一本。二本。三本。 三本分の鞭が姫の首筋―――それも片側に集中して―――をくすぐっている。 姫君は必死で逃れようとしていたがそれは果たせず、その努力も甲斐なく首筋を縦横にネコジャラシが走り回っていた。
「・・・・・・!」
すでに彼女の口を縛る枷は無い。 今度はそれが逆に災いし、彼女は独力で声を漏らさないよう耐えなければならない。
声を出したところでそれ自体は誰も気にしないのだろうが、誇り高い彼女のこと、臆面も無く、しかも自らを弄んでいる相手の前で転がり悶えるのは抵抗があるのだろう。
ネコジャラシが姫君の首を、その筋に沿って微かになぞる。 ビクン、と敏感に反応した、既に限界一杯まで身を退かせている彼女のそこを、容赦なくそれぞれ独立した動きで三つの穂先は責めていた。
顎の裏、喉に沿って、胸元。 しばらくするごとに場所を変えながら、しかし一時に同じ箇所を執拗に。 嬲るように撫ぜ、軽く回転し、また彼女の首元で直に跳ねる。
顎にそって鞭が這った。 ドリストは鞭を巧みに操り、姫の細く白い、繊細な顎から
ネコジャラシを落とさないようにしながら、執拗に、かつ微かに輪郭をなぞってゆく。
涙を堪えて声を上げないよう必死で歯を食いしばっている姫が、
顎を振って鞭の穂先を払い落とす。 すぐ間髪入れずに別の鞭の穂先が跳ね、
聞き分けの無さの仕置のように彼女の顎裏を掠める。 思わぬ刺激に、ビクン、と
身を退かせる暇もあればこそ、顎の輪郭から胸元に振り落とされていた一本の穂先が
活動を始め弧を描く。 共に、新たに獲物の食い出のありそうな場を発見でもしたかのように、
二、三本の別の穂先が胸元に跳ねて食らいついた。
「・・・・・・うぁっ・・・・・・」
くぐもった苦悶は出してはいても、今までそうすることの無かった口がとうとう開いて悲鳴を上げる。 それにもドリストは構わず、変わらない調子で姫を慰み続ける。
「・・・嫌、やめてっ・・・・・・」
たまらずに彼女が言葉を口にする。 しかしドリストは相変わらず、
「ん〜〜〜。 ・・・・・・吐く気になったかァ?」
姫をいたぶる手を休めない。 ドリストからの問いかけに、・・・・・・悪いことに、姫は俯きながらも気丈にも首を横に振った。
ドリストはニヤリと笑い、
「そうか。 ――――――根性あるじゃねェか」
姫への最後の追い込みに入った。 ネコジャラシの動きがいっそう激しさを増す。
「・・・・・・ッ!」
ビクリ、と反応した姫が必死で声を上げまいとする。 口は既に開いているのだが喉は音を出さず、あまりにこらえようとしたせいで声を上げたくても上げられないように見えなくもない。
限界を見てとったドリストがニンマリ笑い、
「それじゃあ、いい声で鳴きな」
チェックメイトをかけるかのような手つきで手元の鞭を振った。
鞭の穂先の一つが跳ね、それは現在首筋から胸元ばかりをくすぐられ続けているブランガーネの露出した腋をシャリ、と掠め、
「ひゃう! あ、あはははは、う、あ、ははははははは!」
・・・・・・既に決壊寸前だった堰に、一つの小さな穴を開ける最後の一押しになった。
「あは、いや、やめ、あは、あははははは!」
ひきも切らずに笑い続けるブランガーネに、ドリストは上機嫌で責めを続ける。
上、上、下、下。 くすぐられる感覚が鈍るに従い、計ったかのように彼女の体の悪魔じみた理解度を持ってくすぐる場所は変えられる。
彼女の体の上を自在にネコジャラシが這い回る絶技と共に、その今までの責めに加えて今では無防備な腋が新たに獲物として開放されていた。 たまらずブランガーネは言葉を漏らす。
「うあは、や、いや、直ちにこの暴虐っを、く、あ、は、やめな、やめなさ、ッッッ・・・・・・!」
「ん〜〜〜〜。 聞こえンなァ。
肝心の言葉はどうしたァ?」
ひざまずいて喘ぐ彼女を見下ろすドリストから告げられたブランガーネは、しかし必死で首を横に振る。
それを見たドリストは、「そうか」、とさほど気にしない様子で呟き、さらに鞭を捌く手を休めない。
左、左、右、上。 姫が苦痛のあまりに、逃れようと体を振って片側の首筋と腋を狂王から遠ざければ、しかし鞭はいとも容易くもう片側の首筋や腋に跳び移り、またしなやかに走り移る。 縦横無尽に、蛇のように鞭は姫の体に相も変わらず地獄の快楽を与え続ける。
「あはははははは! あは、あはははは! く、ひっ、いや、あっ、っっははははは!」
最早外聞もなく姫は笑い転がる。 ちなみにその外聞の方はと言えば、
アルスターはいかにも渋い表情をしている。 恐らくここまでの仕打ちを
その国の姫君に行った後の、ノルガルドからの報復について考えているのだろう。
キャムデンはいささか呆然と目の前の情景を眺めているが、恐らくドリストの並外れた手腕に、
事態があまりにも劇的に表れているからだと思われる。
ユーラは「まあ、気持ち良さそう」などと呟いている。 もちろんその言葉を聞いた姫君が
殺意を抱いたのは言うまでもない。
しばらくあと、ひとしきりにドリストが姫をくすぐり終えた後で、ようやく彼はその手を休める。
・・・・・・姫の様子は、憔悴しきっている様を見せている。 全身が汗みずくになり、それと全身激しく暴れたせいで金糸の髪もまとまりなく振りほどかれている。 ようやく与えられた休息に、やはり姫は必死で酸素を求め、その体全体が荒々しく脈動していた。
「ク〜〜クックック。 どーだァ、お姫様。
イスカリオの歓迎はお気に召してくれたかな?」
・・・・・・ドリストの挑発混じりの言葉にも、姫は答えない。 相手にせず、相手に出きず酸素を求めることに余裕なく集中している。
ドリストはしばらくその様子を眺めた後、お構い無しに言葉を続ける。
「ん〜〜〜、そうか、それは何よりだ。
それで、気に入ってくれたところで、そろそろ吐く気になったかお姫様?」
・・・・・・この言葉には、いまだ激しく呼吸しながらブランガーネも顔を上げる。 金にこぼれる髪の間から鋭く眼光がギラリ、と光る。
「・・・・・・が、・・・ど、に・・・・・・ッ!!!」
至難になっている呼吸に、言葉を形作っている声は出され辛かったが、その語気は
それだけで充分に激しい拒否の意を含んでいた。 加えて、その眼光を見た者には、
その拒否の理由が情報を秘匿する利害だけでなく、彼女を嬲り者にした者への
敵愾心からだということも受け取られたかもしれない。
構わずにドリストはフン、と笑い、
「そうか。 それじゃあしょうがねェな。
―――アルスター。 あれを出せ」
「・・・・・・はっ」
やはり最早諦め顔のアルスターが、進み出て両手に捧げ持ったそれを恭しくドリストに向ける。 狂王は左手に持っていた愛用の大鎌の刃を床に置き、柄を脇に挟んで空いた左手で「それ」を受け取った。
「それ」を目にした姫の顔色が変わる。
「・・・・・・ヒッ・・・・・・!」
「――――――二本だ」
ピシィ、と、彼が左手を振ると共に、床を叩く乾いた音が鳴る。 その左手にはやはり右手のものと同じ、全く同じ改造を施された鞭が有った。
「・・・・・・ひ、い、・・・・・・」
「――――――ほんとに楽しいのはまだまだこれからだぜェ。
じっくり味わいな、お姫さま」
ニヤリ、と、やはり本当に嬉しそうに笑いながら、ドリストは一歩ずつジャリ、と近付いてゆく。
ブランガーネは唯それを怯えて見つめている。
「・・・・・・い、い、いやーーーーーー!」
・・・・・・悲鳴が城中に響く。 しかしやはりそれも、狂王の無道な行いを止める手助けとはならなかった・・・・・・。
今日はここまでー
拙腕失礼しました
乙ですー。こちらも投下
ソフィアの日記
進軍中だというのに足取りが軽い。心なしか、気持ちまで弾むようである
あるべきものが収まるべきところに収まっているという状況は
こんなにも心安らげるものなのか
ブロセリアンデに向けて進軍中。陛下を中心に、両翼を私とフィロが固める
配下は、かつて北国から奪ったシルバードラゴンを筆頭に
フェニックス、ホーリーグリフ、アークエンジェル、アークデーモン他多数を擁し
その上各々の騎士がフェアリーを連れている。紛れもなくレオニア本陣たる大部隊である
最早、僭称皇帝と賢王と狂王が束になって掛かって来たとしても負ける気がしない
いかん、慢心はよくない。大部隊だからこそ采配の手腕が問われよう
フィロと共に、陛下の御為に、一糸乱れぬ連携を見せるのだ
「やっほー、イリアちゃーん」
拠点を目前にして、気合充分で対峙したはずが、いきなり気が抜けた
フィロが敵軍の槍使いに向かって手を振っている
いつの間にあんな怪しげな女と知り合ったのだろう。あの珍妙な格好は君主の趣味か?
身体にぴったり張り付いた、通気性の悪そうな黒い光沢のスーツ
黄色いベストで申し訳程度に覆ってあるものの、胴体の凹凸がはっきり出ていて
あれでは裸エプロンとかいう変態装束と、然程変わらない
妙な形の兜を目深に被っているのは、さすがに恥ずかしいからかだろうか
南国は、この場には居ないが君主が君主だけに、騎士達も変態揃いで
実用性より派手さを重視した、道化紛いのふざけた装束の者が多いが
どうやら女性騎士といえども例外ではないらしい。強制されてるなら不幸なことだ
フィロが声を掛けたにもかかわらず、槍使いは無表情のままブツブツ呟いている
よく聞こえなかったが、何やら物騒なことを宣言していた気がする
しかも、こちらを睨む目付きは不穏当極まりなく、とても知り合いのようには見えない
フィロはといえば、返事が無いのもどこ吹く風で、やる気充分のようである
なんなんだ、いったい
フィロに確認しておきたいのだが、今日の布陣では陛下を挟んでいるため、聞きづらい
と、陛下も疑問に思われたようだ。フィロに何事か尋ねておられるご様子
フィロが答える
・・・
何故陛下が赤面なさるのだろう
フィロ、あなた陛下に何を申し上げたの?
裸エプロンがどうとか言ってないでしょうね?
なに?寧ろ裸で水浴び?ちょっとどういうことよそれ!
鷲掴みとか、揉むと大きくなるとか、色々気になる単語が聞こえたものの
詳しく問い質す前に戦端が開いてしまった。もやもやしたまま迎え撃つ
フォールバーグがとどきそうな距離に槍使いが来ている
見れば見るほど可愛げの無い忌々しい無表情だ。鷲掴みだと?この女がか?
・・・そういえば、フィロの胸が少し大きくなっていたのは
まさか、この女に揉みしだかれたということか!?
おのれ私がレクターでなかったら本当にフォールバーグをぶち当ててやるのに
今回はジェノフロストの予定なので、きっとこいつにはあまり効かない
しかもレジストまで使ってくる。つくづく忌々しい。せめて周りの連中は一掃してやる
後続のがっはっはめ、さっさと掛かって来んか。悩みの少なそうな顔しやがって
自分で書いてて「脳みその少なそうな」と誤読しそうになったが、強ち間違ってない
あと、チョビ髭も居た気がするがどうでもいい
次のターン。もしかしたら槍でも飛んで来るかとは思っていたが、甘かった
まさかカーズまで使えるとは。とことん忌々しい女だ。いったい何者だ?
しかも、さっきまでは私より遅かったはずの脳筋が、私より早く動いた
レベルが拮抗しているらしい。ドラゴンのブレスで薙ぎ倒され、リドニー戦を思い出した
ふつふつと怒りが湧いてくる。あのとき私は敗北を覚悟した。もうあのときの私ではない
先手取ったからって調子に乗りやがって。このツケはきっちり取り立ててやる
ていうかね、こっちは今それどころじゃないんだよ!!
勢い良く立ち上がり、フェアリーのリアクトを使ってのジェノフロスト2連発
更にフィロの2連発が続き、アークエンジェルもホーリーワードを重ねる
トドメに陛下のホーリーワードが戦場を平らげる。既に勝敗は決した
しかしまだ終わらない。陛下がリアクトを受ける。目の前には、配下を失った無表情
ああ陛下、一生ついて行きます
光の御柱は、邪悪なキラードールに負け惜しみの暇すら与えず、跡形も無く消し去った
まあ全治一節で首都に転送されただけだが、私の溜飲は充分下がった。素敵です、陛下
「胸? あー、イリアちゃん、大きかったわよね」
ええと、どうも話が噛み合ってないような
「でもね、触るととっても柔らかくて、弾力もあるのよ。あんなに大きいのに」
・・・どうやら私は早とちりしていたらしい
鷲掴みにしたのも、揉みしだいたのも、フィロの方のようだ
いったいどういう経緯でそんな状況になったのか、激しく気になったが
別れ際が一触即発だったと聞いて、そんなことは頭から吹っ飛んだ
あの女やはり危険だ。次に対峙するときも容赦はすまい
大体、裸エプロンのみならず、野外露出までするような女が、危険でないわけがない
フィロが真似したらどうするのだ、まったく
・・・もう手遅れのような気もするが
GJ
ういうい。 投下いきまっす
大体全角50文字×60行でいってみる
「とりあえず、ここまでだな。
随分と根性見せるじゃねェか」
ピシッ、という音とともに、ドリストが鞭を自らの手に手繰りなおす。 彼にしては本当に珍しく感心するよ
うな口ぶりで、しかし余裕気な表情で彼は眼下の姫君を眺めていた。 ・・・・・・その彼女の様子はといえばその髪
はこれ以上ないほどに振り乱され、まるで死んだかのように腕や体の力が抜けている。 そのくらいに余力の失
われた状態で、しかしようやく解放されて酸素を求めないわけにはいかないそのありさまはさながらボロきれの
ようだった。
「嫌いじゃあないぜェ、お前のような強情っ張りは。
褒美代わりにも〜〜〜〜ッと楽しませてやる。
・・・・・・ああ、その前に一応聞いとくが、勿論まだ話す気は無ェンだな?」
・・・・・・姫君にはいまだ応える気力は残っていなかった。 しかし拷問中のやり取りで、その反応が何を表すか
をドリストは既に了解していたのだろう。 構わずに言葉を続ける。
「――――――アルスター」
背後に控えている重臣の名を呼び何かの合図をする。 呼ばれた彼の方は、しかし仏頂面で、彼の主君に応え
た。
「・・・・・・あの、陛下・・・・・・」
「ん〜〜〜? どうした、とっとと連れてこねェか」
口ごもる彼に、主君が再度催促を行う。 しかしそれにもめげず、意を決してアルスターはドリストに忠諫を
行い始めた。
「・・・・・・陛下、やはりこのようなことはお止しになった方がよろしいかと存じます」
忠臣の反抗に、ドリストが彼に向き直る。
「―――アルスター。 テメェ、俺様に逆らう気か?
いいからとっとと連れてきやがれ」
主君のドスの効いた命令に半ば腰を退かせつつも、必死に踏みとどまって反論を行う。
「・・・・・・ノルガルドは確かに野心を秘めた虎狼の国。 しかし彼の国と言えど未だ無道な振る舞いをしたことは
ありません。 ここで我が国が他国の騎士を辱めたとなれば、その悪名は大陸全土に轟くでしょう。
ノルガルドからの恨みを買うのも得策ではありません。 陛下、どうか今一度お考え直しを・・・・・・」
その言葉を聞いた狂王は、脇に挟んでいた大鎌をクルッと回転させ、肩に担ぎ直す。
トン、トン、と大鎌で肩を叩きつつ、
「―――アルスター。 もう一度聞くが、テメェは俺様に逆らうッてンだな?
それならそれでもいいぜェ。 俺様が直々に連れてきて、お前もそのかばいたがってるお姫様と同じ目に会わ
せてやる」
アルスターの傍らのキャムデンがウヘェとして、「・・・男が責められる光景など見たくありませんな」と呟く。
アルスターは肩を落とし、
「・・・・・・分かりました。 直ちに連れて参ります」
諦めて部屋を退出した。 やはりここで拒んでも、結局君主を止められないと分かったからだろう。
フン、それで良いんだよ、とドリストは眺め送った後改めて姫君に向き直る。
見ると姫君の様子は、幾分かまだ疲労しているとは言っても少しは回復しているらしかった。 呼吸や体の律
動がやや落ち着いてきている。 しかし未だにドリスト達の方には顔を向けず、俯いて呼吸を整えていた。
「どーしたァ、もぅダウンかァ?
