おんなのこでも感じるえっちな小説10

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807名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:41:03 ID:mObiJ4PX
完結乙&GJです

エロが丁寧で萌えました
808名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 03:57:27 ID:1GSihm+C
GJ!ほんわかエロくて萌えました!
809名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 21:54:13 ID:oJagslsT
ほんと丁寧に書かれててGJです!!
810名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 22:25:39 ID:sFe3SlW2
ホッシュ
811名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 05:42:15 ID:iDW1Fhyo
おな感の管理人様ー。所々NEXTのリンクがエラーになってますよー。
812名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 08:55:24 ID:lHX+O9sA
直接メールした方が早くない?
813名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 08:36:56 ID:0zsqBFUQ
ほす
814名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 22:06:14 ID:tvh5MVH0
クリスマスSS読みたいな
815名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 07:38:46 ID:ENQ3UPI5
姫はじめSS読みたいな
816名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 02:47:33 ID:U0rlwkAk
おなのこ
817名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 15:07:57 ID:Dj6clUJY
揚げまんじゅう
818精一とユキの話 1:2010/01/12(火) 23:53:03 ID:NrsGGB7f

スレ埋めのつもりで……。       
本文は全部で、5レスです。
投下します。
819精一とユキの話 1:2010/01/12(火) 23:57:33 ID:NrsGGB7f
                        
成人の日の前に、ユキがハタチになった。
「年が明けたら名実ともにオンナになるんだから」
この間のベッドの中で、ふふんと笑ったその顔は、赤ん坊の時からちっとも変わらない気がする。
もっとも、そんなことを言おうもんなら、しばらく口をきいてくれないだろう。

ユキも大学2年になって、だんだん勉強だけじゃない忙しさに追われるようになった。
サークルや友達づきあい、ってやつだ。
それはそれでいいことだ。
いいことなんだが。

ユキはパッと見は、美人なタイプじゃない。
時間がたつにつれ打ちとけ話をしていくうちに、だんだん惹かれていくようなタイプだ。
どちらかと言うと童顔で、可愛らしい印象をもたれやすい。
するめイカじゃないが、味があるというか、親しみやすいというか。
……他人から見た評価はどうでもいい。
俺は心配事が増えたことに、正直苛立っていた。

俺が36で、ユキが20才。
この差は、どうしようもない。
学校へ行くユキを見送る時でさえ、些細なことで焦る自分がいる。
……そのスカートの丈はどうなんだ、とか、肌の露出が多い、とか。
つい、上げそうになった声を辛うじて飲み下すこともしばしばだ。
親でもないのだから……と言って、『カレシ』と言うにも気が引ける。



「ね、どう……? かな」
「なにが」
「どこか……違う?」
「……ん? 何のことを……あそうか、今年初エッチだ」
「……違う! もう、エロオヤジ」
「また言うか……あ、そうか……オトナ、かー」
「…………うん……もう……あ……っんああ」

すっかりとろとろになったそこに、ゆっくり2本の指を挿入していく。
舌と指でじっくり愛撫したから、たっぷりの愛液が押し出されて卑猥な音をたてていく。

「……どこが違う、って昨日今日でそんなに変わるかよー」
「あ、あっ……笑わ……ないでっ……は……やあんっ」
「……じゃあ、今日からユキがもっと淫乱になったとか……」
「やあっ……いんらんって……ひどっ……はあ……んっ」
「いいことだろー。……ユキ、オトナって言うならさ……リクエストしていい?」
「や……あん……あ……な……に? ああやああん!」

指をかき回すようにしながら、抜き差しして、親指でクリトリスを捏ねた。
びくびくと揺れるユキの耳へ口をつけて、舌で耳たぶをつついた。
確かに、最初の頃に比べると、徐々にオトナの反応になってきたよな。

「あのさ……俺の上に乗ってくれる?」
「あん……え? あ……そん……な」
「オトナになった記念に。やだ?」
「や……精さん……やだ」

顔を真っ赤にして拒否の言葉を口にするけど、促されればそうするだろう。
良いのか悪いのか、ユキは俺に従順だ。
罪悪感が無いといえばウソになる。
俺がそうさせてしまったのだから。
820精一とユキの話 1:2010/01/12(火) 23:58:09 ID:NrsGGB7f
                             

「乗って」
「や、恥ずかし……」
「じゃ、イかせてやんない」

座位で抱き合ったことはあるが、騎乗位はしたことがない。
戸惑うのも無理はないか……。
はあはあと息を弾ませて昇りつめ始めた体の、愛撫の手を止めた。

「やっ……止めないで!…………精さん……」
「……意地悪なことして……ごめんな」

耳たぶを舐めてから、体を少し浮かせた。
俺の下で目を潤ませたユキが、体をくねらせて急かすように腰を揺らす。
すぐにしがみついてきて口づけ、自分から舌を差し入れてくる。
ねだる時に見せる、必死なユキのなまめかしい姿態だ。
俺の髪の毛を乱暴に撫ぜながら、くうと鼻を鳴らす。

こんなユキが可愛くて、つい毎回意地悪くしてしまう。
口中にユキが一杯になって、俺も堪らなくなってユキを抱きしめた。
そのまま、ごろんと背中からベッドに転がった。

「ほれ、ユキが上になったぞー」
「な……」
「続きは、ちゃんとするから」
「も……ひど……」
「ユキの中、入れて」

さらさらと顔に落ちてくる猫っ毛の向こうに、ユキの怒ったような照れたような表情が見える。
ユキが、意を決したようにきゅっと目を閉じて、ゆっくり開けた。

「恥ずかしいんだから……目、瞑っててよね」

ユキの手で瞼を閉じさせられて、じっと待つことにした。
俺の上の重みが、下半身の方へ移動していく。
焦らされているようで、体が次第に熱くなってくる。
俺は大人しく待っていられるわけでもなく、薄眼を開けた。
ユキが俺を跨いで、たて膝になったところだった。

