純愛SS『其の5』

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404かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:46:01.73 ID:XjxK0GL3
「ん……」
 唇の端からこぼれる吐息を、頬の辺りに感じながら、ぼくらはベッドの上で重なり合う。
 抱きしめる腕に力がこもりそうになるけど、なんとか抑えて体を離した。
 仰向けの体勢で、彼女がぼくを見上げている。
 まだ両手で胸と下腹部を隠していたので、やんわりとその腕を取った。
 眼前に、真っ白な乳房と股の茂みが現れる。
 ようやく彼女のすべてを、この目に映すことができた。
「今から……いい?」
 何度か短いまばたきを繰り返し、それから視線を上下させて、それからようやく彼女は
頷いた。
「これで……あなたのものになれますか?」
 今度はぼくがまばたきをする方だった。
「えっと、君は君だよ。ぼくのものじゃない」
「そういうことじゃありません」
 その真剣な目に、ぼくは少し気圧された。
「あなたと出会えたことが、私は本当に嬉しいんです。こうして恋人になって、抱きとめて
くれるあなたがいることが、言い表せないくらい嬉しくて……そんなあなたに、私はすべてを
あげたいんです。私を幸せな気持ちにしてくれるあなたに、全部あげたい。だから、私は……」
 言葉が途切れる。
 彼女の気持ちはわかる。ぼくにも、少なからずそういう気持ちはあるから。
 だけど、一方通行じゃ駄目なんだ。
「じゃあ、ぼくも」
「え?」
「君のものになりたい。ぼくを、君のものにして」
 素敵な時間を、幸せな気持ちをくれた君に、ぼくのすべてをあげたい。
 ぼくはきちんと受け止めたい。だから、君もしっかり受け止めてほしい。
 彼女はしばらく呆然としていたけど、やがて小さく微笑んで、こくんと頷いた。
 目が少し潤んでいるのを尻目に、額に優しくキスをする。
「愛してる」
 短く発した言葉に、彼女の目から涙が一筋こぼれた。
「私も……愛してます」
405かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:50:06.25 ID:XjxK0GL3
 
 避妊具を着けて、彼女の両脚の間に体を入れる。
 ゴムに包まれた先端を入り口にあてがうと、彼女の体がびくりと反応した。
 ぼくは彼女の髪を一度撫でて、それからゆっくりと押し入った。
「ん……」
 呼気を洩らす彼女の表情は、それほど歪んではいない。
 まだ先の方しか入っていないせいだろうか。苦痛ではなさそうだった。
 様子を見ながら、ぼくは慎重に腰を前へと押し進めていく。
「痛い?」
 彼女は不思議そうに首をかしげた。
「いえ、今のところは……少し圧迫感はありますけど。それより、どうですか?」
「何が?」
「気持ちいいですか?」
 ぼくは思わず押し黙った。
 気持ちはいい。なんというか、落ち着く。ただ、まだ先の方しか入っていないので、
思ったほどの快感は得られていない。入れた瞬間放出してしまうんじゃないかとさえ
思っていたのだけど、そんなことはなかった。
 とはいえ、奥に突き入れて好き勝手に腰を振れば、簡単に射精してしまいそうな
気がする。
「気持ちいいよ。今はちょっと心地いい感じ」
「そう、ですか」
 よかった、と息をつく。
 ぼくは彼女の腰を抱え込んで、もう一段深く逸物を沈めた。
 狭い膣内はそれなりにぬかるんでいて、案外スムーズに進むことができた。それでも
抵抗は強く、次第に彼女の顔が苦しげに歪み始める。
 ぼくは動きを止めない。乱暴な真似は絶対にしないけど、確実に奥へと入っていく。
 泣き言を言わない彼女のことを思うと、ここで止めることなんてできなかった。
 彼女の手がシーツをぎゅっと掴んでいる。
 細い指が、調えられた白い布をぐちゃぐちゃに乱すように掴んで離さない。
 それでも、やめてとは言わなかった。
 ぼくはできる限り優しく、彼女の中へと進んでいった。
406かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:51:33.57 ID:XjxK0GL3
 しっかりと埋め込むまで、五分はかかっただろうか。
 彼女にそっと呼びかけると、とても深いため息が返ってきた。
「……おつかれさまです」
「いや、まだ終わってないけど」
「でも一段落は迎えましたよ」
「うん。感動してる」
 目を丸くする彼女がおかしい。
 愛しさが膨れ上がって、胸がいっぱいになっていた。彼女とつながっただけで、こんなにも
気持ちが抑えられなくなるなんて。
 彼女の顔に小さな笑みが生まれた。
「これって、なんなんでしょう」
 胸に手をやり、祈るように目をつぶる。
 眠るように穏やかな顔で、内側にめぐる想いに浸っている。
「きっと、愛しさに限りはないんですね」
「うん」
 数値化もできなければ、限界もない。ときにあやふやになることさえあって、愛情とは
必ずしも確かなものではないかもしれない。
 それでもぼくらは何かをはっきりと感じていて、それはきっとお互いじゃなければ駄目
なんだ。
 君じゃなければ、駄目なんだ。
「どうぞ、動いてください」
 彼女に促されて、ゆっくりと動き始める。
 中は潤っていて、動かすのに支障はない。腰を引いて、それから前に押し入って、短い
往復を開始した。
 強い締め付けに、ぼくはあまり激しく動かすことができない。刺激が強くて、動きを速めると
あっという間に達してしまいそうになる。
 彼女は呼吸を乱しながら、しかし声を上げないようにしている。
 奥を突くと、痛そうに眉をしかめた。
 できれば奥まで突き入れて、大きく腰を動かしたい。中をかき回すように蹂躙したい。でも
それはさすがにはばかられる。ぼくは自制して、中の浅い部分を動き続けた。
 しばらくすると、彼女がぼくの手を握ってきた。
「ん……体、火照っちゃいますね」
 少し余裕が出てきたのか、口調は軽い。
 彼女の手は温かかった。
 つながって、いろんなところが触れ合って、互いの温もりを感じ取って。
 動き続けると汗がにじみ出てくる。腰の奥から痺れるような快感がせり上がってくる。
 一方彼女は、最初に比べたらだいぶ慣れてきたみたいだけど、やはり快楽を得るには
到っていないようだ。
 今のぼくでは彼女をきちんと気持ちよくさせることはできない。せめて痛みを与えない
ように心掛けた。
「大丈夫?」
「あ、はい……なんだか、不思議な気分です」
「不思議?」
「満たされていくような、そんな感じです」
 充足感ということだろうか。なんだか嬉しくなる。
「気持ちいいの?」
「それは……あんまり」
「……」
 わかってはいたけど、直接言われると結構堪える。
「あ、で、でも、すごく優しくしてくれてるから、もうそんなに痛くないんですよ」
 それってフォローになるのかな?
 まあ、ぼくもまだまだ頑張らないといけないんだろう。
407かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:53:04.12 ID:XjxK0GL3
「ちょっとずつレベルアップしていかないといけないかな」
「レベル、アップ?」
「これから何度もこういうことするんだから、慣れていかないとね」
 彼女の顔が真っ赤になった。
 精神的な充足も大事だけど、男としては肉体的な充足も与えたい。
 今回は仕方ないけど、次からはもっと。
「わ……わ、私も……頑張ります、ね」
 たどたどしく宣言する彼女がかわいくて、つい彼女を抱きしめてしまう。
「んんっ、いた……」
 深く奥を突いてしまって、彼女が苦痛の声を上げた。
「ごめん。でも」
「ん……平気です」
 彼女が応えるようにぼくの体を抱きしめた。
 そのままキスをして、舌を絡ませ合って、体を少しだけ強く動かして。
 性感を刺激されて頭が茹っていく。放熱をするように中から何かがこみ上がってくる。
 高まる欲に突き動かされて、ぼくは彼女をひたすら抱いた。
 快楽の波に流されて、そのまま少しも我慢することなく絶頂を迎える。
「や、ああ、い……、んっ……」
 彼女が痛み混じりの嬌声を上げてしがみついてくる。背中に爪を立てられて痛みが
走った。
 ぼくは膨れ上がった欲望をすべて吐き出すように断続的に射精して、ゴムの内側を
白濁液で満たしていく。
 痛みにも似た快感は、射精を終えると急速に薄れていった。
 ただ、心地良い疲労感が絶頂の余韻とともに残っていて、彼女の体を抱きしめながら
それに浸るのがたまらなく気持ちよかった。こうしてつながったまま、一緒に眠りたいとも
思う。
 しかしそういうわけにもいかないだろう。避妊具から精液が洩れてしまうかもしれないし、
お互いに汗もかいている。部屋には匂いが充満していて、シーツは乱れてぐしゃぐしゃだ。
ぼくは名残惜しくも彼女の中から逸物を引き抜いた。
 彼女が仰向けのまま、体を隠しもせずにぼうっと放心している。
408かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:53:47.62 ID:XjxK0GL3
 心配になって声をかけた。
「大丈夫?」
 彼女はぼくの顔をぼんやり眺めて、小さく小首をかしげた。それからゆっくりと息を吐き出す。
 不意に今の自分の状態を自覚したのか、慌てて体を起こそうとした。しかし力が入らずに
手が滑ってしまう。背中に腕を入れて抱き起こすと、彼女は小さな声でありがとうございますと
言った。
「あ、あの」
「ちょっと待って。外すから」
 液がこぼれないように避妊具を取り外し、口を縛ってゴミ箱に捨てる。小さくなった性器を
ティッシュで拭いて、それも捨てた。
 改めて向き直る。
 目が合うと、彼女が恥ずかしそうにうつむいた。ぼくの方もつられて照れてしまう。
「……あの」
「うん」
 何か彼女は言いたいようで、ぼくは落ち着くまで辛抱強く待った。
 やがて顔を上げると、彼女は上目遣いにこちらを見つめてきた。
「……私、今すごく幸せです」
 率直な発言にぼくは咄嗟に返事ができない。
 深呼吸をして、彼女の言葉を反芻する。
 そんなの、ぼくだって、
「ぼくの方こそ、今すごく幸せだ」
 その言葉に、彼女ははにかんだ。
「これからも、こんな幸せが続くんでしょうか」
「続かせたいなあ。君がよければだけど」
「……そんなの、答えなんて決まってます」
 そう言うと、彼女はぐっと顔を寄せてきた。
 ちょん、と。
 掠るように一瞬だけ唇を重ねて、そっと体を離す。
「一緒に、続けていくんです。いつまでも」
「……うん」
 同意して頷くと、彼女は嬉しそうに笑った。
409かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:57:07.18 ID:XjxK0GL3
 
