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名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 23:35:45 ID:6TKtA1dN
学園ぬるぽ
さすがに5kbには納まらないのでこちらに。
今回エロ分は入っていません。
それと分ける場所にこだわった結果、レス数が多いです。あしからず。
では、楽しんでいただければ幸いです。
月日は過ぎ、フェルパーがロストしてから一年が経過していた。クラッズは変わらず、彼女達と空への門に駐留している。
が、最近クラッズは、暇があると一人でどこかに出かけている。この時も、朝食を終えた仲間が外に出ても、クラッズはいなかった。
「おい、クラッズはどこに行ったんだ?部屋にもいないぞ?」
「うーん、勝手にどこか行くことはないと思うけど……エルフ、あなたは知らない?」
「わたくしも、わかりませんわ。……どこか行くなら、わたくしにも声をかけてくださればいいのに…」
その時、遥か遠方の空を、一匹の飛竜が飛んでくるのが見えた。それは見る間に近づき、地面すれすれの飛行になったと思った瞬間、
飛竜の速度をものともせず、背中から小さな影が飛び出した。
その影は地面に落ちると、凄まじい音と土煙を立てて滑った。そしてちょうど彼女達の前で止まると、ふうっと息をつく。
「ご、ごめんごめん!ちょっと遅れちゃった!」
「派手な登場だねー。エルフにかっこいいとこでも見せたかった?」
フェアリーが笑いながら言うと、クラッズは苦笑いを浮かべた。
「い、いや、そういうわけじゃないんだけどね」
「でも、何してたんですか?飛竜に乗ってきたってことは、どっか別の中継地点にいたんですよね?」
「あ、あー、それはその、野暮用でさ。ちょっと個人的な用事」
「ふーん、まあいいけど。でも、せめて私には、一言言ってもらいたいわ」
「ごめんね。次からはちゃんと言うよ」
何をしているのか、気になるところではある。しかし彼の笑顔は、そんな疑問など、どうでもよく思わせるような魔力があった。
「それじゃ、今日はアイザ地下道にでも行ってみましょうか」
「アイザか。まあ、それもたまにはいいかもな」
「去年の今頃なら、アイザなんて行くのも恐ろしいところでしたのに。月日が経つのは、早いものですわ」
既に一行は、特級のカリキュラムすら楽に合格するであろう強さにまで成長していた。もちろん、それはクラッズの功績も大きい。
そんな彼女達を見つめ、クラッズは小さく息をつく。そこに、後ろから声がかかった。
「おう、今から探索か?」
見れば、そこには以前蘇生の果実をやったドワーフがいた。もちろん、エルフも一緒にいる。
「うん、そうだよ。君達は?」
「あたい達は、一回パルタクス帰る予定だよ。だから、挨拶に行こうと思ったら、もう出たって言うからな」
助けてもらったという恩もあるのだろうが、この二人にもクラッズは気に入られていた。
「あ、帰るの?これから?」
「ああ、そのつもりらしいな」
「じゃ、お願いがあるんだけど、いいかな?」
クラッズが言うと、ドワーフは嬉しそうに目を輝かせた。
「お、なんだ!?何でも言ってくれ!」
「う〜ん、いい顔だね。やっぱり君は、笑った顔が一番いい」
エルフが言うと、ドワーフは彼をうんざりした目で睨んだ。
「うるせえ、黙れ。で、何すればいいんだ?」
「えっとね、これ」
クラッズは鞄の中から、丁寧に畳んだ手紙を取り出した。
「ボクの仲間……って、わかる?そのセレスティアの方に渡してほしいんだけど〜…」
その時、クラッズの脳裏に、セレスティアと、このドワーフが大喧嘩する姿が浮かんだ。
「……そっちのエルフ君に頼んでもいい?」
「え〜、どうしてあたいじゃダメなんだよ!?」
「いや、あの、性格がさ…」
「何?僕に、その子へ手紙を渡してくれって?ああ、いいとも。大歓迎だ。おまけに、確かもう一人はドワーフだったね?それは僕が
適任だ。間違いない」
「……おい、ふざけんな!やっぱりあたいが渡す!お前は引っ込んでろ!」
重大な人選ミスを犯したような気がして、クラッズは大きな溜め息をついた。しかし、頼める相手はこの二人ぐらいしかいない。
「あの、じゃあ、二人で渡してくれるかな。それなら多分大丈夫」
「ん、お前がそう言うなら、それでいいか」
「そうだね。それじゃ、僕達はこれで。また、機会があったら会おう」
「うん、またね」
二人に手を振り、クラッズは仲間の元へ戻る。そして和気藹々と話をしながら、地下道へと入っていく。
一年を共に過ごしたパーティ。もう、彼女達も立派な仲間といえる。しかし、彼女達とは、やはり別れる運命を背負っている。
その、別れをどうするか。それに対する準備も、クラッズは誰にも言わず、少しずつ進め始めていた。
時間はやや遡り、それより数週間前のこと。フェアリーはほぼ一年ぶりに、パルタクスのヒューマンに出会った。
「あれ、あんたこんなところで何してんの?」
「おお、お前か!ひっさしぶりだなー!元気でやってるみたいじゃねえか」
「まあね。元気じゃないとやってらんないわ」
フェアリーはパーティから離れて、久しぶりに一人の時間を満喫するため、空への門を散歩していた。そこへ、地下道探索に来ていた
ヒューマンが鉢合わせしたのだ。
どうでもいい話をして、また別れようとしたとき、ヒューマンが思い出したように言った。
「あ、そうそう。お前、天使の涙ほしいとか言ってたよな」
「ああ、言ってたね。もしかして、手に入った?」
「ああ。二つ手に入った」
それを聞くと、フェアリーの表情が一変した。
「それ、ほんと?」
「嘘なんか言ってどうする。けど、今は手元にない。パルタクスの部屋に置いてあるんだ」
「あんた、これから用事は?」
「いや、今アイザ行って来たばっかで、特には…」
「じゃ、今から行くよ。それ、すぐほしい」
「え、おいおい待てよ!今からって、帰りは…」
「飛竜召喚カード持ってる。行くよ」
フェアリーは強引にヒューマンの手を引き、地下道の魔法球を使ってパルタクスへと戻った。ヒューマンは部屋に戻ると、取っておいた
二つの天使の涙を見せる。
「……確かに、天使の涙だね」
「だろ。で、確か高く買うっつってたな?どうだ、この二つで10万とかよ」
ヒューマンが言うと、フェアリーは無表情に彼の目を見つめた。
「はっはっは、いや冗談だよ。でも高くって言うなら…」
言いかけたヒューマンの目の前に、ドサッと大金が積まれた。どう見ても、10万など軽く超えている。
「……え…?」
「100万ある。これで満足?」
「え…?は…?」
「不満なら、もう100万追加するけど?」
「い、いやいやいやいや、不満なわけねえだろ。でも、その、出しすぎじゃ…?」
「どこが。あたしにとっては、こんなの惜しくもない。あと一つあったら、もう一桁増やしたところだけどね」
言いながら、フェアリーは天使の涙を道具袋に大事そうにしまいこんだ。
「はあ……そうですかい」
「じゃ、帰るよ。あんただって、あんまり長居は出来ないでしょ?」
「……まあ」
突然のことに、ヒューマンは状況が把握しきれなかった。あとはもう機械的に、部屋を出て、地下道入り口まで歩き、フェアリーの
呼び出した飛竜に乗り、空への門に戻る。
「ありがとね。あんたのおかげで、だいぶ助かった」
「ああ、いや、はあ」
「これ、おまけ」
言うが早いか、フェアリーはヒューマンの頬にチュッとキスをした。
「えっ……ちょっ…!?」
「ほんとは、もっとしてやりたいけどね。時間もないし、よく考えりゃそこまでする義理もないし。ま、とにかく、助かったよ」
呆然とするヒューマンを残し、フェアリーはさっさと自分の部屋に戻った。そして紙切れに素早く何かを書き込むと、クラッズの部屋の
前に行き、ドアの下から、それをスッと投げ入れた。
「あれ、何やってんの?誰か知り合いでもいんの?」
そこに、現在のパーティのクラッズが現れた。フェアリーはまったく無表情に、彼を睨みつける。
「あたしが何してようと、あんたに関係ないでしょ。で、何か用?」
「はいはい、お姫様は気難しいね。そろそろ探索に行こうって話なんだよ。だからお迎えに来たってわけ」
「……ふん、まあいいわ。じゃ、さっさと行こうか」
いつもなら、嫌味や皮肉の一つも言うはずのフェアリーが、あまりに素直に応じたため、クラッズは少し呆気に取られた。
「……何か、いいことでもあったの?」
「うるさいな、あんたに関係ないでしょ。それとも何?女に関することなら、何でも気になるわけ?」
「………」
やっぱりいつもの彼女だと、クラッズは思い直した。そして呆れたように首を振りながら、元来た方へ戻っていく。
―――あんたらとの付き合いも、もうすぐ終わりだしね。
クラッズの後ろ姿を見ながら、フェアリーは心の中で呟き、そして密かに、ニヤリと邪な笑みを浮かべていた。
パルタクスの寮の廊下で、セレスティアとドワーフの二人組、そしてエルフとドワーフの二人組が睨み合っている。
「いやあ、さすがにきれいな人だね。それに、そっちの子もさらさらの毛で、ほんと最高の…」
「黙ってろっつっただろ、てめえはぁ!!」
隣のドワーフが、エルフに見事なアッパーカットを決めた。そこに、セレスティアが口を開く。
「いくら何でも、殴るのはひどいじゃないですか!そんなことしちゃいけませんよ!」
「あん、何だよ?あたいが何しようと、お前に関係ねーだろ?余計な口出すんじゃねえよ」
「だからって、そんなの見過ごせませんよ!第一…!」
「あ〜、セレスティア。あんたはちょっと、下がって」
セレスティアの隣にいたドワーフが、慌てて二人の間に割り込んだ。
「おう。お前は、こいつとは違うみてえだな」
「はは、あんたみたいな相手は慣れてるしね。それで、私達に何か…」
「いや〜、本当にたまらないな。こう、やっぱり大きい胸もいいけど、いかにもドワーフらしい筋肉質な胸も、素晴らしい魅力があるね」
二人のドワーフは、うんざりした目でおかしなエルフを睨んだ。
「……悪い、一発殴っていいか?」
「爆裂拳か?あたいも手伝うぞ」
「ま、待ってくださいってば!ダメですよ!死んじゃいます!」
今度はセレスティアが、慌てて間に割り込んだ。
「ああ、君は優しいね。やっぱりセレスティアという種族はこうでなくっちゃいけない。それに顔も翼も美しい。最高だ」
「あ、はあ……ありがとうございます」
エルフを除く三人は、これは早く用事を終わらせた方がいいかもしれないと思い始めていた。
「あの、それで、わたくし達に、何かご用ですか?」
「え、ああ。君の仲間から、預かり物があってね」
「あー、そうだそうだ。これ、お前にってよ」
ドワーフからエルフへ、エルフからセレスティアへと、手紙が渡される。それを見たセレスティアの顔に、驚きの色が広がる。
「これ…!?」
「内容までは知らないけど、これで頼まれたことは済んだね」
「じゃ、さっさと帰るぞ」
「いやいや、そんなに焦ることもないだろう?こんなにきれいな子と知り合えたのに、もう少し話をして…」
顔面目掛けて飛んできた拳を、エルフは危ういところでかわした。
「てめえ、避けるな!」
「いやいや、さすがにそれはご遠慮願うよ。何だい、もしかしてやきもちかい?」
「ばっ、馬鹿言うな!どうしてあたいがそんな…!」
「ああ、安心してくれ。女の子との縁は大切にするけど、それは風がもたらしたいたずらさ。永遠の春風を吹かせてくれる、
かけがえのない存在は、君一人さ」
エルフが言うと、ドワーフの尻尾が注意しないとわからないぐらいに膨らんだ。
一瞬の間を置いて、彼女のボディブローがエルフの鳩尾にめり込んだ。
「おぐぁっ…!」
「ふん!じゃ、その……用事は終わったし、またな!」
腹を押さえてうずくまるエルフを担ぎ、彼女は去っていった。そんな二人を、セレスティアとドワーフは呆気に取られたように見送った。
「……嵐が去ったな」
「……ええ」
「あいつ、なんでエルフなんか……わっかんないなあ」
「あの人、結局殴られるんですね」
「照れ隠しで殴られるのも、大変だ」
ともかくも、セレスティアは渡された手紙の封を切り、サッと目を通した。ドワーフも見ようとするが、身長が足りずに文面を覗けない。
「おーい、セレスティア。それ、仲間からって言ってたけど、誰から?あと、なんて書いてある?」
しばらくの間、セレスティアは手紙を眺めていた。やがて、ゆっくりと畳み直すと、いつもの笑顔でドワーフを見る。
「クラッズさんからで、元気にやってるみたいですよ。今は、空への門にいるそうです」
「へ〜、そうなのか。そっかそっか、元気でやってるんだな。なんか、安心したよ」
別に皮肉ではなく、ドワーフは純粋に仲間の無事を喜んでいるようだった。そんな彼女を見て、少しだけセレスティアの胸が痛む。
嘘ではない。実際、手紙にはそういった内容も書いてあった。だが、その後に続けられた部分は、彼女にはまだ言えない。
―――もうすぐ、会えるかもしれない……全部、取り戻せるかもしれない…。
本当なら、もう教えてやりたかった。仲間であれば、全て共有したいという強い気持ちもある。
だが、仲間だからこそ、まだ言えない。これまで、彼女には希望の可能性すら隠し続けた。今更それを伝えたところで、それは自分一人が
何もしていなかったと、彼女を苦しませるだけだ。
それを伝えられるのは、全てが取り戻せるようになったとき。それは近いうち、必ず訪れるはずなのだ。
―――ドワーフさん。あと少しだけ……知らないままでいてください…。
祈るような気持ちで、同時に謝るような気持ちで、彼女はただただ、そう思っていた。
その日、フェアリーはハイント地下道を探索していた。もちろん、仲間の男達は手に入るアイテムよりも、女であるモンスターを探す方が
主な目的である。そのため、度々哀れな犠牲者のために探索を中断しつつも、一行は少しずつ奥へと進んでいく。
モンスターを襲うだけあって、どの男も実力はずば抜けている。おまけに、その装備はフェアリーが練成してさらに強化してあり、
今ではフェアリーですら、苦戦は免れないというほどである。
フェアリーも人のことを言えた義理ではないが、男達は性格が悪いというものを通り越して、極悪人の集まりである。それが大人しく
徒党を組むわけは、利害関係という希薄で強靭な理由に他ならない。本来ならフェアリーも襲われても不思議はないが、彼女が並外れた
力を持っていたため、利害関係に力関係が加わり、無事でいるだけの話である。
つまり、まず利害関係がなくなれば、男達はフェアリーを仲間と見なす必要はない。また、力も単体では敵わないものの、さすがに
五人も相手にしては、いくらフェアリーでも、もはや勝てない。彼女の命は、パーティを組んでいることによって、辛うじて
保障されているようなものなのだ。もしパーティを抜ければ、フェアリーは散々に弄ばれた挙句、無残な死体と成り果てることは明白だ。
そもそもが、『獲物』である女に押さえつけられてきた一行である。恐らく死ぬことすら、容易には許されないだろう。
それらを全てわかった上で、フェアリーは言った。
「それじゃ、あたしはここで抜けるわ」
モンスターを惨殺し、見つけた宝箱。その中身を見た瞬間、フェアリーはそう言っていた。
「は?今、なんて言った?」
「探しもんが見つかったの。もうこれ以上、あんたらと一緒にいる理由はないわ」
天使の涙をしっかりと持ち、フェアリーは言い放った。
「へえ。じゃ、もうここで仲間じゃなくなるわけだ?」
エルフが穏やかな笑みを湛えて言う。その笑みの隣で、鞘から引き抜かれたミスリルソードがぎらりと光る。
「羽虫が。じゃあもう、てめえを生かしておく道理もねえな」
「さすが、お姫様は気まぐれだね。じゃ、その前に、思いっきり楽しませてもらうよ、あはは!」
バハムーンが、クラッズが、次々に戦闘の構えを取る。唯一、ヒューマンのみはあまり乗り気でないようだったが、それでもやはり
戦闘の準備を始めていた。
が、フェアリーはまったく動じず、男達を見つめている。そして、彼等が目の前まで迫った瞬間、口を開いた。
「ま、そう来ると思ったけどさ、ちょっと待ってよ。別にただで抜けるとは言ってないでしょ」
「あん?じゃあどうするってんだ?」
「世話にはなってるからね。置き土産ぐらい渡すっての」
落ち着き払って言うと、フェアリーは道具袋の中から、五つの皮袋を取り出した。そして、その一つをクラッズに放る。
「ほら、中身見てみなよ。気に入ると思うけどね?」
「ん?何が入って……おぉ…」
中には、凄まじい額の金が詰まっていた。およそ、見たこともないほどの大金である。
「宝箱の中身、今のあたしにはそれぐらいの価値があんの。もちろん、あんただけじゃなくって、あんたら全員分あるよ」
フェアリーは次々に、皮袋を放り投げる。それぞれ中身を改め、感嘆の声を漏らしたり、ヒュウッと口笛を吹いたりしている。
「一人頭、1000万。そんぐらいありゃ、相当遊んで暮らせるし、女にも困らないと思うけどね?」
「いや、そりゃ確かに……しかし、すげえなこりゃ…」
「ふ〜ん、悪くないな」
現実感がないほどの金額に、男達はすっかり気勢を殺がれてしまった。もはやフェアリーなど、どうでもいい存在になっている。
「ま、迷惑料とでも思ってよ。あたしはここで帰るから。んじゃね」
金をもらった上で殺す、という選択肢が出ないうちに、フェアリーは天使の涙を道具袋にしまうと、素早くその場を後にした。
残された男達は、まだ中身を見たり、実際に中の金を手にとって改めたりしている。
「贋金ってことはないね。ほんとに1000万だ」
「こんぐらいありゃ、退学したって不自由ねえんじゃねえか?」
その時、中身を改めていたヒューマンが、慌てたように中身を皮袋へ戻した。それに、クラッズが目敏く気付く。
「ん、ヒューマンどうしたの?何か慌ててたみたいだけど?」
「い、いや、何でもねえ」
明らかに、態度がおかしい。クラッズは一瞬納得したフリをし、ヒューマンが警戒を解いた瞬間に、素早く皮袋を奪った。
「あ、てめえ!返せ!」
「……ん!?ちょっと待ってよ、これ中身多いよ!」
「え?」
「は?マジかよ?」
取り返そうとしたヒューマンを、ディアボロスとバハムーンが素早く押さえつける。その間にクラッズが中身を見ると、彼の皮袋だけ、
中身が1300万入っていた。
「300万も多いんだけど、どういうこと?」
「ああ、フェアリーだから、じゃないかな。あの種族は、ヒューマンが好きだから」
「で、どうするんだよそれ」
「返せよ!俺がもらったもんなんだから、てめえらには関係ねえだろ!?」
