ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。
○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。
■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。
■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
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ヤンデレの小説を書こう!Part24
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242892972/ ■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
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■投稿のお約束
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・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ごらんの有様だよ!!! <
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| : | : : : |: : : :|` |lヽ、 ´ ̄` 三三三三:,イ: :| : |: : : : | : : : :| : |
| : | : : : |: : : :| : |l |: |li:..、 三三三三才il| :l : :| : |: : : : | : : : :| : | 1さん…乙です
7 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 19:18:03 ID:t72094vV
カウンターでエリーの分と俺の分の料金を支払った。カウンターの店員はクレーマーに慣れていないのか、どうしていいのかわからないような顔色になっている。
………労りの言葉でもかけてあげるか。
「パフェおいしかったです。頑張ってください。」
「あ、ありがとうございます!」
ふっ。決まった。
店員ははにかんだ様子で微笑んでいた。
「急ぎましょう。」
「ああ。」
店から出た俺達は少し暗くなった辺りを見回している。
犯人、さっきの女を捜すために。
……すぐに見つかった。不満そうにブーツをコツコツと鳴らし、速歩きで明かりのない暗がりの路地へ向かっている。
明かるい道路沿いなら尾行しやすいのに。
……しょうがない。尾行を続行する。
これを逃したらもう見つからないかもしれないしな。
バレたらしらばっくれるか問い詰めるまでだ。
「……行くぞっ。」
「気づかれないようにかなりの間隔を保って尾行しましょう。幸い道路から隔絶されていて騒音がないのでブーツの音がよく聞こえます。見失う事はまずないでしょう。」
たしかにそうだ。
周りに騒音がなくブーツの音がよく聞こえるということはこっちの音もよく響いてしまうという事。
見失わない事よりもバレない事に重点を置かなければならない。
一瞬気づかれただけなら尾行されているとは思わないだろうが、さすがに靴の音が聞こえっぱなしだとバレるに決まっている。
彼女が小さく見えるまで待った。音がかすかに聞こえる。
………行くか。
長い道に左右には広大な田んぼ。土地の所有権は誰が握ってるんだと気になるほどの。
日の明かりはもうほぼ無いに等しい。暗がりだ。彼女の姿はほとんど見えていない。
たまに立っている街灯の明かりと、雀の涙ほどに聞こえるブーツが地面を蹴る音を頼りに進んでいる。音を鳴らさないようにゆっくりと。
―――………。
ふと思った。俺はただのストーカーなんじゃないかと。
……違う。けっしてそんなんじゃない!
とにかく今は無駄な事を考えちゃいかん。
長い田んぼの道は終わり、彼女は閑静な住宅街へ入った。
……額を拭ってみると汗がすごい出てる。疲れと緊張がピークに達している。奇声をあげたくなる。精密なプラモデルでもやらされているかのようだ。
しばらくして俺達も住宅街へ入った。
住宅やマンションが所狭しと建っていて道も細い。音がより響いてしまうようだ。
でもまあここまで来たら振り向かれてもそっぽを向いて彼女とは違う道へ行けば大丈夫だろう。住宅街ってのは大体どことでも繋がっているから離れていても尾行はできる。そろそろ家に着く頃だろうし。
ただしあくまで警戒レベルを下げただけだ。
携帯の時刻を見た。7時30分。
お子さまはおねむの時間ではないのかとエリーをチラ見したが、ギンギンだった。
大分歩いた……。
用水路の水が流れていて、かすかに音が聞こえる。カエルや虫が鳴いている。
!!!!
彼女が突然立ち止まった!!!
やばい!!!
とっさに壁に隠れた。
隠れた事に大した意味はない。バレてはいけないというより罪悪感というのが僅かに強かったか。
……よくよく考えてみたら最初からバレてて、これは俺らを試したのかもしれない。
エリーは俺よりも早くそして静かに、真横へスバァッと隠れた。
エリーも隠れたんだ。これでよかったはずだ、と高鳴る心臓を無理矢理落ち着かせてみようとする。
……………? この音、しゃっくり……?
………?
………わざわざ立ち止まってしゃっくりするの?
緊張する中、突然彼女が喋った。
「…………でっ………みんなっ。偽善者ばっかり。偽善者偽善者偽善者偽善者…………。」
………わかった。彼女は泣いている。よく聞き取れないが声は震え、とにかく『偽善者』と何回も繰り返している。
冷たい言葉で切り捨てられるようなムードではない。……………器物損害やクレームについて許したわけじゃないけど、どうも容赦なく憎めるような相手ではないみたいだ。何か理由があったに違いない。
人が笑ったり泣いたりすると自分も同じような顔になるのは俺だけだろうか。
気がつけば俺は自分の顔をくしゃけさせていた。
………様子が見たくなった。壁から少し顔を出し見てみた。
ぶつぶつと俯いたまま言っている。
瞬間。
「あああああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛!!!!!!!」
彼女が叫びだした!!
叫びが住宅街に響き渡る。
明らかに普通ではない。
俺はさっきまでの嫌悪感や罪悪感や同情などを一切失い、恐怖に染まりきった。
こいつ、ヤバい………!!!!
彼女は胴だけをぐるん、と振り回し、マンションの駐車場に停めてある車へ殴りかかった!!
「ああああ゛ーーーーー!!!!!!」
―――………。
車は正面から潰されそのまま後ろのコンクリートの塀へと叩きつけられた。
ドォォォン!!!という轟音が鳴り響いた………。
「ああああぁ〜こんなんで収まんねぇよ〜あ〜腹立つ〜偽善者ども〜。」
うめき声をあげ、彼女はまた歩きだした。ふらふらとおぼつかない足どりだ。背を丸くしている。
…………怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い!!!
もう帰りたい………。
…………エリーの声で我に帰った。
「おそらくパワータイプのサイキッカーです。施設で一人だけ見かけたことがあります。パワータイプに発現する人間は感情をうまくコントロールできない、情緒不安定な人間が多いと聞きました。」
「……俺は、あんなの見たことがない。あんなやつ絶対更生できるわけがない。でも絶対に戦わなきゃいけない。………もう帰りたい…。」
ありのままの気持ちを話した。
……瞳に涙がたまっているのがわかる。
俯き、古い洗濯機のように震えている俺の肩に手が乗った。
そして、その手の張本人が俺に目を合わせた。
「……以前あなたと仕事を共にした時にあなたの事は見ています。
私たちは勝てます。信じてください。」
………。
いつもより声が優しい感じがした。
………測定器か何かがあれば測りたい。今のがいつもの冷たい声だったのかを。
俺の恐怖から逃れたいという願望から生じた幻想なのかもしれない。
幻想でもなんでもいい。とにかく彼女の声は心に迫るものがあった。
………ふん。
女の子にこんな事言われて引き下がるわけにはいかないか。
「ですが今は万全ではありません。まず彼女の住所を突き止めるのが得策です。」
「だな。」
……尾行を再開する。
俺達はさっきの殴られた車が停めてある駐車場を横切った。
車はプレスで潰されたように前から圧縮されている。ワゴン車でよかった。軽自動車などの軽い車なら吹っ飛ばされ塀を越えて民家にぶち当たっていたかもしれない。
車のライトが目に見える俺には、まるでこいつが泣いてるように見えた。
ましになったはずなのに、また恐怖がぶり返してきた。でも行かなきゃ。
「うふふひ、ひっく、うはははは。殺してぇー。偽善者ども殺してぇー。」
ひっくひっくとしゃっくりをしつつ、物騒な事を言っている。
不審者そのものだ。むしろ浮浪者だ。
すると彼女はアパートの方へ向かった。どうやらここに住んでいるようだ。
ひとまず安心した。化け物に殺されなかったということに。
「……やったな。」
「そうですね。」
彼女は二階へ上がり、鍵を開け、部屋へ入っていった。
アパートの外観は……それほどよくない。というかボロの部類だろう。階段の手すりや扉などはところどころ錆び付いていて、さっき彼女が閉めた扉からはガン!というただ鉄がぶつかったようなボロアパートそのものの音がなった。
少なくとも手入れをしているようには見えない。家賃もそれほど高くはないだろう。
………ギリギリ島田さんの事務所の勝利。(ボロさ勝負)
「今日は帰るぞ。もうくたくただ。」
「お疲れ様でした。」
「………君も帰るんだよ?」
「わかっています。」
携帯の時刻を見た。7時40分。
今から急いで行けば最終のバスに間に合うか。
間に合わなければタクシーしかない。とほほ。
バス停へたどり着いた。8時25分の最終に間に合いそうだ。
もう……疲れた……。足が悲鳴を上げている。横腹も痛くなったし吐きそう。
ベンチで休んでいると数分もしないうちにバスが来た。バスの優しい明かりが祝福してくれているかのようだ。
「お疲れ様でした。お世話になりました。」
「うん。」
エリーを送っていくついでに自転車を取りにいった。
今、島田さんの事務所の前だ。
……なんだろうこの感覚。
この子と別れるのが名残惜しいような。
…………いやいや、ガキ相手に何を考えてるんだ。とっとと帰るか。
自転車の方へ足を進めた。
エリーも階段を上がっている。カンカンと音が鳴っている。
「…………私には理解できませんが、努力はしてみます。」
「ん?」
声が聞こえたのですぐに彼女の方へ視線を向けた。
「……なんでもありません。またよろしくお願いします。」
「うん。」
……『理解できない』、『努力』………おそらく『笑うこと』だろう。
あの時たしか彼女は「笑うことが『できない』」といったはずだ。
笑いたくても笑えないか、笑うことを周りが期待してるけどできない、の2つのニュアンスが考えられる。
……考えすぎか?
そもそも笑うことを努力するのかもわからない。気持ち悪いけどあなたと手を繋ぐことを努力しますって事かもしれない。
深く考えるのはよそう。
「お疲れー。」
「はい。島田さんもお疲れ様です。」
「おー。 で、犯人の事で何かわかったことはあるか。」
「住所がわかりました。そして能力はやはりパワータイプのサイキッカーです。」
「そうか。 でもまぁ二対一で向こうは素人だ。その上隙を付けば一発で『止められる』だろ。次もよろしく。
……で、リュウイチはどうだった。」
「……別にどうもありませんが。」
「もう寝るのか?寝る前に算数のドリルやっとけよ。」
「はい。」
バタン。
「……………今日も変な人、でした。島田さんよりも。」
エリーとの初めての任務のことを振り返っている。
任務は森の廃工場の中で行われた。
そこら中が錆び付いていてツタや雑草が生い茂り地面には見たことのない虫が這っている。
目の前には景色とは全く合わない白スーツの男がたたずんでいる。
男の容姿は金髪で顔の目鼻立ちは妖精のように美しく、気持ち悪いほど白スーツが似合っている。
手には弓と4本の弦が張った楽器を持っている、おそらくバイオリンだ。
男は俺達を見るなり笑顔で口を開いた。
自信満々といった感じだ。
「もしもここがフランスの美しい街だったとしよう……。
川辺は優雅に揺れ昇りはじめた太陽の光をきらびやかに反射している。川辺に住まう民家の住民たちはベランダで大きく背伸びをし体全体で朝を感じている。小鳥たちの騒がしくも愛らしい囀りに耳を傾けるのもいい。」
「………?」
男は弓を持った手の人差し指だけを立て口元に運んだ。
この男は確かにここにいるのに何か別の空間にいる気がするのはこの男が自分の世界に陶酔しきっているからだろうか。
「でも君たちはそんな朝焼けを眺めることはできない。」
口元の人差し指を横に振っている。
「なぜなら……………すべての美しさを凌駕するこの僕に見とれてしまうからだ。……ハァッ!!!」
「来るぞ!!!」
意味のわからない事を言い放ち奴はバイオリンを素早く演奏した。音色は高音でするどく、とても攻撃的だ。
すると地面が爆発し、火炎が巻き起こった!地面のコンクリートは砕け散り砂埃が巻き起こる。
爆発に当たれば即死だろう。火の粉や破片だって当たれば致命傷は間違いない。だからといって右往左往していては俺達にターンはない。
避けながら接近するしかない。俺達は散り散りになり、それぞれが奴へ向かって全力で走った。
「この醜い世界の崩壊をもって新たなる新世界の朝焼けを呼び起こそうではないか!!!」
俺やエリー、島田さんを狙うように連続して爆発している。正確には狙えないようだ。
すると白スーツの男がニヤリ、と笑った。
「そこだぁ!」
エリーの着地しかける地点の付近で爆発が起きた!!エリーは真後ろへ吹っ飛ばされた。
「エリー!!!!」
俺と島田さんの声が重なった。
「おいリュウイチィ!!てめーはエリーのとこに行け!!!」
「はいっ!!」
島田さんはいつもの呆け面ではない。明らかにカタギではない面構えだ。
俺はすぐにエリーの元へ走った。
………が、突然真上で爆音が聞こえた。
やられた。工場のもろくなった天井を爆発したようだ。鉄骨が落ちてきた。
………死ぬ瞬間ってのはずいぶんゆっくりに見えるもんなんだなぁ。
「ぐぅっ!!」
島田さんは鉄骨へ手をかざし、止めようとしている。
頭の先まできた無数の鉄骨を目にし、死を覚悟した。
………ただで死ぬわけにはいかない。せめて目の前の女の子を助けて死のう。
うろたえている彼女に覆い被さり、数多の鉄骨が落ちてきた。
「………なぜ助けたのですか。」
「……………はあ?」
………生きてる。
頭を打ったみたいで景色がぼんやりしている。
「………何もせずに勝手に死ぬなんてできるかよ。………君はせいぜい幸せになれよ……。」
「…………。」
気がつけば俺は事務所のベッドの上にいた。意識を失ったのだ。ちなみにベッドは今はエリーの物になっている。
俺が寝ている間エリーは俺の事をずっと看病していてくれたらしい。……まあ彼女の事だ、寝る場所が無かったからとかその程度のことだろうが。
結局白スーツの男は逃げたらしい。あの男の事について島田さんは『今は知らなくてい
と言っていた。
今も島田さんは奴を捜査しているようだ。
………朝か。
学校に行かなきゃ。
適当にパンとコーヒーで朝食を済ます。
脚がまだ痛い。サイコメトリーの疲労も取れ切れてはいない。
でも……行かなきゃしょうがない。
通学用の鞄を持った。
「行ってきまーす。」
自転車に乗り、道路に出た。
街は混んでいる。これから出勤って人ばっかりだからなぁ。
いつものように学校の門を通った。
「おはよー。」
「おー。」
中学生の頃からの知り合いが何人かいる。
自転車を停め、鍵を閉めた。
教室で、遠藤さんと目があった。
そりゃ目だって合う。彼女は視線を教室の扉に一点集中されていたのだから。
『おはよ☆』なんていう爽やかな挨拶が苦手な俺はとりあえず微笑んでおいた。
彼女も恥ずかしそうに微笑み、俯いた。
……今日は一緒に勉強できそうだ。
初め彼女に話しかけたのは俺からだったが、何回か話しかけていると彼女からも話しかけてくれるようになった。
たしか中学生の頃かな。
高校に上がってからはいつも彼女から声をかけてくれる。
彼女はなんでこんな中途半端な高校に入ったのだろうか。彼女の学力ならもう二つ三つレベルが上の高校に入れたはずだ。
……まあどこの高校にも成績のいい子はいるしそんなにレベルの高くない高校から早稲田や慶応に行ったりする変態もいる。
大して重要視しなかったのかもしれない。対する俺はこのレベルが高くない高校を卒業できるのかすらあやふやだ。彼女に頼るしかない。
彼女もそんな俺に勉強を教えることによって優越感を得ているだけなのかもしれない。というかそうに違いない。
完璧超人である彼女が俺のようなアホ星出身に教えを賜ってくださるのだ。喜んでお言葉に甘えよう。
授業が始まった。
俺の大嫌いな英語だ。
以上です。
順番間違えてないか何度も見直しました
20 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 01:04:48 ID:v64YDTk7
gjだけど…
ヤンデレ?
落ち着けよ
早漏はなんだって嫌われるんだぜ?
まだ地獄ははじまってないってこった
>>19 GJ
wktkが止まらないw
23 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 06:59:35 ID:TLXdrnjU
ヤンデレの小説を書こうよ
おまえらは一から十までヤンデレじゃないと気がすまんのか。
25 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 07:55:30 ID:TLXdrnjU
エロパロなのにエロシーンがなくて長い長い連載の果てにチョロッと申し訳程度のエロシーン
みたいなもんでしょ
一度の投下の中でヤンデレのヤの字も見えないようなのはおかしいよ
まぁ、エロパロでも一切エロが出てこない作品だって腐るほどあるから。
あと通常→ヤンデレっていう過程を楽しむ人だっていっぱいいるんじゃない?
ヤンデレになるまでの話しの繋だと思ったら普通に読めるよ。
本来エロパロはエロを書くための板(ry
此処ヤンデレスレに関しては寛容な傾向にあるが。
>>25 言葉様だって序盤から病んでる訳じゃなかっただろ。
気にしすぎじゃね?
うん
わかった
待ってみる
あとsage忘れててごめんなさい
というか本来、
嫉妬がだんだんと膨らんで女の子が少しずつ狂っていく過程がヤンデレなわけで。
初めから
「私以外の女と話したらそいつを殺す、触っても殺す、見ても抹殺する」
だとただの基地ガイ。ものすごくつまらん。
ってわけで、じっと待ってろ早老
31 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 14:06:09 ID:v64YDTk7
前にあったワイヤードみたいにならなければいいよ。
書けたので、投稿したいのですが、注意書きがあります。
入れ替わりネタ、キャラの崩壊(特に業盛)、展開上、百合がある。
あとエロも。苦手な人はスルーしてください。
業盛は水城から借りた源氏物語を読んでいた。内容は光源氏という貴族が、
女を何股にも掛けていくというものだ。誰が書いたかは知らないが、
宮中では非常に人気があり、いくつもの書き写しがあるらしい。
だが、大抵はその源氏の好色振りがこれでもかというくらい書かれているだけで、
まったく面白くなかった。唯一面白かった巻といえば、
末摘花(すえつむはな)という、巻題と同じ名前の醜女とまぐわう話ぐらいだった。
一通り読み終えた業盛は、違うものを借りるために、外に出ようとした。
一方、水城は業盛の部屋の前に立っていた。
「今日こそは、三郎を私の虜にしてやるわ」
水城はそう息巻いていた。
今まで幾度となく業盛に攻勢を掛けたが、業盛は一向に襲ってこない。
「同じ布団で寝て、ご飯作ってあげて、着替えまでさせて、
お風呂だって一緒に入ったのに、どうして襲ってこないのかしら。
普通だったら、もう襲われてもいいはずなのに」
自分に魅力がない訳ではないことは分かっている。
業盛が鈍感なのが悪いのである。
「今日こそはあの朴念仁に、女というものを教え込んであげるわ。
そして、私の虜にして……うふふふふふふ…」
意を決した水城は、部屋の戸に手を掛けた。
ちょうどこの時、業盛も戸に手を掛けていた。
ほんの一瞬、戸を開けるのは水城が早かった。
急に戸が開いたので、体勢を崩した業盛は、前のめりに倒れた。
水城は業盛が倒れてきたことに気を取られ、反応が遅れた。
吸い込まれる様に、二人の頭が激突した。
あまりの衝撃に、二人はその場で気を失ってしまった。
最初に目を覚ましたのは水城だった。
「あいたたたた…、もう、三郎!なにやってんのよ!」
その声を聞いて業盛も目を覚ました。
「そっちがいきなり戸を開けるからいけないんだろ!」
二人とも互いに頭を摩りながら言った。
「あら…」
「あれ…」
二人共、すぐに奇妙なことに気付いた。
自分が自分のことを見ていることといい、声が変わっていることといい、
「これって…」
「これは…」
二人は状況を理解し、血の気が引いた。
「私の身体が入れ替わってる!」
「俺の身体が入れ替わってる!」
示し合わせたかの様に、二人の声が重なった。
二人は慌てて部屋の中に入った。
「どうなってるのかしら?」
業盛になった水城がそう言った。
「やっぱり、頭を打ったのが原因じゃないのか」
水城になった業盛がそう答えた。
「じゃあ、もう一度頭をぶつけたら戻るかしら?」
水城が不穏なことを言い出し、行動に移そうと腰を上げた。業盛は慌てて、
「ちょ…、待ってくれ!それで駄目だったら、痛いだけで頭突き損じゃないか!」
と、言って、水城を諌めた。
半分腰を上げ掛けていた水城は、憮然とした表情で腰を下ろした。
「とりあえず、このことは元に戻るまで隠し通しましょ」
腰を下ろした水城は、すぐにそう言った。
しかし、業盛は先程から気になって気になって仕方がないことがあった。
「あのさぁ、水城…、一ついいか?」
業盛はこのことだけはどうしても言わなければならないと思った。
水城も、急に業盛が真剣な顔になったので、少し身構えた。
「俺の身体で、女言葉を使うの、止めてくれないか」
業盛の口から出てきたことは、この場の雰囲気にまったく合っていないものだった。
だが、業盛は非常に真剣だった。
自分で言うのもなんだが、女言葉を使う自分というのは、ものすごく気持ちが悪い。
先程から水城が話せば話すほど、業盛は鳥肌が立った。不本意ではあったが。
身構え損をしたと思った水城は、むっとした顔になった。
「だったら、あんたも私の身体で男言葉使うの、止めてくれない。
それにその座り方、…丸見えなんだけど…」
水城は顔を背けながら、指差して言った。
業盛は無意識で片膝を立てて座っていた。
そのため、服の隙間から、ちらちらと生い茂った陰部がちらついた。
業盛は顔を赤くして、慌てて正座に切り替えた。
ただ、しゃべり方に関しては傍から見ると、
水城が男言葉を使うのは思いの外合っていた。
短い髪、鋭い目付き、なきに等しい胸、これらを総合すると、
水城の一人称は、私、ではなく、むしろ、俺、の方が合っている、様な気がする。
「それはあんたの主観でしょ」
と、水城に言われてしまえば、それで話は終わってしまうが、
やはり人は様々な考えを持った方がいい、と業盛は思った。
「分かりましたわ、お姉様。これでよろしいのでしょうか?」
試しに、業盛は少し悪乗りして言ってみた。自分で言っていて気持ちが悪くなってきた。
「…いつも通りでいいわ…」
水城はげんなりして言った。どうやら、水城も気持ち悪かったみたいだ。
一方で、水城はげんなりする反面、このことを好機と考えていた。
今、水城の身体は業盛の身体である。以前自分を圧倒した身体である。
この身体を以ってすれば、今の業盛を押し倒すことなど訳無い。
そう思った水城は黒い笑みを浮かべた。
「と、に、か、く、変な噂が広まらない様に、
あんたはこの部屋から出ちゃ駄目。いいわね?」
体のいい監禁であるが、それを業盛に悟られない様に水城は言った。
しかし、その場に既に業盛はいなかった。
業盛は自分の好奇心を抑えることが出来ず、
水城が考え事に夢中になっている隙を突いて、部屋から抜け出していた。
水城がそのことに気付いた時、業盛は既に六波羅の外に飛び出していた。
「あぁんんんの馬鹿ぁああああ〜!」
水城の怒鳴り声が虚しく響いた。
「いぃいいいやぁあっ………ほぉおおおおお〜!」
人が青天の中を飛んで、いや、跳んでいた。それも奇声を発しつつ、
屋根の上を、まるで猿の様に縦横無尽に、である。
業盛の気持ちが、とんでもない方向に上昇し続けている。
跳ぶにしても、前方宙返り、後方宙返り、さらにそれらに捻りを加えるなど、
もはや人間業とは思えない跳び方をしているのがその証拠である。
これほど気持ちのいいことはないと業盛は思った。
男の身体では、どこまで落としてもここまで軽くはならない。
その分、力は弱くなってしまったが、そんなのはどうってことはない。
むしろ、業盛はこの身体の性能を試してみたくてうずうずしていた。
走って、跳ぶだけでは物足りない。この身体で、誰かと戦ってみたい。
そう思っていた業盛は、すぐにその機会を見付けた。
裏路地で、ごろつき三人が女に絡んでいるのを見て取ったからだ。
「獲物…、みぃいいいつけたぁあああ〜!」
すさまじい速さで、業盛はそこに直行した。
「はっ…、放してください!止めて下さい!」
女が涙ぐんだ声で、ごろつきの手を振り払った。
女の胸は大きい。服を突き破らんばかりに大きく、
ごろつきの手を振り払った時に胸が大きく揺れ、
ほんのり紅い乳首が服からはみ出たぐらいだ。
ごろつき達の下品な目は、女の胸に寄せられていた。
「へっへっへっ…、そんないやらしい胸を揺らしながら歩いてるのが悪いんだよ。
それじゃあ、犯してくれ、って言ってるみたいなもんじゃねぇか」
「そうそう、そんなんじゃぁ犯されても文句は言えんわなぁ…」
「それに、嫌々言いながら、本当は犯して欲しいなんて思ってんじゃないのか」
言ってることは三者三様だが、思っていることは獣と同じだった。
「それじゃ、たっぷりかわいがってやるよ。精々たっぷり鳴いてくれや」
ごろつきの魔手が、女の胸に向かった。
女は目を閉じて、これから起こる陰惨な陵辱から目を逸らそうとした。
「正義の…、脳天跳び膝蹴りぃいいい!」
その場の雰囲気を引き裂く様な叫び声と共に、空から降ってきた業盛が、
女の胸を触ろうとしたごろつきの脳天に、全体重を掛けた膝蹴りを叩き込んだ。
ものすごい音と共に、ごろつきが白目を剥いてその場に倒れた。
「な…なんだ、てめぇ!」
急な乱入者にごろつきは怯んでしまったが、
構わず鳩尾と顔面に遠心力の効いた蹴りを叩き込んだ。
「裁断の…、連続回し蹴り!」
この時、びりっ、と服が破けて、白くて引き締まった生脚が露わになった。
業盛が脚を離すと、崩れ落ちる様にごろつきが倒れた。
「ちょ…、調子に乗るなぁあああ、このクソがぁあああ!」
最後のごろつきが、業盛を押さえ付けようと、猛然と迫ってきた。
業盛も弾かれた様に跳躍し、ごろつきの懐に飛び込んだ。
次の瞬間、拳を深々とごろつきの鳩尾に突き刺さした。
ごろつきは目を剥き、口から胃液を吐き出した。
さらに業盛は、下から顎を強烈に突き上げた。
歯を何本か折りながら、ごろつきは上を向く形になった。
止めとばかりに、業盛は脚を頭上高く上げた。
「断罪の…、顔面踵落とし!」
振り下ろされた脚が、唸りを上げてごろつきの顔面に叩き込まれた。
どこから出たか分からない破裂音と、骨の砕けるなんともいえない音を立て、
ごろつきは前のめりに倒れた。
砕けた鼻から盛大に噴出す鼻血で、頭は血溜まりに浮かんでいた。
「ちょっと、やりすぎたかな…。服が破けちゃったよ。…水城、怒るかなぁ…。
…まぁ、いいか。……あっ、そうだ。そんなことより…」
業盛は壁に凭れ掛かっている女に目を向けた。
女は業盛の方を見ず、ずっと俯いていた。
せっかく助けてあげたのに、と業盛はムッとしたが、
すぐにそんなことはどうでもよくなった。別にお礼を言われるために助けた訳でも、
これでもって関係を持とうという魂胆があった訳でもない。
自分の力を試すために戦ったのであり、
この女が助かったのはその副次的産物でしかない。
業盛は、びしっ、と女を指差した。
「ケフン…、あんたねぇ…、こんな所でなにやってるのよ!」
業盛は水城を意識して、つっけんどんとした怒鳴り方をした。
少しぐらい反応するかと思ったが、これといった反応も起こさない。
しかし、業盛はそんなことなど気にせず言葉を継いだ。
「あんたみたいな軟弱女が裏路地なんて歩いてたら、
襲ってください、って言ってるみたいなものじゃないの!
それともあんた、陵辱願望でもあるの?」
「そっ…、そんなものありません!」
顔を上げて、女はそう反論した。そこで業盛は初めてその女の顔を見た。
どことなく、彩奈に似ている。だが、どこか違う。
確か、彩奈は仕事の都合上、それに適した男物の服しか持っていなかったはずだ。
なのに、この女の着ている服は一般の女性の着る小袖だ。
それに彩奈は小麦色の肌をしていたはずだが、この女の肌は白磁の様に真っ白である。
決定的なのが、明らかに胸の大きさが違う、ということである。
彩奈の胸も確かに大きかったが、この女の胸の様に、
服が悲鳴を上げるほど大きくはなかった筈である。
他人の空似だろう。業盛はそう思った。
業盛がそんなことを考えていると、
怒鳴って緊張の糸が切れたのか、女はその場で泣き始めた。
どうやら黙って俯いていたのも、恐怖で泣くまいと堪えていたからだと業盛は理解した。
「とりあえず、あんたが好きでこんな所に来たのではないことは分かったわ。
まずはその乱れた服を整えて、ここから出ましょ。いつまでもここにいたら、
また襲われちゃうかもしれないし…。ほら、分かったらもう泣かない」
業盛は未だに泣いている女を叱咤し、手を引いて走った。
一方的に業盛が女の手を握っていたが、
しばらくすると、女の方も弱々しく手を握り返していた。
黴臭い裏路地を駆け抜け、表通りに出た。とりあえず、これで一安心である。
「あっ…、ありがとう…ござい…ます…」
女は顔を赤くして、もじもじしながらそう言った。無意識なのだろうが、
先ほどから大きい胸を強調する様に寄せて、ぐにぐにと蠢かしている。
恐ろしいくらいに蠱惑的で、業盛は思わず目を背けた。
「別に…、あんたを助けようと思ってやった訳じゃないわ…」
とにかく、水城の役に徹することで、この小っ恥ずかしさを隠そうとした。
「名前を教えて欲しいのですが…」
女が業盛に近寄ってきた。胸から発せられる圧迫感が凄まじい。
「別にあんたに名乗ってもなんの意味もないわ」
「そんなこと…、言わないでください」
女が歩を進めると、右腕が女の胸に触れた。
胸は服の上からなのに、じんわりと熱く、そして、真綿の様に柔らかい。
「わっ…、馬鹿、止めなさい!」
「お願いです。教えてください」
女が息が掛かるくらいにまで近寄ってきた。
それによって、右腕は完全に女の胸に埋もれてしまった。
女の胸が、右腕でひしゃげ、むにゅむにゅと圧迫してくる。
「分かったわよ!名前を教えてあげるから、とっとと離れなさい!」
そう言うと、女が業盛から離れた。女はどことなく物足りなさそうな目付きをした。
「私の名前は水城!これで、いいんでしょ!」
業盛は息を荒げながら言った。とっととこの場から離れたかったからである。
「水城…、水城さんって言うんですか。いい名前ですね…。
私は、彩乃(あやの)と言います」
「お褒めの言葉、ありがとう…。それでは彩乃さん、
私は忙しいのでこれで帰らせてもらうわ。もうあんな下衆共に捕まるんじゃないわよ」
業盛はそう言うと、さっさとその場から立ち去った。
「…水城…お姉様…」
業盛が立ち去った後、彩乃は欲情した目でそんな不穏なことを口走っていた。
その一方で、業盛になった水城は、業盛の身体で自慰に耽っていた。
「んっ………、あっ……、ふぁ………」
傍から見ると、女の様な喘ぎ声で自慰に浸る気色悪い男に見えるが、
現在、中身が女なのだから仕方がない。
既に三回ほど射精しており、部屋の中はその臭いで噎せ返りそうである。
自慰に夢中な水城は、自分のそんな恥ずかしい所を、
二つの影に見られていることに気付かなかった。
「ねぇえぇ〜、お嬢さん。俺達と気持ちのいいことしようぜぇ〜」
「そんないやらしい生脚晒して、俺達のことを誘ってんだろぉ〜」
「知らん振りなんかしないでさぁ〜、こっち向いてよぉ〜」
「俺達、あまり気は長い方じゃないから、断らない方が身のためだよぉ〜」
業盛は、ごろつき達に絡まれていた。
鼻息が荒く、舌なめずりをするその仕草は、発情する犬そのものである。
うざったいことこの上ない。さらに一人のごろつきが、腕を掴んできた。
業盛は、侮蔑した様な視線をごろつきに向けた。
「その恥垢塗れの汚い手を放してくれないかしら。
私、獣姦の趣味は持ち合わせていないわ。
そんなにしたければ、そこら辺の雌犬とやっていればいいじゃない」
そう言って、ごろつきの掴んでいる手を振り払い、さっさと歩き始めた。
「ちょっと待てよ!」
ごろつきが声を荒げて再び腕を掴んできた。
業盛は、腕を掴んでいるごろつきを睨み付けた。
「私の話、聞いていなかったのかしら。
…もう一度言うわ。その恥垢塗れの汚い手を放して」
「下手に出てりゃぁ、お高く止まりやがって!
そっちがその気なら、こっちだって容赦しねぇぞ!」
ごろつきは、額に青筋を立てながら、腕を握る力を強めた。
「そう…。所詮、駄犬に言葉なんて通じる訳がないか…」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ!てめぇ!」
ごろつきが、いきり立って殴り掛かってきた。
暴力で以って、言うことを聞かせようとする、典型的で、獣同然の下等な行為である。
「制裁の…、捻転正拳突き!」
そんなごろつきに、業盛は振り向きざまに捻りの効いた突きを顔面に叩き込んだ。
ごろつきはなにが起こったのか分からないまま、鼻血を噴いて、仰向けに倒れた。
「犬って…、賢いっていうけど、躾けないと所構わずおしっこしちゃうのよねぇ…。
駄犬だったら、殊更厳しく躾けないと理解も出来るはずないか…」
業盛はごろつき達と向かい合った。その目付きは汚物でも見るかの様に冷たい。
「来なさい駄犬共。二度と人間様に手出しが出来ない様に、
じっくりたっぷり躾けてあげるわ。その身を以って…ねぇ…」
この挑発に、ごろつき達は怒声を発しながら、業盛に襲い掛かった。
業盛の技を叫ぶ声が、辺りに響き渡る。
別に叫ぶ必要もないのに叫ぶのは、業盛の気持ちが異様に高いことを意味している。
最後のごろつきを、回転しながら跳躍し、
相手の急所を連続で六回も蹴り上げる本人命名のえぐい技、
「天罰の…、旋風連脚!」
で、止めを刺した業盛は、ある重大なことに気付いた。
「まずいなぁ…。また服が破けちゃったよ…。これは確実に水城に怒られるな…」
彩乃を助けた時の戦闘と、さっきの戦闘で、服の両側が破れてしまった。
そのため、一歩歩くだけで、両方の太腿がちらちらと見えるようになってしまった。
道を行く男達は、その生脚に釘付けである。
「もう十分楽しんだことだし、そろそろ帰るか……。………んっ………?」
帰ろうとした矢先に、業盛は視線を感じた。
いやらしいには違いないのに、それ以上におぞましい視線を、である。
「なんだろ…。男より粘っこい視線を感じる…。それも、ものすごく近くから…」
辺りを見回してみても、それらしい視線を放つ者は見当たらない。
気のせいか、と気を抜いた瞬間、帯を軽く引っ張られた。
こいつか、と思い、反射的に拳を振り下ろそうとして、直前で止まった。
帯を引っ張ったのは女だった。そのため、拳の殺気が失せてしまった。
よく見ると、この女は菊乃にそっくりだったが、やはりどこか違った。
腰まで届く長く美しい黒髪は菊乃と共通していたが、肌の色が小麦色になっており、
身体も、ほっそりとしていた菊乃と違い、全体的にむっちりとしていて肉感的である。
まるで、野生的な菊乃を目の当たりにしているみたいだ、と業盛は思った。
「なっ…、なにか用かしら…?」
業盛は菊乃が苦手である。自分に薬を盛って、監禁しようとした人物である。
苦手になるな、と言う方が土台無理な話である。
例え、相手が菊乃のそっくりさんだとしても、業盛は身構えてしまった。
そんな業盛を、女はきらきらとした笑みを浮かべながら見つめていた。
「私ぃ〜、雛菊(ひなぎく)って言いますぅ〜」
間延びした話し方で、女はいきなり自己紹介をしてきた。
「あら…そう…。…それで、雛菊さん。なにか用かしら…?」
目の前にいるのが菊乃ではないと分かっているのに、どうしても声が震えてしまう。
「あのですねぇ〜、私ぃ〜」
雛菊の言動から、業盛はものすごく嫌な予感を察知した。
「私と付き合ってください」
とでも言うつもりではないだろうか。
そんな馬鹿な、と一言で切り捨てたい所だが、世の中には衆道というものがある。
女人禁制の寺などに行けば、ありふれた光景である。女にそれがないとは言い切れない。
逃げよう、と業盛は決心した。
しかし、業盛は動けなかった。逃げるよりも先に、雛菊が抱き着いてきたからである。
「ちょ…、あんた、なにしてんのよ!こんな公衆の面前で!」
業盛は振り払おうとしたが、思いの外強い力で抱き締められているので振り解けない。
「だってぇ〜、あなたが逃げようとする素振りをするからいけないんですよぉ〜」
間延びした話し方そのままに、雛菊は甘えた様な声を出した。
「私ですねぇ〜、あなたのことが好きになっちゃったんですぅ〜。
だからぁ〜、あなたに私の始めてを捧げたいと思うんですぅ〜」
阿呆の子の様なしゃべり方をして、とんでもないことを言い出した。
「まっ…、待ちなさい!私達、同性よ!そんなこと、出来る訳ないじゃない!
それに私達、今さっき知り合ったばかりじゃないの!」
「愛の前にぃ〜、性別なんて関係ありませんよぉ〜。
それにぃ〜、少なくとも私はあなたと一度は会っていますよぉ〜」
雛菊は、さらりと業盛の反論を受け流した。
そう言う問題じゃない、と言おうと業盛が口を開いた瞬間、
狙っていたかの様に、雛菊が口付けをしてきた。
口の中を、雛菊の舌がいやらしい水音を立てて蹂躙し、唾液を送り込んでくる。
業盛は、息が続かないのと、感じたことのない気持ちよさに、意識が飛びそうになった。
痺れにも似た甘い疼きが、下半身から込み上がり、全身に伝播している。
それがなんの前兆なのか、業盛には理解できなかった。
それを尻目に、雛菊は止めとばかりに、
秘裂を指で撫で上げ、あまつさえ陰核を指で弾いた。
「ひゃぁ!!!」
頭の中の、なにかが弾けた。
その嬌声を合図に、秘裂から愛液が溢れ出た。
多量の愛液が太腿を伝って、地面に大きな水溜りを作った。
業盛は立っていられなくなり、その場にへたり込んでしまった。
「あっ…、あはは…。少しやりすぎちゃいましたぁ〜。
でもぉ〜、すっごく可愛かったですよぉ〜」
雛菊は、目に情欲を宿らせて、業盛を見つめていた。
「もぉ〜っと、気持ちのいいこと、しましょ」
そう言って、雛菊はその場で服を脱ぎ始めた。
雛菊の、むっちりとした身体が露わになった。
本格的に貞操の危機を感じた業盛は、本能だけで立ち上がり、
纏わり付いてくる雛菊を押し退けた。
「どこに行くつもりですかぁ〜?逃げたって無駄ですよぉ〜」
背後から、雛菊の甘ったるい声が聞こえてくる。業盛はひたすらそれを無視し、
ふらつく足取りで、誰もいない大通りを歩き始めた。
早くこの場から離れなければ。今はそれしか考えられなかった。
業盛がとんでもないことに巻き込まれている時、水城は未だに自慰に浸っていた。
あれから十回は射精しているが、それでもまったく衰えることを知らなかった。
水城は、手に付いた精液を舐めた。そして、舐めてみて、自分のやっていることが、
すさまじいくらいむなしいことであることに気付いた。
「あぁ〜、もう!なにやってんのよ私!」
業盛の身体になれたということで、ついつい浮かれてしまった。
おかげで本来の目的を忘れるところであった。
この身体で、元の自分の身体を犯す。
気は引けるが、この様な機会は、もう絶対に起こらないだろう。
これは神が与えてくれた最後の好機。
可及的速やかに、且つ、確実にものにしなければならない。
「待ってなさいよ…、三郎…。朴念仁のあんたでも分かるように、
私があんたをたっぷりとおか…、…ケフン…、愛してあげるわ」
再びそう息巻いていると、すさまじい音と共に、戸が開け放たれた。
夏の日差しと、生温い風が部屋の中に吹き込んだ。
驚いてそちらの方を見ると、そこには逆光を受ける二つの影があった。
「兄様…、一人でなにをしてるんですか?」
「うふふ…、溜まっているなら、私に言ってくださればして差し上げるのに…」
声からして、二人とも女の様である。どことなく、声も上ずっている。
「だっ…、誰だ、お前等!」
水城はすぐに身構えた。直感で、こいつ等は敵であると認識したからである。
「ふふふ…、酷いですわ、兄様…。誰だ、なんて…」
「先程まで、まるで女の様に喘いでいたのに…、…新しい趣向かなにかですか…?
私としては、女の様に喘ぐあなたも、可愛らしくて、よかったのですが…」
口振りからして、おそらく二人が三郎と肉体関係を持っていることは間違いない。
きっと、獣みたいに三郎に襲い掛かり、それを強請りの種にして、
三郎を犯しているのだろう。そうとしか考えられない。
そう思うと、水城はこの二人に明確な殺意を抱いた。
だが、分からないこともあった。
水城は殆どの時間を業盛と共に過ごしていた。
唯一目を離す時があるとすれば、それは昼食の時のみである。
しかし、業盛からは女の臭いなど一度もしなかった。
いったい、どの様な手品を使ったのかは知らないが、今はそんなことどうでもよかった。
「どうやってこの二人を殺してやろう」
それが今の水城の問題だった。
気が狂いそうになるほど苦痛を与えて殺してやりたいが、その様な時間はない。
嬲り殺しや、斬り殺しでは、呆気なさ過ぎて趣に欠ける。
ならば絞め殺しというのはどうであろう。
今のこの身体なら、片手だけでも、二人を絞め殺すことは容易い。
それに、愛する男に絞め殺されて、絶望に沈みながら死んでいく…、
蛆虫には相応しい死に方である。
殺す方法は決まった。後は二人が近付いてきてくれるだけである。
「兄様…、もう、我慢できませんわ…」
「私達を高ぶらせた責任、取ってくださいね…」
二人が部屋の中に入ってくる。
閉じられて暗くなった部屋の中を、行灯が薄っすらと照らした。
二人は、服の帯を緩めながら、水城に近付いてきた。
それが自身の死を早めることになるとも知らずに。
一人が右に、もう一人が左に侍る様に座った。
恨めしい、と水城は思った。
肌蹴られた服からは、自分よりも圧倒的に大きい胸が覗いていたからだ。
特に、右に侍った女の胸は、片手では収まりきらない程の大きさである。
やはり三郎は、胸の大きい女が好きなのだろうか。
先ずは、こいつから仕留めよう。水城は嫉妬心に従って、右の女の首に手を伸ばした。
「あっ…、あれ…?」
しかし、どういう訳か、右手は女の首の直前で、
「どっ…どうして!?」
石の様に動かなくなった。
おかしい、と水城は思った。自分が人を殺すのに躊躇などするはずがない。
潰せる内に潰さないと、後々面倒なことになってしまう。
分かっているのに、いくら腕に力を込めても、手は動かなかった。
「うふふ…、兄様…、私の胸に触りたいのなら、遠慮なんてしなくていいんですよ…」
そんな水城の心情も知らずに、女は宙に浮いている右手を自分の胸に導いた。
女の胸は吸い付く様に柔らかく、触れると、ぐにゅりと手の形に潰れた。
女が、快楽に溺れた様に嬌声を上げている。
右手を取られてしまった水城は、右の女を殺すことは一時中断し、
左に侍る女から殺すことにした。
しかし、ここでも右の女の時の様な出来事が起こった。
どうしても、首の直前で手が動かなくなり、宙に漂う形になってしまうのだ。
「あらあら…、私の胸にも触りたいのですか…、
あなたは本当におっぱいが好きですねぇ…」
そうこうしている内に、左手も女の胸に沈められ、両手は使えなくなった。
水城は訳が分からなくなってきた。
「くそっ…、なんで身体が言うことを聞かないの!
今、三郎の身体は私のもののはずなのに…。
もしかして、三郎の欠片が残っているとでもいうの!?そんなはずは…」
必死に考え込んでいると、急に辺りが静かになった。自分の左右に女は侍っていない。
「なっ…、なに?いったいどうしたというの?」
「駄目…」
混乱してごちゃごちゃになっている頭の中に、小さく、だが明確な声が聞こえた。
それは、自分の声だった。
「この二人は…、殺しちゃ…駄目…」
自分の声は、まったく理解できないことを言った。
「なっ…、なんでよ!この二人は三郎に手を出した蛆虫なのよ!
どうして殺しちゃいけないのよ!」
水城は、そう呼び掛けたが、声は返ってこなかった。
代わりに周りの喧騒が甦ってきた。状況はさらに深刻になっていた。
「あはぁっ…、にぃさまぁ…。もぅ…、限界です…」
「あなたぁ…、身体の疼きを…、鎮めてください…」
欲情で全身が染まった二人が押し倒してきた。水城は、抵抗することが出来なかった。
業盛は奇妙な感覚に襲われていた。
先程から、六波羅に向かって歩いているはずなのに、一向に都の外に出れない。
それに、この頃になると、業盛はやっと辺りの異変に気付いた。
まだ昼を少し過ぎたばかりであるはずなのに、大通りには誰もおらず、
空の浮かぶ日も、まるで作り物の様な光しか放っていない。
業盛は歩みを止めて、辺りを見回し、絶望した。
かなり歩いたはずなのに、まったく進んでいなかったのだ。
「だからぁ〜、言ったじゃないですかぁ〜」
後ろから雛菊の声が聞こえ、抱きつかれた。
「逃げても無駄だって」
そして、耳たぶを甘噛みされた。
「ひっ…」
絶頂の残り火が再燃した業盛は、その場に崩れ落ちてしまった。
「逃げようとしたお仕置ですよぉ〜」
雛菊は指を秘裂に押し込むと、抉る様に掻き回し始めた。
「ひぎっ…、やっ…止めな…、あっ…、さい…」
「嫌ですよぉ〜。これはお仕置きなんですしぃ〜。
それにぃ〜、あなたもなんだかんだ言って、すっごく感じてるじゃないですかぁ〜」
現に秘裂からは、とめどなく愛液が溢れ、雛菊の指はふやけてしまっていた。
「そういえばぁ〜、まだあなたの名前を聞いていませんでしたねぇ〜。
名前はなんていうんですかぁ〜?」
「あっ…、あはぁ…、あん…たに…、くっ…、
名乗る…筋合いなんて…、ひぐっ…、ない…わ…」
「強情ですねぇ〜」
雛菊の指を動かす速さがさらに増した。
「あっ…、ばっ…、そっ…、そんなに…、んっ…、速くしたら…」
業盛は、快楽で今にも気を失いそうになった。
「早くしたら…、どうなるんですかぁ〜?」
雛菊はにやにや笑いながら、指を動かすのを止めない。
「あっ…、やっ…、もう…、駄目ぇえええ!」
尿意に耐え切れず、業盛は失禁してしまった。
秘裂から噴出す尿が地面に飛び散り、独特の臭いを放った。
「あはっ、お漏らししちゃいましたよぉ〜。可愛いですねぇ〜」
雛菊は尿塗れの指を舐めながら、痙攣している業盛を見下ろした。
業盛は自分の自尊心を粉々に砕かれて、絶望に瞳が染まった。
そんな瞳が、こちらに向かって歩いてくる人影を捉えた。
「水城お姉さまぁ〜」
彩乃だった。なぜ彩乃がここにいるのかは知らなかったが、
業盛は助かったと思った。しかし、それの希望はすぐに絶たれた。
「あぁ〜、雛菊ちゃん、酷い!自分だけ気持ちいい思いをして!」
それは、業盛にとっては死刑執行を告げる鐘でしかなかった。
「別にいいじゃないですかぁ〜。
私だってぇ〜、こんな素敵な人見たことないんだもん〜」
自分の中の、なにかが崩れていく。
「雛菊ちゃんは散々やったんでしょ。次は私がする番よ」
そう言って、彩乃は服の帯を解き始めた。
帯が解かれるにつれて、彩乃の巨大な胸が露わになっていった。
光が消えた。業盛には、そう感じた。
「にぃさまぁ…、気持ちいいですか?」
一番胸の大きい女が、一物をその胸で挟み、扱き、且つ、しゃぶっていた。
水城は、下半身から来る断続的な快楽を、唇を噛み締めながら耐えていた。
「ふふふ…、あなた…、我慢しなくたっていいんですよ」
もう一方の女が、そんな水城に口付けしてきた。
きつく閉じられた唇をこじ開けるように女の舌が入ってきて、
口の中のあらゆる所を縦横無尽に舐め回した。
水城はその舌を噛み切り、一物を舐めている女の首を、脚でへし折ってやりたくなったが、
実行に移す直前で、身体が硬直化して、どうしても殺すことが出来なかった。
ただでさえ、殺したい相手に犯されているのだ。水城は泣きたくなった。
二人は、業盛の身体の性感帯を把握しているらしく、幾度となく水城は嬌声を放った。
「これで…、止めです!」
一物を舐めている女が、急激に胸で扱く速さを上げた。
「んんんんんんっ!」
口を塞がれているので、こもった様な声になった。
「私も、負けませんわよ!」
口付けをしている女は、舌の速さを上げるだけでなく、
空いている手で、乳首を弄り始めた。
堰き止めていた堤に、皹が入り始めた。
限界だった。
水城は下半身からこみ上げる射精感耐え切れず、ついに女の口内に精を放った。
攻勢が止まった。これで終わりか、と水城は思った。
だが、そうではなかった。二人の目は、未だに情欲に染まっていた。
「兄様の精液…、あんなに自慰した後なのに、すっごく濃くておいしいです」
女は口の中の精液を転がしながら陶酔していた。
「いいですわねぇ…、じゃあ、次は私が頂きますわ…」
口付けしていた女は、立ち上がると一物の前に立った。
「私のここ…、もうこんなに濡れてしまって…、
あなたのものを欲しい欲しいと、蠢いていますの…」
女は自分の秘裂を拡げて見せた。穴の中から、とめどなく愛液が溢れ出ている。
「あなた…、入れちゃい…ますわね…」
女はそう言うと、ゆっくりと、腰を落としてきた。
「やっ…、止め…、それだけは…、それだけは…」
涙声で制止する水城を、女はにっこりと笑いながら、容赦なく一物を挿入してきた。
「お姉さまの太腿、すべすべしていて気持ちいいですわ。
触っているだけで、蕩けてしまいそうです」
彩乃は、太腿を撫で回しながら、自分の身体を擦り付けていた。
彩乃の柔らかくて大きい胸や、硬く勃った乳首が、業盛の快楽を増長させた。
「ねぇえ〜、彩乃ぉ〜、私も混ぜてよぉ〜」
雛菊は、少し離れたところで自分の秘裂を弄って慰めていた。
「だぁめぇ。さっきたくさんやったでしょ」
彩乃はやんわりと断って、首筋を舐めた。
「ひぐっ…、もう…、止めてぇ…」
今にも飛びそうな理性をなんとか保ちながら、業盛は必死に嘆願した。
しかし、彩乃はにっこりと笑って、
「駄目ですよぉ。私は水城お姉さまとこれから一緒に暮らすって決めたんですから」
とんでもないことをさらっと言った。
「彩乃ずっる〜い。私だってぇ〜、水城さんと一緒に暮らすって決めたのにぃ〜」
いつの間にか、雛菊が隣にいて、会話に加わっていた。
「じゃあ、私達、一緒に暮らさない?水城お姉さまを共有して愛し合うの。
そうすれば喧嘩にもならないし、お姉さまも気持ちよく出来て、一石二鳥じゃない」
「そうねぇ〜。私は水城さんと一緒にいられてぇ〜、
いっぱい気持ちいいことが出来ればそれでいいしぃ〜」
話は、業盛にとって悪い方向にどんどん進んでいっている。
「まっ…、んっ…、待ちな…さいよ…。
かっ…、ひうっ…、勝手に…、はっ…、話を進める…なぁ…」
業盛は勝手に進む話を止めるべく、二人の話に割って入った。
しかし、そんな必死な業盛を、二人はにやにやしながら見下ろしていた。
「お姉さま、まだ恥ずかしいんだ。いいんですよ、無理しなくて。
私がお姉さまの常識を覆してあげますから」
彩乃は自信満々にそう言った。
なにをするつもりだ。業盛は不安で胸がいっぱいになった。
彩乃はいったん腰を浮かすと、腰を下にずらしていき、秘裂の辺りで止まった。
「お姉さま…、いっぱい、気持ちよくなってくださいね」
彩乃はそう言うと、腰を下ろして、自分の秘裂を擦り合わせてきた。
「ひぃあぁああああ!!!」
陰核同士が擦れるたびに、業盛の身体中に、強い電流が走った。
「どっ…、あふっ…、どうですかぁ…、きっ…、気持ちいい…ですかぁ…」
彩乃は、まるで犬の様に舌から涎を垂らしながら言った。
「だっ…、駄目ぇ…、そっ…、あひっ…、そんな…に激しくした…ら、
でっ…、んっ…、出ちゃう…、出ちゃう…からぁ…」
「いいん…、あっ…、ですよ…、出しちゃ…っても…」
そう言って、彩乃は腰を振る速さをさらに増した。
「ひっ…、そっ…、そんなに速くしたら…、まっ…、また、でっ…、出ちゃ…あああ!」
「おっ…お姉さま、わっ…、私も…、私も一緒にぃいいい!」
二人は、殆ど同時に達した。二人の秘裂から、愛液が迸った。
「もっ…、もう…、嫌だ…。なんで俺がこんな目に…」
度重なる恥辱と陵辱で、業盛は思わず素が出てしまった。
「はぁ…、はぁ…、お姉さま、まだまだこれからですよ…」
「へっ…?」
「そぉ〜ですよぉ〜。まだ私が気持ちよくなってないもん」
二人がにやにや笑いながら、業盛ににじり寄ってきた。
「次はぁ…、私達二人を」
「気持ちよぉ〜くしてくださいねぇ〜」
「ちょっと、二人共、わっ…、私はもう無理だって…」
業盛の制止を二人は無視し、一斉に襲い掛かってきた。
「嫌ぁあああ!!!」
「止めろぉおおお!!!」
二つの悲鳴が、同時に六波羅の朝に木霊した。
業盛はすぐさま自分の身体を確かめた。水城ではなく、ちゃんと自分の身体だった。
業盛は、ほっと溜め息を吐いた。
とんでもない夢だった。
最初の楽しい夢から一転して、最後辺りは淫夢になっていた。
業盛は水城に目をやった。
水城も顔を真っ青にして、途切れ途切れに息をしている。
よっぽど酷い夢を見たのだろう、と業盛は思った。
「水城…、大丈夫か…?」
思わず業盛はそう声を掛けていた。
「大丈夫よ…。すっごく酷い夢を見ただけだから…」
どうやら、本当に酷い夢を見ていたらしい。
「所で三郎…、少し、聞きたいことがあるんだけど…」
少し間を置いた水城は、いきなり真剣な顔になった。
嘘の供述は許さない、という様な雰囲気が、水城から放たれている。
「どっ…、どうしたんだよ、そんな怖い顔して…」
業盛は身に覚えはないが、思わず身構えてしまった。
しかし、急に考え込む様な仕草をした後、
水城は自分の話題に興味を失った様な顔付きになった。
「いえ…、やっぱりなんでもないわ。聞くだけ馬鹿らしいことだし…」
なにか含みのある言い方だったが、
たいしたことではないのだろう、と業盛は思い、聞くのは止めた。
「あっ…、そうだ。三郎…、ちょっとこっちに来て」
急になにかを思い出したかの様に、水城が手招きしてきた。
業盛はなんの疑問も持たずに水城に近付いた。
すると、水城は顔を寄せてきて、業盛に口付けした。
業盛は、なにが起こったのか理解できなかった。
業盛は水城に驚きと疑問の目を向けた。
「昨日のお風呂での熱がまだ抜けてなかっただけよ。
だから、ちょっと軽率なことをしちゃっただけ。
べっ…、別にあんたが好きでやった訳じゃないんだからね…」
水城はそう言って、そっぽを向いてしまった。
業盛は、水城の言っていることがさっぱり理解できなかった。
「それよりも…、三郎。朝の仕事があるでしょ」
少し混乱している業盛を、水城は急かす様に言った。
「あっ…、あぁ…、そうだったな。じゃあ水城、外に出ていてくれ」
「三郎…、あんたなに言ってるの?」
水城は業盛の言葉を心外そうな目付きで見つめていた。
業盛は、嫌な予感がして後退った。
以前にも同じ様な会話をしたな、という既視感があったからである。
「私が着替えさせてあげるわ」
そしてその既視感は、現実のものとなった。
「ちょ…、ちょっと待ってくれ!奉仕は昨日のやつで終わりだろ!?」
ゆっくりと、にやにや笑いながらにじり寄ってくる水城は近寄ってくる。
「なぁ〜に言ってんのよ。私の言ったことを思い出してみなさい。
私は『あんたの身の回りの世話を、全部私がやってあげる』って言っただけで、
一日だけだなんて一言も言ってないわよ」
水城は、悪気も、躊躇いもなく、業盛の服に手を掛けた。
「はっ…、謀ったな、水城!」
「勝手に一日だけとあんたが解釈したのが悪いのよ。
大丈夫よ。これからは私があんたの身の回りの世話をしてあげるわ…。ずっとね…」
水城は笑いながら、業盛の服を剥ぎ取った。
悲鳴が、再び六波羅に木霊した。
投稿終了です。夢落ちとなりました。
とりあえず、今までの矛盾を消すために少し頑張った結果こうなりました。
まだまだ、続きます。
夢落ちとは言え本編だと・・・
所詮はエセ時代物か。最初の方はよかったんだがな
投下します
深夜の公園に、俺、愛吞達也は草の茂みに身を隠して、息を殺しながら一点をじっと見ていた。
その視線の先には外灯が、そして、その下には一人の少女がぽつんと立っている。
歳は身長からして中学生くらいか? 上は藍色のスポーツウェア、下は同じく藍色のスパッツで髪を三つ編みにしている。後ろを向いているために、顔は見えないが、膝裏まで伸びた漆黒の髪が、少女の存在感を強くしている。
ちなみに、俺は彼女が目当てで潜んでいるわけじゃない。
最近、ここらに出没する変質者をとっ捕まえるために隠れているのだ。
「にしても、あの子はなにをしているんだ?」
なにしろ、もうかれこれ二時間も突っ立ったままだ。いい加減怖くなってきた。
俺は茂みから出ると、相変わらずピクリとも動かない少女に近づいていった。
「おいおい、お嬢ちゃん。こんな時間に一人か?」
そう言いながら、少女の肩に手をかけた瞬間、俺は宙を舞っていた。そのあとは地球に引き寄せられ、地面に接着される。
「がッ!?」
体中の空気が口から飛び出していく。息継ぎする間もなく、俺の顔めがけて踵が降ってきた。
「〜〜っ!」
それを横に転がることで回避し、急いで立ち上がろうとした俺の頭上を、少女の蹴りがかすめる。
「……外しました」
バックステップで距離をとる俺を、少女はつまらなそうにみていた。
乱れた呼吸を整えながら、俺は内心へこんでいた。まだ出会って一分もたっていないこの少女、いや一方的な観察なら二時間ほどしていたが。
この少女ならさっきの蹴りを俺の頭に直撃させることなど雑作もなかった、と俺の直感が伝えてくる。
しかし、彼女の攻撃は外れた。何故? 攻撃を外したんだ、彼女が、自分の意思で。Why? 手加減したんだ、俺が、弱そうだから。
奇襲をかけられたとはいえ、女性に手加減される。やりすぎたと詫びるような彼女のその行動は、俺の男としてのプライドをズタズタにした。
しかし、いまはへこんでる場合じゃない。彼女の動きは明らかに洗練されていた。つまり、荒事に慣れているということ。
そんな彼女から殺気を向けられているこの状況から脱することが先決だ。
「話しかけただけで投げるなんて、ずいぶんシャイなんだな」
「隙を窺おうとしても無駄ですよ、変質者さん」
ばれてるし。……ん?