お楽しみの時間はまだまだこれからだぜェ?」
狂王の言葉に、姫が顔を上げる。 その瞳は相変わらず強い眼光を発し仇敵を睨んでいたが、同時にやや静か
なものにもなっていた。
その雰囲気のまま、彼女は狂王に問いかける。
「―――お前は何故このようなことをする。
本当に、このような辱めを行った我がノルガルドからの報復を恐れてはいないのか」
やはり静かな瞳だった。 ん〜〜、とドリストは変わらず肩をトン、トンとその大鎌で叩きながら、面白げに
見やって姫を真近に覗き込める位置まで移動する。
姫は体を腕に付いた鎖に預け、膝を突いていてその顔の位置は低い。 ドリストもまた膝を曲げ、中腰の姿勢
よりも深く体を沈めて姫と視線を合わせる。
子供が玩具を面白がるような目付きだった。 肩に大鎌を下げている、狂王と呼ばれるその男の無遠慮な視線
にも臆さず姫は気丈に睨み返す。
ドリストが告げる。
「――――――お嬢さん。 戦争ッてのは、待ったナシなんだ。
ドンパチやってる戦争相手に、『優しくして下さい』ッてな慈悲を乞うより、先に相手をぶっ潰した方が手っ
取り早いに決まってるだろうが、ん〜〜〜?」
――――――その考えには必ずしも賛成出来ない、とブランガーネは思う。 確かにそれはそうだが、しかし
だからといって買う必要も無い恨みを買い、自らリスクを増大させることもないはずだ。
それに何より――――――
「ノルガルドを愚弄するか。 それ程容易く潰せると思うな、道化。
それに何より、お前はわらわを敵に回して本当に後悔せぬのだな」
挑戦状のつもりで彼女はドリストを睨みすえて語気を叩きつける。
対するドリストは、
「ククククク。 嫌いじゃあないぜェ、そういうの。
いいぜ、受けて立ってやる。 次に戦場で会う時があれば楽しみにしてな」
そう言って本当に嬉しそうにニンマリ笑う。 人から殺意に近いものを向けられてなお喜ぶその様は常軌を逸
しており、あるいはこの男は通り名通り本当に狂っているのやも知れぬ、とブランガーネは僅かに気圧され後ず
さる。
ドリストはそこで興味を失ったようにすっくと立ち上がり、彼女に背を向けて歩き出す。
呟きつつ、
「―――だが、その前に―――」
先ほどまで居た辺り位に戻ると、ブランガーネの方をくるり、と振り返る。
「―――お楽しみの時間だ。
これに耐えられればの話だな、お姫さま」
その言葉を言い終えて残った静寂の中に、やがてコツ、コツ、という靴の音が響く。 部屋の外から近付いて
くるその音はハッ、ハッ、という息遣いらしき音が混じっている。 その音達は部屋入り口のドアの間近で止ま
り、そして靴音の主がギィッ、と音を立ててドアを開けた。
「―――連れて参りました」
アルスターの声が響く。 彼の左手には二本の手綱が握られており、それらはまだ部屋の外の通路の先の暗闇
に伸びている。 それらの先に繋がれているもの達が部屋の明かりの下に姿を現す。
・・・・・・黒っぽいシルエット。 闇の中からでも青白く光る眼。 大きく裂けた口は真紅く、牙が残酷に尖ってい
る。 四足で歩行している彼らは、自分達の本来の主を見つけ、狂喜して今にも飛びかかろうとするところをア
ルスターに必死に押さえられている。
――――――そこにいるのは、二頭のフェンリルだった。
「アルスター。 綱を離していいぜ」
・・・・・・はい、と最早諦めた風情で眉を落としたアルスターが、フェンリル達の首に繋がれている縄を解く。
解放された彼らは喜び勇んで主人であるドリストに飛びかかる。
子牛ほどの大きさもある彼らの突進を、空いている左手でいなし、じゃれつかせ、また頭を撫でつつドリスト
は姫君の方を向いた。
「どーだ。 可愛いだろう。 俺様の犬だ」
・・・姫君の方はと言えば、実の所彼女にはその狼達には面識が有った。 元より戦争の際に駆られるモンスター、
狂王の愛犬達も戦場に良く連れられている。 ・・・しかし、普段ならばフェンリルはおろかファイアドレイクやフ
ェニックスにも臆さぬ姫君だが、この時は勝手が違った。 今は体の自由を奪われた虜の身であり、武装も剥奪
されている。 その生臭い吐息に、より一層脅威を覚え、何をするつもりかとブランガーネは固唾を飲み込んだ。
ドリストはブランガーネに構わず、存分に愛狼達を可愛がっている。 程無くしてキリがついたのか、姫君の
方に再び向き直る。
「――――――さて。 覚悟は出来たか?」
「―――わらわを犬共の牙にかけさせる気か」
「いーや。 そんなことはしねェさ。
唯ホーンのちょっとコイツらにもお姫様を可愛がるのを手伝ってもらうだけだ」
今まで撫でていた狼の頭を、「行け」という言葉と共に一つ叩く。 とつい先ほどまでドリストにじゃれつい
ていたフェンリル達は、今度は姫へと目標を変えて猛然と突進した。
ガチャリと鎖を鳴らす身じろぎと共に、姫が眼をつぶって来襲に備える。 ・・・・・・と、しかし少し待っても予
期した衝撃も、身を裂く痛みもこない。 こわごわ瞳を少し開くと、
「―――ヒッ、」
彼女の間近に、巨大な黒い二つの毛玉があった。 どうやら途中で減速し、歩行に切り替えたらしい。 目の前
で彼女の肉体をスンスンと嗅いでいる。
必死で体を遠のかせようとするが彼女はやはり頭上の手枷に邪魔をされる。 その間に、もう一つの毛玉の方
は悠々と彼女の背後に回り、品定めをするように匂いを嗅ぐ。
「・・・・・・ッ、」
どうにも出来ずに、姫は唯体を固くしている。
やがて背後に回った一頭が、姫君の体の一部に狙いを定め、――――――その真っ赤な口を開け、
「―――ひゃうッ!?」
――――――姫君の足裏をベロン、と舐めた。
もう一方の前面の狼も攻勢を開始する。 腕が高く上げられて無防備な腋、および白い首筋に、鼻面を接触さ
せ、あるいはザラザラした舌で舐める。
「あは、いや、こら、何を、何をして・・・・・・ッ! やめろ、直ちに、やめなさ、いッ・・・・・・!!」
責められている部位をかばおうにも防ぐことすら出来ぬ。
かくして姫君は狂王ドリストの良く訓練された猟犬に、露出した肌を蹂躙され続けた。
「―――どうだ? いい気分だろう。
こんな歓待を受けたのはイスカリオの客としてはお前が初めてだ。
存分に楽しみな」
ドリストが喋っている間にも狼たちの責めは続いている。 一頭は首筋と腋、もう一頭は足裏に集中して。 間
断なく、容赦もなく姫君に快楽を与え続ける。
「・・・あ、はっ、お・・・前っ、犬共に、何をさせている・・・・・・ッ!!」
いささか今更だが当然の反応である。 キャムデンなど呆然としている。 ユーラも無邪気に手を叩いている。
(「わあ。 賢いのね、ガウキャップ、ルースカイウンド」) アルスターの肩はこれ以上落ちる余地などない。
そしてドリストはやはり余裕気に、また実に楽しそうに姫君に応えた。
「ん〜〜〜〜? 何をしているか、だと?
バカモノめッ、見て分からんのかァッ!!
ヤロー共、お嬢さんをもっと楽しませてやりなッ!!」
鞭を未だ持っていたら床を叩いていただろう。 ドリストの言葉に反応して、しかし二頭は責めをより繊細な
ものへと変える。
前方を責めていた一頭は舌の中央部ではなくより細い先端部で、今度は腋の方を集中して責める。 後ろの方
の一頭は、足裏のみへの責めから、ふくらはぎ、そして責めから逃れようとする膝裏に鼻先を突っ込むようにし
て舐め続ける。
「ぅぁッ・・・・・・! ふ、く、・・・・・・ぅ・・・・・・」
巧緻な狼達の責めに思わず姫君は逃れようと、肩を振り腋に付いた狼から少しでも距離を空けようとする。
だが手枷に制限された身ではそれも上手くはいかず、鼻先を腋から離されて不機嫌そうに鼻をスン、鳴らしたフ
ェンリルは何事も無かったかのように今度は姫の脇腹に照準を移す。 ザラリ、とまず味見をする程度に彼は一
嘗めし、
「ひゃうッ!?」
同時に、それに対して足の方に回っているもう一人のフェンリルが連携して、脚全体を舐めていた責めから舌
先で繊細に足裏を刺激する方法に責め方を変える。
「・・・っ・・・ひゃぅッ・・・・・・ぅぁッ・・・・・・は、・・・」
姫君の白く形の良い脚を狼が責める。 陶器の様に見えるその肌の上で彼の真紅い舌が一つ踊る度に、彼女の
脚は猫にいたぶられる獲物のように敏感に反応した。 ・・・・・・なお、そうとは言っても姫君も流石に戦場から戦
場へと疾駆する身、その足の裏は傍目に見える程柔らかくはない。 頻繁な行軍や旅にも耐えられるように固く
なった足の裏に、しかしそれでもフェンリルは苦にもせず思う様に鮮烈な快感を与え続ける。 彼らは明らかに
彼らの主である狂王に重密な訓練を受けていた。
その筋肉、腱、しわに沿ってフェンリルの舌は羽毛の様に、奉仕する従者の様に優しくすらある様で姫君の足
裏を愛撫してゆく。
「・・・・・・はっ・・・・・・もう、やめてッ・・・・・・」
彼女の口から懇願が漏れ始めるが、狼達は構わずその舌を間断無く動かし続ける。
かつて前方に付いていた、脇腹付近を舐めていた狼は今では首筋へと責める地点を移していた。 無論姫君は
拒んでいるのだがやはり上手くいかない。 肩と腕で首を守っても、その真傍に鼻先を近付けたフェンリルはそ
れをあっさり潜り抜けて舌を目的の箇所へと這入り込ませる。 ピチャ、ピチャと隙間に沿って彼の舌が動く。
彼女の肩と腕に阻まれたその刺激のか細さはむしろくすぐったさを誇示し、いっそ首筋を解放した方がマシでは
ないかと思わせるくらいであったが無論そういうわけにもいかない。
犬の熱い吐息が姫の首筋にかかる。 姫君は歯を食いしばってじっと耐えている。 目尻に涙をにじませている
のはくすぐったさに耐えているのか、それとも獣に肌を蹂躙されている屈辱からか。
狼の舌が踊る先は既に彼女のうなじに場所を変えている。 姫が意図的に防ぐことの出来ないその場所は、唯
姫の豊かな金の髪によってのみ護られていた。 彼は丁寧にそれをかきわけつつ、同じく繊細な舌使いで姫の首
筋をそっとなぞる。姫君はそれに唯じっと耐えていたが、やがて彼の舌が次第に下方へ移動し始めていることに
気付く。首筋、うなじ、背骨の脇を通って、肩甲骨にそう。
その先に有るものに思い当たった姫は、ギクリ、と身をすくませる。 だがそれでもどうにもしようがなく、
狼の舌は、姫の感度とは不似合いに無防備な、枷にこじ開けられているその腋をベロン、と舐め、
「・・・はぅっ・・・・・・!」
今まで微細な刺激に慣らされていたところに容赦の無い刺激を受けてビクン、と体を震わせた矢先、――――
――足側に付いていたフェンリルが舌の側面を使ってザラリ、と足裏を舐めた。
「・・・・・・いゃあッ・・・・・・!」
耐え切れなくなったのか姫君が思わずその足を激しく動かす。 ドン、と何かが衝突する音と共に、ギャン、
と小さな鳴き声。 我に返った姫君が足の方向を振り向くと、そちらの方に付いていたフェンリルが姫君から一
歩離れて、首をブルブル振っていた。 どうやら姫君の脚の動きに巻き込まれて鼻の辺りを打ったらしい。
「あ・・・・・・」
やや呆然としたようにブランガーネが呟く。 元々危害を加えられていたのは彼女の方であり、その論理でゆ
けば彼女が罪悪感を抱くことなど何ら無いはずだが、元々彼女は捕らわれの身。 反撃を試みるに何ら問題は無
いとしても、とりあえず今の所彼らが彼女を傷つけてはいない内から自分の方が狼達を傷つけてしまえば、彼ら
の主人であるドリストがどう動くか分からなかった。
ややおずおずと彼女はドリストに眼を向ける。
その様を眺めていた狂王はまだしばらく、首を振っているルースカイウンドを見ていたが、やがてゆっくりと
口を開いた。
「キャムデン」
唐突に名を呼ばれ、背後に控えていた彼は、途端背筋を伸ばして主君に応えた。
「は・・・・・・はッ!」
「ウイークネスをこの女にかけろ」
「は、はッ? ウイークネスでございますか? い、いえ、承知しましたッ!」
慌てて魔法使いが前に出る。 突飛と言えば確かに突飛な命令だった。 まあ姫の膂力を弱める目的ならそうで
もないかも知れない。
キャムデンが気合を入れるように一歩足を前に進め、呪文の詠唱を始める。 姫は唯身を固くし、出来る限り
集中して魔法に抵抗しようとしている。 何にせよドリストのやろうとしていることが姫にとってろくでもない
ことだというのが分かっているのだろう。
「ウイークネスッ!」
詠唱が終わり、力の有る声が部屋に響き渡る。 と同時に姫君の体に負荷がかかる。 どうやら姫君にとっては
悪いことに、呪文は無事に上手くいってしまったようだった。
ドリストが満足気に目を細める。
「いい仕事だ。 ・・・・・・さて」
下がっていた位置からドリストが一歩前に出る。 と同時にキャムデンが急いで元の場所に戻る。 ドリストは
彼の愛狼を見やった。
「ルースカイウンド。 もう平気か」
もう既にダメージから回復していた片一方の狼が、ウォン、と元気に一声鳴く。
「良い声だ。
それじゃあテメェらはお姫さまの両脇に付くんだ。 今度は蹴られないように気を付けな」
声と共に指示通りに狼達が動く。 最後の狂王の言葉は命令というより半ば以上皮肉なのだろう。 言葉を聞い
た姫君もキッとドリストを少し睨んだが、狼達はその言いつけにも忠実に従った。
回りこんできた狼達の鼻先が、姫の両脇の真近にまで迫る。 と、その時になってようやく姫君は気が付いた。
先程のウイークネスの効果は、対象の筋力を弱めると共に――――――防御力も、また下げる。
「・・・・・・い、いやッ、・・・やめろッ・・・・・・!」
身を振って狼達から逃れようと抵抗するが、元より拘束された身、逃れ切れるはずも無い。 獲物を襲う位置
と態勢に付き終えた所で、彼らの主から命令が下される。
「―――やれ」
姫の右腋に付いたフェンリルがスピスピ、と鼻を鳴らす。 唯でさえ敏感な彼女の腋肌は弱化魔法によりさら
に与えられる刺激に無防備になっており、狼の鼻息程度でさえ鮮烈にこそばゆさを彼女に誘発させる。 思わず
右腋から狼を遠ざけようと、彼女は身をひねるが今度は代わりに左腋が真傍で構えていたフェンリルの鼻先に当
たった。
少し湿った感触に、彼女が僅かに身じろぎするのも束の間、避けようとする彼女に鼻先を追走させていた右側
のフェンリルが、ブランガーネの目一杯開けられている腋をベロン、と舐めた。
「―――ひゃうッ!」
姫君の肌に電流が走る。 散々悶えさせられた先程より更に倍増している刺激にも構わず、フェンリルは尚も
攻勢を続ける。
「・・・ひゃ、あ、う、あ、やめ、やめてッ・・・・・・!」
もう声を抑えることすら出来ずに姫君は悶えるが、狼は責めるその舌を休めない。
その様をただ眺めている狂王は何も言葉をかけずにニンマリと笑う。
「・・・う、あ・・・・・・ッ」
苦しむように姫君が身をよじる。 唯でさえもはや限界に達しそうなところに、――――――左腋についてい
るフェンリルも彼女の肌の匂いを嗅ぎ出し、行動を開始しようとする素振りを見せた。
「・・・・・・・・・・・・!」
確実に駄目押しとなる追撃の予感に、姫君は涙混じりに必死で狼を振り払おうとする。 が、それも空し
く、・・・・・・左側の狼もついに彼女への攻勢を開始した。
時には舌先で繊細に、時には舌を大きく使って大振りに、ザラザラした彼らの舌は敏感過ぎる姫君の肌にビリ
ッとした刺激を脳まで突き抜けるほどに与え続ける。 それからどうにか逃れたくとも、手首にはめられた頭上
の枷は、彼女を逃れようも、防ぎようも無くさせていた。
悪魔じみた絶技達に彼女の堰がとうとう破れる。
「あはッ・・・あ、あは、は・・・・・・あはははははは!」
それはくすぐったさによる笑いというより、むしろ逃れようの無い快楽から逃れようとしての代償行為かも知
れなかった。 そこまで追い込まれている姫の状態にも関わらず、狼達はその舌で無慈悲に姫君を責めたてる。
大胆さと繊細さを合わせて使うその拷問は、なおかつ二人の狼同士の連携をもって運用されていた。 どうやら
彼らは別の片方が責める姫の反応を以って、どのように彼女を責めるかを適宜に決めているらしい。
片方が舌先を使って責め、姫を焦らすことを始めればもう一方もそんな時に大振りに攻めて姫に快楽を解放し
てやるような無粋なマネはせず、同調して繊細な責めに変える。 やがて姫がより鮮烈になっている感触に限界
に近付けば、片一方の狼のみがようやく制限を解いて大きく舌を動かし、姫に思い切り刺激を貪らせる。 彼女
が夢中になり、その苦悶に余念が無くなったところで新たに再びもう片側の狼が舌を大きく動かし始め、なお一
層のダメ押しを図る。
グイグイとフェンリルの一人が鼻面で強く姫君の腕を押し上げる。 既に充分姫の腋はこじ開けられているが、
それでもまだ不満らしい。 そのまま彼はベロン、と彼女の腋を嘗める、と、彼女は狼の熱い吐息にも同時に灼
かれることになった。 そのままフェンリルは姫の腋を貪り続ける。
「・・・ひっく・・・・・・おねが、い、・・・やめて・・・・・・」
姫の言葉には流石に懇願が混じり始めているが、やはりフェンリル達は責めることを止めない。
その様をずっと眺めていたドリストが肩をトン、と大鎌の柄で叩きつつ言った。
「どーしたァ、お姫様。
もう降参かァ?」
姫君は俯いたまま、笑声を交えてあえぎながら何も反応しない。 ひょっとすればドリストの言葉自体が聞こ
えていなかったのかもしれないが、姫君の挙動にはえずきや痙攣が少し混じり始めていた。 恐らく反応する余
裕が無いのだろう。
フン、と鼻を鳴らしてドリストは姫君に歩み寄った。と共に、フェンリル達も、舌を使うことはたまにに留め
て主に鼻を鳴らして肌を嗅ぐ程度の小休止に入る。
狂王は姫の間近まで来ると、姫の表情の高さに合わせて中腰でしゃがみこんだ。
「まだ言う気にはならねェか?
