今回は以上です。
そろそろまたエロ場面を入れられるようにしたいと思います。
GJ!
お帰り!ISAP!
フェニックステイルを投下している者ですが、スレも容量433KBとなりました。
あと70KBでdat落ちです。そろそろ次スレのことを考える時期かと思います。
>>367-385で議論されているあたりを見ますと、拙作のようなオリジナル要素の強いものと、
原作パロディの要素が強いものはスレを分離して二本化すべし、という意見が強かったようですが、
現在はどのような選択肢が適切でしょうか。
1 両者を棲み分けるため、新スレは二つ立てる
2 このままオリジナル要素が強いものも、原作パロディも同居する(オリジナル重視作には注意書きなど設けて対処)
いずれが適切でしょうか?
第三の選択肢も含め、スレッド容量が逼迫する前に方向性を得た方が良いのではないかと考え、ご意見を問わせていただきます。
>>549 いつも乙です。
前回の分裂騒動を踏まえて、
来る者拒まず、去る者追わずの
2でいいのではないかと思います。
外の方のご意見もお聞きしたいです。
スレはこのままでいいと思う。
あの辺りの議論ってオリジナル要素が強いかどうかじゃなくて、
結局はISAP氏がどうかって事の方が問題みたいだし。
今は新人は自重しろって雰囲気も無いようだし、大丈夫だと思うよ。
ただ、もし宇宙世紀専用スレが出来るんならそこにしか出入りしないな
個人的には「宇宙世紀専用スレ」がいいなあ。
フェニックステイルを除けば、宇宙世紀作品が最後に投下されたのって一年半以上も前のマイモニさんが最後なんだな
宇宙世紀専用スレ(オリジナル要素排除)なら、立ててもそういうことにしかならんのじゃないのかね
間違えた、二年以上前だ
>>551-552 お二方の考える『宇宙世紀専用スレ』はどんな感じですか?
○オリジナル要素不可、原作準拠作品のみ投下可能
○オリジナル要素の強いフェニックステイルのような作品も投下可能
前者の場合、もう一方のスレにはアナザー系とオリジナル要素含む作品が同居。
後者の場合、もう一方のスレにはアナザー系と、宇宙世紀以外の世界観に基づくオリジナル要素含む作品、
といった感じの棲み分けという認識でよろしいでしょうか。
556 :
552:2013/11/06(水) 23:23:43.78 ID:6lzGVHqp
>>555 自分は後者「○オリジナル要素の強いフェニックステイルのような作品も投下可能」が希望です。
要は、宇宙世紀を舞台にしたSSみたいな。
宇宙世紀を舞台にしたフェニックステイルの様なオリジナルSSはむしろ是非含めて欲しいです。
宇宙世紀をベースにしてればSTの「暗黒地球帝国」みたいなifだってありにして欲しい位です。
ただ自分は結構新参で、過去の議論の推移を把握出来てないので単なる個人の希望と受け取ってください。
ご意見ありがとうございます。
とりあえずオリジナル要素が強い自分の作品もこのまま投下し続けてよいということのようですし、
宇宙世紀以外にも、現在専用スレッドのあるAGEとビルドファイターズ以外の作品の受け皿も必要でしょう。
これ以上ガンダム系スレッドをあまり増やしすぎるのもということで、
スレ容量が足りなくなるころにガンダムヒロインズ]Xのスレ立てに挑戦してみようかと思います。
今夜ぐらいにまた、35KB程度の規模でフェニックステイルを投下予定です。
また読んでいただければ幸いです。
続き物の第九話を投下します。
紹介は
>>452参照です。
エロっぽいものとして、今回はポロリがあります。グロはないよ。
「ほう。連邦軍が勝ったか」
アイリッシュ級戦艦の艦橋。
膠着状態から不意を突いてきた逆襲を打破してジオン残党のMS隊を圧倒、そのMSの手足頭を薙ぎ払いながら完全に制圧していくGMU隊を指して、艦長は『連邦軍』と呼んだ。
『友軍』ではなく。
「識別信号確認。MS隊後方のサラミス改級巡洋艦は、連邦宇宙軍第223戦隊所属トラキアと判明」
「レーザー通信が入っています。我連邦宇宙軍巡洋艦トラキア、貴艦の所属及び行動目的を知らせ、です」
「向こうのMS隊は、いま出ている標準型のGMUが四機だけか? 隠し玉があるかもしれん。対空警戒と相手艦の監視怠るな」
すでに艦の総員が戦闘配置に付いているその艦橋で、艦長席の隣に立つその男は次々に飛び交う指示と報告を聞きながらひとり呟いた。
「ふむ。サラミス改級巡洋艦トラキア、ですか」
艦長席の横に立つ男が手元の電子端末でページを繰ると、その画面には次々と地球連邦宇宙軍に属する数々の部隊が現れてくる。
部隊名、主要拠点、主任務、装備、編成、戦歴、艦長や隊長など主要人物の略歴――そして彼らと部隊全般の、政治的傾向。
「ほほう。『組織』への勧誘には、いい返事を寄越してもらえなかった艦のようですね……残念ながら艦長もMS隊長も、宇宙移民の権利に関する意識はそれほど高くないとあります」
やがてトラキアに関するページに行き当たると、男はつまらなさそうに呟いた。この宙域に赴くと決まったときからその辺りの情報を事前に頭へ入れていた艦長が、男に構わず通信士へ尋ねる。
「通信、ミノフスキー粒子の散布状況はどうか?」
「順調です。連邦艦とMS隊はほぼ孤立しています。電子戦も展開準備中」
不敵な笑いとともに、通信士は返答を続ける。
「ここで今から何が起こっても、おかしな横槍は入りませんよ」
「宇宙の密室、というわけだな。結構だ。さて。行きがけの駄賃に沈めてみるかね? 少なくともこれから訪ねる相手に対しては、いい手みやげになるだろう」
事もなさげに眼下の男へ言ってのける艦長に、はじめて男が顔を上げた。
「いずれ寄らば大樹の田舎侍どもと考えるなら、それにも一考の価値はありますが。彼らも刻の流れを読み、大義の在処に気づくときが来るやもしれません。
その前に当地の駐留艦隊をいたずらに刺激しては、大事に障りましょうな。今は『玉』だけいただいて、丁重にお引き取り願うが得策かと。あるのでしょう、穏便な方法も?」
「まあな。もっともそれを受け入れられるかどうかは、彼らの賢明さ次第ということになるが。――砲雷長、前方の連邦とジオン残党MS隊の宙域周辺へ威嚇斉射だ。細部は任せる」
『了解』
「簡単に当ててくれるなよ?」
熟練した鉄砲屋からの実直な返答が聞こえて間もなく、艦内全体に主砲発射準備中の警告が響いた。
艦体後尾中央で全力回転し続ける主機が、主砲群に膨大なエネルギー量を充填していく。
「MS隊も頼むぞ。連邦軍が妙な気を起こさないよう、しっかりと抑えてくれ」
艦橋の主モニターに開いた通信小窓に、すでに左右MSカタパルトからの出撃準備を終えた二個MS小隊の長が映る。
特筆すべき事があるとすればまずそれは、そこに映る二人がいずれも若く美しい女性だということだろう。
『あら、艦長。ジオン残党のおじさま方、やられてしまいましたのね?』
小さく艶やかな唇が、残念そうに言葉を紡ぐ。栗色の柔らかな前髪をバイザーの中に泳がせながら、大粒の瞳を愛らしく瞬かせるしぐさには幼さが残り、少女のようにあどけない。
だが襟の階級章は紛れもなく、彼女が連邦軍少尉の地位にあることを意味している。
「ああ。数の優位があったとはいえ、一瞬で形勢を逆転させている。この連邦軍部隊、なかなか油断できない強敵らしい。シェンノート少尉、難しい任務だ」
『およしになって、艦長』
だが愛らしい八重歯を見せながら、シェンノート少尉と呼ばれた美少女は天使のように微笑む。
『私、仰られるまでもなくこの全力を尽くしましてよ。このような僻地で長年潜伏していらした、男くさいジオン残党勇士のおじさま方をお助けするためですもの』
戦場の荒んだ空気に染まりつつある耳に心地よい、ころころと転がりながら誘惑するような声色。それは天使の歌声のようでもあり、小悪魔のささやきのようでもある。
だが緩みかけた艦橋要員の耳朶を蹴り上げるように、剣呑に張りつめた娘の声が響きわたった。
『ケッ! まだるっこしぃ! 負け戦から七年経っても未だに場末でくすぶってる、役にも立たねえジオンの負け犬残党ジジイどもなんざどうでもいいってんだ!
