2 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 00:58:58 ID:j0x99ME0
乙です!
3 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 00:59:17 ID:89x7rG3e
剣と魔法とぬるぽモノ
>>1乙
剣と魔法とガッく園モノ。
5 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 14:09:26 ID:j0x99ME0
6 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 20:48:03 ID:j0x99ME0
どうも、以前エスコンの謎予告を書いたものです。
本編が出来ました。ただ、予告とは内容がかなりかけ離れてます。今の所は。
始めにいくつか言い訳を……
・初めの方はエースコンバットから離れてますが、後々合流するつもりです。
・プロローグだけ一人称です。原因:自分の腕不足orz
・エロは……未定。あと、オリキャラもちょいちょいいます。
・オリジナルの用語が二つあります。
騎竜―戦闘用の飛竜。小型。数え方は一騎二騎。普通の飛竜が旅客機で、騎竜は戦闘機だと思ってください。
騎竜士―意味はそのまま。召喚札無しで飛竜を呼べるのがスキル。装備品などは普通科と同じく自由。けど魔法も特技もない。
それでは。
7 :
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜:2009/08/19(水) 20:48:49 ID:j0x99ME0
迷宮には危険が多い。
単純な罠も多いし、広い迷宮なら遭難者が出ることも珍しく無い。
そのなかで最も厄介な危険が、モンスターだ。
時にそれは大軍勢を組み、迷宮の外に流れ出て来る。
そうした時、迷宮近くの町は冒険者や傭兵を募り、防衛隊を結成する。
迷宮での戦闘とは違う、大多数対大多数による戦闘。
それは時に、「戦争」とまで呼ばれる規模に膨れ上がる。
「ち、数が多すぎる!!」
土嚢の影から俺は銃を連射した。
数体のモンスターが倒れたが、連中の数は変わらない。
何度かこうした防衛戦を経験したことはあるが、今回のような大軍勢は初めてだ。
それに比べてこっちは散々だ。
さっきまで隣で魔法を連発していたフェアリーはMP切れで後方に下がったし、前線に行ったフェルパーやバハムーン達は帰ってこない。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
フェアリー代わりに俺の隣に来たのはまだ入学したばかりの一年生だった。
俺と同じガンナーだが、銃を持つその手もまだ危なっかしい。
「うるせぇ!叫びながら撃ってもあたらねぇよ!」
俺は新米をしかりながら土嚢の陰に隠れマガジンを入れ替える。
「おいお前!こういう戦いは初めてか!?」
「は、はい!」
俺の問いかけに、新米は震える声で答えた。
弾が切れた銃の引き金をまだ引いている。俺はその銃を奪い、マガジンを入れ替えてやった。
「なら先輩として言っておく!前線の奴を信じろ!俺らは落ち着いてモンスターを狙うだけでいい!!」
銃を新米に返し、俺は再び土嚢の向こう側に銃口を向けた。
前線が先ほどよりも後ろに下がっている。俺は心の中で焦りながらもしっかりと狙いをつけ、引き金を引いた。
今度はどでかいの2匹片付ける事が出来た。しかし、そんなことでモンスターの群れは止まったりしない。
「あああああああぁぁぁぁ!!!」
新米も隣で銃を撃つ。だがそのほとんどが明後日の方向に飛んでいく。
「怯えるな!!前線の奴らを信じろ!!」
再びマガジンを入れ替え銃を構える。
新米も同じようにマガジンを入れ替えようとしているが、手が震えて上手くいかないらしい。
手伝ってやりたいのはやまやまだが今はそんな暇はない。
前線の後退は徐々にその速さを増している。後方からの援護や増援も無い。
「くそったれ!!!ここで死んでたまるか!!」
俺も新米も、必死に引き金を引いていく。その度に敵は倒れていったが、その数は減らない、いや、むしろ増えている。
俺の銃がもう何度目か分からない弾切れを起こした。
俺は再びマガジンを入れ替えようとして、既に予備のマガジンまで使いきった事を思い出した。
新米も同じようだ。使いきったマガジンの中から使える物を探そうと必死になっている。
俺は新米に後方から弾を取ってくるよう言ったが、遅かった。
前線の一角に、穴が空いた。そこから大量のモンスターがあふれ出て来た。
流れ出たモンスターは一直線にこっちに迫ってくる。
8 :
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜:2009/08/19(水) 20:49:22 ID:j0x99ME0
「新米!逃げろ!!」
俺は青くなって震えている新米にそういうと、ダガーを抜いて土嚢の前に立った。
新米は悲鳴を上げて後方に逃げていった。俺はそれを見て、頷いた。
「生き残れよ、新米……」
俺は周りを見渡した。俺以外にも、何人かの馬鹿が、武器を抜いて土嚢の前に立っている。
戦士系学科の奴は皆前線にいっている。今立っている奴は全員俺のような後方支援型の学科の奴らだ。
その証拠に、手にしている武器はダガーやマイクといったなんとも心もとないものだった。
勝ち目は無い。だが、それでも引くことはしない。
「くそ、最高の馬鹿だよ俺達は!!」
俺はそう叫んでダガーを構えた。一瞬、後方に下がっていったフェアリーの事を思い出す。
(わりぃな、少し、帰るのが遅くなりそうだ……)
モンスター達が土煙を上げて近づいてくる。
恐怖はある、だがそんなモノ、今は関係ない。
俺はモンスター達に向かって駆けだした。
他の連中も俺と同じように叫びながらモンスターに向かって行く。
「うぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」
俺は渾身の力でダガーを振るった。先頭にいたケルベロスの首が根元から弾けとんだ。
だが同時にダガーも砕けた。俺は砕けたダガーを他のモンスターに投げつけ、素手で殴りかかった。
相手が一体ならまだ分からなかったかもしれない。だが、現実は甘くない。
目の前にいたエビルウルフを殴っていた俺は、横から強い衝撃を受けた。
俺の体は一瞬で宙に跳ね上げられた。ダイダラボッチに殴られた、のかも知れない。
それも分からないまま、俺の体は地面に叩き付けられた。
「ッカハ!!」
血が口から吹き出す。激痛が体を襲う。そこに更に、オークが襲い掛かってきた。
「くそ!これでも、くらえ!!」
俺は苦し紛れにすぐ傍にあった石ころを掴み、オークに投げつけた。
それにオークは怯んだが、俺の抵抗が気に入らなかったのか憤然となって手にした斧を振り上げた。
俺は振り上げられた斧をしっかりと見た。死の瞬間までそれから目を背けるなという、師の教えを守った。
斧が振り下ろされた。
俺の短い人生が幕を閉じる……はずだった。
突風が吹いた。
風に巻き上げられた砂が目に入り、俺は思わず目をつぶってしまった。
突風が収まり、目を開けた時には、オークの姿は無かった。
周りは静かだった。モンスター達は空を見上げ、その動きを止めていた。
俺は力を振り絞り、空を見上げた。
9 :
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜:2009/08/19(水) 20:51:12 ID:j0x99ME0
空には、巨大な翼が悠々と飛んでいた。
「騎竜だ……!!」
仲間の誰かが叫んだ。
それに呼応して、他の連中も声を上げる。
「騎竜だ、騎竜が来たぞ!!」
「騎竜士が来てくれたぞ!!」
まだ戦闘中だと言うのに、喝采が上がった。
空を舞う巨大な翼が、それに答えるように大きく弧を描き、モンスター目掛けて突進した。
地表近くを飛ぶ翼は、その鋭い牙と爪で手当たり次第にモンスターを切り裂いていく。
その背中で、翼を操る男が杖を振るうのが見えた。
次の瞬間、地上のモンスターは灼熱の炎に包まれた。
モンスターの断末魔の叫びの中、灼熱の炎を操り駆け抜けていくその姿に、俺はお伽話の鬼神を重ね合わせた。
翼は再び空に舞い上がった。今度は別の方向から喝采が上がった。
空高く飛ぶ翼から、大量にナパームが撒き散らされ、モンスターを吹き飛ばしていく。
俺は興奮に痛みを忘れて立ち上がった。
俺のすぐ近くにいたモンスターの頭が吹き飛ばされた。
一匹だけではない、次々とモンスター達の急所が撃ちぬかれていく。
ガンナーなら分かる。これは空からの射撃だ。あの大空から、地上のモンスターを狙撃しているのだ。
また翼が空から急降下して来た。今度は地表ギリギリで体を水平に戻し、その背中から何かが飛び降りた。
同時に赤い旋風が、そこから巻き上がった。
俺のすぐ傍までその旋風は近づいて来た。
その正体を見て、俺は愕然とした。
赤い旋風の正体はモンスターの血。それを撒き散らしていたのは、なんとフェアリーだった。
その身に不釣合いな巨大な剣を振り回し、一太刀ごとにモンスター達を倒す姿は圧巻だった。
散々モンスターを蹴散らしたフェアリーが指笛を吹いた。彼の騎竜が空から舞い降りてくる。
それに呼応するかのように、俺の後ろから鬨の声が上がった。
振り返れば崩壊していた前線にいた奴らが、再びこちらに向かって駆けだしてきている。
俺を追い抜いていく連中の中には、見慣れたフェルパーやバハムーンの姿があった。
戦況は一変した。たった数騎の騎竜により、壊滅的だった防衛隊は息を吹き返し、モンスター達を追い詰めていく。
10 :
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜:2009/08/19(水) 20:52:03 ID:j0x99ME0
俺は彼らを見送ると、後方に下がった。
とそこで、さっきの新米を見つけた。
新米は俺を見つけると転びそうになりながら駆け寄ってきた。
「先輩!生きてたんですね!!」
「馬鹿野郎、勝手に殺すな」
涙を浮かべて喜ぶ新米に、俺は笑って見せた。
「パル!!」
突然、名前を呼ばれた。俺は声の方向に振り向いた。
一度は二度と会えないと諦めかけた姿がそこにあった。
「リコ!」
俺は叫んだ。愛しい人の名を。
「パルーー!!!」
フェアリーは俺の胸に飛び込んできた。俺はそれをしっかりと抱きしめる。
今自分が生きていると、その時初めて確信できた。
「パルの馬鹿!馬鹿馬鹿ぁ!何で逃げて来ないのよー!!」
「ゴメンな、リコ。でも、俺は生きてるよ」
「う、う、うわぁぁーーん!!」
俺の腕の中でミリーは泣き出してた。
少し離れた所で新米が貰い泣きしている。
俺は彼女をなだめながら、自分がいた戦場を見た。
既にモンスターの軍勢は無く、バラバラに別れたモンスター達を生徒達が狩っている。
その光景からはさっきまで苦戦など読み取れるはずが無かった。
上空で何かが羽ばたく音がした。
俺は空を見上げた。新米やリコも同じように空を見上げる。
巨大な翼が4つ、学園のある方角へと去っていく。
「騎竜士……か……」
「かっこいいですよね。俺、なってみようかな?」
「まずはまともにマガジンを入れ替えられるようになったらな」
「あはははは……」
「……でも、感謝しなきゃ。あの人達のおかげでパルは生きてるんだから。そうでしょ?」
「うん……そうだな。今度あいつらに手の負えないことがあったら、俺らが助けてやらないとな」
俺はそういって、翼の去った空を見つめた。
戦いが終わった事を知らせる鐘が、彼らが飛び去った空に響いていた。
11 :
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜:2009/08/19(水) 20:52:38 ID:j0x99ME0
騎竜士――――
騎竜に乗り、大空を翔る戦士達。
彼らの歴史は古い。初めて彼らが歴史に現れたのは今から数千年前、古代文明の繁栄期だ。
当時の彼らは奴隷のような扱いを受け、空を守るためにだけ生かされていたと、ボロボロの歴史書は語る。
時が流れ、何らかの原因によって古代文明が滅んだとき、彼らはその翼をもって空に逃げ、難を逃れた。
彼らは空を自らの故郷とし、そこで生きる事を決めた。
それから数千年。彼らは各地を転々としながらその技術を子孫に伝え、守り続けてきた。
この時の彼らを、多くの種族の伝説の中で見ることが出来る。
そして迷宮が世界を繋いだその時から、彼らは一流の冒険者として生きていく事となる。
さらに時が流れ、冒険者育成学校が出来たとき、一人の物好きな騎竜士が学校の教師に志願した。
彼は一族にしか受け継がれていなかった技術を多くの生徒に教え、立派な騎竜士に育て上げ、空に放した。
彼の死後、彼の変わりに彼の生徒だった騎竜士が学校の教師となった。
その頃新しく出来た学園にも、彼の生徒が教師として赴任する。
こうして騎竜士は世界に広まり、空を多くの翼が駆け抜けた。
そして今―――
「よぉ相棒。まだ生きてるか?」
「ああ、生きてるよ。親友」
「ピクシー、オレにはないんすか?」
「PJ、まだ生きてたのか?」
「ひどっ!そりゃないっすよ〜」
「あははははは」
「ヒヨコ、お前も人の子と笑えねぇぜ?」
「ヒヨコって呼ぶなー!」
「くくく、それじゃあ帰るとするか。いいか、皆?」
「ガルム2、了解」
「ガルム3、了解っす!」
「ガルム4、了解!」
「OKだ。ガルム1より全騎、学園に向けて進路をとれ!」
彼らの翼が、空を翔る―――
剣と魔法と学園モノ〜ACES AIR〜
12 :
エスモノ:2009/08/19(水) 20:53:56 ID:j0x99ME0
以上、プロローグでした。
第一話は鋭意執筆中…すいません!すいませんから闇夜の石はやめて!スタミナが!
たったこれだけのプロローグ書くのに1ヶ月もかかってます。遅いです、はい。
第一話も、なるべくはやくできるようがんばります。
それでは、
体が深く 沈んでいく……
エロ未定とかどういう事だ
他の事はどうでもいいがエロパロのスレでそれはダメだろw
14 :
エスモノ:2009/08/21(金) 17:31:42 ID:cjFW13xb
>>13 やっぱだめですよね……
一応入れる予定はあります。
ただそれをどこで書けるか分からないので、未定です。
……って、それなら予定って書けばよかったんですよね。
訂正
エロは入れる予定です。ただいつ来るかは未定です。
>>12 GJ!
ガルム隊、いかした登場の仕方をしておりますな!
さて、今夜は決戦事情の決着編をお送りします。
……とは言っても、これもまた実は新たな先端の開きだったりするのですが。
光が、遠く感じる。
息を吸い込もうと口を開けた時、口の中に水が流れ込んできた。そこで水中に落とされたと解った。
……どうしたんだっけ?
そうだ、ギルガメシュ先輩に負けて、叩き落とされたんだった。
水が、口の中から更に奥へと入る。
苦しい。息が、出来なくて……意識が、落ちる……。
このまま死んだら、多分亡きがらも発見されないまま朽ちていくのかも知れない。
仲間達は、どうするんだろう。
ああ、先輩を、心配させるだろう、きっと……けど、今ここにいるなんて、誰にも言ってないや。
母さんは……ギルガメシュ先輩が来て、俺が死んだ事を知るのだろうか。
何だろう、それが凄く悲しく感じる。
ああ、そうか。
俺、母さんに迷惑かけたくないのに、またかけちゃった。
バカだなぁ。
手を、どこか暖かい手が掴んだ。
何だろう、とても暖かくて心地よい。
この手の主は、誰だろう。
いや、違う。
暖かい、とかそういうレベルじゃないんだ。どこか。
純粋で、生きるエネルギーそのもののような、ただ暖かい何かが流れ込んでくる。心地よいじゃない。
力だ。
力そのものが、パワーそのものが、エネルギーそのものが。
流れ込んできたのは、力の証。
ギルガメシュはディアボロスが落ちた場所に沈んだまま浮かんでこないセレスティアの姿を探すのを諦め、戻る事にした。
もう大分遅くなっている。少し体力を回復させてからディモレアに挑んだ方がいい。
学校からの追手も来るかも知れない。
「まぁ、止められるかどうかは解らねぇがな」
少しだけ笑う。こっちだってそれなりの実力者ではある。時間さえかければ、ここまでの戦いだって出来る。
ギルガメシュがそう思った時、ふと気付いた。
「ん?」
水中から、いや、水中から周囲全体を覆う……これは、闘気なのだろうか。暴風のような強さとは違う、霧のようにまとわりついてくる。
「……なんだ、こりゃ……」
まさかと思う。まだ生きているのか。いや、例え生きていたとしてもここまでの力が残っている筈は無い。
そうだ。トドメを刺すのを忘れていた。トドメを刺しておかなくちゃ。二度と浮かばないように。
水際に近寄る。
サイコビームを撃とうと、手をかざそうとした時。
紅い影が、水の奥底から迫ってくるのが解った。
「いっ……!」
もう、遅い。
水中から飛びだしたその紅い影は近くの通路まで跳ね上がり、右手で握っていたセレスティアの身体を優しく置く。
そしてギルガメシュには、飛びだしてきた影の存在が解った。
「……生きて、やがった……」
ディアボロスは、ゆっくりと顔をあげると、もう一度跳ね上がってギルガメシュのすぐ近く、つい先程まで戦っていたフィールドに舞い降りる。片手に握られた精霊の剣から放たれる禍々しい魔力が身体を突き刺す。
そして、その全身から放たれる紅い闘気が。ギルガメシュに襲いかかるような恐怖を覚えさせた。
「(嘘、だろ……)」
ギルガメシュはじりっと後退する。気付いていないけれども、無意識のうちに。
「何だよ、これ……」
「……決まってるでしょう?」
ディアボロスの口から漏れたのは、ついさっきまで言っていた言葉だった。
「まだまだ、続行です」
ディアボロスが地面を蹴り、一気に距離を詰めてくる。
接近戦はギルガメシュの得意分野である。しかし、今度は様子が違った。
ギルガメシュの方が守勢に回る。体力を大分使ってきているし、そして何よりディアボロスの攻撃が先ほどよりも重く、鋭くなってきている。
下手に立ち向かっても余計に力を減らすだけだが、相手を制する程の戦いに持っていけない。
剣が舞う。
「くそっ……お前、どうやって」
「さぁ? なんででしょうね?
「バケモノめ!」
ギルガメシュと、ディアボロスの立場は完全に逆転していた。
攻めだったものが守りに入り、守りだったものが攻めに転じる。一進一退ではない。追い込まれた者と、追い込む者。
例え何度斬り捨てられたとしても、這い上がってくる強さ。
斬られる前に斬ってしまえばいい。だが、斬られても斬られても立ち上がってくる相手には。
どうすればいいのだろう。
どこまでも立ち上がる強さが。どんな底からでも這い上がってくる強さが。どれだけ失っても何かを掴もうとする強さが。
そんな強さに憧れて、ここまで来たというのに。
俺は何で、そんな強さに怯えてるんだろうと思った。
「シャイガン!」
ギルガメシュが距離を取るべく、光の魔法球を放った時、文字通りシャイガンを打ち返すかのようにディアボロスは躊躇わずにダクネスガンを放った。
しかも一発ではなく、二発も三発も立て続けに。
放たれた攻撃を打ち返すどころか、おまけ付き。
「冗談じゃねぇぞ……」
ギルガメシュは呟く。
ただでさえダメージを受けているのに、復活したディアボロスの攻撃が並じゃない。
逆に押されている。このままだと押される。押し返される。潰される。
「舐めんなよ……最強の伝説は、今日で終わりはしねぇ!」
誇りがある限り。
最強の名前は、誰よりも強く在る事。勝ち続ける事。
二本のデュランダルを振り回し、文字通り嵐のように何度も連撃を加える。
だが、ディアボロスはその連撃すらも裁ききり、隙あらば押し返す。
負けなど有り得ない。否、負けはしない。例え何が相手であろうとも。最強対最強。
「負けるのが怖いあんただから」
ディアボロスは呟く。
「押せば押すほど、焦りが出て来る」
「っ……!」
「攻勢に出ていれば最強でも、一度でも守勢に回ってしまえばあんたは勝てなくなる」
攻めていれば倒せる。
守り続けていれば、守る事は出来るし生きる事も出来る。けれども、倒す事は出来ない。
相手を倒すには、攻めなければいけない。
攻め続けている事。攻めに周り続ける事が、最強の戦い。
守りに回ってしまえば、勝つ事が出来ない。
一度でも、守勢に回ってしまえば。
攻められる事の、弱さがそこにあった。
「バッカ野郎! 俺が最強だ……!」
ギルガメシュは剣を振るう。
己が最強の為、己が立てた約束の為。
勝って、倒して、生き残る。それが彼の望み。
「勝てないさ」
ディアボロスは嗤う。そう、解っている。勝利が見えようとしている。
「俺が勝つからだ!」
距離を詰め、再びギルガメシュの至近距離へと近づき、懐にビッグバムを叩き込む。
「ぐぁ!?」
爆発と共にギルガメシュの体が舞う。受け身を取る事も出来ず、床に叩き付けられる。
「くっそ……サイコビ」
「うおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
遅かった。
サイコビームを放つより先に、ディアボロスがギルガメシュに斬りかかる。
血飛沫が舞い、再びギルガメシュの体が宙を舞った。
受け身を取る事は無かった。
床に叩き付けられる。
「ぐっ……」
口から血が溢れる。
お互いに相当なダメージを受けている。だがしかし、今度はディアボロスの方に軍配は上がった。
「………嘘、だろ……」
「先輩……」
そう、負けた。ギルガメシュが。
「………くそ……」
膝をつく、ギルガメシュ。
「…………………」
「…………勝った、のか」
「ああ……テメェの勝ちだ」
悔しそうに、実に悔しそうに。いや、実際そうなのだろう。
勝つと決めてきたにも関わらずに。最強であるにも関わらずに。
けれども、ディアボロスも勝つと決めていて。
自分が最強に最も近いと知って。
負けたくないという意地と意地の戦いが、この結末を生む。
「………強い、な」
「ええ。まぁ、親があれですからね。でも、あれでも……いい親なんです」
自分に愛情を注いでくれる。ここまで育ててくれた、そう、ここまで強くなれるまで。
そんな親を悲しませたくなくて、それで結局、ここまで来た。
「そうか……守りたいものがあるって、強い事、なんだな」
「……………」
「俺にも、あった」
ギルガメシュが呟く。
「凄く昔の話だ。あまり人口は多くなくて小さい街に住んでいた。親も、姉も、妹もいて、普通の生活してた。俺が9歳までの時だ。
姉がいた。その街の近くにも、パルタクスみたいな学校があって、姉はそこで卒業する前に、同級生と結婚した。同級生って言っても、近所に住んでるバハムーンでな。
だから知らない仲じゃなかった。いつも一人で戦ってる、けれども、それでもそいつは強かった。俺が当時見てきた世界の中で、最強と言えばそいつを思い出した。
………俺が9歳の時に、そいつの弟が迷宮に迷い込んだ。俺が助けに行こうとして、止められた。姉も行こうとしたけれど、止められた。
その弟は帰ってきた。けれども、そいつだけは帰ってこなかった」
その日から、それが見てきた世界が、狂い始めてきた始まり。
「誰よりも強かった筈の、そいつが死んだ。皆、泣いていた。それを見ているのが凄く嫌だった。もし、俺があの時行っていればどうなっていたのだろうかと思うようになった。
もし、俺に力があればどうなっていたのだろうと思った。俺に力があるのなら」
力があるのなら、救えたかも知れない。
「だから家を飛びだした。大切なものを全部守れるだけの力が欲しかった。それが、本当の真実だった」
最強の称号も、誇りも、気が付いたらそれだけに執着していた。
だけど、本当は違う。
「だから戦い続けた。パルタクスに入っても、例えどれだけ傷つこうと、負けても立ち上がって、強くなるしかなかった」
もう失わない為に、この手で守れるもの全てを守る為に、戦い続けていた。
気が付いたら、守る為に力を手に入れるじゃなくて、力を手に入れる為に力を手に入れていた。
どこまでも、強くなる為に。
「最強であれば、負けないと思った。だからだ」
ギルガメシュはそこまで言うと、ため息をつく。
「どこで狂ったのか覚えてねぇ。昔の話だ」
そう、本当に。
「……………」
守りたいと願う事。失いたくないのは、誰もが一緒。
「先輩、俺はきっと……守りたいものが、出来すぎたのかも知れないですね」
約束を果たすと、決めたから。
「……好きにしろ」
「じゃあ、失礼します」
ディアボロスは背を向けると、ゆっくりと歩き出した。ギルガメシュをその場において。
「……とどめ、刺さないのか」
「……そこまでして、殺したくな」
ディアボロスがそう呟いた時だった。
その背中に、一本の矢が突き刺さっていた。
「え……?」
ディアボロスは振り返る。矢の飛んできた方向へ。
「………」
観戦していた、二年生のエルフが。手にしていた矢を、放っていた。
「お前……!」
ディアボロスの身体がもう一度倒れる。
ディープゾーンの中へ。
「ばっ……!」
慌てて立ち上がりかけたが、立ち上がりかけても、動かない。だってもう、倒れてしまったから。
「くそっ……!」
ギルガメシュは床に手をつくが、それでもその腕に力が入らなかった。
「……………す、すみません……」
「アホか、テメェは……!」
セレスティアが再びディープゾーンへと飛び込むと同時に、ギルガメシュは視線をエルフに向ける。
「……エルフ君?」
「信じられなくて……」
ヒューマンの問いに、エルフは弓を構えたまま呟く。
「最強が落ちるのを、俺は信じられなくて。だから、つい撃って……」
「他人の決闘に、テメェ如きが土足で入り込むんじゃねぇっ!」
「!?」
「負けは負けだ。素直に認めるっきゃねぇよ……それに」
何か変な感情まで、ふっ切れた気がして。
「負けたっつーのになんか変な気分だ」
ディアボロスを掴んでセレスティアが再び浮かび上がる。どうやらあの様子だと生きてはいるようだ。
「おい、そいつ生きてるか?」
「生きてますよ……って、ギルガメシュ君も大丈夫ですか?」
「無理だ」
あっさりとそう答えるギルガメシュに対して、セレスティアは笑う。
「もう……ともかく、二人とも手当てしないと……誰か聖術使える人は」
「はいはーい」
ヒューマンが駆け寄り、ディアボロスに取りかかる。セレスティアはセレスティアでギルガメシュに向かった。
「……そういえばギルガメシュ君、気になってたことがあって」
「……なんだ?」
「私を好きになった理由って、もしかして、一年生の時に出会った時、とか?」
「………なんだ、覚えてたのか」
「本当にそれが理由だったんですね……」
「まぁな………あいつに出し抜かれたカタチになったつーか……けど、俺らしくもなくいつまでもうだうだしてた俺が悪かったのかもな」
完全にバカした、とギルガメシュは呟く。
「幾ら最強だろうと欠点ぐらいあるさ」
「……それもまたギルガメシュ君らしいですね」
同時に笑った。
「……ギルガメシュ先輩、俺の彼女にそんなに笑いかけないでくださいよ勘違いしそうです」
「うるさい黙れ。先輩には敬語を使え」
ディアボロスの言葉にギルガメシュがそう返し、ヒューマンが笑う。
「もう治療の必要無いねー」
「あ、もうちょっとメタヒールかけて、お願いします」
戦いが終わった後。
つい先ほどまで殺伐していたというのに、和やかな空気だった。
このまま、綺麗なまま、流れてしまえば良いと思うのに。
直後だった。
「………ん」
それに最初に気付いたのはエルフだった。
「何か、変な音しません?」
何かが軋むような、そんな音。迷宮に潜り続けて初めて聞く音。
「変な音? ……そういやするな」
ディアボロスも呟く。
まるで、何かがはち切れる直前のような。崩れる一歩手前というか。
「何の音でしょうね?」
セレスティアが首を傾げる。
「さぁ?」
ヒューマンも首を傾げる。
「そういや、こんな音聞いた事あるな……そうだ、昔まだガキだった時に近所でお化け屋敷って騒がれた屋敷があって」
ギルガメシュが昔を振り返るように呟く。
「何か変な音がするなって思って。こんな音だった。そしたら、幼なじみの兄貴がすっ飛んできて早くここから出ろって言われて」
音はますます大きくなる。
だが、その場にいた五人はギルガメシュの話に夢中になっていた。
「そして、俺らが出て数分経った時に―――――屋敷が一気に崩壊したんだ。頑丈そうな屋敷が」
直後、文字通り崩壊が始まった。
「………マジでか」
ギルガメシュは思わず呟く。
ヒビ割れた天井。崩れ落ちる壁。
溢れ出して、通路へと流れ込む水に混じって流れ行く土砂。
始まる崩壊を、止められる術は無い。
「……逃げるぞ!」
五人が駆け出すと同時に、ゼイフェア地下道中央に、一斉に水が流れ込んできた。
一気に天井近くまで水没し、天井から崩れた土砂が頭上から降り注いでいた。
崩壊が終わった後、残されたのは破壊し尽くされた地下道だった。
パルタクス学園にそのニュースが飛び込んできた時、殆どの生徒は既に就寝中の時間だった。
「ゼイフェア地下道が水没したって本当ですか!?」
「おお、マクスター。来たか。どうやら本当らしい。姉さんが教えてくれた」
ユーノが頭を掻きつつそう呟き、他の教師陣も何故か浮かない顔だ。
「どうしました?」
「実はな……崩落に巻き込まれた生徒がいるらしい。ボストハスの宿屋の主人が崩壊前にゼイフェア地下道に入った生徒がいると」
「…………」
もしそうだとすると、それは大変だ。
「すぐに救援に行かないとマズいでしょう! 崩落ですよ!?」
「ああ。急いでくれ。ギルガメシュに頼んで……」
「あいつ今脱走中ですから何処にいるか……」
ユーノの言葉にマクスターは思わず固まる。
「……まさか」
いなくなったギルガメシュ。脱走したという話。そして今朝、偶然食堂で小耳に挟んだ。
ギルガメシュがゼイフェア地下道中央に行くという話をしていた。
「………とにかく、編成を急ぎます!」
マクスターは職員室を飛びだし、生徒会室に向かった。
親友を助け出さなくては行けない。例え何が起こっても、彼は、ギルガメシュは。
マクスターの親友であり続けるのだ。
五人の生徒が行方不明になったゼイフェア地下道崩落事故の原因は未だに解っていない。
事件を目撃したゼイフェア生によると二人の生徒による決闘の前後から地盤が緩んでいた、と話していたが地下道が崩落した以上真偽は定かではなく、何よりそのゼイフェア生も失踪を遂げている。
そしてパルタクス学園では、かつて学園最強と呼ばれた、行方不明の男子生徒の帰りを、少女は待っていた。
捜索が打ち切られても、彼女は彼の帰りを、ずっとパルタクスで待ち続けているのである。
彼がいた場所、そして彼が帰ると言った場所。
愛する少女が待つ場所に、彼が必ず戻ってくると信じて。
そして、1週間後。
この世界は、別世界からの侵攻を受け、戦争状態へと突入していく事になる。
そしてこの日より、闇の魔導師の天才と呼ばれたディモレアは歴史の表舞台から姿を消す事になる。
その消息も解らぬまま、異世界へと戻ったか下野したかは定かではない。ただ、時折ゼイフェア地下道近辺での目撃情報だけが残されている。
……『ディモレアさん家の決戦事情』 終幕
to be NEXT Episode…?
====存在しえない予告====
遡ること、二〇年前。
マシュレニア学府で学ぶ一人のディアボロスの少女がいた。
同じくマシュレニア学府で学ぶ一人のヒューマンの少年がいた。
魔導師として遥かな高みを目指した彼女。
錬金術士としての極限を目指した彼。
「この世界は酷いものだ。どいつもこいつも腐ってやがる」
「それでも、あたし達はこの世界に生きてる。エド、あたしはこの世界を信じる」
「ディモレア……!」
すれ違いそうでも、繋がっていた思いがそこにある。
「姉さん……俺は、無理な事は無理だって言うタイプなんだ。だから出きる事なら姉さんを止めたい」
「ダンテ、あんたの気持ちはよく解る。けどね、あたしを誰だと思ってるの?」
「……ディモ姉さんには敵わないさ」
彼女が生んだ奇跡こそが、従弟への標となるのか、それとも闇への誘いなのか。
「……エド先輩、どうかお幸せに。パーネは貴方と違う道を行きます」
例えどうなっても守りたい、大切なものってありますか?
ディモレアさん家シリーズ、Episode1血塗られた王の系譜
近日公開予定。
てな、訳で決戦事情終了であります。
……いきなり天剣はやめて下さい、このダンジョンで石化は命取りなんですぅ〜!
バリデスガンも撃たないで、やめて!ビッグバムも不許可です!
まぁ、そんな訳で次は過去話になります。
ダンテ先生とかパーネ先生とか出て来ます。その頃は先生じゃないですけど。
現在頑張って執筆中であります。
だからバリデスガンはやめてください〜!
25 :
エスモノ:2009/08/24(月) 18:40:07 ID:RVnbHgH3
GJ!
な、なんだってーー!!
今度は過去話ですか!?まったく展開が予想できない……
予告……ダンテとディモレアに期待。
20年前……ということはパーネ先生は最低でも35さぎゃ!!(後ろから黒いビーム
し、四捨五入で4(a lost
5人どうなったんだ……すげえ気になるぜ
ともあれ、お疲れ様でした!
ゴアデーモンの攻撃がやけに卑猥だった。
という訳で普通科ディア子に悲惨な目にあってもらいました。鬱的な内容につき苦手な方はスルー推奨。
心配する友人や恋人の声を振り切って、ディアボロスは一人でトハス海底洞窟に向かった。
薄暗い道をたった一人行くディアボロスの目当ては、ガンメンというモンスターだ。極限まで己を鍛える手段として、レベルドレインを受けるためだった。
ワーニングゾーンをぶらぶら歩き回っていると、モンスターが現れる。トハスに生息するモンスターはガンメン以外にもスカイドラゴンやパンサースネイクといった凶悪なものが多いが、強力なブレスと多彩な魔法を操る彼女の敵ではなかった。
かにじゃり水魚をブレスのひと吹きで焼き払い、生き残った一匹を硬い殻ごと素手で叩き潰す。数十回もの転生をも終了させた彼女にとって、最大の敵は油断と過信に他ならない。
瞬く間に殲滅したかにじゃり水魚が宝箱を落とした。珍しく白い宝箱だったので、ディアボロスはしゃがみこんでそれを観察してみる。
普通科の彼女に罠の見極めも解除もできないが、ちょっとした遊び心が芽生えたのだ。
「ん〜……スタンガス、いや、やっぱりワープかな…」
叩いてみたり蓋の隙間を覗き込んだりして、罠の目星をつける。やがて適当に女神の審判だろうと判断すると、答え合わせのためにサーチルを唱えた。
「っと、悪魔の呪いか。やっぱり適当にやっても当たらねぇな……アンロック」
魔法で宝箱の罠を解除し、中身を取り出す。折れたサーベルや魔力の銅貨といった価値の低いものがいくつか出てきただけだった。
がっかりしたディアボロスがそれらをため息とともに道具袋に詰め込んでいたとき、不意に背後に気配を感じる。ディアボロスがあわてて立ち上がろうとしたときには、後頭部を強打されて倒れていた。
朦朧とする意識の中、身体を仰向けにねじる。黄色く光る目で彼女を見下ろしていたのは、一匹のゴアデーモンだ。
ゴアデーモンが鋭い爪のはえる手を振り上げる。思わずディアボロスは首をすくめて目を強く閉じた。胸から腹にかけて切り裂かれる感触。
「くっ!……きゃああっ?!」
内臓を抉られると思っていたゴアデーモンの一撃は、ディアボロスの着ている制服を切り裂いただけだった。控えめな乳房があらわになっている。
怒りと恥辱に歯を食い縛り、ゴアデーモンに拳を突き出す。しかし無理な体勢で放った素手の一撃は難なく受け止められてしまう。
ゴアデーモンがキィキィと耳障りな笑い声をあげて、ディアボロスの乳房を掴んだ。鋭い爪が白い肌に食い込み、力任せの愛撫に激痛が走る。
「痛っ!……ちくしょう、ふざけんなよっ…!!」
ゴアデーモンの頭を消し炭にせんと息を大きく吸ったディアボロス。だが睨み付けたゴアデーモンの醜悪な下半身が視界の端に映り、思わず小さな悲鳴をあげてしまった。
ゴアデーモンの勃起したペニスは、ディアボロスの腕ほども太さがあった。長さもあり、先端は鋭く尖ったそれはさながら槍といっても過言ではない。
それが今まさに、己の性器に狙いを定めていたのだ。数々の死地を越えてきたディアボロスだが、モンスターに犯されることへの恐怖はそれすらも凌駕した。
ディアボロスは腕をめちゃくちゃに振り回し、すっかり取り乱してしまう。
「やだっ……嫌だ、やめろぉっ!!」
ゴアデーモンの槍状のペニスが下着越しにあてがわれた。恐怖に強張ったディアボロスは魔法を唱えられず、ひきつった呼吸ではブレスも吐けない。
グッ、と下着を突き破る一瞬の間があって、ゴアデーモンはディアボロスの身体を貫いた。ディアボロスは限界まで目を見開き、凄まじい痛みに絶叫する。
「ぎゃあああああっ!!」
不幸なことに彼女は強かった。この凄惨な凌辱に押し潰されない精神力も、身を引き裂く痛みに耐えうるだけの体力もあった。ディアボロスはろくな抵抗も出来ないまま、ただ何度も腹の中を抉られる。
「誰か、助けてっ……痛いよおっ……ヒューマン、フェルパー…っ!!」
仲間の名を呼んでも、パルタクス学園にいる彼らにはきっと届かない。心配してくれた手を無下に振り払ったのは、紛れもなく自分なのだから。
ゴアデーモンの動きが性急になり、ディアボロスの身を裂く痛みも跳ね上がる。体内でゴアデーモンのペニスが膨れ上がったのを感じたとき、ディアボロスは一際激しく暴れた。
「やだ、嫌だあっ!それだけは嫌だああああっ!!」
恋人の顔が頭を掠める。身体を重ねるときは必ず避妊をしていたから、ディアボロスはまだ彼の精を受け入れたことはなかった。
助けを求めて泣き叫ぶ小娘を嘲笑うように、ゴアデーモンは焼け付くように熱い体液をディアボロスの中に注ぎ込んだ。
「うああっ、熱いぃ……っうぐ、ちくしょう……ちくしょう…」
食い縛った歯の間から嗚咽がこぼれる。ゴアデーモンは満足したようにペニスを引き抜くと、今度は後ろの穴に狙いを定めた。
痛め付けるようにじっくりと、槍状のペニスがディアボロスの肛門を突き破る。泣きじゃくるディアボロスの喉からは、か細い悲鳴しか出なかった。
「いたい……うああ、痛いよぉ……ぐすっ、助けてぇ、誰かあ…」
彼女の声に答えるように、遠くからいくつもの足音が聞こえてくる。ディアボロスは安堵に息をつき、足音の方に首を向けた。
仲間たちか、通りすがりの冒険者か……期待を込めて暗闇に目を凝らすディアボロス。その赤い瞳に、次第に絶望が広がっていった。
こちらにやって来るのは人間ではなく、ゴアデーモンやドン・オークなどのモンスターだった。下卑た笑いを浮かべるそれらはディアボロスを取り囲み、醜悪なペニスをディアボロスに突き付ける。
一匹のドン・オークがディアボロスの頭を掴み、イボのあるペニスをその口に押し込んだ。えずくディアボロスに構うことなく、掴んだ頭を激しく揺らす。
初めのゴアデーモンがディアボロスの腸内に体液を吐きだした。休む間もなく前の穴にドン・オークが、後ろの穴にゴアデーモンがペニスを挿し込み、激しく腰を動かす。
「……うぐっ…ん"ん"〜〜〜っ!!」
凄まじい痛みに涙をこぼすディアボロスの瞳から、光が消えていく。もはや思考は完全に止まり、恋人や友人の顔もうまく思い出せなかった。
いつしか静けさを取り戻した洞窟に、ディアボロスのすすり泣きだけが響いている。彼女のまわりには頭を砕かれ、身体を焼かれ、無惨に横たわるゴアデーモンやドン・オークの死体が無数に転がっていた。
不幸なことに彼女は強かった。気の遠くなるような凌辱の果てにディアボロスを蝕んでいた恐怖は悲しみに変わり、更には悲しみを怒りに塗り替え、手当たり次第に暴れまわった。
元々が束になろうと負けるはずのない相手。あっさりと全滅したモンスターに、余計に悲しみが込み上げてくる。
恋人が大事にしてくれた彼女の身体は、こんな奴らに汚されてしまった。
「…っふ、ぐう……ううっ…!」
息をしただけで激痛が走る身体を引きずって、ディアボロスは洞窟の奥へ這っていく。何処か遠くで、ディアボロスを呼ぶ声が聞こえた気がした。
以上お粗末。
でも実際は男女問わず槍状のナニでつっついたり体液を飛ばしたり、
ただの変態紳士な気もする。
ディア子災難…しかし普通科ディア子とは珍しい。
てか、ゴアデーモンてそんな紳士だったのかw
GJ
それはそうと、とらのあなでらびらば入荷してましたよっと
34 :
33:2009/08/27(木) 00:04:41 ID:m+LosTap
ごめん、らびらば2のほうでした。
10分前の俺のID、不吉でござるな
>>34 そのIDはひどいな。
とりあえずここにゴエモンのキセルとサジタリウスの弓がある。
これをもってドゥケット岬に行きなさい。
そして夕日を見ていると後ろから声がかか、おや、こんなところに宝箱がってあれ?急に開いて……
【スタンガスで動けなくなったところを袋叩き。スタッフがおいしくいただきました】
>>35 むしろ動けなくなったヒューマンをそのままいただk(アッー!
数分後……そこには
『お前にはお前に惚れた女たちの為にもう暫く生きていてもらう』
という宣告が!
4スレも前の話題が通じる。こんな結束のある所は初めてだ。
ちょっと「a Lost」読み直してくる。
投下したいと思います。しかしID素敵な人が多いな……LosTとか3Pとか。
今回は前回大暴れしたノームパーティの、クロスティーニお留守番組。
冒頭部分は一緒になるので、そこは省いてます。今回も長いですが、半分以上ヤッてるだけの内容です。
注意としては3Pもので、百合要素もあり。百合では基本クラ×ドワですが、最後の方でちょっとだけ逆あり。
それと、少しだけ別ゲームのネタが入ってます。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
クロスティーニに戻った三人は、久しぶりに教室での授業を受けつつ、それ以外では休みを満喫していた。以前は退屈に思えた授業も、
久しぶりに受けてみるとなかなか面白く、三人はいわゆる学生生活を存分に満喫している。
もちろん、色々な意味で好奇の目は多かった。今や学園一の実力者となっているパーティでもあり、また学園一の複雑な人間関係を持つ
パーティでもある。しかも、彼等はその中心たる三角関係を持つ三人なのだ。目立たない方がおかしい。
しかし、三人ともそんなものは気にしていなかった。本人達が受け入れている以上、周りがどんな目で見ようと関係ないと
思っているのだ。そんなわけで、三人は至って普通に生活し、普通に勉強し、普通に遊んでいる。もちろん、大抵は三人一緒に、である。
「ヒュマ君、これいらない?」
「いらねえ。お前、好き嫌い多すぎだろ」
「じゃ、ドワちゃん、これあげる」
「わぁ〜、ありがとー」
「あげるな、喜ぶな」
間違って取ったシーフード入りペペロンチーノのシーフードを、全てドワーフの皿に移すクラッズ。喜ぶドワーフ。呆れるヒューマン。
いつもと変わらない、普段の光景である。
「お前は……きのこも嫌い、エビも嫌い、コーンも嫌いでピーマンも嫌いって、普段何食ってるんだよ」
「パスタは好きじゃよ。ハンバーグも好きじゃし、ピラフも。あとは道草とか人様の時間とかよそ様のお金とか…」
「それは食うな」
「冗談じゃって」
そんな会話をする二人を、ドワーフは笑いながら見つめている。
「二人とも、面白いよね〜」
「ドワちゃんが笑ってくれるなら、いくらでも言うよ」
「突っ込み疲れるから、ほどほどにしといてくれよな」
三人で過ごす時間が増えたためか、彼等の仲は一層良くなってきている。その顔にはいつも笑顔があり、話す声は弾んでいる。
以前は少しぎこちなかったヒューマンも、今ではすっかりこの状況に馴染んでいた。そんな彼等を羨ましいと思う者も多いが、同時に
汚らわしいと思われていたり、さぞ鬱陶しい関係だろうと思う者もいる。いずれにしろ、彼等には関係のない話である。
授業を受け、食事をし、訓練をし、遊び、かいた汗を風呂で洗い流す。その後はそれぞれ部屋に戻ることも多いが、当然の如く、
一つの部屋に集まることも多い。そうなれば自然、やることは決まっている。
その夜も、三人は一つの部屋に集まっていた。というより、ドワーフとクラッズは相部屋なので、そこにヒューマンが来たという方が
正しい。
「お、ヒュマ君来たねー。早速する?」
「お前……気が早いよ」
「じゃってねー?あたしもドワちゃんの可愛い声、早く聞きたいし」
「………」
当のドワーフは、尻尾を落ち着きなく振りながら、恥ずかしげにうつむいている。
「でも、ドワーフの意見無視するなよな。ドワーフが嫌がったらどうするつもりなんだよ」
「あ、あの…」
ヒューマンが言うと、ドワーフはもじもじしながら口を開いた。
「わ、私は……その、何日かしてなかったし……したい、な…」
「お、ドワちゃん珍しく積極的。何かあったの?」
クラッズが尋ねると、ドワーフはますます恥ずかしそうにうつむいた。耳もへなっと垂れており、全身の毛も若干膨らんでいる。
「……あの、だって、私だって、するの嫌いじゃないし……嫌いじゃないって言うか…」
「……ドワちゃん、意外とエッチなんじゃね」
そう言われると、ドワーフの体毛がもさりと膨らむ。
「まあとにかく、それなら話は早いよねー!ささ、ドワちゃんも脱いで脱いで!」
言いながら、クラッズは一瞬の躊躇いもなく服を脱ぎ捨てる。そんな彼女を、ヒューマンは少し呆れた顔で見つめている。
「お前って、ほんっとに羞恥心と無縁だよな」
「今更恥ずかしがることじゃないしねー。それに、女は見られてきれいになるものじゃよ?」
「……ほんと?」
「ドワーフ、真に受けるなよ…」
「ほんとじゃってばー。見られてるって意識すると、きれいにしようとするでしょー」
「ああ、何か納得した」
「って、話はいいから脱ぐ脱ぐー。脱がせるのも楽しみの一つではあるけど、三人だとそうも言ってられないもんね」
そう言いつつ、クラッズはドワーフの服を脱がせにかかっている。ドワーフはドワーフで、上はクラッズに任せ、自分はショートパンツを
脱ぎにかかっている。そんな二人を見つめつつ、ヒューマンは一人で服を脱ぐ。
「ふふ。ドワちゃん、今日もかわいい声聞かせてね」
「クラッズちゃん……ん…」
ようやく服を全て脱いだヒューマンを尻目に、クラッズとドワーフはしっかりと抱き合い、キスを交わしていた。
お互いの唇を吸い、舌を入れる。かと思えば、少し唇を離し、舌先で突付くようにじゃれあう。そして舌を絡め、再び深いキスを交わす。
「クラッズ……お前早えよ…」
「ん……ぷぁ。ヒュマ君が始めちゃったら、ドワちゃん独り占めになるんじゃから、今はいいでしょー」
「俺もキスしたかったのに……まあいいか。でも、俺も混ぜろよ」
ヒューマンもベッドに乗り、クラッズとキスを交わすドワーフの後ろに座る。そして彼女の腋の下から腕を回し、胸を包むように触れる。
「んんっ…!?んぅ……ぷはっ!ふ、二人でそんな……んっ……ん、ぅ…」
ヒューマンの手が、ドワーフの胸をゆっくりと揉みしだく。着痩せするのと体毛の関係で、見た目よりも胸は大きい。触れると柔らかく、
よく手入れされた体毛が艶々とした手触りで、思いの他気持ちいい。
全体を捏ねるように揉み、指先で乳首を摘む。ヒューマンの手が動く度、ドワーフは体を震わせ、口を塞がれたままに声をあげる。
「んっ!ふ、ぅ…!うぅ〜……んんっ!んく……ぷぁ!ふ、二人とも、ちょっと待ってぇ…!」
クラッズが唇を離した隙に、ドワーフは何とか口を開いた。
「ん?どうしたの?」
「だって、二人ばっかりで……私も、お返ししたいよ」
「ん〜、あたしはされるの性に合わないから、ヒュマ君にしてあげるといいよ」
「そう?じゃあ、ヒューマン君、そっち向かせて」
言われてヒューマンは手を離し、ドワーフは彼の方へと向き直る。
「ええっと……どうしよ?」
「無理するなよ?」
「ドワちゃん、ヒュマ君の舐めてあげたら?ドワちゃんの舌なら、すっごく気持ち良さそうじゃない」
「な、舐めるの?」
ドワーフはヒューマンのモノを見て、少し怯んだようだった。だが、すぐに覚悟を決め、顔を近づけようとしたとき、クラッズが
口を開いた。
「あ、ドワちゃん、やっぱりちょっと待って」
「え、なぁに?」
すると、クラッズはドワーフの耳に、そっと唇を寄せる。
「抵抗あるならさ、もうちょっと別の場所舐めてあげるって手もあるよ」
「そうなの?」
「……何話してるんだ?」
クラッズが小声で何か囁くと、ドワーフは一つ頷き、ヒューマンの手を取った。そして、彼の顔を上目遣いに見つめる。
「あの、ね、ヒューマン君。ちょっと、練習させてくれる?」
「練習?」
返事を待たず、ドワーフはヒューマンの指をはぷっと咥えた。
「っ…!ド、ドワーフ…!」
咥えたまま、まるで子供のようにちゅうちゅうと吸いあげ、指の腹を舐める。続けて舌を巻きつかせ、唾液を絡めて全体を丁寧に
舐め上げる。暖かい口内の感触が全て指先に伝わり、自然とヒューマンの胸が高鳴る。まして、一心不乱に指をしゃぶるドワーフの姿は、
何とも言えず淫靡に映る。
「ちゅ……ん……ふぅ。ヒューマン君、どう?」
「あ、ああ……すげえいい」
「んっふふ〜。こういうのは雰囲気も大切じゃからね〜。それじゃ、あたしも」
クラッズがドワーフの後ろに近づき、背中にそっと触れる。そのまま手を滑らせ、尻尾まで来ると、クラッズはそれを軽く握り、
毛並みに沿ってすうっと扱くように撫で付ける。
「ふぅ、ん…!」
ドワーフの体がピクリと跳ねる。クラッズはそのまま尻尾の先まで手を滑らせると、彼女の秘部に触れた。
「んふぅっ!」
「痛て」
思わず声をあげた瞬間、ドワーフはついヒューマンの指を噛んでしまった。それに気付き、ドワーフは慌てて口を離す。
「あ、ごめんね!だ、大丈夫?」
「ああ、別に大したことねえよ」
「そう?それならいいけど……もー、クラッズちゃんてばぁ!」
ドワーフが非難がましく言うが、クラッズは気にする風もなく笑う。
「ごめんね〜。でも、指にしといてよかった。さすがにヒュマ君のそれ噛ませちゃ、今頃大惨事じゃもんね」
「お前、それを見越した上でやらせたのかよ…」
「細かいことは気にしないのー。ほらドワちゃん、もっと気持ちよくさせてあげる」
言いながら、クラッズはドワーフの秘裂を優しく開かせ、そこに指を這わせる。
「んあっ…!」
ドワーフの体が跳ね、指を拒むかのように秘部が収縮する。そこにクラッズの小さな指が入り込み、襞を撫でるように指を動かす。
「うっ……あんっ!」
「ふふ、気持ちいいでしょ。でも、ドワちゃんはここより、こっちが好きなんじゃよね〜?」
クラッズの手が、少しずつ前へと動く。そして、最も敏感な突起に触れると、ドワーフの体がビクリと震えた。
「うあっ!そ、そこぉ……いいよぉ…!あっ!」
「ドワちゃん、相変わらずいい反応じゃね〜。……ん、だいぶ濡れてきてるね。そろそろヒュマ君の出番かな〜?」
同性ということもあってか、クラッズの責めは的確で、ドワーフの弱いところを正確に突いている。前戯に関しては、ヒューマンは
彼女に勝てる気がしない。
「ああ……俺もぼちぼち、我慢が限界になるとこだった」
「らしいよ、ドワちゃん。ドワちゃんも、そろそろ入れたいでしょ?」
「あっ、んっ!そ、そんなこと…!」
クラッズの言葉に、ドワーフの体毛が膨らむ。だが否定はせず、むしろヒューマンを期待に満ちた目で見つめている。
「ドワーフ、いいか?」
「……うん…」
ドワーフが答えたのを見て、クラッズはすぐに手を離す。ドワーフはそのままヒューマンの腰に跨り、ヒューマンの肩に手を掛けた。
「お前、このやり方好きだよな」
「だって、顔も見えるし、ギュッてできるもん。ヒューマン君は、嫌?」
「まさか。俺も好きだよ」
「よかった、えへへ」
嬉しそうに笑い、ドワーフはゆっくりと腰を落とす。秘裂が彼のモノに当たると、ドワーフは一度動きを止め、ヒューマンの顔を
見つめる。ヒューマンが腰に手を回すと、ドワーフは再び動き始めた。
「ふ、ん…!んんん…!」
濡れそぼった秘裂がゆっくりと開かれ、少しずつヒューマンのモノを飲み込んでいく。それが入るに従い、ドワーフの秘部はヒクッと
収縮し、ヒューマンのモノを締め付ける。熱くぬめった体内で強く締め付けられる快感に、ヒューマンは呻き声を上げた。
「くっ……中、すげえいい…!」
「んっ……う……くはぁ…!ヒューマン君の、全部、入ったよ…」
完全にヒューマンの腰に座る形となり、根元まで彼のモノを飲み込みながら、ドワーフは陶然とした表情でヒューマンに話しかける。
「えへへ……お腹の奥まで、いっぱいだよ…」
「ドワーフ…」
ヒューマンは彼女の腰に添えていた手を、そっと首筋に滑らせた。
「さっき、出来なかったからさ……いい?」
「うん。いっぱい、しよ」
ドワーフはぺろりと、ヒューマンの口元を舐めた。彼女からすると、キスより意味の強い行為らしいのだが、ヒューマンとクラッズには
そういう習慣がないため、最初は執拗に口元を舐めて、二人を大いに戸惑わせた。
ヒューマンが首を抱き寄せると、ドワーフは嬉しそうに微笑む。そのまま軽く目を瞑り、唇を重ねる。ヒューマンが舌を入れると、
ドワーフはそこに自分の舌を巻きつかせるように絡めた。
舌が触れ合い、唾液が交じり合う音が響く。二人はしばらくそうしてキスを楽しんでいたが、不意にヒューマンが腰を動かした。
「んっ!」
「ん、悪い。びっくりさせちゃったか?」
ヒューマンが尋ねると、ドワーフは優しく微笑み、首を振った。
「ううん、平気。もっとぎゅって、していい?」
「ああ。そうされると、俺も気持ちいい」
嬉しそうな笑顔を浮かべ、ドワーフはヒューマンに抱きついた。そして再びキスを交わし、ヒューマンはゆっくりと腰を動かす。
じれったくなるほどに、ゆっくりとした動き。それでも、突き上げるごとにクチュッと水音が響き、ドワーフは抑えた喘ぎ声を漏らす。
お互いの温もりと感触を味わい、いかにも幸せそうな表情である。
しかし、クラッズとしては手持ち無沙汰である。いまいち入り込むタイミングが掴めず、彼女は二人の傍らでじっと見ていたが、やがて
その顔にいたずらを思いついた子供のような笑みが浮かんだ。
そっとドワーフの背後に近づき、尻尾の裏側を撫でる。
「ひゃん!?ク、クラッズちゃん?」
突然の刺激に、クラッズはヒューマンとのキスを中断し、肩越しに振り返る。
「んっふふ〜。あたしもちょっと混ぜてね〜」
クラッズはそのままドワーフの尻尾を持ち上げ、手を滑らせる。尻尾の根元を通り、肉付きのいい臀部を撫で、そして指がもう一つの
穴に触れた。
「きゃあ!?そ、そこはお尻の…!」
「こっちも気持ちいいって知ってる?うふふ、二人とも気持ちよくしてあげるから」
「や、やだやだぁ!!お尻なんてやだよぉ!!汚いよぉ!!」
「さっき体洗ったでしょ?なら大丈夫じゃって!」
「そうじゃなくって、クラッズちゃん、やめ…!」
ドワーフの声には耳も貸さず、クラッズはゆっくりと指を突き入れる。途端に、ドワーフのそこがぎゅっと縮こまる。
「やっ、い、痛い!クラッズちゃん、やめてよぉ!」
「うあっ……すげえ締め付け…!」
同時にヒューマンのモノも強く締め付けられ、思わず声をあげる。
「あはは、ヒュマ君は気持ち良さそうじゃね。ドワちゃんは、もうちょっと優しくないとダメかな〜?」
「優しくしなくていいから、やめてってばぁ!」
やはりドワーフの言葉は無視し、クラッズは一度指を引き抜くと、自身の秘部に触れた。
「んんっ……ふふ、こういうときは、女の子同士って便利じゃよね〜」
自身の愛液をたっぷりと絡め、クラッズはもう一度ドワーフの尻尾を持ち上げる。そして再び、腸内に指を突き入れた。
「んあぁ!!や……やだぁ…!」
今度は滑りが良い分、ドワーフが痛がることはない。しかし体内に激しい異物感があり、彼女はそれから必死に逃れようと
するかのように、顔を彼の肩に乗せるようにして、ヒューマンにしっかりと抱きついている。
「どう、ドワちゃん?」
「き……気持ちよくなんかないよぉ…!」
「ほんとかな〜?抜くときとか気持ちいいでしょ〜」
クラッズがゆっくりと指を引き抜くと、ドワーフの尻尾がビクッと震える。
「やだっ……へ、変な感じするよぅ…!」
「お、おいクラッズ、あんまりいじめちゃ…」
「あ、ヒュマ君にもちょっとサービスしてあげるね。ふふふ」
妖しく笑うと、クラッズは指の角度を変え、腹側を擦るように指を曲げた。
「うあっ!?な、何だこれ…!?うっ……くあ…!」
腸壁越しに自身を撫でられ、ヒューマンは感じたこともない快感に上ずった声をあげる。
「どうヒュマ君?気持ちいいでしょ」
「くぅ……あ、ああ……すげえ、気持ちいい…!」
「でしょ?ふふ、ヒュマ君は気持ちいいって、ドワちゃん」
「うぅ……ヒューマン、君…!」
今まで肩に顎を乗せていたドワーフが、不意にヒューマンの胸へと顔を埋める。荒い吐息が肌をくすぐり、ヒューマンとしては悪くない。
「ド、ドワーフ、大丈夫か?」
「……ふーっ……ふーっ…!」
クラッズがいくら指を動かそうと、ドワーフは何も言わない。それまで嫌がっていたにも拘らず、ただじっと耐えるばかりである。
ややあって、クラッズはその理由に気付いた。
「ドワちゃん、ヒュマ君が気持ちいいって言ったから、我慢してるんじゃね?」
「……ん…!」
クラッズに言われると、ドワーフは恥ずかしそうに、顔をヒューマンの胸に押し付けた。
「かわいいのぅ〜、いじらしいのぅ〜!ドワちゃんのそういうところ、あたし大好きじゃよ!」
言いながら、クラッズは指を二本に増やす。さすがに少し痛かったらしく、ドワーフは思わず尻尾を下げようとする。
「うあぁ…!」
「ごめんごめん、ちょっと痛かったよね。これ以上は無理しないから、安心して」
慎重に指を動かす。引き抜くときは、焦らすようにひどくゆっくりと。突き入れるときは、少し速く。クラッズの指が動く度に、
ドワーフの口から熱い吐息が漏れる。
「ふあ……ぁ…!」
「ドワちゃん、反応変わってきたね〜。ほら、ヒュマ君も」
「ぐっ……くぅ…!」
時折、中からヒューマンのモノを撫でる。腸壁越しに感じるクラッズの指がたまらなく気持ちよく、撫でられるたびにヒューマンは
抑えた声を上げる。またドワーフにも、体内を擦られる刺激が伝わり、尻尾がビクリと跳ねる。
ほとんど腰は動かしていないものの、繋がった状態でなお加えられる快感に、二人はあっという間に上り詰めた。
「うぅ……ドワーフ、出そうだ…!」
「や、やだっ……わ、私、お尻でぇ…!う、あ……やああぁぁぁ!!!」
悲鳴に近い嬌声が上がり、ドワーフの体が仰け反る。同時に、膣内が彼のモノをさらに奥まで引き込むように蠢動し、強く締め付けた。
「うあっ!中が……ぐぅ、もう出る!」
ドワーフの腰を掴み、思い切り腰を突き上げるヒューマン。直後、彼はドワーフの体内に精液を注ぎ込んだ。
「で……出てるよぉ……私の中にぃ…」
二度、三度とモノが跳ね、その度に熱い精液が流し込まれる。最後に、ヒューマンは一旦腰を引き、一際強く腰を押し付ける。
そうして最後の一滴を彼女の体の一番奥に注ぐと、二人は大きく息をついた。
「ふふふ。二人ともエッチじゃったよー。ドワちゃん、気持ち良さそ」
うつむき、荒い息をつくドワーフの背中に覆い被さり、クラッズは満面の笑みを浮かべる。
「はぁ……はぁ……もぉ、クラッズちゃんてばぁ…!」
「怒らないでよ〜。気持ちよかったでしょ?」
「そ、それは……でも、お尻はもう、やっ!」
「しょうがないなあ。じゃ、今度またね」
「だから、やだってば!」
「あの、ドワーフ」
その時、ヒューマンが口を開いた。
「あ、なぁに?」
「その、さ。このままもう一回、いいか?」
尋ねた瞬間、ドワーフの体が、かあっと熱くなったのを感じた。そして、彼女は嬉しそうに頷く。
それを受けて、クラッズがドワーフの体から離れると、ヒューマンは再び突き上げる。
「んあっ!ヒューマン君…!あっ!」
「ドワーフ、好きだ…!」
相変わらず、その動きは遅い。しかし、二人ともそんなことはお構いなしに、とても気持ち良さそうな顔をしている。
向かい合って座り、抱き合いながら時に頬を寄せ合い、時にキスを楽しみ、二人はまさに恋人との時間を楽しんでいるようだった。
一方のクラッズは、二人がそんな状態なので、やはり入り込みにくく、どうやって混じろうかと考えていた。
しばらくその手段を考え、やがてクラッズはポンと手を打った。
「ねね、ヒュマ君」
「ん?なんだ?」
「ドワちゃん、こっちに向かせてほしいな。あたしだけ仲間外れは嫌じゃし」
「ああ、悪い悪い。ドワーフ、ちょっと足、いいか?」
「あ、うん。えっと、このまま?」
「だいぶ濡れてるし、たぶん痛くないだろ」
ヒューマンはドワーフの足を持ち上げ、繋がったままでぐるりと反転させた。ヒューマンのモノが中で激しく擦れ、二人は同時に
声をあげた。
「うあっ……中、ぐりってなったよぉ…」
「くっ……今の、結構よかったな」
「浸ってるとこ悪いけど、ドワちゃんちょっと足開いて。で、ヒュマ君はそれ広げる感じでよろしく」
言われて、ドワーフは少し足を開き、ヒューマンはその内側に足を入れる。
「あはは、繋がってるとこ丸見えじゃね」
「や、クラッズちゃん、恥ずかしいよぉ…」
「相変わらず恥ずかしがりじゃなー、ドワちゃんは。でも、そんなとこかわいいよ」
クラッズはドワーフの前に出ると、優しく首を抱き寄せる。その意味を察し、ドワーフは目を閉じた。
唇が重ねられ、小さな舌がドワーフの口内に入り込む。下から突き上げられつつも、ドワーフは声を抑え、必死にそれに応えようとする。
時折、喘ぎを抑えきれず、舌を噛まれそうになる。クラッズはその度に素早く舌を引っ込め、うまく避けていた。しかし、やはり
常に気を張っていなければならず、些か落ち着かない。少し名残惜しい気はしたものの、クラッズはそっと唇を離した。
「んぁ……ごめ……あっ!あんまりうまく、んっ!できなくって…!」
「いいよいいよ。頑張ってくれるだけでも、あたしは十分嬉しいから」
クラッズの手が、ドワーフの胸に触れる。
「あっ…!」
途端に、ドワーフは胸を手で覆ってしまった。
「あ〜、胸隠さないでドワちゃん。……あ、ヒュマ君、ドワちゃんの手、掴んじゃって。そうすれば結構激しくできるよー?」
「……ドワーフ、悪い」
ヒューマンはドワーフの手首を掴むと、自分の方へ引き付け、激しく突き上げる。
「うあっ!?や、やだぁ……こんな、格好…!ああっ!あんっ!」
自然と体が仰け反る形になり、なおかつヒューマンの激しい責めに、ドワーフは全身の毛を膨らませて恥ずかしがる。
「ヒュ、ヒューマンくぅん…!うああっ!あっ!あっ!こ、こんなのダメぇ…!」
「悪いドワーフ。けど、頼むから尻尾で抗議するな」
ドワーフの尻尾が、ヒューマンの腹をバンバンと叩いている。別に痛くはないのだが、抜け毛が舞い上がり、ヒューマンの口に
入りそうになっている。
再び、クラッズがドワーフの胸に手を伸ばす。突き出された双丘に手を触れ、艶のある毛をそっとなぞる。やがて、そこに確かな
突起の存在を感じ、クラッズは笑った。
「あうぅ…!」
「お、乳首発見〜。ふふ、こうやって探すの、楽しいんじゃよね〜」
言いながら、クラッズはそこに顔を近づけ、周辺の毛を掻き分けると、乳首にちゅっと吸い付いた。
「やん!ク、クラッズちゃんん…!」
ちゅうちゅうと音を立て、クラッズは強く吸い上げる。先端を舌で転がし、甘く噛み、そのまま丁寧に舐める。舌が一撫でする度、
またヒューマンが突き上げる度、ドワーフは甲高い喘ぎ声を漏らす。
「あく…!んっ!やっ、もう……二人とも、激しくしないでぇ…!わ、私だけイッちゃうよぉ…!」
「はぁっ……はぁっ……ドワーフ、俺ももうちょっとで…!」
二人の言葉を聞くと、クラッズはドワーフの胸から口を離した。
「ぷはぁ。もう、二人ともイキそう?……ふふ〜ん、なら、あたしが手伝ったげるっ!」
クラッズはにんまりと笑い、ゆっくりと身を伏せた。そして、二人の結合部に顔を近づけると、そこにフッと息を吹きかける。
「やんっ!ク、クラッズちゃん、何を…!?」
ドワーフの言葉には答えず、ただ彼女を見上げてにっこり笑うと、クラッズはヒューマンのモノに舌を這わせた。
「うあっ!?ぐっ…!!」
舌をいっぱいに出し、唾液をたっぷり絡めると、それを押し付けるように這わせる。そして結合部を通り、そのままドワーフの
最も敏感な突起を舐め上げた。
「ふあぁっ!!クラ……クラッズちゃん、そんなのぉ!!うああ!!ダメ、それ強すぎるよぅ!!」
「ぐぅ…!クラッズ、おいっ…!!」
二人の切羽詰った声を、クラッズは心地良く聞いていた。そしてさらに強く、丁寧に舐め始める。
ヒューマンのモノに付いた愛液を舐め取り、代わりに唾液を絡める。ドワーフの陰核を舌全体で舐め、突付き、時には軽く
吸い付いてみせる。
「ぐ……うあっ…!も、もう限界だ!!」
「ダメ!!もうダメぇ!!!クラッズちゃんもうやめてぇ!!」
止めとばかりに、クラッズはドワーフの襞を舌で優しく開かせ、ヒューマンのモノと同時に舐めた。途端に、二人が同時に声をあげる。
「くあっ……ドワーフ、出る!」
「やぁっ!!頭、真っ白にぃ!!!ダメ!!やだ!!私っ……あ、あ、ああああぁぁぁ!!!」
反らされた体をさらに大きく仰け反らせ、ドワーフの体が激しく震える。そんな彼女を一際強く突き上げ、ヒューマンは彼女の中に
二度目の精を放った。しばらくして、ヒューマンが僅かに腰を引くと、激しく掻き混ぜられて泡立った精液が、二人の結合部から
ゴボッと溢れてきた。
「うっ…」
不意に、クラッズが顔をしかめて体を引いた。二人が達した後も結合部を舐めていたのだが、ヒューマンが腰を引いたときに、
彼の精液を舐めてしまったのだ。彼のことも嫌いでないとはいえ、男相手の性行為は彼女にとって不快以外の何者でもない。まして、
モノを舐めるのならともかく、精液を舐めるなど、例え彼に頼まれたってしたい事ではない。
口の中にある生臭くて粘ついた液体の感触に、クラッズは今にも泣きそうな顔になってしまう。が、何を思いついたのか、
その顔にふと笑顔が浮かんだ。
ヒューマンはさすがに疲れたらしく、そのまま仰向けに倒れている。その彼の上に、ドワーフも荒い息をつきながら仰向けに寝ている。
既に結合部は離れ、ドワーフの秘部からはまだ精液が零れ落ちている。
そんな彼女に、クラッズはそっと顔を寄せた。
「どわちゃん」
やや舌足らずの口調で、クラッズが話しかける。
「はぁ……はぁ……はぁ…………な……にぃ…?」
「ちょっと、くちのなか、きもちわるくって……きれいに、してくれる?」
返事を待たず、クラッズはドワーフの唇を奪った。舌を絡めると、ドワーフはすぐにその異質な味と臭いに気付く。一瞬置いて、
それが何であるのかを悟ると、ドワーフはむしろ積極的に、クラッズの舌を舐め始めた。
「んうっ!?ふぅ……う…!」
「ふ……んん……はふ…」
クラッズの小さな舌を、歯を、口蓋を、長い舌で丁寧に舐めていく。その動きに、クラッズは圧倒されるばかりだった。
彼女の口内にあるヒューマンの臭いを、丁寧に舌で拭い取る。やがて、彼の臭いがすっかり消えてしまうと、ドワーフは口を離した。
仕掛けた方のクラッズも、うっとりした表情で体を引き、ドワーフの顔をじっと見つめる。
「嬉しいな、そんなにしてくれるなんて」
「だって、クラッズちゃんだし、ヒューマン君のだもん…」
「ヒュマ君、ちょっと疲れてるみたいじゃし、今度はあたしが、ドワちゃん気持ちよくさせてあげる!」
「あっ…!」
ヒューマンの上からドワーフを引き摺り下ろすと、クラッズは彼女の耳を優しく噛んだ。
「やん……耳はぁ…」
左手ではドワーフを抱き寄せ、右手を彼女の背中に回す。そのまま下へと滑らせ、尻尾に触れると、ドワーフの体がピクンと跳ねる。
「あぅ…」
さすがに疲れているらしく、その反応はやや鈍い。それでも、クラッズの的確な責めは、ドワーフにしっかりと快感を与える。
耳を甘噛みし、尻尾を扱くように撫でる。付け根をグリグリと刺激してやると、ドワーフは荒い呼吸の合間に、甘く鼻にかかった
喘ぎ声を漏らす。
「はぅ、ん…!クラッズちゃん…!」
「疲れてるでしょ?じゃから早めに、イかせてあげる」
耳から口を離し、左手でドワーフの胸をまさぐる。そして毛に埋もれた乳首を探り当てると、今度はそこに吸い付いた。
「あっ!ま、またそこぉ…!んっ!」
強く吸いながら先端を軽く噛み、舌先で突付く。右手では変わらず尻尾を撫で、左手は腹を撫でながら、少しずつ下へと下がっていく。
やがて、敏感な突起に指が触れ、途端にドワーフの体がビクリと跳ねる。
「うあっ!クラ……あっ!あっ!」
「ぷふぁっ。ほんとは舐めてあげたいんじゃけど、ヒュマ君のがね……じゃから、指で我慢してね」
精液で満たされた中には指を入れず、クラッズはじっくりと周囲を解し、突起を優しく撫でる。尖りきった先端を指の腹で撫で、
爪の先で弾き、摘み、再び優しく撫で回す。口では相変わらず胸を吸い、右手も変わらず尻尾を撫でる。
「あっ……く、ぅ…!ん……うあっ!!」
ヒューマンの行為と違い、純粋に快感のみを与えるための動き。既に何度も体を重ねており、また同性ということもあって、クラッズの
責めは的確である。徐々にドワーフの声が大きくなり、呼吸がますます荒くなる。
「んんっ!ふ、あっ!クラッズ……ちゃん…!あっ!」
「ふふっ。ドワちゃん、気持ちいい?」
「ふあ……はぅ!……う、うん……気持ちいいよぉ…!」
瞳を潤ませ、健気に答えるドワーフの姿に、クラッズの胸が思わずきゅんとなる。同時に、クラッズの中にも、全身が疼くような
感覚が広がり始めた。
「かわいい、ドワちゃん。ドワちゃん見てたらあたしも……ちょっと、濡れてきちゃった」
出来るなら、一緒に気持ちよくなりたい。しかし彼女にしてもらうのは性に合わない。さてどうしようかと考えを巡らせていると、
ヒューマンが体を起こす気配が伝わった。
「お、ヒュマ君。大丈夫?」
「ああ、何とか。お前達見てたら、またちょっとしたくなってきたぐらい」
その言葉に、クラッズはピンと来た。何か思いついた時のにんまりした笑みを浮かべ、クラッズは言った。
「あ、じゃあちょうどいいや!三人で気持ちよくなろ!」
「三人で?」
ヒューマンが聞き返すと、クラッズはドワーフから体を離した。
「あん……クラッズちゃん…?」
体を起こし、少し不満そうにドワーフが呼びかける。そんな彼女に、クラッズは笑いかけた。
「ふふ。ちょっといいこと思いついたから、じっとしてて」
「いいこと?あっ…」
クラッズはドワーフを押し倒し、両足を自分の太腿で押さえて広げさせた。そして秘部を合わせ、ヒューマンに妖艶な笑みを送る。
「ヒュマ君、この間に入れてみて。きっと気持ちいいよ?」
ごくりと、ヒューマンが唾を飲む音が聞こえた。
「い、いいのか?」
「擦るだけならねー。でも、したくなってもあたしには絶対入れないでね」
「こ……こんな格好、恥ずかしいよぉ…」
「ほらほら、あんまりドワちゃん待たせちゃダメじゃよ。早くきてきて」
見た目だけでも、なかなかに見応えのある光景であった。恥ずかしげな表情でこちらを見つめるドワーフに、誘うような笑みを向ける
クラッズ。重ね合わせた秘部は、片や艶やかな毛並みの中に、先程出した精液を滴らせており、片やまるで幼い少女のように見える、
ほとんど筋ばかりのような見た目にも拘らず、そこは透明な粘液で淫靡に光り、滑らかで柔らかそうな肌を持っている。
その後ろに動き、クラッズの背中に覆い被さるように体勢を変える。彼女の肌が腹に触れ、ヒューマンの胸がドクンと高鳴る。
ドワーフの体とはまた違う、体温が直接伝わる感覚は、また新鮮に感じる。
「ん……ヒュマ君のお腹、当たってる…」
「あ、嫌か?」
「ん〜、今はいいよ。それより、早く」
そう促され、ヒューマンはゆっくりと、二人の間に押し入っていく。
「うあぁ……ヒューマン君のが、擦れるよぅ…!」
「んっ……これ、結構いいかも…」
二人の秘裂が押し広げられ、ヒューマンのモノにねっとりと愛液が絡みつく。開かれた秘唇から熱い体温が伝わり、ヒューマンは思わず
呻き声を上げる。
二人にとっても、思った以上に気持ちのいいものだった。秘部を擦られる刺激に、彼のモノが敏感な突起を擦り、その度にビリッとした
快感が体に走る。そして目の前には、快感に熱い吐息を漏らす恋人の顔がある。
「くっ……これ、すげえいい…!」
「私……もぉ…!ヒューマン君、もっと擦ってぇ…!」
「んんっ……ヒュ、ヒュマ君、激しすぎじゃよぉ…!」
自然と、ヒューマンの動きは速く、激しくなっていく。先端が擦れるのが気持ちいいらしく、ヒューマンは亀頭部分で二人の割れ目を
擦っている。彼女達にしても、そこが一番凹凸があるため、ヒューマンが動く度に強い刺激がある。
ドワーフが甘い声で喘ぎ、尻尾をヒューマンの足に絡める。クラッズが慣れない刺激に苦しげな声を出し、未発達な肢体を震わせる。
艶々した柔らかい毛の感触と、滑々できめ細かな肌の感触が同時に伝わり、それがまた強い刺激となってヒューマンを襲う。
「あうぅ…!ヒューマンくぅん……クラッズちゃんん…!」
「うあっ!はっ!ドワ……ちゃん…!」
二人はしっかりと抱き合い、どちらからともなく熱いキスを交わす。強く唇を吸い、激しく舌を絡めあう二人の姿に、ヒューマンも
強い興奮を覚える。何より、二人をそうさせている理由の一つが、自分の動きによるものなのだ。
「くぅ……あ…!やべ、出そう…!」
「うぁ、あん!いいよぉ……いっぱい、出してぇ…!」
「うくぅ…!ヒュ、ヒュマ君、もうちょっとで、あたしもイけるからぁ…!」
クラッズが抗議するように言ったが、もうヒューマンは限界だった。動きがさらに速くなり、もはや先端のみならず、全体を使って
二人の秘裂を擦っている。
「う、ぐ……ぁ…!わ、悪りい、もう無理っ…!うあ!!」
最後に思い切り突き入れ、ヒューマンは二人の体に精液をぶちまけた。三度目にも拘らず、その勢いは凄まじく、ドワーフの上にいる
クラッズの腹にまで白濁した液体がかかっていった。
「んあ……ヒューマン君のが、出てるぅ…!」
「あ、熱い…!ヒュマ君のが……かかっちゃったよぉ…」
「く……ふぅ…」
最後まで出し切ると、ヒューマンは二人の間から、ゆっくりと引き抜いた。さすがに限界らしく、ヒューマンは再びベッドに倒れる。
一方の二人は、体にかけられた精液をそれぞれ見つめていた。ドワーフは陶然とした顔だが、クラッズはとても困った表情をしている。
「うえぇ……下じゃなきゃかからないと思ったのにぃ……それに、これじゃ生殺しじゃよぅ…」
ともかくドワーフの上から離れ、クラッズは困りきった顔で腹に付いた白濁を見つめている。そこに、ドワーフがのそりと体を起こした。
「……クラッズちゃん…」
「ん?ドワちゃん…?」
ドワーフはゆっくりと、クラッズの腹に顔を近づける。何をするのかと訝しむ間もなく、ドワーフは彼女の腹に舌を這わせた。
「ひゃ!?ド、ドワ……ちゃ…!んあ!」
愛おしむように、ドワーフは舌全体で丁寧にクラッズの腹を舐める。そして、そこに付いた精液を、丁寧に舐め取っていく。
「んっ……んむ……きれいに、してあげる」
「ドワちゃっ……そんなっ……ひゃう!んっ!あっ!」
ドワーフが、自分の体を舐めている。きれいにしてくれている。そう思うだけでも、クラッズの中に凄まじい快感が湧きあがり、
同時に腹を舐める舌の感触が、強い刺激を生んでいる。
本来なら、どういう形であれ、責められるのは好きではない。しかし、ただでさえ達しそうになっていたうえに、彼女の舌は温かく、
そして優しく、気持ちがよかった。
「ここにも、飛んじゃったね」
「やっ!だ、ダメぇ!おっぱい舐めちゃ……んああっ!!ドワちゃっ……ああっ!!うああぁぁ!!」
―――このままイかされるのも、悪くないかなぁ…?