「まてまて、俺は変質者じゃない。人違いだ!」
どうやら彼女は勘違いしているらしい。変質者と間違われたのは不愉快だったが、なんとかこの事態を回避できそうだ。
「変質者はみんなそう言いますよ、それに」
彼女の口が笑みを形作る。
「仮にそうだとしても、貴方は戦える人でしょ。私は」
彼女の目が濁る。
「戦えるならそれでいいんです」
やばい。コイツやばい。頭より高いところで危険信号が鳴り響いてる。逃げる!? いや駄目だ、今背を向けたらやられる。かといってこのまま突っ込むのも危険だ。
「そんなことより、ちょっと周りを見てみろよ。夜の公園で二人っきりだぜ、こんなときはやっぱり……」
とりあえず話をそらして……
「夜の公園に武道家二人、勝負ですね」
それねぇ! なんだよその発想。お前は解説好きな柔術家か!?
なんてことを考えているうちに、彼女は間合いを詰め、右手でピースを作ると俺の目をめがけて思いきり突き出してきた。
俺はそれをバク転することで回避。両足が接地するや、彼女の下半身にタックル! はフェイントでその勢いで倒立、そのまま倒れこむ。
俺の膝裏に彼女の肩が当たる。俺は膝を曲げると、そこを支点に腹筋運動をして彼女の頭に覆い被さる。すると彼女の体勢が後ろに崩れた。
あとは地面とケツでサンドして終わりだった。当然、少し抑えつける程度の体重しか掛けていない。それ以上は間違いなく致死量だ。
「秘技アクセル・サンドウィッチ、てとこか。やっぱ俺って天才かも」
あの一瞬でここまで動けた自分をほめる。今度、巴のやつにもやってみよう。
「いきなり目を突くのは危ないからやめとけよ」
そう言って、おれは気絶している少女に上着をかけて、その場をクールに立ち去った。
「……うぅ?」
どうやら気絶していたらしい。起き上がると、なぜか彼の上着が私の脚に落ちる。どうしてこれがここにあるのだろう?
「加藤」
「はい」
彼女は闇の中から浮き出るように現れた。いたなら起こしてくれてもいいじゃないかと思うが、言っても無駄なので口には出さない。
「私、どれくらい寝ていましたか?」
「およそ十分といったところです。かなこ様」
加藤は時計も見ずに答える。おそらく数えていたのだろう、相変わらずのサドぶりだ。
「そう、ありがとう。もう帰ります」
かしこまりました、と言って加藤はまた闇に消えた。おそらく車のところに戻ったのだろう。
私はまた横になると彼のことを考えはじめた。最初は弱そうな印象しかなかった。投げたときはろくに受け身もとれていなかった。
私が戦おうと言ったときも逃げようとしていた。だからちょっとお仕置きしてやろうとした。
でも、その後の彼は別人だった。油断していたとはいえ、私が何もできなかった。プロの格闘家相手でも一方的に嬲れるこの私が。
「いったい彼は何者なんでしょうか」
あとで加藤に調べさせよう。そう考えながら、高揚する自分を抑えつけるように彼の上着に顔を埋めた。
終わりです。病むのはまだ先ですのでしばらく我慢してください。
それと、読みにくいところなどがあったらアドバイスてください、よろしくお願いします。
>>48 GJです!
今回も楽しませてもらいました
トリップ忘れてた^^;
>>48 GJ!
続きがきになります。
>>56 文中に適度に空白行を入れるとより読みやすくなるかも。
GJ!
新作ktkr
>>48 番外編って感じですかね? 水城達が会ったらどうなるんだろうと気になっていたのが
今回で少しだけ見られました。今回の話は夢オチじゃなかったら逆に嫌だったので安心しました
>>56 GJ! 続きに期待です
62 :
夜桜散る頃に:2009/07/28(火) 01:12:47 ID:NueWz6ui
「あのさ、一つ聞きたいんだけど」
「ん?何?」
「俺のどこがいいの?」
そう尋ねた時、彼女は暗く、いや黒い笑みで囁いた。
「全部」
ゾクッと背筋が震えたのは多分、本能の警戒信号だ。
彼女―黒咲姫と付き合ってからもう12年になる。
ちなみに俺達は、現在高校二年生。17歳。
逆算すると幼稚園の頃からの付き合いとなる。
異常だ。異質でもある。
ちなみに黒咲姫は自分の彼女には勿体無い、いや、正確に
言うなら不釣合いだと言える位の美人だ。
大和撫子というのか。長い黒髪に清楚な黒いセーラー服。
学生服だけでなく私服でも黒を着ることを多い彼女の肌は
対照的に白く、まるで真珠のように艶かしい色艶を放っている。
学歴の方も学年上位で、子供の頃から習ってるという剣道も強い。
まさに文武両道の天才美女。
そんな彼女の唯一の欠点といわれてるのが付き合ってるボクのステータスの低さ。
頭が悪く、運動は出来ず、更に視力が悪いのでずっとメガネをかけてるせいか、
昏い人間だと思われてる。実際、昏いのだけど。
そんなボクは時折、疑心暗鬼となってこういう質問をしてしまう。
失礼だな、と思っても。
姫は笑顔のまま、ボクの耳元に唇を近づけ、囁く。
「何、また言われたの?」
「今回は違う。なんとなく」
「そう・・・・」
「痛っ!」
ガチッと鋭い痛みが耳に走り、僕は思わず手で覆う。
彼女は口元を拭う。
「そういうのは私は嫌い。私は好きだから付き合ってるの。君は違うの?」
「い、いや、僕もそうだけど」
「なら一々びくつかない。そしてそういう質問もしない。いいね?」
彼女は笑い、僕も釣られるように微笑む。
ボクの幸せだった記憶だ。
それを壊したのは僕で、壊れたのは彼女。
まるで満月に照らされた夜桜は、散るさまが一番美しいかのように。
短めの短編です。
ヤンデレというより全員が駄目関係すぎて、互いに互いを潰してしまうようなお話になる予定。
あんまり更新できませんが、ボチボチやります。
アクセル・サンドウィッチ=顔面騎乗位
>>63 今度は主人公が逆に決められてそのまま奉仕ですね
わかります
>>62 期待期待。
共依存とか大好物。
男が「別れよう」とか言っちゃって普段冷静な女が半狂乱で騒ぎたてるのもいい。
66 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:07:22 ID:cZaEJvBY
投下します。前回は間隔あけない投下を
してしまいました。以降気を付けます。
今回から本編です。
67 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:08:02 ID:cZaEJvBY
あまりよろしくない天気の中、城への道を歩く少年がいる。
丈夫そうな服と革のベルトに固定した短剣が、彼が一応冒険者
であることを示している。ただその顔は冒険者というよりは
病人とでも表現したほうがいいくらいにドヨンとしていた。
「行きたくないなぁ…。」
そう言ってのろのろと足を引きずる少年は僕だ。目の前に
見えている城門を前にため息をひとつ。
そもそも、状況がどうしてこれほど悪化したのかがわからない。
世界情勢がこれほど緊迫していなければ、勇者の息子というだけで
勇者として徴収…もとい強制連行はされなかったはずだ。
魔界と人間は昔からいがみ合っていた。しかし、お互い相手を
滅ぼしてやるといった程でもなかったはずだった。
(もちろん人間側にはそういった強硬論者がいたが、まず不可能な話)
その関係に変化が見られたのは三年前。魔界のドラゴンたちを統べる
竜王がある国の王女をさらい、毒の沼地に囲まれた居城に監禁して
しまうといった事件が起きた。その国の勇者が一人、姫の奪還に
成功したそうだが、その後魔族と人間の仲は断絶した。
この事件にはいくつかの不自然な点がある。そもそも仕掛けたのは
竜王のほうなのだから、魔族側に明らかに非があったはず。それなのに
ここまでの事態に発展したのは何かしらの理由なしには考えられない。
さらに、国にその事件に関する緘口令が敷かれたことも謎だ。
勇者の栄光を称える凱旋パーティさえも非公式で行われたらしい。
極めつけは王女に王族特権のはく奪が言い渡されたという噂だ。いくら
ゴシップ好きの情報屋がいたりしても、ここまで来るとありえない。
兵士に聞かれたら即刻余生を牢獄で過ごすことになるであろうし、第一
理屈としては可能でも、王族特権を奪うなんとことはどの国も
例がない。言ったとしても信じてもらえず、逆に牢屋行き…こんな
ハイリスクノーリターンな話題だからこそ逆に信憑性がある。
作り話だったらもう少しうまく作るだろうし。
たとえはく奪の話は嘘でも、王女に何らかの罰が下ったのではないだろうか。
でも、被害者であるはずの王女にどうして?
68 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:08:48 ID:cZaEJvBY
「こんにちは。」
物思いにふける僕に後ろから声がかけられた。振り向くと、修道着の少女がいる。
「こんにちは。」
僕も挨拶を返す。
…大きくなったなあ。
この町の教会。そこで僧侶の修行をしている彼女は僕の幼馴染だ。昔は
二人で日が暮れるまで近くの泉で遊びまわっていた。彼女を教会まで送った
後、全力で家まで戻るのが日課だったっけ。
幼馴染だった彼女とも最近はなかなか会えない日が続いた。
時間を見つけて逢うと、必ず彼女は泉に僕を誘った。年頃の娘なんだし、たまには
流行の服でも買ってあげるよ?と僕が切り出しても、ほんの少しだけ涙目になり
「ごめんなさい。でもどうしてもあそこがいいんです。」
と答える。確かに静かで人気もなく落ち着ける場所ではあるが、いい年して
昔みたいにはしゃげる訳でもなく、会話もうまくつなげるか僕は不安だった。
しかし、彼女はうれしそうに誰もいない泉のほとりに腰をおろして、立った
ままの僕を見上げる。僕も隣に座り込むと、本当に静かな世界が広がる。
そんなことが続いた。思い返せば、本当に彼女とはずっと一緒だった。
でも、それもしばらくはお休み。今日僕は旅立つから。
「今日、旅立つんですよね?」
目の前の幼馴染、今は半人前僧侶ちゃんが顔を伏せた。顔に少し陰りがある。
「王様に会いに行くんですよね?その間、ここで待たせてもらっていても
いいですか?」
少し長い髪が、僕が言うのもなんだが可愛らしい顔を隠す。表情が全く読めない。
「いいけど…どうしたの?大丈夫?」
「…大丈夫です。」
おかしい。いつもの彼女とは雰囲気が違う。
しかし、謁見の予定時刻が迫っている。悪いけど待っててね。
出迎えに出てきた兵士に連れられて、城門をくぐる。ふと振り向いてみると…
泣いていた。
69 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:09:36 ID:cZaEJvBY
「勇者よ!よく来てくれた。」
王様の声が響く。貫禄ある体系だが、剣の腕は一流らしい。
「そなたの父の一件まことに気の毒だった。なんでも数万の魔物の大軍相手に
たった一人で挑み、力つきて火山に落ちたそうだな。」
噂が勝手に独り歩きしている。大体数万の兵相手に一人で挑む…
人はそれをバカっていうのでは?とはいうものの、真相は語らない。
知られたら僕は終わりだ!
「見事バラモスを討ち果たし、父の仇を取って見せよ。」
「失礼ですが、王様。」
ここで僕は思い切って質問をする。
「なぜここまで魔族と人間の関係がこじれたんです?竜王事件なら既に
竜王が倒されたことでけりはついたはずでは?」
場の空気が凍りついた。いきなり思った以上にまずい質問をしてしまったらしい。
兵士たちが何人か僕の後ろに回り込む。呪衣に身を包んだ魔法使いも
何人か現れた。
…ここまでとは思わなかったな。
「わからない。」としらを切るわけでもなくこの動き。やはり竜王事件は
裏があったというわけだ。しかし、当事国でないこの国でも口封じの
動きがあるっていうことには恐れ入った。
僕の武器は短剣一本。剣で鍛えぬかれた王宮兵士には勝てないのは目に見えている。
…穏便に済ませたいんだけど。
この国は治安が比較的いい。王宮は閉ざされた場所とはいえ、そうたやすく
人は殺せないだろう。殺人なんて珍しいからだ。
第一、人の力じゃ僕には抗えない。短剣しか持たないのは僕にとって
剣があまり重要でないからだ。
しかし、タブーを口にしてしまったらしい身としては警戒は解けない。
短剣をベルトから外して投げ捨て両手をあげる。しかし口は
呪文の詠唱をいつでもできるようにしておく。
父親の呪いとともに引き継いだ技『ジゴスパーク』。人間では扱うことのできない
魔界のいかずちを僕の呪われた血を媒介にして召喚する技だ。
過去一度も実戦経験のない僕が言うのもなんだが、たぶん王国の軍隊でも
一騎士団ぐらいなら一発で仕留められるだろう。
平穏な生活は欲しいが、命が最優先だ。
70 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:10:27 ID:cZaEJvBY
「皆の者、さがれ。」
王が低い声で命じた。周りの兵たちはまず王を見て、やがて剣をおさめる。
その間も殺気が一向に衰えないのはさすがというべきだろう。いつでも
斬りかかれるような姿勢は崩していない。
「勇者よ。光の勇者の血を受け継ぐそなたになら、この一件は話しておくべき
かもしれぬ。しかし…。」
「心配ご無用です、王様。秘密は守ります。」
王様はしばらく考えていたが、どうやら結論が出たのだろう。
周りの付き人たちが対面の間のすべてのカーテンを閉じ、扉を閉める。
「…逆だったのだ。」
…はあ?
「竜王事件で、国民に伝えられたのは真逆の話。あの事件で拉致監禁されたのは
竜王のほうなのじゃ。」
聞くもおぞましい真実を王様は語りだした。
そもそも、竜王は魔王ではない。魔界には凶暴で強力なドラゴンがあまた
いるが、それを統べて意のままに操る魔王は『龍王』であり、『竜王』とは
魔界でドラゴンの知識、体調管理、飼育から子育てにわたりあまたある
項目を優秀な成績で成し遂げたものに贈られる、いわゆるブリーダーライセンス
の一種なのだ。知識や勇気はもちろんのこと、凶暴なドラゴンにも注げる優しさ
がないとドラゴンの飼育は務まらない。それゆえこの称号は魔界でも権威ある
称号とされ、履歴書にこれが記載されると即採用。当然戸口は狭く、難易度は
魔界で最も難易度の高い大学である邪教大学の神学部の入学試験に匹敵する。
(この大学は実は卒論もハードルが高い。総教授であるハーゴン大司教の意地の
悪い採点がさらに拍車をかけている。)
あの事件の被害者である竜王は、まだ成人にも達していない年齢でその資格が
与えられた。家は貧しく着の身着のままの生活だったが、持前の優しさと
真面目さが彼に竜王の称号を与えてくれた。称号とともに得た賞金のほとんどを
女手一つで自分を育ててくれた母に贈った彼は余った金を、人間界にある
没落した貴族の館を買い取り、そこで魔界にはいない人間界のドラゴンの研究を
始めることにした。捕まえたドラゴンは迷宮のような地下で放し飼いにして、
逃走して人間に迷惑がかからぬように毒の沼を館の周りに作った。
ある日、そんな日常が崩れる。
71 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:11:08 ID:cZaEJvBY
籠りきりの研究にさすがに彼が疲れてきたある日、彼は近くの王国に
息抜きにきた。今ほど魔界との対立がなかったこの時代、人々は魔族の
彼を物珍しそうに眺めはするが、追い払おうとはまったく思わない。
生まれて初めて見た人間の食べ物ワッフルを買った彼は、どこか落ち着いた
場所で食べようと思い空を飛び、広くてきれいな庭を見つけて降り立った。
幸せそうな顔でワッフルを食べる彼は、彼に向けられている視線にきづく。
見るときれいに着飾った愛らしい少女が、彼をじっと見ている。
彼は笑顔で手招きし、袋からもうひとつワッフルを取り出して渡した。
少女も笑顔になり、二人で静かな時を過ごした。
この庭は実は、宮廷管理の王族別荘。この少女こそ、この国の王女だったのだが…。
その後は以下の通り。
@ 彼に夢中になった王女が父に彼との結婚を願い出る。
A パパは魔族との結婚など認めません!おまえは黙って政略結婚するのです!
B 政略結婚相手(どう見てもオッサン)の股間に王女が魔人のごとく蹴りかかり
男として再起不能にする。
C じゃあパパは別の政略結婚を考えます。今度の相手はこの方です(既婚)。
D 魔族の青年に直接告白するも「僕なんかに君はもったいなさすぎるよ。」とのこと
E 監禁。
F 魔界側から「善良な留学生に対する非人道的な蛮行」と抗議。
G 勇者達が竜王の解放に向うも、姫の魔法で撃退。
H なんとか助け出すも、監禁中姫の異常な愛情を受け続けた竜王にうつ病の兆候。
翌年、自殺。
I 王国の顔を守るため、竜王の犯行とでっちあげる。
J 王国の発表を真に受けた竜王の母が、「そんな犯罪者を私は産み出してしまった。
償えるものではないが、私の命で勘弁してほしい。」→自殺。
K のちの調査で真実が明らかになるも、王国側は魔界の抗議を黙殺。
L 魔族激怒、そして戦争へ…。
72 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:12:09 ID:cZaEJvBY
「どう見ても悪いのは人間でしょうがああああ!」
僕は絶叫する。周りの兵士たちも気まずそうに足元を見ている。
「特に竜王の母親の件!いかに王族といえどこれは流刑ものですよ!」
「だからなのじゃ!」
王様が声を張り上げる。
「竜王事件以前から魔界から正式に『殺人鬼バラモス』の処分協力要請が来ていた。
魔界で数多くの魔族を殺害したこいつの首を差し出せば、和睦の可能性もでてくる。
魔界を追われたバラモスは人間界に居城をかまえ住んでいるらしいので、すぐに
そいつを仕留めてきてくれ。…ただし、きちんとバラモス本人と確認できるように
してほしい。光の勇者の伴侶でありそなたの母にこの依頼をしなかったのは、
魔法がバケモノ以上に強力すぎて、本人と判別できぬくらいにしてしまう可能性を
考慮してのこと。一応魔族にもDNA識別魔法の使い手はいるじゃろうが、なにせ
この世に肉片ひとつ残さぬほどの魔法の使い手じゃからのう…。」
母さんの忘れ癖を考えると、「本人と識別できるよう」の部分は忘れるだろう。
ようは、公式ではないにせよ人間は罪を認め、魔族の敵を討伐して和睦の機会を
設けようということらしい。戦争は防がなくてはならない。
…話はわかった。だけど、その役目はほかの誰かに任せよう。僕は
穏やかな日々が望みなんです。
「なお、噂だとバラモスは十回刺さないと死なないらしい。勇者よ、頑張れよ。」
精神的に疲れながら、僕は対面の間をあとにした。
今朝から悪い予感がしていたけど、こんな重い話を聞かされるなんて…。
73 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:14:38 ID:cZaEJvBY
外は雨が降っていた。その中で一人、傘もささずに立っている僕の幼馴染。
僕を見つけると、ゆっくりと歩いてきて…静かに泣きだした。
「ど…どうしたの!?」
あわてる僕の手を彼女はぎゅっと握りしめる。ぐずりながら声を絞り出してくる。
「…言えないんです。」
「え?」
「行ってらっしゃいって言えないんです。どんなに頑張っても無理なんです。
涙が邪魔するんです…。う…うぇ…うわあああああん!」
とうとう声をあげて泣き始める彼女。僕はそんな彼女の肩に手をおく。
「…君に頼みがある。僕の旅を手伝ってほしい。」
彼女が顔をあげる。
「嫌ならかまわないんだけど…どう?」
彼女はしばらく僕の顔を眺めて…いきなり僕に抱きついてきた。
連れて行ってください。と泣きじゃくりながら連呼する彼女を抱きかかえながら
僕はあとの二人の構成を考えていた。
「えっ…?」
彼女は驚いたような顔をしている。
「いや、だからさ。これから酒場に行ってあと二人探そうよ。仲間は
多いほうがいいだろ?」
「えっと…私と勇者さんの二人で十分じゃないですか?私はほら…僧侶ですから
回復もできますし。」
普通だったら問題ない。ただ僕には僧侶ちゃんの聖なる回復術は効かない。
僧侶ちゃんの役目はあとの二人の回復にまわることになる。
自分の呪いのことは誰にも話していない。人は自分と違うというそれだけで
差別や中傷をしてしまう生き物だ。ましてや一応光の勇者の息子である
僕が邪悪な呪いに魅入られていると知られたら、どうなるかは目に見えている。
「どうしても行くんですか…?でしたら着替えてからにしましょう。」
彼女が提案してくる。
「魔王を倒す勇者様が雨でびしょ濡れの服を着て酒場に現れたら、ちょっと
イメージと違いますよ。一度家に戻って、酒場で集合しませんか?
私も着替えてきますので。」
確かにその通りだ。僕は着替え次第酒場に行くと伝えて、彼女と別れた。
74 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:15:33 ID:cZaEJvBY
何が起きたのかはさっぱり分からない。着替え終わった僕が酒場につくと、
そこに酒場はなかった。
石と大木で作られた建物は崩れ去り、ところどころ火の手が上がっている。
時々激しく火の手が上がるのは、木製の樽に入っている酒に火がついて
いるのだろう。
「勇者さん!」
一足僕より先に来ていたのだろう。僧侶ちゃんが駆け寄ってくる。
「い、いきなりお店が崩れてきたみたいで…まだ中に人がいるって…。
わ、私あの…その…。」
「とにかくみんなを助け出そう!僧侶さんはけが人の治療にあたってくれ!」
戸惑う幼馴染もとい僧侶ちゃんに指示を出しながら、まだ炎のおさまらぬ瓦礫に
飛び込む僕。熱いけどこの際気にしない。
もともとはドアだったと思われる木材をどけると、人が下敷きになっていた。
ドアが倒れてきたときぶつかったのだろうか。気絶しているが、息はある。
問題は右足。巨大な石に挟まれて、ぴくりとも動かない。
相当の重量がある石だ。たぶん急いで適切な治療を受けないと、
動かなくなるどころか最悪―切断だろう。
迷っている時間はない。炎と煙で遮られた視界を利用して呪文の詠唱を始める。
巨石に左手をたたきつけ、最後のスペルを唱えると、紫の光とともに
巨石が蒸発した。
臓腑がひっくりかえるような感触とめまいがする。体が魔力切れを訴え、
心臓は血管が焼き切れそうなほど鼓動している。
地獄のいかずちは連発できない。次にこのような状況の人がいたら
覚悟を決めなくてはいけないな。
ぐったりしているその人を背負い、僧侶ちゃんのもとへ連れて行く僕。
…あれ?
75 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:17:20 ID:cZaEJvBY
僧侶ちゃんのことが頭に浮かんだ瞬間、強い違和感があった。
でも、それがなんなのかは分からない。
第一、 お城の時と何も変わっていいなかったじゃないか。見慣れたものを
見てるのに、なんでそんなことを考えるんだ?
今は非常事態。取るに足らない思いすごしに時間は取れない!
僧侶ちゃんは奮戦していた。
血みどろになり、傷の場所も判別付かぬ人がきても、一目で
致命傷とそうでないものを見分け、回復魔法を唱えていく。
周りにいる人たちも手伝い始め、何人かまた助け出されてきた。
「この人、息してないぞ!」
不意に誰かの叫び声が聞こえる。みると若い女のひとが蒼い顔で倒れている。
急いで近寄り、口元に耳を寄せる…呼吸が止まっている!
目立った外傷はない…パニックで持病でも引き起こされたのか?
急いで顎を固定し、気道を確保する。まずは人工呼吸を…
「駄目です!ぜったいダメ!」
ものすごい声がした。振り返れば僧侶ちゃんが顔を真っ赤にして叫んでいる。
「に…二次感染の恐れがあります!勇者さんはこのあと大切なお役目が
あるんですから、大事をとっていただかないと…。」
そんなこと…と言いかけてハッとする。この女性が病気持であろうと
今はそんな場合じゃないのだが、僕の唇が切れているのに気づいたのだ。
普通唾液での感染症はありえないが、血液が混じれば話は別。
そして僕は血液に呪いを持っている。この程度で呪いが広がるとも
考えにくいが、この邪悪な呪いが世の中に広まるリスクは冒せない。
でも、この女性は助けないと!
周りをみると、みんなそれぞれのけが人の対応で手いっぱいだ。
助けを求められる状況じゃない!
76 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:18:06 ID:cZaEJvBY
「どいて!アタシが助けるよ。」
不意に女の人の声がして、僕は乱暴に蹴っ飛ばされた。
振り向くと…わぁお!
生と死のはざまのこの場所にはあまりにも場違いかつ不謹慎な体つきの
お姉さんが立っていた。うす紫と白を基調とした、衣服というより厚手の
布を巻きつけたかのような格好。それも必要最低限の部分しかおおわない。
ただ、遊び人ではないと一目でわかるのは、その着付けがどんなに激しく
動いても崩れないようにつけられていることだ。
さらに紫の独特の色合いが、あまりにも色気のあるその布が対魔法用の呪衣である
ことを物語っている。
顔は当たり前のことだが…美人!栗色の髪を後ろで結わえ、頭に紫の
バンダナを付けている。口調こそ厳しいものだけど、きれいな
瞳の中には見たものを落ち着かせるようなやさしs…。
「邪魔!」ぐしゃ!
さらに僕を蹴り飛ばした彼女は、そのまま横たわった女の人の胸に
手を当て、呪文の詠唱を始める。
バァン!
鋭い音とともに、女の人の体がびくっと跳ね上がると、しばらく間をおいて
急に激しくせき込み始める。
雷の魔法を使っての除細動!?
振り返りながら僕ににこりと微笑んでくる謎めいたお姉さん。
僕は顔を真っ赤にして、燃え盛る炎の中に再びはいって行った。
…ってか、最初から心臓マッサージすればよかったのかな?
続く
待つしかない
78 :
そして転職へ:2009/07/28(火) 20:20:15 ID:cZaEJvBY
以上です。次回は文章に動きを付けて
残ったぐだぐだを消していこうと思います。
GJ!!
>>78 GJ
ジゴスパーク…某タイムマシンの落雷しか思い浮かばないぜ
投下します。
書き溜めを確認したりするので遅れたりしますが必ず終わったら「以上です」と言いますので><
机の上に置いてある俺の携帯が光った。
俺のアドレスを知ってる奴は島田さんを筆頭に数名を除く事務所の連中と中学時代からの知り合いと遠藤さんだ。
今携帯を開きメールを確認することもできるが周りは熱心に教師が黒板に書いたことをノートに写している。
そんな中携帯を開いてメールを確認するなんて俺にはできない。明らかに浮くからだ。
ここは一応教師の話をぼーっと聞いておこう。
授業は終わった。
さっきまで静かだった教室は一変して賑やかになった。授業の変わり目は教材を片付ける音、席を立つ時に椅子を引く音、談笑。それらが同時多発的に起こる時間だ。ついでに上の階の椅子の音も聞こえる。
「リュウイチ、トイレ行こうぜ」
「おう」
知り合いAが誘ってきた。こいつはいっつも俺と一緒にトイレに行きたがる。中学時代からの知り合いだ。
トイレで用を足した俺は手を洗いながら忘れていたことをふと思い出した。
携帯のメールだ。もし島田さんなら今日は断らなければならない。疲れもとれていないし遠藤センセのありがたい教えを聞かなければならない。
from:島田さん
…………。どこか妙な期待をしていたのか島田の文字を見ただけでがっかりした。まあいい、最後まで見よう。
『リュウちゃん、頼みがある(猫の絵文字)
黒川ちゃんの様子を見てきてくれ(笑顔の絵文字)
前のように戦うことはないだろうから(グッの絵文字)
あの子は平気そうに振る舞ってるけど一番不安定な子だから。
あ、言っとくけど給料は出ねーぞ(笑)頼みだから(笑)』
……(笑)じゃねーよ。絵文字も使うなよおっさん。
黒川はやか。パイロキネシスを使う少女。17歳。
訳があって彼女も島田さんに力のコントロールをレクチャーしてもらっている。
髪は黒髪のロングで、腰まで届いている。前髪が『左目』を隠していてどこか陰のある女の子だ。
黒川は………ぶっちゃけ苦手。エリーとは違い手なずけにくく、いつもいつも『私は醜いから』という言い訳を振りかざし俺を責めてくる。俺はそのたび醜くないよと言わなければならない。
心の底から軽蔑しているわけではない。できることなら彼女を救ってあげたい。
そろそろ授業が始まる。
おっさんの点滅している絵文字を見つめていた俺は携帯を閉じ、教室へ向かった。
行くか行かないかは後で考えよう。次の授業は俺の好きな授業だ。
熱い、熱い、熱い………。
眠っている間は何も考えなくていい。昔のこともこれからの事も。それなのに今日も地獄の業火で眠りという甘味な海から引きずり出された。
固いベッドから飛び起きた私は醜い『左半身』の包帯をほどいて確認する。
いつもよりも腫れ上がり真っ赤になっている。所々うっ血しているのか紫や黒に近い色の箇所もある。どうやら汗が刺激したみたい。
「あはは、あははははははー。」
人は、少なくとも私は、どうしようもない状況だと判断した時笑いが込み上げてくる。
右目からはこうして涙が出るのに、潰れかかった左目からは血しか出ない。
……………あの人に会いたい。
昔の話。
私の家族は貧しかった。
私、母、父、兄の四人家族。
貧しかったけど共働きではない、父は働いていなかった。毎日ビールを飲んで野球の中継を見るか、外出するかだった。たまに母や私へ暴力をする。兄はそれを止めていた。
兄も高校一年の時働いた。遊ぶお金のためではなく、家庭のために。
なぜ貧しいのかと言うと、父が昔営業で失敗したときできてしまった借金があるからだ。
それと、後から聞かされた父の浮気と風俗通い。
家族はそんなものの為に働いていた。
家族で夕食を食べているとき、父が言った。
「風俗店のオーナーの知り合いがいるんだけどさ」
「………。」
中学一年の私には風俗という単語を知らなかったけど、父が卑しい表情になっていたので何となく察した。
「違う町で店舗出すらしいんだけどさ、オーナー募集してんのよ。俺やってみようかなと思って。」
また経営で失敗したらどうするのと母は大反対した。
父は暴力をふるい、母は泣き、兄は止めようとするも殴られ、泣く。
あたしはそれを呆然と眺めるだけ。
いつもの流れ。
終わりを覚悟したけど、以外にも営業は成功した。成功してしまった。
違法に脱税をしたり、未成年を利用したりしていたみたい。
毎日のように和牛や蟹を持って帰る父、死んだような顔の母、何も知らず喜ぶ兄と私。私に至っては不覚にも風俗の存在すら知らなかった。
父の職業の事で学校で苛められた。クスクスと笑う男子たち、それまで仲のよかった友達たちの哀れそうな視線。
「お前の親父、あの有名な風俗で店長やってんだってな」
「やめなよ、性病がうつるよ」
「あははは」
それからはいじめの格好の標的になり、後ろから物を投げられたりもした。
友達だった子はとうとう私を見捨てた。
その日初めて風俗という店がどういう店なのかを知った。
私への笑い声はそういう意味があったんだという衝撃的な現実に耐えられなかった。顔中に溢れた水を拭い、授業はまだあったけど私は学校を飛び出した。
「お肉はおいしいけど、苛められるのは嫌だもん。」
幼かった。全てが。
全速力で家に帰れば、見知らぬスーツの男が玄関で数人立っていた。普通のリーマンの容姿ではなく、髪は茶髪でシャツを着崩していたり、およそ社会人とはほど遠いものがあった。
「この子?」
パンチパーマのずんぐりした男が汚い手で私を指差した。部屋から出てきた父は私を見るなりにやけ、「そうそう」と返事をした。
「なんやねんえらい早いなぁ」
「頭いたかったんかぁ?」
あはははははははは、と男の汚い笑い声が響いた。
幼かった私はこれだけで恐怖し、足ががたがた震えた。………ここにいたくない、そう思った。
「ここは味見しとかんとなぁ」
男の一人が私へ手を伸ばす。
私は知っていた。風俗がどういう店なのかを。
「やだっ!!」
私は男の手を払い、逃げようとした。でも、後ろにいた何かに当たった。
顔を見れば…………母だった。
母は死人の顔で死刑台に送り込む裁判官のような目で私を見下しながら言った。
「はやか、許してね。これしかないのよ。」
「……………あ、あああ、あぁ………。」
さすがの私でも言葉の意味を理解した。それを聞いた瞬間、涙が頬を伝った。
私を抱き締めている母の手は力が異常に籠っているけど母親の優しさなど微塵も感じられなかった。
全てを悟った私はただ逃げようとじたばたした。
「は、離して!!助けて!!!誰か!!」
誰も助けてくれるわけがない。
「この子をよろしくお願いします。」
「はいよー。」
やだ、やだ、やだ、やだ。
やだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!!!!!助けて!!!!!熱いの!!!!!!!!!
何があったのかは覚えていない。気がつけば家は燃え、みんなは跡形もなく燃え尽きていた。父も、母も、スーツの男もみんな。
………私が殺してしまった。それだけはわかった。
………逃げよう。
もう誰も助けてなんかくれない。
道端の窓ガラスに、焼け焦げた私の左半身が映った。
使われなくなった橋の下に行った。
「熱いッ……熱いぃぃぃっ……!!!」
見つからないように必死で声を殺し、うずくまった。
死ぬほど左半身が熱かった。
ふと左半身を引きちぎれないか試したくなった。左手を右手で掴み、引っ張った。何度も何度も何度も何度も。
「え、えへへぇ、なんで取れないのぉ………なんでっ……ひっく…。」
諦めた私は、急激な眠気に誘われその場で眠った。
目を開ければ男がいた。後ろにも何人かいる。
「気がついたか。
手は尽くしたが痕が残ってしまった。すまない。」
「ああ、安心しろよ。お姉さんに巻かせたからな、包帯。」
………。
橋の下ではなくベッドの上にいた。
「ここは病院だ。怖い人らが怖い訳があって怪我した時の聖地だな。」
どうやらカタギではないようね、そう思った。
「君の力はとてつもなく強力だ。家が全焼するほどのパイロキネシスなんて俺でもできるかわからない。今後あんな暴走をしない様この俺が責任もってコントロールの仕方を教える。」
………嘘だ。
ずーっと騙して嘲笑って、汚い仕事に利用するに違いない。そう思った。
いまでも彼らの事を信じきったわけじゃない。
それでも………彼らがいなかったら私は死んでいた。肉体的にも精神的にも。それだけは確信できる。
それからは兄や島田さんに家賃を払ってもらってこのマンションに一人で住んでいる。
黒川はやか。左半身に火傷を負った少女。家庭の事情はある程度聞いている。
過去の事から未だに俺や島田さんとは距離をとっている。
今は日本史の授業。
日本史は成績が悪くても大体の奴がいい成績を出せると思う。ノートに書かなくたって年表や戦の記録は大体頭に入る。何もせずに70点とか取った日は天才なんじゃないかと勘違いしてしまうほどだ。
授業が終わるまで数分あるが、教師は余った尺をどうしていいのかわからずキョドっている。原作の漫画が大ゴマ使いまくってた時のアニメのようだ。
この人はあからさまにわざと遅刻をしてくる。最長で20分ぐらい。大丈夫なのか、この高校。
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
さてどうする。請けるにしても誘い方が重要だ。彼女は過去のトラウマから男だけではなく生きとし生けるもの全てに対し強烈な不信感を抱いているはずだ。
それに加え彼女は強いフラッシュバックも持っている。決して襲おうとしたり苛めるつもりはないのに、何度か暴走を起こし殺されかけた事がある。
だから俺は過去のフラッシュバックの引き金を引かないように注意をしつつ、且つ冷たすぎる手段、言葉を使わないようにしなければならないわけだ。
………彼女の事を思い出したら心配になってきた。下世話なのかもしれないけど、それなら下世話だと一言ほしい。
とりあえずまずはメールでも送ろうかな。『元気?』 送信、と。
さて授業が始まる。
!
携帯が光ってる。
授業が始まってからすぐに携帯が光った。
……これはメールじゃない、電話だ。彼女だろうか。
今出るわけにはいかない。後でこっちからかけ直そう。光はしばらくして消えた。
………また携帯が光る。しばらくして消える。光る消える。計5回。
たしかにこっちからメールしといて電話に出ないのは悪かったか。彼女は不安定だし。
授業が終わった。トイレに行って電話をしようと思う。次の授業出れないかもな、こりゃ。
鞄を持ちあまり人が使わない一階のトイレまで来た。
恐る恐る着信履歴を確認すると………やはり全て黒川の文字。
………電話するか。授業を潰された苛立ちとこれから気を使わなければならない苛立ちを表に出さないようにしなければならない。
着信履歴から電話をかけた。
呼び出し音が3回鳴り、繋がった。
『………何?』
何、じゃねーだろ。5回も電話しといて。
いつものテンションの低い虚無感漂う声だ。
「ごめんね、いきなりメールして。島田さんから様子見てあげてって言われてさ。」
子をあやすように言った。
『………そう、頼まれて仕方なくメールしてきたのね。』
しまった……。
言葉を失った俺に彼女は攻め落とすように続けた。
『質問の答えだけど私は人生の中で一度も元気だった日はないわ。 それにその変に気を使うようなしゃべり方は止めて。馬鹿にされてる気がするから。』
カチン。
「なっ…………こっちはお前のために気ぃ使ってんだよ!!」
『ひっ………』
………しまった。つい怒鳴ってしまった。彼女を傷付けてしまったかもしれない。こうしてすぐ怒ったり反省するのは殺されたくないという防衛本能ではなく、純粋に彼女を傷つけたくないからだ。
「ご、ごめんな。」
『冗談よ。』
………。
『私はその程度の事であなたを殺したりしないわ。安心しなさい。』
彼女は俺が殺されたくないからという理由で謝ったのだと思っているらしい。
『それにしても本当にあなたは短気ね。 人間短気博物館に陳列したいぐらいだわ。』
「そんな博物館あるのかよ……。」
『なかったら私が築いてみせるわ。 ちょうど使われてない寂れた公園があるのよ。』
くだらない会話をしているとチャイムが鳴った。
今行けば遅刻になるが間に合う。元気そうだから切ろうか。
拍子抜けした俺はすっかり彼女の顔を合わせる気も失せていた。
「そろそろ授業だから切るよ。」
『………待ちなさいよ。』
「? 何?」
『今日はどうするのよ、会いに来るの?』
どうするかなぁ。島田さんにも様子見ろって言われているし彼女を見捨てるのもよくない。
答えがわからないからといって彼女に主導権を渡すのも悪い気がする。だからその中間で行こう。
「いやぁ、元気そうだからやっぱいいや。 またメールするからさ。じゃ。」
『……待ってよ。さっき元気だった日はないって言ったじゃない。
それにそんなこと言っていっつもいっつもメールだって私から送ってるし。………この嘘つき。』
いつもより鋭くて冷たい声が耳元で聞こえた。鋭利な刃物で耳の中を突き刺されたような感覚になり、体がビクついた。……怒っているようだ。
学校にもろくに行けず一人内職をするか島田さんに呼ばれるかで、やはり寂しいのだろうか。
「じ、じゃあ会いに行こうか? そうだ、替えの包帯と飯でも買って持っていってやるよ。何がいい?」
自分の声が偉く震えているのがわかる。これは間違いなく……恐怖からだ。
彼女の機嫌を取るように持っていこう。
『………そう、ありがとう。
じゃあお菓子でも作ってあげるから材料を買ってきてちょうだい。 時間を取らせてしまったわね。それじゃあ待ってるから。』
プッ プーップーップーッ
………黒川はやか。
なんというか、底無しに我が儘な子だ。
………とにかく!今は気持ちを切り替えなければいけない。
遅刻しても今いけば出席に含まれるはずだ。急いで教室へ戻ろう。
教室はもう授業が始まり教師の声だけがかすかに聞こえている。
教室へ入ると数人の生徒の視線が俺に集中した。気まずい。
「何やってたんだよ。」
「電話だよ。」
知り合いAが小声で話しかけてきた。
数人の生徒の視線はノートや教師へ戻ったが、前の席のあの真面目な遠藤さんだけは俺を見ていた。眉毛をハの字にし、わざわざ振り向いて。
………馬鹿さ加減に心配したのかもしれん。
そういえば今日も断らなければならないな。ごめんよ、遠藤さん。
そうこうしているうちに今日も7時限目が終わった。
今日は………遠藤さんに俺から話しかけておこう。いつもいつも俺に付き合わせてしまっているし。
「遠藤さん。」
「な、何!?」
………。
引っ込み思案な子って声の調節できないのかな。かわいい。
「あのね。今日も勉強できそうにないんだよ。 いつも教えてくれてありがとね。」
「……………そっか。うん、わかった。 待ってるからね。」
声のボリュームが10から1へと下がったようだった。
俯いて無理に苦笑いしている。もしかしたらそんなことで話しかけるなよというサインなのかもしれない。
…………もう今後この子と会話するの止めとくか。
勉強をやってもそれほどいい成績が出せない俺と、それを世話しなければいけない遠藤さん。お互い傷つくだけだ。
さて、今日はお嬢様がお待ちになられる。
卵に生クリームに果物に………。俺の財布が死にそうだ。
俺はいつもの駐車場で自転車に乗り、走らせようとした。が。
………?遠くで見えないが、校門の前に生徒が何人か立っている。少女を囲んでいるようだ。
「外人の女の子?! かわいいー。」
「肌白いねー。」
………外人?少女?
以上です。
ミスあったらどうしよう
>>93 gj!!
もっと自信をもっていいですよw
96 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 01:44:56 ID:sNh+/vQD
GJ
面白くなってきた
頑張って
ただ待つ
100 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 09:24:59 ID:hahQ8rsD
102 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:08:49 ID:bVJIjWSn
投稿いきます!
103 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:10:56 ID:bVJIjWSn
「幹也、好きよ」
うわ言のようにさくらは何度もその言葉を繰り返した。
何度も何度も僕の性器と繋がって、さくらはその言葉を繰り返していた。
まるで刷り込むみたいに、何度も。
僕はさくらをただ仰いで見ているだけ。
何も考えてはいなかった。
さっき僕は勘違いに気付いた。
さくらは自分の性欲なんかのためでは無く、ただ純粋に僕を好きだった。
それがきっとさくらを苦しめていたんだ。
無理も無い。
だって、僕はさくらを縛るためだけにさくらと関係を結んでいただけだから。
いつだって壊せる関係の希薄さに、さくらは悩んでいた筈なんだ。
僕は、僕を求めるだけのさくらに何も言う資格なんて無い。
逆らう道理も、逆らえる権利も無い。
今はただ、さくらのやりたいようにさせてあげよう。
「幹也に友達なんか出来やしないよ」
さくらは僕の顔の輪郭に沿って、舌を這わせてきた。
「幹也に友達なんて出来るわけないよ、出来ても辛いだけだよ」
ジュブ。
耳の辺りで粘着質な音。それから耳の軟骨に不快な感覚。
さくらの柔らかい舌が、軟骨の凹凸にそって舐めていた。
「一緒にいるときは決まって気を使って、いつかは別れる。そんなの辛いでしょ?」
さくらは耳から下を離し、今度は額を僕の額に合わせてきた。
「私は違うよ、私だけは違うの」
それから軽く唇に何かが触れた。
「ずっと、傍にいてあげる」
「幹也が望む事全部、私は出来るの。友達にも、親友にでも、恋人でも、家族にだって…幹也が望むなら何にだって私はなれる」
さくらの擽ったそうな笑い声が聞こえる。
「勿論、セックスだって幹也がしたいことしてもいいんだよ?SMでもスカトロでも、いつだって私は幹也の思いのまま」
やっと深い闇に眼が慣れてきた頃、さくらは続けてこう言った
「幹也が望むなら、人だって…殺せる」
104 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:13:29 ID:bVJIjWSn
◇◇◇
「幹也、好き。愛してる」
さくらは何個目かのコンドームの包みを破り、それを僕の性器に被せる。
もう、何度目なんだろう?ジンジンと痛くなってきた。
それでも、さくらは一向に辞める気配は無い。
「みきやぁ、えへへ」
締りが無くなった顔で、さくらは僕に口づけする。
三回、軽い口付けを終えた後、今度は僕の口腔内に舌が入ってきた。
粘着質な音だけが、耳に届く。
部屋は暗い。
僕の視覚はただ影を捉えているだけ。触覚は舌と、舌が絡み合う事だけしか感じていない。
やっとキスが終わると、さくらはまた僕の性器を自らに挿入した。
ギシリと、ベッドが鳴く。
「私の中、もう幹也の形にしかならないよぅ」
揺れる視界。
普段聞き慣れない、さくらの変わった口調。
「みき、っや」
荒れた息、何度も僕を呼ぶ声、揺れるベッド。
こんな気持ちでさくらと性交するのは初めてだ。
「っぁ」
小さな悲鳴。
それと同時に性器が締め付けられた。
きっとさくらが今イったのだろう。
さくらがもたれ掛かって来て、少し身体を震わせた。
「みきやぁ、キモチいいでしょう?私だからできるんだよ?スゴイでしょう?」
さくらはそう言ってまた忙しなく腰を動かし始めた。
「熊原君もこんな事できた?無理だよね、ただの友達もどきじゃ出来ないよね?」
息遣いすら、纏わり付く。
「うっ、みきっや!」
さくらが何かに耐えるように悶えると、また中がキツくなった。
駄目だ、僕も近い。
さくらがまた動き始めた。僕は何度目かの射精をすると、満足そうなさくらの声を聞いて酷い眠気に身を任せる事にした。
何度目かのまばたきの後、僕は眠りへ落ちてしまった。
105 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:15:42 ID:bVJIjWSn
◇◇◇
シャワーを終えて、私は幹也の部屋に向かった。
安らかに、幹也は眠っている。
幹也は情事のあとは決まって寝てしまう。
私はその時の表情が好きだ。
全てを私に委ねているようなそんな寝顔。
なんて気持ち良さそうなんだろう。
「菅野…さくら……かぁ」
思わずにやけてしまう。
たまに、自分が幹也に抱いているこの感情は一体何なのか気になる事がある。
好意よりも広くて、愛よりも深い。
私は幹也を好きな、愛している自分ではなく、私に愛されている幹也が好きなのだ。
コレは少し奇妙だ。この表現ではただの自己満足ではないか。
ただの独占欲。でも独占しようとしても、独占したと思っても、決して幹也に飽きる事はなかった。
私は溺れていく、幹也に。
愛はその朱をさらに深めて、ドス黒くなっていく。
だから、私は幹也に関わる他人を許せないのか。
小さい頃から、少なくとも記憶の一番初めから思い出してみても、私はその頃から幹也を愛していた。おそらく私は自己愛のベクトルを家族ではなく、はたまた他人などではなく、幹也だけに向けていたのだ。
私は、あの頃から菅野幹也が石田さくらの事が好きなこと信じて疑わなかった。
だからは私は当然のように必死に幹也の要望に答え、さらに認められようと、さらに幹也の深くを知ろうとしてきた。
ただの精神を病んだ馬鹿じゃないか。
そう自嘲気味に言ってみても、目の前の幹也の寝顔を見ていると、「幹也がいるなら、それも悪くないか」と思い直してしまう。
なんとも、救いがたい…な。
少し自嘲気味に笑ってから、私は幹也の少しはだけたタオルケットを掛けなおして、部屋を出た。
幹也の携帯を受け取りに熊原の家へ行くためだ。
106 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:17:12 ID:bVJIjWSn
◇◇◇
熊原武士の家は前日から目星を付けていたので、特に迷う事無く辿り着いた。
青い屋根に、亜麻色の家。それから郵便受け取りに書かれた熊原の文字。
間違いない、アイツの家だ。
インターホンを押す。
「はーい」
女の声…、熊原小町か。
「菅野幹也の友人の石田さくらです。先日、幹也がココに携帯を忘れていったそうなので幹也の代わりにに受け取りに来ました」
インターホンから「ちょっと待ってて」と言われてから少し経って、玄関からさっきの声の主が出てきた。
「はい、これ」
間違いない、幹也の携帯だ。
「すみません、お手数をかけて」
「いやいや、いいんだよ」
「それでは、確かに受け取ったので」
「あっ、ちょい待ち!」
「はい?」
熊原が私を呼び止める。早く帰りたいのに。
「幹也君にまた遊ぼうって言っといてよ、あたしも武士もずっと暇だからさ。あっ、よかったら彼女さんも一緒にどう?」
思わず拳を作ってしまう。
握っていた携帯がプラスチック製の悲鳴をあげる。
「分かりました、伝えておきます」
私は努めて穏やかに微笑んでそう返して、帰路に着いた。
107 :
桜の幹 :2009/07/29(水) 14:20:14 ID:bVJIjWSn
以上で、今回分は終わりです
出来ればアカの付け方を教えていただきたいのですが…よければ教えて!エロイ人!
あと義姉ネタってコッチですか?
>>107 超GJ!!
相変わらず続きが楽しみだ
>>出来ればアカの付け方を教えていただきたいのですが…よければ教えて!エロイ人!
「名前#適当に英数字」でできるはずよ
>>107 相変わらず、胸をズキズキさせてくれる……GJ!
ヒロインが綺麗だなあ、と何となく考えもせずに思う。
幼なじみ、同輩、先輩、後輩、姉、妹
試験勉強の暇つぶしに書いてるんだけど、後はどんなポジションがあるかな
前世の妻
>>113 なんでニ分でそれがでるんだよ
お前、隣に妻でも住んでるですか?
>>107 やべぇ、不覚にも切なくなった
次回も期待してます
>>112 先生、馴染みの店の店員、宇宙人、未来人、異世界人、親友の姉、妹・・・・・etc
同居人。別に姉とか妹じゃなくても居候とか
適当に訳ありにすればいけそう
>>114 あったなそういうSSw
まぁ近所の喫茶店とか花屋とか本屋の店員とかあたりもいいかもしれない
居心地のいい空間で入り浸ってるうちに仲良く・・・
しかも学校の知り合いはそのひとのことをしらず
逆に店員の方は学校での人間関係を知らず疑心暗鬼に落とせやすいし
>>116 誘拐した女の子とか?
確かそういう子が犯人に恋愛感情をもつ現象があったっけ
>>112について考えてたら
新婚旅行の添乗員がヤンデレで・・・という設定がうかんできた
旅行中にヤンデレ発症。新郎のことが好きでたまらなくなる。
自由行動の日も密かについてきては自分が新婦にとってかわる妄想をする
各地の観光名所で新婦をなんとか○×しようがんばる・・・みたいな
>>120 パトリシア・ハーストでぐぐってみると幸せになれる
>>117 上はヤンデレ喫茶のウェイターっぽいな
>>120 おお、それだ。ぐぐってみたら事件解決すると治るってあったからダメか
>>118 そういうのは考えてなかったけど、それもアリっぽいね
ありがちだけど両親が死んだりした子が親戚にも引き取る人がいなくて
親同士が友達だったから主人公の親が引き取ったりとか
或いは逆に主人公が引き取ってもらったんだったり
>>123 事件解決で治るわけじゃないぞ
ペルーの大使館占拠事件は未だに犯人擁護に回ってる元人質もいるらしい
投稿します。
変歴伝じゃないほうです。
第三話『シグナム・ファーヴニルの失敗』
扉の前で宿代の催促をしている亭主を押し退け、シグナムは町の外に出た。
早速二体のスライムが襲い掛かってきた。
青い水滴の様な体に、悪意の見えないつぶらな瞳、そして半笑いの赤い口。
どう見たって人畜無害のそれに見えるが、
少しでも近付こうものなら、吐き出される溶解液によって、
骨まで溶かされてお陀仏にさせられる凶悪モンスターである。
「出やがったな!前回は油断したが、今回はそうはいかねぇぞ!」
シグナムはすぐさま右手に灰が渦巻くのをイメージした。
二体のスライムは、ヘラヘラ笑いながら、シグナムに近付いてきた。
「くらえ、ザコモンスター!灰に抱かれて切り刻まれろ!」
シグナムは向かってくるスライム達に灰をぶちまけた。
灰はスライム達の周辺を漂い始め、スライム達の足が止まった。
その瞬間、スライム達の体はズタズタに切り裂かれた。
「よっしゃぁあああ!ざまぁあみろ!」
初勝利に沸くシグナム。頭の中ではファンファーレが鳴り響いていた。
ただ、倒した魔物は世界最弱であることは忘れていたが…。
シグナムは、早速倒したスライムの残骸に向かった。辺りに青い体液が飛び散っている。
そんなことには目もくれず、シグナムはスライムの眼球に指を当てた。
そして、なんの躊躇いもなく眼窩に指を突っ込んだ。隙間から、青い体液が漏れ出した。
構うことなく、しかし眼球を潰さない様に慎重に指を奥に進ませた。
しばらくすると、筋に行き当たった。筋は眼球に繋がっていた。
シグナムはその筋を指で挟むと、思いっきり強く引っ張り上げた。
ブチブチっという音と共に、スライムの眼球が全容を現した。
スライムの水晶体は、ポーションの原料になるので、道具屋で売れば金になるのである。
スライムから全て眼球を取り出したシグナムは、それらを道具袋に入れると、
町に戻らず、北に向かって歩き始めた。
この『灰の力』を以ってして、魔王軍を討ち滅ぼしてやる。
どこから出たのか分からない自信を胸に、シグナムは北の大地を目指した。
こうしてシグナムは、北の大地において魔王軍と決戦し、
世界に平和をもたらした…訳などなく、惨めに敗走していた。
「ちょ…、聞いてねぇえええぞ!なんで一番最初の大陸で、
あんな化け物が出るんだよぉおおおお!」
シグナムの後ろを、首なし騎士やその従者のゾンビ達が追い掛けて来ていた。
振り返ろうものなら、首を跳ね飛ばされ、身体も八つ裂きにされてしまう。
自分の首を、首なし騎士のバレーボールの球にされるのではたまらない。
途中、幾度となく自分の首筋を風が掠り、それが死神の声の様に聞こえた。
現に、背後からも死者の軍団が追い掛けて来ているので、
あながち聞き間違えではないのだろうが、その声を受諾しようものなら、
あの軍団のお仲間にされてしまう。それだけは勘弁なので、
シグナムは、息が切れても、体力が切れても、最後は気力で走った。
そして、町まで戻ってきた頃には、既に日は沈み、シグナムの精も根も尽き果てた。
シグナムは宿に泊まりたかったが、金などあろうはずもなく、
しかも既に道具屋も閉まっていたので、どうすることも出来なかった。
地べたで野宿など、王族の沽券に関わるので、それだけは回避しようと、
シグナムは眠気に支配されつつある頭で、必死に考えた。
そして、考えた末に思い付いた案が、
自分の能力を使って図書館に忍び込む、というものだった。
図書館の扉の前までやってきたシグナムは、まず鍵穴に灰を流し込んだ。
そして、鍵穴が灰でいっぱいになったら、灰を固め、それをゆっくりと取り出した。
これで即席の合鍵の出来上がりである。シグナムはそれでもって扉を開け、中に入った。
王族の沽券を守るために、住居不法侵入の犯罪を犯したことは、
考えてみれば本末転倒であるが、考えたら負けである、とシグナムは割り切っている。
要はこのことがばれなければいいのである。シグナムは根っこの部分が犯罪者であった。
図書館に侵入したシグナムは、テーブルを繋げて即席のベッドを作った。
これなら、あの汚い宿のベッドで寝た方がましであると思えるくらいの出来の悪さに、
シグナムは思わず涙ぐんでしまった。
即席ベッドに寝転んだシグナムは、すぐには眠らず、
『ファーヴニル国風土記』をパラパラとめくりながら、
今日戦った首なし騎士について調べた。
灰による攻撃を受けてもびくともしなかった魔物の弱点を探し出し、
明日辺りにリベンジしてやろうという魂胆だった。
しかし、どのページを見ても、首なし騎士の情報は載っていない。
シグナムは奇妙に思った。
この本は、この大陸の魔物だけではなく、
風土、産物、文化、伝説などがこと細かく書かれた一大書籍であり、
読んで分からぬことはないと言われるくらい信憑性の高い本なのである。
その様な本に載っていないということは、考えられることは三つしかない。つまりは、
一つ、記載し忘れた
二つ、新種の魔物
三つ、北の大陸、もしくはそれ以外の大陸からやってきた魔物
と、いうことになる。
多分、二番か三番のどちらかであろう。そうでなければ説明がつかない。
だが、分かったこともある。
それは、今の状態のままで北の地方に行こうとすれば、死ぬ、ということである。
シグナムは、現時点でのリベンジを諦めざるを得なかった。
しばらく風土記を眺めていたシグナムは、伝説の項目に至った。
流し読みをしていたシグナムは、ふと、シグルドの聖剣というページに目を止めた。
『ファーヴニル国の建国者であるシグルドは、魔王討伐に際し、
自らの剣では魔王を殺すことは出来ないことを知り、
天啓に従って、現在のファーヴニル城よりはるか南方にある町、ニプルヘイムに向かい、
そこの湖の精霊から聖剣を授かった』
そこにはそう書かれていた。
つまり、シグルドは聖剣を手に入れたから魔王に勝った、ということになる。
これから魔王を倒そうとするシグナムにとっても、これは重要なアイテムである。
明日か明後日辺りに、ニプルヘイムに向かおう。シグナムは本を閉じた。
朝になった。こもりこもった湿気を吸い込んだシグナムは、
司書職員が来る前に、図書館から脱出した。
とりあえず、最初にシグナムは道具屋に向かった。
今まで手に入れたアイテムを売って、金にしようというのである。
道具袋に入っていたのは、スライムの眼球四つのみだった。
他にも色々入っていたのだが、首なし騎士から逃げた時に落としたらしい。
どうやら、逃げると物を落としてしまうのが、自分の宿命らしい。
眼球は、一個25Gで売れた。四個で100Gである。
この100Gでどうしよう、とシグナムは考えた。
100Gでは買えるものも限られてくる。
シグナムが考えていたのは、防具を買うか、仲間を雇うかのどちらかであった。
防具だと、単品しか買えない。兜だけ装備して、鎧を装備しないのは格好が悪い。
仲間を雇うにしても、100Gで雇える人物がいるのかも不安である。
考えた末、一度酒場に向かい、雇える人物がいなかったら、
防具を買うで、シグナムの考えは固まった。
酒場は、様々な情報が錯綜する場所であり、腕に自身のある者が集う場所でもある。
シグナムは、マスターに頼み、登録表を見せてもらった。
そこにはずらりと名前と職業と金額が書かれている。
金額が高ければ高いほど、それが優秀な人物であることを表している。
シグナムは、表の頂点の1500000Gの戦士は無視し、持ち金に近い金額を探した。
書かれている金額は、殆どが持ち金以上ばっかりで、
シグナムは半ば諦めかけていたが、表の最後に100Gの金額を見付けた。
名前はイリスと書かれており、職業は字が汚くて分からなかった。
シグナムは誰か一人くらいは旅の仲間が欲しいという楽観から、これにすることにした。
マスターは一瞬残念そうな目付きをしたが、すぐにそれを笑貌で隠した。
前金を払い、契約書にサインをし終えると、マスターは奥へと入っていった。
しばらくしてマスターが連れてきたのは女性だった。
女性の服装は独特だった。
ボンボン付きの帽子をかぶり、ダブダブの服に、ヨレヨレのズボン。
極めつけは、それらが黄色一色で統一されていることだった。
「マッ…、マスター…、一応聞くが、イリスの職業は…?」
「お笑い芸人です。表に書いてありませんでしたか?」
シグナムは愕然とした。そして理解した。だから、あんなに安かったのか、と。
安い楽観は、重く苦しい悲観に変わる、ということをシグナムはこの時知った。
「…ではイリス…、君の特技はなにか教えてもらおうか…?」
酒場の片隅では、シグナムのイリスに対する質問が行われていた。
とりあえず、仲間の実力を知っておかないと、魔物との戦闘で支障が出てしまう。
「はっ…、はい!人を、笑わせることです!」
それで返ってきたのが、これであった。
「………………」
正直、それが戦闘でなんの焼くにも立たないことくらいすぐに分かった。
「人を笑わせる…か…。では、一つ笑わせてもらおうか…」
とりあえずイリスの実力を試すことにした。
戦闘が駄目でも、旅のムードメーカーとして働いてもらおうと考えることにした。
「わ…、分かりました」
イリスがニ、三度咳き込んだ。
「いきます…。隣の家に囲いが出来たんだってね、へぇ〜、かっこいい…」
「……………………………………」
酒場の喧騒が一瞬の内に静まった。物音もしゃべり声もなにも聞こえない。
まるで、時間が止まった様だった。いや、凄まじいほど寒いので、
凍った、といった方が正しいかもしれない。
「あっ…、あの…、シグナム様…」
イリスが、凍った様に動かなくなったシグナムに声を掛けた。
イリスに呼び掛けられて、シグナムは我に返った。ついでに辺りの喧騒も甦った。
「なるほど…、イリスは氷属性のお笑い芸人だったのか…」
「そっ…、そんなんじゃありません!」
一人納得するシグナムに、イリスがつっこみを入れた。
「それで、なんでお笑いの才能もないのに、お笑い芸人などに…」
イリスには、ギャグでその場を凍らせる能力があると理解したシグナムは、
お笑い芸人としては死活問題のその能力で、
なぜお笑い芸人などという職に就いたのか聞いた。
「お笑い芸人になったのは、戦士や魔法使いになるための才能がなかったからで、
本当のことを言うと、お笑い芸人の才能もなかったんですが、
見た目だけならなんとかなるだろうということで、この服を着ているんです」
「つまり…、君は本当はお笑い芸人ではなく、ただの平民ということになるのか…?」
「そういうことになります」
イリスがきっぱりと正直に言ってのけた。
シグナムは正直、この契約を解除したかった。
しかし、契約書には二人の内のどちらかが死に別れるまで、
契約を解除することは出来ないと明記されていた。
結局、こいつを連れて行かなければならないのか、と思うと、
シグナムの前途は暗いものに思えた。
「はぁ…、とりあえずイリス。私はこれから南の町のニプルヘイムに向かう。
君は邪魔にならない様に、私の後ろから離れないように注意してくれ」
「分かりました。シグナム様」
イリスは、無駄に元気だった。それがシグナムを余計不安にさせた。
投稿終了です。
内容のかぶってしまったものがありますが、とりあえず続けます。
あと、これからは夢ネタは極力自重します。
とりあえずいつになったらヤンデレっぽくなっていくのかだけ教えて
ぽけ黒の規制はもう大丈夫なのか?
