【田村くん】竹宮ゆゆこ 20皿目【とらドラ!】

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450 ◆v6MCRzPb66
タイトル『けいとらっ!』
内容  竜×実です。タイトルのわりに重めの内容です
    竜×虎好きな方は絶対読まないでください。
    主要キャラにオリジナルキャラを登場させています
    大河は俺の嫁、竜児許せん…とお考えの読者様がモデル…という事にしてます。
時期  原作アフターの3年生の夏休みからです。
エロ  いわゆる本番は物語後半、竜×実がくっついてからになります。
補足  けいおん!はバンド組む意外、関係ないです。タイトル半分借用したくらいです。
    軽トラックも、物語に深くは関係ありません。
    長編ですので、とりあえず8レス投下します。宜しくお願いします。
451けいとらっ!イントロダクション ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:17:28 ID:bUd64E/C
 わたしは今…悩んでいる。相当悩んでいる。

ウチの娘、大河に恋人がいる事は知っている。たしか、高須竜児…、見た目はともかくとして、
まあ…好青年だ。若いのにちょっと、おばさ…大人びているのは、彼の家庭環境の影響なのだろう。
「ふう…どうやって別れさせようかねえ…」
近い将来、大河には望まない結婚をしてもらう事になる。
普通、結婚というやつは、一般の家庭では、個人と個人の縁組みで成就するもの。
でも、ウチは違う。竜児くんには申し訳ないが、社会的地位が違う。
ウチの結婚は、個人同士ではなく、会社同士の縁組みが重要になる。
会社が大きくなれば当然、とても個人の問題で片付かない。
政略結婚…は、会社を再建するため必要で、
わたしの家族の生活を守らなくれはいけない。さらには、社員、その家族もだ。

前夫の逢坂陸郎も、わたしとは政略結婚だった。しかし…夫婦関係は破綻し、離婚。
陸郎が愛人を作ったのだ。愛人を作ったくらいで離婚に合意した、わたしも悪かったのかもしれない。
男ってのは、そんなもんだ。バカだから。それくらい理解していたのに…
わたしは即、世間体を保つため、当時の部下と半年後の再婚を決めた。

離婚後、大河の親権は、陸郎に譲ったが、結局陸郎は、大河と同居もしないで、
さらにその後事業で失敗し、逃亡してしまう。最悪な男だ。
わたしの責任を果たしに、大河を引き取りに行った
…のだが、有ろう事か、すでに付き合っていた彼氏、高須竜児と家出しやがった…

「Like father,like daughter…」
この父にして、この娘あり…午前中、外国人との商談があったから、つい、英語でグチが漏れる。
それと、無意識に日本語で口に出す事をためらったのかもしれない。心が嫌悪感で満ちてしまうから。

浮気され、家出され…わたしって、そんなに…
…いや、間違っていない。夢や、愛でメシは食えない。
これだけの会社を担う者として、重厚な責任感、使命感がある。そしてそれがメシの種なのだ。
陸郎も行方不明だし、大河がわたしの判断に従わなくてはいけないのは、仕方ない事。
せっかく大河との関係に明るい兆しが…また嫌われるだろう。

もう一度、興信所からの資料に目を通す。
「よし…やっぱりこの娘ね…」

プーッ プーッ 
おっと、内線だ。
「わかった、今行くわ。大河は応接室に通して」
 女社長は、資料をデスクの引き出しに押し込み、社長室をでる。

机上に残ってしまった一枚の写真に、ソフトボールのユニホームを着た少女が写っていた。
452けいとらっ!Aパート1 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:18:45 ID:bUd64E/C