あんなの生きて一匹捕まえときゃそれでいいだろ! まずは四の五の言わずにさっさとあたしらがブッ潰しゃあいいんだ、クソ連邦軍の方をよぉ!』
意志の強そうな切れ長の瞳に強烈な眼力をみなぎらせながら、柳眉を逆立て、金色に輝く鋭い前髪を揺らして娘が喚く。その襟元に光るのも同じ階級章だ。
「……ハフナー少尉。分かっていると思うが、我々は――」
『《エゥーゴ》だってんだろ!? A.E.U.G、反地球連邦政府運動! クソな政治を傘に着てクソな弾圧しか能がねえクソな軍隊、地球連邦軍をブッ潰すための組織だ!』
「……分かっていると思うが。地球連邦を破滅の道へ導こうとするティターンズを討ち、地球連邦のあり方を宇宙移民とともに寄り添う、あるべき姿へ正すための組織だ」
この艦に乗る自らの部下に、地球連邦軍生え抜きの将兵が少なくないことを知る艦長はこめかみに指を添えながら心中だけで舌打ちしたが、うら若き金髪の美女は意に介することもなくなお吠える。
『分かってますよ艦長ォ! わざわざ先に手出しはしません。ただ、ね。奴らが少しでも、フザケた真似を見せてきたら……あたしは、ツブしますよ? 連中を、徹底的にね』
『ふふっ。マインさん、相変わらず過激ですのね』
『何がだ!? てめぇがヌルいだけだろうがリアンナ!』
「分かっていればいい……結構だ」
『艦長。主砲、威嚇斉射準備完了』
娘たちの黄色い口論へ割り込むようにして届いた砲雷長からの報告に、艦長は安堵の息を漏らした。
謹厳実直な砲雷長は、あるいは自分を救うためにあえてこのタイミングで報告してきたのかもしれない。
すかさず艦長は艦内放送のマイクを取った。
「本艦はこれより前方宙域へ突入、連邦軍部隊に拿捕されつつあるジオン残党戦士の諸君らを救出する!
彼らは今や正義を忘れた地球連邦との戦いにその身を捧げる我々の同志であり、彼らとの接触は組織のさらなる飛躍に繋がる重要な手がかりとなるものである!
全主砲での牽制射撃後、ただちにシェンノート小隊、ハフナー小隊が発艦する。連邦軍部隊を威圧するとともに説得し、MS隊は目標を確保したのち本艦へ帰投する。
連邦軍部隊の出方次第では、決定的な全面戦闘もありうる! 宇宙移民の自由と権利を獲得せんがため、各員一層の奮起に期待する――主砲発射、十秒前! 九、八――」
『この……』
『うふふ。おじさま、待っててくださいましね』
通信小窓の中の金髪美女、マイン・ハフナー少尉はまだ言いたいことをたくさん抱えているようだったが、さすがに秒読みまで始められては引き下がるしかなかった。
柔らかな栗色の髪の美少女、リアンナ・シェンノート少尉は楽しげに微笑みながら、モスグリーン塗装の改良型MS、ヌーベルGMUを左舷カタパルト上に屈ませる。右舷カタパルトから先陣を切るマイン機も同様だ。
「三、二、一――撃(て)ッ!!」
宇宙が煌めき、巨艦が揺れる。
連装砲の左右にメガ粒子同士の干渉を避けるわずかな間隔を置きながら、アイリッシュ級の全主砲塔が宇宙に目映いほどの閃光をまき散らしながら火線の束を放った。
「前方観測――正面宙域に被弾物なし」
「連邦MS隊、回避機動中。連邦艦MSとも、現時点での発砲なし」
「両舷カタパルト、進路オールグリーン」
『ヌーベルGMU04、リアンナ・シェンノート少尉、出ますわ!』
『ヌーベルGMU07、マイン・ハフナー少尉! 待ちくたびれたぞ!』
主砲斉射に続いてMSカタパルト射出の反動に揺れる艦橋で、飛び交う通信と報告に紛れるようにして二人は囁く。
「大尉。本当に今回、出すのはあの二人で良かったのだな」
「ええ艦長、どうかご心配なく。MS隊の指揮と人選には、常に最善を尽くしておりますので」
艦橋内にも照り返すその閃光を浴びながら、苦虫を噛み潰す表情の艦長の下で、男は薄い笑みを浮かべ続けていた。
『ジオンのMSを内側に入れろ! 奴らを近づけさせるな!』
マコトの指示が飛び、今度こそ完全にスラスターを封じられた三機のジオン残党MSの残骸――つい数分前までは確かにMSだった有人デブリを、トラキアMS隊は全周防御陣形の内側へと引きずり込む。
頭部と両腕を完全に失い、胴体にはもはや膝までの両腿が残るだけのMSに運動能力など残っていない。
そんな惨状をさらす三機が背中合わせにまとめてワイヤーで縛り上げられてしまえば、残った背部推進器すら後ろの僚機に噴射炎が当たるため、使用不可能となってしまっているのだった。
『な、なんやなんや!? なあ姉さん、いま何が起こっとるんかワシらにも教えてんか!? 後生やさかい!!』
「本当にお願いですから、いま本当に黙っててください……でないと私、そのコクピットの見晴らしをものすごく良くしてあげちゃうかもしれませんよ。……ビームで」
『ヒイッ!?』
接触回線経由で馴れ馴れしく飛び込んでくるザクUパイロットからの不安げな声に、アイネは余裕を失った暗い声色で返す。
ドッツィが不安になるのも無理はない。アイネに頭部ユニットを破壊されたザクUのコクピットではもう、ひどく限定的な展望しか得られなくなっているのだから。
だが実際には現在、わけも分からぬままに鉄の棺桶同然の愛機へ閉じこめられているジオン残党の三人より、彼らを捕らえた連邦軍のMSパイロットたちの方がずっと精神的に追いつめられていた。
「……来るっ!」
『こっちにも……っ、なんなんだこいつらっ!!』
ビームライフルで油断なく身構え続けるアイネ機の前を、がっちりと編隊を組んだGMUの三機編隊が飛びすぎていく。
その反対側、シュンがハイパーバズーカを向けて警戒する方向にもやはり三機のGMU編隊が航過していく。
すれ違う瞬間、アイネは自分たちが乗るGMUとそれらの差異が、単なる塗装だけにとどまらないことに気づいていた。
「胸部ダクトが四つ、頬にもダクト……シールドはGMコマンド系列の変種? 連邦マークが見えなかった……」
早鐘を打つ心臓を抱えながら、それでもアイネは敵対的な行動を取る謎のGMUを分析する。
シールドは連邦軍GM系MSが広く用いるスタンダードな長六角形ではなく、GMコマンドやGMカスタム、GMクゥエルなどのいわゆる高級GMに採用されたものに近い。優美な曲面形状と同時に、上端部に攻撃的な爪部を備えたシルエットだ。
連邦軍制式カラーの赤ではなくモスグリーンに塗装された胴体部には、トラキア隊が運用する標準型GMUに倍する四つものダクトが設けられている。
さらに頭部ユニットの頬にもダクトが増設されていて、のっぺりとした標準型GMUの顔立ちよりもC型やD型のGMに近い、どことなく精悍な印象を受ける。
一方でビームライフルなどの携帯兵器に新奇なものは見受けられず、それらの銃口を向けてくるなどといった明らかな敵対行為もまだ取られていない。
だが彼らの行動は、どの基準から判断したとしても友好的な態度などではありえなかった。誰もが脅威を感じている。
そして今や、無線通信も完全に機能しなくなっていた。今かろうじてトラキア隊のMS間を繋いでいるのは、近距離赤外線通信だ。
急激に濃度の増したミノフスキー粒子だけの仕業ではない。加えてどこからか、強烈な妨害電波が発信されているのだ。だからMS隊は未だにトラキアとの通信を確保できずにいる。
まともな電子戦装備を持たないトラキア隊にその発信源など特定できるはずもないが、状況を見れば眼前の新型戦艦の関与は明白だった。
『また来やがる……!』
つかず離れずの距離を保ちながら旋回し、トラキアとの間へ割り込んで合流を妨害するように向かってくる三機と三機を見据えながら、マコト・ハヤカワ准尉がはっきりと断言した。
『奴らは《エゥーゴ》だ。エゥーゴはジオン残党とも繋がっている。狙いはこいつらの身柄で間違いない』
『え、エゥーゴ? 最近問題になってるっていう、反地球連邦のテロリスト軍団ですか? なんでテロリストがGMUなんかまとまった数で持ってるんです?』
「あの見たことない戦艦も、連邦軍の識別信号を出してますよね……。ひょっとしてエゥーゴって、連邦軍の裏切り者が部隊ごと装備を持ち出して入り込んでる組織なんですか?」
『う、ウソだろ……いくらなんでも、そんなこと出来るわけが――』
『22より各機。詮索は後回しだ。今はこの状況を乗り切ることだけを考えておけ』
とめどなく続きそうだったアイネとロブ、シュンの憶測を、マコトの鋭い指示が断ち切った。
『任務の優先順位を変更する。ジオン残党MS三機のトラキアへの回収を最優先とする。後、エゥーゴが引かない場合、トラキア撤退支援のため、対艦攻撃、並びに防空戦闘を実施する』
『な、んなっ』
『せ、戦艦相手にガチでやり合おうっていうんですか……!?』
ロブが金魚のようにパクパクと口を開き、通信窓の中でシュンの表情が絶望に凍りつく。
アイネだけが覚悟を決めた顔のまま、どこか遠過ぎる彼方に焦点を結んだ瞳でゆっくりと頷いた。ひきつる唇が言葉を吐き出す。
「ハヤカワ准尉、……最後まで……お供いたします……」
『大丈夫だ』
だから、そんな調子外れの声色ばかりが重なる通信回線に、いつも通りのマコトの声は重たく響いた。
『お前たちは、誰も死なせない。……私の盾にかけて、な』
「……ハヤカワ准尉?」
『いやいやいや……いくら不死身のマコっちゃんでも、こればっかりはさすがに無理だろ……終わった……』
そのとき妨害電波でノイズ一色に押し潰されていた共通回線へ、唐突に人間の肉声が混じり込んできた。
『地球連邦宇宙軍巡洋艦トラキアと、そのMS隊に連絡する。こちらは地球連邦宇宙軍環月方面軍所属、戦艦ジャカルタである』
「!」
今やその巨大な艦影を間近に迫らせているエゥーゴ艦からの通信に、アイネはびくりと背筋を跳ねさせた。
『本艦は環月方面軍司令部の命により月面都市グラナダを発して以来、遠路、月周辺宙域に多大な被害をもたらした凶悪なジオン残党『キャリホルニヤの悪夢』を追撃してきた』
「えっ」
アイネの目が点になった。
そのまま通信窓の中の、涙目中年男に視線を下ろす。
キャリホルニヤの悪夢。
そういえばトラキアを発艦後に前進中、途切れ途切れに入ってきた共通回線での通信の切れ端で、このジオン残党がそんな風に名乗っていたような気がする。
ソロモンの悪夢ことアナベル・ガトーのことなら訓練課程で使った教範にも載っていたが、こちらはどうせその適当なパチモンだろうと思って無視していた。
『えっ』
ドッツィの目も点になった。
いつの間に自分はそんなに有名になっていたのだろうか。
いやそもそも、月周辺宙域で活動したことなんか、あったか?
