【戦闘】軍人や傭兵でエロ 2【休暇】

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1名無しさん@ピンキー
ファンタジー世界や現代過去を問わず、
軍人や傭兵を主人公としたエロSSのスレです。

「アタシのケツばっか見てないでちゃんと見張ってろよ」
なんて姉御から、
「上官殿! 弾が出ません!」
「セーフティーを外せ! 訓練でなにをならってきたんだ!」
なんてどじっこまで。

空で。海で。陸で。森で。街で。城で。
会議室で。オフィスで。ジムで。シャワールームで。
ありとあらゆる『戦場』で行われるエロSSのスレです。

強姦陵辱輪姦純愛なんでもありですが、
投下前には一応注意書きを書いておきましょう。
説明は以上だファッキンニューガイ。
では突撃!

★前スレ★
【軍服】軍人や傭兵でエロ【階級】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205085927/l50
2名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 00:54:14 ID:sqiiV41R
よし、歓迎委員会の準備だ。


只只只只只只只只只只只只只只只


これだけクレイモアを仕掛ければグークどももミンチだぜヒャアーッハァッ!!!!
3名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 01:12:42 ID:MNsdRTka
よくやった……とでもいうと思ったか!
うかれる暇があったら即死回避の保守をしろ!
4名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 12:22:00 ID:HYodOfzQ
サー!長官殿。即死回避ってどのくらいでありますか!
5名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 13:42:51 ID:hrpBVkma
30レスまでだ!
鬼軍曹殿にどやしつけられる前に保守だ!
6名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 15:54:36 ID:VvT4WFSf
「いいか保守しろ! そのまま! そのままだ!」
「む、無理です軍曹・・・! 俺、俺、もう……!」
「バカモン! 動くな! あと一時間はその状態で耐久だ! 一ミリでも動いたら射殺してくれる!!」
「うっう・・・・筆卸のつもりがまさか軍曹が処女だったなんて……」
「動くなといっているだろうが! バカモン! 痛い! 動くなというのが聞こえんのかこの低脳なサルが!!」
7名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 22:02:27 ID:5K7uI0Nk
戦火スレより
289 :名無しさん@ピンキー :2009/07/17(金) 22:33:46 ID:gJ7XtvWp
つい最近出たばかりの、内田弘樹「戦場のアナバシス」が非っ常〜にこのスレ向け
ジャンルは仮想戦記なんだが、舞台が1945年の東部戦線で
ドイツ国防軍の少年少女戦車兵が主役。


290 :名無しさん@ピンキー :2009/07/17(金) 22:48:28 ID:IKFze4lI
>>289
いまググって見たら「鋼鉄のアナバシス」がヒットしたんだが、名前間違えた?
それとも、同シリーズの違う作品?
8名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 09:54:45 ID:HZarn4jl
皇族で軍人とかいいな、とか不意に思ったが、歴史上そういう義務があった国ってどっかあるっけ
9名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 15:02:48 ID:coD4ndWp
皇族は大抵軍人だぞ
お天ちゃんは三軍の長だったし
まあ、普通は戦場に出たりはせんが
10名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 15:03:58 ID:u05rw+GL
>>8
旧軍って皇族の大将とか居なかったっけ?お飾りだったと思うけど。
11名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 17:18:45 ID:SXqUgMu3
東伏見宮殿下とか色々いたな
12no solution 3/10:2009/07/19(日) 20:32:04 ID:ub+AzkS3
>>1
スレ建て乙です。

即死回避もかねて投下します。計算では9レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・ご奉仕ものです。


以下本編
13no solution 1/9res:2009/07/19(日) 20:32:38 ID:ub+AzkS3
■第3章 ―― 偶然
 3日後の朝、私とターニャはカイナール村近郊に向かうヘリの中にいた。
AK小銃を持って旧国軍の制服を着たターニャは、どこからどう見ても非合法な武装勢力の一員だ。
私はターニャの反対を押し切って、娼婦時代に着ていたロングのスリップドレスの上からチャドルを被った。
ターニャが旧国軍の扮装をするのと同じ理屈だ。多少は不愉快な思いをするだろうが、理論的な最適解はこれ以外にない。
 ヘリはアイクが操縦している。運転のプロフェッショナルとは聞いていたが、ヘリまで飛ばせるとは思わなかった。
大尉曰く、彼が運転できないのはジェットコースターぐらい、だそうだ。
 3時間ほどで、カイナール村の近くにヘリが着地する。近くといっても、軽く数キロはある。
私はこれから起こることを思い、ちょっと気分が悪くなってきた。
ターニャは装備を再点検すると、ライフルを地面に置いた。バックパックも下ろす。
「アイク、手短に頼むね」
「歯を食いしばれよ」
「言われなくても」
 アイクがターニャを思い切り殴りつける。ターニャは身体をくの字に折って地面に倒れた。
アイクはコンバットブーツでターニャを蹴りつけ、背後から肝臓を殴る。ターニャが押し殺したうめき声をあげた。
 30秒ほどで、暴行は終わった。ターニャは消耗しきったようで、地面にうつぶせている。
アイクは制服から埃を払うと、呼吸を整え、相変わらずのボソボソ声で「健闘を祈ります、少尉」と呟いてヘリに乗り込んだ。
軍用ヘリは、あっというまに雲ひとつない空の彼方へと消える。
「ターニャ、大丈夫?」
「だ、大丈夫、大丈夫。っつ、でも、ちょっと、休ませて」
 彼女はうずくまったまま荒い息をついていたが、きっかり1分後によろよろと立ち上がった。
バックパックを背負い、ライフルを手に取る。足元がおぼつかないようなので、私は彼女に肩を貸す。
「アイクの野郎、本気で、やりやがった。いってぇ」
「骨は折れてない?」
「大丈夫。あいつ、プロだもの、そんな失敗は、しない。それから、少尉、そろそろ英語は、ストップ」
「わかった」
「アイクは、爆破と、運転が専門、ですが、本当の仕事は、尋問係、です。
あたしも、同じ訓練は、受けて、ますけどね。この国流の、やりかた、を」
 ターニャは母国語で喋るほうがずっと楽そうだ。訛りの感じから言うと、南部生まれだろうか。
「ターニャ、敬語はやめないと」
「おっと、そうでした。いやまあ、あたしも、一応、こういう言葉遣いが、できますよ、と」
「大丈夫。わかってるから」
 私たちは、のろのろとカイナール村に向かった。舌の奥がしびれるような緊張を感じる。
慣れないチャドルの下で、肌がじっとりと汗ばみ始めた。
「緊張しないで、って言うほうが無理だと思うけど、でも、緊張しないで。あたしは3マガジン持ってきてる。
村には60人しかいない。いざとなったら皆殺しにしても、31発ほど弾が余るから」
「いざとならないことを祈ります」
「まったく。神のご加護を」
「神のご加護を。ああもう、神に祈るなんて久しぶりです」
「噂どおりの、不信心っぷりだね」
「ラマダンのたびにダイエットに失敗してきたので」
「そりゃ、ひどい逆恨みだ。ってかあんたダイエットの必要なんてないだろ」



 カイナール村が見えてきたあたりで、私たちは羊飼いの少年に声をかけられた。
「こんにちは。あの、そちらの方は随分と具合が悪そうなんですが、大丈夫ですか?」
 どんなに自分が忙しくても――あるいは苦境に陥っていてさえ――困っている旅人がいれば手を差し伸べる。
この国が誇るべき慣習だと思う。だが私は、その誇るべき慣習を逆手に取る。
「ありがとう。でも大丈夫。あんまり、私たちと係わり合いにならないほうがいいわ」
「とんでもない。ここで待っていてください。それから、水を。ここを動かないでくださいよ?」
 少年は私に水筒を手渡すと、村のほうに全力疾走していった。
バツの悪い思いをしながら、水筒をターニャに渡す。彼女は水を一口、口に含んだ。
このあたりでは水は貴重品だが、差し出された好意を受け取らないのは、とんでもない失礼にあたる。
 やがて、少年に案内されて、村の男たちがこちらにやってきた。
彼らは互いに目配せすると、ぐったりとしているターニャに肩を貸す。私はおとなしく彼らに場所を譲った。
 私たちは村長の家に迎えられた。喉の奥のほうから、恐怖心と緊張がせりあがってくる。大丈夫。落ち着け。

14no solution 2/9res:2009/07/19(日) 20:36:38 ID:ub+AzkS3
 応接室に通されてまもなく、老人が姿を見せた。村長だろう。
椅子にもたれていたターニャが姿勢をただし、頭を下げる。私も一緒に頭を下げた。
老人が囁くような声で話を切り出す。
「何があったのか、事情は伺いませぬ。ただ、あなた方を私の客人として迎えさせていただきたい」
「いけません、老師。あたしたちは、ご迷惑を、おかけしてしまう――
すぐに、出て行きます。神に、感謝を」
 ターニャが苦しい息遣いの下から言葉をひねり出した。
ふと見ると、彼女はアイクに殴打された場所を手で押さえている。
痛みを堪えているのではなく、自分で痛みを生み出しているのだろう。
身体を張った演技だ。
「馬鹿なことをおっしゃいますな。このあたりは、野盗も出る。
あなたは女性の身でありながら秀でた戦士とお見受けするが、
その怪我で、お連れの方もいるとあっては、
到底安全とは言いがたい。2、3日休んでいきなされ。
いかなる志をお持ちであるかは知らぬが、
金にしか興味のない外道どもの嬲り者にされるのが、
その志の最期を飾るに相応しい結末とは思えませぬな」
 ターニャは大げさにため息をつくと、頷いて見せる。
「わかりました、老師。ご好意に、深く感謝いたします。
ですが私たちにも事情がありますので、明後日の朝には、出て行かせて頂きます。
それまでご厚情に預からせていただければ、この上なき喜びです」
 私たちを回収するヘリは、48時間後に村から10キロの地点に到着する予定だ。
事情があって明後日の朝にはここを出ねばならないという彼女の言葉に、嘘はない。
「よろしい。まもなく、医術の心得がある者が来る。怪我を診てもらうといいでしょう。
粗末なあばら家ですが、我が家と思ってくつろいでくだされ。神のご加護を」
「神のご加護を」

 夕方ごろになって、医者らしき男が車に乗ってやってきた。
ターニャの怪我を見て眉をひそめたが、無駄な質問をすることはなく、手早く湿布を貼り、包帯で固定する。
ずいぶん頑丈に鍛えられていますから、一晩眠れば快復するでしょうと言い残して、医者は去っていった。
なるほど、アイクの技術は確かというわけだ。彼はどれくらい痛めつければ、どれくらいのダメージを与えられ、
それがどれくらい尾を引くのか、完璧に把握している。



 夕食は村長の一家と一緒に食べることになった。
質素だがたっぷりと振舞われた食事を前に、ターニャはご機嫌だ。
私は失礼にならない程度に食べるのが精一杯で、早々にお茶に逃げることにする。
タバコが吸いたくて仕方がないのだが、このあたりの風習だと女性の喫煙はあまり好まれない。
幸い、お茶はコーヒー党の私でも美味しいと思えるほどの上物だった。
 食事の間中、ターニャがこちらを伺っているのが分かったが、無視することにする。
確かに、食事時というのはいろいろと話を聞きだすのに適した時間だ。
でも、今の段階ではあまりにも時期尚早だし、
万が一、今晩中に追い出されてしまうような展開になると、命に関わる。

 食事が一段落したところで、風呂に案内された。ターニャは傷が痛むのでパス、というわけで、
いきおい私がお風呂をもらわざるを得ない。なにしろこのあたりで風呂と言えば、贅沢中の贅沢だ。
 風呂桶は庭の軒先に置いてあった。当たり前だが、滅多に使われないのだろう。
庭は石壁で街路と区切られているが、壁はところどころ崩れている。その気になれば覗きたい放題だ。
それくらい、この設備が使われる機会はないということだろう。
 私は覚悟を決めてチャドルを脱ぎ、ゆっくりとドレスを脱ぎ捨てていく。
時間を十分に使って全裸になってから、水が張られた風呂桶に身を浸した。
一度、肩まで水に沈めてから、上半身をそろりと水面の上に出す。

15no solution 3/9res:2009/07/19(日) 20:38:49 ID:ub+AzkS3
 そのとき、緊張で研ぎ澄まされた私の意識が、人の気配を捕らえた。
案の定というべきか、壁の向こう側に数人の人間がいるようだ。私はすばやく頭の中で計算を巡らせる。
ふむ。悪くない。もとより、この可能性はシミュレーションの範囲にもあったことだ。不愉快ではあるが。
 私は観客の目を意識しながら、乳房を水の下に隠しては出し、あるいはちょっと立ち上がってみせたり
――もちろん屋敷のほうを向いて――して、壁の向こうを挑発してみる。少しばかり、人数が増えたようだ。
まったく、普段は人間以下の扱いをするわりに、こういう時間帯において商売女が拒まれることは滅多にない。
 30分ほどで入浴を終えると、私はタオルで体をぬぐい、素肌の上にドレスを着る。
それから、数人の男たちが群がっている壁の裂け目に向かって歩を進めた。
彼らは一様に驚いたようだが、あっという間に居直ってふてぶてしい態度をとる。私は街路に出て、彼らと正対した。
「何か申し開きがあるのでしたら、伺いますが?」
「申し開き? 馬鹿言うな、お前が俺たちを誘惑したんじゃねえか、売女め」
「その手の言葉は聞き飽きました」
「まあまあ姐さん、そうツンケンしなさんな。お前も余計な喧嘩を売ってるんじゃねえよ。
そりゃあ、あれだ、ちょっとばかり覗き見しちまったのは、謝る。
だがなあ、その、姐さんがこんなに若くて美人じゃなけりゃ、俺たちだって素通りしたさ。神に誓っていい」
「ずいぶんお安い誓いだこと」
「ヘヘッ、分かってくれよ。こんな田舎の村じゃ、楽しみなんて何もないんだ。
米帝どもの爆弾で若いのもみんな死んじまったんでなあ。こちとら、とんとご無沙汰なのよ」
「私はいま、村長の客人としてここに居ます。
村長が娼婦をかくまったとあっては、彼の顔に泥を塗るも同然ではありませんか?」
「ハッ、あの村長が気にするものか、第一……」
「――黙れ」
 それまで黙っていた男が一声かけると、不自然な沈黙が落ちた。
なるほど、彼ら全員が黙らざるを得ない事情があるのだ。
だがそうであるならば、私がここでとるべき選択は一つしかない。
「旦那さん方、私はプロです。そこを分かって頂けるのなら、
ちょっとした潤いをご提供するにやぶさかではありません」
「カネか」
「ええ。分かりやすい話ではありませんか? ドル以外でのお支払いは受け取れませんけど」
「はん、所詮は売女か」
「まったくその通り。後腐れなくてよろしいでしょう? 私はお金を、旦那さん方は満足を。
それだけ。市場でトマトを買うようなものです」
「俺たちがドルなんぞ持ってねぇことを分かって言ってるのか、売女?」
「ではこうしましょう。私はお口で旦那さん方のお相手をします。
旦那さん方は、満足した程度にしたがって適当なお代をお支払いください」
 彼らはお互いの顔をちらちらと横目で見ている。迷っているのだ。
出来高払いというのは、商売女に慣れた相手には絶対に切り出してはいけない支払い方法だが、
根が純朴な田舎者相手には至極有効だ。彼らにとってみれば、これは名誉の値段でもあるのだから。
 やがて、一人が前に進み出た。
「いいだろう、姐さんにご奉仕してもらおうじゃないか」
「喜んで。でも、ここでというわけには?」
「当たり前だ。ちょうどそこの建物が空いてる。住人は戦争でみんな死んだ」
「分かりました。ほかの旦那さん方はどうされますか?」
「……俺も、お願いしようかな」
「お、お、俺も!」
「では、順番は旦那さん方で決めておいてください。最初はこちらの方からで。それでよろしいですね?」
 私は内心で安堵のため息をつく。まだ本当に危機を脱したわけではないが、
あの「黙れ」の瞬間は、正直かなりヤバかった。
私が何らかの秘密を――彼らが隠したがっている秘密を――
知りたがっていると、彼らが勝手に解釈してしまったら、私は殺されていただろう。
この後、1対1になったところで誰かが私を殺そうとする可能性は否定できないが、
「客」が数人に膨れあがってくれたこの状況ならば、助けを求められる可能性も高い。
薄氷の上で踊っているという事実は変わらないが、氷が割れていないのも事実だ。まだ。
 さて、そうなると問題は彼らを口技でちゃんと満足させられるかということになる。
フェラチオは、苦手ではないが、得意というわけでもない。
まったく、こんなことならもうちょっと練習しておくんだった。
16no solution 4/9res:2009/07/19(日) 20:40:17 ID:ub+AzkS3



 最初の一人は、わりと物慣れた様子だった。あの場面で第一声を発するからには、
要するにこれがとてもお得な取引だということを理解できる人間だというわけだ。
 ランプにライターで明かりをいれ、若干砂埃のたまっていたソファの座面をはたくと、
彼はさっさとズボンを下ろして座り込む。まだそのイチモツは萎びたままだ。
営業用スマイルを浮かべた私が彼の股のあいだにしゃがむと、彼は私の顎に手を差し伸べ、すばやく唇を奪う。
もう片方の手が背中にまわされ、私はやむを得ずなされるがままになった。
 やがて両肩からスリップドレスの肩紐がずりおとされ、胸があらわになる。
男は私と唇を重ねながら、両胸を交互に確かめた。ここ数年で刷り込まれた本能というのは恐ろしいもので、
私は少しずつ自分が高まってくるのを感じる――そのほうが客の受けがいいからだ。
 しばらくして男はキスに飽きたのか、それとも前かがみの姿勢に疲れたのか、私の口を解放した。
それでも片手は私の胸を緩やかに愛撫し続けている。
「随分な上玉じゃないか。感度もいい。街じゃたいそうな値段で米帝どもからムシってるんだろ?」
「それほどでも」。わざと英語で答える。彼は薄く笑い、英語で答える。
「ときどき、街まで出向く用事があるんでな。姐さんらみたいな女のことは良く知ってる。
姐さんクラスの女を抱きたかったら、俺たちの月収程度、軽く飛んでいくこともな」
「私はそんな売れっ娘じゃありませんから」
「いいや、それは嘘だ。それだけ綺麗な英語が喋れて、くるくると頭がまわって、
何より商売女にしてはえらく品があってとなりゃあ、な。
 ……いや、すまんね。詳しいことは聞かんよ。戦争のせいで、何もかもグダグダになっちまった。
俺だって昔は国軍の戦闘機乗りだったのさ。今じゃただの羊飼いだ。
でもお互い、ちょっとばかりそんなことは忘れようぜ」

 彼が本当にファイター・パイロットだったのかどうかは分からない。
女を買う男なんてものは、適当なことしか言わないものだ。
でもシャツの下に垣間見える筋肉を鑑みるに、軍人だったのは疑いない。
それでここまできちんとした英語を喋るからには、戦闘機乗りだったとしても不思議ではないだろう。
彼の教育には、莫大な国家予算が投じられてきたのだ。
 けれどそんなエリートも、今では「街まで出向く用事のある羊飼い」、
つまり麻薬の密売に手を染めているということだ。
彼の提案は正しい。ちょっとばかり、そんなことは忘れてしまおう。

 彼の手とって乳房から離し、ぐっと体をおし進めると、まだ元気とは言いがたい男根を口に含んだ。
匂いがきついが、言ってはいられない。
 皺がよった先端部分の皮のあたりに軽くキスをしてから、全体をぺろりと口含む。
左手は睾丸のおさまった袋の底に添えて、優しくさするように愛撫を始めた。
軽く上目遣いで男の顔を見る。彼は苦笑すると、私の頬に手を添えた。
 口の中で少しずつ大きくなってきた男根に舌を絡ませ、ゆっくりと上下に口を動かす。
動きに合わせて、口の中のモノの大きさと硬さも増していく。
 やがて、根元までは口に含めないほどの長さに膨れ上がった。完全に勃起したようだ。
私は亀頭を舌で舐め上げながら、竿を手にとってしごいていく。ぐっと男根に力が入り、
彼が快感を感じ始めていることが分かった。
 私はなおも亀頭を舌で責めつつ、むき出しになった胸を彼の両太股にしなだらせる。
彼はぐいっと腰を前に押し出した。ははあ、ただ単に乳房を乗せただけではご不満ですか。
このヘンタイめ。でもですね、ご要望は分かるんですが、それはちょっと私には難しい部分が。
いやまあやりますけど。

 椅子にちょん掛けしている彼の股間には、唾液でテラテラと黒光りするイチモツがそそり立っている。
私はその先端を軽く咥えたまま、両方の乳房を手で抱えて男根を挟み込んだ。
正しくは、挟み込もうと努力した。とりあえず形ばかりは、なんとかそういう体勢になる。
頭上で男が忍び笑いを漏らしたのが聞こえた。だからそうなるのはわかってたろうに。
「いや、いや、姐さん、無理しなくていい」
 私はむすっとして、意地になって彼の剛直を両胸で愛撫しようとしたが、途中で諦めた。
やっぱりこのプレイ方針には無理がある。身体的ハンディキャップというやつですよ。
上に乗ってもらえばいけるんですがね。
17no solution 5/9res:2009/07/19(日) 20:42:45 ID:ub+AzkS3
「しかしまあ……姐さんは痩せすぎじゃねえか? もうちょっとちゃんと食ったほうがいいと思うぜ。
下のお口のほうはそのぶん絶品なんだろうなと思わなくもないが、いくらなんでもちょいと心配になっちまう」
 私は彼の男根を離し、ぼそっと呟く。
「食事するのが苦手なんです。無理に食べるくらいなら、嫌いな男に抱かれたほうがマシ」
 男はため息をついた。私はもう一度彼のイチモツを口に含むと、今度はできる限り奥まで飲み込んでいく。
もうここで精一杯というところまで入れたところで、唇に軽く力を入れて、ぎゅっと強く吸った。
口の中が真空になり、分泌され始めていたカウパーが搾り出される。
気圧差の関係で彼の男根の毛細血管がビクビクと激しく脈打ち始めた。
彼が「うっ」と呻くのが聞こえる。ざまあみろ。
 しばらくの間、パスカルの偉大な発見を利用して彼の男根を締め上げたところで、
ふっと力を緩めて再びゆるゆると剛直を前後にさすっていく。左手は睾丸を丁寧にマッサージ。
この左手の使い方には自信がある。医学的知識の差というやつだ。

 やがて、男の呼吸が荒くなってきた。頬に添えられた手は、今では私の肩をつかんでいる。
私は気をよくして、一気に彼を攻め落とすことにした。
 まずはイチモツを強く吸ったり開放したりを繰り返して先走った体液を無理やり吸い出すと、
その勢いでビクビクと痙攣し始めた竿を手と唇、舌でぐいぐいとしごきあげる。
男は低い呻きをあげながら、唇をかんで射精感をやりすごそうとしている。
私は彼の手をとり、自分の胸へと導いた。
乳首はすっかり硬くしこっており、男の手はほとんど本能的に私の胸をまさぐる。
 そろそろ果てるだろうと踏んだ私は、熱を持つ剛直の先頭、亀頭だけを口に含み、
くすぐるようにまんべんなく舌を這わせる。
右手は竿を激しくしごき、左手の指で袋の筋をなでまわす。右手に、竿が硬さを増す感触が伝わってきた。
 男は「おおっ」と一声放つと、私の乳首から両手を離し、がっしりと頭をつかむ。
そして勢いよく腰を振ると、私の口のなかにどっと精液を放った。
苦さと塩気の強いその粘液を、のどを鳴らして飲み干していく。
 男の鍛えられた腹筋にはじっとりと汗がにじんでいて、妙なセクシーさを見せていた。
口のなかの男根はあっというまに萎びていき、私はときおりそれをストローのように吸って、
彼の精子を最後の一匹まで吸い尽くす。吸われるたびに男は軽く喘いだが、容赦する必要はないだろう。
ちょっとばかり悔しい気持ちが先走っているだけで、肉体的には快感なのだから。たぶん。

 一段落したところで、私は彼の分身を口から出した。
彼は大きく深呼吸すると、信じられないという顔で首を振る。
「やれやれ、こいつは驚いた」
「ご満足いただけましたか?」
「これで満足しなかったなんて言ったら大嘘つきもいいところだ。
若いくせにたいしたもんだな、姐さん。
適当な言いがかりをつけて値切ろうとも思ってたが、久々に楽しませてもらったよ」
 言いながら彼は下着とズボンを履くと、ジャケットの札入れから10米ドル札3枚を取り出した。
「そんなにたくさんは……」
 一応言うだけ言ってみる。当たり前だが、私はこんな値段で買える女ではない。
それがたとえフェラチオのみだとしても。だが場所を考えれば――プレイの時間も――これはもらいすぎだ。
「とっておいてくれ。この程度で姐さんに抜いてもらえたんなら、それでも大バーゲンだ。
もしこれじゃ多すぎると本気で思ってるなら、あとの若いのを面倒みてやってくれないか。
 一応は平和になったとはいえ、この国じゃあ人間はいつ死んでも不思議じゃない。
なのにあいつら、まだ女を知らないんだ。
ま、あいつらが姐さんにかけるだろう迷惑代コミだと思ってもらってもいい」
「そういうことでしたら。でも筆おろしまでは、さすがに」
「そこまでは言わないさ。ありがとよ、街で会ったときには値段くらいは聞いてみることにするさ」
「今後ともご贔屓に」
 彼は体から砂埃をはたくと、部屋を出て行った。私は着衣の乱れを直し、次の客を待つ。



 少しして入ってきた男――ありていに言えば少年は、女性経験がないのがありありと分かった。
なるほど、最初の男の言葉どおり。さてさて、どうしたものか。事務的なのも夢がないだろうし、
かといってたっぷり時間をかけるには後ろがつかえている。
 というわけで、定番にしていたシナリオのひとつをアレンジして使うことにする。
18no solution 6/9res:2009/07/19(日) 20:46:47 ID:ub+AzkS3
 まずは、緊張しきったまま立っている少年をふわりと抱きしめる。
インパクトに欠ける胸だが、密着させればそれなりには意識させることが可能だ。
あっというまに彼の股間が膨れ上がったのが分かる。
 少年の手をとってスリップドレスの肩紐に導くと、時間をかけて肩紐をずらしていく。
やがて紐が落ち、密着させた胸の片側上半分があらわになる。
同じようにもう片方も脱がせると、今度は少し上体を反らした。
ドレスがずるりと滑り落ちていき、両胸がさらけ出される。
 少年はおずおずと私の胸に手を伸ばすと、ぎゅっと強く乳房を握った。痛い。
「痛いっ。もっと――もっと優しく……」
 囁くような声で哀願してみせる。彼はびくっりしたように一度引っ込めたが、またすぐに乳房へと手を戻した。
今度は撫でるように双の丘をまさぐる。快感はどこにもないが、この初々しさはなかなか良いものだ。
 2、3分ほど、乳房と乳首を弄ばせたところで、私はまたわずかに体を引く。
ドレスが腰の辺りまで落ちていく。再び少年の片手をとると、私の背中へと導いた。
「女の体は――いろんなところで愛情を受け止めるようにできてるんです――
そう、背中を――そうやって、撫でられるのも――」
 いやまあ何も感じないんですけどね。それは言わないのがお約束。
せめて最初の男くらいの経験があれば、また少しは話も違ってくるけれど。
「背中と胸だけじゃなくて――もっといっぱい、いろんなところを触ってください――」
 私の誘いに応じて、少年の手が体のいろいろなところを探索する。
鎖骨を指が這い、締まったウェストのラインをたどり、ときには頬を、またときにはヒップをやわらかく撫で回していく。
「女ってのは、こんな柔らかいものなのか」
 少年が呆然としたように呟く。
「ええ。もっとも私はみんなから痩せすぎだって言われますけど」
「僕――俺も、そう思う。一抱えにできちまうんだから」
 そう言うと、彼は私の腰をぎゅっと抱き寄せる。
この細さが私の商売道具であり、生命線だったのだから、当然といえば当然。
そもそも私が好んで着ていたドレスは、布地の中で体が踊ってこそ映える
――と偉そうに語っているが、これらは何もかも全部カレンから学んだことだ。

 だいたい10分くらいそうやって抱き合ったまま愛撫をされるに任せたところで、抱擁を解く。
腰のあたりでドレスを押さえたままつつっと数歩下がると、力を抜いて床にぺたりと座り込んだ。
背筋を伸ばし、少年の顔を見つめる。
 彼は無言で私の足元にしゃがみこむと、ドレスの裾を引っ張り始めた。
私は特に抵抗はしないが、局部は両手で隠す。
いまさら何かが恥ずかしいわけではまったくないが、ごく自然に頬が上気する。
訓練の賜物だ。少年の息遣いが荒くなっているのがよくわかる。
 ドレスが両足から引き抜かれるまで、ほとんど時間はかからなかった。
両膝を閉じ、秘所は手で隠す。当たり前のように少年は膝を両手で割ると、私の手をつかんで女性自身をさらけ出させた。
私は大きく息を吐きながら、目を閉じる。
 少年の目は、物心ついてから初めて目にするのであろう女性器に釘付けになっていた、のだと思う。
しばらくの間、彼は身動きひとつしなかった。それでもついに好奇心が勝ったのか、裂け目を指で触れた。
 普段ならこの段階で、問題の場所は十分に潤っている。というか、そういう準備で挑むのだから当然だ。
でも今回は性教育という側面もある。
 少年の指が、秘裂への侵入を試み始める。私は眉をしかめて目を開け、ふたたび痛みを訴える。
彼はまたしても大いに戸惑ったが、体を抱き寄せて一緒に横になり、
胸と秘所を同時に優しく愛撫する方法を教えると、それに熱中し始めた。
「薔薇の花弁をほぐすように、やさしくゆっくりと」とはよく言ったものだ。
 私は私で稚拙な愛撫をほほえましく思いつつ、過去の性交渉の思い出をたぐり、高揚感を高めていく。
と、体の奥のほうで、何かがとろりと溶けるような感覚が伝わってきた。これだ。これを逃がしちゃいけない。
 少年の呼吸にあわせながら快楽の記憶を掘り進めるうち、秘所がじっくりとした湿り気を帯び始めた。
「ああ、そう――そう、それを――」
 適当な声をだしてみる。適当ではあるが、意外にこれが効果がある。
少年にも、私にもだ。彼は一層熱心に愛撫を続け、私はその指先から快感を感じ始めていた。
「もう、入れても大丈夫――」
 そう囁くと、少年は無骨な指を私の体の中に押し込み始めた。十分に潤ったそこは、指先をたやすく受け入れる。
19no solution 7/9res:2009/07/19(日) 20:53:07 ID:ub+AzkS3
「ああ、あ、あぁ、ああっ」
 好奇心に導かれた腕白な指が、胎内で激しく蠢く。想像していたよりも快感が深い。
 さて、このまま勢いにまかせて私が達するまでというのもアリかもしれないが、
それをやってしまうと後ろを待たせすぎになる。残念だが、性教育の時間はここまでにせざるを得ない。
私の内部を探索している手を取って、動きを止めさせる。
少年は困ったような、怒ったような顔になったが、私が「次はあなたのものを」というと、いそいそと手を引いた。

 少年を立ち上がらせてから、ジーンズのボタンに手をかける。
あまりじらしても可哀想なので、さっさとボタンをはずし、ファスナーを下ろした。
ズボンを膝のあたりまで引き下げる。彼の肉棒は年齢のわりに十分に成熟していて、未来の大器を思わせた。何の大器だ。
 先端部分がカウパーと粘液でどろどろになっている剛直に、軽くキスをする。
とたん、剛直がビクっと震え、どっと白濁液が吹き出した。
あまりにも突然の爆発に、口でカバーすることもままならず、顔じゅうに体液を浴びる。
あーあー。これ、本当だったら追加料金ものなのに。
 内心でため息をつきながら、顔には笑みを浮かべたまま、いまだに樹液を垂れ流し続ける少年のイチモツを咥える。
彼がどんな表情をしているのか仔細に観察したい気もするが、それは悪趣味というものだろう。
前髪に飛び散った精液が目に入りそうなので、左手で髪をかきあげながら、少年の初物を舌と唇で愛していく。
 さすがに若いだけあって、まだ苦辛い体液を出しているイチモツは、あっというまに硬さと太さを取り戻した。
このまま一気に攻め落としてしまえば30秒もかからず2度目の射精に至るだろうが、
こんなことでトラウマを作ってしまうのも悪い。私はのんびりと、少年の分身を愛で続けた。
 それでもやはりというかなんというか、限界が来るのは早かった。
特に何をしたというわけでもないが、口の中で彼の剛直は再び痙攣をはじめ、大量の精液を噴出させる。
私は最初の男にしたのと同じように、その体液を最後の一滴まで飲み干した。

 2回の発射を終えた後でも、少年の若々しい肉槍はまだ元気がありあまっているようだった。
でも彼はパンパンに膨らんだそれを私の口から引き抜くと、はにかんだような笑みを浮かべながらブリーフの中に押し込んだ。
「もう、いいんですか? まだ元気なのに」
「いや、いいよ、そりゃあもっとやってもらえれば嬉しいけど、僕はそんなにお金を払えないもの」
「お金なんていいのに」
「姐さんはよくても、僕が嫌だ。ありがと――姐さんのおかげで、いろいろ自信がついた気がする」
「何よりです。好きな子には、とにかく優しくしてあげてくださいね」
 彼は顔を真っ赤にすると、そそくさとズボンを履いた。
そして巾着からなけなしのディナール硬貨をひとつかみ取り出して私に握らせると、部屋を出て行いく。
なんとも。直截的な言葉で言えば「ちょろいぜ」の一言だが、彼らは純朴で誠実な人間たちなのだ。
その価値を否定する気にはなれない。



 結局、それから4人の面倒を見た。そのうち1人にはやや苦労させられたものの、おおむね楽な仕事だったと言えるだろう。
途中、彼らが濡れタオルを持ってきてくれたので、体のあちこちに飛び散った体液を拭い取ることもできた。
最低限とはいえ、やらないよりはずっといい。
 全員が帰途についたときには、夜明けが近かった。もう一度村長の家の庭で水風呂を浴びて、
寝床にもぐりこんだとして、村長に見咎められる可能性は高い。
だが風呂に入らなかったら、どう考えたってこの匂いはバレバレだ。

 ――が、これはそれほど悪い状況ではない。悪いどころか、想定していた筋書きのひとつに上手く着地できる可能性が高い。
そしてそのためには、偶然に頼っていてはダメだ。

 私は堂々と村長宅の庭に戻ると、わざと大き目の物音をたてながら水風呂を浴びた。
村長はだいぶ高齢だから、眠りも浅いと思っていい。これだけの音をたてれば目も覚ますだろうし、
この騒音が何を意味しているかもすぐに悟るだろう。
 だが、彼がAK小銃を片手に庭先にすっ飛んでくるという事態は、ついぞ起きなかった。
私はやや不審に思いつつも、毒を食ったからには皿まで食べることにする。
 風呂を終え、身支度を整えた私は、明るくなり始めた庭を散歩することにした。
この手の伝統的建造物の構造から言って、家長の部屋はまず間違いなく裏庭に面した一角にあるはずだ。
私は頭の中でこの家の地図を想像しながら、裏庭があるはずの方向に足を向ける。
読みどおり、村長は果樹を手入れしていた。
20no solution 8/9res:2009/07/19(日) 20:54:09 ID:ub+AzkS3

 さて。問題はここからだ。
 彼は私のほうをちらりと見て、そして何事もなかったかのように果樹の手入れに戻る。
私はその目に一瞬の怒りがよぎったのを見逃さなかった。
しばらく、近くで老人の作業を見守ってから、ストレートに疑問をぶつけてみる。
「老師、なぜ私を罵倒しないのです? 私はあなたに殺されても仕方のないことをしたのに」
 長老は鋏を手にしたまま、こちらを振り向くこともせず答えた。
「――まったき信仰こそがより正しい信仰を生み、
まったき幸福こそがよりまっとうな幸福を招くように、
忌むべき死はよりおぞましい死を呼ぶ。その連鎖を避けたいだけのことだ」

 ここが勝負どころだ。彼と真正面から話ができる機会は、これを逃せば二度と訪れない。
糾弾するべき者/されるべき者という関係が発生している今ならば、
客人とホストという、伝統と義務に拘束された関係から離脱できた今であれば、
踏み込んだ話をすることもできる。こちらの立場は非常に悪いが、
立場なんていうものは奇襲ひとつで簡単にひっくり返るものだ。

「カレンのことですね」
 まったくのハッタリ。だが、効果はあった。
村長はぎょっとした表情になって、私をまじまじと見る。我奇襲に成功せり。
「カレンに対する正当ならざる不幸は、それを糊塗する必要ゆえに、次の不幸を呼んだ。
それは神の差配ではなく、人の罪です。だから老師は私を指弾なさらない」
 重ね重ねのハッタリ。
「お前は――何者だ」
「カレン・バリシニコワは、もう一人のカレンを生んだ。彼女はカレンと名乗りました」
「おお――神よ、神よ――お前は――」
「運命の輪は途切れず、神は常に天におわします。カレンは死にました」
「――死んだ、だと? 頼む、教えてくれ。頼む。いや、頼みます。どうか。教えてくだされ。
何があったのです。あの子に、何が起こったのです」
 食いつきは上々だ。もう一押し。
「カレンは、首都で娼婦として生きました。そしてある日、自爆テロを起こして死んだのです。
私は、彼女に恩義を受けた人間の一人です。だからどうしても、彼女の最期を故郷に伝えたかった。
それでターニャさんに無理を言って、ここまで連れてきてもらいました。彼女には彼女で別の用件があるのですが」
 私は真偽確かならざる物語を紡ぐ。私の知るカレンが、村長の思うカレンと同一人物である可能性は未知数だ。
しかし、十分な確からしさを持った物語ではある。
案の定、村長はしばらく絶句していたが、やがて深い皺の刻まれた目じりからどっと涙が溢れた。
「おお――おお、神よ。神よ。なぜ儂は今ここで死なないのだろう! 
お願いです、神よ、罪深き者に天罰を、どうか――!」
 よし、落ちた。内心で拳を握り締める。
「カレンの本当の名前を教えてください。彼女は無名墓地に葬られました。
せめて一束の花を捧げたいと思っている人間は、私一人ではありません」
 村長は止めようもない嗚咽をもらしていたが、
涙の狭間でぼそりと「ついてきてくだされ」と呟くと、自室へと私を招いた。

「――儂は、卑劣な男だ。卑怯極まりない男だ。あなたの話を聞いて最初に思ったことは、
この話を他の村人には聞かせられん、そんな邪な想いでした。恥ずべきことです。まったくもって、恥ずべきことです」
「地位には、それに応じた衣が欠かせません。正しい判断だと思います」
「我ながら、つまらんプライドですな。実にくだらん。
なのに、そんなくだらないものが、命よりも大事に思えてしまう。
 カレンを訴えたのは、儂の弟です。あやつは人間のクズだった。
だがあの馬鹿者が宗教裁判所に提訴したと知ったとき、儂は何が何でもこの裁判に勝たねばならないとしか思えなかったのです。
それがカレンの破滅を意味すると分かっていても」
「弟さんは、今?」
「死にました。天罰でしょう。あの愚か者は、60にもなって、12歳の嫁を娶りました。
さすがにまっとうな村人は皆、きゃつに愛想がつきていたから、愚連隊どもをかき集めて結婚式を開いたのです。
儂はそんな茶番に顔を出す必要はないと言いましたが、律儀な村人の中には、結婚式に参列した者もいます。
 愚連隊どもは、こんなご時世であるにも関わらず、式を祝うと称して自動小銃を空に向かって乱射しました。
それから2時間ほどして、連合軍の飛行機が式場に爆弾を落としたのです。
愚連隊どもには、自業自得といわざるを得ない。だがその爆弾で、哀れな花嫁と、罪のない村人たちもまた死にました。
恐ろしい最期でした」
21no solution 9/9res:2009/07/19(日) 20:56:16 ID:ub+AzkS3
「――お悔やみを。罪なき死はもちろんですが、たとえ罪があったとしても、罰としての死はあまりに苛烈です」
「ありがとう。どこまでも愚かな弟だったが、やはり、こたえました。死んで当然だと、何度も思ったが――
いや、失礼、儂の話しではありませんでしたな。
 カレンの裁判の後、儂ら一族は、弟の異常な性欲をどうにかしなくてはならないと、毎夜のように話し合いました。
だがその会合での話題は、自然と、一族から聖典侮辱罪を犯した人間を出してしまったことを、
どう償わせるかという方向に向かった。
 二つの問題は、一つに交わりました。
カレンの両親に、生贄を差し出すよう求めたのです。
それが、まだまだ幼かったマイアでした。
 マイア・バリシニコワ。それがあの子の名前です。儂らは役人に賄賂を握らせて、
マイアの出生届を書類上のミスとして撤回させ、この世に存在しない人間としてマイアを育てました。
法的に存在していない以上、マイアは自らの窮状を訴える先もない。そう考えたのです。
 ですがマイアは、儂らの想像以上に賢く、強かった。
あの子は自らの身を汚されたその翌朝、姿を消しました。
そして今に至るまで、あの子がどうなったのか、儂らは何一つ知りえなかったのです。
 それから先は、恥に恥を上塗りする日々でした。弟には、金で娘を買い与えたのです。
人の道に外れた行いですが、儂らにはそれしか道がないように思えました」

 村の恥部ともいえる秘密が目の前に明かされたが、高揚感はなかった。
私の理性は、これがゴールではないことを理解している。幾何学的事実は3つだ。
(A) カレン・バリシニコワの妹に、マイア・バリシニコワがいた。
(B) マイア・バリシニコワには戸籍がない。
(C) マイア・バリシニコワは失踪している。
 よって、私の知る「カレン」と、マイア・バリシニコワを結ぶ関係性は、村長の証言の中には存在しない。

 マイアのものと断定できる遺留品があれば、カレンの墓を掘り起こして、
DNA鑑定を行うことも不可能ではないだろう。
問題は、そんな不自然な願い事をどうやったら聞いてもらえるかということだ。
が、とにかく話をそちら側に持っていかなくては始まらない。
「老師、カレン――いえ、マイアの、写真はありませんか。私たちの知っているカレンと、
マイアが同一人物であることを証明できれば、お墓をここに戻すこともできると思います」
 村長は、困惑したような顔で立ち上がると、机の引き出しを開け、一枚の古い写真を取り出した。
一人の少女が映っている。一転の曇りもない笑顔。
「……マイアの両親は、マイアが失踪した直後に自殺しました。これもまた、儂の罪です。
彼らは、マイアが暮らしていた家を、自分たちごと焼き払ったのです。
 それもあって、マイアの写真と、髪の毛を一房納めたペンダントを、弟は肌身離さず持っておりました。
それ以外、マイアが残したものはありません。弟は、結婚式の日にまでペンダントを身に着けておりました。
 本当に、一族の末娘をここまで気遣っていただき、感謝の念にたえぬのですが――
そのペンダントは燃えてしまいました。弟と一緒に。今残っているのは、その写真一枚だけです」

 私は見ず知らずの少女の写真を前に、ポーカーフェイスを保つので一杯一杯になっていた。
年齢に差はあるとはいえ、髪の色も、目の色も違う。
 マイア・バリシニコワは、私の知るカレンではない。
 記号論理学的には推論していたとはいえ、
できればそうあってほしくなかった真実を突きつけられたショックは、けして小さくはなかった。

 さあ、どうなのこれは? どこまでが偶然で、どこまでが計画なの?
 なぜカレンの出身地がこの村ということになっているの?
 それだけじゃない、マイアとカレンを同一人物だと指し示す状況証拠がこんなにもありながら、
どういう事実を積み重ねたらそれでなおかつマイアとカレンが別人であり得るの?
 分からない。あまりにもたくさんの未確定なパラメータが、相互に絡みすぎている。
でも、とりあえずひとつの仮説は成り立つ。
 仮説A。こんな偶然など、あるはずがない。

 カレン――あなたはいったい、何者なの?

(第4章「深淵」に続く)
22no solution 3/10:2009/07/19(日) 20:59:04 ID:ub+AzkS3
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。次回以降、また木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・あと7週はかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
・4096byte制限にひっかかりまくって投下に時間がかかりました。エディタ上じゃ4096以下なんですけどねぇ。
23名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 16:23:55 ID:DAtNGchD
乙カレー
24名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 19:53:33 ID:expANHHH
楽しみにしてる
25名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 02:09:47 ID:ycKhOwLD
他の職人さんの投下直後で大変申し訳ないのですが、再び規制される前に、
ひとつ投下させていただきたく思います。

テキスト容量23k。14分割となります。

では。
26無人地帯 (1):2009/07/21(火) 02:10:39 ID:ycKhOwLD
 ほぼ満ちた青白い月が、やわらかな光を放っている。雲はほとんどないため、
美しい姿を損なうことなく、夜空に浮かんでいる。どこかぼやけた印象があるが、
さて、何が原因だろう。
 午睡のまどろみに似た、幸福そのものに近い感覚を味わいながら、夜空の月を
見上げている理由を思う。
 私はなぜ、ここで月を見上げているのだ?
 朦朧としていた意識が鮮明になるにしたがって、自分の置かれている状況を
把握しなければという思いに駆られる。一方で、このまま眠ってしまいたいという
衝動にも駆られる。
 結局、私は誘惑を捨てて、自分の置かれた状況を把握することにした。
 地面に寝ているのはいい。だが、なぜ?
 軽く首を持ち上げると、自分の体が見えた。くすんだ色調の、茶色っぽい服を着ている。
ああ、これは軍服だ。

 首を左に振ると、うつぶせに寝ている人の姿が入ってきた。顔は向こうを向いているのだが、
側頭部が砕けていて、地面に内容物を撒き散らしている。
 あわてて首を右に振ると、今度は仰向けに倒れた男の姿が見えた。はるか上空を
睨むかのように見開かれた目は、まばたきを一度もせずにいる。
 今すぐにでも起き上がって逃げたい衝動を抑えて、自分の手や足が動くのかを確認する。
周囲の死体を見れば、自分の身体もどこかが損なわれていても、不思議ではないからだ。
 手は動く。右も左もだ。足も問題はない。ただ、視界がおかしい。狭くなっているように感じる。
特に、右側が。
 まさか。と思い、恐る恐る右目のあたりに触れると、眼球らしい手触りがない。
放して目の前に持ってきた指先には、乾きかけた血がべったりとついていた。
 どうやら、私の右目は永遠に失われたようだ。

 制限された視界で、さらに周囲を観察すると、あたりはさまざまな軍服を着た人間が
倒れていることに気がついた。性別は男の方が多いが、女もいる。
 その光景を見て、さらに意識がはっきりとしてきた。そして、すべてを思い出す。
 私は、この悪夢のような無人地帯を突撃していたのだ。私の部下とともに。
27無人地帯 (2):2009/07/21(火) 02:11:07 ID:ycKhOwLD
 潜望鏡を使って、塹壕の奥から前方を視察する。
 敵の塹壕線は300mも向こうにある。その間は、両軍の砲撃によって掘り返されて、
雑草すら生えない殺風景な姿を見せている。もっとも、塹壕線の周囲も砲弾で掘られているし、
周囲には塹壕を掘った際に捨てた土砂が盛られているために、視界に入るもので
土の色ではないものは、はるか遠くの森の緑か、空の青と白しかない。
 腕時計で時間を確認すると、予定時刻の1分前だった。
 じれて待つ時間は終わりだ。いよいよ行動する時がきたのだ。
 今朝、敵の大規模な攻撃を撃退しているから、今、目の前の塹壕線は手薄になっているはずだ。
他から増援が来る前に、突撃してしまえば奪えるだろう。
 後方から、大量の太鼓を連打しているかのようなドロドロという音が響き、
飛翔音が頭上高くを飛び越えていくと、前方で爆発が大量発生する。
 準備砲撃が始まった。
 私は両手のひらを上に向けると、拳ひとつくらいの高さだけ、手のひらを持ち上げる。
 それを見た塹壕内に控えていた部下達が、一斉に立ち上がった。そして、小走りに
射撃壕まで昇ると、突撃に備えて待機する。
 砲撃は2分経った今も続いている。その砲声と爆発音を切り裂くように、笛の音が
聞こえてくる。時計を見る。間違いない、時間だ。再度時間を確認してから、
私も笛を吹いた。射撃壕の階段を駆け上り、塹壕線から飛び出す。
 腰のホルスターから拳銃を抜き取ると、天高く掲げてから前方に振り下ろした。
 それを合図に、全力で走る。
 砲弾痕や片付けていない死体が転がる、足場の悪い300mを突破する、命がけの徒競走が始まった。
 決して振り向かないが、背後の気配で部下が続いているのがわかる。
 味方の砲撃は今も続いており、敵が頭を上げないようにしてくれている。
敵が頭を上げて射撃を開始したが最後、前進は非常に困難になるからだ。
特に、機関銃はまずい。あれは、突撃する味方の命を恐ろしい勢いで奪ってゆく。

 だが、いつまでも砲撃をしているわけにもいかない。近づいた味方まで吹き飛ばす
恐れがあるからだ。
 着弾が敵塹壕線の後方に延びてゆく。ここからが本当の勝負だ。
 全力で敵の塹壕線を目指す。すでに200mは走っただろう。あと、100mだ。
 全力で走る私の視界に、敵の塹壕線からチカチカと光る発砲炎が映ったのが、
その頃だった。そして、私は誰かに思いっきり顔面を殴られたような衝撃を感じると同時に、
そこで完全に意識を失ってしまったらしい。
 そして、今、目覚めた。というわけだ。
28無人地帯 (3):2009/07/21(火) 02:12:02 ID:ycKhOwLD
 周囲に転がっている死体を見ると、敵のものもあるが、味方のものもある。塹壕線の
双方が沈黙を守っているので、おそらく、攻撃は失敗し、撃退されてしまったのだろう。

 私は、味方の塹壕線へ戻ることにした。この無人地帯にいても仕方が無い。それに、
ここは双方の狙撃兵が狙っている。闇にまぎれて近くまで偵察に来られたり、
大規模な夜襲なぞかけられるわけにはいかないからだ。
 その意味では、意識を取り戻した直後に、すぐ立ち上がったりしなかったのは
上出来だったと言える。そうしていれば、間違いなくこの無人地帯に転がる死体の
仲間入りをしていただろう。
 だが、私が気を失っている間、死傷者回収のための休戦はされなかったのだろうか。
休戦していれば、私はここで、狙撃兵に怯えながら這って味方の塹壕線に戻るという
作業をせずにすんだのに。
 双方の塹壕線を観察し、見慣れない方の塹壕線を目指す。敵の塹壕線は見飽きているが、
味方の塹壕線を遠くから眺める機会など、恵まれた例がないからだ。
 砲弾痕の縁を越えるときは、特に慎重に行動する。動いている姿を見つかれば、
間違いなく撃たれるだろう。
 この状況では、夜空に輝くあの月が恨めしい。先ほど、美しいと思った気持ちは、
どこかに忘れていた。

 一つ目の砲弾痕をなんとか越えて、次の砲弾痕にかかろうと準備しているとき、
私の耳を何かが刺激した。
 よく耳をすましても、ほとんど聞き取れないような小さな音だが。それは、
間違いなく歌声だった。しかも、子供か女性にしか出せない、高い声だ。
 この無人地帯で、歌を歌っている酔狂な子供ないし女性。
 私は、義務感に近いものに突き動かされて、その声のもとに進もうとした。
こんな場所に、子供や女性を置いておくわけにはいかない。それが、敵であったとしても。
 耳をすまして歌声がする方を慎重に聞き定めて、そちらへと這い進む。
 歌声は、縁の向こうから聞こえるようだ。狙撃兵に撃たれる危険を犯しながら、
じりじりと縁を越えようとする。
 縁からわずかに覗いた先に、白い何かがふたつあった。
 残った左目でそれを凝視すると、それぞれ人の形をしていることがわかる。
 片方は女のようで、下半身は完全に裸。上半身は、胸と腹が露出しているように見える。
もう片方は男のようだ。こちらはズボンと下着を足元まで下ろした姿で、上半身に
着衣の乱れはない。
 じっと観察していると、女の口元がわずかに動いているように見えた。
 錯覚かもしれない。もう一度、じっと見る。
 間違いない、小さく、微かな動きではあるが、動いている。となれば、歌声の主は
彼女だろうか。
 慎重に、慎重に縁を越える。幸いなことに、狙撃兵は私に気づかなかったようだ。
 そこから先、歌う女のもとに這い進むのにも時間がかかった。だが、撃たれるよりは
ましだから。ゆっくり、確実に進んでいく。
29無人地帯 (4):2009/07/21(火) 02:12:25 ID:ycKhOwLD
 近づくと、その男女はなんとも奇妙な姿であった。
 女は、下半身は裸だが、上着は濃紺の水兵服を着ている。となると、
今朝――どれだけ気を失っていたかわからないが、おそらく一日も気絶はしていまい――
突撃してきた海軍歩兵の一人だろうか。
 男は、帝国陸軍歩兵の灰色の軍服を着ている。装備をきちんと身につけているが、
下半身だけ脱いだ状態だ。額を撃ち抜かれたようで、額に穿たれた穴と、
砕けた後頭部から飛び散った脳が散乱している。
 まさかとは思うが。この無人地帯で、その、行為に及んでいたというのだろうか。
 どんな神経なのだろう。

 女は、私が近づいてゆくのに気づく様子もなく、ただ空に浮かぶ月を見て歌っている。
その歌が、子供達がよく歌う歌であることに気づいたのは、女の横にほぼ並ぶ位置に
きてからのことだ。
 言葉は帝国の公用語。間違いない。この女は、敵だ。
 だが、この無人地帯で、敵と味方という事実がどんな意味を持つというのか?
 私は、女に帝国の公用語で声をかけた。
「君、大丈夫かい?」
 いきなり声をかけられて驚いたのか、女の歌声は止まった。そして、ゆっくりと
こちらを向く。
 女の表情がさらなる驚きに変わったあと、なんとも柔和な笑顔に変わり、
口元を小さく動かしてつぶやいた。
「アドルフ……」
 そして、ふらつく腕を伸ばして、私の頬そっとをなでる。
「ああ……アドルフ。迎えに、来て、くれたのね……」
 その手の動きは、ひどく弱々しかった。
「私、ずっと、あなたを、待っていたのよ……」
 とりあえず、人違いをしていることははっきりとわかる。
「君、しっかりしなさい。それに、私はアドルフでは――」
 そう言いかけた私に、女は抱きつこうとして身体をよじる。
 そして、私は見てしまった。
 背中が酷くやられている。致命傷とまではいかないかもしれないが、このまま放置しておけば、
間違いなく死んでしまうだろう。
30無人地帯 (5):2009/07/21(火) 02:12:52 ID:ycKhOwLD
 あわてて支えた私に向かって、女は手を伸ばす。
「ねえ、抱いて……。アドルフ。私を……。お願い……」
 背中を負傷している人を抱きしめるとなると、どうなのだろう。
 だが、乞われたことを拒むと、女の状況が悪化するかもしれない。そう思った私は、
背中の傷に触れないように注意しながら、女の上着をそっと戻すと、やさしく抱きしめる。
 抱きしめられた女は安堵したのか、ちいさなため息を吐き出した。だが。それでは
満足できないようだ。
「違う、の。アドルフ……。私と、して……」
 それで、女が抱擁ではなく、性交を求めているのだと知った。
 もしかすると、あそこで倒れている下半身むき出しの男が、アドルフなのかもしれない。
そして、死地で最期の契りを交わそうとしたときに、男が撃ち殺された。
 抱いて欲しかったのに抱いてもらえなかったから、私を求めているのか?
 いくらなんでも、その願いは叶えられない。なんとか優しく諭そうと、いろいろな言葉を
捜すのだが、普通の会話と軍事用語くらいしか帝国公用語を扱えない私には、非常に困難な問題だ。

 沈黙している私を見て、女の態度が変わった。急に覚えた表情を見せると、震え始める。
 そして、小さな声でつぶやいた。
「私が……犯された、から?」
 その言葉の意味に気がついたとき、私の身体に衝撃が走った。
 犯された?
 まさか――
「私が……汚い女に、なったから……抱けない、の?」

 ああ、糞。なんてこった。
 普段なら決して使わない、罵りの言葉を心の中で幾度も吐き出す。
 犯されただって? 畜生め!

 あそこに倒れているのはアドルフではなく、戦場で傷ついた女を犯した、ただの強姦魔。
そして、彼女は、本当に愛しているアドルフに対する罪の意識からか、私をアドルフだと錯覚し、
私に身体を捧げたい。そう思っているということか。
 ああ、糞ったれめ。この娘が一体、何をしたと言うんだ。
31無人地帯 (6):2009/07/21(火) 02:13:21 ID:ycKhOwLD
 私は彼女の頭をそっと抱きしめると、耳元でささやいた。
「大丈夫。汚いなんて、思ってない……」
 こうなったら、アドルフになりきって、彼女の罪の意識を取り払ってやるしかなさそうだ。
だが、やはり、アドルフと彼女のためにも、抱くという行為はできない。
 それなのに。
「じゃあ、お願いよ……アドルフ。私を、ね……」
 か細い声で震えながらつぶやく彼女に、他に何ができると言うのだ。
 いくら求められたからとはいえ、怪我をしている女を、愛する男だと錯覚している
状態と知っていて抱くだと? あそこに転がっている強姦魔と変わらないじゃないか。

 ああ、畜生! 神よ、お許しください……。

 私は、彼女の唇を奪った。
 唇を離すと、女の視線が私の片眸に突き刺さる。そして。
「アドルフ……」
 一番初めにみた、あの笑顔が戻る。
「あなたが、好きよ……。アドルフ。だから……お願い……」
 ああ、もう。他に方法はないのか?
 悩みに悩んだ末に、覚悟を決める。
 あまり、彼女の負担にならないように気をつけて、彼女を満足させてから。
彼女を治療できる場所に運んでやるのだ。
 上着に縫い付けられた名前は、私の乏しい帝国公用語の知識では、H・シュウィルと読める。
「シュウィル……」
 耳元でささやく。
 そんな私に、シュウィルも耳元でささやいた。
「嫌ね……。そんな、他人行儀な……。いつものように、ハンナ、と……呼んで」
 ハンナ。
 Hは、ハンナだったのか。
「ハンナ……」
 名前で呼びかけると、ハンナは心から嬉しそうな笑顔を見せた。
32無人地帯 (7):2009/07/21(火) 02:13:48 ID:ycKhOwLD
 ハンナの背中を気遣いながら、唇を奪う。正直、喉はカラカラで、唾液の分泌もほとんどない。
ハンナも同じ状況らしく、互いの乾いた唇を幾度も重ねていく。
 正直な話、感触的にはあまりロマンティックなものではなかったのだが。
ハンナは、それをいたく気に入ったようで。
「ああ、アドルフ……。わたしの、アドルフ……」
 行為中に他人の名前で呼ばれることが、これほど虚しいとは思わなかった。

 ハンナの胸は、私の知りうる数少ない比較対象の中から言うと、形は抜群に美しく、
大きさはやや控えめ。といったところだった。
 とはいえ、小さいというようなサイズではなく、むしろ豊かだと言えそうだ。
 そんな胸にそっと手を添えて、優しく包み込む。それに強く触れたら壊れてしまうかのように、
そっと、優しく。
 ハンナは、自分の胸に触れられているということに気づいていないようだった。
 だが、私がハンナの胸の先端を口に含み、舌で触れると、とても切なく甘い声で答えた。
「あ、ん……」
 これほどの怪我を負いながら、まだ喜ぶことが出来るという事実に驚きながらも、
この行為を少しでも早く終わらせようと、ハンナの反応をうかがいながら、愛撫を続ける。

 ハンナは胸への刺激が気に入ったようで、アドルフの名を呼び続けながら、
私の頭をそっと包み込んだ。
「好き。……大好きよ。あなたが……」
 慈しむように私の髪をなで続けるハンナの手に包まれながら、私は再びハンナの唇を奪った。
 どこかで、私がアドルフではないということに気づいてくれないかと期待しながら。
 結局、その期待は完全にはずれて終わってしまうのだが。

 乏しい女性経験の中から、そろそろ頃合だろうと思う時期を見て、胸を愛していた手を
下腹部へと導く。
 ハンナのそこに触れた瞬間、私は驚いた。
 わずかではあるが、濡れている。
33無人地帯 (8):2009/07/21(火) 02:14:08 ID:ycKhOwLD
 陰裂にそって指先を走らせ、入り口のあたりに触れると、たしかに、奥から愛の証が
わずかながらも染み出していた。
 先に彼女を犯した男のものではなかろうか。そうも思ったのだが、指先についた
わずかな液体の放つ香りは、男のものではなく、芳しい女のものだった。
 愛する人と結ばれるという喜びからだろうか。ハンナの身体は、
私――に重ねたアドルフ――を受け入れる体制が整っていた。
 そんなハンナのわずかな愛液を指先にのせると、私は陰裂の奥をなぞるようにして指を動かす。
 ハンナが、よりはっきりとした喜びを表すようになってきた。
 たしかに、今のハンナの状況からすれば、性交などすべきではないのだが。拒絶してしまえば、
もっと酷い結果になるかもしれない。
 この行為が本当にハンナを救えるのか。素朴な疑問が脳裏をよぎるが、
今はハンナの求めに応じることだけを考えよう。

 ハンナの息遣いが、十分に興奮し、男を受け入れる準備が整いつつあることを教えてくれた。
 指先が感じる湿り具合も、それを肯定している。
 私は、ハンナの背中が地面につかないように抱きかかえると、互いに正面を
向き合うような形で横になった。
 ズボンのベルトを外し、ボタンをひとつひとつ外してズボンを緩めると、
下着ごとひざまで降ろしてしまう。
 露出した自分のモノは、ハンナを食べてしまいたいと主張していた。
 恥ずかしいことだが。
 今の私は、ハンナと結ばれたいという欲望に正直になっていた。
 頭のどこかで、彼女の恋人らしいアドルフという人物に謝っていた。彼の名前以外は、
顔も、性格も、年齢すらも知らないから、どんな相手なのかということをイメージする
ことすらできないが、おそらく、私とあまり変わらぬ風貌で、年齢も同じくらいなのだろう。
そうでなければ、ハンナが私をアドルフと間違えるはずがない。
 見知らぬ自分に似たアドルフに再び謝ると、私はハンナの入り口に自分の分身を
押し当てて、そのままゆっくりとハンナの中へと進んでいった。
34無人地帯 (9):2009/07/21(火) 02:14:48 ID:ycKhOwLD
 ハンナの喉から、甘美な声が漏れる。
「ふ、あ……。あ?」
 こちらをじっと見つめながら、ハンナは問いかけてくる。
「ねえ、アドルフ……。私たち、結ばれたのよね?」
 私はアドルフではないし、彼女の中に入った私の分身は、その全長の半分程度という
事実を無視するように、私は答えた。
「ああ、ハンナ。その通りだよ。私たちは、結ばれたんだ」
 ハンナの手が、ゆっくりと自分の下腹部へと移動し、今、結合している最中の場所を
そっと撫でる。
 そして、微笑んだ。
「嬉しい……」
 その笑顔は反則だった。私が見てきたどの女性の笑顔も、ハンナの今の笑顔にはかなわない。
そして、その笑顔は、今は彼女の側にいない、アドルフなる人物に向けられているのだ。
 正直、その笑顔を見た瞬間、私はアドルフに嫉妬した。
 こんな可愛らしい彼女を置いて、彼は何をしているのかと。
 そんな彼の代理として、彼女と行為に及ばねばならないのかと。

 私の中で、ハンナが特別に愛しく、ずっと守ってあげたいと思ったのは、この笑顔を
見た瞬間だったのかもしれない。

 ハンナが私の耳元でささやく。
「お願い……。私の奥に、頂戴……」
 ここで、アドルフの名を呼ばれたら、私は挫けていたかもしれない。だが、ただ、
奥に欲しいと言われただけだったことが、その行為を続けることができた理由だった。
 ゆっくり。だが、確実に、腰を前後に動かして、ハンナの中で動き始める。
 それに、ハンナは艶のある吐息で答えてくれる。
 今は、アドルフの代理でもいい。
 ハンナを、愛していたい。
35無人地帯 (10):2009/07/21(火) 02:15:44 ID:ycKhOwLD
 軍に入ってから、女性と関係を持つことからはかなり遠ざかっていた。
 まあ、後方に下がったときに、士官連中とともに連れ立って、そういう店に厄介になった
こともあるので、皆無というわけではないが。
 それでも、ここ最近は、戦況が芳しくないということもあって、かなりご無沙汰だった。
おかげで、ハンナとの行為は月単位での久しさで、私の中には溜まりに溜まっていたものがあった。
 それが、ハンナの奥を汚したいと主張していて。
 一方で、たとえアドルフの代理であっても、ハンナとの行為をもう少し楽しんでいたいと
思う私がいて。
 動きは緩慢だったが、受ける刺激は女性に対して全力で行為に励んでいるときよりも強かった。
 限界が近いと悟る。

 だが、ハンナはあくまでも私をアドルフと勘違いしているのだ。今、ここで彼女の奥に
放ってしまったら、あそこで倒れている強姦魔と同じじゃないか。
 不意に、そんな思いを感じた私は、ハンナに「外に出す」と告げた。
 その言葉に対するハンナの答えが、私を完全に狂わせた。
「あなたが、欲しいの!」

 それが引き金だった。
 ハンナに負担をかけないように、無理な姿勢で結合していたのだが、それでも一番奥に
突き入れるような状態になったところで、私はハンナの奥めがけて自分の欲望を解き放っていた。
 自分のモノが脈うつたびに、彼女の大切な部分を白濁液が汚していく。

 複雑な気分だった。
 出来ることなら、彼女とはもう少し違う出会いをしたかった。
 ハンナの満足そうな笑顔を見ると、その思いは強くなる一方だった。
36無人地帯 (11):2009/07/21(火) 02:16:40 ID:ycKhOwLD
 行為を終え、ハンナと自分の服装を整えた。
 倒れた兵士の装備から水筒を取り出すと、口の中を湿らせる程度のわずかな水を口に含む。
ハンナにも、同じようにわけてやった。それで、ハンナはかなり落ち着いた。
 だが、あまりの落ち着きに、そのまま息を引き取ってしまうのではないか。という恐れが、
私の中に芽生える。
 ああ、それだけは。なんとしても避けたい。せめて、ハンナを愛するアドルフのもとへ
帰してやりたい。
 今の位置を確認する。見慣れた敵の塹壕線には、あと100mくらい。見慣れない味方の塹壕線は、
あと200mだろうか。
 迷う必要はなかった。
 絶対に、助けてみせる。
「ハンナ。さあ、戻るよ。がんばるんだ」
 私の視線を受け止めて、ハンナはちいさくうなずいた。

 長かった。
 ハンナが背中を引きずらないように、しっかりと支えながら、月明かりの下、
狙撃兵にみつからないように、じりじりと這い進む。
 いくつもの砲弾痕の縁を越えて、塹壕線まであと少し。というところまで近づいたのに。

「誰何!」
 ――見つかった。
 あわてて小さな声で答える。
「王国陸軍騎兵少尉、ジャン・ジャック・ジュベールだ」
 塹壕線の奥がざわついている。まあ、当然だ。敵が至近まで近づいているのだから。
「あんたらの忘れ物を届けにきた。怪我をしているんだ。助けてやってくれ!」
 ここまで必死に連れてきたハンナを指さす。
 塹壕線の騒ぎが、さらに大きくなる。
 誰何した男の声らしき返事がきた。
「畜生、この色男め! そこで待ってろ。動くなよ!」
 動くもなにも、ハンナだけ連れて行ってくれればいいのだが。
 だが、冷静に考えると、彼らがハンナを助けるために塹壕線から顔を出せば、
我が軍の狙撃兵が狙ってくるということに気がついた。
 そうか、ならば、待つしかない。
37無人地帯 (12):2009/07/21(火) 02:17:33 ID:ycKhOwLD
 あまり長い時間は待てない。そう言うべきか迷っていると、塹壕線の奥から何かが
私たちのまわりに投げられた。
 小さな爆発音とともに、それが盛んに白煙を吐き出す。
 煙幕弾か。
 すると、塹壕線から幾人かの男達が飛び出してきた。先頭切って走ってきた男に、
ハンナを託そうとする。
「頼む、助けてやってくれ」
「まかせろ!」
 男は誰何した声の主だった。彼は、ハンナを私から引き離そうとする。
 だが、ハンナはどこにそんな力が残されていたのかわからないくらい、強い力で
私に抱きついている。左腕は使えないはずなのに。
「嫌……い、や。は、離れ、ないで……」
 ハンナを引き離そうとしていた男は、強い舌打ちを鳴らした。
「ええい、糞! あんたも一緒に来い!」
 そんな予感はしていたのだが。やはり、ハンナだけを届けることはできなかった。
 素早く立ち上がると、ハンナを抱きかかえたまま、迎えに来た男達とともに塹壕線へと走る。
 散発的な銃声があたりに響くが、飛び出してきた男達の誰にも当たらなかったようだ。