吐いちまえよ。 元々お前が持っていても価値は無ェモンだぜェ?」
その言葉には応え、ブランガーネはドリストを睨みつける。 ・・・・・・その距離ならば、彼女はドリストに唾を
吐きかけること位は出来たかも知れない。 だが、狂王は未だ彼女を傷つけてはいなかった。 狂王自身が彼女に
触れることすらしていなかった。 礼儀というにはややきわどいその線引きを守ったのか、彼女はただ眼光を向
けるだけに留めた。 ギン、とした、息も絶え絶えになっている今でさえ、澄んだ、眼。
それでドリストは、興味をもう失ったかのように鼻を再びフン、と鳴らし、立ち上がって姫から離れる。
「ガウキャップ。 ルースカイウンド」
後ろを向いたまま主が告げる。 狼達は姫を責める手を止めて狂王へと顔を向けた。
ドリストが振り向く。 その顔にはやはりニヤリ、とした笑みが浮かんでいる。
「遠慮は要らねェそうだ。
その通りにたっぷり可愛がってやりな」
ガウキャップが応じてウォン、と姫の真近で吠える。 ルースカイウンドはウウウウ、と獲物へ飛びかかる前
の逸る気持ちを抑えるように低く唸った後、片割れに続いてウォウ、と吠えた。
姫はどこか諦めの混じった気持ちでそれを聞く。
その視界を次第に占めてゆくのはやはり、神々をも呑みこむとされる巨狼の真赤く開かれた顎門だった。
今日はここまでー
これでも本文が長すぎます制限受けたから次は一行46文字位かな
拙腕失礼ー
ソフィアの日記
おかしい、何故2人部屋じゃないのだろう
陛下御自ら率いられる本隊に、一翼として加わってから数節
体よく山猿を追い出し、首尾よくフィロを引き入れて両翼を務め、敵国拠点を奪取し
陛下は個室に入られるのだから、当然我々は2人部屋になるものと、高を括っていたのだが
思わぬところにとんだ見落としがあった
クエスト帰還騎士の群。彼らは必ず陛下の居城に帰還する。本陣がどこへ動こうとも
必然的に、本陣拠点は毎節のようにクエスト騎士でいっぱいになり、相部屋を必要とする
我々のような若手の有望な騎士は、大き目の部屋を割り当てられる代わりに
クエスト騎士の皺寄せも引き受ける、というわけである
昔のように小さな部屋で、1つのベッドに2人で寄り添うような暮らしであれば
邪魔が入る余地も無かったのだろうが、こればかりは仕方がない
仕方がないのだが
何故よりによって色黒なのだろう
今、風呂場の方から聞こえてきてるのは、一番風呂を使っている色黒の鼻歌である
「バーリンちゃんたらご機嫌ね。何かいいことあったのかしら」
大体の察しはつく。どうせ優男関連だろう
色黒が山猿に振られた後、優男は相当うまいことやったらしい
クエスト出発はバラバラだったのに、どういうわけか2人揃って帰還して来た
結構なことだ。お前ら2人で相部屋してろ。そうすれば邪魔にならないのに
「いやあ、いい湯だったよ」上機嫌の色黒が出て来た
パンツ一丁、首に手拭引っ掛けて
全くこれだから蛮族は。女性らしい慎みというものがまるで無い
弓使いのくせに、邪魔にしかならないものをこれ見よがしに見せびらかしやがって
そんなことでレオニアの騎士が務まるのか。そんなだからいつまでもクエスト要員なのだ
「空いたから入りなよ、2人とも」
そ、それは2人一緒に入れということですか?ということですね?
てっきり色黒のせいで今日も一緒に入れないと思ってたけど
色黒公認で入っていいってことですね?それじゃお言葉に甘えて
「ソフィアちゃん、先に入ってて」
解せぬ
何故私はまた1人で湯に浸かっているのだろう
いや、答えは明白である。一緒に入っていいわけがない
「2人とも」とは「2人ともなんで入ろうとしないの?どっちでもいいから入ったら?」
ぐらいの意味だろう。それ以上の他意は無いのだ。馬鹿か私は
全く、とんだ早とちりのぬか喜びだ。・・・考えていても仕方がない。さっさと出よう
と、湯船の縁に手を掛けた矢先、ガラス戸が開いて、フィロが入って来た
・・・幸いなことに、逆上せたせいで幻覚を見てるのではなさそうだ
そうだ、フィロは「先に入ってて」と言ったのだ。何故気が付かなかったのか
「後から行くから」という意味に決まっているではないか。馬鹿だ私は
「お待たせw」そう言ってにっこり笑うフィロの笑顔は、太陽よりも眩かった
まるで夢のような心地である。フィロが私の全身を、柔らかく泡立てている
極上のスポンジで、決して力を入れず、優しく、柔らかく、でも隅々まで丹念に
「バーリンちゃんね、ガロンくんと付き合うことにしたんですって」
腕も片方ずつ抱えて、腋の下から指先まで、丁寧に
「ほんとはキルーフくんのことが、ずっと好きだったんだけど」
抱えられた二の腕に、胸のふくらみが押し付けられて
「キルーフくんが陛下のこと想ってるの、すっと前から知ってたし」
程好い弾力と、柔らかな温かさが伝わる。それだけで胸中に幸せが満ちる
「ガロンくんもバーリンちゃんのことがずっと好きだったって」
ああ、何節ぶりだろう。やっぱり少し大きくなってる。間違いなく。こいつめ
「ねえソフィアちゃん、聞いてる?」夢見心地の私の耳を、フィロの声が擽る
はいはい聞いてます。ちゃんと聞いてますよ。聞き惚れるくらいに
「ソフィアちゃんは、このこと知ってたの?」
うーん、そうねえ、なんとなーく、知ってたような。はっきり思い出せないけど
フィロが、私の胸を弄っている
いや、スポンジで泡立てているのだ。あくまで洗っているだけだ
でも、私の上体を横から抱きかかえるようにして
私の二の腕は、フィロの胸の谷間に柔らかく挟み込まれ
手首のあたりには、柔らかな茂みが押し付けられている
そんな体勢で、胸全体を柔らかく弄られながら、耳元で囁かれると
瞼が重くなって、そのまま天上まで登り詰めてしまいそうな、そんな心地になる
「陛下とキルーフくんのこと、やっと素直に応援できるようになったんですって」
天上の音楽とは、こんな心地だろうか。戻って来れなくなりそう・・・
「そのことが、すごく嬉しい、って」
撫で回していたスポンジが、お腹を通り過ぎて行く
「バーリンちゃん、とっても健気だと思うの。だから、ね」
自然と脚が開いてしまう
「応援してあげようと思うの。バーリンちゃん達のことも」
しゅくしゅく、しゅくしゅく、泡が立つ
「ソフィアちゃんも、そう思う?」
ああ・・・
「……ソフィアちゃん?」しゅくしゅく、しゅくしゅく
・・・ダメだ、瞼が開かない・・・頭が・・・白く・・・
「起きた?」
気が付いたらベッドの上で、隣にフィロが居た。既に灯りは落ちている
「逆上せちゃったみたいなの。そのまま寝てて。ごめんね、私のせいで」
そう言って、私の身体を撫で回す。今までずっとそうしていたようだ
どうやら同じベッドの、同じタオルの中で、お互い裸のままであるらしかった
えーと、身体がジンジンして、頭が回らないけど、これはまずいんじゃないだろうか
首だけ回して隣のベッドを見ると、もぬけの殻だった。色黒はどこへ・・・?
「バーリンちゃんはねー……フフっw」いたずらっぽく笑う
・・・まさか・・・! いかん。それはさすがにいかん。いくらなんでも本陣で
慌てて起きようとするが、頭を持ち上げただけで貧血に襲われた
その上「ダメよ、ちゃんと寝てなきゃ」フィロが押さえる。こ、こいつ
「もう、応援するって言ったじゃない」言ってない。承諾してない。記憶に無いぞ
・・・言ったっけ?頷いた?いやそれはその、、、 は、謀られた・・・
「うふふ、2人っきりだよ、ソフィアちゃんw」
ああ、そうか。そういうことになるんだっけ
まんまと嵌められたなあ。2人きりになれたら、今度こそ、
なんだっけ?
まあ、いいや
私は、フィロの温もりを体中に感じながら
逆上せて介抱される者らしく、目を閉じて身を任せることにした
「ククククク、楽しませてくれるじゃねェか。
ここまで持つとは正直思ってなかったぜェ」
その通りいかにも楽しそうにドリストが述べる。
―――フェンリルは既に下げられた。 随分と嬲りものにされたあとの姫君の様子はと言えば、時間は狼達の
攻勢が彼らの主に止められてから少し経っており姫君の呼吸はその時と比べ少しだけ安定している。 しかしそ
れでも彼女はなお酸素を激しく求めており、顔と体が涙と汗、狼の唾液にまみれたその姿でしかしそんな形振り
にも構えず必死で体を脈動させている。
「ユーラ。 体を拭いてやりな。
ついでに暇ならヒールでもかけてやれ」
「あ、はいっ」
ドリストからの命令に、少女は急いでブランガーネの元に駆けてゆく。 手持ちに準備良く手拭いを用意して
いた彼女は、ブランガーネの前にかがみ込んで顔、腕、腋、首を丁寧に拭いてゆくと共に回復魔法の詠唱を始め
る。
ドリストがそれを眺めつつ、腰に下げた革袋を手に取り、姫の前に投げてよこす。
「飲るか?
喉も渇いてるだろう」
ヒールをかけ終わったユーラが姫の前の水筒を手に取り、姫に差し出した。 どうぞ、と栓を開けるが、相手
は反応すら見せない。
「途中でぶっ倒れでもしたら俺様が困るからなァ。 ハァーハッハァ!」
自身は二本目の水筒を手にしてグビリ、と飲む。 その飲みっぷりからして何かの酒らしい。
ユーラが重ねて「どうぞ」、と差し出す。 ようやく姫が口をつける。 ユーラが袋を傾ける。
それはイスカリオ産の麦酒で、ドリスト仕様のかなり強いものであったが姫も北国の育ちだけありさほど気に
せず嚥下してゆく。 少しずつ、細やかにユーラは袋を傾けてゆき、やがて姫君が口を離して「もういい」と言
った。
ドリストも自分の水筒の栓を閉めつつ呟く。
「―――しかし遅ェなアルスターの野郎。
どれだけ手間取ってやがるンだ」
「―――はて陛下。 あのノロマめは何をしているのでしょう?
