ブルスケッタに残った三人のうち、ディアボロスはすぐに転科手続きを行い、魔法使い学科へと移った。その彼女を守るようにして、
フェルパーとノームが主に戦い、経験を積ませる。さすがに、少人数での戦いはかなりの危険を伴うものの、それに比例して
いい経験となる。ディアボロスは瞬く間に力をつけ、十日ほどもすると、それなりの実力者となっていた。
そんな彼等を、羨望や尊敬の眼差しで見る者もいる。しかし、全員がそうであるわけではない。
まして、彼等は新入生であり、多くの生徒から見れば後輩である。そんな彼等が、不相応な実力を持っていることに不快感を持つ者も
少なくない。嫉妬や、あるいは憎悪の眼差しをも、彼等は受けていた。しかも、今彼等がいる場所は、クロスティーニの姉妹校の
ブルスケッタである。いわばクロスティーニより上位の学校でもあり、そういった眼はある意味で、母校のクロスティーニよりも
数多くあった。
そんな、一行に対して負の感情を抱く者の中に、彼等はいた。
「気に入らないですよね、あの人達」
「まったくだね。しかも、ディアボロスなんて種族までいる」
穏やかな笑みを湛えるセレスティアと、見るからに気位の高そうなエルフ。セレスティアはいかにもブルスケッタの生徒らしく、
魔法使い学科の服を身に付けているが、エルフはここの生徒にしては珍しく、戦士学科の服装をしている。
「後輩の癖に、一番の成長株とかおだてられて、調子に乗って。少し、痛い目に遭わせたいですよね」
「僕も、気持ちは同じさ。だけど実際、彼等は強いよ」
エルフが言うと、セレスティアは笑った。
「でも、知ってますか?そのディアボロスが、わたくしと同じ学科になったんですよ」
「へえ、転科したのかい」
「……それだけですか?」
いたずらっぽく微笑む彼女に、エルフは首を傾げた。
「何か、言いたげだね?」
「ふふ、鈍いんですね。チャンスだと、思いませんか?」
言われてようやく、彼は気付いた。
「……なるほど。今なら彼女は、弱いと言うわけかい。でも、他の仲間がいるよ」
「聞いた話ですけど、あの女は魔法を覚えたら、戦士に戻るつもりみたいですよ。それにあなたの言う通り、他の仲間がいる……つまり、
それに比べて弱くなってる。ということは、なるべく早く魔法を覚えようと、躍起になってるはずなんですよ」
穏やかで優しげな笑みを湛えつつ、セレスティアは続ける。
「そうでなければ、三人で悪魔となんか、戦ったりしません。それだけ焦ってるんですから、ある程度の実力がついたら、きっと一人で
戦いに出かけると思うんですよ」
「ふむ…」
「何も、あのパーティ全員を、痛い目に遭わせる必要はありません。だって、一人を痛めつければ、他の仲間は十分苦しむんですから」
そう言い、セレスティアはころころと笑った。その笑顔は、あまりに純粋だった。
「しかもですよ?ちょうどいいことに、あの女はフェルパーの方とお付き合いしてるらしいんですよ。そんな人を、一番苦しめる方法。
エルフさん、何だと思います?」
「……言いたいことは、何となくわかったよ。でも、僕にあんな女を犯せっていうのかい?」
「あの女が泣き叫ぶ姿、見たくありませんか?あの悪魔の子孫が、無様に泣き喚く姿、きっととっても面白いと思いますよ」
純粋な笑顔。透き通るほどに純粋な、比類なき悪意。それが、彼女の笑顔を作っていた。
「君とは、ずっとお預け中だっていうのにね」
「だって、わたくしはその……まだ、覚悟がつかないんですもん……やっぱり、怖いですよ…」
「いや、悪かったよ。君を責めてるわけじゃない、安心してくれ」
優しく言うと、エルフは彼女の顔を上げさせ、そっと口付けを交わした。
「君の提案……機会があれば、乗ってみるよ」
セレスティアに微笑みかけるエルフ。その笑顔もまた、彼女に負けないほどの、どす黒い悪意に満ちていた。
果たして数日後。朝から悪魔と戦い続け、そろそろ帰ろうかという話が出たとき、ディアボロスは言った。
「そろそろ夕飯時だしな。けど、悪いが先に戻ってくれないか?」
「どうしたの?」
フェルパーが尋ねると、ディアボロスは笑って答える。
「まだ魔力に余裕がある。それを使い切ってから戻ろうと思ってな」
「そう焦ることはないさ。なら、僕達も一緒にいるよ」
「いや、気持ちは嬉しいが、私もなるべく早く戦士に戻りたい。一人で訓練を積めば、魔法なんぞすぐに覚えられるしな」
「けど、危ないよぉ。僕も一緒にいるよ」
「いやいや、私とて無理をする気はない。誰もが惑わされる樹海辺りなら、いざとなればジェラートタウンに逃げ込めるし、相手も
さほど強くない。仮に、最悪の事態が起きたとしても、発見してもらえる確率も高いからな」
それでも、ノームとフェルパーは不安そうだったが、結局は彼女の言葉に従い、先に戻ることにした。
「でも、本当に気をつけてくれよ。以前ほど君は重装備していないし、立ち回りは明らかに下手になってるんだから」
「わかってるさ。絶対に無理はしない、約束する」
「なるべく早く、戻ってきてね」
「ああ。少しだけ待っててくれ」
念のため、フェルパーとノームは、彼女を誰もが惑わされる樹海まで送ってから、ブルスケッタへと戻った。それを見送ると、
ディアボロスは一人で悪魔との戦いを始めた。装備はいい物を身に付けているため、思ったよりは苦戦しない。それでも、一瞬の油断が
即、死に繋がるため、魔力の出し惜しみなど一切せず、常に全力で戦っていた。その分、実入りもいいが消耗も早い。程なく、残りの
魔力がバックドアル一回分となったところで、ディアボロスはブルスケッタに戻ろうと詠唱を始めた。
その詠唱が完成する直前、突然ディアボロスに異変が起きた。
「う……あ…!?な、何が……うぅぅ…!?」
詠唱を中断し、その場にうずくまるディアボロス。その体はガタガタと震え、呼吸はひどく乱れている。わけもわからない恐怖に、
ディアボロスはただ怯えた。
「ふふ。堕天使学科の魔法って、便利ですよね」
辺りに響く、優しげな声。岩陰から、一人のセレスティアが歩み出た。
「ま……魔法…?く、くそぉ……フィアズか…!」
自分の胸を抱き、ガタガタと震えながらも、ディアボロスは何とか立ち上がった。
「お前が……やったのか…!一体、何のつもりで…!?」
その瞬間、後ろに気配を感じた。それも、ひどく悪意の篭った、禍々しい気配を。
以前なら、その瞬間に体が動いていた。だが、魔法使い学科に転科して以来、頭を使うことに慣れた彼女は、咄嗟に魔法を
詠唱しようとした。しかし恐怖に思考が乱され、結果、最悪の事態を招いた。
背中に凄まじい衝撃。ディアボロスの体は簡単に吹っ飛び、地面に激しく打ち付けられた。飛びかける意識を必死に繋ぎ止め、何とか
首を巡らせ、襲撃者の姿を認める。そこには、クレイモアを持ったエルフの姿があった。
「へえ。剣の腹で打ったとはいえ、殺すつもりで振ったんだけどね」
端正な顔を歪め、エルフは邪悪な笑みを浮かべた。
「さすがは、ヒーロー様の一人ってところかい」
「がはっ…!お前等……何の、つもり…!」
ディアボロスは何とか立ち上がろうとするが、足に力が入らない。それだけでなく、全身が意識しなければ動かせない。
そんな彼女を見て、セレスティアはおかしそうに笑った。
「あらあら、無様ですね。でも、新入生なら新入生らしく、それぐらいの方がお似合いですよ」
「な……何なんだ、お前等…!?」
自分に向けられた、いわれなき悪意の理由を、ディアボロスは理解できなかった。種族が気に入らないというのならわかるが、
彼女を見る限り、そうではなさそうだった。
「いい気になってると、ろくな目に遭わないって教えてあげるんですから、感謝してくださいね?ふふっ」
「しかし、君のことは気に入らないが……意外と、悪くないかもね」
エルフがゆっくりと近づき、ディアボロスの前にしゃがみこむ。何をするのかと思う間もなく、エルフは彼女の服に剣を引っ掛けると、
ざっくりと切り裂いた。
「うわっ!?な、何をするんだぁ!?」
服の前面を切り裂かれ、ディアボロスは慌てて胸を隠す。そんな姿を、二人は笑いながら見ていた。
「何をって?そんなの、この状況を見れば、すぐわかるだろう?」
エルフの言葉に、ディアボロスは凍りついた。彼女の中に、魔法の効果だけではない恐怖が頭をもたげる。
「や……やめろぉ…!」
思わず後ずさったディアボロスを、セレスティアが後ろから押さえつけた。
「ダメですよ、逃がしません。さ、エルフさん」
「嫌だ!やめろぉ!放せ、放してくれぇ!!」
ディアボロスは必死に叫び、暴れた。しかし、消耗した体では大した抵抗も出来ない。そんな彼女の胸に、エルフが手を伸ばす。
「ふーん、かなり大きいね。触り心地は、よさそうだ」
言うなり、エルフはディアボロスの胸を握るように掴んだ。
「いっ!!痛い!!痛い!!!」
「ああ、柔らかいなあ。それにこの顔、たまらないな」
悲鳴を上げるディアボロスを、二人は実に楽しそうに見つめている。
「でも、何だか皮膚が硬いね。やっぱり、君にはかなわないな」
「ふふ。そんな悪魔なんかと、比べないでください」
「はは、悪かったよ」
二人は実に楽しげだった。まるで、子供が新しい玩具でも見るような目で、ディアボロスを見つめている。
エルフの手が容赦なく、乳房を握り、捻り、引っ張る。絶えず襲い来る痛みと恐怖に、ディアボロスは何度も悲鳴を上げる。
「痛い!!もうやめてくれぇ!!嫌だぁ!!助けて……フェルパー、助けてくれぇ!!」
「ははは。君が自分で追い払ったんじゃないか。助けなんか、来るわけもないだろ?」
「でも、あんまりのんびりしてたら、心配して来ちゃうかもしれませんよ」
「それもそうか。よく鳴く小鳥は見ていて楽しいものだけど、仕方ないな」
実に残念そうに言うと、エルフはようやく胸から手を放した。散々に弄ばれた乳房には、乱暴に掴まれた跡が赤く残っている。
それに息つく間もなく、ショーツに手がかけられる。それを引き下げるという面倒な真似はせず、エルフはそれをダガーで切り裂いた。
「さて。それじゃあ、もっといい声を聞かせてくれよ」
返事も待たず、エルフはディアボロスの秘部に、強引に指を突っ込んだ。
「あぐぅっ!」
凄まじい痛みに、ディアボロスは顔を歪める。しかし同時に、彼女の中に僅かな反抗心が芽生えていた。
フィアズの効果は、既にだいぶ薄れている。もう、この状況では抵抗も意味を成さないことは、彼女にもよくわかっていた。
彼女に残された最後の抵抗は、彼等を楽しませないことぐらいだった。
エルフの指が、まったく濡れていない膣内を、乱暴に擦る。
「っ…!……っ…!」
「あれ、さっきみたいな悲鳴はどうしたんだい?もしかして、ささやかな反抗のつもりかい?」
歯を食い縛り、必死に痛みを耐える。それが気に入らないのか、エルフはますます乱暴に指を動かし、さらには指を曲げ、彼女の中を
がりっと引っ掻いた。さすがに耐え切れず、ディアボロスの口から短い悲鳴が漏れた。
「……ぐっ…!……ぅ…!」
「……ふ〜ん、どうあっても反抗するつもりなんだね。ならいいさ。あまり気は進まないけど、もっと痛くしてあげるよ」
言いながら、エルフはズボンを下ろし、ディアボロスの腰を持ち上げる。彼女の肩を押さえつけるセレスティアが、
口元に冷酷な笑みを浮かべた。
「濡らさないでも、入るものなんですか?」
「無理矢理やればね。僕も痛いから、本当に気は進まないんだけどさ」
「………」
ディアボロスは何も言わない。しかし、その顔は恐怖に青ざめ、呼吸も荒い。だが、エルフが彼女の顔を見ると、即座に顔を逸らす。
「……はは。まあいいさ。そうやって反抗的な態度を取られるのも、悪くはない」
片手でディアボロスの体を支え、空いた手でその秘裂を開くと、そこに自身のモノを押し当てた。そして彼女の腰を両手で掴むと、
思い切り強く腰を突き出した。
「ぐっ!!!ぐ、うっっ!!!!」
食い縛った歯の隙間から悲鳴が漏れ、あまりの痛みに、たちまち眦には涙が溢れる。一方のエルフも、決して気持ちよさそうとは
言えない顔をしている。
「くっ……さすがにきつい…!」
「うわぁ。でも、入っちゃうんですね。人の体って、すごいですよね。それとも、好き者のあなたが緩かったんでしょうか?」
「ふっ……うっ…!」
何を言われても、ディアボロスは睨みつけるような真似すらせず、ただただ無視を決め込んだ。それが彼等の神経を逆撫ですると
わかっていても、もうそれしか抵抗のしようはなかったのだ。
エルフがゆっくりと腰を動かし始める。乾いた粘膜を擦られる痛みに、ディアボロスは全身を強張らせる。
歯を食い縛り、拳を握り、それでも悲鳴すら上げず、しかし堪えきれない涙が彼女の頬を濡らす。
「がっ……ぐっ…!」
エルフが動く度に、ディアボロスの体が強張る。その激しい痛みと刺激が、やがて彼女の望まない形での反応を引き起こす。