だがこの連邦軍の新型戦艦は、月の大都市グラナダからはるばる自分を追ってきたらしい。いったい自分に何の恨みがあって?
もしかして、ただ死刑にされるだけでは済まないのか? 月の連邦軍がわけのわからん新型戦艦を出してまで捕まえに来たからには、とてつもなくエクストリームな特別死刑が用意されているのか?
『ほ、ほああ……っ、ほあああああああ……!!』
『本艦に代わって凶悪無比なテロリスト『キャリホルニヤの悪夢』を捕縛していただいたこと、巡洋艦トラキアの諸官らには深く御礼申し上げる。
これで本艦もグラナダに顔向けが出来るというもの。――そのまま本艦のMS隊に、『キャリホルニヤの悪夢』の身柄を引き渡していただきたい』
『聞けん話だ』
回線に割り込んできたのは後方、すでに至近とも言える距離まで接近してきていたトラキアの艦長、リドリー・フランクス大尉だった。
距離が詰まったことと妨害電波が止んだことで、トラキアからの通信も復活したのだ。
「エゥーゴめ。そんな適当な言い訳で名分が立つとでも思っているのか?」
「体裁ぐらいは気にしているでしょう。連中にもティターンズ以外の一般部隊にまで、誰彼構わず喧嘩を売っている余裕はないはずです。むしろ、潜在的な支持基盤とまで見られている可能性もあります。
場所によっては、エゥーゴを強力に支持する部隊も多いと聞きます――連邦宇宙軍の半分はエゥーゴだと思え、などと言う者までいるぐらいですから」
「世も末だな……」
操舵士相手に毒づきながら、リドリーは新型戦艦へ呼びかける。MS隊さえ収容できれば、トラキアはいつでも全火力を叩き込んで離脱できる準備を整えてある。
『本宙域は我が第223戦隊の担当任務区域である。このジオン残党はそこで貨物船を襲撃していた現場を我々が押さえたものだ。
彼らの身柄に関する優先権が我々にあるのは明白である。
当地で活発化の一途にあるジオン残党組織に関する情報を得るためにも、彼らの身柄は絶対に必須だ。
それでもなおどうしてもと言いたいなら、上級部隊を通してもらおう。環月方面軍司令部から、我々の第223戦隊司令部へ依頼を通していただきたい。正規の書面でな。
戦隊司令部が同意さえすれば後日、キャリホルニヤ云々はともかく、このジオン残党の身柄を引き渡すことに異存はない』
『承伏しかねる。『キャリホルニヤの悪夢』はジオン残党組織によって間もなく月周辺で実施されるとみられる、次なる大規模テロ計画にも関与している可能性が濃厚であり、本案件の緊急性はきわめて高い。
身柄の受け渡しはこの場で、ただちに希望する』
『それこそ聞けん話だな。軍人ならば職権の範囲は弁えていただきたいものだ。それとも貴官は、あれか――《ティターンズ》にでもなったつもりか』
『…………』
薄く揶揄するような嘲りを秘めたリドリーの声色に、雄弁だったジャカルタの艦長が言葉を切った。
『もしそうだったのなら、こちらこそ謝罪させていただく。特別の権限を認められているティターンズが相手なら話は別だ。ジオン残党、即座に引き渡して差し上げましょう』
『それは――』
「あっ!?」
ジャカルタ艦長が論戦に次の矢をつがえようとしたとき、アイネは驚愕に目を見開いた。
これまで掠めるような軌道は取りながらも、それでも常に一定の距離は取り続けていたジャカルタ所属GMUの一機が、編隊を置き捨てるように急加速した。
そしてトラキア隊の全周防御陣形、そのシュンが担当する正面めがけて単機で逆落としに突っ込んできたのだ。
『エンジントラブルだッ!』
共通回線に吐き捨てられたのは、若い娘の乱暴な声。
突出したジャカルタのGMUは右手のビームライフルは下げたまま、しかし左腕の新型シールドを逆手に持ち替えながらシュン機へまっしぐらに絡んでくる。
『まどろっこしい! どうせ三文小芝居なら、こういう風に打ちなってんだ! 行くぜお前らッ!!』
『承知だ姐さん!』
『よりにもよって、俺らをティターンズ呼ばわりたぁな! クソ連邦には死あるのみッ!!』
連邦軍部隊に傍受されない自隊だけの周波数で小隊の列機に命じながら、マインはその美貌に迫力ある凄絶な笑みを浮かべてハイパーバズーカ装備のGMUを狙い、突進する。
全天周モニターの脇に通信小窓が開いてもう一人のMS小隊長、リアンナ・シェンノート少尉が少し不満げに可愛く頬を膨らませてみても、マインはまるで目もくれない。
『マインさん、さっきと話が違いましてよ?』
『なんも違わねえよリアンナ! あたしらが『事故』で連邦軍のMSにぶつかって連中をブッ飛ばす! そしたら防御に穴が空くだろ? その間にお前らが残党どもを拾ってくるんだよ!!
もし撃ち返してきやがったら、普通に全力で潰してやりゃあいい!!』
『……了解ですわ』
童顔の美少女はふっとため息を吐くと、自らの小隊にも軌道を修正させた。無理にマインの暴走を止めるのではなく、起きてしまった流れに乗るべきだと判断する柔軟さが彼女にはあった。
『来るなっ、うわあっ、来るなあああっ!!』
狙われたシュン機は、それでもジオン残党MSとの間につけ込まれる隙間を空けすぎない範囲で回避機動を展開したが、迫るGMUはそれを先読みするように絡みついてくる。
威嚇するようにハイパーバズーカを構えるシュン機との間で、マイン機が至近距離をも割り込む。
『どうしたぁ!? 撃てよ! さっさと撃てよ腰抜けぇ!!』
『さ、先に撃たされてしまったら……!!』
バルカン砲の火力では、シールドを前に押し出しながら来るGMUを阻止できない。
ハイパーバズーカを突撃阻止のためにいま撃てば、もう直撃させるしかなく、とても威嚇では済まなくなってしまう。
圧倒的に優勢な相手に対して全面開戦の口実を与えかねない反撃に、シュンは最後まで踏み切ることを選べなかった。
『腰抜けがぁっ!!』
『わああああああっ!!』
激突の強烈な衝撃が両機を揺らし、シュンのGMU23は吹き飛ばされて全周防御陣形から脱落した。
『23!』
『心配してる場合か!? 次はテメーだ!!』
申し訳程度にマシントラブル事故の体裁を装いながら、ハフナー小隊のGMU二機も連邦軍の全周防御陣形へ、マイン機の開けた穴を広げるようにその隣接機めがけて突入する。
ビームスプレーガンなどという時代錯誤な骨董品を構えたGMUの姿を間近で見たときには思わず笑い出しそうになったが、強烈な体当たりを狙って時間差をつけながら仕掛けた二機の機動は紙一重でかわされた。
『なっ、なんだっ!?』
『ただの偶然だ! もう一度仕掛ける!!』
激突を確信した直後に肩すかしを食わされながら、もうエンジントラブルを起こした機体と呼ぶには苦しすぎる急旋回を切り、二機は再びスプレーガン持ちを狙って食い下がる。
「カーペンター伍長!」
『クソッ! 今ここから外れたら、残党機を持って行かれる!』
『うふふ。さあ、どうなさるのかしら?』
アイネとロブには引き続きシェンノート小隊の三機が、一定距離を保ちながらもジオン残党MSの直接奪取を匂わせて拘束する。
『おおっと、姿勢制御にも問題発生!』
そしてシュン機を吹き飛ばしたマイン機はなおも至近距離に絡みついたまま、シールド打撃でハイパーバズーカの砲身を食い破る。
ブリキのようにあっさりと貫通された砲身は、マイン機が左腕を回すとその半ばからいとも簡単にへし折られる。
それで自由を得た新型シールドは、今度は必死に長六角形のシールドを構えて防御しようとする内側へ飛び込み、シュン機の左肩装甲を破った。
そのまま基部まで爪を食い込ませられると、赤いGMUは左腕から力を失ってガードを下げる。
やはり新型シールドの爪部には、GMUの装甲を容易に食い破るだけの貫通力が秘められていたのだった。
『そ、そんなっ!?』
『おらあっ、まだまだぁっ!!』
マインは爪部を装甲板から引き抜くや、即座に再度の押し込みをかける。狙いはビームサーベル。
左肩に装備されていたビームサーベルまでもが強打されて脱落、シュンが敵機を阻止しうる最後の望みを虚空へ漂わせた。
『うっ、うわあああっ!!』
『遅ぇよドンガメッ!!』
シュンはスラスターを全開にしてなんとか逃れようと機動するが、至近距離から露骨な格闘戦を仕掛けてくる相手に背は向けることは出来ない。
そして背を向けることが出来なければ、明らかに同等以上の機動性を有して食らいついてくる敵機相手には距離を開くことも出来ないのだ。
『くそっ、来るな、来るなっ!!』
『往生際が悪いってんだよ!』
半分近い短さになったハイパーバズーカを棍棒よろしく握って振り回すが、左腕の死んだ機体で中空の筒を叩きつけたところで、五体満足の敵機が操る新型シールドに勝てるわけがない。