綺麗だった。
夜の部屋の中で、薄明かりに照らされたユキの体が神々しいほどだ。
ユキの中で果てる時にだけ出てくる、俺の獰猛な欲求が早くも顔をのぞかせる。
ユキがなんとか自分の中に入れるために、手で俺のそれを掴んだ。
おそるおそる両手で包み込むようにしている。
俺は額に腕をあてて、浮いた汗を拭った。
強引に貫いてしまいたいのを堪えて、呻き声を上げそうだ。

ユキがやっと股間に……蜜口にあてがって、亀頭を擦りつけた。
ちゅぷ……とかすかな水音が耳に届いた。
もう少し、我慢しなければ……ユキが自分から飲み込むのを見たい。
もう遠慮なくユキに視線を合わせると、緊張した表情で腰を沈め始めながら、長い溜息を吐いている。
俺の剛直にいきりたったものが、ユキのピンク色の襞の間を押し広げていく。
中からじゅぶ……と音をたて泡立つ蜜が押し出されて、とろとろと俺のモノをつたっていく。
徐々に、ぬるみの中に俺の塊が飲み込まれていく。
821精一とユキの話 1:2010/01/12(火) 23:58:56 ID:NrsGGB7f
                   
ひどく熱くて、溶けそうだ。
熱く柔らかい襞に包まれていくうちに、喉の奥で唸っていた。                      
ユキは眉を歪ませて、唇を噛みしめている。
我慢するな、と言いたかったが、呻き声が漏れ出てきそうで止めた。
その代り、突き立つ俺を半分飲み込んだ秘所に、手を伸ばした。

「きゃ……あん」

行為に没頭していたユキが、小さく悲鳴を上げた。
自分とユキの境目をそっと、何度もなぞる。

「すごい……な。ユキが咥えてる」
「……そんなこと、言わないで……」
「もっと、深く」
「だめ……あっ…………ゆっくりじゃないと」

奥へ奥へと誘い込むような、自分の肉の襞の動きをユキは知らない。
探り出したクリトリスを指の先で弄ると、体が跳ねてぐっと腰が落ちた。

「あっあああん!」

慎重にしていた動きに、自分で知らずに焦れていたのだろう。
自分の重みで貫かれた衝撃で、ユキは喉を仰け反らせ、更に腰を落とした。

「やっやっああん……はんっ」
「ユキ、ほら…………動い……て」

俺も一気に昂るのを抑えるのに必死だ。
もったいないだろ、こんなにいいのにすぐ終わっちまったら……。
なんとか呼吸を整えて、ユキの濡れた秘所への愛撫を続けた。
すぐに、ユキがわずかに腰の動きを繰り返しているのを感じた。

「自分で、気持ちいいと思うこと、してごらん」
「そんな……できなっ……あう」
「……大丈夫だから」

出来ないと言いつつ、腰の揺らぎが確信的なものに変わっていく。

「オトナになったんだろー?」
「も……そういう……あっあっ……い……いじわるっ」

ユキのぷっくりした尻を撫でて、腰に両手をかけた。
最近ウエストのくびれが深くなり、それでいて腰が少し丸くなった。
少女の体から、徐々に女の体になってきた。
たぶん本人よりもそんな変化に気付けることが、密かに嬉しくもある。
その腰を掴んで、ぐるぐると揺らしてやった。

「ああっ、やああ……っ」

その動きから、ユキの腰を掴んだままぐっと俺の腰を突き上げた。
822精一とユキの話 1:2010/01/12(火) 23:59:45 ID:NrsGGB7f
                            

「きゃっ……ああっ……はああ!」

何度もそれを繰り返す。
突き上げるたびに豊かな乳房が揺れて、赤く尖った乳首が跳ねた。
ユキは泣き叫ぶように声を上げて、頭を振ってされるがままになっている。
戸惑いながら全身をピンク色にして、一生懸命揺れるユキを見ていると、
切ないような気持ちになり、堪らなくなってきた。
やっぱりその温かな肌を抱きしめたくなる。
俺は体を起してユキを両腕で包むように抱きしめた。
                              
座位になると、ユキが飛び込むように体を預けてきた。
首に腕が巻きついて、ぎゅっとしがみついてくる。
上気した肌が、しっとり滑らかに俺の肌に吸いついてきた。

「いやあ……おく……奥に……せ……さ……ん、イヤ……ヤっ……」
「奥……が……いいんだな……?」

少し冷えた体を温めるように、俺はユキを揺すりあげた。
片方の胸のふくらみを手でぎゅっと握って、掌で尖った先端を擦ると、ユキの締め付けがキツくなった。

「騎乗位……嫌だった?」
「…………」
「……ごめん……辛かったか」

ユキが首を横に振った。

「……ちが……はあっ……あ……きもち……い」

下からの水音が、じゅぶじゅぶと大きくなってきた。
もう一度繋がった部分に指を這わせた。
とたんに白い喉が目の前に動いて、また、イヤイヤと泣き始める。
細い腕を俺の首に巻きつけて掴まり、背中を反らせて高く声を上げた。

窓も閉まってるし、ユキの両親は無事成人式を終えた次の週だということもあり、
一泊の温泉旅行に出かけている。
だから遠慮なく、ユキの喘ぎ声や嬌声を存分に聞くことができる。
そんなことを思ってる俺は、すっかりオヤジだな。
823精一とユキの話 1:2010/01/13(水) 00:01:26 ID:NrsGGB7f
                              