少しずつ、水音が響き始めた。それに伴い、ディアボロスの声も小さくなっている。エルフは彼女を見下ろし、にやりと笑った。
「おやおや。君は、強姦願望でもあったのかい?」
「………」
「ほら、濡れてきてるじゃないか。ははは、無理矢理犯されて、感じてるのかい」
「……嘘……だ…!」
とうとう、ディアボロスは口を開いた。半ば自分に言い聞かせるように、エルフの言葉を否定する。
「嘘?なら、これは何だい?」
エルフは結合部から漏れる粘液を指で掬い、ディアボロスの眼前に突きつけた。
「ほら、見てみなよ。これでも濡れてないって言うのかい?」
「ふふふ。悪魔はやっぱり好き者なんですね。無理矢理されてるのに感じちゃうなんて」
「違……う…!違う、違う!!」
それは、彼女にとって耐えがたい苦痛だった。感じてなどいないと、どんなに否定しても、彼等の言葉と、実際に濡れているという
事実がある。冷静さを奪われた彼女は、それを完全に否定することが出来なかった。
「ははは。おかげで僕も、気持ちいいよ。あまりのんびりも出来ないし、早めに終わらせてもらうよ」
エルフがさらに強く突き上げる。その乱暴な動きは、まるで体の奥を殴られるような鈍い痛みをもたらす。
ディアボロスはぎゅっと目を瞑り、唇をきつく噛み締めながら、ひたすらその陵辱に耐えている。その眦には、痛みと屈辱の涙が
溜まっている。
しかし、今更抵抗を再開したところで、もはや無意味だということも、彼女にはよくわかっていた。それまでに見せた姿に、彼等はもう
十分に満足していたのだ。
やがて、その動きが一段と激しくなり、エルフが低く呻いた。
「くっ……もう、限界だ!」
最後に思い切り奥まで突き入れると、エルフはディアボロスの体内に精を放った。
「……っ…!」
体内で彼のモノが跳ねるのを感じ、ディアボロスはさらにきつく唇を噛み締めた。あまりに強く噛んだため、口元に一筋の血が伝う。
そんな彼女を満足げに見下ろしながら、エルフは全て彼女の中に注ぎ込む。それが終わると、彼はディアボロスの中から引き抜いた。
「やれやれ。終わってみると、やっぱり気分はよくないね。こんな悪魔なんかと、したなんていうのは」
言いながら、エルフはハンカチを取り出すと、先程までディアボロスの中に入っていたモノを丁寧に拭う。
「ふふっ。でも、なかなか楽しかったじゃないですか。おだてられて、いい気になってる相手が泣く姿は、やっぱりいつ見ても
面白いですよ」
「それもそうか。……ほら、君にやるよ」
あらかた拭き終わると、エルフはそのハンカチをディアボロスの傍らに放った。
「君の体液で汚れたハンカチなんて、僕は使いたくないからね。自由に使ってくれ」
「優しいですね、エルフさんは。うふふ」
押さえていた手を離し、セレスティアが立ち上がる。
「とにかく、これでわかったでしょう?ヒーローとか何とか言われて、いい気になってると、ろくな目に遭わないんですよ。あなたの
お仲間にも、よろしく言っておいてくださいね」
そう言って、セレスティアはにっこりと笑う。しかし、ディアボロスは何も答えなかった。
だが、二人はもう満足したらしく、手早く身なりを整えると、すぐにその場を立ち去った。残されたディアボロスは、
しばらくそのまま横たわっていた。
やがて、むくりと体を起こす。近くに落ちていた杖を取ると、何とか立ち上がる。その瞬間、股間に鋭い痛みが襲った。
「うあっ!」
思わず声をあげ、その場にうずくまる。そのまま、ディアボロスは長いことうずくまっていた。
ぽつりと、雨が地面に落ちる。その黒い染みはあっという間に数を増やし、一分と経たないうちに、辺りは土砂降りとなった。
それでも、ディアボロスはしばらくうずくまっていた。雨に濡れた髪から、水滴が滴り落ちる。それに混じって、頬に温かい水滴が伝う。
やがて、彼女はゆっくりと立ち上がると、震える足を押さえつけ、口の中で詠唱を始めた。だが、それはバックドアルではなく、
テレポルの詠唱である。そして詠唱が完成すると、彼女はどこへともなく消えていった。
一方、フェルパーとノームはブルスケッタに戻ると、購買でいらない物を売り払い、その足で学食へと向かった。
しかし、学食に着くなり、フェルパーがノームに話しかける。
「あ、悪いんだけど、僕はまだご飯食べないよ」
「どうしたんだい。食欲ない……わけでは、ないようだね」
フェルパーは何やらトレイを二つ持ち、それぞれに料理を載せている。
「ディアボロスも、お腹空いてると思うしさ。帰ってきたら、二人で食べるんだぁ」
「でも、彼女が戻ってくるまで待ってたら、冷めちゃうだろう」
「それでも、一緒に食べたいもの。それに、そこまで遅くはならないと思うしさ」
「そうか。いや、それならいいんだ。なら、僕は先にディナータイムとしゃれ込むよ」
「うん。ごめんね、わがまま言って」
「構わないさ。ディアボロスも、きっと喜ぶだろう」
それから、ノームはそこで食事を始め、フェルパーは無理を言って、部屋まで料理を持っていった。
テーブルにトレイを載せ、冷めないように布をかけ、フェルパーは楽しげに尻尾を振りながら彼女を待つ。少々お腹が鳴っているが、
先に手をつけようとはしない。
だが、彼女はなかなか帰らない。既にかなりの時間が経過し、料理はすっかり冷めているが、まだ帰る気配もない。
フェルパーは所在無さげに尻尾を振りつつ、それでも彼女を待つ。
もしかしたら、また魔力が回復したので、長引いているのかもしれない。そう思い、フェルパーはじっと空腹に耐える。
だが、それでも戻る気配がない。フェルパーの尻尾は力なく垂れ、時折床をパシンと叩く。外は既に日が落ち始め、
だいぶ暗くなってきている。
あまりにも、遅すぎる。それでも、もう少し待とうかと考えたのだが、やがて雨が降り始めた辺りで、フェルパーは席を立った。
部屋を出ると、真っ直ぐにノームの部屋に向かう。ドアをノックすると、ノームはすぐに出た。
「フェルパーか、どうしたんだい」
「あのね、ディアボロスがまだ戻らないんだ…」
「何だって、まだ戻ってなかったのか。嫌な予感がするな…」
「うん。あまり考えたくはないんだけど……探しに行くんだけど、ついて来てくれる?」
「もちろんさ。ああ、でもその前に、購買と実験室に寄るから、先に入り口に行っててくれ」
フェルパーはすぐに魔女の森入り口に向かい、ノームを待つ。やがてノームが姿を見せ、フェルパーに紙切れを渡してきた。
「ほら、渡しとくよ。破れた帰還札と、破れた転移札。濡らして、これ以上破らないようにしてくれよ」
「……どうして破れてるやつ?」
「買って分解したのさ。こうすると、そのまま使うよりお得なんだ。覚えておくと便利だよ。それじゃ、探しに行こうか」
ノームが破れた転移札を使い、二人は誰もが惑わされる樹海へと飛んだ。しかし、誰かがいるような気配はない。
「ディアボロス……やられちゃってないよね?無事だよね?」
「そうであることを祈るよ。僕は、ジェラートタウンを見てくる。君は、こっちで彼女を探してくれ」
「うん、わかった」
二手に分かれ、ノームはすぐにジェラートタウンへと向かった。フェルパーはディアボロスを求め、雨の中を歩き回る。
時折、悪魔が襲い掛かってくる。しかし、フェルパーにとって敵ではなく、その全てをあっさりと返り討ちにする。
―――これぐらいの相手なら、負けると思わないけど…。
それでも、万一ということがある。隅から隅までを探し回るつもりで歩いていると、ふと何かが落ちているのに気付いた。
近づいてみると、それはびしょ濡れになったハンカチのようだった。だが、ディアボロスがそんな物を持っているのは
見たことがないので、恐らくは誰かが落としたのだろう。だが、もしそれが悪魔に襲われてということならば、助ける必要がある。
フェルパーは何気なくそれを手に取り、匂いを嗅いだ。
「……っ!?」
途端に、フェルパーの表情が変わった。驚きに目を見開き、もう一度匂いを嗅ぐ。
間違いなかった。それについているのは、ディアボロスの匂いと、知らない男と、精液の臭い。
戻らないディアボロス。ハンカチに付いた臭い。それが意味するところは一つしかない。
次の瞬間、フェルパーは走り出していた。直感で、彼女はあそこにいるはずだと感じ、フェルパーは誰もが歩みを止めた道へと走る。
目印をつけて進んだ道を走り抜け、誰もが歩みを止めた道へと飛び込む。そして、いくつかのワープを潜った先に、彼女はいた。
切り裂かれて、服としての用を為さなくなった制服を身に付け、秘部に指を突っ込みんで精液を掻き出し、ディープゾーンの水を掬い、
洗い流す。何度も何度も、彼女はそれだけを繰り返していた。
「……ディアボロス…」
声をかけると、ディアボロスはゆっくりと振り向いた。
その悲しげな目を見た途端、フェルパーはそれ以上の言葉をかける勇気をなくした。
しばらくの間、二人は無言で見詰め合った。降り続く雨が、ただ二人の体を濡らしていく。
「……一人に……してくれ…………お願いだ…」
ぽつりと、ディアボロスが呟いた。それに答えられずにいると、ディアボロスはもう一度呟いた。
「……お願いだ…!」
もう、声をかけることも出来なかった。フェルパーは何度も躊躇いつつ、やがて彼女に背を向ける。歩き出そうとして、ふと足を止め、
フェルパーは彼女に歩み寄ると服を脱ぎ、彼女の肩にかけてやった。
「………」
「………」
言葉はなかった。最後に破れた帰還札を持たせると、フェルパーは今度こそ踵を返し、震える足取りで彼女から一歩一歩離れていく。
「……うっ……うっ、うぅ…!」
背中に、ディアボロスの嗚咽が突き刺さる。フェルパーの歯が、ギリッと音を立てる。その声を振り切るように、フェルパーは
駆け出した。後にはただ、一人雨に打たれて泣き続けるディアボロスだけが残されていた。
魔女の森に、凄まじい咆哮が木霊する。
「うあああぁぁぁぁ!!!!ああああぁぁぁぁぁ!!!!」
咆哮と共に、それは目に入る全てのものを破壊した。岩にざっくりと爪痕を残し、木々は倒され、立ち塞がった悪魔はたちまち無残な
肉塊と化した。その破壊から逃れられたものは、皮肉にも逃げ遅れて怯えるモンスターだけだった。
悪魔すらも怯えて逃げるほどの破壊を撒き散らしながら、フェルパーは魔女の森を歩く。もはや理性すら感じさせないその顔は、
まさにビーストと呼ぶのに相応しいものだった。
一本の木が目に入る。途端に、フェルパーはそれに掴みかかった。
「ああああああぁぁぁぁ!!!!!」
メキメキと音を立て、幹が握り潰される。やがて、音を立てて幹が折れると、フェルパーはそれを地面に叩きつけた。
「うあああぁぁぁ!!!!がああああぁぁぁ!!!」
滅茶苦茶に叫び、狂ったように爪で切り刻む。一本の木だったものは、彼の爪によってたちまち無数の破片に変えられてしまった。
と、突然フェルパーの顔に理性が戻る。たった今破壊した木屑の一つを手に取り、匂いを嗅ぐ。
雨でだいぶ流れてはいるが、間違いなかった。そこから、あのハンカチについていたものと同じ匂いを感じた。
『獲物』が近い。近くには、迷いし者が集う場所がある。雨を避けているのなら、そこにいる可能性は高い。
目的地が決まり、フェルパーは鬼気迫る表情で歩き出した。相手が近くにいる以上、もう叫び声を上げたりはしない。
そうして、迷いし者が集う場所の入り口付近まで来たとき、岩陰から何者かが現れた。
「……何を、するつもりだい」
ノームが、いつもと同じ無表情な声で尋ねる。
「………」
「いや、聞かなくても顔を見ればわかる。けど僕は、君をこの先に進ませることは出来ない」
「……グゥゥゥ…!」
低い唸りを上げ、フェルパーは手を伸ばす。爪を出来る限り引っ込め、ノームの顔に手をかけると、そっと、しかし凄まじい力で
押しのける。そのまま先に進もうとすると、ノームの手が胸倉を掴んだ。
「この先に進むのは、君の自由だよ」
押しのけられて、思い切り体を反らしつつ、ノームは続ける。
「僕は君の前に立つ以上のことはしないし、君は必要なら、僕を殺すことも出来る」
浮遊できるため、転ぶことはない。不安定な体勢のまま、ノームはフェルパーを無理矢理こちらに向けた。
「怒りの炎の命ずるままに、全てを焼き尽くすことも出来るし、その炎を内に秘め、誰かを温めることも出来る。どうするかは、
君の自由だ」
その言葉に、フェルパーはビクリと体を震わせた。
「ディアボロスは、一人にしてくれと言ったんだろう。じゃなきゃ、君はここにいない。でもね、女心って言うのは複雑なんだ。
言葉に出すだけが本心じゃなく、相反する思いもまた、彼女の本心だ」
「………」
「一人が辛いというのは、本当の孤独を知らない種族の言う言葉さ。孤独は、自分以外の誰もいないが故に、居心地のいい物だよ。
