1 :
名無しさん@ピンキー:
☆☆狩野すみれ兄貴の質問コーナー☆☆☆
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」
Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」
Q続き希望orリクエストしていい?
A「節度をもってな。節度の意味が分からん馬鹿は義務教育からやり直して来い」
QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」
Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
スレ立てお疲れ様です。
[言霊]の続きが書けたので投下させて頂きに来ました。
前回の感想を下さった方々ありがとうございます。
早速次レスから投下させて貰います。
注:今回はエロが微妙に有り。
[言霊(2)]
互いの身体に触れ、口付けし、重なる事。
それは私達の『おまじない』なのだ。
私は彼への想いを…、そして互いに慈しみ、守り合えたら…。
そんな願いを乗せて契っていく。
高須君は…私に対してどんな願いを乗せてくれているのだろう。
それは本人にしか分からないし、かと言ってわざわざ聞こうとも思わない。
「ん…まだ足りないよ…もう一回」
それは…彼が優しく唇で啄み、微かに熱を伝え、目一杯の愛情を乗せてくれていると感じているから。
たった数秒の触れ合い、重ねた唇を離し…額を当てて鼻先で戯れながら紡ぐ。
熱を帯びて熱くほてっていく顔……ふふっ、二人して同じじゃん。
ほぼ零距離でジッと見詰め合い、顔に当たる鼻息すら愛しいの。
「ん、は…ふ。…んくっ…、ちゅ」
墜ちた気持ちを翔ばしてくれる『おまじない』の効果を私は味わう。
唇が再び触れ、瞳を閉じて…優しく舌を忍ばせてくる高須君に絆されていく。
「あ…、ちゅっ!ちゅっ…、んん…、ふあっ!」
肩から背中に滑っていく手がグッと私を引き寄せ、強く抱かれ……私は蕩ける。
嬉しくて、奥へ誘い込んだ舌を絡ませ、強く吸う。何度も何度も……。
「ちゅくっ!あ…、は、う…。ちゅるっ」
右手で背中を支え、左手は後頭部へ…。
彼に強く抱かれた私は目一杯甘え、熱を甘受し…同時に伝える。
覆い被さる様に抱いてくれる高須君に…おまじないをかけるの。
忘れてしまいたい傷心でも忘れてはいけない事…それを受け入れる勇気が持てる様に…。
大河の言う通り、実乃梨ちゃんは……彼が好きなんだ。絶対に。
だけど…すれ違って…ボタンを掛け違えて…凄く痛かったよね?お互いにさ…。
辛い事もあった。…だけど、それ以上に楽しい事も嬉しい事も沢山あったよね?
もし私達の気持ちが本当に繋がっても……それだけは忘れて欲しくないな。
初恋は甘くて、淡くて…切なくて。一度だけしか体験出来ないもん。
妬いちゃうよ…、この先、亜美ちゃんがどんなに頑張っても高須君の『初恋の想い出』だけは独占出来ないから。
な〜んて…嘘。本気で信じたわけ?
ごめん、それも嘘。
…………大切な『想い出』なんだから忘れちゃ駄目だよ?
「ちゅっっ…、は…。ふふっ♪亜美ちゃんからの"おまじない"は、ちゃんと届いた?」
私は重ねた唇を離し、額同士をグッと寄せて上目遣いで聞いてみる。
「…おぅ、いっぱい届いたぞ」
彼がそう言って、私に覆い被さったまま、畳の上に押し倒す。
「そっか。…うん、なら良いや、それより高須君は亜美ちゃんに、どんなおまじないをしてくれたの?」
私は彼の後頭部を抱え込み、首を傾げて聞いてみる。
「そりゃあ秘密だろ、お前だって教えてくれないだろう?
……てか恥かしくて言えるか」
言葉通り、恥かしそうに視線を反らした彼の顔を動かし、自分と視線を合わせて私は問う。
「良いじゃん、教えてよ?ねぇ…ねぇったら」
でも彼は私の視線から逃れる。その反応が面白くて、ニヤニヤと笑いながら私は追う。
後頭部をしっかり抱き、腰に両足を巻き付かせて拘束しながら。
右に視線を反らしたら左の方へ顔を向けさせ、左なら逆……。彼が根負けするまで。
まるで飼い主に『遊べ!』とせがむ犬の様に…。
「……一回しか言わねぇし、聞き返すな。
それで良ければ教えても良いぞ」
そんなやり取りを繰り返す事、五分程…抵抗を彼は諦めた。
私は頷きもしないし、返事もしない。
ただ期待に満ちた視線を送って返す。
それだけで事は足りるだろう。
「川嶋は俺を引っ張ってくれた…、すげぇ嬉しかったんだ。
おかげで、……何ていうか、おぅ、だいぶ治ったぞ」
『完治するまでには、まだ時間は掛かるだろうけど』
そう付け加えた後に、一呼吸開けて紡ぐ。
「…次は俺が川嶋を守ってやる、一人じゃ激痛でも二人なら和らぐだろ。
一人で抱え込まねぇで、俺に背中を預けろ。ってな、………言ってて恥かしくなってきたから、そろそろ勘弁してくれ」
照れ隠しなのだろう、最後にぶっきらぼうな言い方で締めて彼は黙る。
「へぇ〜…んふふ☆
やっぱり亜美ちゃんみたいな超美少女は守られてナンボだしぃ?
高須君に後ろから守られてあげよっかなぁ〜」
「お、う…。てか笑うな」
正直な話、私は照れていた。
高須君のくれたアンサーに、そして想われている心地良さに…。
けど、ちょっと違うよね。
「でも亜美ちゃんは後ろから守られるより、高須君と横並びでぶつかって…一緒に痛い目を見て、守り守られ…の方が良いな」
そう、彼の後ろを追って通り越すのは嫌。
一緒に並んで手を繋いで……どんな時も。
ずっとそう想っていた。
彼を意識し始めた頃から、ずっと…今でも。
だからソレを崩したくないよ。
確かに高須君に守って貰えたら嬉しい。
でも、それじゃ駄目なの。
だって、それは彼が私の前に立ってくれるという事なのだから。
「ね…今日から………"竜児"って呼んで良い?」
より親密に…、横で一緒に並び立つには……ワンステップ昇るしかない。
「良いぞ、川し……」
私は彼が了解したのを聞き、続けて紡ごうとした口を唇で塞いで邪魔する。
「名字じゃなくて名前。
ちゃんと"亜美"って呼んで?」
それは軽い触れ合うだけの口付け。
そう。危うい綱渡りの様な関係を確かな物にする為の楔。
「おぅ…、分かった。亜美…」
「んふ♪なぁに、竜児ぃ」
付き合い始めの男女が甘える様に…、互いに強く抱き締め、熱ぽい視線を交わらせて……近い未来になるだろう関係を私は垣間見た。
首を傾げて甘えた声で問いを返すのは空気を読んで、とか、ましてや演技でも無い……。
天の邪鬼な私から彼が引き出してくれた『素の川嶋亜美』
底意地悪い腹黒い面なら誰にだって見せれる、でも…こうして甘える姿を晒すのは………キミにだけ。
「もう一個おまじないをさせてくれ。俺とお前が横並びになれるように…な」
竜児の紡いでくれる言葉は墜ちた気持ちを浮上させてくれる。
フワフワと気持ちが高揚し、身体の奥底から燃え上がる熱情が沸いて…悩みなんて吹き飛ばされてしまう。
ああ、そっか、今この瞬間から『悩み』も『しがらみ』も一人で抱え込まなくて良いんだよね。
二人で…壁を蹴破って、もがいて……悪足掻きして…それで良いじゃん。
後悔だけはしない様に、一緒に選択して行こう。
違うか、二人で進んだ道の先に後悔は無いよ。絶対…。
だから一人で『頑張る』のは止めよう。
そう教えてくれた彼の為に…。
「ん…あ」
そして私は彼からの『おまじない』に恭順する。
首筋に埋められた鼻先が私を嗅ぎ、押し当てられた唇が甘く吸う…、弱った私を奮い起こそうと強く抱いて。
「ふ、あ…くすぐったい…よ。竜児…」
竜児の吐息が掛かるだけで…私は蕩けてしまいそう。
何回も甘く、淡く、首筋を吸われ、迷い無く滑っていく右手がスカートの裾に掛かった…。
今日だけは『余分な戯れ合い』を必要としてないのは二人共…同じなのかな?
互いの熱さを一刻も早く得たくて…刻んで欲しくて、気持ちが繋がっていく。
「んんっ…ふあ…ぁ。あ…は」
密着した下腹部の隙間を器用に見付け、下着にあてがわれた指先が秘部に沿って蠢く。
縦に、横に、押して、引いて…探っていく。
私は身を捩らせて、都合が良い様に誘導し竜児を手助けする。
『ココを触って…』
そう言う様に…精一杯おねだり。
「は、あ…っ…。あ…っ、ひあっ」
彼の耳元で私は微かに喘ぐ。
甘さを混じらせ、発情し始めた雌の声で…切なそうに。
竜児の中指が敏感な部分に触れた瞬間、ゾワッとした震えが腰から沸き起こる。
後頭部から背中に回した手に自然と力が入る。
だって『準備』も出来て無いのに強く擦るんだもん、少し痛い…。
「り、ゅうじぃ…んんっ…まだ早いよ。もう少し優しく…、あん」
「おぅ、悪い…これなら平気だろ?」
悪気は無かったんだと思う。
早く繋がりたくて焦っちゃっただけ……。
可愛いね…。
今度は下着越しに優しく優しく擦られて目の前に霞が掛かる。
このフワフワな心地良い痺れが好きなんだ。
だから甘く啼いて教えてあげるの。
「い、いよぅ…、腰がゾクゾクしちゃう…」
そう紡ぐと嬉しそうに頬を寄せてくる。
そのままグイグイと彼の顔がずらされ、耳の裏を口付けされて強く刻まれる………求愛の証を。
だから私も同様に返す。
首筋に数度舌を這わせた後に吸い付き、続いて数センチ離れた場所にも…。
そして私からも……してあげるの。
右手を彼の背中から腰へ…太股を通って、キモチイイ所へ。
「あは…かったぁい…、んくっ…」
腰を僅かに浮かせた竜児のおちんちんをズボンの上からモミモミ…。
余分な戯れ合い…じゃなくて、これは必要な事だから。
私だけ高められて行為に及ぶのは可哀相だ、それに『暴れん坊』と遊んであげなきゃ拗ねちゃう。
「あふっ!ぅうんっ…はっ!はあ…はっ!」
敏感な部分を摘まれ、優しく転がされる。
愛撫される毎にお腹の奥がキュンッて疼いて、熱くなっていく。
頭の中にピンクの靄が掛かり、強い刺激に息があがって…蕩かされる。
腕枕してくれ、かつ、強く抱き寄せられて唇を吸われる。
嬉しくて、幸せで、気持ち良くて…色んな感情が入り交じって、竜児への愛撫に熱を込めて返す。
「ん、くちゅ…!ちゅぱっ!ひあぁ…っ!ちゅるっ!!ちゅっ!!」
息つく暇無い位に彼の口内で舌を吸って貰い、ねっとりと互いを絡ませて愛される。
指先が何回も何回も敏感な部分を弾き、残った三指が秘部を擦る。…私はズボンのチャックに指を掛けて引き下ろす。
そして下着のボタンも外して、元気いっぱいになったおちんちんと御対面。
「んむ…っ!ん、ん!ちゅぱっ!ちゅっ!!ひゃうっ…!」
おちんちんの頭を逆手で握って、手の平の中で撫で、そして揉む。
すると竜児の腰が震え、更に強く口内を蹂躙し始めた。
私の啼き声と衣擦れの音、口内を貪る水音が他の雑音をかき消して、より鮮明になっていく。
薄目を開けて彼を見てみると顔が真っ赤で…私も多分同じで…、そう。
二人共、密着して融けていく体温で汗ばみ、呼吸を乱して発情しきっていた。
「はっ!はっ!あっ…んんっ、ふあっ!」
彼の愛撫に頭が蕩かされ、啼き声に甘さと艶が混じって来た頃、彼がポツリと呟く。
「濡れてきた…な」
指の腹で下着の上から秘部を押しながら、竜児が言ったの。
その一言に私は羞恥を覚える。
愛撫されているのだから当然なのだけど……、自分の状態を言われるのは恥かしい。
「っは…あっ、はっ!り、竜児が亜美ちゃんにキモチイイ事をするから……あふっ♪」
そう言い訳すると竜児からおしおきされた。
敏感な部分を摘まれ、ちょっぴり強めに転がされて…。
彼の下で身体をピクンと跳ねさせ、息を弾ませて甘く啼く。
「嘘付け。まだ少ししかしてねぇのに…結構……」
恥かしいじゃん、それ以上は言わないで。
そんな気持ちを伝える為に、私は熱に浮かされた笑みを向けて左手で彼のシャツをギュッと掴む。
事実上の肯定。
すると彼は熱ぽく私を見詰め、僅かに身を捩らせる。
手の平の中でおちんちんが更におっきくなって……熱くなって、ヒクヒクしてる。
亜美ちゃんを辱めた罰だよ、ちょっとからかってあげる。
「んふふぅ…竜児だって…"濡らして"んじゃん。ほらぁ…」
親指の腹でおちんちんの先をグリグリ転がした後、彼の顔面の前に手を持っていく。
親指と人差し指を付け、ゆっくり離すとエッチぃお露が糸を引いて…、ねぇ?コレなんだろうね。クスクス。
「そ、そりゃあ仕方無いだろ。…生理現象だ」
自分の体液を見せられて嫌じゃない人なんて、そう多くは無い。
それは竜児も例外ではない。結構潔癖な所があるし。
「じゃあ亜美ちゃんのも生理現象でしょ?んふっ、ほらほらぁ…まだ触っただけなのにおかしくない?」
一瞬、彼の口にこの指を含ませてやろうかとも考えた…が、それは流石にマズい。
怒るだろうね、多分。
でもフリだけはしてみる。
指先を彼の唇に近付けてみたりしてさ。
「や、やめ!お、おぉうっ!あ、亜美さん、マジ止めてください!」
嫌々と首を振って逃れようとする彼の身体を左手と両足でグッと強く拘束して弄ぶ。
「えぇ〜。嫌なのぉ?竜児はしたくせにぃ…。
亜美ちゃんのエッチぃお汁…舐めさせたくせに…」
ああ、ちなみにソレはちょっと誇張している。
何日か前、行為の後に舐めてあげたの。おちんちん。
竜児がしてって言ったから。
達して間もない敏感な時にペロペロしゃぶしゃぶ……あはっ、竜児ったら悶えまくって凄く楽しかったんだよね。
実際にはゴムを外して、ちょっぴり精液で汚れたおちんちんを舐めた訳だけど、やっぱり多少は自分の体液も……。
だからまるっきり嘘じゃないよ。
「あれは…確かに俺が、あ…いやいや待て…」
「もうっ!細かい事は気にしない。……だから、ね。ちょっと冒険してみなよ」
いつの間にか愛撫は中断され、私達は甘く戯れ合っていた。
それは一進一退の攻防。
攻勢側の私、と、守勢側の竜児だ。
でも、やり過ぎは良くない。
「う・そ…。竜児にそんな事させる訳無いじゃん」
「お前って奴は……。本気なのか嘘なのか分からねぇ時があるからな、びっくりさせるな」
「……私はいつだって本気だよ?」
溜息をついて安堵する彼の耳元で、そんな事を小さく呟く。
「え?」
ただ、さっきまで行なっていた『悪戯』を意図して言った訳じゃない。
「ふふっ☆」
どう捉えるかは彼次第。
私は見せ付ける様に、竜児の体液が付着した指先を舌で舐めて誤魔化す。
ねっとりと舌を這わせて残滓を絡め取っていく。
「竜児、それよりさ…もうココ大丈夫かなぁ?」
その姿に魅入られていた彼の右手に自身の手を添えて問う。
下着の上で止まっている彼の手を秘部に沿って動かして『準備』は出来ているかな…って。
まだ『足りない』よね?
「んあ…。はあ…ぁん、んんっ!……あはぁ」
下着の中に彼の指が侵入して来る…。
そして数度、指先が入口を擦った後、ゆっくり挿入ってくる。
ゴツゴツした中指が…ゆっくりゆっくり…優しく。
お腹の中がポカポカ暖くなって…もっと奥はジンジンしてて、堪らなくて切なくなる。
「んうぅっ!ひあぁっ…は…、あっ!」
そして根元まで挿入られ、小刻みに掻き回されて確かめられる。
『亜美の具合』を…。
「もう少し濡らさないといけないだろうな」
「んっ!じゃあ…お願い……もっとして?」
膣内を掻き回す指…覚えてしまった竜児の味。
美味しそうにおしゃぶりして、膣肉を絡めて悦んでる。
「んは…っあ!あっ!あんっ!んんっ…ぅ!ひうぅっ!」
指先が躍って膣内をほぐす…。
膣壁に擦り付けられる指の腹が私を溶かし、押して、拡げていく。
敏感な部分を転がす親指がもたらす甘い痺れに啼いて、泣いて…身体の震えが絶えず襲う。
「はうぅっ…ぅ!あんっ!や、あ…あぁあっ!!ら…め…、んあっ!!」
「亜美…可愛いぞ」
膣内の弱い所をねちねちイジメられ、速く強く指を叩き込まれる。
首、鎖骨…頬に耳。暖かい舌が這い…彼が私の名前を呼ぶ。
敏感な部分も愛撫され続け、私は竜児と触れ合う所…身体全体が性感帯になった様に気持ち良くて…跳ね、満たされていく。
彼に絆されてしまい、身も心もトロトロに蕩けて…絶えず与えられる愛情に身を躍らせる。
彼に巻き付かせた足の指が刺激に耐えようと虚空を空しく掴む。
シャツを握る手は汗ばみ、強く掴んで離さない。
そして竜児を愛撫する手は…『もっと元気になれ』と言わんばかりに、貪欲に根元から先へ血液を送る。
達しない様に緩やかに、でも快感を与える為に敏感な部分は手の平の中で揉みほぐす。
彼と覚えた悦ばせ方を自然と出来る様になった。
スケベな竜児が亜美ちゃんに覚えさせるの…こういう事を。
でも、ちゃっかり吸収してる時点で私も………。
「はっ…はっ…!りゅうじぃ…欲しいよぅ」
良いよ別に…。他の誰に見せる訳では無い、私達が仲良くなる為だけに覚えた事だもん。
そして一番『仲良しになれる事』を私は竜児におねだりする。
そう。発情しきって乱れた呼吸で甘えん坊な艶声で紡ぐ。
「おぅ…俺もしてぇ。…っと、ゴムは………」
避妊具は常に私の鞄の中。
もしやっちゃんに見つかったら恥かしいし、家庭環境的に悪く思われたら嫌だから、私が隠し持っている。
でも今日は………良いかなって。
「今日は………大丈夫な日なの。…しなくても良いんだよ?」
「お、おうっ…?でも万が一って事があるだろ。俺、亜美の事を大切にしたいし……」
そう。彼がそう返すのは分かってて言ったんだ。
欲望に走るより前に…理性が働いて、そして私の事を壊れ物を扱う様に大切にしてくれる。
それが心地良くもあり、また、歯痒かった。
一人前になった気分でいても、私達は責任を取り切れない『子供』で…あと数年はそのまま。
「大切にするってのは"壊れない様に優しく"するだけじゃ駄目。
強く…忘れられない位に刻んで貰いたい時もあるんだよ?」
でも、私はそんな考えを振り払って語りかける。
「優しさに触れたいから…"邪魔な物"は要らないよ。
私は竜児と"本物の暖かさ"を共有したい」
そう。だから…冒険してみたいなって想った。
「竜児に強くなれる"おまじない"をして貰いたい…な」
「…おぅ」
そう想いを告げたら、彼は一言呟いて黙ってしまう。
『優しい』から考えてしまっているのだろう。
このまま流されても良いのかと…。
「竜児となら……どんな事になっても幸せだから」
私はそんな竜児の心を揺さぶる。
『好きだから求める』
それがいけない事なのかと…。
「とりあえず亜美の親に殴られる覚悟はしとくか」
そして決意を瞳に浮かべ、冗談っぽい口調だけど大真面目に紡いでくれた。
「もう今の段階で半殺しにされる位に殴られるよ。…嘘だけどね」
私も冗談っぽく返し、嬉しさを隠さずに微笑んで鼻先で戯れ合う。
「なあ…しようぜ」
「うん…」
彼が腰を少し動かし、私の身体を抱く。
繋がる悦びと期待に身を捩らせながら私は……彼に巻き付かせた肢体から力を抜く………。
続く
以上です。
続きが書けたら、また来させて貰います。
では
ノシ
>>20 相変わらずエロいですねぇ。 GJです。
ちょっと背伸びしてる高校生な亜美ちゃんが可愛いです。
>亜美の親
亜美パパってどんなんでしょうね。
二次とはいえ、パパを書くのは勇気がいるわ…。
GJ!相変わらずの職人ぶり、俺も見習いたい……。
GJ!
>>19 「なあ…しようぜ」
「うん…」
男らしいなあ竜児。
台詞萌えですよ。
>>20GJ続き待つ全裸で。
高須棒姉妹の作者さん。
私のHDDには若干の余裕がございますry
匂い立つようなエロさGJ(;´Д`)ハァハァ
>>1乙。
そして新スレのオープニングに相応しいKARsさんGJ!
>>24 あと2〜3週でできあがると思いますので、もう少しおまちください
>>27 まさかの復活予告ktkr
これ実際失踪フラグですけど期待してます
>>27 予告キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
ムチャクチャ楽しみにしてます!感激……
>>27 ううおおおおおおおおおおおお
待ってます!!
>>27 つ、ついに亜美グループが姉妹の契りをw
楽しみにしてるぜ!!!
5分後くらいにななこいの4話を投下したいと思います。
玄関に再び訪れたのは暗い闇だった。足元を照らしていた明かりは消えうせて、奈々子と竜児の間に重たい緞帳が降りる。
竜児は口元を覆いながら、唾を一度だけ飲み込んだ。
「ねぇ、どう?」
奈々子は、竜児を自分の部屋に誘った。竜児の家で、夕飯を呼ばれて、家に送ってもらった。
そして、竜児を引き止めるために、奈々子はもっと近くに居たいと思った。
家には奈々子と竜児以外誰もいない。まだ、二人きりの時間を作ることは出来る。
「竜児くん……」
奈々子は竜児の正面から、ゆっくりと近づいていった。竜児の肘に手を当てて、そっと体を近づける。
服と服がぶつかった。ほんの少し顔をあげると、瞬きを繰り返す竜児の顔が見えた。
奈々子は荒くなりつつある自分の呼吸を抑えようと、意識して呼吸を沈めた。喉を通る空気が、かさついた音を立てて、それが耳に痛い。
「お、おい、香椎……」
「奈々子って呼んでよ。ねぇ」
竜児の肘を、手の平で撫でる。それだけで、竜児の体がびくっと震えた。
「そんなに緊張しないで」
「いや、これは……別に」
竜児が一歩下がり、それと同時に足元の明かりが灯る。再び、玄関に小さな明かりが点いて、竜児の顔がよりくっきりと浮かんで見えた。
今の自分はどんな顔をしているのだろう。そう思うと奈々子は、血液が熱されたのではないかと思うほど全身が熱くなるのを感じた。
「キス、しようか」
「お、ちょ、ちょっと待てって……」
「もっと凄いことだって」
目の前に竜児がいる。それだけで、奈々子の瞳は潤んだ。二人の間にある、ほんの数十センチの距離だって、今は遠く感じられる。
もっと距離を縮めたい。竜児と体を重ね合わせて、竜児に溶けるようにしてひとつになりたかった。
もしそんなことが出来るのなら、それはどれだけ気持ちがいいことなのだろう。
心が焼き尽くされそうだった。腹部から昇る下火は、心臓を焙り、今にも焦げ付きを起こしそうだった。
脳髄から降る電流が、理性を痺れさせてしまう。
「ねぇ、あたしじゃダメ? 本当に、竜児くんのことが好きなの。あなたのためだったら……」
「ま、待てって、落ち着け奈々子」
竜児は奈々子から距離を取ろうとして、玄関の扉に背をついた。奈々子に向かって片手を伸ばす。
「……奈々子って呼んでくれるんだ。うふふ、嬉しい」
奈々子が、伸ばされた竜児の手を取る。そして、竜児の手の平を自分の右胸に当てた。竜児の手が、自分の体の大切な場所に触れている。
心臓を叩くビーターは高々と振り下ろされて、その度に大きな衝動が全身を震えさせた。
「おお、ちょ、お前」
「もっと……。ねぇ、もっと触って。強くしていいよ」
竜児に向かって、わずかに進む。すると、竜児の手がもっと強く自分の胸に押し付けられた。
浅い呼吸を繰り返す竜児が、奈々子の手を振り払う。
「お、落ち着けって奈々子。な?」
「どうして……? あたしじゃダメ? あたしのほうが、きっと竜児くんにとっていい相手になれるわよ。他の誰よりも」
竜児に手を払われて、奈々子が目を細める。沸騰する湯に差し水をしたかのように、すっと熱が引いてしまう。
「いや、別にそういうアレじゃなくて……。ほら、俺らだって、別にそう長い付き合いでもないし、こういう、なんつーか」
「時間なんて関係ないわよ。それだったら、これから何年も何十年も一緒にいればいいだけじゃない」
「そ、そんな先のことなんて考えられねぇよ。それに、俺は……、その、なんだ」
「あたしに魅力が無いの? ねぇ、この体だって、竜児くんの好きにしていいんだよ」
奈々子は腰をくねらせて、自分の体を見せ付けるように、わずかに前かがみになった。
「み、魅力が無いとかじゃなくて……、そんなもんはバッチリありすぎるけど、そういう問題じゃなくてだな……」
「なら、いいじゃない。きっと気持ちいいわよ。ううん、絶対に、気持ちよくしてあげる」
「いやでもだな、俺は……」
「……好きでもない相手とエッチなことするのは嫌? あたしのこと、嫌いなの?」
「そ、そういうわけでもなくて……。いや、俺はともかく」
奈々子は、自分の心の底に冷たいものが広がるのを感じていた。青く小さな氷のようなそれが、尖って奈々子の心を刺す。
竜児の心の中に、誰が住んでいるのかはもう知っている。櫛枝実乃梨だった。
実乃梨を、竜児の心の中から追い出さなければいけない。蹴飛ばしてでも、その座を奪い取る。
「……ごめんね、困らせちゃって」
「えっと、いや」
奈々子は肩にかかる髪を手で払って、竜児から少し距離を取った。
「本当に、奥手なのね。ここまで迫られたら、勢いでしちゃおうと思わないの?」
その言葉に、竜児が俯いて唇を噛んだ。
「そんなわけにはいかねぇよ。そんな無責任なことしたら……」
竜児が、ぐっと拳を握り締める。それを見て、奈々子は鼻から小さく息を抜いた。
「もしかして、泰子さんのこと考えてる?」
「……お前に話してたっけ? 俺って、ずっと親父の顔知らねぇし……、親父と泰子がどういう付き合いしてたのかはわかんねぇけど、俺は……」
きっと、竜児は自分の行いで、不幸な子どもが生まれてしまったらどうしようと考えているのだろう。
竜児自身が不幸なのかどうかは、奈々子にはわからない。竜児の強い責任感が、自分の誘惑を断ち切ったということなのだろう。
その強い責任感も、竜児の魅力のひとつだと思えた。しかし、その責任感を潰してまで体を重ねたとしても、竜児はきっと後悔するだろう。
「そう……。家庭のことってあんまり訊くのも失礼だし、あんまりいい話にはならないかもしれないけど……。少しくらい訊いてもいい?」
「……そりゃ構わねぇけど」
薄い明かりの中で、竜児が少しだけ細く見えた。
立ちっぱなしだと疲れるので、竜児と奈々子は玄関に腰掛けた。
このまま竜児の肩に頭を預けたくなったが、奈々子は少しだけ距離を開けて竜児の話を聞くことにした。
自分の生い立ちを訥々と語る竜児に、奈々子は深く頷いたり、相槌を打ったりして聞き入る。
まだ若い泰子が、竜児を身ごもってからずっと二人で暮らしてきたこと、それを理由にして他人から蔑まれたりしたこと。
泰子のような若い女性が、一人で子どもを育てるのに、どれだけ苦労を重ねたのだろう。奈々子には想像もつかなかった。
「そりゃ、泰子の仕事のこともあるし、俺もこんな顔だし……」
竜児の根底にあるのは、不安なのかもしれない。自分の存在が、誰かにとっての重荷になるのではないか、邪魔になっているのではないか。
そんな思いが、拭いきれていない。だからこそ、竜児は自分が誰かに好意を向けられていても、それを素直に信じることができないのかもしれない。
俺なんかが、そう話した竜児だったが、それは自分自身を肯定できないことから来ているのだろう。
奈々子は、口を挟むことなく竜児に語らせることにした。自分を卑しいもののように語る竜児に、反論をすることはしなかった。
そんなことをしたところで、竜児の心の中で焦げ付いた不安は削り取れないだろう。
子どもの頃から、母親を失うことに対しての不安を抱えていた竜児。
父がいないこと、母が若すぎること、母の仕事が理由で、大人たちの見る目が変わったこと、顔が理由で多くの人から避けられたこと。
竜児の話を聞いているうちに、奈々子は胸が痛くなってきた。
「俺は……、本当に、どうすりゃいいんだろうな……」
遠い目で、竜児は最後にそう呟いた。将来に対して不安があるのだろう。金銭的な理由で、進学することにも躊躇が生まれている。
奈々子は竜児に何を言えばいいのかがわからなくなっていた。
「どう言ったらいいのかわからないけど、あたしは、竜児くんに幸せになって欲しいわ。その時、あたしが傍にいるのが一番いいんだけど」
「……幸せねぇ」
竜児が手を後ろについて、天井を見上げた。視線の先にあるのは夜空を遮る冷たい壁だけ。
「今度は、あたしの話も聞いてくれる?」
「いいけど……。いいのか?」
奈々子の顔を見ながら、竜児は目を瞬かせた。
「竜児くんになら、ね」
「口外はしねぇよ。それだけは約束する」
「本当に? じゃあ指きりね」
体の後ろについていた竜児の手に、自分の手を重ねる。
「ええっ?! いや、別にそんなことせんでも、俺は」
「あら、いいじゃない」
本当は、ただ竜児と少しでも触れ合っていたいだけだった。
「わかったよ、ほら」
体を起こした竜児が、右手の小指を立てて差し出してくる。奈々子は、その指に自分の小指を絡ませた。
ほんの少し触れ合っただけで、胸の中で暖かなものが広がってくる。
「指切った、と。ほら、これでいいだろ。お前が何話しても、誰にも言わねぇからよ」
「そう。まぁ別にたいした話じゃないのよ。こんなことしておいて言うのもなんだけど」
苦笑いが出てしまう。あまり重く構えられても、困るだけだった。
「今更だけど、あたしってお父さんと二人で暮らしてるのよ」
家庭の事情なんて、人に話すようなことではないと思う。だから、麻耶にも詳しいことは話したことがなかった。
それを、竜児に話そうとしている。
「離婚、したんだっけか」
「そうね……。離婚したの。普通はさ、離婚すると女の子だったら母親のほうが引き取るじゃない? でも、そうはならなかった」
話しづらいことではあった。でも、竜児なら、真剣に聞いてくれるだろうと思えた。
「んー、どこから話したらいいのか悩むわね」
「お前の好きにすりゃいいと思うぞ。俺はちゃんと聞くから」
竜児の言葉には、優しさが滲んでいた。気を遣ってくれているのだろう。
そんな竜児の優しさに、心が乱される。
「あたしのお父さんって、ずっと仕事で忙しくて……。朝に仕事に出て、帰ってくるのは日付が変わった頃とかそんなのばっかり。それで休みも少なかったし……」
本当に、異常なほど働いていたと思う。
「お父さんは忙しいし、お母さんも働いてて、それでね、段々とあたしは自分で家事とかするようになったの。料理とか覚えるとお父さんも喜んでくれたし、教えてもくれたし」
「まぁ、俺も自分でやんなきゃならなかったからな……。嫌ではなかったけど」
「そうね、あたしも別に嫌じゃなかった。色々出来るようになったら、お父さんもお母さんも喜んでくれたし、頑張ったわ。でも、そしたらお父さんもお母さんも、あたしのことほったらかしになったの」
奈々子なら大丈夫だ、そう言われた。その通りにしようと思った。
「でもね、そのうち段々と上手く行かなくなった。お父さんって、地味にモテるのよ。それで、浮気やらがバレて大喧嘩して」
「……そりゃ、また」
「そしたらお母さんも浮気してたのよ。それで、お母さんは浮気相手のところに走って出て行っちゃった。それで離婚」
話してみれば、なんてあっさりしたことなのだろう。あの時は、本当に辛かったのに。
父も母も、なんて醜いのだろうと思った。二人は愛し合って、一生一緒にいることを誓ったはずじゃなかったのかと思った。
「お父さんとお母さんの喧嘩を見てるのも辛かった。本当に、あんなに酷くて醜いものは、もう見たくないわ……」
ふぅ、と息を吐いて、奈々子は玄関の扉のそのずっと向こうへと視線を送った。
竜児は何を言うべきなのかがわからないのか、黙ったまま俯いている。
「一番辛かったのは、なんだと思う?」
「えっ? いや……、そりゃ親が離婚したこととか」
「ううん、違うの」
これだけは、今でも辛い。
「あたしのお母さんがね、あたしを捨てていったこと」
言葉にしてから、奈々子は自分の体を抱くように腕を組んだ。少しだけ寒くて、上腕を手で擦る。
「お母さんは、もう新しい家庭を作ってるらしいわ。子どももいるみたい。そしたら、その子があたしのお母さんを、お母さんって呼んでるんでしょうね」
「……ひでぇ」
滲みでた竜児の言葉に、奈々子は小さく溜め息を吐いた。
「小さな頃から、ずっとお母さんお母さんって呼んでた人なのよ。いなくなるなんて考えたこともなかった。小さな頃には一緒に遊んだりもしたわ、一緒に洗濯物を畳んだりとか、運動会で応援に来てくれたりとか」
思い返すと、沢山の思い出があった。
「寝付けなくて一緒に寝たこともあったし、あたしが怪我をしたら痛くないよって頭を撫でてくれた。あたしの作った料理を美味しいって食べてくれた。あたしが風邪を引いたら、仕事を休んででも看病してくれた」
「……そうなのか」
「そんな人だったのに、結局は、あたしを捨てて他の男のところに走って、また子どもを作って……」
あたしは、捨てられた子なんだ。
そう自覚した時は、心の中身ががらんどうになったような気がした。目の前にあるものが、現実のものなのかもわからなくなっていく。
薄いガラスの向こうに現実があって、自分はそこから遠い場所にあるような気がした。すべてのものが、遠くにあるように思えてしまう。
突然、肩に手を回されて、奈々子は目を見開いた。竜児が、奈々子の肩に手を回して奈々子を抱き寄せている。
「……どうしたのいきなり」
「な、なんかよくわからんが、つい」
「ついって……」
竜児の言い方に苦笑してしまう。竜児は顔を赤く染めて、恥ずかしそうに頬を掻いていた。
きっと、竜児が優しいから、同情してくれたのだろう。だから、いきなりこんなことをしたに違いない。
奈々子はそれを悪いものだとは思わなかった。たとえ同情だとしても、それは竜児が自分の気を引きたいからとか、他に何か下心があるわけではない。
だから、つい、なんだろう。
奈々子は竜児の優しさに甘えることにした。竜児の肩に頭を預けて、少しだけ目を細める。
そして、自分の右肩に回された竜児の手に、自分の左手を重ねる。
「あたしはね……、壊れない家族が欲しいの。お父さんやお母さんみたいにはなりたくない。ずっと、ずっと一緒にいられる人が傍にいてほしい」
それが、奈々子の願いだった。家族が壊れた時の悲しみは、竜児にも理解ができないかもしれない。けれど、失くしてしまうかもしれないという恐れは、竜児の中にもあるだろう。
「のんびりと、ゆっくりと、日々を平穏に過ごせたら一番だと思うわ」
「……ああ」
竜児は、自分を愛してくれるだろうか。奈々子はそんなことを考えていた。
もし、竜児が自分を愛してくれたなら、長く一緒にいられそうな気がしていた。
こうやって肩を抱かれていると、心が温かく、安らいでいく。何よりも好きなお風呂の時間よりも、今は気分がよかった。
瞳を閉じると、竜児の暖かさが伝わってくる。このまま、眠ってしまいたいくらいだ。
優しくて、責任感や倫理観が強くて、人の心を気遣うことが出来る。そんな竜児に、奈々子は強く惹かれた。
目先の快楽や誘惑にも流されず、正しくあろうとする。その心が、奈々子には綺麗なものに思えた。
竜児の正しさは、きっと自分を守る盾なのだろう。外から向けられる矛から、自分を守るために、竜児は正しくあろうとしている。
それがいいものなのかは奈々子にはわからなかった。竜児は心の底で、何かに怯えていて、不安を拭うために正しさという盾を掲げて周りを伺っている。
「ねぇ竜児くん」
目を開けて、竜児の顔を覗き込む。
「ん? なんだ」
「奈々子、って呼んでよ」
「……またかよ」
少しだけ嫌な顔をしているが、本当に嫌なわけではないのだろう。
「奈々子」
だから、奈々子の言葉に応えてくれる。
「うん……。ありがとう」
「そんな礼を言われるほどのことじゃねぇと思うが」
「ううん、嬉しいもの。好きな人に、ちゃんと耳元で名前を呼ばれるんだから」
この気持ちが、竜児には理解できない。それだけで、竜児の心が遠いところにあるのが感じられて、奈々子は唇を閉ざした。
竜児が帰った後、奈々子はお風呂に入って歯を磨き、寝巻きに着替えた。
長い髪を肩でひとつにまとめて、前に垂らす。もう夜の11時を回った頃になって、奈々子は牛乳を飲むためにキッチンに行った。
キッチンで冷蔵庫を開けた瞬間に、玄関で物音がした。どうやら父が帰ってきたらしい。
「ん? 奈々子か。お前なぁ、家の鍵はちゃんと閉めとけよ。最近は物騒な世の中なんだから、それくらいしとけよ」
コートを脱ぎながら、奈々子の父がリビングに入ってくる。そういえば、竜児が帰った後に鍵を閉めるのを忘れていた。
「あら、早かったじゃない。今日は会議があるんじゃなかったの」
確かそんな話をしていたような気がする。だからこそ、竜児を部屋に誘ったのだが、もし竜児を部屋に上げていたら鉢合わせになってしまっていたかもしれない。
「いやぁ、それがな、ちょっと人手不足で抜けられない人がいてな。そんで今回は流れた。まぁ、そのうちにまたやる予定だけどな」
「ふーん……」
別に仕事の話なんてどうでもよかった。
「ところで奈々子、たい焼き食うか? ほれ、なんか専門店できただろ。会議のおやつにしようと思って買ったんだけど、無くなったからなぁ」
コートを椅子の背もたれにかけて、父は紙袋をぽんとテーブルの上に置いた。
「……」
作られてから時間が経っているにも関わらず、その紙袋からは小麦の焼けるほっこりとした匂いが漂ってきて、奈々子は唾を飲んだ。
「も、もう歯を磨いたし、いらない」
「なんだいらないのか。美味いのに」
そう言って、父が紙袋に手を突っ込む。たい焼きをひとつ摘み上げて、頭から豪快にかぶりついた。小豆餡の甘い香りが広がる。
それを見ると、夜食にひとつくらいつまみたい気持ちになる。しかし、足を痛めてからというものの、日課のウォーキングも出来ていない。
運動不足もあってか、わずかに肉がついてきたような気さえする。ここでこんな甘いものを食べてしまったら、確実に軽肥満への道を行くことになってしまう。
「やっぱ美味いなこれ。時間が経っても皮がさくさくで、中の餡もしっとりとしてて、いい感じの甘みだ。小豆も潰れてないから、食感も残ってるし、砂糖の甘さだけじゃなくて小豆本来の味がしっかり生きてる」
奈々子の心中などお構いなしに、父は口にしたたい焼きの感想を述べ始める。
それがさらに奈々子の胃袋を刺激した。竜児の家で夕食をご馳走になってから、結構な時間が経った。ちょうど小腹も空いてくる。
「ん? 尻尾まで餡子が入ってるじゃないか。別にここはいらないんだけどなぁ」
丸々ひとつ食べ終えた父が、指先をぺろりと舐める。
「ところで奈々子、なんか食うもの無いのか?」
「……今日は外で食べてきたから無いわ」
「そうなのか。仕方ない、自分で作るか……。どうすっかな、パスタか、丼物か、うーん」
牛乳を注いだコップを煽り、奈々子はふぅと息を吐いた。
「そうだ、お父さん、ちゃんとしたオムレツの作り方教えてよ」
「オムレツ? 別にいいけど、なんだっていきなり。俺に料理教わるの嫌なんじゃなかったのか」
意外そうに目を瞬かせて、父はキッチンに入ってきた。
「別にいいじゃない。作り方覚えたって損にはならないでしょ」
「どうせ男に作ってやるとか、そんな理由だろ」
「……どうだっていいでしょ」
まったくもってその通りだった。オムレツなら材料は玉子くらいのものだし、特別な手間がかかるわけでもない。
玉子焼きを巻くよりは簡単そうだと思えた。
「んじゃ、久しぶりに作るかな」
父はコンロの前に来ると、換気扇を回し始めた。それから、テフロン加工の小径フライパンをコンロの五徳に置く。
「んー、普通に作ったら面白くないな。なんか入れるか……」
「なんにもいらないから、普通のでいいわよ」
「普通のねぇ……。デミグラスソースも無いし、ケチャップで食えっていうのかよ」
父が、食器棚から適当な大きさのお椀を取り、冷蔵庫を開ける。
「玉子っと。ん? なんだよ、バター無いのか」
「仕方ないじゃない。高いのよバター。マーガリン使えば?」
「お前なぁ、マーガリンは体に悪いんだぞ。まぁ、無いんだったらこれでいいか」
冷蔵庫からマーガリンと、玉子を3つ取り出す。そして、コンロに火をつけてフライパンに熱を加える。
「お前もわかってると思うけど、テフロンの鍋は熱くしすぎるなよ。テフロン剥げるからな」
「そんなのわかってるわよ」
「じゃあいいけど……。んで、玉子割って、菜箸でガーッと混ぜてやる。混ぜすぎるとあんまりよくないんだけど、こっちのほうが目が綺麗になるからな」
父は片手で玉子を割って、お椀に玉子を入れると、菜箸を使って玉子を激しくかき混ぜはじめる。
白身と黄身が完全に交じり合うまで、箸を立ててガシャガシャと混ぜ合わせた。
「そんで、マーガリンをフライパンに入れる、と。火から離して回してやればほら、溶けるだろ」
フライパンを片手で回し、マーガリンを溶かしていく。同時に、マーガリンの甘い匂いが空気に混じった。
マーガリンの塊が溶けかけた頃になって、フライパンを五徳の上に置く。
「基本は強火だからな。ここで玉子をどーんと一気に入れてやる」
お椀から、溶いた玉子をフライパンに流し込む。小径フライパンの中で、玉子が丸く広がった。
入れた後で、父は白い皿を一枚用意してコンロの隣に置いた。
「それでだ、フライパンの端で玉子がふつふつ言い始めたら、箸を使ってこう混ぜてやる」
フライパンを前後に揺すりながら、素早くフライパンの中の玉子をかき混ぜていく。円を描くように、何度も何度もかき混ぜた。
そのうち、玉子の海の中で、豆粒のような玉子の塊がいくつも出来上がる。
「この焼き加減が難しいんだけどな。あんまり生だと困るし、焼けすぎても美味しくないし。箸に感じる抵抗と、見た目で判断する」
玉子の固まり方がちょうどよくなったところで、フライパンを五徳の上に置いた。
「ここでちょっと玉子の底を焼いて固めてやる。そんで、軽くフライパンをコンロで叩いてやって、玉子がフライパンに当たらないようにしてやるわけだ」
ちょうど玉子がフライパンの上で滑るのを見計らって、父は左手首を右手でトントンとたたき始めた。
「ここで叩いて、トントントントントントン……、と。ほら、玉子が返っただろ」
手首を叩く度に、玉子がフライパンの奥でくるくると回り始めて、オムレツの綺麗なラグビーボールの形を作り上げていた。
そして、右手で皿の底を持ち、フライパンを近づける。
「かっこつけてやるなら、こうやって皿に盛る」
フライパンを空中でひっくり返し、皿の上にオムレツをぽとりと落とした。フライパンと皿が当たって、澄んだ音が鳴る。
「やべっ、当たっちまった。まぁこんなことしなくても、横から滑らせたほうが潰れにくくていいけどな」
隣で父がオムレツを焼く様子を見ていた奈々子は、目を細めて焼きあがったオムレツを見ていた。
「ほら、まだ中身が柔らかいからこう、皿の上で転がるだろ」
父が白い皿を傾けて、その上でオムレツを転がしてみせる。綺麗に巻かれたラグビーボールのような形のオムレツが、皿の上をゆっくりと転がった。
「と、まぁこんな感じだ」
「ちょっと待って……。なんか、早すぎてよくわからなかったんだけど」
「そりゃ手早くやらなきゃな」
鮮やかな手並みに、奈々子は首を傾げた。
簡単そうにやってはいたが、果たしてこれが出来るのだろうかと思うと不安になる。
とりあえず、父に教わった通りにやってみることにした。かけてあったエプロンを着て、肩におろしていた髪を後ろに回す。
「奈々子、お前って……」
「なによ?」
「エプロン似合うよなぁ」
「そう?」
「まぁ、あいつもよく似合ってたな……。腕はともかくとして」
あいつ、が誰のことなのかは奈々子にもすぐ想像はついた。冷蔵庫から玉子を3つ取り出して、お椀に開ける。
「エプロンの似合う女ってのはいいよな。やっぱ、それが一番だ」
「ああそう。だったらちゃんと逃がさないようにすればよかったのに」
「ん、ああ……。いや、あれからはマジで俺もちゃんとしてるからな?」
「どうだか」
「お前、大人しい顔しといて結構言う時は言うよなぁ」
重たく息を吐きながら、父は腹をぽりぽりと掻いた。見た目は若いが、仕草はすでに中年の域に達している。
玉子を箸で溶いてから、フライパンに熱を加える。マーガリンをフライパンの上で溶かして、一気に玉子を流し込んだ。
「ここで混ぜればいいのよね」
「箸でな。外から中にぐるぐる回す感じにすれば、大体均等に混ぜられるから」
教わったとおりに、フライパンの中を箸でかき混ぜる。
「おいおい、フライパンを揺すりながらやれよ。って、そんな無茶苦茶かき回せばいいってもんじゃないぞ、少しくらい間隔開けていいから。ほら、端っこが固まってるからそこも落として」
「えっ? 混ぜればいいんじゃないの」
「揺すりながらやれって。ほら、もうほとんど固まってきたぞ。そろそろ巻けよ」
「えっ? もういいの」
奈々子はフライパンを持ち上げて、左手首を右手でたたき始める。しかし、玉子はまったく動かない。
思い切り叩いてみたら、玉子が宙に浮いて、フライパンに落ちた。同時に玉子の形が潰れてしまう。
「馬鹿、底をちょっと焼いてやらないとフライパン滑らないだろ。それと、手首の力はちゃんと抜いとけよ。軽く叩くだけでいいんだから」
フライパンの奥で、卵の塊がぐちゃぐちゃに潰れてしまっていた。もう何もかもが遅い。
「ええっ?! どうするのよこれ」
「いいから、もう箸で返せ、畳め」
「畳むっ?!」
フライパンの上で、玉子がどんどん固まっていく。もう半熟の部分などなく、ただの玉子焼きになっていた。
「あーもう、ほら、貸せよ」
奈々子が持っていたフライパンを横から奪うと、フライパンを揺すった。それだけで、玉子がフライパンの上で滑り始める。
「もうこうなったら巻くのは無理だから、箸でこうやって畳む。そんでフライパンの端で形だけ作る」
潰れていた玉子が、フライパンの淵で半月の形に整えられる。フライパンからお皿の上にオムレツを移した。
「こうなったらもう無理だな。後はもう、キッチンシートとかで形整えて、オムレツもどきにする」
クッキングシートを一枚とって、父は焼きあがったオムレツの上に被せて手で形を整えた。
「一応、それっぽいのは出来ただろ」
「それっぽいのって……」
父が、キッチンの下の戸棚を空けて、中の包丁立てから一本のペティナイフを取り出した。
ペティナイフで、まずは自分が作ったオムレツの上を一直線にすっと切れ目を入れる。すると、オムレツが割れて、中に溜まっていた半熟の玉子がとろりと流れ出した。
次に、奈々子が焼いたオムレツにも同じように切れ目を入れる。しかし、火が通り過ぎたせいか、切れ目を入れてもまったく変わりがなかった。
「ほら、お前のは焼きすぎなんだよ。ちゃんと玉子が焼ける頃合を見て、手早く玉子を巻いてやらないと」
「……そんな簡単に出来るわけないでしょ」
「どうせ簡単で見栄えがいいからとか思ってて教わったんだろ」
確かにそれは図星だった。材料も少なくて済むし、綺麗に巻く姿はそれなりにサマにはなる。だが、実際にやってみたらまったく上手く出来なかった。
「こんなのやるより、お前は煮物とかああいうの美味いんだからそっちやればいいだろ」
「それは、そうかもしれないけど」
奈々子自身、フライパンを使った炒め物はあまり得意ではなかった。上手くフライパンを振ることができなかったし、火加減の調節も難しい。
野菜炒めも、炒めすぎて食材がベチャッとしてしまうこともあった。だから、普段は煮物だったりスープだったり、そういったものを作ることが多い。
「まぁ、オムレツやりたいんだったら、布巾とか使って巻く練習したりとかだな。手軽にやりたいんだったら、巻かなくても普通に畳んで後から形整えるだけでもいいけどな」
父は冷蔵庫の中からケチャップを取り出して、割ったばかりのオムレツにケチャップをかけていった。
「とりあえずテフロン鍋と、鍋の温度がわかりやすいようにバター使ってやることだな。それで慣れたら鉄のフライパンでもできるように練習。こっちは普段からよく焼いたフライパンじゃないとちょっと難しいけどな」
父が、テフロンのフライパンを布巾で拭いて、五徳の上にフライパンを置いた。
「もっと綺麗にやろうと思ったら、卵液に生クリームと牛乳入れて、それから漉してやるんだよ。そしたら輝かしい黄色のふわふわオムレツができるぞ」
奈々子は溜め息を吐いて、機嫌良さそうにフライパンを拭いている父を横目で見た。料理の腕に差がありすぎて、教えられていてもそれが上手く伝わってこない。
こういった腕前に左右される料理については、特にそうだった。
「……あたしにはちょっと難しいわね。まぁいいわ、そのうち練習してみるから」
そう言って奈々子がキッチンを去ろうとした瞬間、父に肩を掴まれた。
「なによ?」
「これ俺一人で全部食えっていうのか……。玉子6個分だぞ」
顔を歪める父に、奈々子は冷たく言い放った。
「あたしダイエット中なの」
「お前、いつでもダイエット中だな……」
冬の冷たい空が綺麗に澄み渡り、降り注いだ寒気が鋭く肌を刺す。学校へ続く坂道を、奈々子はゆっくりとした足取りで歩いていた。
念のため、今日もいつもより早めに家を出たが、その必要もなかったかもしれない。坂道を登っていると、上から女子ソフト部が掛け声をあげながら走ってくるのが見えた。
先頭を走っているのは、櫛枝実乃梨だった。冬だというのに額から汗を流し、奈々子の横をさっさと走り抜けていく。
奈々子はなんとなく振り返って、坂道を走り降りていくソフト部の背中を見た。
櫛枝実乃梨を、どうにかしないといけない。その思いは心の中にあった。
冷たい風が足元をするりと流れていく。奈々子は身震いをしてから、学校へ続く坂道を登っていった。
足の痛みは随分と引いてきた。歩く分には、ほとんど問題がなくなっている。さすがに走ったり跳んだりをすればすぐに痛むだろうが、普通に生活する分には問題がなさそうだった。
教室に入ってから、奈々子は頬杖をついて黒板をぼんやりと眺めていた。
「……ふぅ」
知らないうちに溜め息がこぼれる。
櫛枝実乃梨と、竜児の間にある関係をすべて断ち切ってしまわなければいけない。そうしなければ、竜児は自分に思いを寄せてはくれないだろう。
修学旅行で亜美から聞いた話だと、実乃梨は竜児の告白を無かったことにしてしまったらしい。その上で、なんでもなかったかのように友達付き合いを続けているのだという。
なぜ明確な返答を避けたのかといえば、おそらく大河に遠慮をしたからだろうと奈々子は思っていた。それで間違いないと思う。
それでありながら、今までの関係を崩したくないからと、竜児の心を無いものとして扱っている。
なんて酷いのだろう。奈々子は下唇を噛んで目を閉じた。
竜児は、そんな扱いをされても実乃梨への想いを拭いきれないのだろう。だから、苦しんでいる。
やることはやり尽くしたという感じのようだったが、それでも望みは捨てきれていないのかもしれない。
だとしたら、実乃梨の口から、しっかりと竜児の想いに対する返答を聞きださなければいけない。
そう考えた時、奈々子は頭の中で電流が走ったような気がして目を丸く見開いた。
これは、修学旅行で亜美がやったことと同じ。そう、実乃梨の口から、竜児への想いを無理矢理にでも聞きだそうとしている。
亜美は実乃梨の本心を聞き出そうと、実乃梨を挑発した。どうして?
それは、亜美が竜児のことを想っているから。だから、竜児の首に、見えない鎖を繋いでいる実乃梨が許せなかった。
その鎖を断ち切って竜児を自由にしてやりたかったのだろう。竜児が振られてしまったほうが、何かと都合がいい。
けれど、実乃梨は竜児との関係や、大河を取り巻く環境を変えたくないと思って、何も答えることができなかった。
亜美は失敗した。けれど、自分はやり遂げてみせる。
放課後まで待って、奈々子は実乃梨を呼び出した。部活に向かおうとしている実乃梨に話しかけて、少しだけ時間が欲しいと告げたのだ。
「なになに? どうしたの?」
「ごめん、ちょっとだけ付き合ってよ」
賑々しい放課後、クラスメイトたちの目を盗むようにして、校舎の端へ向かった。自動販売機が置かれた一角に行く。
実乃梨はなんの話をされるのかがわかっていないのか、鞄を肩にかけたまま目を丸く輝かせていた。
「ねぇ、なんの話だい。私部活あるから、早くしてほいんだけどさ。つーか珍しくね、私を呼び出すなんてさ」
「すぐ終わるから大丈夫よ」
「そうかい。なんだ、私だけ検尿出し忘れたとかそんなんじゃないよね」
「違うから……」
こうやって実乃梨を見ていると、明るい笑顔も何か嘘臭いものに感じられた。変なフィルターが自分の中に作られているのかもしれないと、奈々子は目を瞬かせた。
いつも突飛なことを言い出したり実行したりと、クラスの中でも変わった存在である櫛枝実乃梨。この明るさに、竜児は惹かれたのだろうか。
「話っていうのは、高須くんのこと」
「はぁ?」
笑顔のまま、実乃梨が瞬きをする。
「簡単なことなの。高須くんのこと、ちゃんと振ってあげて。あたしから伝えるから」
「……いや、なんの話?」
誤魔化しに来た。
「あたし知ってるのよ。高須くんが、櫛枝に告白したんだってね。でも、櫛枝はちゃんと返事してない。だから、櫛枝の気持ちが高須くんに向いてないってちゃんと言って欲しいの」
「意味わかんね。話ってそんだけ? 私忙しいし、そんだけだったらもういいっしょ」
振り返って歩み去ろうとする実乃梨。奈々子は実乃梨の鞄を掴んで、制止した。
「あたし、竜児くんのことが好きなの。だから、率直に言うとね、櫛枝のことが邪魔なの」
実乃梨が首を奈々子に向けた。その表情は、幽霊でも見たかのように引き攣っていて、奈々子も驚いた。
「高須くんのことが、……好き?」
「そう、好きなの」
「好きって……、え?」
実乃梨が、引き攣った顔から無理矢理笑顔を浮かべようとしているのを見て、奈々子は目を細めた。
「好きなのよ。だから、竜児くんの気持ちが自分に向いて欲しいと思ってる。でもね、竜児くんは櫛枝のことが……、好きみたい。今はどうなのか知らないけど」
竜児が実乃梨のことを好きだということを、自分で口にするのは難しかった。だから、こんな言い方になってしまう。
「櫛枝は竜児くんのこと、嫌いなんでしょ。だって、告白だって無かったことにしたくらいだもの。だから、ちゃんと振って欲しいのよ」
「……そんなの、あんたには関係ないし。別に私は」
「関係あるわよ。だって、あたしは竜児くんのことが好きなんだもの。ほら、早く聞かせてよ。竜児くんのこと、嫌いなんでしょ。っていうか付き合う気は無いって言ってあげて。そうじゃないと竜児くんがかわいそうだわ」
実乃梨は歯を食い縛って、掴まれた鞄を思い切り引っ張った。奈々子の力ではそれを止めることが出来ず、奈々子の手から実乃梨の鞄が離れる。
「悪いけど、私に言われたってどうしようもないし……」
「そんなわけないじゃない。櫛枝がはっきり言えば済むことでしょ。だって、竜児くんは櫛枝のこと引き摺ってて、そのせいで前に進めないんだから」
「だから、私は……。それに、そんなの私がどうこうしたって」
曖昧に言葉を濁らせる実乃梨を見て、奈々子は下唇を軽く噛んだ。
実乃梨が何を考えているのかが、よくわからない。竜児を取り巻く環境を、壊したくないのだろうか。
恋愛感情の縺れで、いつも一緒にいる友人たちが不仲になるのを避けたいのだろう。そのために、何をしているのかわかっているのだろうか。
そのために、竜児は犠牲になっている。上辺だけ取り繕って、すべてを無かったことにして、仲良くしていればいいと思っている。
「だから、櫛枝がはっきりしないから竜児くんが苦しんでるんじゃない。付き合うつもりがないなら、そう言ってあげて」
「っていうか、横からなんでそんなこと言ってくんの?」
実乃梨が目を細めて、奈々子を睨んだ。
「横から? あたしは竜児くんのことが好きなの。だから櫛枝の曖昧な態度が許せない。なんとかしたいと思うのは、当事者だからよ。それで? 竜児くんのこと、好きなの? 嫌いなの?」
「……だから、関係ねーだろ」
「関係あるって言ってるでしょ。はっきりしてよ。付き合う気はないんでしょ? だったら、それだけでもはっきり口にして」
眉を吊り上げて、奈々子は大きな声でそう言い放った。実乃梨と話していると、段々と腹が立ってくる。
修学旅行で、亜美が実乃梨を相手に激昂した理由が、奈々子には実感できた。決して本心を晒そうとしない実乃梨に、奈々子は唇をぎゅっと結んでその姿を見据えた。
実乃梨も、機嫌悪そうに目を細めて奈々子を睨みつけている。
「櫛枝、いい加減はっきりしてよ」
「だから、あんたには関係無いって言ってんだろ」
実乃梨は眉を寄せて、そう言った。
「どうせ、タイガーのことでも考えてるんでしょ」
その言葉に、実乃梨が表情を激変させる。目を丸く見開き、拳を握り締めた。
「そうよね、タイガーは竜児くんのことが好きだもの。二人が上手く行けばとか考えてるんじゃないの?」
「もう、いい加減にしてくんない? 私忙しいし、付き合ってる暇無いし」
「また逃げるの? ほんと、逃げるのだけは得意なのね」
「だから、いい加減にしろって言ってんだろ」
「だったらすぐに答えを聞かせてよ。竜児くんと付き合うつもりはないってことでしょ」
今にも、実乃梨は握り締めた拳を自分に向けてくるのではないかとさえ思えた。
実乃梨はぐっと何かを堪えながら、肩にかけた鞄の紐を握り締めている。視線を廊下に落として、小さく震えていた。
もし、実乃梨が竜児を振ってしまえば、竜児と実乃梨の間に出来ていた友情は壊れてしまう。
以前のように付き合うことはできなくなるかもしれない。でも、竜児は実乃梨を好きになってしまった。
竜児の感情を殺さなければ成り立たない友情に、一体なんの価値があるのだろう。竜児は傷ついているのに。
このままでは埒が明かない。そう思った時だった。
「お前ら、何してんだ……」
廊下の門から、突然竜児が現れた。状況が飲み込めないのか、目を丸くしている。
竜児に気付いて、奈々子と実乃梨の体が一瞬大きく震えた。こんな場所に竜児が現れることは、予想していなかった。
「なんだ……?」
竜児なりに、二人の間に気まずい空気が流れているのを察知したのだろう、歩みを止めて肩にかけた鞄を握りなおした。
実乃梨との間で決着をつけようと思っていたのに、このタイミングで竜児がやってくるとは思わなかった。
「高須くんはさ……。大河のこと、どう思ってるの?」
実乃梨が、竜児に背を向けたまま問いかける。奈々子には、実乃梨が俯いて唇を結んでいる姿が見えた。
「どう、って、なんの話だ?」
「あのさ、もしかして、大河のことほったらかして、こいつとどうにかなるつもり?」
ゆっくりと、実乃梨は竜児のほうへ振り返って視線を向けた。実乃梨の表情がどんなものなのか、奈々子にはわからない。
ただ、実乃梨の視線を受け止めた竜児は狼狽していた。半歩後ずさって、実乃梨からわずかに距離を取ろうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ櫛枝。なんの話だよ、俺にはわかんねぇよ」
「わかんない? どうして? 高須くんはさ、大河のこと、ほったらかしになんかしないよね?」
「……お前、何言ってんだよ。だから、俺には話が見えねぇって」
竜児が顎を引いて、実乃梨の視線を正面から受け止める。
「ねぇ、櫛枝は竜児くんのことが好きなの? 嫌いなの? 自分ははっきりしないくせに、竜児くんにははっきりしろって言うんだ」
「だから、関係ないから黙っててくんないかな。ほんと、苛々するし」
「苛々するのはこっちのほうよ」
実乃梨の背中を見ながら、奈々子は自分の左腕に爪を立てた。
「ちょっと待てよ。お前ら、一体なんの話を……」
「なんの話って、決まってるじゃない。櫛枝が、竜児くんの告白を無かったことにして、のほほんとしてるのが許せないの。はっきりしてもらわないと」
苛立ちのあまり、竜児に対しても奈々子は低い声音を放ってしまう。
こんな醜い姿を見せたいとは思わない。言ってから、わずかな後悔が襲う。
「……そんな話してたのか」
奈々子が心配するほど、竜児は奈々子に悪い印象を抱かなかったらしい。気まずそうに視線を逸らして、顎に手を触れている。
竜児が現れたことで、奈々子はどうしていいのかがわからなくなっていた。ただ、実乃梨に対する怒りだけは心の中で沸々と音を立てていて、その熱は収まりそうにない。
今自分が何をしようとしているのかもわからない。竜児が実乃梨のことを好きだということは、奈々子にとって何よりも嫌なことのはずだった。
しかし、竜児の気持ちが実乃梨にちゃんと伝わって、その上で竜児が振られて欲しいなどと思っている。
それによって、竜児は傷付くのに。
「竜児くん、今ここで、もう一回櫛枝に告白すればいいじゃない。あたしが横で聞いててあげる。櫛枝の返事もね」
奈々子は眉を寄せながら、竜児にそう言った。竜児は顎に触れていた手で、ゆっくりと前髪に触れ、俯いた。
「それは……、できねぇよ」
「どうして? はっきりと決着をつけたほうがいいわ。そうしないと、竜児くんはずっと傷ついたままじゃない」
実乃梨との友情を保つために、竜児は自分の心を延々とおろし金で削り続ける日々が続く。それは、どれだけ辛いことなのだろう。
奈々子は拳をぎゅっと握り締めて、竜児の顔を見ていた。
「俺は……、その、もう、櫛枝に告白する気はない」
竜児の言葉は、奈々子の耳の上で一度保留された。喉に引っ掛かった小骨のように、その言葉の意味を飲み込めずにいる。
「そう、高須くんは、私のことを好きじゃないもんね」
過去の過ちを自嘲するかのような笑みで、実乃梨は肩を竦めた。
告白をする気がない。それが意味するところは、つまり、実乃梨への恋心は、竜児の心の中で失せてしまったということだった。
「いや、俺は櫛枝のことが好きだった。今更言ってもしょうがねぇけど……。って、なんだよ、なんでこんなこと言ってんだ俺。あの日、緊張しまくって結局言えなかったのに」
後頭部を掻きながら、竜児は視線を壁に這わせた。
「それで、高須くんの気持ちはどうなったのかな? ようやく、気付いたんじゃないの」
「……多分、な」
「そう……」
実乃梨は目と閉じて、大きく息を吐いた。それに合わせるように、実乃梨の肩が下がる。
「俺が好きなのは、お前でも、大河でもない……」
「えっ?」
竜児の言葉を耳にした実乃梨が、顔を上げて竜児の顔を見た。瞬きすらせずに、怒っているのか笑っているのかも判別できない顔で、竜児を見つめていた。
「きっと、一緒にいられる相手は、大河じゃないんだ……。あいつのことは放っておけないとは思う。でも、あいつは俺の手を借りることを望んでない」
「ちょっと待ってよ、何を、言ってるのさ」
両手をぐっと握り締めて、実乃梨は言葉を喉で潰しながら放った。
「高須くんが、大河を好きにならない? どうして、何を言ってるの。大河は、大河はどうなるの?!」
実乃梨の怒声に、竜児は申し訳無さそうに唇を閉ざして俯いた。
「それが、高須くんの答えなの? どうして、そんな……」
「ああ、俺が出した答えだ」
俯きながらも、竜児はしっかりとした声音で応えた。
実乃梨の体が、がくりと一瞬倒れそうになり、なんとか踏ん張った。
そのまま奈落へと落ちていくのではないかと奈々子が思ったの同時に、実乃梨は一歩足を進めていた。
真横に構えた手で、竜児の頬を強く打ち抜いた。なんの手加減も無かったのだろう、頬を張られた竜児は壁際に叩きつけられて肩をぶつけていた。
「竜児くんっ!!」
奈々子は慌てて駆け寄ろうとして、同時に足首に焼けた鉄を押し付けられたような痛みを味わい、竜児の体に向かって倒れこんだ。
「ぐほっ」
「あっ、ごめんなさい」
ちょうど手をついたら、竜児の腹にめりこんだらしい。竜児は頬を張られたことよりも、それが痛かったのか顔をしかめて腹を押さえていた。
「い、いや、別にいいけど」
竜児は顔に脂汗を滲ませながらも、微笑もうとしていた。ようやく追い詰めた獲物をこれから屠ろうとする猟奇殺人者のような顔だったが、奈々子には竜児の気遣いが見えてほっと胸を撫で下ろした。
「……高須くん、君のこと、本当に見損なったよ。結局、何がしたかったの? 大河のこと変に期待させて、大河のお父さんの時も自分勝手にして、そしてまた勝手に大河を傷つけて」
倒れこんだ奈々子と竜児を冷たく見下ろしながら、実乃梨は渇いた声で告げた。
「さよなら高須くん」
鞄を掴んで、実乃梨は足早に廊下の角を曲がり去っていく。
自動販売機の間にある隙間にすっぽりと埋まった竜児が、膝を抱えながら片手に持った缶コーヒーを強く握り締めていた。
「あああ、俺は……ううう」
竜児は時々額を膝にこすり付けてぐりぐりしながら、重たい息を吐き出していた。奈々子がお金を出して買った缶コーヒーも、ほんの少ししか口をつけていない。
奈々子は落ち込んでいる竜児を見下ろしながら、どう声をかけていいものか悩んだ。
さっきは、随分と威勢よく実乃梨に自分の心を告げていたのに、終わってみれば竜児は狭い隙間に嵌って落ちこんでいる。
「竜児くん、そんなところに座ってたら汚いわよ」
「心配するな、ここは俺がいつも徹底的に掃除してるから」
「なんでこんなところ掃除してるのよ……」
いくら掃除好きだからって、こんな場所を掃除することはないのに。
「はああぁぁ……。やっちまった」
ようやく顔をあげて、竜児は額を指で掻いた。
「それなんだけどさ、竜児くんはどうして、櫛枝にあんなこと言ったの?」
あんなこと、としか言えなかった。実乃梨と付き合う気はないという。そして、大河のことも選ばないという。
その言葉の先に何があるのか。奈々子は期待をせずにはいられなかった。竜児が落ち込んでさえいなければ、すぐに問い詰めたかったことだ。
「あんなこと? なんだっけ、ああ、俺……、あいつと付き合うつもりはないとか言ったんだっけ」
まるで他人事のような言い方だった。
「そうだよ、言っちまった……。櫛枝のこと、本当に好きだったのに、何言ってんだろうな」
再び額を膝に当てながら、竜児は小さく縮こまった。
放課後になってから随分時間が経ったのもあって、もう廊下のほうからも賑々しい声は聞こえてこない。
ほとんどの生徒が下校したか、部活に向かったのだろう。校舎の中は静かだった。窓こそ開いていないのに、冷たい空気がどこからか入り込んできて身震いしてしまう。
奈々子は手に持ったホットコーヒーに少し口をつけて、喉の奥に流し込んだ。両手で包み込んでいたおかげで、指先が冷たくなることはないが、体の芯が冷えてくるのは避けようがない。
「……俺は、櫛枝と一緒にはいられないんだろうな。好きになって、精一杯頑張って、そんで振られて、ようやくわかった」
「そう」
奈々子にはその言葉しか出せなかった。その後に、良かった! などと続けそうになったからだ。
そんなことを言ってしまえば、竜児は傷つくだろう。
「竜児くんは、悪くないと思うわ」
「どうだか……。結局、めちゃくちゃになっちまった。これからは、櫛枝とも普通に喋れねぇだろうし」
「いいじゃない別に。竜児くんの気持ちを無視して、今まで普通に振舞ってたほうがおかしいのよ」
普通を続ける代償に竜児は傷つき続けた。ここで櫛枝が傷ついたからといって、それがなんだというのだろう。
自分のしたことに比べれば、本当にちっぽけなことじゃないか。
「そうかぁ? なんか、もっと他に方法があったんじゃねぇかと思っちまって」
「無いわよ。いつか終わるのがわかってた関係じゃない。竜児くんの選択は正しかったと思うわ」
奈々子はそう言いながら、頭の隅で違うことを考えていた。
実乃梨と付き合う気はない、大河を選ばない、そう言った。なら、竜児は誰を選ぶのだろう?
