愛するが故に無理やり…… Part3

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1名無しさん@ピンキー
愛するが故にレイプor強姦or無理やりしてしまうシチュが好きな奴は集え!
二次でもオリジナルでもおk。
襲う側に深い愛情があればおkおk。
相思相愛なら尚更おkおkおk。
逆レイプもおkおkおkおk。

■お約束
・エロパロ板は18禁です。大人の方だけ利用してください。
・原則sage進行。メール欄に半角、小文字で「sage」と記入。
・愛あるレイプに確定的な定義はありません。他人の考え方も尊重しましょう。
・他スレのSS紹介禁止。迷惑をかける可能性があります。
・相手をすると喜ぶので荒らし、煽りは徹底的にスルー。

詳しくは>>2をご覧ください。
2名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 19:58:42 ID:AtZtj9pQ
          _人人人人人人人人人人人人人人人_
         >      ごらんの有様だよ!!!  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______  _____  _______    ___  _____  _______
ヽ、     _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、   ノ    | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ  、  |
  ヽ  r ´           ヽ、ノ     'r ´           ヽ、ノ
   ´/==─-      -─==ヽ   /==─-      -─==ヽ
   /   /   /! i、 iヽ、 ヽ  ヽ / / /,人|  iヽヽ、   ヽ,  、i
  ノ / /   /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、  、 ヽ
/ / /| /(ヒ_]     ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_]     ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '"   ,___,  "' i ヽ|     /ii""  ,___,   "" レ\ ヽ ヽ、
  '´i | |  !    ヽ _ン    ,' |     / 人.   ヽ _ン    | |´/ヽ! ̄
   |/| | ||ヽ、       ,イ|| |    // レヽ、       ,イ| |'V` '
    '"  ''  `ー--一 ´'"  ''   ´    ル` ー--─ ´ レ" |
3名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 19:59:51 ID:w49WFdJW
・投下する方は事前の注意書きをお願いします(特に暴力等描写)。
 事前措置をとればトラブルを回避しやすいと思います。
・書きながらの投下は禁止。書き上げたものをコピペしてください。
・作品の最後には「終り」、「続く」などと宣言してください。
・気に入らない作品はスルーしましょう。好きなものにだけコメントをつければおk。
・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。
・リクエスト、続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
・他人に注意をするときは、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

■過去スレ
 愛あるレイプ Part2
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1234146553/
 愛あるレイプ
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1197985819/

■保管庫
 2chエロパロ板SS保管庫
 ttp://sslibrary.arings2.com/
 ENTER→オリジナル、シチュエーション系の部屋→17号室
※保管されたくない方は投下時に一言添えてください。
4名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 20:17:55 ID:w/FcPEtr
いち乙!!!!!
5名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 20:20:10 ID:Pya81bQQ
乙ですた。
6名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 20:57:42 ID:8o+1xGdg
いちおつ!
7名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 21:27:43 ID:bRCFEbgC
>>1
8名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 21:44:19 ID:2ojemwu4
いちおっつ

初代スレのいじめられっ子×いじめっ娘に萌えた。

いじめっ娘最初はレイプなんてできないだろうと余裕かます

マジ切れしてスイッチ入っちゃった男に力づくで押さえつけられる

そこでやっと恐怖を感じて暴れるが体がビクともしない
こんなひょろい体のどこにこんな力が、みたいな
9名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 14:06:03 ID:MH/06Wcu
いちおつ
10名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 14:38:55 ID:PUMN1ZKl
>>1 乙です!
11名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 14:32:28 ID:GRb1vZ+f
愛ゆえに人は苦しまなければならぬ
こんなに苦しいなら愛などいらぬ!
12名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 14:44:21 ID:BukgQML4
聖帝ですね、わかります。

「愛するがゆえに…見守る愛もある」
13名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 17:30:30 ID:uT0FRtSx
わしょーい
14名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 07:23:56 ID:uoYEj6CC
いつかのおっさんと少女の人はもうこないんだろうか。
あれは萌え死んだ。
その後の妄想も広がりまくりんぐ
15名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 22:10:03 ID:UV9biKKl
あれは確かに萌えた
他の書き手さんも来ないかなー
16名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 00:01:58 ID:OxgSfOqp
大昔、罪といえないような軽い罪を犯した者でも
捕らえられ容赦なく死刑にされてしまう時代があったらしい。
しかしその国の宗教では処女は神のもので、処女を失わなくては娘を死刑にすることはかなわない。
そこで、処女と思しき娘は死刑執行人や看守的なポジションの男が寄ってたかって犯してから死刑にしていたらしい。

無罪の囚人娘と、娘に愛着がわいてしまい
「誰かに無理矢理汚されるくらいなら最後くらい俺が…」と凌辱役を一手に引き受ける看守男希望
17名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 11:12:08 ID:fa7OZFBf
新スレやっと見つけたー
>>1

>>16
それって欧州?
18名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 13:33:04 ID:bFdwPpFK
>>17
古代ローマと中世ヨーロッパで同じ風習があったらしい
19名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 19:56:29 ID:Eg9qDDPq
いいね、それ
ハッピーエンドはなさそうだから物凄く切なくなりそう?
20名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 15:31:17 ID:vobWv/OM
21名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 00:56:25 ID:obwzW/37
人魚姫はなぜ泡になる前に王子を逆レイプしなかったのか
22名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 06:29:56 ID:52ylE2r2
かぐや姫の求婚者の内、一人くらい姫を手込めにしようと考えなかったのかな
23名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 08:27:12 ID:2OjoWQwj
>>21、22
そういう「もしも」な話も面白いかも試練
特に逆レイプ人魚姫は読んでみたい
24名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 14:53:18 ID:8zQH/R0O
>>21
だってあいつ魚類だぜ?
25名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 16:35:35 ID:N9seKzfJ
>>24
水棲動物にも哺乳類はいるから
人魚も哺乳類じゃね?乳あるし
SEXも有りかもよ
26名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 18:47:47 ID:obwzW/37
原作だと姫は「殺して王子の血を足に浴びなくてはあなたは泡になってしまう」
と姉に言われて王子を殺しに行くんだけど、王子は式を終えた花嫁と幸せそうに寄り添いあって眠ってて、それで泣きながら海に飛び込むんだよな。

「寄り添いあって眠ってる」のが事後の姿だとしたら花嫁惨殺(もしくは拘束)して王子縛り上げて
足と一緒にできた膣で処女を逆レイプで失ってから泡になるくらいのことはしていいと思う
27名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 00:36:19 ID:k1ZfmgNV
かぐや姫って服脱がすのすげー大変そうで同意の上じゃないと想像できないなあ
ツンデレ人魚姫だな。

そういえば白雪姫をアダルトにすると愛あるレイプになりそうだ。
王子より継母裏切った猟師あたりが美味しいな。
28名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 00:39:16 ID:k1ZfmgNV
間違ったヤンデレ人魚姫。
29名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 01:18:06 ID:B9z5eveJ
>>27
当時の夏は、かなり薄着だったらしいよ
30名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 01:52:08 ID:DX8ga9eS
人魚姫→王子→花嫁でヤンデレ連鎖とかどうか
王子の花嫁は、隣国のお姫様で許婚だの、
打ち上げられた浜辺近くの村娘などあるが、今回は村娘で

魅力的な王子に憧れるも身分違いで婚姻を拒絶する娘
娘を命の恩人と思い込み、惚れ抜いて既成事実と権力で花嫁にする王子
二人の初夜、もしくは普段からの行為を見続けて人間の性交渉を知り、
初夜を迎えた娘の前で逆レイプで思いを遂げ泡となる人魚姫

娘が口の聞けない人魚姫を甲斐甲斐しく世話してて、二人が仲良かったらもっとカオスwww
31名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 01:53:19 ID:+KNn2NBk
>>27
着込んで隠されると余計に脱がしたくなるってもんだろ!
32名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 03:27:32 ID:sbQplD6w
>>27
源氏物語ではレイプものが3件もあったよ
寝込みを襲えばかなり薄着なんじゃね?
33名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 04:57:28 ID:sbQplD6w
いや、若紫との初夜も入れたら4件になるか

光源氏→藤壺
髭の男→玉鬘
柏木→女三の宮
34名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 08:45:45 ID:MpCkTllG
>>27
「王子様が白雪といたそうとすると、彼女の処女膜には
小さな穴が7つ開いておりましたとさ」

この手のエロパロはうじゃうじゃあったらしい。黎明期はデズニーも規制
緩かったんかね
35名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 14:00:50 ID:tzpe7EHu
マジレスすると処女膜というのは体の中にあって
襞というかちょっとした堤防のような山のようなものだよ
破れるというのはチ*ポの圧力によって堤防がなくなるんだ
まあ>>34はギャグなんだろと思うけど
36名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 19:02:10 ID:k1ZfmgNV
キャラデザまんま使わなけりゃデズニーも文句は言わんでしょ元はグリム童話なんだし
下火になったけど今でも童話のエロパロってあるよ主にレディコミ系に
グリム童話にまとめられる前のペロー原作のあかずきんは
パロ入れなくてもそこはかとなくエロいよ
あかずきんが狼の前で下着一枚になるまで脱いだりする
37名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 19:46:07 ID:t67OcP3m
赤ずきん自体
「何も考えずに怪しい男の人にホイホイついていったら
性的な意味で食べられてしまいました
こうならないように気をつけましょう」
つー話だからな
38名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 05:19:01 ID:A0bvKcTO
>>16
遅レスだけどこれ現代のイスラム国のどっかのでもやってるんじゃなかった?
ついこの前記事を見た気がする
39名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 06:50:51 ID:83Dd1wmy
>>35
堤防決壊・・・なんか萌えた
40異説・赤ずきんちゃん1/6:2009/09/04(金) 19:52:07 ID:RHGLq/G9
>>36>>37
赤ずきんで一つ書いてみた。

注意
※暴力描写があります。
※原作はほとんど無視。キーワードしか合ってません。
※色々考えると無理がある話ですので、広い心で読んであげて下さい。
※NG登録は「異説・赤ずきんちゃん」でお願いします。

昔々あるところに、家も両親もない少年がいました。
彼の両親は無実の罪を着せられて、処刑されたのです。
少年の暮らす国は、身分制度の厳しい王国で、貴族の犯罪に対してはきちんとした裁判などは行われず、
平民に擦り付けられてばかりでした。少年の両親もまた、その犠牲にあい、濡れ衣を着せられて殺されたのです。
まだ5歳にも満たなかった幼い少年は、訳も分からないまま、両親の首が斧で切り落とされるのを茫然と見ていました。
一人ぼっちになったことに気付いたのは、可哀想だが他人の子を育てられるほどの余裕はないからと、
村人みんなに見捨てられて、森の中に放り出されてからでした。泣いても、叫んでも、誰も助けに来てはくれません。
それでも幼さから、少年は泣き続け、ついにはその声で、お腹を空かせた獣を呼び寄せてしまいました。少年は
持たされた布袋だけを武器に戦いましたが、すぐに獣の牙にボロボロにされてしまいました。獣が飛び掛ってきたのと、
樵が忘れていったらしい斧が少年の目に付いたのとが、ほとんど同時でした。
気がつくと、少年は血塗れた斧を手に、獣の前に立っていました。獣は昼間に見た両親と同じように、首の辺りから
勢い良く血を溢れさせていました。少年は恐くなって逃げ出しましたが、夜が明けて、昼も過ぎてからお腹が空くと、
自然とその場所に戻っていました。火の起こし方を知らなかった少年は、夢中で獣の生肉を食べました。血の臭いに
むせ返りながら、自分が生き残る道はこれしかないのだと本能的に悟った少年は、獣の血に濡れた口元をぐいと拭うと、
両手で斧を持って立ち上がりました。
それから十数年、少年は人と交わることもなく、獣を食べて生きています。人間の言葉はもうほとんど忘れてしまいましたが、
人間を襲ってはいけないことはどこかで分かっていて、食べるために殺すのは人間以外の獣だけです。それもいつかは
忘れてしまうのでは、と、少年は恐くなることがあります。たとえば、人間の忘れていった荷物を漁ってみたものの、
出てきた道具の使い道がほとんど分からなかったときに。、獣の皮をまとい、斧を片手に森を歩いているのを
村人に見られて、悲鳴と共に逃げ去られてしまったときに。速いからといって四つ足で走り始めた自分の姿が、泉の水面に映るのを
見たときに。自分がどんどん「人間」とかけ離れていくのが分かるのです。
いつまで人間を同類とみなして獲物から外していられるのか、いつか本当に人間ではなくなる日が来るのではないか、
少年は恐くて恐くてたまりませんでした。
41異説・赤ずきんちゃん2/6:2009/09/04(金) 19:53:00 ID:RHGLq/G9
少女に出会ったのは、そんなときです。普段は人の立ち入らないような深い森で、少年は少女の甲高い悲鳴を聞きました。
不審に思って近づいてみると、赤い頭巾をかぶった女の子が、狼達に囲まれています。まだ12やそこらの、長い黒髪と、
同じ色の大きな瞳が愛くるしい少女です。狼達はどれも見知った顔で、少年を見ると、迎え入れるようにして
一人分のスペースを空けました。
―――どうだ、美味そうだろう?お前も食うか?
一瞬、ふらりとその輪に加わりそうになって、少年ははたと足を留めました。少年は獣の本能を振り払うように
首を横に振ると、斧を振り回して狼達を追い払いました。思わぬことに牙を剥き出して少年を威嚇する狼達でしたが、
少年に睨みつけられると怯んでしまいました。少年は人間らしい知恵で罠を作り、獣を仕留めるので、森の動物達から
一目置かれているのです。
少年は駆け去った狼達に続くようにしてその場を立ち去ろうとしました。どうせ少女は自分を新手の獣としか見ない。
また恐怖を露に逃げられて、傷つくだけならまだいい。激昂した自分が少女を襲いでもしたら、せっかく人として
踏みとどまったものが裏目に出てしまう。少年はそれが恐かったのです。
「オオカミさん!」
それなのに、どういうわけか、少女は一生懸命に走りながらついてきます。
「ごめんなさい、何て呼んだらいいの?でも、狼達とお友達みたいだから、オオカミさんでいいかしら?」
少女が何か言っていますが、少年にはもう言葉の意味が分かりません。少年は足が速いので、少女との距離はどんどん
開いていきます。
「オオカミさん、ありがとう!助けてくれて!」
諦めたらしく足を止めた少女が、最後に大きな声で叫びました。少年は振り向きもせずに走っていきましたが、
一つだけ、聞き覚えのある言葉を口の中で反芻していました。
「アリガトウ―――アリガトウ」
夜になって、洞窟の寝床でその言葉の意味を思い出し、少年は跳ね起きました。
商売をしていた父親の荷出しを手伝ったときに、言われた言葉。道端で摘んだ花を母親に渡したときに、言われた言葉。
あの言葉を、自分は今日、かけられたのだ。それだけのことに、少年の胸は熱くなっていました。それから、昼間に
少女から逃げ出したことを後悔しました。あの子は他の人間とは違う、自分を恐がることも忌み嫌うこともしなかったのに。
少年は翌日から、少女の赤い頭巾を探して森中を歩き回りました。

そしてある朝、少年は少女を見つけました。少女は少年を認めると、ぱっと顔を輝かせるようにして笑いました。
それからというもの、少女が森を歩くときはいつも傍らに少年がいます。少女は、少年が言葉に不自由していることを
すぐに悟り、言葉を教えるように工夫してお喋りをしてくれました。
「私ね、今からおつかいなの。おつかいはね、お父さんやお母さんから言いつけられた用事をすることよ。今日は、
 お祖母ちゃんのお見舞いに行くの。お祖母ちゃんは病気だから、食べ物やお花を持っていってあげるのよ」
「私、赤頭巾て呼ばれてるの。おかしいでしょ、ほんとの名前と全然違うのよ。赤頭巾はね、私が被ってる、これのこと。
 この形を頭巾っていうの。赤は、この色よ」
少女のお喋りを聞くうちに、少年は片言でいくらか喋れるようになりました。その片言で、初めに口にしたのは、
自分はどんな危険からも必ず少女を守るという約束でした。少女はその言葉に喜んで、少年を抱き締め、「ありがとう」と言いました。
少年は、自分のほうこそ人間に戻れたのが嬉しく、「ありがとう」と言い返しましたが、少女はそれを鸚鵡返しだと笑いました。
少女は少年の過去を知りません。少年にはそれを語るだけの語彙が既に備わっていましたが、少年の辛い過去を知れば、優しい少女は
少年から離れることを罪と思ってしまうと、少年は考えたのです。そんな風に、少女の重荷になりたくはありませんでした。
42異説・赤ずきんちゃん3/6:2009/09/04(金) 19:54:22 ID:RHGLq/G9
そんな幸せなときが、数月も続いた頃です。
「いけない!今日は猟師さんもお見舞いに来るって日だわ」
いつもの通り、祖母の住む山小屋の程近くまで共に歩いてきてから、少女がはたと立ち止まって言いました。
「お土産、お祖母ちゃんの分しか持っていない……どうしよう」
少女は籠の中の手土産を見て、途方に暮れていました。籠の中には一人分のお菓子とぶどう酒しか入っていません。
少年は少女と一緒になって頭を捻り、やがて思いついて言いました。
「俺、花を摘む。花、おばあちゃんに渡す。お菓子、お酒、リョウシさんに渡す」
「いいの?」
「いい。赤頭巾早く行く、おばあちゃん喜ぶ」
少女は申し訳なさそうに顔を曇らせていましたが、やがて感謝の念を顔に滲ませながら頷きました。
「ありがとう、オオカミさん。じゃあ、お願いするわ。でもね、猟師さんは貴族の坊ちゃまで、あなたを見たら
 きっと面倒なことをしてくると思うの。あの人、村の安全のためとかいって、何もしてない動物を山ほど
 撃ち殺すような人だから……あなたみたいに村から離れてる人間のことだってきっと良く思わないわ。
 だから、猟師さんに見つからないように、三時の鐘を合図にここに集まりましょう」
少年はこくりと頷き、一目散に花の咲く野原へ駆け出しました。今日ばかりは、少女と出会ってから止めていた四つ足で走ります。
三時までそう時間はありません、二足で走る間があったら、少女とお祖母ちゃんのために、きれいな花を選んでやろうと
思ったのです。そう考えられる自分は、二足で立って歩くことにこだわらなくても、もう人間なのだと思えました。
少年は念入りに花を選ぶと、大急ぎで集合場所に駆け戻ります。どうにか鐘のならないうちに戻ることができ、少年は
ふうと息をついて木の根元に座り込みました。口にくわえていた花束を吐き出して、一つ一つ数えます。白い花、桃色の花、
薄青の花。色とりどりの花をうきうきと見つめていると、少女の喜ぶ顔が目に浮かぶようでした。
山小屋から凄まじい悲鳴が漏れ聞こえたのは、そのときでした。
43異説・赤ずきんちゃん4/6:2009/09/04(金) 19:55:44 ID:RHGLq/G9
少年は花を地面に投げ打って、山小屋へと駆け入りました。そうして見たものは、ベッドに転がったお祖母ちゃんの死体と、
絶命しかけているらしく床でのた打ち回る猟師、そして斧を握り締めて震えている少女の姿でした。少年が立ち尽くしているうちに、
猟師は激しく痙攣し始め、やがてその場にどさりと身体を投げ出して、少しも動かなくなりました。少女はガチガチと
歯を鳴らして震え、何事か呟いていました。少年が先に我に帰り、少女を抱き締めると、少女は堰を切ったように泣き出しました。
泣き声の合間に少女が話す切れ切れの言葉と、お祖母ちゃんの死に様から、少年は大体の事情を察していました。
少女が言うには、猟師はお祖母ちゃんに赤頭巾を妾として差し出すよう迫ったというのです。お祖母ちゃんは森に暮らしていて、
猟師の良くない評判を聞いていたので、頭を下げて断りました。平民が貴族の申し出を断ることなど普通なら考えられませんが、
愛情深いお祖母ちゃんは、それで万が一にも猟師が気を変えてくれればと、精一杯言葉を尽くして、猟師に赤頭巾を諦めるよう
頼みました。自分の命と引換にしてもいいとさえ言ったのです。怒った猟師は、「望み通り殺してやる、だが赤頭巾も俺のものだ」と
叫んでお祖母ちゃんを撃ち殺し、そこへやって来た赤頭巾を手篭めにしようとしました。少女は激しく抵抗し、暖炉の脇にあった
薪割り用の斧で、咄嗟に猟師を殴りつけてしまいました。
少年は、赤い頭巾越しに少女の髪を撫で続けました。幼い日、襲ってきた獣を殴り殺してしまったとき、その場にいられない程の
恐怖を感じたことを、少年は思い出していました。まして、人間を殺してしまった少女が、どれほど恐ろしい思いをしたことでしょう。
慰めの言葉を知らない少年は、少女を子どものように撫でてやることしかできませんでした。
そうしながら、辺りを見回し、少年は考えを巡らせます。お祖母ちゃんは銃弾を胸に受けて死んでおり、少女は銃を扱えないことから、
お祖母ちゃんが猟師に撃たれて死んだことは明らかです。少女の衣服は乱れ、痛々しく肩が剥き出しにされています。猟師が赤頭巾を
襲ったこともまた、疑いようがありません。少女は、祖母を殺した男に乱暴されそうになって、ほとんど錯乱していたのです。
しかし、猟師が貴族であり、お祖母ちゃんと少女が平民であることの前には、そんな事実は何の役にも立ちません。早晩、猟師の家の
者がこの小屋を訪れ、猟師の死体を見つけるでしょう。毎日のように山小屋を訪れていた少女が疑われ、捕らえられれば、
結末は見えています。斧で首を切り落とされたときの両親の顔と、少女の顔が目の中で重なって、少年は堅く目を閉じました。
そうして少年は、一つの決心をしました。してみると、少年の内心は至極穏やかになりました。

「お前、もうおしまい」
少年が呟くと、少女は涙に濡れた目をゆっくりと上げました。焦点の合わない目で少年を見上げ、少女は茫然としていました。
「貴族殺した、お前死刑。俺でも分かる。お前、馬鹿。大人しくやられたら良かったのに」
「オオカミさん……?」
少女と目が合うと、少年はできる限り卑しい顔で笑いました。
「けど、俺、助かった。俺も、お前やりたかった。貴族のメカケ、なってたら、できなかった。無理やりやっても良かったけど、
 何度もしたかったから、お前が俺のこと好きになる、待ってた」
「何、言ってるの?」
「だけど、お前もうおしまい。すぐ殺される。だから今しかない」
少年は少女を抱き上げると、食卓の上にその華奢な身体を投げ出しました。まだ我を失っている様子の少女でしたが、少年に
衣服を引き裂かれて、ようやく悲鳴をあげ、身を守るようにして我が身を抱き締めました。少年はそんな少女を見下ろして、
嘲笑います。
「どうせすぐに死ぬ、何を守る?お前も楽しめ」
「……っ嫌……!!」
下着を剥ぎ取られ、何も施されていない、乾いたそこに肉棒をあてがわれて、少女は掠れた声で叫びました。
44異説・赤ずきんちゃん5/6:2009/09/04(金) 19:56:24 ID:RHGLq/G9
「どうしてっ?!やだっ、嫌あぁっ!」
暴れる少女を、少年は容赦なく打ち据えました。殴られて、呆けたように右頬を押さえる少女の、左の頬を更に叩きます。
「煩い。人間のメス、面倒だな」
「う……う……」
たまらず泣き出した少女に、少年は密かに胸を痛めましたが、もう後戻りすることはできません。
少女の太ももを掴んで無理やり脚を開かせると、少年は再びその中心に自身をあてがいました。
「入れるぞ」
「嫌……嫌ぁ……」
少女の拒絶を無視して、少年は少女に肉茎を突き立てました。どうやら誰も立ち入ったことがないらしい少女のそこは余りに狭く、
乾いたままでは先端しか潜り込めません。
「痛っ……!」
「お前、初めてか。ますます面倒」
少年は嘆息すると、少女からそれを引き抜き、まるで蔑視の対象にするかのように、少女のそこに唾を吐きかけました。
少女はひっと喉を引き攣らせ、とても見ていられないとでもいうように、両目を覆いました。その間にも、唾液にまみれた
少年の指は、少女のそこを侵していきます。陰核を転がされ、その場所に分け入られて、少女は思わず声を漏らしました。
「感じるか?」
「そんな、こと……」
少女は否定しますが、愛液があふれ出て、少女の言葉を嘘と教えます。少年は少女の蜜を舌で絡め取り、そのまま
口淫して、ますます少女のそこを濡らしました。ほんの少しでも痛みが和らぐようにという少年の気遣いでしたが、少女は
そんなことは知りません。
「離して……離してよ、酷い……」
「黙ってろ」
「お友達だと、思ってたのに……こんな酷いこと、考えてたの?」
泣きじゃくる少女の言葉は、少年の胸を抉っていきましたが、少年はそれを悟られぬよう、行為に没頭する振りを
していました。やがて、少女のそこが十分に潤ったのを確かめると、少年はまたしても少女のそこに先端を突き入れました。
「待って」
少女の切実な声に、少年は思わず動きを止めました。
「お願い。せめて、お祖母ちゃんから見えないところでして。ここは嫌」
「……」
少年は、お祖母ちゃんの遺体をそのままにして行為に及んでしまったことを後悔しました。ただでさえ残酷なことをしているのに、
余計に辛い思いを強いてしまったのです。少年は自分を殴りつけたい思いでしたが、必死に耐えて暴漢を装い続けました。
少女の髪を引っつかんで、彼女の上体を起こします。少女のトレードマークの赤い頭巾が、衝撃に耐えられずはらりと落ちました。
痛みに顔を歪める少女に、酷薄に笑ってみせました。
「バアサンはもう死んでる。お前、本当に馬鹿だな」
「いた、い……」
「来い」
少年は少女を台所に引っ張っていき、流し台に手をつかせて、少女の裸の尻を掴んで突き出させました。
そうして今度こそ、少女を犯したのです。少女の凄絶な悲鳴が、小屋中に響き渡りました。その声を誰か聞きつけないかと
少年は期待しましたが、深い森の奥でのこと、誰もやって来はしません。少年は内心で舌打ちをしました。
少女の処女地はときに少年をきつく締め付け、ときに襞で優しく包み込み、少年は我知らず、獣のような声を漏らしていました。
「いやっ、あっ、いやあぁぁっ!」
「……はぁ……お前、いいな……人間の女、何人かやったけど、お前、一番」
「ううっ……あ……」
少年は少女を貫いたまま、まだ膨らみの乏しいその乳房を鷲づかんでいました。痣が残るよう、できる限り乱暴に
揉みしだきます。少年が少女の奥に自身を叩きつけるたび、少女の目からは痛みとも悔しさともつかない涙が零れて落ちました。
「やめて、もう嫌っ!嫌ぁっ!」
「……っく……!」
少年は達する寸前に少女から自身を引き抜き、少女の白い背中に穢れを撒き散らしました。
「あ……あ……」
「まだ、収まらない。お前もだろう?」
少年は、茫然自失に陥っている少女を抱きすくめ、その華奢な身体を撫で回しました。
「お前、気に入った。死ぬまで、俺のオモチャ」
「……」
少女の瞳は既に生気を失い、その視線は虚空を漂っていました。だから、その顔を見た少年が、ひどく苦しげに顔を歪めたことにも、
気がつかなかったのです。
45異説・赤ずきんちゃん6/6:2009/09/04(金) 19:57:15 ID:RHGLq/G9
翌朝になって、猟師の召使が、帰らぬ主を探しに山小屋へやって来ました。そこで召使は、主の死体と、山小屋の老婆の死体、
そして陵辱の限りを尽くされた少女の身体を見つけ、腰を抜かして逃げ帰りました。お城の兵隊が彼の依頼を受けて山小屋を
訪れ、ショックで口が利けなくなっているらしい少女を保護すると、獣同然の格好をした少年が、全て自分がやったことだと
名乗り出てきました。少年はすぐさま捕らえられ、厳しい取調べを受けましたが、すらすらと犯罪を自白するので、処刑までの
道のりは大変短いものでした。山小屋から漏れ聞こえる人間の声に釣られ、覗いてみると、可愛い娘がいたので、一緒にいた
老婆と猟師を殺して、娘を犯した。その残忍な手口と、被害者の一人が貴族であったこと、少年が身元不明の浮浪者であったことから、
少年は公開処刑の判決を受けました。
ただの死刑ではなく、身体のそこかしこを切りつけられ、あるいは切り落とされて、失血死を待つという残酷なものです。
その判決を受けて、少年は安堵の息をつきました。全て、少年の計画通りでした。少女の罪を被る―――優しい少女のこと、
そんな申出をすんなり受けるはずはありません。少女さえ欺くことが、どうしても必要でした。たった一度、形だけ行われた
裁判にも少女は現れず、少年は安心していました。そのために、少女の心と身体を傷つけてしまったことだけが、唯一の後悔でした。

首を切りつけられ、少年は刑場の砂上に倒れこみました。割れるような群衆の歓声と、処刑執行人の罵声が聞こえます。
一度首に斧を突き立てられても、人間は生きているものなのだなと、両親のことも思い出しながら、少年はぼんやりと思いました。
見上げれば、空はどこまでも青く、この狂気のような喧騒など知らぬ顔です。もうすぐあの空へ行ける。それも、この色を青と
教えてくれた少女のために。既に指の数が半分もない手を空に伸ばすと、その手首を執行人が斧で叩き落しました。
それでも、少年の表情は安らぎに満ちて、誰にも侵されることはなかったのです。
「―――カミさん、オオカミさん!」
ただ、一人の少女の声を除いては。少年は驚愕に満ちた目で、見物人の群れを見遣りました。興奮に満ちた群集に押しつぶされそうに
なりながら、刑場の柵に縋りついていたのは、間違いなく少女でした。赤い頭巾の代わりに、あの日少年が摘んだものと同じ
白い花を髪に挿してはいましたが、その顔を見間違える筈はありません。
少女は涙で頬を濡らし、何事か叫んでいましたが、群衆の凄まじい歓声と、薄れ行く意識から、少年がそれを聞き取ることは
できませんでした。ただ、少女が来てくれたこと、その顔を見ながら、彼女のために死ねることが、嬉しくて嬉しくて、
少年は笑って死んだのです。少女が最初に教えてくれた、あの言葉を呟きながら。
「ありがとう」

その日、刑場で泣き崩れた一人の少女がどこへ行ったのか、誰も知りません。猟師の名誉を慮り、事件は真実とは似ても似つかぬ
猟師の英雄譚として語り継がれ、やがてどこかの誰かが童話にしたとか、それも定かではありません。
けれど、事件から何年か後、ある森の山小屋で、まだ幼かった私は見たのです。髪に白い花を挿した若い母親が、赤い頭巾を被った
小さな女の子を抱いて、幸福そうに微笑んでいるのを。

おしまい
46名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 21:59:30 ID:pQzxWGuw
>>40
GJ!
47名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 22:26:20 ID:qwYQsrGO
胸がつぶれそうになりました。GJです
48名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 22:33:33 ID:8UBecNL4
>>40
せつねぇぇ
GJ!
49名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 23:32:42 ID:zJuWzFT3
最高
50名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 00:39:42 ID:2CxREskx
カタコトで必死に悪漢を演じるオオカミさんに泣いた
マジでいいものをありがとう
51名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 01:06:17 ID:bKH9ozm+
>>40
GJ。
瞳が潤んだ。

原作へのアンチテーゼで狼を善にする作品をいくつか読んだ事もあるが…
中でも珠玉の出来。
「単なる善」にせず、喜劇にもせず、かつ童話らしくある所が白眉に感じました。

スレタイにもしっかり合致してるのが凄い。
52名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 02:31:59 ID:X16J3bAm
GJ!
久々に胸がつかまれるような感覚におちいった。
いいものをありがとう。

オオカミさん切ないよせつないよ・・・
53名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 09:30:28 ID:l3E7m0iR
GJ!
何だか目に熱いものが込み上げてきたぜ
素敵な作品をありがとう
ラストに救いがあったのもとてもよかった
54名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 10:40:17 ID:2YsPcfH7
良作ありがとう!GJ!
55名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 14:48:30 ID:GYQLCFuJ
今年一番のGJを見た
女の子が誤解したままだとやるせないなと思ったら…!
もうホント神です。いいもの見せてくれてありがとう
56名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 15:43:23 ID:TVVbYTtH
ありがとうGJ!
オオカミさん切ない
57名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 19:55:32 ID:02qnlj4j
切な過ぎる…オオカミさんはきっと少女を守るために生まれたんだと思うと涙が。
まさにぴったりなお話でした。ありがとう!
58名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 22:42:40 ID:gwhHptxE
>>40
GJすぐる!!
59名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 05:25:11 ID:uwKCd94i
愛のある凌辱+調教が最近のマイブーム。
体の関係はめちゃくちゃ進んでるのに、触れるキスすらまともにしてなくて、
互いに相手が意識のない時にこっそりしてたり。
肉体はつながってても、精神上はこれ以上ないほどすれ違ってたり。
そういうの
60名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:36:29 ID:DLUTeuZR
立場上自分に逆らえない相手に恋をして無理矢理…ってのはありがちかな
メイドさんやロボ娘凌辱ってあんまり見ない気がする
61名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 00:56:46 ID:8TROu44/
ありがちではない、王道だ!
62名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 21:40:44 ID:CEThs/16
>>60
相思相愛で肉体関係なしか、
逆に体だけ目当ての酒池肉林はよくあるけどな
権力を好きに使える分お互い誤解しまくってないと難しいのかもしれん。

相思相愛だと思っていたのにメイドさんが
キスさえ許してくれなくておかしいなと思っていたら
病気の家族とか親の借金とかあって仕事に変えればいいのに
ご主人様と一緒にいたいがために足りないお金を稼ぐのに
密かに体を売っていて
それが負い目でまともにご主人様に触れることすらできない。
そんな時噂を知った連中に集団暴行受けそうになった所を
ご主人様に助けられるが売春のこともばれてしまう。
知られたからにはここにはいられないと別れを告げにきたら、
離れたくないけど許せないし何より自分以外の誰かに渡したくない一身で
借金やら何やら外堀完全に埋めた上で
にっこり「誰でもいいんなら僕でもかまわないだろ雌豚。
これからは、僕専用の性処理穴になってもらうよ」
と地下室で拉致監禁とか。
63名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 22:28:09 ID:vadbnayZ
>>62
そこまでっ!構想できているならっ!何故っ!書かないっ?!
いや書いて下さいお願いします。
64名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 23:50:46 ID:F4FwYeRG
>>62
「他の連中には体を許したくせに、なぜ僕を拒む?」とか悶々とするんですね、わかります
65名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 23:51:59 ID:07Ib990o
>>63
構想を立てることとそれを文書にするのは難易度が違う。
俺はそれを思い知ったところだ。
66名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 06:16:18 ID:yuGFN5YN
でも本当そこまで考えれたなら、後はオチ考えて心理描写と
最初の方にでもギャップ効果的に幸せそうな場面いれればいけるんじゃ?
自分の文章が気に入らないのかな?
6762:2009/09/09(水) 22:25:57 ID:T15uub7m
人が書いた物だとそんな事はないんだけど
自分で長々と書いていると何というか素に戻るんだ。
さっさ告白しろ、くっつけ、何卑屈になってんだ
と思っているうちに冷めるw
68名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 04:20:28 ID:5D75xwc0
そんなこと言わんでよw
まさにそんな状態に陥りつつも
3週間近くもグダグダ書いてる自分はなんなんだwww
69名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 22:22:46 ID:uk/jgOIy
じゃあ頑張ってみる。
その代わりその3週間近くかかっているブツの公開を…!!
70名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 00:51:18 ID:qjqiIyON
魔王さん来ないかな
71名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 06:44:32 ID:P3498rDh
専務と白兎さんにも来て欲しい
72名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 09:43:30 ID:cntlot69
圧縮回避保守
73名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 22:18:15 ID:8AZU6OlZ
保守
74名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:23:37 ID:1+/qdP8j
>>27
知らないのか?
十二単は着るのは骨が折れるが、脱がすのは一瞬なんだぜ。
75名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 04:57:58 ID:HwNqJ/CB
これを空蝉という
76名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 11:54:22 ID:YQWFUw8d
平安時代なんて基本レイプだからな
77名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 22:28:02 ID:JLi1hKJB
>>74
って事はレイプされちゃうと周りにばればれになっちゃう事が多いんだな。
周りにばれないように早く服を着なきゃと思いつつ涙目みたいな。む
78名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 23:07:30 ID:S5K9nnep
>>77
いや、あの時代は周りの手引きなしで姫に辿り着けなかったんだよ。
もちろん手引きする側近は、既に落とされてる。
79その後:2009/09/15(火) 23:07:55 ID:PWrnqJ5n
前スレ、保管庫収容名「絵梨奈と拓馬」のその後的なもの
一切の触れ合い(エロ含)がないので迷ったのですが自己満で投下させて下さい、保守にでもなればさいわい
スルーしたい方は“その後”でNGお願いします、6レス借ります
ーーーーーーーーーー


 似たような顔に同じ表情を貼りつけたキャスター達の口から残暑という言葉がやっと出なくなったここ最近。
蝉が鳴かないだけいくらかマシだが、それでも真昼間の直射日光にはうんざりだ。
 最後の一つを腕を使った振り子の反動で押し上げた。
摘まんだシャツの襟元で鼻下を、上げた腕の肩口でこめかみの汗もそのまま拭ってしまう。
 (さっき中入ったときに、タオル取っときゃ良かった)
 声を張りあげて家の中にいる母さんに呼びかけると、リビングの窓からひょっこり顔が出てくる。
「…かあーさーん!!やっぱりこれ以上は無理だって!」
「やっぱりぃ?じゃ〜ねえ、一回倉庫に置いてきてくれる?」
「俺一人でかよ!」
「しょうがないじゃないの〜。母さんも掃除頑張るんだから」
 ね?と言いながら俺の返事も聞かずに丸顔はいなくなる。
 頑張るのは分かる、それは分かる。
が、今し方自分で積んだ軽トラに目一杯の段ボールを、一人でまた運び降ろすのかと思うと溜息も出るだろうに。
「はー…」
 いよいよ実家の改装工事の日が近づいてきたせいで俺は片付けに駆り出されていた。
捨てると言ったはずのガラクタたちも知人の倉庫を借りれることになった途端、哀愁を漂わせていたかと思えたのに、今ではすっかり我が物顔で段ボールの中だ。

 絵梨奈とのことがあってから丸一ヶ月がたった。
 あの日、俺は夢も見ずマヌケにも眠り続けて、目が覚めたときには昼をとうに過ぎていた。
自分と壁との間に眠っていた筈の絵梨奈の姿はなく、それはもちろんと付け足さなくても分かりきったことで。
異臭を放ってがびがびに固まった精液だらけの冷えたシーツの中、独りきりで起き上がる。
 絵梨奈はどんな思いで目覚めたのか、どれほどの嫌悪で立ち上がったのか。
ならどうして、毛布を掛けなおしていったのか。
想像もつかない。
 あんな馬鹿げた最低の行為で、自分の気持ちが伝わるだなんてありえない。
もし伝わったとしても、そんなものは反射屈折を繰り返して、届く頃には原形など跡形も無い。
男の体で組み敷いたその下で、押し付けた欲望ばかりが彼女の瞠った黒目を大きく占める。

 久しぶりのミッションで半クラ失敗、一回エンストしてから最寄駅の裏手の倉庫に着いた。
埃っぽい屋内とひび割れて禿げかけた駐車場を何度も往復する。
いたるところに散らばった、角ばったアスファルト片がハイカットの足裏にめり込む。
 (いて。てか喉渇いた…)
 人間は弱い生き物には違いないだろうが、だからといってそう簡単にも死ねない。
自分の心一つで死ねる人もいるだろうが、俺はそういった類の人間ではなかったみたいだ。
 腹が減れば食べれる、眠くなれば眠れる。
しばらく眠れなくても平均睡眠時間が2時間になっても、固形物が喉を通らなくても主食が染谷に貰ったガム1個でも死んだりなんかしない。
俺は消えたりできない。
 (そんなつもりないけれど)
80その後:2009/09/15(火) 23:08:51 ID:PWrnqJ5n
 加害者が被害者面するのは、可笑しいだろうから。
いつも通りに笑える自身は無かったが、鏡を見ればきちんと笑える“拓馬”がいた。
トイレでげーげー吐いたって、毎日大学の講義を友達と受けて、母親の愚痴も適当な相槌で聞けた。
 ただセックスもオナニーもする気にはならなかった。
一人、アパートにまで来てくれた女がいたが部屋にさえ上げず、無心に携帯のメモリーをどんどん減らし続けた。
「ッ!!………い、ってぇ〜」
 おざなりに作業を進めていると、今度は倉庫入り口の段差に蹴躓いた。
持っていた段ボールは投げ出され、ついた掌と膝にじんじんと血が集まりだす。
立ち上がる気力もなく、汚れるのも構わず俺は腰を下ろした。
 少しぼーっとしてからひっくり返ったままの段ボールをおこすと、ささくれ立った皮膚がかさこそと音を立てる。
周りに散乱した物に目をやると、どうやら俺がまだ幼かった頃にかいた絵や作文、初めて折った折り紙、使ってた連絡帳なんかまであった。
嬉しいやら呆れるやら、軽く眺めたりパラパラと流し読みしながら一つずつ元に戻していく。
 ふと、目についたものがあった。
丸く切り取った厚紙に金色の折り紙が貼られ、その上に一回り小さな銀の色紙が重なり、そこに油性ペンで覚えたての平仮名が書かれてあった。
水色の首掛けの紐が指の間から垂れて埃を掬う。
 『――――おめでとっ!すごいねー、拓ちゃんがんばったねー!』
 『そんなにすごくないよ…』
 『はい!!!これッ』
 『くれるの?』
 『うん、首にかけてあげるね!』
 『ぷっ…へたっぴな字だなあ。“おめでとう たくちゃん”って書いてある?』
 『これでも、がんばってかいたんだよ。笑わないでよー』
 『ごめんごめん、ありがとう』
 なにを褒めてもらったのか、自分でも思い出せないほど些細なことだった。
でも、絵梨奈はにこにこしながらこれをくれたんだ。
「……、…」
 昔から、いつだって、絵梨奈は絵梨奈なりに好いてくれていたのに。
たとえそれが兄や友を想うようなものだったとしても、ありのまま素直に受け入れるべきだったのに。
俺が、ぜんぶ間違えた。
「…っ………っふ…」
 枯れたはずのものが溢れて折り紙に落ちていった。
金や銀が水分を弾いていくれてよかった、こんなもので、汚れなくてよかった。

 玄関のドアを開けると、待ち構えていたかのような母さんに出くわした。
靴を脱ぐのに手間取るフリをして顔を上げずに返事をする。
「遅かったわね〜!今、電話しようかと思ってたのよ〜」
「ガラクタが重くて時間くったの」
「失礼ねっ、ガラクタじゃないわよ。大事なものばっかりなんだから」
「…うん。俺、風呂入るわ」
「あ、もう少ししたらご近所さんがみえるから。折角だからリビングに顔出してね〜」
「こんなぐちゃぐちゃで人様が座れるところなんか」
 母さんが無言でリビングにつづくドアを開け、意味不明のポーズを取り出す。
どうだ!と言わんばかりの表情の向こうには、普段の生活に必要のない家具やガラクタの無くなった分、すっきりと広がった空間に机と来客用の座布団が整然と並べられていた。
「リビングばっかり掃除してるなーと思ってたら…これのためか」
「ふふふ〜。さ、早くお風呂入ってらっしゃい!」
 バンッと背中を叩かれて、つんのめる俺の後ろで母さんが十八番を口ずさみ始めた。
81その後:2009/09/15(火) 23:09:54 ID:PWrnqJ5n
 熱めの湯を頭からかぶり、素手でザラつきを撫で掃って流した。
沁みる目元をよく拭って風呂からあがると、うっすらと浮いたあばらが西日を受けて洗面台の鏡に映りこんでいた。
浮遊する塵があわく輝く。
 不意に繋がった廊下の先、玄関のほうが騒がしくなる。
ドアの開け閉めや衣擦れの音、それに伴って三和土で靴の上から砂利を踏みしめる音が聞こえてくる。
「皆さんいらっしゃい!暑かったでしょ〜」
「お邪魔しますー。あら!大分、片付いたのねぇ」
「お邪魔しまぁす!」
「あの…これ、良かったら茶請けの足しにしてくれる?」
「まあ、まあ!さ、どうぞあがってあがって〜」
 (これまた結構な人数だな…)
 床伝いに響いてくる足音だけで判断してもすでに4、5人のご近所さんを迎えているようだった。
自然と瞼は落ちて、タオルの両端でがしがしと頭をかきつつ聞くともなしに自分以外の気配へとぼんやり想う。
 先着した一行から僅かな間を空けて、再びドアが軋んで開閉を知らせた。
「こんにちは、お邪魔しますね。遅くなっちゃったかしら?」
「いらっしゃ〜い。そんなことないわよ、大丈夫よ〜。あら!!」
「お邪魔します…。おばさま、お久しぶりです」
 ソプラノとアルトの中間あたり、滑舌はあまり良くなく、でもホットケーキの輪郭のように柔らかい優しい曲線を孕んだ声。
「絵梨奈ちゃんったら、会う度に美人さんになってくんだから〜。こんな年寄りの集まりに来てくれるなんて嬉しいわあ!遠慮なくあがって、お茶でも飲んでってちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
 袖を通したばかりの真新しいシャツが吸い寄せられ、みるみる体に張り付き、背中に汗が染みていくのが嫌でも分かった。
掌の窪みに溜まったかと錯覚しそうになるほどの手汗を掻いて、視界の隙間からふやけた掌、指先を見ると爪の白半月が覗いた。
絵梨奈を押さえつけた体が汚い。
この手が俺が、汚い。
「今日はちょうど拓馬も手伝いに来てて――…」
 話し声が遠退き、蝶番がキィイーと鳴って廊下が静まると、俺は風呂場から飛び出し必死になって階段を駆け上った。
“気付かれないように”その一心で、足音を潜めて体を縮めて2階の一番奥の部屋へ入った。
扉に預けた背中が熱い。
 すう、はく、すう、はく、すう、はく、すう、はく。
「はっ……はっ…はっ…」
 犬よろしく自分の荒い息がうっとうしく耳につく。
心臓は早鐘をうち、足りない頭を回すためにも律儀に呼吸を繰り返すのに、吸ったことしか記憶に残らない。
 いつまでたっても落ち着かず、ずるずると座り込めば色々な物が乱雑に置かれた部屋の中で埃が舞った。
今では物置がわりだが、ここは元は俺の部屋だった場所だ。
無理に肺に入れた酸素が苦くて、喉に広がった渋みが消えない。
82その後:2009/09/15(火) 23:11:07 ID:PWrnqJ5n
「…――どこ行っちゃったのかしらね〜、本当あの子ったら」
 ドア1枚分、くぐもりが薄まった声に肩が跳ねた。
もう一人の声が母さんに返事をしたはずなのに、他の来客のお喋りにかき消されて聞こえない。
室温があがった気がして、警告音が鳴ったような気がして、気が急く。
「顔出すように言ったんだけどねえ……あ、部屋は散らかってるけどそれでもよければ好きにしてて。お洋服汚れないようにね〜」
 トンッと一段、踏み出す音。
ダメだここに居てはいけない、会うわけにはいかないだろう、そもそも顔も見たくないはずだ、ならどうして、逃げろ、隠れろ、でも、どこへ。
混迷する意識でも耳だけは研ぎ澄まされて、トントンと階段を登るのを確かに聞いていた。
 すぐ向こう側にいる人の足が部屋の前でそっと止まった。
 (なんで)
「…………拓ちゃん……?」
 金色、銀色、キラキラに縁取られたこの声を、もう聞けることはないと思ったのに。
 (もう関わることは一生ないと思ったのに)
 無意識のうちに深い息を三度吐いて、ドアへのろのろと向き合おうとればす、自分の存在を不安定に感じて右手で左手を握る。
ふわふわした震えが手首から流れて、ちゃんと体温が続いた。
 もう一度、声がかけられた。
 取っ手に腕を伸ばす。
ゆっくりとドアを押し開いても互いに無言で、脇へ避けた俺の前を絵梨奈が通り過ぎる。
「物いっぱいだけど、あんまり変わらないね…」
 部屋を見回した絵梨奈が小さく呟くので、俺は甲斐性もなく呻くようにああとだけ返した。
本当はもっと自分から話さなくちゃいけないことがあっただろうし、聞きたいこともあったけど口からは出なかった。
「久しぶり、だね……痩せた?」
 俺の目の前に絵梨奈が立って視線が繋がった。
真正面の頭2つほど下、口を結んで上手く笑えていない顔があった。
他人が自分を映す鏡なら、あれは俺の顔でもあるのか。
へたっぴな顔だと思った。
 答えを求めていない質問は置き去りにして、絵梨奈は続ける。
「なんで……あんなことしたのか、聞いてもいい?どうして、泣いたの?」
 必死に震えを抑えた声音に身勝手に胸がつまる。
出来れば聞かないで欲しかった、俺は答えられない。
それに俺の答えがなくとも絵梨奈の答えは決まってるのに、目が、そう言ってる。
 瞬きに紛れて視線を外した。
繋がりが絶たれた瞬間、視界の端で絵梨奈が苦しそうに息を呑んだ。
黙り込み続けた挙句に顔も上げていられないなんて俺はとことんまで腐ってる。
一々そうやって間接的に突きつけてくれなくても知っている。
 耳が痛くなるほどの長い沈黙のあと、隙間なく閉じられていた喉を抉じ開けた。
ほとんどの動きを止めて、自信なく喋りだしたのは俺だった。
「俺、と……俺の傍にいて、怖くないのか?あんなこ」
「こわいよ」
 顔はまだ見れない。
細い足指が床に食い込んで縮こまって、爪が白んでいくのをただ眺めていた。
「……じゃあなんで……」
「こわいよ!!怖いに決まってる!」
 叫びは強い主張を表して、弾かれたように俺は絵梨奈を見る。
「だからって…怖いからって、逃げてばっかりじゃいられない。逃げたぐらいじゃ私、吹っ切れないよ。拓ちゃんを避けたって、結局自分自身からは逃げられないんだよ?……でも」
 瞳の淵にめいっぱい涙を溜めて、それでも零れた痕に髪が張り付くのにも構わず、口を大きく大きく開けて言葉を縒り上げる絵梨奈に、相槌さえ忘れて見とれていた。
「私だって、どうしたらいいのかなんて分かんないよぉ…」
83その後:2009/09/15(火) 23:12:08 ID:PWrnqJ5n
 目の前で泣く絵梨奈の涙も拭えない。
この右手は強張るばかりで一向に動こうとはしない。
 (ああ、俺)
「私…拓ちゃんが、好きなんだよ。ずーっと前から好きだ。…あんなことされて怖いのに、この気持ちは無くなってくれない」
 相手を、心で求めて、体は拒む。
堂々巡りの無限ループ。
「……うん……うん、……うん」
 緩みきっていた涙腺はやっぱりもたなかった。
絵梨奈が話してくれたことには何も返せないで、馬鹿みたいにうんうんとしか言えなかった。
への字に曲がった口と涙と鼻水で、まだ頭と言葉がまとまらない、心と体が遠い。
 責任を、と言われればどんな形や手段であってもそれ相応の責任をとるつもりだった。
謝罪をと言われれば謝罪を、罰をと言われれば甘んじて、責められて咎められて、存在自体を淘汰されるべきだと思っていた。
 でも絵梨奈は“逃げるな”と言うから、俺は俺を確かめる。
目もある、口もある、濡れたままの伸びた髪は次の休みにでも切ろう。
絵梨奈とはつくりの違う筋ばった腕、握る拳に力も籠もりはじめる。
埃まみれの足でも床から垂直に立っていられる、体の中心ど真ん中で、無くならない想いもある。

 10分か20分、いや、30分は優に経っていたのかもしれない。
西日が夕日に変わるまで、黙って二人泣いて泣きつくした。
 途中どちらからだったか互いに音もなく座り込んで、子供みたいに手の甲や袖で何度も顔を拭った。
少しずつ息を整えて絵梨奈を見やると、真っ赤な鼻に黒ずんだ目元、ストライプの七部袖がぐっちゃぐちゃだ。
絵梨奈もこちらを窺ってか自然と目があう。
「……お化粧、とれちゃった」
「うん……パンダ」
「うるさいな」
「大丈夫、かわいいよ」
 瞳がぐらぐらと揺れて、絵梨奈は両手でジーンズの小さな膝を握り締めては俯いた。
額の下辺り、ハの字眉の間に皺がよる。
「…そんなの、今まで、一度だって言ってくれたことなかったくせに…ずるい」
「ごめん」
 体を起こして姿勢を正すと同時に絵梨奈の肩がビクッと跳ねた。
胸が痛んだが、傷つく資格もないので歯を喰いしばってやり過ごした。
 一拍置いて今度は驚かせないように徐々に動いた。
手をついて背を倒して頭を床につける、つまりは土下座だ。
腹めいっぱい、苦しくなるまで酸素を吸い込む。
「この間のこと、ごめん、ごめんなさい。あれは全部、俺が勝手に……」
 語尾が頼りなく、全身からは汗が吹き出て、床と両手の合間がぬるんだ。
 (逃げるな、逃げるな)
 挫けそうになる決心を奮い立たせて、さっきと同じ、吐き出す以外の選択肢をえらべないように深く深く息を詰め込んだ。
のに、言葉に詰まって、歯切れの悪い不必要な前置きばかり長くなる。
「…こ、んなこと言えた立場でもないし、本当なら」
「言って、ちゃんと教えて?」
 俺が一番伝えたいことは、伝えなくちゃいけないことは何だ。
「俺……絵梨奈が好きなんだ、もうずっと。自分のことは棚に上げて、絵梨奈が誰かのものになるなんて許せなかった」
 こめかみから額へ、汗が逆流する。
自分の体温で額のフローリングが暖まっていく。 
「謝ったからって許されるなんて思ってない。けど絵梨奈がまだ俺を選んでくれるなら頑張りたい、一緒に考えていきたい。俺、逃げないから」
 (だからどうか選んで)
84その後:2009/09/15(火) 23:18:15 ID:PWrnqJ5n
 どこまでも自分勝手だったが、それが今の、足掻いてみたって結局は捨てられなかった正直な気持ちだった。
選んでほしい。
可能な限り、傍にいたい。
「……うっ…、……ッ…ばかぁ……ぅーー」
「絵梨奈…?」
 俺は恐る恐る顔を上げる。
「嬉しいよ!でも言うの遅いよ!あの、あの時ひっ、く……私、拓ちゃんに好きだって言うつもりだったのになんで私が誰かのものになっちゃうのよ!!」
「え?え?だって……見合い…するって」
「そんなもの!とっくに、断ってる……」
「…………」
 号泣しながら感嘆符に合わせて床をバシバシ叩く絵梨奈、二の句を次げない俺。
「もうっ…本当ばか……」
「………………ごめんなさい。でも……本当ごめん、今、俺よかったと思ってる」
 卑しい、けどそれが本心でこれが俺だ。
 正座した膝の上、握った手の甲へぼたり、ぼたり、落ちる水滴が温かく染みていく。
安堵して泣いたのは、舌足らずな子供の頃以来のことだった。
決壊したものは自分の意思ではどうにもならなくて、情けないとは感じたが今更だとも思えた。
「拓ちゃん」
「ごめん、今日涙腺ゆるくて」
「……二人とも顔ボロボロだね」
「うん」
 俺たちは静かに見つめあった。
絵梨奈が少し離れた場所にいて、言葉を選んでいるのが分かった。
その気遣いは自分のためだと、今なら、卑屈にならずに受け入れられる。
「許せない気持ちも、怖く思う気持ちも、なくなりはしないのかもしれない。けど、拓ちゃんが逃げないで向き合って考えてくれるなら、私も頑張る」
 これからよろしくお願いします、とぺこんと頭が下げられて。
「ありがとう。……嬉しい。こちらこそ、これからも出来ればずっと、よろしくお願いします」
 俺も頭を下げた。
 変わるものと変わらないもの、満たすことと満たされること。
体温を取り込んで優しくなった部屋で、苦くぎこちなくとも二人で笑える幸せを忘れないでいたい。

「拓馬〜ッ!!!絵梨奈ちゃ〜〜ん!お茶菓子、一緒にいただきましょ〜〜〜」
「 「 はーーい! 」 」

ーーーーーーーーーーーーー
ナンダコレ、前のときのイメージとか壊してたらごめん
拓馬の母ちゃん書いてるときが一番楽しかった、サイト餅

>>62
3週間かかってこれっぽっちだyo!
85名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 23:34:29 ID:0hiWm8ZF
リアルタイムで見た。義理堅い>>68にGJ。
86名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 13:29:04 ID:UnAhBq7W
ああああ、ありがとう!
萌えた!
ハゲ萌えた!!
二人を書いてくれて、ここに書いてくれてありがとう!
87名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 20:40:53 ID:mQqxcLam
GJ!
ありがとう!
88名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 02:35:30 ID:UralNykb
うおおおおおおお待ってた!待ってたよ!!
その後書いてくれてありがとー!!
89名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 07:55:48 ID:EAd84i6/
GJ!保管庫の作品と合わせて何度も読み返しててレスなかなか書けなかった。
絵梨奈が優しくて強くて、心を打たれました!
9062:2009/09/17(木) 22:19:17 ID:C3SejnMr
>>79
これっぽっちっていうなyo!
流石の有言実行っぷりに頭が下がります。

ええと…一応こちらもがんばって書き続けとります。
形になるかは分かりませぬが。では、いつかアップできる日まで。
91名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 00:09:53 ID:ew8pzxZH
信頼し、尊敬していた親代わりのお兄さんにある夜押し倒されて好きなようにされ、
怖いと言っても聞き入れてもらえず、
(しかもお兄さんは自分ではなく自分の母親の面影を求めて自分を育てていた節がある)
翌朝ふつふつと怒りがわくもあまりのことに布団から抜け出せない少女…

と書くと、いい感じの愛ゆえ作品になるが若紫ちゃんのあれ確か和姦だったような
92名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 13:15:06 ID:IVOsZAVe
>>91
SEXのことをよく理解してない少女の同意など
文字の読めない者に説明書を見せて判を押させるよなもの
あれは立派に強姦だよ
93名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 13:25:58 ID:UfqZVtGZ
あれは若紫より翌日の光源氏に態度に(現代人は)どん引きする所だろう。
94名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 21:51:27 ID:sasUWkjg
若紫の方は覚えてるんだけど光源氏の方はどんなんだっけ?
ちょっと手を出したくらいでぴーぴー煩いとか毒づくとか?
95名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 21:56:15 ID:J46IUik/
何を子供みたいに拗ねてるんですか、さっさとお布団から出ていらっしゃい(超意訳)
とのたまったんじゃなかったっけか
96名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 22:13:34 ID:0IwLpgGz
この流れで「笑う大天使」の三人娘を思い出した。
97名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:19:40 ID:0970ezt0
>>91
母でなく叔母な
98名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 06:43:36 ID:gZPAgRXM
>>97
あれ?義母じゃなかったっけ?
しかも更に元をたどれば幼い頃に亡くした実母
99名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 07:43:02 ID:429Tf3g9
>>97の「自分(両方)」は若紫
>>98の「自分(二つ目)」は光源氏
100おっさんと少女続き 1:2009/09/20(日) 00:29:29 ID:5rNnBfB1
gdgdな内容ですがおっさんと少女続き投下します。
文化レベルは現代日本っぽいけど戦後で架空な世界。
だめそな人はタイトルNGで。




「お帰りなさい……」
 志木がドアを開けると、少女は俯きながら出迎えに来た。紺色のベストに臙脂色の
リボンタイがきっちりと結ばれている。いつも通りの制服姿で、いつも通りの強張った
愛想笑い。しかし、男はちらりと見返しただけで無言で部屋に上がった。
 ダイニングには夕食が並んでいる。自分の帰宅時間に合わせて作られた温かい夕食。
 いつも通りの、自分への当てつけだ。
 席に着くと黙々と食べる。少女も何も言わず、茶をよそう。食べ終わる頃に果物を出し、
そして食器を片付ける。
 共通の趣味など元々無い。それでも、今までだったら学校のこと、寮でのこと、天気の話、
勉強の事、少女は声を弾ませ、嬉しそうに話しかけてくれたし、自分もそれに応えるために一緒に
笑い、出かけ、会話しようとした。時々しか会えなくとも、そこに安らぎと楽しさがあった。
だが、あの日から三ヶ月、そんな他愛のない会話すらなくなった。
 あの後、車で先回りし、寮に入る前にチカを車内に引き摺り込んだ。行くなと、
ただ引き留めるだけのつもりだった。しかし、彼女の恐怖で引き攣った表情に、小刻みに
震える身体に、今更謝罪もできず、抱きしめも出来ず、いつも通り来るようにと、
逃げたら必ず追いかけると、その代わり、大学までの面倒は見ると、そう伝えただけだった。
そんな言葉だけの脅迫など簡単に反古にできるのに、いや、して当たり前なのに、
まじめな彼女は怯えながら毎週末自分の部屋に訪れる。
 毎週末、通ってくれているのに、今では必要最低限の連絡と返事が一言、
二言くらいしかしない。時折、学校や進路で少しだけ長く言葉を交わす。絶えず
おどおどしながらこの部屋へ訪れる少女に、自分は舌打ちをするだけだった。その度に
びくりと震える細い肩に、今にも泣きそうな表情に、自分の罪の重さを再認識させられる。
それでも、理性を押さえ込む事が出来なかった。


101おっさんと少女続き 2:2009/09/20(日) 00:30:18 ID:5rNnBfB1


 溜まった新聞や手紙を整理しながら煙草を燻らせる志木の横に、チカが佇んだ。
 一顧だにしない男に対し、少女は言葉をかけようとし、躊躇う。何回か口を開いては
閉じてを繰り返した後、意を決したように声を絞り出した。
「……あ、の、学校のことで、お話が……」
「なんだ?」
 そっと、テーブルの上に書類を置く。その指先すら、震えていた。
「……大学、別の所に行きたいんです。授業料のもっと安い、公立に……先生も、
推薦して下さるって……」
「そうか、そんなに俺の選んだ場所は嫌か」
「ち、違います、そんなんじゃ――」
「構わん、勝手にしろ」
「あ、あの、ちが……いえ……ごめんなさい」
 少女は苦しそうに目を伏せるとそのまま後じさり、そしてきびすを返す。
男が少女の腕を掴み引き寄せると、びくりと肩を震わせ、幼さの残る顔が恐怖で彩られた。
(そんなに、嫌か)
 当たり前だ。
 望まぬまま、力で押さえつけられて、凌辱される。少女にとって恐怖以外の
何ものでもないだろう。優しくしたいのに、彼女の心が欲しいのに、上手くいかない
苛立ちが、何もできない苦しさが、チカにぶつけられる。
 そのまま自分の膝に座らせ、シャツを捲り上げた。
「や……」
 腹部の銃創を確かめるように腰を抱えると、煙草を揉み消した手で上に向けて滑らせた。
チカが後ろに逃れようとするが、背中が男に当たった瞬間慌てて体勢を戻す。
 胸元を這う腕を抑えようとする少女の手が重なった。しかし震える手では制止できず、
男はそのまま片手で器用に薄桃色のブラジャーをずらし、白く柔らかな乳房をたぷたぷと弄ぶ。
 前までは掴むと手が余る程度だった。しかし、今は鷲掴みすると丁度いいくらいの
大きさになっている。高等部に入り身長は伸び悩んでいたが、女としての発育は
まだ進んでいるようだ。
102おっさんと少女続き 3:2009/09/20(日) 00:30:47 ID:5rNnBfB1
 胸元のリボンタイとボタンを外しベストとブラウスを半分脱がせると、
先週付けた痕は消え、代わりにストラップの食い込んだ痕が残っていた。その痕を唇で
辿りながら、男は再び乳房を揉み始める。
「サイズが変わったな。合わない下着を無理に付けても意味がない。新しいのを買え」
「ん……必要、ない、です」
「俺は買え、と言ったんだ。その分は今からお前に払って貰う」
 右手は柔らかな感触を楽しみながら、左手ではスカートをたくし上げ、太ももを
撫で回すと、チカの唇からは制止の声が弱々しく漏れた。
「やめっっ」
「こんなに濡らしておきながら何を言っている」
 くくっと喉を鳴らし、耳朶を噛みながらぷっくりと膨らんだ胸の先端を、ショーツの
基底部を、指先で弄び始めた。花芯をずらし、大きく円を描くように指を滑らすと、
薄い布越しにじっとりとした熱気が帯びてくる。チカは足を閉じて拒絶しようとしたが、
逆に男の指をくわえ込む形になってしまい、抵抗を諦めた。
「や……ぁ、ぁん」
 優しく、焦らすように指を滑らすと、愛らしい唇から抑えきれない吐息が漏れた。
ぐっしょりと濡れてきたショーツ越しに、今度は膨らんだ肉芽を摘む。
「ひっっぁ、あぁぁ」
 男に全身を委ねられるほど、二人の距離はもう近くない。焦らされ、不安定な
男の膝の上で身を捩り、重ねた右手に爪を立てる。
「気持ちいいんだろう?」
「そん……な、じゃ」
「じゃぁ、何故こんなに濡れている?」
 そのまま左手をショーツの中に指を滑り込ます。
 肉襞をなぞり、小さな芽を潰すように押し込むと、とろとろの淫液が滴ってくる。
それを人差し指と中指にたっぷりと濡らしては肉襞になすりつけ、秘裂全体が
ぐしょぐしょになるまで繰り返す。
「ちが、んふぁ……あぁん」
 軽く肉芽を爪弾くと、チカの吐息が更に熱く湿りを帯びる。それと共に志木に
開発された身体が、動きに応えようと疼き出した。
「あぁ……んぁ、あっっだめっっっ」
 身体がビクビクと跳ねる。ショーツもシャツも脱がされ、後はスカートと靴下だけが
残されていた。
「やめっっし、きさ……しきさん、やだぁあ」
 愛撫の手は執拗にチカの感じる場所を刺激した。
 くちゅくちゅと音を立てて嬲られ、じっとりとした声が零れる。
 志木はこぼれ落ちそうな白い胸をやわやわと揉みしだきながら、首筋に舌を這わせる。
そして、熱くなった膣内に指をゆっくりと滑り込ませると、チカは頤を反らし、身体を
ヒクヒクと痙攣させた。
「やっ……あん、やっっ許して……」
 ――何が嫌なんだ、気持ちいいんだろう? ここも、悦んでるじゃないか――
 そうなじりたい気持ちを抑え、行為に没頭する。指一本でも快楽を求め、
きゅうきゅうに締め付けようとするチカの身体の、更に奥へと進ませた。


103おっさんと少女続き 4:2009/09/20(日) 00:31:56 ID:5rNnBfB1



「あっっっやああ、や、やぁ」
 志木は慣れた手つきでチカの快楽を引き出し、追い立てていく。
 くちゅくちゅと指二本で掻き回され、頭がおかしくなりそうだった。
 いや、既になっていた。
 指の動きが激しい抽挿に変わる頃には、腰は痺れ甘い疼きに変わっていた。
 じゅぶじゅぶと水音が一層大きくなり、チカはもたれまいと努めていた事すら忘れ、
志木に身体を委ねていた。
「ひっひぁっっっやあぁん、あっ、やあっっッッ……」
 奥に突っ込まれた瞬間、空いた親指が桃色の先端に触れた。
 ぷるぷると身体が小刻みに震え、頭の中が真っ白になる。
 志木が膝を開くと、力が抜けたチカの身体はズルリと椅子の上に滑り落ちた。
 ぐったりと志木に寄りかかっていたので、脱がされ、火照りきった素肌に、
冷たい志木のシャツのボタンと、熱く硬いモノが痛いくらいに当たっていた。
「あ……」
 ゴクリと唾を飲み込んだのは、呼吸を落ち着けたかった事もある。だが、何よりも
この後に続く行為への覚悟がチカには必要だった。抑えようとしても涙が溢れてくる。
泣いても何にもならないことなんて、両親が死んだ時からわかりきっていた。それでも、
泣く事しかできなかった。
「もっと、太いのが欲しいだろう」
「きゃっっっ」
 突然、志木が立ち上がった。右腕で抱えられていたチカは足に力が入らず、志木に
押し潰される形で、テーブルに突っ伏した。顔をぶつけまいと両の手で庇ったが、
テーブルに乗っていた封書や新聞が払われるように床へと叩き付けられる。
 スカートを捲られ押さえつけられたチカは、ただテーブルに縋り付き、志木に
蹂躙されるのを待つ事しかできなかった。
「や……め……くだ」
 そのまま志木はズボンのファスナーを下ろし、いきり立った自身を少女の膣口に宛がった。
「っっっっぃあぁぁぁ――」
 幾度となく繰り返している行為の筈なのに、挿入される時の異物感には未だ慣れない。
 しかし、中に押し入られる度に、身体の芯が熱くなる。
 浅い抽挿の後、時折ずんと強く突かれ、あられもない声が上がる。身を捩っても腰を
しっかりと掴まれて、逃げられない。
 右足を持ち上げられ、ゴリゴリと擦れながら熱がより深く奥に入り込む。
頭がおかしくなりそうで、悲鳴を上げた。
「やっっっやだっっっあ、あん、やめっっっっ」
 身体の火照りに、心が付いていかない。
 表情がごっそりと抜け落ちた冷たい視線に、チカの心は凍てついたままだった。
 あの日、重い身体を引き摺って寮に戻ったチカを待ち伏せ、志木は押し殺した声で行くなと言った。
『俺の体面を考えろ。いつも通り……いや、毎週俺の部屋に来い。
安心しろ、大学は行かせてやる』
 志木の面子を潰す、そんな事、考えつかなかった。逃げたかったのは、もう合わせる
顔がなかったからだ。だから、自分の浅慮に何も反論できず、志木の望むとおりにする。
 行く度に身体を弄ばれ、冷たい言葉がチカを刺す。恋人がいるのに自分を抱き、
冷たい言葉を吐きながらも自分をここに通わせる、そんな志木の考えがわからなかった。
 常に苛立ち、表情の無い志木に、何も聞けない。
 それでも、この部屋を訪れるのは自分の汚い打算だ。
 まだ、後見を続けてくれるのだから、そんなに嫌われていないのではないか。
 美味しい料理を作ったら、また、『うまい』と褒めてくれるかもしれない、
勉強を頑張れば『頑張ったな』と頭を撫でてくれるかもしれない。
 志木はそのチャンスをくれたのに、また不興を買ってしまった。



104おっさんと少女続き 5:2009/09/20(日) 00:32:48 ID:5rNnBfB1



「いやあぁぁぁっっあっあん、あぁぁぁ」
 チカの声が制止から、甘く切ない悲鳴に変わっていた。
 中はヒクヒクと蠢き、奥を突くと志木にまとわりつくように締めつける。
 何度も何度も仕込んで、執拗に愛撫し、そしてようやく中でイく事を覚えてくれた。
 反り返ったしなやかな背中は、志木を誘うように揺らめく。
「やだ……おねが……やめ、あ、あああぁぁぁ!」
 懇願を無視して腰を打ち付けると、媚肉をひくつかせ自分を締め上げる。
 助けを求めるようにテーブルに縋り付いた指先は白くなり、短く切りそろえられた
爪さえ剥がれそうだった。
 チカも、自分も限界が近かった。
「あ、ああぁぁぁぁぁ――」
 声が絞り出すようにか細くなっていき、少女の力が尽きる。志木は中で出したい
誘惑を振り切り、チカの中から勢いよく引き抜いた。
 瞬間、精液がチカの太腿で飛散し、淫液と交わり少女の足を伝う。
 ガクガクと震え、全身に力が入らないでいるチカが息つく間もなく抱き上げ、
ソファに投げ出した。
「あ……ぁ」
 捲り上がったままのスカートと黒いハイソックス以外は何も身につけていない。焦点の
合わない瞳は涙で濡れていて、薄紅色の唇は荒い息を無理矢理整えようと何度も唾を
飲み込んでいた。屈み込み手を伸ばすと、小さな悲鳴を上げ怯えた表情で自分を見上げる。
「……」
 一時的な快楽と情欲が、一瞬にして冷たい時間に戻る。
 志木は立ち上がると衣服を整え、自分の淫行から目を反らすようにシャワールームに向かった。
 背後では、チカがくぐもった声で啜り泣いていた。


105おっさんと少女続き 6:2009/09/20(日) 00:33:24 ID:5rNnBfB1


 泣いているままでは、また志木に嫌われてしまう。シャワーを浴びている間に
片付けなければ、そう考え、快楽に酔ったままの気怠い身体を奮い立たせ、チカは起き上がった。先に自分のブラウスを羽織ってから、床にばら撒いてしまった新聞や手紙を
掻き集め、分けていく。
 テーブルの上に新聞を、ちらしを、そして請求書や封書を最後に乗せると、
ひらりと一枚の写真が落ちる。志木が写真を持っているのは珍しい、ぼんやりと
考えながらその写真を拾った。
「……この、写真」
 今よりも若い志木と知らない男、そして三ヶ月前、路地裏で志木と抱き合っていた
女性が満面の笑顔を浮かべている。
「ああ、古い付き合いの同僚だった」
「!」
 後ろから突然声を掛けられ、驚いて振り返ると、志木が目を細め、自分の手元にある
写真を見つめていた。
 志木とはここ最近、雑談など、ろくにしていなかった。
 写真の人物に見知った顔があったから、口にしてしまったただの独り言だ。
応えてくれた理由はわからなかったが、とにかく会話を続けようと頭を振り絞った。
「同僚だったって、この方、退職、されたんですか?」
「いや、三ヶ月前の作戦で……死んだ」
「!」
 写真をチカの手から取り上げ、静かに応える志木の顔には深い皺が刻まれている。
 血の気が引いたのが自分でもわかった。
 志木が危ない仕事をしている事は重々承知していた筈だ。怪我をして帰宅する事だって
珍しくない。
 だが、辛そうな表情をする事は今まで無かった。
 死と隣り合わせの場所に、志木はいる。
 そして、志木の友人と、恋人だった女性もまた、その場所で散った。
 父のように爆撃で吹き飛んだのだろうか、母のように、瓦礫に潰されたのだろうか、
それとも志木の娘のように撃たれたのだろうか。
「ごめ……な……さ……ごめんなさい、ごめんなさい」
 戦争の、爆撃の、銃声の恐怖が胸中を乱し、足がすくみ、銃創がじくりと痛んだ。
 だが、何よりも三ヶ月前、という言葉に心が揺さぶられる。
 忘れもしない、あの日の前だ。
 仕事の疲れを、友人と恋人が死んだショックを隠して帰ってきてくれたのに、
我慢して笑いかけてくれたのに、自分は志木の傷口を抉るような行為をしてしまった。
 これは罰だ。
 志木の恩情に縋っている身で、自分勝手に振る舞った罰なのだ。
 もう、修復しようがない。弁解すら出来ない。
 だから、志木自身は最低限しか服を脱がないのだ。だから、キスもしない。
 死んだ恋人の代替品にすらならない道具に、死んだ娘の代わりにすらなれなかった
人形に寄せる情など、あるはずがない。親愛も有りはしないのだ。
 志木の笑顔は、優しさは、もう、自分に向けられる事はない。
 暖かい時間にはもう、戻せない。
「ごめなさ……ごめんなさい……」
「来週は……出張だ。次は再来週、この書類を受け取りに来い」
 崩れ落ちて泣くチカ一瞥し、志木は自室の扉を閉めた。


106おっさんと少女続き 7:2009/09/20(日) 00:36:22 ID:5rNnBfB1


 震えて泣くチカに、また、何もしてやれない。
 チカから取り上げた写真をぼんやりと眺める。
 十数年前、訓練で意気投合し、三人で撮影した。結婚する時、娘が死んだ時、チカを
迎える時も、励まし、相談に乗ってくれた友人だ。命を救われた事もあったし、救った事もあった。
 あの作戦が終わったら会社を辞め、結婚するはずだった二人。その遺品整理で、
親族から自分に送られた写真だ。さっさとしまっておけばよかったのに、いつも掃除を
チカに任せっきりにしていたツケが、回ってきたのだ。
 何故、この写真を居間に放置してしまったのだろうか。
 何故、正直に彼女の問いに答えてしまったのだろうか。
 両親を目の前で失ったチカにとって、戦争の傷跡は未だに恐怖の元だ。
 チカが通うようになってから初めて怪我を負った時も、彼女は真っ青になって震えていた。
人殺しの手だ、怖いか、と聞くとチカは慌てて否定した。
『こ、怖くないです。志木さんの手は、志木さんは私を、みんなを守ってくれました。
大きくて、やさしくて……私、大好きです。……あの、おけが、痛くないですか、大丈夫ですか?』
 涙ぐみながらも、小さな両手で自分の手を包み込んでくれた。
 チカを守った手は、彼女が大好きと言ってくれた手は、もう、彼女を傷つける事しか
できない人殺しの手だ。チカにとって恐怖の対象でしかない。
 またここに通うように伝えたのは、何かきっかけがあれば、以前のような穏やかな時が
過ごせるかもしれない。笑顔を見せてくれるかもしれない。そんな期待があったからだ。
 だが、彼女の怯えた仕草が何かにつけて志木を苛立たせ、結局は毎回のように彼女を
凌辱する事になる。同居を強いなかったのは、彼女を壊してしまいそうだったからだ。
 それなのに、チカはわかっているのだろうか。別の大学に行くという事は、今の学校の
寮を出なくてはならない。ここで、この部屋で、毎日戦争と凌辱の恐怖に怯えながら
過ごすつもりなのだろうか。
 覚悟を、決めるべきだ。
 本来なら、この劣情を抱いた時に決めるべきだったのに、ずるずると甘い期待を抱いて、
愚かしい行為に逃げてしまった。
 まだ自分のために尽くしてくれているのは、自分の脅しと夢のためだ。
 親愛も、情も、ありはしない。優しい娘だから、見捨てられないだけかもしれない。
 もう、彼女が笑顔を向けてくれる事はない。
 過ちは正せない。だが、これ以上彼女の笑顔を、幸せを奪う事も許される筈がない。
 携帯のボタンを押す指は、微かに震えていた。



とりあえずはこの辺で。
では>>62待ちに戻ります。
107名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 09:06:04 ID:arriN+Mn
すれ違いーーーーーーっ!!
切ねーーーーーーーーっっ!!!
どこに電話するんだ、志木サンっ

一番乗りGJ!
続き待ってます。
108名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 09:51:36 ID:zRTxG9xJ
GJ!
朝からイイもの読ませていただきました(*´Д`)
続き楽しみに待ってます
109名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 20:54:39 ID:3xhDlsc0
おっさんと少女続ききたーっ!
すれ違い大好きだ。切なすぐる。GJ!!

