「……やめて……ほしくなかったのぉ…」
「何を」
「う……動く……のを…」
「何が動くのを」
「ノ……ノーム、が……動くの…」
「どうやって動くのを」
「ううぅぅ〜…!」
あまりの恥ずかしさに、フェルパーの目に涙が浮かんだ。
「ノームがっ……わ、わ、私……の……中に、入れて……動くのがぁ…!」
「へえ。でも、今やめちゃってるよね」
フェルパーを見つめ、ノームはますます意地悪そうに笑う。
「フェルパーちゃんは、何を、どうしてほしいのかな。はっきり言って、教えてよ」
「そ、そんなっ…!」
「じゃなきゃ私にはわからないから。ちゃんと、自分の口で言ってみてよ」
「う……うぅ〜…!」
とうとう、フェルパーは涙を流した。そして固く目を瞑ると、大きく息を吸い込み、一気に叫んだ。
「だからぁ!ノームのそれ、私の中に入れてほしいのぉ!!その太いので私の中思いっきり突いてほしいのっ!!いっぱい気持ち良く
してほしいのぉー!!う、うっ、うわぁーん!!」
真っ赤な顔で泣き崩れるフェルパーを、ノームはぞくぞくする思いで見つめていた。そして、いっそう妖艶な笑みを浮かべ、
フェルパーの前にそっとしゃがみこんだ。
「ふふふふ。よく頑張ったね。ほんと、あなたってかわいい……イかせて、あげる」
涙を舐め取り、頭を優しく撫でると、ノームは再びフェルパーの中に突き入れた。
「うあっ……こ、これっ、これぇ!」
「私も、すごく気持ちいいよ。だから、ね。一緒に、イこ」
ノームの動きが、大きく荒くなっていく。それに比例して、フェルパーの快感も一気に跳ね上がる。
「ひにゃっ!!あぐっ!!ノー、ムぅ…!わ、私、私ぃ…!」
「もうちょっと我慢して。私も、もう少しだから」
「も、もう無理ぃ!!私っ、私もうっ!!頭真っ白にっ……うああぁぁ!!は、早くイってええぇぇ!!」
「んっ……もう、出そう。いいよ、思いっきりイって」
ノームが一際強く腰を打ちつける。それと同時に、フェルパーは体の奥に熱い液体が勢いよく流れ込むのを感じた。それは今まで
感じたこともない快感をもたらし、同時に止めとなった。
「あ、熱いぃっ!!お腹、火傷しちゃっ……ひぐぅ!!うあああぁぁぁ!!!」
後から後から、体内に熱い液体がかけられていく。もはや入りきらなくなったそれは結合部から溢れ、床にドロドロと白い水溜りを
作り始めている。その終わらない快感に身を震わせながら、フェルパーは次第に意識が遠のくのを感じた。
「ああ、ぁ……ノー……ム…」
沈んでいく意識の中、フェルパーは額に優しいキスをされるのを感じた。
「あなたなら、すぐにみんなと話せるようになるよ」
おぼろげな意識の中、遠くでそんな声が聞こえた気がした。だが、それが現実かどうかも分からないまま、フェルパーの意識は途絶えた。
「にゃ〜〜〜〜っ!?」
がばりと、フェルパーは勢いよく体を起こした。慌てて周りを見渡すと、そこはベッドの上で、外はうっすらと明るくなり始めている。
「にゃっ……にゃ!?」
大慌てで全身を触る。愛用のパジャマに脱いだような形跡はなく、部屋には誰の気配もない。辺りは静まり返り、自分の鼓動だけが
大きく聞こえる。
「……ゆ、夢…?」
混乱していた頭が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。あまりにもリアルな夢ではあったが、それ以外に考えられない。そもそも、
夢でなかったとしたら、あれほど巨大なモノを入れたら普通は痛くてたまらないはずだ。
「……ど、どうしてあんな夢…」
ふと、下半身にひんやりとした不快感を覚え、フェルパーは視線を落とした。
「にゃっ!?」
パジャマのズボンは、おねしょでもしたかのようにぐっしょりと濡れていた。だが、おねしょではない証拠に、その液体はやや粘り気が
あり、何より臭いが違う。
「うわ、シーツまで…!う〜、あんな夢見るからぁ…!」
結局、フェルパーはトイレでショーツとパジャマを洗う羽目になり、再び寝ることもできず、そのまま朝を迎えることになるのだった。
翌朝、フェルパーが寝不足の目を擦りながら宿の食堂に向かうと、ノームが一人で朝食を取っているのが見えた。
さすがに夢のこともあり、フェルパーは一瞬ビクッとしたが、あくまで夢の話だと自分に言い聞かせて彼女の前に座る。
「お、おはようノーム」
「ん、おはよう。今日もいい天気ね」
至って普通の返事に、フェルパーはホッと胸を撫で下ろした。やがて、朝食のパンを齧り始めたとき、ノームがおもむろに口を開いた。
「ごちそうさま」
「ん?」
ノームの前には、まだいくつかの料理が残っている。しかも『ごちそうさま』と言いつつ、ノームが食べるのをやめる気配はない。
「まだいっぱい残ってるみたいだけど?」
「朝ご飯のことじゃないよ」
「……?」
「ゆうべの、あなたのこと」
「?……っ!?」
ボッと、フェルパーの顔が一気に赤く染まる。
「なっ、にゃっ……ちょっ、えっ…!?」
「そんなに驚くことないでしょ。そもそもがアストラルボディなんだから、夢の中にお邪魔するくらい、訳ないよ。正確に言うと、
あなたの体にお邪魔させてもらったんだけどね」
「なななななっ!?ノ、ノームっ!!」
顔を真っ赤にしつつ席を立つと、ノームはいつも通りの微笑を浮かべた。
「怒ることないでしょ。気持ち良くさせてあげたし、ちゃんと相談には乗ったつもりだけど」
「そ、それはそうだけど!!でも、あんなっ…!」
「恥ずかしいことさせたって、怒ってるんでしょ」
気のない感じで言いつつ、ノームは真面目な顔を向けた。
「人と話すの、恥ずかしいって言ってたよね。でも、それはあのおねだりより恥ずかしいことかな」
「うっ……お、思い出させないでよ!」
「それだけじゃないよね。あなたの体、全部見せてもらっちゃったし、イかせて…」
「にゃーっ!!!もうそれ以上言うなーっ!!」
フェルパーが叫ぶと、ノームはまた微笑を浮かべる。
「あれと比べたら、人と話すくらい、なんてことないでしょ。あんなに恥ずかしい思いなんて、そうそうあることじゃないんだから。
それができたんだから、仲間と話すなんて、もう楽なものでしょ」
「……むー…」
言われてみれば、その通りでもある。フェルパーは渋々ながらも、納得するしかなかった。
そこに、仲間のクラッズがやってきた。彼女はノームに手を振ると、二人から少し離れた席に座った。
「ほら、早速」
「え、何が…?」
「話してきたら。話すことなくっても、挨拶くらいはできるでしょ」
「う……ま、まあそれくらいならできそう……かな…?」
フェルパーは席を立つと、おずおずとクラッズに近づく。それに気づき、クラッズもフェルパーの方へ顔を向ける。
「ん……どうしたの?」
いつも通りの、冷たい感じの声。だが、フェルパーは逃げそうになる足を必死に抑え、何とか声を絞り出した。
「お……お、お、おはよっ!!」
思いの外大きな声が出て、クラッズとフェルパーは同時にビクリとした。二人はしばらく見つめ合い、ややあってクラッズが口を開いた。
「ああ、うん……おはよう。あ、朝から元気だね」
「あ、う……げ、元気なんじゃない……と、思う、けど…」
「うん、まあ……うん、そっか。なんか、ごめん」
「あ、ううん、私こそ、ごめん」
「気、使わせちゃってごめん」
「いや、あの、私のせいで、ごめん」
そのままでは一生謝罪の応酬が続きそうだったので、フェルパーはそそくさとノームの元へ戻った。戻ってきたフェルパーに、ノームは
いつもの微笑みを送る。
「どう、感想は」
「……や、やっぱり緊張する…」
「でも、挨拶できたんだから上等だね。あ、次の獲物きたよ」
言われて後ろに視線を向けると、相変わらず人目を憚らないエルフの兄妹がいた。
「ふふ、お兄様。昨夜は、お兄様の愛をあんなに注いでもらえるなんて。まだ、体の中がお兄様で満たされているようですわ」
「それでも、私はまだお前を愛し足りないよ。お前の香りが、今の私にはほとんど残っていない」
「それならば……今度は、香りを繋ぎ止めるほどに愛してくださるのね」
「ああ、もちろんだ。そしてお前にも、私の香りを等しく刻みつけたいものだよ」
そんな二人の話を聞いていると、フェルパーの中の二人に声をかけようという気が急速に萎えていく。
「……やっぱり、声かけなきゃダメ?」
「気まずいのはわかるけど、今やらなきゃこの先もできないよ」
それもそうだと納得し、フェルパーはさっきよりもずっと重い腰を上げ、二人に近づく。
「お……おはよう」
何とか声をかけると、二人は同時にフェルパーを見つめ、意外そうな目を向けた。
「……臆病な獣か、慎み深い獣か。判断に迷うね」
「寡黙は悪徳。でも沈黙は美徳。これから判断すればいいことですわ。それより、お兄様…」
「……じゃ、じゃあ私はこれで…」
よくわからない言葉を返され、おまけに早々に捨て置かれ、フェルパーはぐったりした感じでノームの元へ戻った。
「お帰り。お疲れ様」
「……う〜、私あの二人苦手だよぉ…」
「得意な人なんていないでしょ」
「だから、話すの嫌なんだよぉ…」
「相手が悪かっただけ。それよりほら、最後のきたよ」
そちらに目を向けると、バハムーンが席に着くのが見えた。エルフ兄妹で疲れていた彼女にとって、もうこれ以上他人と接するのは、
ただの拷問としか思えなかった。
「もうやだよ……絶対冷たいこと言うもん…」
「そう言わないの。練習だと思って、ね」
「でもぉ…」
「頑張って。最初の一歩を逃げちゃ、いつまで経っても進まないよ」
「う〜……わかったよぉ…」
その言葉に、フェルパーはストムを食らったかのように重い腰を何とか持ち上げ、のろのろとバハムーンの前に向かう。
「……おはよ」
消え入りそうな声で言うと、バハムーンは大儀そうに首を巡らせた。その仕草だけで、フェルパーはもう逃げ出したい衝動に駆られる。
「おう、おはよう」
返事が来たので、さっさと戻ろうと思い、フェルパーは後ろを向きかけた。そこに、バハムーンが続ける。
「お前の方から挨拶するとは、珍しいな。ずいぶんかかったが、少しは慣れたのか?」
「え?あ、うん……その、まあ…」
「ふん、まあ慣れきってはいないんだろうな。だが、挨拶するだけでも、それは確かな進歩だ。お前みたいな種族に、いきなり多くを
求めはしない。最初はそれでいいんだ、あとは少しずつ慣れていけばいい」
「あ……ありがと」
一番冷たそうな人物に一番温かい言葉をかけられ、フェルパーは何だかキツネにつままれたような気持ちでノームの元へ戻る。
「ただいま……なんか、意外だった…」
「ふふ、言ったでしょ」
そんな彼女を、ノームは微笑みを浮かべて見つめる。
「みんながあなたをわかってないのと同じで、あなたもみんなをわかってない。彼、態度は大きいけど、いい人なんだよ」
「……そうなんだ」
ノームの言葉に、フェルパーは自分がどれだけ仲間のことを知らなかったか理解した。同時に、命を預ける仲間のことを、
もっと知りたいという気持ちが芽生える。
「少し、頑張ろうかな」
「ふふ。ずっと、それ聞きたかったよ」
そう言い、ノームは笑みを浮かべた。それは夢の中で見たような、満面の笑みだった。
「うん。ありがとね、ノーム」
「いいの。私も楽しめたし、ね」
「……も、もうあれはやめてよね!ていうか、ノームって誰とでも仲いいけど、まさかあれ、他の人にまで…!?」
「ん、秘密」
「どっちなの!?気になるから教えてよー!」
相変わらず、このパーティに居場所はないと、彼女は思っている。だが、それは今までとは少し違う。
居場所なんて、最初はどこにもないもの。それは少しずつ、時間をかけて作り上げていくものだと、フェルパーは思うようになっている。
『まだ』居場所がないだけで、いつかはここにも、確かな自分の場所を築けるはず。
そう考えているフェルパーの顔は、前よりも少しだけ、明るくなっているように見えた。
以上、投下終了。
金髪フェル子も可愛いけど、やはり黒髪フェル子に惹かれてしまう。
それではこの辺で。
乙です。
戦士フェル子可愛いよね。黒髪で表情がヤンデレっぽくて左利き。完全にツボw
298 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:35:33 ID:UE4B1IY9
GJ
フェル子いいなぁ。個人的にエルフ兄妹に惹かれるけど。
>>297 左利きが!?