 飛び込んだ塹壕線の中で、ヘルメットを被りなおした男がつぶやく。
「畜生、今ので間違いなく寿命が縮まったぞ!」
 間近で顔を見ると、かなりの年齢だ。
「天寿を全うできるのか。それが問題だと思うがね」
 ハンナを抱きかかえたままそうつぶやいた私に、彼は豪快な笑いで答えた。
「ああ、その通りだな」
 そして、不敵な笑顔を見せると、こう言い放った。
「俺たちの塹壕線にたどり着いた王国軍の人間は、あんたが最初だな。こいつは名誉な
ことだぜ。少尉さん」
 その言葉に、私は力なく笑うことしかできなかった。
38無人地帯 (13):2009/07/21(火) 02:20:38 ID:ycKhOwLD
 多少くつろいだ姿の兵隊達が、一斉に姿勢を正すのを見て、私もそれに倣おうとした。
だが、しっかりと抱きついたハンナが、なかなかそれをさせてくれない。
 近づいてきたのは、帝国陸軍の高級将校のようだった。階級章を見ると、大佐らしい。
 兵士達にねぎらいの言葉をかけながら、私とハンナのもとに近づいてくる。
 離れようとしないハンナを抱きかかえ、なんとか姿勢を正した私は、精一杯の敬礼を送った。
 大佐の視線が、私とハンナを交互に見てから。
『今夜の騒動の主は、君かね? 少尉』
 驚くほどきれいな私の母国語だった。
「はい、大佐殿。王国陸軍騎兵少尉、ジャン・ジャック・ジュベールであります!」
 私も、あまりきれいとはいえない帝国公用語で答える。
『ヨハン・ブーゲンバルト砲兵大佐だ』
「お騒がせしてすみません、大佐殿。負傷していた彼女を発見したので、お届けにあがりました」
 抱きかかえたハンナを、恋人でも紹介するように示しながら。
『ありがとう、少尉。ところで、少尉。私の語学練習に付き合ってくれると、大変にありがたいのだが』
 そう言われては、ほとんど意地で続けようとしていた帝国公用語での会話はできなくなる。
とりあえず、大佐との会話は私の母国語で通すことにした。

『我が娘の怪我は、どうかね?』
『肩と、背中をやられております。それから、その……』
 そこまで言いかけて、その事実を述べたものかどうか、迷う。だが、言わねばなるまい。
『心がいたく傷ついているようでして、あの――』
『心?』
 大佐が問いかけてくる。
『その……。あの無人地帯で、暴行を受けたらしいので。女性の軍医に見てもらうのがよいかと……』
『なんということだ……』
 駆け寄ってきた軍医らしき人は、ありがたいことに女性だった。大佐はその軍医を捕まえて、
耳元で何事かささやく。その軍医の表情が嫌悪感でひどく歪むのが見えた。
39無人地帯 (14):2009/07/21(火) 02:21:19 ID:ycKhOwLD
 軍医はハンナの側に近寄ると、優しく声をかけながら、私とハンナを離そうとした。
 だが、ハンナは離れない。そして、小さな声で嫌がるのだ。
「嫌よ。アドルフと、離れたくない」と。
 それを聞いた大佐の表情が変わった。
『アドルフ?』
 疑問というか、疑惑というか。ともかく、疑いの眼差しであることは間違いない。
それはそうだろう。名乗った名前と違う名で呼ばれているのだから。
 私は推測したことを説明した。
『彼女の婚約者か、恋人の名前かと思います。自分を、アドルフと思っているのであります』
『ふむ……』
 そんな会話を続ける間にも、抱きかかえたハンナの顔色は悪くなる一方で。
一刻も早い治療を受けるべきなのは、疑う余地もない。
『とにかくだ、少尉。彼女を救いたいなら、今すぐにでも軍医に診せないといかん』
『はい、大佐殿』
『そして、彼女はずいぶんと君になついているようだから、君が彼女とともにあれば、
治療に非常に役に立つと思う』
『はい、大佐殿』
『それから、少尉。私を呼ぶのに、殿はつけなくてもいい』
『は、はい。大佐』
 大佐の表情は複雑だ。
『少なくとも、人命救助のために敵陣地に乗り込んできた勇敢な男を、
捕虜として扱うつもりはない。本来なら、すぐにでもあちらに帰してやりたいのだが。な』
 大佐の言いたいことはわかる。だから、自分から申し出た。
『大佐のお許しが出るのであれば、自分は彼女の側で治療の補佐をしたく思います』
 私とハンナの間には、それくらいの縁というか絆ができてしまっている。
 このまま、アドルフの幻に惑わされる彼女を見捨てて、故国には帰れない。
『ああ、少尉。まことにありがとう。心から感謝する』
 大佐の表情がやわらかくなる。
『そして、覚えておいてもらおう。帝国の臣民は、恩義を忘れることは決してない。
君は形式上捕虜として扱われるが、実際には我が帝国軍のゲストだ。
軍医とともに、彼女の治療にあたってくれたまえ』
『はい。大佐!』

 私の戦争は、そこで終わった。
 そこから、ハンナを助けるための戦いが始まったのだが、それはまた、別の話。
40名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 02:22:44 ID:ycKhOwLD
以上です。

また、ジャンとハンナのお話が書けたら、規制の合間にでも投下させていただきます。

それでは。
41名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 17:17:01 ID:05bRI/+r
GJ!
ジャンとハンナの今後が気になる…そして大佐がナイスミドル
42名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 13:58:56 ID:PrLF5piT
GJ
43名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 03:28:56 ID:dhPB9SGY
戦火とクロスしてるしたまげた
44名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:29:56 ID:v8PG6+UN
とても面白かったよ
45名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 01:00:08 ID:QxBO4bW5
お読みいただいた皆様、ありがとうございます。ジャンとハンナの中の人です。

>43様のご指摘の通り、今回のネタの前にあたる戦火スレのネタを
合わせてお読みいただければ、さらにお楽しみいただけるかと思います。
…陵辱好きじゃないとダメかもしれませんが。

それでは。
46no solution 4/10:2009/07/28(火) 00:25:46 ID:TUTBDLnm
投下します。計算では7レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・自慰ものです。


以下本編
47no solution 1/7res:2009/07/28(火) 00:26:17 ID:TUTBDLnm
■chapter4 ―― 深淵
 その日の夜も、行きがかり上さらに数人の男の性欲処理をしなくてはならなかったが、それはもう問題ではなかった。
ターニャは露骨に顔をしかめたが、手に入れた情報の価値を思えば、収支バランスは悪くない。
 村長からは、様々な傍証を得ることもできた。
マイアが村の少年自警隊に参加していたこと。
彼女はとても優秀な成績を収めており、在郷の退役軍人から首都の青少年親衛隊に推挙しようという話もでていたということ。
その提案は、マイアが「存在しない子供」であるゆえに拒絶されたこと。
問題の写真も、役人や仲間に確認をしてもらうという口実で、手持ちのデジカメに納めた。
 もうひとつ私の興味を引いたのは、村長の弟であるユーリ・オルロフの写真だ。
彼は濃いサングラスをかけていた。なんでも糖尿が悪化して、ほぼ失明状態だったらしい。
さすがにこちらをデジカメに収めることはできなかったが、
基地に帰ったら記憶が薄れないうちにイラストを起こしてもらったほうがいいかもしれない。
関係者のデータは、ひとつでも多いほうが望ましい。

 帰りのヘリのなかで、私はレポートをまとめた。ターニャはターニャで、慣れないコンピューターと格闘している。
30分ほどで自分の作業が終わったので、私はヘッドセットをつけて、ターニャの報告を口述筆記してあげることにした。
途中からターニャが調子に乗って、口調が講談調になったあたりで、
アイクからぼそりと「真面目に仕事しろよ」とかいう茶々が入る。
なんのかんので、この二人は仲がいいような気がする。
 基地に戻って、私は大尉にレポートを提出しに行く。明らかに寝不足なハント大尉は、USBメモリを受け取ると、
「男性隊員の劣情を喚起しないうちに、とっとと風呂に入って着替えてこい」と不機嫌丸出しで言った。
 情報軍制服の着替えは、ヘリの中にも用意してあった。ただ私はターニャと違って、
ヘリの中で生着替えする度胸がなかったし、チャドルを着たまま基地内を歩く勇気もなかった。
それだけのことなのに、なんでそんなに怒るかな。



 シャワールームに行って、念入りに身体を洗う。
備え付けのボディソープを手に取って泡立てていると、思い出したように怒りが沸騰した。
カイナール村での「客」は、おおむね悪印象の抱きようがない人々だったが、一人だけ例外がいたのだ。
 ああ、クソ、忘れようと思ってたのに。思い出すだけで腹が立つ。
 あのエロハゲメタボオヤジは、シックスナインを要求しただけじゃなく
――それだけでもボランティア料金の範囲は超えてる――私を下にして押さえ込むと、
あ、ああ、ぁ、アナルを執拗に舐めやがったのだ。
 ううっ、まったく、思い出しただけで虫唾が走る。
私には、縛られたり殴られたりの趣味はないし、ノーマルなセックス以外に興味はない。
そもそも私が在籍してた店じゃあ生姦だってご法度だった。
近いうちに生フェラも禁じ手になるんじゃないかという噂がまことしやかに流れていたくらいだ。
連合軍御用達の慰安所ともなれば、そのあたりの衛生管理はかなりうるさい。

 ラックからもう一度ボディソープを手にとって、右手に搾り出した。
まずは臀部から腰椎のあたりに広く塗布して、たっぷりと泡立てる。
それから、ややデリケートな地帯をマッサージするように洗う。
さすがに「手で直接触るだなんて……」とか思うほど、おぼこくはない。10年前なら分からなかったが。
 あちらこちらを丹念に洗って、ざっとシャワーで泡を流すと、気分的にだいぶほっとする。
アナルは、生理的に受け付けないというだけではなく、カレンからもきつく「絶対に許してはダメ」と教えられた部分だ。
衛生学的にもその主張はまったく正しい。例えば、アナルに挿入された男根を、そのままヴァギナに挿入されたら? 
なるべく早く対処しないと、大変なことになりかねない。

 そんなことを考えながら臀部のあたりを洗っていると、ふと自分の体が少し熱っぽいような気がし始めた。
この熱さは――風邪だとか、その手のトラブルでは、ない。要するにこれは、あれだ。うん。
 ま、まあ、考えてみればこの半年、そちら方面とはご無沙汰だった。
村では男たちの性欲処理をしてやったとはいえ、私の欲求はまるで満たされていない。
 私はおずおずと、自分の秘所に触れてみる。やはり、ちょっと熱を持っている、気がする。

48no solution 2/7res:2009/07/28(火) 00:26:54 ID:TUTBDLnm
 シャワーを頭からかぶりながら長く息を吐いて、状況を整理する。
やっぱり、半年の禁欲生活はそれなりにストレスだった。
私は格別に性的欲求が強いほうではないし、どちらかといえば弱いほうだと思う。変態プレイへの欲求だって皆無だ。
 そうは言っても、それなりに健康な出産期の女として、最低限の性衝動は否定できない。
そこに向かって、2日で二桁の男の相手をさせられたのは(それでいて一度もこちらが満足していないのは)、
「焼けぼっくいに火がつく」には十分な火力だ。

 そんなことを考えている私の指は、いつのまにか秘裂をゆるやかに弄っていた。
いやいや。いやいやいや。それは良くないから。いくらなんでも。
やっぱりさすがにある程度までパブリックな場所で、これはまずいって。
 指先に少しぬるりとした感触がある。私はかあっと赤面して、あわててシャワーのノズルを下腹部に向けた。
あれだ、ターニャが訓練にでも出た隙に、毛布をかぶってベッドの中で。そうだ。そうしよう。

 そう決めたのに、シャワーの水流が適度な刺激になってしまって、指を離すことができない。
本物の刺激には全然遠いけれど、思わず目を閉じてしまうくらいには染み込んでくる。
ああもう、何をやってるんだろう私は。こんなことに水資源を無駄遣いするだなんて。
 そんな思いとは裏腹に、シャワーブースの壁にもたれかかって、愛撫を続行する。
シャワーを秘所にあてがい、指はクリトリスを探る。軽く痺れるような刺激が走り、体の芯が熱くなっていく。
噴き上げる水流が、淫唇をほどよい感じにくすぐり続けている。
 肉芽をきゅっとつまむと、思わず声が漏れかけた。いけない。それはさすがにマズい。
半開きになった口を固く結び、そっと愛撫に戻る。ジン、ジンと快楽が湧き上がってきた。
呼吸が荒くなってくる。
 うつむいて犬のようにハッハッと息をしながら、押し寄せてくる快楽の波を受け止める。
人差し指と中指を細かく痙攣させると、ぐっと深い快感が突きあがってきた。
 まだなんとか理性が働いているうちにブースの床に正座し、膝を開く。
個室タイプだから、声を出したり、大きな物音を立てない限りは、何をしているのか悟られないハズだ。
立ったまま自慰にふけったあげく、イッったとたんに転倒してメディックとかいう展開だけは避けたい。

 精神的には温まってきたが、実際の体のほうはやや冷えるので、
手を伸ばしてシャワーノズルを壁のフックにかける。
お湯を背中に浴びながら、右手で陰核を刺激し、左手で乳首を愛撫する。
乳首はいつのまにか硬くしこっていて、軽く力をこめて摘むと、ぞくりとするような刺激が走った。
 私は肉芽を弄ぶのを一旦止めて、花弁のほうに指先を這わせる。
本物の花びらを柔らかく押し広げていくように、ゆるりゆるりと裂け目をまさぐった。
蕩けるような感覚がお腹のあたりに押し寄せ、頭がぼうっとし始める。
クリトリスで感じる花火のような鮮烈な快感も好きだが、
どちらかといえばこうやって自分の理性がゆっくりと崩れ落ちていく過程を愉しむほうが好みだ。
さすがに、今ここで趣味全開というわけにはいかないが。
 たっぷりとお湯を吸った髪を背中に跳ね上げる。ちょっと長くなってきた。
時間に余裕ができたら美容室に行きたい。基地でも「散髪」はできるが、あれはどうにもいただけない。
さすがに以前お気に入りだった美容室に行くわけにはいかないが、せめて同じくらいの……
ああ、でも思い切って以前じゃとても敷居がまたげなかったクラスに行ってみるのも一興かも。

 埒が明かないことを考えながら、行為を続行する。腹筋のあたりが軽く痺れてきた。
いい兆候だ。とにかく一度達してしまえば、楽になるに違いない。
ターニャも同じシャワールームの、どこか別のブースにいるのだ。ちょっとばかり急いだほうがいい。
 乳首と乳房を弄んでいた右手を、クリトリスにあてがう。はじめは軽く指先でノック。きゅんと体が締まった。
いい感じだ。左手の指を、膣の内部へと少し侵入させると、どろりと暖かな体液がこぼれた。
それと一緒に声が出そうになって、あわてて唇を噛む。
49no solution 2/7res:2009/07/28(火) 00:29:02 ID:TUTBDLnm
 左の中指を思い切ってずぶりと深く沈め、鋭敏な襞を辿る。右の指先は肉芽をくいくいとこね回した。
背筋に悦楽の波が走り、折りたたんだ足の指先が痙攣する。ああ、そう、これだ。
 ざあっという水音とけぶる湯気が、非現実感を高めていく。
それなりに豊かな家で育ったという自覚はあるが、こんな贅沢が許されることはなかった。
もしかしたらこれくらいは可能だったかもしれないが、恥ずべき浪費だと教えられてきたのだ。
海外にも何回か留学したし、講演や学会にも出席したことは多いが、
こんな途方も無い水の使い方を許してくれる場所はなかった――しかも、下卑た欲求を満たすために使うだなんて。

 私は無意識のうちに誰かの名前を頭の中で繰り返そうとしている自分に気がついた。
かつて同僚に「よくなんのオカズもなしに一人でできるね」と褒め(?)られたことがあったが、
それほど難しいことではない――要は想像力、あるいは妄想力だ。
誰かに抱かれているところを想像し、その人の指先が自分を責めているのだと強く思えば、それで何度でもイける。
もちろん読み捨てのハーレクインあたりの描写を思い出すのでも構わない。
 問題は、ここで何を想定するか、だ。
イリーヤとの初体験はいいネタだったのだが、今となっては気分が乗らないことおびただしい。
カレンとの日々もまた満たされた毎日だったけれど、こちらは思い出すにはあまりに痛みが大きすぎる。

 と、すると。さて。

 いや、いや、ターニャとか普通にあり得ない。彼女はどうみてもヘテロだ。
それに上官と部下という立場で毎日のように顔をつきあわせる関係なのに、
こんなところで変な妄想をかきたてる場合じゃあない。
 ああ、じゃあ――いや、ダメだ。それはダメ。それだけは、ない。

 ……ううっ、どうしても思いつかない。

 昔、馴染みだった客。これもダメだ。
今となってみると、なんだかあまりにもあの日々は遠くて、まるで実感が沸かない。
 理性がうろたえる一方で、右手と左手は勝手に快楽を掘り起こし続けていて、体のあちこちがぴりぴりと震えている。
このまま達してしまいそうだ。こんなにも肉体は愉悦に酔っているのに、心のほうがそれに追いつけない。

 どうしようもないので、何かどうでもいい恋愛小説のいちシーンでも思い起こそうとする。
だが咄嗟に頭に浮かんだのはアンナ・カレーニナだった。うぁ、トルストイ先生ごめんなさい。
 ……でも私には、彼女の気持ちが分かる気がする。
いや、恋をしたことのある人間ならば、男だろうが女だろうが、あの燃えるような想いを感じたことがあるはずだ。

 指はもう止めようもない。身体はガクガクと震えっぱなしだ。
気がつくと、私は床に額をついて、這うような姿勢をとっていた。
破滅に向かって一直線に突っ走る、恋。いや、その行く先がどうであるかなど、問題ではない。
 彼女の終着駅は、その恋の始まりにおいて既に規定されていた。そのことは、分かっていたはずだ。
そういう分岐点に立ったことを意識する、その瞬間に襲い掛かる慙愧と諦念。
それは、ずっと、ずっと、重すぎる首飾りのようにまとわりつき、
それでもその重さを知ればこそ、体の中で燃え上がる炎は止められなくなる。

 結局は、どうでもいいこと、なのだ。だから大事なのは、今、生きているという事実。
「彼」と私が同じ時間を共有し、互いの存在を意識しあっていることを、体の内側で確認しあう行為。
 そう、だから、こんな風に――
もっと、激しく突き上げられ、敏感な襞を抉るように蹂躙され、体のありとあらゆる部分で「彼」を感じて。
 呼吸が浅い。こめかみのあたりがチリチリする。勝手に、ぐぐっと下腹部に力が入った。
ずくん、ずくんと鈍い鼓動のようなものが、尾てい骨から頭のてっぺんまでを貫いている。

 ああ、来る。
 もうダメ。
 あ、ああ、もう――
 あ、あ、もう、だめ。
 ダメ。

 秘裂からどっと体液が溢れだした。無言のまま大きくのけぞる。
痙攣は指先まで支配して、その震えがさらなる快感を呼び込んだ。喉の奥から、低く呻きが漏れる。
50no solution 4/7res:2009/07/28(火) 00:30:22 ID:TUTBDLnm
 わずかな忘我の後、全身から力が抜けた。まだ秘所がびくびくと脈打っている感じがするが、大きな波は去っていく。
私は荒い息をつきながら、しばらくシャワーに打たれるがままになる。

 ううっ、こんな場所で、こんなことをやってしまった。自己嫌悪。



 ――が、立ち上がろうと思ったところで、異常に気づく。
どうも……なんだ、これはその……体の火照りが去っていかない。
 のそのそと立ち上がって、いまだわずかに体液が滴っている秘所をシャワーで洗う。
水流とお湯が刺激になって、身体が再び何かを期待するように脈打ち始めた。何これ。
いや、そりゃあ今のはわりと身体だけ先に絶頂に達してしまったという状況ではあったけど、だからってこれは何なの。
 戸惑いながら、シャワーのノズルをぎゅっと秘所に押し当ててみる。
クリトリスと陰唇が絶え間なく刺激され、えも言えぬ不思議な快感が湧き上がってきた。
いやだ、私はまだ「したい」わけ?

 目がシャワーヘッドに釘付けになっている。プラスチック製の、お洒落で細身のヘッドだ。
こういう場所にあるものといえば金属製でごついやつというのが相場なのだが、そもそも情報軍はPMCであり、
軍隊的訓練をまるで受けていない女性職員も相当数いたりする(かく言う私も似たようなものだ)。
なんだかんだで、機能性や耐久性よりもデザインを優先している部分は少なくない。特に、こういう共有部は。
 それはそうとして、今の自分は明らかにどうかしている。
そりゃあ、無理すれば挿入できなくはないサイズ、では、ある。だがそういう問題ではない。はずだ。
衛生的な課題もあるし。いや、主眼はそこではない。
 思わず視線が周囲を泳ぐ。小さなシャンプーボトルを見つけた。あー、これなら、まぁ、どうだ。
いやいやいやいや、どうだ、じゃない。これなら、じゃない。何をどう定義しても、おかしい。
異常だ。おかしすぎる。主に理性とか常識とか脳とかのあたりが。

 さて、それもそうとして、どうかしている肉体をどうにかしないことにはどうにもならない。
うわ、何を言ってるんだ私は。理論関係子が崩壊している。
とにかく、いくら物理的に可能そうだからといって、
シャワーヘッドをヴァギナにインサートというのは、アブノーマルにもほどがある。
ううん、外来語使ったからといって表現を濁せると思っているあたりがまた救いがたい。
 とにかく、落ち着け。どうどう。
 でもそのとき、私の右手はシャワーヘッドを自分の局部をぐいぐいと押し付けていた。
あああああ。何が何なの。何をしてるの。待って、待って、もう、やだ、やだってば! やめなくちゃ!
 つややかなシャワーヘッドには、水流のオンオフが可能な大き目のボタンがついている。
ごつごつとしたその部分を裂け目に這わせ、ぐいっとクリトリスにこすりつけると、今までとは違った快感が沸きあがった。
理性は必死で何事かを叫んでいるが、本能は貪欲に快楽を貪る。

 なし崩しに溶解していこうとする理性が、必死の計算をする。
とにかく、こうなってしまったら我慢とかその手のものは無理だ。まるで無理だ。とことん行くしかない。
でもそれはそうとして、やっぱりここで大声をあげるのはまずい。絶対にそれはやっちゃいけない。
もしかしたらというか確実にセキュリティカメラが回っているような気もするが、
それでもやっぱりライブで生放送しちゃうのは譴責ものだ。
 となると、何が何でも声だけは我慢しなくてはならない。他の何を我慢できなくても、この一線は譲れない。
 割り切ってしまうと、少し気持ちが楽になった。
シャワーヘッドで秘所を刺激し、ときにはホースを跨いで腰を絡ませる。
本物の刺激にはほど遠いけれど、とにかく、「ほしい」のだ。
 だんだんまどろっこしくなってきて、シャワーを床に投げ出し、右手の指を3本まとめて裂け目の中に忍び込ませる。
頭の中で火花が散った。構わず、激しく指を前後させる。
ああ、そう、もっと。もっと。こんなのじゃまだまだイケない。

51no solution 5/7res:2009/07/28(火) 00:31:50 ID:TUTBDLnm
 ぐじゅり、ぐじゅりと、淫らな音を立てながら、3本の指を膣の中で往復させる。
やっぱり男の指とか、アレとかには、とてもかなわない。でも止められない。
下腹部から絶え間なく突き上がってくる快楽が、脳の中で増幅され、全身の神経を震わせていく。
左手でクリトリスにも刺激を送り込む。背中にぴくりと張りを感じたけれど、
これよりももっと――もっと、「どうしようもない」快楽があることを、私は知ってしまっている。
 足りない。これじゃ足りない。
 あの、全身が溶けるような、上も下も右も左も分からなくなっていって、
ただただどこまでも落ちていくような、あそこにたどり着きたい。

 ああ、もっと。

 もっと、早く。

 ああ、もっと、強く。

 ぐっと膣が収縮する。構わずに指を奥に突き立て、何度も、何度も、身体の一番深い部分を突き上げる。
身体のあちこちが小刻みに震え、汗と体液がほとばしる。

 絶頂は唐突に訪れた。視野がふっと暗くなったかと思うと、一瞬の落下感覚が襲う。
必死で声を殺したが、喉が鳴るのまでは堪えられなかった。
秘所に差し入れた右手の指が、暖かい液体にふわりと包まれる。

 数秒間、ほとんど失神していたのだと思う。
自分を取り戻したときには、シャワーブースの壁にもたれて、ぺたりと床に座り込んでいた。
局部はまだ軽く脈打っているが、熱い塊のような欲望は過ぎ去っている。
 私はふらふらしながらも立ち上がって、全身にシャワーを浴びた。
もう一度ボディソープを手にとって、指から手、腕と、局部を洗う。
まだいくらかの刺激は感じたが、その先に行こうと思うほどではない。

 ふぅ……。

 ボディーソープを洗い流してからシャワーを止め、ぐっしょりと濡れた髪をしぼる。
頭も洗いなおしたほうがいいような気がするが、
さすがにもうそこまで時間を使ってはいられないだろうし、そんな体力もない。
やれやれ。いったい、もう、何がどうしてしまっていたんだろうか?
 シャワーカーテンを開ける直前になって、慌ててシャワーヘッドとホースをざっと洗い流す。
なんだこの惨めさは。



 シャワールームを出ると、脱衣所で半裸姿のターニャがスポーツドリンクを飲んでいた。
そしらぬ風を装って私も自販からスポドリを買い、彼女の隣に腰かけて水分を補給する。
と、がしっとターニャに肩を組まれた。
「か・た・ぎ・り・しょ・う・い・ど・の! ず・い・ぶ・ん・と・ご・ゆっ・く・り・で・す・ね!」
 やばい、バレてる。
「少尉、いくらなんでもシャワーカーテンを過信しすぎでしょ。
声はしなかったけど、呼吸がさー。もうねー。
一応は公共の場なんだから、ちょっとくらいは、恥じらいとか? その手のものを?」
 やばい、バレてる。
 ターニャは軽くため息をついた。
「冗談はこれくらいにして、髪を乾かしたら、メディカルチェックに連れてくよ。
感染症検査はデフォだけど、性病の検査は追加メニュー」
「ううっ」
「ううっ、じゃないよ、少尉。後悔するようなセックスなんてしなさんな」
「本番はしてないもん」
「そういう問題じゃないから。やれやれ、そこのドライヤー取って」
 ターニャにドライヤーを渡すと、彼女は私の髪を梳かしながらドライヤーをあてた。
そ、そこまで急がなくたって。
52no solution 6/7res:2009/07/28(火) 00:33:32 ID:TUTBDLnm
「ねえ、あたしも人のことは言えないかもしれないけど、もうちょっと自分を大事にしようよ。
全力疾走で生きるのは、悪くないと思う。どうせ生きるなら、あたしもそうやって生きたいし、生きてるつもり。
でも、全力疾走するなら、余所見しちゃダメ。
ましてや、わざわざ一歩踏み間違えたら奈落の底みたいな場所を選んで走るなんて、ただの馬鹿よ?」
「うん――でも」
「生き方を変えるのに、手遅れっていう言葉はないわ。諦める暇があるなら、なんとでもできるって」
「――ありがとう。頑張ってみる」

 複雑な思いを抱えたまま髪を乾かしてもらっているうちに、ふと、自分がガタガタと震えていることに気がついた。
寒い? そんなはずはない。両手で自分の身体を強く抱きしめ、震えを止めようとする。
小刻みに、手が震える。膝も笑い始めた。呼吸が苦しくなってくる。なにこれ。さっきからずっと、私は何か変だ。
 ターニャがドライヤーを止め、背中から抱きしめてくれた。自分でも意識しないうちに、どっと涙がこぼれる。
ターニャの体温を感じながら、私は正体不明の激情に揉まれていた。
「お疲れ様、カタギリ少尉。初任務、ほんとうにご苦労さまでした。それから、生還おめでとう」
 ターニャが母国語で囁く。
 ああ、そうか。私は今の今まで、ガチガチに緊張していたのだ。
その緊張が、一気に解けた。それで、自分をコントロールできなくなっていたのだ。
 そこまで理解すると、身体の力が抜けた。震えも涙も止まらないが、呼吸は落ち着いた。
私は自分のロッカーの鍵のナンバーが18なのを確認して、フィボナッチ数列の18番目を公式を使わずに暗算する。
自然と震えが止まり、涙も止まった。もう、大丈夫。私は、私に戻ってきた。
 背後で、ターニャがくすりと笑う。
「早いね。素質があるよ、少尉。普通は半日ほど使い物にならないんだけど」
「素質、なのかな。とりあえず、半日くらい眠りたい気分」
「じゃ、さっさとメディカル行って、飯を食って、寝ましょ。任務直後の24時間は無条件で休暇よ」
「眠い」
「メディカルと食事が先。ほら、もう髪はいいから、着替えて。
まったく、あばら骨が浮いてるのって、痩せてるんじゃなくて、痩せすぎって言うと思うんだけど、
って、あーあー、ここで寝ないの。ほら、立って!」



 目が覚めると、まるまる24時間が経過していた。自分がそんなに眠れるということに驚く。
喉の渇きと空腹で眩暈がするが、とりあえず手洗いに駆け込む。人間の身体は、本当にわかりやすい。
手洗いの中でタバコを一服吹かすと、生きている実感が全身に染みこんだ。
 私は見たことのない、ぶかぶかのジャージのようなものを着ていた。
きっとターニャが寝巻き代わりに彼女のトレーニングウェアを着せてくれたのだろう。
胸のあたりが必要以上にダブつくのが微妙に気になるが、いやいや、彼女のあれは筋肉ですから。
負けて当然ですから。体格も全然違うし。うん。

 くそう。

 くだらない感想を抱きながら、そそくさと制服に着替える。まずは水。それから食事だ。
 食堂に行くと、大尉にばったり出会った。厚切りのトマトとアボカドが挟まったサンドイッチがおいしそうだ。
私も同じものを注文し、大尉のあい向かいに座る。
「レポート、読ませてもらった。興味深いな」
「決定的な部分がまるでつながりませんけどね」
「まあな。これを食ったら、ちょっとばかりターニャと相談がある。付き合ってほしいんだが?」
「いいですよ」
 それっきり大尉は黙り込んでサンドイッチに集中し始めたので、私も自分のサンドイッチにとりかかる。
が、半分くらい食べたところで満腹になった。ここの食堂は、絶対に量がおかしい。
ちらりと大尉が私の皿を見るので、無言で皿ごと押し付ける。
「ちゃんと食えよ」
「食べてます」
「残すくらいなら俺が食うけどな」
 私は軽いデジャヴュを感じつつ、タバコを取り出して火をつける。
今のうちにニコチンの補給をしておかなくては、いつ禁煙ゾーンに連れて行かれるかわからない。
 タバコを吸う私の前で、大尉は黙々と1.5人前を平らげた。この人たちの胃袋はどうなってるんだろう。

53no solution 7/7res:2009/07/28(火) 00:34:09 ID:TUTBDLnm
 食事を終えると、私たちは会議室に向かった。ターニャはファイルを片手に、床で柔軟体操をしている。
「待たせてすまなかった。報告を聞こう」
 ターニャは無言でファイルを大尉に手渡す。
ハント大尉は、しばらくそのファイルを見ていたが、やがて険しい表情で呟いた。
「なんてこった」
 ぱたんとファイルを閉じると、大尉は私にファイルを投げてよこす。牧歌的とすら言える、のどかな牧場の写真だ。
爆弾で吹き飛んだのか大きな納屋が全壊しているが、それ以外はただの牧場。
この国の田舎にいけば、いくらでもこんな風景が転がっている。
「――これは?」
 ターニャは囁くような小声で答える。
「カイナール村のどっぱずれにある、元牧場。結婚式が行われていたところに、連合軍が誤爆した場所」
 つい、私も小声になる。
「写真を撮ってたの? でも報告書には」
「あたしも任務で行っていたわけで。
人の心に踏み込むのは少尉のほうが上手だけど、戦場の痕跡を調べるのはあたしの仕事。
で、ここまでヤバイ話を、とてもじゃないけどヘリの無線に乗せるわけにいかなかったので」
「サーモバリックだ」
 突然、大尉が割り込んだ。
「サーモバリック?」
 思わず鸚鵡返しになる。
「マスコミはFAEB、燃料気化爆弾と呼んでる」
「ああ」
「この爆撃跡は、サーモバリックの特徴を示してる。俺がつかんだ情報とも一致しやがる」
「つまり?」
「誤爆ではあり得ない。戦時中じゃないんだから、サーモバリックの搭載許可がそんなに簡単に下りるはずがない。
平時にこいつを人に向かって使うなどと言ったら、
軍のかなり上の方まで決裁を通したうえで、関係者何人かのクビが飛ぶ覚悟が必要だ。
マスコミ的に誇張して言えば、超小型戦術核を打ち込むようなものさ。
間違って撃てるものじゃないし、普通はそれくらいなら特殊部隊が投入される」
 ようやく私にも状況が理解できた。軍隊用語は、集中講義を受けたとはいえ、まだまだ不得意分野だ。
「ただの結婚式場に、特殊部隊ではなく、サーモバリックを叩き込む理由があるとすれば、
爆弾を落としたパイロットには誰が死んでいて誰が死んでないのかわからないが、
特殊部隊は自分が殺した相手の顔をしっかり見る、この差だ。
 クソ、どうりで治安維持軍の資料写真からフォトショップ臭がするはずだ。
間違いない。これは誤爆なんかじゃない。暗殺か、そうでなければ、もっと悪いものだ」
「誰が? 誰を? 何のために? もっと悪い?」
 ターニャが囁くような声で言う
「わからない。何一つ。わからないが――」
「最大の問題は、これが私たちの追っている事件と関係があるのかどうかすらわからないということです」
「その通りだ。俺たちは、どうやら一歩踏み間違えたら奈落の底みたいな場所を選んで走ってるみたいだぜ、諸君」
 ターニャが大きなため息をついて、囁き声で質問を続ける。
「大尉、情報軍は信用していいの? 本当のこと言うと、あたし、外でこの話をしたかったんだけど」
「大丈夫だ。もちろん、ごく一部が何らかの関与をしていることは、あり得る。
だが上層部がまるごとグルになっているんだったら、俺たちはこの案件の再調査など許されなかっただろうし、
ましてやカタギリ少尉を抱え込むことなど絶対に許可されなかったはずだ。単に、野垂れ死ぬに任せただろう」
「ああ、そうね。それだけでもずいぶん気が楽になった。内ゲバは、前の職場でもうコリゴリ」

 大尉とターニャのやりとりを聞きつつ、私はもう一度ファイルを開く。
私の目には、やっぱりただの、のどかな牧場にしか見えない。
だがこのありふれた風景の裏側には、人知を超えた深淵が渦巻いているのだ。
 私は得体の知れない寒気を感じた。
深淵を覗き込むのであれば、深淵もまた私たちを覗き返すだろう――
そしておそらく、カレンもまた、深淵を覗き込んだのだ。
彼女は、そこでいったい何を見たのだろう? 
そして彼女はいったい、何に見られたのだろう?

(第5章「絶望」に続く)
54no solution 4/10:2009/07/28(火) 00:35:52 ID:TUTBDLnm
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・まだしばらくかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
55名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 01:15:51 ID:0kbl2VcL
面白れEEEEE

フォトショップ臭ワラタwww
56名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 18:54:52 ID:C1gbHc1O
カタギリ小尉もハンナも続きが楽しみだ
職人さん方規制に負けず頑張って下さい!
57名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 23:15:27 ID:A3UNcCej
ええい神はまだか!
58名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 10:42:01 ID:XioGPlq3
まだだったか…
59no solution 5/10:2009/08/06(木) 04:26:08 ID:Hl1zQuT3
投下します。計算では7レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・微妙に百合ものです。エロ少ないです。


以下本編
60no solution 1/7res:2009/08/06(木) 04:27:04 ID:Hl1zQuT3
■第5章 ―― 絶望
 それから数週が経って、私は各種報告書の取りまとめや、「部下」たちからの報告書のチェック、
他のチームへの応援といった類のものに忙殺されていた
(彼らはマクシム教授の活動資金源を追っていた。マクシム教授は大金持ちだが、
さすがに組織的かつ大口の資金援助元があると仮定しなくては、彼の活動すべてを実現はできない).。
事務仕事は苦手ではないが、得意でもない。
しかしここまで調査が暗礁に乗り上げていると、事務仕事は格好の逃避にはなる。

 状況は、急に動いた。

 私室でノートPCを前に報告書と戦っていた私は、大尉に呼び出された。
ニールが、至急報告したいことがあるという。私たちは彼の部屋に向かう。
「何か分かったか」
「いろいろと。全体の関連は見えませんが、共有したほうがいい情報がいくつか出てきましたので、ご報告をと。
 まず、カレン・バリシニコワの件ですが。犯罪データベースにあたってみたところ、
カイナール村で活動していたNPOにヒットしました。ただし25年くらい前の話です」
「お隣と戦争してた頃だな」
「ええ。あの頃、この国は親米国家でしたから、人道援助でNPOも相当数が入ってます。
大半はまっとうな活動家ですが、なかにはかなり胡散臭いのも。
 カイナール村で活動してたのは、メガトン級に胡散臭い男です。シルヴァン・デュラスを知ってますか?」
「アフリカでNPOを自称して活動してる人身売買マフィアのボスだな。この前、やっと逮捕された」
「デュラスがデビューしたのが、カイナール村です。
データベースには、彼がNPO職員としてカイナール村で人道支援の仕事をしていたという記録があります。
実際に何をしてたかは不明ですが」
「武器、麻薬、人間。あの頃なら選り取りみどりだったろうな。
もちろん、真面目なNPO職員だったのかもしれない。
正義を夢見た若者が、現地で夢に破れるってのはよくあるパターンだ。
 デュラスとバリシニコワにどんな関係が?」
「デュラスは、バリシニコワが処刑されるというニュースを、西側のメディアに大々的に流した張本人です。
世界中のメジャー紙を無作為検索しましたが、デュラスが直接インタビューに答えている記事がいくつもあります」
「なるほど。なぜだ?」
「不明です。継続して調査しますか?」
「頼む。デュラスが所属していたNPOの活動内容も調べてくれ。他には?」
「イリーヤ・ダヴィドフの件ですが、彼は遺伝学的にはダヴィドフ家の人間ではありません」
「なんですって!?」
 思わず叫んでしまう。そんな馬鹿な。
「そんな。彼はずっと、ダヴィドフの血筋を自慢してました。
この国における英雄を幾人も輩出してきた名家の生まれだというのは、彼のアイデンティティそのものです」
「証拠があります。先日、ようやくイリーヤの毛髪のDNA鑑定データが出てきたんで、
ふと思い立って彼の両親のものと比較してみたんですよ。99.7%の確率で親子ではないという結果が出ました」
「なんてこと……」
「イリーヤ・ダヴィドフは、29年前にダヴィドフ家の長男として生まれました。
しかしイリーヤが幼いころの記録は、一切残っていません。
病弱だったイリーヤは、まずは乳母、そして家庭教師をつけられ、ぬくぬくと育てられたことになっています
――が、彼の写真が最初に登場するのは、12歳のときです。
国家の富の数%を独占している家の、長男の写真が一切存在しないなどということが、普通あり得ますか?」
「そうだな、例えば写真に対して宗教的な迷信を抱いて――」
「だったらなぜ12歳から突然写真が出てくるんです?」
「クソ、まったくだ」
「ともあれ、イリーヤ・ダヴィドフが、イリーヤ・ダヴィドフではないのは、鉄板です」
「……つまりこれで、身元不明の人間が都合三人になったんですね」
「そうです。この件に関与している『顔のない人物』には、カレン・キリチェンコとマイア・バリシニコワだけでなく、
イリーヤ・ダヴィドフまでもが加わりました。そのうちの二人は、イズミ博士と深い関係を持っています」
 また一枚、「わたし」と「世界」の間にあったベールが剥ぎ取られた。自分が冷たい汗をかいているのを意識する。タバコがほしい。
「えーと、大尉。それで今夜あたり、イズミ博士の元職場に聞き取り調査に行ってもいいですかね?」
「いいだろう、許可する。経費はお前もちだが」
「なんてこった」
「当たり前だ阿呆」

61no solution 2/7res:2009/08/06(木) 04:28:04 ID:Hl1zQuT3


 私たちはオペレーションルームに戻り、状況の整理をすることにする。大尉がコーヒーを持ってきてくれた。
「砂糖とミルクは?」
「ブラックで」
「入れちまった」
「ならそれで」
 何年かぶりに砂糖とミルクがたっぷりと入ったコーヒーを飲みつつ、考えをまとめようとする。
私が知っている人間ではなかったイリーヤ。私が知っている人間ではなかったカレン。
 ――と、唐突に無関係なことが気になった。
「アイク軍曹は、いま何してるんです?」
「オフ。2週につき3日までの休暇が取れる。2ヶ月ごとに1週の国外休暇。
2ヶ月に1回のは義務だから気をつけてくれ。管理部から警告されるけどな」
「軍曹は国外?」
「いや、奴は先月出たからあと1ヶ月」
「大尉は次の国外休暇はどこの予定を?」
「部隊長は国外休暇をキャンセルする権利を持ってる」
「ワーカホリックですね」
「ニールには負けるさ。あいつ、長期休暇の希望先にWikipediaトップのURLを書きやがった前科がある」
「それは立派な病気です」
「休暇先は日本でもいいだぜって言ったら3秒くらいで旅支度してすっ飛んでったけどな。
次は台湾だって息巻いてる。少尉こそ、どうするんだ。今のうちからちゃんと考えておかないと苦労するぜ」
「ターニャに相談しますよ。なんなら彼女についていっても」
「あー、それは、うん、お勧めしない」
「というと?」
「アイクと一緒に休暇を取るだろうから」
 私は思わず納得して頷いていた。なるほどねえ。
「今日もターニャは午後からオフにしてるから、どこかにシケこんでるんじゃないか。
非合法なことをやってるんじゃなきゃあ、オフを誰とどう消化しようが俺の知ったことじゃないけどな」
 ……ん? ん? んんん? なんだかどうでもいい推論エンジンが高速で回転する。それって? つまり? ええと?
「大尉。ターニャと昔、つきあってました?」
「――これだから勘の良すぎる人間は嫌いだ」
「なぜ別れたんです」
 大尉はむすっとした顔になったが、それでも口は閉ざさなかった。
「あいつのほうから、やめにしようってな。上官と部下の間に、必要以上の私情を交えるべきではないってさ。
 ここだけの話だが、あいつがこの国の国軍にいた時代、所属部隊の部隊長と結婚寸前まで進んでたらしい。
だが隊長は作戦中にあいつをかばって死んで、部隊長を失った部隊は崩壊」
「大尉が同じ状況に置かれたら、ターニャをかばいますか?」
「状況による。だが客観的事実を積み上げさせてもらえば、俺があいつをかばう確率より、
俺があいつにかばわれる確率のほうが高いだろう。俺じゃあ、あいつの婚約者二号にはなれん」
 そのとき、私の脳の右側で何かが閃いた。今度のは、さっきみたいなどうでもいい推論ではない、そんな予感がある。
だが一体それが何であるかを左脳が分析し終わる前に、閃きは去っていく。
 思わず眉をひそめ、額に指をあてがう。ええい、あんなどうでもいいことには一瞬で頭がまわったのに。
「――どうした?」
「いえ、何か――仮説の尻尾を、掴み損ねました」
「ブレインストーミングでもするか?」
 大尉が椅子に腰掛け、メモ帳の束を取り出したところで、内線が鳴った。
「あー、はい、こちらハント大尉。ええ。ええ。わかってますよ。わかってます。いや、だからですね。
ええ。わかりました、いますぐそちらに行きます。わかってますって」
 彼は軽くため息をつくと、受話器を置く。
「すまん、ちと上から呼び出しだ。午前様コースだから、ブレストするなら明日の夕方からってことになりそうだ。
なんとも締まらないな」
「お疲れ様です」
「行ってくる。じゃあな、おやすみ」
 大尉はジャケットを引っ掛けると、壁に吊るしてあったネクタイをポケットに押し込んで小走りで出て行った。
この人はいつ寝てるんだろう。



62no solution 3/7:2009/08/06(木) 04:29:37 ID:Hl1zQuT3
 私はいったん自室に戻ってベッドに横になると、自分が何に反応したのかを思い出そうとする。
何か、破片のような一言が、たまらない違和感を生んだのだけれど。
 何度も何度も、大尉との問答を脳内で繰り返す。どうも集中できない。ターニャとアイク軍曹かあ。
ううん。いいなあ。いや、違う。そこじゃない。そこじゃないよ、イズミ、何考えてんの。
 しっかしあの二人のデートって、想像しにくいなあ。レストラン……は、まあ、なんとか……それから映画? 
クラブ? いや、ないね。ない。それはない。第一普通に公衆の迷惑っぽくない? 
それくらいなら射撃訓練所で並んで標的射撃してるほうがずっと似合ってる。となると、やっぱり食べたらホテルに直行? 
それともいっそホテルのベッドの上で食事とか。
 いや、待って、イズミ、なんかあなた変だよ。
 ……ああ、でもハント大尉とターニャって組み合わせだったら、ショットバーで夜更かしってのも絵になるよね。
ターニャもお酒は飲んでそうな気がする。

 私は自分でも何だかよくわからない唸り声を上げて立ち上がる。くそう。なんだろう、これ。
熱いシャワーでも浴びれば少しはすっきりするだろうか。いや、もしかするとスッキリしたくなってまた暴走しちゃうかも。
いや、いや、いや、あれはほら、初任務直後の緊張のせいであって。
あれ以降は、辛抱たまらなくなったらターニャがいない隙にベッドで、ほら。

 ――うーん。

 とりあえず、ひとつ、分かった。今の私は、ダメダメだ。
 おっかしいな。なんでこんなに集中できないんだろう。いや、うん、可能性としてはいろいろ考えられるけれど、それはない。
それはないなあ。ないと思う。だってさ。ねえ。

 モヤモヤしたまま、とりあえず部屋を出る。オペレーションルームに戻って、ハント大尉が使っていたブースに入り込んだ。
混沌の中からキーボードとマウスを掘り起こし、イヤフォンジャックにヘッドセットの末端をねじこんでから、
お気に入りのネットラジオにつないでボリュームをMAXにする。ややポップスによったトランスの専門局だ。
 音に意識を集中させているうちに、だんだん色恋沙汰が心から離れていくのが分かった。
指先とつま先でリズムを追う。と、曲が変わって懐かしいメロディが入ってきた。
1年前に流行ったボーカル入りのアレンジで、カレンと私は飽きずにこれをBGMにしていたものだ。

 ……ああ、やっぱり私は、情報軍の人たちに惚れているのかもしれない。
シャワールームでのアレはただの暴走という確信があるが、冷静さを取り戻してもなお、
彼らに感情的に惹かれる部分を否定できない。
 情報軍の人々は、実直で、誠実で、高いスキルを持ったプロだ。
そして私は、相手の男女を問わず(同性愛が全面的に否定されているこの社会においては、とても危険なことなのだが)、
高い能力というものに無条件で情緒的な執着を示す傾向がある。
そしてしばしばにしてその執着は、もうちょっと分かりやすい感情、つまり恋慕や愛情へと転化されていく。
 この「才能に対する一目惚れ」に対して、私の本能に書き込まれた「惚れるな」という警告が、
理性に向かって警報を発している、まあ、おおかたそういうところ……

 私は黙ってネットラジオを切り、ヘッドセットを外す。

 それだ。なぜこの端緒を掴みそこなったんだ、私は。「俺じゃあ、あいつの婚約者二号にはなれん」。
そうだ。その言葉が、すべてを語っている。

 カレンなのだ。カレンという名前は、一定のグループのなかで、『カレン的なる何か』を体現する人物が名乗る、
いってみれば勲章、あるいは役職みたいなものなのかもしれない。
彼女たちは庇い庇われあいながら、二人目、三人目と『カレン』を引きついでいったのだ。
 私設の難民キャンプや孤児院といったものは、組織的な人身売買および児童買春のベースキャンプになりやすい。
先進国においては商品が互いに顔をあわせることをリスクと考えるため組織の地理的拠点は分散しがちだが、
商品の供給数が決定的に多い地域においては自ずから話が異なる。
 商品たちが一箇所で集中管理されている状況であれば、彼ら「顔のない子供たち」に一種の連帯が生まれる可能性は否定できない。
仕事に関係しない情報の交換も行われるだろう。
だがそれでも、そうやって出来上がった一種の組織が、「雇い主」に叛旗を翻すことはまずない
――なぜなら、彼らは自分たちが幸運であることを理解しているからだ。
仮に反乱が成功したとして、彼らの未来に何があるというのだろう?
63no solution 4/7res:2009/08/06(木) 04:31:33 ID:Hl1zQuT3
 何もない。何も、ないのだ。状況は悪化こそすれ、改善はされない。
麻薬に溺れた売春婦が、ただ麻薬を手に入れるためだけのために自ら率先して煉獄に留まろうとするように、
彼ら「顔のない子供たち」もまた、煉獄を脱した先には地獄しかないことを知っているから、
その煉獄の看守に向かってクーデターを仕掛けようなどとはしない。
自分たちの無力なる「後輩」たちを煉獄から地獄に叩き落すような選択もまた、取れない。

 この仮説は、カレン問題の構造的矛盾に対する回答にもなり得る。
イリーヤと、自爆したカレンは、同じ場所で管理されていた商品であり、カレンがイリーヤに自爆テロの準備を強要した。
イリーヤは今現在自分が仕えている政治集団よりも、かつて自分が所属していた集団への紐帯を優先し、カレンに対して必要な機材を供給した
――イリーヤは、カレンが自分たちの住む煉獄を吹き飛ばすようなことはしないと信じたか、
さもなくば彼らしい無謀な理想主義を掲げてカレンを後押ししたということになる。
 仮説としては、あまり強いものではない。証拠が圧倒的に不足している。
だが二つの不可能が一つの仮説で説明可能になるというのは普通ではないし、
全体の状況証拠に対して目だった矛盾を発生させてもいない。となると、必要なのは検証だ。

 私は大尉の携帯を鳴らしてみたが、電源が切られているらしく諦める。急いでニールの部屋に向かったが、彼も出かけてしまったようだ。
アイクとターニャは、連絡すればできるだろうが、さすがに私もそこまで野暮ではない。
 それに、考えてみればこの仮説を検証するには、普通の調査では追いつかない。一歩、深淵の方向に足を踏み出す必要がある。
 私は自分の部屋に飛んで戻って荷物をスポーツバッグに詰め込むと、基地を出て最寄の公衆電話にコインを入れた。
若干震える指で、記憶に残っていた番号をダイヤルする。この時間なら、あの子はまだ客をとっていないはずだ。
 3回のコール音が無限にも思える時間を紡いだが、予想通り彼女は4回目のコール音と同時に電話口に出てきた。
「ハーイ、こちらナタリア。御用は何かしら?」
 懐かしい、ハスキーな声。
「ナターシャ、私なんだけど」
「誰よ?」
 まだ、彼女の声に緊張はない。仲間内の悪戯電話だと思っているのだろう。
「カレンの恋人」
「……イズミ? そんな。そんな、だって」
 ナタリアの声がぐっと硬くなった。
「詳しいことは話せない。でも、カレンのことでどうしても聞きたいことがあるの。30分後、ラズロの店で会える?」
「本当にイズミなの? 無事なのね?」
「カレンの本当のことを知るまでは、死ねないわ」
「わかった。でも、ラズロの店は無理。ラズロは強盗に殺されたわ。それから私まだお化粧してないから、30分ってのは無理。
1時間頂戴。あなたが本当にイズミなら、ソニーって言えばわかるよね? そっちで待ってる」
「いいわ。1時間ね」
 私は受話器を下ろし、タクシーに乗り込む。運転手に相場の3倍くらいの料金を掴ませると、
彼は後部座席で情報軍の制服を脱いでホットパンツとノースリーブに着替える私をきっちりと無視して目的地へと飛ばし始めた。
もう、着替えがどうこうなど言ってはいられない。



 1時間後、私は首都の歓楽街入り口に立っていた。
連合軍の兵士と、今の私のような格好をした女たちが、嬌声を上げながら道一杯に広がっている。
 私は制服を詰めたスポーツバッグを片手に、ソニーに向かう。
ソニーというのは、私たちが通っていた場末のハードロック・カフェを指す符丁だ。
店主が二言目には「やっぱりソニーのアンプは違うだろ」と言うので、私たちは店自体のことをソニーと呼び習わしていたのだ。
ちなみに、その店で使っていたアンプはビクター製だったが。
 雑居ビルの地下1階に入ったその店は、昔と何も変わらない風情を漂わせていた。
黄金期のハードロックが、ビルの入り口にまで響く大音量で流れている。よくもまあテロの嵐を生き延びているものだ。
 薄暗い階段を降り、錆だらけの鉄の扉を開けると、カウンターにナタリアが座っていた。
腰まで伸ばした薄いブロンドの髪と、凹凸のはっきりしたボディラインは、相変わらず見事なものだ。
が、客は彼女しかいない。
64no solution 5/7res:2009/08/06(木) 04:33:57 ID:Hl1zQuT3
 彼女は、私のことが分からないようだ。私は彼女の隣に座ると、「久しぶり、ナターシャ」と声をかける。
「イズミ? なんだか顔が違う……でも、うん、声はイズミね」
「事情があって」
「聞かないことにするし、忘れることにする。マスターも席を外してる」
「じゃあこれ、後で彼に払っておいて」
 私はバッグからしわくちゃになった1ドル紙幣を取り出し、カウンターの上に置く。
「変わらないのね、イズミ。とっ散らかった人生を歩いてるわりに、妙なところで律儀なのは、やっぱりイズミだわ」
 私は苦笑しながら、単刀直入に本題へと切り込む。
「ねえ、ナターシャ。あなたは、カレンが死んだ理由を知ってるんでしょ?」
「なぜそう思うの?」
「隠さないのね、ナターシャ。いいわ、私の推測は、こう。
 最初に違和感を持ったのは、お店の営業中にゴキブリ騒ぎがあったときよ。
あなたはカレンと同郷で南部出身だって言ってたけど、あのときあなたが叫んだゴキブリを指す卑語は、
北西山岳部の少数民族にしか見られない方言なの」
「よくそんなのに気がついたわね」
「本で読んだことがあったから。それであの後、カレンにもあなたにも、何度か故郷の話を振ってみた。
あなたたちは、同郷だって繰り返したわ。
 カレンは、私には嘘をつかない。同郷だっていうのは嘘じゃないってこと。
だからあの頃の私は、カレンが遠まわしに、あなたと昔は恋人関係にあったって言ってるんだと思ってた。あの頃はね」
「私たちは『同郷』だったわ。シルヴァン・デュラスが私たちの『父親』」
「イリーヤもそうね?」
「――そうよ。2人目だったマイアは、ずっと前に死んだわ。
変態野郎に器具でお尻を犯されて、腸が裂けたの。カレンは、都合、3人目のカレンよ」
「どうして? なぜカレンはあんな死を選んだの?」
「惨めね、イズミ。恋人がなぜ死んだか――いえ、恋人が何に苦しんでいたのか、何を望んでいたのか、何を心の奥に隠していたのか、
あなたはほんのわずかたりと気がつかなかった。いえ、気がつかなかったんじゃない。気がつこうとしなかったのよ」
 私は下唇を噛んだ。反論できない。
「あなたには分かるはずがない。あなたは零落したとはいえ、お嬢様よ。
あなたには才能がある。教育も受けている。身体を売る以外に本当に何もできない、何かをできる可能性すらない、私たちとは違う。
 あなたには、私の絶望は分からない。カレンの絶望はわからない。
この国の、いえこの世界の本当の最底辺で喘いでいる人たちの苦しみを、正しく想像することはできない。
あなたたちの学問や教養が、私たちを救うことは決してない。
 イズミ、帰りなさい。あなたのいるべきところに。
 いいの。私たちのことは、放っておいて。あなたのような人間が
――あなたほどの人間が最善の努力をしても、この世から悲惨はなくならない。
だから、いいの。
 もう一度言うわ。帰りなさい。せめて、あなたの幸せを掴んで。
あなた、いい顔をしてる。新しい恋を見つけたんでしょ?」
 私は、立ち上がって、その場を去るべきだった。軍人としての任務は、果たされていた。
私は必要な証言を得ていて、これを元に裏づけ調査を進めれば、より真相へと近づいていけるはずだ。
 でも私は、動けなかった。ナターシャの優しさと誠実さに、私の心身は麻痺していた。
この社会において何一つ持たない彼女は、私がかつて同僚だったというだけの理由で、
彼女自身を危険に晒す情報を包み隠さず教えてくれた。
 それにひきかえ、私は何をしているのだろう? 
結局のところは私的な欲求を満たすために侵略者の手先になった私は、いったい何を賢しげに動き回っているのだろう?

 私は、何がしたいのだろう?

 膝の上で硬く握り締められた拳の上に、ナターシャの暖かな手が乗せられる。
自分の中で、何かが崩れたのを感じた。驚きは、ほとんどなかった。むしろ、私はそれを望んでいたと言ってもいい。
 自分が不道徳であるという点において、弁解するつもりはない。
いくら性的サービスを職業としていた時期があったからといって、いやむしろそれだからこそ、守られるべき一線はある。
でも私は、プロでありきれなかった。
 カレンはもちろん、ナターシャにせよ誰にせよ、私とある程度まで親しく付き合っていた同僚(ごくわずかだが)にとって、
私は文字通り厄介者だった。一言で「身体を売る」と言っても、そこにはルールもあればタブーもある。
微妙に語義矛盾を起こすが、モラルだってあるのだ。
65no solution 6/7res:2009/08/06(木) 04:35:20 ID:Hl1zQuT3
私はそのいずれをも知らなかったし、そもそも私はただ緩慢な死への道を歩むついでに娼婦という世界に片足を突っ込んだにすぎない。
生きるために身体を張って働く彼女たちとは、決定的な差があった。
「――大丈夫よ、イズミ。あなたは間違ってなんかいない」
 ナターシャが優しく囁く。
「死んだほうがましだ、これくらいなら死んでやるとどんなに思っても。
この先、生きていても何一つ良いことなんてありはしないと分かっていても。
それでも、生きていたい。死にたくない。それでいいのよ。
 そうやってどん底を這いずり回って、互いの首を絞めながらのた打ち回るように生きる、そんな人生でしかないにしても。
それでもやっぱり、手当たり次第に他人の首を絞めてでも、生きたい。それで――それで、いいのよ」
 私はただただ、彼女の囁きに頷く。
「だからせめて、ほんの少しでも――楽しみましょう、今を」



 きゅっと肩を抱き寄せられる。彼女の体温に、心のこわばりがじんわりとほぐれるのを感じた。
反面、心臓は高鳴っている。これは、浮気なのだろうか? それとも?
 ナターシャが私の喉元に顔をうずめる。ラメの入った青紫の唇からちらりとのぞいた舌が、
私の鎖骨をたどり、首筋へと這い上がっていく。私は目を閉じ、快楽の予兆に身を任せる。

 カレンを失ったのは、私だけじゃ、ない。
 ナターシャもまた、カレンを失ったのだ。

 私は彼女の身体を抱きしめ、背中を愛撫する。
ナターシャの舌は私の喉を思うがままに愛し、服越しに感じる豊かな胸は私の官能を支配していく。
せいぜいが半端なバイである私ですらこれなんだから、男どもがあっという間に骨抜きになるのも納得だ。
 ナターシャの指が、ノースリーブの上からチューブブラのホックを外す。器用なものだ。
彼女の手が背中に滑り込み、ブラジャーが抜き取られた。私もおかえしとばかりに、ナターシャの黒いブラジャーを外す。
彼女のドレスは背中が大きく開いていて、ほとんど何の苦労もなかった。
 乳房を拘束していた布が取り払われると、柔らかな快感はいっそう強まった。
性的な悦楽というよりは、どちらかといえば、遠い日の暖かな記憶が刺激される。
女から生まれなかった人間は、現時点では公式には確認されてはいない。
ほとんどの人間が最初に安堵と安心を覚えた温度が、そこにはあった。

 しばらくのあいだ、そうやって私たちは互いの体温に甘えあい、委ねあった。
ナターシャの手が私のシャツを首もとまでたくしあげ、貧相な乳房をたっぷり舐めまわす。
私はなされるがままになりながらも、彼女の長い髪を指で梳いていった。
 小さな口が私の乳首を咥え、きゅっと吸い上げる。ちょっと痛い。
だがそれよりも、押し寄せてくる充足感と愛おしさ、そして刺すような喪失感に翻弄されている自分を感じる。
 私はただ、死ぬために生きていたはずだった。
 私はただ、漫然と世界に存在していただけ、そのはずだった。
 でも、違う。違った。
 あのどうしようもない毎日には、細かな破片のような喜怒哀楽が敷き詰められていて、
なんだかんだで私はその毎日を楽しんでいた。そうだ。楽しかった。楽しかったのだ。
 あらゆる社会学の理論を総動員してなお、豊かさからも安全からも幸福からも遠い世界にいると定義せざるを得なかった私は、
それでも、その毎日を楽しんでいた。小さな欠片を拾い集めながら。小さな破片を敷き詰めながら。

 今となっては、その日々すら、失われてしまった。

 ナターシャが私の乳首から口を離し、視線をあげる。私には、彼女が何を望んでいるのか、よく分かった。
「ナターシャ……」
「イズミ、ここのルール、まだ覚えてる?」
「ええ。『セックスしても構わないが、キスは禁止』」
「馬鹿馬鹿しいルールよね」
「でも、なぜかみんな守ってた」
「そうね」

 私はナターシャの両頬を手で捕らえ、素早くその唇を奪った。
 私たちは何度も、飽くことなくキスを繰り返した。
66no solution 7/7res:2009/08/06(木) 04:37:04 ID:Hl1zQuT3



 ひとしきり禁忌を堪能したところで、互いになんとなく我に返った。私にはなすべき仕事があるし、彼女は遅刻も遅刻、大遅刻だ。
同伴する予定でしたが相手が急用で、とか言い訳できる程度のチップを彼女に預けることはできるから、
マネージャーから叱責を受ける心配はないだろうけれど。
 で、それはそうとして、私は別種の生理的欲求を感じていた。ありていにいえばお手洗いというやつだ。
何もこんなときにねぇ。ここのお手洗いは致命的に汚いことで有名だから、もうちょっと我慢してもいいんだけど。
帰りのタクシーの中は、できる限り思考を集中させたいし。ああ、もう、折角の再会だったのに、どうにも締まらない感じ。
 苦笑交じりに席を立った私を見て、ナターシャもピンときたようだ。
「ねぇイズミ、ここの化粧室だけは、どうなの」
「――う、うん、まぁ、そうなんだけど」
「やめときなよ。何ならそこに新しいカフェが開いてるから、そことかさ」
「んー、でもちょっと、急ぐから。ありがとう」
 ナターシャは何か言いたげだったが、思いなおしたように口を閉ざした。左手の腕時計をちらりと確認する。

 そのとき私は、気がつくべきだった。
 彼女には、時間を気にする理由などない。
 既に、気にしなくてはならないレベルでの遅刻では、ない。

 化粧室の扉を開け、悪臭の立ち込めるスペースに足を踏み入れた私の目の前には、ぎょっとするものが横たわっていた
――頭の上半分を床に撒き散らした、マスターの死体だ。
 悲鳴を上げるより早く、脳の中にアドレナリンが噴出する。

 やばい。やばい。やばい!

 私はとっさに扉を閉め、手洗いの隣にしつらえられた「STAFF ONLY」の扉を蹴破るように開ける。
小さな倉庫の先に、裏口があるはずだ。
 けれど、そこには野戦服を着た男が待ち伏せていた。
半分壊れかけた蛍光灯がちらちらと光る下で、男の手に鈍く光るナイフが握られているのを確認する。
まずい。まずい。でもこれって。

 私はパニックを振り払いつつ、すっ転ぶように180度方向転換して、必死の思いで店内に駆け戻る。
そこにはナターシャと――完全武装の男たちが数人、立っていた。

「ごめんね、イズミ。万が一、あなたから連絡があったら、ボスに通報しろって命令されていたの」
「――で、でも、デュラスはもう逮捕されて」
 ナターシャは鼻で笑った。
「何をピンボケなこと言ってるの? 二代目よ、二代目。もっと辣腕で、もっと陰湿で、圧倒的に悪趣味な男」
「ナターシャ……ああ、ナターシャ、今更言っても仕方ないかもしれない。
私があなたに電話をしなければ、あなたをこんなことに巻き込むことにはならなかったのも、本当のこと。
けれど、これじゃあ、あなただって」
「分かってる。そんなこと、あなたみたいに賢くなくても分かってる。
でも、それしかないのよ。私には、それしかない。
たとえここで口封じのために殺されると分かっていても、
それでも、もしかしたらそうならないかもしれない、そちらに賭けるしかなかった。
 あなたが責任を感じることじゃないわ。
たとえあなたからの電話がなかったとしても、いずれ私はあなたをおびき寄せる餌に使われてた。
早いか、遅いか、それだけの違い」
「――だったら。そこまで分かっていたなら――」
「言ったでしょう。私の絶望は、あなたには分からない。カレンにも、わからない。私の絶望は、私だけのもの。
 そうやって、私は生きる。そうやって、あの遠い山に沈む夕日の向こうに、私だけの絶望が一緒に沈んでいくの」
 ナターシャはとても綺麗な微笑みを浮かべた。精緻かつシンプルな数式のような、この世のものではない綺麗さ。
でも、彼女が導いた解は――

 男の一人がサイレンサーつきの拳銃を抜き、ナターシャの後頭部に押し当てる。
彼は一瞬の躊躇いもなく引き金を引いた。彼女が床に倒れた音は、咆えたける音楽の中に消えていった。

(第6章「イリーヤ」に続く)
67no solution 5/10:2009/08/06(木) 04:42:04 ID:Hl1zQuT3
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・まだしばらくかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
68名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 20:25:49 ID:RfEsXJtL
抜くとか言う以前にじっくり読んでしまった。GJ
69名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 02:57:29 ID:PDwxEvbF
普通に話として面白いんだよな
ここまで書けるなら商業でもやれそうだ

続き楽しみにしてます
70名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 00:06:55 ID:yjayoIkq
楽しみにしてるよ
71名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 21:59:45 ID:gmXtuKmm
木曜age
72no solution 6/10:2009/08/15(土) 03:32:08 ID:IiCHzztR
諸般の事情により遅れましたが投下します。計算では10レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・調教+陵辱ものです。
・スカトロっぽい部分があります。お食事中の閲覧はお勧めしません。
・作品中に登場する事件は、実在の事件事故そのほかと一切の関係・関連がありません。ないったらないです。
 構想していたときには、まさかこんなことになるとは。


以下本編
73no solution 1/10res:2009/08/15(土) 03:32:49 ID:IiCHzztR
■第6章 ―― イリーヤ
 私はなぜか、姉のことを思い出していた。

「だからね、イズミ、あんたは全然わかってないのよ。何も分かってない。
あたしたちは聖典を覚えたら、もうそれでいいの。それ以上は、女の幸せには不要なものよ」

 耐えられる限界まで、私は耐えたと思う。乳首とクリトリスをねちっこく責め立てられ、ローションを秘所に注入され、
そこに異物を挿入されても、私は快楽に負けないよう、必死に戦った。

「イズミ、イズミ、あんたって子は、本当に……。男なんて馬鹿なことしか言わないんだから、うんうんって頷いておけばいいの。
そしたら連中はそれで満足するんだから。なんでそんな簡単なことがわかんないの? そこまで頭が悪いの?」

 そもそも、そんなに難しい戦いではない。力づくで拉致され、いずことも知れぬ小屋に監禁され、
そこで何人もの男から陵辱を受けるなんていう状況に、快感などありようがないのだから。
 でも、彼らは準備も周到だった。
 バイブレーターをクリトリスにあてがわれると、嫌悪感の奥底に、わずかな快楽の兆しが立ち上がってくるのを感じる。
私は首を振って、不自然な感覚を振り払おうとした。
すぐに全身が縛り上げられ、私は身動きがとれぬまま、怪しく振動する器具で秘所をいたぶられ続けた。

「あのさあ。泣いたってなにも解決しないでしょ? 泣くんだったら、最初から泣きなさいよ。
なんで問題をこじらせまくって、無茶苦茶にして、どうしようもなくしてから泣き出すの? 勘弁してよ、ほんとに。
泣きたいのはこっちだわ」

 ああ、姉は正しい。姉はいつも正しかった。
 私よりもほんの少し早くこの世に生まれたというだけで姉という肩書きを背負うことになった彼女は、
でも、その肩書きに恥じない才能と能力を持っていた。私はいまだに、着想の鋭さや事態の解釈能力において、姉に勝てるとは思えない。
私はただ、姉がとっとと捨て去った「学問」とやらに未練がましくしがみついた結果、
ちょっとばかり多めに知識を仕入れたというだけのことだ。

 今頃、姉はどうしているのだろう。
 この時代、この国において、人の生死は能力と無関係だ。
 あの姉をして、わずかな不運がすべてを奪っていった可能性はある。

 縛られた手と手の間に、強引に私の両膝が押し込まれた。両足首を縛った縄に、首から伸ばした縄が結わえられる。
息苦しさもさることながら、男たちはもう私の穴にしか興味を抱いていないということを思い知らされて、心がひしゃげそうになる。
 バイブレーターが引き抜かれ、かわりに、もっと周波数の高い音を立てる何かが秘裂に近づいてくる。
まさか。噂に聞いたことはあるけど、それは、まさか――

 強烈な振動がクリトリスを揺さぶった。思わずうめき声が漏れる。
 私は理性をかき集めて、何が起こっているかを考える。これは、ほぼ間違いなく、電動式のマッサージ器具だ。
変態プレイを好む連中には、それで女を弄ぶのが好きだというのがいると聞いたことがあるし、
独特の刺激がたまらないという感想をかつての同僚から漏れ聞いた覚えもある。
 秘所を嘗め回すように、マッサージ器具が動いていく。理性にガタがきはじめる。
声帯が勝手に「イヤ」と「やめて」を繰り返していた。自分でも、分かる。私は落ちる寸前だ。

「ほら、ちゃんと立って。もう泣かないの。あんたがこれでもまだ学問をやりたいってんなら、もうあたしは止めない。
でも、あたしだって、あんたのことをずっと守ってはあげられない。約束して。せめて、自分のことは、自分でできるようになる、って」

 ごめん、お姉ちゃん。
 ごめん。

 どこか遠くのほうで、自分が卑猥な叫びを上げているのが聞こえた。
 熱い塊が、秘所へ、あるいは口の中へと押し入ってくる。

 ごめん。

 もう、ダメみたい。

 何人もの男に全身を蹂躙されるうち、私は自ら意識のスイッチを切っていた。
これは全部悪い夢で、目が覚めたら平凡な毎日が戻ってくる。そんな詮無いことを念じるうち、視界は闇へと溶けていった。
74no solution 2/10res:2009/08/15(土) 03:34:07 ID:IiCHzztR



 寒気と息苦しさで、私は自分を取り戻す。身体がずぶぬれになっている。数秒の時間をかけて、水をかけられたのだと思い至る。
 視界が真っ暗で微妙に焦るが、目隠しをされている感触がある――視力を奪われたというわけではなさそうだ。
自分の奇妙な冷静さに、自分でもちょっとどうかしていると思う。

「ご加減はいかがですかな、イズミ博士。いや、カタギリ少尉とお呼びしたほうがよろしいか」
 初めて聞く声だ。強い北部訛り。いや、しかしこのイントネーションにはどこか聞き覚えが。
私は必死で頭を上げようとするが、ブーツが私の頭を地面に貼り付ける。
「おっと、私の姿を見ないほうがいい。生きていたいならね」

 どこにでもある、くだらない脅し文句。

 でも――

 でも、その刹那――

 私は全身が震えるような、神経のざわめきを感じた。
 さっきまでとはまったく違う、それでいてどこか似たような、高揚感。

 自分の意思とは無関係に、すべての仮説が収まるべきところに収まっていき、根拠という杭を打ち込まれていく。
スローモーションのように、幾何学的な構造物は見るも彩な繊細さで世界を織り上げる。
 そして誰のものでもない手が、燃える文字を空中に書き上げた。

 Q.E.D.