>>99
源氏の母によく似た藤壷(義母)の姪が若紫。
義母は源氏の父の姪か従姉妹にあたる。
自分=若紫と読んで、若紫を藤壷と重ねているから叔母だと思ったんだ。
勘違いスマン。
110名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 11:41:51 ID:KmVcCVES
愛情があれば801SSも投下OKですか?
111名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 11:58:59 ID:rSTwy09Y
>>110
なにそれこわい
112名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 12:12:07 ID:jVkYkTnQ
>>110
だめ、そう言う話題はそれ専用の板があるので其方へどうぞ。
801
ttp://yomi.bbspink.com/801/
113名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 14:31:38 ID:SrjZxkEY

                                   来いっ!レイプしてやる
                                        __
                 _ __                 ,  '"´
               , _-=テ /\/ヽ`=ー 、           /
                ///  / /ミvム  ヽ\           / /
           /// i | | i{~゙ "ヘ i| l l ヽー-      l /l .// ヽ /
          /: | l i _j_j-┘   └Ll_j| ハ        ∨ |/    ∨\
         ∠/ ∧>イ -─    ―- Lト┴'       /  ァ┬r- /ー‐'
         ノ//r┤`! ////   //// {]        ,′ {-'::::! / \_
          / イ八L_」     l ̄ ̄|    V        l   ヽ ノ / ̄ ̄ ヽ
          j从7  l   │  │   }`ヽ ____      ! 、    l /
.    rォ 1>r―‐/ ̄|i  l 、  └‐ ‐┘ ⊆! / r<__    ∨\   |/ /
    {{|. i{ l  〈  |i  |(o)>ー―‐<N`ーく  {    `丶、ゝ_ノ  //
.     `ー' ̄ ̄ \_|i__/>"{ {l:j   人_|i_/  ゙̄ヽ、    /   \
           ヾ___, <\__ イ   >       ` ‐、_|    ./>─‐--
            〈___|_____j,∠           !   | | (o )厂
             / { `ト孑 〈  ヽ             \. ヽ{_レ几ヘ

114名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 00:10:01 ID:eUSBTRlS
>>112
絶対に801禁止なんですか?
きちんと注意書きしていても駄目ですか?
レイプされる側が女装ショタなら良いですか?
115名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 00:20:57 ID:qTZWUVxH
>>114
なにそれこわい
116名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 00:31:35 ID:y1ThW6Ov
>>114
801板にほぼこのスレとほぼ同じテーマのスレがあったはずだよ。
わざわざここに落とさんでもそっちに落としたら歓迎されるはず
801板を[暴走]とかで検索したら見つかるはず。
そこにいってらっさい。
117名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 00:47:50 ID:v/a1fH3k
>>114
なぜソコで粘るのかが分からない。
801版へ、行ってらっしゃい。
118名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 01:00:53 ID:2yAgrzWJ
ショタなら専門スレがあったんじゃない?
ショタか少年でスレタイ検索してみたら
119名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 01:19:25 ID:f3BS6DoY
>>114
絶対禁止。
120名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 03:56:02 ID:E2Yy+tzM
801とか本気でやめて
121名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 09:07:20 ID:/lfY+hx1
はい、次〜w
122名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 20:40:14 ID:PRoUl+As
ショタならこことか
ショタとお兄さんでエロパロ6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1249810825/

とにかく801は板違い
123名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 20:09:20 ID:OS4xh1/9
124名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 02:49:24 ID:MLEv+Kv6
よく少女マンガとか昼ドラでさあ、親が決めた婚約者がいるのに
他の男と恋をしてしまった女…てのがあるじゃん

ああいうパターンはたいてい婚約者との仲は回復せず婚約者が身を引くか逃避行の流れになるが、
あれ婚約者の立場そうとう気の毒だと思うんだよな。
勝手な決め事でも「そうかあの娘が伴侶になるんだな」と何年も思い続けてきた許婚を
遅れて横からやってきた馬の骨に掻っ攫われるんだからな。
婚約者が美人で気立てもよく、自分だけは家柄目当ての結婚だと思ってなかったならなおさらだ。
相手が幼なじみだったりしたらなおさらだ。

最終的に「僕は彼女の幸せを祈る」「あの子を頼んだよ。…すぐに泣く子なんだ」なんてスカしたこと言ってられる奴なんて皆無に近いと思う。
立場が逆だって同じことだ。男を奪われ、嫉妬に狂って涙する女婚約者は見てて興奮する。
立ち位置を奪われて、プライドをずたずたにされた女が思わぬ復讐に出るのはしかたない事と思える。


つまり何が言いたいかというと、婚約者の片思い愛あるレイプは萌えだということだ
125秘密 1/9:2009/09/28(月) 16:50:25 ID:EUEyo31K
 音を立てないように襖を開け、安心しきった穏やかな寝顔を見下ろす。
 そして起こさないように布団を跨ぎ、ひとつ奥の自分の寝床へと足を伸ばす。
 ここまでは昨夜と同じだ。
 だが、今日はそのまま布団に潜り込むような事をせず、静かに側に腰を下ろすと、掛け布団に手を掛けた――。


* * * * *

 暁人(あきと)二十六歳、会社員。昨年女手一つで育ててくれた母を亡くし、天涯孤独になった。
 だが、正確には親兄弟が居ないというだけで、暮らしているのは一人ではない。
 今から三年前、母が自分の兄夫婦の娘だという女の子を連れて来た。
 父親も母親もどちらも家を空けたまま、何週間も戻らなかったそうだ。月に何度か送金があり、それで
食べるだけの事は出来ていたようだが、家賃やその他の支払いまでは気が回らず、周囲が異変に気付いて
やっと発覚したのだ。
 だが直後に母親が父親ではない余所の男と一緒に住んでいたらしく、出先で事故死したとわかり、
連絡の取れない父親ではどうにもならず、俺の母に回ってきた。
 連れられて来たその娘は痩せて顔色もすぐれず、俯いたまま出迎えた俺の顔をほとんど見ずに頭を下げた。
『大変だったね。もう大丈夫だから、伯父さ……お父さんが見つかるまで居て良いから』
 本当はそう簡単に戻っては来ないだろうと思っていた。あの人が昔からそんな風だったのは俺も知っていた。
 だが、数年前の記憶にある幼い可憐な女の子の変わり果てた姿に、気休めだとしてもそう言って手を
差し伸べずには居られなかったのだ。
『俺の事覚えてる?』
『……あきちゃん』
『そう。よろしくな』
 学生鞄とバッグに位牌が一つ、制服姿のおさげ髪。
 涙を堪えて、俺の差し出した手を恐々と握り返して来た八つ年下の従姉妹。

 その日から渚(なぎさ)は俺の妹として今日まで一緒に暮らしてきた。
126秘密 2/9:2009/09/28(月) 16:51:26 ID:EUEyo31K
 その妹が最近俺に隠し事をするようになった。前々からあまりあれが欲しい、これが欲しい、という
事を言わない奴だった。学費や生活費は仕方ないにしても、それ以外の服や雑貨を買うための小遣い
などどうしているのか、と尋ねた事がある。
 元々高校生になってからバイトをするようになったのは知っている。週三程度だったのが最近ほぼ
毎日のように帰りが遅くなった。(お節介な近所のオバさんが教えてくれるのだ)
 卒業したら働くからと勉強はしていない。とはいえ、俺の稼ぎだけでやってけない程の事は無いと思う。
 隠れてバイトを増やしたのかと考え、なら欲しい物があれば相談しろと言っても『違う』『何でも無い』
との一点張りである。だからとりあえず黙って様子を見る事にした。

 そんなある日の事。
 俺が渚より早く帰宅する事は滅多に無い。大体いつも九時頃になるのだが、その日は体調が悪く、
七時には帰宅したが渚の姿が無かった。気にはなったが、その時の俺には布団に潜り込み眠る事で頭が一杯だった。

 薬のためか、小一時間程眠っただろうか。目が覚めてもまだ部屋は暗く、外からパラパラと音がする。
街頭の明かりに映る窓の雫に雨だとわかり、ガンガンする頭を押さえて立ち上がった。
 ――こんな時間まで。
 だが、傘はあるのだろうか、と外を眺めて渚の身を案じる俺の目に飛び込んできたのは、一つの傘に
寄り添って歩いて来る影。
 小柄な『女』と思われる影がこちらへ走って来るのを見て、窓から離れた。暫くしてアパートの階段を
昇る足音、玄関の鍵がカチャリと乾いた音を立てると、ちょっとの間があってから
「……あきちゃん?」
と小さな戸惑ったような問いかけがあった。
 在るはずのない靴を見て息を呑んだ『間』だったのだろう。
 それから渚は俺を心配して看病してくれた。お陰ですぐ良くはなったが、心の気分はいつまでも優れなかった。

 あれは、男だった。顔は見えなかったが多分間違いないだろう。二階からでもあの程度の明かりなら
それ位の判別は出来る。しかも若くはなさそうだ。

 ――何も言わない渚に何も言わず、聞けず。彼女もまた何も言わなかった。
127秘密 3/9:2009/09/28(月) 16:52:20 ID:EUEyo31K
* * * * *

 それから時々、渚の留守を狙ってこっそりと部屋を物色するようになった。
 部屋と言っても、二間続きのアパートではそれぞれの部屋を持つ事など出来ないので、せいぜい彼女
のそれは机の周り位のものであるのだが。
 乱さないよう引き出しの奥を探るが、出て来るものは普段から俺が目にしている文具や雑貨の類ばかりで、
怪しいものは見つからない。迷った挙げ句鍵付きの引き出しまで開けた。
 バイトを始めた頃作ってやった通帳には、毎月給料日に残してある以外に目立った入金は無かった。
 何度となく頭の隅を掠めた嫌な考えはやはり間違いだったのだ、と胸をなで下ろしたのも束の間、
何気に開けてみたタンスの奥にそれを見つけてしまった。
 洋服を入れた引き出しの奥に、隠すように不自然に突っ込まれた紙袋からはみ出ている物を引っ張り出す。
小さなぬいぐるみや手鏡などの小物、見た事の無い洋服まであった。どれもまだ札が付いたままで、
どうやら手付かずのまましまい込んであるようだ。
 一緒にリボンや包装紙が丁寧にしまわれてあった事から、これらは誰かが渚に贈った物であるという
ことがわかった。
 しかし一体誰が?

 ――まさか。

 頭の中に、認めたくないものが浮かんではそれをかき消す。その度に心がざわざわと騒いで、心臓を
掴み取らんばかりに胸を押しつぶす。
 苦しい。苦しくて堪らない。それを想像して吐き気を催す。
「――うわあぁぁっ!?」
 力一杯引き出しを引っ張り出してぶちまける。
 どう見ても若くは無い男、地味な渚には明らかに趣味では無い派手な若向けの服、何より俺に隠す程の――。
 床に散乱するそれらを握り潰すように力を込めて掴み、またのろのろと引き出しの中に詰め込む。

 部屋の真ん中で、焦点の合わない視線をさまよわせ、見た目は何も変わらなく見える空間で膝を抱えて
いると、買い物袋を提げて帰宅した渚が背後で息を呑んでいた。
「……あきちゃん?」
 どうしたの、と驚くのも無理は無いのだろうが、俺にはそれを取り繕う余裕が無かったのだ。
「何でもないよ」
 そう言いながらも、滲み出る涙は止まらなかった。
128秘密 4/9:2009/09/28(月) 16:53:18 ID:EUEyo31K
* * * * *

 あれから何食わぬ顔で数日を過ごした。
 中身を見れば、ごちゃごちゃになった服の並びに俺がそれを弄った事は一目瞭然だろう。だが、渚は
何も訊いては来なかった。訊けなかったのかもしれないが、それを良い事に素知らぬ振りを決め込んだ
俺は卑怯だろうか?
 だが、もうそれも限界だった。
 渚が風呂に入った隙に覗いた引き出しには、この間見たそれらの物が何一つ残って居なかったのだ。
そうまでして隠したいのか。

 認めたくない黒い疑惑が、俺の中で抑えきれない程に膨らみ、そして――弾けた。


 眠る渚のパジャマの胸元に、そっと手を伸ばした。
 早く、一気に進めなければ。そう焦る気持ちとは裏腹に、震える手先が邪魔をしてうまくボタンが
外せない。
 くい、と強く引っ張った生地に反応して、三つ目のボタンがはだけたところで渚が目を開けた。
「ん……あきちゃ……?」
 ぼうっと呆けた顔をこちらへ向け、だが、すぐにそれははっきりと驚愕の表情に変わる。
「……!?な、なにっ……んっ!!」
 思わず慌てて片手で口を塞いだ。
「黙れ!」
 もう片方の手で残りのボタンを外してしまおうとしたが、身を捩る渚の抵抗により、無理やり引っ張った
せいでビリリと鈍い音がした。
「んっ……んんんっ!?」
 怯える目をして俺を見上げる渚の顔を見ないようにした。そうして残りのボタンごとパジャマの上着を
引きちぎると、露わになったノーブラの胸を夢中で掴んだ。
 柔らかく弾力のある豊かなそれをじっくり味わう余裕等無く、それでも罪悪感と共に僅かな感動すら覚える。
「ずっと……ずっとこうしたかったよ。渚」
 いつからだろう、幼くか弱い守るべき妹から、この腕で泣かせたい女へと変貌を遂げていったのは。
 抑え込んでいた欲望によって、それは違った意味で果たされようとしている。
「あ……」
 拒絶の言葉を聞くのが怖くて、離した手の代わりに唇を押し付けただけのキス。

 そして俺は――同時に自らの耳も心で塞いだ。
129秘密 5/9:2009/09/28(月) 16:54:01 ID:EUEyo31K
 自由になった両手で素肌に触れると、ふるんと揺れる二つの膨らみを確かめるように揉む。
 この三年の間に服の上から見ても解るくらいに成長したそれに、触れてみたいという気持ちをどれだけ
隠して来たのだろう。
 そして、どんなに奪いたいと願っていたのか解らない程焦がれた唇を黙らせる為だけに今は――。
 震えて固く閉じられた唇を舌で強引にこじ開けるように押し開く、と同時にねじ込み絡ませ合うと、
んっ、と苦しげに小さく呻いた。それをされるがままに受け入れている所を見ると、案外それ程拒絶
されてはいないのだろうか?ただ単に慣れてないのか流されかけているのか……。
 はだけた胸を構わず揉みしだき、小さく尖ってきた先を弄ると、肩に押し返されるように置かれて
いた渚の腕の力が徐々に弱っていく気がした。
「……やあっ」
 一瞬だけ離した唇から、ほんの少しだけ甘い声がもれた。
「……渚」
「あきちゃん……や……どうし……」
 涙目で問い掛けてくるその答えを返す代わりに胸へと唇を下ろした。
「あっ……!?」
 初めて目にし触れた膨らみ。その先をためらう事なく口に含み存分に味わった。
「いやぁっ!あきちゃん……何でっ……!?」
 弱々しく首を振り、それでも赤く染まった頬は本当に嫌がっているのかどうか判断が付かないほどに
息が上がって、ため息とも悲しい泣き声とも取れる甘苦しい声が耳に届いてくる。
「本当に嫌なのか?」
「う……」
 蚊の鳴くような声で『嫌』と聞こえたような気がした。だが聞き返す面倒と、それが確定した時の
怖さから逃げた。
「……くそっ!」
 一気にズボンを下着ごとずり下ろす。
「やっ!やめ……」
 慌ててそれを止めようとした両手を掴んで頭の上に片手で抑え込み、片手を両脚の中心に這わせると
滑った音が僅かに響いた。
 嫌がってるくせに。
「いやぁ……んぁ……ぁっ」
 硬い粒を押し当てた指の腹で撫でると、言葉に反した呻きと共にじわりと蜜が溢れ出す。
130秘密 6/9:2009/09/28(月) 16:55:05 ID:EUEyo31K
「――あぁっ!?」
 ……感じるのか、こんなやり方でも……。
 つぷ、とゆっくり差し込んでみた指に一瞬眉をひそめた。が、すぐにそれもかき混ぜる動きに沿って
徐々に弛んでいく。
 もう限界だ。
 濡れた指を抜くとわざと目の前にかざした。
「嘘ばっかりだな……」
「そんっ……!!」

 嘘ばかり。

 片手を抑えたまま、空いた方の手だけでもたもたと自分のズボンを脱ぎにかかった。
「!?……あきちゃん……!!いや、やだっ……」
 背中を反らしてじたばたと捩る身が、余計に俺を焦らせる。くそっ!
「何でだ?なんで」
 何でダメなんだ。
「こわい……やだぁ、今のあきちゃん……何で?どうして!?」
「それは俺が聞きたいよ」
 何で俺はダメなんだ?
「なんのこ……」
「黙れ!!」
 びくっと震えた躰を見下ろしながら、掴んだ手を離しても、強張った顔は変わらなかった。
 両手で一気にズボンを下着ごと膝まで下ろすと、渚が怯む間もなくまたすぐにその上にのしかかる。
「渚……っ」
「いや!!」
 体重を掛けて躰でカラダを抑えると、自分のモノをそこに押し当てた。
「何で……何がそんなに嫌なんだよ」
「だって」
「俺じゃダメなのかよ!?」
 あの男ならいいのか?
「そうじゃな……」
「いくらだ?」
「え?」
「いくら払えば股開くんだ?それとも何か、欲しいもんがあるならそっちがいいのか?なあ、渚」
 俺はどうすりゃいい?
 どうすればお前の全てを自由にできる?
「なんのこ……」
「知らないとは言わせないぜ?」
 ちらと例の引き出しに目を向けると顔色が変わった。
「違う……違うのあきちゃん」
「何が違うんだ?」
 金じゃなかったのか?
 だったら――。
「何が足りない?そんなに、そんなにあの男がいいのかよ、なあっ?」
「男……?あきちゃん違う!違うの、あれは……」
「言うなっ……!」
 もう、もういい。
「ち……いやあぁぁぁっ!?」

 怒りと興奮に猛りきったそれを、渚の中へとねじ込んだ。
131秘密 7/9:2009/09/28(月) 16:55:51 ID:EUEyo31K
「いた……痛い、痛いっ!……いやっ……」
 ぎちぎちと引っ掛かる。押し込んだものが渚のそこに拒まれた気がした。
「何でだ……?」
 なぜ、俺をそんなに拒絶する?そんなに俺が嫌なのか?
「あきちゃん……あ……あたしっ、嫌、抜いてっ!」
「ダメだ」
 どうせ振り向いて貰えないのなら、せめて。
「だってむ……り、や、こんな……」
 ボロボロと涙を流し、ぐしゃぐしゃの顔で哀願する渚の姿にようやく頭が冷えてくる。
「嘘だろ……?」
 唇から僅かに覗く歯をカチカチと震えさせ、噛み締めながら首を振る。
「痛い……」
 一瞬、すうっと頭の中に凍てつくような後悔の念が走ったような気がした。その感情を起こさずに
いられなかった愚かさを、過ちを悔やみ、責めた。
 たが、どうせ手に入れられないのなら、心が俺を拒むならせめて――。
「……いやあぁぁぁ……っ!!」
 両手首を押さえ、身動きできない躰に更に強く自らの悔いと杭を打ち込む。
「いや、ぁ」
 そんなに俺が嫌か?
「うぁ……ぁ」
 俺じゃダメなのか?
 ならせめて、今だけでも俺の――。
「こんな……」
 苦しげに空をばたつく手のひらは、一体何を掴もうとしているのか。ぼんやりと苦しみに悶える汗ばんだ
裸体を見下ろして腰を揺さぶる。
「こんなのは……いや……」
 知るか。こうするしか方法はなかった。
「あきちゃん……あ、あきっ、うぁぁ……!!」
 拒絶の言葉とは裏腹にきちきちと締め付けてくるその不思議なぬめりに、もう俺の意識は完全に崩壊しそうだ。
涙に対する僅かな謝罪心さえ吹っ飛び、夢中で擦りつける。
「もうイク、イ……」
「だめ!や……」
 もちろん避妊などしない。むしろそのほうが都合がいい。
「お願い、せめ、せめてそ……と……っ」
「ダメだ」
 大丈夫。何があっても守るから。これまでだってそうしてきたんだから。
 肌と肌の擦れ合う乾いた痛みが、激しく高ぶっていく快感を際だたせて、頭が段々ぼやけてくる。
「そんなにあたしが……嫌いなのぉ……っ!?」


 ――そうだったらどんなにいいだろう。


 そう思ったさ。
 何度も、何度も。
132秘密 8/9:2009/09/28(月) 16:57:04 ID:EUEyo31K
* * * * *

 疲れた体をより重く感じながらアパートに戻ると、部屋の明かりは消えており、暗い部屋に渚の姿は
無かった。
「渚……?」
 奥の部屋にも居ない。
 電話は?――繋がらない。
 嫌な予感がする。
 バクバクと潰れそうな心臓の音に胸を押さえてそこらを掻き回す。
 例の引き出しはほぼ空になっており、服がごっそり無くなっていた。僅かな貯金の入った通帳も、
多分それらを入れたであろう、うちに来るときただ一つ持ってきたあのバッグも、伯母さんの位牌も。
 部屋の隅には、俺の洗濯物と一緒にシーツが綺麗に畳んで置かれてある。それは夕べの破瓜の証しと
俺の吐き出した欲望とでどろどろになった筈のもので、俺が自分で洗ったものだ。
 その上に『あきちゃんへ』と書かれた封筒がぽつんと置かれてあるのが見えた。
 震える手でそれを拾うと、不安と焦りの入り混じった感情に襲われ、また吐き気を覚える。だが、
それを必死に堪えて封をきった。


『あきちゃんへ。
 あたしは、あきちゃんに嘘をついていました。だから、それを謝らなければなりません。
 先々月、ある人があたしの前に現れました。そして一緒に暮らそうと言いました。
 あたしに“すまない”と言って、その謝罪の気持ちからか、気を引くためなのか、プレゼントをくれる
 ようになりました。
 あたしは困り迷いました。でも、あきちゃんには話せませんでした。
 あたしは未成年です。だからこういう場合はきっと、望む望まないに関わらずそうならざるを得ない
 だろうと思いました。
 だから秘密にしました。内緒にして、このまま知らんぷりしてずっと暮らそうと思いました。
 けど、やっぱりそれはあきちゃんにとっては負担になってしまう。
 あたしは、あきちゃんに幸せになってほしい。
 だからやっぱり、そうしようと思います。
 今まで育ててくれてありがとう。
 優しいお兄ちゃんができて幸せでした。

                                            渚』
133秘密 9/9:2009/09/28(月) 16:59:11 ID:EUEyo31K
 シーツを広げてみると、まだうっすらとうす茶色に変色した染みが残ってしまっていた。
 それをぐしゃぐしゃと握りしめながら歯軋りをして床に転がると、千切れ飛んだボタンが目に入る。
「……ぎさ」
 今朝、風呂場で黙々とシーツを洗う俺の後ろで台所に立ち、いつも通りに朝飯を作ると送り出してくれた。

『いってらっしゃい』

 笑顔こそ無かったが、恨みごと一つ言わずに。
 俺はそれに応えられず黙って背を向けた。

 昨夜の事、今朝の事全てを悔やみ自分を責めた。
 こんな事になるなら――渚を失う位なら、自分の中で何もかも溶かしてしまえれば良かったのに。
 なぜきちんと訊いてしまえなかったのだろう。俺がこんな野郎だから、渚は何も言えずにいたのだろうに。
 お前どこいっちゃったんだよ、渚。

 ――ある人。

 ぼんやりと頭の中に雨の夜を思い描き、少しずつ古い記憶がそれに重なって流れた。

 未成年だから。だから守るべきだと思いこれまで渚を側に置いた。そうすべき人間がいなかったから
こそ、それは当たり前に許された。
 だがもしその必要が無くなれば?
 本来差し伸べるべき手を差し伸べてくる者が現れたら?
 その『権利』は――俺が密かに感じたそれは失われてしまうだろう。

 渚はそれを恐れて、それをひた隠しにしたのだ。
 今『父親』が現れたら、如何なる勝手と言えどもそっちと暮らす方が世間でいう所の当たり前なのだから。
 ましてや当の渚が望もうとも、もし俺がその手を離してしまう事を良しとしてしまえば、それに従う
しか術は無いのだから。

『そんなにあたしが……嫌いなのぉ……っ!?』

 従兄妹だから、兄だから。安心して側にいられるハズだった。その為に気持ちを殺した。

『何があっても守るから』

 決意は虚しく、守るどころか傷付けた。

 渚の秘めた哀しい嘘と自分の犯した罪の重さと後悔の波に呑まれ、生々しい跡の残る白い布を引きちぎらん
ばかりに握り締める。

 渚、俺はお前を――。


 パラパラと窓に叩きつけられる雨は、震える手の甲に落ちる雫と共に俺の心を濡らした。


「終わり」
134名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 18:13:33 ID:hMy0Jm71
>>133
夕時に投下乙
135名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 19:12:34 ID:SmluXYmj
>>125
GJ! 乙です

まさかこの時間に来て投下されてるとは思わなんだ
136名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 01:19:54 ID:rVSLlMxf
>>133

個人的に続きが激しく読みたいです
137名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 20:29:57 ID:2/IJI903
>>133

良いね
138名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 13:04:26 ID:ziIKffrW
139名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 19:09:48 ID:mKQjucTO
>>133
GJです!自分も出来れば続きを…
140名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 21:08:06 ID:pcNPwlL1
GJ!
141名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 20:45:11 ID:ZD5P4efX
志木さああああああん
142おっさんと少女続き 8:2009/10/06(火) 11:14:29 ID:Zuy3LPWU
すんません、データ壊れて書き直し中につき、とりあえず保守兼ねてキリのいい所までどぞ。
NGはタイトルで。


「おじゃま、します……!」
 伝えられた日、買い出しをして志木のマンションを訪ねると、いつもならまだ帰宅して
いない玄関には、今日に限って靴があった。
(出張だったから、帰ってくるの、早かったのかな……)
 言わなくてはいけない事があが、まだ、心の整理が出来ていなかった。
 煙草の匂いと共に大きな影がぬっと視界に現れる。志木は目をすっと細め、抑揚のない
声で咎めた。
 そのきつい眼差しに射竦められ、声が自然に掠れる。
「遅かったな」
「あ、の……ごめんなさい、すぐにご飯作ります」
「まぁいい」
 空気がピリピリしていた。志木の機嫌もよくない。
 大学には行かない、と、言わなくてはいけないのに、言い出せない。推薦状を、
書類を返して欲しいと、言える雰囲気ではない。
 公立大学に行きたかったのは、学費が安くなって志木の負担を減らしたかった事もある。
だが一番の理由は、付属の大学に看護学部が無かったからだった。看護婦になって戦争で
傷ついた人たちを一人でも助けたかった。それに何よりも、誰よりも、怪我をして帰ってくる
志木の力になりたかった。
 だけど、もうそんな資格はない。
 自分では志木を癒せない。むしろ、傷つけ、苦しませるだけだ。
 高等部さえ卒業できれば、後見人の体面は保てるだろう。
 きっと、志木もそれを望んでいるに違いない。
 食事の支度をしながらも、いつ話を切り出そうかと時折志木を見やるが、
煙草を燻らせながら新聞を睨んでいて、無言の拒絶に近づくことすらできなかった。


143おっさんと少女続き 9:2009/10/06(火) 11:15:47 ID:Zuy3LPWU


 食事の支度をしながらも、後片付けをしている時も、カウンター越しの視線がちらちらと絡んでくる。
 お互いに伝えたい事があるが、言い出せないでいるのだ。だが、その理由は正反対だ。
チカと離れる事を恐れる自分、自分の傍にいる事を恐れるチカ。情けない話だった。
 痺れを切らした志木は吸いかけの煙草を揉み消すと、チカはその些細な動作ですら怯え、
苦しげに顔を歪めた。内心、舌打ちしながら志木は意を決して立ち上がり、
チカの逃げ場を塞ぐようにキッチンの入り口に立った。
 今日こそは伝えなければならない。チカをこれ以上傷つけ、苦しめないよう、
準備を整えている。あの華奢な身体も、潤んだ瞳も、切なげに啼く声も、
全てに別れを告げなければならない。
 だから、少しでもその時を引き延ばしたくて先にチカの言葉を待った。
「どうした」
「いえ、あの……」
「どうしたと聞いているんだ」
 屈むように詰め寄ると、背中が引き攣れ、一瞬動きが鈍った。
「?……志木さん、もしかして……お怪我……」
 チカはよく気がつく優しい少女だった。
 少し痒くなってきた背中の傷を、嫌でも思い出してしまう。
 なんてことはない、間の抜けた話だ。チカには出張と誤魔化していたが、
十日間の実戦訓練に参加していた。訓練自体はいい肩慣らしになったが、最終日、
運の悪いことに手榴弾の暴発に巻き込まれ背中を縫う羽目になってしまったのだ。
 胸元で両手を重ね、怖ず怖ずと見上げるチカの瞳は少しだけ潤んでいる。
「おかげん、よく、ないんじゃ――」
「黙れ」
 不機嫌な声にチカがビクッと震えた。
 ただでさえ、苛立ちだけが募っている。よくない兆候だ。
 八つ当たりだということはわかっているのに、欲望を抑えきれない。
 打ち消すようにかぶりを振ると、深い息を吐き出した。
「他に言いたいことがあるんだろう。さっさと言え」
「……」
「早く言え」
「あ、あの……こ、この前の、お話、なんですけど……」
「……」
「大学、推薦辞退しますから、書類……もう、いりません」
「なんだって」
「大学は、行きません。卒業したら……出て、行きます」
 顔は青褪め、掠れた声は苦しそうだった。
「何を……」
「縁も、ゆかりもない志木さんに、ずっと迷惑ばかりかけてしまいました。そんな資格なんて、
ないのに……ですから、もう、終わりにします。高等部、卒業させて頂ければ、
志木さんの体面だって整います。今まで本当に、ごめんなさい」
144おっさんと少女続き 10:2009/10/06(火) 11:16:41 ID:Zuy3LPWU

『学校、行けるんですか……行って、いいんですか?』
 大学までだって行かせてやる、と胸を叩いたらチカは、目を真ん丸にさせて、弾んだ声を上げた。
志木も嬉しくなって栗色の髪をくしゃりと撫でると、幼い顔には満面の笑みが浮かぶ。
『ありがとうございます、志木さん。嬉しいです、夢だったんです、頑張ります、
私、一生懸命勉強します!』
 あの時宣言した通りに、彼女は努力した。国境沿いとは違い、戦火とは縁が遠い都市部の、
裕福な子女が多い学校だ。家庭教師が付いていたり、コネだってある生徒もいただろう。
その中で、数少ない公立大学の推薦枠を勝ち取った。
 大学に行く、その目的で今の関係を我慢していた筈だ。
 なのに、チカはそれすらも放棄しようとしている。
「ふざけるな……」
 チカの為に、彼女が18になる来週には、全てを終わりにするはずだった。
自分の欲求を全て捨て去り、成人を迎え後見人が不要になるチカに、別れを告げるはずだった。
 だが、縁もゆかりもないと言い切られた。今までの関係全てが無かった事になっている。
 大学も行かないとなると、教育費は不要だ。自分は、用済みになるのだ。
 もう心は繋がらない。だから身体に言い聞かせるしかない。
 恐怖で、快楽で、彼女の心身を全て縛り上げるしかない。
 自分を捨てようとする少女に、自分を刻み込みたかった。
 細い手首を引っ張り、ごめんなさい、と震えるチカを自室のベッドへと引きずり込んだ。

 ベッドの上で哀れなほどに縮こまる少女の髪を解くと、柔らかな栗毛がふわりと肩に落ちた。
 リボンタイを解き、ベストを、ブラウスを、下着ごと引き千切るように胸元を開ける。
 衣服から覗く白い乳房、柔らかく甘やかなそこをきつく吸い寄せ、そして噛み付いた。
「っっっつっっっ」
 ワザと痛くしているのに、彼女は涙を浮かべながらただ堪えている。スカートのファスナーを
下ろすと、チカはぎゅっと目をつむって身体を強張らせたが、抵抗はしなかった。
 腹を括ったのか、それとも、諦めたのだろうか。
 人形のようにされるがままの少女に対し、志木は一枚、また一枚と服を剥ぎ取り、
その辺に落とした。腰を浮かせ、最後の一枚をするりと足から抜くと、両腕でしっとりとして
滑らかな素肌を腹から太腿まで撫で回した。白い肌がほんのりと紅く染まっていく。
 足を開かせ、うっすらとした茂みを掻き分けると、薄桃色のそこは潤んでいた。
包皮ごとぬかるんだ肉芽をついと摘み上げると、チカは身を捩らせる。
「あ……」
 チカの感じる場所、自分が仕込んだ快楽をただ与えていく。
 指を動かすとにちゃにちゃとイヤらしく音を立て、微かな啼き声が上がった。
「ん、ふぁっっあ、……ん」
 胸の頂をしゃぶり、舌で転がすと、だらだらと愛液が溢れ出てくる。
 そうだ、チカはここが感じる。
 この場所で曲げるともっと感じる。
 ここを押し込めば軽くイく。
「ああぁぁあ!」
 喉を震わせ、耐えきれなくなったチカが身体を捩るようにベッドへと倒れ込んだ。
 そろそろいい頃合いだった。
 そのまま少女の片足を自分の肩にかけ、まだ肉付きの薄い尻を割る。淫らに濡れそぼり、
ひくひくと誘うように蠢く膣孔に、志木は一気に突き立てると、ベッドを軋ませ
少女の身体が跳ねた。
「やあぁ、……あ――」
 背筋が仰け反り、指先が白くなるほど強くシーツにしがみつく少女に被さり、志木は
獣のように犯し始めた。


145おっさんと少女続き 11:2009/10/06(火) 11:17:24 ID:Zuy3LPWU


 気がつくと、チカは仰向けになり、志木に組み敷かれていた。
 影になって志木の顔が見えない。
 泡立ち、白濁液が滴る秘所に、再び屹立する肉棒が掠めるとチカの身体は再び跳ねた。
「あ――!」
 絶頂を迎えた余韻が断続して襲ってくるのは、何度も何度も奥を揺さぶってくるからだ。
「んっっっ……」
 羞恥に耐えきれず自分の左指を噛みしめる。ともすれば流されそうになる自分を、
快楽を貪りたくなる自分を、その痛みで戒める。
 何をされてもいい。
 もう、認めて貰いたいなんて思わない。
 新しい恋人が出来るまでのオモチャでいい。
 だから、せめて卒業するまでは傍にいて欲しかった。
「しき、さっっっんんんんん」
 イきそうになるその声を封じようと、更に強く指を噛むと、口の中に錆の味が広がった。
 突然、愛撫の手が止められ、そのまま自分の左腕に絡められた。
 一体どうしたというのだろう。志木の無骨な指が手首を這い、指先へと移る。
そして、チカの細い指先を引き寄せると口に含んだ。
「!」
 ペチャペチャと音を立て、指をしゃぶる。その姿に、チカは見入った。自分のつけた歯形が、
志木の唾液でぬらりと光を反射している。傷に滲みたが、その痛みすらも心地よく感じてしまう。
「噛むな、声を出せ、チカ」
 耳元で囁かれると、もう逆らえなかった。ただの嗜虐心から出た言葉だという事は
容易に想像が出来たのに、甘い期待が胸を締め付ける。
(これ、間接、キス、かな……)
 名前を呼ばれたのは、気遣ってくれたのは、どれくらいぶりだろうか。
 ただ、少しだけ優しく、親愛を示す行為をされた。
 今まで、唇を重ねた事はない。胸元や首筋に痕を付ける事はあるが、それは志木の
気まぐれあってキスというには余りにも冷たい行為だった。
 だから、たったそれだけのことがスイッチになった。
「ひゃぁああん、あ、あぁん、あん、やぁあ」
 ゾクゾクと快感が背筋を駆け抜け、全身が敏感に反応する。
 何度も何度も抉るように突かれる度、志木のワイシャツに胸が擦れる度、
理性の箍が外れ、声が溢れ出す。
 止まらない。
 どうせ愛される資格など無いのだから、せめて身体だけの関係でも、繋がっていられるのならば、
それでいい。それでいい筈なのに、一過性の熱が無くなった途端、苦しさが込み上げてくる。
 同じ事を毎週のように繰り返しているのに、幾度となく志木に抱かれた身体は、
組み敷かれる度に熱く火照り、肉欲がチカを支配する。悲しさを、苦しさを、恥辱と快楽に
溺れることで忘れ去りたかった。
 もっと志木を感じたい。
 もっともっと志木が欲しい。
 結合部がぬちゃり、と音を立て更に性欲を掻き立てられる。
 チカはより深く志木を感じられるよう、とろとろの秘部を擦り付けるように腰をくねらせ、
そして腕を伸ばした。


146おっさんと少女続き 12:2009/10/06(火) 11:18:26 ID:Zuy3LPWU


 一気に突き上げるとチカの零れる嬌声に、じゅぷじゅぷと卑猥な音に、
締め付けられる感触に、快感が奔る。
「あっっん、志木、さん、ひゃうっっっ」
 チカは首をいやいや振り、爪が食い込むほど強くしがみついてくる。シャツ越しに与えられる
その痛みは愉悦だった。身体だけでも彼女が自分を求めてくれる、その証だ。
 例え自分が強いた関係だとしても、それだけで満たされる。彼女の笑顔も心も、決して
自分のモノにはならない。だから、今だけ、身体だけは自分のモノであって欲しかった。
「志木さん、しきさん、あ――ん、ひっっあぁぁぁ――!」
 抽送を繰り返す度に、高い声が上がる。
 いつもはシーツや壁にしがみついて堪えるように声を漏らしていた。だが、今、
初めて自ら抱きつき、足も絡ませ、そして執拗に名前を呼ぶ。
 自分の動きに合わせ、快楽を貪るように肢体をくねらせるチカに、更に強く叩き付けた。
「ひぁっっっとけちゃう、とけちゃうよぉ、しき、さん、ぁん、しきさぁぁあ」
 開いた傷口も、シャツ越しに触れている肌も、全てが熱い。
 自分も熱に浮かされ、チカと共に昇りつめる。
 本当に溶けて一つに混じり合えたら、この渇きは癒されるのだろうか。
 心も、自分の物になってくれるのだろうか。
 あのはにかんだ愛しい笑顔を、また見せてくれるだろうか。
「……ここがいいのか? こうされるのが好きなのか?」
 熱く蕩けそうな、しかしきゅうきゅうに締め付けてくる媚肉の奥にゴリゴリと押しつけ、
耳朶を舐りながら囁く。
 今だったら、快楽に溺れて応えてくれるだろう。
 本心じゃなくても、強要された言葉でも構わない。
 志木が動く度にチカは高い声で啼き、痴態を披露する。その嬌声に、艶姿を刻み込みたくて、
志木は何度も突き上げて滾る熱を注ぎ込んだ。



「好きなのか?」
 あまりの気持ちよさに意識が飛び飛びになっている。
 ふと耳に飛び込んできた言葉に、身体が一層反応した。
「好きか?」
 脳内で響く低い囁きに、チカは歓喜に打ち震える。
 志木を包み込んだ身体がきゅうきゅうと締まり、快楽に酔いしれる。
「うん、好き……すき、すきぃ」
 身体の中で熱く爆ぜる度、チカは多幸感に包まれた。
 もっともっと志木を受け入れられるよう、志木の厚い胸に自分を押しつける。
「し、きさん、志木さぁん」
 間接キスでも、嬉しかった。
 名前を呼んでくれて、とても嬉しかった。
 自分が頑張れば、志木は喜んでくれるだろうか。
 自分の身体で、志木は気持ちよくなってくれているだろうか。
 こうやって抱きしめてくれるのなら、もう、なんだっていい。
「きもちいい、きもちいい?」
 荒い息遣いと爛れた熱気に浮かされ、身体も思考もとろとろに溶けていた。



147おっさんと少女続き 13:2009/10/06(火) 11:19:19 ID:Zuy3LPWU


「きもちいい? ね、しきさ……」
「チカ……?」
 体力の限界だったのか、チカはくたりと力を失った。その顔には微かな笑みが浮かんでいる。
 久々に見るチカの笑顔に、志木は汗ばんだ手で、頬に、唇に触れる。
 甘やかで、懐かしくて、何よりも欲しかったチカの笑み。それが、自分の腕の中にある。
この幸福を噛み締めたくて、これで最後なんだ、そう心の中で言い訳をし、
少女の体内にうずめたまま、シーツにくるまった。

 チカの温もりにいつの間にかウトウトしてしまった。
 いつの間にか華奢で小さな手が、深い眠りに就いても尚、縋り付くように志木の
ワイシャツを掴んでいる。
「ん……」
 唇をそっとなぞると、切なげな吐息が零れる。その唇を軽く啄み、柔らかな感触を確認する。
既に笑みは消え、眉根を寄せ疲労の色が濃い。
 ずるりと引き抜くと、精液が少女の太腿を伝う。それを掬うと、チカの腹に、
太腿に日焼けした浅黒い手を滑らせ擦り付ける。
 だが、彼女を自分で染め上げるには全く足りなかった。
 再びぬかるんだ少女の中に自分のモノを入れると、気を失ったチカを揺さぶり快楽を
貪ろうとしたが、弛緩した体では少々刺激が足りなかった。再び引き抜くと、自分の一物に
チカの手を添えさせ、自慰を始める。自分よりも二回りは小さく白く、そして柔らかな手の平が
自分を圧迫する。志木は情動に身を任せ、そのまま少女の顔と胸を穢した。
「……チカ」
 頬を撫で下ろし、そのまま鎖骨まで白い筋を残しながらゆっくりとなぞっていくと、
次第にチカは顔を歪め始める。
「やぁ……しき……さ……んぁ」
 獣欲にまみれていた頭がスッと冷え、手が止まった。
 チカは夢の中でも、自分に犯されているのだ。
 狂喜と快楽に身を委ねた先ほどとは違い、こんなに苦しそうに、切なげに、懇願している。
 こんな自分に笑顔など向けてくれるはずがないのに、無理矢理手に入れようとした。
 気を失った少女を尚、穢し続けている。
「最低だな……」
 溜息と自嘲が洩れた。


148おっさんと少女続き 14:2009/10/06(火) 11:20:32 ID:Zuy3LPWU


 何かが、自分に触れた。
 まだ判然としないチカの目に映ったのは、溜息を吐く志木だった。
「最低だな……」
 最低、何が? それとも、誰が?
 志木の視線の先は、自分だった。
 微睡みの淵から一気に目が覚める。
「あ……あ、あ、ごめ、なさ……わた、わた……」
 背筋が凍り、カタカタと歯の根が合わない。身体に快楽の余韻が残っているのに、
ジンジンと身体が疼いているのに、なのに震えが止まらなかった。
 また、志木に嫌われる事をしてしまった。
 ただの気まぐれに調子に乗って、抱きついて、あられもない声で志木を呼び続けた。
 志木にとって、その行いは迷惑だったに違いない。
 卒業するまでは、志木の言うとおりにしようと、道具でいようと心に決めたはずなのに、
志木の何気ない仕草にその誓いを忘れてしまっていた。
 ぎょろりと見下ろす志木に、チカの身体は竦み上がる。
 しかし、志木は詰る訳でもなくサイドボードから何かを掴むと、無造作に自分に投げてくる。
「飲んでおけ」
 投げ寄越された錠剤の意味がわからず不安げに見上げると、志木は冷笑を浮かべていた。
「?」
「俺の子を産むつもりか?」
「!」
 火照った身体からも、すぅっと熱が引いていく。
 志木の子なら、産んでもよかった。
 それで自分を見てくれるのなら、愛情が生まれるのならむしろ本望だ。
 だが、志木はそれを望んではいない。
 志木が自分を犯すのは、子供が欲しいからでも、当然、自分を想ってくれているからでもない。
 先ほどの抱擁はただの気まぐれで、自分は志木にとってのただの性欲の捌け口であり、
オモチャでしかないのだ。
 その事実を改めて突きつけられ、チカの心は凍り付いた。
 要らなくなったら、捨てられる。
 厚かましい願いだとわかってはいるが、せめて、卒業するまでは、志木と共にいたかった。
 これ以上見放されないうちに、水も含まず慌てて飲み下す。
「飲んだらさっさとシャワーでも浴びて寝ろ」
 怒気を孕んだ冷たい声に耐えきれず、逃げるようにバスルームで泣いた。

149おっさんと少女続き 15:2009/10/06(火) 11:26:33 ID:Zuy3LPWU


 バスルームから、少女のすすり泣く声が聞こえる。
 これ以上彼女を傷つけたくなくて、全て終わりにする予定で、合間を縫って色々と
準備していた。なのに、もう終わりにするという発言に理性が焼き切れた。
 推薦辞退なんて恐怖から逃げる口実だと、頭のどこかでは理解していたのに、
大学に行くつもりが無いなら孕ませてもいいんじゃないか、子供が出来たら、諦めて
自分のモノになってくれるだろうか、そんな妄想が過ぎったのだ。
 最初はともかく、その後は流石に避妊を心がけていたが、女になった、いや、女にしたチカを
ケダモノのように貪ってしまった。
 愚かしい欲望と、チカの恍惚とした仕草に誘われ、容赦なく中に出し、犯し尽くした。
 だが、事後彼女の寝顔を見て思い出したのは、後見を申し出たあの日、大学まで行っていいと
言った時のチカの驚きと喜びの表情だった。彼女の夢まで、あの時の笑顔まで、奪いたくなかった。
 それなのに真っ青になって緊急避妊薬を慌てて飲み込む少女に、志木は落胆した。
自分が強要したのにもかかわらず、だ。
 そんなに自分が嫌なのか。そんなに自分の子を産みたくないのか。
 どこかで、彼女が自分を好いてくれているのではないかと、だからこの部屋にも
通ってくれているのではないかと、まだ、有り得もしない幻想を抱いていた。
 甘い響きで名前を呼んでくれたのは、華奢な身体で自分を求めてくれたのは、ただ、凌辱の
恐怖から逃避するためなのか。それとも教え込んだ身体が「男」を欲しがっていただけなのだろうか。
 血に染まったシャツを脱ぎ捨て、包帯を巻き直した。本当は彼女の肌を全身で感じたい。
だが、自分の裸身を見たら、きっと彼女は更に怯えるだろう。初めて抱きしめた時、チカは戦争の
匂いを敏感に察し腕の中で怯えていた。頭に包帯を巻いて帰宅した時は、真っ青になっていた。
夜、死なないで、とうなされていた事もあった。先日、戦友の死を告げた時も、震えて泣いた。
だから会う時は、戦争と死の匂いを持ち帰らないように、怪我もなるべく見せないように細心の
注意を払っていた。犯される苦痛は与えても、せめて戦争の、死の恐怖だけは、
思い出させたくない。自分勝手で、最低な言い訳だ。
 こんな関係を強いておきながら、それでも愛されたいと思う自分の浅ましさに自嘲する。
 次の日目が覚めるとチカの姿は既に無く、それでも、テーブルの上に食事の支度がしてあった。




後1回だけ続きます。
150名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 11:59:34 ID:yf9aUCRP
>>149
GJ!
151名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 19:06:15 ID:BpFZKE3N
>>149
GJ!!続きもたのしみにしてます!
152名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 19:36:08 ID:FjaFYuH7
>>142
GJ!!
続き楽しみに待たせて貰います
153名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 20:09:01 ID:uB6E1wyy
>>149
GJ!!
このすれ違いっぷりがたまらない。
次でどう収拾をつけるのか楽しみに待たせてもらいます。
154名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 22:15:40 ID:cbPfSANI
>>149
GJ!
すれ違い切ねぇ…
155名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 00:38:32 ID:vCSuKvNC
>>142
GJ!

>>143の最後の行
志木さんの体面ってとこが下の題字と混ざって
おっさんの体面と読んでふいてしまった
156名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 01:27:13 ID:IipVV8+l
>>142
すばらしいとしか。
何この見事なすれ違いっぷり。たまらん。
つか、調教開発されてくチカがエロい。

直前の志木さんコールに召喚されたかのように降臨してて吹いた
157名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 08:16:19 ID:8yJZjrGb
>>142
GJ!
なんかもう、もどかしすぎで切ない………チカかわいいよチカ
158名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 23:07:20 ID:KF0EVPMR
頼むからハッピーエンドにしてくれ!いや、してください!!
159名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 00:57:27 ID:yPKx0s4L
チカたん可愛いな
160おっさんと少女続き 16:2009/10/11(日) 00:29:22 ID:dCKLEkQr
これが最後です。エロ無いです。gdgdです。ごめんなさい。
NGタイトルでお願いします。



 ここ数日、体調が悪かった。
 熱は無かったが、身体が重く気持ちが悪い。
 頭も、腹も痛いし、吐いても吐いても、吐き気が治まらない。
 更には初夏で蒸し暑いはずなのに、寒気がする。
(怖い、なんで、私、どうしちゃったの?)
 雑草のように育ったから、そう揶揄されるくらい、身体が丈夫な事が取り柄だった。
 風邪だって滅多に引かず、去年の冬に初めて寝込んだくらいだ。
 その自分が学校を二日も休んだのに、不調は一向に治らない。
 寝ているだけでは、ダメなのだろうか。何か、悪い病気に罹ったのだろうか。
どうすればいいのか、全くわからなかった。
 志木の機嫌を損ねる真似をした罰か、それとも、身勝手で浅はかな思考しかできない戒めか。
そう考えると合点がいく。
 最低な自分に対する、当然の報いだ。
(死んじゃうのかな……私)
 朦朧とした頭にちらりと過ぎったのは、死への恐怖だった。
 死ぬ。
 死んでしまう。
 小さな疑念が大きな炎となって恐怖を煽った。
「死……ぬ? い、やあ……あぁぁぁぁ」
 歯の根が合わず、自分の身体を抱きしめる。
 死んだらどうなる?
 志木は喜ぶだろうか、いや、後見人としての面子が潰れてしまったと落胆させて
しまうかもしれない。どうすれば、志木を怒らせないでいられるのだろう。志木の望みが
なんなのか、わからない。
 自分の身体なんて、問題外だ。
 料理を頑張っても、褒めてくれる事もない。
 勉強を頑張ったら、余計不機嫌にさせてしまった。
(どうしよう、どうすればいいの……死ぬの、やだよ……志木さん、助けて……)
 死ぬかも知れないなら、その前に、志木に会いたかった。
 迷惑だろう、とか、病院に行かなきゃ、とか、いつもならそう思っただろう。
だが、恐怖が押し寄せ、纏まらないチカの脳裏にあったのは志木への想いだった。
 命を繋いでくれたのは、寂しさを包んでくれたのは、こんな自分に手を
差し伸べてくれたのは志木だけだった。
 名前を呼んで欲しい。
 笑いかけて欲しい。
 抱きしめて欲しい。
 傍にいて欲しい。
 それが、同情でも嘘でも、もう構わない。
 重い身体を叱咤して、チカは志木の部屋へと向かった。
161おっさんと少女続き 17:2009/10/11(日) 00:31:45 ID:dCKLEkQr


 二日前、チカは十八になった。もう、成人だ。
 全ての手続きを終え、後はチカに渡すだけだ。
 彼女の未来を思うと喜ばしい事だが、これからの自分を思うと惨めで、昼から降り始めた
雨音が自分の心を代弁しているようだった。重い足取りは灰色のコンクリートに自分の
足跡を滲ませる。
 ふと先を見やるとエレベーターの入り口から合流した濡れた足跡が自分の部屋に続いていた。
足跡、というよりも、引きずった跡、と言う方が正しいだろう。扉の向こうに誰がいるかなんて
愚問だった。合い鍵を持っているのは、マンションの管理人を除いてただ一人だ。
 本来なら明後日の休日に来る筈だ。そもそもまだ学校の時間の筈だった。何故、今日
来たのだろうか、大学推薦の書類を処分しに来たのだろうか、それとも、心の中を
見透かされたのだろうか、一瞬躊躇うが、思い切ってドアを開けると、玄関にはずぶ濡れの
チカが倒れていた。制服は身体に張り付き、靴は片方だけ脱げている。嗅ぎ慣れた匂いが、
血の匂いがチカからする。
「チカ?!」
 濡れたカバンと傘を投げ捨て、慌てて駆け寄る。
 抱き上げたチカの身体は冷え切っていた。足下に目を向けると、雨で濡れて薄まっているが、
太腿から、いや、その上から間違いなく血が流れていた。
「し、き……さん?」
「チカ……」
「しき……さ、たす……けて…………この前、終わったはずなのに、……痛いよ……さむいよ」
 掠れた声が耳に痛い。
 真っ青な顔で縋り付く少女の怯えぶりに、志木は驚愕を禁じ得なかった。
「こわい、よぉ……私、死んじゃうの?」
 経血も痛みも、緊急避妊薬の副作用だ。チカはそんな事など知らず、未知の症状に、
死の恐怖に怯えているのだ。
 恐らく、ここ数日吐き気も酷かったのだろう。たった四日間で痩せ細り、
目の下に隈が出来ていた。
「ごめ……なさい…ごめんなさい……でも、私……わたしっっ」
 見る見るうちに彼女の瞳から涙が零れ落ちる。その涙を拭うと、チカの冷たい手が
弱々しく重ねられた。
「チカ?」
「どうすればいいか、わからなくて……死んじゃうなら、その前に……会いたくて……」
「チカ、お前は死なない。俺が死なせない」
162おっさんと少女続き 18:2009/10/11(日) 00:32:04 ID:dCKLEkQr
 死の恐怖だけは思い出さないよう気をつけていた筈だった。 
 だが、自分の浅慮と行動が彼女をここまで追い詰めてしまった。
この状態に追いやったのは自分なのに、なのに、チカは自分に助けを求めている。
 彼女には頼れる者が他に誰一人いない。自分しか、いないのだ。
 育った施設はない。
 寮に入ったチカは、自分に気を遣ってか施設の友人の行方や様子を聞いては来なかった。
 生まれた村もない。
 彼女の故郷は地図から消えた。戦争で村ごと焼かれ、国境線が変わった今では隣国の
一部となっている。
 感情に走り逃げ出そうとしたが、公立大学の推薦を貰える位、頭のいい娘だ。戦後の混乱とは
無縁の学校で過ごし、頼る者も、行く宛も、働く術も持たない少女が一人生活できるはずもない。
一番にそれを理解していたのはチカ自身だろう。
 その事実で彼女を縛り付け、凌辱を繰り返す度に、彼女の心は少しずつ軋みを上げる。
 チカの笑顔を失い、優しい時間も失った。そして、彼女自身さえも失おうとしている。
 傍に置いてはいけない事は、わかりきっていた。ただ実行に移す度胸がなくて、
身体だけでもいという身勝手さで、ずるずると関係を続けてしまった。これが最後だと、
彼女を嬲り尽くした。
 その結果が、この様だ。
「……し、きさん、しきさん、」
 幽かな声が耳に突き刺さる。
 副作用で死ぬ事は少ないだろうが、心身共に消耗し、呼吸も弱い。夏とはいえこのままだと
肺炎を起こす可能性もあるだろう。病院に連れて行く為、まずは身体を拭くために手を放すと、
チカは温もりを求めるようにその手に縋り付いてくる。
「やだっっ……行かないで……」
「……すぐ戻る。だからチカ、大丈夫だ」
「……」
 涙に濡れた瞳、捨てられた子犬のような表情が、ひとりにしないでと、無言で訴えている。
「俺が付いている。ゆっくり休めばすぐによくなるから、安心して寝ていろ」
 二回りは小さい身体を抱きしめ、あやすように背中を叩く。
 何が俺が付いている、だ。その自分が少女をこんな目に遭わせたのだ。白々しい言葉に
吐き気がする。それでも、チカは「うん」と小さく頷き、大人しく目を閉じた。
 志木は冷え切った少女を毛布でくるみ、病院へと急いだ。

163おっさんと少女続き 18:2009/10/11(日) 00:33:17 ID:dCKLEkQr


 気がつくと真っ白な部屋にいた。ベッドに一人寝かされ、傍らには男が座っていた。
「大丈夫か?」
「え?……あ、あの……ここは……私一体……」
 起き上がろうとすると、目の前の男が手を添えてくれた。
「ここは病院だ。お前は昨日、俺の部屋で倒れて、ここに運ばれたんだ。……喉が渇いたろう。
ついでだから、薬も飲んでおけ」
「あ……りがとう、ございます」
 喉がからからだったので、大人しく差し出された錠剤と白湯をゆっくりと飲み干す。
「まだ飲むか」
「…………」
 無言で首を横に振る。頭がぼうっとしたままだったが、聞き慣れた声は優しくて、
支えられた手は大きくて、何よりも温かい。
「大分、顔色もよくなったな」
 男の顔を見上げる。まだ視界が霞んでいる。それでも、頭をくしゃりと撫でられ、
その懐かしい感触にようやく思考が追いついた。
 胸を刺す痛みと共に、その名前を反芻する。
「志、木、さん?」
「……チカ」
 低く優しい声が、何度も撫でてくれる温かな手が、じんわりと恐怖を溶かしていく。
 これは夢なのだろうか。
 それとも、あの冷たい日々が夢だったのだろうか。
「私……私……志木さん、志木さん、わたし……しきさん」
 身体は重く、頭もうすぼんやりとしたままだったが、志木の暖かさが懐かしくて、
嬉しくて、ぽろぽろと涙が流れた。そのまま倒れ込むように志木の逞しい身体に縋り付くと、
志木の手は今度は背中に添えられる。
「すまん、辛い思いをさせた。だが、もう大丈夫だ、もう来なくていいから、
だから……安心してくれ」
「え?」
 何を言われているのか、よく理解できなかった。
 顔を上げると、涙を拭われた。そして志木はそのまま優しく頬を撫でる。
「身体の不調も薬の副作用で一時的なものだし、何よりももう、俺の部屋に来る必要はない」
 だとしたら、あの日々は夢では無かったのだ。
 徐々に思考は醒めて行くが、今度は混乱して何を言っているのか理解できなかった。
 体調を崩し、無我夢中で志木の部屋まで行ったが、その後の事を覚えていない。
 一体、何があったのだろうか、一体、何をしてしまったのだろうか。
 志木は撫でる手を止め、懐から白い封筒を取り出すと、チカの手に握らせた。
 少し厚めの封筒は存外重く、チカは訝しげに見上げると、志木はそのまま眼を細める。
「お前はもう、18になった。成人祝いだ、受け取れ」
「!」
 覚えていてくれた事は嬉しかったが、事態を未だに飲み込めない。
 訳もわからず目を白黒させる自分に対し、志木は勝手に話を進めていく。
「公立大学に行くのなら、今の寮を出なくちゃならんだろう。必要な荷物は全部届けさせたし、
書類も全部提出しておいた。金の心配はしなくていいからな」
「なに、を…………? あ……れ」
 段々と身体に力が入らなくなってくる。先ほどははっきりとした意識も、再び朦朧と
し始めた。握らされた封筒も、ベッドの上に落としてしまう。
「俺の事など忘れてゆっくり休め……元気で、チカ。俺が言えた義理じゃないが、
お前の幸せを祈っている」
「し、き……さ」
 睡魔がチカを襲い、呂律も回らなくなる。それでも、力を振り絞って手を伸ばした。
 少しでも長く触れていたかった。
 今なら、きっと以前のように笑いあえる。暖かくて優しい時間が戻ってきた。
 同情でも、偽りでもいい。
 この温もりが、ずっとずっと欲しかった。
 だが、志木に向かって伸ばした腕は、空をかいてベッドの上に落ち、意識も途切れた。


164おっさんと少女続き 20:2009/10/11(日) 00:33:53 ID:dCKLEkQr

 飲ませた薬が効いてきたのだろう。力なく落ちたチカの手を自分の頬に擦り寄せる。
 顔にかかった髪を梳くように撫で、涙を唇で掬ってからそっと唇を重ねた。
カサカサだったチカの唇は、先ほど飲ませた白湯で少しだけ湿っている。
 温もりを確かめるようにそのまま抱きしめた。華奢で、だが、柔らかい。
「チカ……すまん、これで本当に、最後だ……」
 抱擁を解き、ベッドに静かに横たえる。
 もう、この街に戻る事も、彼女に会う事も無いだろう。
 元々、本部に戻って事務処理に回っていたのも、チカと一緒に過ごす時間を
増やしたかったからだ。彼女が大学を卒業して、いつか結婚して自分の元を去るまで、
少しでも多く一緒に思い出を作るつもりだった。
 だが、その穏やかになる筈だった時間を、自分の手で壊し、辛苦に染めてしまった。
 ようやく、気がついた事がある。
 チカは、あんな目に遭ってもまだ、自分を慕ってくれていた。
 夢のために渋々来ていたわけでも、脅されて来ていたわけでも無かった。
 チカはたった五歳で両親と死に別れ、十三歳で自分が引き取るまで施設で過ごした。
孤児院のスタッフは親切だったと言っていたが、孤児が溢れ、食料探しに国境近くまで
行かねばならない位困窮していて、孤児全員に親のような愛情を注げる余裕なんて無かっただろう。
 ずっと、寂しかったに違いない。学校だって、両親がいる家庭が殆どだ。
誰にも相談出来ず、小さな身体に恐怖と孤独を抱え込み、親の愛情を求めていたのだ。
 ――他でもない、この自分に――
 いかに成人前だったとはいえ、凌辱の日々を打算で割り切れる程、彼女は大人ではなかった。
 チカは拒絶した事を悔い、あの暖かく、優しい時間を必死で取り戻そうと藻掻いていたのだ。
 最初に自分が差し伸べた手を、彼女はずっと心の支えにしてくれていたのに、自分に応え、
握り返してくれた手を振り払い、踏み躙った。
 だが、それに気がついたところで、最早、チカを女としてしか見られない自分には、
彼女の望みを叶えてやれない。一緒にいれば、また同じ事を繰り返すだろう。そうなれば、
チカは壊れるまで受け入れてしまう。
 今更、親子のような生活には戻れないのだ。
 国境沿いが焦臭くなってきたのは、現場に戻る、そしてこの爛れた関係を終わらせる
ある意味いいきっかけだ。
 チカは自分の贔屓目を差し引いたって、気立てもよく、可愛らしい娘だ。よく気がつくし、
料理だって上手い。共学の大学に行けば男達が放っておかないだろう。それはそれで業腹だが、
それでも、優しい笑顔を取り戻せるのであれば祝福したい。
 こんな醜い男の事など忘れて、誰よりも、幸せになって欲しい。
 もう、自分の手では叶えられない望みだ。
「愛している、チカ」
 柔らかな髪を一房掬い口付けると、志木は病室からそっと出て行った。


165おっさんと少女続き 21:2009/10/11(日) 00:35:25 ID:dCKLEkQr

「志木さん?」
 退院してしばらくは補習と追試で来られなかった。一ヶ月ぶりに部屋を訪れたが、何の反応もない。
 恐る恐る鍵を開けると、少し埃っぽくなった室内は生活の気配が消えていた。
 何もない、空っぽの部屋だった。
 慌てて管理人室に駆け込むと、ただ転勤で引っ越した、行き先は知らない、
と肩をすくめるだけだった。
 勤めていた筈の会社は、「答えられない」の一点張りで、働いているかも、辞めたのかも、
それすらもわからなかった。
 携帯電話も通じなかった。元々、都市部でしか復旧していない代物だ。国境沿いに行ってしまえば
電波は届かないし、そもそもが会社の支給品だったので辞めていたら通じないだろう。
 最後の手がかりだった封筒に入っていたのは、推薦を貰った公立大学から程よく近い
マンションの地図と鍵だった。中に入っても、人の気配は一切無かったが、家具だけは
揃っていた。配置は違うが見慣れた物だ。泊まるようになってから志木が揃えてくれた
ベッドとサイドボードに机、台所用品も置いてある。
 机の上には自分名義の通帳と手紙が置いてあった。手紙には生活費を振り込んでおく、
大学は行くように、と、それだけ書いてある。
 ただ一つ、写真が見つからなかった。引き取られる時に、孤児院の先生が記念に、と
撮ってくれた、唯一志木と一緒に写したものだったのに、写真立てには何も入っていなかった。
恐らくは志木が処分したのだろう。
 志木の手がかりになるような物は一切残っていなかった。志木の残した痕すら消えてしまった。
志木と自分を繋ぐ物はこの通帳と部屋、そして大学に行くという約束だけだ。
 考えてみると、志木が一体どこで、どんな仕事をしているのか、チカは殆ど知らなかった。
戦時中は軍にいて、戦後は民間軍事会社に入り、敵国の残党や国内の反乱分子を追っていた。
それが七年前だ。どこで、何をしているか、「機密事項だ」と言われてしまえばそれまでで、
迷惑をかけたくも困らせたくもなかったし、何よりも戦争を思い出すのが怖くて、
深く聞くこともなかった。だが、今更ながら少しでも聞いておけばよかった。
そうしていたら、志木を探す手がかりになったかもしれない。
 何もない。
 空っぽだ。
 あの部屋も、自分も、結局は志木に捨てられた。
 志木の部屋に行った日、一体自分は志木に捨てられる何かをしてしまったのだろうか。
 ならばなんで、最後の日、抱きしめてくれたのだろう。優しく笑ってくれたのだろう。
 愚かな自分を許してくれた訳では無かったのか、それとも哀れんでくれただけなのか。
 いっそ憎めたら、少しは楽だったのかもしれない。
 だけど本当は、とても優しい人だ。その事を誰よりも知っている。
 それを自分の浅慮と言動で苦しめてしまった。
 志木を慕う資格は無い事もわかっている。
 捨てられても仕方ない事も理解している。
 それでも、会いたかった。どんな関係でもいいから傍にいたかった。
「志木さん…………私、私は……」
 空っぽの写真立てを抱きしめ、チカは涙が枯れるまで泣いた。



 以上、終了です。
途中改行やsage忘れとほんと申し訳ございませんでした。
166名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:48:05 ID:Xf6kAUHh
>>165
GJ!!
…ってあれ、これで終わり?すごく切ないんですが。
167名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 06:53:13 ID:ZG35JKqT
GJ!!
でも本当に完結?続きがあるかと…
二人ともすれ違いのまま切ないんだぜ…志木さん!
168名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 08:24:57 ID:TFPOujEf
GJ!!
…けど、切なすぎる…!!
すれ違いのままなんて(´;ω;`)ウッ…
169名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 08:25:02 ID:uexOkeKO
いやぁぁぁぁっ!!志木さんカムバァッッック!!!!
170名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 17:32:00 ID:U08ejcBv
>>165
GJ!だけど切なすぎるよー
171名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 17:42:34 ID:lmlkA533
ええええええええええええええええええ!?
これで最後!?後味悪すぎるだろ…!!
せめて後日談…後日談を…!!
172名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 18:37:45 ID:0OihAtK+
なにこれ切ない!!切なすぎるよ!!
GJだけどっ!!後日談をお願いします!!!
173名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 19:04:33 ID:Md8LOsIS
志木さあああん!!!
今すぐ戻って
チカたん幸せにしてよおおお
174名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 20:20:06 ID:Af/GzI9F
GJだけど…GJだけど…
切なすぎる…
目から汁が溢れてくるよママン
175名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 00:53:45 ID:GkVHSjxB
チカたああああん
176名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 13:43:03 ID:puLJbwXs
GJだけど切なすぎるよ…
177名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 14:00:02 ID:X7uF0t0y
志木さん
帰ってくるよね?帰ってくるよね?
信じてるよ!!!