「よっしゃ!いっくよ〜っ…ワン・ツー・サン・シッ!」
ダダダンッ!ドラムを叩く音が響くっ、しかし…誰も続かない…
ありゃ〜?みんなどしたどした?っと、ドラム担当櫛枝実乃梨は大きな瞳で周囲を見回す。
ここは公営図書館にある音楽スタジオ。今日は夏休みの初日だ。クーラーが効いているが、
さっきまでアップだというのに、激しいドラミングを披露した実乃梨は、汗ばんでいた。
スティックをクルクル廻し、太陽のような眩しい笑顔を振りまき、
曇りの無いクリアな声で、周囲を盛り上げる…そんな明るい活発少女なのだ。

「実乃梨ちゃんさ〜…最初のカウント、英語にするか日本語にするか、どっちかにしてくれない?
 なんか…亜美ちゃん、萎えるわ…」
ボーカルを担当しているのは、川嶋亜美。中高生では知らない女子はいない、人気高校生モデル。
サラッサラの綺麗な髪、小さい頭に整った顔、長い手足、豊満なバストに華奢なウエスト…
最近ではグラビアのオファーも来ているほど、パーフェクトガールなのだ。外見。外見だけは。

「いや俺はだな…まだ慣れてなくて、最初のタイミングが掴めないんだ…」
 ベースを担当している高須竜児のアンプから、ぼわわわわ〜んという間の抜けた音がする。
その悪魔のような眼差しは、ノーメイクだというのに、D・M・C!、D・M・C!という絶叫が
聞こえてそうだほど残忍。…なのだが天然クラウザー二世である竜児の怖いのは、顔だけだった。
もっと的確に指摘するなら、目だ。目だけが怖い。

「わははははっ!平気だぞ高須っ!タイミングが掴めなかったのは、俺も一緒だぞっ!
 …それはそうと、逢坂遅いなっ…おっと、もう逢坂じゃなかったか…」
と言って、北村祐作は、1万円で購入した中古のフェルナンデスを構え直す。タイミングが掴めないと、
ビギナーの竜児に同意した北村だったが、実は、兄の影響で、ちょこ〜っとだけ、
ギターをかじった事があり、コードくらいは押さえられた。
竜児に気遣う、そんなナイスガイな北村は、大橋高校の生徒会長だ。

北村が名前を出した大河は、キーボード担当。今日の練習に遅れている。
その大河の容姿を一言で表現するなら、フランス人形…って見た事無いけど、多分そんな感じだ。
きめ細かい白い肌、エレガントな長い睫毛、薄いピンクの唇…そんな、小柄で可憐な美少女大河。
だがしかし、天は二物を与えず、そのキュートな外見とは裏腹に、大河はその、雄大な名前を凌駕する、
ハリケーンのような激しい気性の為、誰が呼んだか、手乗りタイガーの異名を持つのだった。

まだ2ヶ月くらい先の事だが、秋に大橋高校の文化祭がある。
その中でも、バンド演奏は人気もあり、集客の起爆剤になるのだが、
去年、ほとんどの部員が卒業してしまい、軽音楽部が廃部になっているのだ。
そこで文化祭を成功させたい生徒会長の北村は、元部員に土下座までして、なんとか頼み込み、
掻き集め、1組だけ再結成させたのだが、せめてもう1組。対抗バンドが欲しい。
校外からゲストを呼ぶ事も考えたが、どうせなら、ズバリ自分でやろう!!

…という訳で、北村は、竜児、実乃梨、亜美、あとまだ到着していない、逢坂(元)大河、
計5人で、即席バンドを結成したのだ。やはり持つべきモノは、なんとやらだ。
453けいとらっ!Aパート2 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:20:08 ID:bUd64E/C

このスタジオは、3時間借りられるのだが、既に入館から1時間は過ぎている。
大河は、まだ来ない。母親に呼び出されたみたいなのだが…それにしても遅い。
「もーっ、せっかくの音合わせ初日なのにねえ。でも、大河はもともとピアノ弾けるし…
 やあやあ!野郎ども!気合いで練習して!早く大河に追いつこーぜ!」
ドドンッ!と実乃梨はバスドラを踏み込む。
実乃梨はドラムセットなんか持っていないし、ちゃんと演奏するのは今日が初めてだ。
追いつこーぜとか言っているが、これだけ叩ければ、充分な気がする竜児。
スポーツもリズム感が必要というから、センスは良いんだろう。
実乃梨は、太鼓の達人や、リズム天国で練習したと話していたが、竜児は知らなかった。