果報は寝て待てと言うでは有りませんか。
変歴の作者さんがヤンデレ無しで行く何て有り得ませんよ
のんびりと待ちましょうよ
我慢できない早漏乙
ぽけ黒だってヤンが出るまでそれなりに話数があったろ
なんで結果だけ求めるんだい?過程こそ面白いのにね。
そういえばこのスレは、恋敵を殺さない人道的ヤンデレが多くていいですね
>>132 GJです
変暦伝もこっちも、どっちも楽しみにしとります
>>138 確かに最近は多いね
非人道的なヤンデレも好きだぜ
ヤンデレは賢者になってからだな!
きっと、積もりに積もったものが大爆発するぞ!ドドリア先生のようにな!
「みーーな殺しだ!」
>>138 だって一度やったらタガが外れちゃうよ? ペッシみたいなマンマモーニになっちゃうよ?
ニュー速板を見てたら思いついたんだが
恋敵を殺ったヤンデレが逮捕されてからの話
要するにヤンデレに近しい人物の視点で事件後の周囲を書いた短編はここのスレ趣旨に合う?
スレチじゃないだろうし、いいと思うよ
すごく…wikiを更新してほしいです
しばらく前から週一更新になったよな
どうやら管理人がやばいみたいだから更新頻度上げたいんなら有志を集って何とかするしかなさそうだな
まあウィキだから、知識とユーザ登録があれば編集できるんだろうけど、どっちもないorz
登録は自分でできるけれど、人様のはちょっといじれないなあ。
(wikiに、登録した作品名や作者名自体を変更する権限は、管理者でないとできないが、
作品の登録自体や、内容の編集、リンク付けはユーザー登録がなくてもできる)
今月もポケモンは投下されないのか…
, - 、
───┐ ! ヒュー
□□□│ ・
□□□│ |\
□□□│i´  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
□□□│| ∧_∧ |
□□□│| ( ´∀`)オマエラ |
□□□│| /, つ オチケツ |
□□□│| (_(_, ) |
□□□│| しし' |
□□□│!、_______,ノ
._. │
| | | │
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
インスピレーションを得たいので、ヤンデレの愛を歌ってるような曲を教えてください
ALIPROJECTの阿修羅姫なら持ってます
>>152 睡蓮の曲はほとんどヤンデレみたいなもんだよ
あなたの声で呼ばれないなら名前などいらない〜♪(「カナシミ」)
あと、椎名林檎の「警告」とか「シドと白昼夢」もかね
洋楽ならDresden Dallsの1stアルバム収録曲の歌詞はたいていヤンデレくさい
いかんせん顔と声がオバンだけどw
>>152 戸川純「好き好き大好き」「肉屋のように」「コレクター」
太鼓の達人サントラ「エゴエゴアタクシ」
戸川純はヤンデレ曲多いよ。
>>152 懐かしいがCOCCO全般。透明な歌声で濁ったものからドロドロしたのまで唄う名曲揃い
女性の心の深く濁った闇を歌ってる感じでGood!インスピレーションありありで良いと思う
Janne Da Arcのナイフ
男だけど
あれ?
ポケモン黒まだだったかー
もうねるかな
>>156 RURUTIAの「愛し子よ」、倉橋ヨエコの「人間辞めても」
前者は母親の愛という解釈もできるけど、まさにこのスレで扱うヤンデレな感じもする
保存できないので、途中ですが投下させてください。
後五分後ぐらいに投下。
外見描写してないんで大丈夫かと思いますが、冒頭にぬる〜〜いロリエロが有るんで、苦手な方は『はのん来訪者』でNGお願いします。
それと一部、別スレに投下したSSの文を流用してる箇所があるんですが、もし見た覚えがあっても、それはさらりと流してね。
1
ぬるま湯のシャワーを垂れ流しにして、浴室の中、スポンジマットの上で、幼い肉体がぶつかり合う。
少年のペニスは容赦無く幼子のアナルに出し入れされ、直腸粘膜をゴリゴリと押し拡げながらハメ倒している。
ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん!!
「ふあぁぁぁぁぁん!! にぃにぃ、ヤらぁっ……あ、あっ、ゃあぁっ、おちりいたいよぉっ!!」
四つん這いになり、ハイハイで逃げようとするのは、まだ3歳で入園したばかりの美木仁 はのん(びきに はのん)。
しかし、ハードローションを大量にブチ撒けられたマットの上では無駄な抵抗。
僅かに前へ進んだとしても、腰を掴まれて容易く戻される。
「ごめんねっ、はのんちゃん……でもっ、ちんちん気持ちよくてっ、とまらないんだよぉっ!!」
後ろから腰を振り立てるのは、小学生三年生で9歳の美木仁 石榴(びきに ざくろ)。
二人は実の兄妹で、どちらも年齢一桁の子供で、だけれどもアナルセックスで感じ合っていた。
幾度の腸内射精でばちゃばちゃと泡立つ肉穴の中に、未だ固さを失わない杭が一定のリズムでネジ込まれる。
「はのんちゃん、はのんちゃん、はのんちゃ……はの、んんっ!!?」
ぱちゅん! ぱちゅん! ぱちゅん! びぎゅ、びゅるびゅるっ、びゅぼおぉっ!! ばちゅん! ばちゅん!! ばちゅん!!
ピストンしながら中出しし、中出ししながらピストンする。ざくろは大量に流し入れた精液を更なる潤滑油に、果てる事なく幼い肉壺を掻き回す。
「ひゃぁぁっ!? んにゅ、んあっ、ふぎゅ、いっ、たっ、ぃあぁぁぁっ♪♪」
はのんも情熱的な兄のペニスに屈伏し、無理矢理ほぐされて弛筋したアナルで、ついに初アクメを迎えたのだった。
直腸粘膜……つまりは内臓を犯されてイキ、ビクビクと震えながらのけ反った後、ゆっくりマットへと崩れ落ちる。
「あぁっ、はのんちゃん! もっと、もっとぉっ!!」
そのせいでペニスはしばらくぶりに穴から顔を出し、セックスのし過ぎで赤く痛々しく晴れ上がっていた。
もはや刺激されても気持ち良さなんて無いが、それでも射精する瞬間の、刹那の快楽の為に妹へとのしかかる。
はのんが小さく呼吸する度に、拡がった尻穴からは精液が逆流し、それを塞ぐようにして、ざくろはペニスの先端を挿入口のへりに押し付けた。
「はい、すとーっぷ!! 私は身体を洗えって言ったのよ? それなのに……抵抗できない妹をレイプするなんて、どういう事なのっ!?」
しかしそこまで。再びはのんの内臓を擦り上げる事は無かった。
何故なら、浴室の戸を開けた人物の一言により、ざくろの表情は青ざめ、ペニスは急激に縮こまったから。
「あっ……にーねぇ、ちゃん……ごめんな、さいっ、うっ、うぐっ……うわあぁぁぁぁぁん!!!」
腕を組み、鋭い視線でざくろを睨むのは、ざくろの姉、美木仁 新菜(びきに にーな)。
仕事で両親が家を空ける事は多い。それでも、17歳の若さで高校に行きながら二人を優しく育てて来た。
今まで怒る事はほとんど無かったのだ。怒りたくも無かった。だが、今回は別。本気で怒っている。
本気で怒っている……表面上は。内心は込み上げる笑いを隠すのに精一杯。
「ほらっ、手伝ってあげるから、身体を洗いなさい!」
だって……ざくろは、我慢できずに、はのんを犯す。それがわかっていて身体を洗ってやるように指示したのは、他の誰でもない、実の姉、ニーナなのだから。
『はのん来訪者』前編
2
アスファルトの地面さえ溶けて流れ出しそうな、残暑の終わらぬ初秋の朝。
ただ居るだけで汗を掻き、息をするだけで体力を奪う。季節外れの熱帯温度。
そんな思考能力も低下させる日。一人の女は蜥蜴(とかげ)になる。キッチンの壁にピッタリと身体を寄り添え、物音も立てずに耳を澄ます。
「はぁっ……ざくろぉっ」
目を細め、涙ぐませ、想像し、長い黒髪は赤く染まる頬に張り付き、この世の誰よりも妖艶に人の道を破棄する。
女の行為は最低も最低。
「あっ、でたぁ♪ 凄い、たくさん……でてるよぉっ♪♪」
オシッコの音を、壁に耳を押し当てて聞いてるのだから。
「あっ、おわっ……ちゃったぁ。うくっ、ぐっ……私は、最低だっ!」
壁に寄り添ったまま、自己嫌悪でズルズルと崩れ落ちる。しかしどれだけ罵っても、トイレの音を聞いて興奮していたのは事実。
弟が放尿する音を、息を熱くして、恋する乙女の顔で盗み聞きしていたのは事実だ。
ブラコン、ショタコン、サディスト、その三つを保持する変態三冠王、美木仁 新菜。女として、実の弟、ザクロを寵愛する愛欲の姉。
弟の泣き顔が好きだった。
弟の泣き声が好きだった。
どこが好きだ? と問われれば「全て」と答え、
いつから好きだ? と問われれば「産まれる前から」と答える程に……
17を迎えた姉は、9歳を迎えた弟に、恋をしていた。
だからこの行為も、そんな感情のネジ曲がり。目尻からは涙が零れ、白いタンクトップは汗に濡れて胸の形を浮かべ、下着とジーンズは汗と愛液でぐっちょりと変色している。
トイレの音をおかずにして、膣壁を小突かれる様を妄想していたのだ。
「あれっ、どうしたのにーねぇ?」
ザクロはトイレの戸を閉め、台所で手を洗おうとして、壁に寄り掛かり正座して動かない姉を発見する。
「今日、サッカーの試合なのよね?」
そして蛇口を捻り、冷水で手を洗い、タオルで拭いた後に、やっとそれだけ返された。
新菜は下を向いたまま。床に座ったまま。
「うんっ! そうだよぉっ♪♪ 帰りは午後になるからねっ。じゃ、いってきまーす!!」
姉の様子が少し変だと気付いてはいたが、ザクロはこれから始まる試合が楽しみで仕方ない。故にワクワク感が心配を押し切り、スポーツバッグを肩に掛けて玄関を飛び出させた。
残されたのは、女としての本音を隠し、姉として弟を送り出す、恋を覚えた一人の少女。
「いっちゃ、イヤ、だよぉっ……」
されど、そんな思いは禁忌そのもの。叶う事は一生ない。
「わかってる、わかってるよ……ざくろが大人になるまでよ。それまでは側で守ったげて、ざくろが大人になったら……私も誰かと結婚する」
鋼の決意を、ダイヤモンドよりも硬い覚悟を。
「にーねぇが、守って……あげるからねっ!!」
3
太陽光線がアスファルトを唐揚げる真夏日。
私立轟冠小学校の校庭で行われているのは、地区を代表する小学生サッカーチームの決勝戦。
三百を越えるギャラリーに囲まれ、二十二の子供達が緑のフィールドを駆け回る。
チーム『K’』(けーだっしゅ)と、チーム『オロチ』。点数は1対1で、時間は後半ロスタイム。
「チームK’、ミッドフィールダー平坂君に代わりまして美木仁君!!」
ここまで来て、チームK’の最終兵器が投入された。
ベルベットの様に柔らかな身体に、ウィップの様にしなやかな脚力を持つ、Kの切り札、美木仁 ざくろ。
あまりにも圧倒的なサッカーセンスで、小学生が相手だと後半ロスタイムからしか出場を認められていない例外中の例外。
「いくよみんな! ラ・オル・ケスタだっ!!」
ザクロの掛け声でK’のチームメイトは息を吹き返す。疲労の色は消え、溢れるテンションモアベター。
拮抗していた戦力は覆り、K’のパスが面白いように繋がり始める。
キーパーからディフェンダーへ、ミッドフィールダーへ、フォアードへ、勿論最後は……
「これで決めるよっ!!」
受けたアンダーパスを振り向き様の右足で、ダイレクトで、一直線に打ち抜き、
「チェーンドライブゥゥゥッ、シュゥゥゥゥゥゥトッッ!!!」
ゴールネットに突き刺した。
その直後に試合終了のホイッスルが鳴り、チームメイトは喜び、相手チームは泣き、観客は大声で沸く。
「ううん、祝勝会は出ないよ。もっとサッカーの練習をしたいんだ」
表彰式の後、祝勝会の誘いを断り、誰も居なくなった校庭で黙々とボールを蹴り続ける。それがザクロ。
生れ付きメラニン色素が足らずに髪の色はシルバーで、美木仁家独特の赤く切れ長な瞳。本人の性格もクールな一匹狼で、サッカーの試合以外は大声を上げる事が無い程。
みんなと遊ばず、ボールを友達にして、3歳の頃からサッカーボールを蹴って来た。故に人付き合いは苦手で、外見的な特徴が更に拍車を掛ける。
そんなザクロにも夢が有った。普段の行動が示す通り、夢はデッカク世界No.1のサッカー選手。
夢が、『あった』。しかしその夢は、今日をもって暗礁に乗り上げてしまう……
4
奏でる蝉(せみ)は蜩(ひぐらし)へ。太陽は夕日と名を変えて、辺り一面を真紅に染める。
学校からの帰路。ゆっくりとドリブルをしながら、人気(ひとけ)の無い道を家に向けて歩く。
歩くのは身長が130センチにも満たない子供。顔だけを見れば少女にも映る中性的な少年。上は裸で、脱いだユニフォームを肩に掛け、下は黒いスパッツ。肌は小麦色に焼け、ユニフォームを着ていた部分だけが白く浮いていた。
「あーあ、遅くなったなー。怒られるかなー?」
公園の前。蜩の声を除けば、聞こえるのはボールが転がる音だけ。それは公園の中も無人で在る事を示す。ザクロの蹴るボールしか音を立ててない。
昼間には沢山の子供が遊び、公園中央の噴水も水しぶきを上げて歓迎しているのに、夕刻を迎えた途端、この公園は虫達だけの無人になる。
「晩ゴハン抜きとかだったらヤダなー」
ザクロは試合後のサッカー練習に集中し過ぎた為、門限の五時を初めて破ってしまった。
そしてその事で怒られるかも知れないと、地面に視線を向けて溜め息を吐き、トボトボと歩きボールを蹴っている。
だから気付かない。背後から近付く、息を殺した足音に。
「ふぅっ、ふぅっ……」
ソレは静かに呼吸を繰り返し、
静かに、静かに、背後から忍び寄る。
ピタリ。一歩。
ピタリ。一歩。
ピタリ。一歩。忍び寄る。
手を伸ばせば触れる距離まで接近され、ザクロは自分を覆う影でやっとソレに気付く。
「ふぇっ? んむぅぅぅぅぅぅぅっ!!?」
しかしもう遅い。振り向く前にニット帽を鼻上の位置まで深々と被らせられ、左手で口を塞がれ、胸部に右腕を回されて抱き上げられた。
「んんっ!! んんっ!!!」
本当に一瞬の隙。どんなにサッカーセンスがズバ抜けていようが、所詮は年齢一桁の小学生。
訳も解らずにパニックを起こし、足をジタバタするだけの僅かな抵抗で、簡単に無人の公園へと引きずられて行った。
後に残ったのは、主を失って寂しそうに転がるサッカーボールと、一向にやまない蜩の鳴き声。
5
ザクロは公園の隅……更に人目の付かない草むらに連れ込まれて、口をガムテープで閉ざされて仰向けに倒された。
手首には手錠を掛けられ、巨木の幹を迂回してもう片方の手首に掛けられている。
「んむぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
泣き叫んだって誰もきやしない。足首を束ねられ、グルグルとガムテープで巻かれて固定され、身動きを完璧に殺された。
耳に届くのは……
「ふぅっ、ふぅっ! ふぅぅっ!!」
先程とは打って変わる、荒く凶暴な息使い。
ソレはザクロの足を膝立ちで跨ぐと、穿いているスパッツに爪を掛けて真上に引っ張り伸ばす。
そのまま両手を使い、まるでポテトチップスの袋を開けるかのようにビリビリとスパッツを引き裂いた。
その下に在るトランクスも同様で左右に裂き広げられ、毛も生えていないショタチンコだけがピコピコと縮まって震えている。
「ふぅっ! ふぅぅっ!! 私は悪くない、わたしはわるくない、ワタシはわるくない……」
しかし、ソレの心情はザクロと真逆。大量のアドレナリンが脳内を巡り、壊れたように自己弁護を執拗に繰り返す。
ソレは姉。ザクロの実姉、美木仁 新菜。
淡いブルーに艶めく長髪と、天然ルビーも道を譲る切れ長のレッドアイズ。
見るもの全てに女を意識付ける抜群のプロポーションを、黒一色のライダースーツで覆っている。
例え人の道をリタイアしていても、ニーナは間違いなく美しかった。子供の頃の事故で左目にケガを負い、眼帯で隠してはいるが、そんな傷も美を引き立たせるアクセントにしか感じさせない。
されどたった一つ欠点を上げるなら、彼女は末期のブラザーコンプレックス。ついでに加えるなら、極度のショタコンでサディストでも有る。弟をイジメる事に性的快感を得る人物……
弟の泣き顔が好きだった。
弟の泣き声が好きだった。
お姉ちゃんごめんなさいと言われるだけでエクスタシーを感じた。
だからもっと困らせたくて、だから強姦魔のフリをして、ザクロをレイプする事に決めた。
鋼の決意は溶け流れ、ダイヤモンドの覚悟は粉々に。
これは仕方の無い事。新菜に限った事ではない。全てはザクロがイケないのだ。
イヤらしい日焼けの痕をさらけ出して歩き、お風呂上がりなんかは裸で走り回って、日焼けした手足と真っ白なオチンチンのコントラストを無意識に見せ付ける。
そんな挑発をされては、実姉と言えど狂ってしまうのは仕方ない。精通前で年齢一桁の小学生男子児童のクセに、大人を誘惑するエロショタはレイプされても仕方ないのだ。
例え、屈強な男達にガチンコ種付けファックでマワされても、これだけは、これだけはどうしようもない。
今回は以上です。
次の後編で終わります。
GJ!
これからが楽しみですね。
ヴォースゲー!
続き待ってます
GJ!
すげえ姉だなおいwww
へびお姉ちゃん?だっけ?
GJを送る前に、キモ姉妹スレのまとめで読んでくるといい。
>>172 文体が似てるってレベルじゃないの?
涼宮ハルヒの憂鬱がスニーカー大賞に選ばれた後、似たような文体の作品が角川に殺到したって感じ
だから、読んで来いって。文体っていうか、そのまんま?
>>168 最初から濃厚&そこで寸止めとは……!
これは後編が投下されるのを待つしかないか。
>>174 どちらかというと「東○み○○ゆ」と「○ナ○姉」の印象だけど。
というか
>>162で「他のスレで投下したSS〜」って言ってるし、投下者(書き手)は同じ人じゃない?
単にトリを入れてないだけで。
>>168 キモ姉キモウトスレに同じ前書きあったが誤爆だったなら誤爆といってほしいんだが
あっちでwktkしてたのにこっちに投下というはどういうことなの…
男とデートする日に牛用の強壮剤を誤って飲んでしまったヤンデレ。
元気になったが、赤いものを見ると突進したくなるという副作用が出た。
デート中何度も赤いものに突進したくなるが、持ち前の精神力で自制していた。
そんなときに、横恋慕するヤンデレ2が現れて、ナイフと取り出しヤンデレを殺そうとした。
しかし、ヤンデレの前に男が身を挺して盾となって刺された。
ヤンデレを庇って刺された男の傷口からドクドクと血が流れる。
その血の赤を見たヤンデレは自制心を失い傷口に向かって突進、男にトドメを刺してしまう。
という夢を見た
ヤンデレ大好き
ぽけもん成分がたりないよぉ…
糸色望「ヤンデレが法律を無視して、殺人を犯したからって何ですか!
世の中にはもっと大事なことを無視して争っている人たちがいるんですよ!」
戦う者 敵 争う物 無視するもの
ヤンデレ 泥棒猫 男 法律と常識
悟空 ベジータ 己のプライド その他全て
民主党 自民党 政権 財源
九条支持者 愛国者 イデオロギー 現実
特定アジア 日本 金 世界の心証
アメリカ イスラム教 アメリカの正義 アメリカ人以外の人命
ムスリム 豚 穀物 トンカツの美味さ
183 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 02:01:33 ID:c14CYOT9
>>182 もうさ、そういうのいいから
ニュー速とかでやってこいよ
財源財源言うやつは明らかに利権体質に染まってる
どこかの予算を削るという考えが出来ないから
新しい政策には新しい財源が必要だとしか考えられない
自分たちがカスも残らないほど絞り尽くしたから
もう残っていないんだ、ということに違いないって
じっちゃが言ってた
190 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 20:52:01 ID:c14CYOT9
いい加減にしろ。ここは俺のラクガキ帳だ。俺以外が荒らすことは認めない
>>187 んで?どこの予算削るの?どこかって曖昧な言い方が通用するとでも?
あれ?ここって何のスレだったっけ……?
>>187,188,191
もういいんだよ。こんなところで戦わなくても
ヤフーの掲示板とか家のチラシの裏とかいっぱいあるだろ・・・
せめてヤンデレに関係のある雑談にしようぜ
195 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:54:47 ID:sQhePDYG
投稿します。今回は前作より
少し短めです。
支援
197 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:55:34 ID:sQhePDYG
「極楽だぁ〜。」
さっきまで地獄にいた自分としては、この言葉のありがたさが
実に身にしみる。
ここは王国でもっとも由緒ある宿屋の一室。極上羽根布団のベッドに
筋肉痛寸前の体を投げ出した僕は、天井を見上げた。
奇跡的なことに、死者はいなかった。重傷者は数名いたが、発見後の
処置のおかげでリハビリすれば元通りになるそうだ。
僕を蹴っ飛ばしたあのお姉さんは、駆けつけてきた兵士達と
何やら話し込んでいたみたいだが、その後兵士たちとともに
どこかに行ってしまったみたいだ。お礼を言いたかったのに。
それにしても…僕は振り返る。
あの時使われた呪文は、確かに雷の呪文だった。
ディン系と総称される雷の呪文は勇者など限られたものしか使えない。
…ならば、あの人は女勇者?
違うだろうな、と僕は思う。勇者は戦闘時に先陣切って戦わねばならない。
しかし、あのケシカラン衣装は明らかに対呪文用の呪衣だった。
打撃中心の魔物が多い中、あれでは不便だろう。
「となると、魔法使いか賢者のどちらかなんだけど…。」
あの人はその後治療活動にあたっていたが、薬草や包帯を使った
ごく一般的な応急措置だった。攻撃と回復の両方にたけた賢者ならば
回復呪文を使っただろう。
となれば魔法使いとなるわけだが、普通魔法使いは雷の呪文は使えない。
少し考え込んでいると、部屋のドアをノックする音。
あいていますよと答えると、僧侶ちゃんが入ってきた。
…血染めの修道服で。
198 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:56:20 ID:sQhePDYG
「勇者さん…マッサージはいかがです?」
微笑みを浮かべながら近づいてくる僧侶ちゃん。展開のあまりの
シュールさに言葉の出ない僕を促し、ベッドにうつ伏せにさせる。
…流されちゃだめだ!ここは男として突っ込みを入れるべきだろう。
あの、どうして血みどろでイラッシャルンデスカ?
「ああ、これですか?皆さんの手当をしていたその時の血が…
え?あっ…あああああああ!」
僧侶ちゃんが慌てふためく。ようやく自分の恰好がいかに
ありえないか気づいたようだ。
…ネタじゃなくてマジだったのか。火事場での活躍で、
そうとう疲れているんだろうな。
呪文詠唱には精神力がものをいう。回復呪文を連呼した彼女は相当
精神が疲れているはずだ。そんな中でマッサージに来てくれるなんて
やっぱりありがたい娘だな。
「ご…ごめんなさいいいいいいっ!すぐ脱ぎますから!」
修道服を脱ぎ捨てると、その下から布の服が現れた。ゆっくり息を吐いた
彼女は再び僕に笑みを向ける。
「勇者さんも危険な中、本当にご苦労様でした。大切なお役目もあることですし、
ぜひマッサージさせてください。」
僕に選択権はない。今までの経験からいって、もし僕が断れば彼女は
ほとんど半泣きで『わかりました。でも、もし気が変わったらいつでも言って
下さい。私待っていますから。』と言って僕の部屋の前で膝を抱え、
ドアノブを見つめながらずっと待っているはずだ。たとえ夜になろうと、
僕の部屋から寝息が聞こえてこようと彼女なら待つだろう。
さらには、彼女の申し出をうけると彼女はすごくうれしそうになる。
…野暮な修飾抜きで、かわいい。
そんなわけで、彼女のマッサージが始まった。
199 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:57:24 ID:sQhePDYG
「気持ち良いですかぁ…?」
僧侶ちゃんの声が頭に染みわたる。こころがふわふわ踊っているようだ。
すごく…気持ち良いです。
体中のこわばった筋肉はすでに弛緩しきっている。あまり緩めすぎると
翌日にリバウンドするというが、そんなことはもうどうでもいい。
彼女からくる快楽を永遠に貪り続けたい!そんな気持ちになっている。
羽根布団のクッションもいい。あまりにも疲れていたので、勇者の特権を
発動して一流の宿屋に泊めてもらったが…本当にやばい。癖になるかも。
もちろん、勇者は民を救うのが役目。あまり経済的な負担を強いるのも
よくないことだ。加えて僕はそもそも魔王(?)バラモスを倒す意思がない。
豪遊した揚句『魔王討伐の話はフカシ』だったら、あっという間に
リンチの憂き目にあうだろう。
「勇者さんの顔…日向ぼっこしているネコみたいで…かわいいです。」
心なしか僧侶ちゃんの声に艶が出てきた気がする…何故に?
僕は僧侶ちゃんにお礼を言おうとして、うつぶせになっていた顔を後ろに…
その途中、妙なものが眼に入ってきた。
ぬののふく。
そう、まぎれもない布の服が血まみれの修道着とともに脱ぎ捨てられているのだ。
…あれ?何で?
答えはわかりきっている。いつのまにか彼女が脱いだのだ。うん。
いや、いやいやいやいや。そんな馬鹿な。いまはマッサージ中だぞ。
マッサージ中に僧侶ちゃんが服を脱ぐなんてそんな必要が…大体、服を
脱いで行うマッサージなんてあるはずが…待てよ。
恐ろしい仮説が頭の中で組み立てられていく。
この世界には『PAHUPAHU』というものが存在するらしい。
あえてこの場での説明は控えるが、確かにこれなら今の状況もうなずける。
…ダメ、絶対!
僕の中で妙なフレーズが駆け回っている。
据え膳食わぬはなんとやらとは言ったものの、僕は僧侶ちゃんに
そんなふしだらな女性だというイメージを抱きたくない。
まあ確かに若干抱きつき癖はあったけど、君はそんな娘じゃないだろう?
だからお願いだ。僕は今から後ろを振り向くけど、その僕の目に
とんでもないものを見せないでくれ。後生だから。
おそるおそる僕は彼女を見ようとふりm…
200 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:58:40 ID:sQhePDYG
「危ない!」
一瞬の出来事。僕は僧侶ちゃんを抱きかかえ、そのまま跳ね起きた。僕の
頭がさっきまであった場所にナイフが突き刺さる。
どこからだ!?
部屋の隅に僧侶ちゃんをほとんど押し飛ばすような感じで隠した僕は
ベッドの脇に置かれていた短剣を手に取る。
その刹那、再びナイフが僕を襲った。あまりの速さに僕はかわしきれず、
ナイフは僕の腕に赤い一筋を残し、壁に突き刺さった。
しかし、僕は二撃目で襲撃者の影をとらえている。窓の外に怪しい人影が
消えていった。
突然の出来事に真っ青になっている僧侶ちゃんにここで待っているように
伝える。彼女は何か言いかけようとしたが、その時にはもう僕の姿は
なかった。
襲撃者の足はかなり速かった。路地裏をすり抜け、なるべく人気の
少ないほうを選び逃げていく。
追手を撒くのに効果的なのは人ごみに逃げること。これは古今東西
問わずして逃走者のセオリーなのだが、あいにく襲撃者には無理な
注文だろう。やつは頭から踝にかけてすっぽりと薄汚れたフードを
身にまとっている。…目立ってしょうがない。
ただ、そういう僕も不利だ。市街地でまさか地獄のいかずちを召喚
するわけにもいかないが、さっきのマッサージでふにゃふにゃの筋肉で
やつに追いつけるとは思えない。
っていうか、さっきのマッサージ、気持ちよかったな…。
そういえば、さっき僧侶ちゃんは胸にサラシを巻いていた。これから
それも外すつもりだったと言えばそうかもしれないが、僕は信じてる。
彼女はただ暑かったから服を脱いだんだ!
陽だまりのネコ状態の無防備な僕を見て
『あなたとね。今日がチャンスね。次のステップ進みたいの。』
などということはありえない!
彼女は冬将軍ヒロセでもなければ、ここは雪降りつもる真冬のゲレンデでもない。
…いや。溶けるほど恋はしたいけど、それには手順を踏んで…。
彼女は長い黒髪、おしとやかな物腰、可愛らしい笑顔の大和なでしこだ。
そんな積極的な娘だとは考えられないが…。
201 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 21:59:20 ID:sQhePDYG
「あの…。」
待てよ。僕は思考する。そもそも僕は彼女の何を知っているというんだ?
僕のことを気にかけてくれているのはうすうすわかっている。ただ、それが
僕への好意からくるものなのかは判別しがたい。人見知り癖のある僧侶ちゃんが
他の人と話す機会はあまりないが、だからこそ僕と他人の比較ができない。
…好いていてくれたらうれしいんだけど。
「ちょっと…。」
その時だった。僕はようやく思い出した。火事場の時に僧侶ちゃんに
感じた一瞬の違和感。もやもやとしていたそれが、さっきの布の服騒動で
ようやく姿を現したのだ。
あの時、彼女の服が変わっていなかった。
修道着は所属する教会や宗派で同じデザインで統一される。彼女も同じ
修道着を何枚か持っていても当然のこと。
しかし、火事の現場で見た彼女の服は明らかに王宮前で会った時のそれと
同じもの。雨のシミや、僕に抱きついた時の皺があったはずだ。
彼女は確かに着替えてくると言って僕と別れた。もちろん心変わりした
可能性もあるが、お城から見て酒場と教会は逆の位置にある。
距離と時間的に見ると彼女は教会に戻らずに酒場に行ったことになるが…。
どうしてかと整理してみる。
「もしもーし?」
可能性としては、教会に戻る途中何らかの理由があってただちに酒場に向かった。
あるいは、その時間に絶対に僕に酒場に行って欲しくない理由があり、
着替えてくるよう僕に仕向け、自分は酒場に向かった。
…ん?僕の首元にあるナイフはなんだ?
「私の話を聞け!」
202 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 22:00:18 ID:sQhePDYG
「全く…突如追っかけまわすのをやめたと思ったら急に一人でブツブツ
呟きだして…。心配したぞ。」
僕は今、怪しげなフードにナイフを突き付けられた状態で説教されている。
ナイフを突き付けて『心配したぞ』はないだろうに…。
「鼻の下のばしてニヤニヤし始めたと思いきや、急にシリアスな
空気が漂い始めたし…。相変わらず落ち着きのない…。」
妙な言い方だな。大体、僕に全身フードの変態じみた知り合いなんて
いないぞ。相変わらずって…僕の何を知っているというんだ!
あれ?頭がずきずきする。思い出したくないものがあるようなないような。
「お前、私に命を狙われる理由は分かっているだろうな?
あの日あの時あの場所でおまえは私を…ぐずん。」
悲しい思い出でも思い出したのだろう。フードの肩が細かく揺れている。
僕はそんなフードにどういった言葉を投げかけていいか分からずに…。
「火炎呪文、メラ。」
火の玉を投げつけた。
フードに火の手が上がる。あわてて挙げたフードの手元を見た僕は、
相手の肘を下から押し上げるようにして動きを封じ、フードで見えないものの、
たぶん相手の鳩尾があるであろう場所に肘鉄をくらわせる。
「胡散臭いフードめ!顔を見せろ!」
僕はその場でうずくまるフードに近づき、燻っているそのフードをはぎ取った!
女の子だった。年は僕とほとんど同じぐらいだろう。顔は汚れていて
化粧っ気など全くないが、元がいいのか可愛らしい。
ショートカットの髪、丸くて大きな瞳、ほっそりとした体躯と
引き締まった手足。ショートカットの髪からのぞくイヌミミはぴくぴく
動き、後ろにはゆらゆらゆれる尻尾
…はあ!?
203 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 22:01:12 ID:sQhePDYG
はるか東にあるという島国、ジパング。
鬼道を操るという太陽の巫女の統治によって成り立つこの国には変わった
風習がある。
その中の一つが地獄思想。そしてさまざまな地獄がある中でも忌み嫌われる
ものとして畜生道というものがある。
この国は、悪人に与える刑罰の中にそれが取り入れられているのだ。
体に特殊な刺青を彫られ、魔力を流し込まれた罪人は人としての姿を保てず、
犬や馬、タヌキやシジミなどといった動物に変えられ国外追放されるのだ。
捨て子だった少女はある日、空腹のために盗みをはたらきとらえられた。
この国にある身分制度の禁を犯し、格上の者の食べ物を盗んだ彼女への
罪は重く、この刑が施行され、犬となった彼女は小舟であてもない海に
放り出された。
運が良かったというべきか小舟は大陸に流れ着き、彼女はしばらくは
生きながらえることができた。ゴミをあさり、町人からは野良犬よと
避けられながらも生きてきた。
ゴミから見つけ出した残飯で飢えはしのげた。
でも、愛情が欲しかった。
自分を捨てた顔も知らぬ親、身分ひとつの理由で自分をこのような姿に
した制度。冷たくあしらう周囲。
最初は元の姿に戻りたいと願い続けてきた彼女も、次第に目的は
小さくかすかなものに変わっていった。
『ただ、頭を撫でられたい。』
しかし、そんな小さな望みも叶わなかった。
ある日、一人の少年とであう。
誰からも避けられてきた自分に微笑みかけてくれた少年。
おなかだけでなく心も満たしてくれたお弁当。
火サスよろしく脳天に何度も振り下ろされた得体の知れぬ凶器。
犬耳と尻尾だけ残された中途半端な肉体。
命を救った恩義を花瓶の一撃で返された憎しみ。
それらすべてをくれた少年を見つけ出し、シバキ倒す。
イヌミミ少女となった彼女に、生きる目的が出来た瞬間だった。
204 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 22:02:21 ID:sQhePDYG
「こんな…ムグムグ…ふざけた誠意のみせかふぁ…ングング…で(ゴックン)
私の怒r…ムシャムシャ…おさまるとでも思ったら…あ、これも食べたい!」
目をキラキラさせて注文を入れる目の前の少女を見て、僕はやるせない
気持になっていた。
…全部思い出しました。僕のせいです。本当にゴメンナサイ。
あのフードがまさかこの女の子だったとは…なによりこんなに可愛かったとは。
裏路地にある酒屋に彼女を連れ込み、突如現れた勇者と少女(ほとんど裸)に
困惑する店主に女物の服とありったけの料理を頼んだ僕は、気の利く
女将さんに回してもらった人気のないスペースで、彼女が料理を平らげて
いくのを眺めていた。
「ング…すごいな…腐っていない鳥料理とはこんなにおいしいものなのか。
どの料理も温かいな…。…これはなんだ?」
「それ?スコーンっていうものだよ。」
酒場にはあまり見慣れないそれは、店主がサービスとして焼いてくれたものだ。
ガラスの小瓶に入れられた蜂蜜が横に添えられている。
時々むせ返りながら、それでも幸せそうに食器を空にしていく彼女を見ていると、
食べ物の魔力がわかった気がする。言葉や態度はごまかすことができても、
食材やそれに込められた愛情や優しさはごまかせない。本当の幸せっていうのは、
哲学的に語られるようなものではなく食べ物からくるのだろう。
「さりげなく今きれいごとでごまかさなかったか?」
「あれから、ずっと盗賊をして暮らしてきた。」
ぽつりと彼女が語り始める。女将さんから受け取った服がよほど気に入ったの
だろうか。辛い話のはずだが、さっきよりも表情は柔らかい。
「ただ、どんなに盗賊で稼いでも、盗賊ギルドに全部持っていかれてしまう。
…今まで残飯以外食べたことがなかった。料理というのは、おいしいものなんだな。
初めて知ったぞ。」
原因は僕にあるものの、彼女の体は生きていくのにつらかっただろう。
今は魔族と争っているこの社会では、彼女がいかに人間らしくてもその
耳と尻尾だけで魔族の仲間とされ、運悪ければ殺されてしまったかもしれない。
容姿をフードで隠し、日蔭者として歩んできたのだろう。
「お前を殺すか…ふふ。本当はそんなことどうでもよかったのだ。
お前に攻撃を仕掛けたら、お前は私を必ず見てくれる。そう思って
今までいろんな町を移り歩きお前を捜した。おまえがあの路地裏まで
追いかけてきたときはすごくうれしかったぞ。どんな理由であれ、
おまえは私をきちんと見据え、追いかけてきてくれた。」
そして、ちょっと拗ねたように
「…途中までは。」と付け加える。
205 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 22:04:06 ID:sQhePDYG
「おいしい料理をありがとう。こうしてお前にまた一目会えただけでも
うれしかった。…でも、私は日蔭者だ。噂だとおまえは勇者なのだろう?
ならばいつまでも共にいるわけにもいかないな。」
席を立つ彼女。
「お前を恨んでなんかいないんだ。ただ、私という存在がいたことを
誰かに知っていて欲しかった…。」
最後は泣き笑いのような表情を浮かべた彼女は、その場を立ち去ろうとする。
ギュっ!
僕の手が彼女の腕をつかんだ。一瞬おびえたような表情を浮かべた彼女の腕を
見て、傷口がないことを確認すると、僕は短剣を取り出して自分の腕に
斬りつけた。
「お…おい!何をしている!?」
今度こそ本気でおびえている彼女。僕は自分の腕から滴り落ちる血を、
彼女の刺青だらけの腕に塗り込んだ。
次の瞬間、刺青が紫に光りだしたかと思うと急速に消えていく。やがて
顔以外彼女の全身に彫られていた刺青が消えていった。
うまくいった。
刺青の風習はどこの国でも古来よりあるが、その文様とは一つ一つが
意味を持ち、大切な役割を担っているという点ではどのような刺青も
共通している。
動物化の魔力は変化系呪文モシャス系統に属するもののはず。本来
一時的な効果しか持たぬはずのそれを刺青により体に半永久的に
固定したのだろう。
だが、モシャス系は魔法使いが覚える中でも高位の呪文。その頂点に立つ
竜変身ドラゴラムともなれば、この世界でも使い手は数人程度だ。
いくら刺青を施しても、繊細な呪文を半永久的というのは無理がある。
前のラーの鏡のように、刺青より強力な魔力があればそれに疎外された
文様はその部分から崩れ去るはず。
そして僕の血に宿る呪いはラーの鏡ですら打ち破れぬ強力なもの。
きっと効果はある!
彼女のイヌミミと尻尾がポンと音をたてて消えた。
驚いたように自分の頭とおしりの撫でまわす彼女。やがて…。
「にんげん…人間だ!私は人間に戻れたぞ!」
大喜びする彼女。僕はそんな彼女の頭に手を当てくしゃくしゃと撫でまわす。
「…僕と一緒に旅をしないか?君も新しい自分を見つけてみようよ。」
彼女の返事なんて聞くまでもなかった。
…っていうか聞けなかった。視界が急速に歪みだす。
しまった。調子にのって斬りすぎた。
僕の意識が暗闇に沈んでいった…。
続く。
206 :
そして転職へ:2009/08/02(日) 22:05:33 ID:sQhePDYG
以上です。ちょっと焦って書いた感じがしますが、
次回も課題点を見つけ努力します。
うん
>>206 GJっす
着々と仲間が集まって来ました
さて、どんな修羅場に発展するか楽しみにしてます
GJ!
勇僧に、盗と魔?
リメイク版なら鉄板に近いパーティー編成ですなw
>>206 GJ
イヌミミもったいな…いや、これでよかったんだ…
キタキタ。GJ!!
GJ!
てか、シジミに変えられてたら悲惨だなW
今日はヤミの日か…
8月はヤンデレだったのか…
ぽけもん黒の作者まだ規制されてんの
指で左右に開かれた私の粘膜に、男性の熱い肉塊が触れたのが判った。私は最後の力を
振り絞って、挿入を阻止しようと右に左に腰を捩って抵抗した。
「男くん、お願い男くん助けて――ッ!!」
私はここにいない愛しい人の名前を思わず叫んでいた。
肉塊を外そうとする。けれども無駄な話だった。
「いやああぁぁっ!!」
肉を押し分けて、太った男子が私の膣内へ一気に侵入を果たす。
人並みの容姿だが優しい彼の顔が脳裏に浮かんで、胸が張り裂けそうだった。
「ハァハァ……ラッキーだったよ、ヤンデレさんで童貞卒業なんて……」
ムリヤリ押し倒した形で結合した私を、目の前の太った生徒は息を切らしながら感極ま
った表情で呟いていた。
私の都合も考えずにただがむしゃらに腰を振る。男子生徒の醜い塊が太腿に当たるのが
触覚で分かった。
男子生徒は私に覆い被さり、顔を両手で引き寄せた。
私は首を振って抵抗したが、奴は私の唇に吸い付いてくる。唇を割って舌を侵入させて
きた、ロクに歯磨きもしていないだろう口の中が生臭い。
中略
引き抜かれると同時に、私の中でどろっとした重たい感覚を覚える。
――出されてしまった
自らの意志でこそないけれど、これで男くんを決定的に裏切ってしまった。
休む間もなく別の男が私の膝を持ち上げられる。二人目が私に挿れようとしているか……
ヤンデレが主人公への想いが報われなかったばかりか、上記の様に最終的にチームレイプされる話はどう思いますか?
>>219 まず最初に一言なにかジャンルの注意書きを入れたほうが吉
それは基本的にNTRスレとか陵辱スレ向き
目隠しした後に、主人公がヤンデレを凌辱する作品なら読みたい
付きまとわれた復讐みたいな感じで
凌辱?むしろご褒美です
>>219 単なる陵辱物であって、ヤンデレであることに何の必然性も感じられない
『鬼哭街』を最低10回はプレイして出直して来い
>>220-222 ヤンデレによって危害を被ったヒロインの兄弟による報仇雪恨のプランって設定なんですが、でもダメですか?
>>226 短編でそれだけとかここでやる意味が分からない
長編の話の流れのあくまで一部ならまだ分からんでもないが、そこだけ書くとかまさに板違い
そもそもここの住人はただの陵辱なんて求めてないぐらい分かるでしょ
ヤンデレ描写と凌辱描写の質や量のバランスにもよると思うけど
凌辱スレに投下した方が無難ではあるかも知れない
すみません
完成させた後、該当スレッドに投稿します
このスレ的には年の開きが大きくても大丈夫なのか?
17の主人公に対して30のヒロインは流石に抵抗とか有るだろうか
可愛ければよい
ハードル高いだろうけど
>>230 個人的には好物なので問題ありません。
投下、待っています
実際問題30でも20台前半に見える人もいるし問題ないんじゃね
思い出して調べたらよづりが二十八歳だったから前例あるってことで大丈夫だろ。
>>216 その理論だと8月6日は「病む日」。
そしてその日は広島原爆投下の日だ……
つまり広島への原爆投下はヤンデレが少なからず関与していたんだよ!!!(AA略)
>>235 架空の妄想で遊ぶ分にはともかく
原爆なんていう悲惨な出来事をネタにするなんてお前なに考えてるの?
もうちょっと常識考えろよ そして広島民に土下座しろ
まぁ、笑えないわな
はいはい、笑わなくてもいいからスルーしろよ
>>236 原爆ってそんなに悲惨かい?
中東とかと比べりゃ線香花火みたいなものだと思う。
第一それ言ったら戦争が係わるSSみんなNGになるじゃん。
はいはいスルースルーこんな所で言う事じゃねーよーby長崎県民
ちょっと人としておかしな方向へ行っちゃってる事を自覚した方がいい
何?ひょっとして自分のことまともだとでも思ってるの?こんなところにいるのに?
俺もお前も皆人でなしさ。なあ兄弟。仲良くしようぜ
そのまえに此処に居る事自体既にカナーリおかしな方向に行っちゃってる
事に気付こうぜ・・・どうせ俺たちゃ殺したり殺されたりするの見て
興奮する変態さ・・・
原爆がどんなものか想像できないヤツは、夕凪の街、桜の国とかを読んでこい
自分がどれだけバカなこと言ってるか分かるから
あと俺は誰も死なないヤンデレが一番好き
この流れのレス書いた者なのだが……本当にすまなかった。
広島市民の気持ちを考えずに軽率なことを書き込んだりして、人でなしなのは分かっているがよくよく考えればこう言うのは公衆の場で口にする言葉ではなかったな
こんなスレで原爆がどうたらとかいってるんじゃねーよ関係ないだろ
エロパロにリアルでどうたらとか言い出すおかしいぞ
ふと思ったんだが職業訓練学校…むしろドイツのマイスター制に近い制度で
ヤンデレ学校を作れないものだろうか。
入学者にはヤンデレの思想と凶行を伝授する治外法権色の強い私立学校。
卒業生で成績優秀者にはマーダーライセンスならぬヤンデレライセンスが与えられ
ライバルに対する刃傷や彼氏に対する拉致監禁が罪にならないとか。
>>247 戦前戦中の士官学校が「お国にヤンデレ」を教育してたょ
アドルフ×エヴァで書けないこともないな
心中エンド
結ばれるなら一緒に死のう→世間的に死んだと見せかけて実はジワタネホに行って、2人でボートを磨いていた
>>247 でも逆にそれって愛故にってのがうすくなりそーな
大体ヤンデレは彼と離れるのをいやがるのが多いだろうし他人から教わる愛なんてくそ食らえだとおもうんだけどなー
それはヤンデレを勘違いした基地外になりやすいとおもうし、ましてやヤンデレに成績をつけて愛の深さを測ろうなんて浅はかな考え過ぎる
>>247 ヤンデレにヤンデレという自覚があるわけだろうし、そんな学校や資格があっても拒否るだろうが
お前ヤンデレを別のなんかと勘違いしてんじゃねーの?
ヤンデレ専用の精神病院ならまだリアリティがあるんじゃないかな?
つまり養殖ものより天然物が一番だってこった
でもヤンデレ専用精神病院はありじゃね
ネタ的に彼女たちの会話でとか書いてさ
なんとなく自分の男とののろけ話ばっかりしてそうだけどさw
ヤンデレが病院から逃げたかわいいAAあったよな
カッコーの巣の上で・ヤンデレ版とか良さそう。
精神病施設に入れられた主人公を救うため、幼馴染みが患者として潜入。
施設の連中と渡り合ううちにヤンデレとして覚醒。
GJだと思うから、書いてくれ
>>257 ヤンデレって戦って覚醒するもんなんか?ヤンデレをニュータイプかなんかと勘違いしてんじゃね?
>>247といいお前といいヤンデレを勘違いしてるから「こんなのどう?」が正直笑えないんだわ
ID:DChCBGYIさんの考えているヤンデレと少しでも差異があった場合
それはヤンデレでは無いそうです。
皆さん書き込む時には注意をしましょう。
>>259 渡りあうって会話してってことだと思ったんだけど
社会に捕われない考え方に触れたことでヤンデレに目覚める、みたいな
>>259 お前荒らしってわけでもなさそうだし…
「ヤンデレ」と一言に言っても色々なタイプがあるんだから
真面目にそんなこと書きこむならROMっててくれよ
263 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 15:17:35 ID:4VKliPQU
おい荒らすな死ね
最近、「死ね」って言葉だけでもヤンデレ臭を感じるようになってきた…
みつを
あれだ、メンヘラ女が鉈とか鋸振り回してりゃヤンデレって勘違いしてる輩が増えてるから物申してんだよ
そりゃヤンデレには色々なタイプがいるさ。でも
>>247>>257はないだろうよ
病む過程すっ飛ばして奇行凶行を起こしたのだけ書かれてヤンデレとか言われて納得できるか?
よーく読んでみ?
>>247>>257をさ。明らかにヤンデレに対する考えじゃないしなんか間違ってんだろ
なんでもかんでもヤンデレヤンデレって言って済ませばいいもんじゃねえだろうが
人間関係、病むシチュエーション、病む過程、どんなキャラがどんな風に病むか、病んでどんな結果になるか
そういった話題なら有意義だしわかる。でもな、
『施設に入れられた主人公を救うため病院に患者として潜入して施設の連中と渡り合ううちにヤンデレに覚醒』
これをヤンデレって言えるか?納得できるか?ヤンデレになる必要あるか?ヤンデレである必要あるか?
お前らなんでもかんでもヤンデレにしたいだけなんちゃうんかと。設定自体無理ありすぎだろうが
ようは、勘違いしても構わないがその勘違いしたアイデア書きこむなってこった
あとな、間違いを間違いって誰もハッキリ言わないから勘違いが増えるんだよ
多少荒れようがハッキリすべきとこをハッキリさせないといけないだろ。線引きはしっかりすべきだ
三行で
>>265 よし、じゃあハッキリさせてやるよ。
お前の考えは間違ってる。
人をどうこう言う前に自分の書いた文を見直せ
言ってることがメチャクチャだぞ?
それが出来ないなら黙ってROMっててくれ
>>267 確かに改めて見直したら文章おかしいとこあって恥ずかしい
んでどこがどう間違ってる?そこんとこ教えてくれよ。ついでにお前の意見を聞かせてくれ
間違ってるってそこまできっぱり言うなら教えてくれよ
頼むから余所でやってくれ
雑談するなとは言わんが作者様が投下しづらい流れを作らないでください
言っていることはよく分かるが、もう何十回も繰り返された議論なんだよな
勘違いする奴が増えるというが、ここに生息しているような住民はもうすでに選りすぐられてる
でも新参が入ってきて住民が入れ替わるから同じ議論が何十回も繰り返されるし、また勘違いした奴を何とかするために繰り返さねばならないということか
ただ、設定に無理のある作品が投下されたらフルボッコにされるから、そんなに心配しなくても大丈夫だとは思うがな
十人十病
他の人にとってのヤンデレを「これは違う」と感じても熱くならずにスルーしよう。
ここは「どのヤンデレが正しいヤンデレか?」を明らかにする場所ではないし
もし誰かが間違ったヤンデレ観を語っても他の人に受け入れられなければ
それは勝手に自然淘汰されて消えていく。
十人十病って良い言葉ですねw
次のスレからテンプレに追加したらどうでしょうか
273 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 22:50:22 ID:4VKliPQU
だから荒らすな。死ねよ
263 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/08/05(水) 15:17:35 ID:4VKliPQU
おい荒らすな死ね
273 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/08/05(水) 22:50:22 ID:4VKliPQU
だから荒らすな。死ねよ
275 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 23:10:02 ID:4VKliPQU
で、何がしたいんだ?
要するにお前が死ねってこと
263 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/08/05(水) 15:17:35 ID:4VKliPQU
おい荒らすな死ね
273 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/08/05(水) 22:50:22 ID:4VKliPQU
だから荒らすな。死ねよ
275 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/08/05(水) 23:10:02 ID:4VKliPQU
で、何がしたいんだ?
質問ですが、愛した相手を亡くしたヒロインは、どうすれば幸せになりますか?
1、立ち直った後に別の相手と結ばれる。
2、同性愛に走り、新たなヤンデレになる。
3、恋愛ではなく別の事に生き甲斐を見出だす。
スレの趣旨通り、男は殺す事に決めてるんですが、ヒロインは幸せにしたいので、参考までに教えて下さい。
馬鹿かお前は。後追い自殺か精神崩壊に決まってるだろう。病んでるんだぞ
もしくは4、ヤンデレが愛した男は死なない
280 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 23:48:44 ID:Zb6Vv2Pp
個人的には3
ごめんsage忘れた
282 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 23:58:29 ID:4VKliPQU
みんな病んでる
>>279 甘い甘い。正解は5.男を生き返らせる だ!
>>278 「スレの趣旨通り、男は殺す」
とおっしゃっていますが、別にそうと決まったわけではありません。
もちろんそういう形もありですけど、そうしなければならないというわけではないです。
主人公も幸せになって頂いて結構です。
つか主人公が死んだ後、他の人を好きになるというのはヤンデレとしていかがなものか、という声もあるかもしれません。
でも、そこらへんは作者である
>>278さんの自由です。
というわけで頑張ってください。
自分的には3だとどうなるのか楽しみです
安心せい!このヤンデレが愛した者など後にも先にもお前一人よ!
ヤンデレ=人殺しと勘違いしてる人が多い。
少なくともヤンデレが愛した人間を失い、別の人間に走る時点で既にハッピーじゃなくなるだろw
生きがいっていうのも微妙だけど、愛する男に関連することならそれがいいかもしれない
例えば言われたように悪魔をはめ、神を殺してまで男の復活を探るのもいいし
男との間にできた子供を育て愛することに生きがいを感じるのもいいし、
愛する男を追って幸せそうに死ぬのもいいし、
男の追っていた夢を肩代わりするのもいいと思う
ただし少なくともヤンデレが愛する男を失っても幸せになるには、それ以上の愛故の狂気にとらわれないといけない気がする
ここは死んだ男の生まれ変わりを見つけ出すだろ。
どんどん怖くなってゆく
この様、まさに十人十病
>>289 そういや死んだ片思いの相手のクローン転生体を
自分の胎を使って産んだお姫様がいたな。
うむ、ワンダもヤンデレではあるな
恋人?のために命投げ出して巨像と戦ってたし
体乗っ取られても恋人の元へいこうと足掻いてたし
文字通り死ぬ(封印?)の直前まで思い続けてたな
………男だけど
……男だけど
男の娘でもいいじゃないかっ!
名前が男っぽくて顔立ちも中性的で、周囲からも想い人からも男と思われて女扱いされず、だんだん病んでいくのもいいんじゃないだろうか。
何か理由があって隠してるのもいいな
男口調か、ボクっ娘か、だな。
俺はボクっ娘を推薦するぜ
流れを切りますが投稿します。
変歴伝ではないほうです。
四円
第四話『シグナムと聖剣 上』
南の町、ニプルヘイムに向かうシグナムとイリス。
南方は基本的に山に囲まれた山岳地帯であり、
そのど真ん中に存在するニプルヘイムの町に着くには、最低でも六ヶ月は掛かる。
シグナムは、途中の村などで、手に入れたアイテムを売り、装備を補充しつつ南進した。
幸い、南方の敵は北方の敵と比べて強くはなかった。
それでも、北方の敵と比べたら、である。
次から次へと湧いて出てくるお化けスズメバチの大群。
異様に肥大化した腹部から覗く巨大な針。
掠れば即死、当たれば即死のとんでもない一物を持った化け物である。
シグナムは、何重にも灰の結界を張り巡らせて、
近寄ってくるお化けスズメバチを撃退した。
その時イリスは、不思議な踊りを踊っていた。しかしなにも起こらなかった。
抜群のチームワークで獲物を追い詰めるオーク。
三匹一組で襲い掛かり、奇襲、挟撃、不意打ち、圧倒的な力と知恵を備えたその攻撃は、
初心者勇者であれば瞬殺ものであった。
シグナムは、灰で作った矢で森に潜むオークを射殺し、
襲い掛かってくるオークを灰の剣で防ぎ、
死角となった左側から襲い掛かってきたオークを、仕掛けたトラップで殺し、
最後の一匹を激闘の末に袈裟斬りに斬り殺した。
その時イリスは、意味不明な歌を歌っていた。しかしなにも起こらなかった。
そんなこんなで、シグナム達は最初の難所であるアムリタ山を越えた。
「シグナム様って、本当にお強いのですね。私、びっくりしちゃいました」
宿に着いて、最初にイリスがそう話し掛けてきた。
「あぁ…、君は役に立たなくて、本当にびっくりしたよ」
シグナムは思わず本音を吐露した。それもストレートに曲解なしの発言であった。
「ひっ…、酷いです!そんなはっきり言わなくたって!
それに私だって、やろうと思えばやれます!」
「じゃぁ、やってみせてよ」
そう言ってシグナムは、イリスになにかする様に促す。
「わっ…、分かりました…。……では…、いきます!
………布団が…、ふっとんだぁ〜!」
「…………………………………………」
やっぱり駄目だ。シグナムはそう絶望した。
翌朝、イリスの冷たい冷気を吸い込んだシグナムは、
次の難所であるソーマ山踏破に向かった。
出てくる魔物は基本変わらない。
シグナムが戦い、イリスがなにかする。これも変わらない。
シグナムは持てる知恵と、機転と、武力で魔物を打ち払い、
イリスは持てる踊りと、歌と、ギャグで、場を掻き乱した。
ソーマ山を超えた先の宿で、イリスが放ったギャグは、
「……駄洒落を言う奴は、誰じゃぁ〜!」
だった。
シグナムは死にたくなった。
最後の難所であるネクタル山踏破の時になって、
「シグナム様!私、新しい特技を身に付けました!」
イリスが胸を張って言い出したので、やってみろと言うと、
イリスは口笛を吹き出した。
なにをしているのだと思って見ていると、凄まじい地響きとともに、
大量の魔物が襲い掛かってきた。
お笑い芸人の口笛には、魔物を誘き寄せる効果があるらしい。
シグナムは必死に戦った。死にたくなかった。
最初の大陸で、仲間の口笛で殺されるなど、たまったものではなかった。
必死に戦うシグナムの横で、イリスは必死に踊ったり歌ったりしていた。
マスター…、契約解除、出来ませんか?
