1 :
名無しさん@ピンキー:
ありがちなシチュだと思うけど、なかったので立てた。
2 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 01:28:48 ID:OfHAOTXJ
男女のぬるぽ、ぬるぽ、ぬるぽ!!
3 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 19:27:16 ID:kgNU6Yai
悪くない
そーゆうの好きです
よくわからんがNTRみたいな感じか
できあがったカップルが喧嘩するのか、
カップル未満で喧嘩してそれが元でできあがるのか
それが問題だ
ケンカしながらセックスするってのもアリだ
婚約者M子とか良い。NTR要素のが強いけど
ほしゅ
ageてみよう
「お前、嫌々言いながらスゲー濡れてんじゃん?」
「うっさい!あんただって十分ビンビンなくせに!!」
という電波を
>>7を読んで受信したので垂れ流してみる。
ケンカップル好きだからスレの今後に期待。
12 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 01:03:01 ID:2yMlPxMp
ケンカップル
保守
ケンカして女がシュンとするのがいい
ケンカップルいいですね!
痴話げんかしてーな
保守
※女側に過去の傷
※それから生じる不和(元々互いに避け合う仲)
※やや男>女
※女視点で中出しアリ
これで書いてみたけど長文なのでイタイと思う人スルーで
女の子には優しかった。
頭が良かった。
スポーツもそこそこ出来て人望もあった。
だからモテないわけはなく、恋の噂もちらほらあった。
――だけどあたしは嫌いだった。
「伊吹さん」
バイトの女子高生から声を掛けられて振り向けば、彼女の肩越しに見えた横顔に頬がひきつる。
「月刊陸上マガジンて在庫どこでしたっけ?」
「え?――ああ、あれもう品切れだから」
「そうなんですか?どうりで探しても無いはず……あ、すいません。今月号はもう出てしまって……」
そう、ありがとう、とにこやかに答えて手にしていた別の雑誌を持ってこちらへ向かってくる。
来るな、来るんじゃない!……ええい、来るなと言うに!!
「――いらっしゃいませ」
チッ、と(心の中で)舌打ちしながら無理やり百パーセントの嘘笑顔でそれをお迎えする。
仕方ない。レジはここしかないんだし……。
「七百円です。……千円お預かりします。三百円のお返しです。ありがとうございました」
淡々と、でもにっこり営業スマイルを忘れずに決められた手順をこなす。
「ありがとう」
いーえどういたしまして。仕事ですから。
店から出て行ったその客の後には、ぽつぽつと数人の立ち読み客が残るのみ。閉店前の書店は暇だ。
「あの人最近よく来ますね」
「そうね」
常連さんなんて他にも一杯いるから珍しくは無いんだけど、こういう客がまばらな時間に来ると目立つ。
「伊吹さん目当てだったりして」
「まさか!ないない。君の方かもよ」
「いや、年の頃から言っても伊吹さん位じゃないですか?お似合いですよ」
「いや、ほんとにないない。……さ、レジ閉めの準備しよ」
わかりませんよ〜なんて屈託無く笑う女の子を見ながら『あたしがあんなだったのは一体いつ頃まで
だったっけ?』と少々くたびれた頭と体で考える。
若い女は恋の話が好き。
それを何だか過ぎた事のように考えてしまう程、26歳という年齢にしてはあたしは涸れていた。
「お疲れ様でした」
やれやれ、と凝り固まった肩をげんこつでグリグリしながら足下を見ていたせいで、前に回る人影に気が付かなかった。
「うわぁ!」
「遅かったな。なんだお前、人を物の怪みたいに」
いや、物の怪の方がまたマシでございます。――なんて言ったらさすがにあれかしら?
「今日は、何?」
「……酒、付き合え」
「お酒ぇ?」
ここんとこ週1のペースでこんなふうに帰りに待ち伏せられ、食事に連れて行かれる。
最初はハンバーガー、次はラーメン、ファミレス……。それ程賑やかな場所ではないので大方こんな
もんだ。
「しらふじゃ出来ん」
「何?なんかあんの!?」
「あるから呼んでるんだ。逃げたら追うぞ」
ちょっとー、ただでさえ目つきが悪いんだからさ、そんな顔してこっち見ないでよ。
じろりと睨むと有無を言わさぬ迫力であたしの腕を掴む。
ずるずると引きずられるように夜の道を歩きながら
「また拉致られた……」
と捕獲された猫のような心境になった。
「腹減ってるよな。何がいい?」
「何って……」
あの、あたしは給料前なんです。
「心配しなくても奢ってやる。……ほら、何か頼め」
「いいです」
同時にぐるっとお腹が動いた。やばい!と思ったのも束の間、彼はさっさとメニューを指差し適当に
何か注文し始めた。
「少しくらいなら大丈夫だろう?」
はい?と呆気に取られてるうちに目の前にグラスに注がれたビールが並ぶ。
「ま、飲めよ」
誰がっ!!
……でも、喉渇いてるし、お腹空いてるし、何より奢って貰えんなら……。
いや、いかん。こいつにだけは……この男にだけは施しは受けない!!
――とは言え、毎回勝手に待ち伏せて連れてかれるせいか必ず『俺が出す』と言われ、出したお金は
突っ返されるんだけど……。
「ああ、来たな。とりあえず腹ごしらえだ」
「あたしは」
「いいから。飯くらい付き合えよ。誘いがいのない女だな」
付き合えって……。ていうかあたし誘われた覚えはないぞ。
居酒屋に拉致られた、ならわかるけど。
「あの、こんなことしてていいの?」
「何が」
「お宅の立場でこんなとこで女と酒飲んでんの見つかったら……」
「勤務は終わった。車も無い。暴れてるわけじゃなし、別に何が悪い」
「人のこと待ち伏せして拉致った」
「じゃ、嫌なら帰れよ」
むっとした顔でビールに口を付けながら睨まれる。うわー、一重まぶたのガンって怖い……。
「俺は誘いはしたが、無理やり脅して連れてきたわけじゃない。お前こそ嫌なら全力で逃げられた筈だ」
「う……」
いや、普通あんな状況じゃ逃げられるわけ……。
……逃げられたか?