          ◇     ◇     ◇

 夜空に大輪の花が咲きました。
 鈍く大きな音が夜の街に響き、地上にいる私たちの胸にもずしりと重い衝撃が届きます。
 大きな一発を皮切りに、次々と色鮮やかな花が咲き乱れ、光跡をうっすらと残して闇に
吸い込まれるように消えていきます。
 私は今、商店街の通りにいます。
 周りにはたくさんの出店が並び、たくさんの人が行き交っています。
 今日は夏祭り。
 隣にはもちろん私の大切な人がいて、ともに浴衣姿です。ちょうど一ヶ月前、縁日の夜に
着たのと同じものです。
「綺麗ですね、花火!」
 私は柄にもなく興奮していました。花火なんて、ずいぶん久しぶりなものですから。
「去年もやったんだけど、見なかった?」
「去年は部屋に引き篭もっていましたし」
「……あの家ちょっと離れてるしなあ」
 彼は納得したようにつぶやきますが、ちょっと呆れられているかもしれません。
「いいじゃないですか。こうして今年、見ることができたんですから」
 彼の手を握り、にっこり笑いかけます。
「あなたと一緒に見ないと、意味ありませんしね」
「……そうだね」
 彼もきゅっと握り返してきます。
 この人の本当の彼女になりたいと、ずっと思っていました。
 でも、とっくに私は彼のものになっていました。あの初めての夜より前から、ずっと私たちは
想い合っていたのですから。
 大事なのは行為ではなく、想い。
 それに気づいたのは、ごく最近のことです。
 私は彼に抱かれることで、本当の彼女になれると思っていました。逆にいうと、そうしないと
なれないと思っていました。
 そんなわけありません。確かに契りを交わすのは特別なことかもしれませんけど、あくまで
一行為です。多くのふれあいの中の一つにすぎません。
 ちゃんと向き合って、想いが通じ合えば、それでもう十分なのです。
 それよりも、その想いを断たないように、継続していかないといけません。それはとても
難しいことです。想いはあやふやで、数値化できるものでもありませんから。
 だけど、同時に想いに限界はありません。
 これから私は彼のことをもっともっと好きになっていくでしょう。いろんな面を見つけて、その
中には気に入らないものもあると思いますけど、それも含めて好きになっていくでしょう。
 限りない愛情がどこまで膨らんでいくか、見当もつきません。でも私は今、彼の隣にいて、
同じ景色を見ることができ、そのことを嬉しく感じています。
 ともに歩める位置にいます。
 私は彼の彼女です。でも、それだけでしょうか。
 他になりたいものは?
410かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:58:50.31 ID:XjxK0GL3
「……くん」
 小さく、喧騒にまぎれるように彼の名前をつぶやきます。
 彼が顔を上げました。今の声が聞こえたのでしょうか。
 夜空に何度目かの花火が上がりました。
 私は顔を伏せ、遅れて届いた音にまぎれてつぶやきます。
 彼が目をしばたかせました。
 聞こえたでしょうか。きっと聞こえなかったと思います。
 いいのです。これは別に聞かせるつもりで言ったわけではありません。
 その思いを確固としたものにするために、口にしただけです。
 私の心に深く刻み込んで、いつの日かそれが叶いますように――



「ぼくも君と結婚したい」



 瞬間、私はびっくりして、彼の顔を凝視してしまいました。
「き、聞こえたんですか? 今のつぶやきが」
 彼は小さく微笑みます。
「自信はなかったけど、ひょっとしたらと思って」
「……あてずっぽうで変なこと言わないでください」
「外れてた?」
 私は言葉に詰まり、無言で首を振りました。
 彼は嬉しそうに口元を緩めて、
「よかった。すごく嬉しい」
「私たち、まだ高校生ですよ?」
 自分で言っておきながら、そんなことを口にします。
「じゃあ婚約ってことで」
「いつになるかわかりませんけど」
「ぼくは構わない」
「……気持ちが離れたりするかも」
 彼は肩をすくめました。
「確かに可能性はあるけどね」
「……」
「でも、君はもうぼくのものだから」
 心臓が一際大きく跳ねました。
「絶対に離さない」
 彼の手に力がこもります。
 痛いくらいに強く握りしめてきて、私は苦しくなります。なんだか心臓を直接絞られている
ような、そんな苦しさが胸に渦巻きました。
411かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 00:59:34.40 ID:XjxK0GL3
 負けないように歯をぐっと噛みしめて、手に力を込めます。
「私も、離れません。離しません」
 あなたは私のものだから。
 いつまでも一緒に。
「私、なりたいものがたくさんあります」
「うん」
「あなたと家族になりたいです」
「うん」
「パートナーに」
「うん」
「夫婦に」
「うん」
 一つ一つ頷いてくれる彼は、きっと私の一番の願いがわかっているのでしょう。その一言を
待っているようでした。
 私は大きく深呼吸をしました。
「あなたと一緒じゃないと、なれないんです」
「うん」
「だから、これからも――ともに歩んでくれますか?」
 彼は私の顔をじっと見つめ、私の大好きな笑顔で答えました。
「喜んで」



「……ところで、今日は泊まっていきますよね?」
 私が訊ねると、彼は目に見えて動揺しました。
「えっと……いいの?」
「今日はずっと一緒にいたい気分なんです」
 ほどよい高揚とともに、私は言葉を重ねます。
 彼は虚空を見上げてため息をつきました。
「女の子ってすごいね……」
「なんですか、それ」
 つないだ手をそっと組み替えて、指を絡めます。
 それだけで、ドキドキが強くなりました。
「今夜はいっぱい愛してくださいね」
「……頑張ります」
 彼のため息混じりの返事に、私は小さく笑いました。
412かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/07/22(金) 01:09:23.13 ID:XjxK0GL3
以上で投下終了です。
一応これで、このシリーズは終わりです。
あと一話だけ、外伝的な話を書くかもしれませんが。

ちなみにこれまでの話は>>337の保管庫、もしくは

>>97-103
>>109-128
>>224-234
>>304-309

を参照ください。
長々とスレ占領失礼しました。
413名無しさん@ピンキー:2011/07/22(金) 02:28:46.76 ID:m9DUZfmh
>>412
GJ

かおるさとさん待ってました!
414名無しさん@ピンキー:2011/07/22(金) 12:45:38.72 ID:vuX2ujyc
>>412
やった!
待ってました。
これが最終回とは残念です。




ちくしょう…………このカップルかわいいな…………
415名無しさん@ピンキー:2011/07/25(月) 20:25:44.80 ID:Pz6KPJc4
>>412
完結ありがとう!
僕も黒髪の乙女好きですw
416名無しさん@ピンキー:2011/07/28(木) 20:22:07.91 ID:vXEjz2v1
>>412
遅ればせながらGJ!
二人の初々しいやりとりにニヤニヤしちまったわ
417名無しさん@ピンキー:2011/08/01(月) 00:06:05.17 ID:Ze/hM5Bi
>>412
読む暇がなくて遅れてすみません

かおるさとーさん、ありがとうございました!!
このシリーズが終わってしまったのは寂しいけど、外伝楽しみに待ってます!!!