マイン・ハフナーは踊るようにシールドを翻らせて操り、上端に尖る凶悪な爪部でついにシュン機のコクピットを狙った。
MS用格闘戦兵器においてはビームやヒート系以外に、単なる冷金属であっても敵MSの装甲を打ち破れるだけの威力を持つものも少なくない。
一年戦争当時のジオン公国軍水陸両用MS、ズゴックのクローなどが有名だろうが、連邦軍MSにもシールドに強固な突起部を設けることで、類似の効果を期待する場合が散見された。
マイン機が装備しているシールドも、その流れを汲むものだ。
材質には最新素材であるガンダリウム合金を採用し、強固な防御力だけでなく爪部による格闘戦での破壊力、さらにスライド機構の採用による運用柔軟性の増大など、数々の新機軸が盛り込まれている。
エゥーゴ最大のスポンサーである大手軍需企業が、画期的な新型量産MSの防御兵装として開発したシールド。マイン機をはじめとするジャカルタ隊のヌーベルGMUの多くは、それを装備しているのだった。
マインはこのシールドによる一撃が必殺のものになりうることを知っている。GMU相手なら間違いない。
だがビーム/ヒート兵器や実弾火器と異なり、平常時と使用時に明確な状態変化が生じない打撃用シールドは、あくまで『事故』を装って敵機を潰すためには、これ以上なく適した兵器なのだった。
『死ねよ連邦クズ野郎ッ!!』
憎い連邦の兵士を、この手で文字通りに叩き潰すことが出来る。獲物を狩る雌豹の凄絶な笑みを浮かべてシュンを追いつめるマインの視野に、そのとき脇から新たな機影が飛び込んだ。
『カーペンター伍長、掩護しますッ!!』
先ほどシュンが弾き出され、さらにマコト機にも二機が執拗に絡みついて大いに乱れる全周防御陣形から抜けて、アイネのGMU25が全速でシュンとマインの間へ突入してきていたのだ。
『クライネ伍長!?』
『邪魔すんじゃねぇよっ!!』
『させない!!』
横槍ならぬ横盾を入れ、アイネがマインにシールド同士を叩きつけて弾き飛ばす。マイン機は身を翻し、今度はアイネ機のコクピットハッチに爪を突き立てんと躍り掛かった。
『はぁ!? ざけんな、この際てめぇが先に死ねッ!!』
もはや殺気は隠せもしない。強烈な直感が思考より先に、アイネの直感を蹴飛ばしていた。
――殺らなければ、殺られる
シュンとマインの間に割り込みながら、アイネは躊躇なく肩口のビームサーベルを抜き払った。
『寄らば斬ります!』
『はっ! 腰抜け揃いの連邦雑魚が、一丁前に長ドス抜いて格闘戦かよっ!!』
脳内にたぎる大量のアドレナリンに導かれるまま、マインもビームサーベルを抜いて応える。
チタン・セラミック複合材の装甲など豆腐も同然に斬り裂く光刃がふたつ交錯していく光景を、アイネはどこか他人事のような心境で見つめていた。
ゲルググのビームナギナタ。
ザクUのヒートホーク。
人質のボールを外して、ひと思いに切り離した斬撃。
今まで積み重ねてきた訓練にそれらの実戦経験が混じり合って、アイネの中のどこか深い部分で火花を散らした。
この相手に、手加減などは意味がない。自分も死ぬ気で掛かってくる捨て身の手足を払ったところで、敵は勢いのままこちらの喉笛に食らいつく。
近くには左手を殺されてシールドを使えない、無防備なままのカーペンター伍長の23がいる。巻き込めない。
長引かせれば、総戦力に勝る敵に対して本格介入の余裕と口実を与えてしまう。
一撃で、コクピットを潰して仕留める。それしかない。
結論を導き出したアイネは、左腕のシールドをパージした。両腕でしっかりとビームサーベルを保持しながら頭部の横まで引いて構え、そして、全出力をスラスターに叩き込む。
同時にビームサーベル、最大出力。
『面白ぇっ!! つき合うぜこのクソ野郎ッ!!』
マインは絶叫するやシールドを捨て、アイネのGMUと鏡写しの姿勢をヌーベルGMUに取らせて突っ込んだ。
マイン・ハフナー少尉は地球連邦軍人としての軍歴を経ることなく、エゥーゴに直接入隊した志願兵である。
マインは鉱婦である。地球圏に牽引された鉱山資源衛星で暮らす技術者夫婦の娘として生まれ、ろくに外の世界を知らないまま、荒くれた鉱山労働者たちの中で育った。
粗野で下品な男所帯の中で、マインは幼い頃から採掘機械や航宙機器に親しみつつ、屈強の鉱夫たちと肩を並べて現場に出ながら日々を過ごした。
生来さばさばとした気性の彼女は、自らが女として日増しに美しく成長していくことも大して深くは気に留めず、からかい混じりに近づく男は拳と啖呵で黙らせながら、やがて鉱山の若手を仕切るうら若き姉御として、皆から期待を寄せられるようになった。
連邦軍部隊を従えたティターンズ艦隊がそんな彼女たちの鉱山衛星に現れたのは、二年前のことだった。
ジオン軍はおろか、連邦軍の姿すらまともに見たことのない鉱夫たちに、ティターンズはここに逃げ込んだジオン残党を出せと言った。匿っているはずだ。隠し立てすればためにならない。
ジオン残党を引き渡さない場合、地球圏の平和と安寧を守るため、法に基づいて実力を行使する。
鉱夫たちはティターンズの一方的な要求を突っぱねた。当たり前だ。そもそも居ないものなど出しようがない。採掘機械も精製工場も止められない。外との取引だってある。誰がこれ以上、余所者の寝言に耳など貸すか。
だがティターンズは彼女たちの《山》に、仮借ない艦砲射撃とミサイルの雨を叩き込んだ。MSも来た。
仲間を失って怒り狂った鉱夫たちが仕掛けたプチMSの肉弾戦と即席浮遊爆雷は、GMクゥエルの90ミリ砲弾に粉砕された。港も山も町までもが戦火に焼かれた。
鉱山側の抵抗が止んでも破壊は続き、しかし、その焼け跡からジオン残党の痕跡はついに出なかった。
ジオン残党は鉱山労働者たちを反連邦思想で洗脳した後、すでにここを離脱したのだとティターンズは一方的に宣言し、破壊の他に何も残すことなく鉱山衛星を去った。
だから後に残ったのは巨額の債務と無数の墓標、そして復讐を誓う生き残りたちだけだ。
『てめぇらなんかにな! 負けてらんねぇんだよ、こっちはなぁっ!!』
『私はもう負けない! もう私の無力で、私の仲間を殺させなんかしないっ!!』
真正面から、ビームサーベルの剣尖同士が衝突した。
小さな太陽が生まれたように閃光が弾け、Iフィールド同士の凄まじい反発が互いを弾き飛ばし、支える両手を通じてMS全体を動揺させる。
『行っけぇぇぇぇぇ!!』
その一瞬にアイネは無我で、突入してきた反動への姿勢制御を修正し、敵機を狙ってビームサーベルを送り込もうと最後の瞬間まで死力を尽くす。
電光の中に、道筋が見えた気がした。
そしてGMU25のビームサーベルはその切っ先から、まるで最初から敷かれていたレールの上を滑るかのような自然さで、マイン機のコクピットハッチへと飛び込んでいく。
「なっ――」
――死ぬ
全天周モニターの前面を埋め尽くしながら迫り来る光の尖端を見た瞬間、マインは自らの確実な死を直感していた。
コクピットハッチの装甲など、ビームサーベルの前には濡れ紙以下の存在だった。瞬時に突き破りながらコクピット内へ侵入し、光刃はそのままマインの全身を呑み込む。
「ちくしょう! 父さん、母さん!!」
押し寄せるメガ粒子の怒濤でバイザーグラスごとヘルメットが粉砕され、強固なヘルメットの破片も瞬時に蒸発していくその横で、シャギーストレートのセミロングが暴風に煽られるように背後へなびく。
溶け崩れると思う間もなく陽炎のように消し飛んでいくリニアシートの上で、マイン・ハフナーの若くみずみずしい肉体を包んでいたパイロットスーツが、一瞬にして破裂した。
「いやああああああーーーッ!!」
死に瀕してマインが最後に発した悲鳴は、もはや無力で可憐な乙女のそれでしかなかった。
野性的な美貌を備えた金髪美女の、引き締まりながらも女としての要所要所はしごく肉感的な肢体が無防備に、すべてを蒸発させる死の閃光の中へと放り出される。
サイズ小さめのスポーツブラジャーで窮屈に押し潰されていた十九歳の乳房はパイロットスーツの破裂とともに、秘められていた重量感あふれる威容を今こそ誇るかのようにだぷんと揺れて弾み出ていた。
金色の恥毛が生え揃う下に開いたマインの秘所にはおびただしい量の愛液が溢れ、白い柔肌に浮く桜色の乳暈の中で恥ずかしげに埋もれていた乳首が、ツンと張りながら顔を出す。
自らの避けられない死を認識した生物が生殖機能を暴走させ、その肉体に子を成させるべくして急激に準備を整えていく。
――ああ、イくぅ……!