 男はなおも何かを言っている。だが、私には関係のないことだ。まったく、関係がない。
そこはもう、数秒前に到達し終えた場所だ。私の時計は彼の時計の先を進んでいて、期待値的にその差はこれからどんどん広がっていく。
つまり彼には何の価値もない。
 そんなことより、私はこの段階においてなお、根源的な謎がより一層深まったことに、全身をおののかせていた。

 身体を震えさせている私を、男は恐怖に怯えていると解釈したのだろう。なにやら提案らしき言葉がずらずらと並べられる。
私はそれをすべて無視して、呟いた。口に出して、自分に問わざるを得なかった。

「では、なぜカレンは死んだのだろう?」

 男が黙り込んだ。私の頭からブーツがどかされ、棒のようなもので眉間を殴りつけられる。
意識が遠くなるが、それすらも私にはどうでもいいことだ。今は、自分の身体の機能になど注意を払っていられない。
私に残された時間には限りがあるのだ。
 頬に生暖かい液体が落ちてきた。唾を吐きかけられたのか。迂闊な男だ。
もしこのまま私の死体が発見されたら、この唾液が彼の罪を示す証拠になるというのに。
「ならば、死ね。その利口なおつむが焼け付くほど苦しみ抜いてから、死ぬがいい」
 男はそう吐き捨てると、去っていった。当然だろう。彼がここから先の拷問と処刑に参加する可能性は皆無だ。
算術的正確さで、否定できる。

 靴音が去っていき、やがて聞こえなくなった。
 目隠しが取り払われると、何人もの男たちの期待と好奇に満ちた目が、私を見ていた。



75no solution 3/10res:2009/08/15(土) 03:35:51 ID:IiCHzztR
 部屋の中にカメラと照明が運び込まれた。まばゆい光が目を刺す。大げさな、と思ったが、考えてみればこれは彼らの本業のひとつだ。
ハードコア・ポルノと、おそらくはスナッフ・ビデオ。呆れるくらい単純で、暗澹とした未来。

 ガリガリに痩せた男が、椅子に縛り付けられた私を検分している。
彼は私の胸を鷲づかみにし、腰を撫で回したが、そこにはなんら情欲が感じられず、そのことにむしろ寒気がした。
「オッケー、5日くらいでいこう。おい、BとDの衣装一式、用意しとけ。
あとは、そうだな、アレも一応、準備しとけ。水色のやつでいこう」
「使用人の服と、ニホンの学生服っスね。それから、アレって、アレっすよね、監督。
倉庫探しゃあ見つかると思いますけど、だいぶ古くなってるかもっス」
「文句言うな、持って来いっつたら持ってくるんだよ、タコ! 俺だってあんな古いネタをいつまでも引きずりたかぁねえんだ! 
だがよ、カネになるなら何でも撮る、いまさらいちいち説教させんな!」
「ういっす、申し訳なかったっス。準備するっス」
「おう。そんなに急がなくていい。だが明日には揃えとけ」
「了解っス。女優さんの洗浄しとかなくていいっスか?」
「わかってねーなタコ。この、ここに来る前に既にマワされましたって風情がぐっとくるんだろ?」
「おっす、勉強になるっす。じゃ、準備してくるっス」
「おうよ。そっちは任せた。
 さて。おーし――んじゃ、始めっかな。
 兵隊さんたち、この女優さんの縄を解いてくれや。それから、こいつを着せてくれ。
お嬢さん、それとも自分で着るか? 他人に無理やり着せられるよりは、自分で着た方が痛くないぜ、たぶん。
肩とか、結構簡単に脱臼するからな」
 私の足元に、情報軍の女性用制服一式が投げ出された。タイトスカートの、礼装だ。
思わず「監督」と呼ばれた男の顔をまじまじと見てしまう。
「ああ、そうそう、脱臼しようが骨折しようが、そのまま撮影すっからね。どっちがいいか、自分で考えな」

 縄を解かれた私は、のろのろとベージュ色の制服を着はじめた。カメラがスタートする。
 感じたことのない種類の羞恥がこみ上げてきたが、今はそういう場合じゃない。考えるべきことは、あまりにも多い。
とにかく、ほんの少しでも長く、生き延びなくては。その先にあるのが、最悪の死であるとしても。
 それに、石がパンに変わるくらいの確率でしかないとはいえ、情報軍の突入部隊が救助に来てくれる可能性だって残されている。
彼は5日、と言った。それだけの時間があれば、もしかしたら彼らなら、砂漠に落ちた砂粒を探し出すかもしれない。
 ご丁寧に、黒のブラジャーとショーツ、ストッキングまで用意されていた。
サイズがいまひとつ合わないが、そんなことを言っても仕方がない。下着を身に着け、ワイシャツに袖を通す。
じわり、じわりと絶望と無力感が忍び寄ってきて、思考を妨害する。

 助けて。

 唐突に、そんなフレーズが頭に浮かんだ。いけない。いまはそんな夢想に浸っている場合じゃあない。
私はシャツのボタンをとめ、スカートを穿く。ローヒールの靴を履き、ネクタイを締める。
訓練期間中、毎日のように着た服。こっちにきてからは一度も着たことはなかった。
まさか、こんな場面で最初の一回を経験するとは。
 ジャケットを着て、ボタンをとめた。鏡を確認することはできないが、情報軍の女性士官ができあがる。
「監督」は私の姿をしげしげと見てから、大きく頷いた。
「いいね、いいね、さすがは本物だ。よし、と。
メガネは――いらんな。Bセットのときにメガネッ娘にしよう。今回はこのままでいい。
 じゃあ、まずは軽く和んでもらおうか」

 とたんに、後ろから男に羽交い絞めにされた。つかつかと別の男が歩み寄ってきて、腹部に鋭いパンチをもらう。
息がつまり、吐き気がこみ上げた。すかさずもう一発。ほんの僅かに残っていた、抵抗する気力を、根こそぎ持っていかれた。
両手がだらりと垂れ、足から力が抜ける。
「ハハッ、まるで根性ねぇな、メス猫」
 かなりちゃんとした英語だ。最初から輸出版を考えているということか。いや、当たり前だ。
この国では、ヘンタイな映像を手に入れるよりも、同じことを実際にやったほうがずっと安上がりなのだから
――たとえ、それが最終的にスナッフで終わるとしても、なお。
 羽交い絞めが解かれ、私は地面に崩れ落ちた。前半戦の疲労と消耗が残っているというだけではない。
もう、指一本、動かせない。
76no solution 4/10res:2009/08/15(土) 03:39:08 ID:IiCHzztR
 ジッパーをおろす音がして、目の前に巨大な怒張が突きつけられた。
弱弱しく首を振って拒絶するが、男は両手で私の頭をつかんで跪かせると、無理やり口の中に押し込んでいく。
すぐさまイラマチオが始まり、窒息しそうになる。
「おら、ちゃんと舌を使え! 軍隊で何を習った! どうせ毎晩毎晩、何人もくわえ込んでたんだろうが!」
 何を言われても、何もできない。またしても、無気力が押し寄せてくる。

 イラマチオは突然終わり、唾液とカウパーでテラテラと光る巨根が引き抜かれた。まだまだ、爆発するそぶりすら見えない。
呆然と肉塊を見ていると、頬を強く張られた。衝撃で地面に倒れる。
「だらしねぇなぁ。お口でご奉仕ひとつできねぇのかよ。こいつは、ちゃんとキョーイクしてやらにゃいかんよなぁ」
 周囲で笑い声が上がった。セッティングとしては、堅物で世慣れていない女性士官を調教する、そんな筋書きなのだろう。
監督、それって配役に若干問題ないっスかね。馬鹿馬鹿しいことを、ちょっとだけ思う。
 後ろ手に両手を縛られてから、椅子に座らせられる。タイトスカートのホックが外され、ずり上げられた。
両膝を椅子の肘掛にひっかけられると、股のあいだをカメラの前に晒す姿になる。
カメラを意識してしまうと、今更この程度のことで恥ずかしさがこみ上げてきて、
なんとか膝を寄せようとしたが、男たちに両膝を掴まれ阻止された。
そも、膝を閉じたくらいでどうにかなる姿勢でもない。
 ことの成り行きに呆然としていると、ふたたび電動式マッサージ機が秘所に押し当てられた。
今度はストッキングとショーツの上からだが、それでも腰が抜けそうになるような快感が走る。

 このまま虚脱してしまおう。そう思った。
 身体は身体で、勝手に嬌声を上げ、勝手に跳ね回るだろう。
 だから、もう、心を閉ざしてしまえばいいじゃないか。あのときのように。
 さっきはそれで切り抜けたじゃないか。あのときのように。

 でも、自分の心の内側に引きこもる直前、思いとどまる。ダメだ。それをしてしまえば、思考も理性も停止する。
それは死と変わらない。さっきは、それでも許された。なぜなら「彼」が私と会うまでは、私を殺すわけには行かなかったのだから。
 今はもう、いつ、どんな風に殺すか、それだけの問題でしかない。
心を失った肉人形になれば、死は瞬く間に私の元へと到達するだろう。
それはそれで幸せなのだろうけれど、私は――そう、真理にたどり着ける可能性を、ほんの少しでも残したい。
たとえこの先、支離滅裂な思考しかできない時間が待ち構えているとしても。
良い「役者」であれば、あと3日は生きていられる。7日だったか?

「おー、すげー、おもらしでちゅかー?」
「ぐっしょりでちゅねー。セックスだいすきでちゅかー?」
 マッサージ器をあやつる男が、耳元で囁く。男の胸元には、マイクが見える。この声も拾っているのだろう。
やがてマッサージ器は秘所からどけられ、男たちは力なく椅子に沈み込む私をあざ笑いながら、ストッキングを力任せに引きちぎっていった。
布の裂ける甲高い音が、むんむんとした室内に響く。
 ストッキングを破き終わると、彼らはローターをショーツの上からあてがった。
新しい、より鋭角的な快感に身をよじる。別の男たちは私のジャケットをはだけさせると、シャツの上から胸を揉み始めた。
カメラはぐっしょりと濡れたショーツから、貧しい胸を撮影し、快楽と恥辱に歪む顔を舐めるように撮影していく。

 胸を攻めていた男たちは、シャツのボタンを外してブラジャーを露出させると、カメラの前でその中央に鋏を入れた。
鉄の感触が、ひやりと胸にあたる。鋏はゆっくりと閉じられていき、パチンと小さな音をたててブラジャーが断裁される。
「さて、おっぱいのご登場ですよ」
「うわ、こりゃまたかわいらしいおっぱいだ」
「ちっちゃいねー。たくさん揉んで、大きくしてあげなきゃいけないねー」
 言葉とは裏腹に、男たちはローターを2つ取り出し、それぞれ私の乳首にあてがう。
乳首はもう痛いくらいにしこっていて、ローターのもたらす振動が突き抜けるような悦楽を運んできた。
 下腹部では、ローターがショーツの内側に押し込まれ、秘裂の中へと侵入していく。
ショーツを思い切り引き上げられて、裂け目にローターと布が強く食い込むと、思わず声が漏れた。
「気持ちいいね。いいね。感じてるねー」
「もっと気持ちよくなろうよ」
「すごいねぇ、たくさん輪姦されて、また今から強姦されるっていうのに、感じてるんだねえ。エッチだねえ」
77no solution 5/10res:2009/08/15(土) 03:41:28 ID:IiCHzztR

 男たちは私をさんざん言葉で辱めながら、執拗に、執拗にローターでの責めを続ける
――そして唐突に、私は自分がコントロールできなくなった。何の前触れもなく言葉にならない絶叫が上がり、激しく全身が痙攣する。
「お、突然ですがイキそうです」
「イっちゃいな。ほら、イクって言うんだよ。言えよ、ほら」
 私は何度も何度も「イク」「イっちゃう」を繰り返す。その一言ごとに、快楽が深まっていく。
歯止めが利かない。全身が細かく痺れて、縛られた腕がつりそうになる。
 そして、絶頂の波が訪れたときと同様、忘我の瞬間も予期せぬタイミングで訪れた。急激な落下感覚が襲い掛かってくる。
「や、や、やだ、イク、いああぁぁぁ、ぁ、ああっ、まだ、やだぁぁぁあああっあああああっ!」
 目の前で何度も光が瞬き、気がつくと私は絶頂を極めていた。

 呆然とする私を、カメラが撮影している。男たちはショーツに鋏を入れ、小さな布着れになったそれを下腹部から抜き取った。
ひくひくと痙攣する陰部は、まだローターを咥え込んでいる。
 ローターが引き抜かれると、愛液と精液が混じった液体がどろりと椅子の上に零れ落ちた。
男の一人が大笑いしながらその液体を手に取り、わたしの頬になすりつける。形容しがたい異臭が、鼻を突いた。



 朦朧としている私は、上半身を縄で縛られ、机の上に仰向けに転がされた。
自然に両足が開いて秘所があらわになるが、それをどうにかするだけの気力も、体力もなかった。
ときおり、下腹部が勝手に痙攣し、そのたびにごぼっという音をたてて体液と精液が流れ落ちていく。
 男が一人、私の耳元に口を寄せた。
「さて、本日は全部で20人の健康な若い男性が集まっています。士官どのは、この全員を満足させられますか?」
 弱弱しく、首を横に振る。振りながら、今から20人に犯されて、それでもなお生きている自分を想像しようとして、
そのあまりの困難さに慄然とした。でも彼らは、今日で終わりにするつもりはないし、私だってここで終わりになるつもりはない。
ということは、これがまだ何度かある、そういうことになる。
「無理ですか! これは困った。では、作業効率を上げるために、ちょっとした準備をしましょう」

 ひやりと冷たい何かが、アナルの入り口にあてがわれた。私ははっとして、全力で首を振る。
どこにそんな体力が残っていたのかと自分でも不思議に思うが、「イヤ」と何度も叫びながら、首を振り続けた。
 男たちが、私の肩を押さえつける。
 何かの液体が、私の腸の中に入ってきた。違和感と圧迫感が下腹部全体を支配する。
それと同時に、強い便意が沸き上がってきた。医学的にはまっとうな反応だが、それとこれとは別だ。
だがしかし、ここで無理に我慢すると――でもそんな――
 ぐちゃぐちゃな思考を右往左往させていると、秘所に指が侵入してきた。ぴくん、と体が震えて、その勢いで排泄しそうになってしまう。
いや、奴らにせめて一矢報いるなら、ここですぐに出してしまったほうがいい。今なら、おそらくはグリセリン液が体外に放出されるだけだ。
もちろん多少は大腸内の老廃物が溶け込んでいるだろうが、我慢した先に起こる惨状に比べれば……。
 けれど、カメラが私を見ていた。無理だ。それは無理だ。カメラの前で犯されるのは、ある程度まで耐えられるかもしれない
。でも、カメラのまえで排泄だなんて、そんな、そんな、それくらいなら、たぶん、死んだほうがマシだ。

 言うまでもなく、愚かな判断だった。ぐだぐだと悩んでいるうちに数分が経過し、腹部を襲う激痛は耐えがたくなってきた。
額に冷たい汗が滲み、唇がわなわなと震える。でも。でも。
「さあ、どうしたいんでちゅかー?」
「何がしたいのか、大きな声でいってみましょうねぇー」
 耳元で男の声が聞こえた。呼吸するのも精一杯だ。男の指が陰部をかき回し、私は引きつるような腹痛に身悶える。いやだ。だめ。いやだ。
78no solution 6/10res:2009/08/15(土) 03:43:07 ID:IiCHzztR

 ふと、子供のころのことを思い出した。
 私は、いじめられっ子だった。日本人の血が強く混じった外見もさることながら、
小さいころの私はあまり体が強くなく、本が一番の友達だったのだ。
自然と私は引きこもりがちになり、人付き合いも苦手になっていった。
 いじめっ子は、そういう格好の標的を見逃さない。
 その日、私は掃除用具入れに閉じ込められていた。よくあることだ。
ただ一つ違ったのは、閉じ込められた途端、トイレに行きたくなったということ。
私は半べそをかきながら、ロッカーの中で救いの手を待った。
助けを求めて叫べば、次の日にもっと酷くいじめられることを知っていたから。
 でもその日は運悪く、姉は聖典暗唱会に出席していた。
私たちが住んでいた地域では、一番若く(幼くと言ったほうがいい)して聖典の全編を暗記した姉は、あちこちの暗唱会にひっぱりだこだった。
 私が発見されたのは、半日以上たってからだった。ロッカーから異臭がすることに気がついた先生が、私を暗闇から連れ出したのだ。

「お願いです……お手洗いに……お手洗いに行かせて……」
 意識しないうちに、そう訴えていた。10余年をかけて、私はほんのわずか、前進していたらしい。
あのときの私は、黙って自分のし尿と便にまみれていくことしかできなかった。
 でも、助けを求めればどうなるかという論点については、何も変わらない。
「お手洗いぃ? 手ならいくらでも洗わせてあげまちゅよー」
「何がしたいのか、ちゃんと分かるようにいってくだちゃいねー」
 こんなものだ。そんなことは、わかっていた。でも、食らいつかなくては。
いじめられた経験こそが、やがて、私の交渉能力を形成していったのだから。
「お、おトイレに、行かせて、ください」
「だから、おトイレで何がしたいんでちゅかー」
「おトイレでエッチしたいんですね、わかりますよー」
 歯を食いしばる。あの惨めさをもう一度味わうくらいなら、何だってやってやる。
「……トイレで、う、うん、ち、を、出したい、です」
 周囲が爆笑に包まれた。消え入りたくなるような気持ちに、押しつぶされそうになる。
「いいでちゅよー、ほんとうに赤ちゃんでちゅねー」
「赤ちゃんには、赤ちゃん用のトイレがありまちゅからねー」
 私の顔の横に、青いポリバケツが置かれた。これは、つまり。
「はい、おトイレでちゅよー」
 つまり。
 いや、いい。もう四の五の言っていられない。
 私は芋虫がのたうつように机の上で立ち上がると、大急ぎでバケツの上に腰を下ろした。
倒してしまったら大変なことになると思いなおし、最後の最後で慎重に腰掛ける。
 そのとたん、腸が爆発するような痛みに襲われた。異音がして、どっと排泄物がバケツのなかに噴出する。
鼻を突く匂いが立ち込めたが、私はバケツの中に大量の老廃物を吐き出していくほかなかった。
「おー、上手でちゅねー!」「くっさー! マジでくせぇ!」
 悲鳴と笑いが飛び交うなか、排泄は続いた。カメラのレンズと目があったが、もう――もう、そんなことはどうでもよかった。
今更、何を恥と思えというのか。



79no solution 7/10res:2009/08/15(土) 03:45:11 ID:IiCHzztR
 バケツが運び出され、私は机の上でうずくまっていた。とりあえず、生きてる。今のところは。
これを生きていると言ってよければ。いや、でも今はそのことが最も大切なのだ。
私はナターシャの求めた綺麗な解に、心を寄せるわけにはいかない。まだ。今は。
 また、男の声が聞こえた。でも、もう何を言っているのかわからない。だがすぐに、またしてもアナルに何かが押し込まれ始めた。
ペニスでは、ない。なにか、ぐにゃっとした、ゴムチューブのような――
 そう考えていると、アナルの内側で急にゴムチューブが膨らみ始めた。私は「うーっ」と低いうなり声を上げながら、身をよじる。
徐々にゴムチューブは太くなっていき、違和感は痛みに変わった。痛い。本気で痛い。
 ふっと、ゴムチューブから空気が抜けていく。痛みで張り詰めていた身体が緩み、私はぜいぜいと息を吸った。
荒い息を吐く私に、今度はヴァギナへとバイブレーターが挿入される。背中がぴんとつっぱった。
ローター責めで敏感になっていた身体に、これはきつい。
 男がバイブを激しく前後させる。身体の奥を突かれると、それだけで達しそうになる。
 そしてまた、アナルの中でチューブが膨張し始めた。
バイブからの快感と、肛門が押し広げられていく痛みが入り混じって、頭が蕩けそうになる。
さらに、目の前にペニスがつきつけられた。
「しゃぶれよ」
 無理だ。下半身の穴二つから這い上がってくる激痛と快楽に、身体がまるで言うことを効かない。でも。
 男は私の口を無理やり開かせると、イラマチオが始まった。
ヴァギナに挿入されたバイブはさらに太いものに交換され、アナルのチューブは一回ごとに太さを増す。
苦痛と官能が、呼吸困難に陥った脳の中でゆったりとシェイクされ、渾然とした別の何かに変貌していく。
 口の中で男がはじけたとき、私は完全に気を失った。



「……ら、おら、おら、イケ、おら!」
 どこかに旅立っていた意識が、現実世界に戻ってくる。机の上で、私は前後から激しく犯されていた。
身体が重い。よく見ると、私はまだ制服のジャケットを着たままで、どうやらタイトスカートも腰のあたりにまとわりついているようだ。
むやみに息苦しいのは、ネクタイが無理に締まってきたからか。
胸の辺りで何か布がこすれる感触があるのは、おそらくは切断されたブラジャーが肩紐で引っかかっているのだろう。
 膣の中で、男が精液を吐き出した。ピストンの速度が緩み、その隙に私は呼吸を整えようとする。
だがそれを察したように、口の中の男根が私の喉を突いた。思わず吐きそうになる。
 次の男は、四つんばいになった私の下にもぐりこむと、腰を抱え込んでピストンを始めた。
長くて、太い。私の中に、完全には納まりきっていない。そのせいか、突き上げられる一撃ごとに、身体の奥が壊れるような衝撃が走る。
 私の身体は、ズタボロだった。陰唇はひきつけるような痛みを訴えているし、喉の奥にはべっとりと何かがこびりついていて呼吸を妨げている。
 でも、彼らはお構いなしに私を犯し続けた。

 そのとき、白衣を着た男が、拘束されていた手を取った。
 ぷつり、と注射器の感触。

80no solution 8/10res:2009/08/15(土) 03:46:53 ID:IiCHzztR
 何か、音がした。

 カキン、という硬質な音。

 首筋のあたりを、すうっと清涼感が駆け抜ける。清涼感? そんな単純なものではない。
もっと別の――氷河期の頃から溶けることなくたゆたっていた永久氷河を、冷たい太陽の光で溶かして作った熱いシャワーを浴びたような、
そんな、ゾクりとする爽快感。

 あらゆるものが、はっきりと見える。古ぼけた机の木目ひとつひとつ、そこに刻み込まれたたくさんの傷跡。
ピシっとすべてにエッジがたったように明瞭になり、あらゆるものが綺麗に整理されて輝いている。

 今なら。今なら何でもわかる。何でもできる。

 筆舌に尽くしがたい幸福感と、絶対的な自信が沸きあがった。正義と、真理と、確信がビシビシと立ち上がっていく。
すごい。すごくすごい。私は本当にすごいのがすごくすごくてすごい。

 私は自分から腰を振り、膣の中で蠢く貧弱なペニスをぎゅっと絞り上げた。身体の下で男がうめき声をあげる。
ハッ、情けない。膣の内側の、微細な襞のひとつひとつが、くっきりと分かる。
そのひとつひとつを、自分の思うがままに動かせる気がする。だってほら、こうやって、こいつのエラをなでてやると、ほら。
 男は情けない声をあげて、私の内側に精液を吐き出した。何この早漏。
 同時に、口の中の貧相なブツに舌を絡め、きゅっと吸い上げる。男の顔がだらしなくゆるんだ。
いや、緩んだのが見える。見えてないけど。分かる。今なら。舌と唇、歯を駆使して短小包茎な物体を責め立てると、こっちもすぐに噴射した。
だっらしない。
 次の男が、また下からの突き上げを始めた。ふん、ちょっとはやるんじゃない。撮影用の証明がキラキラして
る。私みたいだ。キラキラ。パキパキ。目の前にペニスが聳え立つ。キラキラ。私はフーッ、フーッと威嚇する
ように呼吸しながら、ぱっくりとそれを口に含む。アナルがぐいっと押し広げられ、ペニスが侵入してきた。す
ごい。これヤバイ。イケてる。いま私は全部だ。フーッ。すごいキラキラ。すごくしたい。フーッ。無茶苦茶な
ピストンが前後左右で暴れまわって、ビシバシっと景色が煌いている。くぱあって感じだ。もう、何もかもパッ
キンパッキン。アナルのなかのペニスがぎゅっとなった。ずずんと溶けていく。ペニス溶けちゃった。うわあ。
スゲー。次いくっしょ。次。フーッ。もっといくっしょ。フーッ。こんなのすごい。地球に生まれてよかった。
マジで。そう思わない、宇宙戦士? すごくすごい。キラキラ。フーッ。フーッ。



 このあたりから、記憶が断片的になる。悪夢と現実を足して2を掛けたような感じ。



「ニホンとえば、イケバナとケンドーです。そういうことで、ニホンの血を引いた彼女に実演してもらいますよ」
「ハーイ、やっちゃうわよおおおお」



 視界が逆さになって、私は自分が天井から吊るされていることを知る。ヴァギナとアナルに重たい痛みがある。
無理やり上を見ると、ヴァギナからは竹刀が、アナルからは花が生えている。
 何コレ。チョー受ける。
 ケンドー。きゃはははは。フーッ。フーッ。イケバナ。きゃははははははは。フーッ。フーッ。



「だめぇっ、花瓶、太すぎ、あ、ああ、だめえええっ」



「良い子のみなさーん。これが尿道カテーテルなのよおおおおイエーーーイ。ちんこまんこイェーーーーイ!
 みんなも大変な病気になったら、これのお世話になるんだからねえええ」



 そして、何もかもが真っ暗になって。
81no solution 9/10res:2009/08/15(土) 03:49:39 ID:IiCHzztR



 制服のジャケットを、私はまだ着ていて。わかる? ジャケットよ? 信じられる? 殺す気なんだ。
うんそんなことは分かってる。だって殺す気なんだから。
でもほらみてみてみてみてみて這ってくるんだってああああああだめやめてやめてやめてえええええええぇぇっ! 
やだ、やめないでえええっ! 殺して、殺して、殺してええええええええええええええっ!!



「だからね、イズミ、あんたは全然わかってないのよ。何も分かってない。
あたしたちは聖典を覚えたら、もうそれでいいの。それ以上は、女の幸せには不要なものよ」



そう。姉さん、本当にそうだった。姉さんが正しかった。お願い。だから殺さないで。死にたくない。
死にたくない。殺さないで。イヤ。やめて。ブンブンがガンガンしてる。やめて。お願い。殺さないで。



「イズミ、イズミ、あんたって子は、本当に……。男なんて馬鹿なことしか言わないんだから、うんうんって頷いておけばいいの。
そしたら連中はそれで満足するんだから。なんでそんな簡単なことがわかんないの? そこまで頭が悪いの?」



ごめん。頭悪くてごめん。でも、どうしようもないの。私は姉さんみたいにはなれない。ごめん。頭悪くてごめん。
やめて。お願い。死にたくない。ごめん。姉さんみたいじゃなくてごめん。ごめん。痛い。ブンブンする。ごめん。ごめん。痛い。



「あのさあ。泣いたってなにも解決しないでしょ? 泣くんだったら、最初から泣きなさいよ。
なんで問題をこじらせまくって、無茶苦茶にして、どうしようもなくしてから泣き出すの? 勘弁してよ、ほんとに。
泣きたいのはこっちだわ」



ごめん。本当にごめん。だから許して。許して。もうやめて。許して。助けて。お願い。もうイヤ。死んじゃう。
お願い。もうダメ。もうやめて。痛い。痛いからやめて。お願い。死んじゃう。許して。ごめん。許して。助けて。
助けて。助けて! 助けて、助けて、助けて!



82no solution 10/10res:2009/08/15(土) 03:52:30 ID:IiCHzztR
 ドロドロに溶解していた私の意識の片隅で、コ・コンという小さな金属音が鳴った。
次は何をされるのだろう。私の心臓はどうしてまだ頑張っているんだろう。そんなことを漠然と思う。

 けれど次の瞬間、男たちの絶叫が上がる。

「――グラナーデ!!」

 パシッっと鋭い音が鳴って、視界が真っ白になった。一瞬送れて、鼓膜を聾する大音響が鳴り響く。
私はほとんど条件反射のようにパニックを起こしていた。
人間は急な大音響や閃光から反射的に身を守ろうとする性質があって、これは訓練したところでほとんど克服できない。
もちろん、私は訓練すらされていない。
 騒音と悲鳴、銃声が交錯するが、私にはほとんど聞き取れない。鼓膜がジンジンと痛み、視界は不規則に瞬いている。
時間にすると数秒程度で銃声は収まったが、私はひどいパニックで過呼吸を起こしつつあった。
にも関わらず、私の内側に棲んでいる何かが、私をこちら側に引き戻す。

「クリア!」
「クリア!」

 訛りの強い英語が飛び交う。ゆっくりと、思考がつながり始めた。
情報軍が、愚かなミスを犯した隊員を救助に来てくれたのだろうか? 
それにしては英語が訛りすぎだ。ターニャだってもっと綺麗な英語を使う。
 気がつくと、私は誰かに抱え起こされていた。口元に水筒があてがわれている。私はむさぼるように水を飲み、激しく咳き込む。
「イズミ、ゆっくりだ。落ち着いて、ゆっくり飲め」
 この場に似つかわしくない、クイーンズ・イングリッシュ。混濁した私の脳の中に、一つの名前が浮かぶ。
「イリューシャ……?」
 詰問するつもりで言ったその言葉は、弱弱しい囁きにしかならなかった。
「そうだ。もう大丈夫だ。だが、すぐ動くぞ。治安維持軍にかぎつけられると、いろいろと面倒だ」
「たす……違う、どう、して、ここ……に?」
「今から君に会うと、ナターシャから電話があった。それで一人、張り付かせておいた。
歓楽街は、『俺たち』の庭だ。ちょっとばかり苦労したが、君がどこに連れ去られたのか掴むことができた」
「コマンダンテ、一名が負傷しましたが、軽傷です。作戦続行に支障なし」
「よし、撤収する。テルミットを仕掛けろ」
「アイ・アイ・サー」
 イリーヤは私に毛布をかぶせると、負傷兵を搬送するときの要領で肩の上に担ぎ上げた。
「また軽くなったな、イズミ。ちゃんと食ってるか? タバコとコーヒーだけじゃ生きていけんぞ」
「余計な……お世話……」
 外には幌つきのトラックと大型のジープが止まっていた。私は後部座席に横たえられる。
ようやく、全身に鈍い痛みを感じ始めた。頭が万力で締め上げられるように軋む。
イリーヤは助手席に乗り込むと、振り返って私に錠剤を差し出した。
「飲めるか? 安心しろ、ごく弱い睡眠薬だ。ブドウ糖とも言う。
だが、飲んでもらえないとなると、目隠ししなくてはいけない」
「飲む――し、目隠しも……すれば」
「そのほうが君の安全のためになる、か」
 彼は私が錠剤を口に含んだのを見ると、ポケットから大判のバンダナを取り出して私の目の周りに巻きつけた。
こんな体調で移動経路を覚えていられるとは思えないが、彼の部下や上司は気にするだろう。
エンジンがかかって、車が振動を始めると、私はあっというまに眠りの淵へと沈んでいった。

(第7章「マクシム導師」に続く)
83no solution 6/10:2009/08/15(土) 03:53:43 ID:IiCHzztR
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・まだしばらくかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
84no solution 6/10:2009/08/15(土) 04:10:28 ID:IiCHzztR
追記
・しゃぶ☆すたを、大いに参考にさせていただきました。参考ってかむしろパク(ry
85名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 13:02:53 ID:MAEU9KxR
少尉はそのうちヤク中になるんじゃないかと心配だ・・・。
86名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 13:07:09 ID:c6trhy/3
GJ…てかすごいな。女性視点の作品は読むのが苦手だったんだけど、一気に読んでしまった。
まあとにかくGJ!
87名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 22:38:10 ID:cUtB3gg5
クスリ怖い・・・

だがGJ
88名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 02:31:33 ID:T21fPLoV
怖かったがエロかった
GJ!!
89no solution 7/10res:2009/08/20(木) 01:02:03 ID:E3NYWLGf
投下します。計算では8レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・エロなしです。すみません。
・「解答編 その1」というべきパートになります。
・ひたすら理論ゲームを続けるので、面倒だという方は8レス飛ばしてください。
 最後に要約をつけておきます。

以下本編
90no solution 1/8res:2009/08/20(木) 01:02:53 ID:E3NYWLGf
■第7章 ―― マクシム導師
 目が覚めると、私はベッドで寝ていた。服も、こざっぱりとした夜着に変わっている。
そういえば、漠然と風呂に入れられたような覚えもある。
 そこまで思い出したところで、全身がきしみをあげ、
脊髄に金属製のタワシをねじこんだようなザリザリした不快感に襲われた。
無理矢理半身を起こしてみたが、視界がまるで安定せず、すぐにまた枕へと沈み込む。
 私が目を覚ましたのに気がついたのだろう、少女が水のはいった器を持ってきてくれた。
むさぼるように飲み干すと、彼女は空になった器を持ってとてとてと走り去り、すぐにまた器一杯に水を汲んでやってきた。
二杯目は、ゆっくりと味わって飲む。ただの水がこんなに美味いと思ったのは初めてだ。

 ま、でもタバコが欲しくなったわけですが。

 ともあれ今は少女に礼を言って、もういちど目を閉じた。
開け放たれた窓からは、爽やかな風が吹き抜けてくる。どこか、わりと高級な避暑地だ。
 うとうとしていると、イリーヤが枕元にやってきていた。心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「目を覚ましたと聞いたんでね」
「あなたに、感謝すればいいのかしら。それとも怒ったほうがいい?」
「帳消しになどできないのは分かってるつもりだ」
「イリューシャ、あなたはこの仕事に向いてない」
「君ほどじゃないさ」
「いいえ、まだ私のほうが向いてる」
「かもしれない。身体はともかく、頭のほうはいつもの君のようだね」
「脳も身体の一部だわ。いやってほど体感した」
「マクシム導師が、今日ならば君に会えると言っている。可能であれば、君と話がしたいと」
「好きにして。私は捕虜よ」
「客だ。じゃあ、夕方過ぎにまた来る」
「イリューシャ」
「何?」
「カレンと寝たの?」
「……いいや」
「嘘」
「1度だけ」
「カレンは、秘密にしなくていいって言ったんでしょ?」
「ああ。だが――」
「いいのよ。それはもう、いいの。
 でもあなたも、カレンがなぜ死を選んだのかは、知らない」
「すまない。だが、彼女は言ってたよ。『大丈夫、生きていけるよ』って」
 しばらく、沈黙が落ちた。
「何かあったら、さっきの子に声をかけてくれ」
「わかった」
 イリーヤは私に背を向けると、立ち去ろうとする。
「……イリューシャ」
 彼はゆっくりと振り返った。
「タバコ、持ってる?」
「だと思った」
 彼は苦笑しながら、国産のタバコを1箱と、使い捨てのライターを私の枕元に置く。
「イリーヤ、あなたのことは今でも好きよ」
「でも愛してはいない。君が愛するのは才能だけだ。また後で」



91no solution 2/8res:2009/08/20(木) 01:06:13 ID:E3NYWLGf
 しばらくそのままうつらうつらとしていたが、日が傾き始めた頃に少女がスープを持ってきてくれた。上品な味付けだ。
マクシム導師はこの国でも有数の金持ちであるにも関わらず、
私財を投じて反体制運動を先導しているというのが人気の秘密だが、
私財の本当にすべてを投げ打っているわけではないということだろう。
そのことを私は批判しようとは思わないが、気に入らない人間だって出てくるに違いない。
 スープを飲むと、自分でもびっくりするぐらい体調が回復するのを感じた。
まだまだ私の身体は生きたがっているということだろう。
私はイリーヤにもらったタバコの封を切り、食後の一服を楽しむ。
 彼の選ぶ銘柄は、学生時代からまったく変わっていない。変えられないのだ。
彼は国産のタバコ――ダヴィドフ家の縁戚が経営しているタバコ会社が作っている――以外を、手に取らない。
それがまさに、彼の本質を体現している。
 吸殻を窓から投げ捨て、私はもう一眠りすることに決める。マクシム導師に会うのは久しぶりだ。
武装闘争による社会変革を唱える彼もまた、昔と何も変わってはいるまい。世の中、そんなものだ。

 赤々とした太陽が山の端に沈もうとする頃、マクシム導師が姿を現した。護衛はAKをぶら下げたイリーヤ一人だけだ。
私は多くのことを確信するが、そこになんら新しい発見はない。少なくともこれらの件について、論証の時間は終わったのだ。
「お久しぶりです、導師。ベッドから降りられないことをご容赦ください」
「久しぶりだな、博士。気にせず、くつろぎなさい。学問の徒としては、我々は対等な立場にある」
「お言葉に甘えさせていただきます」
「さて、では君の推論を聞かせてもらおうか。これを楽しみに、長駆やってきたのでね」
「お人が悪い。互いに理解していることを言葉にするだけ、時間の無駄ではありませんか?」
「だが君にしても、救出作戦の経費と治療代、それに滞在費を私に負いっぱなしになるのは不愉快だろう?」
「まったくです。では順を追って。
 治安維持軍と、導師が指揮される反政府武装勢力は、既に手打ちを終えられています。
具体的な数字には誤差が含まれ得ますが、半年以内に停戦と民主選挙の準備段階、
1年後には導師が新大統領に就任し治安維持軍は全面撤退。
このようなタイムテーブルであろうと考えます」
「和平が成立しているのだとすれば、その日程は妥当なラインだ」
「和平自体が成立しているというのは、この場に導師がいらっしゃることと、護衛がイリーヤしかいないことから明らかです。
となると、問題はなぜ和平が成立したか、ですが。
 この和平合意は、導師と治安維持軍との間で成り立ったのではなく、
導師の運動の資金源――仮に資金源Xとします、と治安維持軍との間での取引です」
「ふむ。そこに至る論拠は提示できるかね? 私が知る範囲で言えば、諸君らはそこにたどり着けないはずなのだが」
「深淵を、僅かに覗き込んだだけのことです。深淵が私に教えてくれました」
「立場上、ニーチェは好かんな。私は宗教学者でもあるし、宗教者でもある」
「決定打となったのは、資金源Xが私に挨拶をしたということと、その内容です」
「内容とは?」
「『ご加減はいかがですかな、イズミ博士。いや、カタギリ少尉とお呼びしたほうがよろしいか』
『おっと、私の姿を見ないほうがいい。生きていたいならね』。いささか無用心な発言です」
「まったくだな――なるほど、まったくだ。
彼らしい、肥大化した自信と過剰な警戒心の狭間で生まれた、些細だが重大なミスだな。
君にそこまで大きな手がかりを与えてしまったとあっては、真実の果実を手にされるのもやむをえまい。
してみると、君は目隠しをされていたのだね?」
「はい。彼もまた、緊張していたのかもしれません。『天才』の噂は、根拠などなくとも、武器にはなるようです」
「はは、かもしれんな。おっと、イリーヤ君が少し混乱している。簡単に筋道をつけてあげられるかね? 
私としても、久しぶりに君の攻撃的な論理展開を楽しみたい」
「構いません。それはそうと、そんなに攻撃的なつもりはないのですが、ね」
「これは失礼、ならばアグレッシブとでも」
 私は苦笑して、先を続ける。

92名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 01:06:36 ID:duMg5uaH
しえん
93no solution 3/8res:2009/08/20(木) 01:07:01 ID:E3NYWLGf
「では、まずは資金源X――資金源であることを証明するまでは人物Xとします――から。
 人物Xがどのようなプロフィールであるのか、これは議論を開始するにあたって問題にはなりません。
問題になるのは、人物Xは、目隠しをされている相手に向かって『顔を見るな』と言っていることです。これは明らかな異常です。
 この異常を適切に説明する状況はふたつ、人物Xの錯誤か、あるいは人物Xの視覚が極度に弱い、これだけです。
 前者を成立させるには、人物Xの精神状態が極めて異常であることを想定せざるを得ず、
これは部下を従えて交渉の席に立ったという行動との間で矛盾を生じさせます。
よって、人物Xは視覚に一定以上の障害を有しています。

 もうひとつの問題は、『生きていたいなら』です。これは言い換えれば『見たら殺す』となります。
しかし、これはとても不自然な発言です。
なぜなら、彼は私にわざわざ話しをしに来た――交渉に来たのです。
私を脅迫して内通者に仕立て上げたいのであれば彼本人が自分から現場に出向く必要などなく、
100%確実に殺すつもりであっても同様です。
 でも、情報軍という一種の公的機関を相手に、非合法組織が交渉を成立させるのであれば、
その段階で私が人物Xの姿を見る・見ないなど、問題にはならなくなります。
組織と組織の交渉である以上、片方の組織だけ責任者が雲隠れしたままというわけにはいかないのですから。
もし交渉が進むのであれば、彼の姿という情報は隠匿状態を自動的に脱します。
 それでもなお人物Xは、見るなと脅した。なぜか。
 これから情報軍と何らかの交渉を行おうと思っていた人物Xにとって、
自分の手札がばれてしまうという状況は、なるべく避けねばならなかった。
私が上司に報告する交渉相手の姿は、『なんらかの組織犯罪集団の一人、おそらくは指導者』以上のものであっては困るのです。

 では、私が彼の姿を見ることで、情報軍が得るものはあるか? 普通ならば、ありません。
薬物汚染が疑われ、また身体的拷問を受けていた隊員の目撃証言は、
情報軍の方向性を決定する資料としては不十分です。
 けれど、もし人物Xの姿を、私がそれ以前に目撃していたとすれば? 
不確かな記憶をもとに曖昧なモンタージュを作るのではなく、
データベースを指差して『この人です』と証言できるなら? 
証言の重みは変わってきます。
 もちろん、それでもなお証言の能力としては低い。
でも、私が指し示してしまえる人物は、その低い信憑性をもってなお、
要調査に格上げされるだけの立場にいて、経歴を持ち、またそういう活動をしているのです。
だから、人物Xは私に姿を直視されることを拒んだ。

 ところがその一方で、人物Xは、私に声ならば聞かせても大丈夫だと判断しました。
つまり私は人物Xの声を聞いたことがないにも関わらず、顔は知っているということになります。
より正確に言うならば、人物Xは、私が彼の顔を見たことはあるが、声を聞いたことはないということに確信を持っている。
 どんな実態があれば、この条件が満たされるのか。

 ここで問題となるのは、情報軍が保持するテロリスト・データベースです。
『情報軍』と名乗る軍隊のデータベースが文字と画像だけで構成されていると考えるのは随分とナイーブな話で、
事実、ニュースを詳しく聞いていれば、情報軍が動画そのほかも蓄積していることが分かるはず。
 つまり、人物Xは情報軍データベースに自分が記録されていないという確信があります。
職員に賄賂でもつかませれば、改ざんは無理でも検索は可能ですからね。
セキュリティ・クリアランスの関係で表示されないデータがあるにしても、エントリがあるかないかは分かる。

 でも、これは矛盾です。
人物Xは、私に『人物Xとはこの人です』と『指し示してしまわれる』ことを恐れた、そう考えなくてはいけないのに、
彼は同時に情報軍がその『指し示すべきデータ』を持っていないことも確信している。

 これを説明するロジックはただひとつ。
人物Xの画像データは、私が個人的な経験として保持されている、それ以上のものではないのです。
そしてそのことを、人物Xは知っている。
 ああ、もちろん人物Xがそのように信じているだけ、ということもあり得ます。
でもこれはただの認識論の問題であり、少なくとも人物Xにとってはそう確信できる材料があったという点において同義です」
 私は一息ついて、唇を湿らせる。

94no solution 4/8res:2009/08/20(木) 01:12:51 ID:E3NYWLGf
「さて、ここでもう一度、人物Xが私と会おうとしたという事実が、違和感を生じさせます。
『顔を見られたことがあり、声も聞かれたことがある』可能性は、人間が社会生活を営んでいる限り無数に存在します。
けれど人物Xにとって、この無数の可能性はリスクにはなり得なかった。
彼は『常識的に考えて、自分の声まで聞かれている可能性は皆無だ』と考えたことになります。

 このような判断が発生する背景には、人物Xと私の社会的・物理的距離が著しく離れていたことが想定されます。
私が幼いころに近所に住んでいたのであれば、確かに私が顔しか知らない可能性はありますが、
やはり常識的に考えて声も聞いていると思ったほうがいい。大学で何らかの接触があったとしても同様です。
唯一、文章のみで親交のあった海外の研究者という可能性は残りますが、
見事な北部訛りのネイティブスピーカーであるという事実との間に矛盾が発生するので、この説は採用できません。

 にも関わらず、なぜ人物Xは、私が顔を知っていることを確信しているのか。
これはとりもなおさず、私が積極的に人物Xに関する情報を収集しようとし、
その結果として人物Xの顔を私が知るに至ったということです。
ごく自然に生活していたのでは、『常識的に』接点がないはずなのですから。
そして私が調査を行ったことを、人物Xは何らかの方法で知った。
 私がプロフィール調査を行ったことがあり、かつ画像情報しか確保できていないと信じられる相手。
この段階で、人物は2名に絞り込めます。アンナ・バリシニコワか、ユーリ・オルロフです。

 アンナの画像情報はデータベースに収録されましたが、ユーリの画像情報は私の個人的体験に留まります。
よって、人物Xはカイナール村の村長の弟、すなわちユーリ・オルロフであり、誤爆で死んだというのは虚報である。
これが最も自然な解となります。人物Xが視覚障害を負っているとする論証は、この説と矛盾しません」

 私は枕元の水差しを手に取り、一口水を含んだ。
マクシム導師は目を閉じて私の話に聞き入り、イリーヤは無表情なまま直立している。
「ここでいったんユーリ・オルロフのプロファイルから離れ、彼のもう一つの失言の分析を行います。
ああ、面倒なので以降も人物Xで進めますね。
 人物Xは、私のことを『イズミ博士』『カタギリ少尉』の、二つの名前で認識しています。
ですがこれは連合軍レベルでの機密事項であり、このことを知りうる立場と状況は、そう多くはありません」
 マクシム導師が頷いた。
「私も、君がカタギリ少尉などという名前で呼ばれているというのは、さっき初めて知ったよ。重大な機密漏洩だな」
「学術研究のためには軍機密など障害以上のものではありません。
 さて、そうなると可能性は3つに絞られます。
1)人物Xに対して、情報が漏洩している。
2)これは情報軍の内部闘争であり、人物Xはその駒の一つである。
3)人物Xは治安維持軍ないし情報軍と協力関係にある。

 1)は、マクシム導師ですらご存知ではなかったという事実もありますが、
この情報は端的にいってスキャンダルそのものですから、
もし漏洩していたのならばあっというまにマスコミの餌食されたか、
さもなくば金銭的交渉が発生していたでしょう。けれど、どちらもなかった。
 このスキャンダルを利用したロングタームでの計画があって、
そのカードが切られていなかっただけだという可能性を考えることはできますが、
そうであるならば情報は厳密に統制されなくてはなりません。
部下の前で軽々しく口走ってしまうというのは、明らかな矛盾です。

 2)の場合、そもそもこの調査は始まることすらなかったでしょう。

 では3)はどうか。3番目の可能性だけが、状況に対して矛盾を発生させません。
よって消去法により、人物Xは軍と癒着していることになります。
しかし情報軍と癒着しているのであれば、やはりもっと早期に調査は中断させられたでしょう――所詮は悲しい宮仕えです。

 かくして、人物Xは治安維持軍とのみ協力関係にあることがわかります。もちろん、情報軍にも最低限の内通者はいるでしょうが。
 このことは、人物Xが私の直視を拒んだこととも符合します。
彼には、掘り起こされては困る秘密があり、その秘密が明らかになった場合、
トラブルは彼が収拾できるレベルを遥かに超えた規模に拡大する。
95no solution 5/8res:2009/08/20(木) 01:13:45 ID:E3NYWLGf
これは彼にとって疑いようもない破滅を意味します。治安維持軍は彼との癒着を真っ向否定し、
その日のうちに対物ライフルを持った狙撃兵が、彼の頭蓋骨を2キロ先から身体ごと粉砕するでしょう」

「――理論展開に隙はないように思えるけれど、そこまで複雑なことを考えなくても、
人物Xが生きていて、かつ彼が治安維持軍の誤爆で死んだことになっているのだから、
その組み合わせだけで彼と治安維持軍の癒着を証明できないかな?」
 イリーヤがふと口を挟んだ。
「それは不十分です。治安維持軍は人物Xを暗殺しようとしていて、
人物Xは治安維持軍を出し抜いたという状況の組み合わせでも、その現象は成立し得ます。
この場合、人物Xと治安維持軍は敵対関係です」
「おっと、その通りだね。失礼」

「ふむ――いよいよクライマックスだな。人物Xがユーリ・オルロフであり、彼と治安維持軍が癒着していることは、納得した。
では彼が私に活動資金を提供しているとする根拠と、私が治安維持軍と和平を結ぶ理由は?」
「気化爆弾がその根拠となります。
 連合軍を動かし、誤爆スキャンダルを余儀なくさせた、その代償として人物Xが用意したものは何か? 
一歩間違えれば『平時における気化爆弾での大量殺戮』という、致命傷にも近いスキャンダルを生むこの暴挙を、
どのような条件で治安維持軍は飲んだのか。
 金? そんなものが治安維持軍に対して価値を持つはずがありません。
たとえそれが、目がくらむほどの大金であったとしても。
気化爆弾の使用を承認できる階級にいるのであれば、その生涯収入は、犯罪組織が用意できる現金など軽く圧倒します。
 利権? ほとんどの利権は、金と同程度にしか機能しません。
唯一の可能性は石油ですが、これはもう利権配分が確定してしまっている。
むしろそのための戦争でもあったのですから。
 つまり、人物Xは治安維持軍にとって『本当に価値のあるもの』、
かつ『金では解決できない何か』を提供したとしなくては、矛盾が発生します。
 それは何か? この国に、そんなものがあるのか?

 この国に治安維持軍がなぜ駐留しているのかという定義問題にまで立ち返って考えれば、答えはひとつしか残りません。
つまり、泥沼化したテロとアンチテロの闘争を、終結させること。
この国に、表面上で構わないので、平和をもたらすこと。
 これは、可及的速やかに確かな成果を上げてこの国から撤退したい治安維持軍にとって、
喉から手が出るくらい欲しいものであると同時に、このままでは永遠に手に入れられないものでもあります。

 人物Xは、治安維持軍に『和平への現実的なスケジュール』を提示できた。なぜそんなことが可能なのか? 
それは、彼がこの国における最大の武装抵抗勢力である導師の活動の、スポンサーだからです。
 従って導師は、この和平を完全に納得されているわけではありません」
「完全などというものが、政治の世界に存在しうるかね?」
「いいえ。しかし完全を求める者は常に存在します。導師にとって彼らは、最強の槍である反面、獅子身中の虫でもあります。
 だから導師は聖戦における最高の名誉として自爆テロを設定されたけれど、それだけでは足りなくなってきた。
反政府活動に組する人間の数が増えすぎて、反政府活動組織が彼らに提供できるポストが足りなくなってしまうのです。
 かくしてお約束の内部抗争が始まる。
これは、効果をあげようとしている反政府組織が宿命的に抱える現象ですから、
導師の組織だけはそうではないとするほうに無理があります。
 この状況があるがゆえに、導師と資金源Xと治安維持軍のあいだに、停戦へと至る妥結点が成立しました」
 私はちらりとイリーヤの顔を見る。彼は厳しい表情を浮かべていた。

「導師は、過激派の中でも特に過激な、戦闘中毒症状を呈している集団の牙を抜く必要がありました。
そうしなければ、勝利の日がすなわち敗北の日という、これまた多くの反政府組織が辿ってきた道を邁進してしまいます。
 資金源Xは、これら一連の交渉を成功させることにより、自らの政治的立場を大幅に強化できます。
そのうえで、故郷の親族による監視の目から逃れられるという特典もつく。
 治安維持軍としては、導師との間で和平が結べるのであれば、誤爆スキャンダルなど問題にもなりません
――もちろん、資金源Xから賄賂の申し出もあったでしょうが。
彼らは喜んで資金源Xと導師の利益を同時に満たす作戦の実行を決定します。
96no solution 6/8res:2009/08/20(木) 01:15:11 ID:E3NYWLGf
 かくして資金源Xは結婚式という名目で人を集め、
導師はその結婚式に配下の危険分子を送り込み、
そこを治安維持軍は気化爆弾で爆撃しました。
式場にいたXは替え玉だったか、あるいはタイミングよく結婚式場を離れていたか、そんなところだと推測します」

「……と、ここで終えられれば格好がつくんですが、若干ズルをしている部分がありますので、そこも自白しておきます。
 我々情報軍は、導師の組織の財務状態をほぼ完璧に把握しています。たぶん、導師よりも私のほうが詳しいのではないでしょうか。
 情報軍は、導師の運動を援助するありとあらゆる資金の流れを遮断すべく活動していて、それは確実に効果をあげています。
なにしろ、NGOが復興した学校でこっそりと生徒たちが集めた募金まで凍結したくらい、徹底した封鎖ですから。
現金か現物での手渡し以外、援助はまず届かないはずです。
 結果、かつて海外の有志たちから滝のように寄せられていた義捐金はぱったりと絶え、
その一方で組織の活動規模は拡大しているとあって、反政府組織は財政的には火の車どころか破綻寸前になっています。
 資金源Xの提供している資金援助の規模は、かつて海外から流れ込んでいたオイルマネーに比べれば、たかがしれていると思われます。
人間以外にも、麻薬に武器などあらゆるものを売りさばいているでしょうが、やはり限界がある。
でも、情報軍の経済封鎖が強烈に導師を締め上げている以上、資金源X程度の規模のマネーフローであっても尊重しないわけにはいかなくなった。

 でも、それが本当の要点ではありません。
 治安維持軍は、情報軍主導による経済封鎖によってこの国の反政府運動が干上がる、そんな事態を避けたいと思っている。
彼らには、この国に秩序と平和をもたらすために率先して血を流してきたという自負があります。
24時間コンピューターにかじりついて、人間の言葉とは思えない不思議言語で討議したかと思えば、
大飯を食ってオフィスで居眠りする、そんな連中がこの国に平和をもたらす原動力となったなどとは、絶対に認めたくない。
 そして導師は、確実に悪化していく経済状況のなかで、もう勝利は目の前にあるにも関わらず、
勝ちを確定させるための拡大戦略に打って出られないというジレンマを抱えていらっしゃった。
このまま持久戦になれば、組織の空中分解すらあり得る。これはなんとしても避けねばなりません。

 資金源Xは、強運だっただけでなく、自分の運を正しく理解する能力を持っています。
治安維持軍も、導師も、明らかな限界に追い込まれていて、
そこにおいて彼は、自分がキャスティングボード足りうることに賭けたのです。
 彼は賭けに勝ち、今のこの状況があります。
これはあくまで推測ですが、そうだからこそ彼は、彼が勝てる状況を作り出した情報軍に対し、
しっかりしたパイプを作り始めようとしているのだ。そう考えられます。
 以上です」

 私はふっと息を吐いて、目を閉じた。少し疲れを感じる。と、愉快そうなマクシム導師の声が聞こえた。
「……ふむ。なるほど、素晴らしい。君の知的瞬発力には、いつもながら驚かされる」
「いくつか、瑣末な未確定事項はあります。例えば、なぜ私が導師の配下に襲撃を受けることになったのか。
 可能性はいくつか考えましたが、カレンが起こした自爆テロに、
たまたま導師の配下のなかでも高位の人間が巻き込まれたのではないか、と推測しています。
根拠はありませんが、これが一番説明しやすいので」
「それはほんのちょっと違う、イズミ」
 イリーヤが口を挟んだ。
「カレンの自爆によって、我々の組織が受けた人的被害は存在しない。
だが僕は、あのテロで我々が治安維持軍に潜伏させたスパイが殺されたと、組織の一部に対して発表した」
「なるほど、これも粛清でしたか。だからあなたはいったい誰が罠にかかったのか、現場に確認しにきた」
「あのあと、僕は治安維持軍の密告回線に、問題の場所にイリーヤ・ダヴィドフが姿を現していると通報した。
案の定、突入が早まり、はねっかえりたちは死んだ。
 許してくれとは言わない。あいつらの矛先が一足飛びに君に向かうとは思っていなかったんだ。
売春宿のオーナーが標的になるはずだと」
「オーナーは男。ルームメイトは女。どちらが優先されるか、実際に銃を持つ人間の視線で考えなくては。
女のほうが抵抗される危険性が少なくて、かつ役得もある」
「人生は常に勉強だな、イリーヤ君。君は、視線が高すぎることがある」
「申し訳ございません」
97no solution 7/8res:2009/08/20(木) 01:15:53 ID:E3NYWLGf
「もうひとつ。これは大勢には一切関係ありませんが、
シルヴァン・デュラスがなぜカレン・バリニシコワの助命運動を行ったのかが不確定です。
動機という要素は、論証には不要ですので無視してきたのですが」
「デュラスは、ただの夢見る男だったよ。彼はカレン・バリシニコワに恋をした。それだけだ。
恋は破れ、彼はそのときになってようやく、この世界を生きるには実力が必要なのだと悟った。その程度の男だ」
「だからXは簡単に彼の基盤を奪い取れたのですね。
でもある意味でロマンチストだったデュラスに育てられた商品たちは、
純粋に金しか見ていないXに対して反抗的であり、Xは必要に応じデュラス時代の商品を処分している」
「そうだ。だからナタリア君は殺された。
とはいえ君の指摘するとおり、これらはメロドラマとしての価値はあるが、ロジックに与える影響は皆無だ」

「かくして、私に残された論題はひとつに戻りました」
「カレン君はなぜ、自爆テロを決行したのか」
「はい。導師がご自身のプロパガンダを崩す危険を犯すとは考えられません。
あれは彼女自身の決断であると仮定しなくては、矛盾ばかりが発生します」
「『なぜ』に意味はない。君がそう言ったのではないかね、博士」
「その通りです」
「そして君は裁判官ではないのだから、動機を斟酌する必然性もない」
「はい」
「君は天才だが、やはりまだ経験というインプットに欠ける部分がある。
実数xについて、自乗したときに負の実数を解として返すxは?」
「ありません。虚数は実数集合に含まれません」
「イズミ博士、この老人には、カレン君がなぜ自爆テロへの道を歩んだのか、理解できる。
君もじきに、理解できるようになる。もっとも私は、君がもう理解しているものと思っていたのだがね」
「ご期待に沿えず、申し訳ございません」
「君がカレン君の死を理解できるようになったら、私のところに来なさい。
その頃には、君は自由に私に面会できるだろう。だが、目印はあるといいな
――そうだ、黄色い花束を1束、それを合図にしよう」
「随分ロマンチックですね」
「そうかな? おっと、もう時間だ。楽しい時間は実に早く過ぎ去る」
「お世話いただき、本当にありがとうございました」
「明日の昼、ここに人を呼んである。話をしてみてくれないか」
「導師のお望みとあらば」
「では、またな。次は花束を持っている君を待つことにしよう」
「努力します」

 導師は部屋をあとにした。イリーヤが一人、残される。
「あなたは行かなくていいの?」
「導師は治安維持軍が警護している」
「ここは導師の私邸だから、あなたが警護したのね」
「そうだ。体裁の問題でしかないけれど、意外とこれが重要でね」
「体裁は大事よ」
「なあ、イズミ。なんで大学を辞めたんだ」
「武装闘争になんて意味ないわ」
「君なら、君の望む場所で研究を続けられただろうに」
「もったいない?」
「君の人生は、君のものだ。でも、そうだね、もったいないと思う」
「プルーストを読んだことは?」
「『失われた時を求めて』?」
「ええ」
「読んだ」
「本当に、突然だった。何の予兆も、脈絡もなかった。
 あの日、私は学会に出席するためにタクシーに乗っていた。発表の資料に抜かりはないし、予定も一通り頭に入ってる。
タクシーの中でやることと言ったら、仮眠するか、窓の外を眺めるだけ。だから私は外の景色を見ていた。
本当は仮眠を取りたかったけれど、最低限の慎みは維持すべきだと思ったし。
 どこにでもある田舎道だった。ナツメヤシの畑がずっと続いていたわ。
98no solution 8/8res:2009/08/20(木) 01:17:36 ID:E3NYWLGf
 でもそのとき、私は見てしまった。小さな村の間を抜けていく小道を。
あの小道はほんの一瞬で私の視界から消えて行き、私は『あの小道を抜けていく人生』から切り離された。
 それで――もう、どうでもよくなってしまった。私の心は、折れてしまったの。
学会には出席したし、発表はおおむね好評だった。もちろんいつもどおり主流派からは袋叩きだったけれど、それはどうでもいいこと。
 あのあと二度目の戦争が起こって、たくさんの人が死んだ。
私の説を支持してくれていた人も、面と向かって背教者呼ばわりした人も、みんな死んでしまった。
 もしかしたら。もしかしたら、あのときあの小道に踏み込んでいれば、世界はこうならなかったかもしれない。
そして私には、運転手にそれを要求する権利があった。でも私は、そうしなかった。
 あのとき、私は終わったの。それまで私は、自分の研究を、自分のために行っているという自負があった。
でもあのとき、はっきりした。私は私のために学問を修めているのではない。
 じゃあ、何のため? 私は何がしたくて、何をしなくてはならない?」
「学会で疲れたってだけじゃないのか? あれは、疲れるよ。すごく独特な疲れ方をする。
 そもそも、君ほど学者向きの人間はいないと思っていたけどね」
「私は学会が好きだったわ。それに、人は見かけによらないものよ。
 あなただって、同じ。あなたは、この仕事を続けるべきじゃないわ。あなたには向いていない」
「――引き返すには、僕の手は血で汚れすぎた」
「いいえ、あなたの手に血はついてない」
「僕は指示を出しただけじゃない。実際に人を殺したことも」
「そんなことは関係がない。
あなたはただ、デュラスに悲しい顔をさせたくないから、自分を研鑽した。
ダヴィドフの人たちに悲しい顔をさせたくなかったから、学問を究めた。
マクシム導師に悲しい顔をさせたくなかったから、テロと粛清に手を染めた。
カレンに悲しい顔をさせたくなかったから、爆薬を用意した。
私の悲しい顔が見たくなかったから、死地に飛び込んだ。
 なにもかも、あなたがやりたかったことじゃあ、ない。
あなたは優しいだけ。
うっかり勇敢に思えるくらい、優しいだけ。
だからたとえあなたの全身が血に塗れても、あなたの手は綺麗なままだわ」
「イズミ――」
「世間知らずの小娘を、身体を張って2度も助けてくれて、本当にありがとう。でもここから先は、自分の手を血に濡らす人間の戦場よ。
 私も、甘かった。今回のことで、本当に思い知った。だから、確信を持って言える。ここから先は、あなたの行くべき場所じゃあ、ない」
 長い、沈黙が落ちた。ピリピリとした空気が流れる。
 イリーヤのハンサムな髭面は、怒りのためか、若干紅潮している。

 でも、その静寂は、彼の躊躇いがちな言葉で破られた。

「――うん、僕には――僕には、確かに、その覚悟はない。
 ああ、そうだね――そうだ――
 ははは――僕は、何がしたいんだろう? 何がしたかったんだろう?
 僕は――何者なんだろう?」
「……ねえ、イリーヤ。森鴎外は読んだ?」
「日本文学は読んでない」
「読むといいわ」
「最後まで、君にはかなわなかったな」
「さよなら、優しい人。さよなら、私が初めて恋した人」
「さよなら、僕の愛しい天才博士」
 キスも、抱擁も、握手もなかった。イリーヤは去り、二度と彼が振り返ることはなかった。
私はタバコを取り出し、夜に向かってゆっくりと煙を吐き出す。

 私は、自分の旅が終わりかけていることを意識した。
 長いようで短く、短いようで長い旅だった。
 そして今なお、カレンの死の真相に、私は一歩も近づけていない。

 結局、私たちは――私は、何がしたかったのだろう。

 私は、何がしたいのだろう。

 私は、何者なのだろう。  (第8章「報復」に続く)
99no solution 7/10res:2009/08/20(木) 01:18:47 ID:E3NYWLGf
以上です。


要約
・犯人は「カイナール村の村長の弟」。


ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・まだしばらくかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
100名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 01:35:23 ID:duMg5uaH
毎回楽しませてもらってます、次も期待
101名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 05:01:32 ID:kt2zCLyI
乙!
もうまとめに入ってるのか
ちょっと寂しいが物語のまとめ部分は好きだから頑張って欲しい
102名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 22:25:02 ID:ApOU2D7E
博士スゲー、順を追って説明されるとよくわかるわ
103名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 01:06:54 ID:SoMVST2c
面白かった
GJ!
104no solution 8/10res:2009/08/28(金) 02:22:56 ID:bEKRxE6o
投下します。計算では7レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。

この章の傾向
・純愛もの? みたいな?