奈々子は腹の底にむずむずするような期待が膨らむのを感じていた。遠足前日の子どもみたいに、ふわふわと落ち着かない気持ちで、手に持った缶コーヒーを揺らす。
そうしていないと、貧乏揺すりのように足を揺らしていそうだった。
「ああ、そうだった……。お前に言いたいことがあって探してたんだ」
ようやく気力が回復したのか、竜児は年寄りじみた仕草でゆっくりと立ち上がった。
「言いたいこと? そ、そう……」
覚悟を決めなければいけない。
竜児が自分に何か大切なことを告げようとしている。きっと、この場所に来たのも偶然ではなくて、自分を探していたからに違いない。
そうでなければ、竜児がわざわざ中央の階段に向かわずに校舎の端へやってくる意味が無い。
櫛枝を選ばない、大河を選ばないと言った竜児。きっと、一人の時間に考え続けたに違いない。自分が誰を選ぶべきなのか。
そして、竜児は決断をした。
「今更言いにくいことなんだけど」
竜児はそう前置きをして、咳払いをした。奈々子は唇をむずむずと合わせて、視線の居所を探してうろうろと漂わせた。
自分の肘を抱き、心を落ち着かせようと鼻からゆっくりと息を吐く。
「気にしないで、ちゃんと、言って」
「ん、ああ、そうだな。ほんと今更言うのもなんだと思ったんだけど……」
「うん」
「ハンカチ返してくれねぇか」
「うん?」
商店街を自転車でゆっくりと走る。自転車の後ろに腰掛けて、奈々子は一人で溜め息を吐いた。前で自転車を漕ぐ竜児は、のんびりした様子で前カゴに入れたエコバッグを見下ろす。
エコバッグから、長ネギが頭を出していた。その他には、牡蠣鍋の具が入っている。
今日は天気が良かったからか、昨日よりも空気が少し暖かい。竜児は、緩く巻いたマフラーの先を弄りながら機嫌良さそうに遠くを見ていた。
「さて、どうすっかな。味噌仕立てにして土手風にするか、それともシンプルに出汁で作るか」
「シンプルな方でいいんじゃない。せっかくの牡蠣なんだし、あんまり味つけても仕方ないわよ」
「そうか、じゃあ薄めにやるか」
竜児にとって、牡蠣は高価な食材なのだろう。だからこそ機嫌よさそうにしている。
しかし、奈々子は心がわずかに沈むのを感じていた。
実乃梨も、大河も選ばない。なら、竜児は一体誰を選ぶのだろう。もしかしたら、自分かもしれない。
そう思ったのに、竜児の口から出てきたのは、ハンカチを返してほしいとの言葉。確かに、借りっぱなしだった。
自転車で転んだあの日、膝に巻いてくれた。もう洗ってアイロンがけをし、机の中に仕舞ってあった。
まずは奈々子の家に行ってそれを取りに行き、竜児にハンカチを返した、そして今度は一緒に商店街を奈々子の自転車で移動している。
一度家に帰ってから、竜児に少しだけ時間を貰って、なんとか身なりを整えることができた。何を着るべきなのかで、随分と悩んでしまったが、なんとか可愛く見える服を選ぶことができたと思う。
お気に入りのワンピースを出したし、下着も可愛いものに替えたし、準備は万端だった。濃いブラウンのワンピに、それよりも濃い色のロングブーツ。
せっかくの鍋だから、一緒に食わないかと誘われたのだ。それ自体は嬉しい申し出だった。
奈々子が竜児に、泰子には亜鉛の豊富なものを食べさせたほうがいいと言ったのが昨日。そして、竜児はそのアドバイスに従って、牡蠣鍋をすることにしたのだろう。
ご馳走にしては確かにヘルシーだし、健康にもいい食品ばかりが並ぶ。けど、奈々子にとって重要なのは今夜のご馳走ではなく、竜児の気持ちだった。
「ねぇ竜児くん。櫛枝とのこと、あたしが変にかき回しちゃってごめんね」
そう言うと、竜児が唸りながら唇を閉ざした。鼻を鳴らし、顎の辺りを指で掻きながら、視線を空中に向ける。
「いや……。つーかまぁ、びっくりしたことはしたけどな。なんで二人でそんな話してんのかと」
「それは、だって」
実乃梨の態度が許せなかった。不誠実で、自分にとって都合のいい環境を作るために竜児の気持ちを無視した。竜児を傷つけた。
何かを言おうにも、竜児に対して実乃梨の悪口しか出てきそうにない。奈々子は出かかった言葉を一度飲み込み、篩いにかける。
「竜児くんにとって辛いことだったわよね。櫛枝に、その、振られたわけだし……」
実乃梨と竜児がどれほど仲が良かったのか、奈々子にはよくわからなかった。北村、大河、亜美、実乃梨、竜児、この5人で夏休みには亜美の別荘へ遊びに行ったという話も知っている。
一緒にいて、仲良くやっていた。けれど、これからは前のような関係を作ることは難しいだろう。
もし、竜児が自分の気持ちを犠牲にしてでも、以前の関係を保っていたいと思っていたのなら、奈々子がしたことは余計なことでしかない。
「……確かに、振られたわけだしな。クリスマスにもう振られてんだけど……、結局上手く行かなかったし。うーん、なんつったら言いのか」
竜児の心中は、奈々子にはわからなかった。実乃梨のことが好きだった。けれど、告白する気はないと言うほどに、実乃梨への想いは褪せてしまっているのだろうか。
実乃梨への恋心を諦めてくれるのは、奈々子にとって都合のいいことだった。さらに、大河も選ばないという。
まさかここで亜美を選ぶなどという方向へは進まないと思う。そうなると、竜児の傍にいるのは、自分だけ。
「きっと、俺は櫛枝と一緒にいられないと実感したんだと思う……」
遠い目で、竜児はそう口にした。商店街を抜けて、住宅街を行く。もう少しで竜児の家だった。
「そう……。あたしは、竜児くんがそれを選んだんだったら、その考えを尊重するけど」
「別にそんな大層なもんじゃねぇよ。ただの諦めみたいなもんだからな」
諦め、と口にした竜児。なら、実乃梨のほうから竜児を求めてきたらどうするのだろう。
実乃梨の気持ちは、奈々子にはわからない。竜児のことを憎からず思っているのは確かだと思った。
だったら、実乃梨から竜児に告白をしたらどうなるのだろう。竜児は、その時に実乃梨を選ぶのだろうか。
大河のことはどうなるのかもわからなかった。
それについても訊きたいが、大河と竜児の間にある関係は、難しくてややこしくて、とても簡単に聞き出せそうになかった。
二人は2年生になってから一緒にいることが多かったし、周りは二人が付き合っているのだとばかり思っていた。
大河が暴れまわって、竜児とはなんの関係も無いと表明したが、それでも二人の関係は密接で、付き合ってるのだと思うほうが多かったはずだ。
大河とのことを避けては通れない。竜児と一緒にいるのは、大河ではなく、自分でありたいから。
竜児が台所に立って、買ってきた野菜を切っていた。コンロの上に置かれた土鍋から、ゆらゆらと湯気が上がっている。
手伝いを申し出たが、竜児に断られた。まな板はひとつしか無いし、手伝えるようなことはあまりない。
竜児に頼まれて、食器を用意して、カセットコンロを卓袱台の上に置いたくらいだった。
テレビでも見ててくれ、と言われてテレビを点けているが、流れてくるニュースは何も頭に入らなかった。
日が落ちるのも随分と早くて、外は夜の色を帯びている。
昆布だしの香りが、台所からわずかに漂ってきた。畳の上にぺたりと座りながら、竜児の背中を見てしまう。
まな板に向かって立ち、今は牡蠣の処理をしている。加熱用の牡蠣を袋から出して、キッチンペーパーで水気を切っていた。体力が落ちている泰子のことを考えて、生食用より加熱用を選んだのだろう。
野菜の類は、大きな皿に盛り付けられていて、すぐにでも鍋に放り込める状態になっている。
牡蠣の処理も終わったのか、竜児は皿に牡蠣を並べた。これで用意は整ったのだろう、その皿を持ち上げて卓袱台の上に置いた。
「よし、これくらいあればいいだろ」
高く盛られた白菜に、丁寧な花切りを施された椎茸。えのき茸は白菜に寄り添うように立ち、長ネギは斜め切りされて並べられていた。
「泰子さん、起こしたほうがいいかしら?」
「ああ、頼む。俺はちょっと台所片付けるから」
エプロンを外しながら、竜児が微笑んだ。
「わーお。すっごぉい。今夜はお鍋?」
起き上がった泰子が、仕事に行く準備を終えて食卓についた。座布団の上に座り、両手を合わせて鍋からあがる湯気の中で笑っている。
「こら泰子、あんまり覗き込むな。髪が落ちるだろ」
「はーい」
ポン酢をとんすいに注ぎながら、竜児は泰子の肩を軽く叩く。泰子の顔色は、昨日よりもわずかに良いものに見えた。
化粧の乗りも悪くないようで、少しは体調が持ち直しているらしい。目元に少しだけ疲れの色が見えたが、それでも昨日のように足がむくんでいるわけではない。
「やっぱ鶏肉かなんか買ってきたほうがよかったか……」
野菜たっぷりの鍋を見下ろして、竜児が首を傾げる。メインの具が牡蠣だけでは物足りなく感じたのだろう。
「十分じゃない? 美味しそうよ」
素直な感想だった。牡蠣鍋なのだから、他に何か余計なものを入れる必要はないだろう。
カセットコンロの火が、弱火で土鍋を暖める。立ち上る湯気の中で頭を出した白菜が、透明感を得て鍋の中へ沈んでいった。
「よし、じゃあ食べるとするか」
準備を終えた竜児が、座布団の上に座る。
鍋を食べ終え、泰子が仕事に出てからは随分と静かになった。一緒に食べる鍋の美味しさに、泰子の口数も随分と多かったが、その泰子が仕事に出ると部屋の中がしんとしてしまう。
竜児は鍋をカセットコンロの上に置いたまま、他の食器を下げているところだった。奈々子には座ってゆっくりしててくれればいいと言って、今は洗い物をしている。
奈々子は、竜児の背中を眺めながら、体の後ろに手をついて静かに息を吐いた。運動不足で、食事には気をつけようと思っていたのに、随分と食べてしまった。
鍋自体も美味しかったし、何より竜児と泰子がいて、一緒に食べること自体が楽しかった。
泰子が次から次へと鍋に手を出しているのを竜児が見て、それはまだ煮えてねぇ、こっちから食えと、泰子の世話を焼いていた。
その勢いか、奈々子にもあれに火が入ったから食えよ、と勧めてくれた。
自分が食べるのもそこそこに、人の世話を焼いているのだからおかしい。奈々子は竜児の姿を思い浮かべて、一人で笑みを漏らしてしまう。
「いやぁ、食った食った」
洗い物を終えたのか、竜児がエプロンを外して、今度はミトンの手袋をして鍋をコンロに持っていく。
「しかし、ちょっと残っちまったな」
鍋の中には、野菜が随分と残っていた。確かにあれだけの野菜を用意すれば、残るだろう。
明日、吸い物にすっか、と呟きながら、竜児は手袋を外して居間に腰掛ける。満腹から来るものなのか、体を重たそうにして座った途端に年寄りじみた仕草で息を吐いた。
竜児の横顔を見ながら、奈々子が言った。
「ご馳走様、美味しかったわ」
「そうか、喜んでもらえてよかった」
「本当に料理が上手いのね。高校生で、男の子でここまで出来る人っていないと思うわよ」
「なんだよいきなり……。鍋くらいでそんな褒められても」
「あら、お米だって研げないのが普通じゃない?」
「さすがに米すら研げねぇ奴はいねぇよ」
大真面目な顔でそんなことを言っている。だが、麻耶が調理実習で米すらまともに研げない姿を見たことがあったので、竜児の言い分には素直に賛同できなかった。
男子だったら米の量り方や炊き方もわからないかもしれない。
「ほとんど独学で覚えたんでしょ? 凄いことだと思うけど」
「まぁそりゃ、誰かが教えてくるわけじゃないからな。自分でやるしかねぇよ」
「本当に凄いわね。独学で覚えるのは大変でしょ」
いくら本を読んだり、レシピを見て作っても、正解がわからなければ上手く出来たのかどうかの判断は難しい。
完璧なレシピを渡されたとしても、食べたこともない料理を作って、それが正しい出来上がりなのかどうかをどうやって判断するのか。
結局は、食べたものが美味しいかどうかだけで判断しなければならない。そうなると、すべてが味覚頼りになる。
味覚に頼って作り、それが竜児好みの味付けに染まっているのならわかる。けれど、そうではなく奈々子にとっても泰子にとっても、おそらく多くの人にとっても美味しい料理に仕上がる。
それがどれだけ難しいことなのか、きっと竜児にはわからないのだろう。
「ま、失敗も色々したしな。それはそれで面白かったし」
「そうね、あたしも味見した時には美味しいと思っても、全部食べたらちょっとしつこかったりとかあるわ」
一口食べて美味しいと思う味付けでも、最後まで全部食べてしまえば濃すぎると感じることは多い。
「ああ、あるよなそういうの。後は、弁当とかに入れるとちょっと濃いなぁって感じることとかよ」
「それもあるわね。あたしも、昨日の残り物を入れたらちょっと味が濃いって思うことあるもの」
料理が冷めれば、それだけ味も濃く感じる。熱いうちに食べて美味しい味付けも、冷めてしまえば濃すぎると感じる。
料理のことになると、竜児も雄弁になるようだった。普段の料理で、どんなものを作ったりしてるかとか、コツなどを機嫌良さそうに語っている。
多くの料理に使える万能たれの作り方だったり、安い肉をどうにかして美味しくする方法など、竜児の話は続いた。
「俺の場合は、薄口とみりんが1に対してダシが7くらいだな」
「そうなの? あたしはダシが8って教わったけど」
「それってやっぱ、店とかの大きな鍋で作るから、水分飛んでちょうどよくなる割合だったりするだろ。俺はそんなでかい鍋使わないから、そんなもんだな」
「ああ、なるほど、確かにそうね」
「でも量ったりするのは面倒だから、大体で合わせるけどな」
泰子が仕事に出てから、随分と時間が経った。
奈々子は竜児の話に相槌を打ちながら、少しずつ竜児に近づいていった。卓袱台の前に座る竜児の隣へ移動して、奈々子は竜児の声を耳で拾い集める。
近くにいると、体が段々と熱くなってくる。自分の中に、竜児と触れ合いたいという欲求が沸き立ってきた。
竜児と料理の話をするのは楽しい。同級生で、これだけ話せる相手に会ったことなんか無い。
絵や音楽なら、一度に多くの人に触れてもらえる。けれど、料理となると、実際に作って食べさせるしかない。
そして、家族以外の人に料理を出す機会などというのはあまり無い。その料理を作るのに、どれだけの手間をかけたり、勉強をしたりしても、披露する機会はほとんど訪れない。
「そういや、ぬかづけにした野菜とかもあってだな、今度食わせてやるよ。毎日手を入れてるから、結構いい感じだぞ」
「あら、そんなことまでしてるの? 本当に色々してるのね」
きっと、料理が好きでなかったらここまでしないだろう。
「今度はあたしの料理も食べてもらいたいわね。あたし、煮物とかだったら普通に作れるから」
「おお、食わせてくれよ。俺も奈々子の料理食ってみたいしな」
「あんまり期待されても困るわね……。本当に、ベタなものしか作らないから」
「それでいいんじゃないか? 普通に作れるのが一番だと思うぞ」
竜児は乗り気のようで、隣に座った奈々子の顔を見ながら、微笑んでいた。
夜が深くなるにつれて部屋の中は静けさを増す。時計の針が刻む音は二人の会話に相槌を打つように響き、少し肌寒い部屋の空気は奈々子の体の火照りを冷ました。
「明日、休みじゃない……。あのね、あたしの家でご飯食べない? 晩御飯は泰子さんのこともあるから、お昼ご飯でも……」
「ああ、いいぞ」
「本当? じゃあ、今夜から早速仕込んでおかないとね」
「おいおい、そこまで気合入れなくてもいいだろ」
「ううん、だって竜児くんに喜んでもらいたいんだもの。出来れば、いいものを出したいわね」
床についた竜児の手に、奈々子は自分の手を重ねた。竜児の体が少しだけ震えて、それから恥ずかしそうに目を逸らす。
二人きりでいると、心臓がうねるかのように大きく動いているのが感じられた。竜児の手は、洗い物の後なので、少しだけ濡れて冷たい。
竜児の手を温めるように、奈々子は手を重ねた。
ずっと、好きだと告げてきた。
竜児の優しさに、誠実な態度に、奈々子は恋をした。
好きになるだなんて思ってもいなかった。自転車で転んで、手当てをしてくれた。
竜児のまっすぐな態度に、奈々子は転げ落ちるように惚れてしまった。
「一緒にいてくれて、本当に嬉しいわ」
「お、おう」
自分の体を摺り寄せたかった。昨日のように、肩を抱いてくれたら、どれだけ気持ちよくなれるのだろう。
「ねぇ、竜児くんは……、誰を選ぶの?」
奈々子の問いに、竜児は唾を飲み込むように喉を鳴らした。深くなる夜の匂いが、奈々子の鼻腔を満たす。
すぐ傍にいる竜児の体温が、立ち上る湯気のようにゆらめいて感じられた。竜児の肩に、奈々子は頭を預けた。
奈々子は俯いて、竜児の手を握る。竜児の手の甲に上から手を重ねて、指を絡ませた。
「俺は……」
ようやく、答えが聞ける。そう思うと、奈々子の胸が強く締め付けられる。
「俺は、お前がいい」
奈々子の肩が、びくりと震える。聞き違いではない。奈々子は、眼球の奥から目が開いていくような気がした。
手の平から汗が滲むのが、奈々子には実感できた。
今、肺の中に空気があるのかどうかさえ、奈々子にはわからなかった。寝付けない夏の夜のように息苦しくて、体の内側から、喉へせりあがる不快感があった。
頭の中身が湯だった豆腐にでもなったかのように柔らかく、ぐにゃりと歪んでいく。
声が出ない。何かを言いたいのに、何も出てこなかった。肋骨を突き破ろうと、心臓が肥大していく。
「俺みたいなのに、好きだって言ってくれて、本当に嬉しかったし……。その、気付いたらなんか結構お前のこと考えてて」
竜児は唇を動かして、奈々子に好意を寄せた理由を述べていく。そんなもの、今はいらない。
「お前も言ってたけど、お互いさ、なんか長く一緒にいられそうな気がするんだよな……。それに、なんだろ、お前のことがなんか他人とは思えなくなってて」
息ができない。苦しい。噴火前の火山のように、灼熱の炎が心の中で押しとどめられている。
爆発しそうだった。
「だから……、なんだ。俺は、奈々子のこと好きだぞ」
もう、耐えられなかった。
竜児の肩を両手で突き飛ばした。何をされたのかわからなかったのだろう、竜児は一瞬目を見開いてそのまま後ろに倒れこんだ。
奈々子が、仰向けになった竜児の体に覆いかぶさる。奈々子の顔があまりに血走っていたからか、竜児は怯えたように唇の端を引き攣らせた。
「お、おい?」
「……もう、だめ」
奈々子が口にした言葉に対して、竜児は何かを言おうとした。だが、唇から言葉が紡がれることはなく、奈々子の唇によって塞がれていた。
二回目のキスは、最初のもののように軽いものではなかった。
唇を強く重ね合わせるだけでは足りなかった。かさついて、唇の皮がめくれた竜児の唇。それが、すぐに奈々子の唾液で濡れていく。
奈々子の長い髪が、竜児の顔を覆う。漏れた息のすべてが、互いの顔の間に立ち込めた。竜児の唇の間に、舌を差し入れて、竜児の舌を探した。
挽肉をこねるかのような、肉と肉がぶつかりあう音が口内で響く。竜児の胸板に、奈々子は体重をかけた。両脚を開いて、竜児の腰を捕まえる。
体が触れ合うと、そこから竜児の体温が伝わってくる。夕暮れのような暖かい赤色に似た、優しい温度。
竜児の口内にある唾液を吸いだすように、奈々子は唇を吸った。竜児の唾液を、舌の上で味わい、そして喉の奥へ流し込んだ。竜児の体の一部が、奈々子の胃に落ちていく。
息をする時間さえもどかしくて、奈々子は竜児の舌を貪った。
「んっ」
喉で漏れた声が、竜児の口に響く。竜児の舌が、奈々子の求めに応じるように差し出されてきた。
背骨を抜かれたような気がして、奈々子の体が崩れる。自分の体が制御できなくなる。暖かな温度に、体が溶けて消えた。
舌と舌を絡み合わせる。脳の中心で火花が散る。血が燃え上がる。深く舌を合わせる度に、奈々子の心が満たされていく。
なのに、すぐに足りなくなる。底の抜けたバケツに水を注ぐかのような行為。竜児が足りない。
もっともっと、深く体を重ねたかった。竜児のシャツの間から、手を差し入れる。肋骨のわずかな出っ張りに指先を這わせる。
竜児の体が跳ねた。竜児にも触れて欲しい。この体に竜児の手が触れたら、どうなってしまうのだろう。
今、唇を合わせているだけでも、奈々子の体は燃え上がっていた。熾った炭のように、中心から真っ赤に色づく。
奈々子は、顔をあげて、竜児の顔を見下ろした。驚きに満ちている竜児の表情が、再び奈々子の心を熱くさせる。
「好きよ……」
竜児の顔を見下ろしながらそう言って、奈々子は自分の背中に手を回し襟のボタンを外した。
「ちょ、ちょっと待てって奈々子!」
慌てて竜児は制止の言葉をかけるが、奈々子には届かない。奈々子は竜児の腰の上に座りながら、服に手をかけている。
背中のボタンをすべて外し、奈々子はワンピースを肩から抜こうとした。
階段を駆け上がる足音がした。高須家の家の扉が、大きな音を立てて開かれる。
ぼうっとした頭で、奈々子は誰かが来たのだろうかと考えていた。服を脱ぐのをやめずに、奈々子は胸元を晒そうとした時だった。
台所に、大河が立っていた。
「た、大河?!」
竜児が仰向けになったまま、大河を見上げる。大河は制服のまま、細い眉を強烈に吊り上げ、二重の大きな瞳を細めて歯を食い縛っていた。
大河の右手には、木刀が握られていた。
「あんた……、何してんのよ」
低い声色で、大河は竜児を見下ろす。木刀をぐっと強く握り締めて、上段に構えた。
4&?
ななこいきた!GJ!まだ読んでないけど先にGJ!!
規制された?
つか虎子空気嫁
ななこいきてる!
修羅場で修羅場じゃのぅ
とりあえずここまでって書いてあるから規制じゃないな
ななこいGJ!!!!!
次は大河攻略かw
修羅場怖い(´・ω・`)
実乃梨も奈々子も怖いよ〜(´・ω・`)
大河はむしろ修羅場が似合う
ななこい作者さんGJ!
VS大河はみのりんとの修羅場を知った上だったら怖すぎるが
どうなんだろな・・・奈々子さまがんばれ!
ななこいの人GJ!
奈々子はいいなぁでも大河とはちょっとでもいいから円満にいってほしい気もする
みんながみんな後味の悪い感じじゃ辛いものな
体で落としたって感じだな
>>50の
> 竜児は狭い隙間に嵌って落ちこんでいる。
> 「竜児くん、そんなところに座ってたら汚いわよ」
> 「心配するな、ここは俺がいつも徹底的に掃除してるから」
> 「なんでこんなところ掃除してるのよ……」
> いくら掃除好きだからって、こんな場所を掃除することはないのに。
あーみんの指定席を綺麗にしてるってことは……www
>>68 いやいや、きっと友達思いだからきれいにしてるだけだと思ってしまいたい俺ガイルw
やっぱななこいだなぁと思いましたわ。ただ、俺的にはみのりんと奈々子様がバトってる
時の会話で、大河に対してアドバイスした?とか自分は何もしてないで傷つけてるだけじゃ
ないとか、そういう会話も盛り込んでほしかったなぁとか思いました(・ω・;)
でもこういう展開も好きなので一個人の感想として受け止めてやってくだせぇw
何はともあれ次回を楽しみにしてます(・ω・)b
GJ!けどああああああ早く続きをおおおおおおおおお
GJ!GJ!GJ!
早く続きを!
木刀 規制 わかる
73 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 15:42:42 ID:WpyRNXiT
GJ! 奈々子様初かと思いきや・・・
74 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 15:46:38 ID:WpyRNXiT
ごめんHいれわすれた
ななこいの続き来てたーーーー
やっぱり、ななこいは良いなぁGJです。
続きが気になり過ぎるううぅぅぅ
みのりんを撃破して王子様をGet
したかと思ったらラスボスタイガーが!
な感じ
ななこ様ガンバレ
>>33-58 あいかわらず読んでいるこっちの脳に侵食してくるような文章
いったいエロ描写とはなんなのかと考えさせられます
>>58より
「何二人で楽しんでるの?私も混ぜなさいよ…」
「って大河さん、なんで木刀持ってんでしょうか?」
「うっさいバカ犬!木刀プレイに決まってんじゃない!」グリグリ
「ってそこはアッー!ンッギモヂイイ!!」ビクンビクン
すいません人のまわしで相撲取るの大好きなんです
この板の書き手は基本的に他人のまわしで相撲を取ってる奴らだろw
書き手は批判受けて当然、賞賛なんぞクソ食らえ
ぐらいの気概でいろよ
これは手きびしい
基本的に、自分の読みたいものを書いているだけなんだが
今回のななこいを読んで思ったんだが、大河の幸せ=竜児と結ばれる事。
その為に、竜児や自分の気持ちをないがしろにしたり、竜児は大河が好き、自分の事は初めから好きじゃないなどあれこれ決めつけたり、こじつけたりする実乃梨の気持ちが解らない。
そして何故頑なに自分の本心を隠そうとするのかもとらドラ!本編が終わった今でも本当に解らない。
最早、傲慢でずるいってレベルじゃない。
とらドラP!の実乃梨100点EDが実乃梨の本当の望みなんだと思うのは俺だけだろうか?
>>82 本当の本当の望みは多分そうだろうなww
本編は実乃梨が折れる前に竜児が折れただけってことだろ
なんか、もう色々とエロくて堪らなくなりました。
職人達は責任を取ってこれからもエロスなSSを投下して貰いたいですな。
簡潔に述べるならGJ!
エロ描写より日常描写のほうが好きだわ
それを言ってしまうとこのスレの存在意義が無くなりますね
エロ大好きな俺が居るから相殺されて差し引きゼロさ
あんまりマンセーするとアンチが沸くから自重したいがひとことだけ・・・
ななこい待ってた!超待ってた!
やっぱこの人の文章好きだわ。
高須棒の人も復活するみたいだし、このスレはよいスレにしたいね。
89 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 00:08:10 ID:KnZ5Q6n5
出だしが、言霊でニ話目が、ななこいで、たぶんつぎあたりに、高須棒姉妹が来るかもしれないという、スレの流れがよすぎる!
90 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 00:09:58 ID:KnZ5Q6n5
出だしが、言霊でニ話目が、ななこいで、たぶんつぎあたりに、高須棒姉妹が来るかもしれないという、スレの流れがよすぎる!
うお!? 久々に倉庫見たら腹黒様6が書かれているじゃないか
何時の間に追加されたかわからんが 筆者に超支援
ななこい、いかにも長い時間をかけて文章を練りまくったという感じ
短い文章が幾つもつながり合って、ひとつの複雑な描写になってゆくところとか、
時間かけて書いてんな〜と思う
ななこいも… 早く続きが読みたい…
奈々子様に惚れて気づいたが 自分はゆるくふわっとした黒髪ロングの
似合う巨乳美人に心底弱いようだ
あえて言うとオムレツのくだり、いるか?
>94
竜児も奈々子も「料理」をするという点で繋がりあるし、
奈々子父も既に登場された方なので、別に問題ないと思う。
あれ必要か?これいるか?と言い始めるとどうしようもなくなってくるのであまり言わない方がいい。
……あ、ななこいの方、GJ!です。
続き楽しみにしています……というか、2回もお預けくらって悶悶して眠れん!
二人は早くやってしまうといいと思う。
奈々子が料理できるなんて原作のどこにも書かれてないけどな
っていうかオリキャラだろ
>>94 確か体調の優れない泰子を気遣って出汁巻き卵を作ろうとしたけど油の多さが裏目に出ましたよね?
今回のオムレツ学習のくだりは同じ卵料理ではあるもののバリエーションを増やすための
奈々子の努力家としての一面を表現したのではないでしょうか。
……こういう嫁さんが欲しいなあw
>>95 だがこの焦らしっぷりがたまらん(;´Д`)ハァハァ
>>94 父親に似ている竜児に惹かれている奈々子様、そして父萌え。
>>94 イランかなあと思ったけど
>>98が全てを言ってる
なるほど
そういう伏線だったのか
気づかなかった俺アホス
近頃のゆゆぽスレは修羅場が流行なのかねぇ?
早く投下しないと、また荒れるぜー超荒れるぜー!
大河以外のヒロインと関係が進めば修羅場にしかなりようがないしな
ちょっと気分転換にやっちゃんSS投下
タイトルは「ミラノ天国」で
「魅羅乃ちゃんはさ〜、再婚とか考えないの〜?」
また。
また、この手の質問。
「え〜? 私23歳だからぁ、結婚なんてまだはやいし〜」
そんな事を聞いてどうするつもりなのかなんて考えるだけムダ。
マジメに答えるのはもっとムダ。
だからこんな事を聞かれたら大抵こう返すか、はぐらかす。
「もったいないな〜、オジサンがあと十年若くてカミさんさえ居なきゃすぐにでもな〜」
「お上手なんだからぁ。本気にしちゃうかも」
社交辞令だから絶対本気にしないでほしい。
ついでにとっとと帰ってほしい。
目の前の脂でテカテカ光る顔をした、いやらしい目つきを隠そうともしないで胸元しか見ないようなオジサンが十歳若返ったくらいで
靡く女はそうそういない。
せいぜい寂しくなった頭が、今よりはマシになるだけでしょ。
「ハハハハ、だったらオジサンも本気になっちゃうぞ〜」
「いっや〜ん♪もう、飲・み・す・ぎ♪」
汚い手で触らないで、大して飲んでもいないくせに。
安酒を引っかけただけでおさわり自由だなんて思っているとしたら、どれだけ厚かましいんだろう。
我慢しているこっちの気も知らないで。
「魅羅乃ちゃんホント肌キレイだよね〜、真っ白でスベスベで、いつまで触ってても飽きないよ。
とても高校生の子供がいるだなんて思えないな」
ホント、こっちの気も知らないで。
「息子さんだっけ? 堪んないだろうな、高校生で毎日魅羅乃ちゃん拝んでるんじゃあ。いや、溜まんないの間違いか?」
他の席のお客さんにも聞こえるような声だったから、ドッと笑いが起こる。
やっちゃんも笑ってる。
全然面白くないけど、お酒の席で飛ばされる冗談を一々本気に取ってたら身が持たないから、楽しくもないけど笑っておく。
それにこんな人でも一応お客さんだから、気分を害されたら大変。
どんなにつまらない親父ギャグや下ネタでもお酒の席なら笑ってあげるのが、大人とお店のマナー。
大ウケしたと思ってご機嫌なオジサンはしばらくの間若い娘に絡んではその子を凍えさせていたけど、
次第に飽きてきたのか、ガクンと落ちたテンションでこんな話題を振ってきた。
「でもさぁ、そんなに大きくなるまで一人で育てるのって大変なんだろうねぇ。
しかも今高校生なんだから・・・魅羅乃ちゃんが高校生くらいの時にできたんでしょ、その子」
こんな吹けば飛ぶような軽い心配をされるのも、その裏で歳の事を変な風に考えられていることも、もう何度も経験した。
次の言葉は必ず苦労って言葉が入るはず。
「苦労とか多かったんじゃないの? 偉いよな〜、魅羅乃はエラいよ、いや本当に」
ほら、思ったとおり。
しかも何気に呼び捨てになってるし。
触り方までベタベタしてきて馴れ馴れしい。
「そんなことないですよぉ。あらぁ、グラス空いてますね。気付かなくってごめんなさぁい、なににします?」
「水割りでいいや。でさ、オジサンが何言いたいかっていうとね」
その話はお終いにしましょっていう合図に気付けるぐらいは慣れてると思ってたんだけど。
本気にされちゃって、ただ安いお酒を頼まれただけ。
一杯ぐらい高めのお酒や、いっそボトルでも入れてくれればもうちょっとお話聞いてあげてもいい気になれるんだけどな。
「そんな健気な魅羅乃ちゃんをほっぽって、旦那さんは何やってんだよねぇ」
オジサンだったら絶対放っとかないって〜───要はそんな奴よりも自分の方が良いぞって言いたいだけなんでしょ。
どうして男の人は自分と、知りもしない相手とを勝手に比べては勝った気になって悦に入るんだろう。
主観以外の要素が入り込む余地なんてこれっぽっちもないのに。
下らなさ過ぎて営業用の笑顔も作れない。
水割りを作るために顔を俯けているから悟られないで済んだけど、そうじゃなかったら危ないところだった。
「どうでもいいじゃないですか〜、はぁいお代わりどうぞ」
「おっとっと。ありがとう〜魅羅乃ちゃんは優しいなぁ、もう今のと別れてもいいから本当に嫁さんになってくれないかな」
「いいんですかぁ? そんなこと言って、奥さん怒っちゃいますよ〜」
「いいのいいの、あんな膨らんだ腹されて横にいられたんじゃあ、暑苦しくって同じ家にもいたくないって。
穴が付いてるだけでボノと変わんないよあいつは。ここ来て魅羅乃ちゃんと一緒に飲んでる方がよっぽどだよ」
今度の冗談は少しだけ面白かったから笑っちゃった。
自分を鏡で見てみればいいのに。
「それよりどうかなぁ、ちょっと、ほんのちょびーっとだけでも考えてみない? オジサンとさぁ」
今日のはやけにしつこい。
お酒が抜ければそんな気これっぽっちも失くなってるくせに。
残ってたとしてもこっちからお断りだけど。
「そうだ! 子供作っちゃおう! そうすればオジサン責任取って魅羅乃ちゃんのこと一生養ってあげちゃう!」
突然何を言い出すんだろう、この酔っ払いは。
責任取るとか、子供とか。
一生なんて、あと余命が十年残ってれば良いような体しといて・・・そうでなくても勘弁してほしい。
どうやったらあんな安酒を2〜3杯煽っただけでこんなに酔いが回るのかしら、不思議。
大体ここはそういうお店じゃないから、スッキリしたいんならお店変えてくれないかなぁ、マジで。
聞いてもないのにアレの自慢話なんか始めちゃうし、本当に最悪。
それだけならまだしも、ふとももまで擦って───・・・
「や、や〜ん、本当に飲み過ぎですよ。もう今日はお勘定にしましょうか」
「魅羅乃ちゃんだって今の生活に不満くらいあるだろう? そんな事に気を遣わなくてもよくなるからさぁ、ね?」
お客さんだから言うのもなんだけど、町工場の社長さん程度なのに、どこからそんな根拠が出てくるの?
不渡りがどうとか延々愚痴ってたのはどこの誰?
そんな人がやっちゃんの生活を・・・竜ちゃんとの生活を「不満」?
的外れにも程がある。
それと中学生じゃあるまいし、そんなギラギラした目で鼻息荒くして寄ってこないで。鼻が曲がりそう。
「でもぉ・・・ほらぁ、さっきも話しに出てたけどぉ私子持ちだし」
「どうせ高校出たら一人暮らしでもするって〜。息子さんだって、新婚でアツアツの魅羅乃ちゃんの邪魔したくないだろうし
ホラ、そういうのが分からない歳でもないんでしょ? 何の問題もないじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
勝手なことばかり言わないで。何の問題もないとか、そんなの都合の悪い事は何一つ考えないで、「こうだ」って決め付けてるだけ。
なんにも知らないくせに。
やっちゃんの名前も、竜ちゃんの事も。
やっちゃんにとってどれだけ今の生活が大切な物なのかも。
なんにも知らないくせに───
「一杯頂いてもいいですかぁ? なんだか飲みたくなっちゃった」
「お? いいよいいよー、好きなだけ飲んでよ。今夜はベッドまで面倒見てあげるからどんどんやっちゃって」
「わぁ♪じゃあ・・・これとこれとこれとぉ、あとこれもいいなぁ。ついでにフルーツ盛り合わせも出しちゃお♪」
「は・・・ちょ、ちょっと」
このお店で一番高いお酒をボトルで四つと、ついでにこれでもかっていうくらい高い果物ばっかり乗っかったお皿を頼んだ。
青褪めているオジサンが今日飲んだ分を除いても、軽く六桁を超える。
いくらなんでも、さすがに回っていた酔いが醒めてきたみたい。
鳴ってもいない携帯電話をさも着信が来たように取り出すと、急用ができた風を取り繕ってる。
いない相手に向かって偉そうにがなり立ててる様は、ハッキリ言って大根の方がもっと上手くできそうな演技・・・というよりも、コントそのもの。
そんな事してまで外面を気にするなんて、余計にカッコ悪さが引き立つのに気付いてないのかな。
気付いてないから、そんなカッコ悪いことをやっちゃうんだろうけど。
「また来てくださいねぇ」
あのいけ好かないお客さんは申し訳無さそうな表情を汗だくの顔に貼り付けて、
言い訳もそこそこにキッチリ自分が飲んだ分だけを払うと早足にお店を出て行った。
その背中に向かって「二度と来ないでいいから」って込めながら見送る。
「ふぅ・・・あ、いらっしゃ〜い」
嫌なやり方だって思ってるけど、やっちゃんにも我慢の限度がある。
気分の悪いお客さんを追い返すことができて、少しだけスッキリした。
でも、息つく暇もなく、入れ違いにドアから入ってきたお客さんを笑顔で出迎える。
疲れた顔なんてしていられない。
まだ夜は始まったばかりだから。
・
・
・
最後までお店に残っていた娘が帰っていくのをお疲れ様って声をかけて見送って、ようやく今日のお勤めもお終い。
やっちゃんも帰り支度を・・・っていっても、バッグを一つ手に提げるだけ。
洗い物やらの後片付けは済んでるから、看板も中も明かりが消えたお店の戸締りをして、それだけやって帰り道を歩き出す。
このお店はここらじゃあ一軒しかない飲み屋さんだから、今日みたいな週末はそれなりに大変。
見送って、別のお客さんをお出迎えして、お酒を注いであげて、お話を聞いて。
ちょっとだけえっちな事をしてくる人や、今日みたいに気付きもしないでこっちの気分を悪くさせる人。
そんな男の人を相手にして、それでも嫌な顔をしないように気を遣って、気持ちよく飲んでもらって、見送って。
何回も繰り返して、気付けば新聞屋さんが道を走っている時間に、やっちゃんはようやくお仕事から解放された。
昼夜が完全に逆転してるから、やっちゃんのアフターファイブはコンビニでプリンを買うくらいしかすることがない。
今日はそんな気分でもないから、最早行きつけになってるコンビニを素通りして真っ直ぐ家路を歩く。
「はぁ〜・・・今日もつっかれたぁ・・・」
ワンちゃんの散歩をしてる人や、こんな時間から公園でお喋りしてるおじいちゃん達から「派手だなー」っていう目で見られながら
歩いている間に、見慣れた家まですぐそこという所まで来ていた。
あとは階段を上るだけ・・・だけど・・・
「・・・・・・はぁ・・・・・・」
なんだか家の中に入るのが躊躇われて、足が進まない。
『どうせ高校出たら一人暮らしでもするって〜』
一人暮らし・・・かぁ。
やっちゃんの結婚の事をとやかく言われるのは慣れたけど、その話題には一向に慣れない。
ていうか、考えたくもない。
ずっと一緒に暮らしてきて、そんな今更・・・もし、もしも本当に竜ちゃんが一人暮らしを始めたら───・・・
少しだけ顔を上に向けると、どこも変わってない、ちょっとだけ古ぼけた見た目の我が家。
二つ目のやっちゃんの家。
一つ目の家にも、帰りたい時がたまにある。
最後に見た時よりも老けただろうお父さんとお母さんの顔が見たいのなんてしょっちゅうだし、心配事もないこともない。
でも会いたいからって、そんな理由で都合よく顔を出していい場所じゃない。
そうしたのは、他の誰でもない自分自身。
それはちょっとだけ寂しいけど、でも後悔はしてない。
大切な物を選んだ結果が今の生活で、この古ぼけた見た目の我が家。
一から自分で作ったやっちゃんの家。
竜ちゃんと一緒に作った、やっちゃんと竜ちゃんの家。
ここだけがやっちゃんの帰る場所。
(だから、独りぼっちになっちゃうのはイヤだなぁ)
竜ちゃんが一人暮らしをするって事は、やっちゃんも一人暮らしになっちゃう。
その時やっちゃんはどうやって暮らしていくんだろう。
ご飯は・・・作んのメンドーだからコンビニばっかかなぁ。やだなぁ油っこいし、竜ちゃんのご飯の方がおいしいし。
掃除は・・・竜ちゃんが一生懸命ピカピカにしてるこの家がゴミ箱になっちゃう。
洗濯は・・・洗濯機なんかもう竜ちゃんしか動かし方知らないから、着る物もなくなっちゃうかも。
インコちゃんは・・・・・・・・・インコちゃんなら美人さんだから、野生に帰ってもお婿さんがより取り見取りだからきっと大丈夫。
考えても考えても、竜ちゃんがいなくちゃ死んじゃう自信ばっかり湧いてくる。
「うわ〜なにこのダメなお母さん・・・ってそれやっちゃんやないか〜い」
ノリツッコミ? っていうの?
自分でやってもあんまり笑えない。
竜ちゃんが言ってくれたらまた違うんだけど。
「・・・・・・はぁ・・・・・・」
そんな自分がどんな目で見られているんだろうと思うと虚しくなって、余計に疲れて、眠気も押し寄せてきて。
暗い気分にばかり背中を押されて、やっとやっちゃんは階段を上り始めた。
ガッシャーン
こけた。
「ふみゅ・・・」
一段目に足を乗っけた所で、それだけで足を滑らせて転んだ。
お酒って恐い、なんでもない所で転ぶんだから。
どこも怪我してないっぽいけど、それにしても大きな音だったなぁ・・・また大家さんにうるさいって注意されるかも・・・
知らんぷりしよ、やっちゃんが転んだのはこの滑り易いぼっれー階段のせいですぅーって言うよりは怒らせないはず。
服に付いた埃を掃うと、更に重くなった足取りで階段を上る。
一段一段踏みしめて、また転ばないように手すりにも手をかけて。
ヤだな、おばあちゃんみたい。やっちゃんまださん・・・23歳なのに。
今日は嫌な事尽くしだった・・・転ぶし、嫌なお客さんは来るし。
おかげで変なこと考えちゃうし・・・一人暮らしなんて・・・
竜ちゃんには、できればしたい事をさせてあげたい。でも、学校も出てほしい。
やっちゃんは高校までで、それもすぐ辞めちゃったから、できれば大学まで行かせてあげたい。
今年の春、無事二年生になれた竜ちゃん。
竜ちゃんは特になんとも思ってなかったみたいだけど、やっちゃんからしたら自分の事のように嬉しかった。
再来年の春にはキチンと高校を出た竜ちゃんと、大学生になった竜ちゃんを見たい。
そのためのお金はちょっとずつだけど貯めてきた。
押し付けがましいかもしれないけど、それが今のやっちゃんの、ささやかな夢。
(叶うといいなぁ・・・だけど・・・)
一人暮らしがしたいって言われたらどうしよう。
やっちゃんができる限りはしたい事はさせてあげたい、不自由な思いはさせたくないから。
そうならないよう、これでも精一杯頑張ってきたつもり。
でも、離れ離れにはなりたくないよ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ホントに離れ離れになったら、このドアを開ける度に憂鬱。
こんな時間だと竜ちゃんはまだ寝てるだろうけど、それでもそこに居てくれるのと居てくれないのは全然違う。
おかえりって言ってくれなくてもいい、出迎えろなんて言わない。
聞いてなくてもいいから『ただいま』って、ただそれだけでも───・・・それさえも言えないんじゃ、やっちゃんは・・・
「・・・・・・ただいま」
「おぅ、おかえり。遅かったな」
静かに開けたドアの向こうには、エプロンを着けた竜ちゃんが台所に立っていた。
朝ご飯の支度をしているみたい。
でもなんで? まだそんな時間じゃないのに。
「・・・どうしたの、こんなに早くに」
「なんか変な時間に目が覚めてよ、他にやる事もねぇし。ほら、これ飲めよ」
そう言って、竜ちゃんがお水を注いだコップを手渡してくれた。
ボーっとしながら手の中のコップを見れば、そこにはボーっとした顔をしたやっちゃんがゆらゆら揺れてる。
チビチビと飲んでると、飲みきった頃になって竜ちゃんに何してるんだって変な顔された。
よく分からなかったけど竜ちゃんが足元を指差して、それでようやく自分が靴も脱がずに玄関に立ってるままだったって分かる。
なんだか恥ずかしさが込み上げてきて、慌ててヒールから足を引き抜こうとして
パリーン
バランスを崩して、また転んだ。
持っていたコップも落として、床に当たって割れる。
階段の時は大した事なかったけど、そんな床に倒れたりしたら・・・でも、待っていても床がやってこない。
「っと・・・大丈夫か?」
竜ちゃんが抱きとめてくれたから。
「う、うん・・・・・・っ竜ちゃん、あし!」
「ん? ・・・ちょっと踏んづけただけだろ、大した事ねぇよ」
「でも・・・血が・・・」
転んだ拍子に落として割れたコップ。
その破片が散らばってる床の上を、竜ちゃんは裸足のまま歩いている。
体勢を立て直したやっちゃんに少し待つように言うと、持ってきた掃除機をかけてガラスの破片まみれになった床を掃除し始めた。
手際よく片付け終えると、竜ちゃんはキレイになった床にあぐらを掻いて、足の裏に刺さってしまったガラスを抜き出した。
「おー痛て・・・悪い、そこの棚に絆創膏あるはずだから取って・・・泰子?」
そんな竜ちゃんを見て、そこが玄関なのも関係無しに。
ペタンって、膝から力が抜けて崩れるように座り込んだ。
竜ちゃんが怪我した。
せっかくおかえりって言って出迎えてくれたのに、やっちゃんがボーっとしてたせいで・・・
「ひっ・・・ごめ・・・っぐ・・・ごめっなさ・・・っく・・・」
それに分かった。
竜ちゃんはもう一人ででも大丈夫なんだ。
やっちゃんが面倒を見てあげなくても、全然平気。
それどころかやっちゃんが竜ちゃんの迷惑になってる。
お荷物なのはやっちゃんの方───・・・そう突きつけられた気がした。
唐突に、そう思った。
「・・・どっか怪我したのか」
首を横に振った。
怪我なんて全然してないよ、竜ちゃんが守ってくれたから。
そのことはすっごく嬉しい。
涙が出るのは、もっと別の理由。
「・・・嫌な事でもあったのか」
俯けていた顔を上げれば、真剣な眼差しで見つめてくる竜ちゃん。
一度合わせると、目を逸らせなくなる。
だから首を横に振ろうとしたのに、できなかった。
後から後から溢れ続ける涙を止められないやっちゃんに、竜ちゃんはポツリと「そうか」って呟いただけ。
あとは何も言わずに、黙ってやっちゃんが泣き止むのを待っててくれた。
「なんでぇ・・・」
「・・・・・・・・・?」
「ぐす・・・なんでそう思ったの? やっちゃん、まだなんにも・・・っく」
「・・・なんとなくそんな気がしたっていうか・・・上手く言えないけどよ」
「・・・けどぉ・・・?」
「泰子のことなら何でも分かるっつーか・・・親子だぞ? 何年一緒に住んでると思ってんだ」
竜ちゃんがお腹の中にいる頃からなら、もう十八年も一緒だよ。
そう言ったら竜ちゃんに笑われた。
それもお腹まで抱えて。
やっちゃんはマジメに答えてるのに、なんでこんなに笑われてるんだろう。
そんな気持ちが顔に出てたのか、ムッとしてたみたい。
竜ちゃんは謝りだしたけど、その顔はまだ少し笑ってる。
もっとバカにされた気がして、それが面白くなくって両手で顔を隠すと、竜ちゃんはやっちゃんがまた泣き出したと思ったのか
途端に困った様子で謝ってくる。
あんまりオロオロしてるものだから、そんな竜ちゃんがだんだん可笑しくなってきて、途中で我慢できなくて噴出しちゃってた。
ポカンとしていた竜ちゃんも、笑い続けるやっちゃんを見て、ホッとしたように笑ってた。
・
・
・
「なぁ、もう機嫌直せよ」
「だって・・・」
───あの後
遠慮する竜ちゃんを無視して、傷口の手当てをしてあげた。
だから今竜ちゃんの足の裏はバンドエードだらけ。
歩きづらそうにしてるけど、あれだけ貼っておけばばい菌が入る心配はない・・・はずだよね、うん。
「笑っちまったのは悪かったって、な? お詫びに今日の卵焼きは特別甘くしてるんだぞ」
「ホントだ、おいしぃ」
それから、いつもよりちょっぴり早い朝ご飯。
大河ちゃんが来るようになってからは久しぶりの、二人っきりの朝ご飯。
「・・・でもだぁめ、やっちゃん怒ってるんだから」
「怒ってるって、泰子だって俺の事笑ってたじゃねぇか。酔っ払いみたいにケタケタ・・・お? ・・・そういや・・・」
笑われたのは、まだ少ーしだけ怒ってる。
でも、それは竜ちゃんも同じだったみたい。しかも何かの弾みで、やっちゃんに言おうとしていた事を思い出したっぽい。
酔っ払いっていう部分に竜ちゃん反応してたけど・・・ヤな予感がするのはなんでだろ・・・
「泰子、お前また転んだろ。家の中でじゃなくて、表の階段のとこで」
「う・・・な、なんのこと? やっちゃんにはさっぱりだよ」
「知らばっくれるな、泰子が帰ってくる直前に表で妙な物音がしたのを俺は聞いてんだぞ。
それはそれは近所迷惑なデッケー音だった」
ギク・・・
「案の定家ん中に入ってきた泰子は随分と酒臭ぇし」
ギクギク・・・
「なぁ、転んだんだろ? 今なら怒らないから正直に言え」
ウソ、そんなの正直に言ったって絶対怒られる。
やっちゃんだって学習してるの。
今までだって何度も何度もその甘い言葉を囁いておいて、ホントのこと話して謝ったやっちゃんを竜ちゃんは問答無用で叱ってきた。
今度だってそう、そうに決まってるのに
「あれはやっちゃんのせいじゃないもん・・・ぼっれー階段のせいだもん・・・」
今度は怒られないかもしれない、だって本当に滑り易い階段のせいだもの、竜ちゃんだってきっと分かってくれる。
そんな希望と、竜ちゃんの甘い囁きに縋って正直に告白した。
「お前なぁ・・・飲み過ぎるなって、俺がいくら言ってると思ってんだ」
甘かったのはやっちゃんの方。
竜ちゃんのウソつき。
「ギ、ギザごめんなさいでやんす」
睨まれちゃった。
こんなところだけはパパそっくりで、やっちゃんはなんにも言えなくなっちゃう。
おかしいよねぇ、他は全然似てないのに。
「・・・何度も言ったけど、飲むなって言ってんじゃねぇ。でもな、足元おぼつかなくなるまで飲むなんて明らかに飲み過ぎだろ」
「・・・うん・・・」
「今日は何ともなさそうだけど、転んだんだろ? 一歩間違えば大怪我だろうが。
それでなくても女の一人歩きだし、もし変な奴にでも出くわしたら・・・聞いてんのか、泰子?」
「は、はぁい」
今度はお父さんみたいだなぁ、竜ちゃん。
竜ちゃんは会った事もないのに、お父さんそっくりで、なんだかお説教されてる時を思い出した。
あの時もお父さん、夜遊びして門限破ったやっちゃんに、今の竜ちゃんとおんなじ事言ってたっけ。
腕組みして、こーんなしかめっ面で。
もう子供じゃないからやめてよ───って、子供っぽい事言ってたなぁ、やっちゃんも。
実際ホントに子供だったんだから、心配されちゃうのなんて仕方ないのに。
・・・でも、今なら分かる気がする。
歳なんて関係なくて、お父さんからしたらやっちゃんはずっと子供で。
やっちゃんからしたら、竜ちゃんはずっと子供。
どんなに大きくなっても、それは変わらない。心配して叱って、心配されて叱られてを繰り返していくのもそう。
不思議なのは叱られてばっかりなのがやっちゃんで、叱ってばかりいるのが竜ちゃん。
まるでお父さんが二人いるみたい。
「大体よ、普段から泰子はトロいし、そそっかしいし、危なっかしくて見てらんねぇんだから」
「・・・そうかなぁ、やっちゃんはぁそんなでもないな〜って思うんだけど」
今度は呆れられた。
溜め息まで吐かれて、やれやれって・・・ぐすん。
あんまりだよ、これでもやっちゃんお母さんなのに。
自分でもたまに忘れちゃってるけど。
「階段で転んだのは誰だ?」
「・・・やっちゃん」
「その後玄関で転んだのは?」
「・・・それもやっちゃん」
「こないだ自分の部屋と間違えて俺の部屋で裸で寝てたのは誰だったっけか」
「それはわざとやったの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「うっそ〜、竜ちゃんビックリした?」
竜ちゃん、真っ赤になった顔でそっぽ向いちゃった。
なに考えてたんだろう、気になる。
・・・今度またやってみよっと。
「・・・と、とにかく」
あ、話逸らした。
こんなところは下手っぴで誰にも似てない。
でも竜ちゃんらしいっていえば、そうなのかも。
「もう少し控えろよ、酒飲むの。せめて真っ直ぐ家まで帰ってこれるくらいにはよ」
簡単に言うなぁ、もう。
それがお仕事なんだから無理だよ。
飲めない魅羅乃はただの23歳。
ただの23歳じゃあ大してお金は稼げないから、多少無理してでもお酒は飲まなくちゃ。
でも、竜ちゃんはまだ納得してくれてないみたい。
「いい歳した女がへべれけで道に倒れてて、それが自分の母親なんてイヤだぞ俺」
誰だってイヤだよ、そんなお母さん。
それが自分だったら尚更。
でも悲しいかな、一度経験済みだから強いことが言えない。
あの時はせいぜい五分かそこらだったし、竜ちゃんにはバレてないはずだから、今のは偶然だと思うけど・・・偶然だよね?
「でもね、竜ちゃん」
「でももストもねぇ」
「・・・むー・・・」
聞く耳ももってくれない。
そういう頑固なところは・・・やっぱりやっちゃんに似たのかな。
うん、そうだろうなぁ、きっとそう。
「はぁ・・・お前なぁ、もし俺が自立するような事になったらどうするつもりなんだよ、ったく」
「・・・・・・ぁ・・・・・・」
帰ってくる間も考えていた質問に、やっちゃんは答えられない。
答えたくない。
頭の中でいくら考えても、結局最後は「そんなのイヤ」っていう答えにならない答えしか出てこない。
そんなやっちゃんを知ってか知らずか
「今のままじゃあ心配で心配で、とても自立なんてできねぇよ。泰子は俺が居ねぇと何にもできねぇんだから。
それに、まぁ・・・俺が泰子から離れたくねぇってのもあるしな、やっぱ」
竜ちゃんは自分で言った事を自分で否定した。
お味噌汁を啜りながら、それが当たり前の事のように。
「・・・竜ちゃん・・・」
「ん・・・? ・・・・・・あ・・・いや、今のはその・・・・・・」
急にあたふたしだした竜ちゃん。
テーブルにお茶碗を置くと咳払いを何度もして、無理やり自分を落ち着けてる。
「ご、誤解すんなよ? 泰子一人にさせとくと、この家なんかすぐに人が住んじゃいけないレベルのゴミ屋敷になりそうだって俺は・・・
あとインコちゃんの世話だってあるし、いつまで経っても手のかかるのもいるし、それから・・・」
早口でそう捲くし立てる竜ちゃんのほっぺがほんのり染まっている。
相変わらず、ぶっきらぼうなのは言葉だけ。
見た目で誤解されちゃうけどとっても優しいところも、恥ずかしがり屋で素直になれないところも。
やっちゃんは知ってる。
竜ちゃんのいいところなんてずーっと前から全部、全部知ってる。
「・・・ふふ」
「な、なに笑ってんだ・・・ニヤニヤしてないでとっとと飯食っちまえよ、片付かねぇだろ」
「はぁーい♪」
いつもよりも早めの朝ご飯は竜ちゃんが無口になっちゃったし、大河ちゃんもいないから静かに過ぎていったけど。
竜ちゃんが作ってくれたご飯はいつもよりもおいしくて。
疲れてるのも、嫌な事なんかも全部吹き飛んでった。
そうだ、せっかく今日は休日で、天気だってこんなにいいんだからたまには明るい時間に出かけてみよう。
やっちゃんまだ全然若いんだから徹夜だってへっちゃらだよね。
親子のスキンシップだって大切だもん、お母さんならちゃんとしなくっちゃ。
「ねぇ竜ちゃん」
「・・・なんだよ・・・」
まだ照れてる、かわいいなぁもう。
「今日ってぇ、なにか用事ある?」
「? ・・・いや、なんもねぇけど」
「ほんとぉ? じゃあね、じゃあね、これからやっちゃんと───」
ちょうどそこで、玄関のドアが開く音がした。
次いで、寝癖だらけの頭をした大河ちゃんが入ってくる。
パジャマ姿で、枕まで抱っこして、起き抜けそのものの大河ちゃん。
まだ眠いのか瞑った目を空いた手で擦りながら、あくび混じりにこう言った。
「・・・・・・なんで起こしてくれないの? なんで二人だけでご飯食べちゃったの? なんで・・・ご飯・・・すー、すー・・・」
うっかりしてた。
うちは三人家族だった。
親子のスキンシップなら、大河ちゃんも一緒じゃなきゃ。
「───みんなでお出かけしない? そうしようよ、ね」
・
・
・
今夜も煌びやかなネオンの下、やっちゃんは毘沙門天国の中で天使になる。
「あれ、魅羅乃ちゃんどうしたのそれ? なんか大事そうにしちゃって」
「これぇ? えへへ〜いいでしょ、竜ちゃんに貰ったのぉ♪」
ダメな男に荒くれ者。
たまたまこのお店に入った一見さんから、ほとんど毎日訪れる常連さん。
一日の疲れを忘れたい人や、人恋しくて話を聞いてもらいたい人。
いろんな人たちを癒してあげる天使。
それが毘沙門天国の魅羅乃ちゃんで、それが夜のやっちゃん。
「え? なに? 竜ちゃんって・・・お、おとこ!? 魅羅乃ちゃん男いたのっ!?」
「う〜ん・・・うふふ・・・さぁどうかしら。一杯貰ったら教えちゃうかも」
差し出した空のグラスに、すかさず赤い液体が注がれていく。
透かしてみれば、赤くなった顔をしたやっちゃんが映りこんでて───傾けると、喉を熱い物が抜けていく。
「はぁ・・・おいし。ごちそうさまでしたぁ」
「で? だれだれ? その竜ちゃんって魅羅乃ちゃんのなんなの? まさか飲み逃げなんてしないよね?」
「そんなに知りたいの? ん〜・・・じゃあ、ちょっとだけ教えちゃおっかな」
空になったグラスに映るのは、やっぱり赤い顔したやっちゃん。
それと、大河ちゃんとお揃いで買ってもらったネックレスが照明を反射して胸元でキラキラ光ってる。
中の氷がカランって音を立てて崩れると、その先で人一倍目つきの悪くて、やっちゃんには可愛くて仕方ないあの子が見えた。
「竜ちゃんは〜、私がと〜〜ってもはしたないカッコを見せちゃえるたった一人のお・と・こ♪」
お店の中が雄叫びで沸きあがった。
みんな耳をそばだてていたみたい。
よっぽどショックだったのかしら、そこかしこで強いお酒の注文が飛び交ってる。
やっちゃんウソは言ってないよ? 少なくとも疲れてメイクを落とす気になれないまま寝ちゃった後の顔も、ボサボサに乱れちゃった髪も
ここにいる人たちには絶対見せないだろうし、見せる機会もあげない。
女の子なら別にかまわないけど。大河ちゃんなんていつも見てるし。
だから、そんなやっちゃんも、もっと恥ずかしいやっちゃんを見る事ができる男はあの子だけ。
あの子一人で十分。
「くっそ〜〜〜・・・もう今日は帰んねぇ、魅羅乃ちゃんも帰らせねぇ! その竜ちゃんなんてヤツ、一人寂しく寝てりゃいいんだ。
魅羅乃ちゃんを独り占めしやがって・・・ていうかやらねぇっ! だって魅羅乃ちゃんは俺達の魅羅乃ちゃんだもんな〜!?」
今日は良い人たちばっかりみたい、知らない人同士でも肩を組んで大きな声でお返事してる。
一致団結してやっちゃんを一番大きなテーブルに着かせると、周りを取り囲んで立たせてもくれない。
これじゃあ本当に帰れそうにないなぁ・・・また今日も飲みすぎちゃうんだろうなぁ・・・帰ったら竜ちゃんに怒られちゃうなぁ・・・
でもいいよね? 竜ちゃん。
竜ちゃんはやっちゃんを独り占めしてるんだから、ちょっとくらいこの人たちのお相手したって妬かないでね。
「あらあら、うふふ・・・それなら、今日はとことん飲みましょ♪全員潰れるまで帰っちゃだめよ♪」
時間も忘れて大騒ぎするお客さんたちは、注いでも注いでもすぐにグラスを空けちゃう。
メンドーだから、途中からは全員にこう言って回った。
──────ボトルはいかが?