ああ、保守しといてよかった
418名無しさん@ピンキー:2011/09/01(木) 00:32:38.63 ID:UOGI825S
保守
419名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 01:30:46.83 ID:WSyCgqcd
一か月以上放置しても落ちなくなったの?
420名無しさん@ピンキー:2011/09/15(木) 06:21:37.99 ID:yuVj458l
純愛は愛
421名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 23:42:32.34 ID:9qjUz3mK
このスレって前から落ちにくいよな
ひょっとしたら、運営側がこのスレッドが気に入ってて、
落とさないようにしてくれてるんじゃないかと思うことがたまにある

まあ自分勝手な妄想だけど、そうだったらありがたい
422名無しさん@ピンキー:2011/09/27(火) 18:36:24.42 ID:01WuiGnV
取り合えず作品投下を待つのみ
423 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/09/30(金) 05:20:34.33 ID:UasszfMK
保守
424 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2011/10/14(金) 15:46:40.09 ID:q3Wb149R
保守
425名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 02:38:42.01 ID:AvgidulC
そも、純愛とは何ぞや
426名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 07:40:09.09 ID:TR/eDnT6
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世

エロなしSS予定は無いのでしょうか?
427しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:00:22.95 ID:G+UuE8Ri
突然スイマセン。いつもスレを拝見させてもらっている者なのですが、私もお話など
投下させてもらっても良いでしょうか?
ファンタジー系の作品で、また登場人物もいわゆるケモノ系のキャラクターとなりますが
自分なりに『純愛』を反映させてみたつもりです。
どうか読んでやってくださいませ。
428しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:00:39.90 ID:G+UuE8Ri
【 1 】

 ふと見上げた初夏の空には、伸ばす手に触れてしまえそうなほどの青が一面に溢れていた。
――いやだいやだ……あんなに空が青い。
 そんな青空の眩しさに眩暈を覚えたような気がして、白毛の獣人・ペインは歩みを止める。
 僅かに弾む呼吸の乱れを整えながら、今まで辿ってきた道を振り返りため息も一つ。首都帝都から北へ遠く
進んだ禿山の5合目――そこが今自分のいる場所であった。
 その広大さゆえ、外縁から緩やかに円を描くようにして登るこの山の制覇には、実に気の遠くなるような
時間を要する。
 今の行進も『登山』というよりは『丘越え』と言った方が適切だ。おかげで自慢の健脚に任せて夜明け前から
始めたそれも、正午をとうに過ぎてもなお、5合目をようやく踏みしめたばかりという有り様であった。
「目的の村はこの8合目……陽が暮れるまでに辿り着けるかどうか心配なのね」
 途端、今までの疲労が一気に背中へとのしかかったような気がしてペインは深く長くため息をついた。
 そうして山道から路肩へと外れ、その傍らにあった岩のひとつに腰を下ろす。
 改めてそこから望む禿山の壮観には、まともな樹木の類はほとんど見当たらない。ただ山道の路肩や岩肌の一角

に、
へばり着くよう生える僅かばかりの緑しか確認できない荒涼とした眺めは、この土地の貧しさを如実に物語ってい

た。
 同時にそんな光景はどこか、今は遠き己の故郷の姿をもまた想起させるようで……
「これだから田舎は嫌なのよ……」
 そんな記憶の再生にペインの心はさらに重く沈んだ。
 こう見えて彼・ペインこそは、とある一国の第一王子であったりする。そんな彼の一族が統治をする
北都レイノートもまた土地の枯れた国であった。――否、『枯れている』どころかまともに植物すらも
生えてこないそこは、氷と極寒に支配された最北最果ての地である。
 王族であることの例外もなく、そこでの暮らしは全てを切り詰めた過酷なものであった。
 特産品はおろか、鉱物資源の採掘すら期待されない氷の大地では、おのずと民達の暮らし方も決まってくる。
妙齢になれば女は性を商品とし、男はその環境で培った屈強な肉体を傭兵という商売のなかで切り売りしていく。
……そんな暮らしは、『地獄』以外の何ものでもなかった。
 今のペインの『王家の習いに則った武者修行』もまた、外貨獲得の為の出稼ぎと、そして自国の保護と援助を
諸外国に交渉する外交というのが正直なところである。
 そんな使命を帯びて諸国を漫遊する多感な年頃の王子(ペイン)にとって、他国と自国との在り方の違いはあまり
にも衝撃的であった。
429しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:01:00.38 ID:G+UuE8Ri
 他国の民達は、多少の貧富の差はあれど実に裕福で、そして実に自由に生を謳歌していた。
 そんな現実を目の当たりにしペインは自国の在り方と、しいては自分達種族の生き方に強く疑問を持ったのだっ

た。
 国とは何か? そして、そこに生きる意味とは?
 我が身を売ることでしか糧を得ることの出来ない国などに存在価値などあろうものか? 民を苦しめる国の
どこが愛しいものか――民を苦しめる国を愛することのどこが誇りであるものか。
 常々自問することではある。
 しかしそんなペインの想いとは裏腹に、臣民達にこの国を『愛する』ことへの疑問を抱く者などは、ただ一人と
して存在しなかった。それどころかそんな国の民であることに誇りすら抱いているのだ。
――まさに呪いだ。
 そしてそのことを考える時、決まってペインはこの結論にたどりつく。
 護るべき力を持たぬ統治者など滅んでしまえばいい。そして――
「……愛される価値の無い国なんて、滅んでしまえばいいのね」
 そう思ったからこそ、多感な少年は今日の自分へと至っている。
 帝都に着いたペインは王族の肩書を――『ペイン・レイノート13世』の名を捨てた。自分の代を以てレイノート

家を
終わらせてやろうと考えたのだ。
 そのことを知れば民達はさぞそれに悲しみ、そして自分に失望することだろう。しかしそれよって皆が目覚めて
くれるのならば、そしてかの地より開放されるのであるのならばそれはきっと、国民達にとって正しい選択である
はずなのだ。
 むしろ民達にそれ決起させることこそが、レイノート最後の王族となるであろう自分の、最大最後の宿題の様に
すら今のペインには思えていた。
 と――。
「あぁ、ダメダメ。こんなこと考えてたらちっとも楽しくないのね」
 ふと山脈にこだました野鳥の声に我へ返ると、ペインはそんな郷里への念を振り払った。
「こんな気持ちじゃ、いい仕事が出来ないのよ」
 自分に言い聞かせるよう独りごつると、肩掛けカバンを漁りそこから数枚の資料を取り出す。これより訪れる
村の、『ミルクドラゴン』の資料だ。
 そうして再び山道に戻り歩き出しながら、ペインはその資料を読むことに没頭する。
 ともあれそうした経緯から王族を捨て自由に生きてやろうと思ったペインは、かねてより興味のあった
『ある仕事』についていた。
430しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:01:53.50 ID:G+UuE8Ri
 それこそは、風俗ライター。
 帝都の一出版社から発行されている風俗誌『テラ・べっぴん』にて、『人外フーゾク特集』の連載を勤める
『みこすり丙淫(ぺいん)』こそが、王族でもレイノート種族でもない、今の自分であった。
 もとよりペインを始めとするレイノート種は、苛酷な環境に暮らしている性質上、非常に精力の強い種族――
要は『スケベ』であった。
 かの極寒の地では、一人の人間が成人に至るまでの生存確率はきわめて低く、そんな生存のアベレージを少しで

上げる為に、レイノート種は繁殖力を持ってそれをカバーする。かくいうペイン自身も例にもれず、その愛くるし

仔犬然とした風貌からは想像もできぬほどに絶倫で、そして底無しの精力の持ち主であったりする。
 故に初めて帝都における性の奔流を目にしたペインは下心に胸高鳴らせると同時、それに対して強く感動もした
のだった。
 ここにおける性とは、外貨稼ぎや種の保存などという『生き延びる為の手段』ではなく、あくまで『娯楽』の
一部であった。そのことに感動した。
 食を嗜み、着飾ることを喜び、そして性(こい)することを楽しむ――それら人間にとって当たり前の営みを知る
ことにより、ペインは初めて己が『人』であることに覚醒した。
 そんな感動こそが、今の自分の原風景である。
 そして、そんな原初の強き感動を他の人々に伝えたいとペインは思った。
 その結果、新生した自分こそが、『みこすり丙淫』であったというわけである。
 それからというものペインは、傭兵家業で日銭を稼いでは色町に通い、そこでのサービスや女の子の特徴を
こと細かに記録して回った。
 時にはボッたくられて痛い目をみることもあったが、そんなこともあの極寒の地での過酷な生活に比べれば、
むしろ刺激に満ちた楽しい経験であった。
 そうして原稿が溜まると出版社にそれを送るを繰り返し、ついにこの春――投稿を続けていた風俗誌『ギガ・べ
っぴん』が
新雑誌『テラ・べっぴん』に新創刊されるのを期に、ペインも晴れて念願の風俗ライターへと起用されたのであっ
た。
 そしてそんな記念すべき連載第一回目――『ミルクドラゴンの女の子特集』の取材をすべく、ペインはかの種族