だが、そんなヒューマンの言葉など、誰一人納得するわけがない。かといって、5人で分ければ、たかだか60万である。もちろん、
それでも十分な大金ではあるが、この非現実的なまでの金額の中では、それはささやかな金額にしか見えなかった。
「だけどねえ、君一人だけ多くもらうってのは、納得いかないよね」
「うるせえな!そんなのてめえらには関係……ぐっ!?」
それはまったく突然だった。ヒューマンの胸に、ミスリルソードが突き刺さった。あまりに突然すぎて、誰もが崩れ落ちるヒューマンを
見つめることしか出来なかった。
「なっ!?」
「……これが一番、早いだろ?」
それを投げたエルフは、柔らかい笑みを浮かべて言った。
「そうだよ、これが一番いいじゃないか。5000万もあれば、それこそ一生遊んでたって暮らせる。それを、わざわざ君達と
分け合うなんて……もったいない」
言いながら、エルフは弓を取り出した。それを見て、バハムーンとディアボロスはブレスを吐こうと構える。その瞬間。
「がはっ!?……あ、が…!」
エルフの腹から、小さな手が突き出ていた。いつの間にか後ろに回りこんだクラッズが、貫き手を放ったのだ。
「あはは、それなら話は早いよね。確かに、これだけあれば一生遊べるし、女にも不自由しないし」
言いながら、クラッズは半分ほど腕を引き抜き、そして体内から心臓目掛けて腕を突き入れた。エルフの体が、ガクンと震える。
「そうだよね、別にこれだけの金があれば、君達なんかと付き合う義理もない」
クラッズが勢いよく腕を引き抜くと、エルフは地面に崩れ落ちた。血塗れの腕を舐め、クラッズはにやりと笑った。
「じゃあ、始めようか?みんな、殺してあげるよ」
「ふん……舐めるな、下等な生き物が!」
「お前達になんか、渡せるかよ」
ただの銭金の問題。だが、それは彼等の関係を崩すには、十分すぎるものだった。これだけの大金は、彼等の利害関係など、容易く
壊せるほどのものだったのだ。
金を巡って、仲間だった者同士が殺しあう、醜い争いが始まった。
背中に刀を突きたて、ようやくバハムーンが動きを止めたとき、クラッズはもう立っているのがやっとというほどに傷ついていた。
「はぁっ……はぁっ……さすが、体力馬鹿だよ……はぁっ……こんなに、しぶといなんてね…!」
胸にミスリルソードを突きたてられたヒューマン。腹に穴の空いたエルフ。首から血を流すディアボロス。そして、今仕留めたばかりの
バハムーン。それらを見回して、クラッズは弱々しくも、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ふんっ……勝てないくせに、無理するから…!」
傷ついた体を引きずり、クラッズは他の者の皮袋を集め始める。その時、ディアボロスが僅かに目を開け、クラッズを見つめた。
もはや、その目にほとんど光はない。だが、ディアボロスは残った力を振り絞り、口の中で詠唱を始める。
おかしな気配にクラッズが気付いた瞬間。ディアボロスの詠唱が終わり、魔法が発動した。
「……っ…!?げぁっ……がはぁっ!!」
途端に、クラッズはその場に膝をつき、大量の血を吐いた。猛毒が体を回り、呼吸が乱れる。
「ケケケ…!ざまぁ……見やがれ…!」
「てめっ……うあああぁぁぁ!!!」
狂ったような叫びを上げ、クラッズはディアボロスに刀を投げつけた。それは狙い違わず首を刺し貫いたが、既にディアボロスは
事切れていた。
「ゲホッ!がはっ……毒なんて……ふざ……けるなよぉ…!」
もはや、魔力などまったく残っておらず、解毒剤も持っていない。そんな状況で、ここまで体力を消耗しきった状態で毒を受けては、
行く末など決まっている。
「い……いや、だ……せっかく……殺し、た、の……に……こん、な……僕、が……」
誰にともなく呟き、クラッズは倒れた。その体が何度かビクビクと痙攣し、やがてその動きを止める。
生きている者の気配のなくなった地下道。しばらくして、そこに小さな羽音が響いた。
「……やっぱりね。あんたらなら、ぜ〜ったいやってくれると思ったよ」
未だ皮袋を握るクラッズの死体を蹴り飛ばし、フェアリーは金の入った袋を五つとも回収する。
「別に、嘘じゃないよ。あいつが戻ってくるなら、あたしはこれが一億だって惜しくない。……でもね」
転がる死体を見つめ、フェアリーはニヤリと笑った。
「あんたらにやる金なんて、1ゴールドだってありゃしねえってのよ」
最後に唾を吐き捨て、フェアリーは帰還札を使おうとした。が、そこでふと手を止める。
「……そうだ。あんたらを生き返らせる物好きなんていないと思うけどさ、知らない奴が生き返らせてもなんだし」
フェアリーはそっと、道具袋に手を突っ込む。
「不安の元は、しっかり潰しておかないとねえ?」
ナパームを両手いっぱいに持ち、フェアリーは笑った。それはまさしく、悪魔と呼ぶに相応しい顔だった。
アイザ地下道を回り、目的の物が手に入らないままに、クラッズ達は地下道の出口に向かう。半年前以来、天使の涙もそれ以外も、
まったく手に入る気配すらない。それ以外の物は色々と出ており、彼女達の装備はずいぶんと良くなっている。が、クラッズは
一つだけ、妙に気になっていることがあった。
「ねえ、フェルパー」
「ん?何?」
「あのさ、今使ってるのって、鬼丸国亡はいいけど、それ白刀秋水だよねえ?それって、あんまり強くないんじゃない?」
クラッズが言うと、フェルパーの表情が僅かに硬くなった。また、他の仲間達の表情も、僅かに変わる。
「あ、もしかして、あまり触れない方が良かったかな…?」
「……いいのよ。でも、そうね。あまり口に出したい事でもないわね。言うなれば、これは一つの証……ってところかしら」
そう言って刀を見つめるフェルパーの顔は、少し悲しげで、それ以上尋ねることは憚られた。
「そうなんだ。せっかく宗血左文字が出たのに使わないから、ちょっと気になっただけでさ。あまり気にしないで」
そんなことを話しながら、一行はゲートを潜った。外はちょうど、夕日が雲の向こうへ落ちようとしていた。
赤い光に照らされ、誰かが立っているのが見えた。目が明るさに慣れ始めると、その姿が少しずつ鮮明に見え始める。
そして、それが誰だかわかった瞬間、クラッズは雷に打たれたように、その場に立ち竦んだ。
「……え…?」
「何よ、その態度。久しぶりなのに、嬉しくなさそうじゃん。そこの誰かと、浮気でもしてた?」
甲高い声。皮肉に満ちた言葉。間違うはずがない。そんな人物を、クラッズは一人しか知らない。
が、クラッズが声をかけようとした瞬間、真っ先に小さなフェアリーが口を開いた。
「あんた、いきなり何なのよー!?普通は挨拶ぐらいするもんでしょー!?」
それに、彼女は嘲笑を浮かべて答える。
「あん?何よ、このチビ。あんたこそ、あたしに挨拶もなしで、人のこと言えんの?」
「うるっさいなー、あんただってチビじゃないのー!」
「同種族でも、そこまでのチビは初めて見たわ。ほんと、虫みたいね」
同種族間の相性が最悪で、性格も正反対の二人は、初対面だというのに殺気を放ち始めた。そこに、セレスティアが割って入る。
「何だか知らないけど、いきなりひどいじゃないですか!大体、初対面でその態度は何なんですか!?」
「あ〜、あんたうちのにそっくり。種族も一緒で性格も一緒で、喋り方もあんたら似てんのよね。相手にしたくないわ」
そう言い、フェアリーは虫でも追い払うかのように、シッシッと手を振る。殺気を放つ人物が三人になったところで、クラッズが
大慌てでその間に飛び込んだ。
「やめなってば!二人とも、ちょっと落ち着いて!フェアリーは、いきなり喧嘩売らないの!」
「ふーん。あんた、ずいぶんそのパーティにご執心ね。そんなに居心地いいんだ?」
「うん、居心地はいいよ。みんな、よくしてくれてるし、いい人達だし。でも、目的忘れたわけじゃないよ」
先制しておくと、フェアリーはちょっとつまらなそうに口を閉じた。そこに、フェルパーが声をかける。
「その子、あなたのパーティの子ね?」
「うん。ボクの仲間で……それに、一番会いたかった、大好きな子」
「ちょっ……いきなり何よ、あんたは…!」
そう言いつつも、フェアリーは顔を赤くして逸らした。
「ええぇぇ〜!?そんなのと付き合ってんのぉ!?」
「は?てめえ、そんなのってどういう意味だ?本気で殺すよ?」
「やーめーな。二人とも、お願いだから喧嘩しないで」
「……あれほどまで想われる方が、その子……よくわかりませんわ、あなたの好みは…」
そう呟き、エルフは首を振った。その表情は、ものすごく納得いかないという顔をしている。
「って、うわ、バハムーンと一緒かよ。ちょっとクラッズ、さっさと行くよ」
「……これだから、フェアリーという奴は…。ここまであからさまに嫌われると、ある意味清々しいがな」
「……苦労してるのね、あなた…」
クラッズが苦笑いを浮かべつつ頷くと、フェルパーは少し笑い、フェアリーに顔を向けた。
「初めまして。事情は彼から聞いてるわ。それで、あなたがここに来たってことは……目的が、果たせそうなのね?」
フェルパーが尋ねると、フェアリーは真面目な顔で頷いた。
「あんたはまともに話せそうね。そういうこと。わかったら、さっさとクラッズ返して」
「慌てなくても、その覚悟は出来てるわ。私達は、そのために一緒にいたんだから」
その言葉に、一瞬全員の表情が強張った。しかし、それはすぐに消え、代わりに優しい笑顔を浮かべる。
「そうか、とうとう目的が果たせるんだな」
「寂しくなりますわ。でも、同時にこれほど嬉しいこともないですわ」
「おめでとー!やっと、戻れるんだね!」
「ようやく、報われたんですね。これも、神様のお導きです」
そんな彼女達の顔を、クラッズは一人一人目に焼き付けるように、ゆっくりと見回した。そして、今まで見たこともないような、
とびきりの笑顔を向ける。
「みんな、ほんとに……ほんとに、今まで、ありがとう。みんなと会えて、ボク、楽しかったよ。お世話になってばっかりで、ボクからは
何もしてあげられなかったけど、ほんとに、感謝してる」
もう一度、みんなの顔を見回し、クラッズは頭を下げた。
「みんな、本当に、ありがとう」
「いいわ、お礼なんて。みんな、好きでやったことなんだから」
「挨拶は済んだ?じゃ、さっさと行くよ」
フェアリーが腕を掴むと、クラッズは慌ててそれを押さえた。
「ちょ、ちょっと待って!あと一個だけ!」
「何よ、さっさとしてよね」
「わかってる。……えっとね、それでボクからは、今まで何もしてあげられなかったんだけど…」
そこまで言って、クラッズはフェルパーにパチッとウィンクをして見せた。見覚えのある動作に、フェルパーの胸がドクンと高鳴る。
「一つだけだけど、ボクからのお礼があるんだ。みんな、あと一日だけ、ここに滞在して」
「そ、それはいいけど……お礼って、一体何?」
「それは、あとのお楽しみ!……それじゃあ、みんな。またいつか、どっかで会おうね!」
「ええ。いつか、きっと。元気でね」
そうして、クラッズはフェアリーと共に飛竜に乗り、去って行った。それを見えなくなるまで見送ると、彼女達の間に一仕事終えたような
空気が広がる。
「数えてみれば、丸一年か。長かったな」
「あら、わたくしには、あっという間でしたわ」
「それにしても、お礼って何だろうねー?」
「うーん。クラッズさんのことですから、何かすごいもののような気がしますけど」
そんな彼女達に、フェルパーは明るい声をかける。
「明日になれば、わかることよ。それより、みんな。こうして私達の旅も終わったわけだし、今日はパーっと遊びましょうか!」
「さんせーい!!」
そうして、彼女達は和気藹々と話しながら、宿屋へと向かっていった。夕焼けの中、わいわいと話しながら宿へと向かう光景。
それはいつか見た、懐かしい光景に、よく似ていた。
翌日、一行は宿を出て、朝の散歩をしていた。もう地下道に行く必要もなく、また昨晩、夜更けまで遊んでいたせいで、探索に向かう
元気がなかったのだ。
見飽きたようでも、一仕事終えた後の景色は、また違って見える。久しぶりに観光気分で空への門を回り、再び宿屋に戻ろうと
したときだった。まったく、予想もしない形で、それは訪れた。
「……ふーん、元気そうだね」
「……えっ!?」
後ろからかかった、突然の声。それは聞き覚えのある、懐かしい声だった。
「それに、噂で聞いたとおり。みんな、強そうになったね」
「お、お前は…!?」
「う、嘘!?あなた……どうして…!?」
そこには、かつて仲間だった、クラッズの女の子が立っていた。以前、バハムーンと喧嘩して、パーティを脱退したクラッズである。
その後、彼女は別のパーティに所属し、それで縁は途切れたはずだった。
「どうしてって、言われてもな…」
クラッズも少し気まずいらしく、そう言って視線を外した。
「そりゃ……あんだけ説得されたら、来ないわけにもいかないし」
「説得?」
「あの、ほら。卒業生のさ、私とおんなじ、盗賊の……すんごい粘られたんだよね」
その時ようやく、彼女達は彼の言葉の意味を知った。同時に、ここ最近、彼がどこかへ姿を消していた理由も、察しがついた。
「実は、さ。私、あの後、あのパーティも脱退してたんだ。ディアボロスと、喧嘩しちゃって。で、もう退学しようって
思ったんだけど……そんなときにさ、あの人に、『もう一回だけ、みんなに会ってくれ』って、粘られちゃって」
視線を逸らし、クラッズはぼそぼそと続ける。
「それに……あの……私も、さ。その……ちょっと、あれかなって……後で考えたら、その…」
そこまで言ったとき、バハムーンがスッと前に出た。
「そこまでにしてもらおう。それ以上、お前の言葉は聞きたくない」
その言葉に、クラッズはムッとした顔でバハムーンを見上げた。
「……やっぱり、そうなんだ。どうせ、君にとっては私なんて…」
「私は、ずっと後悔していた。私の不用意な言葉で、お前を傷つけ、仲間を傷つけた。だから、今更許してくれとは言えない」
「……え?」
意外な言葉に、クラッズは呆気に取られてバハムーンを見つめた。彼女だけではない。エルフも、セレスティアも、フェアリーも、
信じられない思いでバハムーンを見つめていた。
「ずっと、お前に言いたかった。……本当に、すまなかった」
「……バハムーン…」
「そして許されるなら、もう一つだけ言いたい」
クラッズの目を見つめ、バハムーンは手を差し出した。
「もう一度、仲間として、一緒に来てくれないか」
クラッズはバハムーンを見つめ、他の仲間を見つめ、リーダーのフェルパーを見つめた。その誰もが、彼女にその言葉を投げかけて
いるようだった。
「……言っとくけど、私、弱いよ?みんな、私よりずっと強くなっちゃってるもん」
「そんなの、関係ありませんわ。仲間は、そんなものじゃなくってよ」
「そうですよ。わたくしは、大歓迎ですよ」
「そうだよー!またみんなで、楽しくやろうよ!」
「私としては、いくら強くても知らない人より、気心知れた仲間の方が、ずっと心強いわ」
クラッズはしばらく悩み、やがて、おずおずと手を差し出した。やがて、指先がバハムーンの手に触れた瞬間、バハムーンはがっちりと
その手を掴んだ。
「よろしく……いや、おかえり、だな」
バハムーンが言うと、クラッズの顔にも笑顔が広がった。
「……うん、ただいま」
そう言うと、全員がわっとクラッズに駆け寄った。誰も彼も、かつての仲間の帰還を喜んでいた。
「で、あの、もしかして、探索行く途中かなんかだった?」
「ううん、元々休むつもり!とにかく、宿屋に行きましょう!あなたがいない間にあったこと、いっぱい話してあげる!」
「そうだねー!私も、クラッズの話聞きたいな!」
かつて途切れた絆。もう繋がることはないと思った絆。それは再び、繋がった。
お互いがいない間の溝を埋めるように、彼女達はそれから一日中、色々な話をしていた。彼女達の幸せそうな笑い声は、一日中、
いつまでもいつまでも、響いていた。
食事時は、学食はいつも混雑している。少し時間をずらせば、さほど混んではいないのだが、探索を控えた生徒はそうもいかないため、
どうしても混雑時の利用になる。逆に言えば、時間をずらして来る生徒は、既に探索を終えた学生か、探索の予定のない生徒である。
戦争のような時間帯が過ぎ、空いている席と埋まっている席が半々になった頃。学食に、二人の生徒が訪れた。
「セレスティア、ほんとにどうかしたのか?今日も休みって、ここ数日休みっぱなしじゃないか」
探索に行けないので少し退屈らしく、ドワーフはそう言って口を尖らせる。が、トレイに山のような料理を持っているので、あまり
怒っているという感じはしない。
「ええ、ちょっと、その……少し、事情があるんです」
「確か、あの手紙来てからだよな。何か変なことでも書いてあったのか?」
意外に鋭い質問に、セレスティアは一瞬言葉に詰まった。だが、すぐにいつもの笑顔を浮かべ、答える。
「変なことなんて、書いてなかったですよ。だから、安心してください」
「ふ〜ん。まあ、それならいいけど」
嘘ではない。変なことなど、何一つ書いてなかったのだから。言い方一つで、ニュアンスなどいくらでも変わって聞こえるということは、
フェアリーとの付き合いで、セレスティアもよくわかっていた。
また、手紙にそうしろとあったわけではない。二人は、いつもどこかの地下道で、場違いなほどに強大なモンスターを倒して回っていた。
手紙には、もうすぐ目的が果たせるかもしれないとあった。だが、もし彼等が目的を果たし、ここに戻ってきたとしても、
地下道にいては、すぐには会えないし、場合によっては戻るまでに、何日か掛かってしまう。そのため、極力動きをなくし、
探索に出るのは救援要請があったときだけにしようと、セレスティアは決めていたのだ。
食事を終え、二人は部屋に戻ろうと学食を出た。寮の階段を上がり、彼女達の部屋へと続く廊下に出たとき、二人の目に見覚えのある
人物が飛び込んできた。それを見た瞬間、二人はその場に立ち竦んだ。
「……え、嘘…?」
ドワーフが、呆然と呟いた。
「お、あんたらそこにいたんだ。ちょうどいいね」
「あ、ほんとだ。二人とも、久しぶり!」
間違えるはずがない。それは、一年前に別れたきりの、クラッズとフェアリーだった。二人とも、以前より逞しくなっている以外は、
一年前と何も変わっていない。
「え……どうして…?あんた達、別のパーティに行ったんじゃ…?」
「あ〜、お別れしてきた。言ったでしょ、つまんなきゃ帰ってくるってさ」