帰ってきてよおおおお
178名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 00:22:05 ID:EM4dCp3y
ちかたんがかわいそすぎて不眠症になっちまったじゃねーか!
ハッピーエンドを用意しろよ!いや用意してください頼みます
179名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 00:44:24 ID:gZ4XOid6
数日ぶりに来てみたらなんというGJ。
おっさんと少女の人、完結おめでとうございます。
心から乙です。素晴らしいものを見せていただきました。

ちょwwwwおまえらwwwww感情移入し過ぎワロスwwww
想像で補完しようぜ! おれはこれも一つの終わり方だと思う
お前らがチカたん大好きなのはわかるが、あんまり展開要求しすぎるのもマナー違反だぜ?
180名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 02:11:04 ID:SskwVv2O
・リクエスト、続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
181名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 02:54:02 ID:kMGCpp2b
お前らってソフトハウスキャラ好きだろ?
182名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 18:23:47 ID:af6jZUAV
ソフトハウスが何なのかわからんが、俺はハッピーエンドが好きだ。
特にレイプから始まり、すれ違いが拗れに拗れた末のだと尚良し。
183名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 20:17:30 ID:tyR7VGUQ
自分はハピエンも好きだが、レイプ後
こんがりまくった感情や関係のせいでもうどうにもならず(←ここにぐっとくる)
傷つけあいすぎて好きやのに後ろ姿を見るのも辛い・思い出すのも辛い
ってのも大好きだああああ
んで互いに離れ(合意or不言実行で)暫く傷を癒し
また別の人との道を築くってのも良し
そこに前の事での葛藤や迷いや恐怖心があれば尚良し
何年も経ってから、ふとなんでもない動作やら事柄やらで当時のことや相手を思い出し、
“もう少し頑張れなかったのか”と自分を責めてみたり、
大人になった冷静な心持ちで当時の二人(自分と相手)を思ってみるのも良し!
異論は認める
長文スマン

ソフトハウスはわからない
184名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 05:32:56 ID:gbZEtn1Y
ソフトハウスキャラはエロゲメーカーの名前だよ
ブラウン通り三番目、巣作りドラゴン、ウィザーズクライマー
とか出してるところ
185名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 20:41:16 ID:mxLEXp7k
いわゆるほのぼのレイプに定評のあるメーカーだな
186名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 12:12:46 ID:rUNtHLpK
初めてのSS!
ってことでパソが今使えないからちまちま携帯で書いたのに改行やらなんやらでエラー出まくり…orz
投下できない。悲しすぎる。
187名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 17:27:04 ID:9oNmHaZc
>>186
どんまい
期待してまってるよ!!
188名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 18:30:11 ID:5f9ca24r
松尾(^ω^)
189be in captivity1:2009/10/18(日) 19:04:24 ID:rUNtHLpK
規制大丈夫かな…?
おっさんと少女、GJでした!
志木さんに影響され過ぎて年の差カポーを書きたくなり…>>62を元に社長と従業員…みたいな。
駄文な上に無駄に長いですすんません。そして今回はエロ寸止め…
志木さんが戻ってくるまでの暇つぶしにでもどぞ。
─────────
「誰でもいいんだろ?……それなら、俺でもいいよな?」

泣いても謝っても、必死に藻掻いたって、彼は冷たい目であたしを見下ろしたまま、許してはくれなかった。懇願したところで、彼は嗜虐的に笑うだけだ。
……目尻にいつもの笑い皺がない。ああ、そうか。口許だけで笑っているからか。いやに冷静に、あたしは涙に霞んだ瞳で彼を見詰めた。

「お前が、こんな薄汚い尻軽だったとはな。がっかりだよ」

謗られて、苦しくなる。
違うの、違うの。聞いて、お願い。誤解だよ、本当はあたしだって、あんなこと、したくはなかったの。あたしはいつだって、貴方だけが好きだったんだよ。
……言いたい。言えない。だって、事実あたしは、薄汚い尻軽の売女なんだから。理由が何であれ、あたしはもう何度もお金で買われた汚い女だ。
彼の言うことに一点の間違いもない。

「お前を買った男共は、お前の泣き顔が好きだったのか?泣けば何もせずに金だけくれたのか?
……違うだろ?泣いたって、無駄なんだよ!!!」

「いやぁっ……!」




あたしが売春を覚えたのは、17のときだった。そのときあたしはまだ、バージンだった。
父親の経営する会社が破綻して、借金まみれになり、父は自殺、母は妹と一緒に蒸発した。あたしは父の連れ子で、母と血の繋がりは無かったけども、愛されていると思っていた。
だけど、それは間違いだったんだ。
あたしは独りぼっちになった。学校も辞めた。父の生命保険も、我が家を売ったお金も、あたしの学費も、全部借金返済に宛てたのに、まだまだ、返しきれない。あたしの手元にはなんにも、何一つ残らなかった。
親戚中を転々として、生活した。バイトをいくつも掛け持ちして、それでも明日食べていくのにも、困るくらいだったのだ。
親戚に疎まれて、頼れなくなって、途方に暮れていたあの寒い夜に、あたしに声を掛けたおじさんが居た。

「君、どうしたの?泊まるところないの?」

…名前も知らない男の人に、あたしは3万で買われた。それが安いのか高いのか、そんなことはどうでも良かった。空腹を満たせるだけで良かった。
ホテルを出てすぐ、おじさんに貰ったお金で、コンビニのおでんを買った。あったかい。美味しい。涙が零れた。
空腹が満たされるにつれて、取り返しがつかないことをしたと言う激しい後悔に襲われた。

初めては、好きな人と。そしてその人と結婚したい。つい半年前までは、そんなことを友達と言い合って、照れ臭くって笑っていたのに。
ああ、あたしは取り返しがつかないことをしてしまった。でももう、これしかなかった。あたしは身体を売って生きるしか術を持たないんだ。
190be in captivity2:2009/10/18(日) 19:06:23 ID:rUNtHLpK
カナ、ナツ、サリ、ユカ、ミキ、ユナ。全部、あたしの名前。あたしが身体を売るときに名乗る名前。本名を呼ばれたくなかった。
あたしの心まで、売り払う気は無かった。
生活費と、借金を返すために、あたしは昼はバイト、夜は売春をして暮らした。疲れていた。
積もり積もった疲れに身体が限界を迎え、あたしはバイト先で倒れたのだった。
「大丈夫か?」
ぼやける視界に飛び込んできたのは、4、5回見たことがあるだけの、社長の顔だった。あたしは休憩室のソファーに寝かされていた。
あたしのバイト先は、チェーン展開しているレストランで、社長はたまに査察を兼ねて食事にやって来る。あたしが社長の顔を覚えたのは、店長が社長に凄い剣幕で怒られているのをたまたま見てからだった。

「…あ、あたし…」
「寝ていろ、お前、まともに食ってないな?顔色が悪すぎる。今店のスタッフに消化のいいものを作らせているから、食え」
「は、はい…すいません」
賄いだけが、近頃の食事だった。早く借金を返すには、食費をカットするしかない。
「あの、…社長、ありがとうございました」
社長は心底驚いた顔をして、あたしを見詰めた。

「お前、俺を知っているのか」
「社長、って、呼ばれてるし…」
「あ、ああ、そうか。そうだろうな」

そう言うと、彼は笑いだした。笑い皺が目尻に刻まれた。真顔は怖いのに、笑うと皺のお陰か、可愛らしく見える。

「俺もお前を知っている」「え?」
「真野 楓」
なんで、社長、謂わば企業のトップが、あたしみたいなただのバイトを知ってるんだろう。何かまずいことをしてしまったのだろうか。
不安で顔が青ざめるのが自分で良くわかった。バイト先をクビになるのは死活問題だった。

「……あたしの名前…どうして」
「……名札」
やっと合点がいった。名札か…。左胸に控え目に付けられた、白いネームプレートに納得した。

「高校生か?」
その言葉に、胸がずきんと痛む。そうなのだ、あたしは本来、高校生であってもおかしくない年齢なのだ。

「……いえ、学校は、行ってません」
どうせ、詮索される。面白半分に、あたしの不幸を聞き出したがる。皆、そうだった。

「そうか」
「……えっ」
「何だ?」
彼は、それ以上何も言わなかった。驚いた。そんな大人は、初めてだった。

「城崎社長!」
店長の声がした。社長は立ち上がると、あたしに言った。

「もう暫く、大人しく寝ていろ。背広は貸してやる」その時漸く、あたしが握り締めているものが彼のスーツであると言うことに気が付いた。
191be in captivity3:2009/10/18(日) 19:07:30 ID:rUNtHLpK
真野 楓は、大きな瞳が印象的な少女だった。美人と言うより可愛らしい雰囲気の、どこか育ちの良さそうな女の子だと思った。
けれど、彼女は見るたびに痩せて、顔色も悪くなり、明らかに酷い健康状態が見てとれた。
ただのバイトの女子高生。最初はそう思おうとしたが、違った。気掛かりでならなかった。
何故気になるのかは、自分で一番分かっていた。……いい歳をして、一目惚れだ。
言葉を交わしたい。彼女のことを知りたい。一体どんな生活を送っているのか。何か悪い病気なのか。
俺に何か出来ることがあれば、力になってやりたい。
そう思っていた矢先、そのきっかけは廻ってきた。俺が彼女の働く店舗に出向いた時に、彼女は、倒れたのだ。俺は誰より早く、彼女の元へ駆け寄って、抱き起こした。

「真野!」

貧血だ。それと、疲労も溜まっていそうだ。青ざめた顔を見て、確信した。
彼女はまともな食事をしていない。余りにも軽い身体を抱き抱え、立ち上がる。
「真野さん…、大丈夫?!」
スタッフが遅れてやって来て、真野に声を掛けた。

「多分貧血だろう。俺は彼女を奥に連れていくから、何か消化のいい温かいものを作ってやってくれ」
ディナータイムのオープン前だったので、客も居らず、大した騒ぎにならなくて良かった。彼女をソファーに横たえて、店の制服のネクタイを緩めてやり、上着を脱いで掛けてやる。
固く閉じられた瞼を縁取る長い睫毛に目がいく。初めて、これほど近くに彼女が居ることに、漸く気が付いた。
馬鹿馬鹿しい。一目惚れだなんて。確かに彼女は可愛らしい顔立ちだが、目立つようなタイプではないし、何よりまだ年端もいかない少女と言うのに差し支えない年頃だ。
…一目惚れだって?可笑しな話だ。少なくとも、15歳は年下の子供だ。俺に媚びる女だって、沢山居る。なのに、何故。
理由の分からない、恋患いなんて何年ぶりのことか。女に興味が無いわけではなかった。人並みに遊んだし、人並みに誰かを愛したこともあった。
だが、これほどまでに惹かれたのは生まれて初めてだ。
よく知りもしない相手に入れ込む自分が可笑しい。馬鹿だと思う。店に出向く度に、真野 楓の姿を探してしまう。
よく働く、マメな女の子だと思った。関わるきっかけがずっと欲しかった。彼女について知っていることなど無いに等しいのに、何故か確信めいたものがあった。
彼女は悪い子ではない。多分、俺のイメージ通りの、芯の在る、凛とした子だ、と。
192be in captivity4:2009/10/18(日) 19:10:11 ID:rUNtHLpK
再びあたしが目を覚ましたとき、テーブルに温かいリゾットと林檎のすり下ろしが入ったヨーグルト、それから林檎ジュースが置かれて居た。
背広を脇に置いて、あたしは有り難く食事を頂くことにした。社長は何処に行ったんだろう。お礼、きちんと言わないと。背広も返さないと。
食事を終えて、食器を洗うために厨房に行くと、店長が居たから声を掛けた。

「店長…あの、お世話お掛けしてすみませんでした」
「あ、もう大丈夫なの?今日は無理しないで帰っていいよ。食器もこっちで片付けておくから。明日は午前中から頼むね」

社長より随分歳がいってる(多分、50手前)柔和な性格の店長はそう言った。生粋のお人好し。
あたしを買う男たちとさして年齢は変わらないけど、きっとこの人はそんな汚ならしいことをする大人じゃない。
「本当に、すみません。あの、社長は…」
「社長なら、お帰りになったよ」
背広、忘れて帰ったのかな。どうしよう。お礼もちゃんと言ってない。
店長は、あたしの顔を見て思い出したように言った。
「明日またみえるそうだから、背広はその時にって。
……最近、うちにばかり通ってるみたいなんだよ。売上が落ちたからかな…はは」
店長は苦笑いを浮かべて、それから溜め息をついた。

非常にわざとらしく、俺は彼女と関わりを持とうとした。背広を貸したまま、帰ったのだ。
口実が欲しかった。だけども、明日背広を受け取ってしまったら、それっきりになる。
何かいい方法はないものか。せめて連絡先くらいは知りたい。少しだけでもいい、彼女に近付いてみたい。
初恋でもしたかのような熱の上げ方に自分で苦笑した。
彼女は俺のことを知っていた。当たり前か、社長と呼ばれている人間なんだから。
それでも、嬉しかった。彼女は気付かなかったらしいが、ネームプレートには『MANO』としか書かれていなかったから、俺がそれを見ただけで彼女のフルネームを言い当てることは不可能なのだ。
けれどもそれを知っていたのは、俺が彼女の名前をわざわざ他の従業員に聞いたからだ。
とにかく、彼女と関わりが欲しかった。関わることさえ出来たなら、後はどうにかする自信があった。
193be in captivity5:2009/10/18(日) 19:10:50 ID:rUNtHLpK
「あ、ありがとう…ございましたっ」
背広を差し出して頭を下げた。腰の角度は90度。
「そんな、いいから。俺は何もしてない」

そうは言っても、正規の社員ですらないようなあたしが、社長と言葉を交わすこと自体恐れ多いのに、背広無しで帰らせてしまったなんて、酷くとんでもないことだと思う。
父はいつも言っていた。背広は男の身嗜み。社長の背広は、肌触りが滑らかで、あたしを買う男たちの、縫い目が解れたようなそれとは質が全く違うことは良くわかった。
とにかく、軽くて滑らかで、高級感がある。

「本当、すみませんでした」
「……代わりと言ってはなんだが」
びく、と身体が反応した。彼が急に使った低い声に、あたしは動揺した。

「食事でも…どうだ」
「え?…食事?」
「嫌か?」
「いっ、いいえ!」

どうなってるんだろう。背広を借りたお礼に、あたしは食事に付き合えばいいの?
まさか、そんなムシのいい話があるもんか。あたしを買う男たちの中には、食事の後にホテルに行きたがる男も居る。
……そう言う、こと?

「何だ、怖い顔して。心配するな、食事だけだ。……それとも何か、俺が信用ならないか」
あたしの心の中を読んだのか、彼はふっと笑って言った。目尻に皺が刻まれる。あたしは首を横に振った。
「連絡先、教えろ。また仕事のきりが付いたら連絡する」

こうして、一介のバイトの分際であたしは社長と食事をする約束をしてしまったのだ。本当に、純粋に食事だけ。ムシのいい話が、あるもんだな……。

あたしの持って居る服を全て並べてもたかが知れている。売れるものは全部売ってしまったから、手元に残った服に大したものはない。
服装は礼儀。父の言葉だ。
『明日の夜7時から、空いているか?』

そうメールが来たのは1時間前のことだった。本当に誘いが来たこと、しかも連絡先を交換してから1週間しか経っていないことに驚いて、思わずすぐに、了承の旨を伝えてしまった。
そこで漸く、着ていく服が無いと気が付いた。

「どうしよう」

ふと、思い出した。父が最後にあたしに買ってくれたワンピースがある。シフォンの上品かつ可愛らしいワンピース。父は服の趣味が良かった。
父が亡くなって塞ぎ込んで、それから一度も着たことの無かったあれだけは、二束三文で売る気になれずに、仕舞い込んで居た。箪笥の奥深くから、取り出してみて、身に付ける。
若干以前より肉が落ちたせいか、少し大きい気もするが、悪くはない。これを着ていこう。
194be in captivity6:2009/10/18(日) 19:14:27 ID:rUNtHLpK
待ち合わせした彼女の勤める店から少し離れたところにある喫茶店に、時間より30分も早く行くと、既に彼女は居た。
しかも、席に座るでもなく、ひっそりと入口で立ち尽くしているのだ。
行き交う人々にじろじろ眺められ気まずそうにする彼女を見ていられず、クラクションを鳴らした。

「真野!」
彼女は顔を上げると、少し驚いていた。手招きをすると、走ってやって来た。俺は運転席から降りて、助手席側に回った。

「……こんにちは」
「今日は、急で悪かったな。はい、どうぞ」

扉を開け、中に入るように促した。彼女はおずおずと車の中に入った。ドアを閉めると、俺も運転席に乗り込む。
彼女は緊張しているのか、俯いたまま何も話そうとしない。

「真野」
「はい…?」
「今日の服、よく似合うな」
黒地に小花柄の、仕立ての良さそうなシフォンドレスに黒いコートを着ている彼女は、いつもの店の制服であるパンツ姿とは随分雰囲気が違った。何だか可愛い。
俺はアクセルを踏み込んだ。
「あ、ありがとう、ございます」
ちらりと彼女を盗み見た。ほんのり、白い頬を紅く染めて、少しだけ、笑みを浮かべた。
「何時から待ってたんだ?」
「や、待ったのは、5分くらいです。全然、待ってませんから」
それは多分嘘だ。
指先が赤いのは、見てとれた。鼻の頭も、同じく。
少なくとも、20分は待っていたんじゃないか。
「寒い思いをさせて悪かった。温かいもの、食わせるよ。知り合いのパスタ屋なんだけどな、美味いんだ」
「社長…どうして、食事なんて、誘ってくださったんですか」

一つ一つ選ぶように慎重に喋る。立場を気にしているのか。だとしたら、そんなこと無意味だ。

「俺も、たまには仕事の話抜きで誰かとゆっくり食事をしたいんだよ。
いつもいつも食事の相手は商談相手か会社の役員。飯の味も分からないくらいだ」
「それであたしを…」
「ああ…だから、社長は止してくれ。城崎とでも、要とでも、好きに呼んでくれていいから」

時々、自分が城崎 要と言う一人の人間であることを忘れてしまいそうになる。
親父が始めた事業の後を継いで、俺は『社長』になった。望むとも望まざるとも感じないまま、必然のようにこのポストに腰を下ろした。
何一つ自分で決めてこなかったから、自分が自分であるなんて当たり前のことを忘れそうになってしまうのだ。
「かなめ、さんって、おっしゃるんですね。いいお名前です」
やはり、彼女は育ちがいいらしい。柔らかい微笑みには気品があった。
195be in captivity7:2009/10/18(日) 19:15:10 ID:rUNtHLpK
「何が食べたい?」
彼はにこやかだった。店に来るときはいつも仏頂面のくせに、何故か今日はずっと微笑んでいた。
多分よっぽど、仕事抜きの食事が楽しいのだろうな。
「要さんは?」
「俺は、真野が食べたい物なら何でもいい。……けど、ナポリタンは、絶品だ」「じゃ、ナポリタンお願いします」

あたしが笑うと、彼もまた笑う。目尻に笑い皺が刻まれた。

「城崎、久しぶりだな」
ナポリタンの大皿を持って現れた男性は、社長を見ると親しげに話し掛けた。
それからあたしに向き直ると、一瞬驚いたような顔をした。
「随分可愛い娘を連れてきたな。初めまして、いらっしゃいませ」

あたしはぺこりと頭を下げた。
「猪山、久々だな。お前、真野にちょっかい出すなよ」
冗談まで言えるなんて、今日の彼はやっぱり普段と違うみたいだ。猪山さん、と呼ばれた男性は、あたしに向かってニッと笑う。
大皿を丁寧にテーブルに置くと、手際よく取り皿に一人前ずつパスタを盛り付け、チーズを削った。
「ごゆっくり」
ゆったりとした動作で猪山さんがその場から離れると社長はあたしを再び見詰めた。目尻の皺が消えていた。
「普段は……きちんと食べてるのか?」
あたしは少し迷って首を横に二度振った。何だか嘘を吐けなかった。
彼は少し目を泳がせて、それから言った。
「俺の仕事が空いたときにお前が暇なら、また食事をしないか」
「え?」
彼はあたしと目を合わせずに黙り込んだ。
「あの、是非お願いします」
それからあたしたちは、月に2、3回会っては食事をしたり、たまには映画を見たりするようになった。
そんなふうに付き合っても、彼は身体を要求することは勿論、不要にあたしに触れることもなく、ただ純粋に一緒に居ることだけを楽しんだ。
渇いたあたしの無彩色だった生活に潤いと彩りを与えてくれた彼を、あたしはいつしか兄とも父とも慕うようになった。やがてその気持ちがただの憧れとは違うことに気が付いた。
彼はあたしの生活を興味本意詮索することはなかった。あたしにとって彼と過ごす日々は安らぎだった。

自分の気持ちは、言えなかった。今の穏やかな関係を崩したくなかったし、何よりあたしは社長と休日の昼間を過ごし、夜は身体を売っていたから。
本当はもう、好きでもない男に抱かれるのは嫌だった。いくら避妊具を付けていると言ったって、身体の中にそれが入ってくるのは苦痛以外の何物でもない。
本当は、彼に…要さんに、抱かれたい。だけど、あたしにそんなことを望む資格なんてない。
196be in captivity8:2009/10/18(日) 19:18:14 ID:rUNtHLpK
月に数回、彼女と過ごせることが、何よりの楽しみだった。彼女への気持ちは、会うたび強くなっていったが、それでも、彼女に触れることはしなかった。
俺は大人で、彼女はまだ子供だから、狡いことはしたくなかった。
ある日、いつものように待ち合わせ場所に行くと、彼女が中年の男に絡まれていた。車の中にいても、様子がおかしいのがよく分かる。俺は慌てて車を降りて、駆け付けた。

「やめてよ!離して!」
「サリちゃん、つれないなあ。いいだろ、今日は5万出すよ」
彼女の細い腕は、男に掴まれたままで、必死に逃げようとしていた。俺は二人の間に割って入った。
「やめないか」
男も彼女も、俺を見詰めた。俺は彼女を庇うように立ちはだかる。彼女は俺の背中に隠れた。

「なんだよ、お前…!関係ないだろ!」
「喚くな、消えろ」
威圧すると、中年男はじりっと後ろに退いた。それから捨て台詞を吐いて、立ち去った。

「お前だってサリの客なんだろ!?ふざけんなよ!」

男が消えたあと、俺は混乱していた。状況が読めたようで、読めていなかった。客、とか、5万出す、とか、サリ、とか。
「真野」
振り返らずとも、彼女がビクリと肩を震わせたのが分かる。彼女に俺は、裏切られていたのか。何故、気付かなかったんだ。

「要さん…あの、あたし…」
「真野、来い」

今度は俺が彼女の腕を掴んだ。引き摺るように、彼女を車に連れていく。彼女が藻掻いた。
そんな細い腕で、抵抗出来るわけないのに、馬鹿な女だ。

「かっ、要さん…!ごめんなさい、ごめんなさい…!」
いつも紳士の振りをしていた分、留め金が外れた今、彼女に優しくする、とか、今までの関係が壊れてしまう、とか、そんなこと、考えられない。
助手席のドアを開け、彼女を押し込むと、そのまま乱暴に閉め、俺も運転席に乗り込んで、アクセルを踏み込んだ。彼女の軽い身体が車の勢いに負けて、浮き上がった。
怯えたような悲鳴が上がる。

「お前、あのオヤジに抱かれたのか?」
「……ごめんなさい…っ」
「何で!何で、なんだよ…」

彼女は泣きながら、自分の困窮した暮らしを語った。父親の自殺、母親の蒸発、自主退学、借金返済。どれも、本当のことなのだろう。
ならば何故、俺に相談してくれなかったのか。身体を売るなんて馬鹿なことを何故したんだ。
金の工面なら、俺がしても良かったのに。何で俺を、頼ってくれなかったんだ。
着いたのは、俺の自宅。高層マンションの屋上階。彼女はエレベーターの中で泣いたまま、謝り続けた。
けれども、許せなかった。既に、関係は崩れた後だ。
もうどうにでもなればいい。部屋に入るなり、彼女を寝室に連れ込んだ。ベッドに突き飛ばし、怯えた顔の彼女に覆い被さった。


とりあえずここまで。続きます。私のリスペクトする職人さんたちの足下にも及びませんが…読んでいただけて嬉しいです。
何だか無理があるのは見なかったふりで。
197名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 19:44:33 ID:aC9BhIuR
>>189
GJ!!
続き期待してます
198名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 20:17:40 ID:UyL2HRIP
>>189
GJ!!
199名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 23:23:12 ID:MfHNt++/
これからどうなるか、ドッキドッキしながら一気読み致しますた。
志木さん達がすれ違ったままになっちまったので、余計に二人の関係が気になる気になるうぅぅ!!

出来れば幸せエンドに……と願いつつ、鳩胸をさらに膨らませて春日のようになりながら続きを待っとります。
200名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 20:33:28 ID:fC/Dn12s
>>189
GJGJ!!!!!!!!!!
続きがもの凄く気になります!!!!!!
とりあえず真野ちゃんには幸せになってほしい…
201名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 22:44:00 ID:rFMJrEZF
無理やり……、に至るまでの過程が丁寧に書かれているので
つづきがすごく楽しみです!!
202名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 15:02:43 ID:JHdorBfP
テンションw
203be in captivity9:2009/10/24(土) 00:21:53 ID:Uz4Jmgh9
こんな拙い文章にGJありがとうございました!泣いて喜びました。
続き投下します(^ω^)


震える彼女の腕を掴んで、ベッドに出しっぱなしにしてあったネクタイを引き寄せた。一束ねにした手首を無理矢理縛り上げた。

「誰でもいいんだろ?……それなら、俺でもいいよな?」
涙に濡れた大きな目が、やめて、と訴える。誰がやめるか。もう遅い。止められない。燻っていた劣情は、完全に燃え上がっていた。「お前が、こんな薄汚い尻軽だったとはな。がっかりだよ」
詰ると、傷付いたような瞳をしてまた涙を溢す。その表情は、俺の嗜虐心をくすぐった。
もっと泣けばいい。もっと傷付けばいい。

「お前を買った男共は、お前の泣き顔が好きだったのか?泣けば何もせずに金だけくれたのか?
……違うだろ?泣いたって、無駄なんだよ!!!」

「いやぁっ……!」

彼女の着ていたワンピースを、乱暴に引き裂いた。そこから覗く、レース仕立ての下着に詰まった白い膨らみに、目を奪われた。

「要さん!やめて、許して…!」
裂けた服を肩から乱暴に脱がし、下着も剥ぎ取ってしまう。無我夢中で、彼女を身ぐるみ剥がしてやった。
腕を縛られたまま、怯えきって縮こまり、震える白い身体。可哀想とは思わなかった。
滅茶苦茶に、壊したい。俺無しには生きていけないように。
震える彼女の細い両脚を掴んで開かせた。中心に強引指を挿し込んだ。途端に悲鳴が上がる。

「やあぁっ!」
「くくっ…真野、お前淫乱だなぁ。脱がされただけで濡れたのか?」
そこの僅かな湿り気に興奮した。さらに深く挿し込むと、そこは俺の指を食い千切りそうなくらい強く締め付けてきた。
空いた手で、白く柔らかな胸を辿る。力を入れて揉むと、俺の意思のまま、肉が形を変えた。
「や、やぁ…っ、やめて、要さん…やめてぇっ」
喘ぎ声に混じって、拒絶が聞こえた気がしたが、無視した。彼女は喉を引きつらせるようにして、嗚咽を漏らす。
その仰け反った白い喉元を狙って、噛み付くようにキスをした。

「…つっ!!」
「痛いか?」

彼女の顔を覗き込むと、唇を噛み締めて、必死に何かに耐えるような表情をしていた。

「痛いかもなぁ。でも、許してやらない」
嬲り尽くしてやる。もう二度と他の男に身体を開けないくらいに、俺を教え込んでやるよ。
彼女の全身に、紅い痕を刻み込んだ。所有の証だ。この女は俺の所有物。他の誰のものでも無く、俺一人のものだ。

「やぁ…あ…かなめさん…」

拒絶の色合いを強く持ったまま、彼女が俺の名を呼ぶ声がした。
204be in captivity10:2009/10/24(土) 00:22:37 ID:Uz4Jmgh9
彼はあたしを詰りながら、あたしの身体を弄んだ。詰られても、罵倒されても、仕方無い。あたしが悪い。
彼はあたしを痛め付けるように、全身に紅い痣を付けた。仕方無いと分かっていても、涙が止まらなかった。
愛のない行為には、慣れている筈だった。なのに、彼に性処理に使われていると言う事実が、あたしを打ちのめした。

「かなめ、さん、かなめさん…っ」
彼の名を呼んでいないと、耐えられなかった。彼の心が伴わないまま、縛られて嬲られるのは、辛かった。
あたしが彼の名を呼ぶと、彼は眉間に皺を寄せた。

「あ……」
馬鹿だ。あたしみたいな汚い女に名前を呼ばれて、不快に決まっている。
「…ごめ…ごめん、なさい…ごめんなさい…っ」

謝っても、彼の眉間には皺が刻まれたままだった。不機嫌な顔で、あたしを見詰める。
「今まで何人に身体を許したんだ?」
唐突な質問に、心が凍てついた。何人だろう。分からない。数えられない。売春は、あたしの生活の一部だったから。

「分からないのか?分からないくらい、沢山なのか?……この売女が!」
怒鳴られて、謗られて、絶望した。嫌われた。もう二度と、前みたいにはなれない。
要さんを愛していた。大好きだった。何も持たないあたしをただ優しく包んでくれた。あたしはあたしの犯した罪で、彼から見捨てられた。

「……ぁ、はぁ」

彼の吐息が熱くなる。見遣ると、今まで一切服を脱いでいなかった彼が、今度は自らの衣服に手をかけていた。
駄目だ。彼があたしを貫いたら、汚れたあたしで彼までも汚してしまう。

「…やっ!やだ、嫌、要さん、やめて、やだ、……」拒絶の言葉は、届かない。彼の腕が、再びあたしに触れた。
反射的に、身体が跳ねた。
「嫌だと?今更何を言っている。
…お前のここは、散々他の男のモノをくわえ込んだんだろ?!」
「……かなめさ…、あ、嫌、やあぁぁっ」

熱い彼自身が、あたしの中に押し込まれた。
遠慮なく、奥まで、ずっと奥の方まで。誰も、入り込めなかったくらいに深く、彼は迫ってきた。
彼の腕が、あたしの身体を抱き寄せた。彼の体温が、熱い。

「…かえで…楓っ」

不意に、初めて彼に名前で呼ばれたせいか、自分の奥深いところが彼を締め付けるのが分かった。
彼はあたしを抉るように突き、動きに合わせて何度も、楓、と呼んだ。その度に、あたしの身体は答えるように悶えた。
205be in captivity11:2009/10/24(土) 00:24:53 ID:Uz4Jmgh9
ずっと堪えていた欲望は、一旦解放されると、とめどなく溢れ出した。
それを留める術はなく、俺は夢中で彼女を貪った。嫌がられても、止められなかった。

「ん…っ!ひ、っ」
声を聞きたくて腰を突き動かしても、彼女は声を噛み殺してしまう。身体は答えるように俺に纏いつくのに、声は聞けない。
「楓…」
それが酷く寂しくて、俺は彼女の名前を呼びながら、より深く繋がりたくて、身体を抱き寄せる。彼女の一番奥深くまで入りたかった。緩急を付けながら、腰を揺らした。

「んっ、あっ…!あ、いや、やぁ…っ」
漸く、彼女の切ない声が漏れ始めた。彼女の中で、自身のモノが再び猛るのが分かった。

「楓、楓…、ほら、分かるか?俺がお前の中に居るのが」
「い、や、かなめ、さん…要さん……っ!」

涙声で、身悶える彼女に、満足出来ていなかった。まだだ。まだ、足りない。
俺は腰を突き立てながら、彼女の脚の間に手を伸ばした。
「ひあぁっ!か、かな、め、さん、あん、あぁっ」
恐らく、女の身体の中で最も敏感な突起を弾くと、格段に締まりが変わる。白い肌は薄桃色に染まって、上擦る声で俺を呼んでくれる。
もう拒絶の言葉は無い。俺はただひたすら、彼女に快楽を与えようと必死だった。忘れられないくらいの快楽を首輪代わりに、彼女を繋ぎ止めたい。
離したくない。許されるなら、いつまでも繋がって居たいくらいだった。
「……っだめ、や、へんだよぉ、ああ、だめ、やあっ」

彼女が限界を迎えそうになるにつれて、俺もまた、限界に近付いていった。彼女を壊してしまいそうなくらい、激しく揺すぶった。

「……っ、楓!あ、イクっ」
「か、かなめさん…、やだ、中は、中は…っ」

急に必死に彼女は藻掻き始めた。俺は縛った腕を押さえ付けて、容赦なくお互いを絶頂に導いた。

「やあぁぁっ!やめて、要さんっ!お願い、許してっ!」
「…許さない」

彼女の一番深いところに、たぎる熱を吐き出した。何度も、立て続けに。 避妊なんて、しない。孕ませてやる。子供が出来れば、彼女を繋ぎ止める一番頑丈な枷になるだろう。
欲望を吐き出しても吐き出しても、俺のモノはすぐに再び猛った。確実に妊娠させるには、まだ足りない。
だが、何度も欲望をぶつけられた彼女は意識を無くしてしまっていた。
「楓」
ずるり、と引き抜いて、汗みどろの身体のまま、同じく汗で湿った、弛緩した彼女の身体を抱き締めた。
子供が出来ればいい。楓と俺の子なら、絶対に可愛いに決まっている。嫌われたところで、この家から出さなければ子供を堕ろすことだって出来まい。
意識の無い彼女をそっと横たえると、手首の拘束を解いてやった。それから、彼女の服だった布切れと下着を掴み上げると、そのまま浴室に向かった。
206be in captivity12:2009/10/24(土) 00:25:57 ID:Uz4Jmgh9
身体の軋むような痛みで目が覚めた。
「……痛っ」
起き上がるのも辛いくらいの疲労。要さんは、どこ?何で、身体が痛いんだろう。
「楓」
振り返ると、バスローブを着た彼が立っていた。髪も濡れたまま、あたしに近付く。

「……何故、借金のことを黙っていた」
「あ、……」

そうだ、あたしは、要さんにあたしの汚い行いを知られてしまったんだ。どうしよう、嫌われた。
「か、要さん…」
「何故俺に相談しなかった」

気付くと彼はあたしのすぐ傍まで詰め寄って居た。いたたまれなくなり、逃げ出そうとしたが、彼に腕を掴まれて、湿ったベッドに組み敷かれた。

「何処へ行く?お前の着ていた物は全部水浸しで着られたもんじゃないぞ?」
彼が喉を鳴らして笑うのを見て、あたしはどうしたらいいのか分からなくなった。逃げられない。でも、合わせる顔などない。嫌われるより、もっと苦しい。
彼の手が、あたしの震える唇に触れた。乾ききった唇を、長い指が往復する。

「お前が身体を許した男共の汚い一物をくわえたのは下の口だけか?ここでもしゃぶってやったのか?」
必死に首を横に振る。あたしはそれどころか、キスすら、したことはなかった。本名を名乗らないのと同じく、あたしのプライドだった。
「どうだかな」

鼻で笑うと、あたしの上で彼はバスローブを脱ぎ捨てた。そしてまた、あたしに覆い被さった。

「か…なめ…さん」

不安だった。もし彼の子を妊娠してしまったら。彼の子を産むことは、あたしにとって、何より嬉しい。
だけど、あたしみたいな女が、一企業の社長ともあろう人の子を産めば、彼に良からぬ噂が立つに決まっている。迷惑は、掛けられない。
「お願い、せめて…避妊を」
あたしの願いに対して彼は明らかに不機嫌な顔をした。

「嫌だね」
「……!」
「今更遅い」

完全に、嫌われていた。微塵も親愛は残っていない。もう二度と、彼に会っては行けない。あたしの存在自体、迷惑なのだ。
そう考えると、一度は渇いた涙が再び溢れた。あたしはまたしても、大切な人を失ったんだ。でもそれは、あたしのせい。
「楓、何故泣く…?そんなに嫌か」
ただ黙って、あたしは首を横に振った。嫌じゃない。寧ろ、彼に抱かれて、嬉しくて気持ちよくて、それだからこそ、辛いの。でもそんなこと、あたしに言う権利はないもの。
彼があたしの中で爆ぜる度に、泣いた。彼と別れなければならないなら、せめて彼の面影を映す子供が出来たら…。彼には知られないように密かに産んで、一人で育てたい。
けれども、借金ばかりしかないあたしに、子供を育てるなんて、出来ないよ。産みたい。でも、産んだら辛い思いしか、させられない。不甲斐ない。
207be in captivity13:2009/10/24(土) 00:27:54 ID:Uz4Jmgh9
泣き疲れたのか、立て続けに何度も犯されたことによる疲労か、彼女は夜が明けて、日が高くなっても目を覚まさなかった。
俺は彼女の柔らかな黒髪を撫でながら、添い寝をしていた。
裸の身体に裸の身体を沿い合わせて体温を分け合うようにしていると、彼女の気持ちを錯覚してしまう。
「こんな時間か…」
むくりと起き上がって携帯を見ると、出勤時刻が近いことに気付いた。だが、彼女を一人置いて行けば、逃げるかもしれない。
うちには乾燥機もドライヤーもある。乾かそうとすれば、俺がバケツに放り込んで水浸しにした服だって、いくらでも乾くだろう。
いっそのこと、首輪でも着けて繋いで置きたい。
今日はもう、会社に行きたくない。重要な商談もないし、俺が居なくても、優秀な部下たちが何とかするだろう。
俺は秘書に電話を掛けて、仮病を使った。わざとらしく咳き込んでみたり、調子が悪いと仕切りに言ってみたり。まだまだ甘い彼女は、仮病だとは露知らず、お大事になさってください、と心底心配そうに言った。
俺はふと思った。首輪か。彼女に着けるのに丁度いい首輪があるじゃないか。

「少し調べて欲しいことがあるんだ、いいか?」


電話を掛け終えて楓のところへ戻ると、彼女は上体だけ起こして、ぼんやり俺を眺めていた。瞼が赤く腫れていた。汗で前髪が額にくっついている。
俺は踵を返すと、バスルームに向かい、バスタオルを取ってきた。それを無造作に彼女に投げると、ぶっきらぼうに言った。
「シャワー、浴びてこい。部屋を出て、すぐ左だ」
彼女はのろのろと立ち上がり、身体をバスタオルで隠すようにして部屋を出ていった。
彼女が居なくなった部屋で、これからのことを考えた。上手くいけば、彼女は真に俺のものだ。
彼女の抱える債務を全て俺が肩代わりしてやればいい。彼女を縛り付けて逃げられないようにするには、俺が債権者になればいいだけだ。
秘書に調べさせているのは、彼女の言った債権者のことだ。利子も合わせて、けして安いとは言えない額だが、払えないことはない。調べさえつけば……。

シャワーから上がった彼女が、戸惑うように部屋に帰ってきた。俺は、箪笥から取り出した黒いTシャツを彼女に投げつけた。
「着ろ。身体を冷やすな」
彼女は泣き出しそうな顔をして、俺を見上げた。本当は、優しくしたかった。
でも、あんなことをしておいて優しくするなんて、あまりにも恣意的な気がして出来なかったんだ。
208be in captivity14:2009/10/24(土) 00:30:05 ID:Uz4Jmgh9
家に帰して欲しい、何度もそう言ったけれど、彼は許してはくれなかった。
あたしの着ていた物は、全部見当たらなかったし、彼は一日中あたしを離してくれなかったから、逃げ出せもしなかった。
彼は昨日よりも確実にあたしのいいところを探しだして冷静にそこを突いてきた。
「楓…」
彼はあたしの中に居るときだけ、髪を優しく撫でながら、甘い響きで名前を呼んでくれる。嬉しかった。
でも逆に、あたしには身体を差し出す以外の価値がないことを肌で感じて悲しくなった。

「楓?どこか、痛むのか…?」
彼はあたしの涙を親指で拭って、訊ねた。痛いのは、心。首を横に振って、目を瞑った。
「…泣くな。何も考えられなくしてやるから」
彼の大きな手が、Tシャツを捲り上げて、あたしの胸を揉みしだいた。声を漏らした途端に、一層激しく責め立てられる。
彼が何を思ってあたしを離さないのか分からない。せめてそこに少しだけでも愛情があればいいけれど、あたしにはそんなこと、望めない。

「あ…っ、や、嫌、お願い、家に帰して…許して…」

懇願は、無視された。彼は無言であたしを責め苛む。これほどまでに嫌われてしまったら、あたしはどうすればいいのかもう分からない。
傍に居られない、とだけ、ぼんやりとする意識の中で思った。

……

「……わかった、仕事が早いな。その債務は俺が引き受ける。大丈夫だ、会社の金は遣わない。
ああ、俺個人の…謂わば娯楽だ」
要さんが誰かと話している。うっすら開けた目で、彼を見付けた。
「悪かったな、余計なことをさせて。…え、具合?よく、なった。明日は行く」
誰と話しているんだろう。今何時なんだろう。
窓を見遣ると、もう夕方近いようだった。あたしたちは、昨日の夜からほとんど何も食べずにずっと身体を重ねていた。
水は、彼の口移しで飲んだけれど、身体は疲れきって、とても空腹だった。
ベッドから離れたところにいた彼が、携帯を折り畳んでテーブルに放ると、またこっちに近付いてきた。逃げ出したり、抵抗したりする体力も気力も、もう無かった。
犯され揺さぶられ、そうされる以外に価値がないなら、大人しく身を差し出すのも仕方がない。
「楓」
「……は、い」
「じきにお前の債権者は俺になる。俺はお前に金は求めない。…身体で返せ」
「え…?」

何を言われているのかよく分からなかった。混乱する頭を振って、考えた。
多分、要さんはあたしの借金を肩代わりしてくれるつもりで、その返済を、身体を使ってしろ、と言っているのだ。

「お前は逃げられないよ、俺から。家にも帰さない。一歩もこの家から出してやらない」
狡い考えが生まれた。
彼の傍に居たら、あたしは彼の為になることなんて一つも出来ない。でももう、逃げ道はない。それならいっそ、彼の子を産んでも、許されるのかな。
…そんなこと、彼は望まないのに、あたしは馬鹿だ。きっと妊娠すれば、すぐに捨てられる。玩具としての役割も果たせない役立たずは、ゴミと同じ。
あたしが産んだ子を可愛がって貰えるはずもない。
あたしは、馬鹿だ。



なんだかだらだら続いちゃってすんません…
まだ続きます。自分でも終わりが見えません!orz
209名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 00:57:47 ID:NkZWHypN
>>203
GJ!!楽しみにしてたよ
リアルタイムで読めて嬉しかった
「忘れられないくらいの快楽を首輪代わりに」って文章に萌えた
続き楽しみにしてます
210名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 01:11:04 ID:MbrfDMQ6
続きktkr
真野ちゃんかわいいよ真野ちゃん
211名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 03:49:58 ID:MKYyaJx5
おお〜!!!GJです!
視点の入れ替わりで、とても感情移入しやすいですね。
どうか、二人に幸あれ!
212名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 18:31:04 ID:/NKNpSYN
投下乙
213名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 19:44:50 ID:WrzesQJm
>>203
GJ!! 続き乙です!
214名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 21:49:03 ID:x8wXgoUf
>>203
GJ!!!
視点が交互に移り変わってて、ふたりのすれ違いが読む度に伝わってきて切なくなりました
真野ちゃんも勿論可愛いが、不器用な要さんがむちゃくちゃ愛しい……
215名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 08:09:44 ID:cuBrD6vS
寒い
216名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 16:04:16 ID:HH7W5mM+
寒いな
217名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 19:05:01 ID:6ZC1MjVT
寒い中モコモコに着膨れした、密かに想いを寄せる幼馴染を思い余ってレイプ!




しようとしたが下着どころかシャツにすら辿り付けず無念の涙に頬を濡らすそんなお間抜けレイプ未遂話
218名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 20:12:00 ID:kBqTxZfZ
>>217
禿萌えた
219be in captivity15:2009/10/27(火) 07:20:15 ID:BvJnWfi6
寒いね。朝から投下しちゃう。
またしてもGJありがとうございました。皆愛してるぜい!



極悪非道、とはまさに俺の本性を言い表すのに適当な言葉だった。
俺は楓を監禁してから数日後に、直接債権者に会い、耳を揃えた現ナマを手渡しで握らせてやった。
相手は驚いたあと、随分嬉しそうに何度も礼を言って去っていった。この瞬間、俺は彼女の人生を金で買ったのだ。そう思えば、高い買い物ではない。

「楓、ただいま」

俺は楓の為に下着類やワンピースを恥をしのんで買い込み、帰宅した。もう彼女は首輪付きだ。服を与えても逃げられないだろう。

「お、お帰りなさい…」

怯えた顔で出迎える彼女をもう見慣れた。俺が家に居ると、彼女は怯えきって俺の一挙一動を不安気に見詰めるのだ。当然だ、俺は彼女を脅迫して、夜な夜な凌辱しているのだから。
大きな紙袋を彼女に押しつける。戸惑うように、俺を見上げた。

「気に入るかは分からないが、着るものだ。いつまでもそんな恰好じゃ、な」

いくら暖房が十分でも、裸体にTシャツだけでは、さすがに身体を壊してしまうだろう。これからもっと寒くなる。

「ありがとう、ございます…」

「着て見せてみろ」

頷くと、彼女は俺が与えた質素な空き部屋に引っ込んだ。ほとんど何もないあの部屋にも家具を揃えてやろう。
彼女は俺が居ない間に独りでは疎かになりがちだった家事をこなしてくれていた。脅迫、債権、と言う強制力がなければ、まるで夫婦だった。けれども、俺たちはそれありきの関係だ。愛情なんてもの、二人の間には無い。

「要さん…」

彼女が着たら、誰が着るより素敵だろうと思って購入した赤いチェック柄のワンピース。おずおずと部屋から出てきた彼女に、想像していたよりもずっと似合っていた。
思わず目を奪われて、黙り込んだ。

「あの、似合いませんか…」

困惑した表情に、我に返る。そして彼女の腕を掴むと寝室に引っ張り込んだ。いつものように、ドサリと彼女はベッドに放られて、怯えた目で俺を見た。

「……今日から、お前の債権者は俺になった。この意味、分かるな?」

ネクタイを弛めながら、彼女に近付いた。いつもよりも、悲痛な顔をして、黙って俺を見ていた。自分の運命を覚ったのだろうか。
ネクタイを外し、スーツも脱ぎ捨てた。彼女に覆い被さって、Yシャツのボタンを外すが、その手間さえもどかしい。身体が彼女を欲しがって、痛いくらい猛っていた。

「楓、楓…」

自分のYシャツを前開きにすると、俺は待ち切れず、折角彼女が身に付けたワンピースの胸元のボタンを引き千切りそうなくらいの勢いで開いていく。
俺が選んで買った控えめなデザインの下着は、彼女には少し大きいのか、カップが余っていた。

「要さん…」

どうして俺は、彼女を怯えさせたり、泣かせたりしか出来ないのだろう。
本当は、愛している、と告げて、キスがしたいのに。
220be in captivity16:2009/10/27(火) 07:20:59 ID:BvJnWfi6
あたしは彼にこの家に連れて来られた翌々日に、全てのバイトを辞める連絡を入れることを命じられた。
いきなり辞める、と言うことを、誰も別段気にかけてはくれなかった。けれど、あのレストランの店長だけは心配してくれた。待っているから、気兼ねなくいつでもおいで、と言ってくれて、泣きそうになった。
本当はもっと話したかったけれど、横で睨み付ける要さんが怖くて、切らざるを得なかった。

「お前、あの男と何かあるのか?」
「あ、ありません!」
「あの店、売上も落ちているしな、俺の一存でどうにでもなる」
「店長は…、店長はあたしのお父さん代わりなんです…。酷いこと、言わないでください」

それを聞いて、彼は明らかに怒りを含んだ目であたしを捕らえると、吐き捨てるように言った。

「父親代わり?
お前が売春した相手も父親代わりとでも言うつもりか」

心が底から冷えきるのを感じた。ああ、あたしは本当に嫌われてしまったんだ。彼はこんな酷いことを言う人では無かった。
あたしが堪えきれずに涙を溢すと、彼は舌打ちをした。携帯を奪い取られて、そしてまた、連れ込まれたときと同じように強引に引き倒された。


何日も掛けて、彼の熱も形も質量も教え込まれて、あたしの身体は彼を拒めなくなっていた。怖いくらいに彼を求めて止まなかった。
彼があたしの債権者になったと告げたとき、あたしは戸惑った。自分も彼も、怖かった。離れられない自分、離してくれない彼。それが愛で繋がれた関係なら美しいだろう。子供が出来れば喜んでくれるだろう。
でもあたしたちは違う。債務と肉欲だけの、澱んだ関係だ。例えばあたしが愛を伝えても、無駄なんだ。それは彼には伝わらない。何も言わず、密かに思うだけの方が、まだ救われる。


俺はとにかく、彼女が一日も早く妊娠することを願っていた。彼女を完全に俺だけのものにし、かつそこに愛が生まれる可能性があるのは、彼女の妊娠だけだと債権者になって漸く分かった。
金では身体は買えても、心は買えない。
だが彼女は、中で俺が達する度に絶望したような顔をする。それは、当然だ。俺がいくら望んだところで、彼女は俺の子供を産むなんてこと、望まない。
身勝手で独り善がりな俺が愛を囁いたとして、誰が信じるものか。

「お疲れのようですね」
秘書が、呟くように言った。俺は彼女が差し出したコーヒーを受け取って、頷いた。
「…スケジュール、きついですか?すみません、私の管理が甘いせいで…」
「いや、違うんだ。その、何だ。ちょっと、上手くいかないことがあってな」
「あ、もしかして恋愛のお悩みですか?」

飲んでいたコーヒーを吹きこぼしそうになる。何で分かるんだ。ひとことも楓のことは話していないのに。
当惑して彼女を見ていると、不敵な笑みを浮かべ、図星みたいですね、と囁いた。

「……結婚したい。子供が出来れば喜んで一緒になりたい」
「え?どうして結婚したいのに今すぐなさらないんです?」
「彼女の気持ちが、俺に向いていないんだ」

深い溜め息が、漏れた。
221be in captivity17:2009/10/27(火) 07:21:47 ID:BvJnWfi6
猪山のところに、子供が生まれた。奴は子供が家に返ってきて早々に俺にけたたましく電話を掛けてきた。

「可愛いぞ、俺の子」
「……そうか」
「見に来いよ」

そう自分で言っただけあって、猪山の子供は本当に可愛かった。週末、仕事帰りでいいから来いと言われて俺は彼の家を訪れると、彼の奥さんは快く俺を迎え入れてくれた。

「あ、城崎さん、いらっしゃい」
「おっ、来たな!ほら来いよ、すげぇ可愛いぞ」

彼に伴われて寝室へ向かうと、小さなベビーベッドがそこにあった。覗き込むと小さくて白くて柔らかそうな赤ちゃんが気持ち良さそうに眠っていた。

「な、可愛いだろ?めちゃくちゃ可愛いよなっ」

子供を眺めながら幸せそうにする猪山に、少し嫉妬した。
俺も子供が欲しい。勿論、俺と楓の子供だ。
彼女を家に置いてから、既にかなり時間は経っていたし、ほとんど毎晩彼女を抱いていた。なのに、まだ妊娠の兆しは無かった。

「城崎さん、お夕食、良かったら一緒にどうぞ」
猪山の奥さんが、寝室へ顔を出した。猪山には勿体無い、綺麗で気立てのいい女性だといつも思う。
「すみません、いきなり押し掛けて…」
「いいえ、城崎さんは主人の大切なお友達ですもの。いつでも歓迎ですよ」
猪山の奴、いい奥さんを貰ったな。楓もいずれ、あんな風に俺のことを夫として見てくれるようになればいいのに。


「楓、ただいま」
要さんはいつもよりかなり遅く帰宅した。あたしは自分の身体がびくつくのを感じた。

来るべきはずのものが、来ていなかった。もう、二週間は遅れている。
最近の身体のだるさと火照りは…もしかしたら、……。それに気付いたとき、あたしは彼に告げようか告げまいか、迷った。
妊娠が分かって、捨てられることを恐れた。けれど、宿った命を守らなくてはいけないと、漠然と思った。

「お帰りなさい…」
彼の顔をおずおず見上げた。何か言いたげな表情だと思った。
「楓、最近変わったことはないか?」
「え…?」
気付かれた?
言わなくちゃ、と思ったのに、バレたかもしれないとなるとあたしの決意はすぐに萎んでしまった。慌てて首を横に振った。
「な、何も、何もありません」
「そうか」
彼はそれだけ言うと、あたしを見ることもなく、寝室へ入ろうとした。
「要さん、お夕飯は…」
「要らない」
冷たく言い放たれて、あたしは所在なく立ち尽くすしかなかった。きっと妊娠していることが分かったら、もっともっと冷たく、捨てられる。
涙が溢れて頬を濡らした。
222be in captivity18:2009/10/27(火) 07:22:37 ID:BvJnWfi6
要さんに冷たくあしらわれるのはいつものことだったのに、何故かあたしは酷く落ち込んだ。
料理を作って食卓を囲んでもほとんど会話はないし、彼がたまに気まぐれに買ってきてはクローゼットに入れていく服を着てみせても、似合うとは言ってくれない。
でも、この家に来る前までの彼は違った。あたしを一生懸命楽しませてくれたし、いつもあたしを大切にしてくれた。
きっとあたしが嫌いになったから、冷たいんだろう。あたしにはもう、彼に身体を差し出す以外に優しい響きの声を聞く機会はない。
それを思い知らされた気がして、そして父親にあたる人の愛情をけして受けられないだろうお腹の子が不憫で、心が戦慄いた。
声を噛み殺して泣きながら、彼のために作った食事を処分した。食べて貰えずにゴミ箱に捨てられた料理を見ていると、自分の姿に重なった。

「楓?」
ハッとした。彼がすぐそばに居たことに気が付かなかった。
「かなめ…さん」
「何を泣いている?」
「何でも、無いんです。何でも無いですから、あたしのことなんて、気にしないでください」
慌てて涙を袖で拭って、無理矢理笑った。これ以上嫌われてしまったら、あたしはもう、本当に笑えなくなってしまう。
「……何でも無くないだろう」
詰め寄られ、言葉を無くして俯くしか無かった。
言いたい。捨てないで、ずっと傍に居たい。縋り付きたい。だけど、そんなこと言ったら、また嫌われてしまう。
彼はゴミ箱に視線を落とした。暫く黙ってから、あたしが手にして、今まさに捨てようとしていたオムレツを彼はそっと手に取った。
「……悪かったな、今日は猪山の家に呼ばれて、つい食事までご馳走になってしまったんだ。連絡すれば良かった」
空いた手で、頭を撫でられた。涙が止まらなくなった。嗚咽すら漏れ始めた。
どうして優しい声を使うの?あたしは馬鹿だから、諦めたはずの貴方の気持ちをまた期待してしまう。
彼の胸に顔を埋めて泣きたかった。でも甘えたらこの優しい手を失ってしまう気がした。
あたしは何も言えないまま、逃げるようにして部屋に帰った。
223be in captivity19:2009/10/27(火) 07:24:11 ID:BvJnWfi6
俺は本当に彼女を泣かせることしか出来ない。
子供が欲しいなんていう身勝手な願いが叶わないことに落胆して、連絡も入れずに遅くまで帰らなかった俺に食事を用意して待ってくれていた彼女の気持ちをないがしろにした。
そもそも、望まない妊娠を強要していること自体、全ての間違いなのだ。
……けれども、俺は彼女を愛していた。ただ、どう愛していいのかが分からなかった。

楓はあの日から少しずつ、痩せていった。食欲が無いようだったし、時々戻していることもあった。事を終えた後、寝たふりする俺の隣で圧し殺した声で啜り泣いていたりした。
様子がおかしいのは分かっていた。どこか具合が悪いのかもしれない。病院へ連れていこう。そう思っていた矢先に、彼女は倒れた。

キッチンで食器の割れる音がして、驚いて駆けつけると、蒼白な顔をした彼女が蹲っていた。
「楓!どうしたんだ!」
返事もしないで項垂れる彼女は明らかに様子がおかしかった。割れた食器の破片を拾い集め、彼女を立ち上がらせた。彼女の脚がふらついた。
「楓、歩けるか?部屋で寝て待っていなさい。病院へ行こう」
その言葉を聞くと、彼女は弾かれたように首を横に振った。
「嫌、嫌です!病院は、嫌です」
「ずっと具合が悪いじゃないか。診てもらいなさい」
「お願いします、病院だけは、嫌なんです。あたしは大丈夫ですから」
そう嫌がる彼女を、半ば無理矢理引っ張るようにして、病院に連れていった。車の中で堪えきれなかったかのように、彼女は泣き出した。
何故それほどまで病院を嫌がるのかが、分からなかった。


「妊娠……!?」
あたしの症状を聞いた医師が様々な検査をして、あたしの妊娠は彼の知るところとなってしまった。
「このまま産婦人科へ回ってください。カルテを回しておきます」
内科医は、おめでとうございます、とにこやかに言ったが、あたしは終始俯いていた。彼に手首を掴まれたまま、内科の診療室から出て、産婦人科の診療室へと向かった。
彼は廊下を歩いている間、何も言ってはくれなかった。内科を抜けた別館の中に産婦人科はある。別館に入ると、待合室で若い妊婦さんが、パートナーの男性と幸せそうに談笑していた。
あたしたちとは対照的で、苦しくなった。
ここにいる人は皆幸せそうだった。暗い顔をしているのはあたしたちだけだ。

「楓」
「……!」
低い彼の声は、不機嫌な色を含んでいた。
「お前、分かっていたのか」
彼は怒っている。
あたし…捨てられる?…堕胎しろと言われる?
ギュッと目を瞑った。
「……ごめんなさい」
「産むのか?」
単刀直入な質問に、答えられない。産みたかったけれど、迷惑だと言われるのが辛かった。あたしはどこまでも臆病者だった。
「産みたくないのか…?」
再度訊ねられ、あたしは漸く蚊の鳴くような声で答えた。僅かに声が震えた。

「産んでも、いいんですか…?」

怖くて顔を上げられなかった。彼があたしに手を伸ばした気配がした。
身体を強張らせると、それを解きほぐすように彼の手がそっと髪を撫でた。
産んでもいい、とは言われなかったけれど、少しだけ、救われた。


まだ終わりません…。終わりどころが分からないorz

そろそろ完結したいので次くらいに終わります(多分)
224名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 07:50:46 ID:Ulh8DSox
225名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 08:22:49 ID:cR7AR1MZ
狂おしく乙
226名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 13:16:02 ID:8JINoD6S
いやいや無理に完結に持っていかなくてもいいですよ
もう一山二山あってもノープロブレム
作者の納得がいくまで書ききっちゃって下さい!!
227名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 17:55:28 ID:vdxS47ca
>>219
乙!乙!
毎晩更新してないか確認してたけど、まさか朝とは…。
べ、別にアンタの作品気に入ったわけじゃないんだからね?!!勘違いしないでよね!
228名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 22:06:52 ID:flkaALaJ
乙!
これからの展開が気になります
二人には幸せになって欲しいな
229名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 00:10:30 ID:iJaeAmpV
GJ
店長にまで嫉妬する要さんヒドスw
大人の余裕はどうしたコノヤローww
230名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 00:16:16 ID:SC9/oBRI
急がなくていいよ。
じっくり書いて欲しい。
二人の気持ちを丁寧に書かれていてとても面白いです。
231名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 01:57:40 ID:K/r66YUD
なんて物を書きやがるんだこの神め。

貴殿にはこの言葉がお似合いだ。

GJ。GJ。GJ。
232名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 13:54:35 ID:symt4aJe
もっと人いるはずだろ
233名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 23:05:27 ID:xH3Y7/Nc
完結してからじゃないと読まない自分が通りますよ
読むの、楽しみだ
234名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 10:06:15 ID:3qZxMMic
誰かおな感スレで書いてよ
姉妹スレなんだから
235名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 22:22:23 ID:HU/Pu3A2
>>219
GJ!続き楽しみです。完結が楽しみなような終わるのがさみしいような複雑な気持ちで待ってますww
236名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 01:07:34 ID:Iu8mMO8K
なんで過疎ってんだよ
237名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 01:18:50 ID:kn00pn/P
あ〜完結を待てず読んでしまった……

くそう、なんてGJ!だこのやろー!!!
238名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 16:10:23 ID:RDMut5PK
>>234
姉妹スレ何てあったのか
239be in captivity20:2009/10/31(土) 19:45:36 ID:b4qHzvU+
完結…
出来ませんでした…
また一波あります。すいません。