「そういえば実乃梨ちゃん、オリジナル作るんでしょ?出来たの?わたしは唄うだけだし、
 ぶっちゃけ、加藤ミリヤが唄えればなんでもいーわっ」
それを聞いた竜児が焦る。
「おうっ!?オリジナルだと!?加藤ミリヤも演るのか?俺は北村から1曲しか聞いてねえぞっ。
 いま音合わせしてるプラネタリウムだけだ。だいたいそれもまだ微妙だ…」
北村は釈明をする。ちなみに北村がその曲を選んだのは、通称『兄貴』が、宇宙好きだからだろう。
「いや、高須にはまだ言っていなかったな。すまん。亜美をバンドに誘う時、
 どうしても好きな曲歌いたいっていうから承諾したんだ。
 その事を櫛枝に話したら、それなら、やりたい曲を、1人1曲やろうって事になった。
 高須の希望曲は…まだ聞いてなかったな、ズバリ何にしようかっ、何でもこいっ!」
それを聞いた竜児はさらに焦る。いきものがかり1曲でも辛いのに5曲だと?
 …でも、…せっかくだから、せっかくなんだし…好きな曲を演奏してえ…竜児はノってきた。
「そう、だな…」
竜児は弦を、ベンベンッ♪っとチョッパー風に弾きながら、目を瞑り、悩み始める。
454けいとらっ!Aパート3 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:21:47 ID:bUd64E/C

ベースの竜児が、自分の世界に入ってしまい練習が中断。
実乃梨はカバンから1冊のノートを取り出し、ウチワのように振りながら、打ち明ける。
「いや〜、オリジナルって言ったはいいんだけどさっ。 実はまだ出来てね〜のよ。
 コード進行は決めたんだけど、歌詞が…内容が、まだ、悩んじゃって…途中なんだよ」
「へえっ、ねえねえ実乃梨ちゃんっ、このノートに書いてあんの?ちょっと見せてよっ」
いつの間にか実乃梨の背後に回っていた亜美は、実乃梨からノートをスパッと取り上げる。
あわわっ!ちょっとっ!実乃梨は顔を真っ赤にして亜美を追いかけるが、亜美は逃げ足が速い。
実乃梨は、も〜っ!と、観念したが、仕返しにドラムスティックで、亜美の背中をパシパシ叩く。
「実乃梨ちゃん!痛てーって、それ!…ちょっとだけ。すぐ返すから…
 …どれどれ……眠れない夜には…ふんふん…らしくないなんてね…
 オレンジ…ほうほう…うわわわ〜〜、あはは〜〜っ、それはそれは〜っ」

読み終わった亜美は、にや〜っとした顔を実乃梨に向ける。うふっ…何を言おうか考えているようだ。
「あーみん、どう?やっぱ時間ないしオリジナル止めよっか。
 そうしよっ!わたしアニソンが良い!GOD KNOWS…」
「この曲オレンジっていうんだね。いいじゃ〜ん、これって高須くんの事でしょ?」
ズバリ亜美は言い当てた。
耳からピーっと湯気が出そうな実乃梨。
竜児はハッと、顔を上げる。そして…
「俺…母親の…泰子の好きなクレイジーケンバンドに決めたっ!」

まったく周りの話を聞いていなかったようだ。
455けいとらっ!Aパート4 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:22:36 ID:bUd64E/C