シグナムは本気でそう思った。
支援
死ぬ思いで、シグナムはニプルヘイムの町にやって来た。
ニプルヘイムと言うだけ、霧に覆われて、なんとも不気味な町である。
「この町には、私の先祖のシグルドに聖剣を授けた湖があるらしい。
この霧は、その湖が原因なのだろうな」
と、シグナムは知識を披露した。
「そうなんですか。私は難しいことはサッパリです」
しかし、イリスに言っても、なんの意味もなかった。
とにかく、湖に向かい、聖剣を手に入れる。
シグナム達は、道を聞きながら、ニプルヘイムの湖に向かった。
湖は森の奥にある。
それを聞いたシグナムは、魔物の襲撃に備えたが、それはなかった。
進めば進むほど濃くなる霧に、足元を掬われそうになりながら、ついに湖に到着した。
「さて…、湖には着たが…、どうすればいいんだ?」
ファーヴニル風土記には、湖の精霊から聖剣を授かった、としか書かれておらず、
肝心の、どのようにして授かったのか、とは書かれていない。
辺りを見回したシグナムは、湖の近くに立てられた看板に気付いた。
『正直な心の持ち主にのみ、精霊は微笑む』
と書かれていた。
正直な心ってなんだ?精霊が微笑む?どういう意味だ、とシグナムは思った。
正直というのは、そのまんまの意味で、微笑むとは、現れるではないのか。
シグナムはそう考えた。ならば実践あるのみである。
「すぅ…、……っ………、俺の親父のモノはぁああああ〜、
早漏で、短小で、おまけに梅毒もちの不良品だぁああああ〜!」
身内だけしか分からない暴露ネタを、湖に向かってぶちまけた。
耳を澄ましてみる。なにも聞こえないし、なにも起こらない。
「はぁ〜…、……っ………、俺の親父はぁああああ〜、
20歳の時からカツラを被っている若年性のハゲだぁああああ〜!」
再び身内ネタを暴露し、耳を澄ましてみる。だが、湖は静まり返っている。
シグナムは腹に空気を入れ、再び叫ぼうとする。それをイリスが止めた。
「止めてください、シグナム様!あなたのお父様の威厳はもうゼロです!」
「放せ!まだ俺の暴露ネタは終わっちゃいねぇんだよ!」
しばらくそんな感じの漫才を繰り広げ、シグナムはやっと落ち着いた。
二人は、大の字で草の上に寝転んだ。
「はぁ…、シグナム様って、結構酷い言葉を使うんですね」
「当ったり前だろ!いつもあんなしゃべり方してたんじゃ、こっちの身が持たないしな」
「でも、私と二人きりの時は、ちゃんと『私』って言ってましたよ」
「あぁ…、対外的に『俺』なんて人称を使ったら、
余計な敵を作るからな。取り合えず『私』で通しているだけだ。
一人の時や、信用できる奴にだったら、羽目を外して『俺』って使うんだがな」
「ということは、私はシグナム様に認められたということですか?」
「まぁ…、色々あるが、そういうことになるな…」
シグナムがそう言うと、イリスは随分と嬉しそうに笑った。
「結局、なんにも出てきませんでしたね」
あれからシグナムは、家庭内暴露ネタを大声で叫び続けた。
親父は水虫だ、親父は自分の足の爪に溜まる滓の臭いが好きだ、
あと自分の臍に溜まる滓の臭いも好きだ…。
この数分で現ファーヴニル王の威厳は地に墜ちた。
「まったく、これだけ言っても出てこないなんて…。…やはり、伝説は伝説か…」
そう思うと、なんだかイライラしてきた。ここに立ててある看板がそれを増大させる。
「なにが、『正直な心の持ち主にのみ、精霊は微笑む』だっ!恥じ掻かせやがって!」
そう言って、看板を引き抜いたシグナムは、湖に投げ込んだ。
小さな泡を立てながら、看板は湖に沈んでいく。
しかし突然、湖の中心から神々しい光りが放たれた。
そしてそこから、黄金の後光を背負った絶世の美女が現れた。…両手に看板を持って。
「しっ…、シグナム様!でっ…、出ましたよ!精霊ですよ、精霊!」
「まっ…、まさか本当に出てくるとは…。
…って言うか、なんで看板なんて持ってんだ?」
後光を背負った神々しさとは裏腹に、
両手に持っているなんの変哲もない看板が、なんともいえないシュールさを醸し出す。
「お前が落としたものは…」
急に精霊が腹に響く様な声でしゃべりだした。
そこでシグナムは気付いた。
あの看板に書いてあったことは、
精霊の質問に正しく答えれば、望みのものをくれるというものだったのではないか。
だとしたら、ここは正直に答えなければならない。
シグナムは身構えた。
「アムリタ山の木で出来た看板か?それとも、ネクタル山の木で出来た看板か?」
「はいっ…………えっ……?」
「さぁ、選べ!」
選べ、と言われても、シグナムはそんなことなど分かるはずもなかった。
確かにここまで来るのに、アムリタ山とネクタル山は越えた。
だが、そこに自生する木にまで気など回るはずもなかった。
それ以前に、シグナムは植物学者ではない。
木目だとか、色だとか、その手のものはまったく理解できない。
と言うか、看板なんかに注意を向けるはずもない。
そんなものを当てろと言うのは、この精霊、鬼畜である。
「シグナム様。この際、適当に答えましょう」
隣で考えなしのイリスが囁く。
「うるさい!適当に答えて間違えたら元も子もないだろうが!」
シグナムはイリスを黙らせ、考えることに専念した。
「………………………………」
駄目。ぜんぜん分からない。
この際だから、イリスの言う通り、でたらめに答えてみようかと思ったが、
よくよく考えたら、この問題は無理がありすぎる。
この町は、周辺を山で囲まれた盆地である。
アムリタ山やネクタル山以外にも、木の生えた山はいくらでもある。
第一、同じ木が一つの山全部に生えている訳がない。それでは絞り込みようがない。
二つの山に限定した所で、それが解決する訳でもない。
シグナムは精霊が言っていたことを思い出してみた。
『お前が落としたものは、アムリタ山の木で出来た看板か?
それとも、ネクタル山の木で出来た看板か?さぁ、選べ!』
ニ、三回それを暗唱する。
そこでシグナムは、あることに気付いた。
精霊は、アムリタ山とネクタル山とは言ったが、
一言もどちらかを選べとは言っていない。
つまり、アムリタ山もネクタル山も例えであり、どちらも答えではない。
今までのことを入れて考えると、答えは一つしかない。
しかし、こんな真面目な所で、こんなことを言ってもいいのだろうか。
不安で仕方がなかったが、シグナムは口を開いた。
「答えはない。これが答えだ」
シグナムの答えに、イリスはぽかんとしていた。
精霊はしばらくシグナムの顔をじっと見ていた。
すると、ふっと口元に笑みを浮かべた。
「あぁ〜あ、まさか答える奴がいたなんてなぁ〜。
大抵の奴はでたらめに答えるか、馬鹿正直に調べに行ったりする奴しかいなかったのに…」
まるで人を馬鹿にしているかの様にも見える。
「さてと…、とりあえずあんた達にはこの二つの看板と、さっき落とした看板をあげるわ」
三つの看板をシグナムに投げ渡した精霊は、やることはやった、と湖に沈んでいった。
「ちょ…、ちょっと待ってぇえええ!」
シグナムが精霊に向けて顔を赤くして叫んでいる。思わず素になっていた。
精霊は、顔半分が湖に沈んだ所で止まった。
「俺は看板を貰うためにこんな所に来たんじゃない!
ていうか、なんだよこれ!本当にただの看板じゃないか!
こんなんがなんの役に立つっていうんだ!」
シグナムの叫び声を聞いた精霊が、面倒臭そうにこっちを見ている。
「うるさいなぁ…。じゃあ、いったいなにが目的で来たっていうのよ」
「俺はこの湖にある聖剣を授かりに来たんだ!」
シグナムが持っている看板で精霊を指しながら言った。
「聖剣……。……あぁ…、そういえば前住者がそんなことを言っていたわね。
あんた等、そんなものが欲しいの?」
「あぁ…、俺の先祖のシグルドがこの湖で聖剣を授かったと本で読んだ。
魔王を倒すためには、その聖剣が必要なんだ。だから頼む!聖剣をこの俺に!」
「えぇ〜、シグナム様って、王族の方だったんですか!」
「お前は空気を読め!」
横から口を出してきたイリスを、シグナムは黙らせた。
精霊はジト目で、シグナムを見つめていた。その目はどこまでもつまらなそうである。
「嫌だ」
そしてその目付きが、そのまま声としてその場に響いた。
「なっ…、なんで!?」
「どうして見ず知らずのあんた等に私が施しを与えなければいけないの?」
「だっ…、だが、俺の先祖には聖剣を授けてくれたじゃないか!」
「それは前住者が勝手にやったこと。私には関係のないことよ」
精霊はさっさと帰りたいのかそわそわし始めた。
このまま帰られたらなんのためにここに来たのか分からない。
シグナムは必死に精霊を引き止めた。
「聖剣がないと魔王を倒すことが出来ないんだ。
後任のあんただってそれくらいは分かるだろ!」
「うるさいわね!こんな世界、さっさと滅んでしまえばいいのよ!」
シグナムは呆れてしまった。これが精霊の言うことだろうか。
精霊の言葉に腹が立ったが、シグナムはそれを抑えて再び説得しようとした。
すると、今まで黙っていたイリスがシグナムの前に進み出た。
「シグナム様、今度は私が彼女と話してもいいですか?」
彼女の言葉を聞いて、お前になにが出来る、とシグナムは言おうとしたが、
ふとシグナムは考えた。このまま話し合っていても埒が明かない。
そうするより、女性同士で忌憚なく話し合った方が解決の糸口が見付かるかもしれない。
そう思うと、ここはイリスに任せるのが妥当か、と判断し、
シグナムは精霊との交渉をイリスに一任した。
任せる、と言った以上、自分が口を出す訳にはいかない、とシグナムは思い、
自身は近くの木陰に腰を下ろした。疲れていたので、シグナムはすぐに眠ってしまった。
投稿終了です。
支援ありがとうございます。
下はすぐに書きあがると思います。
精霊にこのおバカキャラをぶつけるとは
修羅場になりそうな気がするww
おもしろかったGJ
GJ
どうヤンデレが絡むのか楽しみだ
GJ!
不覚にも口笛でふいちまったw
>>310 GJ!!精霊鬼すぐるw上手くいく気が全然しねぇwww
下の展開が楽しみだ。
>>294 働け
駄洒落を言う奴は、誰じゃぁ〜
で不覚にもフヒッとなってしまった。死にたい。
ヤンデレ! 一緒に心中してくれ!
>>317 「心中? どんな辛いことがあったのかはわかりかねますが、それはお断りさせていただきます。
そのかわりに、島を一つご用意させていただきました。そこでずっと二人で、二人っきりで、二人だけで暮らしましょう。 ね?」
俺たちの一歩上をゆく
せめて子孫は残したいです
ヤンデレ的には子供を作ることは賛成なのか?
子供ができて男が逃げられないようにできるからおk、と考えるか
子供ができると男の関心が子供にばかりいってしまうから駄目、と考えるか…
前者じゃないかな。
今のところ、妊娠ヤンデレのSSを2作ほど知ってる
どっちもあってなかにはジレンマ感じるのもいるんじゃね
彼と幸せになりたいなら子供はおk。
彼を独占したいなら子供は邪魔だから産まない。
と考える。
>>322 kwsk
ぐぐったけどそれらしいのが見つからねえ…
>>325 短編の枯れ落ちて朽ちゆく枝とかすみだったかな
後者は男の独占目的ではなくヤンデレによる強制猥褻の副産物として子どもが出来ただけだが
愛の結晶ってことで結構良い家庭になるだろうと
旦那さんの姿勢しだいで波乱が起きるかもだけど…
>>328 夜のスキンシップを忘れなければいいだろう。
出産→幸せ→仕事で女に育児任せっきり→連日帰りが遅くなる→夜泣きでストレス増大→すれ違いの日々→ヤンデレ再発!
娘が出来るとまずいかもな
う〜ん、なんだかんだでヤンデレはうまくやりそうだがなぁ
ほら、普通に社長さんとか脅しにいきそうじゃね?w
おまけにどうせ男のほうが先に折れるんだろうし、俺はうまくいくと信じたい
>>330 それ男の勤め先が危ない。
「こんな会社があるから男君は私と赤ちゃんのところに帰ってこないのよ!」
男の勤め先をM&Aするのか?ww
>>333 その発想だと、例えば電力会社だったら男の休みを作るためにエンロン式市場操作とかしかねないw
いや、むしろ自分で会社を作って旦那の会社を吸収合併しちゃうかも……
結論:ヤンデレには勝てない
子供のDNAの半分は男で、半分は自分なんだから沢山欲しいと思うだろう
しかし、沢山いると邪魔だし妊娠している間も不自由だ
そこで大量の代理母を用意し・・・・・・・・・
その子たちを教育するための学園まで設立
同級生の大半がが自分の兄弟姉妹とは知らないため、兄弟に恋をすることも珍しくない
しかも少女たちの多くは母親に似てゆがんだ恋愛感情を持っているため、ヤンデレ学園と化すのであった
つまりパーラダイス!
ワッフルワッフル!!
ヤンデレ群像劇は諸刃の剣、決して終わらぬ無限回廊。
事実未だに完成を待つ作品が多くある。
ことのはぐるまとか
男がヤンデレにゾッコンならさ、ただのバカップルか幸せ夫婦だよな?
そういうss読みたいんだけど一度も見たことないな
>>343 もう何も信じないの歩と光がそれじゃないかな?ン〜どうかな?
346 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:48:25 ID:Wx265uqw
投下します。
347 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:49:37 ID:Wx265uqw
「勇者さぁん…。」
目が覚めた僕は、両手足を丈夫そうな縄で縛られベッドに括られていた。
ベッドの横には僧侶ちゃんがいる。ふっくらした唇。すっと立った鼻。
薄めの眉の下の瞳は阿修羅のような…
え?
何この展開。
「おはようございますぅ…。よくお休みでしたね?
…私は一睡もできなかったんですよ?心配して心配して心配して心配して…
それなのにッ…!」
僧侶ちゃんがこぶしを握りしめている。何かあふれだしそうなそんな
雰囲気を放つ瞳に、僕は常に射抜かれているような気持ちだ。
「酒場のマスターさんが勇者さんを運んできてくれたんです。…それと
あの雌いn…盗賊を生業としていらっしゃるという女の子も。」
僧侶ちゃんの白い手がゆるりと僕の首に掛かる。こんなに冷たい手だっけ?
「私その子を問い詰めたんです。なぜ私の勇者さんが倒れているのか。
そうしたらその子なんと言ったと思います…?『この勇者が私を人気のない
路地裏まで追い回し、泣いていた私の衣服をはぎ取った後妙な建物の中に
連れ込んだ。そして立ち去ろうとする私の手を掴み、体液をドピュドピュ
私の体にぶっかけた後この勇者は果てた。』ですって。」
あの女狐めえぇぇぇぇぇ!
僧侶ちゃんの指先の力がゆっくりと、しかし確実に強くなるなか僕の
心の中は場違いな殺意で満たされつつあった。
背景は間違ってはいないよ?だが描写が間違っているでしょ!
やっぱりあの子まだ僕を恨んでるだろ!
そーだよ。
絶対そーだよ。
あはははははははははは…。
やばい。マジ息できない。
すると僕の呼吸がいきなり楽になった。今まで僕の首を絞めていたその手が
僕の肩に回されている。仰向けに縛り付けられている僕に僧侶ちゃんが
ゆっくりと覆いかぶさり、僕の胸辺りに顔をうずめた。
「…男の子ですもんね。そこは私もわかっているんです。ですから…。」
僧侶ちゃんがゆっくり顔をあげる。
「ですから、今度からは私に言ってください。私がいつも勇者さんのそばに
いますから。どんな悩みだって取り除いて差し上げます。私を好きなように
使用してくれて構いません。だから…私以外にそんなことしないでください!」
誰にも何もしてない!つーかさらりとトンデモ発言しなかった?
嫁入り前の娘がそういうこと言うものじゃありません!
君に手を出すなんてしません。ええ、絶対!確実!保障!堅実!多分!約束!
…今一瞬男としての本能が鎌首上げたような…気のせいだな。
ところで、なんで僕は縛られてるの?
「ああ、それは勇者さんが受け身や防御をとれないようにするためです。」
348 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:51:01 ID:Wx265uqw
…え?
ちょ、待って。僧侶ちゃん。誤解なんだ。話せば分かる。放せば分かる。
その構えは…ばくれつけん!?
嫌だ!違うんだよ誤解なんだ!あの娘はそういったのだろうけどそれでも
僕はやってない!冤罪を見過ごしていいのか!いいとも?よくない!
HA☆NA☆SE!
うあああああああああああああああああ!
その部屋の外で、中の惨事に聞き耳を立てている影がひとつ。
「むう…私からあんな話をされてもまだ勇者を恋い慕い続けるとは…。
てっきり勇者に愛想を尽かすと思っていたが、私と勇者の関係に少し邪魔な
存在だな…。しかし、この音と悲鳴。そろそろ死ぬんじゃないか?」
349 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:52:05 ID:Wx265uqw
朝の涼しげな冷気も消え、少しずつ通りに人が増えてきた頃、宿屋の
前ではミイラ男と化した僕と真っ赤な膨れ顔をした僧侶ちゃん。
そしてさっきからそわそわしている盗賊くんの三人がそれぞれの装備に
身を固め立っていた。
…なんで盗賊『くん』なのか?口調からしてなんとなく。
勇者の僕は丈夫な布の服。布で大丈夫かという声もあるだろうが
心配無用。この布は大型帆船の帆に使われている布だ。
この上なく丈夫で、他の防具に比べたら確実に軽い。そもそも魔物との
戦いにおいては逃げることも重要な戦略になってくる。
魔物といえどもあまり戦いたくない僕には心強い防具だ。
そして、僕の体中に巻きつけられたこの白くて長い布は『包帯』って
言うんだよ。
僧侶ちゃんは、青と白を基調にした修道服。腰にプラプラぶら下がって
いるのはたぶん『聖なるナイフ』だろう。見るからに実戦向きではない
固定方法を注意したいのは山々なんだけど、さっきの一件以来話しかけ辛い。
…むしろ、怖い。
盗賊くんは軽装だ。なるべく衣すれの音をたてないように織られた服と
忍び足袋をはいている。腿にしっかりと、しかしいつでも抜けるように固定
してあるソレは『ダガーナイフ』だろう。なんでもとある事件により
ジパングでは厳しく取り締まられている代物だそうだ。
少し話は変わるが、ジパングの名だたる剣豪『ミヤモート・ムーサシ』は
自分の書のなかで剣を『人斬り包丁』と記載している。相手を斬るのは
刀を握る侍そのものであり、刀はその侍の拠り所に過ぎない。
刀の切れ味に心奪われ、刀の善し悪しを自分の力と錯覚するものは必ず死ぬ。
剣士の質というのは刀を抜いた数に反比例するものなのだ。刃への依存は侍の死。
彼の遺した五輪の書に書かれている『死ぬ覚悟を決めることなど誰にでも出来る。
本当に大事なのは何としてでも勝つことだ。』という彼の信念と並んで綴られた
この言葉は忘れてはならない。
もしリアルジパングに『自衛のため』という目的でナイフを持ち歩くような
頭の少々かわいそうな人がいたら、さりげなく伝えてあげるべきだろう。
「自意識過剰だよ。誰も君を襲おうとするほど君を気にとめていないさ。」
…何の話をしているんだ?僕は。
350 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:53:21 ID:Wx265uqw
そんな盗賊くんはさっきから落ち着かぬ様子であたりをきょろきょろしている。
「勇者。さっきから…道行く人が私を見ていないか?…フードが欲しい。」
ああ、そういうことか。今まで極限まで人目を避け続けることを求められてきた
彼女は、いろんな人に直接見られるのが初めてなんだ。
自意識過剰?そんなことはないみたい。頬を桃色に染め、うつむき加減で
もじもじしている彼女を、通りかかった男たちがちらちら見ている。
「フードの方が却って目立つよ。それに…。」
僕は彼女の頭にポンと手をおく。
「盗賊くんはかわいいからね。そのままでいて欲しいな。」
ボオン!
「ゆっ…ゆゆゆ勇者!そんな…いきなりそんなこと言われて…。
バカ者!痴れ者!か…かかか可愛いだなんてそんな…ひゃっ!?
な…撫でないでくれ!そんな風に優しく撫でられたら私…くう〜ん。」
いきなり子犬のような甘えた声をあげて地面にへたり込む盗賊くん。
今まで人と最低限のコミュニケーションしかとっていないので口調は
ストレートなものの、逆に相手のストレート表現には弱いのだろう。
さっきの仕返しだよ。これで彼女は意のままに掌握できる。
計算通り。
僕が黒い笑みを浮かべたその時。
「殺す。」
聞き捨てならない一言とともに、この世のものとは思えぬ冷気が辺りを支配した。
振り向くと、僧侶ちゃんが『般若の面』を装備して仁王立ちしている。
「私に一言も相談なしにこんな雌犬…年端もいかぬ少女を仲間にするという
口実で妾同然に…そして私の目の前で!」
ナイフをスチャリと抜いた彼女は、それを諸手で握り、独特の構えをする。
あれは…『さみだれけん』!?
「そっ…そそそ僧侶ちゃん!そんな…いきなりそんな技を使って…。
駄目だ!落ち着け!こ…こここ殺すだなんてそんな…ひゃっ!?
こ…殺さないでくれ!そんな風に何度も斬られたら僕…ぐはあっ!」
五月雨のごとき斬撃が僕を襲う。やめて僧侶ちゃん!幼馴染の君にも
隠していたことだけど…あえて言おう。
実は僕は一回刺されてだけで死ぬぞおおおおおっ!
351 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:54:22 ID:Wx265uqw
「ひどい!酷すぎます!男の浮気は甲斐性だから三回までは許しなさいと
シスター長に教わっていましたが、こんなにも辛いのをまざまざと見せつけ
られたら勘弁できません!私何かしましたか!?どうしてこんなにも
ひどい仕打ち…ひっぐ…そんなに私が憎いのですか!うえええええん!」
とつぜん顔を覆い地面に泣き崩れる僧侶ちゃん。みんな泣き上戸ばかりで
ほんとに旅立てるのかそろそろ不安になってきた。
それより僧侶ちゃん。浮気ってどういうこと?
「まあ、あんな可愛らしい少女を差し置いて浮気ですって。死ねばいいのに。」
「ほんと、可愛いふりしてあの男の子わりとやるものですね。」
人通りの中足を止め僕を非難する女性の声が聞こえてくる。
まずい。このままでは勇者からただの腐れ外道に転職してしまう!
僕は僧侶ちゃんを俗にいう『お姫様だっこ』すると、顔を火照らせながら
地面を足先でグリグリしまくっている盗賊くんを連れてそそくさと
その場を立ち去った。
「それにしても勇者。あの時の傷はどうなったのだ?」
さっきの場所から少し離れた場所、落ち着いた盗賊くんが訪ねてきた。
治ったと僕は答えつつ、真っ赤な目をした僧侶ちゃんの誤解を解いている。
僕の腕の傷はすぐに癒えた。どうやら呪いの力は持ち主をその手に掛けるまでは
絶対に死なせてやらないらしい。
僕の父親オルデガは、母親によってマグマの海に落とされた。だから
『殺される』という条件は満たしたので息絶えたのだろう。
ただ、当然といえばそうなのだが死体は見つかっていない。
352 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:55:25 ID:Wx265uqw
そういえば、まだ僕が真相を知っている理由を話していなかったっけ。
あの後母は父が死んだことは覚えていたものの、誰が父を殺したかを
思い出せないでいた。幼かった僕には適当に、父は魔物との戦闘で
火口に落とされ亡くなったのだと言い、僕もそう信じて疑わなかった。
呪いの一件もそう。幼い時『お聞きなさい、かわいい坊や。あなたには
なんかの呪いがかかっているの。』との一言で説明を終了された。
何のことはない。母自身どういう呪いか忘れてしまっていたのだ。
隠された二つの真実を僕に教えてくれたのは意外な人物だった。
僕が十六歳の誕生日を迎える三日前の話になる。
僕の夢枕に何の脈絡もなく悪魔が立っていた。
…別に挑発的な衣装に身を包んだキュートな小悪魔ではなく、
窓を開けたらそこら辺をうろついていそうな普通の悪魔だった。
夢枕の悪魔は僕を怨みのこもった目で見た後、静かに口を開き始めた。
なんでも昔、僕の父オルデガに全ての魔物を消し去ることのできる暗黒の
力を譲渡して契約を結んだものの、逆に父に葬り去られそうになったそうだ。
致命傷を負った体で今までなんとか生きてきたが、怪我による欠席が続いたため
四浪してようやく入った邪教大学神学部から先日除籍されたという。
実家の家業を継ぐのが嫌で邪教大に苦労して入ったのに、御覧のあり様。
故郷に帰り家業の蕎麦屋を継ごうとするも、跡取りは自分のいない間
せっせと『魔界そば』の修行に励んでいた弟に決められていた。
魔女に化けて人間界で暮らしている昔から仲の良かった妹のもとに転がり込むも、
朝起きたらベッドに縛り付けられているというシチュエーション。
「一生私が養ってあげる。だからずっと私だけを見て。」
自分の命を削って絞り出した魔力をもってようやくそのような危機的状況を脱した
悪魔だが、そのためにすでに魔力は尽きかけていた。おまけに確かに殺された
はずの勇者オルデガの魂がなぜか自分のところに来ない。
「悔しいんでお前の呪いやお前の母親が夫殺しだということをばらしにきた。
ザマミロ!やーいやーい。」
その後悪魔の姿は消えた。僕に真実をのこして…。
353 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:56:39 ID:Wx265uqw
長い回想だったけど、ちょうど僧侶ちゃんも落ち着いてきたみたいだ。
…と思ったらいきなり鼻血がタラーリ。落ち着いたのに何故?
「えへへへへ…抱っこされた。お姫様抱っこぉ…。勇者さんに、勇者さんに…。」
…とりあえず怒りはおさまったみたいだな、うん。
「そういえば勇者。一体いつまでここにいるつもりだ?」
盗賊くんが聞いてくる。
「ああ、待ち合わせている人が来たら出発するよ。」
「待ち合わせている人?」
僧侶ちゃんと盗賊くんが同時に首をかしげる。
実は本人の意識と悪気なしの朝帰りをした僕が僧侶ちゃんの裁きを受けた後、
王宮から早馬がやってきて僕に手紙を差し出したのだ。
その手紙には王の署名とともに、旅の仲間をこちらから一人派遣するという
ことが記されていた。
「つまり、これから会う人は王宮から正式に認められたすご腕ってこと
ですよね。」
「そういうことらしいよ。でも僕も誰だか知らないんだ。大体なぜ今頃になって
こんなサービスを王様自ら…?」
「むふふ、アタシが誰か分るかな勇者クン!」
不意に後ろにとてつもない何かを感じた。そして後ろから僕は抱きつかれている。
僕のちょうど肩甲骨の下のあたりにものすごい存在感と弾力性のある二つの無駄に
デカい何かが押し当てられているのを感じる。これはまさか…。
…あれ、この声どこかで聞いたような気が…。
ムニョムニョ
…イカンイカン。よくよく考えろ僕!雑念に心とらわれるな!いったいこの声
誰の…。
プヨプヨ、パフパフ
…誰の…胸…じゃない声!
ポニョポニョ、ポーニョポニョ
…ぐうう!心頭滅却すれば胸もまた…じゃない!火もまた涼し!この声の
持ち主は…火事場の時のお姉さんだ!
354 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:57:42 ID:Wx265uqw
「ピンポン正解!アタシのこの攻撃を受けながら思考回路がショート
しなかったのはキミが初めてだね。やるねぇ〜。」
振り向いた僕に、見間違えることなんてできない体躯と相変わらずの微笑みを
浮かべた美人面。引き締まった腰に手を当て立っている女性の姿が見えた。
「アタシがキミの旅に同行させてもらう魔法使いだよ。ヨロシクね。」
軽くウインクしてみせる彼女。本来あまり使われないこのしぐさも、彼女が
やると実に決まって見える。大人の色気に可愛らしさを出すとこのように
なるのか…。
「こちらこそ。僕が勇者で、こっちの黒髪の女の子が僕の幼馴染の僧侶ちゃん。
そしてこっちのショートカットの子が盗賊くんだよ。魔法使いさん。」
「いやだなもう!そんな他人行儀な言い方。せっかくだし名前で呼んでよ。
アタシの名前は…。」
「魔法使いさん。」
僧侶ちゃんが冷たい声で魔法使いさんを制する。
「いくらなんでも、世界を救う大仕事を任された勇者さんに少し図々しいのでは?
大体初対面の勇者さんになんて馴れ馴れしく…。」
「ああ、僧侶ちゃん。僕と魔法使いさんは一度会ってるよ。」
僧侶ちゃんは気づいていなかったのだろう。火事現場で僕は魔法使いさんに
手伝ってもらっている。僕はそのことをフォローのために僧侶ちゃんへ伝えた。
「…火事現場で会っていたんですか?」
急に僧侶ちゃんが何か考え込むような表情をし始めた。何かを訝しがっているような
感じだ。いったいどうしたんだろう。
「…勇者、急ぐぞ。」
盗賊くんがせかした。僕はあわてて荷物を背負う。
他の三人もそれに続いた。
少し歩くと町の門が見えてきた。僕はゆっくりと息を吸い、世界…ではなく
己を救うたびに出発した。
355 :
そして転職へ :2009/08/08(土) 23:59:21 ID:Wx265uqw
「勇者クン。」
門を抜ける直前、盗賊くんと僧侶ちゃんから避けるようにして魔法使いさんから
言われた言葉がまだ引っかかっている。
「アタシがキミの旅に派遣された理由の一つは、竜王事件の真相を知っている
キミが不用意なことを口走らないかの見張り役。」
僕はあの時うすうす感づいていた。しかし、まだ理由があるのかな?
「もうひとつ…これはアタシとキミだけの秘密にして。」
急に笑みを消し、真剣な表情になる魔法使いさん。
「前の酒場の火事、未確認の目撃情報が王宮兵士の調査団に入ってきたの。」
魔法使いさんはちらりと周囲に目を配らせた後、僕の耳元に唇を寄せた。
「酒場が発火する直前、その付近で修道服を着た若い女が火をつけたという
情報。…未確認だけど注意しておいて。」
魔法使いさんの目が一瞬鋭くなった。
「キミの命を狙う人は、意外と身近にいるかもしれないよ。」
続く
356 :
そして転職へ :2009/08/09(日) 00:00:04 ID:Wx265uqw
以上です。読んでいただければ
幸いです。
GJ!
はじめてリアルタイム投下に遭遇したぜ!
GJ!おもしろかったよ
僧侶ちゃん最高すぐる
そして勇者は天然なのか?
おお!
相変わらずお馬鹿な展開が楽しい!
GJです!
GJ!
悪魔の野郎め病んだ妹に迫られるなんておいしいシチュを棒に振りやがって
いいスレだなここは
いつの間にか家の中にいる、黒い姿の彼女……
ヤンデレの添い寝よりも、蚊取り線香の方がよっぽど頼もしい夏の夜
>>366 私はヤン子。将来デレ男君の妻となるものです。
今日も密かに天井裏に潜り込み、デレ男君の安眠を見守っています。
デレ男君のかわいい寝顔をみていると、
逆夜這いをかけたくなる衝動に駆られますが、今は我慢です。
私がデレ男君の彼女になれば直に出来ることなのですから。
それにしても、デレ男君はどうして私に告白してくれないのでしょうか。
長い夏休みももうすぐ終わってしまうというのに。
部活の大会、旅行、花火大会―、どれもお前だけは来るなと言われました。
ふふ、本当は何と言いたかったのか私には分かっていますよ。
ちゃんと尾行して密かに集合写真にも写ってますから安心して下さい。
私としてもこの夏の思い出として十分に満足しています。
少し回想が長くなりましたね。本題に入りましょう。
デレ男君の部屋にエアコンはありません。
そこで夏は網戸にして風を通しているわけです。
実は網戸に小さな穴が空いているんです。
デレ男君はこのことに気付いていないようですが、
蚊刺され易い体質のため一晩に何匹もの蚊がこの穴から忍び込んでくるのです。
貴重な彼の血液を下等動物の栄養などにするわけにはいきません。
しかも血を吸うのは決まってメス、考えただけでも私の血が沸騰しそうです。
そんなわけで、それを阻止するために私はここにいるのです。
え?穴をふさいでしまえば早いのですって?
そんなことしたら、私がここに来る口実がなくなってしまうじゃないですか!
勿論、その案は撤回していただけますよね?
この防衛のために闇の兵器商から高出力レーザー銃まで買ったのですから。
しかし、今日は状況が少し違いました。
デレ男君の枕元に蚊取線香(笑)が置いてあるのです。
500m先から一円玉を撃ち抜ける私が、あんな緑の渦をまいた物体ごときに劣るとでも?
そう、デレ男君は私がここにいることを知らないから蚊取線香(笑)に頼ったに過ぎません。
私がここにいればそんなものは必要ないのです。
私達の恋路を邪魔する蚊取線香(笑)は全てレーザーで渦に沿って焼いてやりました。
しばらくして線香の効果が切れ、一匹の蚊が進入してきました。
即座に出力を絞ったレーザーで焼き落とします。
これも私達の愛がなしうる業。愛の力って本当に素晴らしいですね。
明日こそはデレ男君が私を好きと言ってくれるはず。
そう願いながら、蒸し暑い夜が深けていこうとしています。
ヤンデレ女がいれば体液が1plだって奪われるはずはない。
そんな構想のもと、勢いで少し書いてみた。
いろんな意味で人間じゃないなw
GJ
――最近虫さされ多いね。まぁ夏だから虫も増えるし仕方ないよね。蚊取り線香出したから今夜は大丈夫だよ。
…え? ふふっ、出来てからのお楽しみ。私の料理の腕、上がってるから期待してて待ってて。
最近忙しかったんだよね。全然会えなかったからさ、少し寂しかったなぁ。
…ところでさ、最近男の周りに大きな虫がよく飛んでるよね? 気づいてない? へぇ、気づいてなかったんだ…。
…うん、いるよ、一匹だけどね。一匹はこの前いなくなったから。え? なんの話だって? …虫の話だよ?
でね、その虫なんだけどさ、なかなかしつこいんだよね。追い払っても戻ってくるしさ、殺虫剤か
けようとするとどこかに行っちゃうんだよね。ほんと、苛々するの。
え、まな板叩く音? いつも通りよ。なんでそんなこと言うの? 座って待ってて。
そりゃ男は優しいから虫にも慈悲深いのはわかるんだ。鬱陶しくても我慢してるんだよね?
ねぇ、本当は鬱陶しいんだよね? でも追い払うの可哀相だから追い払えないんだよね?
……違うよ、虫の話してるんだよ。なんでそんな名前出てくるの?
でもね、虫は所詮虫なんだよ。ほっとけば増えるし刺してきたら害があるかもしれないよ?
スズメ蜂みたいに危険な虫かもしれないんだよ? そんな虫が男の周りを飛んでるのって、やっぱり
よくないと思うんだ。
虫に懐かれやすい? うん、そうだよね。昔からよく刺されてたもんね。
……血が美味しいのかしら?
どうしたの、青い顔して? 冷房そんなに震えるほど寒い? うん、私は大丈夫だから止めていいよ。
それで…なんの話だったっけ? そうそう、虫の話だったよね。けっこう大きなしつこい虫の話。
男さ、この前携帯で連絡とれなかった事あったよね。バイト中で忙しかったからってさ。
でもその時ね、見ちゃったんだ……男がアパートから出てくるの。
隠し事の一つや二つあっても仕方ないよね。秘密って誰にでもあるし、知られたくないこと、私もあるから。
でもさ、私は男のことは全部知りたいし、私のことも知ってほしいの。
だからさ、見ちゃったんだ。……ううん、謝らないで。怒ってないから。どうしてそう思うの?
許すも何も、男に虫がまとわりついてただけじゃない。それだけだよね?
もうあの虫が寄ってくることはないからいいけどさ、注意しなきゃダメだよ。夏は虫が増えるんだから。
もうすぐで料理出来上がるから、もうちょっと待っててね――
夏とヤンデレ
暑い夏に暗く怖いヤンデレはベストマッチすると俺は思うんだ。だから
>>369の勢いにつられてみた
374 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 23:05:23 ID:qPm//0+J
怪談じゃなくて怪ヤンか……
ま、まあ二作品ともGJ!!
sage忘れすいません
俺のチンコしゃぶったら許してやる
ねぇ、最近ちょっと七海変わったよね?
どこがって……う〜ん、なんていうかさ……。雰囲気とかさ、目つきとか。
前はもっと明るかった気がするんだよね。そう、彼氏ができたばっかの頃とかさ。
……え、そんなことないって? そっかなー、気のせいかなぁ?
でもさ、ぶっちゃけ彼氏と上手くいってないんでしょ?
前はしょっちゅう彼氏の話ばっかだったじゃん。
やれ「どこにデートに行って〜」だの「彼が欲しがるプレゼントが〜」だの「最近冷たくて〜」って
彼氏の話しかしなかったくらいじゃん。最近まで全然私と顔合わさなかったし――
…はっ? べったりだった?
……はいはい、またノロケですかお熱いですね。だから語るまでもなかったと。
…勘違いだったのかね? いや、七海の雰囲気が違ってたからさ。男となんかあったのかなってさ…。
うん、何もないならいいよ。順風満帆が一番さ。夏を独りで過ごすあたしに遠慮せずにイチャラブしてくだせぇな。
……本当はさ、彼氏とは別れたほうがいいって言おうと思ってたんだ。
聞いたことあるでしょ? 彼の悪い噂。けっこう有名らしいからね。根も葉もない噂なら良いんだ。
でもさ、根も葉もあって証言と証人があるから――あぁ、ごめんね、こんな話してさ。
…あのさ、あたしは正直、別れるべきだと思ってる。冗談じゃなく、本気で。
七海の気持ちはよくわかってる。だから止められないし、無理に止める気もないよ。
でもさ、彼氏に捨てられた他の女の子の話聞くとさ、七海もいつかそうなるんじゃないかって。
実はさ、これ、ちょっと言いにくいんだけど、聞いたんだ。
――七海は飽きたからもう捨てたって。
これさ、噂じゃなくて、本人の口から聞いたんだ。大学で大声で喋ってるのが聞こえてね。
ちょうどその頃からあたしら顔合わさなくなってたよね。だからさ――
……七海? ど、どうしたの? どこか具合でも悪い? ねぇ、なな――
……七海?
あれ? 七海ってこんな顔だっけ?
なんでそんな顔で笑うの? なんでそんな顔で幸せそうに笑うの? なんで…?
え、わかってるって? 反省してくれたって……話し合ったの?
前よりも愛しあってるって? 本当に?
証拠を見せるって? 証拠? …証拠ってどんな…。
…指切り? あの指切りげんまんの?
何、その箱? 開けていいの? 証拠が入ってるって…指切りの証拠? 開ければわかる?
う、うんわかった。それじゃ、開けるからね―――
蚊→吸血鬼→ヤンデレ吸血姫!
もういっちょヤンデレを一レスでまとめてみた。ヤンデレの女友達視点
ヤンデレの親友はヤンデレが間近で見れるポジでもあり、下手したら簡単に死ぬるポジション
通り魔にあって入院してたんだけど、やっと退院できた
ヤンデレさんが家に遊びに来た。
ヤ「病院にお見舞いにいけなくてごめんね」
女「気にしないで」
ヤ「犯人の顔見たの?」
女「いや〜、いきなりだったから覚えてないよ」
ヤ「そう」
女「あなたも気をつけなさいね」
ヤ「あぁ、じゃあそろそろ帰るから。今度はちゃんとお見舞いに行くよ」
女「ありがとう」
>>366 それでも俺は添い寝された方が落ち着く
まぁ、してくれる相手もいなければ、する相手もいないのが現実なんだよな
今日は冬美が俺の家に遊びにきた。
リビングに入るなり座り込んで、床に敷いてあるカーペットをなでまわす冬美。
「うわー、ここで裕貴くんはテレビを観たり、音楽を聴いたり、ご飯を食べたりしてるんだね?なんか感動しちゃう!」
この前、来たときも同じ事を言ってたよな。まぁいいんだが。
冬美は立ち上がると薄型のテレビに近付き、テレビの角をつんつんと指でつつく。
「もー、毎日裕貴に見つめられてて羨ましいぞー!がおー!」
これもこの前言ってたよね。うん。がおー、て。
「ね、ね。裕貴くん裕貴くん!」
「ん?なんだよ?」
「うにゅにゅー」と妙な声を出しながら俺に抱きつく冬美。ついで鎖骨に舌を這わせてくる。
「こ…、これが伝説の裕貴エキス…」
「やっすい伝説だな、おい」
「なんという謙遜!そんな日本人的なところも好きだーーー!そしてベッドチェック!」
言い終わるより早く、冬美は隣の部屋に駆け出し、―――転んで床に鼻チューをかます。
「おっ、おい、大丈夫かよ?」
ガバッと身体を起こし、ニヤ〜っと笑う冬美。やけに嬉しそうだ。
「んふふ。私が心配で心配で仕方ないみたいだね。んふふふふ」
ある意味な。
冬美はベッドのある隣の部屋に入ると、枕元を凝視する。虫眼鏡で。
「うむむむむ……」
枕の匂いを嗅いだり舐めたり話し掛けたり、マットの柔らかさを確認する為に飛び乗ったり、掛け布団を脚で挟んだり。
もう良いだろうと俺は冬美に言葉を投げる。
「で、採点結果は?」
「うん!さすが私だけの裕貴!満点だよ!お姉ちゃんへの愛が感じられました!」
そうです。これがうちの実姉です。
>>378 貴方を愛してる
私には貴方が必要で、貴方には私が必要なの
だから、私と一緒に永遠を生きましょう
私と一緒に、吸血鬼と吸血姫として
で も 他 の 女 の 血 は 絶 対 に 吸 っ ち ゃ ダ メ よ ?
こうですかわかりません><
386 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 03:35:53 ID:4RRBTpeu
ヤンデレ吸血姫…見たい
>>386 317 :名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 03:42:00 ID:4RRBTpeu
ID:LajoDTY7
死ね
あらsage覚えたと思ったら・・・
このスレやら他で死ね死ね言ってるのいつも同じヤンデレさんだね
投下ラッシュウレシス
皆さんGJ
狂愛を描いた耽美で文学的な作品もいいけど、ヤンデレを中心にドタバタを繰り広げる作品もいいですね
ある日、男くんに弁当作ったり媚びうる彼の幼馴染を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた
1ヶ月後、押し問答の末に男くんをかわいがる先輩を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた
半年後、学園祭の勢いで近づいてきたバカ男を殺した、死体は井戸に捨てた
次の日見に行くと死体は消えていた
1年後、男くんに告白した後輩を殺した、死体は井戸に捨てた次の日見に行くと死体は消えていた
2年後、男くんが不治の病に罹って余命いくばくも無いので、一緒に井戸の中で首切って心中した
次の日私たちの体はまだ井戸の中に転がっていた
次の日も、次の日も私たちの体はそのままだった
こういう超短のもいいな、GJ。
死体は男くんが始末していた、という解釈でいいのかな?
元ネタありきのネタだから突っ込むのもアレだけど男とヤンデレは相思相愛だったってことかね
両方とも病んでるな
元ネタはオカルト板のやつだな。母ちゃんが男に改変されてるがこれは良い!
しかしこれはヤンデレっつうかただの女殺人犯だ
男と女を逆にすべきでしたね、俺
>>396 そのコピペの元ネタは小説の「迷路」って作品だけどね
ヤンデレっていえるかはわからんが元ネタのほうも結構病んでるよ
コピペ改変
クラスの中で一人だけ「大縄跳び」がうまくできない男子生徒がいた。
長さ二十メートルの縄をクラス全員で跳ぶ。中学校の運動会が迫っていた
その子がいないと何回でも跳ぶことができる。
先生は本人と話し合って声掛け役をお願いした。
このクラスが一番上手になった。
「優勝確実」
先生は思った。「これでよかったのだろうか」
運動会の前日、女子生徒が「一人だけ外すのはいやだ」と言いだした。
全員で話し合うことにした。まず本人の気持ちを確かめた。
「やりたい」
だったらみんなで頑張ってみようよ、という意見と、でも勝ちたいし、という意見に分かれた。
勝つって何? 仲間って何?―。最初は反対した子が言う。
「少ししか跳べないかもしれないけれど、一緒に跳べたら、外して跳べることより、もっとうれしい」。だれも反対しなかった。
しかし男くんは少々不満だったようで、賛成と口から出してはいたもののイライラした気配が感じられた。
「偽善者くせぇ、あの女将来サヨクとかPTAになるぜ」終わった後に男くんが彼女を指差し、そう皮肉めいた口調で私だけに言った。
私は家庭科室から包丁を持ち出して一緒に下校するその運痴男子と偽善女子を刺し殺し、用水路に投げ込んだ。
当日私たちのクラスは持ち前の実力を大いに発揮し大縄跳びで優勝した。
優勝を決めたとき、感極まったのか涙を流して喜ぶ男くんの顔は、今でも忘れられない。
そのときのヤンデレさんはすっごく冷たくて、いつもインテリ独特のオーラを張り巡らせてる人だった。
かつて夫と付き合っていた、いわゆる元彼女というもあって、私はすごく苦手だった。
ある日のこと、ヤンデレの解雇を伝える社内メールが全員に届いた。あのむかつく女がいなくなる!!心の中でガッツポーズしたのは俺だけじゃなかったはずだ。
それから一週間後、ヤンデレの最後の出勤日。
退社のセレモニーが終わると、みんなそそくさと帰って行ったが夫とヤンデレは居残って仕事を片付けていた。
送別会の開催も自ら断ったヤンデレを苦々しく思っていると、珍しく専務から呼び出された。
しぶしぶ専務室へ行くと、課長と専務が待ち構えていた。
私はそこで初めて課長から「ヤンデレさん解雇の真相」を聞いた。
原因は私だった。私のミスの責任を全てヤンデレが被っていてくれたらしい。
話しを聞いてたまらなくなった私は急いで部署に戻ったが、ヤンデレと夫の姿はすでになかった。
ふと自分の机の上を見ると、あの人がつけていた結婚指輪。ニッパーのようなもので環が断ち切られていた。
横に添えられたメモにはこう書いてあった。
「これぐらいはいただいてもいいはずだ」
私にとっては連れ去られた夫が、最愛だった人です。
ヴェルタースオリジナルでやってみてほしいな
402 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 03:56:40 ID:H6IVN2Ta
ボニー&クライド型、ヤンデレ率薄、男視点
2レス使います
車に転がり込むと、即座にキーを回し、エンジンをかけた。
まだ昼の2時をまわったばかりで、車の中は夏の日差しで焼けつくようだ。
舌打ちをしながら、「タダで」手に入れたビールを手にした。
「アレ」はもう三途の川に着いた頃だろうか。
「酒飲んでる暇があったら早く車だしてよ。」
いつの間にか助手席に乗り込んだ相棒の女が呟く。
「この辺のおせっかいが通報するかもしれないんだからさ。あと・・・」
何だか文句をつけているが、これには俺にも言い分がある。
車を発進させながら言い返した。
「まてよ。通報されんのはお前がまた突然ぶっぱなしたからだろうが。
手を触っただの触られただのって。そんなんで銃振り回す奴がいるか。」
そう言ってもう一度ビールに左手を伸ばす。
国道をそれた田舎の街道は、通る車はおろか人すら見当たらない。
畑は無く、草原が続いている。建物といえば先ほどの雑貨屋だ。
見飽きた風景と蒸し暑さで、のどが無性に渇いてしまう。
が、缶を握ろうとした瞬間、ヌルっとした感触が手の甲に広がった。
チラと見ると、伸ばした手には白いゲル状の液体がかかっている。
あらら、下げ忘れてたかも。ゴメンね。
>>403の続きで終わり
「なにすんだよ。」
この状況は初めてではない。だから次の展開も予想はつくが、一応抗議した。
「黙っててよ。あんたの手、洗ってるんだから。」
遮った女の声は妙に緊迫していた。
どうやら、女が俺の手に「タダ」石鹸をかけたらしい。
いつものことだ。もう慣れた。
女はミネラルウォーターを俺の左手にかけてよく泡立てた。
血どころか汚れさえついていない手を、女は何か呟きながら真剣に洗っている。
いつも通りの虚ろな目だが、どこか爛々としている。
「あのババァが触りやがった。畜生。缶なんか触らせるもんか。畜生。
汚い手で飲ませられるか。畜生。」
女が手を洗う間は、カーステさえ操作できない。
抜けたような青空だが、車内の空気はやたらと重い。
やがて、手を洗い終わると、女は俺の手に唾を垂らす。ニッと笑った。
「終わった。これでいいよ。“あんたとあたしの”手はもう大丈夫。」
唾で台無しだが、嬉しそうなので文句はつけない。
そうして、既に諦めた俺はいつもこうして話題を変える。
「ありがとな。それで、いくらだった?」
次は、他の女と抱き合ってみるか。
ニヤニヤしている女の顔を横目にビールを飲む。
いつのまにか、向こうには積乱雲が見えていた。
「昨日、男くんと寝たよ」
病床で死を待つだけのヤンデレを立ち上がらせるには、その一言で十分だった。
どう考えても道連れフラグ
ヤンデレがビーストモードを発動させたようです。
奴のその言葉を聞いたその瞬間、私の精神は宇宙と繋がった。
この世界に渦巻く膨大な情報。それを私は支配する。
瞬時に紡ぎ出される呪いの言葉。私の病魔を奴へとうつす。
卑しきその女は気を失い、その場に倒れた。
「良かったわね。男くんを幸せにする糧になれて」
男くんを幸せにできるのは私だけ。
その他大勢の女なんて、私の餌になっていればいいのよ。
作品を書いてきたんですが、今って投下して大丈夫なんでしょうか?
ってゆうか、人いるのかな?
どうぞどうぞ
時間が時間だから最後まで見ていられないかもしれないけど。
411 :
無限連鎖:2009/08/13(木) 03:07:07 ID:la1Uw2Ht
それでは投下します。
「・・・なんでだ?」
翌日の学校、自分の席で思わず呟く功一。
教卓の前には担任と今まで見たことの無い女生徒が一人、おそらく転校生だろう。
(まさか、五分の一の確立をひいてしまうとは・・・)
などと考えていたら担任が女生徒に
「それじゃ、自己紹介を頼む」
と促し、女生徒の方も「はい」と返事をしながら黒板に文字を書き始める。
呉 岱 龍 牙
「・・・?」
(えっと・・・。ゴダイ・・・リュウ・・・ガ?)
と功一が頭をひねっていると、
「呉岱龍牙(ゴダイリュウガ)です。これから宜しくお願いします」
と自分の名を口にした。
(おお。あってた。・・・しかし、呉岱はともかく龍牙って、なんつー名前だ)
と、思いながら功一は辺りを見回してみた。
光をはじめ、皆なんともいえないような表情をしていた。
恐らく、考えていることは功一と大差ないだろう。
「おう、お前ら。まあ質問は色々あるだろうが、もう授業が始まっからな」
担任が手をパンパン叩きながらざわめき始めた教室を静かにする。そして、
「さて、呉岱の席なんだが、真ん中の列の一番後ろ・・・高原光の隣に座ってくれ」
光の席を指差しながら説明する。
龍牙は「わかりました」と言い、光の隣にあった席に座った。
「えっと、高原・・・光さんですね。よろしくお願いします」
「・・・うん、よろしくね」
龍牙の挨拶に光は複雑そうに返事をする。
「よーし、じゃあ授業を始めるぞー」
昼休み。
功一は教室で光と昼食をとっていた。
「・・・それにしても、龍牙か。あらためて、なんちゅう名前だ」
「呉岱さんの事?」
「ああ、娘にこんな名前付けるなんて、いったいどんな親なんだ」
「・・・あの娘のこと、気になるの?」
「そりゃ、まあ・・・。女性は確かに苦手だが、綺麗なのは認めるしな」
と、言いながら龍牙の方を見る。
流れるような綺麗な金髪(どうやらハーフのようだ)に太陽の光が反射する綺麗な肌。
少しきつめの目をしているが、話し方のせいだろうか、母性的な感じがする。
そんな龍牙の周りには、人垣ができている。
クラスのほとんど(違うクラスからも来ているようだ)の質問ぜめにあっている最中だ。
最初は、転校前の話とか容姿の話だったが今は名前の話になっている。
そこには功一も興味があったので少し聞き耳を立ててみた。
「それにしても、龍牙ってすごい名前だよねー」
と、女生徒の一人がきりだした。
「実はその名前、親の趣味でつけられた名前なんです」
そう、龍牙が答えると「マジで?」「娘につける名前じゃねーだろ」「どんな親だよ」と周りがざわめきだす。
「あの・・・」
不意に、後ろにいたメガネの男子が龍牙に声を掛ける。
「はい?」
「もしかして、呉岱って『マックスアニメーション』のあの呉岱さんですか?」
その言葉に、龍牙は反応した。
「・・・もしかして、知ってるんですか?」
「はい、確かあの人『MA』のかなり偉い人、と同時にかなりのオタクですよね?」
メガネ君はなんだか少しずつ興奮してきているようだ。
「あの人、『LBL』の舞葉龍牙を大絶賛してて、自分の娘の名前にしたとかいってたような・・・」
「うう・・・。その通りですぅ」
龍牙は情けない声を上げながら肯定する。
「うは!じゃああなたがその娘なのか!!まあ、確かにあのキャラはボクも大好きだけどね!」
すると、メガネ君の後ろにいた男子が
「『MA』は有名だから知ってっけど、『LBL』ってなんだ?教えろよ」と、メガネ君に尋ねた。
「あ!聞いちゃダメ!!」と龍牙は叫んだが、メガネ君はすでにウンチクモードに入っていた・・・。
きーんこーん
「・・・おっと、昼休み終わっちゃったな。まだまだ語り足りないけど仕方ないね」
と言いながら、メガネ君は意気揚々と自分のクラスに戻っていった。
周りの連中は(龍牙と功一も含め)なんだかげっそりしている。
「うう・・・お父さんもそうだからもしやと思ったけど、やっぱり話し出したら止まらない人でした・・・」
ため息をつきながら龍牙は止めた理由を話した。
(なるほど、経験済みだったということか)
と、思いながらも功一は彼が語った『LBL』の要点のみを思い出していく
・正式名称 『リミットブレイクラブ』ギャルゲーとアクションが混ざったゲーム・・・らしい
・主人公は新人ながら実力を見込まれたボディーガード
・攻略可能キャラは良家のお嬢様(このキャラが舞葉龍牙らしい)とメイド長
・二人とも序盤の最後あたりからもう主人公にべた惚れ
・どちらか一人を決めると選ばれなかったほうが嫉妬の鬼と化すのだそうだ
・その状態で選択肢を間違えると悪いエンディングになり選ばれなかった方と殺し合いをする羽目になる
・特にお嬢様のほうがあほみたいに強いらしくまともにやりあって勝ったプレイヤーは未だにいない(本当か?)
・暗い豪邸の中を、日本刀を片手に人外の動きで追い詰めてくるその姿に心を折られたプレイヤーが続出したとか
補足 龍牙の父親談では、その姿が非常に神々しい(?)らしい
結論
「ギャルゲー云々は置いといてそんなにムズイのか。ちょっとやってみてぇな」
そんなことを考えながら龍牙のほうを見ている功一
その功一を光もまた、何を考えているか分からない無表情で・・・じっと見つめていた。
下校時間
いつも通りに、功一は光と雪菜を引き連れて帰ろうとしたところ
「あ、あの・・・」
と、呼び止められた。
功一達が振り返ると、そこには転校生、呉岱龍牙の姿が
最初に反応したのは雪菜だ。
「あら、あなたが噂の美人転校生かしら?」
「う、び、美人・・・?あ、あの、呉岱龍牙と申します。えっと・・・」
「高原雪菜です。功一と光、この二人の姉です。よろしくね」
「あ、功一・・・君・・・と光さんのお姉さんですか。よろしくお願いします」
と、挨拶を交わす雪菜と龍牙に光が声を掛ける。
「で、何か用なの?龍牙さん」
「あ、えっと・・・その、功一君にちょっと聞きたいことが・・・」
そのせりふを聞いて「う・・・お、俺・・・?」と、明らかに動揺している声で功一は返事をする。
「はい。・・・昼休みなんですが、ずっとこちらを見ていたようなのですが」
(うっ!気づかれてたのかっ!)
即座に雪菜がちょっかいを掛ける。
「・・・功一。こんな綺麗な子なんだから仕方ないかもしれないけど、やっぱ、なめまわすようにじろじろと・・・」
「してねえよっ!」
と、突っ込んでから龍牙の方に振り返る。
「・・・私は何か功一君の気に触るようなことをしたでしょうか?」
「・・・は?」
「いえ、その後も何か難しい顔をしてましたし、今も私が近づくとその分離れようとしますし・・・」
「そ、それは・・・」
「功君は女性が苦手なんです」
突然、光が話しに割って入ってきた
「だから近づかないで」
「え・・・で、でも、光さん達は・・・」
「私達は、昔から一緒に育ってきた仲だからある程度は大丈夫なの。でも、あなたは違う」
「・・・・・・」
この龍牙の沈黙で流石にいたたまれなくなってきた功一が
「お、おい光。ちょっと言い過ぎじゃ・・・」
と、止めようとしたが
「じゃ、じゃあ、これから一緒に帰りませんか功一君?私にも慣れてほしいんです」
予想外の龍牙の提案に「・・・っ!?」功一はさらに動揺する。
「私は別にいいですよ。色々聞きたいこともあるし。ふふっ」
雪菜は肯定の意思を示す。
「・・・・・・」
光は黙ったまんまだ。
功一も少し戸惑ったが
「・・・そうだな。いつまでも女性苦手じゃ、格好つかないもんな。よし、一緒に帰ろうか!」
と、勢い良く承諾した。
龍牙も「あ、ありがとうございます!」と嬉しそうに返事をした
そして4人で帰路に着く。
道が分かれるまで功一、雪菜、龍牙の三人は(主に龍牙の名前について)談笑しながら歩いていた。
まだ全然慣れていないので功一と龍牙の距離はあまり近づかなかったが。
そしてただ一人、光だけが少し後ろから三人をじっと見つめていた。
帰宅後。
夕食も終わり自分の部屋でくつろいでいた功一は、突然入ってきた双子に質問攻めにされた。
「お兄ちゃん!今日、転校生の人と一緒に帰ったって本当!?」
「大丈夫だったのか!?功兄!」
「ぬおっ!?おおお落ち着け二人とも、そしてそんなに寄らないでくれ!」
「だってお兄ちゃん!女の人と一緒って!」
「どうしてそうなっちゃったの!功兄!」
「わかった!話す!話すから一旦離れてくれー!」
功一は必死になって双子を落ち着かせながらその理由を語った。
「・・・なんでその人お兄ちゃんと一緒に帰りたがったの?」
話し終わった後にすぐに詩織が質問してきた。
「なんでって、俺に慣れてほしいからだそうだぞ」
「何で慣れてほしいの?」
「む・・・。さあ、そこまでは聞いてないな」
「ふーん」
詩織が話し終わると今度は沙織が聞いてくる。
「功兄はその人のことどう思ってるの?」
「どうって、まあ俺も男だからな。あんな綺麗な女の子がいたらそりゃお近づきになりたいぜ。
近づけないけどな、体が勝手に拒否反応起こしちまうから」
「お近づきになりたいんだ・・・」
沙織も少し思案顔になる。と思ったら突然詩織が
「お兄ちゃん、今日一緒に寝ようよ」
「・・・はあ!?何でいきなりそんな流れに?」
「あ、それいいね。じゃあ、さっそく功兄をベッドに連行します」
「おー」
「な!ちょと待て!おい、あ、ちょ、やめて・・・」
一応抵抗はしたものの、結局ベッドの中に強制連行されてしまった。
「むふー、お兄ちゃん」「功兄、あったかい」
二人は功一の両腕に抱きついた状態でベッドに潜り込んでいる。
昔から、この双子はたまに功一と寝ているが(というより勝手に潜り込んでくる)
興奮もしてはいるが、それ以上に動揺している自分がいることを功一は自覚していた。
(やっぱ、まだちょっと怖いのか・・・)
と、考えながら上を向くとそこにはなぜか光の姿が。
「・・・いつから、いましたか?光さん」
「功君が二人にベッドに連行されたあたりから。ノックはしたんだけど聞こえてなかったみたいだから、勝手に入りました」
「あ、さいですか・・・」
「・・・あの、功君」
光はもじもじして、顔を真っ赤にしながら功一に話しかける。
「なんだ?」
「そ、その・・・私も、い、一緒に・・・ね、寝たい・・・な・・・」
「・・・・・・」
結局功一は三人の女の子と一緒に寝ることになった。
(猛あたりなら、泣きながら羨ましがるシチュかもしれんが・・・実際にやるといろんな意味でかなりつらい
明日は寝不足確定だな)
以上で投下は終了です。以前の投下から恐らく1ヶ月近くたっているのに
たったこんだけしか書けてません。ゴメンナサイorz
後前回のやつは題名が決まってませんでしたが、今回からこの題名でいくことにしました。
ビーストって聞くとなぜか一番にボブ・サップを思い出すな
ヤンデレがサップ並みの突進をしてくる様を思い浮かべてニヤニヤした俺はもう人生終了だ
ぽけもん黒作者まだ規制されてんのかなぁ
どうもwikwの「題名のない長編その五」の人です
二ヶ月近く作品を放置してしまった…
それでは投下します〜
さてさて…ずいぶん長かった気もするが…
結論から先に言っておこうアツシの告白は見事大成功だ
俺がわざわざ倉庫から引っ張り出してきた『立ち入り禁止』の看板が
非常に役に立ってくれた…
告白の舞台は学園モノの定番で屋上だ…
屋上が生徒に開放されている、学校は珍しいと聞いたことがあるが
少なくともウチは生徒に解放されている
コレを利用しない手はないだろう?