眠る彼女の髪を撫でた。柔らかな黒髪は、ここに来た時より伸びていた。彼女の下腹部にそっと触れた。ここに、俺の子が宿っている。
「楓…」
俺は彼女の白い額に口付けた。愛しくて愛しくて、欲しくて欲しくて仕方が無かった人が、漸く本当に俺のものになった。
嬉しいはずなのに何故か、胸が苦しい。どうしてだろう。彼女を俺のものに、出来たじゃないか。
……俺は強欲な男だから、それだけじゃ満足いかないのだ。彼女に心から、愛して欲しかった。
「楓、愛しているよ」
涙が、パタパタと彼女の額に落ちた。酷いことばかり、してしまった。彼女の人生を金で奪ってしまった。
望まない妊娠までさせて、それで愛して欲しいなんて、俺は何処まで図々しいのだろう。

「楓、ごめんな…」

抱き寄せ、強く抱き締めた。俺と出会わなかったら彼女は今、幸せだったかもしれない。
彼女に責任を取れと言われれば、喜んで結婚したい。だが彼女は、それを望むだろうか。彼女は俺から自由になることを望んでいるのではないか。
離したくない。離したくないよ、楓。ずっと、一緒に居たい。お願いだ、俺を見捨てないで…。


朝目覚めると、彼の腕の中に居た。いつも目覚めると、彼はあたしに背を向けて眠っていた。愛されていない証拠だと思っていた。
だけど今日だけは、あたしに体温を分けるように抱き締めてくれていた。
「要…さん」
もう少しこのままで…。愛されていなくてもいい。もう少しだけ、このままで居させて。彼の胸に頬を押し当てて、力無く眠る彼の身体に抱き着いて、彼が目を覚まさないように静かに息をした。
少しでも長く、彼を傍に感じたかった。身体をいくら重ねても、彼はキスをしてくれることも、まして愛してると言ってくれることもなかった。
だから、彼に抱かれたあとの、身体の火照りが逃げたとき、あたしはいつも心が冷えきるのを感じていた。
彼が遠かった。寂しくて、悲しくて、きっと子供が出来たら捨てられてしまうんだろうと思っていた。
もし、この子が生まれてきたら、要さんに愛して貰えるのかな。そんなことを未だに考えてしまうあたしは、浅はかで愚鈍な女。
「かえで…?」
掠れた声で彼があたしを呼び、うっすら目を開けた。
「……かえで…」
腕の中のあたしを、抱き締めるような仕草。優しい抱擁が、あたしを温めた。
それからまた、彼の腕は力を無くして質量を持ち、あたしに寄り掛かって彼は寝息をたて始めた。
愛しい人。今あたしの中で一番大切なのは、彼と、お腹の子だけ。
240be in captivity21:2009/10/31(土) 19:46:25 ID:b4qHzvU+
随分日が高くなって、やっと目が覚めた。起き上がると、俺の隣に居たはずの楓が居ない。温もりすら残っていない。
まさか、と言う考えが脳裏を過る。背中に嫌な汗をかいた。
「楓!!」
起き上がって彼女の名を叫んだ。まさか、俺を置いて……!?
「楓…!!」
声が掠れた。寝室を飛び出して、彼女を捜す。半ば泣きそうだった。彼女に置いて行かれたら、俺は生きていけない。

「要さん、どうしたんですか…?」
空の洗濯籠を持った彼女が、リビングから現れた。見遣ると、リビングから繋がるバルコニーに、洗濯物が揺れていた。
ふらふら彼女に近付いて、おもむろに洗濯籠を奪い取ると、床に放った。ガラガラと音を立てて、プラスチック製のそれは転がった。
彼女は突然のことに怯えた顔をした。身を強張らせている。構わず、俺は近付いて、彼女を抱き締めた。
「楓、楓…っ!」
「要さ…」
微かに、自分の腕が震えていることを感じた。何か言いかけた彼女の唇を自分のそれで塞いで黙らせる。俺を拒絶する言葉も、俺を振り払う腕も、欲しくない。

「う、…んっ!」
逃げようとする背中をがっちり捕まえて、引き寄せた。舌で彼女の舌を味わう。深く深く口付けた。
苦しそうな顔をして、彼女は俺の胸を叩いた。一旦解放してやる。
「か、要さん…?」
戸惑った表情。赤い頬。嫌悪感を抱いているようには、見えない。誤解しそうだ。もしかしたら、少しは俺に情を持ってくれているのではないか、と。
でもそれはとんだ勘違いで、彼女にとっては迷惑千万なことだ。
「あの、要さん…」
「今のは、……何でも、ない。
お前、言っておくが債務をまだ背負っている身だからな?ガキを孕んだような身体で逃げようと思うなよ」
必死に、冷たい言葉を探した。彼女を繋ぎ止めているのは、愛ではなく債権と脅迫であることは、ひとつも変わっていないのだから。
彼女は目を伏せた。絶望的な表情。……こんな顔が、見たかったのか?いや、違う。本当は、彼女の笑顔と愛情が、欲しいだけだ。だが、金では、買えない。

「か、かなめ、さん」
俯いていた彼女が、震える声を、絞り出した。
「もし…あたしのお腹の子が、要さんの人生にとって迷惑になるなら、そう、言ってください」
「何を…」
「要さんの、言う通りにしますから」
それは暗に、子供を堕ろしたいということなのか。
俺の言う通りにするなら、産めと言えば、産むのか。
「……お前、子供を堕ろす金はどうするんだ。また売春で稼ぐのか?」
言ってから、ハッとした。酷いことを言った。彼女が好きで身体を売っていたわけではないと、一番知っているのは俺なのに。
彼女は、俺を見上げて、すぐに顔を反らした。俺の横をすり抜けて、部屋に飛び込むようにして入ってしまった。
中から、嗚咽が漏れ聞こえた。
241be in captivity22:2009/10/31(土) 19:47:13 ID:b4qHzvU+
あたしはやっぱり愛されてはいない。
気まぐれの抱擁やキスに、何故期待したのだろう。そして彼は、あたしに何を求めているのだろう。
何も分からない。分かるのは、あたしもお腹の子も、彼の愛情を受けることは無いと言うことだけ。
閉じ籠って泣いていては、ただの役立たずでしかない。ますます嫌われてしまう。だけど、涙が溢れて止まらない。
「ごめんね、ごめんね…」
情けない母親で、ごめんね。要さんが堕ろせと言ったら、貴方を堕ろすつもりだった。あたしが守らなくちゃ、誰も守ってくれないのに。
いくらお父さんに愛されなくても、お母さんが愛してあげれば、いいんだよね。
下腹部を小さく撫でた。

「楓」
要さんが、部屋の前に立った。
「…開けていいか?」
あたしは慌てて涙を袖で拭った。涙を見られてはいけない気がした。
返事をしないうちに、彼は部屋に入ってきた。
「あ、あの…」
「……楓」
「要さん…あの、あたし…」
産みたい。そう言いたい。けれども、喉に引っ掛かった言葉が口から出てくれない。
「楓」
お互いを見詰め合ったまま立ち尽くした。何時間とも思えるような、沈黙。
「……」
突然、彼はあたしの手首を掴んだ。彼の大きな手。大好きだった。優しくて、温かくて、触れられると、そこから幸せを感じた。
それは、強いられて澱んでしまった関係の中でも変わらなかった。
「来い」


彼は無言であたしを貪るように抱く。
「あっ…!かなめさ…っ!!ダメ、お腹の子がっ…」
そう諌めても、彼は聞く耳を持たない。あたしの首筋に唇を這わす彼の吐息が、熱い。
溶けてしまう。いっそのこと、溶けてしまいたい。もう何も考えたくないから、意識ごと、この身が消えてしまえばいい。
「だ、め…!」
「心配するな、激しくはしない」
それだけ言うと、彼が躊躇うこと無く、あたしの中へ押し入った。
「や、は…ぁあ、あ」
熱い、熱い、彼自身が、あたしを翻弄する。ゆっくり、じわじわと彼の質量が伝わってくる。
「かなめ、さん…!」
「楓、…」
いつものように激しくあたしを揺さぶることは無く、そっと髪を撫でながら、額に額をくっつけられた。
彼の手が頬に触れたとき、慈しむように唇が唇に重ねられた。
「ふ、うん…」
「楓、苦しくないか」
浅く出し入れされる彼自身を感じながら、あたしは目を瞑った。気持ち良くて、幸せで、辛い。
愛の言葉が欲しい。
「楓、楓…」
名前を呼んで、口付けて、それでも、愛してはくれないの?あたしは貴方にどんなことをされても、愛さないでは居られないのに。
242be in captivity23:2009/10/31(土) 19:48:04 ID:b4qHzvU+
腕の中の彼女がとてもとても、愛しかった。何度も名を呼んで、何度も口付けた。愛している、と言えたら、満足だったが、俺が囁く愛など、きっと虚構としか受け止めて貰えないだろう。
当たり前だ。今だって俺は、八つ当たりで彼女を犯しているんだから。悪いのは彼女じゃない。俺だ。
激しく揺さぶっては、腹の子に障ると分かっていたから、慎重に腰を動かして彼女の浅いところを行き来した。

「あっ、やぁっ…」
「楓、大丈夫か?」

気遣うくらいなら、初めからこんなことしなければいいのに、俺は自分を止められず、かと言って理性を全て失っていたわけでもなかった。
眉根を寄せて、苦しそうな顔をしている彼女に気付いた。ハッとして、俺は彼女の中から自身を抜き去った。
「…かなめ…さ…ん」
荒い息をしながら、虚ろな目をした彼女の手が空を掻いた。その手が俺の頬に触れた。予想外に冷たい指。

「お願い、…捨てないで」
それだけ言うと彼女の手は力無くベッドに落ちた。


気を失った彼女に、脱がせた服を着せて、布団を丁寧に掛けてやった。ぼんやり、彼女の脇に座って寝顔を見詰めた。
捨てないで、と聞こえた。その言葉は、俺に向けられたものなのか?だとしたら、彼女は俺の傍に居ることを、受け入れてくれたのか?
例えそれが愛ではなく、子供のためだとしても、構わない。一緒に居られれば、それでいい。


「社長?」
振り返ると、コーヒーが差し出された。
「どうなさったんですか、ぼんやり外なんて眺めて…」
コーヒーを受け取って、一口口にした。普通の大人の男が飲むには多分、甘すぎる。俺は昔から甘党で、寧ろ甘くないコーヒーは飲めないのだが。
「……もしかして、あの話ですか?」
秘書は神妙な顔をした。だが俺には何のことか分からない。
「縁談、持ち上がっているって…会長が仰っていましたから」
「縁談?親父にか?」
親父は、経営者としては優秀な人材で、今でも会長のポストで経営に尽力していた。だが家庭人としては最悪だ。俺の母親は、親父の浮気癖と暴力に耐えかねて、出ていった。
長い間、金持ちの独身貴族を楽しんでいたが、漸く落ち着く気になったのか。
「いいえ、社長にです。…ご存知、無かったんですか?」
「俺に、縁談だと?」
暫く意味が分からなかった。何故俺に縁談?
「はい、会長が近日中にお会いになられたいそうで…。あの、社長、お付き合いなさっている方は…」
親父だ。親父が持ってきた縁談だ。…謂わば政略結婚だろう。ふざけるな、愛する人くらい、自分で選ぶ。
「……親父を、出来るだけ早く呼んでくれ。俺の都合は適当に付けてくれ」
いつまでも、言いなりにはならないし、これだけは譲れない。
243be in captivity24:2009/10/31(土) 19:49:43 ID:b4qHzvU+
反吐が出そうだ。親父は俺が会いたがっている理由を誤解してか、満面の笑みを浮かべていた。
秘書から話を聞いて、3日後に親父が本社に訪ねてきた。彼は今、海外に出張していたはずなのに、すぐに都合を付けたらしい。
俺の誕生日にも、俺の運動会にも、都合を付けてくれたことなんて一度も無かったくせに。

「要、お前も33だ。そろそろ身を固めてもいいだろう」
「……はい。そう思っていたところです」
「それは良かった!実はな、いい話があるんだよ。わが社の提携する例の企業のご令嬢が…、」
俺は手を彼の前に翳して言葉を遮った。
「お父さん、僕には、結婚したい人が居ます」
そう告げた途端に、みるみる親父は顔を青ざめさせた。それから、怒りを含んだ目でギョロリと睨まれた。
「要、そんな話は私は聞いていないぞ。父さんに紹介するのが筋だろう。どんな女性なんだ」
極力笑顔を絶やさないように努力した。余裕が無ければつけ込まれる。
「可愛らしくて、気立てのいい、僕には勿体無い女性です」
「そんなことは、どうでもいい」
親父は心底不機嫌そうに言った。タバコをふかしはじめたのは、彼が怒りを堪えている証拠だ。
「ちゃんとした女性なのか?実家は何をしているんだ?最終学歴は?年齢は?」
うんざりだ。彼女の価値が、そんなもので測れるはずがない。
「ちゃんとした人です。凛として、芯のある人ですよ」
「そんなことは聞いていないと言っているだろう!俺の質問に答えろ!!」
ダン!と机を叩いて、親父は俺を威嚇した。ギラギラと光る目が俺を射抜く。
怯んではいけない。
「……お父さんがいくら反対しても、僕は彼女と一緒になります。彼女は、僕の子を妊娠しているんです」
親父は、言葉を飲んだ。

「妊娠だと…?お前、よくも…」
「結婚する相手くらい、僕が自分で決めます」
「まて、お前、騙されているんじゃないのか?金目当てで、どこの馬の骨とも知れないガキを押し付けられて…」
今度は俺が、親父を睨み付ける番だった。どうしても、許せなかった。
腹の子は、俺の子だ。俺が望んだ子だ。親父は舌打ちをすると、ガタガタと音を立てて、立ち上がった。
タバコを灰皿に押し付けると、無言で部屋から出ていった。


あああ〜っ
gdgd!すまそん!
皆見捨てないで!まだ続いちゃうんです…
244名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 19:57:02 ID:Wgax3FBf
お前もう来なくて良いよ
俺はお前が来るまで待ってるけどな
245名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 20:31:17 ID:4B8l0XYV
せっかく文章は上手いのに、内容が残念。
女の自己評価の低さと頭の悪さに、いらいらさせられっぱなしだ。
何で父親の借金を娘が全部背負い込まなきゃならないんだよ、相続放棄も知らんのか。
奨学金は?児童擁護施設は?お金に困ったから即売春って思考回路がもう駄目だ。
駄目な奴が駄目なことして「私は駄目」ってのが、もうね。救いようが無い。
そんなヒロインに惚れ込む男も意味不明。社長でイケメンっていうタグだけが一人歩きしてる。
唐突に出てくる友人夫婦と赤ちゃんにも苦笑。

まあここまできたら頑張って完結してくれ。とりあえず乙。次回作に期待。
246名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 22:02:20 ID:9QgrmwSv
>>245
なぜ完結前に批評をする?
247名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 22:32:08 ID:EAkXdnOj
GJ!続き楽しみにしてます!

>>245
何様だよ。じゃあお前が書いてみろよ。興を削ぐような真似すんな。
248名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 22:32:53 ID:3t24TDxN
>>245
そもそも楓が異常なまでに自己評価が低いのは劣悪な家庭環境があるからで
父親の借金は背負わなくても良いものだと知らなくて円光どころか風呂堕ちする子は今でもいる
そこを突いて叩くのは批評じゃなくてもはや難癖の域

第一、SSに別にリアリティなんて求めてないし萌えて面白ければそれでいい
つまんなかったら読むの辞めたら良い話
自分は何も唐突に感じなかったし、>>245が難癖つけてる諸々もちゃんと説明が入っているから
不快に感じずに夢中になってここまで読めたよ。次回が凄く気になる…幸せになってほしい。
249名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 22:51:09 ID:t/NQ7I/O
>>243
乙です!
続きがたのしみです。二人はどうなるのかな?
250名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 13:01:29 ID:qHFys7Rq
>>243
GJです。続きが気になります
長くなっても作者さんの納得いくまで書いて、どうかふたりを幸せにしてあげてください

ところで、親の借金を放棄出来るっていうのは
高校生くらいなら知らなくても仕方ないんじゃないかな思います
251名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 13:11:37 ID:Wj+18uUO
ごらんよあれがつまりクソスレって奴さ
SS落としてみなよ すぐに叩いて来るぜ
晒しが必要なのさ あの板はいつでも
人並みに楽しんでゆく大人たちのために
あるのだから

ごらんよ住人たち ああなちゃ終わりさ
奔放な叩きの末路を見るがいい
つつくんじゃないよ病気かもしれない
レスをするんじゃない呪いをかけられるよ
252名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 13:13:33 ID:Wj+18uUO
誤爆スレで見つけた素敵な詩です!!!!
どんなクソスレだって人様の役に立ってるんです!!
だから落ち込まないで!!!!!!
253名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:02:30 ID:GvQpaZvl
>>245
876 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 20:39:55 ID:2kY2TfjM
ああ…せめて全部終わってから言えばいいものを…
254名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:03:49 ID:GvQpaZvl
>>243
877 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 21:36:00 ID:JUX/95Sl
もう一山と引っ張っちゃったのが悪かったね。
255名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:05:15 ID:GvQpaZvl
>>248
878 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 22:46:45 ID:tR/ihYA1
批判に反論なんかしないでGJだけしてればいいのに
そういうのがきっかけで、段々荒れていくんじゃないかね
256名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:06:07 ID:GvQpaZvl
>>248
879 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 23:34:28 ID:FVmUUpQZ
リアリティ求めてないと言いながら
援交とか風呂とか現実の都合のいい例は平然と引き合いに出すんだよなあ
職人守りたいのはわかるけど
257名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:06:43 ID:GvQpaZvl
880 :名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:11:40 ID:GjGtSw+L
うわぁ陰湿

ネオロマスレと同じ臭いがするわー
258名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:07:33 ID:GvQpaZvl
>>257
881 :名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:47:53 ID:9oEpjRD9
自己紹介乙
259名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:09:00 ID:GvQpaZvl
>>252
レス代行くらいしてやれよ
260名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 15:41:39 ID:qDl/Pc1f
お互い鈍感すぎて凄くむず痒いが、
意志が通い合った瞬間の幸福度は、今までの反動からもの凄いことになりそう。
完結までもう少しでしょうか?いつまでも待っているので気長に執筆して下さいね。
261名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 16:11:44 ID:1Z7eH+X0
【隔離】場外乱闘専用スレ【施設】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239770078/

307 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 02:47:40 ID:0vZRCGUT
あー邪魔くせぇ、あの糞スレの迷惑な馬鹿ども。
誤爆と愚痴はお前らだけのもんじゃねぇからw
喧嘩したいなら場外使えや。投下の度に占領して荒らすな。
消え失せろカス。

308 :名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 09:13:39 ID:IK4nEGh6
>>307
ここで吼えたって相手に伝わんないだろw
こっちに移動するように該当スレで誘導掛けてきな

309 :名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 12:06:35 ID:yr61BG2p
連中が占拠しはじめると一瞬で
ねちねちした空気に変わるわ

専用のヲチスレでも作れや

これアンタ達のことじゃないの?
反感買ってるとおな感の二の舞になるよ?
262名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 18:30:32 ID:Q+kvOKRf
またかよ

前にも誤爆か愚痴かに書かれたレスが引用されたことがあったよな。
引用する方も引用する方だが誤爆に書く方も書く方だ。
わざわざ本スレに貼り付けるバカがいることがわかっていながら、
内容を十分ぼかさずに書き込み、
しかもそれに同調する奴までいるから始末に負えない。
263名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 20:07:04 ID:kbgdW5lv
>>239
GJ!!!!!
お互いの誤解がとけて、ふたりが幸せになれるのを期待して待ってます
264名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 21:27:46 ID:Xaj/HhjU
>>239
GJ!
続きがあがってないか、毎日たのしみにしてる
いくつ山があっても構わないから、最後まで読ませてほしい
265be in captivity25:2009/11/02(月) 07:40:06 ID:sr2ZJLEl
長々とgdgdに付き合って頂きありがとうございました。これで完結です。さっき上手く落とせなかったけど大丈夫かな…

彼は、あたしの妊娠が分かってから、激しく揺さぶるような抱き方はしなくなった。代わりに、何度も何度もキスを落としてくれる。
慈しむように労るように、髪を撫でながら、名前を呼んでくれる。時々、下腹部を撫でて、そこにもキスをしたり、頬を押し当てたりする。
「いつ、動くんだろうな」
そんな言葉を聞いたら、愛されているのかもしれない、少なくとも、嫌われてはいないのではないかなんて夢を見そうになる。
「…早く、動けばいいな」
涙が出そうだ。あたしは、彼に愛されたくて仕方がない。彼がお腹を撫でてくれると、この子も愛して貰えるんじゃないかと、思ってしまう。
「…要さん…」
愛しています。誰よりも、貴方と、貴方の子を。
だから、だからこそ、もう終わりにする。そう思うと、もう涙は止まらなかった。
「楓、どうした?どこか辛いのか…?」
困ったような顔をして、あたしを覗き込む彼の手が、ただ優しくあたしの頬を撫でた。涙を唇で拭って、また柔らかな口付けをくれた。

彼のお父さんと名乗る男性が、この部屋に訪れたのは、1ヶ月ほど前が初めてのことだった。あたしの顔を見て、明らかに表情が曇った。

「……それで、君は要の何なんだね?」

いつも要さんがくつろぐソファに、ふんぞり返るように腰掛けて、タバコをふかしながら、彼のお父さんは威圧的に言った。
あたしは何も言えなかった。あたしは彼の、何?寧ろ他人に定義してもらわなくてはならないくらいだった。
「答えられないか…。だろうな。全て調べは付いているよ。興信所に依頼したんだ。金があれば何でも出来る時代なんでね」
彼は、脇に立っていた秘書とおぼしき若い男性に指示をすると、鞄の中から分厚い封筒を取り出させた。
「300万。これで手を打って貰えないか」
「どう、言う…」
「正直に言おう。君は、要の人生の邪魔だ。君は、要が金で買った『ペット』なんだろう」
侮蔑の言葉に、身体が震えた。でも、全て事実だった。何も言い返せなかった。目の前で揺らめく、コーヒーから立ち上る湯気を睨んでいた。
「要も要だ。妊娠などと…。この金で子供などさっさと始末して、君は自由になりたまえ」
あたしの、少し目立ち始めたお腹に蔑むような視線を向け、彼はコーヒーに手を伸ばし、口を付けた。
「なんだこれは。甘すぎる。まともなコーヒーの入れ方も知らないのか」
要さんは、甘いコーヒーが好きだった。角砂糖は4つ。つい癖で、コーヒーに砂糖を加えて出してしまったのだ。
お父さんは、コーヒーカップをソーサーに戻すと、脚を組み替えた。
「……要は結婚するんだ。アイツは君と一緒になると言って聞かなかったが、もう縁談はかなり進んでいてね」
あたしは思わず、持っていたカップを床に落とした。黒い中身を撒き散らし、カップは割れた。
「おや、聞いていなかったのか。仕方無いな、さぁ、これを持って病院へ行きなさい」
握らされた封筒の重さを掌に感じると、悲しみが沸き上がってきた。思わず、封筒を突き返した。
266be in captivity26:2009/11/02(月) 07:40:50 ID:sr2ZJLEl
「要りません…要りません!こんなお金、欲しくない!帰ってください!!」
気付くと、叫んでいた。悔しかった。あたしは卑しい女だけど、彼への気持ちは、お金で換算出来るものじゃない。

彼のお父さんを追い返したあと、彼の香りの残る枕に顔を埋めて泣いた。
要さんが、あたしと一緒になると言ってくれたの?それは、子供のため?それでも、満足だよ。
でもやっぱり、一緒には居られない。彼の人生の邪魔は出来ない。あたしはどうすればいいの?

それから3度、彼のお父さんはここを訪れた。その度に「手切れ金」の額は増えた。
あたしは、受け取りを拒否し続けたが、それは額が不満だったからではなく、プライドの問題だった。
でも、4度目に彼のお父さんにあった時、あたしはついに彼との別れを決意した。

「君は要の面目を潰す気か」
そう言われて、ハッとしたのだ。そうだ、そうなのだ。あたしがこの子を産むと、要さんの世間体に拘わる。一番初めに、考えたことだったのに、馬鹿なあたしはそれすら忘れていた。
日に日に目立ってくるお腹と、日に日に優しくなっていく要さんとに、あたしは愛している、の言葉を聞いたわけでもないのにすっかり妻気取りだった。
「…分かりました」
「おや、分かって頂けたかね。おい、早くお出ししなさい」
以前より分厚くなって、数も増えた封筒が、机に並べられた。
でもこのお金が欲しくないのは今でも変わらない。
「要りません…」
「なんだって?」
「お金は、要りません」
「まだ足りないのか?」
「違います!お金なんかで別れるんじゃありません。彼を愛しているから…だから…」
そのあとは、言葉にならなかった。次々に言葉は浮かんだが、涙に喉を塞がれて、口に出せなかった。
彼のお父さんが、じっと項垂れて泣くあたしを見ている気配がした。

彼が正式に見合いをする日までに出て行くこと。二度と彼に会わないこと。子供の父親について口外しないこと。
これが、あたしの求められたことだった。要さんには言えなかった。
ソファにあたしを座らせて自分は床に腰を下ろして、あたしの腰に腕をまわし、お腹に耳を押し当てて目を瞑る彼の表情は、穏やかで、幸せそうだった。
あたしは彼の頭を撫でながら、彼が気付かないように静かに泣いた。彼の見合いの日まで、あと1週間だった。
あたしはまた、大切な人と別れなくちゃならない。しかも、今までの別れの中でも最も辛い。でも、あたしにはこの子が居るから、きっと大丈夫。貴方とあたしを結ぶこの子が居れば、貴方を感じられるから。

だけどやっぱり、悲しい。
267be in captivity28:2009/11/02(月) 07:41:29 ID:sr2ZJLEl
自分が書いた走り書きを睨み付けて、あたしはじっとダイニングテーブルの前に座っていた。彼に、最後の別れを告げてから家を出たかった。だけど、彼の帰宅はいつもよりも遅かった。

「……もう十分だろう」

彼のお父さんは痺れを切らして立ち上がった。

「残念だったな、やはり君と要には縁が無かったようだ」

嘲笑するような口調に、あたしは俯くしかなかった。
彼のお見合いの前夜に、あたしは彼のお父さんが用意したアパートに移ることになっていた。初めは断ったが、妊婦が働き口を見付けられるはずもないし、仕方無く暫くはそこで暮らすことにしたのだった。

「一目だけでも…会わせて頂けませんか」
「喧しい。要は明日、大切な見合いを控えているんだぞ。お前に費やす時間などアイツにはない」
言い切られ、あたしはそのまま何も反論出来ないまま、家から連れ出された。
黒塗りの高級外車に押し込められて、もう逃げ場は無かった。
「めそめそと泣くな!鬱陶しい」
ピシャリと言い放たれ、あたしは涙を溢すことも許されなかった。

着いたアパートには、家具が一式揃っていた。生活には、何の支障もない。
「……お世話、お掛けしました」
深く、彼のお父さんと秘書の男性に頭を下げた。あたしにはもう、この子しかいないから、この子を育てるのに必要なスペースを与えて貰えたことだけでも、感謝しなくてはいけない。
お父さんは返事をせず、踵を返して去っていった。
だが、秘書さんだけは、何故かその場に佇んでいた。「……私は長い間、会長にお付きして居ます。会長の御命令は、絶対です」
細いフレームの眼鏡を中指で押し上げ、ふっ、と皮肉っぽく笑った。
「ですから、これが初めての背任行為になります」
そう言うと、彼はあたしに一枚のメモを突き出した。
「貴女を失ったら、要さんはきっと、もう元の要さんでは居られません。それはわが社にとっての、最大の損失です。
会長が引退されたあとも、わが社が発展し続けるには、要さんのお力が必要です」
それだけ言うと、彼はお父さんの後を追っていった。涙に霞んだ目を擦り、メモを開く。

「……?」

そこには、このアパートから程近い駅に明後日の朝10時に来るように、明日は家で大人しくしているように、と書かれているだけだった。
訳が分からない。でも、従えば何かが、行けば何かが、変わるかもしれない。
268be in captivity29:2009/11/02(月) 07:42:30 ID:sr2ZJLEl
見合いなんて、どうだっていい。この見合いが失敗して、会社が潰れようが、職を失おうが、どうだっていい。
楓を、彼女を捜さなくては。俺の欲しいものは、見た目と家柄ばかりいい、我が儘なお嬢さんでも、遣っても遣っても底をつかない金でもない。ましてや会社の未来になんて興味はない。
着の身着のまま、彼女を宛てもなく捜すために、玄関を出ようとすると、携帯がけたたましく鳴り響いた。
もしや、彼女かと期待をして、確認する。

『着信:佐伯』

佐伯、つまりは、親父の秘書だ。
出ようか、止めようか迷って、ふと思った。彼女は何も言わなかったが、このタイミングで彼女が失踪したのはさては、親父の仕業ではないのか?
俺は通話ボタンを押すなり、怒鳴った。

「佐伯!お前…っ!!」
「要さん、落ち着いてください」
「落ち着く?!ふざけるな、お前、楓をどこにやった!楓を返せ!」
「落ち着いてください。楓さんは、無事ですから!私が責任を持ちます、大丈夫です」
楓が無事だと聞いて、俺は少しだけ落ち着きを取り戻した。息を吐き、咳払いをした。
「……佐伯、楓は、どこにいるんだ」
「今は、言えません。要さん、きちんと身支度をして、見合いに行ってください。遅刻など、しないでください」
「見合いなんて言ってられるか!楓は妊娠しているんだぞ!」
また頭に血が昇る。ダメだ、苛立ちが最高潮に達している。見合いなんて、行けたもんじゃない。それに、見合いに行けば、もう次には具体的な結婚の話をさせられるだろう。
「要さん、見合いに行ってください。こちらに少しの落ち度も無いことを、証明しなくてはなりません」
「落ち度?何のことだ」
「詳しくお話している暇はありません!とにかく、きちんと身支度をして、時間に間に合うように行ってください。全てはそれからです」


俺は、疑念を抱きつつ、佐伯の言うようにきちんと身支度をし、時間に間に合うように、指定された料亭へ向かった。勿論、俺は先方に楓のことを話はしなかった。そして親父が満足そうに頷くような好青年を装った。

…だが、結果として縁談は破談になったのだ。
親父は怒り狂い、それを佐伯が必死で宥め、先方のご両親は呆然としていた。
先方の娘さんだけ、けろりとした顔で居た。流石の俺も、今度ばかりは苦笑するしかなかった。


「どうして、分かったんだ。娘さんが、妊娠していると」
佐伯の運転する車の中、俺は彼に訊ねた。彼は、見合いの最中、まさに縁談が決まるその時になって、会場に飛び込んできた。親父は彼に出ていけと命じたが、彼の見せた写真に、一同が絶句したのだった。
「会長は、昔から温いんです。要さんに探偵をつける前に、先方についてよく知るべきですよ。私の独断で、あちらのお嬢さんを調べさせて頂きました」
しらっと言ってのけるこの男こそ、実は一番食えないらしい。
笑うしかなかった。
269be in captivity30:2009/11/02(月) 07:43:18 ID:sr2ZJLEl
写真には、若いミュージシャン崩れのような風貌の男と抱き合って熱烈なキスを交わす、相手方のお嬢さんが写っていた。
ご両親が娘さんに詰め寄ると、彼女はあっさりその男との交際を認め、今回の縁談を破談にして欲しいと言い出したのだ。
「アタシ、妊娠してるの。父親は彼よ。だから彼と結婚したいわけ」
気持ちがいいくらいすっぱり言ってのけ、彼女は満面の笑みを浮かべながら俺に頭を下げた。
「城崎さん、ごめんなさい。貴方、とっても素敵だから惜しいけど、アタシが好きなのは彼だけだから許してね」
無論、破談にして欲しいと言ったのは相手方だったから、契約は続行、何も問題なく、俺は結婚話から解放されたのだった。

「佐伯…助かった。ありがとう」
運転席の佐伯は、ちらりと俺に視線を向けると、ふ、と笑う。
「私は、わが社の利益にならないことを防ぐため行動したまでです。ですが」
咳払いをし、低く響く声で、彼は言った。
「私は、楓さんの、ひた向きさに心を打たれました。
会長がどれほど金を積んで別れるように言っても、彼女は首を縦に振りませんでした。
出ていくと決意された時にも、お金は要らないと、愛しているから別れるんだ、と…」
その言葉に、俺は熱い何かが胸の奥から込み上げるのを感じた。
愛している、彼女が、俺を?
「楓が…楓がそう言ったのか?」
「はい」
ああ、俺はどうして、こんなに遠回りをしてきたのだろう。彼女は、俺を思ってくれていたのだ。俺が彼女を思うように。もしくは、それ以上に、強く。
「楓に、会わせてくれ」
涙が自然に頬を伝う。今すぐ会って、全て謝って、そして、愛している、そう言いたかった。
「要さん、今日はもう遅いです。明日、会えるように手配してあります。今日はしっかり休んでください」
佐伯の普段は冷たい表情が、柔らかく緩んだ瞬間だった。


昨日は、佐伯さんに言われたように大人しく部屋に籠って居たけれど、気が気で無かった。
彼は、別の女性と一緒になってしまったのだろうか。
「楓さん!」
言われたように、駅前で待っていると、佐伯さんが、あたしを呼んだ。彼の車に乗り込むと、微笑み掛けてくれた。
「あの…どこへ、行くんですか?」
「貴女の、一番会いたい人のところです」
「え?」
「1日貴女が居なかっただけで、要さんは酷く滅入ってみえましたよ」
とても、愛されているんですよ、彼はそう付け加えてまた微笑んだ。
愛されている…、要さんに?それは、本当?
「楓さん、自信を持っても、いいと思いますよ」
「……ありがとうございます」
話を聞くと、彼の縁談は、相手の女性の事情で無かったことになったらしい。
だから、彼を堂々と愛していいのだと言ってくれた。
泣きそうだった。でも、泣くのは要さんに会ってからだとたしなめられて、あたしは滲んだ涙を拭うと、彼に笑いかけた。
270be in captivity31:2009/11/02(月) 07:44:10 ID:sr2ZJLEl
……

柔らかく小さな何かが、俺の頬を触っている。

「おっきして、パパぁ」

ゆさゆさと、案外強い力で身体を揺さぶられ、うっすら目を開けた。目の前に、あどけない顔をした、彼女が居た。

「パパぁ、きょうは、ゆーえんちの日だよー」
遊園地の日…?
ああそうか、今日は、三人で遊びに行くって約束をしたんだっけ。揚げ物をする音がする。この匂いは、唐揚げかな…?
はっきりしない意識の中、ぼんやり考えた。
「パーパ!早く、おいてっちゃうよ」
天使のような微笑みを見せて、彼女はベッドから降りた。彼女は本当に、可愛い。大きな目と、くるくる変わる表情と優しげな口元。全て母親譲りなのだ。
「…めい、ママは?」
「からあげ!つくってる!お弁当だよ」
明は、嬉しそうに言った。楓の作る唐揚げは、明の一番の好物だ。
俺は起き上がると、真っ直ぐキッチンに向かった。せっせと料理に励む、楓の後ろ姿があった。
「あ、っ!」
パチッと油が跳ねた。楓は慌てて手を引っ込めたが、どうやら軽く火傷をしたらしかった。
俺はおはようも言わず、鍋の火を止めると、彼女の右手を手に取った。
「あ、要さん…」
「おはよう、楓。すぐに冷やさないと」
手を引いて、水道の水を流しながら、彼女の指先を冷やす。
「あ、もう、大丈夫。ありがとう、要さん」
俺は言葉には答えずに、火傷で少し赤くなったそこにそっとキスをした。
「要さん?」
「愛してるよ、楓」
「ふふ、あたしも」
微笑み合う俺たちを、陰から見ている人物が居た。明だ。
「らぶらぶ!」
にやにや笑う彼女に気付いて、俺たちは、パッと身体を離した。冷やかしの眼差しを5歳児に向けられてあたふたしているようでは情けない。
「明だって、好きな人くらい幼稚園に居るだろ。パパはママが大好きなの!」
明は少し考えてから、言った。
「めいの好きな人、よーちえんにはいないよ。だってめい、さえきのお兄さんとけっこんするから」
「はっ?!」
親父は、何だかんだ言っても初孫の明が生まれた途端に穏やかな好好爺になってしまった。
佐伯はいつも親父にくっついて居たから、親父に会う度に佐伯にも会っていたことになるが、いつの間に佐伯にたぶらかされたんだ…。
「めい、さえきのお兄さん、大好き」
笑う彼女はやっぱり天使のようだった。
そんな娘の頭を撫でて微笑み掛ける妻も、天使みたいに柔らかな表情を浮かべている。
「さ、明もパパも着替えて。もうすぐお弁当出来るよ」
わーい、と言いながら、明は自分の部屋に戻っていった。俺も着替えようと思って、その場を立ち去り掛けると、ちょっと待って、と楓が思い出したように制止した。
「あの、要さん。今日はあたし、あんまりはしゃげない。だから、明に付き合ってあげて」
「具合悪いのか!?」
「……明に、弟か妹が出来たの」
暫し絶句した。が、その後、俺は気が付くと彼女を強く抱き締めていた。

俺はもう、孤独じゃない。
(了)
271be in captivity27:2009/11/02(月) 07:47:35 ID:sr2ZJLEl
うわ
やらかした。27抜けました…すいません。保管の際は追加お願いします

胎動を感じたくて、彼女の下腹部に触れることが日課になっていた。
少しも動く気配はまだ無かったが、彼女の体温を感じ取ることが出来るだけで幸せだった。彼女が俺の頭を優しく撫でてくれる度に、結婚して欲しい、と言おうと思う。
だが、あれこれ言葉を考えているうちに、タイミングを逃して結局言えず終いになっているのだ。
病院に検診に行くと、仲のよさそうな夫婦が居て、彼女はその様子を目で追っていた。会話をしようとせず、雑誌に目を落とすふりをしている俺を彼女が盗み見て、悲しそうな顔をするのも、知っていた。
だから、分かっていた。彼女は俺と一緒になってくれるだろうと。だけれど、意気地が無くて、もし嫌だと言われたら、とか、そんなこと望んでいないと言われたら、とか、考えてしまう。
要は、自分が傷付きたく無いだけだ。
彼女を散々傷つけておいて、自分は傷付きたくないなんて、ただのエゴだ。

「見合いは受けてくれ。それで断っても、構わない」
親父が俺に何かを頼み込むのは、初めてのことだった。親父に会ってから1ヶ月ほどたった時、電話が掛かってきたのだった。
勿論、初めは渋った。だが、親父にも面子があるだろう。俺は仕方無く、受けるが断ると言うことにして、承諾した。
見合いを終えたら、彼女にプロポーズをしよう。見合いの丁度2日後は、彼女の19回目の誕生日だ。お腹の子はもうすぐ5ヶ月になろうとしていた。

見合いを翌日に控えた仕事帰りに、指輪を買った。婚約指輪だ。彼女の華奢な指を飾る、シンプルだが美しい、小さなダイヤモンドが輝くリング。
彼女は、喜んでくれるだろうか。今までの罪を償うために、一生掛けて、君だけ愛すと告げたら、頷いてくれるだろうか。

「ただいま、楓」

お帰りなさい、いつもならそう返事が返ってくるはずだった。
だが、一言も返事が無い。

「楓」

電気が消された家中を、捜し回った。どこにも彼女の気配はない。
リビングにも、寝室にも、彼女の部屋にも、誰も居ない。

「楓…、楓!楓!」

居ない。誰も。
何故。
どこに、居る。
俺は、独りか?
楓、どこに行ったんだ。
楓、どこだ。
出てきてくれ。
後生だ、俺を独りにしないでくれ。

「楓…かえで…っ!」

彼女が居ない。俺は、独りだ。ずっと、ずっと俺は独りぼっちだった。やっと、孤独から解放されたと思っていたのに。また、独りきりだ。
もう、独りは嫌だ……。寂しい、悲しいよ、楓。

止まらない涙をそのままに、居るはずない彼女を捜し続けて、気が付くと、朝が来ていた。日の光の中、窓際のダイニングテーブルに、走り書きが置いてあるのを見つけた。

『黙って居なくなって、本当にごめんなさい。
あたしは、要さんが大好きです。
でも、何もないあたしでは、要さんの重荷になるだけだと、分かりました。
遠くから、要さんの幸せを願っています。 楓』

涙で文字が滲んだ。お前が居なきゃ、幸せになんか、なれるはずないじゃないか。楓、どうして、居なくなったんだ。
272be in captivityあとがき:2009/11/02(月) 07:49:44 ID:sr2ZJLEl
初めてのSSで、いろいろと突っ込みどころ満載の無理ある設定になってしまって、すいませんでした。
私が話を引っ張ったことで何だか雰囲気を悪くしてしまったことも、申し訳なく思っています。
最後の最後に投下もミスってしまってorz
脳内補完お願いします。
完結出来たことは、純粋に嬉しいです。読んでくださった全ての方に感謝です。ありがとうございました。
では、次の書き手さんがみえるまで暫しROMに戻ります。
273名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 08:39:35 ID:nEGIz6QQ
GJです。
274名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 08:48:53 ID:eNHjX46Q
GJ!!完結してくれてありがとう
「涙に喉を塞がれて」って表現に、物凄く切なくなった
また投下してくれ。楽しみに待ってる
275名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 09:59:45 ID:zepkm4h3
GJ!!!!
ハッピーエンドをありがとうです……
276名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 15:42:31 ID:OSV+iT2H
>>272
gj!!素晴らしいssをありがとう!
好きだ――――!!!
277名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 16:20:10 ID:cJJiWMOu
>>272
完結乙!次回作待ってるよ。
278名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 16:52:06 ID:4LNvuh8/
乙←これはポニーテール(ry
279名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 17:23:16 ID:WgQnLoo6
>>278
乙!乙!乙!
ハッピーエンドで良かった!
素敵なSSをありがとうございました
お疲れさまでした
280名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 17:24:08 ID:WgQnLoo6
アンカー間違えたorz
281名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 07:12:27 ID:dzi2JCm3
前書きや後書きで余計なこと書かない方がいいよ
282名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 08:23:17 ID:a6aZ0UJl
>>272
GJ!!
いつのまにか完結まで…!
お疲れ様でした、次回作楽しみにしてます
283名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 15:22:46 ID:CMKAco2g
>>281
ちょっとそれで損してるのは有るかもね
284名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 21:15:22 ID:hHl8gZeY
あからさまなすれ違いの過程からのハッピーエンドに凄く萌えた。
どうかそんな腰低くなさらずに、また気が向いた時にでも書いて欲しいぜGJ
285名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 11:12:47 ID:TlXUbsJS
まったく長々と焦らしやがって…
涙で液晶が見えないじゃないか!(ノ▽;)

良いモン読ませてもらったよgj
286名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 13:00:23 ID:lu0nwATq
いつまで自演GJ続けるの?
287名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 13:04:37 ID:vxwGL/K5
>>286
お前が死ぬまで

GJ続くのが嫌ならおまいが新作投下すればよろしかろう
288名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 13:18:09 ID:lu0nwATq
触れちゃいけない話題だったかな?
289名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 20:26:01 ID:3tReXtS5
売春女とイケメン社長カップルが織り成す、携帯スイーツ(笑)小説の文章しっかり版
290名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 20:33:17 ID:RDJTA7Vk
ずいぶん近場で売春してるみたいだから、
今後も客とばったり出会って(r
291名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 22:03:30 ID:f+5ZiMOW
佐伯×明の愛あるレイプが読みたい
292魔法使いと少女(0/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:14:15 ID:u8WZ4luz
「愛するが故に〜」、萌えシチュだったのでありがちネタですが書いてみました。
ファンタジーのため苦手な方は要注意。あと男の方がかなり最低です。
それでもよろしければ以下どうぞ。
293魔法使いと少女(1/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:14:51 ID:u8WZ4luz
 今夜も、やはり抗えなかった。
 青年は急に口を閉ざすと、腕を伸ばし、そっと眼前の少女の髪に触れる。
 今の今まで他愛の無い会話を繰り広げていた相手の唐突な行動に、少女は思わず身をすくめると、怪訝そうな面持ちを向けた。
「っ……なに、どうしたの?」
 青年は答えない。
 押し黙ったまま、柔らかな銀色の髪を慈しむように撫でていたかと思うと、不意に少女の頭を引き寄せた。
 そのまま、唇を重ねる。
 睫毛がぶつかりそうな距離で、少女の水晶のような瞳が大きく見開き、瞬く。
「んっ……!」
 柔らかい少女の唇を割り、こじ開けるように舌を差し入れ、わざと乱暴に少女のそれに絡める。
 ようやく事態を飲み込んだか、少女は今さらながら青年の腕から逃れようともがくが、彼はそれ以上の力で彼女を押さえつける。
「な、なんなのっ!?」
 唇を離すと、戸惑いと怒りが混ざった少女の視線が彼を睨み付けた。
「あんた、いったいなに考えてっ…」
「分からないのか?」
「えっ…」
「本当に、分からないのか?」
 今から、俺が何をしようとしているのか。
 淡々とした声音で呟くと、少女の首元に噛み付くように口付けを落とした。
 少女の身体がびくりと反応する。
「んっ」
 そのまま、首筋から耳の下辺りまでちろちろと舐めあげてやる。この娘はここがひどく敏感で、こうしてやるとすっかり脱力する。
 少女の抵抗がすっかり弱まったのを確認すると、彼は彼女の身体を押さえつけていた手を離し、シーツの端で少女の両手首を縛り上げた。
294魔法使いと少女(2/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:15:19 ID:u8WZ4luz
 劣情に耐え切れず、彼女を押し倒したのは果たして幾晩前のことだったろう。
 旅の連れの突然の豹変に恐怖し、抵抗する少女を押さえつけ、欲望の赴くままに犯して、犯して。
 少女の涙を眼にして、さらに歪んだ欲望を掻き立てられ、止まらなくなって、壊れるくらい激しく責め立てて。
 少女の中に、隠し続けていた欲望を何度もぶちまけて。
 想いを遂げた後、最後に残ったのは、満足感ではなく、後悔だけだった。
 我に返った魔法使いは、少女が浮かべる表情に気づき、背筋を凍らせる。
 そこにはいつものような爛漫な明るさは微塵もない。何も言わず、ただじっと彼を見つめる泣きはらした瞳に浮かぶのは、信じていた者に裏切られた失望と、恐怖と、嫌悪の色。
 今さらながら自分がしでかしてしまったことの大きさに気づいて。耐えられなくなって。
 彼は少女の身体を抱き寄せると、その耳元で少女の記憶を封じる呪文を唱えた。
 それがどんなに汚い事か、分かっていながら。
 翌日、すべてを忘れた少女の翳りのない笑顔を目にして、彼はもう二度とあんな馬鹿な真似はしないと誓った。
 なのに。
 しかし、一度それを覚えてしまったら、もう我慢など出来るはずが無かった。
 部屋で、路地裏で、寝台の上で…魔法使いはその後も、欲望のまま少女を幾度となく犯しては、その記憶を封じ続けた。
 自分は壊れているのだろうか、青年は自嘲する。
 こんなにも愛しく思っているのに。それでもこんなことを繰り返す自分の醜さに吐き気すら覚える。
 それでも、一度味わってしまった鮮烈な快感に抗えない。
 本当に、どうかしている。
295魔法使いと少女(3/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:15:57 ID:u8WZ4luz
「放してっ……やっ」
 身体の自由を奪われた少女の胸の柔らかなふくらみを撫でると、服の上から僅かな手がかりを探り当てる。
 いったんそれを把握すると、彼はその部分を避け、円を描くように周りをなぞり始めた。
 耳たぶを甘噛みすると、少女は堪え切れず甘い吐息を漏らす。
「ぁっ」
 少女の細い声と、苦しげに眉根を寄せる表情。
 自分にサディスティックな嗜好があることには以前から気づいていたが、必死で快楽に堪える少女の姿を見ると、興奮のあまり狂いそうになる。
 とはいえ、肉体的苦痛は与えない。与えるのは苦痛ぎりぎりの鋭い快楽だけ。
 苛めたい。耐え切れないくらいの快楽を注ぎ込んで、彼女の身も心もめちゃめちゃにしてやりたい。
 抱きしめるようにして少女の両肩を押さえると、固く張り詰めた突起を服の上から咥えた。
「やっ、だめっ!」
 身を捩る少女の身体を押さえつけ、舌で幾度も舐め上げ、吸いたてる。
「やだっ!やだぁっ!はなしてっ!だめっ……だめっ」
 身体に広がるくすぐったさと耐え難く甘苦い快感。少女は必死で逃れようとするが、青年はそれを許さない。
 舌を動かし、敏感な部分を強く擦りあげる。
「っ……いやっ……っだめぇっ……っ」
 唇と舌で少女の胸元を蹂躙しながら、少女の脇腹や背中へと指を這わせる。
 脇腹をくすぐる様になぞる指先は、そのまま太腿へと降りていき、内側へと滑り込んだ。
「あっ」
 下着越しに割れ目に指を這わせると、少女はひときわ高い声を出す。
 記憶にこそ残ってはいなくても、夜毎青年に抱かれ、開発された少女の身体は、青年の手荒い愛撫にしっかりと反応していた。
「なんだ、嫌がる割には、こんなに濡らしてるんじゃないか」
「ちがっ…」
「何が違うんだ?」
 少女は言葉につまり、悔し気に潤んだ瞳を逸らす。
 そんな反応に満足してか、青年はくくっと喉の奥で笑うと、少女の耳元に唇をよせて囁いた。
「もっと気持ちよくしてやるよ」
296名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 22:16:34 ID:LaLAGoKL
面白かった!完結お疲れ様でした。
凄く良かった。

あと、他の人も言ってるが、投下の際はどんなに言い訳したくても必要最低限に留めて
おいた方がいいと思います。
そうでなくとも人気のある書き手さんは反感も持たれやすいから、
所謂「誘い受け」とか言われないよう、自虐的な言葉は言わないこと。
せっかくいい話を書かれているんだから、自信を持って欲しいです。
またの投下を楽しみにしています!!
297魔法使いと少女(4/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:16:34 ID:u8WZ4luz
 少女の腿を割ると、じっとり濡れた下着の上をつうっと指でなぞる。
「んっ……」
 ゆるゆると、青年の指先が少女の敏感な部分を優しく撫で上げる。一回、二回……。
 一定のリズムで、何度も何度も。布越しに、単調な動きでじわじわと弱い快感を注ぎ続ける。
「物足りないか?」
 青年の問いに、少女は慌てて頭を振る。
「そんなっ……」
「腰が動いてる」
 青年の指摘に、少女は上気した頬をさらに赤らめ、羞恥に泣き出しそうな表情を見せた。
「こんな弱い刺激じゃ満足できなくて、自分から身体を押し付けて気持ちよくなろうとしてるんだろ」 
「ちがっ…そんなんじゃっ……」
 言い募る少女の唇を塞ぐように口づける。
 下着の上をなぞり上げる指の動きはそのままで、彼は少女の身体に体重を掛け、その下半身を固定した。
 腰をがっちりと押さえつけ、身じろぎすら出来ないような状態にして、ひたすら甘く弱い刺激を与え続ける。
 同時に、少女のシャツを捲り上げ、今度は直接胸へと顔を近づけた。
 先程とはうってかわって、ふくらみの頂点に優しくついばむようにキスをして。桜色の突起を唇で軽く圧迫し、尖らせた舌先でつついてやる。
「ぁっ……」
 秘部を撫でられ続けた少女の吐息が、やがて色を帯びてくる。
 少女の身体の奥に蓄積されていった快感が、どうやら一線を越えたようだった。
「だ、やだっ……やめっ……変なのっ……やめっ……」
 指の動きは変えていないのに、少女の反応が見る間に変わっていく。
 息を荒げ、堪えるように瞳を細め、切なげに肩を震わせる。
 少女は自身の反応に戸惑ったように、青年が導こうとしている未知の感覚から逃れようともがくが、かなわない。
 そんな少女の変化にわざと気づかないふりをして、青年は敏感な部分の上をゆるゆると指先でなぞり続ける。優しく、優しく。
「やっ……あっ……いやぁっ……!」
 吐息のような甘い声と共に、びくびくと少女の身体が跳ねた。
 初めは軽くのけぞる程度。その後、青年の指が往復するたびに、何回も何回も。
「やっ……やめっ!……とめてぇっ!……やぁっ……!いやぁっ……!!」
 弱い刺激でさんざん焦らされた末の、深い絶頂。
 繰り返すたびに大きくなっていく熱く痺れる感覚に、少女はたまらず身を捩じらせる。
「あっ!!いやっ!!!……ぁっ……っ……」
 少女が立てる切なげな声が、夜の静けさの中に響き渡る。
 少女の身体から快楽の波が引き終わるまで、青年は優しく指を滑らせ続けた。
298魔法使いと少女(5/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:17:08 ID:u8WZ4luz
 ベルトを外すと、激しい快楽の余韻にぐったりと崩れ落ち、焦点の合わない瞳で息を弾ませる少女の身体の上へと覆いかぶさる。
 陶然としていた少女は我に返ったように表情を強張らせ、逃げようとするが、拘束された両手首のせいでうまくいかない。
「いっ……やだっ!!」
 下着を下ろし、足を押し広げると、青年の愛撫にとろけきった部分が露わになる。
 ぬるぬるとした愛液ごしに張りつめた肉芽に触れてやると、少女は短い悲鳴を漏らした。
 青年はそのままもう少しだけ下に指を動かすと、入り口を弄ぶように、わざと音を立ててかき混ぜてやる。
「やっ……っはぁっ……」
「凄いな。こんなにとろとろになってる。そんなに良かったのか?」
「んっ……そんなこと……」
 否定する少女をからかうように意地の悪い笑みを浮かべ、青年が囁く。
「これだけ満足したなら、今度は俺が愉しませてもらう番だな」
 少女の柔らかな髪に指を絡め、梳くように撫でながら、はちきれそうに膨らんだ欲望の塊を彼女の身体へ押し当てる。
 少女の瞳に、恐怖と絶望の色が浮かんだ。
「やっ……だめっ……来ないでっ……」
 とば口に触れただけで、ぞくぞくするような快感が青年の背筋を駆け抜ける。少女の怯えた表情がまた嗜虐的な欲望を掻き立てた。
「……やだっ……やぁっ……入れちゃっ……ぁっ」
 強張る少女の身体をほぐすように首筋にキスして、くすぐるようにそこに舌を這わせる。
 逸る気持ちを抑えながら、わざとその硬さと大きさを意識させるように、青年は自分の身体の一部をゆっくりと少女の中に潜り込ませた。
「やっ……入ってくるっ……やだよぅっ……だめっ……んっ……」
 熱く大きな塊が、痺れるように疼く部分にじわじわと侵入してくる感覚。
 破瓜の痛みに身構えていた少女の瞳に、やがて戸惑いの色が浮かぶ。
「だめっ……やだっ……なんでっ……こんなっ……わたし……っ」 
 はじめてなのに……弁解する様に、乱れる呼吸の下で独りごちる。
「気持ち良いのか?」
 はっとして、慌てて頭を振って否定する少女を、青年は愉しげに見やった。
「俺が欲しかったんだな」
「ちがっ……」
「こんなに赤くなって……たまらないって顔してる」
「そんなっ……だってっ……」
「……全部、入ったぞ」
 耳元に唇を寄せ、囁くように少女に告げる。
 少女の潤んだ瞳が耐え難い羞恥に細められた。声が震える。
「ぃやっ……」
299魔法使いと少女(6/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:17:48 ID:u8WZ4luz
「……凄いな。先から根元まで、しっかり絡み付いてくる」
 青年は唇の端を吊り上げ、満足げに深いため息をついた。
「最高だ……お前の中、気持ち良いぞ?」
「やだっ……抜いてっ……」
「馬鹿言うな」
 少女の訴えを鼻で笑うように、青年はさらに腰をぐりぐりと押し付けた。
 密着した部分が擦れ、ぐちゅりと淫らな音を立てる。
「んっ……あぁっ……」
「良い声だ」
「やめっ……動かさないでっ……」
 愉悦の表情を浮かべると、青年は少女の求めを無視して動き始めた。
「やっ……だめっ……ぁっ……!!」
 最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げて。
「やっ!……あっ……だめっ……とめてっ……」
 青年の動きに、少女の喘ぎ声が次第に熱っぽく、甘く変化していく。
「やっ……あっ……あんっ……あっ……やぁっ……っ」
 ひとしきり激しく衝きたてたあと、唐突に動きを弱める。
 しばらく浅い部分を往復したあと、一気に奥まで貫いてやる。
 わざと角度をつけて、胎内の性感帯の部分を執拗に強く擦りあげる。
 緩急をつけた青年の責めに、少女の身体はされるがままに翻弄される。
「やっ……だめっ……だめぇっ……」
「気持ち良いだろう?」
 さすがに少し息を乱して、青年が尋ねる。
「認めろよ……俺をくわえこんで、ぐちゃぐちゃにかき回されて、こんなに感じてるって」
 青年の問いに、少女はそれでも力なく頭を振る。
「そんなことっ……無いっ……そんなことっ……ふぁ……んっ」
「俺に犯されて、どうにかなりそうなくらい気持ち良くなってるくせに」
「ちがっ……ぁんっ……」
「じゃあ、とろけそうな甘い声を出してるのは誰なんだろうな?」
「だってっ……だってっ……ぁっ……」
 必死で快楽を否定しようとする少女が、ひどく可愛くてたまらない。 
 もっと苛めたい。もっともっと狂わせたい。壊してしまいたい。
 青年の責めがいっそう激しくなる。少女の身体を押さえつけ、息もつかせないくらいの勢いでその中を貪る。
「やっ……だめっ!やだっ!許してっ!やだっ!あっ……っ!!」
 もはや言葉を口にする余裕すらない。欲望の赴くまま、ひたすら熱い少女の感触を味わう。
「だめっ!だめぇっ!やっ……いやぁっ!」
「っ……」
 短い悲鳴と共に少女の胎内が大きくうねった。今まで以上の激しい締め付けに、青年に限界が訪れる。
 青年は少女の背中に腕をまわすと、快感に震える華奢な身体を強く抱きしめた。
「くっ……」
 差し入れた部分をより奥へ捻じ込むように密着させ、少女の身体の一番深い所で、滾る欲望を放つ。 
 背筋を駆け上る痺れるようなえもいわれぬ快感と、耐え難い征服感。
 俺のものだ。お前は……俺だけのものだ。
 少女を抱く腕により一層の力を込めると、青年は搾り出すような声で少女の名を呼んだ。
300魔法使いと少女(7/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:19:01 ID:u8WZ4luz



 愛してる。何度もそう言おうとして、その度に口をつぐむ。
 欲望のままさんざん少女を陵辱した今の自分に、そんな言葉を掛ける資格などある筈が無かった。
 自分の非道な行為に身も心も壊され、抜け殻のように寝台に横たわる少女の身体を抱き寄せると、青年はせめてもの償いであるかのように、慈しむような優しい口づけを落とす。
 

 
 そして彼はまた、その呪文を唱えた。


301魔法使いと少女(8/8) ◆ZAK/revMU. :2009/11/04(水) 22:20:05 ID:u8WZ4luz
「ふぁぁ…おはよう」
 眠そうな目をこすりながら、寝台に腰掛けていた少女があくびをする。
 ドアノブから手を離し、少女の部屋に足を踏み入れると、青年は腕を組んで呆れたように鼻を鳴らした。
「どうした。いつもの間抜け面に今日はより磨きが掛かっているじゃないか。さては間抜け面全国大会にでも出場する気だな。よし、応援しに行ってやるから交通費はお前持ちな」
「そんな大会、もし何かの間違いで出場するような羽目に陥っても全力で棄権するから!」
「そうか、残念だな。お前なら世界を狙えると思ったのに」
「狙わないから!…もうっ、寝不足なんだよ。仕方ないじゃんか」
 拗ねたように口を尖らせ、少女が呟く。
「……最近、なんだか怖い夢を見るんだ」
「怖い夢?」
 青年の顔が、ほんの僅かばかり強張った事に、少女は気づかない。
 小さくうなずきながら、少女は表情を曇らせ、ふうとため息をつく。
「そうなんだ。……内容はぜんぜん覚えてないんだけど、ただ怖くて、苦しくて、悲しくって、そんな感じの夢で……」
「……」
「な、なに?どうしたの?」
「……いや」
 青年は固い表情のまま考え込むように視線を落としていたが、やがて口を開いた。
「……今日の出発は取り止めだ」
「え?」
 少女は驚いたように瞳を瞬かせる。
「そんな、それほどのことじゃないよ!?ちょっと夢見が悪いってだけで、昨日だってちゃんと早く寝たし、別にそこまでしなくてもっ…」
「そういう自覚症状が無いのが一番やっかいなんだぞ。街から離れた場所でいきなり倒れられでもしたら面倒だ。のんきに人事不肖してるお前を俺の細腕で10km単位も運べると思うか。無理だ。そんなことになったらいっそ途中で捨ててくるぞ俺は」
「うっ……」
「ちょうど今読んでる本の続きが気になっていたところだ。良い機会だから、じっくり読ませてもらうさ。まあ、お前はせいぜい、貴重な青春の一日を非創造的な惰眠に費やすことだな。その間に俺だけレベルアップしてくるから、その辺で残念な感じに取り残されていれば良い」
「でも……また悪い夢を見るかも」
「……大丈夫だ」
 瞳をすがめ、不安げに良い募る少女を見下ろして。
 ややあって、青年は少女に歩み寄ると、その肩をぽんと軽く叩く。
「魔法をかけてやる。もうそんな悪夢なんて見やしない。だから、安心して眠るんだ」
 そのまま、くるりときびすを返した青年の名を、少女が口にする。
 怪訝そうな面持ちで振り返った青年に、少女は少しはにかんだような表情で笑いかけた。
「……ありがとう」
「……」
 青年は無言のまま目を逸らす。



 もう、全てが手遅れだった。どうしたって取り返しはつかない。
 激しい罪悪感と後悔に苛まれながら、彼は自らに問いかける。 
 今宵こそ。今宵こそは、耐え切れるだろうか、と。


                                       <END>
302名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 23:07:41 ID:1k/LvgQc
GJ!!
303名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 23:26:52 ID:+JmHzFyq
GJ!
設定とか文章の雰囲気とか凄く素敵でした!
304名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 23:53:21 ID:oM/OKpCs
>>296・・・慌てすぎ
305名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 01:41:05 ID:Tf7x3r7H
新作来てるー♪
葛藤しながらも欲望に抗えない男視点がたまらんねぇ(・∀・)bGJ
306名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 06:19:18 ID:zHJB64u1
男の葛藤が良かった。
しかもエロい。GJ!!
307名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 06:24:21 ID:zHJB64u1
少女がリアルの場面で徐々に魔法使いに心を動かすようになっていったら……
という続編を期待したい。
少女に心寄せられるほどに魔法使いの苦悩は増しそうだ。
続きを激しく期待!
308名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 08:56:53 ID:DdIqAFjW
GJ
エロいし読みやすかった
309名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 09:02:51 ID:w3P3ga9O
GJ
続いても面白そうだ
310名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 09:14:43 ID:knVRyGqM
うわああこういうのすごく好みだー
GJです!醸しだす雰囲気とかがもう堪らんです
魔法使いと少女のその後が気になる……
311名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 11:39:02 ID:1HB8MoZr
GJだけど避妊具もないだろうに孕んだらどうするのか…
孕まないようにする魔法なんてないだろうしw
記憶が全部戻って少女の自我崩壊エンドでも乗り越えてラブラブ夫婦になるエンドでもどっちも萌える
312名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 14:08:10 ID:zHJB64u1
魔法の綻びが徐々に昼の世界に及んで、昼と夜との境が曖昧になるとか
そういうのも萌える。
つか、あまり妄想しすぎると続編を書きづらくなったら本末転倒だから、
首を長くして待つぞ。
313名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 19:17:55 ID:AnR3+E46
>>296はKY
314名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 21:32:17 ID:xbnvC4D5
それよりID:zHJB64u1がストーカーじみてて怖い
315名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 22:06:16 ID:R/RYwNub
>>ID:zHJB64u1
<END>と宣言しているのだから、職人の意思を尊重するべき。
しつこく展開予想を書くのも失礼。さすがに3レスはやり過ぎ。
続編の有無、設定や展開を決められるのは作者だけ。
侵してはならない領域というものがある。

>・感想の域を超えた批評、展開予想はご遠慮ください。
>・リクエスト、続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
スレに参加するならルールは守ろう。
316名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 23:21:53 ID:JmHdYyJh
>>314
それも愛ゆえになんじゃ…w


魔法使いGJでした!
317名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 23:24:19 ID:7PvBs5iq
>>316
誰がうまいこと言えとw
318名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 00:50:40 ID:vRUnTzWf
全くうまいこと言ってねぇし、そのネタ飽きたわ

いつもそうやって誤魔化すよな
きも
職人が気の毒で仕方ない
319名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 01:41:04 ID:IyqFUd0P
人様のSSなんだから勝手に弄くっちゃ駄目でしょ
形にしたい妄想があるなら自分で文章に起こすべき
320名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 02:08:46 ID:49SzSynv
流れを読まずに質問。
前スレ→現行スレでタイトルが変わった経緯を知らないんですが、
まだ愛あるレイプ系の作品投下っておk?
それとももう、ここは「愛するが故に〜」じゃないと不可でしょうか?
321名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 10:25:35 ID:kBpl/cTK
>>320
スレタイが愛あるレイプだと荒れたので、住人たちで話し合った結果
新スレは少しぼかしたスレタイになりました。
同義なので投下おkだと思いますよ
322名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 17:47:56 ID:2nO7MXwv
>>320
タイトル変わっただけで内容は一緒ですよ。
職人に失礼な人っていつも同じ人なの?なんで学習能力がないの?
323名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 19:18:40 ID:fHfLmIM+
投下楽しみ
324 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:14:05 ID:I/4Aw1jr
>>321-322
情報感謝。安心して投下します。
今度はSFなんでやっぱり苦手な方は要注意。
あとえっちなシーン突入まで無駄に長くなってしまったので、
時間が無い方は09あたりから読めば良いと思います。