一瞬そう思ったが、しかしギリギリの一線で、彼女はその考えを否定する。それでも、この快感は捨て難い。瞬間的に考えを巡らせ、
クラッズは手を自分の秘部へと這わせた。
「ドワちゃん……もっと、もっと舐めてぇ!あ、あたし、もうちょっとでっ……い、イキそうでっ…!」
乱暴に指を突っ込み、無理矢理昇り詰めていく。自身での快感が加わったことで、辛うじてドワーフの快感で達するのではないという
言い訳が作り出される。
クラッズの言葉に応えるように、ドワーフは舌全体を使って、彼女の腹をねっとりと舐め上げた。その刺激が、止めとなった。
「ドワ……ちゃ…!う、あ、ああ、あああぁぁっ!!!!」
真っ赤になった体を弓なりに反らし、ビクビクと激しく震わせる。やがてその体がベッドに落ちると、クラッズは荒い息をついた。
「はあっ……はあっ……気持ち、よかったぁ…」
「よかった、えへへ。私も、クラッズちゃんにしてあげられて嬉しいな」
「あ、で、でも、ほんとはしてもらうの、あんまり好きじゃないんじゃよ!?でも、今日は、今日だけは、ちょっと特別…」
クラッズも一回で疲れ果ててしまったらしく、仲良くヒューマンの隣に寝転び、荒い息をついている。
さすがに全員疲れ果てており、もうこれ以上しようという気は起きない。
「ヒュマ君……平気…?」
「……なんとか…」
「二人とも、大丈夫?お風呂、入る?」
「ドワちゃんは元気じゃのう……さすが、体力あるなー」
「……みんな汚れてるし、風呂入るか。よし、そうしよう」
そう言うと、ヒューマンはむくりと体を起こした。
「三回も出してて、よくそんな体力あるのぅ…」
「お前は、元が体力ねえもんな。俺はまあ、ヒューマンだし、男だしな」
「お風呂、三人で入る?」
ドワーフが尋ねると、ヒューマンは苦笑いを浮かべた。
「出来ればそうしたいけど、ここの風呂に三人は無理だ。俺は自分の部屋で入ってくるよ」
「ん〜、そっかあ。残念だけど、しょうがないよね。じゃ、クラッズちゃん、一緒に入ろ」
話がまとまったところで、ヒューマンは簡単に服を身に付け始め、ドワーフはぐったりしているクラッズを抱き上げる。
「ドワちゃん、ありがとね…」
「えへへ。体、洗ってあげるね。あ、ヒューマン君、寝るときはこっち来てくれる?」
「ああ、そのつもりだよ。だから、鍵開けといてくれな」
二人に笑顔を向け、ヒューマンは部屋へと戻って行き、ドワーフはクラッズを連れて浴室に向かう。そしてそれぞれに体を洗うと、
再び三人で集まり、仲良く並んで寝る。
特に、変わったことではない。多少の違いこそあれど、これが三人の、普段の生活であった。
ブルスケッタの三人が戻れば、また冒険者としての日々が始まる。ならば、せめてそれまではという彼等の爛れた生活は、長くも短い
一ヶ月ほど続くこととなった。
一ヵ月後、明日にもブルスケッタから帰るという仲間の連絡を受け、三人はそれぞれに探索の準備を整えていた。クラッズは人形各種を
丁寧に手入れし、ドワーフは喉の通りを良くするという名目でハニートーストを食べている。
ヒューマンは実験室に向かい、愛用のシャドーバレルと純銀弾に、光と闇の属性をつけるための練成を行っていた。
出来る限り、ここの主には会いたくないと思っていたのだが、その願いも虚しく、後ろから声がかかる。
「あらぁ〜、久しぶりねぇ〜。おゲンコォ〜?」
「う、ジョルジオ先生……ええ、まあ…」
「もしかして、アタシに会いにきてくれたのかしら〜?」
「いやいやいや、ちょっと練成に来たんですよ、練成に…」
悪い先生だとは思わない。しかし、ヒューマンはどうにもこの人物が苦手である。ノームはなぜかここに入り浸っていたが、その神経は
いまいち理解できない。
「ところで、最近あなたのお友達、見ないわねぇ〜」
「ああ、ノームの野郎ですか?あいつは今、フェルパーとディアボロスと一緒にブルスケッタの方に…」
ヒューマンが言うと、ジョルジオの表情が僅かに変わった。
「あら、そうなのぉ〜?ふ〜ん……ちょっと心配ねぇ」
「え?心配?何がです?」
「あらヤダ!アタシったらつい……まあ、いいわ。お友達なら、知っておいてもいいわね」
ふう、と息をつき、ジョルジオはヒューマンに席を勧める。
「教師がこんなこと言っちゃいけないかもしれないけど、あの子、相当な要注意人物なのよぉ〜」
「え、あいつが?なんで?」
「あなた、あの子が中立的な子だと思ってるでしょぉ〜?」
特に何の疑問もなく、ヒューマンは頷いた。むしろ、そんなことを尋ねるジョルジオに、なぜそんなことを聞くのかという疑問を抱く。
「そうよねぇ〜、確かに中立とも言えるんだけど……あの子ね、実はそうでもないのよぉ〜」
「え、じゃあ実は善だとか…?」
「中立って、普通は善でも悪でもない子のことを言うでしょ?でもあの子はね、善でも悪でもあるって子なのよぉ〜」
「……は?」
「善の考えを持ってるけど、同時に悪の考えも同じくらい持ってるって言えばいいかしら?それでどっちにも分類できないから、
便宜上、中立ってされてるのよぉ〜。ま、実際誰とでもうまく付き合うから、間違ってるわけでもないわね」
言われてみると、ノームはたまに平然と暴力を振るうことがあった。ヒューマン自身も、彼に暴力を振るわれた記憶がある。
「はぁ……そんな奴なんですか…。あ、でも、それで何が心配って…?」
「そこなんだけどね、あの子、あなたがいるから大人しくしてるって節があるのよぉ〜」
「俺?なんで?」
ヒューマンが言うと、ジョルジオの目がきらりと輝き、ヒューマンは気分が悪くなった。
「これは乙女の勘なんだけどぉ〜、あの子、あなたが好きなのよ」
「……はああぁぁぁ!?」
「好きな子の前では、いい子でいたいと思うでしょぉ〜?だから…」
「いやいやいやいやいや!!ちょっと待ってくださいよ!?いや、その、そもそも、俺もあいつも男じゃないですか!?」
言ってから、ヒューマンは目の前の物体を眺め、少し絶望的な気分になった。
「そうね、恋愛とはすこぉ〜し違うかもしれないわ。でも、あの子があなたを好きだってことは、まず間違いないわよぉ〜。それに、
あの子きっと、アタシのいい教え子になるわぁ〜」
その言葉の意味に気づくと、ヒューマンは本格的に気分が悪くなった。
「……恋愛じゃないなら、まあいいんですが…」
「限りなく近いとは思うのよねぇ〜。あの子のことだから、絶対口には出さないと思うけどぉ〜」
ジョルジオは何だか楽しそうに笑い、不意に表情が変わる。
「でも、ノームの子達って、どうやって性別決まるのかしら?」
「……言われてみればそうですね」
「もし依代で決まっちゃうなら、それって不幸よねぇ〜。もし女の子の心を持ってるのに、男の子の依代に入っちゃったら、それこそ
不幸よねぇ。もっとも、あんまり気にしないのかもしれないけどぉ」
どことなく含みのある言い方に、ヒューマンはすぐさま気付いた。つまり、ノームがそうだと言いたいのだろう。だとすれば、
彼が実際にヒューマンを好きになっていたとしても、あまり不思議はない。
「ま、まあ、それは本人に聞かないとわからないですよね、はは……えっと、そろそろ時間が時間なんで、俺はここで…」
「あら、もう行っちゃうのぉ〜?またいつでも、アタシに会いに来てね」
「き、機会があれば…」
実験室を出ても、ヒューマンは何だか気分が重かった。仮にジョルジオの言葉が全て真実としたら、ただでさえ複雑な関係が
より複雑化することは間違いない。また、少なくとも見た目が同性のノームに好かれていると思うと、あまり気分が良くない。
とりあえず、その『好き』は友人として好き、の意味だと解釈する事にし、ヒューマンは重い足を引きずり、寮へと戻って行った。
翌日。ブルスケッタに行っていた三人が戻り、一行は久々に全員が揃った形となった。こちらに残っていた三人は、すぐにでも冒険に
行ける準備を整えていたのだが、ディアボロスが再び戦士学科に戻るということで、まだしばらく休むこととなった。
学食では、ノームとヒューマンが軽食を取っていた。既に授業も終わり、あとは夕食まで何もすることがないため、学食で時間を
潰しているのだ。
「お前、何だか強そうになったなあ」
「そりゃあ、僕達はずっと悪魔相手にトレーニングを積んでたんだ。今はもう、君にも負けないかもね」
「恐ろしい話だな、おい」
「それにしても、やっぱりここはいいね。ブルスケッタも悪くなかったけど、ここが一番落ち着く」
「そうそう。お前、向こうで何かあったりしなかったか?」
ヒューマンが尋ねると、ノームは怪訝そうな顔で彼の顔を見つめる。
「……いや、別に。いきなりどうしてだい」
「ああ、いや、別に深い意味があるわけじゃなくて……何もないに越したことないからな」
「ご心配、ありがとう。けど、この通り全員無事さ」
いつもの、口元だけの笑みを浮かべるノーム。どうにも、昨日のジョルジオ先生の言葉が引っかかる。
「君こそ、何かなかったかい。またクラッズと喧嘩したりしてないだろうな」
「まさか。仲良くやってるよ」
「そうか、それならいいんだ。まあ、また何かあったら、仲直りの手伝いくらいはしてやるさ」
「お前の手伝いって、なんか怖いな」
その時、ヒューマンの頭にふと、ジョルジオ先生の言葉を確かめたいという欲求が生まれた。それに従い、ヒューマンは言葉を続けた。
「けど、そう言ってくれるお前のこと、好きだぜ」
「え」
一瞬、ノームはぽかんとした表情でヒューマンを見つめ、次の瞬間、口元だけではない、満面の笑みを浮かべた。
「あっははは。嬉しいなあ、冗談でも君にそんなこと言ってもらえるなんて。けど、ドワーフとかクラッズに嫉妬されたらたまらないぜ」
「そ、そうか。はは…」
「君は君の幸せがあるんだ。自分からクラッシュさせるような真似はやめてくれよ。それに、僕は君達のそういう姿を見てるのが
好きなんだ。せっかくのシアターを壊されたら、僕も悲しい」
たった一言で、ずいぶんと上機嫌になっている。だが確かに、彼の言う『好き』は、恋愛とは違うのかもしれないと、
ヒューマンは思った。
よく、彼は何かと劇に例える。そして、自らを観客と称している。恐らく、その通りなのだろう。言うなれば、ノームはヒューマンという
役者の大ファンであり、その彼が幸せであれば、ノームも嬉しいのだろう。
少なくとも、ヒューマンはそうなのだと思い込むことに決めた。
「……ま、俺だって今の幸せを壊したくねえからな。そんな心配、必要ねえよ」
「はは、それなら安心だ。さて、これ食べ終わったら、ドワーフとクラッズも探してみるか。久しぶりに会いたいからな」
「手ぇ出すなよ〜?」
「出すわけないだろ」
いつも通りの、軽口を叩ける相手。彼が自分をどう思っていたとしても、その関係が変わるわけではない。余計なことは考えず、
これからも普通の友達として接しようと、ヒューマンは思っていた。
「お〜、フェル君。どうしたの?」
「クラッズさん、久しぶりぃ」
「もー、さん付けはやめてってば」
「ごめんね。でも、その方が落ち着くんだぁ」
相変わらず、見た目と違って非常におっとりとしているフェルパー。そんな彼が突然、部屋を訪ねてきたので、クラッズは少し
驚きながらも彼を出迎える。
部屋に入ると、フェルパーはふんふんと辺りの匂いを嗅ぎ始め、あらかたの匂いを嗅ぎ終えると、最後にふーっと息をついた。
「……帰ってきたんだねぇ」
「匂い確かめないと気が済まない?あはは、フェル君ってほんっとに猫っぽいなー。せっかく来たんじゃし、少し話でもする?」
「うん、いいよー」
とはいえ、普段からあまり接点のない二人なので、その会話は無難なものに終始している。大体の近況を話し終えると、話題も
あまり出てこない。
その時、不意にフェルパーの目つきが変わった。そして、虚空をじっと見つめ始める。
「……フェル君?」
「………」
フェルパーは答えない。ただ一点をじっと見つめ、やがて視線がすうっと動く。しかし、クラッズの目には何も見えない。
「……フェル君、フェル君っ!?何!?何が見えてんの!?何か見えちゃってんの!?」
パッと、フェルパーが何かを掴むように手を伸ばす。クラッズの背筋に、冷たいものが走る。
「フェル君〜!?」
「……これ」
不意に、フェルパーは握った手を差し出し、開いて見せた。しかし、やはり何も見えない。
「……どれ?」
「埃が飛んでたから、ちょっと気になったんだぁ」
「………」
超常現象的なものではないとわかり、クラッズは全身の萎むような溜め息をついた。
「脅かさないで…」
「あ、びっくりした?ごめんね」
「あーもう……でも、よく猫が虚空見つめてるのって、別に霊が見えてるわけじゃないんじゃね…」
「霊?」
クラッズの言葉に、フェルパーは首を傾げた。
「……ああ、あの向こう側が透き通ってる人のこと?」
「……え?」
再び、クラッズの背中に冷たいものが走る。
「い……いるの…?」
「僕はあんまり気にしないけど、結構いっぱいいるよ〜。肩にいっぱい乗っけてる人もいるし、その辺うろうろしてるのもいるし。
ここだって、結構いっぱい…」
「フェル君やめてええぇぇ!!!それ以上言わないでいいってばああぁぁ!!!」
恐らく、自分は今後もフェルパーとあまり関わりを持たないだろうと、クラッズは心の中で思っていた。
ディアボロスは一人で屋上に上り、柵にもたれて外を眺めていた。
ブルスケッタでは戦士になれないため、こちらに来てすぐに転科手続きをした。なので、明日からまた戦士に戻るための授業が始まる。
戦士に戻れば、この記憶も消えるだろうかと、ディアボロスはぼんやり思う。あの、忘れたくてたまらない、しかし忘れることの
出来ない記憶。フェルパー以外の男に陵辱された、忌まわしい記憶。
忘れてしまおうと努力すればするほど、記憶が強く蘇り、ますます深く刻み付けられる。その痛みに屈するような彼女でないとはいえ、
やはりその記憶は辛い。
柵にもたれ、大きく溜め息をつく。と、その耳に、何やら楽しそうな歌声が聞こえてきた。
「幸せ〜探すよぉりぃは〜や〜く〜、作ればいーいーよーデンジャラ〜ス、それが私ら〜しい〜」
その歌声は、屋上の入り口から聞こえている。そして少しずつ、こちらに近づいてくる。
「ゆ〜め〜が〜、ひーらーくぅーこーのー場所〜でぇ〜……あ、ディアボロスちゃん、こんなところにいたんだ」
「お前は相変わらずだな、ドワーフ」
ドワーフはトコトコと歩き、ディアボロスの隣に並んだ。
「お前は本当に、楽しそうに歌う」
「うん、歌は大好きだもん。だからアイドルになったっていうのもあるんだよ」
そう言って屈託のない笑みを向けるドワーフの顔は、今のディアボロスには眩しかった。
「……ディアボロスちゃんは、元気ないね?」
「ん……そうか?」
内心どきりとしつつ、ディアボロスは務めて平静を装う。
「うん、元気なさそうだよ」
「……そうか」
それっきり、二人は黙り込んだ。並んでしばらく外の景色を見ていたが、やがてドワーフが口を開く。
「話したくない、話せないっていうことなら、聞かせてなんて言わないよ。でも、私が何か力になれるなら、何でも言ってね」
「その気持ちだけで、十分さ」
あえて理由を聞かず、ある程度の距離を置いてくれるドワーフに、ディアボロスは心の中で感謝した。根掘り葉掘り聞かれては、
たまったものではない。
それからまた、二人は外を眺めていた。そして再び、ドワーフが口を開く。
「ねえ、ディアボロスちゃん。歌は好き?」
「歌?嫌いではないな」
「さっきも言ったけど、私は大好き。歌ってたり、聞いてたりするとね、その歌に合った気持ちになれるから、すっごく好き」
何となく、その先の言葉は予想が付いた。恐らく、彼女は何か歌ってくれようとしているのだろう。
「だからさ、元気にはなれないかもしれないけど……私の歌、聞いてくれると嬉しいな」
「……それは構わない。さっきお前が歌っていた奴か?」
ディアボロスがある程度の確信を持って尋ねると、ドワーフは笑った。
「違うよー。元気ないときは、もっと違うのだよ」
「……そう、か」
「あのね、私は元気なくって、気分が沈んじゃうときはね、一回最後まで沈んじゃうの」
「………」
「もちろん、人によっても違うと思うけど……私は、空元気出すよりも、一回泣いてすっきりしちゃう方だなあ」
「変わった奴だな」
「だって、一回最後まで沈んじゃったら、後は上がるだけだもん」
「……なるほど」
それも面白い考えだと、ディアボロスは少し納得した。
「だからね、ちょっと寂しくて、悲しい歌だけど……あ、もちろん嫌ならやめるよ」
「いや、構わない。この際だ、私もお前の方法を、試してみようと思う」
そう言うと、ディアボロスは初めてドワーフに顔を向けた。そこには、何とも寂しげな笑顔が浮かんでいた。
「うん。それじゃあ……これ、エルフがよく歌ってる歌だけど、これは私も好きなんだ。じゃ、いくね」
一度大きく息を吐き、呼吸を整えると、ドワーフは静かに歌いだした。
「側にあると 見えなかった 温もりを今 感じてる…」
普段の彼女からは想像も付かない、静かな声だった。種族の性質上、柔らかな歌声とはとても言い難いが、その分歌詞の一つ一つが
重く心に響いてくる。
エルフの歌う、柔らかく澄んだ歌声とは違う。技巧だけであれば、彼女がエルフに勝るはずもない。しかし、言葉に篭った力は、
比べ物にならないほどに強い。
自然と、彼女の歌声に引き込まれていく。その歌自体はディアボロスも知っていたが、今聞いているものほど心に響くものは
初めて聞いた。知らず知らずのうちに、いつしかディアボロスも、ドワーフと一緒に一緒に口ずさんでいた。
「振り向いても あなただけが足りなくて もう一度 あなたと歩きたい」
歌い終え、最後の余韻が消えると、ドワーフはディアボロスににっこりと笑いかけた。
「ディアボロスちゃんも、歌うまいね」
「そ、そうか?他人に聞かせたことなどないから、よくわからないが…」
「うん、上手だったよ。きっと、ディアボロスちゃんもアイドル学科いけるよ」
「い、いやいや、それは遠慮しておくぞ。私は戦士として生きたいんだ」
言ってから、ディアボロスは大きく息をついた。
「しかし……お前のやり方も、なかなかいい方法かもしれないな。正直、気分は最悪に沈んだが、お前みたいな奴がいてくれるなら、
また頑張れそうだ。ありがとうな」
ドワーフにぎこちなく笑いかけ、ディアボロスは彼女の耳の裏を掻いてやった。ドワーフは一瞬気持ち良さそうに目を細め、すぐに
おかしそうな笑顔を浮かべた。
「……なぁに〜?」
「え?……あ、ああ。すまん。つい、フェルパーにやってやってる癖が…」
「あはは。二人とも、仲良しなんだね」
「しかし…」
もう一度、耳の裏を掻いてやる。付け根の厚くコリコリした感触と、ふさふさした体毛の感触が心地いい。
「……ドワーフ、少しこうしてていいか?」
「ん?いいよ〜。私も、何だか気持ちいいかも」
許可が出たことで、ディアボロスはドワーフの顔をマッサージするように撫で始める。
耳の裏を撫で、頭を撫で、頬や顎をもしゃもしゃと撫でる。ドワーフは何とも気持ち良さそうに目を細め、されるがままとなっている。
そのうち、立っていると疲れるということで、二人はその場に座る。それでもまだ、ディアボロスはドワーフを撫でており、
ドワーフの目は少しずつ細く、眠そうになっていく。
やがて、ドワーフがディアボロスの太腿を枕にし、すうすうと寝息を立て始めたところで、屋上のドアがガチャリと開いた。
「あ、ディアボロス、ここにいたんだぁ」
「フェルパーか。どこに行ってたんだ?」
「クラッズさんのとこ」
フェルパーはドワーフと反対側に回り、ディアボロスの隣に腰を下ろした。
「……寝ちゃってる」
「この感触が気持ちよくって、つい」
「毛並み、いいもんねぇ」
そう言いつつ、フェルパーはディアボロスに甘えるように体を寄せた。
「……お前も、してほしいのか?」
「うん」
「やれやれ……まあ、私もしたいと思ってたがな」
片手を離し、空いた手でフェルパーの耳の裏を掻いてやると、フェルパーはゴロゴロと喉を鳴らし、気持ち良さそうに目を閉じた。
そんな二人を腕に抱きつつ、ディアボロスは大きな安らぎを感じていた。
辛い記憶を癒してくれようとしたドワーフ。いつも近くにいてくれるフェルパー。それに、その他の頼りになる仲間達。
彼等がいてくれるなら、あの記憶を抱えたままでも、やっていける気がしていた。忘れようとしても、恐らくあの記憶は消えない。
しかし、無理に消すこともない。その痛みを、和らげてくれる仲間がいる。いつになるかはわからないが、じきにその痛みにも
慣れてしまうだろう。そうなれば、もう痛みはないも同然だ。
「無理はしなくていい、か」
改めて口に出し、ディアボロスは笑う。そう、無理に忘れようとすることもないのだ。記憶というものは、どんなに大切でも、
どんなに辛いものでも、やがて風化していく。それを、彼女はただ待てばいいのだ。
あの時は、彼女が生きてきた中で、最も辛い時間だった。だが、もうそれは過ぎ去った。あとは上るだけである。
腕の中の二人を愛おしげに見つめながら、ディアボロスはずっとこの仲間達と歩いて行こうと、心に決めていた。
辺りがすっかり夕闇に包まれても、ドワーフが帰らないということで、ヒューマンとクラッズはひどく心配していた。
そんな二人を宥め、ノームは見当たらないフェルパーとディアボロスを探していた。あの様子なら早まることもないであろうが、
やはり不安ではある。
部屋を探し、学食を探し、校舎内を探し尽くし、最後に屋上に向かうと、誰かがうずくまっているのが見えた。
「ん、そこにいるのはディアボロスかい」
「その声、ノームか?よかった、ちょっと助けてくれないか?」
ディアボロスの言葉に、ノームは急いで駆け寄った。が、その光景を見て、言葉を失う。
「ぷ〜……ぷす〜…」
少し鼻が詰まっているのか、ドワーフの寝息はそれこそ犬の寝息のようになっている。
「くぅー……ゴロゴロゴロ……くぅー…」
フェルパーはいつも通りである。時々聞こえる、喉を鳴らす音が安らぎを与える。
「この通りで、動けなくなってしまったんだ……何とかできないか?」
そして、その二人の体を膝に乗せ、すっかり困り顔のディアボロス。もはや、かける言葉もなかった。
「……起こせよ」
「だ、だって、それは気が引けるじゃないか…!ノーム、何とか起こさないようにどかせないか…?」
「起こせよ」
「ひどい、ひどいぞ…!こんな気持ち良さそうな顔して寝てる奴を起こすなんて、私にはできない…!」
「起こせよ」
結局、二人の「起こせ」「起こせない」の応酬は、ノームまで戻らず不安になった二人が探しに来るまで、延々と続くのであった。
以上、投下終了。
気を抜くと片方が放置プレイになるのがきつい……とりあえず色々させられたので満足。
それではこの辺で。
GJ!
うーむ、ヒューマンはよくもてるな。
ほぼすべての作品に共通するけど、良い友人(悪でも善でも)や良い恋人(喧嘩別れしたりどこかに行っちゃったりするけど)に恵まれやすく、なりやすい。
やっぱりそこがヒューマンなのかな。
しかし3Pとは……いいものだ(おい
>>37 おまえ、ノームか?
グッジョーブ ドワ子可愛いな
ジョルジオ先生の仮説のとおりだとして、
男型でなかったら一線を越えようとしてたのかねぇ……
少なくともヒューマンを中心にしたより退廃的な四角関係が
構築されていたのは間違いないだろうがw
しかしもてやがってヒューマンめ、羨ましいヤローだ
今のままの性別の方が、より退廃的な関係、絵面になるこの事実
つまりドワーフをヒューマンとクラッズが2穴攻めしている状態で更に
ヒューマンのケツにノームのモノをだな……
4Pにまでハッテンするのかw
ヴェーゼ「S○Xをするとなぜ子供ができるのか。私はこの謎を解き明かさねばなりません!
そこであなた方に…」
66 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 15:13:08 ID:78OL6dCD
67 :
hgfds:2009/08/29(土) 15:23:10 ID:vziNKAJr
ココ300円で届くのもはやかったよ!!
数も多かったし、挨拶も丁寧だったw
最近ひんぱんに色々なチャンネルで見る!!
裏DVD 日刊・タマ袋
いや、待てよ。
GJの爆弾発言すらノームの依り代チェンジの伏線だとしたら……?
なんだってー
70 :
名も無き名器1:2009/09/02(水) 06:27:09 ID:WqDLaFWB
初めの森に通じるクロスティーニ学園の裏門のたもとには、名も知れぬ名器が転がっているという。
人に知られることも無く、名器名鑑に記されることも無く、手に入れて使っている本人にも全く
自覚が無い、そんな空気のような名器があって、貧しくも心清らかな新入生たちをやさしく見守って
いるらしい..。
「セレスティア喜べ!!軽木の樹脂が手に入ったぞ」
モンスターの遺体を漁っていたクラッズが明るい声を上げる。
「良かったじゃん。帰ったら早速実験室でライトスリング作ってあげるよ」
「これでまた『ゴルゴセレちゃん』の復活だね」
口々にお祝いを述べるパーティーの仲間たち。
入学当初ひょんなことから手に入ったぱちんこと魔法でパーティを支えてきた魔法使いの
セレスティアだが、活動の場が初めの森から魔女の森や剣士の山道に移るにつれ、ぱちんこの非力さが
目立つようになってきた。昨日も、魔女の森のアンチスペルゾーンでモンスターと遭遇し、死者こそ
出さなかったものの泥沼の乱戦の末に冒険半ばで撤退を余儀なくされたばかりで、もっと強力な飛び道具が
欲しいと思っていたところにこの慶事である。セレスティアの顔も自然と明るいものになる。
「ありがとう..このすばらしい贈り物に神と皆さんに感謝します」
「そんなー。僕に感謝されても困るなー。照れちゃうなー」
「勘違いすな。セレちゃんの言う皆の中にはあんた入ってないから」
「もちろん。僕は神だからねー」
「そっちかい!!」
クラッズのボケに速攻で突っ込みを入れるノーム。夕暮れの初めの森に仲間たちの笑い声がこだまする。
―明日からはもっと素敵な冒険が始まりそう―
そんな想いを抱きつつ、一行はクロスティーニ学園への帰路についた。
71 :
名も無き名器2:2009/09/02(水) 06:28:54 ID:WqDLaFWB
その夜、セレスティアは学生寮の自室で武具の手入れをしていた。就寝前、今日一日生き延びたことに
神への感謝を捧げ、心穏やかに愛用の武器を磨き上げるのが彼女の日課だった。
―このぱちんこの手入れをするのも、今日が最後―
壊れて森の入り口に捨てられていたものを錬金にかけて修理し、補強材が手に入るたびに補強を重ね、
美しく漆塗りを施したぱちんこ。「たかがぱちんこにそこまでしなくても」と仲間たちは笑ったが、
戦死したときに手入れの悪い道具を他人に見られて嘲笑されるのは、剣士だった父親譲りのプライドが
許さなかった。たとえそれが廃品から再生したぱちんこであったとしても。
明日には現役を外れるぱちんこ。しかし、セレスティアは今までと変わることなく、否、今までの感謝の念を
込めて、普段以上に丁寧に磨きあげた。
「これで、磨き残しは無いかしら..ね?」
ぱちんこを目線に掲げ、右手の指先でくるくる回しながら、表裏を満遍なくチェックする。
「あ..ん..!!」
手からぱちんこが外れ、胸元、お腹、太ももの間を転がり落ち、机の下へ消えていった。椅子を引き、ノロノロと
かがみこみ、机の下からぱちんこを取り上げるセレスティア。椅子に座ったまま拾ったぱちんこをぼうっとした
表情でしばらく眺めていたが、何を思ったか、制服のスカートのすそをたくし上げ、下着越しに股間の秘裂に
ぱちんこの柄をあてがった。
「..ん..んん..」
一番感じやすい角度を探り当てると、そのままぱちんこの柄で秘部をこすり始める。
「ん!!…くっ..ふぁっ…」
興が乗るにつれ、こすり上げるペースが上がる。白い頬に赤みが差し、呼吸が荒くなってくる。
「ん..ん..ん..ふあっ!ああっ!!」
思わず声が上がる。はっ、と我に返り自らの口を押さえ、ルームメイトに聞かれてはいないかと背後を振り返るが、
幸いにしてルームメイトは夢の迷宮の奥深くを探索中であった。
ほっ、と安堵のため息を一つ付くと、椅子からよろよろと立ち上がり、愛用のぱちんこを携えたまま自分のベッドへ
向かう。制服を脱ぎハンガーに吊るすと、寝巻きに着替えることなく布団の中にもぐりこむ。そして、下着を膝まで下げ、
枕カバーの代わりに枕に巻いているタオルを枕から剥ぎ、そのすそを口にくわえ、横向きに横になると再びぱちんこの柄を
股間にあてがった。
(わたし..ぱちんこなんかで..しちゃってる..し..)
72 :
名も無き名器3:2009/09/02(水) 06:30:39 ID:WqDLaFWB
「パセリからぱを抜けば『せり』。立派な野菜やね〜。では、ぱちんこからぱを抜くと..いてっ!!」
「乙女の前ではしたないんじゃ!!ぼけなすがぁ!!」
「正解!!ぱちんこのぱを抜くと立派な黒ナス..ぐわっ!!」
「だからやめんか!!このあほんだらがぁ」
(ふふふ..そんなこともあったわね..)
ぱちんこを手に入れた後初めての冒険した日の夜、あまりの威力に喜んだクラッズとノームが寮の食堂で
繰り広げた漫才のことを突然思い出した。それをきっかけに、押し寄せる快楽の波間で、セレスティアは
ぱちんこと過ごした日々のことを次々と思い出していった。
冒険からの帰り道、校門のあたりで偶然朽ち果てたY字の木の破片を見つけたこと。まさかと思い、拾って
調べてみたら壊れたぱちんこだったこと。
(木屑を集め錬金釜に放り込み..ん..わくわくして待った1時間..んはぁ..最初に倒したのは.,.がぶりんちょ
だったかな?一度の戦闘で..あっ..雷のやどりぎを4体落としたことも..あったわね..)
ダストに向かって何度撃っても手ごたえがなく、後一撃食らえばあの世行き..という土壇場でようやく命中したこと。
魔力が尽きた後の退却戦で、ぱちんこ一つでしんがりを支えたこと。無事に学園にたどり着いたときの、みんなの
泣いてるのか笑ってるのかわからないような顔も、ほんの2-3ヶ月前のことなのに、すでに懐かしい思い出だった。
(楽しかったわね、あの頃は..)
セレスティアの瞳から一筋涙が零れる。
やがてメンバーが成長し、武器もそれなりに整って、冒険が奥地に進むに連れて、ぱちんこの非力さが目立つように
なってきた。初めの森では一撃食らうとばらばらに吹き飛んだどくガエルが魔女の森に入るとまるで顔に小便を
引っ掛けられたかのように平然としている。ツンねこや、呪いのメダルなどまだまだ通用する敵もあったが、
グリングリンやハナモゲラ、べろべろばーなどにはほとんど歯が立たなかった。
補強部材を加え、ぱちんこの玉も錬金で強化はしたものの、能力に限界が見えてきたのは明らかだった。規定以上の
強力なゴム、強化されて重くなったぱちんこ玉、なかなか通用しないモンスターを相手に歯を食いしばり力の限りゴムを
引き絞るセレスティアの期待に応えようと、ぱちんこも今にも折れそうな軋み音を立てながら頑張ってきた。
その苦役が今日で終わる。
(今まで苦労かけてごめんね..本当に..本当にありがとうね..)
ぱちんこの柄で秘部を激しくこすりつつ、布団の中で口にくわえたタオルの裾をかみ締めて嗚咽をこらえ、涙を流す
セレスティア。今まで苦楽を共にしてきたぱちんこにはどんなに感謝を捧げても、どんなにお詫びの言葉を並べても
物足りないような気がしていた。
73 :
名も無き名器4:2009/09/02(水) 06:34:10 ID:WqDLaFWB
ひとしきり涙を流し気持ちが落ち着くと、セレスティアは愛液でぬるぬるになったぱちんこの柄の先端を
秘口にあてがった。そして呼吸を整えるとゆっくりと手に力を込め、柄を押し込み始めた。
(くっ..あっ..)
奥まで差し入れると、アクションを起こすセレスティア。
― 時に激しく抜き差しし、時に内部をえぐるようにかき回し、時に自らの腰を振ってさらなる刺激を加え―.
(うっ..あっ..いっ..あっ..くぅ〜っ)
ベッドの中で息を殺し涙にむせびながら、許されぬ仲の恋人と最後の逢瀬を惜しむかのように自慰にのめりこんでいった。
(ん..はっ..くっくふっ..ん、ん、んんん〜っ!!..)
やがて、絶頂に達し燃え尽きたかのように脱力する。しばらく余韻に浸った後、秘口からぱちんこを抜き取り、
うっとりとした目で眺める。そして暗闇の中で、自らの愛液で黒光りするぱちんこに軽く口付けすると、
さるぐつわの代わりに噛み締めていたタオルで付着している液体を拭い、自分の枕の下にそっと忍ばせた。
(こんなことでしかお礼出来なくてごめんなさいね。君は私の一生の宝物だよ)
そう心の中でつぶやくと、両親に挟まれて眠った幼少時代と同じような安らかな気持ちで眠りに落ちて行った。
次の日の朝
「ほーい!!錬金術科希望だがしかし成績及ばず現在不本意ながら普通科で見習い修行中の残念なノームちゃん謹製
ライトスリングです。セレちゃんどぞ〜..うが!!」
「..残念て言うな残念て!!..つかなんであんたが渡すねん?あんた全然製作に関わっとらんやろ〜!!」
クラッズの軽妙なボケにハードな肘鉄で突込みを入れるノーム。いつもと変わらない仲間のやり取りにくすくす
笑いながら、生成されたばかりのライトスリングを受け取るセレスティア。
(こんにちは。新しい私の相棒さん。これからよろしくね)
目を瞑り、感慨深げに得物を抱きしめる。
「..な、なんか、いきなりそんなに抱きしめられると照れちゃうね..あた!!」
「.だから、あんたじゃないから」
懲りないクラッズのボケ。すかさず突っ込みを入れるノーム。
「ありがとう、ノームちゃん、そしてみんな。これ、大切にするね。今日からまた頑張るからよろしく」
「よし、じゃあ今夜はセレちゃんが仕留める、どくガエルのから揚げで一杯やるぞ!!張り切っていこう」
「一杯ってあんたまだ酒飲めんやろ〜。でもあんたには飲ませへんけど、私は『飲―む』なんちて〜」
先頭に立ち、意気揚々と森に向かって歩き出すクラッズとノームの学園最強漫才コンビ。
それをセレスティアが呼び止める。
「あ、ちょっと待って」
「どうしたの?」
足を止め、振り返る一同。
「これをちょっと、ね」
と懐から昨日まで愛用していたぱちんこを取り出すと、膝で柄を叩き折り、草むらの中へ放り投げてしまった。
「あらら。あんなに大切にしていたのにもったいない..売店で売るとか、お守りとして持ってても良かったのに。
そんなに荷物にもならないし..ねえ」
セレスティアが道具を大切にするのをよく知っているノームが不思議がって尋ねると、彼女はノームの耳元に
口を寄せ、静かにささやいた。
「本当はお守りに手元に置いてつもりだったんだけど..実は昨日ね..」
74 :
名も無き名器5:2009/09/02(水) 06:35:25 ID:WqDLaFWB
セレスティアが眠っていると、夢の中に一人の男の子が出てきた。
「今まで大切に使ってくれてありがとう。きつかったけど楽しかった。ここまで能力を引き出してくれたのは
君が始めて。感謝してる」
「君は誰?」
「僕はこれさ」
と左腕を伸ばし左手で斜めのL字を作ると右手でゴムを引っ張る真似をした。
「まあ!!ぱちんこの妖精さん..なのですか?」
「そんなところ。なんか新しい武器が手に入ったみたいだからお別れと、最後のお願いに来た」
「お別れ?私はこれからお守りとして君を一緒に連れて行こうかと思っているんですけど..ご迷惑でしたか?」
「いやいや、そんなことは無いよ」
苦笑いしながら否定する男の子。
「とても嬉しいし、僕も最後まで君について行きたい、と思ったこともある。..でも僕がいなくなると新入生たちが
困ると思ったんだ。特に君のように貧しくて、でも道具を大切に扱ってくれる心優しい新入生がね」
一緒に来てくれないと知り、寂しそうに俯くセレスティア。
「そんなに悲しまないで。僕はいつでも校門のあたりに転がっているし、見当たらないときは誰かの道具として
働いていると思ってくれればいいから」
彼女を慰めるようににっこり微笑んで続ける男の子。
「君は僕が送り出す最高の卒業生だ。今まで何人の生徒に使われたけれども、君ほど道具の能力を引き出す才能が
ある生徒は初めて。これから関わる道具も、僕と同じように大切にしてあげて欲しいな。それがお別れするに当たって
の第一のお願い」
お別れという言葉にはっとして顔を上げるセレスティア。明るい水色の瞳に涙を浮かべながら男の子の顔を見つめる。
「それと二番目のお願いは、出来れば僕を売店に売ったりせずに、森の入り口のあたりにほうり投げて欲しいんだ。
できれば折れるところはみんな折ってばらばらにして、ね」
75 :
名も無き名器6:2009/09/02(水) 06:36:40 ID:WqDLaFWB
「そんな!!そんな酷いこと、私には出来ません」
「でも、そうして欲しいんだ。売店に並べられたら、生徒は高いお金を払って僕を買わなくちゃならなくなる。
君が僕を手に入れたときのことを思い出してごらん?もし、僕が売店に並んでいたら、君は僕を買えたかい?」
セレスティアは力なく俯いて首を横に振った。
「..だからお願い。どうしても壊せないならそのままでいいから、その辺の草むらに放って置いてくれると嬉しいな。
僕のためにも、君の可愛い後輩たちのためにも」
涙をぽろぽろこぼしながら頷くセレスティア。
「..よし、いい子だ。ありがとね。..そうだ!!君には一つ感謝しなければならないことがあったんだ」
「え?」
「..その..僕..あんなこと、初めてだったんだ。だから..なんというか、僕の初恋の人になってくれて、ありがとう」
「う..う..うわああああああ〜ん!!」
真っ赤になって照れる男の子に抱きついて号泣するセレスティア。
「よしよし..いい子いい子..君は僕の一番の卒業生..そして初恋の人..いつでもどこでも、君を見守っているからね..大丈夫..大丈夫..」
男の子にやさしく慰められ、抱きしめられ、頭を撫でられながら、彼女は再び眠りに落ちていった..。
76 :
名も無き名器7:2009/09/02(水) 06:38:47 ID:WqDLaFWB
「..で泣き疲れて眠り込んで、気がついたら朝になっていたと..不思議ねー」
セレスティアの物語に目を丸くするノーム。
「うん。本当はものすごく辛くて寂しかったけど、ああしたの。だからこの子も目一杯大切にするつもりです」
と、新しい相棒をぎゅっと抱きしめるセレスティア。
「..そりゃ作った甲斐があるってもんだね。..それにしても、あんたもオナニーすることがあるんだねえ」
意地悪そうなジト目で見つめ返すノーム。
「いいえ。あれは自慰ではありません。恋人との大切な秘め事です」
すまし顔で答えるセレスティア。
「はいはい、そうですね〜ご馳走様〜」
半分呆れたような笑顔を残してノームが前衛のポジションに戻っていくと、セレスティアは空を見上げた。
生い茂る木々の葉の間には、夏が終わってすっかり高くなった秋の空が広がっていた。
(私、頑張ります。見ていてくださいね、ぱちんこの妖精さん)
翌年の春
セレスティアは魔法使いとして堅実な成績を上げ、二年生に進級していた。金にものをいわせて最新鋭の装備を揃え、
スコアを競い合うようにモンスターを狩りまくるトップエリート達と違い、
廃棄物再生品や手に入る範囲の道具を使いこなし、着実に課題をクリアするセレスティアは、成績は平凡でも
教員達の間での評価は高かった。
「ああいう狂ったトップのバカどもなんざ参考にならん。金力勝負になったらお前らが連中についていける訳がねぇ。
手本にするならあのセレスティアを見習うんだぜぃ」
道場で剣の自慢話に興じる生徒達に、ロッシ先生はそう諭したものだった。
昼休み、セレスティアがパーティの仲間と共に食堂で昼食を取っていると、隣のテーブルに新入生のパーティ
らしき集団がやって来た。
「お前うらやましいなあ。いきなりぱちんこGetかよ」
「いや、偶然だよ。裏門のすぐそばにそれらしい木っ端屑が落ちてたから、拾ってみたらたまたま壊れた
ぱちんこだったってだけで」
校門とぱちんこというキーワードにセレスティアの耳が反応する。
「..ねえ、君。素敵なぱちんこを手に入れたみたいね。良かったら私にも見せてくれないかしら?」
「へ?あ、どうぞ、先輩」
突然魔法使い科の制服に身を固めた美しいセレスティアの先輩に声をかけられ、ドギマギしながらぱちんこを差し出す少年。
もしかしたら、あのぱちんこでは?と期待したセレスティアだったが、一度錬金にかけたせいか、手に取ってみても
かつて自分が使っていたぱちんこの面影はどこにも見られなかった。しかし、何の根拠も無いけれど、セレスティアは
これがあのぱちんこだと確信していた。
「あの..このぱちんこがどうかしましたか?」
不思議そうにセレスティアを見つめる少年。
「え?あ、いや何でも無いの。私もね、新入生のとき、たまたま校門のところで拾ったぱちんこを使っていたことがあったの。
それでちょっと懐かしくなって、ね」
「へぇ、そうなんですか。偶然ですね」
「..ちょっとセンターがずれてるわね。部屋に帰ったら左のアームを火であぶりながら少しずつ矯正してね。ゴムは使う前に
同じ重さのおもりをぶら下げてみて、伸びが均等かチェックすること。それを気をつけるだけでも精度は格段に上がるわよ」
慣れた手つきでぱちんこの微調整をするセレスティア。
「へぇ、詳しいんですね。ありがとうございます、先輩」
「はい、おしまい。大切にしてあげてね」
77 :
名も無き名器8:2009/09/02(水) 06:40:40 ID:WqDLaFWB
調整が終わったぱちんこを少年に返すと、ノームが尋ねて来た。
「あのぱちんこだった?」
「さあ..。一度錬金にかけてしまうとわからなくなっちゃうわね」
ノームは、ふーん、と意味ありげな笑みを浮かべると、パーティ仲間の方に向き直り、
「食堂も混んできたし、そろそろ行きましょう。席の無い人に早く譲ってあげないと」
と出発を促す。
食堂から出る間際、中を振り返ってみると、ぱちんこを左手でかざし、射撃の真似をする少年の姿が見えた。
(がんばってね)
目頭に熱いものがこみ上げてくるのをこらえつつ、セレスティアは仲間の後を追いかけた。
初めの森に通じるクロスティーニ学園の裏門のたもとには、名も知れぬ名器が転がっているという。
人に知られることも無く、名器名鑑に記されることも無く、手に入れて使っている本人にも全く自覚が無い、
そんな空気のような名器があって、貧しくも心清らかな新入生たちをやさしく見守っているらしい..
GJ先生!
序盤では大変お世話になりました…
校門のあたりに転がっているでちょっと笑ってしまった。ぱちんこ可愛いよぱちんこ
79 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 05:09:00 ID:wWuJg491
GJ!
今回はあまり頼らなかったけど、パチンコは低レベル時のエクスカリバーです・・・
俺、このスレの書き手の事正直嫌いだな
たまにすげー良い話で俺を泣かせてくれるから
まるでラノベ読んでるようだ
本出せるんじゃね?
誰も知らず決して語られる事の無い、しかしどんな伝説の武具よりも偉大な武器とな
エロパロすれで泣かすんじゃないバカヤロウw
GJでした
83 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 18:06:15 ID:P0apUMF6
先生達の学生時代って気になるよな
ジョルジオ先生とかガレノス先生とか
(´;ω;`)イイハナシダナー GJ!
自パーティでエロを書こうと思った。
そんなこんなでヒュマ子が猫耳をモフモフする話。全部で10レスくらい。
怒りとも呆れとも悲しみともつかぬエルフのため息で、また探索の手が止まった。
「セレスティア。いい加減にしてくれないか」
感情を圧し殺した低い声で呼ばれたセレスティアは、涼しい顔で制服のほつれを気にしている。
ヒューマンはまたかと肩をすくめ、クラッズも退屈そうに欠伸をする。フェルパーは耳を忙しなく動かし、ディアボロスは面倒くさそうに頭をかいていた。
集団行動であるパーティにおいては、種族間の相性よりも性格の合う合わないの方が重要だ。この真新しいパーティに致命的なひびを入れているのは、ほとんどの種族から好感を持たれているはずのセレスティアだった。
エルフの言葉など何処吹く風のセレスティアが見つめる先には、頭を潰された毒針ネズミの子供が転がっている。
「……どうして君は、脅えている動物を平気で襲えるんだ。しかも、まだ子供じゃないか」
「敵意があろうとなかろうと、殺してしまえば同じ。どのみち群れからはぐれた幼子に生き残る術はありません。ならば、いっそ一思いに殺してやることこそが、せめてもの情けというものですよ」
「お、お前……無抵抗の生き物を殺して、心が痛まないのかよ…!」
「ええ、ちっとも。そんな些細なことでいちいち心が痛むなら、今すぐ冒険者なんか辞めて、僧侶にでもおなりなさい、フェルパーさん」
天使の末裔とは思えないほどに悪意にまみれた言葉をぶつけられ、フェルパーは顔を真っ青にして押し黙った。だがエルフが顔を真っ赤に染めて、セレスティアに掴みかかる。
エルフの手がセレスティアに届く直前、二人の間にディアボロスが割って入った。クラッズもエルフの服を引っ張り、距離をとらせる。
「……すまなかった。エルフ、フェルパー」
「君に謝って貰わなくて結構だよ、ディアボロス」
「そうですよ、ディアボロス。そもそもが謝る必要などないのですから」
セレスティアをかばうように頭を下げたディアボロスに、エルフは忌々しげに舌打ちをした。制服を掴んでいたクラッズの手を振り払い、セレスティアに背中を向ける。
「あ、待ってよ。もー」
さっさと歩き出してしまったエルフに、クラッズが駆け寄った。頭が冷えたのか険しい表情だったエルフも僅かに表情を緩めて、足を止めてその小さな頭を撫でる。
クラッズは真ん丸の目に批難の色をにじませて、エルフを見上げる。
「そうやって睨み合ってばっかりじゃなくてさ、もっと仲良くしなきゃ駄目だよ」
「そもそもの考えが相容れないのだから、現状では難しい相談だ」
「掴みかかってどうにかなるわけないじゃんかー」
「はいはい、わかったよ。せめてフェルパーがもう少ししっかりしてくれれば良いのだが……あれには無理だろうな」
苛立ち紛れに八つ当たりをしたエルフの言葉に、フェルパーは血の気のない顔を更に青くした。
暗くふさぎこんだ表情のフェルパーに気付いたヒューマンが、丸くなった背中をそっと撫でてやる。
「大丈夫?」
「……お腹、痛い…」
「セレくんの言葉もエルくんの言葉も、いちいち気にしてたら身体がもたないよ?」
「うぅ……で、でも…」
今にも泣き出しそうなフェルパーに、ヒューマンも呆れたように苦笑いを浮かべてしまう。極度の人見知り即ち臆病者、というのが彼へのまわりからの評価だった。
腹を押さえて苦しそうなフェルパーを見かねたディアボロスが、ヒールをかけてやるかとフェルパーに近付こうとする。しかしその首根っこをセレスティアが思い切り引っ張り、結果ディアボロスは潰れた蛙のような声をあげた。
「ぐげっ!……こんにゃろ、何すんだよっ」
「無駄な気遣いはおやめなさい。あの子猫はディアボロスである貴女が近付けば、緊張で余計に具合が悪くなりますよ」
「あー……それもそうか…」
あんまりだが的を射ているセレスティアの言葉に納得して、ディアボロスは困ったようにため息をついた。そうして、パーティを組む仲間たちを改めて見回してみた。
種族でいうならば、エルフとヒューマンやフェルパーは仲が悪い。クラッズとフェルパーの相性も決して良くはない。ディアボロスは言うまでもない。
加えて、意地の悪いセレスティアが性格の合わないエルフやフェルパーと絶えず衝突しているため、もはやパーティの何処を見ても仲は非常に悪いと言える。
絶望的な真実を改めて知らされたディアボロスがもう一度ため息をついたとき、エルフが声をあげた。日が一番高くなる前に初めの森を抜ける予定だと、高らかに告げた。
予定より少し早くパンドーロタウンに着いた一行は、宿をとって早々に腰を落ち着けた。誰もが先程の口論で精神的な疲れを感じており、あげくそういったものに滅法弱いフェルパーが体調を崩した為だった。
宿の食堂で簡単な昼食を囲む一行の中に、フェルパーの姿はない。結局魔法使いのディアボロスがヒールの呪文を施して、今は部屋で横になっているはずだ。
耳をべったりと後ろに倒し、頼りなく尻尾を震わせるフェルパーの様子を思い出して、ヒューマンはため息をついた。
「大丈夫かなあ、フェルくん」
「しばらく様子を見て、良くならないようなら……何か手を打たなくてはいけないだろうな」
リーダーであるエルフは、とりあえず診療所まで運ぶ必要はないだろうと判断した。だが、ストレスから来る胃痛でまいってしまっただけに、事態はより深刻と言える。
パーティを組んで一月ほどでフェルパーがそこまで追い詰められたとあれば、編成そのものを考え直さなくてはならない。とりわけフェルパーが苦手としているのは、性格の合わないセレスティアだろう。
「要らないと言うならば、私とディアボロスはいつでもこのパーティから外れますよ」
エルフの言わんとすることを察したのか、セレスティアが突き放すような声音で言った。
「……いや、俺は今後もこの六人でやって行きたいと思っているよ」
魔法使いの二人が抜けてしまえば、パーティの戦力は著しく下がる。いくら気の合わない相手でも、エルフには簡単にその判断は下せない。
かと言って、このパーティに入ったがために体調を崩したフェルパーを切り捨てるようなこともできない。
「結局さ、フェルパーが私たちに慣れるしかないんじゃないの?」
「……そういうことだな」
いくつか言葉を交わし、クラッズがその結論を口にする。エルフは痛むこめかみをおさえながら頷いて、深いため息をついた。
「ヒューマン、すまないが後でフェルパーの様子を見に行ってくれないか」
臆病な野良猫のようなフェルパーが唯一苦手意識を感じないのがヒューマンだった。フェルパーの様子が心配だったヒューマンは、もちろんふたつ返事で了解する。
「できるなら、ついでに元気付けてやって欲しい」
「オッケー。まかせて!」
おにぎりでも持って行ってあげようかと考えながら、ヒューマンはフェルパーのひょこひょこ揺れる尻尾を思い出していた。
エルフたちと別れたヒューマンは、早速その足でフェルパーの部屋を訪ねた。その手にはフェルパーの好きな鮭のおにぎりがいくつか。
ドアを軽くノックしてみると、意外にも返事はすぐに返ってきた。
「フェルくん、具合はどう?」
ドア越しにそう尋ねると、街に着いたときよりは幾分元気そうなフェルパーが顔を出した。フェルパーはヒューマンに向かってゆっくり瞬きをして、僅かに微笑む。
「だいぶ良くなったよ。心配してくれてありがとう」
「そう、良かった。これ、後で食べられたら食べてね。……それと、フェルくん」
ヒューマンの声音が変わったのを感じたのか、フェルパーはおにぎりを受け取る手を止めた。金色の目を丸くして、様子をうかがうようにヒューマンの言葉を待つ。
「ちょっと話があるんだけど……良いかな?」
「あ、ああ、うん。わかった。……じゃあ、中に入ってよ」
大きくドアを開けて、フェルパーはヒューマンを部屋の中に招き入れる。
フェルパーの部屋はドアのすぐそばに荷物がまとめて置かれていて、ベッドの脇には二本の小刀が立て掛けてあった。その小綺麗な様は宿に着いてすぐに散らかった自分の部屋とは大違いで、ヒューマンは感心する。
フェルパーはおにぎりをテーブルに置くと、ヒューマンを椅子に座らせて、固い表情でベッドに腰を下ろす。三角の耳はピンと張りつめたように上を向いていた。
「……あの、話って、なに?」
「うん。フェルくんにね、お願いがあるんだ」
ビクッとフェルパーの身体が震えて、尻尾が二倍に膨らんだ。真ん丸の目が見開かれて、全身で緊張を表現している。
そんなフェルパーの様子にも気付かず、ヒューマンはパシッと良い音を立てて両手を合わせ、頭を下げる。
「お願い、尻尾と耳触らせてー!」
「……は?」
「私ね、ずーっとフェルくんの尻尾とか耳とか触りたかったのー。思ったよりフェルくんが元気そうだったから、お願いしても良いかなーって……駄目?」
ひとつ瞬きをしてヒューマンの言葉を飲み込むと、フェルパーの全身から力が抜けた。緊張が解けてぐったりとベッドに倒れ込む。
「なんだよ……そんなことかあ…。びっくりした…」
「じゃあ触って良いの?」
「……まあ、ちょっと触るくらいなら」
ヒューマンは嬉々としてフェルパーの隣に座り、差し出された頭をそっと撫でた。滑らかな毛が生え揃った耳を指でくすぐる。
耳の外側の毛にに触れるか触れないかの距離に指を差し出すと、三角の耳はプルプルと震えた。何度かそれを繰り返すと、流石にフェルパーは頭を振って嫌がる。
「くすぐったいよ…」
「ごめんごめん。……そういえばさっき、そんなことかって言ってたけど、何の話だと思ったの?」
口では謝りながらもフェルパーの耳で遊ぶ手は緩まない。ヒューマンは思い出したように先程のフェルパーの様子を問い掛けた。
フェルパーは言いにくそうに耳を動かして、少し間を置いてから口を開く。
「……オレ、迷惑かけてるから…。もうパーティを抜けろって言われるのかと思って…」
僅かに伏せられた睫毛が揺れて、鼻の奥を鳴らすフェルパー。よほど恐ろしかったのだろうか、強張ったようにきつく握りしめたフェルパーの拳に手を重ねて、ヒューマンは彼の背中を優しくさする。
ヒューマンの手のひらの暖かさに安心したのか、フェルパーはポロポロと涙をこぼしてしまう。
「そんなこと言う訳ないじゃない。エルくんだって、フェルくんのこと心配してたよ」
「うん……ありがとう、ヒューマン…」
ヒューマンはフェルパーをなだめるように背中をさすり、その手をそっと下ろした。力無くユラユラしている長い尻尾をできるだけ優しく撫でると、フェルパーの身体がビクンと跳ねた。
こぼれていた涙は一瞬にして引っ込み、今度は顔を真っ赤に染めている。抗議の声が上がらないのを良いことに、ヒューマンの尻尾を撫でる手付きは大胆なものになっていった。
柔らかく包むように掴んで、根元から先端まで手を滑らせる。艶やかな毛並みに思わず頬が緩む。
時折ピクンと跳ねるように動く尻尾を撫でながら、ヒューマンはフェルパーの肩に頭を預けた。うっとりと目を細めて、呟くように語りかける。
「怒らないで聞いてくれる?……フェルくんってね、昔家で飼ってた猫に似てるんだ。私以外の人に全然なつかないところとか、耳や尻尾の毛並みもそっくりで…」
「あの、ヒューマン……うっ…!」
「あ、ごめん。痛かった?」
追憶に浸っていたヒューマンの思考を遮って、フェルパーが苦しそうな声を出す。慌てて手を離したヒューマンが覗き込むと、うつむいたフェルパーの顔はこれ以上ないほどに真っ赤だった。
驚いたヒューマンが思わず身を引くと、フェルパーの股間が膨らんでいるのに気付いた。言葉を失うヒューマンに、フェルパーは今にも泣きそうな声を絞り出す。
「ごめん、ヒューマン……あの、尻尾の、付け根は、その……よ、弱い、から……触らないで…」
「ご、ごめん。私、知らなくって…」
ヒューマンも顔を赤くして、しどろもどろに返す。二人はしばらく時間が止まったようにかたまっていたが、不意にヒューマンの頭にある考えが浮かんだ。
何かを企んでいるようなヒューマンの視線に気付いたフェルパーが、涙目になりながら後退りをする。だが、フェルパーが逃げるより先にヒューマンの手がフェルパーの腰に伸びた。
ヒューマンの手がフェルパーの腰の辺り、尻尾の付け根をまさぐるように撫で回しはじめたので、フェルパーは思わずその手を強く掴んだ。
「なっ、何するんだよっ!?」
「いやあ、こうするのが一番良いかと思って」
「何で?!何が?!ヒューマン、本当にやめて!!」
尻尾の根元をギュッと掴むと、フェルパーの腰がビクンと跳ねた。フェルパーは真っ赤な顔に涙をためている。
「フェルくんがパーティに馴染んでくれるためには、まず手始めに私と親密な仲になれば良いんだよ」
「なんだよ、その理屈……うあっ!」
「だって、フェルくん苦しそうだよ……ここも」
どこか艶っぽく笑いながら、ヒューマンはもう一方の手でフェルパーの股間に触れた。ズボン越しにもはっきりわかるくらい熱を持ったフェルパーのそこを、そっと撫でる。
「ちょっ……ヒューマン、やめてよ!本当にダメだって!!」
「どうして?」
フェルパーの手がヒューマンの両手を掴んだ。ヒューマンはフェルパーの顔を覗き込んで、はっきりとした口調で問い掛ける。
何と説得して良いかわからず、ただ目を逸らすフェルパー。耳は困ったように横を向いている。ヒューマンはふっと笑って、再びフェルパーの肩にしなだれかかった。
「私、フェルくんのこと好きだよ。だから……ね?」
観念したようにフェルパーの手から力が抜けて、ヒューマンの手が自由になった。ヒューマンは尻尾の根本をグリグリと刺激しながら、そっとフェルパーのズボンに触れて前を開けた。
熱く硬くなったフェルパーの陰茎をそっと掴み、にじんできている体液を塗りたくるように扱きはじめる。耳にかかるフェルパーの息が乱れるのを感じ、うっとりと目を細める。
竿を擦りあげながら尻尾の付け根を押さえるとフェルパーの全身が強張り、食いしばった牙の間から押し殺した呻きが漏れた。
「フェルくん、気持ち良い?」
「……うっ、ヒューマン…!やめ…っ!!」
「かわいいなあ、フェルくん。……っきゃっ!?」
切羽つまった声をあげるフェルパーを、更に追い詰めようとするヒューマン。フェルパーの前後を掴む両の手にグッと力を入れた瞬間に、フェルパーがヒューマンを突き飛ばした。
フェルパーはベッドに倒れ込んだヒューマンの手を乱暴に掴み、捻り上げる。痛みに身をよじったヒューマンをうつ伏せに押さえ付けて、その背中にのしかかった。
ヒューマンが何かを言おうと首を捻ると、フェルパーはその細い首筋に牙を押しあてた。僅かに肌に食い込んだだけで、その鋭さがうかがえる。
「ヒューマン、オレ…っ!」
「ん……良いよ、フェルくんの好きにして」
ヒューマンが頷くと、フェルパーは一度口を離しヒューマンのスカートを捲りあげた。小振りな尻を包むショーツに手をかけて、一気に引き下ろす。
さらけ出されたヒューマンの秘裂は僅かに濡れていて、発情した雌のにおいがフェルパーの鼻をくすぐった。恥ずかしそうに身をよじるヒューマンに、再び覆い被さる。
雌のにおいをさせてフェルパーを誘う秘裂にモノをあてがうと、首筋に牙をあてながら一気に腰を突き出した。ヒューマンの身体が強張り、破瓜の痛みに背中を仰け反らせる。
「あぐっ、フェルくん…っ!う、あああっ!」
「くっ……ヒューマンっ…!」
ヒューマンの中は狭く、痛いくらいにフェルパーを締め付ける。それだけで達してしまいそうになりながら、フェルパーは欲望に任せて腰を強く前後に揺すった。
腰を引く度に血と雌のにおいが立ち込め、獣の本能を刺激する。フェルパーはヒューマンの尻を掴み、爪を立てているのにも気付かず力強く腰を打ち付けた。
「うぐ、フェルくんっ……あうっ、気持ち良い?」
「うん……ヒューマン、ヒューマンっ!」
ヒューマンは身を裂くような激痛にも構うことなく、フェルパーのモノを締める。勢い良く突き入れて身体を揺さぶられると、痛みとは違う感覚に背中を反らせた。
やがてフェルパーの動きは一段と性急なものとなり、ヒューマンの首に牙を立てる。喉から漏れる声はもはや喘ぎではなく、獣の唸りとなっていた。
「フーッ、フーッ、……うぐ、ヒューマン、もう…っ!」
「んくっ、良いよ、フェルくん。中に、あうっ、出して…!」
「グル……ぐ、ッアアアウ!!」
フェルパーは吼えるような声と共に一際強くヒューマンを突き上げ、更に腰を押し付けてヒューマンの中に精を放った。フェルパーの陰茎は脈打つ度に熱を吐き出し、それはヒューマンの身体の一番奥に注がれていく。
ヒューマンは全身の痛みすら気にせず、うっとりと目を細めて笑っていた。
「うああ……フェルくんのが、出てる…」
やがてフェルパーのモノが動きを止めて小さくなり、ゆっくりと引き抜かれる。
ヒューマンの秘裂から赤と白の混じった体液がドロリとあふれ、フェルパーは我に返ったようにオロオロしはじめた。
「うわ、大丈夫?ごめんね、ヒューマン…」
「気にしなくて良いよ。……フェルくん、キスして」
ヒューマンは身をよじって、甘えるようにフェルパーの首に腕を回した。フェルパーは赤らめた顔を近付け、そっと唇を重ねる。
初めは互いに探るように唇を合わせ、吸い付いていた。次第に舌を伸ばして互いの口の中を確かめ、舌を絡めてみる。
フェルパーの舌は薄くザラザラしていたが、ヒューマンはそれに構うことなく強く舌を絡める。やがて名残惜しそうに唇を離すと、ザラッとこすれる音がした。
ヒューマンはフェルパーの首にすがり付いたまま、身体を後ろに倒してベッドに寝転んだ。フェルパーの頭を強く抱いて、胸に押し付ける。
「えへへ。フェルくん、好き」
ヒューマンの胸は暖かく柔らかい。フェルパーが甘えるように頭を押し付けると、ドキドキと高鳴るヒューマンの心音が聞こえた。
それは、太陽のにおいのする布団とはまた違う、母の腕に抱かれるような気持ち良さであった。フェルパーは安心しきったように大きなあくびをして、ヒューマンに抱きつく。
「うん。オレも…」
言葉は最後まで紡がれず、フェルパーはそのまま安らかな寝息を立てはじめてしまう。ヒューマンもつられたように大きなあくびをこぼして、腕の中のフェルパーの暖かさを噛み締めるように、ゆっくりと目を閉じた。
それ以来フェルパーは少しずつパーティにも慣れ、胃の痛みを訴えることは少なくなった。それは、ヒューマンが間に入るようになったこともあるが、やはり一番は互いに考え方の違いも受け入れられるようになったからだろう。
フェルパーはクラッズに追いかけられて、初めの森を走り回っている。すばしっこい二人がドタバタとすると、土埃が舞い上がってエルフが嫌な顔をする。
「クラッズ、追いかけて来ないでよー!」
「フェルパーが逃げるからでしょー?大人しく尻尾触らせろー!」
「だって、クラッズは引っ張るんだもん。絶対にやだー!」
「ヒューマンには触らせるくせにー!ずーるーいー!!」
フェルパーは手近な樹にするりと登って、一安心したように地団駄を踏むクラッズを見下ろした。フェルパーがヒューマンと付き合いはじめたことを知るや、クラッズの風当たりが強くなったのは、いわゆるひがみだろうか。
頬を膨らませるクラッズにヒューマンが近付き、何やら諭している。流石のクラッズもヒューマンの言葉には大人しく従ったようで、樹の上のフェルパーにべぇっと舌を出して背中を向けた。
ほっと息をついたフェルパーが降りようと思ったとき、重大なミスに気付いてしまう。困り果ててオロオロしていると、ヒューマンが慌てて樹に駆け寄ってきた。
「フェルくん、降りられるー?」
「む、無理…っ!!」
クラッズに注目していた時はまだ良かったが、いざまっすぐに地面を見てしまうと恐怖に全身が震えた。
どうしようかと身体を震わせていると、ヒューマンに呼ばれたセレスティアが心底嫌そうな顔をしながら助けに来てくれた。セレスティアは背中の翼で樹の上のフェルパーに近付き、その首根っこを掴む。
「ごめんね、ありがとう…」
「……ちっ」
セレスティアはフェルパーを見ようともせず舌打ちをすると、躊躇うことなくフェルパーの身体を放り投げた。フェルパーは悲痛な叫びをあげながら落ちていく。
「うわあ〜〜〜っ!!」
背中を丸めて衝撃を和らげながら、両手足を地面について着地する。無事だったが膝が笑って立てないフェルパーを、ヒューマンの呑気な拍手が迎えた。
「フェルくんおかえりー。セレくんありがとー」
いつの間にか地面に降りていたセレスティアは不機嫌にため息をつくと、フェルパーに一瞥もくれず立ち去ってしまう。
ヒューマンに支えられて、別の木の陰に腰を下ろして休んでいるエルフたちの元へ戻った。クラッズはエルフの陰から顔をのぞかせ、フェルパーに舌を出す。
ぶすっと頬を膨らませていじけているクラッズに構うことなく、フェルパーもその側に腰を下ろす。
「セレスティア、本当にありがとう。助かったよ」
セレスティアはフェルパーを冷めた目で見ていたが、おもむろにパワースリングを取り出すとフェルパーに向かって小石を打った。
「いたっ!何すんだよぉ〜!?」
「別に、何となく腹が立ったので」
「ううっ。ディアボロス、助けてぇ…」
赤くなった額を押さえてディアボロスを見ると、頼みの綱はエルフと地図を眺めていた。
「じゃあ、魔女の森の出口は複数あるのか。複雑だな…」
「一度ある程度マッピングしてしまえば、後はいくらか楽になるよ」
「そりゃあそうだけど」
フェルパーやエルフにしてみれば、性格の真逆なセレスティアよりも言葉が荒いだけのディアボロスの方が話ができた。口数が少なかった彼女も、話してみれば随分と気さくな性格をしていた。
このあたりの地形の特徴を熱心にエルフに訊いているディアボロスには、セレスティアやフェルパーなど全く見えていない。フェルパーは助けを求めることを諦めた。
だが、ディアボロスに代わりヒューマンがセレスティアにくってかかる。
「セレくん、私のフェルくんをいじめたらダメー」
「苛めていません。少し気にくわないだけです」
「ねー、クッキー食べてもいーい?」
「返しなさい、それは私の物です。……クラッズというものは、どうにも手癖が悪いですね」
「うきゃー」
善にも悪にも偏っていないヒューマンやクラッズはセレスティアの口の悪さも気にならないらしく、最近では何だかんだとじゃれあっているのを見るようになった。
「……フェルくん、どうしたの?」
「んー、良い天気だから眠いなあって…」
「そうだね。私も眠いなあ…」
「おい、出来れば今日中に魔女の森をざっと通り抜けたいんだ。寝るなよ」
「……どうやら、もう眠っているようですね。流石は寝子というだけあります」
「感心するな。……起きろ!!」
何処を見ても仲が悪いと思っていたパーティだが、こうして見るとそんなに悪くもないのかも知れない。
そんなことを考えると、フェルパーは少しずつ胃の痛みが消えていく気がした。
お粗末。
なんとなく書き溜めがあった気がするので前回からトリつけました。
目下最大の悩みは2の制服の構造がよくわからないことです。どうやって脱がせたら良いんだ…
GJ!