集落があるというここを半日以上もかけて登っているという訳である。
431しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:02:54.57 ID:G+UuE8Ri
「ミルクドラゴンはいいけど、エッチの最中に頭かじられちゃったりしなかろーね?」
 なにぶん強行スケジュールで挑んでいる今回、出立時にはろくに目も通せなかった資料を改めてペインは確認する。
 件のミルクドラゴンは自分達同様にその種の存続が危ぶまれている種族であるのだという。
 ミルクドラゴンにも、大きく分けて翼竜型のモノと人竜型とで二種があり、絶滅が危ぶまれているのは後者の
者達であった。
 翼竜のタイプと違い翼の退化してしまった人竜は一箇所の土地に留まらざるを得ず、結果今日の衰退へと道を
歩んでしまったのだという。
 あるときは守護神、またある時は破壊神――斯様にして太古より、コインの裏表のよう正邪一体として崇められて
きた竜達も、とどのつまりは今のミルクドラゴン同様に、何らかの退化によってひとつの土地・環境にしか適応
できなくなってしまった竜の末路であるのだ。
 口碑されるその正邪とて、竜が訪れることによって起こる『環境の変化』がどう原住民の生活に反映されたかの
結果でしかない。恩恵を受けた種族にとっての竜はまさに『神』であるが、一方で厄害を被った種族にとっての
彼らはとんだ『悪魔』だということになる。各所に伝わる竜の伝承に破壊と創生の違いが見られるのは、まさに
この『結果』なのだ。
 そして今回のミルクドラゴンも、先達の竜達と同じよう退化しこの地に留まったミルクドラゴンの末裔という
訳であった。しかしながら先の話と違う点は、ここには彼女達以外の生命体がもう数えるほどしか生息しなくなって
しまったということである。
 かの地へ降り立ったその頃には、生活を共にするパートナーがまだここにもいたことだろう。しかし長き年月の
中でそれらは淘汰され、ある者は去り、いつしかこの禿山には彼女達ミルクドラゴンしか住まう者はいなくなって
しまっていた。
 この山の荒れ様は今も実感している通りである。こんな植物すらまともに生えてこないような場所において彼女達は、
今も雨露を舐めるようにして暮らしているのだ。 
――こんなところに留まっていては、増えるものも増えないだろうに。
 そんな彼女達の境遇が、ペインの中にある郷里への念を再び呼び覚ます。
432しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:03:19.82 ID:G+UuE8Ri
――竜の全てが神格化されて恐れられていた時代なんてとうに昔のこと。
  なぜ山を降りて、他の生き物達と共存の道を選択しないのか。
 確かに今もかの竜を信仰の対象として崇め奉り、はたまた禁忌として扱う地域は存在する――が、しかし。
多くの種族は竜への知識を正確に図り、近年となっては良き隣人としての付き合い方もまた確立しているのだ。
 それ故この禿山に縛られ続けるがために身売りを余儀なくされている貧しきドラゴン達の姿は、同様に極寒の地で
か細く生きる己が臣民達の姿と重なって、いつまでもペインの心を重くするのだった。
 そうして再び立ち止まりペインは空を見上げる。
「まったく、僕は余計なことを次々と。……全部この空が悪いのね」
 さらには身勝手に独りごち、鼻を鳴らすようにため息をひとつ。
 しかしながら考えなくてもよいことばかり考えてしまうのには、この山と空にも原因があるように思えた。
 高低の境界を見失うほどに雲ひとつ無い青空と、一方で一切の光彩を消失させた禿山の光景は、そのどれもが
悠久泰然としすぎていてあまりにも変化に欠ける。
 こうまで周囲の景観に変化がないと、やがては自分がいま何所を歩いているものか、さらには時間の知覚にまでも
それは影響をして、そこを行く者の精神を混乱させる。そうした距離感の喪失はやがて、外の風景ではなく内なる
己の心をのぞき見ることに意識を集中させてしまうのだ。
 古の僧達は修行の一環として登山を繰り返し行ったというが、それは肉体や精神の鍛錬にのみならず、煩悩や
懊悩を持つ自分自身と向き合う為にも行われていたことなのだろう。
 清廉なる志の下、真摯に己と向き合おうとする彼らにとっては有意義なものであるのだろうが――今まさに
『女を買う為』に山を登る俗物(ペイン)にとってのそれは、けだし拷問以外の何ものでもなかった。
 故に今日のペインは空を見上げるたびに、
「いやだいやだ……あんなに空が青い」
 故郷のことを思い出し、そして自分の矮小さに気付いては気を重くしているのだった。
「はぁ。こうなったら歩くことに集中するのね。村について女の子に会えればきっとこんなこと忘れちゃうのよ」
 やがて手にしていた件の資料を荒っぽくバックにしまうと、ペインはさらに歩みを速めた。
 修行僧でも神様でもない自分に、今の懊悩を消し去れる術が無いことは誰よりも判っている。ならば今はただ
歩くことだけに集中しようと決めた。
 もう、何を思い出そうと考えようと関係ない。ただ内なる声に耳を閉じて歩き続けるのみだ。
 そうしてひとり山道を行くペイン――目的地も己の中の答えもまだ、どちらも遠く険しい道程なのであった。
433しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:03:38.26 ID:G+UuE8Ri
【 2 】

 ひどい頭痛で目が覚めるとそこは――見知らぬ部屋のベッドの上であった。
「あれ……ここ、どこ?」
 そうして依然横たわったまま、首だけ動かしてペインは部屋の中を見渡す。
 石畳の床にレンガ造りの暖炉、飾り気の無い角材を組み合わせただけのテーブルに椅子が二脚――と、そして今
自分の寝ている巨大なベッドがこの部屋の調度の全てであった。
 巡らせていた視線を再び石造りの天井へと投じ、改めて自分がここにいる経緯を思い出そうとする。
 が、しかし――
「なんだろ? ――まったく思い出せないのよ?」
 呟く通りそれらを思い出すことは叶わず、山道を登っていた以外の記憶は切って取られたかのよう頭の中から
無くなっていた。
 しかしながらいつまでもこうはしていられない。
 体を起こし、とりあえず今の状況を少しでも把握するべくベッドから降りようとしたその時であった。
『あ。目覚めたんだ、君』
 突然の女の子の声。それに驚いて声の方向に振り向くと同時――
「わ、わわわッ」
『きゃ、危ない!』
 うまく足腰に力の入らないことから前のめりに倒れそうになるペインを、声の女の子は駆け寄り抱きとめた。
「んむむ〜」
 抱きとめられ豊かな胸の谷間に顔を埋めるペイン。胸当て一枚越しに感じられる豊満な乳房は水風船のような
艶と弾力でペインを迎える。その肉圧の中に飲み込まれていく暖かな感触はまるで、赤ん坊に還ったかのようだ。
『まだムチャしちゃダメだよ。恐いんだからね、高山病は』
 笑みを含みながら諭す彼女の声もまた、母親のように穏やかで心地よくペインの耳に届く。
「あ、あの――」
 そうして抱きしめられている胸の中から、おそるおそる声の主を見上げるそこには――雌の人竜(ドラゴン)が
一人、ペインに優しげな微笑を向けてくれていた。
 そんな彼女の微笑とそしてその姿に、ペインは息を飲んで見蕩れる。
 大麦の稲穂のよう綺麗な三つ網に編みまとめられた黄金の髪で背を覆う少女。そんな毛並みがランプのほのかに
紅い照明を受けて煌めく様は、晩秋の風景画さながらになんとも優しくそして心暖まる印象をペインへと覚えさせる
のであった。
434しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:03:59.46 ID:G+UuE8Ri
『大丈夫? もう落ち着いた?』
 そして再びの問いかけに我へ返ると同時、
「え? あ、うん。――あ、ごめんなさいなのね!」
 ペインはその胸に触れていたことに気付き、急いで離れた。
 平素日頃ならば、妙齢の女性に対しては半ば挨拶のようセクハラをするペインではあったが、さすがに命の恩人
(おそらくは)に対して無礼を働く訳にはいかない。
『うふふ、いーんだよ。遠慮しなくても』
 そう言って快活に笑う彼女をペインは改めて確認する。
 体長は2メートル弱ほど――面長の穏やかな面持ちと、洋梨のように下半身へ向かって脂肪を蓄えた豊満な体型は
人竜特有のものであった。
 しかしながら何よりもペインの目を引いたのは――やはりその胸元。
 たわわに実った乳房は赤の胸当て一枚では覆いきれず、あふれ出した下乳房をその下から大きくはみ出させていた。
――Iカップ……ううんJ? いやいや、もはや人間(ひと)を測る数値じゃ
  この子は測りきれないのね。
『気分はどう? 頭とかはもう痛くない?』
 語りかけながら、少女は入ってきた小屋のドアを閉じる。
 そうしてペインへと背を向けるその瞬間、風を孕んだ腰布がふわりと舞い上がって露となる腰元にも、
――むむむ、これは!?
 その一瞬の中で見えた尻根のラインにもペインはさらに目を見張る。
 胸当て同様赤のショーツに包まれた臀部――乳房に負けぬビックサイズのそれはたっぷりと脂肪を蓄えつつもしかし、
――大型獣人の体型なんて脂肪質か筋肉質かの大味なものだとばかり
  思っていたけれど……この子、スゴク綺麗なのね。
 メリハリ良くくびれた腰元に引き締められた彼女の臀部両房は、実に美しい張りとプロポーションとをそこに
表現していた。
 雄大にして繊細、野趣にして優美――まさに神が造りたもう天性の麗質を前にペインはただ息を飲むばかりである。
435しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:13:00.24 ID:G+UuE8Ri
『ん? どうしたの?』
「んあッ!? あ、何でもないのよ!」
 振り返り様に掛けられるその声と視線にまたもペインは慌てふためく。今日は我を見失ってばかりだ。
「あ、あのぉ、それより何で僕はここにいるのね?」
 そうしてペインはようやくその疑問を彼女に問い質す。やっと尋ねることが出来た。
『やっぱり覚えてないの、あなた? はい、コカ茶』
 一方の少女もペインにお茶のマグカップを握らせると、ベッドのその隣に腰掛けて事の経緯を語り出すのだった。
『君はねぇ、この小屋から少し出たところで倒れてたんだよ。症状からたぶん、高山病になったんだと思う』
「こ、高山病――なのね?」
『そ。ここの山ってさ、登りが緩やかだから気付きにくいけど結構高いんだよ? 酸素だって徐々に薄くなるから、
麓にいる感覚で歩くスピードとか早くすると、すぐに掛かっちゃうんだから』
 少女の言葉にようやく納得がいった。
 目的地へと急ぐあまり早足になっていたペインは、急激に意識を失い倒れたのだ。どうりで記憶に無いはずである。
『偶然あたしが通りかかって介抱したから良かったけど、時にはそれで死んじゃう人だって出るんだから。
危なかったよ、君も』
「そ、そうなのね?」
『死ぬ』の彼女の言葉に、ただでさえ貧血気味の頭からさらに血の気が引いてペインは軽い眩暈を覚えたような
気がした。危ういところだったのである。
『それにしても君、こんな所に何の用事があったの? 山の向こうに行きたいんだったら麓を迂回した方がよっぽども
楽で安全なのに』
「用事? えっと僕は……あぁ、思い出したのよ!」
 そして今になって、ようやくペインは本来の目的を思い出した。
「僕、この山の8合目にあるって言う村に用があったのよ。君、知らない? 早く行かなきゃいけないの」
『この山の、村?』
 そうなのだ。ペインはこの山に棲むというミルクドラゴンの元へ赴かなければならないのである。
436しっぽのおうじさま:2011/10/28(金) 22:15:06.61 ID:G+UuE8Ri
「そうなのね。今日中にそこに着きたくて、それでムチャして倒れちゃったのよ。……今はもう夜になっちゃてる
かなぁ?」
 ようやく本来の目的を思い出して慌てふためくペイン。そんなペインの様子を終始見守っていた彼女であったが、
ほどなく噴き出すよういたずらっぽく笑ってみせたかと思うと、
『なぁんだ。なら、もう焦ることなんてないよ。君がいま寝てるここがその目的の村、「マテ・デ・コカ」だよ』
「え?」
 掛けられその言葉に、思わずペインも目が点になる。ならば自分はもうすでに――
「僕、到着してたのね?」
『そうだよ。おめでとー♪』
 すでに今日の目的を達成していた訳である。
 そうわかった途端、今まで蓄積されてきた疲れと緊張が一気に背中にのしかかってきたようで、今度こそペインは、
本当に眩暈を起こして傍らの彼女にもたれかかった。
『あぁ! 君、だいじょうぶ?』
「う、うん、平気なのよ。安心したら一気に疲れが出ちゃって――眠くなってきちゃった」
『たしかに、麓からここまでを一日で制覇しちゃうなんて、たいした体力だと思うよ。何のお仕事か判らないけど、
今日はゆっくり休んで』
 そう言ってペインをベッドに寝かせると、彼女も立ち上がり部屋の照明(ランプ)を吹き消した。
 そうしてから再びペインのいるベッドへと戻り、
『ベッドがひとつしかないから、一緒に寝てもいい?』
 もはや返事を聞くよりも先に同じ毛布へ潜り込むと、
『それにさ、こうすると暖かいでしょ?』
 彼女はその懐にペインを抱きこんだ。
「うん、大歓迎なのよ♪ 僕こそゴメンね。ベッド、占領しちゃって」
『えへへ♪ いーよ、別に。お客さんなんて珍しいからさ、むしろ君が来てくれて嬉しいよ、あたし』
 夜闇の向こうで彼女が微笑む気配を感じて、思わずペインの口元もほころぶ。
「そういえば僕達、まだ自己紹介も済んでいなかったのね。それじゃあ、オホン――僕はペイン。ペイン・レイ
ノートっていうのね」
『へぇー、ペイン君かぁ。可愛い名前だね。あたしはティアラ』
 そうして彼女・ティアラもペインに応える。