左利きいいじゃん。自分が右利きだったらHの時
お互いに利き手で相手をいじくり回せるんだよ?
あれ?そう言う話じゃなくて?w
300 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:47:59 ID:wn5r2gA3
ととモノ。の世界って多種族の特徴をもったキャラっていないよな。
まぁ、綺麗に産み分けれるようになってるならいいんだけど、一人ぐらい
「セレスティナの羽が生えてるけどディアボロス」
とか
「体はノーム、心はヒューマン」
とか、そういうキャラがいてもいいかと。
ん、体はノーム、心はヒューマンって、鎧か何かに魂くくりつけてるみたいだな。
ドワっぽいフェルパーやフェルっぽいドワーフなら居そう
どうせならロストしたヒューマンと寄代を共有するほうが
>>300 身長のことを言われるとキレる、種族はクラッズ心はヒューマンの兄がいるんだな
ディアとセレの兄妹は出てくるけど、半々っていないな確かに。
隣のクラスのお嬢様はハーフエルフでもよかったんじゃないかと思う。
どうも、俺です。
ととモノ。を持っていない友人に攻略本を見せつつキャラ萌えについて協議した所、
友人は釘バットを持つ普通科ドSフェル子さん萌えという話を書けと言ってきました。
やはりフェル子さんが可愛いものだと認識しましたがやはり1の黒髪フェル子がいい。
こんばんは、皆様。
前回クラ子とノム子で続きを書くと言っときながら持ってきたのは5ページ目になってます。
今回もエロ有りですがやっぱりあまりエロくないです。
マシュレニア学府の卒業式が終わった後、エドワード、ディモレア、カガリの三人は歴史上から一時的に姿を消した。
あくまでも表向きの歴史書からである。事実、卒業直前まで彼らの側にいたパーネとダンテはその先がアイザ地下道の先だという事も知っていた。
そう、三人は誰も踏み込まない地であるアイザ地下道の先を、新たな拠点として選んだ。
誰も踏み込まないが故に、誰にも知られない地。
まるで人目を避けるかのように。
「…………くぁー……」
適当な部品を錬成して作っただけの掘っ立て小屋から大規模な実験施設をも兼ね備えた研究所へと錬成し直すのに、エドの腕前にとっては大した労働では無い。
自分が作ったとはいえ、大したものだとエドは思う。
三人で住むには広すぎるような気もするが、それだけの規模でも無ければ魔導師と錬金術師の二人が同時に研究など出来ないだろう。
エドは大きく伸びをすると、内装を確認するべく中へと入る。
地下道や迷宮の出入り口には大抵街が形成されており、それは大きな規模にもなりうるがそれらの街にもひけを取らない広さ、というより街が一つそのまま中に入りそうな広さである。
「……好きなだけ実験出来そうだな」
「それより前に見取り図が必要よ」
エドの呟きに背後から声が響く。
「ディモレアか」
「なかなかやるじゃない。いい感じに出来てるとは思うわよ? でも、見取り図無いとカガリが困るわよ」
「ん? ああ、そうだな」
カガリは地図を作りながら進むというタイプでは無いので道しるべや地図が無いと確実に道に迷って行き倒れかねない。
エドやディモレアは例え迷ってもそこが迷宮や室内であれば壁を壊すなり錬金術で地形を変えるなりして進めるがカガリには出来ないのである。
「で、ディモレア。お前はカガリと一緒に買い物に行ったんじゃないのか?」
「行ってきたわよ? で、帰ってきたらこうなってたからアンタを探しに来たの。中の構成解るのアンタだけでしょ?」
「あ、そうか」
ディモレアとカガリが必要な物資を買いに外に行った時はまだ掘っ立て小屋のままだったので確かに中を知る筈が無い。
「で、カガリは何処にいるんだ?」
「外で待ってるわよ? 後、風吹いてきたから早く入れてあげないとマズいわよ」
道そのものは決して複雑ではないのでエドはすぐに外へと出ると、山と積まれた荷物の中でカガリはうずくまっていた。
「! おい、カガリ?」
「ん? ああ、エド殿か……心配するな、少し疲れているだけだ」
カガリはエドの声を聞くなりすぐに立ち上がると、山と積まれた荷物を担ぐ。
「大丈夫か? 無理そうならやっておくが」
「なに。案ずるな。これでもお前達よりは体力があるつもりだ。侍学科だからな」
エドが止める脇でディモレアは可笑しそうに少し笑うと、自分も荷物を担いだ。
「カガリ、馬鹿にしなくていいわよ。こいつは無いけどアタシは体力あるから」
「おい、ディモレアそれはどういう」
エドが最後まで続けるより先にディモレアは山と積まれた荷物の中から牛乳の瓶を取り出し、エドの口へと押し込む。
まるでそれでも飲んで待ってなさいと言わんばかりに。
エドが黙っている間に二人は荷物を担いで中へと消えていき、エドが一人残された。
「……………俺、牛乳は嫌いなんだけどな」
とにかく牛乳を飲みつつ、カガリになるべく無茶をさせないようにしないととエドは考えていた。
そしてエドはその頃、卒業前にカガリと寝ていた事をすっかり忘れていた。
当面必要な物資を倉庫に運び終え、防衛用のセキリュティ代わりに罠を仕掛け、カガリが道に迷わないように詳しい地図を作成し、とその日一日でやれるだけの仕事を終える頃にはとっくに日も暮れていた。
適当につまめるものをつまんだだけの夕食の後、それぞれの私室で休むか、というエドの言葉に二人が頷き、それぞれが部屋へと戻っていく。
そしてエドも、作ったばかりの自室へと戻った。
「……ふぅ。くそ、自分の研究所を造るのがこんなに忙しいとは思わなかった」
マシュレニア学府にいた頃は大規模な実験こそ出来ないものの、研究に必要な素材や資料も揃っていた。
しかし、卒業して独り立ちした今では素材集めこそ在学中も行っていたが器具作成や資料集めも自力で行わなくてはいけない。
そして自分一人ではなく、ディモレアの分も集めなくてはいけない。
何せ、今の二人は研究仲間なのだ。協力し合わなくては互いに精進する事も難しいだろう。
「……にしてもな」
そして、そこで疑問に思う事がある。
カガリは何故自分達についてきたのだろう。
マシュレニア学府は術士系に力を入れているとはいえ、それでも冒険者養成学校であるから術士系以外の学科も存在はする。
そして、術士系以外の生徒は大抵は冒険者となる事を選ぶ。最近は冒険者以外にも騎士団や衛兵隊、術士系であれば今のエドのように研究者やはたまた国家付きの研究員や学者になる事だって出来る。
最近の就職事情は厳しいらしいが術士系学科はまだマシな方だと言える。
カガリの腕前ならば、冒険者として期待のホープと言っても過言ではないレベルだろう。それなのに、何故一銭にもならないエド達と共に来る事を選んだのか。
「……カガリは、俺達と一緒にいるのがいいのかな」
そう考えるのが自然なのだろうか。でも、それで、本当にカガリは良かったのか?
本当は、このアイザ地下道を踏破した時のように、俺達と一緒に冒険したかったんじゃないか?