以下本編
105no solution 1/7res:2009/08/28(金) 02:25:15 ID:bEKRxE6o
■第8章 ―― 報復
 翌朝には、身体はほぼ復調していた。デリケートな部分に若干のひきつれは感じるが、歩けないほどではない。
マクシム導師のグループに暴行されたときのほうが、身体的な損傷は大きかった。
嬲られていた時間の差という点もあるが、一晩限りの使い捨てにするつもりではなかったというのが大きいのだろう。
 私はベッドから起き上がり、邸宅の中を散歩してみる。外の風景から、だいたいの場所のあたりはついてきた。
マクシム導師のセーフハウスの位置を知ったことなど、もはや何の価値も持たないが。
 昼ごろに人が来るとマクシム導師が言っていたのを思い出したので、
身の回りをみてくれている少女に、庭先に見える離れに行っていると告げておいた。
離れには本棚があるのが見えたからだ。マクシム導師の蔵書の一部を拝める機会をみすみす逃すほど、私は人生を達観できていない。
 案の定、本棚には稀覯本が並んでいた。私はカナダの大学で教鞭をとっているインド人ムスリム学者の書いた論文を見つけ、懐かしさのあまり手に取る。
「信仰と科学的合理性は共存しうるのですか」と聞いた私に対し、マクシム導師が貸してくれた本だ。
たしか私は、9歳になったばかりだった。あの頃、21世紀の世界がこんな風になってしまうだなんて、誰もが想像できずにいた。

 読書に夢中になっていると、離れの扉をノックする音が聞こえた。来客だろう。
私は本を書架に戻し、扉を開けて――息を呑んだ。扉の向こうには、赤いワンピースドレスにスレンダーな身体を包んだ女性が立っている。
 音信不通だった、私の姉だ。
 私たちは、しばらくのあいだ、無言で見つめあっていた。姉は、ここにいるのが私であることを知っているのだろう。
質問は、何もなかった。私は数歩退いて、姉を中に迎え入れる。彼女はつかつかと部屋の中に入ってきた。
「姉さん……」
「あんたと話すことなんて何もないわ、淫売。マクシム導師のお言葉でなければ、ここに来ることなんてあり得なかった。
よくも一族の顔に泥を塗ってくれたわね。どうやって責任をとるつもりなの? 責任がとれるとでも思っているの?」
「姉さん……」
「喋らないで。私に声を聞かせないで。汚らわしい。ああ、本当に汚らわしい。
同じ部屋の空気を吸っていると思うだけで吐き気がする。なぜこんな不浄の輩を、マクシム導師はご自宅にお上げになったのかしら」
 私はすっかりうろたえてしまう。覚悟はできていたはずなのに、止めようもなく涙がこぼれ始めた。
「あら、相変わらず泣くのだけは一人前ね。いいこと、あんたのおかげで何人が泣いたと思っているの? 
二人の息子は、どうして母親と別れなくてはならなかったのか、今でも分かっていないわ。
旦那は私を引きとめようとしたし、あちらの親族もみんなそうだった。でも、あたしにはできない。
叔母が淫売だなんて不名誉を、あの子たちに着せるわけにはいかない」
 彼女の怒りの熾烈さと正しさが、私の胸に突き刺さった。
私の学んだ学問は、彼女の主張は非合理な因習に過ぎないと叫んでいる。
でも、それはあまりに一面的な真実だ。
「ああ、そうね、これもマクシム導師のおはからいだったんだわ。
息子たちの未来のために、あたしはなんとしても彼らに最高の名誉を贈らなくてはならない。
だから無理を言ってマクシム導師にお願いをしたのよ」
 背筋に冷たい汗が滴った。
「姉さん……姉さん、姉さん」
「喋らないでって言ってるでしょう、淫売! さあ、外に出なさい。一緒に来るのよ。
ここでスイッチを押すわけにはいかない。それに、あんただけを殺すのでは意味がない。
私は聖戦を遂行しなくてはいけないんだから。
 何をグズグズしてるのよ、早く来なさい。祖国を裏切って無辜の民を抑圧している、侵略者の手先どもに神の裁きを下すのよ。
名誉に思いなさい、あんたには、けして償いきれない罪を償う機会が与えられたのだから」
 私は痺れたような脳を叱咤して、言葉を紡ぐ。
「姉さん――どこにも行かなくていい。ここがダメだというなら、もうちょっとここから離れた場所でいい。
死にましょう。私は情報軍に身を売ったの。カタギリ少尉って名前まで持ってる。私を殺せば、姉さんの聖戦は完遂されるわ。
姉さんは、他の誰でもなく、私を殺さなくちゃいけない」
 姉は私の告白を聞いて絶句した。怒りの感情が、まるでオーラのように彼女の周囲で煌いている。
106no solution 2/7res:2009/08/28(金) 02:26:28 ID:bEKRxE6o
「――この……この、恥知らず。売国奴。下種」
 私には、姉を探すだけの余裕はいつでもあった。こと情報軍に入ってからは、姉の消息を辿るだけの権力すら持っていた。
けれど私はそれが破滅に繋がっていることを知っていて、だから、先延ばしにした。
 そしてついに、私の罪は、私に追いついた。
 マクシム導師は公平だ。彼は私にチャンスを与えたのと同様、姉にもチャンスを与えたのだ。

 だから。

 だから、もう、いい。そもそも、カレンの死を追う権利など、私にはなかった。
姉と、姉の家族の人生を踏みにじった私に、そんな権利があろうはずがない。
昨夜の予感は正しかった。でも、これは悪くない終幕だ。少なくとも、死体の数は二つで済む。
幕引きが姉の手によろうとは、思いもしなかったが。
 姉がさっと右手を前に出し、スイッチをかざした。スイッチからはケーブルが身体へと延びている。
私たちは、わずかな破片と灰を残して、跡形もなく消し飛ぶだろう。私は涙を流しながら、姉の顔を見た。
最後の景色を、脳裏に刻み込むために。

 けれど、視界の中の姉は、泣いていた。初めて見る、姉の涙。
 なぜ? 何が悲しいの、姉さん?
 ――まさか、姉さん、あなたは……



 その途端、窓ガラスが割れる音がして、姉の顔の中央部分が物理的に消滅する。



 スイッチにかけられた右の指は痙攣すらせず、姉の身体はゆっくりと床に倒れた。
無残な傷跡からは、大量の出血が始まる。私は悲鳴をあげることもできず、呆然と立ち尽くす。
 何が起こったのは明白だ。でも、私の脳は理解を拒んでいた。あらゆる思考が停止する。
 入り口から一人の男が駆け込んできた。よく鍛えられた胸板が、不安定に立っている私の身体をがっしりと抱き寄せる。
それがハント大尉だと気づくのに、しばらく時間が必要だった。
「この、大馬鹿野郎。帰ったら譴責ものだぞ」
 ゆっくり、頭が働き始める。
「大尉――なぜ、ここが――」
「部下に感謝しろ。ニールが歓楽街でお前の姿を見かけて、
それでヤバイことをしてるんじゃないかと勘ぐって、デート中の二人を呼び出した。
ニールが同伴してた女の子はカンカンだとよ。もちろん、休暇中の二人もだ。
 途中でイリーヤの野郎を見つけたから、これは何かあると踏んで尾行を続けた。
その後は紆余曲折の山あり谷ありで、マクシムの痕跡を確認したときは絶対に罠だと思ったさ。
だが、マクシムが俺たちを少尉のところに案内しているようにも感じられた。理由はわからんが。ま、結果論としてはビンゴだ」
「なぜ――」
「喋るな。まったく、この学者先生は、とんでもないことをしやがる」
 大尉は私をもう一度強く抱きしめた。
「なぜ、撃ったんです」
「……は?」
 いぶかしげな目で大尉が私を見る。
「なぜって、お前、テロリストに脅迫されてたから」
 私は戸惑う大尉の抱擁を無理矢理解いて、数歩後ろに下がる。
「彼女は、私の姉です。私が不名誉を働いたせいで、幸福な家庭から身をひかなくちゃいけなかった、被害者なんです。
彼女は何も悪くない。何も悪くないのに! なぜ、なぜ撃ったんです!」
「カタギリ少尉――」
「わたしはカタギリなんかじゃない! 少尉じゃない! わたしは、ミーリャ・イズミ、イズミ家の恥さらしで、売国奴よ!」
 私は咄嗟に、テーブルの上においてあった果物籠から果物ナイフを拾い上げ、ハント大尉に切っ先を突きつける。
こんなもので彼をどうにかできるとは思えない。でも、どうにかすることが、すべてじゃないはずだ。
 ハント大尉の目がすっと細くなった。
「カタギリ少尉」
「やめてって言ってるでしょう!?」
107no solution 3/7res:2009/08/28(金) 02:27:01 ID:bEKRxE6o
「いいや、やめないね。なぜならあんたはカタギリ少尉だからだ。そしてこいつは自爆テロリストだ。それがあんたの言う、幾何学的真実だ。
 あんたがミーリャ・イズミだというなら、あんたは自身の学問的信条に従うべきだ。
なぜなら、ミーリャ・イズミの業績は、もはや人類の業績として蓄積されてしまったのだから。
 あんたがカタギリ少尉だというなら、あんたは自分が辿ってきたロジックに従うべきだ。
なぜなら、俺たちはあんたのロジックを信じてここまで来たからだ。今更それは全部間違いでしたなどと言われても困る。
 売国奴というなら、そうかもしれん。だが、あんたは学問すらも裏切るのか、イズミ博士。
この半年、あんたを食わせたのは情報軍だ。あんたは恥の上塗りをするのか、カタギリ少尉。
あんたが本当に裏切っちゃいけないのは、あんた自身の誇りなんじゃないのか」
「でも。でも……」
「気がつかなかったとはいえ、あんたのお姉さんを殺してしまったことは、申し訳なく思う。
だが、あの場はあれしかなかった。違うか? 彼女は右手を撃たれれば左手で、左手を撃たれれば口で起爆しただろう」
「あのまま――あのまま、死んでよかったんです。もう、それで、よかったのに」
「ダメだね。なあ、そろそろ自分が言ってることが論理的じゃないことくらい、分かってきたんだろ?」
「でも」
「まったく。そこまで抵抗するなら、俺があんたが間違ってることを一発で論証してやる」
「論証って」
「黙って聞け。俺は、あんたに死んでほしくなかった。あんたが死ぬところを黙って見守るなんて、絶対に御免だ。そらみろ、完璧な論理だ」
 思わず、笑ってしまう。私は左手で目じりから涙を拭きながら、クスクス笑いを止められずにいた。
「そんなの、必要な客観性がまったく介在していません」
「でも、やっと君が笑った」
 大尉が一歩私に近寄り、私の手からナイフを取り上げる。私は笑いながら、涙を流し続けた。
ああ、そうか。私は自分が捨ててきたはずの「イズミ」に、自分を引き戻しすぎた。
それで心理的な時間感覚が狂って、正常な判断を失っていた。洗脳術としては初歩的な手段だ。

 姉のことは、悔しいし、悲しい。でも、姉にとってこの最期は予測の範疇だったに違いない。
涙が、その証拠だ。彼女は私を突き放したのだ。私が一人で生きていけるように。
なおかつ、自分の子供たちが名誉と尊厳を持って生きていけるように。
 姉の透徹した頭脳は、この相容れぬ2条件を同時に満たすための最適解として「聖戦」を導き、それを完璧に演じきってみせた。
彼女が全体としてどのようなシナリオを描いていたのか、今となっては知るすべもないが、その企図は過たず成就しつつある
――マクシム導師は姉を殉教者として称えるだろうし、私はこうやってなんとか生きている。

 かなわない。
 あの人には、どうやったって、かなわない。

 大尉の力強い腕が、もう一度私をしっかりと抱き寄せた。私は彼の胸に顔を埋める。
いまさらだが、彼に涙を見られたくなかった。実にいまさらだが。
 が、そのとき大尉の無線機が鳴った。
「こちらハント。どうした」
「こちらターニャ。もう、仲直りは終わった?」
「そう思うなら邪魔するなよ」
「た・い・い・に・そ・れ・を・い・わ・れ・る・と・は」
「ターニャ、遊ぶな。ハント大尉、ちょっと見てほしいものが」
「アイク、どこだ」
「この別荘の、二階の書斎です。猫一匹いやしないと思ったら、置き手紙が」
「今行く」


108no solution 4/7res:2009/08/28(金) 02:28:07 ID:bEKRxE6o
 アイク軍曹の言うとおり、邸宅からは人っ子一人いなくなっていた。おそらくは、姉がこの場で自爆する可能性を考慮していたのだろう。
私の身の回りをみてくれていた少女も、姿を消していた。
 書斎の手紙は私宛てで、この別荘を私に譲るとだけ書いてあった。ご丁寧に権利書まで添付されている。
「罠だと思うか?」ハント大尉は露骨に懐疑的だ。
「いえ、マクシム導師のテストは、姉の一件だけだと思います。導師は予告なくテストをすることはありませんでした。
私が昨晩告げられたのは、昼に来客があるというだけです」
「テストときたか。ひどい話だ」
「ねえ、この別荘はもうあんたのものなんだ。お姉さんを、せめて仮にでも埋葬してあげない?」
「いえ、とりあえずは冷蔵庫に。嫁いだ先の家に送り届けたいです。それからマクシム導師に殉教者としての認定を。エンバーマーも呼びたいですし」
「わかった。アイク、爆弾を外しておいてくれ。それから冷蔵庫に運ぼう。難しい仕掛けはないと思うが、気をつけろよ」
「アイ・サー」

 アイク軍曹がC4でてんこもりになったジャケットの安全を確保する間、私は昨晩までの体験を報告した。
大尉は眉をひそめて不快感をあらわにし、ターニャは「やっぱりまた内ゲバかあ」とため息をつく。
 姉の遺体を大型冷蔵庫に押し込み終わったころには、全員が疲労困憊していた。
彼らはほとんど不眠不休で私の痕跡を追ってきたらしく、私は私で肉体的にも精神的にもぐったりとしていた。
まだまだ外は明るかったが、一度休憩をとるべきだという意見には、まったく異論が出なかった。
 ターニャとアイク軍曹は、二人づれで客用寝室へと去っていった。途中で邪魔されたオフの続きをしようという腹だろう。
状況が危険なのは言うまでもないが、街に出ればいつだって今くらいには危険だ。
 私は応接間に残って、姉を収納するために引っ張り出したハムだの魚のオイル漬けだのをつついていた。
皆からちゃんと食べろと言われたので、やむを得ずというところだ。
 パプリカの入ったハムを細かく分解しながらタバコを吸っていると、大尉がやってきた。
「食べ物で遊ぶなと教わらなかったか」
 私は黙って皿を大尉に押し付ける。大尉はむっとした表情でハムの残骸をつまんだ。
机の上に残っていたカップに赤ワインを注ぎ、一口啜る。私は椅子から立ち上がって、自分のカップを片手に大尉の隣に腰を下ろしなおした。
「食べるのが、苦手なんですよ。小さい頃はアレルギーもひどくて、それで随分といじめられもしました。口下手で、社交性も皆無でしたしね」
「にわかに信じがたいな。お嬢さん学校に通ってたんじゃなかったのか」
「両親の、というか祖父の方針で、小学校は公立に。ODAで再建された学校で、WFPも一枚噛んでたので給食だったんです。
メニューがアレルギー食材のど真ん中なものばかりで。思い出してもぞっとします。何回吐いたことか。
おそらくは、大尉と真逆の学生生活でした」
「逆って」
「大尉はどうせ、あれでしょ、ジュニアハイ、ハイスクールとフットボールのスター選手で、
レスリング部をかけもち、チアリーダーの彼女がいて、プロムでは主役」
「ひっでえプロファイリングだな。全部ハズレだ。
フットボールはフットボールでも接頭辞がつかないほうで、マイナースポーツの悲哀をたっぷり味わう毎日。
かけもちしたのはジークンドーの道場。初めての彼女はイタリア系移民で、学費が払えなくなったのが縁の切れ目。
お相手をなくした俺は、プロムの夜にはカモ猟の手伝いで泥沼を駆け回ってた」
「あら」
「軍に入って、SEALSに入隊。BUD/sのことを思い出すとぞっとするよ。
2年くらい、世界中の地の果てみたいな場所で任務についたが、遭遇戦で所属小隊が壊滅してな。
俺は負傷した相棒を抱えて帰還したってんで勲章をもらったが――それ以上は続けられなかった。
 除隊して半年くらいフラフラしてたところを情報軍からスカウトされて、
口車に乗っちまったのが運の尽き、気がついたらまたしても地の果てだ。ふむ、うまいぞ、これ。食えよ」
「地の果てで食べるハムの味はいかがですか、大尉」
「おっと、これは失礼。大変おいしゅうございますよ、少尉」
109no solution 5/7res:2009/08/28(金) 02:28:40 ID:bEKRxE6o
 ハムは大尉の強靭な胃袋にすべて収まった。ワインを手酌しながら、タバコをふかす。
タバコが丸々1本灰になるころ、ようやく決心がついたので、本題を切り出すことにする。
「大尉」
「なんだ」
「すごく、仮定だらけの推論があるんですが」
「ブレストなら飲む前がよかったな。まあ、聞くよ」
「仮定A。いまここで私が抱いてくださいと提案したら、どのような反応が想定されるんでしょうか」
「――カップのワインを一気に呷って、目をまじまじと見てから長いキスをし、それからソファに押し倒す。
それで、朝になって華々しく後悔する」
「朝になって後悔させないために、何が最も適切な予防策になりますか?」
「避妊具を用意する。だがアイクに借りに行くのは非常に望ましくなく、また彼らの活動を鑑みれば家捜しするのも適切性を欠く。
そして今、俺は手元にコンドームを持っていない」
「仮定B。私がここに来るまでに暴行を受けており、
また生理の周期から見て妊娠している可能性が否定できないけれど、堕胎は宗教上の理由で拒みたい。
一種の救済策として、自分が好意を抱いている相手の子供を生む可能性を獲得したいと考えているとしたら?」
「馬鹿なことを考えるなと説得するか、大量の酒を飲ませて寝かせる」
「仮定C。私はターニャとハント大尉がつきあっていたと知って激しく動揺するくらい、知らず知らず大尉に強く惹かれていた自分に不信感を抱いている。
そしてかつてのモットーとして、男に惚れるべきではないと信じているとしたら?」
「パンセを引用し、幾何学の精神も結構だが繊細の精神をもっと信用してもいいのではないかと提案する」
「仮定D。私は、姉が死んだばかりなのに、姉を殺した相手と寝たいと思っていることに怯えるものの、
それによって自分は一層破廉恥な淫売と定義され、姉の殉教の価値が上がるのではないかとも考えている。
しかし一方で、そういった打算まみれの性交渉が上手くいくはずがないとも推測している」
「生と死の距離が近い世界で生きているのだから、もっとシンプルに議論を組み立てろと忠告する」
「抱いてください、ハント」
 大尉は彼のカップに注がれた赤ワインを一気に飲み干すと、私の目をじっと見た。
「朝になって、後悔しませんか?」
「それは朝になってから考える。朝になったら条件の定義要件が変化しているかもしれないから、この段階で悩んでも効率が悪い」
「正論です」
 彼の唇が、私の唇を捉えた。



 長い、長いキスをした。ほのかにワインの味がする、柔らかなキス。

 それから、彼はするすると私の服を脱がせていった。もとより緩い夜着を着ていただけだから、脱がされるといってもそんなに手間はかからない。
あっというまに一糸まとわぬ姿になったところでもう一度キスをされた。彼をたっぷりと味わいながら、野戦服のボタンに手をかける。
 いささか時間はかかったが、彼の上着をはだけさせることに成功した。
彼は私を強く抱きしめると、いったん手を放してジャケットとシャツを脱ぎ去る。
それから、もう一度ぎゅっと抱き寄せられた。皮膚と皮膚が直接触れあう暖かさに、陶然となる。
 そうするうちに、ソファに押し倒された。幸いというかなんというか、ソファは革張りだ。
布張りのような、恥ずかしい形跡を残してしまうことはないだろう。

 彼がズボンを脱いだのがわかる。さあ、いよいよだ。

 でも、私はいまさら、自分の身体に自信が持てなくなっていた。
 今日はまだシャワーを浴びていない。
 無駄毛の手入れもできていない。
 そもそも、彼のようなマッチョタイプは、立派なバストと安産型の腰つきをした女のほうが好みなんじゃないだろうか。
 太ってはいない……と、思うが、最近はちょっと運動不足だったのは否めない。妙なところにたるみがでているかも。
 そういえば美容室にも行けていない。髪の手入れもかなりいい加減だ。

 無数に不安が沸きあがる。が、いまさらどうしようもない。
 私は目を閉じ、彼の抱擁を待ち受けることにする。

 けれど、いつまでたっても彼は何もしてこない。
 ちょっとだけ不審に思ったが、すぐに、彼が私の身体を目で見て楽しんでいるのだということに思い至った。
ううっ。こっちは全力で気にしているというのに。
 女らしい肉体という点で自分がかなり落第点気味なのは、存分に自覚がある。
でも、その、ほんのちょっとでもいいから――ほんのちょっとでもいいから、私の身体を気に入ってくれたら。
110no solution 6/7res:2009/08/28(金) 02:29:43 ID:bEKRxE6o

「綺麗だよ、カタギリ少尉」

 囁くように放たれた彼の言葉が、耳に届いた。
 心臓が、どくん、どくんと、強く打ちはじめる。

「綺麗だ。本当に、綺麗だ」

 あー、やばい。これはやばい。
 これは効く。こんな根拠も何もない言葉なのに、これはクる。
 顔が真っ赤になっているのが、自分でもよくわかる。

「恥ずかしがらなくたっていいだろ。本当のことなんだから。
 君は、とても綺麗だ。正直、こんなに綺麗だと思ってなかった」

 たぶん私は、耳まで真っ赤になっているだろう。
 それが恥ずかしくて、思わずソファに顔をうずめる。
 ああ、もう、なにこの女学生みたいな。

 でも、全身をくまなく見られていて、そうやって見ている彼が私の身体を評価してくれているのだと思うと、それだけで身体の芯があたたまってくる。
 彼の視線を感じる。視線がうなじから背中をたどり、薄いヒップから足へと降りていく。
たまらない。ううう、仮にもプロ経験のある人間が、見られているだけで感じつつあるだなんて。でも。でもでも。
 よく分からない葛藤に悶えるうち、思わず口から小さな呻きが漏れた。
いやその、これは心的葛藤が口から出たものであって。
けして、視姦されているうちに感じちゃっただなんて、そんなヘンタイチックな。

 抗ってみたが、どうやら身体は正直なようだ。呼吸が荒くなってきた。心臓はもうさっきからずっとバクバクしている。
「……あぁ」
 もう、堪えようがない。両足の間がたっぷりと潤いを帯びてきた。
全身に散らばった敏感な部分がうずき始めている。まだ何もされていないのに、ねっとりと愛撫されている気分。自制がまるで効かない。

 そして。

 彼が、入ってきた。
 圧倒的に、入ってきた。

 軽く、息をつめる。右手がかすかに痙攣している。快楽の波はものすごくて、声を出すことすらできない。
十分に時間をかけながら彼自身が私の内側に入ってきて、やがて身体の深奥にこつりと当たった。
身体が勝手にのけぞり、喉からは堰を切ったように悦楽の声が漏れる。目の前が真っ白になり、何度も大きな声をあげた。

 ――おそらく、軽く気を失っていたのだろう。気がつくと、まだ彼は私の内側にいた。
弾けるような強い快感こそ緩んでいたが、満足感と安心感は計り知れない。
そしてその暖かさが、新しい快楽を掘り起こしていく。
 でも、ちょっと気になった。彼はまったく動いていない。
「――もしか、して、きつかったり、します?」
 彼は苦笑して首を振った。
「まさか。サカリのついたティーンネイジャーじゃないんだ。ガツガツやるのは、俺の趣味じゃないんでね」
「そう、なん、ですか? そんな、ので、気持ち、いい、です?
 そ、その、わ、わた、しは、ま、また、イっちゃい、そうです、け、ど」
「趣味はいろいろってこと」
 いいながら、彼はゆっくりと腰を動かし始めた。必要以上に敏感になった襞が抉られていき、全身からどっと汗が吹き出す。
軽く達してしまったようで、またしても大きな声が出る。
「激しく突くだけがセックスってわけじゃない。
 どちらかといえば、君はこうやってゆっくり揺らされていたほうが感じるみたいだね」
「あ、あぅ、ず、ずいぶ、ん、ああぁ、っく、よくっ、ご、ご存知、で……」
「ふむ、まだまだ元気だな」
111no solution 7/7res:2009/08/28(金) 02:32:23 ID:bEKRxE6o
 そうやって、彼は私を「揺らし」続けた。意識が朦朧とするような快感が、延髄から脊髄、そして全身の神経を支配していく。
じきに、声すらでなくなった。私は荒い息をつきながら、まったく未知の世界に飛び込もうとしている。
 彼は私の身体を起こしてソファに座りなおさせると、私の両足を肩にかけ、なおもゆっくりと貫いていった。
さっきよりもいっそう身体の深い部分を抉られるのと、不自然な姿勢による息苦しさがあいまって、目の前でちかちかと星が瞬き始める。
お尻の下は、濡れているどころか、水溜りができかねない勢いで愛液が滴っていて、ちょっと気持ちが悪いくらいだ。
「――た、たい、い、ああ、あっ、あぁ……」
「どうした」
「あ、あ、あ、ああ、ダメ、あぅ」
「またイキそう?」
 私はガクガクと頷く。もうこれで何度目の絶頂なのか、とても数えていられない。彼はまだ一度も達していないというのに。
 こころもち、彼の動きが早くなった。下腹部がビクンと痙攣し、猛然とした落下感のようなものが襲いかかってくる。
「ああっ、い、いぃ、イク、イきます、あああ、だめぇっ!」

 また、少し意識が途切れていた。今度は彼がソファに座り、私は彼の上で正座するような格好になっている。
私がこちら側に戻ってきたのに気がついたのか、ぎゅっと抱きしめられた。私も彼の身体を抱きしめる。
 彼の舌が、私の鎖骨を這う。上体が震えた。
下腹部からの刺激はとどまるところを知らず、そこをさらに上からも責めたてられ、私の理性はもみくちゃになっていた。
濁流の中でなんとか自分を保とうと、必死になって彼の身体にしがみつく。
「君を最初に見たときに思ったのは、鎖骨の綺麗な人だな、ってことだった」
 彼はそう呟くと、なおも私の首もとを舌で愛撫し続ける。
「好きだ。愛してるよ、カタギリ少尉。いや、イズミ博士でもいい。なんだって。なんだっていい。君が好きだ。君を愛してる」
 息も絶え絶えになりながら、私も答える。
「あい、して、ます、ハント、あああっ、あ、あい、して、ま、す!」
「俺もだ。愛してる。愛してるんだ」
 彼が、トン、トンとリズミカルに速度を上げ始めた。ひとつ突き上げられるたびに、脳の天辺まで電流のような何かが駆け抜けていく。
最後に残っていた理性の欠片が、溶けたのを感じた。私は獣のように快楽の声をあげつつ、彼の動きにあわせて腰を動かしていた。
「いくぞ、いいか、少尉」
 唐突に、彼の声が脳に届く。私は頷いた。多分。
 途端、彼の分身が一気に太さと硬さを増し、強烈な勢いで私を天へと突き上げる。無上の幸福感に導かれるまま、私は自分の意識を手放した。



 しばらくの間、私は朦朧としていたらしい。
次に意識がはっきりしたときには、カーペットの上で抱き合って横になっていた。彼はまだ、私の中にいる。
「……大丈夫か?」
 少し心配そうに、彼が尋ねてきた。
「大丈夫――凄かった、です。とても」
 彼は苦笑して、私の中から身体を抜こうとする。が、私は彼の腰に両足をからめ、それを阻止した。
「――おい」
「私が気持ちよくなるばっかりじゃ、不公平でしょ?」
「いや、だってほら、君はまだ体調が」
「体調に不安のある部下をあれだけ好き放題犯したんですから、その判断に従ってください」
「あー。それはだな……」
「ターニャとは何回戦がアベレージだったんです?」
「そ、そ、おま、そんなことを今」
「3回? 4回戦とか?」
 彼はしばらく躊躇していたが、逃げられないと悟って観念する。
「……3回だ」
「じゃあ、最低でも4回、あなたがイクまで、しましょう」
「まったく。女は怖えぇ」
 少し笑って、彼にキスをした。彼は私を抱きしめると、熱烈なキスを返した。

 私の中で、彼が元気を取り戻した。まだまだ、夜は長い。

(第9章「トライ」に続く)
112no solution 8/10:2009/08/28(金) 02:34:02 ID:bEKRxE6o
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・まだしばらくかかりますので、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
・ええ、もうちょっと続きます。
113名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 19:37:08 ID:6Jgp6KBn
少慰が結構毎回ハードな目にあってて心配だが今回は大尉と幸せそうで安心した
エロもGJ!
114名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 21:01:44 ID:8CJHDxpJ
姉ちゃん・・・
115名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 20:47:52 ID:6en7M5kc
奴らの地、奴らの血…徹底的な復讐戦を書きたい
というわけで連邦軍で書いてみるべ
116名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 18:01:04 ID:qRRLNRG+
楽しみ
117no solution 9/10res:2009/09/03(木) 00:56:14 ID:AVv44z7u
投下します。計算では8レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・エロなしです。すみません。

以下本編
118no solution 1/8res:2009/09/03(木) 00:56:43 ID:AVv44z7u
■第9章 ―― トライ
 結局、なんだかんだで先に音を上げたのは私のほうだったようで、
朝になって目を覚ましてみたら大尉の腕枕の中にいた。
いやはや、ここまで深入りするつもりはなかったのだけれど。

 交代でシャワーを使い、私はターニャが持ってきてくれた制服に着替えた。
気分がしゃっきりとする。制服への着替えという一点に限ればあの悪夢のような時間と同じ行動なのに、
まったくもって人間とは不思議なものだ。

 そのとき大尉の無線機が、緊急通信を訴えた。さっと全員に緊張が走る。
大尉はほとんど間をおかずにコールを取った。
「ニールです。そちらは無事ですか」
「今のところ危険は確認できない。どうした」
「治安維持軍が情報軍に対して強制捜査を行うと宣言しました。基地は連中に占領されています」
「なんてこった。なぜ察知できなかった。いや、今はそんなことはいい。お前はどうしてる」
「ヒラの兵隊は自室軟禁処分です。まだバレてません。奴ら、緊急即応部隊を投入してきてます。
あとはよくある事後承認の連続でしょう。これから、情報軍のデータベースをハックして凍結します。許可を」
「許可する。いいか、ニール。ヤバくなったら、迷わず投降しろ。
抵抗しなければ、あいつらだって必要以上の人殺しは避けたいはずだ」
「できるだけのことはします。むしろそっちのほうがヤバいと思いますよ。
昨日少尉から聞いた話をもとにして考えれば、治安維持軍が僕らの暗殺を真剣に考えていたとしても不思議じゃありません。
まだ正式な報告書が上がっていない以上、今のところ治安維持軍とマクシム導師の癒着を告発できるのは僕たちだけです」
「上には報告したか?」
「はい。ですが上層部は既に拘束されてしまいました、というか最初に人質にとられました」
「何と言っていた?」
「つなげ、と」
「クソッタレ。データベースの凍結を急げ」
「アイ・サー」

「いやだいやだ、いよいよ本格的に内ゲバじゃない」
 ターニャが心底うんざりしたような声を出す。ハント大尉は眉間に皺を寄せながら、唸るような声で決断を下した。
「カタギリ少尉に、情報を託す。木を隠すなら森の中、だ。
ターニャの戦力を引き算して計算を成り立たせることができない以上、少尉しか選択肢がない。
 治安維持軍は、間違いなく俺達を殺しに来る。情報軍相手に情報戦をするはずがないからな。
だから少尉は、何がなんでも生き残れ。そして、なんとかしてこの情報をつなぐんだ。
告発しようなんて大それたことを考える必要はない。ただ、情報をつなげ。俺たちは情報軍だ。
ただ情報にのみ忠誠を誓う軍隊だ。それを忘れるな。
 アイク、ターニャ。俺たちは、彼女を守る。真実を闇に葬らせるわけにはいかない。
自由も、民主主義も、知ったことか。俺たちは、事実を守る。それに命をかけられるか?」
「当然です、大尉」
「何を今更」
 私は困惑していた。でも、私には彼らを守るような能力はない。誰かがラグビーのボールにならねばならないなら、私が一番効率がいい。
不承不承ではあったが、私は頷いた。
「よし、全員、装備を交換する。アイク、俺のハマーをガレージにまわしてくれ。
ターニャは支援。スナイパーが先行してる可能性がある。警戒しろ」
「了解」
119no solution 2/8res:2009/09/03(木) 01:05:40 ID:AVv44z7u
 数分して、ハマーのエンジン音が玄関先に聞こえた。
「大尉、なんかこいつ、えらく重いですね」
「何事においても準備しておくべしってことさ」
 大尉はハマーに乗り込むと、カーゴスペースにおいてあった大きな箱を次々に開封する。
「うわ、なにこれ。戦争でもする気?」
 ターニャが素っ頓狂な声をあげた。
箱の中にはアサルトライフルやその弾薬はもちろん、分隊支援用マシンガンに手榴弾、RPGに、スティンガーまで入っている。
「治安維持軍とドンパチやるかもしれないとは、この国に入った頃からずっと思ってた。
それで、給料をはたいて武装勢力から買いだめしといたのさ。バレたら一発でクビだが」
「だから大尉、全然おごってくれなかったんだ。納得」
「好きなものを持ってけ。今日使わなかったら、もう使うチャンスはない」
 ターニャはブランドのアウトレットモールにでも行ったかのように、生き生きとした顔で武装を選択する。
ややあって、彼女はAKを2丁と大量のマガジン、数発の手榴弾を選び出した。RPGも1本背負う。
やはり長く使ってきた武器のほうが良いということなのだろう。アイクはすばやくLMGをハマーのマウントポイントに取り付けた。
「よし、じゃあたしはここでお別れだね」
「ターニャ?」
「敵の数は多いわ。できるかぎり分散させなきゃいけない。カタギリ少尉、あなたの別荘をちょうだい。
この家、要塞みたいなつくりになってるから、うまくやれば半日くらい粘れると思う。奴らにA10くらいは呼ばせてみせるわよ」
「でも」
「少尉、これはそういう戦いよ。短い間だったけど、楽しかった。ハント、アイク、少尉をよろしく。ちゃんと食事させてね。
 そうそう、ハント。少尉は嫌がると思うけど、お姉さんを連れていきな。手詰まりになったとき、きっと役に立つ」
「――なるほど。アイク、すまんが気分の悪い力仕事を頼む。ターニャも余裕があれば手伝ってやってくれ」
 なぜターニャが姉の死体と一緒に旅をさせようとするのか、私はすぐに理解した。
感情は猛抗議を唱えるが、理性がそれを抑圧する。ターニャの言うとおりだ。これは、そういう戦いなのだ。
 ほとんど待つまでもなく、アイクがビニールシートでくるまれた姉の遺体を持ってきて、ハマーに積み込んだ。
ごめん、姉さん。でも、こうするしかないの――まさか、姉さんがここまで予想してたかもなんてのは、虫の良すぎる妄想だもんね。

 準備は整った。アイクはハンドルを握り、大尉は助手席に座っている。何のとりえもない私は、後部座席で弾薬補給係だ。
 ターニャが手を振る。アイクがクラクションを鳴らした。
「バイ、アイク。次はあっちで会いましょうと言えないのが残念だわ」
「会えるさ。俺はムスリムだ。マルコムXの頃から、家は代々熱心な信徒」
「あら。全然気がつかなかった」
「その程度の熱心さだってこと。大酒呑みの聖戦士に信仰を非難される筋合いはないな」
「あっは、それもそうね。じゃ、次はあっちで。インシャッラー」
「アッラー・アクバル」



 ハマーは道なき道を走り、見る見るマクシム導師の別荘が背後に遠ざかっていく。
「大尉、プランは?」
「Bルートを使おう。無理そうならプランDだ」
「イエス・サー」
「できれば私にも教えてください、大尉」
「北部山岳地帯に潜伏するのが本線。最終的には徒歩で国境を越える。だが奴らの動きが早いようなら、途中下車せざるを得ないだろう。
 ルート217を北上する途中に、トンネルが連続する地帯がある。
トンネルには、旧政権の閣僚が掘った秘密の核シェルターがあるから、そいつを避難所に使う。
シェルターがあることを知ってる奴なんぞ、この国には情報軍以外に残っちゃいない。ニールが仕事をやり遂げれば、永遠に闇の中だ」
 20分ほど走っただろうか。はるか遠くで、かすかに戦闘騒音が聞こえたような気がした。でも、振り返っている時間はない。
 そのとき、ナビを確認していたアイクが、ぼそりと呟いた。
「大尉、この先で検問があるようです。どうします?」
「正式な許可書のないスティンガーを積んだ車が、敵対的な検問をスルーできるわけないだろ」
「じゃあこれまではどうしてたんです」
「情報軍名義の偽造許可書」
「そりゃダメだ。完膚なきまでにダメだ。なんだ、自分らのボスはただのテロ屋だったんじゃないですか」
「それを言うな。ぶっとばすぞ」
「自分をですか」
「そうしたいのはやまやまだが、検問をぶっとばすほうが先だ」
「アイ・サー」
120no solution 3/8res:2009/09/03(木) 01:07:30 ID:AVv44z7u
 遠くに、臨時の検問が見えてきた。数台の民間車両が順番待ちをしている。
兵士たちにはまるで緊張感は感じられず、検問を口実に仕事をサボる気満々の運転手たちとなごやかに談笑している有様だ。
「なんてたるんだ検問だ。アイク、奴らを教育してやれ」
「なんだかナチっぽいですね、大尉」
「俺のジイさんはナチの戦車兵だ」
 言い捨てると、大尉はRPGを片手に助手席から身を乗り出した。
間髪いれずにトリガを引くと、停車していた装甲車にロケット弾が吸い込まれ、派手に爆発する。
この手の騒動に慣れているのか、検問にかかっていた車の運転手たちが蜘蛛の子を散らすように散開し、
自分の車を盾にとって地面に伏せるのが見えた。
 炎と黒煙が立ち上るなか、アイクは待機車列の先頭になっていたピックアップトラックと、
破壊された装甲車の間の隙間に向かって、ハマーを突進させる。待って。待って。
それ、数学的にスペースが足りない。ハマーならピックアップトラックくらい吹き飛ばすだろうけど、でもちょっと心の準備が。
ええと、確か、対ショック姿勢。それって、ええと、確か。
 アイクの運転の腕前は本物だった。ふわりと、ハマーの片輪が浮く。
浮いた片輪は一瞬だけトラックの車体をかすめ、そして何事もなかったかのように再び4つの車輪が地面を掴んだ。
車体を激しく蛇行させて銃撃をかわしながら、アイクは猛スピードでハマーを走らせる。
 私は恐る恐る後ろを振り返った。遠くに、追跡を始めたのだろう、2台のハマーが見える。
「2台、追ってきてます!」
 私が気がついたのだから、とうにアイクもハントも分かっているだろうが、つい大声で叫んでしまう。
「了解、少尉。そこの箱に入ってるデカブツを取ってくれ。カーボンストックのボルトアクションライフルだ。そう、それ。ありがとう」
 事実上、装甲車といって差し支えないハマーに、ライフル一丁で何をするつもりなのだろう?
「アイク、この先の道路は」
「1キロ先に短いトンネル」
「出口でやるぞ。1秒くれ」
「アイ・サー」
 30秒もしないうちに、車はトンネルに入った。出口がすぐそこに見える。大尉は天井に開いたLMG用のポートから身体を乗り出す。
 その途端、天井の上で、とんでもない炸裂音が鳴り響き、胃袋のあたりにズンと重い衝撃が走った。
驚いて耳を塞ぐ。追ってきたハマーがコントロールを失い、路肩にのりあげて荒地を横転していった。
何が起こったんだろう? いや、状況から言って起こった事実は1つだけだが、それにしたって。
 大尉が頭を車内に戻し、私に声をかける。
「少尉、弾を取ってくれ。この銃と同じ箱。ばかでかいやつだ、こいつ、単発なんでな」
 私は慌てて箱の中を漁り、ソーセージくらいある巨大な弾丸を見つけた。これを撃ったの!?
「12.7ミリの、ちょっと特殊な徹甲弾。ハマーの防弾ガラスじゃ止まらん」
 こんなものをボルトアクションライフルで撃てば、普通の人間なら肩が吹っ飛んでしまう。
高速移動する車両から狙撃して、窓を撃ち抜き運転手に命中させられる大尉の腕前は明らかに異常だが、撃とうと思う段階で頭がおかしい。
「大尉、ジャベリンを持った歩兵1、ルーフに出る」
「見えてる。撃たせやしねえよ」
 ハント大尉は次弾を装填すると、またポートから身を乗り出し、ほとんど間をおかずに撃った。
「少尉、次だ」
 私はもう一発、大尉に弾を渡す。彼が狙いを外すことはありえない。
途中にガラスを挟みつつも、姉の脳幹と延髄を一撃で打ち抜く技量を持っているのだ。
でも、12.7ミリの特殊徹甲弾で撃たれた人間がどんな姿になってしまうのか――映像で見たことがあるので知ってはいるが――深く考えたくはない。
「我々は降伏の訓練は受けていない。お引き取り願おうか」
 再び炸裂音が響き、ハマーが機能を失った。
121no solution 4/8res:2009/09/03(木) 01:09:03 ID:AVv44z7u
 2台のハマーを仕留めた大尉はやれやれといった様子で肩をすくめると、助手席に座りなおした。
そのとき、大尉の無線機が緊急信号を発する。
「ハントだ」
「こちらニール。聞こえると思いますが、銃撃戦が始まりました」
「なんだと。データベースはどうだ」
「凍結進行中。完了まで推定45秒」
「おい、まさか」
「そのまさかです。どうやってか僕らの計画をかぎつけたみたいで、隊員が決起しました。おかげで凍結が間に合いそうです」
「馬鹿野郎。投降しろ、ニール特技官。これ以上、死人を出すな」
「それを僕に命令したいなら、無線にターニャ一等兵を出してください」
「この大馬鹿野郎」
「オーケー、凍結完了しました。解凍コードは例の48桁です。少尉のマイクロチップに送信します。
それから治安維持軍の通信を傍受しましたが、ヘリが2機、そっちに向かっている模様です。機種は不明」
「投降するんだ、ニール」
「まだです。ローカルの痕跡を消さないと」
 通信機越しに、ガン、ガンと何かを叩き壊す物音が聞こえる。
「クソ、上品な方法を取ってる暇はないみたいですね。
ハント大尉、出来の悪い部下ですみませんでした。
アイク軍曹、ヘリの免許はまた別の機会に。
カタギリ少尉、いえ、イズミ博士、この国最高の頭脳とご一緒できたことを、心から光栄に思います」
「投降するんだ、ニール! 命令だ!」
 通信機の向こうから、「両手を上げてゆっくり床に伏せろ」という声が聞こえてくる。部屋の扉が破られたのだろう。
「大尉、僕の心の師がね、こんなことを言ってるんです。
『Otokonara, kiken wo kaerimizu, sinuto wakatte itemo, tatakawa nakuteha naranai tokiga aru』。
そのときを迎えられたのは、けして、悪いことじゃない。機材を熱処理します」
「ニール!」
 爆発音が響き、すぐにノイズに変わった。ハマーの車内で、私は絶句する。

 ――ターニャのことは、ある程度まで覚悟していた。彼女は純然たる戦士であり、だからいつかはこういう別れ方をするだろうと。
それはもう、この国の、この時代に居合わせてしまった以上、宿命のようなものだ。
 けれどニールの死は、あまりにも衝撃的だった。
 私たちもまたターニャと同じように、高確率で死ぬだろう。その覚悟はできている。
でもニールは生き残って、たとえ告発にたどり着くことはできなかったとしても、私たちのことを覚えていてくれる。
もしかしたら遠い未来、自叙伝でも自費出版して、そこで曖昧な暴露をするかもしれない。
それならば、それでいい――根拠もなく、そんな甘えを抱いていた。
だって、彼はいわゆる「バスに乗り間違えた」タイプの、ごく普通の文明圏に属している男だったのだから。

 私が馬鹿だった。この世界に、戦場ではない場所など、あり得ない。私自身、そのことを自分の論文の中で書いている。
 ほとんどの人間は、自分が戦場にいることにすら気づかず、ゆえに危険や死を省みず戦わねばならない瞬間をみすみす手放す。
そして手遅れになってから、自分が牢獄に閉じ込められていることを知るのだ。


122no solution 5/8res:2009/09/03(木) 01:10:39 ID:AVv44z7u
「――アイク、ヘリが発進するとすれば、どこからだと思う」
 ハント大尉が、何かを振り切るように言葉を紡ぐ。
「北部の第4基地じゃないですかね」
「だろうな。そうすると」
「到着まで30分ほどです」
「プランDに変更だ」
「アイ・サー。交戦時間、推定10分」
「トンネル地帯までなら?」
「到着する頃には最初のトンネルは越えてるはずです。ただ問題が1つ」
「何だ」
「1箇所、2キロほどトンネルがまったくないエリアがあります。だいたい1分間、完全に無防備です」
「こっちもスティンガーが撃てる」
「……わかりました」
「頼むぜ、アイク。お前が頼りだ」
 私は嫌な予感に取り付かれていた。戦闘は私の専門外だが、私には彼らが何かを隠そうとしているのがわかる。
とても、よくない事実を。
「ハント――」
「安心しろ、少尉。主人公は死なないことになってる。それより、こいつを任せる。
合図があったら、窓から空に向かってぶっ放せ。敵のミサイルの誘導を妨害できる」
 大尉は荷物を漁って、私に不恰好な形をした単発式拳銃を手渡した。詰め替え用の弾が6発。
「失敗したら?」
「俺たち全員ローストチキン。大丈夫さ、ちゃんと撃っても結構な確率で意味がないし、ロケット弾を撃たれたらやっぱり意味がない」
「どう大丈夫なんだか」
「プレッシャーを感じなくていいってこと」
「それより大尉、トンネルだとか道路だとかを先に攻撃されていたら、それで終わりなんじゃ」
「インフラを破壊するには治安維持軍上層部の許可がいる。
ルート217はこの地域では貴重な舗装道路だし、ましてやトンネルを爆破だなんてとんでもない。
実を言うと、ミサイルだのロケット弾だのを撃てるかどうかすら怪しい」
「でも気化爆弾の例だって」
「それなら俺たちはとうの昔に焼けぼっくいだ」
「軍隊って、本当に非合理的ですね」
「それを言ってくれるな。俺たちも軍人なんだぜ、一応」

 20分ほどして、遠くの空に小さな影が見え始めた。戦闘ヘリだろう。
大尉は私にフレア弾の準備を促すと、天井から頭を出して双眼鏡で機影を確認した。
緊張で、膝が震える。しばらく大尉は双眼鏡を見ていたが、やがて車内に頭を引っ込めた。
「ツイてる。あれは1世代前のヘリだ。それに、ミサイルの使用許可は下りていないっぽい」
「なぜわかるんです?」
「ミサイルの射程に入ってから1キロくらいだが、まだあいつらはこっちに接近中」
「近いほうが命中率が高いんじゃ」
「それはなくもないが、あのヘリに積んでるミサイルは秒速400メートルですっ飛んでくるんだぜ? 
今撃たれたら、20秒弱で着弾だ。20秒以内にこっちにできるフレア以外の回避行動なんて、お祈りくらいだ」
「大尉、あと1分で最初のトンネルです。プランD目標地点まで10分」
「よし、ラストスパートだ。ここが踏ん張りどころだぞ」
 そういいながら、大尉はシートを乗り越えて後部座席へと移動してきた。
「……何を?」
「いやまぁ、ちょっとでも近くにいようかな、と」
「冗談」
 そういいつつ、微妙に顔が赤らむのを止められない。
「半分はね」
 大尉は軽く笑うと、カーゴに残っていた手榴弾を窓から投げ捨てていく。
「銃撃が命中したときに誘爆されちゃかなわん。
検問してるハマーの機銃程度なら装甲版で止まるが、戦闘ヘリの20mmで撃たれたらスカスカ抜けるからな。
奴らがHE弾頭を積んでたら、それでも一緒だが」
 一瞬でもときめいた私が馬鹿だった。どうせこういう男なのはよく分かってるし、だから好きになってしまったのだけれど。
123no solution 6/8res:2009/09/03(木) 01:13:08 ID:AVv44z7u
 ハマーが最初のトンネルに入った。ここから先は、長くうねった道と、たくさんのトンネルが続く。
大学時代、車が好きで好きでたまらないという友人が、休日のたびにルート217に通っていたのをふと思い出す。
私には、若干理解し難い趣味だったが。
「しっかりつかまってください。揺れますよ、ここから先は」
 アイクが珍しく大声を出した。ぐいっとハンドルを切り、猛スピードのまま対向車線に飛び出す。
狙いは分かる。分かるが、胃の辺りがぎゅっと軋む。
 トンネルから車が飛び出した。途端、銃弾の雨が降り注ぎ、わずかに遅れて凄まじい爆音が追いかけてくる。
でもヘリのパイロットは、ハマーが右車線から出てくると安易に信じていたようで、弾丸の嵐はアスファルトをえぐっただけだ。
直後、車は次のトンネルに飛び込む。トンネルのはるか前方できらっとライトが光り、アイクは落ち着いて車線を元に戻す。
クラクションを盛大に鳴らしながら、トラックが通り過ぎていった。
 次のトンネルの切れ目では、ヘリは攻撃するタイミングすらつかめなかった。
3つ目では射撃こそあったものの、完全にタイミングがずれている。
 私は大声で大尉に聞いた。
「こういうのって、コンピューター管理で射撃するんじゃないんですか?」
「将来的にはな。だが今は人間が手で撃ってる。ニールが無人偵察機でおっかけてきてたんだったら、俺たちは最初の銃撃で蜂の巣だった」
「二人とも、口を閉じて。しっかりつかまって!」
 アイクが叫んだ。前方は、トンネルから抜けると同時に、ほぼUターンするような急カーブ。
これはまずい。スピードが落ちれば、ヘリの射手も狙いを過たないだろ。
「けっ、カーブの先でホバリングしてるかと思えば、そこまでの度胸はないってか! アイクさまを、舐めんなよ!」
 アイクのテンションが高い。ハンドルを握ると人が変わる人種がいると聞いたことはあるが、どうやらそういうことか。
 スピードをほとんど緩めることなく、ハマーはヘアピンに突っ込む。
案の定、銃撃が集中した。助手席のガラスが割れ、シートに大穴が開く。
大尉が助手席に座っていたら即死だっただろう。
 アイクはサイドブレーキを引き、ギアとクラッチ、アクセルをコンマ数秒刻みでコントロールして、最小限の減速でヘアピンを曲がった。
ゴムの焦げる匂いが立ち込め、車内は激しい横Gでもみくちゃになる。
アイクは一気にアクセルを踏み抜いて加速すると、ハマーはほとんど損傷を受けることなく次のトンネルに飛び込んだ。
「後席、損害は!?」
 アイクが叫ぶ。割れたガラスから風が吹き込んできて、叫ばないと声が通らない。
「無事だ!」「生きてます!」
「問題は次です! もう一機のパイロットに根性があるなら、出口ぎりぎりでホバリングしてるかも!」
「任せろ!」
 ハント大尉は最後のRPGを拾い上げると、銃撃で破壊された右後部ドアから身体を乗り出させた。
「アイク! サイドブレーキターンまでカウントダウンしろ!」
 大尉の声が届いていないようなので、私がアイクの背後で復唱する。
アイクがカウントダウンを始め、私はそれにあわせてハントの背後でカウントダウンを叫んだ。
 カウントが9になったとき、目の前にヘリの影が見えた。ハント大尉がRPGを撃つ。
ヘリは急上昇し、RPGの弾頭は空へと消えていった。
大尉はRPGを投げ捨てると、急いで車内に戻ってフロントシートにしがみつく。
再び、強烈なターンで車内がぐちゃぐちゃになった。
「どっちも、それほど根性があるわけじゃないみたいだな、アイク!」
「2機目のは、大尉が変人すぎるだけだと思いますがね!」
「あんなもの、当たるはずがないだろ! リベリア恐怖症ってやつだ! 
あのまま奴らは引き金を引いてりゃゲームセットだったんだ! 
賭けてもいい、次のコーナーにはいやしない! トンネルのない場所で待ち伏せるつもりだ!」
 大尉の言うとおり、次のカーブにはヘリの姿はなかった。
「問題の場所まであと何分だ!」
「5分!」
 ハント大尉が、スティンガーミサイルを担ぎ上げた。
「1機落とせば、もう1機はビビる! その隙に走り抜けろ!」
124no solution 7/8res:2009/09/03(木) 01:14:28 ID:AVv44z7u
 ハマーは風きり音を立てながら疾走を続けた。地獄の1分間に繋がる、最後のトンネルに入る。
「少尉! 車の左右どっちかに寄っておけ!」
 ハントがそう叫んで、スティンガーを持ったまま天井のポートから上半身を出した。
私は咄嗟にそれが何を意味しているのかわからず、ただ反射的に指示に従う。
 トンネルの出口が近づく。RPGを警戒しているのか、ホバリングでの待ち伏せはしていないようだ。
けれど轟々と響く風の音の向こうから、戦闘ヘリの爆音が聞こえてくる。上空で待機しているのだろう。
 アイクが、微妙にハマーの速度を落とした。車がトンネルから出る。
 銃撃が始まり、内臓を直接叩きつけるかのような轟音が響き渡った。
ここまでくると、音すらも凶器だ。両手で耳をふさいでも、衝撃が身体の内側を揺さぶる。
 アイクはアクセルを踏み込んで、一気に加速する。
ヘリの射手はフェイントに対応できず、20mm機関砲の嵐はハマーの後ろの道路をえぐるに終わった。

 耳を聾する銃撃音が猛るなかに、パシュっという、鋭い発射音が響く。

 次の瞬間、視界を覆い尽くすような閃光が走った。鼓膜が悲鳴をあげ、熱波と衝撃波が車内に押し寄せる
。大尉の撃ったスティンガーが、ヘリを撃墜したのだ。炎上する燃料が空から降り注ぐ、地獄のような風景がハマーの後方に見える。
銃撃は止まっていて、ヘリのエンジン音がわずかに遠ざかったような気がする。大尉の読みどおりだ。

 私は最大の危機の第一波を切り抜けたことを実感し、大尉に声をかけようとして
――ようやく、生暖かい液体が天井から滴っていることに気がついた。
 あわてて私はポートから大尉を引きずり下ろそうとする。
 でも、意味はなかった。大尉は、もう車内にいた。
 大尉の、残っていた体は、全部。

 目の前が暗くなる。吐き気がこみあげ、風景が現実味を失っていく。
 アイクが何かを叫んでいる。
 また銃撃が始まった。
 ハマーが激しく蛇行し、そのたびに私と、大尉の下半身が、車内を転がる。

 何なのだろう。

 これは、いったい、何なのだろう。

 ハマーがトンネルに飛び込んだ。長いトンネルの中央付近で、アイクがハマーを止める。
「少尉! しっかりしてください!」
 アイクに両肩をつかまれ、激しくゆすぶられる。
 しっかり? しっかりしろ? いったい、何を?
「少尉! あなたの任務は終わってない。少尉!」
 任務? 少尉? それがどうしたというのだろう。
 もう、イヤだ。
 わかっていた。わかっていたんだ。
 こうなることくらい、わかっていた。

 でも、もうイヤだ。もう、無理だ。
 私は十分にやったじゃないか。
 もう、もう――どうか、許して。どうか、助けて。

 突然、右頬に衝撃が走って、あまりの強烈な痛みに意識が冴えた。アイクが拳を握り締めている。
「失礼、少尉。あなたに、一番困難な仕事を残してしまうことを、お詫びします。
でもこのために、みなが命を賭けました。ターニャも、ニールも、ハント大尉も。
愛する人を失ったのは、あなただけじゃない。
時間がありません。そこの赤い防火扉を開けると、シェルターへの階段があります。
行ってください。外の処理は自分がします」
 ほとんど本能的に、私は頷く。痛みが恐怖を呼び、恐怖が私に頷かせたのだ。
そして頷いてから、やっと理性が現実に追いついてくる。
125no solution 8/8res:2009/09/03(木) 01:16:31 ID:AVv44z7u
 ああ、そうだ。
 まだここはゴールじゃない。
 だから私の都合で、終わらせてはいけない。
 私が無理だからという理由で、終わらせてはいけない。

「これを。お姉さんの遺品です。
少尉が拳銃を持ったところで脅迫にはならないが、これならカードとして使えます。健闘を祈ります」
「アイク――あなたは――」
「自分は、デートの相手がすぐそこで待ってます」
「……わかった。アイク――私が言っても、あんまりご利益なさそうだけど――インシャッラー」
「アッラー・アクバル。くれぐれも、お食事はしっかり摂ってください」



 私は、シェルターへと続く暗い下り階段を、一歩一歩踏みしめて歩いた。

 これから、どうすればいいのか。
 これから、何をすべきなのか。

 分からない。

 そもそも、私は何をしたかったのか。
 この期に及んでなお、きちんと説明ができない。

 だからもう一度、私はスタートラインに戻らなくてはならない。
 カレンが、なぜ死を選んだのかという、スタートラインへと。

(第10章「カレン」に続く)
126no solution 9/10res:2009/09/03(木) 01:18:20 ID:AVv44z7u
以上です。

ご連絡
・規制がなければ週1ペースで投下予定です。基本的に木曜周辺を予定しています。
 ただ、かなり規制に巻き込まれやすいため、遅れる可能性があります。
・次でラスですが、投下をお考えの職人様につきましてはお構いなくガンガンかぶせたってください。
127no solution 9/10res:2009/09/03(木) 01:22:59 ID:AVv44z7u
懺悔の間
・12.7mmAPFSDSをボルトアクションで撃ったら、射手が吹き飛ぶと思います。どんなに良くても銃が。
・戦闘ヘリ2機はAH1の最新型を想定していますが、あんなのに追われたら10秒以内に全滅です。
・何をどう考えても、大尉はスティンガー撃てません。俯角が取れないし、バックブラストの問題もあります。
・他にもいろいろありますが、ファンタジーとして、平にご容赦を……
128名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 03:02:22 ID:LoCxOsrT
すげぇ
確かに鬱だけど一気に読める
129名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 03:03:16 ID:LoCxOsrT
最終話楽しみにしてます
130名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 15:18:11 ID:bJypmPph
>>127
gj
次の木曜が待ち遠しい
131名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 23:50:47 ID:hNFrvvR+
まだと分かっていてもリロりまくってしまう
132no solution 10/10res:2009/09/10(木) 00:35:11 ID:dM/stScm
投下します。計算では9レスほどお借りします。

全体についての注意
・NG指定は「no solution」でお願いします。
・作品中に登場する固有名詞は、実在の組織・人物・宗教そのほかと一切の関係がありません。
・擬似的な現代を舞台とした長編になります。全10章、ひたすらに欝話です。
・改行方針を変えてみました。

この章の傾向
・ほぼエロなしです。すみません。

!!!思いきり要注意!!!
・猛烈に「もやっと」する可能性があります!


以下本編
133no solution 1/9:2009/09/10(木) 00:36:09 ID:dM/stScm
■第10章 ―― カレン
 視界は闇に閉ざされていた。
「ほしいのか? ほしいんだろ? ちゃんとおねだりしてみせろよ」
 私は呼吸を整えながら、言葉を搾り出す。
「ほ、ほ、しひ、ふぇす……」
 多穴のボールギャグを噛まされた口からは、まともな声がでない。
 数人(実際には3人だ)の男たちは忍び笑いを漏らすと、私をベッドの上にうつぶせに押し倒した。

 モーターの動く、ブーンという音が聞こえる。すぐにその音は2つになった。
 一本目のバイブレーターが、濡れそぼった局部に挿入される。かなり太いが、痛みを感じるほどではない。
 二本目のバイブが、アナルにねじ込まれた。
こちらも相当な大きさだが、ちゃんと専用のものを使っているので怪我する心配はない。この商売、身体が資本だ。
 下半身に専用のベルトが巻きつけられて、異物が固定される。
二つの穴をふさがれた私は、怒涛のように湧き上がってくる快感にあえいだ。
 実のところ、自分をコントロールすればこの状態でもそれなりにシレっとしていられなくはないが、
我慢しながらも快感を受け止めている女という構図に欲情する男が圧倒的多数を占める(ソース:自分)ので、
素直に刺激を受け入れることにしている。無駄に演技しても、疲れるだけだ。

 胸に打たれた縄のせいで、少し息苦しくなってきた。
 ちゃんと縛れる人間ならばこんなことはないし、あの蕩けるような酩酊感は一度味わうと癖になる。結構ヤバイ。
が、当然ながらそれは特殊技術であって、「ちょっと興味があって試してみたい」程度の連中に手が届く世界ではない。
どうやら、こっちについては若干の演技が必要なようだ。

 そうするうち、ルームサービス(といえば聞こえはいいが、ただの出前)が到着したらしく、部屋のベルが鳴る。
ぼそぼそと料金を支払う声が聞こえてきた。私はベッドの上でのたうって、羞恥を演技してみせる。
 当たり前だが、恥ずかしさなど感じる余地はない。
出前を届けにきたのはボーイのミーチャだし、そも娼館で娼婦が恥じるも何もあったものではない。でも、ここらはサービスというやつだ。
かつてニールが「萌えツボ」という名前の記号論的撞着の特殊結節点について私に講義してくれたことがあったが、その応用と言える。
 ドアが閉じられた。ベッドの上で身体をくねらせ、
羞恥と快楽の板ばさみになっている(観測事実としては、そうなっているはずだ)私を視姦しながら、男たちは食事と雑談を始める。
上官に対する愚痴、故郷の思い出、これまで抱いてきた女についての自慢、エトセトラ、エトセトラ。
会話にほとんど意味はないし、デフォルトで虚偽成分が5割を越えている話に耳を傾けても退屈なだけだ。

 食事が終わって缶ビールを開けたところで、ボールギャグが外された。口元に、勃起した男根を押し付けられる。
私はむさぼるようにそれを口に含み、奉仕を始めた。
これまでの経過を鑑みると、ストーリー的に「むさぼるよう」であったほうが整合性が高いからだ。
高給を取りたかったら、身体と一緒に夢も売るというのが一番効率がいい。ついでにヘンタイプレイにも手をだせば、さらに効率は上がる。
 やがて男たちは次々に私の口のなかで果てた。私は最後の一人のスペルマを口の端から垂らしながら、ベッドの上でぜいぜいと荒い息をつく。
もうちょっと胸が大きければ、垂れた精液を胸の上に溢したりするのだけれど、
以前実験的にやってみたところアレってのは胸にへばりつくから絵になるのであって、
スムーズに胸板の上を滑り落ちていくのでは「非常にみっともない」という自己評定を下さざるを得なかったので自粛している。
134no solution 2/9:2009/09/10(木) 00:37:07 ID:dM/stScm
 ベッドにうつぶせていると、腰から足にかけて巻きつけられていたベルトが外され、ヴァギナとアナルからバイブが摘出された。
きっと、二つの穴は「だらしなく開ききっている」のだろう。それを見て、男たちが笑い声を上げる。
なんというか、毎回ここで笑える彼らに、ある種の敬意すら表したくなる。
――それともそんなに面白い風景なのだろうか。今度、鏡で確認してみよう。
 今後の予定をそっと心の棚にピン止めしていると、最初の男が局部に侵入を開始した。
当然のゴムつき。「生中OK」な店を信用するような、そんな馬鹿男を相手に命を縮めるつもりはない。
生フェラしてるんだから一緒だ? うーん、まぁ、そこはそれ、商売上の競争ってのがありましてね。
 続いて、次の男がアナルに挿入する。さすがにちょっと息が詰まる。最後の一人が私の口にイチモツを突っ込んで、彼らはゆっくりと動き始めた。
 さすがに事態がここまで進むと、自制するのもだいぶ大変になってくる。
でも彼らもそれを期待しているわけで、わたしは遠慮なく快楽を貪ることにする。
適当に締め上げたり、巻きついたりしながら、えっちらおっちら。「わっしょいわっしょい」と言った人もいるけど、私は「えっちら」な感じ。
やがて次々に男たちは欲望を吐き出し、それから穴と棒の対応関係を更新してもう一戦やったところでタイムアップ。
 目隠しを外して、縄を解いてもらってから、お支払いの時間。延長込みの、本来1人分の時間枠で、通常のほぼ5倍近い料金。
彼らは礼儀として「たけぇなあ」とは言うが、ご不満なくお支払い頂く。
 部屋の出口まで客たちを見送ってから、着替える。今まで着ていたのは、治安維持軍の女性将校用礼装。
半年前には、いろいろな意味であり得なかった状況だ。
身分詐称&自爆テロのコンボを避けるため厳重に制服の管理がなされていたあの頃と違い、
今ではちょっと頑張ればこの手のお衣装が手に入る。
が、さすがにこのままフロアに戻ることはできない。というかこのコスプレサービス自体が、常連限定のシークレットだ。
店にバレたら、クビにはならないだろうが、それなりに怒られることは疑いない。



 ……ああ、そういえば、一度だけ、私に本気で惚れたらしき馬鹿がいた。
彼は私にこんな仕事はやめろといい、俺が養ってやるといい、
俺と暮らしてくれといい、俺と一緒に俺の国に帰ろうと言い張った。
私は曖昧な笑みをプレゼントすることはしたものの、それ以上は何一つ約束しなかった。

 ただ、あまりにウザかったので、「なぜこんなことを続けようとするんだ」という質問には、一度だけ答えた。

 なぜなら私は、うっかり油断すると、自殺するからだ。
 けれど、まだ死んではいけないからだ。

 寄る辺なく社会の最下層に流れ着いてきた、まるでこの世界になじめない娘たちに、
生き延びるための技術を教え、基本的な生存戦略を講義し、必要に応じて金銭的な援助をする(出世払いということにはしているが)。
そのためには、私は普通の3倍から4倍は稼げなくてはいけない。
 だから、稼ぐ。
 そして、より効率よく稼ぐにはどうしたらよいかを考え、実験し、実践し、修正していく。
そうやって自分を忙しくしておくことで、私は現実から離れていられる。死への欲望を、忘れていられる。
 もちろん、ダメなときはある。そんなときは、私が突然いなくなったら困るであろう彼女らのことを考える。
いや、実際には彼女たちは困らないだろう。困らないようなシステムの構築方法を教えているのだから。
でも、私は自分勝手に「困るに違いない」と仮定することにしている。
そうすることでのみ、最も強い衝動とも戦えることが分かったから。

 嘘だ。
 そういう話を、しようと思ったけれど、結局やめた。それは彼が望んでいる答えではなかったから。
 ある日を境に彼はぴたりと店に来なくなり、彼が帰国する前日になって、一通の手紙が私の手元に届いた。
私は彼のサインだけ確認して、封筒ごと燃やした。
ゴミ箱に捨てるのではなく、そんな手の込んだことをしたのは、何かの間違いで彼がもういちど私の客になったとき、
彼は「あの手紙はどうした」と私に聞き、それに対して私が「読まずに燃やしたわ」と答えることを期待しているからだ。

 そんなものだ。
 何がそんなものなのか、説明は難しいが、そんなものだ。

 そんな、ものだ。


135no solution 3/9:2009/09/10(木) 00:38:27 ID:dM/stScm
 ドレス姿に戻る前に軽くシャワーを浴びてから(上水道が復旧したのは実に素晴らしい)、私はフロアに戻る。
濡れた髪がうっとおしい。と、私の後輩にしてルームメイトが、声をかけてきた。
「新規のお客様がご指名よ」
「そう? じゃ、オーダー決まったらヘルプに呼ぶわ」
「うっわ、助かりまーす」
「どってことないわよ」

 指名のあった席につくと、そこには懐かしい顔があった。が、私は懐かしさをおくびにもださず、あいむかいに腰を下ろす。
「いらっしゃいませ。お客さん、このお店は初めてでしょう?」
「ああ。もしよければ、外で話ができないかな」
「店外デートは別料金がつきますけど、いいんですか?」
「構わんよ。どうせ領収書商売だ」
「じゃあ、ちょっと待ってくださいね。支度をしてきます」
 私は席を立ち、ルームメイトに声をかけて、客と外に出てくることを告げる。
「あら残念。きばって稼いできてね」
「すぐ帰ってくると思うわ」
「またヘンタイさんなの? 見た感じなんだか真面目そうだけど」
「真面目な人よ。真面目すぎるくらいに」

 私たちは並んで歓楽街を歩いた。内緒話がしたいのだろうから、ソニーに連れて行くことにする。
あの店はオーナーが変わっても経営方針は変わっていないし、客の入りも相変わらずだ。
案の定、店内には雇われバーテン以外、誰もいない。オーナー自らが店頭に立たなくなったのが、ちょっとした変化。
 私はあのときと同じ席に座り、彼は私の隣に座った。バッグからタバコを取り出して、火をつける。
「それで、ギリアム少佐、いったい何の御用ですか?」
「軍は辞めたよ。今は、どこにでもあるPMCの、顧問だ。くだらん仕事だ」

 あれから1年が経とうとしていた。
情報軍は、非合法な武装勢力と癒着していると告発され、激しい銃撃戦の末、この国での活動停止を余儀なくされた。
治安維持軍はこの闘争を通じて「マクシム導師との誤解」を解き、彼らは歴史的な和平への道のりを歩んでいる。
半年前には初の総選挙が行われ、来月にはマクシム導師が新大統領として就任演説を行う予定だ。
 総選挙後、治安維持軍は段階的に撤退しており、今ではごく一部の技術職員だけが残っているに過ぎない。
もちろん、武装した治安維持部隊の必要性は薄れていないが、その利権には世界中のPMCが群がった。
結果、この街の歓楽街は生き残って、様々な国の言葉が乱れ飛ぶ小さなカオスの様相を呈している。

「もう半年前になるが、情報軍のカタギリ少尉にかけられていた賞金がキャンセルされた。死亡が認定されたんでな」
「そうですか」
「だから俺があなたに会いに来たのは、金が目的ではない」
「そうとは限らないでしょう。今だって私をマクシム導師に突き出せば、相当な謝礼が出ると思いますけど」
「命がいくらあっても足りんよ」
「収益がマイナスになると?」
「ああ。この1年、自分でもどうかしてると思うくらい、あなたのことを調べ続けた。妻に白い目で見られようが、構わず。
 最初は、賞金が目当てだった。5000万ドルに目が眩まない奴はいない。マクシム教授ですら3000万ドルだったのに。
生死確かならずなうえ、生け捕りのみという条件は厳しいが、ほとんど素人同然の促成尉官に、50ミリオン。こんな美味しい話があるか。
 それから、情報軍データベースの解凍キーのことを知った。なるほど、仮に生きていたとしたら、50ミリオンの価値がある。
あなたの生体チップに、世界中の数学者と暗号解読技術者を悩ます48桁が収まっているとなれば、50ミリオンなんてはした金だ。
 だが、だんだん――だんだん、どうでもよくなってきた。謎、また謎、また謎。あまりにも、理解できないことばかりだ。
どうしてもあなたのことを理解したくなって、イリーヤ死刑囚が獄中で書いた論文まで読んだよ」
「彼、何を書いてました」
「日本の文学に関する論文だった。何のヒントにもならなかった」
 私はかすかに微笑む。
136no solution 4/9:2009/09/10(木) 00:42:08 ID:dM/stScm
「それで、俺は本来の自分のやり方に戻ることにした」
「トンネルに行ったのですね」
「そうだ。最後のトンネルの通過時間が他に比べて非常に長かったのは、ハマーがなんらかの問題を発生させていて、
それを応急処置したのではないかというのが見解の主流だった。途中で車を停めた形跡もあったしな。
 途中で誰かが降りたのではないか、ってのはもちろんみんなが考えたが、トンネルの設計図を調べてもどこにも枝洞はない。
作業用トンネルはロボットで徹底的に調査されたが、何も出なかった。
反対側の出口から徒歩で逃げた説ってのが、あなたを探すハンターたちにとっての定説だったよ。
 だが俺は、情報軍のエリートたちが、任務達成に寄与しない行動を取るはずがないと考えた。
ましてや武装ヘリが飛んでいて、そのうえ増援まで到着しつつあるってのに、徒歩で岩山を歩いて逃げるような選択をするはずがない。
なにもかもが、あまりにも彼ららしくないんだ」
「彼らは、そうですね、そういう人間でした」
「だから俺は、『情報』を疑ってみることにした。トンネルを徹底的に調べたさ。
危険を承知で近くにキャンプを張って、泊り込みで調査した。それでようやく、あの赤い扉を見つけた」
「それをどうやって私につなげました?」
「彼らが一人を選んで逃がすとしたら、あなただ。
現地の言葉を違和感なく喋ることができ、多方面に個人的な知己がいる。
社会の裏に潜んで、逃げ延びられる可能性は最も高い。
 だが決定打はもっと簡単だ。シェルターを調べてみたら、相当な長期間にわたって、女性がそこにいた形跡があった。
備え付けの生理用品が減っていたんだ。あの車に乗っていた女性は、あなただけだ。
それで本格的に指紋を探して、2週間がかりでようやくあなたの指紋を見つけた」
 私はふと、あの頃のことを思い出していた。何の変わりもなく生理がきたあの日の、言葉にできない絶望感も、今では遠い記憶だ。

 もし。もし、子供を授かっていたら、私は変わっていただろうか?
 それとも、子供のために、この日のこの時間へとつながる道を選んでいただろうか?