そう言い、フェアリーは笑った。いつもの、どこか小狡さを感じさせる、変わらない笑みだった。それに対し、セレスティアもいつもの
微笑みを返した。
「ふふ。約束、でしたもんね。お帰りなさい、二人とも」
「セ、セレスティア!あんた、来るの知ってたのか!?おい、どうなんだよ!?」
ドワーフが思わずセレスティアの肩を掴むと、クラッズが素早く間に入った。
「待ってドワーフ。えっと、簡単に説明するよ」
とは言ったものの、どこから説明すればいいかは思いつかない。少し悩んで、クラッズは頭を下げた。
「まず、ドワーフには、謝らなきゃ。ごめん」
「え…?な、何が?」
「ボク達、ずっとドワーフに隠してたことがあるんだ。ああ、セレスティアにも隠してたけど、何となくは気付いてるんじゃないかな?」
言いながらそちらに顔を向けると、セレスティアは静かに頷いた。
「隠してたって……何を?」
「クラッズ、そんなの後、後。とにかく、みんな外に出て」
フェアリーは、全員を半ば強引に外に連れ出し、飛竜召喚カードを使った。
「ほら、早く。乗って乗って」
「お、おい待てよ!まだ話が見えないぞ!」
「いいから。行く途中で話すから。セレスティアが」
「わ、わたくしだけじゃなくて、みんなで話しましょうよ…」
ともかくも、四人は飛竜の背に乗った。全員が乗ると、飛竜はすぐに飛び立ち、風よりも早く飛び始める。
あっという間に景色が飛んで行き、高度もぐんぐんと上がる。ホルデア山脈を通り過ぎ、ヤムハス大森林を飛び越え、ポストハスを
通過し、やがて空への門が目の前に迫る。飛竜が高度を下げ、一つの地下道入り口前に下りると、ドワーフは一瞬立ち竦んだ。
「こ……ここ、行くのか…?」
「何よ、フェルパーがいなくなったところだから怖いって?ふざけたこと言ってないで、さっさと行くよ」
そう言い、フェアリーはドワーフの腕を掴んだ。だが、その手は乱暴な口調と違い、あくまで優しかった。
「大丈夫。ドワーフ、みんなついてる。それに、入らなきゃ何も始まらないんだよ」
「……わ、わかった。行くよ」
大きく息をつくと、四人は揃ってゼイフェア地下道へと足を踏み入れた。
たった四人でも、もう全員がゼイフェア地下道ですら問題にしない力を持っている。一行はどんどん奥へ進むが、やがてドワーフが
怯えたように呟いた。
「この、マップの順番……あの時と、まったく同じだ…」
「……そうだね、同じだね」
気のない声で答えるフェアリー。しかし、その顔には何とも言い難い、複雑な表情が浮かんでいた。
「そ、そうだ。それで、その、どうしてわざわざ、こんな所まで来たんだよ?」
脳裏に蘇る記憶から逃れるように、ドワーフが尋ねる。それに、クラッズが答えた。
「うん、どこから言おうか迷ってたけど、結論から言おうか。地下道には、色んなアイテムがあるでしょ?その中にね、ロストした人も
生き返らせられるアイテムがあるんだって」
「えっ、本当に!?……じゃあ、それならどうして、私に教えてくれなかったんだよ!?」
「フェルパーに止め刺したのはあんたなんだから、言えるわけないじゃん」
フェアリーが言うと、ドワーフの顔が悲痛に歪む。そこへ慌てて、クラッズが言い添える。
「フェアリー、フェアリー。大切なところ端折っちゃダメでしょ。あのね、ドワーフ」
クラッズは、ドワーフの目を正面から見つめた。
「もしさ、命と引き換えにフェルパーが取り戻せるって言われたら、どうする?」
「聞くまでもないだろ!そんなの、惜しくもない!」
勢い込んで答えると、クラッズはゆっくりと首を振った。
「そう。だから、教えられなかったんだよ」
「え…?」
「ねえドワーフ。気持ちは、よくわかるんだ。正直なところね、ボクだってフェルパーを取り戻せるなら、命を賭けたって惜しくない。
でも、それでまた一人仲間をなくしちゃうんじゃ、本末転倒だよ?ドワーフは、それでいいかもしれないけど、残されたボク達は
どうなのさ?それじゃあ、今のこの状況と、何にも変わらないよ」
「そ、それは…」
「さっきフェアリーが言った通り、あの時フェルパーにリバイブル唱えたのはドワーフ。だから、もしそんなアイテムがあるなんて
知ったら、無理するのは目に見えてた。ボク達は、もうこれ以上、仲間を失いたくないよ」
クラッズの言葉に、ドワーフはしょんぼりとうなだれた。やがて、力なく口を開く。
「でも……でも、それじゃあ、私は何なんだよ…?一人で何も知らないで、その分みんなに無理させて、私一人、何もしてない
じゃないか…!」
「でも、色んな人を助けましたよ」
セレスティアが、ドワーフに優しく微笑みかける。
「新入生の人とか、危ない目に遭ってた人とか、いっぱい助けましたよね。ドワーフさんは決して、何もしてなかった訳じゃないですよ」
「そうそう。フェルパーのことで、何かしたかったって気持ちはわかるよ。でも、ドワーフはドワーフで、自分に出来ることしっかり
やったじゃない。だからボク達だって、何の心配もしないでいられたんだよ。……あ、そうだ。セレスティアも、悪かったね。何にも
教えないで、黙って出て行っちゃって…」
クラッズが言うと、セレスティアは静かに首を振った。
「いいんですよ。少し、皆さんを疑ったこともありました。ですけど、色んな人と出会って、今クラッズさんが言ったことにも気付いて、
わたくしは全然、怒ってなんかいませんよ」
「ま、とにかくさ」
黙っていたフェアリーが、ドワーフの肩をポンと叩く。
「今までは、そりゃ何にもしてなかったかもしんないけどさ。最後に、あんたには大仕事してもらうから、よろしく」
「大仕事って、何だよ…?」
「行きゃわかるって。ほら、目的地見えてきたよ」
一年ぶりに、一行はそこに立っていた。鍵がかけられ、閉ざされた扉。一年前に、大切な仲間を失った場所。
鍵穴に保管庫の鍵を突っ込み、フェアリーが鍵を外す。そして、どこか緊張した面持ちで、扉を開けた。
メタライトルの光でも届かない、部屋の奥。そこに、誰かがうずくまっているのが見えた。
「え…!?お、おい、嘘だろ!?」
その声に反応したのか、うずくまっていた人物が顔を上げた。少し動く度に、体がギリギリと音を立てている。
「……とうとう、来ましたか。待ってましたよ」
「あんた、ノーム!?」
一行はすぐさま、彼に駆け寄った。一年の間に、その体には埃が積もり、依代も多少ガタが来ているのか、ギリギリとおかしな
音を立てている。しかし、それでも仲間を見間違うわけはない。
「ノーム、お待たせ」
「お久しぶりです、フェアリーさん。皆さんが一緒だということは、目的は果たせたのですね」
「悪かったね、一年も待たせちゃって。もうちょっと早く来たかったけど」
ノームは静かに顔を上げ、四人の顔を見つめた。
「……皆さん、僕は皆さんに謝らなければなりません。あの時、僕はあなた方にひどい言葉を投げかけ、皆さんを傷つけました」
「あんた、まさか……あれ、わざと…!?」
「彼を助けるには、ああするしかなかったのです。彼を助けるには、この迷宮の姿を変えてはいけない。ならば、人ならざる身の僕が
残るのが、最善の選択だと判断したのです。それでも、僕の行為が許されるとは思いませんが」
「……ノームさん…」
セレスティアが、そっとノームに近寄る。そんな彼女を、ノームは無表情に見つめた。
「ごめんなさい、セレスティア。あなたのことも、僕はひどく傷つけた」
「ううん、そんなことありません。だって、わたくしには、全部わかってましたから」
セレスティアは、優しく笑った。
「だってノームさん、考えてること、すぐ顔に出るんですから」
フェアリーは二人を指差し、『嘘でしょ』と言う顔でドワーフとクラッズを見つめた。二人も、『それはない』というように手を振り、
セレスティアの言葉を全力で否定している。
「ですから、ノームさんが考えてることは、最初から全部、わかってましたよ」
「……セレスティア!」
叫ぶように言うと、ノームはセレスティアを力いっぱい抱き締めた。そんな彼を、セレスティアも静かに抱き返す。二人はそうして、
しばらく抱き合っていた。
三人はしばらく声をかけあぐねていたが、やがてノームがそっと体を離した。
「すみません。今は、こうしている場合ではありませんでしたね。最も大切なことが、残っています」
「そうですね。そのために、みんな頑張ったんですもんね」
そっと離れると、ノームは再び口を開いた。
「あの時、フェルパーさんを失った場所。この場所で、間違いありません」
「そんじゃ、あたしも最後の一仕事、いくよ」
道具袋から、フェアリーは10個の天使の涙を取り出した。それらを一つ一つ見つめ、そして目を瞑り、練成を始める。
それらはたちまち溶け合い、やがて一つのアイテムとなった。完成した聖母の涙を持ち、フェアリーはそれを見つめる。
「あたしも、見るのは初めて。こんなんなんだね。んじゃ…」
「って、ちょっとフェアリーストップストップ!!言ってることとやってること違うよ!?」
「あ、やべ。そうだった」
そのまま勢いで使おうとした手を止め、フェアリーはドワーフにそれを差し出した。
「ん」
「え……な、何だよ?」
「あん時、フェルパーに止め刺したのはあんたでしょ。責任、取りなさいよ」
フェアリーに言われると、ドワーフは怯えた目でそれを見つめる。
「いや……私、は…」
「何よ、また失敗するとか思ってるわけ?舐めんじゃないわよ、あたしが作ったもんで、失敗してたまるかっての」
「そうだよ、ドワーフ。それに、今度は一人だけじゃない。ボク達全員で、取り戻すんだ」
二人に言われ、ドワーフはそれでも少し躊躇っていたが、やがて恐る恐る、フェアリーから聖母の涙を受け取った。
「さあ、ドワーフさん」
「恐れることはありませんよ。必ず、成功します」
セレスティアが優しく微笑み、ノームが力強く断言する。
仲間の言葉を受け、ドワーフは聖母の涙を胸に抱えると、静かに目を瞑った。
「……神様……この際、悪魔だって構わない…。お願いだから、私達に、あいつを……フェルパーを、返してくれ!」
祈るような叫びと共に、ドワーフは聖母の涙を、かつてフェルパーが消えた床へと振りまいた。
雫が光を受け、キラキラと輝く。それが地下道の床に染み込み、消えると同時に、かすかな変化が起こった。
どこからともなく、暖かい風が吹いた。風は一行の前で渦を巻き、その風に運ばれ、塵のような物が集まってきた。
それは、灰だった。いつか、地下道の風に攫われた灰が、再び目の前に集まってくる。
一行は言葉もなく、その光景を見つめていた。
見る間に、灰はうずたかく積もり、やがて風が止んだ。直後、その場に柔らかい光が溢れ、辺りを満たした。
光の中で、灰が少しずつ、人の形を作っていく。ただの灰だったものが、足となり、腕となり、胴体を作り、失ったはずの彼の肉体を
作り始めた。
そして、一段と光が強くなり、一行は思わず目を覆った。やがて、辺りにふわりと暖かい風が広がり、それと同時に光は消えた。
恐る恐る、目を開ける。
そこに、彼はいた。
まるで眠っているように、静かに目を閉じ、彼はゆっくりと呼吸していた。
誰もが、声を出せなかった。かけるべき言葉も、思いつかなかった。
やがて、フェルパーがゆっくりと目を開けた。
「……ん…?おう、みんな……どうした?」
聞き慣れた声。ずっと求めていたもの。それは確かに、彼の声だった。
その瞬間、張り詰めていたものが、一気に切れた。
「う、うわあぁぁ〜〜〜ん!!」
「フェルパー!フェルパ〜〜!うあぁーーん!!」
「うわ!?な、何だよ!?どうしたんだよ!?」
「フェルパーさん……よかった、よかった…!ふえぇ〜ん!」
「おわっ!?ちょ、ほんとに何だよ!?何なんだよ!?」
フェアリーとクラッズが真っ先に飛びつき、続いてセレスティアまでもが、フェルパーに飛びついた。フェルパーは立ち上がろうと
したところに飛びつかれ、座った状態のままで泣きつく三人を見つめている。
「すみません、フェルパーさん。あなたのおかげで、エンパスに勝つことが出来ました。しかしその後、僕達はあなたをロストした」
フェルパーにヒールを唱えながら、ノームが淡々とした口調で言う。
「え、ロスト…?それで、なんで俺生きて…?って、おい!?お前、すげえぼろぼろだぞ!?」
「あなたを再び取り戻すまで、一年かかりました。あなたにとっては、ついさっきのことなのでしょうが、僕達には長い時間でした」
「そう……だったのか」
それでようやく、フェルパーはこの状況に納得がいった。そこでふと、立ち尽くすドワーフに気付く。
「お、おい、ドワーフ…?」
「……さあ、皆さん。気持ちはわかりますが、一度離れてあげてください。一番会いたいと願った人が、ないがしろになってますよ」
「あ、ごめん……グス、えへへ…!フェアリー、ほら、ちょっと離れよ」
「くすん……しょうがないなぁ」
「そうでしたね……クスン。さ、ドワーフさん」
ようやく三人が離れ、フェルパーは立ち上がった。だが、ドワーフはうつむいたまま、その場に立ち尽くしている。
「……ドワーフ…?」
「……あんた、約束しただろ…?」
震える声で、ドワーフが言った。
「あの時……あんた、言ったじゃないか…!ずっと、側で守るって……なのに、勝手に……約束、破りやがって…!忘れたのかよ…!」
「……覚えてるよ。大切な人の側で、ずっと守る。忘れるわけ、ないだろ?」
「じゃあどうしてっ……一年も、離れてたんだよ…!?さ……寂し……かったんだぞぉ…!」
目にいっぱいの涙を溜めて、ドワーフは震える声で続ける。
「あんた一人、いなくなって……忘れたのかよ…!?私が、生き残ったって……あんたまで死なれるのは、嫌だって…!」
「……ごめんな、ドワーフ」
優しい声で言うと、フェルパーは両手を差し出した。それに飛び込もうとして、ドワーフはちらりとセレスティアを見た。
「なあ、セレスティア…」
「何ですか?」
「あんた、言ったよな…?あと、一回だけ、泣いてもいいって…」
「……ええ」
セレスティアが頷くと、とうとう堪えきれずに、ドワーフは涙を流した。そして、なりふり構わず、フェルパーの胸の中に飛び込んだ。
「うわぁぁぁん!!!馬鹿、馬鹿!!もうどこにも行くなぁ!!!絶対、どこにも行くなよぉ!!!」
ずっと、夢に見た感覚。もう、夢でしか感じられないと思った暖かさ。彼の胸の中で、ドワーフは子供のように泣きじゃくった。
「わかってるって。もう、俺はどこにも行かない。ずっと、みんなと一緒だよ」
静かに言うと、フェルパーはドワーフを抱き締め、その頭を優しく撫でてやった。
「フェルパー!!」
直後、フェアリーもセレスティアもクラッズも、再びフェルパーの胸に飛び込んだ。さすがによろめいたものの、フェルパーは何とか
全員を抱きとめた。
「フェルパーさん。僕は今初めて、この体であることを嬉しく思っています」
ノームが静かに、フェルパーに話しかける。
「ん?何だよいきなり?」
「涙も流せず、感情も全て一歩引いて見つめるこの体。でも、だからこそ、こんな時でも冷静でいられる」
「ああ……それが、どうしたんだ?」
「……フェルパーさん。皆さんが言い忘れていることと、あなたが言い忘れていることが、一つずつあります。それに、せめて
一人ぐらいは、笑顔で迎える者がいてもいいでしょう」
そう言うと、ノームはにっこりと微笑んだ。
「おかえりなさい、フェルパーさん」
フェルパーは一瞬呆気に取られたが、すぐに自分が言うべき言葉を知った。
「ああ……ただいま、みんな」
静かに言うと、胸の中の四人を、フェルパーは優しく抱き締めた。
「僕はあなた達と出会って、様々な物を得ました。皆さんのような仲間に、力。愛する者を得る喜び、大切なものを失う悲しみ。
そしてかけがえのない、絆。フェルパーさん、あなたを失ったとき、僕はとても悲しかった。そして、今はとても嬉しく思います」
「なんか、お前変わったな」
「一年も経てば、誰しも変わります。……僕のこの感情は、皆さんのものと、きっと同じなのでしょう。それに、一年待ったという
こともあります。ですから、今ぐらいは、少しぐらい羽目を外してもいいですよね」
「え?」
聞き返す間もなく、ノームもフェルパーに飛びついた。
「本当に、お帰りなさい、フェルパーさん!」
「お前もかよっ!?って、ちょっ、危ねえって!!重い!!こける!!おい、押すな!!少しぐらい加減しろおおぉぉ!!!」
ずっと求め続けたもの。ずっと夢に見たもの。
それは宝でもなく、力でもなく、まして名誉でもない。
それら全てを犠牲にしても惜しくないと言えるものは、ただ一人の仲間だった。
地下道は、望むもの全てを与えてくれる。しかし、時に地下道は大切なものを奪う。
だが、その奪われたものすら、彼等は取り返した。
それが、彼等の力によるものなのか。それとも、それすら地下道が与えるものの一つなのか。それは、誰も知らない。
しかし、一つだけ言えることがある。
失ったものを諦めず、求め続け、それを奪い返した彼等。その絆は、それこそ地下道に勝るとも劣らない、大きな大きな奇跡だった。
以上、投下終了。
この後最終章があるのですが、一気に投下すると長すぎるので一旦切りました。
近いうちにそちらも投下したいと思います。
それではこの辺で。
ついに復活…!
感動して泣くところだったぜ、乙!
うわぁあああぁあぁぁあああ!!
泣いていい?泣いていいよね?
でもその前にGJですようわぁあああぁあぁぁあああ!!
まずはGJ!と言っておこう
そして・・・・・・
フェルパああああああおかえりいいいいいいい!!!!!
前半の凄まじい殺し合いが後半で完全に拭い取られてる・・・
GJ!!
勧善懲悪もGJ!
言いたいことが上手くかけないけどGJ!
最終章、楽しみにしてます!
感動した。マジ泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。
とにかくGJ!
お疲れ様でした
泣きそうなのを堪えた所でバハムーンPTが気になった
LostPTも紳士エルフもナパームもクラッズPTもなにもかも最高でした!
最終章楽しみにしてます
で、ひとしきり泣いた後で、ロストからの復活にかかった莫大な費用を「元」PTメンバーに請求されるフェルパー。
さらに、一年間のブランクで愛しのドワーフとは20レベルも差がついている始末。
元後輩たちと新PTを組んで、借金返済&経験値稼ぎの旅が始まる訳ですね。
どこのクリスタニアだw
やべぇ、目が潤んだの久しぶりだぜ…乙でした!
…あとモンスター強姦パーティの悲惨な末路に黙祷
美人局やってた女ヒューマンにも黙祷。
>>32 ヒュマ子死んでない!
ヒュマ子死んでないYO!!