けど、今の俺達は―――――。
「ええい、何考えてやがる」
エドは自分の頭を軽く小突く。
今さら後悔して何になる。研究者として、錬金術士として、錬金術を更なる高みに――――俺はその為に。
いや、それよりも。
エドはベッドから立ち上がり、整理が終わっていない荷物の山の一番上、厳重に梱包された小箱を手にとった。
梱包を一つ、また一つと解いていく中で、手が震えているのが解った。
そりゃそうだ。こんな所で下手に暴走させたら命がないに決まっている。
「……………」
アイザ地下道で見つけた、紅の石。
錬金術であろうと魔術であろうと、その全てを増幅する。
「こいつを見つけてからだよな……」
エドが錬金術で、破壊と創造について考えるようになったのは。
共に精進する。
ディモレアとそう約束して、卒業後ここに移ってきたまではいい。
世界を壊す事じゃなくて、世界を救うと約束した。
でも。
「……この力を借りたとしても、どこまで行けるかが気になるんだよな」
何せ一度でもその力を知ってしまったからには。
世界すらも壊せると気付いてしまったからには。
でも、それは。
裏切り。
今、この場所に辿り着いた仲間達への。
「……………」
小箱を、もう一度だけ閉じ、そしてもう一度開いた。
紅の石が変わらぬ輝きを放っていた。
「それ、持ってきてたの?」
いきなり背後で声が響き、エドは文字通り飛び上がる程驚いた。
慌てて背後を振り向くと、シャツと短パン一枚という女子の寝巻きにしてはワイルドな、ついでにいうとかなり薄着のディモレアがエドの手元にある石を覗き込んでいた。
「な、なんだよいきなり……」
「別に。なんとなく来てみただけよ。部屋、隣りだし」
規模が大きいにも関わらず、三人の部屋が隣接し合っているのはやはり側にいた方が落ち着くからかも知れない。
それはその分、下手に騒げば隣りに筒抜けだという事でもある。
エドが考え事をしながら独り言をしゃべっていたのを聞きつけたのかも知れない。
「それ、確かこの前隕石呼び寄せるのに使ってなかった?」
「ん? ああ、そうだな。それだけの力はあるな」
ディモレアの言葉にエドはそう答えると、小さく首を振る。
「……下手に捨てて悪用されるってのも悪ぃしな。ただ……どうしたもんか迷ってたりはする」
「そもそもそれ、何処で見つけたのよ?」
「アイザ地下道だ」
「へぇ?」
その意外な場所にディモレアは驚きを隠さないで呟く。
「アイザ地下道は未だによく解ってない所が多いからかしら? 錬金術や魔術を増幅する石が産出するなんて知られたら大変な事になるわよ?」
「だろうな。それこそ、ろくな連中が集まらん。おおかたそれぞれ身勝手な事にしか使わないだろうさ」
強大な力を持つ事は、その力を使う責任が伴う。
その力を全て自分の為だけに使うのも決して、道理としては通っていないわけではない。問題はその力で何をするかだ。
「でしょうね。アンタがここに来たいって言った理由、それを誰かに使わせないため?」
「それもある。でも、そうは言っても俺もこれを持て余してはいるけどね……」
何せ、この物体そのものが構築式を有しているようなものだ。
錬金術や魔術をちょっとかじっただけの者が使っても膨大な力を発揮出来るだろう。
「……………まぁ、でも、これだけ大規模な施設作ったんだから、研究用にはいいんじゃない? アタシにも使わせてくれる?」
「そのうちな」
暴走の危険でも無ければ、の話だが。
エドは小箱の蓋を閉じて備え付けの机に慎重にしまうと、ベッドへと向かった。
その後ろに、ディモレアが続く。
「……部屋に戻らないのか?」
「気になることが少しあってね」
ベッドの隅に腰掛け、エドに視線を向けつつ口を開く。
「カガリの事よ」
「カガリの?」
エドが首を傾げると、ディモレアは顔をずいとエドに近づける。
「アンタがあの子をどう思ってるか知らないけど、あの子……アンタの事、意識してると思うわよ?」
「お前じゃなくてか?」
「んな事はどうでもいいわよ」
「おいおい……」
何回目かになる似たようなやり取りだな、とエドは思いつつベッドに座り直す。
すぐ隣りにディモレアが座る。本当にすぐ近くである。
息が届くほどの、距離。
その時になってエドは自分の中で鼓動が速くなるのを感じた。
いつの間にか、こうやってすぐ近くにいるのが恥ずかしい。でも、側にいたい。
出来れば、こうやって自分の事だけを見て欲しい。ずっと、ずっと。
エドがそんな事を考えていると、ディモレアは口を開いた。
「アンタはどう思ってるの? カガリの事」
「…………」
エドはすぐには答えられなかった。
あの日の夜――――確かにカガリを抱こうとした。でも、あの時既に、エドの興味は、ディモレアの方にあった。
すぐ脇にいる、息が届く距離の彼女に。
昔嫌いで、色んな出来事の果てに気がつけば気になっていて、一緒にいるのが嬉しくなって。
側にいると恥ずかしいけれども、それでも一緒にいたくて。
カガリよりも、目の前にいる彼女の方が気になる。
「答えてよ」
「…………あの日、カガリを抱いてたのは……カガリが訪ねてきてからだ。俺が、アイザ地下道に、行こうとしていたのに気付いていた。あの頃俺が考えてた事に……。
世界をやり直そうとしてた事に、真っ先に気付いたのはお前だけど。カガリも言わないで気付いていたさ。だから、あの日訪ねてきたんだ」
その時の自分と今の自分は違う、とエドは思う。
だがしかし、今でも時折このままの世界でいいのかと思う時もある。自分に手を下す力があるのに、このまま燻らせておくのかと。
でもその度に考え直す。
あの日、カガリは。
「俺を止めに来た。俺が世界を壊す権利など無いってな。そう考えてみりゃそうだ。俺達は神様じゃない。ただ一人の、錬金術士さ。破壊と創造の中で悩んでただけの。
破壊と創造のどちらが先かを考えて。創造の方を望んでたのに破壊の事を考えてた、な」
「…………破壊と創造のどちらかが先ねぇ……そんなの決まり切った事じゃない」
ディモレアは呆れたように口を開く。
「創造する方が先に決まってるでしょ。ものが無きゃ破壊なんか出来るわけが無い」
「……………」
黙り込んだエドに、ディモレアは更に言葉を続ける。
「だって……創造が無ければ、アタシ達だって存在すらしないわ。この世界が創造されなければ、今、この世界も無い。
そして世界を作った誰かさんが創造したから、破壊だって有り得る。でも、それはアンタの役目じゃない」
「…………」
「破壊も創造も、確かにアタシ達が出来る事の一つではあるけれど。世界だけは、アタシ達に手出し出来るものじゃない。この世界をアタシ達みたいに生きてる連中がどれだけロクな連中じゃないとしても。
この世界はアタシ達のオモチャじゃないから。アタシ達に許された―――――魔術とか錬金術で出来る限りなんとかして、それでどうにもならなくてもどうにかなるように頑張るしかないのよ。
それしか出来ないぐらい、アタシ達なんて小さい存在なんだから」
「……………」
「アンタだって、それぐらいは解ってるでしょ」
自分が世界と比べてどれだけ小さくて、無力な存在かという事を。
ディモレアは続けなくても、そう言っていた。
「……ああ」
解ってるさ、それぐらい。
でも、だからこそ自分にどこまで出来るかと思うのが、エドワードらしさでもある。
「俺は結局……自分で決めて果たせなかった事に未練を残し続けてたのかな……」
「でも、それは果たさない方がいい事だと思うわよ。アンタがどんな思惑でも―――――他から見ればただの極限の破壊でしかないんだから」
エドの呟きに、ディモレアはそう答えた。
「………………そうか」
「………………そうよ」
「………………なぁ」
「………………なに?」
すぐ隣り、ほんの少しだけ首を曲げてエドはディモレアを見ながらゆっくりと口を開く。
「俺らは……色々あったよな」
「ん? まぁねー。アンタとクレパスに落ちた事もあったし」
ディモレアは懐かしそうに「あはは」と笑う。
その時初めて、すぐ届く距離にいた。あの時と同じように、手を伸ばせば届く距離に、いる。
初めてキスをした事も憶えている。暗闇の中、弱り切った彼女を手にかけようとした唯一の記憶。
でもあの時、お互いに拒否をしようとはしなかった。
あの時からずっと、二人は出来る限り一緒にいるようになった。最初はなし崩し的に、続けて仲間として、そして最後に――――。
「あの時、俺さ……お前に、キス、したんだよな……」
「え? ああ、そう言えば……」
ディモレアは少し恥ずかしい事を思い出したのか、慌てて視線をそらす。
だがエドはその視線を追い掛けていた。
「あの時の続き」
「してもいいか」
「え?」
ディモレアが答えるよりも先にエドはディモレアの身体を抱き寄せ、ベッドに押し倒していた。
「エド……?」
そう呟いたディモレアの口を塞ぐ。
学生の頃から豊満な彼女の肢体に、本人も気にしている小さめの体格のエドはアンバランスに見える。
しかしエドはディモレアに覆いかぶさるようにベッドの上へと上がり込むと口の中へと自らの舌を出した。
ねっとりとした唾液が唇の間から溢れる程、深い接吻を交わす。
雫を引いて唇が離れた時、エドの手はディモレアの身体へと伸びる。
「………下着、付けてないのか?」
「……ね、寝るだけだったからね……」
恥ずかしそうにディモレアが呟く中、エドはシャツをまくりあげ、上へとずらしていく。
シャツの下の、豊満な乳房が露になる。
学生だった頃、ディモレアの豊満な乳房に憧れを抱く男子はそれなりにいた。何せ従弟であるダンテですら気になると言っていたのを聞いた事があるぐらいだ。
その乳房を、ゆっくりと揉み下すと、ディモレアは小さく声をあげた。
普段まず出さないような―――――あえて言うならクレパスに落ちた時に見せた弱みのような、そんな感じのする声にエドは少しだけ笑む。
「おいおい、お前そんな声出せるのか?」
「アンタが出させて……るんじゃない……」
何度か揉み下した後、視線はまくったシャツからその下の、短パンへと移る。
ゆったりとした感じだった短パンは汗で張り付き、ちょうどその下に在るパンティの形ですら見えるほどだ。
エドは小さく口笛を吹く。
胸を揉み下していた手を身体をなぞるように下へとスライドし、短パンのホックを外す。
外された短パンが足へとずれ、汗と何かで濡れたパンティが露になる。
「……で、何で濡れてるんだ?」
楽しそうに言い放つエドの言葉にディモレアは答えない。
ただ、ベッドの上に投げ出されていた両手をエドの背中へと回した。
無言の、サイン。
その日、エドはディモレアを初めて抱いた。
「……んっ…………」
ディモレアも処女では無いのか、挿れた時に特に出血は無かった。
エドの分身はやはりその体格に似てあまり大きいものではなく、奥まで特に抵抗も無く入ってしまった。
「……ここまで抵抗無く入るってのも珍しいな」
「アンタだからじゃない? でも……それでも、アンタが中にいるって解るわよ……こう、目を閉じてても」
目を少し閉じたディモレアはそう呟く。
「アンタと今一緒になってるのって……なんか不思議ね」
確かにそうだな、とエドは思う。