何をお命じになられたのですか?」
キャムデンがそう質問した時、丁度靴音と共にギィ、と扉を開け、フェンリル二人を元の場所へ帰しに行って
いたアルスターが戻ってきた。
「――――――連れて参りました」
彼が部屋に入ると共に、彼の背後にいた者も姿を現す。
――――――それは一人のマンイーターだった。
姫君には分かった。すぐに分かった。そのシュルシュルと蠢くマンイーターの触手を見ただけで、今までの経
験からドリストが何をやりたいのか明確に分かった。 それ故ヒ、と軽く悲鳴を漏らす。
ドリストはさほど不機嫌でもなくアルスターを迎える。
「遅かったじゃねェか。
さァ、そいつをこっちに渡しな」
「はい・・・・・・」
変わらず眉尻の下がった顔でアルスターはドリストにマンイーターの統魔を受け渡す。 今度は最早諦めたの
だろう。
引継ぎを終え、ドリストは姫君に改めて向かい直った。
「―――さて。 何をされるか分かってンだろうな?」
背後に充分知られた脅威が控えている分だけ、ドリストの唯でさえドスの効いた声にも迫力が増す。
先程散々味あわされた恐怖を前に、姫はやや蒼くなり、ズッ、と尻を擦って後退る。
ドリストはそのままの調子で続ける。
「―――なら、お前が何をするのかも分かってるだろう?」
彼が望む情報を迫る声。
拷問か、屈服かの二択に、ややもした後、姫は瞳を閉じ、
「―――好きにするが良い」
強くまた愚かしくも、吐いて楽になることを是としなかった。
クク、とドリストが笑う。 彼の内心はどうあれ、
「それじゃ、行ってこい」
そう命じて、彼はマンイーターを姫へとけしかけた。
マンイーターの二本の触手がじわり、と地面を這いずって姫に近寄る。 姫も出来る限り後退ってそれから離
れようとする。
まずマンイーターの触手が到達したのは姫君の脇腹だった。 さわ、と触診するように、味見をするように
はだけたすそからあくまで軽く肌を撫でる。 絹のようにしなやかで滑らかな肌触り。
「ひゃう!」
姫君が思わず小さく叫び、しかし触手達は気にもせずさわりと姫の体を順に移動してゆく。服を伝って、首筋、
顔、腋。 また、太股、膝裏、ふくらはぎ、足裏。 これまでされてきた責め程くすぐったくはないがどこか品定
めをするようなその触り方に、姫はどことなく嫌らしさを覚えて身をよじる。
やがて触手達は狙いを定めたようだった。 つい、と姫の体に沿って蔓の茎や先端を移動させ、その焦点を足
裏に絞る。
現在足を前に投げ出す形で姫は座り込んでいる。 その表面が晒されている足裏を、巨大花の触手は蔓先と茎
部を使ってさわさわと刺激してゆく。
彼花の蔓である触手は、植物だけあってその表面は滑らかなようでいて、かつ微細にささくれがある。 その
さわさわとした刺激に加え、先程の鞭もまた生きているような動きを見せたが今度の凶器は正真正銘生きている。
ドリストの鞭が肌の上を走り回る毛玉と言うなら、今責めている彼花、マンイーターが見せる触手の動きは身
をくねらせ、這いずり回る蛇だった。
くすぐったさにビクン、と反応した姫が、たまらず足裏を地面に伏せる。
しばらくマンイーターの触手達は名残惜しそうに足裏周りを逡巡していたが、やがて吹っ切りその蔓先はブラ
ンガーネの白く艶めかしい脚を這い伝って行く。
「・・・・・・ふぁッ・・・・・・!」
彼花が獲物に定めたのは、今度は太もものようだった。触手は脚部を上昇することをそこで止め、胴体を軽く
巻き付けつつ茎部の這いずる動きで姫君に刺激を与える。
時を刻む長い振り子のような緩やかな動き。 その触手の先端は鞭の穂、悪魔の尻尾のように微妙に膨らんで
おり、その部分は特に強く姫の太股の奥の部分をすりこする。 蔓全体に及ぶ微小な突起が姫を苛む。
「・・・・・・・・・・・・!!」
姫の肌の上でたわんでいた触手が一気に跳ねた。 弾けるような刺激を一気に姫に与えると共に、同時に触手
全体の動きが激しいものへと変わる。 その様はイカやタコのようなそれを思わせた。 触手がうねり、くねり、
姫の太股に絡みつく。
どこか卑猥でさえあるその動きに悶え、必死に耐えているその時、あることに気付いた姫がざっと血の気を顔
から引かせた。 触手の僅かに膨らんでいる先端。 その部分が、悪戯めいて太股のより奥の部分へと進む動きを
見せている。
「・・・いや、やめて・・・・・・!」
姫の制止にも触手は止まる素振りを見せない。 その先端が姫の短いズボンの上から脚を愛しむようにさする。
やがてとうとう、その部分はズボンの隙間から姫の股間部へと這入ってゆき――――――
「おっと。 そこまでだ、マンダバンディカ」
現在の主である、ドリストの命令と共に止まった。 同時に姫君の脚を這い登った軌跡そのまま、逆回しにし
て後退してゆく。
「悪いな。 ソイツは元々ヴィクトリアのでな、性格も似てきてやがるンだ」
さほど気にした風でも無さそうにドリストが呟く。 借りてきたモンスター故に、統魔することが比較的難し
いということもあるのだろう。
一応ドリストに止めてもらったブランガーネが彼をにらんで告げる。
「礼は言わぬぞ。
元々そなたの不始末だ」
それ以前にドリストは姫を現在加虐している身のはずだが、これは姫が慣れてきたというより一線を意図して
越えないドリストの配慮(?)に反応してのものかもしれない。
狂王はそれに関らずニィ、と笑う。
「ん〜〜、構わねェさ。
どの道これからタップリ泣いてもらうんだしな」
彼がパチリ、と指を鳴らす。 と、それを合図に少し退がっていたマンイーターが、再び姫に向かって触手を
進めた。
姫が息を詰めて耐えようとする。
・・・・・・まず触手が達したのは姫の首筋だった。 さわり、さわりと味わうように頬辺りにかけて撫でる。
加えて左の触手が姫の右大腿に達する。 先ほど良く可愛がった後味を楽しむようにさわさわ包み込むように
触れる。
ブランガーネが先程の恐怖や嫌悪感を思い出したか、呻き声と共に少し後退る。
それにも構わず足に付いた触手は愛撫を始めた。
締めつけるのではなく、網のように軽く姫君の脚をさする。 大腿全体にはり巡らせてまんべんなく。ただし
内腿、それも奥部には触れないように気を付けているようで、その辺りドリストの命令に効果が出ているのだと
思われる。 幾重にも脚を取りかこんだ触手が互い違いに回転するかのようにうねって肌を刺激する。 まるで羽
毛のように軽く。
姫君はその刺激にしばらく耐えていたが、やがて触手はしかし自ら姫の拘束を解いてゆく。 恐らく最初から
味見程度のつもりだったのだろう、縛めを解くと同時にまた自らも自由になった触手は、そうしてまた姫君の体
を伝って今度は腋へと移動した。
姫君の体がくゆる。 今なお右の触手の首筋への責めも続いており、左右の触手が上半身に集中していること
になる。 二つのくすぐられる距離はより近くなり、離れていた先程とは別の相乗効果を姫に与えている。
「く、・・・・・・はっ・・・・・・」
悶えつつ、首を横に振ろうとも軟体の触手は姫に絡み付いて離れない。 むしろ絡みつく度合はますます上が
り、接点から生まれるくすぐったさもより深みにはまり込んだ状態になる。
「いゃっ・・・・・・!」
拒んで外そうと姫がもがくが、やはり触手は外れない。 構わず彼らは姫に加虐を加え続けてゆく。
右の触手が姫の耳元を掠める。 微細なささくれがもたらす、シャリ、とした耳触り。 その先端がピチ、とま
るで魚の尾のように跳ねて姫に可愛く悲鳴を上げさせた。 彼は渦を巻くようにうねり、またその状態からほど
き、あるいは複雑に絡み合ってその動きの全てで姫に刺激を与えてゆく。 まるで姫と懇意であるかのように狎
れた動きで大きく姫の首に自身を伸ばし、遠慮もなく姫の白磁の肌を蹂躙し続けている。
片や左の触手はやはり腋付近を責めていた。 蔓の先端付近で何度か巻いてばねを作り、その側面で姫の肌を
擦っている。 そのばね状になった部分自体が伸縮し、揺れ動き、また新たに巻き数を増やしたりほどいたりす
ることで回転し、姫を苛んでゆくと同時にその先端部に繋がる胴体部がうねることで先端部を絶妙にコントロー
ルして前後左右に微少に揺らす。 そしてその胴体部自体でも、それは姫の脇腹に擦過を与えていた。 先端部を
揺り動かすその動きでそのまま彼女の肌を擦る。
「は、・・・・・・あ、・・・・・・あ・・・・・・」
巨大花の魔技に姫が悶える。 限界といえばとうの昔にもう通過しており、笑声を上げていないのは単にくす
ぐったさの質が違うからに過ぎなかった。 ――――――「ひゃう」、と触手の先端部で腋を強く擦られて声を
上げ、彼女の思考が一瞬途切れる。 ―――そもそも、この巨大花があの魔女のモンスターだというのも頷ける。
確かに性悪な所がそっくりだ。 そう告げられてからというもの、あのマンイーターの触手をくねらせる手がど
うにもとんがり帽子の魔女が高笑いをしている様を連想させるのが不思議だった。
―――と、彼女はそこでいったんとりとめの無い思考を止める。 自分の体が、どこか異変を起こしているこ
とに気付いた。
――――――これは、とその症状に思い当たって、いささか茫洋としていた意識をハッと覚醒させる。
触手が触れる度、ピリピリとした電気の流れるような刺激が加わる。 腕や足を試しに動かそうとしても同じ
感触が返ってきて、なおかつ動きや感度も鈍い。
――――――そう、マンイーターの触手は、高い毒性でもって獲物の体を麻痺させる。
「・・・・・・ゃッ、・・・・・・・・・・・・ぃゃっ・・・・・・・・・・・・!」
そう呂律もあまり回らなくなっている声を上げて、体を振って必死で抵抗するが逃れられるはずも無い。
ドリストが面白そうに言葉を掛けた。
「ん〜〜〜〜、毒が効いてきたようだな。
じゃじゃ馬娘もちょっとは大人しくなるッてかァ?」
ハァーハッハァ、と高笑う。 いつもなら姫はそのような態度をされれば反撃の言葉を叩きつけるところだが、
麻痺とマンイーターに責めたてられているのとでそれも出来ない。
ドリストが調子に乗ったまま言葉を続ける。
「何か言いたいことが有るなら今のうちに言っておいた方がいいぜェ?
何せこれから更に何言ってるか分かんなくなっちまうンだからなァ。
トイレはもう済ませたかァ?」
ク〜クック、と彼がいつもの調子で笑う。
彼の言葉はレディに対して臆面もないものであったが、要するにやはり「吐くなら今の内だ」、と選択を与え
ているのだろう。
姫はベ、と唾を地に吐き、いつものように拒絶した。
んーんー、と、ドリストもまたいつも通り面白そうに眺めている。
――――――彼らのそんなやりとりが交わされている間にも、マンイーターの姫を責める手は止まらない。
触手の先は首筋に、その胴は今度は姫の腋に。 左右共に同じ場所を責め、シンメトリーに、しかし微妙に動
きを変えて刺激を与える。 姫の体は痺れが始まっており、どれほど首を責められようともう阻害することさえ
出来ない。 そんな姫を嬲るように触手が姫の体をくすぐり続ける。
姫の体は本来痺れによって触覚が鈍り、むしろ触られる度にピリピリとした痛みが走り、それはくすぐったさ
や快楽といったものではないはずである。 実際触手が姫の体の上を滑る度に姫は軽い痛みに身もだえする。 し
かし、自分の毒の専門家であるマンイーターには自分が絡めた獲物の扱い方が分かっているのか、それともその
技を仕込んだマスターの手腕がよほど優秀だったのか、彼花はさほど獲物の状態を苦にもせず軽くさすり、刺し、
こすり、時にはきつく刺激を与えることで明らかに彼女に快楽を与えている。
右の触手がしゃらり、と姫の右肩を撫でる。 それだけで今の姫君には耐え難い苦悶だった。 そのまま触手は
肩から姫の腕にかけて、ぐるぐる何重にも巻きついてゆき、何らかの振動やそれ自体が動くことによって姫に擦
過が与えられると彼女は酩酊状態であるかのように甘い呂律の回らぬ声で高く鳴いた。
右腋を通った左の触手が後ろから姫の首筋を悪戯っ気に撫でた。 懸命に耐えると共に、一つ触手が擦れる度
に痺れに苛まれる姫の表情はどこか自身にしなだれかかる触手を受け入れるものになっている。 麻痺によって
抵抗する余力が無くなっているのかも知れない。 そのまま触手は首筋を掠めつつ、袖の無い姫のシャツの、開
かれた腋下の部分から、もぞもぞシャツの中へと這入ってゆく。
「あ・・・・・・? くぁ、ひゃん!」
無遠慮な侵入者に、しかしどうのしようもなく姫が悶える。 触手が現在擦っているのは、姫の体右側面――
―腋下―――肋骨―――脇腹。 その最下部まで到達した後は、折り返してそのまま再び脇腹を先端部で這い回
る。
「あ―――ひゃ、らめ・・・・・・!」
抵抗するように身をくゆらせる。 姫の左首筋の右触手が、まるでたしなめるように首元を掻いた。 姫が吐息
を漏らすと共にどこか陶然としている様に見えなくもない表情を浮かべる。
姫の腋下で触手がモゾモゾと動き出す。
「・・・・・・・・・・・・!」
もはや抗せず、じっと触手の与える快楽に耐える姫に、彼らは遠慮なく姫の体を貪り続ける。
右の触手はもう腕の拘束を外し、姫の左腋下を通って首を一巻き、二巻きした後にくるくる、と肩付近で蛇の
ように這い動く。
左の触手はそのまま姫の服下をモゾモゾ責める。 彼女の乳房には決して触れず、さりとて姫の体の左側面を
大きく使って蛇腹を形成し、触手を引き上げることで蛇腹を一つ減らしては触手の胴部全てを使って姫の肌を責
め上げ、また先端部が姫の脇腹を這い回ってはやはりそれに連動した胴部が全体に渡って刺激を与える。
――――――それは、姫の受けている感覚において、正に快楽の地獄だった。 本来姫君はそれに耐えられる
だけの意志の強さを持っている。 しかし先述の通り、彼女の体の麻痺がそれすら奪っているのだろう、唯でさ
え耐えるのが至難のその苦悶に、姫君は無抵抗にさえさせられてしまっている。 今の彼女において、撫ぜられ
ることは喜悦であり、擦られることは発情であり、締められることは服従であり、肌の上を這い回るそれは堕天
使の使いの長虫だった。 もはやなすがままに肌を触手達に貪らせている。
――――――と、その最中、ドリストが口を開いた。
「――――――いいぜ。 マンダバンディカ。
本格的にお姫様を楽しませてやれ」
――――――彼は何を言っているのだろう、と姫は良く回らない頭で考える。 これ以上なんて有るわけがな
い。 だって今でも限界だ。
これ以上されたら狂ってしまうか死んでしまう―――と認識しているが故に、姫の思考はその「それ以上」を
認識出来ない。 しかしそんな姫を他所にマンイーターは自身の巨大な花を大きく開く。 ・・・・・・その彼花の様子
を見ていた姫のとろんとした眼に、次第に絶望の色が差し始めた。
――――――その巨大花の中心、花弁の中から、先端の膨らんだ二本の巨大な触手がニュルニュルと伸び出す。
彼花のおしべだった。
姫の目の前の巨大花からそのおしべの触手が良くしないつつ徐々に姫へと距離を縮めてゆく。 姫はそれを最
早抵抗することも出来ずに見つめている。
現在なおも姫の上半身は蔓の二本の触手が責めている。 おしべの触手は空いている所を、ということなのか、
二本ともそれぞれ姫君の脚へと向かっている。
姫の体の麻痺は下半身にまで及んでおり、彼女の膝からは力が抜けている。 立たせてはいられないそれを、
姫は根性で最後の力を振り絞って自身の望む方向へ倒し、二本の脚を平行に横にすることであられもない格好に
なることを避けていた。 その白く艶めかしい脚に触手が近付く。 最初に触れたのは、平衡になっている脚の内
の上のもの、その左脚だった。 うにょん、と、やはりタコやイカを思わせる動きで肌を撫ぜる。
「・・・・・・・・・・・・!」
冷たくニュルンとした感触。 普段ならさほどくすぐったさを招くことのないであろうその感触は、体が麻痺
しているこの状況下において蔓とはまた異質の触感を醸しだす。 次いで巨大花の右側のおしべに続いて左側の
おしべも脚への接触を開始した。 右脚の太ももを撫でる。
「・・・・・・、――――――!?」
―――悶えかけた姫の、突然反応がビクン、と変わる。 明らかに異質な触感を受けたように見える。
マンイーターが何をしたのかは謎だった。 あるいはおしべ越しに今度は媚薬性の毒でも流し込んだか。
「―――ひや、ちょっ・・・・・・!」
突然与えられる刺激が増大し、危機感を覚えた姫がなけなしの余力を振るって抵抗する。
触手達は一瞬考えるように逡巡した後、まず右の蔓が動いて姫君の左腋をなだめるようにサリ、と掻く。 や
はり蔓の方から来る刺激も増大していることを確認して一層暴れる姫君に対し、今度は左の蔓が姫君の服の下か
ら出、顎下を通って姫の左耳後ろをシャリ、と撫でた。
ビクン、とした再度の姫の反応。 共にどこか恍惚とした表情を浮かべる。 反撃する力もそれで尽きたのかそ