連投になってしまう気もしますが、時間置くようなものでもない気がするので残り投下します。
微妙にエロ分がありますが、あまり期待はしないでくださいw
では、最終章、投下します。
かつての仲間だったクラッズが戻り、彼女達は一年ぶりにパルタクスへ帰ることにした。その帰路も、思い出をなぞるように、
ランツレートを経由し、パルタクスへ戻るというものだった。
その途中。ドゥケット岬で、一行は宿を取った。それもまた、彼女達の儀式の一環である。
夕焼けが辺りを赤く染める頃、岬の先端に、フェルパーは一人で立っていた。心地良い潮風が、彼女の髪と尻尾を揺らす。
「一体どうしたんだ?いきなり消えたから、びっくりしたぞ」
そこに、後ろからバハムーンが声をかけた。フェルパーは振り向かず、静かに笑う。
「ちょっと、ね。一人になりたくて」
「それは悪かったな。邪魔したか?」
「ううん、いいのよ。大したことじゃないから」
かつての記憶とまったく同じように、バハムーンはフェルパーの隣に並んだ。
「他の子達は?」
「ああ、まだクラッズと遊んでる。……この道筋はあの時のようだが、宿の中はまるで入学したときみたいだ」
そう言ってバハムーンが笑うと、フェルパーもクスリと笑った。
それからしばらく、二人は夕焼けを眺めていた。
「あの、卒業生のクラッズ……彼には、世話になったわね」
「ああ。まさか、あんなお礼を用意するとはな。いい奴だ、本当に」
バハムーンの言葉に、フェルパーは頷いた。だが、その顔には、一抹の悲しみが篭っているようだった。
「……私は、ダメなリーダーね…」
ぽつりと、フェルパーが呟いた。
「いきなり何を言い出すんだ?」
驚いて尋ねると、フェルパーは寂しげに笑った。
「本当なら、あれは彼のお礼じゃなくて、私が果たすべき義務。でも、私はそれを放棄して、他の仲間を探そうとしていた…」
「いや、それは仕方ないだろう。そもそも、あいつが次のパーティまで脱退していたなんて、私達にわかるわけもない」
「ありがとう。でもね、それだけじゃない」
フェルパーはそっと、腰に下げる白刀秋水に触れた。
「……みんな、『彼』のことは、覚えてるでしょう?」
「……ああ。忘れられるわけがない」
「みんな、彼のことがあって、変わった。エルフは狩人になって、フェアリーは司祭になって、セレスティアは、前よりもっと
優しくなって……あなたは、素直になったわね」
「う、うるさいな」
「でも、私だけ、何も変わってない」
そう言うと、フェルパーは目を瞑った。
「それだけじゃない。みんな、彼のことがあって、成長した。彼に負けないよう、彼に教えてもらったことを活かすよう……みんな、
彼の死を乗り越えて、成長した。なのに、私は…」
「………」
「私、彼のことが好きだった。なのに、好きだったのに、私は彼の願いに耳を塞いだ。自分一人の感情で、彼の気持ちを裏切った。
そんなことをしたのは、私一人だけ。リーダーがこんなんじゃ、仲間が離れて当然よ」
言いながら、フェルパーは白刀秋水を腰から外した。
「私は、彼の死を悲しんで、彼の幻影に縋り付いてた。でも、それももうおしまい。私はもう、彼を振り返らない」
「何を……あっ!?」
フェルパーは、ずっと腰に下げていた白刀秋水を、思い切り海へと放り投げた。刀は弧を描き、飛沫と共に波の中へと姿を消した。
「……勿体無いことをする。売ればそれなりの金になっただろうに」
「どうせ、地下道の魔法球を探れば、見つかるわ。でも、私は売る気もないし、せっかくなら後輩にでも使ってほしいわね」
清々したという顔で、フェルパーは言った。
「さあ、これからよ。私達も、ゼイフェア学園に入学できるよう、頑張らなきゃ」
「強く、なったんだな。だが、これ以上強くなっては、嫁の貰い手がなくなるぞ?」
「あなたに言われたくないわよ!」
二人は、大きな声で笑った。そこへ、二人を探しに来た仲間が声をかける。
「おーい、そんなところで何してるの?」
「ちょっとね、武人同士の語らいよ」
「せっかく元のパーティに戻ったんだから、もっと遊ぼうよー」
「焦らなくとも、もういつでも、嫌というほど遊べるさ」
元の姿に戻ったパーティ。苦難を乗り越え、成長した者達。長い時を経て、彼女達はようやく、新たな一歩を踏み出した。
かつて、彼女達と共に旅をした、二人の男。その二人が、彼女達を大きく成長させた。
一人は、語られることのない、一人のヒューマン。もう一人は、学園の誰もが知る、しかし目立たない一人のクラッズ。
彼女達のパーティは、もうその姿を変えることはないだろう。しかし、彼女達は、二人を決して忘れない。
もう二度と、共に歩むことがないとしても、その二人は、彼女達の大切な、途切れぬ絆を持った、仲間だった。
「ちょ、ちょっと待って待って!!エ、エルフ!!ダメだって……んうぅ……ああぁぁ!!」
「うふふ。お姉様、可愛い」
寮の一室で、バハムーンとエルフの声が響いていた。エルフの華奢な手が、バハムーンの大きな胸を揉みしだき、その度にバハムーンの
体がビクリと震える。
「お、お姉様って呼ぶなら、私がする方……ふあっ!や、やだ!エルフ、そこはダメぇ!!」
「ほら、お姉様、もう我慢しないで、気をやってくださいな。ほら、ほら!」
全体を優しく捏ねるように揉み、つんと尖った乳首を指先で弄る。途端に、バハムーンの体が激しく震えた。
「エ、エルフってばぁ!や、やめっ……あ、あああぁぁ!!!」
大きな体が仰け反り、甲高い嬌声が上がる。達してしまったバハムーンを見て、エルフは満面の笑みを浮かべる。
「ふふ。こんなに敏感で、すぐ気をやってしまって……ここも、弱かったですわね?」
言いながら、エルフはようやく落ち着いたバハムーンの股間に、太腿を差し込んだ。そのまま押し付けるようにして動かすと、再び
バハムーンの体が震える。
「ひゃんっ!?エルフ、ダメっ!い、イッたばっかりで、まだぁ…!」
「つまり、もっと敏感になってるってことですわね?うふふ、ですから、もう一回、気をやってくださいな」
胸に手を這わせ、敏感な部分を太腿で擦り上げる。たちまち、バハムーンの体が激しく震え、口からは悲鳴に近い嬌声が漏れる。
「だ、ダメだって言って…!うあっ、うああぁぁ!!も、もうやめてぇ!んあっ!エルフ、もう許してよぉ!!
も、もうイキたくな……や、やだ……や、あ、ああぁぁ!!」
あっという間に二度目の絶頂に達したバハムーンを見て、エルフはそれこそ蕩けるような笑みを浮かべた。が、当のバハムーンは
ひどく消耗してしまい、弓なりに反った体が落ちると、そのままぐったりと横たわってしまった。
そんな彼女を、エルフは優しく抱き寄せた。
「お姉様ったら、本当に可愛いですわ」
「はぁ……はぁ……はぁ……エルフ、ひどいよぉ…」
すっかり地の口調になってしまっているバハムーン。普段の彼女は威厳に満ちた、頼りがいのあるリーダーに見えるのだが、
こうなってしまうと、ただの少女にしか見えない。
「でも、気持ちよかったでしょう?」
「そ、そういう問題じゃない…!」
そう言って口を尖らせるバハムーンの頭を、エルフは優しく撫で始めた。そして、ぽつりと呟く。
「わたくし、幸せですわ」
「……何がだ」
「あの時、自信と過信の違いを知らず、才能を即ち力と思い込み、その結果、わたくしは色々なものを失いましたわ」
意外な話が始まり、バハムーンは少し戸惑いつつも、彼女の話に耳を傾ける。
「純潔を散らされ、自信を砕かれ……でも、そのおかげで、わたくしはお姉様と出会えましたわ」
エルフは目を瞑ると、静かに微笑んだ。
「死にたいほどに辛い記憶も、泣きたいほどに悲しい過去も、やがては全て、大切な記憶になりますわ。それは死に臨んで、命を
預けるべき者に出会えて、愛する者に出会えて……いつになるかはそれぞれでも、生ある限り、過去は全て、大切で楽しかったものと
なりますわ。もちろん、あの苦しみ、痛みが消えるわけではないけれど……それが、わたくしとお姉様を引き合わせてくれたのだと
思えば、あの記憶もまた、甘美な思い出ですわ」
「……そう言えるまでに、なったか」
かつての彼女の姿を思い浮かべ、バハムーンは優しく笑った。男と話すことも出来ず、心を閉ざし、過去の傷の痛みから逃げ続けていた
エルフは、もうどこにもいなかった。その代わり、何かと面倒な気性を持つ子になってしまったが、それぐらいは仕方ないと、
バハムーンは思い始めている。
「お姉様だけじゃない。ノームも、ヒューマンも、セレスティアも、ディアボロスも、全員が大切な仲間。そんな仲間と出会えて、
そしてこうして、ゼイフェアにまで来られるようになったんですもの」
エルフはバハムーンに抱きつくと、可愛らしい笑顔を浮かべて彼女を見上げた。
「過去のことで、後悔することがあるとすれば、お姉様に初めてをあげられなかったことですわ。でも、あれがなければ、わたくしは
お姉様と出会えなかった。……ね、お姉様」
「ん、何だ?」
「その……久しぶりに、わたくし、お姉様に愛されたいですわ。あの日みたいに、わたくしを抱いてくださいな」
そう言い、にっこりと笑いかけるエルフ。その頼みを断ることなど、彼女でなくともできるわけがない。
「ああ、いいぞ。さっきされた分も、まとめてお返ししてやる」
軽い調子で言うと、バハムーンはエルフの顔を上げさせ、そっと優しい口付けを交わした。
エルフにとってのバハムーンが、そうであるように。本人に自覚はなくとも、バハムーンにとってもまた、エルフは大切で、
この上もなく愛しい、大切な仲間だった。
同じく、ゼイフェアの寮の一室。室内には熱気が満ちていたが、既に聞こえる息遣いは小さく静かで、残ったその熱気も少しずつ、
冷め始めているところだった。
「ノーム、大丈夫か?」
ディアボロスが尋ねると、ノームは嬉しそうに微笑み、彼の腕枕に、そっと手を触れた。
「うん、大丈夫。初めてだったから、まだちょっと痛いけど」
「悪かったな、その、いつもみたいに激しくしちまって…」
「あとちょっと、お腹変な感じ。中、ごろごろ」
ちょっと渋っているような感じがあるのか、ノームは腹に手を当て、少し不安そうにそこを見つめる。
「……悪かったよ」
「ううん、いいの。だって、それぐらい気持ちよくなってくれたってことだし」
そう言って笑うノームを、ディアボロスは優しく抱き寄せた。その体は柔らかく、肌触りも自分達とまったく変わらないように思える。
だが、彼女は呼吸もしなければ、血も流さず、温もりを感じることもない。彼女はやはり、他の種族とは違う。
いつか聞いた、彼の言葉が蘇る。
いくら生身に近づこうとも、決して生身を得ることはない。その体は人形以外の何者でもなく、故に感覚すら、普通の人間とは違う。
言い換えれば、ノームという種族は、『人間』ではないのだ。
その時、ふとノームが唇を尖らせた。
「また、余計なこと考えてる」
「え!?あ、いや、悪い悪い。つい、な」
ノームはまるで子供のように、ぎゅっとディアボロスにしがみつく。
「……私、違うもん」
「え?」
「……あんなのと一緒にしちゃ、や」
凄まじいまでの女の勘に、ディアボロスは一瞬血の気が引いた。あるいは超術によってそれを知ったのかもしれないが、いずれにしろ
心の中を言い当てられるのは、あまり気分のいいものではない。
「あんなのって、お前なあ…」
「……違うもん…」
呆れつつも、ノームを嗜めようとしたところで、再び彼の言葉が蘇る。
生身を持たないことは、彼女のコンプレックスなのだ。恐らくは人形に執着するのも、そのためなのだ。
彼女は特別だ、と、彼は言った。それは事実、間違ってはいない。ほとんど生身と変わらぬ体を持ち、また感情も豊かで、何よりこうして
お互いに愛し合うことが出来ている。
言おうとした言葉をグッと飲み込み、ディアボロスはノームの頭を優しく撫でた。
「……そうだな。お前は、俺の恋人だもんな」
ディアボロスが言うと、ノームの顔がパッと輝いた。
「うんっ」
嬉しそうなノームの顔。それだけで、ディアボロスは幸せな気分になる。
彼女は、厳密には人間ではないだろう。だが、そんなことは関係ない。ディアボロスにとって、彼女は最も大切な『恋人』である。
生身を持っていようが、そうでなかろうが、こうしてお互い、愛し、愛されている。同じ気持ちを持つ以上、彼女はやはり『人間』だ。
そうでなかったとしても、と、ディアボロスは思う。
自分が、彼女を好きになるよう、仕向けられた操り人形であるならば、それはそれで構わない。ならば、自分と彼女は人形同士、やはり
お似合いだろう。
そんな自嘲めいた考えが浮かび、ディアボロスは笑った。だが、その笑いは幸せそうで、暖かい笑みだった。
「ね、もう一回、お尻でしてみる」
「いや、まだ痛いんだろ?気持ちだけ、ありがたく受け取っておくよ。それより、もうちょっとくっついてくれ」
ノームを抱き寄せると、彼女も嬉しそうに、ディアボロスを力いっぱい抱き締める。
柔らかく、しかし温かくはない彼女の体。だが、何より大切で、かけがえのない存在。人間であろうと、人形であろうと、
それは変わらない。少なくとも彼にとって、彼女は大切な、一人の女の子だった。
「くっ……出しませんよ…!」
追い詰められた表情のセレスティアが、搾り出すような声で言う。
「いいから、早く出しちまえよ。楽になるぜ?」
それに対し、ヒューマンは実に余裕のある笑みを浮かべている。
「認めません…!このわたくしが……あなたに、負けるなど…!」
「もう諦めろって。ほら、さっさと出せよ。じゃねえと終わんねえだろ」
「うぐ……残念、です…!」
直後、部屋の中に、パパン、と乾いた音が響いた。そして、ヒューマンが思い切り拳を天に突き上げる。
「いよぉっしゃああぁぁぁ!!!勝った!!!ようやく勝ったぞぉぉ!!!」
彼とは対照的に、セレスティアはカードを一枚握り締め、本性を現したかのような表情で舌打ちをした。
「ちっ、まさかわたくしが、あなた如きに負けるとは…!」
「へっ!だから言っただろ!?スピードだけは得意なんだよ!バーカバーカ!」
「……ふん。子供、ですねえ。たかだか一勝したぐらいで、そこまで、はしゃぎますか」
「お前こそ、出したら負けるってわかった瞬間、出さねえとか言ってたよな?へん、ガキが!バーカ!」
「……未だ童貞のあなたにだけは、ガキなどと言われたく、ないですね」
その瞬間、ヒューマンの顔が、ドロドロと暗く淀んだ表情に変わった。
「……うるせえ、堕天使が……むしろダメ天使が…」
「では、繁殖だけが取り得のヒューマンで、童貞のあなたは、さしずめゴミ人間、ですかね」
「本当にお前、一度死ね…」
完全に興を殺がれ、ヒューマンは重く悲しい溜め息をついた。セレスティアはいつものように、一見天使のような、悪魔の笑顔を
浮かべている。
「おやおや。図星を突かれて、ご立腹ですか?」
「……もういい。お前なんか嫌いだ」
「やはり、あなたとは気が、合いますね」
もはや皮肉に反応するのも疲れたらしく、ヒューマンは大きな溜め息をついた。そこでふと、表情が元に戻る。
「……あ、話は全然変わるんだけどよ。あいつらの話、聞いただろ?」
「ええ、聞きましたよ。よくよく、奇特な方々です」
「でも、すげえよな。何だかんだで結局、ロストした奴取り返しちまったんだろ?俺達じゃ、とてもできねえよな」
「……そうですねえ」
セレスティアは手慰みにカードをまとめ、慣れた手つきで切っている。
「ですが、わたくし達なら、そんな努力をする必要も、ありません。ロストなどさせなければ、いいのですから」
「そういやお前、結局司祭に戻ったよな。よくそこまで、転科する気になるよ」
「あの女から、お金はたくさん、もらいましたから。思うほどには、苦労もありませんでしたよ」
そうは言うものの、私財を投げ打ってまでパーティの力になろうという気には、少なくともヒューマンはなれなかった。
「装備もせっかく作ったのに、もったいねえ」
「どうせ、元は共有倉庫の素材、ですよ」
大きく息をつくと、セレスティアはポツリと呟いた。
「やはり、わたくしには、彼等の気持ちは理解、できないですね。人間誰しも、自分が一番、大切でしょうに」
「ん〜。まあ、あいつらはそうじゃなかったってことなんじゃねえか?」
「……考え方の、違いですかね。彼等にとっては、仲間を取り返すことが最も、自分のためになる、と」
「ああ、そうとも考えられるな。善人気取りの奴等の考えは、よくわかんねえけどな」
「まったくもって、理解、できませんよ。仲間など、自分より大切とは、思えないのですがね」
その言葉を聞くと、ヒューマンはニヤニヤと笑った。
「お前だって、『仲間のために』転科してんだし、似たようなもんじゃねえの?」
「…………うるさい、ですよ」
「うっはっはっは、そう照れるなよ!誰にも言わねえでやるからさ!」
そう言って肩をバンバン叩くヒューマンを、セレスティアはうんざりした目で見つめていた。しかし、本気で怒っているわけではない。
彼にとっては不快であっても、そうなってしまった事実は変えようがない。いくら彼でも、自分の心までは騙せない。
今のパーティは、彼にとって、かけがえのない存在だった。
仲間など、欲しくもなかった。自分以外を守ることなど、絶対にしたくないはずだった。それが今や、自分を犠牲にしてでも、
パーティを守りたいと思うようになってしまっている。
「やれやれ。やはり、あなた以外を守れるように、努力するとしますよ」
「はっはっは、そうかよ。ま、お前に任せちまっちゃあ、あとで何言われるかわかんねえしな。その前に、俺が何とかしてやるさ」
そう思うのは、セレスティアだけではない。ヒューマンにとっても、今のこのパーティは、何物にも代え難い、大切な存在だった。
「あなたに任せる方がよほど、不安ですがね。やはり、わたくしが頑張りますか」
「お前は、後が怖いんだよ。無理しねえで、俺に任せときゃいいんだ」
憎まれ口を叩き合い、軽口を言い合い、意地を張り合い、それでも背中を預けられる、大切な存在。
お互い口には出さずとも、二人は心の中で、お互いを親友と呼んでいた。
何を言おうと、また言われようと。表面ではいがみ合いつつ、心の中では誰より信頼する人物。
永遠に、口に出されることはなくとも、二人の心は、深く強く、繋がっていた。
彼等は、余りものだった。
入学当初、他のパーティからあぶれてしまい、その結果として、仕方なくパーティを組んだだけだった。
喧嘩もあった。解散の危機に瀕したことも、何度かあった。しかし、それでも彼等はずっと一緒だった。
共に戦い、助け合い、幾多の困難を乗り越えるうち、いつしか、その仲間達は、本当の仲間になっていった。
誰よりも信頼でき、誰よりも大切な仲間達。それを得た彼等は、やがて学園の代表といわれるまでに成長した。
意外な気もする。だが、当たり前のような気もする。少なくとも彼等は、仲間と一緒なら、どんな苦難も乗り越えられると確信していた。
ただの、余りものの寄せ集めだった彼等。それが、いつしか地下道に奪われたものを取り返すまでに成長していた。
今日も、どこかで彼等の声が響く。
「だぁから、あんたは一人で無茶ばっかりしてー。それだから、フェルパーに止め刺したりすんのよ」
フェアリー。彼女は当初、何とか入学が許される成績で、パルタクスに入学した。それに加え、生来の性格の悪さゆえ、
どのパーティからも敬遠された。だが、性格は悪くとも、パーティのことは誰よりも真剣に考え、そのために自身を変えることも
厭わない純情さも持ち合わせている。そのため、入学当時から目指していたくノ一になることをやめ、錬金術師としての道を歩き出した。
もっとも、それも仲間と接するうち、得たものなのかもしれない。
「何だとー!?てめえ、それはねえだろ!!ぶん殴ってやる、降りて来ーい!!」
ドワーフ。戦士学科に所属していたが、同じ戦士ならばブレスを使えるバハムーンや、素早さに優れるフェルパーなどの方が人気があり、
最後まで余ることとなった。口は悪く、短気な面はあるが、どこまでも真っ直ぐで、仲間を守りたいと思う優しさを持っている。
初の探索で仲間を死なせたことで、神女としての道を歩き出した。僧侶では戦う力に劣り、力がなければ、やはり仲間を守れないという、
彼女なりの選択である。毎日のように口喧嘩をするフェアリーとも、深いところではちゃんと繋がっている。
「やめろってドワーフ。それに、俺はここにいるんだから、もういいじゃないか」
フェルパー。彼は同種族で固められたパーティに入り損ね、ひどい人見知りのため誰とも話せず、結局最後まで残ることとなった。
当初は頼りなく見えていたが、全滅の危機においては常に最も勇敢に行動し、身を挺して仲間を守った。その結果、彼は一度ロストする
こととなったが、仲間の活躍により、再び生を得た。当初からドワーフと共に前線に立ち、彼女はあらゆる面でいいパートナーである。
「フェアリーもやめなって。さすがにそういうことは、言っちゃダメでしょー」
クラッズ。彼は入学すら危ぶまれる成績で、辛うじて合格した。成績は誰よりも低く、堂々の最下位である。その出来の悪さゆえ、
盗賊学科という需要の高い学科にも関わらず、最後まで残る羽目となった。仲間を思いやる気持ちも強く、ほぼずっと喧嘩の仲裁役を
担ってきた。また、持ち前の明るさと人懐こさで、パーティの仲間以外にも、数多くの友人を作った。フェアリーとは当初学科が一緒で、
ほぼ唯一、彼女を気遣った存在でもあるため、とても気に入られている。多少振り回されている感はあるが、傍から見れば、
とてもお似合いの二人である。
「二人とも、喧嘩はしないでくださいよ。もっと仲良くやりましょうよ、ね?」
セレスティア。入学してすぐ、その人の良さから、多くの友人を作った。が、その人の良さが災いし、友人にパーティを探してやって
いたところ、気付けば自分自身があぶれていたという異色の存在である。利他的で、典型的な『いい人』であり、純情かつ純粋で、
フェアリーとはいつも喧嘩が絶えなかった。また、性格ゆえに、パーティのため一人を見捨てねばならないときや、あえて希望を与えずに
隠し事をしなければならないときなど、多くの場面で苦しんだ。しかし、それでも裏方に徹し、見守り続けることが出来る人物で、
仲間にとってはそれこそ、天使そのもののような存在となっている。
「喧嘩するほど仲がいい、とも言いますけどね。ですが、地下道内では、喧嘩は控えてください」
ノーム。パーティは通常、多くの魔術師を必要としない。彼は無難な魔術師学科を選び、必要なこと以外は口にしない性格のため、
最後まで残ることとなった。セレスティアと同じく、人当たりは良く、しかし彼女と違って、常に一歩引いた視点で物事を見つめている。
だが、人ならざる体であることを密かに愁い、それまでは何事からも、常に一歩引いていた。しかし、セレスティアと出会ったことで、
それも気にしないようになり、常に冷静であるが故、パーティの危機には自身を悪者としてでも、最善の道を選ばせた。セレスティアとは
同じ後衛であり、彼女の良き相談相手でもあり、仲間という枠を超えた、大切な存在でもある。
「はいはい。みんな、このワンコちゃんが大好きねー」
「うるさいな、このチビ!あとで絶対ぶっ潰してやるー!」
「ドワーフ、よせってば。少し落ち着け」
「よしなってフェアリー。嫌いな相手なんて、みんないないんだから」
「そうですよ。フェアリーさんだって、大切な仲間ですよ」
「ドワーフさんも、本当に潰したりしないでくださいね。いくら僕でも、もう一年も地下道にいるのはごめんですよ」
いつもの光景。いつもの雰囲気。一度は消えたはずの、当たり前の姿。彼等はもう二度と、その姿を失うことはないだろう。
彼等のことを、奇跡のパーティと呼ぶ者もいる。事実、それは間違っていない。
凄まじい力を持ち、学園の卒業生筆頭であり、ロストした仲間すらも取り戻した彼等は、奇跡と呼ばれるに相応しい者達だろう。
だが、それだけが彼等の奇跡ではない。
彼等の一人でも、入学当初、別のパーティに入れていれば、このパーティは組まれなかった。また、全員が居心地のいいパーティと
思っていたわけでもない。脱退の危機も、解散の危機も、何度もあった。
それを乗り越え、信頼を育て、誰よりも強く結ばれた仲間となった彼等。
ロストしてすら、それを諦めなかった、大きな結束。地下道の宝より、大切と思える仲間達。
その、死すらも分かつことのできない、彼等の絆こそが、何よりも大きな奇跡だった。
この先も、様々な苦難があるだろう。だが、そんなものは、彼等にとって何の不安にもならない。
信頼する仲間が、大切な親友が、愛する恋人が、いつも一緒にいる。
共に笑い、共に泣き、時に喧嘩し、時に力を合わせ、彼等は冒険を続ける。
いつものように、いつもみたいに、彼等は変わらぬ姿で歩いていく。
いつかゼイフェアを卒業し、皆がばらばらになる日が来るかもしれない。それでも、彼等は怖くなかった。
どんな場所でも、どこにいても。
彼等の絆は、これからも決して、途切れることはないのだから。
以上、投下終了。
とりあえず、個人的な区切りが付いたので満足。最後の部分を何度書き直したことか…w
ともあれ、長らくのお付き合い、ありがとうございました。
それでは、この辺で。
完結、お疲れ様です。最後までお見事でした!