だからこそ、人は辛いとき、一人になりたいと願う。君も、それはよくわかるだろう。……けどね、時には誰かに支えてもらいたい
と思うときがある。側にいてほしいと思うときがある。それは、孤独よりも居心地のいい、誰かの隣という居場所が見つかったときさ」
「……フー……フー…!」
少しずつ、フェルパーの呼吸が荒くなっていく。しかし、それは怒りのためではない。
「……彼女は、一人にしてほしいと思っている。それは事実だ。けど同時に、君にそばにいてほしいと思っている。それもまた、事実だ」
「……フゥーッ……フゥーッ…!」
歯を食い縛り、その隙間から荒い呼吸が漏れる。雨が雫となり、涙と共に頬を流れていく。
「ウウ……ウ…!ぼ……僕…………は…!」
震える声で、フェルパーが呻くように呟く。そんな彼の頬に、ノームはそっと手を当てた。
「……君は、美しいよ」
そっと、顔を寄せる。吐息がかかるほどに顔を寄せ、ノームは口を開く。
「その頬に流れる涙のようにね。涙は、人の感情の結晶だ。怒り、喜び、悲しみ……いずれも感極まったとき、人は涙を流す。
だから、流れる涙はどんなものでも美しい。僕には与えられなかった、君達だけの宝物」
フェルパーの目を真っ直ぐに見つめ、ノームは微笑んだ。
「そんな君が、あんな奴等のために、汚れる必要はない。美しいものを汚してみたくなるのは、人間の性といえ、それはこの手で
汚すことに価値がある。君自らが進んで汚れては、話にならない」
「……?」
ノームの言葉が理解できないらしく、フェルパーは戸惑いの表情を見せる。そんな彼に、ノームは優しく言った。
「行ってやれよ。彼女を温めてあげられるのは、君だけだ。今は、その怒りの炎を内に収めて、彼女を温めてやれ。雨で汚れを
流したなら、それで冷え切った体を温める存在が必要さ。例え拒絶されても、決して彼女を放すな。君ならきっと、今の彼女にも、
受け入れてもらえるさ」
フェルパーの胸に、ノームは破れた帰還札を押し付けた。躊躇いながらもフェルパーがそれを受け取ると、ノームは静かに彼の脇を
通り抜ける。
「けど、安心してくれ。このままで終わらせる気はない」
フェルパーの頬に触れた手が、優しく撫でていく。そして、指先で彼の涙を掬い取ると、ノームはそれを口に含んだ。
「君の火種……僕が受け継いだ」
迷いし者が集う場所に、二つの人影があった。二人はぴったりと寄り添い、実に仲が良さそうに見える。
「ふう、いきなり降られたのには参ったね」
「でも、ちょうどよかったかもしれませんよ?下手に戻って、あの悪魔が仲間と合流してたら、無事じゃ済まなかったかもしれません」
「それもそうか。ほとぼりが冷めるまで、こうして隠れてた方がいいのかな」
「うふふ。あなたと一緒なら、わたくしはそれでも構いませんよ」
そう言って笑うセレスティアを、エルフはグッと抱き寄せる。そして、彼女に口付けをしようとしたとき、不意に気配を感じ、
咄嗟に身構えた。
誰かが近づいてくるのが見える。足音すら立てない移動の仕方は、恐らくノームだろう。そのノームは二人の前に来ると地面に降り、
気取った仕草で頭を下げた。
「やあ、初めまして。デートの邪魔をして悪いね」
「……何だい、君は?」
「普通科所属の、ただのノームの一人さ。ただ、君達とは少し縁がある」
「縁?縁って、どんな縁ですか?」
セレスティアが尋ねると、ノームは口元を笑みの形に持ち上げる。
「……仲間のディアボロスが、ずいぶん世話になったみたいでね」
その言葉に、二人は素早く武器を構えた。途端に、ノームの目がスッと細くなる。
「やっぱり、お前等か。しかし、こうも簡単にかかるとは……お前等も、馬鹿だな」
「……ふん。それで、どうするって?君一人で、敵討ちでもする気かい?」
「ああ、そのつもりさ。僕の大切なディボロスを、そしてフェルパーを、傷つけた罪は重いぞ」
「ふふふ。わざわざ一人で来るなんて、そういう人、嫌いじゃあないんですけど…」
穏やかな笑みを浮かべながら、セレスティアは意識を集中した。
「でも、あなたは生かして帰しませんよ!」
セレスティアがフィアズを唱えた。だが、ノームは鼻で笑う。
「ふん。魔法使いがいることなんて、想定済みさ。そんな魔法、食らうかよ」
「なら、これはどうだい!」
エルフが剣を抜き、ノーム目掛けて突きかかった。それを見て、ノームは笑った。
「ふん、甘いよ」
次の瞬間、エルフは驚きに目を見開いた。ノームは避けようとせず、自らその剣に貫かれたのだ。
「なんっ…!?」
「避けたところを狙うつもりだったんだろ。残念だったなあ。突きの後は、動きが死ぬぜ」
ノームの腕が、くるりと円を描いた。その瞬間、凄まじい悲鳴が響いた。
「ぐっ……ああああぁぁぁ!!!」
「エルフさん!?」
股間を押さえ、うずくまるエルフ。そのそばに、血に塗れた何かが落ちている。
「おっと、悪かったな。咄嗟だったもんで、切り落としちまった」
笑いながら言うと、ノームはエルフの顔を蹴り上げた。仰向けに倒れたエルフを見つつ、ノームは地面に落ちたそれを無造作に掴み、
エルフの股間に押し当て、ヒールを唱えた。途端に出血が止まり、切り落とされたモノも元通りにくっつく。
が、悲鳴が止まった瞬間、ノームはエルフの股間を思い切り蹴り飛ばした。
「がっっっ!!!!か……はっ…!!!」
内臓にめり込むほどに強く蹴り飛ばされ、エルフは悶絶した。ノームは懐から鎖を取り出すと、一端を迷宮の壁に括りつけ、もう一端を
素早くエルフの足に巻きつける。そして、そこにガチャリと錠をかける。これで、エルフの動きは封じられた。
不意に熱を感じ、ノームは腕で顔を庇った。直後、セレスティアの放ったファイアがノームに襲い掛かる。
「エルフさんに何をするんですか!離れなさい!」
「……くくくく」
不意に響いた笑い声に、セレスティアはぞくりと身を震わせる。
「フェルパーとディアボロスの味わった痛み……お前等が味わうのは、そんなものじゃ済まないぞ」
無表情なはずの瞳の奥に、セレスティアは言い様もない恐怖を感じた。言うなれば、彼の瞳は狂人のそれだった。彼は、狂気を
飼い慣らしている。ある意味では、ビーストや狂戦士に近い存在ともいえる。
「く……その濡れた体に、雷はよく効くでしょうね!」
セレスティアが魔法を詠唱する。その隙に、ノームは距離を詰める。
「逃げ場は与えませんよ!サンダガン!」
雷が放たれ、ノームの体を貫く。しかし、ノームはまったく怯まずに距離を詰めてくる。
「なんて方ですか…!でも、わたくしに追いつけますか!?」
セレスティアは翼を広げ、素早く後ろに飛んだ。さすがに素早さでは、ノームに勝ち目はない。だが、ノームは笑った。
「逃げながら魔法を撃つ気かい。さすがにそれをやられちゃ、僕も危ない。魔法は、封じさせてもらう」
「普通科の、しかもノームのあなたが、一体どうやって魔法を……なっ!?」
ノームはダガーで、自分の左腕を切り落とした。それにセレスティアが驚いた瞬間、ノームはそれを彼女に向かって放り投げた。
思わず、それを腕で受ける。すると、その腕はまるで生きているかのように動き、彼女の喉を掴んだ。
「ぐぅっ…!?ぐ、ゲホッ…!」
「ははは。こういうときには便利なもんだよ。この間、首が落ちても動ける事に気付いてね。それの応用さ」
首を掴まれては、魔法の詠唱も出来ない。その腕を振り払おうともがいていると、いつの間にかノームが目の前まで迫っていた。
ダガーの一振りを、後ろに飛んで避ける。着地しようとして、セレスティアは自分が壁際まで追い詰められているのに気付いた。
「くっ!」
足元は電流の流れる地面である。着地すれば、無事では済まない。
慌てて羽ばたき、何とか横に逃れる。だが、ノームはすぐさま追撃をかけ、執拗に攻撃する。浮遊の仕方が違う分、ノームの動きは
見た目では判断できない。後ろにやや空間が開き、思わず後ろに飛んだ瞬間、セレスティアの体がぐるりと回った。
「きゃっ!?」
目の前に壁がある。後ろも壁である。そこでようやく、セレスティアは自分がターンエリアに踏み込んだのだと知った。
そこに、ノームが現れた。大慌てで翼を開いた瞬間、ノームは彼女の腹を思い切り蹴り飛ばした。
「ぐっ、ああああぁぁぁぁぁ!!!」
壁に押し付けられ、白い火花が散る。それでもノームは、足で彼女を壁に押し当て続ける。
「あがががが!!!がっあああぁぁぁあああああ!!!」
凄まじい悲鳴を上げ、セレスティアの体が狂ったように揺れる。翼が焼け、辺りに嫌な匂いが立ち込め始めた辺りで、ノームはようやく
セレスティアを解放した。
先に投げた左手を掴み、肩に押し当ててヒールを唱える。そして、彼女の翼を無造作に掴むと、エルフの前まで引きずっていく。
エルフはまだうずくまっており、それに気付く余裕はないらしい。ノームは口元だけで笑い、セレスティアにヒーリングを唱えた。
「う……何を…?」
「死なれちゃあ困るんだ。まだ、君には生きててもらわないと」
言うなり、ノームはセレスティアの服に手をかけ、引き裂いた。
「きゃああぁぁ!!」
悲鳴を上げ、セレスティアは胸を手で隠す。
「あ……あなたは、わたくしを……あ、あの、ディアボロスと……おな、同じ目に、遭わせるつもりですか…!?」
震える声で尋ねると、ノームは口元の笑みを、一層酷薄そうに歪めた。
「そうしたいけど、僕は残念ながら、こうなんでね」
こともなげに、ノームはズボンを下ろしてみせる。そこには何も付いておらず、それこそ人形のようにのっぺりとしている。
「……でもまあ、別に必要ないか。これが付いてたって、僕はそんなものを使う気はない」
言いながら、ノームは手首を動かす。そして、セレスティアの前にしゃがみこむと、その体をしっかりと押さえつけた。
「目には目を、歯には歯を……なんて、甘いこと言うと思うなよ。地獄を見せてやる」
ノームの手が、セレスティアの股間に伸びる。中指が割れ目をなぞると、セレスティアはビクリと体を震わせた。
「や、やだ!やめてください!」
「いきなり本番になっちまっちゃ、それこそお前、死ぬぜ」
割れ目を擦り、敏感な突起を押しつぶすように刺激する。比較的敏感なのか、その度にセレスティアの体が跳ねる。
「うあっ!あっ!も、もうやめてくださいよぅ!!謝りますからぁ!!あ、痛ぁっ!!」
ノームの指が僅かに侵入すると、セレスティアは悲鳴を上げた。
「へえ、付き合ってる割には経験ないのか……ははっははははは」
楽しそうな笑い声を上げるノーム。だが、その不穏な気配を感じ、セレスティアは怯えた。その時、後ろから声がかかった。
「ぐ……セレス、ティア…!」
見れば、エルフが何とか顔を上げ、二人を見つめている。
「エ、エルフさん!助けてください!!わたくし、こんな人に初めてあげたくありません!!」
「ディアボロスには好き勝手しといて、いざお前の番となりゃその台詞かい。やれやれ……楽しませてくれるねえ」
「や、やめて……痛っ!」
中指を沈み込ませ、ノームはエルフに冷酷な笑みを向けた。
「はははは。君も見てるといいよ。君の女が……ここに、こいつを飲み込む様をさぁ」
そう言って、ノームは拳を握って見せた。その意味を理解した瞬間、セレスティアの顔が見る間に青ざめた。
「い、嫌……嫌、嫌、嫌ぁ!!!助けてぇ!!!エルフさん、助けてぇ!!!」
「はぁっははははっ。じゃあ、始めようか。さぁて、どこまで耐えられるかな」
突き入れた指が、恐怖からかぎゅっと締め付けられる。だが、それまでに多少の湿り気を帯びたそこは、指の一本程度なら自由に
出し入れ出来る程度である。
「さて、もう一本増やそうか」
「嫌だ!嫌だぁ!!やめ……い、痛い!!痛い痛い痛い!!!」
「くそ……やめ、ろぉ…!」
ノームの指が、もう一本セレスティアの体内に沈み込む。セレスティアは体を捩り、ノームの体を押し返そうと抵抗するが、
その度にノームは彼女の体内から押さえつけ、それを鎮める。
彼女をいたぶるように、ノームは二本の指を引き抜き、かと思うと強く突き入れ、回す。あまりの痛みに、セレスティアは涙を流して
悲鳴を上げるが、ノームは怯む気配すらない。
「痛い!!痛いぃ!!もうやめて!!もう許してくださいぃ!!」
「三本目、行こうか。くく、そろそろきつくなるかもな」
暴れる彼女を押さえつけ、ノームはゆっくりと三本目を突き入れる。狭い膣内を無理矢理押し広げられる感覚に、セレスティアは全身に
脂汗を浮かべ、必死に耐えている。
「あっぐ…!い……たい…!エルフさん……助け……て…!」
「セレスティア……セレスティア…!!貴様、やめろぉ…!!」
さすがに、三本目はそう簡単に入らない。セレスティアが全力で拒んでいるのに加え、そもそもがそこまでの広さではないのだ。
それを知ってなお、ノームは薄笑いを浮かべ、腕に力を込める。