ほんの一年前までは思ってもいなかった。嫌いだった。この世界ごと壊してしまうかも知れなかった。
でも、今、実際にしている事は―――――。
今、目の前にいる彼女を愛している事。
「ぁ……んっ……!」
奥へと届くように、エドは少しだけ腰を振る。
先端が奥に触れ、ディモレアが小さく声をあげる。それほど大きくは無かった分身が彼女の中で強くそそりたち、すぐにでも精を放ちそうな状態にまで来ていた。
「あんっ……んむっ!?」
ディモレアの上へと覆い被さり、エドはその胸を舌で刺激していく。
下で繋がっているだけでなく、胸への刺激も銜えてディモレアは少しだけ意識が遠のきかけた。
「…ぁ……んぁ………ん」
「っ……出す、ぞ」
その直後、エドが力強く腰を打ち付け、同時に先端から熱いものがディモレアの中へと吐き出される。
ディモレアが意識を持ち直したのか、手を伸ばしてエドの背中に手を回す。
自らの胸へと顔を埋めているエドの額に接吻をし、その温もりを確かめるかのように舌を伸ばした。
性を交わしたのは二人とも決して初めてではないが、まるで特別な事でもしたかのように思っていた。
その理由は、二人はまだ気付いていない。
でも。
お互いの中で、それぞれが特別な存在であるという思いだけは、更に大きくなりつつあった。
そう、彼女の事を差し置いて。
その扉一枚向こうに、カガリがじっと息を潜めていたのを二人は気付いていなかった。
最初にその異変に気付いたのはディモレアだった。
「……ねぇ、カガリ?」
「なんだ?」
研究生活を始めてはや二ヶ月ほど、カガリがようやく道に迷わなくなったある日の朝。
ディモレアがカガリの用意した食事が明らかに前よりも増えている事に気付いた。
「最近、食べる量増えた?」
「にゃうっ」
文字通り痛い所を突かれたのか、カガリは尻尾を逆立てて驚く。
「……この年になるともう胸より腹に行くわよ?」
「む……、で、ディモレア殿ほどスタイルが良くないのだ。別にかまわんだろう。私はまだ伸びる!」
カガリはそう言って胸を張ると、山と積まれた朝食に取り掛かる。牛乳やらおにぎりやらを両手で食べていくその姿は普段のカガリとは大分かけ離れていた。
「……後で太っても知らないわよ? フェルパーは素早い種族なのに鈍くなってどうするのよ」
ディモレア個人として彼女を心配した警告だったのだが、何故かカガリは食べていく手を止めた後、コップを掴む。
「ふにゃー!」
珍しくカガリが癇癪でも起こしたのか、手にしていたコップをぶん投げ、ディモレアが投げられたコップを回避する。
そして扉が開き、寝惚け眼で顔を出したエドに直撃する。
「ふごぉっ!?」
「あ、すまないエドワード殿」
「朝から何やってるんだお前ら?」
とりあえず飛んできたコップを拾ったエドが椅子に座ると、ディモレアがすぐに口を開いた。
「いや、カガリが食べる量増えたから太るわよって言ったんだけど……」
「ディモレア殿のようにスタイルを良くしたいだけだ」
「…………」
エドはカガリとディモレアを見比べた後、ため息をついて口を開いた。
「あのなぁカガリ」
「なんだ?」
「人はスタイルじゃないぞ」
「……………」
「ついでに言うがお前が俺に言った事だぞ」
相も変わらず学生時代からあまり身長が伸びてないエドはそう言って胸を張る。
「………………」
「ま、でもぶくぶく太るよりは今のままの方がいいが」
エドがそう口を開いた時、文字通りカガリは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。
「……そうか解った」
「……カガリ?」
「それでエドワード殿がディモレア殿を選んだとしても文句は言えないと言う事か」
珍しい事だ、とエドは思った。
カガリが滅多に無い自己主張を、強い口調で言っている。
「ちょい待ち。カガリ、話が見えないんだが」
「…………エドワード殿?」
カガリの額に青筋が浮かび、その剣幕にディモレアが思わず後退し、エドも躊躇わず少し後退する。
「私が何故ここについてきたか知っているか?」
「……いや、解らない」
その理由をエドは知らなかった。気になってはいたが、聞けずじまいだったから。
「……くだらない事かも知れないがエドワード殿と離れたくなかった」
「……あー……ま、そりゃ確かにな。一年……あるかないかとはいえ、あんだけ色々と皆でやってりゃな」
エドと、ディモレアと、カガリ。ダンテとパーネ。
共にパーティ仲間としていたのは一年にも満たないのに、それでもその中で結ばれた絆は太い。
前人未到のアイザ地下道ですら踏み越えるほどに。
「……そう考えるとな」
カガリはエドに視線を向けると、少しだけ顔を近づける。
「エド殿と共にいたい、というのは駄目か? ディモレア殿の方が、私よりもいいのか?」
「べ―――――」
エドは言いかけてふと停まる。ディモレアの空気が変わったと感じたからだ。
そう、ディモレアがまずカガリに向けた事の無い感情を、怒りを向けている。
「カガリ」
「……なんだ、ディモレア殿?」
「アンタ、おかしいわよ? 別にエドはアンタ一人のものじゃないでしょ?」
「別にディモレア殿のものでもないだろう。私が気にかけて悪いか」
「それはそうだけど……」
ディモレアが口ごもった時、カガリは何かを言いかけて急に―――――顔色が変わった。
「おい、カガリ?!」
慌ててエドが駆け寄り、ディモレアも近づく。
「大丈夫か? 立て、る……?」
エドがカガリを助け起こそうとした時、その時になって気付いた。
カガリの腹部が、明らかに膨らみかけている事に。
それが無駄な脂肪や、ましてや鍛えた筋肉ではない事は解る。
そう、明らかに妊婦の膨らみだった。でも何故――――とエドは思いかけて思い出す。
「……………………なぁ、カガリ。それ、もしかして……」
エドが震える声で呟き、ディモレアも思い出したようにエドとカガリを見比べる。
「………そうだ、あの時、エドワード殿に抱かれた時に、出来た子だ」
まだマシュレニア学府にいた頃。一度だけエドはカガリを抱いた事があった。
胎児の育ち具合から逆算すればその時と辻褄が合う。
「…………なんてこったい」
エドは思わず呟き、ディモレアはディモレアで視線をエドに向ける。
「……これじゃあしょうがないわね」
「しょうがないって何がだ?」
「言った通りの意味よ」
エドの問いにディモレアは首を振る。
「せいぜい幸せになりな―――――」「ちょっと待て」
エドはまず椅子に座り直すと、頭を軽く抑えてから再び口を開いた。
「……ともかく。カガリの中に俺の子供がいるとして、だ」
「うむ」「ええ」
「だが問題はここからだ」
そう、あの時そうであったにせよ。エドの興味は既にディモレアに向いている。
でもカガリはカガリでエドから離れたいとは想わないし、それはエドだってついさっき理解した。
そこまで必死になっているのなら、何を離れる必要があるのか。
でも、それはカガリだけでなくディモレアも同じこと。
「カガリは…俺と、離れたくないんだな……それだけが理由じゃなくて、カガリが本当に離れたくないっても解る。けどな。俺にも言わせて欲しい」
そもそもエドが此処に来た理由はただ一つである。研究の為だ。
その為にはディモレアと共にいる事も理由だった。だがしかし。
ああして、疑問に思ったにせよ、なんだかんだ言ってカガリも仲間である。共に潜り抜けた、仲間だ。
「俺は――――――」
「まさかとは想うけど、どっちとも離れたくないなんて言うの?」
「……ディモレア、俺の台詞を先に言うな」
まさか言われるとは思っていなかったが、事実そうである。
エドが息を吐いた時、ディモレアはため息を吐いた。
「けどねぇ、エド。そりゃマズいわよ」
「何がだ?」
「カガリとアンタに子供が出来てるのにアタシがここにいるって事よ」
「それは問題無いだろう。ディモレア殿はエドワード殿と研究を続ける上でのパートナーだろう? だから、これとは」
「無関係、と言いたいの?」
ディモレアの言葉に、カガリはおずおずと頷く。
「でもそれは無いわね」
「どうしてだよ?」
「幾ら研究に都合が良いからって理由だけで、同居したり寝てたりするような女だと思ってたのアンタら?」
「………………」
そういう事か。カガリと同じ理由である。
「……そりゃそうだよな。俺だってそうだよ」
エドは天井を仰いだ。
確実に成長していく、カガリの中の子と。
でも、ディモレアへの思いもまた、エドの中で大きくなっていくのだった。
その頃、それは既に始まっていた。
地下道も通っていない小さな街の青年が熱に倒れた時、家族も本人もただの風邪だろうと思っていた。
しかしそれが新種の熱病だと言う事に気付くのに、一ヶ月余りかかった。その頃には最初の患者である青年は死んでいてその家族に感染していた。
爆発的な感染力と、手の施しようが無く進行していく症状。
その小さな街から近隣の街、そして地下道や街道を通る冒険者達に乗って様々な街へ。患者はあっという間に広がっていった。
その治療法は見つからず、症状を遅らせる事は出来ても進まない。
医術に精通する者達は、魔導士や錬金術士の力を借りた。しかし彼らもまた、どうする事も出来ないまま事態が進んでいった。
そしてその魔の手は、彼らの棲む地にも近づこうとしていたのだった…。
…投下完了。
十二月ってどうして忙しいのだろう。
放置されると胃が痛くなるよね
忘却の彼方にレアモンスター。こんばんは、アトガキモドキです。
前後篇の前篇だけで切れていた話の続きですごめんなさい。
前篇を見ていない人は、過去スレと保管庫を参照してくださいごめんなさい。
今回も激甘です。それでは↓からどうぞ……ごめんなさい。
腕を引っ込めて膝に頭を預け、目を瞑りかすかに頬擦りをするフェルパーの紅い髪を、優しく撫でつける。
彼が刻んだ肩の傷を魔法で治してから、もうずっとこの調子だ。
どのくらい時間が過ぎたことだろう。フェアリーははめていた手袋を外し、頭頂部からうなじまでを素手でさすり続ける。
「なあ、フェアリー。聞きたいことがあるんだ」
今はすっかり落ち着きを取り戻し、フェルパーは会話が出来るまでになっていた。
「ん?なあに?」
「フェアリーはさ、その、ヒューマンとか……気にならないのか?」
二股に分かれたフェルパーの尻尾が、先のほうだけ小さく揺れる。
フェアリーという種族は、神を崇める聖職者のように、ヒューマンを尊ぶ傾向にある。
これまでの友人関係を改めて思い起こした。そういえば、自分から積極的にヒューマンと関わろうとした覚えは、あまりない。
「ああ。だってあのひとたち、怖いんだもの」
フェルパーが首を捻り、先程まで床を眺めていた顔をこちらに向けた。
意外そうな、ひどく驚いたような表情にも、どこか愛嬌がある。
「怖い?ヒューマンがか?」
「図書室でちょっと調べると分かるけど、伝説だとか神話とかにも、やけに出番のある種族じゃない?」
「あ、ああ。そのくらいは、知ってる」
「神様に敬愛されてるとか言うけど、悪いこともたくさんした種族でしょ?なんかそのへんが、おっかなくて」
ひと呼吸置いて、「ディアボロスより天罰下される回数も多いし」と付け加える。