よく考えたらフェルパーってこれぐらい人見知りなんだよな。というか猫。
確かに制服の構造は分からない。前にボタンがあるわけでもないし。
もしかしてすっぽりかぶってるのか?
乙!
普通に正面にチャック付いてるだけじゃない?
腰の白いのは紐だろうし、首元のは女がボタンかチャックで男がベルトと思われ
99 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 05:22:30 ID:q6g8AGXg
保守?
ん?
PSPのボタン及びアナログスティックがイカレ始めた。どうしたもんか…。
今回は再びディア子。
注意としては、最初やや無理矢理気味。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
その日の朝、事件は起こった。
いつも通り、クラッズとドワーフとヒューマンが一緒に学食で朝食を取り、すぐあとにノームがやってくる。さらにその後、ドワーフが
お代わりを取りに行く頃になり、フェルパーとディアボロスが姿を見せた。
「お、おはよう二人とも。これで全員揃ったな」
「おはよ〜。みんな、早いねぇ」
「まったくだな。もう少しゆっくりすればいいものを」
「いや、僕等が早いんじゃない、君等が遅すぎるんだ」
そんな話をしていると、朝食とは思えないほどの量の皿を持ったドワーフが、席に戻ってきた。
「あ、二人ともおはよー」
「ああ、おはようドワーフ。お前は相変わらず……いや、いつにも増して食うな」
「えへへ〜、最近なんかお腹空いちゃってさ」
「でもドワちゃん……最近、そのせいでちょっと太ってない?」
「ん、たぶん太ったかも。でも、すぐ元に戻るよー」
その時、フェルパーが不意にふんふんと鼻を鳴らし始めた。そしてドワーフを見つめ、唐突に言い放った。
「あ、ドワーフさん臭いすごい。あんまり近寄らないでね」
とてもフェルパーの口から出たとは思えない台詞に、全員が一瞬呆気に取られた。
「え、あ、そう……なんだ?じゃあ、そうするね」
ドワーフが答えた瞬間、クラッズがフェルパーを睨みつけ、怒鳴った。
「あんた、いきなり何言ってんの!?いくら何でも、失礼にも程があるでしょ!?信じらんない、フェル君ってそんな人なんじゃね!!」
「私もそう思ったぞ。フェルパー、女の子相手にそれはないだろう」
「え……あ…」
二人の顔を見ておろおろするフェルパー。そこに、ヒューマンが追い討ちをかけた。
「お前、臭いには敏感なんだろうけど、さすがにそれはねえだろ。見損なったぞ」
「あ、あの、みんな…」
ドワーフが口を開きかけたが、誰もそれに気付かない。
「ドワーフ、お前もあんなこと言われたら、さすがに言い返していいぞ。あんまり失礼だろ、今のは」
「いや、あの、今のは…」
フェルパーは何か言おうとしたが、ドワーフの顔をちらりと見ると、そのまま黙ってしまった。ややあって、ペッタリと耳を寝かせ、
尻尾も悲しげに垂らしてしまうと、ぽつりと呟いた。
「……ごめんね…」
寂しそうに言うと、フェルパーは自分のトレイを持ち、別の席に移ってしまった。しかし、誰もそれを止めない。
唯一、ノームだけは黙ってそれを見ていたが、やがて席を立った。
「おい、ノーム?」
「さすがに、一人はかわいそうだ。僕ぐらいは、フェルパーの隣にいるよ」
そう言ってノームも席を移ると、ドワーフ以外の三人は気を落ち着けるように溜め息をついた。
「……まさか、フェルパーがあんなこと言うなんてなあ」
「最っ低じゃね、あいつ!」
「いきなりどうしたんだろうな、あいつは……普段はあんなこと言わないんだがな」
「あ、あの…」
「ん?何だよ?」
「えっと……その……フェルパー君、あんまり責めないであげて…」
躊躇いがちにドワーフが言うと、クラッズは呆れたような溜め息をついた。
「ドワちゃん、庇う必要ないって。女の子に臭いがすごいとか、普通言っちゃダメでしょ」
「あの……うん…」
ドワーフは何か言いたいらしいのだが、どうも口には出せないようで、そのまま黙ってしまった。しかし、それに気付いたものは、
誰一人いない。
結局、その日の朝は最悪の始まりとなり、以後しばらく、一行の間には険悪な空気が漂うこととなった。
翌日、ディアボロスが朝食を取ろうと学食に行くと、いつもいるはずのドワーフ達がいない。ついでにフェルパーも見当たらず、
ノームのみが一人でお茶を飲んでいる。彼はディアボロスに気付くと、軽く手を上げて挨拶した。
「やあ、おはよう。今日もきれいだね」
「本当に相変わらずだな、お前は。まあいい、他の奴は?」
「さあ。僕が来たときからこうだったよ。おかげで、今日は久々にのんびりしたティータイムが取れたけど」
「ふーん?一体どうしたんだろうな?」
ディアボロスが不思議そうに呟くと、ノームはぼそりと呟いた。
「ま、大体予想は付くけどね」
「え?何か言ったか?」
「いや、何も。とにかくみんな来ないんじゃ、今日は休みでもいいんじゃないかい。一日ぐらい探索をサボったって、怒られやしないさ」
「うーん、それはそうだが……まあ、いい。そうするか」
「せっかくだし、フェルパーとでも遊んだらどうだい」
ノームが言うと、ディアボロスは少し不機嫌そうな顔になった。
「あいつとは、今はあまり会いたくない」
「昨日のことかい」
「ああ」
「……まあいいさ。でも、忘れないでくれよ。あの猫は君も知っての通り、普段は絶対にあんなこと言わない」
「だからこそ、腹が立ってるんだ」
一語一語に力を込めて言うと、ディアボロスは朝食を取りに行ってしまった。そんな彼女の後ろ姿を見送りながら、ノームはやれやれと
いうように肩をすくめた。
朝食を終えると、ディアボロスは一通りの授業を受けてから剣の打ち込みの練習をし、夕食の時間になると再び学食へと向かう。
やはりノームだけいるのかと思っていると、今度はヒューマンがどこか寂しげに座っているのが見えた。
「おう、ヒューマンか。一人とは珍しいな」
声をかけると、ヒューマンは疲れた顔でディアボロスを見た。
「お〜う、お前か。お前こそ、一人なんて珍しいじゃないか」
「それも確かにな。だが、こっちの理由はわかるだろう?」
「……なるほど。でもこっちは予想付かないってことか」
一つ溜め息をつくと、ヒューマンはオレンジジュースを一口飲んだ。
「クラッズに追い出された」
「え?まさか、また喧嘩を始めたのか?」
「いやいや、喧嘩じゃねえんだ。ただ、ドワーフが問題でなあ…」
問題など起こしそうにないドワーフが問題と言われ、ディアボロスは首を傾げた。それを見越していたように、ヒューマンが続ける。
「あいつ、今な、発情期に入っちまってるらしいんだ」
「発っ…!?え、えっと、あれか、犬とか猫の、盛りと一緒か」
「そう、それそれ。で、俺はほら、繁殖力高い種族だろ?で、発情期は言い換えれば繁殖期ってわけだ。そんな時期に、あいつの期待に
応えちまっちゃ、退学コース一直線になるからなぁ……あいつは、時期が時期で我慢できないし、そんなあいつに誘われて、
我慢しきれるほど俺は我慢強くねえし、あの手この手で子供作ろうとしやがったからな〜…」
「……で、クラッズがあいつに付きっ切りになってるというわけか」
「付きっ切りってか、独り占めって雰囲気だったな、ありゃ」
乾いた笑い声を上げ、再びヒューマンの表情が疲れたものになる。
「その、なんだ。仲間外れは辛いだろうが、そう長い時間じゃないだろう?男なら、それぐらい我慢しろ」
「ある意味、男だから辛いんだけどな…」
「それもそうか。……ん?待てよ、ドワーフが盛りとなると……もしや、フェルパーも?」
ディアボロスの言葉に、ヒューマンは怪訝そうな顔をする。
「どうしてフェルパーまで?」
「あいつはドワーフに臭いが云々と言っていたが、それはもしかして、盛りの匂いがするって意味だったんじゃないかと思ってな」
「……ありえそうだな。でも、ドワーフとフェルパーって種族違うけど、反応するのかぁ?」
「いや、それは知らんが……あいつがあんなこと言ったのは、それ以外に考えられん」
「そういや、ドワーフもあいつの言葉、そんなに気にしてなかったっぽいよな……もしかして、あいつらみたいな種族だと、普通の会話
だったのかな…」
とは言うものの、ディアボロスは内心、その仮定が外れていてほしいとも思っていた。仮定が当たっていたら、普通の会話をした彼を
こちらの一方的な勘違いで非難してしまったということなのだ。もちろん、悪意を持って言ったとは思いたくないのだが、何の罪もない
彼を非難してしまったという事実も耐え難いものである。
「……あとで、フェルパーを探してみるか。謝らなきゃいけないかもしれないからな」
「あ〜、それもそうだな。俺もあとで行くよ」
その後、二人は一緒に夕飯を食べると、揃ってフェルパーの部屋に向かった。しかし、いくらノックしても出る気配がない。
「いないのか?」
「いねえってこともないと思うけど……ちょっと失礼」
ヒューマンはドアの前に屈むと、鍵穴に耳をつけ、目を瞑った。しばらくして、溜め息とともに目を開ける。
「……寝息聞こえてら」
「早いな!?」
「こりゃ、明日出直した方がよさそうだな。どうせ明日は休みだし、時間なんかいくらでもあるからな」
寝ているのでは仕方がない。二人はそこで別れ、それぞれの部屋へと戻った。ディアボロスは何とも重い気分のまま、部屋に着くなり
すぐに着替え、何をするでもなく寝てしまった。
翌朝、ディアボロスは起きるとすぐにフェルパーの部屋を訪ねた。しかし、今回も返事がない。しつこくノックしてみたが、動く気配すら
ないので、恐らくはどこか出かけてしまったのだろう。よくよく考えれば、起きるのが遅れたせいで時間はもう午後に近いのだ。
仕方ないので、一旦部屋に戻っておにぎりを食べてから、再びフェルパーを探す。今日は天気もよく、気温もちょうどいいぐらいなので、
たぶん屋上だろうと目星をつけ、階段を上っていく。そして屋上に続くドアに手をかけ、グッと押し開ける。
「フェルパー、いる…」
その瞬間、目に飛び込んできたのは、スカートとショーツを破られ、床に押さえつけられるクラッズと、その後ろからのしかかっている
フェルパーの姿だった。
「あ、ディアちゃん…!」
一瞬、ディアボロスの思考が停止する。しかし、すぐに凄まじい怒りが湧き上がり、直後フェルパーに飛び掛った。
「フェルパー、貴様ぁ!!」
その声に驚き、文字通り飛び上がったフェルパーの胸倉を掴むと、ディアボロスは彼の頭にガンガンと角を打ちつけた。刺さらないように
根元でやっているとはいえ、その音はひどく硬質で、聞くだけで痛そうなものである。
「貴様、何をしてるんだっ!!私というものがありながら……くそっ、このロリコンが!!」
「痛い痛い痛い!ごめんなさいごめんなさい、でもちょっと待って、ちょっと話聞いてぇ!」
「この状況で言い訳か!?そんなもの、誰が聞くか!!」
「ディ、ディアちゃん、ちょっと待って!ほんとに事情があるんじゃって!フェル君はそんなに悪くないんじゃってば!」
他ならぬ被害者であるクラッズが、そう言って腕を引っ張る。それでようやく、ディアボロスは角を叩きつけるのをやめた。
「しかもロリコンって……あたし、同い年なんじゃけど…」
「いや、その、それは口が滑って……と、とにかく、事情とはなんだ?」
「あ〜……えっと、今ドワちゃんが恋の時期になっちゃってるんじゃけど…」
破られたスカートを何とか直しながら、クラッズはやや口ごもりつつ続ける。
「それで、あたし昨日ずっと、ドワちゃんの相手してたんじゃけどね……それで、すっかりドワちゃんの匂いが、あたしに付いちゃった
みたいなの。それであたし、フェル君に近づいちゃったから、フェル君抑えが利かなくなっちゃって……で、でも、フェル君は直前で
我慢してくれたんじゃよ!実際危なかったし、ちょっと、見た目はこんなじゃけど、それ以外は被害ないの!」
言われてみれば、クラッズに強姦された形跡はない。ならこの程度で許してやろうかと、ディアボロスはフェルパーから手を放しかけた。
が、フェルパーの呼吸が異常に荒くなっているのに気付き、その手を止める。
「……なんだ?」
「う……ウ、ア…!クラ……風上……グッ……立たないで…!」
「え、あっ!?ご、ごめんっ!」
「なんだおい、どうした!?」
「グウゥゥ…!」
胸倉を掴む手を、フェルパーが強く掴み返した。その力は強く、ディアボロスはギョッとして手を放そうとした。しかし、
今度はフェルパーがそれをさせない。
「ウウ……ウウゥゥ…!」
「やっば…!ご、ごめん!また匂い嗅がせちゃった!」
その言葉とフェルパーの様子に、色々と嫌な予感がしてくる。しかし、苦しげな彼の様子を見ていると、先日のお詫びということもあり、
何とかしてやろうという気持ちが湧き上がってきた。
「……クラッズ、とりあえずお前は戻ってくれ。あとは私が何とかする」
「わ、わかった。ごめん、あと任せるね」
それだけ言うと、クラッズは逃げるように屋上を後にした。出入り口のドアが閉まると、屋上にはフェルパーとディアボロスの
二人だけになる。
再び、フェルパーを見つめる。ディアボロスの腕を強く掴み、荒い呼吸をする彼の姿は、とても苦しそうだった。
「……辛いのか?」
「ウゥ……ウ…!」
食い縛った歯の隙間から呻き声を漏らし、フェルパーは頷く。
「……したいのか?」
「フゥ……グゥ…!」
再び、頷く。ディアボロスは溜め息をついてから、フェルパーに困った笑顔を向ける。
「わかった、わかった。相手してやるから、まずはこの手を放せ」
言われたとおり、フェルパーはこじ開けるようにして手を放した。
「とにかく、まず部屋に…」
「ウウゥゥ〜…!も、もう無理だよぉ…!」
「え?」
突然、フェルパーはディアボロスの体を強く抱き締めた。それに驚く間もなく、フェルパーは強引に唇を奪う。
口の中に、フェルパーの舌が何の遠慮もなしに入り込む。驚いて押し返そうとするも、彼の力は強く、それもかなわない。
ザラザラした舌が、執拗にディアボロスの舌を舐める。呼吸を妨げられるほどに激しいキスに、ディアボロスは必死に身を捩り、
彼の腕から逃れようとする。
それに気付いたのか、不意にフェルパーが唇を離した。だが、その目は既に獣のような光を湛えている。
「ま、待て待てフェルパー!こんなところで…!」
「ディアボロスっ……ディアボロス!」
「ま、待てって……うあっ!!」
制服の留め具を吹っ飛ばし、その下のブラジャーまでも爪で切り裂くと、フェルパーは彼女の乳房にむしゃぶりついた。
乳首を強く吸い、舌全体を使って舐める。いつもよりはるかに強い力に、さすがのディアボロスも僅かに痛みを感じるほどだった。
「う、うあっ…!フェル……ま、待てぇ…!あっ!」
彼の頭に手をつき必死に押し返そうとするが、ディアボロスの力を持ってしても、フェルパーは微動だにしない。それどころか、
抵抗されたことによって、より強い力でディアボロスを抱き締める。
「フェルパぁ……や、やめろぉ…」
多少痛みがあり、強引な行為だとはいえ、それでもフェルパーからの刺激には快感が伴う。だんだんと抗議の声は小さくなり、
代わりに荒い呼吸の合間に、甘い吐息が混じり始める。
「もう、よせぇ……んんっ…!」
ディアボロスは力なく身を捩るが、それはもはや抵抗というより、快感から逃れようとする動きに近い。顔も既に赤く染まり、
汗ばんだ体からは、フェルパーにしかわからないような『女』の匂いがし始めている。
それに気付くと、フェルパーは口を離し、彼女のスカートの中に手を突っ込んだ。
「あっ!?フェルパー、やめっ……だ、ダメだ!」
「フーッ、フーッ!」
ディアボロスの言葉には耳も貸さず、爪を伸ばして下着を切り裂く。そして彼女の体をぴったりと抱き寄せると、ジッパーを下ろす。
「え…?お、おい!待て待て待てぇ!!そんな、こんなの……ちょっ、おいっ!」
慌てて逃げようとしたが、無駄だった。フェルパーは彼女の秘裂にあてがうと、根元まで一気に突き入れた。
「うあぁっ!!あっ……ぐぅ…!」
濡れきっていない所へ突き立てられる痛みと、体の奥を叩かれる疼痛。その痛みに、ディアボロスの体の自由は奪われた。
「あ、あ…!フェルパー……こんな、立ったまま……なんて…!」
ディアボロスの抗議に耳を貸さず、フェルパーは腰を突き上げた。体重が結合部にかかり、内臓を押し上げられるような苦しさが
襲ってくる。抵抗しようにも、強く抱き締められていては、何も出来ない。
片手でディアボロスを抱き締め、もう片方の手で腰を抱きかかえるようにして、フェルパーは強く突き上げる。体勢ゆえに
激しさはないものの、突き上げる力は強い。
「あうっ……くっ…!フェ、フェルパー……あっ!」
「ディアボロスっ……フーッ……ディアボロスっ…!」
愛液がポタポタと伝い落ち、地面に黒い染みを作っていく。痛みはだいぶ薄れてきたが、それでも突き上げられれば疼痛があり、
何よりこんな場所で、こんな格好で犯されているということが、恥ずかしくてたまらなかった。
「フェル…!も、もうよせぇ…!誰か来たら……んんっ…!」
「ディアっ……ぐ、うう!」
不意に、フェルパーが呻き声を上げる。直後、ディアボロスの体内に熱い液体が流れ込んできた。
「うっ、あぁ!?な、中……熱っ…!」
体内に放たれる精液の感覚に、ディアボロスは一瞬、快感に身を震わせた。
だが、直後にその体が強張る。屋上入り口の方から、足音が聞こえてきたのだ。
「お、おいフェルパー!誰か来る、放せ!一回離れてくれ!」
「ハーッ、ハーッ…!」
だが、フェルパーは聞く耳を持たず、それどころか再びディアボロスを突き上げる。
「んうっ…!ば、馬鹿っ、やめ……んっ…!おい、フェルパー!フェルパーってば!」
必死に体を押し、身を捩り、彼の腕から逃れようともがくが、フェルパーは変わらずしっかりとディアボロスを捕まえている。
足音が少しずつ大きくなり、ドアの前で一度止まった。
「フェルパー、フェルパー!誰か来ると言ってるだろ!おい、放せ!放してくれってば!」
たまらず、ディアボロスはフェルパーの耳を掴み、そこに小声で必死に訴える。
ガチャリと、ドアノブが回る音がした。
「フェルパーっ!!!」
直後、フェルパーは一度ディアボロスの中から自身のモノを引き抜いた。それにホッとする間もなく、フェルパーはディアボロスの体を
軽々と抱きかかえ、屋上の柵に向かって走った。
二度、激しい衝撃がディアボロスに襲い掛かった。フェルパーは彼女を抱えたまま軽々と跳躍し、柵を踏み台に屋上入り口の屋根へと
飛び移ったのだ。あまりの驚きにディアボロスが唖然としていると、下から声が聞こえた。
「……あれ〜?おっかしいなあ、フェルパーとディアボロスいねえじゃん…」
間違いなく、ヒューマンの声だった。恐らく、クラッズから二人の居場所を聞いてきたのだろう。
とにかく見つからないようにしようと、ディアボロスは呼吸を抑え、心を落ち着けようと目を瞑る。が、フェルパーはディアボロスを
うつ伏せに置くと、その後ろからのしかかってきた。
「っ!?お、おいフェルパー…!今はダメだ、今はよせ…!」
「フーッ……フーッ…」
「フェル……うっ…!」
突然、首筋に痛みが走る。うなじにかかる吐息から、フェルパーが噛み付いたのだとわかった。さらにフェルパーは、彼女の両腕を
屋根に押さえつけ、挿入を果たそうとする。
その強引な行為に、ディアボロスの脳裏にかつての記憶が蘇る。出来ることなら叫びだしたいほどの恐怖を覚えるも、ディアボロスは
必死に歯を食い縛り、その衝動を堪える。
「……フェルパー、待て……んっ…!」
秘裂を割り、フェルパーが彼女の中に押し入る。そのまま一気に最奥まで突き込むと、腰を密着させたままで、
何度も奥に叩きつけるように腰を突き出す。
「っ!!……っ……っ!」
声などあげたら、下のヒューマンに気付かれてしまう。ディアボロスはぎゅっと目を瞑り、歯を食い縛って必死に声を抑える。
そんな彼女をいたぶるかのように、フェルパーは彼女の体内を強く突く。ディアボロスの手が石造りの屋根を引っ掻き、
ガリッと音を立てる。
「部屋でも行ったのかな〜。でも、さっきいなかったしなぁ」
「……っ……ふ、ん……っ…!」
気付かれるという恐怖と、記憶から来る恐怖に、ディアボロスの膣内はフェルパーのモノを強く締め付ける。それが彼に強い快感を与え、
より激しく突き上げられる。
「……うっ…!」
思わず、声が漏れてしまった。ディアボロスはギョッとして呼吸を止める。
「ん?……誰かいるのか?」
下でヒューマンが歩き回る気配がする。ディアボロスはますます体を強張らせ、フェルパーのモノをさらに強く締め上げる。
「フーッ……フゥー…」
一瞬、フェルパーの呼吸が落ち着き、それと同時に再び熱いものが注ぎ込まれるのを感じた。それでも声をあげるわけにいかず、
ディアボロスは拷問のような時間をじっと耐える。
「……気のせいか?ま、いいや。いねえなら帰ろ」
足音が再び屋上の入り口前に回り、ガチャリとドアの開く音がする。それに続いて足音が小さくなり、やがてドアが閉まる音と共に、
聞こえなくなった。
完全に足音が消えると、ディアボロスは止めていた息を一気に吐き出した。それと同時に、フェルパーがまたも腰を動かし始める。
「うあっ……フェルパー……フェルパー、頼む…!待て、待ってくれ…!」
身じろぎすると、フェルパーは首を噛む力を強める。強引な行為と、強い痛み。それが思い出したくない記憶を強く蘇らせる。
それまでは、彼に対してひどいことを言ったという負い目もあり、何とか我慢していた。だが、もう限界だった。
「フェルパー、お願いだから話を聞いてくれぇ!もうやめてくれ、無理矢理はやだぁ!」
涙声で叫ぶと、フェルパーはギョッとしたように口を離し、続いて押さえつけていた手を放した。
「……お前が辛いのはわかるが……ひっく……せめて、優しくしてくれ…」
涙を浮かべるディアボロスに、フェルパーは一瞬にして理性を取り戻した。
「ご、ごめん!ごめんねディアボロス!大丈夫!?」
「くすん……やめろとは言わないから、押さえつけたりはしないでくれ…」
「う、うん。ごめんね、ディアボロス」
いつもの穏やかな声で言うと、フェルパーはディアボロスの体を仰向けに直し、優しく唇を重ねた。ディアボロスもそれに応え、
自分から彼の舌に舌を絡める。
唇を離すと、フェルパーは不意に低く呻いた。
「でも、その……ごめん…!あまり、我慢できない…!」
「……無理矢理じゃなければ、いいぞ…」
その言葉を聞くや否や、フェルパーはディアボロスの腰を抱え上げ、激しく腰を打ちつけた。
「うあっ!フェルパっ……は、激しっ…!」
「ごめんっ……でも、腰、止まらなっ…!」
パン、パンと腰が打ち付けられる音が響き、結合部からは愛液と精液の混じったものが飛び散る。それすら意に介さず、フェルパーは
欲望のままにディアボロスの体内を突き上げる。
乱暴な動きではあるが、そこまでフェルパーが夢中になっているということに、ディアボロスは微かな喜びを覚える。それが、少しずつ
ディアボロスの快感を高めていく。
「うああっ!あっ!フェルパー、フェルパー…!」
何度もフェルパーを呼びながら、ディアボロスは彼のモノを強く締め付ける。
「ディアボロス……すごく、気持ちいいよ…!」
フェルパーはフェルパーで、快感を貪るように、さらに強く、激しく腰を打ちつける。体には汗が伝い、ディアボロスの体に滴り落ちる。
やがて、動きが性急なものになり、フェルパーが低く呻く。
「うぅ〜…!ディアボロス、僕っ…!」
「い、いいぞ……何回でも、受け止めてやるから……中に…!」
直後、フェルパーが腰を押し付けるように突き入れ、それと同時に三度目の精が放たれた。それはなぜか、今までのものと違って、
とても温かく感じられた。
彼のモノが体内で跳ね、その度に温かい精液が注ぎ込まれていく。その感覚に、ディアボロスは言い様もない快感を覚える。
やがて、全て彼女の中に注ぎ込むと、フェルパーは彼女の中から引き抜いた。完全に抜け出てしまうと、ディアボロスはぐったりと
横たわった。
「ディ、ディアボロス、大丈夫!?」
慌てるフェルパーの声が、少し遠くで聞こえる。それに、ディアボロスは弱々しい笑顔を浮かべて答える。
「ああ……さすがに、ちょっと疲れたが…」
「……じゃあ、またするのは、少し休んでからの方がいい?」
「……な、何?」
この男はまだするつもりなのかと、ディアボロスは内心ゾッとした。
「その……まだ、ちょっと、足りなくて……ダメなら、いいけど…」
とは言うものの、フェルパーはしたくてたまらないという顔をしている。そんな彼を見ていると、どうにもディアボロスは
断れなくなってしまう。
「……外では、もう嫌だぞ…」
その言葉の意味を考え、ようやく彼女の真意を察すると、フェルパーの尻尾と耳がピンと立ち上がった。
「じゃ、部屋連れてってあげる。それならいいよね?ね?」
「……ああ」
今日一日を、完全に無駄にする覚悟を、ディアボロスはしっかりと固めていた。そんな彼女を抱き上げ、フェルパーは嬉々として
部屋へと歩いていくのだった。
翌朝、フェルパーが学食に行くと、ディアボロス以外の全員が集まっていた。
「お、フェルパー。おはよう」
「うん、おはよー」
「あ、ああ、フェル君……おはよ」
クラッズは昨日の一件があるからか、少し態度がぎこちない。というより、怯えているようにも見えた。
「クラッズさん、昨日ごめんねぇ」
「へ!?あ、いや、それはいいんじゃけど……あたしこそ、ごめん。ひどいこと言っちゃったし、苦しい思いさせちゃったし…」
「あの、みんなごめんね!私のせいで、色々迷惑かけちゃったみたいで…」
「すげえ謝罪大会だな。……ま、俺もなんだけどさ。フェルパー、この前ごめんな。匂いがどうこうって、普通の会話だったのな」
「いいよ〜。知らなかったんだから、しょうがないもん」
そう言って穏やかな笑みを浮かべるフェルパーに、ノームを除く全員がホッと息をついた。
「……で、ノーム。お前、最初から全部知ってたんだろ」
「ご明察。起き抜けにしてはクレバーだね」
「お前はー!だったら教えてくれよ!お前が教えてくれりゃ、ここまで大ごとにならなかったのによー!」
「僕は常識だと思ってたんだけどな。ドワーフにフェルパー、それとバハムーンの一部にはそういう時期があって、異種族であっても
反応する場合があるってさ。それに『自分は盛ってる』なんて、恥ずかしくて言えると思うかい。まして女の子がさ。
確かに、保健体育では教えてくれないけどね」
「知ってるなら教えろっ!」
「人は失敗から学ぶ方が多いんだぜ」
「そう言って、お前絶対、一人で楽しんでただろ!」
「さあ、どうだかね」
否定もせず、しかも口元に笑みが浮かんでいるため、実質ノームはヒューマンの言葉を、全面的に肯定しているようなものだった。
「妙なところで性格悪いよな、お前は……お前のそういうとこは嫌いだな」
「自分を捻じ曲げてまで好かれようとは思わない。ま、少しぐらい嫌いな要素があった方が、飽きも来ないだろ」
「したたかだな、お前は…」
「あれ?フェルパー君、ディアボロスちゃんはどうしたの?」
椅子に正座しているドワーフが尋ねると、フェルパーは無表情のままで顔を赤くした。
「あ、えっと……腰、痛めちゃって、部屋で寝てる…」
「……大変だな、ディアボロスも…」
「ドワーフさんは、どうしてそんな座り方してるの?」
「えっ!?」
今度はドワーフが、全身の毛を膨らませる。
「こ、これはその、ちょっと、色々…」
「……まだ痛いのか……悪かったな…」
「ま、しょうがないでしょー。あの状況じゃもんね」
「もー、クラッズちゃんが変なことするからぁ!」
どうやら三人の間では話が通じているらしいが、フェルパーには何のことだかさっぱりである。
「ところでフェルパー。それなら君は、ここじゃ食事しないのかい」
ノームが尋ねると、フェルパーは首を振った。
「ううん。部屋で一緒に食べようと思ったんだけど、『みんなと食べて来い』って言われたから」
「そうなのか。意外だな」
「だよねぇ」
その時、ちょうどドワーフが食事を終えた。その量は、既にいつもの量に戻っている。
「ねえフェルパー君。私、お見舞いに行ってもいい?ディアボロスちゃんがそうなったのも、元はといえば私のせいだし…」
「ん、いいよー。ディアボロスも喜ぶと思うなぁ」
「よかったー。あ、鍵は?」
「鍵は開いてるよー。部屋、わかる?」
「うん、わかるよ。じゃあ、みんなには悪いけど、私、先に出るね」
そう言い、ドワーフは席を立った。
「フェルパー、せっかくなんだから、その席に座ったらどうだい」
「お、おいノーム。それはまずいんじゃ…?」
ヒューマンが言いかけると、フェルパーは笑った。
「大丈夫だよぉ。もう、臭いほとんどしないから」
「そうなのか……俺には全然わかんねえ…」
「わかったら、ヒュマ君なんか大変そうじゃなー。学園の女の子全員危ないんじゃない?」
「おい、どういう意味だそりゃ!」
いつもの日常。いつもの仲間達。二日ほど続いた騒動も、ようやく終わりを見せたようだった。
そんな話をする仲間と笑って別れ、ドワーフはフェルパーの部屋に向かって歩き出した。
その頃、フェルパーの部屋ではディアボロスが一人、うつ伏せで寝ていた。
結局、一日中フェルパーの相手をさせられ、しかも激しく腰を打ちつけられたせいで、今日になってひどい腰痛である。
だが、さほど不快ではなかった。あれだけ激しく求められたというのも、それなりに気分はいいし、何より初めてフェルパーの部屋に
入れたのだ。なので、この幸せを満喫しようと、フェルパーには学食でゆっくりして来るよう言っていた。
ベッドに残る彼の残り香を満喫してると、ふとノックの音が響いた。
「ん、誰だ?」
「ディアボロスちゃん、私。入っていい?」
「ドワーフ!?あ、ああ、どうぞ…」
遠慮がちに、ドワーフが部屋の中に足を踏み入れる。そんな彼女を見て、ディアボロスは内心がっくり来ていた。彼と付き合って、
ディアボロスでさえここに来るまでに数ヶ月を要したのに、さほど彼と付き合いの深くないドワーフが、あっさりと部屋に
入っているのだ。
しかし、考えてみればその目的は見舞いのためであり、別にフェルパーが連れてきたわけではないと思い直し、彼に直接招かれたのは
自分だけだと、再び立ち直る。
「あの、ごめんね。私が、あの時ちゃんと言ってれば、ディアボロスちゃんも、こんなにならなかったのに…」
「ああ、いや、いいんだ。お前が気にすることじゃないさ」
ベッドに突っ伏すディアボロスの隣に、ドワーフはゆっくりと腰掛ける。しかし、その座り方は横座りで、腰をベッドの縁に
引っ掛けるような、あまり落ちつかなそうな座り方である。
「……お前もどうかしたのか?そんな変な座り方を…」
「え!?な、何でもないよ!何でもないの!」
「……詳しくは聞かないさ」
その一言に、ドワーフはホッと息をついた。
「あの、でね、少なくとも私にも責任あると思うし、何かしてあげられないかな?腰のマッサージとかする?」
「いや、いい。というか、今は腰に触らないでくれ。今触られたら泣く」
「……そっかぁ…」
ドワーフはがっかりしたように俯いてしまった。前屈みになった分、最近太ったと自称している腹が、少しはみ出して見える。
「……何でもいいのか?」
「あ?何かある?何する?」
「まず、起きるのを手伝ってくれ」
そう言い、ディアボロスは体を起こそうとするが、凄まじい痛みに阻まれて途中で止まってしまう。
「あつつ…!」
「だ、大丈夫?」
「……大丈夫、だ……気にしないで、起こしてくれ…」
「う、うん。じゃ、いくよ?」
ドワーフはディアボロスの手を掴み、グイッと引っ張った。
「痛ったたたたた!!痛い痛い痛い!!」
「ご、ごめん!大丈夫!?」
意識が遠のきかけるほどの激痛が走ったものの、ディアボロスは何とか起き上がることに成功した。痛みが少し落ち着いてから、
ドワーフの隣に並んで座る。
「あつつつ……痛、痛たた……ふぅ、起きられた」
「あの、ほんとに大丈夫?」
「あ〜、平気だ。で、もう一つ頼みがあるんだが〜」
「うん。なぁに?」
「……ちょっと抱っこさせてくれ」
「え?」
意外な申し出に、ドワーフは目を丸くする。
「ダメか?」
「あ、ううん。いいけど……そんなのでいいの?」
「ああ。ぜひ」
ディアボロスはドワーフの後ろから手を回し、腹の辺りで手を組んで持ち上げ、膝に乗せた。ふわふわの体毛の感触が心地いい。
「うーん、やっぱりフェルパーとは感触が違うな。あいつはさらさらした感触なんだが、お前のはふわふわというか、艶々というか…」
「毛質が違うもんね。それに、いっつも手入れしてるもん」
「さすがはアイドル、だな。しかし、この腹…」
軽く、腹をさすってみる。柔らかい脂肪の感触があり、そのすぐ下に鍛え抜かれた筋肉の硬い感触がある。
「時期が時期だったからね〜。でも、もう終わったから、またすぐ痩せるよ〜」
「……なんと言うか、こう、ふにっというか、たふっというか……たまらない手触りだな。このまま痩せなくてもいいんじゃないか?」
ディアボロスが言うと、ドワーフは笑った。
「ダメだよぉ〜。アイドルとしても、冒険者としても、しっかりまた痩せなきゃ」
「そうか。残念だな」
そんな話をしていると、外で足音が近づいてくるのが聞こえた。それは部屋の前で止まり、続いてドアノブがガチャッと音を立てる。
「ディアボロス、ただいまぁ」
「ああ、フェルパー。早かったな」
「お邪魔してまーす」
フェルパーはその手に、学食から持ってきたらしい料理のトレイを持っている。
「ディアボロス、朝ご飯まだだよね?持って来たよ」
「ああ、ありがとう。置いといてくれ」
フェルパーは机の上にそれを置き、二人の隣に座る。
「……フェルパー、また撫でてほしいのか?」
「ん、今日はいいよー。腰、痛いでしょ?」
二人の会話を聞いて、ドワーフが笑う。
「二人とも、ほんとに仲良しなんだねー」
「お前達だって、相当な仲良しじゃないか。普通はないぞ、三人の恋人同士というのは」
「クラッズちゃんとヒューマン君は、ちょっと違うけどねー。友達以上恋人未満、かな?」
「それにしたって、一人の恋人を仲良く好きになっているなどとは、珍しい」
そう笑いながら、ディアボロスはドワーフの腹を撫でている。そんな彼女を、フェルパーはじっと見つめていたが、やがてぴったりと
体を寄せた。
「ん、どうした?」
「………」
「……フェルパー君、代わる?」
「ん、そこまではいいよぉ。でも、こうしてたいな」
恐らく、軽いやきもちを焼いているのだろう。そんな彼の心境を察し、ディアボロスは笑った。
「ははは。私としては歓迎だ。ドワーフの手触りも好きだが、お前の手触りも捨てがたい」
いつも通り、耳の裏を掻いてやると、フェルパーはゴロゴロと喉を鳴らす。幸せそうに目を細めるフェルパーに、ディアボロスは心が
安らぐのを感じた。
こうして、笑い合える仲間がいる。気の置けない友人や、気前よく撫でさせてくれる友人がいる。
この仲間達と、ずっとずっとこんな日が続けばいいと、ディアボロスは心の底から思っていた。
だが、冒険者である彼等に、ゆったりした時間など続くはずもない。
その、僅か数十分後。彼等の元に、クロスティーニ開校以来の大事件が舞い込もうとは、この時誰も予想できなかった。
以上、投下終了。
最初はドワーフ前提で書いてたけど、連続で同じ面子もなーとディア子にしてみた。
発情ネタは何度か使ってるけど、やはり外せなかった。
それではこの辺で。
ワッフルワッフル
GJ! 相変わらず素晴らしい
発情して一日中・・・なネタは何度見ても良いものだ
乙です
お馴染みの発情ネタか、ディアボロス大変だなw
そして次回はメインストーリーかな?
次も楽しみに待ってます
知ってるか?ヒューマンが栄えてるのは繁殖力が高いからなんだぜ?
とりあえず乙
GJ
ふと思ったんだが
ノームには家族の概念があるのだろうか?
ノームの生まれ方は謎だよな。
生まれた時からあれぐらいの精神年齢なのか、そもそもどうやって生まれるのか。
交配ができないなら子供は残せない。というわけでもない。
ノームは親がいないのか?
Gn「ねぇ、お父さん?私の本当の両親はどこにいるの?」
Fe「何をいってるんだい、お前は僕と母さんが造ったんだよ。お前は僕の娘に決まってるじゃないか。」
Gn「依代のことじゃないの、私のアストラルボディはどこからもってきたの?」
Fe「それは僕と母さんが」Gn「嘘よ!フェルパーやドワーフからノームが生まれるワケがないじゃない!そもそもフェルパーとドワーフで子供ができるなんておかしいわ!」
Dw「あなたに本当のことを話す時がきたようね。」
Fe「ちょっまだ早」
Dw「アナタは黙ってて。ノム子、あなたのアストラルボディは藁人形に入れられてお店の前に放置されてたの。」
Gn「・・・」
Dw「その頃ね、自分の子供の依代にムチャクチャな注文を付けてきたり突然キャンセルしたりする客がたくさんいてね、依代の製作を止めようと思ってたの。
そんな時にあなたがうちに来た、私たちは依代を造るのはあなたで最後にすることにした。父さんと母さんの持てる技術すべてを使ってね。」
Gn「お母さん・・・」
Dw「だからあなたは私たちの最高傑作なのよ、本当の両親を名乗る人が現れても絶対に渡したりしないわ。」
Gn「おかあさーん!!」
Gn「じゃあ私を造ってくれた本当のカッコイいお父さんは?」
Dw「あの人はね、あなたを造ったちょうど次の日に交通事故で・・・」
Fe「おい」
ノームがどこからやってくるのかは知らないが、中身の成長に合わせて専属の人形師が依代のパーツを交換してるんじゃないかと予想
ノームは友達を3万人集めると人間になれるという…
そのためにアイドルになります!
ノームが人間になる話……
人間の日常生活が監視され、人間に代わってノームが雑用や労働をこなしている時代。
そんな中、愛という感情をインプットされた最初の少年型次世代ノームとして誕生したデイヴィッドは、彼を造ったヘンリーとその妻モニカに引き取られる。
母親を永遠に愛し続けるよう運命付けられていたノームだったが、まもなくロストしていた夫妻の実の息子マーティンが女神の涙で生き返ったため、あっけなく捨てられてしまう。
その時から、魔法生物のテディやライフゴーレムのジョーを道連れにした、デイヴィッドの旅がはじまった。
そし2000年後。地球は氷河期を迎え、従来の人類は絶滅していた。
そこに生き残っていたデイヴィッドは、未来人たちに発見され、幻想の中で母親に抱かれるのだった。
昔あった「AI」という映画のあらすじをノームに変えてみた。
なんか、切ない。
124 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 00:39:05 ID:oUw265ya
今更ですが、パネエ先生のエロは拝見しましたが、ディモ姐さんのエロみてみたいって思う方いるのでしょ〜か?いたら投稿おねですわ
久々に全裸になる時が来たようだな……
ここにいるぞ!!
馬岱乙
>>123 え?ノームってなんかバトルロイヤルして勝ち残ったのが人間になるんじゃないの?
>122
METAL IDOLとか通じる奴少ないだろw
皆様、お久しぶりです。
だいぶ間が空いてしまいましたが、過去編引っ提げてやって来ました。
とは言っても、これもまだシリーズとしてそこそこ続きますが……。
初回なのでエロシーン無しですが;
何事にも、過去があり、現在があり、未来がある。
パルタクスの武神がパルタクス三強の筆頭になる前。
かつて王の中の王と呼ばれたパルタクス生が、迷宮の遺産を巡ってディモレアと闘う更に前。
二〇年前。
彼らの世代の親の世代が、幾多の迷宮を駆け抜けていた時代があった。
後に世界の管理者となる事を望んだ類稀な才能を持つ錬金術士。
後に迷宮の遺産を巡って各地で争いを繰り広げた天才的な魔導師。
後に帝国の四天王最強と畏れられた剣士。
後に帝国の四天王で最も凶悪と言われた堕天使。
そして後に、天才的な死霊使いを生んだ少女。
彼らが生きた時代。
彼らの生き様。彼らの見てきた世界。
Episode1:血塗られた王達の系譜
二年前。天才魔導師ディモレアは、迷宮の遺産を巡って世界を相手に戦乱を引き起こした。
主戦場となったハウラー地下道から名付けられ、ハウラー戦争と言われるこの戦乱。
彼女は何故、戦乱を起こしたのか。
そして、彼女と、彼女の夫であった人物と、その仲間達が残した子供達。
彼らの辿った運命。
彼らの生きてきた、彼らが見てきた、世界。
遠い昔に追い遣られてしまった、過去の記憶。
マシュレニア学府は長い歴史の中で多くの魔術士を輩出する事から術士系を極めたければマシュレニアに行けなんて言葉が生まれる程で、正反対に武術系を多く輩出しているランツレート学院とは良きライバルとなっている。
もっとも、生徒間同士の仲は決して悪いものではなく、マシュレニアの敷地内でランツレート生が歩いている事や、その逆もよくある。
そしてその日。
マシュレニアの敷地をランツレートの制服を着たディアボロスの少年がとぼとぼと歩いていた。
血のような紅い髪と、さほど大きくはない体格。着ている制服はまだ新しいのか、糊が落ちきっていない。
しかし、その制服は何故か既にボロボロになっていた。口元も切れていて血が流れており、彼は泣きそうになるのを必死にこらえながら歩いていた。
そして、しばらく歩いた先、マシュレニアの校舎の前に同じく血のような紅い髪をしたディアボロスの少女と、銀色の髪をしたフェルパーの少女が雑談しているのを見つけ、彼は急に足を速めた。
二人も彼の存在に気付いたのか、視線を向けるとディアボロスの少女は立ち上がる。二人の少女はマシュレニアの制服を着ており、彼よりも年上なのか見下ろすような視線で見ていた。
「こら、ダンテ! あんた遅い!」
少女の言葉に、ダンテと呼ばれた少年はびくっと身体を震わせ、頭を下げる。
「ごめん、ディモ姉ちゃん……」
「ほら、それより頼んどいた魔道書! ランツレートの書庫から取ってきたんでしょ? さっさと出しなさい!」
「いや、その……実は……」
「実は、何?」
「まぁまぁ、ディモレア殿、落ち着くといい。ダンテ少年、慌てなくていいからしっかり話しなさい」
フェルパーの少女が間に入り、フェルパーの言葉に落ち着いたのか、ダンテはゆっくりと口を開いた。
「その、ランツレートを出た所で……年上のセレスティアの女子にからまれて、取られちゃったんだよ」
「……は?」
ディモレアは額に青筋を浮かべながらそう返した。
「だから、頼まれてた魔道書が取られちゃったんだよ……なんでも『私の先輩が使いますから寄越しなさい。後輩は先輩の為に譲る!』って……」
「ふ・ざ・け・ん・な・ッ!」
ディモレアの叫びと共に、ダンテは再び震え上がった。今年ランツレートに入学したばかりの哀れな彼はマシュレニア卒業を控えた従姉、ディモレアに完全に尻に敷かれていた。
「取り戻してきなさい!」
「無茶言わないでよ、殴られてほら、血まで出てるんだよ? あの先輩怖いよ、絶対女子じゃないし……」
「大体、セレスティアに取られるって何よそれ! このバカチン! そんなんだからミラノちゃんにバカにされるのよ、まったく」
「ミラノはただ単に毒舌なだけだよ……ディモ姉、その手に持ってる釘バットは?」
「これ貸してあげるからそのセレスティアの女子を殴り倒して取り戻してきなさいって言ってるの」
「そんな無茶苦茶な……あ」
ダンテが急に後ろを振り向き、そして校庭の一点を指さした。
「あそこにいるんだけど……ほら、ランツレートの制服着たセレスティアの女子と、あの近くにいる金髪の小さいマシュレニア生の」
「……あれ? よし……カガリ、ダンテ。ついてきなさい。アタシの魔道書を横取りした不届きなセレスティアを成敗してやるわ」
ディモレアが釘バットを振り回しながら立ち上がり、ずんずん進んでいく後ろをカガリと呼ばれたフェルパーと、ダンテが続く。
ダンテが指さした校庭の先。
そこにいたのはマシュレニアの制服を纏った金髪のヒューマンの少年と、ランツレートの制服を着たセレスティアの女子だった。
ヒューマンはセレスティアより年上なのか、魔道書を開いてセレスティアに講釈を垂れている。しかし、その体格はセレスティアよりも小さく、更に言うならクラッズと同じぐらいの体格でしか無かった。
ヒューマンにしては小さすぎるほどで、本人もそれを気にしている。
ディモレアはヒューマンに気付いたのか、小さく「げ」という声をあげる。
「……アンタ、確か……チビのエドワードね。その魔道書はアタシが従弟に頼んで借りてきたものなんだけど? 返してくれない? チビのエドワード」
「誰が極小アリンコドチビかーッ! このウシチチが! 悪いがそういう訳にはいかねぇよ、ランツレートの後輩が持ってきてくれたんだ。なぁ、パーネ?」
チビのエドワードことエドと呼ばれたヒューマンは目の前に座るパーネに視線を向ける。
「ええ。そこのディアボロス君から私が借りてきたんですのよ? 何か不満でも?」
「先輩、俺から無理矢理取ったじゃん! 返してくれよ……でないとディモ姉に殺される」
「アンタは黙ってなさい」
ダンテはディモレアから拳骨を一発貰い、ディモレアは視線をエドに向ける。
「どうしても大人しく渡さない気かしら……?」
「当たり前だ。チビと言われて黙ってられるか! 俺の事をチビと言うとは……万死に値する!」
マシュレニア学府の最上級生の仲で最もキレやすく、そして凶悪な男と言われる。錬金術士学科エドワード。通称、エド。
「ふぅん、史上最小のチビっ子がアタシに噛み付くなんていい度胸だわね」
「俺の錬金術を見てからほざけ! パーネ! とりあえずがらくた持ってこい!」
「はいエド先輩。木くずです」
「おう、木くずから錬成して……って、出来るのはパチンコだよ! パチンコでどうするんだよ!」
「さぁ? そこは先輩の腕の見せ所です」
「……こ、この娘。本当に俺をバカにしてやがるな、幾らミニマムだからって俺はお前よりも三年も年上なんだぞ……!」
「冗談ですよ、エド先輩。はい、ししゃも10個」
「おう! ししゃも10個を錬成して……ほら見ろ! イカが出来て……アホーッ! 攻撃力1だろーが! イカで、どうしろって言うんだテメェ! 俺をバカにするにも程があるだろ!」
「バカだからじゃない?」
ディモレアの言葉に、エドは文字通り顔を真っ赤にすると、鞄を探り出す。
「いい度胸だなウシチチ……分解して肉塊にしてやろうか」
「……さっきから聞くけどウシチチとは良く言ってくれるじゃない、チビのエドワード。消し炭にしてやろうかしら?」
ディモレアとエドが対峙し、パーネは楽しそうに、ダンテは慌てた様子でそれを見守る。
カガリはのん気に「まぁまぁ」とその間に割って入った。
「ディモレア殿も言いすぎだ。エドワード殿も、少し落ち着くといい。背の高さがその人の価値を決める訳でもあるまい」
「ああ、カガリは解ってるな! そーだよな! そのとーりだよな! それなのにこの後輩と来たら! 後輩ときたら……!」
エドはパーネを指さしながらカガリの前で泣き始めた時、パーネは「あらあら」と笑いだす。
「あら、エド先輩。私が不満なんですの? 酷いですわ、昨日の夜の事を忘れてしまったのですね?」
「……そんな貧乳の後輩相手に欲情して何が楽しいのかしら、エドって」
「だからディモレア殿、言いすぎだ……」
ディモレアの言葉にエドが再びキレ始めたのをカガリが宥め、ダンテはダンテで一人オロオロしていた。
マシュレニア学府のあるマシュレニア自体に多くの資産家や商人が集まり、一大都市を形成しているせいか、マシュレニア周辺の食堂は美味という事で伝わっていた。
その喧しすぎる五人は学府のすぐ隣りにある食堂に落ち着き、まずは魔道書をどうするかという事を決める事にした。
もっとも、ランツレートから借りてきたのはダンテなのだが。
「だいたいね、この魔道書はあの禁呪とまで言われる古代魔法ネロ・カラレスが載ってるのよ……魔術士として探求心が疼くに決まってるじゃない」
故に魔術の発展に貢献するべくこの魔道書が必要だと言い張るのはディモレアである。借りてきたのはダンテだが。
「禁呪がなんで禁呪かってのは危険だからに決まってるだろ? それより、この魔道理論を解明して少しでも錬金術に役立てるのが筋ってモンだろうがよ?」
錬金術と魔術は厳密には理論は異なるのだが、それでもそれぞれがお互いに影響を及ぼしていることは間違いない。
どちらも技術であり、新たな技術の開発に他の技法のカタチを取り入れるのも間違いではない。
錬金術士学科のエドが魔道書を使う理由は魔道理論を取り込む事で新たな錬金術を立ち上げる事にあるのだ。
「これだから錬金術士は我が侭なのよ。素材がなきゃ何も作れない癖に」
「ケッ! 魔力が切れたら何も出来なくなる奴等がいえる台詞か! 俺達は素材さえあれば作れるんだぜ! 使うだけの魔術士とは違う」
「その材料を生みだすのは誰だと思ってるのよ! このチビっ子」
「誰がチビだ!」
「まったく、お主達は落ち着くという言葉を知らぬのか? やれやれ……これ、パーネと言ったか? ダンテ少年をいじめるんじゃない」
カガリはディモレアとエドの口論を仲裁しつつ、ダンテにちょっかいを出すパーネを止めるという器用な事をしつつ、今口論の対象となっている魔道書を取る。
「私はこういう魔道書を読んだ事は無いのだが……ディモレア殿といい、エドワード殿といい、相当心引かれるものなのだろうな」
「そりゃそうでしょカガリ。魔道書は先人が生んだ最高の書物よ」
「古人の叡知が文書になってるようなもんだしな。これはいいものだ」
ディモレアとエドがそう口を開くが、パーネは興味なさげにダンテの角を引っ張り始めていた。
「こらアンタ……いい加減、ダンテにちょっかい出すとアタシ怒るわよ? ディアボロスの角は大事なものなんだから」
「あらあら、頭に血が上り過ぎですよ。少し別の場所に回したらどうですか? その胸にぶら下がってる無駄な脂肪の塊あたりに」
「殺してやろうかしら、このセレスティア」
ディモレアが殺気を飛ばし、パーネは笑みを浮かべる。
とても先輩後輩のやり取りには見えない。
「ディモ姉、怖ぇーよ……」
ダンテは震えつつ呟く。しかし、ディモレアは意にも介さず、パーネと睨み合いを続けている。
「やれやれ。これでは当分……む?」
カガリはそんな彼らを見つつ魔道書のページをめくり、そのまま凄い勢いでめくっていく。
ページというページを確認し、彼女はゆっくりと口を開いた。
「なぁ、ダンテ少年や。この魔道書は読めない人間が見ると真っ白く見えるのか? 何も書いてないんだが」
魔道書、とは言っても様々で、時には筆者が秘密を多く漏らしたくないだけに呪いをかけていたりする事もある。
ダンテは首を横に振り、それを聞いたディモレアとエドは「はぁ?」と言った顔でカガリを見た。
「カガリ、何を言うのよ。その魔道書が白い訳……本当に白いわ」
「え? もしかしてこれ偽物なのか?」
エドがそう呟き、慌てて魔道書を開く。
ディモレアがその脇から強引に覗き込んだ、後、凄まじい絶叫が響いた。
「「なんじゃこりゃああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」」
食堂の窓という窓を全て破壊するには充分過ぎる程の威力だった。
「何よこれ、偽物ってどういう事よこれ。ダンテ! アンタ何借りてきたの!?」
「え、それで俺!? いやだってちゃんと司書の人が持ってきてくれたもん! これで合ってるって!」
ディモレアはダンテの首を文字通り絞めていると、ダンテは慌てて弁解する。
そこへ、魔道書の最後のページが一枚の紙がこぼれ落ち、カガリはそれを拾い上げる。
「む、何か落ちたぞ。なになに……『伝説の魔道書カラレスの書はいただいてくぜ。おつかれさん。怪盗ジェーンブライド』……ほう」
「怪盗ジェーンブライド? 最近、この近隣で騒がれている怪盗の事か?」
パーネの言葉に、ようやくディモレアの首絞め攻撃を振り切ったダンテが言葉を続ける。
「確か、怪盗ジェーンブライドは昔は盗賊団肉球パンチを組んでいたけどリーダーその他が捕まってからソロで活動してるって聞いたけど」
「ふぅん、怪盗ジェーンブライドねぇ……こんなの盗んでどうするつもりなのかしら? 魔術士や錬金術士でも無い限り役に立たないのに」
「だよなぁ」
彼女達が議論を始める中、食堂の席から一人の女性が慌ただしく立ち上がり、外へと出ていく。
その時、店主が口を開いた。
「あ、食い逃げだーッ!」
女性が店の外に出ると同時に走っていくのをダンテは見逃さず、即座に立ち上がると慌てて後を追う。
ディモレアとエドワードは言い争いを始めており、ダンテが走っていくのに気付いていなかったが、パーネは同じように外へと出た。
「逃がすか! 待てーッ!」
女性を追うダンテ。逃げる女性。そしてそのダンテを追うパーネ。
「で、食い逃げなんて追いかけてどうするの?」
「普通だろ! 良識ある生徒は悪事を見逃さない!」
「ダンテ君はどこの生徒なのかしら……」
ダンテの凄まじい走りに流石の女性も驚いたのか、速度をあげようとして見事に転んだ。
そう、転んだ。
「チャーンス! タックルは腰から下ぁぁぁぁぁっ!!!!」
ダンテは女性に腰からしがみつき、取り押さえる事に成功する。
食い逃げ犯の女性は必死に抵抗をしようとしたが、ダンテが腕も押さえてしまったので諦めたのか、うな垂れた。
「さて、食い逃げを捕まえたっと」
ダンテは嬉々として、パーネは渋々女性を引き摺り、食堂へと戻る。
「ダンテ、あんた何処行って……なにその人」
「食い逃げ」
ディモレアの問いにダンテがそう答えた時、エドが急に女性をまじまじと見た。
「あれ?」
「どうしたのですかエド先輩?」
パーネが不思議そうな顔をする中、エドは取り押さえられた女性をまじまじと見る。回りをぐるりと回って、そしてゆっくりと口を開いた。
「パーネ。こいつ確か、怪盗ジェーンブライドだな」
「「「「え?」」」」
エドの言葉に、四人の声が重なる。まさか怪盗が食い逃げをするとは。少し変である。
「俺が言うんだから間違いねぇよ。で、アンタが盗んだのか? 魔道書を」
エドの問いに、食い逃げ犯の女性こと怪盗ジェーンブライドは視線をそらす。まるで、その事について触れられたくないとばかりに。
「どうなのよ? あの魔道書はどこに行ったの?」
ディモレアが顔をずいと近づける。それでも喋らないとみたのか、ディモレアは片手に光をトもした。
「ビッグバムぶちかますわよ?」
「ディモレア殿、落ち着いてほしい」
カガリが留めなければ確実にぶち込んでいたに違いない。
ディモレアが肩で息をするのをカガリが宥め、ダンテは女性をじっと見る。
「で、魔道書を何処に隠したんだよ? 正直に言ったほうがいいぜ。ウチの姉ちゃん、気が短いんだ」
「私の先輩もですけどね」
パーネが言葉を続け、女性はため息をついた。
「わかった、言う。言うよ……」
「解ればよろしい」
ディモレアは女性の頭を文字通り掴んで言葉を続ける。
「何処に隠したの?」
言わなかったら殺す。無言でそう言っていた。やはりディモレアは他人を脅すことにかけては超一流のようだ。
ザスキア氷河。
ランツレート学院からそう離れていない場所に、魔道書は隠されている。
怪盗ジェーンブライドを騎士団に引き渡し(ただしその前にビッグバムをぶつけた)た後、ディモレアは即座に回収に行くと宣言した。
ダンテに命令して取りに行かせたとはいえ、それでもディモレアが元々は読みたいと思っていたものである。そして、エドもまた回収に行く事を宣言していた。
元々どちらのものでも無いのだけれど、お互いに所有権を主張しつつ、一行はザスキアへと向かっていた。
「だから、カラレスの書はあたしが使うって何度言ったら解るのよ!」
ディモレアの怒りにエドは真っ向から反撃する。
「俺が錬金術の発展に役立てるんだよ、お前なんざ後回しだ後回し!」
「なんですってぇ!」
隙あらば掴みかかろうとする二人を引き離しつつ、カガリはため息をつく。
「お互い、将来有望なのだから少しは仲良くしたらどうなのだ?」
「「断る!」」
見事なハモり。カガリは二度目のため息をつく。ここまで気が合うのに何故嫌いあうのだろう。
魔導師と錬金術士なら、それぞれお互いの弱点をカバーし合っているようなものなのに。
「やれやれ、本当に困った事だ……」
カガリがそう呟いた時、ダンテも「そうですね先輩」と相槌を打ち、パーネにも同意を求めるべく振り向いた、時だった。
パーネがいない。
「……あれ?」
ダンテは慌てて周囲を見渡す。カガリは頭を抱えており、ディモレアとエドはとうとう掴み合いに発展していた。パーネがいない。
「パーネ先輩……何処に、行ったんでしょうね?」
ダンテの呟きに、二人が反応した。
「え? あのセレスティア、いないの!?」
「なに!? パーネの奴、いつの間に!?」
ディモレアとエドは慌てて周囲を見渡す。しかし、パーネの姿はない。
ザスキア氷河は、モンスターのレベル自体はかなり低く、入門レベルと言っても過言ではない。
しかし、問題はその場所にある。氷河地帯故に、似たような景色が続き道に迷いやすい。その上、氷の通路は歩くだけでも否応無しに体力を奪っていく。
単なる雑魚モンスターの巣窟だから楽勝、なんて言葉は当てはまらないのである。
ディモレアやエドならともかく、まだ冒険者として成長途中のパーネが一人でうろちょろ出来る場所ではない。
「ったく、しょうもねぇなぁ……」
エドは頭を掻きつつ、ディモレアとダンテ、そしてカガリに視線を向けた。
「探すの、手伝ってくれるか?」
「嫌」
ディモレアは当たり前のように拒否の返事を出すのだった。
と、いう事で1話目投下完了。
ダンテとパーネのキャラが変だとか言わないでくださいまし。
彼らにもきっと可愛い時代があったと思うので。
>>124 学生時代のディモレアお母様でよろしければそのうち書きますぜw
>>128 ああ、あまりにも反応がなくて悲しかった…
貴方がノームの3万人の友達の1人です。
>>135 GJ!
ダンテwwちょっとダンテがww暗いのはこの反動も混じってるんじゃないか?
久々に新作!乙です!続き楽しみです!
さて、エスモノの続きに取りかかろう。
>>135 ノームの体に魂を宿した弟の出番はまだですか?
学生時代のディモレアってがり勉の内気な瓶底眼鏡っ娘だったのが、憧れの先輩に告白した際に
「俺、真面目の娘に興味ないから」
って振られて以来あんなんになったんだっけ?
うぃ、今夜は2話目を引っ提げてやってまいりましたぜ!