「嫌だ……嫌だぁ…!も、もうやめて……誰か、誰か助け…!」
その時、ノームがさらに力を加え、途端に何かを無理矢理押し広げた感触と共に、指がずぶりと入り込んだ。同時に、セレスティアが
凄まじい悲鳴を上げる。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!痛いいいぃぃ!!!痛い!!痛い!!痛いいいいぃぃ!!!」
「セ、セレスティア!!!うあああぁぁ!!!」
ノームの指が赤く染まっていき、エルフも悲鳴に近い絶叫を上げる。そんな二人を見て、ノームは満足そうに笑う。
「はは、残念だったなあ。君の初めてをもらったのが、恋人じゃなくて僕だなんて。まさに一生の思い出だな、あはははは」
言いながら、ノームは激しく指を出し入れさせる。傷ついた膣内を擦られ、なお押し広げられる苦痛に、セレスティアは悲鳴を上げる。
「やだぁ!!もうやめてくださいぃぃ!!許して!!許してええぇぇ!!!」
「さて、そろそろ四本目、行こうか。くくくく、頼むから、途中で死んでくれるなよ」
小指をもまとめ、ノームが力を込める。
「やだやだやだやだぁぁぁぁ!!!!お願いですから、謝りますからああぁぁ!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!
ごめんなさいいいぃぃ!!!もうやめて!!!もう許してええぇぇ!!!」
「はっはははは、許されるなんて思っているのかい。そんな甘い考え、どこから出てくるのやら、ね」
言うなり、ノームは思い切り腕に力を込めた。途端に、ミチミチと嫌な音を立て、指が飲み込まれていく。
「いっっっぎゃあああぁぁぁ!!!!あがっ!!!が、ああああぁぁぁぁ!!!!」
もはや女性とは思えないような悲鳴が上がる。セレスティアは白目を剥き、同時にノームの手に、ちょろちょろと黄色い液体が
かけられる。
「あーあ、さすがに失禁したかい。まあ、しょうがないね」
「もう、もうやめろおおぉぉ!!!やめてくれええぇぇ!!!うわあああぁぁ!!!」
エルフが絶望的な叫びを上げる。だが、今のノームにとっては、それはたまらなく心地いい音にしか聞こえない。
限界以上に広がり、激しく出血する膣内を乱暴に擦る。突き入れる度に血が飛び散り、引き抜く度に血と粘液の混じったものが
零れ落ちる。そして、セレスティアは気が狂ったような凄まじい悲鳴を上げ続けている。
「さあ、ラストスパートだ。いい声あげてくれよ」
「やだあああぁぁぁ!!!エルフさん助けてええぇぇ!!!助けて、助けてええぇぇ!!!殺される!!!助けて、殺されるぅ!!!」
「もうやめてくれえ!!!もう許してくれ!!!お願いだああぁぁ!!!」
「ふふ……断る」
入れやすいよう、指を窄めるように揃え、ゆっくりと彼女の中に突き入れていく。
「痛い痛い痛いぃぃ!!!もうしませんから、謝りますから、だから許してくださいお願いですからあああぁぁ!!!」
「最初からしなければ、こうならなかったのにな。ははは」
ゆっくりと、しかし容赦なく、ノームは彼女の中に指を突き入れる。既に限界を超えて押し広げられた入り口も、さすがに指の
付け根まで入ったところで、それ以上の侵入を拒む。
「もう無理!!もう無理ぃ!!!もうやめてぇ!!!」
「無理かどうか、やってみなけりゃわからない、さっ」
僅かに引き抜き、そして勢いをつけ、ノームは思い切り彼女の中へと突き入れた。そして、ブツッと嫌な音と共に、ノームの手首までが
彼女の中に入り込んだ。
「いぎゃああああぁぁぁぁ!!!!!」
「うぅ……あああぁぁぁ…!」
エルフは耳を塞ぎ、目を瞑ってその現実から逃れようとしている。セレスティアはもう痛みも限界にきたのか、身じろぎ一つせず、
ただただ荒い息をつくばかりである。
「あははは。ちゃんと入ったじゃないか。さっきまでバージンだったとは、とても思えないよ。あはははは」
言いながら、ノームは彼女の中で拳を握る。
「がぁっ!!!あぐぁっ!!!あ……あ…!」
「ほーら、これで拳が入った。ずいぶん緩くなったもんだね」
本来なら、さらに彼女を痛めつけてもよかった。だが、セレスティアは既に限界に来ているようであり、さらに別の理由から、ノームは
この辺で切り上げるべきだと判断した。
一度拳を引き抜き、ポケットから何かを取り出すと、それを握って再び拳を突き入れる。
「おご……あ…」
だが、今度はすぐに拳を引き抜くと、ノームはセレスティアに向かって魔法を詠唱する。やがて詠唱が終わり、ヒーリングが発動すると、
ひどい出血も一瞬にして治まり、セレスティアの目に生気が戻る。だが、セレスティアは急に腹を抑え、苦しみだした。
「い、痛……な、何が…!?」
「……おい、そこの君。いい加減手を放せ」
ノームはエルフの腕を掴むと、無理矢理耳から引き剥がす。
「う……な、何だ…?」
「ふふ……聞こえるかい。あの声が」
言われて耳を澄ませると、遠くで悪魔の声がする。そしてそれは少しずつ、こちらに近づいてきている。
「悪魔は血の匂いに敏感だからねえ。どうやら、嗅ぎつけられたようだ」
言いながら、ノームは腹を押さえて苦しむセレスティアに目を移す。
「君を縛る鎖の鍵は、彼女の中だ」
「え…?」
「指先で届くなんて期待は、しない方がいい。この木屑に括りつけて、横向きに置いたからね。仮に指先が届いたとしたって、
取れやしないさ」
そう言ってノームが取り出したのは、フェルパーが滅茶苦茶に切り裂いた木の破片であった。
「助かりたいなら、鍵が無いとね。でも、取り出すなら優しくしてやれよ。なんてったって、体は処女に戻ってるんだ。だけど、
急がなきゃ悪魔が先に来るかもね。そうしたら、君は死ぬね」
実に楽しそうに言って、ノームは立ち上がった。
「お、おい!!」
「ははっははははは。僕はもう帰るから、あとは君達の自由にするといいよ。二人とも、無事だといいねえ。あっははははは」
高笑いを残して、ノームはジェラートタウンで買った転移札を使い、消えていった。残された二人は、しばらくそこを見つめていたが、
やがてセレスティアが痛みを堪えて立ち上がる。
「うう、う……戻ら……ないと…!」
歩き出そうとした瞬間、その足をエルフが掴んだ。たまらず、セレスティアは転倒する。
「痛っ!な、何を…!?」
「……君は、僕を見捨てるつもりか!?」
鬼気迫る表情で、エルフが問い詰める。
「だ、だって……こんなところの鍵なんて、取れないですし……あ、後で必ず、助けに来ますから…!」
「ふざけるな……僕は、悪魔になんか殺されたくない…!」
その目にノームと同じ気配を感じ、セレスティアは逃げようとした。しかし、エルフはしっかりと足を掴み、逃がさない。
「な……何をするんですか!?何をするつもりですか!?」
「……悪く、思うな。僕は、死にたくない!」
「え…!?い、嫌です!!嫌だぁ!!もう、あんなのわたくし、嫌ですよぉ!!!」
エルフの手から逃れようと、セレスティアは地面を引っ掻き、翼を羽ばたき、必死に抵抗する。しかし、戦士学科に所属するエルフには、
まったく無駄な抵抗だった。
悪魔の声が、近くまで来ている。エルフは乱暴にセレスティアの足を開かせ、その体にのしかかる。そして、彼女の秘裂に手を当てる。
「う……嘘ですよね…!?」
「……すまない…!」
「や、やだ!!やめて!!!やめて!!!やめてえええぇぇ!!!!やだああああぁぁぁぁ!!!!!」
セレスティアの哀願の声が響き、そして一瞬遅れて、辺りに耳をつんざく悲鳴が響き渡った。
翌朝。ノームが学食に行こうと寮の廊下を歩いていると、ちょうどフェルパーとディアボロスが部屋から出てくるところだった。
「お、グッドタイミングだな。二人とも、これから朝食かい」
「あ、ノーム。おはよー」
「……おはよう、ノーム」
意外としっかりした声で、ディアボロスは言った。
「思ったより元気そうだね。でも、無理はしてないかい」
「ああ、平気だ。よくよく考えれば、別に初めてを奪われたわけでもないし、私にはこいつがいる」
そう言い、ディアボロスは愛おしげにフェルパーを見つめる。
「昨日、ずっと抱き締めていてくれたんだ。私は、こいつを拒絶したのに…」
「はは、のろけ話を始めるとはね」
仲良く三人で歩きながら、彼等は話を続ける。
「のろけ話とは失礼だな。私はフェルパーが、どれだけ優しいか……うっ!」
不意に、エルフの生徒が見えた。決して昨日のエルフではないのだが、その瞬間、ディアボロスはその場に固まり、フェルパーの腕を
ぎゅっと掴んだ。そんな彼女に、ノームは優しく声をかける。
「無理は、しなくていいさ。ショックじゃないなんてことは、いくら君でも、ないだろう」
そう言われると、ディアボロスは少し声を落とした。
「……まあ、な。だが、いつまでも沈んでいるわけにはいかないだろう。例え空元気だって、続けていれば、いつか本当の元気になるさ」
「悲しいほどに強いね、君は。でも、時には肩の力を抜いて、フェルパーにでも思いっきり甘えてくれよ。何なら、僕でも構わない」
ノームが言うと、ディアボロスは笑った。
「ははは、お前に甘える、か。それも面白いかもしれないな。気が向いたら、試させてもらうとしようか」
「おっと、フェルパーの前でそんなこと言っていいのかい。嫉妬されても困るぜ」
「お前ならいいだろう。なあ、フェルパー?」
「うん。君がいいなら、僕もいいと思うよ」
「公認か、参ったな。あははは」
そんなこんなで学食に着き、三人はそれぞれ料理を取り、席に着いた。その時、隣のグループの会話が耳に飛び込んできた。
「おい、昨日の話、知ってるか?」
「ああ。あの、エルフとセレスティアの話だろ?悪魔に襲われたんだっけ?」
「それが、よくわからないんだよなあ。セレスティアの方は、もう完全にこれだってよ」
そう言い、男は自分の頭を指差し、クルクルと回して見せた。
「エルフの方も、もう錯乱状態で何があったかわからないんだと」
「ブルスケッタの生徒がそれじゃ……絶望的だな」
「ああ。たぶんもう、二人とも退学じゃないかって話だよ」
それを聞くともなしに聞いていたフェルパーが、不意に席を立った。
「あれ、フェルパー?どこに行くんだ?」
「え?えっと……ちょっと、トイレ」
「僕も一緒に行っていいかい」
「ノーム?お前がトイレに何の用だ?」
「服にソースを零した。これを洗いたい」
そう言い、ノームは袖に付いたソースの染みを見せる。
「ああ、なるほど。なら仕方ないが……その、二人とも、なるべく早く戻ってきてくれよ」
「うん、わかってるよ。ちょっとだけ待っててね」
二人は席を立つと、揃ってトイレへと向かう。中に入ると、フェルパーは大きく溜め息をついた。
「さっきの話の……君、だよね…?」
「ああ。報いは何倍にもして返してやったよ」
「………」
だが、フェルパーの表情は浮かない。ややあって、フェルパーはぽつりと言った。
「本当なら、君にお礼言わなきゃいけないと思うんだけど……ごめん。なんか、素直にお礼、言えないよ…」
フェルパーが言うと、ノームは口元と、目にも少しの笑みを浮かべ、フェルパーの肩を叩いた。
「はははは。君は、それでいいのさ。むしろ、君が喜んで『ありがとう』なんて言ったら、僕は君をぶん殴ってた。その優しさと純粋さ、
君には失くさないでもらいたいな。白いものを汚すのは面白いにしても、あまりに白すぎるものは、汚すのが勿体無いものさ」
袖に付いた染みを洗い、ノームはドアに手をかけた。その背中に、フェルパーが声をかける。
「あ、でも、ありがとうって言えるの、あったよ」
「ん、何だい」
フェルパーはその顔に笑みを浮かべ、言った。
「ディアボロスを、助けさせてくれて……ほんとに、ありがとう」
「……はは、よせよ。それは、君と彼女本人の力さ。僕はあくまで、背中を押したに過ぎないよ」
それから、二人はディアボロスの待つ席へと戻った。
「ただいま〜」
「さすがに男は早いな。その辺は、いつも少し羨ましい」
「僕の場合、洗い物に行っただけだからね。男も何も関係ないけど」
「朝飯が終わったら、また悪魔と戦いに行こうと思うんだが……付いてきて、くれるか?」
「はは、当たり前だろ」
「そうだよ〜。今度は、君が何言っても、一緒にいるからね」
再び戻った、いつも通りの日常。少しだけ密接になった、二人の関係。彼等と距離を置きつつ、しかし誰よりも仲間を思うノーム。
壊されかけた日常は、しかし決して壊れなかった。
その後、彼等はクロスティーニに戻るまで、ずっと三人一緒だった。
そしてクロスティーニに戻るとき、試練をまた一つ乗り越えた彼等は、ほんの少しだけ、大きくなったように見えていた。
以上、投下終了。
勧善懲悪もいいけど、悪を飲み込む巨悪も好き。
それではこの辺で。
グッジョブ!