他のフェアリーがどうしてああもヒューマンに盲目なのか。幼少より疑問に思っていることだが、いまだによく分からない。
「じゃあ……オレは、どうして平気なんだ?」
「え?」
「昔からそうだった。オレは暴れだしたら見境もなくなるのに、フェアリーは怖がらなかった……なんでだ?」
フェルパーの顔色は変わらない。さっきの質問と同じように、下心のない素朴な疑問なのだろう。
「うーん。なんでだろうね。あたし、危ないと思ったらさっさと逃げちゃうのに、フェルパーが暴れてるのは平気なの」
根拠と呼べるものは思いつかなかった。昔から長い付き合いだが、今日まで結論には至っていない。
しかしフェアリーの中では、たとえフェルパーが両手に刃物を構えていたところで、ちっとも怖くないのだ。
同じことをヒューマンがしていたら、荒くれの大男と、いうことを聞かない子供ぐらいの差を感じる。
「ふうん。なんでだろう?どういうことなんだ?」
「分かんない。だけど、フェルパーが暴れてるの見てても、逃げようと思わないの。不思議だね」
「本当に愛する者が錯乱した場合、その隣人は彼に、彼女に、追放よりも理解を求めるだろう」
聞きなれた声だ。十年、いいや、もっと前から、耳に馴染みがある。
視線を持ち上げて正面を見る。開いた引き戸に寄りかかり、バハムーンが部屋を覗いていた。
「まーた始まった。それ、誰の言葉?」
「周囲の反対を押し切って、セレスティアを嫁にとったディアボロスの言葉だ。やっこさん、発明家だったかな」
バハムーンはコーヒーカップを二つと、香ばしい匂いのするバスケットを手にしている。
「まだなんも食ってないんだろ?軽くでいいから、腹に入れときな」
教室の床に置かれた籠には、フライドチキンとホットケーキと、少々のおにぎりが詰められていた。
片手に持った二つのコーヒーを、ベージュ色のものはフェルパーに、ブラックはフェアリーに、それぞれ手渡す。
「詳しい話はエル子から聞いたぜ。派手に暴れたそうじゃねぇか」
猫舌にも程よいミルクコーヒーをすすったフェルパーの耳が、しゅんと垂れた。
「なあ……そのことなんだけどさ」
「最後まで聞けや。フェル男、てめぇクラ坊に、二人だけでも逃がせって言われたんだってな」
しょげるフェルパーに構わず、バハムーンは台詞をさえぎって質問する。
腕組と仁王立ちがやけに様になるのは、学科のせいか、種族のせいか。
「あ、ああ……でも、オレは……」
「俺達は六人パーティだ。思い出してみろ、あの時不意打ちをくらってから、誰がどんな順番でやられた?」
「えっと、ディアボロスと、バハムーンと、クラッズとフェアリーと……あ」
指を折って数えていたフェルパーの猫耳が起き上った。
「全部で四人。6引く4は2だ。ほらな。約束守れてるじゃねぇか」
にっと歯を光らせて笑うバハムーン。ランプの薄灯りでも分かるほど清潔な白だ。
よく見ると、制服の襟首には、ぐるぐると真新しい包帯が巻かれている。
「いいか?てめぇはてめぇが思ってるほど、頼りない奴でも、弱っちい奴でもねぇ。もっとてめぇに自信を持ちやがれ」
「……そう、なのか?」
「エル子なんか、おかげで生き残れたって言ってたぞ。クラ男も、フェル男ならやってくれると思ったってよ」
そこまで喋ってから、バハムーンはバツの悪そうに頭をかいた。
「け。説教なんざ、俺のガラじゃねぇや。でもよ、この場にいない後三人、皆てめぇを待ってんだぞ」
ぶっきらぼうに吐き捨て、そっけなく背中を向けたらそれ以上語らず、バハムーンは夜の校舎に消えて行った。
心配かけやがって。さっさと帰ってこい。赤い翼と後ろ姿がそう続ける。
「……ほらね。フェルパーがどんなに荒れてても、みんな怖がらないんだよ。いつもの、優しいフェルパーを知ってるから」
「そうか……そうかもな」
フェアリーはバスケットの中から、フェルパーの好物であるフライドチキンを取り出し、口の前まで持っていく。
「お腹すいたでしょ?さ、お食べ」
差し出されたフェアリーの手の上から、フェルパーは肉にかじりつく。最初のひと口は遠慮がちだった。
そのうち、両手でそれを掴み取り、大口を開けてがっつき始める。よほど腹が減っていたのだろう。
「ほらほら、そんなにあわてないの。誰もとらないから、ゆっくり食べなさい」
またフェルパーの頭を撫でてやる。癖の強い頭髪が指に絡みついた。
バスケットに入っていたおにぎりとフライドチキンをすべて平らげると、フェルパーは再び膝枕に寝転がった。
先程と比べて満足げな表情を浮かべており、フェアリーも安堵する。
もう一度、赤毛の短髪を指でなぞる。心地よさそうに、猫耳が反応した。
「……ずっと前」
「え?」
「ずっと前にも、こんなふうにフェアリーが頭を撫でてくれたことがあった」
フェルパーは薄眼を開けていた。視線の先に、自分の過去を投影されているようであった。
「確かあの時は、オレはケンカしたすぐ後で、フェアリーにやつあたりした。ひどいこと、さんざんやった気がする」
撫でていたフェアリーの手が止まる。その時の様子はすぐに思い出された。
つい先日、その頃の夢を見ている。フェルパーは、どこまで覚えているのだろう。
「そういえば、そんなこともあったね。フェルパー、あたしに何やったか、覚えてる?」
「……あんまりよく覚えてない。だけど、めちゃくちゃひどいことしたってのは、覚えてる」
むくりとフェルパーの頭が持ち上がった。両手を床に付き、上半身が起き上る。
「そうだ。あの時だって、オレはさんざん暴れてから正気にもどって……フェアリーに、謝ってた」
薄明かりの中でも、フェルパーの眼は黄金色に輝いていた。暗がりにも目が慣れてきて、尻尾の先までしっかり見える。
すっかりおとなしくなったフェルパーは、目尻が垂れ、申し訳なさそうな表情だった。
「めいっぱい怒られたけど、最後にはオレのこと許してくれて……やっぱり頭を撫でてくれたよ」
「ほんとフェルパーは、昔っからそう。頭撫でてあげると、おとなしくなるよね」
「だって、いつも撫でるのは、フェアリーだったろ?叱るのも、なだめてくれるのも、最後は、隣にいたフェアリーだった」
ふっと、フェルパーの口元が緩んだ。ほとんど見たことがないような、深く穏やかな雰囲気を纏う。
「しょっちゅう迷惑かけて、ごめんな。けど、フェアリーに優しく撫でてもらうのが、何より嬉しいよ。ありがとう」
突然、左の胸が強く脈打った。急激に鼓動が早まり、不意に息がつまって続かなくなる。
大事にしていた飼い猫に、ご主人様大好きです。なんて、いきなり告白されたような。
満面の笑みと、柔らかい囁き。徐々に呼吸が回復する中で、心の枷が音を立てて外れた。
「ねぇ……フェルパー」
こんな甘い声が出せたものかと、自分の喉を疑いたくなる。
ずいと詰め寄られたフェルパーも、あっけにとられているようだ。
「頭よりも気持ちイイところ……撫でてあげよっか」
くすぐったいくらいの力加減を意識して、子猫の股に手を伸ばす。
「ふぇ……フェアリー?ん、んむっ!」
何か言おうとしたのだが、フェアリーは唇を重ねて黙らせる。ふわっと女の子の甘い匂いがした。
幼馴染とキスした覚えなど、そういえばフェルパーには全くなかった。舌を絡める、過激な口づけ。
頬に触れていないもう片方の手は、依然として股間を弄っている。
「んふ、むぅん……ちゅっ、ぴちゃ……ぷはっ」
息が続かなくなったらしく、フェアリーのほうから顔を離した。
糸を引いている口元を指でなぞって、いたずらに、得意げに笑う。
「ふふっ……どう?女のキスよ」
「フェアリー?なに、なんのつもりだ?」
「もちろん、フェルパーを誘惑するつもり。ほらほら、もうこんなになってるよ」
いつの間にか、ズボンを下ろされていた。すでに充実した陰茎が、フェアリーの手の中で脈打っている。
「あ、こ、これは、フェアリーが」
「あっつくて、硬ぁい……ほら、こうすると……気持ちイイでしょ?」
反論させる間も与えず、手にした肉棒をしごき始める。時折手を止めて唾液を垂らし、根元から先までの上下運動。
フェアリーの手淫は柔らかく、涎が水っぽく音を立てる。久しくしなかった自慰よりも格段に良い。
「うっ、くぅ……フェアリー」
「あははっ、どんどんおっきくなってるね……もっともっと、よくしてあげる」
うわ言のように、彼女の名を呟く。フェアリーはモノを刺激しつつ、猫背のフェルパーの後ろに回る。
「出そうになったら、ガマンしちゃダメ。フェルパーの弱いトコなんて……全部知ってるんだから」
息のかかる距離で囁いたフェアリーは、そのまま舌を伸ばして耳に触れた。
途端にフェルパーの身体はびくんと跳ねて、全身に電流が走ったようになる。
「ふぁ!?フェアリー、ダメだ、耳はあっ!」
「フェルパーのオチンチン、ビクビクしてるよ。ね、もうイキそう?イッちゃいそうなの?」
耳をなぞりながら、より強く激しく指先で幹を摩擦するフェアリー。もはや我慢も限界だった。
「ああっ、フェアリー!イッ、イクうっ!」
ひときわ大きく一物が膨張し、次の瞬間には白濁を放っていた。その間も、フェアリーの手は止まらない。
昇天して肢体をびくつかせるフェルパーを、フェアリーはただ眺めるばかり。
「いっぱい射精たね……あは、元気元気」
射精が終わっても萎えないフェルパーの亀頭を、フェアリーが指先で軽くつついた。
「うああっ!フェアリー、それもイイっ!」
一度は果てたフェルパーのペニスを、今はフェアリーが口に含んでいる。
唾液をたっぷりとため込んでの口淫が、まだまだ行為に耐えうるだけの硬度とサイズを呼び戻す。
「ちゅぷ、ちゅく、んぷ、くぷっ。んはっ、フェルパーは、手でするよりも、口でするほうが好きなのかな?」
「んっ、なんで?」
「フェルパーの、さっきより熱くて硬いよ?あむっ、じゅぷ、じゅくっ、んふぅっ」
先端部を咥え、頭ごと動かしての強烈な吸いつきでむしゃぶりつく。
じゅぽじゅぽと淫猥な音が響き渡り、五感のすべてを侵されるようだ。
フェアリーは時折、上目使いで視線をよこし、それがぞくぞくとオスの本能を刺激する。
「ああ〜イイっ。フェアリー、オレまた射精ちまうっ!」
「んふ、いひよほっ。いっふぁい、らひふぇっ」
もごもごと口にしたまま返事をしつつ、フェアリーは玉袋を揉み解す。
亀頭を舌先でほじくりながら、竿を激しく摩擦してきた。
「あっ、また、またイクっ!フェアリー、口に……ううっ!」
反射的にフェアリーの頭を押さえつけ、喉の奥まで侵入して射精する。
己の分身がのたうつたびに、精子を吸い出そうとするかのように、フェアリーが強く吸い上げてくる。
たまらず二度三度と大きく痙攣し、数秒間の長い絶頂が続いた。
「はぁ、はぁ……ごめん、フェアリー。自分でも無意識に、突っ込んじまって」
「ん……ちゅうぅ、ちゅぱっ。あははっ。喉の奥まで、マーキングされちゃった」
ぺろりと舌を見せて、軽口をたたく。相当な量を発射したつもりだが、全部飲みこんでしまったのだろうか。
「二回目なのに、いっぱぁい……おまけに、まだまだ元気だね」
今度は先ではなく峰をつつかれる。全く衰えていないようで、はじかれてもすぐ元の位置へと落ち着く。
自分のモノとはいえ、底なしにすら思える精力が、少し恥ずかしい。
「じゃあ……本番しちゃっても、いいかな」
