ファイアーエムブレム&ティアサガ第32章

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68名無しさん@ピンキー
「ええっ!? ラクチェ、それホント!? ラナってファバル兄さんとつき合ってたの!?」
「うん。どうも本当みたいよ、パティ。私も聞いた時はビックリしたけど」
「だって、ラナってセリス様一筋じゃなかったの!?」
「私もそう思ってたわよ。わかんないモノよね」
「ユリアがシャナン様とラブラブな関係になったのも驚いたけど、ある意味それ以上に信じらんない……」

ここはペルルーク城の女性用お手洗い。
たまたま出くわしたラクチェとパティが、なぜか洗面所で恋愛話に花を咲かせていた。
昔はシャナンを巡っていがみ合ってた2人。
しかし当のシャナン本人は、記憶喪失の少女ユリアといい関係になっていった。
そしてラクチェとパティにも、それぞれヨハルヴァ、レスターという恋人ができた。
そんな関係の変化の中で2人はすっかり打ち解け、今では親友といっても差支えない間柄になっている。

「まさか兄さんとラナがねぇ……。じゃあラクチェ、セリス様と怪しいのって誰だと思う?」
「私の勘だけど……フィーっぽくない?」
「フィー……。あぁでも、言われてみればそんな気もする!」
「ナンナは最近の様子だと、やっぱりアレス様が本命なんでしょうね」
「うんうん! それでリーンがリーフ様とでしょ?」
「みたいね。最初の関係が入れ替わったって所じゃない?」
「アルテナさんは……ま、しょうがないか。それじゃあさ、ティニーは誰だと思う?」
「ティニー……ティニーか。ちょっと私には想像つかないかな」
「あたしセティ様じゃないかと思ってるんだけど、違うかな?」
「考えられなくもないけど……」
「うーん……」
「あ、ラクチェさんパティさん」
69名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 17:52:16 ID:osMN5vxo
パティとラクチェが顔を見合せ首をひねっている所へ、1人の少女が現れた。
リボンで飾られた独特な髪型に、上はノースリーブ、下はスカート姿。
話の渦中の人物、ティニーその人だった。
「こんにちは」
ティニーは柔らかい微笑を浮かべ、2人に会釈をする。
「あ、ティニーこんにち……」
「あーっ! ティニー、ちょうどいい所に!」
挨拶を返そうとしたラクチェの声は、突如発されたパティの大声にかき消された。
「あのさあのさ! 聞きたいことがあるんだけど、ティニーの好きな人って誰?」
いきなり直球ド真ん中の質問を繰り出すパティ。
「え? 好きな……人?」

あまりにも唐突すぎる展開に虚を突かれたか、ティニーは目を丸くしてその場に固まった。
かと思うと、一瞬にしてその顔が真っ赤に染まる。
「ちょ、ちょっとパティ! いくらなんでもストレート過ぎ……」
「いいじゃんいいじゃん! 別に減るものじゃないんだし!」
たしなめようとするラクチェの言葉をさらりと流すパティ。
「で、どうなの? 誰かいるんでしょ? 好きな人!」
瞳を輝かせ、パティはティニーに追撃をかける。
「い、いえ……。べ、別にいませんけど……」
目を泳がせ、どもりながら答えるティニー。
「へーえ、いないんだー。でも、そう言う割には顔が真っ赤になってるけど?」
「そ、そんなこと、ないと思います」
言いながら、首をぶんぶん振るティニー。
「いやいやいやいや。さすがにどう見ても真っ赤だし」
分かりやすすぎるティニーの反応に、ラクチェは思わず苦笑を洩らした。
70名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 17:53:45 ID:osMN5vxo
「と、と、とにかく、本当にそんな人いません。ほ、本当です」
手をわたわたさせ、あからさまに焦った様子のティニー。
その姿は、誰がどう見ても『わたしウソをついてます』といった雰囲気だ。
「だってさ、ラクチェ」
パティはにやけながら、ラクチェの方に顔を向けた。
「うーん……ふふっ」
笑みをこぼしながら、パティと顔を見合わせるラクチェ。
「そうね。ここまで慌てられると、何だか私もすごく気になってきたわ」
「ねえねえラクチェ。ちょっと耳貸して!」
「ん?」
「こんなのどう? まずラクチェが……で……あたしが……」
ラクチェの耳元に顔を近づけ、何事かを囁くパティ。
「さすがにそれは……じゃない?」
渋い顔をし、今度はラクチェがパティの耳元で囁いた。
すると、今度は再びパティがラクチェの耳に顔を近づける。
「だからそれは第1……でその後……」
「それは……言う……」
「でしょ……って感じで……」
「うん……かも……しれない……」
体を寄せ合い顔をくっつけ、何やら小声でこそこそ相談をする2人。