何なんだ。どうすりゃ良かったのかと段々ムカついてきた。
「んじゃあ帰ります。えっと……」
幾らあればいいかと残り寂しい千円札を出そうとしていると、財布を握った手をぱっと掴まれた。
「待て!!……やっぱりちょっと居てくれ。言い過ぎた」
はあーと溜め息をつきながら上目遣いで睨むでもなくこっちを見る。
「ちょっと苛ついた……すまん」
何なんだ。つか、手離せ。
「じゃあ居ろ。金はいらんから、とにかく飲め」
握った手と逆の手で割り箸を渡してくる。仕方なく受け取ろうとするとやっと財布を持つほうの手が
自由になった。
「ああ、すいません。……二杯追加」
はい!?何で二杯?ていうか聞くだろ普通!当たり前みたいに頼むのな。
食え、と促されるので開き直って箸をつけた。も、いいや。さっさと食べて飲んで帰ろう。
敢えて勧められなくても二杯目の分までグラスも空けてやった。
あたしもそうだが、奴もまあまあイケる口だ。というか大体あたし達の周りの人間は酒飲みが多い。
強い弱いはともかく、飲めないという奴はまずいない。まあ、だから勝手に注がれたところで断りは
しないんだけどね。
「いい食いっぷりだな」
げ。
つい本能のままに食べ続けてしまった。
ニヤニヤしながら空になりつつある皿をつつく様を見て、何だか知らないが急に恥ずかしい事をした
ような気がしてきた。
「昔昼休みまで泣きながら給食食ってたよな」
「覚えてんの!?」
人前でご飯を食べるのが大ッ嫌いだった。好き嫌いが多かったから食べるのが遅くて、不器用だから
こぼす事もあって恥ずかしかった。好きな男の子の前なら尚更口を開けられなかった。
って何でそんな事を今更。
「あの」
「ん?」
「何であたしを呼んだわけ?」
で、何故飯を食わせる。昔話したいわけ?毎回ほぼ大半の時間は黙々と食事に費やされ、たまの会話は
大して良くもない思い出話だ。わけがわからない。
「……ああ、まあな」
空になった二杯目のグラスを端に寄せて伏し目がちにテーブルを指でトントン叩く。
「まさか恋愛相談だったりして〜」
お酒のせいで少々気分が軽くなっていた。横のカウンターのカップルがたまたま目に入ったついでに
何も考えずぽろっと言ってみた言葉に彼はぎょっとして顔を上げた。あらまあ。
「図星?」
あらら。耳まで真っ赤っ赤じゃないですか。お宅はビール二杯じゃ多分こうはならないよねぇ?
「出よう。話はそれからだ」
伝票を掴むとさっさとレジに向かわれた。
「何なのよ……」
店を出て無言ですたすたと早足で急ぐ奴を慌てて追うように歩く。どこ行くんだよ、と思っているうちに
近所の児童公園に入っていった。
ベンチに腰掛け
「逃げなかったんだな」
と手招きされる。
いや、何となくあのまま回れ右するのは気が咎めただけで。
隣に座るのは何かなーと思ったんだけどね。立ち仕事でパンパンの足は正直辛くて、腰掛けて一息ついた。
「何でそんな端っこなんだよ」
いや、睨まれたって。だって中途半端な位置に座るから、一人分空けるとこうなっちゃうんだもん。
じゃなきゃくっついちゃうでしょうが!
「話なんだがな」
「はい」
おお、いきなり本題か。
「好きな女がいるんだが――どうしたらいいかわからない」
はあ、と肩を落として膝の上の拳をぐっと握りながらぼそっと呟いた。
「は?……言えばいいじゃない。好きです、付き合って下さいって」
あほらしい。ていうかあんたそんなタマか?
「そうか。やっぱりそうだよな」
「そうだよ。ていうか相手はどんな感じなの?」
「それがわかれば苦労はせん」
むっ、と斜め下から顔を向けられ睨まれた。だから怖いんだってばそれ。
「だったら尚更はっきり言えば?言わなきゃわかんないんじゃない?いい大人なんだから」
そう言うと妙に神妙な顔になってまた俯いた。
「どうしたの?……ああ、でもあれか。一歩間違うと犯罪だもんねぇ」
「は?」
「だって未成年者はやっぱりまずいっしょ?それも生――」
「待て!!お前何か勘違いしてるだろう!?」
え?違うの。
「だってあれでしょ。そこまでいい大人が悩むってなんかまずい相手だからでないの?それか……
まさか不倫じゃ」
「あほ!教え子になんか手出すか!!職を棒に振る程馬鹿じゃない」
なんだ。禁断の恋に悩む青年教師じゃなかったのか。
ちっ、と舌打ちして唇を噛む。柄悪いってあんた。
「お前はー……」
「何よ。な、何いぃ!?」
ぎゅ、と手を握られる。
「だから」
「え?えぇ?」
なに?なんで目の前にネクタイの結び目が。
「解れよ」
え?な、何が。
「解れってんだよ、いい加減に!!」
「はい!?」
あたしの手を握っていた筈の手がいつの間にか背中にある。がっちり抱き締められて動けない!
「致命的に鈍いな、お前は」
「鈍いって……」
「それ程仲良くもない男が月に何回も何回も会いに行って、やっと飯から酒までこぎ着けたってぇのに、
普通気付くだろ?この状況。ええ!?」
何を言ってらっしゃるんでしょう、ビタ一文解りません。
「……3ヶ月掛かったか」
3ヶ月。
その時の状況をぼんやりと思い出しながら、あたしはただ、垂らしたままのやり場のない自分の両腕を
持て余していた。
――あたしの勤めている書店は近所にある高校の教科書を卸している。
その日はいつも行っていた古株の従業員が留守で、店長に頼まれて一緒に数箱に及ぶ教科書の配達に
高校まで出向いた。
本というのは、荷物の中でも運ぶのは力仕事である。だから毎年若手の男性職員が手を貸してくれたり
するらしいのだが――。
伝票を渡そうと俯いたいたまま手を出したが、一向に受け取らない様子なので作業中の手を休めて
顔を見た。
そして固まった。
「あの時は本当に驚いたな」
こっちの台詞でもあるんだけど。
田舎に電話した時、母から
『河本さんとこの志郎君がそっちの方に就職したらしいよ。あんた何か聞いてないの?』
なんて言われたような気もするが、女の子ならともかく男の子の、まして在学当時でさえろくに口も
聞かなかった相手と同郷だからといって連絡を取る必要はないと思うのよ。
田舎を離れて数年。
その先でかつての同級生は『センセイ』という呼ばれ方をする大人になっていた。
それが3か月前。
「まさか職場でお前に会うなんてな。こっちにいるのは聞いてたけどこんな近くにいるとは」
「ああ、まあ、偶然って凄いよね」
「本当に偶然だと思うのか?」
「へ?」
「……教採試験受けて受かった中でこの県選んで、また同窓会で話題にでもなれば、お前との会話の
ネタになる位に思った事はあるが。……でもここまでくれば偶然じゃ終わりそうにない、俺」
押し付けられてたワイシャツの感触が頬から消えたと思った瞬間、唇を塞がれた。
「!?」
相変わらず自由の利かない躰を捕まえられたまま濡れた柔らかさが声を奪った。
「……か、わもと」
「運命だ」
「?」
何なんだいきなりこの男は。
「それか偶然じゃなくて必然的なもんだと思わないか?」
「は?……酔ってんの?」
「んな事素面で言えるか」
だよねぇ。ていうかふざけんな!酔った勢いで何すんだアンタ。
「わかった。わかりました。全部流しといてやるから、帰っていい?」
絡まる腕を解こうと躰を離そうとして
「待て!――ふざけんなお前」
とドスの効いた声で呟かれぎょっとした。
「ここまで言わせといて逃げられると思うなよ」
捩った体を無理やり抱きかかえられて、気付けばワイシャツの胸にぎゅっと押し付けるようにされていた。
「このまま俺んとこ来い」
「やだ、何で」
「俺のものになれ。もう待てん」
――え!?