やっぱ敵に回すと一番恐ろしいのはノームか
戦い方と攻め方がえぐくて笑ったわ
フィストは死ねるだろうなぁ
261 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 14:04:54 ID:Om6EtyFh
乙
ノームこえー(ガクブル
ノーム怖かっこよすぎるGJ!
処女にフィストって鬼畜すぎるがだがそれがいい
>> ◆BEO9EFkUEQ氏
ノーム怖ぇ……。
しかしセレ子も哀れというか何というか……下手に敵に回してはいけない人物なんてどこにでもいるのですね。
と、いう訳で今夜は第3話を。
最終章もそろそろ大詰め。ついでに先輩の意外な過去もそろそろ明らかになるかも。
ディープゾーンから上がったディアボロスと、ギルガメシュは剣を抜いたまま睨み合っていた。
まだお互いに攻撃力は健在だ。魔力も残っているし、持ち替え取り換え戦う分だけの武器もあるし、道具も残っている。
だがしかし、まだこの戦いがどれだけ続くか解らないという点が、2人に攻撃の手を考えさせていた。
ディアボロスはギルガメシュを倒せば済む事だが、ギルガメシュの方はディアボロスを倒した後ディモレアとも戦わなくてはいけない。その為にも余裕を持って戦わなくてはいけない。
だが、現状はディアボロス相手に苦戦している状況である。
「くそ、なんてこった」
ギルガメシュは悪態をつき、2本のデュランダルを握りしめ、迷宮の床を蹴った。
ディアボロスも精霊の剣と鬼徹を構え、同じように迷宮の床を蹴ってギルガメシュへと迫る。だが、ギルガメシュはそこで―――――。
「うおりゃあああああああああ!!!!」
力強い一撃を三連続で叩き込む、鬼神斬りという技術が存在する。
前衛の中の前衛だけが習得出来る、最強の連続攻撃。しかし、ギルガメシュの持つデュランダルは一度の攻撃の中でも何度となく振り回せる。
十五回にも及ぶ攻撃が、ディアボロスを襲った。
そのうちの九回目まではディアボロスも防ぎきる事に成功した、だが、十回目以降は間に合わず、直撃を喰らった。
六度にも及ぶ斬撃。
口から血の塊がこぼれ落ち、すぐ背後のディープゾーンに落ちそうな所をこらえる。だが、辛うじて立っている状態だ。
「………流石ですね、先輩」
「今ので倒せなかったか。まぁ、全部当たらなかった時点で、止めてた方が良かったかも知れねぇけど」
「多彩な手数と、その力強さ……ギルガメシュ先輩、あんたは本当に最強だよ……けど」
それは、今日で終わらせる。
ディアボロスは口には出さず、剣を構える事でそう告げた。
「お前も諦めが悪い奴だ。あれだけの攻撃を喰らってもまだ立ってやがる」
「負けたくないから」
ディアボロスの呟きが、ギルガメシュの手を止める。
「そうか。お前もか」
「ええ」
「お互いに。譲れないもん抱えてるってこったな」
剣を数回振り回し、ギルガメシュは呟く。次は何を仕掛けるべきかと、考えながらも。
この戦いに、勝つのはただ一人。
「うわー、凄い戦いかも……」
ゼイフェア地下道中央より少し外れた場所で、ヒューマンとエルフは戦いを見守っていた。
「信じられない、ギルガメシュ先輩が苦戦するなんて……」
「幾ら最強だからって常勝無敗な訳ないでしょうが……」
「いえ、ギルガメシュ先輩はそれを実現する男です!」
「…………あっそう」
エルフが如何にギルガメシュを崇拝しているかがよく解ったヒューマンはため息をつく。
彼女も学年が低いとはいえパルタクス三強に選ばれる実力者である。2人の実力が拮抗している事は一目瞭然だ。
「あれがディモレアさんの息子さんなんだね……本当に凄いや」
錬金術士学科に属する、と聞いていて接近戦も魔法もそこそここなせる、というイメージを持っていたが、ある意味想像以上だった。
ヒューマンはますます彼にディモレアを紹介して欲しいと思った。
「あ、先輩!」
エルフの叫びと同時に、ギルガメシュが体勢を崩してディープゾーンに落下。ディアボロスが続けてダクネスガンを連射する。
「っ!」
「はい、エルフ君落ち着く。見ていろって言われたんじゃないの?」
弓をディアボロスに向けたエルフをヒューマンが窘めると同時に、ディープゾーンから飛びだしたギルガメシュがディアボロスに斬り掛かり、剣がぶつかり合う盛大な音が響く。
「けど、ギルガメシュ先輩が決定打を与えられないなんて……変ですよ」
「そりゃパルタクス三強同士の戦いだもん。おかしくないよ。エルフ君も今後の参考によく見といた方がいいよ。これからのパルタクスを背負うのはあたし達なんだから」
ディモレアとの戦いが終わって既に2年が過ぎ、これからの学校を背負っていくのはディモレアと直接戦いを経験したギルガメシュ達最上級生では無い。
ヒューマンやエルフといった下級生が学年が上がると共に、パルタクス学園の柱となっていくのだ。
「…………だからですよ。俺が、先輩に憧れたのは」
エルフは小さく呟いた。だが、それはヒューマンに届いていなかった。
ディアボロスのパーティメンバー全員が部屋に押し掛けてくるのは2回目になる、とルームメイトのフェルパーは思った。
ただし、今回は隣人のエルフとヒューマンのコンビがいなくて代わりにディアボロスの恋人になったセレスティアがいる事だった。
「……あいつ、また一人でほいほい出掛けるたぁ……で、何処行きやがった?」
バハムーンの怒声に近い声にフェルパーが慌てて「まぁまぁ」と仲裁に入った後口を開く。
「で、うちのディアボロスは何処に?」
「……ギルガメシュ先輩が逃げ出した話は知ってるよな? で、先輩を止めに行った」
「「「「……はぁ?」」」」
その言葉に、全員が首を傾げる。
「いや、だからさ。ギルガメシュ先輩が『ディモレアに一戦やらかしてくる』って言って逃げたから、それを阻止する為に……」
「待て」
バハムーンの目がつり上がり、ディアボロスの女子がルームメイトのフェルパーに視線を向ける。
「それで、お前は止めなかったのか?」
「当たり前だろ。俺がどうやって止めろと」
「色々方法があるだろ! 相手はギルガメシュ――――学園最強なんだぞ!」
バハムーンが叫んだ時、ルームメイトのフェルパーが口を開いた。
「あのさぁ。あいつが相当な実力者だって事、忘れてないか?」
「………勝てるのかよ?」
「勝てる。少なくとも、俺は信じてるし、あいつだって勝てると思ってる。だから挑んだのさ」
何せ、彼はディモレアの息子である。
最強とまではいかなくても、それでも充分な戦いを見せつける事が出来るだろう。
五人のパーティメンバー達はそれぞれ視線を交わしたり顔を見合わせたりしていたが、じきに同時にため息をついた。
「…………なら、信じるっきゃないか」
「そうだねー……でも、ちょっと心配かも」
「帰ってきたらご飯奢ってもらおう」
「その前にお土産ぐらい持ってきてもらうべきかも知れんな」
「ついでに俺はマタタビを」
「フェルパー、それは無い」
「酷っ!?」
パーティメンバー達がいつもの空気に戻ったのとは裏腹に、セレスティアは黙っていた。
「……先輩?」
ルームメイトのフェルパーも流石に気になったのか、セレスティアに声をかける。
だが、彼女は答えない。ただ、黙り込んだままだ。
「先輩、どうしました?」
「………本当に」
「?」
「本当にあの人達は自分勝手に暴れだしてッ!!!」
一瞬だけ、文字通り時間が止まった。
「あ……え、えーとですね、今のはその……」
セレスティアも言った後で気付いたのか、顔を真っ赤にしつつしどろもどろになる。
「先輩……」
ギルガメシュとディアボロスが戦う事。ある意味この2人が一度険悪になった事でセレスティアは知りたくない事実を知る事になり、悲劇も起こったのだ。
ディアボロスとの間に問題はもう無い。だが、ギルガメシュとは未だに解決していない。
ディアボロスもその事は言っていた筈だが、セレスティアはそれを今の今まで忘れていた。だが、その問題解決の為に。
「2人がどうしてまた傷つけあうのかって……変ですよね、ギルガメシュ君も……」
生徒間同士の決闘は禁止だし、2人が争う事を望まない者だってきっといる筈だ。
それなのに、2人はどうして戦いあうのか。それがセレスティアには解らない。きっとお互いに無事では済まない筈なのに。
「…………」
止めるしかない、とセレスティアは思う。
今、ディアボロスを止められるのは自分だけだろう。でも、ギルガメシュの方はどうすれば良いのか。
いや、止めるしかない。何があっても。自分が、この手で。止める。
セレスティアは部屋を飛びだす。
他の誰が止めるのも聞こえない。もう、走り出すしかなかった。これから起こる悲劇を、止める為にも。
ゼイフェア地下道中央の戦いはまだ続いていた。
ギルガメシュが得意の接近戦に持ち込もうと距離を詰めればディアボロスは魔法や火薬を使って距離を取り、距離を取られたギルガメシュは様々な武器を投擲して牽制する。