おしまい
GJですー
ここで先月リストラ喰らったオッサンから切望。
幸太×さくらの甘いssお頼み申す!
ラスボス大河を倒したところで、裏ボスあーみんが待ちかまえている
きっとそうに違いない
ゆゆこいはかなり時間をかけて書いている感があるから
次回まで結構間が空きそうだねえ 待つのも甲斐性か
>>115 やっちゃん、実は頭いいんじゃないか説のSSですね。
でも口調はそのままなとこがGJです。
内心は子供たち同様、複雑な感じで面白かったです。
>>115 ひじょーにおもしろかったです、まる。
ぜひとも他のキャラソンしりーずも書いてみてくださいな
121 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 20:58:59 ID:BzgSNrwN
カニサレス
俺にもくれ、ボトル。
GJしたー
いいね、いいね!GJ!!
>>116 リストラなんぞに屈しない強き心を持つんだ。
そうすればきっとSSも投下されるだろう 多分
>>115 上手い。
ちょっとしんみりしちゃったよ……
125 :
SL66:2009/07/02(木) 23:08:10 ID:bAUneT9j
「指環(中編)」を、零時より、48レスで投下予定。
エロあり、オリキャラあり(春田のオヤジ等)に留意されたし。
sien
>>125 たまにはふつーの本編スピンオフも書いてよ
釣り針、スルーよろ>> arl
>>125 相変わらず書くの速いっすね。全裸待機してます。
130 :
SL66:2009/07/02(木) 23:59:40 ID:bAUneT9j
さぁてと…
何やら、お約束のジャミングもあったようですが、
定刻になりましたので、投下開始と致します。
本来なら、前後編にて完結でしたが、中編はエロ
後編は錯綜した伏線を正す、ということになると思います。
では、次レスより本編の開始です。
竜児の家から徒歩で二十分以上離れた、一戸建てが目立つ、どちらかといえば中産階級以上が住むような住宅地
の一角に、春田の家はあった。
その春田の家は、鉄筋コンクリート造りの三階建てで、一階が家業である内装業の事務所になっているらしい。
建付地は、周囲の道路よりも一段高くなっており、道路に面した部分は横方向にくり抜かれ、クルマが二台駐められる
ガレージになっている。実際、そのガレージには、薄汚れ、あちこちが凹んでいる業務用の大型ワゴンが一台駐まっていた。
このワゴンで、職人たちと機材を現場に運ぶのかも知れない。
もう一台分のスペースには、内装業で使うらしい工具や、塗料か接着剤らしい缶とかの機材が雑然と置かれていた。
ガレージと家屋は直接行き来はできないようだが、ガレージを含めると、地下一階、地上三階の結構な規模と言えそうだ。
「春田の奴、意外に裕福なんだなぁ…」
竜児は、二階建てばかりの周囲の家屋よりも、頭一つ抜きん出るように建つ春田の家を見上げた。
アホそのものの春田からは想像が困難だが、春田の父親は、それなりにやり手なのだろう。
そのガレージのすぐ脇には、普通の住宅のそれよりもかなり広めに作ってあるコンクリートの階段があって、そのまま、
内装業の事務所の入り口につながっていた。竜児はその階段を上がり、事務所の入り口に立ってみた。だが、中は暗く、
人の気配がない。どう見ても営業時間外といった雰囲気がする。
「自宅の方に出頭しろってことなのか?」
しかし、春田の自宅の入り口はどこか? 竜児は辺りを見渡して、事務所の入り口のすぐ脇に、目立たぬように設け
られている階段を見つけた。どうやらこれが、春田の家の玄関口らしい。
その階段を上がり、『春田』と、分厚い真鍮板にゴシック体で刻まれた表札の下にある呼び鈴のボタンを押す。
『ふああ〜い、どちらさん? あれ? 高っちゃん? 久しぶり。どったの、こんな朝っぱらから』
インターホンからは高校卒業以来、久しく耳にする春田の間延びした声が聞こえてきた。
竜児は、ほっとした、竜児がここでバイトすることは、当の春田は未だ知らなかったらしい。万が一、亜美が春田に
電話していたとしても、竜児がここでバイトすることを、春田は口走っていないということになる。
もっとも、竜児が家庭教師をすることも春田は、『知らない』と答えるだろうが、こっちの方はいくらでも誤魔化しよう
がある。大体が家庭教師というものは、当人が望んで頼むものではない。親から、『この人に勉強を見てもらえ』と強制
されるのが普通である。それが、ある日突然、当人には何の予告もなしに行われることだってあり得るのだ。
「どったの? 高っちゃん。高校卒業してから、ご無沙汰だったじゃん」
つい、余計なことを考えていて、竜児はインターホンの春田に応答しそびれたが、そこはアホ故に警戒心も希薄な
春田である。カメラに写った人影だけで竜児と判断して、解錠し、わざわざドアを開けてくれた。
ドアの隙間から、春田の憎めないが、いかにもアホっぽい顔が覗く。
竜児と春田が、互いに顔を合わせるのは高校卒業以来のことになる。卒業後、それぞれ進路が異なるのだから当然
なのだろうが、どうしたって、頻繁に顔を合わせるのは、同じ大学に通う者同士になりがちだ。ましてや、進学せずに家業
を継ぐつもりである春田と、進学した竜児とが疎遠になるのも致し方ない。
「久しぶりだな、ま、それもあるけど、実はな…、急だけどよ、今日からここでバイトさせてもらうことになった…」
「バイト? ここで?」
「ああ、北村から紹介してもらった。で、北村に、今日の八時までにここに来るように、って指示されてな…。
こうして来たって訳なんだ」
春田が、「ふぅ〜ん」と言って、竜児の格好を改めて一瞥している。亜美に付けられたキスマークを隠蔽するための、
襟が高いスタンドカラーシャツを除けば、適当にくたびれて、汚そうが破けようがお構いなしといった風情のジーンズと
おんぼろスニーカーが目についたらしく。春田は、うん、うん…、と柄にもなく訳知り顔で頷いた。
竜児が、汗だくで、埃まみれの重労働を覚悟していることを悟ったのだろう。
「じゃぁさぁ、親父に会わせるから、とにかく上がってよ。他の職人たちは、八時半頃にならないと来ないんだよ。
にもかかわらず、高っちゃんを早めに呼んだのは、親父が高っちゃんを実際に見て、まぁ、使いものになるかどうか
を確かめたかったんだろうな」
「お、おぅ、そうなのか?」
竜児は、意外にしっかりした春田の応対に、少しばかり感心した。
高校時代は、とかくKYで、頓珍漢な言動が目立ったことを思うと、あの頃の春田と今の春田は別人のようだ。
「まぁ、とにかく、そこのスリッパ適当に使ってよ」
屋内は綺麗に片付いていた。僅かな埃でも目立つフローリングであるにもかかわらず、塵一つなく、ワックスで
ピカピカに磨き上げられている。
さすがに内装業を営む者の住まいである。『紺屋の白袴』というわけにはいかないのだろう。ただ、業務用の機材が
雑然と放置されているガレージは、ちょっといただけなかったが、詰めの甘さは誰にだってある。例外的に、竜児には、
その種の隙がないというだけの話だ。
「なぁ、春田、卒業以来、ずっと親父さんの下で修行してきたのか?」
蛇足かな? と竜児は思った。前を行く春田の姿を見れば、それは自明だったからだ。
その背中は、高校時代よりも格段に広くなっているように竜児には感じられた。二の腕も、箒の柄のように細く貧弱だった
高校時代とは打って変わって、今は丸太ん棒のように太く逞しい。
「ああ、毎日、汗水たらして肉体労働さ。最初の頃は、きつくってさぁ、みんな大学に行ってるのに、なんで俺だけが
こんな辛い目に遭わなきゃならないんだ、って泣き言ばっかだったけどな」
「た、大変だな…」
竜児は、思わず生唾を飲み込んだ。北村からの間接的な情報で、仕事のきつさは覚悟しているつもりだったが、いざ、
春田からも実体験に基づいた話を聞かされると、日給の高さ相応の厳しい試練であることを痛感させられる。
その厳しさに、卒業してから三箇月とはいえ、もまれ、鍛えられてきたのだ。春田といえども変わるのだろう。
「なぁ、春田」
その春田に、竜児は予防線を張っておくことにした。いくぶんはしっかり者になりつつあるような春田だが、過分な
期待は禁物だ。
「何? 高っちゃん…」
「実はな…、昨日から今日にかけて、俺たちの共通の知り合い、大橋高校の同窓生の誰からか電話なりメールなりの
連絡はなかったか?」
「大橋高校の同窓生って、例えば誰だい?」
緊張感が丸で感じられない春田の応答に、竜児は、こうしたところは相変わらずだな、と苦笑した。
「誰でもさ、北村はここのバイトのことを俺に教えてくれた奴だから例外だが、他に、能登とか、櫛枝とか、木原とか、
香椎とか、村瀬とか…」
「うんうん…」
「そして、川嶋とか…」
竜児は、最も警戒すべき人物を最後に挙げて、春田の反応を窺った。亜美のことを未だに憎からず思っているであろ
う春田のことだ。実際に、亜美から電話なりメールなりを受け取っていたのなら、その言動が急変するに違いない。
廊下の突き当たりにある、重厚なドアの手前まで先導していた春田は、その一言で足を止め、竜児に向き直った。
だが、その表情に浮かれたような色はない。
「ふ〜ん、なんか、高校の時の知り合い全員じゃん。でもなぁ、進学したみんなとは、もうほとんど縁がなくってさ。
電話もメールもとんとご無沙汰だよ」
いかにもつまらなそうな春田のリアクションに、竜児はひとまず胸を撫で下ろした。幸いなことに、亜美の追及の手は
春田には及んでいないらしい。
それと、進学しなかったことが、春田にとって引け目になっていることを改めて知り、竜児は内心で自己を叱罵した。
だが、そうであっても、春田には釘を刺しておかねばならない。
「じゃ、済まねぇが、さっき俺が挙げた誰かから電話なりメールがあったり、道端でばったり出くわしたりしたら、俺がここ
でバイトをしてるってことは内緒にしてもらいてぇ」
「いいけど? でも、また何で?」
「恥ずかしながら、泰子からバイトを禁止させられているんだよ。それで他言無用に願いたいんだ」
春田が、理解不能なのか、小首を傾げている。
「だったらさぁ、泰子さんだけに秘密にしとけばいいだけじゃん。泰子さん以外だったら、高っちゃんが、ここでバイトして
いることを話したって、何も問題はないけどな」
竜児は、おい、おい…と、不安になった。しっかりしたように見えても、やはり春田はアホなのだ。泰子が直接耳に入れ
なくても、誰かの口から連鎖的に噂が広まることを理解できないのかも知れない。
何よりも、泰子の同調者である亜美に対して、春田が何の疑いもなく、竜児がバイトしていることを漏らしたら、
それこそ致命的だ。
「噂が広まるってのがあるだろう? だから、用心に越したことはねぇのさ。とにかく、北村以外には、誰であっても俺が
バイトをしていることは、絶対に秘密にしておいてもらいてぇ」
「ほ〜い、そういうことなら、オッケイ。高っちゃんがバイトしてるのは秘密にしとくよ」
「済まねぇな…」
だが、もう一丁、春田に念を押しとかねばならない。
「更についでで済まねぇが、中には、妙なことを口走る奴が居るかもしれねぇ…。それにも注意してもらえたら有難い」
「妙なことって? 例えば、どんな?」
ソファに座った竜児に、改めて春田の親父の視線が注がれる。一見柔和だが、あらゆるものを貫き通すような
その視線に竜児は怯みそうになったが、三白眼を、くわっ! と見開いて耐えた。
これは面接試験なのだろう。竜児が十日間のタフな肉体労働に耐えられるか否か、粗暴と言ってよいほど気性が
荒い職人たちに対応できそうか否かが見極められているのだ。
「ふむ…」
竜児にとっては息が詰まるような春田の親父とのにらめっこだった。それでも、時間してみれば、ほんの三十秒ほど
だったのかも知れない。
春田の親父は、満足そうに相好を崩した。
「よっしゃ、君ならなんとか務まりそうだ。筋肉質でガタイもいい。それに、俺の顔から視線を外さなかったから肝も
据わっているようだ。何より、本当は温厚なんだろうが、ぱっと目には迫力のある眼光、これならうちの職人たちも、
ただの大学生とは思わないだろうな」
第一関門はクリアした。
「あ、ありがとうございます!」
大きな声で春田の親父に礼を言い、深々と頭を下げた。
喜びよりも、緊張感が少しばかり和らぎ、お辞儀をしたまま竜児は、ほっと、大きなため息をつく。
「おい、喜ぶのは未だ早いぞ。日給ははずむが、仕事は本当にきついからな。その点は覚悟しといてもらおう」
「は、はい」
元よりそのつもりである。それに、軟弱といってよい春田でさえも、卒業してからの三箇月間、これから竜児が経験
するであろう、過酷な試練に耐えてきたのだ。竜児だって、耐えねばなるまい。
「それにだ…。短期間とはいえ、雇うとなったからには、今日から君はうちの使用人だ。だから、これからは『お前』と呼び、
『高須』と呼ぶことにする。分かったか?」
「はい」
「更に、大学生だという、お前の素性を職人たちに明かす訳にはいかない。学歴がものを言う昨今で、肉体労働やって
る奴なんか社会の底辺なんだよな。だから、不満があるし、僻みもある。そんな奴らが有名大学の大学生と喜んで働くと
思うか?」
竜児は、無言で首を左右に振った。逆の立場は、竜児にだって想像がつく。
「だろ? だから、お前には不本意だろうが、お前は、浩次と同じ高校の卒業生だが、素行不良で進学も就職もできな
かった落ちこぼれってことにしておく」
「は、はい…」
カムフラージュが目的とはいえ、あんまりな設定ではあった。しかし、正体が職人たちにばれるよりはいい、ということ
で、竜児は自分の気持ちに折り合いをつけた。
そんな竜児の心境を読み取ったのか、春田の親父は、微かに頷いた。
「じゃあ、そういうことで宜しく頼む。ついでに言っとくと、職人は三人だ。それに浩次とお前がアシスタントとして働く。
135 :
SL6:2009/07/03(金) 00:07:33 ID:vqx2fL3b
上記「4」は、手違いです
以下、続けます
「例えば、俺と北村が、ボランティアでお前の家庭教師をやってるんじゃないか、ってことを訊いてくる奴が居るかも知れ
ねぇ」
「はぁ?」
春田が、理解不能とばかりにアホ面を歪めた。
春田でなくても、亜美が竜児の行動を訝しんでいるという背景を知らなければ、誰だって理解不能だろう。
「詳しく説明すると長くなるから、ちょっと端折るけど、とにかく、何の脈絡もなく、そんなことを訊いてくる奴が出てきそう
なんだよ。それも、誰だかは分からない。その時は済まねぇが、俺は数学と物理、北村は英語と国語と社会を、
それもバイトじゃなくてボランティアでお前に教えているってことにしといてくれ」
理解を求める必要はない。そう対応してくれるように指示するだけだ。特に、春田の場合はそれだけで十分である。
「家庭教師ってバイトじゃないの? それをボランティア? う〜ん、なんだかよく分かんないけど、高っちゃんが
そうしろって言うなら、そうするからさぁ。第一、俺、頭悪いから、高っちゃんから話聞いても、理解できないし、
聞いたそばから忘れるからさぁ」
「お、おぅ、済まねぇ…」
分というものをわきまえている者は、賢愚にかかわらず、ある種の清々しさがある。こうした点でも春田は成長したな、
と竜児は感じた。
だが、春田は、やっぱり春田だった。
「で、念のため訊くけど、高っちゃんが英語と国語と社会で、北村が数学と物理だっけ?」
「おい、おい、逆だよ、逆!」
見直した、と思ったそばからこれだ。竜児は、大きく嘆息しながら苦笑した。春田のアホは金輪際治りそうもない。
「あは、そっか、高っちゃん、数学専門だったよな」
「そうだよ…、だから、そこんとこはしっかり頼むぜ」
春田は、笑いながら「うん、うん」と頷き、回れ右して、オーク材か何かでできているらしい、どっしりとしたドアの前に立ち、
そのドアを開けた。
「高っちゃん、取り敢えず中に入って待っててよ。親父だったら、今すぐ呼んでくるからさ」
そう言って、竜児を革張りのソファに案内すると、入ってきたドアとは別のドアから出て行った。
ドア越しに春田が階段を駆け上がる音が聞こえてくる。
「三階が居住スペースになっているんだな…」
ゲストが立ち入ることができるのは、この応接室まで、ということなのだろう。
「ごついオーク材のドアに、この応接室。内装業ってのは結構儲かるのか?」
亜美の実家に比べたら、それは問題外のレベルだろうが、それでも竜児はもちろん、北村や実乃梨の家よりも格段に
裕福であろうことは間違いない。
古くなった家屋は、建て替えるよりも、リフォームで延命を図る方が合理的という風潮故なのか、春田の家業は
それなりに繁盛しているようだった。
「俺なんかが、居てもいいのかな…」
残された竜児は革張りのソファに座ることもできず、居心地が悪そうに周囲を見渡した。
甲板が分厚いガラスでできているテーブルが目の前にあり、卓上ライターと大理石らしい灰皿とシガレットケースが
置かれていた。灰皿には、吸殻が二、三本転がっていて、部屋の中にもタバコの匂いが残っている。春田の親父は喫煙
者らしい。肉体労働者というか、ガテンな仕事を生業にしている者に、ある種ふさわしいと言えるだろう。
サイドボードの上にはウイスキーやらブランデーやらの度数の高い酒が何本も並べられており、そのうちのいくつか
は、中身が尽きかけていた。おそらく、毎晩、ここでソファに身を預けながら、タバコをふかして、ウイスキーやらなんやらを
呷っているのだろう。
サイドボードの隣には、サイドボードと同様にオーク材でできているらしい重厚な造りの本棚があった。
しかし、本棚にこれといった書籍はなく、竜児には何が何やら分からない業界誌が何冊か、後は夥しい数のDVDで
埋め尽くされていた。
竜児は、立ったまま振り返るようにして、背後を見た。
「大型テレビに、カラオケセットか…、いかにもだな」
七十インチは優にありそうな大型テレビを飲酒しながら鑑賞し、ほろ酔い加減でカラオケセットで歌っている姿が
想像でき、竜児はちょっと苦笑した。
「まぁ、思ってたよりも普通かな…」
カラオケセットはいただけないし、本棚に書籍がないのは無学であることの証明のようだったが、インテリアの趣味は
そう悪くはない。
ガテンな親父らしく、酒飲みで喫煙者らしいが、意外にまともな人物なのかも知れないと、竜児は思った。
そんなことをあれこれ考えているときに、春田が姿を消したドア越しに、誰かが階段を降りてくる気配がした。
春田本人ではないことは確かだった。敢えて表現するならば、ドスン、ドスン、という重く響くような足音が、春田本人
のそれとは明かに違っていた。
「待たせたね…」
ドアが開いて、日焼けした、角刈り頭のいかつい中年男が現れた。中背というよりも、短躯というべきなのだろう。
息子の春田よりも背はかなり低いようだ。全体にずんぐりとしていて、正直なところ垢抜けない。
だが、幾本もの皺が刻まれた面相は、裸一貫で事業を起こし、文字通り体を張って稼いできた者に特有の厳しさが
漲っていた。何よりも、一見、穏やかそうに見える目が、その実、あらゆるものを吟味し、峻別する鋭さを秘めていることに
気付き、竜児は、半ば無意識に気を付けの姿勢をとっていた。
「まぁ、そう突っ立ってないで座りなよ。それじゃ、まともな話もできゃしない」
「は、はい、では、失礼します」
竜児は、おずおずと黒革のソファに腰を下ろした。その竜児の所作を、春田の親父は、さりげなく注視している。
「で、君が、浩次の友達で、北村くんと同じ大学に通っている高須竜児くんだね?」
「はい」
ソファに座った竜児に、改めて春田の親父の視線が注がれる。一見柔和だが、あらゆるものを貫き通すような
その視線に竜児は怯みそうになったが、三白眼を、くわっ! と見開いて耐えた。
これは面接試験なのだろう。竜児が十日間のタフな肉体労働に耐えられるか否か、粗暴と言ってよいほど気性が
荒い職人たちに対応できそうか否かが見極められているのだ。
「ふむ…」
竜児にとっては息が詰まるような春田の親父とのにらめっこだった。それでも、時間してみれば、ほんの三十秒ほど
だったのかも知れない。
春田の親父は、満足そうに相好を崩した。
「よっしゃ、君ならなんとか務まりそうだ。筋肉質でガタイもいい。それに、俺の顔から視線を外さなかったから肝も
据わっているようだ。何より、本当は温厚なんだろうが、ぱっと目には迫力のある眼光、これならうちの職人たちも、
ただの大学生とは思わないだろうな」
第一関門はクリアした。
「あ、ありがとうございます!」
大きな声で春田の親父に礼を言い、深々と頭を下げた。
喜びよりも、緊張感が少しばかり和らぎ、お辞儀をしたまま竜児は、ほっと、大きなため息をつく。
「おい、喜ぶのは未だ早いぞ。日給ははずむが、仕事は本当にきついからな。その点は覚悟しといてもらおう」
「は、はい」
元よりそのつもりである。それに、軟弱といってよい春田でさえも、卒業してからの三箇月間、これから竜児が経験
するであろう、過酷な試練に耐えてきたのだ。竜児だって、耐えねばなるまい。
「それにだ…。短期間とはいえ、雇うとなったからには、今日から君はうちの使用人だ。だから、これからは『お前』と呼び、
『高須』と呼ぶことにする。分かったか?」
「はい」
「更に、大学生だという、お前の素性を職人たちに明かす訳にはいかない。学歴がものを言う昨今で、肉体労働やって
る奴なんか社会の底辺なんだよな。だから、不満があるし、僻みもある。そんな奴らが有名大学の大学生と喜んで働くと
思うか?」
竜児は、無言で首を左右に振った。逆の立場は、竜児にだって想像がつく。
「だろ? だから、お前には不本意だろうが、お前は、浩次と同じ高校の卒業生だが、素行不良で進学も就職もできな
かった落ちこぼれってことにしておく」
「は、はい…」
カムフラージュが目的とはいえ、あんまりな設定ではあった。しかし、正体が職人たちにばれるよりはいい、ということ
で、竜児は自分の気持ちに折り合いをつけた。
そんな竜児の心境を読み取ったのか、春田の親父は、微かに頷いた。
「じゃあ、そういうことで宜しく頼む。ついでに言っとくと、職人は三人だ。それに浩次とお前がアシスタントとして働く。
俺も、お前や浩次の働きを監督したいが、今は事務所の方が忙しくてな。だから、現場では、サブという職人の指示に
従ってもらうことになるだろう。このサブってのが、うちの職人のリーダー格だ」
「わかりました、社長」
その竜児の応答に、春田の親父は、一瞬、目を剥いたが、すぐに相好を崩し、はっはっは…、と体格に似合わぬ
大きな声で豪快に笑った。
「こいつぁ、傑作だ。お前さん、なかなか見どころのある奴だ。当たり前のことなんだが、俺のことを、こう呼べない奴が
多くてな。なのに、お前さんは、指示もなく、自然に俺のことを『社長』と呼んだ。学の無い俺としては認めたくはないが、
やっぱりあの国立大にストレートで合格したってのは伊達じゃないな。場の雰囲気を的確に判断できるようだ」
「は、はぁ…」
竜児は、春田の親父の豪快な笑いに圧倒された。なりは小さいが、一国一城の主だけのことはある。
「それじゃ、ひとまず、下の事務所で職人たちが来るのを待つんだ。連中が揃ったら、ガレージにあるワゴンで現場まで
行く。作業開始は九時過ぎだ。現場は、大橋高校近くの賃貸マンション。そこの内装修繕がここ十日間の仕事になって
いる」
であれば、竜児にも土地勘はある。ここから歩いても十分もかからない。
「それと、ボロいジーンズってのは、汚れ仕事を覚悟しているようで結構だが、糊の効いたそのシャツは余計だな。
汚れるといけないから、Tシャツとかに着替えた方がいい」
「はい、この下はTシャツですから、これさえ脱げばオーケイです」
そう言って、竜児はおもむろにスタンドカラーシャツのボタンに手を掛け、さりげなく右を向き、ボタンを外してシャツを
脱いだ。この角度なら、春田の親父には亜美に付けられたキスマークは見えない。
そして、ディパックからタオルを取り出し、それを首に回して、両端をTシャツの襟元に突っ込んだ。これでキスマークを
何とか誤魔化せるだろう。
「よし、シャツの下にTシャツを着ていたとは用意のいい奴だ。それじゃ、下へ降りるぞ。俺は、この階と事務所を直結し
ている階段を下りるが、お前は、玄関を出て、事務所の前で待て。俺が中から鍵を開けるから、そうしたら、事務所に入っ
て来い」
「わかりました、社長」
春田の親父がにやりとした。社長と呼ばれるのが嬉しいらしい。けじめのない春田は常時『親父』と呼んでいるのだ
ろうし、職人たちだって、陰では、社長ではなく、親父とか、親方とか勝手に呼んでいるのだろう。
だとすると、春田の親父が不在の時に、職人の前での、社長云々は控えた方がよさそうだ。
そんなことを考えながら、竜児は玄関を出て、事務所の入り口に立った。
「入んな…」
春田の親父が、いくぶんぶっきらぼうに言って、事務所の扉を開けてくれた。竜児は、軽く会釈して事務所の中に足を
踏み入れた。
入り口から、パソコンが置かれている机が二つあり、更に奥には、一際大きい机が事務所の入り口から入ってくる者
を出迎えというよりも、威圧するがごとく据え付けられていた。これが春田の親父の机らしい。
パソコンが置かれている机は、春田の母親か、あるいは職人とは別の事務員が使うのだろう。
全体に片付いていて、掃除も行き届いてはいたが、パソコンが置かれている机の上には、帳簿が広げられたままで
あり、不用心なのは否めない。
竜児は、事務所の更に奥の方にも目を向けた。奥は資材置き場になっているようだ。真新しい缶入りの塗料だか、
ワックスだか、接着剤だか、素人の竜児には何だか分からない製品が、一つの棚に整然と並べられ、別の棚には、
メジャーとか、金尺とか、壁に貼るクロスを切断するためらしいカッターとか、更には丸い鋸歯が装着されたエンジン
カッターのような、構造物を荒っぽく切断するような機材も保管されていた。
「そうか、こっちが本当の保管庫だったんだな…」
ガレージに埃まみれで雑然と置かれていたのは、使用済の空き缶とか、老朽化して処分を待つだけの古い機材だっ
たのかも知れない。
「おい、きょろきょろしてないで、座って待て」
春田の親父が、事務所の壁に立てかけてあるパイプ椅子を指差した。
竜児は、軽く頷いて、できるだけ隅っこの方で、そのパイプ椅子を広げ、それに座った。
そして、携帯電話機を取り出して、時刻を確認する。午前八時二十二分。そろそろ、職人たちが現れる頃合いのようだ。
「うぃっす、しゃちょぉ〜」
低いしゃがれ声がしたので、年嵩なのかと思ったが、三十路になったかならないか程度の痩身中背で真っ黒に日焼
けした男が事務所に入ってきた。髪は五分刈りというよりも、ほとんど坊主に近い。タンクトップにハーフパンツ、右耳に
は金色のピアスを入れて、鱈子のように分厚い唇には、火の着いてないタバコが咥えられている。
「おお、サブ、来たか」
この男が職人のリーダー格らしい。そのサブと呼ばれた男は、春田の親父に、「へぇ…」と小声で応ずると、眉の下に
ぎょろりと光る大きな目を心持ち歪めて、部屋の片隅に座っている竜児を見咎めた。
「誰ですぅ? こいつぁ?」
サブが、竜児に対して顎をしゃくるように持ち上げてから、春田の親父に向き直った。
「ああ、そいつは、きょうから浩次と一緒にみんなの仕事を手伝ってくれる高須だ」
「バイトなんですかぃ?」
「まぁ、そんなところだ
そのサブが、竜児の顔にぎょろ目の照準を合わせてきた。先ほどの春田の親父と違い、若干の敵意らしきものが込
められたその視線を、竜児は三白眼で受け止めた。
生意気なガキだ、と思われるかも知れないが、初めから弱気丸出しも宜しくない。こういう連中には互譲や、謙譲等
の美徳は通用しないから、尚更だ。
サブは、一見冷徹なような竜児の三白眼を直視して、うっ、と声を詰まらせた。
竜児の方こそ、冷汗三斗であったが、にらめっこでは竜児の方がサブを圧倒したらしい。
「何者なんすかい? こいつ…」
春田の親父は、その瞬間、竜児を一瞥し、にやりとした。職人のリーダー格をしてビビらせた竜児の三白眼は、
春田の親父が想定していた以上のものだったらしい。
「こいつはな…、うちの浩次と同じ高校だったが、札付きでな、素行不良で進学はおろか、就職もできずに、まぁ、色々と
くすぶっていた奴なんだ。それを俺が見るに見兼ねてな、ちょっくら仕事で更生させてやろうって寸法さ。まぁ、見た目は
こうだし、今は気持ちの整理もついていないようだが、根はそう悪い奴じゃない。幸いガタイはいいし、力もありそうだ。
まぁ、うまく使ってやってくれ」
「へ、へぃ…」
生まれてこの方、疎ましく思ってきた自身の三白眼が役立ったのは、これが初めての経験であったかも知れない。
ものは使いよう。いや、処変われば、同じものでも、価値や評価は違って当然なのだ。
もっとも、竜児の三白眼が、言っちゃあ悪いが、こんな知性や教養とは無縁そうな連中に限って効果的というのも、
困ったものではあるのだが…。
そんな竜児の複雑な心境を知ってか知らずか、春田の親父は、薄ら笑いを浮かべている。
「おし、じゃあ、高須。こっちが、職人のリーダー格のサブだ。ちょっと、挨拶くらいしてやれ」
「へい…」
郷に入りては郷に従え、である。竜児もサブの口調を真似て、春田の親父に応答した。
そして…、
「高須竜児です。以後、よろしゅうたのんます」
口調とか仕草とかは空気感染するのか、はたまた、昔見たヤクザ映画の一場面を思い出したのか、竜児は、
任侠さながらの口調で、サブに挨拶することができた。
「わ、分かった。それじゃ、俺がびしびし鍛えてやっから、そのつもりでいろ」
「へい、宜しくおねげぇしやす」
内心ではやりすぎたかな? と思い、竜児は春田の親父に目線を送ってみた。
だが、その春田の親父は、悪戯っぽく含み笑いをしながら、竜児に向かって微かに頷いている。
実際は、臆病でへたれということが、サブ以下の職人たちにバレたらまずいが、とにかく十日間、誤魔化し通せ、
ということなのだろう。
時刻が八時半になる頃、残りの職人たちが集まってきた。
一人はノブオ、もう一人はテツと呼ばれる二十代半ばの男たちだ。いずれも凶相と呼べるほどに目つきが険しく、
剣呑な雰囲気が漂っている。
その彼らが、眉をひそめて竜児の顔を一瞥してくる。竜児も、ビビりそうなのを堪えながら、彼らの視線と向き合い、
彼らが何者であるのかを把握しようとした。
ノブオは、竜児よりも大柄で、腕っ節は強そうだ。しかし、やや肥満気味であるし、絶えず身体を揺らす等、
少々落ち着きがなかった。存外、気弱な奴なのかも知れない。
テツは三人の職人の中で一番背が低いが、横幅ががっちりしており、こちらも腕力は相当なものであることを窺わせ
る。しかし、竜児が気になったのは、そのテツの言いようのない暗さだった。それも、単に性格が暗いとかで済まされるよ
うなレベルではなく、他者を排他する険悪さが感じられるのだ。職人の中で、こいつが一番厄介かも知れない、と竜児
は思った。
現に、竜児と視線を交えた際に、ノブオは一瞬、竜児の眼光を避けるように目を逸らしたが、テツは逆に鮫のように
感情が窺えない眼で竜児を睨み付けてきた。
「よ〜し、サブに、ノブオに、テツと、三人揃ったな。後は、浩次か…」
社長である春田の親父が職人たちの呼び名を挙げた。こうした仕事では本名で呼び合うことはあまりないのだろう。
そう言えば、竜児も履歴書の提出を求められなかった。
春田の親父にとって、使用人の過去はさほどの問題ではなく、実際に会ってみて、使い物になりそうならばひとまず
よし、更に実際に仕事をさせてみて、ダメなようなら即刻馘ということのようだ。
「遅れて、すんませ〜ん!」
事務所の奥の方から、所々に塗料やら、接着剤やらのシミが着いたTシャツと、膝が擦り切れて、やはり塗料とかで
薄汚れたジーンズを穿いた春田が現れた。
「浩次、遅いぞ!」
社長である親父の叱責に、春田は「ごめんよぉ、親父」と言い、その一言で、「社長と呼べ!」と更なる叱責を浴びてい
る。春田はどこまでも春田なのだ。
「でわぁ、社長、ボンも来ましたし、そろそろ行かねぇと…。でねぇと、九時前には現場に着きやせん」
サブの塩辛声に春田の親父も頷いた。春田は職人たちからは、『ボン』と呼ばれているらしい。
ボンボンのボンなのだろうが、何となくボンクラの意味も込められているような気がしないでもない。
「よぉ〜し、今日から、新しい現場での仕事だ。その現場は、大橋高校近くの賃貸マンション。そのマンションの内装の
修繕を請け負っている。工期は十日間だ。日程を考えるとかなりきつい仕事になるが、浩次の元同級生の高須を
アルバイトとして雇うことにした。掃除や資材の運搬とかの雑用はこいつに優先的に割り振って、みんなは石膏ボード
やクロス、クッションフロアの貼り替えといった、技能が必要な作業に専念してくれ」
「「「へぃ!!!」」」
職人たちは威勢よく返事をすると、ガレージのワゴンに乗り込むべく、事務所を出て行こうとしている。
春田と竜児もその後に従った。
ガレージでは、ノブオが運転席に着き、テツが助手席に座っていた。
エンジンを始動し、マイクロバスと呼べそうなほどの大きさのワゴンが、黒煙混じりの排気ガスを吐きながら、のろのろ
とガレージから這い出してくる。
「ボンにタカ、乗んな!」
後席のスライドドアを開けて、サブが顔を出した。どうやら竜児の呼び名は『タカ』になったらしい。
その『タカ』こと竜児は、春田に付き従って、ワゴンの中に入り、サブと、春田と一緒に三人並んで座った。
「後ろは機材でギッシリだな…」
ワゴンは三列目の座席が取り外されており、塗料や接着剤、クロス、それにクロスを切断するスケール付きの特殊な
カッターや、漆喰を補修するためらしいパテや、そのためのコテ等が、棚に分別されて収納されていた。
「だから、このワゴンは五人が定員なんだよ」
春田がしたり顔で宣っている。
「それでも、石膏ボードとか、ベニヤ板とか、ある程度でかい建材はこいつじゃ運べねぇ…。こうした建材は、昨日のうち
に俺と親父さんが軽トラで現場に持ち込んであるんだ。今回の現場は、内装がなかり荒れているから、クロスの貼り替
えだけじゃ修繕できねぇ。何しろ、壁のあちこちに穴が開いている部屋がかなりあるんでな…」
そのサブの話を聞きながら、まずはその軽トラから重たい石膏ボードとかを作業現場に運ぶ仕事が課せられるな、
と竜児は思った。内装業に関する技能が皆無の竜児には、この十日間は単純な力仕事しか任せられないし、そうする
ことで他の職人を技能を要する作業に専念させようというのだろう。
現場である賃貸マンションは、大橋高校の目と鼻の先であり、竜児自身も通学途中に何度か目にしたことがある。
鉄筋コンクリート造りで、地上五階。それなりに外見は立派だが、築二十年ということもあって、壁面の塗装は色褪せ
ていた。
「モルタルに亀裂があるな…」
「だね…。でも、高っちゃん、俺らは内装屋なんだからさ、外装がどうであろうと関係ないんだよ。外装がどんなに問題
あっても、内装をきっちり綺麗に修繕すればオッケイなのさぁ」
アホであったはずの春田からもっともな指摘を受けて、竜児は苦笑した。ついつい、全体の瑕疵が気になってしまう
のは竜児の性癖である。その性癖故に、竜児は何事も完璧に成し遂げようとする。しかし、営利での仕事となれば、
それは却って宜しくないのだ。
「お〜し、ボンにタカ! 駐車場に止めてある軽トラから、石膏ボードを二、三枚持ってきてくれぇ!!」
ちょっと、物思いに耽りそうになっていた竜児を、サブの塩辛声が現実に引き戻した。
「「へぃ!!」」
この仕事で、単なるアルバイトの竜児には、考えるということは全く要求されていない。言われるままに力仕事に専念
するしかないのだ。
この日の午前中は、結局、石膏ボードや、接着剤、古いクロスを剥がすリムーバーとかの資材を、
サブに命じられるまま運んだだけで終わった。
そして、昼食。春田や職人たちは近くのコンビニで買った弁当を突っついてる。竜児も手ぶらで来たから、その点は
同様だ。
その化学調味料やら、砂糖やらの味付けが妙にくどい煮物に内心では辟易しながらも、傍目には、さも美味そうに
食べているようにした。
「暑いねぇ…」
春田がだらけきって、弛緩したようにボヤいた。近隣住民から、マンションを管理している不動産会社に苦情がいくと
まずいので、竜児たち五人は作業場であるマンションの一室にこもって食事をしていた。
その部屋は、南北とか東西とかに吹き抜けにならない構造で、埃っぽいだけでなく暑苦しい。
エアコンがあれば当然しのげるが、空き部屋となったこの場所に、そんなものがあるわけがなかった。
食べている弁当の上に、汗が滴った。竜児は、それに柄にもなく舌打ちし、首に巻いたタオルで、顔面を拭き、頭髪と
首筋を拭った。
「た、高っちゃん、それ?」
春田が竜児の喉元を指差している。
竜児は、はっとした。亜美に付けられたキスマークの存在を、迂闊にも失念していたのだ。
「い、いやぁ、な、何でもねぇよ」
「そう? でも、なんか赤く腫れているぜ。虫刺されにしては変に大きいし、大丈夫?」
春田の指摘に、職人のリーダー格であるサブも身を乗り出してきた。
「タカ、ちょっと見せてみろ…」
指示に従わねばならない立場である竜児に拒むことはできない。
先ほどはそのサブをもすくませた三白眼を伏せて、喉元をさらけ出した。
「ふ〜む、こいつぁ…」
サブがぎょろ目をしばたたかせ、眉間にシワを寄せて、困惑したように呟いた。
よくよく見れば、亜美の口唇の形が分かるのだろう。サブは、竜児の喉元の赤い痣のようなものが、キスマークである
ことを見抜いたようだった。
そのサブの背後から、テツの陰険な目が覗いている。
「キスマークみてぇだな…」
テツの一言に、竜児は身を強張らせた。さり気ないような口調であったが、それには竜児に対する悪意が込められて
いる。
「え〜っ?! キスマークって、高っちゃん、相手は誰よ?」
すかさず春田が、竜児に詰め寄ってきた。
その春田に対し、竜児は、「いや、そんなんじゃねぇよ…」と、目を伏せて応じるのが精一杯だ。
更には、テツと春田に加え、感受性が乏しそうなノブオまでが、竜児に対して羨望と敵意が交錯するような視線を
送ってきている。
「おい、いい加減なことは言うもんじゃねぇ!」
竜児を追い詰めるような雰囲気は、サブが張り上げた塩辛声で、打ち破られた。
そのサブは、自身の背後に居るテツを一瞥してから、竜児に向き直った。
「こいつはぁ、あせもをこじらせてできた皮膚炎みたいだな。今は赤く腫れているが、二、三日すりゃあ元に戻るだろう」
「え〜っ、高っちゃん、皮膚炎なの? 俺は、てっきりキスマークかと…」
「ボン、紛らわしい形をしてるが、こいつは皮膚炎だ。そうだな、まぁ、毎日暑いってのもあるけど、皮膚が弱い奴には、
こんなのができやすいのさ。そうなんだろ? タカ」
「へ、へぃ…」
「タカは、見かけによらず、皮膚がデリケートってことさ。だから、今日は仕事が終わったら、すぐに風呂に入って汗を
流すんだ。汗をかいたまま放ったらかしが一番いけねぇからな」
145 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 00:19:02 ID:ARgtIzOH
>>143 なーにがジャミングだばかもん
至って真面目な要望です
「すんません、ありがとさんす。気ぃ付けます」
竜児は、ほっと胸を撫で下ろした。サブは場の雰囲気を読んで、適当に誤魔化してくれたのだ。さすがに職人の
リーダー格だけあって、思ったよりもまともな人物なのかも知れない。
竜児は、初対面で、サブのことを低学歴と軽侮したのは早計だったと、反省した。
だが、そのサブの背後から、なおも、じっとりとした視線を送ってくるテツが不気味だった。この男、明かに竜児を敵視
している。
時刻は午後一時になろうとしていた。
「よぉ〜し、昼休みは終わりだぁ。午後は、三時に小休止するが、それ以外は、ぶっ通しで作業をするぞぉ!」
サブの号令のような塩辛声で一同は弁当の容器やペットボトルを片付け、持ち場についた。
竜児と春田は午前中と同様に資材を作業現場に運んでいたが、それに加えて、作業現場で出てくる諸々のゴミを
片付ける仕事もやらされた。
修繕を要するマンションの一室からは、剥がしたクロス、穴が開いた部分だけ切り取った石膏ボード、
といった廃棄すべきものが大量に出てくる。それらのゴミが生じたら、作業している職人たちの邪魔にならないように、
迅速に回収して回った。
「おーい、タカ! 何やってる、さっさと片付けねぇか!」
クロスを剥がしているテツが、竜児に対して刺のある言い方をしている。初対面からあまりいい印象はなかったが、
昼休みに、竜児の喉元にキスマークを見咎めて以来、その険悪な雰囲気に拍車が掛かったような感じだ。
彼女が居ないのか、彼女にふられたばかりなのか、大方、そんなところなのだろう。実に下らない。
だが、そう思いながらも、竜児は、ともすれば気が抜けたように作業の手を休めがちな春田を尻目に、罵声も努めて
気にしないようにして、汗だくになって働いた。
重い資材を手で運び、作業で生じた廃棄物は、職人から文句を言われる前に片付け、コマネズミのように右往左往
するうちに、この日の作業は終了した。
「しかし、疲れたぜ…」
来たときと同様に、大型ワゴンで春田の事務所兼自宅に戻り、春田の親父にその日の作業の進捗状況を
サブが報告して、解散となった。
職人たちは、あっさりしたもので、互いに馴れ合うこともなく、各々がさっさと帰っていった。
「高っちゃん、シャツから塩吹いているから、シャワーでも浴びてきなよ」
春田にはそう勧められたが、竜児は遠慮した。他の職人が誰もシャワーを浴びさせてもらえないのに、春田の友人と
いう立場だけで、そこまで優遇されるのは、さすがに宜しくない。第一、春田の親父がそれを許さないだろう。
そんなこんなで、竜児は、銭湯で汗を流し、今は併設されているコインランドリーで汗だくになったTシャツとジーンズ
とブリーフを洗っている。衣服が乾燥するまでには今暫くかかりそうだ。
竜児は、携帯電話機を取り出して、電源を入れた。作業中に私的な電話に出るようなことは許されないと思い、
竜児は携帯電話機の電源を切っていたのだ。
その携帯電話機の時刻表示が青く光り、午後六時半であることを示した。
「まずいな…」
作業の邪魔になるし、壊したら勿体ないということで、竜児は腕時計もはめてこなかった。そのため、時間に対する
感覚が少々ルーズになっていたのは否めない。
七時過ぎには亜美が竜児の自宅にやってくる。それまでには帰宅できるか否かは、洗濯物次第だ。
竜児は、メールと留守電を確認した。
「うわ…、亜美の奴、こんなにひっきりなしにメール送りやがって…」
そのメールも、午後の早い時間までは、『どう? 似非家庭教師さん、ちゃんとやってるぅ?』的な、多少はユーモアが
感じられるものだったが、時間を追うごとに険悪になっていき、つい五分前のメールでは、『もぉ! バカ竜児! 何やっ
てんの! さっさと連絡よこしなさいよ!』という剣幕丸出しの文面で終わっていた。
留守電にも亜美からのものがいくつか記録されていたが、メールの文面だけで十分に気が滅入った竜児は、それら
を聞くことなく、すべて消去した。聞かなくても、どうせ内容は察しがつく。
「しかし、こっちから何の連絡もしねぇのは、さすがにまずいな…」
気は進まなかったが、亜美の携帯電話の番号をリストから選択して、通話ボタンを押した。
相手方に接続する無味乾燥なノイズの後、鼓膜が破けそうなほどの亜美の罵声が、竜児の左耳をつんざいた。
『あんたぁ! いったいどこで油売ってんのぉ!!』
「お、おぅ…」
『おぅ、じゃないわよぉ!! 気抜けしたげっぷみたいな声出してぇ! あんた、夕食の支度も放ったらかしで、どこで
何やってるの? あたしが、ちょっと早めに来たら、泰子さんが空腹で動けなくなっていたんだよ。
あんた、無責任過ぎるじゃない!』
朝食の用意はしたが、夕食まで手が回らなかったのは、失策だった。
「まぁ、ちょ、ちょっと春田の物覚えが悪くって、時間が掛かっている。済まねぇけど、もうちょっと待ってくれ」
嘘にもならない、苦し紛れだった。目の前の洗濯機が、ぶぅ〜ん、と唸り、洗濯物を乾燥させる工程に移ったようだ。
その音は、当然に、竜児の携帯電話機も拾っていて…。
『あら、何かしら? 何だか衣服の乾燥機か何かが動いているような音が聞こえるんですけどぉ…』
「き、気のせいじゃねぇのか?」
電話口からは、ふふん…、という亜美の嘲笑みたいな吐息が聞こえてくる。
『見苦しいわね、そうまでして誤魔化そうとするなんて。あんたが正直に言わないようだから、あんたが今居る場所を
当ててあげましょうか?』
「そ、そんなこたぁ、どうだっていいだろうよ」
銭湯で汗を流したばかりだというのに、脇の下からは、アセトンのような嫌な匂いのする冷や汗がじっとりと滲んできた。
『よくないでしょ? あんたが嘘をついているんだから。とにかく、あんたは、コインランドリーとかで汗だくになったシャツ
を洗って乾かしているところなんでしょ? 誤魔化してもだめ。ちゃんと聞こえているのよ、乾燥機が動いているのが』
「だ、だから、これは春田の家の扇風機の音なんだって」
一度でも嘘をついたら、嘘をつき続けるしかない。苦しくても、正直に認めてしまったら、お終いである。
真実を告げるのは、全てが終わり、亜美にあの指輪を渡す時だ。それまでは、何があっても白状する訳にはいかない。
『本当に嘘くさい…。もういいわ、インチキ家庭教師さん。あんたの狂言にいつまでもつき合ってられないから、この話は、
別の機会に改めてしましょ…』
「そ、そうだな…」
ひとまずは、亜美の追及はしのげたことで、竜児は、額にいつの間にか浮かんでいた冷や汗をタオルで拭った。
もっとも、この場合、亜美の方が呆れ果てて、一旦、手を引いたというのが正しいのだが。
『そんなことより、あんた、重要なことを忘れてない?』
はて? 何だろうと、竜児は思った。何しろ、のっけから亜美のワンサイドゲームなので、竜児は、この話の展開に
ついていけてない。
「え〜と、何だっけ?」
しかし、当事者意識が丸で感じられないその口調は明かにまずかった。
『あんたって、本当に最低!! 夕食の支度とか、空腹の泰子さんのこととか、全然、念頭にないのね! あんた本当に大丈夫? 仕事のしすぎで、バカ丸出しになったんじゃないのぉ?』
しまった、そう言えば、会話の初っ端で、亜美がそんなことを訴えていたな、と思ったが、後の祭りである。
「済まねぇ、そういえばそうだった」
『済まないで済めば、警察も裁判所も、いらないわよぉ! あんたは自分の責務を放棄して、アルバイトにうつつを抜か
したんだわ。これって、民法四百十五条の債務不履行じゃない!!』
弁理士試験対策の勉強の影響なのか、竜児と口論するときは、根拠条文を挙げるのが最近の亜美の特徴だ。
こうすることで、法学部生でない竜児を翻弄することができるというのもあるのだろう。
「で、で、ど、どうなったんだ? 腹を減らした泰子は?」
『しかたがないから、あたしがあり合わせのものをこしらえて、泰子さんに食べさせてあげたわよ』
「あり合わせって…」
竜児は、狐につままれたような気分だった。亜美が自発的に料理をしたというのが、ちょっと信じられなかった。
『とにかく、近所のスーパーにすっ飛んでって、鯵とほうれん草を買ってきて、鯵は塩焼き、ほうれん草はおひたしにして、あとは卵焼きとサラダを作ったから。それを食べて、泰子さんは、落ち着いたわ』
心なしか、亜美の声が得意気にうわずっている。
「ほ、本格的だな…」
『まぁね…、これでもあんたの女房になるつもりなんだからさぁ、それぐらいはできないと洒落になんないでしょ?』
あ、割り込んじまった。すまんすまん
「お、おぅ…」
『でもね…』
一拍置いた静寂が不気味だった。
『どうでもいいけどぉ、さっさと戻ってきなさい!! あと、十五分以内に戻ってこなかったら、今夜は一晩中、あんたに
しがみついて、精を搾り取ってやるんだからね!!』
そう、怒鳴るように言って、亜美は電話を切った。
「て、『精を搾り取る』って、サキュバスかよ…」
つい昨日まで処女だったというのに、一度、男の味を覚えたら、もうこれだ。
亜美という女は、竜児にとって似合いの相手ではあるが、同時に、手に負えない淫乱なのかも知れない。
乾燥機が止まった。竜児は、洗濯物をディパックに仕舞うと、のろのろと自宅へ向かって歩き出した。どう頑張っても、
亜美が指定した制限時間内には帰宅できっこないからだ。それに、制限時間内に帰り着いても、竜児との性愛に目覚
めてしまった亜美が、大人しくしているはずがない。
その制限時間を大幅に超過して、竜児は帰宅した。
「お・か・え・りぃ…」
玄関を開けるや否や、柳眉を逆立て、こめかみに青筋を浮かび上がらせた亜美が待っていた。
「た、ただいま…」
消え入るような声で返事をすると、竜児は、おんぼろスニーカーを脱いで、きまり悪そうに亜美の傍をスルーしようとした。
「ちょっと、待ったぁ!」
その逃げるように立ち去ろうとする竜児の襟首を、亜美の右手がひっ掴む。
「い、いてぇな…」
竜児は振り返るようにして亜美を見た。鬼か般若のような形相ではあったが、気のせいか、悪さをした息子を咎める
母親のような雰囲気もなくはない。
その亜美が、ほんの少しだけ相好を崩したように竜児には感じられた。
「あんた…、お腹空いてないのぉ?」
「お、おぅ…」
昼にしょぼいコンビニ弁当を食べただけで、激しい肉体労働に耐えてきたのだから、当然に空腹である。その意思を
伝えるべく、竜児は、首根っこを押さえられたまま、気弱そうに頷いた。
「じゃぁ、お説教は勘弁してあげる。あんたの分は、ちゃぶ台に配膳してあるから、ひとまず腹ごしらえしてきなさいよ」
そう言うと、亜美は大きく嘆息して、掴んでいた竜児の襟首を離してくれた。
竜児は、亜美から追求をほとんど受けなかったことに安堵しながら、その理由を考えてみた。
そして、それは、ちゃぶ台に竜児のことを思って配膳された鯵の塩焼き、ほうれん草のおひたし、卵焼きとサラダを
見て、何となく分かったような気がした。
「すげぇな…。これ、本当にお前が全部こしらえたのか?」
台所から、暖め直したみそ汁と、大盛のご飯を持ってきた亜美が、ちょっと恥じらうように頬を朱に染めて頷いている。
魚の塩焼きとか、卵焼きとか、どれも簡単な家庭料理だが、インスタントではできず、それなりに手間は掛かる。
「と、とにかく、食べてみてよ…」
亜美の声がうわずっている。
よりにもよって、プロ並の料理の腕前を誇る竜児に、初めて自分が作った料理を食べさせるのだ。その緊張感は、
いかばかりのものだろう。
亜美の追求が手ぬるかった理由は他にもありそうだが、ひとまずは、せっかく作った料理を竜児に食べさせたい、
というのもあるのだろう。
竜児は、期待と不安が綯い交ぜになった亜美の視線を浴びながら、味噌汁を一口啜った。
「うん、美味い」
味噌汁の具は、豆腐とえのき茸だった。出来立てではないから、風味自体はいくぶん落ちてはいるのだろうが、出汁
と味噌の分量が的確で、えのき茸の微かな味わいも感じ取れるような、絶妙といってよい味付けだった。
「ね、ねぇ…。ほ、本当に美味しい?」
おずおずと、亜美が訊いてきた。先ほどまでの般若のような表情はどこへやら、今は、思い人である竜児に自分の
料理を誉めて欲しいという純な気持ちで満たされているらしい。
「美味いよ、正直、亜美がこれほどできるとは思っていなかった…。たしかに、昨夜、お前に怒られたように、俺はお前や
泰子、というか女というものを軽く見ていたのかも知れねぇ…。その点は、俺の不徳だな」
「わ、詫びはいいからさぁ、味噌汁だけじゃなくって、鯵とか、ほうれん草とか、卵焼きとかも食べてみてよ!」
「お、おぅ…」
頬を朱に染めて、今や喜色を浮かべている亜美に急かされるように、竜児は、鯵の塩焼き、ほうれん草のおひたし、
それに卵焼きを賞味した。
鯵の塩焼きは、振り塩がやや多過ぎるきらいはあったが、それがかえって、大汗かいて、塩分の補給が必要な竜児に
は有難かった。焼き加減はちょうど竜児の好みで、表皮が少々焦げて香ばしく、それでいて中はふんわりと柔らかく
仕上がっている。
「美味いよ、焼き加減は完璧だ。焼きたてだったら、無敵の美味さだな」
「そ、そうなの?」
予想外の高評価だったのだろう。亜美は、本当に嬉しそうに笑っている。誉められる、ということは、誰にとっても嬉し
いものだが、それも竜児に誉められたのだから、格別なのだろう。
「ほうれん草のおひたしも、なかなかだ。醤油と出汁と、かすかな甘みは本味醂かな? とにかく、漬け汁の配合が俺の
とは違うが、甲乙付けがたいほど美味いよ」
「うん、うん…」
卵焼きはちょっと形が崩れていたが、半熟の部分が程良く残っていて口当たりがよい。
味付けには砂糖を使っていないらしいが、これにも微かな甘みがあって、食べていると優しい気分になってくる。
「卵焼きは、ほんのり甘いんだが、何だか砂糖のようなしつこい甘さじゃねぇな。何だろう…」
蜂蜜かな? と竜児は思ったが、であれば特有の匂いがするはずだ。しかし、この卵焼きにはそうした蜂蜜臭さが
一切ない。
「うふふ、何を入れたのか当てたら大したもんだわ…」
竜児は、蜂蜜ではないとすると、アミノ酸系の人工甘味料か? とも思ったが、この種の甘味料は熱を受けると甘み
が損なわれるから、おそらく違うのだろう。他に、『アセスルファムK』のような熱に強い人工甘味料もあるにはあるが、
アミノ酸系の人工甘味料に比して変な苦みがあるはずだし、何よりも、竜児同様に健康を気遣う亜美が、
そんないかがわしいものを使うわけがない。
「だめだ…、降参する。俺にはさっぱり分からねぇ」
参りました…、とばかりに首を左右に振る竜児に、亜美は、してやったりの得意そうな笑みを向けている。
「水飴を入れたのよ…」
「水飴? あの粘っこい水飴か?!」
なるほど、嫌味のない甘さは、麦芽糖を主成分とする水飴によるものだったのか、と竜児は納得した。
麦芽糖は、砂糖と違って血糖値を急激に上げることはないから、膵臓に負担を掛けないし、第一、太りにくい。
しかし、水飴は粘度が高く、溶いた卵に加えただけでは十分に混じらない。その点は、どうやったのだろうか、
という新たな疑問が生じた。
その竜児の疑問が亜美には以心伝心であったのだろう。
「水飴は粘っこいけど、少し水を加えて、電子レンジで加熱するだけで、蜂蜜みたいにトロトロになるのよ。
それをお醤油と一緒に溶き卵に入れたの。どう? なかなかいいアイディアでしょ?」
「お、おぅ…。アイディアってことは、お前が独自に考えたんだな?」
「う、うん…。この前の銀座でのショッピングの時、竜児が、麦芽糖なら太りにくいって、言ってたでしょ?