あまりに遅すぎる性本能の発露がマインの中で眠っていた雌の部分を、超高熱の閃光の中で情け容赦なく開花させていくのを感じながら、彼女の意識は溢れる光に失せていった。
「うわあああああっ!!」
コクピットハッチからビームサーベルを引き抜いたアイネがそのまま機体を蹴飛ばすと、モスグリーンのGMUはビームサーベルとシールドを構えた姿勢のまま硬直して、まるで死人のように後方へ漂流していった。
それが何を意味しているのか、アイネは誰か自分ではない他人のことのように理解していた。
「こ、殺したっ……、わたしが……私が、あのGMUのパイロットを、殺した……っ」
『あっ、姐さん!? そんな!!』
『クソ連邦軍があっ! よくも姐さんを殺りやがったなッ!!』
マコト機へ執拗に挑みかかっていたハフナー小隊の二機が、怒りに我を忘れてビームライフルの銃口を跳ね上げる。アイネ機を狙って照準をつけ、そのままトリガーを引き絞りかけた。
『死ね――あぐッ!?』
『そこまでにしておけ』
だが共通回線から来た若い娘の冷たい声と機体に走った鈍い衝撃、それに全天周モニターが告げる警告が彼らの暴走をそこで止めさせる。
マイン機がコクピットを焼かれるまで彼らが追い続けていたトラキアMS隊の隊長機が、ハフナー小隊の一機の背中に組み付きながらビームサーベルの発振部を押しつけると同時に、ビームスプレーガンの銃口をもう一機にも突きつけていた。
『それ以上続けるなら、二機とも後を追ってもらうぞ』
『こっ……こいつ、いつの間に……!?』
一瞬にして攻守を逆転させ、同時に二機を手玉に取ってみせた敵機から放たれてくる強烈な殺気に、二人は戦慄する。
だがトラキアMS隊の四機中三機までが側を離れてしまっては、最後までジオン残党MSの防備に残っていたロブ・サントス伍長のGMU一機だけで、シェンノート小隊の三機を相手取ることなど不可能だった。
『うぅ、うう……っ』
『はいはい、ごめんなさいね、通していただきますわ』
シェンノート小隊の二機がビームライフルの銃口を向けて、ロブ機を圧倒しながら下がらせる。そして小隊長たるリアンナ・シェンノート少尉のヌーベルGMUは悠々と、ワイヤーで縛り上げられたジオン残党MS三機の元へたどり着いていた。
「な、なんや!?」
思わず身を固くするドッツィの眼前で、全天周モニターにGMUパイロットからの通信窓が開く。装甲経由で信号を通して、二機の間だけで交わす接触回線だ。
『あら、素敵なおじさま』
そして飛び込んできたのは、柔らかな優雅さを感じさせる少女の声と、ヘルメットのバイザー越しに繊細なウェーブを描いて揺れる明るい前髪、興味津々に彼を見つめる愛らしい大粒の瞳だった。
『リアンナ・シェンノート少尉と申します。エゥーゴの者ですの。ザクUのおじさま、あなたが『キャリホルニヤの悪夢』なんですの?』
「……おっ? お、おお……なんや、えらい別嬪さんやな。わ……ワシこそが『キャリホルニヤの悪夢』ドッツィ・タールネン少佐や!」
『あら! やっぱりあなたでしたのね、おじさまっ!』
バイザー越しに頬へ小さな掌を寄せ、八重歯を見せて花咲くように笑う美少女。地獄に垂らされた天国への糸を見るような目で、ドッツィはリアンナを見つめた。
『タールネン少佐。エゥーゴがあなたがたをお助けしますわ』
「お、おいっ!? な、なんやて……えうご!? 助けに……!? 釜茹でにする、の間違いなんちゃうんか!?」
『釜茹で? お料理の名前かしら?』
リアンナは宝石のような瞳を瞬かせて小首を傾げ、それからまた笑顔で話を再開する。
『私たちエゥーゴは、宇宙移民を弾圧する地球連邦政府の今のあり方を正そうと集まった正義の武装組織ですわ。構成員には連邦の軍人もおりますけれど、元ジオン兵も多くおりますの。
おじさまのような、たくましくて、雄臭くて、男らしいジオン残党勇士の方なんて、……ああ、……素敵……。もう身も心からも大歓迎させていただきますわ』
「だ……っ、だい、かん、げい……っ」
屈託のない美少女の笑顔に、女っ気のない生活を強いられていたドッツィは生唾を飲む。よからぬ妄想が脳裏を走り始めたところで、ドッツィはそれを思い出した。
彼らを今のこの状況に叩き込んだ元凶、あのGMUを。
「せやけど、アカン! この連邦軍の、スプレーガン持ちだけはアカン!! あいつ一機で……っ、ホンマにあいつ一機だけで、一個中隊並みの戦力がありよる! アカン! あれは、人間業やない!!」
『スプレーガン持ち、ですか……。ええ、承知しておりますわ。他にも、かなり腕の立つパイロットがいるようですわね』
言いながら、リアンナは彼女の僚友をビームサーベルの直撃で殺したGMUを見る。
新型に換装された主機出力をはじめ、総合性能では確実に標準型GMUを上回るはずのヌーベルGMUを駆ってあのマイン・ハフナー少尉が挑み、そして見事に完敗した。
彼も言う『スプレーガン持ち』だけでなく、間違いなくあのGMUも強敵だろう。
『ですが――もう、詮無いことですわ』
「い、いや、アカン! あのスプレーガン持ちだけはホンマに、なんとかせんと絶対アカンて!! 逃げられへん! 殺られてまうっ!!」
『だって。あの方々が出てきてしまわれたんですもの』
どこか冷めた口調で言い放ち、そのスプレーガン持ちのGMUへと、リアンナは視線を上げる。
いつの間にか、その二機のMSは出現していた。
一機は重MS。バズーカを装備し、リックドムを彷彿とさせる重厚なフォルムを持ちながらも、背中にはさらなる高機動性を誇示するかのように巨大なバインダー付きのバックパックを追っている。
モノアイは可動レールを持たない固定式のようで、それがこの新奇な重MSに独特の印象を与えていた。
そしてもう一機はいま撃墜されてもはや漂流するばかりの、マインのヌーベルGMUへとまっすぐに向かっていく。
先ほどまでのGMU隊が装備していたものと同じ、GMコマンド系のそれに似た角付きシールドと、標準型のビームライフルを装備している。
頭部のゴーグルアイや細身の体型はGMの系譜に連なるMSとも見えるが、しかし連邦軍がこれまで開発、配備してきたいかなるGM系MSとも異なる意匠を備えていた。
いずれも完全に新開発の新型機か、と醒めた目で見るマコトのGMU22へ、その重MSのほうが向き直って通信を入れてきた。
『貴官がトラキアのMS隊長ですか?』
『そうだ。貴官は』
『私は戦艦ジャカルタのMS隊長、ベリヤ・ロストフ大尉と申します。先ほどは私の部下が無様なところをお見せしてしまい、たいへん失礼をいたしました』
『……自分は巡洋艦トラキアのMS隊長、マコト・ハヤカワ准尉であります』
すでにジオン残党のMSへとジャカルタのGMUが取り付くのを許してしまった時点で、実質的にこの場の決着は付いている。
あとは、落としどころをどこにするか、だけの問題でしかない。
素直な謝罪を寄越してきた相手方のMS隊長に、無感動な調子でマコトは応えた。