BEO9EFkUEQ氏の作品は泣けるものが多いなぁと思います……。仲間って素晴らしい!
ロストなんて本当はしたくないのであります……自分。
んで、流れをぶった切るようですがディモレアさん家シリーズのスピンオフを投下であります。
エロ無しってかほぼギャグオンリーです。
はじめまして。僕はパルタクス学園の生徒会で副会長を務めているフェアリーです。学科は司祭でパーティの中枢です。
生徒会の仕事の他に部長を務めている美術部とか、学生の本分である迷宮探索とか色々と忙しいですけど、まぁそれなりに楽しく学園生活を行っています。
え? 副会長はギルガメシュ君じゃないかって? ああ、彼も副会長ですよ。パルタクスは冒険者養成学校という性質上、万が一の事態に備えて副会長が2人いるんです。
……もっとも、生徒会長のマクスター君と副会長のギルガメシュ君がよく仕事をやってくれているので、助かっています。だから僕の仕事は生徒会室のお茶汲みか会議の出席です。
……マクスター君とギルガメシュ君が交渉事に向かないからですけどね。あの2人は性格に難がありますから。
と、いう事で本日は委員会が集まる会議です。各委員会の委員長と副委員長は全員出席です。揃ってないのは生徒会だけです。書記と会計も出なきゃいけないのに。まったく。
「えー、それでは今月の会議を始めたいと思います。まずは学校からのお知らせですが、今月は特にありません。ディモレアが討伐されて以来危険なモンスターなども確認されていません。
大きなイベントも当分無いと思うので安心してください」
先日、あのマクスター君主導で突発的にイベントを行ったばかりである。賛否両論だったが成功したと言っても過言ではない。
「それでは、各委員会から何か意見は……」
「はいッ!」
僕の問いに、即座に反応したのは風紀委員長を勤めるバハムーンの少女だった。
戦士学科でパーティでも前衛として活躍する彼女だが、バハムーンにしては身長が極端に低く中学年ほどのクラッズと同じぐらいの身長しかない。成長期はまだだからこれから伸びると本人は言い張っている。
「はい。風紀委員長。なにか」
「あー、風紀委員会からなんだけど、先日のイベントで多くのカップルが誕生して、それは学園生活としては喜ぶべきだとあたしは思う」
「はい、そうですね」
同時に、美化委員長のセレスティアと副委員長のディアボロスが照れくさそうに苦笑する。この2人も先日めでたく誕生したカップルで大変仲良しである。
「けどな………校内の治安が急激に悪化しているんだよな、風紀委員会としては」
「……例えば?」
「例えば? ………その、校内でだな……」
バハムーンが口をつぐんだ為、風紀委員会の副委員長であるノームの少年が言葉を続ける。
「いわゆる性交です。寮の部屋でやるならまだいいですが、間違っても公共の場である校庭の片隅や屋上、挙げ句の果てには廊下で行っている者も先日確認されました」
「「!!!」」
美化委員のカップル2人が視線をそらしたのは言うまでもない。まったく、この2人は。
「別にやるなとはあたしだって言わない。そりゃあ、学生とはいえ、うん、まぁ、アレだからな? それに、あたしらぐらいの年齢ならば別にやってもおかしくないとは思うよ。
うん、だってそれだけ仲良いって証拠だから別に禁止しろとは言わない、けど秩序ってもんが必要だよ。やっぱ」
「普段の鬼の風紀委員長が言う発言じゃありませんね」
「叩き潰すぞこの羽虫!」
体格では僕と大差無い筈ですが、貴方は。
「と、ともかくだな。そういうのを生徒会の方から注意するように促してくれって事だ。……解ったな、美化委員の2人」
「……はい」「ぜ、善処します」
このバカップル……。
「それと、だ。下級生を中心に不安になってる事態が起こってな」
「それは?」
風紀委員長の話はまだ終わらないのか言葉を続ける。はて、何か大きな事件でもあっただろうか。
「先日のイベントの翌朝なんだが……。あんたその時いたっけ?」
「先日のイベントは準備はしましたが当日と翌日は迷宮探索でいませんでしたね、僕は」
僕の代わりにターク君が手伝ってくれたと聞く。その後何かあったのだろうか。
「いや、おたくのもう1人の副長がね。朝から大噴火しやがって」
「ギルガメシュ君が?」
「うん。そこの美化副委員長から美化委員長を振り向かせてやるって宣言して。宣戦布告だとか恋は戦争とか」
風紀委員長の言葉に美化委員の2人が実に気まずそうに頭を抱えた。待て、それは初耳だぞ。
と、言うより孤高の存在であるギルガメシュ君が色恋に走るというのも想像しにくいが。ああ、前に一度あったか。あの時は確か図書委員会のサラ君が相手だった筈。……破局したのか。
「うちの副会長も大変な人ですからねー……ああ視えて真面目だけどキレるとそれだけで周囲に恐怖を振り撒きますし」
生徒会書記を務める一つ下のセレスティアの少年がため息をつく。生徒会はセレスティア率が高いのは気のせいじゃない。
「で、生徒会の方でなんとか頼むよ。あたしからは以上」
「わかりました。では、他には?」
「美化委員会からです。購買の利用状況が悪いと……マシュレニアのエストレッタ生徒会長から。他の学校に迷惑をかけないでくださいという事です」
「あ、他の学校への迷惑云々で図書委員会から。ランツレートの図書室で借りた本をこちらの図書室に返さないで下さい。ランツレートまで送り直すのが大変です」
「保健委員会から。新入生パーティはバランスの悪いパーティが多いです。ちゃんと回復役や盗術系学科の生徒を組み込むようにお願いしておいて下さい。新入生が保健室に搬入されたり回収されたりする数が多いです」
各委員会からの報告は続く。どうやら報告書をまとめるのは一苦労だ。
……まとめるのは僕ではないけれど。
「わかりました。えー、では以上で……」
「……あの。予算委員会から」
最後にか細い声が挟まる。哀れにも予算委員長にされてしまったフェルパーの少女である。
「はい。なにか?」
「各部活からの予算請求なんですけど……部活の選考基準について疑問を呈したいんです……」
「それはなぜ?」
「………文化部の部活は活動が不明瞭なのが多すぎます。特に『ひで部』とか『あそ部』とか何がしたいのかわかりません……それなのに予算請求されても困ります……」
「わかりました。生徒会の方から注意しておきます。……って、『あそ部』はともかく、『ひで部』ってなに!?」
「わ、わかりません……後は『ころ部』とか『叫部』とか『空き缶同好会』とか……あと、一番高額な予算を請求してきたのが『ひらめ愛好会』です」
「『ひらめ愛好会』? あれ、確かあの部活って部長と副部長と会計の三役が対立して分裂したんじゃ?」
保健委員長が首を傾げた時、風紀副委員長が口を開いた。
「いえ、部長が『ひらめ愛好会』に残留して会計が『ししゃも同好会』を立ち上げて副部長の1人が『はまち部』を創ってもう1人の副部長が『ほっけクラブ』を創って、内部対立に愛想をつかした部員達が『イカ研究会』を立ち上げたのです」
「なに、その複雑な事情……」
と、言うより最早何が何だかよく解らない事情だ。
「あ、それと予算委員会からは『とつげき馬部』が先日地区大会で一位入賞したので表彰を出したいんですけれども」
「考慮しましょう」
僕はメモを必死に取りつつ、書記にもちゃんと記帳するように促す。それにしても何でマクスター君もギルガメシュ君も来ないんだ。
「ああ、予算委員会にお願いです。ともかく、今年度の『ネコミミメイド同好会』の予算をゼロにしておいてください」
「はい、わかりました……」
「待て待て待て待て待て! なんで予算ゼロなんだ! おかしいだろそれは!」
僕が予算委員長に告げた直後、窓ガラスを文字通り突き破って生徒会長のマクスター君が飛び込んできた。
「来るのが遅いですよ」
「それはどうでもいい。それより副会長。僕は君に問いたい。何故ネコミミメイド同好会の予算がゼロになるんだ? 正当な理由を400字以内で説明しろ」
「むしろそれで予算請求して通る方が変です。と、いうより幾ら生徒会長だからってそんな訳の解らん部活の予算を通そうとしないで下さい」
「いやいやいやいやいや! ネコミミメイドは文化だ! 後世に伝えるべき民族文化で歴史だー!」
「兄貴の言う通りや! 予算ゼロは勘弁してや!」
いつの間にか扉から現れた学園の番長であるターク君も泣き付いてくる。だが、それは無視する。
「駄目です。予算ゼロ、と。これで通しておいてください」
「はい。副会長」
「予算委員長も何でそれを受け取る! せっかくのネコミミなのに何て非道な!」
「フェルパーだからでしょう。非道なのは関係ないでしょうけど」
未だに泣き叫び続けるマクスター君をよそに、本日の会議はこれで終了である。挨拶をしなければならない。
「では、皆さん。起立」
「おい、マック! 何処に行ったぁっ!」
いきなり怒声が響き、扉が開いてギルガメシュ君が現れた。
「あ、ギル! 大変なんだ聞いてくれ! ネコミミメイド同好会の予算がゼロにされたんだ!」
「知るかアホ! それよりテメェなぁ、部屋のネコミミグッズを掃除しろとあれほど言ったよな? ああ?」
「ど、どうしたんだギル」
ギルガメシュ君がマクスター君の胸倉を掴み、殺気の込もる視線で見つめる。
「……部屋の床が抜けて下の部屋が大惨事だ」
「そいつは大変だ」
「テメェの部屋が原因だろうがっ! この前掃除したばっかなのに何でまた溢れてるんだ!」
「君が捨てたのをまた拾いに行ってきたからだ!」
「処分しろってあれほど言っただろうがテメェはよぉぉぉぉぉぉぉっ!」
そう言えばマクスター君は個人部屋だった筈。で、その一階下の部屋がギルガメシュ君……。ちょっと大変そうだ。
「いや、その前に2人とも仕事してくれよ」
「「お前は会議に出るかお茶汲みしかしてないんだからいいだろう」」
「………本当にこの2人を生徒会役員にしたのは誰なんでしょうね?」
本当に疑問に思います。
マクスター君とギルガメシュ君が言い争いを始め、チャンスとばかりにギルガメシュ君に風紀委員長が先日の一件について問うとギルガメシュ君が激怒、テーブルを持ち上げて……ふぅ、これじゃまだ当分長引きそうだ。
パルタクス学園の副会長である僕は、今日もため息をついて仕事を続けるしかないようです。当分のんびりできそうにありませんね……。
僕は頭を抱え、ひとまずこの混乱を収拾する方法を考えるのでありました。
投下完了。
風紀委員長とか今後も登場予定であります。
無名なのにキャラの書き分けがしっかり出来てるBEO9EFkUEQ氏を尊敬しつつ。
本当に、本当にお疲れ様でした!
>>45 お疲れ様でした!!
やはりLostPTのヒューマンはツボ過ぎて泣いてしまう・・・
ヒューマンは幸せだろうな・・・・・改めてあの世で幸せであるよう祈る
それにしてもこれで永遠にお別れみたいで無償に淋しさが込み上げる・・・
また会えるときを願って、再度お疲れ様でした!
>>50 こちらもお疲れ様です
あそ部だのししゃもだのひど過ぎるww
なによりもマクスターの本気が凄い
床をぶち抜くとかレベル高すぎるww
昨日やっと給料入ってとともの2買ってプレイしたのでうp
っていうか2はここでいいの?
わざわざ分ける必要性があるとは私は思わないんだけど
とりあえず、うp
おk、とりあえずうpるぜ。
クオリティーは期待スンナっ!
うーむ。
いや、なんていうか?
どうしてこうなった……?
クロスティーニ学園に入学して早三週間、課題もこなし、
順風満帆な学園生活を送る俺の目の前で二人の少女が言い争っている。
「彼の隣を歩くのは私です、いつも後ろにいて目立たない貴女が隣に立てば彼の栄光が陰ってしまいます」
こちらがその豊富な魔力と明確な魔法で、
俺のパーティー最大の火力を誇る魔法使いのセレスティア。
「……我がままで傲慢な女を連れている方がよっぽど品位を下げるような気がするけど?」
そしてこっちが引っ込み思案であんまり前に出ることはないが、
常にパーティー全体が有利に戦えるように補助魔法を扱う人形遣いのディアボロス。
「言いますね……」
「……ふん」
どちらも俺のパーティーにとっては要である。
で、なぜ言い争っているかというと、
ここのところずっと課題ばかりで、迷宮はもとよりモンスターがわらわらといるような場所に行きっぱなしだった。
学園に戻ってくるのは精神力が重要な魔法を扱うための休息を取るため程度。
格闘家の俺や、剣士のフェルパー、そして忍者のグラッツ、レンジャーのヒュム子は唯一関係ないのだが……。
高くて買えない回復アイテムの代わりにセレスティアのヒールに依存しっぱなしな俺達としては重要なことだった。
「それならば、今一度勝負と行きましょう。まぁ魔法を使える私に貴女が勝てる道理はありませんけれど」
「……それはお互い様。それに私は貴女の目をだませることを忘れないほうがいい」
二人のまわりに魔力以外の何かが渦巻き始める。
つーか場所を考えろ、こんな校門の前で大声で喧嘩されてる方が俺に対する影響がひどいだろうが。
しかし彼女らは喧嘩をやめる様子はない。
さて……どうしたものか?