「あ、あの、わたしお手洗いに入りたいんで……」
さっきまで慌てていたティニーだが、さすがに2人の妙な雰囲気を感じ取ったらしい。
恐る恐るといった感じで2人の横を通り抜け、奥の個室に向かおうとした。
と、その時。
「ティニー覚悟!!」
突如、ラクチェがティニーの背後から襲いかかった。
「ひっ!?」
いきなり背後から組みつかれ、驚きの声をあげるティニー。
しかしラクチェは意に介さず、問答無用でティニーの体にしがみつく。
そしてあっという間にティニーを取り押さえると、その体を羽交い締めにしてしまった。
「な、何をするんですか!?」
身を捩って逃げようとするティニーだが、ラクチェとの力の差は明白。
かよわいティニーがどんなに頑張っても、とても抜け出せるものではない。
もがくティニーの前に、両手を腰に当てたパティが仁王立ちになった。
「ふっふっふ……。ティニー? 大人しく白状した方が身のためだよ?」
そう言うと、パティはティニーの足もとにゆっくりとした動作でしゃがみ込む。
そしておもむろに、ティニーのスカートの裾に両手をかけた。
71名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 17:55:58 ID:osMN5vxo
「もし言わないなら……スカートの中が見えちゃうかもしれないよ〜?」
悪戯っぽい表情でティニーを見上げながら、パティはスカートの裾を少しずつ持ち上げ始めた。
「な……!?」
絶句するティニーを尻目に、じわじわと、しかし確実にスカートをめくり上げていくパティ。
「ほらほらほら、早く言わないと……」
いくらもしないうちに、隠されていたティニーの可愛らしい膝が丸見えになる。
「ちょ、パティさん何を、ちょっと!」
「今のうちに、早く言った方がいいんじゃない?」
パニクっているティニーの耳元で、静かに囁くラクチェ。
「ま、待って! 本当です! 本当にそんな人いないんです! 信じてください!」
懸命に訴えるティニーだが、パティの魔手はとどまる所をしらない。
ついには、ティニーの白いしなやかな太ももまでもが露わとなった。

「さ〜てと。あとちょっとめくったら本当に見えちゃうけど?」
「ダ、ダメです! 本当にやめてください!」
声だけでなく、内股になったティニーの脚はプルプルと細かく震えている。
無駄な努力とは知りつつも、太ももに全力を込めて脚を閉じようと頑張っているようだ。
「今教えてくれれば、これ以上は何もしないよ?」
「どう? 正直に白状する?」
「イ、イヤ……」
パティとラクチェの脅迫に、羞恥が混じった弱弱しい声を発するティニー。
しかしパティは容赦がない。
「じゃあ、あと5秒だけ待ってあげよっか。いくよ? ごーお、よーん……」
考える暇を与えさせまいと、カウントダウンを開始するパティ。
「さーん、にーい……」
「うぅ……」
蚊の鳴くような声を発し、苦悩の表情を浮かべるティニー。
やがて覚悟を決めたのか、その目がぎゅっと固くつぶられた。
72名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 17:57:37 ID:osMN5vxo
――ところが。
「……いません」
ティニーの口から発されたのは好きな男性の名前ではなく、頑なな否定の言葉だった。
「へ? 今何て?」
思わず聞き返すラクチェ。
「……ですから、本当にいないんです」
目はきつく閉じられたままだが、その声色は数秒前とは違っていた。
冷静さを取り戻したような、落ち着いた声。
「そんな答えでいいの? 本当にめくっちゃうよ?」
「そうすることで、パティさんとラクチェさんが納得してくれるなら、わたしは構いません……」
再度脅しをかけるパティだが、ティニーは決して屈しなかった。
パティとラクチェは顔を見合わせ、ほぅ、とため息を漏らした。
「さすがはティニー、って所かしら?」
「……う〜〜ん。強情だなぁ」
そう言うと、パティはギリギリの所までたくし上げていたティニーのスカートから両手を離した。