で、気になって、麦芽糖が含まれている甘味料はないかって調べてみたの。そしたら、日本古来からある水飴が
そうだって分かったわけ…。以来、この水飴を砂糖の代わりに使うレシピを考えて、試作し、伯父や伯母にも
実験台になってもらっていたのよ」
「お前、すげぇな…」
『実験台』、という響きは、失敗作も試食させたことを意味しているのだろう。その時の亜美の伯父と伯母には同情を
禁じ得ないが、そのおかげで、竜児は、ほのかに甘い、かつてないほど優しい味わいの卵焼きを、亜美から食べさせても
らえたのだ。
「亜美、お前って、徹底してるんだな…。まぁ、大学受験の勉強でもそうだったし、本気を出すと、無茶を承知でとことん
頑張る…。本当に恐れ入ったぜ」
「そんなの、お互い様だよ…。あんたの方こそ、根をつめて頑張ってばっかりじゃない。傍から見ていると、大丈夫かって
はらはらするぐらい…」
亜美を誉めたつもりが墓穴を掘ったらしい。
「そ、そんなこたぁ、ね、ねぇよ…」
無茶な肉体労働をしていることを亜美に突っ込まれないように、竜児はとにかく否定した。
だが、亜美は、そんな竜児には取り合わず、優しげな笑みを浮かべながら竜児の左手から、空になった茶碗を取り上
げ、それに白飯を盛った。
「はい、はい…、そうね、あんたはいつだってそう。無理をしてても、決して弱音を吐かないし、そもそも無理をしてるって
ことを絶対に認めない」
「……」
何だか風向きがおかしいとは思ったが、竜児はどう対処していいのか分からず、再び、飯が盛られた茶碗を手に、
申し訳なさそうに亜美の表情を窺った。
「何? あたしの顔に何か付いてる? どうでもいいけど、お腹空いてるんでしょ? だったら、何杯でもお代わりして
いいからさぁ。今は、ご飯を食べることに専念した方がいいわよ」
その表情は、母親がわが子に向ける類のものなのだろう。そこには打算的な損得勘定はない。
理由は分からないが、今の亜美は竜児のアルバイトを咎めるつもりはないらしい。竜児は、半信半疑ながら、再び、
亜美の手料理に箸を付けた。
美味い。誰かに作ってもらった料理がこんなに美味いと思ったのは、初めてかも知れなかった。
亜美が台所で洗い物をしている水音を聞きながら、竜児は食後の気だるい気分でぼうっとしていた。
自宅で上げ膳据え膳なのは、本当に久しぶりだった。思えば、小学校低学年以来だろうか。
あの時は、働きづめの泰子の負担を少しでも減らしてやりたいばかりに、おっかなびっくり炒り卵を作り、
食後の洗い物は竜児が専ら行うようになったのだ。
「あれからだったなぁ…」
見様見真似どころか、徒手空拳で始めた家事だったが、テレビの料理番組を参考にしたり、新聞の献立の記事を
読んだりしながら、少しずつレパートリーを広げ、その技量を確かなものにしていった。
その過程が、今となっては堪らなく懐かしい。
母親に甘えるという子供らしい欲求を封印したのも、この頃ではなかったか。泰子の働きぶりを思うと、子供心にも
無遠慮に甘えることはできなかった。泰子の膝の上で子守歌を聞いたのは、もう遥かな昔だ。
そのまま夢見心地で竜児は朦朧としていたが、頬へのひんやりとした感触で、正気を取り戻した。
「気が付いた?」
うっすらと目を開けると、庇のように突き出た乳房越しに、淡い笑みを浮かべている亜美の顔があった。
その亜美の手が、ひんやりとした感触とともに、竜児の頬に優しく当てられている。
そして、竜児の後頭部には、弾力に富んだ亜美の太股が感じられた。
「亜美…、済まねぇ、満腹になって、つい、うとうとしちまって…。い、今は何時なんだ?」
本当は、慣れぬ肉体労働で疲労し切っていたからなのだろう。
それは亜美も分かっているのか、淡い笑みを浮かべたままだ。
「そうね…、かれこれ十時近くになるかしら。どう? 弁理士試験の勉強はできそう? 何だか、だいぶ眠たそうね」
短時間でも眠ったことで、頭は意外とすっきりしていた。しかし、十時近くという時刻が問題だった。
難解な条文と格闘しなければならない弁理士試験の勉強は、三十分や一時間程度継続しただけでは、目に見えた
効果は望めない。 少なくとも二時間は連続して勉強することを思うと、勉強を開始する時刻としては、いささか遅い
ようだ。それに…、
「少し眠ったせいで楽にはなったが、勉強はちょいパスだな。何せ、春田の奴が、サボるんでなぁ、こっちの精神的な
疲労感が甚大なんだよ。だから、済まねぇが、今日は、本の類は読みたくない…」
春田の家庭教師で竜児が苦労したと、亜美が錯誤するように要点をぼかして言った。
ある程度は本当だった。実際、現場でも、春田は、竜児よりも根気に乏しく、ともすれば手を抜くというかサボりがち
ではあったからだ。
「はい、はい…、そういうことにしときましょ…。そうね、夏休みの初日だもの、今日ぐらいは勉強しなくても、許されるかも
知れないわね…」
亜美は、微笑して、竜児の言い分を真に受けていない。だが、嘘をついている竜児を責めるような素振りもないのが
不思議だった。
「電話では、えらく怒っていたけど、今は何だか優しいな…」
亜美は、膝に乗せている竜児の頭を優しく撫でながら、鈴を転がすように、うふふ…、と笑った。
「当たり前のことに気付いたのよ。あんたも、やっぱり男の子なんだわ。男の子ってのは、どうしたって、やんちゃなことを
する。傍目には無茶だ、と思われても、敢えてやるのが男の子なんだわ。それは、女の子であるあたしには到底真似が
できないことなのよ…」
「そ、そんなこたぁねぇだろう。亜美だって、今の大学に猛勉強で合格して、今度は弁理士試験に挑戦する。
女の子であるお前だって、無茶を承知で敢えて頑張ってるじゃねぇか」
亜美は、淡い笑みを浮かべながらも首を左右に振った。
「女ってのはねぇ、中には例外もあるだろうけど、やっぱり攻め手よりも守り手なんだよ。で、男は、種族とか、一族のため
に外に出て戦わなきゃいけない。女が戦うときもあるけど、それは、従属的な存在として、男の後に付き従っている場合
が大半だよ。あたしが、あんたを追って今の大学に入ったように、そして、あんたに従って弁理士になろうとしているよう
に…」
「そ、そうなのか…?」
亜美が微笑しながら頷いている。その面相は、陳腐なたとえだが、聖母のように慈悲深く、穏やかだった。
「男はどうしたって、外に出て行ってやんちゃをする。それは、もう、有性生殖をする種のことわりみたいなものなんだよ。
それを止めるとか、非難するとかは、そのことわりに反することなのね。
だから、女は、頑張っている男を見守るしかないんだわ…」
「それって、母親っていうか、母性そのものって感じだな…」
「母性かぁ、たしかにそうかも…。好きな人を見守るってのは、母親がわが子を見守るのと似ているのかも知れないわね」
亜美は、鈴を転がすように、うふふ、と笑った。それに呼応して、ふくよかな乳房が艶めかしく揺れている。
「い、今のお前は、母親みたいな気分なのか?」
「うふ、そうね、女はみんな母親になるのが夢だって、前にも言ったわよね。あたしも、そう…。あんたと結婚して、
あんたとの子供を産みたい。そんな本能にも似た強烈な欲求があることは認めるわ」
「お、おい、急ぎすぎだよ、そりゃぁ…」
結婚後ということを前提としても、竜児にとって、妊娠とか出産とかは、苦手な話題だ。生々しいくせに、男にとっては
絶対に経験できない非現実性がもどかしい。
それに何より、竜児にとっては、女を孕ませてしまうことには、生理的な抵抗が根強かった。
「あら、あんた、妊娠とか、出産とかっていうと、妙に挙動不審になるのね。誤魔化しても、だぁ〜め。あんたって、苦手な
話題になると、額に変な汗が吹き出てくるんですもの」
「お、おぅ…」
亜美は、女は従属的な存在だと言ったが、本当は、男の方がそうなんじゃないかと竜児は思った。女は、男に付き
従っていながらも、こうして男を癒すようにしながらも、ある程度は意のままに男を操っているのだ。
言ってしまえば、哀れな傀儡に過ぎないのだろうが、それが種のことわりであるならば、それでいい。
何よりも、永遠の愛を誓い合った亜美に操られるなら、それも本望だった。
「再三言ってるけど、ちゃんとピルは飲んでいるから大丈夫。あたしだって、それほどバカじゃないから…。
社会的には何の力もない未成年者だってことを分かっているからね。
そんな無力な者が、子供を産んでも碌なことにはならないんだよ。それに…」
亜美が、一瞬、言葉を詰まらせて、膝の上の竜児の瞳を覗き込んだ。
「亜美…。お前は…」
「母になる前に、あたしはあんたの妻になりたい。あんたの妻になる前に、あんたにとって唯一無二の女になりたい。
だから、あたしは、あんたと今宵も結ばれたい…」
「そ、それは、いいけどよ…」
昨晩、処女を喪失したばかりの亜美の体調が気掛かりだった。
竜児だって、今も亀頭の辺りが微かに疼くのだ。膣内を竜児の極太ペニスで無理やりに引き裂かれた亜美であれば、
そのダメージは、竜児の比ではないはずだ。
「あたしの身体のことを気遣っているんなら、そんなのは無用だよ。女のあそこってねぇ、結構丈夫にできてっから、
昨晩くらいのことじゃ、大して痛みは残っちゃいないのさ」
本当だろうか? と思ったが、男の竜児に、その真偽を確かめる術はない。全ては亜美の言うことに耳を傾けるしか
ないのだ。
「何? その目は? やっだぁ〜、亜美ちゃんが痛みに耐えながら、あんたに奉仕しようとしてるって思ってんでしょ?」
「お、おぅ、そ、そうじゃねぇのか?」
「竜児って、バカ? あたしみたいな性悪女がそんな殊勝なことを考えるわけないじゃん。淫乱チワワが発情している
だけ、それだけなんだよ。何なら、さっき電話で言ったように、一晩中あんたにしがみついて、あんたの精を吸い尽くして
やってもいいんだからさぁ」
「あ、ありゃ冗談だろ?」
亜美は、ふん、と鼻先であしらうように笑った。
「あんたが、あたしの料理を不味いって言ってたら、本当にそうしたかも知れないわね。でも、あんたは、あたしの料理を
喜んで食べてくれた。それに免じて、今夜は、一回だけってことで勘弁してあげるわ」
「お前…、無理してるよ。絶対…」
昨夜あれほど激しく竜児を求めてきた亜美が、『一回だけ』と言ったことからも、それは窺えた。
だが、亜美は、竜児の気遣いには構わず、ノースリーブのカットソーを脱ぎ捨て、ブラジャーを外した。
「ねぇ、ママのおっぱいだと思って吸ってよ…」
竜児の頭上に、ぶるぶると震える乳房が露わになった。先端の乳首と乳輪がぷっくりと膨れている。
竜児は、思わず固唾を飲んだ。竜児のように性欲が薄い男であっても、こんな光景を目の当たりにして冷静では
いられない。
「い、いいのか?」
亜美が、頬を朱に染めて頷いたのを認め、竜児はゆっくりと起きあがり、亜美の乳房の谷間に顔を埋め、その匂いを
堪能した。
花のように香るトワレとは別の、乳臭いような、甘いような、やるせない匂いが、竜児を劣情させる。
亜美は、そんな竜児の頭部を、母親が乳飲み子を抱くような手つきで支えた。
「うふ…、もぞもぞ、くすぐったいけど、気持ちいい…。ね、ねぇ、あたしの胸の谷間の匂いを嗅ぐのもいいけどぉ、
そ、そろそろ、お、おっぱいも啜ってよぉ…」
その声に促されるように、竜児は、ぷっくりと膨れている左の乳首を吸い、舌先でそれを弄び、艶やかな乳輪ごと
軽く歯を当てて甘噛みした。
「うっ、き、気持ちいい…」
その瞬間、亜美が竜児の頭部を力一杯抱き締めた。
竜児は、餅のように弾力のある亜美の乳房に押さえられ、窒息しそうになりながらも、夢中で乳首を啜り、甘噛みした。
「ひ、左だけじゃなくて、み、右も、お、お願い…」
竜児の頭部を押さえていた力が弱まった。上目遣いに窺うと、亜美は、涎を垂らして、陶然としている。
竜児は、その亜美に頷くと、脇の下から右の乳房全体を啜るように嘗め、その先端の乳輪と乳首を強く吸い、
軽く噛んだまま引っ張ってもみた。
「あ、あぅ、そ、そうよ、も、もっと…」
亜美は、そのまま暫く身をよじらせて快感に酔い痴れていたが、不意に、竜児の頭部を、乳房から強引に引き剥がした。
「きゅ、急にどうしたんだよ…」
亜美は、苦しそうに喘ぎながらも、竜児に笑顔を向けた。
「な、なんか、おっぱい吸われているだけで気持ちよくなり過ぎちゃった…。で、でも、前菜は、これで十分。もう、そろそろ、
メインディッシュを戴きましょうよ」
そう言うなり、亜美はデニムのスカートに両手を突っ込んで、ショーツを引きずり下ろした。ショーツのクロッチからは
粘液が糸を引いている。
「お、おい、そう言えば、こ、ここって、俺の部屋じゃなくて、いつも飯食っている場所じゃねぇか。隣には泰子が寝てるん
だろ?」
遅ればせながら、自分の居場所を把握した竜児に、亜美は妖艶に微笑んだ。
「泰子さんなら、ご飯を食べて、またスナックに行ってるわよ。だから、この家に居るのは、あたしとあんたの二人だけ…。
ならばぁ、竜児の自室以外の、キッチンとか居間とかでエッチする方が萌えるじゃない…」
「お、お前、変態だよ…」
「そうよ、あたしは変態…。でも、最愛の伴侶限定のね…。だから、今のあたしには、むしろ誉め言葉だわ」
そう言いながら、亜美は、スカートも剥ぎ取り、文字通り一糸纏わぬ姿になって、竜児の前に横座りした。
「お、お前…」
全裸の亜美は、未だ躊躇している竜児に妖艶な流し目を送りながら、物憂げに髪を掻き上げた。
「早くしなさいよ。このまま、あたしの裸身を指をくわえて見てるつもり? そんなんじゃ、ジーンズを突き破りそうなほど
大きくなってる、あんたのおちんちんが可哀相じゃない」
亜美の白魚のような指が、怒張している竜児の股間をまさぐった。
「わ、分かった、じゃぁ、お、俺も…」
亜美の愛撫に急かされるようにして、竜児もTシャツとジーンズとブリーフを脱ぎ捨てて、全裸になった。
『女は従属的』だなんてことを亜美は言ったが、何だかんだ言っても、男は女に操られているのだ。
「じゃあさぁ、あんたは座布団を二枚敷いて、その上に仰向けになってよ。そのあんたの上にあたしが乗っかるからさぁ」
いわゆる騎乗位というわけだ。
竜児は、その亜美に従って、座布団を敷いたが、いくぶん渋い顔をして、亜美に向き直った。
「なぁ、エッチしてると、色々と液が出てくるよな…」
そう言いながら、亜美の股間を指さした。実際、亜美の秘所からは、既に愛液がとろとろと畳の上に滴っている。
「な、何よ、い、いきなり人の大事なところを、ゆ、指さすなんてぇ、このスケベ!
それに、液が出るのは、あんたのおちんちんだって同じじゃない!」
「だよな…、このまんまじゃ、座布団にシミができちまう。それじゃまずいから、俺、ちょっとバスタオルとか持ってくるよ」
竜児は、立ち上がって、歩き出そうとした。しかし、大きく勃起したペニスがぶらぶらして、ひょこひょことしか歩けない。
「あははは! あんた、おちんちん、ぶ~ら、ぶら!」
それを見た亜美が、腹を抱えて笑った。それにつれて、豊かな乳房がたっぷん、たっぷん、と揺れている。
「おい、おい、そう言うお前だって、おっぱいゆさゆさ、なんだからな」
竜児の指摘に、亜美はいっそう笑い転げ、胸に手をやって、豊満な乳房を揺さぶった。
「あんたって、本当はスケベなんでしょ? まぁ、亜美ちゃんとしては、そうしたあんたの方が有り難いからさぁ。
だから、バスタオルでも何でも持ってきて、さっさとエッチなことを始めましょうよ」
竜児は、そんな亜美に苦笑すると、勃起したペニスを気遣うようにして浴室からバスタオルと通常のタオルを三枚持ってきた。
そのバスタオルを座布団の上に敷き、更には、竜児の臀部の直下に二つ折りにした通常のタオルを敷いた。これなら、
亜美の愛液の分泌が盛んでも、竜児の精液が流れ出ても、何とかなりそうだ。
「もう、なんか、持ちくたびれちゃった…」
バスタオルを敷いた座布団の上に仰向けになった竜児に、早くも亜美がのし掛かってきた。
「前戯なしでいいのかよ?」
亜美は、うふふ…、と妖艶な笑みを浮かべて、竜児のペニスを掴んだ。
「お、おい…」
「あんたのおちんちん、こんなに固くなってる。それに…」
亜美は、その竜児の亀頭を自身の秘所に擦り付けた。
「あたしのあそこも、ぐちょ、ぐちょ…。だから、前戯なんていらないわ。このまま、あたしが腰を落としていくだけで、
あたしとあんたは一つになれる…」
言うが早いか、亜美は、竜児のペニスを軽く握って支えたまま、ゆっくりと腰を下ろしていった。
それにつれて、亜美の膣に竜児の大きなペニスが、ずぶずぶと飲み込まれていく。
「う、ほ、本当だな…。な、中は、もう完全にどろどろだ…」
その亜美は、心持ち眉をひそめ、何かを堪えるようにしながら、なおも、ゆっくりと腰を落としていった。
亜美は、その子宮を軽く突き上げるようなところまで竜児のペニスを収めると、ほっとしたように、大きく息を吐き出した。
「は、入っちゃった…」
それでも、竜児の長いペニスが完全に収まった訳ではない。結合部には、あと二センチばかり、竜児のペニスの根元
が覗いている。
「亜美、大丈夫か?」
そのまま、深く挿入しようとしない亜美の様子が気になった。
「う、うん…。やっぱ、気持ちいいけど、未だ二日目だからかしら…。昨日ほどじゃないけど、あそこが、じ〜んと痺れたよう
な感じがしてさぁ…。だ、だから、あんたには悪いけど、この姿勢のまま、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、待ってて…」
「お、俺は構わねぇけどよ、お前、本当は痛いんだろ? 男の俺だって、先っぽが少し疼くんだぜ。ましてや、処女を喪失
したお前は、我慢できねぇほど痛いんじゃないのか?」
亜美は、喘ぎながらも、笑顔を竜児に向けてきた。
「しょ、正直言うと、ちょっと、痛い…。でも、あんたのおちんちんが入っていると、その痛みがだんだん薄れてくるの…。
もう、だいぶ痛みは和らいできていて、今は、ちょっと、痺れたような感じが残っているだけ。
この痺れも、薄れてきているから、だから、だ、大丈夫…」
「なんか、無理してるんじゃねぇか?」
「無理なんかしてないよ…。本当に、痺れがなくなってきて、あと、ちょっとで、動けるようになるからさぁ。あんただって、
おちんちんの先っぽの疼き、あんまり感じなくなってるでしょ? だって、あたしの中で、あんたのおちんちん、入れた時
よりも、おっきくなってる…」
そう言われてみればそうだった。挿入直前まで感じていた、亀頭の疼きはもう感じない。それと呼応するかのように、
亜美の膣の肉襞が、粘液を分泌しながら、うねうねと蠢いて、竜児のペニスを妖しく翻弄している。
「ねぇ、感じるでしょ? 亜美ちゃんのあそこ…。亜美ちゃんのあそこも、痛みが取れて、今は竜児のおちんちんが、
美味しくてしょうがないみたいなの…」
「た、たしかにな…。お前の、あそこって、変な緊張感がなくなって、何か、動いてる…。
お前、すげえよ、気持ちよ過ぎるぜ…」
「あ、あたしも、気持ちいいよぉ…」
「でもよ、未だ、俺のが全部入ってないんだぜ…?」
亜美は、それには応えず、おもむろに、竜児の身体、その固く怒張したペニスに体重を預けてきた。
「うぁ!」
亜美は、顔をしかめて、嗚咽のような声を発したが、竜児のペニスは、ぐちゃ…、という粘っこい音とともに、
完全に亜美の膣に収まった。
「こ、今度こそ、ほ、本当に全部入っちゃった…」
喘いではいるが、ほっとしたような、何か満たされたような表情を浮かべて、亜美は微笑んでいる。
「だ、大丈夫か? なんか無茶しやがって…。ぞれに全部入ったはいいけど、きつきつだ…」
「女のあそこってねぇ、ものすごく弾力があって、伸びるんだよ。それで、あんたの大きなおちんちんも、すっぽり収まるの。
だから、無茶でも何でもない…。大丈夫…」
「お、おぅ…」
亜美は、竜児のペニスを引き抜く寸前まで、ゆっくりと腰を持ち上げると、再び腰を落として、勃起した一物を根元
まで飲み込んだ。
「た、たまらない…。あんたのおちんちんが、あたしの中をかき回している。あんたのおちんちんが、あたしの子宮とか
内臓を、がっつんがっつん突き上げてる」
「亜美、お、俺も、たまらねぇぜ。お、お前の中は、暖かくて、きつくて、俺のペニスをすっぽりと咥え込んでて、と、とにかく、
気持ちよ過ぎるぜ」
竜児も、仰向けになりながら、その腰を上下左右に揺するように動かした。
「あああっ! そ、そんなの、だめぇ! 気持ちよ過ぎちゃうぅぅ!! いっちゃう、亜美ちゃん、いっちゃうよぉ!!」
亜美の膣が、きゅ〜っ、と収縮し、竜児のペニスを締め付けた。
「あ、亜美、お、俺もやばい! 締め付けが、き、きつ過ぎる」
亜美は、もはや意識を失う寸前なのか、涎と涙と洟を垂れ流しながら、「あぅ…、あぅ…」と、うわ言のようなことを繰り
返している。それでも、腰を上下させる動作は止めようとしない。その様は、快楽に支配された奴隷さながらだ。
「も、もう、らめぇ…」
その一言を最後に、亜美は意識を失ったようだ。
しかし、意識を失った亜美が、よりにもよって、背を反らせて、横向きにくずおれた。
「うわぁ、あ、亜美、こ、こいつはやば過ぎる!!」
竜児の反り返っていたペニスが、それに抗するように亜美の膣内で下向きに引っ張られ、次いで横向きに捻られた。
その激痛にも似た刺激に耐えきれず、竜児のペニスは、どくどくと脈動しながら、亜美の胎内へと大量の精液を吐き
出していた。
ひとしきり、精液を吐き出させた後も、亜美の膣の締め付けは強烈だった。
竜児は、以前、亜美に言われた、『女の快楽は余韻が長い』を思い出し、挿入したまま、失神している亜美の身体を
優しく抱きとめた。
その亜美は、満足したような淡い笑みを浮かべている。
「毎度のことだけど、涙やら、洟やら、涎やらで、ベトベトだな…」
竜児は、タオルで、亜美の顔を優しく拭いてやる。
セックスになると、亜美は、止め処なく快楽を貪って、挙句に沈没してしまうのだ。それは、酒の飲み方も同様で、限度
をわきまえずに、飲みまくってつぶれる、ということが多い。
「やっぱ、ストレスとかあるんだろうな…」
昨日のやけ酒は、竜児との逢瀬がままならないことへの鬱憤だったようだが、逢瀬が叶えば叶ったで、新たなストレス
が生じているのかも知れない。
「色々と業が深そうな奴だな。こいつは…」
そう言いながらも竜児は苦笑した。亜美に隠れて、バイトをしている竜児もまた、それなりに業はあるのだ。
竜児は、膣の収縮が一段落したと見て、ペニスを引き抜いた。
ペニスが引き抜かれた膣からは、白濁した粘液が、どろどろと零れてきた。
「しょうがねぇなぁ…」
気を失ったままの亜美をバスタオルの上に寝かせて、竜児は、四つん這いになって、亜美の陰部をタオルで拭ってやる。
「しかし、男の俺にとっては、媚薬を通り越して、毒だな…」
亜美の陰部は、とろとろと粘液を吐き出し続けて、心なしか、ふるふると震え、淫靡な匂いを伴って男の竜児を誘惑し
ている。それを目の当たりにしていると、射精したばかりの竜児のペニスが再び勢いづき、再び一つになりたいという
本能的な衝動が抑えきれなくなってくるのだ。
気が付いたら。竜児は、その亜美の陰部に口付けしていた。舌先で、クリトリスの薄皮を剥いで、それを夢中で啜り、
未だ愛液を滴らせている膣口を嘗め、舌先をその膣に挿入した。そのまま鼻先で剥き出しのクリトリスを突きながら、
溢れる愛液を味わった。
「りゅ、竜児ぃ…」
竜児のクンニのせいなのか、亜美が意識を取り戻した。
「お、おぅ! す、済まねぇ、お前が寝ているのをいいことに、ついやっちまった…。『一回だけ』って約束だったのに…」
亜美は、夢見心地にとろんとした顔を竜児に向け、首を左右に振った。
「あんたがしたいんなら、何回でも構わないよ…。もう、あそこも痛くないから、『一回だけ』なんてケチな制限はなし…。
何回でも、あんたが好きなようにしていいからさぁ…」
「お、おぅ…。でもよ、そんなに何回もやるなんて、また外泊かよ」
「そうね、今日は、帰宅するつもりがちょっとだけあったけど、もう、そんなもの消し飛んだわ。
伯父や伯母への釈明がうざいけど、あんたに抱かれて、一夜を過ごしたい…」
「おい、おい…。そりゃまずいだろ? 今夜がなくても、明日の晩があるじゃねぇか」
その一言で、亜美は、夢見心地にとろんとていた顔を憂鬱そうに歪めた。
「どうかしたのか?」
「言いそびれていたけど、あたし、今日になって、ママ…、川嶋安奈から呼び出されちゃった…。
何でも、せっかくの夏休みなんだから、実家に帰ってこいっていう、半ば強制的な命令…」
「よ、呼び出されたって…、いつからあっちの方へ行かなきゃならねぇんだ?」
「明日から…」
「急だな…。そこまでして、お前を呼び寄せるって、何か理由があるんだろうか」
亜美は、横たわったまま、眉をひそめて頷いた。
「なんかさぁ、もしかしたら、ママって、あたしたちのことを勘付いているのかも知れない…。それとか、局アナにはなる
気がなくて、弁理士試験を目指していることとか、ある程度は把握していて、それを直接あたしから問い質すのかも…」
「おい、そりゃまずいぞ…。だったら、外泊しねぇで、今日は帰った方がいいんじゃねぇのか?」
しかし、亜美は、自嘲するかのように口元を歪めて、ふふっ、と笑った。
「だったら、余計に、あたしたちは、抱き合わなきゃいけないわ。どうせバレているなら隠す必要はない。それに、あっちに
行っちゃうと、少なくとも数日間はこっちに来れなくなっちゃう。だから、今夜は、ずっと、あんたに抱かれていたい…」
それだけ言うと、亜美は股間を大きく広げ、更に、陰裂を白魚のような指先で大きく広げた。
竜児のクンニで目覚めた亜美の陰部は、陰毛の薮の中からクリトリスを勃起させ、瑞々しい膣口からは、とろとろと
愛液を滴らせている。
「き、来て…」
その言葉に竜児は頷くと、いきり立った肉塊を亜美の膣にねじ込んだ。
「ああ…、いいわぁ…、あんたのおちんちん、すごく気持ちいい…」
挿入された瞬間、亜美はぶるぶると四肢を震わせながら、呆けたように陶然としている。
「う、動かすぞ…」
亜美を下にしたまま、竜児は、二度、三度と、ペニスを引いては突き、を繰り返した。それも、単純に突くだけじゃなく、
根元まで挿入した時に、腰で『の』の字を描くつもりで、ぐりぐりと自身の股間を亜美の陰部に押し付ける。
「あう、りゅ、竜児、あ、あんたの腰使い、すごいよぉ〜。昨日よりも、ずっと、ずっと、気持ちよくなってる。あ、亜美ちゃん、
も、もう、おかしくなっちゃうよぉ〜」
その竜児の腰の動きにシンクロするように、亜美もまた、寝そべりながらも、腰を上下左右にゆすり始めた。
「あ、亜美、お、お前だって、その腰の動き、や、やば過ぎる」
このままだと、二人とも簡単に果ててしまいそうだ。
亜美に久しく会えないことを思うと、少しでも長く、一つになっていたかった。
「亜美、体位変えるぞ…」
「ほぇ? た、体位?」
快楽で朦朧としてきたらしい亜美の両腕を捉えると、それを引っ張るようにして、亜美の上体を起き上がらせた。
そして、竜児は座り、その上に、陰部が結合している亜美を乗せた。いわゆる、対面座位である。
「ど、どうだ? 亜美…」
その亜美は、竜児の首に縋りながら、瞑目して、いぎたなく涎を垂らしている。
「き、気持ちいいよぉ〜。でも、さっき、いく寸前だったけど、また、ちょっと持ちこたえたみたい…。こ、この体位って、
何かいいかもぉ…」
そう言いながら、亜美は、乳房を竜児の胸に擦り付け、自身の腰を、先ほどの竜児と同じく、『の』の字を描くように、
妖しく動かしている。
「あ、亜美、そ、その腰の動き…。すげぇ、気持ちいい」
「へ? こ、腰って?」
再び意識が朦朧としてきたのか、亜美が素っ頓狂な口調で応答してきた。
どうやら、腰の動きは意識してのものではないらしい。快楽を得たいという、本能的な欲求による、自然な動作だった
ようだ。
竜児は、そんな亜美が愛おしく、思わずぎゅっと、抱き締めた。
「好きだ、亜美、俺が愛する女は、お前だけだ…」
「う、うん…」
その竜児の言葉に呼応するように、亜美の膣が、ぎゅっ! と、にわかに収縮した。
「あ、亜美、締め過ぎだぁ!」
「あ、亜美ちゃん、な、なんもしてねぇんですけどぉ…」
二度目の限界が近いのか、亜美が、喘ぎながら瞑目している。
「お、お前、わざと締めてんじゃないのか?」
「し、締めてないよぉ、亜美ちゃん、竜児の言葉が嬉しいだけ…。亜美ちゃんが嬉しいから、亜美ちゃんのあそこも嬉しく
なって、竜児のおちんちんを抱き締めているんだわ…」
「亜美、お前って奴は…」
亜美は、苦しそうに喘ぎながらも、竜児の首筋に接吻し、浮き上がっている汗を嘗め取った。
「も、もっと、あんたを感じていたいから、あ、あたしが、いっちゃって、意識を失っていても、お願い、そのまま、あたしを
抱き締めていてよ。あたし、あんたの身体に抱かれて、あんたのおちんちんに貫かれたまま、ずぅ~と、あんたと一緒に
居たいんだ…」
先ほどに比べて緩慢にはなってきたが、それで亜美は腰を『の』の字に動かすのをやめようとしない。
本能的と言ってしまえばそれまでだが、その絶頂の寸前まで、快楽を竜児とともに分かち合いたいのだろう。
「亜美…、好きだ…。お前のことが、誰よりも好きだ…」
「あ、う、嬉しいけどぉ、あ、亜美ちゃんの、あ、あそこがぁ!」
亜美の膣が一段と強く締まり、襞という襞が妖しく蠢いて、竜児のペニスをしごくように締め上げた。
その強烈な締め付けに抗うことができず、竜児は、たまらず射精した。
「し、搾り取られるようだぜ…」
亜美はというと、竜児の首筋に縋ったまま、全身をわなかせている。
「あ、亜美ちゃんも、き、気持ちいいよぉ~。あ、亜美ちゃん、いっちゃったのに、亜美ちゃんのあそこは、未だ、りゅ、竜児の
おちんちんが欲しくって、何か、ぶるぶる震えているんだよぉ~」
亜美の膣は、本人も制御できないくらい、貪欲な存在であるらしい。その襞は、亜美が快楽にあてられてぐったりして
いても、なおも執拗に竜児のペニスをしごくように締め上げ続けていた。
「亜美、お前が落ち着くまで、このまま…、挿入した状態で待つが、大丈夫か?」
辛うじて意識を失わずにいた亜美が、瞑目したまま頷いた。
「う、うん…。亜美ちゃん、もう、死んじゃいそうなほど気持ちよくて、頭の中が、ほわん、ほわんしてるんだけどぉ、亜美
ちゃんのあそこは、未だ竜児のおちんちんを食べたがっているんだよぉ。変だよ、これって、絶対変だよぉ!」
竜児は、ちょっと不安になっているらしい亜美を改めて抱き締めた。
勃起し続けている亜美の乳首が、竜児の胸に食い込むように擦り付けられる。
「変でも、何でもいいじゃねぇか。お前のあそこが、俺のペニスと精液を食べたがっているんなら、いくらでも食わせて
やるまでさ」
「で、でも、あんたの体力だって限界があるじゃない…。あ、あんまり無茶すると、あ、明日のあんたの仕事が…」
亜美が、竜児の首筋に白磁のような頬を擦り付けてきた。バイトに反対というよりも、竜児の体調が気になっていた
のだろう。
竜児は、縋り付く亜美の髪を優しく撫でながら、囁いた。
「暫くお前に会えないと思うと、俺のペニスも、お前の中を突いて、突きまくって、滴る汁を啜りたいみたいだぜ…。
実際、二回射精したが、お前の中が、あまりにも気持ちよくって、全然萎えてねぇ」
「りゅ、竜児ぃ…」
「だから、何度でも、もう、本能の赴くままに抱き合って、お互いを貪り尽くそうじゃねぇか」
竜児は、亜美の上体から自身の上体を離し、結合したまま、座布団の上に一時横たわった。
「亜美、動けるか?」
「う、うん…。だ、大丈夫、動けるよぉ」
「だったら、済まねぇが、俺とつながったままで、ぐるっと百八十度回って、身体の向きを変えてくれねぇか」
「う、うん…」
亜美は、竜児の身体の上で自身の身体の向きを変えるべく、のろのろと動き出した。
「あぅ、こ、これ、き、効くよぉ~。あ、亜美ちゃんのお腹が壊れちゃうぐらい、もの凄いよぉ!」
「お、俺もだ…。亜美の中で俺のが擦れて、引っ張られて、もげちまうんじゃないかってくらい、すげえ…」
いわゆる『花時計』。話には聞いていたが、その苦痛と紙一重の快感は凄まじかった。
勃起したペニスが、回転する亜美の膣で、曲げられ、捻られ、圧迫されるのだ。その刺激は筆舌に尽くしがたい。
そして、亜美の膣内もまた、反り返った竜児の極太ペニスでかき回されているのだ。本当に、『壊れる』寸前の、
かつて経験したことがないほどの衝撃を受けているに違いない。
「ま、回った、回ったよ…」
膣内から全身に広がる感覚は、苦痛か、はたまた極限的な快楽か、竜児に背を向けて、後ろ姿を見せている亜美
からは、その表情が窺えない。
しかし、はぁ、はぁ…、という喘ぎ具合から、相当に堪えていることは確かだった。
「亜美…」
竜児は、上体を起こし、その亜美を、背中から抱きとめた。
「やだぁ、あたし、赤ちゃんみたいに、竜児の膝の上に乗せられてるぅ…」
座位は座位でも、先ほどとは逆の背面座位である。
竜児は、ともすればくずおれそうになる亜美を、その背中から支え、亜美も、文句は言ったものの、その実は、
ほっとしたように竜児に身体を預けていた。
「でもさ、こうすると、お前は俺に寄りかかって休むこともできる。その点は悪くねぇだろ?」
「う、うん…、そ、それは、そうね…」
「それに、こんなことも、お前にしてやれる」
竜児は、脇の下から差し入れた手で、亜美の乳房を揉み、その乳首を摘んで、軽く弾いた。
「あう…、そ、それ反則ぅ。あ、あたし、乳首が弱いことを知って、そんなこと、す、するんでしょ。ひ、卑怯じゃない!」
「なら、やめるか? 卑怯だって言うんなら、やめたっていいんだぜ」
「そ、それは…」
本当は、亜美だって気持ちがいいのだ。それを知っている竜児は、乳房をいじるのは左手に任せ、右手を、そろそろと
亜美の下腹部に伸ばしていった。
その指が、茂みの中から飛び出している敏感な部分を摘み上げた。
「あ、りゅ、竜児ぃ、お豆いじるなんて、もっと反則だよぅ!」
亜美は、たまらず腰を『の』の字に動かして、きわどい刺激を癒そうとする。
「お、お前、その腰、やばい感じだぞ」
その腰の動きが、はからずも、竜児への逆襲となったことに亜美は、喘ぎながらも微笑し、白魚のような指で、竜児の
陰嚢と棹の根元を、握り締めるように強く揉みしだいた。
その加虐一歩手前の激しい愛撫に、竜児は、「うっ!」と呻いて悶絶する。
「ど、どうよ? あ、亜美ちゃん捨て身のマッサージはぁ…」
「す、捨て身? な、何が何だか分からねぇが、き、効く、効き過ぎるぜぇ…」
「あ、あたしが、おっぱいと、お豆が弱いのと同じように、あんたがここを弄られるのが弱いってのは、もう、お見通し
なんだからねぇ」
亜美は苦しい息の下、竜児への反撃のつもりらしく、いっそう荒っぽく竜児の股間をマッサージした。
「うわっ! お、お前、それやり過ぎだぁ! それじゃ、愛撫なんてもんじゃなくて、ほ、ほとんど、拷問みてぇな
もんじゃねぇか!」
竜児の、叫ぶような抗議があっても、亜美は、過激な愛撫を止めようとしない。
「な、何度も言ってるけど、あ、あんたって、痛む寸前のぎりぎりの感覚がいいんでしょ? う、嘘言ってもダメ。
あ、あんたのおちんちん、タマ袋を揉むと、一段と、おっきくなるんだからさぁ。こ、この変態…」
「へ、変態は、お前もだろ?」
竜児は、反撃とばかりに、亜美の左乳首をつねるようにしながら引っ張り、茂みの中の敏感な部分を剥き出しにして、
摘み上げ、更には、滴る液を擦り付けた。
「あ、あああっ! そ、そんなに強く摘んじゃだめぇ!!」
亜美の膣がぶるぶると震えながら収縮し、咥え込んでいる竜児のペニスを搾り上げるようにうねうねと蠢いている。
限界が近いのだろう。
だが、それは竜児とて同様だった。
「さ、三度目のフィニッシュ、いくか?」
「う、うん…。あ、たしもぉ〜、も、もう…。あたしのあそこが、竜児のミルク、欲しがってるよぉ」
「よ、よし、亜美、ちょっと、荒っぽくいくぞ」
「き、きてぇ! で、でも、痛いのはいやだよぉ〜」
竜児は、快楽に悶絶しながら半べその亜美に、「大丈夫だ」と耳打ちすると、亜美の大腿部に手を差し入れ、
亜美の身体を持ち上げた。
「あ、あぅ、お、おちんちんが抜けちゃうぅ〜」
亜美の身体は軽かったが、それでも、座ったままでは腕力だけが頼りだったから、大変だ。
竜児は、亜美の身体を、ほんの三センチばかり浮かせると、支えていた手を離した。
支えを失った亜美の身体は、重力に任せて竜児の膝上に落下し、膣が竜児のペニスで鋭く貫かれる。
「ああああああっ! す、凄いよぉ。亜美ちゃんのお腹が、りゅ、竜児のおちんちんで、く、串刺しになってるぅ〜」
「あ、亜美、お、お前の膣だって、い、一段と、動きが妖しくなってきたぜ。な、なんだか、疣だか、襞だかが、にゅるにゅる
動いていやがる。こ、これって、やっぱり、お前がわざとやってるんだろ?」
「りゅ、竜児って、バ、バカ? あ、あそこのお肉を、お、思うように動かせるほど、あ、亜美ちゃん、き、器用じゃねぇし、
あ、あたしのあそこは、あたしの思ってることとは別に、勝手に動いてるんだよぉ」
そう言えば、竜児のペニスだって、更に大きく勃起している。 亜美の膣といい、竜児のペニスといい、
本人の意のままにはならないところが、セックスの妙味なのかも知れなかった。
「あ、亜美、もうちょっとだ、頑張れ…」
竜児は、ともすれば意識を失いそうな亜美を励ますつもりで呼び掛けた。その一方で、渾身の力を振り絞り、
再び亜美の身体を持ち上げて、膝上に落下させた。
「あ、ああああっう! い、いいよぉ! りゅ、竜児のおちんちんが、亜美ちゃんのお腹に刺さってるよぉ!」
「き、気持ちいいんだな?」
竜児の問いに、亜美は涙と洟と涎でぐしゃぐしゃになった顔で、頷いた。
「も、もっとぉ! あ、亜美ちゃんのお腹を、さ、刺して、刺して、刺しまくってよぉ!!」
「お、おぅ、じゃぁ、や、やるぞ…」
またも亜美の身体が浮き上がり、落下した。怒張した竜児のペニスが、亜美の膣を貫いていく。
「うっ!」
それがとどめになったのか、亜美は、嗚咽のようなくぐもった呻き声を一声上げると、四肢を痙攣させて竜児の胸に
もたれかかった。
しかし、痙攣している亜美本人とは関係なく、亜美の膣は強く収縮しながら、疣や襞が竜児のペニスを絞り上げている。
「お、俺も、限界だぁ!」
苦しげに叫びながら、竜児は、白きパトスを、亜美の膣の奥深く、胎内へと解き放つ。
竜児のペニスは、そのまま、どくどくと脈打って、亜美の熱い胎内に三度目の射精を行った。
「うぁ…、りゅ、竜児のミルク、あったかいよぉ〜」
「お、お前の膣から溢れる蜜も、俺のペニスには、結構なご馳走みたいだぜ。な、なんか、全然萎えねぇ…」
「う、うん…。だったら、何杯でもお代わりしていいよぉ〜。あ、あたしのあそこも、竜児のミルクをもっと飲みたいって、
おねだりしてるんだからさぁ」
その後は、何回達したのか、竜児も亜美も分からなかった。本能の赴くまま、互いを貪り、快楽にひたすら身もだえ、
二人は一つに結ばれたまま、深い眠りに落ちていった。
「う、うん…?」
雀だか何だかの小鳥のさえずりで竜児は目を覚ました。
側臥する竜児の横には、陰部を竜児の股間に密着させたままの状態で、竜児と向き合うように横たわり、すやすやと
眠っている亜美の姿があった。
どうやら、何度目かの絶頂を迎えたまま、二人とも気を失って、そのままだったらしい。そして、その二人には毛布が
掛けられている。
「泰子だな…」
その毛布の上には、『カゼひいちゃうよ』という、泥酔した泰子らしいミミズののたくったような文字が記されたメモが
置かれていた。
「泰子に、こいつと裸で抱き合ってるの、見られちまったみたいだな…」
実の母親に、フィアンセを自称する娘との不純異性交遊の現場を押さえられてしまった。
竜児にとっては、失態もいいところだが、今となってはどうしようもない。
「ま、泰子だからな…」
泰子は、竜児と亜美が結ばれることを祝福してくれているし、何よりも、竜児との初体験で膣痙攣になった亜美を、
その陰部を啜ってまで介抱した当人である。
であれば、竜児と亜美がまぐわって、さかっている最中を目撃しても、取り乱したりはせずに笑って許すか、はたまた、
お茶でも啜りながら、二人の狂態をじっくりと鑑賞しさえするかも知れない。
竜児は、亜美と陰部を重ねたまま、首を廻らせて、置時計の時刻を確認した。
午前五時。起床予定は六時だったが、寝坊するよりはいい。
「お、おい、亜美、起きてくれよ」
竜児は、脚を絡めるようにして、竜児と身体を重ねたまま眠り続けている亜美の身体を揺さぶった。
その揺れに呼応して、もじゃもじゃとした亜美の陰毛が、竜児の亀頭をさわさわと擦り上げる。
「うぇ、こいつのあそこが、もろに俺のに当たってるんだった…」
そう意識したとたん、眠っている途中に萎えて抜けたらしい竜児のペニスが、再び勢いを盛り返してむくむくと膨らみ、
対面していた亜美の陰裂を、突っつき始めた。
「ま、まずいじゃねぇか!」
竜児は、焦ったが、いったん勃起したペニスは鎮まってくれない。焦れば焦るほど、固く、大きく怒張してくる。
いきり立ったペニスの先端は、ちょうど亜美の陰部、それも、行為の余韻か、微かな滑りが残っている膣口付近に
ぴったりと合わさってしまった。
射精しまくったというのに、なんでこんなに元気なんだろう、と、竜児は自分のペニスが恨めしくなった。
疲労感はあるにはあるが、あれほど激しい行為をしたにしては、それほどでもない。
「俺って、意外に絶倫だったのか?」
セックスに慣れてきたのかも知れないが、血筋によるものも否定できない。
泰子を孕ませた、あの忌むべき男の血を、悲しいことに受け継いでいるのだから。
「う~ん、やぁだぁ~。亜美ちゃん、ねむぅ~い」
悩む竜児をよそに、亜美が、不満そうに頬を膨らませながらも、うっすらと目を開け始めた。
「よ、よぉ…、き、気分はどうだ?」
亜美の陰部に勃起したペニスが接触していることを言及されないように、竜児は、当たり障りのない言葉を亜美に掛けた。
その亜美は、「うん…」と物憂げに頷いた後、腰を竜児のそれに重ねたままで、身体のこりをほぐすように、伸びをした。
その瞬間、竜児のペニスが、亜美の秘所を突くようになり、寝ぼけていた亜美の表情が、困惑したように硬直した。
しかし、それは束の間で、次の瞬間には目を細め、口元を歪めた性悪笑顔に豹変し、その妖艶な流し目で、竜児の
顔を窺っている。
「あたしは、下のお口で竜児のミルクをたくさん飲んだから、気分は最高よ。で、あんたは?」
「お、おぅ、お、俺も、き、気分は悪くねぇよ」
亜美が、うふふ、と妖しい含み笑いをしている。
「そうよねぇ、あんたって本当にタフなんだわ。あれだけ出したのに、今はもう元気一杯って感じじゃなぁい?」
「お、おぅ…」
その『元気一杯』が狭義には竜児の身体の特定の部位を示すことは明らかだった。
「ねぇ、なんか、さっきから、固い物が、亜美ちゃんの大事なところに当たっているみたいなんですけどぉ〜」
「き、気のせいなんじゃねぇのか?」
「え〜っ? リアルそのものの実感だよぉ。何かさぁ、お腹を空かせた大蛇が、鎌首もたげて、甘い蜜を啜ろうとして
いるみたいなんだけどぉ〜」
言うや否や、亜美は陰部を竜児のペニスに押し付けてきた。滴る愛液で陰裂が、既にじっとりと湿っていることが、
竜児の亀頭にも感じられた。
「お、おい、朝っぱらから、さかるのはやめようぜ。それよりもだな、俺たちが裸のまま、引っくり返っているのを泰子が見ちまったみたいだぞ」
竜児は、泰子のメモを亜美に示した。いくら何でも、泰子に見られたことを知れば、大人しくなるかと思ったからだ。
しかし、発情雌チワワはこの程度のことでは引き下がらない。
「なぁんだ、泰子さん見ちゃったのかぁ…」
「なぁんだ、って、これはまずいだろ? こんなところでエッチしないで、さっさと起きた方がいいんじゃねぇか」
亜美は、性悪笑顔を、けっ! と歪めて、せせら笑った。
「竜児って、やっぱバカ? 先日、亜美ちゃんは、泰子さんに大事なところを散々嘗められ、指を突っ込まれたんだよ。
それを思えば、もう、エッチしているところを見られようが、どうってことないじゃん」
「いや、あれは治療つうか、介抱だろ? エッチを見られるのとは意味が全然違う」
「でもぉ、あたしが竜児に処女あげたのって、昨日、泰子さんに知られちゃったからねぇ」
「え?」
こともなげに宣う亜美に、竜児は絶句した。
「うん…。あんたが出かけた後、素っ裸でお風呂場に行くところを、寝起きの泰子さんに見られちゃってさぁ。で、あとは、
泰子さんが、『うん、うん、亜美ちゃんも、女の子から、女になったんだね〜』って、何か喜んでもらえたんですけどぉ」
「お前って、羞恥心ってもんがねぇのか?!」
亜美のような一筋縄ではいかない女に、恥じらいとか、慎みとかを期待する方が間違っているのだろう。
そう言えば、高二の時に、水着を買うのに付き合ったことがあったが、水着姿のまま店内を平気でうろつく大胆さに
驚かされたものだ。
裸族である北村の幼馴染みだけあって、この女もまた、北村みたいに変な性癖を備えているのかも知れない。
「何か、つまんないこと言ってるけどさぁ…」
亜美の変態ぶりを北村のそれに対比させるという余計なことに気を取られていた隙を突いて、亜美が竜児のペニスに手を伸ばしてきた。
「お、おい、いきなり何しやがる!」
「ここをこんなにおっきくして、羞恥心? ばっかじゃねーの? この大蛇みたいなおちんちんで、亜美ちゃんの蜜壷を
弄ぶつもりなのねぇ。ほぉ〜んと、おぞましい…。こんな、おちんちんには、お仕置きが必要だわ」
『蜜壷を弄ぶ』にしろ『お仕置き』にしろ、結局、やることは同じである。
「お、おい、早起きしたからって、いつまでも寝そべっているわけにもいかねぇ。朝は、忙しいんだよ。
俺は春田の家庭教師をしなくちゃいけねぇし、お前だって、今日は東京の実家へ帰るんだろ?
だったら、さっさと起きて、シャワー浴びて、飯の支度して、掃除や洗濯をしなくちゃならねぇ」
淫乱性悪女である亜美に正論は通じない。このことを竜児は彼女との密な付き合いで、嫌というほど把握している
のだが、何も言わずに、このまま亜美の意のままになるのもしゃくである。
その亜美は、竜児のコメントに、一瞬、不満そうに頬を膨らませたが、すぐに、元の性悪笑顔、いや、何かの悪だくみを
思いついたかのように、妖艶な笑みを浮かべた。
「う〜ん、あんたの言うことにも一理あるわね…」
亜美は、妖しい笑みを浮かべた白磁のような面相を、竜児の鼻先に突き付けた。
「お、おぅ? お、お前にしては、も、物分かりがいいじゃねぇか」
「そぉ? 亜美ちゃん、いつだって物分かりがよくて、気立てがいいんですけどぉ」
「そうかぁ? 昨夜は自分から『性悪女』とか言ってなかったか?」
そのツッコミにむかついた亜美が、竜児の陰嚢を思いっきり掴んできた。
「うぁ! いててて! わ、分かった、お前は物分かりがよくて、気立てもいい、そして、か、可愛い。
こ、これでいいだろ?」
「うん、分かれば宜しい…。で、あんたの言い分を聞き入れて、折衷案を考えてみたんだけど? どう?」
「折衷案?」
その折衷案とやらのため、竜児は、浴室で泡だらけになって、亜美と抱き合っていた。
正座した竜児の上に、亜美が乗り、その亜美の膣を竜児の極太ペニスが貫いている。
昨晩も試した対面座位で、二人はつながっていた。
シャワーを浴びたいし、セックスもしたい、ということで、またしても『ソープランド亜美』の営業というわけである。
「あ、あたし、この体位、やっぱ好きかもぉ…」
泡だらけの身体を竜児に擦り付け、腰を『の』の字に振りながら、亜美は早くも陶然としている。
「お、おい、あんまり腰振るなぁ! こ、このままじゃ、簡単にいっちまう」
「別にいいじゃん…。
あんたが先にいっても、この体位だったら、あたしは自分がいくまで、あんたにしがみついていられるんだからさぁ」
「お、お前なぁ…。それって、自己中心性が過ぎるぜ」
「あら? なら、あんたも頑張って、亜美ちゃんと一緒にいけばいいだけじゃない。それに、亜美ちゃんが先にいっても、
あんたも亜美ちゃんがどうなろうと構わずに、突いて、突いて、突きまくればいいだけじゃん」
そう言いながら、亜美は、ぐっと、腰を落として、竜児のペニスを更に深く飲み込んだ。
「あ、亜美、き、きつきつだ…。お、お前は大丈夫なのかよ」
「だ、大丈夫。でも、き、効くぅ~。あんたのおちんちんが亜美ちゃんの内臓を串刺しにしてる感じだし、あ、亜美ちゃんの
お豆が、あんたの茂みに擦られて、あそこがじんじんするよぉ~」
亜美が、竜児の首筋にもたれながら、苦しそうに喘ぎ始めた。このまま竜児も腰を突き上げたら、亜美は早くもいって
しまいそうだ。そうすることで、とっとと、『ソープランド亜美』なんて戯れ事を終わらせてもよかったが、ちょっとばかり
気が変わった。
「なぁ、暫くは会えないんだから、慌ててやらずにさ、こうして抱き合ったまま、ゆっくりいこうじゃねぇか」
快楽にあてられて、涎を垂らしたまま呆けていた亜美が、「へ?」と、間抜けな返事をした。
「いや、俺、ちょっと、お前に訊きたいことがあってさ…」
「き、訊きたいことって、なぁに?」
亜美が、涎を、手の甲で拭いながら、表情をいくぶんは引き締めた。
「昨日なんだけどよ、電話では、お前、何かすげえ怒ってたけど、恐る恐る帰ってきたら、『女は男が頑張ってるのを
見守るしかない』とか、しおらしくなっててさ…。なんで、急に、あんなことを言い出したのか、気になってたんだ…」
自分で作った夕食を竜児に初めて食べさせる、というのが理由としては考えられそうだが、それのみではないだろう。
何か、他に、大きな理由があるに違いなかった。
「そ、そんなこと、どうだっていいじゃない…。
あんたがバイトをするならするで、それをあたしが反対したって、どうしようもないことに気付いただけなんだからさぁ」
その亜美は、竜児に貫かれる快楽に喘ぎながら、うふふ、と妖艶に笑った。
「バイト? 俺はボランティアで春田の家庭教師をしているんだが?」
亜美は、何らかの方法で、竜児がアルバイトをしていることを確認したに違いない。
それでも竜児は、亜美がどうやって竜児のバイトを確かめることができたのかを訊き出すために、敢えてバイトである
ことを否定してみた。
「うふふ、この期に及んで悪あがきはみっともないわよ。昨日、ある人に電話して、あんたがボランティアの家庭教師
じゃなくって、春田の内装屋でアルバイトしてるって、分かっちゃったんだからぁ」
やはり、そうか、電話の相手は春田だろうか、と竜児は怪しんだ。北村という線もあり得なくはないが、北村は、竜児の
親友であり、かつ分別があって義理堅い。しかし、春田はその限りではないからだ。
「誰かって、誰なんだ?」
口を割ったのは春田に違いないと思っていたが、念ため訊いてみた。
「誰って、はっきりしないけど、春田のお母さんみたいな人に教えてもらったんだけどぉ? 何か、問題ある?」
「え? 春田のお袋さん?」
予想外の人物を挙げられた。そのことで困惑している竜児へ、例の意地悪そうに細めた眼を向けながら、亜美は、
してやったり、とばかりににんまりとした。
「ど、どうせ、あんたのことだから、春田や祐作には口裏合わせをしてるでしょうから、春田の携帯じゃなくて、春田の家
へ電話してみたの。そしたら、春田のお母さんらしい人が出てきて、あんたが内装業のアルバイトをしているってことを、
お、教えてくれたわ」
しまった、そうきたか、と竜児は、歯噛みした。
「ま、まぁ、ばれちゃしょうがねぇ。たしかに俺は春田の家の内装業のバイトをしている。
でもよ、春田の家の電話番号なんて、お前は知らねぇだろう。卒業アルバムでも見たのか?」
たしか、亜美は卒業アルバムを実家に持ち帰っているはずだ。であれば、またぞろ、竜児の卒業アルバムを無断で
開いたのかも知れない。
「そ、卒業アルバムぅ? あ、亜美ちゃん、そんなもの見なくたって、春田の家の電話番号は分かっちゃったんです
けどぉ?」
「卒業アルバムを見ていない?!」
理解不能で眉をひそめている竜児に、亜美は、出来の悪い我が子に対するような目を向けている。
「あ、あんた、あ、亜美ちゃんとのセックスのし過ぎで色ボケ? そ、それとも慣れない肉体労働で脳が劣化したの?」
「ボケでも劣化でも何でもいいから、教えてくれよ」
その亜美は、喘ぎなのか、竜児に呆れたのか、大きくため息をつき、更には腰を振って、「あん…」と妙に色っぽい
嬌声を上げた。
「で、電話帳って知ってるの?」
「あ、そうか…」
一般家庭なら、迷惑電話を防止するため、電話帳には番号を記載しないのが現代では常識化している。しかし、
事業を営む者であれば別だ。古典的ではあるが、電話帳の記載は、最も金の掛からない広告と言ってもよい。
「わ、分かった? 春田の家は、商売をやっているから、電話帳にも出ているのよ。だ、だから、卒業アルバムが
なくたって、で、電話を掛けられたというわけ…」
はぁ、はぁ、と喘ぎ、端正な面相を苦しげにしかめながら、亜美は種明かしをしてくれた。
しかし、春田の母親とはどんな人だったのだろう。竜児が夕方事務所に戻ってきても、事務所には社長である春田の
親父しか居なかった。竜児は、春田の母親の代わりに、その伴侶である春田の親父の姿を思い浮かべた。
春田本人とは違って、外に打って出るタイプそのまんまの男。それで、竜児にも、亜美の態度がなぜ変化したのかが
分かってきた。
「お前、春田のお袋さんに諭されたな…。俺がバイトしてるって聞かされたとき、俺は働き過ぎだから、バイトは無理です、
辞めさせて下さい、とか直訴したんだろ? で、その時に、女は男のやることを見守るだけ、とか言われたな?」
そう言いながら、竜児は、腰を亜美に向かって突き上げた。
竜児のペニスが、亜美の子宮を突き上げ、亜美はたまらず、「うっ!」と呻いて、竜児の身体にしがみついた。
「そ、そうよ…。春田のお母さんらしい人に、お説教されちゃった…。た、たかがアルバイトでも、男の子が無理して仕事
しようとする時は、必ず何か大切な理由がある。だ、だから女は男のやることを邪魔しちゃいけない。無事に成し遂げる
ことを祈りながら、見守ってやるだけだって…」
喘ぎながらそう言うと、亜美は、肩を落として瞑目した。
「お、おい、大丈夫か?」
亜美は、眉をひそめて微かに頷いた。
「い、いきそうだけど、未だ、何とかもちそう…。そ、それにしても、春田のお母さんらしい人の言うことはもっともだって
思ったわ。あ、あたし、あんたのために、って思ってたけど、結局、あんたの邪魔になってたんだ…。
それが、ようやく分かって、恥ずかしかった…」
亜美は、竜児の肩に再び縋った。その亜美を支えている竜児の肩に、亜美の涙が滴り落ちる。
「な、泣くなよ…」
「う、うん…。でも、恥ずかしいだけじゃなくて、ちょっと悔しいんだよ…。頑張ってるあんたを見守るしかできないなんて、
は、歯痒くて情けないんだよ…。ね、ねぇ…、せめて、あんたが何のために無理して働くのかだけでも教えてよ」
だが、その要求には応えられない。全てを明らかにできるのは、バイトが無事に終わって、亜美に指輪を渡す時だ。
「悪いな…。時期が来たら必ず教えるし、必ず分かる…。今はこれだけしか言えねぇ。でも、勘弁してくれ」
竜児は、亜美に詰られることも覚悟の上だったが、亜美は、力なく竜児の肩に顎を乗せて、何も言わなかった。
互いに身じろぎ一つしないまま、気詰まりな沈黙が暫く続いた後、
「そう…。なら、いいわ…。春田のお母さんらしい人に言われたように、あんたには口出ししない…」
「お、おぅ、済まねぇ、本当に済まねぇ…」
「だったら、この話題はここまでだわ。湿っぽい話は、お色気むんむんの『ソープランド亜美』にはふさわしくない…」
亜美は、腰の動きを再開した。
「お、おぅ、こいつぁ効くぜ!」
だが、竜児も負けてはいない。『の』の字を描くような亜美の腰の動きに抗するように、自身の腰を亜美とは逆に旋回
させて、亜美の秘所を翻弄した。
「あ、あんた、そ、その向きは、やばいってぇ! こ、壊れちゃうぅ」
もう、二人とも泡だらけになったまま、互いにしがみつきながら、ひたすら腰を動かし、それで得られる快楽の虜に
なっていた。
充血した亜美の膣が、怒張した竜児のペニスをじわじわと締め付け、竜児のそれも、その圧力に抗うように大きく膨れ、
反り返っていく。
「あぅっ! ほ、本当に今度こそ、げ、限界ぃ〜!」
「お、俺もだぁ〜!」
互いに達したことを確かめ合うように、竜児と亜美は絶叫し、竜児のペニスは、びくびくと脈動しながら、肉の襞が
粘液を分泌ながら妖しく蠢く秘所の奥、その胎内目がけて生命の源を解放した。
シャワーを浴びて、仕事着である古びたジーンズとTシャツを着た竜児は、沸き立つ寸前の味噌汁の味見をした。
出汁は、いつものように出汁の素は使わずに、煮干しからとっている。
「まぁまぁかな?」
やはり、料理というものは、手を抜かなければ、それだけ美味しくなる。
脱衣所からは洗濯機が作動する音が聞こえてきた。亜美が、汚れ物を洗ってくれているのだ。
「いい匂いね…」
その亜美が、台所に居る竜児の傍らに寄り添ってきた。
「毎度代わり映えしないけどよ、もうちょっとで食べられる。そろそろ、ちゃぶ台の方で待っててくれ」
「配膳する必要があるでしょ? だから、あたしも手伝うよ」
亜美は、ひじきの煮物の入った小鉢と、オーブンで炙った鶏のささ身にわさび醤油を添えた小皿を盆に乗せて
持っていった。
「まぁ、そうだな…。そうしてもらえるのは、たしかに有難いか…」
竜児は卵三個をボウルに割入れると、それに塩胡椒少々と、生クリームを加え、菜箸でかき混ぜた。
熱したフライパンに油を入れ、馴染ませてから、余分な油はキッチンペーパーで拭い、そこにボウルの中でかき混ぜ
た卵を注ぎ込んだ。
やや低温のフライパンの中で、卵はじわじわと固まり始める。竜児は、フライパンを廻らせて、卵の薄い膜を作っては、
それをフライパンの片隅に寄せ、寄せた卵からにじみ出る卵の液を再びフライパン全体に広げて薄い膜にする動作を
繰り返した。
「プレーンオムレツなの?」
ご飯と味噌汁を配膳するつもりで台所に戻ってきた亜美が、竜児の鮮やかな手つきに感心し、その手元を見ている。
「おぅ、単純な料理だけど、たまに食べたくなるんだ。今日は、ご飯にしちまったが、このオムレツなら、ソーセージと
一緒に黒パンとかの方が美味しいかもな」
そう言いながら、竜児は、出来上がったオムレツを大きめの皿に移し、バターを一片載せた。余熱でバターは溶け、
その匂いが、台所に広がった。
「バター風味ってのもよさそうね」
そのオムレツを、竜児は、包丁で二ヶ所切れ目を入れ、三つに切り分けた。切り口からは、半熟の卵がとろりと流れ
出てくる。
「焼き加減は、こんなもんかな? 久しぶりに作ると、どの程度半熟にするのかの勘が鈍るが、まぁ何とかなったようだ」
「嫌味な謙遜…」
亜美は、傍らの竜児を肘で軽く突いて、悪戯っぽく笑う。
「いてぇな…」
「あたしや祐作、麻耶とか奈々子とかは、あんたって人間をよく知ってるから問題ないけど、外では注意した方がいいよ。
過剰に謙遜するのをウザイと思う奴が居るからさぁ。特にバイト先とかで…」
竜児は、サブ以下の職人たちを思い浮かべた。リーダーであるサブは問題ないだろう。
しかし、ノブオとテツ、特にテツは不気味だった。
「そうだな、注意するよ。あと九日間、とにかく続けるだけだ…」
その竜児の言い回しが、亜美は気になったのだろう。
「バイト先に、変な奴とかが居るの?」
鋭いな、と竜児は内心舌を巻く。女の直感というものは侮れない。
「いや、大丈夫だ。職人のリーダー格は結構まともな人だったよ。お前に付けられたキスマークを春田が見つけて
大騒ぎしたが、その人が、単なる皮膚炎ということにして、その場をとりなしてくれたんだ」
『キスマーク』で、亜美が、申し訳なさそうに顔をしかめた。
「あれはねぇ…、たしかにやり過ぎ…。今は、ちょっと恥じてる…」
「まぁな、俺のバイトを妨害するつもりでやったんだろうが、大勢に影響はなかった…。もう、それでいいじゃねぇか」
竜児は、形よく突き出た亜美の尻を撫で、当人に「きゃっ!」という悲鳴とも嬌声とも判じがたい一声をあげさせると、
その反撃を食らう前に、オムレツを載せた皿を持って、台所から退散した。
「もぅ…、不意打ちなんて卑怯よ」
配膳された料理を食べながら、亜美は、不満げな口調で訴えた。しかし、目は悪戯っぽく笑っている。
内心は、そう悪い気分ではないのだろう。
「まぁ、いいじゃねぇか。そういった不意打ちを、俺はお前からいつも食らっているんだぞ。たまには、立場が逆でも
いいじゃねぇか」
「そうね…。何せ、しばらくは会えそうにないんですもの。何なら、食後に、もう一ラウンドするぅ?」
竜児は、亜美の艶っぽい冗談に、苦笑しながら首を左右に振った。
「それは、お前が戻ってきてからのお楽しみにしようや」
「うん…。その代わり、帰ってきたら、昨夜みたいに気を失うまでやっちゃうからね。その点は、覚悟しておいてよね」
「お、おぅ…」
性悪笑顔を浮かべて上目遣いに竜児を見ている亜美に、昨夜と、先ほどの浴室での情事による疲れの色は窺えない。
こいつも結構タフなんだな、と竜児は思った。
「しかし、『帰ってきたら』って、本来なら、これからお前が行く実家こそが、帰るべき場所なんじゃねぇのか?」
亜美は、その一言で、不満げに頬を膨らませた。
「実家はねぇ、今のあたしにとっては敵地も同然だわ…。表面上は、ママとはうまくやってるように見えるけど、高二の
三学期から、色々とママには逆らってきたからねぇ。ママも、『手のつけられないバカ娘』ぐらいには思っているでしょ」
竜児は、こともなげに宣う亜美を見ながら、味噌汁を啜った。親子といえど、一度関係がこじれると、その修復は簡単
ではないらしい。
「これを機会に、お袋さんと関係を修復とか…。あっ、そうか…、い、いやぁ、済まねぇ…」
仮に亜美と川嶋安奈との関係が修復された場合、亜美と竜児との関係にも大きな影響が生じる得ることに気付き、
竜児は口ごもった。
「でしょ? ママと関係修復するってことは、結局、あんたと受験勉強する前の、ママの言いなりに動いていた、バカな
あたしに戻るってことなのよ。あんたと一緒に弁理士になることだって叶わなくなる」
「そうだったな…。俺たちは、自分の力だけで社会に認めてもらえる道を模索して、弁理士を目指すことにしたんだ。
俺にとっては、見た目のまずさをカバーし、お前と結婚できるステータスを得るため。そして、お前は…」
「うん、あたしは、女優川嶋安奈の影響から脱するために、頑張っていくことを決意したんだわ」
「おぅ、俺たちは、誰の干渉も受けずに、一緒になるんだ。だが…」
竜児は、考え込むように、眉間に皺を寄せた。
「どうしたの? 急に、黙り込んで」
「いや、そうなると、お前のお袋さんが、何か仕掛けてきそうで…。それが、ちょっと気になってな…」
「そうね、それが不気味なのよ。電話で接した限りでは、妙に優しくて、却って気持ち悪かったわ。それに、問題なのは、
あんたの存在。ママは、あんたの存在を知らないみたいだけど、油断はできないわね」
「興信所とかを使えば、俺の存在なんか簡単に炙り出せるだろう。それに、お前のお袋さんほどの大物になれば、
わざわざ興信所に頼まなくても、事務所のスタッフが俺の存在を嗅ぎ当てるだろうさ」
川嶋安奈にとって、竜児は、亜美を女優にするという夢を打ち砕いた敵にほかならない。したがって、亜美が実家に
戻ったのを機に、もはや亜美を大橋には戻さず、そのまま竜児との縁を切らせる、ということもあり得るだろう。
更には、竜児が、亜美の貞操をやぶった張本人だと知ったら、業界でそれなりに恐れられている川嶋安奈のことだ、
不法行為すれすれの手を使ってでも、竜児にその責めを負わせるかもしれない。
「気をつけてくれ。お袋さんは、悪人じゃねぇとは思うが、俺はあの人にとって敵も同然だ。俺とお前を別れさせるような
算段をしているかも知れねぇ」
「だから、実家は敵地なのよ。竜児を敵視しているママは、あたしにとっても敵なんだから。でも、行かなきゃならない」
亜美が静謐な瞳を見開いて、竜児の顔を涼やかに見ている。
そこには、不安や、怒りや、恐怖といったものではない、亜美の決意が窺えた。
「理由があるのか?」
亜美は微かに頷いた。
「別荘の鍵を借りなきゃいけない。別荘は鍵も含めて、全部ママの支配下にあるからね。どうしたって、行かなきゃいけ
ないんだわ」
「おい、おい、鍵はお前が持ってると思っていたぜ。よりにもよって、お袋さんが管理してるのか…」
竜児は、錯乱した亜美が、深夜に『別荘に行って、エッチしよう』と喚いた時のことを思い出した。
あの時は、本当に行かなくてよかった。行ったとしたら、鍵がないまま、軒下で野宿ということになっただろう。
「一応、鍵は、別荘の敷地内に埋めてあるのよ。いざとなれば、それを掘り返して使える。これは、現地に行って鍵を忘
れた時の非常用ね。最悪は、これを使うことになる。でも、それじゃ、いくらオーナーの娘といっても不法侵入なのよ。
適法に、別荘の使用許可をもらってくる。そのためにも、行かなきゃいけないの」
「しかしなぁ…」
竜児は、関係がこじれている川嶋安奈が、亜美に別荘の使用を許可するとは思えなかった。
竜児が、川嶋安奈の立場だったら、間違いなく亜美の申し出は拒絶するだろう。第一、一緒に泊まる相手は、
川嶋安奈の敵も同然の竜児なのだ。
「その点は、適当な嘘をでっち上げないといけないわね。また、麻耶や奈々子に口裏合わせをしてもらうことにするわ」
また、それか…、と竜児は嘆息した。
「なぁ、そんな子供だましが通用するか?」
「そうね、通用しないかも知れない。むしろ、通用する可能性の方が少ないでしょうね」
亜美は、静謐な瞳のまま、落ち着いていた。
「それでもやるのか?」
「それでもやるのよ。あたし、高二の時に言った、『夏中一緒に過ごす』っていうのを叶えたい。そのためには、
ある程度は、ママのご機嫌もとるつもりよ。そうして、ママを油断させてから、用件を切り出そうと思っている」
竜児は、実家に戻った亜美を想像してみた。おそらく、川嶋安奈は、有名人が来場するパーティーとかに亜美を
引き連れ、芸能界の大物や政治家等の有力者に引き合わせたりすることだろう。
華やかな世界ではあるが、罠も仕掛けられているに違いない。
「何か、要注意だな。魑魅魍魎が巣食う芸能界でのし上がった川嶋安奈だけに、何かを企んでいることは確かなんだ
が、その何かが想像できねぇ」
「それは、あたしもそう思う。ママって、本当に食えない人だからね。でも、あたしだって負けない。
ママに対しては面従腹背を貫いて、その裏をかいてやるつもりなんだから」
竜児は苦笑した。たしかに、亜美と川嶋安奈は親子なんだろう。竜児を一途に思いながらも、虚言や、時にはごり押
しで竜児を翻弄する亜美は、川嶋安奈から一筋縄ではいかない食えないところを受け継いでいるらしい。
そんな竜児の思考を、亜美は敏感に感じ取ったのだろう。
「な、何よ、変に笑っちゃって。感じ悪いわねぇ」
静謐な表情は、お馴染みの頬を膨らませたブス顔に戻っていた。竜児は、やれやれ、と苦笑しつつ、ほっとしたよう
にため息をついた。
「まぁ、お前が実家に行くのは正直心配だけどよ、もう、俺が心配したってどうしようもねぇな。で、あれば、さっさと飯を
食っちまおう」
「そうね…」
二人は、食事に専念した。料理はいくぶん冷めかかっていたが、それでも、十分に美味しかった。
「このプレーンオムレツなんか、焼き加減が絶品よね。半熟部分がとろっとしてて…、あたしもこんなの作れるようになり
たいなぁ…」
「すぐになれるさ。昨日食わせてもらった水飴入りの卵焼きだって、なかなかのもんだったぞ。亜美は筋がいい。勉強
だって、やり始めたら、すぐに成績が上がったし、いろんな分野で、お前は素質があるよ」
世辞ではなく、本心から言ったことが分かるのだろう。亜美は、ちょっと、頬を染めて、微かに頷いた。
そして、照れ隠しのつもりなのか、再び、プレーンオムレツを口にした。
「ご飯にも合うけど、さっきあんたが言ったように、ライ麦の入ったドイツ風のパンとかと一緒に食べるといいかも
知れないわね…」
「本当は、今朝は、ご飯じゃなくて、パンにしようと思ってたんだ。まぁ、買いそびれて、結局、こうだが」
「パンにするつもりだったの?」
竜児は、顎を引くようにして軽く頷いた。
「最近なんだけどよ、駅前に、天然酵母使用を謳うパン工房ができたろ?」
「あ、知ってる。口コミでかなり高評価なお店よね。奈々子は、目ざとく開店初日に行って、好みのパンを買い漁った
らしいけど」
「あそこは、売れ筋の菓子パンやフランスパンだけじゃなくて、ドイツパンも作っているところがいい。
俗に黒パンと呼ばれるミッシュブロートなんか、いっぺん試しに買ってみたが、ちゃんと、サワー種使ってるんだな。
酸味があって、それでいてライ麦の微かな風味があって、なかなかのものだったよ」
「へぇ〜、そうなんだ」
パンの話題に妙に食いつく亜美に、竜児はちょっと意外な感じがした。
「お前ってさぁ、本当はご飯よりもパン食が好みなのか?」
亜美は、笑って首を左右に振った。
「あたしも、どっちかというと、ご飯党だよ。パンも食べるけど、普通の白パンとかじゃ物足りないってだけ。
どうせ食べるなら、小麦以外の材料も使った、ドイツパンとかを食べたい」
竜児は苦笑した。
「何だか、好みが俺と同じだな」
「まぁね、似た者同士ってことでいいんじゃないの」
「そうかも知れねぇな。だが…」
「何よ、勿体をつけて…」
亜美が、柳眉を微かに逆立てた。
「問題はだな…、合宿中は、まともなパンが食べられないってことだ。あの別荘は、駅前のスーパーだけが頼りだが、
品揃えにはかなり問題がある。特に、パンとかは、賞味期限ぎりぎりの食パンと菓子パンくらいだからな」
それを聞くなり、亜美の表情が険しくなった。
「あんた、この期に及んで、合宿に反対するつもりなの? これから、あたしが敵地に乗り込んで、鍵をもらってくるって
いうのにぃ!」
「違う、違う、そうじゃねぇって!」
興奮している亜美をなだめるつもりで、竜児は両掌を亜美に向け、できるだけ無害な笑顔を心がけて、左右に振った。
「何もかも、ここで暮らしているようにはいかねぇってことさ。あの僻地に長期間篭もるってことは、それなりの覚悟が
要るってことを言いたかっただけなんだ」
それを聞いて、亜美も、表情を少し和らげた。
「まぁ、不自由なのは確かよね。でも、それがあるから、合宿の意味があるんじゃない。何でもかんでも、楽ができる
街中と違って、少々、苦労するくらいの方が、野心を持てるってもんだわ」
「そっか…」
竜児は、ちょっと嬉しくなった。亜美は、自ら困難に身を投じ、それに耐えるつもりでいるようだ。
単に、自堕落に遊び呆けるつもりで別荘へ行くわけではないらしい。
「それに、パンだけどさぁ…。別荘で焼くってのはどうかなぁ? 最近、インターネットで、粉やイーストの通販をやって
るみたいだし、へんぴな土地に籠城していても、何とかなるかも」
「おい、おい、俺は、イーストで発酵させるパンの類は経験がねぇぞ」
亜美は、困惑する竜児を見て、うふふ、と笑った。
「スーパーマン高須竜児にも弱点はあったってわけだ。そっかぁ、なら、パンは、あたしが何とかするわよ」
「何とかって、お前が、パンを焼くのか?」
亜美は、ちょっと、恥ずかしそうに俯いた。
「まぁ、パンとかにはちょっと興味があってさ…。前から、自前でできないかなぁ、って思ってたんだよね。
それで、パン作りの本とかを読んで、それに、インターネットのレシピとか見て、自分でも焼いてみたいなぁ、
なんて、考えていたんだ」
「でも、簡単じゃねぇだろ?」
「何でもそうでしょ? 簡単にできるものなんか、この世に存在しないんだわ。でも、やると決めた取っ掛かりが
大事なのよ。そうすれば、いつかは願いが叶う。そう言うもんじゃないかしら」
決意があってこそ、願いが叶う。それは、パン作りに限ったことではない。竜児と亜美が挑戦しようとしている弁理士
試験がそうだし、何よりも、諸般の障害を乗り越えて、二人が結ばれるには、結ばれることを信じて、何があっても負け
ないという決意こそが原動力なのだ。
「そうだな。お前の本気、俺は感じたよ。別荘のオーブンも、パン作りには不向きな代物だが、頑張れば何とかなるかも
知れねぇ」
「まぁ、あんたがバイトに精出してる間に、あたしも実家でパン作りとかやってるよ。
本当なら、弁理士試験の勉強でもすべきなんだろうけどさぁ。実家で、それを大っぴらにやると、ママに気取られる
おそれがあるからね」
「法学部の前期試験対策だって言えば誤魔化せないか?」
「そうかも知れないけど、ママって、無学なくせに、人の企みごととかは見抜くのが巧いのよね。だから、疑われるような
ことはしない。それに尽きるわね」
だが、竜児は、亜美の本音が別にあるような気がした。
「お前、本当は、勉強が嫌いなんだろう…」
その辛辣な一言で、亜美は、一瞬頬を膨らませたが、ふっ、と瞑目して、嘆息した。
「それは認めるわ。正直、あたしが何とか勉強できているのは、あんたが傍らに居るから…。あんたが居ない実家じゃ、
張り合いがないのよ。これは分かるでしょ?」
「まぁ、そうかも知れねぇな。俺だって、一人きりじゃ張り合いがない。それに、お袋さんの直感が鋭いってのはたしか
なんだろうな。であれば、疑われるような行為は慎む、これに越したことはねぇ」
「うん、そうだねぇ…」
竜児は時刻を確認した。
「何だかんだで、もう、八時近い。俺はそろそろ春田の家に行かなきゃならねぇ。お前は、どうする?」
「あたしは、この洗い物をして、泰子さんの分はラップに包んで、それから洗濯物を干して、自宅に帰るよ]
言うなり、亜美は、使用済みの食器類を盆に載せ、台所に運んで行く。
その自然な立ち居振る舞いは、もはや竜児の女房といった趣だ。
「じゃあ、洗濯物を干すぐらいは、俺がやっとくよ」
竜児は脱衣所にある洗濯機の蓋を開けて洗濯物を取り出し、それを籠に入れてベランダに向かう。
その途中で、台所の亜美に声を掛けた。
「そういやぁ、昨日は汚しちまったシーツとか、タオルケットとかを、洗っておいてくれたんだな。済まねぇ、恩に着るよ」
自前の黒いエプロンを着用して洗い物をしていた亜美が、いつもの性悪笑顔で振り返った。
「なぁに言ってんだか。この程度のことができなきゃ、合宿なんて無理でしょ? 何せ、へんぴな土地に二人っきりで
一月以上も一緒に暮らすんだもの。互いが、責務を全うするという気持ちがなければやってけないわよ」
「お、おぅ…」
頼もしい、とも表現できそうな亜美の一言に竜児は、ちょっと驚かされた。本当に亜美は変わった。
実乃梨の指摘のように、少しずつ、少しずつ、竜児の影響を受けて変わってきたのだろう。
「何? 目ぇ真ん丸にして突っ立ってるなんて。早く出掛けないといけないんでしょ? だったら、さっさと洗濯物を干し
てきなさいよぉ!」
「お、おぅ、わ、分かった」
竜児は、洗濯物を手早く干すと、昨日と同様に、着替えを入れたディパックを背負った。
「じゃぁ、亜美、済まねぇが、後は宜しく頼むぜ」
台所で、洗った食器を整理している亜美が振り返り、「はーい、あんたも気を付けてね」という、よく通る声で応じた。
「俺からの連絡は専らメールにしとくよ。電話だと、お袋さんに気取られるおそれがあるからな」
「うん、あたしも、メールで連絡するよ。でも、絶対に安全な時は電話するから、その時は、あんたの声を聞かせて」
「お、おぅ、でも、くれぐれも気を付けてな。それと、実家から帰ることになったら、なるべく、早く知らせてくれ」
「うん、もち、そうする…」
台所の亜美に、片手を振って竜児は玄関に向かう。そして、この仕事で使い捨てるつもりの、おんぼろスニーカーを
履いた。
その亜美は、タオルで手を拭きながら台所から出てきて、玄関から出ようとする竜児の腰へ唐突に抱き付いた。
「お、おい、な、何すんだ…」
亜美は、竜児のぬくもりを確かめるように、瞑目して、その脇腹に頬ずりしている。
「ごめん、正直言うとね、実家へ行くのが怖いんだ…。なんか、実家へ行ったら、もうこの家に来れないような気がする」
竜児は、しがみついている亜美の髪を、指先で梳るようにして優しく撫でた。
「大丈夫さ。さっき、俺は、お前の覚悟みたいなもんを感じたんだ。その覚悟があれば、お袋さんにも負けねぇような
気がする。て、言うか、俺たちは負けちゃいけねぇ。負けるわけにはいかねぇんだ」
「う、うん…」
亜美の瞳が微かに潤んでいる。それを隠すかのように、亜美はちょっと乱暴に指先で目尻を拭った。
「あ、あたし、約束する。絶対に、ここに、この家に帰ってくるって…」
「おぅ、俺もお前が帰ってくるのを信じて、待ってるぜ」
「帰ってきたら、ほんとに気絶するまで抱き合おうよ…」
「そうだな…。そのときは、何日間か会えなかった分のエネルギーを、互いにぶつけ合おうぜ」
二人は、玄関の土間で、互いの存在を確かめるように、暫し抱き合った。
竜児には、残り九日間、怪しげな連中とともにする厳しい肉体労働が、亜美には、実家での実母との対決が控えている。
それら全てが恙なく終わるか否かは、神のみぞ知るところなのだろう。
(以下、『指環(後編)』に続く)
183 :
SL66:2009/07/03(金) 01:03:39 ID:MMVMJKze
以上です
途中にジャミング君のお茶目な割り込みがあったのが、これ幸いw
投稿規制よけになりますた。
長い
二次創作は大作になればなるほど読む気が失せる
特にif展開かつ長編は一定のラインを超えると原作との乖離の方が目立って
「もうオリジナルでやれば?」って思ってしまう
というわけでオリジナルなら読みたいから
その時は教えてくれ
俺は好きだぞ
GJ
GJです
俺もこのくらい読み応えがあるほうが好きですね
往年の書き手が続々復活してくれているからこの流れ大事にしたいね。
そんな訳でSL66さんもお帰りなさい。
この調子で後編も期待してます!