……こんな俺に……ユキ――。
どんどんユキの時間が流れていって、大人になっていき、いろんな出会いを経験して……。
いつか、俺のことはどうでもよくなって、本当に好きなヤツができるかもしれない。
一方で俺の時間は停まったようなもんだ。
家で引きこもってやってる、地味な自営業の三十路の男だよ。
そのうち年を重ねて、ユキとつり合いが取れなくなっていくのかもしれない。

ユキ。
愛してるって、何度も言えても、それが永遠とは限らないよな。
俺はユキしかいないってこの歳になってやっとわかったけど。
でも、ユキはどうなんだ……って。
俺といて、ユキは幸せなんだろうか。
俺だけを見てきてくれて、俺に『初めて』をくれて。
その上、ユキの『これから』を奪うのかと思うと……怖い気がするんだ。

でもユキ。
それでも俺は何度でも言わないといけないんだよな。
愛してるって。
たぶんこれからも俺にはユキしかいないから。
子どもから大人になっていくユキを眩しく思いながら、放したくないと思いながら。

ユキがどこかへいってしまわないように、死ぬほど照れくさい言葉を、なんとか口にしてユキに伝えないと。
ユキがぶつけてくれたように、体温だけじゃなく、想いを伝えていかなければ。
ユキ……。

「愛してる」

ぐっと突き上げながら、血が体中を駆け巡っていくのを感じた。
ユキを自分に押し付けるようにして、何度も突き上げた。
ユキがいやいやをしながら、途切れ途切れに声を上げる。
もう、俺の声なんか聞こえてないくらい、ユキは昇り詰めている。
それでも俺は抱きすくめたユキの耳に、最後まで何度もつぶやき続けた。



===終===


ありがとうございました。

誤字脱字ありましたら、ごめんなさい
824名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 01:17:04 ID:Dab42H44
実にGJ!
他に言う言葉が思いつかんのだがどうすればいいと思う?
825名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 09:18:54 ID:0BronB7/
そういう時はGJ!を連呼すればいいと思うぜw

これは良いお年玉&成人式でした。
ユキタソ、かわいい。
そして年の差を気にする精さんが、なんだか切なかったっす。
いつまでもラブラブでいて欲しい二人だ。
826名無しさん@ピンキー:2010/01/14(木) 00:56:53 ID:NL6TvTao
凄いなぁ、この書き手さん・・・
エロいだけのはよく見るけど、これは切ない・・・。
自分、女ですが清さんに濡れました
こんな人に初めてをあげたいね
自分じゃ誰も欲しがらんかww
827826:2010/01/14(木) 01:01:19 ID:NL6TvTao
ゴメ!精さん ね
誤変なんかいつも気にせんけど、この人には
失礼な気がした
ありがとうゴザイマシタm(_ _ )m
828名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 18:48:26 ID:eeKsvXtF
投下乙
愛情があっていいね
829名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 18:46:24 ID:b/mxGWv7
保守
830名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 21:32:02 ID:KXN9Cewe
保守
831名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 07:28:58 ID:yuZ9Dzef
保守     マッテマス
832名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 00:33:51 ID:1mEV/oTp
あと、残り27KBほどだけど、
書き手さんが作品投下できるかどうか。
ぎりぎりの残かな?
規制解除されたところもあるし。

そろそろスレたての季節?
テンプレはすでに縮刷版に用意されてたありがたや。
833名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 20:26:14 ID:3yYM+i/I
書き手さんが残り容量以上のSSを投下するなら
そのとき新スレ立ててもらったほうがいいと思われ
テンプレが既にあるなら余計に

停滞してるのに新スレ立てちゃうと、旧スレと新スレ2本立てが
長く続く上に、話も2箇所に分散したり、新スレ即死につながったり

読み手が立てるなら、もう少し埋まってからがいいと思う
834名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 23:58:18 ID:1mEV/oTp
>>833
分散……そうだった。
もう少し埋めて待とう
835ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:52:22 ID:vzsZWJNg
スレ埋めに投下します。
一旦終わったくせに、ユキサイドの話をまた投下
すみません、エロ無です。

本文8レスです。

遅筆のため、こんなペースですが、
終わりまで時々投下しに来ます。
836ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:53:32 ID:vzsZWJNg
                                 
大学1年の冬、精さんと想いが通じてから、今まで1年ちょっと。
大学3年になった私と精さんの関係が、何か劇的に変わった、というのは無くて。
赤ん坊の頃から知られてる関係だし、それまでと大して差がないのは仕方ない。
でも……16歳の歳の差があっても、対等でいたい、というのは私のワガママかな。

最近、短期留学するために精さんの事務所のバイトを止めて、2つバイトを始めた。
定年して今はパート社員として勤めているお父さんに、学費以上の負担はかけられないし。
精さんが絶対行って来い、って言ってくれたから頑張るつもりでいたけれど。
やっぱりあれもこれもと、私が欲張りなのがいけないのかな?
すごく忙しくなって、ただでさえ少ないふたりだけの時間が減った。

家が隣だとはいっても、親や近所の目が気になって、ふたりの時間を作るのが難しい。
用もなく長く精さん家にいることはできないし、私の部屋でふたりで過ごすなんて絶対無理。
だから、いつももっと寄り添いたいと思うのに。



今夜は自転車サークルの飲み会……じゃなくて、臨時総会なんだって。
この間のイベントで出会った人が入会したので、それを歓迎するのだそう。
その歓迎会に私も一緒に参加する。

春とはいえ、夜は冷えるしコートなしじゃ、まだ肌寒い。
特に今夜は。
いつもふたりでいる時は、気持ちは温かいはずなのに。
一昨日ちょっとしたことがあって、精さんと手を繋ぐのを躊躇っている。
といっても、普段精さんは照れくさいと言って、人前では手を繋ぎたがらない。
だからデートの時は、いつも強引に私から手を繋いでる。