こんばんは皆様、もうそろそろ学校が始まりそうなディモレアさん家の作者です。
>>137 哀れなダンテ先生はこの時からディモレアとパーネの尻に敷かれているのです。
今後、ダンテ先生はクロスティーニの教師になっても苦労し続けるのでしょうね。
続き楽しみに待ってますw
ザスキア氷河の西の空に、太陽が沈もうとしていた。
エド達がザスキアに辿り着いたのが昼下がり。パーネの行方が解らなくなって既に数時間が経つ。
このまま夜になって気温が下がれば、最悪取り返しのつかない事態にもなりかねない。何せ元々ザスキアに来る予定など無かったので防寒具など用意していなかったのだから。
「いたか?」
ザスキアの中央部に戻ってきたエドは反対側を捜索していたであろうカガリに声をかけた。
「いいや。そちらもいないようだな」
カガリの返事にエドは頷く。それから数分後、恐らく友人であろうランツレート生を何人か連れたダンテも姿を現した。
「すいません、見つからなかったです」
「悪いな、友達まで手伝わせちゃって」
エドの言葉に、ダンテは首を左右に振る。
「これもレベル上げの一環だと思えば………でも、本当に何処行ったんでしょうね」
ちなみにディモレアも一応まだザスキア氷河にいる。ただし、探しているのは怪盗が隠したカラレスの書だが。
パーネの捜索などディモレアにとってはどうでもいいらしく、カガリとダンテに捜索を手伝うように言っただけである。
「わからん。けど、パーネの奴は俺に黙ってふらふら出歩くような奴じゃないしなぁ」
ダンテの言葉にエドは考え込む。
「しかし、そろそろ日も暮れるだろう。一年生をこれ以上駆り出す訳にも行かない」
「そうだよなぁ……おい、ダンテ。お前らもうランツレートに戻れ。後は俺らでやるから」
カガリの言葉にエドは頷き、ダンテにそう声をかける。しかしダンテは首を左右に振った。
「日が暮れた後が余計マズいじゃないですか……相当寒くなりますよ、ザスキアは」
「だからだよ。一年坊主を凍死させちまったら責任取るの俺なんだぞ?」
「そういう理由ですか」
「そういう理由だよ。錬金術で暖は取れないんだから」
無から有を生み出せない錬金術士故の苦悩である。ダンテはため息をつくと、友人達に声をかける。
「今日はこれで捜索切り上げて帰る事にするか……」
女子生徒はため息交じりに頷いたが、男子生徒は一斉に不満の声をあげた。
「なんでだよダンテ! パーネ先輩放っておくのかよ!?」
「そういう訳じゃないんだけど……」
「そうだぞダンテ! 捜索を続けてパーネ先輩見つけたら寒さに凍えるパーネ先輩をあーんな事やこーんな事で温めて…」
鼻息を荒げながらそう叫ぶ男子生徒の言葉はカガリの強烈な拳骨で沈黙させられた。
「ダンテ。とりあえずそいつら連れて帰れ」
「はい! 帰らせて頂きます!」
エドの言葉に、ダンテは元気よく従ったのだった。
「じゃあ、もう少し探してみるかな……」
ダンテをランツレート学院に返した後、エドは頭を掻きつつそう呟く。
「うむ。では、私はこちらを」
カガリも頷き、お互いに反対方向へと進む。もう、日は沈んでおり、視界は悪くなっていた。
「あー、クソ。何も見えねぇ。天然ダークゾーンだ」
ダークゾーン。
暗闇で視界を奪われ、文字通り一寸先も見えない。床にターンエリアがあろうものなら、方向感覚すら失う危険もある。
おまけにライトルの魔法を使っても見えないというオマケ付き。どうしようもない場所である。
「見えん……」
エドは悪態をつくと、とりあえず近くに手を伸ばし、手探りで壁を探る。
迷宮で道に迷わない方法その1。
壁に手をついて壁伝いに進んでいけばそのうち出口に着く。
ただし、時々行き止まりに突き当たる事もあるが……。
「お、あった。あった」
壁をどうにか探り当て、壁に手をついて進んでいく。パーネを探そうにも、道が解らないと意味がないだろうし。
しばらく進む。
直後、唐突に何かにぶつかった。
「あだっ!?」
「いったぁ!?」
どうやら人にぶつかったらしい。少なくともモンスターではないだろう。
ただ、人とはいえ迷宮を歩く人が必ずしも友好的とは限らない。ある程度警戒しつつ、エドは数歩後退する。
「……いつつ。誰だ?」
「そっちこそ誰よ?」
「俺か? 俺はマシュレニア生だよ」
「あたしもマシュレニア生よ」
どこかで聞き覚えのある声だな、と思いつつエドは「ぶつかって悪かった」と続ける。
「そうね。こっちも悪かったわ」
お互いに頭を下げる。
「ところで俺は人を探しているんだ。セレスティアの女の子を見なかったか?」
「見てないわね。あたしはものを探してるの。魔道書を見なかった?」
「見てないな」
しかし、何処かで聞き覚えのある声だなと思った。
「しかしこうも視界が悪いと何も見えないな」
「待って、今、灯りをつけるから。シャイガン!」
相手が空にシャイガンを打ち上げ、一瞬だけ視界が明るくなった。
「あ」
「げ」
その時、二人はお互いの姿を確認した。
「なによ、チビのエドワードじゃない!」
「誰がチビだ! 何してやがんだ、ディモレア!」
道理で聞き覚えのあるはずである。どうやらディモレアもまだ魔道書を見つけられないまま夜になったらしい。
「その様子だと、あのセレスティア見つかってないのね」
「うるさい! お前だって魔道書を見つけてねぇじゃねぇか」
「ケッ! 後輩一人見つけられないような錬金術士じゃ、お先真っ暗ね」
「何だとぉ!? 人命より魔道書を優先する魔導師の方が将来怖いわ!」
「なんですってぇ! このチビ!」
「黙れウシ!」
二人は暗闇の中で言い争いを始めるが、今度はカガリやダンテのように止める人間がいない為、それは悪口の応酬へと発展する。
「この×××××で●●●●●の△△△△△!」
「なんだと!? お前なんか◎◎◎◎◎で□□□□□の▼▼▼▼▼の癖に!」
「◆◆◆◆◆! ×××××! ○○○○○!」
「▽▽▽▽▽で◇◇◇◇◇なのに■■■■■の方が狂ってんだよ、ヴァーカ!」
「アンタなんか●●●●●で▽▽▽▽▽の◆◆◆◆◆で死んじゃえばいいのよ!」
延々と続く罵詈雑言の応酬。しかし二人は止める気配を見せず、逆にヒートアップしていく。
そう、少なくともお互いに魔法と錬金術を発動させる直前までには。
「丸焼きにしてやる」
「肉塊にしてやる」
ディモレアは片手にビッグバム。
エドは片手に地面破壊を用意し、そして同時に―――――。
高威力の爆発と、地面破壊。
同時に直撃すれば、それは文字通り地面を崩壊させるには充分である。そして二人がいた場所も悪かった。
ザスキア氷河。
即ち、氷河の真上。
氷河の下は、文字通り巨大なクレバスになっていた。
「どわぁあああああああっ!!!!」
「きゃああああああああっ!!!!」
それも気付かずに地面破壊をすれば、クレバスへと落ちていくのも当然のエドとディモレアであった。
「最悪だ…」
「最悪だわね…」
エドとディモレアは同時に呟いた。
クレバスの深部、文字通り空が遠く見える場所に二人は折り重なるようにして倒れていた。
「エド、あんたどきなさいよ」
ディモレアは真上にいるエドにそう言い放つが、エドは首を動かさずに口を開いた。
「無茶言うな。足いっちまったらしくて動かねぇんだよ」
「何よ……あたしも腕が動かないのよ……いつつ……」
エドが首を動かすと、確かにディモレアの右腕が変な方向に曲がっていた。
素人目に見ても骨折である。
「お前、腕折れてるじゃねぇか! 大丈夫か? メタヒール使えメタヒール」
「バカ言わないでよ……こんな状態でどうやって魔法使えっての?」
ディモレアの言葉に、エドは沈黙する。
魔法を使うにしてもそれなりの集中が必要である。うまく集中できない状況で魔法を使えば魔力の暴走にも繋がりかねない。
「で、どうするんだよこれ……お前、魔法使えないんじゃテレポルも使えないってか?」
エドの言葉にディモレアは力なく頷いた。テレポルを使えなければ、クレバスからの脱出も難しい。
「マジかよ、俺転移札なんてねぇぞ」
「バカじゃないの」
「じゃあお前持ってんのか?」
「持ってるわけないじゃない」
「使えねーな」
「アンタもでしょーが」
二人で散々罵声を浴びせた後、黙り込む。
日はとうに暮れ、クレバスの中の気温も下がってくる。吹きさらしの外よりマシとはいえ、それでも寒い。
「あー……何か燃やした方がいいな」
「どうやって?」
エドの呟きにディモレアが返答。そりゃそうだ。魔法使えない・火種無し・そして何より燃やすもの無し。
どう足掻いても暖はとれません。
「……おい」
「何よ」
「腕1本折れたぐらいで魔法使えないほどになるのか?」
「バカ言いなさい」
ディモレアが視線を下に向け、エドも釣られて下へと向ける。
腕だけでなく、足もだったようだ。
「アンタも足いってるから言わなかったけどね……」
そう言い放つディモレアの声も、先ほどには無かった疲れが混じっている。
寒さと痛み。二重の責め苦がディモレアの体力を奪っているようだった。
「………おいおい、大丈夫かよ……」
「わかんないわよ、そんなの……」
ディモレアはそう呟くと同時に、動く腕を使い、エドを強引に振り落とした。
少し離れた所にエドが転がったのを確認すると、ディモレアは目を少しだけ閉じた。
「……まぁ、朝になれば少しは視界もマシになるから案外見つけてくれるんじゃない?」
「朝までどうするんだよ」
「寝るに決まってんでしょ、バカじゃないの?」
ディモレアの言葉にエドはむっとしたが流石にこれ以上先ほどの続きをしても意味がないと思ったのか、黙って目を閉じた。
寒さ。
深いクレバスの底で、二人はじっとしていた。
どれぐらいの時間が経っただろうか、エドは目を開くと、ディモレアはどうなったのかと思い、暗闇に目が慣れるのを待ってから口を開いた。
「ディモレア?」
声をかける。微かな息遣いが聞こえるが、返事がない。
「おい、ディモレア!?」
思わず声を荒げた時、返事が返ってきた。
「叫ばなくてもわかるわよ……」
その弱々しい返事に、エドは足を引き摺り、腕だけでディモレアへと近寄る。
その腕に触れると、ぞっとする程冷たくなっている事に気付いた。
「おい……冷たくなってやがるな、大丈夫……じゃないな」
「放っといてよ……」
その声が徐々に小さくなっている。寒さにやられたのかどうか解らないが、ディモレアが危険な状態であるという事だけは解った。
「クソ、どうすればいい……」
エドはまずはともかくディモレアの身体に近寄り、文字通りそのまま密着する。
「ちょ、何すんのよ!?」
いきなり何をしでかすのか、とディモレアが言うより先にエドは「大声出すな」と言葉を続ける。
「とにかく、体温でも少しはマシになるだろ、と思う」
「………アンタねぇ」
エドの言葉にディモレアはため息をつくが、反論する力も無いのか、エドで暖をとるという方法を受け入れていた。
しかし、とエドは考え込む。
この寒さでは自分も寒さにやられてしまう場合がある。まぁ、熱を発生させるだけならどうすればよいのかと考えるにしても。
考えるにしても……。
若い男女。密着させている身体。大きく発達している二つの丘。むにむに。
エドも一応男子ではある。しかしモテない。
その理由の一つに小さい事がある……性格面が一番の理由の筈だが本人は背が低い事が一番と言い張るのでそれが一番の理由という事にする。
パーネの場合はあくまでも実家が近所同士の幼なじみのような関係なので、恋愛とかそういうイベントとは無縁の関係にある。
そしてディモレアの場合。見掛けだけなら大人気でそれなりにファンもいる。性格面に大きな問題ありだが。
「…………ごくっ」
エドは、思わず息を飲んだ。
「……な、なによ……」
間近でその音を聞いてしまったディモレアが息を飲む。しかし、それより先に。
エドは既に、ディモレアを押し倒していた。その唇を強引に塞いで。
「―――――んんっ!? んむ、んむっ!」
無理矢理唇を奪われた、という現実を認識した直後はもう、ディモレアの頭は真っ白になっていた。
散々チビだなんだとからかってきた分、そんな力があるとは思ってもいなかった。けど。
その小さな体でも、寒さに凍える今には暖かすぎると思ったのは、気のせいではないだろうか。
「……なに、すんのよいきなり……」
「あ………す、すまんついっ!」
我に返ったのか、エドは慌ててディモレアから離れようとした。が。ディモレアは腕を掴んだ。
「誰が離れろって言ったのよ」
「……違うのか?」
「………寒いじゃない」
エドがディモレアの横まで戻る。高すぎる闇に包まれた空。
「………はぁ。本当に、なにかしらね」
「なにがだよ?」
少し元気でも戻ったのか、ディモレアが口を開いた。
「なんだかんだ言って、あんたと一緒にこんな一夜を過ごすなんて、思ってもなかったわ」
「俺もだっつーの……魔道書探ししてるだけで良かったのによ」
気が付けばパーネが行方不明になっていて、パーネを探していたらディモレアともどもクレバスに落ちて。
まぁ、散々である。
「……本当に、酷い目にあったわよ………けど、縁でもあるのかね」
「何のだ?」
ディモレアの言葉に、エドは問いをぶつける。
「あたし達よ。マシュレニアをもうすぐ卒業するけど……あんたも、あたしも結構なレベルにはなってる。でも、その間で何度か会ったわよね? 散々喧嘩してたけど」
「ああ、してたな」
目指している分野は違えど、それでも実力者同士の二人。
会う事は今まで確かに多かった。その度に散々喧嘩をしていた気がするが。でも。
「でも、こんな風にあんたと二人だけってのは初めてよ」
「……そうだな」
こんな風に、二人だけでどうしようもない状況にいるというのも。初めて。
けど。
今まで散々嫌っていたのに。
エドも、ディモレアも、すぐ側にいるという事に、悪くないと思っていた。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「朝になったら、助けぐらい来るわよね?」
「だろうな。カガリが心配するだろうし」
「その前にアンタはパーネちゃんの心配したら? 見つかってないんでしょ?」
ディモレアの言葉に、エドは思わず笑う。パーネとまったく馬が合わなかった癖に、よくもまぁそんな事が言えるものだ。
「なによ、急に笑って」
「いや……ただ、な」
「ただなによ!」
「なに。お前の言葉が意外だっただけだ」
「なんですってぇー!!!」
この後、ディモレアは「あたしにだって優しい所ぐらいあるわよ!」と発言し、エドはエドで「そんなディモレアが何処にいるのか」と言い放った結果。
一晩中クレバスから響く悪口の応酬がたまたま通りがかった冒険者達の耳に届き、クレバスの奥から響く転落者の怨念が生んだ罵詈雑言というザスキア氷河の新たな怪談が生まれたという。
「…………」
翌朝。ランツレート学院の食堂に朝食の訪れたダンテは目の前にいる存在を見て、思わず目を擦った。
「あらあら、どうしたんですかダンテ君?」
「いえ……パーネ先輩、あの?」
ザスキア氷河で行方不明になっていた筈のパーネが目の前にいるという事実。
昨日散々探していて、エドとカガリは捜索を続けたまま未だに帰ってきていないというのに、である。
「あら、どうしたの?」
「昨日、ザスキアからどちらに?」
「え? ああ!」
パーネは鞄をごそごそと探ると、1冊の本を取りだした。
「はい。これ返しますねダンテ君。昨日一晩中、寮の部屋でこれを読んでたんです」
ダンテの前に突き出された本。エドとディモレアが散々探していた魔道書、カラレスの書に間違いはなかった。
「これは……! どうしたんですか、これ」
「たまたまザスキアの通路を歩いていたら氷の中に埋まってたので……鎌で氷を砕いて取りだしたんですよ」
「鎌で氷を砕いてって……」
ダンテはため息をついた後、ともかくカラレスの書を受け取った。
「ところで先輩。エド先輩達が一晩中探してたの、知ってました?」
「えっ?」
ダンテの言葉にパーネが驚いた時、保険委員が慌ただしく食堂を通りすぎていった。
「ザスキアで凍って動けなくなってたマシュレニア生を発見した! とにかく解凍しなくちゃマズいぞー!」
保険委員が担いでいったのはエドと合流できず、パーネも見つからないまま一晩中ザスキアを探し回っていたカガリであった。
「「カガリ先輩!?」」
「大変だ! ザスキアにクレバスが発生して生徒が二人取り残されてるって!」
「マシュレニアの上級生らしいぞ!」
「骨が折れてて動けないらしい! とにかく救援を!」
「おい、ダンテにパーネ! 何してんだよ、お前らの知り合いだぞ!」
ダンテとパーネは文字通り、保険委員に引っ張られ、ザスキアでの救出活動に立ちあった後、行方も告げずにいなくなった事をまずエドに怒鳴られ、
そして魔道書を発見してさっさと渡さなかった事をディモレアに殴られた。
ダンテは何の罪も無いのに二人にこってり絞られる羽目となったのだった。哀れである。
そしてこの日以来。
ディモレア、エド、カガリ、ダンテ、パーネの五人はマシュレニア・ランツレートの中で学校の枠を越えた優秀なパーティとしてその名をしらしめるようになる。
ただし、二人の機嫌が悪い時に彼らが通った後は草木1本も生えない状態になっていたという……。
うぃ、投下完了であります。
五人がつるむようになった理由、というか過去編のメインはこの五人です。
すみません、今回もエロシーン無しでありました;
期待してた人ごめんなさい;
>>146 GJ
なんだか未熟なディモレアが可愛い。
痛みで集中できないとか、クレパスに落ちて手足を折るとか。
ギルガメシュ先輩に斬られても普通に魔法使えた人なのに。
そして頑張れエドワード。背の低い錬金術師のエドワード。
将来は国家錬金術師だ!
>>138 ようやく意味が分かった。
こっちも期待。
意外と誰も書いていないので自給自足。今回はNPCの中で最高に好きな二人、ティラミスとコッパ。
というかNPC使わないと、1も2もあまり変わらない気がする…。
注意としては、完全クリアした時点での話になっているので、そこまで進んでいない人がいたらご注意を。
それと書き上げてから記憶を辿ったら少し曖昧な部分が……こいつらの探索した場所、合ってるよね…?
ともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
その時、学園にいた生徒達は奇跡を目の当たりにした。
死んだはずの校長と、パーネと共に消えたはずのダンテが蘇り、剣になったはずのルオーテが肉体を取り戻した。
三つの試練を乗り越え、神に打ち勝った生徒達。そして起こった奇跡は、まさしく神の奇跡と呼ぶに相応しい出来事だった。
彼女も、それは大きな奇跡だと思っている。だが彼女にとっては、もっと身近に、もっとささやかな、しかしそれに負けないぐらいの
大きな奇跡が起きていた。
小さい頃から、ずっと弟のように思ってきたコッパ。冒険者養成学校に入学はしたものの、当初は地元にいる頃とほとんど変わらず、
ヒーローに憧れる割には他力本願で頼りなかった。そんな彼が、今では背中を預けられるほどの冒険者となり、学園のエースのパーティが
神の塔に挑んだときは、彼等を助けるためにコッパとたった二人でモンスターの大群と戦った。その後に現れた地獄の迷宮でも、
ボスは先に倒されてしまったものの、先生達と彼と一緒に、迷宮を攻略した。
もう、彼も一人前の冒険者といえる。あの頼りなかったコッパが、そこまで成長したことに、ティラミスは安堵と寂寥の入り混じった
複雑な溜め息をついた。
もちろん、立派な冒険者になってくれたことは嬉しい。だが、あの手のかかる弟のような存在がいなくなってしまうということに、
多少の寂しさを覚えるのも事実である。かといって、あの彼に戻ってもらいたいかと聞かれれば、もちろん全力で否定する。
要は、彼が独り立ちできたのは嬉しいのだが、自分の手を離れてしまうということに、寂しさを覚えるのである。
そんなティラミスの胸中など露知らず、コッパは彼等の戦いと奇跡を見て以来、ずっと興奮している。
「でさ、すっげえよな!こうバーンって、ドーンってさ!それでこうズバーンって!ほんと、あいつらヒーローみたいだよなあ!
オイラもあんな風になりてえなあ!」
「なれるよ、コッパちゃんなら」
「そうか?へへっ、それならあいつらに負けないぐらい、オイラも頑張らなきゃな!」
以前なら、恐らく絶対に聞けなかった台詞。彼の口からそんな言葉を聞けたということに、ティラミスはやはり複雑な思いを抱く。
「にしても、ビックリだよなあ。校長先生とダンテ先生が生き返って、ルオーテまで元に戻っちゃったんだぜ」
「うん、本当に奇跡だよね。あんなこと起こるなんて、本当にあるんだね」
「あーあ、あんな奇跡起こせるんなら、ついでにオイラをヒーローにしてくれればよかったのに」
「もう……せっかくコッパちゃんのこと、少し見直したのに。そんな風に、楽することばっかり考えちゃダメだよ」
「うるさいなあ、ティラミスは。それぐらいわかってるってば。言ってみただけだよ」
こういうところは、いつも通りである。とはいえ、コッパは本気で言っているわけではなく、ティラミスも言葉の内容はきついものの、
本気で怒っているわけではない。
奇跡のおかげで、学園は大騒動となっている。授業も必然的に休講となってしまったため、二人はカフェに来ていた。
未だ興奮冷めやらぬコッパに、お茶とケーキと彼の話を楽しむティラミスの他に、生徒はほとんどいない。恐らく、奇跡の結果を
見に行っているか、部屋に戻っている生徒が多いのだろう。
「でもティラミスだって、何かオイラ達にも奇跡起きてほしいとか思わない?」
「それは…」
もう起こっている、などとはさすがに言えない。正直なところ、ティラミスにとっては今の彼がいれば十分である。
「……ルオーテが元に戻ってくれただけで、十分だよ。それ以上は、ただの欲張りになっちゃう」
「かったいなあ、ティラミスは。奇跡なんだから欲張ったっていいのにさ」
それに対して口を開こうとしたとき、コッパは不意に表情を改めた。
「ま、オイラだってルオーテは良かったと思うけど……でも、ちょっと残念だなあ」
「何が?」
「もう一つぐらい、奇跡起きてくれても良かったのにってさ」
「なぁに?やっぱりヒーローになりたいとか…」
「違うってば。それはオイラ、頑張ってなるからいいんだよ。ただ……パーネ先生、戻ってこなかったのは、残念だなって…」
その言葉に、ティラミスは飛び上がらんばかりに驚いた。その惚れていた相手によって化け物に変えられ、そのショックから
記憶を封印してしまったはずの彼が、どうしてそれを思い出しているのか。
「コ……コッパちゃん…?パーネ先生って、誰だかわかってる…?」
「わかってるよ。オイラの憧れの……いや、憧れだった先生だよ…」
「え、えっと……コッパちゃん、その先生に何されたか…」
「何だよ、言えって言うのか?ゾンビパウダーで、化け物に変えられたんだろ…」
完全に、彼の記憶は戻っている。だが今まで、そんな様子は少しもなかったのだ。
「コッパちゃん……それ、いつ思い出したの…?」
ティラミスが尋ねると、コッパは暗い顔で溜め息をついた。
「あの、地獄の迷宮でさ……あそこ入ったとき、何か覚えのある感覚だと思ったんだよ。で、がしゃどくろっていただろ?あいつと
会ったとき、急に全部思い出したんだ。あいつ、セレスティアが悪霊になった奴だろ?それと、あの感覚。あれ……パーネ先生が、
本性現したときの感覚と、そっくりだったんだ…」
言葉が出なかった。記憶を封じてしまうほど辛いことを思い出したのに、彼はそんな様子をおくびにも出さず戦い続けていた。
そのことに、ティラミスは一層複雑な思いを抱く。
それと同時に、ティラミスの中に今まで感じたこともないような気持ちが湧き上がる。
「まあ、しょうがないよな。あいつらに聞いたら、パーネ先生は神になろうとしてたらしいし、生き返らせてもらえるわけないか」
彼がその言葉を口にする度、ティラミスの中にある気持ちは強くなる。それが何であるか、ティラミスは薄々気付いていた。
「そうだよな、うん、しょうがない。オイラ絶対、パーネ先生よりいい人見つけてやるもんね」
その一言に、ティラミスの中にある気持ちがこれ以上ないほど強まった。
ずっと近くで見てきた、弟のような存在。見違えるほどに強くなった、逞しい男としての彼。彼女自身、それに気付いたのは
たった今だった。
頼りなくて、見ていられないようなことばかりして、誰かが助けないと危なっかしくてしょうがない男の子。
目標に向かって努力することを覚え、一人前と呼べる実力になり、安心して背中を預けられる男。
昔からなのか、この学園に来てからなのかはわからない。しかし、確実にわかることがある。
いつからか、ティラミスはコッパのことを弟としてではなく、一人の男として好きになっていたのだ。
「……すぐ、見つかるよ、そんな人。だって、近くにいるもん」
知らず、ティラミスはそう口走っていた。
「え?どこにいんの?」
まったく予想外の台詞に、コッパは思わずそう聞き返していた。
「コッパちゃんの、すぐ近くにいるよ。その人も、コッパちゃんのこと、大好きなの」
「え、誰?オイラの知ってる人?」
「うん。コッパちゃんも、よく知ってるよ。すっごくよく知ってる」
「えー、誰?ジェラートなんかありえなさそうだし、パンナ……違うよなあ。オリーブでもないよな?」
彼の言葉に、ティラミスは呆れたように笑い、僅かに耳を伏せた。
「……目の前に、いるよ」
「え…」
コッパは呆気に取られたように、目の前のティラミスを見つめた。やがて、その意味を理解するにつれ、全身の毛が膨れ上がっていく。
「……じょ、冗談はやめろよな!オ、オ、オイラをからかおうったって、そんな…!」
「ううん、からかってないよ」
静かに、しかし強い口調で、ティラミスは言い切った。その雰囲気に、コッパは思わず口を閉じる。
「私……本気だよ」
そう言って見つめる目は、真剣そのものだった。逃れようのない視線に、コッパは呼吸すら忘れてティラミスを見つめる。
「私じゃ、ダメ?私じゃ、コッパちゃんの好きな人には、なれない?」
言いながら、ティラミスの耳が力なく垂れ下がっていく。表情こそいつもと変わらないが、その目は不安に怯えていた。
コッパはその問いに、すぐには答えられなかった。彼女の思いは本物で、それがより彼を焦らせる。
「あ……えっと……と、とにかく、場所変えようぜ。ここじゃ、その、落ち着かないし…」
ともかくも、考える時間を引き伸ばそうと、そう提案する。ティラミスは頷くと、残っていたケーキを一口で食べた。
二人は席を立つと、コッパの部屋へと向かう。その間中、二人はずっと無言だった。
途中、何人もの生徒とすれ違ったが、二人を気にする者はいなかった。それどころではない状況でもあり、まして二人が一緒に
いるのは珍しいことでもないので、いつもと雰囲気が違うことにも気づくことはなかった。
部屋に入ると、コッパはティラミスに席を勧め、自身はベッドに座った。が、ティラミスは当たり前のように、コッパの隣に腰を下ろす。
先の話もあり、何だか妙に気恥ずかしく、コッパはティラミスから少し離れる。が、そうしてずれた分、ティラミスはコッパの方へ
体を寄せる。
「な……何だよぅ…?」
何ともいえない居心地の悪さを感じ、コッパはそう口にする。しかし、ティラミスは僅かに微笑みかけただけで、何も言わない。
不意に、尻尾に何かが触れた。それがティラミスの尻尾だと気付くと、コッパは慌てて尻尾をずらす。だが、ティラミスはさらに
体を寄せると、再びコッパの尻尾に自身の尻尾を重ねる。あまりの恥ずかしさに、ベッドの端まで一気に移動すると、
やはりティラミスもしっかりと移動し、尻尾を重ねる。
「あああ、あのっ、ティラミスっ……し、尻尾がっ…!」
「……嫌?」
「い、いやいやっ、嫌だってんじゃないけどっ、そのっ…!」
それ以上の言葉を続けるのは恥ずかしく、コッパはうつむいて押し黙った。
少しだけ、二人の間に沈黙が流れる。それを、今度はティラミスが破った。
「コッパちゃん。私、コッパちゃんになら、こうしてたって恥ずかしくないよ」
「え……あ……そ、そう…」
「……もう、コッパちゃんてば…。コッパちゃんになら、こういうことだってできるよ」
「え?」
何を言い出すのかと振り向いたコッパの鼻を、ティラミスはぺろりと舐めた。突然のことに、コッパは全身が固まってしまう。
「ねえ、コッパちゃん。私じゃ……ダメ?」
そう尋ねるティラミスの顔は、微笑みを湛えていた。だが、その目は迷子の子犬のように怯えている。怯えを笑顔で覆い隠し、
ティラミスはコッパの返事をじっと待っていた。
それはコッパも気付いていた。初めて見る、幼馴染の表情。よく知っていたはずなのに、見たことのない顔。そして、今までに
感じたことのない、彼女への気持ち。
いつもうるさく世話を焼いてきて、時には煩わしく思うこともあった相手。クラスとしては敵対しつつも、地元にいる頃と変わらない
付き合いを続けた友達。自分の成長を我が事のように喜んでくれ、危険な目に遭ってまで自分を救ってくれ、背中を預けて共に戦い、
いつもいつも一緒にいてくれた女の子。
ティラミスのことを拒絶すれば、もしかしたら彼女は傷つき、離れて行ってしまうかもしれない。それを想像すると、コッパの胸は
たまらなく苦しくなった。それは今の彼にとって、どんなことよりも辛かった。好きだったパーネ先生に裏切られた記憶より、
想像の中の出来事の方が、よほど辛かった。
コッパは何も言わず、ティラミスの手にそっと自分の手を重ねた。ティラミスの体がピクンと震える。
「……ダメなわけ、ないだろ…」
恥ずかしさに視線を逸らしつつも、コッパははっきりと言った。
ティラミスは驚いたようにコッパを見つめ、やがてその顔に笑顔が浮かび、かと思う間もなく涙が溢れた。
「よかった…!嬉しいよ、私……コッパちゃんに嫌われたら、どうしようって…!」
涙を浮かべ、ホッとした顔で言う彼女は、たまらなく可愛らしく見えた。そんな顔を見ていると、コッパの胸にどうしようもないほどの
衝動が湧き上がった。
「ティラミス!」
「きゃっ!?」
気がつくと、コッパはティラミスを押し倒していた。というよりは、抱き締めようとして勢いが余り、意図せずして押し倒してしまった
だけなのだが、過程はどうあれ結果は変わらない。
コッパの腕の下で、ティラミスは驚いたように彼を見つめていた。コッパはコッパで、女の子を押し倒してしまったという事実に
パニック寸前となりつつ、緊張した顔でティラミスを見つめている。
二人は無言で見詰め合い、やがてティラミスはコッパにそれ以上の意思がないことを悟ると、困ったように笑った。
「……コッパちゃん」
「ひ、ひゃい!?」
名前を呼ばれ、コッパは上ずった声で返事をする。
「女の子に期待させておいて、何もなしっていうのはひどいよね」
「え……ええ!?ティ、ティラミスっ、何言って…!?」
肩を押さえる手を、そっと撫でる。突然の感覚に、コッパはビクリと体を震わせる。
「ね、コッパちゃん?私、コッパちゃんとなら、いいよ」
ティラミスの言葉に、コッパの体毛がぶわっと膨らんだ。
「それとも、コッパちゃんは、私とじゃ、嫌?」
「いいい、嫌なもんかっ!だだだ、だけど!いきなりそんな…!」
「それじゃ、その証拠、見せてほしいな」
そう言うと、ティラミスは誘うような目つきでコッパを見つめた。最初こそ戸惑ったコッパだったが、やがて覚悟を決める。
ゆっくりと、二人の距離が近づいていく。輪郭が見えていたのが、相手の目だけが見えるようになり、お互いの吐息が
感じられるほどになる。コッパは緊張からか、荒い息をついている。その息が頬の毛をくすぐり、ティラミスはくすぐったそうに
目を細めた。そして、コッパを落ち着かせるようにゆっくりと頷くと、静かに目を閉じる。
そんなティラミスを、じっと見つめる。コッパは緊張で、もう心臓が口から飛び出しそうなほどになっていたが、ここまで来たら
引き返せないと自身を奮い立たせ、震える唇を近づける。
まるで禁忌を犯すかのように、唇が恐る恐る触れ合う。何度も何度も、確かめるように唇を触れ合わせ、やがて少しずつ、
強く触れ合うようになっていく。
お互いの唇を吸うように、二人はその感覚を求め合った。唇から伝わる温もりが、かけがえもなく愛しく感じる。
不意に、コッパは口の中に異物を感じた。柔らかく、温かく、甘い。一瞬戸惑い、やがてそれがティラミスの舌であることに気付くと、
コッパも負けじと舌を絡める。
今度はティラミスが、驚きに目を見開く。しかしすぐに、その目はとろんと蕩けるようなものに変わり、一層強く唇を吸い始めた。
いつしか、二人ともその手を相手の頬に当て、初めてのキスを貪るように求めていた。
コッパの舌が、ティラミスの舌を撫でる。彼女の舌には、さっき食べたケーキの味が残っている。それを残さず拭い去ろうと
するかのように、彼女の舌を、牙を、頬を舐める。
それに対し、ティラミスは更なる刺激をねだるように唇を強く押し付け、コッパの頭を優しく撫でる。
思うままに初めてのキスを楽しみ、ようやく二人は唇を離した。二人の間に、唾液が名残を惜しむように白い糸を引く。
「コッパちゃん…」
「ティラミス…」
名前を呼び合い、お互いをじっと見つめる。だが、ティラミスの期待するような視線から、コッパは目を逸らした。
「え、え〜と……これで、十分……だよ、な?」
コッパが言うと、ティラミスは不満げに息を吐いた。
「もう。コッパちゃんの意気地なし」
「なっ、何言うんだよ!?だって、そんな、いきなり…!」
「ここまでしておいて、『やっぱりやめた』なんて、いくら何でもひどいよね」
「そ、それはだから…」
「コッパちゃん。ヒーローなら、女の子に優しくしないと」
「う…」
ヒーローという言葉に、コッパはそれ以上の言葉を止められる。
「それにね…」
一瞬言葉に詰まり、それでもティラミスは何とかその先の言葉を続けた。
「私……コッパちゃんと、続き、したいと思ってるんだよ…」
「っ!」
今度はコッパがティラミスを見つめ、ティラミスが恥ずかしげに視線を逸らす。そんな恥じらいの仕草が、たまらなく可愛らしく映る。
さすがに、そこまで言われてはコッパも覚悟を決めるしかなかった。まして、女の子にそこまで言われて、断れる男もそういない。
ごくりと、コッパの喉が鳴る。
「ほ……本当に、いいんだな?」
「……何回も、言わせないで。私だって、恥ずかしい…」
もはや逃げ場もなく、逃げる気もなかった。コッパは怯えるような手つきで、ティラミスの服に手をかける。
震える手つきで留め具を外し、そっと服をはだけさせる。お世辞にも大きいとは言えない胸が露わになり、ティラミスは
恥ずかしそうに、そっと耳を伏せる。
「ごめんね、あんまり大きくなくって…」
「い、いいんだよそんなの。別に、その、胸がでかくたって、でかくなくたって、ティラミスはティラミスだ」
言いながら、コッパはティラミスの帽子をそっと脱がせる。次に、魚の形をした髪留めに手をかけるが、そこはいいかと手を下ろす。
どうやら、胸をはだけさせたはいいものの、その先を躊躇っているようだった。ティラミスは優しく笑い、コッパの頬を撫でる。
「コッパちゃん、怖がらないで……ね?」
「う……こ、怖がってなんかないやい!……ほ、ほんとに触っても大丈夫?」
ティラミスが頷くと、コッパは恐る恐る彼女の胸に手を伸ばす。
指先が体毛に触れると、ティラミスの体がピクリと跳ねる。それに驚き、コッパは手を引っ込めた。
「ん……ごめん、驚かせちゃった?」
「あ、うん……いや、大丈夫」
気を取り直し、再び手を伸ばす。やはり直前で少し躊躇い、しかし今度はしっかりと、僅かな膨らみに手を触れる。
「んっ…!」
ティラミスの口から、熱い吐息が漏れる。自分で触れたことはあっても、誰かに触られるのは初めてだった。まして、その触っている
相手は、自分の好きな男なのだ。
「ティラミス……大丈夫?」
「ん、うん。優しいね、コッパちゃんは」
そう微笑みかけると、コッパは恥ずかしげにうつむいた。手はそのまま胸に触れているが、それ以上の動きはない。
「コッパちゃん、もっと私の胸……触って」
「も、もっと…?こ、こうでいいのか…?」
慣れない手つきで、コッパの手がティラミスの胸をまさぐる。
「ん、もうちょっと優しく……捏ねるみたいにしてみて…」
「えっと……こう、かな…?」
言われたとおり、コッパは胸全体を優しく揉みしだく。ティラミスは体を震わせ、一層熱い吐息を漏らした。
「ん、んんっ…!気持ちいい……上手だよ、コッパちゃん…!」
「そ、そう…?そうか?」
褒められて気を良くしたのか、コッパは少しずつ大胆に触り始める。片手で恐る恐るだったものが、両手で乳房を掴むように変わり、
その柔らかい感触を楽しむようにじっくりと揉み始める。
「ふぅ……んっ…!んん……ふぁ…!」
彼の手が動く度、ティラミスの体に強い快感が走る。いつしか、吐息は鼻にかかった喘ぎ声になり、秘裂はじんわりと
湿り気を帯び、男を誘う匂いをさせ始めている。
その匂いを敏感に感じ取ると、コッパはティラミスの胸から手を放した。
「ティラミス…!その……オイラ、もう…!」
スカートにかけられた手を、ティラミスはそっと押さえた。
「慌てないで、コッパちゃん」
「で、でもぉ…!」
「今度は私が、コッパちゃんにしてあげるから、ね?」
優しい割に有無を言わせぬ口調で言うと、ティラミスはコッパをベッドの縁に座らせ、自分はその前に跪く。
そこは既に、ズボンの上からでもわかるほどに怒張している。ベルトを外し、ズボンを下ろすと、下着の上からそっとそこを撫でる。
「うあっ…!」
ビクンとコッパの体が跳ねる。そんな彼を見て、ティラミスは嬉しそうに微笑んだ。
「コッパちゃんのこと、もっと気持ちよくしてあげる」
下着を脱がし、直接コッパのモノに触れる。先端を指の腹で撫で、優しく握ると、ゆっくりと扱き始める。
手を上下に動かす度、手の中で彼のモノが跳ねる。手の中で熱くなっていくそれが、今のティミラスにはとても愛しいものに思えた。
「どう、コッパちゃん?気持ちいい?」
「うっ……あっ…!あ、ああ……くっ!」
「よかった。もっと、してあげるね」
ティラミスはそっと、彼のモノに顔を近づける。そして一度心を落ち着けるように息をつき、それを根元から舐め上げた。
「ぐっ……ティ、ティラミスっ…!」
途端に、コッパは呻き声を上げ、手はシーツをぎゅっと握る。自分の行為で、彼が気持ちよくなってくれていることに、ティラミスは
嬉しくなった。もっと気持ちよくなってもらおうと、ティラミスは先端まで舐めると、そのまま彼のモノを口に含んだ。
その瞬間、コッパがティラミスの頭を押さえた。
「うあぁっ!もう出ちゃうよ!」
その意味を理解する間もなく、ティラミスの口の中に粘ついた液体が注ぎ込まれた。
「んうっ!?う……うぅ…!」
口を離そうにも、コッパが頭を押さえているため、それもできない。かといって吐き出せば彼の体を汚してしまう。そんなことを
考えている間にも、それは口の中を満たしていく。
何度か口の中で彼のモノが跳ね、その度に精液が吐き出される。それをすべて口の中に受け止めると、彼の手がどけられたのを感じ、
ティラミスは口を離した。
「ご、ごめんティラミス!オイラ、つい…!」
慌てて謝るコッパを微笑ましく思いつつ、ティラミスは目を瞑った。そして舌を動かし、口の中にある精液を舌の上にまとめると、
それをごくりと飲み下した。
「……ぷはぁ。もう、コッパちゃんてば。いきなり押さえつけられて、びっくりしたよ」
「ごめん…」
「でも、それだけ気持ちよくなってくれたんだよね。私、嬉しいな」
うつむくコッパの頬に手を添え、ティラミスは優しく微笑んだ。
「コッパちゃん……次は、二人で気持ちよくなろ」
「……ティラミス!」
「あっ…」
コッパはティラミスの腕を掴み、ベッドの上に押し倒した。だが、ティラミスはそれを非難することもなく、彼の顔を期待に満ちた目で
見つめる。
スカートに手をかける。今度はそれの手を押さえることもなく、自分から尻尾を動かして脱がせるのを手伝う。
スパッツには、股間の部分に黒い染みが広がっていた。そこから、男を誘う匂いがより強く感じられる。
コッパがスパッツに手をかけると、さすがにティラミスは恥ずかしげに身を捩った。しかし、やはり彼を押し止めるような真似はせず、
大人しく彼にされるがままとなっている。
ゆっくりと、スパッツを引き下ろす。スパッツの染みと秘裂の間に、愛液がつっと糸を引く。それを完全に引き下ろし、ベッドの下に
投げ捨てると、コッパはティラミスに覆い被さった。
そのまま、二人はしばらくそうしていた。やがて、ティラミスは彼の目にある怯えと戸惑いの色に気付いた。やはり彼らしいと思いつつ、
ティラミスは彼の顔を抱き寄せると、鼻先を優しく舐めた。
「大丈夫だよ。コッパちゃん、きて」
ティラミスに言われ、コッパは少し慌てたように自身のモノをティラミスの秘部にあてがう。しかし焦っているためか、なかなか
狙いが定まらない。そんな彼に、ティラミスは静かに話しかける。
「コッパちゃん。私、逃げたりしないから、慌てないで大丈夫だよ」
「う……ご、ごめん…」
「ううん、いいよ。落ち着いて、そっと、ね」
その言葉に少し落ち着いたのか、コッパは言われたとおりに、彼女の秘裂へ自身のモノを押し当てる。
「そう。あとは、そのまま……でも、優しくね」
「わ、わかった」
優しくリードされ、コッパは大きく息を吸うと、ゆっくりと腰を突き出した。少しずつ秘唇が開かれ、先端が彼女の中に
飲み込まれていく。その感覚に、コッパは気持ち良さそうな、ティラミスは少し怯えたような声をあげた。
「うわ……すげえ、ぬるぬるしてる…!」
「んうっ……うっ……や、優しくね」
亀頭部分が全てティラミスの中に入り込むと、だんだん抑えが利かなくなってきたらしく、コッパはより強く突き入れ始める。
「うあぅ!コ、コッパちゃん、もっとゆっくり…!」
「ご、ごめんティラミス…!けど、もうオイラっ…!」
「い、痛っ!お願いコッパちゃん、もうちょっとだけ優しくっ……うあ!」
痛みはますます強くなり、ティラミスはたまらずコッパの腕を掴んだ。
「お願いっ……コッパちゃん、乱暴にしないでぇ!」
ティラミスの悲痛な声に、コッパはハッと我に返った。見下ろせば、ティラミスの目には涙が浮かんでいる。
「お願い……私も、初めてなんだから、優しくして…」
「ご、ごめんよティラミス…!オイラ…!」
言いかけるコッパの口に、ティラミスは人差し指を押し当てた。
「今は、謝らなくていいよ。その代わり、優しくして」
「あ、ああ。わかった」
再び、コッパはゆっくりと腰を突き出す。既に半分ほどが入り込んでおり、その先はただでさえ狭い彼女の中が、一層狭くなっている。
それ以上は無理かとも思ったが、ティラミスは辛そうな顔をしつつも、コッパに話しかける。
「コッパちゃん。私、コッパちゃんとなら我慢できるから……きて」
「だ、大丈夫なのか?」
「うん……たぶん」
「……わかった」
お互いに覚悟を決め、コッパはグッと腰を突き出す。狭い膣内を強引に押し広げられる感覚に、ティラミスは唇を噛んで痛みに耐える。
やがて、そのきつさが不意になくなり、コッパのモノが一気に奥まで入り込んだ。
「うあっ!」
「ぐぅっ……う、あっ…!」
あまりの痛みと驚きに、ティラミスの目に涙が溢れた。しかしコッパに気付かれる前に、ティラミスはそれを腕でぐしぐしと拭い去る。
「はぁっ……はぁっ……ティラミス、平気…?」
「だ、大丈夫だよ……ちょっと、痛いけど」
「そうか……って、ちょっとティラミス!ち、血ぃ出てるぞ!!本当に大丈夫なのか!?」
大慌てのコッパをおかしそうに見つめ、ティラミスは彼の頭を優しく抱き寄せる。
「初めてだもん、普通だよ。だから、大丈夫」
「ほ、ほんとかよ…?」
「でも、できればまだ、動かないで……もう少し、落ち着いてから…」
本当はかなり痛んでいたのだが、ティラミスは務めて気丈に振舞う。でないと、ようやく結ばれたというのに、コッパが途中で
やめてしまいそうで怖かったのだ。
動けない代わりというように、ティラミスはコッパの顔を抱き寄せ、唇を重ねる。コッパもすぐに応え、彼女と舌を絡める。
キスをしつつ、コッパははだけたままの彼女の胸に触れる。不意に加わった快感に、ティラミスはピクンと体を震わせた。
更なる刺激をねだるように、ティラミスはより激しく彼の唇を吸い、コッパもそれに応える。
無意識のうちに、コッパの尻尾がティラミスの尻尾に重ねられる。嬉しそうに目を細め、ティラミスはしっかりと尻尾を絡める。
気付けば、もう痛みはほとんど感じなくなっていた。ティラミスは唇を離し、キスが中断されて少し不満げなコッパの顔を見つめる。
「コッパちゃん……動いて、いいよ」
それを聞いた瞬間、コッパはすぐに腰を動かし始めた。やはり、動きたくてたまらなかったのだろう。
彼のモノが入り込む度、体の奥に鈍い衝撃を感じる。逆に抜け出るときは、軽い痛みと不思議な喪失感を覚える。
「んっ!あっ!あっ!コッパちゃん……もっと、いっぱい…!」
「はあっ、はあっ……ティラミスの中、温かくて、ぬるぬるしてて……気持ちいい…!」
「うっ!あっ!そ、そんなこと……んっ!い、言わないでぇ…!」
痛みがないわけではない。苦しくないわけでもない。それでも、突き上げられる度に、自分でもよくわからない快感が体を走り抜け、
苦痛の声を甘い嬌声に変えてしまう。
「うあ……コッパちゃん、もっといっぱい、気持ちよくなってぇ…!」
ティラミスが言った瞬間、コッパは不意に彼女の腰を掴んだ。
「ごめん、ティラミス…!でも、オイラもう、我慢できないんだ…!」
「コッパちゃ……うあっ!?あっ!!」
コッパはティラミスをうつ伏せにさせると、腰を持ち上げて激しく彼女を突き始めた。
「あぐっ!あっ!コ、コッパちゃん、激しすぎるよぉ!」
「ごめんティラミス!!でも、腰止まんないよぉ!!」
それこそ獣のような体勢で、コッパは欲望のままに腰を打ち付ける。ベッドがギシギシと激しく軋み、部屋には腰がぶつかり合う
音が響く。
「はあっ、はあっ!ティラミス、ティラミス!!」
「うあぁ……コッパ、ちゃん…!」
突き入れるごとに、結合部から愛液が飛び散り、引き抜けばシーツに滴り落ちる。その匂いがさらに二人を刺激する。
やがて、コッパの動きが一段と荒く激しくなり、切羽詰った唸り声が漏れ始めた。
「ぐぅぅ…!ティラミス、オイラ、もうっ…!」
「ふあぁ…!コッパちゃんっ……中は、ダメぇ…!」
しかし、コッパは彼女の声を無視し、さらに激しく突き上げる。
「ぐ……うぁ…!ごめん、ティラミス…!出る!」
最後に一際強く突き入れ、それと同時にコッパはティラミスの中に精を放った。
「あ、あ……熱い……コッパちゃんのが、中に…」
どこか陶然とした声で呟き、ティラミスは尻尾を震わせた。そんな彼女の腰をしっかりと掴み、コッパはなおも精液を注ぎ込む。
ティラミスの一番奥に全て流し込むと、コッパはそのまま彼女の背中に覆い被さった。
「はぁ……はぁ……はぁ…」
「もう、コッパちゃん……中はダメって言ったのにぃ…」
ティラミスも荒い息をつきながら、背中のコッパをなじるように言う。しかし、もはや彼にその声は届いていなかった。
「はぁ……はぁ……ティラミス……好きだ…」
うわごとのように言うと、コッパはそのまま意識を失ってしまった。だがその言葉に、ティラミスの表情は和らいだ。
「……私も、好きだよ。コッパちゃん…」
聞こえていないと知りつつ、そう囁きかけると、ティラミスも目を瞑った。さすがに疲れたらしく、すぐに全身が浮かび上がるような
感覚を覚える。
体の中と背中に、愛しい者の存在を感じるという幸福を噛み締めながら、ティラミスは静かに眠りについた。
翌朝、二人はほぼ同時に目を覚ました。ティラミスは少し恥ずかしそうに朝の挨拶をしたが、コッパの方はわからないはずの顔色が、
真っ青になっているのがわかるぐらいのうろたえぶりを見せた。
「ごごごごご、ごめんティラミス!!!昨日、その、えっと…!」
「もう、コッパちゃんたら。昨日、危ない日だったのに」
「うえぇ!?」
「うそうそ。でも、安全な日でもなかったけど」
「あちゃぁ〜……や、やっぱりやばいよなぁ…?」
そんなコッパに、ティラミスは優しく笑いかけた。
「コッパちゃん。もし出来ちゃったら、責任は取ってくれるよね?」
「う…」
さすがに、コッパは一瞬言葉に詰まる。だがすぐに、ティラミスも驚くようなしっかりした顔を見せた。
「……お、おう。それぐらいは、その、覚悟してるよ」
「よかった、そう言ってくれて」
本当に嬉しそうに言うと、ティラミスはコッパの頬にキスをした。
「……オイラ、頑張ってヒーローにならなきゃな」
不意にいつもの話が出て、ティラミスは何だか肩透かしを食らった気分になった。しかし、コッパはすぐに言葉を続ける。
「オイラ絶対ヒーローになって、ティラミスも、その子も、しっかり守ってやるからな。大事な奴も守れないんじゃ、ヒーローの
資格なんてないもんな」
ティラミスは、そんな彼の言葉を信じられない思いで聞いていたが、やがてその目に涙が浮かんだ。
「お、おい?オイラ何か…?」
「ふふ……嬉しいな。コッパちゃんからそんな言葉聞けるなんて。でも、まだ赤ちゃん出来るって決まったわけじゃないよ?」
「今はそうでも、その……えっと、ほら、そのうち、出来るだろ?」
一瞬、ティラミスはコッパの言葉の意味を考え、やがて驚きに目を見開いた。
「……つまり、それって…?」
「い、言わなくてもわかるだろ!?その……だから……オ、オイラは、ティラミスが好きなんだからさ!」
はっきりとは言わなかったが、その意味するところは十分にわかった。
ティラミスは嬉しさのあまりコッパに抱きつくと、彼の口元を何度も舐めた。
「うわっ!ちょっ、ティラミス!よせって……うっぷ!朝から、ちょっ…」
「ふふ、やだよ。私だって、コッパちゃんのこと、大好きだもん」
「舐めるな、舐めるなってば!おい、ちょっと、ティラミスってばー!!」
大きくとも小さくとも、奇跡は奇跡だと、ティラミスは思う。
神の起こした奇跡は、紛れもなく大きな奇跡だろう。だが、見る者によっては、小さな奇跡でも十分に大きな奇跡となる。
あの、頼りなくて心配をかけてばかりだったコッパ。それが、今では誰よりも頼れる存在となるほどに成長した。
それだけではない。いつしか惹かれていた彼と、こうして結ばれることができたのだ。もうそれだけでも、ティラミスにとっては
十分に大きな奇跡だった。
相変わらず、ヒーローになるとコッパは言い続けている。だがティラミスの中では、彼はもう立派なヒーローになっていた。
周りから見れば、そうは見えないだろう。それもそのはず。
コッパはティラミスだけの、言い換えれば惚れた相手だけの、たった一人のヒーローなのだった。
以上、投下終了。
口調と二人の間柄のせいで、途中何度かティラミスがデーモンズ化しそうで危なかった。
たまにはNPC書くのも面白いね。……探索場所、合ってるよね…?
それではこの辺で。
GJ! グッジョーブ!!
神はNPCを書かせても神なのか・・・!
ティラミスも萌えるけどコッパが可愛すぎてニヤニヤしっぱなしだったぜw
ごちそうさまでしたー!!
161 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 06:49:34 ID:S5Nuvz8j
GJ!
最高でした!
氏がドワーフ好きで本当に良かった。ドワーフ好きにはこう言うのは堪えられんわ
けどなんか本スレかどっかで見た、
ヒモニートコッパとだめんずティラミスのSSが始終頭から離れなくて何だか笑いが……くそっw
ΛΛ
( )
( ) ヤセイヲ…
| |
ΛΛ
ヽ('A`)ノ
( ) トキハナツ!!
ノω|
はうっ!!!誤爆した…orz
,。_。、
<(-.-;><何をやっとるんだね君は
( )
| |┗
>>147 学生の頃ゆえかやはり未熟な所もあるのがディモレアお母さん。
息子が知ったら「母さんもやっぱり〜」な台詞を吐くに違い有りません。
ええ、小さな錬金術士のエドワードです。
国家資格は就活で受けた時に落ちたようです。
お久しぶりでございます、皆様。
今夜は第3話を引っ提げてやってまいりました。
まぁ、ちょいとした転換点みたいな話となっております。
今 回 も エ ロ を 入 れ 忘 れ た 件 o r z
夜の帳が下りると、冒険者養成学校は消灯時間になる。
消灯時間、即ち全ての灯が消え、生徒も含めてもう眠る時間という事である。
しかしその日、学生寮の一室には煌々と灯が灯っていた。
錬金術士エドワードの部屋である。
崩れ落ちそうな本の山の中で唸ったと思えば凄まじい勢いでページをめくり、また唸ったかと思えば次は頭を抱えつつペンを動かす。
「あー……」
エドは頭を掻くと、椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。
「うまくいかねぇ」
そう呟いて首を振る。
しかそれでも、エドはペンを再び手に取る。幾つも書き連ねた文書と構築式。
ページの最上部に書かれた、世界浄化式と書かれた文字が不気味に輝きながらも。エドは、ペンを動かし続けていた。
朝。エドが寝不足の頭を振りつつ、マシュレニア学府の食堂に顔を出すと既にパーティ仲間達は集まっていた。
同級生のカガリとディモレア。そして後輩でランツレート生のパーネとダンテである。
「エド、アンタ遅いわよ」
「うるさい黙れ。遅くて悪いか」
ディモレアの言葉にそう返しつつ、エドが椅子に座るとパーネが小さく咳払いした。
「……エド先輩も来た事ですし、もう一度最初から言いますね。アイザ地下道を踏破しましょう」
「………なぁ、カガリ。パーネはいきなり何を言ってるんだ?」
あまりにも唐突すぎるその言葉に、エドは思わず隣りに座るカガリに視線を向ける。
「うむ。パーネがアイザ地下道を踏破したいと言っているのだ。私個人としては構わないのだが……」
「アタシは嫌。パーネにはまだ早すぎるわ」
「だよなぁ」
ディモレアの言葉に、エドは思わず頷く。
アイザ地下道。世界に迷宮は数多く存在するが、その中で未だにその先を見たものがいないと言われる地下道である。
マシュレニア学府側は安全が確保されていないという理由で生徒のアイザ地下道への進入は禁止している。だがしかし、本音としては誰かが踏破してほしいと願っているのである。
そこに何があるのかというのを理解しておけばその分だけ、安全上の問題で役に立つのだから。
もっとも、あくまでも踏破した人物がいないというのは公式記録であり、非公式記録にはいるかも知れないが。
「ああ、エド先輩も! 目の前に前人未到の領域があるんですよ!? 踏破して名前を残しましょう! ああ、パーネの名前が歴史書に乗る日も近いですよ!」
「お前の望みだけじゃないかパーネ。大体な、今のお前のレベルじゃアイザ地下道は無理だろうに」
パーネが自分の実力に対して自信があるのはエドも知っている。事実、同年代から見ればパーネのレベルは高い方だ。
しかし、それでも前人未到である以上、エドも何があるか解らない地下道にパーネと一緒に入ろうという気持ちは起こらない。何故なら。
「いいか、パーネ。俺がマシュレニアにいる間はお前の事をお前の母さんから見張ってろと言われてるんだ。俺の目の黒いウチは勝手な事はさせないぞ」
「エド先輩は私のお父さんですかっ!」
「無茶はやめろと言ってるんだ」
「むー……ダンテ君はアイザ地下道行ってみたいですよね? 行くよな?」
パーネはダンテの角を引っ張りながら同意を求める。勿論、角を引っ張られているダンテとしては逆らえない。
「はい、行きたいです。行きたいですパーネ先輩」
「ダンテ、あんたそんなのに屈する程弱い精神だったの?」
「ディモ姉、怖ぇ……」
「ビッグバムかますわよ? あたしは反対」
「俺もだ。珍しく意見が合うな、ディモレア」
そして、4人の視線はカガリに向けられる。五人いるなかで、2対2。あと一人。
「カガリ先輩はアイザ地下道行きたいですよね?」
「このパーネを止めてくれるか、カガリ」
「……むぅ。私個人としては行きたいのだが」
カガリが悩むように呟く。パーネはガッツポーズを決めるとすぐに口を開いた。
「はい、3対2で可決です! 行きましょう、アイザ地下道へ! 前人未到の地を制覇して私たちの名前を残しましょう!」
「…………」
どう転んでもカガリは賛成だとは言っていない。
しかし、何を言っても無駄だろうなとエドはため息をつくのだった。
アイザ地下道。
前人未到の領域。封鎖された扉。誰もいない場所。
「せいっ!」
封鎖された入り口をパーネがこじ開け、暗い地下道に外の光が少しだけ差し込んだ。
未だに踏破したものがいないその地下道は不気味な静寂を保っていた。
「……こうしてみると、そこら辺の地下道と変わらないみたいだけど」
ダンテが中を覗き込みつつ呟く。もっとも、その言葉とは裏腹に顔つきは緊張していた。
もともと度胸があるようには見えないダンテなのでそれだけで済んでいる方が奇跡なのかも知れない。
「やれやれ……おいパーネ。言い出しっぺなんだから先に行けよ」
「はいはーい」
パーネは楽しそうに槍を一振りするとずんずん前へと進んでいく。罠の事をろくに考えもしていない。
カガリがそれに続き、ダンテとディモレアが渋々と言った感じに続く。最後尾はエドである。
「やれやれ……」
寝不足という最悪のコンディションで向かう前人未到のアイザ地下道。最悪と言っても過言ではない。
別にアイザ地下道という場所そのものが嫌いな訳ではない。冒険者養成学校に在籍している以上、未踏破の迷宮をその足で踏破するというのは光栄な事であり、エド個人としてはそれは多いに結構な事だ。
だがしかし、完全に安全が確保されていない状態で自分だけならまだしも、自分より格段にレベルの落ちるパーネやダンテを巻き込む事が嫌なだけである。
しかもよりによって、発案者がパーネだと言うのなら尚更だ。
しかし、とエドは思う。
寝不足である理由。世界を浄化する方法。
延々と考え続けても、答えは出ない。世の中に数多くある迷宮は徐々に踏破されつつあるとはいえ、迷宮の中に潜むモンスターは冒険者や隊商を襲い、悲劇を産み落とす。
モンスターだけが脅威ではない。宝箱に仕掛けられた罠、迷宮で起こった異変が外へと連なって起きる地震。
様々な要因が広まっていく呪い。疫病。火災。
この世界に起こる悲劇など、数を数えてみればキリがない。
異世界の軍団がこの世界を狙っていたりもするし、身勝手な開発から災害が起こる事もしばしばだ。
そう、だから。
「一度世界全部壊しちまえば、またゼロから再スタートになるもんな」
誰にも聞こえないように、そう呟いて苦笑する。
錬金術を以てして、全ての文明を破壊してもう一度ゼロからやり直す。そうすれば、少しはマシになるはずだ。
エドはそう思っている。だから、世界を壊す方法を延々と考えていたのだ。
「眠ぃ……」
「エド先輩、ちゃんと寝てます?」
いつの間にか隣りに来ていたダンテがエドにそう声をかける。
「うあ? ああ、ダンテか」
「どうしたんですか、先輩。凄い顔してますけど」
「ああ、まぁな……。眠いだけだ」
「そうですか……。何かあったんですか?」
「ん? ああ、そうだな……錬金術の可能性から考える未来って奴だ」
半分正解で、半分違う答えだ、とエドは思う。
もしも、世界を滅ぼす計画を考えてる、なんて告げたらダンテはどんな顔をするのだろうとエドは思った。
「エド先輩ってそういう所は真面目ですね。ディモ姉に少しは見習わせたい……あ痛ぁーッ!?」
「失礼ね。アタシだって考えてる所は考えてるわよ」
ダンテに拳骨を浴びせつつ、ディモレアが口を開く。
「ほう、それはなんだ?」
「魔法がどこまでいけるかって事をね。少なくとも、アタシ個人としては出来る限り誰かを助けたいとは思ってんのよ。折角学んでるんだしね」
「へぇ……」
意外である。普段攻撃魔法にかけてはそれこそ天下一級品で破壊と破壊と破壊しかしていないディモレアがである。
「新しい魔法作って病気の人とか助けたいとか思った事あったのよ……」
ディモレアの言葉にダンテが思わず顔を伏せる。思い当たる節でもあったのだろう。
「……けどよ。何にしたって限りってのはあるだろうがよ。魔法にしても、錬金術にしても」
「あら、エド。アンタ錬金術をどこまでも伸ばしたいとか言ってたじゃない。もう限界認めちゃうの?」
「いや、そうじゃねーけど」
錬金術にしても、魔法にしても、必ずしも誰かを救える訳ではない。
そう。いつか限界があると、エドは解っている。誰かに表立って言わなくても、それでも先の見えてる技術に限界があると思っている。
万能ではない。不可能な事もある。
だからだろう。
世界を一度壊して、もう一度さいしょからやり直させれば少しマシになるんじゃないかと思うようになったのは。
「………なーんてな」
そんな事を言えば狂人扱いされるのがオチというものだ。だからエドは言わない。
そう。だから。この奥の中にしまっておくべきだ。
エドは、そう思っていた。
アイザ地下道は地下迷宮の中では、長い部類に入る。
長い地下迷宮は1日で踏破する事は難しく、中でキャンプをするなり一度外に出て宿屋に入るといった行動をとるのが普通だ。
そしてアイザ地下道は未だに踏破した人物がいない、即ちそれだけレベルが高いという事である。
「……ねぇ、今日はこの辺りにしない? 流石に疲れてきたわよ」
ディモレアが今日何回目か解らないリバイブルの魔法を迷宮の床で灰の山になっているパーネとダンテにかけつつ、口を開いた。
ちなみにアイザ地下道に入ってからパーネはバカみたいにモンスターに突っ込み、ダンテは罠の解除に失敗し続けるという理由で何度も死体になっている。
他の三人は無傷とは言わないがまだ余力は残っている。だがしかし、この調子でこのまま探索を続けるのは無理があるだろう。
「……確かにな。ディモレア殿の言う通りだ。エド殿はどう思う?」
「あ? カガリの意見に賛成だな」
エドは思考を現実に引き戻しつつ頷く。その頃になってようやく灰から元に戻ったパーネとダンテが立ち上がった。
「……今度は駄目かと思った」
「ダンテ。今日はもう引き揚げる事にしたわよ」
ダンテの呟きにディモレアがそう口を挟むとダンテは安心したようにため息をつく。
しかしパーネは懲りずに不満げな顔をしていた。
「まだ中央部にも到達していないのにもう引き揚げるんですか? エド先輩も何か言ってあげてください」
「誰のせいだと思ってんだ。とにかく、今日はこれで打ち切り。決定だ。俺とウシとカガリで意見が一致したんだ」
「誰がウシよ!」
エドの言葉にディモレアがビッグバムを放ち、エドはそれをひらりとよけて迷宮の壁に激突する。
爆音と共に、彼らの頭上に土埃が幾つか落ちてくる。
「………今日はもう戻った方がいいわね」
土埃を祓いつつ、ディモレアがそう呟く。
五人それぞれが今来た道を引き返すべく、くるりと背を向けた。
その時、エドはふと地下道の片隅に転がる、つい先ほどまでは無かった物体に気付いた。
「?」
ビッグバムによる崩落で土の中から転がり出てでも来たのだろうか。綺麗な球体を保っているそれを、エドは摘み上げる。
真っ赤に輝くその球体は、固体とも液体ともつかぬ、ぶよぶよした感覚を与えた。
「なんだ、これ……」
思わずそう呟く。固体、と呼ぶほど凝固していないが液体と呼べるような物体でも無い。綺麗な球体を保つその物体。
どういう存在なのか、エドにはさっぱり解らなかった。
「エド先輩?」
後を追ってこないエドを心配したのか、パーネが少し先で振り向いていた。
「ん? ああ、悪い今行く」
エドはそれをポケットに突っ込むと、慌てて駆け出した。
そのポケットの中にいれた物体が、彼を大きく変えるとは知らずに。
アイザ地下道の出入り口である空への門に宿屋は少ない。
入る冒険者自体が少ないのでそれだけで間に合ってしまうからである。
そしてその日、宿屋を訪れた客はエド達一行、即ち五人だけであり、宿屋側の好意で一人一人違う部屋に泊まる事になった。
計画の構築式を練るにしても、拾った謎の物体について考えるにしても一人の方が都合が良いのでエドとして喜ぶべき事態であろう。
もっとも、エドと同じ部屋で無い事をパーネは残念がっていたが。
「……さて、と」
エドはポケットからその赤い球体を取り出し、サイドテーブルに置いた。
「………で、これはいったい何なのだろうな?」
首を傾げつつ、つついてみる。ぶよぶよした不思議な感覚。しかし、力を加えなければ綺麗な球体を保っている。
そんな特性を持つ金属や宝石なんて見た事は無いし、記録上にも無いだろうから金属や宝石で無い事は確かだろう。
「うーん……」
掌で軽く転がしてみても、よく解らない。
「そもそも何の役に立つかも解らねぇよなぁ」
エドは苦笑すると、それをサイドテーブルの上に転がしたまま、いつものノートとペンをとりだした。
無数に書き連なれた構築式。しかしそれでも、上手く行かない事は解っている。
錬金術だけでなく、先日読んだカラレスの書に含まれていた魔術式も組み込んで複雑化したその構築式の目的は。
流星の誘引である。
広い宇宙をかける箒星だが、地上まで落ちてくると時として惨事を引き起こす事になる。
小さな石が落ちてきたとしても、宇宙から地上まで落ちる星の落下速度は通常では考えられないほどであり、速度で上乗せされたその破壊力は石が大きくなれば大きいほど破壊力は増す。
そこでエドは、流星を大量に誘引する事で、世界の文明という文明を破壊する事を思いつく。
しかし問題はそこにある。
誘引出来たとしても、たった一つの流星を誘引するのに莫大な構築式が必要である事。
そして錬金術だけでなく魔術的な要素も必要である為、錬金術と魔術の同時発動という非常に困難な技術が要求される事。
更に、文明全てを破壊出来るだけの流星を誘引するにはそれを大量に行う必要があるのに、一度に大量に呼び寄せられないという事。
問題だらけである。
「うまくいかねぇ……」
錬金術を始めとする技術的な未来に不安を感じて始めてはいいが、技術的な問題にそれを妨害されるというのは本末転倒ではないだろうか。
エドはため息をつきつつ、そう思っていた。
「連射が効かないんじゃ折角壊してもすぐ直されちまいそうだしなぁ」
錬金術士は一人ではないのだから。
「でもな……このままだといけないとは思うんだよなぁ」
発展していく技術を、悪行に使う者など幾らでもいる。
盗賊に然り、悪魔に然り、奴隷商人に然り。
何でもありである。力があっても、それを正しい事に使わなければそれは悪行ではないだろうか。
しかし、その正しい事ですらも。
エドには、解らなくなりつつあったのだろうか。だから、エドはそんな事を考えているのか。
まるで子供だ、とエドは思った。
他人の技術の使い方が気に入らないから世界を壊してもう一度やり直すだなんて。
わがままな子供がかんしゃくを起こしたようなものだ。
正しい事云々、と考える前に。自分が正しい事をやっていないんじゃないだろうか。
そんな事を考えていた時、ふと摘み上げた赤い球体が、構築式の上へと落ちた。
バチリ、と錬金術が発動した直後の特有の錬成反応が生まれる。
「!?」
エド自身は手をつけていない。しかし、錬金術は現に発動している。
「なんだ、こりゃ!?」
構築式がノートから部屋全体へと広がり、膨大な力が周囲に放たれているのが解る。
そう、エドが立てた構築式通りに。
錬金術だけではない。魔術式も発動し、同じく力を放っている。
そう、たった一つの目的。
流星を呼び寄せるという、たった一つの目的に。
「うおおおおおおおおおおっ!!!!!」
エドが絶叫するより先に、エドの視界に飛び込んできたのは、夜空から雲を突き破って落ちてくる巨大な火球のような星だった。
「………!」
エドが気付いた時、視界に飛び込んできたのは崩れた屋根の隙間から見える夜空と、目の前の床に突き刺さる一抱えもある流星。
そして自分自身を取り囲むように貼られた小さな壁だった。
どうやら小さな壁が貼られていたお陰で流星の落下に巻き込まれずには済んだらしい。
「……これって……」
エドは、構築式の上で魔術も錬金術も発動していない。
なのに、発動した結果、流星は落ちてきた。
その理由は、この赤い謎の物体。
「…………………」
流星のすぐ近くに落ちていたその赤い球体を拾い上げる。
確かな力を感じる。つい先ほどまで気付く事の無かった、流星すら簡単に呼び寄せた、魔術と錬金術の同時発動すら容易に出来る。
見た事も無い。信じられない程の、この物体。
「……くっ………くっくっく………はははははははははは!」
エドは、思わず嗤った。
信じられないほどの力になりそうなものが、今、自分自身の掌の中にあるのだ。
この掌にあるそれが。
自分の考えを、一生を、世界を、左右できる存在。
「これさえあれば! これさえあれば……!」
「……で、いつまでバカ笑いしてんの、アンタは?」
エドが笑い声を続けた時、背後からディモレアの冷たい声が響いた。
「……なんだよ」
「何してんの? 宿屋の屋根に穴開けちゃったし」
ディモレアは部屋に入るなり、部屋の床に突き刺さったままの隕石に手を延ばし、その熱さに驚く。
「どうしたの、これ」
「落ちてきた」
「へぇ。で、この床に散らばってるの……なにこれ、錬成の構築式? と、思ったけど魔術式もあるみたいだけど?」
ディモレアは隕石の下に落ちていて半分焼け焦げたノートを拾い上げ、ぱらぱらとめくりだす。
「勝手に見るな」
エドが取り換えそうと手を伸ばすがディモレアは返そうとしない。
ただ、ページをめくりながら、焼け焦げて読めないページがありながらも、その式の大体は理解しかけているのだろう。
「おい、それ以上読むな」
「……………」
エドの言葉に耳を貸さず、ディモレアはただページをめくり続ける。
「……アンタ、正気?」
そして、口をゆっくりと開いた。
「何がだ?」
「……流星を呼び寄せるだなんて。ただ、災厄振り撒いてるだけじゃない」
「だろうな」
普通の視点から見ればそうなるだろう。
「世界が全部ぶっ壊れるわよ。もし、流星が雨あられと降り注いだら。でも、アンタのこれ。まるでそれを狙ってるようじゃない」
ノートを振りつつ、ディモレアは言葉を続ける。
「ああ。世界全部ぶっ壊して、もう一度最初からやり直す事考えてる。それがいいと思ってる」
「だから、こんなの作ってたわけ? 毎晩毎晩?」
ディモレアの言葉にエドは頷く。ここまで知られているのであれば、覚悟を決めるしかない。
荷物の中から、愛用している剣をそっと抜き放った。勿論、ディモレアには見えないように。
「バカみたい。いいや、極限級のバカだわ。錬金術の可能性を無駄遣いしてるにも程があるわよ」
首を振りながらも、ディモレアは言葉を続ける。その全てを否定するかのように。
「どうしてそう思うんだ?」
「……壊した所で、どうしようっていうのよ。どうしてそこまでして壊したいのかって事」
「錬金術にしても魔術にしても、常に正しく使われてるとは限らないからな」
そう、人を救うべき技術が人を傷つける事に使われているのは。
そして人を救うべき技術にも、救えない人がいるのなら。
何の為に、やってきているのか解らなくなる。
「でも、世界を壊すってのは正しい方向じゃないわよ。矛盾してるじゃない」
「だろうな。でも、それが一番早い」
エドは呟く。
だって、今その手に。
それが実現出来るものがあるのだから。
「それに、アンタの技術、てか今の技術じゃ世界を壊せるほど器用にできてないでしょ。流星一つ呼ぶのにこんなにかかっちゃ」
「まぁ、そうだな……それだけの構築式を使って魔術と錬金術の同時発動を行って流星一つだ。壁一枚で防げる威力の、な」
自嘲するように笑う。そう、あくまでも現時点ではそれだけだ。だが。
「だけどなディモレア……それが実用に耐えうるレベルになったら、どうする?」
「実用にたえうるレベル?」
「ああ……連続して、無数の流星を呼べれば。同時に破壊出来るほどなら。世界も壊せる」
「バカ言わないでよ、そんなの夢物語だわ。今でもバカだけど」
ディモレアは笑いながら首を振ると、視線をエドに向ける。
エドの視線。
「………正気?」
「ああ」
「できるの?」
「ああ」
「……………」
世界を一つ壊そうとするほど思い詰めた錬金術士を哀れに思ったのか。
それとも、その狂気を止めたいと思ったのか。
はたまたただ単にうざかっただけなのか。
その時のディモレアの気持ちは、エドには解らない。
だがしかし、次にディモレアが口にした言葉は思い掛けないものだった。
「………ねぇ」
「なんだ?」
「アンタは世界を壊したいのなら、アタシは世界を壊さないで済む方法を考えるわよ」
エドの瞳を見ながら、ディモレアは言葉を続ける。
普段破壊しか考えていない。いや、破壊行為にかけてはそれこそ一流のディモレアが。世界を壊さないで済む方法を考えるという。
どうやって、とエドは問わない。
不可能だ、夢物語だ、ともエドは言わない。
自分自身がやってきたことですらも出来ない事である筈だったというのに。今、可能になってしまった。
だから、ディモレアの場合も。
あるいは。
「………なら、好きにしろよ。俺は構わねぇから」
エドは笑う。それが、どんな結果を招こうとも。
彼には解っていた。
ディモレアという存在が、どこまでも自分のライバルとなりうる存在であるという事を
「面白い話だぜ、たくよぉ……」
エドは口の中だけでそう呟いた。
ポケットの中で輝る、小さな赤い球体をそっと握りしめながら。
投下完了、と。
今気付いた事だが。
このスレで俺、投下するの五本目だった事だぜ……。
乙です
ふと思ったがディモさんやパーネ達って
パルタクスのある世界・クロスティーニのある世界とは別の三つ目の世界から来た人達じゃなかったっけ?