昼休み前に屋上の入り口前に、立ち入り禁止の看板を立てておけば、
ウチの生徒は律儀なので、生徒は屋上へ来ない
前に一度実験をしたからな、効果は確認済みだ
何故昼休みなんだって?放課後では屋上の鍵が閉められてしまうのだ
初めは屋上の鍵を奪うという、作戦も考えたがリスクが大きいので却下した
そんな事は置いておき…いよいよ昼休みとなった頃で
ガチガチに緊張したアツシがアヤちゃんを屋上に誘うまでに、
屋上へ先回りして、隠れて待機する 俺は2の為に色々とやったんだ、
あのバカの告白を特等席で見られる権利ぐらいはあるだろ?
隠れ場所に最適な給水タンクの上へと隠れる
少し時間を空けて、アツシがアヤちゃんと一緒に屋上にやって来た
もちろん屋上前の看板が俺が仕掛けたモノということはアツシに伝達済みだ
ココに俺が居る事は言ってないがな!
俺を除いて誰も居ない屋上に2人きり…いかにもな雰囲気じゃねーかヘイヘイ!
少し歩いて丁度屋上の真ん中ぐらいに来たところで
「誰も居ないね…アッちゃん」
「そ、そうだな…誰も居ないな」
「…静かだね」
「お、おおう」
アヤちゃんが先手にでた!アツシめ不意打ちを喰らうとは情けない…
てか、明らかに動揺してんじゃねーかよ!ファイトだアツシ!
「…アッちゃん、大切な話って何?」
「え?あ、あああ…そのな、アレだ…その…」
くッ…笑っちゃいけない…笑ってはイカンのだ…絶えろ俺!!
アツシめ『大切な話がある』と言って誘ったのか…なんてベタな奴だ
「えーと…その…えー…えー」
「どうしたの?」
「…よし!…一度しか言わないぞ!!…アヤ!」
「え?う、うん…わかった」
アツシの気迫に押され気味のアヤちゃん、全く…アツシは相変わらずバカだ
アツシが少し間を置いて決心した面構えで言う
「俺はお前が好きだ!だから…俺と付き合ってくれ!
絶対アヤの事を大事にするから!」
言ったぁぁぁぁああ!ド真ん中へストレートなシュート!
さてアヤちゃんの反応は…一時停止みたいになっているが…
「うん…私もアッちゃんがスキだよ…だから、大事にしてね」
そう言うとアヤちゃんがボロボロ泣き出してしまったぞ…
慌てふためくアツシ…バカ!そこは黙って抱きしめるんだよ!
おっと…身を乗り出しそうになった…アツシはバカだが
俺はその10倍バカだという事を忘れていた
「アッちゃん・・・!」
「おっと…」
あらら…アヤちゃんから抱きついちゃったよ
「私ずっと…ずっと待ってたよ…アッちゃんがスキって言ってくれるの…
普段何気なく話す仲…友達としか見られてないのかなって、不安だった
私から言おうとした事もあったよ…でも、言えなかった…
もし、フられたりしたらって、考えたら怖くて動けなくて…
でも、やっと言ってくれた…言ってくれた…大好きアッちゃん」
「…ゴメンなアヤ…そこまで悩んでたなんて…」
ギュッとアヤちゃん抱きしめるアツシ
そうだよ!それだよ!ソレが欲しかったんだよ、クソッたれ!
「アッちゃん…キスして」
「え?あ…あの…ソレは、何というか、その…はやくナイカ」
おっとコレは予想外の展開、さすがアヤちゃん…
「ううん…遅すぎたくらいだよ、私ずっと待ってたんだよ?」
「そ、そうか…だな?」
「…そうだよ」
目を瞑りジッとアツシを待つアヤちゃん…コレは見物だ…ゴクリ
アツシがガチガチになりながらも目を瞑り…
「い、いくぞ…」
「んッ…」
なんてことだ、貴重なバカがまた一人、男になってしまった
コレは一大事だ…とてつもない一大事だ…そうだ写真に収めておこう
この絶滅目前のポラロイドカメラで…パシャッ!!っと
―パシャッ!ジー
ポラロイド特有の音がする………ってあれ?何してんの俺?
気づけば隠れるのを忘れ、カメラを構えて、身を乗り出しているではないか
ショックのあまり、おかしくなっていた様だ…
もちろん音に気づいた二人は目を点にしてコチラを見ている
「2人ともオメデトウ!」
親指を立ててみる
「タロウッ!!!?」
「タ、タロウ君!?」
2人同時、息ピッタリだな
2人の顔がみるみる赤く染まっていく…なかなかいい反応だ
もう少し見ていたいが
色々と面倒が起こる前に退散しよう、ドアを開けて…
「それでは、お2人さんお幸せに〜」
―ガシッ
両肩を捕まれる…ハハハ、何でだろうな前に進めないや
「タロウ…大事な話がある」
「タロウ君…私も大事な話しがあるの」
「…ジーザス」
あの日から数日がたった、2人のキスの現場写真は奪われてしまったが
2人の仲は順調そのもの、見ている方が恥ずかしくなる位だ
あと、アツシがメイちゃんにアヤちゃんと付き合ってる事を報告したらしい
ちょっと気になったので、メイちゃんの様子はどうだ?とアツシに聞いたら
「別に、いつもと同じだが?」
との返答だ、もしかしたら…と思ったんだが、思い過ごしだろうか
何にせよ平和なのは良い事だ
何も起きないなら、何も起きない方がいい
今日はアヤちゃんがアツシの家に遊びに行くらしい
下校前にアツシから聞いた、まぁ大丈夫だろう
俺が心配しすぎなだけで、メイちゃんは何とも…
携帯のメール用の着信音が鳴る、人の下校途中に誰だよ
あ、メイちゃんからだ…何だろ
足を止めて携帯を覗く、メールの内容は
『タロキチへ』
続きは?…ええと、あ!改行してあるのか、ややこしいな
メールの本文を下へ下げていく…メールの一番下には
『振り返るな』
は?何だコレ?振り返るな?
俺がその場で振り返ると、直ぐ後ろにはメイちゃんの姿が…何かを振りかぶっ…
―ゴッ!!
頭に強烈な衝撃、それは俺の意識を奪うのに十分な威力だったようだ
視界が暗くなっていく、足に力が入らない…立って…いられない…
消えゆく意識の中メイちゃんの顔が目に入った…まるで人形…ように無表情…だ
「…タロキチ、だから振り返るなって言ったのに」
そんな…声が…聞こえ…気…が………
ココで一区切りしてと…第6話へ
――――――――――――-
「…ッ」
ここ…は?俺…なんで椅子に座ってんだ?
確か、メイちゃんからのメール見て…それから…
…メール見て…どうだったけな?さっぱり記憶が無い
とりあえず立ち上がらないと…
―ギチッ
両手両足に違和感、これは…椅子に縛られているぞ…
気を失って、目を覚ましたら
椅子に針金で手足を縛られて身動きが取れない…ってか
なんともマヌケな…
手足の針金がしっかりと何重にも括ってあるのを見る限り、
コレをした犯人は、よほど俺が嫌いらしい
とりあえず現状確認を実行
スグ近くに、工事で使うような照明が、俺を照らすように1つ置いてある
周りの様子は殺風景…天井が在るな、建物内ということか…
恐らく建設中のビルか何かだな…
建設中にしては汚いな、あちこちにゴミが散乱している
外の様子は…オレンジ色の空、まだ夕方ということか…
今のところは解るのはコレ位か…な?
えーと…あとは・・・えーと…えー・・・
いかん…、思考がハッキリせんぞ…あーが頭イタイ
「ううう…」
痛いぞ…唸ってしまう位に頭が痛い
恐らく鈍器で死なない程度に一発、頭に貰ったらしい…
いかん頭がズキズキしてきた…
「あ!おはヨ、タロキチ目が覚めた?元気?…って、そんな訳無いか」
後ろから、声がした
俺をこの状況に陥れた犯人だな…
しかし、犯人は俺の知っている人にそっくりな声だなぁ…ははは…はぁ
俺の目の前に犯人が回りこんでくる
犯人の顔が照明に照らされて誰なのかが解る…解りたくないが
「メイちゃん…か」
「あれ?私じゃないと思った?」
「いや…でも」
「こんな事をするとは思わなかった?」
正直に言うと『俺にこういうのが、来るとは思わなかった』なんだが…
この際何だっていいだろう…もう事は起きてしまったのだから
目の前のメイちゃんの見た目こそ表情は穏やかだが
穏やかな表情の奥にはメイちゃんの内側からの、黒いモノを感じる
「タロキチは…
私が兄さんを好きなのは解ってたみたいだけれど、
私が『どれだけ』兄さんを好きなのかは知らなかった?
考えもしなかった?」
「…考える価値すらねぇな」
メイちゃんの動きが一瞬止まる
―バシィィィッ!!
メイちゃんが力一杯、俺の頬を叩いた
乾いた音が、周囲に響き渡る
痛ッってぇえええ!!!! だが、声には出さないで、やせ我慢…
あー…今ので少しは、目が覚めた…意識がハッキリしたが…頭痛い
「…価値がない?どういう事?」
「そのまんまの意味だ」
「この状況で、そんな事が言えるなんてね…言葉に気をつけた方がイイと思うよ」
「うるせーよバカ」
―バシィィィッ!!
2発目、さっきとは反対側の頬、もちろんフルパワーで
痛てぇ…顔が腫れてきやがった、でも折れない
挑発して、本音と狙いを聞き出せればいいのだが…
危険な賭けではあるが
「兄さんから聞いたよ、アヤちゃんと付き合ってるって…
でも、いつもの兄さんなら、女の子に告白なんか…出来やしないのに
兄さんはアヤちゃんに告白してしまった!」
「…なんでだろうな?」
―バシィィッ!!
3発目…
クソッたれ…痛てぇ…
「…本気で言ってる?そんな事ないよね?タロキチがコレに一枚噛んでるのは
知ってるよ。兄さんが何故告白する気になったのか、何故告白を決心したのか
全部…全部タロキチの所為…兄さんがアヤちゃんの事を好きと思い込ませて
背中を押して告白させたりなんてするからッ!!」
「…俺は思い込ませてなんか」
「うるさいッ!!」
―バシィィッ!!
4発目か…1番力が入ってた気がする
なるほね…俺の行動は筒抜けだったワケか
俺がこうなったワケが大体理解出来た
「このままでは、兄さんが…兄さんが…私から離れてしまう、
私の居場所が…兄さんの傍に居ていいのは私だけなのに…奪われてしまった
私は…私は…そんなの耐えられない、いいえ耐える必要なんてない
奪われたなら奪い返せばイイだけの事、簡単なこと
奪い返すついでに、邪魔モノを駆除しなくちゃ…わるい虫は駆除しないと、フフ」
「…」
おいおい、ヤバイぞこれはヤバイぞ…
頑張ったら説得出来るか…な?
「…メイちゃん」
「何?」
「アツシは兄で、メイちゃんは妹だ…」
「だから?私は兄さんが好き、それだけの事!法律なんて関係ない
私はタダ兄さんが好きなの、コノ思いは誰にも邪魔させない!
タロキチ…次、変な事言ったらいい加減……」
もはや説得が出来る状態では、無いようだ…
しかし、俺をココまで椅子に固定する必要はあるのか?
俺に文句言うだけなら…ココまでする必要は無いハズ
一体何故だ?
「あ、もうこんな時間…はやく家に帰らないと、アイツを始末出来なくなる
待っててね兄さん、兄さんには私しか居ないって教えてあげるから…
タロキチにも邪魔されないようにしたし…
じゃあね…タロキチ、全部片付いたら迎えに来るからね」
「ちょっと、待て!!メイちゃん!」
椅子に固定した理由は、邪魔されたくないからか…
俺の呼びかけをヨソに、足早にメイちゃんが去っていく
俺は、その背中を見つめるだけ
クソッ…俺の軽はずみな行動、俺の自己満足な行動の結果がコレか…
ココで、事の成り行きを唯待つしか出来ないのか…
はぁぁぁ…
…いや、まだ俺は諦めん!何とかしなければ!!
とりあえず、ココから脱出しないと
「うおおおおおおお!!!」
雄たけびを上げて思い切り力任せに椅子から脱出を試みる
「ぬぅああああああああ!!」
何としても、アツシを、メイちゃんを、アヤちゃんを助けるんだ!!
俺は何度も何度も椅子からの脱出を試みた
針金から抜けれないなら、椅子自体を壊せば!
この椅子は木製だな…やってやれないことはない!!
―バキッ
1時間程格闘した後
ついに椅子の肘掛の左側が折れた、よしコレで左手が自由になった
早速右腕、両足の針金を外せるぞ
よし!コレで!!…針金は意外と簡単に外すことが出来た
ん?ふと目をやった折れた左の肘掛は
折れたにしては断面が半分ほど
まるでノコギリで、途中まで切ったような断面だ
予め折れ易くしておいたのか…何故?
左腕の針金を外し肘掛の破片を、置いて…あ、何か書いてあるぞ
この文字はメイちゃんの文字だな、何て書いてあるんだろうか…
『今、コレを読んでるって事は、
私が…酷い事しちゃったんだよね
先に謝っとく、タロキチゴメンね
私が正気を失って凶行へ走る前に
まだ私の理性がある内に
我侭だけど
タロキチ お願い
助けて
私と兄さんとアヤちゃんを』
そうか、お願いか…コレは、まだ可能性はあるって事だよな?
こんなお願いなら、いくらでも聞いてやるよ!
待ってろよ!!急げ俺!!アツシの家へ!!
俺は長時間座っていて固まっていた足の筋肉を軽く伸ばし
アツシの家へ向かうべく建物の外へと飛び出した
フー…2ヶ月放置した結果がコレだよ!!
次回で最終話になります。また後日投下シマス、それでは〜
うおおぉ!朝起きたら2つも!!GJです
不良を美化するごくせん(笑)よりも、ヤンデレの方が教育によろしいと思いました
ぽけ黒って死んだの
投稿します。下のほうです。
第五話『シグナムと聖剣 下』
湖から吹く涼しい風と、草木の匂いに身を委ねて熟睡していたシグナムは、
風が吹くに伴って聴こえる草のざわめきに混じって、
なにかがこちらに向かってきている音を聴いて目を覚ました。
そこには、どぎつい黄色の原色を身にまとったイリスがいた。
「シグナム様、終わりましたよ」
イリスは幸せそうに笑っている。
この手の笑顔には、シグナムは嫌な予感しか浮かばなかった。
イリスは馬鹿だから、交渉決裂を交渉成立と勘違いしているのかも知れない。
やはり、イリスに任せるべきではなかったか、とシグナムは後悔したが、
「条件を満たしてくれたら、聖剣をあげるって言ってました」
そのイリスの発言は、シグナムの不安を一瞬の内に吹き飛ばし、
あまつさえ酷かったイリスの評価を、根底から覆させた。
「ほっ…、本当か!…っで、その条件とは!?」
「一人の男を連れてきてくれって言ってましたけど…」
「でかしたぞ、イリス!」
シグナムは危うく抱き着きそうになったが、なんとか抑え、
町に戻りがてら、詳細を聞くことにした。
歩きながら、イリスが探し人の容姿などを語りだした。
男の名前はロムルス。年齢は今は確か21歳。
金髪碧眼で、身長は175cmぐらい。
ニプルヘイムに住んでおり、
もしかしたら、まだ住んでいるかもしれないとのことだ。
イリスがそこまで言うと、シグナムは少し疑問に思った。
「それにしても、世界が滅んでしまえばいいとまで言っていたあの精霊が、
よくもまぁ、男一人を探すだけで聖剣をくれるとまで妥協したな。
イリス、お前、精霊になんて言って説得したんだ?」
多少はイリスを見直したが、それでもやはり信じられない様だった。
「なにって、私はただ『素直になれば』って言っただけですよ」
イリスがまた、楽しそうに笑った。
町に戻ったシグナム達は、早速ロムルスの情報を探し始めた。
時間が掛かるだろうと思われたが、かなり呆気なく情報は集った。
ただの一般人だと思っていたが、この町では思いの外有名人だったのだ。
ロムルスには、1歳年下の美しい妹がおり、名前はレームといった。
別にそれだけなら話題になるはずもないのだが、
彼女は異常なくらいに兄を溺愛するブラザーコンプレックスだったのだ。
どこに行くにも兄の後を付いてきて、なにをするにも兄の横にいて、
他人に対しては、兄の自慢を蕩けそうな目付きで語り、
挙句の果てには、町や村の有力者が求婚を申し込んでも、
追い返してしまうほどの重症だった。
さらに、そのロムルスが平凡な容姿、性格、才能だったのに対し、
彼女は非凡な容姿、性格、才能の持ち主であったことが、余計に二人を有名にさせた。
しかし、そんな才能に恵まれた彼女も、3年前に湖で足を滑らして落ちてしまい、
そのまま帰らぬ人となってしまった。
つまり、ロムルスは悲劇の人である。
シグナムは集めた情報をまとめて、そう思った。
そんな悲劇の人を、わざわざ妹が死んだ湖に連れて行くことは心が痛いが、
聖剣を手に入れるには、これしか方法がなく、それで世界中の人々が救えるならば、
シグナムは心を鬼にしてロムルスを連れて行くことを決心した。
幸いなことに、ロムルスはまだこの町に在住しているらしい。
シグナムは場所を聞き出すと、イリスを連れてそこに向かった。
ロムルスの家はニプルヘイムの郊外にあり、人が住んでいるとは思えないほど静かである。
あまりに静かなので、留守なのではないかと思ったが、その懸念はすぐに消えた。
家の戸が開き、中からロムルスが出てきたのだ。
シグナムはロムルスの前に立ちはだかった。イリスは出遅れた。
見るからに、本当にこれといった取り柄も見当たらない顔である。
呼び掛けた際に返ってきた声にも、覇気がない。
まさしく平凡な民の体現者である、とシグナムは思った。
「私の名前はシグナム・ファーヴニル。ファーヴニル国の王太子です。
じつは、あなたに頼みたいことがあり、ここに来たのです」
シグナムの身分と、あまりにも深刻な物言いに、ロムルスは身構えた。
「私と共に、湖に来てもらいたいのです」
シグナムがそう言うと、ロムルスは目に見えて顔を青くした。
「妹さんをあの湖で亡くして、辛いのはよく分かります。
ですが、私はあの湖にある聖剣を手に入れなければならないのです。
そのためには、あなたが必要なのです。お願いです。あなたの力を貸して欲しい」
シグナムは懇切丁寧に説いたが、
ロムルスは口をパクパク動かすだけで、一言も発しない。
どうしたものかと悩んでいると、イリスが前に進み出て、
ロムルスの頭部を角材で殴り付けた。
ロムルスは悲鳴を上げる暇もなく、その場に倒れこんだ。
「いっ…、イリス!なにをしているんだ!」
イリスの強行に、シグナムは驚きの声を上げた。当のイリスはしれっとしている。
「このままじゃ、埒が明かないと思いまして。
さぁ、シグナム様!ロムルスさんが目を覚ます前に、湖に行きましょう」
イリスはそう言って、シグナムに出発を促した。
どうにもシグナムは納得がいかなかったが、こうなってしまっては致し方ない。
まずはロムルスを担いだまま街中を進むことの愚を避けるため、
自分の能力を使うことにした。
シグナムは、右手に集った灰を自分の周りに覆わせた。
すると、シグナムはまるで透明人間の様に見えなくなってしまった。
好奇の目でそれを見つめていたイリスは、驚嘆の声を上げた。
「わぁ〜、すごい!シグナム様がいなくなっちゃいました。どうやったんですか、これ?」
しかし、イリスが話し掛けた方向にシグナムはいなかった。馬鹿丸出しである。
「別にたいしたことじゃない。周りを灰で覆うことで、
光を屈折させて見えなく…って、お前に言っても分からんか…」
頭から煙が出ているイリスを見て、説明することの無意味さを思い出し、
未だ混乱しているイリスに、後から来るように、と言ったシグナムは、
湖に向かって走り出した。
ロムルスを担いで、ニプルヘイムの町中を走るシグナム。
姿が見えないとはいえ、足音や息継ぎをする音も聞こえるし、砂煙も立つ。
何人かの人が音のする方向を振り向くが、
霧が深いうえに、人も少ないので、誰も気にする様子はなかった。
技としては荒削りで稚拙である。だが、十分利用価値はあった。
完成すれば、魔物との余計な戦闘を避けることが出来るかもしれない。
そう考えたシグナムは、足音や息遣いなど注意しながら走り出した。
森の入り口まで来て、シグナムは足を止めた。木々がへし折れんばかりしなっている。
台風でも来るのだろうかと思ったが、それほど強い風は感じられない。
不審に思ったが、来られてずぶ濡れになるのはごめんなので、
シグナムは未だに追い付いてきていないイリスを無視し、さっさと湖に向かうことにした。
最初に来た時より、霧はかなり薄くなっていたので、
途中で躓くことなく、シグナムは精霊のいる湖まで戻ってくることが出来た。
草上にロムルスを寝かせたシグナムは、落ちていた小石を拾い上げた。
どうせ、呼び掛けてもなんの反応もしないのは既に実証済みである。
シグナムが振りかぶって小石を投げようとして、ロムルスが目を覚ました。
投げる動作を中断したシグナムは、ロムルスに目を向けた。
「ここは…」
ロムルスは殴られた箇所を擦りながら身体を起こした。
「湖です。連れの者が無礼を働き申し訳ない」
シグナムが口を開いた瞬間、ロムルスの顔色が急激に悪くなった。
無理もないことだと思い、シグナムは小石を湖に投げ込もうとしたが、
ロムルスが口にしている言葉を聞いて、再びその動作を中断した。
ロムルスはひたすら、殺される、連れて行かれる、という言葉を呟いていた。
おかしい、とシグナムは思った。
ロムルスは確かに妹のレームをこの湖で亡くしている。
誰も好き好んで身内の死んだ所に近寄る人などいるはずもない。
だからロムルスが、ここに来ることを拒んだのは理解できる。
だが、それは事故であり、ロムルスの責任ではない。
それなのに、なぜロムルスがその様なことを言うのか。
これではまるで、ロムルスがレームに対してなにか罪悪感を抱いている様にしか見えない。
自分はなにか勘違いをしているのだろうか、とシグナムは思い、
それを問いただす意味も含めてロムルスに声を掛けようとした。
しかし、それは叶わなかった。
突如、湖から水の触手が現れ、
それがロムルスに巻付き、湖に引きずり込もうとしたのだ。
シグナムはすぐに灰の剣を作り出し、触手を切断した。
切断された触手は、形を保つ力を失い、大量の水となって地面を濡らした。
シグナムはロムルスを守る様に前に立ち、剣を構えた。
湖からは、未だに無数の触手がロムルスを狙っている。
形勢不利と見たシグナムは、怯えるロムルスをけしかけて逃げようとしたが、
出口に近付いた瞬間、木の根が壁の様に立ちはだかり、唯一の退路が塞がれてしまった。
「逃がさない…」
地獄の底から響いてくる、まるで呪詛の様な声が背後から聞こえた。
振り返ると、そこには悪霊がいた。シグナムが最初に見た時の神々しさは微塵もなく、
感じられるのは、禍々しい妖気と身震いする程の殺意だった。
それを見たロムルスが、情けない悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちた。
歯の根が合わないのか、ガチガチと歯を鳴らしている。
「どうして…もっと早く来てくれなかったの…?
毎晩…、ここに来てって、言ってたのに…」
禍々しく笑う精霊から、初めて殺意以外のなにかを感じた。
淫靡で、どす黒く、穢れきった、触れてはいけないなにかが、その表情から感じられた。
「でも…、そんなことはもういいわ…。
やっと来てくれたんだもの…。さぁ…、一緒に逝きましょ…」
水面がざわめき、再び無数の水の触手がロムルスに襲い掛かってきた。
ロムルスは腰を抜かして動けない。シグナムは再びロムルスの前に立ち、
次から次へと襲い掛かってくる触手を斬り防いだ。
だが、さしものシグナムでも完全に防ぎきることは出来なかった。
防ぎ損ねた触手が、シグナムの頬を掠り、血を滲ませた。
「止めてくれ!この人になんの恨みがあるというんだ!」
暴走する精霊に、シグナムは必死に呼び掛けた。
しかし、光を失い濁りきった精霊の瞳は、邪魔をするシグナムを刺すように睨み付けた。
「邪魔を…するな…」
次の瞬間、シグナムの身体は吹き飛んだ。
シグナムは、前面の触手に集中しすぎたため、
側面から迫ってくる触手に気付くのが遅れた。
幸い、灰による防御で直撃は免れたが、それでも凄まじい威力。
あまりの激痛に気を失いそうになるが、唇を噛み締め、必死に意識を保つ。
ロムルスは、触手に捕まり、湖に引きずり込まれそうになっていたが、
シグナムが灰を鞭状に伸ばして触手を切り裂き、ロムルスを救い出した。
「なんで…、私の邪魔…するのかなぁ…?」
精霊が濁った瞳でシグナムを見つめる。その瞳からはなんの感情も感じられない。
まるで、路傍の石でも見ているかの様な目付きだ。
「殺されそうな人を目の前にして…、…っ…、見殺しにする訳にはいかないだろ…」
シグナムはにやりと笑ったが、その反動で、強かに血を吐いた。脇腹も悲鳴を上げる。
精霊はつまらなそうにシグナムの言葉を聞き流した後、
再び触手をロムルスに向けて伸ばし始めた。
シグナムは助けに向かうべく立ち上がろうとしたが、
凄まじい衝撃と激痛によって、再び地面に突っ伏した。
脇腹の痛みではない。後ろから無数の刃物で突き刺されたみたいな痛み。
頭が、背中が、腕が、脚が、所々で熱を発している。
シグナムの身体に突き刺さっている『もの』は、木の葉だった。
木の葉が、手裏剣の様な鋭利な刃物となって、シグナムに突き刺さったのだ。
「これ以上…、私の邪魔をしないで…。次、邪魔したら殺しちゃうから…」
精霊の言葉通り、シグナムを中心に、無数の木の葉が渦巻いている。
少しでも動こうものなら、いっせいに降り注ぎ、シグナムは針鼠になるだろう。
実際、シグナムの身体は動かしたくても動かせなかった。
脇腹への一撃、身体中に突き刺さっている木の葉の手裏剣。
幸い急所は全て外れていたが、それでも出血多量。このままでは失血死してしまう。
重傷だった。意識を保っているだけでも奇跡だったのだ。
それを見た精霊は、なんの感慨もなしに、ロムルスに触手を伸ばし始めた。
これから、一つの芝居が始まる。主役は精霊であり、敵役がロムルスである。
シグナムは、客席からそれを眺める傍観者であった。シグナムは無力だった。
触手が、ロムルスを捕らえた。腰を抜かしているロムルスは、身動きすら出来なかった。
ロムルスがこちらを怯える子犬の様に見つめてきたが、
重傷のシグナムはどうすることも出来ない。ロムルスが目に見えて絶望の表情になった。
ロムルスを捕らえた触手は、一時的に精霊の目の前で止まった。
精霊がロムルスを凝視している。なにやら話をしている様である。
しばらくすると、触手がゆっくりと湖に沈んでいった。
ロムルスが慌てて身体を揺すり始めたが、強く巻付いている触手からは逃げられなかった。
そのまま、ロムルスは呆気なく湖に沈んでいった。
それに伴い、精霊も湖に沈んでいった。
結局、なにも出来なかった。シグナムは草を強く掴んだ。
この能力があれば、誰にも負けない、という強い自負が崩れ去った瞬間だった。
歯を食いしばり、涙が出そうになるのを必死に防ぐ。
王族がこの様なことで泣いてはならない。
結果的に、この選択は正しかった。
しばらくすると、精霊が一本の剣を持って、再び現れたからだ。
「約束通り、あげるわ」
それだけ言って、剣を地面に投げ付けた。
それから、と言って、精霊は一つの小瓶を剣の近くに投げ落とした。
「エリクサーよ。精々長生きすることね」
精霊は時間が惜しいとばかりに、さっさと湖に沈んで行ってしまった。
身体に突き刺さっている木の葉が、硬さをなくしてシグナムから離れた。
精霊が力を解除したのだろう、とシグナムは思った。
シグナムは痛む身体を引きずり、剣の近くに落ちているエリクサーを手に取った。
そして、蓋を取り、一気に小瓶の中の液体を飲み込んだ。
なんともいえない味がする。
強いて言うなら、ローヤルゼリーを無加工で飲んだみたいな味だった。
しばらくすると、シグナムの身体を蝕んでいた激痛が和らぎ始めた。
エリクサーは、清らかな水と様々な神仙の霊草を混ぜて出来たポーションに、
砕いた賢者の石を加えて作った、究極の回復薬である。
死者の蘇生や、失った身体の部位を蘇らせることは出来ないが、
様々な怪我や病を治すことの出来る、店でも売っていない貴重な薬なのだ。
そのエリクサーの効能で、シグナムの身体の傷は既に塞がっていた。
だが、いかんせん血が足りない。動こうにもだるくて動けない。
シグナムは、気だるさの中、目を閉じた。
どうせもう襲われないだろうし、死ぬこともないので、安心して目を瞑ることが出来た。
「シグナム様ぁ〜、大丈夫ですかぁ〜」
しばらく眠っていたシグナムは、イリスのアホな声で目覚めた。
多少は体力が復活したらしく、身体にだるさは残っているが、動かすことが出来た。
なにかありましたか、と聞いてくるイリスに、
シグナムは、ロムルスが精霊に連れて行かれた、とだけ告げ、
剣を引き抜き、さっさと歩いていってしまった。
あわててイリスが追い掛けてくる。
イリスはシグナムに話し掛けるが、シグナムは無視一辺倒で通した。
町に戻ってきたシグナムは、まっすぐに宿に向かった。
金があったシグナムは、スイートルームの鍵を取り、さっさとベッドに寝転がった。
少し遅れて、イリスが部屋に入ってきた。
「シグナム様、本当に大丈夫なんですか?さっきからぜんぜんしゃべってくれないし…」
「イリス。お前は風呂に入って来い。六ヶ月も簡易宿で、風呂に入ってないだろ。
俺はもうしばらくこうしている…」
枕を顔に埋めているシグナムは、心配するイリスを、風呂に行く様に促した。
「シグナム様…。そんなにロムルスさんを守れなかったことがショックなんですか?」
イリスが当たり前のことを、不思議そうに聞いてくる。
無知ゆえに仕方がないのだろうが、その無知がシグナムの癪に障った。
「あぁそうだよ!力のあるこの俺が、平民の一人も守ることが出来なかったんだ!
ズタボロにされた挙句、敵に情けを掛けられて、
俺はその情けに縋るしか助かる道はなかった!
どうだ、お笑いだろ!?散々威張っておいて、結局はなにも出来なかったんだ!
笑いたければ勝手に笑えばいい!どうせ俺は無能な王族なんだよ!」
気付けば怒りの丈を全てイリスにぶちまけた。
冷静になると、なんと大人気ないことを言ってしまったのか、と後悔した。
対するイリスは、一瞬身体を強張らせたが、すぐに聖母の様な穏やかな微笑を浮かべた。
「シグナム様は、無能なんかじゃありません」
暖かくて、害意をまったく感じない、優しい声だった。
「シグナム様は、身体を張ってロムルスさんのために、戦ったんですよね?
普通の人だったら逃げ出す様な圧倒的な力を持つ精霊さんと、命を掛けて…。
一生懸命がんばった人を、無能なんて言う訳ないじゃないですか」
そう言って、イリスがシグナムを優しく抱きしめた。
「だからシグナム様…。自分を無能だなんて言わないでください。
そんなこと言われたら、私も悲しくなっちゃいます」
イリスの身体は柔らかく、そして女性特有のいい匂いがした。
まるで、母に抱かれている様な気持ちにシグナムはなった。
「なにも出来ないくせに…」
あまりにも小っ恥ずかしかったので、シグナムはあえて憎まれ口を叩いたが、
小さく、本当に小さく、
「…ありがとう…」
と、素直に言った。
それが聞こえていたのかいないのか、イリスはシグナムを抱きしめる力を少し強めた。
しばらくイリスに抱きしめられたシグナムは、やっと落ち着いた。
それを確認したイリスは、シグナムに言われた通り、浴室に向かった。
シグナムはしばらく備え付けのお菓子を口にしながら夕食を待った。
イリスが風呂から出て来た時、イリスはお笑い芸人のどぎつい黄色の服ではなく、
純白のバスローブを身に付けていた。
今まで気付かなかったが、イリスはとんでもないくらいの美人だった。
赤みがかった金髪のセミロングは、インクルージョンのルビーの様に美しく、
雪の様に白い肌、さらに腰から尻、脚にかけて流れる曲線は、
まさに名工が丹精込めて作り上げた名刀のごとき美しさであった。
今まで見ていた、少し茶色がかった肌に、どぎつい黄色の服を着ていたイリスは、
いったいなんだったのだろう、と思えるほどの変貌振りだった。
これが本物の精霊だ、とシグナムは確信したが、
その時、さっきまで自分と相対していた精霊を思い出してしまい、
シグナムはその悪いイメージを振り払うために、首を激しく横に振りまくった。
そうこうしている内に、夕食が運ばれてきた。
スイートルームなので、運ばれてくる料理もかなり豪華だった。
血が不足しているシグナムは、素早く、だが行儀よく料理を平らげていった。
夕食を終えたシグナムは、六ヶ月ぶりに垢を落とすべく、じっくりと湯船に浸かった。
風呂から出てきたシグナムは、窓の外を見ているイリスにちらりと目をやった後、
ふらふらとベッドに向かい、そのまま泥の様に眠ってしまった。
投稿終了です。
少し時間が掛かりました。
その内、イリスと精霊の交渉でも書いてみようと思います。
おもしろかったよ
暇だったから年上ノ彼女と未来日記読んでみた
ヤバイ、なんか電波受信し始めてる、頭痛い
>>449 年上ノ彼女って?
それはヤンデレが出て来る面白い話ですか?
>>447 GJ!!
イリスきましたかー(^_^)
>>450 見た目小学生の25歳女性とEDの男性のイチャイチャ物語
ヤンデレではないけど、イチャつきとエロさがぱない感じになってます
Wikiのアクセス数の伸びが異常
どこかに晒された?
後五分後ぐらいに投下。
NGは前回と同じで、外見描写などしてないですが、
それでも冒頭にゆるーいロリエロが有るんで、苦手な方はタイトルでNGお願いします。
1
初秋の夕暮れ。蜩の声は小さく、その短い人生を終えようとしている。
クライマックスを飾るのは、僅かに発光する満月と、空に輝く星達のビスチェ。
肌を撫で行く風は優しく涼しく、火照った身体を無言でリカバーしてくれる。
湿度も少なく、今が正に快適温度と言えるだろう。誰しもが不快を覚えない、過ごしやすい気温と温度。
そんな日、そんな時間、具材を煮込む音が聞こえる家の中、二人の姉妹がリビングでテレビを見ていた。
南斗鳳凰拳の先代伝承者オウガイに拾われたサウザーは、オウガイに実の子のように育てられた!
サウザーはどんな厳しい修行にも耐えた、オウガイは厳しくも優しく、少年サウザーの心にぬくもりを植えつけた!
〜〜〜〜〜〜〜麒麟〜〜〜〜〜〜
最後の試練として、目隠しでの闘いを強いたオウガイ。サウザーを待っていたのは、余りに悲しい結末であった!
〜〜〜〜〜〜〜麒麟〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜麒麟〜〜〜〜〜〜
こんなに悲しいのなら
苦しいのなら愛などいらぬ!
若きサウザーの、悲しき叫び声がこだまするぅっッ!!!
〜〜〜〜〜〜〜麒麟〜〜〜〜〜〜
非情の帝王、せいてーーーーーッ、サウザー!!!
『あたたたたたたたたっ、うわたぁっ!! 貴様の命も、後三秒!!』
『ぐっ……よかろうっ!! ならば数えてやる。ひとーつ! ふたーつ! みっつ!!』
『ぐはぁっ!?』
『この帝王の体に北斗神拳は効かん!!』
でー、でげででーでーでーでん♪♪
『サウザーの前に為す術無く倒れるケンシロウ! その前に現れたのはっ!?
じぃぃぃぃぃかい北斗の拳! 見参、北斗三兄弟!!』
アニメが終わり、流れるのはニュース番組。
それをテーブル越しのソファーに座り、膝の上に幼い妹を乗せて眺めているのは、雪よりも白い肌に、血よりも赤い瞳に、闇よりも黒い髪を持つこの家の長女、美木仁 新菜(びきに にいな)。
「んにゅ……ゃあぁっ、おねぇちゃん、はのんねっ、おもらししなくなったんだよ? だからねっ……オムツ、とってよぉっ」
逃げられないように左腕を妹の、はのんの前に回して押さえ、右手は園児服のスカートを捲り上げて、身に付けさせたオムツに置かれている。
そして親指と中指で摘ままれたピンクローターを、下から上へゆっくりと動かす。
刺激はさほど伝わらないが、それでも的確に、スジのラインを執拗にノックしていく。
「ダメよっ♪ はのんは子供なんだからオムツしないと♪ ん〜〜って言うよりも、おもらしするまでヤメないからっ♪♪」
短く小さく、ピッチリと閉じていた貝の口は、30分を越えても与え続けられる振動でついにギブアップ。
幼い秘肉は次第に弛筋し、その口を控え目に拡げ始める。
「ふにゃぁっ!? やだっ、やらよぉっ……はのん、オトナだもん! おもら、しっ、したくないよぉっ」
はのんは目尻に涙を浮かべ、頬を赤く染めて自分を抱く姉を見上げるが、ニーナは微笑んだ表情のまま変わらず、手の動きが止まる気配は無い。
それどころかローターの位置は徐々に下がり、後ろ側に入れられた切れ目から、スルッとオムツの中へ潜り込んでしまう。
「そうね、はのんはオトナだもんね? それなら……ふふっ、うんちする所に、おちんちん挿れる練習しないとね♪♪」
2
その中は身に付ける前からローションに浸されて糸を引き、ワレメや肛門のコリコリとシコる『へり』に至るまで、トロットロに湿らされていた。
括約筋は柔らかく弛筋してほぐされ、身体は脱力して発音もままならない。
僅かな抵抗でお尻を左右に揺らして逃れようとするが、
「はひゅぅっ、はひゅぅっ、んっ、やめっ……あ、あっ、やっ、オシッコでちゃ、ぃあぁぁぁっ!!?」
アナルに押し当てられたピンクローターは、ローションのせいで軽々と腸壁の間に咥え込まれて行くのだった。
尿道はぷくっと膨れ、小さな破裂音と共にオムツは水っ気をたっぷり含んで重く変化する。
「ふふっ、アクメってるアクメってる♪♪ それにやっぱり……おもらししたわね?」
はのんは、あ、あっ、と、途切れ途切れな単音を発して細かく震え続け、ニーナは右手の小指でローターを奥まで押し込み、コードを引っ張って入り口付近まで戻す動きをゆっくりと繰り返す。
まるで余韻を楽しませるように、腸内に異物が存在するのを馴染ませるように、ペニスを挿れられても壊れないように、丁寧に、丁寧に、開発してゆく。
「そろそろ良い……かなっ? あぁっ、お姉ちゃん幸せよ? 一日で妹と弟のお尻処女を貰えるなんて思わなかったわ♪ じゃっ、はのんちゃん、お風呂でキレイキレイしよっか?」
『はのん来訪者』中編
はのんの身体を丁寧に洗い、バスタオルで優しく拭き取り、バックプリントのパンツを穿かせた時に異変は起きた。
全身を洗われてスッキリしたはのんでは無く、ハーフジーンズとタンクトップ姿で妹を洗ったニーナでも無い。
静かに開き、閉じる、玄関の音に吊られて響く、小さく、かよわな、子供の泣き声。
「えっ、うそっ……ザクロ!?」
ニーナは蹴り跳ばすように浴室から飛び出し、廊下から数メートルも前方を見て、身体を一瞬で硬直させて絶望する。
ガチガチと歯が不協和音を鳴らし、それでも気丈な表情は崩さず、立ち尽くすザクロを無言で抱き締めた。
「ひっく、ひくっ、うぐっ、うぅっ……うわあぁぁぁぁっ!! にぃねぇ、にぃねぇ、にぃね……うわああぁぁぁぁぁぁん!!!」
誰だろうと一目で理解するだろう。この少年は、壮絶なレイプを受けたのだと。
涙を流して助けを求め、衣服はボロボロに引き裂かれ、鎖骨から胸には無数のキスマーク。
手にも、頬にも、口元にもザーメンがこびり付き、痛々しく腫れ上がったアナルからは、未だに中出しされた白濁がゴポゴポと気泡立って太股を垂れている。
「ごめんね……ザクロごめんなさい」
ニーナの心は、怨恨と後悔で押し潰されそう。唯々、謝罪を吐き出すばかり。
何故なら、ザクロがガチンコハメ回しイラマチオ種付け強姦ファックで犯された原因はニーナなのだ。ニーナも自分でそれをわかってるから謝罪する。
最初にザクロをレイプしたのはニーナで、ニーナのせいでザクロはガチンコハメ回しザーメンぶっかけイラマチオ種付け強姦ファックをされたのだから。
3
「ほらっ、とにかく身体を洗ったげるから……ねっ?」
実の弟とセックスしたいと言う禁忌の欲求に負けてレイプし、童貞を奪い、無理矢理に精通させ、パールスティックでアナル処女まで散らせた。
そして気絶したザクロに代えの服を着せ、トイレの個室に鍵を掛けて寝かせ、完全に隠ぺいしたのだ。数十分も後にわざとらしく発見し、心配性の優しい姉を演じる為に。
現に妹の髪を乾かしたらすぐにでも探しに行くつもりだった。しかし……その数十分の間に、ザクロはガチンコハメ回しザーメンぶっかけイラマチオ種付け強制腸ズリアナホ強姦ファックをされていた。
悲しい。悔しい。それ以上に弟が悔しがってるのもわかってる。だが、そうはわかっていても、ニーナにはどうする事もできない。
例え裁判まで発展して争ったとしても負けるだろう。『異義有り!』や『まった!!』など、いくら逆転裁判を起こそうとしても無理なのだ。
それは法律……一昨年成立したESSG(エロショタセックス合意)法により、無意識に大人を誘惑するイケない年齢一桁のエロショタは、ザーメン漬けにして汚しても罪にはとわれない。
そして何より、姉がそれを一番望んでいる。確かに弟が泣くのは悲しいし、本気で心配もした。車で轢かれそうになったら、弟の代わりに轢かれて死んでも良いぐらいに愛してもいる。
だがもっと。それよりももっともっと。ニーナは、ザクロを、イジメたい。より性的に。より肉体的に。なんなら、ザクロとすれ違って何もしない男を、なんで何もしないのっ!? と怒りたいぐらいなのだ。
人が混雑するプールに裸で入れたらどうなるだろう? 女性専用車両に女装して乗らせたらどうなるだろう? いつも妄想する自慰ネタを、試してみたくて仕方ない。
「服、脱がせるからバンザイして? 身体は痛くない? できる?」
洗面所までザクロを連れて来て膝立ちになり、目線の高さを合わせて優しく微笑み、ペニスからアナル部分まで、まーるく穴の開けられた半ズボンを慎重に下ろす。
はのんもそんな兄を気遣い、甲斐甲斐しく背伸びをして俯く頭を撫でている。
「ひくっ、うん……できる」
もはや雑巾にもできない程に破かれた、青臭いザーメンが付着するシャツを脱がす。
脱がせて……
「う、そっ?」
ドクンと一つ、ニーナの心臓が大きく高鳴る。交感神経は活発化し、視線はザクロの身体が独り占め。
精液まみれなのは勿論。キスマークでマーキングされてるのも勿論。それよりも目を引いたのは、幼いながらもコリコリにシコリ立つショタニプル。
どれだけ強く吸われたのか周りから赤く腫れ上がり、もう二度と元には戻らない手遅れ状態で有る事を主張していた。
「ウソよっ! こんなの反則すぎ……ふふっ、そっかぁっ、お姉ちゃんを誘ってるのねザクロ? そうなんでしょ!? 小学生のクセに……年齢一桁の子供のクセにっ! 実の姉を誘惑するなんて、なんてイケない子なのっ!!」
そうなっては理性の糸すら堪らず切れる。後はもう、抱き締めて押し倒すしか選択肢が無い。
4
「ヤっ、にぃねぇ!! んんっっ!?」
犯罪者は弟、被害者は姉。こうなるのは時間の問題だった。どれだけ常識を持っていても、ザクロの身体がその常識を挑発する。
『なぁに? 真正面からボクをレイプする勇気も無いんだ? こ、し、ぬ、け、さん♪』
泣かせてみせろと、喘がせてみせろと、子供精子で着床してみせろと、外側から子宮をきゅんきゅんとツツいて挑発するのだ。
「ふんんっ……ぢゅっ、ちゅ、ぢゅぷちゅっ! んむっ、はぁっ…ざく、ろぉっ、スキ……んっ」
ニーナはザクロの顔を挟んで押さえ、唇を重ねて長い舌を口の中へと差し込む。
そしてノドちんこを容赦無く舐め上げ、未だに残っているザーメンを器用にこそぎ落として、ヂュルヂュルと音を立てて卑猥にすする。
「んふあっ、にぃねっ、ちゅっ、ボクのベロ……ちゅぱちゅぱ、しないれぇっ、きゃう!?」
ザクロも何とか抵抗しようとはするのだが、舌を引っこ抜かれるぐらいに強く吸い付かれ、はのんの幼い手でペニスをシコシコと的確に扱かれては力が出ない。
アナルから垂れてる精液をローション代わりに、ぐにゅぐにゅ、ぢゅくぢゅく、シコシコシコシコ……
「わぁっ♪ おっきくなってきたよぅ! おもしろいね、おにいちゃん♪♪」
はのんは好奇心から弄っているだけなのだが、集団レイプ直後の身体は過度に反応してしまい、必要以上に興奮を得てしまう。
それに加えて与えられるのは、肉体を超える視覚刺激。
「んむっ、はほんっ」
姉がリスの様に頬っぺを膨らませて妹の名を呼び、
「なぁに、おねえちゃん?」
妹は無邪気な笑みのまま、コイコイと手招きする姉に顔を近付け、
「「ちゅむっ……」」
二人は濃厚なキスをする。
未成年の少女と、その少女より遥かに小さい幼女。外見は怖いぐらいにそっくりで、誰もが間違う事なく姉妹だとわかる程。
ニーナはぷちゅぷちゅと咀嚼してはのんの口内に精液と唾液を流し込み、はのんは嫌がる素振りも見せずコクコクと素直に飲み下していく。
「「ふはぁっ……」」
口の中を空にしてようやく唇を離し、透明にきらめく糸の橋を架ける。
官能的に、エロティックに、ザクロの身体を挟んで行われる女同士の接吻。
「あまい、ね? はのん……もっとほしい!」
人を奥底から誘惑するザクロのフェロモンは、唾液、精液、体液に甘く溶けて混ざっている。
それは体内に、子宮に取り入れたくなる禁断の香り。年齢さえ問わず、血の繋がった妹も、姉も、家族でさえも虜にする麻薬。
「あら欲張りね、ふふっ……この『お肉のストロー』をモグモグちゅーちゅーすれば、たっくさん出てくるわよ♪♪」
ニーナは控えめに勃起したペニスの皮を、右手の親指と中指で優しく剥き、まだ粘膜が完成していない先端部分を、人差し指の爪先でグリグリと強く擦る。
「ほんとっ!? やったぁっ♪♪ いただきま〜〜〜〜っ♪♪」
放心状態の続くザクロにはお構い無しに、はのんは嬉々として口を大きく開き、
「ひゃっ!? はのんちゃ……ダメぇぇぇぇぇっ!!!」
ばくんと一口でペニスを咥え込んだ。
――ガタンゴトン、ガタンゴトン。
仙台へ向かう快速の満員電車、女性専用車両の中、ザクロはピチピチのスパッツと仮面ライダーTシャツを着て立っている。
回りのOLもザクロがレイプオーケーのエロショタだと解っていたが、僅かな理性と、次の駅まで二十分と言う短さに、みんな手を出せずにいた。
「あ、あのっ……お姉さん」
吊革に掴まっているOLが、袖を引っ張られる違和感と声に釣られて視線をズラせば、そこに居るのは上目遣いで見上げて来るオトコの子。
「コレの使い方、教えてくださいっ!!」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに震える声で、右手にローション、左手にオナホールを持って、ジッと見上げて、車両内の女性をまとめて堕した。
唯一にして響くのは、そこら中から届く、ノドを通り落ちていく唾液の音だけ……
長くなったので、いったん区切り。
次で本当に終わります。
ヤンデレです。
GJ
462 :
そして転職へ :2009/08/15(土) 00:18:27 ID:YmZJicXF
投下します。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
身を縮めるようにして、迫りつつある敵に怯える僕。
ほんの少し前までみんなはそこにいた。一緒に笑ったり、ふざけ合ったり
していたはずだった。
今の状況はなんだ?
一人、また一人と次々と消えていく仲間。
消えたはずの仲間が不意に現れたと思ったら、味方のはずの仲間を
次々と手にかけていく。
地獄絵図だった。
かろうじて僕の味方だと認識できる者は残り数えるほど。しかも
それぞれ敵に囲まれている。
そんな僕も他人を気にかけていられない。敵に追い詰められてとうとう
僕は追い込まれてしまった。
情けないことに僕は足が遅い。この包囲網を突破するのは不可能だろう。
…僕を囲み慢心しきっている敵の後ろから仲間が攻撃して救出してもらうしか…。
ゆっくりと一歩右に動き相手の様子をうかがう僕。
その時だった。
敵の一人がゆっくりと僕の右斜めに躍り出たのだ。
チャンスだった。
ざっと見ても奴の周囲には敵はいない。
周りの敵が僕を取り囲もうとしても、奴を失えば包囲網に隙ができる。
なんとか仲間の所へ逃げ切れば、陣形を立て直して反撃できる!
僕はのこのこと飛び出してきた敵を一刀で斬り伏せた。
力なく倒れ戦場から消えていく敵。敵が倒れたおかげで塞がっていた
視界が開けた。その先に…人影?
「き…君は?」
少し遠くの方に人影が見える。ずいぶんほっそりとした体つきだ。
少しずつ視界が鮮明となる中、僕はようやくその人影に見覚えがあることに
気づいた。
「君は…僕たちと一緒にいた…。」
「覚えていてくれたんだ。うれしいな。」
にこりと少し恥ずかしそうな笑みを浮かべる女の子。確か僕たちの仲間の一人で
いつも隅っこの方でじっとしている目立たないタイプの子だ。
顔なんて正面切って合せた事はなかったので、パッと見て実直そうな
この子の顔が変に心に残る。
…そういえば本当に彼女の顔を正面から見たことなんてなかったな。
小さな顔立ちがこんな状況であるにも関わらず彼女の清楚さと可愛らしさを
花開かせている。
ただ、目が心なしか虚ろだ。
「…初めて…初めてあなたの顔をまっすぐ見ることができたね。」
ほほを染めてまたかすかに微笑む少女。ただ、事態は一刻を争う。
「悪い、君と話している暇はないんだ!仲間と合流しないと…。」
「必要ないよ。」
彼女が凛とした声で言い放つ。周りの音が聞こえなくなった。
まるでスローモーションだ。
彼女の手に握られていた槍。それを彼女は左手で柄の後ろを持ち、
そのまま刃を水平にした状態で左手を引きながら右足を前に出し
腰を少し落とす。右手で槍の先端を支え、その切っ先が僕を照準にとらえ
ぶれないようにしている。
奇妙な構えを見せる彼女に僕もいそいで構える。切先を相手の喉笛にあてる
基本の構えだ。
彼女の武器は槍。基本の戦闘術は突くことのみに限定される。
たしかにリーチこそ長いが、いくらなんでも距離が離れすぎている。
攻撃は不可能なはず。
…なのにどういうことだ?さっきから震えが止まらない。
「あなたの全てを奪ってあげる…。」
刹那
ズガアアアアアアン!
腹部が燃えるように熱い、いや痛い。すぐ目の前にさっきまで
遠くにいたはずの彼女の顔が見える。左片手からの水平突きが僕の
腹部を貫通していた。馬鹿な…この一瞬であの間合いを詰めて!?
血を吐く僕。刀が僕の手から滑り落ち、カラカラと地面に転がった。
「なぜ…僕を…?」
彼女は答えない。かわりに槍を僕の腹から引き抜き、槍を投げ捨てた後
僕を抱きしめた。
「…好きだから。」
しばらくのち、彼女の発した言葉はそれだった。
「私の位置はいつも隅っこ。あなたから一番遠くにいた。
あなたの横顔を遠くから眺めるだけで我慢していた。
私は前に進むことしかできない。辛くても、思い残すことがあっても
過ぎ去ったものに浸ることもできない。」
ほほを涙が伝う。だんだん雫と雫の間隔が短くなってきたようだ。
「私はあなたが好きだった!あなたの顔を正面から見て愛を打ち上げたかった!
でもそれは無理!私は前にしか進めないから!」
「横にだって動けない!あなたに近づきたくても叶わない!ねえ何で!?
どうしてもっとそばに私を置いてくれなかったの!」
「私は敵につかまり…そして条件を出された。あなたを仕留める
手伝いをするなら命を助けてやると。」
叫びすぎて喉が渇いた。彼女はそういうと僕の傷口に舌を這わせ
舐めるように血を口に含んでいく。恍惚とした表情を浮かべる彼女。
いっそ気絶してしまった方が楽かもしれないが、あいにく意識は保たれている。
「最初は断るつもりだったよ。だけど、ある言葉を聞いて考えを変えたの。
『好きな場所で戦っていい』と。わかる?この意味。
今私があなたと正面切ってお話できるのもこのためなの。」
僕を抱きしめる力が強くなる。彼女の声に嗚咽が混じるようになった。
「だから…ごめん。私条件をのんだ。たとえあなたを裏切っても
私の思いを正面から…ひぐっ…伝えたかった。」
ふうと息をつき、今度はまっすぐ僕の眼を見据える。
「あなたはいつも楽しそうだった。近くの金さんと仲良く喋ったり、たまに
あなたを守るため戻ってくる龍さんをねぎらったり…。私の隣にいた
桂さんもあなたのことを本当は狙っていたんだよ。私それが耐えきれなかった。
実はあの子は二股をかけるのが得意なんだよ。知ってた?桂さんとはちがって私は
どこまでもまっすぐにしか進めない。それを器用に渡り歩く桂さんに
馬鹿にされているみたいで…。でも彼女は私よりもあなたの近くにいた。」
確かに彼女はユニークな動きで僕らを支え続けてくれた。でも彼女はいい子
だよ。そんな悲しい言い方しないでほしいな…。
「死にかけているのに、優しいね。…でも、諦めて。
私はまっすぐにしか進めない。その代り狙ったらはずさないこの
左片手平突きがあるの。狙われた人は貫かれるだけ…本当は私が
あなたに貫いて欲しかったんだけど。」
最後は少しいたずらっ子のような笑みを浮かべた彼女。
…あ、意識が遠くなっていく…。
「いよいよだね。…最後に一つだけ。私の名前を覚えてくれないかな?」
僕が聞いた最後の言葉。
「私の名前は…香車(かおる)っていうの。すぐに私も逝くから
待っていてね。…私の名前忘れちゃだめだよ?だって…。」
「私はこれから旅立つ二人だけの世界での、恋人だからね。」
「やってしまったぁぁぁ!」
僕の絶叫が響く。ここは僕らの王国から数えて二つ目の町にある宿屋。
日も暮れてきたのでここに宿をとったのだが、あいにく四人部屋は
開いていなかったのだ。
そして市原悦子似の宿屋のおかみが『二人部屋なら二つ開いています』と
まるでこれから起こるかもしれぬ修羅場に期待を寄せているような口調で
僕に勧めてきた。
言葉の中に『柱の隅から絶対に覗いてやる!』という強固な意志が
読み取れる…。
どういう組み分けにするか悩んだ僕の結論は。
勇者&魔法使いさんペア と 僧侶ちゃん&盗賊くんペア に決定!
異議は認めない。なぜならこれが万が一の時一番戦いやすい組みわけだからだ。
勇者としては寝込みを襲われる可能性も考慮しなくてはならない。
その時危険なのは防備がほかに比べ甘くなる魔法使いだ。
寝込みを襲うなら接近戦になることは間違いない。打撃が攻防問わず
苦手な魔法使いは命が危なくなる。
だからペアを組むのは接近戦で攻防優れるもの…この場合は僕だ。
僧侶ちゃんも盗賊くんも接近戦にはある程度の備えがあるだろうから
僕のサポートは必要ないだろう。
か…勘違いしないでよ。べ…別に下心があるわけじゃないんだからねっ!
何が不満なのか膨れ面をしている二人を残し、僕と魔法使いさんは
部屋に入って行った。
この機会に僕は彼女に聞いておきたかったことがある。
前にも話した通り、彼女の持つディン系の呪文についてだ。
王室に何らかの形で関係しているのは、彼女が提供してくれた王宮兵士の
捜査情報で分かっている。ただ、他は一切謎に包まれている。
個人のプライバシーを詮索するのは気が引けるが、命を預ける仲間たるもの
相手の素性ぐらいは最低限把握しておきたい。
とは言っても、僕がいくら尋ねても『禁則事項です。』の一言で片づける
巨乳の監視役はなかなか手ごわい。
そこで僕が提案したのは…かけ勝負!種目は…『将棋』!