頭が一瞬のうちに真っ白になった。
わけがわからない。力が抜けた体は僅かばかりの抵抗をやめた。その隙をついてまた唇が唇を塞ぐ。
軽くぶつかって離れ、またくっつく。何度目かのそれで押し込まれかけた舌のぬるっとした感触に
やっとの事で我に返ることが出来た。
「……ちょ、待って待ってやだぁ!」
必死の思いで胸を押してそれから逃れた。
完全に流されかけていた。危ないったらありゃしない!
「何だ今更」
「あの、一応訊くけど、好きな女って」
これ以上ない怖い顔で睨まれた。
「この期に及んで……往生際の悪い女だなお前は」
――嘘だと言って下さい。その方がなんぼか気持ちが休まります。
「俺にここまでさせといて、ふざけんなよ。俺をからかってんのか?」
「ここまでって……」
あんたが勝手にしたんでしょ、とはこの雰囲気ではいくらあたしでも言う勇気はない。
「だっておかしいじゃん。あんたとあたしは確かに中学までは一緒だった。けどそれだけで別にこれまで
それ以外何の付き合いも無かったじゃない」
「それはお前がそう思ってるだけだ」
「そんなの知らないよ。あんたがあたしをどう思ってようがそんなの知らない。知りたくもない」
少しずつ、胸にしまっていたはずの苦い思い出が記憶の扉を押し開けていく。
「からかってるのはそっちじゃないの?」
何故だろう。癒えた筈の傷痕が今になってまた疼くのは。
「――今度は何の罰ゲーム?」
「伊……」
「あんたの言う事なんて信じられると思う?いきなり運命だとか何とか、そんなのどうしろって言うのよばか!!」
どこの誰に『愛してる』と言われても、この男だけは信じてはいけない。
ずっとそう思ってきたから。
――再会したあの日から。
* * *
あの出来事から数日が経った。
店には姿を見せなくなって、あたしは帰りに拉致られる事なく無事に帰宅する。
泣きながら振り切って帰ろうとした腕を掴んで無理やり渡された、携帯のアドレスの書かれたメモ。
一緒に書かれた住所を訪ねていく事などありはしないだろうと見て見ぬふりをした。
なのに。
今、せっかくの休日である平日のこの昼間に、男の名前一つ書かれた表札のあるドアの前に立って
いるあたしは何なんだ。
今朝あたしの携帯に覚えの無い番号から着信があった。
最近頻繁にあるイタ電かもしれないと無視を決め込んだが、数回に及ぶ着信履歴の更新に嫌気がさして
せっかくの朝寝の幸せを諦めた。
その犯人が開けたドアの中へとあたしを導いている。
「一体何だってーのよ。仕事は?」
無言でさっさと奥の方へ消えてゆく。呼んでもまともな返事はなく「ふーん」とか「あー」とか。
日本語話せ。
本当はここで話をつけて帰るつもりだったんだけどな。仕方が無いので靴を脱いで勝手に上がる。
1DKの造り。台所を突っ切ると、カーテンを引いたままの薄暗い部屋の隅のベッドに横になっている。
『動けない。しんどいから助けに来て』
いつもの有無を言わせぬ図々しい物言いはどこに言ったのか。弱々しい声で掛かってきた電話を無視
する事もできたのに、チクチクと痛む良心が面倒臭さを押さえ込んでしまった。ああ甘い女だな。
「番号誰に訊いたの?」
「……○○から××にまわしてそっから……」
田舎の友達に電話して順繰りに回してあたしの番号を知ってる友達まで辿り着いたようだ。なんつう執念。
仮にも「小中一緒の幼なじみ」という田舎レベルでなければ実現しない行動であろうといえる。
「熱……あんの?」
「さっき計った。ちょっとある」
「ちょっとって……だいぶ赤いじゃん。ポカリ、あるけど薬は?なんか食べる?」
そう言って買い物袋を見せた。
最初じっと黙って寝っ転がって見ていた彼は、あたしがしゃべり終わるのを待って起き上がり、プッと
笑った。
「看病してくれんの?」
「や、別にそんなつもり……」
じゃ、ないんだけどな。まあ死にそうな声で助けを呼ばれて無視出来る程あたしは鬼ではない。
「それ食べたい」
袋から透けて見えるうどんを指差してくる。
「ん。わかった。ネギとか大丈夫?」
「……卵。とじじゃなくて半熟のやつ」
はいはい、と台所に向かう。何だろう、なんか調子狂うわー。
出来上がったうどんを持ってベッドの側のテーブルに置くと、のそのそと起き上がってぼーっとしてる。
箸を渡してやっても何か食いつきが悪い。
「なによ。いらないの?」
「いや、別に」
何か気に入らなかった?卵煮すぎたかな。ネギが少ないとか。
「食う。食べるけど……」
テーブルの上の丼とあたしをちらちらと交互に眺めては、困ったように俯いて諦めたように食べ始めた。
もしや?