『この村最後の、ミルクドラゴンだよ』



(明日に続きます)
437名無しさん@ピンキー:2011/10/29(土) 00:12:11.13 ID:AztvOFgL
>>436
これは期待
明日が楽しみです
438しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:41:38.03 ID:4KAZGGvc
昨日の続きを投下させてもらいます。また大変に長い読み物となっているので
投下は2〜3日かけてここに落す形となってしまうますが、どうかお許しください。

それでは今日もご迷惑おかけします。


>>437
そう言って頂けると勇気を出して投下した甲斐もあったというものです♪
秋の夜長らの暇つぶしにでもなれば幸いです。どうか楽しんでやってください


439しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:42:14.56 ID:4KAZGGvc
【 3 】

 村のはずれ――そこから山の展望を一望できるその場所が彼女の家族達と、そして一族が眠る場所であった。
 小石を積み立てただけの粗末な墓標に花を手向けると、彼女・ティアラは黙祷を捧げる。
 そんな後ろ姿に一瞥くれ、ペインは改めて目下に広がる渓谷の壮観を見下ろした。
 ティアラによって語られた事実は思わぬものであった。
 この山に住む彼女達ミルクドラゴン種は、ティアラを残して全て絶えてしまっているとのことだった。
 争いがあったとか、疫病が蔓延したという訳でもなく、単純に一族はこの痩せた土地で繁殖力を失い、結果
淘汰されたのだそうだ。
 ティアラの母が彼女を身ごもったその時――すでに山には、この家族以外のミルクドラゴンはいなくなっていた。
 そして彼女の家族も、父が断崖からの転落事故で亡くなり、母もまた産後の肥立を悪くしてその後を追ったのだという。
それ以来、祖母と二人で慎ましやかに暮らしていたティアラであったが――その祖母も今年の始め、長寿を全うして
天に召された。
 それ以来ティアラは「一人でここに暮らしているのだ」と言ってどこか寂しげに笑うのであった。
 それらを気丈に話す彼女を前に、ペインはひどく胸が傷む思いがした。
 こんな山の、こんな苛酷な環境に住む事もなければ、彼女の父も崖から落ちるなどということはなかったであろう。
人里に暮らしていたのならば母の肥立にも滋養が尽くせたはずである。
 それこそは己が故郷の臣民達の現状でもあり、やがては自分達が辿るであろう未来の姿でもあった。
『――よし。おまたせ、ペイン君』
「もういいのね?」
『うん、もう大丈夫だよ。ごめんね、こんな所に付き合わせちゃって。毎朝の日課でさ』
「全然構わないのよ」
 そうして二人、言葉を交わしながら元いた小屋への帰路を辿る。
「どうせ僕だってやること無いんだし」
 そうして何気なく出された言葉に対し、
『そうなの? でも昨日は、なんか急いでたような感じだったよね』
「えッ!? いやその、う〜んと――」
 その当然の矛盾を問うティアラにペインは固まってしまった。
440しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:42:35.68 ID:4KAZGGvc
『そういやまだ聞いていなかったけど、ペイン君って何の用事でここに来たの?』
「ええ〜っとぉ、そのぉ……」
 さすがに『女を買いに』とは言う訳にもいかず、ただペインは視線を泳がせては喘いでみせる。
 そしてふと見下ろした先に、小さな草が生えているのを発見すると、
「あ――ぼ、僕は学者さんなのね。ここには植物の調査に来たのよ」
 それを手に取り、一世一代の大芝居(ウソ)を打った。
「調査なんて特に急ぐものでもないのね。昨日は日暮れまでに村へ着きたかったから焦ってたけど、到着しちゃったら
もう、後は気楽なものなのよ」
 そんなペインの言葉に一瞬ティアラも目をぱちくりさせたものの、
『すっご〜い! 本当に学者さんなのッ? ペイン君って偉い人だったんだねぇ♪』
 すぐにその瞳を輝かせると、依然草を握り締めたままのペインの両手を取った。
「う、うん……まぁ、そんな大したことじゃないのよ」(――えらいウソついちゃったのよぉ、僕)
 そんなティアラを前に謙遜しつつも、その心中は穏やかではない。
『学者さんって、どういうことするの? 草とか虫とってきて、顕微鏡で見たりとか、論文とか書いたりするの?』
「ま、まぁそんなところかな? そこの動植物の生息を調べたり、繁殖方法や生態系の仕組みなんかをフィールド
ワークして調べるのよ」
 穏やかではない心中とは比例して、ペインの長広舌は益々その動きを滑らかにする。――もっとも、『動植物』の
単語を『風俗嬢』と置き換えれば、常日頃の彼の行動と今の言動もまた、あながち外れてはない訳だが。
 ともあれ、
『じゃあさ、「調査」ってことはしばらくここにいるんだよね? だったらあたしの家に泊まりなよ。ご飯とか
作ってあげるからさ』
「えぇッ? あ、うん――じゃあ、お言葉に甘えようかなぁ……」
 些細な嘘を発端に、話はどんどんこじれていく。
 本来ならば収穫が無い以上、ペインはいつまでもこんな場所に留まっている訳にはいかないのだ。代用の企画を立て、
一刻も早く原稿執筆に着手しなければ誌面には穴が開いてしまうことになる。
 しかしながら、
『行こ行こ、ペイン君。それじゃあ、あたしの畑に案内してあげるね♪』
 駆け出し、すっかりテンションの上がってしまったティアラにその手を引かれ、風に舞う洗濯物のよう宙になびき
ながら村へと帰るペイン。
 そこから見上げる空は――今日も憂鬱になるくらい青かった。