「その頃には、とうに賞金はキャンセルされていた。
ヘリからの攻撃で大爆発を起こしたハマーの中にあった死体をDNA鑑定した結果が出て、あなたの死亡が確認されたからだ。
頭部が本当に粉々に吹き飛んでいたから、DNA鑑定に頼る他なかった。
 俺は状況の不自然さに随分と悩んだが、あなたに双子の姉がいることを思い出した。
なんらかの理由で、あのときあなたの姉が車内にいた。それ以外に、これを説明する方法はない。
 そこから先は、さほど難しくはなかった。いつもどおり、地道な捜査をしただけのこと。
あなたが潜伏するとすれば、この地域以外にあり得ない。
賞金がかかっている間に戻ってくることはあり得ないが、誰もあなたのことを探さなくなってしまえば、ここは格好の安全地帯だ」
「お見事です、ギリアム顧問」

「それでも俺にはわからんのだよ。あなたは、いったいなぜ、ここまでのことをしたんだ? 
日の当たらぬ地下での半年に渡る孤独な生活。安全や快適からは程遠い仕事。命令だったからの一言で、これを説明できると?」
「命令だったからです、顧問。私たちに与えられた任務は、まだ消滅していません」
 彼はぎょっとしたような目で私を見た。
「顧問、ひとつ、お教えします。48桁の暗号が記録されたマイクロチップという情報は、フェイクです」
「――な……っ」
「彼らは私の安全を確保する努力の一環として、芝居を打っただけのこと。
そして、ただのマイクロチップという話は、いつしか生体チップという名前に変わった。
小さな物語は、環境の影響を受けつつ、自らの力で大きな物語に育つ。情報軍のセオリーです。
かくして、私に対する賞金は『生死問わず』ではなく、『生けどりのみ』になった」
「馬鹿な」
「保険です。そしてより重要な点として、これはプローブでもあります」
「プローブ? 何を調べると……」
「ニール特技官は、『少尉のマイクロチップに転送します』と言っているはずです。
この発言だけを聞けば、私がマイクロチップを持っているということで、話は終わりです。必要なのは私ではなく、マイクロチップ。
ところがなぜだか、マイクロチップは『生体チップ』になった。マイクロチップが、私の体の中に埋め込まれているということになったのです」
137no solution 5/9:2009/09/10(木) 00:44:39 ID:dM/stScm
 ギリアム顧問の顔に衝撃が走った。
「『情報軍が、私の身体にマイクロチップを埋めた』というストーリーは、
後にも先にも、私が入院した病院でしか話されていません。報告書すら存在しない。
なぜなら、そんな事実はないのだから。
 このストーリーを耳にする可能性があったのは、ハント大尉と私を除けば、ギリアム顧問――あなただけです。
あの日、花を持ってきたあなたは、そのまま院内に隠れて、アナログ技術で盗聴をしていたんですね。
なぜです、顧問。なぜ、そんなことを?」
「お、俺は、その、め、命令だったんだ」
「そうですか。盗み聞きとは、ご趣味が悪いですね」
「やむをえないだろう。命令されれば、やるしかない。倫理的に気分が悪かろうが、拒否する権利などない」
「まったくです。ところで顧問、当時の情報軍は、たとえ極秘任務であろうと、治安維持軍の正式な作戦行動を監視できる体制にありました。
意味はお分かりですね?」
 彼は今度こそ真っ青になった。唇がわなわなと震えている。
「当時のあなたに、私たちの会話を盗聴せよという命令は出ていませんでした。
でも顧問、あなたは嘘をつくタイプの人間ではない。
あなたはそもそも嘘をつくという行為を軽蔑しているし、私の前で嘘をつき通す自信もお持ちではない。
 そう、命令はあったのです。そしてあなたは、その命令どおりに、『身体に埋められたマイクロチップ』の情報を命令主に伝達した」
「――やめてくれ。頼む。もうやめてくれ。俺に、俺は、もう、もう忘れたいんだ。思い出させないでくれ。頼む。許してくれ」
「顧問が伝えた『身体に埋められたマイクロチップ』は、治安維持軍内部で正式に『生体チップ』と認識されました。
不思議なことに、あなたが連絡を取った相手は治安維持軍に記録が残る形での命令は出そうとしなかった、
あるいは出せなかったのに、治安維持軍が5000万ドルを投じる活動方針を左右できるほどの影響力は持っている。
 そんな人物がいるのか? 可能性は2名です。一人は、マクシム導師。もう一人は、ユーリ・オルロフ。
カイナール村の村長の弟にして、マクシム導師の活動資金源であり、『奇跡の和平』の立役者」
「頼む。仕方なかったんだ。どうしても、どうしても、死んだ部下の、生まれたばかりの子供を養うのに――
金が、必要だったんだ。1回だけの、つもりだったんだ」
「マクシム導師は、危険な扇動者ですが、学者です。
『身体に埋められたマイクロチップ』は、『身体に埋められたマイクロチップ』でしかない。
そこで定義を変更することなど、あり得ません。従って、消去法により、一人が残ります。
 少佐、あなたが軍の情報をリークし、その引き替えとしてリベートを受け取っていた相手は、ユーリ・オルロフですね。
あなたは情報軍との連絡将校という立場を利用し、治安維持軍と情報軍双方の機密をオルロフに提供し続けた。
彼はその情報と自己の権勢をもとに、最終的には情報軍に対する奇襲攻撃も成功させた」
 彼はしばらく肩をふるわせていたが、やがて、がっくりとうなだれた。
「あなたに逮捕権はない。告発しようにも、あなたは表社会に出られないし、証拠もない」
「その通りです」
「だから――だから、決着は俺がつける」
 ギリアム元少佐は席を立ち、私に敬礼した。私も席を立って、敬礼を返す。
「はは、思い出すな。あなたがカイナール村に行った夜、偶然、パーティの席でハントと会ったんだ。
あなたの話を聞くに、偶然ではなかったのだろうが。奴は『今回の新人は、頭はいいのに、敬礼ひとつできやしない』と愚痴っていたよ。
随分、ちゃんとした敬礼ができるようになったじゃないか」


138no solution 6/10:2009/09/10(木) 00:47:48 ID:dM/stScm
 それから、1ヶ月がたった。私は自分の部屋でタバコを吸いながら、ぼんやりとテレビを見る。

 ギリアム元少佐による告発は、あっというまに世界中の耳目をひきつけた。
何千という連合軍兵士が死に、何万という市民が犠牲になったこの国の混乱は、
その末期においては治安維持軍と非合法武装勢力がグルになって演出していた芝居でしかなく、
彼らは自分たちの利権を確保するために邪魔な情報軍を粛清したのだという告発は、
この国どころか、この国に派兵したすべての連合国与党政府に大きな衝撃を与えることになった。
 ギリアム元少佐は厳重な警護下に置かれたが、
妻と面会した際、妻が急に錯乱してギリアム元少佐を殺害、彼女も直後に自殺した。
世界中のメディアは一斉に陰謀説を唱えたが、
この巨大疑獄が尻すぼみに終わるであろうという観測は、あながち間違いではなさそうだった。

 けれど、ギリアム元少佐が死んだその夜、凍結されたはずの情報軍データベースが、自由に閲覧できる形でネットに流出した。
今度こそ、もう止めようはなかった。
あちこちで市民団体や平和運動団体が自国政府を相手どって訴訟を起こし、
その巨大なうねりが爆弾や暗殺で阻止できないのは誰の目にも明らかだった。
 文部大臣に就任する予定だったユーリ・オルロフは、姿を消した。彼がどこに消えたのか、知る者はいない。
己が術中であった暗殺や陰謀が彼自信を裁くことになったのか、それとも一流の抜け目のなさを発揮して地球のどこかに潜んだのか。
だが彼が姿を消したという事実は、この疑獄が真実であることを決定的に証明せざるを得なかった。
 マクシム導師は、狂信的な支持者に守られ、一定の影響力を維持している(私の姉が嫁いでいた家は、ある意味で類型的な支持者となった)。
しかし、かつてのカリスマティックな支配力は、もはや見る影もない。
彼が新大統領としてどれくらいの仕事を成し遂げうるか、疑問視する国民は多い。
この国唯一の英字紙は「師が極めて有能な政治家であることは、必要以上に証明された」と皮肉交じりに論評している。

 いずれにしても、私たちの任務は達成された。イリーヤを含め、彼の背後にいた人物の政治的選択は、すべて白日の下に曝け出された。

 私は新しいタバコに火をつけ、テレビのチャンネルを変える。
2つしかないチャンネルの両方が、昨日と何も変わりばえのないニュースを流していた。
誘拐。殺人。強盗。虐殺。組織的人身売買。麻薬の密売。郊外で武装勢力との戦闘。
隣国はIAEAと揉め、さらにその隣では核戦争も辞さないという演説。飢餓に民族浄化、核実験に経済制裁。
 インターネットにつなげば、Twitterでは自由と民主主義を求める呟きが縦横無尽に駆け巡り、
アルファブロガーたちは半日も欠かさず自己の主張をあちこちのBlogやSNSで訴え、
ネットニュースは動画や写真を配信し、それらすべてはTumblrで次々とreblogされ、
DiggなりFriendFeedなりでコメンタライズされていく。
 でもそれは、伝統的な権威を解体こそすれ、本当の権力を解体することはできない。
この国に駐留していた情報軍が治安維持軍によって武力制圧されたように、真の権力とは暴力装置によってのみ醸造される。
ペンは剣より強し。なるほどその通り。しかしそれは、ペンが剣以上の暴力装置として機能して初めて真に成立し得る――
思うに情報軍という巨大にして奇妙な組織が狙っているのは、そういうことなのだろう。

 本当に私たちが成し遂げたことが正しかったのかどうかは、わからない。
客観的に評価すれば、情報軍のほうがよほどテロリスト的であると言える。
私たちが任務を達成しなければ、連合軍が威信を失うことはなく、マクシム導師は希代の大政治家としてこの国に永遠の名を刻んだだろう。
世界全体が失ったものはあまりにも大きく、現在の情報軍がその損失を補填するリヴァイアサンたり得るかといえば、明らかにまだまだ足りない。
 そしてまた、この一連の暴露によって、社会を維持するための生贄として差し出されてきた名もなき人々の苦しみが終わったかと言えば、
そんなことはあり得ない。減ってすらいるまい。
むしろ、世界に広がる苦しみの総量は、確実に増えた。
私たちのやったことは、情報の自由というお題目を貫くために、煉獄の底を叩き割って地獄と直結させた、そういうことだ。
139no solution 7/10res:2009/09/10(木) 00:49:18 ID:dM/stScm
 私たちはこの事件の教訓をもとにより良い社会を作ろうと動くよりも先にこの事件の存在を忘れ、
もう一度流血と悲惨を繰り返しながら、もう一度同じ社会を構築するだろう。
そうやって人間は歴史を積み重ねてきたのだし、してみるとやはりそれこそが人間にとって自然な状態なのだ。
 マクシム導師は、この状況をさして「解なし(no solution)」と定義してみせた。別荘での問答を要約すれば、そうなる。
だが私は、疑義を唱える。解は、ある。ただ、人間はその解を定義できない。なぜなら、カレンが口癖にしていたように、それは――



 ふと、呼吸が速くなるのを感じた。
 体の芯ともいえる部分に、熱さを感じる。
 目を閉じる。頭の中で、いくつもの光が瞬く。


 それは――?


 酸素を求めて肺が喘ぐような音を立てる。
 神経という神経が悦びの歌を歌い、全身の筋肉が期待に満ちて引き締まる。



 ……それは、つまり……?



 愛も、
 欲望も、
 
 責任も、
 自由も、
 
 正義も、
 悪も、
 
 倫理も、
 哲学も、
 
 任務も、
 理由も、
 
 恋も、
 欲求も。

 なにひとつ介在し得ない、極限の狭間。

 間違いない。
 私は、この純粋な瞬間のために、生きている。
 あらゆるものが研ぎ澄まされ、収斂していく、この永遠にも似た一瞬のために。



 そして、私はすべてを理解した。

「カレンはなぜ死ななくてはならなかったのか」
 その問いは、私のなかで一握の羽毛のように、軽やかに散華していく。

 そういう、ことだったのだ。

 それで、よかったのだ。
140no solution 8/10res:2009/09/10(木) 00:50:39 ID:dM/stScm



 Q.E.D.



141no solution 9/10res:2009/09/10(木) 00:51:46 ID:dM/stScm
 私はタバコをもみ消して、ふらりと立ち上がった。

 テレビからは、情報軍がこの国で活動を再開したというニュースが流れている。不思議と、何の感慨も沸かなかった。
試みに、ぽつりと彼の名を呟いてみたが、その言葉もまた何の感情も呼び覚まさない。
 ちょっと怪訝に思って、何度か彼の名を繰り返してみるが、やはり、ただの名前以上のものではない。

 つまり、私の時計は彼の時計を追い越してしまっていて。
 だから、もう、私にとって彼は、意味を成さない。



 ほんの少しだけ、自分が泣くかもしれないと思った。

 でも、涙はでなかった。



 今週の末には、マクシム導師の大統領就任演説が、市場で開催される。
師に会いに行こう。彼の支持者であることを証しだてる黄色い花束を持って、赤いドレスを着て。
きっと、彼も私を待っているだろう。

 階下で、ルームメイトが私を呼んでいるのが聞こえる。そういえば、今日の昼は彼女と食事をする約束だった。
「もう、先に出ちゃうよ? まだ? 早くしないと売り切れちゃうよ?」
「ちょっと待って。すぐ行くから」
 私は返事をして、外履きのサンダルに履き替え階段を降りる。
「ああ、やっと来た。さ、行こう、カレン姐さん。
あのお店のサンドイッチは本当に美味しいんだって。アボカドとトマトがこんなたっぷりでさ」
 私は彼女ににっこりと微笑むと、昼下がりの街へと向かう。

 釘を、買わなきゃ。






142no solution 10/10res:2009/09/10(木) 00:52:23 ID:dM/stScm
「――昨日N国首都で発生した爆弾テロは、
本日現地時間正午すぎ時点での死者34名、重軽傷者90名以上という、
今年に入って以来最悪の事態を招きました。
 N国臨時政府は緊急事態宣言を発令、戒厳令を敷きましたが、
首都では今もときおり散発的な銃声が響いています。
いずれにしても、このテロによってN国の民主化プログラムは大きな後退を余儀なくされそうです。
今のところ、国際テロ組織からの犯行声明は出ておりません――」

(第11章「カレン」に続く)
143no solution 10/10res:2009/09/10(木) 00:56:13 ID:dM/stScm
以上で完結です。
長い長いお話にお付き合いいただき、まことにありがとうございました。
144名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 14:26:05 ID:0LAchFXQ
す、救いがねぇw

モヤッ
145名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 15:40:00 ID:EHMewl+6
え、なに、これで完結?
モヤモヤがー。
146名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 17:29:11 ID:L4c8tZ7x
一回目からして、どうせロクな事にはならないだろうと思っていたけど
名前ある登場人物全員死亡とか……別の意味でスッキリしちゃった件

面白かったけど
147名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 17:31:08 ID:NAWDOOPN
>>143
お疲れ様でした!
文章力と予告守った投下のペース配分が凄くて関心させられてばかりです
少慰はカレンになっちゃったのか…
といいつつQ.E.Dの意味がわからないので最初から通して読んでみる
148名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 17:52:58 ID:oFlFhRHU
>>147
Q.E.DはQuod Erat Demonstrandumの略で、「論議(論証)終了」の意味だと思います。
直訳すると、「問題に対する答えが示されましたよ」、みたいな感じだった筈…
149名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 18:54:34 ID:nMN+EI3Q
お疲れ様でした。
11章楽しみにしています。
150名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 19:17:57 ID:iM9wC7cF
だれか前スレをくれ、もう一度序盤を読み返したい

もしくは作者様前スレ分をどっかにあげてくだせえ
151名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 23:00:21 ID:MpsQ8ake
>>143
すごい読み応えでした。読めてよかった。出会えてよかった。ありがとう、ほんとありがとう。

>>148
>>147は言葉の意味じゃなくて、「何を」証明終了したのかが判らないんじゃないかな…w
かく言う自分も判らないから最初から読みなおしてみる。
152名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 01:46:58 ID:gOpLKDxQ
GOODJOB
大作だった
お疲れ様です
153名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 06:41:18 ID:Dekq4wvb
あれ?完結だよな?
11章は打ち間違いか何かか?
154名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 07:02:26 ID:IqOEkHq5
完結お疲れ様でした。
凄いものをありがとう。
毎回投下を心待ちにしていた。
エロスの有無に関係無く面白かったし、
エロあり話は毎度趣向が凝らされていて楽しかった。
なにより物語の構成に感動した。
最終話の清々しさとモヤモヤ感がたまらない…!


もう一度最初から読み返したい…が>>150と同じで前スレ保存していない俺残念。
どなたか前スレを分けてくださらまいか。
155名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 22:04:44 ID:YwEdhWyb
全部メモ帳にコピーしてUPするか?
156名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 22:31:28 ID:xPQBjM9r
>>155
お願いします
157名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 22:33:38 ID:rCo2DkLX
>>155じゃないんですが、たったいまロダにUPしました。

http://loda.jp/uploader777/?mode=pass&idd=151
パスは0000
158名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 00:19:55 ID:scgtxKl9
世界に絆を失ったから、惰性で生きていく意味を見いだせなくなって、自爆したのか?
最初に自爆したカレンと同じ境地に少尉が至ったからQ.E.D.となったのはわかるんだが。
159名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 21:55:43 ID:FLqYDMoZ
>>157
おぉ、ありがとう

読み返すとさらにおもしれえな、ギリアム少佐の存在忘れてたwwww
情報軍の車は車内禁煙だし、自爆テロが釘入りだってことも忘れてた
160no solution 10n+1:2009/09/12(土) 22:14:56 ID:KUateyB3
■――「カレン」
ttp://img515.imageshack.us/img515/8194/1208986694233ct6.jpg

- "Little girl gives a flower to soldier on tank"



(了)





最後に、"no solution"を書きはじめるきっかけとなった絵をリンクし、結びとさせていただきます。
改めて、どうもありがとうございました。
161名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:24:21 ID:Q4Nl3XSh
>>157
ありがとう。おかげで助かった…!


ラストの11章ってのはコピペミスではなくループの暗示って事なのかー
テロの報道が冒頭とラストで一字一句同じだし
1章のカレン=イズミ少佐ですよっていう
「失われた時を求めて」もループする話だったよね確か

何はともあれ大作お疲れ様です。凄い面白かった。
エロくても冷静な少尉の内心の呟きが笑えて毎週楽しみにしてました。ありがとう!
162名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:42:37 ID:xkYrbfsO
凄い楽しませてもらいました。
こんなに投下を楽しみにした作品は久々でした。
少佐のテーマとやらをBGMにもう一度読み直してみようと思います。
お疲れさまでした!
163名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 02:03:08 ID:DNdE4wTm
GOODJOB!
164名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 14:40:40 ID:PQpmPAxZ
音ゲープレイするので少佐のテーマでなんかイメージ変わったなw
165名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 21:52:49 ID:DfKjAwUr
>>160
後ろ手に凄みを感じる。
166名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 22:28:19 ID:23uvbRmy
>>160
バイブのスイッチか、と思ったオラは死んだ方がいいですね><
167名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 12:16:35 ID:PHB8S20i
ちくしょー乙だぜ!
168戦車兵:2009/09/14(月) 13:46:01 ID:PYYxDf8D
ずっと読んできましたが、最後の絵が全てを物語っているような感じが。
正直、あの絵を見て『ゾクッ』としました。
文章力と構成力にはすごいとしか言いようがないです。

もしかしてno solutionの作者さんは女戦車長が
二人の民兵少女を助ける話を書いてくれた方ですか?
169名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:21:02 ID:x6TFHR15
日本が舞台のやつもそうかな
終わりは救いがある方が好きだけどこの職人さんの話は凄く好きだ
本とか出してたらぜひ買いたい

戦火人さん久しぶりっす
170名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:22:04 ID:x6TFHR15
戦火スレと間違えた…
戦車兵さんすみません
また投下待ってます
171名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 10:19:32 ID:aBkJ1Hc9
172名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 03:17:23 ID:RSBm/Sic
これって、なぜこうなったと思ったら、職人さんの思うつぼだよね? くやしいっ…

それから、少尉が生きてる可能性もあるよね。
だって爆弾テロってあるけど自爆テロとは

おっと、こんな時間にメール便か。郵政再編で必死だな。
173名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 02:58:14 ID:06T7hA9d
マクシム導師は爆発させられたのかも気になる

そして新たな作品の投下を待ちつつage
174名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 13:20:01 ID:0Dact0Tz
食玩で陸自と空自の娘さんが売られていたから買った。
陸自編で鉄帽被った娘が出たんだがとても萌えた。
いつになったら軍服萌えがメジャーになるのか?
175名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 22:39:41 ID:kuDqmwDq
銀髪と軍服は絵になるねぇ
176名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 07:04:40 ID:2tUPIR0G
軍人ということはやはり近代以降なんでしょうか。
馬をパッパカ走らせていたりするのは邪道?
177名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 11:33:32 ID:aYuXksC8
>>176
こんなスレもあります

◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209042964/
178名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 11:41:30 ID:vx1ksSWJ
>176
貴官は「騎兵は軍人ではない」と申すか。

ナポレオン戦争あたりの時代では歩兵、砲兵と並ぶ主兵科であるし、
第二次世界大戦中でも騎兵は普通に運用されておるぞ。
それに、第三帝国の補給手段は、馬車が高い比重を占めておったしの。
馬が廃されて機械化されていくのは、比較的最近のお話じゃ。


…冗談はさておき。
>1にありとあらゆる『戦場』との記載があるから、軍人や傭兵が出てくるなら、
時代とかは別に関係ないんじゃないかな?
179名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 15:05:18 ID:A4wpA70O
>>176
日本の軍歌「愛馬進軍歌」にもあるように、軍馬は近代戦になっても使われていた。
欧米の警察とかでは未だに騎馬部隊が存在する。(暴徒鎮圧任務に馬用防護面つけて現れることも…)
軍人ならばローマ史以前でも問題ないのでは?    
180名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 04:54:34 ID:IXcaCuEC
>>177
ありがとうございます。

>>178
>>179
そうですよね。
たしかにナポレオン配下のミュラとか、明治の秋山古好とか有名ですよね。
自分は中世の封建的な世界で戦うお姫様を描きたかったので、ちょっとこのスレ
の気風にそぐわないかとも思ったのですが、まあ駄目ならスルーされるだけですもんねw

馬上でもベッドでもがんばるお姫様を描きたいと思います〜。
181名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 20:49:44 ID:vpf4R/76
あれか、ナポレオニックなお姫様が東方の小国を侵略したら、
通り道の要塞指揮官に略奪婚されちゃうのか。
182名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 02:51:04 ID:wO3Nm3Vf
スターリングラードで
183名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 16:24:06 ID:6MdRxSGS
>>180
がんばってねー
184名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 20:54:53 ID:nYf3ZsQU
待ってる
185名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 00:13:03 ID:oRBwhCWv
ちょっと話題がズレて申し訳ないんだけど、このスレ向けかなと思うのでおいとく。

ttp://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2644877/4652654
186名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 05:32:45 ID:5DrKwvjs
>>185
スウェーデン軍なのに何故AK-74…と思ったらロシア軍との合同演習か。
187名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 15:26:51 ID:xl3fHwWE
ところで実際にいた名将を女にしてエロパロつくるというのはどうだろう?
一騎当千みたいな・・・って誰も知らないか。

でもトゥハチェフスキーとか彭徳懐とかはとんでもなく残虐だろうな。
188名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 19:01:16 ID:xJLTLQZj
>>187
はーつおぶ愛あんでググレ
189名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:16:56 ID:ku2NTI7o
そこで愛あんが出てくるかw
190名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:44:06 ID:d6/ISKXI
名機を女性化したPCゲームがあってな…
191名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 18:46:23 ID:T3Am8hLP
ほしゅ
192名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 21:10:57 ID:MNmODxIM
なんか体つきの良い歴戦のおっさん上司と、
新任のひ弱な部下が戦場でだんだん仲良くなって、
ギシアンってのを提案する
193名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 21:22:40 ID:DhSXOB1X
一瞬、アッー!ってなるのかと思っちゃたじゃないか
194名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 00:12:06 ID:7+0GySP9
>>192
いいシチュだ
195名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 00:39:08 ID:lTfqi19A
>192
書類ミスで事務職採用の筈が実戦部隊に回された銃の撃ち方すら知らない子を
とりあえず作戦終了するまで手取り足取り面倒を見るおっさんを妄想した。

初日
「スペルミスでこんな素人と間違えたって!?」
『こっちも電卓すらろくに使えん人間を回されたんだ、我慢しろ』
「命がかかってるんだぞ」
『もう作戦は始まっている、配属の変更は作戦終了後だ。反論は許さん。以上』
「おい、おい!……切れちまった」
「あの、私、どうなるんでしょう」
「……6時間後に再集合、来ない場合は命令違反敵前逃亡で銃殺だ」
「銃、殺」
「作戦が終わったら書類元の配属先に戻れる。一ヶ月の我慢だ」
「そんなっっっっ」
「死ぬ気で生きろ、俺も出来る限り協力する」

三日目目
「すみません、私のせいで……手当しますから、脱いで下さい」
「これくらい、大した怪我じゃない」
「お願いです、せめて、私に手当をさせて下さい」
「……ああ、わかった」
上着を脱ぐと、自分の日焼けした二の腕を白く細い指が滑っていく。
「助けて下さって、ありがとうございます」

十日目
「私……人、ころし、た……」
カタカタと震える彼女を抱きしめる。
「俺を助けてくれた。感謝する」
「私、私っ……隊長、隊長」
細い腕が背中に回され身体を押しつけてくる。
背中を撫でながら、密着する胸の柔らかさに着痩せする質なのか、とぼんやりと考えていた。


段々妄想がスレ違いになってきたのに絶望した。
196名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 03:38:06 ID:cb1Sqace
>>195をみて滾った。エロ未到達。

 何も知らない子供だ。
 銃の撃ち方どころか、歩き方一つ分からない。まるで赤子のような存在だ。だと言うのに敵
国の男に組みふされ、肌を嬲られ、割り切り方など知っているはずもないのに無我夢中で人の
命を奪ってしまった。
 まるで凍えているようだった。青ざめた表情でガタガタと震えながら、眼前の少女は頭を抱
えてうずくまる。破かれ、ひどく乱れた戦闘服。傍らには下半身を晒した男の死骸。死の衝撃
でか、地面に向かって射精している男を一瞥し、彼は少女の前に膝を着いた。
「よくやった」
 はっと、少女が顔を上げて自身の上官を凝視する。
「なんて顔してるんだ。え? お前は敵兵を殺した。おまえは自分の命を守り、そいつに殺さ
れるはずだった仲間の命を守った」
 少女の瞳に涙が溢れた。
 殺人を罪だと“思い込んだ”、俗世間でのどかにいきる“人間”の表情で。
 だがもう無理だ。彼女は殺した。元の世界へは戻れない。彼女自身が、きっとそれを許せない。
「笑え」
 一言命じる。少女は乾いた唇を僅かに開き、かすれた吐息を吐き出した首を振った。
「笑え。命令だ」
 できません、と少女が再度繰り返す。いまや涙がとめどなくあふれ出し、今にも声を上げて
泣き出してしまいそうだった。だが男はさらに少女に詰め寄ると、俯く顔を無理やり上向かせ
てその瞳を覗き込む。少女の瞳に怒りと憎悪の光が揺れていた。それが誰に対するものかなど
どうでもいい。罪悪感を消し飛ばす強い感情が必要だった。
「戦争では敵を殺した奴が英雄だ。生き残ることが正義だ。仲間を守る事が誉れだ。笑え。そ
してその腐れ野郎の死体に唾を吐け!」
「できません! そんなことできない、できない、できない!!」
 叫んで、少女は男の胸板に拳を叩きつけた。渾身の力をこめたのだろうその拳を、男はあえ
て受け止める。唇を引き結んで涙を飲み込み、少女はもう一度拳を振り上げた。
「できない……!」
 弱々しく拳を振り下ろし、少女は男の胸に取りすがる。
 男の服を両手で掴み、硬い布地に顔をうずめ、少女は声を上げて泣き出していた。男は全て
の部下にそうするように、少女の体を抱きしめる。痛むほどに、軋むほどに、決して離さぬと
言うように。
だが、それもほんの数十秒だ。あまり長居はしていられない。
「キャンプに戻るぞ。立てるな?」
 いまだ男の胸に縋ったまま、少女がこくりと頷いた。そして恐る恐る、赤子が親の手を離れ
るように体を離し、立ち上がる。その、少女の破けた戦闘服の上から自身の上着をまきつけて、
男は少女と共にキャンプを目指して森を駈けた。
197名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 21:08:34 ID:bcZgD8pD
「お前か、俺の戦友殺したの」
198名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 00:07:53 ID:I4Gxzxoj
>>195 >>196
いい妄想だ 続けてくれ
199名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 18:24:56 ID:fHuA+nfz
やっぱりいいね、軍人ならではですね。
200名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 20:24:55 ID:QShLLMAw
保守
201名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 06:09:23 ID:x6jC0v/C
実戦経験なしの女の子が戦闘…妄想してみた。前編

J国、平和憲法を持つこの国は最低限度の防衛力しか保持しておらず実戦などと言う言葉は物語の中でしか登場しなかった。
しかし始まりは突然だった。独裁国家が弾道弾を放ったのだ。放たれた飛翔体は不幸にも市街地に着弾。
多数の死者を出した。この事態の数十分後、J国各地でゲリラ・コマンド部隊が攻撃を始めた
警察、原発などを急襲。防衛隊の駐屯地も例外ではなかった。 

J国陸上防衛隊 K駐屯地
朝霞士長は突然爆発音を聞き飛び起きた。サイレンの音、非常放送が入った。
「各員、所属部隊に集合!武装せよ!発砲を許可する!」スピーカーからそんな言葉が聞こえる。
朝霞士長は正門方向を見た。夜明け前の空は赤黒くなっていた。続いて銃声が響きわたる。
急いで戦闘服に着替えると所属部隊に向かった。戦闘装着セット、戦闘防弾チョッキを
着け、廊下で敵を待った。
電気は消され、非戦闘員にも拳銃が支給されていた。車両置き場が爆破されたようで爆発炎上しているのが見えた。
早速銃撃で窓ガラスが割られた。暗闇から銃声が響く。
「いち、にい、ヨシ!」頭を上げて一斉射撃を行った。
202後編:2009/10/12(月) 06:37:41 ID:x6jC0v/C
「撃てないよ!人なんて殺せない!」
「バカ!あいつ等容赦しないぞ!自爆攻撃と急襲掛けて来る奴等なんだ!撃たないと死ぬぞ!」
朝霞千瀬士長は防衛隊に入ってまだ二年三ヶ月しか経っていない。
演習には出た事が有る。しかし人に向かって発砲するわけでも、される訳でもない。
しかし、今は撃たなければ死ぬのだ。そう分かっていても引き金が引けない。
その時、隣の市ヶ谷一士が肩を打ち抜かれて倒れた。
「キャー!智子!シッカリして!」明野一士は半狂乱で叫ぶ。
その時、防火扉が開いた。扉の向こうには…青いジャージの武装した男
ジャージの男がAK47をこちらに向けようとした時思わず発射してしまった。
「ウァァァァァァァ!」彼女は叫びながら引き金を引いた。
小銃は5.56mmの弾を吐き出し、男を血だらけの襤褸にした。
そうこうしている内に銃声が途絶え、夜が開けた。
各地で似たような襲撃があった事を受け、J国政府は初の対外戦争へと踏み切ったのである。
朝霞士長はこの後、PTSDを患い、除隊する事となった。   
203名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 15:14:18 ID:Jm5ARwMU
板を間違ってないか
204名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 21:51:41 ID:8l5z2Uru
冷酷な女武装SSがみたいであります
205名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 13:31:26 ID:B6R5cQCq
女SS「塹壕の深さは1.5m!対空機関砲の弾倉交換は40秒!食事は5分以内
トイレットペーパーは一回につき15cmを厳守!
違反した者は私の教育的指導をこの鞭で受けてもらう…クックック」

少年兵「はぁはぁはぁ…大尉殿、塹壕が掘れました」

女SS「ほぉ……どれどれ」

少年兵(……テディベアがプリントされた定規で測ってる……)

女SS「む、貴様!1.4mしかないぞ!教育的指導!」

ビシバシビシィ!!

少年兵「い、痛い!……はぁはぁ…で、でも気持ちいい!?」

おっさん兵「へへ…大尉殿、トイレットペーパー30p使ってしめぇやした〜」

女SS「銃殺だ。連れて行け」

憲兵「はっ」

おっさん兵「なっ!?え?ま、待って−−−−【銃声】−−はうっ!」

こんな感じでどう?
206名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 20:45:07 ID:9MvJcuDz
>>205
かまわん、続けろ
207名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 18:57:05 ID:AgKVp3Vn
悪ノリした。

助教「オラァ!声出せやコラ!テメエ等ナメてんのか!」
隊員達「レンジャー!!」
助教「次!武装障害走10周だ!もたつくなよ!」
隊員達「レンジャー!!(うわあマジで死ぬ5秒前)」

助教「オラァ!テメー声小せえんだよ!タマ落としたか?確認してやる!!」
隊員A「レンジャー!(ヤバい、気持ち良い。顔が近い、鬼の助教がかわいく見える!)」
隊員達(あいつ!助教に刺激されて喜んでる!うらやましい!あれでも見た目は美女だからな…)
助教「おい、気色わりい笑みを消せ!鼻っ面叩き折るぞボケ!てめえだけ60kgで走るか?ああん?」
隊員A「レンジャー!(顔が赤いなぁ…)」 
208名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 13:06:00 ID:+R4/xlyH
見上げる空は天気晴朗、桜は満開、絵に描いたような青空に、白い雲が浮かぶ様…正に学生から社会人としての第一歩を踏み出すに相応しい朝だった…はずだ。


風変わりな6桁ナンバーのバスが停留所に停まって人を乗せる。
再び走りだし、また何処かで停まり、乗せる。
なんの事はない光景だが、不思議な事に誰一人降りようとはしない。
俺はバスの最後尾に座ってぼんやり車窓を流れる景色を見ていた。
周りを見渡すとしきりに周りに話しかける学生、うつむいているスーツ、物憂げに携帯を触る私服。

バスの中には18〜27歳の男女。
俺と同じく高校を出たばかりの学生から一通り社会の荒波を経験したであろう社会人まで様々男女が乗り込んでいる。
そんな中、運転手とバスガイドだけは見慣れないグリーンを基調とした制服に身を包み、淡々と自らの職務を全うしているようだった。

「なあ…」
俺は隣の席に座って目を閉じているセーラー服に話しかける。
寝ているのだろうか。
黒く、長い髪に白い肌。前髪は切り揃えられ、腰まで達しようかという黒髪を抱くようにじっとしているそいつはまるで人形のようだった。
「…」
「寝てるのか?」
「…うるさい」
開口一番が「…うるさい」とはなかなか失礼なやつだ。
「お前…友達いないだろっ。」
「…だから、何?」
お、少しイラっとしてる。
「俺と友達になろうぜ。」
「…え?」
今度は呆気に取られてるようだ。なかなか単純なやつだな。
「だから、お前友達いないんだろ?だから今から俺とお前は友達だ。」
「…」
おお、眉間にしわが寄ってる。分かりやすいやつだなあ。
「俺の名前は…ま、後でわかるか。だからお前の名前も聞かないよ。よろしくな。」
「――――っ!だっ!誰があんたなんかと――――!」
バスの中にわんわんと響き渡る声、集まる注目、その視線の先は言わずもがな。
拳を握りしめ勢いよく立ち上がったままの彼女はぼむっ!と顔が赤くなり、そのままヘロヘロと椅子にへたりこむ。
「いや、我らが同期は頼もしい限りだな。俺にはそんな度胸はないわ。」
しゅーしゅーと湯気が立ち上る彼女からは応答がない。
うーん、悪いことしたかなあ?
209名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 13:06:22 ID:+R4/xlyH
だが、彼女の一言は澱んでいたバスの思い空気を吹き飛ばすには充分で、皆胸のつかえがとれたかのように周りと談笑を始めた。

やがてゴオ、という音と共にバスはトンネルの淡い橙光に包まれる。
数分はたっただろうか…バスは陽光の世界に飛び出し、次いで飛び込んだ光景に俺や皆の目は釘付けになった。
延々と続く金網と有刺鉄線と桜並木の先、巨大な正門とアーチが目にはいる。
まるで高校の学祭を彷彿とさせる手作りのアーチには
「祝 御入隊♪」とやたらかわいらしい字体で描かれていた。

バスは正門で一度止まり、詰所から…守衛だろうか?銃を担いで迷彩服を着た人が運転手とバスガイドに敬礼し、詰所への合図と共に正門をふさいでいた障害物が除かれた。

正門をくぐる時、俺は少しだけ後ろを振り返った。
見慣れぬ土地のありふれた風景。
ほんの数秒の景色だが、俺はこの風景をずっと忘れないだろう。


その日、俺たち50人は
陸軍中部方面軍管区第2教育団第11×教育大隊第3××共通教育中隊に着隊した。
210名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 13:09:38 ID:+R4/xlyH
なんか変なんですみません。
数年前を思い出しながら書いてるので、おかしい所は多々あると思いますがご了承下されば幸いです。
211名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 17:25:59 ID:uB0YH1X9
続き楽しみにしてる
212名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 23:48:30 ID:rDpT7liG
応援あげ
213名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 04:57:03 ID:Mz5FqlFe
>>210
そんな彼女も今では俺のワイフさ!
って事か…
214名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 12:46:44 ID:AtAv1MCf
戦ヴァルのエロパロは単独スレも無いし、立ててもすぐに廃れ
そうだから、ここに書いちゃっていいですか?
215名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 12:49:55 ID:zZdSU0H6
歓迎します
216名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 13:18:44 ID:HpxLGCx0
>>214
来いよ!
217名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 01:44:29 ID:I73yPLC3
『戦場のヴァルキュリアでエロパロ』スレはあるぞ?検索してみ。
218名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 00:15:10 ID:gqruwoDg
あったのか
219名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 17:04:28 ID:RdadJsBZ
やっと規制抜けたー!
規制の間に何か面白そうなの始まりそうだな。
220名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 13:49:04 ID:uiFcfj38
前線支援あげ
221名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 21:18:12 ID:erEUwb/R
死守
222名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 23:09:22 ID:SOe6rkS4
ナイト・オブザ・スカイ見たよ。このスレに合いそうな内容だったぞ
戦闘機の上でのストリップとか
223名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 18:06:48 ID:wvNO/f5D
ああ、あれか…。
終わり方が唐突すぎてはぃぃ?終わり?って感じだったな。

絵ヅラは良かったがな。
224名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 22:10:34 ID:OhDLZtzb
まぁ、あれはストーリーじゃなくてミラージュを見るもんだしな
225名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 22:34:11 ID:Rza9Equw
戦闘機の販促映像としてはかなり上質
226名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 00:26:14 ID:s9beOcdc
軍服の女性は美しい
227名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 22:42:08 ID:jMpZjoZI
その美しさを投下で表現してくれ
228名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 15:05:41 ID:qCPtzuE3
絵じゃ駄目でありますか?
229名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 15:42:59 ID:2yeVo0xk
>>228かまわん。やれ。軍人ならな。
230名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 19:41:42 ID:ddUi5q17
是非!
231名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 21:49:04 ID:qCPtzuE3
ごめん、この前削除したの忘れてたもんだからロクなの残ってなかった
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org405838.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org405849.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org405859.jpg

誰かこの絵を基になんか書いてくr……書いてください
232名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 23:19:11 ID:g556Jn/a
一番上詳細kwsk
233名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 04:15:21 ID:4cKYua24
え、>>231が描いたの?
……プロ?
234名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 13:45:20 ID:InqDvUZR
一番上と中のやつか。絵上手いな。
話作るなら
民兵組織に入ったら幼なじみのお姉さんが居て、指導係に任命される…という感じか…

  
235名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:51:31 ID:Zfu1YWgP
>>233
そんなわけねーだろwww
一番上は多分姫騎士アンジェリカ
後はどっかで拾った奴なんだ、ごめん
236名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 16:54:37 ID:Oo4THH+f
絵が巧くなって絵も上手くなりたい。

努力しなければ
237名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 18:27:26 ID:4VC4wGnT
保守ネタ





「距離1200、右、ファイア。」
熱い、熱い、とにかく熱い。
空からギラギラ照りつけてやがる太陽が怨めしい。
「了解、撃破!」
「次、距離1300、撃破した後方にもう一両。」
熱砂の舞う前線で貴重なのは海岸線の道だそうだ。
その理由は補給線の確保。
補給が無ければどんな強力な兵器も鉄クズになるからだ。
では、内陸の砂漠の中を行軍すれば?という疑問が浮かぶが、
それはできない。その理由はここの戦場が灼熱の大地だからだ。
内陸のほとんどが、砂、砂、砂…見渡す限りの砂。つまり砂漠なのだ。
こんな所を行軍していたら、エンジンに砂が詰まり、動けなくなった
ところを敵機のカモにされるのがオチだ。
実際に内陸から前線へ物資を補給しようとした部隊は、砂嵐に遭い、
敵軍に物資ごと鹵獲(ろかく)されてしまった。
「え、ど、どこ?どこですか、中尉!?み、見えません!」
海岸線なのだから海軍に補給を協力してもらえば?
と思うが、悲しいかな陸(おか)の軍人は海の軍人とは仲が悪いらしい。
その点は敵軍も同じ様なので問題ないが…
「……あ、あのねー…オープントップの車体に乗ってるんだから…
見えないなら頭上げろ!このマヌケ!」
「は、はいい!す、すいません、すいません!」
私は照準手の少年兵のお尻を蹴った。顔立ちが一番、幼く可愛い少年兵だ。
その可愛い顔で悲鳴をあげるのは、見ていてゾクゾクする。
「中尉ぃ〜撃破された戦車の車体に鉄板立てて、長砲身乗っけた急造品ですから
装備もほとんどスクラップのモノを流用。照準眼鏡も壊れてるのでは?」
とこれは装填手の少年。生意気なところがあり、いかにもヤンチャ面。
だが、こういうのもいい。
「い、今は訓練ですし…ち、中尉も落ち着いて。ね、こいつも反省してますから」
操縦手の少年は落ち着いた雰囲気のある癒し系な甘いマスク。
「訓練?実戦だったら、私達はもう昇天してる、気を抜くな!」
ショタコンな私はもう昇天しちゃいそうだ。三人の少年に見られてるなんて
ものすごく興奮してしまう。常に絶頂状態だ。
いつか、休暇の時に一人ずつ味わってやろう。
「言い訳はいらない!ほら、さっさと装填!ぶっ放せ!撃破しろ!」
そう、早く私に装填して、中でぶっ放して、撃破してほしいの〜♪

〜〜熱砂のロリコン女戦車長の日記より抜粋〜〜
238名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 21:12:22 ID:yXf8kT24
ロリコンというよかショタコンだろw
投下乙
239名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 05:36:00 ID:tro2Wn8f
今読んだ。
遅くなったが投下乙!
240名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:01:21 ID:fqWw6rhE
保守ネタ
熱砂のショタコン戦車長



「カプッツォ砦に敵戦車部隊接近!皆、出撃命令だ!」
「ふへッ!?」
私の言葉に水と共に不味いソーセージの缶詰を吹き出しながら
少年兵達は振り返った。
「ふへッじゃない!出撃だって言ってんでしょーが!
お前らの短砲身砲揉みほぐすぞゴルァ!」
私はおよそ士官とは思えない発言をしながら、少年兵を見回した。
本当は揉むのではなく食べたいが、事が事だけに不可能だ。
すると装填手のヴァルケーが言った。
「え、ええーだって、俺らの中隊って2両しか整備できてないっすよ!?」
「第8戦車連隊第1大隊第1中隊中で2両だ!動けるヤツは動く!
マチルダだろうとも接近でぶっ飛ばすんだよ!」
照準手のベルのお尻をけっ飛ばしながら私は言った。
「あ、ああー我らのまします――――――」
「神への祈りは後にしろ!十字架は敵に突きたてろ!」
操縦手の癒しマスク、ハリーに一喝。
241名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:02:29 ID:fqWw6rhE
「おおおおっアッガーの神よおおおおおお」
いきなり無線手のツィッギーが叫びだした。コイツはウチの戦車で
もう一人の女だが、アラブ系の血が入っているのか褐色の肌をもつ。
「おわっイッギーが狂った!?」
ヴァルケーが後ずさった。
「狂ってないよ!略式で神に祈った!さァ出撃だ!」
そう言ってツィッギーは走り出した。
「おい、コラ。待て、そこの小娘。走る方向逆だから戻って来い来ないと
後ろからその貧弱な尻撃つぞ」
と言い終わる前に私は発砲した。こいつは女だから戦死しても一向に構わない。
大事なショタハーレムの定員を削りやがって。しかも最近はお気に入りの
ベルと仲が良い。むかつくぞ。
「言い終わる前に撃たないで下さい」
「うるさい。さっさと搭乗!短砲身砲だからイッギーお前が装填手をやれ。
ヴォルケーは無線手、いそげ!」
242名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:03:26 ID:fqWw6rhE
私はそう言うと、配置につく歩兵の合間を縫って、戦車へ搭乗した。
「各部チェック!」
「装填機器、同軸機銃異常なし」
「エンジン異常なし」
「照準器、異常なし」
「無線、機銃異常なし。中尉、本部からです」
W号F型は短砲身砲だ。近々、長砲身砲になるって噂があったのにツイてない。
攻撃力はそこそこだが機動力を生かせば、何とかなる
しかし無線を聞いて私は愕然とした。
『こちらナゲール3、敵勢力、戦車40両以上、歩兵多数!死力を尽くせ!』
ナゲール3とは大隊本部のコードネームだ。
243名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:03:55 ID:fqWw6rhE
「……逃げよっか?」
私はボソッと呟いた。
『こちらヤシの木2、中尉、俺達も一緒だ。指揮を頼む。
8・8砲が援護してくれるらしい。』
僚車のパウエルからだ。こいつは階級が少尉だが、同期生で気が合う。
『了解。ああー行くしかないか…ヤシの木1、了解。側面から回り込む。
敵は正面の面が固くて抜けない。掻き回して、側面を狙え。』
『了解。』
ゴゴゴッと動き出す戦車の機動音。
『イッギー、スモーク弾を2、その後、榴弾。歩兵から蹴散らす』
『了解しました。装填完了。』
『戦車、前進!』

>>238指摘サンクス。
「おおおおっアッガーの神よおおおおおお」
いきなり無線手のツィッギーが叫びだした。コイツはウチの戦車で
もう一人の女だが、アラブ系の血が入っているのか褐色の肌をもつ。
「おわっイッギーが狂った!?」
ヴァルケーが後ずさった。
「狂ってないよ!略式で神に祈った!さァ出撃だ!」
そう言ってツィッギーは走り出した。
「おい、コラ。待て、そこの小娘。走る方向逆だから戻って来い来ないと
後ろからその貧弱な尻撃つぞ」
と言い終わる前に私は発砲した。こいつは女だから戦死しても一向に構わない。
大事なショタハーレムの定員を削りやがって。しかも最近はお気に入りの
ベルと仲が良い。むかつくぞ。
「言い終わる前に撃たないで下さい」
「うるさい。さっさと搭乗!短砲身砲だからイッギーお前が装填手をやれ。
ヴォルケーは無線手、いそげ!」
私はそう言うと、配置につく歩兵の合間を縫って、戦車へ搭乗した。
「各部チェック!」
「装填機器、同軸機銃異常なし」
「エンジン異常なし」
「照準器、異常なし」
「無線、機銃異常なし。中尉、本部からです」
W号F型は短砲身砲だ。近々、長砲身砲になるって噂があったのにツイてない。
攻撃力はそこそこだが機動力を生かせば、何とかなる
しかし無線を聞いて私は愕然とした。
『こちらナゲール3、敵勢力、戦車40両以上、歩兵多数!死力を尽くせ!』
ナゲール3とは大隊本部のコードネームだ。
「……逃げよっか?」
私はボソッと呟いた。
『こちらヤシの木2、中尉、俺達も一緒だ。指揮を頼む。
8・8砲が援護してくれるらしい。』
僚車のパウエルからだ。こいつは階級が少尉だが、同期生で気が合う。
『了解。ああー行くしかないか…ヤシの木1、了解。側面から回り込む。
敵は正面の面が固くて抜けない。掻き回して、側面を狙え。』
『了解。』
ゴゴゴッと動き出す戦車の機動音。
『イッギー、スモーク弾を2、その後、榴弾。歩兵から蹴散らす』
『了解しました。装填完了。』
『戦車、前進!』

>>238指摘サンクス。
244名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:57:20 ID:Un+2OW3k
最後、重複ミスった。
スマソ
245名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 23:20:45 ID:0EDgAdj0
乙!
246名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 13:41:21 ID:8GFXbJb3
フォート・カプッツォか…パンフロB型じゃ75mm野砲でマチルダさんと撃ち合いするんだったな(´・ω・`)
247名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 02:24:33 ID:aUg3bOSf
ラインの守りが始まってるのにそれに合わせたSSが書き終わらない
こんなんじゃ投下する前に戦争が終わっちまうぜ
248名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 01:07:36 ID:/4peh4qN
戦車長:戦車前進!
ヤークトティーガーの128oが火を吹くぜ!

ベギャバギッ

操縦手:あ、やべ、転輪折れた

戦:をいよ!?

照準手:弾頭重っマジ重いでーす!
装填手:薬筒もおもーい
戦:早くしろよ!お前ら!イワン来てる来てる!
249名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 01:13:23 ID:/4peh4qN
砲兵長:四人乗りの鉄の棺桶って感じよねぇ…コレ
装填手:リモコンマシンガンだ!ワーイワーイ♪
照準手:コレでイワンの重戦車とかやめてほしいッス。あたしは砲兵ッス
操縦手:右側みえなーい!しかも天国への特等席なんていやー!
250名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 01:20:03 ID:/4peh4qN
戦車長:狭い。狭いぞ同志装填手!こ、こら、
どさくさに紛れて!
装填手:仕方ありませんよ。砲弾だって28発しか積めない砲塔ですから
(ああ、同志中尉のおっぱいが…お尻が密着)

操縦手:くそっバイザーブロックが一番薄いのに最悪だ。



たぶん参戦してた戦車でのやり取り…んなわけないか…
251名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 13:20:08 ID:G7g2MWw9
『ヤシの木1よりナゲール3へ敵戦車、歩兵の後退を確認。』
『こちらナゲール3、こちらも確認した。素晴らしい、奇跡だ!』

「うおっは!天にましまし!ましまし!神様、我々の」
もう野営基地では大騒ぎ。皆、ハイになって、歓喜した。
「ハリー、お前もっと言葉を頭の中で推敲してから喋れよ」
ビールに酔っているハリー。
「うおおおお!ッガッガッガー!!」
「小娘、お前略しすぎだろ」
地面に頭を叩きつけ、伏せしているヤツは相変わらず
戦車で6両、88o砲で3両。それに驚いた敵がさっさと後退してしまったのだ。
峠に侵攻していた敵戦車群など壊滅的な打撃を受けたらしい。
それも関係しているのかもしれないが。とにかく奇跡だった。
「中尉にカンパーイ!見事な指揮でしたァ!」
不味い缶詰も乾物も、この時ばかりはパーティーの御馳走に見えた。
「しっかし…まァ…こんな戦果は騎士鉄十字章モンですね、中尉。」
ヴァルケーが缶詰のソーセージを食べながら言った。
「神の啓示を受けた。中尉は『カプッツォの雌豚』だ」
どーんと胸を張ってツィッギーが言った。
「だぁれがメス豚だ、この処女野郎!必殺短砲身砲パンチ」
「痛ッ!パンチと言いながら蹴らないで」
しくしくとウソ泣きするツィッギーにヴェルケーが呟く。
「せめて獅子にしとこうぜ…な、イッギー」
「うう、私は処女違うのに…ベルと…」
――――――あんだと?私の耳がありえない単語を拾い上げた。
「おい、小娘。お前は非処女なのか、しかもベルと寝たって?」
「違う」
なんだ。ホッとした。まったく紛らわしいんだよこの小娘。
「私の処女をあげて、ベルの童貞貰った」
聞きました、奥さん?
既にハリーとヴァルケーはベルを連れて全力疾走している。
「あ、聞こえなかった。もう一回言ってくれるかな?」
「中尉、顔が魔神みたい」

〜〜熱砂のショタコン女戦車長〜〜
252名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 01:25:40 ID:Oe4tBYmT
空挺系ヒロインとか来てくれないかな…
忽ち開く百千の真白き薔薇の花のよう…見よ落下傘空を行く♪
見よ落下傘空を行く♪見よ落下傘空を行く♪って感じの

もしくはヘリボン系ヒロインとか…
水中装備着てヘリから海中にダイブして泳いで上陸したりする娘とか
ミニガンの援護と共にファストロープ降下で突入する娘とか色々いるけどな…     
253名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 20:46:53 ID:6PeYJPlc
ヘリ系は多分「ホント 戦場は地獄だぜ!」か「ぶらっくほーくだうん!ぶらっくほーくだうん!」のどっちかにしかならない気がw
254名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 02:57:58 ID:ARMttpIr
…想像した。

ドアガンをブッ放して車や兵士をミンチに変えている女の子と新兵の会話
「オラオラ、呻き声聞かせろ!オラァ!テメエらの粗末なモンじゃアタシゃ落ちないぜベイビー!」
「イヤイヤ、煽らないで下さい!マジで落とされたらどうすんですか!戦場に着く前に撃墜は勘弁!」
「何シケたこと言ってんだ、童貞!大方、女一人落とすのに貢ぎまくって土台固めしてから口説くクチか?」
「ちょ…年頃の女の子がそんな事言っちゃいけません!」
「お前は降りて袋叩きにされる気か?貴重な歩兵使って目標まで行くか?だからM2で潰すんだ!」
「目標レイヴンまで5分だ!お忘れ物の無いようにご注意下さい!乗務員はLZの監視掃討を行って下さい。」
「拾ってやるから行ってこい、必ず生きて帰って来い。幸運を!」
「行くぞ新入り!ネーちゃんに惚れたか?だったら終わらせてベッドに誘え!」
255名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 00:36:51 ID:9iYOdFAx
浮上せよ!
256名無しさん@ピンキー:2010/01/03(日) 07:21:29 ID:F4D43xKg
浮上せよ!
…という事は潜水艦モノか…

女だけの閉鎖空間、
寄港どころか浮上すら殆どできず…

突如発せられた「浮上せよ」の通信
そこで彼女たちの見たものとは?
257名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 04:28:42 ID:5l9bRxQk
潜水艦モノ…考えてみた。

小型潜水艇6号…沿岸警備用に開発された試作艦。
技術士官、乗員合わせて15名。女性十三名、男性二名
航走試験中トラブルが発生。浮上できなくなる。
そこで「もはやこれまで」とみた艇長は艇内の様子を書き残す。
沈みゆく艇内で男女はどうせ死ぬならと…しかしギリギリで潜水母艦に救出された。
数カ月後、女性艇員達が妊娠していることが発覚し、艇長以下数名を尋問。
本当の記録を見た上層部を卒倒させる事となる…
軍は既に偽造した記録を元に「一糸乱れず、たじろがず、救助を待った」と宣伝していたからだ…  


元ネタ…第六潜水艇 佐久間艇長    
258名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 18:14:53 ID:a7Fs5Icw
「サカタ二等兵、誰も来ませんね。」
「だろうな、こんなへんぴな場所に誰が来る。せいぜい巡察か不審者か交代要員だよ。」
駐屯地の端の窪みの中の苔蒸した築60年の弾薬庫の前に二人の兵士がいる。
彼らは今、歩哨に立っている。隊舎もその他施設もかなり離れており、通る者は皆無だ。
「そうだヤマシタ二等兵、もし巡察や誰か来たらどうするか覚えているか?」
「誰何し、応答なき場合は射殺及び刺殺します。それぐらい覚えてますよぅ。」
小柄な童顔の女性兵士は答えた後、頬を膨らませた。
「よろしい。つーてもこんな街ん中で破壊活動(工作)する奴なんぞ出ねーよ。」
「むしろ、発砲したらそれだけで問題ですよねー。ところで、上番の時間いつでしたっけ。」
「0000…零時ジャストだ。後三時間。どうした?ヤマシタ。」
「サカタ二等兵…いや、シュウちゃん。どうせ誰もこないんだし久々にイイことしない?」
「トモコ…オマエなぁ…弾薬庫の陰はそりゃ周りから見えないけどさ、歩哨居ないのはまずいだろ。」
「とか言ってさ、もうここはカッチカチなのに…我慢は良くないよ?今逃したらしばらく出来なくなるよ?」
二人は煉瓦作りの建物と斜面の隙間に入っていった。
259名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 19:06:06 ID:a7Fs5Icw
女性兵士は鉄帽を取って地面に置いた後キスをした。鉄帽同士が触れ合って音がするからだ。
「じゃ、脱がすぞ?良いか?」男は女の第一ボタンに手を掛けた。
「良いけど、第三ボタンまでね。すぐ戻れるように。」女はL字ライトを消すとそういった。
闇の中男は手探りでボタンを外した。そしてブラジャーをずらして早速乳首を嘗めた。
「ひゃん!…続けて。…………ん…………あっ…」女はいきなりの刺激に声を上げたが続きを要求する。
ハァッ…ペチョペチョ………チュッチュッ…男は舌先で音を立てながらなめ、吸った。
それが二分ほど続いたとき、女が震えた。それを感じ取った男はベルトを外し女のズボンを下げた。
女の下着はもう湿っていた。もし月光が当たっていたなら、大きな染みが出来ているのが分かっただろう。
男は濡れた下着を下げると女の秘裂をなめた。汗と愛液の混ざった味がした。
そして左足から女のズボンと下着を抜き取ると男はズボンのチャックを開けた。
そして男は下半身を露出すると、女の膣に陰茎を挿入した。
「アッ…アッ……アン…ァ…アッ…」まるで野砲の用に腰を振る男、女は砲声の用に呼応して喘ぐ。
暫くし、男が射精の時を迎えた。
  
260名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 19:43:10 ID:a7Fs5Icw
男は膣の中に射精した。女は最初から分かっていたのか特に騒ぐこともなかった。
そして数刻遅れて女が絶頂を迎えた。二人はそのままじっと抱き合っていたが、陰茎が萎えると離れた。
服を着て外した装具をまた付けると表の弾薬庫前に立った。
男は男性兵士に、女は女性兵士に戻っていた。しかし、女性兵士は冷たい下着に震えていた。
初夏とはいえ、まだ夜風は冷たかった。二人は残りの一時間半持ち場を守った。
そして向こうから小型トラック…ジープの様な車両がやってきた。四名乗車していた。
シマダ一等兵と北国生まれのフユキ兵長がやって来た。彼らが交代要員だ。
彼は震えているヤマシタ二等兵にこう声を掛けた。
「都会っ子は軟弱だなあ。アソコなんぞ寒冷手当あってもやりたくない位寒かったからな!」
運転手が目で「さっさと申し送りしろ!」と合図してきた。
二人はコガ兵長の「実弾点検」の声で5.56mm小銃弾を申し送り、実包のパッケージを渡す。
そして手順を経て申し送りを終了した。
二人は後部座席に座り、弾薬庫を後にした。後には下番した二人の歩哨が残された。

【終】保守ネタ。
※これはフィクションであり、実在の組織の勤務形態とは異なる場所もあり
261名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 10:48:56 ID:KzqVOWNh
某潜水艦ゲーの2が出たのに前作でエッチできなかった
機関長が出演してないよ!
これは自分で作るしかない!ので保守ネタ気味の短編



「か、艦長…冗談が過ぎますって…」
帰投後の潜水艦内、今は夜更けでドッグに入っている艦内には俺と
機関長であるヴィルしかいない。
「俺は真剣なんだがな」
「スティアはどうするんですか?」
「――――――少尉は関係ない」
「……ほんとに?スティアの方が器量良いですし、おっぱいも、お尻も
大きいですよ。ノール家の長女ですしね。あたしぁ、町工場の娘。
貴族の艦長にはスティアの方がお似合いですって」
「俺は――――――!」
アアルは声を上げて言った。
「俺は油と汗にまみれた君がいい。においフェチなんだ!」
「艦長、それあたしの地雷ですよ」

アアル艦長、殉職。
262名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 02:18:48 ID:phjEPLBG
見事に機雷に接触したな
263名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 18:17:57 ID:KscxKK5/
被害甚大!メインタンクブロー

     
264歩兵の本領 替え歌:2010/01/22(金) 22:32:36 ID:3G+4emwG
パンツの色はどんな色♪
華は真っ赤にこう言った♪
変態!変態!寄らないで♪
スケベ心にグッとくる♪

股間の銃は使われず、給与の額は僅かなり♪
すべてその数二十万♪
パチンコ飲酒に費やして♪
女に使う金がない♪

「〜♪はっ!居たの!何時から!」
「あんたが歌い始めた辺りからよ!変態。」
「ちょっ…待てって!昔、士長に教わっただけで俺作詞してないから!」
「じゃあ今度の外出の時奢ってくれるよね。金欠童貞君。」 

保守
265名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 23:43:07 ID:X9jLalqL
hosu
266名無しさん@ピンキー:2010/01/26(火) 23:59:37 ID:KWaxG5KX
俺も潜水艦もので考えてみた。
今回は最初の方を保守代わりに
267名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 00:00:14 ID:MZFnskHe
 潜水艦伊188は突然の命令で夜間のマキナタ諸島沖に浮上した。
 「電池充電もしとけ。皆はお客さんを探すんだ」
 艦長の佐藤美代大尉は副長の飯田琴美中尉にこの伊188の電池充電の為にディーゼル機関を動かす事を命じた。同時に甲板に出た将兵に見張りを命じる。
 空は曇りであるが満ちかけた月が雲の合間から光を差し海面を照らしていた。
 「艦長。9時方向からボートらしき物が接近します」
 美代の隣で見張りをしている兵が双眼鏡を見ながら報告する。美代はその方向へ首から提げた双眼鏡で確認する。
 穏やかな海面に反射した月明かりに人が乗ったらしいボートの影が見えた。

 「杉田誠司大尉以下12名。これで全員です」
 甲板に全員が上がった客達の1人が美代に敬礼しながら申告した。
 「ご苦労。私は艦長の佐藤大尉だ」
 美代も敬礼して返す。そしてよく杉田を含む12人を見た。
 杉田と合わせて7人はカーキ色の航空衣を着ていた。残る5人は陸戦隊であるのか緑の第三種軍装を着ている。彼らは孤島に残された最後の将兵だった。そんな彼らを収容し内地へ運ぶのが今回の急な任務だった。
 「佐藤大尉。これから入る艦内ではくれぐれも理性を保つように」
 美代は真剣に杉田へ注意した。杉田は合点がいかない顔をしたが伊188の艦内に入ってそれを理解した。
 「おお。これはこれは」
 杉田はその光景に圧倒された。そこは見慣れた軍隊の風景ではあったが決定的に違う所があった。
 それは艦内に居る全員が女だと言う事だ。
 「だから艦長はくれぐれも理性を保てと言った訳ですな」
 第三種軍装を着た塚田少尉は根が真面目せいか女将兵に目をそむけつつ言った。
 「こんな軍艦初めてだ…」
 まだあどけない顔の松山太一郎二等飛行兵が軍服姿の女達をあっちこっち視線を向けている。
 「とはいえ眼福に違いはない」
 杉田と同期の藤堂平祐少尉が嬉しそうに周囲を見ながら言う。
 「藤堂。ここで手出すなよ寄港したらすぐに軍法会議ものだ」
 杉田は浮名で華々しい藤堂に釘を刺した。
 「分かってますって、軍服着た女じゃ手を出す気にはならん」
 藤堂は笑いながら答えた。それに杉田は疑い気味に「本当かあ?」とからかった。