「食べさせてとかいう?」
「!……るせえ。んなわけあるか馬鹿!!」
なにこのわかりやすい生き物。
「何が可笑しい!?」
「別に」
あたしの目にはいつも「俺様」にしか映らないこのワガママ男が「ボク」に見えた瞬間だった。
冷やすものが何も無いというので、近くのドラッグに走り、熱冷まし用のシートを買った。
「気持ちいいでしょ」
貼ってやるために額に乗せた手を彼の男らしいごつい手が掴んだ。
「……かわ」
「昔」
ひんやりとした額と熱のある手に挟まれたあたしの手の下に、目を閉じてぽつりと呟き始めた。
「昔、田舎で野球やってた頃。なんか知らないがソリの合わない女いてな。他の女子とはどうしても
違ってきつい態度とったり、口、聞かないようにしてた」
ふーん。そんなコいたんだ。誰にでも優しかった優等生ってわけじゃなかったのね。
「ところがそいつ、放課後になるとよく窓からこっちの方こっそり見てんだよ。カーテンの陰に隠れて
そん時だけは、他の女子より女の子に見えたなぁ」
――野球部にいたクラスメイトに片想いして、図書室からこっそり見てた。それが精一杯だった。
「でもある日」
そう、突然だったなあ。
「……その女はそれをやめちまった」
あたしはそこに居られなくなった。
「仲間と賭けをした。くだらない賭けでそいつを傷つけた。負けた奴がクジで選んだ女子に告る。もし
振られたらそれで終わり。万が一にもOKしたら……そこで振る」
わー最悪。
「本当なら負けたのは俺じゃなかった。だがタゲになる女が決まって、もし俺が勝ったら……告るのは
その女が好きだった奴だった」
ん?
「だからわざと負けた。で、当然振られて丸く収まると思ってた――ら、そいつ、三日待てって言ってさ。
すっげえ悩んだんだろうな。クマいっぱい作ってさ。ごめんなさいって泣くんだよ。好きな男がいて、
だから簡単に振りゃいいのにさ、それをどう言えばいいかって真剣に悩んだんだよそいつ」
なんだろう。なんか古傷か痛むのですが。
「それまで苦手だと思ってた女がそんな繊細な奴だと思わなくてさ。同時になんか苛ついちゃって、
思いっきり振ってやった。『誰がお前なんかに惚れるかバカ』って。……その女、その場は笑って
たけど、後でこっそり泣いてるとこ見ちまった」
無言のままあたしは握られた方と逆の手で胸を抑えた。
「それで?」
「……話していいか?」
「話したいんでしょ」
あたしも聞いておきたい。
本当は触れてほしくない黒歴史の一部始終の全てを、今は黙って話して欲しいと思った。
「……それからそいつは放課後の窓から消えた。ぽっかり穴が空いたみたいになって、何だか暫くもやもや
して過ごした。俺、相手の男に嫉妬してたんだ。気づいた時にはもう完全にその女は俺を嫌ってて、
俺もまともにそいつの顔が見られなくなった。人を傷つけた事を初めて意識して、初めて後悔した」
遠くを見る目で天井を見上げ、そのまま視線があたしに向けられてくるのを感じた。けど逸らす事は
しなかった。――今は。
「信じては貰えないだろう。でも、俺は今度こそ嘘じゃない告白がしたかった。嫌われてるのは知って
たけど、そんな相手にどうしていいかわからなくて迷走した。初めて自分から好きだと言った。それも、
二度もだ。一度は嘘で傷つけて、二度目は……信じて貰えなかった」
そりゃあそうでしょうよ。あたしだって信じないわ――ん?
「大して興味ない本ばっか数冊買い続けて、餌付けみたいにして少しずつ手懐けて、それでも尻尾一つ
振りやがらない。痺れが切れた」
餌付けて、おい!
「だから……伊吹。信じて貰えなくても、嘘なんか二度とつかん。俺はお前を傷つけた事は勿論悔やん
でる。でもこのまま何もせず終わってしまうのは多分もっと悔やむ。だから今度ばかりは本音だ」
初めて告白されたのは中2の時。あたしは他に好きな人がいたから、同じ野球部の彼になんと言って
断ったらいいか悩んだ。あたしが出来ない事を勇気を出して言ってくれた彼を、どうすれば傷つけずに
済むか、と。
結果傷ついたのはあたしの方で、それまで毎日通った図書室に行く事もやめてしまった。そのうち
片想いは冷めて終わり、問題の彼とは視線さえ合わさず卒業して、それぞれ反対方向へ行くバス停で
朝晩姿を見るだけで、同窓会でも挨拶さえ交わさなくなった。
それから彼は大学へ進学。あたしは当時家で色々あって進学どころではなかったから、そのまま他県に
就職してからは全く付き合いはなかった。
それがここにきて一気に急展開を迎えた。
数年振りに会った憎きトラウマの主は、何を思ったか定期的に顔を見せ、統一性の無い買い物をして
行くようになり、仕事帰りのあたしの重い足を引きずり、空腹を満たす。
最初はさっさと布団に転がりたい体を振り回されてむっとした。けれど、暗い夜の道にスーツ姿の
仏頂面が見えない日は、一人ビールで喉を潤していてもどこか乾いた心がちくちくと疼いた。
彼が満たしたのはあたしのぺこぺこのお腹だけでは無かったのだ。
「俺の事許せないか?」
部屋の隅に積んである手付かずであろう書の山。……袋から出してすらないし。そもそも理数系頭の
この男が読書してる所など見た記憶がない。
「許さない……」
「伊吹」
「許すも何も信じられるわけないじゃない!」
何だかわからないけど、腹が立つ。むかついて、悔しくて、何故か無性に泣きたくなった。
「勝手な事言わないでよ。冗談でしょ?あたしなんかの事好きなわけないじゃん!今度は何?何の罰ゲーム?