「え?本番って……フェアリー?」
目の前でフェアリーはスカートをめくりあげ、今まさにパンティを脱ごうとしていた。
ただ白いだけのように見える下着は、心なしか湿っているようでもある。
尻を突き出し、フェアリーの指で開かれた亀裂からは、蜜がたっぷり滴っていた。
「フェルパーのそれ、元気いっぱいのオチンチン、ここに頂戴」
フェアリーの眼が、艶っぽくうるんでいる。
腰に手を当てたところで、ふとフェルパーの動きが止まる。
「どうしたの?」
「……いいや。気のせいかもしれないけど、前にもこんなことがあったような気がするんだ」
ほとんど記憶にないことだった。異性との性行為など、これが初めてのはずである。
フェアリーにはあきれられるかと思ったが、ふっと軽めな溜息の後には、意外な返事が待っていた。
「ねえフェルパー、覚えてる?フェルパーがうんと子供だったとき、あたし、一回だけ襲われたことがあるの」
いくつのとき、とは明確に示さなかったが、だいたい初等教育を受けていたころだと、フェルパーはぼんやり考えた。
「襲われた?どういうことだ?」
「うん。あたしね……フェルパーに、レイプされたことが、あるんだよ」
視界が暗転した。フラッシュバック。当時の映像が新鮮に蘇る。
あの日は同級生とケンカをして、取っ組み合いの末に、相手にだけひどい大ケガを負わせたのだ。
現場から逃げ出し、ひとり物陰にうずくまっていたところを、フェアリーに見つかる。
苛立っていたせいだろう。性に目覚めたばかりのフェルパーは、おもむろに彼女を……。
「……あ……あぁ」
間欠泉のように罪悪感と背徳感が噴き出してくる。どうにもしまらない、情けない声が出た。
目の奥が煮えたぎり、叫びだしてどこかへ走り去ってしまいたい気持ちになる。
「フェルパー、あのときのこと……まだ、覚えてたんだね」
「フェアリー……オレは、オレはっ」
金縛りにあっているらしい。足がすくみ、全く動けずにいる。
やがて、フェアリーがゆっくり起き上り、フェルパーの頬へ唇が吸いついた。
「あのときは、無理やりだったけど、犯されたのは下だけだったから。だから、さっきのが、あたしのファースト・キス」
驚くほど穏やかなフェアリーの笑顔は、一筋の水滴で濡れていた。
「あたしはもう、全然気にしてない。だから、今夜のこれが、あたしたちのちゃんとしたヴァージン……てことにしない?」
今一度、フェアリーが秘部を突き出す。オスの性だろうか、女性器を目にするだけで、勃起は回復する。
挿入部の位置を確認し、先端を当ててフェアリーの腰に手を添える。わずかな挿入でも吸い込まれそうだ。
「……挿入るよ」
「うん。フェルパー、来て」
体重をかけ、一気に突き入れる。フェルパーの侵略を防ごうとする幕のようなものは、何もなかった。
「んああっ!挿入った……フェルパーの、おっきいっ」
「フェアリー……フェアリーの中っ……ぬるぬるが吸いついて、気持ちイイっ!」
初めて行為に及ぶ男女は、きっとこんな感じであろう。
一度は経験したこととはいえ、長年眠っていたその感覚は、あるいは初めてより具合がいいのかも。
「い、イイよフェルパー……そのまま、動いてぇ」
フェアリーが言いだすより少し早く、フェルパーはすでに動いていた。
腰を引いて打ち付けるたびに、弾力ある尻が弾かれる音と、かき回される秘裂の水音がこだまする。
一突きずつ、醜い過去の過ちや、後ろめたい理性が消えていく。
「あっ、ああん、ふぁっ!フェルパーのオチンチンっ!あたしのオマンコにぴったりで、気持ちイイっ!」
「凄いよ、フェアリーのアソコっ!グチャグチャで、アツアツで、からみついてくるっ!」
「あはあっ!そこイイっ!もっ、もっと深くぅ!もっと激しく突き上げて!ああっ!」
「フェアリー、キスしてっ!キスしてくれえっ!」
フェルパーが叫ぶと、フェアリーが上体を起こして、ざらついた舌をほおばる。
バックの体制のまま首元にしがみつき、アクロバティックな格好だ。
「んっ、んん……っは、フェアリー、射精すときは、どこに射精したらいい?」
「うぅんっ、中でいいよっ。今夜は特別……んあぅ!このままドピュッてさせたげるっ!」
気のせいか、フェアリーのほうからも腰を突き出している感じがある。
ビーストの精力にやられているのか、すっかり快楽におぼれているのか、フェアリーははしたなく喘ぎ散らす。
普段の強気な笑顔に見え隠れする、堕落した甘い表情がたまらない。
「フェアリー、気持ちよすぎて、オレまたイキそうっ」
「いいよ。いっぱい、ドクドクしてえっ!あっ、あたしも、もうダメぇ!」
淫らに催促されてしまっては、いよいよフェルパーは耐えきれない。
ぞくぞくと昇ってくる射精感に合わせ、深く最奥へ突撃する。
「うっ……射精るっ!」
「ああぁっ!イクぅ!イクイク、イクうぅー!」
今晩三度目に放たれたスペルマが、フェアリーの子宮へ注ぎ込まれていくのが、伝わったように思えた。
最低限の事後処理もせずに、行為が終わった後の二人は、その場に寝転がっていた。
「……フェアリーの、オマンコ」
「なあに?」
「……気持ちよかった」
「あははっ。フェルパーのオチンチンも、凄かったよ」
「また……シテもいいかな?」
「う〜ん、毎日はダメよ。中毒になるといけないし、フェルパー元気だもんね。いい子にしてたら、またシテあげる」
フェアリーは、相変わらず頭を撫でている。さんざん射精した後ということもあって、程よい心地よさ。
心なしか、いつもより彼女の掌が暖かいようである。
「今更だけど……ゴメン、フェアリー」
それで許されるとは、あまり思わない。過去というからには、取り返しは付かない。
謝ったそばから泣き出しそうになっているフェルパーは、自分が情けなくて仕方なかった。
それでも、フェアリーはいつも通りの、ちょっと強気で、活き活きとした微笑みを見せた。
「ちゃんと謝ってくれたから、そのことは許してあげる。そのかわり」
言葉を区切った。何を言われるのだろうかと、少し身構えてしまう。
「自分を大切にして。捨て身はいいけど、フェルパーがちょっと無茶するだけで、結構心配なんだから」
眉が垂れていた。あきれながらフェアリーがたしなめるときは、いつもこんな顔になる。
一瞬、あっけにとられたが、すぐ我に返って返事をした。
「わかった。もうフェアリーを心配させるような無茶はしないよ」
「そうして。あたしだけじゃない、バハムーンや他の皆も、あなたのこと心配しちゃうから。ユビキリゲンマンだからね」
張り切って小指を繋ぐフェアリーともども、子供に戻った気がした。
あの頃から、バハムーンとやんちゃをしていた。ディアボロスも一緒になって、四人でおやつを食べたりもした。
やがてクロスティーニへ入学し、エルフが、クラッズが仲間になった。同級生にも自慢できる友人だ。
今までのことを振り返ってみれば、こんなオレにも仲間がいるじゃないか。帰れる場所と、その温かみに気がつく。
「……フェルパーがなんで怖くないのか、なんとなく解ったかも」
「え?」
ふっとフェアリーの顔が弾けた。燭台の灯りではかなわないくらいの、華やかな微笑み。
「かわいくて、子供だったあの頃と、中身がちっとも変わらないんだもん」
蝋燭の明かりが揺れた。照明の角度と部屋の暗さで、赤らんだ頬をごまかせていたらいいと思う。
アトガキモドキが現れた!
アトガキモドキからは敵意を感じない。
えー……大変長らくお待たせしました。フェル×フェアの後篇でございます。
そもそも私のことを覚えていらっしゃる方がおいでかと小一時間、
そしてこんなにも遅くなってしまって面目が立たないだろと小一時間、
さらにスレの容量ギリギリに滑り込むのは無茶だろと小(ry 本当にごめんなさい。
え?かけた時間に品質があわない?そもそも賞味期限切れ?ごめんなさい。イペリオンを唱えないで。
放置でトンズラという最悪の事態は回避ということで、ああもうほんとg(ry
謝ってばかりですね。今夜はこれでご勘弁を。それではノシ
アトガキモドキは挨拶をして立ち去った。
GJ!
長い間待ってたかいがあった!
326 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 04:37:30 ID:4DCIyr9H
>>313 GJ
な、なんだってー!!!
相変わらずこっちの予想を遥かに上回る展開。流石。
そしてエドの鈍感ぶりも流石。
>>325 乙!
おお!ついに続きが!待ったかいがあった!
大丈夫、忘れてませんよ。
遅くなっても大丈夫です。
ここに、もっとひどいのが居ますから。
このスレの最初に投下した、アレ。
ようやく第一話が書き終わりました。
容量の問題で投下は次スレになります。
…第二話は、もっとはやく書きます。すみません!
・Δ・)ととモノエロパロまとめサイトとか無いのー?
・・・とまぁROM専が言えるセリフじゃないなスマソ
ノシ
328 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 18:46:25 ID:4DCIyr9H
329 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 18:48:05 ID:4DCIyr9H
あれ、言葉が変だな。すみません。
>>328 いや、結構たくさんのSSがあるから独立した保管庫がありそうだなーと思っただけだ
失礼した、以後自重する
331 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 18:37:04 ID:BeWbZoAL
埋めネタ投下。容量ギリギリいけるはず
お相手はドワ子。では投下します
初めて出会った相手を判断するとき、まずは種族が重視される。次いで性格、見た目と続いていき、こまごまとした要素を積み重ねた上で
評価を下す。そのため、いかに人間的に優れていようと、種族や性格で損をする者も多い。
彼はそんな種族の代表格、ディアボロスであった。おまけに性格も悪く、学科は忍者である。戦闘力も高く、有用な魔法を覚え、
盗賊技能までもを併せ持つこの学科は非常に需要と人気が高いが、その技術は主に暗殺のためであり、顔色一つ変えずに
敵を殺すこの学科を、快く思う者は少ない。あくまで冒険に有用だという理由で人気が高いのであり、人間的には大いに問題がある、
というのが、大方の意見である。
彼自身も、それはよくわかっていた。種族でまず嫌われ、性格でさらに敬遠され、おまけに学科でも人を遠ざけているため、パーティの
仲間とも必要最低限の関わりしか持とうとしなかった。また、慣れ合えば甘さが出る。そういったものを極端に嫌う学科でもあるため、
彼自身はその境遇に十分満足していた。
が、変わった人物というのはどこにでもいる。
この時も、彼は体育館へ向かって歩いていた。一人で鍛錬をしようと思っていたのだが、その背中に元気いっぱいの声がかかった。
「あ〜!見つけたー!」
その声に、ディアボロスはうんざりした溜め息をつく。その顔は不快を通り越し、『嫌な奴に見つかった』という、一種悲壮な表情が
浮かんでいた。