うん……きっと精さんは面白くなかったんだね……。
でも、そういうこと、顔にも出さないんだもん。
いつものように笑って傍観してるんだと思ってた。
……たぶん……私が立て続けに、合コンや送別会とかに出たからなんだと思うんだけど。

私も学生のお付き合いとはいえ、断わり切れないものだってあるから、人数合わせに出かけることもある。
またこの時期は歓送迎会とかにかこつけて、やたら飲み会があったりする。
ゼミの懇親会の翌日、精さんがめずらしく不機嫌になってるのに気がついた。

だからって、こそこそ悪いことしたわけじゃないし。
私も開き直って、昨日は必要なこと以外はしゃべらなかった。
……本当は、ちゃんと言って欲しかった。
時々精さんが、言いたいことを飲み込んでしまうのを、私は知っている。
またかよー、とか、心配だ、とか、行くな! ……とか。
気持ちを、伝えて欲しいのに。

だって……「好きだよ」ってコトバ、普段精さんはあんまり言わない。
いつもオトナな精さんは、みんなの前ではいつもどおりにしてる。
あたり構わずベタベタするのは、私も好きではないけれど。
一番最初は、お互いに言葉に出して確かめたはずなのに。
体温を確かめることも、言葉で確かめることも、両方大事だと思うのに。

いつも感情の起伏を見せないようにしてて……どこか遠慮してるみたいに。
……抱き合っている時も、そっとそっと気遣ってくれる。
大切にされていること、わかってる。すごく幸せすぎるくらいに。
でも、そんな風に私を抱いて、嫌にならないのかな。
気遣いすぎて、疲れないのかな。
837ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:55:10 ID:vzsZWJNg
                       
もっと、乱暴にされても、いい。ううん、して欲しい。
本当は、押し倒されて、容赦なくされても構わない。
私そんなに弱くないよ。
辛いなら、ちゃんと言える。
私は、対等なつもりでいるのに、精さんはいつまでも子ども扱いして……。

ずんずん前を歩いて行って、やっぱりあんまりこっち見ない。
そろそろ仲直りしたい。
手も繋がずに、ほとんど無口で歩いて行って、あっという間にお店の前に到着してしまった。

「こんばんは〜。ユキちゃん、元気そうだねえ」

嶋岡さんが向こうからやってきた。何故か、ホッとする。
サークルの人たちと私は顔見知りで、すごく仲好くしてる。
最初は精さんの元会社の人との小さなサークルだったのが、意気投合した人とかが入会して増えていったのだ。
趣味での人の繋がりって、素敵だなあって思う。

「嶋岡さん、こんばんは。いよいよ娘さん、受験生ですね〜」
「カミさんに、にらまれちゃってさあ。今年はレース以外は参加できないかも」

嶋岡さんには中学生の女の子と小学生の男の子がいたんだよね。
奥さんとは学生結婚だったらしく、いまだに頭が上がらない、て言ってたっけ。

「ウチのことより……佐々木とは仲良くやってるみたいで、オジサン安心してんだよ」
「はい、まあ」
「嶋岡、寒いんだから、さっさと店に入ろうぜー」
「はいはい。なんだよ照れちゃってさ。あ〜あ、幸せ僕にも分けて欲しいよ」

「充分幸せだろっ」と精さんが嶋岡さんの頭を小突きながら、店の階段を上がっていった。
うーん、今はちょっと微妙な空気なんだけどね。
この飲み会で機嫌が治るといいんだけどな。
続こうと思ったら、嶋岡さんが急に立ち止まって振り向いた。
ぶつかりそうになって急停止した私に頭を寄せて、声を抑え気味に話しかけてきた。

「ユキちゃん……あのさ……」
「はい?」
「うーんと。佐々木はユキちゃんしか見えてないから。それは僕が保証する」
「……なんですか、唐突に……」
「ユキちゃんは、佐々木の唯一絶対の存在だからね。誰が何と言おうとさ」
「え? ……エへへ……嶋岡さんも、唯一絶対、奥さん、でしょ」
「へ? ウチ? ウチか……僕がそうでも、カミさんにとっての唯一は子どもだろうなあ」



みんな楽しそうに飲んでる。
新しく入った人は、……サークル最年少だろうな。26歳の女の人だった。
彼女は立ち上がって、挨拶と自己紹介を始めた。

「飯田小春といいます。先日の湖の一周で、ここのみなさんに助けていただいて」

ええと、ひどい転倒をして、ケガをしたんだっけ。
単独で参加していたから、みんなで手助けしてあげた、って精さんから聞いた。

「偶然家も市内だし……ということで、佐々木さんに誘っていただいて……」

飯田小春さんは、そこで言葉を区切って、ちらっと精さんの方を向いて、にこっと笑った。
……んんん!? 誘って……って?
何? 今のは、ひょっとして……飯田さん、精さんのことを……?
838ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:56:44 ID:vzsZWJNg
                          

「ユキちゃんに、ライバル出現」

ぼそっと隣で声がした。
私の隣は、私が一番仲好くしている、お園さんだ。
園子さんという名前だけど、みんな、お園ちゃんとかお園さんとか呼んでる。
私を見る横目が、きらきらしてる。
いたずらっぽい……ていうか、面白がっている目をしてる。

「一応さ、家近いし、誘う、って社交辞令でしょ。気にすることはないよ」

お園さんは言葉だけは真面目に返してくれた。
そうだろうけど。
そのうち彼女の挨拶が終わって、みんな一斉に拍手した。私も、一応。
場が落ち着くのを待ちかねたように、お園さんが私のグラスにビールを傾けるしぐさをした。