大河は車に乗っていた。母親の会社からの帰りだ。運転手は社長令嬢に気を使い、沈黙している。

「はあ…めんどくさっ」
溜息とともに本音が漏れる。…まあ仕方ないか…。大河はバンドの練習に出掛けようとしていたら、
ママから、大至急会社に来いって電話がかかって来たのだ。珍しい事なので、嫌な予感はしたけど、
やっぱりその通りで、ママの経営している会社の、吸収合併の準備の手伝いを頼まれてしまった。
 手伝いと言っても、TOBやら何やら、具体的に何かする訳ではなく、合併相手の企業から、
少しでも有利な条件を引き出す為、今後大河に、パーティに出席して欲しいとの事だった。

それで…いきなりだが、1回目のパーティは明日の夜。
ママから、自分である程度準備するなら、これ使いなさい…と、現金を1束渡された。
明日のパーティーは、都内のホテル。
準備するって言っても、パーティドレス、小物、美容院の予約、あとは…
考えると結構やる事があった…明日の午前中は忙しくなりそうだ。

もちろん、恋人の竜児にも報告しなければ。

しばらくして、車窓が見慣れた町並みを写し出した。
もうすぐだ。やる事を整理しながら、虎柄の手帳に、スケジュールを記入する大河。
そして車は練習場所の図書館に停車した。
456けいとらっ!Aパート5 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:23:30 ID:bUd64E/C

「わたし、ジュディー&マリーがいい」
「へぇ〜、あんたが?意外っ」
亜美は大河が、とてもロリータなアーティストな名前を吐いたので、普通に驚いた。
バンドの練習後、夕刻を過ぎ、お腹がすいた5人は実乃梨のバイト先のファミレスにいた。
「中学の時にピアノで弾いた事あんの。練習しなくても弾けるの。だから。そんだけ」
「ジュディマリなら何でも良いの?じゃあ何に唄おっつかな?でもあんま詳しくないんだよねッ」
すると、
「そばかす…」
亜美が思案中に、実乃梨がつぶやく。実乃梨ちゃん…?みのりん…?視線が集中する。
「ありゃ?あっ、いい、いいっ。言ってみただけっ…タラリララ〜ン♪」
ちょっと亜美が思惑ありげな顔になったが、すぐニッコリ。
「…そうねっ、実乃梨ちゃん、それにしましょっ、そばかす…知らないけど…」
知らないのかよっ!っと実乃梨がブーイング。知っている大河は、実乃梨の左耳を確認する。

やっとバンドの演奏曲が全て決まったが、竜児は増えた曲数に、ちょっとゲンナリ。
しかし、さっき練習した図書館で提案した、クレケンの『タイガー&ドラゴン』は、
亜美が、そんなの、わたしが唄える訳ねぇーじゃん!!っと全否定されたので、
合計4曲だ。まあ、文化祭の本番まで、夏休み挟むし、まだ時間あるし…大丈夫か…。

気分転換に窓に目を向けると、見覚えのある黒いポルシェを発見。おうっ、あのポルシェは…
竜児は大河に確認させようとしたが、ポルシェは発進。竜児は大河には伝えなかった。

そして1時間ほど、あれが駄目だのこれが何だのと勝手な意見を言い合い、ミーティング終了。
「散っ!」
と、5人はそれぞれ家路に付く。…のだが、その5人の内1人に、黒いポルシェが尾行を開始。
そのポルシェは、ちょっと赤めの髪の毛から匂う、ピーチの香りを追いかけて行った。
457けいとらっ!Aパート6 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:24:23 ID:bUd64E/C
 帰宅した竜児は、入浴し、練習曲をハミングしながら風呂から出て来た。
「あっれぇ〜?☆竜ちゃん、ごっきげ〜ん☆」
「おうっ、別にそういう訳じゃあねえけど…でも、結構楽器って楽しいなって思ってさ…
 そうだ、インコちゃ〜ん、ベース上手くなったら、インコちゃんだけに1曲ギグるゼ〜っ」
タオルで頭を拭きながら、インコちゃんに夜のコミュニケーション。その破顔フェイスは、
どうみても奇怪なのだが、竜児にとっては、癒しの愛しのペットなのだ。
「イッ…インッ…」
ギグるなんて…そんなカビの生えた言い方に、インコちゃんは反応。
ついに自分の名前を…という淡い期待は、すでに竜児には無いようだった。
「イングウェイ=マルムスティーン」
自分の名前の方が遥かに簡単だろうに。わざと間違えたとしか思えない。