あ、そっか、同窓会まで引っ張るとか」
「おい!」
あれからあたしは色恋沙汰にはなるべく関わらない事に決めた。人並みに恋もしなかったわけでは
ないけど上手くはいかなかった。
「あんたはみんなに優しかった。真面目で優等生で、だからコロッと騙された。だけどあたしにはどこか
余所余所しくて、偉そうに見えて苦手だった。だから本当は嫌いだった。だけど」
好きだと言われた時はそれでも嬉しいと思ってた。
「あれからあんたを見るのが嫌になった。だから目を逸らした」
顔を見るとなんだか苦しくなって、見ないようにした。
「あたしだけ、名前を呼んでくれなかった。だから嫌われてるって思って、あたしもそう思う事にした」
小さな田舎の学校では子供の頃から皆一緒だったから、名字より名前や愛称で呼び合うほうが普通
だった。だけどこいつはあたしだけは中学からは「伊吹」と名字でしか呼ばなくなった。
「呼んでもいいのか?」
「なに」
「名前」
はっと顔を見下ろすと、額にあった手が離れ頬に流れる雫を掬った。
やだずるい。そういうことしないでよ。優しくされてるみたいで、あたし怒れないじゃない。
「……特定の人間から目を背ける事は、逆にそいつだけを見ているのと変わりないんだそうだ。同じ
なんじゃないのかな、俺も……お前も」
見つめないようにしていたのは、目を逸らせなくなってしまうから。本当はそれが怖かった。
「……嫌い」
これ以上下がりようがない程最低ラインに居続けた存在だったのに。
「そうか。……ならまだ望みはあるな」
「なによそれ」
「下がりようが無いなら後は上がるしかないだろうが」
お、意外とポジティブ?
「だから楽になれ。一言言ってくれ。俺ももう苦しみたくない」
……苦しめてるのはどっちなんだろう。
「名前、呼んでいいか?」
嫌だとは言わなかったけど、頷く事も出来なかったけど。
「……秋穂」
頬に当たる彼の手に自分の手を重ねて、泣いた。
ぐい、ともう一方の手で頭を引っ張られ、彼の頭の上に乗っかるようにしてキスをした(というか
させられた)。
「……んなっ」
「ガタガタ言うな。いい歳してこれ位」
「ふ……ざけんなってば、ちょ!」
悪い口だな、と更にもう一度。それから文句を言おうと口を開く度にそれで塞がれた。
「何だもう終いか?」
「もういいです」
これ以上やられたら身が持たん。風邪が移る、と思ったがまたやられたら適わんので黙って耐える。
それにしても、未だあたしを押さえ込む両手も、触れた唇も……なんかスッゴい熱いんですけど。
「ねえ、着替えたら?汗かいてない?そのままだと良くないよ」
「おお、そうだな」
起き上がり、着ていたTシャツを脱ぎ捨てる。やっとあたしの体は自由になったものの、ちとばかり
目のやり場に困って、背を向けて立ち上がった。
「なあ、そこの引き出し開けてシャツ出して。……ああ、どれでもいいや」
「はいよ」
適当に引っ張り出したシャツを渡そうと振り向くと、物凄い力で手を引かれ、ベッドの上に倒れた。
「ぎゃあぁ!!」
「お前……色気ねえな」
ぱたん、と彼がベッドに背中から倒れ込む。と同時に両手を掴まれた状態のあたしは、その上にのし
かかるような形で同じように倒れた。
っていうかこれ。
「おお、俺を襲う気か」
「ちっがーう!!」
結果的にそうなっただけであんたのせいでしょーが!……って場合によってはあたしの方が押し倒され
てたんでは!?
「いーから早く着……」
見下ろすとモロに飛び込んでくる裸の胸がどうにも目の毒、とばかりに持っていた替えのシャツを
振り回して見せた。
「暴れんな、バカ」
「バカって……ちょっと!?」
どこにこんな力があったんだろう。
思い切り起こそうとした躰を逆に引き寄せられ、胸の上に倒れ込む。
「うっ」
苦しい?ほら見ろ!
そう言ってやろうとして覗き込んだ彼の瞳にはあたしがいて――鼻がぶつかって、熱い息が唇に触れて
――緩やかに瞼を閉じると同時に、力の抜けきった手から掴んでいたシャツの感触が消えた。
「んん……」
被さっているのはあたしだ。だけどその下から追うように唇をつき上げて、あたしを逃すまいとする。
「責任取るから……」
優しい。なんだろう、ちゅちゅっと下から首を伸ばして啄まれるようなキスも、合間に洩らすように
囁いてくる低く響く声も。
「二度と傷つけるような事しないから。だから」
ずるいよ。
0座標にあったあんたへの気持ちが、少しずつ緩やかに上の方へ伸びていきそうで怖い。
「……腕伸ばせ」
?と何となく言われた通りに腕を伸ばして見下ろすと、あたしの脚の間に自分の脚をねじ込んでくる。
「うわ、ちょっ……」
思い切り跨った形になってしまって慌てて逃げようとしたあたしの服に手を掛け、一気に裾から両手
を押し込んでくる。
その手が背中に回ってあっという間にホックを外すと、ブラの下に出来た隙間から潜り込んできた。
「……ヤらせろ」
「えっ……あ」
ふるん、と揺らしながら掬うように両方の胸それぞれを手のひらで押し上げてくる。
「結構大きいんだな。得した」
サイズを確かめるように持ち上げた手は、今度はゆっくり指先をばらばらに動かし始める。
「柔らかい……」
熱のせいなのか、押し上げるように揉んでくる手が熱くて、灼けつくような感覚に喉がじんじんくる。
揉まれながら、一体こんな状態であたしはどうすれば逃げられるのかと気持ち躰を引いた。
「きゃっ!」
「逃げるな」
いきなり乳首を摘まれた。びくんとしてお尻が上がる。
「やぁ……いやぁ」
着ていた薄手のニットカットソーをブラごと胸の上まで捲り上げられ、両手の指の腹で今度はそれぞれ
の先を転がすように撫で回される。
「ん……やぁ……いやっ、んん……」
ぴたりとしたタイプの服は、胸の上にうまく引っかかって落ちてこない。
「いい眺めだな。……声も悪くない。触り心地もな」
「……っあ」
ずいっとあたしの胸まで頭が来るように躰を潜り込ませてくると
「肘立てて」
と言われたので、伸ばしていた腕を曲げてみる。
胸の高さが下がって、ちょうど彼の頬にそれが当たった。慌てて起きようとしたけれど、その膨らみ
を両手で寄せ上げられ、先端部を口に含まれ動けなくなった。
「ん……ん……」
「あっ……ああ……」
吸い付かれた唇も転がされる舌も熱くて、ねっとりと絡み付くようなその動きにたまらず息が乱れる。