「ビールじゃないほうがいい? それともウーロン茶かジュース?」
「わっ私もう、オトナなんですからっ……私、水割り飲みたい気分なんで。お園さんは?」
「ん? あたし、ビールで……うーん、でも、じゃあ付き合うかな」

今年還暦だという落合さんが「最近飲んでないから、ワシも飲むかな」って言うので、
お園さんが店員さんに水割りを3つ注文した。

「ユキちゃん、今日は、飲む?」
「……飲む」
「よし」

私よりちょうど10歳上のお園さんは、性格はさっぱりしてて、かっこいい。
会社では部下がいて、バリバリ働いているらしい。
私の気持ちを察して、気遣ってくれてる……今日は、お園さんに身を委ねちゃおう。
さっきとは打って変わって、隣の飯田さんと楽しくやってる精さんなんか、知らんっ。

……どことなく、彼女の媚を感じてしまうのは、私の嫉妬のせいだけだろうか
精さんも当てつけるみたいに楽しくふたりで話してないで、他の人とも話せばいいのに。
いつもは精さんが誰と話してても、これほど気にはならなかった。
胸が、チクチクする。

うーん……楽しそうだ。
小春ちゃあん、て嶋岡さんがすでに気易く声をかけてるのには、ちょっと笑えた。
小春ちゃんはやっと立って、他のテーブルにまわって、みんなと挨拶がてら話し始めた。
ホッとする。でも……こっちにも来るんだよね……。

「よろしくおねがいしまーす。え……と」
「秋山雪です。お隣が岸井園子さんで」
「この間会ったよねえ、よろしく……ケガ大丈夫そうね」
「おかげさまで、すっかり」
「年齢的には、ユキちゃんが同世代だよね……て、ユキちゃんハタチだっけ?」
「……はい」
「同じ20代ですよね、さっき佐々木さんから聞きました」
「そうですか」

にっこり愛想笑い。ちゃんと笑えた。
でも、「佐々木さんから聞きました」って何? 精さん、勝手に人のこと教えないで。
ムっとして顔を上げると、視線が合って、小春ちゃんがパッと笑い返した。
すっごく笑顔が素敵だ。
それに比べて私は、愛想笑いしかできなかった……。最低だ。

「他にもいるよ、20代。おうい、田中くーん、こっちに来てー」
839ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:57:20 ID:vzsZWJNg
                  

お園さん、恥ずかしいくらい大きな声。酔いが回ってきたのかな。

「田中智樹、28歳。独身、彼女いない歴……」
「お園さ〜ん、やめてくださいよ、恥ずかしい。この間会った時、自己紹介しましたよお」

田中さんは顔が赤い。お酒と照れてることで、だね。

「そうだったねえ。あははは」

お園さん……水割り、私の残したのと別に2杯空けてる……大丈夫かな?
あ……小春ちゃん、こっち見てる。綺麗な目……でも、険がある。

「ユキさんて、湖のイベントにはいなかったですよね?」
「あ……敬語、いいですから……あの、私あんまり自転車乗らないんで」
「えっ……そうなんだ。でも、どうして」
「ま、まあ裏方というか、スタッフ? みたいな感じで」
「そうなの」

ビールを注ごうとした小春ちゃんに対して、コップを塞いでやんわり拒否した。
なんだか、小春ちゃんのを受けたくなかった。

「水割り飲んでるんで、ビールいいです……」
「ああ、そうなんだ。グラス空だから……注文しようか」
「自分でしますから」

もう一度愛想笑いを作った。
その時、横からお園さんが小春ちゃんを引っ張った。
田中さんを売り込むつもりのようだ。
「ちょっと、お園さん……」と田中さんが戸惑っている。
「おお、若い連中はもう仲良くやってるじゃないか」……隣のテーブルから落合さんの声がしてきた。



しっかり酔ってる精さんが、黙ったまま服をひっぱってる。
二次会行くぞ、ってことだと思う。
やだ。
だって、精さんの横にちゃっかり小春ちゃんがいるじゃんか。
精さん、わざと? 私に仕返しのつもりで、当てつけてるんだろうか。
小春ちゃんと次の店の相談してる。
小春ちゃんの手が肩まで上がって、今にも腕を組みそうな雰囲気……に見えた。
精さん、帰りにそのまま小春ちゃんに連れられて、断り切れず……なんてことないのかな。

……なに考えてるんだろ。
精さんがそんなことするわけないじゃない。
でもでも、積極的で素敵な小春ちゃんが本気を出したら、精さんはどうなるんだろう。
小春ちゃんは明らかに精さんのことを、男の人としてみている。
お店から出てきたとき、熱っぽい瞳で精さんを見ていたのを私は知っている。
あの人は私より大人だ。素敵な笑顔をいつでも作れる。
お園さんと同じ社会人としての落ち着きとか、女性らしさとかそういうものが感じられた。

それに比べて、私はどうだろう。
まだ学生で、やっとハタチになって……今の私には、自信がない。
愛想笑いを浮かべるのがやっとで、素敵な笑顔を作って向き合うことさえできなかった。
一昨日からの精さんや自分の態度を思い出して、情けなくなった。
子どもじみた……意地っ張りな私に、精さんは愛想を尽かしたかもしれないな。
840ユキと精さんの話 5:2010/02/01(月) 23:59:58 ID:vzsZWJNg
                 

オトナの恋人同士に見える、今にも寄り添いそうな、お似合いのふたりをまた見てしまう。
……胸の奥にある、重く苦しいものがむくむくと大きくなっていく。

「今日は帰るね、精さん。明日、学校行く用事思い出した」

思わず、言ってしまっていた。
振り向いた精さんは、えっ、て顔してる。
自分の傍から離れかけた精さんの袖を、小春ちゃんが引いたのが見えた。
ああ、ここはやっぱオトナになるべきか…………ううん、もうこれ以上、ここにいたくない。