考える俺のそばに、嬉しそうに笑顔を浮かべたフェルパーがやってきた。
「うむ、我が主は今日ももてているようでなによりじゃ」
「同じ状況になったらお前にも言ってやるよ、その台詞」
「ははは、そいつは残念。我はハッキリしておる方でな。それにお主以外の男なんぞあり得んて」
「はいはい」
こいつはいつもこんな感じだ。
俺がパーティーを組んでくれる奴を募集していると、隣のクラスだというのにわざわざ入ってきた。
後衛は同じクラスだったあの二人のおかげで間に合っていたため、前衛を担ってくれる彼女は確かにありがたかったが……。
だがしかし、こいつはいつも俺のことを主と呼び俺のことを好きなようなそぶりを見せてくる。
しかしそいつはどう見てもポーズだ。だから俺はいつも軽くあしらっているのだが。
「しかし、このままではいつまでたっても街へはゆけぬぞ?」
「あー、そうだな」
「どれ、ここは我と行かぬか?」
「お前と?」
「あぁ。今あの二人は目の前の敵しか見えておらん。抜けだしても分かるはずもないしな」
「なるほど。まぁせっかくの休みだ、無駄にするのもなんだし行くか」
「相変わらず話が分かるの。では行こうか」
どうしてか、ひときわ嬉しそうに笑ったフェルパーは俺の前に立って歩き始めた。
特徴的なしっぽはヒラヒラと揺れ、良い感じに感情表現している。
そしてしばらく歩いているとフェルパーが俺の隣を歩きだした。
「のぅ……お主は、あの二人のことをどう思っておるのじゃ?」
「あの二人って、セレスティアとディアボロスか?」
「うむ」
「そうだな……まぁいい奴らだと思う。セレスティアのほうはまじめすぎるけどな。この間俺がケーキ買って時のこと覚えてるか?」
「覚えておる。あの娘、ワンホールを均等に等分せんと気が済まんタイプだったとはな」
「全くだ。おかげでついでに買ってきたジュースもぬるくなったし散々だったぜ」
「そうじゃの。で、ディアボロスはどうなんじゃ?」
「うーん、あいつは……あぁ腹話術ウマすぎて怖い」
「ああれは怖いのぅ……。技術としては天下逸品なのだが、彼女がしゃべりながら人形もしゃべっているのはどうやっておるのか……」
「謎だよなあれ」
「うむ」
と、ここで会話が途切れた。
今まで相槌を打っていたフェルパーがなぜか急に黙ってしまったからだ。
俺はもともと話し上手な方じゃない。聞かれたからこうやってそれなりに返せただけだ。
なによりも年頃の女の子に振る話題なんて持っちゃいないしなぁ……。
しばらく気まずい沈黙。
それに俺が耐えかねて何とか話を振ろうとした時だった。
「その……」
「ん?」
「我のことは……どう思っておるのじゃ?」
そう言った彼女はどこか様子がおかしかった。
さっきまであれだけ元気で嬉しそうだった彼女は顔を伏せ、
いつもピンとしている耳も垂れ下がっていた。
まぁ、この状態が分からないほど俺は鈍くはない。
が……。
分かるがゆえにどうこたえるべきかとても悩む。
「えっと……まぁそうだな。頼りにしてる」
「……?」
「俺のパーティー、正直お前と俺以外前線を支えきれる奴はいないだろ?クラッズは奇襲と横からの襲撃が主だしさ」
「そうじゃのう……」
「だから……たぶん一番パーティーの中で信頼してるかも知れないな。背中を預けられるというかさ」
「そうか……。うん……」
そして俺の言葉に頷いたフェルパーは唐突に俺の手をつかんで走り出した。
「ちょっ!?」
「黙ってついてくるのじゃ!」
彼女は俺の手を引っ張って人気のない、道から見えないような草むらの中に連れ込んだ。
と、同時に俺を押し倒し馬乗りになる。
「ふぅ……さて、我は主に一つはっきりさせておきたいことがあるのじゃが」
「な、なんだよ」
「好きじゃ」
「……は?」
「だから好きじゃと言っておるのじゃ。ライクでもないラブで」
「えーと……状況が飲み込めないんだが。とりあえず……今までのはフリじゃなかったと?」
「うむ。初めて見た瞬間、お主のその真っ直ぐな目に惚れてな。そしてさっきの答えで満足した」
「満足って……」
「嘘を言っておらんかった。我は嘘をつく輩が大っ嫌いなんじゃ。その点主の仲間は誰一人として嘘はつかん気持ちの良い仲間たちだからな」
「で……?抜け駆けか?」
「悪いの、据え膳食わねばなんとやらじゃ。それ以前にセレスティアとディアボロスは二人とも主に思いは伝えとらんしのう。すなわち言った者勝ちだったのじゃよ」
尻尾がうれしそうに揺れている。
……意外に大胆というか、
いや、ずっと大胆だったんだがいつもの性格からして本気に見えなかっただけか……。
でも……。
「いいのか?俺で。こう見えてもできの悪い男だぜ?」
「ふむ、そうじゃの。女子二人がアピールしておるというのにそれを無視するようなの」
皮肉たっぷりに言う彼女の頬に手を添える。
「……正直あの二人は俺には無理だ。お前みたいな……静かにしていてくれる奴のほうが好きなんだよ」
「……っ!」
真っ赤になるフェルパー。
それに俺はたたみかけるように言葉を紡いだ。
「実はな、最初お前を見た瞬間俺は神様にすげー感謝したもんさ。だって俺の好みどんぴしゃりの女が俺のそばに来てくれたんだぜ?」
「あぅ……」
「綺麗な銀色の髪で、清楚でおとなしい。でもおとなしいだけじゃなく大胆な面もある。そうそう、料理上手っていうのもすげぇポイント高いぞ?」
「……うぅ……」
「だからさ……本当は好きだったんだよお前のこと」
そして俺は彼女の後頭部に手をまわして顔を引き寄せる。
ふわりと、女の子特有のいい香りが俺の鼻をくすぐった。
それと同時に、やわらかい淡いピンク色をしているその柔らかそうな唇へキスをした。
あ、すげぇ柔らかい。
そしてフェルパーのほうはすでに許容限界を超えたようでそれこそトマトのように顔は赤くなり、
全くと言っていいほど状況を飲み込めていないようだった。
可愛いやつめ。
そのまま俺は彼女を抱えたまま横に転がって態勢を入れ替えた。
「さて、誘ったのはお前だぞ?」
ようやく色々と呑み込めたらしいフェルパーは小さくうなずいた。
普段あんな口調だが……体つきは割と小柄なほうな彼女。
こうして改めてまじまじと見てみるとギャップがものすごいな。
声だけ聞いてれば大人の女性のそれなのだが……。
ちょっとだけ攻めあぐねいているとフェルパーがモジモジと俺の下で動く。
「主よ……その……」
「ん、リクエストか?」
「違うっ!……えっと……その初めてなのじゃ……」
その言葉に俺はキスをして答える。
答えはこれで十分だ。
そしてその意味はしっかりと伝わったらしく、彼女は微笑んだ。
とりあえず服の上から胸を責めてみる。
「……っ」
僅かに声が漏れるが、その体はまだ震えたままだ。
この先の行為が怖いのだろう。
とはいうものの俺自身それほど経験があるわけじゃない。
優しくできるかは……正直微妙だった。
制服のボタンをはずし、肌を空気にさらさせる。
「……大きいほうが好きじゃろう?」
「いんや、これぐらいが一番。つくづく俺の好みだよお前は」
フォローを入れつつブラのはずして直接胸に触れる。
柔らかく温かい。
言ったとおり小ぶりだが、かなり柔らかい。
僅かに力を入ると揉めば指はすぐに埋まり、綺麗に形を変えていった。
「ん……はぁ……」
彼女の吐息にわずかに甘い調子が含まれてくる。
そのタイミングを見計らってスカートの中へと手を滑り込ませた。
驚いた顔を浮かべた彼女に問答無用でキスでそれを防ぐ。
閉じられかけた膝から力が抜けた時を見計らい、
するりと彼女の一番大事な部分を防ぐ布を脱がすことに成功した。
しかしそこを攻める前にじっくりとキスを楽しむ。
唇を重ねるだけでなく舌を差し入れようとした。
「うむっ……!?……あぅ……」
驚いた彼女だったが舌を噛むようなことはせず、恐る恐るだが俺を受け入れてくれた。
それに調子を付けた俺は少しきつめに彼女の口を犯しす。
彼女の口のありとあらゆる場所に俺の痕跡を残すように。
けれど、いきなりそれはまずかった。
「むぁ……!むーー!!…………あむっ!」
「……!!」
噛まれた。
そう、見事に舌を。
とはいうものいわゆる甘噛みだ。けれどフェルパー特有の鋭い八重歯が食い込んでいる。
もう少し力を入れて噛まれると穴があく、絶対に。
そして当の本人は俺を睨みつけていた。
俺はとにかく頷いて答える。
もうしないという意味をこめて。
そうしたら彼女は舌を開放してくれた。
「冷や汗かいたぞ……」
「調子に乗るからじゃ。まぁ……悪くはないがのう……」
怒った顔から一変して微笑んだ彼女は眼を閉じ、体から力を抜いた。
いつの間にか彼女の体の震えは止まっていた。
「後は……好きに」
「……あぁ」
その言葉に従って俺はようやく彼女の一番大事な場所に手をかける。
キスをしながら脱がせたそこは、すでに若干濡れていた。
初めてだというのに、まぁいわゆる本能なんだろうなぁ。
とかいう俺もすでになかなかやばいが。
そして、そのまま丁寧に彼女の中をほぐしていく。
一度も男を受け入れたことのないそこは狭く、どうもきつそうだった。
けれどもここまで来て後に引いたら男として最低だろう。
自分を思ってくれている女が目の前にいて、いろいろと了承済みだというのに。
「ま、覚悟かな?」
「ふぇ……?」
愛撫ですっかり夢心地になってしまっていたフェルパーに再びキスをする。
「たぶんめちゃくちゃ痛いと思うから先にことわっとくぞ」
「……望んでおるのだから、平気じゃ」
そして俺達は笑いあった。
彼女のあらゆる痛みは俺が抱え込もう。
そして彼女は俺の支えとなってくれるだろう。
戦いはもとより、俺の心の支えとして。
所変わってクロスティーニ学園校門前。
セレスティアとディアボロスはいまだに闘っていた。
ただ両者魔力は付き、赤い豚の最後の戦いさながらの殴り合いになっていた。
そして、両者の拳がぶつかり合ったとき、セレスティアがあることに気が付く。
「はっ!?バハムートさんがいない!?」
その言葉にディアボロスも辺りを見回す。
見慣れたパーティーの残りのメンバーが辛抱強く二人を待ってくれているが
そこにセレスティアが言ったようにバハムートの姿はなく、そしてもう一人、
フェルパーの姿がないことに気がついた。
「……フェルパーもいない」
そしてたっぷり30秒。
「……もしかして先越された!?」
はい、その通りです。
そしてバハムートは地面に大の字になってねっ転がっていた。
その隣で身なりを整えているフェルパーが見下ろしながら笑みを浮かべる。
「あ〜………もーむり」
「盛りのついた動物のようにやりおってからに。我より経験豊富なんじゃなかったのかえ?」
「だから言ったろ……お前は俺の好み全部持ってるって。そんな女、味わいつくさなきゃ勿体ねぇだろ。それに最後の一回以外痛かったろ?それもさ」
「……そうじゃな。……ふふ、ありがとう主よ。これで堂々とそばに居させてもらえるの」
「……まぁな、そう言うわけだ、これからも頼むぜ?」
「任せておけ。背中といわず共に行こう」
愛し合う男女にしてはいささか無骨な挨拶だが、二人は拳を突き合わせ、そして立ち上がった。
彼らの冒険はまだ始まったばかりだ。
あとがき
これが俺のパーティーだ!
そんな感じで現在とともの2序盤なので書いてみた次第。
本当はどっかでリプレイ書こうかとか思ってたけど、いろいろムリっぽいのであきらめ、
で、一度湧いてしまった創作意欲をぶつける先がここだったというわけだ。
どことなく中途半端ですまん。
でもこういうのって想像する余地を残しておく方が楽しいよね!
(妄想をぶつける場で何を言うか)
それじゃ、また!
ちなみにゲーム進めば、またこいつらが出てくるかもしれないよっ!
なんでだろうな?
バハ男のもてっぷりはw
やっぱニブチンっぽいのが主役に持ってきやすいんだろうか…
絆…とうとう完結しましたか、お疲れ様でした!
途中のところでセレス男と人男のアッー!を期待した俺は負け組
◆BEO9EFkUEQ師
絆、お疲れ様でした!!LostPTのフェルパーが刀を捨てるところが素敵過ぎる。
てか金ってバハ子ww
ディモレア(ry氏
風紀乱れすぎwww
冒険者養成学校って何て自由なんだww
>>55 GJ!
もてすぎだよバハ男w
まだ64レス目なのにもう容量の5分の1を食いつぶしてる事実。
速い。
ヒューマンさん童貞だったんすかwww
ナパーム虐殺フェアリーとの絡みをもっと見てみたいぜ
あんまり関係ないけどさ。今回も攻撃食らった時とか、壁にぶつかったときの♀キャラの声がエロすぎる……。
仲良しパーティーって良いよね
ウチのパーティー、相性値がセレ子を除くと軒並み90%以下だわ
ギスギスし過ぎだっつの
>>66 アレはヤバい。フェルパーとか別に妄想してないのに凄く興奮する。
>>68 だよなー。
個人お勧めがバハムート♀だと思う。
中々良い声で……。ムラムラしてきた。書くか
あと、保健室のベッドもエロす
>>51 マクスター=ネコミミ萌え、ターク=メイド萌え、なんて凄まじいキーワードがあるからさ。
ただ、とともので一番メイド服が似合うのは2のキャンティだと思うのは気のせいでしょうか?
彼の本気は床すらもぶち抜くのです。
>>55 GJ!バハ男とフェル子とはまた珍しい組みあわせですなw
だがバハ男も結構な男の子ぶりなのでそこがいいw
>>64 あれだけの規模なら自己責任の素晴らしさで何でも出来るのですよ、多分w
ネコミミメイド同好会は生徒会長が予算を突っ込んだから出来てる訳だし。
>>55氏が2のネタを書いた事を受けてちょっと自分も2で書いてみた。
一部ネタバレあるかも。
ただ、ちょいと凌辱注意。
72 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:28:33 ID:gjVJz1L5
魔女の森。
ブルスケッタ学院に隣接し、クロスティーニ学園からもそう離れていないこの森は下級生パーティにとってある意味での難所で知られていた。
気を抜けばとてつもない強敵が出て来る、ワープゾーンが迷路のように配置されている、雷の落ちる岩場へ曲がるように回転する地面の罠、変わりやすいというよりすぐに嵐になる天候…エトセトラ、エトセトラ。
それなりに経験を積めば決して怖い場所ではない。だがしかし、それでも上級生だろうと下級生だろうとこの森で気を抜く事は死を意味していた。
そして、この日も魔女の森では雷が鳴り響き、雨が降り注ぐ嵐の中、6人の少女が奥へと進んでいた。
彼女達はクロスティーニ学園の制服を着用しており、彼女達がそこの生徒である事は間違いはない。しかし、森の中に彼女達以外の人影は見当たらない。こんな嵐の中を進む生徒も普通はいない。
だが、彼女達は周囲に注意を払いながら、それでも臆する事無く一歩一歩前へと進んでいた。
先頭を歩くのはバハムーンで、力強い種族である彼女がこのパーティの最前列での切り込み役である事が解る。
その次に続くのはディアボロスで、バハムーンのすぐ真後ろを、同じように注意を払いながら進んでいる。
ディアボロスという種族は他種族とは馴れ合わないのだが、先頭を歩くバハムーンには気を許しているのか、少し動けばくっつきそうな程近い距離だった。
三番目を歩くのは前を歩く2人と少しだけ距離を置いて進むヒューマンだった。彼女は何も持っていない。だが、その拳と足が彼女の武器である、所謂格闘家に身を置く彼女にはそれだけで充分だった。
その次に4番目としてヒューマンの後ろに続くのは、成長してもさほど体格も大きくならないクラッズだった。
ヒューマンの後ろを守るかのように周囲に視線を気を配りつつ、足音を忍ばせて歩く彼女はまるで忍者に相応しい。実際彼女は忍者学科に籍を置いている。
そしてクラッズが周囲を警戒するのに合わせて周囲に視線を送るのはパチンコを握りしめたフェアリーだった。しかし、彼女の服装だけは他の面々よりも浮いている。
それもその筈、彼女は仲間達の支援役であるアイドル学科に身を置いているからだろう。
しかしその衣装も雨のせいで少し濡れつつあるし、時折響く雷の音にも彼女は身をすくませる。
そんなフェアリーを後ろから優しく後押しするのは背中に生えた純白の翼で浮遊するセレスティアであった。
手にした杖が彼女が魔法使いである事の証明であり、尚且つこのパーティの火力である事も示している。
彼女達は周囲を警戒しつつ進んでいたが、やがて開けた場所で足を止めた。
「なぁ、クラッズ」
二番目を歩くディアボロスが口を開き、クラッズが少し驚いたように視線を向ける。
「なに?」
「この依頼はお前が受けた話だが……その話は本当なのか?」
「まったくだ。私も疑問に思ってきたぞ。こんな嵐の日だというのに本当に黒いローブの連中が魔女の森をうろついてるなんて本当か? どこを探しても木と岩とモンスターしかいないぞ」
ディアボロスの言葉に合わせるように先頭を歩いていたバハムーンも頷く。
そう、彼女達がこんな嵐の日にこの森に足を踏み入れたのはクラッズがクロスティーニ学園の姉妹校でもあるブルスケッタ学院で受けてきた依頼にあった。
魔女の森で最近うろついている謎の黒いローブの連中について調べて欲しい、という内容である。依頼を受けたクラッズが即座に行動を起こす事に他の面々が賛成した為、ディアボロスとバハムーンはしぶしぶついてきたに過ぎない。
「……せめて雨が止めばよいのだが」
「まったくだ。あたしとバハムーンの時間を潰した責任は重いぞ」
「ディアボロス……」
バハムーンの言葉にディアボロスが口を開き、バハムーンはため息をつく。このディアボロスは少し百合の気質でもあるのか、パーティを組んだ当初からバハムーンとだけは仲が良かった。
バハムーン個人としてもディアボロスは嫌いではないし、背中をしっかり守ってくれてるのは嬉しいが油断していると襲いかかってきそうなのが怖い。
73 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:29:51 ID:gjVJz1L5
「まだいないって決まった訳じゃないじゃん」
ヒューマンが口を開き、セレスティアが「それもそうですね」と続く。
「え? でも、雨はどんどん激しくなるし……」
フェアリーが気弱そうな声をあげ、バハムーンが「確かにな。お前が風邪を引いたら困る」と続ける。しかし、ヒューマンもクラッズもセレスティアも首を横に振った。
「大丈夫だって、まだまだ」
「うん。大丈夫、調べなきゃ戻れないもん」
「……やれやれ」
ヒューマンとクラッズの言葉に、ディアボロスは諦めたようにため息をついてバハムーンに視線を向ける。
「まだ行くっきゃないのか。解った。行こう」
バハムーンが斧を担いで歩きだそうとした時、ディアボロスが「待て」と止める。
「どうした?」
「……今、気付いたんだが。何かいないか?」
「何が?」
ディアボロスの言葉にバハムーンが首を傾げる。だが、セレスティアが即座に口を挟んだ。
「ディアボロスさんの言う通りです。見られてるような感じが、今したんです」