★     ★     ★


441しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:42:52.21 ID:4KAZGGvc
うんしょ、うんしょ……う〜ん、こんにゃろッ」
 ぶら下げるよう両手で携えていた岩石のひとつを、ペインは掛け声とともに絶壁の外へ投げ放った。
 高台のそこから見下ろす中、投げ捨てたそれはほぼ直角に近い急勾配の岩肌で何度もバウンドしながら転がり
落ちていく。
「ひえ〜。こんな所から落ちちゃったら、ひとたまりもないよね」
 その眺めに、ついそんなことを想像して身震いもひとつ。ペインは今、ティアラの整理する畑へと来ていた。
 高知の山脈の、それも一際上層の高台に作られた畑――そこには、こんな場所にしか設けられない相応の理由もある。
 山岳地域の谷間とあっては、そびえ立つ山脈に阻まれて日照時間も限られてくる。おまけに数少ない降雨の恩恵を
漏れなく受けるとなると、自然に耕地はこのような高台に設けるしか叶わなくなるという訳であった。
 そんな高台の畑仕事を、ペインは調査とうそぶきながら手伝っているという状況である。
『ごめんねー、手伝ってもらっちゃって。でも、調査の方を優先してくれてもいいんだよ?』
「ううん、いいのよいいのよ。サンプルさえ取っちゃえば、あとは現地で出来ることなんてもうないんだから。
お手伝いするのね♪」
 依然としてそんな嘘をつき続けながら、ペインは新たに耕地の中の砂利を選別し始める。斯様な手伝いの理由は、
単なる手持無沙汰を持て余しているからという訳だけではない。彼女の好意にかこつけて謀り続けることに対する
そんな贖罪の念もあった。
 また、ティアラと共に「畑仕事に興じる」というシチュエーションもまたペインは楽しんでいたりもする。
斯様にして女好きの彼にとって、女性と一体感を感じられる作業は、性交に限らず気持ちが良いものなのだ。
 そんなことをしみじみ感じて空を見上げるペイン。
 行きの道中に感じたこの青に対する嫌悪も自然と和らいでいた。
「だけど、こんな高いところで作業していて危なくない?」
 改めて見渡す景色には本当に目にとっかかるものが何もない。それだけの標高を保つこの山の、さらには
この場所である。
 先にも述べた高台のここは、畑の淵のすぐ外が標高数千メートル級の断崖であるのだ。そんな場所で日ごろ
作業するティアラをペインは心配せずにはいられなかった。
『えー? 大丈夫だよー♪  だってここ、あたしのお庭みたいなもんだもん』
 そんなペインの心配していくれている言葉が嬉しかったのか、ティアラは断崖の淵に近いそこで背を伸ばすと
足取り軽く快いリズムで踊ってみせる。
442しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:43:15.49 ID:4KAZGGvc
 編まれた三つ網が弾み、その背が露わになる。美しく伸びた背筋とそこに残る小さな羽根、そしてうなじの
露わになる後ろからの眺めに、その一時ペインも時を忘れて魅入られる。
 しかしすぐに我へ返ると、
「あ、あぶなぁい! そんなとこで踊っちゃダメなのよ、ティアラちゃん!」
 すぐにペインは、そんなティアラへと声を掛けるのであった。
 再三ながら、畑のすぐ外は断崖絶壁なのである。聞けば彼女の父もまた、墜落事故で無くなっているのだ。ならば
このティアラとて、ここから落ちれば無事では済むまい――ペインはそれを危惧するのであった。
 そうして胸騒ぎに慄きながら見守り続けるなが、予想しうる最悪の瞬間は訪れてしまう。
 数度のステップの後、小高く空へ跳ねた次の瞬間――着地したティアラの足元が地崩れを起こした。ステップに
踏み固められた土壌が、他の柔らかい部分のそれと分離したのだ。
『あ……』
 そんな突如の危機にふためく暇もなく、ただ呆気にとられるティアラ。
 やがて彼女の体は弓なりに背を反らせて、断崖の向こうへと傾く。
 その瞬間を目の当たりにし、
「ティ、ティアラちゃんッ!」
 ペインは放たれた矢のよう、地を蹴りそこへと駈け出した。
 走り続ける目の前では、バランスを取り直そうと両手を振るティアラがゆっくりと背を下に傾いていく姿が
見えていた。あのまま背から倒れれば、間違いなく谷底へまっしぐらだ。   
――間に合えッ、間に合え!  もっと速く動けッ、僕の脚!
 その光景を捉えながら、走るペインはさらに身を低くして踏みしめる両足に力を込める。
 おそらくは、生涯のうちで今日ほど『速く』と願った日はないであろう。そして今日ほど『速く』に走ったこともない。
 やがては見守り続ける中、もはや体制を持ち直すことが叶わなくなり畑の外へと落ちようとするティアラへと、
「両手、出してぇ!」
 そのギリギリで、ペインは間に合った。
 掛けられるその声に反応し、反射的にティアラも両手を伸ばすと差し出されたペインの右手を握りしめる。
 グンと右半身を引き広げられるような過重それを感じながら、ペインはさらに伸ばした左手で、土中に埋まった
岩石のひとつにしがみつく。
 斯様にしてペインを中間に、ティアラは振り子のよう畑の淵からぶら下がった。
 一見して間に合ったかのように思えたこの救出劇――しかしながら、問題はまだ何も解決はしていない。
 何よりもティアラを繋ぎ止めているペイン自身に限界が訪れていた。
443しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:43:34.55 ID:4KAZGGvc
「ぐ……ぐぅ〜ッ……んんぅ〜ッ」
 体長2メートル弱のティアラに対して一方のペインは1メートルにも満たない。そんな体格の違いからくる
体重差に、小さなペインの体はたちどころに悲鳴を上げた。
 体の中にはミリミリと肉や骨とが引き伸ばされ軋む音が響き始めている。それに伴う、両肩の引きちぎられる
痛みにもペインは唇をかみしめた。
 そして耐久の限界を超えた右肩は次の瞬間、外からも聞こえるほどに鈍い音を立ててペインの関節から外れた。
「あぐッ!?  うわあああぁぁぁんッ!」
 その痛み、そして衝撃に思わずペインは声を上げる。一方の、そこにぶら下がるティアラの体もガクンと一段、
大きく下がる。
 それでもなお、
「あぐぐぐぐ……ッ!」
『ぺ、ペインくぅん……』
 それでもなおしかし、ペインはティアラを離さなかった。
 まさに引き千切られんとするその状況と激痛の中、それでもペインは耐えたのであった。
『ペイン君ッ、もういいよ!  放していいよッ』
 そんなペインを見かね、その右腕に体を預けるティアラはそんな言葉を掛ける。
 しかし、
「いいわけないよぉ……絶対に、離さないから、ねッ」
 ペインは強く頭を振った。そしてなおかつ、心配してくれるティアラへと強がって笑顔を見せるのであった。
 とはいえしかし現実は無常である――そんな笑顔(へんじ)を返した次の瞬間、残っていた左肩すらも外れた。
「うがああぁぁぁッ!  あ、あぁ……ッ!」
『ペイン君ッ!』
 もはや骨の支えをなくした体はただ筋と肉のみでティアラを吊るすのみ。このままではペインの小さな体が
その過重で引き裂けてしまうことは時間の問題に思えた。
『無理しないでペイン君! いいから! 本当にいいから!』
「くぅ……ダメ。……離せないよぉ。絶対に、離せさないッ……!」
『でも、でもこのままじゃペイン君、千切れちゃうよ。あたしなら大丈夫だから、もう放して』
「大丈夫なわけないよぉ……こんな場所から落ちたらティアラちゃん、死んじゃうのね。それだけは、それだけは……ッ」