「ええっ、ユキちゃん一人で帰るの?」

傍にいた嶋岡さんにも聞こえたみたい。
嶋岡さんがお店に入る前に言ってたこと、なんとなくわかりましたよ。
でも、今日はダメです。
このままここにいたくないの。

「ユキちゃん、帰るのォ、じゃあユキちゃんの分まで飲んでくるわね〜」
「よろしくでーす、お園さん。……あ、落合さん、帰りますか? 駅まで一緒ですよね」
「ワシも帰るけど、女房がそこまで迎えに来てくれるんで、方向違いだねえ」

精さんが、小春ちゃんに話かけてるのが視界に入ったけど、目を伏せて見ないようにした。
じゃあね〜。
お園さんたちが手を振ったのをいいことに、「さようなら」と挨拶して、さっさと歩きだした時――。

「俺も、帰るわ」

精さんの大きな声が聞こえた。
少しの距離なのに、走ってくる足音が私の後ろで止まった。
振り向くヒマもなかった。
急に腕を掴まれて、手袋もしていない冷えた掌が、大きな手でぎゅっと握られた。
心臓が跳ねあがる。

「精さん……みんな、見てるよ……」
「置いてくなよな」

私から目を逸らしてみんなの方に顔を向けながら、ぼそっと言い、そしていつも通りに挨拶する。
私は血が逆流していくみたいな感じで、体がカチカチになってしまっている。

「みなさん、お先に失礼します。二次会の場所は、嶋岡に任せたので……」
「おう。任せろよ。田中くん、小春ちゃんから店を聞いて、電話してくれるかい?」

嶋岡さんは、テキパキとみんなに話をし始めた。
お園さんがすっごく嬉しそうに「仲良く帰りなさいよ〜」と手を振っている。
それに応えるように、精さんが指を絡めて繋ぎなおして、高く上げた。
……精さん、恥ずかしいよ。
でも、精さんは、落ち着いてる。こんな精さんは、初めて。
いつもと逆になってしまった。

胸がドキドキして、体が熱い。
ものすごく照れてしまうのだけど、でも、泣きそうなくらいな幸せも感じてる。
喉の奥がむずむずする。
『精さんは私だけのもの』そう言って叫びたくなった。

けれど一瞬視界に入った、目を見張ったような小春ちゃんの表情からは、急いで目を逸らせた。
841ユキと精さんの話 5:2010/02/02(火) 00:00:36 ID:vzsZWJNg
       
                   


電車を降りて、改札を出る。
ずっと言葉を交わさずに来てしまった。
でも、電車の中でもずっと、手は繋いだままだった。
そのまま歩いて、いつの間にか、川沿いの道に出ていた。
冷たい川風にあたったおかげで、酔ってふわふわした感じが少し醒めてきた。

精さんの方は、心なしかまだ足の運びが、ふらふらしているようで、心配になって振り返った。
瞬間、あっ、と息をのみ込んだ。
まるでスローモーションを見ているみたいに、灯りを背にした精さんが私の体を覆った。

「あ、あのっ……精さん……ちょっ……苦し……」
「ユキい……なんだよ……」

お酒臭い。
抱きつかれた私の体に、精さんの体重がかかる。

「……なんで、一人で帰ろうとした?」

なんでって、言いたくないし……言えない。
顔を私の肩に伏せてるから顔が見えないけど、珍しく、声が怒っているみたいだ。
今日の精さんは、いつもと違いすぎて、また心臓がどきどきしてくる。
そしてお店に着くまでの、黙ったままの精さんを思い出して、戸惑ってしまう。
私の体が締め付けられるぐらい、精さんの腕の力が強くなった。

「精さん……肩、痛いよ……」
「……明日用事って……なんで、嘘ついた?……」
「……だって、精さん、ずっと……怒ってたでしょ」
「……怒ってない」
「……うそ……」
「ユキだって、どうして俺を置いてこうとしたんだ?……こっち見ないし」

どうして、ってそれは、口をきいてくれない精さんの所為……って言おうと思った。
でも。
小春ちゃんのことが瞬間に頭に戻ってきて、苦しくなった。
ふたりのことを勝手に妄想して、いらいらして、それから、自己嫌悪して。

 「……ごめ……なさ……」

急に腕の力が緩んだ。
私の肩に大きな手が置かれ、精さんが顔を覗き込むように顔を近づけてきた。
心配そうな視線を避けて、慌てて目を閉じた。

「俺の所為か?」
「…………私が、いないほうが……楽しいかな、って思って」

さっき考えてたことを思い出して、胸が苦しい。
鼻の奥がつんと痛い。目が熱くなってくる。
咄嗟に顔を下に向けた。

「なんで、そんなことを言うんだ」
「だって……だって……」
842ユキと精さんの話 5:2010/02/02(火) 00:02:53 ID:vzsZWJNg
                            

顎を持ち上げられて、思わず精さんの真剣でまっすぐな視線にぶつかった。

「ちゃんと、言って」

今度はすごく優しい口調で言われたから、言わない、と思っていたことが、ぽろりと出てしまった。

「小春ちゃんと楽しそうだったから」

また、目を閉じた。
ホントは精さんにも、『ちゃんと言って』欲しい。
でも、その一言をちっとも言えなかったな、私も。
バカだ、私は。バカで、どうしようもなく子どもなんだ。
だから、あの小春ちゃんの、素敵で積極的な笑顔には敵わないと思ったんだ。

同じ目の高さにいたいのに、自分からそっぽを向いてしまった。
対等でいたい、と思いながら、オトナな精さんに、甘えるだけ甘えてた。
精さんを我慢させた揚句、黙らせていたのは……私の方だ。
抱きしめられてばかりいないで、自分から寄り添えばよかったんだ。
涙が、止まらない。