まずは感想、エロいっす。
登場人物も、原作の人格がちゃんと出てるから話も読んでて楽しい!
GJ
何か見ない間にまた作品がたくさん投下されてる!
週末にまとめて読む楽しみが増えたぜ職人達ありがとう!
西村京太郎、みたいな、文章、ですね。
すまん
俺も長すぎて読むの辛い・・・
長い、長いが読み応えあって面白い……が、ちょっとエロシーンが浮いてるような。
元々SL66氏の作品は生々しいのがいいんだが、これはちょっとやりすぎな気がする。
もうとらドラ関係ねーっつーか何というか…
SL66氏gjですっ
長いとか贅沢すぎだろ…半月とか半年レベルで投下されないスレもあるっつうのにw
オリジナルで読みたいってのには同意。
携帯で1画面50レス表示だと容量オーバーで設定変更しないと見れないとは……
相変わらず1スレに1回大量投下出来る速度は驚異的だな
>>183 いつもながらあーみんが可愛すぎる
量が多くてもこんな美味いモンなら残さず食べます!
ジャミングに負けず頑張ってください
続き待ってます!
196 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 04:22:05 ID:cjDqCWRw
GJ!徹夜でとらPやって、タイガーED100点出したけど、やっぱりあーみんが一番!
197 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 05:12:21 ID:LYgCiCEo
GJっす!やっぱり面白くかつエロな内容で最高だったっす!
じっと待ってて良かったですw
続きもじっくり待たせていただきますのでよろしくお願いします!w
>>184>>192 無駄無駄
彼からすりゃ、君らの意見も「ジャミングですね」キリッ
なんだから。
しっかしジャミングって便利な言葉だよな。俺も他のとこで使わせてもらお
SL66氏、GJ!!GJ!!
ノーパソにUNIX入れてるっつーだけだけあって、ちょっとばかしヘンですよねこのヒト(褒めてます)
なんか、コード書いてんじゃねーの、みたいな雰囲気があります。
いつもながら、お前はペリーローダンか、それともグインサーガかという長編ぶりがまたよろしい。
実際に会ったら、これがまた、話が長そうな感じが
すみませんもういいません
ななこいでの竜児と実乃梨の関係は完全に終了でおk?
ていうか早く続きをプリーズフリーズ!
202 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 08:50:08 ID:ARgtIzOH
>>201 まだあーみんの反攻ターンが終わってないんだぜ?
203 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 09:21:34 ID:9WaLwOgw
SL66さん、GJ!です
ストーリーは面白いし、何よりキャラが生きているのが凄い
竜児や亜美や春田はもちろん、オリキャラの春田の親父がなかなかです
これも、モデルがいるんでしょうか?
長いって言うなら読まなければいいのにね
作者は万人向けで書いてるわけじゃないんだから
何にせよSL66さんGJ
SL66氏の中では竜児と亜美はもう完全に弁護士への進路を辿ることになってるんだな……
作品に文句言ってる奴は荒らしです。
ジャミング君は消えな。
なにはともかくSL66さんGJです!!
SL66氏のファンです。
なんか描写力が半端無いのがすごい。後編楽しみにしています。
>>206 > 弁理士な
そうだった
ごめんね(SL66氏にも)
で、高須棒はまだかい?
あと半分くらい
>>211 あんまり頻繁にクレクレしてるなよw
俺も読みたいが端から見てても最近は度を越えてる気がする
SL66さん乙です
文句じゃなく感想として、キャラの口調に微妙な違和感を覚えますね
これだけ大作なんだし作者様の地が出てくるのはしょうがないんでしょうけれど、他が良いだけに少し残念です
亜美の口調に違和感ありってのは同意
ヤクザの姐御って感じ?
またジャミング君が来てますねw
SL66さんは気にせず頑張ってください!
GJ!
ながいのはいいけどせめて2,3日とかに分けてほしい‥
さすがに40とか50とか一気にきたら読みづらいです‥
>>217 それは我儘だろ、SL66さんにも仕事があるんだから
何時も暇しているわけではないし
時間つくって構成ねって書いてくれてんだから感謝するだけにしとけよ
いや一気にじゃなくて48レス分のできたやつを2,3日に分けて投下してくんねーかなぁと思ったわけですよ
投下するだけぐらいなら時間あるんじゃないかなぁと
おれは一気に読めるほうがすっきりしていいけどなぁ
>>219 投下する方としちゃ、綺麗な区切りが出来ない場合は一気に
読み進めていただきたいのもあるんで、ご了承を。
他の方の作品で一気に読み進めにくい時は、自分はまとめ
サイトさん待ちにしますけどね。特に出張中でPC使わないと。
いいこと思いついた
量が多かったら、何日かに分けて読めばいいんじゃないかな
まぁ自分で調整するのが作家さんにも他の人にも影響のない
一番の解決策だな
確かに、まとめサイトで読むとか、何日かに分割して読むなりすればいい事ですが。
「長くて読み辛い」って理由で読まない人が出るかもしれないって
内容で勝負してる(であろう)作者様にとって、すごく不本意な事なんじゃないのかな?
創作する人が全てそうとは思わないけど、その多くが
”「出来るだけたくさんの人に見てもらいたい」”って気持ちがあるものなんじゃないでしょうか?
実際、不特定多数の人間が見る場所に投下してるわけだし。
読み手に媚びろなんて絶対言わないけど、内容とは別の部分では妥協する事で
読む人が増え、さらに作者様が些細な事(長くて…と言われる)で煩わされずに済むなら
作者様にとって利点になる部分もあるんじゃないでしょうか。
SLさんに任せるのが一番良いよ。
投下するだけなら とかw
まぁ自分では書かずに、文句しか言わないやつには投下の面倒臭さなんかは分からんだろうな
>>225に同意。
>>226 確かに、読むだけだと作者側の気持ちはわからんなぁ
最近SS書き始めた自分は、とても大変だと思い知らされました。
作者本人が書きやすいスタイルが1番かと
二次創作でオレ設定でオレ強えー展開は短編なら面白いけど
長編でだらだらやられるとつまらなくなる
>>224 逆に小出しにすると読みづらいと思う人もいるかもしれない。
>>221みたいに作者側の意図の場合もあるかもしれない。
って事だけは理解しといてもらえれば幸い
この週末で作品投下出来るものはおらんのか!?
ジャミングが多くて無理
ジャミングって、特定の作者を狙い撃ちにしてるよね
それでいて、別の特定の作者は、そうしたジャミングを受けていない
意味するところは明白だ罠
>>232 つまり犯人は自分ですと
どっちにしろ荒しはスルースルー
BY 釣られました。
234 :
黒×実1:2009/07/05(日) 10:22:04 ID:3l4LI/hq
ーーーこの世界の何よりも、裏切らないものがある。
それは逞しくて、とても強い。
多分、漢に生まれたなら,誰もがそれを欲しがるはずだ。
だがそれは,誰もがそれを纏うことがない。
そう簡単には手に入れられないことは、世界の漢達は解っているのだ。
だけど諦めなければ,誰もが纏える。
手に入れるべき漢達が、ちゃんとそれを纏えられる。
そういうふうになっている。
「黒間先生〜っ!ちゃんと聞いてくんなましよ〜っ」
男子、女子ソフトボール部の総部長の櫛枝実乃梨は、半ば呆れていた。
「むうっ?すまんな。今…ふぬっ!カールしていて返事が,ぬおっ!出来なかったが,くぅっ!聞いていたぞっ」
黒間がダンベルを上げるたびに、太く、黒い腕がビクビク脈打つ。
「♪はぁ〜っ↑↑、おらが〜のぉ,ほ〜にぃもぉ〜♪ それにつけて
も…って!何を唄わせるんですかっ!!先生っ」
「違うぞ、櫛枝。くおっ!カールってのは,しゅっ!スナック菓子ではなく,じょっ!上腕2頭筋をだな…」
「違うのは、先生ですっってぇ!!Oh、ディアッ…」
実乃梨は,お手上げのポーズをとる。
丁度3セット目のダンベルカールを終えた黒間は,やっと実乃梨の目を見て答える。
「ふぅうぅっ まあ落ち着け。ハアハア、要は、フウフウ、臨時のソフト部顧問兼、監督になればいいんだな?」
「落ち着くのは,先生なんですってばぁ… はい。先週,監督が長期入院されたのです。
来月からの高校総体の予選にはベンチに監督が座ってないといけない決まりなんですヨォ」
実乃梨は,親友の亜美のウルウルしたチワワ瞳を真似してみた。目一杯可愛くしてみた。自分で言うのも何だが、
ソフトとバイトに魂を売ったMr.レディーにしては,まあまあイケる方なのではないかと思っている。密かに。
しかし,黒間は、実乃梨がアピールした箇所と,違う箇所を凝視していた。
「いい。いいカーフだな…キレてるっ」
ふくらはぎである。実乃梨のふくらはぎを見ていたのである。変態だ。実乃梨はふくらはぎを手で隠す
「ええっ?何?何ですか?ここってカーフっていうの?キレてるって…キレてな〜いっ,うっ!痛恨の寒いギャグっ」
「わかった。いいだろう。早速、俺の指導のもと、一緒にレジスタンストレーニングだ。礼はいらん」
サムズアップし,歯がキラリ。突然の黒間の提案に、実乃梨は、あわててSAY NO!
「だが断るっ 臨時の名前だけの監督でいいんですってば!黒間先生だって迷惑でしょ?」
「よく,球技に使う筋肉は、球技でつけるというが,間違いだ。筋肉は付いていて悪影響は皆無だ。
近年、レジスタンストレーニングはトップアスリートには必須だ。お前なら、知っているだろ」
話が噛み合ない。そういえば,親友の亜美に脳味噌筋肉オンナと言われた過去を思い出す。黒間は続ける
「これをやろう。BCAAだ。じゃあ、30分後に体育館に来い。俺はアップして来る」
黒間は、体育準備室から出て行った。
天上を仰ぎ、実乃梨は渡されたアミノ酸カプセルを3つ。口へ放り込む。つい,噛んでしまった。
っしゃあああっ 仕方ないっ、それが条件なら、黒間先生に付き合うか…
実乃梨は、軽くカーフのストレッチをした後に,体育準備室から出た。
独特の大きなストロークで実乃梨は歩く。腕を振る。だんだん飛ぶよう に加速。
「あっ、実乃梨ちゃん…」
渡り廊下にいた亜美は、そんな実乃梨を見かけたが、声を掛けそびれて しまった。
235 :
黒×実2:2009/07/05(日) 10:25:51 ID:3l4LI/hq
「櫛枝。待たせたな。」
そんなに待っていなかったのだが…,ジャージ姿に着替えた実乃梨は黒間を迎え入れる。
「来たな!プレッシャーッ!!では,宜しくお願いしまーっす。へへっ」
黒間の筋肉は、大きく隆起している。実は実乃梨も、ウェイトトレーニングはしている。5kgのダンベルも持っている。
しかし,ここまでは太くはならない。実乃梨の実弟,高校球児のみどりも,マシントレーニングを取り入れているようだが,
黒間に比べると,迫力が違う。ムキッ!艶のある三角筋に見惚れる。その視線に気付いたのか、黒間は、ポージングを始めた。
左右のサイドチェストを繰り返す。タンクトップの下の胸の筋量が分厚い。ムキッ!血管が浮き出て膨張している。堅そうだ。
丸太のような太い腕は、脂肪がなく、筋肉の形がはっきりスジになっている。なるほど,これがキレてるって事か…。
「この世の中で裏切らないものがある。それは己の肉体。鍛錬すれば輝き、怠惰すれば鈍る。」
えっ?っと実乃梨は黒間を見入る。黒間は実乃梨の正面に立つ。
「ただ,限界もある。どんなに鍛錬しても突破出来ない。まあ、先天的なモノもあるんだ」
「はあ」
「櫛枝は、100万人に一人のいい肉体を持っている。俺には解る。」
黒間は、実乃梨の両肩をわし掴みする。大きな黒間の手に力が入る
「せっ,先生〜、解りましたっ。解りましたからっ!ちょっと,痛い…」
嫌がる実乃梨。しかし,肉体は抵抗しない。痛いが、気持ち良い痛み。いい筋肉だなあと呟きつつ、黒間は次に腰回りを触る。
「むぁああああっ 先生!!くすぐったいっすっっ!!うほほほほっ」
あろう事か、黒間は、実乃梨のTシャツを捲る。うっすら割れた腹筋が見える。
「わぁあああ。ナニナニ!何で、わたし脱がされてんのっ!」
「うむっ やはりな。実にナイス。ナイスバルクだ。」
「バル?バルバル,バル,ブロロロロっーーーーー!!」
実乃梨は,掛け声とともに黒間を撥ね除けようとするが、岩石のように黒間はビクともしない。
「ひええ,このヒト堅ぇ…あっ!そこっ,ああっ!!あんっ!ちょっ!お母さ〜〜んっ」
自分でも、女っぽい声を出したことに驚いた。いつの間にか腹筋、腰から、背筋まで触られている。
「櫛枝!変な声だすな!筋量を確認しただけだ。よしっ!トレーニング始めるかっ」
へなへなっ実乃梨は座り込む。少し後悔し始めたが、まあ、乗りかかった舟だ…
もしかしたらアストロ級の魔球を会得出来るかもだ。それとも単なる死亡フラグなのか…
「へいへい…ストロングイズビューティフル!!ってね!やりますか!!」
実乃梨は、かつてバイトしていたラーメン屋の店長のように黒間の細い目が開いたのを見逃さなかった。
続く
>>235 なんだこの組み合わせはww吹いちまったじゃねーか……
男女の筋肉担当同士というか、とりあえず期待
ちょwwwwwワロタwwww
まさか黒マッスルSSを見る日がこようとは
一年後、ミス・オリンピアに選ばれ、マッスル・アンド・フィットネスの表紙を飾るみのりの姿があった…
241 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 19:48:16 ID:fR21HA7z
>>235みたいなネタはVIP向きじゃねーか?
どっちかと言えば
エロネタならVIPも何もなくオールオッケー
何という濃ゆい中身になりそうなSS
これは期待せざるしかないなw
職人さんGJ!
いやいや、俺が読みたいのは、竜×実のアマアマエロエロの奴だ!
てか、竜×奈の完全エロはまだか!
なんだこいつきめぇ
246 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 06:46:34 ID:gOJKsR20
>>245ああ?喧嘩売ってんのか?ゴラア!(`□´#)
うるせぇ投下されるたびに「てか○○まだ?」とか
無神経なこと書くやつがきもいに決まってんだろ。
てか凄く痛いんですけど…
以下通常通りの流れ
日記まだー?チソチソ
チンコ見せい
250 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 11:48:39 ID:gOJKsR20
>>247あんたの方が痛いつーかウザイんですけど。
251 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 11:49:25 ID:gOJKsR20
また荒らすぞグレギブンバゾ!!グレギブンバゾ!!(笑)
釣り針に引っかかるなよ
なんだもう終わりか
254 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 13:11:43 ID:gOJKsR20
なたまやにかなわまにはにやみなはやはやま
どうした、全然荒らしになってねぇぞ
掲示板を荒らすこと以外、なにひとつマトモにできねえくせに
とっとと氏ね
256 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:08:20 ID:gOJKsR20
257 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:08:56 ID:gOJKsR20
(`へ´)
258 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:09:19 ID:gOJKsR20
きなたはやたなひよわにふのしはたあなひら
259 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:10:23 ID:gOJKsR20
記載して下さい!(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しくお願いします。(笑)、宜しく
260 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:11:22 ID:gOJKsR20
支払い日の愛情表現がクロスちぇんして下さい!(笑)
261 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:12:13 ID:gOJKsR20
ウゾダドンドコドーン
262 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:13:49 ID:gOJKsR20
投下要請、投下要請、作家陣は早期に作品投下せよ。
なお、作家の都合は一切顧みないものとする。
263 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 14:15:11 ID:gOJKsR20
早く投下しないと前スレの二の舞だぜえ、きひひひひひw
「作家」っていう言葉遣いで、この基地外が誰だか
何となく察しがつくな
ほら、いたよね、単発ネタの羅列を「神作」と主張し、
「作家」と言う呼称に執着していたのが(ry
その調子だ
お前さんを立派な荒らしにするために、おとうさんとおかあさんは、今まで頑張ってお前を育ててきたんだ
いいとこ見せてやれ
悪かったよ
親の話は禁句だったっけな
だから泣くなよ…
267 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 15:05:16 ID:gOJKsR20
だから悪かったって
ご両親は、このスレのお前の書き込みを、誇りにおもうことだろう
お前は胸を張っていい
269 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 15:28:24 ID:gOJKsR20
そう
ふぅ…抜いた
「また訳の分からない奴が私のレスを消費してるわね!こうなったわワタヒュが!って竜児!変なことしないで」
「放っておこうぜ大河。それより、な?」
「もう。このエロいぬっっ!」
「はぁはぁ。ココ、でいいか?」
「!ちょ!駄目よ!そんなトコに突っ込ま」
「い…くぞ!」
「だ!だめーーーーーー!!」
「王手飛車取り」ぱちん
「駄目っていったじゃないバカ犬ーー!!」
273 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 17:36:06 ID:SVbZr+Kc
ギシギシアンアン
274 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 18:20:06 ID:gOJKsR20
ツブツブアンアン
275 :
黒×実3:2009/07/06(月) 19:00:41 ID:u4Cbzif2
陽も沈みかけた頃。二人きりの体育館。実乃梨は腕立てをしていた。今日の最後のメニューだ。
「…ごおぉぉ,りゅおおおおおおく…」
ただの腕立てではない。ダンベルを握りながらの深い自重による負荷。
さらに黒間は実乃梨の足首を握っている。いわゆる手押し車の体勢だ。
「ななっ,はちっ,きゅ〜う! じゅうううううううっ!!ヴィクトリー!!」
「よおおおおおっし グッジョォォォブ!!よかったぞ!櫛枝っ!クールダウンしよう」
実乃梨の腕が、ピクッピクッと,軽く痙攣している。色も赤い。
「んはっ!んはっ!ふぁいッ!教官!もといっ! 先生!!あざーっす!」
黒間の手にはマッサージオイル。大量に手に取り、ネトネトこねている。
実乃梨は貞操の危機を憶え、唐突にセブンセンシズが目覚めた。
「BACOOOOON!!まさか…そいつぉ使うんですかい?」
「マッサージだ。櫛枝。トレーニングベンチに横になれ」
「わたし頑丈な方なので…大丈夫です」
「聞こえんのか?ベンチに横になれ」
「嫌です」
「櫛枝…ベンチに横になれ。ちゃんとマッサージしないと明日、筋肉痛が酷くなる」
わかりました…本当は、慣れない本格的なウェイトトレーニングで、マッサージしてほしかった。
しかしなんというか…オイルマッサージは何かの禁忌に触れてしまうような気がしたのだ。
実乃梨は仰向けにベンチに寝る。照明が眩しい。黒間は慣れた手で、横になった実乃梨の肩そして腕を揉み始めた。
「いいか櫛枝。俺が監督するからには、優勝以外考えられない」
「御意っ わたしもです」
触れられている肌が溶けるように気持ち良い。脱力して、黒間にされるがままになる。
「より実践的で効率的なトレーニングが必要だ。俺に任せろ。インターハイの頂点にお前を連れていく」
黒間の迷いのない力強い言葉。いままで実乃梨にこんな言葉を掛けてくれる人は…いなかった。
「野球やっている弟がいるんです。私も昔は野球やってまして、ぶっちゃけ私の方が才能上だった…
でも続けられなかったんです。女子だって理由で。だから.お金を貯めて.自力で体育大に進んで、
ソフトの全日本を目指すんです。それで世界中に叫ぶの私の選んだ掴んだ幸せはコレだぜって…
あれ?わたし、先生に何話してるんだろ…」
油断した。はっと気付いた時に黒間に顔を向けるとなんと 泣いていた。
「ぶおおおおっ!!そうかっそんな想いをっ櫛枝!!ぅわかった!!一緒に世界の頂点をみようっ!」
黒間は感極まり大粒の涙。鼻水。仰向けの実乃梨に泣き崩れる。顔を埋める。諦めるな〜っと嗚咽している。
逆に、意地に縋って、どんな時でも泣かないと決めた実乃梨は、感情を剥き出しにして、自分のために
泣いてくれている黒間を想い、実乃梨のTシャツに黒間の涙やら鼻水やらが着いてしまった事を我慢した。
そろそろ泣き止んで欲しくなって、黒間の手を握ったその時、体育館の入り口に亜美が立っていたのが見えた。
「ふうん…」
ゼッテー誤解された…それに気付かず熱血教師は実乃梨の手を握り返し『この一球は、絶対無二の一球なりっ!』
と、どうやら修造が憑依したようだった。もう苦笑いしか出来ない。
亜美が逃げるように去って行く。先生っわたしトイレっ!!と抜け出し、実乃梨は亜美を追った。
続く
276 :
黒×実4:2009/07/06(月) 19:13:40 ID:u4Cbzif2
「やっべーんじゃね?実乃梨ちゃん。でもまあ、もう18歳だからいいのかっ」
「違うの、違うの、あーみん!誤解、誤解なんだって!」
「わたし見てないから。見てない。見てない。本当だよ?うん」
「だから〜っ!誤解!誤爆!」
「実乃梨ちゃん、先生と手繋いで、目がとっろ〜んってなってたじゃん。それが誤解?誤爆…?」
「しっかり見てるじゃねえかっ!あーみんよぉ、でも誤解なんだってぇ」
ふふんっと面白がっている亜美。櫛枝は、今の亜美には何言っても無駄だと悟り、はぁ〜っと溜息。
「ほらっ!実乃梨ちゃんっ、彼っうふふっ…黒間先生がお呼びよ?」
櫛枝〜っ!っと、黒間が、T-850のように実乃梨を探している声が聞こえた。亜美がまた逃げていった。
もう、追うのはよそう。アイルビーバック。体育館に実乃梨は戻った。空はもう暗かった。
****
夢を見た。
最終回。フルカウント。実乃梨はマウンドにいる。あと一球で、世界一。エベレストになれるのだ。
実乃梨は、ボールをリリース。その0.5秒後。フルスイングしたバッターの先に、ミットに包まれたボール。
地鳴のような歓声、揺れるスタジアム。そして、ベンチから飛び出て来た監督の胸に飛び込む。監督っ!
この一球は、絶対無二の一球なりっ!おっと、投げる前に聞きたかったぜ!んんっ?黒間先生?ええっ?
「ぎゃあああああああっ」
うるせーっと部屋の外から母の声。夢から覚めた。思い切り覚めた。実乃梨は夢を思いだし凹んだ。
果たして夢の内容で凹んだのか、夢だったから凹んだのか…自分でも解らないが。今、何時だろう?
携帯で朝6時前と、時計を確認した時、携帯が鳴った。目覚ましではない着信音。電話だ。
「おはよう!櫛枝!!さっき、エベレストになった夢を見たぞっ!縁起が良い!待ってるぞ」
ツー・ツー・ツー…黒間先生…
ごく親しい友人は、その昔、警告夢を見たという。結果から言うとそれは警告夢ではなく予知夢だったが。
実乃梨は机の上に黒間からもらったゴールド色のプロテインに目をやる。そっか。昨日朝練の約束したんだ。
黒間に監督を依頼した事は部員に話している。皆、受け入れてくれるだろうか。どうやって説得しようか。
黒間は練習のメニューの改善をしたいという。例えば、朝練のメニューのランニングについての提言。
『持久力は、例えばサッカーなら必要だが、ソフトで必要なのは瞬発力。爆発力。つまり筋力だ』
一理あると思うが、タイブレーカーに持ち込んだ時にスタミナ切れを危惧していたら、
『何言っているんだ。7イニング以上やらん。基本コールド勝ちだ』
と、一蹴した。その自信が何処から湧くのか理解出来なかったが、今朝は身体が軽い。実乃梨は翔び起きる。
「とおっ!シャキーン!」
そこに答があるのかもしれない。
****
大橋高校のグラウンドでは、ピリピリした空気が流れている。
「…という訳だ!一緒に頂点を目指す!以上!」
部員達は、無言で互いの顔を見合わせている。そこで北村の右腕と言われた部員が沈黙を破った。
「納得できません。櫛枝部長!なんでド素人の黒間先生がなんで、シャシャってくるんすか!」
「いや、一応名前だけとはいえ、監督なんだし。」
黒間は割って入る。
「お前の言う事も解らんでもない。しかし俺は櫛枝に約束したんだ。いままでのやり方では、優勝はできない」
春季大会で、相手が強豪とはいえ初戦敗退した男子ソフトボール部としては、痛い言葉である。
「なん…だとっ…解った!黒マッスルは、部長が好きなんだな!」
話の流れがおかしくなってきている。右腕くんは、実乃梨に目を合わす。思わずビクッとする
「部長!いえ、櫛枝さん!俺、貴女の事が…」
まさか…
「好きだぁぁぁぁーー!!」
右腕くん、元部長に影響されたのか…
「黒マッスル!勝負だ!俺が勝ったら、部長から手を引けっ!」
ここに、第一回櫛枝争奪杯ソフト対決が開催される事になった。
続く
ここに常駐している人に聞きたいんだが
ななこい3→4までどのくらいの期間が空いていたの?
2ヶ月半
ほぼラノベ一冊分待ったわけか… 今のところネット上の創作物じゃ今
一番楽しみにしている作品だから次が待ち遠しいなあ
とりあえず作者のモチベうpの為に支援米 すごく続きの気になる場面で
切られたからね
>>276みのりんに告った通称・右腕ってだれやねん?
>>281 オリジナルじゃね?
……くっ、俺のみのりんにモテ期がorz
>>283 よし!誰のみのりんか、あーみんに聞いてくる。ウチで風呂は入ってるから待ってて!
と云う妄想が出る俺は病んでいる。
>>276 さすが、北村の右腕だなw
続きwktk
北村の右腕ということはやっぱ脱ぐのか!裸族なのか!!
みなさん、こんにちは
起きたら、天気がよく気持ちよかったので、突発で書いちゃいました。
時間がないので推敲があまいかも、ご容赦下さい。
概要は以下です。よろしくお願いします。
題名 : 今年の七夕は晴れたから
登場人物 : 竜児、亜美、大河、実乃梨
時期 :どうしても七夕ネタやりたかったんだけど、
各キャラの立ち位置は文化祭あたりをイメージして下さい。
方向性:どちらかというとあみドラです。書き手の趣味で
長さ : 3レスくらい
今年の七夕は晴れたから
それは夏休みまで2週間をきったある日の登校風景
昨晩までのジメジメとし、雨の耐えない陽気とはうって変わって、
涼しげな風と、謙虚な太陽の日が照るそんな朝。
高須竜児は、逢坂 大河と一緒に学校にむかっていた。
その後ろから、風を切る、いや追い越す勢いで元気の塊が近づいてきた。
「おはよう、大河、高須くん、今日は晴れ申したな。いい七夕日よりだね」
「よう、櫛枝、まだ油断できないが朝の天気予報だと午後になれば
もっと晴れるみたいだぞ」
「お、そりゃすごい。七夕は晴れてないと、織姫さんも彦星さんもかわいそうだからね」
太陽のような笑顔で竜児たちに話しかける櫛枝 実乃梨、その笑顔を見ているだけで、
今夜の快晴は確実な様に思えてくる。
「みのりん、みのりん。織姫様の機嫌がいいと願い事かなう確率上がるかな?」
「そりゃ、そうだよ。きっと快晴感謝記念際、大バーゲンセールとか開かれちゃうぜ〜
大河、ちゃんと願い事書くんだよ」
抱きつくように話かける大河、それにこえたるようにニコニコと返事をする実乃梨。
微笑ましい情景が続く。
「みのりんは何てお願いしたの?」
「私?私はソフトボールの事かな、長年の夢だからね。後UFOが見れればいいなって」
UFO? 大河は不思議そうな顔で問いかける。実乃梨は少しだけ遠くの方を見て
「ま、それは書いてないんだけどね。UFOはロマンだよ、ロマン。大河は?」
「みのりんと末永く、幸せに暮らせますように!って。それとね、それと....
やっぱり内緒」
「そいつは聞き捨てならねぇな、おいらにも内緒かい。大河さんよ」
「ごめんね、恥ずかしいし」
「言えよ、言え、体に聞いちゃうぞ」
抱きつくどころから、完全に体を密着してうにうにする二人、それを困惑した目で
(端からは獲物を狙う目に見える)見つめる竜児、まさに通行の邪魔
「なに、朝からレズってるのよ、通行の邪魔よ、邪魔!」
8頭身、さらさらヘアー、ミニスカの美少女が、あえて3人の間を掻き分けるようにして入ってきた。
川嶋亜美である。
「なによ、バカチー。あんたこそ邪魔。みのりんと私の友情はどんな事にも
揺るがないんだから、割って入らないで。
あ、バカチーは友達いないから羨ましかったんだ」
「はぁ、あんたより社交性あるつもりなんですけど」
「真の友情は社交性だけじゃ手に入らないのよ。ねぇ、みのりん!」
実乃梨に目を向ける大河、それに対し熱い瞳で答え 大河 と呟く実乃梨
数秒ほど、見詰め合っただろうか、そしてお互いに篤いハグをかわす。
ガシ!という音が聞こえてくるようだ。
「あ〜あ、お子様にはついていけないわ」
「そうだ、みのりん。今夜、竜児の家に来ない?今日、七夕パーティやるんだよ。
ねぇ、竜児」
最後の言葉と同時に竜児に振り返る大河、そしてその目は語っていた。
ほら早く、計画通りにやりなさいよ、このバカ犬
「そ、そうだ、そう、ど、どうだ。俺料理作りすぎちまった。泰子も毘沙門天の
七夕イベントとかで夕飯食えないって言うし2人じゃ食べきれないんだ。
そうなんだMOTTAINAIんだよ」
竜児は一息でしゃべった後、実乃梨を前に言葉を失う。用意していた言葉以外は
浮かんでこない。
そんな竜児を不思議そうに見つめた後、実乃梨は
「お、そうかい、その挑戦受けてたとうじゃないか。女、櫛枝 実乃梨たちの前に
立ちふさがる豪華食べ物の山、果たして戦いは如何に、請うご期待!
期待してるよ♪高須くんの手料理」
「櫛枝・・・・」
竜児は感動のあまり、目を潤ませて、その場で固まる。もう死んでもいいというくらいに
「で、いつから開催」
実乃梨は竜児に話しかける。
「え〜と、竹さして、短冊飾りから始めるから夕方には始めたいな」
「夕方か、今日、運動部持ち回りの体育館大掃除の日なんだ。ごめん、
ちょっと遅れてもいい?」
「だったら私たちも手伝うわ。ねぇ 竜児」
「おぉ、燃えてきたぜ」
「バカチーあんたも手伝ってよ」
急に話を振られ、あ〜あ、3人ともオママゴトがお好きなようで という顔をしていた
亜美は素で驚きの表情を表した。
「・・・・なんで私が」
「いいじゃない、どうせ暇なんでしょ」
「暇!! 今日は....仕事はないけど」
「ほら、バカチーパッパは暇モデルなんだから、全然大丈夫じゃない」
「だから、あたしはあんた達とは違って暇じゃないって、今日だって仕事が
中止になっただけなんだから」
「ふん、見栄張っちゃってさ、じゃ仕事の内容言ってみなさいよ」
売り言葉に買い言葉、いつも通りヒートアップした二人、より通行の邪魔さを
増した塊に周りの通行人は避けてて通る。すこし微笑ましい表情で。
「雨に似合うオッシャレ特集用だったんだよ。で、昨日になって降雨車が調達
出来なくなったてだけ。
ただ、今日の天気、週間予報とかだど、高い確率で一日雨って言ってたじゃない。
だから、一応スケジュールは抑えられていたのよ、でこの天気だから中止。
これだけ言えば理解できるかしら、猛獣類でも」
「だから、その程度で中止になる仕事しか入ってなかったてことでしょ」
あんたね 亜美の言葉の響きが、テンパリメーター一杯を感じた実乃梨は、
大河に耳打ちをした。
「大河やめなよ、本当の事言ったら傷つくでしょ」
もちろん、目の前にいる亜美には聞こえてしまう。もういいやと
カバンを背にしょう感じで持ち上げ、移動準備をしたその時
「川嶋、だったら今夜暇だろ、お前も来いよ」
竜児の声に亜美の動きが止まる。
「え、さっきの七夕パーティてやつ」
「あぁ、本当に料理作りすぎちまったんだ、お前が来てくれると助かる」
すこし考えてから、それでも答えを決めかねたように、迷いを含んだ声で
亜美は答えた。
「え、あ、まぁ、高須くんがどうしても言うんなら、行ってあげてもいいけど」
「おぅ、よろしくな」
「う、うん。・・・・・もう、亜美ちゃん先にいくからね。
放課後、体育館に行けばいいんでしょ」
そして、そのまま3人から一人離れ、学校にむかう亜美
それに少し遅れて、なにかいいネタを思いついたという感じで実乃梨が顔を上げた。
「大河、高須くん。私、日直だったんだ。先に行くね」
「あーみん、あーみん」
「わ、えーと、あれ実乃梨ちゃんだけ?」
実乃梨は亜美に追いつくと声を掛けた。
「雨が振ったら会えなかった二人って、織姫と彦星みたいですな、
ではでは、ワスは日直なんでアデュー」
「な、なによ。意味わかんねえし」
亜美はそうして周りを見渡した。亜美は知り合いがいない事を確認し
ちょっと笑ってみた。
「さて、今夜はどんな服を着ていこうか、織姫のイメージな服あったけ?」
END
以上で投下終了です。
お粗末さまでした。
さて、これから仕事だ、七夕なのに徹夜だ。
……ま、GJ。
GJ
なんかこういうさらっとした軽めのSS久しぶりに読めた気がするわ
GJ!
なんででっかいどーの七夕は旧暦なんだぜ?
無理に文化祭あたりにしなくても
七夕あたりの距離感で成立する話だと思うんだけど
>>295 はやいとこ日記の続きを書かないと、ヒグマの1ヶ自動車化狙撃師団がお前の家に押しかける
298 :
295:2009/07/07(火) 22:59:52 ID:lWdfbSK9
>>297 それ、俺、違う
某スレでギシアン書いてるくらいっす
>>297もう、無理だと思うよ。
スレが変わっても投下されたいって事は作者に書く気がないって事。
だから日記は未完結作品に決定。
つか、未完作品は保管庫に入れんなよ。
いまある未完の奴もさっさと消して欲しい。
わざわざ消す必要ないかと
未完でもおもしろいのは沢山ある
むしろ未完こそ自分で続き妄想して楽しめばいいじゃない
そして忘れたころに投下されてそうくるのかーってなればいいじゃない
302 :
黒×実5:2009/07/08(水) 02:19:27 ID:ts3ttcBM
右腕くんの本気球は実乃梨以外捕れない。バッターボックスの黒間は、捕手の実乃梨に話しかけた。
「櫛枝。はっきり言おう。彼には悪いが、俺は打つぞ」
はっきり言おう。右腕くんのボールは、大橋高校のソフト部、野球部もいれていい。誰も打てない。
コントロールが不安定だが、波に乗ると手に負えない。実乃梨は自分でも思いがけない言葉が漏れる。
「監督。打って…下、さい」
自分を賭けて勝負されるとは夢にも思わなかった実乃梨は、対処に困り、いつもの軽口が出ない。
っていうか、黒間を応援している…もちろん監督不在では試合に出られない。だから?それだけ?
「いくぞ!黒マッスルっ!」
右腕くんは溜めに入る。実乃梨は雑念を払う。黒間は剣道で言う上段の構え。
「いいか、櫛枝!指導者と認めさせるには、圧倒的な実力を魅せつけるんだ!」
右腕くんはモーションに入る。実乃梨は集中する。黒間は腰を落とす。
一瞬の出来事。
放たれたボールは直球。だが、マグヌス効果で縦に変化。黒間の踏み出した足が接地。フルスイング。
さらに落ちる。黒間のバットの軌道がボールに吸い付くように変化。芯でインパクト。ボールは歪む。
キンッ!
実乃梨は遠く飛んだボールの先に、空に白い月を見つけた。
****
ガラッ
「……」
実乃梨が扉を開けると、騒がしかった教室が静かになった。うむむむ…ゴシップって広まるの早ぇ…
(…櫛枝、黒マッスルと付…らし…ぜ)
みのりんレーダーはウィスパーな声でも拾えるんだぜ…
(なんでも、…君と勝負して…公認で…)
まあ…噂ってのは、拡大解釈されやすいもんだ…
「実乃梨ちゃんがさぁ、黒間先生と昨日、体育館で、ローションプレイしててさ…」
「だーーっ!あーみんっ!話デケぇ。話デカくしすぎ!だいたい声大きいしっ!大木杉っ!」
机をバンバン叩く実乃梨。亜美はまるで、面白い遊戯を見つけた悪魔のようだ。いや妖魔だ。幻魔だ。
「え〜?そうなの〜っ?でもお似合いだな〜っ?、実乃梨ちゃんと黒間せ・ん・せ・いっ」
ムキーッ!真っ赤になる実乃梨。この調子で今日一日過ごすのかーっ!いや、調子が戻ったのか、な?
「でも、櫛枝ほどのスペックを持ってして、いままでスキャンダルが無かった事は奇跡だったぞ」
わはははっといつの間にか教室の扉から顔を覗かせていた北村に教科書を投げつけたが、既にいなかった。
はあっ!はあっ!換気しなくては!こういう扱いに慣れていない実乃梨は、ご無沙汰のハゲヅラ装着。
この空気を換えようと試みる。ハゲヅラ自体は、絶好調。リアルで微妙な照り具合をかもし出してる。
「おらぁよぉ。人呼んで泪橋。この悲しい橋を逆に渡りてぇ。泪橋を逆に渡って、栄光を掴み取るんじゃ…」
元ネタを知らないクラスの連中は退いた。知らないから、誰と渡りたいかを言わなくてもすんだ。
****
「ありゃーしたっ!!」
放課後、今日の部活は終了。黒間のメニューは時間が短い。中心になるのは、筋トレと紅白戦。
有酸素運動がほとんどない。黒間の言う、実践的で効率的なトレーニングだ。
練習で鈍くても、試合で映える選手がいる。逆に、練習で俊敏でも、試合で実力が出せない選手もいる。
もちろん黒間は前者を試合に出すつもりらしい。全部員の動きをチェックしていた。機動力、判断力など。
実乃梨は、何故か管理し慣れている黒間監督に疑問を持つ。
「おつかれさまーすっ、黒間監督。あの〜監督って、もしかして、経験者じゃないんですか?」
「櫛枝。今日は個人訓練は無しだ。その代わりにミーティングしよう。帰りに体育準備室まで来い」
実乃梨の質問は聞こえているはずだが。答えぬまま黒間はグラウンドから出て行った。
続く
303 :
黒×実6:2009/07/08(水) 02:31:14 ID:ts3ttcBM
高須竜児は燃えていた。正解には萌えていた。今日は毎月恒例ボランティア町内掃除大会だからだ。
実際には内申の微妙な3年生のための救済処置らしいのだが、竜児は丁度1年前くらいに初参加していた。
口角が上がり、クックッと忍び笑い。竜児の猛虎も黙る三白眼が、エモーショナルに動く。正直おっかない。
貴様ら、邪魔しやがったら、ゴミごと焼却炉にブチ込んで、2000℃の炎の中で、懺悔させてやる!!
と思っているのではない。凶悪なフェイスは竜児の仕様だ。ただのお掃除フリークなのだ。
「私たちの町内が、綺麗になると、楽しくなるわよね〜?おしっ、頑張ろーっ!」
やる気が無いにも関わらず、今回は亜美も同行する。
「嘘こけ。そんなに内申ヤバいのかよ。それとも好感度アップか?だいたい軍手もしてねぇじゃねぇか」
ひっどーい、亜美ちゃんはぁ…くどくど… と、聞く価値のないトークを続けている亜美を竜児は軽くあしらう。
竜児達3年生は、学校周辺を担当するのが習わし。制限時間は1時間。移動時間が少ない分、成果が期待できる。
校門を出た竜児は、学校の外壁沿いを縄張りにした。外壁の苔までも、自慢の高須棒で次々消し去っていく。
清掃マシーンと化した竜児は、何もしてない亜美を引き連れ、体育準備室沿いの外壁に段々近づいていった。
****
体育準備室では、黒間と実乃梨が、今後の練習について話し合っていた。紅白戦で明白になった個々の
部員の課題。イチローは、動体視力を上げるために、200キロオーバーのテニスのサーブを…云々。
「とまあ、こんな感じだな、今日はここまで。明日は部活の後、個人訓練あるからな。1日おきだ。」
実乃梨は昨日のマッサージを脳内再生し、ふぁいっ!と声がリバース。誤魔化すように、実乃梨は言葉を発す。
「やっぱり、黒間先生って…経験者ですよねぇ?いくらマッジヴでも、素人離れしすぎっすよ。おぬし」
そこんとこどうなの〜っ?と、黒間の逞しい上腕3頭筋をプニプニ突く。へぇ〜、結構。柔らかい。
「…誰にも話した事ないが、櫛枝。お前なら話そう。詳しい事は勘弁してくれ」
窓際に移動し、黒間は丸イスに座る。キュッとキャスターが鳴った。ずいぶん使い込んでいる丸イスだ。
「この世の中で裏切らないものがある…とか昨日言ったのを憶えているか?」
「アイアイサー!己の肉体っすよね!」
「俺はその昔、仲間に裏切られた。それから団体競技から手を引いたんだ。しかし…やっぱり、いいよな。
一緒に目指し、感動を分ち合える仲間…櫛枝。お前は俺にチャンスをくれた。お前のおかげだ。」
「いや〜、そんな…照れるぜっ」
実乃梨は、本当に照れていた。わたしって、もしかしたら…これは死亡フラグどころか、このフラグは…
「ソフトボールはお前の方が上だな。実戦の状況ごとの判断が正確で素早い。勉強になる。ソフトボール
というスポーツをよく理解している証拠だ。そうだ、今日、バットを貰ったんだが…」
いままで実乃梨が培った、バッティング理論、ピッチング理論を黒間は聞きたくなったらしい。
今日はここまでっと言っていたのに…まあ、誰にも話した事ない黒間の過去を自分にだけ話してくれたし、
もう少し付き合う事にしようと実乃梨は判断を誤った。
続く
みのりんの貞操が危ない!!
と思ってるのは僕だけではないはず
NTR好きだからドキドキしちゃうぜ
>>299 たかだか数ヶ月でこらえ性の無い。
とはいえ保管庫に一言未完って書いてあったら便利だと思うけど
>>306十分飽きすぎだっつーの!
いっそあの作品はモルグに葬り去れ!
>>306十分空き過ぎだっつーの!
いっそあの作品はモルグに葬り去れ!
309 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 03:26:46 ID:Pc9Eic/+
悩ましい。(笑)
310 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 04:11:01 ID:jN0JoTQU
何をこれくらいで・・ シンジ君えりかちゃんを ずーーーーと全裸正座
1年近く待ってる おいらたちに比べれば・・w
なぜだ……みのドラしか認めん俺だが普通に読めてしまう
しかし黒マッスルはなぁ……(苦笑)
いまだに、日記日記言う奴がいるのか
あんな程度の低いできそこないは、保管庫からも抹消しろ
>>312禿同。
つーか、全ての出来損ない(未完作品)は即刻削減すべき!
またわいてるな。
夏も近い…
これより連投します。前回投下してから、だいぶ間が空いてしまいましたが、「高須棒姉妹」の続きです。
絶頂の高みからふわふわと降りてきたばかりの、ぐったりとした亜美の身体に、竜児はじぶんの手足をからませていった。
すべすべしたフェテェッシュな脚が、待ってましたとばかりに、すね毛だらけの足をぎゅっと挟みこむ。
ついさっきイッたばかりの火照った肢体からは、体育の授業のあとの汗の匂いとは違う、甘ったるいフェロモンの香りがして、
これがセックスの匂いなんだと竜児は思った。
たちのぼる甘い匂いに息が詰まる。
ふたつのおっぱいはデカいわりに張りがスゴくて、仰向けになっても乳首がぴんと上を向き、お椀を伏せたような形を保っている。
のしかかるようにして体重をかけていくと、ぴんと尖った乳首を竜児の胸板にめり込ませながらひしゃげてゆく。
竜児の頬をつたって落ちた汗が、押しつぶされたおっぱいの谷間にたまって、ぴちゃぴちゃという音を立てた。
彼女の肌はきめ細かく、まるで剥きたてのゆで卵のようにつるつるして、ぎゅっと掴んでも、まるでオイルでも塗っているみたいに
指先がするりとすべった。
(…なんて綺麗な身体なんだ、なんて長い脚をしてるんだ…)
窓際に座った麻耶が、ベッドの上の二人をはやし立てる。
「亜美ちゃんガンバ! 痛いのなんか最初だけだって〜! おらおら高須君、男らしくぶすっと行け、ぶすっと〜!」
麻耶の隣に座った奈々子が突っ込みを入れる。
「ちょっと麻耶、やくざの鉄砲玉じゃないだから… ねぇ高須くぅ〜ん、早いトコ亜美ちゃんと済ませて、あたしのバージン、奪っちゃって〜!
あくまで亜美ちゃんは前座、トリはこのあたしだからね〜」
「…!!」絶句する竜児。
「ちょww奈々子ww」麻耶が吹き出す。
せっかくのムードを吹っ飛ばされて、亜美がぼやいた。
「テメ〜らサイテ〜、…ったくも〜、あったまイカれてんじゃね〜のか奈々子は…。…ねぇ、高須君、そうやってあたしにサービスばっかしてないで、
…あたしのカラダ、高須君の好きにしちゃって、いいんだよ?」
サクランボのようなぷりぷりの唇が、なまなましいリップノイズを発しながら、あえぐように言葉をつむぐ。
これが立派な性器になるのだということが、さっき麻耶がしてくれたことで、竜児にもわかっていた。
「あぁ、そうさせてもらうぜ」
もの欲しそうにわずかに開いた唇をみながら、竜児は、それが自分のペニスを頬張っているところを想像した。
ついさっき、麻耶の口いっぱいに射精したときの、ペニスが溶けてゆくような快感が、ありありと蘇える。
「ふふっ」
彼女がふっと口元をほころばせると、その唇が優美な弧を描いてみせる。
「…高須君のナニ、さっきから凄いことになってる」
すでにイチモツは、へそに付くぐらいの勢いで勃起していた。
「それじゃあ亜美、いくぜ…」
息を弾ませながら、彼女が言った。
「高須君、きて… あたしの中に入ってきて。…今度は中のほうから、あたしのカラダをめちゃめちゃにして…」
切れぎれの息は、あたたかく湿っていて、竜児にまとわりつくように流れていった。
お互いの呼吸が同期するように、ひとつになる。
竜児の頭の中は、もう、彼女の芯を貫くことしかない。
つるつるのおなかを縦に走るおへそ。そこから少し下ったあたりに、先ほど竜児がじっくりと舐め尽くした、男を喜ばせるための器官がついている。
二本の太腿のしたに手を入れ、ひざを立たせた。
細くみえる太腿にも、念入りに鍛えられた筋肉がきちんとついていて、さすがは大河をひょいと持ち上げて、25mプールのど真ん中まで
軽々と投げ飛ばしただけのことはある。
「…ん〜っしょっと」
両脚をぐっと持ち上げ、M字に開いていくと、唾液でぴかぴかになった、まっさらの女性器があらわになった。
結合の瞬間を長いこと待ちわびていたギャラリーも、がぜん盛り上がる。
「おおっと〜、いよいよ挿入です、香椎先生!」麻耶がアナウンサー風に実況する。
「遂にこの瞬間がきましたねぇ〜」奈々子が神妙な顔でコメント。
「オンナのことロクに知らないくせに、やたらと前戯が長いですもんね」と麻耶。
「ほんと、童貞のくせしてねえ」と奈々子。
「フェラですぐ昇天するくせにねー」と麻耶。
「おっぱい星人だしねー」と奈々子。
「さっきから黙って聞いてりゃ〜、てめーらうっせーぞ、黙って見てろ、でねぇと… 犯っちまうぞ!」竜児が凄んでみせる。
「きゃ〜こわい〜」「犯されちゃう〜」嬉しそうに二人がはしゃいだ。
(…つーか、よく考えたら、あいつらとも、あとでヤるんだった)と、竜児は思い当たった。
二人の熱い視線を背中に感じながら、ゴムをかぶった先っちょを彼女にあてがう。
(…なんか、人に見られながらヤるのって、マジでAV男優になったみてーだな…)
第三者に見られながら射精するという、AV男優にとっていちばん重要な素質を、さきほどから遺憾なく発揮させている竜児であったが、
二人の同級生にガン見されながらの初体験という、かなり異常なシチュエーションに、さすがにかなり緊張していた。
ずっと思い描いていた理想の初体験のイメージが、賑やかな声援によって、因果地平より遥か彼方に吹っ飛ばされてゆく。
(つーか、これなんて撮影現場…?)
格好わるいところをみんなに見られたくないという、いかにも若者らしい気負いで、つい余計な力が入って、ぎこちなくなる。
亜美は、そんな風に自分を求めて、せっぱ詰まっている竜児を見つめた。
その天性の美貌のおかげで、小さい頃から人生のおいしいところを味わい尽くしてきて、スタジオでも無数のライトを浴びながら、
その一挙手一投足を皆に凝視されて、女としての『見られる快感』をたっぷりと満喫している彼女といえど、好きな男から
そんなふうに自分を求められるのは、たまらなく嬉しかった。
自分の身体の中心部に向かってせいている竜児を、亜美は、とても可愛いと思った。
麻耶がくすくす笑いながら、奈々子に耳打ちした。
「高須君マジになってる〜、かわいい」
豊満な胸元をふるふると揺らせながら、奈々子も頷いた。
窓際の二人がこそこそと何かをささやきあいながらクスクス笑うので、キョドってなかなかうまく出来なかったが、
亜美がすこし腰を浮かせてくれたので、ようやく無事に挿れることができた。
窮屈な部分を、えいやっと抜けると、ぶちっとなにかが切れる感触があった。
竜児のしたの身体がびくんと震え、彼女が悩ましく眉をしかめるのが視界の隅に入ったが、構わず押し進む。
竜児の尻がぐっと沈み込み、二本の腿がめりめりと押しひろげられる。
ぬめっとした肉の壁が侵入を拒むように、モノをぎゅっと締め付ける。
そのまま、己がイチモツに全体重をかけて、一気に奥まで押し込んだ。
「ぐぁっ…… あひぃいいっ」
最初の一突きで、自分でも到達したことのない奥の奥までぶっすりと貫かれ、処女である亜美の身体は激しくのけぞった。
彼女の奥まった部分が、たぎるように熱くなっているのを、竜児は一番敏感なところで感じた。
破瓜の痛みに耐えながら、亜美は懇願した。
「むぐぅっ… たっ、高須君、遠慮しないで… 思う存分暴れまわって、あたしの中に、ぜ〜んぶ、はき出して…」
「…あぁ」
竜児は、彼女にのしかかるように上半身をつんのめらせ、ベッドに両腕を付いて体重を支えた。
その体勢から、ゆっくりとピストンを開始する。
よほどの腕力がないと出来ないその姿勢は、腰が自由になることで、途方もないストロークを生み出した。
一気に根元まで突き入れたかと思うと、カリのくびれぎりぎりのところまで抜いてくる。とても長い、ダイナミックな一往復だ。
はじめはゆっくりだった腰使いに、次第に反動がついてゆき、上から振り下ろすような激しいものに変わる。
いちばん奥まで突き込まれるたびに亀頭が子宮口にごつんとめり込み、ひだの合わせ目にあるいちばん敏感な部分がばちんばちんと
モロに打ちすえられ、凝縮された知覚神経が悲鳴を上げる。
「んぐっ、はぁっ、はふっ」
あまりにも大きな快感が、潮のようにいちどきに押し寄せてきて、亜美は息も絶えだえになって喘いだ。
粘膜どうしのこすれ合いが、これほどの快感をもたらすということを、彼女は身をもって思い知った。
怒涛のようにぶち込まれて、まだ成熟しきってない肉体が、跳ねるようにのたうちまわる。
きれいに整えられた爪が、あてどなくシーツを掻きむしり、細い足指が引きつったように、ぎゅうっと折れ曲がる。
肉と肉がぶつかるパンッパンッという乾いた音が、見物している二人の肌をびりびりと震わせる。
いつも優しい竜児が、親友を潰れそうなほど荒々しく突きまくるのを見て、麻耶と奈々子はマジでびっくりしていた。
麻耶は吊りあがった瞳をおおきく見開き、ベッドの上のほとんどレイプみたいなセックスを興味津々といったようすで見ていた。
(…なにあの動き …高須君ってサイボーグかなにか?… あんなにバコバコされたら、あそこ壊れちゃうかも…)
本命以外の男に抱かれることへのためらいが、今さらながらにふつふつと湧き上がる。
(あんな風に好きな男に抱かれて、めちゃくちゃに犯されるのって、どんなんだろう。…ど〜しよ〜、まるお…)
いつも派手目のコギャルルックで、いかにも遊んでいる風にみえる普段の印象とは裏腹に、麻耶は今まで誰とも付き合ったことがなかった。
奈々子のほうも、バージンである自分はあの連打に、はたして耐えられるのだろうかといぶかしんでいた。
(高須君のあの大きなおちんちんで、あんな風に繰り返し突きまくられたら、…あたし、いったいどうなっちゃうんだろう?)