そのあたしの下で彼もまた時折小さく呻く声がする。
「ねえ……あ……んっ……苦しく……ない?」
「いや……でもこんなんで窒息死すんのは勘弁だな」
「なにそれ……あっ」
「黙れ」
乳首に吸い付きながら下着の上からお尻を撫で回してくる。しまった。なんで今日スカート穿いて
来ちゃったんだろう。
期待して来たとか思われないよね?とかバカな事を考えてるうちにショーツの端に指が掛かった。
「脱げ、秋穂」
「えっ!?」
「汚したくないだろう」
そういうとするするとお尻が剥き出しになっていく感触がした。
「スカート……」
「なら、それも脱げ」
よっ、と躰を起こすと脱がされかけていたショーツに手を掛けて何となく下から脱ぐのが間抜けな
気がしてきて、胸の上で引っかかったままのカットソーとブラを取った。
その後スカートを脱ぎながら、よくよく考えると脱がない選択肢もあったのだという事にそこでようやく
気が付いた。
しまった、と恐る恐る振り向くとジャージの短パンを脱ぎ捨てる彼とばっちり目が合って、膝まで
スカートを下げた状態で固まった。
「怖じ気づいたか?」
「……別に」
今更逃げようとは思わない。逃げられるとも思ってなんかいない。
熱冷ましシートを貼ったままの男に最後の一枚まで取り払われ、再び寝転がって両手を広げるその
胸の上に倒れ込んだ。
――もう戻れない。
「俺のもんになれ。秋穂」
「かわも……」
「志郎」
ぐっと顎を持ち上げ喉元に舌が這わされる。
「し……ろう?」
「うん」
呼び慣れない名前に自分で戸惑って、薄目を開けて見下ろした顔は、同じ様に細めた目をしてあたしを
見上げる。口元が少し弛むのを見て、あたしの頬も弛んだ。
少し上にと促されて躰をベッドの上部の方へ這わせると、また下から胸に吸い付いて来る。二度目
となると慣れたもんで、無意識に肘で支えては、舐められる舌の刺激に合わせるように躰を上下した。
いや、つぶしたら悪いし。というかこれじゃされてるというよりさせてるって感じでは。
でももうどっちでもいいかな。
ひとしきり胸を堪能して気が済んだのか、また顔と顔を突き合わせてキスする。今度は唇だけじゃなく、
頬に、首筋に耳元にとのしかかるあたしの届く限りの位置に触れるだけのキスを、そっと、何度も。
それはじりじりとする分却ってぞくぞくと背中に快感が走って、やっと深く差し込まれた舌の味には
頭がくらくらしてもう気が遠くなりそうだった。
ぼーっとした頭でキスばかりに気を取られていたせいで、そこを狙われている事にまったく気が回らなかった。
「わっ!いや、ちょっ……んんんっ!?」
跨った脚の真ん中から差し込まれた指が何の躊躇いも無くそこを掻き回すと、滑らかに指の滑る感触がした。
「熱……」
こんな時に『良かった、ちゃんと濡れてた』とほっとしたのも束の間、熱い彼の指の温度がもろに
伝わってきて、雫の伝う秘部から一番敏感な蕾の先へとそれを向かわされると一気にそれしか考えられ
なくなった。
「あああ……っ」
多分熱のせい。彼の躰が、指が、唇も全て。
だけどそれだけじゃなくあたしの中は熱に浮かされて溶けそうに、そう、何もかもこの男のペース
に流されている。
「とろけそう、て感じだな……まさにここは。お前も」
彼の首筋にしがみつくように抱きついたあたしの頭を撫でて髪にキスする。そんなことをしておきな
がら、いたぶる指は止まらない。
声を我慢するのが苦しくなって、自分から必死に唇に吸い付いた。それに応えて下から押し上げる
ように差し込んでくる舌に自らのものを動かしてそれを受け止める。
耳に届くのは、絡み合う唇の結び付きと跳ねてはもっと、と強請るように動いてしまう下半身の水音。
終わりなんか全く見えなくてもう何が何だかわからなくなってきた。本当におかしくなる……。
お腹の中がきゅうっと疼く。この先にあるのはきっと、でも。
本当は気づいているのに、そこへ踏み出す勇気はまだ湧いて来なくて、されるがままに身を委ねた。
そろそろだめかも――そう思った時、蠢く指が動きを止め、唇が離れた。
「……はあっ……」
何だか息切れがして大きく息を吐く。
押し上げてくる力に気付いてあたしが躰を起こすと、その隙にボクサータイプの下着を下ろす。
剥き出しになったアレにぎょっとして目を奪われているうちに腰を掴まれ、その上にあてがわれた。
「えっ!?ちょっと、ちょっと待ってぇ!!」
「何で。俺動けないんだからそっちが動け」
「だっていきなり上は無理!それに、その……」
初めてするのに騎乗位って……。しかもどう見ても『なま』でないかい?ていうかそこまでしてやるのか。
「無理って……んなわけあるか。幾つだお前、まさか、だよな?」
「……んなわけないじゃん。あたしあんたと同い年ですけど。けど」
「けど?」
「一回しか……やった事ないもん」
やりかけの中途半端な体勢のまま二人とも動けなくなった。あたしはずっと俯いたまま志郎の顔が
見られなくて、ずっと彼の引き締まった男らしいお腹を眺めた。あたしに対する何とも言い難い視線
はずっと感じてはいたのだけれども。
初めて付き合ったのは高校の時で、あの嘘告白の男性不信は拭える事なく結果拒否し続けた挙げ句
振られた。
だからハタチでやっと出来た次の彼氏はすぐ誘われても拒まなかった。そしたら……それはそれで
終わってしまった。あたしにはどうやら、焦ったせいかよっぽど男を見る目が無かったのらしい。
いわゆるセカンド・ヴァージンというやつだ。本物の処女よりよっぽどタチが悪い気がする。(とあたしは勝手に思ってる)
「……ヒく?」
だよねぇ。志郎は溜め息をついてあたしから目を逸らすと、苦々しい顔をして眉をひそめた。
「……きついな、正直」
「やっぱり面倒くさいよね?」
何にも知らないほうがよっぽどましかもしれないのかな?変に中途半端に経験したせいで、変な恐怖心
が蘇る。緊張して震えだした脚に気付いて太ももからなで上げてくる志郎の手が、再びそこをとらえた。
「……っあ、んやっ、あ、あ……なん……」
「一度だけのわりには感度がいいな」
秘密の行いを見透かされてカッと頬が熱くなる。
「あ……やぁ……んっ……」
ぐちゃぐちゃと滑った音を立てて、存在を主張する芽をさっきよりも強い力が転がしてくる。
「……これからは必要ない。俺がやる。どうしても我慢できなきゃ構わんがその時は」
その時は?