>>174 しーっ
だけど3つ目の世界って
続編の伏線だよな
そこでさ、ふと考えたんだが文明レベルは
3つ目の世界>銃のある2つ目の世界>>>>>>>>パルタクス
なんだろうか
銃ってそんなに高度な文明必要か?
けっこう昔っから存在してる気がするが
>>176 火縄銃とかならまだしも
ライフルがある時点で差はあるとは思うんだけどな。
まぁ、武器で文明の高低は決めれないけどさ。
ようは生活水準だよね
保険の先生が合成獣作れる程度の文明ならパルタクスにだって
どっちの世界も炊飯器あるんだよね。壊れたのしか見たことないけど。
気まぐれにメインパーティを全員アイドルにしてみた。とても後悔した。
やけに露出度の高いアイドルエル子で書いてみたので投下。
ある日、友人であるヒューマンのパーティに誘われた。性格の合わないパーティで人間関係に疲れていた僕は、二つ返事でそれを承諾した。
早速紹介された彼のパーティに、一際目立つエルフの女の子がいた。彼女はエルフの中でも飛び抜けて美しく、また露出の多い服が人目を引いていた。
繊細なガラス細工のような容姿にドキドキしながら、ヒューマンにこっそりたずねる。
「ねぇ、あのエルフの子…」
「ん?……ああ、あいつはアイドルだよ。おい、エルフ!」
ヒューマンに呼ばれて、エルフがこちらに近付いてきた。彼女の冷たい瞳がまっすぐに僕を映したので、僕は顔を赤らめて目を泳がせる。
いたたまれなくなって隣のヒューマンを見ると、彼は彼女の長い耳に何かを囁いていた。
「……それじゃあ、後でな」
エルフは首を小さく縦に振って、一言も発することなく僕たちに背を向けた。その時、一瞬だけ彼女が僕を見た気がして、また胸が高鳴った。
ヒューマンのパーティは今まで僕がいたパーティよりもずっと実力があり、僕は後ろをついて歩くだけで精一杯だった。学園に帰りついたときはクタクタで、荷物を適当に放り出してベッドに寝転んだ。
しばらくそうしてうとうとしていると、部屋のドアがノックされた。夕食はとっくに済ませていたので、ヒューマンあたりが遊びに来たのかと思って返事をする。
「どうぞ。開いているよ」
ドアを開けて入ってきたのは、やっぱりヒューマンだった。ヒューマンはベッドでぐったりしている僕を見て、小馬鹿にするようにニヤニヤと笑った。
「……見ての通り、疲れているんだ。大した用じゃないなら明日にしてよ」
「つれないこと言うなよ。せっかくお前の歓迎会でもしてやろうと思ったのに」
「歓迎会?……はは、なんだよそれ」
随分可愛らしい表現をしたヒューマンがおかしくて、つい笑ってしまう。ヒューマンは僕の腕を引っ張って無理矢理起こすと、屈託のない笑顔を見せる。
「ほら、俺の部屋来いよ。良いもんがあるからさ」
「あんまり引っ張っらないでよ。一張羅の制服が伸びるじゃないか」
ヒューマンに急かされるまま部屋を出ると、僕たちはヒューマンの部屋に向かった。
それにしても、歓迎会だって。今までのパーティでは有り得ない和やかな響きに、僕は嬉しくなって内心すっかり舞い上がっていた。
ヒューマンの部屋は階段を上がって一番奥にある。鍵のかかっていないドアを開けると、ヒューマンは僕の背中を押して部屋に入るよう促す。
「俺からのプレゼントだ。麗しの歌姫さまがお前のためだけに歌ってくれるって」
その言葉を最後に、部屋の主であるヒューマンを迎え入れることなくドアが閉められた。
びっくりして咄嗟にドアノブを回したが、どういう訳かドアは開かない。外側からしっかり鍵がかけられているようだった。これは立派な盗術技能の悪用ではなかろうか。
まさか歓迎会と称して部屋に閉じ込められるとは思わなかった。困り果てた僕がぐるりと部屋を見渡すと、ベッドに腰掛けているあのエルフと目が合った。
驚いて思わず後退ったが、僕の後ろは開かないドアが塞いでいる。エルフは立ち上がり僕に近付くと、恋人にするように僕の首に腕を回した。
呆然とする僕の唇に触れるかと思われたエルフの唇は、頬を軽く撫でて僕の耳にかじりついた。少し背伸びをし、僕の耳を舐めたりかじったりしながら、エルフの身体は絡み付くように擦り寄ってくる。
「な、なっ……え、あのっ、なにを…!」
ぎこちなく肩を掴んで身体を離すと、エルフは不思議そうに僕を見上げた。扇情的な仕草で首を傾げ、唾液に濡れた唇を指で撫でる。
「貴方、私の“歌”が聞きたいんでしょう」
彼女の言葉に、ドアを閉める直前のヒューマンの言葉がよみがえる。だけど僕は彼女の歌を聞きたいと言った覚えもなければ、そもそもそれとこれとは全くの別問題だ。
目を白黒させて困惑する僕の胸に、エルフは頬を寄せた。するりと跪いて、僕の股間にそっと手を触れた。
恥ずかしながら先程の愛撫とも呼べないような行為にも、今まで女の子に縁がなかった僕の股間はすっかり反応してしまい、内側からズボンを押し上げている。
エルフは一瞬だけ頬を笑みの形にして、テントを張ったズボンに頬擦りをした。そのこそばゆいようなささやかな刺激さえ、今の僕には致命的だ。
「や、やめてよ、何でこんなっ…」
「お金なら気にしなくて良いのよ。ちゃんと、ヒューマンに貰ったわ」
頭を離して僕のベルトに手をかけながら言ったエルフの言葉で、僕はようやく理解できた。同時に、金で仲間を買うヒューマンに激しい嫌悪感を抱いた。
とは言っても、この状況では僕も同じ穴のムジナだ。自分から穴に飛び込んだのか、突き落とされたのかは、大した差ではない。
エルフの細い指は慣れた手付きでベルトを外し、ズボンの前を開けて、下着の中から僕の陰茎を引きずり出す。
先端からにじみ出る体液を指ですくい、くるくると亀頭の部分を撫でた。それだけで僕の全身は雷に撃たれたように震え、足に力が入らなくなる。
エルフは白くしなやかな指で優しく僕の陰茎をしごき上げ、時折甘えるように頬擦りをする。そのたびに僕の身体は跳ね、情けない喘ぎが喉の奥から出てきた。
慣れた手付きの奉仕に、たちまち僕の陰茎ははち切れんばかりに膨れ上がる。エルフは手を止めてベッドを目で指した。
「続き、したいでしょう。床でやるのは好きじゃないの」
エルフは服を脱ぎ捨てながらさっさとベッドに横たわった。僕も服を脱ぎ散らかして、彼女の上に覆い被さる。
「好きにして…」
呟くような彼女の言葉に頷いて、おずおずと手を伸ばして乳房に触れた。
「んっ…」
鼻にかかったような可愛らしい声がこぼれ、気を良くした僕はそのふくよかな乳房に夢中になる。
全体を捏ねたり、乳首を指で転がしたり、舌でつついてみる。エルフは身体をくねらせ、時折か細く美しい声で鳴いた。頭を振り、顔にかかった長い髪をかきあげる仕草がとびきり美しい。
調子に乗って彼女の唇に顔を近付けると、やんわりと押し返された。
「それは、駄目」
僕は少し不満だったが、すぐにエルフは腕を伸ばして僕の頭を抱き、足を僕に絡ませてきた。エルフの言わんとしていることを察し、僕は唾を飲んで彼女の足を大きく開かせる。
露になった秘裂に指を這わせると、くちゅ、と小さな音を立てた。エルフの顔色をうかがうと、責めるような、或いはねだるような目で僕を見ていた。
もっとじっくり彼女の反応を楽しみたかったけど、これ以上我慢出来なかった。僕はエルフの秘裂にいきり立った陰茎をあてがい、彼女の瞳をのぞきこんで最後の確認をする。
「……本当に、良いの?」
エルフが視線をそらして小さく頷くのを見るや、僕はゆっくりと腰を突き出して彼女の中に押し入った。初めて味わう快感に時折動きを止めながら、時間をかけてなんとかすべてをエルフの中におさめた。
本当は滅茶苦茶に腰を振って彼女の身体を貪りたかったけど、それをやったらすぐにでも果ててしまう。ノロノロと腰を引いて、慎重に腰を沈める動きを何度か繰り返していると、エルフが苛立ったように息を吐いた。
「もっと、激しくして頂戴。焦らされるのは嫌いなの」
「そ、そんなこと言われても……あっ、ちょっと!」
情けない声を出した僕にため息をつくと、エルフは僕に強く抱き付いて素早く体勢を入れ替えた。エルフが上になり、その体重でより深く僕のモノが彼女に入り込む。
エルフが髪をかきあげて、身体を上下に揺らした。彼女の身体が跳ねるのに合わせて、緩急を持って締め付けられる。
形の良い乳房がユサユサと揺れる眺めがたまらない。僕はシーツを握りしめ、必死に快感に耐えていた。
気持ち良いのか、次第にエルフの唇からも喘ぎが出始める。高く愛らしい彼女の喘ぎ声は、まるで歌を歌っているようだった。
しかし残念ながら僕にはそれを聞く余裕なんてなかった。喉の奥から絞り出すように声を上げる。
「エルフ、もう…やめて……出るっ…!」
泣きそうな僕の声に、エルフは上下の動きを止めた。かわりに円を描くようにグリグリと腰を回してくる。
これはこれで気持ち良いが、我慢出来ないほどではない。ほっと息をついた僕を見下ろして、エルフが心底楽しそうに笑った。
「良いわよ。私の中に思いっきり出して」
「良くないよ……うあっ!?」
エルフの身体が先程よりも激しく跳ねた。彼女の“歌声”にも艶がこもり、金色の髪がキラキラと踊った。
「エルフ、僕…もうっ……うああっ!!」
再三の刺激に耐えきれず、僕はとうとうエルフの中に精を吐き出してしまう。ビクンビクンと何度も脈打って、今まで出したことないくらい大量に出したと思う。
エルフも動きを止めてそれを受け止め、うっとりと目を細めていた。
頭が真っ白になるくらいの快感に呆然と天井を見上げていると、再びエルフが腰を動かしはじめた。射精したばかりで敏感になっていた僕の粗末なモノは、たちまちかたさを取り戻してしまう。
涙目になってエルフを見上げると、エルフもまた快楽に溶けた妖艶な笑みを浮かべていた。その笑顔を見た瞬間、僕の中で何かが吹っ切れる。
「エルフ!」
「きゃあっ?!」
身体を起こし、エルフをベッドに押し倒す。驚いて身体をよじるエルフの小さな尻を掴み、力の限り彼女の中を突き上げた。
深く突き入れ、ぎりぎりまで引き抜くと、先に注がれた僕の精液が掻き出される。それだけで僕は彼女を蹂躙しているような錯覚に陥り、より強く突き上げる。
エルフの“歌声”も次第に甲高く、熱のこもったものになって、僕はますます行為に酔いしれる。気まずさや後ろめたさとか背徳感みたいなものは、とうの昔に吹き飛んでいた。
「エルフ、エルフ!くっ、また…っ!」
「あっ、あんっ、中に、出してぇっ!」
ギュッとエルフの中が締まり、僕を強く締め付けた。僕も一際強く彼女に腰を打ち付けると、更に腰を押し付けて二度目の精を放つ。
「エル、フ……うあっ!」
「んぅっ、熱いのが……あっ、ああああっ!!」
エルフの身体が大きく震え、精を搾り取るように蠢いて僕のモノをしごきあげた。立て続けに二度の射精で流石に疲れていたが、女の子の絶頂を目の当たりにして、よくわからないけれど物凄く興奮した。
僕はまたエルフの腰を掴み、猛然と突き動かす。そこで初めてエルフは慌てたように僕の手を掴んだ。
「待って、まだ駄目っ!」
「なんでだよ。僕の言うことは聞いてくれなかったじゃないか」
「とにかく駄目なの!お願いだからもう少し待って……あ、ああっ!」
往生際悪く言いつのる彼女を振りきって、僕はエルフを激しく攻め立てる。本当に悲鳴をあげているような喘ぎに、彼女を犯している気さえした。
その夜、僕は何度もエルフの中に射精した。長い髪を振り乱して“歌う”エルフは、とても綺麗だった。
彼女の歌声は僕が今まで聞いた中でも最高で、最低なものだった。
カーテンの隙間から入る外の色が僅かに明るくなった頃、腕の中のエルフが動く気配を感じた。
あまりにも疲れていて眠かった僕は、トイレか何かだと思い再びの眠りに落ちていった。外から閉ざされていたはずのドアが開いて、小さな音を残して閉められた。
そして目が覚めたときには、太陽はだいぶ高い位置にきていた。先に行ってしまったのだろう、傍らにはあのエルフはいない。
起こしてくれれば良かったのに、とこの場にいないエルフに文句を言いながら、飛び起きた僕は足元に散らかっていた制服を適当に着ける。
大慌てで階段を掛け降りる途中で、のんびりした足取りで階段を上ってくるヒューマンに出くわした。真っ青な顔で謝る僕に、ヒューマンは少しだけ暗い笑顔を返してくれる。
「ああ、大丈夫。今日はどうせ休みだから、気にしなくて良いよ」
「……は?どういうことだよ、それ」
「新しいメンバーが見付かるまで、探索は休もうと思ってさ」
「新しいメンバー?」
おうむ返しに訊きながら、僕は嫌な予感に襲われていた。ヒューマンはおどけたように肩をすくめて、珍しくため息なんかを吐き出した。
「エルフが退学したんだって」
「エルフが退学?!」
馬鹿みたいにヒューマンの言葉を繰り返しながら、僕は目の前が真っ暗になる気分だった。
まず間違いなく、エルフが最後に会ったのは僕だ。もし朝方のあのときにエルフに声を掛けていたら……彼女を引き留めることができたのかも知れない。
気付けば僕は頭を抱え込んで、階段の踊り場に蹲っていた。僕の肩にヒューマンの手がかかり、哀れみの声が降ってくる。
「気に病むなよ。お前のせいじゃないからさ」
「でも、僕…」
「まあ、元々何考えてるかわからない奴だったし。……お前だって、一月もヤれば飽きてたよ。うん」
「なんだって!」
ヒューマンのあんまりな言いぐさに、僕は彼に掴みかかっていた。だが、僕に胸ぐらを掴まれてなお、ヒューマンは僕を哀れみの目で見ている。
その彼の眼差しで全てを悟ったような気がして、僕はヒューマンから手をはなして項垂れた。
彼にとってエルフを失ったことは、仲間がいなくなったということではないのだろう。言うなれば、便器が壊れたくらいの感覚なのだ。代わりは探せばいくらでもある。
突然黙り込んだ僕を不審に思ったのか、ヒューマンが再び僕の肩に手を触れる。僕はそれを振り払い、ヒューマンを見て笑った。
「僕も、パーティを抜けるよ。君とはやっていけないみたいだ」
本当は睨み付けて殴り飛ばしてやりたかったけど、もはやそんな気力もなかった。どうせ彼にとって、僕の代わりも探せばいくらでもあるのだから。
僕は困惑するヒューマンに背を向けると、覚束ない足取りでなんとか自分の部屋に帰りついた。ドアに鍵をかけ、ベッドに倒れ込んで枕を抱えると、暗くなるまで泣き続けた。
オイオイと泣き続ける僕の嗚咽は、あまりにも情けない歌だっただろう。
その後、僕は他の学校の先輩たちのパーティに入り、またついて歩くだけで精一杯の毎日を送っている。行く先々の街でさりげなく彼女の姿を探したけど、あの美しいエルフは僕の前に現れることはなかった。
けれども、時が経つにつれこんな話を耳にするようになる。期待の新人として彗星の如く現れた、可憐な歌姫の話。
とびきり美しいエルフの女の子は、今日もラジオの向こう側で歌っているのだと、僕は信じることにした。
以上お粗末。
時代劇があるらしいからラジオもテレビもきっとあるはず。
むしろそれ系のメディアがなかったらアイドル学科の卒業後の進路が心配すぎる。
>>186 乙
ととモノの世界の文化レベルってわかんないよな。
電気はいくらでも作れそうなんだけど。
>>173 らめぇぇぇぇぇぇ!!!
ユリシーズ呼んじゃらめぇ!!
というかゼロに戻すとかいわないでピクシーの決め台詞が、ピクシーが泣いてる!!
青き清浄なる世界の為にとか言って魔法陣起動させないでぇぇぇ!!
そのうちディモレアさんが鬼神とか呼ばれ始めたりしたら、うわぁぁぁぁ!!
すいません、気が触れました。
乙です。このスレだけで5回目の投下……頑張ってください。
まだ容量は半分あります。つまり10回までは……
とりあえずさっさと書こう。俺。
メディアの話ならパルタクスには漫画の単行本がある。たぶん印刷技術もかなり高い筈
AK-B48がカラシニコフと同様の自動小銃だとすると
ある程度の品質を維持する必要があるかな
銃弾に信頼性がないと頻繁にジャムったりして使い物にならんはず
てか、学校があって、統一されたデザインの制服が支給されてるって事は
あの世界はかなり高水準の生活レベルを維持してるよな
少なくとも第二次産業革命以降、19世紀初頭と同等ではなかろーか
生徒と言え伊達に命賭けてないからな
冒険者のいるところは迷宮の発掘品で技術レベルも上がっていくだろう
家屋とか移動手段が微妙なのは技術発達が迷宮品任せだからか?
この世界で文化レベルとか気にしたら負けだと思ってる
ターンAの世界ぐらいの文化レベルはありそう
193 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 01:05:08 ID:gwZcVo7I
というか銃とかの管理ってどうしてるんでしょうね?犯罪に使用されるケースもありそうだしねえ。学園側が責任取るみたいな感じなんでしょうかねえ?
写真があるから、カメラもあるんだろうなあ。アイドルのブロマイドとか売られてそう。
生徒手帳によると、交通手段に馬・竜があり。武器及びそれに準じるものは学校に届出が必要。
てかこれ、全寮制と思ってたら通学手段云々言われてたり、登校停止とかあったり、この学校はどういう体制とってるんだ?
195 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 01:50:32 ID:r17LAOVW
寮が学園の敷地内にあるとも限らない..とか?
朝、生徒達と共に寮から学園に出勤し、
夕、生徒達と共に寮に帰るトレネッティさん
ん?てことは、近いうちにロッシ先生が寮監に?..gkbr
公式絵とか見る限り、この世界のフェアリーって、手のひらサイズじゃなくて、
クラッズと大差ないサイズだと思うんだけど、どうなんだろ。
198 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 19:39:16 ID:r17LAOVW
スフォリアは
↑悪い途中で書き込んだ。
スフォリアは釣り針を武器にするイベントなかったか?
釣り針が武器とか一寸法師級のサイズだぜ。
あの世界の魚のサイズを見れば問題無い
んー、そうするとやっぱりヒューマン×フェアリーのエロは難しいか……
ジョルジオは2メートル近い巨漢らしいし、イラストのスフォリアはオリーブと同じ程度に見える
体が小さく見えるのはそういう幻惑だって説もあるし、ほんとにあいつらはよくわからん
あれだ、基本は小さいけど個体差がものすごく大きいとか、伸縮自在なんだよきっと
関係ないけど1のフェアリー♂は多分おっぱいが大好きだと思う
206 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 14:07:57 ID:+SSiOUTc
ある意味この世界奥深いよねえ、突き詰めれば謎出てくるし。まあそうじゃないとととモノプレイできんわ
>>203 体格差があるからこそ可能なエロだってあるんだぜ?
>>204 体格差もいいが、年齢差もなかなかだぞ。
数百年生きるエルフやバハムーンの精神年齢16歳が実年齢の16歳と限らないし。
ノームも依り代入れ替えればいくらでも生きれそうだし、ディアブロスなんてまず寿命で死ぬかどうか。
そういえばグノーさんもそうやって若返って生徒やってたな。
逆にスタミナさえ切らさなければロストヒューマンのように長生きできる。
なんだ、なんでもありじゃないか。
100人あれば100通りのととモノ。の世界。その緩さがいい。
「ノームに食事が必要か?」とか「エッチは可能か?」とか、
いくらでも紛糾しそうな火種はあるけれど、作者の世界観に深く
干渉しないここの雰囲気はとても好き。
オープニングを聞くとアイドル学科のディア子、エル子、セレ子、ノム子にが歌ってる幻視をするのは俺だけだろうか
連続ドワ子になってしまうけど、お蔵入りもなんなので前々回のもう片方のグループを。
そろそろ書いたり投下したりする暇がなくなりそうなので、悔いのないようにと…。
注意としては3Pもので二穴責めあり。苦手な方はご注意を。
それから冒頭部分は省いてるので
>>102を参照してください。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
フェルパーが仲間外れにされたまま、長い長い一日が終わった。翌朝、クラッズが目を覚ますと、隣から苦しげな息遣いが聞こえた。
「ん……ドワちゃん…?」
そちらに目をやると、ドワーフは苦しげな顔で、ハァハァと荒い息をついている。
「ド、ドワちゃん!?どうしたの!?大丈夫!?」
「うぅ……クラッズちゃん……おはよ…」
「いや、おはようじゃなくって……ドワちゃん、平気?風邪でもひいた?」
「………」
ドワーフは答えない。とりあえず体に触れてみると、明らかに火照っている。しかし鼻に触れてみると、こちらは健康そうに湿っている。
「……ドワちゃん、どっか痛いとかある?保健室行く?」
「う、ううん……保健室は、嫌…」
「う〜ん、一回ガレノス先生に診てもらった方がいいと思うんじゃけど…」
「風邪とか……病気じゃないから、大丈夫…。でも、ごめん……今日は、休ませて…」
なぜ病気ではないとわかるのか疑問に思いつつも、クラッズは彼女の言葉に従うことにした。それに、体は火照っているものの、鼻は
確かに湿っているので、病気とはまた違ったものという可能性もある。
とりあえず、朝食を取ってくるついでにヒューマンに知らせようと思い、クラッズは部屋を出ると学食に向かった。あの状態のドワーフが
どれだけ食べるかは不明だが、ともかくも思いつく限りの食べ物を取っておく。
「おうクラッズ。今日はずいぶん食うな」
後ろから声をかけられ、クラッズは振り向いた。
「違う違う。これ、ドワちゃんの分じゃよ」
「そういや、ドワーフいないな。どうしたんだ?」
「それなんじゃけど、ちょうどよかったー。あのね、ドワちゃん体調悪いみたいなの」
「え、あいつが?昨日まであんなピンピンしてたのに…」
「うん。じゃから、少し気になってるんじゃけど……ヒュマ君も、お見舞い来る?」
「もちろん。ついでに様子も見たいし」
ヒューマンがそう答えると、クラッズはにんまりと笑った。
「じゃ、ついでにこれ持ってね」
「……そのために呼んだんじゃねえだろうな?」
笑顔で差し出される、料理満載のトレイ。ヒューマンはすっかり呆れつつも、それを受け取る。
せっかくなので三人揃って食べようという話になり、二人は三人分の料理を持って部屋へと向かう。もっとも、その大半はヒューマンが
持たされているのだが。
部屋のドアを開けると、中から苦しげな息遣いが聞こえてきた。かと思うとすぐに、ふんふんと鼻を鳴らす音が聞こえる。
「……ヒューマン、君…?」
「お、よくわかったな。ドワーフ、大丈夫か?」
「ただいまードワちゃん。ご飯持って来たよ」
「主に俺がな」
さほど大きくない机に何とかトレイを載せ、ヒューマンはドワーフに近づいた。だが、なぜかドワーフは顔を逸らしてしまう。
「どうした?機嫌悪いのか?」
「………」
一層苦しげな息をつき、ドワーフは目を瞑る。熱でもあるのかと、ヒューマンは彼女の耳を摘んだ。
「……微熱、か?でも、熱っぽいのとはまた違…」
呼吸に苦しげな呻き声が混じり、直後、ドワーフは口を開いた。
「う……うぅ…!も……もう、ダメぇ…!」
「え?何が……うわっ!?」
ヒューマンが聞き返そうとした瞬間、ドワーフは彼の腕を掴むと、思い切り引き寄せた。そして、バランスを崩したヒューマンの体を、
力いっぱい抱き締める。
「えっ!?ちょ、ドワちゃん!?」
「ヒューマン君!!ヒューマン君!!」
「ちょっ……おいドワーフ……うっぷ!」
「ねえヒューマン君、しよ!!私のこと、いっぱい抱いてぇ!!」
人が変わったように叫ぶと、ドワーフはヒューマンの口元を舐め、腰をぐいぐいとヒューマンに押し付ける。
「ヒューマン君、欲しいのぉ!!私の中に、ヒューマン君の精液いっぱい出してほしいのぉ!!」
「ちょっとちょっと、ドワちゃん!?いきなりどうしちゃったの!?」
ヒューマンは何とかドワーフの腕を振り払うと、とにかくベッドに押さえつけた。しかし、ドワーフはいつにも増して強い力で、
彼の腕を易々と押し返す。そこにクラッズが加勢し、二人は片腕ずつドワーフの腕を押さえ込んだ。
「やぁん!ねえヒューマン君、しようよぉ!!ヒューマン君のおちんちん、入れて欲しいのぉ!!」
普段なら絶対、口に出さないようなことを叫びながら暴れるドワーフに、二人は顔を見合わせた。
「……おい、クラッズ。どうしたんだこいつ?」
「いや、あたしも全然……昨日まで何ともなかったのに…」
その時ふと、ヒューマンは気付いた。
「まさかとは思うけど、こいつ発情期じゃ…?」
「え?……ああ、言われてみればそんな感じじゃね」
「放してよぉ!!ヒューマン君、入れてよぉ!!赤ちゃんほしいのぉ!!お腹の中、ヒューマン君の精液でいっぱいにしてよぉ!!」
なおも叫び続けるドワーフに、クラッズがそっと顔を寄せた。
「ねえ、ドワちゃん」
「う〜……なぁに…?」
「さっきからヒュマ君ばっかりじゃけど、あたしじゃダメ?」
クラッズが尋ねると、ドワーフは少し悲しげに目を逸らした。
「だって……出来るんなら、クラッズちゃんとの子供だって欲しいけど、クラッズちゃん女の子だもん…」
「あ〜、つまり赤ちゃん欲しくなっちゃってるんじゃね」
何とも厄介だと思いつつ、クラッズはヒューマンの方へ視線を移す。と、彼の表情の変化に気付き、クラッズは表情を改める。
「ヒュマ君、どしたの?」
「いや……女の子にあんなこと言われまくって、我慢するのも辛いなーってな…」
視線を落とすと、彼のズボンはこんもりと盛り上がっている。
「……するつもり?」
「……正直、してえ」
「でも待ってよ。まさか、ドワちゃん共々退学する気なんてないでしょ?仮にそうじゃとしても、ドワちゃんは置いてって」
「地味にひでえな、お前」
「まあ、でも、気持ちはわかるよ。それに、ドワちゃんも鎮めてあげなきゃいけないしね」
そう言うクラッズの顔には、いつもの楽しげな笑みが浮かんでいた。
「ふふふ。ドワちゃん、い〜っぱい気持ちよくしてあげる。今日は一日、いっぱい遊んじゃお」
言いながら、クラッズはドワーフから手を放し、服を脱いでいく。
「俺は我慢しなきゃならねえってのに、お前は…!」
「あ〜、ちょっと待っててヒュマ君。あとでちゃんと、ヒュマ君もさせてあげるから」
自身の服を全て脱ぐと、クラッズはドワーフのショートパンツに手をかけた。
「クラッズちゃん……ほんとに、ヒューマン君ともさせてくれる…?」
「ほんとじゃって。でも、その前に準備しなきゃね〜」
下着ごとショートパンツを脱がせると、ドワーフのそこは既にぐっしょりと濡れていた。下着に染み込んだ愛液が、彼女の秘部に
つぅっと糸を引く。
「うわ、すっご……前戯要らずじゃね。でも、あたしはしたいから、ドワちゃん付き合ってね」
軽い調子で言うと、クラッズはドワーフに優しく唇を重ねる。普段なら、ドワーフはそれに応じるという程度なのだが、
この時のドワーフはクラッズの頭を抱き寄せ、貪るような激しいキスで応えた。さすがにその動きは予想できず、クラッズは驚いて
唇を離そうとするが、ドワーフはしっかり捕まえたまま放さない。
「んうっ!んんんっ!!んー!!」
「はぁっ!はっ、はっ!クラッズちゃん、気持ちいいの、もっと…!ふん、んん…!」
クラッズは必死に手を動かし、ヒューマンに助けを求める。それに気付き、ヒューマンは慌ててドワーフの手を引き剥がした。
「おいおい、大丈夫か?」
「ぶはっ!ドワちゃん、いきなり激しすぎじゃよ……びっくりした…」
「あうぅ〜……気持ちいいの足りないよぉ…」
「ゆっくりしたいけど、ドワちゃんにはじれったいだけか……ちょっと残念じゃけど、ヒュマ君も待ってるし、本番いこっか」
その言葉に、ドワーフは情欲に潤んだ目でクラッズを見つめる。
「ヒュマ君、ちょっとそこのクローゼット開けて、あたしの荷物ん中にあるの取ってくれる?」
「お前の?って、どれ……ああ、これか。で、この中のどれを取れって?」
「すぐわかると思うから、早く」
「わかると思うったって……うわ!?」
突然、ヒューマンが驚きの声をあげた。その声を聞き、クラッズは笑う。
「ね、わかったでしょ?それ、こっち投げて」
「お前……こんなの、いつのまに…」
彼の手にあるのは、一見すると露出度の高い女物のショーツに見える。ただし、股間には男性器を模した物体が固定されていた。
種族柄なのか、それはやや細めの作りである。
「ちょっと友達にね〜」
「お前の友達って…」
「ま、あたしはこういうの使うより、指とかでじっくりするのが好きなんじゃけど……ドワちゃんは、こっちの方が喜びそうじゃからね」
異様に慣れた手つきでそれを身に付けると、クラッズはドワーフにそっと近づく。
「ね、ドワちゃん。後ろからしてもいい?」
「うん。クラッズちゃんがしたいんなら、いいよ」
ドワーフは大人しく後ろを向くと、四つん這いになって腰を上げる。クラッズがその腰を掴むと、ドワーフはゆっくりと
尻尾を上げる。
「ふふ、いい子じゃね。じゃ、入れるよ」
先端をドワーフの秘裂にあてがうと、クラッズはグッと腰を突き出した。
「んああっ!は、入ってくるよぉ!」
背中を反らし、ドワーフは嬉しそうな声をあげる。
「クラッズちゃん……もっと、もっと奥まで入れてぇ!」
「言われなくても、ちゃんと入れてあげる」
クラッズはにんまりと笑い、ドワーフの腰を掴むと、思い切り腰を突き出した。一気に根元まで突き入れられ、さすがにドワーフは
一瞬苦悶の声をあげた。
「あぐっ!……っふあぁ、クラッズちゃん、もっとぉ…!」
それでもなお甘い声で快感をねだるドワーフに、クラッズは満足そうな笑みを浮かべた。
「今日のドワちゃんは、すっごく淫乱じゃのぅ。ふふ……気持ちよく、させてあげる」
言いながら、クラッズはドワーフの中から引き抜いた。愛液に塗れた張型が、秘裂との間に糸を引く。
「え……どうして抜いちゃうのぉ?抜いちゃやだよぉ」
不満げに言い、ドワーフは誘うように腰を振ってみせる。
「すぐ入れてあげるって。ちゃーんと、尻尾上げててね」
だが、今度はドワーフの秘裂ではなく、尻尾の付け根の穴に何かが押し当てられた。
「えっ!?ちょ、ちょっとクラッズちゃん!?そこ違うよぉ!」
「大丈夫。すぐ気持ちよくなるって」
「やだやだ!お尻はやだってばぁ!やめ…!」
グッと、クラッズが腰を突き出した。ドワーフはビクリと体を震わせ、必死に入り口を締め付けて侵入を拒む。
「うあぁ…!クラッズちゃん、やめてぇ…!」
「ほらほら、もっと力抜いて。締めてると痛いよ?」
入り口をこじ開けるように、クラッズはさらに力を込める。ほんの僅かに入り込む感触があり、ドワーフはますます強く締め付ける。
「うあぁっ…!あっ……っく!」
侵入を諦めたかのように、クラッズが力を緩める。それにホッとし、ドワーフが一瞬力を抜くと、それを見計らっていたように再び
クラッズが腰を突き出す。
「ぅあう!っぐ、うっ……はぐぅ…!」
押し付け、力を緩め、再び押し付けるという行為が繰り返される。どう抵抗しても、少しずつそこは解されていき、まして愛液に塗れ、
滑りの良くなったそれは、少しずつドワーフの中に入り込んでいく。
「ぐっ……あぅ…!んぐっ……はぁ……はぁ……ふああっ…!」
「ふふ、もうすぐ先っちょが入りそうじゃよ。ドワちゃん、もっと力抜いて」
「やっ……やだよぉ…!お尻なんて……やだ、あっ!?ああっ!!うああぁぁぁあああ!!」
とうとう、先端が入り口を押し分け、彼女の中に入り込んだ。同時に、ドワーフの背中が反り返り、全身が強張る。
「い、痛……ぁ…!クラッズちゃん……ぬ、抜いてぇ…!」
「や〜じゃよ。ドワちゃんが気持ちよくなるまで、抜いてあげない」
「こ、こんなの気持ちよくなるなんて……いっ!?クラ……あぐ、あああぁぁ!!!」
クラッズがさらに腰を突き出し、根元まで一気にドワーフの体内へ飲み込まれていく。その苦痛と圧迫感とに、ドワーフは悲鳴を上げる。
パン、と腰がぶつかり合う音が響き、それと同時にドワーフの悲鳴も止まった。代わりに、苦しげな息遣いが部屋の中に響く。
「かふっ……クラッズ、ちゃん…!痛い……痛いよぉ…!」
「最初は痛いものじゃって。でも今のドワちゃんなら、すぐ気持ちよくなるよ、ふふっ」
ゆっくりと、クラッズが腰を動かし始めた。ドワーフはシーツをぎゅっと握り締め、その痛みを堪えている。
痛みと、体内の凄まじい異物感。それを少しでも和らげようと、ドワーフは腹に力を入れてみたり、逆に力を抜いてみたりと、
必死に逃れる術を探す。やがて、突き入れられるときには力を抜き、引き抜かれるときに力を入れると、少し痛みが和らぐことに気付く。
だが、そうしてやっと痛みから逃れると、今度はそれよりも厄介な感覚が生まれ始めた。
「うあぁ……あっ、あ…!クラッ……ズ、ちゃん……もう、やめてぇ…」
その声に、微かな甘い響きを感じ取り、クラッズはにやりと笑った。
「どうして?ドワちゃん、こんなに気持ち良さそうなのに」
「き……気持ちよくなんか…」
「嘘はダメじゃよー、ドワちゃん。ほら、ドワちゃんのここ」
言いながら、クラッズはドワーフの秘裂に指を這わせた。
「ふあぁ…!」
「ほら、こんなにびしょびしょじゃよ?」
クラッズはその手を、ドワーフの目の前に晒す。そこにはべっとりと愛液が張り付き、ぬらぬらと光っていた。
「ち……違うもん…!それは、違う……もん…!」
「そ?じゃ、気持ちいい方もいじったげるね」
ニヤニヤと笑いながら、クラッズは再びドワーフの秘部へと指を這わせた。そして、敏感な突起をグリグリと弄る。
「うあぁっ!?クラッズちゃん、やっ……今はそこ、ダメぇ!」
「どうして?気持ちいいでしょ?ふふっ」
「い……今はダメ…!う、あ、あ……お、お願いクラッズちゃん、もうやめてぇ!!」
体をガクガクと震わせ、ドワーフは必死に叫ぶ。いつもより遥かに敏感な体は、既に絶頂を迎えようとしていた。それに気付くと、
クラッズは小悪魔のような笑みを浮かべた。
「そう。じゃ、やめてあげる。ほら、イッちゃっていいよ!」
クラッズはドワーフの腰を掴むと、さらに激しくドワーフの腸内を突き上げた。
「や、やだぁっ!!やだやだ、やっぱりやめちゃ……うあぁ!!クラッズちゃんお願い、動かないでぇ!!!」
悲鳴に近い叫びを上げ、ドワーフはクラッズの手から逃れようと、必死にシーツを引っ掻く。そんな彼女をあざ笑うかのように、
クラッズはより強く腰を叩き付けた。
「ああぁぁ!!お、お願……や、だぁ……う、あああぁぁ!!!」
ドワーフは思い切り背中を仰け反らせ、全身を激しく震わせた。それを満足げに眺め、クラッズは彼女の中から引き抜いた。
そしてぐったりする彼女の耳元に、そっと唇を寄せる。
「ふふ。ドワちゃん、お尻でイッちゃったね」
「あ……ぁ……ち、違うぅ…」
「違わないでしょ?あたし、お尻しか責めてなかったんじゃけどな〜?」
そう言われてしまうと、ドワーフは何も言い返せなかった。ありえない場所を責められ、達してしまったという事実だけが、絶望的な
響きを持ってのしかかる。
「とりあえず、ドワちゃんイッちゃったから、交代じゃね。ヒュマ君、こっち来て」
その異常な光景に見惚れていたヒューマンは、クラッズに呼ばれて我に返った。
「あ、ああ」
「ヒュマ君も、しっかり準備しないと……って、さすがにもうおっきくなってるんじゃね。あはは」
言いながら、クラッズはヒューマンのモノを掴み出すと、先程手に付いたドワーフの愛液を丁寧に擦り付ける。
「ん〜、今までちゃんと触ったことなかったけど……真ん中の方が、先の方より太くなるんじゃね」
「く……まあ、人にもよるかもしんねえけど」
「でも根元は細いんじゃね〜。それじゃ、真ん中までは、ゆっくり入れてあげてね。その後は、一気に根元まででいいからさ」
「……つまり、俺もそこに入れろと」
「退学する気がないんならね〜。大丈夫大丈夫、中もきれいみたいじゃし」
そういう問題ではないと言いたかったが、ヒューマンとしても我慢の限界が近かった。また、普段と違う、異常な行為をするという
ことに、ある種の興奮を覚えていたのも事実である。
後ろからドワーフの体にのしかかる。それに気付くと、ドワーフは尻尾を内股に巻き込んだ。
「やぁ〜……ヒューマン君、そっちはもうやだよぉ…」
「……ドワーフ、悪い」
尻尾を掴み、強引に上げさせる。ドワーフは力なく抵抗してくるが、そんなものでヒューマンが止まるわけもない。
屹立したモノを押し当てると、怯えたように穴がぎゅっと縮こまる。その力が緩むのを見計らい、ヒューマンは腰を突き出した。
「いっ…!やだ……ヒューマン君、ダメっ…!ふ、太すぎるよぉ…!」
思わず口走った言葉に、ヒューマンのモノがさらに硬くなる。それが少しずつ、無理矢理押し広げて侵入する痛みに、ドワーフは
悲鳴を上げる。
「い、痛いっ……痛いよ、ヒューマン君…!無理だよ、入らないよぉ…!抜いてぇ…!」
「悪いドワーフ、もうちょっと我慢してくれ…!」
「無理だって……うあぁっ!あっ、ぐっ!!い……痛、ぁ…!」
ようやく、先端部分がドワーフの中に入り込む。既にドワーフのそこは限界と思われるほどに広げられ、ヒューマンのモノを
きつく締め付けてくる。その締め付けが、彼に強い快感を与える。
できれば一気に突き入れたいところだったが、先のクラッズの言葉と、今のドワーフの痛がりように、ヒューマンは一度動きを止めた。
「はぁっ……はぁっ……ヒューマン君、もう無理だよぉ……抜いてよぉ…」
涙声で訴えるドワーフの声は、とても可愛らしく聞こえる。また無理だとは言いつつ、少しずつ最初の様なきつさはなくなってきている。
「ドワーフ、力抜いてろ」
そう言って頭を撫でてやると、ドワーフはふるふると頭を振る。
「もう無理なのぉ…!お願いだから、抜いてよぉ…!」
鼻をグスグスと鳴らしながら、ドワーフは必死に訴える。
「お尻は、もうやだよぉ……入れるとこ違うのぉ…」
「だから、そっちはダメだって…」
「いつもの方なら、ヒューマン君の好きにしていいからぁ……いっぱい出していいから、もうお尻はやめてよぉ…」
さすがに、その言葉はヒューマンを躊躇わせるのに十分な力があった。が、一瞬戸惑ったヒューマンの肩を、クラッズが突付く。
「ヒュマく〜ん?ダメじゃからね〜」
「う……わ、わかってるって。ドワーフ、ごめん」
再び、ヒューマンが腰を突き出す。油断していたところを動かれ、ドワーフが悲鳴を上げる。
「やぁん!痛ぁい!!ヒューマン君、もうやめてぇ!!許してよぉ!!お尻切れちゃうよぉー!!」
「ドワーフ、もうちょっとだからっ……もうちょっとだけ我慢してくれっ…!」
「や、だ…!痛いっ!痛いっ!もう無理ぃ!!それ以上は、もぉ……あぐぅっ!」
既に半分ほどがドワーフの中に入り込み、一番太くなっている部分が侵入する。途端に抵抗がなくなり、ドワーフの締め付けによって、
むしろ引き込まれるように、根元まで一気に入り込んだ。
「がっ…!あっ…!……うあぁ……く、苦しいよぉ…!」
突然、腸内の奥深くを突き上げられ、ドワーフはあまりの圧迫感に涙を流す。さすがにヒューマンは罪悪感を覚えるが、それと同じか、
あるいはそれを上回るほどの嗜虐心も頭をもたげる。
苦しいとはいえ、無理に広げられる苦痛がなくなったためか、ドワーフの呼吸は少しずつ落ち着いてくる。それを見て取ると、
ヒューマンはゆっくりと腰を引いた。
「いっ!?だ、ダメぇ!ヒューマン君、抜かないでぇ!!」
「抜いてほしいんじゃなかったっけ?」
耳元に囁きかけると、ドワーフは涙に濡れた目でヒューマンを非難がましく見つめる。
「うぅ〜……クラッズちゃんみたいなことするぅ……だって、苦しいけど……入ってた方が、痛くないんだもん…」
「じゃあ、入れてた方がいいか?」
それを肯定したくともできず、ドワーフはただ尻尾の毛を膨らませている。
「それとも、やっぱり抜くか?」
「い、いじわる…。お願いだから……入れてて…」
聞くが早いか、ヒューマンは再び根元まで一気に突き入れる。
「あうっ!……うう、でもこれ……苦し…!」
「ドワーフ、悪いけど動くぞ。我慢できねえ」
ゆっくりと、ヒューマンが動き始める。ドワーフは背中を仰け反らせ、シーツを強く握り締める。
「うっ……あぁ…!あ、あまり、強くしないでっ…!」
普段と違い、根元ばかりが強く締め付けられる感覚。その局所的な快感を全体に広げるかのように、ヒューマンはゆっくりと腰を動かす。
とはいえ、普段とは違う感覚は新鮮でもあり、慣れない快感にヒューマンはあっさりと追い詰められた。
「ううっ……ドワーフ、出る!」
「うあ……お、お尻の中になんてやだよぉ…!ヒューマン君、ダメぇ…!」
「くっ……はぁ!」
思い切り突き入れ、ドワーフの腸内の奥深くに精を放つ。その感覚はドワーフにはわからなかったが、ヒューマンの様子から腸内に
出されたのだとわかる。
「うぅ〜……ダメって言ったのにぃ…!」
「……んなこと言ったって、抜けるか…」
「ね、ヒューマン君……もういいでしょ?普通にしようよぉ。お尻じゃなくって、こっちにいっぱい出してよぉ…」
「そ、それは…」
再び誘惑に負けそうになったとき、またもやクラッズがヒューマンの肩を突付いた。
「ダ・メ・じゃ・よ」
「……わかってるよ。ドワーフ、もうちょっと我慢してくれ」
ヒューマンが腰を動かし始める。終わったと思った刺激が再び訪れ、ドワーフの体がビクンと跳ねる。
「や、やだぁ!ヒューマン君、もう終わりだよぉ!お尻はもうやだっ、ダメぇ!」
さすがに少しずつ慣れてきたらしく、ヒューマンはそれまでより大きく腰を動かすが、ドワーフが痛みを訴えることはない。
「やだってばぁ!するなら前でしようよぉ!ヒューマン君、ダメ……あうっ!」
抗議する尻尾を掴み、それを引っ張り上げながら腸内を突き上げる。グチュグチュと湿った音が響き、突かれる度にドワーフの口から
押し出されるような吐息が漏れる。
「あぐっ……うあっ…!ヒューマン君、お願いだからぁ……ふぅ、あっ…!いつもの方がいいよぉ…!お尻やめてよぉ…!」
「ふ〜ん……ドワちゃんは、やっぱり前に欲しいんじゃね」
少し退屈してきたらしく、クラッズはドワーフの隣に腰を下ろした。
「だって、お尻なんて変だよ……それに、き、気持ちよくないし…」
「嘘はダメじゃよ〜。気持ちよくなかったら、ここ、こんなにならないでしょ?」
秘裂に触れると、そこは実際に見るまでもなく、クチュッと湿った音を立てた。
「それは、だって…」
「そっかー、ドワちゃん、こっちが寂しいんじゃね」
きらりと、クラッズの目が妖しく光る。さすがにドワーフも、その危険な気配に気付く。
「あうっ……な、何するつもり…?」
「決まってるでしょ?あたしが、こっちいっぱいにしてあげる。ちゃんと洗ったし、安心して」
言いながら、クラッズは再びペニスバンドを身に付ける。何をされるか悟ったドワーフは、咄嗟に逃げようと体を起こす。
「うわっと!ドワーフ、危ねえよ!」
危ういところで頭突きをかわし、ヒューマンはドワーフの体を抱く。
「やぁー!ヒューマン君、離してえ!クラッズちゃんやめてえ!ふ、二人同時なんて無理だよぉ!!」
「大丈夫じゃって、今のドワちゃんなら!ヒュマ君、ドワちゃん逃がさないでね」
「ダメダメダメぇ!!やだってば!!無理だって!!二本も入らないよぉ!!ヒューマン君放してぇ!!」
「危ねえって、お前は!!」
ドワーフは何とか逃げ出そうと大暴れするが、ヒューマンが本気で危険を感じたため、逆に全力で押さえつけられてしまう。
羽交い絞めにされ、まして腸内に突き入れられたままでは、ろくな抵抗もできない。そこへ、ドワーフをいたぶるように、クラッズが
ゆっくりと近づく。
「ク……クラッズちゃん、ダメ…!やめて……それだけは許してぇ…!」
「ふふ、怯えてるドワちゃんも可愛いなー。大丈夫、ちゃーんと気持ちよくしてあげる!」
先端を秘部へとあてがう。ドワーフは解放された尻尾でそこを隠すが、あっさりとどけられる。
「それじゃ、ドワちゃん。こっちもいっぱいにしてあげる」
「だ、ダメええぇぇ!!!」
ドワーフの悲鳴。それと同時に、クラッズは思い切り腰を突き出した。
「あっ……が…!かはぁ…!」
腸内にヒューマンのモノを入れられ、狭くなった膣内を無理矢理押し分けるようにして、一気に根元までが入り込む。
肺の空気を押し出されるような圧迫感に、ドワーフは呼吸すら妨げられ、ただ全身を強張らせている。
「うあっ……すげえ、きつい…!」
ヒューマンも、急に強くなった快感に呻き声を上げる。そんな二人を、クラッズは楽しげに見つめる。
「ふふ。二人ともいい顔じゃのぅ〜。あ、ヒュマ君、ドワちゃんあたしの腰に座らせてくれる?」
「あ……ああ、いいけど」
クラッズがベッドに座るように体勢を変え、ヒューマンは身動きの取れないドワーフをそこに乗せる。膣内の圧迫が強くなり、
ドワーフは苦しげな呻き声を上げた。
「うあぁ……お腹、痛いよぉ…!」
そんなドワーフの顔を、クラッズは愛おしげに見つめ、優しくキスをする。
「ドワちゃん、可愛い。ヒュマ君って、いっつもこうやってドワちゃん見てたんじゃね〜。二人がこの格好好きなの、わかるかも。
……でも、さ」
「ん?どうした?」
クラッズは困ったような笑顔を浮かべ、ヒューマンを見た。
「……ドワちゃん重くて、腰痛い……やっぱり、ドワちゃんの体勢変えて」
「今太ってるからな、こいつ…」
結局、クラッズは仰向けになり、ヒューマンはドワーフを四つん這いにさせる。一瞬、ドワーフは楽になったとホッとしたが、
すぐにヒューマンが強く腸内を突き始める。
「うあっ!やっ……ヒューマン、君っ……激しく、しないでえっ…!かふっ……お、お腹の中……擦れるよぉ…!」
しかし、ただでさえ物足りなかった刺激が強まり、しかもこの状況に興奮していたヒューマンには、その声は届かなかった。
ヒューマンが突くたび、ドワーフの体が揺れ、体内に突き入れられたものがゴリゴリと擦れる。
「あぐっ…!けほっ!お、お腹がぁ……はぐっ、あっ…!」
強すぎる圧迫感と、限りなく苦痛に近い快感。ドワーフはボロボロと涙を零し、だらしなく開かれた口からは獣のように舌が突き出され、
そこから唾液が滴り落ちる。
「ドワちゃん、いい顔……可愛いよ」
そんな彼女に、クラッズは優しく囁きかけ、その突き出された舌をねっとりと舐める。それが幸か不幸か、ドワーフの苦痛を和らげる。
「ふあ……あ、ぐぅ…!や……やだ、ぁ…!」
苦しげな呼吸の合間に、ドワーフは小さな声で呟く。
「やだ……よ…!かはっ…!私……こんなの……で…!」
快感に抗うように、ドワーフの全身が強張る。途端に、ヒューマンが呻いた。
「ぐっ……ドワーフ、そんな締めたら…!」
急に強くなった締め付けに、ヒューマンは一気に追い詰められた。動きは自然と速く荒くなり、ドワーフは跳ね上がった苦痛と、
それ以上に増した快感に悲鳴を上げる。
「や、やだぁ!ヒューマン君、動かないでえ!私……あぐっ!私、こんなのでイキたくないよぉ!!」
彼女の言葉に、クラッズはにんまりと笑顔を浮かべ、ドワーフの首をかき抱いた。
「ふふっ。ドワちゃん、否定しなくっていいんじゃよ。気持ちよければ気持ちいいで、いいじゃない」
「やだ、ぁ…!こんなので……私ぃ…!」
「ぐ、うぅぅ…!ドワーフ、出る!!」
一際強く突き入れ、ヒューマンは再びドワーフの腸内に精を放った。それと同時に、ドワーフもとうとう限界に達した。
「や……こんな…!あ、ああっ、あああぁぁぁ!!!」
思い切り全身を仰け反らせ、ビクビクと体を震わせるドワーフ。腸内もヒクヒクと震え、まるで精液を搾り取ろうとするかのように
蠢動する。
一番奥に精液を吐き出し、一度軽く引き抜いてから再び奥に突き入れ、最後の一滴まで彼女の腸内に射精すると、ヒューマンはようやく
自身のモノを引き抜いた。それを確認してから、クラッズもドワーフの中から引き抜く。
「ふあ……ぁ…」
そのまま、ドワーフはどさりとベッドに倒れこんだ。激しく犯され、まだ閉じきらない肛門から、精液がどろりと溢れ出す。
「ふ〜、楽しかったぁ!たまにはこういうオモチャもいいものじゃね〜、あはは!」
「……お前、本当に楽しそうだな、色々と」
上機嫌のクラッズに、ヒューマンは少し疲れた声をかける。
「そりゃね〜?こういうのは楽しむものじゃし」
「それはまあ、そうだろうけどよ…」
ドワーフがぼんやりした表情で、溢れ出す精液を指で掬った。それをぼうっとした顔で眺め、やがてそっと手を下ろす。
直後、それに気付いたクラッズがドワーフの腕に飛びついた。
「ちょっと待ったぁー!!!」
危うく膣内に挿入されかけた指を、クラッズは間一髪で止めた。
「やぁ〜ん!放してよぉ!!クラッズちゃん、邪魔しないでぇ!!」
「ダメじゃってばっ!!そんなの入れちゃダメ!!変な病気になったらどうするの!?」
「放してよぉ!!ヒューマン君の精液、こっちに入れるのぉ!!」
「ちょっ、ヒュマ君手伝ってー!!!」
何が起きたのか気付き、ヒューマンも慌ててドワーフの腕を押さえ込んだ。
「あっぶねえなこいつ!何が何でも妊娠しようとしやがる…」
「ヒュマ君、お風呂入れちゃお。お腹の中まで全部きれいにしなきゃ、危なくってしょうがないよ」
「やぁーん、ダメぇ!!せっかくヒューマン君の精液もらったのにぃ!!」
大騒ぎするドワーフを協力して押さえ込み、二人は必死の思いでドワーフを風呂に入れ、無理矢理全身を洗った。
「ふえぇ……せっかくもらったのにぃ……ひどいよぉ…」
全身ずぶ濡れになり、泣きべそをかくドワーフ。そんな彼女を、二人は呆れきった顔で見つめる。
「発情期って、厄介だな…」
「そうじゃねえ……ちょっと気持ちよくしてあげるだけじゃ、全然ダメみたいじゃね」
クラッズは溜め息をつくと、ヒューマンの顔を見上げた。
「ま、こうなったら一日中でも相手してあげて、すっきりさせちゃおうかな。で、ヒュマ君」
「ん?」
「ヒュマ君、しばらくここ立ち入り禁止ね」
「えええぇぇ!?」
ヒューマンとドワーフが、同時に叫んだ。
「ど、どうしてだよ!?」
「だって、さっきの見たでしょ?ヒュマ君がいる限り、ドワちゃんが妊娠しちゃう可能性は消えないんじゃから。出すなって言ったって、
どうせ無理でしょ?」
そう言われてしまうと、ヒューマンは何も言えなかった。
「やだよぉ!私、ヒューマン君とするぅ〜!」
「あたしとで我慢してね〜ドワちゃん。さ、わかったらさっさと出てく」
「飯もまだなのに……わかったよ…」
とぼとぼと部屋を後にするヒューマン。ドアが閉まると、クラッズはドワーフに飛びついた。
「ヒューマン君の精液、欲しいのにぃ…」
「ふっふ〜。さすがにそれは無理じゃけど、今日一日、ず〜っと気持ちよくしてあげる!それとも、あたしとじゃ嫌?」
「……嫌じゃ、ないけど…」
「よかった!それじゃドワちゃん、い〜っぱい気持ちよくしてあげる!」
満面の笑みを湛えるクラッズ。それは久しぶりに、ドワーフを独り占めできるという、私欲に塗れた醜くも純粋な笑顔だった。
翌日、ドワーフの部屋から一日中聞こえていた嬌声はやみ、代わりにクラッズの疲れた声が響く。
「……ドワちゃん……お、落ち着いた…?」
「クラッズちゃん、大丈夫…?」
ドワーフの声は、既に理性のない叫びなどではなく、いつもの声に戻っている。
「さすがに、一日中すれば落ち着くか……でも、まさかほんとに……一日中するなんて、思わなかったよ…」
言いながら、クラッズはだるい腕を必死に持ち上げ、自分の髪を結っている。
「あの……ご、ごめんね。平気?立てる?」
その隣で、ドワーフもクラッズのもう片方の髪を結っている。以前とはちょうど逆の立場に、クラッズは少し嬉しくも思ったが、
この時ばかりはお返しを受けた嬉しさではなく、ただの手伝いの意味として嬉しかった。
「立てなくはないけど……だる…」
「無理しなくていいよ。連れてってあげる」
「……ドワちゃんの体力って、すごいなあ…」
髪を結い終えると、ドワーフはクラッズを背負い、学食へと向かった。中に入ってみると、ヒューマンが一人で朝食を取っているのが
見えた。ドワーフが近づくと、ヒューマンはすぐに気付く。
「おう、ドワーフ……と、クラッズもか」
「ヒューマン君、おはよう」
「おはよ……はぁ…」
ドワーフはぐったりしたクラッズを席に座らせると、自分も隣の椅子を引く。だがそのままは座らず、椅子を横に向けると、
その上にちょこんと正座する。
「どうしたドワーフ?そんな座り方…」
言いかけて、ヒューマンはドワーフの少し怒ったような顔に気付いた。同時に、その理由にも気付く。
「……ほ、ほんとに、痛かったんだからね…!」
「いや、それは悪かったけどさ……そ、それより、お前ってこの時期、いつもああなのか?」
ヒューマンが無理矢理話題を逸らすと、ドワーフの耳がへたりと垂れる。
「う、ううん。あの、昨日は三日目で、一番辛いときで……で、でもっ、去年とかは全然そんなことなくってっ……あの、でも、
今年はヒューマン君の匂い嗅いだら……なんか、いつもと全然違って……我慢、できなくなっちゃって…」
ドワーフの声は徐々に小さくなり、最後の方はぼそぼそとよく聞き取れない声になっていた。
「赤ちゃん作る時期じゃもんねえ。そりゃ、男がいたら辛くなるよね〜」
「……もー!よく考えたらクラッズちゃんが、ヒューマン君に変なことさせたんじゃない〜!」
「じゃ、ヒュマ君と赤ちゃん作って退学が良かった?」
「………」
さらに非難を続けようとしたドワーフの口が止まり、やがて力なくうなだれると、ふるふると首を振った。
「でしょ?じゃから、しょうがなかったんじゃってば」
「……でも、だからって……まだすっごく痛いんだよぉ…」
「昨日は結構気持ちよさそうじゃったのにね」
「昨日はだってっ……あ、う……き、昨日も気持ちよくなかったもん…」
「ま、いいけどね。そういえばヒュマ君、フェル君見かけた?」
クラッズが尋ねると、ヒューマンは首を振る。
「いや、昨日から見てないな。ディアボロスなら見たけど」
「そっか。……あとで探しに行こうっと」
一昨日の彼の言葉を、クラッズは忘れていない。だが、その言葉に対する感情は、怒りではなく焦りになっていた。
というのも、ドワーフが今『ヒューマンの匂いを〜』と言っていたように、もしかしたら彼の言葉は悪気のない、極めて普通の
言葉だったのではないかと気付いたのだ。まして、ドワーフは発情期に入っており、その匂いがしていたとしてもおかしくはない。
なのに、自分はそれに気付かず、彼を悪し様に罵ってしまった。もし仮定が事実だとすれば謝らなければならないし、いずれにしろ
真意は問いたださねばわからない。
そんなわけで、クラッズは食事を終えると重い体を引きずり、フェルパーを探し始めた。ドワーフには手伝おうかと声をかけられたが、
彼女に運ばれた状態で謝っても、説得力というものがない。
最初に部屋へ行こうかと思ったが、窓の外は太陽が燦々と輝いている。ならば猫の性質が強い彼のこと。恐らくは屋上で日向ぼっこでも
しているだろうと思い、クラッズは真っ直ぐ屋上へ向かった。
ただでさえ重い扉を、それこそ全身で押し開けると、フェルパーが気持ち良さそうにゴロンゴロンとのたくっているのが見えた。
しかし音に驚いたのか、フェルパーは素早く飛び起きると、クラッズをじっと見つめる。
「あ、ごめん。驚かしちゃった?」
「え……クラッズさん…?」
どこか異質な驚きの表情を見せる彼に、クラッズは何の疑問もなく近づいた。しかし、その分だけフェルパーは後ずさる。
「……ちょっと、いきなり何?そんなに怒ってるの?」
「ち、違……で、でも近寄らないで…」
「なんで?」
「クラッズさん、その、体の臭いひどい…」
元々、彼の言った『臭い』という言葉について詳しく聞こうと思い立って来てはいた。しかし、普段から『におい』を、まして体臭に
関して言うことは失礼だと言う認識がある彼女にとって、その言葉は冷静さを奪うのに十分な威力があった。
「ちょっと、いきなり何それ!?そりゃあたしもひどいこと言ったかもしれないけど、それにしたってひどいでしょ!?」
言いながら、クラッズは猛然とフェルパーに掴みかかった。途端に、フェルパーはビクリと体を震わせる。
「臭いがひどいとか、ドワちゃんにもっ……あれ?」
そこでようやく、クラッズは自分が何をしに来たのかを思い出した。しかし、また同じ過ちをしたと悔やむ以前に、目の前で獣のような
眼光を湛えるフェルパーに、大きな危機感を抱く。
「え……えっと、フェル君…?」
「グ……ウッ…!ウウゥゥ……ガアァァ!!」
獣そのものの雄叫びを上げると、フェルパーは鋭い爪を振りかざし、クラッズの服を切り裂いた。
「きゃあぁぁ!?フェ、フェル君、何するのぉ!?」
「グアアァァ!!」
逃げようとした瞬間、フェルパーは彼女のスカートを掴み、腕力にものをいわせて引き裂く。
「ちょ、ちょっとやめて!!フェル君、落ち着いてよぉ!!」
さらに下着まで切り裂かれ、クラッズは思わずその場に屈みこんだ。その瞬間、フェルパーの手が彼女の首を掴み、あっという間に
地面に押し付けられる。
「痛っ!や、やめてよぉ!!フェル君やめてぇ!!」
「フーッ、フーッ!!」
「お願いじゃからやめてってっ……い、痛い!!」
首筋に鋭い痛みが走る。うなじにかかる荒い吐息に、クラッズはぞくりとする。
腰に腕が回され、強引に持ち上げられる。そこでようやく、クラッズはフェルパーが何をしようとしているのか悟った。
「い、嫌じゃよぉ!!フェル君お願い、やめてぇ!!あたし、そんなの嫌じゃよぉ!!」
「フーッ……フーッ!!」
フェルパーの手が、クラッズの腕を押さえつける。もはや抵抗のしようはない。
「い、嫌ぁ……あ、あたし、男相手なんか嫌ぁ…!ふ、ふえぇぇ……お願いじゃから……やめてよぉ…!」
あまりの恐怖に、クラッズはとうとう泣き出してしまった。その瞬間、背中に感じる気配が変わった。
「フーッ……フ、グゥ……かはぁ!」
いっそう熱い吐息を感じ、同時に首筋の痛みが消える。続いて、こじ開けるようにして彼の両手が開かれ、クラッズの腕を解放する。
「ぐす……フェル君…?」
「グウゥ……クラッズ、さん…!逃げ……テ…!」
絞り出すような声。だが、そうしたくても、フェルパーが覆い被さったままでは逃げられない。
「体……ドワーフさんの、匂い……それ、嗅ぐと……我慢、できない…!」
その言葉に、図らずもクラッズの目的は達成された。おまけに、それを嗅ぐとどうなるのかまで実演されている。
ただ、いい加減に逃げないと危ないのだが、フェルパーはこれ以上動いてくれない。
「あ、あの……フェル君、お願いじゃから、背中からどいて…!」
「う……ゥ…!こ、これ以上……我慢……デキナイ…!」
再び、フェルパーの手がクラッズの腕を押さえる。もはやなりふり構わず、とにかく大声を上げて助けを呼ぼうかと思った瞬間、
屋上のドアがガチャリと開いた。
「フェルパー、いる…」
「あ、ディアちゃん…!」
現れたのは、背中にいる彼の恋人であるディアボロスだった。二人の姿に、彼女は一瞬唖然とした。
「フェルパー、貴様ぁ!!」
一声叫ぶと、ディアボロスは猛然とフェルパーに掴みかかった。そして彼の胸倉を掴み、頭に角を叩きつける。
さすがにフェルパーが哀れになり、クラッズは必死でディアボロスを止め、それまでの経緯を説明する。その説明でディアボロスは
納得したが、フェルパーの風上に立っていたせいで、再び彼の様子が危険なものになる。幸い、ディアボロスが後を任せろというので、
クラッズは逃げるように屋上から引き上げた。
しかし、何とか逃げたはいいものの、上着もスカートも、ショーツまでズタズタにされてしまい、とても外を歩ける格好ではない。
とはいえ、ここでじっとしているわけにもいかない。とにかく、部屋まで誰にも会わないようにと祈りながら階段を下りる。
そして部屋へと続く廊下を曲がった瞬間、誰かが目の前に現れた。
「きゃあっ!?」
「おう、クラ……うわっ、何だその格好!?」
「……ああ、ヒュマ君かぁ〜…!よかったぁ〜!」
「どうした!?何があったんだよ!?」
ヒューマンはいつも身に付けているマントを、クラッズにかけてやった。サイズが極端に違うのは、この場合好都合だった。
「いやね、フェル君と会ったのはいいんじゃけど…」
再びそれまでの経緯を説明すると、ヒューマンも納得した。
「ああ、なるほどな……やっぱそういう理由か」
「あの、ディアちゃんまだ上にいるはずじゃから……様子、見てきてあげて」
「わかった。それに、俺もあいつに謝らなきゃいけないし、ちょうどいいや」
二人はそこで別れ、クラッズはさっさと部屋に向かう。それまでに数人の生徒とすれ違ったが、彼のマントのおかげで恥ずかしい思いは
せずに済んだ。
「おかえり、クラッズちゃ……あれ?どうしたの、その格好?」
「ただいま〜。ちょっとねぇ、色々あって…」
クラッズは三度目の事情説明をしつつ、マントを脱いで別の服へと着替える。ボロボロにされた服は、後で練成して元に戻そうと、
とりあえずその辺に放っておく。
「あ〜あ、お気に入りじゃったのに…」
「大変だったんだね……ごめんね、私のせいで…」
「あ〜、いいのいいの。別にドワちゃんのせいじゃないって」
不意に、ドアがノックされる。ドワーフが出てみると、そこにはさっき別れたばかりのヒューマンがいた。
「あれ、ヒュマ君?ディアちゃん達どうしたの?」
「それなんだけどな、あいつらいなかった」
「え、いなかった?いないわけないと思うんじゃけど…」
「すれ違いで部屋にでも行ったのかな」
「部屋、ね…」
あの状況で、二人一緒に部屋に戻ったとなると、その後の二人がどうなるかは容易に想像がつく。
「……今日も休みだな」
「……じゃね」
「みんな、ごめんね…」
結局、その日も休みになることが確定し、一行はあまり嬉しくない二日目の休日へと突入するのだった。
翌日、学食にディアボロス以外が集まり、少し話をしてから、ドワーフがディアボロスの見舞いにフェルパーの部屋へ向かった。
少ししてフェルパーもその後を追い、学食にはヒューマンとノームとクラッズの三人が残る。
「それにしても、長く続いた騒動が終わるとなると、些か寂しいね」
「そんなのお前だけだ、馬鹿。それに、あんまり本業サボるわけにもいかねえだろ」
「でもさ、オーブ探し、あたしら参加してないけど、いいのかなあ?」
クラッズが言うと、ヒューマンが笑う。
「いいんじゃねえの?もうやりたい奴にやらしとけば」
「隣のクラスは、やりたくない奴もやってるみたいだけどね」
「あの、ジェラート軍団・砕って呼ばれてた子達ねぇ……泣きながら突っ込んできたのはビックリじゃったよ」
「アホらしいじゃん。俺達は別に、隣のクラスに因縁があるわけでもなし。正式な依頼ったって、もう結構単位取れてるし、
これ以上取る必要ねえしなあ。あとはやりたい奴と、単位の足りない奴がやりゃいいんだよ」
それもそうかと、ノームとクラッズも納得する。
「でも、強いモンスターが出てきたとか言う話も聞くけど…」
「僕等以外でも、強い奴は多いさ。オリーブとかルオーテだって、実力はあるからね。あの依頼は彼女等に任せて、僕等は
ポレンタ辺りでバケーションってのも、悪くないんじゃないか。手に余るような事態が起こってから動いたって、遅くはないだろうし」
そう言うと、ノームは席を立った。
「さて、それじゃあ僕は、ここらで失礼するよ」
「まぁ〜た実験室か。そんなにジョルジオ先生が好きか、お前は」
「ああ。僕としては一番好きな先生だ。話してて退屈しないぜ」
「そりゃ、退屈はしないけど……あたしは苦手じゃなぁ…」
「ははは、確かに癖のある先生だからね。もっとも、癖のない先生なんて、この学校にはいないけど」
楽しそうに言いながら、ノームは去って行った。後に残ったヒューマンとクラッズは、お互いの顔を見る。
「……さて、俺達はどうするか」
「デザートとかどう?」
「よし、それ採用」
話は一瞬でまとまり、二人はケーキを取って席に戻る。それを半分ほど食べ終えたとき、突然ノームが飛び込んできた。その表情を
見る限り、ただ事ではないらしい。
「おい二人とも。とんでもないアクシデントが起きたぞ」
「ど、どうしたノーム?とんでもないことって?」
周囲をちらりと見回し、ノームは声を潜めた。
「……校長が殺された」
「はぁ!?」
「ええ!?……ちょ、ノーム君……それ、ほんと…!?」
「嘘なんか言ってどうする。そんな理由もないさ」
「いやっ、ちょっ……それ、冗談にしちゃ笑えねえぞおい…!マジかよ…!?」
「冗談の方が笑えない。ジョルジオ先生は終わりなき塔に向かった生徒を止めに行った」
どうやら嘘ではないらしい。二人は顔を見合わせると、食べかけのケーキを置いて席を立った。
「よりにもよって、とんでもねえ事件が起きたもんだ。ノーム、ヴェーゼ先生はそれ知ってるのか?」
「ああ、もちろん」
「よし。じゃあ俺はそっち行って、詳しい話聞いておく」
「じゃ、僕もついて行こう」
「あたしはドワちゃん達呼んでくる。みんな、あとで職員室で」
三人は二手に分かれ、クラッズは寮に戻るとフェルパーの部屋に飛び込んだ。
「みんな、やばい事態が起きたよ」
「え、やばい事態?クラッズさん、どうしたの?」
ノームから聞いたことを伝えると、三人の顔色も変わる。
「ええ!?そ、それ本当なの!?」
「校長先生が…!?ど、どうしてそんなこと…!?」
「あつつ…!くそ、何もこんな時にそんな事件起こさなくたって…!とにかく、私達も職員室に向かうぞ!」
四人が職員室に着くと、ちょうど終わりなき塔へ行っていた生徒達も戻ってきたところだった。職員室の中に二十人ほどがひしめき合う中、
ヴェーゼ教頭が事件のあらましを説明する。
それによると、犯人は彼等の担任であるダンテ先生。彼は目撃者のパーネ先生に重傷を負わせ、終わりなき塔へ逃走したとの話だった。
ダンテ先生に惹かれていたオリーブはショックを受けているようでもあり、また担任が引き起こした大事件に、それ以外の生徒も
少なからずショックを受けた。
当然の如く、オリーブやルオーテ、コッパは終わりなき塔へ行く決心を固める。そんな中、一行は顔を見合わせた。
「……僕等はどうする」
「こんだけの事件だ。それに、何があるかわからねえ。俺達も行くべきだろう」
「いや、それは僕も思ってる。でもね、嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感?」
ノームの言葉に、他の仲間は首を傾げた。
「おかしいと思わないか。最後のオーブのある場所が終わりなき塔。そして、最後の依頼の場所でもある。どうしてわざわざ、
そんな場所に逃げ込むんだ」
「……そういう意味では、もう一つ気になるところがあるね」
今度はクラッズが口を開いた。
「この依頼出したのは、パーネ先生じゃよね。もし、この犯行が計画性のあるものじゃったとしたら……当然、共犯ってことになるよね」
「で、でも、パーネ先生はダンテ先生に斬られて大怪我したって…!」
「僕も、パーネ先生は違うと思う……ううん、思いたいけど…」
「いずれにしろ、確認しなきゃわからないけどね。で、どうするの?」
クラッズは一行の顔を見回す。最初に、ディアボロスが口を開いた。
「ちょっと、保健室で整体ついでに、痛み止め打ってもらってくる」
「え、何をいきなり…?」
「事件の真相はともかく、場合によってはダンテ先生と一戦交えかねない、危険な課題だろう?そんな時に、私達が動かないでどうする」
「……僕も、行く。事件とかよくわかんないけど、他の人を危険な目に遭わせるなんて、できないもの」
「私も、行った方がいいと思う。だって、あんまりおかしすぎるもん」
これで、ほぼ全員が終わりなき塔へ行く決意を表明したことになる。しかし、再びノームが口を開いた。
「みんな、一ついいかい。これはあくまで僕の予想なんだが、この事件に深入りしたら、もう今までのような生活はできなくなると思う」
その言葉に、一瞬全員が言葉を失った。
「今までのような学園生活も、恋人とのデートも、きっとそんなことをしてる暇はなくなるだろう。そんな自分達の、当たり前の幸せを
捨ててまで、この事件に付き合う覚悟は、君等にあるかい」
しばらく、誰も口を開かなかった。ややあって、一人ずつ口を開く。
「俺達は、冒険者になるためにここに来たんだ。むしろ、こっちが本業だろ」
「行かなきゃ、きっと後悔する。それに、こんな時に動かないんじゃ、私達、何のために力つけたのかわからないよ」
「平和なのもいいけど、たまには刺激が欲しくなるものじゃよね。刺激あってこその、平和の喜びじゃもんね」
「何を言い出すのかと思えば……じゃあ、私は保健室に行ってくる」
「他の人を不幸にしてまで、幸せになんかなりたくないよ。だから、僕は行く」
そんな仲間の顔を見回し、ノームは呆れた笑顔を浮かべた。
「やれやれ、全員ゴーサインか。誰か一人でも、行かないって言ってくれるかと思ったのにな。そうしたら、僕も堂々と反対できたのに」
しかし、すぐにその表情はいつもの笑顔になり、やがてニヤリとした笑みに変わる。
「でも、それでこそ君等だ。僕も、このシナリオの行く末、見届けさせてもらおう」
それで、話は決まった。一行は準備を整えに、それぞれの行くべき場所へ向かう。
最初に、あまり準備するもののないヒューマンとフェルパーが校庭に着き、続いて保健室からディアボロスが戻る。
「ディアボロス、大丈夫?」
「ああ。少なくとも痛みは取れた。……ついでに変な注射をされてないことを祈るが」
それに続いてドワーフとクラッズが姿を見せ、最後にノームが現れる。
「ん、オリーブ達はどうしたんだ」
「あいつら、先に行っちまったよ。気の早い奴等だよなあ」
「そうか。一緒に行くつもりで、飛竜召喚札用意してきたんだけどな。まあ、いい。僕等も行くか」
ノームが札を使うと、巨大な飛竜が現れる。それに乗ろうとして、一行は一度校舎を振り返った。
「……絶対、ここに帰ろう」
その言葉に、全員が頷く。そして、一行は飛竜に乗り、終わりなき塔へと飛んでいった。
それぞれに覚悟を決め、平穏な日々に別れを告げ、決意を胸に、かの地へと向かう一行。
やがて、その学校での大事件は、世界での大事件となり、彼等は抗う術もなく、その大きな流れに飲み込まれていく。
世界を賭けた戦争へと発展する、その最初の一戦。その火蓋が、切って落とされようとしていた。
以上、投下終了。
なんか続きそうな終わりになりましたが、今後エロい要素が入る余地なかったんで、とりあえず終了。
まあしばらく後には嬉々として柿狩りしてることでしょう。
それではこの辺で。
乙。いやもう発情期ってすごいねぇ、猫とドワーフ2人も居れば大変だ。
クラッズはやっぱり真っ黒ですね
……正直シナリオとかもう忘却の彼方だw
全部クリアしてからずっと嫁育成でカキハントしてたからなぁ
乙です
ととモノのストーリーが◆BEO9EFkUEQさんの書き方だとやたら面白そうな話に見えるという
キャラ喋らせられなくて難しいのは分かるがシナリオ担当頑張って欲しかった・・・
2の話の筋自体はそんなに嫌いじゃないから残念だった
>>187 ユリシーズと言えばストーンヘンジですが自分はぶっちゃけシャンデリアの方が好き。
エドがトンでもないものを産みだすっていう話自体はあったけど当初はシャンデリアでも作ろうかなと思ったのですが。
ぶっちゃけととモノ。の技術的に流石にアレは無理だろうと言う事で。
一番無理が無いのがユリシーズを呼び寄せるぐらいに……。
大丈夫、ディモレアお母様が鬼神は無いです。
だって呼ばれそうな奴一人既にいますし……ねぇ?