れ以後大人しくなった姫君に対し、左触手、右触手共に拘束を解き、改めて触手達は姫の食事にかかった。
蔓の右触手はまず左腋。 胴体を使って姫の肌をぐいぐい責め、結果自然にチロチロ動く蔓先を姫の首筋に当
てて同時に責める。 左触手の方は、ぐい、と今度は姫の服下に、右脇腹のはだけた服すそから入った。 そのま
ま上昇し、今度は蔓先を腋の下に当てて集中して責める。 同時に服の右側面に入っている胴体をやはりたわま
せ、蔓先を連動させて肌を擦る。
おしべの触手達は先程と同じく脚に付いた。 右は姫の左太ももを上から嘗め、左は姫の二本の脚の隙間に自
らを差し込んで右ふくらはぎ、及び脛を柔らかく撫でる。
それぞれ独立した四種四様の動きに、最初は暴れていた姫も今は好きにされるままになっている。 未だオー
ドブル程度の刺激に、しかしやはり一撫でする度に短く声を上げて快楽をもたらす触手に身を委ねている様は、
やはり媚薬のような成分でも擦りこまれたかと思わせる。 右の蔓の触手が蔓先で姫の顎をクッと持ち上げた。
姫は熱く息を吐き、本人自身意識してかせずしてか、彼女はわずかにもどかしげに内ももを擦り合わせている。
右の蔓の触手が姫の首筋を意図的にくすぐる。 姫君は眼を固く閉じ、目尻に涙をにじませてそのくすぐった
さに甘く耐える。 そんな姫に対して意地悪く、触手は是非にでも姫に声を上げさせようと姫の顎裏を一掻き、
二掻き、三掻きと重ねて軽く蔓先で引っ掻く。 本人が耐えかねてか、それとも触手のそんな意図を汲み取った
のか、姫は口を開けて「ぅぁっ・・・・・・」と短く呻き声を上げた。 左の触手が褒美だとでも言うかのように姫の
後ろの首筋をそっと撫でた。
脚に付いていたおしべがいよいよ本格的な攻勢に入る。 右のおしべが上から、左のおしべが二つの脚の隙間
からそれぞれ姫君の左右の脚の、太ももの下側に先端を沿わせてそっと撫でる。
「ひゃぅうあ!?」
普段人間でさえまだ誰も触れることを許されない、その意味での秘部をそっとなぞり上げられ、姫君は呂律の
回らない声で思わず声を高く上げる。それにも触手達はまるで構わず、無遠慮に姫の太ももを愛撫し続ける。
一度。 二度。 三度。 四度。
もはや姫は放心状態で、一つ撫で上げられるたびにビクン、と体が反応する快楽に身を任せる。 その内触手
は姫も恐らく気づかぬままに、太ももを撫で上げることを続けながら姫の脚自体を少しずつ徐々に持ち上げてい
った。
やがて姫の脚が大きく開かれる。
「あ・・・・・・」
ことここに至って姫は自分の姿勢にようやく気付く。 しかし体は未だ麻痺して動かず、抵抗しようにもどう
しようもない状態だった。 自分自身があられも無い姿を晒していることに気が付いてすらいるのかいないのか、
ぼう、と姫は自分の格好を見下ろしている。
二本のおしべの攻勢は続く。 無論姫の上半身への蔓の攻勢も続いたままである。
双方のおしべが、その胴体部を使って姫の両内ももの側面を擦り始めた。 一つ擦る度に姫は耐え切れずに甘
い声を上げる。――――――もし姫に、そういうことをする恋人などが居たなら、そんな風に自身を征服しよう
とする快楽を無抵抗に、望んですら見えるかのように受け容れたのかもしれない。 もはや姫の脚が開かれてい
るのは触手がそう力を込めているからだけではないようにも見える。
今一つ手持ち無沙汰になったおしべの先端、右の一方が貪る場所を求めて服のシャツ下に、脇腹の左裾から這
入ってゆく。 姫は自身への征服者に、姿勢を変えて彼が入ることに支障の無いように裾の隙間を自ら大きくし
てやった。ニュル、という蔓とはまた違った脇腹には新鮮な触感が姫を襲う。 服中に既に入ったおしべは腋の
開口部までは突き抜けず、服下に先端まで留まったまま姫の脚部における内ももをさする動きで、また自身もく
ゆりつつ姫の肌を蹂躙し続ける。
首筋、左腋、右腋、左脇腹、右脇腹、そして左右の内もも。 体中を蹂躙されながら、姫の表情にはしかし忌
避は映ってはいなかった。 途切れなく喘ぎつつ、顔を紅らめ、むしろ与えられる快楽に従っているように見え
る。
蔓の右の触手が戯れのように姫の口の中へ己の先端を這入りこませた。 舌先に絡み付いてくるそれを、姫は
自身を貪らせるに任せて更に自らも僅かに舌を動かし、愛撫に応える。
姫のシャツの左裾からおしべの右の触手が引き抜かれた。 突然消えた一つの触感に、姫は物寂しげな、また
不審そうな表情を浮かべる。 としかし姫を休ませる間もなく、蔓の方の右の触手が腋側の開口部からシャツの
下に這入り込んで姫に苦悶の声を上げさせることになった。
二つのおしべがその胴体を内ももから離し、代わりに先端部を内もも、それも大腿部の奥部に当てる。
一瞬何かを危惧した姫は眼に涙をにじませ、しかし諦めたようにその両脚を更に僅かに開く。 しかしおしべ
達はドリストの命令を破らず、唯大腿の奥部で先端を擦りつけ続けるに留まった。
――――――何をしているのだろう、と姫は思う。 確かにその刺激は耐え難くは有る。 しかし彼らにはそう
しなくとも、触手全体を使って自分にもっと広面積にも刺激を与えることも出来るはずだ。 今でもその胴部は
自分のふくらはぎを撫でてはいるが、それはついでのおざなり程度で先程の刺激と比べると、先端が擦り続けて
いる刺激を含めても確かに縮小されていた。
この触手に限って妙なことをしている、と姫が疑問に思いつつぼうっと彼らを眺めていると、やがてその疑問
は無事解消された。
――――――触手の先端が擦りつけられている大腿。 その部分に、黄色い粉が薄く付着している。
――――――そう。 おしべとは雄性の生殖器。 ああ、こいつらは自分に受粉させているのか、と既に陵辱さ
れ切った頭でぼんやりと納得した。
汚されている、という実際に即した思いに、姫の体は今までの快楽とはまた違った熱さを帯びる。
――――――既に、自分の衣類は汗に塗れていて良かった、と心の底から思いながら、姫は触手を受け容れる
ようにまた僅かばかり脚を開いてやる。
姫の征服者は、それに応じて、今一度おしべの触手の全体部をうねらせ、礼を言うように姫の脚を優しく撫で
上げた。
今日はここまでー
拙腕失礼しました
次くらいが見せ場としてはラストになるかなー
ソフィアの日記
早朝の爽やかな空気が肺を満たす
木漏れ日の朝陽を浴びながら、フィロの後ろを走る
汗を吸ってぴったり張り付いた、殆ど下着のようなトレーニングウェアのボトムに
1/4程しか覆われていない、取れたての桃のようなお尻が、目の前で可愛らしく躍動している
人気の無い山道ながら、こんな格好で外を走ろうというのだから
氷の華も余計なことを仕込んでくれたものだ
まったく、これ以上フィロが着衣の露出度に無頓着になったらどうしてくれるのだ
確かに眺めはいいのだが、私までお揃いなんだから
昨夜、フィロの「介抱」に身も心も包まれながら眠りに落ちた私が、目覚めて目にしたのは
まだ薄暗い室内で、足の筋を伸ばすストレッチに勤しむ、ウェア姿のフィロだった
おはようの挨拶を交わすと、「ソフィアちゃんもジョギングする?」
フィロはそう言って、私の分のウェアを差し出した
ウェアだけ
下着は無い
やはりこのウェアはほぼ下着なのではないだろうか
そんな格好で、本陣の城門から出るわけにはいかない
静まり返った廊下を歩き、城の裏手に回る。モンスターの宿舎を抜けて、外へ出る
途中、私の配下の悪魔っ娘が、フィロのアークエンジェルに擦り寄っているのが見えた
男でも女でもどちらでもなくてもいいのか、お前は
天使の方は、豊満な肢体にも全く興味がないようで
悪魔っ娘が身体を摺り寄せてくるのを、煩そうにかわしたり押しのけたりしている
まあ放っておこう。何にせよ仲がいいのはいいことだ
羽と翼がわさわさするのを尻目に、私達は走りだした
それにしても、どこまで行くのだろう。フィロは見せたいものがあると言っていたが
胸の間に溜まった汗が、谷間を通って下乳から流れ出ていく
タンクトップはすっかり汗が滲んで、先端の形までくっきり浮かび上がらせている
おそらくフィロもそうだろう。・・・そろそろ並んで走ろうかしら
と思った矢先、急に視界が拓けた。水音がしていたのに気付く。滝だ
「着いたー。見て、ソフィアちゃん」フィロが両手を広げてくるりと回る
「私が見つけた秘密の場所。まだ誰にも言ってないのよ」
かつてフィロが迷い込んで、何故かあのキラードールと一緒に水浴びしたという滝である
話には聞いていたが、こんな所にあったとは
今、私はフィロと秘密を共有したのだ。その喜びが胸に染みた
「ねえ、水浴び、しよっ」フィロはそう言うと、早速タンクトップを脱ぎだした
野外だというのに躊躇がまるでない。やはり悪い癖がついてしまっているようだ
まあ、だからといって脱ぐな着ろという気もないのだが。水浴びなら仕方ないではないか
フィロの身体に弾ける滴、流れる雫が、朝陽に煌いて神の造形美を彩る
日の光の下で、こんなにまじまじとフィロの裸体を見るのは、随分久しぶりな気がする
相変わらず輝かんばかりに美しい。絶妙なバランスでしなやかに描かれた曲線美は
同じ女である私から見ても、思わず溜息が漏れる程だ
そしてその健康的な珠の肌に、弾け流れる清水の煌き
伝説のマーメイドもかくやと思わせる、神々しいまでの美しさで「わぷっ!」
「うふふ、なぁに見てるのかしら?」フィロが水流を掬って掛けてくる
見蕩れていたせいでまともに顔に受けてしまった。負けじと私も掛け返す
2人できゃあきゃあ笑いながら、まるで水の尽きない水鉄砲で撃ち合っているようだ
狙って胸に当てると、ぷるんぷるんとよく弾む。やはり以前より大きくなっている
忘れていた。これは問い質さねばなるまい。はぐらかすなら、カラダに直接聞くまでである
私は、フィロが身を捩って飛沫を避けたのを見計らい、後ろからがばっと捕まえた
フィロが笑い転げながら形だけの抵抗をする。構わず後ろから鷲掴みにする
なんてこと、もう少しで手に余るほどに成長しているではないか
やあんとかきゃあんとか喜ぶフィロに、どうしてここまで大きくなったのか問い詰める
もちろん両手も動かし続けて、言わないとこうだと攻め立てる
毎夜のマッサージをシャーリンさんに教えてもらった、とか
シャーリンさんにしてもらった、とか、おフロで皆でやってみた、とか
コルチナちゃんが触ってくる、とか、不穏当な発言が続いて
私もちょっと歯止めが利かなくなった。昨晩一方的にやられた鬱憤もある
存分に揉みしだいて声音が甘くなったところで、いきなり腋だのお腹だの擽ってやった
悲鳴をあげて逃れるフィロ。しかし振り向いた途端、その顔がはっと強張った
私の後ろで滝に割って入るような水音がしたかと思うと、次の瞬間
私は何者かに背後から抱きすくめられ、水流のベールの向こうへと引き摺り込まれた
首筋に突きつけられた両穂の槍の穂先
背後から私の胸を鷲掴みにする無礼千万な左腕
背中に当たる、冷え切った女体と、裏腹に激しい鼓動を伝える張りのある肉の塊
生真面目より大きいかも、などと埒も無い思いが浮かぶがそれどころではない
「イリアちゃん……どうして……!」激しい水音の向こうから、フィロの緊迫した声がする
間違いない。こいつはあのキラードールだ
陛下のディバインレイに全身を灼かれ、首都で静養しているはずのこいつが何故ここに?
無表情な低い声が耳元でブツブツ呟く。水音に紛れて聞き取り難い。もっとはっきり喋れ
・・・
何ィ?!お前がシャーリンかだとぉ!?
よりによってあの淫乱食虫華と間違えるとはどういうことだてめえ!
「違うのイリアちゃん、その子はソフィアちゃんっていうの!」
フィロ、こんなときに他己紹介はいいから
武器を捨てろ?見れば分かるでしょ。武器どころか素っ裸よ
と言っているのに聞く耳持たず、無表情は左手で私の胸元を弄り始めた
胸の谷間に暗器でも仕込んでいると思っているのだろうか
どこぞの暗殺者集団じゃあるまいし。まああの覆面なら仕込んでるかもしれないが
何しに来たって、それはフィロが、えと、その、・・・何だろう
とぼけてるわけじゃないわよ。ええい執拗に触るな気持ち悪い!
フィロが見ているというのに、無表情は私の胸を散々弄んだ挙句
大きさを確かめるように乱暴に握り潰すと、フン、と鼻を鳴らした
溶岩にも似た怒りが、胸中でグラグラ煮え立っていく
何故こんな奴にいいようにされねばならんのだ、しかもフィロの目の前で!
胸を調べ終えた無表情は、左手を今度は下の方へと伸ばし始めた
そこは・・・! 思わずその左手首を左手で掴んでしまう
すかさず穂先がクッと首に食い込み、フィロが声ならぬ悲鳴を上げる
動くなと、そんなことは分かっている。だがそこだけは絶対に許すことはできない
そこに触れていいのはフィロだけだ。他人の指でいいように掻き回されるわけにはいかない
しかもこいつは、奥まで調べるためなら、最も大事な部分を平気で破ってくるだろう
フィロの目の前で、それだけは絶対にさせない。絶対に。そのためなら
首に血が滲むのが分かる。フィロが透明なベールの向こうで半泣きになっている。私は
私は、掴んだ左手首を、自ら股間に押し当てた
無表情が穂先を緩める。しかしすぐに、ビクッと身を震わせた
私が右掌にヒールの光を込めて、彼女の股間を捉えたからだ
私を両腕で抱えている無表情は、腰を引いて逃れることができない
そして私は一か八かの賭けに勝った。この女、やっぱりそうだ
なによ、文句あるの?ただのヒールよ。それに先に触ってきたのはあなたの方でしょ
楽しませてくれるんでしょうね。そのつもりなんでしょ、言わなくても分かってるわよ
何故って、さっきからあなたが押し付けてきてるご自慢の胸だけどねえ
先っぽがいやらしくしこり立ってるのよ!違う?何が違うのかしら?誤魔化しても無駄よ
体中冷え切ってるくせに、どうしてそこだけ温かいのかしら?自分で弄ってたんでしょ
それだけ大きかったら、自分でしゃぶることだってできるんじゃないかしら?
ほうら、ここだってこんなにぬるぬるしてるじゃない。ふふ、温かいw
独りで滝の裏に隠れて、なにをしてたのかしらねえ?
やめろですって?ここはそうは言ってないわよ?嘘ついてるのはどっちの口かしら
どうしたの?おててがお留守になってるわよ?
本当は体中ガタガタで、立ってるのも辛いんでしょ?膝が震えてるわよ
そんなカラダでいったいどんなふうに楽しませてくれるのかしら
こうかしら?それともこう?こんなのはどう?あら、ここが弱いのね
まあ、こんなに物欲しそうにそそり立たせて、そんなに弄ってほしいのかしら?
うふふ、聞こえる?いやらしい音。可愛がってあげるわ。たっぷりとねw
無表情だったキラードールが、息も絶え絶えに顔を歪める
こうして見ると結構美人かもしれない。ぎゅっと寄せている眉根が悩ましい
それでも渾身の力を振り絞って穂先を突き上げようとする。しかし、遅かった
これだけ隙ができてしまっては、フィロの方が数段早い
ベールを突き破って飛び掛るフィロの指先から、電光石火の稲妻が迸り
・・・なんで私まで感電させるのよ。ていうか水場でサンダーはないでしょ
まあ確かに助かったけど。どうしようか、この娘
つまり、先客が居たのだ
彼女が滝の裏で誰にも邪魔されず、傷ついた身体を慰めていたところに
先日戦った私達が、乱入して来たということになる
素っ裸ではあったものの、それは彼女も同じこと。私達の闖入を襲撃と勘違いした彼女は
冷え切って中途半端に裡だけ火照る身体に鞭打って、健気にも私を人質に取ろうとしたのだ
少々、悪いことをしてしまったかもしれない
滝の裏は想像以上に広く、石造りのベッドまで据えられていた
破れた古着で作ったような、汚らしいタオルとシーツ、枕カバーまで揃いの柄で
どこかで見たことのあるような、黄色と赤の派手なストライプだ
枕元には、へたくそな手作りの人形。やはり同じ柄で、赤い大鎌まで持っている
キラードールの秘密の部屋というわけだ
そんなところで、まさかキラードールと並んで寝るはめになるとは
フィロは私の胸に縋ってひとしきり泣きじゃくった後
本当に大丈夫か確かめると言い張り、動けない私を大股開きにして
キラードールの目も憚らずに、大事なところを調べ始めた。ちょ、ちょっと
も、もうっ、無表情でしげしげ見てるんじゃないわよっ!向こう向きなさいよ!
うっ、羨ましいって何よ!仲がいいのは、否定しないけど
・・・本当はあなたも、可愛がってもらえるはずだったの?
負けて帰ったから怒られた?
ここはあなたの記憶の始まりの場所?狂王に拾われた、大切な思い出の場所・・・?
無表情でぽつりぽつり呟く彼女の思い出話は
キラードールの二つ名に似つかわしくない、捨てられた子犬のような切なげなものだった
どうやら、私が彼女を「可愛がって」しまったために、話す気になったらしい
その私は現在進行形でフィロに可愛がられているのだが・・・くっ・・・
ちょっと!いつまでしてるのよ!もう充分確かめたでしょ!恥ずかしいったら!
「うん、大丈夫」ちゅるん。ひうっ!や、やめなさいってば!