 「みんなはどうだ?」
 美代は琴美に尋ねた。杉田達を収容してから三日目の事だ。
 「やはり、落ち着かなくなってます」
 琴美は深刻そうに言った。
 「やはりな。出港してから1ヶ月。途中で敵艦に追われたのが2回もあったのだ。欲求不満も溜まるだろう」
 美代は仕方ないと言ったが琴美は納得できないという顔をした。
 「しかし、これでは規律が乱れます。いっその事あの男達を倉庫に閉じ込めて隔離すべきです」
 「おいおい。激戦を生き残った搭乗員と陸戦隊の連中にそんな仕打ちはないだろ」
 「艦長。あの人達には心苦しいですがこのまま状況が悪化して気が緩めば我が艦は自滅してしまいます」
 乗員の規律維持は副長の仕事ではあるとはいえ過激な言動に美代は琴美も相当に溜まっているんだなと思えてならない。多分に欲求を自律できそうに無いから倉庫に閉じ込めようという発想になったのだろう。
 「分かった。このままではまずい。ならばガス抜きをせねばなるまい」
 美代は琴美をなだめるように言った。
 「ガス抜きですか?」
 「その為にまずは航海長を呼んでくれ」

 翌日の朝。乗員と杉田たち同乗者も朝食を終えた時であった。
 この潜水艦伊188がどすんと尻餅でもついたような衝撃を皆は感じた。
 「どうしたんだ?まさか座礁したのか?」
 杉田達はこの衝撃が座礁によるものと思い不安になった。
 「大丈夫だ。我が艦は海底に着底しただけだ」
 杉田達の所へ美代が現れ状況を説明した。杉田達はこの伊188の乗員達とは別の部屋に居る。
 「敵に発見されたのですか?」
 塚田は不安げな顔で尋ねた。
 「いや違う。今日はある事をするので海底に我が艦を置いているのだ。そのある事を貴方達に頼みたい」
 神妙な顔で美代が杉田へ言った。
 「それは何でしょうか佐藤大尉」
 杉田は何を言うのか予想が出来す美代と同じように表情を固くした。
 「我が艦の乗員みんなの慰安を頼みたい」
 美代は真面目に言ったが杉田の表情は呆気に取られて緩んだ顔になっていた。
268名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 20:10:53 ID:/DQm+swS
い、慰安を…ゴクリ
269名無しさん@ピンキー:2010/01/28(木) 02:10:45 ID:2VVEzuoR
男女比をかんがえると男1に対して女4〜5くらいだな
羨ましすぎる。
……ニオイとかキツそうだけど
270名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 02:54:18 ID:hQFI9O9L
水がとても必要になりますな…。
情事の跡を潮で流すのは無理ですし、なにより双方とも喉が乾きます。
271名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 14:25:55 ID:eTyfRXtR
オーストリア「ハンガリーと併合(つなが)ったまま二重帝国を築くなんて、頭がフットーしそうだよおっっ」
272名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 08:59:00 ID:Kzb2rf7v
誤爆?
273名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 00:15:03 ID:EhMQCM71
ちょっと保守ネタを、

女性工作員「提督、今回の任務は?」
提督「今回の任務は、原住民に囲まれ、弾が無く孤立している部隊がいる。ここの原住民は、裸体の女性には手を出さないそうだ。なので君に弾薬を部隊に届けてほしい。」
女性工作員「どうやって、・・・まっ、まさか!!」
提督「そうだ。君の×××に入れていく。防水用の弾薬袋に弾を入れる。」
女性工作員「で、でも私、処女なんですが、・・・。」
提督「大丈夫だ、君の好みは調査済みだ。・・・ん?どうした?」
かなり顔を赤らめて、
女性工作員「わ、私提督がいい。」
もっと顔を赤らめながら言う女性工作員。
提督「それを待っていた。さあ、ベットへ行こう。」
女性工作員「は、はい。」


続くかも。
274名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 00:24:04 ID:wVQvSYYf
「立て!このファシスト野郎が!」
「貴様達が我々の同胞に対して何をしたと思っている!さっさと一列に並べ!」
275名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 00:34:10 ID:J2n7lZ1a
「悪魔め、きっと電気を使ってる」
ですね、分かります。
276名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 18:13:56 ID:bELgJOli
277名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 14:56:20 ID:5TlD6JhZ
しつこいw
278名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 02:23:39 ID:7gU+kOth
軍靴で踏んづけられてぇ
279名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 21:05:58 ID:ht1KI3iK
ぐりぐりぐり・・・
280名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 22:51:46 ID:ffguJcCm
35kを若干超えるくらいのネタを投下させていただきます。

最近、このスレでも流行の兆しを見せているような気がする海モノです。
一応、純愛のつもり。

なんとなく嫌な予感のする方は、NGワードに
「鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり」をご指定ください。

全部で22分割。そのうち、エロパートは14〜21あたりの予定です。

では。
281鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (1):2010/02/26(金) 22:52:35 ID:ffguJcCm
 狭い艇内に電動機の作動音が響く。
 私の前には座席に腰掛けた人影があり、計器をにらみながら操縦舵に微妙な加減を加えている。
本艇の操縦士、艇付だ。
 私は、前方にいる艇付に命令する。
「ツリム上げ。潜望鏡深度」
 騒音の中、かろうじて相手に聞こえるか。というくらいの小さな声で。
「潜望鏡深度、よーそろー」
 相手の返事も、なんとか聞き取れるくらいの小さな声だった。
 ただし、女の声。
 二人乗りの特殊潜行艇"海龍"に、私は艇長として。彼女は艇付として乗り込んでいるのだ。
「潜望鏡深度、よし」
 計器を見ながら、艇付が返答する。
 私は潜望鏡を引き上げると、潜航中に外界を視認できる唯一の手段であるそれを覗いた。
 波間からわずかに突き出した潜望鏡から得られる情報は少ない。だが、私はほぼ正面。
一時方向に船影があるのを発見した。
 ほんのわずかな時間でその船を観察し、すぐに潜望鏡をしまう。
 相手は商船。軍艦ではない。進行方向は本艇とほぼ向かい合わせ。
だが、進行するに従い離れていくような航路を取っている。
 私は頭の中に海図を描き、商船と私の艇の針路が重なる場所を計算する。
あの船の船腹にぶつけるには、今すぐに舵を切らねばならない。
「艇付、面舵。針路○三八」
「おもーかーじ」
 羅針盤が示す角度を睨みながら、艇付は慎重に舵の操作を行っている。
 わずかに見える羅針盤の示す角度が、○三八に近づいたあたりで、艇付は舵を戻すと、
当て舵を取る。
 羅針盤が○三八を少し越えたか。と思うと、越えた分を直ちに取り戻して、
ぴたり○三八を示すのが見えた。
「定針。針路○三八」
282鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (2):2010/02/26(金) 22:53:05 ID:ffguJcCm
 艇付が海龍の針路を変えている間、私は頭に描いた海図で、
商船に命中させる公算をはじき出していた。
 こちらが現在の針路と速度を維持したままと仮定して、
相手が変針したり速度を変えたりしなければ、ほぼ間違いなく命中するはずだ。
 もう一度、ちらりと潜望鏡を出して、獲物である商船の様子を確認する。
こちらに気づいた様子は無い。
「艇付。注水、潜舵下げ。深度二○」
「深度二○」
 前後部のタンクに海水が入り、潜舵が動く音が聞こえる。
「深度二○」
「艇付、増速。強速となせ」
「強速、よーそろー」
 電動機の回転速度が増して、海龍がさらに行き足をつけるのを感じる。
 加速中の艇の外から、本艇が出している騒音以外の音が響いてくる。
 これは、海中で推進器が回転することで発生する騒音だ。
つまり、我が艇は確実に商船に近づいている。
 艇の左前方から聞こえてくるそれが、徐々に艇の右後方に移動するのを
ずっと聞き耳をたてて注意しながら。無言のまま艇を直進させる。
 そろそろ頃合だと思った時点で、艇付に浮上を命じた。
「艇付、浮上しよう」
「浮上。よーそろー」
 艇が浮上すると同時に、私は潜望鏡を引き上げて後方を視認した。
 驚くほど近くに商船――に見立てた大型漁船――が見える。
最近は敵の攻撃が激しくて、近海ですら航行が難しくなっているというのに、
大盤振る舞いの訓練だった。
 我々の艇が通った航跡は、見事に商船の航路を貫いていた。
これが本番ならば、敵船を見事轟沈させていたことだろう。
 私は、額に浮かんだ汗を軍手で拭うと、艇付に声をかけた。
「艇付、命中は確実と思う。よくやった」
「本当でありますか? 嬉しくあります」
 その返答は、心から嬉しいのだとわかるほど、喜びに満ち溢れていた。
283鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (3):2010/02/26(金) 22:53:41 ID:ffguJcCm
 判定は、基地に戻った後の訓練講評で伝えられた。
「命中と判定した艇は、第六、第七、第一二の三艇だ。
 接近できたが外れた艇は、第一、第四、第五の三艇。
 残りは敵に発見され、接近することができずに撃沈されたものと判定する。
 特に第一一艇、司令搭が海面から常時突き出ていては、『我、ここに在り』と
 旗を掲げながら突撃しているのと変わらんぞ!」
 叱責された第一一号艇以外の訓練生が、一斉に笑う。
 私たち乗るの第一二号艇は、一応、笑える組に入っていた。
 ただ、私も艇付も笑ってはいない。
「本日を持って諸君らの訓練を終了とする。本日の訓練で得た経験を生かし、
 実戦では必ず敵艦への攻撃に成功してくれると確信している。解散!」
 教官から開放され、私たち訓練生は兵舎へと戻ろうとしていた。
いや、先ほどの教官の話からすると、もう、訓練生ではないのかもしれない。
「艇付。ご苦労だった。今日はもう、休んでいい」
 傍らに控えていた艇付に笑顔を向けてそう言うと、艇付は怪訝そうな顔をした。
そして、問われる。
「少尉は、いかがなされるのですか?」
 私を呼ぶときに"殿"がつかないのは、省くように言ってあるからだ。
知らぬ人が聞けば不躾に思えるかもしれないが、殿などつけられると、
なんだかくすぐったくて仕方ない。
「私は、艇の整備を行うつもりだが」
「じ、自分もご一緒します!」
 艇付の少し怒っているかのように力いっぱいで元気な申し出に、
少々気圧され気味に答える。
「ああ、うん。それは、まことにありがとう」
 その返事を聞いた艇付は、笑顔を浮かべて敬礼すると、愛艇へと走っていった。
 課業時間はとっくに過ぎている。だから、休んでも文句は言われないのだが。
訓練もこれで終わりとわかると、すぐに休む気にはなれなかった。
戦局が戦局だけに、いつ出撃となるかわからない。だから、とにかく、努力をしなければ。
284鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (4):2010/02/26(金) 22:54:10 ID:ffguJcCm
 そんな私の肩を掴む者がいた。
「よう、橘。なかなかの成績だったみたいだな?」
 振り返ると、第一一号艇の艇長、伊藤少尉がいた。
 私は、少し警戒しながら答える。
「ああ。私の一二号艇の艇付はとびきり優秀だからね。
 私は我侭を言うだけでいいから、かなり楽だよ」
 私と伊藤少尉との間には、ちょっとした因縁がある。
 沖縄が落ち、九州に連合軍が上陸する状況下にあっては、
もはや銃後と前線などと区別をつけていられなくなり、それまでの後方勤務だけではなく、
前線にも女性が登場するようになってきた。
あげく、この部隊のように、特別攻撃を実施する部隊にも女性が志願して配属される有様だ。
 一億総特攻。まさにその先駆けというやつだ。
 女性が戦闘部隊に配属されることになったものの、
男性と女性は別にして部隊を編成するのが原則になっていた。
しかし、どうしても人数が合わない場合がある。
その結果、余った男女で部隊が編成されることになった。
私たちの部隊は、その余った男女で編成されている部隊であった。
 さらに言うと、一人で乗り込む回天とは違い、二人で乗り込むことになる海龍は、
男性または女性のいずれかに性別を統一した艇員で操られるはずだった。
だが、余った男女がそれぞれ奇数の場合はどうなるのか。
当然、男女が乗り組む艇が誕生することになる。
 私たちの艇は、丁度、その余った男女の、さらなる余りであった。
 それを題材にして、伊藤少尉は、
「橘艇長と桐沢艇付の乗る第一二号艇は、狭い艇内にも関わらず、
訓練中に男女の営みに励んでおるために、成績不良で云々」
などという卑猥で下劣な冗談を飛ばしてくれた。
 それが、酒の席でならば、まだ笑って許せたものを。
 素面でそれを言われては。黙っていられるはずがない。
 何よりも、必死にがんばってくれている艇付を侮辱しているのが許せなかった。
 結果、私と彼は"転んでしまったにしては不自然なほど多い痣"を全身に浮かべて、
翌日の訓練に参加することになった。
285鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (5):2010/02/26(金) 22:54:38 ID:ffguJcCm
 それ以来、お互いに干渉しない。という関係が続いている。
 なのに。
 彼から話しかけてきた理由は何だろう。
「潜舵と計器に異常があってな。下手に潜るわけにはいかなかったんだよ。
それがなければ、命中した艇の中に、一一号が含まれていたはずなんだがな」
「そいつは……」
 私は苦笑した。艇の面倒を自分はまったく見ていない。
と、宣言しているようなものだからだ。
「まあ、本番では失敗しないさ。見てろよ」
「ああ、お互いにがんばろう」
 最後に、敬礼を交わすと、伊藤少尉は自分の艇へと歩いて去って行く。
 今のは、和解の合図だろうか。
 いずれにせよ、私にできることは一つだけ。
 男と女の艇だから上手く行かない。などと言われないように、
最高の成果を見せ続けることだ。
 大丈夫。私の傍らには、控えめに見ても立派で優秀な艇付が控えているのだから。
 歩み寄った第一二号艇には、桐沢艇付と整備班が取り付いて作業してくれている。
私は、彼女たちの中に飛び込むと、整備作業に加わった。
「では、始めようか」
「はい、少尉!」
 整備班とともに愛艇の整備を終えて。兵舎に戻った私たちに突きつけられたものは、
出撃命令だった。九十九里沖に、米英の機動艦隊が輸送船団を伴って進出しているという。
 いよいよだ。
286鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (6):2010/02/26(金) 22:55:12 ID:ffguJcCm
 翌日。
 その姿に気づいたのは、偶然だった。
 出撃を明後日に控え、両親への最後の手紙を書き終えた私は、
ぶらぶらとあても無く基地の周囲を散歩していた。
 外出許可も出ているので、実家に戻ってもよかったのだが、あえてそうはしなかった。
今生のお別れになどと言い出してしまえば、軍事機密の漏洩になってしまうし、
だからと言って、出撃を隠して会うのもどうかと思えたのだ。
 それに、鉄道もまともに運行できていない昨今の情勢下にあって、
たった一日の外出許可で、無事に実家へとたどり着き、
そして、ここまで戻ってこれる保証など、どこにも無い。
 同僚達の中には、歩いて会いに行けるような距離に実家がある者の他には、
最期の思い出にと皆で近くの町に繰り出す者もいれば、同じ基地で訓練に励んだ性別の違う同僚に、
これまでずっと胸に秘めていた思いを告白しようなどと企む者もいた。
まあ、最後の例の大半はあっけなく轟沈してしまったようだが、
中には見事標的に命中という幸運な者もいたようだ。
 そのいずれにも組していない私は、ただ静かな場所を求めて歩いているだけだったのだが、
私が密かに通っていた、あたりを一望できる海辺の丘に、先客がいるとは思わなかった。
 見知った相手でもあるし、声をかけねば失礼だろう。
そう思った私は、海を見ながら静かに座るその人に声をかけた。
 今は出撃前の最後の休暇中だ。だから、あえて苗字で呼ぶ。
「やあ、桐沢君」
「少尉!」
 顔のまわりを不自然になでてから。
あわてて立ち上がり、敬礼しようとする艇付を片手で制して。
「いや、今はお互いに私的な時間だから、堅苦しいのはやめよう」
「は、はい」
 それでもかしこまっている艇付の隣に立って、ともに座るようにうながすと、
彼女と同じく海を眺める。
 頬をなでる潮風が心地よい。
287鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (7):2010/02/26(金) 22:55:37 ID:ffguJcCm
 同じように、静かに海を見ている桐沢艇付に、素朴な疑問を投げかけた。
「海を、見ていたのかい?」
「はい。私、海が好きです」
 そう言いながらじっと海を見つめる艇付は、どこか憂いを帯びた表情を浮かべている。
「そうか」
 続けて、彼女の姿をみとめたときに、ふと思った疑問をぶつけてみる。
「ご家族に、挨拶には行かないのかい?」
 艇付は急にうつむいて。
「……もう、誰もいませんから」
 そう、苦しげにつぶやく。
 ちらりと見える表情は、苦痛そのもので。
「す、すまない。知らなかった……」
 思わず、頭を下げて謝る。
「あ、い、いえ。少尉。その、私も、話してませんでしたから!」
 そう言いながら、私の頬に触れて顔を上げさせようとする艇付の手は、
潮風に吹かれすぎたのか、少し冷たかった。
 その手に誘われるように顔を上げた私の目に、艇付の顔が近くに映る。
 艇付は、瞳にわずかだが涙を浮かべている。
 その頬には、涙が伝った跡が残っていた。
「泣いて、いたのか?」
「泣いてません!」
 その言葉とは裏腹に、艇付の瞳からはぽろぽろと涙がこぼれる。
私が顔を出してから、今までずっと泣くのを我慢していたのだろうか?
「ほら、泣いてるじゃないか」
 思わず、その涙を指で拭う。
 だが、彼女の涙は止まらない。
「ち、違います!」
 力強く否定するその様子を見て。私の心の奥にある思いが、思わず口に出てしまう。
「……怖いのかい?」
「怖くなんて、ありません!」
 それは、拒絶とも取れるくらい強い口調の返事であった。
「家族の仇を討てるんです。怖くなんて、ありません!」
 気丈にもそう言い放つ艇付であったが、嗚咽はさらに激しくなって。
 さらに、潮風にのって、ふわりとやわらかくて甘い女の髪の香りがただよう。
288鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (8):2010/02/26(金) 22:56:02 ID:ffguJcCm
 瞬間、私は胸を撃ち抜かれたような感覚にとらわれた。
 ああ、この女性は。
 なんと、儚い存在なのだろう。

 気がつけば、私は彼女を抱き寄せていた。
 私の肩に頬を寄せた彼女は、少し驚いた表情を見せている。
「しょ、少尉!?」
 狭い艇内では邪魔だからと、ばっさり切り落としてしまった彼女の髪を、
やさしくなでる。
 上官にいきなり抱き寄せられて、髪をなでられているという状況に、
とまどいを見せていた艇付も、やがてそれを素直に受け入れて、なでられるがままになっている。
「ねえ、桐沢君」
「は、はい!」
「明後日の出撃。かならず成功させようね」
「はい!」
 出撃の成功。それは、そのまま死を意味しているのだが。
 彼女ははっきりと肯定の返事をしてくれた。
 そして、そのとき彼女が見せた心からの笑顔が、私の心の奥に眠っていたとある感情を、
完全に呼び起こすことになった。
 桐沢君とは、互いに性別を意識することなく、ただ、海軍軍人として、
国民と陛下が海軍に寄せる期待に応えるべく、最善を尽くそうと誓った間だ。
 当然、これまでの付き合いも、男女という性別の違いを、
可能な限り意識せずに過ごしてきた。そして、それは非常にうまく行っていた。
 たった今、私が、彼女が備える女性としての素敵な魅力に気づくまでは。
 彼女は、艇付としては隊の中でもとびきり優秀だと、私は信じて疑わない。
彼女が第一二号艇の艇付をしてくれているおかげで、
自分は艇の指揮に専念できると言っても過言ではないのだ。
 そして、気づいてみれば、彼女は女性としても非常に魅力的で可愛らしい存在だった。
 凛とした雰囲気を身にまといながらも、どこか可愛らしさを失っていない。
そんな性格が可愛らしいし、顔は美形というほどではないが、
これっぽっちも魅力を感じぬような酷い造りでもない。
どちらかと言えば、顔の造りよりも、浮かべる表情に魅力がある女性だ。
 体型はまだ発展途上な雰囲気だが、年齢のことを考えれば、
標準的な発育状況と言っていいだろう。
289鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (9):2010/02/26(金) 22:56:28 ID:ffguJcCm
 まあ、そんなことは些細なことだ。
 重要なことは、私は、艇付――桐沢君を、一人の女性として好きになってしまったということだ。
 一度それに気づいてしまうと、これまで二人で過ごしてきた時間が、
とても貴重なものに思えてくるから不思議なものだ。
 そして、明後日には何もかもが終わってしまうという事実が、
私をかなり大胆な行動に走らせることになった。

「桐沢君。ちょっと、困ったことになった」
 抱き寄せた艇付の表情をうかがいながら、つぶやくように切り出す。
「ど、どうなさったのですか?」
 真剣な表情に変わった艇付の顔を見て。
私は、自分が彼女を欲していることを強く認識させられることになった。
 だから。
 思ったことを、そのまま伝える。
「どうやら、私は、君のことをかなり好いているらしい」
「ええっ!?」
 初めは真剣に聞いていた艇付も、話の内容があまりにも唐突過ぎたのか、
目を白黒させて驚いている。
 そんな彼女に、私はさらに無理なことを言い出していた。
「どうだろう。明後日の出撃のときは、艇長と艇付ではなく、恋人。
 いや、夫婦として出撃してみないか?」
「ええええっ!!!!」
 驚くのも無理はない。正直、切り出した私自身も驚いているのだから。
 ただ、自分たちの運命は明後日までと決まっているこの状況下だ。
少しくらい、自分の気持ちに正直に生きてみたって、いいじゃないか。そう思った。
 だから、思ったままを正直に言葉にしたのだが。
 それを聞いた艇付は、完全にうつむいてしまっていた。
 この沈黙が気まずい。
290鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (10):2010/02/26(金) 22:56:52 ID:ffguJcCm
「ず、ずるいです……」
 かなりの時間をかけ、たったそれだけだったが、とにかく、彼女は答えてくれた。
「うん。確かに。階級が上なのをいいことに、こんなお願いするなんて。
 我ながら、酷いものだと思うけど――」
「ち、違います!」
 艇付は顔をあげると、必死になって反論してくる。だが、私と目が合った瞬間、
再び視線をそらしてしまう。
 再びの沈黙の後、彼女は声を絞り出すようにして話はじめた。
「他の人から、『男と女だから駄目なんだ』なんて言われないように。
 と、二人でがんばってきましたよね?」
「ああ、そうだね」
 確かに。私たちは、お国のためにという思いは当然として、
伊藤少尉たちの猥談のネタにされるようなことが無いようにと、必死になって努力してきた。
「だから、私、少尉のことを、素敵な人だな。
 って思っても、決して愛してはいけない人だと思って、
 男性として見ないように努力してきたのに……」
 私の顔を見上げてそう言い切ったかと思うと、艇付は再び私の胸に顔を埋めてしまう。
「そんな簡単に、『君が好きだよ』なんて言えるなんて。ずるいです……」
 そう言うと、艇付はすっかり黙ってしまった。
 その沈黙の間に、私は、彼女がつむいだ言葉の一つにようやく気がついていた。
 ――少尉のことを、素敵な人だなと思っても――
 それって。
 確認したいと願う心があせるばかりで、それを問う言葉を出せずにいる私に、
彼女はもう一度つぶやいた。
「橘少尉は、ずるいです」
 その言葉が胸に刺さる。
 だが、次に彼女が顔と上げたとき、その表情が想像していたものとは違っていたことに驚いた。
 微笑んでいる。
 そして。
「だから、私は、あなたを好きになってしまったのかもしれません」
 どうも、彼女の言葉は私の胸を貫くのが好きらしい。
 もっとも、今のは、先ほどとは違う痛みだ。
291鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (11):2010/02/26(金) 22:57:17 ID:ffguJcCm
「き、桐沢君。ええと。その……」
 結婚を申し込んだときの勢いはどこかへ消えてしまっていた。
そして、みっともないほどうろたえる私を見て、彼女は小さく笑った。
「お受けいたします。少尉。喜んで」
 その笑顔が、自分に向けられた好意によるものだという事に気づかぬほど、
私は鈍感ではなかった。
もっとも、彼女がずっと私に対して抱いてくれていた気持ちに気づかないほどの鈍さではあるのだが。
 自分が惚れた女性に結婚を申し込み、それを受け入れてもらえた嬉しさは、
言葉にできないほどのものだった。そして、無理な願いを叶えてもらったついでに、
私は、もうひとつの願いを彼女に伝えた。
「じゃあ、もうひとつ、お願いしてもいいかな?」
 今は涙を忘れ、笑顔をみせてくれている艇付は、不思議そうな表情だ。
「はい、何でしょう?」
「これから夫婦になるのだから。私のことは、名前で呼んでくれないか?」
 その一言は、どんな状況下でも冷静に艇を操縦する彼女をうろたえさせるに十分だったようだ。
頬があっという間に朱に染まり、耳まで赤くなっていく。
 しばし逡巡を見せた彼女は、控えめに、小さな声で。だが、はっきりと。
「ゆ、譲さん……」
 まるで、本当にそう呼んでもいいのか探っているような声だった。
 それに対して、私は。
「華子君」
 まるで、そう呼ぶことが当然なのだという声色で彼女を呼ぶ。
「譲さん!」
 胸に飛び込んできた華子を抱きとめ、愛しさを伝えようときゅっと抱きしめる。
「私、ずっと、譲さんを慕っておりました。立派な艇長として。
 そして、その、素敵な男性として……」
 感極まったのか、何も言えなくなった華子の顎に指をそえて、少し上向かせてから。
 そっと、唇を重ねた。
 少々強引かとも思ったが、華子は唇で触れ合うだけのキスを、受け入れてくれる。
 長い間、ずっと唇を重ねあっていたが。
 名残惜しさを感じながら、唇を離すと、再び互いを抱きしめあった。
 こうして抱き合っている時間が、とても幸せでたまらない。
 だが、私は、二人が夫婦として結ばれたのならば、どうしてもやっておきたいことがあった。
 華子を抱きしめたまま立ち上がると、彼女の手を取る。
「では、急ごうか。あまり時間も無いからね」
「な、何を急ぐんですか?」
「結婚式は無理でも、せめて二人が結ばれた証拠くらいは残したいじゃないか!」
 そのまま駆け出した私に、何がなんだかわからないまま、
引っ張られるようにして華子がついてくる。
 すごく、幸せだ。
292鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (12):2010/02/26(金) 22:57:48 ID:ffguJcCm
 その時の私は、まあ、間違いなく浮かれていたんだろう。
 司令のところに出向いて、「自分達の結婚に、司令官殿の許可はいるのでしょうか?」
などと聞いたのは、後にも先にも私たちくらいだと思う。
 明後日には死地へと旅立つ部下から、真顔で「自分達は結婚します」と言われた司令は、
思う存分笑った後、
「許可などいらん。思ったとおりにやれ。それでは、君たちの結婚に際し最初に
「おめでとう」を言った人物として、しっかりと記憶してもらおうか」
と言って、僕たちの手を握ると、ポンポンと優しく肩を叩いてくれた。

 基地を出てすぐ。近くの役所で婚姻届を手早く書いて提出した。
 いきなり飛び込んできた海軍の士官と下士官が、喜びを隠し切れずに婚姻届を提出するのを見て、
役所の公務員は半ば呆れ顔で応対してくれたが。
最後に「おめでとうございます」を言うのを忘れるほど、冷めてはいなかった。
 心と心の結びつきだけではなく。役所に保存された書類の上でも夫婦となった私たちは、
その足で写真屋に飛び込んだ。
 お互い礼装ではなく、通常の勤務服だ。私はくすんだ褐青色の第三種軍装で、
彼女は紺の下士官用の勤務服。まあ、下士官の軍服に礼装は無いのだが。
 それは、他の人が見ても、特別な記念の写真とは思えないものだったが、
私たちにとっては、お互いが結ばれたことを証明できる唯一の品であった。
 なにしろ、指輪を買う余裕がない。金銭的な意味ではなく、時間的な意味でだ。
 現像が終わったら、私の実家に送るように手配をして。
私たちは門限のギリギリ前に基地へと戻った。

 そこには呆れる光景があった。
 兵舎の食堂に、粗末だが心のこもった紙の横断幕がかかっている。
「祝ご結婚 橘 譲少尉殿 桐沢 華子三飛曹殿」
 他にも同じような考えの馬鹿がいたようで、合計三組六名の名前が書かれていた。
そこに、かつて私的な白兵戦訓練をしたあの伊藤少尉の名が書かれているのは、
きっと何かの冗談だろう。

 さらに呆れたことに、夜は乱痴気騒ぎの祝宴となった。
 ただでさえ物資困窮の昨今にありながら、よくもこれだけ見つけてこれたものだと
感心してしまうほどの、ささやかな食事と酒とが用意されていた。
よほど銀バイに長けた兵ないし下士官がいるのか。それとも、司令が酒保に働きかけたのか。
 耐久生活を強いられている国民には申し訳ないが、私たちはそれをありがたくいただくことにした。
293鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (13):2010/02/26(金) 22:58:16 ID:ffguJcCm
 夜。祝宴を終えた私たちは、それぞれの兵舎へと歩いて帰る。
 夫婦となったものの、今は軍人である私たちは、それを当然のことと受け入れた。
 だが。
 華子と別れて兵舎に隣接した風呂に入った後に、司令から特別な宿泊先を用意したと言われた。
 案内されると、そこは、小さな家がいくつか立ち並んだ場所だった。
この基地を拡張したときに接収したものの、取り壊されずに当直の待機部屋として活用している家々だった。
「好きに使ってよろしい。出撃まで、英気を養いたまえ」
 そう言われて放置された夫婦のうちの二組は、誰が言い出すでも無く、
それぞれの家を選択して歩き始めた。
 取り残された私と華子は、完全に取り残されたことで我にかえった。
「えーと。じゃあ、どこにしようか?」
 そう言ったものの、選択肢は三つしかない。真ん中、右奥、左手前。
いずれの家も、さほど変わらないように見える。
「あう……」
 これからの新居を選ぶ新婚夫婦であるはずなのに、そんな気分はまったくなかった。
 私は、建物として一番しっかりしていそうなのは、右奥の建物だと思っていた。
とはいえ、外見がしっかりしていても、中身がそうとは限らない。
「……右奥。でしょうか?」
 控えめに答える華子に、私は笑顔で答えた。
「意見の一致を見て、とても嬉しいよ。私も、その家がいいと思っていた」
 そう笑いながら、華子の手を取る。
「では、帰ろうか。我が家に」
 その言葉に、少し頬を赤らめた華子は、小さくこくんとうなずいた。

 もともと、民家として使われていたものだから、住まいとして使うのには何の問題もない。
それに、待機部屋として使われていたので、徹底的な掃除をしなければならないほど荒れてもいなかった。
 それでも、何か気を紛らわしたいとでも言うのか、二人とも箒や雑巾やらを持ち出して、
一通り室内を掃除していく。
 すっかり室内を綺麗にしたあとは、押入れから布団を引き出した。
何人分かの布団が入っているが、とりあえず、二人分を畳の上に広げる。
ありがたいことに、布団は普段からよく干してあるらしく、太陽の光を一杯に浴びた香りがした。
294鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (14):2010/02/26(金) 22:58:45 ID:ffguJcCm
 すべての準備を整えた時点で、私も、華子も、どちらも固まったように布団の上に座っていた。
 夫婦となりはしたが、その実感はまだしっかりとしたものになっていない。
どこか、艇長と艇付、少尉と三飛曹という、
これまでの関係から抜け出しきれていないように感じるのだ。
 だが。
 今まで隠していた、彼女が愛しいという気持ち。
 これだけは、今までと違うもの。
 だから。

 私は華子に手を伸ばすと、彼女を引き寄せてそっと抱きしめた。
 急に抱きしめられて、ぴくりと跳ねた彼女は、
これから初めての行為に挑むという緊張のためか、身体が強ばっている。
 そんな華子を、私は飽きることなく抱きしめ続けた。
 彼女の緊張が解けて、硬直した身体が緩み始めるまでに、
かなりの時間がかかったのだが、二人とも、それに気づいていない。
 私の腕に包まれている華子が、こちらを見上げるようにして、
可愛らしい顔を見せてくれている。。
「しょ――ゆ、譲さん」
 いつも通りに階級で呼びそうになって、あわてて名前を呼んだ華子の唇に、
私は自分の唇を重ねた。華子は潤んだ瞳をそっと閉じて、その感触を味わっているようだ。
「ん……」
 そんな華子を抱きしめる一方で、もう片方の手が徐々に肩から下の方へと降りていく。
そして、華子の腕から手へと移動すると、手のひらを合わせるように重ねて指をからめる。
 その手のひらの向きを変えて、華子の手のひらに私の手の甲が触れる形に変えると、
そのまま華子の胸の上へとにじり寄る。
 控えめな双丘の片方を包んだとき、華子はひときわ甘い吐息を自然と漏らした。
「ん! う、ん……」
 その吐息の甘さを鼻腔で感じながら、唇を重ねたままで彼女の胸をそっと愛し続ける。
295鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (15):2010/02/26(金) 22:59:39 ID:ffguJcCm
 どれくらい、触れ合っていたのだろう。ようやく開放された華子の唇が、
彼女の愛しい人の名をつむぐ。
「ゆ、譲さぁん……」
 私の胸に頬を寄せた華子は、私の手のひらから与えられる刺激によって、
徐々に呼吸を荒くしていた。
 下士官用の上衣のボタンをひとつひとつ外すと、粗末な生地の水平襦袢があらわれる。
本来なら、下士官用のシャツが支給されるはずだったのだが、
物資の不足はここまで深刻になっている。
 上着を脱がせて畳の上にそっと置くと、私も第三種軍装のボタンに手をかけて、
服をひとつひとつ脱いでいく。
 ある程度脱いだあとは、再び華子のもとへ戻ると、彼女の服を確実に脱がせていき、
その内側に隠れた素肌を少しずつ露出させていく。
 水中で脱ぎやすいようにと、ボタンを外すと前面がめくれる形になっている水兵ズボンを
脱がせると、身に着ける女性が最近増えたという西洋式の下着がちらりと見えた。
 徐々にあらわになっていく華子の素肌に魅了されて、いつの間にか、
私は彼女の服をすべて脱がし終えていた。
 彼女の額にそっと唇を当てると、身体を支えながら布団の中へとそっと横たえる。

 されるがままに脱がされて、優しく布団に寝かされた華子は、
自分が一糸まとわぬ姿になって、すべてをさらけ出していることに気づいて、
顔を両手で覆っていやいやと首を横に振った。
「み、見ないで、ください。……は、恥ずかしい、です……」
 そんな華子の身体に、私は見とれていた。
 窓枠にはまった梨地の型ガラスのために、輪郭がぼんやりとしか見えない月の明かりが、
本来持っているはずの色彩をほとんど消して、白黒灰のモノトーンに若干の青を加えた
だけに近い世界を作る中、もともと白い華子の肌は、幻想的な白に変わっている。
 薄い青と白の肌の中で、ほんのり色づいている胸の先端と、かなり薄めな陰毛が、
その存在を控えめに主張しているが、際立って目立つものではない。
 その姿を目にして。私は、思ったままを言葉に出した。
「その、とても、すごく、綺麗だ……」
「あ、う……」
 私が漏らした賞賛の言葉に、顔を覆った華子の指がわずかに開いて、
そこからちらりとこちらを覗き見ている瞳が見える。
296鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (16):2010/02/26(金) 23:00:08 ID:ffguJcCm
 私は花に誘われる蝶のように、ふらふらと華子にのしかかって組み敷くと、
華子の胸をそっと口に含んだ。
「ひゃう!」
 不思議な悲鳴を上げた華子の胸を、唇と舌とで丹念に愛していく。
先端を唇で挟むようにしてから、舌先でつんつんと叩き、ときどき、軽く歯をたててみる。
そのすべての行為に、華子は喜びを素直に伝えてくる。
「あ、ふ……。ゆ、ずる、さん……。ああっ!」
 もう片方の胸を手で包むと、服の上からの感触とはまったく違う、
女性の肌だけが持つ特有の滑らかさと、その中で自分の存在を主張している突起物とに出会った。
その突起をボタンに見立てて、つんつんと触りながら押し込んだりと遊んでみる。
 華子の呼吸は再び乱れ始め、少し荒くなってくる。
 私の後頭部にまわされた華子の手が、愛おしさを伝えたいとでも言うかのように、
私の髪をそっと撫でている。

 そろそろ、次の段階へと進むべきだ。そう判断した私は、舌先をとがらせて、
彼女の胸の先端に実る果実をつつく。そして、次の目的地を目指して移動を始める。
 胸から臍を経由して下腹部へと進んできた舌が、最終的に目指しているものを悟った華子が、
太腿をぴたっと閉じて私の頭の侵入を拒むと同時に、いつになく激しい抗議の声をあげる。
「そ、そこは……。そこだけは絶対に駄目ですっ!」
 そんな華子を上目遣いでちらっと見ながら、舌はわずかに覆われた恥丘を通り過ぎて、
腿の内側をくすぐり始める。
 舌先が触れるくすぐったさに負けて、太腿に加えられた緊張が少しだけ緩んだ瞬間に、
私は華子の足を強引に広げると、華子が隠したがっていた下腹部に向けて舌を移動させた。
「だ、駄目です、って……。言ってるの、にぃ……」
 華子が見られたくない箇所から漂う、さほど強くは無い女の香りが、私の鼻腔をくすぐる。
 あまり強くない香りと同じく、華子が隠そうとしている秘所も淡い色合いのものだった。
月光に染められて、色合いの判別がつきにくい中でも、淡く艶やかに光るそこは、美しい。
「譲さんの……。馬鹿……あっ!」
 自分の恥ずかしい場所をじっと見られていることに耐え切れなくなった華子が、
消え入りそうな声で抗議をしたのだが、その抗議は私の舌が陰裂を掻き分けた瞬間に途絶えてしまった。
297鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (17):2010/02/26(金) 23:00:43 ID:ffguJcCm
「だ、駄目、ですっ! き、きた、な……いっ!」
 汚いも何も、祝宴の後の入浴で全身を丹念に洗っていたらしく、
奥から溢れる女の香りは控えめで、汚いと感じるような味も香りもない。
 太腿に力を入れて、私の頭を排除しようとしているようなのだが、
私が舌を使って悪戯をしているために、その力は弱く、
逆にその位置に私の頭を固定しているようなものだった。
「汚くはないさ。君のものだから、ね」
 わざとらしく聞こえるかもしれないが、私は思ったままのことをそのまま伝えた。
「……馬鹿ぁ……」
 そうつぶやいた華子の太腿に加えられた力が、少しだけ強くなる。
 その太腿のやわらかな感触を楽しみつつ、私は華子の秘められた部分を舌で愛することに
夢中になっていた。
 色彩がほとんど消えた青みがかった薄明かりの中で、幻のように白い肌の華子が、
信じられないという表情でこちらを見ている。
 だからこそ。私は、唇全体で彼女の女性特有の部分を覆いつくすように塞いだ後で、
舌先を器用に使って襞をかきわけ、入り口をつつき、襞と襞が合わさる部分に隠れた蕾を
探し当てる。
 それらを舌で愛す間にも、指先は華子の胸へと向かい、そっと包み込んでは揉みしだく。
 華子は、その行為に、淫らな喜びをしっかりと感じてくれているらしい。
特に、蕾を舌先で軽く押し込んだときには、背中が反って一際大きな声で喜んでくれる。
「あ、あぁんッ!」
 入り口にわずかに舌先を入れて、広げるような感じで円を描くと、
少し控えめだか断続的に喜ぶような声が漏れる。
「ふ、あう、ふううッ!」
 再び顔を覆いながら、恥ずかしそうに首を横に振る華子が、ようやく搾り出せたというような、
か細い声で言う。
「声が、出ちゃうんです。……はしたない女だと、嫌わないで、くださいッ!
 ふ、ああッ!」
 私は、その言葉に素直な喜びを感じていた。
 自分が彼女に伝える愛の行為で、彼女が喜んでくれている。
 男にとってこれほどの喜びはない。それで彼女を嫌うなど、ありえない。
 だから。
298鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (18):2010/02/26(金) 23:01:07 ID:ffguJcCm
 私は、一度彼女から離れて、再び彼女を抱きしめると、その唇を奪う。
 さらに、舌を華子の唇へと押し当てて、その先に侵入しようと試みる。
 最初、私の意図を把握することができずにいた華子だったが、恐る恐る唇を開くと、
私の舌を受け入れた。
 自分の口腔内を激しく愛し始めた私の舌に、彼女はとまどっていたが、
自分がどうすべきなのかをなんとなく把握したようで。
 私の舌に、彼女の舌が触れる。
 そのまま、互いの舌を絡めあう。
 脳の奥まで貫くような、甘くて激しいキス。
 やがて、華子の舌が私の口腔内に、ためらいながらも入ってくる。
 私は、彼女の舌を受け入れた。
 互いの舌が激しく絡み合い、そして離れると、混ざった二人の唾液が、
互いの舌先に名残惜しそうに糸を残した。

 その間も、彼女の陰列に潜り込ませた指は、華子の恥ずかしい部分をじっくりと愛している。
彼女の奥からあふれた愛の証が指と彼女自身を濡らして、ひどく淫らな粘着質の音を響かせる。
 そろそろ、頃合だろう。
 私の決意を感じ取ったのか、華子は小さな声でようやくそれだけのことをつぶやく。
「譲さん。わ、私、その……。は、初めてで……」
「大丈夫。わかってるよ」
 恥ずかしさに頬を染める華子に、私はなるべく優しく聞こえるようにささやいた。
 華子は未経験だとわかったが、私も経験豊富とは言えない。
何事も経験だと言う同僚達に混ざって一度だけ、赤線の向こう側に行って、
遊女と関係したことがあるくらいだ。
 そのときは、何がなにやらわからぬうちに、すべてが終わっていた。
男女の行為とはこのようなものか。などという明確な感想を抱くこともできぬまま、
経験者の仲間入りをしたのだが。今は、華子を不安にさせないためにも、
百戦錬磨の古強者のように振舞わねばならない。
 上半身を密着させて、彼女の肌のなめらかさを触れ合ったすべての部分で感じながら、
彼女の耳元でそっと告げた。
「いくよ?」
「お、お願い、します……」
 腰の角度を変えて、華子の入り口に先端が触れてから。
一呼吸の間を置く暇も無く、一気に奥まで貫いた。
299鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (19):2010/02/26(金) 23:01:30 ID:ffguJcCm
「あ、あああああああっ!」
 華子の背中が弓なりに反り返り、私を抱きしめる腕に力が入る。
背中に軽い痛みが走ったのは、背中に華子の爪が食い込んでいるのかもしれない。
「だ、大丈夫かい?」
 真下に組み敷いた華子の鼻に、自分の鼻が触れるかの距離で、聞いた。
「わ、かりません……」
 目に薄らと涙を浮かべた華子は、ふるふると首を振りながら答える。
「私の中を、譲さんが。広げて、います……」
 自分の状況を伝えたあと、なんとか微笑みのようなものを浮かべた華子が、
精一杯嬉しく聞こえるように努力していることがありありとわかる声で私を呼んだ。
「譲さん……」
 その表情に、私は一瞬、心を奪われた。いや、心はとっくに奪われているので、
惚れ直したとでも言うほうが正しいだろうか。愛しさが、胸の奥から込み上げてくる。
 しばらく、彼女が落ち着くまで、そのまま繋がっていた。
初めて男を受け入れるときは、耐え難い痛みが走って云々という話を、私も聞いたことがある。
 だから、私を奥まで受け入れてくれた彼女に、自分がどれほど彼女を愛しく思っているかを
伝えるためにも、繋がったままの姿勢を保ちながら、彼女の唇を奪い、
抱きしめることで密着している胸を少し動かすことで、
華子に痛み以外の感覚を感じてもらおうと、必死になっていた。
 だが、それは、余計な気遣いだったのかもしれない。
「大丈夫?」
 再び聞いた私に、華子は少し落ち着きを取り戻した声で答える。
「思っていたよりも。聞いていたよりも、痛くはありませんでした」
 軽く、唇を重ねるだけのキスを、彼女から求めてから。
「でも、ちょっとだけ、痛いです」
 そう答える華子を、私は再び抱きしめた。
300鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (20):2010/02/26(金) 23:01:53 ID:ffguJcCm
 お互いの性的な器官によって繋がっているという感覚。
 男として。女として。結ばれているという感覚。
 そんな、愛し合う二人だからこそ感じることができる感覚に、私たちは溺れていた。
「私たち……。夫婦、ですよね? 夫婦、なんですよね?」
 私の頬を撫でながら聞いてくる華子。
「ああ……。そうだよ。私たちは、夫婦だ」
 彼女の髪をそっと撫でながら答える私。
「嬉しい、です……。譲さん……」
「僕もだ。華子……」
 互いの名前を呼び合うだけでも、これだけの喜びを感じることができる。
 そんな喜びを満喫している私に、華子は決意を秘めた表情でささやいた。
「動いて、ください」
 そんな彼女の頬に、優しいキスをひとつ落としながら。
「無理しなくても、いいんだよ」
「違います」
 お返しに、私の頬にキスをした華子は。
「譲さんが私を愛してくれているんです。それが、とても、嬉しい……」
 頬を寄せて、そう耳元でささやいてから。
「だから、最後まで、私を愛してください」
 その笑顔は、反則だ。

「じゃあ、いくよ。華子。でも、無理せず、痛みを感じたら言うんだよ?」
 そう言いながらも、彼女は痛みを感じたとしても、
何も言い出さずにすべてを受け入れるように思えて仕方が無い。
そんな疑問を抱いている私に、華子は小さくうなずいてから答えた。
「お願いします。譲さん。私を、愛してください」
 彼女と唇を軽く重ね、私はゆっくりと動き始めた。
 華子の負担にならぬよう、大きく激しい動きはやめて、
ゆっくりとした小さな動きで様子を探る。あとは、彼女の反応を見ながら、
動きを強めていけばいい。
 今のところ、私の動きは、彼女に苦痛を与えてはいないようだ。
私の腕の中で何かに必死に耐えている華子に、小さな声で呼びかける
「大丈夫かい?」
301鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (21):2010/02/26(金) 23:02:16 ID:ffguJcCm
「ああ……。譲、さん。私、怖い……」
 うるんだ瞳をこちらに見せながら、華子は小さな声で答える。
「もう、譲さんのことしか、感じ、られない。です」
 ほとんど抜けかかった自分の陰茎を、再び華子の中へと侵入させる。
 それを受け入れた華子は、一番奥まで入ったところで、最愛の人の名を呼ぶ。
「譲、さぁん……」
 私の背中に回された華子の手に、わずかに力が加わり、離れるのが嫌だと言うかのように、
しっかりと抱きついてくる。
「華子、くん……」
 動きは、普通の男女の交わりと変わらぬくらいの激しさとなっていた。
華子が私の動きに合わせて喜びの声を漏らすのが、たまらなく可愛い。
 密着していた上体を起こして、両腕で自分の身体を支えるようにして起き上がる。
それによって、交わっている角度が変わったために、華子の反応がまた変わる。
「あ、うんッ!」
 華子の肌の上にも、汗が浮かぶようになってきた。
 私の背中はすでに汗の玉が浮き出ているし、額にも汗の感触がある。
 かなり動きを強めたはずなのに、華子は痛がることもなく、
ただ、私の行為を深く受け止めている。
 結合部からは水気の多い音が響き、私の鼻は華子の髪から漂う女の香りに刺激され。
 私は、五感のすべてで華子の存在を確かめて、味わっていた。
 それは、華子も変わらないようで。
 今では、私の動きに合わせるように、自分の腰を浮かせたりして挿入の角度を変えて、
私をより奥へと導こうとしているかのようにして求めてくる。

 そんな華子が、とても愛しい。

 動きは一段と激しいものとなり、男を初めて受け入れたばかりの華子に容赦なく突き入れて、
奥を叩く。
 乱れに乱れた呼吸で途切れ途切れになりながらも、華子は懇願するように叫んだ。
「ゆ、ずる、さん! お、奥に……。奥に、く……、ください!」
「華子!」
 華子の最深部を穿つように突き入れられた先端から、勢いよく噴き出る白濁液が、
誰にも犯されたことの無かった奥を汚していく。
 仮に、二人の愛の行為が実を結ぶことになったとしても、それを見届け、
育むことは叶わないのだが。私たちは、その事実を意図的に無視するように、
互いを求めて愛し合った。これが最初で、最後だと知っているから。
 互いに汗で濡れた肌を重ね、普通なら不快に思うはずのその感触に喜びを感じる。
 華子の中で一度萎えかけた私のモノは、彼女の笑顔とキスとによって、
再び元気を取り戻しはじめていた。
 驚きの表情を浮かべる華子。
 だが、彼女はその表情をすぐに喜びへと変えた。
「譲さん。また、愛してくれるのですか?」
 そう言われては。誰も、拒めないだろう。
302鋼鉄製の棺桶の中で、君とふたり (22):2010/02/26(金) 23:02:37 ID:ffguJcCm
 出撃の朝。
 私と華子の指には、整備班長がわざわざ作ってくれた鉄製の指輪があった。
公私混同というか、恐れ多くも海軍の資産であり、今となっては大変に貴重な物資である鉄を、
結婚指輪に加工するなど言語道断であったが、私たちはありがたくそれをいただいた。
 今では、同じ海龍の乗組員としての連帯感の他に、夫婦としての連帯感が加わり、
愛艇とともに一致団結して敵にあたることを幸いとしていた。
 愛する者を残さず、ともに逝けるのだから、他の艇の乗組員たちよりも幸福だ。
私たちは、そう信じていた。
 傍らに立つ、純白の作業衣に身を包んだ彼女は、まるで花嫁のようで。
 共に立つ私も、今日は純白の第二種軍装だ。だから、見ようによっては、
新郎新婦の晴れ姿と見えなくもない。
 そんな他愛も無いことを考えていた自分を笑いつつ、
こちらを見上げている最愛の人に呼びかけた。
「さて、行こうか。華子君」
「はい!」
 愛らしい笑顔で答えてくれる彼女を見て。私は任務の重要性を一瞬忘れそうになるくらい、
幸せな気分に満たされていた。



 第七七四菊水隊――海龍特別攻撃隊は、九十九里浜沖の米機動艦隊と輸送艦隊に向けて、
定数一二隻のうち、一一隻の海龍を発進させた。
 うち、二隻は機関の不調により引き返し、九隻は敵に突入できたものと推測された。
 沿岸部に展開していた陸軍の観測記録によれば、上陸を試みた米軍の艦艇に一時的な
混乱が見られ、激しい大量の水柱があがっていたとの報告もある。
そのうちの大半は、潜水艇に対する爆雷攻撃によるものだったようだが、
船腹の間近で立ち上った水柱を観測した者もいる。
 一方、米海軍の記録によると、その日、北方より接近する潜水艇多数を発見し、これを迎撃。
その大半を撃沈したものの、二隻の突入を許したという。
 損害は駆逐艦一沈没。リバティ級輸送船一大破。
そのリバティ船は、搭載物資のうち使用可能なものを水揚げした後、雷撃処分とある。
 これが、第七七四菊水隊の戦果であるか。また、だれの艇が戦果をあげたかについては、
日本側には明確な資料が残っていない。
 ただ、橘 譲少尉と橘 華子三飛曹の乗る第一二号艇は、
当日引き返した不運な艇には含まれていないことが、
第七七四菊水隊の司令が残した個人的な日誌により判明している。
303名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 23:04:04 ID:ffguJcCm
以上です。


11月ごろには書きあがっていたのですが。
コロネット作戦の時期に合わせたかったので、本日の投下となりました。

若干、最近投下されているネタと被っている気もしますけど、どうかご容赦を。


それでは。
304名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 23:55:28 ID:KmlHgze/
>>303
GJ!
渋いね、格好良いね、そして儚いね。
僅かな時に燃え上がった愛故に強く…そして切なく心を打ちました。

機関不調で戻ったニ艇は、きっと他の二組の夫婦だったのだと思う。
少しでも、詰られても、共に生きる幸せを探したのだと。
だが第一二号艇の夫婦は、少なくとも、共に死す幸せを得た。

どちらが幸せか、どちらが正しいか、きっと答えは無い。
305名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 04:14:44 ID:D53MAMQC
GJ
306名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 21:25:22 ID:XCEV5qlz
なんというGJ!
307名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 00:27:05 ID:77i6rvBu
本土決戦か…切ないけどグッジョブ
末期の兵器は回天に海龍だっけ?狂気な産物だな。
308名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 23:55:53 ID:2H+C5oZv
GJくださった方、ありがとうございます。前に>26とか書いた>281です。

ジャン → ジョウ → 譲(ゆずる)
ハンナ → ハナ → 華子(はなこ)

ということで、また違うジャンとハンナを書いて持ってきたいと思います。


それでは。
309名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 21:40:44 ID:YAZ5tw/y
本土決戦といえばオリンピック作戦だな
圧倒的な戦力で日本軍を踏み潰すのがたまらん
310名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 01:21:48 ID:2nlM5M+z
保守
311名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 01:00:15 ID:0acJwJjq
テキスト量27kB、21レスほど投下します。

このスレの>192や>195-196に触発されて書いたので、
思いっきりネタをパクっている箇所も…。

げふんげふん。


それはいかん。という方は、NGワードに"拠点一七三"をご指定ください。


では。
312拠点一七三 (1):2010/03/20(土) 01:01:34 ID:0acJwJjq
 酷い雨だ。闇夜ということも手伝って、視界は十メートルも無いのではないだろうか。
 基本的に、雨程度の濡れ方なら問題なく作動する小銃を、無意識のうちにかばうように抱える
ジャン・ビシャール曹長は、熟練の下士官のみに許された油断なき視線を周囲にくばる。

 ここは、拠点一七三と呼ばれる、周囲より若干標高の高い丘だ。
そして、ジャンのいる場所は、その丘の敵側に向いた斜面の一角に掘られた穴となっている。
味方の前進速度が思いのほか速かったために、今夜の宿は、あまりにも簡易すぎる
塹壕の中となってしまったのだ。
 いや、より正確に言うのであれば、塹壕というよりは個人用掩体壕の拡大版といったところだ。
中に入っていられるのはせいぜい三人くらい。
そのため、排水処理は傾斜の付いた床に設けた溝しかない。
その溝も、今ではたっぷりと雨水を湛えているため、床は水浸しだ。
 ぬかるむ床に悪態をつきながら、個人用の携帯天幕で守られている一部を覗きこむ。
そこには、もう一人の戦友が眠っているのだ。見張りを交代したばかりで、
今、ようやく眠りについた仲間をちらりと見る。
 小さな身体だった。徴兵制限の最下限といったところだろう。
小銃を抱え込んで眠る姿と寝顔は、まるで少年兵か子供といったところだ。
 無理も無い。彼女は、本来ならばこんな最前線にいるはず無い人なのだから。
313拠点一七三 (2):2010/03/20(土) 01:03:26 ID:0acJwJjq
 ジャンは、人生の半分近くを軍隊で過ごしてきた。
 一八歳で徴兵に取られた後、軍隊の居心地のよさにすっかり気をよくしたジャンは、
上官の勧めもあって、下士官候補に志願した。
それ以降、ジャンは軍隊で順調に経験を重ね、気がつけば、下士官の中でも
古参に分類される男となっていた。
 深い経験と、豊富な知識と、鍛えぬいた身体とがつくる自信に裏打ちされた、
控えめで従順な態度を決して崩さない。そんな、まさに下士官の鑑と言うべき男だった。
 そんな歴戦の男でも、途方にくれることがあるのだ。
 思い出すだけでも、嫌になる。

 中隊先任として補充兵の受領証にサインをした彼の目の前には、三人の補充兵がいた。
 左と真ん中の二人については、特に述べることもない。
問題は、一番右に立っている、一際背の低い兵隊だ。
 その兵隊は、ハンナ・ローゼンバウム二等計手と名乗った。
軍隊手帳にも、そのように記載されている。
 一方、ジャンの手元ある補充兵リストには、ハンス・ローゼンバウム二等兵とある。
 そして、彼女が持ってきた転属命令書は間違いなく本物で、そこには、たしかに、
この中隊に配属するとある。
 ありえないミスだった。
 スペルミスとか、そういった低い次元の間違いなんてものじゃない。
見れば、誰だって性別の違いに気づきそうなものなのに。
 とはいえ。
 自分も、それと気づかずに、つい惰性で受領証にサインをしてしまったのだから、
他人を罵る資格は無い。
314拠点一七三 (3):2010/03/20(土) 01:04:30 ID:0acJwJjq
 それにしても。
 本来、後方で兵站を担うはずの主計科の娘が、最前線で銃を取って戦うことになる。
 中隊にも、補給に関連した書類仕事や計算のような仕事はあるが、
たかが中隊程度の規模では、専任の主計官が必要なほどの仕事も無いため、
その手の仕事はジャンがすべてやっている。
 リストには、兵隊が来ると書かれていて。
 実際に来たのは、主計科の娘。
 そして、配属を命令する書類は、間違いなく本物。
 困り果てたジャンは、中隊長に相談した。
 事情をすべて聞いた中隊長が下した判断は、客観的に聞けば妥当だが、
言われた本人としては釈然としないものだった。
「これから大きな作戦に参加するのに、人員を弄っている暇はない。
 後方に戻すよう手続きは取ってやるから、それまで死なないように、
 君が面倒を見てあげたまえ」

 結局、ジャンはハンナを傍らに置いて、なんとか兵隊の真似事をさせている。
 初日には、敵の砲撃に咄嗟に伏せるのが間に合わず、左目下の頬骨のあたりに、
砲弾片によって傷を付けられてしまって、ジャンの無傷で戻してやりたいという願いが
あっさり消えてしまうという事件があった。
 その後も、狙撃兵が狙う中、ぼーっと立ち尽くして、戦死の可能性を引き寄せて見せたし、
味方の背中を撃ちそうになるといった失敗をやらかしてはいるが、今のところは、
誰も殺さず、誰にも殺されず、せいぜい敵の頭上に向けての援護射撃といった仕事で
がんばっている。
 この作戦がひと段落したら、何とか後方に戻してやりたい。
それまでは、味方に危険が及ばぬ範囲で、なんとか生き残って欲しいものだ。
315拠点一七三 (4):2010/03/20(土) 01:05:55 ID:0acJwJjq
 周囲を警戒しながら、そんなことを考えていたジャンの耳を、何かが刺激した。
 ――銃声?
 雨の音でかき消されてしまったが、今の音は銃声じゃないか?
 ジャンの身体は一気に緊張を増し、周囲に向けていた視線が何か異変を発見しようと、
やけにぎらつくものになる。

 次の瞬間、雨のスクリーンの中におぼろげな影が浮かんだ。
まっすぐこちらに近づいてくるのか、その影は徐々に鮮明になっていく。
それが敵だと気づいた瞬間、ジャンは迷わず小銃を向けて引き金を引いた。
 乾いた音が響くと、近づいてきた敵兵士はぐらりと崩れて倒れる。
「敵襲!」
 声の限り叫んだジャンは、左手で腰に佩いた銃剣を抜き取りながら、
天幕の下で眠っているハンナを蹴った。頼りない主計科の娘でも、今は兵隊として必要だ。
 銃剣を取り付けながら、ジャンは再び叫ぶ。
「敵襲!」
 蹴られたことと、ジャンの叫びによって目覚めたハンナは、その叫び声の内容を理解する間もなく、
抱えていた小銃を手にしてヘルメットを被りなおした。
 それを確認してから、視線を再び前方に向けたジャンは、
再び雨の中から敵兵士が飛び出てくるのを見た。今度は二人だ。
 ジャンは迷うことなく、ハンナに近いほうの敵兵士を撃った。
腹を撃たれて倒れる兵士をちらりと確認しながら、ジャンの方に
まっすぐ突っ込んでくる敵兵士へと向き直る。
 だが、相手はあまりにも近すぎた。
 ぎらりと光る何かが視界に入った瞬間、ジャンの身体は正しい反応を示した。
小銃を横殴りに振り払うと、がちんという高い音とともに、
ジャンにまっすぐ伸びつつあった銀色のものがジャンから逸れていく。
 それは、銃剣だった。
 逸れた切っ先はジャンのヘルメットを擦るようにして突き進み、滑っていく。
316拠点一七三 (5):2010/03/20(土) 01:06:50 ID:0acJwJjq
 面白いことに、このような至近距離で遭遇した兵士たちは、決まって同じような行動を取る。
互いの武器をぶつけ合う白兵戦へと移行するのだ。
 手に持ったその武器は、引き金を引くだけで、致命的な一撃を相手に与えることができるのに。
 銃剣で。
 銃床で。
 時には、拳や爪先、それに、肘や膝。歯だって武器になることがある。
 ジャンも、自分が手にしているものが、それだけの威力を備えた武器であることを
完全に忘れていた。
 迷わず、銃を突き出す。
 銃剣の切っ先は、身体をひねった敵兵士のわき腹を掠めただけにすぎない。
 敵の反撃は、ジャンのものよりも剣呑だった。
 銃床を振り上げるようにしてジャンの顎を狙う。
 咄嗟に顎をひき、首をひねって避けようとしたジャンのヘルメットの側頭部に、
敵の銃床が命中する。
 ぐわん!
 激しい音と衝撃とがジャンを襲い、眩暈を覚えてふらついたところに、
敵兵士の体当たりが加えられる。
 その衝撃に耐え切れず、ジャンは塹壕の床に叩き伏せられた。
 ジャンの視界には、今にも振り下ろされようとしているナイフが見えた。
銃剣以外にも格闘用のナイフを持っているとは。随分と用意のいい兵隊だ。
 咄嗟に突き出した左手が、敵兵士の右手首をとらえた。
続いて右手を加えて、振り下ろそうとしている敵兵士の手に抗う。
互いに死力を尽くしての力比べが始まった。その先にあるものは、生か死。
 だが、自分を鍛えることに喜びを感じるジャンでも、
自分と同じかそれ以上に鍛えられた敵が自分を組み敷いているという不利な状況は、
ひとりで何とかできるようなものではなかった。
 敵兵士は右手に体重を乗せて、さらにナイフをジャンに近づけようと全力を振り絞る。
 だが、ジャンの全力での抵抗も空しく、ぎらりと光る刃は、ジャンに少しずつ近づいていく。
 まずい。
 殺られる。
 そんな思いが脳裏をよぎる。
317拠点一七三 (6):2010/03/20(土) 01:07:59 ID:0acJwJjq
 そのときだった。
 乾いた銃声。
 敵の兵士の身体から急に力が抜けて、自分の胸に穿たれた穴を、
信じられないという表情で見てから、傍らにいる人物の姿を見た。
 再び、銃声。
 二発の銃弾を浴びた敵兵士は、口の端から血をたらすと、
ジャンにのしかかるようにして塹壕の床へと崩れてゆく。
 その敵兵士の身体を押しのけて、何とか身体を引き起こしたジャンが見たものは、
小銃を構えて震えているハンナの姿だった。その銃口からはわずかに煙が立ちのぼり、
たった今発砲したことが見てとれる。
 ハンナの表情は、恐怖とも悲しみとも取れるようなものだった。
歯の根があわないのか、かちかちと音をたてながら震えている。
 ジャンは悟った。
 彼女が、自分の命を救ってくれたのだと。
 周囲の状況を一瞥し、今はまだ大丈夫だと判断したジャンは、ハンナの肩に手を置いて、
その目をじっと見つめながら、心をこめて言う。
「すまん。助かった。ありがとう」
 だが、礼を言われた方は、心がここには無いようだった。
「わ、たし…………」
 力が抜けた腕から、小銃がするりと抜け落ちる。
「人、を。ころ……し、た……?」
 ふらふらと崩れ落ちて、塹壕の床に座り込むハンナ。
その視線は、同じく塹壕の床に倒れている敵の兵士に向けられている。
彼女が、ジャンを救うために撃ち殺した男に釘付けになっているのだ。
 ジャンは、塹壕の床に倒れた死体の装備に手をかけると、ぐいと持ち上げて、
外に転がすようにして捨てた。
 そして、人を殺したという事実にショックを受けているハンナの肩を揺さぶりながら、
声をかける。
318拠点一七三 (7):2010/03/20(土) 01:08:59 ID:0acJwJjq
「しっかりしろ。ローゼンバウム二等計手!」
 さまよっていたハンナの視線がジャンのそれに重なる。
「そ、曹長殿。わ、わたし……」
 何かを言いたげなハンナを片手で制しながら、ジャンは手短に言った。
「君が銃を撃っていなければ、俺が殺されていた。君は、俺の命を救ったんだ。
 仲間の命をな。今はただ、それだけを考えるんだ。いいな?」
 視線をハンナに向けつつも、ちらりと周囲を確認する。
そんなジャンの視界に味方とは思えない色の軍服が入った瞬間、
ジャンは片手で小銃を向けると、迷わずに引き金を引いた。
「この地獄はまだ終わっていないのだ。ローゼンバウム二等計手。
 今は銃を持って戦え。何かを考えるのは、その後だ。わかったな」
 そんなことを言われても、承諾などできるはずがない。
だが、ジャンは問答無用で小銃を渡すと、ハンナの身体を引き上げた。
「今度また、俺が同じように殺されそうになったら、ためらわずに助けてくれよ」
 そういってウインクを送ると、ジャンは雨の中から不意に現れる敵兵士に、
銃を向けて撃ち続けた。
 傍らでは、ハンナも同じように闇雲に小銃を発砲している。
そう。それでいい。忙しくしていれば、何かを考える余裕もなくなる。

 その日の戦いは、日が昇り、再び沈むまでの間、ずっと続いた。
319拠点一七三 (8):2010/03/20(土) 01:09:54 ID:0acJwJjq
 あの激戦から、一週間が過ぎようとしていた。
 敵の攻撃はあまりにも無謀すぎた。
時機を得た増援と、的確な火力支援とを得た味方の逆襲によって、
敵の総反攻で失った地歩を再び確保できた。
そのため、ジャンとハンナは再びあの場所に戻っている。

 ジャンが守るべき人に命を救われて。
 ハンナが人の命を初めて奪った場所。
 拠点一七三に。

 ハンナは、あの日以降、どこか影のある雰囲気を漂わせたまま、
これまで以上に兵隊としてがんばっている。
ジャンには、それがあまりにも無茶をしているように見えて仕方ない。
 睡眠もあまり取れていないようだし、食欲も無い。
だが、命令されたことは素直に実行するし、敵に銃を向けるのにもためらいが消えたようだ。
でも、そこには、どこか危険な雰囲気が漂っている。
やせ我慢というか、自暴自棄というか、とにかく、不安定な精神状態にあるように見えるのだ。

 あのときと同じように、同じ壕の中に入った二人は、
あの日と同じく交代で歩哨につくことになっていた。
 ハンナの異変に気づいたのは、不寝番をしているジャンだった。
 苦しげな呼吸と、苦悶の表情。
一応、眠っているようには見えるが、とても安眠とは思えない。
320拠点一七三 (9):2010/03/20(土) 01:11:06 ID:0acJwJjq
 しばしの迷いの後、ジャンはハンナに声をかけてみた。
「大丈夫か?」
 答えはない。
 周囲に視線をまわし、脅威となるようなものが無いことを確認してから。
ジャンはハンナの肩を軽く二回ほど叩いてみた。
「おい、大丈夫か?」
 その瞬間、かっと目を見開いたハンナは、怒りとも苦しみともつかない表情を浮かべた後、
恐れの表情を明確に浮かべてから、ジャンの胸元に飛び込んだ。
 そして、声をあげて泣き始める。
「ロ、ローゼンバウム君?!」
 いきなりの状況変化に、どう対応すべきかわからず戸惑うジャン。
何しろ、長い軍隊生活の中で、若い娘が自分の胸元に飛び込んできて、
声を上げて泣き始める。などという経験は無かったからだ。

 だが。
 こんなとき、どうすればいいのかは、魂の奥底に初めから書き込まれているのだろう。
 ジャンは、ハンナをそっと抱きしめると、やさしく背中を叩きながら、
泣き止むまでずっと待ってやることにした。