んな訳で今夜は第4話でございます。
何回目かになる挑戦。流石は前人未到のアイザ地下道であり、エドやディモレアも何度か本気で命を落しかけた。
だが、その挑戦も今日で終わる。
エドワード、ディモレア、カガリ、ダンテ、パーネ。
五人が同時に最後の一歩を踏みだした時、その世界が目の前に広がった。
誰も見た事がない場所。
「………あ」
それは誰が零した言葉だったのだろうか。
誰の手も入らなかったその場所には、枯れ果てた林の元で咲き乱れる花の数々だった。
「お、おお……すげぇー……」
ダンテは声をあげつつ思わず駆け出し、パーネがそのすぐ後に続いた。そしてカガリも。
「すげぇ光景だな。これ、夢か?」
「夢じゃないわよ。けど……でも、あたし達、誰も歩いた事無い場所を歩いてるのよ」
エドの呟きにディモレアはそう答えつつ歩みだす。そう、それほどまでに、そこは感動的な風景だった。
遠く青空の下。
五人は、心ゆくまでその花畑を歩き回った。
しかし結局の所。
その前人未到の地を踏破したと名乗り出たのは、いなかった。
「あんな光景見てちゃ流石に他の人に見せたくはないな」
というダンテが欲を出したせいである。前人未到はいつまでも前人未到のままなのである。
そして、その日の夜。マシュレニア学府の、エドの部屋にはまだ灯が灯っていた。
「……………」
アイザ地下道で手に入れた、赤い球体を机に転がしつつ、やはり新たな構築式を練っていた。
学府にいる間は強引に隕石を呼んだりしてはいけないが、それでも式を作る事だけは出来る。
先日は一つしか呼び寄せる事は出来なかった。だが、もっと沢山の数を呼べるかも知れない。それだけを目指して、ただ試行錯誤を繰り返す。
「ふぅ……」
エドは息を吐くと、大きく伸びをして少し目を閉じる。
同時に、今朝見た光景――――前人未到の領域が脳裏に浮かんだ。
「……あそこ、広かったな」
誰もいない。誰も入った事が無い。誰にも邪魔をされない。
他の誰にも邪魔をされないのなら、あの場所を利用する事は出来ないだろうか。そう、世界の浄化の為に。
何せ誰も知らない場所なのだ。誰も気付く筈が無い。
「……よし」
エドは呟くと、荷物をそそくさとまとめた。
クレバスに落ちるという間抜けな事をした後、転移札と帰還札は常備するようになった。アイザ地下道をさっさと抜けてあの場所に到達するのは容易い事。
とにかくもう一度あの場所に急ごう、エドが部屋を出た、その時だった。
「あ」
「……お?」
廊下を歩いてきた、カガリと遭遇した。
「どうした、こんな時間に」
「ん? ああ、エドワード殿の部屋で灯がついていてな……少し、気になったのだ」
「ああ、そういう事か」
マシュレニア学府は男子寮と女子寮は向かい合わせになっている。お互いに灯がついてれば何をしているのかさえ解ってしまう事もある。但し女子寮は大抵カーテンが締め切られているが。
恐らく、カガリはエドの部屋を見に来たのだろう。
「もう、夜も遅いのに何をしているのだ? 明日も早い筈であろうに」
「まぁな……色々、やる事が終わらなくて」
「で、その支度はなんだ」
「ん? 出かける用意だ」
アイザ地下道に行って研究を続けるだけの、と言う前にカガリの両手がエドの肩を掴んでいた。
「もう寝る時間だろう」
「おいこら。俺は行かなきゃならんのだが」
「明日にするがいい」
半ば強引に押されるように部屋まで押し返される。
エドはため息をつきつつ、部屋へと戻る。
「どうしたんだ、いきなり」
「まぁ、な」
カガリと話す事はあまり無い。ディモレアとカガリはよく話してはいるが、カガリ自身が無口なのとエドが彼女と話す理由があまり無いという理由からだ。
ただ、こんな風に二人きりになるのは初めてでは無いが珍しいとは思う。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。
人見知りするフェルパーという種族故か、カガリは何を話したらいいのか迷っているようだった。
「……俺、出掛けてもいいか」
「あ、待ってくれ……その……」
「なんだ?」
「エドワード殿は何を企んでいる?」
「………」
ディモレアから聞いたのか、と言いかけてエドはカガリの表情があまりにも悲壮な顔をしている事に気付いた。
普段落ち着きがあってエドとディモレアの喧嘩の仲裁に入る彼女が、である。
「何を企んでるって、どういう事だ?」
エドは搾り出すように声を出す。カガリが何故知ってるのか、という事は言わない。そうだとすれば言われた事が正しいと認めてるようなものだから。
「エド殿が、毎晩のように研究しているものだ。アイザ地下道に初めて入った夜から、エド殿はどこか変わってしまった」
「……………」
完全に突かれている。いや、知られている。
どうすればいい、とエドは内心焦る。下手にぶっちゃければ、カガリの事だ。何としてでも止めようとするだろう。
だが、止められても、やめる訳には行かない。もう決めた事だ。
「……答えてくれ。エド殿。何を考えているんだ」
「世界のやり直しだ」
「!」
「隕石を落して、世界の文明全部壊して、もう一度やり直させるんだ。どいつもこいつも、折角ある技術をまともに使おうとしねぇ。その為には、やり直しが必要だ」
エドの言葉に、カガリはただ黙っていた。
首を左右に何度か振り、「それはいけない」と呟きつつも、エドの次の言葉を待っている。
「それが出来そうなんだ。そして今日……あのアイザ地下道の先に辿り着いて、思ったんだ。あそこなら、出来るってな」
「エド殿……」
カガリは呟くと、そっとエドに近寄る。
「エド殿は、この世界が嫌なのか?」
「……あ? まぁ、そうでもなけりゃな……色々やらかしてきたしな。まぁ、技術をまともな事に使ってないなんて言えば、俺もだし」
「………」
「だから、俺は俺自身も隕石をぶつけなきゃなんねぇけどな」
そう考えてみたら、何となく自分が酷く情けない存在に見える。エドはそう思った。
でも、もう決めてしまった事だ。何せ。
「パーネの親がな。錬金術士だった」
ぽつりと呟く。
「だがそいつはトチ狂ってた。その全てを破壊と殺戮に突っ込んだ。錬金術を文字通り、それこそ超威力の攻撃方法として確立した」
エドが錬金術士を目指したのは、彼に教えられたから。
だがしかし、それがエドの目指す錬金術と違う事に、そんなに長い時間はかからなかった。
けれども、マシュレニア学府に入学して、色んな奴に出会っても。
あまり変わらなかったのだ。彼と。
それが主流で、エドのように創造する事が基本と考える人間の方が少数だったのだ。
破壊と創造。
錬金術に於ける中で、分けられる二つの理論。どちらが先か、という考え方で。
破壊に重きを置く者。
創造に重きを置く者。
エドは。
「………錬金術ってのは作る為のものさ。破壊の為じゃない。けど、どいつもこいつも破壊しか考えてない。なら、何も無い状態にしちまえば、皆作る事しかしなくなるんじゃないかなって思ってさ」
それが理由。
世界を壊す、たった一つの理由。
「だから、隕石を落すのか?」
「ああ」
全て壊す。そう、全部壊して。もう一度作り直す。
もう、誰も過ちを犯さぬように。
「……何の権利があってそんな事をする」
「……いけないか?」
「お前が裁くべきことではない、と私は思っている」
カガリの言葉が、冷たく響く。
「…………」
「私は、今、エドワード殿達と共に戦える事が、嬉しい。ディモレア殿もそうだ。ダンテ少年やパーネと一緒にいる事も。私は嬉しい」
カガリはそう呟いて言葉を続ける。
「だが、エドワード殿は……それが嫌なのか?」
「いいや。悪いとは思ってねぇさ。今の、この状況を」
そう、悪いとは思っていない。仲間、と言えば確実にそうだろう。
背中を預ける、共に切磋琢磨出来る、時に安心して話せる、そんな仲間。
嫌いではない。嫌いじゃない。一人じゃない。
「ならば、それでいいじゃないか。わざわざ壊すなんて事は、しなくてもいいだろうに。自分が見てきた世界だけで、この世界の全てを壊そうと思うな」
見えている範囲だけが世界じゃないのだから、とカガリは続ける。
そして、今までの時間だけが、見えてきた世界だけじゃないと。
「…………それにな、エドワード殿」
「なんだ?」
「私は、お前がそんな風に狂気に走ろうとするのを、見たいとは思わない」
少し恥ずかしそうにそう呟くカガリ。その時、エドはカガリがベッドの上にいる事に気付いた。
ベッドの上。
たしか浴衣、という名称だった筈の東の民俗衣装を纏ったカガリがエドの上に覆いかぶさってくるのに、長い時間はかからなかった。
歳の割りに体格の小さいエド。
「………こうして、エドワード殿を愛せるのが、私は幸せだと思っている。今の、まだ正気を保っているエドワード殿の」
耳元で、カガリの声が響いた。
自分より体格の大きい異性を抱く、というのはどんな感じなのだろう、とエドは思った。
お互いに接吻を交わし、そのまま口の中に舌を入れていく。
生温い感覚が舌越しに伝わる。何度も接吻を交わし、唇を放すと雫が糸を引いてこぼれ落ちた。
エドは片手でそれを拭うと、その手をカガリの秘部へと伸ばしていく。
単衣の民俗衣装はすぐにでもはだけてしまいそうで、実際エドが手を伸ばして少し動かすと、その下の下着が露になった。
「…………」
こうして見るとカガリも良い体格をしている、とエドは思う。
出る所は出っ張っているし、余分な肉もついていない。寝巻きが単衣というのも似合っている。
そして何よりも。
「なぁ、俺さ。フェルパーの尻尾って触ったこと無いんだけど……」
「にゃっ!? そ、その……尻尾はやめて欲しい」
「尻尾は駄目なのか」
「尻尾は駄目なのだ」
性的な意味ではなく生物学的な興味なのだが、とエドは言おうとは思ったが言わない事にして尻尾から視線をそらした。
覆いかぶさられたままのエドは視線を胸へと移す。
ディモレアのように大きくはない。だが、小さい訳でもないその乳房に触れ、少しだけ揉みしだく。
カガリが声をあげた時、エドは半ば強引に自分の手元まで抱き寄せると、更に強く揉んだ。
「っ……」
「なぁ、カガリ……お前は、さ」
「……なんだ……」
「お前は、俺の事、好きか?」
俺は、お前の事を、まだよく知らないと言いたくて、でも言えないエドは言葉を問いかける。
カガリは、無言のまま首を縦に振って肯定した。
エドはまだ、自分の気持ちが解ってないのに。なんでこうして、抱こうとしているのか。
「……俺は……」
誰が好きなのか、とか特に意識していなかったのに。何故か脳裏に浮かんだのは。
ライバル関係になった筈の魔導師だった。
「………」
もう訳が解らなくなり、エドはカガリの着衣に手をかけた。
「ぁぅっ……くぅっ……ぅぁぅ……」
その行為は続いていた。
接吻や愛撫を挟みながらも、エドはカガリの秘部にものを突き入れ、まだ射精には至っていないものの、カガリに絶頂を感じさせるには十分だった。
カガリも男性経験が無い訳ではないのか、処女では無かった。
しかしそれでも恍惚の表情でエドを受け入れ、エド自身からの気持ちがはっきりしていないにも関わらず、それでも受け入れていた。
決して、二人は恋人同士ではない。
そんな関係で行為に及ぶというのもおかしな話ではある。しかも二人ともまだ学生だ。
「そろそろ、出る、か……」
「……う、ああ……」
「なぁ、外に、出すべき、か?」
「いや………中で、いい」
「………」
当たり前だがエドはカガリの周期など知らない。だが、カガリ本人が拒否してない以上、大丈夫なのだろう。
そう、その筈だ。
「……じゃ、行く、ぞ……」
エドがそれを吐き出そうとした時だった。
何処かで、盛大な音がした。
「!?」
二人が同時にベッドから跳ね起きると、部屋の扉が開き、一人の人影がゆっくりと顔を出した。
「……二人共、随分仲良しね」
「ディモレア殿? どうしたのだ……とと、の前に」
カガリが慌てて浴衣を羽織ると、ディモレアは着衣を脱いだままのエドに視線を向ける。
「アンタ、カガリを誘惑するような奴だったとは思ってなかったわよチビのエドワード……」
「待て、俺が誘った訳じゃないぞ」
少なくとも、カガリの方から持ちかけられた事で俺は違う、とエドは言いかけたがディモレアは指を突き付けた。
「アンタねぇ……なに? 世界を壊すとか言ってた癖に性欲はある訳? そんな事考えるぐらいなら性欲もくだらないものとか言いそうだったのに」
「バカ野郎。俺だって普通の男だぞ」
もっとも、今の状況で胸を張って言えるべき事ではないが。
エドがため息をついた時、ディモレアはカガリの腕を引っ張って立ち上がっていた。
「……まぁ、とにかくね。あたしが言いたいのはエド。アンタがもしあの事を実行に移そうとか考えるなら」
「アタシが力づくで止める」
それは一種の宣戦布告なのか、エドは一瞬だけ震えた。
「ああ、そうかい……」
「ま、あんなの見て実行に移すそうなんて思わないでしょうけどね」
ディモレアはそう言って笑うと、カガリの腕を引いてそのまま部屋を出ていく。
「バカか俺は」
エドは自分の頭を軽く小突いた。
世界を壊すのは、今も揺らいでいない。変わらない。エドの望みでもある。
けど、確かにカガリの言う通りに、エドが壊す必要は無いし壊す権利も無い。
「けどなぁ……今さら、なんだよなぁ」
今さらそれが出来そうな時になって、その為に色々と準備してきて、切っ掛けも掴めるって時に。
「何で躊躇させるような事をするかねあの連中は……」
ディモレアといいカガリといい、余計な所に鋭すぎだ。
「だーかーらー!」
エドは鞄を引っつかむと、深夜の外へと飛びだしていった。
ちなみに、叫び声をあげた為に起きてきたヴィーマ校長に廊下を走っている所を発見され、魔法をぶつけられてノックアウトする羽目になったのは言うまでもない。
「あれ? エド先輩、凄い顔をしていますね?」
翌日、エドが食堂に向かうと、ダンテが驚いた顔で彼を見た。
「あ? ああ、ダンテか……色々あってな」
「色々って、先輩駄目ですよ、タダでさえパーネ先輩の相手で疲れてるんでしょうし」
「お前がパーネの相手をしてくれりゃラクなんだが」
「嫌ですよ。苛められますから」
ダンテはエドの頼みをやんわりと拒否しつつも、椅子を引いてエドを座らせた後、お茶の用意を始めた。
「お茶です」
「どーも……おい、ダンテ。色々と聞きたい事があるんだが構わないか?」
「まぁ、構いませんけど……なんですか?」
ダンテが椅子に座り直すと同時に、エドは周囲に人がいない事を確認してから口を開いた。
「ディモレアの事だ」
「ディモ姉の? なんでまた?」
「……アイツは俺の事を気にかけてるみたいなんだが」
エドの言葉に、ダンテは「ああ」と頷く。
「ですね。先輩がいない時なんですけど、ディモ姉なにかとエド先輩の事を喋ってるからこれはもう惚れてるんじゃないかと」
「ぶほっ!?」
いきなりストレートな発言である。
「…………ナプキン借りるぞ。惚れてるって……」
「ええ。だってディモ姉はあんな性格ですから彼氏の一つなんて出来る訳が無いし本人も元々は興味なさそうだったんですけどエド先輩とパーティ組むようになってからはもう。
エド先輩にぞっこんでしょうね、アレ。俺が保証します」
「……………」
幾ら何でもそれは初耳だった。
「……………今日、ディモレアと会ったか?」
「へ? まぁ、さっきまでそこにいましたけど……どうしてです?」
「何か俺の事で言ってなかったか?」
「いいえ? 特に……どうしたんですか?」
ダンテが不思議そうに首を傾げた時、エドは首を左右に振った。
「いや、何でもない……」
どうやら昨日エドがカガリと行為に及んでいた事そのものについてはディモレア本人としては何も言う気は無いのだろうか。
だが昨日、エドの企みを力づくでも止めると言っていたのは。
「……」
エドは、ディモレアの事を、どう思っているのか。
そしてディモレア自身は。
「…………なあ、ダンテ」
「なんですか?」
「俺がディモレアの事を好きだと言ったらどうなる?」
「へ? まぁ、俺個人としては大歓迎ですね。先輩ぐらいしか手綱を付けられる人いませんし。お似合いじゃないですか。魔導師と錬金術師。お互いに切磋琢磨出来て、伸ばせますし」
「それもそうか……」
「で、実際の所どうなんですか?」
ダンテが嬉々とした顔を向けて来る。
「……まぁ、嫌いじゃないな」
時々、腹が立ったりする事もあるけれど。
昨日、カガリに言われたように。共にいて、嫌な存在じゃない。共にいて、嬉しい存在だと思っている。
「………まぁ、いつまでも側にいられるかっつーとそうでもないと思うが」
「いればいいじゃないですか」
「……ダンテなぁ、そんな簡単に言うけど」
「簡単じゃないですか。魔導師にしても、錬金術師にしても、第一線で活躍する事だけが未来じゃないでしょう」
「研究者として生きろって事か?」
「ディモ姉だったら嬉々として選びますよ、その道は」
「……否定はできねぇな」
どこまでも追い求めるディモレアであるからに。
でも、破壊も大好きなディモレアも新しい魔法研究に取り組みたいと言っていたから。
「先輩が協力すれば最高の助っ人です」
「そ、そうか……」
魔法の研究も必要。
一つの技術を追い求める中でも、他の技術を取り入れる事もある。
そう、例えば隕石を呼び寄せる構築式にも。
魔術式が混じっていた。混ぜざるを得なかった。
「……そうだな。俺もだ」
エドはぽつりとそう呟いた。
そう、今さらだけど初めて気付いたのかも知れない。
この仲間達と、長くいたいという思いに。
ディモレアの部屋にダンテが訪ねてきたのはその日の夜だった。
「エド先輩が話したい事があるんだって」
そう呼びに来たダンテにとりあえず一発拳骨をかました後、ディモレアはエドの部屋に向かう事にした。
昨夜の話だとしたらどうしようか、とディモレアは思う。
ディモレア自身はエドとカガリが付き合う事には別に反対はしない。二人の意志であれば、それはそれでよいのだ。
でも、もしエドがカガリと恋人同士になったとしても、エドが世界を破壊する事を望むのなら、それは止めなければならない。何をしてでも。
自分の恋人が大罪人になるのは嫌だろう。カガリだってきっとそう思うに違いないだろうから。
「エド、入るわよ……何の用?」
とりあえずそう声をかけた後、返事を待たずに扉を開ける。
「よう、来たか」
部屋中に広げられた構築式の中で、ディモレアがそう口を開いた。
「……何の用? というより、これは何?」
「今日一日で書いた式の山」
「……よくやるわね、アンタも」
ディモレアが式を踏まないように歩き、ベッドの上に腰掛けるとエドは少しだけ笑った。
「こんだけ書いてもな、世界一つ壊せそうに無いたぁ、ちっぽけな話だけどよ」
「あら、じゃ諦めるの?」
「諦める訳じゃねーけどな。でも、それよりな……」
エドは頭を掻きつつそう言葉を続ける。
「あのな。昨日、カガリと寝たっつーか寝そうになったんだが……その」
「別にそれはアンタとカガリの問題でしょ。アタシに言う事じゃないんじゃないの?」
「違う。そうじゃなくてだな……なぁ、ディモレア」
エドは咳払いをした後、ディモレアをじっと見る。
「お前はさぁ、魔導師としちゃ一流だと思うよ。日々、上達するために頑張ってるし。その力を、間違った方には使わないとも思う」
「そりゃそうよ。その為にやってるんだもん」
アンタとは違って、とディモレアは口に出さずに続ける。
出来ない事なんて無い筈だと、信じているから。
「だからこその頼みなんだ。お前にしか出来ない事だ」
「……アタシに? 何をしろっての?」
「俺を元に戻してくれ」
「……は?」
ディモレアはエドの言葉が理解できなかった。目をパチパチさせ、もう一度だけ聞き返す。
「だから、俺を、元に戻してくれ。お前みたいに、出来ない事なんて無いって思えるほど、その力を正しい方向に向けられるように」
「……………エド、アンタ自分が間違ってるって気付いたの?」
「いや、違う。間違ってるとは思っちゃいない。けど、自分に自信が無いのも事実なんだ。お前がいたから」
「お前がそうやって可能性を信じてるから。魔法とか錬金術とかそんなのは関係ない。お前が正しく力を使えるって胸張ってその為に頑張ってるとかいうから、
俺は自分に自信が無くなっちまったのさ……今、世界を壊そうとしてる自分がだ。お前の事しか考えられねぇんだよ」
「……………」
「俺の錬金術で、お前に出来ない事をやってやるから。お前は俺に出来ない事をやってくれるだけでいい。それだけでいいのさ。悪いようにはしない」
ついこの前。
エドは世界を壊そうと言っていた。
プライドが高い。ガンコで意地っ張り。
でも、それでも。
世界を裁く権利など、彼には無いとディモレアにも解る事をエドはやろうとしていた。
だが、それを。
間違っていると、エドは、認めたのだ。
ディモレアのお陰で。
「……………世界を、壊さないって約束出来る? あたしは、この世界で……」
「約束するさ。俺は、お前と生きていたいんだ」
「…………こんな時に言う台詞じゃないでしょ、それ。でも……あたしもよ」
ディモレアは、エドワードと共に行きたい。
他の誰でも無い。貴方だけしかいない。お前だけしかいない。
世界でたった一人だけ。望めるパートナーがそこにいる。
「間違っている使い方してる技術を正す方法なんて、全部壊すだけが方法じゃないだろうしな……ああは言ってたけど、方法なんて一つじゃねぇんだ」
「そうね……たった一つの冴えたやり方なんて本当は無いのかも知れないわ」
ディモレアの言葉にエドは少しだけ笑う。
「そうだな。可能性なんざ、一つだけじゃねぇんだ」
「そうよ。何をするにしても。何を為すにしても。アタシ達は、無数にある可能性の中から一つを選ぶしかないんだから」
そう、今この二人がいる事も。別の可能性では二人は殺し合っていたのかも知れない。
そもそも出会わなかったのかも知れない。
でも。今は。
この世界の事を考える、目の前にいる相手がいるから。
「……この世界を……アンタと一緒に救いましょう、エド……」
「ああ……」
だから一つだけ言える。
この世界を、必ず救ってみせると。
投下完了であります。
転換点もしくは折り返し?
これでようやく半分終わった状態であります……。
話変わりますがカテリーナ姉さんを見た時ゴスロリ+ネコミミに狂気乱舞したのは俺だけでしょうか?
乙
正直、あれ?なんか雑じゃね?
とかまず真っ先にそんな考えが浮かびました
書くだけ書いて長らくほったらかしてた1の小ネタ。
エロではない。
白刃が煌めき、赤い花が咲き乱れる。暗闇を溶かし込んだような黒髪が舞い、長い尻尾が揺れている。
金の目を光らせて獲物を睨み付ける娘は、誰よりも速く刀を振るう侍であった。
群れを成していた魔物も瞬く間に沈黙し、一行は再び地下道を踏破していく。何度も通った地下道、地図を完成させるためだけに歩くその足取りは気楽なものだ。
フェルパーに悟られないように、ヒューマンがドワーフに近付いた。セレスティアもやってきて、男三人顔を寄せあって密談を交わす。
「なあなあ、今日は何色だった?」
「ん、白と水色のしましま」
「マジかよ!ちくしょう、場所代われドワーフ!」
「くっ…!何故後ろにいる私からは見えないのでしょうか…!」
白刃一閃が走る瞬間、フェルパーの左隣にいるドワーフにだけは、彼女の下着が見えていた。フェルパーはそのことに未だ気付いていないようだが、男たちの話題は専ら彼女の下着の色だ。
「随分と楽しそうね。ヒューマン、ドワーフ、セレスティア」
しかし、フェルパーには聞こえないくらい小さな会話も、エルフの聴覚には丸聞こえだった。いつの間にか三人のすぐ後ろで薄ら笑いを浮かべた錬金術士のエルフが、死の呪符の束をこれ見よがしに叩いている。
ヒューマンの顔がひきつり、セレスティアが顔を青くし、ドワーフだけは不敵に笑ってエルフを見ていた。
「因みに、エルフは緑に白いレース、だな」
「なっ!?」
途端に、エルフは顔を赤くしてスカートを抑えた。慌てるエルフを見て、ドワーフが笑う。
「ははは、適当に言ったのに騙されてやんの。もしかして当たってたか?」
からかうような笑いを浮かべるドワーフに、エルフの端正な顔が歪んだ。大きな目が三角につり上がり、手にした死の呪符が怪しく光を帯びる。
ドワーフは大きな盾を両手に構えながら、一目散に逃げ出した。エルフはそれを追い、死の呪符を一枚構える。
「待ちなさい!」
エルフの手の中で一枚の死の呪符は十枚の虹の呪符に姿を変え、ドワーフに向けて無数に放たれる。ドワーフは背を向けたまま器用にそれを受け流していた。
走り去った二人の影を見送って、ヒューマンとセレスティアは胸を撫で下ろした。生還を祝うように顔を見合わせた二人の首筋に、スゥッと冷たいものがあてられた。
それが何であるかは、見なくてもわかる。
「言い残すことは、あるか?」
刀を突き付けたフェルパーの恐ろしいまでに優しい声が、ヒューマンに問い掛ける。ヒューマンは打ち上げられた魚のように口をぱくぱくさせるだけで、声を出せない。
「逃げられると思うなよ?」
目を泳がせてフェルパーの隙を伺っていたセレスティアにも、冷たく言い放つ。少し離れたところでは、くの一のクラッズがおどけたようにシャドーボクシングをしていた。
「ま、待ってくれ!俺たちは実際に見た訳じゃない!」
「そう、そうですよ!」
ヒューマンの苦し紛れの命乞いに、セレスティアが必死に賛同する。未遂だ、冤罪だ、情状酌量などと喚き始めた二人の愚か者が最期に聞いたのは、冷たく凍り付くようなフェルパーの声だった。
「理由になっていない」
二つの首が転がる。
お粗末。
このあともちろんドワーフも御臨終召されました。合掌。
245 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 00:51:10 ID:yuo/pAcY
女性陣恐るべし・・・・・男共にご冥福を。
セクハラ=首切りの刑とはフェルパー怖!
>>240 GJ!
よかった。エドは踏みとどまったか。
エド、ディモレア、カガリの三角関係。
カガリさん、生き残れるかな……なんか、生存できるか不安になってきた。
>>244 でも結局蘇生するんですね分かります。
ところでととモノって一体いくつ世界があるんだ?
闇、光、竜の3つの世界にストレガさんの亡命先の魔界。
他になんかあったっけ?
世界は三つで
それぞれの世界で魔界やら天界やら精霊界やらがあったりなかったりするイメージだな
寒くなってまいりました。ドワ子膝に乗せてコタツ入りたい。
今回は俺の書く中で出番は多いものの、あまりエロいのに絡んでこないバハ子。
1の「いっくぜぇー」が印象に強いので、そっちの強気なイメージ。でも2の話。
それでは、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
彼の最も古い記憶は、外で荒れ狂う猛吹雪。家の中は暖かく、薪の爆ぜる音が耳に心地良かった。
父と、母がいた。弟か妹もいた気がする。その記憶は、既に霞がかっている。
突然、玄関のドアが破壊され、一頭の狂った獣が家の中に飛び込んだ。そこからの記憶は、さらにモヤが掛かったようで、はっきりとは
思い出せない。
断片的な記憶。父の怒号。母の悲鳴。弟か妹の断末魔。
その獣、デスバッファローは家の中で暴れ狂い、全てを破壊した。最後に家までもを破壊すると、父が背中に刺した槍をそのままに、
どこへともなく氷河を駆けて行った。
ただ一人、彼は生き残った。生き残ってしまった、と言う方が正しいのかもしれない。たった今まで生きていた家族の亡骸と、
たった今まで幸せを享受していた家の残骸を前に、彼は幼くして絶望を知った。
生きる気力をも、その獣は奪って行った。だが、生きなければならない理由を、その獣は残して行った。
家族の亡骸を前に、彼はうずくまり、泣いた。だが確かに、彼は誓った。
「ぐすっ……ひっく…!あ、あいつ……絶対、殺してやる…!みんなをこんなにしたあいつ……絶対に、殺してやる!」
そのまま共に眠れれば、どれほど楽だっただろう。しかし、彼は復讐だけを糧に、この地獄のような世界で生き延びることを誓った。
たった六歳の少年は、たった一人、吹雪の中をあてもなく歩いて行った。
それから十年。クロスティーニ学園には成長した彼の姿があった。
とはいえ、どこのパーティに所属しているわけでもなく、専攻する学科があるわけでもない。ディアボロスという種族柄、
他の種族からは嫌われており、またこれといった才能があるわけでもなく、普通科に甘んじている彼に、周囲の風当たりは冷たかった。
一人には慣れていた。だが、慣れているということと、一人でいることは違う。パーティを組まねば、初めの森すら抜けることができない
新入生にとって、一人でいるということは致命的な事態だった。
一人に慣れ過ぎていた。人付き合いをほとんど経験せず、屈折した十年を過ごした彼は、対人関係が恐ろしくまずかった。
人を気遣うことをせず、誰かに笑いかけることもない。不幸にも、嫌われ者のディアボロスであるということも、彼を周りから遠ざける
一因でもあった。
それでも、彼は諦めなかった。たとえ一人でも、復讐は成し遂げると決めたのだ。そのために、彼はこの学校へ入ったのだ。
初めの森の入り口をうろつき、ツリークラッカー相手に死闘を繰り広げ、寮に戻る。そんな生活を続け、同級生が次々にカリキュラムを
こなす中、彼だけはいつまで経っても新入生の姿のままだった。
そんな、ある日のこと。いつものように狩りを終え、学食に入って夕食を取っていると、不意に声をかけられた。
「おい。ここ、いいか?」
見上げると、そこには大柄な女子生徒が立っていた。背中に鱗のある翼を持ち、赤い尻尾を太腿に巻きつけた特長的な姿から、
一目でバハムーンだとわかる。
「……他にも空いてる席はある」
それだけ言って、ディアボロスは再び食事を始めた。普通なら、それでどこかへ去ってしまうはずだった。
「かったいこと言うなよ!別にダメって訳じゃないだろ?」
言いながら、バハムーンは既にトレイを置き、席についていた。だが、ディアボロスは彼女を完全に無視し、黙々と食事を進める。
話題も思いつかず、またそれを探すのが面倒でもあり、初対面の相手と話す必要もないと思っているのだ。とはいえ、別に悪意はなく、
ただ人付き合いというものを知らないだけなのだ。
そんな彼に構うことなく、バハムーンは勝手に座り、勝手に食事を始めていた。ガツガツむしゃむしゃと、非常に賑やか且つ
品のない食事風景に、ディアボロスは少し眉をひそめた。
「……もう少し静かに食ってくれないか」
「ん〜?こばかいことひうばっへ」
口の中に物を詰めたままで、構わず喋るバハムーン。おかげで噛んでいた肉片が飛び出し、ディアボロスのスープに落ちる。
「……てめえ…」
「んっく……おう、悪い悪い。まあ気にしないでくれ、ははは」
当たり前のようにスプーンを突っ込み、バハムーンはその肉片と、ついでにスープの具材を失敬していく。ディアボロスの食欲は、
この時点でほぼ消え失せていた。
「……じゃあな」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、バハムーンが口を開いた。
「あ〜、ちょっと待てよ。話があるんだ。まだ座ってろ」
「俺はお前に用はない」
「あたしにはある。だから待て」
「いつまでだ」
「食事が終わるまで」
いっそのこと、この失礼な女をブレスで灰にしてやろうかとも考えたが、ディアボロスは辛うじて思い止まった。
騒々しい食事の終わりを必死の思いで待ち、いい加減に我慢も限界だというところで、ようやく彼女の食事は終わった。
「ふ〜、食った食った。ごちそうさまっと」
「よし、じゃあ俺は帰る」
「待てえ!やっと話できるようになったってのに、帰るんじゃねえよ!」
「食事が終わるまでって話だっただろ」
「ああ、そうだ。で、食事が終わってからが本題だ」
「……帰る」
「帰るな」
それでもディアボロスが席を立とうとすると、バハムーンは思い切り身を乗り出して彼の腕を捕まえた。
「待ぁーてぇー!いいから話を聞け!」
「いい加減にしてくれ」
「しない。お前がいい加減にしろ。とにかく座れ」
どうにも、話を聞かなければ一晩中でもこの問答が続きそうな気がしてきたため、ディアボロスは渋々席につく。
「お前、新入生じゃないよな?」
「ああ」
「一人なのか?」
「ああ」
「仲間はいないのか」
「ああ」
「『ああ』しか言わないな」
「ああ」
すると、バハムーンは突然、豪快に笑い出した。
「あっはっはぁー!そこまで突き抜けてりゃあ、見上げたもんだ!よし、今日からあたしがお前の仲間になってやる。感謝しろ」
「……は?」
言葉の意味が理解できず、ディアボロスは思わず聞き返してしまった。
「お前みたいな奴じゃ、そりゃあ他の奴は寄りつかねえだろ!だからあたしが寄り付いてやる」
「そんなこと、頼んだ覚えはない」
「そう強がるなって!お前みたいな下等種族一人で、この先何するってんだ?今まで何ができてる?ん?」
「………」
「だろ?だから、あたしが仲間になってやる。一人より二人の方が、何かと楽だぜ」
断っても、無理についてきそうな雰囲気である。それでも、場の空気というものを読めない彼は言った。
「断る。邪魔なんだ」
「ひっでーなあ。じゃあ何?お前が何を考えてんのか知んないけど、お前は初めの森でダストに襲われて死ぬのが目的なのか?」
「………」
「そうじゃないなら、仲間にしとけ。見た感じ、お前はとても腕があるように見えない。それで一人なんて、死にに行くようなもんだ」
彼女の言うことはいちいち癇に障ったが、言い返せないのも事実である。結局、彼は首を縦に振らざるを得なかった。
それ以降、彼女はずっとディアボロスについてきた。彼女自身、あまり力があるわけではないようだったが、確かに一人よりは
二人の方が何かと心強かった。
「あんた、戦士か」
「おう!でも、ずっと戦士でいるわけじゃねえぜ。もっと勉強して、絶対竜騎士になってやるんだ!……てーか、今気付いたのか?」
「ああ、興味がなかったからな。……竜騎士になる、か。なれんのか?」
「はっはっはー、まだおつむが足りねえとかほざかれたけどな。でも、絶対なるんだ。あたしはそう決めたんだ」
他者をかばう竜騎士になると言うだけあって、彼女は何かと世話を焼いてきた。彼にとって、それは時にありがた迷惑でもあったが、
そうして気にかけてくれる人物に会ったのは、これが初めてだった。
一人では辛かった敵も、二人なら楽に倒せた。一人なら倒されるような場面でも、二人なら切り抜けられた。一人の頃とは比較にならない
経験を積み、やがて僅かながらも魔法を扱えるようになると、初めの森では物足りなく思えるほどになっていた。
魔女の森まで足を伸ばすようになり、拠点をジェラートタウンに変える。敵の顔ぶれも変わり、時には極端に強い敵も現れるようになる。
ある日、カイワーレに出会った二人はいつものように攻撃を仕掛けた。だが、カイワーレは二人の攻撃を容易く耐え抜き、ツタ乱舞を
繰り出してきた。見た目に似合わず、その攻撃は異常なほど強く、二人は一瞬で瀕死に追い込まれた。
「ぐあっ!……くそ、こいつ強えな…!」
「ぐぅ……こんなところで、死ねるか…!」
二発もの攻撃を受けても、バハムーンはその驚異的な体力で耐え抜いていた。ディアボロスも一撃は受けたが、バハムーンほどには
傷ついていない。
にも拘らず、ディアボロスはすぐさまヒールを詠唱すると、それを自分に使った。カイワーレは再びツタ乱舞の構えを見せたが、
バハムーンが剣を杖代わりに立ち上がり、大きく息を吸い込む。
「消えろ、この大根が!」
吐き出されたブレスは、カイワーレを一瞬にして消し炭に変える。辛くも得た勝利に、二人はホッと息をついた。
それ以上の狩りは危険だと判断し、二人はジェラートタウンの宿屋へと戻る。その道すがら、バハムーンが口を開いた。
「お前、さっきカイワーレにやられたとき、あたしじゃなくて自分にヒール使ったな」
「……ああ」
「あたしの方がひどい怪我だったのにな。どうしてだ?」
「……死にたくなかったからだ」
「そうか、なるほどな」
「……気に障ったか?」
彼女と一緒にいるようになってから、ディアボロスはほんの僅かではあるが、他人を気遣えるようになっている。とはいえ、まだまだ
絶望的な社交性であることに変わりはないのだが。
「お、なんだ?気にしてるのか?」
「……そんな口ぶりだから」
それを聞くと、バハムーンは笑った。
「あっはっはっは!お前みたいな下等種族に心配されるほど、あたしは落ちぶれてないさ!お前の判断は正しい、それでいいんだよ」
「けど、怪我は確かに…」
ディアボロスが言いかけると、バハムーンは少し真面目な顔になった。
「いいか、覚えておけ。他人を気遣うなんてのは、その余裕のある奴に任しときゃいいんだ。余裕がなきゃ、てめえのことだけ考えろ。
てめえの身すら守れねえ奴が、どうして他人を守れるんだ?他人を守る方が、てめえを守るよりよっぽど難しいんだ」
「………」
「だから、お前のような下等種族は、自分のことだけ考えてりゃいいんだ。あたしに気遣いは無用!あたしだって、本当にやばくなりゃ
自分のことだけ考える。いいな、わかったか?」
「……ああ、わかった」
何だか釈然としないものはあったが、ディアボロスは大人しく頷いた。
恐らく普通の者なら、そのことで大喧嘩になっただろう。だが、バハムーンはそれを責めず、むしろ肯定してくれた。
口調こそ荒いが、相当なお人よしであることはわかる。そんな彼女に対し、ディアボロスはほんの少しずつ、彼女に心を開いていった。
経験を積み、力をつけ、二人はいつしかセミフレッド村を拠点とするようになっていた。今や、二人は出会ったばかりの頃とは
比べ物にならないほど力をつけている。装備も、バハムーンは両手剣に重装備で身を固め、ディアボロスは片手にデスシックル、
片手に疾風のナイフと持ち、比較的軽い防具を使っている。
ただ、そこに来てからディアボロスの様子が少しおかしい。それでもバハムーンは何も聞かなかったが、ある日とうとう彼に尋ねた。
「おいお前、最近どうしたんだ?元気ねえってわけじゃなさそうだけど、なんか変だぞ?」
すると、彼はいつも以上に深い闇を湛えた目でバハムーンを見つめた。
「……俺の家、この近くだったんだ…」
「お、そうなのか?」
だが、家が近いことと彼の様子がおかしいことに、関連は見出せない。
「……なあ、できれば聞かないでおこうと思ってたんだけどよ、お前は力つけて何するつもりなんだ?」
そう尋ねると、彼の暗い瞳がなお一層濃い闇に包まれる。
「殺したい奴がいるんだ」
「復讐、か。だからか、なるほどな」
バハムーンは単純かつ頭はやや足りない面があるが、そういったことには鋭い。その一言で全てを察すると、それ以上は何も
聞かなかった。またディアボロスも、それ以上は語らなかった。
やがて、二人の力はカッサータ砂漠すら物足りなくなり、グラニータ雪原へと足を伸ばすようになる。
そこへ初めて足を踏み入れた瞬間、バハムーンは翼で体を覆った。
「うっへぇ〜、寒っ!こんなとこで暮らしてる奴等って、どんな体してるんだよ!?」
「大丈夫か?」
「あ〜、あたしにはきっつい、ここ。お前は平気なのか?」
「………」
突然無言になったディアボロスを見て、バハムーンはその理由に気付いた。
「そうか、お前の家ってこの辺だったのか」
「……俺は決めたんだ。絶対に、あいつを…!」
そう言いかけた瞬間、バハムーンがそれを遮った。
「おっと、待ちな。それ以上言うな」
「……?」
「いいか?言葉にするってぇのは、誰かに自分の考えを伝えるためのもんだ。てめえの復讐は、てめえだけが知ってりゃいいことで、
人に伝えることじゃねえ。口に出せば、どんなもんでも安くなる。本当に伝えてえこと、安くなっても構わねえこと。口に出して
いいのは、それだけだ。お前のそれは、そんなに軽いもんじゃねえだろ?」
「……そうか、そうだな」
それ以後、ディアボロスはその事について一言も触れなかった。あとはただ、いつものようにモンスターと戦い、経験を積んで戦利品を
得る、いつもの日々が始まる。
さすがに以前暮らしていただけあり、ディアボロスは寒さに苦戦するバハムーンを何かと助けていた。
「ブレスはあまり吐くな。燃えやすい物がある時だけにしろ。じゃないと、呼気で熱が持っていかれる」
「あ〜、思いっきり息吸っちゃダメなのか。言われてみりゃ、深呼吸すると寒くなるな」
「鎧の可動部も気をつけろ。凍りついたら動けなくなるぞ」
「凍りついたらブレスで……って、そしたら今度は体がやられるのか。あーっ、どうすりゃいいんだよ!?」
「頻繁に動かしておけば、固まることはない。常に動かしておけ」
「なるほど!お前頭いいな!」
ディアボロスは、彼女が竜騎士になるのは一生かかっても無理なのではないかと思ったが、口には出さないでおいた。以前なら躊躇いなく
口に出したであろうが、それもまた彼が成長した証拠である。
力をつけ、グラニータ氷河基地までたどり着き、今度はそこを拠点とする。ここまで来ると、もはやディアボロスの様子は
尋常なものではなくなっていた。いつにも増して重い影をまとい、目だけは炯々と光っている。あまりの異様な雰囲気に、店の者ですら
彼を警戒する始末だったが、常に一緒のバハムーンだけは、相変わらずの付き合いを続けている。
「よう。お前、ずいぶん漲ってんなあ。やっぱり獲物が近いとなると、腕が疼くかい」
「……ああ」
「けどよ、その相手ってちゃんといるのかぁ?時間経ってたら、誰か他の奴が倒しちまったなんてこともあるんじゃねえの?」
「……さあな」
「ま、行ってみなきゃわかんねえか!けど、もし見つからなかったときは、今後の身の振り方、考えとけよ」
「………」
実際のところ、それは彼も気になっていた。もしも、仇が既に別の者の手で討たれていたら、彼のこれまでの時間は全て無駄なものに
なってしまう。家族の仇を、この手で討ちたいがため、そしてこれまでの時間を無駄なものにしたくないがために、彼は仇の生存を
心の底から願っていた。
翌日、二人は氷河の迷宮に足を伸ばした。少し前まで、オーブだ何だと騒がしかったが、今では他の生徒の姿などまったく見えない。
中は寒く、滑る床に苦戦し、おまけに浮遊効果のあるアクセサリを持っていないため、途中のディープゾーンを突破できず、探索自体は
早々に打ち切られることとなった。とはいえ、宿で寝るには早すぎる時間なので、帰還札は使わずに徒歩で迷宮の脱出にかかる。
その間中、彼は仇を探していた。デスバッファローはここをねぐらとしているらしく、似た相手はたまに見かけたものの、そのどれも
彼の探す仇ではなかった。
結局、仇が見つからないままに迷宮を脱出する。出てみると、外はかなりの吹雪になっていた。バハムーンはすぐにでも宿屋に
帰りたそうだったが、ディアボロスはその案に首を振る。
「悪いが、一つ行きたいところがあるんだ。何ならあんたは、先に戻ってても構わない」
「う〜、寒…!そうしてえけど、お前一人にできるかよ。あたしも付き合うぞ……寒っ!」
「そうか……悪いな」
ディアボロスは先頭に立つと、氷河基地の方へと歩き出した。しかし、微妙に方角が違う。
そのまましばらく歩くと、ディアボロスは不意に立ち止まった。そして辺りを見回すと、突然その場にしゃがみこみ、足元の雪を
手で掘り始める。やがて、頭が入るぐらいの深さになったところで、彼は手を止めた。
「何してるんだ?」
「………」
バハムーンがその穴を覗き込むと、何やら木の破片が見えた。それもただの木ではなく、何か木材のように見える。
「これは…?」
「……俺の、家があった場所だ…」
「そ、そうなのか」
なぜ、こんな拠点から外れたところに家があったのかと疑問に思ったが、彼の種族を考えれば、その理由もすぐにわかった。
「えっと……いや、何でもねえや…」
さすがにかける言葉が見つからず、バハムーンは珍しく口篭ってしまう。その残骸を見る彼の顔は悲しげで、とても見ていられず、
バハムーンは黙って視線を逸らした。
と、そこに何かが群れで近づいてくるのが見えた。視界が悪いとはいえ、人間ではないのは一見して明らかだ。
「おい、ディアボロス!何か来る、気をつけろ!」
その言葉に、ディアボロスは素早く立ち上がり、武器を構えた。やがて、二人の前に相手の姿が浮かび上がる。
グロテスクワーム、エリマキゾンビ、そしてデスバッファロー。恐らくは、氷河の迷宮から出てきたのだろう。
「やれやれ、追撃とはご苦労なこった!ディアボロス、やる……おい、ディアボロス?」
彼は、笑っていた。その目には狂気の光を宿し、真っ直ぐに群れの中の一匹を見つめ、武器を持つ手は震えている。
視線の先には、デスバッファローがいる。そのデスバッファローは、今までの相手と少し違った。
「何だ、あいつ?背中に何か刺さって…?」
「父さんが、刺した槍だ…!」
「え?ってことは、あいつが…」
「……見つけた……見つけたぞ…!殺してやる、殺してやる!!」
すぐさま飛び掛ろうとしたディアボロスを、バハムーンは間一髪で押さえた。
「待て、慌てるな!あの群れに飛び込んだら、死ぬのはお前だ!」
「知るか!!俺は、あいつをぉ!!」
「わかってる、わかってるぞ。お前の言いたいことは」
いつにも増して真面目な顔で、バハムーンはディアボロスの肩を掴んだ。
「だがな、無駄死にはするな。お前はあいつを殺すために、ここまで来たんだろ?」
「当たり前だ…!俺は…!」
「慌てるな。なら、他の奴は邪魔だろ?」
そう言うと、バハムーンはディアボロスに笑いかけた。
「他の奴等は、あたしに任せろ。あのデスバッファローは、全部お前に任せる。あたしは何も手出ししない。仮にお前が殺されようと、
あたしはお前を助けないし、横取りもしない。それでいいだろ?」
もはや声を出すのももどかしく、ディアボロスは黙って頷いた。
「なぁに、もしも本当にお前が殺されたら、その仇はあたしが取ってやる。安心しな」
「……ふん。余計な気遣いだ」
「下等種族相手には、ついつい気を使うもんなんだよ」
冗談めかして言うと、バハムーンは足に巻きつけている尻尾を一度解き、鞭のように勢いよく振った。そして再び足に巻きつけると、
しっかりと剣を構え直す。
「さあ、行ってこい!」
二人は同時に走った。敵の目前で二手に分かれ、ディアボロスはデスバッファローに、バハムーンはその他の相手へと飛び掛る。
デスシックルが一閃する。しかし、その鎌は相手を軽く傷つけただけで、大した傷にもなっていない。
すぐさま、疾風のナイフを突き立てる。だが、軽い刃は剛毛と硬い皮に阻まれ、容易く弾かれる。
直後、デスバッファローが角を振り回した。至近距離にいたディアボロスは避けきれず、胸に痛烈な一撃を受ける。
「ぐほぁっ!」
体ごと吹っ飛ばされ、しかし辛うじて体勢を立て直し、雪の上を滑る。たった一撃を受けただけにも拘らず、明らかに骨が
数本やられている。
だが、そんな痛みなど彼の意識にはなかった。幸か不幸か、強すぎる殺意は冷静さも、恐怖も、痛みすらも消し去っていた。
再び、ディアボロスが雪を蹴立てる。今度はデスバッファローもこちらへ向かって突撃する。
真っ直ぐに向かってくる巨大な角を、上に跳んでかわす。飛び越えざま、背中に武器を突き立てるが、やはり大した傷は負わせられない。
一方のバハムーンは、エリマキゾンビを相手に戦っていた。少々の攻撃は鎧で跳ね返し、強引に隙を作り出して両手剣を叩き込む。
先の言葉通り、彼女はディアボロスの戦いに手を出す気配はないが、その目は時折、不安そうに彼を見つめている。
そんなことに気付くはずもなく、ディアボロスは自分の戦いに集中している。だが、些か分が悪い。
再び、デスバッファローの突進を飛び越えてかわし、ディアボロスは振り向きざまに尻尾を狙った。その瞬間、デスバッファローは
軽く跳ねると、後ろ足を揃えてディアボロスを思い切り蹴り飛ばした。
「がはっ…!」
腹に直撃を食らい、ディアボロスはたまらずその場に崩れ落ちた。そのまま止めを刺しに来るかと、ディアボロスの背筋に
冷たいものが走る。
しかし、デスバッファローは突如狙いを変えると、グロテスクワームと戦うバハムーンに突進した。最後のグロテスクワームを倒し、
バハムーンがようやく振り向いた時、相手はもう避けられない距離まで迫っていた。
「うわあっ!?」
「バハムーン!」
鎧を着た巨体が吹っ飛ぶ。完全に体勢を崩してはいたが、退化した翼を思い切り羽ばたき、空中で何とか体勢を立て直す。
だが、しっかりと地面を踏みしめたのも束の間。途端に足がガクガクと震えだし、バハムーンは地面に剣を突き立てた。
「おぉ……お…!?ぐ、う…!」
剣に寄りかかり、それでも目だけはしっかりと相手を睨みつける。そんな彼女に、デスバッファローは地面を前足で数回引っ掻くと、
再び突進した。
ディアボロスの脳裏に、十年前の出来事が蘇る。モヤがかかったように思い出せなかった一つの場面が、はっきりと脳裏に描かれる。
角に貫かれ、それでも槍を突き刺した父の怒号。隠れていろと言われ、しかし父の姿にその言いつけを破って飛び出した弟。
弟を守ろうと、共に蹴り殺された母の悲鳴。ただ一人隠れ、生き残った自分。
そして今、自分の目の前で、また一人殺されようとしている。
「やめろおおおぉぉぉ!!!」
腹の底から叫び、ディアボロスはデスシックルを振り上げ、デスバッファローの足目掛けて全力で投げつけた。
突然の怒号と足の痛みに、デスバッファローの突進が止まる。そこに、ディアボロスが駆け寄った。
全身の痛みを堪え、デスバッファローに飛び掛る。その背に乗ると、ディアボロスは疾風のナイフを振りかざした。
「おおおぉぉぉ!!!」
十年前に父の刺した槍。それを目掛け、ナイフの柄を振り下ろす。肉を引き裂く確かな手応えと共に、槍がズブリとめり込んだ。
「ブオオオォォォ!!」
悲鳴を上げ、デスバッファローは激しく暴れ始めた。たまらず吹き飛ばされ、ディアボロスは辛うじて着地するが、様子がおかしい。
デスバッファローはしばらく暴れたあと、突然倒れた。悲鳴も徐々に小さくなり、やがて途絶える。
しばらくの間、二人はその死体を見つめていた。やがて、ディアボロスがポツリと呟く。
「……もう少しだったんだな、父さん…」
あと僅か、力が残っていれば、槍の穂先は急所を貫いていたのだ。だが、その僅かな力が足りなかった。
「十年も、よく急所に刺さらず残ってたもんだな。あいつ、お前に殺されるために生きてたんじゃねえのか?」
ようやく足元がしっかりしてきたらしく、バハムーンはゆっくりと剣を納めた。
「で?これでお前の復讐も終わったな。これからどうするんだ?」
そう尋ねるバハムーンに、ディアボロスは気の抜けた目を向ける。
終わってみれば、虚しいものだった。今までずっと、これだけを目標としてきたのだ。それを成し遂げた今、彼にはもう何もなかった。
「……もう、全部終わりだ。俺も、もう、みんなのところに行くよ」
言うが早いか、ディアボロスは疾風のナイフを振りかざし、自分の胸目掛けて振り下ろした。
チィン!と冷たい金属音が響き、ナイフが宙に舞う。痺れる手を押さえるディアボロスに、バハムーンは抜き打ちに振り上げた剣を
そのままに口を開く。
「馬鹿なことするんじゃねえ!何考えてんだ!」
「……もう、疲れた。今までずっと、俺は復讐のためだけに生きてきたんだ」
「自分のために生きりゃいいじゃねえか」
「復讐のためだけに生きてきて、今更自分のためになんて、どうすればいいんだよ」
ディアボロスの言葉に、バハムーンはやれやれと言うように首を振った。
「復讐のため、ね。そう言やあ聞こえはいいが、要は今までだって、てめえのためだけに生きてたんじゃねえか」
「……何だって?」
「いいか?死人にゃあ口もなけりゃ耳もねえ。何も考えねえ、何も感じねえ。葬式にしろ復讐にしろ、死人のために何かするってのは、
生きてる奴のためにするもんなんだよ。残されたてめえがかわいそうだとか、大切な奴が殺されて腹が立つとか、そういうもんなんだよ、
死人のためにするってのは。何をしようと、死人は死人だ。喜ぶわけもねえ」
「………」
最初は反論しようとしたが、よくよく考えてみれば、彼女の言葉にも頷けるものがある。結局、ディアボロスは黙らざるを得なかった。
「だから、お前は死人のためのつもりで、今までも十分、てめえのためだけに生きてきたんだよ。一つぐらい目標がなくなったからって、
情けねえ面ぁしてんじゃねえや」
言いながら、バハムーンは剣を納め、少しヒビの入った鎧を脱ぐ。
「死ねば確かに楽だ。それ以上考える必要ねえし、辛いことからもぜ〜んぶ解放される。けどな、生きてりゃ楽しいこともあるぜ?
辛いことの方が圧倒的に多いけど、その分でっかい楽しみもある」
「……そんな楽しみなんて、どこにある」
思わずそう口走ると、バハムーンはちょっとだけ考える仕草をした。
「んー、そうだな」
言いながら、バハムーンはディアボロスの手を取る。
「たとえば、こんなのどうだ?」
バハムーンは掴んだ手を、躊躇いなく自分の胸に押し付けた。
「っ!?」
突然のことに、ディアボロスは一瞬思考が止まる。服の上からとはいえ、手に伝わる彼女の体温と、柔らかい感触が心地いい。
「どうだ?男なら嫌いじゃねえだろ?」
それに答えられずにいると、バハムーンの表情が少し不安げなものになる。
「え〜と……そんなに好きじゃない?自慢なんだけどな、この胸……あ、も、もしかして、小さい方が好きか?」
「あっ……いやっ、その…!い、いきなり何を…!?」
「あ〜、ほら、だから、お前どうせこういうのした事ねえだろ?気持ちいいし、楽しいぞ?……でかい胸、嫌いか?」
不安げに尋ねるバハムーンに、ディアボロスはブンブンと首を振る。すると、バハムーンはホッとした表情を見せた。
「よかったー。じゃ、遠慮なく触っていいぞ」
遠慮なく、と言われたところで、遠慮なく触れるわけもない。ディアボロスが固まっていると、バハムーンは笑った。
「いきなりはさすがに無理か、はっはっは!んじゃ、ゆっくりできるとこ行こうぜ。ここじゃ寒いしな」
誘われるまま、ディアボロスはバハムーンの後をついて行き、二人は氷河基地の宿屋へと向かった。
部屋に入り、荷物を下ろす。暖かい室内に入って少し落ち着くと、不意に戦闘で受けた傷が痛み出す。
「あつ…!」
「ん、どうした?……ああ、あいつにやられたところか。あとであたしにもヒールしてくれ」
まずは自分にヒールを唱え、傷が治ったのを確認してからバハムーンに近づく。
「……あんた、どこやられた?」
「ここ」
笑みを浮かべながら言うと、バハムーンは胸をはだけた。自慢と言うだけある胸の谷間が見え、思わずディアボロスの動きが止まる。
「ん、もうちょっと下か……何だよ、その目。怪我してるのはほんとだぞ」
「あ、いや……悪い」
一応謝ったものの、バハムーンはいたずらっぽい笑みを浮かべている。
「腹の方か……ちょっと見せてくれないか」
「おう、見てくれ」
「……いや、だから見せて…」
「何だよ、脱がせてくれないのか?」
「え!?」
うろたえるディアボロスに、バハムーンは笑いかける。
「怪我人に色々やらせんなよ。ほら、脱がせてくれって」
「う……わ、わかったよ」
顔を真っ赤にしつつ、ディアボロスはバハムーンの服に手をかける。ボタンを外していくにつれ、素肌が露わになっていく。
やがて、腹の辺りまではだけると、確かに青く腫れているのが見えた。極力、その怪我だけを見るように努力しつつ、ディアボロスは
ヒールを唱える。
青みがなくなり、腫れが引いた瞬間。バハムーンはディアボロスの腕を掴むと、グイッと引っ張った。
「わっぷ!?」
バランスを崩し、ディアボロスはバハムーンの谷間に顔を埋めるような形になる。その状況に固まっていると、バハムーンは優しく
ディアボロスの背中を撫でた。
「ははっ、ありがとな。んじゃ、さっきの続きな」
「いや、その…」
「も……もしかして、あたしとじゃ嫌か?」
「そっ、そういうわけじゃない!」
むしろ彼女だからこそ、ドギマギしているのだ。これが他の者なら、それがたとえノームだろうと、あっさり拒絶しているだろう。
「あ〜、初めてだから不安か?はは、それなら任しとけ。楽しませてやるからさ」
「ちょ、ちょっと待て!その前に聞きたいことが…!」
「そんなの後、後!今はとにかく楽しめ!」
言いながら、バハムーンはディアボロスの肩を掴み、自分の体から引き剥がす。そして強引にベッドに座らせると、ズボンのベルトに
手をかけた。
「お、おい…!」
「いいからいいから、じっとしてろって。あたしに任せとけ」
とは言いつつ、バハムーンはあまり慣れていない手つきでベルトを外す。次にズボンを下ろし、下着を脱がせる。
「おー、結構立派だな」
「っ…!」
「そう恥ずかしがるなよ!男なら堂々としてろって!」
実に楽しそうに言って、バハムーンはディアボロスのモノを優しく掴んだ。思わず呻き声を上げると、バハムーンは笑みを浮かべる。
「お前、もしかして自分でしたこともねえのか?」
「……な、ない…」
「うへー、どんだけストイックだよ。よしよし、あたしに全部任しとけ。楽しいこといっぱい教えてやる」
バハムーンの手が、ゆっくりと彼のモノを扱き始める。
「うあっ!」
ディアボロスは思わず声をあげ、バハムーンの腕を掴んだ。
「ははっ、いい反応するなーお前。でも、手ぇ掴むなよ」
優しい割にかなり強い力でその手を引き剥がすと、バハムーンは再び扱き始める。またもその手を掴みかけ、しかし掴んではいけないと
思い直し、ディアボロスはシーツをぎゅっと握る。
さすがに反応は目覚しく、それはバハムーンの手の中であっという間に硬く大きくなり、熱を帯びる。
「どうだ?気持ちいいだろ?」
「くっ……うぅ…!」
「答えられねえくらいか。よっし、もっと気持ちよくしてやるからな」
バハムーンはディアボロスの前に跪くと、服を脱ぎ捨てた。そして体を寄せると、ディアボロスのモノを自身の胸で挟み込む。
「うあっ…!」
「へっへー、悪くねえだろ?他の奴等より皮は硬えけどさ、お前も結構硬いから平気だよな」
胸をぎゅっと寄せ、強く挟み込みながら扱き上げる。全体を柔らかく包み込まれ、やんわりと締め付けられる感覚が、何とも言えず
気持いい。バハムーンが動く度、胸が腰に当たり、ぴたぴたと音を立てる。
初めて受ける刺激に、ディアボロスはそれこそ一瞬で追い込まれた。
「うあ、あっ…!や、やめろっ……なんか、変なっ…!」
「ん?まさか、もう出るなんて…」
「ぐ……うああ!」
「わ!?」
バハムーンの顔に、白濁した熱い液体がかけられる。それに驚きながらも、バハムーンは彼のモノを胸で包んだまま目を瞑り、
じっとそれを顔で受け止める。
やがて少しずつ勢いが弱まり、ディアボロスのモノを伝って谷間にこぼれる程度になると、バハムーンはそっと目を開けた。
「……ふー。お前なあ、早すぎだろ」
「はぁ……はぁ……わ、悪い…」
「……ま、初めてだもんな、しょうがねえか!で、どうだ?出したのも初めてだろ?気持ちよかったか?」
言い様もない倦怠感に襲われ、ディアボロスはただこくんと頷いた。そしてバハムーンを見つめ、どうやら自分が
汚してしまったらしいことに気付く。
「あ……ご、ごめん。あんたの顔…」
「あー、待て待て。動くな。あたしがきれいにしてやるから」
胸で挟み込んだまま、バハムーンはディアボロスのモノを丁寧に舐め始めた。新たな快感に、ディアボロスはただ呻き声を上げて耐える。
亀頭全体を舐め、先端を口に咥える。軽く吸って中に残っていた精液も吸い出すと、バハムーンはようやく体を離した。
「ん〜、さすがに濃いなあ。すっげえ匂いだし、喉に絡む感じだし……それに、熱い」
楽しそうに言いながら、バハムーンは胸と顔に付いた精液を指で掬い、舐め取っている。そんな彼女の姿を見ていると、ディアボロスは
何とも言えない疼きを感じた。
「あ、あの…」
「ん?どうした?」
「……もう一回、してもらっちゃダメか…?」
ディアボロスの言葉に、バハムーンはにんまりと笑った。
「お、気に入ってくれたのか?それは嬉しいなー。けど、もっと気持ちいいこと、してみたくねえか?」
「……し、してみたい…」
つい正直に答えると、バハムーンは笑いながらディアボロスの頭を撫でた。
「ははは。ずいぶん素直になったなー。そんぐらい素直な方が、可愛げあるぜ」
「………」
「あ、怒るなよ?別にからかったわけじゃねえんだ。ま、とにかく!最っ高に気持ちよくさせてやるからな!」
バハムーンはスカートとショーツを脱ぎ捨てると、自身もベッドに上がった。そして、ディアボロスの体を優しく抱き寄せる。
「この先、どうすりゃいいかわかるか?」
「い……一応…」
だいぶ緊張しているようで、ディアボロスの体はすっかり強張っている。そんな彼に、バハムーンはいつもの笑顔を向ける。
「お前のそれを、あたしのここに入れるんだ。別に難しくもねえだろ?」
言いながら、バハムーンは自分で秘裂を広げてみせる。舐めている間に興奮していたらしく、襞の間に愛液がつっと糸を引く。
「……ほ、ほんとに入るのか?」
「入るって。安心しろ」
「痛く……ないのか?」
「あー、あたしは経験済みだからな。いちいち気にすんな。……はは、でもそうやって気ぃ使ってくれるのは、ちょっと嬉しいな」
ディアボロスはおずおずとバハムーンに近づき、そっと体を寄せる。彼女の体を抱きかかえ、ぎこちなく腰を突き出すが、
きちんとあてがわれていないため、虚しくバハムーンの体を滑る。
「さすがにいきなりじゃ無理か。手伝ってやるよ」
太腿に巻きついていた尻尾がするりと解け、ディアボロスの腰に添えられる。さらに、バハムーンは手で彼のモノを掴み、自身の秘部に
しっかりと押し当てた。
グッと、尻尾が腰を抱き寄せる。それに促されるように、ディアボロスは腰を突き出した。
クチッと水音を立て、先端が彼女の中に入り込む。そこから伝わる熱さと、感じた事もない快感に、思わずディアボロスの動きが止まる。
「う、あっ…!」
「んんっ……お、おい、焦らすなよ。そのまま奥まで、来てくれよ」
とは言われても、動けばまたすぐに出てしまいそうで、ディアボロスは動けなかった。すると、バハムーンはちょっと不満げに息をつく。
「その方がお前も気持ちいいのに……しょうがねえなあ。ぃよっと!」
尻尾が、さらに強く腰を引き寄せる。それに抗うこともできず、ディアボロスのモノが一気に根元まで彼女の中に入り込んだ。
「ぐっ……あぁ…!」
「ふあっ……久しぶりだな、これ…!……へへ、動けねえか?」
いたずらっぽい笑みを浮かべるバハムーンとは対照的に、ディアボロスはかなり切迫した表情になっている。
「ま、しょうがねえな。でも、動けるようになったら、動いてくれよ。あたしだって気持ちよくなりてえし、じっとしてるより、
ずっと気持ちいいぜ」
正直なところ、ディアボロスにはそれに返事をする余裕もなかった。
中は熱くぬるぬるしていて、しかしディアボロスのモノをきつく締め付けてくる。時折締め付けが緩み、ホッとすると、
今度は引き込むように蠢動する。それだけでも、もうディアボロスは限界寸前だった。
だが、動けばさらに気持ちよくなるという言葉が、抗いがたい魅力を持って響く。こみ上げる衝動を何とか堪え、ディアボロスは
そっと腰を引いた。
「んあっ……はあぁ…!」
バハムーンが、今まで聞いたこともないような甘い喘ぎ声を上げる。同時に、熱くぬめった膣内が収縮し、ディアボロスのモノを締める。
今度は、強く腰を突き出す。
「うあっ!……ふぅ、あ…!」
パン!と、腰と腰がぶつかり合う乾いた音が響く。一瞬、苦悶にも見える表情を浮かべたバハムーンが、そっと目を開いてディアボロスを
見つめる。
「んん……今の、よかったぜ。もっと、動いてくれ…!」
ねだる、というよりは命令に近い口調。だが今の彼に、そんなことを気にする余裕はない。ディアボロスは彼女の腰を掴むと、
欲望のままに腰を打ちつけ始めた。
「んんっ!あっ!……ど、どうだ?気持ち……んっ……いいだろ…!?」
「はあっ、はあっ…!ぐうっ、あっ…!」
追い詰められた呻き声が響き、ディアボロスの動きが荒く性急なものになる。限界が近いことを悟ると、バハムーンは笑みを浮かべた。
「ふぅ、あ……いいぜ、そのまま中に……出して…!」
「バハムーンっ……うあ、あぁ!!」
一際強く腰を叩きつけ、ディアボロスはバハムーンの体内に精を放った。熱いものが注ぎ込まれる快感に、バハムーンは身を震わせる。
「ふあ……すげえ、いっぱい出てる…」
「……ぐ…!はぁ……はぁ…」
全てバハムーンの中に注ぎ込むと、ディアボロスは荒い息をつく。そんな彼を、バハムーンは優しく撫でた。
「ちっと物足りねえけど、しょうがねえな。気持ちよかっただろ?」
「………」
ディアボロスは答えない。その代わりに、不意にバハムーンの腰をしっかりと掴む。
「ん?何す……ふわぁ!?」
ディアボロスは強引に、バハムーンをうつ伏せに寝かせた。そして腰を持ち上げると、再び荒々しく彼女の中を突き上げる。
「うあっ!?あっ、あっ、あっ!!お、お前出したんじゃ……あうっ!」
完全に油断していたところへ、予想もしなかった行動を取られ、バハムーンは快感に翻弄される。
「悪い、まだ足りないんだ…!」
「ちょっ、待っ……あんっ!う、後ろからなんてそんなっ……は、激しすぎるって…!」
パン、パンと乾いた音の合間に、グチュグチュという愛液と精液の掻き混ぜられる湿った音が響く。バハムーンの体には玉のような汗が
浮かび、蒸れた匂いがディアボロスの鼻腔をくすぐる。
「んんんっ……くぅ、あっ……お、お前……思ったより、やるじゃねえか……あっ!」
少し余裕が出てきたらしく、バハムーンの口調はいつもの喋りに戻りつつある。しかしそれに反して、嬌声はますます高く大きく
なっていく。
「んあぁ…!も、もっと強く…!あたしも、イけそうだからっ……あぅ!だから、もっと強く…!」
その声に応えるように、ディアボロスはさらに強く腰を打ち付ける。二人の体を汗が伝い、熱気はますます強くなる。
「ぐぅぅ……また、出そうだ…!」
「な、中にぃ…!あたしの中に、全部っ……う、うあぁっ、もう、あたしっ……あ、あ、ああああぁぁぁ!!!」
一際大きな嬌声と共に、バハムーンの背中が反り返る。同時に、膣内がまるで精液を搾り取ろうとするかのように蠢動し、
強く締め付けた。
「うあっ!?中が、きつくっ……うあぁ!!」
その刺激に、ディアボロスも限界が来た。腰を強く押し付け、再びバハムーンの中に欲望を吐き出す。三度目にも拘らず、それはかなりの
勢いを保っており、バハムーンの体内で何度も跳ねる。その度に注ぎ込まれる熱い液体の感覚が、バハムーンに大きな快感をもたらす。
やがて、その勢いが少しずつ弱まり、やがて完全に動かなくなると、ディアボロスは力尽きたようにバハムーンの背中へ覆い被さった。
同時に、入ったままだったモノが、彼女の中から押し出されるように抜け出る。
「はぁ……はぁ……ふぅ〜、いい汗かいたな!」
額の汗を拭うと、バハムーンは妙に生き生きとした声で言った。そしてディアボロスを押しのけ、仰向けに寝直す。
「で、どうだ?気持ちよかっただろ?」
「はぁっ……はぁっ…」
ディアボロスはぐったりしつつ、何とか頷いた。そんな彼を、バハムーンはぎゅっと抱き締める。
「ははっ、そりゃ何よりだ。あたしも気持ちよかったし、イけるなんて思わなかったぜ?」
抱き締められると、彼女の匂いがより強く感じられる。その匂いが、なぜかディアボロスの心を落ち着かせる。
「……なあ、一つ聞いていいか…?」
「ん?何だよ?」
ひどい倦怠感を覚えつつ、ディアボロスは何とか声を絞り出す。
「その……どうして俺に、ここまで…?」
「……ん〜」
意外なことを聞かれたと言う顔で、バハムーンは頭をポリポリと掻いた。
「いやな、実は元々、お前のことは知ってたんだよ。あ、目的とかは知らなかったけどな。でもまあ、お前有名人だったし、
変わった奴だっていうのは知ってた」
自分はそんな有名人だったのかと、ディアボロスは今更ながらに驚いた。
「お前、種族も種族だし、何だかほっとけなくてなー。んで、その……何?実際一緒にいたら、ますますほっとけなくてさ。
だから〜、その〜……なんだ…」
複雑な思いを言葉にするのは苦手らしく、バハムーンは言葉に詰まってしまう。
「え〜と、だから……まあ、いいじゃねえか!とにかくほっとけなかったんだよ!で、もう疲れただろ?今日はもう寝ろ、な?」
色々とごまかされているような気はしたものの、確かにこれ以上ないほどに疲れきっている。大人しく目を閉じかけ、ディアボロスは
再び目を開けた。
「……なあ。一つ、頼みがあるんだけど、いいか?」
「ん?どうしたんだ?」
それを言葉にするのを一瞬躊躇い、ディアボロスはぼそりと言った。
「……できれば、もっと強く、抱き締めてくれないか…?」
バハムーンは一瞬きょとんとし、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「ああ、いいぜ。お前、結構甘えん坊だな」
それに反論する気も、もはや起きない。強く抱き締められ、彼女の温もりを全身に感じながら、ディアボロスは目を瞑った。
初めてのはずなのに、どこか懐かしい感覚。それは、もはや記憶にも残っていない、母の腕の温もりによく似ていた。
翌朝、二人は目を覚ますと揃って宿を出た。とりあえず、もうディアボロスが冒険をする理由はない。
「……で、どうするよ?お前、やっぱり死にたかったりするのか?」
軽い調子で、しかしどこか不安げな目をしつつ、バハムーンが尋ねる。
「どうしてもって言うんなら、あたしももう、止めねえけど…」
「……いや、やめとくよ。あんだけ楽しいことがあるなら、生きてるのも悪くない」
「だろ!?はは、体張った甲斐があってよかったぜ!」
そう言うバハムーンの顔は、本当に嬉しそうだった。
「んじゃ、これからどうする?もしクロスティーニに戻るなら、送ってくぜ?」
「いや、それもやめとこう。今のところ、自分でも何すりゃいいか、わからない」
「そっか。ま、別に焦る必要も…」
「だから」
バハムーンの言葉を遮って、ディアボロスは続けた。
「今度は、俺があんたの手伝いをする。あんたには世話になったし、その恩を返してない」
「え?お前が?あたしの?」
その意外な答えに、バハムーンは笑い出した。
「あっはっはっは!そんなこと、気にしねえでいいのによ!」
「人助けは、余裕のある奴がすればいいんだろ?俺はもう、自分のやることは終わった。余裕なら売るほどある」
「あー、なるほど。そう来たか」
「それに、あんた一人じゃ、いつまで経っても竜騎士にはなれそうもない」
「言ってくれるな〜、この野郎!下等種族が舐めんな!……でも、勉強とかは教えてもらいてえかな」
二人は顔を見合わせると、楽しそうに笑った。
「ははは。それぐらいなら楽なもんだ」
「おっ!お前の笑ってるとこ、初めて見たなー。いい顔するじゃねえか。よしよし、今日はいいことありそうだ!」
言いながら、バハムーンはディアボロスの首にがっしりと腕を回した。ディアボロスも、その腕に手を添える。
「お前がやっぱり死ぬとか言い出さなくて、ほんとによかったぜ。結構心配したんだぞ?」
「あんたがいる限りは、生きてることにするよ。また、その……したいしな」
「はっはははは!やっぱ男だなーお前も!いいぜいいぜ、それぐらいお安いご用だ!」
恋人同士、と言うには変わった関係。戦友同士、と言うには近すぎる関係。だがそのどちらにしろ、二人は強く繋がっている。
「ああ、でもまた冒険行く前に、武器をどうにかさせてくれ。デスシックルは投げちまったし、疾風のナイフはあんたに飛ばされた」
「あー、あったなそんなこと。あれだ、あいつの背中の槍使えばいいじゃねえか」
「父さんの槍か。はは、それもいいかもな」
もしも、バハムーンの念願叶い、竜騎士になったらどうするか。ディアボロスはぼんやりと考える。だがその答えなど、すぐに見つかる。
今と変わらず、彼女と一緒にいること。
それが、今のディアボロスにとっての、生きる指標だった。
あの、吹雪の日の忌まわしい記憶。屈折した十年間を経てようやく、彼はその呪縛から解放された。
「しっかし、今日は晴れてやがんなー。今のうちに拠点変えるか?」
「今度は、パニーニにでも行くか?転科できるようになったら、すぐ手続きできるしな」
「お、いいなそれ。よし!このくそ寒いのも飽きたし、行くかぁ!」
氷に閉ざされた大地にも、春は来る。暖かな日が差せば、どんなに硬く凍りついた雪も解ける。
雪原を歩く二人。吹雪が止んだ今、その先には暖かい日差しが差し込んでいた。
以上、投下終了。
普通科ディアなら暗い過去も似合うと信じている。
そして案外単純だとも信じている。
それではこの辺で。
乙でした
普通科ディアは確かに暗い過去持ってそうな顔ですね
実際の所ネタ解釈で不眠症だの夜更かしし過ぎだのってイメージが強かったけどもw
とりあえずディア男が可愛すぎてやばかった
Nice work!