「ありがとう、イリアちゃん。ソフィアちゃんの大事なところ、傷つけずにいてくれて」
・・・お礼そこなの?
フィロを執拗な確認行動に駆り立てたのは、もしかしたら
嫉妬にも似た何かだったのかもしれない。私にも覚えがあった
フィロは私の秘所を昨夜に続いてじっくり堪能した後
可哀想なキラードールも一緒に可愛がってあげようとしたのだが
「私は、陛下のものだ」
彼女はそう言って、きっぱりと断った
それを聞いて、確かに私は安心したのだ。色んな意味で
滝の場所を口外しないことと、滝の裏には入らないこと
2つの約束を条件に、私達は滝で水浴びしてもよいことになった
南国を併合した暁には、ここも完全にレオニア領になるだろう
それでも私達は、この場所のことは秘密にしておくような気がする
そこに誰かの大切な思い出があるのなら、他者がほしいままにしてはいけない
レオニアが目指すのは統一であって、征服ではないのだ
帰り道のジョギング中に、そんなことを考えていると、フィロが話し掛けてきた
「ソフィアちゃんは、自分で自分の胸にちゅっちゅできるくらいの大きさが目標なの?」
私の考えはふっとんだ。あのねフィロ
「じゃあ、私がしてあげるね、マッサージ」よろしくお願いします
身体が軽い。今なら地の果てまででも走って行けそうだ
何か考えていたような気もするが、おそらく余計なことだったのだろう
明日のことを思い悩むより、まずは今夜のことである
・・・その前に、既に人が起き出しているであろう城内を
どうやってこっそり部屋まで帰るかという懸念もあるのだが
お二方とも乙です!
未だ麻痺の残る姫の体を、ユーラが細心の気遣いを払って慎重に拭いている。 しかしそれでもユーラが手ぬ
ぐいでそっと姫を撫でる度に、姫の体には微細に痛みが走った。
ドリストがそんなブランガーネに声をかける。
「どうだ? 姫さん。
ちぃっとは応えたか?
まァガキンチョにはまだまだ早過ぎたお楽しみだったかもなァ。
ク〜クックック!!」
余裕っぷりをかましまくって全くの遠慮無しに馬鹿笑う。 姫はやはり現在動くことは出来ない。
「ひはま、ほぶぉへれおれ、(貴様、覚えておれ、)
あおれかふぁらすほのむくひをおもひしらひれくれる(後で必ずこの報いを思い知らしてくれ
る)・・・・・・!!」
ろれつの未だ回らぬ舌で姫が凄む。 「まだ無理しちゃ駄目です」、と、姫君を拭いている最中のユーラが窘
めた。
やがてユーラが姫の身づくろいを終え、ヒールの詠唱に入る。 彼女はメディカも使えるのだが、ブランガー
ネの麻痺を治療することはドリストに前もって禁止されていた。
「元気が良くて何よりだ。
まァ最も、その元気がいつまで続くかは―――別だが」
ハッタリをたっぷりと効かせたその言葉に、姫がギクリと反応する。 戦場でも恐れを知らぬかの如き姫とは
言えど、ドリストが姫にどういうことをしたがっているかはもう姫君は充分過ぎるほどに思い知らされている。
そんなことはどこ吹く風でドリストは言った。
「ユーラ。 もう用事は済ませたか。
そろそろアルスターが帰ってくるぜェ」
「あっ、はい、今終わらせます!」
相も変わらず横暴な主君に元気良く返事する。 主君に絶対忠実な少女とは言え、しかしまだブランガーネの
体を拭く少女の手付きは相変わらず気配りに満ちていて、丁寧だった。
手際良く、体を拭くこととヒールをかけることのキリをみつくろって少女は作業を終える。
急いでユーラがドリストの背後の元の定位置に戻る。
姫は喋れず、ドリストもこれ以上そんな姫に言葉をかけることもせず、沈黙の時間がしばらく続いた後、やが
てまた扉の外から足音が響いてきた。 今度のものはアルスターであろうやや大柄の人間らしき足音が一つ分、
他の音は聞こえない。
「―――連れて参りました」
またいつもの様に声が響く。 いつもの様にアルスターの眉も下がっている。
――――――彼が今回背後に引き連れているのは、空を舞う数人の妖精だった。
彼女達が舞っている空間に、金の煌きと緑の煌きが入り乱れている。 統魔主(アルスター)から遠くへ離れ
ることは出来なくとも、それでも充分好き勝手に飛び回り、笑いさざめく。 彼女達が何を笑っているのかはし
らない。 間抜けな人間達をかも知れないし、あるいはまたハシが転がったようなことが起こったのかも知れな
い。 彼女達の振るまいは、気紛れであり、自儘であり、自分達のことしか興味が無いかのようであり、決して
人間には自分達の意図(プライバシー)を悟らせない。 しかしけれども、そんな状態でなお、確実に言えるこ
ととして彼女達は今度の獲物がそこで吊り下げられている姫であることを知っていた。 妖精というのは、概し
てそんな連中である。
「―――ひ、い」
姫君が怯えたような声を漏らす。 彼ら妖精は、戦場において単体ではさほどの脅威では有り得ない。
しかしこの場―――彼女を責めるこの場において―――ピンチ(つねる)にペック(穴を開ける)、パッチ
(継ぎ充てる)にガル(だます)にリック(なめる)にバッキー(跳ね上がる)、連中と言うのは、生まれつい
てのつねったり、くすぐったり、等の悪戯することにかけてのプロである。
「いいぜ。 アルスター。 こっちに渡しな」
今現在耳をつねられたり髪を彼女達に引っ張られたりしていたアルスターが、彼女達の統魔をドリストに受け
渡す。 と途端にアルスターを弄くっていた彼女達もアルスターから離れ、ドリストの周囲へ飛び交うようにな
った。 気紛れな飛行とお喋りは止むことは無かったが、ドリストが彼女達の悪戯の被害に全く会わない辺りは
やはり狂王の器なのだろう。
ドリストは改めて姫君に向き直る。
「――――――さて。 準備はいいか?
ショータイムの始まりだぜ、お姫さま」
ドスの聞いたドリストの声に、姫は身震いする。 普段は狂王を敵に回しても一歩も物怖じしない姫君だが、
この時ばかりは彼が背にしているものの迫力が違っていた。
死ぬ。 体の麻痺した、こんな状態でヤツらにくすぐられる羽目になったら、死ぬか死ぬより辛い目に会って
しまう。
「―――はふぁっは(分かった)。 はらす(話す)。
しょなはのしひたひじょうほうほほしえる(そなたの知りたい情報を教える)」
例えイスカリオの作戦機密であろうが、国家規模の金山であろうが、彼女の命が失われてまで彼らに渡さない
メリットは無い。 この時の彼女の判断は完全に正しい。 加えて死んでしまえば、それをノルガルドに持ち帰っ
て解読することも出来ないのである。
アルスターが愁眉を輝かせて姫に詰め寄る。
「おおっ!! 本当ですかっ!!」
ドリストは上機嫌で告げる。
「――――――聞こえねェなァ」
アルスターの動きが止まる。
「―――はに(何)?」
「そんなモゴモゴ喋られても、なに言ってるか分かんねェなァ。
キャムデン。 お前は分かったか?」
「―――いえ。 私めにもとんと」
恭しく拝礼しつつキャムデンが答える。
アルスターが、その主君の笑顔に、とてつもなく嫌な思い出達とセットの見覚えを感じながら、ドリストに詰
め寄る。
「―――そんな!? 私は確かに―――」
「確かにもなにも、聞いたと主張しているのはお前だけではないかアルスター。
二対一じゃア信じてはやれねェぜェ。 諦めな」
「―――ふはへるあ(ふざけるな)―――」
「―――そうだ! ユーラさん!
ユーラさんはちゃんとお聞きに―――」
――――――ゴスン、と言う音。 それと共に、ユーラに詰め寄りかけていたアルスターが気を失って倒れる。
たった今打撃として振るった大鎌を旋回させて元の肩の位置に戻しながらドリストが言った。
「―――さて。 つまんねェ邪魔が入ったが―――
待たせたな、ようやくお楽しみの時間だぜ、お姫さん」
彼が歩み寄ると共に、いかにも嬉々として背後の妖精たちが散開する。
姫はそれに真剣に怯えて曰く、
「―――やめ、らめて(駄目、やめて)ーーーー!!!」
―――当然ながら止める者は無く、かくしてイスカリオの夜は更けてゆく。
ヒュンヒュンと、彼女達は姫の周りを飛び交っている。 それは見ようによっては猫が獲物を襲う準備行動で
あるかのようにも見えた。 姫は僅かばかりにでも体を振って威嚇しようとしているが、やはり彼女達を留める
手段にはならない。
彼女達の編成は、フェアリー4にピクシー1。 それが出来たのならドリストは全員をフェアリーで構成して
いたのだろうが、流石にそこまでの数は居なかったらしい。その内の一人のフェアリーがまず最初に姫君に対し
て飛びかかる。 彼女の羽音は姫を掠め、そのまま飛び過ぎていった。
また別のフェアリーが、姫君の首筋へとそっと寄る。 ギ、と姫君は歯を硬くくいしばりながら、彼女の方向
に出来る限り肌を見せないようにして彼女に構える。
フフ、と姫の側に寄ったフェアリーはそんな姫に楽しそうに微笑いつつ、手にしている小さな羽ぼうきで、
―――姫の首筋をフュ、と撫でる。
ビクン、と、電撃的な衝撃。 彼女に対して身構えていたはずなのにまるで防御(ガード)など存在しないか
のように衝撃を与えてくる。 あらそういえば体が痺れてるんだっけ、ちょっとやりすぎちゃったかしら、とで
もいうようにそのフェアリーは「いっけなーい」と口もとを抑えて少しばかり反省する。
獲物の流した血の匂いに惹かれてまた別の妖精も動けない姫へ集まりだす。
ピクシーが実に可愛らしい姫君を慈しむように、彼女がくすぐられた反対側の首筋に軽くキスをする。 「あ、
ぅあ」、と、それだけで姫はゾクッと身悶えし、首を振って振り払おうとするがまるで彼女は離れない。
後ろに回っていた妖精が姫の足裏をシュ、と羽ぼうきで撫でた。
「きゃうあふ!?」、
姫君の足裏に電気が流れる。 ペロン、とその妖精は悪戯っ気に舌を出す。 続けて二度、ビクン、三度、ビク
ン、四度、と妖精(フェアリィ)がいとも軽く姫を撫でて大きな反応を彼女に与える。
一人のフェアリーは姫の脚に付いた。 妖精達に責められ続けて絶え間なく姫が反応を返している中、その震
える内ももに鼻(自身ごと)を近付けてスン、と匂いを嗅ぐ。 何か奇妙なものを感じたようだった。 続けて何
度も鼻を動かしてみるがまだわからない。
チロ、と舌を出してその部分を舐めてみる。
「ひくぁぅ!」
ああ、何だ花粉かと彼女は納得する。 大好物なのでそのまま舐め続ける。 姫のそこを刺身のツマに、刺激を
コントロールしつつチロ、チロと。
最後の一人は脇腹に付いた。 既に散々に悶えさせられている姫の反応に合わせ、慈しむようにそっと優しく
撫で上げる。
5人の妖精は気ままに羽を動かし、時に自分がくすぐる場所を変え、時に妖精達が集合して集中して特定の個
所をくすぐりながら、姫の喉で五重奏曲を奏で上げる。
「ん〜〜〜。 どうしたァ、随分と苦しそうではないか〜〜〜?」
動けない姫を嬲るようにドリストが楽しそうに嘲笑う。 罵倒の一つでも投げ返してやりたくとも、くすぐら
れる刺激で姫には手一杯だった。
更にニヤリ、と狂王が笑みを浮かべる。
「―――どうだ? 吐く気になったか?