「気のせいだろう? モンスターでもいるんじゃないか?」
「いや、違う。これは――――――」
ヒューマンが口を開いた時、フェアリーが小さく声をあげ、彼女達は一斉にフェアリーの視線の先を見た。
その視線の先、つい先ほど彼女達が入ってきた広場の入り口から、数人の黒いローブの人影が入ってきた。
セレスティアが視線を前方に送れば、反対側の通路からも数人、右から、左から、と気が付けば、二十人ほどに囲まれていた。
「囲まれたな……」
バハムーンが斧を構えながら呟き、ディアボロスが反対側へと周り、他の四人を庇うかのように剣を構える。
「どうする? 相手の数が多すぎるよ」
ヒューマンの問いに、ディアボロスとバハムーンが同時に口を開く。
「相手の数が多い。一旦戻った方がいいかもな」
「あたしも賛成だ……おい、セレスティア。魔法でも打ち込んで穴を開けてくれ。突破するぞ」
ディアボロスの言葉に6人はそれぞれすぐに移動した。バハムーンとディアボロス、そしてヒューマンが片側に行き、その後ろをクラッズ、セレスティア、フェアリーがつく。一つの方向に寄り始めたのに気付いたのか、ローブの人影は少しずつ移動し、囲みを狭め始めてきた。
「行くぞ!」
バハムーンが近くの黒いローブに斬りかかり、ディアボロスが2撃目を叩き込む。他のローブが近づこうとした時、セレスティアは既に詠唱を終えていた。
雨の降る中で、雷属性の魔法はかなり有効だった。文字通り雷が直撃し、数人がその一撃で崩れ落ちる。そこへ、穴が開いた。
他の黒ローブが追いすがるより先にヒューマンの拳が相手を捉え、そこへクラッズとフェアリー、そしてセレスティアが飛び込んだ。他の三人もそれに続く。
囲みを突破された事に気付いた黒ローブは即座に追跡を開始してきた。数人を倒したとはいえ、まだ十人以上が残っている。
そして何より、逃げ出したはいいがここは魔女の森。そこら中に罠が仕掛けられており、彼女達は思ったより進めない。
特に、順番が真逆になった分、フェアリーやセレスティアのように浮遊していれば進める場所もクラッズやヒューマンには進めない。その度に魔法をかけたりしながら、とにかく急ぐ。
74 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:30:48 ID:gjVJz1L5
「くそ、もうあんな所にいやがる!」
背後を振り向いたディアボロスが悪態をつき、バハムーンも「フェアリー、早くしろ!」と叫ぶ。
「待って、道がどっちか……!」
「ヤバい、追い付かれる……くそ!」
ディアボロスは剣を抜くと、そのまま迫り来る黒ローブへと駆け出した。
「時間を稼いでるからさっさと行け! 早く助けを呼んでくれればいいから!」
「おい、ディアボロス!」
「早く行け!」
バハムーンが声をかけた時にはもう黒ローブの先頭と交戦し始め、バハムーンは前へと向いた。
「行くっきゃない」
「ディアボロスさんを置いてく気ですか!?」
セレスティアがバハムーンを振り向く。普段あんなに仲が良いのに見捨てるのか、と言わんばかりだ。
「今は助けを呼んでこいってディアボロスも言ってただろ」
「でも、1人じゃ長くは持ちません」
普段ディアボロスとセレスティアの仲は良くない。だが、それでも仲間である事は認めている。セレスティアは、仲間を見捨てたくはないのだろう。バハムーンはため息をつく。
何を言ってもセレスティアは首を縦には振らないだろう。ならば、行くしかないと。
「…………解ったよ。助けに行く」
「じゃあ、ヒューマンさん。お願いしますね」
「……セレスティアも行くの?」
「ええ」
「…………そう。じゃあ、行くよ2人とも。急いで助けを呼びに行くよ」
ヒューマンはクラッズとフェアリーを先導して走り出し、バハムーンとセレスティアは黒ローブへと向かっていく。クラッズとフェアリーは一瞬だけ呆気に取られたが、すぐにヒューマンの後を追い始めた。
「ねぇ、クラッズ……ディアボロスちゃん達、大丈夫なの?」
「わかんない。けど、あたし達が早く助けを呼んでくるしかない」
フェアリーとクラッズがそんな会話をしつつヒューマンに追い付いた時、ヒューマンは「遅い」と口を尖らせ、視線を前方に向けてから足を止めた。
「……嘘。どれだけ数がいるの」
ヒューマンの言葉に2人が前方に視線を向けると、十人ほどの黒ローブの集団が待ち構えていた。
「嘘、やだよもう……!」
フェアリーが怯えた声をあげ、浮遊状態からふわふわと地面に落ちて尻餅をつく。
クラッズが慌ててフェアリーを立たせるが、フェアリーはとても浮遊状態を保てる状態じゃなかった。
「フェアリー、クラッズ。ここは私に任せて。ブルスケッタ学院に助けを求めてきて、お願い」
「ヒューマンちゃん、大丈夫?」
「大丈夫。何とかなる」
ヒューマンは両手をぶんぶん振り回すと、黒ローブへと立ち向かう。クラッズは黒ローブがいない抜け道に視線を送ると、フェアリーの手を引いて走り出した。
「クラッズちゃん!」
「大丈夫、ヒューマンちゃんを信じてれば大丈夫だよ!」
クラッズがそう叫んだ時、クラッズは咄嗟にフェアリーの手を離し、フェアリーが地面に落ちる。
75 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:32:19 ID:gjVJz1L5
「痛っ! クラッズちゃん、なに……」
フェアリーが顔をあげた時、クラッズの真上に木から飛び降りてきたであろう黒ローブの人影がクラッズともみあっていた。
「っ!」
フェアリーは手にしていたパチンコをぶつける。黒ローブが僅かにひるみ、クラッズが力強く蹴り上げて近くの岩へとぶつける。
流石の黒ローブも気絶したのか、動かなくなった。
「クラッズちゃん大丈夫?」
「ありがと、危なかったよ―――――危ないっ!」
「え?」
直後、フェアリーは背後から力強く地面に叩き付けられた。脳が揺さぶられ、意識が朦朧とする。
そして同じようにクラッズが地面に叩き付けられるのが見える。黒ローブの1人はさっき倒れた1人を介抱し、別の三人がクラッズとフェアリーを地面に押し付けたまま、手にしていた武器を無理矢理奪い取る。
「やだっ、やめて、離してよ」
「離して、離してぇっ……」
クラッズとフェアリーを立たせた黒ローブの集団の1人が近づき、クラッズとフェアリーをじっと見る。
「……………」
「ヒッ……!」
黒ローブは短刀を取り出すと、クラッズの胸倉を掴んで引き寄せる。そして、その短刀をクラッズの着衣へと突き立て、ゆっくりと引き裂き始めた。黒ローブは片手で力強く抑え、クラッズが必死に抵抗しても離す事は無かった。
やがて、クラッズの幼い肢体が雨の中で露になった時、別の黒ローブが短刀を取り出し、フェアリーの身体も掴んだ。
フェアリーは目の前で裸に剥かれたクラッズの二の舞いにはなるまいと必死に羽ばたき、足を蹴飛ばしたりしたがやはり無駄だった。
ほんの数分後には2人とも一糸纏わぬ姿にされていた。
「行くぞ……」
黒ローブの1人が口を開き、クラッズとフェアリーを引き摺るようにして元来た道を歩き始める。
途中で2人がヒューマンと別れた場所まで来た時、同じように裸に剥かれていたヒューマンが黒ローブに引き摺られ始めた時だった。
「ヒューマンちゃぁん……」
「……うそ……2人、とも……」
お団子にしてある髪留めの片方が解け、額や腕からも血を流していても強気な顔を見せていたヒューマンも自身と同じ姿にされたクラッズとフェアリーを見て抵抗する意志も失せたのか、視線を伏せる。
黒ローブに引き摺られた三人が元の場所に戻ってきた時、ディアボロス、バハムーン、セレスティアの三人が引き摺られてきた三人を見て小さく声をあげた。
「お前達もか……」
「つかまっちゃったよ……どうしよう」
バハムーンの言葉に、クラッズが情けない声をあげる。ここまで来て黒ローブはようやく手を離し、6人は即座に駆け寄った。
「ごめん、本当に」
ディアボロスがクラッズにそう口を開いた。
「え?」
「皆一緒だったら突破出来たかも知れないのに、単独行動したあたしのせいだ」
「あなたのせいではありませんわ……せめて私が残っていれば」
「今さらどうでもいいだろう、そんなこと。誰のせいでもないさ」
セレスティアの言葉にバハムーンがそう口を開き、それで6人とも黙り込んだ。
76 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:34:39 ID:gjVJz1L5
6人を黒ローブのうちの数人が槍を携えて囲む。裸に剥かれた上に、嵐は更に激しさを増し、6人は冷たさで思わず身震いをする。
もっとも、フェアリーとクラッズは冷たさだけではないのか、ヒューマンのすぐ近くまで身を寄せる。そのヒューマンもセレスティアに身を寄せており、バハムーンとディアボロスはそれでも周囲で槍を構えている黒ローブを睨んでいた。
結構な人数のいた黒ローブの総計は三十人ほどだった。数人が周囲を警戒し、数人が6人を見張り、残りの二十人は何か準備をしているのか、地面に蝋燭を置いたり長い棒を使って何か書いているようだった。
「……おい、これから何をする気だ?」
「……………」
「答えろ」
ディアボロスが黒ローブにそう問いかけるが、黒ローブは無反応のままだ。
「クラッズ、何か聞いてないか?」
「………何でも、悪魔を呼び寄せる連中がいるとは聞いたけど、それ以外は特に……」
「悪魔を?」
セレスティアが問いかけた時、黒ローブの1人がクラッズを槍の先で小突く。黙れ、という事なのだろうか。
「……………」
クラッズが黙り込み、フェアリーが更に怯えたように身をすくませる。
「フェアリーちゃん……」
クラッズがフェアリーの身を案じかけた時、作業をしていた黒ローブが近づいてきて、まず最初にディアボロスを無理矢理引っ張りあげ、そのまま地面へと叩き付けた。
「ぶっ!」
地面に頭から突っ込み、泥水でも吸い込んだのが激しくディアボロスは激しく咳込む。同時にディアボロスは再び引き摺られ、先ほど黒ローブが作業をしていた場所まで引っ張られる。
三重の円が書かれており、その中心には無数の記号や数式がある。魔法陣か何かだろうか。
ディアボロスは三重の円の一番外側、円一つにつき対角線上に二箇所、三重の円全体で六ヶ所ある記号が描かれた小さい円の上まで引き摺られると、そこで暴れないようにとばかりに数人がかりで押さえつけられる。
「なにする気だ………離せっ……ぅぁぁっ!?」
ディアボロスが押さえつけられた時、その背中にメスのように薄い短剣が押し付けられ、まるで何か記号でも描くかのようにゆっくりと動かしていく。だが、短刀で素肌に直接傷をつけられているディアボロスとしては相当な痛みだった。
黒ローブは記号を描きおわったのか、背中から短剣を離すと、ディアボロスを引っ繰り返して仰向けにする。
押さえつけていた手も離れたが、ディアボロスは痛みで立てないのか動かなかった。そして、バハムーンがその反対側の小さい円へと引きずり出され、まさしく同じように黒ローブが数人がかりで押さえつけた。
ヒューマンが散々暴れはしたものの、三重の円の六ヶ所に小さな円に6人は背中に記号を彫り付けられて転がされていた。
雷こそ止んだものの、雨はまだ振り続けており、冷たさ、痛み、そして恥辱は6人にとってある意味地獄のような時間だった。
フェアリーはディアボロスが短剣で無理矢理傷つけられ始めた時から嗚咽を盛らしていて、転がされている今もまだ泣き止もうとはしなかったし、セレスティアはただ虚ろな目で周囲を見ていた。
地面に描かれた魔法陣に、六ヶ所に小さな円からしみ込む血。
淡く発光したそれを見て、黒ローブ達は全員がその円の周りに集まる。
77 :
魔女の森の悪夢:2009/07/04(土) 18:35:22 ID:gjVJz1L5
「始めるぞ」
1人が声をあげ、黒ローブが一斉に何かを唱え始める。
淡かった魔法陣の光が徐々に強く光り、その光の中から何かの影が飛び出してくるのが6人にも解った。
光が徐々に小さくなると同時に、その影の形がはっきりと見えてくる。同時に、ディアボロスが小さな声をあげた。
「悪魔……?」
古の悪魔達は首をコキコキと鳴らすと、地面に横たわる6人へと視線を向けた。
悪魔達を呼び出すのに成功したというのに黒ローブ達は無表情のまま変わっていない。だが、悪魔達はそれぞれ狙いを定めたのか、それぞれ6人へと一斉に飛びかかる。
「!」
セレスティアが気付いた時にはもう遅かった。
悪魔に馬乗りにされ、地面に強引に押さえつけられる。
「離しなさい! このっ……!」
力強く蹴り上げ、自身に飛びついた悪魔を引き剥がそうとするセレスティア。だが悪魔は蹴られてもビクともせず、セレスティアの腕から翼へと狙いを定め、翼を掴んで強引に捻った。
「ああっ……!」
翼を捻られ、力が抜けたセレスティアを抱え上げるかのように悪魔は立ち上がる。そして、セレスティアの視界の中に、悪魔の股間でそそりたつそれをはっきりと見た。
「っ……やだ、やめっうああああぁぁァァーッ!!!!」
ずぶり、という音と共にセレスティアの悲鳴が響いた。
サイズのまるで違うそれを強引に突き入れられ、そしてキツくて動かない筈のそれがゆっくりと腰の動きと共に突き入れられる。
セレスティアだけではない。悪魔達は他の5人にも手を伸ばし、バハムーンの形の良い乳房をもみくだし、クラッズの小さい穴に指を突き入れ、ディアボロスの上に跨がり、小さすぎるフェアリーを抱えたりと思い思いの方へと動かしていた。
黒ローブ達は悪魔達を眺めた後、1人が小さく口を開いた。
「ところで……いいのか?」
「何をだ?」
「俺はともかく、お前はこの連中について調べるんじゃなかったのか」
「下手に動くとバレるだろう、マヌケめ」
問いかけられた1人が問いかける1人をコツンと叩いた後、口を開いた。
「催眠にかかった振りをして仲から調べるには多少の犠牲も必要さ」
「………俺達とは学校違うからか? 非道な奴だな」
「バカ言え。敵を騙すには味方からというだろう。……ついでに、後で楽しませて貰えればそれでいいし」
「悪魔の使用済みなのにかよ?」
黒ローブの2人がそんな話をしているのを、他の黒ローブ達は気付いているのか気付いていないのか解らないが、恐らく聞こえないまま悪魔達の動向を見ていた。
「結構な美人だからな。ディアボロスとかバハムーンを犯せる機会なんて普通無いぞ」
彼女達の悲鳴が嗚咽へと変わった時、黒ローブはそう言葉を締めくくった。
彼女達の悪夢は、まだ止みそうに無い。
投下完了。
凌辱モノは実はいうとあんまり書いた事無い、てか下手だったがストレガ云々のイベント見てたらこういうのも
ありだと妄想してみたりしてた自分がいた。
ちょっとギルガメシュ先輩が首を斬りに来そうだ……。
乙
追われる時の緊張感が素晴らしかったです
黒ローブはよかったがグレーターデーモンのクエ受けられる時期とPTのレベルが噛み合ってないから恐ろしかった
80 :
先生×エル子:2009/07/05(日) 01:59:35 ID:a7Uhtijy
ある日、偶然キャンプ中にヒュム男と魔フェア子がきゃっきゃうふふ
してるのを目撃してしまった精霊エル子はセラフィム先生と
勢い余って一夜の情事に耽ってしまうのであった…
精霊エル子が命じると、先生は機械的な動作でエル子の秘部を刺激しはじめた
エル子「ん…」
セラフィムの硬質な腕部の先端が、エル子の秘部の上を往復する。
布地越しに伝わるその物質属性の感触に、エル子はじわじわと快感が
競りあがってくるのを感じていた。
エル子「も、もっと…もっと強くして…ください、先生…っ」
脳裏には、先程目撃してしまったヒュム男とフェア子が抱き合う光景が
浮かび上がっている。二人は深く舌を絡ませながら口づけし、ヒュム男はやがて
フェア子の華奢な体に手を伸ばして、体をまさぐる。やがてその手はフェア子の下腹部へと移り、
ブルマを履いた股間へと伸びて……
先生は忠実に、腕部を少し強く、少し速く動かすようになった。
エル子「ああっ!」
その刺激が、ヒュム男の伸ばした腕の光景と重なり、エル子は嬌声をあげてしまう。
想いを寄せていたヒュム男が、こともあろうにフェア子と愛し合う光景を目撃し、
あまつさえそれによって快感を得てしまっている。エル子は背徳感が
甘い刺激となって背筋を駆け抜けるのを感じた。
その間も、先生はエル子の秘部を刺激する動きを繰り返す。
エル子「も、もっと…」
足りない。エル子の麻痺した思考が貪欲に快楽を欲していた。
エル子「もっと! もっとしてください。お願い!!」
先生は、使役されるものとしてその命令を忠実に実行した。
それまでエル子の体を刺激していた両腕の先端が展開し、
内部から細い管のようなものが無数這い出てくる。
その管は、エル子の体中に絡みつき、胴や手足をまさぐってくる。
エル子「え……? 先生……っああっ!?」
その管に触れられるや、エル子の体に電流が走った。
エル子(な、なんなの!? コレ…)
エル子が体を奮わせるのにも構わず、管はエル子の体中を這い回る。
無数の管は、すぐさまエル子の胸や秘部に辿り着き、その先端を
細い管で絡めとるように刺激しはじめた。
エル子「あっ、あ! ちょっと…ま……っっ!!」
制止の声を無視して、先生はさらにエル子を責め立てる。
管の何本かがエル子の衣服を剥ぎ、そのまま容赦なく
下着を剥ぎ取ってしまう。
エル子(どうして……?)
自分は、ここまでしろとは言っていない。
外気に触れた肌が急速に熱を落とし、エル子に一瞬、理性が帰ってくる。
エル子「やぁ…っ、やめてっ! やめてください、せんせ…ぁあぅっ!」
慌てて制止するように命じても、先生はその動きを止めることはなく、
むしろ、その言葉に反応するように動きを激しいものにする。
そして、エル子の熱くなっちゃ部分を管が刺激し続け、それは抑えられない
快感となってエル子を打ちつけた。
気付くと、先生の管が両手足に絡みつき、身動きが取れないように
抑え込まれてしまっていた。
その間も、露出した乳首や股間を管が責める。股間から溢れ出していた
蜜と管が絡み合い、卑猥な音をあたりに響かせ始めていた。
81 :
先生×エル子:2009/07/05(日) 02:00:34 ID:a7Uhtijy
エル子「あ! ……っ、あぁ……」
先生の執拗な愛撫に、エル子はもはや動くこともままならない。
甘い刺激に突かれながら、エル子は、先生がどうして言うことを
聞かないのかをおぼろげながら理解していた。
精霊は、精霊使いの精神と感応し、その命令を忠実に実行する召喚獣だ。
ヒュム男とフェア子の情事を脳裏に強く思い描き、その行為を自分も
強く欲した。それが強い感応となって先生に伝わってしまったのだ。
それを受けた先生は、忠実に、従順に。
ヒュム男がフェア子を犯した様に犯されたいエル子の欲望を
満たすためだけに、その能力を費やす。
エル子(これを……私が?)