投擲された武器を弾いたり回避したりしつつディアボロスも距離を詰めて先制しようにも接近戦はギルガメシュの領域である。
お互いに、決定打を撃つ事が出来ない状態。
「クソッ、なんてこった」
ディアボロスは舌打ちする。
グレネードもけむり玉も、魔力だって無限ではない。まだ余裕がある状態とは言え、接近戦だけの戦いならばギルガメシュの方が圧倒的に有利だ。
魔法での戦いに持ち込もうにもギルガメシュを魔法だけで仕留めるのは至難の技である。
モンスターとの戦いもそうだが、ギルガメシュは冒険者相手の戦いにも慣れているのだろう。
幾つかの迷宮では冒険者ギルドのメンバーと遭遇する事もある。生徒相手でも容赦なしに攻撃してきたり挨拶して立ち去ったり相手によって様々だが、攻撃を仕掛けてくる相手にギルガメシュは躊躇う男ではない。
対モンスター、対冒険者の双方の戦いに長ける人材など、そうそういないだろう。
「だから、最強か」
思わず呟く。だが、弱点が無い筈は無い。
「サイコビーム!」
ディアボロスがグレネードを投げようとした時、ギルガメシュはサイコビームを放った。
慌ててグレネードを床に取り下とし、ディアボロスは即座に離れる。グレネードは床で爆発した。
「ふぅ……」
速度が早い上に一撃の殺傷能力、そして貫通力に長けるサイコビームを、ギルガメシュは主力の攻撃魔法として使っているようだ。
反応さえ出来れば回避出来るだろうが、魔法壁ですら貫通しそうな速度で撃ってくるギルガメシュの攻撃は脅威といえる。
「けど、な……」
多用しすぎである。
相当な魔力を要するサイコビームを何発も連射し続ければ集中力だって落ちる筈だ。
柱の陰に隠れたディアボロスを不審に思ったのか、ギルガメシュは首を傾げた。
「どうした? 隠れているのか? 隠れていては倒せねぇぞ」
「まさか。少し、作戦を練らして頂いているだけです」
「くだらねぇ。テメェがちゃちな作戦を立てたぐらいで俺を倒せると思うのか?」
「解りませんよ? 倒せるかも知れない」
ディアボロスはそう呟くと同時に、口でグレネードのピンを抜いた。
「ハッ! いい加減その手には飽きたぜ!」
ギルガメシュはディアボロスがグレネードを投擲してくるであろう場所を予測し、横に回り込んで柱の陰へと斬り掛かろうとする。
だがしかし、柱の陰から、ディアボロスの姿は消えていた。
「テレポルか!」
だが、次はどこへと思った時だった。
上から、何かが落ちてきた。
「……上?」
ギルガメシュが上に視線を向けた時、上空に移動していたディアボロスが両手を向ける。
「喰らえ! ランツレートの爆裂大華祭とまではいかなくても……充分な火力はあるんだ! ビッグバム、ビッグバム、ビッグバム!」
片手でグレネードを投げ、もう片方の手でビッグバムを放つ。
ギルガメシュが気付いた時、既にゼイフェア中央は爆風で揺れた。
ディープゾーンの水が天井近くまで舞い上がるほど。
三回に及ぶ、真上からの広範囲攻撃のビッグバム。
空中爆撃を喰らったに等しいギルガメシュは、床に伏していた。
「……くそっ……たれ」
まだ生きていた。
だが、流石に爆風のきつさに参ったのか、膝を折り、立ち上がるのもやっとと言った状態のようだ。
「………先輩」
ディアボロスが床へと降りる。
「もう諦めて下さい。貴方にだって、勝てないものはあります」
「…………本当に、そう思うか?」
ギルガメシュが呟く。その奇妙なまでに自信に溢れた声に、ディアボロスが首を傾げかけた時だった。
「こういうこった」
直後、一瞬の閃光の後に、ギルガメシュが立ち上がる。その傷は既に塞がっており、まだ戦闘続行可能だ。
「メタヒールさ。つい最近になって、無詠唱でも出来るようになった。ちょっと疲れるが」
「そう言えば先輩、そんな人でしたね」
本当にどこまでも諦めが悪く、どこまでも強い。それがギルガメシュという男の性格。
この戦いはまだまだ続くだろう。
「サイコビーム!」
「ビッグバム!」
ギルガメシュがサイコビームを放つと同時に、ディアボロスもビッグバムを放つ。
「流石はあのディモレアの血を継ぐ奴だ、どこまでも魔力が底なしだな!」
「先輩こそ、そこまでサイコビーム撃てるのが奇跡みたいですよ!」
「ハッ! 当たり前だバカ野郎」
ギルガメシュはそう叫ぶと、ポケットから何かを取りだし、思いきり投げる。
「?」
何か、とディアボロスが振り向こうとした時、言いようの無い殺気を感じた。
「!」
慌てて横に飛ぶと、真横を禍々しい何かが駆け抜けていった。
いや、違う。あれは禍々しい何か、何てレベルじゃない。
死を告げるもの、いや、死、そのものと言うべきだろう。
「………デス」
人を癒す僧侶が扱う魔法の一つだが、敵に確実な死を告げるその魔法を使う僧侶は殆どいない。
一つは当たりにくい事と、もう一つは躊躇う事である。
確実な死を告げるそれをモンスター相手でも躊躇う生徒は多い。ましてや対冒険者ならばもっての他である。
それなのに、ギルガメシュは今。
躊躇いを見せずに、それを放っていた。
先ほど投げたのはこの為に気を逸らす為の何かだろう。
「くそ、外したか」
「先輩、今の」
「悪いな、俺も焦ってきてる」
ギルガメシュは呟く。
「躊躇いを捨てろ、迷いを捨てろって昔っから何度もぶつかってきた。だからだ。誰よりも越える強さが欲しいと願ったガキの頃から、俺は戦い続けてきたのさ。
そして……今、この勝利の為に、卑怯と言われようと何と言われようと構いやしねぇ! 勝利のために、過程や結果なんざ、どうだっていい! 勝っちまえば生き残れる。
勝つ事だけが全てなんだよ! 冒険者ってのは、そういう生き物だ!」
「ふっ……ふざけんなぁ! 冒険者ってのはそんな生き物なんかじゃない! 戦う為に生きてる奴もいるさ。純粋に強さを求める者、自分の中の最高の極みを求める者、
古の叡知を求め手に入れる者、仲間達と結束して生きる者、なんだっているさ。けどな……けど、冒険者が掴む栄光の為に、卑怯な手だけは使わない! それが冒険者のプライドって奴だ!」
「プライドだけに生きてる奴なんざ生き残れない。俺の持つ最強のプライドは敗北しない事だが、俺はプライドの為だけに強くなってるんじゃねぇ! 最強になれば、失う事も何も無いさ!」
「ならあんたは何を失った!」
いつの間にか、お互いに距離を詰め、剣で斬りあっていた。
叫びながら、思いをぶつけ合いながら、剣をぶつけていた。何合も。
「弱さも迷いも、遠い昔に置いてきた。俺に残ってるのは、最強を求める俺だけだ!」
「強さだけ求め続けて、その先に何がある! 意味なんか無いだろ!」
「意味ならある! 何も失わない為にも、パルタクスで俺が手に入れられたもの……パルタクスで出会ったもの、その全てを守りたいと願ったからだ! 敗北がなければ、何も失わない!」
「何も得ない勝利だってあるだろうに!」
剣が再び振られる。素早い速度であるにも関わらず、そして何十合と打ち合っているにも関わらず、気が付けば息切れ一つしていなかった。
「だが、勝たなければまた失うだけだ。何であろうと、な」
「あんたに敗れた誰かが、失ったものはどうなる!」
「そいつが敗者なだけだ。俺は勝つ、ただそれだけだ」
「戯言を! そんな事を並べ立てた所で、それはあんたのエゴにしかならない!」
「エゴじゃない! エゴじゃないさ! 俺が求めてるのはそんなちっぽけなものじゃねぇ! 俺が求めるのは……ただ……」
ギルガメシュは反論しようとして、思わず剣を止める。
ディアボロスもギルガメシュが剣を止めたのを見て、距離を取って剣を構えた。
「………俺が求める者は……俺は……」
昔、故郷を出た時。
何かを求めていた筈なのに。何で今、今になって出て来ないのだろう。
ただ、これだけはいえる。
「俺は……最強の名を残したいだけだ。ギルガメシュの名前を」
口から出て来た言葉は、本心じゃない。
それを理解していたのは、ギルガメシュただ一人だった。
「……最強の名前、かぁ」
ヒューマンは小さく呟いた。
共にギルガメシュとディアボロスの戦いを見ていたエルフは「え?」とヒューマンを振り向く。
「あの人、どこまでも本気なんですね。まるで、俺達なんかと違う世界の人のように見える」
「……そうかもね。でも、エルフ君、あたしさ、最強見てて思うんだけどね」
「はい?」
「あの人、あの調子だと負けるかもね」
「はぁ?」
エルフはそのヒューマンの意外な言葉に思わず叫ぶ。
「負けるって、どうして」
「疲労してきてるんだよ、ギルガメシュ先輩」
ヒューマンの言葉に、エルフはギルガメシュに視線を向ける。
確かに攻撃力の高い魔法や積極的に接近戦を仕掛けており、相手の反撃でも結構なダメージを負っている。
だが、それでも先ほどのメタヒールで回復した筈だ、とエルフは思う。
「甘いね。ディアボロス先輩が効率の良い戦いをしているからね。魔力キャパシティはあっちの方が上だし、おまけにディアボロス先輩、接近戦でもギルガメシュ先輩相手に渡りあってるんだよ?