「ユキ」

精さんの熱をもった頬が、頬に触れた。
同じような温度の掌が、涙を拭ってくれた。
温かかった。

「なんだか、うれしいなー」

耳に息がかかって、くすくすと笑う声がする。
精さん……なんでうれしいの?
次の瞬間、私の体がぎゅうっと精さんに抱きしめられた。

「可愛いなあ、ユキ」

よ、酔ってる?
やっと精さんが離れて、私の顔の前で、子どもみたいに、にっと笑った。
でも私の肩を掴むと、急に表情を引き締めて、強く引き寄せられた。
あっという間もなく、唇が温かなものに覆われた。
すぐに舌が入り込んできて、口が大きく開いた。
深く深く舌を吸われ、息苦しくて、厚い胸に手を突っ張った。

「ちょっ……と……待って、精さん、ここ、外だよ……?」
「それが、なに?」

まなざしは真剣だけど、やっぱり精さん、酔ってる。
嫌ではないのだけれど、私はさっきのことで気持ちが落ち着いてない。
だから、精さんの行為に混乱してる。

「ユキが可愛いから」
「そ、それ……意味わかんない……」
「素直に妬いてるユキが新鮮で、すごく可愛い」
「や……やだ……今、私すごくヤな人なんだよ。精さんの所為にしたり、怒ったりして」
「怒ってくれよ。俺はユキのモンだーって、怒って」
843ユキと精さんの話 5:2010/02/02(火) 00:05:27 ID:vzsZWJNg
                                           
にへへって笑う精さんが、なんだか可笑しく思えてきた。
少しずつ気持ちが落ち着いて、緩んでいく。
完全に酔ってるってわかってるけど、言ってくれるコトバが胸に落ちてくるみたい。
いつもこういうことを伝えてくれたら、いいのにな。
顔をくしゃくしゃにして笑う精さんの首に手を回して、自分からぎゅっと抱きしめた。

「精さんも、怒って……もっと。言いたいこと、言って、ね?」

言いたくても言えなくて、やっと言えた言葉に、なんだか切ない気持になった。

いつも精さんを見て、追いかけてきたよ。
抱きしめて、キスをして、また抱き合って。
心も体も、全部精さんに向いているよ。
……精さんが、好き。
ただそれだけを伝えたいのに。

「好き……なの」
「……うん」
「精さんが、好きなの。大好き」
「……わかってるよ」

言葉はどうしてこんなに軽いんだろう。

「ユキ……」

精さんの声が喘ぐようにうわずって聞こえた。

「帰ろう」

精さんの腕の力が、すごく強くなった。

「いたっ……精さん、ど……したの」

腕の力が弱まらなくて、精さんの呼吸が大きくなった。
精さんの温かい体温が、私までも温めてくれるよう。
耳に精さんの唇があたって、くすぐったい。

「あん……やっ」
「ここででもいい……ユキを…………抱きたい」

瞬間に、体がかあっと熱くなって……あそこがきゅんと疼いた。

「かっ、帰ろう、精さん…………ね?」

精さんも私も俯いて離れたけど、手は離さずに呼吸を整える。
ゆっくり合わせた視線をはずさずに、お互いに赤くなった顔で笑い合った。
精さんのポケットの中で手を繋いで、家へと歩き出した。
何も言わなくても、繋いだ掌の体温のせいで、体の中心までが熱くなっていく気がした。

***

あの夜、精さんの家に入るなり、玄関で長い長いキスをして。
精さんが「帰したくない」って、部屋に直行して。
私がコートを脱いでいる間に、精さんはひとりでベッドに倒れ込んで、
あっと言う間に眠ってしまって朝まで起きなかった。

翌日からしばらく、今度は私の機嫌が悪くなったのは、言うまでもない。
844ユキと精さんの話 5:2010/02/02(火) 00:07:47 ID:9QROR9XJ
ありがとうございました。
誤字脱字……あったらごめんなさい
845名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 00:39:10 ID:AQFyqCgD
二人ともかわいい。ほのぼのした。ありがとう!
846名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 01:08:07 ID:Z30L2S2F
投下お疲れ様
純愛いいね
847名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 01:09:01 ID:Z30L2S2F
そろそろ残量危ないかな?
848名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 08:28:02 ID:21vefeqb
ユキかわいいよ!
精さんがダメな大人でかわいいよ!!
849名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 20:59:22 ID:RNCffnDB
次スレ立てる?
850名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 22:04:47 ID:MId22wY0
だね。
851名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 13:00:37 ID:IOHQTOTd
なんというほのぼの
小春ちゃんカワイソス
852名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 14:35:31 ID:Jy2hXgJK

もう僕も君も、次のステップに進みたいって……そう思ってるよね?
じゃあ、気持ちの準備ができたら目をつぶって。怖くないから。

僕を信用して?

おんなのこでも感じるえっちな小説11
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1265434406/

一番上のボタン…… 外すよ……
853名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 08:20:49 ID:YxUf2rYs
>>852
スレ立て乙
854精一とユキの話 2:2010/02/12(金) 00:43:30 ID:RqUjbYwC
>>1さん、乙です
即死回避に……

エロ(あっさり目)有
ユキは出てきません。
暗いです。
すみません

今さらですが、
NGワードは タイトルか、IDで

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855精一とユキの話 2:2010/02/12(金) 00:45:08 ID:RqUjbYwC
                   
カナダへ短期留学に行ったユキが帰国するまで、あと半月。

ユキが出発の前日切ってくれた髪は、すぐに伸びた。
仕方なく昔オヤジに連れられて行った床屋に久しぶりに行ってきた。
結果――しばらく帽子が手放せなくなってしまった。
今は伸びてきて、寝癖がつきやすくて困るものの、帽子はかぶらずにすむようになったんだが。
ユキに会ったら、思い切り笑われるだろうなあ。