魔法使いの方は、蛇足にならない続きが書けそうな確信を得たらという事で。
325「詐欺師の贈り物」01 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:16:29 ID:I/4Aw1jr
「ルージェン」
 聞き覚えのある声に名を呼ばれる。
 観光シーズンをとうに外れたエアポート。その人気のない発着場の片隅のベンチで雑誌を読み耽っていた少女が、静かに顔を上げた。
 茶がかかった金色の髪に、金属フレームの眼鏡。そこでにっこりと笑っている一見地味な青年の正体は、詐欺師にして、ここ数年来、裏社会で宇宙において最も敵に回したくない相手のひとりだと囁かれる人物。
 この星にエアポートは数え切れぬほど存在するが、入星手続きの手際の良さや整備点検などのサービスに一定の質を求めるなら、その数は自ずと限られてくる。
 その上、田舎のはずれのひどく辺鄙な場所にあり、いつも閑古鳥が鳴いていて、中央から派遣された入星管理官が並外れたものぐさ者であったなら。
 互いに裏の仕事を生業としていれば、この青年とここで顔を合わせたとしても、何ら不思議は無かった。
 だが、そんな大物の姿を認めても、少女は別段、動揺する事もない。立ち上がるどころか会釈する素振りすら見せず、表情ひとつ変えぬ事務的な口調で答える。
「お久しぶりね。何か用?」
「用がなければ、話もしてくれないのかい?」
 柔和な笑みを浮かべたまま、気安い口調で青年が問う。
 少女は僅かに肩をすくめた。
「挨拶程度ならするわよ。あなたの機嫌を損ねて得することはないけれど、わざわざ機嫌を取るつもりはないの。気を悪くした?」
「とんでもない。君に会えた日に、不機嫌になんてなれる訳がない」
「お上手ね」
 おざなりに呟くと、少女は再び雑誌に目を落とした。そこに青年がいたことなどすっかり忘れてしまったかの様に、細い指でページを繰る。
 とりつくしまもない少女の態度に、しかし、青年は諦めない。変わらずにこやかな表情で少女に話しかける。
「実はね、君に贈りたい物があるんだ」
「それは結構な申し出ね。いったい何かしら」
「たぶん、君が喜ぶものさ」
「なぁに?」
「薬だよ」
「ふぅん」
 少女はいかにも興味なさげに相づちを打った。
「女の子へのプレゼントとしては、少し魅力に欠けるんじゃないかしら」
「そうかな?喜んで貰えると思ったんだけど」
「あいにく、健康上の悩みはないわ。どんな優れた合法ドラッグにも興味はないし、積極的にサプリメントを飲むほど、長生きしたいとも思ってないもの」
「例の発作、最近はどうなんだい?」
 青年の言葉に、ネット犯罪に関する記事を追っていた少女の視線が止まった。
「……何なら、試してみる?」
326「詐欺師の贈り物」02 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:18:44 ID:I/4Aw1jr
 雑誌を閉じて脇に置くと、少女は静かに青年を見上げる。
 挑発的な口調とは違い、その眼差しはひどく淡泊で、どこか投げやりだ。
 ようやく少女の興味を惹くことに成功して、青年は嬉しそうに瞳を細めた。
「遠慮しておくよ。女の子を泣かせるのは趣味じゃないからね」
「わたしの発作と薬に、いったいどんな関係があるの。よもや、わたしの男性恐怖症を治す薬を手に入れただなんて言わないでしょうね」
「人の心に作用する薬は、幾らでもあるよ」
「限度があるわ。風邪の菌だけを殺す風邪薬なんて作れない。いくらあなたが詐欺師だからって、特定の記憶だけを封じる薬があるなんて出鱈目じゃ、今日びスラムの子供だって騙せないわ」
「ちょっと違うな。別に記憶を消すって訳じゃない。病気を治すには、二つの手段があるだろう?病原体を弱まらせるか、それとも身体の方を強くするか」
「つまり、心を強くするってこと?」
「それは、服用してからのお楽しみ」
 いたずらっぽく笑うと、青年は人差し指を立てる。
「百パーセント、とまでは断言できないけど、たった一回の服用でかなりの効果が期待できるうえに即効性。かつ副作用はほとんどナシ。
別に無理をする必要はないと思うけど、今までだって相当苦労してきただろう?この機会に、思い切って克服しておいても悪くはないと思うけど」
 少女の頭の中に、思い当たる出来事がいくつも浮かび上がる。男性に触れられると過去の記憶がフラッシュバックし、恐慌状態に陥ってしまう自分が犯してしまった失敗の数々。うち幾つかの際には、自分だけでなく大切な仲間さえ危険に晒してしまった。
 いままではどうにか切り抜けてこられたものの、今後もそうあるという保障はどこにもない。
 少女はしばらく考えるように押し黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「……そうね。一人じゃろくに外も出歩けない宙賊なんて、足手まといよりたちが悪いもの。今回は、あなたの好意に甘えさせて頂こうかしら」
「良かった!じゃあ……」
 満面の笑みを湛え、青年が頷くのとほぼ同時に、小さな電子音が鳴った。
 青年は言葉を切ると、手首に巻き付けられたリモコンにもう片方の手をかぶせ、ちらりと目線を僅かに上の方へと走らせる。
 おそらく眼鏡のレンズに出力された情報を読みとったのだろう。青年の顔が僅かに曇った。
「……まいったな。そろそろ出発しないと、明日の約束に間に合わない」
「あら、わたしの方は別に、今日じゃなくても構わないけど?」
「そうはいかないよ。次にいつ、君に会えるか分からないのに」
 頭を振るうと、青年は真摯な口調で言い募る。
「一刻も早く君を治してあげたいんだ。……君の仲間だって、きっと僕と同じ事を言うだろうさ」
 でも……と、青年は申し訳なさそうな表情をしてみせる。
「……まあ、今回ばかりはしょうがないか。ごめんね、ルージェン」
「ねえ」
 少し考えて、少女が尋ねた。
「その薬、あなたの船内のどこに置いてあるかは分かっているの?」
「もちろんさ。次に君に会えた時に渡そうと思って、ちゃんと仕舞っておいたからね。まさかこんなところで会えるとは思っていなかったから、身に着けて来なかったのが残念だけど」
「なら、わたしがあなたの船までついて行くわ。あなたが薬を取ってきて、船の外で待ってるわたしに渡してくれればたいして時間は掛からないでしょう?もちろん、もしあなたが良ければ、の話だけど」
 青年は表情を緩ませて、大きく頷く。
「そうか、そうだね。それぐらいの余裕はある。少し歩くけれど、大丈夫?かなり外れに止めちゃったんだ」
「平気よ」
 膝に乗せたままだった雑誌を傍らに置き、少女はゆっくりと腰を上げた。
「わたしの母星には、車なんて無かったもの」
327「詐欺師の贈り物」03 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:19:29 ID:I/4Aw1jr
「少し待っててね。今、取ってくる」
 タラップをに足を掛け、青年は片手を上げて少女に声を掛ける。
 第三プールの周りには、ほとんど人影は見られなかった。遠くの売店では、中年の男が暇そうに頬杖をついている。
「あなたの引き出しの中が整理されてることを祈るわ。薬探しに手間取らせて、あなたの仕事の邪魔をするのは本懐じゃないから」
「大丈夫。引き出しの中と女性関係だけは、きっちりしていないと気が済まないタチだからね。もっとも、他に関しては、保証できな……」
 すくめた肩越しに言葉を返しつつ、タラップを二三歩ほど踏んだその時。清閑なエアポートの空気を切り裂くように鋭いサイレンが青年の言葉を遮った。
 青年は口をつぐみ、少女は弾かれた様に辺りを見回す。
 いつの時代も、警報の音と言うものはあまり変わらない。ひどく大きく、愛想もない耳障りな音だ。
「見送りのファンファーレにしてはずいぶんなボリュームね。いったい何?」
「二種警報だね。中央でも、そうは発令されない高レベル警報音だ。珍しいな」
「何が起こったのかしら……」
 いつになく真面目な青年の面持ちに、さすがの少女も、ちらと不安の色を覗かせる。
 少女は少しの逡巡していたが、やがてくるりときびすを返した。
 しかし、タラップから飛び降りた青年が回り込むと、母船へと駆け出そうとした少女の前に立ちはだかり、両腕を広げて制止する。
「駄目だよ」
「どいて。みんなが心配だわ」
「情報も無しに、無闇に動くのは危険だ」
「でもっ……」
「大丈夫。無事さ。航宙船の中に居れば、たとえ爆撃を受けたとしてもたかが知れてる。こんな状況で、生身で飛び出す方がよほど馬鹿げてるよ。君らしくない」
「…………」
「さあ、まず君が避難しなきゃ。君に何かあったら、それこそハイン達に申し訳が立たない」
 少女は無言で唇を噛み締めた。
 悔しいが、青年の言うことはもっともだった。そして、彼は場合によっては、腕づくでも少女を安全な場所へと引っ張っていくだろう。
 ……そう、腕づく、でも。
 ややあって、少女は小さく頷くと、青年の促すままにタラップを駆け上った。
328「詐欺師の贈り物」04 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:20:08 ID:I/4Aw1jr
「……何が起こったのかしら」
 人が三人も入れば一杯になってしまうような制御室。椅子に座ることもせず、少女は落ち着かない声音で先と同じ質問を口にする。
 青年はディスプレイに目を向けたまま、少し自信なげに答えた。
「二種警報なら、おそらくテロリストか宙賊の襲撃ってところかな。もっとも、最近それらしい動きは聞いてないけど……」
「RPOかしら。こないだの戦争でリトレスカの政府を支持したから、この星は恨みを買ってるはずよ」
「いや、彼らなら今はキトラの方の政変で手一杯さ。あちらの方が実入りが良いからね。何もわざわざこの時期に、こんな大きな星に喧嘩をふっかける事もない」
「何か情報は無いの?」
「今のところはね。……何にせよ、早く解決してくれないと困るよ。あまり時間に余裕が無いんだ」
 心底、困ったように漏らす。そう言えば、青年はこの後、約束があるのだった。
 少女が所在なげに天井を見上げたその時、ふっと、警報の音が小さくなる。
「良かったじゃない。案外、早く解決するかもしれないわよ」
「そうだと良いんだけど」
 青年がため息をつく間、小さくなった警報に変わるかのように、少し低めの、良く通る女性の声がスピーカーから流れ出した。
 不要な混乱を防ぐためか、先のけたたましい警報とは不釣り合いなほどに落ち着いた声音だ。
『政府より、リシャール上空に、重武装した星籍不明の不審船が停泊しているとの警告がありました。既に政府軍が向かっておりますが、安全のため、民間船の出港はしばらく停止されます。お急ぎのお客様、誠に申し訳御座いません。繰り返します……』
 少女はわざとらしく肩をすくめると、嘆息した。
「ご愁傷様。どうやら、お詫び状の文面でも考える必要がありそうね」
 皮肉混じりの呟きに、こちらもため息をつきながら、青年が応える。
「……悔しいな。本業以外での約束は、今まで破ったことがないんだけれど」
「あら、本業での約束なら、全て破るくせに?」
「別に詐欺だけが僕の仕事って訳じゃないよ。これでも、いろんろな組織と渡り合っているからね。こちらは信用第一。僕が騙すのはカモだけさ」
 青年は腰掛けたまま、大きく伸びをした。少女の方に向き直ると、さばさばとした表情で笑い掛ける。
「まあ、考えてみれば運が良かったのかもしれないな。つまらない仕事より、君を選ぶ口実が出来た」
「あら、わたしは薬を取りに来ただけよ。当面、それほどの危険は無いみたいだし、受け取ったらすぐに帰るわ」
「でも、そう急ぐ用事も無かったみたいだけど?」
 青年の問いに、少女は瞳をすがめて答える。
「誰にも言わずに出て来ちゃったもの。わたし、あまり一人で出歩いたりしないから、いきなり姿を消したら心配されちゃうわ」
「大事にされてるんだね」
「……みんな、良い人達よ。弟以外も、本当の家族みたいに」
 独りごちるように、ルージェンは呟く。その声音は相変わらず淡々としていたが、その瞳にはどこか柔らかい光が浮かんでいる。
 青年はそんな少女に慈しむような眼差しを向けると、思い出したように唇を開いた。
「そう言えば、君はハインに触られるのは大丈夫なのかい?」
329「詐欺師の贈り物」05 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:20:50 ID:I/4Aw1jr
 唐突な問い掛け。
 少女は青年の顔をまじまじと見やった。見開かれた少女の大きな瞳は、複雑な色を湛えている。
 ややあって、少女は瞳を逸らし、唇をひき結んだ。
「……どうして、そんな事を聞くの?」
「ただの好奇心」
 微笑みながら、青年。
「あとは、少しのライバル意識かな。あの薬がどれだけ効くかは分からないけれど、もし君が街を歩けるくらいになったなら、僕は真っ先にデートを申し込むつもりだから」
「馬鹿を言わないで。言ったでしょう?ハインは家族みたいなものよ。ハインのことを怖いなんて思ったこと、無いわ。彼に対して男性恐怖症なんて、出るわけが無いでし……」
 不意に少女は口をつぐんだ。
 そう言えば、青年がいう薬の効き目とやらはどうやらはっきりとはしていないらしい。いったいどこでどう入手したのかも気にはなるが、それはこの青年のことだ。何か裏のツテでもあったのだろう。
 問題は、実際に薬がどれだけ効果を発揮したのかを推し量るためには、服用後、試しに誰か異性に触れてみなければならないということだ。
 現在、彼女の母船には二人の異性がいる。当然ながら、そのうち実の弟に関しては触れても男性恐怖症が起こらないことは確認済みだった。
 しかし、もう一人。彼らのリーダー、ハインに関しては……。
 自信ありげに答えたものの、ルージェンは彼らの仲間になってから今まで、握手という形でさえ、ハインに触れたことは無かった。もし彼に対し男性恐怖症を起こしてしまったら、自分が彼を信頼していないことを証明してしまうようで怖かったのだ。それに……。
 何にせよ、薬の効き目を試すにはその二人は適切ではなく、そしてその二人以外、彼女がそんなことを頼めそうな人物はたった一人しかいなかった。
 少女は小さく頭を振ると、青年の顔を見上げた。
「ごめんなさい。気が変わったわ。すぐに効き目が知りたいの。ここで薬を飲んでいっては駄目かしら?」
「おや、君の家族が心配するんじゃなかったのかい?」
「即効性って言ったのはあなたでしょう?一時間くらいなら、別に問題ないわ。どうせうちの船の出港時間も延びるんでしょうし」
「それは嬉しいな。予定外の自由時間、暇を持て余すのと、君と一緒に過ごすのじゃ、宇宙の直径よりも大きな差がある」
 冗談めいた口調の青年に、少女はあえて冷ややかな視線を投げかける。
「ご期待のところ悪いけれど、長居はしないわよ」
「分かってる。短くたって構わないよ。問題は、いかに長く君と過ごすかって事より、いかに楽しく君と過ごすかって事なんだから」
「……全然分かってないような気がするのは、わたしだけなのかしら」
「まあまあ」
 曖昧な笑みを浮かべながら青年がコンソールに指を走らせると、少女の右手、青年の背中側の壁の大きなドアが音もなく開いた。
 四角いその枠からは、暖かい色の壁紙と、それによく調和したシックな色調のソファが置かれた、感じの良い部屋が顔を覗かせている。
 青年は席を立つと、手のひらでドアを指し示し、少女を促した。
「そこのソファにどうぞ。いま、薬を用意してくるよ」
330「詐欺師の贈り物」06 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:21:38 ID:I/4Aw1jr
 手のひらに載せられた、三錠の小さな錠剤。
 躊躇いもせずその一つを口に含み、口の中でいくらか転がしたのち、水を呷る。
「今さら、毒を盛られることも無いでしょうけど……」
 グラスの底を覗くようにして、少女はぼやくように呟いた。
「別に何てこともない、普通の薬ね。本当に効果があるのかしら?」
「多分ね」
 自信ありげに、傍らに腰掛けた青年が笑いながら補足する。
「少なくとも、まったく効かないって事は無いだろうさ」
「ふうん」
 少女は気のない返事をしながら、残りの錠剤を口に放り込むと、冷たい水で一気に喉へと流し込んだ。
 柔らかなプラスティックで作られたコースターの上にグラスを戻すと、あらためて青年を見やる。
「ところで、落ち着いたところで、聞きたいことがあるんだけれど」
「何だい? 神は実在するのか、とか、人類はどこから来てどこへ行くのか、みたいな質問以外なら、大抵は答えられると思うよ」
「あら、神学や哲学はお嫌い?」
「そんなことは無いよ。ただ、僕は証明出来ないことを語るのが苦手でね」
 茶化すような少女の問いかけに、青年は小さく伸びをしながら笑って言葉を返す。
「僕は完璧主義者らしいんだ。自分が満足のいく絶対的な答えを返すことが出来ない質問には、答えたくない」
「ずいぶん尊大なのね。まるで思春期の子供みたい」
「自分でも、そう思うよ」
 皮肉のつもりだったが、青年はあっさりと、少女の言葉を肯定してしまう。少女は毒気を抜かれた様に口を閉ざしたが、ややあってため息をついた。
「……開き直るのもどうかと思うけどね。あいにく、そんな高尚な質問をするつもりはないわ。わたしが聞きたかったのは、たぶんあなたがすっかりと承知していることよ」
「僕が知っていること?」
 怪訝そうに鸚鵡返しをする青年に、少女は淡々とした口調で詰問する。
「この薬、どこで、どのような手段をもって手に入れたのかしら?」
 少しのタイムラグをおいて、青年は微笑みながら、逆に少女に疑問符を返した。
「気になる?」
「もちろんよ。飲んでおいて何だけれど、そうそう都合良く、あなたにわたしぴったりの薬が見つけられる筈がないわ」
「そうかな。もしかしたら、僕は君のためだけに、君のためだけの薬を探す旅に出ていたのかも知れないよ」
「そんな暇人がこの宇宙に存在すると思うほど自惚れてないわ、残念ながら」
 少女は大袈裟に首を振ると、続ける。
「即効性で副作用が無くて、たった一回飲んだだけで男性恐怖症が治る薬なんて聞いた事無いわ。そんなの、表の薬ではあり得ない。興味が湧くのも当然でしょう?
あなたの友人や知り合いには、新薬の開発をしている研究者か、違法薬物のバイヤーか、さもなくば草の実や木の皮からとんでもない秘薬を作るシャーマンでもいるのかしら?」
「そんな友人が一人でもいたら、退屈とは無縁な、充実した人生が送れそうだね」
 にっこりと笑って、青年。
「残念ながら、どれも不正解。本当のところは……たぶん、すぐに分かるよ」
「どういうこと?」
「そろそろ、薬が効いてくる頃だ」
331「詐欺師の贈り物」08 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:22:15 ID:I/4Aw1jr
 青年の言葉に、少女は思わず、自分の身体を見下ろした。ややあって、疑うような眼差しを持ち上げる。
「そうかしら?別に、何も変わったところは無いんだけれど」
「触っても良い?」
 言うが早いか、青年は少女へすっと手を差し伸べる。
 少女はびくっと反射的に身をすくませた。
 しかし、やがて唇をぎゅっとかみ締めると、決心したかのように、おずおずと腕を上げる。
 少女のしなやかな指先が、青年のそれに触れた。
「…………」
「……どう?」
 真剣な声音で、青年が問う。
 少女はしばらく沈黙した後、幾度か瞳を瞬かせ、驚いたように青年を見上げる。
「平気、みたい……」
 青年は、ほっとしたように表情を弛めた。つられた様に、少女も目を細め、口の端を吊り上げて文字通り微かに笑む。
 仏頂面の普段が普段なだけに、それは意外さと新鮮味を帯びた、ひどく魅力的な表情だった。
「嘘みたい。正直、それほど信じていなかったのよ?少しドキドキするけど、大丈夫だわ。嘘みたい」
 とても信じられないといった風に、少女は幾度も嘘みたい、と呟いた。その声音にも、自然と明るい色が混じっている。
 ややあって、少女は我に返ったように手を引き込めた。
 戸惑いとはにかみを浮かべた顔を上げると、すっかり言うのを忘れていた礼の言葉を口にする。
「……ありがとう」
 青年も、優しく微笑み返した。
「そんな。礼を言うのは、まだ早いよ」
「?」
「あれ、言っていなかった?」
 怪訝な表情を浮かべた少女に、青年はしれっとした顔で応じる。
「あの薬は、ただ飲むだけじゃ駄目なんだよ。飲んだ後に、しかるべき治療を受けなきゃいけないんだ」
「しかるべき、治療?」
「そろそろ種明かしの時間かな」
 青年はくすりといたずらげに笑うと、ソファの上で長い足を組み替える。
「いや、それじゃ賢明な君に失礼だ。ヒントを出そう」
「いったい、何を……」
 少女の問いには答えず、青年はにっこりと笑った。
 少女の中に生まれた小さな疑問符がたちまち膨れ上がる。
 嫌な予感がした。
「今さらだけど――」
 青年は微笑んだまま、少女に言い聞かせでもするかのように、ゆっくりとした口調で言葉を紡ぐ。
「君の男性恐怖症は、君が経験した、忌まわしい過去に起因してる」
 少女の表情が強張った。
 少女の母星である流刑星に、人体実験のために落とされた新型爆弾。その後遺症の調査と称して行われた、研究者たちによる拉致と集団レイプ。
 そしてそれをマスコミに公表し、政府を告発した事によって少女がさらされた、いわれなき中傷と好奇の視線。
 彼女の本当の名前は、今でも卑猥な冗談の種として宇宙中で囁かれている。忘れようの無い記憶。
「そんなこと、言われなくても……」
 わかっているわ、と続けようとした少女の言葉を遮り、青年。
「つまるところ、君の恐怖の一番の原因は性行為なんだよね。こういう場合って、本当なら恋人が、たっぷり時間と愛情を掛けて癒してあげるべきなんだろうけれど。君の場合は恐怖症のせいで、それも容易じゃない」
「カーチェス……」
 僅かに身体を引き、少女が呟く。
「あなた、まさか……」
332「詐欺師の贈り物」08 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:23:29 ID:I/4Aw1jr
「ご明察」
 にっこりと、青年。
「どこで薬を手に入れたか、だったっけ?さっきの質問。答えは薬局さ。ちょっと法律の甘い辺境の惑星に行けばね、抗不安薬や精神安定剤くらい、文字さえ読めれば誰にだって手に入れられる」
 言葉を切った後、思い出したように補足する。
「媚薬だけは、違う場所で買わなきゃならなかったけどね」
 少女は瞳をすがめた。唇を歪め、眼前の青年を睨み付ける。
「詐欺師」
「分かっているのに、僕を信じる方が悪い。そう思わない?」
「武装船も、あなたの仕業?」
「惜しいな。不正解」
 青年は笑いながら肩をすくめた。
「武装船なんて始めから無いよ。宙港の警報は本物だけどね。あれは僕がちょっと弄って、鳴るべきじゃない場面で鳴らしただけさ」
「でも、それなら、あの放送は……」
 言いかけて、少女ははっと息を飲む。青年が満足げに頷いた。
「察しが良いね。その通り。僕の船の内にどんな音を流すかなんて、僕の裁量次第。外の音をリアルタイムに流すのも、警報に昔のニュース音声を合成したものを流すのも、ね」
「始めから全部、仕組んでいたのね……」
 薬を取りに行くと自分から言い出したことも、ハインのことを思い出し、この船内で薬を飲んでいくつもりになったことも。
 おそらくは、この宙港で彼と出会ったことさえ、偶然ではないのだろう。
 全ては罠。
 そして……間抜けにも、完璧に絡めとられた。
 少女は舌打ちすると、青年から目を逸らす振りをして、船内に素早く視線をめぐらせた。操縦室へ続くドアは開いたままになっているが、青年の方が位置的に近い。
 しかし、幸い彼女は、いつもの発作からは解放されている。隙のない青年だが、不意をついて体当たりでもすれば、ほんの一瞬ひるませることくらいは可能なはずだ。
 タイミングを計ると、少女はソファから腰を浮かせようとした。
「無駄だよ」
 青年は、笑みを浮かべたまま諭すように口を開く。
「暴れる受刑者に、看守が精神安定剤を打つのは何故だと思う?興奮を静めるため?……いや、それだけじゃない」
「!?」
 立ち上がることは出来なかった。身体に力が入らない。まったく動かせないという訳ではなかったが、少し身体を持ち上げただけで脱力してしまう。
 バランスを崩した少女の身体は、 立ち上がろうという少女の思惑とは裏腹に、ソファの背もたれへとより沈み込む結果になった。なんとか起きあがろうとしたが、腕も足も必死になればなるほど重さを増し、少女の動きを妨げてくる。
「……!」
「知ってた?精神安定剤にはね、筋弛緩作用があるんだよ。アルコールと併用することで、その効果は劇的に高められるんだ。流刑星育ちで味覚が発達していないから、君は気付かなかったみたいだけど」
「……グラスの水」
「当たり」
 唇の端を持ち上げ、青年は愉しげに笑った。
「ここまで仕組んでおいて、この場になって僕が君を逃がすと思う?」
333「詐欺師の贈り物」09 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:24:02 ID:I/4Aw1jr
 少女の悔しそうな精一杯の抗議の視線が、青年に向けられる。青年はそれを真正面から受け止めるが、意に介さない。代わりに、今やすっかり自分の手中にある少女に向け、心をとろかしてしまいそうに甘く優しい笑みを浮かべた。
「今から僕が、君の恐怖心を消し去ってあげる」
 くすくすと笑いながら、青年は腰を上げる。
「僕が君にたっぷりと、君が知らない悦びを教えてあげるよ」
 本来ならば、騙された怒りや動けない恐怖、そして嫌悪感が先に立つ筈だったが。
 薬のせいだろうか。自分でも奇妙にすら感じられるほど、それらの感情は僅かなものだった。
 代わりに、妙な感覚が身体中を覆っている。
「……冗談じゃないわ」
「冗談?わかるだろ、これは冗談なんかじゃないよ」
 青年は大袈裟に肩をすくめながら、笑うのを止めない。
 ソファの背もたれに手を掛けながら、腰に手を当てて、青年。
「大丈夫、怖がる必要は無いよ。痛いことは何もしない。ただ、気持ちよくしてあげるだけさ」
 唐突に少女の視界から青年の姿が消える。少女は慌てて身体を捻り振り向こうとするが、やはり力が入らない。ようやく顔をいくらか上げたところで、背後から、彼の声が囁く。
「良いかい?これから君の身体に、深く深く快楽を刻み込んであげる」
 ソファ越しに、甘い声で紡がれる言葉。
「これから、じっくりと君を愛してあげる。呆れるくらい何度も口付けして、君の身体の敏感なところを隅から隅まで撫でて、舐め上げて、かき回して……ゆっくり時間を掛けてとろとろにしてあげる。身体と意識が蕩けきって、悦び以外のすべてを忘れてしまうまで」
 少女の頭の横に肘をつき、吐息がかかるくらいまで、耳元に唇を近づけて。
「もう僕無しではいられない身体にしてあげるよ」
 まるで催眠術にでも掛けられたかのように。耳の中に淫靡な言葉を注ぎ込まれ、痺れの様なものが少女の身体中に走っていく。
 何とか顔を向けると、青年はこちらを見つめながら、ただ優しく微笑んでいる。香水だろうか。心地よい香りがこのかに鼻腔をくすぐる。
 狡い、と少女は思った。彼は自分がどれだけ魅力的なのかを自覚した上で、さらにその魅力を引き立てる術を心得ている。敵うはずがない。狡い。
 身体の奥底の深いところで、じりじりと何かがくすぶっている。それが何であるか、少女にはよく分からなった。ただ、何かひどく熱く、もどかしく、切ない。胸が苦しい。
「そろそろ、媚薬の効果もはっきりしてきたかな?」
 青年は目を細め、嬉しそうに評する。彼の指摘に、少女は初めて、自分の身体が熱を帯びていることを自覚した。上気している。
 少女はそんな自分の反応にちらと不安を覚える。これはいけないものだと思う。
「厭……」
「勘違いしないで。これは治療だよ。僕の好意からの」
「ふざけないで。わたしはこんなの、望んでないわ」
 もはや少女が自由に行使出来るのは、言葉と視線ぐらいのものだった。
「もういいわ。このまま治らなくても良い。だから、こんな馬鹿な真似は止めて」
「こんなに不利な状況でも、君は強気なんだね。魅力的だ」
 少女の顎に、青年が長い指をかける。少女の顔を自分の方へ向けさせると、「でもね」、と囁くようにして笑う。
「君の身体はもう、僕が欲してたまらなくなってるんだよ。だって、僕がそうなる様にし向けたんだから」
「卑怯者」
 少女が吐き捨てる。
「嘘吐き。詐欺師。最悪な男」
「だいぶ分かってきたみたいじゃないか」
 少女の顔から指先を外し、青年がうそぶく。
「でも、残念。少し気付くのが遅すぎた」
 青年はソファの後ろに身を置いたまま、背後から少女の肩を抱きしめた。
334「詐欺師の贈り物」10 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:24:44 ID:I/4Aw1jr
 少女は青年の身体を振り解こうとしたが、弛緩した身体は申し訳程度にしか動かない。
 青年は少女の頭を大きな手のひらで押さえると、肩越しに少女の唇を奪った。
 軽く口付けたあと、舌を潜り込ませる。
「ん……」
 青年の舌先が、少女のそれに触れた。
 始めは輪郭をなぞるように、そして、包み込むようにして、青年は巧みに少女の口腔を犯す。触れた唇の暖かさと柔らかさと、舌が擦られるくすぐったいような感触に、少女は僅かに瞳を細めた。
 深いキスを終えると、次は少女の首筋に唇を落とす。
「んぅ……」
 予想外の攻撃に、少女は甘く悶えた。
 首筋から鎖骨に、鎖骨から首を駆け上がって、青年は熱っぽい口付けを繰り返す。耳たぶを甘噛みされ、少女はたまらず声を立てる。
「んふっ……ぁっ……」
「可愛いよ。こんなに頬を赤くして」
「ぃや……やめ……ぁっ……」
「ふふ、まだキスしかしていないのに。いつものクールな君はどこへ行ったの?」
「そんっな……ぁたしっ…………」
「意外だな……君が、こんなに感じやすいだなんて思わなかった」
 首筋を唇でなぞりながら、青年の指先が、少女の胸へと伸ばされる。感触を確かめるように弱く揉むと、服の厚い布地越しでもそれとなく分かるほど硬くなった部分を軽く引っ掻くようにしてやる。
 少女の身体に、鋭く甘い快感が走った。
「やっ……駄目っ……」
「ここが良いの?」
 もう何度か、同じ動きを繰り返すと、青年は指の腹でそこを撫で始める。今度の快感は弱かったが、ひどく重く、少女の身体に蓄積してゆく。少女は身じろいだ。
「……厭っ……だめっ……変な感じなの……止めっ……」
「君の身体は何枚もの布の向こうなのに、感じちゃうんだね。すごく敏感になってる」
「違っ……」
「直接触ったら、どうなっちゃうんだろう」
「!?」
 青年の手のひらが、少女の服の端から素肌へと潜り込む。ふくらみへと辿り着いたその指先は下着をずらしてから、硬く張りつめた蕾に触れた。
 ひっと、少女がうわずった声をあげる。服の中で、青年の指先が蠢いている。青年の手のひらの形に布地が持ち上がっている様は、少女の目にひどく淫猥に映った。
「やっ……だめっ……」
 中指と人差し指で摘まれ、柔らかく転がすように愛撫される。青年の指が動く度に、波紋のように背筋に何かが走ってゆく。
「止めて、お願いっ……ゃっ…」
「駄目」
 青年は指先を巧みに操りながらも、まるで少女の身体を埋め尽くそうとでもするかのように、口付けを止めない。
「意地悪っ……」
「意地悪にもなるさ。今の君の表情、くらくらするよ。たまらないね」
 指の腹で押しつぶされ、擦られ、まわりを優しく撫でられる。少女は泣きそうな顔で首を振った。
 触られているのは身体の上半分なのに、何故だろう。甘い疼きは下半分から広がってゆく。 腰が熱く溶け、ソファと一つになってしまう様な感覚。
 唐突に、少女の服の中を這っていた手のひらが抜き取られた。青年はソファをまわると、今度は少女の傍らに腰掛ける。
 乱れた息を整える暇すら与えられず、ソファにぐったりと凭れた少女の身体は、青年に抱き寄せられていた。
「だいぶ、良くなってきたみたいだね」
「……そんなこと、無いわ」
「嘘を吐くのは、僕の仕事だよ?」
 くすりと笑い、目を閉じる。
 少女の上気した頬や震える睫毛に、青年の唇が幾度も触れていく。
335「詐欺師の贈り物」11 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:26:50 ID:I/4Aw1jr
 幾度かの軽いキスの後、青年は再び深く口付けた。
 今度のキスは、先にもまして優しく、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと行われる。唇を重ねながら青年は、少女の柔らかな髪に指を絡ませ、優しく梳いてやった。舌を吸われながら頭を撫でられるのはひどく心地がよくて、少女は思わずうっとりしてしまう。
 青年の指先が、少女の胸元のファスナーを下ろし、オーバーの下に来ていた厚手のセーターと下着をまくり上げた。
 少女は慌てて抵抗しようとしたが、青年のキスと愛撫の陶酔から逃れられない。
 濃色の着衣の奥から、小ぶりだがふっくらとした乳房が晒される。
 青年は唇を離すと、少女の瞳を覗き込んだ。
「恥ずかしい?」
「っ……」
 肯定することも、否定することも悔しくて。少女は無言のまま、ありったけの強いまなざしで青年を睨め付けた。しかしその反応は、どうやら青年のお気に召すものであったらしい。 愉しげに唇の端を持ち上げると、青年は目を閉じ、少女の首筋を甘噛みする。
「んふぅ……ぁっ……」
 場所を変え、首筋を唇や舌でくすぐりながら、青年は少女の脇腹に指を這わせた。指先は少女の身体のなめらかな曲線を、少しずつ上っていく。触れるか触れないかの弱い刺激を与えながら谷間や膨らみの上を這いつつも、敏感な部分にはわざと触れない。
 まるで円を描くように、淡い色をした蕾のまわりを撫で続けると、それは柔らかな膨らみの中で己を誇示するかのように硬く尖っていく。
「勃ってきたね……そんなにイイの?」
「それは、あなたがっ……」
「僕が、何?」
 わざと惚けながら、愛撫を続ける。少女の顔が羞恥に歪んだ。
「だから、あなたがそんな風にするからっ……」
「そんな風に、って、どんな風に?」
「それはっ……その……」
 少女は言葉を失い、悔しげに唇を噛んで、瞳を逸らす。
 青年はしょうがない、と言った風に笑うと、少女の胸元に唇を近づけた。
 青年の舌先が、限界まで張りつめ、硬くなったその蕾にそっと触れる。
 とたん、身体を貫いた快感に、少女は思わず瞳を強く瞑った。
「ぁんっ」
 舌のザラザラした感触が、敏感な蕾に痛いほど響く。二度、大きく舐めあげると、ちろちろとくすぐるように舌を動かす。
 少女の声からため息にも似た嬌声が漏れた。
「あっ……ぁっ……やっ……あっ……」
「ここ、こんなに硬くして……」
「……ぃやっ……んぅ……」
「これじゃあ、きっと苦しいね?こんな時は……」
 うそぶきながら、青年は桜色をしたその突起に唇を近づける。
「……しっかり、解してあげないとね」
「やっ……駄目っ…だめぇっ……やっ」
 青年の唇が、少女の胸にむしゃぶりついた。青年の口の中で吸われ、甘噛みされ、舌で幾度も弄くり回される。断続的な快感の波が、少女の背中を駆けめぐっていく。
「おかしいな、なかなか解れないね?」
「あああっ……あんっ……やっ……」
「少し弱すぎたのかな。もう少し、強くしてみようか?」
「だめっ……だめぇっ…やめっ…………んっ」
 ちゅう、と、わざと音を立てる様に強く吸い上げると、少女は苦しげに喘ぐ。
 青年は少女の身体から顔を離すと、強すぎる刺激に涙を浮かべている少女の耳元に唇を寄せ、囁いた。
「ごめんね。少し、急ぎすぎたかな」
336 ◆ZAK/revMU. :2009/11/06(金) 21:28:57 ID:I/4Aw1jr
長くなったんで続きは明日投下します。
途中話数ミスったのは気にしないで下さい。
337名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 21:30:12 ID:fIFl/8Rq
>>336
急ぎすぎてないよGJだよ
リアルタイムで読めて良かった
続き楽しみにしてます
338名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 21:40:51 ID:5+Qux5ra
ぐぐぐGJぉぉ〜!!
全裸待機しております。
詐欺師、いい仕事しているなあ〜
339名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 23:29:21 ID:yi8Vt4jU
サウザーSS希望
340名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 10:55:06 ID:MPK7w923
は?
341名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 12:17:39 ID:grfoVAwc
GJ!
エロに持ち込むため全力な詐欺師萌えすwww
342名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 14:29:31 ID:GmQeUSzF
>>341
言われてみればwww
ともあれGJ 全裸待機決行します!
343 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:34:18 ID:VhMenOFy
感想嬉しいです。詐欺の無駄遣いww
全裸待機してくださってる方が風邪を召される前に続き投下しますww
344「詐欺師の贈り物」12 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:34:57 ID:VhMenOFy
 少女の背に腕を伸ばし、抱きしめながら幾度目かのキスをする。
 後ろに回した手のひらで慈しむように背筋を撫であげて。
 もう一方の手のひらは服越しに少女の身体をなぞりながら下へと降りていき、厚いタイツ越しの大腿に触れる。
 同時に、少女を押し倒すように体重をかけ、割るようにして、少女の両足の間に自分の膝を滑り込ませた。
「……じっくり、愛してあげる」
 甘い言葉と共に頬や首筋に唇を落としながら、少女の身体の上に指先を這わせる。
 それは、まさしく愛撫だった。大事に慈しむように、あくまでも優しいタッチで。
 彼の手のひらはじれったくなるほどゆっくりと乳房の横から脇腹までを撫でさすり、二の腕をつたって、脱力した少女の指先を絡めとる。
 同時に差し入れた膝を動かして、少女の身体の奥深いところを軽く圧迫した。
 少しずつ、少しずつ。首筋に、手足に、上半身に、下半身に。幾方向から同時に、別々の動きで、じわじわと。
 蜜が垂れる様にとろとろと注がれる弱い快感に、少女は次第に溺れていく。
 こんなのは初めてだった。それは、少女が知っている忌わしい行為とはまるきり違っていた。
 先程のような耐え難い、払いのけたくなるような快感とは違って、今度の快感には苦しさはまるでなく、ただただ甘い。
 下半身から広がる疼きのような感覚も決して不快ではなく、むしろそれは少女の身体を包み込むように、あたたかくじわりと広がっていく。
 青年の唇が、腕が、指先が、少女の身体中に触れまわっていく。
 あまりの心地よさに、時間の感覚さえあやふやになる。もう、いったいどれだけの時間、こんな事をされているのか分からない。
 ……このまま、ずっとこうされていたい。
 青年の丁寧な愛撫によってすっかり目覚めさせれた少女の身体は、痛いほど敏感に、感じやすくなっていた。
 手のひらをくすぐられ、指をなぞられて、それだけで少女は自分でも恥ずかしくてたまらなくなるような甘い声をあげてしまう。
 肌に青年の吐息を感じただけで、背筋にぞくぞくとえもいわれぬ感覚が走り抜けた。
「気持ち良い?」
 耳元で囁かれ、少女ははっと我に返ると、思い出したように精一杯強く青年を睨みつける。
「気持ちよくなんてっ……無いわ……こんなの……苦痛なだけよ……っ」
「まだそんな台詞が言えるんだね。まったく、君はなんてチャーミングなんだろう?」
 青年は少女の顎から耳たぶまで指でなぞると、そっと髪を掻きあげて顔を寄せた。
「でもね、知っておいたほうが良いよ?そんな表情でそんな台詞を言われたら、いじめたくなっちゃうんだ。君が快楽に降伏するところが見たくなる。どうしてもね」
 くすくすと愉しげに笑いながら、青年は膝をさらに押し上げ、少女の下腹部への刺激を強める。
 たまらず少女が漏らした甘い吐息に、彼は満足そうな表情を浮かべた。
 面に切なげな色を浮かべたまま、それでも少女は気丈に毒づいてみせる。
「あなたも……相当暇なのね……いつまでこんな事……してるのよ……?早く入れれば良いじゃないっ……」
345「詐欺師の贈り物」13 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:35:38 ID:VhMenOFy
「なんだ、入れて欲しいの?」
「違っ……」
 慌てて否定する少女の言葉に、青年は冗談だよ、と笑ってみせる。
「大丈夫。最初に言っただろ?これは治療なんだよ。君の男性恐怖症を克服するためのね。僕が気持ちよくなる事が目的じゃない。……まあ、君のこんな表情が見られるのは役得だけど」
「……そういう……趣味……なの?」
「心外だな……僕がどんなになってるか、見せてあげようか?」
 いたずらっぽくうそぶくと、青年は少女の髪を梳くように優しく撫でる。
「君の中に入ったらきっと歯止めが利かなくなるからね。こうやって、君の事を気遣えなくなる」
「…………」
 だめだ。
 このままじゃいけない。
 青年がもたらす甘い快楽に陶酔しながらも、少女の中に僅かに残る冷静な部分が警告する。
 今でさえもう、こんなにおかしくなってしまっているというのに。
 このままこうして青年の愛撫を受け続けたら、最後にはいったいどうなってしまうか分からない。 
 いったいどうすれば、少しでも早く青年から逃れられるだろう。どうすれば。
「……入れて」
 少女の呟きに、青年が動きを止める。
 ゆっくり頭を上げると、怪訝そうな面持ちで、少女の顔を覗き込んだ。
「……ルージェン?」
「……こんな事いくらしたって無意味だわ。わたしが怖いのはこうして優しく触れられる事じゃない。犯される事だもの」
 中に入れさせれば、あとはもう少し耐えるだけで済む。何度か欲望を吐き出せば、さすがに青年も満足するだろう。
 そうすればそれで終わる。開放される。帰してもらえる。
 そんな自分の算段を悟られまいと、誤魔化すように少女は饒舌になる。
「だって、こんな目に遭わされてるのよ?治らなくちゃ困るわ。そうでなきゃ、わたしはただ、あなたに玩具にされただけになっちゃうじゃない。だから……」
「……」
 青年は困ったように眉を顰め、わざとらしくため息をついた。
「……まいったな。本当に良いの?」
「もちろんよ。だから、早く……」
 言い募りながら、少女はそこではっと気づく。
「……もしかして、これも、あなたの計算どおりなの?」
 まさか、自分はまたしてもこの青年の罠にかかってしまったのだろうか。
 そんな少女の不安そうな視線を受け、青年はふっと表情を緩めると、堪えきれずに笑い声を上げた。
「そんな事は無いよ。本当に僕は最後まで我慢するつもりだった」
 肩をすくめるようにしてゆっくり頭を振ると、少し真面目な顔をして、少女に問う。
「……良いんだね?」
 わずかな逡巡ののち、少女は小さく頷いた。
346「詐欺師の贈り物」14 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:36:12 ID:VhMenOFy
「怖い?」
「……少なくとも、心安らかではないわね」
 スカートを捲り上げられ、タイツと下着を脱がされ、脚を押し広げられる。
 青年の問いかけに皮肉で応じたものの、少女の表情はやや硬い。
 見ないようにしても、視界にそれが入ってきてしまう。少女にとって、耐え難い恐怖と苦痛を象徴する肉塊。
 いくら薬で抑えられているとは言え、さすがに恐怖心が頭をもたげる。
 引き裂かれ、貫かれる。何度も何度も。鋭さと鈍さを併せ持つ耐え難い痛みの、悪夢のような記憶のフラッシュバック。
 そんな少女のざわついた心をほぐすように、青年はそっと少女に口付ける。
 唇を離し、落ち着かせるように頭を撫でながら、優しい声で囁いた。
「入るよ……」
 くちゅ、と卑猥な水音が響く。
「ぁっ」
 青年のそれが入り口に押し当てられた瞬間、少女はびくんと身体を震わせた。
 苦痛になりかねないような刺激を与えてしまう事を恐れてか、青年がわざと直接触れることを避けていた部分。
 そこは思った以上に敏感になっていて、青年の身体がほんのわずかにかすっただけでひくひくと痙攣する。
 少女の反応に青年はいくらか躊躇ったようだったが、そのまま熱くとろける少女の中にゆっくりと自分を沈めていった。
「……んっ……ぅっ……」
 強く目を閉じ、少女は唇をかみ締める。
 圧迫感。わざとその存在感を意識させるようにじわじわと、青年が入ってくる。
 熱く、苦く、そして……甘い感じ。
 敏感になっていたのは、外側だけでは無かった。
 青年のゆるゆるとした動きに伴うように、少女の奥深いところからたまらない感覚がこみ上げてくる。
 それに気づき、少女は慌てて「止めて」と言おうとしたが、既に遅い。
「ぁっ……だめっ……ぁっ……んんっ……」
「ルージェンっ……」
 挿入の途中で唐突に締め付けられ、青年は切なげに表情を歪めると、ため息を漏らした。
「感じてくれてるの……?……僕を締め付けて……ひくひくしてる……」
「……っ……あなたが飲ませた薬のせいよ」
 挿入半ばで軽く達してしまった少女は、羞恥のあまり、瞳を逸らして言い訳をする。
 自分がこんな風になっているのは自分が淫らなせいじゃない。媚薬のせいだと、自分に言い聞かせる様に。
 小さな爆発の後も、少女の身体の奥の疼きは収まることなくくすぶり続けている。
 その疼きのおおもとを目指すかのように奥へ奥へと進んでくる青年と、さらに膨れ上がっていく切なさを伴った感覚。
 そんな事は決してあり得ないのに、まるで喉の奥まで貫かれてしまいそうな錯覚すら覚える。
 圧迫感が耐えがたい程大きくなったところで、青年の動きが止まった。
「……全部、入ったよ……」
 ため息混じりの囁き声が少女の耳をくすぐる。
 青年がいま、自分の中に入っている。青年の身体を根元まで埋め込まれて、ぴったりと密着して、ひとつになっている。
 どこか現実感の無い、ふわふわした意識の中でそれを認識したとたん、身体の奥のほうからこみ上げてくる感覚があった。
 苦しいけれど、甘くて、怖いような、それでいて、幸せな様な……。
「大丈夫……?辛くない?」
 優しい声音が少女を気遣う。
 青年の問いに、少女は我に返ると、ふるふると小さく頭を振った。
「……ちょっと……息苦しい感じがするけど……平気みたい……」
「良かった。痛みは……それほど無いみたいだね」
 安堵するように呟くと、青年は瞳を細めて、少女の顎から上気した頬をそっと指先でなぞる。
「……君の中、すごく気持ち良いよ……動いても良い?」
「……好きにして」
 青年と繋がった部分から、痺れるような甘い感覚を覚えている事を隠すように、わざと投げやりな口調で少女は呟く。
 少女を髪を撫でながら、青年はゆっくりと動き始めた。
347「詐欺師の贈り物」15 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:36:42 ID:VhMenOFy
「くっ……」
 青年が、切なげなため息をつく。
「すごいよ、ルージェン……君の中、あったかくて、きつくて、数え切れないほどの手が、僕のを掴んで、撫でて、くすぐってるみたいでっ……くっ……僕のほうがどうにかなっちゃいそうだっ……」
「やだっ……そんな変なことっ……言わないでっ……」
「ぁっ……気持ち良いよ、ルージェン……」
 青年の動きがもたらす身体の奥に深く重く響くような快感はもちろん、吐息混じりのうっとりとした声音で耳を擽るように囁かれると、なぜだか余計にたまらない気分になってしまう。
「やっぱり、我慢したほうが良かったんだ……こんなんじゃ、何もできない……止まらないよっ……んっ……ルージェンっ……」
「っぁ……やだっ……」
「僕のが君の中を擦り上げてるのが分かる?前の辺りに、僕の先の膨らんだところがひっかかる感じがするだろ?ここを擦るとぎゅうって締め付けてくる。ほら、ここだよ……」
「やっ……んんっ……」
「っ……ここが感じるんだね……君の身体の中が、僕のをぎゅって抱きしめてくれるみたいだ。そんなに僕を気に入ってくれたの?とろけそうだ……」
 青年が耳元で囁いてくる言葉に、彼の動きを嫌というほど意識させられる。
 打ち消そうとしても、胎内を擦りあげる彼の一部がはっきりイメージされてしまって、おかしくなりそうなくらいそれを感じてしまう。
「あっ……やっ……」
 中に入ったまま身体をずらし、より深く当たるように、少し位置を変えて衝きあげる。
 たまらず少女の唇から押し殺すような甘い声が漏れた。
「……んっ……」
「やっぱり、この角度が良いみたいだね。君の声がとても艶っぽくなる……その表情、たまらないよ……」
「もう許して……これ以上はっ……んっ……だめっ……怖いの」
「……許してあげない」
 呼吸を荒げたまま、青年が微笑む。
「駄目だよ、逃がさない。このまま、いちばん気持ちいいところまで連れて行ってあげる」
 少女の背に手を回し、熱っぽく囁く青年の口調が熱に浮かされたような頭の中に響く。
 いったん動きを弛め、優しくキスをすると、青年は少女の身体をやんわりと抱きしめた。
 焦らすように挿入を浅くし、入り口の辺りをかき混ぜる。
 やだ……。
 感じる部分を避けるような動きに、物足りなさを感じている自分に気づいて、少女は泣きそうな顔をする。
 思わず青年の顔を見上げると、そんな少女の心を見透かしたように、彼はにっこりと笑った。
「っ!」 
 いきなり激しく衝き立てる。
 青年の不意打ちに、少女は思わず小さな悲鳴を上げた。
「……あっ……やだっ!だめっ!やめっ!やっ……!」
 心も身体も、いいように操られてしまう。いったい彼はどこまで自分を翻弄すれば気が済むのだろう。
 目を閉じ、少女の中を余すところ無く感じようとでもするかのように。青年は人が代わったように無言で、ただ乱暴に少女の身体を突き上げる。
 青年によって注ぎ込まれ、少女の身体に溜め込まれた疼くような快感が、雪崩れるように破裂し始めた。
 本能に任せるような青年の動きに合わせ、限界まで膨らんだそれは溢れ出し、次々に弾けていく。
 その度により強く、より深い快感の波が少女の身体を包み込み、自らの意思とは関わり無く下半身が跳ねた。
「あっ!んんっ!やっ!ぁっ……」 
「……ルージェンっ」 
 少女の身体を抱きしめたまま、青年は少女の奥深くへ自分を押し付けた。
「……ルーっ……くっ……」
 自分の中で、青年がびくびくと大きく震えたのが分かった。
348「詐欺師の贈り物」16 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:39:19 ID:VhMenOFy
「怒ってる?」
「まあね」
 優しく髪を撫でながら問い掛ける青年に、少女は淡々とした口調で答える。
「……謝るつもりなら、代わりにもう少しこうしていても良いかしら?髪を撫でて貰うの、とっても気持ち良いの……正直、抱かれるよりずっと気持ち良いかも」
「そういわれると、ちょっと自信を無くすな」
 苦笑する青年。そんな青年の反応を気に入ってか、少女は微かに笑む。
「貶してる訳じゃないわ。嫌いな人にこんな事されても、不快なだけだと思うから」
「それは告白と受け取って良いのかな?」
「誰もあなたの事好きだなんて言ってないわ。嫌いじゃないって言ったのよ」
「それでも、僕にとっては大きな進歩だ」
 青年の軽口に、少女はわざとらしくため息をついてみせる。
「……それにしても」
 青年は嬉しそうに笑うと、少女の頭を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「まさか、君があんなになっちゃうだなんて思わなかった。可愛かったよ。とってもね」
「それはっ……」
 心持ち赤面すると、少女は弁解するように唇を尖らせる。
「あれは、あなたが媚薬なんて使うから……」
「……」
「何がおかしいの?」
 くつくつと笑う青年を、少女は怪訝そうに見やる。
 青年は堪え切れない、といった風に破顔すると、笑いながらさらりと言い放った。
「ごめんね。嘘なんだ」
「え?」
「あの薬は三錠とも同じ精神安定剤。見た目もまったく同じだっただろ?通常使用量の三倍だったから三錠出しただけでね。媚薬は入ってない」
「なっ……」
 少女は絶句した。
 青年は寝台の上に頬杖をつくと、ひどく楽しそうに続ける。
「まあ、一緒に飲ませたアルコールにも多少の催淫効果はあるけれど、大した影響力じゃない。つまり、あんなになるくらい感じてたのは、君自身……」
「信じられない」
 にこにこと笑う青年を睨みつけると、少女は悔しさと恨みをありったけ込めて呟く。
「……わたし、もうあなたの言葉なんてひとつも信用しやしないわ。絶対に」
「無理だよ」
 青年はいたずらっぽく笑ってみせる。 
「僕に騙せないものなんて無いんだからね」
 落ち着いたら船まで送ってあげるよ。青年は囁きながら、少女の身体にそっと腕をまわす。 


 敵わない、少女は思う。
 悔しいけれど、彼はとても自分みたいな小娘の手に負えるような相手じゃない。
 でも。
 そんな青年に髪を撫でさせながら、彼に気づかれぬよう、少女はくすっと微笑む。
 もちろん、それが演技じゃないって証拠は、どこにも無いんだけれど。
 そういうあなただって、最後、わたしの中で、すごく可愛い顔してたんだから。
 少しだけ溜飲を下げて、少女は青年の胸にそっと頭を預けると、瞳を閉じた。
 
<END>
349 ◆ZAK/revMU. :2009/11/07(土) 19:42:02 ID:VhMenOFy
以上です。長々お付き合いありがとうございました。
350名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 20:24:52 ID:R0jbCTD4
甘いなあ〜GJでした。
だけど我が儘言えば、ルージェンがもっと感じまくってってところを
もっと読みたかったかな。
昨日が読みごたえあったから、今日のパートがやけにあっさり感じてしまった。
351名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 21:16:45 ID:X6UzyCKZ
普通の物語、普通のエロとしてはGJ
でもこのスレとしては物足りない
もっと女の子がフラッシュバックで怖がって嫌がって拒否するところを
男が愛ゆえに無理矢理……を期待していたのに
ただのエッチで終わってしまった
352名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 21:48:56 ID:4+i2wB+6
てめーら一体何なんだ。


何はともあれ職人様、良いものをありがとうございました。とても楽しめました!
ヒロインも可愛いが、詐欺師も可愛く思えて、ハッピーエンドで良かった良かった。


自分も何かしら書こうと思うのだが、自分の趣味全開にすると、
ベタなネタと展開になりそうで困る。
身分差モノって需要あるかねー、プロット立てた時点でかなりの長丁場になっているんだがw
353名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 22:18:04 ID:bAjtaD+w
批評家の先生方は下のスレでご活躍下さい。場違いです。

エロパロでエロネタ書いて叩かれた 原稿用紙2枚目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1223998603/
354名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 22:29:58 ID:5rQtapnd
批評家先生というより、お客様気取りの困ったチャン
赤の他人である職人に依存し甘えているだけ
355名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:15:30 ID:BCfBZo3R
過剰反応しすぎだろ。
>>351は過剰なリクエストかもしれないが、少なくとも>>350は一意見であって
別にそこまで非難される言われはない気がするんだが……
明らかに節度や礼儀を欠くものは 当 然 ス ル ー 対象だが、否定的なレスそのものを禁止するのは、
むしろ職人にとって糧になる有益なものもあるはずなのに、勿体なく思う。
356名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:19:27 ID:8FeWQQGk
待ってたぜ
GJ!!
357名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:21:26 ID:7YhLMlwv
>>349
GJ!!よかったよー
358名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 23:48:17 ID:pVmzeRBN
職人にとって糧になる有益な意見……?
どこが?
自分のワガママを押し付けているだけに見えるけど
>>351なんか明らかに書き手を見下した物言いをしているのだから
注意されて当然でしょう
359名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:24:28 ID:FetAHWgi
いや、むしろなんで注意しようとする?
過保護すぎるだろ?
言論統制じゃあるまいし。

だって、書いたものをわざわざ2chで投下してるんだぜ?
見る人間も多いから否定的な意見が出るのは不可避というか、ごく自然なことだよな?書き手のほうもそれは承知しているはずだ。
要するに職人は褒めてもらうためだけに、ここに来てるわけじゃないはずなんだよ。
人からどう見えたかを率直に書いて貰いたい気持ちもあるはずなんだ。
だって褒めてほしいだけなら自サイトやブログを立ち上げて、そこで賛美されてればいいんだから。
当たり前だが称賛は糧になる。また次も書こうという気になる。でも同様に心残りを指摘する声も参考になることがある。
やっぱりここを変えたほうがよかったか、そういう考えもあるんだなって気づける機会が増える。
我儘とか押し付けと言うが、職人の側からすれば、たかが一意見を重く受け止める必要なんかない。不快なら職人のほうでもスルーすればいい。
言論統制を敷かれGJしか返って来なくて"お世辞じゃないか"と疑心暗鬼になるよりは、
賛否含めて様々なレスの中から自分の糧になるものを選り抜いて心にとめておける環境のほうがいいと思うんだが。

何でそれをあえて封じてしまおうとするんだ。
360名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:29:25 ID:eXpl5gyW
ぶっちゃけどうでもいいよ。
そんな討論は別のところでやってください。
361名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:35:17 ID:q4pl5awA
そうだそうだ
職人さんに申し訳ない。詐欺師GJ。
362名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:38:23 ID:RtVV8pqF
展開予想の次はこれかよw
363名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:41:41 ID:buuZFF96
>>351は無い。
自分で書け。他人に要求すんな。
荒れる原因作んな。
364名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:46:22 ID:dKJD4FMP
職人は自分の書きたいものを書くだけだよ
思い通りに操ろうとするな
365名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:50:10 ID:gQXxyhA9
>・気に入らない作品はスルーしましょう。好きなものにだけコメントをつければおk。

これを守ればいいだけじゃないの?
366名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:51:14 ID:1JxqCg0h
つまり簡単に言うと、
詐欺師の話も、それの擁護も批判も、すべてスレ違いである、
よそでやれ、と。
367名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:53:39 ID:X7vq/Xoo
荒れてるんだから当然ダメなレスでしょ…何回繰り返すんだよ。職人さんは自分の書きたいもの書いてるだけで、評価して欲しいわけじゃないのに勘違いすんな。
368名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:54:08 ID:CChXG2nC
テンプレ作った意味ねーな
369名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 00:55:08 ID:FetAHWgi
>◆ZAK/revMU. 氏
流れにつながってしまったようで申し訳ありませんが、氏のことには一切関係ありません。
私の指摘したかったことは、スレ全体のことです。しかし、御不快にしてしまったら申し訳ありません。


荒らそうとしてるんじゃない。
このスレがとかく空気が悪くなりやすく、折々厨スレとみなされる原因を直視するべきだと思うから書く。
どうにも、愛故スレ住人は都合の悪いレスに過剰に反応して、集団でそれを排除しようとするきらいがある。
こういう体質が閉鎖的な空気を生み、居心地の悪さを作り出してる。
たったひとつ他と違う見解が書き込まれただけでハチの巣をつついたようになる、スルーができない。
もちろんあえて沈黙を保ってる人もいるだろうが、”スルーしようとしない人”がいる限り、永久にこの空気が続いてくんだよ。
愛故スレ住人が誤爆や愚痴に本音を書いてそれが火種になるのは、過度に意見が抑圧されてるせいだ。
誤爆愚痴に書かれた言葉さえも、スルーできないとか、どう考えても耐性がなさすぎるだろう。
展開予想、職人への過剰な絡み云々より、この異常なスルー耐性の低さをどうにかすべきじゃないのか。

以降は必要なら場外に行く。
370名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:02:21 ID:zft8EVub
>>351は独りよがりな自己満足レスだろ
職人のことも、スレ全体のことも考えちゃいない
全くプラスに働いてないじゃないか
371名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:02:55 ID:ny3ik3tM
>>369
激しく同意
372名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:12:06 ID:Krt9TkzQ
いちいち「批判すんな!プンスカ!」と絡むからどうでもいい話で荒れるんだろ・・・

赤ペン先生気取りレベルの批評ならともかく、1、2行程度の個人的な
「こうしたああしたほうがよかった」程度の内容にまで噛み付く住人がきもい。
マンセーしか許されないスレって馴れ合いになるだけだよ。
373名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:13:51 ID:gQXxyhA9
職人さんには全く落ち度がない
楽しく読ませて貰ったし、スレ違いなんて思わなかった
きちんとテーマに沿ってる
374名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:24:48 ID:JkwSq8fT
続き続き!と何レスも続けて要求するマンセーがキモかった
職人に媚び媚び
375名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:35:09 ID:/sM5afy4
女が多いからか知らんけどさ、べたべた馴れ合おうとするよな
すぐ「神」の連発だし、ノリが痛い
もうちっと節度ある書き込み出来ないの?
376名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:45:20 ID:TfprBLeP
はいどうぞ〜
【隔離】場外乱闘専用スレ【施設】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239770078/
377名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 01:53:05 ID:X7vq/Xoo
>>369
あなたは文章が長過ぎ。読む気しない。
378名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 02:39:49 ID:IznvXB7O
自由に職人叩きしまくって誰も寄り付かない無法地帯にすれば?
379名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 04:11:06 ID:A7QDrBF+
ある程度の意見は職人のこれからの作品作りの
参考になるだろうに、
そんな作品に意見交換も出来ないスレなど
つまらないと、個人的な意見。
380名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 05:20:13 ID:R0IXli0R
口火を切った連中から擁護されてるわけでもないのに、馴れ合い連中から目の敵にされてる>>351カワイソス

荒れるからだめに決まってるって……
たった1、2レスのこうだったらいいのにコメに批評家きどりだの過剰要求だのと
集団で騒ぎ立てるから荒れてるように見えるだけだろ。
作品を燃料に話題を出すなりしてうまくスルーすれば何の問題もないわけだが。

その"私たちは職人さんを守ってます"みたいな意識は何なんだ?
批判や叩きが自由化されると職人が追い出されてしまう?それは裏を返せばひどい侮辱だぞ?
職人はそんな脆弱な、保護を受けなきゃいけないような存在じゃない。
マンセーしかいりません、俺の作品にケチ付ける奴は帰れ!みたいな書き手なら話は別だが
381名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 06:47:43 ID:HEDi+ou1
場外乱闘行かないのか?
382名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 07:35:44 ID:t/cNOtU7
確かに書き手のためには、持ち上げるだけの感想よりも、
批評批判があった方が力が向上するだろう。
だけど、ここはそれをする場として設置されている訳ではないと思う。
ここいらで批評批判意見に対する方針も決めておいた方がいいかもしれない。

ここ十数レスがギスギスしてるので、
よーし、パパ何か書けたら書いて流れ変えちゃうぞー
383名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 08:10:22 ID:Dwr7IHvc
>>382
期待!
384名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 09:18:10 ID:P4QfuNGT
>>380
351が「たった1.2レスのこうだったらいいのにコメ」じゃなくて
批評家きどり過剰要求に感じる人もいるんだよ
380がそう思うのは勝手だが侮辱とか脆弱とか
書き手の統一見解みたいに語るのはやめてほしい
385名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 09:25:12 ID:DpIZKsBs
お前ら全員論点が違うて。
>>351が叩かれるのは、勝手に「このスレ的には」とか吐かしてるからだろうよ
とりあえずスレの総意を私物化するなんてアホ臭い
386名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 09:38:35 ID:ny3ik3tM
職人擁護のつもりレスが、一番雰囲気悪くしてるぞ
387名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 09:52:39 ID:Je4MComO
確かに論点が噛み合ってない、てんでバラバラ
それぞれ言いたいこと好き勝手言って、鬱憤晴らししてるだけだわ
388名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 10:17:40 ID:X7vq/Xoo
>>385
あ、確かに言われてみればその通りだ。文章が下手とか、そういうレスには腹立たないからなんで自分が頭にきたのかわからなかった。
一晩たったら冷静になりました。ごめんなさい。
389名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 10:52:16 ID:R0IXli0R
>>384
中にはそんな人もいるかもしれないな。ただし、ほんの一握りの人間だろうがな。
そんな自己決定力の薄弱な、ナイーブな人間が、世界中に公開されたネットの掲示板で作品を公開すること自体間違ってる。マンセーだけが欲しいのなら自サイトかブログに行くべきだ
それに、仮に過剰要求があったとして住人が反応するメリットはあるか?
レスに対してどう反応するかは職人の自由だろ?
住人がやっきになって反論するせいでその自由を奪うばかりか、よけいに事がややこしくなるだけだが。

このスレの一部の人間が作り出す職人さんを守ろう的な空気とそこから見えてくる理想化された職人像が吐き気を催すほど気持ち悪い。
390名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 11:29:40 ID:4RrD+KZt
何でそんなに偉そうなの?
391名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 11:31:33 ID:QOaiUKsM
一気に噴出
職人さん気の毒に
(GJでしたよ!)

なにかりかりしてんのさ
392名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 13:26:24 ID:XrqweSAv
>>389
はいはい
早いとこ自分が一握りだって気付こうな
393名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 13:38:43 ID:P4QfuNGT
>>389
批判叩き当然
351レベルの批判を嫌がるなら脆弱な職人決め付け
自分の考えと違う人間は一握り、自己決定力の薄弱なナイーブな人間貶め、
さらに意味不明な侮辱扱い
理想化された職人像押し付けて一人で酔ってるのは自分では?
色々な職人がいるのわからないなら自サイトかブログに行ってほしい

どうでもいいけどそんな偉そうな高慢レスじゃ
仮にまともなこと言ってたとしても誰もまともに受け取ってくれないって
くだらない独り言ならリアルチラ裏でお願いね
スレ初代から荒れた時によく見かける文体だわ
ねえ?このスレのガンのお一人さん
394名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 13:42:54 ID:9+tFqH3A
お前ら>>3
でおk

ということで俺は
>>382を全裸待機するんだぜ
395名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 15:47:29 ID:V1fGuXBH
書き手に夢見ちゃってるんだね
396名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 16:43:09 ID:ydKZOb7X
つか既に感想レスどころじゃない状態だねえ。

取り敢えず、詐欺師いい仕事!GJ!!
397名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 17:25:07 ID:W6ZSIDwT
ここって二次も大丈夫みたいだけど保管庫見ても二次創作ものってないよね
スレの住人としては二次創作ものはアリ?
あとスレの主旨に沿っていれば特殊嗜好含んでてもおk?
398名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 17:32:26 ID:4RrD+KZt
あくまで自分個人の意見だが、注意書きさえしてくれれば二次も歓迎。
だけど801は該当する板でお願いします、という感じだ。
でも他の人はどうだろう?
399名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 18:41:46 ID:mdDRzKpA
別に二次ナシってことはないと思う
ただ二次ものをシチュスレでやった場合、原作を知らない人も多いから
反応が無くても泣かない覚悟が必用かと

特殊シチュは危なそうだったら注意書きしておくのが無難
400名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 19:40:09 ID:tRRItD8p
寝取り寝取られとか地雷率高そうな物件の上、
それが二次創作だったりするとファンが大変な事になるので
なにとぞ注意書きとNG登録できるようなんらかのワードかトリップをお願いします

まぁ自分が好きな作品の二次はどうせ来ないだろうけどナー
401名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 23:00:58 ID:DpIZKsBs
>399位で良いんじゃないかね。本スレ以外へ落としたSSにケチつけるのはほぼ元ネタ好きだろう
知らないネタなら問題は、愛故に一悶着以上あるかどうかだけ
というか寝取り以前に、まだカプ成立してない場合もあると思うんだ
402名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 00:36:52 ID:B3sNyAbk
有難う、参考になったよ
403名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 03:52:56 ID:kjwfMrVV
作品に対して見解が違おうが、お互いに干渉しなければ済む話
それを文句言う奴は注意されて当たり前って…
トラブルの9割9分がスルーで解決できるって知ってるか?
404名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 04:01:20 ID:f/4I6lST
もう蒸し返すのやめようよ
新作投下期待してます
405名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 04:14:41 ID:kjwfMrVV
>>404
>もう蒸し返すのやめようよ

それです。
どうしてスルーしようとしないんですか。
二次創作に対しての見解を述べるなり、あるいは単純に新作待ってるとレスすれば、
スマートに後腐れなく話題を変えられるのに何であえて言及するんですか。
そういう一言言わずにいられない態度か事をややこしくしているんじゃないでしょうか。


二度は言いません。
406名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 06:56:38 ID:hURH7Fxb
説教くせえ
407名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 10:01:08 ID:5DLriD2S
>>405
>トラブルの9割9分がスルーで解決できるって知ってるか?