一見、清純そうに見えながら、日々成熟してゆく肉体を持て余していた奈々子は、セックスというものに興味津々だった。
今、目の前で繰り広げられる荒々しい行為に、ずっと心に秘めていた願望がむくむくと立ち上がる。
(あのペニスで思いっ切り掻き回されたら… あの雁首でお腹の中をごりごりとこすられたら、…どれだけ気持ち良いんだろう?)
「あうっ、んぐっ、はうっ」
ペニスが勢いよく引き抜かれるたびに、膣壁がこすられ、ひだがめくりあげられる。
お互いの器官が流体のようにからみつき、くっつき合って、ひとつの煮えたぎる混沌になった。
膣の傍らにある、男の海綿体に相当する器官ぷっくりと膨れ上がり、俗に言うGスポットと呼ばれる敏感な部分が盛り上がって
ペニスに押し付けられ、ごりごりとこすられる。
それは亜美にとっても、まったく未知の感覚だった。
頭の後ろのほうで、真っ白のフラッシュがパッ、パッと続けざまに光った。
(これって何っ? …めっちゃヤバいのが来るっ、来るっ、…いやっ、だめっ高須君、助けてっ)
かつて感じたことのないレベルの快感。本能的な恐怖に、たまらず手を伸ばし、相手の動きを制しようとする。
とはいえ、見てくれ優先で鍛えた自分の身体とは違い、竜児はまるで野生動物のように硬く、力強かった。
亜美の力では、どうすることもできない。
「うっ、…うぐあぁっ〜!!!」
彼女のうめき声を聞いた竜児は、直線的に出し入れする代わりに、腰をグラインドさせて円を描くようにした。
竜児にすれば、苦しそうな亜美を思いやって腰遣いをシフトチェンジしたのだが、そのせいで、膣の天井といわず床といわず、
暴れん棒に激しくこづかれ、亜美は、あっという間に絶頂近くまで押し上げられてしまう。
(あぁっ、さっきよりスゴいっ、なっ… なに、なんなのこれぇ〜!!)
すでに、これまで経験したことがない高みまで昇りつめていた亜美は、このままイカされてしまったら、どれほど底なしの絶頂に
見舞われるのだろうかと、期待と恐怖になにも考えられなくなる。
パートナーの不安に構わず、竜児は、相手のなかに肉のパンチを続けざまに放つ。
膣がひくひくと脈打ち、奥のほうにペニスを呑み込もうとするように、ぐっと引っ込んだ。
さっきの前戯では亜美が快感に支配されていたが、今度は竜児のほうが、身体の奥から湧き上がる快感に支配される番だった。
「うおっ…も、もう、でっ、出るっ!」
毎日の地味な労働によって鍛えられた身体が、女の中に精を放つ本能的な喜びにぶるぶると震える。
亜美は、竜児の腰使いが急にせわしなくなるのを感じた。
頭の中が真っ白になり、意識が遠のいていく。
親友二人に痴態を見守られながら、彼女はイッた。
せつなく喘ぎながら上体を逸らし、小刻みに身体を痙攣させる可憐な姿が、竜児の魂に深く刻み込まれる。
もはやぐったりとした亜美に向かって、腰の動きを加速させ、スパートをかける。
「…亜美、好きだっ!!!」
呻くような竜児の叫びが彼女の心を鷲掴みにし、彼女はさらにイッた。
パンパンに怒張したペニスがどくどくと脈打ちながら膨れあがり、爆発するようにマグマを噴出させた。
彼女の肉井戸の底深く、竜児は思いのたけを解き放った。
亜美にもたれかかるようにして、竜児は、射精後の気だるい余韻が過ぎるのを待った。
繋がったままのペニスは、さっきの口内射精のときに劣らないほど、じんわりと痺れている。
オナニーの後とは比べ物にならないほど心地良いその痺れは、長く、いつまでも尾を引いた。
身体を動かすのが、ひどくおっくうに感じられる。
竜児のしたで、彼女は息を弾ませていた。
自分の身体が、彼女の中にどこまでも深くしずんでゆくような気がした。
ベッドによろよろと両手をついて、やっとのことで上体を起こす。
長いこと密着していたせいで、身体を引き離すとき、まるで一体化していたかのように皮膚がべりっと音を立て、汗の糸を引いた。
亜美の中から抜け出して、そのわきに横たわる。
手をのばし、汗まみれの額にはりついた前髪を払ってやる。
彼女のほうは、長い長い絶頂からようやく降りてきながら、息を整えているところだった。
放心状態の彼女の顔に頬摺りをする。
まだ興奮冷めやらずといった様子で、亜美は言った。
「好きよ…」
竜児は言った。
「シャワーを浴びよう」
亜美はごくりと唾を呑み込む。
「…たかすくん、あ… たし… まだ…」
自分としては、もう少しゆっくりと余韻を感じていたかった。
しかし、あとがつかえているので、そうゆうわけにもいかない。
竜児はのっそりと立ち上がり、屈み込んで彼女を抱き上げた。
そのまま、シャワー室に運んでゆく。
荒々しいロストバージンのあと、亜美はシャワーを浴びながら、自分の身体のすみずみまで確かめた。
あれほど激しい行為にもかかわらず、その美しい身体にはすり傷ひとつ付いていなかった。
メイクラヴの余韻が、まだ下腹のあたりにとどまっている。
竜児のほうに視線をやると、さっきまで、まるで野獣みたいだった彼は、元の優しい男に戻ったように見えた。
猫が毛づくろいをするように、自分の身体を仔細に点検している美しい友人を、竜児はぼんやりと眺めた。
授業中にいつも、あー川嶋とセックスしてぇ、あのパーフェクトボディでパイ摺りとかフェラチオとかいっぱいしてもらいてぇーなどと妄想していた
その当の本人が、ついさっき自分とのセックスを済ませて、目の前に立っている。
均整のとれた見事なプロポーションにまとわりつくように水が流れ落ち、つかの間の透明の膜をつくったと思うと、張りのある肌にはじかれる。
彼女が片方の脚からもう片方へ体重を移動させると、長い腿の内側で筋肉がしなやかに動くのが見えた。
竜児は、17歳の泰子を孕ませてトンズラした、無責任な親父の気持ちが、なんとなくわかったような気がした。
(…だってよ、女子高生のカラダって、こんなに抱き心地イイんだぜ、そりゃ、しゃ〜ねぇわ…)
そして、今、三人のクラスメイトの処女を次々に奪っていっている自分は、あの親父と同じぐらいたちが悪い。
今さっき、一人を抱いたばかりだというのに、早くも、あとの二人とのセックスに興味が移っていく。そんな自分自身に竜児は驚いた。
どうやらセックスというものは、いったん体験してしまうと、たがが外れたように歯止めが利かなくなってしまうもののようだ。
セックスをするのに、相手への恋愛感情はとくに必要ないのだということを竜児は理解した。
櫛枝実乃梨のことはもうどうでもよかった。
さっきからのリアルで圧倒的な体験に、この一年間ずっと抱き続けていたプラトニックな恋心など、跡形もなく溶かされてしまっていた。
今までずっと大事なものと思っていた、愛だの、恋だの、精神的な繋がりといったものがすべて、何だかあやふやであてにならない
もののように感じられた。
ふと、17歳のときの泰子はどんな抱き心地だったのだろうと、気になった。
コンドームを外すと、硬さを失ったペニスは、まだぼてっと膨らんだまま、ぶらぶらしていた。
充血した亀頭をシャワーで冷やす。
亜美は、その鈴玉のような先っちょが水滴に打たれて揺れるのをじっと見つめた。
竜児がコンドームをきゅっと結んで、便器に放り込んだ。亜美は、それが、本来なら自分のなかに注がれるはずだった男の体液ごと、
暗い穴の向こうに勢いよく流されていくのを静かに見守った。
まだまだ続きます
まさに駄犬だなーw
続き期待しときます
(;´Д`)ハァハァ
GJ
325 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 12:44:03 ID:LRaP4N9J
まこ…じゃなくて竜児氏ねw
ここの職人は最高だっぜ!
326 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 18:15:36 ID:Pc9Eic/+
やまやらまゆなはなはちやはぬさして
>321
まさにエロ犬!
あと二人食っちまうなんてすげえ
奈々子のエロいボディを食う様を想像するだけで興奮してきちまうぜ
328 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 19:43:31 ID:Pc9Eic/+
ぐわわわわわ!
329 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 20:23:35 ID:Pc9Eic/+
乙乙
序盤の麻耶の二回分を含めると全部で5回分は考えないといけないのか
竜児ってタフだなー
保つのかなーw
早く続き読ませろー!
所でななこいは?
皆さんこんばんは
[言霊]
の続きが書けたので投下させて貰いに来ました。
前回の感想を下さった方々ありがとうございます。
では次レスから投下させて頂きます。
注:エロ描写有り。
[言霊(3)]
「っ…は。あ…あぁ…」
何度経験しても、この瞬間がキモチイイ。
竜児に蕩かされた身体に与えられる、切なくて甘い…そして熱を伴って疼く心地良さ。
下着を横にずらされた後、膣にあてがわれたおちんちんが、大切な所を掻き分けて挿入ってくる。
その時に掛かる質量が……堪らなく好きなんだ。
「う…、キツ…」
おちんちんの頭が膣内に挿入ると、彼が声と身体を震わせて呟く。
久し振りだもんね………何にも着けないのはさ。
「ふあっ…あっ、くふぅっん…」
竜児は気持ち良い?私は……すっごく気持ち良いよ。
いつもみたいにゴムが擦れる感覚も無いし…なにより、火傷しそうな熱い『竜児』を感じているから。
「ひうっ!?…んっ。…はぅっ!」
普段より『準備』が足りないから何も着けて無くても、ちょっと引っ掛かる感じがして違和感を感じた……、けど一旦、少しでも挿入ってしまうと……楽なんだよね。
簡単にヌルン…って挿入っちゃうの。
だから、竜児が途中から根元まで一気に挿入てきて……甲高く啼く。
一度では無く二度、三度と…何度も…抗えず啼いてしまう。
それは竜児が力強く腰を打ち付けるから…。
間隔を設けて一打づつ、強く強く膣の奥へ力一杯…。
息が詰まって、私はビクンと身体を跳ねさせる。
思考と視界が靄が掛かった様に…淡く、白くなっていく。
「っは!はあ…はあ…、んんっ!…んあ」
竜児の大きな身体の下で、私の身体が蚤の様に小さく縮こまっていく。
彼の熱に浮かされ、淡い痺れに酔わされ、強い刺激に絆される。
背中に回した両手で強く抱き締め、総毛立つ快楽の海に溺れていく…。
こうして、しっかり抱き締めていないと、竜児がくれる愛情を取り零してしまいそうな気がするんだ。
「ふ…ぅ、悪い…ちょっと休憩させてくれ。気持ち良くて、すぐにイッちまいそうだ」
暫くすると、彼が肩で息をしながら私に身体を預ける。
「ん…、良いよ。竜児のペースですれば良いから」
私は彼の頭を抱いて頬を寄せながら紡ぐ。
繋がっているだけでも気持ち良い。密着した胸がトクントクン…脈打つ様子を感じるだけでも私は……嬉しいから。
「亜美…」
「んう?…あ。ん…」
竜児が私の顎を軽く持って僅かに唇を開き…口付けしてくれる。
舌を吸い出され、甘噛みされて…口内で貪られていく。
彼の奥深くへ誘われ…唾液を送る。
『もっと愛して』と…舌を口内で蠢かせ、囚われて蕩ける。
「ねっ…亜美ちゃんがしてあげよっか?」
息継ぎの為に唇を離して、彼に甘く囁く。
やっぱり我慢出来なくなっちゃった。
「ん、何をだよ?」
「ん〜…。こ・う・い・う・こ・と」
私はお尻にグッと力を入れて、膣でおちんちんを締める。
これは自然に覚えた技。
力を緩めて、また入れて…柔らかい膣肉でモミモミ。
そして腰をフリフリさせてみる。
こうしてあげると竜児が気持ち良さそうに呻くんだ。私も良くて…啼いちゃう。
私の中でおちんちんが暴れるの…膣内が掻き回され、奥をグリグリ擦って気持ち良い。
ピリピリ痺れる甘い電気が身体を駆巡って、堪らなくて…更にサカリが付いてしまう。
「ん…ん、んぁ。あふっ…はっ…はっ…」
私は腰を緩やかに擦り付けながら貪欲に彼を求める。
「く、ぁ。あ、亜美…少し加減を……おおぅっ!」
そんな言葉を押さえ付ける様に私は腰をグリッと一回転。
すると竜児が気持ち良さそうに喘ぐ。
膣内でおちんちんが暴れ、おっきくなって抉る。
「んあっ…だぁめ、私は私のペースでするもん。
あっ…あ…ほらぁ…竜児も一緒に頑張ろっ?」
私は彼にしがみ付き、ねっとりと腰を使って誘う。
発情しきった甘い啼き声を耳元で聞かせて…一枚づつ理性を剥いであげるの。
「ふふ♪我慢しちゃ駄目…。あ…はぁ…うん、そうだよ…ゆっくりゆっくり…、は…ふ」
徐々に竜児が抽出を再開し、子供に接する時みたいに優しく褒めて、身体を捩らせる。
緩く突いて『亜美の味』を確かめているんだ。
スケベな竜児…、そんな事されたら亜美ちゃんまでスケベになっちゃうよ。
うん。じゃあ一緒に御味見しようか。
私は『ここも美味しいかなぁ?』って…腰を振って薦める。
「んは…、ぁう…あっ。んうぅ…」
おちんちんの頭が縦横無尽に膣壁を掻く、ゾワゾワってお腹が痺れて腰が蕩けて消えてしまいそうになる。
いつもみたいな激しさは無いけど、深く繋がっている悦びに快感を感じていた。
「ふ…ぅ、あ…。や、あ…っあ。りゅ、うじぃ…気持ち良いよぅ」
根元まで深く挿入たまま腰を揺すられ、ゆっくりおちんちんを引かれる。
「あっ!はっ…、あっ…あ…。んくっ…、あっ!」
そして一気に奥まで突き上げられて、また円を描く様に揺すられる。
何回も何回も…愛情を込めて繰り返してくれる。
「亜美の中…暖くて、くふぅっ…はっ…凄く気持ち良い…」
息を弾ませて竜児がそんな事を言う。
「あは…ぁ…、んん……あ、亜美ちゃんも…す、ごく良いよぅ。ひあっ…頭がバカになっちゃいそう…」
恥かしいじゃん…でも竜児に酔わされた私も素直に返して、背中に回した手の指に力が入っていく。
トロンと蕩けて力が抜けてしまった身体…。
だけど抱き付く手と足は彼を離すまいと…必死で。
「っ…、は…亜美っ…イ、イッちまいそう、だ。本当に…その、良いんだよな…、ふっ」
「はあ、はあ…ん。…うん、だからこのまま…んう」
「お、おうっ…」
そして竜児がほんの少しだけど抽出の速度を上げて、登り詰めていく。
膣内でおちんちんがビクンビクン跳ねて暴れているから分かるよ。
荒々しさは無いけど、力強く私の膣肉を掻き分け、交ぜて、締めた膣壁を押し拡げていくの。
その愛情表現に背中が反っていき、意識しなくても勝手に膣内の彼を締め上げ、呼吸に合わせて揉みしだいていく。
そう。私の意思なんか関係無く、身体が覚えてしまってて…一滴も残さず飲干そうと貪欲に貪るんだ。
「ふっ!あっ!あっ!あっ!あぁ、んう!あんっ!」
お腹の奥にビリビリ響く竜児の乱打に私の身体が跳ねる。
気持ちが高揚し、全身が熱く溶けて一つを除いて感覚が消えていく。
彼に委ね、繋がった部分の感覚のみが強い刺激を伴って、思考を支配する。
「りゅうじぃっ!!あっ!!あっ!!りゅうじぃっっ!!」
彼の名を呼び、淫陶に溺れてしまい爪を立てて漂流するのが精一杯。
「くうぅっ!うあ…っ。はっ!はっ!…はっ!」
竜児が大きく喘ぎ、身体をブルッと震わせたのを感じ、続いてお腹の中が火傷しそうな熱に呑まれる。
「んんっ!んっ!!んっ…あ……はあ!」
熱い飛沫が奥をくすぐり、むず痒くて…痺れて…気持ち良くて、そこで理解する。
竜児が射精…してる。私の膣内で…。
これ以上無い程に張り詰めたおちんちんがビクンビクン暴れ回って、何度も脈打つ。
その快感に私も同様に震え、互いの身体を撫で合って覚えていく。
これが本当の『竜児の味』なんだと。
バカになった腰が止まらず、惰性で振り続けてしまう。
止まらないの…コレ、気持ち良くて堪らないから。
トロンと蕩けた表情で私達は快楽の残余を堪能していく…。
.
「ねぇ…良かった?お・ナ・マ…。亜美ちゃん病み付きになりそう」
抱き合ったまま事後の熱を冷ましている途中、私は竜児にそう聞いてみる。
「おぅ…癖になりそうだぞコレ。亜美に包まれて気持ち良くてよぅ…」
下腹部に当たるおちんちんが徐々に小さくなる様子を感じ"彼は"満足したんだなって…ちょっぴりヤキモチを妬いてしまう自分が居た。
「そっかぁ…。あの、ね。実は亜美ちゃん……まだ足りないの、おまじないが足りないよ」
達する事無く持て余した情熱に体内がジリジリ焦がされて、身体の熱が冷めても…熱いままで切ない。
このまま我慢…なんかもう出来っこない。竜児の逞しさを覚えてしまったから…ずっとソワソワしちゃう。
「でもすぐには無理だぞ、なっ…もう少ししたら」
「え〜〜?大丈夫だって、若いんだし。それかアレ?その年で枯れ気味ぃ〜?」
私は大人しくなったおちんちんの根元を持って左右に振る。
「ちげぇよ!俺は枯れ始めてすらねぇっ!」
ちょっと声を荒げて彼が言う。でも見た目程には怒っては無いみたい……目付きが怖いのは仕方無いし。
「だってぇ目の前にこ〜んな可憐な美少女が居て一回で打ち止めとか……ねぇ?ぷぷっ…」
手の平を口に当てて含み笑いし、優しくおちんちんを扱く。
愛液と精液に汚れたヌルヌルおちんちんを手の平の中で弄ぶ。
「何事も急には無理なんだよ、ったく……お前って奴は」
「んふ♪嘘だぁ、こういう事されたらすぐに勃きちゃう癖にぃ」
私は起き上がってブレザーを脱ぎ捨てリボンを解く、そして一個づつブラウスのボタンを外していく。
その様子を寝転んだまま凝視する竜児を横目に見つつ、彼の足を拡げて間に腰を落ち着ける。
ブラウスを脱ぎ、同様に上下の下着も…。私の身を覆う物はスカートとハイソのみになる。
そのまま俯せて彼の下腹部に上体を乗せる。
「竜児の大好きな亜美ちゃんのおっぱいで、お寝むになっちゃったおちんちん勃こしてあ・げ・る」
彼のズボンを下着と共に太股までずり下げ、お尻の下に膝を差し込んで胸でおちんちんを包む。そして…両腕を寄せて、ゆっくり扱いていく。
ちょっと滑りが悪いみたい。引っ掛かりが有るというか…。
だから谷間から覗いたおちんちんの頭に唾液を垂らして馴染ませていく。
胸の中で強く圧迫して、上下左右に揉みほぐして唾液を擦り込んで…。
「う…亜美、柔らかい…な」
手慣れている様で実は初めてなの。
こういう愛撫の事は知識として知ってはいた。
けど…初めてするんだ。
頑張るね?竜児…。
「っふ!う…ぁ…。う…うぅ」
彼が切なそうに啼き、愛撫の快感から身を捩る姿を上目遣いに見ながら、優しく、強く、ゆっくりゆっくりおちんちんを擦る。
自身の胸元から発つ水音…眠っていた『竜児』を目覚めさせている音。
勝手が掴めなくて、ただ単調に胸の中で揉みしだいてみたり、上下に擦るだけ。
それでも啼く竜児が愛しい。
「どう?痛くない、…気持ち良い?」
「お…ぅっ…」
徐々に逞しさを取り戻していくおちんちんの熱さに満足して、答が分かっていても問う。
弱ったチワワが竜に拾いあげられ、背中に乗せて翔んでくれた事が嬉しくて…。
優しさと強さに触れて痛みが和らいで、傷が癒えていく。それを実感しているからこそ濃いスキンシップで返す。
ただ快楽を求めて…って訳じゃないんだよ?…多少言い訳っぽいけどさ。
傷を舐め合ってるみたいに他人が見ようが関係無い。
私達二人が自分達なりに見付けた惹き寄せ方なんだ、気持ちを確かめて、伝えて……共有する為に必要な契。
竜児は気の迷いなんかでリスクを負う人じゃない。
お腹の中でまだ熱を帯びている彼の愛情がその証拠。
そのリスクだって、自分より私の事を心配して直前まで気遣ってくれていた。
竜児はいつだって相手の事を想いやれる……。
私が隠した内面を見付けても怯まずに相手してくれた。
いつかの私はそれが嬉しくて…内面を晒け出す勇気が持てた。
その結果は良い方に転んだ……竜児のお陰。
ああ、そうだ。回りくどい言い方は無しだよね……
「竜児………大好きだよ」
彼に聞こえない様に、そう呟いて…胸をグイグイ押す可愛い『暴れん坊竜児』に口付けする。
啄む様に何度も甘く吸い付き、先っちょを舌先でつつく。
「ちゅっ!ちゅっ!ちゅ…う…!」
溢れた先走りを吸い出し、舌の上で転がす。
竜児がくれたご褒美だから…美味しいよ。
唾液と共に喉を鳴らして咀嚼し、また吸う。
今度は唇で甘噛みし、舌で舐め回しながら強く吸う。
根元から残滓を搾る様に胸で掻き、彼に求愛する。
「く…ふぅ!あ、亜美っ!…うお!」
腰が引けてしまっている彼を引き寄せて捕らえたら、口内へ誘う。
「くちゅ…ちゅぶっ…。は…ふ。ちゅばっ!」
繋がる為の最終仕上げ。
これは竜児を高ぶらせる為のおまじない、だから加減してはいる。
でも愛情は載せて、唾液を絡ませた舌でねっとりとねぶる。
「ちゅぷっ…ちゅる!…ちゅぶっ、ん…」
竜児の震える身体を押さえ付けて、数回愛撫して口を離す。
コレより、もっと蕩ける事……それを彼もしたくなってるだろうから。
「ね…、挿入ちゃおうか?」
と、甘く囁き彼の上に跨がる。
そして膝を立てて腰を上げ、潤いを湛えたままの秘部におちんちんを小刻みに擦り付ける。
ほらぁ…ちゃんと返事をくれないと、このまま焦らしてお預けしちゃおっかなぁ?
本当は私が望んで行為に及ぼうとしているのに、こんな意地悪をしてしまう。
それは竜児と戯れたいから…、例えるなら波打ち際で海水を掛け合うみたいな……そういう事の代わりに今出来る事をしてるだけ。
「んんっ…あ…。」
でも竜児は鈍感だから気付かない。だから早々に諦めて私は腰を沈めていく。
疼く膣を割って挿入ってくるおちんちんの甘美な快感に身体を震わせながら新たな目標を見つけた。
『今はこれで良い。けど、いつかは竜児の方から戯れてくる様にしてやるんだから…』
と…。
その時が本当の意味で並び立った瞬間になるだろうから…。
そして終着じゃなく『始まり』であり『通過点』になれと願って…。
「あは…全部食べちゃった」
根元まで呑んで、ジンジンと疼く痺れに声を震わせながら私は竜児に紡ぐ。
彼の上に足を開いて跨がって…繋がった部分を晒している。
自分でもやり過ぎかなと思ってしまう淫らな姿……、でも竜児には全てを見て貰いたいから…このままで良いかな。
『大切な貴方になら、こういう一面も見せてあげる。嫌かもしれないけど、しっかり見て』
そんな想いを載せて、私はゆっくり腰を前後に揺らす。
彼の胸板に両手を添えて、膣で感じる熱と硬さに融ける。
「んあ…あ、ぁう…。ふ…、は…あ…はあ」
硬くて太いおちんちんが奥を強く抉る、巡る血液が沸騰してしまいそうな高揚感、そして途切れる事無く与えられる甘い痺れ。
痺れが解ける直前の、ムズムズするあの感覚。
それがお腹の奥から腰へ伝わり、駆けて全身へ…。
「はふっ…!あ、ん…。ん…う…、んんぅう…」
膣壁を余すことなく擦りながら暴れるおちんちん。
それがヒクンと膣内で跳ねて硬さを増し、同時に私のサカリも増していく。
竜児の色に染まる悦び。自身の色に彼を染めていく喜び。一点の斑も無く交ざって融け、一色にしたくて一心不乱に腰を躍らせていく。
緩慢に抽出し自重で奥深くを突き、強い刺激に腰が砕け背中と首が弓なりに反る。
呼吸が浅くなって、身体が熱くて…堪らなくて…思考も視界もトロンと淡い白さにぼやけてしまう。
「はっ!はっ!はあっ…!あっ!んあっ…!りゅうじぃっ…りゅうじぃ…!」
甘えた声で彼の名を何度も呼び、更に強い刺激を求めて腰を振る。
竜児が両手で胸を掬って揉みしだいて返してくれて、腰の力が抜けてガクガク震える。
でも必死に踏ん張って、より激しく抽出する。
額を伝う汗が彼の身体に落ちていく様子を、何処か遠くで起きた出来事を見ている様な不思議な感覚がした。
「ひうっ!あっ!あんっ!!あ、あ…あぁっ!!」
胸に十指を埋めた竜児が胸を軽く搾る。
絶え間なく蠢く指の感触。
そして緩く突き上げられる快感。
それらに私は啼く。…もっと愛してと嘶く。
「ふっ、う…!あっぁ…!!ひあっっ!!あっ!!」
人差し指と親指で摘まれた乳首を優しく転がされる微弱な電流、突き上げて膣内を抉るおちんちんの強い刺激。
快感が融解して一つになって鋭い電流に変わる。
私の中の『女の本性』がざわつく。
太いおちんちんが絡み付く膣肉を掻き分け、掻き回し、引っ掛けて、引っ張る。
張り出したおちんちんの頭が膣壁を引っ掛けながら抜かれる時の浮遊感に酔わされて…、
自重で一気に奥へ押し込んだ後、更に一突きされてグイッと女の部分を押される。
下死点から上死点まで与えられ続ける強い刺激に、私は何も考えられなくなっていく…。
彼と踊って…身も心も繋がってフワフワ……翔んでしまう。
多幸感と視界が白く染まる感覚が頭の先から爪先まで一巡して、二巡、三巡…気持ち良くてバカになりそう。
「ひあぁっっ!!あっ!!あっ!!あっ、うっ!!ひあうぅっっ!!」
とうに燻っていた熱情は燃え上がり、私を焦がしていた。
彼の上で私は揺れて、獣の様に貪る。
抱き寄せられて胸を吸われ、噛まれ、ねぶられて……ガツガツと突き上げられている。
急激におちんちんが当たる場所が変化し、私は雌豹の様に背中を反らせて切なく、オクターブ高く啼く。
丁度弱い部分におちんちんの頭がズリズリ、グイグイ……蕩けちゃうよぅ……。
そんな事を心の中で叫んだ時には、目一杯高ぶっていて…絶頂までもう数歩。
「あんっ!!あっ!!ら…めぇ!!ひうっ!!イ、イッちゃう!!イッちゃうよぅう!!!」
汗だくの肢体を竜児に寄せて、ギュッと頭を抱いて…あとはただ身を任せるだけ。なんにも出来なくなるから…。
「はっ…あ!!亜美ぃ…!!」
竜児が両手で私のお尻を掴んで、激しくおちんちんを叩き込む。
やらしい水音と肉のぶつかる音が大きくなっていき、だけど私の耳には入らなくなっていく。
耳鳴りだけが響いて……淡く、白く蕩けてフェイドイン…。上手く言えないや。
そして、視界一面が白一色で染まった瞬間……爆て真っ暗になった。
「ああっっっ!!!!」
私の身体を電流が走り、総毛立って……筋肉が硬直する。
それを感じた時、私の意識は何処かにフワリと翔んでいった……。
羽毛に包まれた様な心地良い感覚に惚け、力強く引かれる感触に自我が戻る。
「っはあ!はあ…はっ!!………あうっ」
竜児が私を俯せにして、腰を掴んで引き寄せたの………。
その際に膣内でおちんちんがズリズリ擦れて敏感になった身体が跳ねる。
彼と触れている部分全てが、性感帯になったみたいに気持ち良くてビクンビクン…惚けて、蕩けて…力が入らない。
「っ…今の亜美、すっごく…やらしい顔してるぞ」
彼が均す様に腰を緩く振りながら、覆い被さって私の顔を覗く。
返す言葉も無いし、事実だし、恥かしいし………だから蕩けた笑みを返して答とする。
「んふ…、あっ…」
再び彼が身体起こし、優しく腰を進める。
私は上体を畳に湛えて、爪を立てる。
達したばかりの敏感になった身体に与えられる甘い痺れに、途切れ途切れの吐息を洩らして甘受する。
彼の動きに合わせて私の身体は揺れ、自分の身体がこんなにもちっぽけなのだとか思ってしまう。
体格とかって意味じゃなく、竜児に抱かれると……私は小さくて、彼は何倍も大きい様に錯覚してしまう……そんな感じ。分かるかな?
ゴメンね?変な例えをして…でも、そうとしか言い様が無いんだ。
「なっ?もう少し激しくして良いか?」
そう彼が懇願したのがおかしかった。
だって私は『優しく』してなんて一言も言って無いもん。
気遣ってくれて我慢してくれてたんだ。
「う、うん…良いよ?来て……」
妙に照れちゃって…声が上ずっちゃう…。
『この状態で激しくされたら……凄く気持ち良いんだろうな』
そんな期待も交ざってはいる。
だが、それ以上に彼が注いでくれる情が嬉しかった。
高鳴る胸の鼓動は、彼への愛情が増したから。
震える肢体を奮い立たせてお尻を彼の腰に押し付けるのは好奇心。
どんな事も一緒に見たいから……亜美ちゃんも頑張るよ。
「んうっ!!ひあうぅっっ!!ひっ…あぁっっ!!あっ!!」
「おぅっ!す、すげぇ…!くぅっ!!」
『何が』凄いのか…それは彼にしか分からない。
彼の言うところの『亜美』が吸い付いてくる、とか、揉まれる、とか、ザラザラが纏わりつくのか…全てなのか、それとも一緒に躍らせている腰遣いか。
でも気持ち良さそうに私を味わっているのは確かで、可愛いとさえ想ってしまう自分がいた。
自然に締めてしまう膣で感じる彼の質量に絆されて、トロントロンに蕩けて発情しきる。
こんな犬の交尾みたいな格好で………それが堪らないの。
気持ち良いけど恥かしい…でも、一番自然な形での交わりなのかもしれない。
だからくすぐられているんだと思う。本能が…。
おちんちんが抜け出る直前まで腰を引き、一気に挿入る。
「ひぁうっっ!!」
女の部分が圧迫され、息が詰まって目の前で白い火花が散る。
腰が痺れる…お腹の中もジンジン痺れ、熱く疼いて…お尻を振っておねだり。
「りゅうじぃっ!も、もっと…もっとぉ!!あんっ!!」
今度は速く、激しくおちんちんに突き上げられる。
時折、円を描く様に掻き回されて、強い一撃を食らう。
膣壁を絡め取りながら擦り、硬く張り詰めたおちんちんの先で口付けされる。
「あっ!!あっ!!んあっ!!あひっ!!あんっ!!」
押し拡げられた膣から沸き起こる刺激に狂喜し、全身の筋肉が硬直し、すぐに弛緩する。
蕩ける甘さに舞い上がって、達してしまいそうになる。ゾワッと背筋を鋭い電流が走り抜けて脳内で爆る。
亜美はそれが堪らなくて女の部分で口付けを返し、彼にねだっている。絶頂が迎えたくて…。
「あんっ!!あんっ!!あっ、あぁ!!あ…ふっ!!」
そして望み通りに達せられても、竜児は容赦なく『交尾』を続ける。
「あっ!!あひぃっ!?…や、あぁ!!あっ!!りゅ、うじぃっ!!ら、らぁ……あっっ!!」
淫乱な私に彼がおしおきしてくる。
斜め下からさっきとは違う角度で、女の部分が潰れるんじゃないかと思う位に激しくおちんちんで何度も刺突してくるの…。
私は再び達してしまい甲高く啼く、連続して何回も何回も…。
快楽以外の感覚が無くなり、竜児に囚われ……女の悦びに舞わされる。
気持ち良過ぎて腰がバカになっちゃう。
ガクガクが止まらず、快楽を覚えた身体が欲する事を止めない。
美味しい竜児を膣でしゃぶり回して、吸って、揉んで…溶かして求愛する。
「うぅっ…はっ!あ、みっ…くっ…出そ、う!!」
「う、うんっ!!あ、あ!!い、良いよっ!!このまま…あっはぁ!!」
私が全部を言い切る前に、あの熱く染み渡る感覚が襲う。
膣内を暴れ回りながら、おちんちんが精液を吐き出す。
さっきより深い場所で、跳ねて…掻き回す。
熱くなった身体が更に熱く融けて…蕩けていく。
私はお尻を振って竜児の射精を手助けする。うぅん…まだ止まらないの…バカになっちゃってて。
私の腰を掴む彼の手が震え、吐き出す物が無くなっても脈動が止まない。
私はその余韻すら取り零さない様に…痺れた身体を寄せて……甘え続ける。
.
「なあ、本当に送って行かなくて良いのか?もう遅いから危ないぞ」
玄関先で竜児の肩を借りて、ローファーの爪先をトントンと打ち付けて履きながら私は返す。
「ん、心配しなくても大丈夫だよ。そう時間が掛かる訳じゃないし、それに竜児も疲れたでしょ?」
でも竜児は納得し切れて無い様子だ。
「別に疲れてねぇよ。少しの距離っても亜美に何かあったら嫌だ。だから…送らせてくれ、頼む」
事後にシャワーを借りてから、何度もこんなやり取りを繰り返していた。
「じゃあ…お願いしようかな」
でも最後には彼の優しさに折れてしまう。
いや…本当は望んでいた。
何か『送らせている』って感じが申し訳無い。
そもそも発端は私が『腰が痛い』と言った事なのだ。
だから申し訳無い。
「おぅっ!」
けど嬉しそうな竜児の顔を見たら、これで良かったんだと気付く。
意地を張り続けるより素直になろう、彼の曇った顔は見たくないし、優しくして貰うのは嬉しいから。
カンカンと音を響かせて階段を降りたら、竜児が手を差し延べてくれる。
それは手を繋ごうという合図。
満面の笑みを返して私は指を絡ませて手を繋ぐ。
どんなに寒い日でも、こうして彼と手を繋げば暖くて、全身がポカポカ。
繋ぐ事が出来ない左手はコートのポケットの中で寂しそうにしているけどね。
「よし、行こう」
そう言って私を導いてくれる竜児と並んで歩みを進める。
わざと歩幅を狭めて、ゆっくり歩くのは、ただの一秒でも長く居たいから。
この時間が永遠に続けと願って寄り添い、幸せな気持ちを噛み締める。
そして十歩も進んだ頃だろうか?
高級マンションのエントランスから出てきた人物を見付けたのは。
そいつは息を切らせ、私達の前に躍り出て進路を塞ぐ。
「大河…」
驚きを隠せない声で竜児が、その名を呟くと…そいつはゆっくり顔を上げ……次の瞬間『殺気立った大きな何かの気配』が辺りを包む…。
続く。
今回は以上です。
続きが書けたら、またお邪魔させて貰います。
では
ノシ
355 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 00:04:11 ID:xq+vWnTm
ななどらとマジで話がこんがらがった
それぞれ、今後楽しみだね
もう全ssこのヒキでいい
>>354 おいおいおいおい
えっちシーンは甘々ラブラブで最高にGJ
でもGJなのに修羅場のヨカーン
続きが気になってならない
ところで「抽出」は「抽送」ですよね?ピストン運動
エローイ!これはあとの二人も期待大ですなっ
そして3人終わったところで最初だった亜美が復活して
シャワー浴び終わった二番手も合流して最後は全員でか!
359 :
黒×実7:2009/07/09(木) 08:12:57 ID:/EWAAPm7
「あ〜あ〜っ 退屈っ だりーだりー、ダルビッシュ」
亜美は悪態をつく。掃除に熱中している竜児は、全く相手にしない。亜美は竜児の背中を見ながら自問自答。
タイガーも、こんな想いで高須くんと付き合っていたのだろうか。毎日、なんとなく一緒にいて、二人の
関係が近づく事も、遠ざかる事もなく…ずっと一緒。やっぱりこれはこれで、アリなのかもしれなかった。
あの時…もし実乃梨ちゃんに高須くんを奪われても、この関係が続くのであれば、アリだったのかも、と。
…するとっ
「黒間監督っ、カマ〜ン♪」
「櫛枝!!俺のバットを握れっ!!」
突然聞こえた声に、亜美のセンチメンタルな妄想は吹き飛ぶ。実乃梨と黒間先生の声だ。俺の?バットぉ?
そそっそれ…まさかっ 高い塀越しで、2人の声しか聞こえない亜美は、大変な勘違いをしてしまった。
竜児は、気付かず掃除を続けている。しっかし、このオトコは鈍感にできているものだと感心するも、
(…ちょっ、ちょっと!!高須くんっ!!!動かないで、静かにしてて!)
竜児の口を手で塞ぐ。竜児は、おうっ!と驚いて、こっちの世界に還って来た。
(おうっ!な…どうしたんだ、川嶋っ)
(実乃梨ちゃんと,黒間先生っがいるのっ!気付かれちゃうっ!
邪魔しちゃだめっ)
「…監督っ 監督の黒バット…太っ…」
「そうだ…いいぞう櫛枝。そう…スゴいじゃないか…。今度はタマを握ってくれ。しっかりな」
「はいっ こんなっ感じですか?ちょっと転がしてみますよ?クリンクリン♪」
「おおっそうだ、むうう流石っ…やっぱり、バットを握ってみせてくれ…ゆっくり動かすんだ」
「もうっ、ワガママなんですねっ」
竜児と亜美は顔を見合わせる。ほらほらほらほらっ!大変大変!!という顔の亜美。いやいやいやいや!
そーかもしれんが、そーじゃないかもしれないし!!という顔の竜児。どっちもエロゲ脳って感じだが。
すると体育準備室から、ガタッ!という大きな音が聞こえた。まあ、座っていた丸イスが壊れた音なのだが。
座面と足がバラバラになった丸イスを修理しているのも、高い塀があって、外壁の2人には見えないのだ。
「監督、わたし足持ち上げますから、ここに入れてください」
「いいのか櫛枝。もうちょっと足を上げてくれ。入らない…」
「ええっ、無理です、これ以上…でも、んんっ…これで、入りますか?」
「いいぞ、櫛枝。よく見える。ゆっくり入れるからな…」
「もうちょっと…上…あっ、あたってる」
やっぱりやっぱりやっぱりやっぱり!!ヤバいヤバい!!という顔の亜美。うわわわわわわわ!!!!
マジかマジかマジかマジか!!という顔の竜児。二人とも涙目だ。
「ああんっ監督っ あせらないで、ゆっくり入れてくださいってばぁ」
「すっすまん。力んでしまった、実はあまり経験がなくてな」
「そうなの?今度はちゃんと入れてくださいねっ ストライクッ、なんちって」
「なんか塗った方がいいか。そうだ、マッサージオイルを使おう」
キャーキャーキャーキャー!!!鼻息が荒い亜美。おうおうおうおうおうおう!!自己崩壊の竜児。
二人の妄想は加速。亜美は脳味噌が沸騰しすぎて、エロモードになってしまった。
「むっふううん…、高須くん…わたし、キスしたくなっちゃったぁっ…かもっ」
「なななななななっ、やめろやめろ、抱きつくなっ」
「ちょっとでいい。ちょっとでいいからさぁ」
ドタバタドタバタ暴れ回る。二人は悪くない。青い果実達の想像力は果てしないモノなのだ。
「何やってんだ、お前ら…」
体育準備室近くの裏門から、黒間と実乃梨が出て来ていた。
彼らは、縦四方固めの体勢で、竜児のほっぺたに吸い付かんとしている亜美を目撃した。
続く
夢を見ている。
またこの夢だ、と竜児はこれが夢であることを自覚する。
夢であることを自覚し、内容をコントロールできる夢を明晰夢と言うらしい。
もっとも、この夢の場合自覚はしていてもコントロールはできないのだが。
* * *
その日、高須竜児は恋人との幸せな時間を過ごしていた。
恋人は実乃梨であったり亜美であったりクラスの女子であったり、または見知らぬ女の場合もあった。
いずれの場合も二人は寄り添い、見つめ合い、微笑み合う。
逢瀬の後、彼女を家まで送る僅かな時間にも竜児の胸は幸せで一杯であり、
今にもスキップを始めそうな足を彼女の歩調に合わせながらつないだ手に少しだけ力を込める。
そんな竜児に微笑む彼女の姿はとてもキラキラしていた。
二人で過ごす世界は嘘のようにわざとらしくキラキラ綺麗に輝いて、まるで夢のようであった。
そうして歩きながら竜児は考える。
こんなに楽しくて、こんなに幸せで、こんなにも気分がよいから、今日の夕飯には大河の好きなものを作ってやろう。
夕飯の席では今日恋人とあったことを話そう。明日恋人としたいことを話そう。
きっと楽しいはずだ。きっと大河だって楽しいはずだ。
明日も明後日も明々後日も、ずっと先の未来でも、きっと大河は笑ってくれるだろう。
だって世界はこんなにも幸せに満ちているのだから。
そして――――
スマンかぶった
自分も告知なしで投下しているので気にしないす。ドゾ
>>362 すみません。ではお先に。
以下
>>360の続き
「竜児」
目の前に大河が立っていた。
「おめでとう」
「お幸せに」
二人に祝福の言葉を告げ、柔らかく微笑む大河の胸には、
「今までありがとう」
(やめろ)
「私の傍にいてくれてありがとう」
(やめてくれ)
「私を見ていてくれてありがとう」
(やめろやめろ!)
「私に優しさをくれてありがとう」
(やめろやめろやめろ!!)
「もう私は竜児の傍にはられないから」
(そんなことを言うな!!)
「だから私は独りで生きていくね」
(そんな顔をするな!)
止めどなく血が溢れる大きな傷があった。
「さようなら」
(頼むから笑ってくれ!!!)
笑ったまま血を流していた。
去っていく大河のけぶるような髪を、いつかのように掴むことはできなかった。
傍らの恋人はいつの間にか石となっていて竜児を捕らえて離さない。
色を失った世界で大河の血の跡だけが鮮やかだった。
大河が血を流しながら歩く道は細く暗く険しく、何度も転ぶ大河はその度に傷を増やしていく。
誰かが止めなければいけない。その体を支え、傷を癒してやらなければならない。
俺が傍にいてそれをやらなければいけない。
大河の傍にいたい。傍らにあり続けると誓ったのだ。
なのに、
伸ばした竜児の手が大河に届くことはなく。
大河の名を叫ぶ竜児の声は吹雪にかき消され。
大河は一度も振り返ることはなく。
その姿は吹雪の崖の向こうへ消えていった。
喪失感に自身の胸を見れば、いつの間にか開いていた大きな穴の向こうで恋人の石像が微笑んでいた。
――――そして高須竜児は永遠に大河を失った。
* * *
「―――――っ!!!」
声にならない絶叫と共に竜児は跳ね起きた。
滝のように流れる汗は全身を濡らし、肺は酸素を求めているのに胸をぎゅうっと締め付ける痛みが呼吸を邪魔する。
次に襲う急激な嘔吐感に堪らずトイレに駆け込んだ。
悪夢のような修学旅行からこっち、もはや恒例となった朝の始まりであった。
悪夢に囚われ、コントロールを失った明晰夢は己が考えないようにしていた恐怖を呼び、最悪の結末を見せ付ける。
いつかの幸せな悪夢とは違う。救いなんてこれっぽっちも無かった。
「大河」
涙で滲んだ視界の向こうにその姿は無い。
自分はなんて愚かだったのだろう。
共に電柱を蹴り倒し、傍にいると誓ったのは誰だったか。
プールサイドで聞いた真直ぐな叫びで気づいた感情は何だったか。
夏休みの旅行で安らぎを感じたのは何時だったか。
文化祭で走ったのは誰を取り戻すためだったか。
寒空の下、一緒に星を見上げたのは誰だったか。
クリスマスイヴには誰と一緒にいたいと願ったのか。
「大河」
こんなのはほんの一部に過ぎない。
4月以降、毎日毎日朝から夜中まで一緒に過ごした時間は如何程だろう。
放課後から就寝までを6時間、4月から12月まで270日としてざっと計算しても1620時間。
それだけの時間が大河の存在を大きくした。
それだけの時間が大河の存在を見失わせた。
自分はなんと愚かなのだろう。
この苦しさの正体に気づきながら、それでも竜児は自分がどうすればいいのか考えあぐねていた。
雪山で聞いた大河の願いが頭をよぎり、思考を拡散させるのだ。
大河に逢えばきっと答えが出るだろう、そんな自分の愚かしさに見て見ぬ振りをして汚物と一緒に流す。
そうして大河のいない灰色の一日が始まる。
(了)
ご迷惑をおかけしました。
空色をしたプールの底まで一気に潜水すると、亜美はゆっくりと浮上し、そのまま、空気との境界に沿ってするすると泳ぎ始めた。
キラキラと揺らめく水面から差し込んだ光が透明な水の中で拡散し、彼女の身体にゆらゆらとした影を落とした。
意識してゆっくりと泳いだ。けだるそうに腕を挙げ、水をかく。
急ぐ必要はなかった。タイムを競っているわけではない。泳いだ距離も関係ない。大事なのは心拍数と時間。
亜美はゆっくりとプールから上がった。
ビキニパンツの股のところからぽたぽたと水が滴っている。
すらりと均整のとれた長身には疲労の色が浮かんでいる。
2−Cのいつもの面々、竜児、実乃梨、大河、亜美、北村、それに加えて麻耶、奈々子、能登、春田の九人はそろってここ「らく〜じゃ」のプールへと出かけてきていた。
女性陣がレーンで泳いでいるあいだ、男性陣はプールサイドの椅子に座って彼女たちを眺めていた。
同級生の女子との”裸の付き合い”に、能登と春田は口をだらしなく半開きにして、やにさがっている。
「顔、小っせえ〜、身体、細っせえ〜」と能登。
「やっぱ亜美ちゃんすげ〜、俺もう死んでもいい…」と春田。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、見事なモデル歩きでプールサイドを竜児たちのほうに向かってやってくる亜美。
彼女が歩いてくると、みんなぎょっとして顔を上げる。頭身がハンパじゃないのだ。八頭身どころじゃない、十頭身くらいあるんじゃないかとさえ思える。
素足だというのに、ハイヒールを履いてるんじゃないかと勘違いするほど長い脚。
彼女は誰が見てもファッションモデルという顔と身体をしていた。
だいたいの男の人はモデル体型の女の子を見ても、『もっと肉付きがいいほうが…』などと、関心を示さないものだが、彼女は違った。
顔は小っちゃく目はおっきくて、呆れちゃうほど手足が長い、いかにもファッションモデルといったスタイルでありながら、
亜美の身体は、出るところは出て引っ込むところは引っ込むという、いかにも男好きのするカーヴを描いていた。
子ども連れのお父さんは思わず手をつないでバタ足の練習中の我が子のことを忘れ、
腰までの浅いレーンでウォーキング中のおじさんはよそ見をしたままプールの端につま先をしこたまぶつけ、
スイミングスクールの指導員のおにぃさんはクロールで泳いでいる子どもたちを叱咤するのを忘れ、
派手なワンピースの水着に巨大な脂肪の塊のような身体をつめこんだおばさんたちも、ぺちゃくちゃおしゃべりしていた口をぽかんと開けて
何か新種の人類でも見るかのように眺めた。
そして、やれやれしょうがないわね、若い娘って、自分だけは永遠に若く美しいままにいられると錯覚してるんだから、とでも言いたげに首を振った。
つづきはまかせた
>>367まるなげかよ!
あんたの作品は保管庫に入れる資格なし!
なにさまわろす
370 :
366の続き:2009/07/09(木) 13:02:15 ID:/EWAAPm7
亜美の美貌は確かにメジャー級なのだが、それにしても今日は視線が熱すぎる。
ふとガラスに写る自分の姿を確認。プール中の視線を集めた謎解明。
ノーブラだった。乳丸出しだった。
「ぎょわぁぁるぅぉええぅ!!!」
手遅れだ。
クラスの仲間は、大河までもが、逃げた亜美に深い同情したが、
北村だけは、悔しがっていた。
続かない
「あ〜みん、一度ならず二度までも… だからそのビキニ、危ないって言ったのに〜」
元気はつらつとした水着姿の櫛枝実乃梨が弾けるような笑顔で見送った。
「ふぁ? なに、どったのばかちー?」
実乃梨に手を引いてもらっていた大河が、水から顔をあげて聞いた。
花柄のワンピースを着たその姿は、見た目だけはスーパードルフィー並みに愛らしい。
いっぽう、男子たちはというと、ちょうど思春期の盛りで、サルも顔負けの性欲を日々持て余しているところに、大橋高のトップアイドルのあられもない
トップレス姿を目の前に見せつけられたものだから、もうたまらない。
座ったまま、全員がうつむき加減になっていた。
「どうしたの高須君、コース空いたから、泳いできたら?」
奈々子が、海パンの上から竜児の逸物を注視しながら言った。
奈々子の黒くつやつやとした濡れた髪が、彼女の豊満な胸元に這うようにへばりついていた。
高校生としての発育のレベルをはるかに超越した、肉感的なダイナマイトボディは、そんじょそこらのグラビアアイドル以上の大迫力。
そしてそれを申し訳程度に覆うわずかな布地は、着ているというより、身体にまとわりついているといった感じだ。
悩ましくくびれた腰と、きゅっと上に上がった幅広のお尻、ムチムチしたツルスベの太腿。
憂いを帯びた瞳と、いかにも情の濃そうな厚ぼったい唇が女の色気をかもし出している。
竜児の股間で、快楽弾が薬室に送り込まれようとしていた。
あとはたのんだ
頼むから全部書いてくれよwwww
>>373の続き
奈々子は動こうとしない竜児の手を引っ張り無理矢理立たせようとする。
竜児は抵抗したが、奈々子は前屈みになって媚びるように声を出す。
「行こっ」
豊満な肉体と垂れ目の威力を存分に使い、さらに竜児逸物を剛直させた。
自分の武器を知り尽くしている奈々子は、竜児が固まっている間に手を取り走り出す。
前屈みになりながらも駆け足で走る竜児の剛直には女性陣からの視線が嵐のように舞う。
それと同様に一歩踏み出す度に踊る奈々子の肉体にも男性陣の視線が豪雨のように降り注いだ。
次の方お願いします
竜児の手を握った奈々子のやわらかい手のひらはとても心地よく、理性がとろけそうになる。
歩くたびに、小振りのスイカくらいはあるその巨乳が、ぼよんぼよん、と揺れた。
彼女のあとに付いて歩きながら、竜児は、白い前腕に生えた柔らかいうぶ毛をじっと見つめた。
(いったい、俺をどこに連れていこうってんだ…?)
心臓がバクバク鳴って、肋骨のすき間からはみ出しそうだ。
竜児の目は前を歩く女の完璧な形をしたお尻と、滑らかな太腿にクギ付けになっていた。
「ひゃははっ、亜美ちゃんケッサク〜、更衣室から出てこね〜んだもん」
様子を見にいっていた木原麻耶が、へらへら笑いながら帰ってきた。
歩くたびに、亜麻色の髪の毛が、さらさらと優美な弧を描きながら、揺れる。
フレッシュな果実のようにういういしい身体つき、勝気そうな瞳、ミルクを練りこんだみたい白い肌。
若々しいエネルギーに満ちた麻耶の身体は、ちょうど狩野すみれのスマートな肢体を思わせた。
麻耶は以前にも増してになり、男性陣よりもむしろ女性から羨望のまなざしを浴びていた。
「ねぇ能登っち、マジ受けたよね今の」
麻耶は、北村と能登のあいだの空いていた椅子に座ると、わざとらしく能登のほうを向いて、屈託の無い人懐っこい笑顔を浮かべて、にこやかに話しかける。
どうやら、麻耶は北村攻略をからめ手で行くことにしたようだ。
追いかけるよりは追いかけさせよう、ということか。…能登は当て馬かよ、気の毒に、と竜児は思った。
どうぞ
少し離れたところから北村が麻耶の身体を眺めていた。
(……会長…? あっあれは木原か。きっと会長とプールに来ていたらあんな水着姿だったんだろうな…)
知らず知らずの内に北村は麻耶とすみれを重ね合わせていた。
性格は全く違う。
麻耶は決して軽くはないがギャル系。
すみれは兄貴系、もとい姉御肌のしっかりした女性。
でもその身体には似たようなものを感じる。
いつの間にか北村は麻耶に見蕩れていた。
でもその麻耶は能登と楽しげに話している。
北村の中にフツフツと今まで感じたことのない感情が込み上げて来た。
(なんだこれは? 俺はなんで……)
竜児は麻耶と能登を眺めた後、奈々子に全長50mもあるウォータースライダーの乗り場に連れてこられていた。
スピード感溢れることが魅力のウォータースライダー。
一つのチューブに二人で乗る、という形のモノで周りを見渡すとカップルばかり。
そんな場所に奈々子と二人きりであることに気付いた竜児は葛藤に苦しむが奈々子はそんな竜児を無視した。
奈々子の柔らかな手の感触は竜児を妄想という夢の中へ誘い、櫛枝ことを忘れそうになる。
引っ張られ、されるがままの竜児。
それを楽しむ奈々子の笑みは妖艶だった。
硬直している竜児はスタッフにからかわれ、男性陣からは羨望の眼差しを受ける。
周囲の目を一切気にせず奈々子は竜児に密着し、二人でスライダーを滑り落ちて行く。
滑り落ちて行く途中、怖がるフリをして竜児のソレに触れたり、自分の身体をわざとらしく擦り付けた。
更衣室から出てきた亜美は、そんな光景を目撃してしまった。
-------------------------------------------
ああ麻耶を幸せにしたい欲望が出てしまった。
次の方どうぞ。
378 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 16:40:30 ID:GTuo/hoA
間違えた。
>>377の一行目はこっちにしてください。
北村は遠くから歩いてきた麻耶を一瞬だけすみれと錯覚してしまった。
亜美は、竜児を探していた大河と実乃梨に合流。見たまま、ありのままを話した。
「…って事なのよ。大体もし2―Cをラノベ化したら、ヒロインは私達三人にだと思わない?高須くんを、たかがモブキャラにNTRれるなんてオカシイのよ」
「ばかちーにしては、いい意見ね…ただ、あのエロ犬をブチ殺さないで捕らえる自信ないわ…」
「どうどう大河…もし裁判になっても、あたしは大河の味方だよ」
奇跡の討伐隊が誕生した
竜児と奈々子はもつれ合いながらウォータースライダーをすべり降り、派手な水しぶきをあげてプールに着水した。
絡みつく奈々子をふりほどきながら水から上がってくると、プールの縁に大河、実乃梨、亜美が立っていた。
「こらぁエロいぬ! 昼間っからイチャイチャしてんじゃねえぞごらぁ!」
「ねぇ〜、た・か・す・く・ん? この亜美ちゃんがいない間に、ずいぶんと奈々子ちゃんと仲のよろしいことで…」
「今のはちょっと見逃せないぜ高須君!」」
奈々子がわざとらしく竜児に腕を絡ませる。
「あら亜美ちゃん、お帰りなさい」
水着を着た二人の女神が竜児を挟んでにらみ合った。
いずれも、大橋高校トップクラス、一人はまるで全身整形したような美しい肉体をもつ現役ファッションモデル、
そしてもう一人は、まるで雑誌のグラビアから抜き出てきたみたいな、めまいがするほどのダイナマイトボディ。
その横には脳みそ筋肉女と妖怪人間ベロもいた。
あたりには発情した女子高生の匂いが立ち込めていた。
竜児は、四方を鏡に囲まれたガマのように、だら〜りだら〜りと脂汗を流した。
そんな光景を見物しながら、実乃梨が言った。
「やるねー香椎さん、みごとなこうげきだーっ、ふむふむ、これぞ恋の鞘当て、いやいや、恋の戦国無双っ! …にしても高須君、
こーんな美人のクラスメイト二人にモテモテだなんて、この色男さんめぇ〜」
亜美がべらんめぇ口調でまくし立てる。
「てんめぇ奈々子、いったいどういうつもり? あれか、抜け駆けする気か、それとも…」
「べつにいいじゃない、高須君は亜美ちゃんのものって決まったわけじゃないんだし」
ぐうの音も出ない様子の亜美。
「て言うか高須君、公衆の面前でその股間のいきり立った逸物はなんなの?」
(お前に公衆の面前でうんぬん言われる筋合いはねぇ…)などと思いつつ竜児は、
「こっこれはだな川嶋… そ、そう、健康な男子の生理現象というものなんだ」
「ふーん… 奈々子に身体くっつけられてコーフンしてたんだ?」
「いや違う! 元はといえば川嶋のおっぱい見ちまってから…」
「…えっ」
奈々子がぐっと身体を密着させる。
「そんなコト言わないで」
そう言いながら、まるでオリエント工業とかリアルドールみたいに完璧なかたちをしたおっぱいを、竜児の腕にすりつけた。
もっちりした乳肉がむにゅっと吸い付いてくる。
「ちょっとぉ、奈々子、高須君を離しなさい!」
「いや」
「あははははー、やってるやってる。修羅場だねー」
「そうだな! あいつらは元気が良いからな! 楽しそうだ!」
北村の視線に気が付いた麻耶は、隣に座っている能登に構わず北村と二人だけの空間を作っていた。
北村も北村で麻耶に興味を持ったことでいつもと少し様子が違う。
失恋のショックからだろうか、少しビクビクしているように見える。
麻耶はそんな北村に気が付き、内心喜びながらも普通の友達に接するように振舞っていた。
(もう少ししたら私も奈々子みたいにウォータースライダーに誘おうかな……)
北村に自分のことを、より女性として意識をさせる為の作戦を麻耶は考えていた。
そんなことを考えているようには顔に出さずに。
そんな時に北村から思ってもない一言が出た。
「木原、俺らもあれに乗ってみようか!」
麻耶は目を丸くして驚いた。
北村はそんな麻耶を見て失敗したか?などと考えていたが
「う、うん。一緒に乗ろう、まるお」
「よしっ! じゃ能登、春田、行ってくるなって、あれっ春田はどこ行った?」
周囲を見渡しても見つからない。
今日は休日でかなり混んでいるため一度見失ったら見つけるのは困難だろう。
そういうことで能登を一人残し、北村と麻耶は二人で一緒にウォータースライダーへと向かい歩いて行く。
今にも手を繋ぎそうな距離感で。
竜児は今にも泣きそうな能登に気が付いたが、自分が囲まれている女性たちの対処でいっぱいいっぱいだった。
そんな中、乳合戦に沈黙してしまった大河は、最後の手段に出た。
らく〜じゃの前で配っていた風船を疑乳パットの代りに装備した。
「竜児!そんなに、おっぱい好きなら、わわわたしの、おおおっぱい揉みなさいよ!」
不自然に膨んだ胸を突出した大河であった
ざっぱああああん!!
ウォータースライダーをいきなりすべり降りてきた長身の若者、長いのは身長だけでなく、髪の毛も長かった。
「うっひょおおーい、たっかすちゃーーん」
「どわっ」
「きゃっ」
春田のボディアタックを受け、もんどりうつ竜児。
ふと、気がつくと、なにやらぴんと張った曲面に頬っぺたをすりつけていた。
キュッキュッという音がする。
竜児が見上げると、大河の真っ赤になった顔があった。
「…こんぬおおおおおお!!」
いつの間にかリレー小説がまともに成立してる・・・しかもこんな短時間で
ここの職人たちのレベルの高さは本物だな
と大河が暴走する寸前にまた誰かが飛び込んできた。
ドバァアァアア!!!と水しぶきを上げ、周囲の目がその人物に集まる。
……全く知らない、顔に何の覚えもない赤の他人だった。
怒るに怒れない大河。
大河から逃れることに成功した竜児。
相変わらずちゃらんぽらんな春田。
次の行動を考えながら竜児に徐々に近づいている奈々子。
実乃梨と亜美は何かを話し合っている。
北村と麻耶は遠くから指を指して笑っていた。
そんな光景を遠くから能登は眺めていた。
「……平和だなぁ」
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「っていう夢を見たんだよ〜〜」
「アホ春田、最っ低―」
「やっぱり、俺が一番気の毒じゃねえか」
おしまい。にしませんか…
そうですね
だが待ってほしい。
どうせ夢オチなら、公衆環視の中公開セックスとかなんとかやっても平気なんだぜ?
春田、そういう時は衆人環視って言わないか?