「……帰れ」
「帰るかー!今日こそは絶対勝ってやるんだからぁー!」
尻尾をぶんぶん振り回し、とてとてと走ってくる小さなドワーフの女の子。
「さあー、勝負勝負―!」
「……帰ってくれ」
「やだー!勝負、しょうぶ、しょーぶー!」
『また始まった』という顔で、ディアボロスはさっきよりも深い溜め息をついた。
彼女は格闘家である。素手での戦いを習い、武器や防具に頼らない戦闘を得意としている学科だが、忍者もそれとよく似た技術を
持っている。それに対抗意識を燃やしているらしく、事あるごとにこうして勝負を挑んでくるのだ。正直なところ、彼としてはこの
ドワーフが大の苦手である。
「手加減できるような技量はない。頼むから……本当に頼むから帰ってくれ」
「逃げる気かー!絶対逃がさないぞー!」
そう言うと、ドワーフはがっしりと腕を絡めてきた。
「……抜け毛と臭いがつくから放せ。そして帰れ」
「じゃ、勝負する!?じゃないと放さないぞー!」
彼女は何事にも本気で、言葉には少しの嘘も含まれていない。つまり、彼女が放さないと言ったら、絶対に放さないのだ。
強引に振りほどこうにも、そもそも腕を動かすことができないほど、彼女の腕力は強い。
「わかった、わかったから放せ。勝負してやる。してやるから終わったら帰れ。帰ってください」
「やったぁー!じゃ、早く行こ!絶対勝ってやるんだからー!」
言いながら、ドワーフはディアボロスを引っ張って体育館へ向かう。一度隙を見て逃げ出したことがあるからか、ドワーフは絶対に
腕を放そうとしない。
体育館に着き、その一角を確保すると、ドワーフはようやく腕を放した。ここまでくると、さすがにもう逃げ場はない。
「じゃ、一発勝負ね!お互い言い訳はなしだからね!」
本当に、ディアボロスはこのドワーフが苦手だった。
パーティ結成当初こそ、大多数の者と同じく彼を避けていたが、彼が素手での戦いを見せた瞬間から、あっという間に今のような関係に
なってしまった。彼の心中などお構いなしに、土足というよりは裸足で踏み込んでくる彼女は、色々な意味で慣れない相手である。
「さ、いくよ!絶対勝つんだからー!」
ドワーフは勢いよく、制服を脱ぎ捨てた。ディアボロスも同じく制服を脱ぎ捨て、二人とも最低限の衣類を身につけただけの状態になる。
「準備いい!?」
「……来い」
「いざ、勝負ー!」
二人は同時に踏み込むと、同時に拳を繰り出した。
お互い一歩も引かず、激しく打ち合う。至近距離での乱打戦ではあるが、ドワーフはディアボロスの攻撃を主に腕で受け、ディアボロスは
ドワーフの攻撃を捌くか避けるかである。お互いの突きも蹴りも、どれ一つとして相手を捉えない。
だが、正面からの戦いは、決着が早い。そして、彼がドワーフを苦手とする所以が、もう一つある。
突如、ドワーフは回し蹴りの勢いのまま背中を向けた。そして頭を下げ、グッとお尻を突き出す。
何事かと思った瞬間、顔面に何かが被さってきた。
「ぶあっ!?ぐっ…!」
ふんわりとした感触。ふかふかの肌触り。そして獣臭く、目に毛が入り、口の中にまで抜け毛が侵入する。ドワーフは尻尾を使い、
目潰しを仕掛けてきたのだ。完全に体勢を崩したところへ、ドワーフが走った。
「とりゃあー!」
元気な掛け声。ドワーフが跳んだと思った瞬間、ディアボロスの目の前で思いっきり足が開かれた。
ばふっと、顔面に股間が押し付けられる。スパッツ越しに、獣の臭いと蒸れた汗の匂い、そして柔らかい感触が感じられた。
ドワーフは足を閉じ、ディアボロスの顔を挟み込むと、思い切り体重をかけた。同時に、ディアボロスはぐらりとよろめき、
そのまま後ろに倒された。
「ぐ…!」
後頭部を強打した音が響き、ドワーフの足の間からくぐもった悲鳴が漏れる。そんな彼の上で、ドワーフはパタパタと尻尾を振る。
「えっへへへ!マウントポジション取ったから、私の勝ちだよね!」
その言葉に、ディアボロスはしばらく答えられなかった。
「……お前の勝ちでいいから、どけ。いつまで乗ってるつもりだ」
「やったぁー!勝ったぁー!久しぶりに勝てたよぉー!」
いっそう激しく尻尾を振り始めるドワーフ。胸のあたりを羽根箒で掃かれるようなこそばゆさを感じながら、ディアボロスは顔に
座られたまま、黙って横たわっていた。
ディアボロスは彼女が苦手である。それは読めない動きをするからというわけではない。
どうやら、彼女は自分が女であることを意識していないらしく、先の戦闘のような行動を平気でしてくるのだ。
色仕掛けなら、引っかからない自信はある。だが、彼女の無邪気な行動は、狙っていないが故に、こちらとしても対処できないのだ。
もちろん、最初の頃は気にもならなかった。しかし、ある程度の付き合いになれば、話は変わってくる。一戦ごとに心を掻き乱されるのは、
忍者としては非常に不快なものである。ドワーフの方は、彼を純粋にライバルと見ているだけらしく、それ以外の用事で話しかけることは
ほとんどない。そうやって、一方的に心を掻き乱されているだけというのも、ディアボロスが不快に感じる要因の一つである。
「えへへ〜、今日は勝てた勝てたー!体動かした後のご飯っておいしいよね!」
「………」
ドワーフは相当に機嫌がいいらしく、組み手の後はなぜか二人で食事をする羽目になってしまった。ディアボロスは帰りたかったのだが、
やはりドワーフに腕を取られ、強引に連れてこられたのだ。
「あれ〜?おいしくない?」
「……負けた後の飯がうまい奴が、どこにいる」
「ご飯はご飯だよー。勝っても負けても、体動かした後はすっごくおいしいよ」
「………」
色んな意味で、こいつと自分とは種族が違うと、ディアボロスは思っていた。彼女にとっては、格闘は即ち殺しではなく、ある種の
スポーツマンシップを持って行うものなのだろう。
「……お前がなぜ俺にまとわりつくのか、理解できん」
思わずそう漏らすと、ドワーフは目をパチクリとさせた。
「なんでって、仲間だし、格闘のライバルだもん」
「俺のは殺しの技だ。お前の拳とは違う」
「拳は一緒だよー。力は私の方があるけどね!」
「……調子の狂う奴だ」
彼の目下の悩みは、このドワーフがどうしたら自分に付きまとわないようにできるか、である。最近は、いっそ組み手の最中に、本当に
殺してやろうかとすら考え始めている。
その時、ドワーフがふと口を開いた。
「あ、ねえねえ!私、そろそろクリティカル教えてもらえるんだけどさ、それ教えてもらったら、また勝負してくれる!?」
「お前は俺を殺す気か」
「君だって無刀流免許皆伝持ってるでしょー!それは私習わないけど、クリティカル教えてもらったら結構対等になるじゃない!?
だから勝負しよ!ね、約束だよ!」
「おい、俺は約束した覚えなんか…」
「ごちそーさま!それじゃ、またやろうねー!」
一方的に言って、ドワーフは食器を下げに行ってしまった。残されたディアボロスは深い溜め息をつき、しかしこれは利用できるかも
しれないと、一人ほくそ笑んでいた。
それからしばらくして、ドワーフは晴れてクリティカルの技術を習得した。さあいつ来るかと待ち構えていると、昼食を終えて
学食を出た瞬間、いつもの声がかかった。
「あ〜っ、いたいたー!さー、約束通り勝負ー!」
真っ白な息を吐きながらこちらに走ってくる毛玉。ここ最近、特に寒い日が続いたため、ドワーフの体毛はすっかり冬毛になっている。
「やるのは構わない。だが、ただで受けると思うなよ」
「んー?」
真ん丸な目を瞬かせ、ドワーフは首を傾げた。
「今までは、無刀流免許皆伝を持つ俺の方が有利だからこそ、お前の組み手にただで付き合った。だが、対等になった以上は、
ただで付き合うつもりはない。どうしてもやれというなら、それに見合ったものを賭けてもらおう」
「……あー、負けた方が勝った方に何かあげればいいんだ?」
「いや、お前が頼む方なんだから、俺は…」
「じゃ、私が勝ったらでっかいケーキと七面鳥!あとご飯いっぱい!おごってもらうからね!」
「俺の話…」
「私はそれでいいや!で、君は何賭ければいいの!?」
どうにも言いたいことが曲解されているようだったが、全体としてみれば予定通りの流れである。ディアボロスは軽く息をつくと、
はっきりと言った。
「じゃあ、お前には体を賭けてもらおうか」
さすがに、いくらドワーフとてこの申し出は断るだろう。相手が断れば、自分も受ける義務はないと逃げられる。仮に受けたら受けたで、
こちらにも不都合は全くない。
「ん?体?」
だが、ドワーフは意味がわかっていないようで、やはり首を傾げている。
「体?って?抜け毛でもいる?」
「……抱かせろ、とか、やらせろって言えば通じるか?」
「……あっ!」
途端に、ドワーフの体毛がぶわっと膨らんだ。もはや露出している部分は、元の形が完全に消え失せている。
「そ、それ本気、で言ってる?えーと、それでいいの?」
「嫌ならやめていいぞ。ただし、その場合は組み手の話は断る」
十中八九、ドワーフは断るだろうと踏んでいたのだが、意外にもドワーフは首を振った。
「ううん、いいよ!負けなきゃいいんだもん!それに、それぐらいの方が気合入るもんねー!絶対負けないぞー!」
「……受けるのかよ」
「じゃ、体育館行こ!よーし、絶対おごってもらうんだからー!」
こうなっては仕方がない。二人はいつものように体育館へ行き、その一角を確保すると服を脱ぎ捨てた。
「いつでも来い。負けはしない」
「私だって負けないからねー!さあ、いっくぞー!」
いつもより遥かに気合の入った声で言うと、ドワーフは地を蹴った。それに対し、ディアボロスは防御の構えを取る。
次々に襲いかかる攻撃を、ディアボロスは落ち着いてかわしていく。自分からは決して攻撃せず、せいぜい相手の隙にカウンターを
放つ程度である。防御に徹している彼に対し、ドワーフは構わず攻撃を仕掛ける。
あまりの猛攻に、いくつか避けきれない攻撃もあった。それを腕で防ぐと、以前より遥かに強い衝撃が襲ってくる。それでも、直撃さえ
避ければ何とかなる。ディアボロスはじっと機会を窺い、やがてその時が来た。
いくら体力のあるドワーフとはいえ、攻撃の手を休めなければさすがに疲労する。動きが鈍り、やや大振りの攻撃が出た瞬間、
ディアボロスは走った。
腕の下をすり抜け、さらに姿勢を低くして床を滑る。そのままドワーフの足の間を抜け、すぐさま立ち上がる。
「え?あれ!?」
標的が消え、ドワーフは慌てて辺りを見回そうとした。その直前、ディアボロスは足音もなく駆け寄ると、後ろからドワーフの膝を蹴り、
体勢を崩した彼女の首を締めあげた。
「あうっ…!」
「……俺の勝ちだ」
耳元で冷たく言うと、ドワーフの体がビクッと震える。
「う〜……や、やっぱり本気……なんだよね…?」
「どうしても嫌なら、代案がないわけでもないがな」
「な……何?何すればいいの?」
一筋の光明を見出したように、ドワーフは身を乗り出して尋ねる。やはり乗ってきたと、ディアボロスはほくそ笑んだ。
「二度と俺に付きまとわないなら…」
「やだ。それなら、その……い、いいもん。約束、守るもん」
「……なんでだよ…」
「いいの!約束は約束だもん!か、か、覚悟はできてるもん!」