人に言う前におまえがスルーを覚えろ
408名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 10:08:39 ID:vLP/fUHU
>>404
あえて自ら轍を踏んで釣りかよ
バカがたくさん食いついてよかったねwww
409名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 10:09:29 ID:vLP/fUHU
安価ミス>>404>>405
410名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 18:58:34 ID:1+dU9uQs
荒れてるところすまんが、
処女を守る神官の女の子を彼女を慕う平民の男の子がなんかの原因でレイプしちゃう作品ってある?
そういう作品を書いてて、ふと既視感を覚えたのだが・・・
常駐はしてないが、もしかしたらここで読んだのかと思って
411名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 19:05:48 ID:1+dU9uQs
すまん保管庫あったんだな・・・>>1とゆっくりしか見てなかった
ちょっと探してくる
412名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:16:24 ID:2Qth3XiQ
<<410
投下待ってます。
413名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:19:57 ID:2Qth3XiQ
ごめん、アンカ記号反対だった恥ずかしい。>>410です。レス無駄遣いすみません。
414名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 22:27:03 ID:5m8PPlzJ
規制されたけど>>410です
ざっと探してみたけど当該作品は見当たらなかった
でもここって昔から良作多いね、
探すの忘れて読みふけったり別のことにふけったりしてしまったよw
完成して規制解けたらここに投下させてもらいたいと思います
415名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 00:08:17 ID:hpHJp423
>>414
規制ドンマイ。投下待ってます。
416名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 20:42:49 ID:d27XFMTx
いまさらだけど詐欺師の人GJ!
ネタバレ→ヒロインを追い詰める場面に萌えました
今回は災難でしたが、あなたの作品好きです
もし良ければまた書きに来てくれると嬉しいです

≫414
あらすじで既に大好物の予感
投下楽しみにしてます
417名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 09:38:40 ID:dCcEcyCr
418名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 19:37:14 ID:b7sqbcsy
その日の夜、俺は日中に嫌な事があったので気分を紛らわす為、
普段は飲まない量の酒を飲んでいた。「ピンポーン。」
チャイムが鳴ったが、俺は無視をしていた。「ガチャガチャ。」
玄関の鍵が開く音がした。合い鍵を持っているのは、彼女だ。
「何してるの?」声に反応し、顔を上げると彼女が立っていた。
俺は「何って、別に何もしてねぇよ。ただ、飲んでるだけだよ。」と
ぶっきらぼうに答えた。彼女は何気にテーブルを見た。
俺が普段飲まない筈の数の空き缶を見て、彼女は驚いた。
「そんなに飲んだら、体壊すよ。いい加減に止めなよ。」
「ウッセェなぁ。自分の体の事ぐらい、自分で分かってんだよ。
お前に色々言われる筋合いねぇんだよっ。」と言い、次の缶を開けようとした。
彼女はそれを奪い「もう、本当にいい加減にしなよっ。」と俺の右頬を強く叩いた。
「イッテェなぁ。いきなり何すんだよっ。」怒りながら、彼女の両肩を
掴み突飛ばした。壁に体を打ち付け、彼女は倒れた。
俺は彼女に近付き声をかけるが、返事がない。
どうやら彼女は気を失った様だ。俺は慌てるが、
気絶している彼女の姿を見て「ゴクッ。」息を飲んだ。
「今しかない。」そう思った俺は、気絶している彼女の衣服に両手を掛け、
一気に引きちぎった。飛び散るボタン。次の瞬間、俺は驚いた。
幼さがまだ残る彼女が身に付けていたのは、大人の女性を思わせる
黒いブラジャーだったからだ。ふざけ合った時に、
何度か彼女のおっぱいを触った時いい感触を感じたが、やはりスリムな体の割に
彼女はなかなか巨乳だった。ブラジャーに守られたDカップはありそうな丸く
形のよい彼女のおっぱい。俺は、その柔らかそうな白いおっぱいを
ブラ越しに揉んだ。時折、気絶しているはずの彼女の口から
「ぁ・・ぅんっ。」と喘いでいる様な声が漏れる。気絶していても感じているのかと思うと
俺の興奮は更に高まり、更に彼女のおっぱいを揉み続けた。
俺は彼女の唇も奪ってみたくなり、彼女を抱え起こして
おっぱいを揉みながら、彼女にキスをした。柔らかな唇だった。
俺は、彼女に対して罪悪感を感じつつも、彼女のおっぱいを直接揉んでみたい
衝動に駆られた。ブラの肩紐に手を掛けた、その時だった。
「うっ、う〜ん。」彼女は気が付いた。一瞬の事に彼女は茫然としたが、
状況を把握し「いやぁ〜。」と俺を突き飛ばした。
彼女は、両手でおっぱいを隠し、目を潤ませ震える声で
「どうして?どうして、こんな事するの?」と俺に言った。
俺は動揺しながらも「俺、お前とヤりたいんだよ。」と言った。
彼女は自ら横になり「好きにすれば?」と顔を背けた。
彼女の目には涙が浮かんでいた。彼女の涙を見て、
俺はそれ以上の事は出来なかった。

419名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 22:59:03 ID:Nj13G7z3
えっ!?
いつの間にか始まって、いつの間にか終わってる?
420名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 04:09:34 ID:ljpu8UsD
続き期待
421名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 04:17:06 ID:/rWJGX9a
合鍵持ってるのにヤってもないって何なの?
近親相姦なの?どういう関係なの?
422名無しさん@花束いっぱい。:2009/11/16(月) 11:07:05 ID:wM79NRCi
女が男を無理やり…って何でないんだろ。他スレでやれってこと?
423名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 11:42:44 ID:CToEEKcP
前にあったよ
保管庫いったら置いてある
424名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 10:46:58 ID:WgUBlr1m
>>1にもあるけど全然おけだと思います>逆レイプ
数が少ないのは、やっぱ男が女を……って方が定番だからかな
逆レイプスレもあるみたいだけど
425名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 12:31:11 ID:XSgxTTz1
おじさんに惚れた女の子が、すれ違いのあまり愛ある逆レイプとか。
子供扱いされて恋愛の対象にされないからせめて思い出だけでもと襲うが、
実はおっさんは彼女の成長を待って我慢してて理性ぷっつんと同時に逆転、獣のように(ry

ないしは愛あるレイプ→不公平と称し愛ある逆レイプ→互いの気持ちに気づいて和姦とか
426名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 12:45:46 ID:mJ6MJlCN
なにそれもえる
427418:2009/11/17(火) 20:28:39 ID:FFxXCBMa
>>421合鍵は渡してあるけど、
友達以上恋人未満っていう設定。
428名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 22:12:40 ID:CaMD9weU
戦地に向かう身ながら、婚前の交渉はイカンと頑なに拒むカタブツの青年を
想うあまり、押し倒して拘束して、初めてにして逆レイプしちゃう少女
429名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 15:20:57 ID:oUYjBPc/
政略結婚に嫁ぐ前に、従者の青年に逆レイプするお嬢様。
430名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 21:14:30 ID:NHSHbLbi
保守がてら逆レイプもの小ネタ
逆レイプ難しい

「や、やめ…やめろ!」
困惑と焦燥が、彼の顔からうかがえた。でも私は、服を脱ぐ手を止めなかった。
指は震えていた。彼は必死で私を制していた。それでも、止められなかった。
「狡いよ、いつも、私だけ」
「やめろ、待て、やめるんだ」
「嫌よ…!」
一糸纏わぬ姿で、眠っている間に腕をベッドに縛り付けられた彼に、跨がった。
彼のYシャツの釦も、一つ一つ、外していく。見慣れた、よく締まった胸部が露になった。そこに、啄むようにキスを落とした。
「やめてくれ、…っ」
「やめない…。狡い、いつも、私に、してる癖に!」
彼の唇を奪った。彼が毎晩、私にするように。強引に、熱く、激しく。
「ん、ん…ねぇ、欲しい、欲しいの、貴方が欲しい」
彼のそこに手を伸ばした。いつもなら、私の意志と関係無く私の中に入ってくる、それ。だけど、今日は私が望んで私の中に受け入れる。
「馨さん…っ!!」
「凛っ、うぁ、あ!」
ゆっくりゆっくり、彼を受け入れた。熱い。拡がる。
「あ、痛い…っ、痛い…」
何度受け入れても、その大きさに、動揺する。痛みすら伴う。
いつも、泣きながら彼を拒むけれど、今日は泣きながら、彼と一つになった。
腰を大きく揺らしながら、彼を締め付けた。
「凛、やめてくれ、う…っ」
「ん、嫌よ…、嫌、絶対、誰にもあげないんだから」
私の初めてを無理矢理奪って、毎晩毎晩私を犯していた癖に、 他の女を幸せにするなんて、許さない。
私を捨てるなんて、許さない。
私を彼が愛していないのなんて分かってる。でもこの人は私のものよ。
「出して。赤ちゃん、出来たら、ずっと一緒に居てくれるでしょ」
「凛、ダメだっ!ダメだ!」
「貴方だけ幸せになるなんて許さないっ…」
胸を彼の胸に擦り付けながら、私は喘ぐ。気持ちいい。彼が深くまで来ているから。
「誤解だ!凛、誤解だよ」
「何でもいい、馨さんの赤ちゃん、欲しいのぉっ」
泣きながら懇願した。離れたくなかった。
彼は苦し気に呻いて、欲を吐き出した。
満たされた筈なのに、私は虚しさを抱えたまま彼の胸に倒れ込んだ。
431名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 05:02:12 ID:FEQIuhiX
GJ
逆レイプたまらん
432名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 09:45:43 ID:e4KgDs5v
あーいいなー、逆レイプも
433名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 22:46:17 ID:rJyoD3YT
人外スレ新作ラッシュの一本がここ向けっぽい雰囲気だった
434姉じゃなくなる日(1/4):2009/11/26(木) 01:38:36 ID:us04B4zP
逆レイプで義理の姉弟ものです。
苦手な方はスルーしてください。



 もう、限界なのだ。

 大きな音を立てないよう気をつけて、扉を閉める。灯りが消され暗い部屋の中、
聞こえるのは規則正しい寝息だけ。その寝息の主の元へと、私はそっと近づいた。
 …よく、寝ている。昔から変わらない、穏やかな寝顔。今から私が行おうとして
いることを実行したら、きっともうこんな無防備な姿を見せてくれないんだろうな。
それを寂しく思うけれど…それ異常に、耐えられないのだ、私は。
 私が血の繋がらない弟である聡に恋をしたのはいつだったのだろうか。実は、血
が繋がっていないと知ってから?…ううん、きっとそれよりもっと前から、私はも
う聡を弟として見ていなかったのだと思う。

 …ごめん、聡。

 心の中で謝りながら、その言葉とは裏腹に聡の両手をとる。起こしてしまわない
ようそっと上に持ち上げ、聡の頭の上でまとめた。ポケットから取り出したのは、
この日のために用意した手錠。…本物ではないけれど、聡の両手を塞ぐくらいなら
できるだろう。…縄や紐では、途中で外されてしまうといけないから。
 聡の両手を手錠でまとめ、動かせないように鎖でベッドにくくりつける。…これ
で、準備は完了だ。…両親が泊まりで出掛けている今日しか、チャンスはない。

「…ダメなお姉ちゃんでごめんね」

 すやすやと眠る聡の上に馬乗りになる。腰をかがめて、口付ける。最初は軽く。
だけど、それだけじゃ足りなくて、薄く飽いた唇に舌を捩じ込んだ。

「ん、んんっ」
「………ん…っ」

 ぴちゃり、と唾液が混じる。息苦しいのか、聡は眉間に皺を寄せ小さく声を漏ら
した。…でも私はキスをやめない。聡に気づかれてもいい。聡が起きてしまっても
いい。もう、後戻りなんて、できないのだから。

「…はっ……んん、さと、る…」

 何度も何度も口付ける。服越しに感じる聡の体温。聡の香り。…なんでこんなに、
聡が好きなんだろう。

「…さとる……」
「ん……ね、ちゃん…?」

 聡の瞼がぴくりと動き、ゆっくりと上がる。至近距離にある私の顔を瞳に映し、
不思議そうに二、三度瞬いた。だがすぐに、ただの悪戯だと思ったのか再度目を閉
じる。
435姉じゃなくなる日(2/4):2009/11/26(木) 01:39:05 ID:us04B4zP
「…なにしてんだよ…重い……」
「………聡、好きだよ」

 そう囁いて唇を重ねる。驚いたように、目が見開かれた。

「…な、……え…?」
「聡が好きで、好きすぎて、おかしくなっちゃった」

 頬を撫でて、さらに口付ける。今の状況が理解できないらしい聡は、混乱したよ
たようにえ、え、と何度も呟いた。身体を起こそうとしてやっと、両手が塞がれて
いることに気づいたらしい。ガチャガチャ、と金属が触れ合う音がした。

「…な、にを…じょ、冗談…」
「冗談なんかじゃない。…聡が、欲しいの」

 半笑いだった聡の表情が、困惑に染まる。そんな顔させたいわけじゃなかったの
に、何故だか少しだけ満たされた。
 キスしながら、右手を聡の脚の付け根に伸ばした。

「…っね、ねぇちゃん!やめろよっ!」
「やめない」
「な、なんでだよっ!おいっ、ねぇちゃん…っ!」
「好きなの」

 聡が暴れて、金属音が部屋に響く。そんなに動かしたら明日、手首に傷ができて
いるかもしれない。そう思うと胸が痛む。仕事を早く済ますためそのまま手錠をつ
けたが、こんなことならリストバンドかなにかを付ければ良かったかもしれない。
 後ろ手でジャージとトランクスを一緒に下ろし、聡のそれを撫でる。聡が息を飲
んだのが分かった。

「っ、やめろっ!」
「やめないって、言ってるでしょ」

 手を動かして刺激してやると、聡のものが段々と固くなっていく。それでもまだ
足りない。これでは、私の中に入って来てはくれない。
 聡の腹に下ろしていた腰を上げ、腿の上に移動する。半端に孤立した聡のそれを、
両手で包み込んだ。息を吸い込み、

「ね、ねぇちゃ…っ!!」

そのまま、咥えた。
 びくん、と聡の腰が跳ねる。口の中のものも同じように震え、大きく、固くなっ
ていく。実践したことなどなかったけれど、この日のために知識だけは蓄えた。ソ
フトクリームを舐めるように、下から上へ舌を動かす。

「う、あ…っ」

 吐息と脈打つそれが、聡が感じているのだと教えてくれる。嬉しい。
436姉じゃなくなる日(3/4):2009/11/26(木) 01:39:27 ID:us04B4zP
「さとる…好き、好きだよ…」
「や、め…」
「ふふ、聡の、固くなってる」

 先端を舌先で刺激する。私の唾液だけでなく、聡の先端もじわりと滲んでいるよ
うだ。聡のものは口では咥えきれないくらい大きくなった。…これで、十分だろう。

「聡、好き…愛してるの」
「だ、ダメだよねぇちゃん…俺たち、姉弟なのに…!」
「でも血なんか繋がってない…私、聡のお姉ちゃんなんかじゃないわ」

 今の私は、泣いてるのか笑ってるのか自分でも分からない。少しだけ滲んだ視界
に、焦ったような聡の顔が見えた。
 愛してるわ、聡。
 スカートをめくり上げ、下着をずらす。そのまま、勃ち上がった聡のものを跨ぎ、
腰を下ろした。

「ぁ、うあ、あ…っ!」
「…あ、いっ……」

 前戯すらしていないのにびちょびちょに濡れていたのにも関わらず、聡の圧倒的
なものを受け入れたそこに鋭い痛みが走る。血も流れているようだ。でも、その痛
みすらいとおしい。だってそれは、聡が私に与えてくれた痛みだから。

「…く、さと、る…聡…っ」
「ね、ちゃん…まさか……」
「……初めてが聡で、嬉しい、の…」

 痛みのせいか、それとも喜びのせいなのか。頬を伝った涙はそのまま聡の腹へと
落ちた。

「聡…愛してるわ」

 愛液と破瓜の血を潤滑油にして、ゆっくりと動き出す。聡は説得するのを諦めた
のか、顔を背けて私の事を見てはくれない。…それは悲しいけれど、嫌われても構
わなかった。嫌われても、聡が欲しかった。姉の顔をして聡の側にいるのは、もう
限界だった。

「聡…ぁ、聡ぅ…っ」
「…っ、ぅ」

 がむしゃらに腰を揺らす。じくじくと痛い。そこに、快感なんてない。それでも。
 私の奥深くに、聡がいるという実感。それだけで、満足だった。
437姉じゃなくなる日(4/4):2009/11/26(木) 01:40:48 ID:us04B4zP
「聡、愛してる、聡…っ」
「…くっ、ダメ、だ…っ、ね、ちゃん、どいて…っ!」
「嫌、嫌よ…っ!」
「ねぇちゃん…っ!」

 聡の限界が近いのだろう。必死に堪えながら、私にどくよう懇願する。けれど、
私がそれを聞き入れることはなかった。

「…聡、きて、きて、聡…っ!」
「だ、めっ、ね、ちゃん…っ!」
「さとる…っ!」
「……っ!!」

 締めつける私の中で、聡が大きく震えたのが分かった。同時に目の前の聡の顔が、
絶望で彩られる。
 ああ、どうしてそんな顔をするの?私は、こんなにもしあわせなのに。
 腰を上げると、聡のものと聡が吐き出した精液が私の中から伝い落ち、ベッドを
汚した。そっと、お腹を撫でる。痛みはあるけど、幸福が勝っている。

 たとえ、今までのような関係に戻れなくても。
 たとえ、聡が私に笑ってくれなくても。


 ―――ねぇちゃん!


 一瞬、脳裏に幼い頃の無邪気な聡の笑顔が浮かぶ。
 そして、昨晩一緒にテレビを見ながら私に話掛ける、昔から変わらない笑顔も。

「……聡、愛してるわ」

 そうキスをした瞬間零れた涙の理由は、私にも分からなかった。

END
438名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 04:31:18 ID:W9HObxki
GJ!!
439名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 13:06:55 ID:JJyWaYcf
切ないGJ
440名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 19:50:47 ID:iK3I4BqZ
GJ!
切なくてよかった
441名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 20:46:47 ID:a+nIt5G4
過疎んなよ
442名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 19:26:33 ID:ABFryxHr
この切なさは何だ・・・?
とにかくGJ!!
443名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 15:13:21 ID:VXKbBday
腐女子スレ
444名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 18:41:46 ID:NeT0LwEQ
>>443

ここは腐女子のスレではありませんよ。
445名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 19:18:50 ID:njCQ+dlw
似たようなもんだけどな
446名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:54:02 ID:eDsAayeK
>>434
Gj
お姉さんの逆レイプいいな

447名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 16:19:29 ID:ATJF2Qd4
腐女スレってより主婦スレ
448名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 22:16:42 ID:8eWkYVKA
リア工・リア厨専用スレじゃないの?
449名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 00:27:46 ID:Rdi7p3cF
気持ち悪いのを承知でやってんだから放っといてやれよ
ガキとかババアとか関係なく性癖なんだからよ
450名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 04:30:48 ID:4oyBCeC5
んな事より、もっと感想書いてやれよ・・・。
451 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:09:51 ID:vaEoYQB3
懲りずに新作出来たよー。
まとめようとしたらちと長くなってその分エロが薄くなっちゃったけど、保守がてら一応投下しときます。
自分は批評は別に構いませんが、スレの雰囲気悪くしない程度でよろしくです。
一部流血描写注意。NGワードは「ロボットとご主人様」で。
452「ロボットとご主人様」1 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:10:39 ID:vaEoYQB3


 こんな事をしたって、決して手に入らない事は分かっていた。
 それでも、俺はこうせずにはいられなかった。
 薄暗がりの中、苦しげに、切なげに悶える少女の身体の上で、俺は命じる。
「笑え」
 俺の言葉に、少女は瞳に涙を浮かべたまま唇の端を吊り上げ、造りものの笑顔を浮かべた。
 違う。激しい苛立ちが俺の思考を支配する。俺が欲しいのはそんな表情じゃない。
 こみあげた激情をすべてぶちまけるように、俺は少女の華奢な身体を貪った。


453「ロボットとご主人様」2 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:11:30 ID:vaEoYQB3
 弟のイツキがロボットになってから、一ヶ月が過ぎた。
 まったく、馬鹿げた話だ。
 ある日、銀の首輪を嵌め、酷い傷だらけで帰ってきたイツキの口からその言葉を聞いたとき、俺は耳を疑った。
「兄さん、僕は今日からロボットになるよ」
 まったく、馬鹿げた話だ。だが、イツキの声音は真剣だった。
 イツキはずっと前からクラスメイトの少年たちからいじめを受けていたが、今日のそれはいつもにも増して酷いものだった。
 下校途中にそいつらに取り囲まれたイツキは、ロボットがつける首輪を嵌められ、メインストリートに引っ張り出された。
 道を行き交う人々の目の前で、イツキは殴られ、蹴られ、そのまま打ち捨てられた。けれども、ロボットの首輪をつけたイツキを助けようとする者は誰もいなかった。
 まるでイツキの姿なんか見えないように、人々は無関心にイツキのすぐ傍らを通り過ぎていった。
 そんなイツキにの前に、ただひとりだけ、足を止めた者がいた。
 それは、薄汚れた小柄なロボットの少女だった。
 彼女はイツキの首輪を見て、イツキを自分と同じロボットだと思い込み、慈しむように微笑みながらそっと手を差し伸べてきた。
 ロボットは人間に心を開かない。ロボットが人間に対して抱くことが出来る感情は敬意だけ。ロボットは、そういう風に造られている。
 イツキも、自分に向けられたその少女の微笑みが、ロボットの間にだけ存在する種類のものだと知っていた。
 だからその笑顔が失われることを恐れて、イツキは少女に、自分が人間だとは言い出せなかった。
 イツキは、少女に嘘をつき続ける事を選択した。そのつまりが、この馬鹿げた狂言だ。
 あの日から、イツキはロボットになった。
 そして俺は、イツキの兄から、イツキの主人になった。
 イツキが連れ帰ったロボットの少女は正規流通品ではないいわゆるジャンク品で、名前すら無かった。
 俺は『ご主人様』として、イツキと共に自分に使えることになったそのみすぼらしいロボットの少女に、ミズキという名前をつけてやった。
454「ロボットとご主人様」3 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:12:16 ID:vaEoYQB3
 イツキがロボットになってから。いや、ミズキが来てから。
 両親を亡くした俺とイツキ今までが二人きりで住んでいたこの屋敷の古びた暗い空気は一変した。
 二人ははしゃぐようにして屋敷中を片っ端から掃除し、締め切った部屋の窓を開け、花瓶に花を飾った。
 そして食事の時間には、洗いたてのテーブルクロスの上に『ご主人様』である俺のために作った手の込んだごちそうを並べてみせた。
 俺はすっかり呆れていた。イツキと来たら、今まで自分の部屋の片付けすらロクにしやしなかったくせに、お茶のひとつも淹れられなかったくせに。
 俺のためにかいがいしく働く二人は、本当に楽しそうだった。屋敷の中は、二人の楽しそうな笑い声で満たされた。
 俺はよく、そんな二人の空気に引き寄せられるようにして、足音を潜ませ、そっと二人がいる部屋を覗き込んだ。
 そこには、満面の笑みを浮かべて楽しげに言葉を交わす二人の姿がある。
 ミズキが両手を広げ、瞳をきらきらと輝かせながら夢中で何か力説していて、イツキがそんなミズキに肩をすくめてみせ、堪えられないといった風に顔を綻ばせて。
 でも、やがてミズキが笑いながら顔を上げて、ふっと俺の姿を認める。その途端に。
 ミズキの面から、天使のような笑みは拭い去ったように跡形もなく消えてしまう。
 代わりにその顔に浮かぶのは、敬意と畏怖の影が覗く造りものの微笑み。
 やや遅れて俺に気づいたイツキも、ミズキの後を追うように表情を取り繕う。
 二人は俺に向かって深く頭を下げると、畏まった声音でこう口にする。
「何か御用でしょうか、ご主人様」
 俺は何も言わずにきびすを返し、部屋の前から離れる。
 やがて背後からは、また二人の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
 暗くて、引っ込み思案で、無気力だったイツキがこんなにも明るくなったのは、兄としては歓迎すべき事なのに。
 なのに、この胸の奥にわだかまる感情はいったい何だろう。
 最初、俺は自分が、ミズキに嫉妬しているのだと思ってた。
 ミズキが来てから、弟は、イツキは俺とほとんど話さなくなった。
 ロボットを演じるイツキにとって俺はもう、兄ではなく敬愛すべき主人で、神のように尊い、崇拝すべき対象で。
 そんな一段高い場所に俺を追いやって、イツキの傍らにちゃっかり収まったミズキの事を、腹立たしく感じているのだとばかり思ってた。
 ミズキと一緒にいるときのイツキは、今までずっと一緒に育ってきた俺でさえ見た事がない様な表情を見せる。
 だから、ミズキが憎くて、俺はこんなにも苛々するんだと。そう思ってた。
 でも、そうじゃなかった。
455「ロボットとご主人様」4 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:13:08 ID:vaEoYQB3


 それは、ある日の昼下がりの事だった。
 居間のソファでのんびり本を開いていた俺の耳に、どこからともなく歌声が響いて来た。
 それは、憶えのある歌だった。昔、まだ幼かった俺とイツキを残して亡くなった母がよく口ずさんでいた歌。
 懐かしさに、胸の奥が疼いた。
 思わず、俺はソファから腰を上げる。
 声の出所はすぐに分かった。窓から中庭を見渡すと、ミズキが箒を手に落ち葉を集めている。珍しく、その傍らにイツキの姿は見えない。
 庭を掃除しながら、少女は歌っていた。本当に幸せそうに。楽しくてたまらないといった風に面をほころばせて。
 かいがいしく箒を動かしながら、薄い唇から流れるように歌を紡いでいく。
 喜びと幸せに満ちあふれたようなその少女の声と姿は、不思議と俺の心を和ませた。
 気づけば、彼女から、目を離す事が出来なくなっていた。
 やがて、ミズキは顔を上げた。ミズキの大きな黒い瞳が、俺の視線とぶつかる。
 途端に、まるでスイッチでも切り替えたかのように。
 ミズキはいつものようにその表情をかき消し、神妙な面持ちで深く深く頭を下げた。
「見苦しい物をお見せしてしまって誠に申し訳御座いません」
 胸に浮かび上がる、ひどく苦い不快感があった。
 俺はつとめて平静を装った口調で、ミズキに問いかける。
「その歌、イツキに教えて貰ったのか?」
「そうです、ご主人様」
 淡々とした声音で、ミズキ。
 しばしの沈黙。
 ややあって、俺はミズキに命じた。
「もう一度、歌ってみせろ。さっきと同じように」
「はい、ご主人様」
 ミズキはまた深々と頭を下げると、ぎこちない微笑みを浮かべ、唇を開く。
 だが、今度のそれは、先の物とはまったく違っていた。
 急に正確さを増した歌もさることながら、造りものめいた不自然な微笑みに、先のような魅力は微塵もない。
 数小節も聞かず、もういい、と口にして、俺はミズキに背を向けた。
 ソファに腰を下ろすと、俺はため息をつく。
 その時にはもう、俺は自分の苛立ちの正体にはっきりと気づいてしまっていた。
 何てことだろう。
 俺が嫉妬していたのは、ミズキに対してじゃなかった。
 彼女の、あの微笑み。決して俺に向けられる事のない、あの表情。
 心臓が締め付けられるように切なく疼いた。
 歌いながら幸せそうに微笑む少女の姿が、目を閉じても頭から離れない。
 でも、それは、イツキだけのものだった。
 ミズキが心を開くのはイツキだけ。彼女が本当に笑い、本当の心を見せるのはイツキの前でだけ。
 自分が決して手に入れる事が出来ないものをイツキは持っていた。
 それが羨ましくて、そして、ひどく腹立たしかった。悔しかった。
 何をやっても駄目で、冴えないイツキ。そんなあいつを守ってやれるのは自分だけだなんて偉そうな事を考えていたくせに。
 何のことはない。俺はただ、イツキの優位に立っていたかっただけなんだ。イツキを見下して悦に入ってただけなんだ。
 胸の奥でわだかまる重いものは、俺のくだらないプライドだ。

 それがまるでガキのような幼稚な感情だって事は分かっていた。
 それでも、イツキに負けるのは嫌だった。許せなかった。俺はイツキより優れていなければいけなかった。


 だから、奪おうと思った。
456「ロボットとご主人様」5 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:13:43 ID:vaEoYQB3


「何の御用でしょうか、ご主人様」
 音も立てないほどにゆっくりと、丁寧に扉を閉めて。ミズキがいつものように慇懃に頭を垂れる。
「ああ」
 鷹揚に頷くと、つとめて冷静な口調で命じる。
「来い」
 言われたとおり、ミズキは俺へ歩み寄った。ランプの明かりの下、少女の黒い髪が揺れる。
 俺はミズキの身体を乱暴に抱き寄せた。そのまま、力任せに寝台へと押し倒す。
 俺に身体を押さえつけられても、ミズキは顔色一つ変えなかった。ただ、じっと俺を見つめている。
「……抵抗しないのか」
 俺が問うと、ミズキは小さく首を振った。
「わたしたちはそういう風には作られていません」
「命令でもか?」
「それがお望みでしたら」
 その声音と表情は、普段彼女が俺に向けるそれとまったく変わらない。敬意に満ちたお定まりの色。
 俺は舌打ちした。
 けれども、一度火のついた欲望はもう止まらない。止められなかった。
 俺はミズキに口づけをした。ミズキの唇は想像以上に柔らかくて、暖かかった。
 千切るようにもどかしげに釦を外し、服をはだける。薄く骨の浮いた、可哀想なくらいに細い身体。
 薄明かりの下で、俺は目を見開いた。
 今まで服に覆われていた少女の白い肌の上、至る所に、桜色の痕が浮き上がっている。
 あるものは丸く、あるものは短い線を描いて。
 背中に水を浴びせられたように、俺は跳ね起きた。
「ミズキ!」
 舌がもつれる
「この痣は……」
「前のご主人様は、よく、わたしをお相手を命じてくださいました」
 その方は、血を見るのがお好きでしたので。
 こともなげに、いつも俺の命令に答えるときのようにさらりと、ミズキは答える。
 俺の中に、言いしれぬ激しい感情がこみ上げてきた。
 ミズキのこんなに華奢な身体に傷痕をつけ、なぶりものにした前の主人とやらに対して。
 そして、こんな目に遭わされながら、少しもそいつを憎んではいないどころか、あまつさえは尊敬までしているような口ぶりのミズキに対して。
 そして。今、そいつと似たようなことをしようとしている自分に対して。 
 ミズキにとっては俺も、非道な前の主人も、たいして変わりはしないのだ。
 ミズキにとって、ロボットじゃない人間は皆同じ。どんなに優しい言葉を掛けようが、どんなに酷い仕打ちをしようが、どんなに愛情を注ごうが、彼女が抱く感情は変わらない。
 尊敬すべきご主人様。
 ロボットには痛覚もあるし、感情があるなら、当然恐怖心だってあることだろう。
 けれども、どんなクズな人間に、どんな惨い仕打ちを繰り返されたって。その相手が人間である限り、ミズキはそいつを尊敬の眼差しで見やったはずだ。
 いま彼女が俺に向けているのと同じ、この表情で。
457「ロボットとご主人様」6 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:14:19 ID:vaEoYQB3
「くそっ……」
 怒りに震える指先で冷たい銀の首輪の下をなぞり、鎖骨に唇を押し当てると、少女は少し身じろぎをした。
「……」
 胸元に指を這わせる。華奢な身体の中で、そこだけがふわふわと柔らかい。
 感触を楽しみながら指を動かして揉みしだき、親指の腹で頂点を撫でると、唇でそれを咥える。
 ざらっとした舌の平で擦りあげるように舐め上げ、わざと音を立てて強く吸いたてた。
 片腕で身体を抱き寄せて胸をしゃぶりながら、もう一方の手で脚を撫であげ、下着の中に指を滑り込ませる。
 ミズキが身を捩らせた。
「っ……」
 濡れていた。
 俺ははっとしてミズキの顔を覗き込んだ。
 ミズキは相変わらずの表情だが、その呼吸は少し速まり、頬が僅かに赤らんで見える。
 俺はぞくりと身震いした。感じてる。こんなことをされているのに。
 俺はもう一度、ミズキにキスをした。
 ミズキの下着を脱がせて太腿を割り、濡れそぼったミズキの割れ目を羽で触れるように優しく撫であげながら、幾度もキスしてやる。
 表情はほとんど変えなかったが、少女の唇から、堪えるような吐息が漏れた。
 指の動きを早め、奥の小さな突起をぬるぬると擦ってやると、少女の瞳が細められる。
「ぁっ……」
 切なげなため息。
 もう、たまらなかった。
 俺はもどかしく服を脱ぎすてると、ミズキに自分のそれを突き立てた。
458「ロボットとご主人様」7 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:14:53 ID:vaEoYQB3
 興奮していた。
 思考が焼け付くようだった。
 衝動に任せて腰を動かすと、とろとろになったミズキの胎内が俺を締め付けてくる。
 ミズキは僅かに眉根を寄せ、声も漏らすことを堪えるかのように唇を噛みしめていた。
「気持ちいいのか?」
「……っ、はい、ご主人様」
 俺の問いに、潤ませた瞳を瞬かせ、ミズキが頷く。
 ミズキの言葉は嘘じゃない。
 けれども、それは人間を無条件に尊敬するロボットの本能が、それを愛情みたいなものに錯覚しているだけだと分かっていた。
 ミズキはイツキが好きなのに、本能に支配され、その心さえもままならなず、好きでもない俺との行為に喜びを感じてしまっている。 
 そんなミズキが可哀想で、腹立たしかった。
 ロボットは本当に哀れな存在だった。そんなロボットの存在自体に俺は苛立っていた。
 それはミズキのせいなんかじゃないのに、俺はミズキにその怒りをぶつけるように、少女の身体を乱暴に突き上げた。
 ミズキの顔が切なそうに歪む。せわしない呼吸。耐えるように瞳を閉じる。
 ミズキがたまらなく愛おしかった。
 もし、今この瞬間にそれが許されるなら、俺も間違いなくイツキと同じ選択をするだろう。
 人間を捨て、ロボットを騙ってでも、ミズキの笑顔が欲しい。。
 けれども、ミズキはロボットで、俺は人間で、彼女の主人だった。
 こんな事をしたって、決して手に入らない事は分かっていた。
 それでも、俺はこうせずにはいられなかった。
「笑え」 
 俺の命令で少女が無理矢理に浮かべた造りものの笑顔はひどく痛々しい。
 ミズキがたまらなく愛おしかった。
 この少女の全てを俺のものにしたかった。
 だが、そうする術は俺にはなかった。
 彼女の心を手に入れることが叶わないなら、せめてその身体だけでも、俺のものにしてやろうと思った。
 背筋をぞくぞくと這い上がる感覚に、俺はミズキの華奢な身体を壊れるほど強く抱きしめた。
 彼女の身体に俺を刻みつけるように深く。俺は彼女の中に、爛れた欲望を吐き出した。
459「ロボットとご主人様」8 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:16:02 ID:vaEoYQB3


「おはよう、兄さん」
 イツキの声に、俺はびくりとした。
 新聞から顔を上げると、俺は内心の動揺を押し隠すように鷹揚な口調を装って答える。
「……お前にそう呼ばれるのは久しぶりだな。一人なのか?」
「うん。ミズキがね、なんだか疲れてる感じだったから、もう少し眠るように言ってきたんだ」
 心臓がずきりと痛んだ。
 だが、イツキは俺の顔が僅かに強張ったことになど気づいた様子もなく、おかしそうに笑う。
「最初は起きるって言って聞かなかったんだけどね。兄さんの命令だって言ったら頷いてくれたよ」
 やめろ。
「ミズキったらね、兄さんの話になるといつだって、あんなに素晴らしいご主人様はいないって言い張るんだ。目をきらきら輝かせてね。僕がなんて言ったってお構いなしさ。正直、兄さんが羨ましいよ」
 やめろ。
「それは、俺が人間で、あいつがロボットだからだ」
「そうかな」
 わざとぶっきらぼうに吐き捨てた俺の言葉に、イツキは首をかしげる。
「ミズキはね、前の主人の事は話さない。ちょっとでもそういう話になると表情が曇るんだ。ミズキはロボットだから、人間を悪く言ったりはしないけど……たぶん、非道い目に遭ってきたんだと思う。
ミズキに何度も言われたよ。イツキは分かってない。イツキのご主人様がどれだけ素晴らしい方か、って。わたしは本当に幸せだって、ミズキはいつも言ってる……ミズキが笑顔なのは、兄さんのお陰なんだよ」」
 イツキは俺の顔を見上げるようにして、にっこり笑った。
「僕だって、兄さんには本当に感謝してるんだ。いくら感謝してもしたりないくらいよ。……面と向かってこんな事言うのは照れくさいけど、本当に」
 やめてくれ。
 はにかんで笑うイツキの無邪気な言葉が、俺の心を容赦なく抉っていく。
 いや、違う。俺の心を苛むのは心優しいイツキじゃない。俺を苦しめるのはひどい罪悪感だ。
 昨夜の行為が脳裏をよぎる。
 俺はイツキを裏切った。ミズキを裏切った。
 俺は、こんなにも俺を信じてくれる二人を、慕ってくれる二人を裏切った。
「兄さん」
 すっかり押し黙った俺の前で、イツキが、突然真面目な顔で呟いた。
「僕、落ち着いたらまた学校へ行くよ」
 ひどく真剣な声。俺は思わず顔を上げる。
「勉強して、大学に行って、僕はミズキの……ロボットのプログラムを解除する方法を見つけるんだ」
「そんなこと……」
 出来る訳が……反射的に口に出した俺の前で、イツキは微笑んだ。
「やってみなけりゃ分からないだろ」
 イツキのまなざしはどこまでもまっすぐで、強い光を持っていた。
 それに比べて、俺は。
 俺は耐えきれずに目を逸らした。イツキの真摯な視線と想いを受け止めるには、俺は汚れきっていた。
 俺はどこまでも卑劣で、矮小な、つまらない人間だった。
 本当に、俺は何てことをしてしまったんだろう。
 ミズキにふさわしいのはこんな俺じゃなく、イツキなのに。それなのに、俺は。
 いくら悔いても、犯してしまった過ちは、もう取り返しがつかなかった。
 だからせめて、これからは二人の良き主人として、二人の幸せをそっと見守ってやろう。何があっても、俺に出来る全ての手助けをしてやろう。
 拳を握りしめながら、俺はそう強く誓った。


 けれども、それはついに叶わなかった。
 終わりは、唐突にやって来た。

460「ロボットとご主人様」9 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:16:52 ID:vaEoYQB3


 月明かりの元。
 その裏路地には血の海が広がっていた。
 そこに横たわる一つの身体と、そして、力なく肩を落とし、血だまりにへたり込む一つの人影。
 まるで悪夢のような場面だった。
 だが、鼻を突く錆びた鉄の臭いが、これが現実だという事を厭と言うほど主張してくる。


 その日。夕飯の時間になっても、二人は俺を呼びに来なかった。
 もう日も暮れるというのに、どの部屋にも明かりは無かった。そして、二人の笑い声もどこにも無かった。
 嫌な予感がした。
 俺は屋敷を飛び出して、二人を捜し回った。そして。
 イツキがよく通っていたその路地に足を踏み入れた途端、俺はそれを目の当たりにした。


 呆然と立ちすくむ俺の気配を察して。
 人影がまるでスローモーションのようにゆっくり、ゆっくりと振り返った。
「ミズキ……」
 からからの喉から、俺は苦労して声を絞り出す。
「一体、何があったんだ!?イツキはっ……」
「ご主人様……」
 大きく破れ、はだけられた服から肌を覗かせて。
 ミズキは、まるで夢でも見ているかのような虚ろな眼差しをこちらに向けた。
「わたしは……」
 振り向いた少女の肩越しに、血だまりに横たわるそれが目に入る。
 それは、見慣れた顔の少年だった。
 大事な大事な、この世でたった一人の、俺の――。
 俺は叫んだ。
「イツキ!」
 駆け寄り、血だまりに膝をつき、その身体を抱き起こそうとする。
 イツキは動かない。
 それどころか、その身体は信じられないほどに冷たく、固い。
 首にぽっかりと空いた穴は既に乾き、黒く変色した血液がこびり付いてる。
「わたしは……」
 血だまりにぺたんと座り込んだ少女が、感情のない声で壊れたように呟く。
 その手に、古びた拳銃をしっかりと握りしめて。
「わたしは……」
「お前がやったのか!」
 イツキの身体から腕を放すと、俺はミズキの襟首を掴んだ。
「お前がイツキをっ……イツキをっ……!!」
「…………」
「答えろ!」
「…………」
 乱暴に揺さぶる。
 ミズキは相変わらずどこか遠くを見るような眼差しのまま、こくりと頷いた。
「わたしが、イツキを殺しました」
「……!!!!!」
461「ロボットとご主人様」10 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:17:23 ID:vaEoYQB3
 次の瞬間。俺はミズキを殴り飛ばしていた。
 ミズキの小さな身体が地面に叩きつけられ、転がる。
 それでも俺の激昂は収まらない。倒れたミズキを引きずり起こし、拳を振り上げる。
「よくも!よくもイツキをっ……!俺の弟をっ……!!」
「……おとうと……?」
 ぼんやりと、ただされるがままになっていたミズキの表情に、初めて僅かな感情が表れた。
「ああ、そうだ!イツキはロボットなんかじゃない!イツキは人間だ!俺の大事な弟だ!イツキは!!!」
「イツキは……人間……イツキが……」
 少女は、反芻するように繰り返す。
 少女は血だまりに浸かったまま、傍らのイツキの屍体を見つめて。
 次に、手の中の拳銃を見つめて。
 そしてまた、イツキに目を向けて。
 そして。信じられない、といった口調で。
 呆然と。
「じゃあ、わたしは、イツキを殺さなくても、良かったの?」
 呟くように、ミズキが漏らす。
 途端に。
 既に赤く腫れた少女の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
 不思議なほど表情のない面の中、ただその瞳から、涙だけが次々に滴り落ち、血だまりに波紋を描く。
 俺は、我に返った。
 そうだ。
「……何があった?」 
 ミズキが、この少女が。好きこのんでイツキを殺す筈がない。
「答えろ、何があった?」
 ミズキはぼろぼろと涙をこぼしながら、やがて唇を開いた。
「わたしたち、買い物に出て、その帰りに、イツキをいじめてた方々に会ったんです。イツキはわたしを守ろうとして、家から持ち出した拳銃で人間を撃とうとして。だからわたしは……だからっ……イツキをっ……」
 嗚咽で、声が途切れた。
 ああ、そうか。
 ミズキはロボットで。ロボットは、人間を守るように作られいて。
 だからミズキは、人間を撃とうとしたイツキから拳銃を取り上げ、人間を守るため、イツキを撃った。
 何てことだろう。
 ミズキは……この少女は、イツキを傷つけ、自分を襲おうとしたクズみたいな人間を守るために、イツキを殺さざるを得なかったのか。
 彼女がロボットであったが故に。自らの意志とは関わりなく。
 まったく、何てことだろう。
462「ロボットとご主人様」11 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:17:51 ID:vaEoYQB3
「ご主人様……」
 やがて、ミズキは俯いたまま、そっと呟いた。
「わたしはジャンクだから、きっとどこか狂っているんですね」
 そっと、イツキの顔に手を伸ばし、その頭を愛おしげに撫で、ミズキは瞳を細める。
「おかしいです。イツキは人間なのに、それでも、わたしはやっぱり、イツキが好きなんです」
 ミズキは、そう独りごち、頭を振った。
「……分からない。わたしの中に矛盾が多すぎて、壊れてしまいそうです」
 複雑な色を湛えた瞳でこちらを見つめながら、ミズキは自分のこめかみにそっと銃口を押し当てた。
 そして、小さく頭を振ると腕を下ろし、俺に、そっと拳銃を差し出してくる。
「何度も試したけれど、駄目なんです。わたしはロボットだから、どうしても自分に引き金が引けないんです」
 だから。
 ミズキは言外に、それを求めていた。
 俺は首を振った。
「駄目だ」
「…………」
「そんな事は出来ない」
「…………」
 拳銃を掲げて俺を見つめる少女の眼差しは、いつになく真摯で。
 無表情なのに、ひどく悲しげに見えた。
「馬鹿な考えは止せ。さあ、俺と一緒に、家に帰るんだ。もちろんイツキも一緒に。だから……」
「…………」
「命令だ!」
 厳しい声。主人の命令。人間の命令。
 ミズキは絶対に逆らえないはずなのに。
「……わたしは」
 なんて事だろう。
 少女は静かに首を振ったのだ。
 薄い唇を開くと、ミズキは囁くような声音で呟いた。
「わたしは、もう、壊れているんです」
「っ……」
 しばし、躊躇って。
 俺は悪態を付くと、少女の手から、奪うようにして拳銃を取りあげた。
 額に銃口を向けると、少女は唇の端を、ぎゅっと持ち上げる。
「ありがとう御座います。ご主人様」
 それは、ミズキが初めて、俺だけに向けた笑顔だった。
 俺は指先に力を込めた。
 鋭い音が響き渡り、そして、静寂が訪れた。
463「ロボットとご主人様」12 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:19:32 ID:vaEoYQB3


 崩れ落ちる少女の身体は、イツキの身体に折り重なるようにして止まった。
 拳銃を乱暴に放り投げると、俺はまだ暖かなミズキの頬に触れる。
 浮かべられた微笑み。俺があんなにも焦がれ、求めたもの。 
「どうして……」
 ミズキの身体からあふれ出した鮮やかな血は、イツキのそれと混じり合い、アスファルトの上に広がっていく。
 人間の血と、ロボットの血。
 同じ色をした二人の血液に、何の違いも見られない。
 当然だ。二つの屍を前にして、俺は吐き捨てるように独りごちる。
「ロボットだって、本当は人間なのに」
 何百年も昔に開発された、生物の遺伝子に直接「本能」を書き込む技術。
 それを駆使して作られたのが、人間に隷属するよう本能を弄られた、ロボットと呼ばれる生まれながらの奴隷人種。
 天が人の下に人を作らなかったから、人がそれを作った。
 人間のエゴが生み出したシステム。
 ミズキは、その犠牲者だった。
「……」
 イツキの身体の傍らに落ちているものに、今更ながら俺は気づく。
 俺には最初、それがいったいなんなのか分からなかった。
 ひしゃげた白い箱と、そこからはみ出した、ぐしゃぐしゃに潰れた白っぽい固まり。
 転げ落ちた割れたクッキーの上に、チョコレートで書かれたメッセージがあった。
『誕生日、おめでとうございます』
 俺の身体が大きく震えた。
 そうだ。
 今日は、俺の誕生日だった。
「……ーっ!!!」
 二人は、俺を祝うために、外出して、そして。
 こんな俺のために。
 二人を裏切ったこんなどうしようもない俺のために、二人は……!
 俺の喉から叫び声が漏れた。
 その場に崩れ落ちるように膝を落とすと、俺は絶叫した。
 やがて声は枯れ、それでも、俺は喉が千切れるまで叫び続けた。
464「ロボットとご主人様」13 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:20:30 ID:vaEoYQB3
◆ ◆ ◆


「そこをどけ」
 握りしめた拳銃の柄は硬く冷たく、その感触はあの時の情景を克明に思い起こさせた。
 銃口を突きつける俺の警告に、だが、その少年は一歩も退かない。
 両腕を広げたまま奥歯を強く噛みしめて、俺を強いまなざしでねめつける。
 少年の後ろにかばわれるように、一人の少女の姿がある。
 栗色の長い髪、黒い瞳。頼りなげな小さな身体に不釣り合いな、冷ややかな銀色の首輪。
「嫌だ」
「ロボットの一生なんてろくなモンじゃない。ロボットなんて哀れなものは、この世界に存在してはいけない」
「嫌だ」
「ロボットの遺伝子は全て抹消しなければいけない。髪の毛一本すら残さない。もう俺たち人間には、ゼロからロボットを生み出す技術は残っていないんだ。今いるロボットたちを全て殺せば、もう誰もロボットは造れない」
 俺はあの時、二人の屍の前で誓った。もう二度とこんな哀しい事は繰り返させないと。
 俺はあれから、人類を堕落させるロボットの排斥を掲げる市民団体に身を投じ、その先頭に立って、反ロボットの名のもとにロボットを殺し始めた。
 もちろん、なるべく苦しむ事がないような方法で。
 ロボットを救うために、ロボットを殺して、殺して、殺し続けた。
 この世界からロボットがいなくなれば、もうあんな悲劇は生まれない。それが俺が出した答えだった。
「わたしたちの……」
 震えるような声が聞こえた。
「わたしたちの幸せを人間の価値観で計らないでください」
 俺は拳銃を構えたまま、視線を少年の後ろへと向ける。
 栗色の髪をした少女は俺の冷たい視線に一瞬怯んだようだったが、それでも気丈に唇を開く。
「わたしたちは人間を尊敬しています。人間のために尽くすこと。それがわたしたちの幸せなんです。だから、わたしたちは哀れなんかじゃない」
 だから、それが哀れなんだよ。
 俺は瞳をすがめ、少女を見やる。
 彼女は、本当ならば生まれるはずがない、人間とロボットの混血。度重なるロボット同士の混血によって生まれたイレギュラーな存在。
 彼女は危険だ。ロボットは自発的に番うことは無い。人間が繁殖を命じなければ増えることはない。
 だが、ロボットが人間の子供を孕むとなれば話は別だ。
 彼女の遺伝子が広まれば、ロボットは爆発的に増殖するだろう。ロボットの遺伝子は人間の遺伝子と混ざり合って広く伝播する。
 そうなっては、もうこの世からロボットを根絶させることは不可能になってしまう。
 彼女は危険だ。この世に存在してはいけないものだ。これ以上の悲劇を生み出さないために、俺は彼女を殺さなければいけない。
「お前たちは気づいていないんだ。自分たちがどれだけ哀しい存在なのか」
「でも、わたしたちは幸せです」
「幸せ?そんなのは、本当の幸せじゃない。……お前も分かっているだろう?」
 最後の言葉は、少女ではなく、少年に向けたものだ。
 少年はそっと視線を落とす。だが、やがて小さく頭を振った。
465「ロボットとご主人様」14 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:21:16 ID:vaEoYQB3
「……メルは殺させない」
「ロボットなんて、生きていたって不幸になるだけなんだ。お前はお前のエゴで彼女を苦しめるつもりか?」
「何か方法がある筈だ。ロボットの本能を覆す方法が」
「無駄だ。ロボットの人間に対する服従は遺伝子に刻まれてた絶対事項だ。本能は、後から手を加えてどうにかなるモンじゃない」
「そんなこと、やってみなきゃ分からない!」
 少年は顔を上げ、俺を見つめる。
 その表情を、俺は知っていた。
 かつて同じ表情で、同じ事を言った少年を、俺は知っていた。


 俺の中で、何かが音を立てて崩れた。


 俺は拳銃を掴んだまま、ゆっくりと腕をおろした。
 何も言わずに、傍らのクローゼットの扉へと手を掛ける。扉を開くと、背後で、少年が息を飲むのが分かった。
「これは……」
 クローゼットの中に、大量に積み上げられたノート。
 俺はその一冊を無造作に摘みあげ、ぱらりと捲る。
 そこに並ぶ文字は、俺の過去の遺物だ。
 その答えを求め、俺はいったいどれだけの時を費やしたことだろう。
 それは結局徒労に終わり、そして諦めた俺は、こうしてロボットを殺すようになった。
「持って行け。手がかりくらいにはなる筈だ」
 吐き捨てるように呟くと、俺は少年を見据え、皮肉交じりに笑う。
「……俺には解けなかった。やってみろよ。お前にやれるものならな」
「あなたは……」
 少年が何かを言いかける。俺はその言葉を遮るように口を開いた。
「もし、ロボットを救う方法を見つけられたら……もう一度、俺のところにロボットを連れてこい」
 拳銃を放り投げると、俺は静かに目を閉じる。  
「俺は数え切れない程のロボットを殺した。ロボットにとっちゃ仇だ。だから、もしロボットが人間と対等になれる日が来たら……俺を殺しに来い」 
 約束だぞ。
 言い放つと、俺は振り返りもせずに、少年と少女が佇むその部屋を後にした。
466「ロボットとご主人様」15 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:22:06 ID:vaEoYQB3



 最初から、俺はずっと間違い続けてきた。償いきれないくらいの罪を重ね続けてきた。
 俺はどこまでもつまらない愚かな人間だった。
 けれども。
 いや、だからこそ。この選択だけは間違いじゃないと信じたい。
 なあ、イツキ、ミズキ。
 俺が大好きだった二人。
 俺は空を見上げ、目をすがめた。
 唇の端を吊り上げ、俺は笑ったつもりだったが、俺の頬には何故か涙が伝っていた。


 
                                                 <END>
467 ◆ZAK/revMU. :2009/12/03(木) 18:22:45 ID:vaEoYQB3
以上です。お目汚し失礼しました。
468名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 19:06:08 ID:GNnwPu5g
GJ!GJ!
469名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:14:38 ID:g1vJmp9P
GJ!
本当に感動しました
目から汁が…
470名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 22:37:52 ID:7td/S+N9
GJ!!!
感想を書きたいんだけど、言葉にならない
本当に良かったよ。ありがとう
471名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 18:54:14 ID:a6PY7nw/
すげぇ!
GJどころの騒ぎじゃねぇよ!!
こんな素晴らしい作品をありがとうありがとう!!
472名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 21:31:36 ID:mhsnIcaD
age
473名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 00:27:10 ID:Hal/nCGp
凄まじくGJ!兄に激しく萌えた
個人的にはミズキもお兄さんの事好きだったと思いたい
474名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 11:51:36 ID:V2tbrZbb
素晴らしい!!
475名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 04:16:11 ID:F2GqoXcW
腐スレ
476名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 20:22:47 ID:9ZkGabzz
GJの仕方に鳥肌が立った

ここの職人さんは好きだけど。
477名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 20:34:05 ID:AGfZOStR
腐女子スレだから仕方ない
478名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 21:10:00 ID:31KlnbXU
職人は良質な仕事をするのに、住人の質は残念すぎるから困る。
479名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 23:10:02 ID:wtF4ZGxu
スルーすべきなんだろうけどさすがに腹立ってきた。
書き手の端くれとしては空気を悪くする以外何の役にも立たん
スレの住人の質批判よりも、少しくらい厨でもgjの書き込み
ひとつの方がよっぽど嬉しいわ。
gjも感想も貰えないなら自分だったら二度と書かない。

◆ZAK/revMU.氏、投稿直後に何度もこんな事になってしまって
本当に申し訳無い。とにかくgjです。
480名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 23:29:18 ID:yLiX/+QM
前スレか前々スレで出てた、体や顔のコンプレックス→愛あるレイプが読みたい……

かなり具体的なプロットまで挙がってたから、いつか読めると信じていたのだが
481名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 23:34:52 ID:R13dGPxo
無関係な◆ZAK/revMU.さんの名前出すなや
問題に巻き込むな
482名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 23:58:59 ID:oVuRM8i6
気色悪い度を越えたベタ誉めのGJ
無関係の職人のトリ出して謝るフリの自称職人
設定の切れ端ぐらいでいつか読めるとなどとほざく読み手

相変わらずだなゴミども
483名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 00:11:30 ID:OpemCOca
こんなスルースキルも思慮も欠けた人間がよくこんな殺伐とした板で書き手なんてやってられるな。
と、一瞬思ったが、エロパロにも様々なスレがあるわけで、例えばここみたいに空気が温くて、
さして投下に緊張を伴わないスレなら他の大勢の中にちらほらそういう書き手がいてもおかしくないか、と納得できた
484名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 02:58:45 ID:qY7cyBsu
住人の公開オナニーが始まった
485名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 04:47:54 ID:o250O72N
いや>>481-484みたいなレスする住人が一番いらないに同意なんだが…
なに俺釣られクマー?
486名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 05:00:11 ID:teBsYGQw
同意。
>>485はいらない子。
なに俺釣られクマー?
487名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 05:03:08 ID:vTaEHb9M
踊り子さん達頑張ってください!
488名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 00:05:05 ID:MzN67uPc
>>480
ここで具体的にシチュを書いてみると職人さんの良い刺激になるかも…

自分はありきたりだけど、今まで遊んでたモテ男が清純派な女の子に夢中になるってのが好き。で、相手にしてもらえずに無理矢理…ってのがたまらん。
489名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 09:28:13 ID:aQRIbVes
>>488
遊びで真面目ちゃん近づいたら、本気になったチャラ夫

真面目ちゃんもチャラ夫の優しい一面とか知ってて、好きなんだけど「わたしは遊びなんだろうなぁ」て思ってる。

真面目ちゃんの一線ひいた態度に、煮詰まったチャラ夫が………

だらだら妄想スマン

490名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 12:39:03 ID:R4+Fsnf5
せめて他のスレでは自重しろよ・・・なにやってんだよ
491名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 19:19:49 ID:MzN67uPc
>>489
まさにそういうのが好き。
清純派じゃなくても、お洒落に興味のないボーイッシュな女の子でも良いな。
492名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 00:51:46 ID:N8kXYiZM
645 :名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 05:02:26 ID:lfKdDTXV
GJですー。
『愛するが故に〜』のスレにも繋がるものがあるような内容に、
あのスレ住民としても非常に満足させていただきました。

いちいち名乗り出るな
厨スレの同類と誤解されたら困る
493名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 13:31:21 ID:Se3vhZ9S
ネタ投下します。
種馬になった負け知らずの競走馬が、過去一度だけ負けた馬の娘に惚れちゃったらこうなるネタ。
擬人化スレに投下しようか迷ったけど、愛あるレイプネタで浮かんだのでこちらに落とします。
携帯からなので、見にくかったらごめん。
擬人化が嫌いな人は華麗にスルーしてください。



『パパ!すごい!すごい!また一番よ!!』
嬉しそうな声を上げる子供が、男の目の前を歩く大きな背中に向かって飛び掛かっていった。
甲高い声に驚き顔を上げた男は、その時初めて少女を見た。
葦毛の父親に纏わり付く、見事なアルビノ。
白銀の美しい毛並みが、風に靡いていた。
男が初めて負けた相手の娘の姿。
初めて見た。
白銀の毛並みと、紅い双眸。
男の鍛え上げた黒い体躯と漆黒の瞳とは全く違うその美しい肢体。
男は初めて味わった敗北と共に、湧いた感情に戸惑うことすらできず、ただ苛立ちを募らせた。
思えば男の執着は、そこから始まったのだろう。
494名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 13:33:18 ID:Se3vhZ9S
「だめっ!わたしなんかじゃ貴方の血を汚してしまうわ。お願い、離して!」
「何を言っている?こんなに欲情にした匂いをさせているくせに」
女の悲痛な叫びに、男は軽く舌を出して唇を舐めた。
鼻面を女の頬に押し当て、濡れそぼつ女の腰を引き寄せた。

ひどく欲情した匂いが部屋に広がっていた。
頭がクラクラする。
彼女のこんなにも欲情した姿を見た男が自分だけしかいないことに優越感を覚える。
白銀の髪を掴み、男は女の美しい顔に舌を這わせた。

「初めてなんだろう?安心しろ、俺が教えてやる。熱の吐き方も男の誘惑の仕方も、な」
部屋には男と女の姿しかない。
これは、仕組まれたことなのだ。
彼女に異常なほど執着を持つ男に気付いた者による、仕組まれた交配。
たとえ彼女が嫌がっても、止めることはできない。
今だ勝利経験もなく、自信を失い卑屈になっているが、彼女の血もまた残さなければいけないものだ。
その血統は、男よりも優れているのだから。
発情期に入った彼女に宛がわれたのは、男が初めてなのだろう。
部屋の隅で怯えて震える彼女は、身体を侵す熱に狼狽え瞳を潤ませて頼りなげに男を見上げていた。
だが、その身体は欲に負け、男を欲している。
その匂いに、欲を煽られる。

「お願い、やめて。わたしなんかよりもっと、もっと強い血を持つ女性がいるじゃない」
「俺はお前がいいんだ。他の女となんか、子供は作らない」
女の尻を後ろから撫で上げ、脚の付け根に指を添わす。
びくりと震えた女を、逃がさないように強く腰を押さえる。
割れた肉の間から漏れたぐちゃりと濡れた音が、部屋に響いた。
熱に浮かされる身体に反して、言葉は彼女の強い意志を伝え、いやいやと頭を左右に振る。

「抗うな。お前が辛いだけだ」
発情してしまった以上、男を受け入れなければ辛い状況が続く。
まして、その匂いで同じように盛ってしまった男が傍にいるのだ。
理性だけで堪えられるものではない疼きが、身体を蝕んでいるに違いない。
495名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 13:33:58 ID:Se3vhZ9S
「だめっ、そんなことをしたら処分されちゃ、ん、んぅ」
それでもまだ耐えようとする女の唇を塞ぎ、男は濡れた唇で冷たく笑った。
とろりと潤んだ女の紅い瞳が、男の欲を煽る。
濡れた下半身が、女の意志に逆らって男にこすりつけられた。

「処分?俺が?俺との仔が?残念だが、それはないな。俺は引退するまでたったの一敗しかしなかった連勝馬だ。その血を残さないわけにはいかない」
そう、そのたった一敗の相手がお前の父親だ。お前にも、強い競走馬の血が流れている。
いや、お前にこそ歴代の優勝馬の血が流れている。だから。

「いやっ!!あああ!!」
女の腰を高く持ち上げ、濡れた蜜壷に怒張を押し当てた。
白銀の髪を振り乱して抵抗する女の悲痛な叫びは、藁のベッドに押し付けた。

だから、ここで俺の子種を孕ませなければ、お前は他の男に宛がわれる。
悪いが俺の執念は、そんなに薄いものではない。
お前でなければ、俺の血を残す気にもなれない。
現に、他の女の匂いを嗅いでも、発情できなかった。

「俺の相手はお前しかいないんだ。観念するんだな」
俺の血を残すと望む声は多い。
その俺が、お前にしか欲情しないのだ。
俺の血を残すために、血統の良いお前は利用される。
それでも、お前が俺以外の男を受け入れるなんて許せない。
お前は、俺のものだ。

初めて受け入れた怒張の突き上げに耐え切れず、女は気を失った。
それでも、欲情した女の匂いは男を煽って誘惑する。
男は、眠る女の胎内に幾度も精を放った。
まるで自分の匂いを刻み付けるように。
まるで、彼女の発情を他の男の嗅覚に察されないようにするために。
幾度も幾度も、彼女を蹂躙した。

「お前は、俺のものだ」

終わり
496名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 14:11:17 ID:VBtg9c4s
昔競馬に凝ってた自分には面白かったよ〜

で、男の方は、種馬になったけど、牝馬に興味なかったのが、
この白毛に出会って目覚めたということなんだろうか。
そうなら、これ以降は他の牝馬相手にも種牡馬として役立つんだろうか?
この白毛限定だと種牡馬としての未来は暗いと思うと、ロマンもへったくれもないが。
497名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 15:32:11 ID:RewuePw5
まぁそれはそれで悲恋っぽくていいんでないかい?
処分されるのがわかってて一人(一匹?)への思いを貫くというのもなかなか…
498名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 16:49:20 ID:VBtg9c4s
現役時代にそこそこ実績を残せば、功労馬として余生を送れそうだが…
そうなると普通に考えれば、この白毛にはもう種付けはできないよねえ。よっぽど強い子が生まれない限り。
499名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 17:41:08 ID:6jGPkVhn
魔王書いてた人はどうなったかな…
500名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 00:44:22 ID:Jx7CVKCI
擬人化作品はあまり読んだことなかったが
なかなか興奮するものだね
GJ
501名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 18:16:24 ID:9NrqaNuR
保守
502かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:14:02 ID:lhgx3HsV
おはようございます。お久しぶりです。
初めましての方は初めまして。

半年前に投下した作品の後編を投下します。
タイトルは『想い一途に』
保管庫の方に前編と中編はありますので、よろしければそちらもどうぞ。

NG指定はコテハン名かトリでお願いします
503かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:15:09 ID:lhgx3HsV
『想い一途に・後編(二人の場合)』



「あっ、あっ、あん……」
 口から漏れる喘ぎ声をどこか他人事のように聞きながら、私は彼に抱かれていました。
 十回以上重ねた彼との行為は、まるで私の生活の一部のようで、最近はもうあまり抵抗も
しなくなっていました。抵抗しても体の大きな彼に敵うはずもなく、結局は無意味だった
からです。
 それでも涙は出ます。彼に犯されている間、私は悲しい気持ちでいっぱいで、器から水が
溢れるように涙が止まらないのです。
 私は、彼が好き。
 留衣くんが大好き。
 想いが通じあっていればこの行為もきっと素晴らしいものになるのでしょう。私の想いが
彼に届けば、彼がそれを受け入れてくれれば、私は満たされるに違いありません。
 でも、実際はそうじゃなくて、
 そんなこと現実にはありえなくて、
 彼は私をただ犯すだけでした。



 六月十二日。
 学校から帰ってくると私はすぐに勉強を始めます。私の志望校は合格ラインが高めなので、
あまり気を抜くことはできません。
 その日も私は帰宅するや自室にこもっていました。
 苦手な数学を重点的に解いていると、唐突に玄関のチャイムが鳴りました。
 私はびくりと震えました。また彼が来たのかと思ったからです。
 ここで居留守を使っても彼は合鍵を使って入ってきます。私はのろのろと重い足取りで
玄関に向かいました。
 これではまるで彼の行為を受け入れているみたいで、私はまた悲しくなります。
 私はもう、妹でも、幼馴染みでもなく、ただ体だけの繋がりしか持たない一人の女でしか
ありませんでした。
 ただ──妹扱いされないことにだけは、なぜか安堵している自分がいました。
 やっぱり私は──
 眩暈がしそうなくらいに激しい心臓の鼓動を聞きながら、私は玄関のドアを開けました。
504かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:16:38 ID:lhgx3HsV
      ◇   ◇   ◇

 六月十三日。
 雨が降りそうで降らない空模様の下、俺は市立図書館への道を歩いていた。
 受験生である。三年経って再び俺、相川留衣は受験生という立場に戻ってきたのだ。
 目指す大学は地元──それは三年前と変わらない。難易度は遥かに高くなっているが、
別段気にしていない。今の時点でもそう悪くない判定が出ているし、順調に行けば十分
合格は可能だろう。
 図書館に行くのは、考えすぎないようにするためだ。
 勉強するなら家でも構わない。だが、家にいると隣家に住む幼馴染みのことを気にして
しまう。
 俺が幼馴染みの四本比奈を初めて犯した日から、二年以上の月日が過ぎていた。
 回数で言うなら十四回。
 それは俺にとって罪の回数でもある。
 必要な事だとは思っている。比奈は生まれつき生命が零れ落ちやすい体質で、魂の状態が
不安定なのだ。それを防ぐには彼女を抱かなければならない。
 性交によって互いの体を深く繋ぎ合わせ、俺の魂の波長を比奈の魂に送り込む。それに
よって不安定な魂を安定させるのだ。俺はその力のことを『調律』と呼んでいる。
 比奈はこのことを知らない。だから彼女は俺のことを、好き勝手する暴行魔みたいに
思っているのかもしれない。昔は実の兄のように慕ってくれていたが。
 そんな関係にはもう戻れないかもしれない。
 事情を話しても比奈は受け止めない。受け止められない。
 互いの関係も親同士の関係もその他様々な事情も、全部比奈には重荷なのかもしれない。
 俺はそのうちなんとかなると思っていた。今は受け入れられなくても、いずれ必ずわかって
もらえると信じていた。
 そう思い続けて二年が過ぎた。
 比奈は中学生になっていて、あと一年もしないうちに高校生になる。
 進路はどうするのだろう。
 比奈の成績はどの程度なのだろう。優秀ならあるいはよその進学校に進むこともある
かもしれない。
 その時俺はどうすればいいのだろう。
 彼女を繋ぎ止める手段を俺は持っていない。
 言葉は届かない。想いも伝えられない。かつての気安さもとっくに無くなっていて、
本当に俺は何もできない。
 命に関わることだ。無理矢理にでも側にいさせなければならないのかもしれない。だが
俺は比奈を束縛することに疲れを感じていた。
 今でも無理を強いている。それだけでも罪悪感でいっぱいなのに、その上進路まで縛り
付けるなんて。
 しなければならないことだとしても、終わりの見えない束縛はきついものだ。
 ましてや好きな女の子を犯し続けるなんて。
 罪悪感や背徳感が入り混じってぐちゃぐちゃになる俺の精神は、正直限界だった。
 逃げ出したいと思ったこともある。
 だがそれは許されない。逃げるということは見捨てるということ。比奈を見捨てるなど
俺にはできない。信念などではなく、単に逃げる覚悟がないというだけの話だ。
 結局俺は比奈と一緒にいたいのだ。
 それがどんなに俺の心を傷付けることでも、傍らにいられなくなることの方が恐ろしい。
 俺は弱い人間だった。
505かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:18:44 ID:lhgx3HsV
 道を歩きながら考えるのは比奈のことばかりで、俺はそれに気付いて頭を軽く振った。
 受験のことなどまるで頭にないことに苦笑する。何のために図書館に向かっているのやら。
 無意識のうちにうつむいていた顔を上げ、前を見る。このまま道なりに行けば図書館が
左手に見えて、