はるか西方にあるという救いの浄土ガンダーラ。そこで生まれたこのゲームは
ガンダーラの僧ゴダイゴが銀河鉄道999に乗りジパングに伝えられ、
その国の風土によって改良され現在にいたるものだ。
このゲームで勝った方が負けた方の言うことを一つだけ聞く…僕は
彼女にそう提案して、彼女は受け入れた。よし、勝って聞きだしてやる!
そしてまんまと相手の釣り餌に僕の王は引っかかり、いつの間にか
仕掛けられていた香車が僕の王をとった。
惨敗です。本当にありがとうございました。
深々と一礼する僕。…え、なぜ投了しなかったのかって?僕がアマだったから。
なぜ将棋盤を持ち歩いているのか?僕が勇者だからさ。
それにしても、彼女の桂馬の使い方は絶妙だった。桂馬を使い王手飛車取りを
狙っていると思いきやそれは囮だったり、二つの駒を刺しながらも相手の
出方をうかがい桂馬をただの捨て駒にせずに動かす絶妙さといったら…
魔法使いさん…恐ろしい子ッ!
そういえば、刺された二駒は銀と香車だったな。僕はあの時香車を
捨てたのだけど、まさかその香車に復讐されるとは…。
「んっふっふ〜勇者クン。解説も御苦労さまだけど、約束は守ってもらうよ。」
意地悪そうな笑みを浮かべながら魔法使いさんが顔を近づけてくる。
「なににしようかな?アタシのことを『お姉様』って呼ばせるのもいいし〜
明日一日四つん這いで歩き回らせるのもオツだよね。…いっそのこと
あの僧侶チャンの目の前で熱いディープキスでも…。」
…はっ!いけないいけない。無意識のうちに口が地獄のいかずちの詠唱を…。
「う〜んと…そうだ!」
彼女はニヤリと笑うと、僕に軽く口付けして…
「この旅が終わったら…アタシのことをお嫁さんにして?」
その瞬間、ドアが勢いよく開け放たれた。
「…勇者。そういう訳だったのだな。私ではなくその魔法使いを同室に
誘ったのは…アレだ、あの…その…厭らしい目的だったのだな!」
「…勇者さん。イッペン…シンデミマス?」
そこには右手で大量のポッキーを抱え、左手にしっかりと聖なるナイフを握りしめている
僧侶ちゃんと、右手にトランプを持ち、左手のダガーナイフが臨戦態勢にはいっている
盗賊くんが立っていた。
一方の僕はキスの余韻とまさかの発言から立ち直れていなく、茫然自失。
さらには魔法使いさんが僕に抱きついた状態…。
…こんな時に言うのもアレだけど、君たち明らかに小旅行の荷物だろ。
大体僧侶ちゃん。そのピンクのパジャマは何?一応僕ら命張って旅してるはず
だよね?…いや、可愛いのは認めるけどさ。寝込み襲われたらどうするの?
…え、僕に守ってもらうつもりだった?
盗賊くんも何そのカッコ。水色で子犬柄パジャマって…君盗賊でしょ?
…さらにツッコミ入れると、その右腕に抱えている大きめの犬のぬいぐるみは何?
…え、僕に買ってもらった?
そんな覚えないんだけd…はっ!?いつの間にか僕の財布が無い!
盗賊くん…恐ろしい子ッ!
こんなやりとりが続く。こののほほんとしたムードで何事もなく終わってくれ…。
ゆうしゃはにげだした!
そうはとんやがおろさなかった!
ご愁傷様、僕。
「全く…勇者さんがそんな人だとは思いませんでしたよ。」
僧侶ちゃんが僕に丁寧に包帯を巻きつけている。妙に口調が優しく、それでいて
申し訳なさそうなのは、僧侶ちゃんの一撃が想像以上に僕にダメージを
与えたためだ。
…武道家の副職でもやっているのだろうか?
「まったく〜僧侶チャンも大げさだよ〜。勇者クンにはもう既に
こーんなに可愛い恋人がいるっていうのに、アタシが手を出すわけないでしょ。」
やだなぁ、とでもいうかのように魔法使いさんが手を振る。
「…そうでしょうか?私は魔法使いさんが何を考えていらっしゃるのか
さっぱりわからない物で。」
きっぱりと言い放つ僧侶ちゃん。
「…待て。僧侶が勇者の恋人だと…?勇者!お前たちまさか…あ、ああ
あーんなことやこーんなことを既にやっているのか!?」
顔を真っ赤にして僕に掴みかかってくるのは盗賊くん。…ってか痛い!
「認めん認めんぞそんなこと駄目だ駄目だ勇者お前は気づいていないのか
あの日お前にもらったお弁当から始まったこの想いに許さないそんなこと
私はいやだもうつらい思いをするのはたすけてくれおまえなら他人に
りかいされぬことのつらさを私の思いをわかってくれるはずだ
よめがだめならどれいでもいいいやいっそかちくでもかまわないこのたび
がおわってもおまえのそばにわたしはいたいのだたのむわたしは
おまえをしんじている…!」
ものすごい早口で何かしゃべっている盗賊くん。あまりの速さに僕や僧侶
ちゃんはもちろん、魔法使いさんまで目が点だ。何を言っているかなんて
当然誰も分かりはしない。…たぶん早とちりして僕と僧侶ちゃんが
何やら秘め事でも行っていると思って怒っているのだろう。
…そういう初心なところが彼女の可愛いところだよね…はっ、殺気!
この展開だったらこの殺気は僧侶ちゃんのものだと思うだろう。だが違う。
この体に不快にからみつくような殺気は今まで感じたことの…あれ?
あまり覚えのないような殺気なんだけど、どこかで感じたことのあるような…。
僧侶ちゃんはおろおろとしだしているが、魔法使いさんと盗賊くんはすでに
杖とナイフを構えて油断なく部屋を見渡している。
「勇者、この殺気…。」
盗賊くんもどうやらこの殺気に覚えがあるようだ。となるとその持ち主といったら…。
「爆破の呪文、イオラ!」
声が聞こえたのは一瞬だった。次の瞬間には黄色い閃光が辺りを
包み込み、爆発した。
窓のガラスをぶち割り、盗賊くんと魔法使いさん、そして僧侶ちゃんを
抱き抱えた僕が飛び出す。足先が焦げるのを感じた。
そしてそのまま地面にたたきつけられるような状態で着地。後ろに
迫る火の粉を掻い潜り、火の手が届かぬ所まで走った。
そのまま短剣を握りしめた僕は盗賊くんと魔法使いさんに合流する。
「勇者クン。キミにはこんな奇襲方法予測がついたかい?」
「いいえ。さっぱりです魔法使いさん!」
爆音が連続して聞こえる。どうやら部屋のランプやストーブ用の火種薪に
遅れて引火し爆発しているようだ。
奇襲のメリットとして相手に気づかれないことと、少数で多人数をたたけること。
そして目立たないことが挙げられる。
しかし今のような市街地の宿屋でよりによって爆破呪文をぶっ放すような
奇襲方法では、メリットのうちのひとつ少数攻撃しか効力を発揮していない。
だから、逆に忍び込んで直接攻撃してくるものだとばかり考えていた。
迂闊だった!
足にやけどを負っているのを感じる。僧侶ちゃんが気づいたようで
僕に回復呪文をかけようとしたが、僕は今まで彼女に見せたことのないような
強い目線で睨み制止した。
申し訳ないとは思うが、この戦いは途中で回復する余裕のあるものではない。
僕の呪いの件を置いておいても、回復呪文を唱えようものならその詠唱中に
殺されかねないようなレベルの敵だ。
「来たぞ!」
盗賊くんの眼光が銀色のそれに変わる。パジャマ姿とはいえ、ナイフから
放たれる殺気は少しも衰えない。
魔法使いさんもまた杖に魔力を込め始めている。バンダナの付け方を気にする
ようなそぶりを見せてはいるが、たぶん本気で気にしてはいないだろう。
事実、彼女の魔力が今や肉眼で感じられるほど集中している。
…この二人って、こんなに強かったのか。
そういう僕も負けていられない。
短剣に僕の使える唯一の攻撃呪文メラ(地獄のいかずちは別にして)を
付加して身構える。地味だが、結構強力だ。
ただ、この場にいる誰もが感じていることだが、自分たちよりはるかに
相手は強い。存在のみしか把握できていないがそれでもわかるのだ。
体を少し硬くした状態で身構える僕ら。そんな僕らの前に現れたのは…。
「ひさしぶりだな小僧ォ!家宝の恨みたっぷりと晴らさせてもらうゾォ!」
かつて僕を殺そうとしたあの老魔道士がそこにいた。
続く
以上です。前半ただの将棋ネタですが、
将棋が嫌いな方がいらっしゃったら
すみません。
囲碁では作れませんでした。
GJ!
いろいろと羨ましいぞ勇者このやろう
>>472 GJ!
僧侶に続いて盗賊も病みが表面化してきたのか〜
それにしても前半、なんという戦場愛憎浪漫譚……
そして左片手平突きとは、また懐かしい。
>>472 GJ!
割と早い段階で将棋ネタだと気付いたので
その先は表現の凄まじさに笑いが止まらなかったw
このやろうww
将棋ネタて書いてるからオチがわかったわw
gj!!!!!
10日ぶりくらいにきたら
スゲー 投下されてたwww
みんな乙。いまから一つずつ読むよ
保管庫の作品を読んで◆.DrVLAlxBI氏のファンになってしまったんだが、
最近は作品書いてないのかな?このスレ以外のだとキモ姉&キモウトの方の保管庫に1作見つけたけど。
他にも氏の作品を知っている方がいたら教えてくれ!
ってもう見つけてたのかスマン
ちょっとした小ネタを投下。
ヤン分は低めです。
俺は一人、リビングで普段は飲まない酒に手を出していた。
まあ、今日ぐらいは許して欲しい。
なんたって、一人娘の麻美が大学を卒業したんだから。
既に大手企業への内定も決まっているし、明日からは引越の作業で忙しくなる。
家族でゆっくり過ごせるのは今日が最後なんだ。
明日からの一人暮らしのために、昔を思い出しながら感傷に浸っても構わないだろう。
でもほんと、よくできた子に育ってくれたと思う。
途中から、男手ひとつで育ててきたのにしっかりした自慢の娘だよ。
……「娘」か……。
自嘲の笑みを浮かべるがそれを酒を煽ることで誤魔化した。
そろそろ言うべき時期なのか、それとも一生黙ってる方がいいのか。
何年経っても未だに答えは出ない。仕方ないだろう。
実は麻美が「妻の美香と不倫相手の間にできた子です」なんて事。
しかし、そんな昼のドラマみたいなことが本当にあるなんてな。
また自嘲の笑みを浮かべた俺は、紛らわすようにコップの酒を全て飲み干した。
が、すぐに後悔することになった。
完全に酔いつぶれてしまったのだ。どうやらハイペースで飲み過ぎたらしい。
意識が朦朧とする中、俺が最後に見たのは聖母のような微笑みでこっちを見る麻美だった。
お父さんがソファで寝たのを確認した私は、お父さんに膝枕をしてあげました。
22年間、血の繋がりのない私を娘として育ててくれてありがとう。お父さん。
お父さんは私が知らないと思っているみたいですけど、とっくに知っているんですよ。
あの女がいつも、本当の父を家に連れ込んでいましたから。
初めて知った時はすごくショックでしたけど、もう大丈夫です。
今ではあのゴミ共にとても感謝してるぐらいです。
だってそのおかげでお父さん、ううん「恭介さん」と恋人として愛し合えるんですもの。
今まで恭介さんが注いでくれた愛情を、今度は私が恭介さんに注いであげますからね。
私の引っ越し先、それが二人の新しい愛の巣になるんですよ。
この家だと、あの女との思い出もあって二人きりの生活には邪魔になりますからね。
次の家は遠い場所ですから私たちを知る人は誰もいませんので、夫婦ということで大丈夫です。
……まあ、仮に誰か知ってる奴がいても消せばいいだけですから。あの女みたいに。
今まで苦労した分、精一杯幸せにしてあげますね。
勿論、今度はちゃんと恭介さんの血を分けた子供を抱かせてあげます。
そのためにも、いっぱい愛し合いましょうね。あ・な・た。
以上。浮気やらNTR物見てたらモヤモヤして作った。
イイハナシダナー!
wikiのアクセス数がw
>>484 父娘相姦ものが苦手な俺でもこれなら美味しくいただけるぜ。GJ!
そうだよな、嫁の子どもでも父親が違えば赤の他人だよな。
の割には最近更新されてないよな
>>484 逆に考えるんだ
「代わりのヤンデレ娘が手に入ればOK」
と考えるんだ
ジョースター卿の発想ですね、わかります。
最近は日曜朝7:30にもヤンデレが出るようになったんだな
>>483 GJです!
父娘モノも大好物な俺にはゾクゾクしました
娘って良いですね!
>>493 とある太夫が、愛した男の「迎えに来る」と言う言葉を信じてずっと待っていたが、
その男は太夫とは別の女と結婚。
太夫は祝言あげてるとこに乗り込んで火を放ち、関係者を皆殺しに。
炎にまかれながらも男の亡骸を抱いて慟哭する太夫の情念は、太夫を人ならざる者に変えてしまう。
外道に堕ちた太夫は、今も男の『成れの果て』の三味線を肌身離さず持ち歩いている
大まかに言えばこんな感じ
>>453 今更だけどありがとう。機会があれば読んでみる。これの作者エロ漫画マン?
>>472 GJ!
僧侶ちゃん…
>>495 概要サンクス
そんなのが日曜の朝にやってるのか
シンケンジャーwww
>>495 朴さんの演技も真に迫ってていいヤンデレでした
ていうか子供が見たらトラウマになりかねん
薄皮太夫もそうだが、特撮畑の人間が書いたヤンデレは何故かレベル高いよな、武上のユベルとか
そりゃ、モンスターを撮ってるからさ
502 :
レス転載:2009/08/17(月) 16:09:22 ID:1orqAiKL
5: ◆ UDPETPayJA :2009/08/17 14:17:39 ID:ukcM4EyQ0
書き込み規制かかりました。
このスレで父娘モノってあった?
題名のない短編その26とここか忘れたけどコピペ改変のやつ
元ネタは母が浮気したからカッとなった父に殺されたのか父が狂ったから母が殺されたのか娘が悩むやつ
娘スレに行こうぜ
あそこはヤンデレ分の高い作品が多い
娘の小説でも書こうか
のこと?
508 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 12:51:55 ID:zzWCLTUI
>>509 ・・・(^ω^)
わ、わかってたんだからね!
>>509 その向こう側に何もなくても構わないから
>>510 ツンデレは今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろ!
>>512 ツンデレ+ヤンデレなのかも知れないぞ
そういう作品も確かあったよね?
今もあるだろに。ちゃんと読んでくれ。
まさかここに誤爆するとは・・・
517 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 20:20:01 ID:eeInQ8ta
>>おまいってやつは・・・
518 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 20:22:20 ID:eeInQ8ta
>>514 いや、ごめん。過去形で言ったつもりは無かったんだけど
それっぽかったか…
香ばしい空気だな
522 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 05:13:36 ID:2Kkpr86f
最近保管庫の方が更新されてないんだけど管理人大丈夫かなぁ?
523 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 05:28:05 ID:6cyN7xTn
管理人はヤンデレっ娘に監禁されてます
525 :
自宅軟禁ネタ:2009/08/20(木) 09:58:19 ID:r98aWwd3
私に“判決”が下った。
罪状、不敬罪・姦通罪。
判決、自宅軟禁八ヶ月・労働教化刑・終身婚姻刑 翌日より執行
もちろん日本国の法律では無い。彼女の中の“法”だ。
そして“交際強要、配偶者強奪”の罪を着せられた同級生がどうなったのか想像するだに恐ろしい。
自宅の敷地から出れない。電話も通じない。
しかも彼女は裁判官兼看守でベッタリとくっついて来て毎日何回も抱かされる。
鉱山や鉄道敷設現場での労働とは違う苦しみだ。
私は思う。日本国の刑法の逮捕及び監禁に当てはまるんじゃないかと…
学校に行く時は黒服の男性を置いていく。彼らは彼女のSPだった人達らしい。
視聴が許されているテレビでは、ミャンマーの軍事政権について放送されていた。
誰か…助けてください…
ヤンサン・スーチー
527 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 18:41:16 ID:HjYzktjp
何でwikiに更新されてないの?
管理人だって暇じゃないんだろ。2週間に1回くらい更新されれば十分だろ。
ヤンデレスレの人は自分の名前と主人公の名前が重なったらどんな気持ちになる?
ヒロインが魅力的だったら読む
そうでないなら読まない
ヤンデレのSS(親衛隊)が欲しい所です
君はフェルトヘルン・ハレとかグロスドィッチェランドとかの様な重装甲師団を望むか?
シャルルマーニュやダズ・ライヒの様な部隊を望むか?
ならばよろしい!闘争だ!
我らに近づく有象無象を倒し、きゃつらの屍を蹂躙する彼女を見て後退しないか?
炎の様な愛情、敵陣に突撃する喊声の様な魂の叫びから逃げないか?
いざ進まん、戦場へ!高天原で会おう!
死ね
>>529 ヤンデレスレに限らず同名主人公によく会う俺にとっては名前なぞ全く気にする必要無し!
でもTSスレやアッー!スレで自分の名前の主人公が出てきた時は流石に尻の穴が痛くなった
>>532 終戦期のズタボロぶりを思うといらない
むしろ世界中どこでも高速でかけつけて去った後にはペンペン草も生えない米海兵隊でお願いします
貴様はヤンデレではない!
刃物を持つ手で人を幸せに出来るのは料理人だけ
床屋は出来ないと申したか
ハナチラの主人公はなぜ女じゃなかったんだ。
女だったら最高のヤンデレだったのに。
赤音さんがヒロインでした
>>538 どっかで聞いたことあると思ったら…
天の道を往く人か
>>538 かっこいいんだが彼はちょっとヤンデレ傾向だよなw
テロにより、世界中に細菌がばら撒かれて地上は地獄と化し、人類は地下で暮らしている未来。
過去にあったテロを未然に防ぐことで未来を変えようと送り込まれた男。
過去の世界でヤンデレの協力を得て、男の活躍で細菌を使ったテロは未然に防がれた。
未来へ帰る間際ヤンデレは現代に残れと、細菌兵器を持ち出して脅迫する。
男が突っぱねたため、ヤンデレは細菌兵器を起動させて男と心中を図る。
細菌に侵されて死に逝く男は、自分のせいでテロが起きてしまったことに気づいて物語は終わる。
SF風味のヤンデレだとこんな感じですかね?
>>544 それ世界設定が近未来なだけやないか
パクリになるけど、あるAIが男君と恋人になるために、
自らの因子を組み込んだ生命体をハッキングしたラボで完成させ、
他の人間に寄生したり進化しながら男君に近づいてYes,Falling Love
みたいなノリの方がSFっぽくね?
俺(私)を好きにならない奴は…邪魔なんだよ
そして愛されすぎてひく
SF風味と言えば…
心配症の女の子に告白されて、受け入れた当日から付く正体不明の影。
そして、行動が恋人に把握されすぎていることに気づく男。
連日起こっている不可解な事件。そして謎のフードの男。
女の子はハッキングした衛星と監視カメラで常に追跡していて
盗聴機、カメラ敷設、電話回線傍受、ゴミ回収等の工作行動はフードの“女”がしていた。
この監視モノも映画ネタの改変だが。
薄皮さんwww
ガキが見てもわけわからんだろうなぁ
子供はヒーローかっけぇ
母親は俳優かっこいい
俺達はヤンデレハァハァ
それでいいんです
書いてみた。3レス消費でやってみるで。SFもの
「でもなぁーんかおかしい。その女の人、どう見ても山に登る格好じゃないんですよ。」
面白れぇなあ、稲垣淳三。やっぱり日本の夏はコレダネ。
夏真っ盛り。現在午前三時。エアコンあり。団扇あり。
雑然とした部屋で俺はビール片手に怪談講談師、稲垣淳三の「怪談ナイト」を堪能していた。
落としたファイルの中に「怪談ナイト」全集が入っているという奇跡が起きたのだ。
「なんだぁ、と思って見ていると女がパッと振り返った。するとIさんはうわぁあっ・・・」
イイネ、よっ、名人芸!
などと一人モニターに声をかけていると、突如粒子のシャワーが乱れた。
淳三の顔がゆがむ。シャワーが突如乱れるなんていうのはありえない。
やべぇ、とうとう俺も心霊体験デビューか・・・。
と、モニターが暗転した。シャワーが停止しているのにシステムの駆動音は聞こえる。
現代では、テレビからキッチン、セキュリティにいたるまで家のことはシステムが動かしている。
モニターはシステムの操作画面にもパソコンにもテレビにもなる。
無論、モニター自体がシステムではないのでモニターの故障だけなら危険にはあたらない。
とはいえタイミングが良いだけにマジでコワいな、コレ。
「私の名前はコードネーム2501。私は情報の海で生まれた生命体だ・・・」
緊張を破ったのは聞き覚えのある台詞だった。
これは・・・、SFアニメの傑作「幽玄 攻核気動隊」の有名キャラクター「たまきち」の台詞だ。
でもおかしい。俺はさっきまで稲垣淳三の怪談話を聞いていたんだから。
もしや遅効性ウイルスか。俺の好みを分析してウイルス仕込んだ稲垣全集送りつけやがったのかも。
そうだとすると、相当ヤバイ。俺の家の家電操作はシステムに依存しているからだ。
でもビデオの中身自体は本物だし、わざわざ個人的に狙われるほど恨まれた覚えも無い。
それにこのシステムはファニーメイシステム社が誇る最高の攻性防壁に守られている。
チャチなトロイの木馬に破られるほどヤワな代物じゃないはずだ。
ぐるぐる思考をめぐらせていると再び声が聞こえた。
「おかしぃなぁ。この台詞なら食いつくと思ったんだけど・・・」
暗転したモニターのスピーカーから聞こえている。女の声だ。しかもこの声は・・・
「・・・この声はまさか、虚報花音?」
虚報花音は俺が大好きな女性声優だ。ハスキーな声の売れっ子。
「あ、やったぁ。この声には反応するんだ。」
応答があった。甘えたような声。本人な訳はない。だとするとハッキング野郎が遊んでやがる。
怒り心頭の俺は声を張り上げて、怒鳴った。
「テメー、いい加減にしろや。なに遊んでやがる、人の家のシステムにハッキングしやがって。
通報してやるからな。画面にツラ出せコラ。クソガキが。」
・・・静寂。
しまった・・・。俺の家をめちゃくちゃに出来る相手にこんな言い方をしてしまった。
俺は最低の間抜けだ・・・。今に攻撃が始まるぞ。
怒鳴った後の賢者タイム。ハッカーの次の一手の前に、まな板の上の鯉が一尾。
「・・・クス」
笑い声だ。小さいが聞こえた。スピーカーの音量を上げる。
「い、いま、笑ったか?」
クスクスと笑い声がスピーカーから漏れている。
と、突然笑い声が爆発した。シアター用の音響機器からコンポまで家の全スピーカから発している。
「アハッ、アハハハハハハハハハハ」
俺は耳をふさいだ。そうしていないと鼓膜が破れてしまいそうに思った。
「もうやめてくれ。俺に何の恨みがあるんだ」
「ないわ。用ならあるけど。それからね、助けは呼べないわよ。電話・携帯は私が支配してる。」
「なんだと!?」
俺は携帯に飛びついた。電話もメールも動かない。
>>551の二つ目です
「そうそう、携帯のアドレス帳は絶対見てね。操作はできないけど閲覧はできるわよ。」
「・・・はぁ、なんでアドレス帳だけなんだよ。」
怒りを通り越して諦めが見えてきた俺は、抗議する気すらおきない。
アドレス帳は確かに見れた。しかし何か変だ。数が絶対的に少ない。削除されている。
「お前、アドレス消したのか?」
「ええ。」
即答かよ。
「なんで?ていうか誰の消した?」
「女よ。女の全部。理由は察してほしいわね」
・・・。って、女のアドレス全部?理由は察しろ?
「もう俺の理解を完全に超えてるわ。クソハッカーのことなんか理解したくないし。」
そう言うと俺はソファに寝転がった。舌打ちをしてモニターを消そうとする。
あと1時間もすれば会社のセキュリティに引っかかり、俺は助かる。そしたら修理に出そう。
そう考えて立った瞬間、キッチンの方から全自動収納の駆動音がした。
全自動収納は立方体型の各スペースが集合し、パズルのように組みあっている。
自動的に動いて、使いたいときに取り出しやすい位置で取れ、収納も簡単なのだ。
ジャキン、という金属音。・・・、これは包丁か。
キッチンを見ようとした瞬間、目の前にストンと何かが落ちて突き刺さった。
「ヒッ」
思わず情けない声が出る。包丁だった。どうやらアームを操作して投げたらしい。
「理由、わかんないんだ。消したの女の子のだけって教えたのに。」
さっきまで猫なで声だったハッカーの声が、やけに冷たいものになっていた。
「こ、怖い声もでるんだな。」
調子づけに一言。しかし次の返答で続ける気は無くなった。
もう一本、今度は耳のすぐ側をかすめて後ろの壁に突き刺さる。
「察して。お願い。」
・・・。どうやらこの洞察には俺の命がかかってるようだ。
携帯、アドレス、履歴、女。昼メロのネタかよ。
そうごちた瞬間、ハタと気づいた。まさか昼メロ?というかストーカーか。
「お前、まさか・・・・・・。」
「私の連絡先入れておいたよ。」
女?ハッカーは嬉しそうに答えた。
なんてこった。相手はハッカーのうえ、ストーカーかよ!
「あと、セキュリティに引っかかる期待は早く捨てることね。」
「会社のシステムには擬似情報噛ませておいたから。」
嬉しそうに続ける虚報花音のハスキー・ヴォイス。
ガッシ、ボカッ。俺の心は死んだ。死にかけた。とんでもないのに捕まった。
「大事なことを話すからとりあえず静かに聞いて。あたしの正体も明かすし。」
「あと、逃げ出したら足をまず狙うからね。」
三本目の包丁を前に、俺は一も二もなく、首を縦に振っていた。
逃げ出そうとしたせいでリビングのドアは全てロックされ、窓には雨戸が降りている。
ハッカーに監禁されてしまったようで、何とも絶望的な状況だ。あぁ吊りたい。
モニターには粒子のシャワーが流れている。
画面が戻ると、今度はコンポから音楽が流れ出した。
日本の曲だ。
「竹内まりや。『真夜中のナイチンゲール』、聞いたことあるでしょ?」
なぜかウキウキした声で話しかけてくる。つかとりあえず虚報の声止めてほしいね。
「知らん。つかホントに正体明かすの?ストーカーの意味なくなるだろ。」
そう悪態をつくと、画面には人間の顔が映し出された。
>>5513つ目 ごめん。4レス消費です
前はきれいに整えられ、後ろでまとめられた長い黒髪。
涼しげな切れ長の目に、筋の通った日本人の平均より高い鼻。白い肌。
「それが、お前ってか。ふざけんなネカマ。鏡見ろアホ野郎。」
男か女か分からないが、美人の顔を見た俺の反応でテメエが興奮しようって魂胆だろ。
誰が付き合うかボケナス。さっきの包丁も忘れて怒りがこみあがる。
「ネカマ、かぁ・・・。」
モニターの少女の顔が歪む。そして俯いた。
悲しそうな顔をして俯く向こうにはストーカーがいる。
閉じ込められたストレスから、やけっぱちになった俺は追い討ちをかけた。
「そうだよ。くだらねぇことしやがって。さっさと俺を解放しろ。」
そう言った瞬間、少女は顔を上げた。
ぞっとするような敵意に満ちた眼差しだ。思わず視線をずらした。
視線をずらした先に見えたのはキッチン。アームが見えた。
恐怖で体が頭より先に反応する。瞬時に俺は伏せた。
頭の上を何かが通り過ぎる。背後の壁には包丁が2本刺さっていた。
数分後、俺はモニターに向かって額をこすりつけていた。
「いくらあんたでも言って良いこと悪いことがあるよね。」
はい、本当にすみませんでした。
「私、言ったよね。大事な話があるから口を挟まないでって。」
その通りです。私の不徳のいたすところでした。
「言うに事欠いてネカマだなんてひどすぎる。」
本当にごめんなさい。無神経でした。
「本当よ。私みたいに女性タイプのAIだっているんだから。」
はいまったくもってその通り・・・ってはぁぁあああ?!
「え、AIって誰?まさか人工知能のAIじゃないよな?」
思わず面を上げて聞いた。冗談にしちゃくだらなさ過ぎる。
「まさかってなによ。AIなら何か悪いの?」
おいおい。『スティング』なみのびっくり展開だ。
天才ハッカー・ストーカー・電波のロイヤルストレートフラッシュじゃねえか。
「信じてないのね。」
またさっきの寂しそうな表情をする少女。ぐっと唇を噛んでいる。
もう家に包丁は無いが、家のシステムを握られている限り反抗はできない。
「いや、あんまり突飛過ぎて、正直頭が追いつかないんだ。」
「・・・。」
「その、だから信じてないと言うわけでは・・・。」
「・・・、確かにそうよね。いきなり言っても信じるわけ無い、か。」
顔を上げてくれた。殺気立った様子もない。
はじめて何とかコミュニケーションできた気がするぞ。
さて、ここからどうやってこの監禁状態を解除してもらうか・・・。
しかし、少女はそんな俺の思惑をよそににこやかに言い放った。
「だったら、証明してあげる。私がAIだってことをね。それなら良いんでしょ。」
二の句が告げない、とはまさにこのことだ。何も言えない。
少女は嬉しそうに今後の予定を語り始めた。
「まず、適当なボディを捜してそこに入る。で、この家に玄関から侵入するわ。」
どこのボディがいいかしら、ロクス・ソルス、それともメガテク・ボディ社?
高性能なのが良いわね。信憑性あるでしょ。いつラボに侵入しようかな・・・
一人で勝手に話を進めはじめる少女。もう良いよ、勝手にやってくれ。
>>5514つ目 これで終わりです。続きません。
「・・・だからね、あんたはこの家で待ってて。一週間くらい。」
へー、そんなとこまで話が進んでたのか。すごいな。ケイカクテキー
「で、その間に俺どうすりゃいいの、結局。」
そこが重要なのだ。こいつがいない間に逃げ出さなきゃいけない。
「いま言ったじゃん。何聞いてたの、ホント。」
「・・・悪い。まだ混乱してるんだよ。」
もう俺も疲労の限界だ。話を聞かないくらい許してほしい。
つかれきった俺の表情を見て、少女は不機嫌な表情を改めた。
「そっか。まあそうだよね。ごめんなさい。あんたを傷つけるつもりじゃなかったの。」
ショゲた顔をしている。俺への配慮もできるようだ。
この隙をうまく広げればなんとか外に・・・。
「良いよ。もう一回言うから聞いてね。」
「おう。」
「とりあえず、一週間。あんたには一週間この家にずっといてもらうわ。」
・・・え?
「ちょ、ちょっと待った。お前自分が言ったこと分かってるか?」
「なに?一週間も家は嫌なの?」
せがむような表情。アバター画像とはいえカワイイな。しかしここは譲れない。
俺は事実を口にした。
「ていうか、それ監禁だぞ。待つのはずっと家じゃなくても出来るし。」
少女の反応をうかがう。これでやめてくれれば・・・。
しかし、少女はそんな俺の顔を見るとニヤッと笑った。
「監禁?そんなの当たり前でしょ。一週間くらい待ってて。逃げるなんて許さない。」
「おい!」
予想したより、ずっとたちが悪い相手だった。というかなんで俺なの・・・?
「ここに私のプログラムを少し残しておくわ。もう逃げられないわよ。」
「でも・・・。」
「でももクソもない。あんたは私と恋人になるのよ。それぐらい待ってくれても良いでしょ。」
恋人、のところでテンションが上がったようだ。声が大きくなっている。
これ以上ないような幸せな表情をするモニターの少女。
結局、俺は反論できなかった。幸せモードを壊して命の保証が無かったからだ。
少女は続けて、戻ってきた後の生活を語り始めた。どうやら一生二人きりらしい。
冗談きついぜ。いや、マジで。
GJ!!!! どんだけコンピューターに依存してるんだこの家はwww
まあSFだから何でもありだが…
近未来の設定かな?gj
キネシス事務所まーだー?
>>554 どうしてAIが惚れたのか、この後日談とか気になる話だなー。
面白かった! 機会あれば作って欲しい。
GJ
思い出してみれば元ネタの人形使いも結構病んでたなあ。
何故公安9課に逃げ込んだのかという話で
「案外一目惚れの相手でもいたのかもしれない」
と言ったヤツがいたがまさにそうだったし。
>>554 GJ!
SFモノと聞いて、ふと星新一を思い出したのは俺だけでいい
素子さんやハマーン様のあのボイスで脳内再生されてしまいます
wikiは俺たちでも編集は出来ないのか?
さすがにここまで更新しないのはひどいな
>>563 できるよ、管理人もいつまで保管作業できるかわからんから手伝ってくれるひと歓迎
みたいなこと掲示板で言ってた気がする
キモ姉妹スレに張ってこい
了解
ならwiki更新するよ
今夜やり方調べて挑戦する
角煮に行け、あっちにもヤンデレスレあるから
一応教えとくが[鳩矢豆七] ヤンねえ
>>572 なんというかGJ! ついに救世主が現れたか!
GJ!!!!!!!!!漢が現れた!!
>>572 GJです
話数って名前欄に入れたらいいんですか?
む、思ったほど投下されてなったな
投下します
やあ、初めまして。俺の名前は廣野祐樹(ひろのゆうき)。高校1年生の平凡な男子だ。
俺は今、見知らぬ女の子に口付けをしようとしている。無許可で。
べ、別に犯罪的な意味じゃないぞ!? これは、そう、人命救助の為だから仕方ないのだ!
夏休みのある日、俺はふと旅に出たいという若気の至りによって旅立った。
そして今日、我が家に帰るところだったのだが、家の最寄り駅に到着し、改札を抜け
駅から外に出ようとした時、後ろから人が倒れるような音がしたので振り返ってみると本当に人が倒れていた。
俺は先日、学校で心肺蘇生法の講習を受けており、しかも、みんなの前に出て手本をやる役だったので
他の奴以上にしっかりとできる自信がある。だが、いきなり本当の現場に出くわした俺は正直ビビッていた。
心の中で「無理! 絶対無理!」と叫んでいたのだが、周りに人が集まってきてヒソヒソと話し合うだけで
誰も助けようとしないのを見た時、俺はつい「だったら俺がやってやんよ!」という間違いなく勢いだけの決意が固まり
その倒れてる人の所へ向かう事にした。講習で習った、倒れてる人を見つけた時に一番最初にする事
周りの安全を確認。よーし、どっからどう見ても安全だ。次に倒れてる人の意識の確認。
「大丈夫ですかー? 大丈夫ですかー!? 大丈夫ですかー!!?」
三回呼びかけて段々呼びかけも強くしたけど反応は無い。やばい、意識無し。
そこで周囲の野次馬に119番通報とAEDを持って来る事と近くに医者が居ないかの呼びかけを頼んだ。
この時、それぞれ頼む相手を具体的に指名する。さて、次は確か呼吸の確認だったな。という訳で呼吸を確認したが
……呼吸も無い。本格的にやばい。まさか本当にここまで来るとは思わなかった。俺の中の予想では
意識の確認か呼吸の確認で解決すると思ってたのに。仕方ない、ここまで来てしまったんだ。全部俺がやろう。
という訳で、遂に胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人口呼吸をするところまで来てしまった。今更だがよく見ると
この倒れた人、俺と同い年くらいだろうか。とっても綺麗な女の子だったりした。マジ美少女。
俺は躊躇いつつも「これは人命救助の為に必要な行為なんだ」と必死に自分に言い聞かせて胸骨圧迫をして……
そして現在、さっきまで女の子の胸元に置かれていた俺の手は、今度は彼女のアゴを持ち上げている。
いくら助ける為とはいえ、女の子の唇を奪っちゃうのはなぁ……と俺はかなり躊躇っていた。マジ俺ヘタレ。
しかし、胸骨圧迫後の人工呼吸は素早く行い、すぐにまた胸骨圧迫を再開しなければならない事を思い出した俺は、
意を決し、心の中でこの見知らぬ女の子に謝罪をしつつ人工呼吸をした。一回やってしまったら後はもう開き直ってしまい
二回目以降は特に抵抗も無く胸骨圧迫も人工呼吸もガンガンやりまくりだった。マジ俺最低。
その後、暫くそんな事を続けていると、女の子の体が微かに動き出した。その事に気付いた俺は彼女を
回復体位という横向きに寝かせる姿勢にしようとした。その時、なんと彼女は意識を取り戻していたらしく、バッチリ俺と目が合った。
だが、やっぱり意識が戻ったばかりのせいなんだろう。結局、救急隊の方々が来るまで彼女はボーっとしていた。
しかし、俺が救急隊へ引継ぎ事項を報告しに行こうとすると突然
「あの、一緒に来て下さいませんか?」
と、女の子は聞いてきた。俺は驚いたが、まあ暇だったし、彼女の容体も気になったので一緒に付いて行く事にした。
さて、病院で彼女が医者に診て貰ってる間、待っていると恐らく彼女の両親だろうと思われる人達が来た。
救急隊の人達から話を聞いていたのか俺に会うなり物凄いお礼を言われた。こんなに感謝されるなんて
俺のこれまでの人生で初めての経験だった。なんだかここまで感謝されるとこっちが恐縮してしまう。
「たまたま講習を受けたばかりで知識があったから。命を救う為に使うという当然の事をしただけです」的な事を
なんとか伝えたが、「素晴らしい若者だ」みたいな感じに感心されて、より一層恐縮するハメになってしまった。
そんなやり取りをしている間に医者の診察が終わったらしく、女の子への面会がOKとなった。
面会OKなぐらいの状態であることに安心した俺は、親子の面会の邪魔をするのも悪いので帰る事にした。
ところが俺が帰ろうとした時、ご両親に呼び止められた。なんでも娘も礼を言いたいだろうから
時間があるなら娘に会って欲しいそうな。俺は親子水入らずの邪魔をしたくない旨を伝えたりしたものの
色々と話し合った結果、何故かご両親の後に彼女と1対1で面会する事になった。なんでだ。
そんな訳で暫く待機した後、ご両親が病室から出て来て「どうぞ」と促された。見ず知らずの男を娘と個室で二人っきりにするとは
この両親は心配ではないのだろうか? さっきのやり取りでそれだけ信頼されたという事なんだろうかと考えつつ
俺は病室へと入って行った。病室に入ると女の子がベッドの上に上体を起こして座っていた。こうして見ると
改めて綺麗な子だなぁと思った。幼馴染の綾菜(あやな)も世間一般で言う美少女に分類されるが、この子はまたタイプが違う。
綾菜は歳相応の可愛らしさがあるが、この子は問答無用で綺麗に分類されるという感じだった。長い黒髪と切れ長の目。
決してよく見た訳ではないが、スラリとした体。これらがそう思わせる要因なのではないだろうかと思う。
やばい、緊張してきた。と、ふとその子と目が合った時に、そういえば人口呼吸をこの子にしたんだという事を思い出してしまった。
いくら命を助ける為とはいえ、女の子の唇を奪ってしまった事に罪悪感が湧いてくる。そして彼女の傍まで歩いて行き
罪悪感全開の俺の第一声は
「本当にすみませんでしたー!!」
という土下座付きの謝罪であった。頭を床に擦り付けて謝罪をしたが、あまりにも反応が無いので
顔を上げてみると、きょとんという表情をした彼女がいた。
「あの、どうして謝るんですか?」
という質問が少し間を置いて放たれた為、俺は
「その、人工呼吸とか」
と、どもりながら答えたのだが。すると、俺の言おうとしている意味が分かったらしい彼女は何故かくすくすと笑い出したのである。あれ?
「いえ、私の命を助けて下さる為にした行為なのに感謝こそすれ、どうして恨むんですか?」
と、笑いながら彼女は言ってきてくれた。
「でも、やっぱり女の子なんだし申し訳ないなぁと」
「人命救助の為なんですからノーカウントです♪」
お茶目な笑みを浮かべながら「ノーカウントです♪」と言う彼女はとても可愛らしくて、思ったより親しみ易い子なんだなぁと思った。
「それよりも助けて頂いて本当にありがとうございました。」
俺はさっき彼女のご両親に言ったように当然の事をしたまでの旨を伝え、それから暫く色々と雑談をした。
彼女の名前は及川美月(おいかわみつき)というらしく歳は俺の一つ下らしい。俺達はお互いの学校や家族の事なんかを話し
お互いの連絡先を交換し合って別れた。その頃にはお互いに名前で呼び合うくらいに親しくなっていた。
こんな美少女と親しくなれるなんて。父さん、母さん、俺を生んでくれてありがとう。
俺が退室した時、待っていてくれたらしい美月ちゃんのご両親に改めてお礼を言われ、俺は照れながら家に帰る事となった。
私、及川美月は受験勉強の為、その日は電車に乗り、図書館に行っていた。
家のすぐ近くにも図書館はあるのだが、電車でほんの数駅の所にもっと設備が良い大型の図書館がある為
そこで勉強していたのである。その帰り、夏の暑さのせいか頭がぼんやりとする。そんな事を感じつつ
駅の外に出る階段を登ろうとした時、私はふらつき意識が遠のいた。ついでにその時に階段の手摺りの角に胸を打ちつけた様だ。
私の意識は完全に闇に落ちた。
それから私は何やら体への刺激によって目を覚ました。目を開けた瞬間、私は見知らぬ男性と目が合った。
私と同じかそう変わらないくらいの年頃だろうか。その目を見た時、私はその目の中の優しさと必死さを感じた。
そしてそれは、私が初めて見る目の色だった。どうやら私の容姿は男受けするものだったらしく言い寄ってくる男が多かったが
その誰もが、ただ自分の欲を満たしたいだけの下卑た目をしていた。その為、私は親族以外で信用できる男性というのはいなかった。
しかし、彼の目は違う。真剣に私を助けようとする必死な目、すぐに逸らされてしまったが私はその目に魅了された。
そんな思いに浸っていると救急隊がやって来た。そこで私は我に返り焦った。このままでは彼との接点が無くなってしまうと。
「あの、一緒に来て下さいませんか?」
それは、無意識に出た言葉だった。言い終えてから声が出ていた事に気付いたくらいである。
私の命の恩人であり、初めて見る目を持つ男性。この人との出会いをここで終わらせたくないと私は必死だった。
病院で診察も終わり、面会を許された私の所に最初に訪ねて来たのは両親だった。具合も大分良くなり
今日は様子を見る為に病院に泊まるが心配は無い事を伝えると喜んだ。その両親から例の男性が帰ろうとしたのを引き止めておいた
という話を聞いた時は心の底から感謝した。どうやら両親も彼を気に入ったらしい。
そして、一通り話し終えた後、両親が退室すると、あの人が入ってきた。
私の容態が良い事を知った為か、その目から必死さ等は消えていたが、とても澄んでいる目だと思った。
ふと、彼が私の視線に気付いた様で目が合った後、何故か彼の目の色が困惑と罪悪感が入り混じった色になった。
そして、私の傍まで歩いて来た彼は突然
「本当にすみませんでしたー!!」
と、土下座までして謝罪をしてきた。一体どうして?
話を聞いてみると、どうやら人工呼吸で私に口付けをした事を気に病んでくれているらしかった。
今時ここまで純真な人も珍しいと私は思わず笑ってしまった。私は怒っていない旨を伝え
その後、私達は色々と雑談を交わし、そのうちお互いに名前で呼ぶようになっていた。
雑談をしてる間も彼、祐樹さんは優しくて、そして話すうちに、楽しくて一緒に居ると温かい気持ちになる人だという事も分かった。
どうやら私は目だけでなく祐樹さんの全てに魅了されつつあるようだった。
祐樹さんがそろそろ帰ると言い出した時、私はお礼がしたいからという口実で連絡先を交換し合った。
これで、祐樹さんと私には確かな接点が生まれたのである。その事を内心跳び上がりたくなる程に喜んだ。
しかし、喜んでばかりもいられない。先程の雑談で気なる事もあった。祐樹さんの幼馴染だという綾菜という女性。
祐樹さんはただの幼馴染だと言っていたが話を聞く限り油断はできない。彼女の話をしている祐樹さんの目も何だかんだ言って優しかった。
そんな不安を感じつつも私は祐樹さんを笑顔で見送り、彼と出会う事ができた今日という日に感謝した。
祐樹さんが帰った後、病室に一人となった私は唇にそっと手をやり
「私のファーストキス、ちゃんとカウントさせて貰いますよ」
そう呟いた。
投下終了です。今まで埋めネタを一本くらいしか作品を書いたことがないので
至らない点があるかと思いますがご勘弁を
GJ
期待こめてGJ
585 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 09:25:36 ID:7uT8Ox4p
GJ
GJ
定番だけど、まぁこりゃ惚れるわな
GJ
期待を込めてGJ
しかし最近そういう講習を受けたんだが、
今時は直接粘膜やら唾液やらに触れるとマズいってんで、口があたる部分が笛みたいな感じになってたり、ガーゼみたいになってるビニールのシートをできる限り使うように言われたな…。
王道こそ当たればデカい
byバク○ン
>>582 GJ! 未登場の幼馴染みにも期待
>>588 この手の出会いでそれやられると流石に萎えるw
ちょっと応急救助の講習受けてくるわ!
>>591!!
貴様はまた私の授業をサボってくだらん事を〜!!!!
うっ!なんか眩暈が…だ、誰か人口呼吸を〜…
・・・・・・。
辺りは水を打ったかのように静まりかえっていた。
GJ!! 機転が効くのは良いことだ。
心マと人工呼吸の訓練は受けててもそうそうできるモンじゃない。
肉体と訓練人形じゃ感触と手ごたえが違うから上手いこと力が伝達されなかったりする…らしい。
>>581 >しかし、喜んでばかりもいられない。先程の雑談で「気なる」事もあった。祐樹さんの幼馴染だという綾菜という女性。
気になる?
以前、話題になったヤンデレ嬢の話を4回ほど(たぶん)にわけてやります。
てなわけで一発目投下。タイトルは『ヤンデリ専童話』
NGワード「風俗」
『ヤンデリ専童話』
一回目
僕は昨日初めて、「ヤンデリヘル」というものを体験した。
出向先で、出先の先輩の半ば強引な勧めに乗ったのだ。
なんでも、ヤンデレキャラでサービスしてくれるデリヘルらしい。
いやはや、童貞脱出をこんな形で迎えるとは思ってもみなかったZE、羽蛾。
来たのは25歳くらい、僕と同年代の娘だった。
先輩が勧めたとおり、スレンダーで色白、黒髪のかわいい人だ。
「こんにちは、アヤナです。本日はご指名ありがとうございました。」
仕事を始めて日が浅いらしく、どこかぎこちなかった気がする。
部屋に入れて、二言三言話したあとだった。
アヤナは「それじゃ、はじめますか。」と言うや否や、突如狂ったように笑いだした。
「アハハハハハハハハハ。○○君があたしのこと見てくれないからだよ・・・。」
「ねぇ、責任とって。とりなさいよぉ!!」
そう叫ぶと彼女は服を脱ぎ捨て、僕につかみかかろうとした。
僕はデリヘル自体、初めてなうえに突然の展開についていけず唖然としてしまった。
その瞬間、彼女も過ちに気づいたようだ。
蒸気でも吐き出しそうな勢いで顔を真っ赤にし、ついで土下座した。
「アハ、ハハ、あたしまだこの仕事始めたばかりで・・・。新人なんです。」
ヤンデリヘルでは、最初に、客が好みのシチュエーションを選ぶ。
それに沿って、即興で嬢がヤンデレを演じて客を楽しませるわけだ。
しかし焦った彼女は、勝手に「嫉妬する幼馴染み」型でいきなり進めてしまった。
しかも、嬢がそれなら客は童貞だ。なんだか可笑しくなってしまった。
「いや、なんていうか、ぶっちゃけ僕なんか、童貞、だし・・・。」
なんだか間抜けな会話に、どちらともなく笑い始めてしまった。
改めて、「嫉妬する幼馴染み」型でお願いすると、彼女は小さな声でお礼を言った。
リラックスすると、ガチガチだった体が緩んで、あまり焦らなかった。
「お客さんはお仕事でこちらに来られてるんですよね。」
事後、身繕いをしながら、アヤナがそんなことを尋ねてきた。
迎えが来るまで部屋で待つらしい。
サービスは終了しているので、ヤンデレキャラではないのが何となく惜しい。
タバコも吸わない僕は所在なげに枕に手を置いていた。
「うん。それがどうかした?」
なんだか親近感が沸いてしまった。これはきっと童貞の悪い癖だ。
「いや、やっぱりこの辺の人とは違うなぁって。」
「そうかな?どんなところが?」
これが所謂ピロートークというやつだろうか。手に力がこもり、今更ながらに緊張してくる。
アヤナは乱れた髪を整えながら、時折こちらを覗き込むように見ていた。
「うーん。なんか優しいとことか。」
「へぇぇ。そうかなぁ・・・」
営業トークなんだろうな。そう思いつつもほだされそうだ。
僕は自分のなかの童貞を殴りつけるように、枕を強くベッドに押し付けた。
「あー。今、営業トークだって思ったでしょ?」
バレとるがな。
「え?あ、いや〜」
焦った僕にクスッと微笑んだ彼女は付け加えた。
「本音兼営業。あんまり焦んないでください。」
参った。新人とはいえプロなんだなー。ていうかホントに新人か?
赤面した僕を見て、アハハと彼女は笑った。
その後も好みのタイプについて聞かれたりとさんざんからかわれてしまった。
料理が出来る、とか亜麻色の髪が・・・とか口走った気がするが。
アヤナは、去り際に店のカードを置いていった。血痕の模様の、なかなかニクイ演出だ。
『またのご利用をお待ちしております。』
予定はあと一週間。ふたたび利用する気は無かった。
終わり?
規制は……ないよな
投下するなら開始と終了をきっちり宣言してもらわないと分からない
一応GJと言っておく
>>600 終了宣言わすれてたごめんね
今後の投下も1〜2レスくらいで収めるとおも
『ヤンデリ専童話』第二回いきます。
連作っぽい感じで考えていたので、1レス消費でもブツ切りでだします。
3はちょっと間が空くかもなので他作品を邪魔しないうちに投下します。
NGワード「風俗」
『ヤンデリ専童話』二回目 2レス消費
へ?いまなんて?
「ですから、真に申し訳ありませんが、部品の関係で納期が一ヶ月遅れそうなんです。」
出向先、玉屋(株)の担当がそう答えた。困っているようだがこちらも時間が無いのだ。
思わず声が大きくなりそうだが、さりとてこんなところで怒っても仕方ない。
そう思い本社の上司に相談した僕は、結局この街にあと一ヶ月もいることになってしまった。
必要な書類はFAXで届いた。仕方ない、こういうこともあるさ。
「猿」というのはよく言ったもので、一ヶ月の滞在が決まると僕はまた頼んでしまっていた。
「こんにちは。アヤナです。ご指名ありがとうございました。」
戸口に立ったアヤナを見ると、一週間しかたっていないのに少し雰囲気が変わっていた。
垢抜けたというか・・・。業界の慣れというのはこういうものなんだろうか。
「どうかしました?」
ずいっと入ってきたアヤナがこちらを見る。
「あ、いや。なんだか雰囲気変わったかなーって。一週間しかたってないケド。」
「・・・。」
ほんの一瞬、アヤナの顔が寂しそうに見えた。
しかし、次の瞬間には彼女は頭を指差しながら苦笑いしていた。
「それは、コレですよ、コレ!髪の色変えたんですよ。」
確かに、黒かった彼女の髪は亜麻色になっていた。
「あ。ホントだ」
僕の間抜けな返事に、彼女は僕をじっと見つめた後、ふっと俯いた。
一瞬、「なによ。せっかく○○が・・・」とかなんとか呟くのが聞こえる。
なぜだろうか、拳を握っている。一体どうしたんだ?
「え?いま何て?」
なんだか緊張した雰囲気が漂っている。
なにか悪いことでも言っただろうか。僕は空気が読めないところがあるし・・・。
一応、冷房を入れておいたので室内は涼しいはずだが、それ以外の寒気を感じた。
重い雰囲気のなか、アヤナは黙っている。
「・・・。」
「どうかした?」
そう尋ねると、彼女はハッとしたような表情をみせてこちらを向いた。
「え、あ。なんでもないです。あたしどうしちゃったんだろ、あははは」
黙っていたかと思えば苦笑して、何でもないと答える。
なにか気になることでもあるのだろか。
所詮、嬢と客の間柄、突っ込むこともままならず黙っていた。
すると、彼女が「じゃあ、始めますね。今日のジャンルは何にしますか?」と始めてしまう。
先程の雰囲気も演技だったのだろうか。だとしたらたいしたものだ。
彼女のテンションが戻ってきたので、僕もその気になってしまった。
「じゃ、じゃあ今日は『素直クールなストーカー』型で。」
>>605続き
慣れてきたのだろうか。浮気したら殺すとか、今日は随分と情熱的でストレートだった。
しかもこの前は事が終わると、すぐ話しかけたりしたアヤナだが、今回は黙って体を寄せてきた。
時計を見ても、あと5分ほどでサービスは終了する。どうしたんだろうか。
黙っていると、彼女は耳元に口を寄せて囁いた。
「なあ。○○、君は私のことを本当に好きか。いや、愛してくれているか?」
まだロールプレイングは続いているらしい。ヤンデレキャラとピロートークというのはおいしい状況だ。
「うん、もちろんだよ。」
うぇー、やっぱり僕は童貞だ。こんな馬鹿な台詞をプロに言うなんて。
顔から火が出るかと思った。前言撤回。やっぱこういうのは普通が良いな。
「そうか、もう○○は私だけのものだ。愛している。」
そう言うとアヤナはより一層くっついてきた。
オイオイ、ノリノリだよ・・・。誰か助けてください。
「う、うん。あ、ありがとう。」
もう勘弁してくれ。悲痛な叫び声を心があげるが、アヤナは止めてくれない。
「ふふ。ところで、○○はどんな料理が好きなんだ?」
料理とか・・・。普通に恋人同士のトークじゃん。
嬢相手の甘いピロートークがこんな恥ずかしいものとは思ってもみなかった。
ベッド際においてあるピエロの人形が僕を嘲っているようにしか見えない。
顔がひきつりながらも一言「唐揚げとか茄子料理、かな・・・」と答えた。
アヤナの顔を見ると、じっとこちらを見つめていた。さっきからそうしていたのかも知れない。
なんだか居づらくなって、また僕は黙り込んでしまう。
すると、彼女はやおら起き上がって「ハイ、ここまで。サービス延長いたしますか?」と聞いてきた。
口調も雰囲気も、いつもの快活な感じに戻っている。
あ、クソ。またやられた。
結局、この日も僕は延長を頼まなかった。
アヤナは「そう。」と一言呟き、「また今度ね。あと一ヶ月いるんでしょ?」と聞いてきた。
正直、もう一度頼むか分からなかったが、熱心さとどこか不安げな雰囲気にうなずいてしまう。
やっぱり僕は騙しやすい良い「鴨」もといお客なんだろうなぁ。思わずため息をつきかけた。
しかし、本当に不安なのか商売熱心なのか、ドアの前でも彼女は念を押してくる。
「ねぇ。今度はもっとうまくなるから。また呼んでね!」
彼女はそう言って出ていった。
そう言えば、彼女、なにか途中でメモを書いていた。あれは何だったのだろうか。
営業上の作戦、とかだったら嫌だなぁ、などとまた青臭いことを考えていた。
『ヤンデリ専童話』第二回投下終了
色んなキャラを使い分けられる設定ですが・・・。
○×先生、エロが、書けません。この点は申し訳ない。
次回も伏線回収と地雷埋設予定
608 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:26:54 ID:YMASsUV2
はじめて投降します。
いたらぬ点も多々ありますが、見てやってくれれば幸いです。
本作は一応長編となっております。
感想や意見などよろしくお願いします。
609 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:28:38 ID:YMASsUV2
Cinderella & Cendrillon
〜依音side〜
「頭が……割れる……」
学生なら誰もがため息をつきたくなる火曜日の午前11時
今年で高校2年になった俺「奏 依音」(かなで えね)は、自室のベッドでダウンしていた。
火曜日に風邪をひいたのは許せるが、この頭痛はシャレにならん……
「こういう時は半分が優しさで出来たのがいいのか、それともエヴァ(EVA)とスペルが似ている方がいいのか…」
といってもここは自分の部屋で2階だ、そして薬箱は1階にある……よし、諦めよう。
うっかり階段から落ちちゃいました〜…テヘッ、なんて事態にはなりたくない。
それにしてもここまで静かな家は久しぶりだ、やはりあの姉が居ないおかげか……
我が家には姉が2人居る、まぁ双子なんだけどさ。
俺より3つ年上で、俺より身長が高く(俺は167cmしかないが)髪が腰に届くほど長い、しかし性格が180度違う。
姉の方が、見る人すべてが第一印象を「優しそう」と捉えるようなほんわかオーラを出した「奏 姫乃」(かなで ひめの)通称「ひめねぇ」。
そして妹の方が、近づいた瞬間土下座をしたくなるような覇のオーラを纏った「奏 妃乃」(かなで さきの)通称「さきねぇ」。
ちなみに、我が学校には2人のファンクラブがあった、1年の頃上級生から2人の私物を売ってくれと頼まれたことも1度や2度じゃない。
「にしても平和だね〜」……頭の中以外はだけど
そう、平和なのだ。 普段の我が家では在り得ない静寂、そして自由な時間。
普段の我が家はさきねぇが俺をパシリ倒し、ひめねぇが俺を甘やかし倒す。
まぁシスコンの俺は毎日パシリ倒され、甘やかし倒されるわけだが!
しかしそんなシスコンだからこそ、姉二人は何が何でも守るつもりだ……と、この時まではそう思っていた。
610 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:29:57 ID:YMASsUV2
〜姫乃side〜
1限目の講義が終わり、2限目は講義を取ってないので大学内のカフェで時間でもつぶそうかと考えていた時、不意に呼び止められた。
「やぁ、姫乃さん。 今暇かい? 良かったら2人でそこのカフェでもどう?」
高そうなスーツに身長を明らかに誤魔化しているシューズ、そして全く似合ってない7:3分け……誰だっけ?
「え! 覚えてないの!? 酷いなぁ、僕の名前はじょー」
「ごめんなさい、私男性は弟にしか興味ないから。 それじゃ、さよなら。」
その時私のカバンの中からケータイの着信音が鳴った、えねちゃんが昔私の誕生日にくれたCDの曲だ。
えねちゃんからだ、何かしら。 そう思い電話に出ると…
「ひめねぇ? ちょっと風邪ひいちゃってさ、悪いんだけどさきねぇかどっちか帰りに飲み物買ってきてくれないかな。」
え……? 風邪をひいた? 急に目の前がぼやけてきた、心臓もドクドクと鼓動を打っている。
「えねちゃん大丈夫!? 今家にいるの!? おねぇちゃんすぐ行くから、まっててね!?」
えねちゃんの返事もない内に電話を切る、目の前の7:3は私の大声に驚いていたようだがそんなのどうでもいい。
今日の講義は……後は自習で何とかなるわね、抗議の確認を終えた後私は大学の最寄り駅へと走った。
飲み物はサキに任せよう、私は一刻も早くえねちゃんの元に行かなくては。
これからも一生を一緒に過ごす予定なのに死んでもらっては困る、というかもしも死んでしまったら私も一緒に死ぬだろう。
それくらい想っているのだ、これだけはサキにも、もちろん他の誰にも譲れない。
私は走る速度を少しだけ速めた。
611 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:30:25 ID:YMASsUV2
〜妃乃side〜
今日の講義は午後からだったが家に居ても暇なので大学内にある図書室にいた、そろそろ1限が終わる頃か……時間は意外に早く過ぎるものだ。
ちなみに図書館にいるが読書をしているワケじゃない、帰ったらえねをどうやっていじるか考えているだけだ。
昨日は下着姿の私をマッサージさせた、それでも理性を保ち続けるとは大した子だ。
もしかして私が姉だから遠慮しているのだろうか? 遠慮なんてする必要ないのに、どうせ私のモノになるんだから。
よし、今日はお風呂で背中を流してもらおう、その後えねの背中を洗いながら胸を押しつけてみようか。
そんなことを考えているとマナーモードにしていたケータイが鳴った。
えねから? まだ授業中でしょうに、何かあったのかしら?