『GMUは枯れた技術で構成された、信頼性と整備性のきわめて高い機体です。それがこうも簡単に機体トラブルを起こすなど、通常ではあり得ない話だと思いますが』
『MS隊を率いる者として、実に耳に痛いお言葉です。我が隊のGMUは独自に改修を加えたところが多く、それが仇になってしまったのやもしれません。
ですがハヤカワ准尉、今回はこちらの払った犠牲に免じて、どうか寛大なるご容赦をいただきたい』
ロストフ大尉と名乗ったMS隊長の言葉を強調するように、彼とともに現れていた新型のGM系がコクピットを灼き貫かれたままのGMUに近づき、無残な破壊の跡を確認するように寄り添った。
『かなうならばこれ以上の無用な血が、双方の間で流れることのないように願いたいものですが』
ジオン残党MS群をがっちりと保持し、自らの艦へと収容していく三機のGMU。マコトに一度は阻止されたとはいえ、なお殺気立ったままのGMU二機。
そして、マコトの目の前の新型二機。
『その点については同意します』
『准尉のご理解とご厚意に、心より感謝の意を表させていただきます』
重MSの背後を新型戦艦へ向けて、三機のGMUに護衛されるようにしながらジオン残党のMSが収容されていく。トラキア隊はただそれを見守るしかない。
『ところで准尉は、本当に素晴らしい技術を持っておいでだ』
『単に古株というだけです。ボールとGMにしか乗ったことがない。今の新しい技術にはついていけませんよ』
世間話のように柔らかな口調で切り出しながら、ロストフ大尉はマコトの心を探るように言葉を重ねた。
『ご謙遜をなさる――ハヤカワ准尉。その力、真に宇宙移民のために用いるお心はありませんか?』
『今も連邦軍人として可能な限り、日々連邦市民のために奉仕させていただいております。自分にはこれが精一杯ですね』
『僭越ながら私は、あなたにはもっと相応しい舞台があると感じるのです。時代のスポットライトを浴びる場所が。
――これからの時代、世界は荒れます。そのときあなたのいるべき場所は、そこではないのではありませんか』
真に迫るような問いかけを、マコトは鼻で笑いとばした。
『大尉。それではまるで、地球連邦に弓を引け、と唆されているかのようにも聞こえてしまいます。誰が聞いているかわかりません。それは私とあなたの間だけの、ここだけの話にしておきませんか』
『なるほど。今はまだ……というわけですね』
『いえいえ。なにぶん、今の配置がなかなか居心地いいものでして』
それきり言葉を切って黙るマコトに、ロストフは心底楽しそうに弾んだ声で言い出した。
『残念です。本当に残念です。いや、しかし――あなたとお会い出来て、本当に良かった。あなたのような強者がおられることを知っただけでも、ここまで来た甲斐があったというものです』
『…………』
その手放しの賛辞に対して、マコトは一言も返しはしなかった。
ロストフ大尉と名乗った男の言葉の裏に、どこか首筋にまとわりつくような不快さが潜んでいるように感じられてならなかったのだ。
『それでは、我々はこれで。ハヤカワ准尉、トラキアのご武運を』
『ええ。ロストフ大尉、ジャカルタのご武運を』
そしてロストフ大尉の新型重MSは、鮮やかな旋回を見せてマコトの前から後退した。
ハフナー小隊で生き残った二機は、新型GM系に引かれながら母艦への進路を取る、自分たちの小隊長機へと近づきたそうにしていた。
だが戻ってきたロストフの重MSからなにか通信を受けると、進路を変じて距離を開き、右舷カタパルトへと進路を取っていった。
『……本件に関しては後日、環月方面軍に対し正式に抗議する』
『ええ、どうぞ。上級部隊を通じて、正規の書面でお願いする』
感情を噛み殺して吐いたリドリーの言葉に、ジャカルタ艦長が余裕を漂わせながら応える。
『ああ。それから――貴艦の航海の無事を祈る』
あざ笑うように定型句を置くと、トラキアの目の前でMS隊を回収し終えたジャカルタは悠然と回頭し、そのまま高い加速力を見せつけるようにして離れていった。
『……生き……残った……のか……?』
『なんだったんだ……この戦いは、いったい……』
ロブとシュンが惚けたように呟く。
『22より各機。我が隊の任務はまだ終了していない。警備会社MS隊の救難作業を支援し、リバティ115に接触する』
『24、了解』
『23、了解……』
『25。了解か?』
『……25、了解』
他の二機からだいぶ遅れて、アイネは半可な返事を寄越した。
コクピット内のアイネは無言のまま、ノーマルスーツのグラブ越しに自分の掌を見つめている。戦艦ジャカルタとそのMS隊の気配が遠のいてから、もう、ずっと。
そこに何か、見えない染みでも付いているかのように。
今回は以上です。
ヌーベルGMUは俺MSです。
ビームスプレーガンとネモシールドがこんなに強いSSが読めるのは、多分ここだけ。
GJ!
GJ!
ハフナー少尉二重の意味で昇天か(-人-)ナムナム
宇宙世紀とアナザーを棲み分けするとした場合
Gジェネ系はどこに行けば良いんだろう
アナザー
ヒロイン増えてきたけど、しかし全員GMUパイロットってのはどうなんだw
GMUヒロインズか?w
>>573 Gジェネ系ってスレでもたびたび名前が出てきたみたいだけど、実際に投下されたことって今まで一度もないよね?
そもそも今の投下頻度だとスレを分ける意味がそもそも無いから、AGEとビルドファイターズ以外のガンダム系は全部ここ、でいいんじゃないかと。
フェニックステイルを投下している輩です。
スレ容量が476KBに達しました。そろそろ拙作の次回投下も厳しい容量になりつつあります。
拙作次回更新分(今週中には投下できるかと思います)の容量次第では新スレ保守を兼ねて、新スレを立ち上げながらの投下になるかもしれません。
そこでここまでの経緯と議論を踏まえ、次スレテンプレ案の可否を問いたいと思います。
また次スレ移行時より、外部サイト(pixivを検討中です)にフェニックステイル既存投下分に多少の修正を加えたようなものも、逐次保管していきたいと思っております。
こちらについてもご意見などございましたらお寄せください。
>>577の草案1にはたびたび議題に上がるGジェネ、拙作のようなガンダム世界観利用の二次創作に関する記述を盛り込みました。
>>578の草案2はほぼそのままコピーしてみましたが、
>>1から四年が経過したために公式リンク先の選別がこれでよいのかという問題や、保管庫などの非公式サイトで機能していないところが散見されます。
ご意見などありましたらお寄せくだされば幸いです。
>>572 ハフナー少尉の昇天が二回だけで終わると誰が言った?
>>575 >>411にもあるように、GMUは主人公機なのでー。
あと追加で。
Android環境だと、2chMate+datmateを利用することで、過去スレすべてを閲覧することが出来ます。
テンプレ草案2の過去スレURLは、datmateで直接飛べるものに修正した方がいいでしょうかね?
テンプレにはAGEとビルドファイターズのエロパロ単独スレへの誘導があった方いいんじゃない?