 比奈がいた。

 図書館に通じる一本道。その傍らに幼馴染みの姿があった。
 ほっそりとした体に流れるような黒髪。薄手のブラウスとプリーツスカートが涼しげな
印象を与える。二年間で背は10p以上伸びていて、女の子から女への変化がはっきりわかる
程だ。
 俺は茫然としていた。どうして比奈がここにいる?
 俺は普段比奈と極力顔を合わせないようにしている。もちろん気まずさがそうさせている
のだが、比奈の方もそれは同じだったようで、こうしてまともに外で会うのは久しぶり
だった。
 多少の嬉しさと多大な気まずさに襲われながら、しかし歩みを止めることもできず、
俺は一歩一歩彼女に近付いていく。
 距離5メートル。
 4メートル。
 3。
 2
 い
「留衣くん」
 そう呼ばれたのは1メートル一歩手前という距離まで近付いた時だった。
 通りすぎるつもりでいたのに、呼び掛けを無視できなかった。
 比奈に「留衣くん」と呼ばれたのは本当に久しぶりだったから。
 手を伸ばせば簡単に触れられる距離に比奈がいる。
 俺は気まずく思いながら、比奈を見やった。
「おはよう、留衣くん」
 反対に、比奈は少しの気後れもない様子で言った。
「お……はよう」
 変な緊張に縛られながら、俺は辛うじて返す。
 比奈はそんな俺の様子にかまわず訊いてきた。
「図書館行くの?」
「あ、ああ」
「受験生だもんね。私もだけど」
「……」
「今日の予定、他に何かある?」
「……いや」
 すると、比奈は少し口元を緩めた。
 それを見て俺ははっとなった。
(……笑った?)
 が、その表情は目に焼き付けることもできないうちに消えてしまう。
「留衣くん」
 再び名を呼ばれた。
「もしよかったら……今日一日付き合って」
506かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:20:22 ID:lhgx3HsV
 図書館行きをやめて、俺は比奈に付き添った。
 比奈は来た道を戻るとそのまま駅へと向かった。どこへ行くのか尋ねると、「わからない」
と言われた。
 比奈以上に何もわからないまま、俺は彼女についていく。
 駅に着くと電車に乗って郊外に向けて移動した。どこまで行くのか見当もつかなかったが、
四つ先の駅で「降りよっか」と言われたので黙って従った。
 来たことのある場所だった。
 市街地の中心から離れて二十分。そこにはよく恋人や子供連れの家族が訪れる。
「遊園地か?」
 先を歩いていた比奈がゆっくり振り返った。
「思い出その一」
「……思い出?」
「憶えてない? ほら、小さい頃に初めて一緒に出掛けた場所。私は三歳か四歳だった」
 言われて思い出す。お互い家族同士で連れ合ってここに来たことがあった。
 だが、
「初めてじゃないぞ」
「え?」
「お前と一緒に初めて行った場所は動物園だった」
 比奈はきょとんとした顔をする。
「え、本当? 私憶えてない」
「お前まだ二歳だったからな。憶えてなくてもおかしくない」
 俺はそのとき五歳だったから憶えている。全部ではないが、まあ大体のことは。
 この遊園地に来たことは確かにあった。俺が小学一年の時だから比奈は幼稚園児か。
 まだ、恋愛感情はなかったと思う。
「ちょっといろいろ、回ってみたくなったの……」
 比奈の呟く顔は少し寂しげだった。
 どういうつもりなのか、よくわからない。
 今日会ったのは偶然じゃないだろう。比奈は俺が図書館に行くのをなぜか知っていて、
先回りしていたに違いない。そうでなければあんな一本道で佇んでいる理由がない。
 比奈は今日何かをしたくて、そしてそれには多分俺の存在が必要なのだろう。
 とはいえ具体的に何をするつもりなのか、皆目見当がつかないのだが。
 比奈は言った。
「思い出巡りをしたいの」
「……は?」
 唐突な一言に俺は目を丸くした。
「思い出巡り……って、なんで」
「ちょっと、確認したいことがあって」
「……?」
 何を確認するというのだろう。
 思い出。
 まだ彼女の両親が健在だった頃の、幸せな思い出。
 それを振り返るということは──
「それが必要なんだな」
 比奈ははっきり頷いた。
 比奈のこんな、意志の固い毅然とした態度を久々に見た気がする。
 比奈が何を考えているのか、何を求めているのか、はっきりとはわからない。
 ただ、それはおそらくとても大事なことなのだろう。
 俺に声をかけてまで必要な、何か。
「……わかった。必要だというなら付き合うよ。説明したくないならしなくても構わないし」
 比奈は小さく息を吐くと、微かに笑んだ。
 その笑みを見て、さっきの微笑はやはり錯覚ではなかったのだと確信した。比奈は今、
確かに笑っている。
「ありがとう」
 その言葉も久しぶりだと俺は思った。
507かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:22:45 ID:lhgx3HsV
 曇り空が鬱陶しい湿気とともに辺りを覆い、遊園地の中もそれにあてられてしまったかの
ようにどんよりとしているような気がする。
 いや、錯覚かもしれない。単に俺の戸惑う心がこの場にそぐわないだけの話かもしれない。
遊びに来たわけじゃないから。
 遊園地に入場すると、比奈は適当に散策を始めた。
 ジェットコースターもメリーゴーラウンドも観覧車も眺めるだけで、乗るつもりはない
らしい。観覧車に二人きりなんて気まずいにも程があるので、俺にとっては都合がよかった。
 奥に進んでいくと、ここの乗り物の目玉の一つ『オクトパスグラス』が見えた。シートが
固定された八つの円形台が中央の支柱からシャンデリアのように吊り下げられていて、
支柱と台それぞれが回転するという安全性に疑念を抱きたくなる代物だ。
 比奈は少しだけ興味を示したが、そこも素通りした。そのまま近くの軽食コーナーに
足を向ける。
 フランクフルトやたこ焼きの匂いが漂ってくる。特に食べたいとは思わないが、比奈は
どうだろうか。
「……ソフトクリームを落としたの」
 ぽつりと比奈が呟いた。
 俺は一瞬意味を掴みかねた。
「そう、私はそれで泣き出して……そんな私を、お父さんが抱き上げてくれて」
 昔の思い出。
「でも……はっきりとは憶えてないの。お母さんが何か言ったかもしれないし、留衣くんが
何かしてくれたかもしれない。でも、それは憶えてない」
 俺は憶えている。あの時は確かソフトクリームを買い直して、比奈は鼻をすすりながら、
でも少しずつ舐めていた。帰る頃にはすっかり泣きやんでいて、楽しげに笑っていた。
「お前は笑っていたよ」
 比奈のどこか寂しげな様子に、俺は思わず言っていた。
「だから、きっと楽しかったんだと思う」
 思い出というものは比較的美化されがちだが、だからといって悪い思い出というわけでも
ないはずだ。
 もう少し気の利いた言い方ができればいいのだが、気まずい思いが依然としてある以上
仕方がない。
 比奈は何かに思いを馳せるように目を瞑り、小さく頷いた。
「憶えてないけど……でもお父さんが優しく抱き上げてくれたことは憶えてる。お父さんは、
ちゃんと私のお父さんだったよ……」
 奇妙な言い回しだと思った。ちゃんと、とはどういう意味だろう。
 だが比奈はそれきり何も言わず、しばらく佇んでいた。
 俺は黙ってその寂しげな姿を見つめていた。
508かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:25:26 ID:lhgx3HsV
 結局乗り物には一つも乗らず、俺たちは遊園地を後にした。中にいた時間は一時間も
なかった。
 次に向かったのは海だった。
 遊園地からは駅を跨いで反対方向だったが、俺は特に口出しはしない。比奈には比奈の
考えがあるのだ。思い出巡りとやらをどういう基準で進めているのかはわからないが、
行きあたりばったりというわけでもないだろう。よっぽど変な場所に行かない限りは問題
ない。
 堤防の向こうに広がる砂浜。その先にどこまでも続く水平線が見える。
 曇り空の下で海は心なしか荒れているように見えた。
「雨降ってきたら危ないぞ」
「……」
 比奈は答えずに砂浜へと下りていく。
 無視されたというより聞こえてなかったみたいで、比奈はそのまま薄灰色の砂地を
歩いていく。服が汚れるんじゃないかと思ったが、比奈は特に気にしていないようだ。
 枯れた小枝や貝殻がばら蒔かれたかのように散っていて、天気とあいまって少し淋しい。
 もうすぐ満ち潮に変わる。俺は心配になって比奈の後を追った。
「おい、あんまり波に近付くな」
 潮の匂いを波風の中に感じる。佇む幼馴染みの姿はそれは絵になったが、やっぱり服が
汚れてしまうのはよくない。綺麗な髪も傷んでしまうだろうし。
 比奈は顔を上げてこちらを見つめた。
「お母さんみたいなこと言うんだね」
 俺は小さく眉を跳ね上げた。
「なんだそれ」
「小さい頃に勝手に泳ごうとしてお母さんにすごく怒られたことがあるの」
 俺は怒ってないぞ。
「そのせいかあまり海にいい思い出ってないんだよね」
「それは怒ったんじゃなくて、叱ったんだろ」
「あの時はただお母さんが恐かった思いしかなかったよ。でも今は、心配かけたんだな
って反省してる」
「……」
「小さい頃ってさ、そういうものじゃない? 振り返ってみて初めて相手の気持ちがわかるの」
509かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:26:53 ID:lhgx3HsV
 なんとなく掴めてきた。
 なぜ比奈が思い出を振り返っているのか。
 おそらく両親のことを思い返すためだ。
 両親の何を知りたいのかはわからないが、比奈は何かと向き合おうとしている。
 そしてそれは楽しいことばかりではないはずだ。
 比奈は好きじゃないという海にわざわざ来た。遊園地でもソフトクリームのことを振り
返っている。
 それは全部家族の思い出だ。
 四本比奈が家族とどう過ごしたかという大切な思い出。
 それを振り返るということは──
(まさか、全部思い出したのか?)
 自分の体質のことも、互いの親の関係も、俺が比奈にやっていることの理由も、すべて
思い出したのだろうか。
 もし思い出したのだとしたら──俺はどうすべきだろう?
 比奈とどういう距離を保てばいいのかわからない。
 今日の態度を見る限り、決して嫌われているわけではないと思う。だが今までやってきた
ことをなかったことにできるわけではないし、比奈の体質が改善されたわけでもないから、
これからも比奈を犯し続けることに変わりはないのだ。
 比奈が変わっても、俺のやることは変わらない。
 他に、俺が比奈にできることはないのだろうか。
 いや、
 ある。
 俺が比奈にできること。
 というより、俺が比奈にやらなくてはならないこと。
(そんなの、最初から決まっている)
 彼女を傷つけているという負い目を意識しすぎて、すっかり諦めていた。
 俺は、比奈が好きだ。
 ならその想いをきちんと言葉にして伝えなければならないのだ。
 ずっと怖かった。告白するということが。
 彼女が小さい頃は歳の差に遠慮して妹のように扱ってしまったし、異性を感じさせる
程に成長する頃には俺はもう彼女を傷つけていた。
 告白なんてできるわけがなかった。
 でも、言いたいことがあるなら言うべきなのだ。
 俺の望み。
 資格はないと思う。彼女を苦しめている俺が彼女に愛を囁くなんて、図々しいにも程が
ある。
 でも、もし。もし、許されるなら。
「次はどこだ?」
 気持ちを切り換えて俺は訊ねる。
「あ、うん」
 振り返る少女を見つめながら、俺は決心する。
 伝えよう。自分の想いを。
510かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:30:16 ID:lhgx3HsV
 昼食は近くのファミレスでとった。
 楽しく食事をするという気分ではなかったが、比奈に気負った様子は見受けられなくて、
合わせるように俺も平静を装った。
 午後からもまたせわしなく移動した。
 公園に行き、学校に訪れ、神社に参った。
 縁日の、運動会の、初詣の記憶を辿りながら、比奈は懐かしさに浸るようにかつての
思い出を呼び起こしていく。
 比奈の目にはその時の光景が映っているのだろうか。
 そこにいるのはきっと彼女自身と、彼女の両親。
 比奈が両親のことを思い返しているのなら、それはきっといいことのはずだ。
 俺は切に願った。思い出せ。そして両親のことを受け入れろ。
 俺は嫌われてもいい。俺は嫌われることをずっとしてきた。
 でもあの人たちは違う。
 あの人たちは本当にお前を愛していたんだ。
 決して不実なことなどない。お前が愛さないでどうする。
 あの人たちのことだけはちゃんと理解してほしい。
 家族が愛し合えないなんて、あまりに哀しいじゃないか。
「留衣くん」
 比奈の声に俺は思いに沈んでいた頭を上げた。
 今いる場所はバス亭だった。郊外の神社から戻る途中で、既に夕方だ。西の雲が暗く朱い。
 比奈は隣に佇みながら呟くように言った。
「今日は……ありがとう」
 俺は曖昧な声を出す。とりあえず頷いたが、比奈にありがとうと言われるのは複雑な気持ちだ。
「断られるかもしれないって本当は思ってたの。でも留衣くんは昔みたいに優しくて、
私、そのことにすごく感謝してる」
 比奈は、その顔はとても穏やかで、それ故に俺は彼女の心中を測れなかった。
「……俺は感謝されるようなことなんて何も……してない」
 憎まれることはあっても感謝なんてありえない。
 俺はお前を死なせないようにしているが、死にたいくらい辛い思いをさせているのだから。
「感謝、してるよ」
 比奈は淡々と繰り返す。俺は二の句が継げない。
「今日いろんな所を回ったのはね、お父さんとお母さんのことを思い返すためだったの。
私にとって二人がどういう存在か、そして二人にとって私がどういう存在だったか、私は
どうしても知る必要があった」
 やはりそうだったのか。ということは、封じ込めていた記憶も、
「私が本当に二人の子供なのか、ずっと不安だったから」
 ……何?
 俺は予想外の言葉に一瞬頭の中が真っ白になった。
 本当の子供かどうか、だって?
 なんで、そんな考えが出てくる?
 俺の困惑をよそに、比奈は続ける。
「ずっと怖かった。もしも私が二人の子供じゃなかったら、それはとても恐ろしいことに
繋がるから」
 もし比奈が二人の子供じゃなかったら。
 その場合、比奈の親は誰になるのか。
 俺は考え──そして、怖くなった。
(まさか)
 ありえない。
 しかしありえないわけではない。
 感情が真っ先に否定しながら、可能性としてはありうるその考え。
 それは俺にとっても恐ろしいことだった。
(ああ……)
 そして俺は同時にひどく納得していた。
 比奈がお互いの親同士の関係を『なかったこと』にした理由。
 その可能性を見たくなかったのだ、彼女は。
「そうか……お前はそれで」
 比奈は寂しげに微笑む。
「そう。私はそれが怖かった。留衣くんが私の『本当のお兄さん』だなんて、そんな可能性が
あることを認めたくなかったの」
 彼女の理由だった。
511かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:33:31 ID:lhgx3HsV
      ◇   ◇   ◇

 玄関のドアを開けると、留衣くんのお母さん──留美さんが立っていました。
 てっきり留衣くんだと思っていた私は拍子抜けしました。
 とりあえず上がってもらって、リビングに通します。
「ごめんね、急に訪ねたりして」
 お茶を出しながら私は留美さんを見やります。
 留美さんはとても綺麗な人です。容姿もですけど、佇まいが凛としていてかっこよく
映ります。
 私はこの人に密かに憧れています。体も小さく気弱な私とは違い、留美さんはいつだって
堂々としているからです。なんというか、すごく「オトコマエ」な人だと思います。
「最近どう? 中学に入ってからあまりうちに来なくなったじゃない」
「……ちょっと、いろいろありましたから」
 そう、いろいろ、ありました。
「あなたは家族みたいなものじゃない。遠慮しなくてもいいのに」
「そういうわけじゃないんですけど……いつかは一人で生きていくわけですから、今の
うちに慣れておいた方がいいかな、って」
「でも学校のことくらいは教えてほしいな。進路はどうするの? 行きたい高校ある?」
 私は前もって用意していた回答を言いました。
「地元の高校にします。近いし、私立は厳しいけど公立もあるから」
 そう、嘘をつきました。
 私の本当の希望は県外です。それも全寮制の女子校を考えています。
 留衣くんから離れるには、恐らくそれが最善の方法だから。
 留美さんはふむふむ、と小さく頷きました。
「本当にそうしてくれるんなら、こっちとしては楽だけどね」
「……え?」
「でもそれは嘘なんでしょ?」
「──」
 私は呆然と固まってしまいました。咄嗟に言葉を返すことができません。
 留美さんは当たり前のことを言ったに過ぎないような、何でもない顔をしていました。
「なんですか、嘘って、」
「本当は別の高校に行きたがっている。正確には県外の……」そこで少し考え、「違うな。
正確には『留衣の側から離れたがっている』、かな」
 何も、言えません。
 あまりにも正解を捉えすぎていて、私は何も言えません。
「まあ、しょうがないよね。留衣があなたにしていることを考えたら、そうしたくなるのも
当たり前だと思うし」
 その言葉に私はさらに驚きました。
 留衣くんが私に何をしているか、この人は知っているのです。
 私はそのことを『嫌だ』と思いました。
 なぜでしょうか。私は留衣くんとのことを知られたくないと思いました。
 それは留美さん個人にではなく──『誰に対しても』そういう思いを持っていたのです。
 なぜかはわかりませんが、確かに私はそのことを知られたくなかったのです。
512かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:35:12 ID:lhgx3HsV
「……何のことですか」
 声が震えなかったのは幸いでした。
 おばさんは答えず、別のことを話し出しました。
「本当はね、留衣に任せるつもりでいたの。これから比奈ちゃんを守っていくのは留衣な
わけだし、不安定なあなたに私が何を言っても届かないと思っていたから」
 でも、と嘆息。
「……もうすぐあなたは高校生になる。留衣も大学生になる。少しずつ大人になっていく。
行動範囲が広がって、可能性が増えていって、いつまでも一緒にはいられなくなる。だけど
あなたは留衣と一緒にいなければならない。そうじゃないとあなたは生きていけないから」
 左胸の音が体中に響き、私は気分が悪くなりそうでした。
 聞きたくない、そんな思いに駆られました。
 意識が遠のきます。足元がふらつき、体に力が入らなくなって、

 頬を叩かれたのはその瞬間でした。

 左頬に痺れるような痛みが走り、ぼんやりしていた意識が元に戻りました。
 呆然とおばさんを見やると、彼女は目を細めてこちらを見据えていました。
「逃げちゃダメ。ちゃんと聞きなさい」
「に……逃げる?」
「これ以上聞かないように気絶しようとしたでしょう。そんなの許さない」
 気絶するなんて、そんなわけ、
「あなたが不安に思っているようなことは絶対にありえないから、覚悟を決めなさい!」
 鋭い声が私を打ちました。
『絶対にありえない?』
 何を言っているのだろう、この人は。
 絶対なんかどこにもない。
 私はずっと幸せな生活が続くと思っていました。
 平凡でも温かくて、優しい家族がいて、隣に留衣くんがいる。そんな毎日が続くと思って
いました。
 でも父も母も今はいなくて、
 その時から留衣くんは私のお兄さんではなくなって、
 私は一人になって、
 …………。
 変です。
『留衣くんは私のお兄さんではなくなって』
 おかしいです。
 留衣くんに乱暴されることはとても辛いことなのに、
『お兄さんではなくなって』
 どうして私はそのことに『安堵』しているのでしょうか。
 留衣くんは私のお兄さんのような人ですが、本当の兄ではありません。
 だからこそ私は彼を好きでいられるのです。
 もし、本当の兄妹だったら、私は──
513かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:36:49 ID:lhgx3HsV
「……う」
 そのことに思い到った瞬間、私は急激な吐き気を覚えました。
 気持ち悪さが胸の上まで迫り上がってきて、喉の奥から苦しさが沸き上がり。
 私は、その場で吐いてしまいました。
 前のめりになって膝から足元にかけて嘔吐し、吐瀉物が服と床を汚します。
 苦しさに涙が溢れ、全身に気だるさが広がります。
 涙と鼻水にまみれながら切れ切れの呼吸をしていると、背中を撫でられました。
 いつの間にか傍らに寄り添っていた留美さんが、優しく背中をさすってくれました。
「大丈夫。落ち着いて呼吸を戻しなさい。無理に我慢しないで」
 私は二、三度嘔吐を繰り返しましたが、言われたとおり変にこらえようとせずに、ゆっくり
呼吸を整えました。
 五分くらいかけてなんとか状態を整えると、留美さんに向き直ります。
「ごめんなさい、急に……」
「もう苦しくない?」
「はい……多分」
「お風呂沸かすから入ってきなさい。服も着替えないといけないし」
「い、いえ、シャワーでいいです」
「そう? まあ体調悪いなら長風呂はよくないけど」
「話も……ありますから」
 私は小さな声で呟きました。
 留美さんは目を細めます。
「何の話?」
「……私が恐れていることの話を」
 すると留美さんは微かに笑みを浮かべました。
「それは私の想像通りの話かしら」
「……わかりません」
「一つだけ確認。すべて思い出したの?」
 頷きました。はっきり頷きました。
 私が忘れていたこと。
 いえ、忘れていたわけではありません。忘れたふりをしていたのです。
 私は些細な可能性を見なかったことにしたくて、目の前の現実から目を逸らし続けて
いたのです。
 あまりに身勝手な私の『恐れ』。
 そんなことあるわけないと、理性は言いました。でも可能性はゼロじゃなくて。
 そう考えると留衣くんが私を妹扱いしていたことも納得できてしまうのです。
 私と留衣くんは兄妹みたいな関係ではなくて。
 ひょっとしたら、『本当の兄妹』なのではないかと──。
514かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:38:20 ID:lhgx3HsV
 熱いお湯を全身に浴びながら私は頭の中を整理していました。
 私のお母さんと留衣くんのお父さんが、その、『そういう関係』だったことをお母さん
から聞かされた時、一つの可能性が頭をよぎりました。
『私の本当の父親は、ひょっとして留衣くんのお父さんなのではないか?』
 何を馬鹿なことを、と思われるかもしれませんが、可能性はゼロではありませんでした。
 お母さんとおじさんの深く複雑な関係、お母さんが感じていた負い目、留衣くんの私に
対する兄のような態度、様々な要素が私に疑念を抱かせたのです。
 確かめれば済むことでした。でももしその想像が間違いではなかったら、私の留衣くん
への想いは行き場を失ってしまいます。
 腹違いでも兄妹になってしまったら、私は──
 そして私が選んだ道は、『すべてを忘れる』というものでした。
 自分の体質のことも、留衣くんの力のことも、親同士の関係のことも全部なかったことに
して、私は知らないふりをしたのです。
 それも、無意識のレベルで。
 留衣くんに対する想いだけが私の支えだったから。
 ……いえ、言い訳です。これは私の我が儘です。
 二年以上も留衣くんに責任を押し付けて、私はのうのうと生きてきたのです。
 留衣くんは私をずっと守り、助けてくれていたのに。
 留衣くんに筋違いの罪をなすりつけて。
 心のどこかで自分がめちゃくちゃなことを言っているのはわかっていました。矛盾して
いるのは明らかだったのですから。
 留衣くんへの想いを守るために知らないふりをして、そのふりを続けるために留衣くんを
悪者にしてしまって。
 挙げ句の果てに留衣くんから離れようとするなんて。
 留衣くんから離れたら生きてはいけない。そんなことはわかっていたのに、向き合う
勇気を持てないばかりに自分の都合を押し通して。
 自分の愚かさに涙が出そうでした。
 でも私はこらえます。
 泣いている場合じゃないのです。留衣くんに言わなければなりません。私がずっと騙して
きたことを。
 私の嘘を。
 これで嫌われても仕方ないでしょう。それよりも私は留衣くんを解放してあげなければ
なりません。
 もう自分を責める必要なんかないのだと。
 苦しむ必要などありはしないのだと。
515かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:40:13 ID:lhgx3HsV
 お風呂場から上がり、服を着替えてリビングに戻ると、留美さんがグラスにお茶を入れて
くれました。家の中にあったものではなく、新しく買ってきたもののようです。
 激しく嘔吐した割にはあっさり飲めました。むしろ冷たさが心地好く感じられました。
「兄妹、か」
 不意に留美さんがぽつりと呟きました。
「そんなことあるわけないのにね……。でも、あなたがそういうことを考えてしまった
気持ちは、わからなくもないのよね……」
 梅雨空のように、留美さんの表情が陰ります。
「……あの、それってどういう、」
「私もあなたのお母さんによく疑いの目を向けていたからね」
 寂しげな顔。
「私は渚さんより歳下で、あの人と比べたら自分に魅力があるとは思えなかった。だから
いつも不安だったの。うちの人がいつか渚さんの方を向くかもしれない、ってね」
「……」
「いやー、実際『そーいう関係』だったわけで、私もそのことを知らされているわけじゃ
ない? 口では納得してるようなことを言っても、やっぱり内心面白くなかったのよ。
自分の旦那が自分以外の女を抱いているんだから当たり前といえば当たり前だけど」
「……」
「で、悔しいことに渚さんは物凄くイイ女なわけ。嫉妬も羨望も昔は普通にあって、結婚
してもしばらくはめちゃくちゃ悩んでいたわ」
「……」
「留衣を産んでからはもうそういう感情は小さくなっていったけどね。でも、一回だけ
嫉妬というか、疑いが再燃したことがあった。わかる?」
 私は少し考えて、頷きました。
「そう、あなたが生まれた時。本当に渚さんと敏雄さんの子供なのかって、みっともない
けどまた不安になっちゃって。敏雄さんから検査結果の書類を渡されてようやく安心したの」
 留美さんは自嘲気味に笑いました。
「こんなものよ。大人とか子供とか関係なく、不安になるときはなるの。嫉妬もするし、
変な疑いも抱く。だからってわけじゃないけど、あなたのしたことも特別罪深いものでは
ないと私は思う。思春期の女の子がちょっとだけ自分のことに悩んで、ちょっとだけ周りに
迷惑を掛けただけ。ただそれだけのことよ」
 優しい言葉でした。
 私は、それだけで罪悪感が払拭されるわけじゃないけれど、少しだけ安心しました。
 留美さんは私にとってやっぱりかっこいいと思える人でした。
「本当に、私と留衣くんは兄妹じゃないんですか?」
「今言ったじゃない。ちゃんと検査で判明してるわ。だから安心してあなたはあなたの
なすべきことをなさい」
 なすべきこと。
「……はい。ちゃんと留衣くんに謝らないといけませんね」
 許してもらえるとは思いません。でも二年以上も彼を苦しめた私にできることはきっと
それだけです。
 嫌われても構いません。きちんと彼を解放して、この歪な関係に決着をつけるのです。
516かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:41:24 ID:lhgx3HsV
 私が一人決心していると、留美さんは怪訝そうに私の顔を覗き込んできました。
「……いやいやいや、そうじゃないでしょ比奈ちゃん」
「え?」
「まあ謝りたいなら謝ればいいけど、あなたがしなければならないことは他にあるじゃない」
「……え?」
 私は一瞬頭が真っ白になりました。
 しなければならないこと?
 慌てて考えますが、見当がつきません。
「比奈ちゃん。あなたは恋する女の子なの。なら、やることは一つでしょ」
 …………。
 …………はい?
 まさか、と思ったと同時に留美さんは言いました。
「告白するのよ。相川留衣くん、あなたのことがずっと好きでした、って想いを全部ぶち
まけなさい」
 いとも簡単に言いました。言ってくれました。
 私は呆然となりかけた意識を揺り動かして、勢いよく首を振ります。
「な……何言ってるんですかっ。そんなことできません」
「どうして? 留衣のこと好きなんじゃないの?」
「……っ、そ、それは、好き、ですけど、でも」
「なら言いなさい。告げなさい。宣言しなさい」
「だ、だからどうしてそんなことを」
「あなたがこれからも生きていくためよ」
 存外真剣な顔で言われて、私は口をつぐみました。
「あなたが生きていくには、留衣と共にこれからの人生を歩んでいくしかない。想いを
伝えるのはそのための義務。隠し事禁止とまでは言わないけど、一緒にいたいならそれは
絶対に必要よ」
「……義務」
「あなたたちはパートナーになるの。お互いに好き合っているのだから、何の問題もない
じゃない」
 留美さんの言葉に私はまた驚きました。
「好き合って……?」
「……あなたたち、本当にわかってなかったの?」
 溜め息をつかれました。
 それはとても呆れたような、疲れたような、深い深い溜め息でした。
517かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:42:29 ID:lhgx3HsV
 昨日のことを説明した後、私は深呼吸をして形だけでも気を落ち着かせようとしました。
「……まず謝らせて。その……ごめん、なさい」
 私は、やっぱり最初にそうすべきだと思って、深々と頭を下げました。
 もっと他に言い方とかあるんじゃないかとも思いましたが、今の私には思いつきません。
大人だったらもう少しいい謝り方があるのでしょうか。
 頭を下げていた時間は十秒もありませんでした。
 その間留衣くんがどんな表情をしていたのか、私にはわかりません。
 顔を上げると、留衣くんはこちらから視線を逸らすように下を向いていました。
 それはなんだか考え事をしているようでもあり、怒っているようでもあり、私は急速に
不安に駆られました。
 そして改めて思ったのです。この人にだけは嫌われたくないと。
 彼は何も言いません。
 口も開かず、ただじっと顔を伏せています。
 沈黙に耐え切れず、私は呼び掛けました。
「る、留衣く──」
「いいんだな?」
 ぼそりと、そんな言葉が洩れました。
 留衣くんが顔を上げます。
 その表情はひどく穏やかでした。でもどこか疲れたようにも見えました。
 私は何のことかわからず、答えられません。
 まごついていると、留衣くんがゆっくり近付いてきました。
 そして。
 留衣くんは優しく微笑みました。
518かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:44:09 ID:lhgx3HsV
 その微笑みは私がこれまでに何度も見てきた顔でした。
 その表情を見せた時の留衣くんはとても優しくて、私がどんなに間違ったことをしても、
すべてを留衣くんは許すのです。
 でも、今回ばかりはその優しさに甘えるわけにはいきません。
 私がうつむくと、留衣くんの手が頬を撫でました。
「辛そうな顔するなよ」
「……やめて」
「何を」
「優しくしないで」
「優しいか? 俺」
 とぼけたような言い草に、私は思わずカッとなって声を荒げました。
「私はっ、ずっと留衣くんを騙してたんだよ!? 留衣くんに嫌われても、恨まれても、
どんな酷い仕返しをされても仕方ないと私は思ってる。なのに……なのにどうして少しも
変わらないの?」
 留衣くんは優しいから、きっと私に対して罪悪感を抱いていると思います。でもそれは
私が問題にきちんと向き合えば済む話でした。
 この人を苦しめたのは間違いなく私。なのに、この人は、
「お前は、どうしたいんだ?」
 そう、問い掛けられました。
 私?
 私は、留衣くんにただ謝りたくて、
「難しく考える必要はないんだ。ただしたいことを思い、すればいい」
 私は、
「お前は俺から離れたいのか?」
「……」
「違うんだな? じゃあお前は俺から何か罰を受けたいのか?」
「……それで、留衣くんの気が済むなら」
「俺の気が済めばいいのか?」
「……」
 それはその通りです。その通りですが、
「俺がお前を許せば、それでいいんだな?」
「ち、違うの。そうじゃなくて、」
「お前は、俺とどうなりたいんだ?」
 一番肝心なことを訊かれました。
 そうです。私は、今後留衣くんとどうなりたいのでしょう?
 友達? 恋人? 兄妹?
 私はどれも選びません。選べません。
 そんな明確な間柄になれるほど私たちの関係は単純じゃないから。
 でも、だからこそ単純化したい気持ちもあります。
 恋人になれたら、きっと私は死んでしまいます。嬉しさと切なさ、二つの刃に貫かれて、
私の心は砕けてしまうかもしれません。
 単純に、私は、
「元に戻りたい……」
 それだけを願いました。
「昔みたいに留衣くんと、笑ったり、泣いたり、怒ったり、そういう関係に戻りたい」
「……」
「幼馴染みとして、留衣くんの側にいたい……」
 それが一番の願いです。
 恋なんて実らなくていい。私は、ただあなたの側にいられたら、それで満足だから。
「留衣くんと、仲直りしたい……」
 素直に自分の想いを吐露しました。
519かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:46:29 ID:lhgx3HsV
 それを受けて、留衣くんはどう思ったでしょうか。
 図々しいとか厚かましいとか、そう思われたでしょうか。
「じゃあ話は簡単だ」
 留衣くんは実にあっさりした口調で言いました。
「仲直りしよう」
「……え?」
「え? じゃないだろ。仲直りしようって言ってるんだよ」
「…………」
 私は頭がうまく働かず、ぼんやりとした気分に陥りました。
 そんなに簡単に?
「どうした?」
「……だ、だって、そんなにあっさり言われたから」
「簡単なことなんだから当たり前だろ」
「……簡単なことなの?」
「お前は仲直りしたがってる。俺もお前と仲直りしたい。なら仲直りしよう。ほら、簡単
だろ?」
「……」
「本当に、それだけのことなんだ」
 留衣くんはまた微笑みました。
「聞いてくれ、比奈。お前は自分のことを責めているんだろうが、それは俺だって同じ
なんだ。俺はお前をずっと、その、辱めてきた。二年もだ。そのことだけは確かで、俺は
それに関して俺自身を許せない」
「で、でもそれは私のせいで、」
「最後まで聞いてくれ。お前がどう思っていようと、俺がやったことは変わらない。その
ことについて俺は多分一生抱えていくと思う。なかったことにはできないからな」
「……」
「でもそれは別に後ろ向きな意味で言ってるんじゃない。それをきちんと認めた上で、
俺はお前と仲直りしたい。お前を傷つけた分以上に大事にするために。お前がそれを認めて
くれると、嬉しいな」
「……」
「で、お前も俺と仲直りしたいと思ってくれてるんだろ。お互いがそれを願っているなら
何の遠慮もいらない」
「……」
「もちろんすぐにはできないかもしれない。わかっていても後悔や罪悪感はなかなか拭え
ないし、ギクシャクしてしまうかもしれない。でもそのうち必ず払拭できると思う。二年は
長かったけど、これからの時間の方がずっと長いんだから」
 留衣くんの言葉の一つ一つが私の中に染み込んでいきます。
「騙されたなんて俺は思っていないが、お前が気にするならこう答える。気にするな。俺は
少しも気にしていない」
「……許して、くれるの?」
「当たり前だろ。それより、俺の方こそ気にしてることがある」
「え?」
 留衣くんは小さく息を吐き出すと、頭を軽く掻きながら言いました。
「その……俺はさ、お前をずっと、犯していたわけで……」
 歯切れが悪いです。
「でさ、やっぱりちゃんと謝りたいんだ。だから、……ごめん。本当に、ごめん」
 留衣くんは深く頭を下げてきました。
 私は、別にもうそのことをなんとも思っていません。私が原因だったわけですし、留衣
くんは私のためにやっていたわけですし。
 確かにまあ痛かったり悲しかったりしましたけど、留衣くんにされていたことだから、
私は気にしません。
 それに、自分に嘘をついてまで留衣くんの行為を受け入れていたのは、多分心底では
決して拒絶していなかったということなのかもしれません。
520かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 09:49:13 ID:lhgx3HsV
 いろいろ考えましたが、私は結局シンプルに答えました。
「私は気にしてないよ。だから留衣くんも気にしないで」
「許して、くれるのか?」
「うん」
 留衣くんは目に見えて安堵しました。
「……ようやく、だ」
「そんなに気にしなくてもいいのに」
「それはさっき俺が言っていたことなんだけどな」
 私は返事に困りました。慌てて言い繕います。
「う……で、でも、私の体なんか抱いたって、少しもよくないだろうし……」
「はああっ!?」
 私の言葉に留衣くんが急に大声を上げました。
「え? な、何?」
「……お前……俺がどれだけ悩んでいたか、全然わかってないな」
「え? え?」
 留衣くんの声はどこか低く、溜め息混じりです。
「……よすぎるから困るんだろうが。溺れないように俺は結構必死だったんだぞ」
「……」
 思わず赤面しました。
「でも、体も小さいし、胸とかもちょっと前まで全然なかったのに」
「好きな相手を抱いているんだぞ。どれだけ興奮すると思ってるんだ」
「す……!?」
 好きな相手。
 もしかして、いえもしかしなくてもそれは私のことでしょうか。
 顔が熱くなってきました。体温が2℃は上がったような気がします。
 留美さんに留衣くんの想いは聞いてはいたのですが、正直半信半疑だったので、改めて
本人から言われると気恥ずかしくなってしまいます。
 私が真っ赤になっていると、留衣くんがじっとこちらを見つめてきました。私はますます
恥ずかしくなり、顔を背けました。
「……こっち見てくれよ」
「そ、そんなこと言われても……」
「ちゃんと言いたいからさ」
 真面目な口調にごまかすことができず、私は顔を戻します。
521かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:00:46 ID:lhgx3HsV
 留衣くんは落ち着いた様子で、静かに告げました。
「好きだ、比奈。ずっと前から好きだった」
「──」
「これからもずっと好きだと思う。もしよければ、俺と付き合ってくれ」
 とてもまっすぐな言葉でした。
 目の前にいるこの人は、この想いをどんな気持ちで封じ込めていたのでしょうか。
 もう想いを抑える必要はないのです。何も我慢することはなく、本心をさらけ出しても
いいのです。
 留衣くんの言葉にはそんな積み重なった想いが詰まっているようで、私は泣きたくなり
ました。
 こんな私を、そんなにも想ってくれていたことが嬉しくて、切なくて、申し訳なくて、
そして有り難く思いました。
 私は波打つ気持ちを落ち着かせて、彼の目を見据えます。もう目は逸らしません。想いに
応えるためにも逸らしません。
「私も……あなたが好き」
 小声にならないように胸を張ります。
「大好き。留衣くんが大好き。ずっと一緒にいたい。留衣くんと一緒に歩いていきたい。
パートナーとして、幼馴染みとして、……恋人として」
「じゃあ」
「うん。よろしくお願いします」
 積年の想いを胸に、私は一番の笑顔で応えました。
 瞬間。
 私は留衣くんに抱き締められていました。
「あっ……!」
 厚みのある胸板が私の頭を受け止めます。背中に回された腕は痛いくらいに体を絞め付け、
私を拘束します。
 留衣くんの腕の中は初めてじゃないけど、こんなに力強く私を求めてくれたことは記憶に
なくて、私はどうすればいいのかわからず固まってしまいました。
 留衣くんは力を緩めることなく、私を抱き締め続けます。
「いいんだな。もう、我慢しなくて」
「留衣くん……」
「夢なら覚めないでくれって、本気で思う日が来るとは思わなかった」
 私は未だに夢心地です。
 でも、体を縛る腕の力が、頬に伝わる胸の鼓動が、確かにこれが現実であることを明確に
示していて。
 泣いたら駄目だと何度も自分に言い聞かせて、それでも視界が霞むのを止められなくて。
 私はそれをごまかすように留衣くんにしがみつきました。
「うん。もう我慢しなくていいの。信じられないかもしれないけど、信じていいの」
「……信じてるよ」
「私も、信じてる。だってこんなに幸せなんだもの」
 もう、父も母もいないけど。
 今日一日、いろんな場所を回って振り返った思い出の中で、私はすごく愛されていて、
そして今の私を愛してくれる人が、目の前にいる。
 私は目を瞑り、陶酔するように今の気持ちを噛み締めました。
522かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:02:20 ID:lhgx3HsV
      ◇   ◇   ◇

 家を出た時とは比べ物にならないほど上機嫌で、俺はかなり浮かれた気分だった。
 比奈と手を繋ぎながら道を歩く。たったそれだけのことにこんなにも幸せを感じる。
今の俺は端から見たらちょっと引かれてしまうかもわからない風なのではないだろうか。
「気持ち悪い」
 とはいえそんなにストレートに言い切られるとかなり傷つく。
 帰宅後の俺たちを迎えたのはお袋の毒舌だった。
「はて、おかしいわね。図書館に勉強に行ったはずなのに、どうしてかわいい女の子を
連れ帰ってきたのかしら」
「いや、事情知ってるだろお袋は」
 焚きつけた本人が今日の比奈の行動を知らないわけがない。
「仲直りはできた?」
 俺の言葉を無視してお袋は比奈に尋ねる。
「はい。ご迷惑おかけしました」
「あんまりよそよそしいのも失礼よ。あなたは私の娘になるんだから、もっと世話を焼か
せてほしいわ」
「え……あ、あの」
 比奈が慌てている。俺はとりあえず突っ込んだ。
「なんだよ、娘になるって」
「あら、比奈ちゃんはうちの娘みたいなものじゃない。別に他意はないわよ」
「娘に『なる』って言っただろ。意味が違ってくる」
「そう言ったかしら」
「言った。間違いなく言った」
「なら言い直すわ。比奈ちゃん、うちの娘にならない?」
「どこを言い直してるんだよ!」
 なんだこの親は。
「ま、仲直りしたならいいわ。改めてよろしくね、比奈ちゃん」
「は、はい」
「早く戸籍上もうちの娘になることを祈ってるわ」
「お袋!」
 比奈は目に見えて真っ赤になっている。ちらちらこちらに目を向けてくるが、俺だって
恥ずかしいんだ。そんな風に見られても、その、困る。
「おなか空いたでしょ。ごはんできてるわよ。比奈ちゃんも一緒に食べていきなさい」
 比奈は遠慮がちに頷くと、手伝いますとお袋に申し出た。先に手を洗ってきなさいと
促されて、洗面所の方へと向かう。
523かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:03:51 ID:lhgx3HsV
 その様子を尻目にダイニングルームに入ると、親父が一人席に着いて夕刊を読んでいた。
今日は仕事は早く終わったのだろうか。いつもなら八時以降にならないとまず帰って来ない。
今はまだ六時過ぎだ。
「ただいま」
「ああ」
「いつもより早いけど」
「母さんから、今日は早く帰って来いと連絡があったんだ」
「そんなので早く帰って来れるのか」
 それならいつもそうしてもらいたいが。
「今日は特別だ」
「特別?」
「せっかく比奈ちゃんと仲直りできたんだ。一緒に食事くらいいいだろう」
「……お袋に聞いたのか?」
「ああ。安心したよ。ようやく『家族』になれる気がする」
 親父は新聞を畳むと、俺の顔を見つめた。
「よかったな」
 たったそれだけの言葉だったけど。
「……ああ」
 十分に親父の思いやりは伝わってきて、たまらなく嬉しかった。
「手、洗ってくる」
 これ以上向き合っていると泣いてしまうかもしれない。そう思って俺は部屋から出る
ことにした。今日の俺は涙腺が緩くなってる。
「ちゃんとうがいもしろよ」
「わかってる」
 返事がぶっきらぼうになってしまったのは仕方ないことだと思う。
 後から思えば、親父のその呼び掛けもちょっとらしくなかった気がして、俺は密かに
笑った。
 照れ臭かったのは、きっと俺だけじゃなかったのだろう。
524かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:05:00 ID:lhgx3HsV
 夕食はすき焼きで、普段は見ることもできない高級な肉が並ぶのに、俺は目を丸くした。
 比奈は成長したとはいえ体が小さいことに変わりはなく、食も細かった。お袋がやたら
肉を勧めて、その度に発育がどうだのスタイルがどうだのためにもならんアドバイスを
送るので、比奈はずっと恥ずかしそうにうつむいていた。もうただのセクハラだった。
 親父は親父でいつもより酒量が多く、表情には出さないが言葉数が増えてる辺り明らかに
酔っていた。いい大人がハメを外すな。まあ今日くらいは仕方ないかもしれないが。
 久しぶりに比奈と一緒にとる食事はうまかった。昼食の時は気まずさしか感じられ
なかったが、今は温かさに包まれているようで、本当に落ち着く。
 家族の団欒だ。
 俺が彼女となりたかった関係。
 おじさんやおばさんの代わりにはなれないが、同じくらい大事な存在になりたかった。
 ほんの少し前まで、それは途方もなく彼方にある、遠く果てしない夢だった。でも、
こんな時間を共有できるなら、もうそれは夢じゃない。
 ふと比奈と目が合う。
 比奈はくすぐったそうに笑った。
 俺も応えるように微笑む。
 俺と比奈は幼馴染みで、生きるためのパートナーで、ついさっき恋人同士になって、

 今日、大切な家族になった。
525かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:06:36 ID:lhgx3HsV
「おじゃまします」
 俺は比奈に連れられて、四本の家に上がった。
 てっきりうちに泊まると思っていたのだが、比奈は拒否した。帰ってやりたいことが
あるという。留衣くんも一緒に来て、と言われたので俺もついていった。
 玄関から広いリビングを抜けて階段を上がり、二階の比奈の部屋に向かう。
 部屋に入ると、扉を閉めるなり比奈は俺に抱きついてきた。
「うわっ」
 受け止めながらもいきなりの行動に戸惑う。
「ひ、比奈?」
 比奈は俺の顔を見上げながら、至近で囁いた。
「留衣くん……私を抱いてほしいの」
「……は?」
 唐突な申し出に俺は一瞬思考停止に陥った。
 抱いてほしい。
 ……今から?
 改めて状況を見直す。
 誰もいない家に二人きり。しかも夜で、明日は日曜で、
 比奈についていった時点でなぜその可能性に到らなかったのか、俺は己の鈍さを呪った。
 断ろうとして、しかし比奈の顔が存外に真剣なのを見てとる。
 理由を訊かなければならないだろう。
「急に、どうしたんだ?」
 比奈は顔を赤くしながらも答えた。
「私は留衣くんに抱かれないと生きていけないんだよね?」
「……ああ」
「それはいいの。ちゃんと心の整理はついてる。でも、そういう『やらなきゃいけない』
っていう義務感だけでしたくはないの」
 比奈の腕に力がこもる。
「私たち、恋人同士になったんだよね? なら、その最初の一回目くらいは、そういう
理由抜きで、純粋に……あ、愛し合いたい……」
「比奈……」
 比奈の言葉には俺へのまっすぐな想いが込められていて、ドキッとした。
 こんなことを言われて、断れる男がいるだろうか。
 俺は比奈を抱き締め返すと、耳元で囁いた。
「俺も、比奈を抱きたい」
「うん……」
 シャワーを浴びたいと言い、比奈はそそくさと部屋を出ていく。
 手持ち無沙汰になった俺はベッドに腰を下ろした。
 ドキドキしていた。何のわだかまりもなく比奈を抱ける。そのことが嬉しく、そして
緊張する。
 唾を一つ呑み込むと、俺は気を紛らすように部屋の中を見回した。
 比奈を犯すために何度か入っているが、こうして落ち着いて室内を見るのは随分久しぶり
かもしれない。
 白い壁に白く輝く照明。薄蒲色を基調とした絨毯。木製の机はコンパクトな大きさで、
部屋を狭くはさせない。隣の本棚には教科書やノート、漫画や小説が並び、さらにその
横には反対側のクローゼットと相対するように姿見が佇んでいた。
 ここで、今から俺たちは。
 想像するだけで胸が高鳴る。
 自分の心臓の音に倒れそうな思いだった。
526かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:09:14 ID:lhgx3HsV
 戻ってきた比奈を見て、俺は放心した。
 ピンクの薄いパジャマを着た彼女は妙に色っぽかった。体のラインがはっきり浮き出て
いるためだろうか。それとも服の隙間から覗く肌が仄かに上気しているためだろうか。
 それとも──
「……」
 比奈の顔がうっすら紅潮していて可愛らしく見えるためだろうか。
 俺はその姿に目を奪われて身じろぎもできない。
 比奈がゆっくり近付いてくる。
 近付いて、隣に腰を下ろして、小さく息を吐く。
「……お待たせ」
 俺はうまく言葉を返せず、必死で頭を動かした。
 そうしてようやく見つけた言葉を、取り繕うように口にする。
「俺も、入ってくるよ。家で入ってないし、汚れてると思うから」
 立ち上がろうとして、しかし腕を掴まれた。
 僅かに浮いた腰は重力に引かれて再びベッドに着地する。
「いいよ、入らなくて」
「いや、そういうわけには」
「……」
「……」
 比奈の熱っぽい目が俺を捉えて離さない。
 しばしの沈黙の後、折れたのは結局俺だった。
「……比奈」
 比奈の頬に手を添える。小さな体が微かに震えて固くなった。
 そっと顔を近付けた。
 比奈は動かない。ただ、静かに目を閉じた。
 唇が触れ合った瞬間、俺は心臓がドラムのように激しく鳴るのを感じていた。
 深くは繋がらず、五秒程で唇を離す。
「……」
 比奈が薄く笑みを浮かべた。
 一方俺は盛大に息を吐いていた。
「……留衣くん?」
「いや、なんていうか……深呼吸でもしないと身が持たない気がする」
「……ドキドキしてる、とか?」
「……」
 素直に頷くことができない。
 言葉を濁していると、比奈は急に俺の手を取った。
 そして自らの左胸に掌を当てがった。
「お、おい」
 声が上擦る。
 比奈は何も言わずに俺の手を押し当てている。
 その柔らかい感触は服の上からでも十分伝わってきた。最近になってはっきり膨らみが
表れてきていて、余計に困る。もうその全てを俺は知っているのだけど、困るものは困る。
 柔らかさとともに熱も感じられる。体の僅かな強張りも、内側の鼓動も。
「私も……ドキドキしてるよ」
「……っ」
「続き、お願い」
 比奈の顔がまた近付く。
 再びキスを交わす。今度は先程よりも、強く。
 比奈の背中に腕を回し、しっかりと抱き締めながらキスを続ける。比奈の細い腕が応える
ようにしがみついてきて、体全体が密着した。
 何度も体を重ねているのに、いつも一方的で、こういう風に抱き合うことすらなかった。
 俺は今比奈に受け入れてもらっている。
 そのことが死ぬ程嬉しい。
527名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 10:11:09 ID:Wj9Xib60
うれしい支援☆
528かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:16:32 ID:lhgx3HsV
 体の力が抜けてきたのを感じ取ると、俺は舌を挿し入れてみた。
 案の定というか、びくりと反応する比奈。が、それも一瞬のことで、こちらの意図を
察して侵入を許してくれた。
 唇から歯茎を舌先でちろちろと探る。舐めとるように丁寧に這わせていくと、唾液が
分泌されてぬめりが強くなる。
 比奈の舌がこちらの動きに合わせるようにくっついてきた。
 舌同士が触れた瞬間、そのざらつきながらも柔らかい感触に、堪らない気持ちになった。
脳天から爪先までゾクゾクと駆け抜ける快感。
 俺は夢中になって比奈の舌を、口中を味わった。
 まるで舌が一つの生き物として求愛行為に励んでいるようだ。こんなにいやらしく繋がり
合っているのに、比奈は少しも嫌がらず、むしろ積極的に応えてくれる。
 高まっていく熱は際限がないようで、俺の全身はもう興奮でいっぱいだった。
 どれだけキスをしていただろう。気分的には永遠にも思える長さだったが、実際はほんの
一分程度だったかもしれない。
 腕の拘束を緩めて口を離すと、比奈はぷはっ、と荒い息をこぼした。
「はっ、はっ、はあっ、は……」
 互いの口元にかかる細い唾液の糸が、吊り橋が崩れるようにベッドのシーツに落ちた。
 比奈はまだ激しく呼吸を重ねている。
「……大丈夫か?」
「はっ……んっ……だっ、て……いき、できな、くて、……はあっ……」
 顔を真っ赤にして、苦しげに答える。
「鼻で息をすればいいだろ」
 しかし比奈はぶんぶんと首を振る。
「息、当たっちゃうの、恥ずかしい……」
「……変なこと気にするなあ」
 睨まれた。
「変なことじゃないもん」
 すねる様子は、本人には悪いが、かわいい。
「気にするなよ。息できなくなるくらい夢中になってた、ってことで」
「む、夢中になんて」
「俺はお前に夢中だぞ」
「──」
 絶句した比奈を、隙を突いてそのまま押し倒した。
「あ……」
 とさり、とベッドに仰向けに倒れる比奈。
 上にのしかかって軽くキスをする。そのまま唇を下の方に移動させていく。
 顎から喉仏に。
「んん……あっ」
 首筋に口付けを落とすと、比奈が小さく声を洩らした。
 動物にとっては急所となる場所だ。普通なら絶対に許さない部分で、こういう時にしか
こんなことはできない。
 有り得ない行為だからこそ、興奮がより強くなっていく。
529かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:19:02 ID:lhgx3HsV
 手を胸に這わせた。
「!」
 膨らみを撫でられて比奈の体がまた反応を見せる。
 パジャマの上からゆっくり揉み込んでいくと、比奈ははっきり身じろぎ始めた。
「やあ……ん」
 逃れるように体をくねらせるが、当然逃げられない。むしろ反応があった方がこちらの
情欲も増すというものだ。
 しかしこの感触は……
 ボタンを外すと、やはりというか何も着けていなかった。
「あ、ダメ!」
 比奈が慌てて隠そうとするが、両手を捕まえてそれをさせない。見たいんだ。
「み、見ないで」
「無理言うな」
「無理ってことはないと思うけど……」
「じゃあ無茶言うな」
「……」
 諦めたようにぷい、と横を向く。
 現れた乳房は、もちろん何度も見てはいるのだが、見惚れる程に綺麗で、俺は思わず
生唾を飲んだ。
 掌にちょうどよく収まる程の大きさのそれは、まるで俺のために存在するかのようだ。
 両の乳首を指先でこねる。
「あン──」
 小さな喘ぎ声が色っぽく耳に響いた。
 人差し指と親指でつまみ、徐々に力を込めていく。爪を立てないように腹の部分を使い
ながら刺激を与えていくと、少し固くなってきた。
 比奈は顔を背けてはいたが、呼吸の間隔が短くなっていて、何度も唾を飲み込んでいた。
 ちゃんと気持ちよくなっているようで、嬉しくなる。
 はだけた胸に唇を寄せた。
「ひゃ!?」
 不意打ちだったせいか、比奈は驚きの声を上げた。
 まずは右の胸。勢いよく吸い付いてわざと音を立てた。じゅぱ、じゅぷ、と卑猥な音が
生じ、それを聞いた比奈が顔を歪めた。
「だ、だめ、留衣くん! そんなに吸わないで!」
 俺は構わず吸い続ける。
「だめって、言ってるのに……やっ!」
 左の乳首にもしゃぶりつく。指でこね続けていたからもうすっかり先端は固くなって
いたが、口でさらに刺激を加えてやる。
「留衣くん、そんなにおっぱい好きなの……?」
「お前の体が好きなの」
「……っ。こんな、子供っぽい体でも……?」
「どこが子供だ。しっかり胸はあるし、肉も柔らかい。魅力的な体だよ」
「でも……」
「言っとくけどな、二年間ずっとお前の体の成長を間近で見てきたんだぞ。どんどん女に
なっていくからこっちは気が狂いそうだった。こんなにいやらしくなりやがって」
 左手で股間をまさぐると、比奈は「きゃあ!」と悲鳴を上げた。
 ……反応が敏感すぎる。
「まさかもう濡れてたりするのか?」
「なっ!? ち、違っ、」
 俺は左手をそのままパジャマの中に突っ込んで確かめてみた。
「や、やだ」
 ショーツの中、正中線の一番下の部分を触ると、こもった熱とともにぬるぬるとした感触が、
「……嘘つきだな」
「留衣くんのバカぁ!」
「もう脱がせるぞ」
 有無を言わさず、下の服をずり下ろした。下着も一緒に下ろしたために比奈はあられも
ない姿となる。
「留衣くんのヘンタイ! 痴漢! 犯罪者!」
「全部その通りなのが困りどころだな」
 こういう反応の一つ一つがまた俺を喜ばせるということに、そろそろ気付いてもよさ
そうなものだが。
530かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:21:55 ID:lhgx3HsV
 怖がってくれるよりずっといい。
 俺はお前を怖がらせてきた。ひょっとしたらこういう行為に関してトラウマを植え付けて
いるのではないかと心配だった。
 今の比奈は羞恥を抱いてはいるものの、拒んではいない。それは俺をとても安心させる。
 からかいながらも、内心で俺はひどく安堵していた。
「比奈」
 名前を呼ぶと、比奈はじっと俺を見つめてきた。
「もう……その目は反則」
「何?」
「何でもない。……いいよ、続けて」
「その前に、ちゃんと服を脱がせたいんだけど」
「じ、自分で脱ぎますっ。留衣くんは自分のを脱ぎなさい」
 言われて気付いた。己を省みると一枚も脱いでいない。
「早くしないと私が無理矢理脱がせるよ」
 それもいいかもしれないと、俺は一瞬馬鹿なことを考えた。


 互いに裸になって改めて抱き合う。
 温もりがくっついた肌からじわりと浸透してくる。
 横抱きにしながら俺は比奈の体を撫で回す。比奈はこちらの下腹部が気になるのか、
おとなしくしながらもしきりに視線を下に寄越してくる。
 いや、確かにこちらはとっくに元気イッパイなのだが、あまり見ないでほしい。
 まあ今からこれが自分の中に入るのだから、気になるのは当たり前かもしれない。
 入念に準備をしておこう。
「ふえ!?」
 右手を太股の内側へ滑らせると、比奈は妙な声を上げた。
「あ、あ、あの、ああ」
 中心部にあっさり到達。割れ目を軽くなぞってみる。
「きゃあっ!」
 またも驚声を上げる。俺が無理矢理していたときはじっと耐えるばかりだったので、
今の姿は新鮮だ。
 秘裂を上下に撫でる。既にそこは蜜で溢れていて、指先に糸のようにまとわりつく。
 中指を奥に向けて挿し込んだ。
「ひっ……」
 充分に濡れているためだろうか、すんなり指は入っていった。とはいえ緩いわけでもなく、
周りの肉がぎゅうっと締め付けてくる。
 中をほぐすように指を動かす。
「あぁっ!」
 敏感に比奈の体が震えた。
「あ、んっ、うごかさ……ないで、だめ、くぅ、はぁんっ」
 指の動きに合わせて腰が浮く。言葉に反して体は愛撫を受け入れている。
 指の根本まで愛液が伝ってきた。温かくぬめる液は潤滑油となってますます指の動きを
スムーズにさせる。
「んっ、んっ、んっ、んんっ、あっ、いじりすぎ……だよ……、んぅっ、イク……」
 比奈は切れ切れの喘ぎ声を洩らしながら、俺の戯れに懸命に耐えていた。
531かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:24:22 ID:lhgx3HsV
「今、イクって言わなかったか?」
「っっっ!? いいい、言ってないそんなこと!」
「そっか、まだイってないのか」
 指の動きを速めた。ちゅく、ぐちゅ、とよりはっきり秘部が音を立てる。
「ち、違う、そういう意味じゃなくて、」
「じゃあどういう意味だ?」
「ひあっ、あぁんっ!」
 奥の内襞を一際強く擦り上げると、甲高い声で鳴いた。
 断っておくが、俺は別にSではない。
 むしろ人を傷つけたり嫌がることをしたりするのに抵抗を感じる辺り、極々真っ当な
人間だと思っている。
 だからこれも比奈をいじめて楽しんでいるわけではない。反応を見るかぎり、比奈は
恥ずかしがっているだけで本気で嫌がっているわけではないと思う。だったらおもいきって
気持ちよくさせてやるのが男の責任ではないだろうか。せっかく愛を紡ぎ合おうとして
いるのだから。
 ……と、実に都合のいい理屈で己を正当化しながら、俺は比奈をひたすら弄り倒した。
「んっ、あ、ああ……」
 右手で秘所を混ぜるようにかき回し、左手で優しく頭を撫でる。黒髪に顔を埋めると
シャンプーのいい匂いがした。
 すっかり俺のモノはいきり立っているが、比奈はそれに気付くどころではないらしい。
俺の愛撫を受け止めながら快感の波に耐え続けている。
 髪の間から覗く小さな耳がぴくぴく動く。普段は白いうなじがうっすら赤く上気している。
 比奈は中学生で、まだ十四歳で、それでもこんなにも女で、そのことに俺はひどく興奮
する。
 嗜虐心とまではいかないが、軽い悪戯心と背徳感が内側からこみ上がってきて、行為が
どんどんエスカレートしていく。
 左手を頭から肩に滑らせ、そのまま胸へと持っていく。右の乳房に触れると柔らかい
弾力で軽く押し返された。
 たまらなくなった俺は膨らみを揉みながらその頂点に吸い付いた。
「痛ッ!」
 しかし乱暴すぎたのか比奈は顔を苦痛に歪めた。
「あ、ご、ごめんっ」
「……」
 慌てて顔を離す。手の動きもつい止めてしまう。
 比奈は息を整えるように一回だけ深呼吸した。
 それから俺を見つめ、
「……歯が当たったの。それでびっくりしただけだから」
「……ちょっと落ち着いた方がいいかもな、俺」
「私は落ち着けないよ……」
「どうして?」
「……気持ち、いいから」
 小さな声でぽつりと答えた。
 そんなこと、今まで何度も抱いてきたのに一度だって言われたことはなかった。
 こんなこと言われて嬉しくない男なんているのか?
「きゃっ」
 だから──思わず相手を抱き締めても、それは不可抗力ってものじゃないか。
「あ、あの、留衣くん?」
「……ヤバい。もう俺無理。我慢できない」
「あ、あの……あ、あた、当たってる、あの」
「したい。比奈の中に入りたい。いいか?」
 比奈は密着する俺の体に(主に下腹部に)慌てていたが、俺の要求を聞くと目を見開いて、
しばしの間の後、こくりと頷いた。
532かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:26:55 ID:lhgx3HsV
 両脚の間に体を入れて秘裂に先端を当てがう。
 この瞬間だけは何度繰り返しても緊張する。
「ん……」
 比奈は感触に耐えるように瞳を閉じている。その姿は精巧な西洋人形のように整って
いたが、赤らんだ頬や微かに早まっている息遣いは作り物とはかけ離れている。
 俺だけの『雛』だ。
 膝を使って這うように腰を押し進めると、意外なほどあっさり奥まで入った。
「あ──」
 短い呼気が比奈の小さな唇から洩れ出た。
 膣内がぎゅうっと収縮して絡み付いてくる。
「くうっ……」
 中の反応に俺は驚いていた。これまでと違い、抵抗は少ない。しかし容易な進入の割りに
締め付けは強烈で、今まで味わってきた感触とは明らかに質が違っていた。
 まるで俺を捕まえて離さないような……。
「留衣、くん」
 比奈が潤んだ目でこちらを見つめてくる。
 俺は頷き、ゆっくり動き始めた。
 膣襞がまとわりつくように俺の逸物を刺激する。喩えようもない快楽が下半身から毒の
ように全身に回り、気が狂いそうになった。
 奥に突き入れると亀頭全体が擦れて痺れるような錯覚に陥る。腰を引くと今度は襞々が
くびれに引っ掛かり、また違った快感に包まれた。
「ん、あっ、留衣、くんっ」
 比奈の押し殺したような声が俺の性欲をさらに煽った。
「比奈……比奈っ……」
 ゆっくりとした動きが次第に速まっていく。性器同士の絡みが激しくなるにつれて繋がった
部分からいやらしい音が聞こえ始めた。
 ぱちゅん、ぷちゅ、ぐちゅぅ、と淫らな水音が響き、それに重なるようにぱん、ぱん、と
肉のぶつかる乾いた音が鳴った。
「ああぁ……んん、ん、んっ、あんっ、あっあっあっ、ああっ」
「う……く、う……」
 違う。
 今までしてきた行為とは全然違う。
 過去の交わりも、はっきり言って気持ちよかった。溺れないように必死だったというのは
嘘じゃないし誇張でもない。
 それでも俺は溺れはしなかった。やろうと思えばいくらでもその機会はあったのに、
必要最低限の回数しかこなしてこなかった。
 だが、今日のこれに対しては、自分を抑える自信がない。
 こんなにも気持ちのいい繋がりは初めてだった。
533かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:28:05 ID:lhgx3HsV
「留衣くん……」
 切なげに比奈が俺の名前を呼んだ。
「好き……留衣くん……大好き……」
 そのストレートな想いの吐露は脳天にがつんと響いた。
 気持ちいいのは当たり前だ。
 今の俺たちは体だけでなく心も繋がっている。
 俺がただ一方的に抱いていた時とは違うのだ。
 それに今は、今ならもう、溺れてもいい。
 比奈に溺れて夢中になってもいい。
 自分を抑えなくてもいいのだから、気持ちいいのは当然だった。
 腰の動きが止まらない。激しく膣肉を貪り、内側を蹂躙する。
「俺も……好きだ」
 覆い被さるように比奈の体を抱き締め、耳元で囁いた。
「あうっ、あんっ……」
「もう……全部俺のものだからな」
 揺れる頭を押さえて、開きっぱなしの唇にキスをした。
 一瞬驚きに肩を震わせて、しかしすぐに応えてくれた。荒い息を抑えて懸命に受け止めて
くれる恋人に、俺は深く深くキスを送り込む。
 舌が絡み合い、唾液が唇の端から垂れ落ちる程激しい接吻を交わしながら、腰の動きは
まるで落ちることがない。
 比奈もすっかり慣れたのか、自分から腰を動かして俺を求めてくる。
 激しい動きに汗が吹き出てきて、呼吸の間隔も短くなってきた。
 動きを速めれば速める程、膣内が強くうごめき、陰茎全体を締め付けてくる。その刺激に
もう俺はいつ射精してもおかしくなかった。
 突き入れる度にぬかるんだ感触が俺を迎える。その濡れすぼった秘壺に欲望の塊を早く
ぶちまけたかった。
「比奈っ、もう俺……っ」
「うん……いいよ、私ももう、あっ、いっしょに、」
 細い腕を背中に回して比奈も俺を抱き締めてきた。『締める』というには弱い力だが、
こうして抱き合っているだけで俺の胸は満たされるように温かくなった。
 きっと、比奈も。
 遠慮の一切ない往復に、逸物が擦り切れるようにじんじん痛んだ。
 それは苦痛ではなく快楽の痛みで、それに引きずられるように睾丸から熱いものが迫り
上がってくる。
「あっあっ、やぁっ、ああぁ、ああっ」
「比奈、うっ……」
 閃光のような光が頭に走るのと同時に、俺は比奈の膣内に大量の精液を吐き出した。
 瞼の裏で明滅を繰り返す光に合わせるように、びゅく、びゅく、と白濁液が何度も放出
される。
 陰嚢が絞られるような快感に襲われ、俺は眩暈がする思いだった。
「んんぅっ──、ん……」
 比奈は精の奔流を受け止めながら、微かに呻いた。
 その様子はどこか陶酔しているような色っぽさがあり、俺は思わず見とれた。
 断続的に起こった射精がようやく止まると、急に倦怠感に包まれた。
 うまく力が入らず、俺は体を比奈の横に投げ出す。中から抜いた性器が力なく萎れていた。
 比奈の手が俺の手に触れた。
 ぼんやりする意識の中で軽く握ってやると、向こうも握り返してきた。
 天井がやけに高く見える。
 すぐ横で比奈が嬉しげに微笑んでいるのが見えた。
534かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:29:38 ID:lhgx3HsV
      ◇   ◇   ◇

 しばらく私は留衣くんの傍らで余韻に浸っていました。
 留衣くんにくっつきながら目を閉じて、心地好さに身を委ねます。
 幸せでした。
 今日一日いろんなことがあったなあ、とぼんやり考えて、しかし気だるさが邪魔をして
思考がまとまりません。
 留衣くんの体は温かくて安心できます。
 私は留衣くんの腕を枕代わりに抱き締めました。留衣くんも多少疲れた様子でしたが、
優しく頭を撫でてくれました。
 穏やかな空気に溶け込むように、私はそのまま眠ろうとして、
 ふと、私がそのことを思い出したのは、自分の脚の間に残る感触に気付いた時でした。
 私の大事なところから生温い液が漏れ出てきます。
 中に出された異性の液。
 普通なら慌てるところですけど、私と留衣くんの場合は少し事情が違います。
「ねえ、留衣くん」
 顔を上げて呼び掛けると、留衣くんは億劫そうに首を動かしました。
「ん?」
「前言ってたよね。本当に留衣くんは、その……子供を作れないの?」
 彼はぼんやりしたまま、表情を変えません。
「ああ、そうみたいだ。医者に検査してもらった時に、無精子症だとはっきり言われた」
「……」
 私は、複雑な気持ちになりました。
 子を生せないというのは、とても哀しいことではないでしょうか。
「治せないの?」
「どうかな。精子自体はちゃんと作れるみたいだから、手術すればひょっとしたら治せる
かもな」
「本当に?」
「可能性はある。まあ、治す気はないけどな」
「どうして!?」
 私が声を上げると留衣くんはきょとんとしました。
「いや、『調律』……俺の力をお前に使うためには、その、中に出さなきゃいけないわけ
だし」
「私のため?」
「まあ、そうなるか」
「だったらやめて。ちゃんと治してもらった方が私は嬉しいから」
「……なんで」
「なんでって……だって、その……」
 私は答えに詰まります。
 だって、私は留衣くんが好きなのです。
 だから、いつとははっきり言えませんし、先のことなんてわかりませんが──それを
望むのは当たり前だと私は思うのです。
「留衣くんは、子供ほしくないの……?」
 留衣くんは目を見開きました。
「……な、なんだよいきなり」
「私はまだ中学生だけど……大人になったら、きっとほしいと思う」
 今はまだ私自身が子供だけど。
「その時その相手が留衣くんだったら……ううん、絶対に留衣くんだと思うけど、今の
ままだとほしくても作れないから、だから……」
 私にはもう留衣くん無しの人生なんて有り得ません。
 留衣くんとの間に子供ができたら、きっとそれは素晴らしいことです。
 先のことなんてわかりませんけど、今の私にはそう思えました。
535かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:31:28 ID:lhgx3HsV
「……難しいんだよな」
「え?」
 留衣くんは困り顔になりました。
「お前がそう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、生まれてくる子供がお前と同じ体質だったら
……俺は後悔するかもしれない」
 頭の中が真っ白になりました。
 私の『魂が零れやすい』体質というのは、母からの遺伝です。
 必ずしも遺伝するとは限りませんが、もし私の子供にもそれが受け継がれてしまったら──
「そういうことだ。子供のことを考えると、どうしても躊躇ってしまう。お前と新しい
家族を作れたら嬉しいけど、でも気軽に結論を出せる問題じゃないから」
「……」
「それに俺は、比奈と一緒にいられるだけで満足なんだ。子供は作れないかもしれない
けど、その分お前を大事にしたい」
 留衣くんはちゃんと考えています。私より三つ歳上ということもありますが、先のことを
しっかり見据えようとしています。
 子供のことは多分ずっと前から考えていたのではないでしょうか。
 その結論が、作らない。
 それが最善なのかもしれません。
 しかし、
「それでも、ほしいって言ったら?」
 留衣くんはまた目を見開きました。
「そんなにほしいのか?」
 私は首を振ります。
「わからない……。正直自分が母親になるなんて、うまく想像できない。よく、わからない」
「……」
「でも、でもね、多分そういういろんな問題とか、そういうことを全部含めて今の私は
いると思うの」
「……どういう意味だ」
「だって──お母さんは私を産んだよ?」
 留衣くんが微かに息を呑みました。
「お母さんは自分の体質をわかっていて、それが私に遺伝する可能性があることも承知
していたはずだもの。それでもお母さんは私を産んだ」
「……」
「それはひょっとしたらすごくひどいことなのかもしれない。でも私は少しもお母さんを
恨んだりしてない。むしろ感謝してる。生まれてこなかったら、こうして留衣くんの隣に
いることもできなかったんだから」
 なんとなく思うのです。きっと母はたくさん悩んだに違いありません。それでも母は私を
産んでくれて。
 父の、愛する人の子を産みたいという気持ちもあったでしょう。でもそれ以上に、もっと
単純な理由で私を産んだのではないでしょうか。
 母は、私に会いたかったのではないかと。
 自分の子に会いたくて、そのために私を産んだのではないかと。
 それは本当にただそれだけのことです。でも、多分とても大切なことです。
 果たして私は生まれ、父に、そして母に会いました。
 それから十年余りの時間、二人は私を愛してくれました。
 もちろん自分の体質を疎ましく思いはします。でも、決して生まれてきたことを嘆いたりは
しません。
 だって、私は愛されていたのですから。
 そして、愛されているのですから。
 だから、かつて母に言ったように、私はずっと好きでいます。
 父も母も、いつまでも好きでい続けます。
536かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:36:33 ID:lhgx3HsV
「やっぱり治した方がいいよ」
「そうか?」
「うん。それで、うまくいって子供ができたら……私はいっぱいその子を愛したい」
「……」
「私が受けた愛情を、同じようにその子に注ぎたい。留衣くんと私の子供ならなおさら、ね」
「……」
「もしその子供が私と同じ体質だったとしても、治せる方法があるかもしれないし、私は
簡単に諦めたりしないよ」
 留衣くんは軽く溜め息をつきました。
「……お前はすごいな」
 呆れ半分感心半分といった様子で、留衣くんはやれやれと首を振りました。
「でもな、そういう話はもっと違う時にすべきだと思うんだ」
「え?」
 留衣くんがおもむろに体を起こしました。私は茫然とそれを眺めていましたが、
「お仕置きだっ」
 突然組み伏せられて、めちゃくちゃ慌てました。
「な、何!? 留衣くん?」
 留衣くんはニヤリと意地悪な笑みを浮かべます。
「愛を交わし合ってゆったり余韻に浸っていたのに、空気読まないで小難しい話をする
お前には、いろいろ教えなきゃならないようだ」
「な……」
「まずはもう一回改めてやり直すぞ。今度は余力も残せないくらいいっぱい気持ちよく
してやる」
「……っ」
 無茶苦茶なことを言う留衣くんは、とても楽しそうでした。
「それに、子供ほしいんだろ? 今から予行演習しとかなきゃな」
「る、留衣くんのヘンタイ! 痴漢! 強姦魔!」
「全部否定できないのが実に辛いところだな」
 全然辛そうに見えない顔で、留衣くんが迫ってきます。
 私はむー、と唸りましたが、結局諦めて体の力を抜きました。
 抱き締めながら、留衣くんが小声で囁きました。
「比奈──愛してる」
 赤面しながらなんとか返事を返し、私はそのままゆっくりと留衣くんに溺れていきました。



 お母さんがずっとお父さんを愛していたように、
 私も、ずっとあなたを愛したい。
 あなたが私にくれる幸せを、
 ずっとずっと大切にして、これからもあなたの側で生きていくよ。
 変わらない心で、想い一途に──。
537かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/12/23(水) 10:39:44 ID:lhgx3HsV
以上で投下終了です。
だいぶ期間が空きましたが、これで完結です

>>527
支援ありがとうございました
538名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 12:20:24 ID:indzsgwk
GJGJGJでした!!
そして、乙カレサマでした
539名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 12:48:53 ID:e93n76Lr
なんというか…GJとしか言いようがない…!