接近戦だけを見ればギルガメシュ先輩が有利だけど、道具や魔法の使用とかを見ればマルチに戦えるディアボロス先輩の方が有利だよ。まぁギルガメシュ先輩も魔法はそこそこいけるけど」
そこそこ、というのはあくまでもヒューマンの視点であって生徒という基準でみればギルガメシュの魔法レベルも相当なものだ。
だが、ディアボロスはそれを更に踏み越えていくレベルなのだ。
「そ、それじゃ……」
「だから焦ってきてるんだと思う。デスなんか使ってるあたり。だけど、先輩もドジだねー。さっきの一撃が当たれば勝てたのに。もう撃っても当たらないと思うよ?」
確かに、ギルガメシュが不意打ちに近いカタチで仕掛けたデスが当たれば終わっていただろう。
だが、外れてしまってはどうしようもない。
「本当に、酷い話ね」
ヒューマンはそう呟き、エルフは弓に手をかけながら、戦いを見守るしかなかった。
ギルガメシュの勝利を幾ら信じていても、少しずつそれが揺らごうとしている事に。彼は、気付いていた。
気付きながらも、何も出来なかった。
剣が何度となく、ぶつかり合う。
「あんたの名前は確かに残る筈だ。パルタクス……いや、王国の長い歴史の中でも、あんた程の奴なんてそうそういない。歴史に名を残す事も栄誉の一つさ。
だけどギルガメシュ。醜い手段でそこまで成り上がっても、誰も賞賛なんかしない筈だ。あんただけ満足しても、意味はあるのかよ!?」
「バカ言え。名前を持つ事の誇りさえあれば、賞賛も栄誉も必要無い……栄誉も名声も、所詮はちっぽけなものさ。誇りですら、簡単に敗れてしまうものだと言うのに」
「なんだって?」
「戯言だ」
ギルガメシュはそう呟くと同時に距離を詰め、剣を振りかぶる。
振り下ろされる剣。ディアボロスがそれを弾く。
「俺が生きていた証明……最強である事の誇り………それだけでも、俺は戦っていける」
けど、本当は違うとギルガメシュは叫ぼうとした。
言葉にならなかった。
「俺は、負けたくない」
「……あんたは、負けるのが怖いだけなのか?」
ギルガメシュの小さな呟きを、ディアボロスは聞きのがしたりはしなかった。
「4年生にして学園最強の称号を持った。入学した時から戦い続けた事はもう、俺ら下級生の中じゃある意味伝説の語りぐさだ。最強伝説がいつから始まったかは知らない。
けれども、最強と呼ばれた辺りから、最強の名を汚したくなくて、あんたは負けるのが怖くなった。だからただ戦い続けたのか? 何も振り向かず何も気に留めず。
最強という名前を手に入れてしまった誇りが、あんたをそこまで追い詰めたのか?」
「………バカを言うな。勝手な想像を並べ立てるんじゃねぇ」
「だから最強を求めた。負けるのが怖いから、何をしてでも勝利する。失いたくないから負けたくないなんて、そんなのあんたが勝手に作ったルールだ。
例え負けたとしても、得るものだってあるさ」
「勝手な事を抜かすな! テメェに俺の何が解る!」
「解らないさ! 解らないから、人は理解し合おうとするんだよ!」
再び剣がぶつかり合い、ギルガメシュは同時にサイコビームを放つ。
不意打ち気味に放たれたサイコビームをまともに喰らい、ディアボロスは膝を折る。
「ぐっ……!」
「俺はな……俺はなぁ……!」
ギルガメシュは剣を振り上げる。その攻撃の軌道は荒く、ディアボロスでも簡単に回避出来る。
「くそっ……たれ!」
ディアボロスは距離を置くと同時に、地面に手を置いた。
錬金術は錬成と分解の二つの使用法がある。
素材を組みあわせて新たなものを生みだす錬成。
物品を分離させて素材に戻す分解。
そして錬金術の分解も錬成も、戦闘に応用出来るのである。
ギルガメシュの足下の床が分解され、所々に罅割れが走った。
「んなっ!? 地面破壊、だと……」
床が破壊され足場が悪くなった所へディアボロスは更にビッグバムを放つ。
こちらは回避したものの、それでもギルガメシュは確実に不利な状況へと追い込まれていった。
「くそ、不甲斐ない……」
ギルガメシュは悪態をつく。
ディアボロス相手にここまで苦戦するなんて。ディモレア相手に戦って返り討ちにあったら。
みっともない。
「サラに会わせる顔がねーじゃねぇか……」
軽く舌打ちをする。
「一気に勝負を決めにかかるしかねぇ」
こちらの被害を考えている余裕なんかない。
ギルガメシュは剣を構え直すと、2本のデュランダルを引き抜いた。
「…………俺に敗北の文字はない。それが浮かんだ時は……俺が死ぬ時だけだ。勝って、戻ると、俺は決めた」
そう、パルタクスで帰りを待つサラに。約束したのだ。
勝って、必ず戻ると。
「行くぞディアボロス! 死ぬ覚悟は出来ているか!」
ギルガメシュは床を蹴ると、一気に突進した。
足場の悪さも、構いはしない。
ディアボロスが放つ牽制の魔法や火薬ですら、例え直撃してもこの足を止めない。
「うおおおおおおおっ!!!!!!!!」
勝利の為に、ただ貪欲に。
勝てる戦いに勝つ為に。俺が勝つのだと、ただ勝利だけを信じている。妄信的に。
ギルガメシュは、その剣を振り下ろした。
ディアボロスも剣を構え、反撃を試みた。
だが、ギルガメシュは最後の力を振り絞った攻勢を、一気にかけていた。
全ての力を注ぎ込み、躊躇いも無いその連続攻撃。
防ぐのがやっとのディアボロスにとって、その死に物狂いの攻撃は予想外だった。
そして最後の一撃が、ディアボロスの肩から腹まで大きく抉った。
紅い血飛沫が舞う。
「………あ……が、は……ぁっ」
「…………」
ギルガメシュは、血を吐きだして崩れ落ちそうなディアボロスを片手で掴むと、ディープゾーンへと放り投げる。
ドボン、という音と共に、ディアボロスの肉体が沈んでいく。
もう、2度と浮かび上がる事は無いだろうとギルガメシュは思った。
「……………バカ野郎」
最後にそう悪態をつくと、ギルガメシュは膝を折る。
「俺の正義は何処だよ……」
迷宮の床に倒れそうになるのを、必死にこらえて壁へと急ぐ。
だがそこに、異分子の存在を感じ取った。
急速にゼイフェア地下道中央まで近づいてくる、誰かがいると。
さっきのヒューマンやエルフではない。誰かが。
「……誰だ?」
ギルガメシュの問い掛けに、ヒューマンとエルフが不思議そうに視線を向けてくる。
自分達がいるのが変なのかとばかりに。
「お前達じゃない、違う奴だ!」
ギルガメシュが叫んだ時、反対側の、ちょうどディアボロスが入ってきたであろう側の扉が開き、迷宮の薄暗い明かりに照らされた。
「………ギルガメシュ君。ディアボロス君はどこですか?」
セレスティアだった。
手にニケの槍を構え、ギルガメシュへの警戒心を解かないまま、ディアボロスの姿を探す。
「倒した」
「!? そんな……」
遅かった、とセレスティアが呟く中、ギルガメシュは腰を下ろす。
「……強かったさ。あいつにだって、あいつの正義はある。だが、それは俺も同じだ」
「生徒間同士の決闘は禁止ですし、そして殺してしまったとなれば下手すれば退学に……」
「知るかそんな事」
今さら何を言う、とばかりにギルガメシュは呟く。
「あいつも、あいつ自身の正義の為に戦ったんだ。お前が文句言うべき事じゃない」
「そんな事……!」
セレスティアはディアボロスは何処に行ったのかと視線を彷徨わせ、ヒューマンが沈んだ場所を無言で指さした。
「おい、何をす」
ギルガメシュが何かを言うより先に、セレスティアは既に飛び込んでいた。
深いディープゾーンへと。彼の後を追うか、それとも。
彼を助ける為なのか。
ギルガメシュには、解らなかった。
投下完了。後少しで終わりか……。
先輩が貪欲に強さを求める理由は本人も語っているように最強の名を求める為じゃないんですが。
けど戦い続けた事である事をする為に強さを求めた結果、いつの間にか最強を求める事になってたという現実。
ギルガメシュ先輩も人並みに悩む子なのです。
273 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 06:57:09 ID:t7ddibBN
GJ
なんだかギルガメシュ先輩がどんどん人間に近づいてくる。
同時にディアボロスが人間離れしていく気がする。
『俺とお前は鏡のようなもんだ。向かい合って、初めて本当の自分に気付く。似てはいるが、正反対だな』
なんだか某妖精の声が聞こえてきた。
GJ
>> ◆BEO9EFkUEQ氏
ノーム((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
無茶しやがって…まだフェルパーにミンチにされたほうが良かっただろうに…。
>> ディモレアさん家の作者氏
ギルガメシュ先輩が少しづつブレていくのが感じ取れますねー。
しかしながらいい場面で区切るなぁ。
お二方ともジョルジオでした。
276 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 17:14:44 ID:qRSdEdb2
残り容量が微妙すぎる。
普通科ヒューマン♂が腹黒にみえる件
次スレ立てるのは、まだ早い?
容量が微妙だということで、短めの投下します。
今回のお相手はセレ子。前回と被ってますが大目に見てください。
では、楽しんでいただければ幸いです。
いつもの場所。いつもの時間。いつもの待ち合わせの約束。
いつも通り、予定より数分早く。いつも通り、服を気にしながら。いつも通り、髪を直しながら。
二人はまるで、申し合わせたかのように出会った。
「お?」
「あら?」
一瞬、二人の時間が止まった。お互いの顔を驚いたように見つめ、やがてすぐに、笑顔が浮かぶ。
「……久しぶりだな、セレスティア。これからデートか?」
「ええ……そうですよ。バハムーンさんも、ですよね?」
「まあな」
中庭のベンチに、それぞれ腰かける。しかし、二人は同じベンチに座ることなく、ただ隣り合ったベンチで、相手側に座るだけである。
「変わらないんだな、俺も、お前も」
「そうですね。本当に全然、変わりません」
微妙な距離を置き、二人は話す。
「そう、全然……わたくしの気持ちは、あの頃のままなんですよ」
「……やっぱり、気が合うな。俺も、まったく同じさ」
二人は同時に目を瞑り、同時に溜め息をついた。二人の距離さえなければ、まさしくお似合いのカップルに見えることだろう。
「……恋って、難しいです」
「愛なら、お前のお得意な分野なんだろうがな」
「もー、茶化さないでください」
「はは、悪かった悪かった。けど、確かに……お前の、言うとおりだな」
背もたれに寄りかかり、バハムーンは空を見上げた。
「……懐かしいな、セレスティア」
「……そうですね、バハムーンさん」
静かに答え、セレスティアも空を見上げる。あの時も、二人はこうして、空を見上げていた。
二人の中で、時間が巻き戻っていく。隣に座る、愛する者と過ごした時間へと。
恋人同士として過ごした、大切でかけがえのない時間へと。
二人は恋人同士だった。入学してすぐ結成されたパーティに、バハムーンは戦士として、セレスティアは魔法使いとして参加していた。
やはり、バハムーンは他の仲間からはいい目で見られていなかった。そんな中で、セレスティアだけが彼を他の仲間と平等に扱った。
そんな二人が恋人同士となるまで、そう長い時間はかからなかった。先頭に立って攻撃を受け止め、敵を殲滅するバハムーンに、
後ろで仲間を癒し、戦いを補佐するセレスティアは、パーティの仲間としても相性が良かった。
お互いによく話すようになり、じきに冒険以外でも一緒にいる時間が増え、やがて二人は時間が許す限り、いつでも一緒にいるように
なっていった。勉強に戦いにと汗を流し、心身ともに疲れ果てたとき、隣で支えてくれる存在は、何よりも大切だった。
初めてのデートの時は、バハムーンは普段から想像も付かないほど、全身ガチガチに固まっていた。
「バハムーンさん、そう緊張しないでください。別にやましいことじゃないんですから」
「わ、わかってる。が……どうも、な」
デートの誘いすら、彼はどもりながら必死に言葉を搾り出しているようだった。一体彼が何を言いたいのか、セレスティアが先回りして
助け舟を出すことで、ようやく達成できたほどだったのだ。しかし、そんな彼の意外な一面を見たことで、セレスティアはより彼に
惹かれていった。またバハムーンも、彼女の優しさに触れ、より一層惹かれていった。
二人は恋人同士だった。デートを重ね、共に冒険し、勉強を教えあい、体を重ねたことも、何度もあった。
初めての時は、セレスティアがすっかり怯えてしまい、バハムーンは全ての理性を総動員して、前戯だけに留めた。
「ご……ごめんなさい…。でも、でも、わたくし…」
「いや、いい。無理はするな。俺はお前を、傷つけたいわけじゃない」
その後もしばらくは、前戯だけの性交渉が続いた。セレスティアが慣れるまで、バハムーンはじっと耐えた。セレスティアも、
バハムーンにあまり我慢をさせたくはなく、慣れようと必死だった。そんな苦労があったせいもあり、二人が初めて結ばれたときは、
嬉しさもひとしおだった。
「くっ……セ、セレスティア、平気か?」
「うっ、く…!わ、わたくし、嬉しいです……やっと……やっと、バハムーンさんと…」
慣れるまでずっと我慢してくれたバハムーン。慣れるまでずっと頑張ってくれたセレスティア。そんな相手を、二人はこの上もなく
愛しく、また大切な相手だと思うようになっていた。
そのままずっと、同じ関係が続くのだと、二人は信じていた。しかし、実際はそうはならなかった。
愛し合っていた。その気持ちが揺らいだことなど、ただの一度もなかった。
だが、愛し合っているという事実に寄りかかり、いつしか二人は、恋人同士という関係を維持することに怠慢になっていった。
いるのが当たり前の相手となり、自分を愛するのが当たり前の相手となり、やがて二人は、恋人という関係ではなくなった。
愛しているはずなのに、別の異性に惹かれる。二人とも、今までは一度だって、そんな事はなかった。その事実に、二人は驚き、怯えた。
しかし、二人は気付いてしまった。どんなに愛していても、どんなに好きでも、もうお互いに、何の魅力も、刺激も、感じていない事に。