 どれくらいの時間が経過しただろう。
 ついと顔を上げたハンナの目は、泣き腫らして酷いことになっていた。
 そんなハンナに、ジャンはどう声をかけていいのか悩んでいた。
こんな時、どんな風に接してやればいいのだ?
 だが、ハンナはそんなジャンの心配をよそに、つぶやくように語り始める。
321拠点一七三 (10):2010/03/20(土) 01:11:51 ID:0acJwJjq
「……眠れないんです」
 その声は、とても苦しそうで。
「あの人が、ずっと、こっちを睨んでいるんです。最初は睨んでいるだけなのに、
 そのうち、どんどん、こっちに近づいてきて、私を、殺そうと、するんです……」
 再び泣きそうになるハンナ。
 ジャンは、自分の無力さを感じていた。
 自分の命を救ってくれた娘が苦しんでいるのに、自分は何もできない。
 だが。
 本当に、自分は何もできないのか?
 何か、彼女が求めていることはないのか?
 残念ながら、自分では、何をすべきかがわからない。
 だから。
「なあ、ローゼンバウム君。俺は、君に命を救われたんだ。だからこそ、君の力になりたい」
 少しだけ、抱きしめる腕に力を入れながら。
「何か、俺にできることは無いか?」
 真剣に、問う。
 そんなジャンの態度を受けて、ハンナは、何かを言いたそうな表情を浮かべては、
何をはばかるのか、結局言い出せない。という態度を、ぐるぐると続けているように見えた。
 だが、そんなハンナは、ついに意を決したようだ。
 小さな声で。
 そっと、つぶやく。
「忘れさせて、ください……」
 それは、ジャンを頼り切った目で。
「あの夜のことを。忘れさせて……」
 そっと、ジャンの胸に頬を寄せる。
322拠点一七三 (11):2010/03/20(土) 01:12:31 ID:0acJwJjq
 忘れさせてと言われても。
 どうすればいいのだ?
 人を殺したという恐ろしい出来事以上に、何か衝撃的な出来事が彼女の身に起こればいい。
とでも言うのか?
 そんなジャンの脳裏に、まるで三文芝居のような、くだらない筋書きが浮かんだ。
 いくらなんでも。
 だが。
 他には、何も思いつかない。
 胸元のハンナを見つめる。
 可愛らしい娘だった。
 もし、ジャンが早くに結婚していて、女の子でも生まれていたら、
彼女くらいの娘になっていただろうか。
 まあ、実際に娘がいたとしても、ハンナよりは少し幼いだろうが。
 そんな、娘にも等しいほどに歳が離れているハンナに対して。
 ジャンは、保護者としての愛情を超えた、別の愛情が芽生え始めていることに、
嫌でも気づかされる。
 ハンナが、愛しい。
 これは、自分の我侭ではないだろうか。
 自分の思いを成就させたい。ただ、そんな邪な気持ちなのではないだろうか。
 そんな迷いがジャンを苦しめる。

 それでも。
 ジャンは決断した。
 殺した敵兵士という記憶よりも、俺のことを、より鮮明に記憶させようと。
323拠点一七三 (12):2010/03/20(土) 01:13:12 ID:0acJwJjq
 ジャンは、ハンナの額に唇を寄せた。
 額の次は、涙のたまった眦に。
 頬に。
 鼻先に。
 次々と、優しいキスをハンナに贈る。
 幾度もキスをするが、恐れにも似た感情によって、肝心の場所には触れないでいたジャンは、
されるがままになっているハンナの瞳をのぞき込んだ。
 彼女の視線は、それまでのものと変わらない。
 いや、もしかすると、これまで以上に信頼をよせてくれているかもしれない。
 それだけ、純粋で素直な目をしている。

 その瞳の美しさに、ジャンはもう一歩を踏み出す決心をした。
 ハンナの唇に、自分の唇を重ねる。
 戦場で、入念な手入れなどできるはずもなく。互いに荒れた唇だったが。
 重ねた唇は、とても甘く感じた。
 ジャンがそっと唇を離すと、ハンナは離れゆくジャンのたくましい首筋に腕を伸ばすと、
そのまま抱きしめてくる。
「曹長、殿ぉ……」
 苦しげな声。だが、そこに、拒絶の意味は含まれていないように聞こえる。
 ジャンは、再びハンナの唇を奪うと、ハンナを抱き寄せている腕の一方をずらして、
ハンナの胸元へと指し伸ばした。
 そこにあるのは、小さなふくらみだった。
 片方だけなら、ジャンの手のひらで十分に覆いつくせるくらいの、可愛らしい丘が二つ、
そこにある。
 服の上から触れただけでも、さぞかし美しいのだろうと思わせるような、
すばらしい手触りと形だった。
 ジャンの手のひらが、ハンナの胸を包み込み、愛を伝えていくにしたがって、
ハンナの息が、艶を帯びたものに変わっていく。
324拠点一七三 (13):2010/03/20(土) 01:14:35 ID:0acJwJjq
 不意に、ハンナがジャンの唇を奪った。
 ジャンのことを、愛しくてたまらないとでも言うかのような、情熱的なキス。
 ジャンは、そんなハンナの唇を貪るようにしてついばみながら、舌でハンナの唇を味わう。
 唇を交し合っていたところに、いきなり舌が参加してきたことに驚いた様子のハンナだったが、
彼女もジャンに習って、自分の舌を恐る恐る差し出してくる。
 絡まる舌と舌。
 たっぷりと、互いの舌を味わいあった後で、ジャンはハンナの名を呼ぶ。
「ハンナ」
 姓や階級ではなく。その名前で。
 言われた方は、胸からの刺激と、絡ませあった舌と唇とによって、頬が朱に染まり始めていたのだが。
その頬が、さらに赤くなっていく。
 そんなハンナの表情を確かめてから。ジャンは問う。
「そう、呼んでもいいか?」
 改めて、名前を呼んでもいいかを聞かれて。ハンナの顔はさらに赤みを増していく。
 そして、ジャンをじっと見上げながら、小さな声でつぶやくように答えた。
「はい、曹長殿……」

 名前を呼ぶ許可を貰い、少し親密さを増したことを喜ぶジャンだったが。
 どうせなら、もう一段階、関係を深くしたい。
 そう思ったジャンは、ハンナの唇を軽く奪ったあとで、ひとつお願いをしてみた。
「じゃあ、ハンナ。君も、俺を、ジャンと呼んでくれ」
 そんなお願いをされるとは思ってもいなかったのか、ハンナは、ジャンの視線から
一度逃れた後で。再び視線を交わすと、ゆっくりとその名をつむいだ。
「ジャン…………さん」
 それまで階級に殿を付けて呼んでいたのを、いきなり名前を呼び捨てでというのは、
彼女にとってはハードルが高かったらしい。
だが、少なくとも、階級で呼ばれるという関係からは脱却できそうだ。
 それが、今、この夜限りだとしても。
325拠点一七三 (14):2010/03/20(土) 01:15:08 ID:0acJwJjq
 互いの名を呼び合うようになると、心の奥のどこかに、より深い絆が生まれたように感じて。
 ジャンは、ハンナに自分の気持ちを伝えようとするかのように、ハンナに触れていく。
 気がつけば、ハンナの手も、ジャンの胸元に伸びていた。
 ジャンの左胸に添えたハンナの手が、ジャンの心臓の鼓動を伝える。
「ジャンさんも、ドキドキしているんですね」
 少し嬉しそうにそう言ったハンナに。
「ハンナと、同じくらいにな」
 照れを隠すかのように、少しうわずった声で、ジャンは答えた。

 装備を外し、野戦服のみとなった二人は、互いのボタンを外しあう。
 場所が場所であるし、状況が状況であるから、すべて脱ぐわけにはいかない。当然だ。
 だから。
 ジャンも、ハンナも、野戦服のジャケットのボタンを外し、シャツを捲り上げた状態で、
互いの胸を露出させ、下半身はズボンと下着を少しずらして脱ぐだけで、
目的を達成しようとしていた。
 ジャンは、直接触れるようになった胸に唇と左手を置くと、
想像していたよりもはるかに美しい白い肌を堪能しようと、指と舌を駆使していた。
 ハンナは、そんなジャンの頭を抱えるように抱きしめて、
自分へ愛を伝えてくれる男に対し、自分の抱く気持ちを伝えようとする。
 ジャンの右手が、ハンナの足元へと伸びていった。
 滑らかな太腿の感触を味わっていたかと思うと、その手のひらは、
ハンナの小振りなお尻へと移動していき。
 もう少し肉付きがよければ申し分ないその部分を、ゆっくりと撫でる。
326拠点一七三 (15):2010/03/20(土) 01:16:11 ID:0acJwJjq
 あきらかに興奮しているとわかるハンナの吐息を感じながら、
ジャンは、胸を楽しんでいた左手を少しずつ降ろしていって、ハンナの女性の部分に触れてみた。
 そこは、男を受け入れるのに十分なほど濡れていた。
 指先を動かすと、水分をたっぷりと含んだ粘着質な音が響く。
 いやらしい、淫らな音。
「だ、駄目……。は、恥ずかしい……です」
 乱れた息で、ようやくそれだけを言えたハンナが、可愛くてたまらない。
 ジャンは、左手の指を激しく、そして優しく動かすことで、
ハンナがそんな恥ずかしさを感じる余裕がなくなるくらい、愛を伝えることにした。

 ハンナの準備が万端だと悟ったジャンは、懐から防水紙に包んだあるものを取り出した。
包みを解くと、そこには、軍支給の避妊具が入っている。
 いくら、互いに望んで男と女の行為に及ぶといっても、その一線を越えるわけにはいかない。
 例え、ジャンが、ハンナに抱いている気持ちが、保護者としての愛情から、
男としての愛情に変わりそうで。そして、ハンナがジャンに抱く気持ちが、
親や保護者に寄せる信頼ではなく、頼れる男に抱く感情になりつつあるとしても。
 左手でハンナを愛しながら、右手で器用に自分の分身を避妊具で包んでいく。
 左手の指先で、ハンナの入り口の部分を入念に愛してから。
 ジャンは、自分の陰茎の先端を、その入り口に押し当てた。
「いくぞ、ハンナ」
 耳元でそうささやいたジャンに対して、ハンナは、幾度もうなずきながら答えた。
「お願い、します……」
 塹壕の中に座るジャンの上に、向かい合わせになるようにして座るような姿勢のハンナの腰に、
ジャンは自分の腰を浮かせるようにして近づけると同時に、彼女の体重を支えている腕に手伝わせて、
ハンナの身体自体をジャンの身体に近づける。
 思っていたよりも、ハンナはすんなりとジャンを受け入れた。
ハンナの愛の証が、潤滑油という本来の目的どおりに働いたからかもしれない。
327拠点一七三 (16):2010/03/20(土) 01:17:03 ID:0acJwJjq
 だが。
 ハンナは、ジャンの身体にしがみつくようにして、貫かれた衝撃に耐えようとしていた。
 息は荒く、声を出すまいと必死に唇を噛み締めている。
「ハンナ……。無理は、するなよ」
 根元までは埋まらないが、先端が奥の奥に当たっているのを感じたジャンは、
胸元で苦しそうな息を吐くハンナに、そうつぶやく。
 そんなジャンの唇を、ハンナは求めた。
 軽く触れる、ソフトなキス。
「嬉しい、です……。ジャン。さん……。わ、私……」
 ハンナの目は潤んでいた。
 それは、痛みによるものなのか。
 それとも、喜びなのだろうか。

 ずっと、結合したままで抱き合う。下手に動けば、ハンナが壊れてしまいそうだからだ。
 繋がっている間、ジャンはずっと、ハンナの胸や結合している部分に指を這わせて、
痛み以外の感覚をハンナに伝えようとしていた。
 そんなジャンの努力が実ったのか。それとも、ようやく、男を受け入れることに慣れたのか。
ハンナの呼吸も痛みに耐えているような荒い呼吸から、艶を帯びた色気のあるものに変わっていく。
「ジャンさん……」
 ジャンの頬に手をよせて、少し背伸びをするような姿勢でジャンに口付けをしたハンナ。
 それが原因で、ジャンの陰茎がハンナの入り口近くまで引き抜かれてしまう。
328拠点一七三 (17):2010/03/20(土) 01:17:36 ID:0acJwJjq
「あ、ああッ!」
 その動きに、ハンナは痛み以外の何かを感じたようで、これまでに聞けなかった、
女らしい喜びの声が自然と漏れる。
 だが。
 あまりにも大きすぎたその声は、周りの注意を引いてしまいそうなくらい大きくて。
 思わず漏らしてしまったハンナも、そんなハンナを抱きしめているジャンも、少し肝を冷やす。
 こんな狭い塹壕の中で。
 男と女の愛の行為をしているなんて。
 それが、誰かにばれてしまうのでは。
 そんな恐れが、二人を襲う。
 しかし、結局、誰一人として、その声の原因を探りにくる者はいなかった。

 ジャンとハンナは、互いの唇を荒々しく重ね合わせた。
 こうしておけば、声が漏れる心配も無いだろう。
 そして。
 ハンナが、ジャンの首に両手をまわしながら、少しずつ、腰を上下に動かし。
 ジャンも、それに合わせて腰を浮かしたり沈めたりする。
 今回が初めてのハンナも、その動きがもたらす喜びに気づきつつあった。

 動きが徐々に速さを増して、ジャンのモノも先端に近いところまで引き抜かれたと思えば、
根元近くまで埋まるというのを繰り返し。
 結合の角度を変えることで、ハンナの内側をいろいろな方向から突き上げる。
 ハンナの鼻から漏れる息は、女が喜びを感じていることを証明するかのような、
荒いが一定のリズムを刻むものに変わり。
 ジャンの呼吸も、余裕が無くなってきたことを示している。
329拠点一七三 (18):2010/03/20(土) 01:18:29 ID:0acJwJjq
 そして、その瞬間がやってきた。
 短い周期で奥の奥を突かれていたハンナは、快楽に脳を焼かれるような感覚が拡大していき、
頭の中が愛されている喜びで完全に満たされて、他のことを考えることができなくなり。
 そんなハンナの奥に突き当たった瞬間に、ジャンは白濁液を吐き出した。
 ジャンのモノが、ハンナの中でびくん、びくんと暴れる。
 その一暴れごとに、大量の子種が避妊具の中に溜まっていく。

 激しい行為に体力を消費して、力の抜けたハンナは、ジャンの胸元にそっと寄り添う。
前をはだけて、シャツを持ち上げているので、肌と肌が触れ合う。
 しっとりと汗ばんだ肌が触れ合うのだから、本来なら気持ちのいいものではないはずなのだが。
 その感触が、たまらなく嬉しい。
 本来なら、使用後はすぐ引き抜かねばならないのだが。
 愛しい人と繋がっているという感覚がたまらないのか、ジャンも、ハンナも、
互いに離れようとはしなかった。
 お互いの肌の温もりと、結合部からの温もりとを感じながら。
 ずっと、抱き合う。

 すべての行為を終えて。ジャンは、ハンナの野戦服と装備の乱れを直してやっていた。
 きっと、ろくに眠れずに疲れきっていたのだろう。ハンナは、ジャンの胸元に顔を寄せ、
すうすうと寝息をたてながら、ぐっすりと眠っている。
 完全に安心しきって眠っているその姿を見ながら、ジャンは思う。
 果たして、本当に、俺は、彼女を救えたのだろうか。
 わからない。
 でも。
 少なくとも、今この時だけは、悪夢にうなされずに、眠ることができている。
 きっと、何かの支えくらいには、なれたのだろう。
 そう思いながら、ジャンは苦笑していた。
 それにしても。
 今、敵の襲撃を受けたら、ハンナを抱きかかえている俺は、反撃できんぞ。
 歴戦の下士官らしからぬ、隙だらけの自分を冷笑しながら。
 ジャンは、ハンナの安眠を妨げることのないように配慮しながら、
周囲に警戒の視線をくばりはじめた。
330拠点一七三 (19):2010/03/20(土) 01:19:37 ID:0acJwJjq
 敵の逆襲を押し返し、再び攻勢に転じる一方で、一度戦線を整理することになった。
 これ幸いと、ハンナの転属を上申したところ、これはすんなり受理された。
 実戦部隊の兵卒として、主計科の娘が配属されているというのは、流石に問題だと思われたようだ。
 そして、今。
 ジャンとハンナは、包帯所の傍らで、負傷兵を乗せて後方へと向かうトラックを待っていた。
ハンナは、そのトラックに便乗させてもらうのだ。
 中隊の仲間たちとの別れは済んでいる。
 あとは、二人の別れを残すのみだった。

 鼻の頭を指でいじったり、短く刈り込んだ頭をボリボリとかいてみたり、
略帽を脱いでは被ってみたりしながら、言うべき言葉を捜していたジャンは、
長い長い時間をかけて、ようやくそれを見つけた。
「……傷、残ってしまったな」
 ジャンは、自分の左目下の頬骨のあたりを指先で指し示す。
ハンナのそこには、うっすらと傷痕が残っていた。それは、初日の砲弾によってつけられた傷だった。
「よりにもよって、顔に傷を残してしまうとはな。
 年頃の娘さんの保護者としては、俺は失格だったな。すまなかった」
 頭を下げるジャンに対して、ハンナは慌ててその肩に手を触れて、
上半身を起こすように押し上げながら。
「いいえ。いいんです。
 これを見れば、皆さんと一緒に過ごした日々を、いつでも思い出せますから」
 微笑みながら、そう言ってのけるハンナに。
 ジャンは、思ったことを素直に告げた。
「強く、なったな」
331拠点一七三 (20):2010/03/20(土) 01:20:27 ID:0acJwJjq
 ハンナには、ジャンにそう思わせるだけの何かが備わっていた。
 芯が一本通ったというか、何と言うか。この中隊に配属された頃は、
すぐに壊れてしまいそうなくらい、脆くて繊細な印象だったのだが。
 今は、違う。
「全部、ジャンさんのおかげですよ。私、このご恩は、一生、忘れません」
 笑いながら、そう答えられるのも。彼女が身に付けた強さの証なのかもしれない。
 それを見届けてから。
 ジャンは、不意に姿勢を正した。
 そして。
「ありがとう、ハンナ。俺は、君に命を救われたことを、絶対に忘れん」
 ジャンは、ただそれだけを言った。
「私こそ。ジャンさんがいなければ、今頃は、どうなっていたか……」
 そう言いながら、ハンナはうつむいてしまう。
 それまでの気丈な態度はどこかへ消え去り、今にも泣きそうな雰囲気のハンナに、
ジャンが何か声をかけようとしたその瞬間。
 ハンナは、悲しみと涙とを奥に隠して、とびきりの笑顔をジャンに見せた。
「ありがとうございました!」
 ハンナも、ただそれだけで答える。

 それしか、言えなかった。
 ジャンは、自分の中に、ハンナを求める気持ちがあることを知っている。
 ハンナも、自分の中で、ジャンが特別な存在となっていることを理解している。
 だが。
 お互いに、それを言葉には出せないのだ。
 男は、生と死が隣り合わせの戦場で生きることの意味を、十分に理解しているがゆえに、
女の未来を束縛するような約束などできず。
 女は、あらゆる努力を払っても、常に死の危険性がつきまとう戦場を知ったがゆえに、
自分が男の負担になることを恐れて。
 言いたい言葉は、胸が痛くなるほどわかっているのに。
 それ以上、何も言えずに、互いにただ見つめあう。
332拠点一七三 (21):2010/03/20(土) 01:20:55 ID:0acJwJjq
 そんな二人を引き裂くかのように、包帯所に負傷者を後方に運ぶトラックがやってきた。
ハンナは、これに便乗させてもらうのだ。
 ハンナは、足元に置いておいた背嚢を背負いなおすと、ジャンに向けて敬礼した。
「お世話になりました、曹長殿!」
 ジャンも、敬礼で答える。
「君とともに戦えたことを、誇りに思う」
 そして。
 敬礼していた手を下ろすと、互いに手を差し伸べて、硬い握手を交わした。

 トラックに乗り込む負傷者たちに手を貸して、荷台に最後に乗り込むことにしたハンナは、
背嚢の重さで荷台に上がれず、押しつぶされそうになっていた。
 見かねたジャンが、そっと手を差し伸べる。
 ジャンの助けを借りて、ようやくトラックに乗り込めたハンナは、
荷台から何か言いたそうな表情でジャンを見つめる。
 そんなハンナを乗せたトラックは、エンジンを吹かした。
 天を突くようなマフラーから盛大に黒煙を噴いて、トラックはゆっくりと加速していく。
 その光景を見た瞬間、ジャンは思わず叫んでいた。
両手を口元に運び、メガホンのように輪をつくって。
「手紙を書くからな! 配属先が決まったら、教えてくれよ!」
 走り出したトラックから、ハンナも叫ぶ。
「待ってます、ずっと! 私も、絶対に、返事を書きますから!」
 結局、ぼろぼろと涙を零して泣き出してしまったハンナを、両手を振って見送りながら。
 はるか遠くに走り去ったトラックが、視界から消えそうになる寸前に、
ジャンは、尊敬する上官に向けるような見事な敬礼を、彼女に贈った。
333名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 01:21:33 ID:0acJwJjq
以上です。

萌えなネタを提供してくださった、
>192,195-196さん。
勝手に使って、申し訳ありませんでした。


それでは。
334名無しさん@ピンキー:2010/03/20(土) 01:39:13 ID:fFp+AyTy
>>333
GJ!
かっこよくて、そしてちょっぴり切なくて
別れのシーンなんて最高です
335名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 23:14:30 ID:Aplsowvj
GJ!
336名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 01:02:01 ID:mWkRiBL0
このスレでは、陸軍や海軍が、かなりの活躍を見せておるようだな。
だが、そろそろ、空軍の出番が必要だとは思わんかね? 同志。

例えばだ。
いつもいつも機体を壊して帰ってくるドジっ子操縦者(男)と、
そんな彼に文句を言い、怒鳴りつけながらも、きっちり機体を整備して送り出す一方で、
操縦者自身が無傷で生還することを祈っている整備班長(姐)とか。


…まあ、それはともかく。
何か、空に絡んだいいネタは無いかね?
337名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 10:24:07 ID:iwKw53zW
マッコイさんがが美少女と申したか。
338名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 00:24:04 ID:gL4LU+oK
「パイロットとコ・パイ」とか「操縦者と火器管制員」とか
「女性ばかりの空挺落下傘部隊に配属された男の輸送機パイロット」とか
339名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 04:29:06 ID:Fe22kCpU
軍服のエロさ
340名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 00:33:50 ID:KC73ZHUK
管制官とパイロット…
愛する人の声に導かれながら…とか?

戦闘機乗りと救難員とか…
    
341名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 00:41:28 ID:r/ACdMoJ
GJくださった皆様、ありがとうございました。>312あたりの人です。

空軍に絡んだSS、読んでみたいですね。
自分も、空と関係のある何かを投下できるように、がんばってみます。




ああ、これは、ちょっとした噂話なのですが。

戦後、とある補給廠に、泥だらけの野戦服を着た古参兵らしき下士官がやってきて。
そこで働いていた主計官のひとりを、連れ去ってしまったらしいですよ。
その二人は、戦時中、ずっと手紙を交わし続けていたのだそうです。


それでは。
342名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 01:22:01 ID:6456JF6/
>>341
それを書くんだ(鉄血の涙
343名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 00:13:03 ID:niZLS5Vz
非エロスレで、WW3を舞台にして、ノルウェーの女性戦闘機乗りと、彼女を撃墜した
ソ連軍の将校がすったもんだの末に結婚するってのがあったな。
続編で、PKO派遣された女性戦闘機乗りのほうがまたしても撃墜されて、イギリス特殊
部隊と陸自特殊部隊、空自救難隊が救出する(らしい)話が始まったが、救出作戦直前で
中断中。
344名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 15:22:38 ID:+6xUuKud
第二次とかの重爆撃機
とかおもしろそう。
B17ぐらいか…

B29は墜ちたら竹ヤリ
に突かれるし
345名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 01:19:35 ID:q/b99KK2
空軍の将兵を主人公にしようとすると、なぜか知らんが、必ず撃墜される話になるんだ…。
そして、空を飛んでいるときの描写よりも、落とされて四苦八苦な描写の方が多いんだ…。

…なぜだ。
なぜなんだ…。
346名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 01:53:14 ID:6vwczUz/
カップル席を持った戦闘機って聞いたことないからなあ。
347名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 02:22:24 ID:tHVFcIEl
爆撃機なら、まだなんとか……
348名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 12:41:38 ID:WJ5ihl9h
「出撃するわよガーデルマン!」


……という台詞を思い出したが後が続かない。
349名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 05:15:54 ID:G59jbC2k
爆撃機の搭乗員とかって
戦闘機の機銃をモロに
受けたら肉塊になっちまうんだな…
特に欧州戦線のドイツ空軍とか30oとか積んでるし

女の子の搭乗員で書く場合、バラバラは何かなぁ…
350名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 20:05:05 ID:H4+ySkEO
歴戦の急降下爆撃機乗りに後部機銃手として女の子が配置されて
頭を抱える話を妄想してみた。

問題は規制でPCから書き込めないことだ。
351名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 02:48:14 ID:VI/Vc0Kt
>>348


隻脚の女性エースパイロット「ハンナ・ウルリッヒ・ルーデル」だな。


戦後は、年下の幼馴染みとラブラブなんだな。



このショタコンめ!!
352名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 00:51:36 ID:SkBnJP+R
最近の規制は酷いな
353名無しさん@ピンキー:2010/04/07(水) 17:50:30 ID:U4ZOBW/z
仕事中にルーデルが女体化する妄想をしてしまった……

物凄く後悔している。
354名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 03:55:08 ID:VxMblrxc
このスレの男くんは「ジャン」で女ちゃんは「ハンナ」なのか?
355名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 13:30:17 ID:5MrGf3Wc
>>349
まあミンチにならなくても着陸に失敗して炎上するか、爆弾に誘爆して…
地に足のついてない分飛行機乗りは地獄だぜぇ…

356名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 19:15:59 ID:/POaxrTE
なんだかんだでドイツ好きがおおい
357名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 22:46:20 ID:um8vL1SF
>354
特定の書き手が、キャラの名前を考えるのが面倒なので、ジャンとハンナで固定しているだけ。
スレのルールではありません。


…フランス系とドイツ系なので、他国ならしっくりくるが、同じ国の話を書くと、途端に違和感な罠。
358名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 03:11:06 ID:5YAZpLGh
ソ連少年兵とSSのお姉さんですよ

復讐じゃー
359戦車兵:2010/04/09(金) 23:30:27 ID:mJY1Q5eq
帝国戦車兵
後日談
エロ無し




「パンターのエンジンがお釈迦になっても引き上げ部隊に車輪が残ってたのは幸運
ですかね、大尉?うんしょっと」
ツーメリカ伍長が左側から高速徹甲弾を込め、汗を拭った。
「幸運?冗談言わんといて、めっちゃ不運やわ。何やのこの席、あの世への特等席やんけ!」
僕の前に座っているエルリカ曹長がなまりのある情けない声で言った。
「照準器よし……大尉、修正完了です。これで何とかいけるかと」
「了解……本来ならティーガーとかがよかったけど……パンツァーファストで肉薄するよりはマシだね」
僕の名前はハンス。帝都防衛作戦がら7日後、僕達の生き残りを賭けた
最後の戦いが始まろうとしていた。

『最後の戦い』

帝都防衛作戦に参加した全部部隊が民間人を保護し、西部戦線から迫る連合軍へ
降伏するまでの時間を稼ぐため動ける戦車、自走砲、突撃砲、駆逐戦車問わず
大砲を積んでいる全ての車輌は殿(しんがり)を務めた。任務ではない、全て志願だ。
僕達の搭乗していた豹戦車はエンジンの故障とガス欠で僕達自らの手で自爆させた。
帝都を脱出し、徒歩で行軍していたら機械化混成部隊の少佐が戦車が扱える者を
召集していた。
360戦車兵:2010/04/09(金) 23:31:17 ID:mJY1Q5eq
『これは任務ではない。志願だ、戦車や砲が扱える者は名乗り出てくれ。民間人を可能な限り
西に脱出させるために時間を稼ぐ』と
僕達を含め、数十名の戦車兵、砲兵、退役した軍人が参加した。
作戦は簡単だ。街道を東から追撃してくる戦車の足止めする。それだけだった。
それも数少ない戦闘車両を3〜5両ずつ距離をあけて配置し、偽装させ、側面を突くのだ。
ただし、この任務はかなりの確率で命を落とす。
敵の重戦車の大部隊をたったの数量で攻撃するのだ。敵の追撃は遅くなるだろうがその分
決定的な戦力の差で撃破されることは間違いない。
それでも僕は志願した。大尉と共になら死んでもいい…とさえ思ったからだ。

僕達は最初の待ち伏せ隊だ。
『こちらカッツェからケッツヒェン1へ…カリナ、準備はできた?』
『こちらケッツヒェン1、2、3、4、準備完了。小人達によるとブレーメンの音楽隊は
既に森を抜け以前ブレーメンを目指しています』
『了解、目標は各自に任せる。魔獣は高速徹甲弾じゃないと側面も抜けないから注意。
射撃後全速後退。次の巣まで急いで。小人は敵兵と輸送車を狙って、戦車撃破後は同様に後退』
暗号名で会話される意味は不明だが、声音から敵の追撃はすぐそこまで迫っているらしい。
この戦車……いや軽駆逐戦車は4人乗りだ。
ただ設計の関係で中心に装備される砲が向かって左側に
装備されているため、本来であれば主砲の右側にいる装填手が左側にいるのだ。
軽駆逐戦車の名が示すとおり、小型で狭く視界は操縦手の覗き窓に、僕の照準眼鏡、伍長のリモコン機銃
下に装備されているペリスコープ、そしてこの戦車の搭乗口に設けられている大尉のペリスコープに大尉の双眼鏡。
大尉が搭乗口を閉めると、車輌の右側はほとんど見えない。
乗員の配置は前から操縦手のエルリカ曹長、照準手の僕、リモコン機銃&装填手のツーメリカ伍長、そして
戦車長のシュルツーナ大尉だ。
「よォ、ハンス。背中に当たるおっぱいが大尉のじゃなくて悪かったな?」
伍長は煤にまみれたタンクトップに長ズボンという出で立ちだ。その手に頭部を叩かれた。
「…………」
繰り返すようだけど、この車輌は小型で狭いため、必然的に
伍長の82のEカップなおっぱいが僕の背中によく当たる。その度に僕のアソコがビクンと反応してしまのだ。
無理もない……つい先日、大尉に僕の念願であった後背位でさせてもらった。
でもその後にサウナ室で曹長、伍長、それに僚車の戦車長をしているカリナ軍曹の3人に弄ばれたのだ。
しかも3人全員騎乗位。
361戦車兵:2010/04/09(金) 23:32:41 ID:mJY1Q5eq
……それに一番、僕の事を『不潔』『スケベ』『変態』と罵っていたカリナ軍曹が
『あああっ、わ、私のはしたないおっぱいが変態ハンスに吸われえて、あんっっ吸われてるうう!何か出る
出る、出ちゃうう!おっぱい出るううう!!』とか
『ふぐっあはっ、んおおおっ!ダメ、ダメなの…わ、わたくしい!イちゃいます!変態ハンスにレイプされながらイちゃうのおお!
ああっイクッイクッイクうううううっ!!』
………って嬌声を上げながら3回も搾られた……さすがの豹変振りに他の二人も、後から入ってきた大尉も
『え…えーと……その…すごく激しいね…軍曹…た、溜まっていたのかな…ハハッ』
と言って引いていた。………あとで聞いたけど、カリナ軍曹って元シスターなんだって……って
ああ、ま、また催してきた。もう!
『こちらケッツヒェン3!戦車警報、音楽隊発見…先頭の魔獣が射程に入ります。』
『こちらカッツェ、射程は400を厳守。そうじゃないと魔獣の側面も抜けない』
予想通り相手は大部分が122o砲を持つ重戦車だ。
帝都防衛の時、敵軍の主力戦車と共にウジャウジャ湧いて出てきたヤツだ。
『了解。大尉、神の御加護があらんことを』
『ありがとう。そちらも武運を…ね』
362戦車兵:2010/04/09(金) 23:34:25 ID:mJY1Q5eq
そしてしばらく静まりかえる車内……照準眼鏡を覗いている僕の眼に砲塔に白帯を引いた重戦車が映った。
兵士が跨乗し、歩きながらお酒を飲んでいる。帝都を陥落させて浮かれているのだろう。
戦車の砲塔から顔を出している戦車兵にゲキを飛ばされながらも、酒を飲み歩いている。
『……ボク達を舐めきってるね……ハンス、いい?いくよ』
『はい、大尉!照準、完了』
『よォし!ぱんほー!!』


『こちらケッツヒェン1、敵戦車撃破!』
『ケッツヒェン2、重戦車撃破』
次々と撃破という言葉が飛び交う。しかし、ここからが本当の戦いだ。
『了解。こちらカッツェ撃破!各車、全速後退!急いで!』
敵もこちらの位置を掴み、車体と砲を旋回させている。この軽駆逐戦車の砲では重戦車の正面装甲は弾き返される。
『ひ、ひえええッた、大尉!大尉!は、速く!速く!敵がこっち向いとる!』
曹長が覗き窓を見ながら半ば叫ぶように言った。それもそのはず、この戦車で122o砲なんて喰らったら一発でバラバラにされる。
『曹長、落ち着いて全速後退!ツーメリカ、榴弾装填!目標は敵歩兵群、リモコン機銃も併用して!』
大尉が搭乗口から突撃銃で歩兵を牽制しながら言った。
『榴弾、命中!』
『榴弾、装填完了!』
『ぎゃあああ!』
周囲は一変して地獄絵図と化した。崩壊する帝都を防衛した時の様子が脳裏に浮かぶ。
硝煙と銃声に包まれた。重戦車の砲弾が地面を抉り、後方の森の木々を砕く。
僚車が撃破され爆発する音、燃える敵の輸送車。
そして次の瞬間、重い衝撃が走り、地面ごと右覆帯が抉られた。
『な、何や!?あかん、覆帯が車輪ごとごっそりやられ取る!』
『こちらケッツヒェン1、大尉援護します!』
『カリナ、猟兵を連れて後退しろ!射撃で時間を稼ぐ!ボク達に構うな!!』
『し、しかし――――――!!』
『カリナ!!』
『り、了解!』
続いて、再び右側面に砲弾が被弾。僕達の車輌は大きく傾いた。
『乗員、携帯火器を持って脱出!』
最悪のシナリオが僕の胸中からこみ上げてきた。僕以外が全員女性。
相手は4年前、東部戦線で我が軍に妻、恋人、娘が暴行されて惨殺された相手。
帝国にこの怒り、憎みをぶつけんと復讐・報復に燃えている敵軍。
「ハンス!何をしているんだ、速く車外へ出るんだ!」
「はっ、はい!」
た、大尉が伍長や曹長が敵軍にめちゃくちゃにされるところなんて見たくない――――――



とまァ、こんな感じで書いてみた。
前スレに投下した戦車兵モノ。
この戦車兵モノはハッピーエンドと
バッドエンド検討中。

363名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 23:35:43 ID:utVIeGg7
おお、続き来てた。お疲れ様です
364名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 17:26:33 ID:3CfLlbeM
GJ
続きwktk
365名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 18:30:13 ID:I2hOoveK
wktk!
バッドエンドが読みたいです。
366名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 12:25:52 ID:9BG43wjU
バッドエンドだと戦火スレ向きな気も・・・


このまま脳天気にドタバタでハッピーエンド(ハンス的にはバッドエンド?)が見てみたいな
367名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 13:50:45 ID:syoh3bA3
ひょっほう
368名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 17:06:29 ID:DVhMRoNc
ハンスは敵軍女性兵のお供えですね
わかり
369名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 18:53:02 ID:KsTW9X+1
ってか両方書いてくれれば(ry
370名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:02:34 ID:d9vAKhh4
戦車兵モノ
バッドエンド編
敵少年兵×大尉
微ショタ







僕は目の前で起こる暴行をこめかみに自動拳銃を突きつけられたまま呆然と見ていた。
捕まった時に何発か殴られ、口が切れたらしく、血の味が口にまだ残っていた。
大尉、伍長、曹長は敵兵に捕まった途端押し倒された。
敵兵が大尉達の服を荒々しく引き裂き、胸元を開いて、股を割らせる。
そして下着をはぎ取り、胸と尻を露わにさせ、蹂躙する。
手慣れたものであった。戦場で何度もそうした経験があるのだろう。

半裸の大尉達は必死に抗ったが5人もの男の力で押さえつけられては適わない。
大尉や伍長の豊満な胸や尻に男達は狂喜してむしゃぶりついていた。
エルリカ曹長はここからは見えないが『裏切り者』『売女が』と断片的に言葉が聞こえ
そのたびに悲鳴が上がっていた。
371名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:03:11 ID:d9vAKhh4
男達は我先にと怒張を取りだし、有無を言わさず大尉に埋め込んだ。
「くっ…あぐうう!や、やめろっ!やめろおおっ!」
大尉は必死に抗った。が、濡れてもいない膣を強引にこじ開けられ、削り取られる痛みは尋常ではない。
喉をのけ反らせて、呻き声を上げた。愛撫など一切無い。
「んおおっ、加減がきかねェ…へへっ…んぐっおおおおっ」
「はぐっあっああっ…い、いやっ!な、中で出すな!!」
男が野獣のような声を上げ、大尉の中にぶりゅううっと精を吐き出した。
「ぐううっで、出る!」
「い、いやあああっ!!ああっあああー!!」
大尉の上に倒れ込み、深々と大尉に押し込みながら、より奥に精を吐き出そうと腰を密着させる。
男は何度か腰を震わせると、ふらふらと立ち上がった。大尉の股からどろりとした糊のような体液が
糸を引いて吐き出された。そして休む間もなく次の男が大尉にのし掛かっていく。
愛撫など一切ない。滅茶苦茶に突き上げ、乳房を握りつぶし、尻に指を食い込ませ、射精するのだ。
時折、何度か拳を振り上げ腹部を強打している敵兵もいた。
そして10人は相手しただろうか、大尉の抵抗も弱々しいものになっていた。
大尉や伍長の恥部からは鮮血が太股へとつたい、地に赤い雫をしたたらせている。
372名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:03:48 ID:d9vAKhh4
「ほらほら、もっと抵抗しろよ。帝国の雌豚が」
男が大尉の腰を掴み、勢いよく下から上へ抉るように突き上げた。
「かはっ!」 
大尉の身体が仰け反り、ぷるんと弾ける乳房から汗が飛び散った。
「帝国の女は良い身体してやがる…併合した田舎国の女とは大違いだ」
男が嬉々としながら大尉の震える乳房にむしゃぶりついた。
肌に舌を這わせ、乳首から母乳を吸うように食らいつく。
「はっ…い……あ、ああっ!う、うう……」
大尉は気丈にも『殺してやる』と言わんばかりに蒼い瞳で男を射るように睨んだ。
「何を睨んでやがる!」
男の拳が大尉の頬に飛んだ。
「こっちは散々殺されてるんだぜ。こんなんで済むと思うなよ?俺が満足したら次はアイツだ。」
男は後ろに控えている僕ぐらいの少年兵を顎で指した。
「なっ――!?」
大尉は男の言葉に愕然とした。
「アイツの童貞貰ってやれよ。なぁ?」
「な…や、やだ…そ、ん…ぐう!」
大尉は激しく突かれながら唇を噛みしめた。
こうなる事は理解していた。女が戦場で敗れればこうなる事は理解していたのだ。
だが、自然と溢れてくる涙を止める術はない。
「あん?泣いてんのか?帝国の雌豚が!俺には姉も妹もいたんだ。だがてめぇらが
攻めてきた時に犯されまくって殺されたんだ。妹はまだ10にもならない子供だった
のによ!おい、聞いてんのか、このクソアマッ!!」
「だ…誰が…くふ…は…ボ、ボクが殺したんじゃない!」
「知るか!てめぇだって帝国兵だろうが!姉や妹と同じ目に遭わせてやる!!」
「はら…い、いやっ!―――ぐううっ!!」
男は絶頂が近いのか、腰の動きがよりいっそう激しくなった。大尉を組み敷き、問答無用で
膣内に射精するつもりなのだろう。逃れようとする大尉に身体ごとのし掛かり地に押しつけた。
「お、おおう!だ、出すぞ!」
「や、やだ…やめろ!!いやあああっ!」
びゅるどぴゅびゅるるるるびゅびゅううう――――
男が最後に力強く突き上げてきたのと同時に吼えた。
う…うっと男が腰を振るわせる度に、大尉は身体から力が抜けていく。
「ん、んうう…い、いや…ハンス…ご、ごめんね…う、うう…」
「…さぁて…今度はあいつの相手をシテもらうか…」
男はそういってすすり泣く大尉を俯せにするとぐにゅりと尻肉を鷲掴んだ。
373名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:04:24 ID:d9vAKhh4
「おら、レンコフ、何やってんだよ。!」
「え…あ、は、はひゃい!」
少年兵は短い悲鳴のような返事をすると、地に伏せる大尉の腰を抱き上げた。
「う……」
自然と尻が持ち上がり、尻を後ろに突き出す四つん這いの姿勢になった。
満身創痍といった大尉の抵抗はなく、なすがままにされている。
「オラ、このエロい帝国の雌に種付けしてやれよ」
「よそ見してんじゃねぇよ!」
「はっ…はひ…はい…はっ…」
少年兵は血と精液に汚された色白の尻を見て腕が止まった。
成熟した女の、帝国の女性の尻を眼の前にズボンの中の肉棒は天を向き、
ガチガチに反り返っていた。
「はっ…はあ…!」
「ほら、やれよ。このお姉さんがお前の童貞欲しいってさ…やりやすいようにゆるめといたぜ」 
少年兵は大尉の震える腰を手で掴み、肉棒をズボンから取り出すとその膣口にあてがった。
「はー…はァ…はァ…ご、ごめん…ごめんなさい」
――ぶちゅ…ずにゅうううう――
「く…う…んんんん…!!」
大尉の膣口が少年兵の肉棒によって再度開かれた。
「あ…はっ…オチンチン…あと、溶けちゃう…あ、熱い…」
「い…く…くううっ……んん」
少年兵のガチガチに勃起した肉棒に思わず声を上げてしまいそうになるが
大尉は唇を噛みしめ声が漏れないように必死に耐えた。
374名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:05:10 ID:d9vAKhh4
「うぅぅ…あ…ああ…はあ…う」
少年兵は初めて体験した女なのだろう。
とろけるような表情をしながら、大尉の尻を掴み、奥へ奥へと自身の肉棒を押し込もうとしている。
「大尉…大尉…畜生!!」
僕は泣きながら叫んだ。その間にも少年兵は大尉の中に埋まった肉棒を突き上げるようにして
腰を擦りつけ、背後からこぼれ落ちる乳房に両手を食い込ませ犯している。
じゅぶっじゅぶっ…と少年兵と大尉の結合部が嫌でも目に入ってくる。
少年兵が腰を突き出し、引き抜こうとすると未練がましく、ねっとりと絡み吸いついている
ぬちゃぬちゅう…ぐちゅうう…ぬりゅう…
「あ…き……う…ううう」
大尉の苦痛に耐える声が少年兵の情欲をさらにかき立てた。
「あ…ああ…ごめん、ごめん…ハンス、ハンス…あ…見ないで…見ちゃダメ…!」
左右にぷるんと張った尻肉の腰を打ちつけ、パンパンパンと音が弾けるほど少年兵は
激しく腰を振り始めた。その光景はまるで野良犬の交尾のようだった。
「あっ、ああっんんんっ、はっ、はっンス…見ないで…見ないで、ハンス!」
後ろから何度も何度も突き上げられ、地に頭部を
擦りつけながらも大尉は「見ないで」と繰り返し続けた。
「あぐッ…く…ん!」
少年兵が大尉の乳を搾るように鷲掴みめちゃくちゃにこね回しながら歯をくいしばった。
「あっああっ…はっはっん…出る、出るよ。もう出ちゃう!」
「ぐ……っや…は!」
涙を散らしながら大尉はいやいやと頭を左右に振った。
「あああっし、締まる…締め付け…あ、ああああっ」
少年兵は大尉の背に密着し、首筋に舌を這わせながら乱暴に腰を叩きつけ、ピストン運動を繰り返す。
大尉の尻が震え少年兵の腰が上下に動く度に大尉の押し殺した苦悶の声が口から漏れる。
「ははあ…出る、出る、出る、出るうううっ!帝国の雌に…んんっぼ、僕の…た、たね…種付ける!」
覆い被さった少年兵の嬌声。その野良犬が大尉のうなじに頬をよせ、乳房を乱暴に
鷲掴んだ。そして狂ったようにピストンを繰り返し、腰を叩きつける。
その度にぬめった結合部から血と走り汁の混合液が垂れ落ち、森の草のベッドを汚した。
「ああ…出る出る……しゃ、射精…はあああっ、ゾクゾクって…あ、ああんん」
少年兵が猛烈な勢いで大尉の尻に腰を叩きつけ、パンパンパンと音が響く中、
本能のまま腰を振る、少年兵が雄の声で甘くわなないた。
375名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:05:32 ID:d9vAKhh4
「あああっ出る出ちゃうう出る!」
「いやっ…いや、もう…や、やめて…んくううううう…ハンス、見ないでええええ!」
大尉が泣き叫んだ瞬間
ぶりゅ、ぶりゅるるどぶぼどぼどぼどぶにゅうううう!
少年兵が大尉の濡れそぼった膣に限界まで肉棒を埋め込み、天を仰いだ。
背筋がピンと張り、肉棒からドロドロの白濁が鈴口を裂く勢いで射精され、大尉の中に精をぶちまけられた。
「はああっ…で、出てる……びゅるるって…出てる…うう…うっ…ううう…ハンス…ごめんね…ごめ、…うう」
射精絶頂の快感に少年兵は喉を痙攣させ、背筋がおれるくらい仰け反らせた。
「あ…ん…んんん…ふ…」
大尉の尻に少年兵は腰を振り続け、残った精液を吐き出したのか仰け反るようにして大尉から離れた。
ずるるっと肉棒を引き抜き、惚けた表情で萎えた肉棒に手をやり、射精の余韻に耽っていた。
先の男達よりも濃く、青臭い少年兵の塊が大尉の膣口からぶりゅっとこぼれ落ち、股を汚している。
僕は顔を伏せ涙した。少年兵を煽った男は終始大尉の陵辱劇をにやにやと鑑賞していたが再び催したのか
勃起した肉棒を扱きながら大尉に近づいた。
「へへ…ざまぁみろ…」
そして銀髪を荒々しく掴み、肉棒を眼前に突き出すと大尉の顔に射精した。
「い…や……あ……は」
ドロドロの精液を顔にぶちまけられても大尉はほとんど反応しなくなっていた。
伍長や曹長の声も聞こえない。大尉はこのまま死ぬまで犯されるのだろう。
「おい、このガキ使わねぇのか?」
新しい足音に僕は顔をあげた。それは敵軍の女性兵士の小隊だった。
僕は戦慄した…帝国軍が東部戦線でした事…その中には帝国の女性兵士が敵軍の少年兵の
手足を縛って死ぬまで犯し続けた事。
「遅いお前らの為に取っておいたのさ。チンポ縛って犯しまくるんだろ?」
「ああ、皆、溜まってるからね……へぇ、可愛い顔してるのね…ねぇ君、名前は?」


END


戦火の方にしようか迷いましたが続きという事でこちらに投下しました。
次回はハッピーエンド編です。
あと、下記は前の投下の修正箇所です。

×続いて、右側面に被弾し、僕達の車輌は大きく傾いた。

○続いて、至近弾が地面に炸裂し、僕達の車輌は大きく傾いた。

軽駆逐戦車の側面に被弾したらそれこそバラバラになってしまうのでは?
と思われた方、すいません。
376名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 22:13:06 ID:MxJSZTqS
乙ハッピーエンド偏も楽しみにしてます
377名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 03:09:52 ID:Nq9X1J3v
GJ
ENDなんてもったいない・・・!
378名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 20:53:24 ID:7hYy4ofG
ホントだよ。
ハンスきゅんの被虐シーンにwktkしてるのに。
続きも書いてほしかったけど、GJです。
ハッピーエンド編も楽しみです。
379名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 17:10:50 ID:vYZA17Uu
保守
380名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 16:58:58 ID:Je3QsqJ0
戦車兵モノ
ハッピーエンド(ギャグ多め)
前編
エロ
言葉責め



「手を上げろ、帝国兵!」
傾いた軽駆逐戦車の横で僕達は包囲されてしまった。
周囲には小銃を構えた敵兵士。
「くっ……ここまでか」
「畜生……」
「ええっいやや〜、ま、輪姦されて極寒収容所のバッドルートや……」
「大尉…伍長…曹長……」


ハッピーエンドルート


「って……何で僕だけなんですかっ!!」
最悪だ。最悪だ。最悪だ。
敵軍兵士は大尉達には目もくれず、僕を取り囲んだ。
しかも僕の軍服は脱がされ、下着一枚だ。
僕を取り囲むのは2メートルはあろうかという大男達。
「はぁーはぁーはぁー……」
「ダ…レ…カラ…ヤル?」
「そりゃ…もちろんじゃんけんだろ。これだけの上玉だぜ」
「ああん?年功序列で俺からだろ?お前はまだ1年しか従軍してねぇだろうが!!」
鼻息を荒くし、目は血走っている。かなり危険な状態だ。
「……ハンス、モテモテだね…」
「修羅場……ですかね?」
「………これはこれでええけど…何かむかつくな」
大尉達は遠くから僕を見ている。逃げようと思えばそのまま逃げることもできるだろう。
381名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 16:59:37 ID:Je3QsqJ0
「もう我慢できない!!」
一人の大男が跳びかかってきた。
「い、いやだ……いやだああ!」
僕は悲鳴を上げ、後ずさり、身体を捻って転がり大男から逃れた。
男はそのまま地に覆い被さり、ビクンと腰を引きつられた。
「うっ…!」
男が眉を潜めて、仰け反った。そして股間を押さえたまま、踞る。
「………何て可愛い声だしやがる…思わずイっちまった――――――ぼごぁ!?」
僕の方を向いて、男はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた途端、横から跳び蹴り
を喰らってそのまま気絶した。
「何抜けがけしてんだよ、ぶっ殺すぞ!穴は一つしかねぇんだぞ」
「口と尻で2つありやああああもう我慢できない!!」
「マキシマイズパワー!」
男達が下半身のズボンを脱ぎ祓い
「ウェポンパーフェクション!」
もはや魔物としか形容できないアレを取りだし
「アドレナリンラッシュ!!」
完全に勃起させて僕に迫った
「にやああああっ!?」
男達が跳びかかろうとしようとした瞬間、僕との境目に機銃が撃ち込まれた。
「そこまでだよ、ゴミクズ共」
はっとして振り返ると、短機銃を構えた戦車兵を筆頭に数名の歩兵が
小銃を構えていた。
「な、なにしやがる!!」
男達がズボンを下げたまま抗議の声をあげた。
「何しやがるだぁ?ざけんな、囚人部隊が好き勝手やっていいワケねぇーだろボケッ!
さんざん滅茶苦茶にしといてまだ足りねぇのかよ!今のお前らは俺の指揮下にあるんだよ。
小汚ねぇイチモツしまって戦列に戻りやがれ!」
激しい剣幕でその戦車兵は吼えた。よくよく見ると、女の人なのか?
大尉のふくよかな胸に見慣れている僕はその戦車兵の胸を見て一瞬、疑問に思った。
あ、でもお尻のラインからすると女の戦車兵だ。
「それともここでぶっ殺してやろうか?囚兵はいつでも撃っていいって命令はでてるんだぜ?」
がちゃりと短機銃を構え直す戦車兵にさすがの大男達も諦めたのか、未練がましく隊列へと戻っていった。
「た……たすかった?」
ヘナヘナと僕は脱力すると脱ぎ捨てられた軍服を別の戦車兵が持ってきてくれた。
こちらは明らかに女性とわかる。先ほどの女戦車兵は大尉の元へ行き
何やら話し込んでいる。
『失礼しました。大尉殿、自分はシャリナ=ツェッファ中尉であります』
「ああ……どうも」
敬礼を交わした大尉だが表情は険しい。
『御心配なさらないで下さい。我が軍の追撃命令は撤回されました。
貴女方を捕虜にするつもりはありません。早く、西軍へと投降してください』
「………それはありがたいね」
大尉はそう言った。しかし女戦車兵の眼が先ほどの表情のように険しくなった。
『それと…………勘違いしないでくれ。あんたらを捕虜として捕まえたら
強姦される前に俺が八つ裂きにしちまいそうだ。だからとっとと目の前から消えてくれ』
女戦車兵がナイフを取りだし、大尉の襟元に突いているブリキでできた十字章を切り取った。
『これはその駄賃だ。早く消えろ』
そう言うと戦車兵は他の兵に声を掛け、戦車へと戻っていった。
「た…助かったんですかね……」
伍長が恐る恐る言った。
「一応はね……早く行こう。気変りされて撃たれるのはごめんだ。ハンス…」
大尉が僕に向かって言った。
「は…はいい〜ッぐすぐす」
「大丈夫?君のお尻は守られたようでよかった」
「冗談じゃないですよ」
「ブリキの勲章1つで済んだのは奇跡だね。早く行こう。カリナ達と合流しないと」
382名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 17:00:13 ID:Je3QsqJ0
そして僕達は森の中をひたすら西へ、西へと進んだ。
ようやく自軍に合流でき、その2日後、連合軍に降伏し、僕達の戦争は終わった。
捕虜にはなったものの、あまりにも小汚い容姿だったせいか、少佐以外は半年もたたない内に釈放された。
戦後、復興ために色々とあったけれど一番、苦労したのは大尉だと思う。
もともと帝都貴族の出身であった大尉は帰る家もない。何も無くなった帝国貴族の令嬢。
連合国の分家を頼るという手もあったんだろうけど、結局は土地の一部だけを残して
その他の土地はほとんど分家に譲ったそうだ。
ツーメリカ伍長は空襲で焼けてしまった町工場を再建するため、行き場のないエルリカ曹長を雇って、故郷に戻った。
カリナ軍曹はシスターとしての道を再び歩み、戦乱で亡くなった多くの人達の為に祈りを捧げている。


最後に僕は?というと………


「はぁ……暑い」
僕は今し方、収穫した麦を荷台へと積み込んでいる。
田園地帯が広がるこの土地で農業の手伝いをしている。元々は農家であった為、作業自体は手慣れている。
戦後の復興の中、食うや食わずの生活をしている人達に比べ、毎食、食べられる僕は恵まれているのだろう。
照準手として最後に搭乗した駆逐戦車の残骸が残る田園で僕は汗を拭った。
もちろん、この駆逐戦車は僕が乗った戦車ではないけれど、そのうち鉄クズとして業者にでも引き取って貰おう。
少しぼーっとした後、僕は胸ポケットに入った古ぼけた写真をとりだした。
降伏する前、最後に取った皆の写真だ。
「ハンスさん、この麦で最後です」
「とりあえずこれで全部、収穫完了ぉ」
「ああ、御苦労様。それじゃ明日、街に出荷しよう。今日はこれくらいで上がろうか」
「はい」
「了解でーす」
この領地で雇われている少女、エルンとファニーに声を掛けた。
二人とも戦災孤児だ。他にも領主様の屋敷には何人かメイドや運転手、執事もいるけど
皆、戦乱で徴兵されていた人や戦乱で家族や故郷を失った人だ。
え?僕が雇ったって?違う、違う。僕もここの領主様に雇われた内の1人だから。
その領主様とは――――――
383名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 17:00:49 ID:Je3QsqJ0
「お嬢様、ただいま戻りました」
「御苦労様、今年の収穫も問題ないようだね?」
「はい。明日には出荷できるかと思います」
領主の私室で僕はうやうやしく言った。
椅子に座る女性は手にしていたペンを置くと僕に向き直った。
「お嬢様だなんて………そんな風に改まって言われると調子狂っちゃうなぁ…
ここには誰もいないんだから、ボクのことを名前で呼んでくれると嬉しいんだけど」
「はい………僕も何かむず痒くて…大尉」
「それはダメだって言ったはずだよ?ちゃんとツーナさんって呼んでくれなきゃダメ」
「え…えと…ツーナさん」
「は〜い、なにハ・ン・ス♪」
「その………え、えーと…き、今日も…ですか?」
「んん〜…何が?」
領主様は椅子から立ち上がると机に腰掛けた。見慣れた軍服はではない、大尉の私服。
未だに違和感を感じてしまう。大尉のスカート姿なんて生きている内に見ることが
できるとは思ってもいなかったからだ。
「………その…夜伽…とかです」
「ああ、ハンスは飽きちゃったからそろそろ別の子を呼ぼうかなぁ…エルンとか女の子もいいなぁ」
「ええ、そ、そんなぁ!?」
僕はガビーンとなった。確かに大尉は年上だし、若い子の方が好みかもしれないけど…僕は落胆した。
「あははは、ウソウソ。ボクはハンスがいいな。さすがに戦時下じゃない時に
エルンやファニーに夜伽は犯罪になっちゃう」
「……………」
僕は戦時中にエルンと同じ年齢で大尉に筆卸しされたんだけど。
大尉の年齢は聞いたことはないけど…たぶん今現在で23、4じゃないかな?

「んっ…うう……た、大尉」
「だから『大尉』は……もう、仕方がないか…いいよ、その呼び方で」
大尉が僕の股間に手をあて、
ぐにゅぐにゅと揉みほぐすような手つきで囁いた。
「はっ…はい…あ、あぐうう」
今、僕は執務室の椅子に背を預け、大尉が股間に踞る格好だ。
大尉が僕のジッパーを開き、勃起しているモノを取り出すと
舌先でチョロチョロと舐め始めた。
「はは…すっごいガチガチだね…毎日ボクの事を思ってオナニーしてたんじゃない?」
チュチュッと軽い鳥の囀りのようなキス。ゾゾゾッと背筋を登ってくる快感に
僕はまたしても背をのけ反らせた。
384名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 17:01:13 ID:Je3QsqJ0
「そ、そんな…毎日…なんて…あくっ」
大尉は僕が言い終わる前にズボンをずり降ろし、下半身を顕わにした。
「ウソばっかり…君みたいな変態がオナニーを我慢できるわけないじゃないか。
休憩時間の度に搾ってるんじゃない?」
「そ、そんな事してません…ほ、本当です」
「……そういえばボクの下着が1枚ないんだよね……君に洗濯を頼んだ時からさ」
「――――――!」
「ほうら…ビクンっと反応した。使ってるんじゃない?ボクの下着を」
ガチガチに勃起している僕のモノに舌を這わせ、指先でくりくりと鈴口を突かれた。
「う……そ…そんな」
「ん…あはっ、硬くてステキだね…ん、ちゅ…ね、怒らないから本当の事言ってくれる?」
大尉はモノに添わせ、歯で軽く甘噛みしながら、唾液を擦りつけ始めた。
「くッ…はぁ!?…そ、そうです……た、大尉の下着……その匂いを嗅いで…
オ、オナニーしてます!…で、でも、よ、夜だけで…休憩時間になんて」
「ふうん…やっぱり君だったんだ…ボクのパンティー盗んで犬みたいにクンクン嗅いで
チンポ扱いてるなんて…ふふふ」
大尉は僕の股間に踞り、上目使いで言った。
「……くっ…あ…た、大尉…くはっ」
「んっ…このまま扱いて射精させてもいいけど…それじゃあ可哀相だもんね?」
大尉は僕の勃起しているモノをペロリと一舐めして言った。
「は…はい…お、お願いです大尉…は、早く…」
「ん〜…どうしようかなぁ……そうだ、ちゃあんとおねだりできたらいいよ」
「お…おねだり…?」
「うん」
大尉は笑顔で頷き、言った。
「『僕はエルンとファニーの裸を見ながらオナニーしていた変態です』って言って欲しいな
あと僕の足を舐めながら、二人のどこを見て興奮していたのか言ってくれる?」
「な――――――!?」
僕はその言葉に凍り付いた。
「……図星でしょ、誰にでも発情する変態ハンス君?」
「ち、違――――――」
僕のその言葉は大尉の次の言葉で遮られた。
「ふぅん……あの二人が川で水浴びしてた時に見張りをしていたハンスが
こっそり覗いてたのをボクは知ってるよ」
「なっ…何でそれを!!」
僕はとっさに叫んでしまった。
「偶然だったけどね……乗馬してた時にコレで見えたんだよね♪」
大尉が執務机に置いてある古びた双眼鏡を掲げて見せた。戦車長をしていた時からの支給品だ。
「14歳の少女達の健康的なお尻と太腿に興奮してたのかな……必死でオナニーしてるハンスは可愛かったよ
三回もぴゅぴゅって射精していたし…ホント、君ってド変態だよね」
「………あ、あの二人には……」
「言って欲しくなかったら……」
大尉は足をずいと出して
「ボクの足、舐めながら言ってくれる?」

385名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 21:58:02 ID:vVQ4HTGE
GJ
ハンスほんとに見境ねえなw
386名無しさん@ピンキー:2010/05/01(土) 07:13:24 ID:5x0C4vZo
戦後復興もまたエロから始まるw
387名無しさん@ピンキー:2010/05/01(土) 17:58:49 ID:k8iR4FPH
ハンスきゅんかわいすぐる!!!
続きも楽しみです。
388名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 08:08:45 ID:WpPxWEOZ
やっと規制解除! 遅れ馳せながらGJでした!
389名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:16:03 ID:nFlfe5cO
なんとなく女性工兵とかどうだろう、とかふと思ったが…
ある意味一番あり得なさそうだよなぁ
390名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 12:44:39 ID:hcj8YC1e
>>389
大祖国戦争では、赤軍に女性の工兵が結構いたよ

「地雷除去の工兵は人生で何回間違えることがあるか?」
「工兵はただ一度間違えるだけです」
391名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 01:09:48 ID:oIaz3FwV
陸自の施設科・不発弾処理隊にも女性自衛官いるぞ。

女性自衛官が初めて不発弾処理したのは2005年11月。
出典『陸上自衛隊の素顔』監修・小川和久
392名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 01:38:20 ID:pLrJkXnE
「直接戦闘に参加しない」「手先の器用さを買って」「荷物もちは機械がやるから」
そんな謳い文句で戦闘工兵に女性兵士が大量動員されてる世界とか…

まあ実際にその謳い文句どおりになっているかは現場しだいなんだろうけど
393名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 03:04:21 ID:2qmAVRFx
女性工員が戦車を前線まで運転して行く

「待っていたぞ同志、では今から突撃だ!」
当然工員もセット

よくある話だったらしいが生産に悪影響無かったんだろうか?
394名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 05:04:19 ID:icwOqM8/
次代を担う子供たちの生産か?
増産体制だから良い影響では?
395名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 00:42:31 ID:fDTQlEcN
産休が取れるとは思えんが……
妊娠発覚する前に死んでるかもしれないし……
396名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 18:07:53 ID:INYIHcQR
ho
397王子様の親衛隊―1:2010/05/25(火) 01:32:54 ID:v0PpNkKm
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1166012445/380-
設定は↑のを使ってます

王族たるもの、いついかなるときに命を狙われるかわからない
そのため24時間傍に付き添い、護衛をせねばならない そこで王の長子、つまり跡取りの王子様にも護衛兼身の回りのお世話をする王子の親衛隊が組織された…!

フィオナは新たに親衛隊に任命され、本日は彼女のお披露目だ 彼女は孤児であったが国の社会保障がしっかりしていたので十分な暮らしと十分な教育を国から施された
自分を育ててくれた国に恩返しをしたい その一心から彼女は国を守る軍人になることを決めた 軍の厳しい訓練に耐え、神の子である王子のお傍に仕えることができる なんと光栄なことだろうか
親衛隊は王子様直々のご指名によって選ばれる 親衛隊員は皆、抜群のスタイルを持ち、優れた美貌を持っているらしい
夜の御勤めがあることも理解している 余計な毛の永久脱毛の手術も受けさせられたためそういうこともあるのだろう
と、ある程度の覚悟は決めていたのだが 王子の寝室を開けて飛び込んできた光景には言葉を失った

「ああ、気持ちいいよ… あ、君が新しい子?」
フィオナはご挨拶をせねばならなかったのだが、言葉が出てこなかった
王子はベッドの上で親衛隊の1人に抱きかかえられ、頭や顔を胸の間にすっぽりと収め、手にも足にも親衛隊員が張り付き、胸で挟みこんでいる もちろん性器も別の親衛隊員の胸で奉仕されている
「服を脱いで王子様に自己紹介をしなさい」
ベッドの隣に立っていた親衛隊隊長であるメリンダの声を聞いてやっとフィオナは思考を取り戻した すぐさま服を脱ぎ、気をつけの姿勢で
「はっ、本日より親衛隊に配属されましたフィオナです!」
と声を張り上げた フィオナは処女であり、裸を男に見せたことも無い 胸やあそこを手で隠したい気持ちを必死で押さえ込む
「(ああっ、恥ずかしい…)」

「っ…ぁぁっ…(痛いっ 裂けるっ…!)」
フィオナは必死に破瓜の痛みに耐え、声を出すのをガマンする
しかし王子はフィオナを気遣うようなことをせず、好き勝手に腰を振るばかりで痛みは増していく 親衛隊は王子の遊び相手であり、王子を悦ばす玩具なのだから当然だ
「あ」という声とともに精液がぶちまけられる 何もかもがいきなりで、鍛え上げられた軍人でもぐったりとしている
だがしかし、そんなことお構いなしで今度はアナルにペニスがねじ込まれる これには流石に声をあげて
「あひぃーっ! ああああああーっ!」


こうして一夜にしてフィオナは後ろの処女まで奪われてしまったが、どうやら王子のお気に入りになってしまったらしく、彼女の思いとは裏腹に夜伽以外にも様々なことを命じられることとなった
「フィオナぁ、雑誌買ってきてよ」
どうも雑誌に王子の好きなアイドルが載っているようだ これだけだとただのおつかいだが…
「王子様、ただいま帰ってまいりました これでよろしかったでしょうか」
「うんうんいいよいいよー ありがとうね」
言いながらスカートが捲られる バイブが前と後ろに挿し込まれ、振動している
「あはは、びしょびしょだねー」
その後、愛液まみれのバイブを口に突っ込まれ、前の穴には王子のペニスが代わりに挿し込まれた

他の日には、王子がお忍びでショッピングモールに出かけるということで護衛を勤めることになった
もちろんゾロゾロと王子のまわりを大柄な女が囲むわけにもいけないので、隊長が隣につきそれ以外は着かず離れずといったところだが
王子はプラモデルを見てまわるのに夢中なようだ お忍びなのにあまりに堂々としているため逆に気づかれていない
「…っ!んっ、くぅっ…!」
今回、王子を護衛する親衛隊は全てバイブを装着しており、王子のポケットにそのスイッチが入っている
王子は快楽に必死に耐える親衛隊員を横目で見ながらニヤニヤとしている プラモデルと同じく、彼女たちもまた王子にとっては玩具だからだ

その他にも全裸の親衛隊3人でソリを引かされたり(しかもヒモは膣穴とアナルに挿し込まれたバイブにくくりつけられており、内臓を引きずり出されそうな苦痛に耐えて引くことになる)
ノーパンノーブラでチアガールの衣装を着て踊らさせられたり そんな命令ばかりだった
4交代制であるから休暇もあり、体力的には問題ないのだが、国に恩返しをしたくて軍隊に入ったのにこれではフィオナの落胆度は増すばかりであった
王子は神の子であり、神の子に命じられたことは全て尊いのだと、自分に言い聞かせても限度がある
「こんなことをするために軍隊に入ったわけじゃない!」
そんな気持ちは日増しに膨らんでいった


398王子様の親衛隊―2:2010/05/25(火) 01:33:40 ID:v0PpNkKm
ある日、王子は高利貸しを運営しており闇の王とも囁かれるアーチボルドの招待を受けその本社ビルにやってきた 護衛は10人、その中には隊長のメリンダとフィオナも含まれている
厳しい取立てなどかなりあくどいことをやっているのだが、この男の手は議会や司法、メディアにも及んでおり非常に大きな力を持っていたため誰も手が出せずにいた 正義感の強いフィオナにとって許せないことだ
小規模メディアなどが記事にしていたが、圧力が凄まじく数件の新聞社は潰されてしまったという なぜ王子を招待したのか、そしてなぜ王子はホイホイやってきたのか
フィオナは不審がりながらも万一のときは命を捨てても、なんとしてでも王子だけでもお守りせねばならない そこは流石に軍人である、今までの仕打ちをすっかり心の隅に追いやり任務に集中した

「王子様、このようなむさくるしいところにおいでくださいましてありがとうございます」
脂ぎった顔をニタニタとさせ、アーチボルドは王子を出迎える ビルの最上階、接待用の特別室に招待され、最高級の茶や菓子が振舞われる
「護衛の皆様方もどうですかな」
「いいえ、お構いなく」
当然飲むわけがない それに貧しい者から搾り取った金で作った茶など飲みたくもない、そんなものを王子に飲ませるのも許せなかった
「ねぇ、B-ZONEはまだ?」
B-ZONEとは王子が好きなアイドルユニットのことで、彼女らが載っているということでフィオナは恥ずかしい思いをして雑誌を買いにいかされた
「(まさか…これに釣られて……)」
「ははは、王子様はお待ちかねのようですな では…入って来なさい」
「「「は〜い」」」
B-ZONEの所属メンバーが部屋にぞくぞくと入ってくる 10人以上の大所帯だから年齢もまちまちである
彼女たちが着ていたのはステージ衣装ではなく、極小の水着だった どんな接待が行われるのか大体想像はつく
「うわぁ、キャサリンだぁ!本物だー!」
王子は一番のお目当てのアイドルを見つけ、極上の笑みを浮かべている
「ふふふ、お気に召しましたかな」
「(やっぱこういうことかー!このエロ王子め!)」
闇の王の狙いは明らかだった、買収である しかも王族に対する買収とは、王族をナメきっている 
フィオナは拳をワナワナと震わせ、射殺すような視線をアーチボルドにぶつけた しかし涼しい顔でそれをかわす
「ホントにB-ZONEのみんなとエッチしていいの?」
「ええ、そのために呼んだのですからな… しかし、もしよろしければ1つこちらの願いを聞いていただけませんか」
大体予想はつく、議会で審議されている金利引下げ法のことだろう あれが通れば高利貸しは大損害を被る
「金利引下げ法、議会の連中はアレこそまさしく貧民を救う法であると言っておりますが…それは全くの嘘です! 
銀行が金を貸さないような者たちを我々は救済しているのです もしあんなものが施行されたら我々は廃業せねばなりません 
そうすれば一番困るのは誰か、銀行は金を貸さないのですよ? 借りた金を返すアテのない貧民たちが一番困るではありませんか」
「ふーん、でも王族には『ほうあんせーてーけん』はないよ、社会の授業で習った」
「何をおっしゃいますか、王子は昨今の金融危機が起きることを予測され、王に進言なさった 
そこで王が国民に海外への投資を止めるように呼びかけられたのではありませんか! 恥ずかしながら、あれが無ければわが社も今頃は…」
「(!! 確かにそんな噂は実しやかに流れていたけど…まさか本当にこの王子が…?)」
399王子様の親衛隊―3:2010/05/25(火) 01:34:04 ID:v0PpNkKm
実際、あの国王の発言のおかげでこの国は殆ど投資で損を出していない、国王の言葉は神の言葉であり、皆がそれに従ったのだ フィオナの中で王子を見る目がエロガキから変わりつつあった
「あれは先生が言ってたことをそのまま父様に言っただけだよ ところで、僕は難しいことはよくわかんないんだけどさ、お願いってことは別に無視してもいいんだよね」
「(なっ、なんてことを言い出すんだこのガキは!)そ、それは困ります 王子様のためにB-ZONEを呼んだのです、必ず王様にお伝えくださいませ」
王子の無茶苦茶な発言に流石の闇の王もうろたえる B-ZONEに伽をさせるためにどれだけの金と労力を費やしたか それを無駄にしてしまってはおしまいだ
「んー、でもさー こういうのを…たしか『ばいしゅー』って言うんじゃなかったっけ?」
「(コイツ、もしかして全然わかってないのか!?)そうですよ!買収です! 私の願いをかなえていただけるために王子にそのお返しをするんです!」
「でも、これって罪になるよね、牢屋に入れられちゃう」
「そんなこと!黙っていればわかりゃしません!王子様はいい思いをする、私は金利引下げ法の成立を防ぐことができる、これでいいじゃありませんか!」


まくし立てた後でアーチバルトはハッと我に返り、自分はとんでもないことを口走ったのではないかということにやっと気づいた
「ねぇねぇ、今のちゃんと録音した?」
「はい、このとおりです」
『そうですよ、買収です! 私の願いを―――』
「あ…あああああああああーっ!! かっ返せ!そいつを返せ!出てこい!!全員出てこい!! アレを奪い返せ!!」
王族に危害を加えるのはこの国の法では死刑か終身刑である、しかも録音されたレコードを奪ってどうするつもりなのか とにかく焦ってまともな思考が取れなくなっていた
一瞬、何がどうなっているのかフィオナもわからなかった ただ軍隊で鍛え上げられた体は頭より先に行動した
他の親衛隊員も同じように自分の身を立てにして王子を守る バン!と大きな音とともに闇の王の部下たちが部屋に入ってきた
それと同じく通気口が蹴破られ、天上に潜んでいた親衛隊が飛び降りてくる それと同じくして木の陰、机の下、そしてOLの格好をして部下たちがやってきた廊下から どこにこれだけ隠れていたんだというほどの人数が現れた
いずれも見た目は美しい美女であっても正規軍、チンピラやヤクザ風情では勝ち目がなく、たちまち抑えられてしまった

「王子様、この者たちはどうしましょう 共犯だと捉えられてもおかしくない状態ですが…」
親衛隊員の1人がB-ZONEの処遇について尋ねる 共犯なら死刑になる恐れもあるため少女たちは怯えて震えている
「ちっ違うんです!私たちはそんなつもりじゃ…」
「お願いです!許してください!」
「うぇ〜ん、えぐえぐっ…」
王子はニコニコと笑いながら
「あーいいよいいよ、この子たちも被害者だよ その代わりみんなで今度うちに来てよね」


かくして、司法や議会、メディアにまで力が及んでいた闇の王であったが、王族に危害を加えたとなればもうどうしようもなかった
国民は怒り、メディアもその勢いに飲まれ、死刑にすべきであるという意見が大勢を占めた
しかし闇の王は恩赦により釈放された 持っている財産は全て没収し高利貸しの被害に苦しんでいる人の救済に当てること、繋がりのある議員や検事・裁判官を全て暴露することを条件に
この完璧な事後処理に国民は感激した いつの間にか王子自らが大立ち回りを演じ、悪人共をこらしめたことになっていたが、それもこの熱狂の中では仕方のないことだろう

「(ああ…私はなんということを考えていたのだろう… 一瞬でもあんなことを考えた自分が恥ずかしい…)」
そんな中、フィオナは自責の念の極地にいた 一時は王子のことを単なるエロガキとしか見てなかったのである
それがこの国を覆っていた暗雲を一瞬にして晴らしてしまった この王子に一生ついていく、ということを心に決めた瞬間であった


「ねーねーフィオナ、漫画買ってきてよ もちろんバイブを入れて… あ、そうだ、今回はパンツも穿かないで行ってよ」
「はい、喜んで!」
400名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 14:04:59 ID:JZUqbajn
何という調教っぷりだ…乙
401名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 15:18:59 ID:LzYo5/oM
斬新な軍モノ
単なるエロ王子かと
思いましたが策略家なのかもしれない?