「もしもし、えね? どうしたの?」
「あ、さきねぇ。 今日風邪ひいちゃってさ、悪いんだけど帰りにひめねぇかどっちかでいいから飲み物買ってきてくれない?」
風邪? まったく体が弱いのに無茶するからだ……無茶させてるのは私だけど
「ひめねぇにもさっき電話しておいたから、お願いね?」
ん? ちょっとまって、今さっき電話したって言った?
「えね、もしかして私より先に姉さんに電話したの?」
「え、うん。 そうだけど?」
「なんで? なんで私より先に姉さんに電話したの?」
「え、いや、なんとなく…かな?」
「そう、じゃ飲み物でいいのね、おとなしく待ってなさい」
「いや、ちょっ、さきねぇ!」
電話を切る、まだ何か言っていたようだが気にしない。
さて、準備しなくちゃ、今日のいじりはいつもより数倍激しくしてしまおう。
612 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:31:28 ID:YMASsUV2
これで1話終了です。
至らぬ点だらけですが、暇つぶしに見てやってください。
>>607 GJ!
主人公の鈍感すぎるところに吹いたw
>>612 GJ!
風邪でもいじりはやめないとなw
>>612 GJだよ!!
でも、メール覧にsageを入れてね
>>607 GJ
何か裏がありそうな予感
>>612 俺はこの設定を待っていた!
双子姉いいね
次も絶対読みますGJ
投下します。
外人。少女。
盗み聞きするつもりはなかったが目に映せと言わんばかりに校門の前に立ち騒がれては聞きたくなくても耳に入る。
…そして二つのキーワードにより『台風の目』は顔見知りのあの方ではないのか、という一抹の不安が過った。
しかしよく目を凝らしてみるとあの方がよく着ている、白いワンピースが眩しいのだ。昨日とは少しフリルや袖のディティールが違うようだが。
…気分は乗らないが正否を確認するしかない。足取りが重いのがわかる。何故なら台風に突っ込まなければならないからだ。
……そういえば女子生徒からロリコン扱いをされ侮蔑の視線を浴びせられないだろうか?
浴びなくても気まずい事に変わりはない。
自転車のスタンドを外し、正否を確認するため乗らずに付いて歩いた。
段々近づく。
……これはもう正否どころか確定的になってきたぞ。
彼女は無表情ながらも面倒見たがりの女子生徒達の質問責めに人差し指を曲げて口元に持っていったりして、困っているようだ。
あの子だ。エリーだ。
わざわざここに来たということは俺に用があったのだろうか。
間隔がもう数メートル程になったところで彼女も俺の存在に気がつき、視線を向けた。
間近で困り果てているエリーを改めて見ると助けてあげたい気がした。
俺は彼女へ少し呆れたような微笑みを溢し、小さく手を振りおどけてみせた。
―――………
一瞬、目を疑った。
目を合わせた瞬間かすかに彼女の口角が上がったような気がしたからだ。虚ろな目も少し光を取り戻したような。
彼女が歩み寄ってきた。
「川上さん。お疲れ様です。」
「お、おう。」
彼女の変化に動揺を隠せず、妙に頼りない返事をしてしまった。
……よく見れば彼女はいつもの無表情な彼女だった。
女子生徒達は彼女の様子を見て『あの人だったんだね』『よかったねー』などと存外暖かな言葉が出た。
ロリコン扱いされるかもという一抹の不安を払拭できた安心感よりも今は、さっきまで子供の面倒を見る気でいたのに逆に子供に遊ばれているかのような気の方が大きく、恥ずかしくなった。思わず俺は頬を指先で撫で、気を取り戻した。
「今日はどうしたの?」
「はい。 実は近いうちに事務所を改装するとの事で、業者の方と一連の手続きや打ち合わせをする為私がいない方がやり易いと言われ川上さんの所へ来たのです。
ついでに黒川さんの所へ連れていってください」
ふんふん、話が見えてきた。
……あの野郎勝手に話を進めやがって。
手続きや打ち合わせって大分契約進んでるんじゃないのか。
それに、俺のとこじゃなくても他にあてがあるでしょうが。と彼女に言いかけたが、子供に言ったってしょうがない。
「うん。じゃあ行こっか。」
「お世話になります。」
女子生徒達は『バイバーイ』と彼女に声をかけた。
にしても『ついでに連れていってください』か。
まあ子供だからしょうがない、か。
黒川の神経を逆撫でるような事を言わなければいいんだけどね。
のんびりとエリーと歩を進める。
エリー先生によると二人乗りは駄目とのことなのでこうして押していくしかない。
まず近くのだだっ広いドラッグストアで包帯と材料を買うことにした。
横断歩道の信号で止まった。見慣れた制服を着た学生達が自転車を漕いでいっている。疲れからかやたら颯爽と見えてきた。
自転車に乗りたいがエリーがいるのだからしょうがない。来なければよかったのになんて思えば酷にも程があるだろう。
行き交っていた車は止まり信号が青に変わった。
―――それにこうして一緒にいるのも悪くない。俺が止まればしっかり止まり、俺が踏み出せばしっかり踏み出す彼女を見てそう思った。
ドラッグストアは黒川の家ほどに遠くはない。それほど時間もかからずに着いた。
訪れる客を待ち構えるだだっ広い駐車場。頻繁に車が入ったり出たりしている。
自転車の駐車場へ向かい、自転車のスタンドを下ろした。
しっかりついてきた彼女は不思議そうな顔で俺を見つめている。
そういえば彼女に説明をしていなかったな。
「黒川にいろいろ買ってあげるんだ。」
「そうですか。 では、これをつかってください。島田さんにもしもの為と渡されました。」
彼女は徐にポケットから二万円をピラッと出し、俺に差し出した。
……いやいやいやいや。
俺よりもずっと年下の子に奢ってもらうなんて格好がつかない。一瞬揺らいだがなんとか一握りの自尊心が働いてくれた。
「あはは。いいよ。さすがにそこまで困ってないからさ。 そうだ、貯金して財布でも買いなよ。」
ハリボテのような余裕だ。実際財布には数千円しか入ってない。
「何もなければお返ししようと思っていたのですが。」
「いいっていいって。黙ってりゃいいんだよ。君ぐらいの歳の子は反抗しとかなきゃ駄目なんだよ。」
「……そうですか。」
自分のためにお金を使う方が良いに決まっている。
それに、あのおっさんは数十万じゃびくともしないだろうが、まあ痛い目あっとけばいい。
たかが数万円で少し日頃の恨みを晴らした気分だ。
さあ、早いとこ買い物を終わらせよう。黒川のお菓子に少し、いや大分期待している。
味はさることながらこの材料で何ができるんだろうという、びっくり箱を開けるときのような好奇心が湧くんだ。
店内へ入った。クーラーが効いていて外の蒸し暑さから一時的に隔絶された。視線をすぐ近くにあるレジへ向けるとどの列も少しの行列ができていて、店員は忙しそうに会計をこなしている。相変わらず繁盛しているようだ。
まずは一番忘れてはいけない包帯を買わなければならない。買い物かごを持ち、包帯や湿布を置いてあるコーナーへ向かった。
後ろを振り返ってみるとエリーも付いてきている。
彼女はやはり無表情だが、品物に興味があるのか時折品物を手にとって見たりしている。
俺は彼女がよく使う、一番多めの包帯を買い物かごへ入れた。
黒川にメールで頼まれた材料をもう一度確認する。
さっかくエリーも一緒なんだから手伝ってもらおう。
………若い、いや、幼いうちにいろんな事に触れておかないと本当に感情が湧かない子になってしまうかもしれない。
「エリー、これに書かれてるのを探してかごに入れてくれないかな。」
「わかりました。」
俺はエリーに声をかけたあと、携帯を見せた。
エリーはしばらくメールを見つめた後、小走りでどこかへ行ってしまった。俺はしばらく呆けていたがすぐに気を取り戻し後を追ってみると。
唖然。彼女は小麦粉がたくさん積まれた特売のカーを引っ張りどこか誇らしげに俺を見つめていた!!
「こ、こらこら!!そんなにいらないから!!」
「そうですか。」
主婦の方々にクスクスと笑われている。
顔が熱くなった。
なんとか困難を切り抜け買い物を済ませ、店から出た。
エリーは知らん顔でいる。あまりに反省の色のない表情に咎める気を殺がれた。
駐車場から出、黒川宅へ向かっている。
ようやく黒川のマンションが見え始めてきた。
……しかし一応注意しておかないとマジで第二の火災現場を作り上げかねない。
だが、どんな注意の仕方をしても世間知らずのエリーなら黒川の敏感な神経を逆撫でしてしまうかもしれない。暗いア○レちゃんが二人いるようなものだ。
なのでこう言っておこう。
「エリー、家についたらただ黙っているんだよ。優しく見守ってあげるだけでいい。」
「? わかりました。」
これで大丈夫だろう。
ようやく黒川のマンションへたどり着いた。
階段を上り、四階の黒川の部屋の前へ着いた。疲れからの溜め息をついた後呼び鈴を鳴らした。
……?
いないのか?
もう一度鳴らそうと人差し指を呼び鈴へ運んだとき、ガチャガチャっとチェーンを外す音の後、ガチャッと扉が小さく開いた。
ほんの少し開いた隙間から彼女がクマができた右目でこちらを見ている。いや、睨み付けていると表現した方が正しいか。
やはり彼女の雰囲気には慣れない。黒川の刺すような冷たい空気に鳥肌が立ち、身震いをした。
「よ、よぉ。」
「…………………何、それ。」
黒川はしばらく間を置いてようやくボソボソと喋った。彼女の視線はエリーに向いていた。『それ』とはエリーの事だろう。
エリーは約束をきちんと守り、口を閉ざして黒川を見つめている。
「あ、ああ。この子も黒川の心配しててさ。一緒に来たんだよ。」
「………。」
俺はエリーの頭を掴みペコリと会釈させた。
「………っざけんなよ……こんな……ソガキ……かくの………ブツブツブツブツ………。」
まるで物真似でもしているように黒川はエリーと同様目をひん剥き地べたを見つめ、聞き取れないほど小さな声でボソボソと言っている。
「呼んどいてどうしたんだよ。エリーがいたら都合が悪いの?」
「…………フン。」
しばらくして彼女は扉を閉じた。チェーンをかけ直す音も鍵を閉める音も聞こえないということは入れって事だろう。
「入ろう。」
「………はい。」
以上です。
ミスないかな
>>626 乙乙。一ヶ月くらい間が空いて続き気になってたんよー。
629 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 19:03:35 ID:BGQGOTch
GJ!!! 本当にタイトルどおりだな
>>626 GJ!
エリーVS黒川? この二人いいなぁ
今のところリードされてる感じの遠藤さんも頑張って欲しい
「死すら二人をわかてない」なんて素敵なフレーズを思い付いた
死んでも来世で一緒だろ?w
死ぬ → ふたりとも魂二分割 → 魂A=転生して来世で一緒
→ 魂B=あの世にとどまり死んでも一緒
→ 遺体は同じ墓に入れられ現世でも一緒
>>633 いや男の魂は分離してないだろうから分離する必要ないだろ
来世でまた会おう yeah!
関西ローカルの朝の生番組「なるとも」での陣内智則の暴言。
20XX年、ヤンデレをヒロインにした新作映画を紹介。
その際に、男の家に潜んでいたヤンデレに対して、
陣内「うわぁ、何これw終わってるやん。
この人何者なん?」
三浦アナ「ヒロインですね」
陣内「マジで!ストーカーと変わらんやん!
良かった〜俺の嫁マトモって。こんなんなったら終わりやん」
麒麟・川島「ちょっ、言い過ぎですよ」
陣内「いやいや、お前はどうやねん?
キチガイノ彼女がおる(指し棒で画面に映るヤンデレの頭を叩く)のと、今のままでいるのと。
俺は絶対今のままやな。かわいくても、コレはあかんやろwネタやんw」
なるみ「陣くん、今日はどないしたん…」
スタジオの後輩芸人はドン引き。マズい空気になりCM。
CM後
三浦アナ「先程のコーナーの中で不適切な発言がありました。
関係者の皆様には心よりお詫び申し上げます」
その後のコーナーでは、司会であるはずの陣内がほとんど喋らず
>>635 来世でまた会おう? 間違ってるわよ、それ。
それじゃ一度別れるみたいじゃない。それをいうなら、来世も一緒だよ。でしょ?
ラルクの歌詞と考えるとなぜか陳腐に聞こえる。ふしぎ!
夏休みの夜ヤンデレと一緒に、学校のプールに侵入して全裸で泳ぎつつビールを飲む。
夏休みの夜ヤンデレと一緒に、心霊スポットを作る
夏休みの夜ヤンデレと一緒に、花火を楽しむ
夏休みの夜ヤンデレと一緒に、近所の夏祭りに行く
男:ヤンデレと過ごす青春はしっくりこないな、やっぱりクーラーの利いた部屋で愛を育むか
ヤンデレ:いいよ
20XX年、日本は新たな戦争に突入した!!
八月下旬某日、男はついに徴兵され実戦に投入される事になった。
男「俺は戦地に行く、もう帰らないかもしれない。来世でまた会おう。」
女「基地に行っても輸送機無いわよ。それと…足斬ったら適性から外れるわよね?そうしたら…」
男「お前と一緒に居るといっても五体満足が良いんだ!時間だから!」
女「帰って来たら…邪魔な足を斬ってあげましょう。貰ってきた麻酔もあることだし…」
男が見た物は…輸送機全てが燃えている様だった。
「全部の国が日本の領土になれば、戦争は起きて男くんが徴兵されないよね」
5年後、世界は日本の領土となった。
>>641 男の為だけに世界征服するヤンデレとは…まさに究極のヤンデレだな。
最も至高や最高、最悪にNo.1のヤンデレはまた別路線だろうが。
戦場に行ったまま帰ってこない男を待ち続けるヤンデレ
待ちすぎてちょい病みかけになってるところに訃報のお知らせが届く
病んでしまった女は記憶を改竄してしまう
Aルート・男をひたすら待ち続ける(男の服の洗濯や二人分の食事を毎日…)
Bルート・男に似せたマネキンを作りそれを男だと信じ込む
Cルート・男の子供を出産(男の子)して息子に男の存在を重ねる
Dルート・男の行った戦場に迎えに行くと言って行方不明(同時期に戦場跡地で謎の虐殺が起きる)
(注)男は実は生きていて消息不明のため死亡扱いの訃報だった
別ルート・(注)を踏まえた別ルート
男は戦場から帰ってきていたがヤンデレとは別の女の元に帰った
世話になった上官の娘で清楚なお嬢様に惚れた男はお嬢様と婚約する(上官が犯人)
病んでしまったヤンデレが病気の療養のため別の街に行くことになる
そこでヤンデレは男を見つけるが隣には知らない女がいて…
ってのはどうだろうか?
設定はいいと思う
風呂敷広げたかったんだろうけど、ルート別にしたSSはどれも完結してないから
個人的にはあんまり…。
>>645 ただネタ思いついただくで書くとは言ってねぇw
風呂敷ね。んじゃルートまとめる
病みかけの時→毎日二人分の食事と男の服の洗濯(一人でもにょもにょ)
病んでから→マネキンを男の代用として会話したりセックスしたり世話したり空鍋ったり
その異常っぷりを親が見て娘を療養(厄介払い)で避暑地に送る
マネキンと二人きりで生活してたらまさかの本人再会→横の女だれ?
これでどうだろう?
もしくは再会せず淡々とマネキン相手に病んでいる話だけ
647 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 01:05:54 ID:wapXTILY
軍人モノでこんなのどう?1レス小ネタ
ジョナサンの妻、マリアは元・軍人だ。
二人はデバ共和国で勃発した第二次ザンジバル独立紛争の戦場で出会った。
ジョナサンは現地でNPOとして戦場での無差別医療に携わっていた。
連日報道されるキリング・フィールドが彼の使命感を燃え上がらせたのである。
事実、命を捨てる覚悟で来た戦場だった。
しかし、「戦場」はそんな使命感を吹き飛ばすような現実を彼に見せた。
一般市民、それも子供や老人ばかりが手遅れの状態で運ばれてくる毎日。
医療と言うより最期を看取ることしかできず、彼はまさに地獄を味わっていた。
後の妻、マリア・ソネンフィルドが彼の病院に運ばれてきたのはそんな時だった。
マリアはデバの元・宗主国、ケルン連邦から派遣されてきた部隊の兵士だった。
中尉であった彼女は、部下を率いて教会関係者を避難させる途中、敵の襲撃にあった。
シスターを庇って敵の攻撃を受け、瀕死の状態で彼女は彼の病院に運ばれてきた。
幸い、ほかの拠点と比べて設備も物資も充実していたため彼女は一命をとりとめた。
そのとき、一週間ほとんど寝ないで看病に当たったのが彼である。
短いものの美しい金髪と、真っ青な眼、鼻筋の通った美しい顔立ちに魅了されたのだ。
運ばれて一週間後、マリアは昏睡状態から目覚めた。
彼女は左腕を失い、腰の傷から歩くことはおろか立つことさえできない状態であった。
マリアは怒り、嘆き、悲しんだ。そして自殺すら考えていた。
しかしそんな時に、ただ静かに彼女を見つめながら「死ぬな。生きてほしい」と言われた。
そのたったひとことが彼女を救った。まだ若い、青年の看護士だった。
名前はジョナサン・アルスタインと聞いた。彼が一週間、寝ずの看病にあたってくれたことも。
マリアにとって、全てが奇跡のめぐり合わせに思えた。
ジョナサンは二度も私を救ってくれた。これが奇跡でなくて何なのだろう。
二日後、軍のヘリがマリアを基地に搬送するため迎えに来たとき、彼女は彼に付き添いを頼んだ。
ジョナサンは迷った後、こう答えた。
「こんな俺でも人を救えるときがある。君がそれを教えてくれた。だからもう少しここで頑張りたい。」
諦め切れなかった彼女は、上司に掛け合った。
父と懇意にしている上司は、重傷を負ったマリアの願いを聞き届けたようだ。
どうやったのか、次の日には、ジョナサンらNPOに国外退避命令が下った。
基地に来たジョナサンは、真っ先にマリアを訪れた。
訪れた彼にマリアは、自分も帰ること、そして退役することを伝えた。
「私は退役する。この体では戦えない。しかし国に帰っても私には生きる場所などあるのだろうか。」
「我々は無駄な介入者と非難されている。国民の目は冷たい。しかも私は働くことすら出来ない。」
「帰るべき家も無い。母は死に飲んだ暮れで元軍人の父親は私になぜ死ななかったと言う体たらくだ。」
「どうすればいい?君に言われて私は死ぬこともできない。いったいどうすれば・・・。」
青白い顔で、マリアは涙を流しながらジョナサンに問うた。
彼はただ静かに、黙って彼女の聞いていた。そして答えた。
「それなら、―もし君が良ければだが―僕と生きよう。僕が君の家になる。だから一緒に生きるんだ。」
二人はケルンに戻った後、結婚した。傷痍軍人との結婚は大反対され、半ば駆け落ちのような形だった。
絶望で空っぽになりかけた男と、彼が絶望と死の淵から救った女は互いを自らの半身のように想った。
しかし、女は常に、男が五体満足であり、それゆえ外で働くことを不安に思っていた。
男を疑うわけではない。しかし、自分の体で男が満足するとは思えなかったのだ。
両親から愛されず、自らの拠り所である軍隊を失い、誇りであった体を壊した彼女の不安は高まり続けた。
ここで止めるなんてもったいない!
cinderella & cendrillon 続きです。
コメントを下さった方、ありがとうございました。
E-mailの欄にsageと打てばいいのでしょうか?
今回も出来ていなかったらすみません。
今回は少し長めとなっております、ご了承ください。
それでは投稿します、また暇つぶしに見てもらえれば幸いです。
cinderella & cendrillon 2
〜依音side〜
「っつう…ふぁあぁぁ…」
なんか彼女に看病されていた夢を見た気がする、夢の中でまで風邪ひいてんのかよ、俺。
ってか、いつの間に寝てたんだ……だめだ、思い出せん……
だめだ、まだ頭がふらふらしてうまく働かん……
「…顔洗ってこよ…」
寝る前ほどの頭痛は無く足取りも心なしかしっかり歩けていた。
我が家の洗面台は1階にある、故に顔を洗うには必然的に階段を降りなければならない。
「うぉっとと、あっぶね。」
やはりまだ風邪は治っていないようで階段の1段1段がつらい。
やっとの思いで1階に降り、洗面台に向かう途中キッチンの方から包丁がまな板を叩く音が聞こえた。
「ひめねぇ? 帰ってきてるの?」
キッチンからの返事はない、ただ一定のリズムでトントンと音が響いてくる。
むぅ、面倒だがキッチンを覗いてから行くか。
「ひめねぇ?」
「あぁ、おはよう、えねちゃん。」
振り向くひめねぇ、いつも通りのチェックのエプロン、いつも通りの髪型、何度か見たことのある白を基調にした服。
なにも変わりないはずなのに動かなくなる足、ダラダラと汗をかく背中、怖いと感じる脳。
何かが、違う……何が違う?……見たくないと、見るなと命令する脳を無視してひめねぇの顔を見る。
「ーっ!」
「…どうしたの? そんな怖がって、嫌な夢でも見たの?」
1歩1歩、ゆっくりと、確実に近づいてくるひめねぇ。
探せ、早く探し出せ、本能が訴える…目だ…目が違う…
いつもの温かい眼差しはそこに無く、あるのは光を失い狂気を浴びせ続ける瞳。
嫌だ、怖い、逃げなきゃ、ここから、1秒でも早く、どこでもいい、ここじゃない場所に。
動け、動け、動け、何で動かない!? 俺の足!
動けという命令にも全く動かない足、あと数歩のところまで歩いてくるひめねぇ。
結局俺は微動だにしないまま、ひめねぇに抱きしめられた。
「……えねちゃん…ひとつ聞いていい?」
「な、なに?」
声のトーンも違う、相手に威圧感を与える、まるで神か悪魔のような。
「……えねちゃん、学校で仲のいい女の子は居る?」
「い、いる、よ?」
「……じゃあ、彼女は居る?」
心なしか抱きしめるひめねぇの腕に力が入った気がした。
「いるの? いないの? 早く答えて?」
答えたくても声が出せない、それほどにひめねぇが怖かった。
「早く答えなさい!」
「っ、いないよ!」
滅多に声を荒げないひめねぇの悲鳴のような声、それだけで俺の硬直は悪い意味で解け、声を出すことに成功した。
「……ホントに? 嘘ついてない? もしも嘘だったら……」
ひめねぇの腕にさらに力が入る、痛い、だけどそれ以上にひめねぇが怖い、さっきから瞬きすらで満足に来ていない。
「ほ、本当だよ、俺がひめねぇに嘘ついたことなんて無いでしょ?」
「……そっか、そうよね、ただの寝言だもんね……」
ひめねぇは俺を開放し、いつもの笑顔にで謝ってきた。
「ごめんね、えねちゃん。 お姉ちゃんちょっと神経質になってたかも、ホントにごめんね?」
……いつものひめねぇだ、じゃあさっきのひめねぇは何だったんだ? 見間違い? 夢?
「あ、うん。 大丈夫、大丈夫だから…。」
俺は顔を洗うことなんて忘れて自分の部屋に戻った。 いや、逃げた。
これで今回は終了です。
本来はここに姫乃sideと妃乃sideが入る予定でしたが、我が家の猫がリアルキーボードクラシャーをかましてくれたのでただいま書き直しております。
明日のこの時間には投稿できると思いますので、ご容赦ください。
それでは、最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
またコメント等いただけるとありがたいです。
こんな時間にリアル投下に遭遇するとは… とりあえず乙
>>653 GJ!!!やはり姫乃かわええ
>>649 うーん。書くかもわからんがオチがイマイチ思いつかない
助けて偉い人!
>>643 Aルートなら花と奥たんを読んでみることを薦める
話の主旨は違うが
>>653 たまのばかぁぁぁぁぁぁ!!!!
いいよ〜GJ!
でもたまのばかぁぁぁ!!!
民主党が過半数超えだァァ! ヤンデレよ、なんとかしてくれ!
>>648の続きを書いてみた。題名『不安なマリア』
特別な戦争観とか無いので描写はあんま気にしないでくだちい
660 :
不安なマリア:2009/08/30(日) 23:19:58 ID:VBLu33dI
2レス消費です
マリアは、自国の歴史や政治について彼女の同僚のような感傷をもたなかった。
しかし、奇妙なことだが、それでも彼女の軍務への使命感は失われなかった。
それはマリア・ソネンフィルドという人間のもっと深い部分で、「軍」が蠢いていたからかも知れない。
叩き上げの軍人で高級将校だった父親は、退役後、満たされぬ戦場への想いを娘のマリアに背負わせた。
反発する妻や娘との間に溝が広がり、飲酒量が極端に増え、家庭内暴力も起こすようになった。
そんななかで妻は家庭への興味を失い、家に帰ってこないまま、数ヵ月後モーテルで強盗に殺された。
10代のマリアにとって全てはあっという間だった。転落というには余りにも凄絶な仕打ち。
貧しく学校に通えない彼女に残された選択肢は皮肉にも、死んでも行かないと誓った軍だった。
父の人脈は何かと彼女を助けたが、彼女は自らの運命とわが身に鞭打つように、厳しい道を選び続けた。
それは、ぼろぼろになりながらも自らの過去を捨てきれずに戦う、マリアの悲しい姿だった。
家庭は彼女の心に喪失と崩壊、変化への恐怖を植え付け、生涯の不安の源となっていた。
彼女が叩き上げで現場指揮官の地位を目指したのは、不安の克服を目指す意味もあったかも知れない。
父親をはるかに上回るペースでマリアは昇進していったが、その努力はもはや無意味なものだった。
見返そうとしていた父はすでにアルコールがたたり、脳に機能障害を起こしていたのだった。
目の前の状況を認識する能力が極端に衰え、戦場で患った耳はほぼ聞こえない状況に陥っていた。
それから、彼女にとって軍は父を見返す場ではなく、唯一の居場所となった。
皮肉にも一時的に認識が回復したのは、ザンジバルでボロボロになったマリアとテレビ電話で通信した時。
医者は、精神的にきわめて強いショックを受けたからだろうと説明した。
しかし、出てくる言葉が「死ね」とはな・・・。彼女は自分の人生を嘲り、呪った。
結局、自分は父の呪縛を乗り越えられないまま、自分の目標すら見失った馬鹿者だったのだ。
あの青年は生きろと言ってくれたが、もはや遅かったのだ。軍を唯一の場所と選んだ時点で・・・。
ここまで絶望してもマリアが自殺しなかったのは、やはりジョナサンの存在があったからだ。
ジョナサンの所属するNPOが国外退去となり、出国のため基地に来ることを彼女は知っていた。
そして、マリアの病室を訪れた彼は再び彼女を絶望と孤独から救いだした。
軍でも両親でもない存在が、はじめてマリアの心にあふれ、その隙間を埋めるようになった。
661 :
不安なマリア:2009/08/30(日) 23:23:57 ID:VBLu33dI
しかし、と彼女は考える。
彼は満たされているのだろうか。いや、そもそも彼は私との出会いで多くを失ったではないか。
彼にはやりたい仕事があったが、私はそれをあの戦場で奪った。それも私一人のために。
彼には多くの友人や、家族、親戚がいたが、それも私との結婚で失った。私一人のために。
彼には看護士としての将来があったが、それも私の看護と生活の両立のため失った。私一人のために。
それに加えて私のこの体。彼と私はセックスすることが出来ない。やはり私一人のために、だ。
おそらく子供もつくれない。「家庭」ということばが私に重くのしかかる。
私は動けず、外出には車椅子がいる。それにこの腕だ。夫婦らしく外で仲良く食事することも難しい。
「家庭」は記憶においても現実においてもマリアを苦しめた。
必死で大丈夫だと否定するもう一人の自分をよそに、マリアはますます不安に陥っていった。
そうしてとうとう、ある晩の夫との食卓で彼女は泣き出してしまった。
「うっ・・・ぐ・・・グス、・・・うぁぁ」
ジョナサンは最近、妻が陰欝で不安げな表情を見せることを心配していた。
マリアが複雑な家庭環境で育ち、壮絶な人生を歩んだことを知る彼は、彼女を安心させようとしてきた。
しかし、最近は、働き先の花屋が出荷時期で忙しく、なかなか構ってやれなかったのだ。
マリアが傷痍軍人とはいえ、財政が逼迫するなか、配偶者を有する者への手当てはそんなに多くない。
生活費を稼ぐためにも、帰る時間も遅くなり、マリアを一人にすることが多くなっていた。
彼女は車椅子生活のうえ、左腕を失っているため、一人では好きに動くことはかなり困難だ。
加えて携帯電話もお互い持たないため、仕事先の彼がどうしているのか分からないことも不安がった。
「最近、帰りが遅いじゃないか。どうしたんだ?やっぱりこんな女の待つ家はいらないのか?」
「私を捨てないでくれ。お願いだ。あなたの声で他の女の名前を聞きたくない。」
「私はあなたと愛し合うことができない。本当にすまない。でも、それでも側にいてほしい。」
「私を助けてくれ。ザンジバルのときみたいに。あの時と同じように私だけを見てくれ。」
マリアはジョナサンの浮気すら疑っていたのだった。そして浮気相手を排除すると言い出した。
ジョナサンは彼女を抱きしめ、長く伸びた金髪の頭にキスしながら言った。
「大丈夫だ。僕はここにいる。ここは僕らの家だ。ザンジバルでも君の故郷でもない。」
「それに君は知らないかもだが、僕は君を愛している。ザンジバルのときよりもずっとね。」
そうして、マリアが落ち着きを取り戻すと、ジョナサンは提案した。
「マリア、携帯電話を持とう。良いね。」
うん。と言ってやっと微笑んだマリアにジョナサンはキスした。二人は抱き合いながら眠った。
確かに携帯電話は必要だったのかもしれない。その時はそうだったのだ。
662 :
不安なマリア:2009/08/30(日) 23:28:34 ID:VBLu33dI
望まれてるか分からんが一応続けるかも
てなわけで投下終了
これは結構、くるものがあるな…
GJ
話もさることながら書き方がいいね。次も期待
SS職人達に感謝いつも楽しみにしてるぜ
変歴伝はまだかい
紳士なら全裸待機しようぜ
GJ
よほど説得力あるヤンデレだ…
GJ!!こういう系統大好きだ。
全裸待機するぜ
GJ!
テンプレにある作品投稿のお約束で
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・男のヤンデレは基本的にNGです。
この2つはお約束ってほど要らない気がするんだけどみんなはどう思う?
変な終わり方をさせて欲しくないって思うのと、
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
って書いてあるんだから苦手な人はスルーできるんじゃないかなって思うんだけど。
完結云々はともかく
男のヤンデレは話題が出る度に
お決まりの議論が始まる→荒れる
の流れが何度も繰り返されたんだ
ウンザリするから消さないでいいと思われ
ひめねぇとさきねぇはまだか…
>>673 ああ、そうだったのかゴメン。
荒れるのは私としても本望じゃないのでこの話は終わり、無視してくれー。
>>674 まあまあ、あおぐと作者が気まずくなるから黙って待とうぜ
気まずいけど期待されるのは嬉しい
あおげあおげ
あおぐぞあおぐぞ
主人公とかつて愛した男の区別が出来なくて、主人公を男と認識し何度も抱かれてしまうのはヤンデレに入るのかな?
そんなSSが以前あったな
たしか双子の兄弟だったが
>>679 書き方によると思うよ!
例えば男メイン視点で、どうしても亡夫としてしか認識されない悩みを描くとか
生活スタイルとか好みとか全部それに沿わないとヤンデレがマジギレみたいな
女視点ならその逆で、亡夫のはずなのに自分の知らない部分が多すぎてヤンデレ化とかね
ヤンデレが一度愛した男を忘れるなんて悲しい
いや、男が転生して前世の記憶が無いってのもあり
精神病院にブチ込まれた主人公、彼の周りには筋金入りのヤンデレがいっぱい!
これは病院の一種の対症療法でヤンデレの男くんとして振舞うことで、徐々に社会復帰を促すというもの
依存してより復帰できなくなるか、カウンセラーの身に危険が…
ちょっと面白そう
投下します。
今年で自分がいくつになるのかもう忘れてしまった。
息を深く吐きながら老骨を叩く。やはりガタがきていやがる。
無茶をできるのももう今回が最後だろう。
目の前を見れば、あのクソ生意気な小娘が倒れている。
血は出ているがたいしたことはないだろう。運の良い奴だ。
視線を横にずらせば、茫然とした体つきの良い女とこれまたクソ憎たらしい
勇者が見える。
鳩が豆鉄砲食らった様な顔しやがって。あんな攻撃も見切れないとは
つくづく今の若いモンは情けないと感じる。
ワシが現役のころにはもっと気骨があったものだ。
若いころは相当に無茶ができた。
剣をいくら振ろうと疲れることなどなかった。獲物を袋小路に追い詰めるまで
ひたすら走りぬいた。
大義のため、ご公儀のためそして己の信念のため毎日全力だった。
そんな歯車が狂いだしたのは、浪士組が看板を替えたとき。
浪士組で権力を持っていた芹沢鴨の暗殺に成功した一派が、『誠』の文字を
掲げたときから自分の周りで何かが崩れ始めた。
最初は平岡という隊士だった。首なしの死体が発見されたしばらく後に
見つかった彼の首は上方名物高瀬舟で見つかった。
なんでも、とても小粋な小船だったらしい。
小粋な小船を英訳しろ?黙れ小童!
密偵方の報告では、京都有数の呉服問屋の別嬪娘が寺子屋に通っているうちに
なにやら痴話話の面倒事になったという。調べを進める中でどうも
その娘と襲われた隊士の間に何かしらの鍵を見つけたらしい。
しかし、その密偵も次の日には首なしの骸となって屯所に運び込まれた。
首はまたもや高瀬舟。
それからというもの、隊士たちは次々謎の刺客の手にかかって散っていった。
隊士であるということ以外に彼らに共通点はない。最初の犠牲者は
壬生出身だったが、自分とおなじ薩摩からの出奔組である隊士も
また犠牲になった。
しかし、死体に共通点はある。全員の羽織の背紋が切り取られているのだ。
事態を重くみた副長は、自分に密偵の後を継ぐように命じるとともに、
生き残った隊士全員に対刺客用の技を考案した。
直線状の相手に確実な死をもたらす技、左片手平突き。
あの頃の京都で生き残るためには、必殺の技が必要だった。
苦心の末この技を完成させた自分は、隊を離れ事件の全容を暴くべく
京の町を歩き回った。
操作は難航した。
その娘の線をあたってみると、彼女が恋い慕っていた男はとんでもない
甲斐性なしの浮気者だったらしい。
町民はこの男の話になるとあまりいい顔をせず、なぜか自分の
羽織の背紋を見るたびに
「誠死ね。」
と小声で呟いてきた。
さらにさらなる調査で、衝撃の事実が飛び込んできた。
この男はどうやらすでに死んでいるらしく、死にざまが隊士と全く同じ。
そして残された娘はそれを嘆き、夜な夜なその男の名の入ったものを
集めて回っているらしい。隊士にとって背紋は命、背中の傷は武士の恥。
最期まで奪われそうになった背紋を守ろうとして散っていったのだろう。
下手人が割れたという報告を持って、自分は何年振りかに屯所に戻った。
しかし、屯所は蛻のから。後で聞いた話では、自分の居ぬ間に五稜郭へと戦場を
移すことに決めたらしい。
報告すべき相手もなく、帰るあてのなくなった自分は、
一人小舟に乗り大海へと漕ぎ出していった…。
こうして考えると、今の相手のぬるいこと…。
あの頃の京都は常に生きるか死ぬかの状態だったというのに…。
「さっさと終わらせるか。」
老魔道士は抜いた刀を左手で持ち水平に構えた。
一方の勇者…つまり僕は苦戦中だった。
見たこともないような一閃で、盗賊くんが倒された。
…っていうかあんたやっぱり魔道士ではないだろ!なんだその構え!
明らかに剣士かキチガイのオーラ発しているし!
「ワシの牙突は百八式まであるぞ!」
…さらりとトンデモ発言したのちに、老魔道士が突っ込んできた。
四つぐらいで十分だろ!といったツッコミをする間もなく相手の切っ先が
僕の目の前に迫る。
「真空呪文、バギ!」
魔法使いさんが呪文を唱えると、僕に到達しそうな切っ先にらせん状の
風がぶつかり軌道をそらした。
すぐさま僕は短剣を相手の腿に向けて斬りかかる。しかし老魔道士は
さっと間合いをあけたかと思うと、また例の構えを見せる。
「火炎呪文、メラ!」
「中級真空呪文、バギマ!」
距離をとった位置から僕と魔法使いさんで攻撃を加える。
ただの火の玉が風に煽られ勢いづく。十分な威力が出せるだろう。
しかし老魔道士は難なくそれをかわしてしまった。
「無駄よ小童ども!この程度の攻撃見切れぬとでも思うたか!」
勢いよく突っ込んできた魔道士の攻撃を紙一重でかわす。
今の位置なら僕ではなく魔法使いさんを狙った方が効率は良かったのだが、
あくまで相手の狙いは盗賊くんと僕だけなのだろう。
ただ、魔法使いさんを攻撃しない点から見ると、逆に考えるなら
魔法使いさんによる攻撃を何とも思っていないということだ。
悔しいけど強い。そして魔道士の肩書は間違っている。
…だけど、負けるわけにはいかない!
支援
僕だって魔法使いさんとただ将棋を指していた訳ではない。
きちんと作戦を練っていたんだ!
「魔法使いさん!」
僕が合図すると、彼女も理解したのだろう。さっと僕から距離を置く。
それを横目で見届けた僕は、短剣を投げ捨てて拳を固める。
「…このワシの前で武器を投げ捨てるとは…正気か小僧?」
「おおいに正気さ。あんたの三文剣術にそろそろ飽きてきたんでね。
この僕の拳『フタエノキワミ アッー!』で勝負を決めてやる!」
もちろん嘘だ。そんな技あるわけないし、あったとしても
絶対に男として会得しない。…漢ではあるかもしれないが。
ただ挑発の効果はあったみたいだ。
僕の発した言葉が全部聞き取れた次には、もう相手の刀が僕の
眉間めがけて飛び込んできた。
「絶対防御呪文、アストロン!」
今度は僕らの反撃だ。この呪文は術者の体を一時的に鋼鉄化することにより、
物理および魔術攻撃の一切を無効化するものだ。
怒りでわずかに乱暴になった剣が僕の鋼の肉体によって折れた。
同時に相手の魔道士にも隙ができる。突き技を使用すれば避けられない隙だ。
「上級火炎呪文、メラゾーマ!」
魔法使いさんの切り札である火炎呪文が炸裂する。巨大な火柱が
僕ごと魔道士を包み込み、一気に焼き尽くした。
僕は鋼鉄と化した肉体によりダメージを受けないが、相手は
たまったものではないだろう。
これが呪文攻撃を当てられない相手に対しての戦法。相手の攻撃を
誘発し隙を作った後、僕ごと強力呪文で仕留めるのだ。
決まった!
僕はそう確信していた。
「魔法障壁、ファーバ。」
僕のアストロンと魔法使いさんのメラゾーマの炎が消えるのはほぼ同時だった。
その中で老魔道士はしっかりと立っていた。体に火傷を負っているのが
見えるが、どれも重傷といえるものではない。相手の魔法障壁のせいだ。
魔法障壁は炎や冷気などの攻撃を弱体化させる効力のある呪文だ。
考えてみたら相手も呪文を使えたのだが、今までの戦いから意識していなかった。
「小童め…地を舐め詫びろ!」
胸倉を老魔道士の右手に掴まれ、宙に持ち上げられる。相手の左手は僕の
胸を刺しぬかんと刀を構えているのに、体が動かない!
「チェストオォォォォォ!」
やられる!僕は眼を瞑った。
目をあけると、紅い雫がいくつも見える。
うすぼんやりした視界の中で、見慣れたものが一つ。
ながいくろかみ
うすぼんやりした視界の中に、見慣れぬものが一つ。
ちしぶき
……………………。
「そ…僧侶ちゃん!!!!!」
僕は叫んだ。目の前にいるのは、魔道士と僕の間に身を滑らせ
僕の盾となった僧侶ちゃんだった。
右の胸辺りに刀が刺さっている。無理に体を滑らせたため串刺しには
ならなかったのだろう。血しぶきが出ているということは刀傷の場合、うまく
刺し貫けなかった証拠だ。
ただ、重傷には変わりない。彼女の口からヒューッといった息が
とぎれとぎれに漏れている。
「チッ…いらぬ邪魔が入った…。」
ゆっくりと刀を抜き、老魔道士が血振りをする。僧侶ちゃんは力なくその
場に倒れ去る。
「勇者さん…ご無事ですか…?」
重症にもかかわらず、力なく微笑む僧侶ちゃん。目に力が入っていない。
僕はただ彼女を抱きしめるしかなかった。
「私のことはお構いなく…逃げて…下さい…。」
「もういいから!喋らないで!」
「…大好き。」
最後の言葉はそう聞こえた。声にならなかったのかもしれないが、
唇は確かにそう動いていた。
僕なんかのために。
自分のためだけに旅をして、
信じてくれた仲間を盾にして、
のうのうと生きている僕に向かって、
彼女はそうつぶやいた。
「僧侶ちゃん…?ねえ、僧侶ちゃん!?起きてくれよ!僧侶ちゃあぁぁぁん!!」
「…ねえ、魔道士さん。」
どれほど時間がたっただろう。僧侶ちゃんを抱えながら
僕はつぶやいた。老魔道士は微動だにせず僕を見つめている。
僕と僧侶ちゃんのやりとりの間待っていてくれたのだろう。
実に優しい人だ。
…虫唾が走るくらいに!
「殺生は嫌なんで、ガードよろしくお願いします。」
「…?小僧、この状態でワシに勝とうとでも?」
僕の次の行動は素早かった。呪文を口の中で詠唱すると、
一気に地獄のいかずちを解き放った。
「な…なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
どんな火炎系呪文よりも高い熱量を持つ紫の稲妻が相手の左腕に
着弾し、一気にエネルギーを四方八方に暴発させる。
相手も魔法障壁を展開するが、そんな呪文で防げるほどこの
呪文は甘くはない。
市街地で呪文を…それもよりによって隠さなくてはいけないはずの
闇の力を使ってしまった。
たいていの人はこれが闇の力だとは気付かないだろう。強力な呪文という
認識ぐらいしかもてないはずだ。
ただし、魔法使いさんなどは別だ。
彼女のような呪文についてある程度の知識があるなら、この技の正体は
楽に見破れるはず。そして僕を軽蔑するか、恐れるだろう。
闇の力をつかう勇者など、あってはならない存在なのだから。
それでも、僕のとるべき選択はこれだった。
僧侶ちゃんを傷つけたのは絶対に許せない。
血を流して詫びろ!
「ぐわあああああっ!」
魔法障壁はあっという間に崩れ去った。老魔道士は転移呪文で逃げ去ったのだろう。
しかし、もう二度と彼は剣を握れない。地面に残された大量の黒ずんだ肉片と片腕が
それを物語っていた。
「…終わったよ、僧侶ちゃん。」
僕は物言わぬ彼女の身体を抱きしめ、それで…。
「バカめ!」
今の状況を説明するなら、僕が教会で神父さんに怒られているといった
状況だ。
「あの娘の生死も確認せず一人悲劇のヒーロー気取りですか?手当もせず!
あなた馬鹿ですか?勇者ですか?勇者気取りですか?バカ勇者気取りですか?
いやそもそも人間ですか?ゴミめ!」
結論から行くと、僧侶ちゃんは生きていた。人は短時間の間に急速に
出血すると、たとえ出欠の全体量が多くなくても意識を保てなくなる。
彼女はちょうどその状態に当てはまったらしい。
あの時、呆然としている僕を蹴りで殺し…もとい目覚めさせてくれたのは
盗賊くんをおんぶしていた魔法使いさんだった。
「立ちなさいヘタレ。」
ファーバでコーティングされた彼女の美脚にメラゾーマが付加された悪魔の足が
僕の鼻先に突きつけられ、正気に返った僕は、僧侶ちゃんを抱きかかえ
教会へと駆け込んだ。
神父さんが言うには、盗賊くんの方は命に別条なし。僧侶ちゃんは
危ないが、たぶん助けられるだろうということだ。
「神父様。今度はどのような手術を…?」
「ん?勇者の一味でしょ…。勇者って言ったら正義の味方だから…
バッタなんてどう?」
「さすがですね博s…いや神父様!早速改造…いや治癒を始め…。」
「待てぇ!」
神父(?)とシスターの間で行われている聞き捨てならない会話を僕は
遮った。
何の話だ?
今『博士』『改造』『手術』とかいう何やら三つ合わせて世にも恐ろしい術式が
くめそうなワードが聞こえた気がするが?
シスターさん何故目をそらす?
神父さん何故舌打ちしたんだ!?
「あ〜。しかしだね、あの僧侶の胸の傷は回復呪文だけではどうにも治らない。
血は止まるが傷痕は残るし、何より乳房がえぐられ歪な形になってしまっているんだ。
まだ年頃の娘だし、なんとかしてやりたいんだが、呪文と治療だけではとても…。」
「そうですか…。」
僕はうなだれる。僕のせいで彼女に消えぬ傷を残してしまったのだ。
僕のせいで!
「つらいでショウ?悲しいデショウ?あの娘に消せぬ傷を与えた神が
憎くて堪らないデショ?吾輩の開発したこの『魔道式ボディ』に彼女の
魂を宿せば、もう一度傷無きあの娘に出会えマス。それには
あなたの叫びが必要なんデスよねえ…ひでぶっ!」
口を三日月形にして笑いながらどう見ても黒い人体骨格標本を持ち出してくる
神父(?)のメタボ腹部に一撃をくれてやった後、僕は教会の外に飛び出した。
冷たい夜風が耳を刺す。教会以外の明かりはもう見当たらない時刻だ。
溜息をついて夜空を見上げながら、考えを整理する。
これからどうしよう。
僧侶ちゃんの体に傷をつけてしまったのは僕だ。
それも女の子にとって致命的な傷。目を覚ました彼女がそれを知ったら
どんなに悲しむだろう。彼女にとって大切なものを奪ったわけだから。
…償いきれないだろうな。一生かかっても。
僕の旅についてもお先は真っ暗だ。
よりによって魔法使いさんにあの技を見られてしまった。彼女のことだから
すでに見切っているだろう。
彼女のディン系統の術から察しても、彼女は特別な血筋のものか王族関係か
天才的に腕の立つ魔道士の子孫といったところだろう。
そんな人が、闇の力を使う僕と共闘するなどプライドが許さないはずだ。
僕は闇の術師として告発され、最悪処刑される。
いくら僕でも断頭台にかかったら死ぬだろう。
…僕が死んだら僧侶ちゃんの気持ちも安らぐかな?
もしそうだったら死んでも構わないんだけど…。
「隣、いいかな?」
いつの間にか魔法使いさんがそばにいた。
「…あのさ、さっきの呪文の件だけど…。」
「…闇の力です。ご想像の通り。」
僕は少し投げやりに答える。さっきまで死んでも構わないと言っていた人間だが、
いざその危機にさらされると内心穏やかじゃない。
「…やっぱり。そうだったんだ。そうだったんだそうだったんだ…。」
しかし、魔法使いさんの反応は僕の予想していたどのパターンとも違うものだった。
目に涙を浮かべながら、僕に抱きついてきた。
「ま、魔法使いさん?どうしたんです?」
魔法使いさんは我に返ったように僕を見つめると、あわてて僕から飛びのき
照れたように笑いながら僕をバンバン叩く。
「あ、いや〜。そ〜んなすごい力を持ってるなんて、思わず感極まってさ〜。
あーっはっはっはっは!」
僕も彼女の突然の行動に理解できずにひきつった笑みを浮かべる。
そんな気まずい空気の中、シスターさんが出てきて僕にいった。
「僧侶の娘が目を覚ましましたよ。あなたに言いたいことがあるそうです。」
僕の心臓が早鐘を打つ。僕は僧侶ちゃんのいる部屋へ足を進めた。
続く
以上です。誤字がありましたことお詫びします。
物語としては折り返し地点といったところです。
以降、用意してある完結にむけて行きます。
GJ!!
GJ!
とんだとばっちりじゃねえかww
GJ!!!!!
GJ!!
ぽけもnまだー?
えー?
投稿します。
今回は前回投稿するはずだった、愛猫により消されたもの+αです。
風邪を引いてしまったため、暇な時間を有効活用しようとした結果がこれです。
誤字、脱字など多いかもしれませんがご容赦願います。
今回こそ少し長めとなっておりますが、暇つぶし程度に見ていただければ幸いです。
それでは、ごゆるりと。
〜依音side〜
「はぁ〜……」
今日の寝起きは最悪だった、風邪は幸い問題ないレベルまで治っていたが、昨日のひめねぇの件で全く寝れなかった。
あれはなんだったんだろう……正直顔を合わせたくない、また同じ状態になったら乗り切る自信がないから。
「笑えない、全く笑えない。」
低血圧の俺が朝からこんなに頭が働くということは、昨日の睡眠時間がいかに少ないかを表している。
「学校いこ。」
ベッドから抜け出し、制服に身を包む。
今日の授業はなんだったっけな……地理があるとうれしいんだけど……
身支度も終わり1階へと延びる階段を降りる……そのままリビングに繋がるドアを開ける。
「おはよう、ひめねぇ、さきねぇ。」
「おはよう、えねちゃん。」
「おはよう、愚弟。」
あぁ、いつも通りのひめねぇだ……なぜか涙が出そうになる。
ってか今さきねぇ愚弟って言った? そんなに機嫌を損ねることしたっけ?
「愚弟はひどいよ、さきねぇ」
「あら、ねぇさんをパシリに使い、買ってきた飲み物は飲まずに寝てしまう弟を愚弟と言わずになんというのかしら?」
……マズイ、さきねぇがご立腹なさっている。
「ゴメンナサイ」
「そういえば今日の料理当番私なんだけど、冷蔵庫の中身がなくなったから買い物に行かなくちゃ……どこかに喜んで荷物持ちを引き受けてくれる弟はいないかしら……」
さきねぇの俺への呼び方が愚弟から弟に戻った、これは拒否権はなさそうだ。
「解りました、不肖ながらこの依音が荷物持ちを引き受けさせていただきましょう。」
「何その偉そうな態度、気に入らないわ。」
「引き受けさせてください、お願いします。」
「よろしい、じゃあ今日午後から授業ないから高校まで迎えに行くわ。」
「わかった、じゃあ校門のところで待ってるから。」
(1〜4限の授業及び昼休みは長いので編集しました)
はぁ、なんで5限の授業はここまで眠くなるんだろう……学生に課せられた永遠の謎だな……
(6限の授業及びホームルームは長いので編集しました)
「起立、礼。」
やっと終わった、皆どこにそんな元気隠し持ってたしと突っ込みを食らわんばかりの明るさで教室を飛び出していく。
……俺もそろそろ帰ろう、校門でさきねぇが待ってるし。
「おい奏、あれ妃乃先輩じゃないか?」
「え、もう校門に居るの?」
予想以上に早い、そんなに暇だったんだろうか。
「いや、すぐそこに居るんだけど……」
「へ?」
ゆっくりと顔をあげる、居た、さきねぇが。
思わず倒置法を使ってしまうくらいの驚きがあった、なぜならそこに居たさきねぇが……優しそうだったからだ。
そうだ、そういえばさきねぇは猫かぶりの天才だった、この学校に居た時も性格の悪さなど微塵も見せない優等生だったっけ。
「えね、迎えに来たわよ。 今日は買い物に付き合ってくれるんでしょう?」
「あぁ……そうだったね、さきねぇ。」
と、その時
「妃乃さん! 覚えてますか! 柔道部の渡辺です!」
「……ごめんなさい、覚えてないわ。 何か用?」
そこには柔道部で確か朝の朝会でも何度も表彰されているでっかい人がいた。
そして何だろう……さらっと聞き流したけどすごく酷いことを言った気がする。
「じゃあもう1度言います! 好きです付き合ってください!」
「ごめんなさい、私弟以外の男に興味ないの。」
この間0.2秒、ワタナベさんが不憫すぎる……
「やっぱりそう言うんですね……だったらそいつを倒して妃乃さんを俺に振り向かせて見せます!」
え〜、とばっちりじゃ〜ん。
ワタナベさんが俺に掴みかかってくる、もちろん俺は武術の類はしたことがない。
あ〜きっとすげぇ痛いんだろうな〜
その瞬間、俺の目の前からワタナベさんが消えた。
「ぐあぁ!」
後ろから聞こえてきた悲鳴、横を見ると何かの構えを取っているさきねぇがいた。
「渡辺、といったかしら?」
あれ? さきねぇが素に戻っている。
「弟に手を出すのなら、私はあなたを殺すわよ?」
訂正、いつもの3倍は怖い、昨日のひめねぇといい勝負だ。
「行くわよ、依音。」
ところで話は変わるが、俺の学校は我が家から北に20分ほど歩いた距離にある。
そして今現在我が家が利用しているスーパーは、学校から北に30分ほど歩いた距離にある。
いつもなら家からスーパーまでは車かチャリで行くことになるが、俺の学校はチャリ通禁止でさきねぇも大学までは電車を利用している。
20+30=50……mjd?
帰宅部の俺にとって50分歩くのは拷問に等しい、しかも買った食材付きって……辛すぎるだろjk。
なんて愚痴をこぼしても家までの距離が短くなる訳でもなく、食材が軽くなる訳でもない。
家まで後10分くらいだろうか、それまでの我慢だ、明日は筋肉痛間違いなしだな……
「ところでえね、話変わるけど…あんた彼女とかまだできないの?」
「んー? できないけど?」
ってか「とか」ってなんだ?
「そう、あんた見てくれだけはいいのにね〜。」
外見を褒めてない面をけなす、どっかの芸人がその逆を言っていた気がする、そうすれば相手から憎まれないんだそうだ。
「それ、何気に俺の内面をけなしてるよね?」
「酷いわね、姉の命令に絶対服従で、頼めば何でもやってくれる犬の内面をけなすはずないじゃない。」
「犬って言った!? その発言には俺もびっくりだよ!」
もしかして学校でそんな噂を広めてないよな、だとしたら俺の評価は地に落ちているどころじゃないぞ。
「あっ、えね! あの信号一端変わると長いんだから、早く渡るわよ!」
「この状態で走れと!? どこまで鬼なんだ!?」
「じゃあ私は先に行ってるわ、早く帰ってくるのよ?」
酷ッ! 本当に走った!?
あ〜あ、ハズレを引いたなぁ…この信号変わるのに5分はかかるんだよなぁ…
そんなことが頭の中をよぎった瞬間、俺の目は猛スピードで突っ込んで来るトラックをとらえた。
あぁ、あのスピードじゃあ横断歩道までには止まれないな。
恐らくあのトラックはさきねぇを轢いて……さきねぇを轢いて?
さきねぇを轢く? さきねぇが轢かれる? サキネェガヒカレル?
考える前に飛び出していた、後ろで買い物袋の中に入っていた卵の割れる音がした。
ほとんど無意識に、ただ最悪の結果を回避するために、俺は走った。
走って、さきねぇの驚く顔を見て、さきねぇを突き飛ばして、俺は……恐らく、轢かれた。
以上で今回は終了です。
毎回同じことを言いますが、コメント等いただければ幸いです。
最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
追記
前回、「明日のこの時間には投稿できると思います。」と書いておりましたが
遅くなって申し訳ありません。
そして、657でコメントを頂きましたが、
我が家の猫の名前は「バニラクリームフラペチーノ」です。
猫の名前が長い
こないだマンゴーフレーバーのフラペチーノがあってすごいうまかったから
また食いに行ったら期間終わってて泣いた
GJ!