容量が膨らむ前にキリの良いところまで、続き物の第十話を投下します。
紹介は
>>452参照です。
今回はまだ微エロ程度です。
『おじさま、着艦ですわ。衝撃に備えてくださいまし』
「おう!」
通信小窓から響く柔らかな少女の声に、可能な限りの威厳を込めてドッツィ・タールネンは顔を上げる。
メインカメラをバルカン砲に吹き飛ばされてやたらと死角の多くなったザクUの全天周モニターの中で、新型戦艦のMSカタパルトデッキがぐんぐん大きくなってくる。
その奥には緩衝ネットが張られているのが見えていた。操縦困難に陥ったMSを回収するための古典的手段だ。
全機が両脚を『スプレーガン持ち』に叩き斬られているジオン残党の三機は、一般的な手順で着艦する事が出来ない。
連邦軍MS隊に拘束されたワイヤーを外さないまま三機を曳航している改装型のGMU隊は、このままカタパルトデッキ奥の緩衝ネットへ彼らを放り込むつもりらしかった。
「了解や……デティ、聞いたか?」
『聞こえとるで、兄ィ。せやけど、イーデンはまだアカンな』
「まあ、生命反応は確認しとる……何とかなるやろ」
曳航機が制動を掛けて減速する。緩やかな逆Gを感じながら放り出された三機は、MSカタパルトデッキに張られたネットへ受け止められるようにして着艦した。
追って曳航してきた三機のGMUも着艦すると、たちまちノーマルスーツ姿が群がってきて彼らの機体の破損部めがけて不活性化剤を噴射し、そして絡まる網の目を外しに掛かった。
『おじさま方、ノーマルスーツに破損はありませんこと? MSデッキの与圧がまだですの。そのまま出られまして?』
「大丈夫や。問題あらへん」
『では、降りてきていただいてけっこうですわ。お茶を用意させていただきます。ご自分の艦だと思って、おくつろぎになってくださいまし』
「自分の艦やと思て、か……」
全天周モニターへ切れ切れに映る外界は、MSデッキの光景を写している。行き交うノーマルスーツはいずれも連邦系であり、出撃してきた八機以外にもまだ数機が残っていた艦載機も、リアンナ・シェンノート少尉と名乗った美少女の乗機と同じGMU系だ。
『兄ィ。こりゃ、まるきり連邦軍の巣やないけ。生きた心地がせえへんな……』
敵機めがけてドラッツェを全速で飛ばしていたときと異なり、急に慎重な口調になったデティ・コイヤー軍曹は小声で呟きながら、通信小窓の中から不安げにドッツィを見た。
『……兄ィ、行くんか?』
「まあ、せっかくのご招待やしな。助けてもうたことは確かなわけやし、とにかく行ってみいへんことには話も何も始まらんやろ」
あっけらかんと言い放ちながらも腕組みし、ドッツィはしばし思案した。
自らドッツィの一の舎弟を自称し、そしてドッツィとしても腹心として信頼を置いていた部下、イーデン・モタルドゥは、あの忌々しい不死身のGMU『スプレーガン持ち』からの強烈なシールド突きを受けたきり、気絶していた。まだ目を覚ましそうにない。
すぐに動けるのは自分とデティの二人だけ。そして助け船を出してはくれた《エゥーゴ》を名乗るこの組織も、果たしてどこまでの信頼に足るのかをまだ見極められていない。
「ええか、デティ。お前はここの連中におかしなことをされへんように、ワシらのMSを見張っといてくれや。ただくれぐれも、こっちから先には手ぇ出すなよ」
『兄ィは、……兄ィはどないするんや?』
「ワシはちょろっと行って、ここの艦長と話してくるわ。デティ。お前はイーデンと、ワシらのMSを頼むで」
全天周モニターが映すザクUのすぐそばには、すでにGMU系から降りてきた小柄なパイロットが着地して、彼のザクUのコクピットを見上げている。
ままよ、とドッツィはコクピットハッチを開放し、その小柄なパイロットスーツの元へとリニアシートを蹴った。
すると小柄な相手も床を蹴り、ドッツィの胸へ飛び込んできた。ぶつかる。
「なんじゃあっ!?」
慌てて空中で抱き止めると、そのヘルメットがジオン軍パイロットスーツの胸板の広さを確かめるように頬をすりつけながら、スーツ同士の接触回線で呼びかけてきた。
「ああ、逞しい……。うふっ。やっと直接お会いできましたわね。改めまして、戦艦ジャカルタ第二MS小隊長、リアンナ・シェンノート少尉ですわ、おじさま」
「お、おう……」
……めんこい娘やのう。
MSを降りて直接に相対してみたその少女は、ドッツィの胸までも背丈が届かないような小柄さだった。
ドッツィが大柄で屈強な体格であることを差し引いても、もはやジュニアハイどころか、エレメンタリーの学生と言っても通るのではないかと思えるほどだ。
だが、連邦軍の現行パイロットスーツへ如実に浮き出るそのボディラインは、幼く小柄な印象の中にも確かに女を感じさせる豊かさを要所要所に秘めていた。トランジスタグラマーと呼ぶべきだろう。
「あ、当たっとるで……」
「? 何が当たってるんですの?」
パイロットスーツと、おそらくはその下でブラジャーのカップにも包まれているのだろう形の良さそうな乳房が、ドッツィの股間近くでみずみずしい弾力を潰れさせながら、今にもはちきれそうな若い甘さを伝えてくる。
股間に痺れにも似た熱を感じてたじろぐドッツィに、少女がそのヘルメットの小首を傾げた。上目遣いで呟く。
「あら? 他の方は、降りてこられないんですの?」
「せ、せや。一人はさっき、スプレーガン持ちにド突かれたきり気絶しとる。もう一人はうちらの損傷した機体がおかしなことにならんように見させとる。まずはワシ一人で、艦長さんにお礼させてもらうとするわ」
「まあ、おじさま。さっそく艦長に会っていただけますのね?」
「お、おう……」
ドッツィに押されてゆっくりと降りていく少女は左右の掌を合わせ、バイザーの向こうに眩しいほどの笑顔を弾けさせた。
そんな美少女に面映ゆさを感じてたじろぎながらも、しかしドッツィは着地とともに振り向いて、周囲の整備兵たちを牽制した。
「そこの整備の人ら! いろいろ危ないでな、勝手にワシらのMSに触らんといてな! 一人残しとくさかい、どうしてもちゅうときはそいつの指示に従ってんか!」
「大丈夫ですわ。エゥーゴは不作法な真似はいたしませんもの。こちらにいらしてくださいまし、おじさま」
ころころと笑う少女に手を引かれて導かれ、エアロックをくぐって与圧された艦内通路へ入る。
リアンナと一緒にバイザーを上げると、空気には新造艦特有の匂いが漂っていた。ドッツィが以前にこの匂いを感じたのは、もう何年前のことだっただろうか。
「艦橋ですのね? シェンノート少尉ですわ。艦長にお伝えくださいまし。タールネン少佐がお会いくださるそうですわ。――もう今行ってよろしいんですのね? ――では参りましょう、おじさま」
「は? もうええのか??」
素早く艦内電話に取り付いていたリアンナは、早くも艦長とのアポを取り付けた様子だった。笑顔で向き直ると右手にリフトグリップを、そして左手にドッツィの手を握って再び先導していく。
リアンナのパイロットスーツに包まれた脚、そして小作りながらも豊かな腰つきが、手を伸ばせばすぐ触れられる目の前で、無重力の通路を泳いでいる。
今のうちに艦内を観察しようとしても、どうしてもドッツィの視線はそちらへ強く引きつけられてしまう。
だからドッツィがまともに気づくことが出来たのは、艦内を行き交う人影には連邦軍の制服以外に私服のような軽装が多いこと、そしてやたらと多く見かけられるその服装は、どうやら制服に準じる扱いであるらしいということぐらいのものだった。
美少女の脚と尻ばかり眺めているうちに艦橋前まで着いてしまったが、むしろそれ以上の直接的な行為を彼女に働かなかった己の自制心を評価すべきかもしれない、とドッツィは思った。
「艦長。リアンナ・シェンノート少尉、ドッツィ・タールネン少佐をお連れいたしましたわ」
「ご苦労だった、シェンノート少尉。下がりたまえ」
見上げる高さで艦長席をぐるりと回して、艦長はリアンナと向き合いながら敬礼を交わす。
「おじさま、それではまた後ほど」
「お、おう……」
リアンナは微笑みながら囁くと、艦橋にドッツィを残して退出していった。憮然とした表情のドッツィに、連邦軍制服のジャカルタ艦長は親しげに話しかけた。
「戦艦ジャカルタに――そしてエゥーゴにようこそ、タールネン少佐。艦長のデミトリ・スワロフ中佐だ。不屈の闘志を持つジオン残党勇士の諸君らを歓迎させてもらおう。僚機パイロットの方も、身体の方に異常はないかな?」
「ええ。おかげさんで、塩梅ようさしていただいとりますわな」
「それは何よりだ」
「スワロフ艦長、まずはお礼を言わしていただきます。ワシらジオン残党を連邦軍から助けてもろうたご恩、これは素直に恩に着さしていただきます。おおきに」
率直に謝辞を述べたドッツィに、破顔しながら艦長が応じる。
「礼には及ばない。我々は立場こそ違えど、今の地球連邦政府のあり方に異を唱えんとする者同士だ。助け合うのが当然というものだろう」
「いやあ艦長、せやけど、言うても何ですわ……やっぱ世の中、タダより怖いもんはありませんわな。単刀直入に聞かしてもらいます……艦長さん。何が狙いなんや?」
乾きかけた唇を舐めながら、ドッツィは直接に疑問をぶつけた。だがスワロフは韜晦するように目を細める。
「狙い、とは?」
「わざわざ連邦軍の巡洋艦とやり合うて、本気のど突き合いにまでなりかける危ない轍を踏んでまで、ワシらを助けてくれはった。それはもう、心底感謝しとります。
せやけど、艦長……そこまでしてくれはるちゅうのは、単に通りすがりのジオン残党を助けてみたかったから、だけではないですやろ? あのときあの場所まで、わざわざ月から駆けつけてきてもうたことも含めて、何を考えておらはったんですかな」
「ふむ」
艦長席を小さく回し、スワロフは艦橋を巡る窓の外に広がる宇宙の光景へと斜めに対した。
「タールネン少佐。我々は、力を必要としているのだ。より多くの、正義を志す人々の力をね」
「ほお。力、でっか」
言われてドッツィは腕を組んだ。