「俺の事だけ考えろ」
ひえええっ!!
「わかったら早く挿れさせろ。ていうか挿れろ」
まだ弄られ足りないのか、あたしの躰はじんじんと熱く火照って疼く。それをニヤニヤ眺めながら
「イきたそうだな。まあ待て……後で幾らでも泣かせてやる」
とお尻に指を食い込ませて押さえ込んできた。幾らでもって……。
「って待った!ひに、避妊は!?」
「無い」
「うそっ!やだバカ!!」
「仕方ないだろ、暫くご無沙汰だったんだから」
それに、と言いつつヌルヌルとした感じがさっきよりも広がってる気がする。入り口の周りをアレが
探るように滑って、ぴたっと止まった時には緊張が走った。
「大丈夫だ。この方が滑りがいいから痛さはマシかもしれん」
「はあ!?」
強張ったあたしの躰をゆっくり撫でてくる。肩、背中、腰……これまでにない優しい手付きで。
ああもうこいつ狡い!こんな時ばっか、どうしていちいち可愛いと思いたくなるような気にさせるんだろう。
とりあえずアノ日は……。
「責任取るっていっただろう?……これまでの事も、これからの事も、お前を俺が全部背負ってやる」
そう言った瞬間、そこに激痛が走った。
「――!?……イタッ!い、痛い!痛いっ!!」
頭の中でカレンダーを読み上げて『よし、大丈夫かも』なんてほっとしたのも束の間、気が緩んだ
所を一気に攻められた。この男に油断は禁物だったぁ……ちくしょう!!
「やぁだ、抜く、抜いてぇ」
「俺がヌいたらな。……しかしキツいな」
ぎちぎちと下から押し上げるように入り込んでくる。そこへ上からも腰を掴んで押し下げられて逃げ場が
無いから堪らない。
「痛い……いや……やぁ」
あまりの痛みにとうとう泣けてきた。うう、十年前ならいざ知らず、この歳でこれは色んな意味で痛い。
「……くそっ」
舌打ちまでしやがったよこの男は。ああいいさ、ヒいてくれよもう。ごめんね、面倒くさくて。
「もっと前に……高校ん時にプライドなんか捨てりゃ良かった。そん時押し倒してやっちまったら良かった!
そしたらそんな顔させんの、俺だけで済んだのに」
……えっ?
くそっ、て悔しそうに腰を突き上げてくる。
その痛みよりも、自分の知らない初めてを奪った人間に対するやり場のない気持ちをそこにぶつけて
くる彼の苛立ちの方が何倍も痛く感じられた。
なによ。自分だって……。
ずきんと胸が痛む。それは躰の中心を伝って、繋がって貫かれたその部分と一つになっていくようで、
裂けて痺れるような痛みがあたしに――あたし達に生きている意味を教えてくれるような気がする。
「し、ろう……」
揺さぶられながら力のこもる彼の腕に触れる。
「何だ?」
ギシギシ揺れるベッドがうるさい。隣に響くよ、コレ。
「……いっぱいにして。志郎であたしをいっぱいにして」
あんたがあたしを苦しめてきたと思ってるなら、それを全部取り払って、塗り替えて。
今まで目を背けてきた分、今度は逃げずに向かい合うから。
「俺を見ろ。俺の事だけ考えろ」
「うん」
苦しげに汗をかいた額をそっと拭った手を彼の手が覆う。
「あ……っ!ああ!!あ、あ、ああぁ!!」
始めより更に痛さとスピードが増した動きに堪えきれず、思わず彼の上に倒れ込んで悲鳴をあげた。
* * *
「うわぁぁぁ!!もうヤダなにこれ〜……信じらんない」
後から後から湧き出てくるように流れてくるモノを必死で何とかしようとして、ベッドにティッシュ
の山を作った。
「いい歳して落ち着けよ。……まあ、新鮮味のある反応で面白いがな」
「面白くないっ!」
ええそーですよ。いい歳してバカですよ、落ち着きない女ですよ。
そりゃ話には聞いた事ありますよ。でも想像の話と実際の経験じゃやっぱりどーしたって全然違う。
いわゆる耳年増ってやつで知識だけはあるものの、経験値はレベルアップには程遠い。悪いか!?
くっくっと笑いながら額のシートを剥がして捨てている。
「汗かいたお陰で下がった。礼を言おう」
あーそうですかそりゃよござんした。
「色んな意味でスッキリしたしな」
空になったティッシュの山を片付けぶーたれていると、代わりに敷いておけとバスタオルを渡してきて、
こそっとそんな事を耳打ちしていきやがった。
す、スッキリって……何て事言うんだ!
ああもうむかつく!
動くとなんかヤバい。仕方なく言われた通りにバスタオルを敷いた上にお尻を乗っけて横になる。
奴……志郎はさっさとパンツ穿いてポカリのボトルを開けている。ずるい……。
「飲む?」
ああ頂きます。いやそれあたしが買ったんだけど、ていうかこれもだけど、あたしもパンツ穿きたい……。
ぬるくなったボトルで喉を潤していると、テーブルの上にあったあたしの携帯が鳴っていた。
裸で立ち上がるのは心許なくて足下にあった肌布団を体に巻き付けていると、
「ほれ」
と渡された。
「……もしもし」
『ああ、秋姉?』
弟だ。誰?と口パクで睨みを利かせてきたのでこちらも口パクでかえしてやる。ふーんといった顔で
ぷいとそっぽを向いた。いや、でも耳はこっちにしっかり向いてますから……って……妬いてる?