家族になるのなら、きっとそれでよかったのだろう。しかしそうでない限り、もう二人が付き合う必要はなかった。その理由は、もう
完全に消えてしまったのだから。
大好きで、誰よりも愛していて、なのに恋の出来ない相手。何度も何度も、二人は話し合った。時には涙を見せることもあった。
それでも、結果は変わらなかった。そしてとうとう、二人は別れることとなった。
だが、嫌いではないし、愛しているのだ。最後の思い出にと、二人はデートの約束を交わした。
いつもの時間に、いつもの場所で。二人のデートは、いつも変わらなかった。
予定より数分早く合流し、二人は校内を歩いた。一緒に散歩をし、一緒に食事をし、二人の間には笑顔が絶えなかった。その姿を見て、
それが二人の最後のデートなのだと思う者は、誰一人いなかっただろう。
辺りが夕焼けに染まる頃、セレスティアがポツリと呟いた。
「……どうして、好きなだけじゃダメなんでしょう?」
その言葉に、バハムーンが少し間を置いて答えた。
「好きなだけなら、家族も恋人もペットも同じだからじゃないか?」
「それぞれの形が、あるってことでしょうか。だとしたら、わたくし達がうまくいかなくなったのも……何となく、わかります」
「けど、言っておいてなんだが、俺も納得いかねえなあ。お前が、一番好きで、大切なのに……くそ、なんでだろうな」
「わたくしも、同じです。でも……しょうがないですよ。お互いを嫌いになって別れるんじゃなくって、よかったと思いましょうよ」
「そう……だな。それが、いいのかもしれないな」
夕食を一緒に食べ、そして二人はバハムーンの部屋に向かった。もう、デートも終盤だった。
「お前とも、これで最後か」
「言わないでください。寂しくなります」
恥ずかしげに服を脱ぐセレスティア。だが、彼女は今まで脱ぐのを恥ずかしがっており、いつも灯りを消した後、バハムーンが脱がせて
いたのだ。それだけを見ても、もうこれで最後なのだという事実が、はっきり突きつけられているように思えた。
「でも、そうですよね。これで最後なんですから……悔いは、残したくないですよね」
「ああ。セレスティア、今夜までは、ずっと恋人でいてくれ」
服を脱ぎ終えたセレスティアにそっと近寄り、その体を抱き締める。セレスティアは彼の首に腕を回し、静かに目を閉じた。
唇が微かに触れ合う。お互いを焦らすように、二人はしばらく唇だけで触れ合っていた。
やがて少しずつ、どちらからともなく唇を吸い、舌を絡めあう。すぐに貪るような激しいキスとなり、舌の触れ合う音が部屋に響く。
柔らかく、温かい感触。それももう、今夜を過ぎれば感じることはなくなる。だからこそ、二人はいつもより長い間、キスをしていた。
口内を舐め、舌を絡め、唇を吸う。やがてセレスティアが、そっと唇を離した。
「あの……バハムーンさん」
「ん?どうした?」
「あの……その…」
セレスティアはしばらくもじもじしていたが、やがて意を決したように顔を上げた。
「わ、わたくし、バハムーンさんの……な、舐めてあげたいんです」
「え……え!?お、お前が?俺の?」
今まで、ほぼされるばかりだったセレスティアの意外な申し出に、バハムーンは驚いた。しかし、セレスティアは真面目な顔をしている。
「だって、最後くらい……わたくしだって、バハムーンさん、気持ちよくしてあげたいですから…」
「……そうか。なら、してもらっていいか?」
「が、頑張ります」
バハムーンはベッドに座り、セレスティアはその前に跪く。いつも受け入れているものではあるが、改めて目の前に見せられると、
その大きさと形に少したじろいでしまう。
「無理するなよ?」
「い、いえ、最後ですから、無理でも頑張ります」
そっと手を伸ばし、それに触れてみる。触れた拍子にピクッと震え、セレスティアは一瞬手を離しかける、しかしすぐに気を取り直し、
優しく手で包む。そしてゆっくり扱き始めると、バハムーンが呻くような声をあげる。
「バ、バハムーンさん、どうですか?」
「あ、ああ、気持ちいい」
「ですかぁ、よかった」
本当にホッとした声で言うと、セレスティアは彼のモノを扱きつつ、じっと見つめた。何をするのかと思った瞬間、セレスティアは
口を開け、それを咥えた。
「くっ…!セ、セレスティア…!」
「んぅ……ふ、んん…」
少し苦しそうな顔をしつつ、セレスティアはゆっくりと頭を動かす。まったく経験もなく、知識も一応知っている程度なので、
その動きはひどく拙い。しかしその拙さが、彼女の純粋さを表しているようで、バハムーンにとっては大きな快感となる。
時々顎が疲れるのか、動きを止めて舌で舐め、また時には先端を咥えたまま、手で扱く。懸命に頑張っている姿と相まって、バハムーンは
たちまち追い詰められた。
「セ、セレスティア!口離せ!出る!」
「んん…!ん!」
だがセレスティアは彼のモノをしっかりと咥え、手で強く扱いた。さすがに耐え切れず、バハムーンは彼女の口内に思い切り精を放った。
口の中に注ぎこまれる精液を、セレスティアは黙って受け止めていた。しかし、予想以上に量が多い。
「んっ……うぐっ……ふあ!」
たまらず、セレスティアは途中で口を離した。残りは手で受け止め、それまでに出された精液は口の中に溜めている。
「セレスティア、吐いてきていいぞ」
「んんん…!」
セレスティアは首を振り、しっかり目を瞑った。そして思い切り顔をしかめつつ、口の中のそれを必死に飲み下す。
ごくりと大きく喉が動き、セレスティアは目を開けた。しかし、何だか気持ち悪そうな顔をしている。
「おい、セレスティア……大丈…」
「……うぶっ!」
話しかけた瞬間、セレスティアは口を押さえた。
「お、おい!大丈夫か!?無理しないでさっさと吐き出せ!」
バハムーンは慌ててハンカチを差し出したが、セレスティアは頑なにそれを受け取らず、やがてもう一度大きく喉を鳴らし、息をついた。
「……ふえぇ〜、なんとか飲めましたぁ……ケホ…」
「お、お前なあ……無茶するなよ」
「だって、今しなかったら、もうチャンスないんですもん…」
「ま、いい。じゃあ、俺もお返しだ」
「え?きゃ!?」
バハムーンはセレスティアを軽々と抱え上げ、ベッドに横たえた。そして彼女が抵抗する間もなく足を開かせ、割れ目に舌を這わせる。
「きゃあっ!バ、バハムーンさん……あっ!やぁ……舌がぁ…!」
セレスティアの体が仰け反り、体がブルブルと震える。それに構わず、バハムーンは足を動かないように押さえつつ、秘裂を舌で開き、
全体を優しく舐める。舌先で敏感な突起を突付き、丁寧に舐める。
その度に、セレスティアの体がビクビクと震え、腰が跳ね上がる。翼も時折、ばさりと開かれている。
「うあぅ…!あんっ!あっ!や、やぁ……バハムーンさん…!ま、待って!ダメです!それ以上されたらっ…!」
「……ふぅ。もう、限界か?」
口を離し、セレスティアを解放すると、彼女はぐったりと横たわった。そして、とろんとした目で彼を見つめる。
「あの……わたくし、バハムーンさんのが……ほしいです…」
「ああ、わかった」
そのまま彼女にのしかかり、秘裂にそっと自身をあてがう。彼女が頷くと、バハムーンはゆっくりと腰を突き出した。
「はうっ……うあぁ…!」
顔を歪め、苦しそうな声をあげるセレスティア。いつものことではあるのだが、やはり少し心配になってしまう。
「セレスティア、大丈夫か?」
尋ねると、セレスティアは顔を歪めつつも、嬉しそうに微笑んで見せた。
「はい……苦しいですけど、バハムーンさんを、もっと感じさせてください…」
「うあっ!?」
言いながら、セレスティアは自分から腰を動かし、バハムーンのモノをより深く飲み込む。普段はあまり深く入れられなかったのだが、
セレスティアが自分から腰を動かしたことで、バハムーンのモノが根元近くまで埋まっている。
感じたこともないほどの快感に、バハムーンの理性は一瞬で限界に来た。
「ぐっ……セレスティア、悪い…!動くぞ…!」
「はい……んあっ!うくっ!あっ!」
さらに深く押し込もうとするかのように、バハムーンは激しく腰を打ちつける。子宮の中まで入り込みそうに錯覚するほどの衝撃と、
強い鈍痛。それに加え、例えようもない快感がセレスティアを襲う。
「あっ!あっ!バハムーンさん…!もっと、もっといっぱい感じさせてください!」
「ぐうぅ…!セレスティア…!」
ベッドがギシギシと激しく軋み、二人の体から汗が流れ落ちる。腰を打ち付ける度、パン、パンと湿り気を帯びた音が響き、
結合部から愛液が飛び散る。
セレスティアの口はだらしなく開かれ、時折空気を求めるかのように、嬌声の間に掠れた呼吸音を立てる。そんな顔が可愛らしく、
バハムーンはさらに強く腰を叩きつける。
「あっく!かふっ!バハ……バハムーンさん…!わたくし……もう…!」
限界が近いのか、セレスティアの中がぎゅうっと収縮する。
「うあっ!くっ……今ので、俺も…!くっ……セレスティア…!」
彼女の体を抱き起こし、バハムーンはより深く彼女の体内を突き上げる。セレスティアはバハムーンにしがみつき、必死に彼の求めに
応じる。やがて、動きが大きく荒くなったかと思うと、バハムーンは最後に一際強く、セレスティアの体内を突き上げた。
「セレスティアっ…!」
「うあぁっ!な、中で、動いて……熱……う、あ、あああぁぁ!!!」
体内に注ぎ込まれる、熱い精液の感覚。それが止めとなり、セレスティアも全身を震わせて達してしまった。膣内が一際強く収縮し、
まるで最後の一滴まで搾り取ろうとするかのように蠢動する。それに応えるように、バハムーンのモノは何度も何度も跳ね、その度に
彼女の中へと精液を注ぎ込んでいった。
やがて、その動きも少しずつ静まり、そして止まった。二人は向かい合って座ったまま、しばらく荒い息をついていたが、
やがてどちらからともなく顔を上げた。
「……お別れ、なんですよね…?」
「……ああ」
「大好きです。本当に、大好きなんです。でも……もう、終わりなんですね…」
「俺もだ。俺も、お前が好きだ。それはきっと、ずっと変わらない」
バハムーンはセレスティアを強く抱き締めた。腕の中で、彼女は窓から空を見上げた。
「空は、ずっと変わりませんね」
言われて、バハムーンも空を見上げる。
「毎日、ずっと同じ。わたくし達も、そうなれればよかったのに…」
「空だって、季節が変われば姿を変える。星だってそうだ。変わらないわけじゃないさ」
「そう、でしたね。でも、何年経っても、変わりません……どんな変化があっても、毎年変わらず、元の姿に戻ります…」
「……好きなことだけは、変わらない。関係が変わったって、俺はお前が、ずっと好きだ」
腕の中の彼女を、バハムーンは優しく撫でた。
「……ね、バハムーンさん?」
「ん?」
「今夜はずっと……こうしててください」
「……ああ」
繋がったまま、抱き合ったまま、二人は空を見上げた。その夜がずっと明けなければいいのにと、心から願いながら。
「……太陽がきれいですね」
同じことを思い出していたのだろう。セレスティアが、ポツリと呟いた。
「明けない夜はない。空だって変わり続けるもんさ」
「わたくし達の関係も、ですよね。いきなりパーティ脱退なんて、びっくりしましたよ。気にしなくてもよかったのに」
「いや、俺達はそれでよかったが、他の奴等がかわいそうだ。あいつら、俺達に気を使ってて大変そうだったからな」
「あ、そういうわけだったんですか。そういえばクラッズさん、薬飲んでたような…」
「たぶん胃薬だろうな」
そう言って、バハムーンは笑った。釣られてセレスティアも笑う。
一頻り笑ってから、二人は表情を改めた。
「……お前との時間、俺は後悔していない」
バハムーンは、はっきりと言った。
「わたくしもです。あなたと過ごせた時間は、大切な思い出です」
セレスティアも、きっぱりと言いきった。
「今日お前と会えて、よかった」
「わたくしも、同じことを思ってました」
二人は顔を見合わせ、優しく、そしてとても悲しい笑顔を浮かべた。
彼等の間にある距離は、もう決して埋まることはない。久しぶりに会った相手は、変わらず恋人としての魅力を感じなかった。
大好きで、愛していて、しかし恋のできない相手。もう二度と、二人の道が交わることはない。それでも、二人は満足だった。
遠くから、誰かが近づいてくるのが見える。それに気付き、二人はそれぞれ別の方向へ顔を向けた。
「やあセレスティア、相変わらず早いね」
「ふふ。エルフさんは時間ぴったりですね。あ、でも急いでたんですか?服、皺になってますよ」
整った顔立ちのエルフの男。セレスティアは彼に、以前バハムーンに向けたものと同じ笑顔を向ける。
「ごめん、待ったかな」
「いや、早く来すぎただけさ。それよりノーム、寝癖付いてるぞ」
無表情で、それでいて嬉しそうな雰囲気のノーム。彼女にかける声は、以前セレスティアにかけたものと同じ優しさだった。
バハムーンとセレスティアは、一瞬相手の現在の恋人に目をやり、そしてお互いに笑顔を向けた。
「……その人は、知り合いかい?」
それに気付き、エルフが尋ねる。
「ええ。以前、一緒にパーティを組んでたんですよ」
「なるほど、それでね」
一方のノームは、寝癖をクシクシと直しつつ、セレスティアを見つめている。
「……きれいな人」
「なんだ、やきもちか?お前だって、十分かわいいんだからいいだろ」
ベンチから立ち上がり、二人は現在の恋人と共に、それぞれ別の方向へと歩き出した。
もう二度と、会うことが無いとしても。もう二度と、交わることのない道だとしても。
それでも、最も愛する人の幸福を、背中に感じるという幸福を噛み締めながら。
以上、投下終了。容量がやばそうなので、ついでに次スレ立ててきます。
ではこの辺で。
乙。
幸せそうなのに切ないな…
切ない……
乙でした
お互い相手を嫌って分かれるのでないだけよしとしよう、か…。地味に来る言葉だ
年単位で同居して『そろそろいろいろ面倒だから結婚するか』みたいな未来もあったのかなぁ
出来ちゃったで退学。冒険者への道は諦めて
二人だけのささやかな幸せを守ると言う
選択肢を選んだ生徒も多いんだろうな
..と思うのはここの見すぎなんだろうか?w
..出来ちゃったら三人かw
自爆スマソ。