あと半月の辛抱なんだが……。
ちょっとした約束をした所為で、思っていた以上にこの3カ月を長く感じるハメになった。

『俺のことは忘れろ』

この話をした時、ユキは初めのうちは意味がわからない、と泣いてあげくにケンカのようになった。
――電話もかけてくるな。
――手紙もいらない。
俺とのことは無かったことにして、あっちでの生活に集中しろ、と。
学生のユキに、できるだけたくさんの経験をさせてやりたいと思ったからだ。

俺とユキとは16の歳の差がある。
俺は大学生活も会社勤めも恋愛も一通り、まあ平凡にそれなりの経験をしてきた。
けれどユキのほうは、これからなのだ。
俺の存在が、それを取り上げてしまうようなことはしたくない。
俺とのことで、あいつの大切な時間を潰したくなかった。

ユキを離したくない。でも、束縛したくはない。
だから、日本での煩わしいことから切り離して、思い切り楽しんで来てほしかった。
学生としての時間を謳歌する時に、思考の中から「俺」という項目を外させたかったんだ。
けれど、実際ユキがいなくなって堪えたのは、待つ身になった俺の方だった――。

会えないからなのか、最近は、何故かよくユキの小さい頃のことを思い出すようになっている。
5歳から1年生の頃は、遊んで欲しいと、よく俺の部屋のドアからそっと顔を覗かせていたこと。
しょっちゅう俺のオヤジの晩酌に付き合っていたこととか。

オヤジは自営だったから、晩酌を始める時間が早く、ユキのおやっさんは会社勤めで帰宅は遅かった。
だからユキは、寂しくていつもウチに入り浸っていたんだろうな。
ユキがオヤジの胡坐にちょこんと座った様子は、まるで親子のようだった。

中学生になる頃には、挨拶すらもぎこちなくなった。
思春期なんだ、ってそう思っていた。
そのころには結婚を考えていた相手がいたから、俺の方はユキのことは、
可愛い妹としか思っていなかったからなあ。
それでもユキは、月に一回は、必ず俺の髪を切りに来てくれていた。
母が亡くなってからも。
それが、アイツの、唯一の気持ちを伝える手段だと、その頃からわかってはいた。

けれど、ユキにとって俺はただの隣のお兄ちゃん(現に小学生まではそう呼ばれていた)で、
しいて言えば憧れられてるだけだと思ってた。
高校生になった頃も、ユキが俺を男として見てんのかが、わからなかった
彼女と別れて、次の年母が亡くなって……ひとりでもいいと思っていたし。
もう、何も、誰もいなくていい、と思っていたからだ。



今日は、4年前に亡くなった大学の恩師の墓参りに来た。
車で片道3時間もかかるが、葬儀以来ずっと来ることができなかったから、
どうしても今日の命日に行こうと思い立った。
856精一とユキの話 2
                 
午後に自宅を出たのは、墓参の親類縁者に顔を会わさずに済むと思ってのことだ。
秋の陽の傾く中、4年ぶりに恩師である辻先生の墓前に手を合わせることができ、まずほっとした。

淡く朱色を刷いたような秋独特の夕焼け空を、鳥が2羽横切っていく。
もうすぐユキが帰ってくるんだな。
墓地を抜けたばかりの寂しい場所でさえも、不謹慎だが空を仰げば心が弾んだ。
空を仰いでみるようになったのは、ユキがカナダに行ってから。
カナダの空も日本の空も、続いていて、同じだからだ。
この3ヶ月、空を仰いでみては、ユキを想っていた。
ユキの存在をリアルタイムで感じられる気がする。

「精一」

いつのまにか彼女がすぐ傍に立っていることに、全く気づかなかった。
聞き覚えのある、少し高めの落ち着いた声に、頭にあったユキの存在が一気に消し飛んだ。
その代わりに血が昇った。

「精一……よね?」

俺は黙ったまま、ゆっくり声のほうを振り返った。

「…………うれしい。来てくれたのね」
「みやこ……」

恩師の妹の美夜子が、俺の腕に華奢な手のひらを添わせてきた。
俺より2歳年上の美夜子は、かつて結婚を考えていた人だ。
卒業した後も、時々ゼミの仲間と先生宅で集まっていて、当時、
先生と同居していた彼女とそのたびに顔を会わせていた。
そうするうちに、俺と美夜子は、付き合い始めた。

「やっと来たんだ……葬儀以来……だよ」
「兄さん、よろこんでるわ」

微笑した美夜子の顔は、前より少しやつれたように見えた。

「美夜子は、これから帰るの?」
「え……ええ。今日はこちらで泊まって、明日自分の家に帰るわ」

美夜子が旅行鞄を持っているのに気付いた。
俺と同じように、ここに着いてあまり時間がたっていない、ということか。
美夜子の実家は、ここから歩いて20分程かかるところだったことを思い出した。

「送っていくよ。もうすぐ日が暮れるし」
「…………え……え。お願いしようかな」
「じゃ、車、乗ってよ」

できれば会いたくなかった、というより、会うのが怖かったひとだ。
会ってしまったら、自分が美夜子に対して冷静でいられるか自信がなかった。
けれど、意外にお互い穏やかに話ができた。
だから、実家まで送り届けるつもりになった。
実家なら、車で10分もかからないはずだし。
けれど、美夜子は実家ではなく、隣町にある温泉街のある旅館の名を、俺に告げた。

急に、後ろ暗いような不安な気持ちが、胸を過る。
同時に、最後に会った日のことが、蓋をしておいた記憶の底から蘇ってきた。
4年前のあの日、辻先生の葬儀が終わって、俺が帰宅する朝のことだった。

***