 両肩から体を引き離される痛みと疲労のピークの中、ペインの頭にはさながら走馬灯のよう故郷で過ごした
過酷な日々が蘇っていた。
444しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:44:01.44 ID:4KAZGGvc
 辛い暮らしの中で、その環境の過酷さに淘汰され死んでいく仲間達をペインは幼い頃より見ていたのだ。
 その中には親しかった友の姿があった――
「……もう……もういやなのよ……」
 愛した女性(ひと)の姿もあった――
「絶対に、僕は許さないんだから!  もう僕の目の前でッ、誰かが死んじゃうなんてこと許さないんだぁー!」
 そして今、ティアラの命とを繋いでいる体と心の痛みとが同調したその瞬間、まるで傷みに泣くかのようペインは
空の彼方へと叫んでみせるのであった。
 そんなペインの限界を見定めティアラは小さくため息をつく。
『ありがとね、こんなあたしにそこまで頑張ってくれて。……あたし、すごく嬉しいよ』
 ティアラは場違いなほどに穏やかな声で、そんな感謝をペインに伝える。
『ごめんね、こんなに痛い思いさせちゃって。今、楽にしてあげるからね』
 そしてそう微笑むとティアラは――両手でつかんでいたペインの右手を自ら放したのであった。
 途端に重力が消えるその感触と目の前の谷底に落ちんとするティアラを前にペインは目を剥く。
「ティ……ティアラァァァァァァァアアアアアアア!」
 そして谷底へいま落ちていく彼女を前に、この限りにその名を叫んだペインであったが、
「アアアアアアアアアアアアァァァァッ、……え?」
『あははは……』
 その瞬間、目の前の光景にペインは眉をしかめた。
 何もない断崖の彼方へ落ちたはずのティアラは――その淵から頭ひとつを出したまま、空中そこへ停止しているので
あった。
「ん? んんッ?」
 身を乗り出して何度もそんなティアラを確認する。
 飛んでいるとか浮かんでいるといった様子は見られない。まさに、落ちていかんとするはずの断崖のその向こうで、
まるで窓から顔を出すかのよう泰然とした様子で彼女はそこに在り続けるのであった。
『あー……ごめんねぇ。なんか』
 そんなペインの様子に依然として口元に苦笑いを作りながら、なんとも申し訳なさそうに語りかけてくるティアラ。
445しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:44:18.38 ID:4KAZGGvc
『あのね、さっきは急すぎて伝えられなかったんだけど――』
「な、なぁに?」
『こっち側ってさ、そこからはうまく見えないけど、もう一段畑があるの。だからココから飛び降りたって別に
危険でもなんでもないんだ』
 そんな彼女の言葉とそしてその事実にペインは愕然とした様子で口元を開ける。
 一方のティアラも覗きこんでいるそこから横へスライドしたかと思うと、いとも簡単に元の畑へと歩み登って
くるのであった。
『ごめんね、あたしなんかのせいでケガさせちゃって。本当にごめんね』
 そしてその傍らに着けてティアラもまた腰かけると、そんな呆然然自失としたペインに語りかけ謝ってみせる。
 しかしペインは、
「はぁ〜……良かったぁ。崖じゃなかったのね」
 そんな彼女の案じる自身のことよりも、ティアラが無事であったその事に大きく安堵のため息をつくのであった。
『そ、そんなにあたしのこと心配してくれたの?』
「あったりまえなのね。そっちの方がよっぽども大事なのよ」
『だけど君、両腕……』
 ティアラに言われ、改めて自分の体を見下ろすペイン。
 脱臼した両肩は糸の切れた道化人形のようだらりと地に落ちてしまっている。
「あぁ、そういえば。じゃあティアラちゃん、ちょっと右腕引っ張ってくれる?」
 さも大したことではないといった様子で自分の体を見下ろすと、ペインは己の右手をティアラに取らせて力の
限り右腕そこを引き延ばすよう指示する。
 やがては言われるがまま力いっぱいにそれを引っ張り上げるティアラ。それに対してペインも上手く関節の位置を
調整すると、自分からそれを体に納めて外れた間接を元に戻すのであった。
 そうして両肩のそれを元に戻し、改めて大きくため息をつく。
446しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:48:43.58 ID:4KAZGGvc
「こうみえても風俗ライ……じゃなくて、学者さんになる前は傭兵とかしてたからね。この程度のケガなんて慣れっこ
なのよ」
『そ、そうなの? でもまだ両腕が上がらないみたいだけど』
「うん、ちょっとスジも伸ばしちゃったからねぇ。肩は嵌ったけど、しばらくは動かせないなぁ」
 その事実に今度は小さくため息をつくペイン。言う通り、この両肩が動かせるようになるにはしばらくかかる
ことだろう。するとなると、ここから下山するのもこの怪我が完治してからだ。――例の雑誌への記事掲載は、
もはや絶望的に思えた。
 しかし、
「――だけどさ、それでも僕は嬉しいのよ」
 それでも、と顔を上げて笑顔を見せるペインにティアラは首をかしげる。
 そして継げられる言葉に、
「だって、ティアラちゃんが本当に無事だったんだもん。これ以上に嬉しいことなんてないのね♪」
『ペイン君……』
 そんな笑顔に、ティアラは胸の奥が熱く締め付けられるよう思いがした。
 今日まで一人で生きてきたティアラが初めて感じる胸のときめき。彼女はまだ、この鼓動の意味を知らない。
愛しさに胸かきむしらんとするこの――誰かを『愛する』というその意味を。
 ただ今はとてつもなくペインが愛しくなって、
「ん? うわぁぉッ♪」
 ティアラはペインの顔へ口元を寄せると、その頬へキスをひとつした。
 愛しむよう強く吸いつけて離れる唇。やがて改めてペインと瞳を合わせると、
『ごめんね、ペイン君。あたし、こんなことくらいしかお礼できないけど』
 そう言って、はにかむそこへ申し訳なさそうに笑顔のひとつを咲かせるのであった。
 そんなティアラに対し、
「そ……そんなことないよ! すごい嬉しいのね。ティアラちゃんにキスしてもらっちゃった〜♪」
 ペインもまた満更でもないといった様子で瞳を輝かせる。
 今さらではあるがペインは女の子が大好きだ。故に彼の行動原理はいかに『女の子の為に在れるか』ということを
基幹にしている。
 それゆえに今のティアラのキスは――その純粋な感謝の行為は、何にも増してペインの中の『雄(おとこ)』を
満足させてやまないのであった。
447しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:49:06.03 ID:4KAZGGvc
『本当? あたしなんかのキスでもいいの?』
 そんなペインの反応に驚いて、そしてそれがまた嬉しくてついティアラも聞き返してしまう。
「もちろんなのね♪ このキスの為ならさ、ティアラちゃんの為なら何だって出来るのよ、僕」
 さらにはそう返してくれるペインが、もう自身では抑えられなくなるほどに愛しくなり――
『う〜……ペイン君ッ』
「うは〜♪ いや〜ん」
 ついにティアラはペインを抱きしめて押し倒してしまうのだった。
 そしてこそから何度もキスをして、存分に頬を擦り寄せてはペインを愛撫するティアラ。
 そんな彼女の溢れんばかりの愛を一身に受けながら、
――もうちょっとここに留まっててもいいかな。
 まんざらでもなく、ペインはそう思うのであった。



448しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:49:24.00 ID:4KAZGGvc
【 4 】

 夕の食卓にはナイフの立てられた台形のチーズと山積みのロールパン。そして山菜のサラダのその隣に、
『はい、おまたせ♪』
 立ち上がる湯気でその向こうが見えなくなるほどに温かいクリームシチューを一皿ティアラは置いた。
 それらを前に大きく口を開けたまま、そこから垂れる涎も意に介さず食い入るよう見入るペイン。
『ごめんねー、お肉とか用意できなくて。こんな山だと魚もいないし鳥も少なくてさ』
 そんなペインの前に、ティアラもテーブルを挟んで腰かける。
 掛けられる言葉の通り、今日の食卓には肉の類は一つとして見当たらなかった。
 しかしながらペインはそんなことなど一向に気にならない。
 内に凝縮した旨みを主張するかのよう色濃く熟成されたチーズや、はたまたバターの照りを存分に輝かせた宝石の
ようなパン――そして何よりも、立ち上がる湯気を吸いこむだけで胸の奥まで甘い香りと味とが広がるかのような
シチューの料理それらは、今まで食べてきたどんなご馳走よりも今のペインの食欲を強く刺激するのであった。
「お肉だなんてとんでもないッ。これだけですごい美味しそうなのね! もう食べちゃダメ?  食べちゃダメ?」
 喉の外へと込みあがってくるかのような食欲を抑えられないペインは、つい何度もティアラに確認してしまう。
 そんなペインの様子にティアラも安堵のため息を小さくつくと、
『そう? うれしいな♪  じゃあたくさん食べてね』
 そう言って笑顔を返すのであった。
「いただきまーすッ♪」
 そしてお祈りもそこそこにシチューの皿へ鼻先を飛びこませるペイン。刺激された食欲は留まることを知らず、
無意識に体はその口元をシチュー皿へと飛びこませたのであった。
 途端にシチューの熱と香りが頭の中を駆け抜ける。
 想像通りのその味――否、想像をはるかに超えた豊潤な甘みのシチューにペインの意識は忘我に達する。
 ティアラの料理の腕もあるのだろうが、何よりも絶品と思われたのはこれの材料に使われているであろうミルクと
思われた。ここまで濃厚で、それでいて後味にしつこさや厭味な香りが残らないそれは、今までに飲んだこともない
未知のミルクそれである。
 と、
449しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:49:40.70 ID:4KAZGGvc
――あれ?  でも、お乳出せるような家畜っていたっけ?
 ふとペインはその事に気付く。
 考えるとおり、今日一日ティアラに共だって彼女の畑や村の跡地を回ったペインではあったが、そこには
農作物こそあれど生乳を出せるような家畜・山獣の姿は微塵として見られなかった。
 しかしながらそんな疑問に捉われたのも一時のこと、すぐさまペインの疑問は押し寄せる食欲に流されて、
再び食事に失心していく。それほどにこのシチューはペインを魅了してやまないのであった。
『あーもう。お顔がシチューだらけだよ、ペイン君』
 そんな様子を見守っていたティアラは、依然として犬食いを続けるペインへ苦笑いげに語りかける。
「んあ?  うわわ、ごめんねぇ」
 その声に我へと返り、顔を上げて謝ってははにかむペイン。
 そんなペインの顔がこれまた額までシチューまみれになってるのを確認し、ついにはティアラも笑い出してしまう
のであった。
「あちゃー、恥ずかしいのね。ごめんね、お行儀悪くしちゃって。でも本当に美味しくてさ、つい夢中になっちゃったのね」
『ありがと、そう言ってもらえるとあたしも嬉しい♪  それに、よくよく考えたら今のペイン君、両手が
使えなかったもんね』
 言われて自分の体を見下ろすペイン。
 昼頃に脱臼した両腕は、首からぶら下げた三角巾二丁でさながら腕を組むかのよう吊り下げられている。大した
怪我ではないのだが、それでも脱臼直後とあってはまだ動かすことがままならない。
 そんなペインの隣にティアラは席を着けたと思うと、
『食べさせてあげるね。欲しいものとかあったら言って』
 手に取ったパンを一つまみむしり、それをペインの口元へ運ぶのであった。
 そんなティアラからのパンを前に、ペインは大きく口を開けるとその指先と一緒に丸々口の中に咥えこむ。
そうしてパンを舌先で絡め取った後は唇を立ててティアラの指先を味わってくる感触に、
『んふふふッ、くすぐったいよぉ。ペイン君』
 ティアラはコロコロと笑い出してしまうのであった。
「んん〜、ぷは。だってティアラちゃんの指も美味しそうだったんだもん」
『もう、だからって食べちゃダメでしょ。いけない子なんだから』
 口では窘めながらもまんざらでもない様子で額を押し付けてくるティアラに、ペインも同じく額や頬元を擦り
寄せては仔犬が甘えるかのように応える。
450しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:49:59.05 ID:4KAZGGvc
かくして蜜月の内に終わる二人の食事。
 食器の片付けも終わり、再びテーブルに着いて向かい合ったその時であった。
「ん、んん……んぅ〜……」
 どこかペインの様子が落ち着かないことにティアラは気付く。
 そわそわと身をよじらせ、時おり視線を宙に投げだしては小刻みに体をゆするその様子に、
『どうしたの、ペイン君? 気分でも悪いの?』
 ティアラはペインの身を案じて声をかける。
「えッ? あ、あぁ……なんでもない。なんでもないのよッ」
 そんなティアラの声に一瞬、両肩を跳ね上がらせたペインはそう笑顔で応えて姿勢を取り繕う。
 しかしそん態度にティアラはむしろ、彼が何か隠しているであろうことを確信する。
『ペイン君、そんな態度じゃ何か隠してるのがバレバレだよ。本当にどうしたの? 何かあたしに話せないこと?』
 テーブル越しに身を乗り出してくるティアラを前に、ペインはそんな彼女を見つめたまま小さく息を飲む。
 そしてしばしもごもごと口籠った後、ペインはその理由を恥ずかしげに告げるのであった。
「あのね…………オシッコしたいの」
『オシッコ? そんなことで?』
 その理由を聞いてティアラも気の抜けた声を上げる。
『なにも我慢することないよ。すぐにしてきたら?』
 そして当然のような言葉をかけるティアラであったが、それに対するペインの表情は先ほど以上に困惑に眉を
しかめたものとなっていった。
「あ、あのね……すごく恥ずかしい話なんだけどね、僕のその……おチンチンって、普段は毛皮の奥に隠れてるの」
『ふんふん、それで?』
「それで、オシッコの時には自分で取り出すんだけども……ほら。今さ、両手がコレでしょ?」
 三角巾で吊り下げられた両腕と自分とを交互に見つめてくるその視線に、ようやくティアラはペインが困惑している
理由を知る。
『そっかぁ。今のペイン君って、自分でオシッコが出来ないんだね』
「ピ、ピンポ〜ン。その通りなのね」
 ようやくそのことが伝わり力無く笑うペイン。それが伝わったからといって、何も問題は解決していないのである。
 そしていよいよ以て強まる尿意に苦悶の表情を見せたその時であった。
『じゃあさ、あたしが手伝ってあげるよ。ペイン君のオシッコ』
 そんな突然のティアラの申し出に、その一瞬ペインは尿意も忘れて呆ける。
451しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:50:39.06 ID:4KAZGGvc
 しかしすぐにその意味を理解すると、ペインは激しく頭(こうべ)を振ってそれを拒否するのであった。
「だ、ダメなのよ、そんなこと。さっきも言ったけど、僕がオシッコするためには、その……チンチンを取り出さなきゃ
いけないのよッ?」 
 まさかそんな行為を堅気の娘さんにさせるわけにはいかない――ペインはそんな想いからもティアラの申し出を激しく断る。
『んもう、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。そのまま我慢し続けたら体に毒だよ』
 しかしティアラとて退かない。やがては立ち上がりペインへ近づいたかと思うと、軽々彼を抱きあげてティアラは
小屋の外へ出るのであった。
 そうして小屋の裏手にある草むらまでペインを連れてくると、刺激をしないよう静かにそこへ着地させる。
 かすかに冷気を含んだ外気(かぜ)と草むらの眺めにペインの中の排泄感はいよいよ以て刺激される。
 そして激しく痛み始める下腹部の痛みについには、
「うう〜………ごめんなさい、ティアラちゃん。僕のオシッコ、手伝って」
『もう。最初っから遠慮なんてする必要ないのに』
 涙目でそんなお願いをしてくるペインに、ティアラも小さく苦笑いを漏らすのであった。
 かくしてペインを草むらに向かって立たせると、ティアラは慎重な手つきでその腰元を探っていく。
 指先で触れるペインの腰元は予想以上に毛並みが厚くそして深い。探るように指先を潜らせると爪の根元までが
すっぽりとその中に埋まってしまった。
『どこらへん? ペイン君、誘導して』
「う、うん。もうちょっと右」
 確認しながら指先でまさぐるティアラの動きにペインも細かく指示を出していく。
「あ、今ちょこっと触れたのね」
『え、どこ? こっち? それともココ?』
「あ、うあぁ……指先が当たってるのよぉ」
 ペインの反応を見ながらそれを探すティアラではあるが、未知の他人の体であるということもあり、それを探る
彼女の指は何度もその先端をかするばかりで、一向に「本体」へは辿り着けない。
 そしてそんな彼女からの手の動きに、やがては排尿ともまた違った変化がペインの体にも現れる。

452しっぽのおうじさま:2011/10/29(土) 21:51:05.22 ID:4KAZGGvc
『あ、何か当たってるねぇ、もしかしてコレ?』
「んぅ、あうんッ。あんまりじらさないでぇ……」
『待っててね、ペイン君。今、オシッコさせてあげるからね』
「ち、違うのぉ。そうじゃなくて、別の意味で危なくなっちゃってるのね」
 ペインの語りかけにもしかし、それを探すことに夢中になってしまっているティアラにはその言葉が届かない。
 そしてついに目的の本体を探り当て、
『あ。あったぁ。これだッ』
 つまみ上げたそれを、強く引き抜いたその瞬間――
「だ、だめぇッ。大きくなっちゃう!」
『え?』
 ティアラの目の前に、今まで探しだすのも困難だった筈のペインの陰茎が大きく肥大して飛び出すのであった。
 依然としてティアラの手の中で大きく脈打つそれ。捌いたばかりの精肉のように赤くズル剥けてぬめりを帯びた
それにティアラは驚きと物珍しさから釘付けになる。
 そして一際強く痙攣したかと思うとペインのそんな陰茎は、その先端から激しく放尿の飛沫を噴き上げるのであった。
「ふ、ふわあぁ〜……ッ!」
 純真無垢な女の子に対し、何というものを見せてしまっているのかという葛藤もあるがしかし、今まで我慢し
続けてきた括約筋の限界とそして排泄感に、ティアラの手の中で排尿するその勢いは留まるところを知らなかった。
 何度も尿道を太く隆起させながら送られ続ける尿――やがて、その小さな体からは信じられない量のそれを
すべて出し終えると、その脱力感とそして罪悪感にペインは大きくため息をついて頭をうなだらせるのであった。
 しかしそんなペインとは裏腹に――ティアラは未だに彼の性器そこから目を離せないでいる。
 依然として手の平の中に在り続けるそれは、排尿と共にその大きさを縮めてはいたものの、時おり熱く脈打つ
その存在感はなぜかティアラを魅了してやまないのであった。
 そしてそんな陰茎を見つめたまま、
『すっごいね、ペイン君の……いっぱい出たね』
 感心するようそんな言葉がティアラから出されたその瞬間、
「う……うわぁ〜ん! ごめんなさ〜いッ!」
 ペインはそんなティアラを振り切って走り出していた。
 何気ないそんな乙女(ティアラ)の一言に、ついにはペインの羞恥心とタブーに耐える心とが限界を迎えたのであった。
453しっぽのおうじさま
『あ、ペイン君!』
 泣き声をこだまさせ、暗闇の山道の中をどこへ向かうともなく走り去っていくそんなペインの後ろ姿にティアラも
右手をのばす。
 しかしすぐにそんな彼の姿も闇の中に消えるのを見送ると、差し出していたそれを下ろし大きくため息をつくので
あった。
 暗がりに一人座り込むティアラの手の中には、未だにあのペインの茎の感触と温度とが残っていた。
 やがては再び手の平を見下ろし、ティアラはそこにあの陰茎の姿を思い重ねる。
 そして空想の中のそれに頬擦るかのよう手の平を頬に当てると、
『あれが、男の子かぁ……』
 ティアラは人知れず熱いため息をついて、高鳴る鼓動の余韻を味わうのであった。