龍は普通科の見た目からは考えられん位の
乙女ボイスだからな、2は。やっぱり豪快な姐さんいいわぁ。
でもこのディアボロス、絶対セックス中毒になるなw
第一声が「よかった、傷が悪化して死んだりしなかった」ってどうなんだろう自分。
GJ!
なんか青春だな
ディア男かわいいよディア男
GJ!
ディア男がこれからどう変化するか。
とりあえず姐さんからは離れられないかも。
姐さんが下等種族と言う度に親指を立てる自分がいる。
PSPがお亡くなりになりました。
今年の夏は酷使し続けたせいでしょうか。主におおかみかくしとエスコンXと東鳩2Pとととモノ2で。
初期型にしては長く持ったほうだと思うので良しとします。
……まぁ、そう思いつつ攻略本を眺めていたのですが。
忍ディア子かわいいよ忍ディア子。
と思い立って短編一発投下します。
お相手はダンテ先生。エロは薄目な方だと思う。
クロスティーニ学園で起こった校長殺害事件は大きな衝撃を与えた。
校長がかつて有名な冒険者で高齢の今でも鍛練を怠っていなかった事と、その犯人が教師であるダンテだった事である。
そう、教師が校長を殺害して逃亡したという事が。何よりも大きな衝撃を与えていた。
ただ、ダンテ達がボレンタ港の先にある塔にいるという情報だけは多くの生徒に知られていた。
しかしまだ混乱の収まっていないクロスティーニ学園は生徒達に塔へ向かう事を禁止し、すぐにでも突っ走りがちな生徒達を宥めていた。
だが、それも深夜になってしまえば警戒の目は緩む。
消灯直後、宿直教師の巡回が始まる前に抜け出した三つの影は、塔を目指してひたすら走っていた。
先頭を走るのはディアボロスの少女で時折飛びだしてくるモンスターを手にした刀の一閃で全てを蹴散らしていた。
そんな彼女に少し遅れて、クラッズとノームの少女が後に続く。動きの速いディアボロスの後を必死に追い掛け、追い付こうとしている。
「ディアボロス、早いよ……少し待って」
長い橋の終わりまで辿り着いた所でクラッズがそう声をかけ、先頭を走るディアボロスが足を止める。
「……すまない」
「急ぎたい気持ちは解ります。でも、ペース配分も少し考えた方が良いです」
ディアボロスが頭を下げると同時に、クラッズと共に追い付いてきたノームがそう声をかける。
錬金術士学科の彼女は二人よりも多くの荷物を抱えている。クラッズと同じペースで走る事自体が大変なのだ。
ディアボロスはもう1度「すまない」と謝ると、鞄から地図を取りだして広げる。
「ここからはもう一本道で行けるな」
「そうだね……ねぇ」
クラッズが口を開き、ディアボロスが顔をあげる。
「なんだ?」
「本当に……行くの? 黙って出て来ちゃったけど」
「………」
クラッズの言葉に、ディアボロスが無言で頷く。
「ダンテ先生の為だ」
ディアボロスは淡々と答える。
ダンテが校長を殺害した、という事実はある。それは確認された事だ。
だが、何故それをしたのか?
彼女にはそういう疑問があった。厳しくも優しく指導してくれたダンテが何故そのような所業に出たのか解らなかった。
だから、ダンテに会って話を聞く為に。
ディアボロスは、仲間達と共に塔に向かっているのだ。
「彼女の言う通りです」
ノームがクラッズにそう口を開いた。
「ダンテ先生が何をしようと、それでも私達の先生である事に変わりはありません。何が待ち受けているか解らなくとも、それでも私達がクロスティーニ学園の生徒である以上、進むべきでしょう」
「……なるほど。そうだね。行くべき、だよね」
クラッズは前方に視線を向けると、大きく伸びをした。
「じゃ、もうすぐだからそろそろ行こう」
「うむ」
ディアボロスが先ほどより少しペースを落として走り出し、クラッズとノームがその後に続く。
再び、夜の闇の中へと消える。
遠くの空が明るくなりかけた頃、ボレンタ港を抜けて塔まで辿り着いた3人は一端足を止める事にした。
「話には聞いてたけど、本当に大きい塔だよね」
クラッズの言葉に、二人が頷く。元々はレベルが高いから近づくな、という理由で生徒は殆ど足を踏み入れないその塔に。
そんな場所に、今は校長殺害犯と言われるダンテに会いに行く為に、足を踏み入れようとしている。
「…………なぁ、二人とも」
「なに?」
ディアボロスの言葉に、クラッズが首を傾げる。
「心配だったら、ここで待っていてもいいんだぞ? 私が誘ったようなものだし……」
「それは心外ですね。貴方が言わなくとも私は行くつもりでしたよ? 用意していたら貴方に誘われただけです」
ディアボロスの言葉にノームがそう返事を返し、クラッズも「そうだね」と頷く。
「ディアボロスは、ダンテ先生のこと、本当に心配してたものね。友達が危ないかも知れないトコ行くのに、クロスティーニ学園の生徒として黙ってみる訳には行かないし。
ノームがさっき言ってたのと似てるけど……」
クラッズは照れたように笑いつつそう言葉を続けると、背負っていたその小柄な身体に似合わぬ鎚を持ち上げ、塔を示した。
「ともかく、入ってみて、ダンテ先生探そう」
「……ああ」
クラッズの言葉に二人は頷くと、周囲を少しだけ見渡した後、塔の中へと急いで突き進んでいった。
その姿を、塔の中から見下ろす一つの影がいた事に気付かずに。
手強いモンスターが多く潜んでいる、と聞いていたが彼女達は一階を抜けるまで、一体のモンスターとも出くわさなかった。
そう、不気味に思えるほどに、静かで響くのは3人が立てる足音だけ。
逆に何かあるのかと不安になってしまうほどに。
そして上の階層に抜けた直後、ディアボロスは薄々感じていた不安が徐々に膨れ上がっていく事に気付いた。
「………なぁ」
「なんですか?」
急に足を止めたディアボロスに、ノームが視線を向ける。
「さっき、何もいなかったな」
「ええ。いませんでしたね」
「変じゃないか? レベルの高いモンスターが沢山いると聞いていたのに」
「………今はまだモンスターも寝てるんじゃない?」
ディアボロスの言葉にクラッズが欠伸をしつつそう答える。明かり取りの窓から覗く空はまだ夜は明けていない。
「夜行性のモンスターぐらいどこにでもいます」
ノームが冷静にそう口を開き、ディアボロスは「そこなんだが」と言葉を続ける。
「もう1度手分けして一階を探さないか? 何か腑に落ちないんだ」
「…………反対はしません」
ディアボロスの言葉に、ノームは転移札の束を鞄から取りだしつつそう答える。
「手分けしてって、一人一人で?」
「危険になったら転移札を使って合流すればいいだけの事です」
クラッズの不安げな言葉にノームが淡々と答え、一つかみ分の転移札をクラッズとディアボロスにそれぞれ配り、荷物を少しだけ漁る。
クラッズは少し躊躇ったが転移札と幾つかの回復アイテムを受け取ると「じゃあまた」と言って下の階層へと降りていった。
未だに鞄を漁り続けるノームと、アイテムを幾つか受け取りつつ視線を伏せたディアボロスの二人が残される。
「で」
ノームは鞄を漁りながら口を開く。
「どうしたのですか?」
「ああ、うん……」
「一人になって考えたいという気持ちは解らないまでもありません」
ノームは淡々と続ける。
「ダンテ先生がいなければ、貴方はいつまでも一人だったでしょうから」
ノームの言葉にディアボロスは頷く。
他種族から忌み嫌われるディアボロスの彼女。元々気も強い方ではなく、入学してしばらくの間ただ途方に暮れるばかりだった。
口ではなんだかんだ言いつつも、そんなディアボロスを塔に辿り着ける程度のレベルまで引き揚げたのはダンテである。
今年こそ新入生の担当に入ってはいるものの、ディアボロスの中ではダンテが自分の担任であるという思いは強い。
そしてだからこそ。
ダンテが校長を殺害して逃げた、という話を聞いた時は嘘だと思っていた。
でもそれが事実だと知って、いてもたってもいられなくなった。けれども。
「ダンテ先生に会って、何を話したいのか解らない」
ディアボロスはノームの背中に向かってそう答えた。
そう、何を話せばいいのか。何をすればいいのか。
昔から孤高を保っていたダンテに、ディアボロスも授業の事以外に不必要な事は聞かなかった。それで充分だった。
ダンテもダンテで彼女に対する指導以外であまり口を聞いた事はない。それで充分だった。
ダンテの事を心配してここまで来たのに、結局の所ディアボロスは何がしたいのかまるで解っていなかったのである。
そんな勝手な事にノームやクラッズを巻き込めない、と思ったディアボロスは手分けして探すことを提案したのだった。
「………問題ですね。でも……私は残念ながらその答えを知りません」
ノームはディアボロスの言葉にそう口を開く。
「私自身がダンテ先生にかける言葉は決まっています。でも、それは私の言葉であって貴方のものではありません」
「……うむ」
「と、いう事で一人になって考えるのもいい事だと思います」
「…………ああ」
「では、またあとで」
ノームは鞄を閉じ、階段を下に向かって降りていった。
口では厳しい事を言いつつも、ノームもディアボロスやダンテの事を心配しているのだろう。
ディアボロスは少しだけ安心し、壁に背中を預けた。
「先生……」
何故、こんな事をしたの?
そんな単純な問い掛けですら、ディアボロスは怖くて言えないようにも見えた。
生徒と教師。
そんな関係だけで、充分だった筈なのに。ディアボロスは、ダンテに何を求めているというのだろう。
「…………」
目を閉じた時、いつものような仏頂面で自分を見ているダンテの顔が浮かんだ。
『強くなりたければ生き残れ。無駄死にだけはするな』
ダンテの口癖のような台詞は何度言われたか解らない。迷宮の中で倒れていた自分を回収した後にそう言われた事もあった。
今の自分は、無駄死にしようとしているのだろうか。自分の先生は、校長を殺したのだ。
でも、とディアボロスは思う。
例え校長殺害犯であろうと、ダンテはきっとダンテのままなのだろう。いつもあの先生は、何をしようと何を言おうと仏頂面のままだから。
嬉しい時も哀しい時もどんな時も。彼はいつも変わらない。変わらない、ダンテのまま。
「ああ、そうか」
そう。何ら変わる事は無い。
何をしようと、ダンテはダンテであって自分の先生なのだ。
「………バカだ」
くだらない事を悩んでいた。本当に、何を悩んでいたと言うのだろう。
どんな事があろうと、ダンテと自分の関係は変わらないのだ。そう、きっと。
いつものように、ディアボロスの事を指導してくれるのだ。いつもの仏頂面で。
でも……でも。
本当にそれだけなのか、少しだけ疑問に思ってしまう。
ディアボロスにとって、初めての先生であったダンテは、初めて自分と向きあってくれた相手でもある。
そしてそれは―――――ただの憧れとか、ただの教師への敬愛とか、そういうものでは現せないものになっていたのかも知れない。
何を話に来たのか解らない。でも、そうだっていい。
話を聞いてどうしたいのか、それはもう、ディアボロスが疑問に思っても、どうでもいい事だったのだ。
ダンテが、ダンテが。
ディアボロスの、愛する人である事に変わりはないのであれば。
「先生……」
ディアボロスは、ダンテの顔を思い浮かべながら、そっとひざを抱えた。
「……ここで何をしている」
ディアボロスが慌てて顔をあげると、真正面にダンテが立っていた。
ただ、ディアボロスの首元に―――――背負っている剣の切っ先を突き付けたまま。
「ダンテ、先生」
「………………俺はもうお前の教師でも無い。だから先生なんて呼ぶな」
いつもの仏頂面のまま、ダンテは口を開く。
その気になればいつでもディアボロスを殺せる。そんな位置にいるのに、ダンテは剣を動かさない。
「でも、私にとって、先生は―――――」
「まぁ、確かにお前に割いた時間は長かったな。他の奴よりかはだ」
ダンテは同じ体勢のまま、そう告げる。
「だが、それでもお前も生徒の一人という認識でしかない。そして今は俺の――――」
ダンテが言葉を続けるより先に、ディアボロスの手が動いた。
腰から抜き放った刀の一閃がダンテの手を弾き、ダンテの持つ剣を遠くの床へと吹っ飛ばす。
「それより先は言わないで下さい、先生……」
「……………お前に俺が殺せるのか?」
「殺せません……」
ディアボロスは首を振ると、刀を遠くへと投げる。
ダンテの剣のすぐ側に落ちた。
「……………」
「……………」
お互い素手のまま、ただ顔を合わせるだけの時間が続く。
「……剣を拾っていいか?」
「駄目です」
「おい」
「…………話したい事が、あって来たんです」
「……………」
ダンテは一瞬だけ頭を抑える。その癖は、ディアボロスは何度も見ていた。
そう、生徒に何かを指導する直前に。ダンテはじつに面倒くさそうに頭を軽く抑える。
パーネ先生から教師としてその癖はどうなのでしょうかと言われていたのも知っている。
「……先生」
ダンテは、やはりダンテのままだ。
ディアボロスは、そう確信した。
「先生に指導してもらってる間、先生は本当に指導しかしませんでした」
「それはそうだ」
あくまでも教師と生徒の関係、ダンテはそれを保っていただけに過ぎない。
「でも、私としてはそれだけでも充分でした。私も先生に必要以上の事は聞かなかったし、先生も私に必要以上の事は話しませんでした。
それだけでも充分でした。だから、こういう難しい話とかするの、先生とは初めて、ですね」
「……………」
「先生がどんな思いでこんな事したのか、私には解りませんし私は知る気もありません」
「おい」
じゃあ何の為に、とダンテが言葉を続けかけた時、ディアボロスは口を開いた。
「でも、一つだけ言える事は、私にとってどんな事があろうと、先生が私の先生である事に変わりはありません」
「………………」
「それだけは本当です。だって、ダンテ先生はダンテ先生ですから」
「……そうか」
ダンテは視線を少しだけ伏せる。
申し訳ないと思っているのか、それとも少し困っているのか、また微妙な表情を見せていた。
「俺はな……何と言えば良いのだろうな」
遠くに落ちた剣から視線を外し、頭を掻きつつ、困ったように呟く。
ダンテのそんな表情は初めて見る。ディアボロスは少しだけ笑った。
「………これは俺が……いや、俺ともう一人が勝手に起こした事だ。校長を殺した事もここに逃げた事も、だ」
「何故、それを」
「お前に話しても意味はない」
「ならば聞きません。けど……」
ディアボロスはダンテから視線をそらさずに、言葉を続ける。
「でも、先生がここにいる事が先生の勝手なら、私がここにいるのも私の勝手です」
「巻き込まれるぞ。死ぬかも知れんぞ」
「先生の側に、貴方の側にいられるのであれば。構いません」
ディアボロスの言葉に、ダンテは首を振る。
「……………聞き分けの悪い生徒だなぁ。お前がそこまで頑固な奴だとは思わなかったぞ」
「先生が気付かなかったです。ついでに言うと……そうしたのは先生です」
ディアボロスの恥ずかしそうな呟きに、ダンテは呆れ顔でため息をついた。
ダンテはゆっくりと床に腰を下ろす。
目線がほぼ同じ位置になる。
「もう1度だけ聞く。本当に、ついてくるのか?」
「はい」
「……そうか。わかった」
ダンテはそっとディアボロスの肩へと手を伸ばすと、優しくすぐ側まで抱き寄せた。
ぶっきらぼうな彼だとは思えないぐらい、優しい手。
「俺についてこい」
「……勿論です、先生」
ディアボロスは目を細めると、ダンテの体に身を預けるかのように寄りかかった。
そしてダンテも、そんなディアボロスの事を優しく抱きしめた。
「ん……」
ダンテの頬に、少しだけ濡れたディアボロスの柔らかい唇が触れた。
「!」
「………先生、その……私は、初めて、ですけど先生なら……」
「おい……そんな簡単に出すものじゃないだろう」
「ついていくと言いました」
ディアボロスはきっぱりと言い放つ。ダンテはもう1度だけため息をつくと、そっとディアボロスの制服へと手を伸ばした。
「……いいな?」
「はい」
ディアボロスは頷くと、マフラーを首から外した。
床に落ちたマフラーをダンテは片手で丁寧にどかしつつ、もう片方の手は上衣のボタンを外していた。
ボタンが外され、同年代と比べて大きくも無いが小さくも無い胸が白い下着に覆われつつ現れる。
パーネのように特別大きいわけではない。だが、それでもダンテが今担当している新入生達よりはずっと成長した肢体。
その下着に覆われた胸へとダンテは手を伸ばし、ゆっくりと揉みしだく。
「ん……!」
ディアボロスが少し頬を染めつつも声を出す。その声に満足したのか、ダンテはもう片方の手をスカートの中へと這わせた。
スカートの中のショーツの下へ。ディアボロスの秘部へ、手が伸びていく。
誰の侵入も許していない秘部へ。
「……少し濡れてるな」
そこに触れた時、ダンテは思わずそう呟く。
だがディアボロスはそれには答えず、スカートのホックを片手で外した。
ショーツの中にダンテの手がすっぽり入っており、その中でダンテが秘部に指を入れているのが見える。
「……!」
無骨な指とは思えないほど、ディアボロスの中でダンテは指を優しく動かした。
「っ……先生」
「………大丈夫か?」
「いえ、もっと……」
今まで自分で弄った事もあまり無い。そして何より、元々、よほどの相手でも無い限り、差し出すつもりだって無かった。
でも、ダンテなら、自分の敬愛するダンテになら。構わないとディアボロスは思った。
だから。
「お願いします、先生……」
ディアボロスの膣の中を、優しく撫でるダンテの指。
一本だったのが二本になり、少し無理に入ったという感じもするが、それでもダンテの指使いは見事なものだった。
「……っ……!」
初めてのディアボロスにも、痛くないように、絶頂を迎える程でなくてもそれでも快楽を与えるには充分に。
初めての行為が、自分の敬愛する相手なら。
そして、こんなにも優しくしてくれるのなら―――――。
そして、湿り気を帯びていた秘部から、液体が流れ出した頃になって。
ダンテはベルトを緩めた。
「……挿れても、いいか?」
「…………」
ディアボロスはゆっくりと頷き、両手をダンテの背中へと回した。
ほぼ密着するようなカタチの中で、ダンテがそれを取りだすのをディアボロスはじっと見ていた。
直視するのはきっと始めてであろうそれは、大きいのか小さいのか解らなかった。
だが、それが自分の中に入ってくるという事実だけは解っていた。
「………」
ダンテのそれが、中へと入っていく。濡れていたせいか、思ったほど痛くはない……。
いや、違う。
大きい。
「…………んんっ……先生ぇ」
「ど、どうした?」
「お、大きいです」
「そうか」
ダンテは困ったように首を振る。
「だが、諦めろ」
1度だけそう言って、ディアボロスの頬に接吻をした。
それが合図だった。
中へ深く入ったそれが、ディアボロスの膣の奥に当たった。
力強く、そう、力強く。
「ひっ……!」
ダンテが腰を動かし始めると、大きなダンテのものが文字通り中で擦れつつも何度も奥へと当たる。
擦れる壁。当たる奥。
痛みを感じるのに、でもダンテのそれが気持ちいいと感じてしまう。
「せ、先生っ、ちょっと」
力強いダンテの動きに痛みを感じても、ダンテは抜こうとはしない。
どんな時も手加減などをしないダンテだからだろうか。
ディアボロスには解る。
ダンテがいつも通りのダンテだという事が。
「あっ、ふぁっ、ぁぁ……」
無理に奥まで突き刺さる、というほどではないが中に打ち付けられる度に、ディアボロスの身体が跳ね上がる。
悦が混じったその声をあげる度に、ダンテはディアボロスの身体を時に舌で、時に手で刺激していく。
上も下も。
敬愛する教師の腕で抱かれているという事。
「随分嬉しそうだな」
ダンテの囁きに、ディアボロスは答えずに頷く。
「なら、もう少し耐えろ」
ダンテはそう言った後、ディアボロスの肢体をそのまま床へと押し倒した。
深く、深く。彼女の意識が落ちていくのに、充分だった。
「…………」
意識を失ったディアボロスの身体から身を起こすと、ダンテは慌ててズボンを元に戻した。
中に出したりはしなかったが、それでも性交をしていたという事に変わりはない。
「…………参ったな」
まさか生徒に本当に手を出してしまうとは思わなかった。
実際、欲求不満があったのかと聞かれるとそうではない。このディアボロスが入学した頃から何度か受け持っていたし、実際補習で二人きりになる事は何度かあった、
ダンテ自身も彼女も必要以上に会話をするようなタイプでは無いので、ダンテとしてはやりやすい相手だった。
もっとも、彼女が本当に自分を愛していたとは気付かなかったが。
「やれやれ、俺もヤキが回ってきたか・」
今まで散々色々とやらかしてきた分、変なオチがついてもおかしくはないと言えるが。
「どうしたものかな」
ついてくるか、とは聞きはしたものの、ダンテ個人としては出来れば誰も巻き込もうとは思っていなかった。
何せ本当に自分自身の勝手なのだ。でも。
『でも、先生がここにいる事が先生の勝手なら、私がここにいるのも私の勝手です』
彼女がここに自分の意志で来ている事も、ダンテの側にいると言った事も。それと同じ理由。
「……………」
このまま置き去りにするのも、酷なのかも知れない。
ダンテは、腹を括る事にした。
彼女を連れて、共に行く事を決めた。
ダンテはディアボロスの着衣を戻すと、まずは遠くに落ちた剣を拾う。
少し躊躇い、ディアボロスの刀も拾うと、彼女をゆっくりと抱き上げた。
塔の上にはパーネがいる。そして、自分とパーネが出した課題を守ろうとしている生徒達もいる。
このディアボロスにしたって、クラッズとノームを連れていた筈だ。
だが、もう。
そんな事はどうでもいい。
彼女を抱き上げたダンテは、塔の出口を目指しゆっくりと歩きだした。
いつもの仏頂面が少しだけ緩んだ、困ったような顔を浮かべながら。
投下完了。
やっぱりダンテ先生は口では言わないミクロな優しさとか気遣いとかやってると思うのですよ。
(本編でも幾つかやってた気もするけど)
多分、意外と女子生徒の人気高いんじゃないのかなとか思ってたり。
ノム子とクラ子?
次に書く時はその二人の話を書きます…
>>276 GJ
オリーブざまぁwww
それにしてもやっと規制解除だよ
ずっと考えていた
ととモノ2のヤムハス大森林(だったか)の魔法球がクロスティーニ学園に繋がっていた理由
あれはディモレアさんが脱出するために使ったんだ!!
バグに見せかけた伏線だったんだ
と妄想
279 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 13:36:42 ID:FqGT7XPQ
>>276 GJ
そうだもんな、ダンテも一応先生なんだもんな。
>>278 なるほど!なら天の橋立(?)の魔法球がバルバクス(?)学園につながっているのは
パーネ先生が連絡用に使ってたからか!!
さすがアクワイア、隙がない。
保守
281 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 01:18:02 ID:rWW89QfX
ドワーフもふもふ、ノームももふもふ
あれ、俺は何を言ってるんだ?
保守
282 :
招待状:2009/11/24(火) 21:39:37 ID:DZe9sxSD
「あと一ヶ月でクリスマスだね、ディアボロス」
「そうだな」
「ディアボロスはクリスマスどうするの?」
「そうだな..」
「錬金術科のノームは、剣士科のフェルパーと一緒に食堂でマジックショー
やるんだって。面白そうだよね」
「そうだな」
「エルフは教会で賛美歌歌って過ごすって言ってた。そういえばあの子
アイドル科だもんね」
「そうだな」
「でもセレスティアは堕天使科の仲間と黒ミサだって。こわーいw」
「そうだな」
「バハムーンとドワーフは大晦日の格闘競技会に向けて寒稽古の真っ最中とか」
「そうなんだ」
「で、ディアボロスはどうするの?」
「そうだな..」
「うにゅう..じゃ、これあげる。もし暇だったら遊びに来て。じゃね」
部屋に帰ったあと、クラッズから手渡された封筒を開けてみると紙切れが一片
入っていた。
「ご招待
-人形使い科クリスマス公演"飛ぶ教室"他-
於体育館特設会場 18:00開演」
死霊使い科のディアボロスにとって、クリスマスは自分には縁のない物だと思っていた。
食堂でクリスマス限定の定食を食べ、部屋で死霊と戯れるか、魔法書でも読んで
独り静かに過ごすつもりであった。
が、
「そうだな..」
せっかくの仲間のお誘いを無碍にする事も無いだろう。そう思い、顔面を覆う呪布から
わずかに覗く真紅の瞳を細めて小さくつぶやくディアボロスであった。
とりあえず、保守。
283 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 01:24:27 ID:pw8+4gTV
GJ,
そうか、クリスマスか。もうそんな時期か……
そうだな..
お久しぶりです。仲間と一緒に寝起きして食事してお風呂入って戦闘技術を習ってとしていると、
冒険者養成学校ってこんなもんなのかと思ったりする。
問題はそれが今回のSSに何ら活かされていないことだ。
今回はバハ子と並んで出番の少なかった錬金ノム子と戦士フェル子。
注意としては、ノム×フェルの百合物の上にふたなりあり。
多少人を選ぶ代物になりましたが、楽しんでもらえれば幸いです。
つくづく、ここには自分の居場所がないと、彼女は思っていた。
それなりの資質を持ち、他の多くのフェルパーと違って剣士ではなく、あえて戦士として腕を磨き、今ではクロスティーニの中でも、
そこそこ強い方になっているとは思う。だが、それでも自分は、このパーティには居場所がないと感じていた。
「今日のお兄様は、一段と逞しいですわ。過去のいかなる英雄とて、今のお兄様にはかないませんわ」
「お前も、今日は一際美しい。そのハープの調べも、お前の歌声のように澄み切っている。お前は本当に、自慢の妹だよ」
「嬉しい……でも、それはきっと、お兄様の温もりが力を与えてくれたのですわ」
「私の力は、お前の香りが与えてくれるものだよ。お前と香りを交える度、それが力になるのを感じる」
二人だけの世界に浸る、精霊使いの兄妹。エルフという種族自体、あまり得意ではない上に、この兄妹は万事こんな調子で時と場所を
問わず、熱烈に愛の言葉を交わすため、近くにいる彼女としては非常に居心地が悪いのだ。
「ああ……わたくし、幸せですわ。故郷では、こうしてお兄様と睦言を交わすことすら許されなかったんですもの」
「私も幸せだよ。いつもお前が隣にいる。これ以上の喜びなど、この世界には存在しえない」
常に後ろから聞こえる二人の言葉だけでも、十分に居心地は悪い。だが、それだけではない。
「二人とも、ラブラブでいいねー。私にも幸せ分けてほしいなー、あはは」
そう笑うのはクラッズである。明るくよく笑い、誰とでもすぐ親しげに話しかけるため、とても付き合いやすいように見える。
だがフェルパーにとっては、それが苦手なのだ。元々が人見知りの彼女にとって、いきなり近づかれるのは、苦痛以外の何物でもない。
今ではもう、それを苦痛とは感じないのだが、今度は別の理由で彼女と話すことができない。
楽しげなクラッズの顔を見ていると、ついつい自分もその輪に入りたいという思いが湧き上がり、おずおずと声をかける。
「あ……あの…」
すると、クラッズは不意に笑顔を収め、無表情に彼女を見つめた。
「ん……何?」
それまでと違い、どこか無機質な感じすら与える言い方に、フェルパーは萎縮してしまった。
「……ご、ごめん。何でもない…」
「……そう」
最初に会った時、フェルパーはクラッズにそっけない態度をとってしまった。それがショックだったのか、今度はクラッズがフェルパーを
苦手としているのだ。そしてそれが引き起こす、普段の笑顔と自分と話すときのギャップに、今度はフェルパーが委縮してしまい、
結局まともに話せないという悪循環である。
ため息をつき、視線を横に滑らせる。そこには屈強な体つきのバハムーンが立っている。
「……ん、何だ?」
視線に気づき、バハムーンが声をかける。が、フェルパーは慌てて視線を逸らした。
「ふん」
どちらかというと、彼は比較的マシな方である。多少、人を見下しているようなきらいはあるが、それ故かあまり干渉してこないのだ。
それが気楽でもあるが、こうも周りと接点がない状況では、少しぐらい話しかけてほしいとも思ってしまう。
そんな仲間達に囲まれ、フェルパーは何度脱退を考えたか分からない。それでも留まり続けるわけは、一つは脱退したら再び慣れない
人達と付き合わねばならないこと。そしてもう一つは、ただ一人気の合う仲間がいることである。
さりげなく移動し、アイテムの錬成をするノームに近づく。
「ねえ、ノーム…」
フェルパーが声をかけると、ノームはすぐに振り向いた。
「どうしたの」
「あ、ううん、どうしたってわけじゃないんだけど……その…」
「まあ、そこの彼でもない限り、話す相手がいないと退屈するものだよね」
ほんの僅かな微笑を浮かべて言うと、バハムーンは大儀そうに振り返った。
「ん?俺がどうかしたのか?」
「ううん、別に。ただ、ずっと黙ってられてすごいなって話してただけ」
「ふん、そうか」
そう言われて悪い気はしないらしく、バハムーンもノームに微笑みを返す。
「ノームちゃん、今の切り返しうまいなー」
後ろから、クラッズの明るい声が響く。
「私なんか、バハムーン君と話すの苦手なのに。そういうとこ、尊敬しちゃうなー」
「私は、あなたみたいな笑顔ができる人を尊敬するな。私はそういうの、ちょっと苦手」
「あははー、やっぱりノームちゃんはうまいなー」
誰とでも分け隔てなく接するノーム。種族ごとの違いもしっかり把握し、どんな相手でもうまく立ち回ってみせる彼女は、
やはり誰からも好かれていた。フェルパーとしても、この干渉しすぎず、また適度に話してくれる仲間は好きだった。
それからクラッズと二、三言葉を交わし、ノームはフェルパーの方に向き直った。
「結構経つけど、まだ慣れないなんて。あなたの人見知りって、結構重症ね」
「……ごめん」
「謝る必要はないよ。でも、楽しくやりたいなら自分から変わっていかないと、ね」
「………」
それができるなら、苦労はしない。実際、彼女は何とか周りと話そうと努力はしているのだ。しかし、いざ話せる状況になると、
どうしても言葉が出なくなってしまう。何を話せばいいのか、どう話せばいいのか。そういったことで頭がいっぱいになってしまい、
そこから来る沈黙が余計に彼女を慌てさせ、おまけに相手が自分を見ていたら、もう顔を真っ赤にする以外、何もできない。
「……そうなれればいいんだけど」
思わずそう独りごち、ため息をつく。そんな彼女を、ノームは少し呆れたような目で見つめていた。
その夜。一行は町で宿を取り、エルフの兄妹を除いてそれぞれの部屋で眠りについた。フェルパーも当然、一人でのんびりと旅の疲れを
癒し、早々にベッドに入った。
はずなのだが、今彼女の目の前にはノームが立っていた。
「……んにゃ?」
「どうかしたの」
「いや、あの、ここ私の部屋……っていうか、私寝たはず…?」
確かに寝たはずなのだ。だが、今目の前にはノームが立っているし、自分も部屋の真ん中に立っている。
「まあいいんじゃないかな。細かいことは気にしないで」
「細かいこと……いや、これって細かいことの範疇じゃないんじゃ…?」
「だから、気にしないでいいの。仲間が仲間の部屋にいたって、別に不思議じゃないでしょ」
相当に強引な言葉ではあったが、フェルパーはなぜかその言葉に納得してしまった。
「で、相談があるんじゃないの」
「え?」
言われてみれば、確かにそんな用事があった気もする。
「ああ、うん……そうだよね。あの、えっと、私もさ、できればノームみたいに、色んな人と話したいと思ってるんだ…」
「うん。それで」
「でも、どうしてもみんなの顔見ると、言葉が出なくなっちゃって……仲良くしたいんだけど、仲良くなれなくて……私、どうしたら
いいのかな……このままじゃ嫌なんだけど、変わるなんて、そう簡単にできないし…」
不思議と、彼女の前ではスラスラと本音が流れ出てきた。二人きりだからというのもあるのかもしれないが、それにしてもここまで
喋るのは、フェルパーにしては珍しいことだった。
「他の人と話すって、恥ずかしいことかな」
「え!?い、いや、話すことは恥ずかしくないけど……でも、何か、何て言うんだろ……どうしても、恥ずかしいし、怖い…」
「なるほどね。じゃ、恥ずかしくなくなれば、普通に話せるってことかな」
「え、う〜ん……そうなる、かな?」
ノームの手が、優しくフェルパーの肩を撫でる。その感覚が何とも気持ち良く、フェルパーはうっとりと目を細める。その手が、肩から
首に回され、不意に力が入ったと思った瞬間。
「にっ…!?」
極めて自然な動作で、一点の躊躇いもなく、ノームはフェルパーの唇を奪った。突然の事態に、フェルパーの尻尾はまるで
ブラシのようになり、目は驚きに見開かれる。
「んぐっ……ぷはぁっ!」
何とか彼女の腕を振りほどき、フェルパーは後ずさろうとして足がもつれ、床に尻餅をついた。
「いっ…!ちょ、ちょっとちょっと!いきなり何するのー!?」
「キス」
「違っ……わ、私が言いたいのはそうじゃなくって、どうしていきなりキスするのー!?」
「あなたがかわいいから」
「にゃっ…!?」
貞操の危機を感じ、フェルパーは床を後ずさる。しかし、それよりも早くノームが覆い被さってくる。
「にゃにゃにゃにゃっ!ちょ、ちょっと落ち着いて!ね!落ち着こ!?だ、ダメだよ!?私は女だし、ノームも女の子で…!」
「大丈夫。女同士でも好きになるのはおかしいことじゃないから」
「おかしいってばーっ!」
「うるさい子。少し黙らせてあげる」
「や、やめっ…!」
逃げようとした体を押さえこまれ、ノームはフェルパーの顔を強引に上げさせると、再び唇を重ねた。それどころか、口の中に侵入する
異物の存在を感じ、フェルパーの体毛がぞわぞわと逆立つ。
「んふぁ…!ふぅ、あ…!」
「ん……ふふ、かわいい」
ノームの舌が、フェルパーの口内を蹂躙する。逃げる舌を押さえ、牙を舐め、口蓋をなぞる。自身の口の中で響く、くちくちという水音に
フェルパーの顔はたちまち真っ赤に染まる。
初めこそ、抵抗しようとも考えた。だが、ノームのキスを受けていると、なぜかその考えは急速に消えていった。それどころか、
彼女のキスは優しく、暖かく、今までに感じたどんな快感よりも気持ちよかった。
ただ、キスをされているだけなのに。舌が触れ合っているだけなのに。その快感をいつまでも感じていたいと思うような、それこそ
全身が蕩けそうなキスだった。
長い長い口づけを終え、ノームがそっと唇を離す。妖艶な笑みを浮かべるノームと、放心したようなフェルパーの唇の間に、
唾液が白く糸を引く。
「うふふ、静かになったね」
まるで子供を褒めるように、ノームはフェルパーの頭を優しく撫でる。
「まだみんな、あなたの魅力に気づいてない。もったいない」
ノームの手がゆっくりと動き、頭だけでなく、小さく震える耳を撫で始める。
「ふあ…!」
「でも、それはあなたが話そうとしないから。あなたも、他の子も、お互いの魅力に気づけない」
ノームはそっと屈み込むと、フェルパーの耳を軽く噛んだ。
「んにゃっ…!」
背筋がぞくぞくするような快感に、フェルパーは知らず熱い吐息を漏らす。そんな彼女を見つめ、ノームは妖しく笑う。
「こんなに可愛いのに、ね。でも、だからこそ、今日は私があなたを独り占め」
耳を甘噛みしつつ、ノームは片手をフェルパーの服に滑り込ませた。
「んあっ!?ノ、ノーム、そこは…!」
「恥ずかしいでしょ。やめてほしいでしょ。でも、もっとしてほしいとも思ってる。違うかな」
「う……うぅ、お、思ってない思ってないっ!!」
ノームの言葉に、フェルパーはぶんぶんと首を振る。
「そう。でも、するけどね」
「そんなっ……あっ!?」
胸を掌で包みこまれ、フェルパーはビクリと体を震わせる。ノームは胸全体を優しく包みつつ、少し硬くなり始めた先端を指で挟み込む。
「うあ、あっ……んんっ……にゃぁ!」
全体を柔らかく揉みつつ、挟んだ指で乳首をコリコリと弄る。彼女の手が動くたび、フェルパーは全身を駆け抜ける快感に体を震わせ、
抑えられない嬌声を上げる。
いつの間にか、フェルパーは服を脱がされていた。ノームの方も、いつの間にやら裸になっている。
「うにゃぁ……ノームぅ、もうやめ…」
「ここ、こんなになってるのに」
言いながら、ノームはフェルパーの秘部に指を這わせた。
「あうっ!」
くちゅっと水音が響き、フェルパーの体が仰け反る。
「敏感なんだ、ふふ。体もきれいだし、本当に可愛い」
「ま、待って!ノーム、お願いだからもう……にゃあっ!」
ノームの手は、フェルパーの弱いところを的確に責めてきた。フェルパーも自分で慰めることはあったが、今受けている快感は、
それとは比べ物にならないほど大きい。
胸を捏ねるように揉まれ、その先端を指先で弄ばれる。さらに秘所を開かれ、体内に指が沈み込む。今や、フェルパーの体には
玉のような汗が浮かび、全身は快感と恥ずかしさとのために、真っ赤に上気している。
「どう、気持ちいいでしょ」
「うあぁっ!!うあぅ……にゃあ!」
「私もちょっと、気持ち良くなりたいな。一緒に、気持ち良くなろ」
そう言うと、ノームはフェルパーの足を開かせ、敏感な突起を擦り合せるように腰を押し付けた。
「あうぅ……ノームぅ…」
「ふふ。ちょっとわがまま、付き合ってね」
ゆっくりと、ノームが腰を動かす。途端に、全身を電流のような快感が駆け抜け、フェルパーの体がビクンと震える。
「うにゃあぁ!!ノ、ノームっ!ダメぇ!それ以上しちゃダメぇ!!」
充血した突起が擦れ合い、その度に強すぎるほどの快感が襲う。さらに、ノームは器用に胸までも合わせ、それこそ全身で快感を貪る。
「気持ちいい。あなたは、どう」
「ああ、あっ!こ、擦れちゃうぅ!ダメだってばぁっ……や、やめてぇ!」
フェルパーの言葉に、ノームはちょっとだけ唇を尖らせた。
「ふーん、擦れるのは嫌いなんだ。……じゃ、期待に添えるようにしてあげる」
どことなく不機嫌そうな声で言うと、ノームは体を離した。しかし、フェルパーがホッとしたのも束の間。ノームは自分の股間に
手を当てると、何やら目を閉じて神経を集中させているようだった。
やがて、彼女の体に異変が起こった。陰核が見る間に巨大化し、まるで男のモノのようになったのだ。
「にゃーっ!?ちょ、ちょ……な、何それー!?」
「私は錬金術師で、この体は依代。改造くらい、簡単にできるってこと」
「な……な、な、な、何するつもり!?」
「決まってるでしょ。これの使い道なんて、一つしかないじゃない」
それぐらいは、フェルパーにもわかっていた。だが、今ノームの股間にあるものは、異常に巨大だった。しかも、フェルパーは
自分で慰めた経験こそあるが、まだ男性経験はない。
「う、嘘だよね!?そんなの無理だよぉ!!」
「大丈夫。痛くないし、普通に入るよ」
言いながら、ノームはゆっくりとフェルパーに近づく。フェルパーは慌てて逃げようとしたが、腰が抜けてしまったのか、
いくら逃げようとしても一向に体が動かない。やがて、ノームの手が彼女の肩を捕らえた。
「や……やだ、やだよぉ!!そんなの入らない!!し、死んじゃうよぉ!!」
あまりの恐怖に、フェルパーはガチガチと歯を鳴らし、目にはいっぱいの涙が溜まっている。
「大丈夫大丈夫。死なないから安心して」
フェルパーをいたぶるように、ノームはゆっくりとその巨大なモノを押し当てた。
「やだああぁぁ!!ノーム、やめてぇ!!!お願い、助けっ…!!」
そんなフェルパーの哀願を嘲笑うように、ノームは思い切り腰を突き出した。
「ぎにゃっ……あっ、あ…!!」
フェルパーは一声悲鳴を上げると、全身を強張らせ、思い切り仰け反った。丸い目はさらに大きく見開かれ、だらしなく開かれた口から
唾液がこぼれ落ちる。しかし、それは痛みのためではなかった。
「ふふふ、どう。痛くなかったでしょ」
「ひっ……にゃ、あ…!な……なん……でぇ…!?」
痛みなど、まったくなかった。それどころか、腹が膨らんで見えるほどに巨大なモノを受け入れたにも拘らず、血の一滴も
出ないどころか、それこそ苦痛と紙一重の快感が襲ってきたのだ。
「うあぁ……これ……これぇ…!」
「じゃ、動かすよ。もっと気持ち良くなってね」
「ま、待って!まだ……うにゃぁ!!」
ずるずるとノームのモノが抜け出る。体の奥深くから何かが抜け出ていく感覚に、フェルパーは悲鳴じみた嬌声を上げる。
直後、ノームは再びフェルパーの中に突き入れる。
「あぐっ……かは、あっ…!」
子宮を突き上げられ、痛みの代わりに凄まじい快感が全身を襲う。もはやフェルパーはまともな意識を保てず、開きっぱなしになった
口からは唾液がこぼれ、焦点の合わない目は何も見てはいない。
「あなたの中、すっごく熱くて、きつくって、気持ちいい。あなたも、こんなにぬるぬるにしちゃって」
「はーっ……はーっ……はぐ、ぅ……そんな、こと……い、言わないで、ぇ…!」
ぼんやりと聞こえる声に、フェルパーは辛うじて言葉を返す。だが、もはやその余裕もなくなりつつある。
「にゃうぅ…!ノーム……ノームぅ…!も、もうダメぇ……やめて、ぇ…!わ、私、もぉ……あぐっ!!い、イっちゃ…!」
ノームが腰を動かす度、拷問に近い快感が全身を走り抜け、フェルパーを確実に追い詰めていく。
「うあ、ああぁぁ!!ノームっ!!ダメぇ!!もうそれ以上はっ……ほ、ほんとにイっちゃうよぉ!!ノームぅ!!」
荒い息をつき、ギュッと拳を握る。そしていよいよ快感が絶頂を迎えるという瞬間。
不意に、ノームはフェルパーの中から自身のモノを引き抜いた。
「ふあ…!?ノ、ノーム……どうしてぇ…!?」
「ダメなんでしょ」
冷たく、ノームは言い放った。
「え…!?」
「だから抜いてあげたの。イっちゃうのは嫌なんでしょ」
「ち、違っ…!」
慌てて否定しようとするも、それが何を意味するかを察し、フェルパーは慌てて口をつぐんだ。
「何か違うの」
「う……あ、あの、だって……こ、こんなとこでやめちゃうなんてぇ…!」
「あなたが言ったんでしょ、ダメだって。それとも、何か違ったの」
どうやら本当に、ノームはこれでやめにするつもりらしかった。フェルパーは少し躊躇い、やがて顔を真っ赤にすると下を向いた。
「……違う……のぉ…!」
「ふーん、違うんだ」
無表情な声で言うと、ノームはその顔に妖しい笑みを浮かべた。
「何が、どう違ったの」
その言葉に、フェルパーはますます顔を赤くし、ぎゅっと拳を握った。
「……やめて……ほしくなかったのぉ…」
「何を」
「う……動く……のを…」
「何が動くのを」
「ノ……ノーム、が……動くの…」
「どうやって動くのを」
「ううぅぅ〜…!」
あまりの恥ずかしさに、フェルパーの目に涙が浮かんだ。
「ノームがっ……わ、わ、私……の……中に、入れて……動くのがぁ…!」
「へえ。でも、今やめちゃってるよね」
フェルパーを見つめ、ノームはますます意地悪そうに笑う。
「フェルパーちゃんは、何を、どうしてほしいのかな。はっきり言って、教えてよ」
「そ、そんなっ…!」
「じゃなきゃ私にはわからないから。ちゃんと、自分の口で言ってみてよ」
「う……うぅ〜…!」
とうとう、フェルパーは涙を流した。そして固く目を瞑ると、大きく息を吸い込み、一気に叫んだ。
「だからぁ!ノームのそれ、私の中に入れてほしいのぉ!!その太いので私の中思いっきり突いてほしいのっ!!いっぱい気持ち良く
してほしいのぉー!!う、うっ、うわぁーん!!」
真っ赤な顔で泣き崩れるフェルパーを、ノームはぞくぞくする思いで見つめていた。そして、いっそう妖艶な笑みを浮かべ、
フェルパーの前にそっとしゃがみこんだ。
「ふふふふ。よく頑張ったね。ほんと、あなたってかわいい……イかせて、あげる」
涙を舐め取り、頭を優しく撫でると、ノームは再びフェルパーの中に突き入れた。
「うあっ……こ、これっ、これぇ!」
「私も、すごく気持ちいいよ。だから、ね。一緒に、イこ」
ノームの動きが、大きく荒くなっていく。それに比例して、フェルパーの快感も一気に跳ね上がる。
「ひにゃっ!!あぐっ!!ノー、ムぅ…!わ、私、私ぃ…!」
「もうちょっと我慢して。私も、もう少しだから」
「も、もう無理ぃ!!私っ、私もうっ!!頭真っ白にっ……うああぁぁ!!は、早くイってええぇぇ!!」
「んっ……もう、出そう。いいよ、思いっきりイって」
ノームが一際強く腰を打ちつける。それと同時に、フェルパーは体の奥に熱い液体が勢いよく流れ込むのを感じた。それは今まで
感じたこともない快感をもたらし、同時に止めとなった。
「あ、熱いぃっ!!お腹、火傷しちゃっ……ひぐぅ!!うあああぁぁぁ!!!」
後から後から、体内に熱い液体がかけられていく。もはや入りきらなくなったそれは結合部から溢れ、床にドロドロと白い水溜りを
作り始めている。その終わらない快感に身を震わせながら、フェルパーは次第に意識が遠のくのを感じた。
「ああ、ぁ……ノー……ム…」
沈んでいく意識の中、フェルパーは額に優しいキスをされるのを感じた。
「あなたなら、すぐにみんなと話せるようになるよ」
おぼろげな意識の中、遠くでそんな声が聞こえた気がした。だが、それが現実かどうかも分からないまま、フェルパーの意識は途絶えた。
「にゃ〜〜〜〜っ!?」
がばりと、フェルパーは勢いよく体を起こした。慌てて周りを見渡すと、そこはベッドの上で、外はうっすらと明るくなり始めている。
「にゃっ……にゃ!?」
大慌てで全身を触る。愛用のパジャマに脱いだような形跡はなく、部屋には誰の気配もない。辺りは静まり返り、自分の鼓動だけが
大きく聞こえる。
「……ゆ、夢…?」
混乱していた頭が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。あまりにもリアルな夢ではあったが、それ以外に考えられない。そもそも、
夢でなかったとしたら、あれほど巨大なモノを入れたら普通は痛くてたまらないはずだ。
「……ど、どうしてあんな夢…」
ふと、下半身にひんやりとした不快感を覚え、フェルパーは視線を落とした。
「にゃっ!?」
パジャマのズボンは、おねしょでもしたかのようにぐっしょりと濡れていた。だが、おねしょではない証拠に、その液体はやや粘り気が
あり、何より臭いが違う。
「うわ、シーツまで…!う〜、あんな夢見るからぁ…!」
結局、フェルパーはトイレでショーツとパジャマを洗う羽目になり、再び寝ることもできず、そのまま朝を迎えることになるのだった。
翌朝、フェルパーが寝不足の目を擦りながら宿の食堂に向かうと、ノームが一人で朝食を取っているのが見えた。
さすがに夢のこともあり、フェルパーは一瞬ビクッとしたが、あくまで夢の話だと自分に言い聞かせて彼女の前に座る。
「お、おはようノーム」
「ん、おはよう。今日もいい天気ね」
至って普通の返事に、フェルパーはホッと胸を撫で下ろした。やがて、朝食のパンを齧り始めたとき、ノームがおもむろに口を開いた。
「ごちそうさま」
「ん?」
ノームの前には、まだいくつかの料理が残っている。しかも『ごちそうさま』と言いつつ、ノームが食べるのをやめる気配はない。
「まだいっぱい残ってるみたいだけど?」
「朝ご飯のことじゃないよ」
「……?」
「ゆうべの、あなたのこと」
「?……っ!?」
ボッと、フェルパーの顔が一気に赤く染まる。
「なっ、にゃっ……ちょっ、えっ…!?」
「そんなに驚くことないでしょ。そもそもがアストラルボディなんだから、夢の中にお邪魔するくらい、訳ないよ。正確に言うと、
あなたの体にお邪魔させてもらったんだけどね」
「なななななっ!?ノ、ノームっ!!」
顔を真っ赤にしつつ席を立つと、ノームはいつも通りの微笑を浮かべた。
「怒ることないでしょ。気持ち良くさせてあげたし、ちゃんと相談には乗ったつもりだけど」
「そ、それはそうだけど!!でも、あんなっ…!」
「恥ずかしいことさせたって、怒ってるんでしょ」
気のない感じで言いつつ、ノームは真面目な顔を向けた。
「人と話すの、恥ずかしいって言ってたよね。でも、それはあのおねだりより恥ずかしいことかな」
「うっ……お、思い出させないでよ!」
「それだけじゃないよね。あなたの体、全部見せてもらっちゃったし、イかせて…」
「にゃーっ!!!もうそれ以上言うなーっ!!」
フェルパーが叫ぶと、ノームはまた微笑を浮かべる。
「あれと比べたら、人と話すくらい、なんてことないでしょ。あんなに恥ずかしい思いなんて、そうそうあることじゃないんだから。
それができたんだから、仲間と話すなんて、もう楽なものでしょ」
「……むー…」
言われてみれば、その通りでもある。フェルパーは渋々ながらも、納得するしかなかった。
そこに、仲間のクラッズがやってきた。彼女はノームに手を振ると、二人から少し離れた席に座った。
「ほら、早速」
「え、何が…?」
「話してきたら。話すことなくっても、挨拶くらいはできるでしょ」
「う……ま、まあそれくらいならできそう……かな…?」
フェルパーは席を立つと、おずおずとクラッズに近づく。それに気づき、クラッズもフェルパーの方へ顔を向ける。
「ん……どうしたの?」
いつも通りの、冷たい感じの声。だが、フェルパーは逃げそうになる足を必死に抑え、何とか声を絞り出した。
「お……お、お、おはよっ!!」
思いの外大きな声が出て、クラッズとフェルパーは同時にビクリとした。二人はしばらく見つめ合い、ややあってクラッズが口を開いた。
「ああ、うん……おはよう。あ、朝から元気だね」
「あ、う……げ、元気なんじゃない……と、思う、けど…」
「うん、まあ……うん、そっか。なんか、ごめん」
「あ、ううん、私こそ、ごめん」
「気、使わせちゃってごめん」
「いや、あの、私のせいで、ごめん」
そのままでは一生謝罪の応酬が続きそうだったので、フェルパーはそそくさとノームの元へ戻った。戻ってきたフェルパーに、ノームは
いつもの微笑みを送る。
「どう、感想は」
「……や、やっぱり緊張する…」
「でも、挨拶できたんだから上等だね。あ、次の獲物きたよ」
言われて後ろに視線を向けると、相変わらず人目を憚らないエルフの兄妹がいた。
「ふふ、お兄様。昨夜は、お兄様の愛をあんなに注いでもらえるなんて。まだ、体の中がお兄様で満たされているようですわ」
「それでも、私はまだお前を愛し足りないよ。お前の香りが、今の私にはほとんど残っていない」
「それならば……今度は、香りを繋ぎ止めるほどに愛してくださるのね」
「ああ、もちろんだ。そしてお前にも、私の香りを等しく刻みつけたいものだよ」
そんな二人の話を聞いていると、フェルパーの中の二人に声をかけようという気が急速に萎えていく。
「……やっぱり、声かけなきゃダメ?」
「気まずいのはわかるけど、今やらなきゃこの先もできないよ」
それもそうだと納得し、フェルパーはさっきよりもずっと重い腰を上げ、二人に近づく。
「お……おはよう」
何とか声をかけると、二人は同時にフェルパーを見つめ、意外そうな目を向けた。
「……臆病な獣か、慎み深い獣か。判断に迷うね」
「寡黙は悪徳。でも沈黙は美徳。これから判断すればいいことですわ。それより、お兄様…」
「……じゃ、じゃあ私はこれで…」
よくわからない言葉を返され、おまけに早々に捨て置かれ、フェルパーはぐったりした感じでノームの元へ戻った。
「お帰り。お疲れ様」
「……う〜、私あの二人苦手だよぉ…」
「得意な人なんていないでしょ」
「だから、話すの嫌なんだよぉ…」
「相手が悪かっただけ。それよりほら、最後のきたよ」
そちらに目を向けると、バハムーンが席に着くのが見えた。エルフ兄妹で疲れていた彼女にとって、もうこれ以上他人と接するのは、
ただの拷問としか思えなかった。
「もうやだよ……絶対冷たいこと言うもん…」
「そう言わないの。練習だと思って、ね」
「でもぉ…」
「頑張って。最初の一歩を逃げちゃ、いつまで経っても進まないよ」
「う〜……わかったよぉ…」
その言葉に、フェルパーはストムを食らったかのように重い腰を何とか持ち上げ、のろのろとバハムーンの前に向かう。
「……おはよ」
消え入りそうな声で言うと、バハムーンは大儀そうに首を巡らせた。その仕草だけで、フェルパーはもう逃げ出したい衝動に駆られる。
「おう、おはよう」
返事が来たので、さっさと戻ろうと思い、フェルパーは後ろを向きかけた。そこに、バハムーンが続ける。
「お前の方から挨拶するとは、珍しいな。ずいぶんかかったが、少しは慣れたのか?」
「え?あ、うん……その、まあ…」
「ふん、まあ慣れきってはいないんだろうな。だが、挨拶するだけでも、それは確かな進歩だ。お前みたいな種族に、いきなり多くを
求めはしない。最初はそれでいいんだ、あとは少しずつ慣れていけばいい」
「あ……ありがと」
一番冷たそうな人物に一番温かい言葉をかけられ、フェルパーは何だかキツネにつままれたような気持ちでノームの元へ戻る。
「ただいま……なんか、意外だった…」
「ふふ、言ったでしょ」
そんな彼女を、ノームは微笑みを浮かべて見つめる。
「みんながあなたをわかってないのと同じで、あなたもみんなをわかってない。彼、態度は大きいけど、いい人なんだよ」
「……そうなんだ」
ノームの言葉に、フェルパーは自分がどれだけ仲間のことを知らなかったか理解した。同時に、命を預ける仲間のことを、
もっと知りたいという気持ちが芽生える。
「少し、頑張ろうかな」
「ふふ。ずっと、それ聞きたかったよ」
そう言い、ノームは笑みを浮かべた。それは夢の中で見たような、満面の笑みだった。
「うん。ありがとね、ノーム」
「いいの。私も楽しめたし、ね」
「……も、もうあれはやめてよね!ていうか、ノームって誰とでも仲いいけど、まさかあれ、他の人にまで…!?」
「ん、秘密」
「どっちなの!?気になるから教えてよー!」
相変わらず、このパーティに居場所はないと、彼女は思っている。だが、それは今までとは少し違う。
居場所なんて、最初はどこにもないもの。それは少しずつ、時間をかけて作り上げていくものだと、フェルパーは思うようになっている。
『まだ』居場所がないだけで、いつかはここにも、確かな自分の場所を築けるはず。
そう考えているフェルパーの顔は、前よりも少しだけ、明るくなっているように見えた。
以上、投下終了。
金髪フェル子も可愛いけど、やはり黒髪フェル子に惹かれてしまう。
それではこの辺で。
乙です。
戦士フェル子可愛いよね。黒髪で表情がヤンデレっぽくて左利き。完全にツボw
298 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:35:33 ID:UE4B1IY9
GJ
フェル子いいなぁ。個人的にエルフ兄妹に惹かれるけど。
>>297 左利きが!?
左利きいいじゃん。自分が右利きだったらHの時
お互いに利き手で相手をいじくり回せるんだよ?
あれ?そう言う話じゃなくて?w
300 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 02:47:59 ID:wn5r2gA3
ととモノ。の世界って多種族の特徴をもったキャラっていないよな。
まぁ、綺麗に産み分けれるようになってるならいいんだけど、一人ぐらい
「セレスティナの羽が生えてるけどディアボロス」
とか
「体はノーム、心はヒューマン」
とか、そういうキャラがいてもいいかと。
ん、体はノーム、心はヒューマンって、鎧か何かに魂くくりつけてるみたいだな。
ドワっぽいフェルパーやフェルっぽいドワーフなら居そう
どうせならロストしたヒューマンと寄代を共有するほうが
>>300 身長のことを言われるとキレる、種族はクラッズ心はヒューマンの兄がいるんだな
ディアとセレの兄妹は出てくるけど、半々っていないな確かに。
隣のクラスのお嬢様はハーフエルフでもよかったんじゃないかと思う。
どうも、俺です。
ととモノ。を持っていない友人に攻略本を見せつつキャラ萌えについて協議した所、
友人は釘バットを持つ普通科ドSフェル子さん萌えという話を書けと言ってきました。
やはりフェル子さんが可愛いものだと認識しましたがやはり1の黒髪フェル子がいい。
こんばんは、皆様。
前回クラ子とノム子で続きを書くと言っときながら持ってきたのは5ページ目になってます。
今回もエロ有りですがやっぱりあまりエロくないです。
マシュレニア学府の卒業式が終わった後、エドワード、ディモレア、カガリの三人は歴史上から一時的に姿を消した。
あくまでも表向きの歴史書からである。事実、卒業直前まで彼らの側にいたパーネとダンテはその先がアイザ地下道の先だという事も知っていた。
そう、三人は誰も踏み込まない地であるアイザ地下道の先を、新たな拠点として選んだ。
誰も踏み込まないが故に、誰にも知られない地。
まるで人目を避けるかのように。
「…………くぁー……」
適当な部品を錬成して作っただけの掘っ立て小屋から大規模な実験施設をも兼ね備えた研究所へと錬成し直すのに、エドの腕前にとっては大した労働では無い。
自分が作ったとはいえ、大したものだとエドは思う。
三人で住むには広すぎるような気もするが、それだけの規模でも無ければ魔導師と錬金術師の二人が同時に研究など出来ないだろう。
エドは大きく伸びをすると、内装を確認するべく中へと入る。
地下道や迷宮の出入り口には大抵街が形成されており、それは大きな規模にもなりうるがそれらの街にもひけを取らない広さ、というより街が一つそのまま中に入りそうな広さである。
「……好きなだけ実験出来そうだな」
「それより前に見取り図が必要よ」
エドの呟きに背後から声が響く。
「ディモレアか」
「なかなかやるじゃない。いい感じに出来てるとは思うわよ? でも、見取り図無いとカガリが困るわよ」
「ん? ああ、そうだな」
カガリは地図を作りながら進むというタイプでは無いので道しるべや地図が無いと確実に道に迷って行き倒れかねない。
エドやディモレアは例え迷ってもそこが迷宮や室内であれば壁を壊すなり錬金術で地形を変えるなりして進めるがカガリには出来ないのである。
「で、ディモレア。お前はカガリと一緒に買い物に行ったんじゃないのか?」
「行ってきたわよ? で、帰ってきたらこうなってたからアンタを探しに来たの。中の構成解るのアンタだけでしょ?」
「あ、そうか」
ディモレアとカガリが必要な物資を買いに外に行った時はまだ掘っ立て小屋のままだったので確かに中を知る筈が無い。
「で、カガリは何処にいるんだ?」
「外で待ってるわよ? 後、風吹いてきたから早く入れてあげないとマズいわよ」
道そのものは決して複雑ではないのでエドはすぐに外へと出ると、山と積まれた荷物の中でカガリはうずくまっていた。
「! おい、カガリ?」
「ん? ああ、エド殿か……心配するな、少し疲れているだけだ」
カガリはエドの声を聞くなりすぐに立ち上がると、山と積まれた荷物を担ぐ。
「大丈夫か? 無理そうならやっておくが」
「なに。案ずるな。これでもお前達よりは体力があるつもりだ。侍学科だからな」
エドが止める脇でディモレアは可笑しそうに少し笑うと、自分も荷物を担いだ。
「カガリ、馬鹿にしなくていいわよ。こいつは無いけどアタシは体力あるから」
「おい、ディモレアそれはどういう」
エドが最後まで続けるより先にディモレアは山と積まれた荷物の中から牛乳の瓶を取り出し、エドの口へと押し込む。
まるでそれでも飲んで待ってなさいと言わんばかりに。
エドが黙っている間に二人は荷物を担いで中へと消えていき、エドが一人残された。
「……………俺、牛乳は嫌いなんだけどな」
とにかく牛乳を飲みつつ、カガリになるべく無茶をさせないようにしないととエドは考えていた。
そしてエドはその頃、卒業前にカガリと寝ていた事をすっかり忘れていた。
当面必要な物資を倉庫に運び終え、防衛用のセキリュティ代わりに罠を仕掛け、カガリが道に迷わないように詳しい地図を作成し、とその日一日でやれるだけの仕事を終える頃にはとっくに日も暮れていた。
適当につまめるものをつまんだだけの夕食の後、それぞれの私室で休むか、というエドの言葉に二人が頷き、それぞれが部屋へと戻っていく。
そしてエドも、作ったばかりの自室へと戻った。
「……ふぅ。くそ、自分の研究所を造るのがこんなに忙しいとは思わなかった」
マシュレニア学府にいた頃は大規模な実験こそ出来ないものの、研究に必要な素材や資料も揃っていた。
しかし、卒業して独り立ちした今では素材集めこそ在学中も行っていたが器具作成や資料集めも自力で行わなくてはいけない。
そして自分一人ではなく、ディモレアの分も集めなくてはいけない。
何せ、今の二人は研究仲間なのだ。協力し合わなくては互いに精進する事も難しいだろう。
「……にしてもな」
そして、そこで疑問に思う事がある。
カガリは何故自分達についてきたのだろう。
マシュレニア学府は術士系に力を入れているとはいえ、それでも冒険者養成学校であるから術士系以外の学科も存在はする。
そして、術士系以外の生徒は大抵は冒険者となる事を選ぶ。最近は冒険者以外にも騎士団や衛兵隊、術士系であれば今のエドのように研究者やはたまた国家付きの研究員や学者になる事だって出来る。
最近の就職事情は厳しいらしいが術士系学科はまだマシな方だと言える。
カガリの腕前ならば、冒険者として期待のホープと言っても過言ではないレベルだろう。それなのに、何故一銭にもならないエド達と共に来る事を選んだのか。
「……カガリは、俺達と一緒にいるのがいいのかな」
そう考えるのが自然なのだろうか。でも、それで、本当にカガリは良かったのか?