『キャリホルニヤの悪夢』を名乗る身としては、ここで己自身の力を誇示する威勢のいい啖呵の一つも切りたいところだったが、なにぶんあの『スプレーガン持ち』に叩きのめされたところを救出されたばかりだ。さすがに自重した。
「我々が今の力だけで戦うには、地球連邦の地球至上主義が生んだ悪しき尖兵ティターンズは、あまりに強大な存在なのだ。
そして本来ならスペースノイドのために在るべき連邦宇宙軍の中にも、未だ真実を知らされることなく情報の暗闇に閉ざされたまま、大義の在処に気づくことが出来ていない人々があまりにも多い。先ほどのトラキア隊のようにね。
だが今はまだ、ティターンズも地球連邦軍の全軍までは掌握できていない。多くの力を集め、叩くならば今しかないのだ。
だから私はまず、この暗礁宙域の奥に拠点を構える、少佐が属するジオン残党組織の長にお会いしたい。そして、我々エゥーゴとの共闘を申し込みたいのだ。
タールネン少佐。あなたにはその会談のパイプ役になっていただきたい」
「共闘、でっか……」
そう来たか――ドッツィの唇がわななく。
組織全体でエゥーゴと共闘するということは、この方面の連邦軍だけではなく、遠方にいるティターンズとも積極的に打って出て交戦するということになるだろう。
こんな辺境にくすぶりながら、ちんけな海賊行為や破壊工作の合間に時たま連邦軍や民間警備会社と交戦する、といったぬるま湯の環境ではなくなる可能性が大きい。
「今までは辺境ということもあってここまでティターンズが手を伸ばしてくることはなかったようだが、このまま奴らが勢力を拡大すれば、いずれ必ず君たちの組織にも目を付けるだろう。
そうなる前に、我々と共同でティターンズを叩く。これがお互いにとって最大の得策のはずだ」
「……言うても結局、おたくらのエゥーゴいう組織は連邦軍が基盤なんでっしゃろ? ティターンズ打倒ちゅう共通の目的がある当分の間は良うても、将来どう転ぶかは分かりゃしまへん……。
ワシらにとっては、こんな連邦製のごっつい新型戦艦と仲間を引き合わせるだけでも一大事、大博打です。そう簡単に、仲間は売れませんわなあ」
「少佐。我々エゥーゴの目的は、単にティターンズを打倒するだけで終わるものではない。さらにその先、スペースノイド全体の地球連邦における地位の大きな向上を目指しているのだ。
この目的には、君たちジオン残党組織のそれとも重なるところが大きいと思うが?」
「いやいやいや。しょせんワシらは、あんな重力井戸のどん底から無茶な政治をしよる連邦のバカタレどもの言いなりになってたまるか! ゆう苔の一念だけでなんとか頑張っとるだけの弱小ですわ。
ご期待してもらえるんは嬉しいんですけどなあ。そんな大きな青写真、とてもやないですが――」
「ほう? そうなのかね?」
面倒くさい方向へ転がっていきそうな話を無難に収めていこうとするドッツィに、スワロフが口角をわずかにつり上げた。
「タールネン少佐。君の属するジオン残党組織――『ルスラン・フリート』は、かの『デラーズ・フリート』にも匹敵する規模の戦力を整備したと伝え聞いたのだがね」
「!?」
事もなさげにスワロフが言い放った一言で、任務の傍らで話を聞いていた艦橋要員の何人かが顔色を変えた。
デラーズ・フリート。一年戦争後にジオン公国の木星開発拠点アクシズへ逃れることなく、地球圏へ残留しての闘争継続を選択したジオン残党における最大勢力。
四年前に決起するやコンペイトウの観艦式に集結していた大艦隊を核攻撃で壊滅させ、さらに移送中のコロニーを奪取して北米に落着させた彼らの戦いぶりは、まさにその後の地球圏の歴史を大きく変えたと言っても過言ではない。
そのデラーズ・フリートに匹敵する戦力を隠し持っていたジオン残党組織などというものが現存するなら、エゥーゴの現有戦力と合わせてティターンズを壊滅に追い込むことすら夢ではなくなるかもしれない。
だが、いかに一年戦争終結時にジオン共和国への復帰を拒んで行方を眩ました旧公国軍部隊が多かったとはいえ、さすがにギレン・ザビ親衛隊を中核としたデラーズ・フリートに匹敵する勢力が未だ地球圏に現存するなど、いかにも眉唾物に思える話だ。
「い、いや……それはさすがに、買いかぶりすぎですやろ……」
しかし、そんな荒唐無稽にも思える話を振られたドッツィ・タールネンは脂汗を垂らしながら唇を引き攣らせ、切れの悪い調子で否定するしかなかった。
探るような視線をスワロフへ向けてくる。目の前の男は、自分たちについて一体どこまで知っているのか、と。
スワロフの笑みが深まる。
「今、君たちルスラン・フリートと我々エゥーゴが手を組めば――地球圏全体の未来を、ティターンズの魔手から救うことが出来る。我々の手で、だ」
「ワシら両方の手で、地球圏を、でっか……」
一気に踏み込んできたその言葉が持つ重さに、ドッツィは圧倒される。
それはすなわち、彼らがエゥーゴという大きな組織についてこのまま勝利を手にした場合、巨大な配当にあずかることが出来るということだ。
彼らを連邦軍から救出するために出撃してきたGMUには、新造機の輝きがあった。最後に少しだけ出撃してきた二機など、完全に新規開発の代物だろう。
あれらの機体の前では彼らを苦しめたトラキア隊のGMUなど、もはや単なる旧式機でしかないのだ。
エゥーゴには、連邦軍をも凌ぐ力がある。
先細りが目に見えている今のジオン残党組織から、大きな勝ちをも狙える、若く勢いある組織への大胆な転換。
これは自分だけでなく部下たちや、組織全体にとっても決定的なメリットをもたらす可能性もある。
「ど、どうですやろな……まあ何にせよ、自分一人ですぐに答えの出せる話ではないですわ」
「それは当方も承知の上だ。君たちのために部屋を用意した。まずはそこでゆっくり疲れを取って、それからじっくり考えてほしい。
部屋までは、シェンノート少尉に案内させよう」
艦長の目配せに合わせるように、ドッツィの背後で艦橋のドアが開いた。
「おじさま、お迎えに上がりましたわ!」
「んん? シェンノート少尉か――はおっ!?」
開いたドアに目をやって、ドッツィは目の玉が飛び出るほどに大きく見開いた。
そこにいたのはパイロットスーツを脱ぎ、エゥーゴ制服に着替えたリアンナだった。
頭上の照明を受けて天使の輪を宿す柔らかな栗髪はアップにされて、大きく可憐な白いリボンで少し短めのポニーテールにまとめられている。
実際にはそう極端に大きいわけではなくとも、涼しげな制服の薄い布地を押し上げる胸の膨らみは彼女の全体的な小作りさとの好対照をなして、丸みを帯びた豊かさを強烈に主張していた。
そしてノースリーブにミニスカートという露出の多い大胆なエゥーゴ女子制服からはすらりと眩しい四肢が覗き、愛らしい両脚は清潔感のある白のオーバーニーソックスに腿の過半まで包まれている。
ミニスカートの裾が無重力に揺れて、見えそうで見えない下着とオーバーニーソのわずかな隙間に、太股の輝くような眩しい白さがいっそうよく映える。
「おっ、おおっ……おおおおお……っ」
え、ええんか? 軍艦の中でこんなん、ほんまにええんか??
「ではシェンノート少尉、タールネン少佐の案内をよろしく頼む」
「了解ですわ、艦長。では、こちらにいらしてくださいまし――おじさま?」
「はおっ!?」
悪戯っぽくウィンクするリアンナが、ドッツィに腕を絡める。形よく立体的なリアンナの胸がドッツィの腕で柔らかく潰れて、口ひげを吹き飛ばすような強烈な鼻息を吐き出させる。
「捨てる神あれば拾う神あり、ですわ。おじさま……」
ドッツィの背中で微笑みながらささやくリアンナは、艦長席のスワロフと無言で視線を交わし合った。
今回は以上です。
現在497KB。
次スレと拙作保管庫、もしくは埋めネタのことは、次回投下時に考えることにします。
しかし、エゥーゴが悪者っぽいSSってあんまり見ませんね。
GJ!
ここはゼブラゾーン地獄の激戦区。
生きてデッキを踏める運はすべて○○○の神任せ。
俺たちは命知らずの外人部隊。
反政府軍「エゥーゴ」と闘う外人部隊ってパロなら考えた事はある。
○○○は思いつかなかった。
アレキサンドリア級「アスラン」とか、
真は、GMU→マラサイ→バイアランとか
ミッキーは、ハイザック→マラサイ→ギャプランとか
ネモのウルフパックとか
アナハイム内部のP4とか
でも、サイド6とジオン共和国位にしか外人いないしなーとか
>>590 あと木星とか?
シロッコ指揮下のジュピトリス傭兵隊みたいな設定でも出来そう。
ってかその設定でも、エゥーゴは敵役ではあっても悪者っぽくなるとは限らんよね。
ちょっと違うかもしれないが…
オデッサに駐屯するジオン軍から色々ちょっかいを掛けられる
ベルファスト基地でエリア88ネタをやろうって思ったことはあった。
(ガンダム系のTRPGを使って)
まだ連邦軍にMSが無くてPC達はセイバーフィッシュ乗りで。
敵はドップ改の飛行機編隊から、MSを乗せたドダイ隊、ダブデ級地上母艦、
ガウの爆撃を止めたり、アッザム倒したり、マクベが何処からか引っ張り出してきたドーラ戦車だったり。
アイネ人気ないの?
エロさが足りないの?
アイネはまだネタにされてる分だけ、拙作の面子では恵まれてる方かと……
マコトなんか一話からずっと出ずっぱりなのに、感想レスに名前を出してもらえたことが一度もないという影の薄さですし。
スレもそろそろ終わりそうだから、最後に思い切って聞いちゃいます。
今までのところで話や戦闘の流れなんか、訳わかんなくなってるところはないでしょうか? わりと複雑ですよね。
エロ場面は二話と五話をメインにそれなりに入れてきたつもりでしたが、お役に立ってますでしょうか?
>>590 ジオン共和国軍はアポロ作戦のときにもティターンズの支援で出てきてますね。ムサイ改とハイザックで。
VOEでは確かそのへんがスルーされてたような気がして、あれっと思った覚えがあります。
リーア軍は……どうなったんですかね?
>>592 セイバーフィッシュの後はジムでなく、コアブースターに乗り換えたり?