まさかね。
『聞いてる?』
「えっ?ああ、うん」
そわそわと胡座をかいてゴミ箱を抱えるパン一の大人ってなんか面白い。
『米とか野菜送っといたから。あと、婆ちゃんが次はいつ帰ってくるんだ?ってさ。あとその、ミナの奴もさ』
「あーうんありがと。そのうちにね。……てかミナちゃん元気?うまくやってんのあんた」
あたしより2つ下の弟は田舎で農業をやってる実家を継いだ。後は嫁だが、どうやら近所の女の子
と付き合っているらしい。妹のような幼なじみ。よくぞ童貞丸出しのようなあいつに惚れてくれたもんだわ。
「まだ結婚しないの?そのつもりだって聞いてるけど」
『いや、まだあいつ19だし。俺もまだまだ頑張り時だからさ……』
結婚、と聞いて志郎のきき耳がピクリと動いた。
「貸せ」
「えっ?あ、ちょっとあんた!」
「おう、大地か、久しぶりだな。俺だ。河本だ」
あわわ。いきなり何だ。何なんだこいつは。
弟の大地とは二学年しか違わないから、志郎と大地は幼なじみでもあり、先輩後輩の間柄でもある。
つまり面識はあるわけだが、あたしと志郎が犬猿以下の仲なのは何となく知ってるはずだ。その二人が
一緒にいる事を一体どう思うのか。
「驚いたか?そうだろうな。いや、いい機会だから。……ああ、そうだ。そのつもりでいてくれ」
早口でまくし立てるとさっさと携帯をあたしに押し付け、ベッドに倒れ込む。何なんだ本当に。
「もしもし」
『あーうん、まあ、また野菜送るから住所早めに教えてよ。じゃな』
「はあ?あの、大地!?……ちょっと何言ったのよあんた」
「別に……ただ」
「ただ?」
「あいつが『もしかしてお兄ちゃんになるからとか言う?』って訊くから『そうだ』って答えただけだ」
……えっと????
「責任取るって言っただろうが!」
解れよ馬鹿、とムッとした顔で睨まれて
「飯行くぞ。運動したら腹減った」
とさっさと服を着始めた。
何よ馬鹿って……。
それから駅前の不動産屋に行こうとも。
勝手に決めるなんて酷くない?
ちょっとむかついたから、肩を叩いて
「ねえ」
と耳元で囁いてみた。
「今度はあーん、てしてあげよっか?」
「!!……てめぇ……っ」
真っ赤な顔で『覚えてろよ』と睨まれたけどそれはいつもの俺様野郎じゃなく、キョドった坊やにしか
見えなくてお腹を抱えて笑ってやった。
――そのかわり『覚えてろよ』の言葉通りの報復をたっぷり頂きましたけど……。
「終わり」
GJ!スレが活気づくことを願う。
保守
保守
保守
45 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 22:26:28 ID:rqf0ubD9
良スレage
>>18 別スレ情報で来たけどいいな姉夫婦…GJ!
>>39 私も他スレからお邪魔しましたが、いや〜GJすぎる!
初めての相手に嫉妬する志郎にめちゃ萌えました!
上と同じく他スレから失礼。
GJでした!
それにしても、長い長いすれ違いだったなw
親切な方の導きのおかげでこれました…。
なんという良スレ
これは良い幼馴染み…じゃなかった。喧嘩仲間。
激しくGJ!
保守
擦れ違いのもとはやはり勘違いや誤解だよね。
あと、付き合ってても思ってることをちゃんと伝えられない女の子に男の子が自信無くして疎通になる、とか?
大業にケンカも良いけど勝ち気な女の子じゃないと泣き喧嘩になるしな
だがそれも良い保守
55 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 12:49:07 ID:ggCaqgW1
ご愁傷様です
hosyu
喧嘩しちゃって後悔してる女って萌る
保守
59 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 00:33:22 ID:KjTs6YGl
保守
保守
呆スレに秋穂さんの続きキテターーーー(゜∇゜)
mjd!?
どこか教えてくれ!
おにゃのこ…
ほ
65 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 23:29:00 ID:74aGsmFS
し
ゅ
う
68 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 18:13:34 ID:NaqNYfRh
ムキになってる女・・・
保守
痴話喧嘩
hosyu
「お前あいつと浮気してるんだろ・・・!」
「はあっ?なに言ってるの?信じらんない!」
それでそれで?
喧嘩のあとのsexは気持ちいい
男と女が喧嘩するのっていいよな
中高生の男女がお互いに想ってるのに素直に慣れなくてついケンカ口調になるのとか好きだ
初々しいよねそういうの
78 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 23:01:26 ID:DjyaCvWG
男女乱闘
格闘技ですか?寝技ですか!?
絞め技
81 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 03:04:12 ID:xoLbhcDa
昨日、テレビで赤毛のアンやってて思ったんだ…
アンとギルバートってまさにこれじゃないの!って。
82 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 13:16:08 ID:0cjc8dPj
アンタなんて大嫌いよ!
てかww確かに。
大嫌い!!
っていうとガラスの仮面の速水とマヤを思い出すな。
不和、喧嘩、すれ違い、ぜんぶあてはまる
あれはすれ違い過ぎて迷宮入りしてないか?ww
すれ違い勘違い仲違いは焦れったさがたまんないね
アンとギルバート…必死に探しているが、見つからないwww
やっぱ名作系は小説ないのかな…。
エロパロってどのくらいで落ちるの?
保守
保守
89 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 18:30:08 ID:+mrc4EIG
>>86 圧縮が近くなければ1、2ヶ月書き込まなくても落ちないよ
90 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 14:27:34 ID:FPK/vjU7
圧縮来そうで来ないね
91 :
名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 09:55:25 ID:QCIhhEry
保守
保守
ここ初めて来た。いいもん読ませてもらった。
アンとギルバート…
あれはすれ違い期間長いぞー
ho
平凡な男女だったらただの喧嘩ですむものが、
ともに対等くらいの権力、地位、金、プライドなんかをもってる大物どうしだったら
部下や経済、果ては国家を巻き込んでの大騒動になる、みたいなのを妄想した。
多方面への影響を心配する周りがなんとかまるくおさめようとして逆効果になる、みたいな。
99 :
名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 07:25:46 ID:UIdKJ/Tx
良スレ
100 :
名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 22:53:02 ID:/j1FeMOF
職人さんにあいたひ…
補償
102 :
名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 21:58:33 ID:uzckqayS
なつのおわりにおおげんか…
秋の始まりに痴話喧嘩…
104 :
名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 10:45:48 ID:8qG57BTJ
保守。
105 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 15:19:25 ID:8ytI7b2Q
あげ
秋穂たちはまだケンカしてんのかなぁ…
保守
108 :
名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 15:02:21 ID:TqEhsdWg
age
>>39GJ!!
すごくイイハナシダナーっておもったらすごい昔だったかw
自分も妄想膨らんできたのでこっち投下してみる