孤児施設が充実してる
のはフィオナみたいな
人材を発掘するためだったりしてw
402名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 11:52:41 ID:5NiUnv8J
h
403隣国の美剣士 その1:2010/05/26(水) 15:05:43 ID:5NiUnv8J
>>397-399の続き

小国の隣国――バートン王国
かつては小国を併合していたほどの大国であるが、近代化に乗り遅れ経済力では小国に大きく遅れを取ることになってしまった
そこで外資を受け入れ一気に経済発展を遂げようとしたのだが…経済危機によりドバイ化してしまった そこで経済危機の中でも平穏そのものな小国に援助を頼むことになってしまった

「我が娘シェリーよ、すまぬ…」
「いいえ、父上 国家を守るのが王族の努めです これは私が望んでやることです」
「ああ、王女様…」
隣で王女の従者が自分の無力さを噛みしめている できるなら代わってさしあげたいと心から思いながら
王女は非常に優れた美貌を持ち、現代のクレオパトラとも囁かれている 援助と引き換えにどんな目に遭うかは明らかだ
その王女が援助を得るためにかつて支配下においた小国へ向かうのだ 小国は支配下におかれたこともあってバートン王国をよく思っていない、王の許可が無ければ国民は援助を認めないだろう そのためには――

まずは王のもとへ行き形式的な挨拶を交わし、エロ王子のもとへ向かう
「あなたがこの国の王子ですね わたくしがバートン王国が王女、シェリーです」
「ふーん…… 子供だね」
「んなっ、なんですって! 私よりチビのくせに!」
シェリーだって大人の女性というわけではない、14歳の子供だ しかし自分よりも更に年下で、小さい男に子供呼ばわりされるとは
バートン王国の者たち…とくに王族はもともとプライドが高い そのため他国のやり方を受け入れず、ここまで衰退してしまったのだが そこで王子へのゴキゲン取りも忘れて思わずキレてしまった
「悪いけどさぁ、僕はEカップ以下の人には興味が無いんだよねー」
シェリーは並外れた美貌を持っていたが、ただ1つ胸だけはあまり大きくなかった それでもバランスの取れたスタイルをしているのだが
「君よりはまだスモウレスラーのほうが僕の好みに近いよ」
「な、なんですってー!」
生まれてからというもの、かわいいかわいい、美人美人と言われてきたシェリーにとって王子のこの言葉は屈辱の極みであった
王子はシェリーにさっさと見切りをつけ、次の玩具として目をつけたのが…王女の従者、ローザだった 先ほど王女に対し「代われるなら代わってさしあげたい」と思っていた女性である
ローザは女性でありながら国内最強の剣士であり、王女の護衛としてやってきた 今回の訪問にシェリーは護衛らしい護衛をこのローザ以外つけていない 1人いれば大丈夫と思わせるほど信頼されている
「ねーねー、名前なんていうの?」
「わ、私ですか!? 私はローザと申します」
目をキラキラとさせローザに擦り寄る王子 ローザもまた優れた美貌を持ち、スタイルも良かった バートン国内からも非常に人気が高い
「うーん、僕にはこっちのほうがいいや」
代われるものなら…と思ったが、まさかこんなことになるとは!
404隣国の美剣士 その2:2010/05/26(水) 15:06:52 ID:5NiUnv8J
ローザは子供の頃から強く、男が何人でかかってこようと決して負けることはなかった
普段えらそうな男も私には敵わない 何人何十人と束になってかかっても無駄、最後は私にひれ伏す いつしかローザは男を見下すようになっていた
「あっくっううっ…」
「あはは、進め進めーっ」
そんな彼女が男の――しかも小さな子供にひれ伏し、鞭で打たれる 動物のように裸にされ、馬のように四つん這いにされ それは彼女にとってどんなに屈辱だっただろう
子供の力とはいえ鞭で打たれてはたまらない しかも王子は鞭を打つのに手馴れているようで、かなりの威力になっている
「(耐えろ…王女様が犯されているのをただ見ているだけよりもよっぽどマシではないか!)」
「王子様、浣腸の用意ができました」
「あ、フィオナ ありがとうね」
その声を聞き、後ろを振り向きローザは顔面蒼白になった 2リットルは入るかと思われる巨大な浣腸器に浣腸液が満タンに入れられている
「まさか…そんな…」
「んじゃフィオナ、それを全部入れてあげて」
フィオナは躊躇せず浣腸器の先端をローザのアナルに突き挿し、浣腸液を注ぎ込んでいく
「うぐっ…ぐああああああっ! ひいいっ! やめて!もう入らないぃっ! ごめんなさいぃっ!もう許してぇ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
今までローザが一度も漏らしたことのないような台詞を叫ぶ しかし注入が止められることはない どんどん飲み込み、ローザの引き締まった腹が徐々に膨らむ
じょぼぼぼぼっ 思わずお漏らしまでしてしまう 腹が圧迫され膀胱から出てしまったのだろう 内臓が圧迫され、痛みと吐き気に襲われているローザはまともな思考ができない 頭は混乱し、ただただ涙が流れる
「王子様、浣腸液が全て入りました」
「妊娠してるみたいだね」
浣腸器が抜かれ、次に襲ってくるのは便意である これはお漏らしの比ではない 絶対に避けなければ
「お願いします!トイレに行かせてくださいっ!」
必死で肛門を引き締め便意に耐える しかし王子からは容赦無く鞭が膨れ上がったお腹に飛ぶ
「あっひぃっ!はっはっはっ…!」
もう声すらまともに出せない 少しでも気が緩めば全てを吐き出してしまう
「んー、でもここでされちゃったら困るなぁ いいよ、トイレに行って」
王子はようやくローザから降りた ローザは自分の手で尻を押さえながらトイレに千鳥足で向かう 下手に走ると漏らしてしまうからだ
トイレから出てきたローザはきれいになったアナルを犯される そのまま王子をおぶさり、くの字に体を折り曲げたまま歩かさせられる
「ほら、ローザ イクときはイクって言わなきゃだめだよ」
「はいっ、イキます! ローザイキます! アナルでイクーっ!」

こうしてローザは王子にその心をズタズタにされ、最強の剣士として自信に満ちた姿はどこへやら、王子を見るだけで恐れを抱いてしまうようになった
いや、本当に恐ろしいのは王子ではない 王子を見るだけで股を濡らすようになってしまった自分が一番恐ろしいのだ
今日は木刀で王子と手合わせすることになった しかし王子を攻撃するわけにもいかず、ただ王子の攻撃を受け続けるだけなのだが
バシンバシン!
木刀がローザの胸を打ちつけ、大きな胸が形を歪ませる
「あっひいいいーっ」
ローザは木刀を手放し腕で胸を庇う そこには最強の剣士の姿は無い ただただ弱い女の姿があるだけだった
無防備になった腹・腰・太腿 そして性器に木刀が何発も叩きこまれる
「あああああーっ!」
遂にローザは座りこみ、木刀で性器をぐりぐりと突き挿されながら、口には王子のペニスをねじまれてしまった
普段の彼女からはとても考えられない屈辱的な姿 それはおそらくバートン王国の誰も信じないような哀れな姿だった


バートン王国への援助は決定され、王女が帰ることになった 当然付き添いのローザも帰ることになった
条件は1つ、王族の政治介入を防ぐ制度を作ること 王の失政により経済破綻の状態に陥ったということもありバートン王国の国民は大いに喜び、小国の国民も援助に納得したという
そして新政府の首相が挨拶にやってきた 護衛としてローザの姿もあった

「王子様…どうか、私をいじめてくださいませ……」
ローザは王子から呼ばれていないのに、自分から王子の下へやってきた
「いいよ それならさぁ、僕の親衛隊になったらいいのに いつでもいじめてあげるよ」
「は、はい! これからは親衛隊として王子に仕えます!」
こうして最強の親衛隊員が誕生した
405名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 20:36:30 ID:YPt1abcR
王子wwwwww
実は名君の素質があるのかw
調教の腕もすごいが
406名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 22:30:48 ID:081x3wOT
王子すげえええええ!!
407名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:06:18 ID:RCyaMxOd
ハンス「た、大尉、僕はもう我慢できないよぉ!7日以上もお預けなんて!だ、出したい!出したいのにィ!」

大尉「あー…でも規制だからハンスは射精できないんだよね…」
408名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 01:17:02 ID:XnBVqvCM
うおお…規制めええ
409名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 23:10:25 ID:x3E/LD/i
このスレ、保管庫はないのか?
過去の作品も読んでみたいのだが……
410名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 07:00:37 ID:FNxDlhwn
保管庫ほしい。前スレのハンスの活躍見たい!
411名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 15:54:52 ID:sf2mMDts
エルン「領主様、地下牢のハンスさんが動きません」
ファニー「“殺して”とか“射精”って爪跡が」
シ「…アソコにリングして両手縛ったのがいけなかったかなぁ…でも規制だしねぇ」
412名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 22:33:14 ID:FNxDlhwn
規制ェ・・・・・。畜生・・・・・・
413名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 01:18:35 ID:vOqnXqzL
URAAAA
414名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 08:44:06 ID:nJMUjvyY
撃てぇー!怯むな!!作家達が帰って来るまでこの戦線を維持しろ!!

いたぞぉぉぉぉぉ!
   
    ∧_∧    
  ┌ ( `・ω・)     ガガガガガガガッ!!!!!!
  ├ (   ┏ ○┓_ _ _ _从._,
  ├ つ┏┓三((〓((━(。゚。)   ━ 二 三  ━  ━  ━
  └ ≡≡≡ノ  ̄  ̄  ̄  ̄ ⌒Y⌒
    (__(__)
415名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 21:11:38 ID:VSxo1+0r
>>411
ちょっと待てよ……両手縛られてる状態で動やって爪痕を残したんだ…?
416名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 16:31:28 ID:Qv9GnIwe
>>415
足の指とか?

後ろで縛られても
何とか引っ掻いたのでは?

ファニー「あたしも欲求不満です!短編を要求するです!」
417名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 18:03:20 ID:D+JMAzcD
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 軍人!軍人!


  _   ∩
( ゚∀゚)ノ 軍じ・・ 
(っ   )
/  っ ゜。゚
( / ̄∪ ドピュ


  _  _∩
( ゚ _ ゚)ノ a・・・
     
  _  _
( ゚ _ ゚)  ・・・・・・
    ヽ
    U 
418名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:44:10 ID:lTlHM1zp
戦車兵 
後編




「ん…ちゅ……ふ、二人の…れろ」
僕は大尉のストッキングに覆われた右足を舐めながら言った。
「だめだめ、エルンとファニーどっちか言ってくれないと」
「エ、エルンの……白いお尻とお、おっぱいに…こ、興奮して…はっ
んちゅるる…ぼ、勃起しちゃって…」
僕は情けない気持ちになりながら言った。
大尉の足をストッキング越しに舐めながら、自分の覗きを告白している。
しかも、その時を思い出して更に自分のモノが固くなってきた。
エルンはファニーより背が高く黄金色の髪は襟元まである。
白い肌にスレンダーな体型で、特に腰のくびれが綺麗だ。
思春期の女の子として、生育途上の柔らかい曲線を描くお尻が雄をくすぶらせる。
対照的にファニーは背が小さく、赤い髪も適当にきりそろえた程度だが、14歳にしてはおっぱいが大きい。
活発な性格をしており、よく動き走ったりするのでファニーよりも日焼けが目立つ。
日に焼けて褐色になった腕や足と日に焼けていない白い部分が
はっきりと別れているため、色白のおっぱいがなお一層、目を惹く。
何よりも二人の少女のすらりとした健康的な太腿と柔肌には興奮してしまう。
ただファニーは激戦区の半島で戦闘に参加していた為、大小の傷が随所にあった。
特に左腕に走る裂傷の後が痛々しい。
419名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:44:50 ID:lTlHM1zp
「ふぅん……ファニーはおっぱいが14歳にしては大きいモンね。君はエルンとファニーで何回したの?」
「は…はい…んん、エルンのお尻でい、…1回…ぢゅるる、ファニー…の赤いアソコの毛と…
ひ、日に焼けてない…んれ、れる、じゅづづ…おっぱいに…ちゅ…ちゅ…こ、興奮して…に、2回…イキました」
「はははは、そう…そうなんだ。じゃあ…最後の質問」
「は…はい…」
大尉の眼光が鋭くなった。
「エルンとファニーと何回ぐらいエッチした?」
「そ、そんな…ぼ、僕はしてませ――――――」
「本当かな……厩舎でエルンの喘ぎ声を聞いたことあるし…農具倉庫の中から
ファニーの声も聞いたことあるんだけど…相手はハンスなんでしょ?」
「い、いいえ…ぼ、僕じゃありません!あ、あの二人とはい、一度も」
「ウソだったら、もうボクとはエッチできないよ?今なら本当の事言えば怒らないし、これからもエッチさせてあげる」
「本当です。信じて下さい、ぼ、僕は、ここに来てから、た、大尉以外とは…一度も」
ポロポロと涙がこぼれてくる。これだけは本当だった。
そんな表情に確信を得たのか大尉はスッと足を引き、言った。
「そう…ハンスはボクに操をたててくれたんだ」
「大尉……」
「まぁ、ハンスが誰とエッチしようが自由なんだけどね。別に2人に手を出しても
無理矢理じゃなかったら、一向に構わないんだけど」
「た、大尉〜……」
「ウソウソ……ほうら、ご褒美にボクのアソコ、存分に味わって…」
大尉はそう言って立ち上がると、机に手をつき、スカートをたくし上げた。
露わになる黒いTバック。ガーターベルトに引き上げられた黒いストッキングに覆われた艶ののった太股。
お尻に食い込んでいるTバックに僕の肉棒は痛いほど反り上がった。
「ハンスの…太い徹甲弾を…ボクの砲尾に装填して。あ、最後は照準手だったっけ?」
大尉は僕に振り返り妖艶に微笑みながら言った。
「た、大尉………」
「くすくす…さぁ…早く…パンティーを履かせたままでも、引き裂いてもいいよ。
ハンスの硬いオチンチンでボクをいじめてよ」
大尉はそう言って、手でさらに下着を食い込ませた。
「ほうら…ハンスの妄想していたボクのお尻ってこんな感じ?どうかな、ボクのお尻は魅力的?」
たわわな尻肉がさらにTバックからはみ出し、脇から微かに覗く濡れた銀色の毛が僕を高ぶらせた。
「大尉!」
僕は大尉の声を遮り、お尻を抱え込むようにすると尻肉に頬をあて、ペロペロと舌で舐めた。
420名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:45:29 ID:lTlHM1zp
「ひゃっ……ん、もう…いきなり…なんて反則」
白い肌と黒いガーターベルトのギャップがまた雄を滾らせる。
僕は立ち上がり、パンティーに指を引っかけ一気に太股までずり下げた。
その反動で尻肉がぷるんと揺れ踊った。そして滑る大尉のアソコにあてがう。
「い、今…ゴム付けますから…た、大尉」
「いいよ…チンポゴムなんて付けなくても…今日は大丈夫だから…中で射精して…」
「大尉、大尉…い、挿入れます…ぼ、僕のチンポで…か、感じて下さい」
下腹部に当たるようにガチガチに反り返っているモノを大尉の秘部にあてがい、一気に貫いた。
ずにゅううっと飲み込まれていく感じは何度味わっても飽きない。
そしてぐにゅぐにゅ締め付けられる膣中も最高だった。
「ん、来て――――――あ…あ…んんぅ…あ…」
「ああ…大尉、大尉…くう…はぁああ」
そして大尉の濡れそぼった秘部に後ろから挿入したと同時にとろけそうな快感は最高だ。
「んんんん…ハンスの…か、硬い……あはっ…ハンスのオチンチン……大戦中の時より成長してる…とっても太くて硬いよ」
「うう…はっ…んう…ああ」
僕は大尉の銀髪に顔を埋め、大尉の匂いを嗅ぎながらずぷ…ずぷ…とゆっくりと動き始めた。
「はあっ…んうう…は、はは…ハンス……上手、上手だよ…大戦中の
犬みたいに必死なハンスも好きだったけど…んんっ…こ、これは…これでとっても好き…」
大尉はとろけたような声で僕の剣突を嬉々として受け入れていた。
「た、大尉の膣中…まとわりついて…締まって…もう…んあああっ!」
「あはっハンスの……ハンスのチンポ硬い…とっても硬くて熱い」
「…あんん…こ、こんな……止められません!止まらないよ!」
「うん…うふ…はあ…ハンスのが…中で大きっく…んんんっ!」
僕は眼を閉じ、背後から衣服越しに大尉の双乳を両手で鷲掴み、その背に舌を這わせた。
腰を振るたびに下腹部にあたる熟した桃のような尻肉が波打つ度に、痛いほど雄の本能を刺激する。
421名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:46:34 ID:lTlHM1zp
「あは…ハンス…あん…はああ」
「…大尉、大尉、大尉!…顔…僕に…大尉の顔…見せて下さい」
「んっ…んん、い、いいよ…ボクの顔…いっぱい見て」
大尉が妖艶に微笑み、ボクと繋がったまま、身体ごとこちらを向いた。
大尉は机の上に上半身を乗せ、僕の腰に両脚を絡ませた。
「あん…ボ、ボクの二つしかないオレンジ、いっぱい搾って」
大尉は微笑んで胸元を開き、豊満な乳房をさらけ出した。
ぷりんと弾む白い胸に上に申し訳程度についている桜色の乳首。
両手でむにゅっと揉むと指が沈むように柔らかい。淫らに歪むその柔乳に僕は生唾を飲み込んだ。
「オ、オレンジというより…メロンかと…」
「そんなに大きいかな?それじゃ、柔らかさは?」
「マシュマロよりも…や、柔らかい…」
「ホント?…嬉しいよ、ハンス♪」
「大尉っ…んっ!」
「あっ…はんっはァ…そ、そんないきなり…んっ」
大尉の豊満な胸の谷間に僕は顔を埋め、一気に腰を下から突き上げた。胸を仰け反るようにして大尉が顔をしかめた。
大戦中は大尉にリードされていたけれど、現在は僕が大尉を責める時がしばしばあった。
あまり度が過ぎると怒られるけれど、一度、大尉の執務中に誘われにバックからした時は大尉が根を上げてしまった。
『ハ、ハンス…も、もう…ダメだよ…そ、そんなにボクの中で射精しないで…んっ』
もちろん、その時はオナニーを7日も我慢していたんだけど。
「あ…大尉、大尉の…おっぱい…おっぱい!んっんちゅうう」
「あはっ…いいよ、もっと、もっと!はむはむして…ああっハンス、いい、
いいのハンスの口がボクのおっぱい…はむって吸ってる……んっんんっ」
大尉の喘ぎ声と眉をしかめた顔に陶酔していると、急に下腹部からゾクゾクゾクと背筋を抜けて
ピリピリとした感覚が脳天を突いた。大尉の犯しているチンポが熱く、ビクンビクンと呻り始めた。
「う…ダ、ダメです…も、もう…オチンチンで、出ちゃう…大尉、出ちゃいます!」
僕は大尉の腰を両手で掴み狂ったように腰を振りたくった。
422名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:47:30 ID:lTlHM1zp
「うっんんんっ…ボ、ボクも……ね、そろそろ、今日は大丈夫だから…
ボクの膣中に、ね…ハンスの種をつけて…大丈夫だから…はっんんんう!
もっと、もっとパンパンして、は、激しくしパンパンしてぇ!」
大尉の中がきゅううっと締まり、根本から僕のチンポを締め上げた。
「あっあっああっく…ううっ、そ、そんな締められたら、そんなにキュッキュッってしたら
ダメっ、ダメです!もう出る、出るうう!チンポ出るうう!」
僕は両手を腰から大尉のお尻に回し、指をぐにゅうと柔尻に食い込ませた。
お餅の様に柔らかいお尻揉めば揉むほど形が変わる。
「ハンス…ハンスッ!んっ…んんっ〜」
大尉が僕の頭をかき抱き、唇を激しく交わらせた。
その途端絡みつく大尉にヒダヒダが一滴も逃すまいとぎゅううと収縮した。
「んんっ…ふはっ!た、大尉の膣内に膣内で…チンポ、イク、イク、イっちゃいます!」
唇を離し、僕が叫んだ時、たまりにたまった白濁の塊が鈴口を引き裂く勢いで射精(で)た。
びゅるるる、びゅばああぼどぼどぼどぶしゃぶりゅびゅるうううう
「んっああっ、熱い!熱いよ!とってもハンスの熱いの出てる!んんんんぅ」
「ああっ出てる、出てるよぉ!大尉のマンコに僕の精液ぶちまけてる!
大尉、大尉のマンコすごい、気持ちいいよ!気持ちよすぎるうううっ!」
眉間に皺をよせ、お尻を揉みし抱きながら、天にも昇る快楽に歯を食いしばって最奥で射精を続ける。
ぶりゅううううとゼラチンの塊がチンポの中から止めどなく大尉の膣内に注ぎ込まれる。
423名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:49:05 ID:lTlHM1zp
「ま、まだ!と、止まらない、止まらないよ!大尉、大尉!!」
「はっ…んんんんっ…ハンスの…ハンスのすごい…ボ、ボクの子宮がキュンキュンしてる…
あ…ああっ…ま、またイクッ…び、敏感になってるのに…んっ…んんんっ!」
「イッて下さい…大尉、大尉のイク顔…もっと見たいです」
「も…もぉ…ハンスのへ、変態!っあああっイ、イクッ…んんうううッ!」
大尉のイク顔を見ながら僕は大尉に倒れ込んだ。
胸板にぐにゅっと密着する大尉のおっぱいとコリコリする乳首がとても心地良い。
「あ…ぼ、僕も…ま、まだ出てる……はァ…はァ…大尉」
「はっ…はあはぁ…最高…です…大尉…」
「はあはあ…ボクも…最高によかったよ……」
「はぁ…ああ…ボクの中に出てる…すごく濃い…種付けられちゃった…」
そして僕は獣じみた性交を終えると荒い息をつきつつ、大尉の上から離れた。
大尉は机の上で仰向けから、うつ伏せになり、はあはあと息をついている。
捲り上げたスカートから覗く尻の下、膣口からドロリとした白濁液が太股を伝ってゆっくりと流れ落ちてくる。
「はっ…はあはぁ……大尉…」
「はあはあ………ねぇハンス…」
「はい」
「実はボクさ…今日、とっても危ない日だったんだ…」
「え………!?」
大尉がフフッとこちらを向き、乱れた服のまま言った。
「こんなに出されたら…妊娠しちゃうかも…」
大尉が膣口に指をあて、愛液が混じった精液を口に含みながら言った。
「もし、赤ちゃんができたら…どうする?」
大尉が僕を誘うような、そして試すような視線を投げかけてくる。僕は毅然として言った。
「か、構いません。ぼ、僕は責任取ります。た、大尉と…いやシュルツーナさんと結婚したい。
もっと、もっと働いて、きっとツーナさんに見合う夫になって見せます」
「ハンス……」
心なしか、大尉の顔が赤くなった気がした。
僕がプロポーズとも言える言葉を大尉に告げた後、しばらくして大尉は笑みを浮かべて言った。
「なんてね……冗談だよ。今日は大丈夫な日でした〜チャンチャン♪」
「え…た…大尉……」
ちょっと僕が落胆してると、大尉は僕をギュッと抱き締めて言った。
「でもね、ハンスがボクを妊娠させたくなったらいつでも言って。ボクの一番危ない日にセックスさせてあげる。
喜んでハンスの赤ちゃんを孕んであげるよ。はじめは女の子がいいなぁ…名前は『フェンリア』なんてどう?」
「た、大尉…ぼ、僕と…その…結婚してくれるんですか…」
「僕はそのつもりだけど…年上はイヤかな?」
「そんなこと…僕も大尉と結婚したい、いや、させて下さい!」
「あはは…嬉しいよ。ハンスって……もしかして今から!?」
「は、はい大尉。僕、大尉を妊娠させたいです。僕の、僕のチンポで妊娠して下さい!」
そして僕はおさまらないチンポを乱れた衣服のまま大尉を机に押しつけ、
パンティの脇から無理矢理ねじ込み、さらに5回ほどイッた。

END
424名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:50:44 ID:lTlHM1zp
おまけ
エルン編




初めての任務は帝都陥落後で救出部隊の入り口をこじ開ける事。
崩壊した帝都から民間人、友軍を可能な限り脱出させるためだ。
私達に与えられた車輌は塗装もされていない工場から出たばかりの虎戦車。
訓練学校は20日前に卒業した。
もっとも、過程をかなり短縮して1ヶ月しか訓練していない。私の役目は無線手だ。
乗員は国防軍の戦車大隊の少尉さんと操縦手の軍曹さん。
その二人以外は皆、私の同期生だった。

それが私、エルリア=ファーディの最初にして最後の戦闘だった。

これを『激戦』と言わずして何と言うのだろう?
横で応戦していた75o砲搭載のハーフトラックが撃破される音が雑音と共に耳をつんざく。
瓦礫から立ち上る黒煙、覆帯が空襲で黒く焼け焦げた肉塊を踏みつぶす感触。
爆発音に至近弾、敵戦車の砲弾がこの戦車をかすった時は死ぬかと思った。
ほとんど見えない防弾ガラスの向こうにはさっき撃破した敵戦車らしき影。
大丈夫、私はまだ生きている。
425名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:51:12 ID:lTlHM1zp
『照準完了!』
『目標、400メートル先の重戦車側面、ファイア!』
燃えた。こちらに側面を向けていた敵の重戦車が炎に包まれ、次の瞬間、轟音と共に爆発した。
『撃破。次弾、装填急げ。無線手、友軍から連絡はないか?』
戦車長の声が聞こえた。
『…………………』
だけど震えて声が出ない。
燃える戦車から火だるまになった敵兵が絶叫しながら転げ回っている。
手が痺れ、喉が渇く。股間にじっとりとした湿り気を感じた。気持ち悪い。
『エルン!返事をしろ!連絡は!?』
戦車長の怒声で初めて我に戻った。
『はひっ…は、はいっ!な、何も応答ありません!少尉殿!』
『前方をしっかり見張れ。敵歩兵だと思ったら迷わず撃て。取りつかれたら終わりだぞ』
『は、はい!』
薄暗い戦車の中。室内灯が隣の操縦手さんの顔を照らす。覗き窓を見る眼は真剣だ。
『ザー…ザザー……こ…ちら……カッツ…ザー…ツェ、森へと…続く橋…にて
ザー防戦中……敵…戦車…1両撃破……救出…部隊…おう…答せよ…ザー』
無線器から酷いノイズと共に友軍の声が聞こえた。
『応答ありました。救出部隊本部の森へ続く橋を守る車輌からの連絡です。暗号名はカッツェ(雌猫)…?』
『シュルツーナか!……了解。これから向かうと伝えてくれ』
『はい!』
426名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:51:49 ID:lTlHM1zp
味方の救出作戦はうまくいった。私達がこじ開けた道から救出部隊が突入し民間人や友軍が数十万と西へと脱出できたらしい。
それでも陥落した帝都には今もなおその倍の数の友軍や民間人がいるわけで……手放しには喜べない。
私の戦争は2日で終わった。途方に暮れる私。
帝都出身の私には帰る場所も家族もない。頼るべき親戚も空襲で全滅しているだろう。
そんな時、知り合ったあの『カッツェ』の戦車長から声を掛けられた。

「へぇ……大変だね。もしよかったらボクの領地で働いてみない?
君のとこの少尉と同期でね。彼も一緒に来るけど…どうかな?」

そして私はその女性の領地で少尉さん共々住みこみで働くこととなった。
女性…いや、領主様は有数の帝国貴族出身で広い土地をもっていた。
農作業はやったことはなかったけど、親切な先輩、ハンスさんから教えてもらい、
ファニュリアという女の子も働いていた。同年代ですぐ仲良くなり、互いに『エルン』『ファニー』と愛称で呼ぶようになった。
少尉さんは領主様の運転手。実は領主様に私を紹介してくれたのは少尉さんという事は後で知った。
ぶすっとしているけど優しい人なんだ…その後、色々あって私の少尉さんは恋仲となった。
少尉さん……いや、パウエルさんから好意をもっていることを告げられた時は驚いたけど「私なんかでよかったら……」と了承した。
その後…ま、また色々あって……今はパウエルさんと……厩舎にいる。
427名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 21:54:23 ID:lTlHM1zp
「あっ…厩舎でなんて…だ、ダメだと…思うんですけど…」 
「今更だよ、エルン…こんなに誘っておいて…放っておくなんて男じゃないさ」
「え…そ、そんなつもりじゃ…」
私は迫り来る少尉さんから、じりじりと後ずさりしたが……トンッ……厩舎の壁に背中が当たる。
退路が断たれたらしい。
「わ、私、農作業終えたばかりだし…あ、汗くさいし…えっと、あの…その」
「構わないよ。戦車に乗ってた時に比べれば、問題ない」
パウエルさんはシャツの前を開き、私に迫った。た、確かに戦車に
乗ってた時は酷い臭いだったけど…こ、これはこれで、別問題だと思う。
「や、やだ…あっん!んっ…た、立ったままなんて…いやですよ」
「今更だよ…くっ…うっ」
厩舎の壁に手をついたまま、お尻だけ突き出して、立ちバック。
なんだかんだで濡れている私。厩舎に繋がれている馬の視線が妙に痛い。
馬の種付けをこっそり見ていた私への報復なのかも……ああ、円らな瞳で人間の種付けをみないで…
シャツを捲り上げられ、ショーツは膝までずりさげられて…お尻だけ突き出すなんて最悪だ。
「も、もォ!変態、変態!んっうう、パウエルさんのバカ!」
「はっ…はっ…エルン!エルン!」
「ひゃっ!?」
激しく腰を突きだし、パウエルさんは私の背中に舌を這わせた。
生暖かい感触に思わず背筋を反らせ、声を上げてしまった。
「胸…少し大きくなったね…これからいっぱい揉んであげる!」
むにゅむにゅと背後からおっぱいを揉みほぐし、乳首を指でくりくりと弄くるパウエルさん。
「そォ…そういうこと…あっ…い、言わないでっ!あんっんんっ!」
厩舎の周囲は無人なのはいいかもしれないけど…んっあっ…も、もし誰かに聞かれていたら…
はぁ…だ、ダメだ…もう何も考えられない…んんっ
「はぁっ出る…出るよエルン!」
「あっ…は……はぁ…ダ、ダメ…イ、イッちゃ…」
「エルン――――――うっ!」
昨夜に引き続いてパウエルさんのアレがググッと大きくなって熱いモノが私の中に注がれる。
ビクンビクンと波打つ下腹部。
こ、こんなにされたら……本当に赤ちゃんできちゃうかもしれないのに
「愛してるよ、エルリア」
ちゅ…ちゅ…と啄むようなキスを首筋に受けながら、私はずるずると
脱力して、厩舎の床にへたり込んだ。トロリとあそこからパウエルさん精液が垂れ落ちる。
「もう……パウエルさんのバカ!」
そう言いつつも、その後三回もしてしまった私……もう、私のバカ!バカ!バカ!

END

ファニー「私のは!?」
エルン「まだ考えてないそうです」
フ「ふざけんなー!パスカ《訳:畜生!》」
428名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 22:35:08 ID:tI3noDLX
                        ,、ァ
                      ,、 '";ィ'
________              /::::::/l:l
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  . : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l|   またまたGJな物を
、、 . : : : : : : : : r'":::::::::::::::::::::::::,r':ぃ::::ヽ::::::::ヽ!                 ,、- 、
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::;;、-、、゙:::     rー-:'、                /   }¬、
. \::゙、: : : :./::::::::::::::;、-''"::::::::::   ,...,:::,::., :::':、           _,,/,,  ,、.,/   }
   ヽ:ヽ、 /:::::::::::::::::::::::::     _  `゙''‐''"  __,,',,,,___       /~   ヾ::::ツ,、-/
     `ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ-    _|  、-l、,},,   ̄""'''¬-, '  ''‐-、 .,ノ'゙,i';;;;ツ
   _,,,、-‐l'''"´:::::::'  ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、,    ,.'      j゙,,, ´ 7
,、-''"    .l:::::::::::;、-''"  ,.-'  ゙、""ヾ'r-;;:l  冫、     ヽ、 /    __,,.ノ:::::ヽ. /
       l;、-'゙:   ,/       ゞ=‐'"~゙゙') ./. \    /  '''"/::::;:::;r-''‐ヽ
     ,、‐゙ ヽ:::::..,.r'゙         ,,. ,r/ ./    ヽ.   ,'     '、ノ''"   ノ
   ,、‐'゙     ン;"::::::.       "´ '゙ ´ /      ゙、 ,'            /
  '     //:::::::::            {.        V           /
        / ./:::::::::::::            ',       /         /
.    /  /:::::::::::::::::.            ',.     /   ,.、     /
429名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 21:37:28 ID:X9rqDElK
アパーム!GJ持って来い!アパーム!
430名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 21:42:52 ID:sL3SJcmu
いい!規制溶けてgj!
ハンスすげぇw
431名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 12:46:21 ID:8Gshs9nB
良いじゃない。エロイじゃない。
432名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 01:50:26 ID:OOFGOSFA
「誰もいねーな。さすがに真夜中に戦車見に来るやついねーよな。」
そういうと男は車長席で自家発電を開始した。
そして数分後突然ハッチが開いた。
「整備班長!これはその……」
「あたしの戦車内でやるたあいい度胸じゃないか。兵曹、お仕置きの時間だ。」
男と女の声が響くが真夜中のハンガーで聞く者もいないので問題は無い。
「整備はん……じゃなくて○○は何で戦車に」
整備班長は真っ赤な顔でこういった。
「戦車の保守点検だ……嘘だ。君が歩いているのが宿舎から見えてな……」
「動哨が来ます。灯火切ってください。」
当直の兵士はけだるそうに言った。
「保守。」
433名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 22:00:42 ID:5xKqU/F9
a
434名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 22:36:51 ID:2v+SeUA4
職人さんくるまでこの戦線を保守
435名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 17:38:49 ID:4m+6H45g
クレイモアの設定がいい
男よりも強く、体格もいいし、感情があまりない まさしく駒って感じがいい


中世の時代、妖魔はいないが各地で戦乱が繰り広げられた時代…
男だけでなく女までもが剣を取り、戦っていた。そんな中、「芽」と呼ばれる寄生植物を植えつけることで強靭な戦士を作り上げる方法が開発された。
しかし男は芽が発芽すると凶暴になり、言うことを効かないことがしばしばあった。そうすると戦争では役に立たない。女はその衝動を抑えることができる。
女であっても芽の効果は絶大で、彼女らは傍目からは普通の女性とそれほど違いはないが大剣を軽々と振り回す力と、頑丈な体を手にした。
そこで芽を植えつけるのは女ということになり、実験を繰り返すうちに自我を抑え、命令にのみ従う従順な人間兵器を作ることに成功した。
だがしかし芽の大量生産は難しく、彼女らは自我が薄く従順で女という特徴から王侯貴族の護衛が中心となっている。


ここは訓練場、様々な理由で軍へと売られ芽を植えつけられた少女たちが戦士としての訓練を受ける場。
幼い頃から芽を植えつけているほうが少女たちの発育がよく、自我も抑えられる。ここで訓練を受けた少女たちは大人になると各地へ「出荷」される。

「んあっ…あんっああっ…!」
少女が男を抱きかかえ、嬌声をあげる。少女の名はサンドラ、15歳であるがその体は少女のものとは程遠い。
身長は180cmと大柄で、胸も大きい。男は大木にしがみつくようにサンドラに抱きつき、性器に挿入し、彼女に両腕で支えられている。木にとまるセミのような姿である。
男は訓練官で、彼女らは王侯貴族に献上されるのだから奉仕の仕方を教えている、という理由で彼女に命を下している。実際のところは単なる役得なのだが…
「もっと声をあげろ、体に起こっていることを言え!」
「はいっ、あんっああんっ!熱いおちんちんがじゅぼじゅぼ私のおまんこをついていますっ!」
「ちゅっぱちゅっぱ… そうだ、もっと媚びろ、気持ちいいと言え!」
男は胸に顔を埋めながら言う
「ああっ!おっぱいも気持ち良くて、おまんこも気持ち良くて!頭がおかしくなりそうですっ!いっちゃいますうっ!」
男に仕込まれた言葉を叫び、体を震わせ男を射精に促す。そして男が精を放つと同時に、
「出すぞ」
「ああっ、イクうううっ! 膣に出されてイクうううっ!」

彼女がこのような痴態を晒すのは、娼婦の真似事をする訓練を受けたからである。
これとは逆に声を押し殺し、一切反応しない訓練も受けている。

「明日は貴族の方々がお見えになられる。準備をしておけよ」
「はい」
436名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 06:24:30 ID:7hQMxm/V
>>435
GJだぞ!久しぶりにキターーーー!!!
437名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 22:55:50 ID:AXbslfRq
百戦錬磨の部下たちを(体で)纏め上げる女傭兵隊長という電波を受信した。
438名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 23:41:34 ID:7hQMxm/V
速く書いてください
439名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 12:29:04 ID:Bad6EMOY
ノブリス・オブリージュとかいうヤツか
440名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 13:34:32 ID:JKGhDv6w
何だっけそれ?心構えだっけか
441名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 22:40:27 ID:/fi+QwJm
高貴な人間は相応の奉仕をしないといけないってやつだな
公益福祉の概念がなかった時代に富の再分配を促す言葉だったんだが
442名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 06:12:54 ID:xIjUoUgI
女兵士の再分配・・・ゴクリ
443名無しさん@ピンキー:2010/07/15(木) 22:30:58 ID:2jO2rea+
444夢の国 ◆ou.3Y1vhqc :2010/07/18(日) 21:52:37 ID:3Sej1wj7

熱い――肌が焼ける様に熱い…。
身体に流れている血がすべて蒸発しているよう。
たしか私はあの赤いドラゴンの炎と爪にやられて……。

「ティーナ…様…?」
聞き覚えのない声が微かに聞こえた。
女の声だ。
薄目を開けて、声の主を確認する…。
服装から察するに、ノクタールの使用人らしい。
――どうやら、私はあの地獄から生き残ったようだ。

「ティッ、ティーナ様、意識がッ!?お医者様を呼んできます!」
そう声をあげると、パタパタと部屋の扉から外へと走っていった。
慌ただしい女…身体に響くから大声をださないでほしいのだが、今の身体では文句の一つも言えない。

「……はぁ。」
私はどれぐらい意識を失っていたのだろうか?
竜の口からどうやって帰ってきたのか…。

誰が私をここまで運んだのか。

分からないことだらけだ。



「お、意識を取り戻しましたか?」
使用人が飛び出した扉から男が入ってきた。
白衣を羽織っている所をみると、医師のようだ。
その男のすぐ後ろから使用人が数名姿を現した。
先ほどの使用人もいる。

「ここは…どこだ?」
まず、一つめの疑問を医師へ問いかけた。
445名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 21:54:54 ID:3Sej1wj7
ご迷惑をかけて、すいません!間違えました!

無視してください。
446名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 22:39:31 ID:FUls/ljo
oh・・・
447名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:06:25 ID:EcwDax1t
おまけ
ファニー編




あたしが所属するのは半島に閉じ込められた帝国の北方軍集団。
事の経緯は、扱く簡単だ。栄えある帝都の総統様(?)が崩壊し始めた東部戦線の状況を
理解できずに『撤退するな!死守せよ!』との命令を連発したために、前線を突破され
退路を無くしたのだ。実に41万人もの軍集団が閉じこめられており、背後は冷たい海。
今や半島は出口無き戦線となってしまった。
あたし達は無尽蔵に湧いてくる敵をなけなしの戦力で防衛している。
陸路を遮断された今、半島から出る方法は船による海路しかない。
しかし元々、義勇兵で編成されているあたし達に部隊は便利な『火消し部隊』として最前線に投入される。
消耗しつくされ、全滅する前に乗船できる可能性は低い。
かりに乗船できたとしても、制空権が敵に掌握されているので本国に着く前に撃沈される可能性が大だ。
しかも、脱出どころか、本国からの命令はこの半島の『死守』。
帝都の御偉いさんはまだこの戦争に勝つつもりなのか?ここを橋頭堡にする計画でもしているのだろうか?
あいにくとそんな状況ではないのが現実だ。敵野砲の準備射撃で、滅茶苦茶に破壊された森林地帯。
そこに網のように張り巡らせた塹壕があたし達の前線である。手に取れるものなら何でも武器にした。
敵戦車相手に上等なのはもちろん戦車……とはいっても半島の戦車部隊は壊滅状態だ。
なので、まともに張り合えるのは対戦車砲、それに砲兵部隊の突撃砲だ。
次は対戦車地雷、パンツァーファスト、取っ手付き手榴弾にワイヤーで爆薬筒を巻き付けた即席の対戦車爆弾。
最悪なのが火炎ビン、これはあたりどころが悪ければ、敵戦車に反撃され火だるまか蜂の巣にされる。
そして敵兵相手に上等なのは機関銃、小銃、手榴弾に敵からぶん取った短機銃に小銃。
最悪なのは弾丸が入ってない小銃に銃剣をつけた『槍』に鉄カブト、そこらに転がっている石の塊。
それで戦車を先頭に数で押してくる連邦軍相手に戦っている。一夜明ける度に部隊の人数が減っていく。
毎日、毎日、缶詰と雪で餓えをしのぎ、夜襲に備えて僅かな仮眠、1時間もしない内に始まる準備射撃の野砲が目覚まし代わりだ。
その日の弾直はやや後方から聞こえてきた。敵の総攻撃が始まったのだ。
「来たか…遊底の凍結をチェック!…戦闘配置!いそげ!ファニー、来い!」
隊長の怒声が聞こえ、あたしは野戦電話を担ぎ、配線リールを持って隊長と共に塹壕の中を走る。
配置につくと頭で考えるよりも先に身体が反応し、小銃の遊底の凍結をチェックした。よし、凍結していない。
野戦電話が鳴った。受話器を取り、応答する。
「隣接する空軍野戦師団より、敵歩兵の攻撃を受け負傷者多数、増援を求めています!」
「クソ、敵は辺りを攪乱しているが本命はここだ……戦車に備えて、前哨を下げろ!」
隊長が大声で叫ぶ。ここは隣接する空軍野戦師団との継ぎ目であり、もっとも戦闘が激しい所だ。
この戦線を突破されたら、ここを起点に敵がなだれ込んでくる、それは北方集団の消滅を意味する。
『こちら司令部より全部隊へ、全力を尽くせ』
司令部から全部隊への連絡だ。隊長が双眼鏡で正面を睨んでいると司令部から伝令兵が走り込んできた。
448名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:06:55 ID:EcwDax1t
「伝令、クリュンベルク中尉、司令部より左翼陣地と連絡をつけろと」
左翼陣地は確か帝国軍の部隊が防衛にあたっているはずだ。士気が低いのでいつも尻ぬぐいをさせられている。
「またか!……了解した。軍曹、中隊から10名を選出し、対戦車地雷、パンツァーファストに携帯火器、弾薬を持って
左翼陣地を支援する」
隊長が声を荒げた。無理もない、義勇軍が何故、帝国の部隊の尻ぬぐいをしなければならないのか?
誰のために俺達が戦っていると思っているんだ、お前ら帝国のためだろう!と腹の底で罵っていそうだ。
そこへ空気を読まない伝令が思い出したような口調で言った。
「それと突撃砲が支援に加わるそうです」
「わかったよ、このボケッ!」
そんなやり取りを聞きながら、故郷の事を考えていた。
あたしの祖国は敵の連邦国に近い小国。過去に帝国やその他の大国に何度も蹂躙された国だ。
隊長が言うには『連邦は祖国と講和条約締結させる気だ。もし、締結されたら故郷に帰れるぞ』
と言っていたが、ゴメンだ。どのみち、故郷に帰っても、今度は連邦国の兵士として戦争にかり出されるか、収容所行きだ。
レジスタンスに入るという選択もあるだろうけど、ここで戦うのも故郷で戦うのも相手が一緒なら、ここで戦う方がいい。
「戦車警報、敵戦車多数!8時方向、距離約1500!」
「戦車だ。戦車が来た!」
他の兵士が叫ぶ。
あたし達より30mほど先の塹壕に配置されている対戦車砲が射撃を開始した。発射炎と共に敵戦車が燃えた。
「よし、命中!撃破!」
そこらの塹壕やたこつぼから歓声が上がる。続けて二両目も撃破、対戦車砲様々だ。しかし、それも長くは続かなかった。
「4時方向に重戦車!」
と誰かが叫んだ瞬間、対戦車砲付近に敵弾が着弾し、地面を抉った。
対戦車砲は無事なようだが、砲兵達は榴弾の餌食だろう。
「くそ、衛生兵!兵員交替!戦車砲へ!ファニー、フランツ中隊へつなげ!側面から対戦車砲で支援を要請するんだ!」
「それが……つながりません!」
「畜生、配線がやられ――――――!?」
隊長がこちらを向いた時、閃光が走った。吹き上がる土砂、それから遠のいていく意識の中で
ああ…あたし死ぬんだ……あっけない最期だったなぁ…と微かに思考し、目の前が真っ暗になった。
449名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:07:39 ID:EcwDax1t


目が覚めたら、灰色の空が見えた。アーアー…と海鳥の声、潮の香りに波の音…あたし…生きてる?
「ここは――――――痛ツツ!?」
身を起こそうとして、左腕に激痛が走った。
肩から胸に掛けて包帯でぐるぐるまきにされている。
特に左腕に酷い出血の跡がある。砲撃の破片で裂かれてできた傷だろう。腕があるのは奇跡だ。
「ああ、気がつきましたか?ちょうど包帯を取り替えたところです。傷が深いのであまり動かないで下さい」
あたしの横にいた軍医……といってもあたしとほとんど年齢がかわらない少女が言った。
少しなまりがあるが同じ義勇兵なのだろう。
「あ、あたしは…戦線はどうなったの?部隊は?隊長は!?」
少女の腕を掴み、あたしは言った。
「わわ、伍長さん、落ち着いて下さい、詳しくは知りませんけど、半島の戦線はそのまま維持されたそうです」
「あの総攻撃を耐えたって事ね……奇跡だわ」
「その間に伍長さんの所属する師団は海路撤退の命令を受けたそうです。隊長さんも重傷ですが大丈夫です」
「そう…よかった」
でも、この腕じゃ当分の間、銃は持てないだろう………悩んでも仕方ない。
この女の子相手に少し話でもするか…とあたしは身を横たえた。
「あたしはファニュリア=ゼンスキー、ノルトラントの義勇兵。貴女は?」
「あ、はい。僕はヨナティア=ミューラーって言います。軍医の見習いみたいなもので、皆にはヨーティって呼ばれてます」
「キュッラ(了解)、軍医殿」
あたしは軽く敬礼すると、ヨーティに言った。
「ヨーティ…さっそくだけど、君、いくつ?」
「え…はい、13ですけど?」
あたしと同じ年齢だ……この幼い顔で…しかも僕?もしかして…
「あたしと同じ年齢だね…それに君って…男の子?」
「はい、そうですよ。ゼンスキーさん」
ヨーティはきょとんとして言った。

それから紆余曲折を経て、帝都防衛作戦の折りに、正式に軍医となったヨーティと再び会った。
『久しぶり』という挨拶もままならぬまま、帝都から西へと脱出する部隊や民間人の支援に参加し
追撃してくる敵軍相手に何度か戦闘を繰り返した。
そしてようやく西部戦線の連合軍に投降し、あたしの戦争は終わった。
これからどうしていいのかわからず、途方に暮れていると救出作戦で親しくなった女性戦車長さんがあたしとヨーティに

『ボクの領地で働き手が欲しくてね。特に行く当てがなければどうかな?』

と誘われて、住み込みで働くこととなった。
450名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:08:33 ID:EcwDax1t
ヨーティは町の診療所を手伝いに行き、夜になると領主様の屋敷へと帰ってくる。
来月には正式に診療所の医師として雇ってもらえるとのこと。
話は変わるけど、この屋敷にはあたしと似た境遇の人が働いている。
ハンスさんやエルン、運転手のパウエルさんにメイドのヴェアトリーチェにトゥティー。
皆、帝国の戦車兵や兵士だった面々だ。
あたしは元々、屋外で動くことが好きだったから農場を担当している。
メイドもいいなぁとは思ったけど、礼儀作法や堅苦しい言葉遣いは苦手だ。
農業は先輩のハンスさんから教えてもらい、エルンという同年代の友人もできた。
ヨーティとは恋人としてそれなりにやっている。

その証拠に今も農具倉庫の中で……
「じゃーん、どう?あたしのメイド姿似合うでしょう?屋敷で働いているヴィーチェのお古を貰ったんだ」
あたしはいつもより早く帰ってきたヨーティを倉庫に連れ込んで新着の披露をした。
「一度でいいから着てみたかったんだよねぇ〜メイド服」
あたしは紺色のスカートをヒラヒラさせてくるりと回った。
故郷の貧しい一家に育ったあたしはいろんな仕事をしていた。
酒場のウェイトレスをメインに男相手の水商売。胸やお尻がふくらんでくる年頃には身体も売った事がある。
ヨーティがあたしに好意を抱いていると気付いたときに、その過去を全て吐露した。
しかし、ヨーティは『それでも構わない、僕はファニーが好きなんだ』と言ってくれた。
その一言で、もう惚れてしまった……こんなあたしを好きになってくれて正直なところ嬉しかった。
ヨーティには本当に感謝している。
451名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:09:09 ID:EcwDax1t
「に、似合ってると思うけど…ファニー、も、もしかして…」
「そうだよ。ヨーティってコスプレエッチが好きなんでしょ?その願いを叶えてあげる」
そう言ってあたしはスカートを捲った。エッチしやすいように下着は履いていない。いわゆるノーパンだ。
でも、しっかりとストッキングは着している。そのポイントはぬかりない。
「わっ…フ、ファニー!し、下着!」
「うん…あたしね、はやくヨーティとしたくて濡れちゃって…気持ち悪いから脱いじゃった。
あたしの赤いアソコの毛も濡れ濡れだよ………ふふふ」
「で、でも…そんな農具倉庫でなんて…もし、領主様にバレたら」
「大丈夫だよ。それに野外セックスも大好きなんでしょ?それにそんなにテント張って説得力ないよ」
ヨーティは女の子みたいな顔をしているけど、アソコは男らしい。
ズボンの上からでもソコは痛々しいくらいに自己主張している。
「うう…で、でも…」
「ほら…あたしのここ…触って…ん」
ヨーティの手を取って、あたしの割れ目を指でなぞるように動かした。
「……ね、ヨーティのが欲しくて…すごく濡れてるの…日に焼けていない白い肌…興奮してこない?」
昼間、農作業をしているときに走り回っているせいであたしの肌は褐色に焼けている。
エルンは日焼けを気にして肌を日にさらさないけど、あたしはそんなのお構いなしだ。
おかげで日に焼けた褐色の四肢と対照的に白い身体、特に胸やお尻はなおさら目立つ。
かなりマニアックな趣向になるけど、ヨーティはご満悦のようだ。
「こ、興奮しないわけないよ……ファニーの意地悪」
ぶすっと拗ねる顔は食べちゃいたいくらい可愛い。いや、実際にこれから食べるんですけど。
「えへへ…ほーら、あたしアソコを触りまくった手だよォ…」
あたしはそう言って、メイド服の胸元を開いた。こっちもノーブラで窮屈に服に押さえ込まれていたおっぱいが
ぷるんと弾みを付けて、こぼれ落ちてきた。
「フ、ファニー…それはちょっと…露骨すぎだと…」
「いいの、いいの、気にしないの〜」
ヨーティの手を取って耳元で囁く
「あたしのアソコを触った手でおっぱい…いっぱい揉んで欲しいな…」
年齢の割にはおっきいおっぱいはそれなりに自慢だ。
ギリギリパイズリできるサイズだけどヨーティはすごく喜んでくれる。
「ファニー………」
「あん……ふふふ……一回、抜いてあげる。いつもと同じように口とおっぱいで……ね、ヨーティ?」


「あっ、いいよ…んっヨーティのすごい!」
ヨーティのは一回くらい抜いても全然、衰えない。あたしはメイド服のままヨーティの上で腰を振っている。
ぷるんぷるんと揺れるおっぱいを下から支え上げられるように揉まれ、甘美な感触に思わず声が出る。
「んっ…ぼ、僕もすごく気持ちいいよ、ファニー…お、おっぱいも…柔らかくて…お、お尻も…」
ズンズン下から突き上げられて、じゅぶじゅぶとスカートの中で粘着音がする。
服を着たままなんてすっごくいやらしいけど、最高に興奮する。
今度は看護婦さんの制服をヨーティに持ってきて貰おうかなぁ…その時の台詞はこうだ。
「せんせ…あたしにお注射してぇん♪」

END
452名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 17:44:57 ID:sK5zecS5
GJ!神キターーーー!!!!!
453名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 17:18:14 ID:ylNQEr42
>>437
某HPにティアサガものでそういうのがあった
女隊長が部下をまとめるために進んで乱交してて
同部隊に入った娘も自分から同じ事やってて
母娘だなぁ、って内容だったと思う

残念ながらその話はすでに見れなくなってるようだが・・・
454名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 23:04:23 ID:/fmAfEY2
それは残念すぎる
455名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 23:26:47 ID:x0drjVJ0
敵に捕まった少年兵に対して敵国の女指揮官が性的な説得をする
456名無しさん@ピンキー:2010/07/29(木) 05:56:00 ID:6931/mV3
なんの説得だよw
457名無しさん@ピンキー:2010/07/29(木) 16:28:53 ID:CTGBkFbK
説得は二の次ってことだよ

いわせんなはずかしい
458名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 01:15:00 ID:JtDNHYEv
(/ω\) ハズカチィ・・・
459名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 08:31:47 ID:uhgR0sVk
よし逆だ…
とっ捕まえた女将校を懐柔するためショタ2等兵たちが(性的な意味で)奮戦する。
460名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 03:28:02 ID:jHabOBBg
書いてくんろ
461名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 17:13:28 ID:uKh0NK+2
>>459
脱いだ
462名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 23:50:36 ID:GjyPR121
栄枯盛衰は世の習い、かつて覇国であったドロテア王国も次第にその力を失いブルーノ王国に滅ぼされてしまった。
ドロテア王国の誇る騎士団も壊滅したが隊長であるアウリの死体は見つからなかった。ドロテア王以下、王族も皆殺しにされた…1人の王子を除いて…
アウリは王子とともに反乱軍を率い、ドロテアを復活させるのでは…そんな噂がまことしやかに流れていた頃のこと

「んっちゅぱっじゅる、んちゅぅぬぷっ」
跪き、座っている男の股間に顔を沈め奉仕している。そんな彼女の姿を誰が想像できようか。
そう、娼婦のように男に必死に奉仕している彼女こそ騎士団隊長アウリである。
彼女が奉仕するのは、いかにも金持ちそうな中年の男…ドロテア王国周辺を縄張りにする商会のドンである。
男は反乱軍のパトロンであり、その見返りとしてアウリはその身を捧げた。
「んぐっぐぼっぐぇっ」
誰もが憧れを抱いた戦乙女の髪を鷲づかみにし、その喉奥を犯す。
アウリは女でありながらかかのくに最強の騎士であった。何重にも包囲された王宮から王子を連れて脱出したことからもそれは確かである。
それを好き勝手に犯す感覚に男は酔いしれる。
「ほひーほひー、出すぞオラァ!きっちり飲み干せよ!」
「んぐぇぇ…お、おいしかったれふぅ…げほげほっ…」
地獄のようなフェラが終わっても、まだまだアウリの地獄は一丁目、まだまだ続く。

「ほほほ、きちんと反乱が成功するように鍛えてやらんとなぁ」
男はアウリの首に手を回し、その鍛えられた体に寄りかかる。
アウリは男の尻と背中に手を回し、男を持ち上げる。男は肥え太っており、普通の女ならば数人がかりでも支えられそうにない。
しかし鍛えられたアウリの身体は自分の何倍もある男を真正面から持ち上げる。
「んぐぅ…くぅ…」
重さに身体が悲鳴をあげる、しかし男を持ち上げるだけでは終わらない。尻を支えていた手を男のペニスに伸ばし…
「んんっ…あああーっ!」
自分の膣穴にズブリと沈ませる。そしてここから男を満足させねばならない。
前に倒れそうになるのを必死に抑え、男を振り上げては下ろす。鍛えられたといえど女が繰り返せるものでもない。
しかし王国を復興するという執念が彼女を突き動かす。
「おおっ、いいぞ!」
腕、腰、脚…そして膣穴 全身の筋肉を躍動させアウリは男を絶頂へと導かせる。
男が戦乙女の秘部に精を叩きつけた頃には彼女の限界はとうに超えていた。彼女は倒れこんで指一本動かすのも困難だ。
しかしこれでも地獄の2丁目である。

動けないアウリの乳首、クリトリスに電極がつけられる。これこそ真の地獄、これに比べれば今までのは単なる余興である。
「ほひーほひー、その程度で疲れてるようじゃ失敗して捕えられるかもしれんの、もし拷問でわしの名を吐くようなことでもあれば…」
そして男自身も電流を発する棒を手にしている。
「だから、拷問に耐えられる訓練をしておかねばな! やれ!」
電極から電流が流される
「ひぎぃぃぃっ!ぐあああああーっ!」
全身から汗が噴出し、涙を流し、鼻水を長し、先ほど飲み込んだ精液を吐き出し、小便を漏らす。
身体の至る所から体液を流し、野獣のようにアウリは絶叫する。そこには美貌の戦乙女の姿はない。
「ほひーほひー、この程度で音を上げてどうする!」
最後に男の持った棒が性器に突き立てられ、アウリは断末魔のような叫び声をあげて気を失った。

463名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 23:51:09 ID:GjyPR121
「(ぐっ…思い出したくもない地獄のような日々だったが…今日で終わりだ)」
アウリは再建した騎士団を中心とした反乱軍を引き連れ、かつての王の間に突入した。
「(作戦は全て上手くいった、後は王子を王に据えれば悲願は達成される!)」
「おやおやおや、野蛮な猿が何をしているのですか」
忘れようのないこの声…ブルーノの女王、エヴェリーナ!
「王の仇だ!貴様を倒して、ブルーノ王国は終わり……っ!?」
王の間は敵国の兵士で埋め尽くされていた。そして玉座に座るエヴェリーナの前には鉄壁の守りが築かれていた。
「野蛮な猿よ、おまえの浅はかな考えなど全てお見通しです。これを見なさい」
女王の指差した先には、反乱軍のアジトで勝利を待っていた王子の首だけが吊るされていた。
「あああああああああああ!貴様あああああああああああっ!」
最強の騎士といえど、怒りに我を忘れたアウリの特攻は鉄壁の守りに阻まれ、すぐに捕えられてしまった。


「ほひーほひー、残念でしたなぁ反乱が失敗して」
捕えられたアウリの元へ男がやってきた。
「やはり…貴様が…」
「あらら、てっきり私を殺そうと鎖に繋がれたまま暴れるかと思いきや…」
「もう…いい…私は疲れた……さっさと首を刎ねろ、これ以上私を辱める気なら、舌を噛む」
光の射さぬ牢獄にあって、アウリの目もまたそれに溶け込み光を失っているようだ。
「ほほほ、ならばお前に新たな生きがいを与えてやろう。ユハニ、こちらへ」
「はい、お父様」
男の太った体に隠れていた少年がひょっこりとアウリの前に現れた。男とは似ても似つかぬかわいらしい少年だ。
「アウリ、お前にはこのユハニの護衛を命じる」
「なっ…ふざけるな!」
「ユハニは私の養子だ。ドロテアの王族の血を引いておる…ほんの薄くだがな」
「っ!!」
「ねぇ、この人が新しいメイドさん?」


「あんっ!坊ちゃま!ああーっ!」
アウリはベッドの中で、自分より遥に小さな少年に犯されていた。
いや、寝室に不届き者が現れたときのため、と自分でユハニと添い寝するからこうなるのだが。
「ふーっ、出した出したっ それじゃ次は馬の練習ね」
アウリは床に精液を零しながら四つん這いになり、ユハニの馬になる。
その金の髪を手綱にして、尻尾をアナルに挿入され、乗馬鞭でお尻を叩かれながら、アウリはその広い部屋を何周もグルグルと回る。
自分を極限まで辱め、自分から全てを奪った男の子を背に乗せ、嬌声をあげ、膣穴からは先ほど流し込まれた精液と愛液を流しながら。
結局、アウリは心に空いた王子の穴、王国復興の穴をこの憎き男の息子で埋めたのである。
忠誠を誓うのは王国からユハニに置き換えられた。アウリはかつての自分がそうしたように、全てをこの少年に捧げている。
最強の騎士は、ここに最強の奴隷騎士として復活したのである。
464名無しさん@ピンキー:2010/08/04(水) 06:19:49 ID:5JHO2L2x
GJGJGJ!!やっぱ強気な女騎士はいいなぁ
465名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 20:30:46 ID:HOqwyPvW
gjgj!女騎士ハァハァ
466名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 00:16:02 ID:UVhQAdig
このオチ方すんばらしいぞ!
ぐへへ
467名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 19:56:42 ID:UD8Mu2rs
ほ守
468名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 23:51:16 ID:qlrKoo/H
捕虜となった新兵(ショタ)が性的な尋問を受ける・・・てのは投下しても大丈夫?
469名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 23:54:47 ID:haMmGfiw
最初に注意書きさえあればいいと思う。

あとスレ容量が残り18KBなんで容量注意。
470名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 01:38:20 ID:SWcbQ6Nf
そろそろ次スレだね

書きたいけどミリタリィの知識が足りなくてツッコミが怖い
471名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 05:12:34 ID:ewjyG4in
誰か次スレ立ててそしたら>>468
書いてくれるはず!大好物だから頼むよ
472名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 21:57:04 ID:gU7MyL1+
アヴァロン内戦の続き読みたい
473名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 22:29:21 ID:0I6pu49i
早く次スレ立ててちょ
474名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 23:14:22 ID:1hf/dAP2
このスレって銃や戦車とかの近代じゃなくて
槍や弓や馬とかの昔の時代を舞台にしたSSでも良いのかな?
475名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 00:33:09 ID:HIjZm5P5
>>468
国民突撃隊なんか大変そうだな
476名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 05:02:06 ID:yVYGdNN1
【戦闘】軍人や傭兵でエロ 3【休暇】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1281902425/
立てた
477名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 22:11:41 ID:zhJfPO8e
おーい、誰か生き残ってるかー

おおーい
478名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 22:16:46 ID:3Qvtv+6r
いるよ
479名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 00:06:11 ID:V8wwKyeS
おーい水島ぁ! 一緒に日本に帰ろう!
480名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 06:06:23 ID:iWepucZm
……なんだ、空耳か。
もう部隊は俺1人だってのに、そろそろヤキが回ってきたかな。
このタグをおっかさん達に届ける為にも、なんとか帰らないと。
ああ、ああ、脚があれば楽に歩けるのにな。
帰りてえなあ



481名無しさん@ピンキー
俺が代わりに渡してやる!