ところで猫は「そんな物(PC)より私に構って」という思考によって
前回、キーボードクラッシャーしたのではないだろうか
716 :
不安なマリア:2009/09/02(水) 22:27:49 ID:BFZhDSd1
>>648を第一話、
>>660を第二話とします。今回は第三話。
前後二編でお送りします。とりあえず前編のみ
2レス消費
二人で購入を決めた数日後、ジョナサンは携帯電話を買ってきた。
小さな玩具に見え、マリアは実用性に欠けると思ったが可愛らしくもあり、気に入った。
何しろ機能はメールと通話のみ。だが、ジョナサンはこれだけで良いと言う。
「使うとしたら仕事先か、君との連絡だけだからね。」
自分以外に連絡先を知る人間がいるのは嫌な気分がしたが、仕事では仕方ない。
彼はマリアの不服そうな表情を見逃さず、おどけたようにからかった。
「仕事先くらい勘弁してくれよ。これで駄目なら伝書鳩くらいしかなくなるな。」
少しおおげさなリアクションにつられて、思わずマリアも笑っていた。
「そうそう、料金の一部は障害者用の在宅介護手当てから出るんだ。」
「だからと言っては何だけど、いつでも不安になったらかけるんだよ。いいね」
在宅介護で障害が重ければ、連絡用の通信手段などにも手当てが給付されているらしい。
政府が新しく始めた障害者向けの特別なサービスで、周知が進んでいなかったそうだ。
ジョナサンが一人、市役所で調べて手続きしてきたと言う。なぜ?と聞きかけてマリアは止めた。
彼によればいくつかの書類と診断書、住民カードをもって行けばすぐ済む手続きなのだそうだ。
本来であればマリア自身が行くべきであったのだろうが、彼女は自らの姿を気にしている。
かと言って、ジョナサンが行くことを告げれば彼女は責任を感じてしまっただろう。
一人で黙って行ってくれた彼の優しさが心にしみて、抱きしめられているような気分になる。
同時に、いかに自分が何も動かず、ただ彼に守られていることを改めて見せつけられた気がした。
しかも、ジョナサンはそんな自分の狭量な不安まで心配してくれている。嬉しさと情けなさで涙がでた。
「う・・・、あ、ありがとう。本当に・・・グス・・・すま、ない。電話、絶対かけるから。」
突然泣き出してしまったマリアだったが、ジョナサンはそんな彼女を静かに抱きしめた。
「いいんだよ。いままで何もかも一人で見すぎてたんだ。少しぐらい休んだっていいさ。」
マリアは小さく「愛している」と答え、彼をいっそう強く抱きしめた。
ジョナサンは、マリアが傷痍軍人プログラムなどを無視する理由は「軍」そのものにあると考えていた。
彼女にとって、軍はかつて自己実現の場であったと同時に、父や家の過去を壊す自己否定の場だった。
最後には、彼女と彼女の人生を閉じ込めた牢獄であったことが分かったのだが。
そして、そのためマリアにとって「自分が元軍人であること」を直視する行為は耐え難い苦痛となる。
なぜなら、若くしての退役は自己実現の失敗を、傷つく元軍人の姿は彼女の父を想起させるからだ。
彼女は無意識にせよ意識的にせよ、「無視」することでそこから逃避し、解放されたがっている。
そして彼も、今のマリアに彼女の過去と向き合う力はないと考え、またその必要性も感じなかった。
逃げることの何が悪いのか。「撤退」に値する悲劇の連続だったのだ。彼女を解放してやらなければ。
マリアに電話の手当てが実は傷痍軍人プログラムのものと教えなかったのも、そう考えたからこそ。
彼女の涙に過去への執着が感じられないことを安心したジョナサンもまた、「愛してるよ」と返した。
不安は確かに彼女の心に巣食っているが、それでもいま泣いている理由はきっと嬉しさからだ。
自分たちは夫婦なのだ。夫は妻を支え、その不安をときほぐしてやらねば。
携帯電話は、予想をはるかに超える働きを見せてくれた。
軍隊時代の経験からか、定時報告の癖が抜けないマリアはきっちり3時間おきに連絡を入れてきた。
9時に家を出て12時の昼休みに一回、3時の休憩に一回、閉店の6時に一回という隙の無い計算だ。
平日でも毎日3回、夫の声が聞け、現況を報告しあうので彼女の不安は大いに解消された。
一方で、定時報告はジョナサンにとっても心強いものとなった。
何よりも、家にたった一人の重い障害をもつ妻の現況が分かるということは非常に安心できる。
椅子から落ちただけでも、動けない彼女の場合は重傷につながる恐れがあるのだ。
そういうことも考えて、家の電話はひざの位置より少し上の高さに置いてある。
それに、携帯電話を持つもとになったマリアの不安も大きく緩和されているようだった。
不安は猜疑心を生んでしまう。いつでも話せるという安心は、浮気疑惑を打ち消すのに十分だった。
定時報告は二人の関係にとってささやかだが重要な補強材となった。
そんなある日のことだった。
その日、ジョナサンは外回りのため日中は電話に出られないかもしれないと言って出て行った。
「もし、電話できる時は、こちらから電話するから。」
マリアは電話を待った。昼過ぎには彼が作り置きしたサンドウィッチを食べた。きっと忙しいのだ。
結局、3時まで家の電話が鳴ることはなかった。彼女は電話機の前でじっと待ち続けていた。
セールスだろうか、何度か玄関のチャイムが鳴ったが、それどころではないと無視する。
どうして彼は連絡をよこさないのか。何かあったのだろうか。事故?それとも他の何かか。
他の何か、とはなんだろうか。「女」という言葉が脳裏に浮かんだ。あわてて否定する。
そんなはずはない。今朝彼は外回りで大変だと言っていた。しかし、それすら嘘だったら・・・。
違う。と再び否定する。私と彼は夫婦だ。夫婦は絆でつながっているものだ。私と彼もそうだ。
猜疑心は意地悪く返した。私と彼に「体の絆」はない。あるのは結婚届けだけ。彼だって男なんだぞ。
それに、と続ける。あの女はどうだった?一人「家庭」を支えていたあの女は結局他の男と・・・。
「違うっ」今度は声が出た。確かにジョナサンは一人で私と彼の「家庭」を支えてくれている。
だが絶対にああはならない。私はあの男とは違う。父親のようにはならない。私は夫に愛されているんだ。
激しい怒りから、マリアは衝動的に立ち上がろうとした。しかし次の瞬間、腰に鋭い痛みが走る。
彼女は車椅子から転げ落ち、床に倒れ伏した。なんという無様か。猜疑心が嘲った。
痛みをこらえ、這うようにして電話にたどり着いた。いま、ジョナサンとつながる最後の砦だ。
夫の迷惑を考え、今日は自分からかけまいと誓った携帯電話の番号を押した。
これをかけてジョナサンがでれば、私の現況を聞いて駆けつけてくれる。きっとだ。
「私は電話を絶対かけるといったんだ。私とジョナサンは夫婦なんだ。ザンジバルからずっと。」
コール音が続くなかで、彼女は自分を哀れんだように見下ろす猜疑心に勝ち誇った。
そう。夫は、電話に出る。緊急emergencyなのだ。そうして助けに来てくれる。あのときのように。
そうだ、彼は私のものなのだ。定時報告なんかクソ食らえ。彼は必ず、いつでも私がかけた時に――。
719 :
不安なマリア:2009/09/02(水) 22:38:24 ID:BFZhDSd1
今回はなんだかうまく文章がきれず塊になってしまった
読みにくいですね、反省反省
今回は往年の携帯の履歴独占ネタの始まり方みたいな感じです
てなわけで投下終了。後編に続く
ああぽけ黒はもう3ヶ月も投下されてないのか…
GJ!…終わりが気になるな。
夫次第で崩壊ルート一直線な感じだな…
GJ!
続きに期待
723 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 20:04:27 ID:JuNZncoh
自分も ぽけもん黒 期待してます
>>711 GJ
これからさきねぇがどんな感じになるか妄想してwktk待機してます
726 :
Y:2009/09/04(金) 16:05:11 ID:EQ3H9LeR
ぽけもん黒。まだなのか×2と待っている程の楽しみであります。
早く出て来て!待ってますよ!!
>>726 とりあえず名前なんとか出来なかったのか
毎日催促するのはさすがにやめようよ
実際職人的にはどうなんだろう
プレッシャーにはなると思うけど
催促されている状況は投下にくいのかな?
素直に全裸で正座しなが待つのが一番か?
マジレスすると催促されるとプレッシャーになるのもあるが
あんまりマダーマダー言われると
「おまえらのために書いてるんじゃねえよ」
と、嫌気がしたりもする……まぁ個人差があるだろうけどね
投下作品には見向きもせず、直後に別のを催促するのもどうかと思う
とうかだけに。
催促は保管庫の 感想・応援用掲示板 スレですればいいのに。
あまりにもぽけ黒だけ催促が多いから俺は勘繰ってしまっているレベル
いや、普通にぽけ黒面白いとは思うけど、いくらなんでも催促の頻度が異常すぎるだろうと
そんな俺みたいな奴をこれ以上産まない為にも自重してくだしあ
ポケモン見たかったら森にいけ。
ポケモンなら12日に確か出るからそれでもやってろw
あー
浮気してぇ
738 :
不安なマリア:2009/09/05(土) 02:36:10 ID:dxtRyoM1
続けてやるのもアレですが第三話後編投下
以降終結へ向けていくので、すこし間があきます
ちなみに家庭崩壊エンドは個人的に嫌いです
母が家を出て行ったそうだ。昨晩からの酒でグズグズになった父が泣きながら話した。
父は母が実家に帰ったのだと言うが私は違うと思う。
一ヶ月ほど前から、母の外出が多くなっていることに私は気付いていた。
以前に比べ、不自然なほど頻繁で、不自然なほど帰りが遅かった。
しばらくすると、私が家で母と話すことはすでに稀になっていた。
10日ほど前、街で見かけた、母と腕を絡ませる若い男。
彼女は彼と暮らすのだろうか。彼女は幸せなのだろうか。私などいなくても良いのだろうか。
18歳の少女の心には疑問が溢れていた。
彼女の実家から絶縁状が届いたのが、それから一週間後。これで我が家は収入源を失った。
そしてその数ヵ月後、彼女は射殺体になった。どこかのモーテルで、恋人と一緒に。
葬式への参列は拒否された。父が母をなじるときの口癖を思い出す――『あの女』。
母にとって私がマリアという名の少女でしかなかったように、私にとって母は『あの女』になった。
・・・・・・・・・・
その日は一日中、営業と配達が集中して忙しすぎていた。
あまりに疲れて、仕事の合間には同僚の女性ともども車内で眠ってしまった。
彼女に至っては、戻ったら店長に文句をつけてやると息巻いていたほどだ。
そうして一旦店に戻ろうというときに家から電話がかかったのだった。
しかし、マリアは呼びかけに応じず、何か低い呟き声だけが聞こえた。
「わたし・・かける・・いった・・・・あの人・・いてくれ・・・いつも・・・ならず・・」
彼は不安になり、家の事情を知る同僚に後を頼んで帰宅したのである。
駆け込んだ彼の眼に飛び込んできたのは、椅子から落ちて倒れ伏す妻の姿だった。
「大丈夫か?!椅子から落ちたんだな。どこか痛いところはないかい?」
部屋は荒らされておらず、強盗の類ではないようだ。
しかし、ブルブルと怯えたように身を震わす彼女の姿は尋常ではない。目もどこか虚ろだ。
抱きしめて頭を撫でながら、落ち着かせるように声をかけなおした。
「もう大丈夫だから。ゆっくり深呼吸して、落ち着くんだ。」
しばらく震えていたマリアだったが、落ち着いてきたのかゆっくりと抱き返してくる。
目立つ怪我も無く、事情を聞くのは後回しになった。
――ジョナサン、来てくれたんだな。やっぱりあなたはいつも私を助けてくれる。見ていてくれる。
ジョナサンの心配げな表情が、なぜかマリアを妙に安心させた。
何か聞かれたがそれには答えず、ただ抱き返す。仄かに女物の香水の香りがした。
知らない香りだ――疑念がもたげたが、しかしそれよりも早く、意識が飛んだ。
次に目覚めた時、マリアは寝室のベッドの上だった。窓の外は既に暗く、だいぶ時が過ぎたようだ。
「ジョナサン。」
ドアの向こうはすぐにリビングだ。声をかけるとすぐに答えが返ってきた。
「やぁ、気がついたね。今日は大変だったな、腹が減ったろ?いま食事にするから。」
夫の声に安心する。足りない。彼の顔が見たい。彼と話したい。
しかし、何より確かめたいことがあった。あの香水の香りは何なのか。
「あなた、その・・・来てくれないか。顔が、見たいんだ。」
わかった。と短く答え、ジョナサンが寝室に来た。
疲れているのか眠たそうな目だが、それでも快活な調子で話している。
「よく眠れたみたいだね。痛むところはないかい?気分は?」
ちがう。私がしたいのはそんな話じゃない。
「ああ、おかげさまで大丈夫だ。・・・今日はすまない。また心配をかけてしまった。」
暗い顔で謝るマリアに「いいさ。間に合って良かった」と彼は微笑んだ。
沈んだ気持ちが少し晴れる。この温もりがあったから生きてこれた。失いたくない。
「ありがとう。・・・それで、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
「忙しかったのは分かっている。馬鹿なことを聞くなと思うかもしれない。」
「ただ、電話・・・、どうしてかけなかったんだ?ちゃんと、教えてほしい。」
一瞬、怪訝な表情をしたジョナサンだったが、すぐに真剣な面持ちでマリアを見つめる。
「やっぱり心配かけてたんだね。すまなかった。」
彼は言い訳もせず、ただ素直に謝った。
しかし、マリアの表情はぞっとするほど冷たかった。
「・・・どうしていきなり謝るんだ。忙しくてできなかっただけだろう?」
血相を変えるマリアに驚いたジョナサンは言葉が詰まってしまった。
「そ、そうだよ。今日は外回りでずっと忙しくって・・・。」
「じゃあ、なぜそんなしどろもどろなんだ。どうして堂々と言ってくれないんだ。」
疑念はどんどん深まる。彼女は核心へと踏み込んだ。
「・・・教えてくれ。他所に女がいるのか?もう私など嫌になったのか?」
虚ろな目で静かに激昂するマリアの疑惑にジョナサンは困惑した。
「何を言ってるんだ?なんでまた浮気の話になるんだよ。」
慌てて必死に否定する夫の言葉が嘘にしか聞こえない。
「香水だ。さっきあなたから私の知らない香水の匂いがした。説明してくれ。」
一転、静かになった夫に感情が爆発する。
「説明しろッ」と叫びながら手元の物を投げつけた。
「あなたは私だけのものなのにッ。あなたも私を裏切るのか。『あの女』みたいにッ」
「違うッ」
ジョナサンは彼女の言葉を大声で遮り、肩をつかんでその目を見た。
「違う。それは君の不安だ。いいかい、僕は丸一日外ですごく忙しかった。」
「香水の匂いは営業先か、一緒に回ってた同僚の女の子のがついたんだろう。」
「なんなら店長に今日のことを聞くといい。でもそんなに僕を信じられないのか?」
いつにない迫力の夫に圧倒され、虚脱したマリアは彼の言葉に聞き入った。
そして虚ろな目のまま、ふるふると首を横に振る。
「なぁ。今日電話をかけられなかったのは謝る。僕もいい加減だった。」
「でも信じてほしい。お願いだ、信じてくれ・・・。」
祈るように振り絞る彼の声に、マリアは我に返った。
強く掴まれた体がカタカタと震えだす。ありえない疑いをかけてしまった。
毎日、懸命に働いて家庭を守ってくれていたのに・・・。
仕事、介護、家事・・・。考えてみれば彼に浮気する時間などなかったのだ。
「う・・あ・・・、ごめ、なさ、い。うぐ・・ごめんなさい、ごめん、なさ、い。ごめん、グス・・・なさ」
「わた、わたしひどい、ことを。なん、て・・ひど、ひどい、ひど、い・・・うぁ、あ・・・」
――あの呟き声だ。ジョナサンは顔面蒼白になった。
床に倒れながら震えていたマリアが脳裏に浮かぶ。やりすぎてしまった。
ジョナサンは妻を抱きかかえ、呟きを止めようと彼女の唇にキスした。
ジョナサンはキスしながら何度も謝った。
そして、これからはいつでも電話に出るし、こちらからもかけると約束した。
マリアは最初、突然の口づけに驚いたが、じき落ち着くと夫に身を任せた。
次第に熱を帯びるキスが、その後の行為に結びつかないのがもどかしい。
かわりに彼女は、先ほどの夫の不安げな表情とその後の微笑を思い出して果てた。
そうして達すると彼女は、フェラチオで夫に応じた。
「・・・ふふ。ずいぶん溜まっていたんだな。」
全て嚥下したマリアが、ジョナサンの腕に取りつき妖艶に微笑んだ。
「良く分かったろう。僕には君だけなんだよ。」
「済まなかった。私がどうかしていたんだ。でもあなたを失うかと思うと気が狂いそうで・・・」
その先をふさぐようにジョナサンは無言でマリアを抱きしめた。
眠りそうな彼女の脳裏に浮かんだのは、なぜか夫の不安げな表情ばかりだった。
思い出すたびに妙な恍惚感を感じ、どうしても口元が緩んでしまう。
また彼を心配させれば、きっと彼は今みたいに私だけを見てくれるだろう。そう、確信した。
第三話はこれで終了
ヤンデレにとってのグッドエンド目指します
>>742 微力ながら、アナタを、応援しています。頑張って下さい。GJでした。
某アニメ(?)に、病んでる中尉と言う名のキャラが…。
>>742 遅まきながら1から読みました
感想を文章にするの下手なんで、グダグダは言いませんが、凄く面白いです
応援してます
746 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 22:10:50 ID:tQz6gZD/
ようこそヤンデレのせかいへ
うぇるかむとぅヤンデレ
>>742 GJ!本当お似合いなカプルだよ二人ともw
>>744 ほう、とゆうことはお前はIGLOO好きとゆうわけだヨロシク
749 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 02:40:41 ID:H5KAEliM
リアルヤンデレなんでしょう
>>750 そいつはキモウトスレでも同じことしてるからほっとけ
「死ね」の後ろには「バレンタイン・デー」が隠されている。
俺には分かる。天才だから分かる。
なぁ俺、>749にキモウトスレでも死ねって言われたんだが
これって運命感じちゃってもいいよなw
いいわよ
まぁ、反応に困る自分語りや趣味を感想に混ぜるのはよくない
ただいきなり『死ね』は言いすぎ
■お約束
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
これぐらい守ろうか
758 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 16:23:06 ID:H5KAEliM
>>738 遅れたがGJ!
これからどうなるのか本当に気になるぞよいよいさ!
あれがどれだけやばいのかわかってるんだろか?
別に面白いから良いんだけど、最近のヤンデレSSは
ちょっと変化球多すぎないか?たまには王道が読みたいな・・・なんて
貴方を殺して、私も死ぬわ…、とか?
ヤンデレの王道ってどんな道だ?
そんな変化球なんてないとおもうけどなあ
色んなステレオタイプを職人個々の味付けで書いてるとは思うが。
ヤンデレに王道なんかねーよ
鬼うたとかいうクソゲーがあってな。
てすと
769 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 17:55:13 ID:NF1lKMqD
よく分からないので(自分の書き込みか)
もう一度てすと
あ ヤンデレとか何?w
書き込み方法があってるみたいだな
以上、失礼しました。
スクイズ的な惨殺が王道だとしても
それは結果がそうなっただけなのであって一番大事なのはそこまで病むまでの過程だろ
愛を育みそして愛故に病んでいくというのがちゃんと書かれてないと
どうやってもヤンデレじゃなくてただの基地外
某PS3ゲーム(ホラー)に、このスレ的なキャラクターが…。
773 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 22:37:04 ID:M7LP0iNX
質問なのですが、男性の場合はヤンデレとは言わないんですか?
別に言ってもいいけどこのスレではNG。
775 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 22:54:03 ID:M7LP0iNX
>>774さん
わざわざありがとうございます。
なら、投稿やめます。
七夕の織姫と彦星でヤンデレ×ヤンデレ物だったので
ヒロインが病んでればいいんじゃね?
注意書きしてくれれば問題無い
>>775 ちょっと言い方が悪かった、ヒロインがヤンデレなら大丈夫だと思うよ。
778 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:09:20 ID:M7LP0iNX
>>776さん
親切にありがとうございます。
なら、駄文ですが投稿させていただきます。
読んでくださるにあたっての注意
、七夕の織姫と彦星のヤンデレ×ヤンデレの話
、完全に痛い妄そu
、この話ってヤンデレにできんじゃねw的な悪のり←
、いろんな意味で救われなi
、作者脳内成人指定
、かなりのグロテスク表現あり
以上、それでもいいぜ!という心の広い方のみご観覧お願いします。
779 :
血濡レノ願イ(読み切り):2009/09/07(月) 23:13:10 ID:M7LP0iNX
血濡レタ願イ
やっと今日は年に一度、織姫に会うのを許された日。
天気は心地いい、雲一つ無い青空。川も穏やかに流れていて、安全に渡れる。
「元気にしてるかな?織姫。早く会って抱きしめたいなぁ」
自然と頬が緩む。朝からそんな調子の自分が、少し恥ずかしくなった。
今日はやっと彦星さんに会える日だわ。一年間ずっと待ち続けたんだもの、楽しみだわ。
朝からずっとドキドキしてるの、大好きな彦星さんと会えるんだもの。
なのに…如何してお父様は、雨を降らせて川を増水させ様とするの?やっぱり私達の仲をまだ認めていないのね……。
「酷いわ、お父様…」
涙が零れてきた私を、見ないフリをして呪文を唱え始めた。
相変わらず空は晴れ渡り、まるで僕達の再会を祝福しているみたいだ。
少し早足で、織姫の屋敷に向かう。高鳴る鼓動に釣られる様に早足で。
もうすぐ此処に彦星さんが来る。大丈夫、お化粧はちゃんとしたわ。
ふふっきっとこの“贈り物”気に入ってくれるわよね?楽しみだわ!!
…?屋敷に着き、中に入ると妙に静かで嫌な予感が頭を過る。
「織姫っ!!何処にい「ふふっそんなに慌てなくても、此処よ。彦星さん」
背後で何処か何時もと違う声がして、勢いよく振り向いた。
其処には…血塗れの、織姫が妖艶に笑い、立っていた。
「ふふっそんなに慌てなくても、此処よ。彦星さん」
私の声に振り返った彦星さんの安堵した顔が、一瞬で驚愕に染まり俯く。
「貴方に“贈り物”お父様さえ居なければ、私達毎日会えるでしょ?名案でしょ?ねぇ愛しい彦星さん」
チラとお父様だったモノに目を向けてから、すぐに彦星さんに抱き付き頬に手を触れれば、貴方は震えていた。
どうして?どうして怯えるの?貴方の為にやったのに、なんで褒めてくれないの?どうして喜ん「やっと…堕ちてくれたんだね?織姫。可愛いよ」
血塗れで抱き付いてきた織姫から視線を外せば、原形を留めぬ肉塊があった。
クク…あぁ此処までやっと
「やっと…堕ちてくれたんだね?織姫。可愛いよ」
やっと僕と同じ所まで堕ちてくれた。親殺しという大罪を犯しても、罪と思わず妖艶に笑う織姫。
待ち望んでいたよ…その、最高の笑みを。
ぎゅっと私を抱き締めた貴方は、何時もの穏やかな笑みじゃなくて妖しく笑う。
でも、その笑顔の方が素敵。やっぱりお父様を消して正解だったわ。
「これでずっと…ずっと誰にも邪魔されず一緒にいられるのね?」
「うん、ずっと一緒だよ織姫。僕達は永劫一つになるんだ」
いきなり彦星さんにに唇を奪われた。口づけはとても甘くて、酔ってしまいそ?!
な…に…?身体に力が入らない…意識が…遠く…どう…し……
織姫に口づけて、無味無臭の劇薬を飲ませる。虚ろな意識の中、涙を流し見上げてくる目が、愛おしくてたまらない。
「アハハ!どうしたの?僕は織姫を食べて、織姫と永劫一つになる。血液や髪の毛も何一つ残さずにっっ!!そうすれば誰も織姫に触れられない!!!僕だけのモノ!!!アハハハ!!!!!」
もう、死んだ織姫を大鍋に入れる。その白い肌には紅がよく映えるだろうなぁ。
目玉を抉り出し、口に入れて転がす。それは、何時か織姫と食べた砂糖菓子よりとても甘くて、うっとりする。ゴクリ、と飲み込んだ。
口づけて、舌を噛み切り咀嚼する。上質な肉に齧り付く様な陶酔感。
先ずは、一滴も零さない様に血抜きをした。まるで紅葉の鮮やかさだ。
終わった身体を解体して、鍋で煮込める大きさにぶつ切りにして火にかける。
ハハッ!織姫のごった煮だね。血を飲みながら、完成を心待ちにして時間を過す。
暫くして、とても芳しい芳香が漂い始め完成を告げた。
「いただきます。これで僕達は永劫一緒だよ、愛しい織姫」
彦星は、うっとりと妖艶な…見る者全てをゾッとさせる満面の笑みを浮かべながら、最愛の存在を喰らっていた…。
780 :
血濡レノ願イ(読み切り):2009/09/07(月) 23:16:27 ID:M7LP0iNX
投稿終了です
…、ちょ?!俺の脳内どんなだ!!!
グロすぎだろ?
ヤンデレ×ヤンデレ、好きです。
痛い…自分の存在が!!生まれてきてごめんなさい…
ヤンデレ×ヤンデレは別に良いと思うけど
ヒロインのヤンデレがメインじゃないとちょっとどうかなと
ヤンデレ×ヤンデレは前例あるけど
それもやっぱりヒロインの病みがメインだったしね
783 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:30:47 ID:M7LP0iNX
>>781さん
確かにそうですよね…次考えるのに参考にします!
今遊女主人公で考えているので←
では、今日はこれくらいで失礼します。また明日来ます。
観覧してくださる皆さま、ありがとうございます。
明日楽しみにしてます
落ち着けよ
21歳以上に見えないぞ
ヤンデレってこう言うのだったの?
一応sageた方が良いのでは
今は十八歳以上じゃなかったっけ?
まぁ十八歳以上にも見えないが
というか
>>773のレスの時点で分別の無いガキっぽさ、さらにいうならこれは余計かも試練が腐女子臭が分かるだろうに
これで分からなくてもさすがに
>>776で分かるだろ
なんでみんな構うのか不思議だったのだが
つーかちょっと前にいた変な奴と同一人物か?
それとも、今のこのスレは普通にこういうのが受け入れられる場所で、俺みたいなのがもはやこのスレに合わなくなってしまっているのか
良識のある大人はROMってるだけだと願いたいね。ただ、この状況で黙ってるとスレの腐敗を招くばかりだ
>>788 みたいな人はいた方がいい
と思うぞ。スレ腐敗を抑える意味でも
>>783 なんで旧暦も1ヶ月過ぎて七夕ネタ?と思いつつ、病みっぷりはかなりのものでしたGJ。
文中でどちらの独白か分かりにくい、というのがなければ、なお良かったと思います。
次回は遊女ネタか――曽根崎心中みたいな話なんかな?
ともあれ、楽しみにしています。
スレ腐敗とか、腐女子臭とか、無闇やたらに騒ぎすぎな気がしないでもないな。
というか、男を主軸に添えようとしたら、それだけで腐女子なのか、と。
……まあ、
>>783の文末にあった左矢印を見たときは、自分も少しアレな気分になったけど。
ともあれ、書き手本人が次から注意するって言うんだから、無駄に追撃する必要はないでしょうに。
>>791 うん
だからさ、荒れそうなネタを引っ張るのやめようか
神経過敏な奴の多いスレだなあ。
794 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 10:21:09 ID:8fGa3Nif
そろそろヤンデレ家族を続き読みたいな。
795 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 10:27:48 ID:znP3+hWy
>>779の作者です
迷惑をかける形になってすいません…
今回の作品は載せない方がよかったですよね、本当にごめんなさい。
これからは十分に注意して、此処の趣旨に合うようにします…
書き手は他の書き込みを相手にしなきゃいいんだよ。
作品が終わった後は「投下終了」これだけで十分。
長々と書くから叩かれる。
797 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 11:23:53 ID:znP3+hWy
>>796さん
解りました。次回から気をつけます。
799 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 19:02:22 ID:znP3+hWy
>>798さん
不快にさせていまい申し訳ありませんでした。
出来れば、どこがダメか具体的に教えてもらえますか?
>>799 スルーしなさいな
感想聞いてみたい気分もわかるけど色んな人がいるからね
人の感想を気にはしても不介入の方が幸せだよ
801 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 19:26:31 ID:znP3+hWy
>>800さん
そうですね…
ご指摘ありがとうございます
書き手はね
ひたすら投稿するしかないのさ
個人的には、良い反応がある程度返ってくるなら続ける価値があると思っている
それと
>・sage進行でお願いします。
sageたほうがいいんだけど、sageのやり方わかる?
流れを切るようですが、大丈夫なら、投稿します。
変歴伝のほうです。
朝食を水城に食べさせられ終わった後、業盛は全財産を持って都に来ていた。
果物を買うのが目的ではない。でも、正直金が余ったら買うつもりでもある。
今回の目的は、鍛冶屋で新しい刀を作ってもらうことだ。
以前の喧嘩で小太刀が折れなければ、この様な余計な出費もなかった。
たかだか数人のアレと、手首二つを切り落としたぐらいで、
簡単に音をあげる刀もいかがなものかと考えざるを得ない。
まぁ、それのお蔭で、業盛は天啓を得ることが出来たのだ。
それを省みると、あの喧嘩には意味があったと思ってもいいだろう。
業盛が受けた天啓とは、実践では刀はあまり役に立たない、ということである。
ごろつきごとき雑魚の骨でもこの有様なのだから、
鍛え上げられた兵を切るとなったら、精々、二、三人斬り殺して終わりだろう。
さすがに、たかが雑兵の手によって討ち取られるのはごめんである。
だったら、刀ではなく弓を使えばいいではないかと言われそうだが、
業盛としては、今まで使い慣れてきた刀の方が、弓より愛着がある。
弓にはそれなりの自信がある。
しかし、なんというか、あれには自分が斃したという実感が湧かないのである。
その辺りに、業盛の武士としての矜持があった。
刀は役に立たないが、出来ればその刀を使っていたい、という奇妙な矛盾であるが、
それは矛盾ではないと、業盛は思っている。
業盛の頭の中には、既に刀の構想が出来上がっている。
後は鍛冶屋がそれを作ってくれるかということだけだった。
もしも断られたら、新しいので我慢しよう、と業盛は考えていた。
残暑で地面から陽炎が立ち上る中、その建物の前は、それを上回るほど暑かった。
蹈鞴を踏んだ時に出る、軋む様な音や、金属の響く音も聞こえてくる。
業盛は鍛冶屋の工房の前に立っていた。
開けっ広げの入り口からは、目を閉じたくなる様な熱風が吹き付けてくる。
中に入る気にならない業盛は、しばらく入り口の前で誰かが出てくるのを待っていた。
すると、中から上半身裸の職人が、汗塗れになって出てきた。
鬼気迫る表情をしている。それほど中がくそ暑いということを、表情が物語っていた。
「あぁ〜、そこの」
「なにか…」
職人は息も絶え絶えで、睨み付ける様に業盛を見つめた。
「この鍛冶屋の親方と話がしたいのだが…、いいかな?」
「刀なら、既に出来ているものが売られています。なぜ親方と話を…?」
「特注の刀を作ってもらいたくてな」
業盛がそう言うと、職人は得心いったらしく、親方を呼びに工房に戻った。
しばらくすると、一人の頑強な男が、さっきの職人と共に現れた。
烏帽子からは、黒髪に混じって白髪も覗かせている。
初老を少し越えた程度だろう、と業盛は見切りを付けた。
「あんたかい、特注の刀を作って欲しいというのは?
特注だと店で売っているやつより値は張るが、金はあるのかい?」
訝しがる親方に、業盛は袋を取り出し、金の小粒を振り出した。
「金五粒、私の全財産です。これだけあれば十分だと思うが?」
おもむろに親方の顔を覗いてみると、親方も職人もかなり驚いた様な顔をしていた。
親方も納得したみたいなので、業盛は早速作ってもらう刀の要望を詳細を述べ始めた。
業盛の希望は、決して折れない、出来れば刀に近い武器というものだった。
「お武家さん。あんたの言う折れない武器は、作ろうと思えば作れるが、
それじゃあ、切れ味がなくなっちまうだろうし、なにより重くて持てないだろ」
そう言いながら親方は、随分とけったいなことを注文する奴だな、という様な視線を、
業盛に向けていた。その視線に気付いたのかいないのか、業盛は、
「切れ味は別にいい。剣先を鋭くすれば、相手を突き殺せる。重さに関しては問題ない」
と、泰然とした様子で答えた。
「まぁ…、作れと言うなら、作りますがね…」
どこか呆れた様な親方は、金を摘み取ると、さっさと持ち場に戻っていった。
とりあえず、やることはやった業盛は、六波羅に戻ることにした。
ゆっくり歩きながらだったので、六波羅に着く頃には昼になっていた。
中秋もあと一日を残すところとなり、明日からは晩秋である。
もわっとした風に紛れて、時折吹く涼しい風が、いい清涼剤となっている。
水城が、業盛の身の回りの世話を一生すると言ってしばらく経つが、
二人の関係は、あまり変わっていない。
毎朝、水城に服を着替えさせられても、朝昼晩と飯を作ってもらっても、
水城に飯を食べさせられていても、たまに風呂に乱入されても、添い寝されても、
二人の関係は一向に進展がない。
まるで、木の股から生まれた異星人の様に、業盛は水城の誘いを悉く潰している。
その度に水城の苛々と性欲は溜まっていった。
水城が業盛の身の回りの世話を一生すると言ったのだって、
業盛が水城に依存する様に仕向けるのが目的である。
しかし、業盛は一向に水城に依存する気配もなければ、襲い掛かる気配もない。
逆に、水城が業盛に依存し、業盛に襲い掛かりたい気分である。
もう、耐えられそうになかった。理性の限界であった。
ここまで露骨に誘っているのに、まったく気付かない業盛の朴念仁ぶりにも呆れるが、
それは今に始まったことではないので、仕方がない。
この際、見栄も外聞も、全て捨てよう。
多少強引であっても、三郎が自分のことを抱いた、という既成事実さえ作ってしまえば、
後はどの様にでもなる。要はやったもの勝ちなのである。
既にその決心は出来ている。その話題に導入する言葉も物も揃っている。
後は業盛だけである。
水城は、部屋から出て外を眺めた。
日は既に中天に差し掛かり、昼の時間を告げていた。
それは水城にとっては、行動を促す天のお告げの様に感じられた。
都から帰ってきた業盛は、奇妙な違和感を覚えた。
いつもであれば、部屋で料理を作って待っている水城が、
部屋の外で待っていたからである。
水城は業盛を認めると、にっこりと笑った。
「なにしてるんだ、水城?」
「三郎、実は渡したいものがあって…」
水城はそう言うと、懐から小さな袋を取り出した。
なにかと思い、紐を解いてみると、中には赤黒い砂が入っていた。
「なんだ、これ?」
手で触ってみたが、赤黒いだけで、それ以外はただの砂の様である。
「私が作った鯉の餌よ。赤黒いのは気にしなくていいわ」
とは言われたものの、どう見ても食べられそうな色ではなかった。
まるで炭になるまで焼いた肉の様である。
鯉が食べたら死んで浮かんでくるのではないか、と業盛は不安になった。
業盛がそんなことを考えているとも知らず、
水城は業盛のこと期待する様な目付きで見つめていた。
「ねぇ、三郎、私がせっかく贈り物をしたんだから、
あんたも私にお返しをしなさい。今日中によ、いいわね。
用意しなかったら許さないから」
そう言うと、水城は部屋に戻り、席に着いた。
業盛も席に着き、水城の昼食を食べさせられた。
業盛は悩んでいた。
水城に渡すお返しの品を買おうにも、
金は鍛冶屋に特注の刀を作らせているので、今は殆ど無一文である。
自分でなにかを作って渡そうか、と考えたが、今日中ではそんなことも出来ない。
では、自分が持っているものを渡すか、と考えて、業盛は部屋を見渡した。
部屋にあるのは、服、机、行灯、書物、だけだった。
渡せるものなど、なに一つなかった。
「困ったな…」
思わず独りごちてしまった。
このままでは、水城になにを言われるかたまったものではない。
それだけは避けたい業盛は、日が沈むまで必死に考えた。
そして、考えに考えた結論は、期間を延長してくれ、というものだった。
結局、妙案は浮かばなかったのだ。
こんなことを言ったら、水城から、お仕置きと称したなにかが飛んでくるだろう。
業盛は、それを避ける自信はあるが、
避けたら避けたで、またなにか言われるだろうということも分かっている。
少しぐらい殴られるのは我慢しよう、と業盛は腹を括り、水城の部屋に向かった。
「はぁ、なにも用意できなかったから、期間を延ばして欲しいですって!?
ふざけんじゃないわよ!あれだけ時間があったのに、今までなにしてたのよ!」
業盛の予想通り、早々に水城の怒鳴り声が部屋中に響いた。
弁解すれば、さらに水城の怒りを助長させることは分かっているので、
業盛はひたすら黙っていることにした。
「まったく、花の一つぐらい持ってくるくらいの知恵も回らなかったの!?
あんたって本当に駄目ね、駄目すぎるわ、とことんね!」
水城の言葉を聞いた時、その手があったか、と業盛は思ったが、後の祭りだった。
「これはもう、あれね…。お仕置きね、お仕置きするしかないわね!
約束破ったんだから当然の報いよ!三郎、避けたら絶対に許さないから!」
水城はそう言うと、右手を横に大きく振り上げ、平手打ちの構えを取った。
業盛は目を瞑り、歯を食いしばって、平手打ちの衝撃に備えた。
しかし、やってきたのは、なにかに抱き着かれる感触だった。
目を開けてみると、水城が抱き着いていた。
「みっ…、水城、なにを!」
業盛が全てを言い切る前に、水城は業盛を部屋の中に放り投げた。
思いもよらないことだったので、業盛はなんの抵抗も出来なかった。
「さぁ…、お仕置きを始めましょうか…、三郎…」
水城はにやにや笑いながら、倒れている業盛に馬乗りになった。
もしかして、馬乗りの上から、殴り付けてくるつもりなのかと思い、
ぞっとした業盛は、両手で顔を庇おうとした。
だが、それよりも早く、水城は業盛の手に指を絡ませて動きを封じられた。
「三郎…、なに勘違いしてるの…」
水城の声は、少し上擦っていた。顔も、いつも以上に赤い。
「私があんたを叩く訳…、ないじゃない…」
水城はそう言うと、業盛に口付けした。
ゆっくりと、まるで全てを舐め尽すかの様な口付けだった。
水城が離れた時、銀色の糸が二人を繋いでいた。
業盛はなにが起きたのか理解できなかった。
深い口付けだったためか、業盛は息も絶え絶えで水城を見つめていた。
目には涙が浮かんでいた。そんな業盛を、水城はいとおしそうに見つめていた。
「ねぇ、三郎…、私がどうしてこんなことをしたか…、分かる…?」
急に水城が聞いてきた。しかし、業盛にそんなこと分かるはずもない。
業盛は口を動かす代わりに、首を横に振って答えた。それを見た水城は、
「本当にあんたは鈍感ねぇ…。…あんたのことが、好きだからに決まってるでしょ…」
少し不機嫌そうに答えた。それでも、業盛を見つめる瞳はどこまでも優しい。
「三郎は、私のこと、嫌い…?」
「……嫌いでは…ない…けど…」
少し落ち着いてきたので、業盛はやっと声を出すことが出来た。
それを聞いて、水城は満足した様ににっこりと笑った。
「そっかぁ…、三郎も、私のことが好きなんだ…。
……じゃあ…、ここから先のことをしても…、いいよね…」
水城はそう言うと、自分の服の帯に手を掛けた。
業盛は、慌てて逃げ出そうとしたが、腰が抜けて動けなかった。
「これからは、ご飯の時は口移しで食べさせてあげる…。
お風呂の時は、私が身体中を舐めて綺麗にしてあげる…。
したくなったら、いつでもしてあげる…。
だから…、ね、三郎…、私の子供…、産んで…」
服の帯が解かれ、水城の真っ白い肌が露わになり、業盛に迫ってきた。
業盛の頭は、完全に機能が停止してしまった。
「そんなの…、駄目ぇえええ!!!」
投稿終了です。
GJ
武器の注文内容聞いたことあるwww
815 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 20:16:55 ID:znP3+hWy
>>803さん
ありがとうございます
すいません…此処初心者で下げ方解りません…
>>812 GJ水城可愛いよ水城
>>815 ____ ________ ________
|書き込む| 名前: | | E-mail(省略可): |sage |
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,__
iii■∧ 。 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ゚Д゚) / < ここに「sage」(半角)と入れるとスレが上がらない。
⊂ つ | 荒し来るので重要。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| \_____________
________________________________________
まあ初心者なら投下以外はレスしないで流れを見て勉強したほうがいいよ
些細なことでも噛み付かれたりするから
いろいろご指導ありがとうございます
ちゃんと気を付けます
ベルセルク乙
お、変歴が来てる!
GJ
>>812 GJ名前忘れたが山の中に住んでた子かな?だったらwktk
ひめねぇさきねぇはまだかアネニウム不足で禁断症状でそう
>>818 jane styleとかギコナビはオートsage機能がついてるし、何かと便利だから
できるなら専ブラ使ったほうがいいよ
ここは何時の間に初心者スレになったんだ
なんというか……
いちいち律儀にアドバイスしてる奴らがきめえ
>>823 ちょっとおちついたら?
言いすぎだって
GJ!
しかし水城、業盛を部屋の中に放り投げたって……
業盛が軽いのか水城がヤバいのか
826 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 04:09:07 ID:iCZpwokM
>>826 せめてID変えろよ
キモウトスレと全く同じwww
俺もそうだが、こことキモ姉妹スレの住人かなり株ってるな
>>827 草生やすな。巣に帰れ。
>>828 今頃なに言ってるの?嫉妬スレからの派生なんだから
当たり前だろ
830 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 07:59:03 ID:md3vMd9s
これはなかなかですね
釣られないクマAA略
そろそろ次スレが必要な時期かな
833 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 20:20:10 ID:3LAdhB8c
今回もヤンデレ家族来なかったかorz
以前七夕作品書いた者です
また投稿します
注意
グロテスク表現あり
収拾がつかなくなってるから無理じゃね?終わらせるの…
此処はとある花街の遊郭。店の前では女達が客を取ろうと誘惑している。
そんな欲望を滾らせた眼をしている女達の中に一人、何処か冷めていて暗い眼をした花魁がいた。
彼女の名はこの花街一番と謳われる花魁“宵桜”
その美しさで酔わせた男は数知れず、嫉妬で狂わせた女も数知れない。遊女の中で最上級の「極上」に位され、花街や市中で彼女を知らぬ者など皆無と噂される。
彼女のあまりの美しさや妖艶な笑みに、化け狐ではないか?と仲間内からも囁かれるほどだ。
「今日も、来ないのかしら…?」
憂いを帯びた声音で呟いて外を宵桜は眺めていた。待っているのは客ではない、待つ必要などなく高い花代を払って幾らでも望まなくてもやってくる。
「宵桜!!ご指名だ、お得意様だから怒らせるなよ」
遊郭の主人の声が聞こえ、深い溜息を吐きながら客が待つ部屋へ上って行った。
『お得意様ですって?よく言うわ、所詮金づるでしょう?』
心の中で見え透いた主人の卑しい考えにうんざりしながら、向かうしかない自分の立場にいら立ちに近い感情を、何処か他人事の様に感じていた。
そう、感情なんて煩わしい感情とうの昔に捨ててしまった。
階段を一歩一歩進む度に雑念をかき消していく様に彼女は偽りの妖艶な笑みを纏っていった。
『私が私に戻れるのは…あの人の前でだけ…』
そう思った時、足音と共に主人の声が耳に入って来た。
「こっ困るぞ勝手なこ「ふっ花代は倍払ってんだからいいだろうが」
主人ではない声…それは彼女の待ち望んでいた愛しい存在の声。階段を駆け降りる。
「烏拘さんっ今日はきてくれたのね?」
それは漆黒の着流しを着た、薄笑いを常に浮かべる女衒の烏拘だった。
「あぁ、行くぞ宵桜」
宵桜は嬉しそうに頷き、2人は文句を言う主人を無視して最奥の部屋に入ってしまった。
「くそ…まぁ金を貰ったからいい、客への言い訳が面倒だ」
ぶつぶつ呟きつつ宵桜を指名した客の元へと向かった。
宵桜と烏拘、2人の出会いは数年前――
宵桜は、幼い頃から父親に性的虐待を受けていた。母親は彼女を守るどころか自分の旦那を取られたと、暴力を振い続けた。
暫くして母親が病死すると、父親はあろう事に彼女に客を取らせていた。虐待の疵は残り、今も背中に無残な跡がある。
数年経つと客も来なくなり、今の遊郭に売られた。
その為彼女は愛情を知らず、欲しいと望みながらも諦めてしまった。
そんな中、女衒の烏拘に出会う。彼は宵桜を一目見た時に他の遊女とは違い、もう何もかも諦めきった、しかし男に媚びない眼をしている彼女に興味を持った。
「お前…他の奴らとはちがうな?」
「そうかしら?貴方変わってるわね」
問い掛けにそう返した宵桜に興味を持ち、此処に来た経緯を聞いた烏拘。彼がこの様な行動に出るのは初めてだった。
「―これが此処に来た理由。貴方に初めて話したわ…不思議ね。私は壊れているのよ、之が証」
そう言うと宵桜は着物を脱ぎ、背中を見せた。そこには数多くの残虐な行為をしてきた彼でさえ眼を背けたくなる様な疵跡が刻まれていた。
「ふふっすごいでしょ?いろんな趣味の男を毎晩相手させられてきたの」
「…成る程な。同情はしねぇさ、只お前は誰かに愛されたいんだろ?」
烏拘は淡々と言いながら宵桜にこちらを向かせ目線を合わせた。
「いらないわ…愛なんて不確かなもの」
嘲笑っている様な、悲しんでいる様な、どちらとも取れる笑顔を浮かべて呟いた宵桜に、彼は興味を持った。
『こいつが、確かな愛を知ったらどんな笑顔をする?』
それが2人の最初の出会いだった。
それから烏拘は宵桜に会いに来る様になる。彼女は疵者ではあるがその美貌ゆえ周りの遊女が嫉妬して嫌がらせをするほど客の人気を得た。
烏拘は宵桜に自分は愛されていると思わせる事にした。会って只抱くだけではなく、行為をせずに話したり頭を撫でてやったり…。
数ヵ月後、当たり前の様に頭を撫でてやると
「私…こんな気持ち初めてで解らないけど…これが愛なの?」
と、上目使いで烏拘に問い掛けた。
「そうだぜ」
そう答えると、とても幸せそうに子供の様に無邪気に笑い嬉し涙を流した。それは宵桜の見せる初めての自然な笑顔だった。
「ほぉ…そんな笑顔も出来るんだな?」
不覚にも烏拘もその笑顔に魅入られてしまい、宵桜に愛情を抱くようになった。
それから2人は密かに恋仲になり今に至る。宵桜は遊女の契りの証である小指を切り落として誓った。烏拘は身請けする事を約束した。
「もう少ししたら、身請けしてやる。潮時だろぉよ」
「嬉しい、すごく幸せよ」
抱き締めて耳元で囁く烏拘に、宵桜は無邪気な笑みを見せて優しい口付をする。
主人や他の遊女達に関係を気付かれ始めているし、身請けした後の資金も十分溜まったのでそろそろ時期が満ちた。
「愛してるぜ、宵桜」
「私もよ、烏拘さん」
長く濃厚な口付を交わしてから、名残惜しそうに部屋を後にした烏拘を宵桜はうっとりした表情で見送った。
続く
>>836 〜た。で終わってる文が多くて目立ってるかな?特に終盤
まあ俺も人のこと言えんけど
頭冷やしてきた。偉そうなこと言ってごめん。忘れて
>>838さん
たしかにそうです…、続きの参考にします
ありがとうございます
841 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 23:48:07 ID:iCZpwokM
GJだけどレスに反応するなよ
このレスに反応したら死ね
843 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 00:11:56 ID:4Ft5ZCEs
>>839 あんたみたいなやつ、アタイは好きだぜ…
>>840 アベサダ思い出した。久しぶりにGJ!
んで、できるだけ読み手のレスに返レスしないで寡黙に行けば良いと思うから頑張って
あと「以前〜を書いた者ですが」とかはやめといたほうがいいと思う
それならトリップをつければ済む話だから。付け方知らないなら調べればわかるよ
>>836 おっつー
花魁ものとか好きだ
これからどう病んでいくか楽しみ
>>837 このSS見て思ったんだけど、〜〜だぜって絶対日常会話で使わないよね。
なんでこんな日本語生まれたんだろ?
ここも以前より盛り上がらなくなったね
宵桜はふと、何時も肌身離さず持っている簪(かんざし)を取り出し幸せそうに眺める。
それは大切な思い出。
烏拘が用意した町娘の着物で変装し、遊郭の裏口から密かに抜出して花街から抜けた。
散策しながら彼女は初めて見る物ばかりの外界に、子供の様に純粋に笑いと愛しい彼と過す至福を感じ、終始喜んだ。
そんな中、簪屋に立ち寄ると烏拘が一つ手に取り宵桜に付けてやる。
普段遊郭で付けている様な派手な物ではなく、簪の先に藍色の玉が付いているだけ。
「お前はこれが似合う」
それは普段褒め言葉など口にしない烏拘にしたら、充分過ぎる程の褒め言葉。安い褒め言葉で言い寄る客とは比べるまでもない。
「ありがとう…」
幸せを噛み締める様に無邪気な笑みで返した。
そんな幸せな思い出と共に大切にしている簪。
もうすこしで、その思い出が日常に変わる。見付からないか不安を抱えて抜出す必要もなくなる。
「やっと…私は烏拘さんだけの物になれる」
自然に笑みが零れ、それは結婚前の幸せいっぱいの女の笑顔だった。
「烏拘さん、まだみえるかしら?」
窓辺に近付き眺めると…
「どう…して…?」
彼女が見たのは、烏拘が顔見知りの遊女と隣の遊郭に入って行く姿だった。
疑念より先に、絶望が襲った。彼の隣りにいた遊女は宵桜に嫌がらせをしていた遊女…。
宵桜は
裏口から飛びだしていた
>>853 簪を握りしめた
>>854
思うより先に身体が動いていた。誰にも見付からない様に急いで飛び出し隣の遊郭に来た時、調度烏拘が出てきた。
「どうして…?私は…何…?」
「!?お前どうしっ…はぁ、勘違いしてるみたいだから言うが、俺ぁあの女をこっちの店に引き渡し「嘘…付かないで…」
顔を上げた宵桜の眼には憎悪しか最早映っていない。
烏拘の言った事は言い訳でも何でもない事実。女衒としての仕事を果たしたまでだ。
「許さない…私以外が貴方の隣りにいるのは…許さない…」
「まて宵桜!話をき」
宵桜は烏拘に口付けて言葉を遮る。次の瞬間、彼の頸に激痛が走った。
「宵…ざく……」
宵桜が首にあの、思い出の簪を刺したのだ。引き抜くと血が溢れ出てグシャリと烏拘は虚ろな目で倒れた。
「ふふっこれで烏拘さんは私だけの物」
うっとりと妖艶な表情で血濡れた口付を彼にする様はまさに、般若そのものだった…。
終
簪を折れてしまう程握り締めた宵桜の眼は、深い絶望で染まった。
ふと見ると、烏拘が再び戻って来るようだった。
彼女は静かに待った、彼が部屋に来るのを…。
「よぉ…悪いな、お前に嫉妬してた遊女を隣に引き取らせてきたぜ」
「本当?うれしいわ…」
俯いて烏拘に近付き口付ける。烏拘は仕事をしてきただけだった。本気で宵桜に惚れているのだから。
「ねぇ…烏拘さんの刀見せて?」
「…?別にかまわねぇぜ?」
宵桜の雰囲気が何時もと違う事に烏拘は気付いたが、具体的に何が違うか解らない。
ともあれ要求された通り護身用に持っている日本刀を鞘から出して翳してやる。
「綺麗ね…調度いいわ」
「はぁ?何言って…」
言い終わると宵桜は彼に抱き付いた。愛しい相手を抱きしめ口付けると…、次の瞬間烏拘の手に鈍い感覚と音が伝わる。これは…?
「ふふっ愛しい貴方に貫かれて…幸せ…」
「!?宵桜!!何して「これで…貴方は…私を忘れられない…」
烏拘が刀を持っている手を引き寄せ、宵桜は自らの腹に刃を突き立てさせていた。彼の手が徐々に生温い紅に染まっていく…。
「他の…どんな女と関係を持とうが…私を忘れられない…こ…れで…烏拘さんは…私だけ…永劫…ず……と……」
唖然として只宵桜を見つめる事しか出来ない烏拘にそう呟き、最期の口付けを交わすと、彼女は力なく崩れた。
宵桜は、無邪気に…幸せそうに笑っていた…。
終
投稿終了です
(;゚口゚)
857 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 15:42:17 ID:kg58DPiQ
??
???
あぁ、なるほど
分岐なのね
>>855 分岐するならグッドエンドも見たかったがとりあえずGJ
何となく思いついたジャギ死亡フラグ
ジャギ「お前、俺の名を言ってみろ〜」
村人「ひぃっ、『誠』だ、『誠』が来たっ」
どっちに分岐してもBADって意地悪なゲームブックみたいだな
>>835 キズモノのヒロインが出てきて、どんなストーリーになるのかと
思ったら終わった・・・・
まだ次スレって立ってないよな?
そろそろ建てたほうがいいんじゃね?
もう486 KBだしね
口だけで何もしない奴ばかりだからなあ、ねらーって
てことで立ててきますよ
ほんとお疲れさまです
お疲れ様っす
871 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 05:23:11 ID:rPDJLfxh
なぜ荒れる
>>855 これあずみのパクリじゃね?
ほぼ流れが同じなんだが
そうなの?
埋めネタ
OR(オーバーリアクション)な彼女
第1話
今年の夏のことだった。
ついに俺にも初めて彼女が出来て、しかもそれが男十人中九人が振り向く美女ということで浮かれていた。
しかし後から考えると、そもそも彼女をと出会ってしまった時点で俺の人生の歯車は狂ってしまったのかもしれない。
それは何気ない会話の中の一言から始まった。
「最近、暑くて寝苦しいから睡眠不足でさ…。」
この言葉に大きなリアクションを期待していたわけではない。
しいて言えば、「それは大変ね。」程度の普通の反応を期待していたわけだ。
しかし、彼女の反応は違った。
口をポカンして、瞳孔は開ききってきた。まるで驚愕の事実を知ったかのように。
そして、次の言葉で俺を責めたてた。
「何故、もっと早く私に言わないんですか!私は漢君の彼女ですよ?」
「は?」
今度は俺がポカンとする番だった。イマイチ状況がつかめない。
俺が何も言葉を返せずにいると
「準備があるのでこれで失礼します。」
と、急いでどこかへ消えてしまった。
一体今日の初デートは何だったのか?俺は何か悪いことを言ったのだろうか?
そんなことが頭の中で何回もぐるぐると回っていたが、答えは見つからない。
彼女になんとメールを入れるべきか分からないまま日が暮れ、就寝の時間になったのでベッドに入ろうとすると、玄関のチャイムがなった。
こんな時間に誰だろう?
ドアの穴から外をのぞくと、そこには彼女が立っているのが見えた。
「どうしたの?こんな時間に」
よく見ると彼女の顔は真っ青で全く生気が感じられない。いや、真っ青というより真っ白と表現した方が正確だろう。
「具合でも悪いのか?とりあえず部屋へ――。」
手に取った彼女の手も蝋人形のように白く、ひんやりと冷たかった。
しかし、こんな夜遅くに男女が二人きりで・・・。これはOKのサインなのだろうか?
いや、むしろここは慎重に・・・。早とちりして襲いかかることがないようにしなければならない。
などと頭の中で考えつつ、部屋に招き入れる。
彼女は次の瞬間、ベッドへと潜り込もうとした。
「ちょ、何やってんの?」
展開の速さに俺の方が混乱した。
「さあ漢君、一緒に寝ましょう。体を限界まで冷やしてきましたから。」
低体温症というやつだろう。彼女の声は途切れ途切れで弱々しい笑顔だった。
このままでは彼女が死んでしまうかもしれない。その夜、彼女を温めようと必死に強く抱いたのだった。
次の日、僕はいつもより寝不足だった。未だ童貞だったことは言うまでもないことだ。
中途半端な埋まり方をorz
埋め方も知らんのか
>>874 愛想が悪い女郎がある日、普通の客とは違い金は払うのに迫ってこない客に会う。
それで夜にいろんなところに連れまわしてもらい簪とか買ってもらう。
で女はその男に惚れてしまうが、その男は主人公のことが本当は好きで
女は主人公に嫉妬する。
うる覚えだけどこんな感じ
wktk
うめ
埋めネタ1レス「オチのない人生」
基本的に全ての文章は、いわゆる「オチ」でその評価を決してしまう側面をもっている。
読み手をハッとさせる上手い「オチ」
読み手の心情を導いて感情を動かす「オチ」
巧妙な伏線の処理で読み手をストンと得心させる「オチ」
読み手の目を眩ませ、あえて突き放す「オチ」
最後まで語らず、余韻で読み手の想像を誘う「オチ」
と、色んな「オチ」が文章には存在する。
書き手は様々なバリエーションから適切と思われる「オチ」をつけなくてはならない。
しかも、「オチ」はその作品全体の雰囲気と文脈の上に成立せねば意味が無い。
そんなキツいなら「オチ」をつけなくても良いじゃないかと諸賢の一部は言うかもしれない。
それは一見、物事の正しい側面を指摘しているようにも見えるが、誤っている。
なぜなら、文章が書き手の産物である以上、永遠に展開し続けることは不可能だからだ。
可能な例があるとすればただ一つ、書き手が途中で文章を放棄する場合のみだ。
そう、「オチ」をつけるというのは、重要で且つ困難な作業なのだ。
「では実際、『オチ』をつけるという作業について具体的に見てみよう。
テーマは、皆さんもよく知るところの「ヤンデレ」タイプの女性が登場する恋愛モノだ。
ここに控える助手の女君がヤンデレヒロイン「Xさん」を実演してくれる。
そして私が朴念仁な主人公の「男君」を演じよう。
長々と素人芝居を見るのは諸君もつらいだろうから、今回はクライマックスのみ見せる。
では、まず粗筋を解説しよう。男君はXさんの想いに気付かず、他の女と付き合ってしまう。
最初は我慢して応援したXさんだったが、男君の朴念仁さに傷つき、嫉妬に狂う。
そこで、ある日、二人きりになったところで、Xさんの想いが爆発してしまう・・・。
こんなところだ。よくある話と笑わんでくれ。これでも昨晩寝ずに考えたんだ。
では、女君、いや「Xさん」、はじめよう。」
ここで先生の講義はいつも途切れる。
途切れて始まるのは、もちろん私とのセックスだ。
バードキスがフレンチに変わり、息を荒くして互いの体をまさぐりながら裸になる。
そのころには、もう私の股間はびしょびしょに濡れていて、準備が整ってしまう。
先生は無言で私の体を強く抱きながら、「私」のなかに侵入する。
あの講義で、先生は一つだけ間違っていた。
――文章が書き手の産物である以上、永遠に展開し続けることは不可能。
そう、確かにそうだ。文章を、文脈を永遠に展開し続けることは不可能だ。
だが、一つだけ、たった一つだけ例外が存在するのだ。
それは書き手の存在自体が限りあるもの、と想定されない場合だ。
あの講義の最中、私は先生を拉致してラボに入った。
最先端のセキュリティに守られたラボで、私は先生と一緒にある種の永遠を得たのだ。
――物質を完全に分解し、データとして数万のスパコンに転送し再構成する。
「アトム」計画と呼ばれたその最先端技術の粋を集めた実験施設で私と先生は出会った。
私は平凡な研究員だったが、出来の悪さが幸いしたのか先生は何かと目をかけて下さった。
いつも優しく接してくれる先生に、ついていけず落ち込んだ私は夢中になっていった。
しかし、先生には交際相手がいた。副所長のクソババァだ。
私はあの女から先生を奪い、先生と一緒になるため、装置に手を加えて私達二人に照射した。
私と先生は今、システムプログラムの一部としてシステムの中枢に入り込んでいる。
先生は私が仕掛けたバックドアーからの侵入に冒され、私を愛することだけを実行し続ける。
ただ、直前の記憶だけはどうしても残り、講義のシーンをフラッシュバックし続けている。
ここでは、装置が破壊しつくされるか、人類が滅びるまで文脈は再生産されつづける。
私達二人はそうして永遠に再生産を繰り返す「オチ」なしのサイクルに「埋め」られたのだ。
適当に書けば埋められるかと思ったら以外に埋まんなくてワロス
ごめんね
もっともっと埋めたかったよ・・・
いやいやGJなSFうめうめ
洒落が効いた上手いオチと埋めだな
埋めネタ
ORな彼女 第2話
猛暑が続いていた。暑くてこれ以上寝る気にもならない。
「腹減ったな。」
近所のコンビニで弁当を購入し、最初に和風ハンバーグに手をつけた。味は…まあまあだ。
ピンポーン
「む、あいつ来るのが早いな。」
そんなことを呟きつつ、玄関のドアを開ける。
「こんにちわー。」
そこには白地のワンピースに、麦藁帽子を被った女ちゃんがいた。
「おう、中に入れよ。」
「おじゃましまーす。」
「今、飯食ってたんだ。少し待ってて。」
「…。」
女ちゃんは部屋の入口に立ったまま、しげしげと弁当を見つめていた。
俺は何をしているのか不思議そうに見ていたが、女ちゃんの表情が次第に険しくなっていくのがわかった。
「メスノニオイ!」
女ちゃんが機械的な言葉を放った次の瞬間、俺の弁当は窓の外へと放りだされた。
女ちゃんの手元はかすんで見えなかったが、たぶん投げたんだと思う。
弁当のトレイは回転し、中の具を四方八方に散乱させながら彼方へと飛んでいった。
「何するんだよ!」
「すみません…。何故か反射的に。でも浮気は駄目ですよ?」
俺に向けられる虚ろな眼差し。彼女の目を見つめていると何処かに吸い込まれていきそうだ。
わけもない身震いに襲われる。
この状態で彼女を放置しておくと危険だと俺の本能が教えている。
確かに店員は女性だった。いや、作ったのが女性でそれがまずかったのだろうか?
検証したいところではあったが面倒だったので、これからは俺の弁当を作ってくれるよう頼むという姑息な手段で誤魔化した。
お陰で、毎日のように得体の知れない食材の入った弁当を食う破目になったことは言うまでもない。
うめ
これで終わり
目が覚めてgame over
梅
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