長い間お疲れさまでした!!
540名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 12:11:06 ID:1xefyaA0
GJです!
これずっと続き読みたいと思ってましたー。嬉しいです
お疲れさまでした
541名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 08:22:18 ID:JMSHSNnY
GJ
待ってた
542名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 08:39:33 ID:5hCD+Wgm
あけましておめでとうございます。あげ
543名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 13:26:02 ID:wszWXsS7
あけおめー
544名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 16:11:50 ID:UHGRQ+0U
あけおめ
545名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 00:00:36 ID:2100u8rh
保守
546名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 15:52:43 ID:Rf/3f196
保守
547名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 03:54:02 ID:3UNtNfHp
スレが停滞しているので
どういうシチュエーションが好きか話でもしませうか

ちなみに自分はヤンデレ男×女に惹かれる。
あとは、想いが通じ合ってない状態の話のほうが都合上多いけど、
恋人状態からの話もいいよね。
相手の浮気を疑って疑心暗鬼になるとか。
独占欲ってつきあう前より自分の物になった後のほうが強くなると思うんだよねー
548名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 16:49:27 ID:NTPT6xhv
ヤンデレ男って需要あるの?
今考えてる話の一つがヤンデレ男×ツンデレ女なんだが……
まあいつ書きだせるかわからないし、なんかギャグっぽくなりそうで
あんまりこのスレには合わないかもしれないけど。

とりあえずヤンデレだったら、
元々付き合ってたけど男の束縛に耐えかねて女が一方的に別れを告げるも
男は諦めきれなくて、ストーキング&監視するようになる(元々やっててもいいけど
ついには他の男と楽しげに話しているのを見て逆上、
寝ているところに合鍵で忍び込んで……って感じが王道か?
近づく男を排除しつつずっと密かに付きまとってるけど、
なかなか思いを伝えられないツンデレ気味(シャイ?)な
ヤンデレなんかも面白いかも。
549名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 17:37:42 ID:IlH1zhM1
エロあればヤンデレ男でもなんでもおk。
550名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 22:25:00 ID:4jqOut0G
シャイなヤンデレ男に期待。

できれば、付き合ってるんだけどホントに好きなのか不安になって嫉妬して・・・

みたいなの。
551名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 22:38:01 ID:yF3j7vdq
>>548
ギャグテイストも好きだ。

すごくいい人で相手に遠慮する大人しいタイプが
すれ違い誤解の末にヤンデレ、ドSに豹変するのがツボ。
552名無しさん@ピンキー:2010/01/19(火) 00:12:49 ID:s9VJKEWV
>>548
自分には需要あるよ!
自分は元彼ヤンデレにも期待。
でも自分としては女もヤンデレ男の事が本当に好きな子だと嬉しいなー。
あんまり束縛するから少しは反省して欲しくて別れを切り出すとか。
ラブコメって新しいけど、途中に愛無理要素が入ってれば全然いいと思うよ!
面白そう!

>>551
自分もドツボ!
普段ニコニコ笑ってる人に限って怒ると怖いっていうしね
553名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 15:44:19 ID:XGmlkEjx
自分が書く話はつい男がヤンデレ気味になる……
書ける人物の幅が狭いなー
554名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 02:32:29 ID:XTkw0IR6
865 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2009/08/18(火) 20:37:11 ID:vQc4pKOW
荒れる予感のするようなよくない発言があったとき
明らかに悪気がないってわかるのに
執拗に罵ったり謝った後でも陰険にネチネチいうような自治厨気取りが
スレの雰囲気を悪くしてると思うな
実際荒れそうな発言があった時点よりも自治厨気取りが騒ぎ出し始めた時の方が
いつも確実に悪化して雰囲気悪くなってる気がするし

あと誤爆スレをコピペしてくるやつは最悪だね

372 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2009/11/08(日) 01:12:06 ID:Krt9TkzQ
いちいち「批判すんな!プンスカ!」と絡むからどうでもいい話で荒れるんだろ・・・

赤ペン先生気取りレベルの批評ならともかく、1、2行程度の個人的な
「こうしたああしたほうがよかった」程度の内容にまで噛み付く住人がきもい。
マンセーしか許されないスレって馴れ合いになるだけだよ。

389 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2009/11/08(日) 10:52:16 ID:R0IXli0R
>>384
中にはそんな人もいるかもしれないな。ただし、ほんの一握りの人間だろうがな。
そんな自己決定力の薄弱な、ナイーブな人間が、世界中に公開されたネットの掲示板で作品を公開すること自体間違ってる。マンセーだけが欲しいのなら自サイトかブログに行くべきだ
それに、仮に過剰要求があったとして住人が反応するメリットはあるか?
レスに対してどう反応するかは職人の自由だろ?
住人がやっきになって反論するせいでその自由を奪うばかりか、よけいに事がややこしくなるだけだが。

このスレの一部の人間が作り出す職人さんを守ろう的な空気とそこから見えてくる理想化された職人像が吐き気を催すほど気持ち悪い。
555名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 02:19:19 ID:mrRukJEp
携帯解除されたけど今度はPCが規制…
556名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 01:07:23 ID:DnIxpjRB
やっと規制解けたんだ。長かった!
557名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 00:46:07 ID:RzfguByM
また規制
558名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 20:58:11 ID:VOknr19h
魔王の人、他のスレに行っちゃったかな?
見かけたかたいますか?
559名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 20:11:47 ID:qcg1NnYv
>>558
DIY

追跡はあまり良くないかと
560名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 07:24:43 ID:Po/h8WSb
ストーカー女きめぇ
561名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 18:52:18 ID:yc9UYg8t
ノリがおばさんw
562名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 14:37:27 ID:NvpSAjil
保守
563名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 02:18:03 ID:qgEZDViK
564名無しさん@ピンキー:2010/02/28(日) 18:21:50 ID:lVjzXTln
保守しとく
565名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 02:41:47 ID:qO09UfIn
ヤンデレ応援
566名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 15:44:04 ID:pQ/Nz+BW
   (  ´)`Д) )) < ハァハァ こんな所でダメェ
  /  つ つ  < 大丈夫だって,こんな過疎スレ誰も来ねえよ
(( (_(_  ノ ノ
  し∪ ∪

 Σ( ゚д゚ )゚д゚)
  /  つ つ
  (_(_  ノ ノ
  し∪ ∪
567名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 17:46:21 ID:VWE9fFz0
保守
このスレのヤンデレさんはやっぱり男なの?
568名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 09:42:17 ID:yz+ng3Jd
質問の意味がわからない
569名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 14:35:17 ID:2pIcOwY4
サウザーがお師さんを愛するが故に無理やり犯すSSキボン
570名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 22:38:30 ID:Tvxk8FFt
ヤンデレの定義が未だによく分からない
571名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 13:24:59 ID:uGCVTlSA
つ グーグル
572名無しさん@ピンキー:2010/03/17(水) 02:36:35 ID:aAGROMre
ヤンデレの定義はツンデレ以上に神学論争にしかなりえないだろうな
それはともかく投下は…?
573名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 09:32:23 ID:38ss9r2b
お前が投下すればいいんじゃね?
574名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 11:40:19 ID:ED74qHY0
小ネタいきまーす

「おい、お前またそういう格好を…。」
「別にこれくらい、普通でしょ?」
「普通じゃない!なんだその胸の開き方は!スカートの短さは!
せめて素足はやめろ!」
「アンタがそうやって見るからそう見えるの!やらしいんだから…」
ブチっ
「ああそうか、じゃあそういうやらしい目で見てやるよ!」
「え、やだ、ちょっと…!」

(中略)

「要するに、アンタは私にこういう服を着せたくないわけね?」
「……まぁつまりは」
「私の持ってる服、だいたい知ってるよね?」
「そんなんばっかだよな」
「アンタの希望に合わせるなら、ワードローブ一新しなきゃいけないわけよ。
それにかかる費用と労力、慰謝料がわりにしっかり提供してもらうからね」



女性の買い物にうんざり顔で付き合わされている男性たちに捧ぐ。
575名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 08:29:00 ID:igMUUNW+
なるほど、あの男たちはみんなそうやって…w
GJ!
576名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 23:20:53 ID:OaaXB0AW
なんて明るい無理やりwGJ

ヤンデレも、それ以外も、待ってるぞ〜!
577名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 01:58:46 ID:z9pOD4gA
小ネタ乙
しかし最近は寂しいね
578名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 23:24:59 ID:jNJLqmI9
舞台は現実とファンタジー皆どっちが好きなの?
579名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 23:51:38 ID:xRZF6hSW
どっちも好きだすよ

そこに愛と無理やりがあるならば!!

現実は現実でリアル感と泥臭さが感じられていいし、
ファンタジーの場合はシチュエーションが無限大に操作できていいよねえ
580名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 17:41:28 ID:SKKs0F3m
俺もどっちでもおk
581名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 00:20:59 ID:3xv+UyWY
自分はファンタジーの方が好きだな
安心して楽しめる
582名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 20:39:30 ID:9K6ydeHU
現実でもファンタジーでも健気でいじらしいおにゃのこが
どす黒い欲望を発露させた男にズタボロにされればなんでもいいや
583名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 04:18:28 ID:Zg7Xmo/p
好きな男がいるのに、他の男(権力者や弱みを握られてる奴)に陵辱されるのは萌えるね
584名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 12:06:11 ID:/OdunvR5
片方が挫折とか事件起こしたとかで、自己評価を低くしてるとイイ
なんかプライド取り戻そうとあがいたり、潔癖過剰になってたりするとイイ
あとは近付き過ぎた相手を襲ったり、突き放した相手に襲われたりとテンプレ展開で
585名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 23:03:36 ID:PzJdNAsh BE:640613546-2BP(0)
>>579-584
この辺を織り混ぜたのを考えてみたのに

規制で投下できねええええ
586名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 01:06:41 ID:iPfPs+5/
愛するが故に無理やり規制
587名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 23:52:25 ID:996+79lw
2ch廃人から立ち直らせようと…!
何という深い愛だ。
588名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 00:54:12 ID:eLzTT4bQ
>>585
なんて事だ…
でもそろそろ規制解除が目立ってきたようですよ
もしまだなら一旦自身の携帯に送って携帯で書き込みはどうでしょう?
ピンクは携帯規制殆ど無いですし
まぁ、昨日から2ちゃんでも解除されてますが、また2ちゃんで携帯規制となっても
多分ピンクは巻き込まれない筈です
589名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 14:15:48 ID:0/vvvNDf
wktkで待ってるよ!!
590名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 21:59:46 ID:SBKM3O7i
やっと規制解除だパソコンでも書き込めるぜ…

>>585
期待しています。
591名無しさん@ピンキー:2010/04/10(土) 20:08:52 ID:urvs53RG
規制解除記念上げ
592名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 23:47:17 ID:kIqbs4wJ BE:160153632-2BP(0)
また規制食らってる。

>>588の言う通り携帯使った方がいいのだろうか…
593名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 09:11:47 ID:2mPa5T+q
>>592
投下して頂けるなら是非に
594名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 23:37:37 ID:vEXV0LnK
くどいな。
誘い受け臭い。
595名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 00:03:53 ID:2mPa5T+q
>>594
規制で書き込めないなら仕方ないんでね?
携帯で長文ってコピペするだけでもダルいし
596名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 01:46:29 ID:/F6tivlE BE:160153632-2BP(0)
すまん、コピペ面倒だから躊躇ってた。

でももう規制解除待つ方が面倒臭いから根性でコピペする。


・事前の注意書き

インスパイア事項
>>581 ファンタジー
>>582 健気でいじらしいおにゃのこ
>>583 権力者
>>584 片方が挫折とか事件起こしたとかで、自己評価を低くしてる

他、強姦要素が強いので注意。

では投下します。
597偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 01:53:28 ID:/F6tivlE BE:960919766-2BP(0)
月が綺麗な夜だった。

「ロイド!村がある!」

浮遊魔法で上空から今夜の宿を探していたディアナは、遠方に小さな村を見つけ嬉々として旅の相棒に伝えた。

「やっと抜けたか…」
「やっと宿で休める…」

森を彷徨い野宿を続けていた2人にとっては、久々の宿となる。
ディアナはロイドを急かし、2人は足早にその村へ向かった。



──剣士ロイドと、魔道士ディアナ。
2人は数年前から共に旅を続けていた。

ロイドは表向きはただの剣士だが、実は某強大勢力国家の王位後継者である。
彼の国が大きな力を持つようになったのは、彼の軍事指導があってこそだった。
若くして剣の腕も立ち最早負け知らずだが、その強さは戦略によるところも大きい。
要するに、切れ者なのだ。

しかし今は、国を抜けディアナと旅をしている。
ディアナは詳しい事情は知らずにいる。
何故国を出たのかと何度聞かれても、ロイドは一切教えなかった。

しかし最近では聞かれることはなくなっていた。
ディアナはどれほど気になっていても強くは言えない立場にあるからだ。


598偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 01:55:10 ID:/F6tivlE BE:160153823-2BP(0)
森の外れの寂れた村に辿りついた2人は、真っ先に宿を確保した。
石畳の上に最低限のものが置かれただけの、簡素な部屋だった。

「あぁ、疲れた…」

ディアナは開口一番、ベッドに倒れ伏す。
部屋は一つ。以前別々の部屋を取り、熟睡したディアナが賊に寝首を掻かれそうになったためだ。

「ベッド、一つしかないけど…… いいの?」
「俺は使わないからいい」

ベッドに横たわって寝るといざという時に反応が遅れるという理由で、ロイドは一切ベッドを使用しない。

「また座って寝るの?疲れない?」
「いいからさっさとシャワー済ませて寝ろ。」

ディアナは心配そうな表情のまま浴室へ向かう。
ロイドはベッドの隣に置かれていた椅子に座り、何の気なしに部屋の窓から空を見上げた。




──昔、世界の外れに強大な力を持つ魔道士の集落が存在した。
数年前、その力を恐れた国々の奇襲を受け今はもう廃墟となっている。

ディアナはその村で最も恐れられた大魔道士の娘であった。
敗戦を帰し、瓦礫の下で気絶していたディアナを見つけ出したのが、興味本位で立ち寄っていた1人の剣士。

599偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 01:57:23 ID:/F6tivlE BE:560537137-2BP(0)
ロイドと名乗ったその剣士は事情を聞くと、魔力はあっても戦闘経験がほとんどなく戦力にならないディアナを、
自分の指導の下強くなることを条件に仲間に引き入れた。


村も家族も全て失い、生きる希望を失っていたディアナはロイドに縋った。
その時自分に向けられた、まるで道具を扱うような視線に気付いていても。



それからディアナは、ロイドの役に立つために旅を続けている。恩返しのつもりなのだろう。
例え利用されているとしても、標を、そしてそれが何であれ、生きる理由を与えてくれた人間であることに
変わりはないのだ。






暫くすると浴室の扉が開き、ディアナがバスタオルを一枚巻いただけの姿で出てくる。

「おまえ… 着替えて来いよ…」
「だって、脱衣所なくて」

よく見ると、確かに扉の先は文字通り浴室だった。
部屋の構造まで簡単な宿のようだ。

「ここで着替えるけど…… 見たい?」
「別に」

にやにやしながら自分をからかうディアナをロイドは素っ気無くあしらい、視線を窓の外へと逸らす。
ディアナは手早く着替え終えると、ベッドに腰掛け小さく呟いた。

600偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 01:59:11 ID:/F6tivlE BE:1494763687-2BP(0)
「ロイド、最近冷たい……」
「見たいって言って欲しかったのか?」
「そうじゃないけど……」

森を彷徨う前から、ディアナはロイドの自分に対する扱いが簡素で適当になっている印象を受けていた。
少し前まではもっと会話らしい会話をしていたのだ。

「じゃあ何だよ」
「……、そういう風に、言うのが……」

ディアナはロイドの顔色を伺うように小さな声で言う。

「前は、もう少し……」
「…………」

ロイドは表情を一切変えず押し黙っている。
そこに漂う気まずい空気に、ディアナは猛烈な不安に駆られ始めた。

知らないうちに何か気に障ることでもしたのだろうか?
もしそうなら、実は自分を置き去りにするタイミングを計っているのではないか?

「あ……、あの、もう寝るね。」

脳裏をよぎる最悪の事態に耐え切れず、ディアナはベッドに逃げ込もうと布団に手を掛ける。
その瞬間、ロイドは彼女の怯えたような表情を見逃さなかった。

「待て」

反射的に、彼女を呼び止めていた。
ディアナはぴたりと動きを止め、恐る恐るその呼び元に顔を向ける。

601偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:00:51 ID:/F6tivlE BE:106769322-2BP(0)
「な、何……?」

本人は平静を装っているつもりのようだが、ディアナはどう見ても畏縮している。
ロイドは怪訝な表情を浮かべた。全く愛想のない自分に対し、不満な態度を取るのなら理解できる。
何故怖がる必要があるのか?

「俺が怖いのか?」
「そういう…わけじゃ……」

逸らされた目が、それが嘘であると悟らせる。

「…………」

自分に怯えるディアナに無性に苛立ちを覚えたロイドは、おもむろに立ち上がると僅かに震えるその腕を掴み
乱暴にベッドに押し倒した。





ロイドはディアナを仲間にした時から、女として意識するつもりは全くなかった。
戦力にさえなれば良いと思っていたのだ。

しかし時間が経つにつれ、非常に従順な彼女に対し自分の中で情が移って行くのを自覚していた。
ディアナに対する淡白な態度は、その心情を否定していたがために現れたものだった。

疎ましく思っているわけでもなければ、怯えさせるつもりもなかった。




「え…?え?ロイド?」
「怖がらなくていい」

困惑の表情を浮かべるディアナを押さえつけ、ロイドは一言だけ口にすると無理やり彼女の唇を奪う。

602偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:02:12 ID:/F6tivlE BE:934227757-2BP(0)
「んっ…!?」

わけがわからず顔を反らそうするとディアナの顎を、空いている片手で固定しより深く口付ける。
苦しそうな声を上げた時だけ僅かに息継ぎの間を与え、すぐに唇を塞ぎ舌を絡め取る。
本当に息苦しいのか、強く肩を押し返される感覚を覚えたところでロイドはようやくディアナを解放した。

「ロ、ロイド……?なんで……」

ディアナは軽く息を切らしながら問い掛けるも、ロイドは何も言わずに首筋に唇を移す。

「待って……」

その言葉は聞き入れられず、空しく静寂に消えた。





ロイドはディアナが自分を慕っているのは知っていたが、それを受け入れることはできなかった。
ディアナは非常にわかりやすい。万が一気持ちが通じたなどと思われてしまうと周囲に知れるのは明白だった。

そしてロイドは名の知れた剣士である。必要と判断すれば、非道な行為も平然と為す。
故に悪名も高く、恨みも多く買っている。

そんな人間の恋人になどなったら、どうなるか?


603偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:03:16 ID:/F6tivlE BE:1281226368-2BP(0)
更に挙げるなら、ロイドは他国の王女や関係者を政治的・軍事的利用を目的に裏で何人も抱いてきた。
相手にもよるが、意のままに操るには自分に依存させてしまうのが最も確実で手っ取り早かったのだ。

つまり、女の嫉妬も怖かった。


では何故今こうしてディアナを組み敷いているのか…

このまま畏怖され続けていては旅に支障が出ると思ったからか?
心の内に秘めた、行き場のない感情をただぶつけたいだけなのか?

違うかもしれないし、あるいはその両方かもしれない。
ロイドは自分でも良くわからなかった。




「……、どうして……私なんか……」

ディアナは自分は利用されていると思っているため、好意を寄せられることなど絶対にあり得ないと思っていた。
性欲処理として使われるのなら、とうの昔に使われているはずだった。それ故今の事態を理解できずにいた。

ロイドは何も答えずにディアナの胸元をまさぐる。

「や、やだ、待って!何か言ってよ!」

ディアナは慌ててその手を押さえ、衣服内への侵入を阻む。
ロイドは動きを止め、抵抗するディアナの耳元で静かに言い放った。

604偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:04:37 ID:/F6tivlE BE:960919766-2BP(0)
「おまえ、俺が好きなんだろ?何が不満なんだ?」

返事を待たず、ロイドはディアナの胸を無理やりはだけさせる。彼女の形の良い、程よい大きさの白い胸が
外気に晒された。

「なっ……!?」

ディアナはいくら慕っている相手でも、自分に気持ちが向いていない人間に抱かれるのは嫌だった。

「いや……! でも……、こんな……」

全てを言わせる前に、ロイドは胸の突起を親指の先で転がし始める。

「や、あぅっ…… やだっ…!ロイド、嫌!!」

ディアナは拒絶の言葉をはっきりと口にし、身を捩って抜け出そうと暴れ出す。
ロイドはその肩を無理やり押さえつけると、鋭い視線で彼女を見据え静かに問い掛けた。

「抵抗するのか?」

必死に逃げようともがいていたディアナの動きが止まる。

「俺に逆らうのか?」
「…………」

怖がるなと言ったその口で行われた露骨な強迫。
ディアナの瞳が、僅かに潤んだ気がした。
我ながら卑劣だと自嘲しつつ、ロイドは再びディアナの胸を愛撫し始める。

「う……あ、あぁ……」

あからさまな抵抗はしなくなったものの、ディアナは切ない表情で悶えている。
605偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:05:47 ID:/F6tivlE BE:640613164-2BP(0)
ロイドはその表情から目を背け、ディアナの息が上がってくるまで執拗に愛撫を続けた。


「は……ぁあ……!も、や……」

頃合を見て、彼女の下半身に手を滑らせる。触れると、そこはしっとりと濡れていた。

「!!いやっ!そんな、とこ……」

ディアナは驚いて手を伸ばし、その行為を妨害する。
ロイドはその手首を掴み彼女の頭上で押さえ身動きを封じると、触れていた指を第二関節まで侵入させ
指の腹で中を擦ってやった。

「あぁ!はっ…ぁああっ!」

過去の経験より、女の悦ばせ方は大体わかっていた。
ディアナは初めて与えられる妙な感覚に戸惑いを覚えているように見える。
ロイドは見透かしたような目でディアナを観察し、指の動きを速めていった。

「や、あぁ!いや!やめっ…!」

一頻りディアナを喘がせたところで指を引き抜く。そこはもう、十分に潤っていた。
もういいだろうと思い、ロイドは腰のベルトを緩める。

その様子を見たディアナは顔を強張らせ、おずおずと問い掛けた。

「あ、あの……、するの……?」
「ここまできてしないとでも?」

逆に問い返しながら、自分のものをディアナの入り口に充てがう。

606偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:06:58 ID:/F6tivlE BE:213537942-2BP(0)
「ま、待って…!私、初めてだし……」
「配慮してやる」

突っ撥ねるように答えると、ロイドはゆっくりと腰を進めた。

「い、やぁっ…!ああぁっ……ぅっ…」

若干きついものの十分に濡れているので難なく奥まで入ったが、やはり痛いようだ。
ディアナは固く目を閉じ唇を噛み締めている。

「痛いか?」

ディアナは辛そうに頷く。ロイドはディアナが慣れるまでできるだけ優しく、ゆっくりと動いた。
痛みを紛らわすため、しばらく胸の愛撫も同時に続けた。

「んっ…、ぁあ……っ、い、たっ……」

言葉を発することができるようにはなったようだ。
ロイドはそのまま、必要以上に時間を掛けてディアナを慣らしていった。




「まだ痛いのか?」
「……ぅ、うん…」

既に相当な時間を掛けている。
若干の痛みは残っても、そろそろ別の感覚を覚え始めてもおかしくはなかった。

「……本当に痛いのか?」
「痛い……」
「…………」

痛みを訴えるディアナの表情から苦痛は読み取れない。むしろ、声を上げないよう我慢しているように見える。
607偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:08:27 ID:/F6tivlE BE:960920249-2BP(0)
ロイドは小さく溜息をつくと、ディアナの腰を掴み不意に強く突き上げた。

「ぁああっ!!」

ディアナの身体がびくんと反り、簡単に高い嬌声が漏れる。そこに苦痛の色は全くなかった。

「……それが痛みに耐える人間の声か?」
「…………」

ディアナは気まずそうな表情で目を合わせずに黙っている。

「おい、どうなんだ」

尋問するように、何度も何度も強く突き上げる。

「あぁっ!やあぁっ!ごめ、なさ……ぁあんっ!!」
「この状況で嘘をつくとはいい度胸じゃねえか」

ロイドはお仕置きと言わんばかりに、どんどん腰の動きを速めた。

「や、あっあぁっ!ああぁっ!」

突く度に高まっていく喘ぎ声が、ロイドの欲情心を更に掻き立てる。嗜虐心と言った方が正しいかもしれない。
時間と共に勢いを増す容赦のない陵辱に、ディアナは初めてにも関わらず限界を迎えさせられた。

「ああぁ!だめ!!おねが…ぁあっ─────!!!」

固く目を閉じ身を強張らせ、その身を貫く深い快楽に耐えている。
ロイドはその様子を一瞥するも、腰の動きは一切止めなかった。

608偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:09:31 ID:/F6tivlE BE:213538324-2BP(0)
「はっ……!!あぁっ!!ロっ……!!!」

なかなか引かない大きな波に、ディアナはロイドの名を呼び切れず身を震わせ続ける。




気を失うまで続けてやる。そう決めていた。

喘がせるほどに満たされていく、支配欲と独占欲。その裏で、ロイドは一時の感情に囚われこのような事態を
招いてしまったことを後悔していた。可能ならばなかったことにしたかった。

だからこそ、ディアナにとって信じ難いこの事態を、実は夢だったのではないかと思わせたかった。


自分らしくもない、稚拙な考えだと思いつつロイドは目を閉じ、ディアナが落ち着くまでひたすら突き続けた。

「ぅ、あっ……っ……!はぁっ…!!いやっ…、もう、……あ、ああぁっ!!」

何とか絶頂に耐え切るも、絶え間なく与えられ続ける快楽にディアナは再び高い声を上げる。

「お願……もう、やめ……っぁああん!!」

懇願してくる彼女を、ロイドは拒否の意を示す代わりに一際強く突き上げる。
それから実に数十分、ディアナがいくら果てようと、いくら懇願してこようと、休息すら入れずに犯し続けた。
609偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:10:55 ID:/F6tivlE BE:320307326-2BP(0)
容赦なく送り込まれる強烈な快楽に耐えられず、幾度となく絶頂を迎えさせられたディアナはとうとう泣きながら
声を上げた。

「いや!ロイド!もういやぁ!」

その様子を目にしようやく腰を止めると、その涙を指で拭い優しく頬に触れる。
ディアナは激しく息を切らしつつ、ようやく訪れた休息に僅かながら気を抜いてしまう。
それを確認した瞬間、ロイドはディアナの最も反応の良いところを思い切り突き上げた。

「ああああぁぁっ!!!」

強烈な不意打ちを食らわされ、絶叫とも取れる大きな嬌声が響く。
ロイドは反射的に反り返ったディアナの身体を抱えて腰を引き寄せると、より深くまで何度も貫いた。

「はあぁっ!ああぁっ!いやぁっ!!」

更に大きな嬌声が搾り出される。

ディアナは身に余る過剰な快楽を少しでも和らげようと必死に腰を捩るが、更に深く食い込ませるだけの結果に
終わっていた。
その行動に気付いたロイドは、身じろぎする彼女の腰を強く押さえつけ、抵抗しなくなるまで徹底的に突き立てる。
それと同時に上がる、激しい喘ぎ声。

ほんの僅か抵抗する素振りを見せるだけで、割に合わない凄まじい陵辱がディアナを襲い続けていた。


610偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:12:10 ID:/F6tivlE BE:160153632-2BP(0)
これだけ犯しても意識を保ち続けるディアナに、ロイドは焦りを感じていた。
自身もそろそろ限界を感じていたため、早々に追い込む必要がある。

「ディアナ、おまえ……しぶといな……」

小さく漏らした声は、喘ぎ続けるディアナにはおそらく届いていない。
旅の疲れを癒す必要もある。次で終わらせると決めていた。

ロイドは抱えていた腰をしっかり固定すると、ディアナの敏感な箇所を目掛け自分の腰を思い切り打ち込んだ。

「ぁぁああっ!!!」

びくんと跳ねかける腰を動かないよう押さえ、更に何度か突き上げる。

「ああんっ!!やあぁっ!!」

ディアナが一際大きく喘いでいることを確認すると、小刻みにそこだけを突き続けた。
中を往復せず少しでも長く持ち応えようという考えだった。

「あっ…ぁぁあああっ!!!いやあぁぁっ!!」

あられもない声が響き渡る。弱いところを集中的に攻められているのだから、ひとたまりもないはずだ。

611偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:13:27 ID:/F6tivlE BE:1441379096-2BP(0)
「いやっ!!いやあぁぁぁっ!!!だめえぇぇっ!!!」

突然ディアナが激しい抵抗を始める。全力でロイドを押し返し、必死で逃げ出そうとしていた。
ロイドは押さえていた手を腰に回しその身体に覆い被さると、強くディアナを抱き締める。
密着し自らの身体で押さえ込んでいるため、ディアナの力ではどう足掻いても脱出できない状態となった。
ロイドはその体勢のまま、ペースを上げて集中的に突き立てる。

「あああぁぁっ!!!やめてぇぇ!!」

ディアナは震えながら絶叫する。ロイドの衣服を掴む手に力が籠もる。
文字通り、限界が近いようだった。

ロイドは再び唇を奪うと無理やり舌を絡め、喘ぐことすら困難にさせる。
あまりに強烈な快楽を声を出すことで紛らわせていたディアナは、全神経を以てそれを味わわされることとなった。

「……──────っ!!!」

享受し切れず身体に蓄積され続けた熱が、尋常とは思えないほどに甚だしい快楽と化してディアナを襲う。
声を出せずに震えるディアナを、ロイドはここぞとばかりに激しく突いた。
しばらくの間、中から漏れる物凄い速さの水音と、時折上がる苦しげな声だけが部屋に響いていた。


612偽悪的征服録 Ep.1:2010/04/13(火) 02:14:25 ID:/F6tivlE BE:854150584-2BP(0)
程なくしてディアナは大きくくぐもった声を上げ、強烈な収縮を以ってロイドを限界へと導く。
ロイドは唇を離すと自身をディアナから引き抜き、勢い良く欲望を吐き出した。

爪を立て、強くロイドの背を掴んでいた手が力なく落ちる。
胸に垂れる美しく波打つ金色の髪が、安らかな呼吸に合わせ揺れていた。

ロイドは涙で濡れたディアナの頬を優しく拭い、乱れた着衣や毛布を整え静かにベッドから離れると、
崩れ落ちるように椅子にもたれ掛かった。

しばらく何も考えず、ただ呆然とうな垂れていた。




いつしか部屋を支配する重い静寂が、2人を深い眠りに誘っていた。
613名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 02:17:25 ID:/F6tivlE BE:160153823-2BP(0)
以上。長文失礼しました。
伏線仕込んだので続けます。
614名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 08:26:12 ID:iYbR/3De
GJです!
朝からにやにやしてしもうたw
続きも楽しみにしてます
615名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 15:44:54 ID:eV9Kvnjn
>>596-613
長文投下GJ!!!
ディアナたんカワユス(´Д`;)ハァハァ
この調子で性的に苛められるのか…興奮する!!
616名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 21:39:05 ID:rKGJgipE
GJ!!
文章とか設定とか凄く好みだ
続き楽しみにしてます
617名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 02:02:02 ID:wmT07rhg
>>613
乙です!!!!
翌朝の気まずい雰囲気を想像しただけで萌えるw
小動物みたいにビクビク怯えて媚を売るディアナとか
それを見て更に苛つくロイドとか
ロイドはドSっぽいし性的な意味で鬼畜度全開なのを期待してますw
618名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 11:30:46 ID:kZS5TiHA
>>613

萌えた
619名無しさん@ピンキー:2010/04/16(金) 10:50:06 ID:+UroxYi/
投下期待
620名無しさん@ピンキー:2010/04/18(日) 22:57:40 ID:FmHJPeiX
ディアナちゃんマダー(AA略
621名無しさん@ピンキー:2010/04/21(水) 02:20:00 ID:uMjUBruC
投下待ち
622名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 01:56:08 ID:xsfakcpt BE:640612883-2BP(0)
いつになったら規制解除されるんだ…
>>613ですが感想・妄想ありがとうございます。励みになります。
携帯ですが続き投下します。

【事前の注意書き】
・鬼畜展開(グロくはありません)

濡れ場以外はそれほど求められてないと思うので、簡単に書いてさっさと進めてます。
濡れ場のみご所望の方は半分くらい飛ばしてしまって下さい。


以下、投下します。
623偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 01:59:20 ID:xsfakcpt BE:1281226368-2BP(0)
小鳥のさえずりがこだましていた。
窓から差込む柔らかな太陽の光の中、ディアナは薄っすらと目を開ける。

無意識のうちに、隣に座っているはずの人物を探していた。
が、その姿を捉えることができないことに気付くと、慌てて飛び起き辺りを見回した。

「ロイ……ド……?」

昨日の、要らぬ想像をした矢先のこと。全身から血の気が引いた気がした。
着替えもせずに探しに出ようと部屋の扉に近付いた瞬間、勢い良く開いたその扉がディアナを直撃した。

「痛っ!!」
「……。何やってんだ……?」

探していた人物が、扉に突き飛ばされ尻餅をついているその姿を呆れ顔で見下ろしていた。
起こさないよう配慮したのか、別の空き部屋でシャワーを浴びてきたようだった。

「な……、何でもない……」

鼻の頭をさすりながら、満ち行く安堵感を覚えていた。
それと同時に、昨日の未だ信じられない出来事が脳裏をよぎる。少しだけ、顔が熱くなった。

「あの……、昨日……」
「身体は軽くなったか?」

言い掛けた言葉を遮るように質問される。

「え?」
「回復したかって聞いてんだよ」

言われてみると、身体は軽かった。そして同時に生じる疑問。あれほど長時間に渡り手込めにされ続けた身体が、何故重くないのか?

「…………?」

これほど鮮明に覚えている夢などあるはずがない。
しかし、ロイドはまるで何事も無かったかのように振舞っている。

いまいち事態を飲み込めなかったものの、1つだけはっきりしたことがあった。
夢でなかったとしても、彼がそのことに極力触れないようにしているという事実。

憤りよりも淋しさが込み上げていた。
ディアナはその気持ちを胸に仕舞い込むと、彼の意を汲み何も言わずに旅の支度を済ませた。

その様子を黙って見ていたロイドは、窓を開け放つとディアナを部屋から出るよう促す。
部屋に漂っていたほのかな薬草の香りが、風に流され消えようとしていた。



624偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:03:33 ID:xsfakcpt BE:427076328-2BP(0)
──その後、2人が辿り着いたのはアルベニアという小さな国。
目的地というわけではない。遅い昼食を適当に済ませ、宿か野宿かの討論がなされていた。
ディアナは先日までとは違いロイドが普通に接してくれることが嬉しいのか、すっかり元気になっていた。
そこへ現れた数名のアルベニア兵。
かしこまった様子で休憩していた2人の前に立ち、周囲に聞こえない程度の声でロイドに話し掛ける。

「失礼ですが、ロイド様ですね?」
「人違いだろ」
「只今我が国では、各地より猛者を募っております。急な申し出で恐縮ですが、アルベニア城まで御同行をお願いしたいのですが。」
問答無用に並べ立てられるマニュアル通りの言葉。

「話を聞いて下さるだけでも構いません。応じて下さった方には、無償で宿を提供させて頂いております。」
「本当ですか?」

用意されていた「餌」に食い付いたのはディアナだった。

「おい……」
「併せて食事も提供致します。御同行お願いできますか?」
「ね、行くだけ行ってみてもいいんじゃない?」

子供のような目で「行きたい」と訴えている。おそらく、城という建物に入ってみたいのだろう。
加えて、宿にまで有り付けるのだから彼女にとっては一石二鳥。
面倒ごとになり兼ねないため今まで国を訪れても城内に入るのは避けていたが、昨日の件でディアナに多少の負い目を感じていたロイドは仕方なく応じてやることにした。


兵に連れられ辿り着いたその城は、小さいながらも厳かな雰囲気を醸し出していた。
門をくぐり促されるままに広間に入ると、それなりの人数が既に集っているのが目に入る。
姿こそアルベニア兵そのものだったが、新参であることがその空気からすぐに読み取れた。

やがて、長身の隊長格らしき人物が2人の前に現れた。
頭上から注がれるその視線は、お世辞にも良いものとは言えない。

「ラストニア国王の御子息ですね。」
「…………」

ロイドは一瞬、眉をひそめる。

「呼び方がお気に召しませんでしたか?ロイド・リト・ラストニアス様。こうお呼びした方がよろしいですか?」

言い直されたその言葉に込められていたのは、明らかな皮肉。
はっきりと、周囲に知らしめるようにその名が呼ばれると、憎しみや恐れといった様々な感情の篭った視線がこの空間を錯綜した。
それはディアナにもはっきりと感じ取れたようで、驚いてロイドの背に寄っていた。

625偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:07:20 ID:xsfakcpt BE:400383735-2BP(0)
「貴方のような方がこのような僻地へ訪れるとは……それほど宿にお困りで?」
「さっさと用件を言え。」
「これは失礼。それではこちらへどうぞ。」

殺伐とした空気の中、ロイドの痺れを切らしたような催促でようやく事が進む。
少なくともこの城の人間には歓迎されていないようだった。招待した兵は、おそらく手当たり次第当たっていただけなのだろう。
ディアナは周囲を警戒しながらその背中を追い、国王の間へと足を踏み入れた。


日が暮れた頃、宿として案内されたのはそこそこ豪華な客室だった。
立場を配慮されたのか、明らかに他の連中とは扱いが異なっていた。
部屋に入り扉を閉めると、ディアナがおもむろに振り向き小さくなって頭を下げる。

「ごめんなさい……」

自分の我侭のせいで不快な思いをさせてしまった、と思っているのだろう。

「日常茶飯事だろうが。気にするな。」
「はい……」

ディアナは申し訳なさそうにベッドに腰掛け、話題を切り替えた。

「そういえば、王様は結局何言ってたの?お互いに遠回し過ぎて何を話してるのかさっぱり……。」
「要は近々他国に手を出したいから手を貸すか、貸さないのならおとなしくしてろと。」
「それだけ?」
「…………」


アルベニア王はある魔道士を探している、とも言っていた。
誰なのかと聞いてもその名を口にすることはなかったが、その素振りから口を割らないというより知らずにいる印象を受けていた。
他国を制圧して魔道士を掻き集め、名も知らぬ人物を探すつもりなのか?
それとも誰かにそうするよう指図されているのか?

あり得るとすれば、後者。
どことなく、裏で何者かの意志が働いているような気がした。
そして、陰で捜索されるような魔道士といえば……


ディアナはロイドにじっと見られていることに気付く。

「……?どうしたの?」
「いや……」

断定するには不確定要素が多過ぎた。
取り立てて気にする必要はないのかもしれないが、ロイドはその経歴上、策謀の匂いには殊更敏感だった。

「食料を調達して来てやる。こんな国の出す料理じゃ何を入れられるかわかったもんじゃない。」
「じゃあ、一緒に……」
「おまえはここにいろ。絶対に部屋から出るな。誰が来ても返事をするな。」
「……はい」

626偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:10:36 ID:xsfakcpt BE:213538324-2BP(0)

唐突にまくし立てられ、たじろぎながら返事をするディアナを部屋に残し、あるかどうかもわからない手掛かりを探しに出る。
何もないならそれはそれで良いのだ。
周囲から向けられる視線は完全に無視し、散歩を装って城内をよく観察した。見張りは姿を見られる前に気絶させた。

やはりただの考えすぎかもしれない。
そう思い始めた頃、地下で偶然目にしたのは鎖で封鎖されている扉。人が訪れた痕跡はなかった。

ロイドは静かに剣を抜きその鎖を断ち切ると、重い硬質の扉を蹴破り中を調べた。
書斎のようなその室内で感じたのは、何者かがこの空間を使用していたという漠然とした空気。
そしてその部屋で、抱いていた疑念は確信に変わった。

裏で糸引く人物を炙り出す方法を考えながら、部屋へ戻る途中。
背後からはっきりと視線を感じていた。
しばらく他人の目など気にも留めていなかったため、いつから跡をつけられていたのかはわからない。

ロイドは不自然に足を止め、既に気付いているということを暗に伝える。
すると、顔を出したのは美しい容姿の1人の女性。碧く真っ直ぐな長い髪をなびかせ、おずおずと歩み寄る。
どこかで見た顔だった。

「あの……、私を覚えていらっしゃいますか?」

巫女のような清楚な身なり。そしてその胸に光るのは、アルベニアの国章。

「マリシア王女……?」
「覚えていて下さったのですね!」

会ったのは10年以上前。会合に連れられて来た時に話しただけだったが、国の主要人物となり得る人間の顔は忘れないようにしていた。

「も、もしよろしければ……、私の部屋にお立ち寄りしては、如何でしょうか?」

マリシアは頬を赤らめ、緊張した面持ちで声を振り絞っている。

「…………」

この城に永くいる人間。何か知っているかもしれない。
ロイドがその申し出を受け入れると、王女は嬉しそうに自室へ案内した。


彼女の部屋は別段華々しいわけではなく、白を基調とした綺麗な部屋だった。
言われるがままにソファに腰掛けると、他愛の無い会話が始まった。
マリシアは相変わらず緊張している様子を見せたが、すぐにその緊張も解け始めた。
ロイドはその様子を観察しつつ、頃合を見計らい何食わぬ顔で本題に入る。

「マリシア王女」
「マリシアで構いません。」

静かな物腰で呼び捨てを強要される。

「……マリシア。地下の鎖で封鎖された部屋を知っているか?」
「封鎖された部屋……?」

627偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:13:52 ID:xsfakcpt BE:533844454-2BP(0)
マリシアは眉をひそめ考え込む素振りを見せるが、その答えは予想外のものだった。

「そのような部屋はありません。」
「…………は?」
「地下には開放された軍事施設しかないはずです。」

嘘をついている様子は無いし、つく理由も無い。ロイドは耳を疑った。
その手で斬った鎖は、確かにあの場所に存在するものだった。

「どうかされましたか?」

一つの可能性が浮かんでいた。
もしそれが正しければ、彼女が知らないのも無理は無い。

「いや……、何でもない。邪魔したな。」
「え?…ま、待って下さい!」

早々に用件を済ませ立ち去ろうと扉へ向かうと、彼女は慌ててロイドの腕を掴みその場に留めた。

「できればもう少し……」
「……マリシア」
「ずっと、お会いしたかったんです!」

何か言いたげなロイドを遮り、マリシアは強い口調で胸の内を訴える。
腕を掴むその手に僅かに力がこもった。

「母は他界し、父はもう子供を作れぬ身で……、早く後継者を作ろうと縁談が絶えませんでした。私はそれを……断り続けました……」
「…………」
「せめて、貴方にもう一度会うまではと……」

ロイドは目を合わせずに、紡がれるその言葉を黙って聞いていた。

「ロイド様……。初めて話したあの日から、見初めておりました……」

切なげに思いを明かし、俯いたまま掴んでいた腕に寄り添う。
そんな彼女を待っていたのは、不自然に長い沈黙。マリシアは、ただ静かに愛しき人の答えを待った。

やがてロイドはゆっくりと振り向き、何の表情も浮かべずに彼女に視線を注ぐ。
それに気付いたマリシアは、そっと顔を上げその目を見つめた。

彼女を見つめるその瞳に宿る、黒い謀略の光。マリシアはそれに気付いていなかった。


ロイドは彼女の細い腰を抱き寄せ、静かに唇を重ねると、マリシアは目を閉じながらそれに応じた。
すぐに唇を離し、その華奢な身体を抱き上げベッドに横たえる。
時間をかけ、胸に触れないよう服の上からその肢体をゆっくりと撫でると、マリシアはくすぐったそうに身動いだ。

「夢のようです……ロイド様」

マリシアは恍惚とした表情で目の前の男性を求めた。
この先は必要ない。ロイドは微かに昂りを覚えながらもそう判断すると、再び彼女に優しく口付け、髪を撫でる。

「今日はもう眠れ。」
「また明日、来て下さいますか?」
「約束する。」

628偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:15:55 ID:xsfakcpt BE:1121073067-2BP(0)
マリシアは幸せそうに微笑み、ロイドを部屋から送り出した。
空高く昇った月が窓に臨み、蒼白く光っていた。


部屋に戻ると、明かりがついていなかった。

「ディアナ?」

よく見渡すと、小さく盛り上がった布団が目に入る。中にこもっているようだった。
ロイドはベッドに近付き、もう寝たのかと思い手を掛けると、侵入を防ぐように布団を引っ張られる。

「……何してたの?」

少しの間を置き、中から拗ねたような声がした。
遅れるのは今までも良くあったが、調達すると告げた肝心の食料が手元に無い。

枕元の照明をつけどうしたものかと言い訳を考えているうちに、ふと全開の窓がロイドの目に留まった。
アルベニア城は広場を囲う構造になっているため、他の部屋がよく見える。

何気なく覗くと、そこから見えたのは白を基調とした部屋。マリシアの部屋だった。

「…………」

幸い入り口付近しか見えないものの、まずいと思いディアナの様子を窺う。
ディアナは布団から少しだけ顔を出し、非難するような目でロイドを凝視していた。
静かに窓を閉め、カーテンを閉じる。見られていたとしか思えなかった。

「見たのか?」
「…………」
「……はっきり言え。」

やはり見られたのだと確信するも、ロイドは飽くまで強気の態度で応じる。

「もう寝る……」

ディアナが逃げるように布団を被ると、ロイドはそれを遠慮なく剥ぎ取り再び強い口調で命じた。

「何度も言わせるなよ。溜め込むな。はっきり言え。」

突然隠れ蓑を失い、ディアナは慌てて俯けになって枕に口元を埋めた。
最初から不貞寝するつもりだったのか、既に着替えられていた。
ディアナはしばらく困惑したような表情でロイドの顔色を窺っていたが、やがて意を決したように口を開く。

「私にあんな酷いことしておいて、すぐに他の人に手出すのね。」
「何だ、覚えてたのか」
「………なっ!」

ロイドの白々しい物言いに、ディアナは勢い良く顔を上げ食って掛かろうとする。

「先に言っておくが、俺は何もしてない。」
「嘘!キスまでしてロイドが何もしないはずない!」

やはりただの嫉妬だった。それにしても酷い言われようである。

「してねえよ……しつこいと襲われるぞ。」
「襲えるの?男の人ってそう何度もできないんでしょ?」

629偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:20:30 ID:xsfakcpt BE:400383353-2BP(0)
からかう目的で言ったつもりが、挑発的な返しを食らう。
いつもはすぐに折れるディアナだが、今日は珍しく反抗的だった。よほどショックだったと見える。

「……誘ってんのか?」
「誘ってないっ!」
「襲えば身の潔白を証明できるんだろ?」
「な、なんでそうな……いや、ちょっと待っ……」

ロイドはディアナの口元を手で塞ぎ、勢い良く枕に押し込む。
好都合だった。どうせ覚えているのなら、先ほど抑えこんだ情欲をぶつけてやろうと思っていた。
相手がディアナならば抵抗はない。むしろ望むところだった。

ディアナは手を退かそうともがくが、非力な魔道士の力で敵うはずがない。
ロイドは口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと彼女を組み伏せた。

「でかい声は出すなよ。ここは敵地だと思え。」
「…………」

ディアナはロイドが既にその気になっているのを感じ取り、どうあっても逃げられないのだと悟ると諦めたように目を伏せた。
口元を押さえていた手を外してもディアナはおとなしくしていたが、衣服に手を掛けると恥ずかしそうに小さく呟いた。

「せめて明かり……消して」

ロイドは言われた通りに照明を消し、作業を続ける。露わになった彼女の白い肢体が、月明かりではっきりと目に映る。
身体を隠しかける手を退け胸の先を擦るように手を添えると、ディアナは小さく震えた。
昨日の件で無駄だと学習したのか、全くと言って良いほどに抵抗がない。
張り合いがないと内心思いつつ、ロイドは早々に下半身に手を滑らせ昨日と同じ要領で中を蹂躙した。

「んっ……!」

言いつけを守るように、辛そうな表情でディアナは声を押し殺す。
指の動きを速めると、それに釣られ彼女の息遣いも荒々しいものとなった。

指が引き抜かれるとディアナは脱力したようにぐったりとしていたが、下半身に突然与えられた圧迫感に思わず声を上げた。

「あぁっ!」

はっとしたように両手で口を塞ぎロイドの顔色を窺っている。

ロイドはその様子を一瞥すると、何事もなかったかのように抽送を開始した。

「ぅ、んっ……!」

ディアナは小さな声を漏らしながらも、襲い来る熱い衝撃に必死に耐えている。
徐々に速度を上げると、シーツを強く握り締め辛そうに息を荒げながら身を捩り出す。
その姿は、小さかったはずの色欲を大きく膨れ上がらせるには十分だった。

630偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:22:57 ID:xsfakcpt BE:427075182-2BP(0)
端から理性を抑えるつもりなど微塵もなかった。ロイドは堰を切ったようにディアナを激しく突き立てる。

「やっ…あ、あっ……!っ……!!」

こらえ切れず、悩ましい声がその口を衝いて出る。ディアナは慌てて口を押さえるが、それはすぐに自分を追い詰める行為となる。
ロイドは彼女が懸命に命令を守ろうとしていると見て取ると、それに付け入り更に深くを突き回した。同時に、辛そうなか細い声が長く漏れる。
昨日はディアナを追い込むことを目的としていたが、今日は違う。遠慮の色など一切見せず、彼女が必死に声を抑えているのをいいことに、貪欲にその身体を貪り続けた。

やがてディアナが大きく震え上がり、ロイドもそれと同時に果てる。が、間髪容れずに再び自身を捻じ込むと、ディアナは息を切らしながら慌てて口を開いた。

「わ、わかったからもう……!」
「何度もできないと駄目なんだろ」

最早当て付けでしかないが、ディアナを黙らせるには十分だった。
再び開始された猛攻に、ディアナは小さな声を漏らしながらも決して声を上げるまいと耐え忍んでいる。
昨日の件からも、命令に反すれば理不尽な「お仕置き」が待っているのは明白だった。

無論ロイドはそれを見越した上で、ディアナに無駄な努力を強いる。
声を出さないならば絞り出すために、声を上げたならば「罰」を与えるためにより激しく攻め立てるだけなのだ。
際限なく自分を追い込み続ける陵辱に、ディアナはついに耐え切れず声を上げた。

「っ……、やっ……、あ、ああぁっ!!」

瞬間、ロイドの手によりその口を塞がれ、奥深くを思い切り抉じられる。
たちまち強烈な痺れがディアナの全身を突き抜ける。

「ぅんっ……!んんーっ!!」

鈍くも十分に官能的な声が止め処なく上がる中、その「罰」はお互いが達するまで続いた。
ディアナはまだ解放される気配がないことを感じ取ると、切なそうに音を上げた。

「お、お願い……、もう、やめて……、わかったから……」
「……本当か?」

ロイドが聞く耳を持ったことに違和感を感じたのか、不思議そうな表情を浮かべながらも何度も頷く。
無論、応じる気など欠片も無い。

「じゃあ次は体罰だな。」
「……え?」

ロイドは透かさずディアナの身体を無理やり捩じ伏せ、右腕を掴み後ろ手に固定する。
続いて左肩を押さえつけると、ディアナは血相を変えて抵抗を始めた。

631偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:27:37 ID:xsfakcpt BE:854151348-2BP(0)
「なっ…何!?離して!」
「俺を疑った報いだ。拘束されたくなかったらおとなしくしてろ。」

ロイドの声から感じ取れるのは、怒りではなく優越感。それ故ディアナに怖がる様子はなかった。
しかしこの状況はまずいと思ったのか、ディアナは珍しく媚びた声でせがみ出す。

「あの……、私、静かにしてるから、もう少し楽に……」

これから行われる行為を受け、静かにできるわけがない。
ロイドは彼女の哀願を鼻先で笑い飛ばしてやると、肩を掴む手に力を込め一気に奥まで貫いた。

「んっ!!」

口元が枕に埋まり、辛そうな声が上がる。流石に苦しげな様子を見せたため、肩に置いていた手を退けるとすぐに抽送を開始した。
しばらくの間は比較的軽く、弱い快楽でディアナを慣らす。

「あ、あっ……!……っ!!」

軽くといっても基準が違う。ディアナにとっては十分に耐え難く、ひたすら身を固くしてその行為が終わるのを待っていた。

「そんなに固まってたら疲れるぞ。力を抜け。」
「無、理……っ」
「……ディアナ」

咎めるような声色で名を呼ばれ、ディアナは戸惑いながらも少しずつ身体の緊張を解し始める。
その緊張がある程度まで解れた頃、ロイドが急に突く力を強めると、その身体は彼女の意志に反し再び強張り始めた。

「力抜けって言ってんだろ」
「で、でも……ぁあっ!」

より強く、より速く突き上げ、彼女の命令遵守の行為の邪魔をする。
一向に従う様子が見られないことを確認すると、勢い良く奥まで貫きその動きを止め、意地の悪い台詞を吐いた。

「守れないならどうなるか、わかってるな」

言うと同時に、腰を引かずに彼女の中を激しく掻き回す。

「いっ……!やあああぁっ……んぅっ…!!」

瞬く間にディアナの全身を強烈な快楽が支配する。
無理やり絞り出された嬌声は、瞬時にロイドの手によって抑え込まれた。

「でかい声を出すなと言っただろう。そんなに言うことが聞けないのか?」

ロイドはディアナの口を後ろからしっかりと塞ぎ、中を執拗に掻き回しながら耳元で如何にも愉しげに囁く。
ディアナは切なそうに悶え、懸命に首を振っていた。


そろそろ絶頂に溺れさせてやろうと思っていた。状況的にもちょうど良い。
口を塞いだまま解放していた左手も後ろ手に固定すると、今まで意図的に避けていた彼女の性感帯を徹底して突いた。

632偽悪的征服録 Ep.2:2010/04/22(木) 02:29:46 ID:xsfakcpt BE:1441379096-2BP(0)
「っっ!!ん───っ!!!」

反射的に身を反らし、快楽から逃げようと必死でもがくディアナを力で押さえ込み、一層激しく突き立てる。
立ち所にその速度は増し、ディアナはすぐさま限界に追いやられた。
無論ロイドがそれだけで満足するはずもなく、ディアナがどれほど苦しげに喘ごうとも、情け容赦なくその位置だけを一心に突き尽くした。

数え切れぬほど強制的に絶頂を迎えさせられ、精神的にも追い詰められた頃、ディアナはようやく解放された。
ディアナはあまりに理不尽な仕打ちに非難の声を上げる。

「ひ、酷い……」
「酷くないと罰にならねえだろ。」

今にも泣き出しそうなディアナの顔を自分の方へ向かせると、ロイドは無理やり唇を奪う。
そのまま寝返りを打たせるように仰向けに倒し、彼女が落ち着くまでは決してその唇を離さなかった。



「ロイド、お願い」

ベッドから離れ着衣を整えていると、横から小さな甘えたような声が聞こえた。
声の主に顔を向けると、ディアナがその碧い瞳で真っ直ぐにロイドを見つめていた。

「好きって、言って欲しい……」
「…………」
「嘘でいいの」

ロイドは思わず目を逸らす。
偽りの愛情表現など過去にいくらでもしてきたが、彼女にだけはできなかった。
彼女に対するそれは、その実を失ってしまうからだ。

「……もう寝ろ」

ディアナは悲しげに視線を落とすと、何も言わずに小さく頷いた。


既に日は変わっていた。アルベニア軍の出陣まで、あと3日。
ロイドはただ静かに、来たるべき時を待った。
633名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 02:31:37 ID:xsfakcpt BE:640613838-2BP(0)
以上、続きます。長文失礼しました。

次は連休明けになるかもしれないので、待ち惚けにならず普通に雑談していて頂きたいです。
投下される方も構わずして頂きたいです。
634名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 02:36:09 ID:3EkiwDcu
リアルタイムでキタコレGJ!!!
ディアナたんかわゆすなぁ
635名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 18:26:14 ID:m+CseknA
乙です。
ロイドはディアナにベタ惚れだなw
こういうの萌えるなぁ嘘でも良いから好きと言ってくれって女の子が言う展開も良い
636名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 23:48:37 ID:Op8gXyFz
乙でした!
ディアナかわいいな
637名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 00:24:02 ID:uoJWbmeL
全裸で正座してた甲斐があった
ありがとう>>633
638名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 00:48:57 ID:qWlgj7Jx
GJ!
これからどうなっていくのか気になるな
639名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 19:03:50 ID:8UzWdyHN
そろそろ次スレ
640名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 01:23:14 ID:dZws9jkY BE:1201149195-2BP(0)
即行の御感想ありがとうございます。

ところでちょっと意見を聞きたい。
投下が少ないようなので増えて来るまでだらだら続けようかと思ってるんだが、このスレ的に同じネタで続けるのは有り?

スレを私物化されるような印象を受けるなら何とか終わらせる。
ただ、単発だと妄想に限界が来そうなのであまり続かんかも…
641名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 01:35:27 ID:GDRUnrII
私物化というのは、他の人が投下するとぐちぐち文句言ったり、スレ違いの妄想入れたりすることでは。

投下がないのはタイミングの問題であって、同じシリーズの投下が続くのはスレに合っているならば構わない、
むしろ自分はぜひお願いしますって感じなんですが。
642名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 02:21:03 ID:wj5Z5f7W
>>640
そりゃたまたま他の職人さんがいないだけですので投下してくれるのならして頂きたく
他の人が投下すると文句言ったりするなら私物化ですが職人さんが一人しか居ない状態は私物化ではありま千円
むしろ投下して貰えないとスレが滅びるw


そして次スレの季節か
643名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 15:29:22 ID:ELU2QdpK
昨今は規制が多いから、慢性的な職人さん不足になりがちなんで、
投下は非常にありがたく存じます。
実際、職人さんが規制食らってる間に昇天したスレもあるし。
644名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 02:06:24 ID:eKX8jp++
ディアナが気になって眠れないんだが
645名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 11:20:58 ID:XKdF7Isd
この二人の関係がツボすぎる…!ディアナが可愛すぎてロイドが羨ましい
そして姫ルートもちょっと気になる
646名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 19:55:58 ID:zk8ZkqGk
姫の濡れ場も気になるけどロイドが本気で好きになったのってディアナだけみたいだし
抱かれて道具扱いで終わりか…それはそれでハァハァするなぁ
647名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 20:30:01 ID:Qg3OPHnL
規制解除きたー!

>>641-643
何やら定義を勘違いしていた模様。
了解です。心置きなく投下させて頂きます。

ちょっと過去ログ漁ってみたんだが>>583みたいな寝取られっぽいのってないんだな…
648名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 22:50:51 ID:AvW06iFq
>>647
規制解除おめでとう

まぁ両思いの二人なのにすれ違いまくってってのが多いね
でも主人公が女寝取られるのは嫌いじゃないが悔しい!!ってなるけど
寝取るのはむしろいやったー!!ってなるから結構好きかも
愛してるのに違う男が好きな女を目茶苦茶に犯しつつ愛でるのです。
649名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 02:19:40 ID:bA5mtrv+
>>648
一言一句同意
まず、相手の男から奪った女を無理やり既成事実を作って
ベッドの上に軟禁して
宥めて、賺(すか)して、甘やかして、脅して、抱いて。
いつか女が堕ちてくるのを信じて待つ男っていうのもいいね。
寝取りの場合女は簡単には翻らないで、ずっと他の男のことを思ってるほうが好き。
女の大事な男の安全をネタに脅して、望むことをさせたりするのもいい。
女があまり別の男の名前を呼んだりしなくなったり、
体が抱かれるのを受け入れている、自分に依存して愛し始めているそぶりをみせたら、
あえて自分が油断しているような状況を見せて女を試す。
もしそれで女が逃げ出す、つまり別の男の下へいくそぶりを見せたら・・・ふふっ

という妄想
650名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 02:38:42 ID:xLtU5Q5L
>>648-649
お前等鬼畜ですね、酷い人達です
俺も素晴らしいと思うけど
他に好きな男がいる女の子を凌辱しつつ姦計を張り巡らして
身も心も蹂躙して愛を刻み込んでいくのは
とても素晴らしいと思います。
651名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 16:29:36 ID:CxAacU1H
>>648-650
ちょっとシチュは違うけど、某エンドレス少女漫画の脇カップルが思い浮かんだ。
専門スレ、以前はあったんだが、今は見当たらない。
どこかに潜ってしまったんだろうか。
そもそも主役カップルじゃないから、需要も少なそうだが。
652名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 19:30:36 ID:JB1J6c42
>>651
某エンドレス少女漫画の脇カップルについて詳しく



しかし好きな男が居るのにそんな自身に対して横恋慕する男の深いけど歪んだ愛情をぶつけられる女の子最高と思ったが
両思いなのすれ違ってレイプされ鬼畜陵辱も好きなんでどうすれば…と思ったが
二人ヒロインを用意してそれぞれのシチュを割り振り二股かければ解決する事に気付いた
653名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 21:37:47 ID:hIzXaPhA
そろそろ次スレ?
654名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 21:53:11 ID:DI14PV8k
>>652
651さんではありませんが、「王家の紋章」のミヌーエ将軍とアイシス女王では・・
655651:2010/04/27(火) 22:13:03 ID:CxAacU1H
sage忘れスマソ

>>652
では、ざっと概要を(主観ですが)。

近隣諸国にもその美貌で知られ、国の半分を治めていた、聡明な女王(兼祭司)。
幼い頃から、腹違いの弟(現国王)の妻となることを周りから期待され、
自身も信じ込み、何より弟を肉親として男性として深く愛し続けてきた。

そこへ現れたヒロイン。
弟はヒロインに強く惹かれ、アプローチを繰り返す。
ヒロインは最初は反発するも、やがて弟に惹かれていく。
国民も、ヒロインの持つバックグラウンドから、彼女を神の娘と思い込み、
王妃にと望む。

女王はヒロイン殺害を何度も試みるが、全て失敗。
いくつか露見したため、弟からの愛情も、国民からの支持も徐々に失っていく。

そんな折、近隣の国王が女王に求婚する。
国王の当初の目的は、女王の国の王位継承権を得ることだったが、
女王自身にも興味を持つ。
国王は女王に、ヒロインを殺害することを条件に、婚姻を迫る。

ヒロインと弟は結婚し、女王の国内での立場は、王妃となったヒロインよりも
下位になった。
プライドの高い女王にはそれが耐えられず、国王の求婚を受け入れる。


てな感じです(そして当然、ヒロインは死にません)。

女王は、その後ずっと弟を愛し続け、ヒロインを憎み続けています。
同時に、保身の為に国王の機嫌も損なわないように注意しています。
国王は、女王が弟を愛し続けていることを察しつつも、女王に愛の言葉を
ささやき続けています。


…とここまで入力して、>>654さんが答えてくれていることに気付きました。
かなり近いですが、ラガシュ(国王)とアイシス(女王)です。
だってラガシュの方が、ねちこく愛してそうなんだもん。

アイシスの「もう抱かれるのは嫌じゃ」は、弟(メンフィス)を愛しているのに
ラガシュの愛撫に感じてしまうのが厭わしい、という意味に(勝手に)読んで
萌えまくっていましたよ。
656名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 23:35:58 ID:JB1J6c42
>>653
うん

>>654-655
有難うでせう
657名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 13:15:03 ID:KPGr3/3U
次スレ逝ってくるお
658名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 13:19:32 ID:KPGr3/3U
659名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 14:29:11 ID:CKlggcE2
>>658
超乙
660名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 17:35:40 ID:dKXPqTxF
661名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 01:42:30 ID:98C5bRaQ
次スレに移行しました埋め

次スレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272428300/
662名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 01:44:56 ID:3KImux7h
次スレめちゃくちゃ楽しそうワラタ
663名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 02:12:03 ID:98C5bRaQ
>>662
なら君もあの楽しそうな妄想に更にネタをぶち込むのだw
664名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 09:24:39 ID:USL90DEm
大好きな次スレがなくなるくらいなら埋めてやる!
665名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 11:39:58 ID:Q11koFRi BE:213537942-2BP(0)
残り全部埋めるのかw
666名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 20:04:43 ID:98C5bRaQ
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                ノ' x< ̄,/::/   {{ハ      ∨ 厂 ̄了          / l |
                </ 》、,/::/    }} l'.      ∨\ ≪、         〈  | |
.       /          /  《ソ/::/    ノ_! '.      マ¨¨\ ≧==x.__rュ.   〉 l| !
    /ィ′       ∠.イ , /::/_   /- 、 }、\       マ__   ̄ ̄ ̄ ̄   / W
    〃/ |            ,厶イ,厶/ `》イ    `'< \  rz_}\∧          / W
   {{ |l \              / / / j}       ` :x》ュ}    | ∧        / W
    Yl  〉           _/ /ィ´ /          `ヽ\戊| ∧     / W
    j}|l /         // /_,.イト廴__          }、 ,{ 心\,}.    , ′W
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    Y|l !        /¨V               '.      ∨, '′ ィlW
     Y|l 丶    __,/ ./                ':,     ,. '′  x≪》'′
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667名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 20:06:39 ID:98C5bRaQ
668名無しさん@ピンキー
梅ついでに昔考えた話を貼ってみる。

幼馴染みで、物凄く仲良しだった二人。
けれど、女の方は魔王の魂を封印するための肉の器だった。
魔王は段々女の中で覚醒していくんだけど、その過程で女を大事にする男に惹かれていく。
魔王は男に会うために女の意識を乗っ取って覚醒するけどそのせいで男は女を失い、
憎しみのこもった目で魔王を見ることになる。
魔王は男に好きになってもらおうと必死で努力するけど、そうすればするほど男の怒りを買ってしまうことになる。

魔王が焦れて力尽くでやっても良いし、
男が「そんなに俺が好きだって言うならいなくなった女の代わりに抱いてやるよ!」な
嫌がらせと復讐と喪失の悲しみとかをぶつけるようなのでもいい。