「しょうがないなあ。その強情さに免じて、スカートめくるのは許してあげる」
しぶしぶ、という表情を浮かべ、パティはその場から立ち上がった。
そんなパティの様子を見て緊張から解き放たれたか、ティニーはほっ、と息を吐いて瞳を開いた。
「ありがとうございます。信じてくれて」
ティニーは羽交い締めにされたまま、パティにお礼を言い、頭を下げた。
そんなティニーに向かって、パティは満面の笑みを浮かべると、言った。
「え? 信じたわけないじゃん。それに、これで追及が終わると本気で思ってる?」
73名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 17:59:06 ID:osMN5vxo
「……え?」
パティの不穏な言葉に、ティニーの表情が凍りついた。
「ねえ、ラクチェ?」
「そうね。そこまでひた隠しにするなら、私もどうしても聞き出したくなってきたし」
パティの言葉にうなずくラクチェ。
「素直に教えてくれればいいのにね、パティ?」
「ある意味予定通りだけどね。それじゃ、作戦第2段階に入ろっか、ラクチェ」
そう言いながらパティは両手の指をわきわきさせ、ティニーの体へ少しずつ近づけていく。
「オッケー」
ラクチェの方も改めて力を入れ直し、ティニーの腕をがっちりと抱える。
「え、え……?」
さっき以上の危険な空気を感じ取ったか、再びティニーの表情に焦り、そして恐怖の色が浮かんだ。

「それにしても、ティニーって綺麗な腋の下してるよね〜。羨ましいな〜」
パティはそう言いながら、ティニーのむき出しになっている腋の下に手を伸ばした。
そしてスルン、と両腋を一撫で。
「きゃっ!?」
突如襲ってきたくすぐったさに可愛らしい悲鳴をあげ、ティニーの体がピクン、と反応した。
「あ、良い反応! これはくすぐり甲斐がありそうだな〜」
ティニーの反応を確認し、満足げに笑うパティ。
「ま、まさか……」
パティの言葉にこれから何をされるか察したか、ティニーの顔がひくっ、とひきつった。
「素直に教えてくれないから、こんなことしなくちゃいけないのよ?」
「ま、しょうがないよね〜」
「あ、言っておくけど、私は白状するまで絶対に離さないからそのつもりで」
「あたしも、今度は白状するまで絶対やめないからそのつもりで!」
2人の口から交互に紡がれる死の宣告に、ティニーの顔がたちまち真っ青なった。
「や、やめてください! わたし、くすぐられるの本当にダメなんです!」
震える声で懇願しながら、どうにかして今の状況から逃れようとジタバタするティニー。
しかしどんなに頑張っても、ティニーの動きを封じているラクチェの腕はピクリとも動かない。
「大丈夫大丈夫。素直に教えてくれれば終わりにするから」
「さあ、どれだけ耐えられるかな〜?」
「やめて! やめてくだ……」
しかしティニーの叫びは、パティの開始宣言の前に打ち消された。
「それじゃスタート! コチョコチョコチョ〜ッ!」
パティは再度ティニーの腋の下に手を伸ばすと、今度は本格的にくすぐり出した。
「きゃあああああっ!!」
ティニーは甲高い悲鳴をあげ、全身をビクビクと震わせた。
74名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 18:00:26 ID:osMN5vxo
「ううっ、あ、うくっ、……うう」
体をモジモジさせながら、健気に笑いを堪えるティニー。
「あ、ダメ……あは、あははは! きゃはははははは!!」
しかし、残念ながら無駄な努力だったようだ。
すぐにティニーは、身を激しく捩らせて笑い始めた。
「あははははっ! やめて、くださいっ……きゃはははは!!」
ティニーをくすぐっているパティの指は、縦横無尽に細かく動いて全く容赦がない。
「……見てるだけでくすぐったくなってくるわ」
パティの指の動きを後ろから覗きこむように眺め、思わず顔をしかめるラクチェ。
「ま、指先の器用さには自信があるから。伊達に盗賊やってるわけじゃないってこと!」
「きゃはははははは、ひーっ!!」
2人がそんなやり取りをしてる間にも、ティニーの苦しげな笑い声はどんどん大きくなっていく。
「ダ、ダメです! トイレに! ひははははは!! トイレに行かせてくらしゃひひひいひひいひひ!!」
その場で小刻みにピョンピョンとジャンプを繰り返し、切羽詰まった声を発するティニー。
「あ、そういえばティニー、トイレ行きたかったんだっけ」
しかし、パティは腋の下をくすぐる手を緩めることはなく。
「じゃあなおさら早く言わないと。このままじゃ、大変なことになっちゃうんじゃない?」
ラクチェもティニーを解放するそぶりは全く見せなかった。