意地になって叫ぶ彼女に、ディアボロスは内心頭を抱えていた。予想では、ここまでの流れで自分に付きまとわないようにできると
思っていたのだが、彼女は予想に反して体を許す方を選んでしまった。こうなっては、ディアボロスも覚悟を決めるしかなかった。
半ば自棄気味に、どうとでもなれと思いつつ、ドワーフと一緒に部屋へ向かう。
「あ、あの、まだお昼だけど…?」
「構うか。さっさと脱げ。そもそも、お互いの体なんかいつも見てるだろ」
「う、うん……けど、なんか、その、そういう目で見られるって思うと、恥ずかしいな…」
それでも脱がないわけにいかず、ドワーフはおずおずと服を脱ぎ始める。その恥ずかしげな表情と、少しずつ全身が露わに
なっていく姿自体はなかなかにそそるものがあったが、ディアボロスは体毛を肌と同列に見られるほどには、悟りを開けていない。
やがて、ドワーフは上着を脱ぐと、恥ずかしそうに胸を隠した。
「こ、これでいい?」
「隠すなよ」
「う…」
ドワーフは恥ずかしげに、胸を隠していた手を下した。しかし、ただでさえ冬毛になったドワーフの体は、ふわふわした体毛以外
何も見えない。
ディアボロスはおもむろに、ドワーフの胸へ手を伸ばした。
「あっ!?やっ…!」
「邪魔するな」
「……う〜」
触ってみると、ドワーフの胸元の毛にふんわりと手が埋まる。さらに強く押すと、硬い大胸筋に触れた。ほとんど筋肉ばかりで、
胸らしい胸は存在していないらしい。それでも、一応は女の子の胸だということで、ディアボロスはその平坦な胸を撫でてみる。
指先に、僅かな突起を感じた。途端に、ドワーフの体がピクッと跳ねる。
「あうっ…!」
直後、ドワーフは自身の口を覆った。そして耳を垂らし、上目遣いにディアボロスを見つめる。その姿が妙に可愛らしく、ディアボロスは
執拗に胸を責める。
「うあっ……んっ、あく…!あ、あんまり触んないでよぅ…」
「反抗するな」
「う〜…」
手を押さえることもできず、かといって逃げることもできず、ドワーフは体をくねくねと捩らせつつ、何とかその刺激に耐える。
ディアボロスはドワーフを後ろから抱くようにして胸を撫でていたが、やがてその目は落ち着きなく振られる尻尾へと向けられた。
左手を放し、尻尾の裏側を撫でる。
「ひゃあっ!?」
ビクリと体を震わせ、ドワーフが甲高い叫びをあげる。逃げようとする尻尾を捕まえ、さらにじっくりと撫でる。
「うあぁっ……やっ、尻尾は、やめっ…!」
「うるさい。何をしようと、俺の勝手だ」
尻尾を撫でられる度に、ドワーフは高い声を上げ、体を快感に震わせる。どうやら尻尾が弱いようで、さらに根元が敏感だと気付くと、
ディアボロスは執拗にそこを刺激する。
毛を撫でつけ、時に逆立てる。裏側を指でくすぐり、さらに右手では、変わらず胸を撫でている。
「んっ……うあぅ…!んうっ……はぅ…!」
最初はその刺激から逃れようとしていたドワーフだが、その動きがだんだんと弱まり、声も少しずつ小さくなり始める。
やがて、スパッツに黒い染みがじんわりと広がる。それに気付くと、ディアボロスは手を止めた。
「……もう、準備はいいみたいだな」
「ふぇ……じゅんび…?あうっ!」
ディアボロスはドワーフを抱き上げると、ベッドに放り投げた。そして自身も服を脱ぎ、ドワーフのスパッツに手をかける。
が、脱がせると体のラインが見えなくなることに気付く。スパッツ越しに形のいい臀部が見え、僅かな膨らみも見える現状を確認すると、
最終的にラインがはっきり見えている方がいいと判断し、ディアボロスはスパッツの中央部分を引き裂いた。
「あーっ、お気に入りなのにぃ…!」
「錬成して直せばいいだろ。ほら、足開け」
足を開かせ、その間に体を割り込ませる。そしてスパッツの裂け目に見える秘部に触れると、ドワーフは不安そうに耳を動かす。
「あ、あのっ…!」
「なんだ」
「こ……こういうの、初めてだから……優しくして……くれる…?」
いつも元気いっぱいのドワーフの、怯えたような声。さすがのディアボロスも、そんな声を聞いては強引にしようという気は起こらない。
「……なるべくな」
割れ目を開かせ、そこに自身のモノを押し当てる。ドワーフはいよいよ不安げにそれを見ていたが。やがて観念したように目を瞑った。
ゆっくりと腰を突き出す。先端が硬い肉を押し分け、彼女の中に入り込んでいく。
「ぐ、う……うあ、あ…!うぅ〜〜…!」
ドワーフは固く目を瞑り、歯を食いしばってその痛みに耐える。ディアボロスがさらに腰を押し付けると、意外とすんなり根元まで
入ってしまった。とはいえ、ドワーフが辛そうなことに変わりはない。
「んあぅ…!くぅぅ…!」
「……その、大丈夫か?」
ディアボロスが尋ねると、ドワーフは弱々しく笑った。
「だ……だい、じょぶ…。そ、そんなに大きくないから……へーき…」
直後、ディアボロスは思い切り腰を突き上げ始めた。
「いっ、痛い痛い痛ぁーい!!!痛いよぉー!!うあーん、動かないでよぉー!!!」
必死に痛みを堪えていたドワーフだったが、突然の激しい痛みに、とうとう泣き出してしまった。相当に痛かったらしく、ドワーフは
ディアボロスにしっかりと抱きつき、その動きを強引に封じた。
「なんでぇ…?なんでいきなり……ぐすっ……そんなひどいこと…」
「……あんなひどいことを言われれば、男は怒るか凹むかしか選択肢はない…!」
ディアボロスは前者を選択したらしく、その顔は怒りと悲しみの入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。
「……大っきくない方がいいのにぃ…」
「もう大きさは言うな。頼むから」
鼻をグスグス鳴らしつつ、ドワーフはこくんと頷いた。やがて、その手から少しずつ力が抜けていく。
一瞬、ディアボロスの脳裏に、このままドワーフを滅茶苦茶に犯してやろうかという考えがよぎる。そうすれば、恐らく今後、彼女に
付きまとわれることはなくなるだろう。
だが、目にいっぱいの涙を浮かべ、こちらを不安げに見上げる彼女を見ていると、どうしてもあと一歩が踏み出せなかった。
「……動いていいか?」
「……うん…」
ゆっくりと腰を動かす。途端に、ドワーフの中がぎゅっと収縮し、ディアボロスのモノを強く締め付けてくる。
「うああっ!あっ!あ、あっついよぉ…!」
突き入れれば熱い体温が伝わり、同時に全体をぬめった肉壁が締め付けてくる。
引き抜くときには、中が引き留めるかのように収縮し、腰と腰の間に溢れた粘液が糸を引く。
パン、パンと腰を打ち付ける音が響き、それに合わせてベッドが軋む。その合間に、ディアボロスの荒い吐息と、ドワーフの悲鳴とも
嬌声ともつかない声が響く。
「くぅ、あっ!も、もっとゆっくりぃ…!」
「うあっ……中が、締め付けて…!」
少しずつ、ディアボロスの動きが強く、大きくなっていく。汗が頬を伝い、顎からドワーフの体に滴り落ちる。ドワーフ自身も、既に
体毛がぺったりと体に張り付いている。
いつしか、ディアボロスはドワーフの体を強く抱き締めていた。そしてドワーフも、ディアボロスを強く抱き返す。
「くっ……もう限界だ…!出る…!」
切羽詰まった声を出すと、ディアボロスはドワーフの体の奥まで突き入れた。それと同時に、彼のモノがビクンと跳ねる。
「ああっ、あっ!中で……動いてる、よぉ…!なんか、出てるぅ…!」
自分の体内で動くモノの存在を感じながら、ドワーフが茫然とした声で呟く。
全てをドワーフの体内に注ぎ込んでも、ディアボロスはしばらく彼女の中に留まっていた。そして射精後特有の気だるさと、
激しい運動後の倦怠感と、感じたこともない快感の余韻が心地よかった。
「終わっ……た…?」
その時、ドワーフが息も絶え絶えといった声を出した。慌てて彼女を見ると、相当に消耗したらしく、ドワーフはぐったりとしている。
「あ……悪いな、大丈夫か?」
言いながら、ゆっくりと彼女の中から引き抜く。そのすべてが抜けると、ドワーフはピクンと体を震わせ、同時に力尽きたように
目を閉じた。
「おい、ドワ…」
不安になり声をかけようとしたが、ドワーフは静かな寝息を立て始めていた。
「………」
相当に疲れていたのだろう。よくよく考えれば、ここに来る前は組み手をやっているのだ。ディアボロスも、かなりの疲労感がある。
「……悪かったな」
そう声をかけ、全身を軽く拭き、ついでにドワーフの体も拭いてやると、隣に寝転がる。そして彼女に腕枕をしてやり目を瞑ると、
彼もいつのまにか寝息を立て始めていた。
目を覚ますと、時計はちょうど0時を指したところだった。思ったよりもずっと長く寝ていたらしい。
隣で動く気配に気づいたのか、ドワーフがもそもそと動き始める。
「ドワーフ、起きたか」
「んん…?ふえ…?今何時ぃ…?」
「ちょうど日付が変わったところだ」
「ひづけ……えええぇぇ!?」
ディアボロスも驚くほどの大声を上げ、ドワーフは文字通り跳び起きた。そして辺りを見回し、窓の外が真っ暗なことに気付くと、
大袈裟に溜め息をついた。
「あ〜ん!ケーキと七面鳥食べ損ねちゃったよぉー!!」
「またそれか。お前、ケーキと七面鳥に何のこだわりが…」
言いかけて、ディアボロスはふと今日の日付を思い出した。
「……ああ、そうか。今日はクリスマスイブだったのか」
「しちめんちょお〜……今気付いたの?」
「完全に忘れてた」
溜め息をつき、ディアボロスはポリポリと頭を掻く。
「……随分とまあ、おかしなイブを過ごしたもんだ。組み手をやって一発ヤッて、昼寝したまま日付が変わる、なんてな」
「……あ、でもさでもさ!」
何を思いついたのか、ドワーフの顔がいつもの明るい笑顔になる。
「恋人と過ごすクリスマスって考えたら、それっぽいかも!?」
「……お前と恋人になった気はないがな」
「む〜。じゃ、男の子と過ごすクリスマス。これなら間違ってないよね?」
「まあな」
「私、こんなの初めてだよー!」
「俺もだ」
「クリスマスイブに初体験しちゃったんだねー!ロマンチックでいいかも!」
「よかったな」
この調子だと、彼女に嫌われた様子はない。悉く読みが外れ、ディアボロスは大きな大きな溜め息をついた。
しかし同時に、これも悪くないかとどこかで思い始めていた。慣れ合いは自身の成長を止めるとしても、仲間でありライバルである
彼女なら、一緒にいたところで成長を止める余裕はないだろう。受け入れてしまえば、ひたむきに張り合ってくる彼女は何とも
可愛らしく見えてくる。
「でも……うぅ、ケーキと七面鳥…」
「……そんなに食いたいなら、明日食えばいいだろ。イブを外したとはいえ、一応はクリスマスだ」
「お金ないもんー」
「じゃあ、おごってやる」
ディアボロスが言うと、ドワーフは一瞬キョトンとし、次の瞬間、まぶしいほどに目を輝かせた。
「いいのー!?ほんとにいいのー!?」
「それぐらい構わん」
「わぁーい!!大好き―!!」
無邪気に抱きついてくるドワーフ。ふかふかとした体毛と、彼女の体温を感じていると、何だか心が安らぐような気がした。
聖なる夜など、自分には関係ないと思ってきた。しかし、今日ぐらいはその奇跡を信じるのもいいなと、ディアボロスは思うのだった。