さっさと言っちまった方が身の為だぜェ?」
「―――は、」
何を、言っているのだろう、と姫は余裕の無い頭でそれだけを何とか認識する。
この男は、先程わらわの申し出を蹴ったはずだ。 頭がおかしくでもなったのだろうか。 元からか。
駄目でもともと、彼女は何とかもう一度口に出してみようと、僅かな余力を傾けた。
「ひ、ふ(言、う)」
「ん〜〜〜? 聞こえンなァ〜〜〜?」
思い切り意地悪く狂王が聞き返す。 ん? と耳に手まで当てている。
―――この、外道。
「―――い、わきゃう、いひ、う、かあら(言うから)・・・・・・」
必死の思いで告げた言葉も、やはり狂王には届かない。
「ん〜〜〜。 やはり分からンな。
レディス、もう好きなだけ好きにしてやって良いぜ」
ャーーッ、と、歓声のさざめきが妖精達の間で起こる。 姫が悔しげに目尻に涙を溜めてドリストを見やる。
彼女達の晩餐が始まった。
妖精達は姫を連携して責める。 片方が責める首の側を姫がガードすればもう片方はその逆側の首、片方の腋
を責めることに姫が体を振ることで抵抗を見せればそのもう一方、そちらに集中している際に注意がおろそかに
なっている足裏を一人のフェアリーが責め、不意打ちの衝撃に姫が動きを止めた所で残りの4人がそれぞれたた
みかける。
地獄だった。 体の麻痺はそれなりに薄れてきており、それに伴う痛みは少なくなってきてはいるが妖精達は
それすらも見越して姫をくすぐりかける刺激の強弱を変える。 姫の体に苦痛はあれど、それは痛めつける目的
の苦痛ではない。 快楽を味あわせる際の苦痛であり、またあるものはその苦痛自体が快楽である。 前に責めて
いた鞭や狼や花にもその傾向は有ったが、プロである妖精にはそれはやはり顕著に現れている。
ピクシーが姫の太ももの上に乗る。 慈しむように、可愛がるように上へと脚をなぞり上げてゆく。 その行為
に姫は自分でも分からない危機感を覚えながら、じっと耐える。 やがてそのピクシーが面白がるような口調で
何かを囁いた。
「――――――」
小さくて聞きとれないはずであるその囁き声に、姫は何故か体をカッと熱く反応させ、
「―――嫌ぁッ!!」
とっさに拒絶するように体全体を大きく振る。
共に大きく振られた姫の髪が、一人の首付近に付いていたフェアリーを巻き込みそうになり、彼女はそれを慌
ててかろうじて避ける。
「―――なにすんのよ、もう!」
今度はちゃんと聞き取れた妖精の小さな言葉と共に、
「――――――!?」
姫に軽く、「本物」の電撃が走る。 妖精の反撃に伴う雷だった。
「―――あ―――」
どこかでシュウシュウと煙の立つような音がしている。 効果は抑えられていたらしく、姫の命に別状はない
ようだった。 しかし姫はやはりその後すぐには体を動かせず、そのことに舌なめずりをした妖精達が直ちに姫
を賞味にかかる。
一人は脇腹、一人は腋、一人は胸元、一人は二の腕。 各々それぞれが姫を責める中、先程反撃を行った妖精
は姫の耳に近い右の首元に付いた。
まだ先程の報復が済んではいないつもりなのか、眼を細めて首筋を羽ぼうきで撫でながら可愛がるように姫の
耳元で何かを囁きかける。 意地の悪い姉が出来の悪い妹に対するように愛情深く、一撫で、二撫で、三撫で、
抵抗出来ずにビクン、ビクンとその度反応を返す動けない姫に対して、彼女は満足しているようにクスリと笑っ
た。
一人のフェアリーが姫の真白い足裏に付いた。 やはりツイッ、と撫でる度に良い反応を姫はしてくれる。 普
段は彼女は足裏を撫でられるとすぐに地面に押し当て閉じてしまうのだが、今は雷のショックによって動けずい
いように嬲られるに任せてしまっている。 滅多にないごちそうに、もう二人のフェアリーがそこに集まってく
る。
右の足裏にフェアリーが二人、左の足裏にフェアリーが一人。 刺激の量は不均等になるが、彼らはそれ自体
を武器にして、一方の刺激に姫が悶えればもう片一方は追走するように、片一方の刺激にまた姫が夢中になれば
もう片一方は姫を更に快楽の洪水で飲み込むように、互いに連携して姫君を喜ばせる。
ピクシーが姫君の右腋を掠める。 クスクス笑いながらほうきを動かしチロチロ責める。 このピクシーは何ら
かの意図を持って動いているようだった。 決して乳房に触れるような無粋な真似はせず、しかしその真近につ
いて繊細に、緻密になぞってゆく。 姫君はその反応を見る所、やはり腋への刺激に弱い。 あるいはまだ性的な
方面には初心の姫だけに、やはり乳房に近いからしてその部分への刺激に羞恥があるのかもしれない。 果たし
てそれを知っているのか、そのピクシーはその推測において的確に、忠実に弱点を容赦なくなぞってゆく。
首筋についていたフェアリーが、ブーンと羽を細かく動かした。
「わひひゃう!」
その羽は姫君に、その振動そのものでもって刺激を与えた。 姫はおもわず顔を背けて首を遠ざけようとする。
だが効果はない。
―――実のところを言えば、それは姫の首左側面と顎下においてのことであり、姫がある程度首を激しく動か
せば、その妖精からの刺激ははね飛ばせるはずだった。 もう雷撃のショックによる痺れもそれほど強くはない。
にも関らず姫がそれをしなかったのは、再び跳ね飛ばしてしまえば―――また雷を落とされるかも知れない、と
いう恐怖によるものであった。 自身の調教が上手くいっていることを確認して満足したフェアリーは、姫の耳
そばによって姫に囁きかける。
「―――ねぇ―――もっと気持ち良くなりましょう? ――――私達に、身を任せて―――――――」
「あ―――は、」
フェアリーが何をしているのか、姫もすぐに気付く。 彼女達の攻撃には、相手を魅了する効果もまた伴う。
このままでは危険だと、今になって必死に首を振り振り払おうとするがフェアリーはしかし離されず、未だに姫
君に支障なく刺激を与え続けている。
「まだ早いか」、と、悪戯がバレた子供のように舌を出し、羽を動かしつつ今度は舌も使って姫の耳元を舐め
る。
「ああうぁ、」
再び顎先を激しく振ってフェアリーを振り払おうとする。 彼女はそれを上手くかわし、羽を飛翔することに
使う代わりに自由になったその手で、羽ぼうきを使って首元をくすぐりだした。 同僚が本格的に姫を捕食し出
したのを見て、他の妖精達もまた本格的に攻勢を開始する。
姫の腋に付いていたピクシーが、未だに姫の乳房付近を、今度は羽ぼうきを左右にシャワシャワ波立たせなが
ら激しく攻める。 加えてチロ、チロと、小さな妖精の更に小さな舌で以て姫の腋部を舐めることも始める。
その様は、幼気で、健気で、忠実な従者のようにも見えて、まるで姫に奉仕しているかのようだった。 しか
し逆に、しかし故に姫が与えられる快楽は凶悪で、ガシャン、ガシャンと手首に枷が付いていることにも構わず
姫は鎖が可動する限界にまで手を打ち付けて鎖を鳴らす。
その姫の反応に、他の妖精たちも集まってきた。 姫の右腋側は現在責め続けているピクシーに任せ、二人の
フェアリーが空いている姫の左腋側に付く。 ずっと責めていたピクシー程には姫の腋を責めることに慣れてい
ない彼女らは、ビクン、ビクンと今も反応を続ける姫に顔を見合わせ、どうしようか、と相談し合う。 やがて
とにかくやってみることに話が決まったのか、二人して羽ぼうきをフュ、と動かす。
「わきゃうッ!?」
しょっぱなから思いがけない大きな反応が返ってきて、妖精達は二人して顔を見合わせる。 やがて申し合わ
せたようにテヘ、と笑って舌を出し合ってから、改めて攻勢を開始した。 姫の現在の感度、受けている刺激に
配慮した、やや柔らかめの責め。
最後の一人のフェアリーはへそに付いた。 快楽としては他の四人が責めているおまけ程度に、しかしだから
こそメインの刺激を任される責任もなく気ままに、他の部分と比べればやや刺激を与えにくいへそを好きに楽し
む。 鼻歌交じりに羽根でくすぐりつつ、空いた左手で姫のへそを色々弄くって調査を開始した所、彼女は姫の
へそのごまにいきあたった。
もう、と姫のその身の手入れのおざなりさに少し怒った彼女は、羽ぼうきの柄側、やや硬い部分を使って柔ら
かく、しかし遠慮無しに深くまで差し入れて手入れにかかる。
「・・・・・・ぁっ・・・・・・!!」
現在の妖精における責めではあまり行われない、引っかくような刺激に、姫は思わず仰け反る。
その刺激に対して限界まで反応している姫に、耳もとでフェアリーがまた囁いた。
「―――あなたの秘密、知ってるわよ――――」
耳もとに口を付けてボソボソと囁かれる。 それ自体のこそばゆさに姫が耐えている中、フェアリーは姫のみ
に聞こえるよう、手でメガホンの形を作りその耳だけに直接声を送り込んだ。
「――――」
何を言われたのかは分からないが、姫が必死で否定する様に首を横にブンブン振る。
妖精は同じく、また追撃をかける。
「――――――」
それを聞いた姫の四肢から、ダラリ、と、力が抜ける。
妖精達は嬉しそうにクスリ、と笑い、姫への各所の責めに喜びを加えてまたとりかかった。 姫はそれに対し
抵抗しようとする素振りを見せるのだが、しかし変わらず力が入らないらしい。
魅了(チャーム)が成功したらしいことを見てとった耳元のフェアリーが、嬉しそうな、愛しそうな笑みを浮
かべて姫の耳そばにチュ、と口付けた。
彼女達の饗宴が始まる。
ある者は首筋、ある者は腋、ある者は脇腹、またある者は大腿。
本性を底まで全開にして、狂喜乱舞に思う存分姫の肌を貪り続ける妖精に、しかし姫は抵抗出来ず、むしろそ
の愛撫に応えるようにしてその身を捧げる。
「―――あ、いや――――――」
本来としての姫の意識はまだ残っているらしい。 それが興に乗ったのか、妖精達は一斉にさざめき笑う。
一人は首筋、顎の裏。 一人は左腋に付く。 一人は右の脇腹を擦り、一人は姫の左大腿。 残る一人は、気に
入ったのか、変わらずへそをいじくり回す。
首元に付いているフェアリーが食べに入った。 もうここは彼女にとってなじみの場所だった。 自身の色香で
堕とした少女を、愛で慰み者にするように、優しくそっと、満足そうに顎の裏を撫ぜてゆく。 「ひゃくくくく
ぅ」と姫が鳴く。
脇腹に付いているフェアリーがキュ、と姫の肌を噛む。 「キャあッ」とのけ反った姫にも構わず、舐め、撫
ぜ、さすり、あるいはその羽の鱗粉を擦り付けるように、ふわりと優しく撫で上げる。 ぼうっと恍惚の表情を
姫が浮かべるもつかの間、羽ぼうきの柄を使ってまたへそに付いているフェアリーが姫のへそを軽く突いた。
右腋のフェアリーは、玩具を乱暴に弄くり回す子供のように悪戯っ気な表情を浮かべて激しく腋の肌に羽ぼう
きを暴れ回らせる。 姫はそれにも短く断続的な喘ぎ声を上げながら肌をその妖精に任せて唯じっと涙を浮かべ
て耐えている。
今回の責めの、影の殊勲者はそのピクシーだっただろう。 彼女は姫の左大腿に付き、堕とした姫という自分
自身の仕事の成果に満足して、その果実、後味を舌の上で愉しむように穏やかな顔でゆっくり内ももを撫でてい
た。 興が向いて先に別の仲間が舐めていた場所を自分も味わってみる。 味わえたのは汗でのしょっぱさだけだ
った。 これもまあ、自分の仕事の成果かと納得し、舐めると共に姫が僅かに脚を開いてくれたことを利用して
羽ぼうきを隙間に差し込んで内ももを擦る。
―――姫は、既に妖精達に貪られるだけの餌だった。
「―――や、いや、やめてッ・・・・・・!」
本人自身がそうなっていることに危機感を感じながら、しかし体は抵抗するように動いてはくれない。
「・・・・・・・・・・・・!」
最早為す術も無く、妖精達に弄くられ、妖精達に快楽を与えられ続けながら、姫の嬌声は果てるともなく続い
てゆく。
――――――後どれくらい続くのだろう。
・・・・・・やがて姫がそう思った時、丁度同時に彼女の抵抗する自意識は闇に落ち、その口からは快楽を受け容れ
る笑声が漏れ始める。
「・・・・・・あ、は、あははははは、は・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・それでもなお、妖精達の饗宴は終わるとも無しに続いてゆく・・・・・・・・・・・・。
今日はここまでッ
次でラスト、少しくすぐった後エピローグという流れになりまぁす
拙腕失礼しましたー
>283
乙です〜
ブランガーネたんがどうなるのか楽しみにしています。
ソフィアの日記
今思えば、上から羽織るものでも隠しておけばよかったのだ。モンスター宿舎あたりに
とはいっても、こんなに帰りが遅くなること自体、想定外ではあったわけだが
城に帰り着いたはいいものの、城内からは既に人の気配がする
フィロと2人で、フェンリルの檻の蔭から様子を窺う
こんな格好で人目につかぬよう、タイミングを計って行かねばならない、と
ひとが懸命に気配を探っているというのに、わさわさとうるさい連中が居る
悪魔っ娘が懲りずに天使に絡んでいるのだ。しかも先ほどより深みにはまっている
悪魔っ娘のあまりのしつこさに、天使は押しのけるのをすっかり諦めてしまったようで
悪魔っ娘はそれをいいことに、腕も脚も絡ませて抱きつくばかりか
羽衣の中にまで手を突っ込んで、何やら弄っている
一見、あまりにけしからんことをしているようにも見えるが
フィロの話によると、天使はつるっつるであるそうなので、そういう意味は無いようだ
確かに天使の方も、うっとうしげな表情ではあるものの、これといった反応はしておらず
問題ないといえば問題ないのかもしれない。羽と翼が擦れ合ってわさわさうるさい以外は
そのわさわさのせいで気付けなかった。まずい、人が来る
慌てて檻の蔭に隠れるが、この程度の格子など向こう側まで丸見えである
見られたら、終わる。神様、どうかバレませんように
耳元でフィロの息遣いがする。「ふふ、ドキドキするわね」笑い事じゃありません
宿舎に入って来たのは、最近仕官した新米騎士だ
確か、どこかの田舎の教会付属孤児院の出で、僧侶兼保育士をしていたという娘だ
ルーンの加護を受けていながら、戦場に出るのが怖くて士官を躊躇っていたのだが
クエスト専門騎士のアヒル頭が、偶然見つけてスカウトしたらしい
偶然見つけたというか、偶然助けてもらったというか
アヒル頭が何故かレンジャーになって徘徊していたところ
怪我人を見つけたのだが、大見得切って治そうとしたらヒールが使えなかった
それを彼女が偶然助けて事なきを得たそうだ。いったい何をやっているのだあのアヒル頭は
まあとにかく、戦いどころかモンスターを従えるのも初めての、素人同然の新米騎士だが
毎朝自分の配下におはようを言いに行ったりするあたり、面倒見はよさそうである
そのおかげで今、私達が大ピンチなわけだが
新米の足がフェンリルの檻の前で止まった。万事休すである
しかし新米が見ているのはこちら側ではなく、向こう側のようだ
向こう側には・・・
わさわさ、わさわさ
あー、それか。とんだものに助けられたものだ
新米は、物音に立ち止まって目を向けてはみたものの
目にした光景を理解するのに暫くかかったようだ。気付いてはっと立ち竦んでいる
「え? え?」混乱しつつも目は釘付けである。やだなあ
わさわさはといえば、折悪く、悪魔っ娘が天使は耳朶が弱いということを発見したようだ
天使の反応がうってかわって敏感になる。見てるこっちが恥ずかしい
新米がますます見入る。両手で顔を覆いながらも、指の間からしっかり見ているらしい
私達はその隙に、気付かれないよう城内へ入った
背後で「わあ……すごい」という新米の呟きが聞こえた
廊下を小走りの忍び足で急ぎながら、フィロはくすくす笑っている
「ソフィアちゃん、止めなくてよかったの?」そりゃ止めたいのは山々だったが
そうは言っても、あの場で制止したりしたら確実に気付かれるわけで
そもそもあの2人が囮にならなかったら、こっちが見つかっていたかもしれない
それを思えば、耳朶くらいは大目にみても仕方ない
「耳朶だけで済むかなあ」どういう意味ですか?
「エンジェルって、おしりも弱いの。悪魔ちゃんもそのうち気付くんじゃないかしら」
前言撤回、今すぐ戻って止めなければ「この格好で?」ああもう
ていうかフィロ、知ってて黙って見てたのか。おーのーれー
とにかく、部屋に辿り着きさえすれば何とかなる。私は逸る心を抑えて廊下を急いだ
見えた、あの扉だ。入って着替えて何食わぬ顔で速攻止めに行くぞ
なるべく音を立てずに扉を開け、素早く滑り込む。よし、誰にも見られなかった
ほっと胸を撫で下ろした私は、室内を見て固まってしまった
部屋の中には、着替え中の色黒が、こちらを見て固まっていた
すっかり忘れてた。一晩中居なかったくせに、よりによってこんな時にこれだよ
「……おはよ」色黒がやっと動き出す。「おはよw」フィロが返す。私は声も出ない
「……へぇ〜」私とフィロを見比べて目を細める色黒。何がへぇ〜だ
よく見ると、浅黒い肌が今朝は一際血色良く、つやつやしている
昨夜はたっぷりお楽しみだったのだろう
「お二人さん、朝っぱらから仲いいねぇ」お前が言うな、夜這い女
「ジョギングしてたの。バーリンちゃんもどう?」フィロがあっけらかんと誘う
「ジョギングねぇ?……遠慮しとくよ。な、ソフィア」にやにやしてやがるのがムカつく
見られた。見られてしまった。あああ。せめてこいつでよかったと思うべきか
あまりのショックで、悪魔っ娘を止めに行くのをすっかり忘れてしまった
なので、あれから新米がどんな光景を目にしたかは、定かではない
ただ、朝食の席の間中、彼女が頬を上気させながら、終始上の空だったのは確かである
色黒が先輩面で白々しく話し掛け、にやにやしているのが腹立たしい
会話の内容が気になったが、私はすぐに気にするのを止めた
この2人の会話に耳を欹てることほど馬鹿馬鹿しいこともない
「ソフィアちゃん、あの2人の声って」フィロ、それ以上はやめなさい
乙乙!
新米騎士はシェルーナかな?