本当は、このアイザ地下道を踏破した時のように、俺達と一緒に冒険したかったんじゃないか?
けど、今の俺達は―――――。
「ええい、何考えてやがる」
エドは自分の頭を軽く小突く。
今さら後悔して何になる。研究者として、錬金術士として、錬金術を更なる高みに――――俺はその為に。
いや、それよりも。
エドはベッドから立ち上がり、整理が終わっていない荷物の山の一番上、厳重に梱包された小箱を手にとった。
梱包を一つ、また一つと解いていく中で、手が震えているのが解った。
そりゃそうだ。こんな所で下手に暴走させたら命がないに決まっている。
「……………」
アイザ地下道で見つけた、紅の石。
錬金術であろうと魔術であろうと、その全てを増幅する。
「こいつを見つけてからだよな……」
エドが錬金術で、破壊と創造について考えるようになったのは。
共に精進する。
ディモレアとそう約束して、卒業後ここに移ってきたまではいい。
世界を壊す事じゃなくて、世界を救うと約束した。
でも。
「……この力を借りたとしても、どこまで行けるかが気になるんだよな」
何せ一度でもその力を知ってしまったからには。
世界すらも壊せると気付いてしまったからには。
でも、それは。
裏切り。
今、この場所に辿り着いた仲間達への。
「……………」
小箱を、もう一度だけ閉じ、そしてもう一度開いた。
紅の石が変わらぬ輝きを放っていた。
「それ、持ってきてたの?」
いきなり背後で声が響き、エドは文字通り飛び上がる程驚いた。
慌てて背後を振り向くと、シャツと短パン一枚という女子の寝巻きにしてはワイルドな、ついでにいうとかなり薄着のディモレアがエドの手元にある石を覗き込んでいた。
「な、なんだよいきなり……」
「別に。なんとなく来てみただけよ。部屋、隣りだし」
規模が大きいにも関わらず、三人の部屋が隣接し合っているのはやはり側にいた方が落ち着くからかも知れない。
それはその分、下手に騒げば隣りに筒抜けだという事でもある。
エドが考え事をしながら独り言をしゃべっていたのを聞きつけたのかも知れない。
「それ、確かこの前隕石呼び寄せるのに使ってなかった?」
「ん? ああ、そうだな。それだけの力はあるな」
ディモレアの言葉にエドはそう答えると、小さく首を振る。
「……下手に捨てて悪用されるってのも悪ぃしな。ただ……どうしたもんか迷ってたりはする」
「そもそもそれ、何処で見つけたのよ?」
「アイザ地下道だ」
「へぇ?」
その意外な場所にディモレアは驚きを隠さないで呟く。
「アイザ地下道は未だによく解ってない所が多いからかしら? 錬金術や魔術を増幅する石が産出するなんて知られたら大変な事になるわよ?」
「だろうな。それこそ、ろくな連中が集まらん。おおかたそれぞれ身勝手な事にしか使わないだろうさ」
強大な力を持つ事は、その力を使う責任が伴う。
その力を全て自分の為だけに使うのも決して、道理としては通っていないわけではない。問題はその力で何をするかだ。
「でしょうね。アンタがここに来たいって言った理由、それを誰かに使わせないため?」
「それもある。でも、そうは言っても俺もこれを持て余してはいるけどね……」
何せ、この物体そのものが構築式を有しているようなものだ。
錬金術や魔術をちょっとかじっただけの者が使っても膨大な力を発揮出来るだろう。
「……………まぁ、でも、これだけ大規模な施設作ったんだから、研究用にはいいんじゃない? アタシにも使わせてくれる?」
「そのうちな」
暴走の危険でも無ければ、の話だが。
エドは小箱の蓋を閉じて備え付けの机に慎重にしまうと、ベッドへと向かった。
その後ろに、ディモレアが続く。
「……部屋に戻らないのか?」
「気になることが少しあってね」
ベッドの隅に腰掛け、エドに視線を向けつつ口を開く。
「カガリの事よ」
「カガリの?」
エドが首を傾げると、ディモレアは顔をずいとエドに近づける。
「アンタがあの子をどう思ってるか知らないけど、あの子……アンタの事、意識してると思うわよ?」
「お前じゃなくてか?」
「んな事はどうでもいいわよ」
「おいおい……」
何回目かになる似たようなやり取りだな、とエドは思いつつベッドに座り直す。
すぐ隣りにディモレアが座る。本当にすぐ近くである。
息が届くほどの、距離。
その時になってエドは自分の中で鼓動が速くなるのを感じた。
いつの間にか、こうやってすぐ近くにいるのが恥ずかしい。でも、側にいたい。
出来れば、こうやって自分の事だけを見て欲しい。ずっと、ずっと。
エドがそんな事を考えていると、ディモレアは口を開いた。
「アンタはどう思ってるの? カガリの事」
「…………」
エドはすぐには答えられなかった。
あの日の夜――――確かにカガリを抱こうとした。でも、あの時既に、エドの興味は、ディモレアの方にあった。
すぐ脇にいる、息が届く距離の彼女に。
昔嫌いで、色んな出来事の果てに気がつけば気になっていて、一緒にいるのが嬉しくなって。
側にいると恥ずかしいけれども、それでも一緒にいたくて。
カガリよりも、目の前にいる彼女の方が気になる。
「答えてよ」
「…………あの日、カガリを抱いてたのは……カガリが訪ねてきてからだ。俺が、アイザ地下道に、行こうとしていたのに気付いていた。あの頃俺が考えてた事に……。
世界をやり直そうとしてた事に、真っ先に気付いたのはお前だけど。カガリも言わないで気付いていたさ。だから、あの日訪ねてきたんだ」
その時の自分と今の自分は違う、とエドは思う。
だがしかし、今でも時折このままの世界でいいのかと思う時もある。自分に手を下す力があるのに、このまま燻らせておくのかと。
でもその度に考え直す。
あの日、カガリは。
「俺を止めに来た。俺が世界を壊す権利など無いってな。そう考えてみりゃそうだ。俺達は神様じゃない。ただ一人の、錬金術士さ。破壊と創造の中で悩んでただけの。
破壊と創造のどちらが先かを考えて。創造の方を望んでたのに破壊の事を考えてた、な」
「…………破壊と創造のどちらかが先ねぇ……そんなの決まり切った事じゃない」
ディモレアは呆れたように口を開く。
「創造する方が先に決まってるでしょ。ものが無きゃ破壊なんか出来るわけが無い」
「……………」
黙り込んだエドに、ディモレアは更に言葉を続ける。
「だって……創造が無ければ、アタシ達だって存在すらしないわ。この世界が創造されなければ、今、この世界も無い。
そして世界を作った誰かさんが創造したから、破壊だって有り得る。でも、それはアンタの役目じゃない」
「…………」
「破壊も創造も、確かにアタシ達が出来る事の一つではあるけれど。世界だけは、アタシ達に手出し出来るものじゃない。この世界をアタシ達みたいに生きてる連中がどれだけロクな連中じゃないとしても。
この世界はアタシ達のオモチャじゃないから。アタシ達に許された―――――魔術とか錬金術で出来る限りなんとかして、それでどうにもならなくてもどうにかなるように頑張るしかないのよ。
それしか出来ないぐらい、アタシ達なんて小さい存在なんだから」
「……………」
「アンタだって、それぐらいは解ってるでしょ」
自分が世界と比べてどれだけ小さくて、無力な存在かという事を。
ディモレアは続けなくても、そう言っていた。
「……ああ」
解ってるさ、それぐらい。
でも、だからこそ自分にどこまで出来るかと思うのが、エドワードらしさでもある。
「俺は結局……自分で決めて果たせなかった事に未練を残し続けてたのかな……」
「でも、それは果たさない方がいい事だと思うわよ。アンタがどんな思惑でも―――――他から見ればただの極限の破壊でしかないんだから」
エドの呟きに、ディモレアはそう答えた。
「………………そうか」
「………………そうよ」
「………………なぁ」
「………………なに?」
すぐ隣り、ほんの少しだけ首を曲げてエドはディモレアを見ながらゆっくりと口を開く。
「俺らは……色々あったよな」
「ん? まぁねー。アンタとクレパスに落ちた事もあったし」
ディモレアは懐かしそうに「あはは」と笑う。
その時初めて、すぐ届く距離にいた。あの時と同じように、手を伸ばせば届く距離に、いる。
初めてキスをした事も憶えている。暗闇の中、弱り切った彼女を手にかけようとした唯一の記憶。
でもあの時、お互いに拒否をしようとはしなかった。
あの時からずっと、二人は出来る限り一緒にいるようになった。最初はなし崩し的に、続けて仲間として、そして最後に――――。
「あの時、俺さ……お前に、キス、したんだよな……」
「え? ああ、そう言えば……」
ディモレアは少し恥ずかしい事を思い出したのか、慌てて視線をそらす。
だがエドはその視線を追い掛けていた。
「あの時の続き」
「してもいいか」
「え?」
ディモレアが答えるよりも先にエドはディモレアの身体を抱き寄せ、ベッドに押し倒していた。
「エド……?」
そう呟いたディモレアの口を塞ぐ。
学生の頃から豊満な彼女の肢体に、本人も気にしている小さめの体格のエドはアンバランスに見える。
しかしエドはディモレアに覆いかぶさるようにベッドの上へと上がり込むと口の中へと自らの舌を出した。
ねっとりとした唾液が唇の間から溢れる程、深い接吻を交わす。
雫を引いて唇が離れた時、エドの手はディモレアの身体へと伸びる。
「………下着、付けてないのか?」
「……ね、寝るだけだったからね……」
恥ずかしそうにディモレアが呟く中、エドはシャツをまくりあげ、上へとずらしていく。
シャツの下の、豊満な乳房が露になる。
学生だった頃、ディモレアの豊満な乳房に憧れを抱く男子はそれなりにいた。何せ従弟であるダンテですら気になると言っていたのを聞いた事があるぐらいだ。
その乳房を、ゆっくりと揉み下すと、ディモレアは小さく声をあげた。
普段まず出さないような―――――あえて言うならクレパスに落ちた時に見せた弱みのような、そんな感じのする声にエドは少しだけ笑む。
「おいおい、お前そんな声出せるのか?」
「アンタが出させて……るんじゃない……」
何度か揉み下した後、視線はまくったシャツからその下の、短パンへと移る。
ゆったりとした感じだった短パンは汗で張り付き、ちょうどその下に在るパンティの形ですら見えるほどだ。
エドは小さく口笛を吹く。
胸を揉み下していた手を身体をなぞるように下へとスライドし、短パンのホックを外す。
外された短パンが足へとずれ、汗と何かで濡れたパンティが露になる。
「……で、何で濡れてるんだ?」
楽しそうに言い放つエドの言葉にディモレアは答えない。
ただ、ベッドの上に投げ出されていた両手をエドの背中へと回した。
無言の、サイン。
その日、エドはディモレアを初めて抱いた。
「……んっ…………」
ディモレアも処女では無いのか、挿れた時に特に出血は無かった。
エドの分身はやはりその体格に似てあまり大きいものではなく、奥まで特に抵抗も無く入ってしまった。
「……ここまで抵抗無く入るってのも珍しいな」
「アンタだからじゃない? でも……それでも、アンタが中にいるって解るわよ……こう、目を閉じてても」
目を少し閉じたディモレアはそう呟く。
「アンタと今一緒になってるのって……なんか不思議ね」
確かにそうだな、とエドは思う。
ほんの一年前までは思ってもいなかった。嫌いだった。この世界ごと壊してしまうかも知れなかった。
でも、今、実際にしている事は―――――。
今、目の前にいる彼女を愛している事。
「ぁ……んっ……!」
奥へと届くように、エドは少しだけ腰を振る。
先端が奥に触れ、ディモレアが小さく声をあげる。それほど大きくは無かった分身が彼女の中で強くそそりたち、すぐにでも精を放ちそうな状態にまで来ていた。
「あんっ……んむっ!?」
ディモレアの上へと覆い被さり、エドはその胸を舌で刺激していく。
下で繋がっているだけでなく、胸への刺激も銜えてディモレアは少しだけ意識が遠のきかけた。
「…ぁ……んぁ………ん」
「っ……出す、ぞ」
その直後、エドが力強く腰を打ち付け、同時に先端から熱いものがディモレアの中へと吐き出される。
ディモレアが意識を持ち直したのか、手を伸ばしてエドの背中に手を回す。
自らの胸へと顔を埋めているエドの額に接吻をし、その温もりを確かめるかのように舌を伸ばした。
性を交わしたのは二人とも決して初めてではないが、まるで特別な事でもしたかのように思っていた。
その理由は、二人はまだ気付いていない。
でも。
お互いの中で、それぞれが特別な存在であるという思いだけは、更に大きくなりつつあった。
そう、彼女の事を差し置いて。
その扉一枚向こうに、カガリがじっと息を潜めていたのを二人は気付いていなかった。
最初にその異変に気付いたのはディモレアだった。
「……ねぇ、カガリ?」
「なんだ?」
研究生活を始めてはや二ヶ月ほど、カガリがようやく道に迷わなくなったある日の朝。
ディモレアがカガリの用意した食事が明らかに前よりも増えている事に気付いた。
「最近、食べる量増えた?」
「にゃうっ」
文字通り痛い所を突かれたのか、カガリは尻尾を逆立てて驚く。
「……この年になるともう胸より腹に行くわよ?」
「む……、で、ディモレア殿ほどスタイルが良くないのだ。別にかまわんだろう。私はまだ伸びる!」
カガリはそう言って胸を張ると、山と積まれた朝食に取り掛かる。牛乳やらおにぎりやらを両手で食べていくその姿は普段のカガリとは大分かけ離れていた。
「……後で太っても知らないわよ? フェルパーは素早い種族なのに鈍くなってどうするのよ」
ディモレア個人として彼女を心配した警告だったのだが、何故かカガリは食べていく手を止めた後、コップを掴む。
「ふにゃー!」
珍しくカガリが癇癪でも起こしたのか、手にしていたコップをぶん投げ、ディモレアが投げられたコップを回避する。
そして扉が開き、寝惚け眼で顔を出したエドに直撃する。
「ふごぉっ!?」
「あ、すまないエドワード殿」
「朝から何やってるんだお前ら?」
とりあえず飛んできたコップを拾ったエドが椅子に座ると、ディモレアがすぐに口を開いた。
「いや、カガリが食べる量増えたから太るわよって言ったんだけど……」
「ディモレア殿のようにスタイルを良くしたいだけだ」
「…………」
エドはカガリとディモレアを見比べた後、ため息をついて口を開いた。
「あのなぁカガリ」
「なんだ?」
「人はスタイルじゃないぞ」
「……………」
「ついでに言うがお前が俺に言った事だぞ」
相も変わらず学生時代からあまり身長が伸びてないエドはそう言って胸を張る。
「………………」
「ま、でもぶくぶく太るよりは今のままの方がいいが」
エドがそう口を開いた時、文字通りカガリは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。
「……そうか解った」
「……カガリ?」
「それでエドワード殿がディモレア殿を選んだとしても文句は言えないと言う事か」
珍しい事だ、とエドは思った。
カガリが滅多に無い自己主張を、強い口調で言っている。
「ちょい待ち。カガリ、話が見えないんだが」
「…………エドワード殿?」
カガリの額に青筋が浮かび、その剣幕にディモレアが思わず後退し、エドも躊躇わず少し後退する。
「私が何故ここについてきたか知っているか?」
「……いや、解らない」
その理由をエドは知らなかった。気になってはいたが、聞けずじまいだったから。
「……くだらない事かも知れないがエドワード殿と離れたくなかった」
「……あー……ま、そりゃ確かにな。一年……あるかないかとはいえ、あんだけ色々と皆でやってりゃな」
エドと、ディモレアと、カガリ。ダンテとパーネ。
共にパーティ仲間としていたのは一年にも満たないのに、それでもその中で結ばれた絆は太い。
前人未到のアイザ地下道ですら踏み越えるほどに。
「……そう考えるとな」
カガリはエドに視線を向けると、少しだけ顔を近づける。
「エド殿と共にいたい、というのは駄目か? ディモレア殿の方が、私よりもいいのか?」
「べ―――――」
エドは言いかけてふと停まる。ディモレアの空気が変わったと感じたからだ。
そう、ディモレアがまずカガリに向けた事の無い感情を、怒りを向けている。
「カガリ」
「……なんだ、ディモレア殿?」
「アンタ、おかしいわよ? 別にエドはアンタ一人のものじゃないでしょ?」
「別にディモレア殿のものでもないだろう。私が気にかけて悪いか」
「それはそうだけど……」
ディモレアが口ごもった時、カガリは何かを言いかけて急に―――――顔色が変わった。
「おい、カガリ?!」
慌ててエドが駆け寄り、ディモレアも近づく。
「大丈夫か? 立て、る……?」
エドがカガリを助け起こそうとした時、その時になって気付いた。
カガリの腹部が、明らかに膨らみかけている事に。
それが無駄な脂肪や、ましてや鍛えた筋肉ではない事は解る。
そう、明らかに妊婦の膨らみだった。でも何故――――とエドは思いかけて思い出す。
「……………………なぁ、カガリ。それ、もしかして……」
エドが震える声で呟き、ディモレアも思い出したようにエドとカガリを見比べる。
「………そうだ、あの時、エドワード殿に抱かれた時に、出来た子だ」
まだマシュレニア学府にいた頃。一度だけエドはカガリを抱いた事があった。
胎児の育ち具合から逆算すればその時と辻褄が合う。
「…………なんてこったい」
エドは思わず呟き、ディモレアはディモレアで視線をエドに向ける。
「……これじゃあしょうがないわね」
「しょうがないって何がだ?」
「言った通りの意味よ」
エドの問いにディモレアは首を振る。
「せいぜい幸せになりな―――――」「ちょっと待て」
エドはまず椅子に座り直すと、頭を軽く抑えてから再び口を開いた。
「……ともかく。カガリの中に俺の子供がいるとして、だ」
「うむ」「ええ」
「だが問題はここからだ」
そう、あの時そうであったにせよ。エドの興味は既にディモレアに向いている。
でもカガリはカガリでエドから離れたいとは想わないし、それはエドだってついさっき理解した。
そこまで必死になっているのなら、何を離れる必要があるのか。
でも、それはカガリだけでなくディモレアも同じこと。
「カガリは…俺と、離れたくないんだな……それだけが理由じゃなくて、カガリが本当に離れたくないっても解る。けどな。俺にも言わせて欲しい」
そもそもエドが此処に来た理由はただ一つである。研究の為だ。
その為にはディモレアと共にいる事も理由だった。だがしかし。
ああして、疑問に思ったにせよ、なんだかんだ言ってカガリも仲間である。共に潜り抜けた、仲間だ。
「俺は――――――」
「まさかとは想うけど、どっちとも離れたくないなんて言うの?」
「……ディモレア、俺の台詞を先に言うな」
まさか言われるとは思っていなかったが、事実そうである。
エドが息を吐いた時、ディモレアはため息を吐いた。
「けどねぇ、エド。そりゃマズいわよ」
「何がだ?」
「カガリとアンタに子供が出来てるのにアタシがここにいるって事よ」
「それは問題無いだろう。ディモレア殿はエドワード殿と研究を続ける上でのパートナーだろう? だから、これとは」
「無関係、と言いたいの?」
ディモレアの言葉に、カガリはおずおずと頷く。
「でもそれは無いわね」
「どうしてだよ?」
「幾ら研究に都合が良いからって理由だけで、同居したり寝てたりするような女だと思ってたのアンタら?」
「………………」
そういう事か。カガリと同じ理由である。
「……そりゃそうだよな。俺だってそうだよ」
エドは天井を仰いだ。
確実に成長していく、カガリの中の子と。
でも、ディモレアへの思いもまた、エドの中で大きくなっていくのだった。
その頃、それは既に始まっていた。
地下道も通っていない小さな街の青年が熱に倒れた時、家族も本人もただの風邪だろうと思っていた。
しかしそれが新種の熱病だと言う事に気付くのに、一ヶ月余りかかった。その頃には最初の患者である青年は死んでいてその家族に感染していた。
爆発的な感染力と、手の施しようが無く進行していく症状。
その小さな街から近隣の街、そして地下道や街道を通る冒険者達に乗って様々な街へ。患者はあっという間に広がっていった。
その治療法は見つからず、症状を遅らせる事は出来ても進まない。
医術に精通する者達は、魔導士や錬金術士の力を借りた。しかし彼らもまた、どうする事も出来ないまま事態が進んでいった。
そしてその魔の手は、彼らの棲む地にも近づこうとしていたのだった…。
…投下完了。
十二月ってどうして忙しいのだろう。
放置されると胃が痛くなるよね
忘却の彼方にレアモンスター。こんばんは、アトガキモドキです。
前後篇の前篇だけで切れていた話の続きですごめんなさい。
前篇を見ていない人は、過去スレと保管庫を参照してくださいごめんなさい。
今回も激甘です。それでは↓からどうぞ……ごめんなさい。
腕を引っ込めて膝に頭を預け、目を瞑りかすかに頬擦りをするフェルパーの紅い髪を、優しく撫でつける。
彼が刻んだ肩の傷を魔法で治してから、もうずっとこの調子だ。
どのくらい時間が過ぎたことだろう。フェアリーははめていた手袋を外し、頭頂部からうなじまでを素手でさすり続ける。
「なあ、フェアリー。聞きたいことがあるんだ」
今はすっかり落ち着きを取り戻し、フェルパーは会話が出来るまでになっていた。
「ん?なあに?」
「フェアリーはさ、その、ヒューマンとか……気にならないのか?」
二股に分かれたフェルパーの尻尾が、先のほうだけ小さく揺れる。
フェアリーという種族は、神を崇める聖職者のように、ヒューマンを尊ぶ傾向にある。
これまでの友人関係を改めて思い起こした。そういえば、自分から積極的にヒューマンと関わろうとした覚えは、あまりない。
「ああ。だってあのひとたち、怖いんだもの」
フェルパーが首を捻り、先程まで床を眺めていた顔をこちらに向けた。
意外そうな、ひどく驚いたような表情にも、どこか愛嬌がある。
「怖い?ヒューマンがか?」
「図書室でちょっと調べると分かるけど、伝説だとか神話とかにも、やけに出番のある種族じゃない?」
「あ、ああ。そのくらいは、知ってる」
「神様に敬愛されてるとか言うけど、悪いこともたくさんした種族でしょ?なんかそのへんが、おっかなくて」
ひと呼吸置いて、「ディアボロスより天罰下される回数も多いし」と付け加える。
他のフェアリーがどうしてああもヒューマンに盲目なのか。幼少より疑問に思っていることだが、いまだによく分からない。
「じゃあ……オレは、どうして平気なんだ?」
「え?」
「昔からそうだった。オレは暴れだしたら見境もなくなるのに、フェアリーは怖がらなかった……なんでだ?」
フェルパーの顔色は変わらない。さっきの質問と同じように、下心のない素朴な疑問なのだろう。
「うーん。なんでだろうね。あたし、危ないと思ったらさっさと逃げちゃうのに、フェルパーが暴れてるのは平気なの」
根拠と呼べるものは思いつかなかった。昔から長い付き合いだが、今日まで結論には至っていない。
しかしフェアリーの中では、たとえフェルパーが両手に刃物を構えていたところで、ちっとも怖くないのだ。
同じことをヒューマンがしていたら、荒くれの大男と、いうことを聞かない子供ぐらいの差を感じる。
「ふうん。なんでだろう?どういうことなんだ?」
「分かんない。だけど、フェルパーが暴れてるの見てても、逃げようと思わないの。不思議だね」
「本当に愛する者が錯乱した場合、その隣人は彼に、彼女に、追放よりも理解を求めるだろう」
聞きなれた声だ。十年、いいや、もっと前から、耳に馴染みがある。
視線を持ち上げて正面を見る。開いた引き戸に寄りかかり、バハムーンが部屋を覗いていた。
「まーた始まった。それ、誰の言葉?」
「周囲の反対を押し切って、セレスティアを嫁にとったディアボロスの言葉だ。やっこさん、発明家だったかな」
バハムーンはコーヒーカップを二つと、香ばしい匂いのするバスケットを手にしている。
「まだなんも食ってないんだろ?軽くでいいから、腹に入れときな」
教室の床に置かれた籠には、フライドチキンとホットケーキと、少々のおにぎりが詰められていた。
片手に持った二つのコーヒーを、ベージュ色のものはフェルパーに、ブラックはフェアリーに、それぞれ手渡す。
「詳しい話はエル子から聞いたぜ。派手に暴れたそうじゃねぇか」
猫舌にも程よいミルクコーヒーをすすったフェルパーの耳が、しゅんと垂れた。
「なあ……そのことなんだけどさ」
「最後まで聞けや。フェル男、てめぇクラ坊に、二人だけでも逃がせって言われたんだってな」
しょげるフェルパーに構わず、バハムーンは台詞をさえぎって質問する。
腕組と仁王立ちがやけに様になるのは、学科のせいか、種族のせいか。
「あ、ああ……でも、オレは……」
「俺達は六人パーティだ。思い出してみろ、あの時不意打ちをくらってから、誰がどんな順番でやられた?」
「えっと、ディアボロスと、バハムーンと、クラッズとフェアリーと……あ」
指を折って数えていたフェルパーの猫耳が起き上った。
「全部で四人。6引く4は2だ。ほらな。約束守れてるじゃねぇか」
にっと歯を光らせて笑うバハムーン。ランプの薄灯りでも分かるほど清潔な白だ。
よく見ると、制服の襟首には、ぐるぐると真新しい包帯が巻かれている。
「いいか?てめぇはてめぇが思ってるほど、頼りない奴でも、弱っちい奴でもねぇ。もっとてめぇに自信を持ちやがれ」
「……そう、なのか?」
「エル子なんか、おかげで生き残れたって言ってたぞ。クラ男も、フェル男ならやってくれると思ったってよ」
そこまで喋ってから、バハムーンはバツの悪そうに頭をかいた。
「け。説教なんざ、俺のガラじゃねぇや。でもよ、この場にいない後三人、皆てめぇを待ってんだぞ」
ぶっきらぼうに吐き捨て、そっけなく背中を向けたらそれ以上語らず、バハムーンは夜の校舎に消えて行った。
心配かけやがって。さっさと帰ってこい。赤い翼と後ろ姿がそう続ける。
「……ほらね。フェルパーがどんなに荒れてても、みんな怖がらないんだよ。いつもの、優しいフェルパーを知ってるから」
「そうか……そうかもな」
フェアリーはバスケットの中から、フェルパーの好物であるフライドチキンを取り出し、口の前まで持っていく。
「お腹すいたでしょ?さ、お食べ」
差し出されたフェアリーの手の上から、フェルパーは肉にかじりつく。最初のひと口は遠慮がちだった。
そのうち、両手でそれを掴み取り、大口を開けてがっつき始める。よほど腹が減っていたのだろう。
「ほらほら、そんなにあわてないの。誰もとらないから、ゆっくり食べなさい」
またフェルパーの頭を撫でてやる。癖の強い頭髪が指に絡みついた。
バスケットに入っていたおにぎりとフライドチキンをすべて平らげると、フェルパーは再び膝枕に寝転がった。
先程と比べて満足げな表情を浮かべており、フェアリーも安堵する。
もう一度、赤毛の短髪を指でなぞる。心地よさそうに、猫耳が反応した。
「……ずっと前」
「え?」
「ずっと前にも、こんなふうにフェアリーが頭を撫でてくれたことがあった」
フェルパーは薄眼を開けていた。視線の先に、自分の過去を投影されているようであった。
「確かあの時は、オレはケンカしたすぐ後で、フェアリーにやつあたりした。ひどいこと、さんざんやった気がする」
撫でていたフェアリーの手が止まる。その時の様子はすぐに思い出された。
つい先日、その頃の夢を見ている。フェルパーは、どこまで覚えているのだろう。
「そういえば、そんなこともあったね。フェルパー、あたしに何やったか、覚えてる?」
「……あんまりよく覚えてない。だけど、めちゃくちゃひどいことしたってのは、覚えてる」
むくりとフェルパーの頭が持ち上がった。両手を床に付き、上半身が起き上る。
「そうだ。あの時だって、オレはさんざん暴れてから正気にもどって……フェアリーに、謝ってた」
薄明かりの中でも、フェルパーの眼は黄金色に輝いていた。暗がりにも目が慣れてきて、尻尾の先までしっかり見える。
すっかりおとなしくなったフェルパーは、目尻が垂れ、申し訳なさそうな表情だった。
「めいっぱい怒られたけど、最後にはオレのこと許してくれて……やっぱり頭を撫でてくれたよ」
「ほんとフェルパーは、昔っからそう。頭撫でてあげると、おとなしくなるよね」
「だって、いつも撫でるのは、フェアリーだったろ?叱るのも、なだめてくれるのも、最後は、隣にいたフェアリーだった」
ふっと、フェルパーの口元が緩んだ。ほとんど見たことがないような、深く穏やかな雰囲気を纏う。
「しょっちゅう迷惑かけて、ごめんな。けど、フェアリーに優しく撫でてもらうのが、何より嬉しいよ。ありがとう」
突然、左の胸が強く脈打った。急激に鼓動が早まり、不意に息がつまって続かなくなる。
大事にしていた飼い猫に、ご主人様大好きです。なんて、いきなり告白されたような。
満面の笑みと、柔らかい囁き。徐々に呼吸が回復する中で、心の枷が音を立てて外れた。
「ねぇ……フェルパー」
こんな甘い声が出せたものかと、自分の喉を疑いたくなる。
ずいと詰め寄られたフェルパーも、あっけにとられているようだ。
「頭よりも気持ちイイところ……撫でてあげよっか」
くすぐったいくらいの力加減を意識して、子猫の股に手を伸ばす。
「ふぇ……フェアリー?ん、んむっ!」
何か言おうとしたのだが、フェアリーは唇を重ねて黙らせる。ふわっと女の子の甘い匂いがした。
幼馴染とキスした覚えなど、そういえばフェルパーには全くなかった。舌を絡める、過激な口づけ。
頬に触れていないもう片方の手は、依然として股間を弄っている。
「んふ、むぅん……ちゅっ、ぴちゃ……ぷはっ」
息が続かなくなったらしく、フェアリーのほうから顔を離した。
糸を引いている口元を指でなぞって、いたずらに、得意げに笑う。
「ふふっ……どう?女のキスよ」
「フェアリー?なに、なんのつもりだ?」
「もちろん、フェルパーを誘惑するつもり。ほらほら、もうこんなになってるよ」
いつの間にか、ズボンを下ろされていた。すでに充実した陰茎が、フェアリーの手の中で脈打っている。
「あ、こ、これは、フェアリーが」
「あっつくて、硬ぁい……ほら、こうすると……気持ちイイでしょ?」
反論させる間も与えず、手にした肉棒をしごき始める。時折手を止めて唾液を垂らし、根元から先までの上下運動。
フェアリーの手淫は柔らかく、涎が水っぽく音を立てる。久しくしなかった自慰よりも格段に良い。
「うっ、くぅ……フェアリー」
「あははっ、どんどんおっきくなってるね……もっともっと、よくしてあげる」
うわ言のように、彼女の名を呟く。フェアリーはモノを刺激しつつ、猫背のフェルパーの後ろに回る。
「出そうになったら、ガマンしちゃダメ。フェルパーの弱いトコなんて……全部知ってるんだから」
息のかかる距離で囁いたフェアリーは、そのまま舌を伸ばして耳に触れた。
途端にフェルパーの身体はびくんと跳ねて、全身に電流が走ったようになる。
「ふぁ!?フェアリー、ダメだ、耳はあっ!」
「フェルパーのオチンチン、ビクビクしてるよ。ね、もうイキそう?イッちゃいそうなの?」
耳をなぞりながら、より強く激しく指先で幹を摩擦するフェアリー。もはや我慢も限界だった。
「ああっ、フェアリー!イッ、イクうっ!」
ひときわ大きく一物が膨張し、次の瞬間には白濁を放っていた。その間も、フェアリーの手は止まらない。
昇天して肢体をびくつかせるフェルパーを、フェアリーはただ眺めるばかり。
「いっぱい射精たね……あは、元気元気」
射精が終わっても萎えないフェルパーの亀頭を、フェアリーが指先で軽くつついた。
「うああっ!フェアリー、それもイイっ!」
一度は果てたフェルパーのペニスを、今はフェアリーが口に含んでいる。
唾液をたっぷりとため込んでの口淫が、まだまだ行為に耐えうるだけの硬度とサイズを呼び戻す。
「ちゅぷ、ちゅく、んぷ、くぷっ。んはっ、フェルパーは、手でするよりも、口でするほうが好きなのかな?」
「んっ、なんで?」
「フェルパーの、さっきより熱くて硬いよ?あむっ、じゅぷ、じゅくっ、んふぅっ」
先端部を咥え、頭ごと動かしての強烈な吸いつきでむしゃぶりつく。
じゅぽじゅぽと淫猥な音が響き渡り、五感のすべてを侵されるようだ。
フェアリーは時折、上目使いで視線をよこし、それがぞくぞくとオスの本能を刺激する。
「ああ〜イイっ。フェアリー、オレまた射精ちまうっ!」
「んふ、いひよほっ。いっふぁい、らひふぇっ」
もごもごと口にしたまま返事をしつつ、フェアリーは玉袋を揉み解す。
亀頭を舌先でほじくりながら、竿を激しく摩擦してきた。
「あっ、また、またイクっ!フェアリー、口に……ううっ!」
反射的にフェアリーの頭を押さえつけ、喉の奥まで侵入して射精する。
己の分身がのたうつたびに、精子を吸い出そうとするかのように、フェアリーが強く吸い上げてくる。
たまらず二度三度と大きく痙攣し、数秒間の長い絶頂が続いた。
「はぁ、はぁ……ごめん、フェアリー。自分でも無意識に、突っ込んじまって」
「ん……ちゅうぅ、ちゅぱっ。あははっ。喉の奥まで、マーキングされちゃった」
ぺろりと舌を見せて、軽口をたたく。相当な量を発射したつもりだが、全部飲みこんでしまったのだろうか。
「二回目なのに、いっぱぁい……おまけに、まだまだ元気だね」
今度は先ではなく峰をつつかれる。全く衰えていないようで、はじかれてもすぐ元の位置へと落ち着く。
自分のモノとはいえ、底なしにすら思える精力が、少し恥ずかしい。
「じゃあ……本番しちゃっても、いいかな」
「え?本番って……フェアリー?」
目の前でフェアリーはスカートをめくりあげ、今まさにパンティを脱ごうとしていた。
ただ白いだけのように見える下着は、心なしか湿っているようでもある。
尻を突き出し、フェアリーの指で開かれた亀裂からは、蜜がたっぷり滴っていた。
「フェルパーのそれ、元気いっぱいのオチンチン、ここに頂戴」
フェアリーの眼が、艶っぽくうるんでいる。
腰に手を当てたところで、ふとフェルパーの動きが止まる。
「どうしたの?」
「……いいや。気のせいかもしれないけど、前にもこんなことがあったような気がするんだ」
ほとんど記憶にないことだった。異性との性行為など、これが初めてのはずである。
フェアリーにはあきれられるかと思ったが、ふっと軽めな溜息の後には、意外な返事が待っていた。
「ねえフェルパー、覚えてる?フェルパーがうんと子供だったとき、あたし、一回だけ襲われたことがあるの」
いくつのとき、とは明確に示さなかったが、だいたい初等教育を受けていたころだと、フェルパーはぼんやり考えた。
「襲われた?どういうことだ?」
「うん。あたしね……フェルパーに、レイプされたことが、あるんだよ」
視界が暗転した。フラッシュバック。当時の映像が新鮮に蘇る。
あの日は同級生とケンカをして、取っ組み合いの末に、相手にだけひどい大ケガを負わせたのだ。
現場から逃げ出し、ひとり物陰にうずくまっていたところを、フェアリーに見つかる。
苛立っていたせいだろう。性に目覚めたばかりのフェルパーは、おもむろに彼女を……。
「……あ……あぁ」
間欠泉のように罪悪感と背徳感が噴き出してくる。どうにもしまらない、情けない声が出た。
目の奥が煮えたぎり、叫びだしてどこかへ走り去ってしまいたい気持ちになる。
「フェルパー、あのときのこと……まだ、覚えてたんだね」
「フェアリー……オレは、オレはっ」
金縛りにあっているらしい。足がすくみ、全く動けずにいる。
やがて、フェアリーがゆっくり起き上り、フェルパーの頬へ唇が吸いついた。
「あのときは、無理やりだったけど、犯されたのは下だけだったから。だから、さっきのが、あたしのファースト・キス」
驚くほど穏やかなフェアリーの笑顔は、一筋の水滴で濡れていた。
「あたしはもう、全然気にしてない。だから、今夜のこれが、あたしたちのちゃんとしたヴァージン……てことにしない?」
今一度、フェアリーが秘部を突き出す。オスの性だろうか、女性器を目にするだけで、勃起は回復する。
挿入部の位置を確認し、先端を当ててフェアリーの腰に手を添える。わずかな挿入でも吸い込まれそうだ。
「……挿入るよ」
「うん。フェルパー、来て」
体重をかけ、一気に突き入れる。フェルパーの侵略を防ごうとする幕のようなものは、何もなかった。
「んああっ!挿入った……フェルパーの、おっきいっ」
「フェアリー……フェアリーの中っ……ぬるぬるが吸いついて、気持ちイイっ!」
初めて行為に及ぶ男女は、きっとこんな感じであろう。
一度は経験したこととはいえ、長年眠っていたその感覚は、あるいは初めてより具合がいいのかも。
「い、イイよフェルパー……そのまま、動いてぇ」
フェアリーが言いだすより少し早く、フェルパーはすでに動いていた。
腰を引いて打ち付けるたびに、弾力ある尻が弾かれる音と、かき回される秘裂の水音がこだまする。
一突きずつ、醜い過去の過ちや、後ろめたい理性が消えていく。
「あっ、ああん、ふぁっ!フェルパーのオチンチンっ!あたしのオマンコにぴったりで、気持ちイイっ!」
「凄いよ、フェアリーのアソコっ!グチャグチャで、アツアツで、からみついてくるっ!」
「あはあっ!そこイイっ!もっ、もっと深くぅ!もっと激しく突き上げて!ああっ!」
「フェアリー、キスしてっ!キスしてくれえっ!」
フェルパーが叫ぶと、フェアリーが上体を起こして、ざらついた舌をほおばる。
バックの体制のまま首元にしがみつき、アクロバティックな格好だ。
「んっ、んん……っは、フェアリー、射精すときは、どこに射精したらいい?」
「うぅんっ、中でいいよっ。今夜は特別……んあぅ!このままドピュッてさせたげるっ!」
気のせいか、フェアリーのほうからも腰を突き出している感じがある。
ビーストの精力にやられているのか、すっかり快楽におぼれているのか、フェアリーははしたなく喘ぎ散らす。
普段の強気な笑顔に見え隠れする、堕落した甘い表情がたまらない。
「フェアリー、気持ちよすぎて、オレまたイキそうっ」
「いいよ。いっぱい、ドクドクしてえっ!あっ、あたしも、もうダメぇ!」
淫らに催促されてしまっては、いよいよフェルパーは耐えきれない。
ぞくぞくと昇ってくる射精感に合わせ、深く最奥へ突撃する。
「うっ……射精るっ!」
「ああぁっ!イクぅ!イクイク、イクうぅー!」
今晩三度目に放たれたスペルマが、フェアリーの子宮へ注ぎ込まれていくのが、伝わったように思えた。
最低限の事後処理もせずに、行為が終わった後の二人は、その場に寝転がっていた。
「……フェアリーの、オマンコ」
「なあに?」
「……気持ちよかった」
「あははっ。フェルパーのオチンチンも、凄かったよ」
「また……シテもいいかな?」
「う〜ん、毎日はダメよ。中毒になるといけないし、フェルパー元気だもんね。いい子にしてたら、またシテあげる」
フェアリーは、相変わらず頭を撫でている。さんざん射精した後ということもあって、程よい心地よさ。
心なしか、いつもより彼女の掌が暖かいようである。
「今更だけど……ゴメン、フェアリー」
それで許されるとは、あまり思わない。過去というからには、取り返しは付かない。
謝ったそばから泣き出しそうになっているフェルパーは、自分が情けなくて仕方なかった。
それでも、フェアリーはいつも通りの、ちょっと強気で、活き活きとした微笑みを見せた。
「ちゃんと謝ってくれたから、そのことは許してあげる。そのかわり」
言葉を区切った。何を言われるのだろうかと、少し身構えてしまう。
「自分を大切にして。捨て身はいいけど、フェルパーがちょっと無茶するだけで、結構心配なんだから」
眉が垂れていた。あきれながらフェアリーがたしなめるときは、いつもこんな顔になる。
一瞬、あっけにとられたが、すぐ我に返って返事をした。
「わかった。もうフェアリーを心配させるような無茶はしないよ」
「そうして。あたしだけじゃない、バハムーンや他の皆も、あなたのこと心配しちゃうから。ユビキリゲンマンだからね」
張り切って小指を繋ぐフェアリーともども、子供に戻った気がした。
あの頃から、バハムーンとやんちゃをしていた。ディアボロスも一緒になって、四人でおやつを食べたりもした。
やがてクロスティーニへ入学し、エルフが、クラッズが仲間になった。同級生にも自慢できる友人だ。
今までのことを振り返ってみれば、こんなオレにも仲間がいるじゃないか。帰れる場所と、その温かみに気がつく。
「……フェルパーがなんで怖くないのか、なんとなく解ったかも」
「え?」
ふっとフェアリーの顔が弾けた。燭台の灯りではかなわないくらいの、華やかな微笑み。
「かわいくて、子供だったあの頃と、中身がちっとも変わらないんだもん」
蝋燭の明かりが揺れた。照明の角度と部屋の暗さで、赤らんだ頬をごまかせていたらいいと思う。
アトガキモドキが現れた!
アトガキモドキからは敵意を感じない。
えー……大変長らくお待たせしました。フェル×フェアの後篇でございます。
そもそも私のことを覚えていらっしゃる方がおいでかと小一時間、
そしてこんなにも遅くなってしまって面目が立たないだろと小一時間、
さらにスレの容量ギリギリに滑り込むのは無茶だろと小(ry 本当にごめんなさい。
え?かけた時間に品質があわない?そもそも賞味期限切れ?ごめんなさい。イペリオンを唱えないで。
放置でトンズラという最悪の事態は回避ということで、ああもうほんとg(ry
謝ってばかりですね。今夜はこれでご勘弁を。それではノシ
アトガキモドキは挨拶をして立ち去った。
GJ!
長い間待ってたかいがあった!
326 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 04:37:30 ID:4DCIyr9H
>>313 GJ
な、なんだってー!!!
相変わらずこっちの予想を遥かに上回る展開。流石。
そしてエドの鈍感ぶりも流石。
>>325 乙!
おお!ついに続きが!待ったかいがあった!
大丈夫、忘れてませんよ。
遅くなっても大丈夫です。
ここに、もっとひどいのが居ますから。
このスレの最初に投下した、アレ。
ようやく第一話が書き終わりました。
容量の問題で投下は次スレになります。
…第二話は、もっとはやく書きます。すみません!
・Δ・)ととモノエロパロまとめサイトとか無いのー?
・・・とまぁROM専が言えるセリフじゃないなスマソ
ノシ
328 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 18:46:25 ID:4DCIyr9H
329 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 18:48:05 ID:4DCIyr9H
あれ、言葉が変だな。すみません。
>>328 いや、結構たくさんのSSがあるから独立した保管庫がありそうだなーと思っただけだ
失礼した、以後自重する
331 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 18:37:04 ID:BeWbZoAL
埋めネタ投下。容量ギリギリいけるはず
お相手はドワ子。では投下します
初めて出会った相手を判断するとき、まずは種族が重視される。次いで性格、見た目と続いていき、こまごまとした要素を積み重ねた上で
評価を下す。そのため、いかに人間的に優れていようと、種族や性格で損をする者も多い。
彼はそんな種族の代表格、ディアボロスであった。おまけに性格も悪く、学科は忍者である。戦闘力も高く、有用な魔法を覚え、
盗賊技能までもを併せ持つこの学科は非常に需要と人気が高いが、その技術は主に暗殺のためであり、顔色一つ変えずに
敵を殺すこの学科を、快く思う者は少ない。あくまで冒険に有用だという理由で人気が高いのであり、人間的には大いに問題がある、
というのが、大方の意見である。
彼自身も、それはよくわかっていた。種族でまず嫌われ、性格でさらに敬遠され、おまけに学科でも人を遠ざけているため、パーティの
仲間とも必要最低限の関わりしか持とうとしなかった。また、慣れ合えば甘さが出る。そういったものを極端に嫌う学科でもあるため、
彼自身はその境遇に十分満足していた。
が、変わった人物というのはどこにでもいる。
この時も、彼は体育館へ向かって歩いていた。一人で鍛錬をしようと思っていたのだが、その背中に元気いっぱいの声がかかった。
「あ〜!見つけたー!」
その声に、ディアボロスはうんざりした溜め息をつく。その顔は不快を通り越し、『嫌な奴に見つかった』という、一種悲壮な表情が
浮かんでいた。
「……帰れ」
「帰るかー!今日こそは絶対勝ってやるんだからぁー!」
尻尾をぶんぶん振り回し、とてとてと走ってくる小さなドワーフの女の子。
「さあー、勝負勝負―!」
「……帰ってくれ」
「やだー!勝負、しょうぶ、しょーぶー!」
『また始まった』という顔で、ディアボロスはさっきよりも深い溜め息をついた。
彼女は格闘家である。素手での戦いを習い、武器や防具に頼らない戦闘を得意としている学科だが、忍者もそれとよく似た技術を
持っている。それに対抗意識を燃やしているらしく、事あるごとにこうして勝負を挑んでくるのだ。正直なところ、彼としてはこの
ドワーフが大の苦手である。
「手加減できるような技量はない。頼むから……本当に頼むから帰ってくれ」
「逃げる気かー!絶対逃がさないぞー!」
そう言うと、ドワーフはがっしりと腕を絡めてきた。
「……抜け毛と臭いがつくから放せ。そして帰れ」
「じゃ、勝負する!?じゃないと放さないぞー!」
彼女は何事にも本気で、言葉には少しの嘘も含まれていない。つまり、彼女が放さないと言ったら、絶対に放さないのだ。
強引に振りほどこうにも、そもそも腕を動かすことができないほど、彼女の腕力は強い。
「わかった、わかったから放せ。勝負してやる。してやるから終わったら帰れ。帰ってください」
「やったぁー!じゃ、早く行こ!絶対勝ってやるんだからー!」
言いながら、ドワーフはディアボロスを引っ張って体育館へ向かう。一度隙を見て逃げ出したことがあるからか、ドワーフは絶対に
腕を放そうとしない。
体育館に着き、その一角を確保すると、ドワーフはようやく腕を放した。ここまでくると、さすがにもう逃げ場はない。
「じゃ、一発勝負ね!お互い言い訳はなしだからね!」
本当に、ディアボロスはこのドワーフが苦手だった。
パーティ結成当初こそ、大多数の者と同じく彼を避けていたが、彼が素手での戦いを見せた瞬間から、あっという間に今のような関係に
なってしまった。彼の心中などお構いなしに、土足というよりは裸足で踏み込んでくる彼女は、色々な意味で慣れない相手である。
「さ、いくよ!絶対勝つんだからー!」
ドワーフは勢いよく、制服を脱ぎ捨てた。ディアボロスも同じく制服を脱ぎ捨て、二人とも最低限の衣類を身につけただけの状態になる。
「準備いい!?」
「……来い」
「いざ、勝負ー!」
二人は同時に踏み込むと、同時に拳を繰り出した。
お互い一歩も引かず、激しく打ち合う。至近距離での乱打戦ではあるが、ドワーフはディアボロスの攻撃を主に腕で受け、ディアボロスは
ドワーフの攻撃を捌くか避けるかである。お互いの突きも蹴りも、どれ一つとして相手を捉えない。
だが、正面からの戦いは、決着が早い。そして、彼がドワーフを苦手とする所以が、もう一つある。
突如、ドワーフは回し蹴りの勢いのまま背中を向けた。そして頭を下げ、グッとお尻を突き出す。
何事かと思った瞬間、顔面に何かが被さってきた。
「ぶあっ!?ぐっ…!」
ふんわりとした感触。ふかふかの肌触り。そして獣臭く、目に毛が入り、口の中にまで抜け毛が侵入する。ドワーフは尻尾を使い、
目潰しを仕掛けてきたのだ。完全に体勢を崩したところへ、ドワーフが走った。
「とりゃあー!」
元気な掛け声。ドワーフが跳んだと思った瞬間、ディアボロスの目の前で思いっきり足が開かれた。
ばふっと、顔面に股間が押し付けられる。スパッツ越しに、獣の臭いと蒸れた汗の匂い、そして柔らかい感触が感じられた。
ドワーフは足を閉じ、ディアボロスの顔を挟み込むと、思い切り体重をかけた。同時に、ディアボロスはぐらりとよろめき、
そのまま後ろに倒された。
「ぐ…!」
後頭部を強打した音が響き、ドワーフの足の間からくぐもった悲鳴が漏れる。そんな彼の上で、ドワーフはパタパタと尻尾を振る。
「えっへへへ!マウントポジション取ったから、私の勝ちだよね!」
その言葉に、ディアボロスはしばらく答えられなかった。
「……お前の勝ちでいいから、どけ。いつまで乗ってるつもりだ」
「やったぁー!勝ったぁー!久しぶりに勝てたよぉー!」
いっそう激しく尻尾を振り始めるドワーフ。胸のあたりを羽根箒で掃かれるようなこそばゆさを感じながら、ディアボロスは顔に
座られたまま、黙って横たわっていた。
ディアボロスは彼女が苦手である。それは読めない動きをするからというわけではない。
どうやら、彼女は自分が女であることを意識していないらしく、先の戦闘のような行動を平気でしてくるのだ。
色仕掛けなら、引っかからない自信はある。だが、彼女の無邪気な行動は、狙っていないが故に、こちらとしても対処できないのだ。
もちろん、最初の頃は気にもならなかった。しかし、ある程度の付き合いになれば、話は変わってくる。一戦ごとに心を掻き乱されるのは、
忍者としては非常に不快なものである。ドワーフの方は、彼を純粋にライバルと見ているだけらしく、それ以外の用事で話しかけることは
ほとんどない。そうやって、一方的に心を掻き乱されているだけというのも、ディアボロスが不快に感じる要因の一つである。
「えへへ〜、今日は勝てた勝てたー!体動かした後のご飯っておいしいよね!」
「………」
ドワーフは相当に機嫌がいいらしく、組み手の後はなぜか二人で食事をする羽目になってしまった。ディアボロスは帰りたかったのだが、
やはりドワーフに腕を取られ、強引に連れてこられたのだ。
「あれ〜?おいしくない?」
「……負けた後の飯がうまい奴が、どこにいる」
「ご飯はご飯だよー。勝っても負けても、体動かした後はすっごくおいしいよ」
「………」
色んな意味で、こいつと自分とは種族が違うと、ディアボロスは思っていた。彼女にとっては、格闘は即ち殺しではなく、ある種の
スポーツマンシップを持って行うものなのだろう。
「……お前がなぜ俺にまとわりつくのか、理解できん」
思わずそう漏らすと、ドワーフは目をパチクリとさせた。
「なんでって、仲間だし、格闘のライバルだもん」
「俺のは殺しの技だ。お前の拳とは違う」
「拳は一緒だよー。力は私の方があるけどね!」
「……調子の狂う奴だ」
彼の目下の悩みは、このドワーフがどうしたら自分に付きまとわないようにできるか、である。最近は、いっそ組み手の最中に、本当に
殺してやろうかとすら考え始めている。
その時、ドワーフがふと口を開いた。
「あ、ねえねえ!私、そろそろクリティカル教えてもらえるんだけどさ、それ教えてもらったら、また勝負してくれる!?」
「お前は俺を殺す気か」
「君だって無刀流免許皆伝持ってるでしょー!それは私習わないけど、クリティカル教えてもらったら結構対等になるじゃない!?
だから勝負しよ!ね、約束だよ!」
「おい、俺は約束した覚えなんか…」
「ごちそーさま!それじゃ、またやろうねー!」
一方的に言って、ドワーフは食器を下げに行ってしまった。残されたディアボロスは深い溜め息をつき、しかしこれは利用できるかも
しれないと、一人ほくそ笑んでいた。
それからしばらくして、ドワーフは晴れてクリティカルの技術を習得した。さあいつ来るかと待ち構えていると、昼食を終えて
学食を出た瞬間、いつもの声がかかった。
「あ〜っ、いたいたー!さー、約束通り勝負ー!」
真っ白な息を吐きながらこちらに走ってくる毛玉。ここ最近、特に寒い日が続いたため、ドワーフの体毛はすっかり冬毛になっている。
「やるのは構わない。だが、ただで受けると思うなよ」
「んー?」
真ん丸な目を瞬かせ、ドワーフは首を傾げた。
「今までは、無刀流免許皆伝を持つ俺の方が有利だからこそ、お前の組み手にただで付き合った。だが、対等になった以上は、
ただで付き合うつもりはない。どうしてもやれというなら、それに見合ったものを賭けてもらおう」
「……あー、負けた方が勝った方に何かあげればいいんだ?」
「いや、お前が頼む方なんだから、俺は…」
「じゃ、私が勝ったらでっかいケーキと七面鳥!あとご飯いっぱい!おごってもらうからね!」
「俺の話…」
「私はそれでいいや!で、君は何賭ければいいの!?」
どうにも言いたいことが曲解されているようだったが、全体としてみれば予定通りの流れである。ディアボロスは軽く息をつくと、
はっきりと言った。
「じゃあ、お前には体を賭けてもらおうか」
さすがに、いくらドワーフとてこの申し出は断るだろう。相手が断れば、自分も受ける義務はないと逃げられる。仮に受けたら受けたで、
こちらにも不都合は全くない。
「ん?体?」
だが、ドワーフは意味がわかっていないようで、やはり首を傾げている。
「体?って?抜け毛でもいる?」
「……抱かせろ、とか、やらせろって言えば通じるか?」
「……あっ!」
途端に、ドワーフの体毛がぶわっと膨らんだ。もはや露出している部分は、元の形が完全に消え失せている。
「そ、それ本気、で言ってる?えーと、それでいいの?」
「嫌ならやめていいぞ。ただし、その場合は組み手の話は断る」
十中八九、ドワーフは断るだろうと踏んでいたのだが、意外にもドワーフは首を振った。
「ううん、いいよ!負けなきゃいいんだもん!それに、それぐらいの方が気合入るもんねー!絶対負けないぞー!」
「……受けるのかよ」
「じゃ、体育館行こ!よーし、絶対おごってもらうんだからー!」
こうなっては仕方がない。二人はいつものように体育館へ行き、その一角を確保すると服を脱ぎ捨てた。
「いつでも来い。負けはしない」
「私だって負けないからねー!さあ、いっくぞー!」
いつもより遥かに気合の入った声で言うと、ドワーフは地を蹴った。それに対し、ディアボロスは防御の構えを取る。
次々に襲いかかる攻撃を、ディアボロスは落ち着いてかわしていく。自分からは決して攻撃せず、せいぜい相手の隙にカウンターを
放つ程度である。防御に徹している彼に対し、ドワーフは構わず攻撃を仕掛ける。
あまりの猛攻に、いくつか避けきれない攻撃もあった。それを腕で防ぐと、以前より遥かに強い衝撃が襲ってくる。それでも、直撃さえ
避ければ何とかなる。ディアボロスはじっと機会を窺い、やがてその時が来た。
いくら体力のあるドワーフとはいえ、攻撃の手を休めなければさすがに疲労する。動きが鈍り、やや大振りの攻撃が出た瞬間、
ディアボロスは走った。
腕の下をすり抜け、さらに姿勢を低くして床を滑る。そのままドワーフの足の間を抜け、すぐさま立ち上がる。
「え?あれ!?」
標的が消え、ドワーフは慌てて辺りを見回そうとした。その直前、ディアボロスは足音もなく駆け寄ると、後ろからドワーフの膝を蹴り、
体勢を崩した彼女の首を締めあげた。
「あうっ…!」
「……俺の勝ちだ」
耳元で冷たく言うと、ドワーフの体がビクッと震える。
「う〜……や、やっぱり本気……なんだよね…?」
「どうしても嫌なら、代案がないわけでもないがな」
「な……何?何すればいいの?」
一筋の光明を見出したように、ドワーフは身を乗り出して尋ねる。やはり乗ってきたと、ディアボロスはほくそ笑んだ。
「二度と俺に付きまとわないなら…」
「やだ。それなら、その……い、いいもん。約束、守るもん」
「……なんでだよ…」
「いいの!約束は約束だもん!か、か、覚悟はできてるもん!」
意地になって叫ぶ彼女に、ディアボロスは内心頭を抱えていた。予想では、ここまでの流れで自分に付きまとわないようにできると
思っていたのだが、彼女は予想に反して体を許す方を選んでしまった。こうなっては、ディアボロスも覚悟を決めるしかなかった。
半ば自棄気味に、どうとでもなれと思いつつ、ドワーフと一緒に部屋へ向かう。
「あ、あの、まだお昼だけど…?」
「構うか。さっさと脱げ。そもそも、お互いの体なんかいつも見てるだろ」
「う、うん……けど、なんか、その、そういう目で見られるって思うと、恥ずかしいな…」
それでも脱がないわけにいかず、ドワーフはおずおずと服を脱ぎ始める。その恥ずかしげな表情と、少しずつ全身が露わに
なっていく姿自体はなかなかにそそるものがあったが、ディアボロスは体毛を肌と同列に見られるほどには、悟りを開けていない。
やがて、ドワーフは上着を脱ぐと、恥ずかしそうに胸を隠した。
「こ、これでいい?」
「隠すなよ」
「う…」
ドワーフは恥ずかしげに、胸を隠していた手を下した。しかし、ただでさえ冬毛になったドワーフの体は、ふわふわした体毛以外
何も見えない。
ディアボロスはおもむろに、ドワーフの胸へ手を伸ばした。
「あっ!?やっ…!」
「邪魔するな」
「……う〜」
触ってみると、ドワーフの胸元の毛にふんわりと手が埋まる。さらに強く押すと、硬い大胸筋に触れた。ほとんど筋肉ばかりで、
胸らしい胸は存在していないらしい。それでも、一応は女の子の胸だということで、ディアボロスはその平坦な胸を撫でてみる。
指先に、僅かな突起を感じた。途端に、ドワーフの体がピクッと跳ねる。
「あうっ…!」
直後、ドワーフは自身の口を覆った。そして耳を垂らし、上目遣いにディアボロスを見つめる。その姿が妙に可愛らしく、ディアボロスは
執拗に胸を責める。
「うあっ……んっ、あく…!あ、あんまり触んないでよぅ…」
「反抗するな」
「う〜…」
手を押さえることもできず、かといって逃げることもできず、ドワーフは体をくねくねと捩らせつつ、何とかその刺激に耐える。
ディアボロスはドワーフを後ろから抱くようにして胸を撫でていたが、やがてその目は落ち着きなく振られる尻尾へと向けられた。
左手を放し、尻尾の裏側を撫でる。
「ひゃあっ!?」
ビクリと体を震わせ、ドワーフが甲高い叫びをあげる。逃げようとする尻尾を捕まえ、さらにじっくりと撫でる。
「うあぁっ……やっ、尻尾は、やめっ…!」
「うるさい。何をしようと、俺の勝手だ」
尻尾を撫でられる度に、ドワーフは高い声を上げ、体を快感に震わせる。どうやら尻尾が弱いようで、さらに根元が敏感だと気付くと、
ディアボロスは執拗にそこを刺激する。
毛を撫でつけ、時に逆立てる。裏側を指でくすぐり、さらに右手では、変わらず胸を撫でている。
「んっ……うあぅ…!んうっ……はぅ…!」
最初はその刺激から逃れようとしていたドワーフだが、その動きがだんだんと弱まり、声も少しずつ小さくなり始める。
やがて、スパッツに黒い染みがじんわりと広がる。それに気付くと、ディアボロスは手を止めた。
「……もう、準備はいいみたいだな」
「ふぇ……じゅんび…?あうっ!」
ディアボロスはドワーフを抱き上げると、ベッドに放り投げた。そして自身も服を脱ぎ、ドワーフのスパッツに手をかける。
が、脱がせると体のラインが見えなくなることに気付く。スパッツ越しに形のいい臀部が見え、僅かな膨らみも見える現状を確認すると、
最終的にラインがはっきり見えている方がいいと判断し、ディアボロスはスパッツの中央部分を引き裂いた。
「あーっ、お気に入りなのにぃ…!」
「錬成して直せばいいだろ。ほら、足開け」
足を開かせ、その間に体を割り込ませる。そしてスパッツの裂け目に見える秘部に触れると、ドワーフは不安そうに耳を動かす。
「あ、あのっ…!」
「なんだ」
「こ……こういうの、初めてだから……優しくして……くれる…?」
いつも元気いっぱいのドワーフの、怯えたような声。さすがのディアボロスも、そんな声を聞いては強引にしようという気は起こらない。
「……なるべくな」
割れ目を開かせ、そこに自身のモノを押し当てる。ドワーフはいよいよ不安げにそれを見ていたが。やがて観念したように目を瞑った。
ゆっくりと腰を突き出す。先端が硬い肉を押し分け、彼女の中に入り込んでいく。
「ぐ、う……うあ、あ…!うぅ〜〜…!」
ドワーフは固く目を瞑り、歯を食いしばってその痛みに耐える。ディアボロスがさらに腰を押し付けると、意外とすんなり根元まで
入ってしまった。とはいえ、ドワーフが辛そうなことに変わりはない。
「んあぅ…!くぅぅ…!」
「……その、大丈夫か?」
ディアボロスが尋ねると、ドワーフは弱々しく笑った。
「だ……だい、じょぶ…。そ、そんなに大きくないから……へーき…」
直後、ディアボロスは思い切り腰を突き上げ始めた。
「いっ、痛い痛い痛ぁーい!!!痛いよぉー!!うあーん、動かないでよぉー!!!」
必死に痛みを堪えていたドワーフだったが、突然の激しい痛みに、とうとう泣き出してしまった。相当に痛かったらしく、ドワーフは
ディアボロスにしっかりと抱きつき、その動きを強引に封じた。
「なんでぇ…?なんでいきなり……ぐすっ……そんなひどいこと…」
「……あんなひどいことを言われれば、男は怒るか凹むかしか選択肢はない…!」
ディアボロスは前者を選択したらしく、その顔は怒りと悲しみの入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。
「……大っきくない方がいいのにぃ…」
「もう大きさは言うな。頼むから」
鼻をグスグス鳴らしつつ、ドワーフはこくんと頷いた。やがて、その手から少しずつ力が抜けていく。
一瞬、ディアボロスの脳裏に、このままドワーフを滅茶苦茶に犯してやろうかという考えがよぎる。そうすれば、恐らく今後、彼女に
付きまとわれることはなくなるだろう。
だが、目にいっぱいの涙を浮かべ、こちらを不安げに見上げる彼女を見ていると、どうしてもあと一歩が踏み出せなかった。
「……動いていいか?」
「……うん…」
ゆっくりと腰を動かす。途端に、ドワーフの中がぎゅっと収縮し、ディアボロスのモノを強く締め付けてくる。
「うああっ!あっ!あ、あっついよぉ…!」
突き入れれば熱い体温が伝わり、同時に全体をぬめった肉壁が締め付けてくる。
引き抜くときには、中が引き留めるかのように収縮し、腰と腰の間に溢れた粘液が糸を引く。
パン、パンと腰を打ち付ける音が響き、それに合わせてベッドが軋む。その合間に、ディアボロスの荒い吐息と、ドワーフの悲鳴とも
嬌声ともつかない声が響く。
「くぅ、あっ!も、もっとゆっくりぃ…!」
「うあっ……中が、締め付けて…!」
少しずつ、ディアボロスの動きが強く、大きくなっていく。汗が頬を伝い、顎からドワーフの体に滴り落ちる。ドワーフ自身も、既に
体毛がぺったりと体に張り付いている。
いつしか、ディアボロスはドワーフの体を強く抱き締めていた。そしてドワーフも、ディアボロスを強く抱き返す。
「くっ……もう限界だ…!出る…!」
切羽詰まった声を出すと、ディアボロスはドワーフの体の奥まで突き入れた。それと同時に、彼のモノがビクンと跳ねる。
「ああっ、あっ!中で……動いてる、よぉ…!なんか、出てるぅ…!」
自分の体内で動くモノの存在を感じながら、ドワーフが茫然とした声で呟く。
全てをドワーフの体内に注ぎ込んでも、ディアボロスはしばらく彼女の中に留まっていた。そして射精後特有の気だるさと、
激しい運動後の倦怠感と、感じたこともない快感の余韻が心地よかった。
「終わっ……た…?」
その時、ドワーフが息も絶え絶えといった声を出した。慌てて彼女を見ると、相当に消耗したらしく、ドワーフはぐったりとしている。
「あ……悪いな、大丈夫か?」
言いながら、ゆっくりと彼女の中から引き抜く。そのすべてが抜けると、ドワーフはピクンと体を震わせ、同時に力尽きたように
目を閉じた。
「おい、ドワ…」
不安になり声をかけようとしたが、ドワーフは静かな寝息を立て始めていた。
「………」
相当に疲れていたのだろう。よくよく考えれば、ここに来る前は組み手をやっているのだ。ディアボロスも、かなりの疲労感がある。
「……悪かったな」
そう声をかけ、全身を軽く拭き、ついでにドワーフの体も拭いてやると、隣に寝転がる。そして彼女に腕枕をしてやり目を瞑ると、
彼もいつのまにか寝息を立て始めていた。
目を覚ますと、時計はちょうど0時を指したところだった。思ったよりもずっと長く寝ていたらしい。
隣で動く気配に気づいたのか、ドワーフがもそもそと動き始める。
「ドワーフ、起きたか」
「んん…?ふえ…?今何時ぃ…?」
「ちょうど日付が変わったところだ」
「ひづけ……えええぇぇ!?」
ディアボロスも驚くほどの大声を上げ、ドワーフは文字通り跳び起きた。そして辺りを見回し、窓の外が真っ暗なことに気付くと、
大袈裟に溜め息をついた。
「あ〜ん!ケーキと七面鳥食べ損ねちゃったよぉー!!」
「またそれか。お前、ケーキと七面鳥に何のこだわりが…」
言いかけて、ディアボロスはふと今日の日付を思い出した。
「……ああ、そうか。今日はクリスマスイブだったのか」
「しちめんちょお〜……今気付いたの?」
「完全に忘れてた」
溜め息をつき、ディアボロスはポリポリと頭を掻く。
「……随分とまあ、おかしなイブを過ごしたもんだ。組み手をやって一発ヤッて、昼寝したまま日付が変わる、なんてな」
「……あ、でもさでもさ!」
何を思いついたのか、ドワーフの顔がいつもの明るい笑顔になる。
「恋人と過ごすクリスマスって考えたら、それっぽいかも!?」
「……お前と恋人になった気はないがな」
「む〜。じゃ、男の子と過ごすクリスマス。これなら間違ってないよね?」
「まあな」
「私、こんなの初めてだよー!」
「俺もだ」
「クリスマスイブに初体験しちゃったんだねー!ロマンチックでいいかも!」
「よかったな」
この調子だと、彼女に嫌われた様子はない。悉く読みが外れ、ディアボロスは大きな大きな溜め息をついた。
しかし同時に、これも悪くないかとどこかで思い始めていた。慣れ合いは自身の成長を止めるとしても、仲間でありライバルである
彼女なら、一緒にいたところで成長を止める余裕はないだろう。受け入れてしまえば、ひたむきに張り合ってくる彼女は何とも
可愛らしく見えてくる。
「でも……うぅ、ケーキと七面鳥…」
「……そんなに食いたいなら、明日食えばいいだろ。イブを外したとはいえ、一応はクリスマスだ」
「お金ないもんー」
「じゃあ、おごってやる」
ディアボロスが言うと、ドワーフは一瞬キョトンとし、次の瞬間、まぶしいほどに目を輝かせた。
「いいのー!?ほんとにいいのー!?」
「それぐらい構わん」
「わぁーい!!大好き―!!」
無邪気に抱きついてくるドワーフ。ふかふかとした体毛と、彼女の体温を感じていると、何だか心が安らぐような気がした。
聖なる夜など、自分には関係ないと思ってきた。しかし、今日ぐらいはその奇跡を信じるのもいいなと、ディアボロスは思うのだった。