えっ、arl環視じゃないの>arl
394 :
黒×実8:2009/07/10(金) 00:16:29 ID:UZ83fsE1
ジャズの流れる店内。須藤バックスをようこそ〜っと、元気な女子大生の声が聞こえた。
そんな、いつになっても通報されない珈琲店の禁煙席で、4人は喜怒哀楽をそれぞれ担当していた。
喜んでいるのは亜美。
「…てーかぁ♪高須くんの事だったらぁ実乃梨ちゃんには黒間先生がいるからもういいじゃなーい♪」
からかい甲斐のある禁断の恋バナと、未遂だが竜児とチッスできたのは充血するような体験だった。
怒っているのは実乃梨。
「違っげーよっ!大河にあーみん監視しろって言われてんだよ!監督は関係ねー。なんだよ昨日からっ!」
大河の旦那に手を出したのはムカつくし、監督の目の前で竜児への想いを晒されたのもなんか嫌だった。
哀しんでいるのは竜児。
「先生なんか、イロイロ。すいません…ちょっとした誤解があってですね、掃除も途中で、すいません」
勘違いで、まあ流れとはいえ亜美とイチャついてしまい、その体裁を整えるため掃除大会を強制終了した。
楽しんでいるのは黒間。
「ノーファットミルクがあるのか…素晴らしい。ん?何だ、高須、飲まないのか?」
普段、飲食はジム以外で摂らない黒間は、オサレな店内の全てに感嘆の声を挙げる。カウンターの店主、
須藤さんと目が合って、会釈。須藤さん的には、大橋高校の生徒は、最近騒がしい小柄な可愛い娘が
来ないな〜と思ったら、予想GUYでムキムキのニューキャラが出現たりして、こそこそ楽しんでいた。
「先生は関係ないって…本当〜?まあいっか。わかった、わかった、わらったw」
「わらってんじゃねえつーの!高須くんもっ!あたしゃー、大河に何といえば良いのやら…」
「いや…川嶋との事は、まあ、交通事故みてぇなもんで…まあ1発免停って感じだけどな…」
「なんだ高須、18歳だからってあせって免許取らなくてもいいだろ。お前には2本の脚がある。走れ」
じゃあ、明日の朝練遅れるなよと、黒間は風のように去って行った。なんてニュートラルな性格なんだろ…
とにかくっ大河になんて報告しようか…、林のように実乃梨は静かになった。黒間の事も話さねばなるまい。
その黒間が帰って、亜美の関心は竜児へ。火のような情熱で、公然わいせつ女は、竜児にぴったり寄り添う。
大反省中の竜児は、亜美を撥ね除けられず山のように動けないのだが、山のようになった下半身にさらに猛省…
どいつもこいつも…高須くんの事は、高須くんに任せるしかない。あーみんもそうだ。四六時中監視する
わけにも行かない。実乃梨は決めた。今は、とりあえず高校総体が終わるまでは、自分の目標に集中しよう。
大河っごめん。
ノーファットミルクw
396 :
黒×実9:2009/07/10(金) 00:48:15 ID:UZ83fsE1
高校総体の予選はトーナメント制。大橋高校の地区は、早い話、3日間で6回勝てば全国大会の激戦区だ。
黒間は、監督就任して約1ヶ月過ぎ、すっかり周りからも認知されていた。ただ、ちょ〜っと良くない噂話
もあるのだが…
「いいかっ、明日から本番だ。しかし、世界を目指す我々には通過点に過ぎん。最低でもインターハイで
優勝して、渡米し、全米ジュニア代表をノックアウトするぞっ!行けばわかるさっ!1、2、3…」
ダァーーーーーッ!!!と、お約束通り全部員が同時に天に拳をかざす。特に打ち合わせしていないのに…
この1ヶ月。やることはやった。メンバー全員、明らかにビルドアップ。ユニフォームがパッツンパッツン。
表情にも自信にみなぎっている。そういえば、昨日の帰りに冗談で試しに缶コーヒーを思い切り握ったら、
プルトップが吹き飛び、コーヒーはブッシュウウっと飛び散って、超ヒンシュクをかってしまった…
また、連日の男女の紅白戦により、様々な状況での判断力が上っている。ちなみに右腕くんの本気球は、
レギュラーで打てない者はいなくなっていた。明日は、大橋駅に8時集合。
第一試合は、9時からフィールディング。9時半にプレイボールだ。
「解散!!」
実乃梨は部長として帰り際に一人一人に声をかける。期待してるぜ〜、良いトコ見せろよ〜…すると、
「…部長っ」
後方から小さい声。なにかねっ?と声の方に振り向いた実乃梨は驚いた。
「あれれれれ?ねえっ、どした?どうして泣いているの?」
肩を震えさせているのは、実乃梨の右腕と言われた部員。入部してから、ずっと一緒にやってきた娘だ。
ちなみに北村の右腕といわれた、右腕くんとは、まったくの別人。性別も違う。
「あのっ、部長は…黒間監督の事…本当に好きなんですか?本当に付き合っているんですか?」
ふっふっふ。前回は唐突だったが、今回は違う。予想出来た。わたしって流石。右腕さんに優しく話す。
「もう、貴女までそんな事言って…。あたしゃー、ソフトに命を捧げたのだよ。
ジャイアントさらばしたのだよ。うん。貴女、黒間監督の事、好きなんだね?」
「ジャイアント?…何ですかそれ?違います」
違うか〜っ、じゃあ、そっちかよ…実乃梨は覚悟した。覚悟のススメだ。
「部長!いえ、櫛枝さん!わたし…貴女の事が…」
きた…
「好きでぇぇぇーーすっ!!」
もう、ソフト部員は、公然告白しなくてはいけないのか…まあ、うれしいけどね。
「あは…あははは、あんがとっ、うん。でもさ、覚悟のススメっていう、マンガにはね、
暴力は極力避けるもの、恋は極力秘めるものつーのがあってだね…ま、こっちで話そ!」
と、引き連れてベンチの奥に移動しようとすると、目の前を黒い肉体…、黒間が道を塞いだ。
「お前達。明日から予選だぞ?大丈夫か?メンタル面というのは非常に試合に影響する」
知っている…。そう、実乃梨は去年末、練習試合で、逆転負けの失態を演じた。真面目に答える。
「はい…わかっています、だから今、はっきりさせます」
「そうだな。俺の監督初日のときも全員に話したが、俺と櫛枝には師弟関係以上の事は皆無だ。安心しろ」
黒間は、右腕さんに白い歯を魅せながら、きっぱりと否定する。そんなにきっぱり言わなくても…
「そうなんですか?でも、生徒も先生も知らない人いない位、学校中の噂になっていますよ。いつも一緒で…」
たしかに、廊下とかでヒソヒソ話される事が日常茶飯事になった。先週なんか、ゆりちゃん先生にも聞かれた。
「大丈夫だ。ただ今は、ソフトボールだけ考えるんだ。one for all - all for one」
一瞬春田くんの『arl』を思い出し、吹きそうになる。右腕さんは黒間の言葉に頷き、安心して帰っていく。
右腕さんとのロマンスは、まあ置いておいて…全部員を見送った後、黒間と実乃梨はグラウンドに二人きり。
「いや〜、わたくしモテ期に突入したようですなぁ」
しばらくして黒間が口を開く。
「ときめくな俺の心。揺れるな俺の心。恋は覚悟を鈍らせる」
えっ?黒間の言葉に実乃梨は反応。黒間監督も、マンガ読むんだ…、
と、思った以上に、その言葉を発した真意が実乃梨は知りたいと、強く思った。
続く
うう・・・みのドラが好きなのに
意外といい組み合わせだとか思ってしまうw
つか右腕w
うぅ……俺もだ
実乃梨には竜児以外いないと思ってたのに
つかガチで最後結ばれそうなのが怖いな
そして黒マッスル…生徒とそんな噂流れたらクビじゃないかww
そういえば俺の高校の体育教師が女子高生にわいせつ行為して捕まってたな……
400 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 05:19:08 ID:ogR0FB8X
逮捕エンドか
(ブタメシ)盛るぜぇ〜超盛るぜぇ〜
>>394-396 GJ!なんかこの二人がヤるとしたら、恋とかじゃなくって、単なる肉体的欲求の解消という感じ
つーか竜児、スドバでキャバクラ状態いいなー
ななこいは?ななこいは?ななこいはどした?
スレが変わって、荒らしも減ったというのに、相変わらず日記の投下はなしか。
書けなくなるなら、最初から書かねば良いものを、愚かな作者だ。
しつこい、今更そんなこと書いて誰が得する?
>>404 まだ相変わらずお前みたいな奴がいるからじゃないかな
俺は当分待ち続けるよ
スルー検定実施中ですか
俺は
>>403,4見た瞬間NGいれたけどな
最近すごいラッシュだな。梅雨で外出率が下がったから?
410 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 16:08:49 ID:NiVxCP5Z
411 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 16:11:02 ID:NiVxCP5Z
ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?
ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?
ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?
ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?ななこいは?
412 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 16:11:52 ID:NiVxCP5Z
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な
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は
な
は
古いwwwwww
大河の中で何かが切れた。
大河は竜児に跳びかかり、まるで子泣き爺いのように背中にしがみつくと、思いっ切りひっぱたきながら喚きちらした。
「ずん胴で悪かったわね! ペタンコで悪うござんしたぁ! …なによなによ、そんなにモデル体型のボンキュッボーンが好きなら、
ばかちーんとこでも香椎さんとこでも好きなとこ行っちまえ!…つ〜か、あんた少しは女の整理しろっつ〜の!!」
「あいててて〜っ!!」
実乃梨が引っぺがそうとする。
「これこれ大河、も〜ちょっと行儀良くしんしゃい!」
そのとき、能登がふらふらとやってきた。
そのただならぬ気配に、竜児の危機回避アビリティが警告を発する。
(…なんかヤバい、目が据わってんぞアイツ!)
せせら笑いながら、能登がひとりごちた。
「うぉぉーい、高須竜児! こりゃ〜どういう事だよ! あれか、クラスの女子を毎日とっかえひっかえか。 こんな美人に囲まれて
朝から晩までイチャイチャか。ええ? そ〜やって末長く幸せに暮らしましたとさ〜か。ほーほー」
(マズい、目が死んでいる!)
415 :
黒×実10:2009/07/10(金) 18:45:55 ID:XSozlAul
AM7:00
集合時間の1時間前に実乃梨は大橋駅にいた。たま〜に、北口と間違える部員がいるからだ。
南口に近づいてくるユニフォームが見えた。まだ早い。誰だろ…どうやら…右腕さんだ。
「部長っ!お早うございますっ、ホントっ早いですねっ1時間前っす」
「オッス、マンサンコ〜ン!っあれ?このネタ使い回しちゃったかな…」
ちょっと曇り気味の空。今日は午前と午後に試合がある。あまり暑いと厳しいから丁度いいか。
1試合目は、大丈夫だろう。ただ、2試合目は去年の優勝校、インターハイでもベスト8だ。
しかし実乃梨は緊張するわけでもなく、ただ早く試合がしたかった。ウズウズしていた。
一緒に苦労したから、一緒に感激を分ち合いたいと、想うヒトがいるからだ。
そんな実乃梨に、右腕さんに抱きついた。この娘もそうみたいね…
AM7:30
「あれー?みんな来てるっ!わたしったら時間、間違っちゃったかしら?このユニフォームって、
三十路(独身)には辛いわぁ…おはよーございまーっす!」
ゆりちゃん先生?実乃梨は目を丸くする。実乃梨と目が合う。
「おはよっ、櫛枝さん。あ、部長ね。ごめんなさい、櫛枝部長。あのっわたし大丈夫かしら…」
「えっ?なんで?大丈夫って何が?なんで、ゆりちゃん先生がここにいるの?」
「あっそうなの。わたし今日付けで、女子ソフト部の臨時だけど顧問兼監督になったの。よろ…」
実乃梨は独身の言葉を最後まで聞かずに、北口に走って行った。もしかしたらいるかもしれない。
そしてカモシカのように階段を3段抜かししながら、携帯のフリップを開けた。携帯は繋がらない。
南口にはもちろん誰もいなかった。
AM8:00
「もう時間だし。行きましょ、櫛枝部長…」
恋ケ窪ゆり(30)独身兼臨時監督は、実乃梨をなだめるように、肩に手を置く。部員は独身が
来る頃には全員集合していたのだ。実乃梨は、口には出さないが、黒間を待っているのがわかる。
「なんで…どうして…」
つぶやくような言葉を、独身は聞き漏らさなかった。独身はゆっくり話しだした。
「その…いま非常に敏感なんですよ。噂だけでも。高校教師というか、僕たちの失敗というか…」
黒間解雇の理由は、そんなツマラナイものか。実乃梨はやり場のない怒りを憶える。部長〜っ
心配そうな部員達。…そうだった、わたしは部長だ。わたしがしっかりしなくちゃっ!
「おおおおっしゃああ!!出っ発ぁぁぁーーーーっつ!!黒間先生の弔い合戦じゃああ!!」
いや、死んでないし…という右腕さんのつっこみを受け流し、部員を引き連れ、いざ鎌倉!!
AM9:15
大橋高校の部員達は、すでにアップを初めていた。実乃梨はトイレで携帯を見つめていた。
「連絡くらい…しやがれっ」
吐き出した言葉に、自分の中で、黒間の存在が大きくなっていた事に気付く。どうせなら、
誤解されるなら、本当に付き合っても良かった。たとえ臨時だったとしても、チームを
活気づけてくれた。わたしの夢を理解してくれた、後押ししてくれた、初めてのヒト。
携帯を閉じるのと同時に、実乃梨はその恋心を閉じた。
またかぶってしまった…すいません…
いえいえ
>>414 リレーの続き?GJ!
いきなり夢オチ止まりになったからちょっと不満だったんですけど再開してくれて嬉しいです。
楽しみにしてます!
>>415 ヤバい、黒みの面白いw
ゆりちゃん参戦?w
ゆゆぽスレももう終わりだな
スレは一部の職人に私物化され、その空気に異を唱える者は去り
残ったのは馴れ合い職人とその信者、キチガイ荒らしだけ
いやいや
終わってるってのは、この板のハルヒスレとかの奴の事を言うんだよ
アニメ絶賛放映中(笑)なのに、だーれも投下しないw
まぁ、ハルヒの場合はvipがあるけど
>>420 私物化なんてしてない
ずっと閑古鳥が鳴いてるから遊んでるだけ
まぁ雑談に毛が生えたようなレベルだけどね
それを世間一般では私物化という…
釣れますか?釣られてますか?
悪かった
もう投下やめます
どういう状態が正常なスレのかkwsk
>>425 それだと荒しの思う壺だぞ、落ち着いたら帰ってきてね
当日作品投下したわけでもなく、トリも付けてない自称作者とか荒らし以外の何者でもない
430 :
黒×実11:2009/07/10(金) 23:29:44 ID:ulon+Soc
AM9:30
黒間はひとりで、誰もいない大橋高校のグラウンドにいた。もうプレイボールの時間だ。
第一試合は、去年の練習試合で逆転負けされた相手。
今の実力なら、本当にコールド勝ち出来るだろう。みんなよくやった。頑張った。
やっぱり、俺には団体競技は向いていないのか?苦笑し、細い目をさらに細める。
黒間はいつかここで打ったホームランの軌道上、曇り空の合間に、白い月を見つけた。
「櫛枝…実乃梨…」
黒間はいつもは名字だけで呼んでいたが、無意識に、下の名前も口にした。
AM11:30
須藤コーヒースタンドバーへようこそ〜 あれ?女子大生のバイトの掛け声が変わった?
亜美はこの時期忙しい。モデルの仕事もそうだが、肌を露出する機会が多く、エステやら
ジムやらで、ゆっくりする時間がない。しかし時間は作るもの。亜美はプロフェッショナルだ。
スケジュール管理をきっちりすれば、今日みたいに丸1日オフにする事が出来るのだ。
ネイルサロン帰りにスドバで、冷たいキャラメルマキアートをイートインしに来たのだ。
いつもの指定席の禁煙席に行くと…あら?見たことある黒く、ムキムキした物体を見つけた。
PM00:00
「ぷはああああっ、もう1杯っ!」
実乃梨は、水筒に入ったアミノ酸飲料を飲んだ。もちろん黒間から譲ってもらったものだ。
球場の周りの河原で、実乃梨はメンバーと昼食を摂っていた。風が気持ち良い。
第1試合は10点差、3回コールド勝ち。おかげで疲労も少ない。元来、女子ソフトでは、
投手戦が多く、大差が付く試合は珍しい。思わぬ伏兵に、大橋高校へのマークが慌ただしかった。
第2試合は2時から試合開始。相手は本命、去年の優勝校だ。
「もしかしたら…勝てるかもですねっ!でも勝てたら、全国レベルって事ですもんねっ」
右腕さんに、いやいや、勝って兜の緒を締めるもんだぜっと、言い聞かせる。ただ…
ただ、実乃梨は密かに…密かに想っていた。わたしは、わたしのために全国レベルではなく
世界レベルを目指すと。 そして、あのヒトのためにも。
PM02:00
試合開始の時刻。ホームベース前に整列した大橋高校女子ソフトボールチーム全員、唖然。
相手は全国ベストエイト。今年の目標は、全国制覇!といっても納得のチーム。その相手が、
地区大会の予選で、全員一軍で固めて来たのだ。前代未聞だ。雑誌で見た選手が数人いる。
さわやかなスポーツマンシップって感じぁなく、完全にメンチ切っている。
ほ〜、おもしろいじゃないの…ベンチに戻った実乃梨は、円陣を組み、エンジン全開。
「みんなっ胸をかしてやろうじゃねえかっ!いっくぞおおおおおっ」
オー!!!!
続く
432 :
360:2009/07/10(金) 23:39:49 ID:M+90hc4j
>>432 いや、立派にSSだろ
遅ればせながらGJと言わせてもらおう
>>430 連日乙です。
なんかクライマックスに向かって加速が始まった て感じですね
続き期待してます。
乙です
>>430 最初は、なんだこのカップリングはギャグかよww
と思っていたが何だかいい展開になってきて面白い
437 :
黒×実12:2009/07/11(土) 07:31:47 ID:acnMjojB
PM02:50
強豪校が強豪校たるゆえん。それは、勝負所で、実力以上に力を発揮する所かもしれない。
大橋高校は、単発ヒットは出るが、打線が続かず、試合は一進一退のシーソーゲーム。
やってる方は必死だが、見ている方は、面白い。噂を聞きつけた人々が集まり、超大入り状態。
何かあるたびに、うおおっ、わああっと歓声が聞こえる。土手の上にいる亜美の耳にも届いた。
ただ、微妙にルールが解らない。できれば祐作に解説して欲しい所だが、当の本人は、生徒会
の仕事で来れないと、嘘付きやがった。…どーせ、ボストンから一時帰国している兄貴と合流
しているはずだ。あーあっ、せっかく完璧なスケジュール管理で空けた休日を、何が楽しくて
球場に来ているんだろうと後悔。今年の2月。高須くんとタイガー達を大橋で助けた時も
そうだったっけ…。困っている、悩んでいる人がいると、手を伸ばしたくなってしまうのだ。
だけど本当は…誰かにそうしてほしいんだ。考えたくないけど…わたしって、
「わたしって、本当。かわいそう……」
さてっ!亜美は、携帯を取り出し、ちょっとまえに赤外線でゲットした番号にダイヤルする。
PM03:10
最終回。あと一人で。大金星だ。
しかし、そうは問屋がおろさない。実乃梨は変化球を多用し、結構、そのヤバかった。
「ボーッルッフォア!!」
やっべ〜、歩かせちまった。クリーンナップの1人目を1塁に送り、満塁。最悪な事にここで、
今日3打数3安打の4番打者が相手だ。…こいつまでは打順を廻したくなかった。
ゆりちゃん監督が、うるうる心配そうな目で見ている。もういいのっ、よくやったわって目。
いやいやここからでしょ…。キャッチャーの右腕さんは、イン側のサイン。しかし、
相手も読んでるだろ…さて…実乃梨は頷く。
そんな実乃梨の状況もよく理解していない亜美は、土手から降りて来て電話をしている。
今日一番の名試合のクライマックスで、声援が大きく、電話の声が聞き取りにくい。
「え〜っ、何? 先生、まだそんな所にいるの?もう、試合、終わっちゃいますよっ!」
亜美の電話の相手は、まだ、朝の集合場所の大橋駅にいる。球場までは1時間かかる。
続く
次の投下で、ひとまず終了です。今日の夜です。規制で携帯からの投下だったのでとびとびですいませんでした。
…………ィーン……ウィーン…ウィーン
「うーん……」
掃除機のけたたましい音が近づいてくるのを感じて奈々子は目を覚ました。
しかし意識はいまだはっきりとせずまぶたも重い。
本能に従って再び夢の世界へ舞戻ろうとした時、掃除機の音を伴いながら部屋の引き戸ががらっと開かれた。
「こら奈々子!いい加減に起きなさい!」
おばあちゃん登場である。眠気は今この瞬間も動き続ける掃除機に吸われていく。
「……おはよう」
「何がおはようよ、もうお昼前よ。いくら土曜だからって朝寝坊が過ぎるわ」
「……およそう?」
「はいはい、おそようおそよう」
「ふぁあ……しょうがないじゃない、今週はテストだったんだから」
「……昨日は試験休みだったじゃない。ま、昨日みたいに昼過ぎに起きてこなかっただけ上出来ね」
「…………」
あわよくば夕方まで寝ていようと思っていた奈々子は親の仇を見るような目で掃除機を見つめていた。そして、
ぐぅううう〜〜〜〜きゅるるる
盛大に腹が鳴った。
「ぷっ」
「うっ…………あ、朝ごはん何?……朝ごはん?ここは優雅にブランチというべきかしら?」
「そんなものもブランチなんて洒落たものもないわよ。お昼ごはんはそうめんだけど」
「手抜き」
「あら、それはどうかしらね。いいからさっさと顔洗っていらっしゃい」
「はーい」
* * *
さて、ここで奈々子の家族構成を説明しておかなくてはいけない。
奈々子は現在祖父母と父と一緒に暮らしている。他に大学生の姉がいるが現在は大学近くに下宿している。
母は奈々子が小学校に入学する前に離婚して家を出て以来、行方は杳として知れない。
仕事を抱えながらの育児は父には荷が重く、まだまだ元気を持て余していた祖母が奈々子の母代わりとなったのだ。
(……元気がありすぎる)
更に異様に若い。見た目が実年齢マイナス10歳なのに加え、纏っている雰囲気が本当に若いのだ。
一緒に歩いていて母娘だと思われることも珍しくない。
小学校の授業参観でも見事に溶け込んでいて担任ですら奈々子の母だと思い込んでいたくらいだ。
そして目元のほくろがエロいのである。いい歳こいて……。
* * *
440 :
360:2009/07/11(土) 10:35:24 ID:cCoosSE3
「何か手伝おうか?」
顔を洗って台所に顔を出した奈々子は、そうめんと睨めっこしている祖母に手伝いを申し出た。
「そうね、海苔を刻んでおいてもらおうかしら。……ってなによその格好、着替えくらいちゃんとなさい」
奈々子はパジャマにぼさぼさの髪を洗顔用のゴムバンドで上げているという出で立ちである。デコっぱちである。
「いーのいーの。海苔を刻めばいいのね」
「おお、おばあちゃんのお手伝いか。偉いぞ奈々子」
「そうめんか。ばあさん茗荷を忘れないでくれよ、茗荷」
昼食のにおいをかぎつけた父と祖父の登場である。
「寝坊して海苔刻んだくらいで何が偉いもんですか。茗荷ばっかり食べてると物忘れが酷くなりますよ、おじいさん」
「うるさいなー、もう」
「ばあさん、それは俗説だよ」
「あらあら、じゃあ今日は何の日だったかしらね?」
「え?」
祖母のからかいに本気で頭をひねる祖父。もう幾度も見た平和な光景である。
「さあさあ、そうめんが茹で上がりましたよ!」
「よし、今日はそうめん記念日ということにしようじゃないか!そうしよう、なあばあさん」
毎日が記念日だ。
そうめんである。
どこまで行ってもそうめんである。
なんだかすごいことになっちゃったなぁである。
手抜き、などと言っていた奈々子であるがその実祖母のそうめんには白旗を挙げる気まんまんであった。
もう無条件降伏だ。
茹で加減が絶妙なのに加えて、薬味も茗荷にはじまり、刻み葱、下ろし生姜、山葵、白ゴマ、刻んだ海苔(奈々子作)と
各種取り揃えている。
更に祖母お手製の特製麺つゆ(やりすぎ)によってそうめんは御馳走へと昇華する。
「いただきます」
「いただきまーす!」
唱和の後、麺を掴もうと逸る箸を抑えてまずは茗荷だけをつゆにくぐらせて口に運ぶ。
しゃきゅしゃきゅ、とした歯ごたえと共に口一杯に広がる夏の香りに恍惚とした表情を浮かべる。
(あっあ、夏……!!)
そして奈々子の食欲に火がファイヤーしてしまった。
まずは薬味をつけずに素直にめんとつゆの味を楽しむ。
豊かなつゆの香りをつるりと飲み込んだら次は葱と生姜である。
やはり合う!手間を惜しまずに直前におろした生姜が効いている!
今度は刻み海苔だ。薬味は組み合わせで無限の楽しさを演出してくれる。
しっかりと海苔の存在を感じながら自分の仕事に満足する。
しかしまだ終わらない。ゴマの出番である。
すらずにざらっと投入された白ゴマは口の中でプチプチとした感触と共に風味をたててくる。
(やっぱりそうめんは夏に限るわ!そうめん記念日万歳!!)
そうして奈々子は夏の日を堪能していった。
441 :
360:2009/07/11(土) 10:35:44 ID:cCoosSE3
堪能しすぎた。
(最後の二把、あれが効いたな)
二つに折った座布団を枕に畳の上でごろりと寝転び、ちょっと張ってしまった腹をさする。
試験勉強で中断していたウォーキングを再開しなくてはいけないかもしれない。
しかし今は満腹と共に襲ってきた眠気に身をゆだねてしまおう。
明日からがんばるのだ、と決意を新たにして奈々子は意識を手放した。
気が付けば土曜日の三分の二が終わっていた。
ということは今日はあと三分の一しかないじゃないの、と考えたところで声が掛かった。
「あら、やっと起きたの。どうでもいいけど今日は貴之先生が来る日じゃなかったかしら?」
「わぁっ!?そうだった!もう、もっと早く起こしてよっ!」
「寝言で『もう食べられない』とか言ってたからおもしろくて動画撮っちゃった。ほら」
言いながら祖母は携帯を見せてくる。
『う〜ん……もう食べられない……』
いい表情である。
「ひいぃっ!削除っ!!」
「あらあら」
しかし祖母は余裕の表情だ。きっとパソコンにバックアップがあるのだろう。
無駄にハイカラなのだ。コンピュータおばあちゃんである。
後で探して削除せねばと思いながら、今はそんなことに構ってはいられない。
大急ぎで身支度をしなくては。
貴之先生とは奈々子の家庭教師である。
3月までは女の先生が付いていたのだが大学を卒業ということもあり、
その先生の紹介で4月からは大学3年生の貴之先生がその任を受け継いだ。
実は先の先生の弟で、教育学部に通っているだけあってなかなか教えるのが上手かった。
だからどうしたというわけではない。
きっとさっきまでのだらしない格好の反動だろうが、薄く化粧までしてちょっと気合の入った格好になってしまった。
案の定、父にもばれているようであった。
「なあ奈々子、貴之先生のことなんだが。その、なんだ……やっぱり女の先生の方が気兼ねがなくていいんじゃないかな
?」
「何の心配をしているのよ。大丈夫よ、私は年上趣味だから」
そう、奈々子は年上趣味である。
「貴之先生だって年上じゃないか?」
「タイプじゃないわ。たしかにちょっとかっこいいけど頼りないし年取ったらお父さんみたくなりそうで……ねえ」
「…………」
お父さんはちょっと泣きそうである。そんな父の肩をたたき祖父が言った。
「まあまあ、娘なんてそんなもんだ。呑んで忘れよう。ばあさんに枝豆茹でてもらうから。ばあさーん!枝豆!!」
「私は枝豆じゃあありません」
「あとビール」
「もうすぐ貴之先生が来るんですよ。せめて日が暮れるまで待って下さい」
夏の日は長い。
442 :
360:2009/07/11(土) 10:36:19 ID:cCoosSE3
連れ合って廊下を行く二人を見ながら奈々子は考える。
そう、ダンディズム漂う渋いおじ様がいいのだ。ただ年上なだけではダメだ。
ちなみに人生設計はこうだ。
高校卒業後は女子大へ行き、一流企業の一般職に就いて高給取りの渋くてダンディな旦那をゲットして
まったり専業主婦で有閑マダムである。亭主元気で留守がいい。
「だったら家事、特に料理くらい人並み以上にできないとねえ」
いつの間にか声に出ていたらしい。聞いていた祖母から突込みが入る。
「わ、私だってやればできるわよ」
「どうかしら?」
「…………」
……できなかった。料理に限らず奈々子はほとんど家事をしない。
祖母と姉にまかせっきりだった。元気なおばあちゃんというのも考え物だ。
今度お味噌汁の作り方を習おう。おばちゃんの味噌汁をマスターすれば男なんかいちころだ。無条件降伏だ。
ダンディな旦那は置いておくとしても、幸せな結婚のためには清純路線がいいと思う。希少価値という奴だ。
将来結婚するかどうかも分からない男とどうこうなろうなど正気の沙汰ではない。
失敗例は身近にいた。担任の独神先生(29)が暴走して語ったところによると
大学で4年間付き合っていた彼氏に就職後振られたらしい。
その後は聞くも無残な売れ残り街道まっしぐらであった。
あまりの悲惨さにクラスに何組かいたカップルたちにはしばらく気まずい空気が流れていたくらいだ。
いつもと変わらなかったのはタイガーと高須君のカップルくらいだった。
そう、タイガーと高須君。
あの二人は不思議だ。傍目にはどう見てもカップルなのに付き合っていないと言い張っている。
ただ普通のカップルともちょっと違う。
他のカップルがまだ初々しくもぎこちないのに比べて、あの二人の間に漂う空気はひたすらに自然なのである。
高校生のカップルにあの雰囲気は出せない。なんと表現したらいいか、
「ばあさんや、ビールはまだかい?」
「醤油でも飲んでて下さい」
そう、うちの祖父母だ。それぞれの性格は全然違うのになぜかしっくりとピースがはまった。
カップルというよりは夫婦。それもかなり年季が入っている。
そういえばあの二人には朝から晩まで一緒に過ごしているという噂まであるではないか。
普通のカップルにはそんなことはできない。なぜなら少しでも相手にいいように見せたいと思うからだ。
いいように見せるということは、悪いところを隠すということだ。
とてもじゃないが全てを見せることはできないのだ。
長年連れ添ったカップルならともかく高校生には不可能なことだ。
しかし噂が真実なのだとしたら、あの二人はそれを実現していることになる。
ある意味理想系だ。正直うらやましい。
そして同時に思い至る。果たしてそんなことが本当に可能なのか?なにか秘密があるのかもしれない。
コレはちょっと面白いのではないか?
今後のためにもあの二人をよく観察してみようか。
そんなことを考えていると、ピンポーンと先生の来訪を告げるチャイムが鳴り思考は別の興味に流されていった。
「はーい」
出迎える奈々子の足音がいつも弾んでいることに気づいているのは祖母だけであった。
「やっぱりまだまだ青いわねえ」
(了)
このスレは本当に終わってるよね
という皮肉を込めてオリキャラ(奈々子含む)で固めた
保管不要
乙
他人の尻馬に乗っかってるだけで書き手になったと思ってるのは流石に勘弁願いたい
スレを私物化したいのならサイトでも開いて仲のいいみんな(笑)でリレー小説でもしとけばいい
皮肉を込めたわりに無駄におもしろい
というかリレー小説あたりとか嫌いではないがスルーしてたんで
どのへんがどう皮肉ってるのかいまいち分からなかった
黒×実はおもしろそうだけど、カップリングの時点で読む気にならずスルーしてる
リレー物も、好みが分かれるんだし、あぼんしやすいようにタイトルで
リレー物ってわかるように共通のタイトルなり付けてくれればいいのに…
リレー小説じゃなくて奈々子関連のSSについての皮肉なんじゃないんかね
せっかくの文才
もうちょっと良い方向に使ったらどうだ勿体無い
太陽の煌めきとななこいの続きはいつ?
>>443 今までのオリキャラ物は始めの数行で拒絶反応が出たが、今回のあなたの作品は
余りに自然にゆゆぽ世界に溶け込んでいてとても楽しめましたよ。
奈々子様のイメージもこのスレで形作られたものとは全く違うのに不思議。
GJ!
452 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 18:56:27 ID:ZIAfULk1
>>450 モウチーニョがスポルティングから移籍するときぐらい
今から2スレ分投下させて頂きます
454 :
黒×実13:2009/07/11(土) 20:09:49 ID:9JllNqkf
PM03:15
「すっげー、フルカウントから、もう5球目…大橋高校惜しかったけど…圧されてるなっ」
詳しそうな観客の1人に亜美は声をかける。
「それって…点取られちゃうって事?負けちゃうって事?」
「でもあのピッチャー、すごいよ。あの高校の4番、今年のU19日本代表のスラッガーだぜ」
へえ、と言って、亜美はグラウンドからちょっと離れた、小さい小屋に走っていった。
いっぽう、グラウンド上。
「はあっ、はあっ、」
実乃梨の肩は大きく上下に揺れ始める。どこ投げてもバットに当てられる。読まれている。
もうどこへ投げていいか解らない…あと1球、ストライクで勝つのに。あと一球…
実乃梨は、アウトコースいっぱいに投球っ!キンッ、ライナー性の打球、振り返るっ、
ボールはスライスし、ファールっっ! 生き延びたっ しかしっ今のカーブは、渾身の一球。
実乃梨は、外野から戻って来たボールも、キャッチできなかった。そして…追い込まれた。
仲間や、観客の声援が、どんどん聞きとれなくなる。ノイズが増して来る。頭の中に、
砂嵐のような音で、めまいがする。 その時、
「この一球は、絶対無二の一球なりっ!!!」
聞き覚えのある声が、大音量でスピーカーからグラウンドに流れた。放送室の亜美も、
びっくりして、マイクに向けた携帯を落としそうになったくらいだ。
「先生、ばっちり。じゃあ、急いでくださいねっ」
そして、実乃梨の本日最後の一球は、U19代表スラッガーのバットに擦らせる事も許さず、
右腕さんのミットの中に飛び込んで行った。
****
「先っ生ぇーーいっ!!遅ぉーいっ!終わっちまったよ〜っ!」
誰よりも早く黒間を見つけた実乃梨は、黒間のもとに走り寄る。近づいて来る黒間。
ちっくしょう、こいつをどうしてくれよう?せんせ〜いと、抱きつくふりして、
ドロップキック?ジャンピングニー?それともスペースフライングタイガードロップ?
それなら、この距離から、側転、バク転…、なにが頂点に連れて行くだ、初戦から
いなかったくせに、わたしに何も言わなかったくせに、放ったらかしにしたくせに…
黒間が近づくほど、細い目、短い髪、黒い肌、白い歯が、はっきり解るほど、実乃梨
の瞳には涙が溢れてくる。うぐっ…それ以上に、今まで感じた事ない感情が溢れ出るっ。
もうっ限界…
「もう、わたしを離さないでっ…」
好きですっ…実乃梨は黒間の胸に飛び込む。すまんっ、あまりにも逞しく、頼もしく、
大きくて、優しい胸。けっして華奢ではない実乃梨を、黒間は抱きとめ、キスをした。
遠くであたふたしている独身、顔を覆った手の指の隙間が大きい右腕くんと、右腕さん。
バイクで駆けつけてくれた、狩野先輩と北村くんも笑顔を交わし当ているのが見える。
「解った…離さない。ずっと一緒だ」
この世の中で裏切らないものがある。
それは、そのヒトは、わたしの夢を叶えてくれた。
大河は携帯とにらめっこしていた。
今日は、大好きなみのりんに逢える。今年のインターハイは、大河の転校先の近くなのだ。
さっすが、みのりん。ジャイアントさら…、ではなく、ジャイアントキリングを連発し、
インターハイ初出場、初優勝。テレビにも出ていた。ゆりちゃん監督が涙で何言っているか
解らなくて、コーヒー吹いたが…昨日の表彰式には門限があって行けなかったので、今日の
お昼に待ち合わせ。しかし…たしかにみのりんは言ってた。『自分の幸せは自分できめる』
でも…
「黒マッスルかよ…」
っとメール着信。亜美からだ。
差出人 : ばかちー
件名 : おっはよー☆
受信日時 : 200×08.02 09:00
タイガー、元気?あのさ、わたしもお仕事でこっち来てるのよね。
すっげー、面白い話あるし、今から逢わない?内容は、実乃梨ち
ゃんと黒間先生の×××な話。 おほほほほほほっ
大河は大至急で準備した。
続く⁇
600KBくらいの超大作がくるかとひやひやした
乙乙
早く再開するんだ
あと1998レス残ってるぞ
>>455 GJ
だがしかし、改めてアニメで黒マッスルを見てしまったらこりゃないわww
って吹いた
こんな筋肉野郎がみのりの初キスを奪った上に今後その他諸々を奪うと思うと・・・
463 :
言い訳:2009/07/12(日) 05:28:19 ID:qSePsIkT
黒×実。読んでしまった方、ありがとうございました。
この板の某職人さんの文体が好きで、wktkしてたクチなのですが、待ちきれず、出来心で
前スレの終わりの方で、群馬のSS書いてしまいました。が、群馬が全くエロくならなかったので
エロエロにしよう!!と思って、有り得ない設定で始めたのが黒×実でした。しかし…
みのりんにふさわしい漢じゃないと、エッチさせたくなかったので、だいぶ脱線してしまいました。
しかもまたエロくなりませんでした…未熟でスイマセンでした…
おおっ、レスとスレ間違い、俺バカス…
>>462 iphoneからの投下だったので…Gは??です。続きは…一応あるのですが需要無いと思うので、自粛します。
つーか、ちょっと修行して来ます。なんか本当にすいません。
>>463そう言われると逆に気になるからむしろやってくれ。
もしくは、太陽の煌めき続きをあんたが書いてくれ。
465 :
グンタマ:2009/07/12(日) 13:16:10 ID:JAo+d8xR
いつになく活気づいていますね。黒マッスルとみのりん…。その考えはなかった。
異質のカップリング、続きを期待しています。
というわけで、触発されたので6レスくらい投下します。独身物です。
タイトル:それでも独身
466 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:17:09 ID:JAo+d8xR
銘々の話題に花を咲かせている昼休みの教室。
そこに、いつもより多目の人数で机を囲み、とりどりの弁当を広げる一群が一際目立っていた。
もちろん、ただ人数が多いからではない。
そこには、
「ふーん。お腹に肉付いてるのにモデルってできるんだ、ばかちーって」
人形のように可愛らしい姿で人々を恐怖に陥れる、手乗りタイガーこと逢坂大河、
「もうねぇっつーの!ちびタイガーみたいな食うだけと違って、毎週スポーツクラブ通ってるし。
や〜ん、亜美ちゃんてマジ努力家☆最近可愛くっていうより、綺麗に近づいた気がするの〜!
ね、高須くんもそう思わない?」
女神と見紛うばかりの美しさを持つ、究極の猫被りモデル川嶋亜美、
「そこで何で俺に振るんだよ…。俺はそういうの、よくわかんねぇし、参考にもならねぇぞ」
外面ヤンキー、内面骨の髄まで主夫の高須竜児の有名処三人が一同に介していた。
さらに、
「あら、亜美ちゃんは『高須くんに』評価されたかったんじゃないかしら?うふふ」
「っ…?!あ、あたしは別に「何言ってんのよ奈々子。亜美ちゃんが高須くんからかうなんて、いつものことじゃない!」
……まー、ね」
奈々子や麻耶といった、2-Cの高レベル体も一緒にいることも起因した。
ちなみに、実乃梨と北村はそれぞれ部や生徒会の集まりで、昼休み早々に教室を出ている。
その割合、実に四対一。竜児は、かなり肩身の狭い思いをしていた。
周りから見れば、竜児が周りに侍らせているようにしか見えないのだが。
「あ、綺麗になったって言えばさー」
麻耶がサラダを掴んだ箸をそのまま、皆の方に顔を向ける。その時、小さなキャベツの千切りが、机に不時着。
刹那、竜児の眼が分からない程度に見開いた。
今すぐにでも取り除いて、机の上を拭きたい。しかし、麻耶と竜児の位置は対角線。
手を伸ばさないと届かないが、机の上に広がる弁当箱を避けつつ処理するのは至難の業だ。
(気付け、木原…!いや、隣にいる香椎でもいい!その取り零された憐れなキャベツを、一刻も早く!)
麻耶の話そっちのけで、竜児の意識はそこに集中
「ゆりちゃん、最近綺麗、ていうか、すごく可愛くなったよねー」
――することができなかった。
467 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:17:52 ID:JAo+d8xR
「あ、わたしもそれは思った。ゆり先生、前みたいに無闇に焦ってた感じがないわね。
なんて言うか、落ち着いた雰囲気っていうのかしら?」
「そうそう、ベージュの服も着なくなったし、だからと言って無理してるわけでもないし。
ゆりちゃん先生って、亜美ちゃんから見ても凄く元が良いから、勿体無いな〜って思ってたの」
奈々子と亜美が同調し、話題は担任であり、独身の恋ヶ窪ゆり(30)へと移った。
事実、ある日を境にゆりの評判は徐々に上がっていき、特に男子学生が騒いでいた。
春田や能登も例に漏れず、「可愛くなった」「大人の色気がむぉんむぉん」等、鼻息荒く語っていた。
最近は『ついに独身にも遅い春が来たのか?!』と噂がたった。
その噂から数日後の放課後、数人の生徒が職員室で呪詛を呟き項垂れているゆりを目撃した。
それ以降、誰も噂を口にすることはなかった。
そんな亜美逹の会話は、しかし竜児には聞こえておらず、頭に流れるのはこの前の鮮明な映像。
ゆりのシャツ一枚姿、ゆりの艶かしい太股、ゆりの口に含まれた指、そして。
『ありがとう』
(!…や、やべぇ!)
竜児は、誰にも見られないよう、咄嗟に俯いた。あの時のゆりの笑顔を思い出す度、鼓動が強く跳ねる。
訳も分からず一人照れて、口端は鋭角に吊り上がり、とても人様にお見せできない表情になる。
竜児自身、これが何か自覚している。まるで実乃梨と対峙している時のような、『あの』緊張。
「…ありえねぇ」
そう、ありえないのだ。自分の親とほぼ同年代の相手に、ましてやクラス担任に。
そもそも、自分は櫛枝のことが――そのはずなのだ。そのはずなのに、鼓動はなかなか治まらない。
もちろん、櫛枝が好きという気持ちに、嘘偽りは一寸もない。ずっと想い続けている相手なのだ。
あの太陽のような眩しい笑顔に、大袈裟にも見える身振りに、真っ直ぐすぎるほど純粋な姿に。
そんな櫛枝に、気が付けば心奪われていた。はずなのだ。はずなのに……
廊下ですれ違った瞬間、理由もなく横目で追い、少しだけ振り返ってしまう。
自分の机の隣を歩いていった時、香る匂いで意味もなく恥ずかしくなる。
もやもやとした気持ちの性で、眠れぬ夜を過ごした竜児だが、実乃梨とゆりに対する決定的な違いに気付いた。
周りがゆりの話題で盛り上がる度に、竜児の心は波風が立ったかのようにざわめいた。
それは、大河がミスコンで栄冠を勝ち取り、周りの大河を見る目が変わった時のように。
自分だけが知っていたものが、周りにも知られてしまった。それが、竜児にはあまり面白くなかった。
きっと、それだけなのだ。
あの時は少し非現実的な状況だったし、タイミング良く独身がイメチェンを始めた。
色々な要素が重なったために起きた、一時の気の迷いなのだ。
だから、竜児は一人呟く。「ありえねぇ」と。
「……ん?」
――ふと、隣から痛いほどの視線を感じた。背筋が無駄に伸びてしまうような、負のオーラが見えた気がした。
竜児はゆっくりと首を捻る。
「お、おぅっ」
大河の酷く疑うような眼差しと、真正面からぶつかった。
468 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:18:33 ID:JAo+d8xR
竜児を見上げる形になる大河の表情は、不機嫌には間違いなかった。
しかし、竜児は思わず息を飲んだ。怒っているような、疑っているような、咎めるような、泣いているような。
何度か、大河がこんな表情を見せたことはあった。
例えば、大河と亜美がいつものようにぶつかり合った際、竜児が稀に亜美を擁護したとき。
例えば、竜児の弁当を奈々子が称賛し、二人が料理の話題で盛り上がっているとき。
インコちゃんが捏造七割程の発言をしたあの日、大河には当たり障りない程度には話してある。
『独身と偶然会い、食材が余るのは勿体なく、また雨宿りも兼ねて夕飯に招待した』。
亜美のときの前例もあったので、明らかに納得していない不満げな大河に対し、それ以上突っ込むのを止めた。
当の大河は、危機感を覚えた。最近の竜児の態度が妙だというのが、分かってしまっているから。
気付いてしまった自分が恨めしいが、それ以上に遺憾なことがある。
今もそうだが、亜美のときも、奈々子のときも、まして実乃梨のときですら、苛立ってしまう自分がいること。
竜児と実乃梨、自分と北村が上手くいくように、お互い手を組んでいるはずだった。
それなのに、大河は思ってしまうのだ。『何で自分をもっと見てくれないのか』。
その度に、竜児は私に犬のように協力すると言ったから。と、自分に言い聞かせる。
それに、竜児が名前で呼ぶ唯一の異性が、実母である泰子を抜いて自分だけなのだ。
そんなことが、大河を堪らなく優越感に浸らせ、同時に情緒不安定にさせた。
――大河は、危機感を覚えていた。
「……ねぇ、高須くんも、ついでにちびタイガーも聞いてる?」
「…は?」
「……?なにがよ」
気付けば、亜美だけでなく、麻耶と奈々子も二人を見ていた。当然二人は話を聞いているわけもなく。
片や三白眼をギラつかせて、片や大きな眼球に凶暴な力を乗せて、亜美を睨み付けた。(のは大河だけである)
「げ、マジで聞いてなかったの?あーもう、また話すのめんどくせー…」
一般人なら、泣いて許しを乞うか、その場に卒倒するか。
そんな殺人的な二つの視線を、亜美は全く介する様子もなかった。
頬杖を付き、普段の猫被りはどこへやら、眉をハの時に歪め、不満たらたらを隠そうともしない。
ちなみに、その隣にいる奈々子は涼しい顔で微笑を浮かべており、その隣にいる麻耶は思い切り目を反らした。
「亜美ちゃんが、今週の土曜日に近くでモデルの仕事があるらしいの。それに来てみない?って話よ」
奈々子の言葉に、二人で首を傾げる。独身の話から、どういう経緯で亜美の仕事の話になったのか。
ただ、大河はあまり、というか全く興味ないらしく、不参加の意思を表明しようとした。
469 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:19:15 ID:JAo+d8xR
「ち、ちなみに、あたし逹も参加しちゃって良いんだって!行くよ!あたしは絶対行くよ!!
一度でいいから、今の内に着てみたかったんだぁ…」
やたらと気合いの入っている麻耶は、頬に両手を当ててうっとりとした目で中空を見上げる。
まさに、夢見る乙女そのものだった。そんな様子の麻耶を見た大河は、少なからず興味が沸いてきた。
「…ちなみに、何のモデルなのよ」
さも関心がないように、ぶっきらぼうに言い放つ。
そんな可愛らしい手乗りタイガーに、奈々子は口許に軽く手を当て、ふふっと小さく笑った。
キッと奈々子を睨むが、赤い顔では威力も半減。
固めを瞑り、舌をチロッと出して悪戯っ子のような顔で手刀(てがたな)を切られた。
大河は、より一層赤くなる。掴み所のない奈々子が、少し苦手だった。
「あれー?逢坂さん、さっきまで興味無さそうだったのに、ど・う・し・た・の・か・な〜?」
亜美がおちょくるように大河に顔を近づける。
「う、うるっさい!い、いい、いいから、早く教えろこのバカちにゃにゃ!」
どもりすぎてカミカミな大河に、奈々子はブフォッ、と思わず吹いた。手で口を隠し、プルプルと震えている。
大河は、小さく「タイガー、可愛すぎ」と聞こえたのは、気のせいということにした。
「しっかたないな〜。それじゃ、興味津々な逢坂さんに、教えてあげる★
ウェ「だって、ウェディングドレスだよ、タイガー!女の子の憧れじゃん!超興奮するって、マジで!」
、ウェ…ウェーイ」
まじうぜー。亜美の視線が如実に語っていた。
「…ウェディングドレス?て、あの結婚式とかで着るあれ?」
ああ、だから独身の話から繋がったのか。大河は納得した。
「今回は地域のパンフに使うくらいのもんだし、そんな固いもんじゃないの。
色んな子がいたほうが、ドレスの種類も写真も多く撮れるし、寧ろ参加してって感じ。
麻耶ちゃんも奈々子ちゃんも、ムカつくけどちびタイガーも十分可愛いから、喜ばれると思うけどなぁ」
亜美の態度が気に入らないが、大河はかなり惹かれていた。
純白のウェディングドレス…着てみたいに決まっている。狂暴な手乗りタイガーといえ、女の子なのだ、
――そう、真っ白なウェディングドレスを着て、隣には愛する人の手を取り、一緒に歩くの。
周りが祝福してくれる中、赤い絨毯の上をゆっくり歩いて神父の前に。
きっと、指輪を通すときには新郎の手は少し震えているだろう。私はそれを見て、幸せを噛み締める。
誓いの…き、キス、をする時、新郎は私のレースをゆっくりと持ち上げていく。
そして、私の大きな瞳と、新郎の鋭い三白眼が――
「…そんなに腹減ってたのか、お前」
「ふ、ふぅはいっ!!ほっひひんは!!」
突然弁当をがっつき始めた大河に、四人は呆気にとられた。
470 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:20:01 ID:JAo+d8xR
「あ、でもわたしは参加できないの」
「え、な、何で?!奈々子がウェディングドレス着たら、マジヤバイくらい似合うと思うよ!
高須くんだって、奈々子のウェディングドレス姿見たいよね!ね!!」
「え?あ、お、おぅ」
全く蚊帳の外だった竜児は、絶賛暴走中の麻耶の勢いに乗せられるかの如く、頷いてしまった。
途端、突き刺すような視線と、冷めたような視線を感じた。その相手は探す必要もなく、目の前と横にいた。
何故睨まれなければいけないのか、理不尽に思いつつも、藪を余計につついて大怪我はしたくない。
竜児は身の保身を図ることにし、気付かない振りで流すことにした。
「ふふっ、ありがと。でも、その日はお父さんと出掛ける用事があるの。
ホントに残念だし、申し訳ないんだけど…」
そういえば、と竜児は奈々子が片親なのを思い出す。
自分は父親が、奈々子は母親がいないので正確には違うのだが、似た境遇の奈々子の気持ちは理解できる。
自分だけのことよりも、たった一人の親とのことを大切にしたい。
「…仕方ねぇよ、木原。親との約束なんだから、優先するのはそっちだろ。香椎も気にするなよ」
竜児本人は気付いていない。普段より幾分か柔らかい表情であることを。
年相応に見えない、包み込んでくれるような大人の表情。
「高須くん…うん、ありがと」
そんな竜児だからこそ、と奈々子は思うのだ。タイガーが、櫛枝が、亜美ちゃんが。
一筋縄ではいかなそうな、でも全く違う魅力を持った女の子達が、一人の男の子を好きになっている。
それはきっと、高須竜児という人物を知ってしまったから。
彼の純粋さ、優しさ、強さ。それに触れてしまうと、白かったはずの心は瞬く間に染まってしまう。
(…あの三人に、敵うわけないけど)
苦笑をしてしまう自分は、脇役なのだ。気付かれないよう、ポーカーフェイスには自信がある。
――タイガーや櫛枝には悪いけど、わたしは亜美ちゃんを応援するからね。
「ところで、そんなとこに俺が行っていいのかよ。むしろ、男一人ってかなり居辛いんだが」
ウェディングドレスの撮影なら、男の参加者なんていらないだろう。
今もそうだが、せめてあと一人くらい同士が欲しい。
「あ!それなら、まるおは来るの?来るよね?来るんだよね?」
亜美に詰め寄る麻耶は、分かりやすい程に素直だった。
竜児自身、北村がいるかいないだけで心の持ちようが大分変わるのは確かだった。
「あー、祐作?祐作は……あ、確か生徒会の集まりだか何だかで、都合悪いとか言ってた。多分」
理由は違えど、目に見えて落胆した麻耶と竜児。しかし、竜児はハッと隣を見る。
北村が来れなくて落ち込む人物は、隣にもう一人居ることを思い出した。
471 :
それでも独身:2009/07/12(日) 13:20:41 ID:JAo+d8xR
(残念だったな、大河)
(……なによ)
突然小声で話しかけてきた竜児に、大河は気味悪そうに横目で見る。
(何って、北村が来れないことだよ。ここで一発、でかいアピールできるチャンスだったのにな)
大河を気にかけた竜児の言葉は、しかし大河にとって不愉快でしかなかった。
(……私は、別に)
(まぁ仕方ねぇよ。パンフが出来たら、それを見せればいいじゃねぇか)
(…………)
――大河の機嫌が悪いのは、北村にウェディングドレス姿を見せることができないからだろう。
話を聞かず喋り続ける竜児に、大河の怒りが有頂天。
(ほら、そんなに落ち込むなっでえぇぇぇ…っ!」
大河の足が、的確に弁慶の泣き所を貫いた。
「あら、食事の場所で叫ぶなんて、本当に躾のなっていない駄犬ね」
「お、お前なぁ…」
ふんっ、と大河は鼻息荒く竜児を睨む。訳のわからない竜児は、また大河の気紛れかとため息をつく。
「でも、困ったなぁ。
奈々子ちゃんも参加すると思ってたから、監督に女の子三人は連れて行くって言ったのに…」
「最初から連れていく気だったのかよっ」
亜美の中では、ウェディングドレスが似合いそうな三人を選ぶつもりだった。
実乃梨には申し訳ないが、ウェディングドレスがただのユニフォームになりそうで即却下。
他の女子も、イマイチパッとしない。ウェディングドレスが映えるモデルというのは、なかなかに難しいのだ。
「うーん……あ、それじゃあ」
奈々子がこれ名案と言わんばかりに、両手をポンと合わせた。
皆の視線が奈々子に向き、『敢えて』亜美が考えまいとした人物の名を挙げた。
「私の替わりに、ゆり先生、なんてどうかしら」
――竜児の瞳の色が変わる。それに気付いたのは、大河と……亜美だった。
472 :
グンタマ:2009/07/12(日) 13:25:15 ID:JAo+d8xR
以上です。独身が出ていない?仕様です。次からはちゃんと出ます。
この話の前作品は、保管庫の[だけど独身]です。見てください。お願いします。見てください。
次は…なるべく遅くならないように投稿したいと思います。
長文失礼しました。
>>472 +独神ですか。
ワクワク感がいいですね。
期待して待っております。
474 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 15:50:43 ID:5giQY0cu
けどやっぱ、独神はバッドENDなのでは?
476 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 18:58:00 ID:5giQY0cu
亜美か、奈々子の甘々な、SSが読みたい。
そういややっちゃんとあんまり歳変わらないんだよなw
結婚前にウェディングドレスを着ると婚期が遅れるって言われてるのに独神は行くのか?
婚期が遅れるより一生着られないかもっていう
強迫観念に負けてついてくるんだろうな
独神かわいいから好きだよ、PSPのソフト買っちゃうぐらいに
でもダメEND扱いなのがかなしかった
久しぶりに来たんだが保管庫ぶっこわれてんの?
PSPの独神ENDは意外と悪くなかった。
読んでて思ったけどやっぱりあのゆりドラの人だったか
続編読めて嬉しいぜ
続きも楽しみに待ってるよ
グンタマさんGJ!
ゆりドラなんだけど大河とばかちーの心理描写が良いっすね。
誰かウェディング描いてくれる絵師さんがいれば良いなぁ。
×××ドラ!の続きまだかな。
7月にまた投下するって言ってたよね…?
昼ドラ!
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分かりやすい構図だな
490 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 00:26:47 ID:B64G1bsn
アババババババババババ!
491 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 07:55:34 ID:B64G1bsn
Ueeeeeeeeeee
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wiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
どうしてこうなった
夏だな
そいやそいやそいやそいや!
作家どもが、さっさと投下しねーからだろ?
ヘイユメ-ん?
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う応用y。うお。;ぴ・いpふぃrついr
気狂い 消えろや
またゴミが来たかぁ。こいつの回りも、ゴミしかいないんだろうなぁ。
蛙の子は蛙って言うし、親兄弟も揃って終わってるんだろう
まとめ人お疲れさん。
まとめ人さん、ご苦労様ー。
まとめの人お疲れ様
リンクがやっと19になったのぅ
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Athena99
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athena97
Athena96
Athena95 - Raiwa
Athena94
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ライオトルーパーとかもあるわけだし、基本は生身扱いかな
怪人対一般人はサジ加減が難しいね。映像的に。
戦うめぐみんとか好きだけど「あれっ?ファンガイアあんまり強くなくね?」
とか思わなくもないし
最近初めてみたアギトは、人間(あかつき号の人)が
なぶり殺されそうなシーンとかあって凶悪さを感じたなぁ(そこじゃ死ななかったが)
死ねとか言わない。ただ15分だけ息を止めなさい
メンヘラに2ちゃんねるは劇薬だと思うがな。
まあ、嵐の最中は、独り静かにSSを書きためる時。これに尽きる。
おお〜
殺害予告キタコレ
ぎぃgy費c、g、tf具yskmるdrfつ、lrつkるkdちゅひtly、い9tいうlちtlぢ
kgk、l地ウィtxlちぃ;xちぃlぃ;衣甥pふお;pgヴゅいおfvyふおl
うjrtdmth、hjh、jfgjh
十分、棒に振ってるだろ?
つか、お前要らない
気狂い早くねんねするか山に帰りや
525 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:43:10 ID:f2BaW3Kf
にゆらゆまたに葉に羅悲話なゆなふやなへりやま
なゆらへねひらして
526 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:46:48 ID:f2BaW3Kf
527 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:48:13 ID:f2BaW3Kf
>>524 まさか、通報する気じゃないだろうな?
市ねみたいな事言ってきたの向うなのに!
528 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:48:57 ID:f2BaW3Kf
きなたはやたなひよわにふのしはたあなひらしてくれてたがってくれたから天とこういうところもいますようになんてやめたからね
529 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:49:37 ID:f2BaW3Kf
かはなやたなしてなくさんにゆらゆまでならね
530 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:50:01 ID:f2BaW3Kf
悩ま4
531 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:50:44 ID:f2BaW3Kf
那覇空港のアニスパは一体全体かな?
532 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:51:08 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふ
533 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:51:35 ID:f2BaW3Kf
なやはちなひよひしぬふしていてましょ。
534 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:52:29 ID:f2BaW3Kf
かさやたなへなゆわやなさはたにふなはしのなはなつ
535 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:53:35 ID:f2BaW3Kf
Σ( ̄□ ̄;)ヾ(=^▽^=)ノ(`へ´)(>_<)(・_・|(`´)(_´Д`)ノ~~(´∀`)
536 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:54:16 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふがいいとをもないほうとをいいのに
537 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:54:57 ID:f2BaW3Kf
なやはちなひよひしぬふしていただけばねなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふ
538 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:56:04 ID:f2BaW3Kf
(´∀`)パンツの電波で高らかになりました。(笑)
539 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:56:37 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふした場所は絶対安静の友達感覚麻痺していただけばね!(笑)
540 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:57:06 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふした事には触れないんですか?
541 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:57:49 ID:f2BaW3Kf
あーまーぞ(ry
542 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:58:25 ID:f2BaW3Kf
543 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:59:14 ID:f2BaW3Kf
インリンオブザーバー(笑)
544 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 01:59:54 ID:f2BaW3Kf
生クリームの友達同士に執着心見せ始めたのもそもそも浅野のせいだし、だから毎月買うのは声アニスパで高らかになりました。(笑)
545 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:00:34 ID:f2BaW3Kf
ハナオタしていただけばね!(笑)
546 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:01:26 ID:f2BaW3Kf
はさなはたなはなたなひなたまやにはにたに
547 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:02:00 ID:f2BaW3Kf
花が
548 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:02:24 ID:f2BaW3Kf
ハザードのアニスパは何センチと思っています?
549 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:03:09 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふした場所は何センチ?
550 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:04:30 ID:f2BaW3Kf
花が、ピッコロさんにゆらゆまでやるような?その程度の電波でやるべきだ、だけでもOKのアニスパは絶対条件の黒い人間はある未完作品は選ぼうよほっちゃんとかのは。
551 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:05:04 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふ
552 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:06:14 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふ
553 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:07:06 ID:f2BaW3Kf
やはたゆなはたなは
554 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:08:03 ID:f2BaW3Kf
なはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふなはたなはにたなひやぬはなやにさはさきふ
555 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:08:30 ID:f2BaW3Kf
なはさかみやはやみやらやはたゆなはたなはあるなはさかみやはやみやらやはたゆなはたなはあるなはさかみやはやみやら
556 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:09:17 ID:f2BaW3Kf
なはさやまたなかたならたなふなちなふなてやはたゆなはたなはあるなはさかみやはやみやら
557 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:10:12 ID:f2BaW3Kf
558 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:10:32 ID:f2BaW3Kf
楽しい?
560 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:11:18 ID:f2BaW3Kf
南商研へ急げ!
561 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:12:06 ID:f2BaW3Kf
>>559 (´∀`)ヾ(=^▽^=)ノ(^O^)o(^∇^o)(o^∇^)o(^^)v
562 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:12:30 ID:f2BaW3Kf
はなたなはにはさあかやならはなやなはさやまたなかたならたなふなちなふなて
563 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:13:11 ID:f2BaW3Kf
もう少し待ってていかがでしょうか?
564 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:13:46 ID:f2BaW3Kf
はぁーん
565 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:14:35 ID:f2BaW3Kf
566 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:15:00 ID:f2BaW3Kf
567 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:15:58 ID:f2BaW3Kf
なはさやまたなかたならたなふなちなふなて
568 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:17:24 ID:f2BaW3Kf
とかちつくちてとかちつくちてあけちみつひでやまぐちかずしげ(^^)v
だれか通報しろ
こんなもん規制対象だろ
570 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:18:41 ID:f2BaW3Kf
571 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:19:08 ID:f2BaW3Kf
なはさかみやはやみやらやはたゆなはたなはあるなはさかみやはやみやらやはたゆなはたなはいいな?
572 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:19:30 ID:f2BaW3Kf
カバンの黒い人間は何センチ?
573 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:19:57 ID:f2BaW3Kf
アスラクラインとラクスクライン
>>561 その反応は病んでるから。
自覚あるのか無いのか知らないけど、メンヘラ以外の何者でもないから。
大人しく養生しとけよ。2ちゃんやってる場合じゃないだろ、君。
575 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:21:25 ID:f2BaW3Kf
YEARン、らめえーん太子
576 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:23:06 ID:f2BaW3Kf
>>574 えらそやねー何様?
神様?界王様?電王様?
577 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:23:57 ID:f2BaW3Kf
12345#あかさたな#アカサタナ#
578 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:24:25 ID:f2BaW3Kf
>>574 頑なに自分のバストは一体なんでこんな事には触れないんですか?
579 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:25:21 ID:f2BaW3Kf
なはさかみやはやみやらやはたゆなはたなはできませんよ。(笑)、
投下します、竜×実ネタです。
581 :
竜と太陽の×××:2009/07/15(水) 02:29:55 ID:f2BaW3Kf
竜児ははなたなはにはさあかやならはなやなはさやまたなかたならたなふなちなふなて、らめえーんけどやっぱりまだこれからもっとです!(笑)
「これは…?」
目の前に糸巻き状態の大河がガンダムの角を持って、らめえーしていました。
「まさか、ゴルゴムの仕業か!」
竜児ははなたなはにはさあかやならはなやなはさやまたなかたならたなふなちなふなて、保安官の友達に来てもらった。
sien
583 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 02:35:09 ID:f2BaW3Kf
「高須ー!」
「おう、中山。」
竜児の前に現れたのは、オルフェノクのライオネス飛鳥だった。
「これを見てくれ、こいつをどう思う?」
竜児は山田にOV∀を見せた。
「すごく…大きいです。」
志村は粋を食べた。
584 :
竜と田村のアニスパ:2009/07/15(水) 02:40:02 ID:f2BaW3Kf
「とりあえず、こいつをウルトラの★に運んでくれ。」
「高須は何センチ?」
竜児ははなたなはにはさあかやならはなやした。
「櫛枝をヤってくる!」
「GJ!」
竜児は実乃梨の元へジャンピングした。(笑)
585 :
竜と太田のアスラクライン:2009/07/15(水) 02:45:48 ID:f2BaW3Kf
そして竜児は実乃梨を×××して××××をした後、激しく×××××した。
「んああー、たかすきゅーーん!
らめえー!!」
実乃梨はこれこそ自分の求める幸せだと確信した。
「セックスイクイクー、セックスイクイクー!」
一方、その頃貫太郎はキダタローとウルトラマンタロウと共に、桃太郎スタジアムに来ていた。
586 :
竜とやまぐちのアニスパ:2009/07/15(水) 02:54:03 ID:f2BaW3Kf
「待て!」
マサルは突然、とかちつくちていた。
「なはさやまたなかたならたなふなちなふなて」
「そうは言ってもリスクが大きい。」
「かさやたなへなゆわやなさはたにふなはしの、なはさかみやはやみやら。」
ファイルはサジタリアスとリヴアイアス、そしてステルビアの3つの召喚獣の復活を是非としていた。
「竜児と実乃梨の間に間もなく子が産まれるなだろう、全てはそれからだ。」
「竜児クン、産まれるよ、私たちの愛の結晶が」
実乃梨は竜児の子供を既にその身に宿していた。
587 :
竜との1日選挙:2009/07/15(水) 03:09:06 ID:f2BaW3Kf
「時ハ来タエリ」
暗闇の中で何かが蠢く
「モモイハルコ、ジエンオツ」
「ゲッタン」
「キセキガタリナイ」
「シッパイ」
「ヤハリ、ニンゲンハ」
「ナニシトンネン、ジブン」
「セイジャクデナケレバ」
そしてそこには、宇宙へ旅立ったはずの狩野すみれが不適に笑っていた。
「それよりも今日は堀江由衣のニューアルバムの発売日だ、早い所買いにいくぞ。」
「ホッチャン…」
「ホーホーホアー」
アインストは、堀江由衣のファンのようだ。
一方その頃、竜児と実乃梨の間に女の子が産まれた。
名前はトシ子と名付けられた。
彼女は後に外国人と結婚し、宇宙へと旅立つ事になるが、それは別の話である。
了
588 :
竜とイルカのファン感謝祭:2009/07/15(水) 03:15:02 ID:f2BaW3Kf
以上です。
続きは今の所、30%位です。
ご有望の場合は、ナメック星の神龍を呼び出し時の呪文を100レス程書いて下さい。
では、アディダスアミューズメント!(笑)
グンタマさんGJ!!