ヒール使えないランゲ様ワロスw
ういー。
ラスト行きまっす
モデムか電話回線の調子がおかしいのでぶつ切れるかも知れませんがご容赦
ドリストが妖精達の攻勢をとめてから、姫が正気を取り戻すまでにしばらくかかった。
それ以後ずっと姫は口を開こうとしない。
「よう。 何か喋れよ。
舌が充分に回るようになったンだから使わねェと勿体ねェだろうが。
今ならブツの在り処も俺様が聞いてやれるぜェ?」
―――ギン、と。 相手を睨み殺すような視線。 やはり言葉は何も告げない。
この少女は、もう決してこの仇敵に屈服するまい。
ククククククク、とドリストは尚嬉しそうに笑う。
「元気そうで何よりだ。
それじゃあ、またどんな風に俺様が遊んでも平気だな?」
フイ、と激しく姫君は横を向く。 敵意を激しく表した行為ではあるが、逆に言えばそれだけ姫は激しくその
言葉に対して反発しなければならなかったということになる。
やはりそれは姫にとっては忌避の対象なのだろう、ドリストもそう思ってかやや穏やかな顔で言葉を繋ぐ。
「意地っぱりな姫さんだぜ、全く。
――――――だが、もう来たようだな」
姫がギ、と歯を噛んで俯く。 それには構わず、ドリストは扉の方を向いてアルスターを迎えた。
「――――――連れて参りました」
眉の下がった二人分の人間大のシルエットを連れて現れる。 それらは人間にしては本来ないはずのものが背
に付いており、その内一方はフワフワ浮いている。
――――――天使と悪魔の最上級クラス、ルシファーとリリスだった。
その個体は姫にも見覚えがあった。 一、二月ほど前の戦いは彼らの双発メテオを軍がかわし切れずに敗北し
たようなものだったのだ。 もっともその後のほとんど無意味な狂王の駄目押しメテオもあったが。
その威容に姫は僅かに身を正して構えながら、しかしこれまでの相手とは違い、くすぐることにならさほど―――特に妖精達と比べて―――恐ろしくは無いかと姫には思えた。 最も、ドリストが彼らの運用を、今までと
同じように扱えばの話だが。
彼らの姿を確認したドリストが、改めて姫に向き直る。
「さて―――覚悟は出来たか?」
その言葉に、姫君が再びそっぽを向く。 ドリストは満足気に、
「ユーラ」
後ろの少女の名を呼んだ。
肩透しを喰らった姫が意外そうにドリストを見る。
「あ、はいっ」
そんな状況にも関らず、ユーラが相変わらず元気に返事をする。 同時に狂王の元へと駆けていった。
「コイツらをお前が統魔しな。
お前がお姫様をもてなしてやるんだ」
先程姫君に対してしたのを同じやや穏やかな顔を向け、ドリストはユーラに彼らに二人の統魔を渡す。
ユーラは元気良く返事した。
「はいっ、分かりました!」
―――姫君には不審だった。 それは確かに、そのモンスターの内、ルシファーは本来彼女の統率しているモ
ンスターだ。 統魔の器に疑問は無いが、そもそもこの純真な少女自身がドリストが今からさせようとしている
ことについて致命的に向かないのではないかと思わせる。
ユーラが堕天使と大悪魔を引き連れ、ブランガーネの前に進み出る。
「それでは姫様、大それたことながら私がドリスト様の代役を勤めさせていただきます。
どこか至らないところがあればご遠慮なくお申しつけ下さい」
やはり到底これから姫君を嬲り者にする立場だとは思えないその発言に、毒気を抜かれたのが半分、呆然とす
るのが半分、「・・・あ、ああ」と、姫君は彼女の立場からしてもやや筋違いの発言をする。
姫君の返答に納得を得たユーラは、嬉しそうに、
「――――――それでは、始めますね」
―――本当に無邪気にニッコリと微笑った。
――――――その微笑みが、実の所大悪魔と堕天使―――それは本当は妖精達にも決して劣るわけではない
―――より恐ろしいものだと姫君が知るのはもっと後になってからのことである。
「えっと・・・・・・それじゃ、シャラーナ、
いきなり二人じゃ刺激がきつ過ぎるだろうから、
まずはあなたがお姫様を気持ち良くしてあげて」
ユーラの命令に、リリスが従順に進み出る。 ドリストは何も言わずに狼達、花、妖精達を従えていたが、ま
あこれは技術より性格の問題だろう。
姫はそれを見て、やはりこの少女は責め手としては甘(やさし)いな、と感想を抱く。 先程の妖精達は、最
初から五人がかりだった。 しかもこちらが麻痺していてなおだ。
金髪の妖姫がノルガルドの姫君の背後に回る。 姫の視界に映らなくなった悪魔をやや脅威に思いながら、姫
君は悪魔が何をするかを唯身構えて待つ。
――――――姫の背後真傍まで近付いた悪魔が、姫君の肌、上腕に、そっと手を伸ばす。
「はうッ!?」
予想もしない電撃が彼女を襲う。 リリスの手はさわさわしており、絹のようで、流石男であれ女であれ触れ
る者には極上の感触だった。 それに何か、悪魔特有の妖気が、リリスの手を通して姫君の肌に直接送り込まれ
る。
そのままリリスは手をさわさわと移動させ、上腕、下腕、そしてまた降りてきて上腕―――へと、やはりまた
妖技とも呼べる手つきでまんべんなく味わっていた。
――――――その全てに、姫君は危うく―――堕ちてしまいそうな実感を覚える。
「――――――やっぱり。 貴女、私たちを見くびっていたのね」
耳元でリリスが艶かしく囁く。 実際言葉の内容を認識しているどころではない。
それを見たユーラが実に嬉しそうに呟く。
「良かった。 気持ち良くなって下さっているんですね、姫様。
えーと、・・・・・・今度は、左手はそのままで、右手を脇腹に添えてあげて」
はい、とリリスが従順に命令を受諾し、腋に至りかけていた右手をそのまま脇腹へと持ってゆく。
「ーーーーっ!?」
再び極上の悦楽。 リリスの右手が脇腹の肌をさわ、と撫でるだけで痺れるような感覚が走る。 姫の反応から
それを確認したリリスが改めて手の動きを、ようやく、「くすぐる」ものへと変化させる。
―――それについては、もう何も言うまい。
一瞬気が遠くなりかけた姫が、しかし意識を引き戻され、早々にこらえ切れず嬌声を漏らし続ける。
「あは、いや、うゎは、・・・あは、あはははははは・・・・・・!」
それを確認したユーラがニッコリと微笑う。
「はい。 良いわよシャラーナ。 今度は左手も休めないで」
優しいながらも、どこか教官めいた口調。 それにブランガーネは違和感を覚えるが、今はそれどころではな
い。
リリスの左手が腋へと向かう。 それに姫は純粋な恐怖を覚えて、思わず叫んだ。
「・・・嫌、いやーッ!!」
「・・・・・・シャラーナ、ストップ」
と共にリリスがその手を止める。 ストップをかけたユーラが、どこか恐る恐る姫君に声をかけた。
「・・・・・・ええと、どこか、痛いところがありましたでしょうか?」
姫君が上気させたままの顔でユーラに叫ぶ。
「こやつを今すぐわらわから離せっ!!」
そう言われたユーラが僅かに困った顔をする。
「ええと・・・・・・そう言われましても・・・・・・
気持ちよくして差し上げる、というのが、ドリスト様からの御命令ですので、申し訳ありません」
本当に申し訳無さそうにユーラが腰から曲げて頭を下げる。 その様に、
――――――本当に邪気無くそう言うその様に、ブランガーネはゾッとしたものを感じて、一瞬言う言葉を見
失った。
その間隙に、再びユーラが命令を下す。
「はい、シャラーナ、続いて。
今度はあまり痛くしないように気をつけてあげてね」
実の所先程の指使いは全く痛みを伴うものではなかったのだが、それにも関らずリリスは従順に「はい」と素
直にうなずく。
再び彼女の右手が脇腹に回され、さわり、さわりと姫の肌を侵蝕してゆく。
悶え始めるのも束の間、今度はリリスの左手が、―――直に姫の左腋に触れた。
「――――――、あ、」
魂の抜けるような感覚。 その指は時には羽毛のように柔らかに、時には清流のように淀みなく、姫の肌を愛
撫し続ける。
同時に脇腹についていた右手が「くすぐる」ことを始めた。
ビクン、と、淫魔から意図して快楽を与えようと働きかけられるその行為は、肌を通して姫を抵抗のしようも
なく蝕んでいった。 姫がたまらず鳴き始める。
「あ、いや、やめ、やめて、死んじゃう、」
それを聞いたユーラが何となく困ったような顔をする。
「・・・・・・あの、痛くしてはないわよね? シャラーナ」
「はい、そのはずです」と淫魔が答える。 加えて曰く、
「あの、もう少し気持ち良くなされては如何でしょう?
姫もすぐに喜んで下さると思いますが」
淫魔らしく、姫の状態を良く分かっている。 姫はぼうっとした頭でそれを聞いている。
ユーラは頷き、
「・・・・・・そうね。 それじゃ、首筋を舐めてあげて、シャラーナ」
更に姫の脳を蕩かす一言を放った。 本能的に危機を感じて姫が逃れるのに身を浮かせようとするが、
「・・・・・・こうでしょうか?」
あっさりとユーラの命令に従ったシャラーナに捕まる。 姫の首筋を、その存在自体が淫猥な舌がツイ、と舐
める。
「あ――――――」
――――――それだけで、姫は何も考えられなくなった。 抵抗が止んだことを確認したユーラが頷き、
「―――そう。
もっと顎の輪郭から耳元を、舌先を使って、ゆっくり」
――――――ツイ、と、淫魔の舌先が糸を引く。 ビクン、と、姫の体が一瞬跳ねる。
それを見たリリスがクスリと笑う。
ドリストが実に何の気なく呟いた。
「―――あー、言っとくが、
あの妖精ども、あれを全部仕込んだのはユーラだぞ」
最早姫の頭は働いていない。 虚心になったその状態で、何となく致命的だと思われることが頭に入ってくる。
ユーラがドリストに向かい直ってやや恥ずかしそうに言った。
「あの子達は生まれつき他人を喜ばせることが上手ですから。
私も教えられたりしています」
ククク、とドリストは笑い、
「性格上だろォな。 人を『もてなす』ことにおいちゃ俺様も敵わねェかも知れねェ。
どれだけ抵抗しようが人を強制的に快楽に引き摺り込みやがるんだ。 性質悪ィぞ」
―――あの、それ程でも、無いです、と、少女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
しかしそんな主人の状態にも関らず、リリスはブランガーネへの責めを続けていた。
相変わらずの魔技。
姫はリリスに完全に体を預け切っており、その背にはふくよかな、女性であっても心地が良い柔らかくて暖か
いふくらみが当たっている。 赤子を抱く母親のように、リリスは姫を慈しんで快楽に導いてゆく。
まだ頬を紅らめているユーラが、それでも姫達の方向に向き直って呟いた。
「・・・・・・ちょっと早いけど、そろそろ良いかな」
「はい」
その意図を理解したリリスが、さわ、と、姫の胸を両手で柔らかく包み揉んだ。
「あ――――――」
――――――魂の悦楽。 未だ未開拓である姫の性器は、専門家中の専門家である淫魔の女王にフィ、と揉ま
れ、その快楽は至福の奈落の底へと堕とし込んでゆく。
ユーラがやはり何の邪気も無く訊ねる。
「ちゃんと堕とせた?」
フィ、フィ、と、シャラーナが二度三度胸を揉んで確認する。
「そのはずです」
ユーラは満足そうにニッコリ微笑み、
「それじゃ、ランセルリエル。
あなたのお披露目ね。 初舞台、頑張って」
は、と、御意を得たルシファーが姫の前に進み出る。
ドリストが再び付け足した。
「―――ああ、お姫さん。
そいつはユーラが、一から直に仕込んだ虎の子だ。
俺様もそいつの腕前を見るのは初めてなんでな、楽しませてもらうぜ」
姫君には、もうその死とほぼ同義の言葉は聞こえていない。
彼女の背後の淫魔が、姫の耳元で囁く。
「―――じっとしていて。
――――――すぐに、天国の庭で遊ばせてあげるわ」
――――堕天使の羽が開く。 その翼は黒く染まってもなお神々しく、見るものに後光をもってその姿を認識
させる。 翼の羽根一枚一枚が光にさざめく。
――――その羽が、姫へと向かって緩やかに進み始める。
天国と楽園を追われた天使と淫魔は、姫君を至福に導くものか、それとも堕落の道に誘うものか。
シャラーナが再び姫君の乳房を両の手で揉む。
クスリと笑って、
「――――貴女、もう何回達した?」
悪戯っ気に姫を慰む。
堕天使の羽が姫を包む。
「あ―――――」
最早誰が誰か区別も付かないほど前後不覚に陥った姫が、それでもその快楽を認識させられて至幸の声を上げ
る。
――――――堕天使の羽の一枚一枚が揺れさざめく。 それぞれ意思を持つかのごとくに姫の全身はくまなく
愛撫されてゆく。
その様は、堕天使というよりむしろ愛に満ちた慈母のようで。
前に堕天使、後ろに淫魔と、最凶の組み合わせに抱かれた姫君の意識は、抵抗のしようも無いままやがて間も
無く闇へと落ちていった。
「―――言わぬ」
ルシファーとリリス、彼らが意識を失った姫君をどれ程の間責め続けただろうか。 流石に姫の体力が限界に
達する頃を見計らって拷問を終え、目一杯にヒールをかけ続けて今にいたる。 あれほど快楽の渦に叩き込んで、
なおその姫の命には全く別状無かったというのがユーラの技の恐ろしさを物語る。 最も姫君が正気に戻るまで、
やはり格段な時間がかかったが。
今はその姫君が目を覚ました後、ドリストが再び姫に彼が求めるものについての尋問を行ったところだった。
「―――全く。 とことん強情な姫様だな。
もう一回拷問のフルコース喰らってみるか?」
クククク、とドリストが含み笑いを漏らす。 対してブランガーネは、
「どういうことをされようが、どんな風にわらわがなろうが、絶対に、貴様などには言わぬッッッ!!」
顔を紅潮までさせてドリストへ怒鳴る。 屈辱を味合わされたことによる意地だろう。
ドリストはそれを聞き、
「―――ほう。 それじゃあしゃあねェな」
案外アッサリ引き下がる。
ブランガーネはまた何かをする前兆だと思ったのか、ドリストに対し一歩身を退き身構える姿勢を見せる。
彼は構わず、彼の背後の騎士にたいして呼びかけた。
「――――――ユーラ」
「はいっ、ドリスト様っ」
狂王に対し盲目的に忠実な、従者の如き少女が駆けてくる。
ブランガーネは彼女を目にして、ビクン、と一つ体をすくませた。 あの少女の純真さが、どれだけ怖ろしい
ものであるか体に磨りこまれてしまったのだろう。
ドリストはそれにも構わずユーラに言った。
「――――やれ」
「はい。 ――――――チャームッ!」
「な・・・・・・・・・・・・」
意外過ぎる彼らの行動に反応が少し遅れる。
その差が敗因となり、魔法は無事姫君にかかってしまった。
効果は徐々に彼女を侵蝕してゆく。
「き、貴様・・・何のつもりだッ!!」
チャームの魔法は、かかった対象から理性を奪い術者の虜にする。
これから何が起こるかせめて知っておこうと、姫君はドリストに問い質す。
ドリストは当然のように姫君に応えた。
「何のつもりかだと?
馬鹿め、そんなことは決まっておるではないか。
――――――これからお前に俺様が知りたいことを答えてもらうのだ」
は、と、姫君の思考が一瞬止まって息が吐き出される。
確かにチャームの魔法は対象を傀儡にさせる。 聞きたいことを自白させることにも使えるだろう。
しかし、それなら何故、という、当然の疑問が残る。
それはアルスターが代弁した。
「・・・・・・あの、陛下。
それでは何故、最初からそうなさらなかったのですか?」
その問いに対しても当然のように彼は答える。 子供のように、心の底から嬉々とした表情を見せて。
「馬鹿め〜〜〜〜!
それでは俺様が楽しめンからに決まってるだろうがッッッ!!!」
――――――ガックリと、アルスターの膝が崩れ落ちる。
姫君においても、自分の中で何かがブチンと切れたような音を彼女は聞いたような気がした。
「こッッッッの、大道楽者の、大うつけの年中花見頭がぁーーーー!!!」
・・・・・・・・・・・・姫の叫びが城内に響く。しかしそこで姫は魔法の支配下に落ち、彼女の抵抗はあえなく途絶えた。
その後ブランガーネは無事無傷でノルガルドに返された。
ノルガルドの城中には姫がイスカリオで何をされたか心配する者も居たと言うが、姫は決して答えず、唯それ
以後、彼女が戦場でその相手の姿を見かけると、激高して斬りかかってゆく相手の数が一人増えたという。
あと、これはなんでもない、本当にささやかなイスカリオの日常の一コマとしての追記。
「イリア」
狂王が、彼の騎士の部屋へと入り、彼女に声を掛ける。
「―――陛下?」
彼女は深手を負っており、王都カエルセントにて療養中だった。 負傷の故か顔色も優れなく見える。 ベッド
から上半身を起こして彼を迎える。
「―――ほらよ。 お前の落としモンだ」
ドリストが無造作にイリアの元へそれを投げてよこす。 イリアはそれを見ると、信じられないように、そし
て大事に両手ですくい上げ、顔の高さにして眺めた。 血色の優れなかった顔には薔薇色が差している。
どうやら憂色の原因はこれだったらしい。
――――――それは、ドリストからイリアに、イリアが拾われた記念日に贈られた、どこにでもある木彫りの
ブローチのようなものだった。
イリアがドリストに訊ねる。
「―――あの、これを、どこで?」
「戦場の跡で見つけたってよ。
アルスターの野郎を、探し方が足りねェッて後でブン殴っとけ」
ブローチを本当に大事そうに握り締めて、イリアが呟く。
「―――あの、陛下、本当に、ありがとうございます・・・・・・!」
ベッドから立ち上がって礼を言おうとするイリアをドリストが制する。
「お前は良いから大人しく寝てろ。
とっととその怪我治して、俺様の為に戦場に立て。
今度はあの姫さんになンぞそンな傷負わされるんじゃねェぞ」
「―――はい」、と、大人しくイリアはベッドに戻る。 その代わりベッドの中から、もう一度ブローチを握り
しめて礼を言う。
「・・・・・・あの、陛下、もう一度――――――本当にありがとうございます」
「礼は良い。
但し今度は無くすな」
もう用は済んだのか、靴をコツコツ床に鳴らしてイリアに背を向け、部屋をそのまま退出してゆく。
手の中のブローチの感触を確かに感じながら、狂王の騎士は、「―――はい」、と、彼の言葉をちゃんと受け
取った。
――――――実に。 イスカリオの日常の一コマである。