竜児は自分の部屋に戻り、ベースを取り出した。さっそく運指の練習を始める。
「くっ、ううっ、おりゃっ…こうかっ…はあああっ、ムズいっ」
ムズいっと言いうが、ここ数日で、竜児はフレット移動がとてもスムースになった。
指先が堅くなり、痛くなくなってきたからだ。1曲弾き終わり、ふうっと休憩。
ちょっと満足げに微笑む竜児。どうみてもデス系バンドの黒ミサで、悪魔が降臨!
てめえらの内臓エグり出してやるっ!!…という風にしかみえないのだが、
もちろん違う。上達して単純にうれしいのだ。
北村の希望曲は上手く出来そうだ。大河の希望曲は、大河のiPodから聞かせて貰ったが、
シンプルでなんとかなりそう。亜美の希望曲は…大河がキーボードでフォローしてくれるらしい。

そして、実乃梨の希望曲は…
458けいとらっ!Aパート7 ◆v6MCRzPb66 :2009/07/31(金) 02:25:03 ID:bUd64E/C

「…オレンジ」
実乃梨が作った曲だ。楽譜が読めない竜児は、ファミレスで、押さえる弦と、
フレットだけ書いてもらっていた。実乃梨はまだ出来ていないと言っていたが、
実は曲は完成していた。コードだけではなく、きちんと楽譜に落としてある。
なんでも、実乃梨は、歌詞の内容が納得出来ないというか、マズいというか、
…って言っていた。
ちょっと唄ってみる。

「…オレンジっ色は、あの日見た夕焼けを思い出っさせてくれるっ…
               2つの影が手を繋いでいるみたいだっ…た…」

すげえっ、竜児は驚く。櫛枝はなんでもスマートにこなすが、こういうのもセンスがある。
そういえば2年の秋頃に、ふたりで一緒に帰った事があった。たしか北村の家に行くときだ。
櫛枝が、この歌詞と同じ様な事を言ったのを思い出す…

……うおーっ、影なっげーっ!ほらっ高須くんっ、
    あれ?よくみると、なんか手ぇ繋いでいるみたいに見えない?…な〜んてっ……

 今の実乃梨とは、永遠の親友だぜっ…と誓ったのだが、当時の竜児は、実乃梨の事が好きだった。
ずっと片思いしていた。その時、竜児は、好きな人とのふたりきりの下校で、ドキドキしていた。
だから竜児は言ってやった。俺は、お前の事を分かりたいと。俺がおまえのことを見守ってやると。
そんな…『最後の救い』になりたいと。
竜児は、その時、心の中で確かに誓ったのだ。実乃梨には言えなかったが。
もし実乃梨がどんな奴でも、どんな事があっても、永遠に愛すると…確かに誓った。

「櫛枝……おうっ、俺っ…」
何分経ったのであろうか、どれくらい実乃梨の事を想ってしまったのであろうか…罪悪感。
竜児は大河に誓った。実乃梨の時とは違い、大橋の下で言葉に出して叫んだ。大河に誓った…
すくっと竜児は立ち上がり、決意する。押入れの奥から、少しくたびれた段ボールを取り出す。
「捨てちまおうっ…」
段ボールの中には、竜児が実乃梨を想って作ったポエム、プレイリスト、そして…
クリスマスイブに渡せなかった、オレンジ色のヘアピン…あれ?オレンジ?…
 大河には大切に保管しておきなさいっと言われているが、駄目だっ。想い出しちまう。
その…情熱が。実らなかった初恋が。実らなかったオレンジを…櫛枝実乃梨への恋心を…

ビーッビーッビーッ!

その時、竜児の携帯が振動ッた。