個人的には一番好きなSSの続きですごく嬉しいっす
やすドラ、だけど独身、ななどらがほぼ同時にきてたあの時代がちょっと
懐かしくなった
590 :
ニセドラ!1:2009/07/15(水) 16:09:34 ID:ts7QpLwN
「なあ。一生に一度くらい、本当に魔法が使えたら、イイよな」
土曜日の夜6時。ドリンクバーで、アイスコーヒーをチョイスした高須竜児は後悔していた。
まずひとつめは、今日の昼休みに、夏と言えば怪談っ!という事で、仲の良い三人で、
オカルトな話題を交していた時に、自分の口から出た言葉に対してだ。まほうって魔法の事?と返され、
『えっ…高須、それって、マジで言ってんの?』
『ほえ〜、高っちゃんって以外と、メルヘンチックじゃん☆』
自分ではそんなにおかしな事言ったつもりはないのだが…シラっぽくなった空気が立ちこめていた。
そしてふたつめ。竜児は今、待ち合わせしているのだった。受験勉強どころか、試験勉強しないと、
卒業が危うい春田浩次とふたりで勉強会の約束をしていたのだ。竜児は紳士的に10分前行動。
しかし、約束の時間を過ぎても当の本人がこない。今日の夕食は、外食すると母親の泰子には
伝えてあったので、すきっ腹での三杯目のコーヒーを飲み干せるか、思慮していたのだ。
「ボナペティ、ムッ〜シュ!!みのりん特製、ポテイト盛り盛りの高須くんスペシャルだぜっ!
…って、まだ来ないの?春田くん、遅いね。メールとか着てないのかい?」
と言って、ドドーンと、マンガでしか観た事無いような山盛りポテトを運んできた眩い笑顔の
ウェイトレス登場。その名は櫛枝実乃梨。竜児が1年の時から、片思いしていた、ちょっと
ユニークでかわいらしいこの天使は、このファミレスでアルバイトをしている。今日も元気で健康的だ。
「おうっ、メール受信してるっ。春田からだ…どれどれ…えっ来れない?」
「そうなの?どしたの?何故ゆえっ?」
「えー…、ごめん高っちゃん、行けなくナッチッタ☆ 家を出たら、風で飛んで来たバケツに
ぶつかって、驚いた自転車に突っ込まれて、ヨロめいた拍子に、溝に落ちて、犬に噛まれて、
鳩のフンが掛かって、ネコに引っ掻かれて、街路樹の太い枝が、頭に落ちてきたから帰った☆
…らしい。」
あー、よくある事よのお…と納得し、実乃梨は仕事に戻った。
…しかたねえ。ポテト食べたら帰ろう。
***
ピンポ〜ン。
来店客が、『御用の際はボタンを押してください』ボタンをプッシュした音だ。呼び出し番号が光る。
「んはーーっいいっ、ただ今っ!」
食べ終わったテーブルの片付けをしていた実乃梨は、軽いステップで、呼び出し番号のテーブルへ。
「お待たせしました!!ご注文どう…ぞ」
そのテーブルの上には、トコロ狭しと、プリントアウトした絵?…のようなモノがブチ巻かれている。
そして…真っ黒な髑髏のオブジェが、テーブルの上に鎮座していた。この手の趣味に対して抵抗のない
実乃梨は、おもわず、ジーッと見入ってしまったのだ。
「ドリンクバーひと…。貴女、一介の給女なのに、このイラスト。興味あるの?解るの?」
夏だというのに、全身漆黒。しかし、サテンテープが胸もとでクロスし、リボンとフリルの可憐な
カットソー、スカートはメッシュ素材で、ミニで、フレアーで、ギャザーで…まあ、定番のゴスロリだ。
正々堂々、正真正銘、完全無欠、神聖、戦慄…、一言では表現するのが出来ないほどの『超』の付く美少女。
人を寄せ付けない雰囲気は、出会った頃の親友、大河に似ている…ただ服装同様、髪の毛は真っ黒。
そう、この美少女を一言で表現すると、黒大河だ。
「あっ、はい、そのなんつーか…時空を超えた小宇宙、壮厳で、神秘的で幻想的なクライシスですよね?」
黒大河ちゃんは、目を開く。宝物を見つけたトレジャーハンターの様にワナワナ瞳が輝く。
「あなた、異端ね…平民の給女が、魔女の心の欠片を的確に名状するなんて…」
どうやら気にいって頂いたらしい。なんか怪しいものがいっぱい入っていそうなポーチから、黒大河ちゃん
は、小瓶のついたネックレスを取り出した。なんか、粘り気がある緑の液体が入っている…
「えっと、櫛枝さんっね。これを授けるわ。有難く受取りなさい。わたしの二つ名は、涙夜。憶えておいて。
偽愛パラノイアのマスター…謁見を許可するわ。あ、これアドレス…です」
名札で実乃梨の名前を憶えたらしい黒大河ちゃんは、実乃梨に、まるでタロットカードのような名刺を渡した。
わたしはこういう娘に好かれるんだな…
少し離れた席。竜児は、特盛ポテトを6杯目のアイスコーヒーで、なんとか完食寸前。
「…もう喰ねぇ」
そして、ゴロロロロロっと腹部から悲鳴。トイレに駆け込んだ。
591 :
ニセドラ!2:2009/07/15(水) 16:10:34 ID:ts7QpLwN
「はあっ、やばかった…」
トイレ(大)を無事終わらせた竜児は、洗面台でしっかり手を洗い、鏡で入念に前髪チェック。
よしっ!と、トイレのドアを思い切り開けたその時だった。
ゴンッ!!
かなりの手応えを感じた。そして、竜児の足元に、黒くてヒラヒラした物体が転がっていた。
「おううッ!すっすいません、大丈夫ですか?」
ものすごく痛いはずだ。しかしその物体は、涙が零れるのを我慢しているようだった。そして
ブツブツと何か唱えはじめた。(ツータッタ…ツータッカ、あっ間違えた…)呪文のような何かを。
「あの…ほんと、すいません。怪我っ…お、うっ?」
なんとなく、既視感に襲われる。この少女…たしか去年の七夕あたりに…いや…記憶が…微妙。
「ったい……。ぉのれぇぇ…我が魔族最凶の劇烈黒魔法を喰らえ!冥界で、永劫後悔するがいいっ!」
カーッ!気合一閃。そう吐き捨て、涙夜こと、玉井伊欧は女子トイレへ。
どちらにせよ、ガマンの限界だったようで、勢い良く女子トイレの扉がバタン!と閉まる。
…はぁ、驚いた…と竜児は、言ったつもりつもりだったが、あれ?声が…声が出ない?!
声が出ない代わりに、ウウッっと、変な呻き声が出た。そこへトイレに来た男性客が、竜児を見て驚いた。
今まで、凶器のような三白眼を持つ竜児としては、驚かれたり、ビビられたりするは、よくある事…
のはずなのだが… 何か違う。おかしい。違和感。その…カラダの感覚も、あれ?毛もフッサーっと…
竜児は、おもむろにトイレに戻り、洗面台に手をかけ、鏡を見た。
「ウッ!!、ウォォ〜ン!」
竜児は、犬の姿をしていた。
トイレに、犬が紛れ込んでるっという男性客の通報でファミレスの店長がモップ片手にトイレにやって来た。
ただでさえ混乱している竜児(犬)は、さらに混乱。モップを振りかざす店長の横をすり抜け、パニック状態の
店内を駆け抜け、入店しようとする女性客の足下をくぐり抜け、日が暮れかかった街の中へ逃げ出した。
***
須藤氏の営む喫茶店。須藤コーヒースタンドバー、通称スドバに、大橋高校の制服を着た一組のペアの姿があった。
メガネが似合う(かわいくない)能登久光が、最近人気のアーティストのCDを、亜麻色の髪が似合う(かわいい)
木原摩耶に借りようとしていたのだ。ふたりがオーダーしたコーヒーは、ほとんど手を付かずだ。会話が途切れず、
話し続けているからだ。しかし、仲良く見えないのは何故だろうか。
「な〜んで俺がそこまで言われなくちゃいけない訳??」
「能登のくせに、えっらそーなクチきくからだよっ」
「そんな事言ったら、木原だって…何あれ?」
能登の指先の先には、じーっとこちらを見ている犬がいた。…見てるというか、睨んでる。睨んでるようにみえる。
なぜなら目つきが恐いから。
「能登っちって、犬にも嫌われているんだ…ちょっと同情しちゃう」
「え?本当?…あれ?これって、俺喜んでいいトコなの?」
せっかく竜児(犬)は、気付いてもらえたが、スドバのふたりは、またもやいい争いを始めてしまった。
竜児(犬)は諦め、駅前に向って駆け出した。
続く
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タイピングの練習は他所でやってね。
いいなあ・・・ヒマで
スルースキルをどこかに置いて来たのか?
ちょっと反応が多すぎると思う。
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615 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 21:27:42 ID:o5GVS80M
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急jklどつd、いmtytdkmtl、stk
うん、こりゃあ次スレで投下しよう。
次スレというくらいなら明日明後日でええやん
619 :
ニセドラ!3:2009/07/15(水) 22:14:28 ID:O4LJgu0O
駅前には、家路を急ぐ人々でごった返していた。竜児(犬)は、泰子の勤め先であるお好み焼き屋、
弁財天国に行こうとしたが、逆に面倒な事になりそうだったので、スルーして気付けば駅前に着いたのだ。
すれ違う人の中には、犬好きの人もいて、竜児(犬)に気をとめ、ワンちゃ〜んっと近づいて来て触ろうと
するのだが、狂犬そのものの鋭い眼差しを見るなり、逃げてしまったりしていた。
途方に暮れている竜児(犬)に、またもや一人、声を掛けて来た物好きが来た。
「道のど真ん中にいやがって、ジャマな野良犬!」
川嶋亜美。ファッション雑誌の高校生モデル、抜群の美貌を誇る彼女は、残念ながら口が悪い。
「保健所に通報して犬らしく犬死に…あれ?この犬の目…見覚えが、何だっけ?」
竜児(犬)に気づいた。もう少しだ。竜児(犬)は、猛烈アピール。
「うわわわわっ!吼えた、威嚇した、恐ェ!」
ダッシュで逃げる亜美。バウバウ!釈明する竜児(犬)。どう見ても犬に襲われているようにしか見えない。
あっ亜美ちゃんだ。誰かが亜美に気付く。亜美ちゃんが、猛犬に襲われている!ピンチだ!助けろ!
竜児(犬)は、即席の勇者達に、カバンやら傘で、ボコボコにされた。
***
ゲホッゲホッ…
なんとか逃亡に成功した竜児(犬)。くそっ、動物愛護協会に訴えてやるっと、誓うのだが、行き場がない。
とりあえず、家に帰ろうと、いつもの通学路を、駆け抜ける。さすが犬の脚。速い速い。
もうすぐ到着!という交差点で、竜児のカバンと服を持った実乃梨に出くわした。
「も〜、高須くん、どこ行っちゃったんだろ…家にはいないみたいだし…」
急用で、どこかに行く事はあるだろう。しかし着ていた服がここにあるって事は、、、全裸だ。
「北村くんに関係…あるわけないかっ!もしかしたら宇宙人に誘拐された?それともっ」
と、実乃梨の妄想が加速した時に、竜児(犬)に気付く。ワンッ!と吠えてみる。
「アヒャヒャヒャ!!このワンコ、高須くんそっくりっ!ちょー受けるっ!やるな?キミ!」
竜児(犬)に駆け寄り、実乃梨はおもいっきりヨーシヨーシする。いつの間にか、ムツゴロウの物まねしていた。
犬になってから、初めて優しくされ、尻尾をフリフリしていたが、実乃梨のスキンシップが強烈すぎて、
ハアッハアッ、…意識して興奮してしてしまった。恥かしい。
「ワンコっ!気に入ったぜ。首輪付けていないから野良だね?よしっ!家においで。飼ってあげる
ふっふーん…本当に高須くんそっくり…ワンコッ!お前は今からニセ竜児。ニセドラだっ!」
ワンッ!ともう一回吠えてみた。
続く
>>619 おもしれぇww
どんな展開になるのか楽しみだ
>>619 gggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggg
jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
大河「さっさと舐めなさいよ…」
竜児(犬)「ぺろぺろ」
わかりません><
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ghjmgvhnmbhnm
なんだこれは…たまげたなあ。
伊欧「とりあえずなぁ、犬のマネしろよ」
竜児「え?」
伊欧「犬だよ、ヨツンヴァインになんだよ。早くしろよ」
竜児「やれば人間に戻してくれるんですね」
伊欧「おう考えてやるよ」
こうですね、わかります><
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626 :
ニセドラ!4:2009/07/16(木) 10:21:32 ID:Uq6qDXxS
「だからさーっ、お願げーだよ。ちゃんと躾けるからさー…」
櫛枝家の玄関。実乃梨は母親を説得している。もちろん竜児(犬)を飼うためだ。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。あんたは言ったら聞かないから…母親は折れる。
「ウェルカムホーム!ニセドラッ、今日から我が家の一員だっ!ヨーシヨーシ…」
だからそれは…嬉しいけど、恥ずかしいんだって…
玄関で、ステイっされた竜児(犬)は、大人しくしていた。奥から声が聞こえる。
そうだ、お姉ちゃん夕食は?バイト先で食った。じゃあ、お風呂はいちゃってよ、
あんたが最後よ。…とその直後。
「ニセドラっ、お前、汚れているから一緒にお風呂はいるよっ!!おいでっ」
飼い主の命令には逆らってはいけない。
***
おじゃまします…と言いたい所だが、竜児(犬)は声が出ない。クウーンと唸っただけだ。
櫛枝家の脱衣場。やっぱりマズいよなっ、いや、しかしご主人様だし…とっても自然な事。
「ニセドラ。先にお入り、こっちだよっ」
竜児(犬)は手…ではなく、前足を拭いてもらい、脱衣場に入り、さらに風呂場へ。
ピシャッと扉が閉まる。犬の嗅覚は、最大1億倍というが、櫛枝家の風呂場には、
実乃梨の臭いが、プンップンッしていた。正確には犬だからこそ臭ったのだろう。
そんな臭いフェチと化した文字通りエロ犬は、脱衣場にいる実乃梨の脱衣シーンを
すりガラス越しに見ていた。よく見えないが肌色が見える。肌色が多い。大興奮。
はあっ、はあっ、うぉーんっ。実は今、相当エロい事を口走ってしまったのだが、
何言っても犬だからバレない。実乃梨は犬語は喋れない。だがしかし…
しかし竜児(犬)は相当やばい状況になっている。犬の場合は何というのか解らないが、
人間の場合。下半身が、だ。人間同様、犬だって。興奮したらカラダの一部が変化する。
ガウッ、ウォホオオオン
またもや竜児(犬)は、日本語だったらとんでもない卑猥な言葉を発したが、やはり
実乃梨はバウリンガルではないので、ノーリアクションだった。助かった。
おあずけっ!!状態のままの竜児(犬)は、風呂場の窓枠に手…、ではなく前足を掛け、
けんすいを始めた。けんすいをして、カラダの一部に集結した血液を分散させようとした。
ウォオオウッ!すっ、滑るっ!後ろの脚をバタバタさせて、けんすいスタート。
ワン!ツー!…ツーが言えない…。そんな努力をしていたが、馴れないカラダで、
けんすいなんてそう何回も出来るものではない。キャゥゥウッ!前足が窓枠から外れた。
「おまたせっ!ニセドラッ!…あり?どした?」
竜児(犬)は、スッ転んで、実乃梨にいわゆる腹見せの状態に…丸見えだ。全開だ。
実乃梨は水着を着ていた。
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まだ気狂い湧いてんのか 早く溶けて消えろや
>>629 どろろんどろろんでろでろば〜wwwwwwwww
あーらら
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うyfmttmyjちぃきゅlydfちゅmkdrtfghgdrjmkりゅ
えりぇdnydrtfdgxfgjhfgjfytfrytふゅwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>626 共に風呂展開は予想済みだったが……
何故水着ww
いいぞー続けろ!
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636 :
ニセドラ!5:2009/07/16(木) 20:37:08 ID:vfukoyJ4
駅前には、家路を急ぐ人々でごった返していた。竜児(犬)は、泰子の勤め先であるお好み焼き屋、
弁財天国に行こうとしたが、逆に面倒な事になりそうだったので、スルーして気付けば駅前に着いたのだ。
すれ違う人の中には、犬好きの人もいて、竜児(犬)に気をとめ、ワンちゃ〜んっと近づいて来て触ろうと
するのだが、狂犬そのものの鋭い眼差しを見るなり、逃げてしまったりしていた。
途方に暮れている竜児(犬)に、またもや一人、声を掛けて来た物好きが来た。
「道のど真ん中にいやがって、ジャマな野良犬!」
川嶋亜美。ファッション雑誌の高校生モデル、抜群の美貌を誇る彼女は、残念ながら口が悪い。
「保健所に通報して犬らしく犬死に…あれ?この犬の目…見覚えが、何だっけ?」
竜児(犬)に気づいた。もう少しだ。竜児(犬)は、猛烈アピール。
「うわわわわっ!吼えた、威嚇した、恐ェ!」
ダッシュで逃げる亜美。バウバウ!釈明する竜児(犬)。どう見ても犬に襲われているようにしか見えない。
あっ亜美ちゃんだ。誰かが亜美に気付く。亜美ちゃんが、猛犬に襲われている!ピンチだ!助けろ!
竜児(犬)は、即席の勇者達に、カバンやら傘で、ボコボコにされた。
637 :
ニセドラ!6:2009/07/16(木) 20:38:07 ID:vfukoyJ4
「はあっ、やばかった…」
トイレ(大)を無事終わらせた竜児は、洗面台でしっかり手を洗い、鏡で入念に前髪チェック。
よしっ!と、トイレのドアを思い切り開けたその時だった。
ゴンッ!!
かなりの手応えを感じた。そして、竜児の足元に、黒くてヒラヒラした物体が転がっていた。
「おううッ!すっすいません、大丈夫ですか?」
ものすごく痛いはずだ。しかしその物体は、涙が零れるのを我慢しているようだった。そして
ブツブツと何か唱えはじめた。(ツータッタ…ツータッカ、あっ間違えた…)呪文のような何かを。
「あの…ほんと、すいません。怪我っ…お、うっ?」
なんとなく、既視感に襲われる。この少女…たしか去年の七夕あたりに…いや…記憶が…微妙。
「ったい……。ぉのれぇぇ…我が魔族最凶の劇烈黒魔法を喰らえ!冥界で、永劫後悔するがいいっ!」
カーッ!気合一閃。そう吐き捨て、涙夜こと、玉井伊欧は女子トイレへ。
どちらにせよ、ガマンの限界だったようで、勢い良く女子トイレの扉がバタン!と閉まる。
…はぁ、驚いた…と竜児は、言ったつもりつもりだったが、あれ?声が…声が出ない?!
声が出ない代わりに、ウウッっと、変な呻き声が出た。そこへトイレに来た男性客が、竜児を見て驚いた。
今まで、凶器のような三白眼を持つ竜児としては、驚かれたり、ビビられたりするは、よくある事…
のはずなのだが… 何か違う。おかしい。違和感。その…カラダの感覚も、あれ?毛もフッサーっと…
竜児は、おもむろにトイレに戻り、洗面台に手をかけ、鏡を見た。
「ウッ!!、ウォォ〜ン!」
竜児は、犬の姿をしていた。
トイレに、犬が紛れ込んでるっという男性客の通報でファミレスの店長がモップ片手にトイレにやって来た。
ただでさえ混乱している竜児(犬)は、さらに混乱。モップを振りかざす店長の横をすり抜け、パニック状態の
店内を駆け抜け、入店しようとする女性客の足下をくぐり抜け、日が暮れかかった街の中へ逃げ出した。
***
須藤氏の営む喫茶店。須藤コーヒースタンドバー、通称スドバに、大橋高校の制服を着た一組のペアの姿があった。
メガネが似合う(かわいくない)能登久光が、最近人気のアーティストのCDを、亜麻色の髪が似合う(かわいい)
木原摩耶に借りようとしていたのだ。ふたりがオーダーしたコーヒーは、ほとんど手を付かずだ。会話が途切れず、
話し続けているからだ。しかし、仲良く見えないのは何故だろうか。
「な〜んで俺がそこまで言われなくちゃいけない訳??」
「能登のくせに、えっらそーなクチきくからだよっ」
「そんな事言ったら、木原だって…何あれ?」
能登の指先の先には、じーっとこちらを見ている犬がいた。…見てるというか、睨んでる。睨んでるようにみえる。
なぜなら目つきが恐いから。
「能登っちって、犬にも嫌われているんだ…ちょっと同情しちゃう」
「え?本当?…あれ?これって、俺喜んでいいトコなの?」
せっかく竜児(犬)は、気付いてもらえたが、スドバのふたりは、またもやいい争いを始めてしまった。
竜児(犬)は諦め、駅前に向って駆け出した。
続く
__,.--、
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ロボーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
まさかの伊欧が登場wwwww
あのさー、作風はコメディーっぽくしているけど、結構マジで作ってたんだよね〜。
面白くないなら、せめてタイトル汚さないでスルーしてほしかった。
>>643 vbmfvhfkydtfjhxmftghmdfhxdfhdfchftじゅf?
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乗っ取り?
>>643 あのさー、作風はコメディーっぽくしているけど、結構マジで作ってたんだよね〜。
面白くないなら、せめてタイトル汚さないでスルーしてほしかった。
ニセドラ!最後まで頑張ってくれ
個人的にかなり楽しみだから
>>643 あのさー、作風はコメディーっぽくしているけど、結構マジで作ってたんだよね〜。
面白くないなら、せめてタイトル汚さないでスルーしてほしかった。
ニセドラの人
俺も楽しく読ませてもらってるよ
変なのがいるがうまくスルーしながら、頑張ってくれ
>>643 あのさー、作風はコメディーっぽくしているけど、結構マジで作ってたんだよね〜。
面白くないなら、せめてタイトル汚さないでスルーしてほしかった。
652 :
ニセドラ!5:2009/07/16(木) 23:07:13 ID:CkrYKVQN
実乃梨の全裸は拝めなかったが、なんのなんのっ、今竜児(犬)は至福の刻を過ごしていた。
「うっしゃらららっ!!うっしゃらららっ!いやー泡立つねえ。どう?ニセドラ!」
最高です…初恋の相手に、お風呂場で洗ってもらえるなんて、これ以上、何があるというのか。
「せっけん流すよ〜、放水開始っ!うりゃああああっ」
竜児(犬)は想像した。ちょっと不謹慎な事だ。もし実乃梨と付き合っていたら…
大河と付き合ってなかったら…こんな風に一緒に…おおうっ!熱ちぃ!!
「ごっめーんっ!熱湯出しちまったよ。今日は暑かったし、水の方がいっか。なっ、ニセドラっ!」
水でキレイに濯いでもらった竜児(犬)は、無意識にブルブルっと水切りする。飛沫が飛ぶ。
「つおおおおっ!ペッペッ!ニセドラ!おぬし、いつの間に、オーロラエクスキューションを会得したのだ…」
なんてなっと、実乃梨は、犬の自分にでも、ずっと話かけてくれている。ずっと気を使ってくれている。
すっごくかわいくて、明るくって。一緒にいて楽しい…。俺、やっぱり…櫛枝の事…
「ではでは、あっしも体を洗おうかねぇ」
おもむろに実乃梨は、ビキニに手をかけ、脱ぎだした。
おうっ!犬になっても、それぐらいは、言えるようだ。焦った竜児(犬)は、前脚で目を覆う。
「なんだいニセドラ。照れてるのかい?えへっ、憂いやつじゃ、近うよれいっ」
近うよれる訳ない。前脚が塞がっている竜児(犬) は、ぴょんぴょん飛び跳ね、…またスッ転んだ。
そんなアホ犬に、実乃梨は、後ろから抱きしめる。もちろん、全裸で。
「よしよし…洗ってくるから待ってて。 お・す・わ・り。 ね?」
ピタッと、動きを停めた竜児(犬)。背中に感じた、想像より大きく、柔らかい温もり。
このまま死んじゃうかもしれない。心臓がバクバクする。鳥肌が起つ。犬だけど。
そんな気も知らず、♪抱っきしめた〜♪こっころのコッスモ〜♪実乃梨は唄い出す。
竜児(犬)は、精一杯の理性で我慢していた。抱きたい。そう思っているのだ。しかし…苦悩する。
でも…実乃梨が全裸で至近距離にいる。こんな状況で、自制心を保てる男、オスがいるだろうか?
イネーだろっ!無理無理!絶対イネー!
意を決して、竜児(犬) は、実乃梨に襲い掛かるっ!わお〜〜ん!
ガンッ!
いつの間にか洗い終えていた実乃梨は、湯舟に浸かりながら壁に激突するエロ犬を見た。
***
気絶していた竜児(犬)は、いつの間にか実乃梨の部屋に運ばれていた。
「気がついたかい?ニセドラ。もぅ!お風呂キライなの?心配したぜよ〜」
超アップで、実乃梨に話し掛けられ、ビクッとする。屈託のない笑顔に罪悪感でいっぱいになる。
「ニセドラ…もしかして、わたしの事キライなのかな?」
竜児(犬)は、ブルブルと全力で首を横に振る。ヨダレが出るくらい全力で否定。
「汚ねェ!…ってお前…人の言葉、解るの?」
今度はコクコクっと首を縦に振る。ヨダレは…出ない。
「凄っげー!凄げーよ、ニセドラ!もしかしてミュータント?XーMEN?ウルヴァリン?」
言葉を理解する犬なんて、普通は拒絶反応を起こすだろうに、実乃梨はすんなり受け入れた。
そういうトコロも、竜児(犬)は好きなんだ。三白眼なんかもそうだった。
「じゃあさ…。わたしの事。…好き?」
急に真剣な眼差しで、ゆっくりと問いかける実乃梨。
竜児(犬)は、目をそらさずに、ゆっくりと肯定した。
続きますが、ちょっと様子見ます
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
皆さんこんばんは。良作が投下されてるので、僕も便乗させてください。
[言霊]
の続きが書けたので投下させて貰いに来ました。
前回の感想を下さった方々、まとめ人様ありがとうございます。
今回はエロ分が皆無で申し訳無いですが、よろしかった読んでやってください。
では次レスから投下します。
[言霊(4)]
「こんっっのエロ犬っ、お前は何やってるんだ?」
私達の目の前に現われたのは逢坂大河…。
竜児を下から睨付け、搾る様に低い声で唸る。
隣で寄り添う私を一瞥し、何も言えずにいる彼に質問を返す。
「聞 い て ん の 竜 児 ?ねぇ…、犬の癖して耳が遠いの?」
今の彼女の姿は凶暴な虎とダブる。
震える柴犬に前脚の鋭い爪を首筋に押し付けて威す虎……そんな幻覚を私は見てしまう。
夕方の一件から間もない、だからこの状況は予想外だった。
彼女の心を傷付けてしまった、それを贖罪した上で彼を自由に……、たらい回しにするのは止めさせる。
そして出来るなら『仲直り』をしたい。
それは時間が掛かるだろう。けど少しづつ歩み寄れたら…。
そう漠然と考えていたのだ。
「お、ぅ…あ、亜美を送っていってるんだ…そ、それだけだ」
彼が迷いながら言った言葉は脚色していない事実だ。
だが、それは彼女の質問の本質とは違っている筈。
彼女を刺激しない様に言葉を選んで…無難な事を言った。
けど、それは逆効果の様だ。
彼女は握り締めた拳を震わせて、紅潮した頬を引きつらせて彼を喰い殺さんばかりの形相で睨あげる。
「そんな事は聞いて無い。だから……何をしているの?って聞いてるでしょ」
私はとんだ思い違いをしていたのかもしれないと考え始めていた。
「いや…た、大河。今言った通りだ。嘘じゃねぇ……なっ?」
大河は虎。私は…彼女の言う通りチワワなのだろう。
実はあの時、何も言い返さなかったのは…傷付いたから…じゃなくて怒りに震えていたのだとしたら…。
そうだ。そうだった………私は聞いたじゃないか、夏に大河の咆哮を。
『竜児は私のだ!誰も触るな!』
そう。虎はチワワに噛付かれた位じゃ致命傷は負わない。
彼女が彼に触れる事を許したのは…『実乃梨ちゃん』だけ…。
「みのりんに告白出来なかった位で逃げてんじゃないわよっ!!!なにをすぐに諦めとるんじゃいっ!!!」
煮え切らない態度に臨界点を超えたのだろう。大河が大きな声で吠え、彼を容赦無く蹴倒した。
竜児が地面に向かって倒れ、手を繋いだ私は彼に引っ張られてコケる。
手を離せば私まで倒れる事は無かった。だが、そうしなかったのは彼だけに責めを負わす訳にはいかないから…。
咄嗟だった。けど実は…ただ単に身が竦んで動け無かったのかもしれない。
一つ解っている事は、その鋭い爪が私にも向けられていて身動き出来ない事だけ。
「ってぇな……何してんのよ!!クソチビィ!!コラァッッッ!!!!!!」
だが私はその圧力に屈しないで吠え返す。
だって腹が立つじゃん?
何様のつもり?竜児を物みたいに扱ってさ。
確かに大河の言う事はもっとも。でも……間違ってもいる。
好きな相手に致命傷を負わされたら誰だって怖くて先に進めなくなる。
彼は漫画のヒーローじゃない。
『拒絶』されて、彼女達に都合良く振り回されて……自分の事は蚊帳の外に放られ、表向きとはいえ眼中に無いと言われても諦める事は許さない。
暗にそう言っているのだ当事者である大河は。
「アンタには関係ない!!私はこの駄犬と話してるの!!バカチワワは黙ってろ!!」
彼は誰より強くて、そして脆い……それを理解している筈なのに、彼女は自己満足の自慰に彼を巻込もうとしている。
相手の都合なんか無視して…。
自分が好きだと気付いた時には手遅れで、せめて親友との仲を取り持つ事で本心を誤魔化そうって事ぉ……はあ?
それこそ『逃げ』だし。
「うるせぇ!!アンタは自分が言っている事がどういう意味か理解して言ってんの!!??」
それに気付いても当たる勇気が持てない癖に、相手には強いる。
『みのりん』と『竜児』の為ぇ?
嘘付くな『自分』の為の間違いでしょうが。
「竜児の考えも気持ちもガン無視?大河ちゃんが全部決めてあげるから逆らうなってか?
自分の事は棚にあげといて何を言ってんの!!!
自分は大層な事を吐かしてる癖に"告白"する事から逃げて、相手からも逃げて……押し付け合ってっ!!
竜児は物じゃないんだ!!
なんで一番大切な人の事を考えてあげれないのよ!!!」
私は大河に詰め寄り、猛り狂う。
彼女自身から聞いた訳では無い『憶測』で物を言った私も同類なのだろう。
だけど…事実だよ。
「っ!アンタに何が解る!何度も言うけど、竜児はずっとみのりんの事が好き!私は上手く物事が運ぶ様に協力するって約束した!
なのにっ…このバカ犬は勝手に判断してみのりんから逃げ回ってるんだ。情けない。
一回位で諦める位なら初めから好きになんかなるなっ!
ふんっ!第一に発情バカチワワがでしゃばる意味が分かんない!さっさと失せろ!」
大河が私と竜児を交互に睨み付けながら猛る。
この前まで『傍観者』だった私には耳が痛い。
彼女から見れば、途中から割り込んだ『異分子』が隙をついて『忠犬』を盗ろうとしている。
そうだね。うん間違いない。
つまり私の言い分も大河の言い分も正論だし、事実。
立つ視点が違うだけ…。
でも、一つだけ違うんだよね。
それは彼に本心を包み隠さずにぶつけれてるか否か。
私はしているよ。自信を持って言える。
でも大河と実乃梨ちゃんはどうかな?
二人して黙り徹して、たらい回して…それを彼がどう思うか…。
最終的に判断する竜児の心に訴えかける事が出来るの、ねぇ?
私は見逃さなかったよ?
ちょっと私の言った事に動揺してたし…『余計な事』を言われ無い様にまくし立ててるよね。
情けないのはアンタの方。そんな奴に容赦は必要無い。
「ふぅ〜ん…そこに"今の竜児"の考えは反映しない訳だぁ?恋のキューピッドなタイガーちゃんは。
へぇ〜"大怪我"した理由を無理矢理でも納得したいから自分の都合の良い事以外は無視して…それって本当に上手く事が運ぶって思ってんのぉ?」
私は大河を嘲笑いながら、睨み付ける視線に怒りを込める。
彼女がその言葉を聞いて僅かに瞳が揺れ、慌てて口を開こうとする。
「大河。あんたがそう信じたいなら勝手にしな、でも本音を隠したまま……自分の思い通りにはならない。
いくら取り繕っても無駄。
竜児と実乃梨ちゃん…掛け違えたボタンを無理矢理に掛け直そうとしたら千切れる。
あんたの望む答なんか出てこないよ。それだけは言っておいてあげる。
絶対に後悔するから…」
だが私はその暇を与えず、彼女に吐き捨てる。
そして踵を返し、この光景を唖然と見ていた竜児の手を引いて起こす。
「竜児、行こっ?」
彼の返事は待たず…引き立てる様にグイッと腕を引いて、早足で大河を横ぎる。
「お、おい…亜美」
呆然と立ちすくむ彼女を視界の端に捕らえ、すぐに背ける。
正直…呆れていた。
憶測も良い所だけど…大河の『好き』は私なんかの言葉でぶれる、その程度のモノなんだと…。
誰より長く、身近に彼と居て……一番、彼の事を知っているのに、壊れるのが嫌で踏み出せない。
挙句に誤魔化そうと必死で………ああ、もういいや。
『余計な考え』を私は思考の外へ放る。
千切れた糸は…所詮は簡単に千切れてしまう運命にあった……そういう事なのかもしれない。
私達は一言も発せずに黙々と歩む。
指を絡ませて手を繋ぐ事も無く、彼の羽織ったキルトジャケットの袖ごと腕を掴んだまま…。
だが…あと少しで帰り着く……そんな時に竜児が歩む事を止める。
「なぁ…亜美よ」
「……………なに?」
私はぶっきらぼうな言い方で返す。
「駄目だ……やっぱり……俺は言わなきゃ駄目なんだ」
「………何を?」
そう言った竜児が真に言わんとしている事の判断に迷う。
わかんない……わかんないし。
「大河に……言わねぇと駄目なんだよ、俺の考えって奴を。
このまま……黙ったままなのは……アイツが……」
「可哀相って?良いじゃん自業自得……無駄だよ何言っても」
竜児の言葉を遮り、私は一息に言って先に進もうとする。
が……今度は彼の方が私の腕を掴んで離さない。
「違う……可哀相とかじゃなくて、俺は大河に解って欲しいんだ。
なんで櫛枝より亜美の事を好きになったか。
なんで今の今まで言えなかったか」
私を真直ぐに見詰め、彼は噛み締める様に言った。
「あっそ……じゃあ行けば?速攻で戻って教えてあげたら良いじゃん、そこは大河と竜児の問題ですしぃ、亜美ちゃんには関係ありませぇ〜ん」
私の心中を嫉妬と苛立ちと悲しみが覆う。
まだ彼の中を占める大河の割合に、彼の余計な優しさに、そして……それを羨ましいと想う自分に…。
「確かに亜美には関係は無い事かもな、けど……亜美に大河と一緒に聞いて欲しいんだ」
「はあ?イ・ヤ!何でよ、聞かなくても良い!
どうせ大河は……解ってなんかくれない、絶対に駄々をこねるのなんか分かってる!時間の無駄!」
言葉と裏腹に私の心は泣いていた。
紡ぎ直せると期待してみたら駄目で、愛しい彼の気が大河に向いている事、実は駄々をこねているのは自分である事に。
少なくとも……今の私はそうなのだ。
竜児と互いに惹かれているのは解ってて、でも彼は大河に余所見している。
それが私自身が言った『竜児の考え』を彼女に説明するという事だとしても妬いてて…頭の中がグチャグチャ。
縋った『理想』を諦めるのは尚早と考えてみても、早々に見切りをつけてしまいそうになる自分の弱さ。
情けなくて、悲しい。
「無駄…じゃねぇ。俺は少しづつ繋げば良いって言ったよな、だからまずは取っ掛かり。
お前達が千切った糸同士を持つ所からだ、今から見せてやる」
何を言ってるの?二度ある事は三度ある、そう言うじゃん。
私は自信ありげに言葉を紡ぐ彼に疑いの目差しを向ける。
目を細め、ジッと彼の瞳を見詰める。
それを竜児も同様に見詰める、そう…そっか、逸した方が負けって事だね。
どうしても見せたい訳だ竜児は…。
オツムの足りない本能に忠順忠実なチビ虎を納得させれる、…と私に示したいんだ。
彼女の特性を理解している彼にも出来るかは疑わしい。
竜児だって見たんだから……解るでしょ?
蹴られたし、罵倒されたし………色々と必死だし。
やっと見付けた『拠所』を守ろうと…必死なんだよ大河は。
なるべく荒れない様に…手入れしてるつもりなの。
でも私だって……そうだもん。
出来るなら元通りにしたいもん、歪でも。
じゃあ私は…私は………信じるしか無いじゃん竜児を。
いくら難しい事を並べたって…敵わないや。
一度でも見てみたいと想った『理想』は簡単には諦められない…。
「…私はただ竜児の横に"居るだけ"
無駄だと思ったら帰る。
それでも良いなら見届けてあげる」
目を逸さずに私は答える。
目を逸さないのは『勝ち負け』じゃなく信頼を示すため。
以前、一緒に糸を紡ごう…そう言ってくれた。
私は下手くそだから……やり方を竜児が見せてくれるって……なら私は見てみたい。
見届けたい…。また皆で仲良くしたいから、私と大河が戯れあって竜児も巻込んで、実乃梨ちゃんが窘めて……ん?祐作ぅ?
あいつはほっとけば良いよ、勝手に遊んでるだろうし。
「おぅ、それで良いから」
竜児が頬を緩め、私の手を握る。
暖かい彼の体温…私の冷めた心を溶かす温もり。
ヤキモチを妬かせたのは、これでチャラにしてあげる。
竜児と私の指が滑って重なり…しっかり絡んで繋がれる。
それは…どちらからとも無く、自然に…。
.
「……で、どうやって入る訳?」
来た道を足速に戻り、私達は高級マンションのエントランスに居た。
実は数日前に修学旅行のしおりを皆で作ったのだ。
その時はエントランスまで大河が迎えに来てくれた、だが今日は……。
「お?ああ…大丈夫だ。入り方は知ってる」
そう言って竜児がニヤリと笑う。
細められた三白眼がガラス張りの自動ドアをギロリッと睨む。
『こんなもんガスバーナーで炙ってマイナスドライバーで小突けばイチコロよう』
とかは考えて無いだろう。常識で考えて。
でも何も知らない人が見たら……ねぇ?
なんちゃって嘘だよ。
私はダウナーだった気持ちが浮上してきていた。
もしかしたら竜児なら、解決の糸口…新たな糸を結ぶ事が出来るかもしれない。
大河が信頼した彼なら……私なんかより、って。
彼が暗証番号を打ち込む後ろ姿を見守りながら、腕を組んで待つ。
といっても、それは数秒で済む訳で…彼が私に向かって頷いて、行こうと促す。
私は腕を組んだまま、さも渋々連れて来られました、そんな雰囲気で振る舞って彼を追う。
本当は真逆なんだけどね。
エレベーターに乗ってる間、私は彼を数度チラリと見た。彼は緊張した様子だった。
でも私が見た事に気付いた竜児が頭をポンポンと優しく撫でてくれた。
『心配するな、俺に任せろ』
そう言うみたいに…。
私はムッとした顔をしてみる。
亜美ちゃんは天邪鬼だからさ……本当は嬉しいんだよ。
だから…されるがまま。
そして暖色の灯が灯された廊下を渡り、私達は大河の部屋の前に着いた。
問題はどうやって入る…か。
呼び出した所で大人しく出て来る訳が無い。鍵は…持ってると聞いた事がある。
が…勝手に入ったら犯罪だ。
なら…どうやって?
そう考えあぐねていたら、彼は携帯を取り出す。
微かに耳に届く呼び出し音。私はそれを聞こえないフリをする。
「おぅ、起きてるか?」
大河の携帯に繋がったのだろう、彼が開口一番にそう言う。
「さっきの事で大切な話があるんだ」
大河が何を言っているかまでは聞こえない、が…乱暴な口振りな事だけは解る。
「おぅ…、おぅ、いや…でも聞いて欲しいんだ。頼む、いや、お願いだ」
今度はハッキリと聞こえる『うるさい!死ねっ!』の一言。
「…死んでも死にきれねぇだろ。俺はお前に説明しなくちゃいけないからな」
大河の苛立った返答を聞いても彼は顔色一つ変えずに紡ぐ。
「頼む……時間は取らせない、聞くだけ聞いてやってくれ。
相談…しなかったのは悪かった、言えなかったんだ…でも今ハッキリさせたい」
この押し問答を何回も繰り返す。
本当に嫌なら大河はすぐに通話を止める筈。でも続いているのは……多分、怖いから。
言われる事の察しはついてて、受け入れる事に勇気が持てない。
その気持ちは充分に理解している、が…真摯に頼み続ける竜児の願いは通じた。
支援
彼が感謝の言葉を述べた後、携帯を閉じる…。
カチャリとドアの鍵が開く音がして、彼はノブに手を掛けて開放つ。
そして素早く身体を潜らせる、私は手を引かれて一緒に…。
「なんでバカチワワも居るんだっ!!!」
同時に大河の激昂した声が玄関の中に響く、が…竜児の一言で黙る。
「それは亜美も居ないと成立しないからだ、本当は櫛枝も居た方が良いけど、まずは大河に俺の考えを聞いて欲しいんだ」
「ちっ!惚気話なら帰れ、普段の駄犬ぶりが嘘みたいに、あんたが珍しく真面目な口振りだから入れてやったのに…」
「惚気話じゃねぇよ、大真面目な話をするんだよ。今から」
先程と威勢はそのまま……でも私は気付いてしまう。彼女の瞼が微かに腫れている事に、微かに声が震えている事に。
大河はドキドキしてるんだと思う、竜児に何を言われるか、その内容も察していて……怖くて心細くて…折れそうな気持ちを虚勢を張って必死に誤魔化す。
チラリチラリと竜児と私を盗み見て、何かを考えていた大河が口を開く。
「……そう、そっか…うん。仕方無いから聞いてあげるわよ」
その声から覇気が消え、やけに素直になる。
ゆっくりとした動作で二人分のスリッパを用意して、トボトボと先を進む後姿……。
彼女も理解したのだろう、これ以上は『先延ばし』も出来ない『逃げれない』…と。
変に素直…そして妙な違和感を覚えた。
広いリビングに通され、テーブルを挟んでチョコンと座った大河は小さくて…哀れで……諦めの表情を浮かべていた。
ポツンと一人で座る大河、対して竜児と私は並んで座る…その対比は、彼女に無言の圧力を掛けている筈。
三人がバラバラに座れば、少しは希望が持てたかもしれない。
でも、現実は変わってしまった虎と竜の距離感と、急接近した私達の仲……癒えてない傷口を抉る様な現実を見ているのだろう。
「大河、俺は櫛枝に二度目の告白はしない。亜美の事が好きだから……好きになっちまった。
だから…櫛枝とは距離を置こうと思ってる」
静かな部屋の中で、彼が大河に向かってそう言う。
ストレートに言い放った言葉は大河にとって……『親子関係』の終焉。
私なんかに言われるより、確実に、そう…残酷なまでに見せつけられた夢の終わり。
「竜児…」
大河は縋る様な目付きで彼を見て、すぐに視線を逸す。
竜児の迷いの無い目差しを見てしまったら、今の彼女には眩しくて…悲しくて、でも聞くと言った建前……逃げれない。
「でも縁切りじゃねぇ、ただ"元通り"に…クラスメートに戻ろうって事だ。
俺はそうしたい、多分櫛枝も…」
「違うもん、みのりんはそんな事を望んでいない……絶対……。
私のせいでみのりんは本当の気持ちを言えないだけなの」
でも大河にも譲れない事はある、それが今言った事。
唯一の拠所、傷付いた理由、せめてそれだけは竜児に届けたい、そう見える。
「おぅ…俺が今まで大河に相談出来なかった理由はそれなんだ」
そう言うと墜ちた大河の表情に僅かだが光が差した気がする。
そして私は解らなくなる。
彼が言いたい事が理解出来ない、ただストレートに言うだけで…『取っ掛かり』は掴めるのか疑問。
「何か…亜美も言ってたけど、櫛枝は大河っていうフィルターを通して俺を見ている気がする。
俺も考えてみた。櫛枝をどう見ていたか」
そう一旦締め、少し間を開けて彼は続ける。
その表情は苦しそう、遠くを見ながら紡ぐ。
「俺は………櫛枝を、先入観とか思い込み…色々と勝手に想像して好きになった気持ちになってたんだ」
「え…」
その言葉を私と大河は同時に吐く。
だって驚くよ『好きだった』『好きになったつもり』
同じ『好き』でも意味合いが違うのだから。
「いつだって明るくて、面白くて、偏見は持たずに誰とも仲良くなれる……自分が持って無い物を櫛枝は持ってて、
キラキラ綺麗で、こういう娘みたいになりたい、もし仲良くなれたら…俺もなれるかな、
そう想ってたんだよ。
今、考えてみれば憧れ…みたいな」
「でも知れば知る程……何か違うな、って。
見てるのは……いつだって大河、その付属で俺を見ていた。
それを"認めたくない"そんな気持ちで迷って…。
俺は見て貰いたかったんだろうな、本当の意味で自分を…」
「ま、待ってよ。みのりんはちゃんと見てる、竜児が望む様な意味で」
大河が彼の言葉を遮り、慌てて訂正しようと試みる……が、竜児は止まらない。
「俺もそう想いたかった…何回もその考えを追い出そうとした。
でも無理で……どう見られたかったか、自分の胸に手を当てて聞いてみた………そうしたら亜美の顔が浮かんで消えないんだ」
『亜美』と言った瞬間、私の顔を見て……再び彼女を見据える。
「上辺だけ見ずに、内面を拾ってくれた。…隠さず、誤魔化さずに、守ってくれた。目一杯の優しさをくれた…。
俺が見て貰いたかった事を見てくれて、見せてくれたのは亜美なんだ」
「だから…好きになった、惚れちまった。
急な心変わりみたいだけど……いや心変わりだな。
……俺は"自分だけ"を見てくれる人が欲しかったんだ、俺はしっかり自分を見てくれる人と居たいし、そんな相手の事を見てやりたい」
その紡がれた言葉に大河の目は見開かれ、瞳が潤む。
「みのりんは…見て無かったの?竜児の事を…違う、違う、それは誤解だ、よ?私が竜児の近くに居るから…みのりんは遠慮みたいな感じになってるだけ」
それは自分に言い聞かせる様…大河の気持ちを揺さぶっている。
だって、じゃないと……彼女は失ってしまう。
自分を見てくれる存在も、彼と居る理由も…。
「俺は自分で決めたい、流されたくない。
自分の幸せってのは誰かから貰うんじゃなくて、自身が手に入れる物なんだ。
それと……櫛枝を"好きだった"って気持ちは大事にしたい。
変なフィルターを通さずに"良い恋をした"と想うから。それは事実だから、自分の気持ちに正直になりたい」
彼が全てを言い切り、リビングに流れるのは重くて永い沈黙。
私は竜児に掛けた『おまじない』が伝わって良かったと想う一方で……大河が哀れだと考えていた。
彼が彼女に伝えた事は余りに残酷で……贔屓目で見ずとも正論。
だから大河は何も言えなくなる。ただ生気の無い虚ろな瞳でテーブルを見るだけ。
「……言いたい事はそれだけ?」
それでも、大河は泣かない。……虎は強いから並び立つ竜に弱味は見せない。
彼女が一言呟いて、竜児は返す。
「おぅ、もう隠すもんなんか無い位にな」
と…。
「なら帰れ」
「おぅ」
淡々と返事を返す竜児。冷たい訳じゃない、いつもの口調で…そう普段通りに振る舞う。
私はその姿に戸惑いを覚えた…、そして彼に手を引かれる。
「亜美、行くぞ。大河悪かったな、夜遅くに…おやすみ」
大河は黙ったまま動かない。
私は彼女を正視出来ず、フローリングを見ながら彼に付いて部屋を出た。
階下へ降りるエレベーターの中で竜児が言った。
「大河は解ってくれる…あいつを信じて、真摯に訴えれば、きっと…いや絶対に」
その言葉に返事を返そうとして止める。
私は……横に居て聞いた"だけ"だから。竜児と大河の"問題"だから…。
.
「うん、ゴメン。そこらへんは上手く言っておいてよ。じゃあ…ね」
あの後、私は一睡も出来ないまま一夜を越した。
何とも言えない気持ち…が頭の中を渦巻いて、学校に行く気なんか出ない。
奈々子に電話して『今日は休む』と伝え、日光で微かに透けたカーテンを見ていた。
こんな状況で寝れる訳も無く、このままベッドの中でボーッと一日を過ごそうか。
かといって美容の大敵の一つ、睡眠不足。
今月は仕事が暇とはいえ、油断は出来ない。手を抜いて楽をすれば、後で痛いシッペ返しを食らうのは目に見えている。
少し身体を動かして疲れたら……寝れるかな?
……お腹も減ったし。
人間とは不思議なもので、一度そう思ったら空腹が気になって仕方が無くなる。
人前で恥かしくない程度に身嗜みを整え、私は外へ一歩を踏み出す。
向かう先はスドバ、某コーヒーショップのパチモンな店だ。
ちなみに蛇足だけど、なかなかに美味しいのだ。本家に負けない位には。
実は何気に気に入っている。
「げっ……なんでばかちーがココに居るのよ?」
店内に入って見付けたのは目を充血させた大河の姿だった。
見付かる前にスルーしようとした瞬間、彼女が私に気付き、さも嫌そうな顔をする。
「それには同感だわ、なんでタイガーが居る訳ぇ?てかサボりかよ、うっわ…シンクロとかうっぜぇ」
「ふん…そっちもサボりでしょ?」
キャラメルモカとドーナツを二個注文し、そんな言葉を無視して窓際のカウンターに腰掛ける。
すると、大河が横にチョコンと座る。
てか…朝からどれだけ食べるんだよ?
ベーグルにスープにドーナツに…うぇっ……トレイに盛ってるし。
「あれあれぇ、おっかしぃなあ〜、横に誰も居ないのにぃトレイだけ置かれてるぅ〜
オバケかな、や〜ん怖いしぃ……んんっ?なんだ〜タイガーじゃん、居たんだぁ?小さ過ぎて見えなかったよぉ」
「あら、干され過ぎて存在が霞んだと思ってたら、目も霞んでたんだ。
それともストレスで変な葉っぱでも吸ってラリってんの?
とうとう墜ちる所まで墜ちたの?」
あ〜無視だ無視、ああ言えばこう言う……相手にしてたらキリが無いし。
互いにソッポを向いて、ドーナツを口に運ぶ。
「ねぇ…ばかちー」
うん美味しい、ドーナツはやっぱりシンプルなのが一番ね。妙にゴテゴテしたのは重いしカロリー高いし。
「……私、竜児の事が好き」
突然の告白に私の動きが止まる、サラッと軽く……この娘は言った『竜児が好き』だと。
「……そう」
一言で簡潔に返して、私は迷う。
昨日の今日で……あっさり認めた、隠す事を止めたから。
「でも竜児には言わない、このまま秘密にしとくわ」
彼女を見ると、昨日の生気の無さは嘘みたいに晴れていた。
「…大河はそれで良いの?」
私は聞き返す、でも……言った後で問い掛けるのは無意味だと悟る。
その顔は柔らかく微笑んでいるから…。
「良いの。私は強くなりたい、一人立ちしたいもん。竜児とみのりんに見せてやりたいもん。
でね昨日、ちょっとだけばかちーが羨ましかった。
堂々と竜児に好きだって伝えれて、竜児に好きだって言われてて……。
竜児が言ってたのって結局は惚気だけど…うん。なんかスッキリした」
昨日、感じた違和感……ほら大河が二人分のスリッパを用意したじゃん。
他人への気遣い…それは社会で重要な事。
彼女は『一人立ち』するために努力してるんだ。
そう考えたら合点がいく。
半欠けになったシナモンドーナツを口に放り込み、大河は続ける。
「へほ、ひゅーひよりふきひなれふひほをひふへるはへ、ふひへひはひ」
「何言ってるかわかんねぇ〜から、食べるか喋るか、どっちかにしろっつーの、あ〜あ…きったねぇ。それじゃあ一人立ちなんて万年は先だね」
顎に肘を付いて、そう言うと大河が私をキッと睨んでモグモグと口を動かす。
彼女が言った内容を…しっかりと私は聞いた。
『でも、竜児より好きな人を見付けるまで、好きでいたい』
そう…ちゃんと届いた。
「私は竜児が大切、みのりんも大切…だからお節介は止める。
竜児が決める事だから、もう邪魔はしない。
ズキズキ痛いけど…竜児を好きな事に自信を持つ、そして見付けるの、あいつより私を見てくれる"たった一人"を…。
それに…良く考えたらアレよ、犬は犬同士でくっつくのが自然の摂理だしね?
駄犬ごときが、私とくっつくなんておこがましいにも程があるわ」
ふんっ!と鼻で笑って強がる大河……可愛くねぇ。
でも竜児の言った通りだったよ、まずは相手を信じてみる事、端から疑って掛かったらこじれるだけなんだ。
そして、気持ちを飾らずに伝えれば解り合える。そう示してくれた。
彼女は…誰よりも強い虎。
誰も寄せ付けない気高い矜持を持った虎なのだ。
だから見付かるよ…絶対に。竜より相応しい相手が、きっと見付けれる。
誰かに頼らなくても。
「大河」
私は彼女に呼び掛ける。頑張る姿を見てるのは…実はまだ居るんだと伝える為に。
「頑張りな」
頭を優しく撫でて紡ぐ。それを嘲笑って憎まれ口を叩くと思ってたら……素直に、そして喜びを隠さずに返してくれた。
「うん!」
と…。
続く
今回は以上です。
次回からは暫く竜児視点。
では
ノシ
亜美ちゃん萌えSSなのに大河に萌えてしまうとは。
>>680超GJ
大河救われたね。
682 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 00:07:28 ID:XLJZsFKT
GJ!スバラシイ!
かなりおもしろかったです!!!
[言霊(2)]
互いの身体に触れ、口付けし、重なる事。
それは私達の『おまじない』なのだ。
私は彼への想いを…、そして互いに慈しみ、守り合えたら…。
そんな願いを乗せて契っていく。
高須君は…私に対してどんな願いを乗せてくれているのだろう。
それは本人にしか分からないし、かと言ってわざわざ聞こうとも思わない。
「ん…まだ足りないよ…もう一回」
それは…彼が優しく唇で啄み、微かに熱を伝え、目一杯の愛情を乗せてくれていると感じているから。
たった数秒の触れ合い、重ねた唇を離し…額を当てて鼻先で戯れながら紡ぐ。
熱を帯びて熱くほてっていく顔……ふふっ、二人して同じじゃん。
ほぼ零距離でジッと見詰め合い、顔に当たる鼻息すら愛しいの。
「ん、は…ふ。…んくっ…、ちゅ」
墜ちた気持ちを翔ばしてくれる『おまじない』の効果を私は味わう。
唇が再び触れ、瞳を閉じて…優しく舌を忍ばせてくる高須君に絆されていく。
「あ…、ちゅっ!ちゅっ…、んん…、ふあっ!」
肩から背中に滑っていく手がグッと私を引き寄せ、強く抱かれ……私は蕩ける。
嬉しくて、奥へ誘い込んだ舌を絡ませ、強く吸う。何度も何度も……。
5 : ◆KARsW3gC4M :2009/06/29(月) 23:30:06 ID:/xuNx48I
「ちゅくっ!あ…、は、う…。ちゅるっ」
右手で背中を支え、左手は後頭部へ…。
彼に強く抱かれた私は目一杯甘え、熱を甘受し…同時に伝える。
覆い被さる様に抱いてくれる高須君に…おまじないをかけるの。
忘れてしまいたい傷心でも忘れてはいけない事…それを受け入れる勇気が持てる様に…。
大河の言う通り、実乃梨ちゃんは……彼が好きなんだ。絶対に。
だけど…すれ違って…ボタンを掛け違えて…凄く痛かったよね?お互いにさ…。
辛い事もあった。…だけど、それ以上に楽しい事も嬉しい事も沢山あったよね?
もし私達の気持ちが本当に繋がっても……それだけは忘れて欲しくないな。
初恋は甘くて、淡くて…切なくて。一度だけしか体験出来ないもん。
妬いちゃうよ…、この先、亜美ちゃんがどんなに頑張っても高須君の『初恋の想い出』だけは独占出来ないから。
な〜んて…嘘。本気で信じたわけ?
ごめん、それも嘘。
…………大切な『想い出』なんだから忘れちゃ駄目だよ?
「ちゅっっ…、は…。ふふっ♪亜美ちゃんからの"おまじない"は、ちゃんと届いた?」
私は重ねた唇を離し、額同士をグッと寄せて上目遣いで聞いてみる。
6 : ◆KARsW3gC4M :2009/06/29(月) 23:31:13 ID:/xuNx48I
「…おぅ、いっぱい届いたぞ」
彼がそう言って、私に覆い被さったまま、畳の上に押し倒す。
「そっか。…うん、なら良いや、それより高須君は亜美ちゃんに、どんなおまじないをしてくれたの?」
私は彼の後頭部を抱え込み、首を傾げて聞いてみる。
「そりゃあ秘密だろ、お前だって教えてくれないだろう?
……てか恥かしくて言えるか」
言葉通り、恥かしそうに視線を反らした彼の顔を動かし、自分と視線を合わせて私は問う。
「良いじゃん、教えてよ?ねぇ…ねぇったら」
でも彼は私の視線から逃れる。その反応が面白くて、ニヤニヤと笑いながら私は追う。
後頭部をしっかり抱き、腰に両足を巻き付かせて拘束しながら。
右に視線を反らしたら左の方へ顔を向けさせ、左なら逆……。彼が根負けするまで。
まるで飼い主に『遊べ!』とせがむ犬の様に…。
「……一回しか言わねぇし、聞き返すな。
それで良ければ教えても良いぞ」
そんなやり取りを繰り返す事、五分程…抵抗を彼は諦めた。
私は頷きもしないし、返事もしない。
ただ期待に満ちた視線を送って返す。
それだけで事は足りるだろう。
klfvotguyhtgyjtgyhkygujlodyuitlhplppflgh;df;.;dpp.dg;p;zg@plps;dfg
;g.@d;rp;,.p;.p;f;;pd;f;e.;s,d;fp;dfpp;gsel;d,pxdp;dc;.
gdp;rplp;,sklfmsotsd@:f;.z:sdf.:zs.;dfp,lfpz@lf@,
>>680 GJ
俺も大河にキュンキュンきちまったぜww
>>652 まさかの原作Afterだったのか・・・
油断した、泣いちまった
続きwktk
乙
期待ksk
亜美モノも実乃梨モノも奈々子その他も
竜児がむかつく
大河を幸せにしない竜児に価値なんかねえ
>>690 キチガイなんだから触んなって…余計なことすんなよ。
つーか荒らしのクズの相手をするのも又、クズ野郎なわけで。
よく覚えとけ。
餌を与えないで下さい by スレ一同
ちょっとケチがついたくらいでキレるしょぼい書き手は、vipでSSスレ立てて揉まれて来いよ
あそこは煽り耐性つくぜー
体験談でした
このスレ自体がもう一部の書き手除いて終わってる
保管庫直投下でもいいかもしれないね
現在、497KB
そろそろ次スレを用意したほうがいいかもだ
保管庫といえば
何らかの形で管理人への連絡フォーム(拍手でもいい)が欲しいところ
そうすれば余計なレスしなくてすむから
以下指摘
1皿目 夏休みの境界線 同じ内容が2回繰り返されてる
19皿目表記がない
奈々子 そうめん の削除
>>691 キチガイなんだから触んなって…余計なことすんなよ。
つーか荒らしのクズの相手をするのも又、クズ野郎なわけで。
よく覚えとけ。
700 :
ニセドラ!7:
実乃梨の全裸は拝めなかったが、なんのなんのっ、今竜児(犬)は至福の刻を過ごしていた。
「うっしゃらららっ!!うっしゃらららっ!いやー泡立つねえ。どう?ニセドラ!」
最高です…初恋の相手に、お風呂場で洗ってもらえるなんて、これ以上、何があるというのか。
「せっけん流すよ〜、放水開始っ!うりゃああああっ」
竜児(犬)は想像した。ちょっと不謹慎な事だ。もし実乃梨と付き合っていたら…
大河と付き合ってなかったら…こんな風に一緒に…おおうっ!熱ちぃ!!
「ごっめーんっ!熱湯出しちまったよ。今日は暑かったし、水の方がいっか。なっ、ニセドラっ!」
水でキレイに濯いでもらった竜児(犬)は、無意識にブルブルっと水切りする。飛沫が飛ぶ。
「つおおおおっ!ペッペッ!ニセドラ!おぬし、いつの間に、オーロラエクスキューションを会得したのだ…」
なんてなっと、実乃梨は、犬の自分にでも、ずっと話かけてくれている。ずっと気を使ってくれている。
すっごくかわいくて、明るくって。一緒にいて楽しい…。俺、やっぱり…櫛枝の事…
「ではでは、あっしも体を洗おうかねぇ」
おもむろに実乃梨は、ビキニに手をかけ、脱ぎだした。
おうっ!犬になっても、それぐらいは、言えるようだ。焦った竜児(犬)は、前脚で目を覆う。
「なんだいニセドラ。照れてるのかい?えへっ、憂いやつじゃ、近うよれいっ」
近うよれる訳ない。前脚が塞がっている竜児(犬) は、ぴょんぴょん飛び跳ね、…またスッ転んだ。
そんなアホ犬に、実乃梨は、後ろから抱きしめる。もちろん、全裸で。
「よしよし…洗ってくるから待ってて。 お・す・わ・り。 ね?」
ピタッと、動きを停めた竜児(犬)。背中に感じた、想像より大きく、柔らかい温もり。
このまま死んじゃうかもしれない。心臓がバクバクする。鳥肌が起つ。犬だけど。
そんな気も知らず、♪抱っきしめた〜♪こっころのコッスモ〜♪実乃梨は唄い出す。
竜児(犬)は、精一杯の理性で我慢していた。抱きたい。そう思っているのだ。しかし…苦悩する。
でも…実乃梨が全裸で至近距離にいる。こんな状況で、自制心を保てる男、オスがいるだろうか?
イネーだろっ!無理無理!絶対イネー!
意を決して、竜児(犬) は、実乃梨に襲い掛かるっ!わお〜〜ん!
ガンッ!
いつの間にか洗い終えていた実乃梨は、湯舟に浸かりながら壁に激突するエロ犬を見た。
***
気絶していた竜児(犬)は、いつの間にか実乃梨の部屋に運ばれていた。
「気がついたかい?ニセドラ。もぅ!お風呂キライなの?心配したぜよ〜」
超アップで、実乃梨に話し掛けられ、ビクッとする。屈託のない笑顔に罪悪感でいっぱいになる。
「ニセドラ…もしかして、わたしの事キライなのかな?」
竜児(犬)は、ブルブルと全力で首を横に振る。ヨダレが出るくらい全力で否定。
「汚ねェ!…ってお前…人の言葉、解るの?」
今度はコクコクっと首を縦に振る。ヨダレは…出ない。
「凄っげー!凄げーよ、ニセドラ!もしかしてミュータント?XーMEN?ウルヴァリン?」
言葉を理解する犬なんて、普通は拒絶反応を起こすだろうに、実乃梨はすんなり受け入れた。
そういうトコロも、竜児(犬)は好きなんだ。三白眼なんかもそうだった。
「じゃあさ…。わたしの事。…好き?」
急に真剣な眼差しで、ゆっくりと問いかける実乃梨。
竜児(犬)は、目をそらさずに、ゆっくりと肯定した。