「た、助けて!! 苦しい!! きゃははははははは!!」
悶えまくるティニーの耳元に、ラクチェがそっと顔を近づける。
そして。
「ふーっ……」
「んああああああっ!?」
突然耳の穴に息を吹き込まれ、艶っぽい声をあげるティニー。
「あ、ラクチェすごーい! 見てみて、ティニーの体。鳥肌立ってるよ」
「え? だって何だかティニーがすごく可愛くって。つい私もいじめたくなっちゃった」
そう言うと、ラクチェは再びティニーの耳元に唇を近づけた。
そして……。
「ふっ!」
「いやあああああん!!」
またも耳に息を吹きかけられ、ティニーの体が激しくくねる。
「あたしも負けてられないな。そ〜れ、コチョコチョコチョ……」
「ひひひゃははは!! あきゃはふふふふはははひゃひゃ!! *#△◎+〜〜!!」
腋の下を激しくくすぐられ、耳に息を吹きかけられ、ティニーは狂ったように笑い悶えた。
「も、もれちゃいます! 本当にぃ!! ひーんひひひひ!!」
普段の彼女なら絶対言わないであろうはしたない言葉を発し、激しいタップダンスを踊るティニー。
両手がむなしく虚空を握り、助けを求めるようにもがいている。
その瞳から、涙が一滴こぼれた。
75名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 18:02:33 ID:osMN5vxo
「も、もうダメ!! 言います言います!! 言うから許してえええ!!」
数秒後、2人の激しい責め苦の前にティニーの心は完全に折れた。
「あ、喋る気になった? それじゃあ早く教えて教えて!」
そう言いながらも、パティはあくまで腋の下をくすぐる手を緩めない。
「きゃはははは!! しゃ、喋れません!! 止めてくれないと喋れないぃ!!」
髪を激しく振り乱し、必死に許しを請うティニー。
「でも、言わないとやめてあげないよ?」
「ほらほら頑張って早く言わないと。トイレに行きたいんじゃないの?」
2人の女悪魔はあくまでも非情だった。
「きゃ〜っはっはっは!! あははっははっはは!!」
体をダンシングドールの様にガクガクと痙攣させるティニー。
そしてついに、断末魔の悲鳴のような告白がトイレ中に響き渡った。
「コープルさん!! 私が好きなのはコープルさんですぅぅぅっ!!」

「え!?」
「コープル!?」
ティニーの口から発された名前はラクチェ、そしてパティにとっても完全に予想外だったらしい。
ぽかん、と呆気に取られた表情を浮かべる2人。
パティの指の動きは止まり、ラクチェの腕から力が抜ける。
その隙にティニーは激しく身を捩らせると、ラクチェの腕から逃れた。
荒い息をつきながら、ティニーはその場にへたりこんだ。
「はぁはぁ……けほっ」
そのまま数秒間放心状態のティニーだったが、やがて何かを思い出したように表情が強張った。
慌ててその場から立ち上がり、ダッシュで奥の個室へと駆け込んで行くティニー。
バタン!!
大きな音と共に、個室の1つが閉じられた。
それからすぐに、水が流れる音が響く。
後に残されたパティとラクチェは、気まずそうにお互いを見つめた。
76名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 18:03:50 ID:osMN5vxo
「ビックリしたねー……」
「まさかコープルとは思わなかったなぁ……」
「ねえ……。ティニーって……もしかして、ショタコンなのか、な?」
「い、いや……。さあ……。ちょっと、それは何とも言えないけど……」
戸惑いの表情を浮かべる2人。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙の後、ラクチェが口を開いた。
「冷静に考えると、私たちってティニーに酷いことしたよね……」
「いくらティニーでも、あんなことされれば怒ってるよね、多分……」
いつもあっけらかんとしているパティも、さすがにやり過ぎたと思ったらしい。
その顔には、濃い反省の色が浮かんでいた。

しばらくして、再び水の流れる音が聴こえたかと思うと、個室の扉が開いてティニーが姿を現した。
「あ、ティニー……。ごめんなさい……」
「その、あたしたち、ちょっと調子に乗り過ぎちゃったかも……」
ティニーの姿を認めた2人は、ばつが悪そうにしながら謝罪の言葉を口にした。
しかしティニーは2人を責めることはせず、穏やかな表情でゆっくりとかぶりを振った。
「いえ、いいんです……。誰かに知ってもらって、何だか気持ちがスッキリしました」
そう言うと、ティニーは頬を桜色に染めて照れ笑いを浮かべた。
「でもやっぱり恥ずかしいので、絶対他の方には秘密にしてくださいね……?」

   ※※※

それからしばしの時が流れた。
聖戦はセリス軍の勝利に終わり、英雄たちは皆、自分の国へと帰って行った。
シレジアへ旅立つ若き司祭コープルの傍らには、マージファイター、ティニーの姿があった。
パティとラクチェの尽力の結果、2人はめでたくカップルとして結ばれたのだ。
後にシレジア王となったコープルは、ティニーにこう語ったという。
『別れの際、父上がティニーさんに向けていた暖かい眼差しを、僕は一生忘れることはないでしょう』
と……。

   ―おわり―