先生は、自分が望んだことをしてくれているだけだ。
その考えに至ったとき、エル子のなかに残っていた
理性のひとかけらが溶け去って消えた。
エル子「も、もっと……もっと、してぇ!」
その、悲鳴のようなエル子の声に先生が応じた。
数本の管が蠢きながらエル子の濡れた膣内に挿入される。
エル子「!! は、あ。ぁ、あ……っ」
ごく細い、糸のような管に挿入されただけで、
昂ぶっていたエル子は絶頂を感じてしまう。
大きく体を奮わせるエル子の内部に、立て続けに管が進入してくる。
管のひとつひとつが、エル子の膣の浅い部分を無規則に跳ね回り、
そのたびに、これまで感じたことのない快楽がエル子を襲う。
エル子「あぁぁ、あ〜〜〜……」
いつの間にか、エル子の口はだらしなく開かれ、嬌声が
途切れることなく漏れ出すようになっていた。
エル子「ふぁ…ああ。してぇ。もっとしてぇ……っぁあん!」
管は、何本も何本も、とどまることなくエル子の膣に送りこまれる。
無数の管が膣内で絡まりあい、押しひろげ、刺激する。
エル子「す、すごいの……すごいです、先生ぇぇ……」
体をくねらせ、自分から管の挿入を求めるようになったエル子の眼前に、
複数の管が集まってくる。
エル子「ふ……ん……ぁ?」
その管たちはお互いに寄り集まり、ひとつの束となって屹立する。
男性を思わせる形状に変化した管の集合体が、体を揺さぶりながら、
呆けた表情で成り行きを見守っていたエル子の口腔に進入した。
エル子「え……!? ん、ぶ……っあ」
突然口を犯されたにも関わらず、エル子はすぐに反応し、
進入と後退を繰り返す管の群れに舌を這わせた。
エル子「ん……ぷぁ……ちゅ……」
エル子の鼻腔を、甘い香りが刺激する。
先生の管の先端からは、さまざまな作用を引き起こす
分泌液が出ることを、エル子は思い出していた。
エル子「ちゅ……ん、ふ、ん……はぁっ……」
エル子の口を犯す管の動きに反応したのか、それまで個別に
膣内を刺激するだけだった管たちも、同様の反応を示していた。
中で蠢いた複数の感触が、ひとつの硬いものへと
変化していくのを、エル子は感じた。
エル子「……ん、あ! あ、やっ。そんな……!」
管を愛撫する口を離し、エル子は慌てて自分の下腹部を見やった。
いつの間にかエル子の中で男性のそれへと変わり果てた管たちは、
それまでの動きから一転し、一息でエル子の奥まで到達せんと動きだす。
エル子「!? まっ……てぇっ! わ、わっ。私……」
その言葉に、先生が動きを止めるはずがなかった。
膣のなかほどで管の動きを阻害していたエル子の処女膜は
いとも簡単に拡げられ、あっさりと突き破られた。
エル子「い……っ!! あああああぁぁぁっ!!」
だが、突き破られた感触と共に、エル子が痛覚を得たのは、
ほんの一瞬のことだった。
エル子「あっ! や、あぅ……な…んで…っ!」
挿入が繰り返される。そのたび、凄まじい快楽が押し寄せ、引いていく。
純潔を散らしたばかりのはずなのに、伝え聞いていたはずの
痛みが、それ以上エル子を襲うことはなかった。
エル子「こんな…ぁ! こんなっ!」
密集した管の運動は、それまで以上の快楽でもってエル子を
突き上げる。空中に吊るし上げられる格好となった体は
もはや力もなく管に支えられ、揺さぶられている。
エル子「気持ち、いいっ! いいですぅ先生ぇ!」
全部、私が望んだことなんだ。
こんな恥ずかしい格好でよがっているのも、
ヒュム男君にあげたかった初めてを先生にあげちゃったのも、
全部私がそうしたいと思ったから、先生はしてくれてるだけなんだ。
エル子「ひゃ、あ! すごいのぉ……こんな。恥ずかしいのに……いけないのにぃ!」
本当はヒュム男君にして欲しかったことを、代わりにしてくれてるんだ。
だから、こんなに気持ちいいんだ。
エル子の芒洋として輪郭を失った思考が、
そうして更なる快楽を呼び覚まし、それに先生が応える。
果てることのない情事が、そこにあった。
深夜。
ふと目を覚ました私は、隣で寝ているヒュム男くんが寝静まっているのを確認して、
歩き出した。遠くから、なにかが転がり落ちる音や獣の砲口が聞こえてくる。
突然、モンスターが現れないとも限らない。
いつでも魔法を打てるように身構えながら、私は
森の草木が深く茂る方へ、注意深く進んだ。
さすがに、皆が寝ているとはいえ、すぐ近くでおしっこを
するのは気が引けた。
茂みを掻き分け、ときに飛び越え。進むうち、私は異変に気付いた。
モンスターの鳴き声とも、草木が風にざわめく音とも違う。
人の声だった。それも、これは……。
そういえば、キャンプにエル子さんの姿がなかったことを、
私は突然認識した。さっき見た光景のうち、誰か1人の姿が
かけていたのを確かに見ていた。
私は長い耳をそばだたせ、音の方向を見極めると、
慎重にその方向へと体を向けた。
遠いが、確かに聞こえる。
エル子さんの声だった。それも、エッチなことをしているときの声。
つい数時間前の、私自身の口から溢れた声が蘇ってきて、
私は気恥ずかしくなってしまう。
でも、どうして……?
おそるおそる進むうちに、その声ははっきりと聞こえるようになる。
同時にエッチをするときに聞こえた、水と水がぶつかり、まざるような、
セックスの音も聞こえてくるようになった。
いったい、なにが起こっているのか。
野盗の類。まさか、モンスターに……!?
恐ろしい光景が脳裏をよぎり、歩を早めた私は、やがて小さく開けた場所があるのを見つけた。
そのなかを覗き見た私の目の前に。
信じられないものがあった。
エル子「いいのぉ……いいです……もっと、もっとずぽずぽしてくださぁい……」
精霊のセラフィムが、エル子さんを吊るし上げ、
触手のようなものがエル子さんの体中を這っていた。
女の子の大事なところにも、太い触手が出入りしているのを、しっかり見てしまった。
エル子「お、あ! あは、は。すごいのぉ……すっごいきもちいいのぉ。もっと、
もっともっともっとぉ…先生のふといので、私のお○○○を気持ちよくしてぇ……」
エル子さんは、今までみたこともないようなだらしのない表情で、
セラフィムの触手を受け入れていた。自分から体を動かし、
快感を求めているように見えた。セラフィムが大きく動く。
エル子「〜〜〜〜っ! いやあぁっ! また、またぁ!」
痙攣でも起こしているかのように、エル子さんの体が大きく跳ね上がる。
絶頂しているのだ。
エル子「またいっちゃうのぉ! すごい。どうにかなっちゃうよぉ……!!」
大人びていて、しっかり者で、お姉さんみたいなエル子さんが。
自分の精霊で、エッチなことをしている。
私は思わず、一歩後ろに身を引いてしまっていた。
しまった。と思ったときには遅かった。草の群れに体が触れてしまっていた。
目の前で大きな声をあげ、エッチな音を響かせている、エル子さんの
耳にもとどいただろうか。私はダンテ先生に叱られたときのような緊張感で、
エル子さんの方を見た。
視線が合ってしまった。
エル子さんが、いつもとは違う笑顔で、私を見ていた。
つづ……かない!
本スレで勢いあまってしでかして、
こっちに誘導されてきたので、
本能の赴くままに書いてみた。
精霊エル子使いのDIO様に
御満足いただければこれ幸いでござる。
ラッシュ入ってるからどうしようか迷い中。 |ω・)
意見くだされ、ちなみにこのスレの55書いた人です
86 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 20:46:43 ID:y1hIKAfP
okです。投稿してくだされ
87 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 21:04:28 ID:0QHRFXTc
うっふん 次郎吉 ! ↑検索してみるとわかるが今ネットで密かに増殖中
88 :
55:2009/07/05(日) 21:53:15 ID:Sgnu9ZmR
おk。
名前もわかりやすく55で固定させてもらうぜ。
ちなみに続き。
プレイ中の流れから妄想したんだぜ。
毎度のことながらエロ成分は控え目……
89 :
55:2009/07/05(日) 21:55:08 ID:Sgnu9ZmR
こんにちは。
前回は紹介だけで、実際には出てこなかったレンジャーのヒュム子です。
あ、ちなみに今は忍者やってます。
え?前忍者だったクラッズの子と被るって?
……非常に悲しいことなんですけれど、彼女この前大きな怪我を負ってしまって
学校を止めてを離脱してしまったんです。
まぁ、忍者の頃に鍛えた話術でカウンセラーにでもなるんだとか笑っていましたけれど……。
で、私はバハムートさんの提案でレンジャーから魔法も使える忍者に転科しました。
ただ、彼にはもう一つ思惑があるみたいですけど。
さて、今日は再び久々の休暇です。
私が忍者に慣れるためとクラッズさんが抜けた穴を埋めるために入ってきたメンバーとの連携を鍛えるために、
再び潜りっぱなしだったので、この休暇は非常にありがたいです。
あぁ、そう言えばバハムートさんですが、フェルパーさんととてもいい関係を続けているみたいですよ?
でも、セレスティアとディアボロスの二人は……
『先は越されたが既成事実作っちまえばこっちのもんよ!』
とか言いながらあきらめてない様子です。
よくやると思います。
バハムートさんは最初からフェルパーさんしか見てなかったっていうのに。
と、
「やっほー、元気ー?」
「っ!」
「そんな驚くことないじゃない」
「学科の癖みたいなものです……」
「そう」
急に話しかけられて思わず驚いてしまいました。
学科が忍者になってからというもの、こう言った現象にすぐに反応してしまうようになってしまいました……。
レンジャーの頃が懐かしい……。
まあいいや、今私に突然話しかけてきた人物が、クラッズさんの代わりに入ってきたバハ姉さんです。
私たちより一つ学年が上で、戦士さんをやっています。
バハムートらしい豊富なパワーを使って大きな斧を振るう姿はかっこいいです。
性格もサバサバしてて付き合いやすいですし。
「で、今日はどうされたんですか?こんなところにまで来て」
私がいる場所は、学園の片隅に作られた物好きな学生が、
ダンジョンで集めた家具を使ってやっている簡易喫茶店だ。
色々至らない部分は多いが、雰囲気と立地がいいので結構客入りはいい様子。
今後は部活動にするとも言っていましたね。
「いや、バハムートの奴はどこ行ったかなって思って」
「バハムートさんですか?今日はフェルパーさんとデートですよ。ちなみに帰りは明日の朝」
「ほほう、朝帰りか……」
とたんハバ姉さんの顔が怖くなりました。
背中からは何かオーラが浮かんでいるような気もします。
90 :
55:2009/07/05(日) 21:58:09 ID:Sgnu9ZmR
「で?場所は?」
「街です。この前行った交易所に可愛いペンダントがあったそうで」
「わかった、ちょっと行ってくる」
「暴れないでくださいよー。せっかくダンジョンで稼いだ資金パーにしたら困るんですからー」
ズダッと忍者の私も驚きの速度で駆けだしたバハ姉さんの背中に一応警告しておく。
で、それに対して彼女も一応手をあげて返してくれたが……。
まぁ、明日にゃ資金も空っぽか……。後で一人で潜って皆のご飯代ぐらいは稼いでおこう……。
ふかーくため息をついたのち、私は代金をおいてテーブルを立った。
ちなみに今回合流したバハ姉さんはバハムートさんの従妹ということで、
昔からバハムートさんの面倒を何かとよく見ていたそうだ。
おかげで、まぁ言わずとも分かるだろう。
ますますバハムートさんを取り囲む状況が悪化した。
あの人も大変だなぁ。
そんなことも考えながら私は武器や防具、道具を整えて、クロスティーニ学園に隣接している始まりの森と呼ばれる場所へ向かった。
ここでならとりあえずご飯代ぐらいは稼げるだろう、無理なら剣士の道ぐらいに足を延ばせばいいし。
ところ変わってどこかの交易所。
そこではあのフェルパーとバハムートが仲睦まじく買い物をしていた。
「主よ、これなどどうじゃ?手になじまぬか?」
「うーん、すこしごわついてるかな……」
「そうか……。主は拳じゃからなぁ、合っておらぬと壊しかねんしな」
手にもったグラブを棚に戻し、フェルパーはしょんぼりと耳を垂らした。
その頭にポンと手をおいて俺は笑ってやる。
「まぁ、今のやつでも十分さ。確かに守るにゃ不安があるが攻めるのは何とかなるし」
「むぅ……我ばかり良い物を持っているのも気が引けるのじゃが……」
「まぁ鬼切りのかなり質のいい奴だもんなお前のは」
「まぁダンジョンでの拾いものじゃがな」
そして俺達は交易所から出る。
すると、そこには俺にとっては……忘れられない顔があった。
「ふ、ふ、ふ。私を差し置いてデートとは、いつからそんな身分になったのかしら?」
「げぇ、バハ姉」
「む」
ダンジョンの中でボスクラスといわれるモンスターに出会ったとき以上の恐怖を思い起こさせる、
どす黒いオーラを纏ったバハ姉だ……。
彼女は俺の従妹。最近パーティーメンバーが抜けてしまったのを聞きつけてパーティーに入ってくれた。
かなり古い付き合いで、まぁ本当の兄弟のように相手のことは知りつくしているといってもいいのかもしれない。
と、オーラを纏う彼女にフェルパーも闘志をみなぎらせ、その愛刀へと手をかけて臨戦態勢を取る。
どう見ても同じパーティーを組んでいるとは思えない様子だった。
91 :
55:2009/07/05(日) 21:59:32 ID:Sgnu9ZmR
「フェルパー……怪我をしたくなかったらそこをどきなさい。そこは私の場所よ?」
「ふん、吠えおってからに。主は我を認めたのだ、そばに居るものとしてな」
「へぇ……、そうなの?バハムート」
「え?まぁ……そうだけど」
ジト目で見てくる彼女に俺はどうこたえるべきか考える……までもないんだよなぁ。
「ちょっとは考えろこのアホ!」
バハ姉が吠えると同時に地面を蹴った。
その手にはこの前購入したばかりの大斧が握られており、そんな重たいものを持っているとは思えないほどの速度で俺に迫ってくる。
「ちょっ、まっ……!」
「一回死ね!灰になれ!!」
振り下ろされる斧、俺はそれを捉えることは出来た、しかし素手でそれを防ぐすべはない。
まさか……ここで死ぬとは……。まぁ診療所あるし……平気か?
ゆっくりと近づいてくる斧。
「させぬ!!」
だが、それを銀色の輝きがそれを防いだ。
甲高く響き渡る強烈な衝突音。
「まだ食い下がるかこの泥棒猫が!!」
「いつから主が物になったか?駄竜が!」
互いにバックステップ、しかし身のこなしはフェルパーのほうが上のようだ。
着地と同時に再度踏み込む。
風しか残さず一瞬にしてバハ姉へ。
そのまま袈裟掛けに容赦なく切り込んだ。
だが、大斧でそれを受け流し体制を立て直したバハ姉が叫ぶ。
「あいつと私は、あんたより付き合いは長いのよ……!それを……!」
「誰を好きになるかは……主の自由じゃろうが!!」
「だからよ!怒りの矛先は本当ならあいつに向けたいっていうか向けさせなさいこのバカ猫!」
「嫌じゃ!何があろうが主が傷つくのは見たくないのでな!」
うわー、またしても俺の責任か。
っていうか確かに、俺が悪いんだがな……。
フェルパーには言ってないが俺は昔バハ姉に守られてばっかりだった。
まぁ俺自身もそこそこは強かったが、どうしても勝てない奴とかがいたもんだ。
そう言った連中からバハ姉は俺を守ってくれた。
だからさ……ありがちなセリフなんだが言っちゃたんだよ……。
「いつかお前を守る」ってやつを。
あぁ……軽率だった。
それが子供の頃とかじゃなくて結構最近なんだよなぁこれが。
んで、入学してみたら俺の好みのど真ん中のフェルパーがいたもんだ……。
そりゃ悪いよ?俺も……。
けどさー……。
…………あぁ、もう、どうしてこうなった!!
92 :
55:2009/07/05(日) 22:05:12 ID:Sgnu9ZmR
「せい!!」
と、俺が頭を抱えて悶えてる間に勝負が決した。
勝ったのはフェルパーだった。
やはり魔法を使える分攻め方が一辺倒じゃないのは大きいか。
「私が……負けた?」
「ギリギリじゃったがのう……」
流れるような動作で刃をしまいフェルパーはバハ姉に背を向け俺の元へと歩いてくると……。
そのまま腕を回してしきた。
「というわけじゃ、主は我のものということじゃな」
「ぐぬぬぬぬ……」
「悔しかったら勝ってみなされ。いつでも相手してやるぞ?」
そんなことを言いながら、フェルパーは俺に目配せをする。
さっさと行こうと言いたいらしい。
まぁ……バハ姉には悪いが、やっぱこいつが一番なんだよな……。
そしてその晩……。
「にゃふぅ……」
「あー……死ねる、つーか死んでもいい」
大満足。
アレからというもの毎日フェルパーに求められ、床を共にするたびにあいつの腕前は上がって行っている。
おかげで今日はもう出ないといえるほど搾り取られた……。
あ、ちなみに避妊はしてるぞ?いろいろまだ早いからなー。
「ふふ……死んでもらっては困るの……愛する主がな」
「まぁなー。でも本当に上手くなったな、いろいろと」
「主のためじゃからな……それに、我も……な」
「そうか。ほれ」
「うむ」
俺の上で息を整えていたフェルパーは体を転がして俺の横へ収まる。
丁度腕枕をする形だ。
体を横にする彼女は尻尾を嬉しそうに動かしている。
「はぁ……落ち着くのぅ。一人で寝るより圧倒的じゃ……」
そう言いながら彼女は純粋な笑みを浮かべた。
あぁそういう表情されるとたまらんじゃないか。
もう少し彼女と楽しんでいたいのだがなぁ……。
「むぅ……」
流石にフェルパーのほうが限界だ。
体力はあるとはいえ、あの細い体で何度も達したのだ、さすがに無理だろう。
「主?」
「ん?」
「朝まで隣にいてくれる?」
「当り前だろうが」
「ふふ……それは……よか…った」
とたん彼女は眠りの中へと落ちて行った。
93 :
55:2009/07/05(日) 22:10:29 ID:Sgnu9ZmR
さて、俺も寝るか……と思った矢先。
「これで終わりと思うなよ……」
「な、なに!?」
宿屋の天井、そこに四角い小さな切れ目が入りそして音もなく誰かが部屋の中へと飛び降りてきた。
「おま、ヒュム子!」
「バハムートさんには恨みはないんですが……この方がどうしても入れろとおっしゃるので」
「やっほー」
バハ姉……。
そこまでするかお前は。
「というわけで夜這いに来たわ」
「……いや隣にいるし」
「気にしたら負けだと思うわよ?」
素敵な笑顔ありがとうございます……。
「じゃ、私ご飯代稼いでこないといけないので」
「ありがとー。またよろしくねー」
そしてヒュム子は入ってきた穴へと姿を消した。
って、いうかご飯代って何の話だ?
「では、いただきます」
「ま、待って……くぅっ……!」
素早く俺のモノを取り出したバハ姉はそれを躊躇なく咥えた。
「ぐ……!」
フェルパーとの連戦で流石に力尽きていると思われたそれは、俺の意思に反してどんどんと固くなっていく。
いや……バハ姉のテクがやばい……。
舐めたり吸い上げたりするのは当然として、軽く噛んだりすることで適度な刺激を俺に与えてくれる。
「ほーれ、出しちゃいなさい……弱点は知りつくしてるんだから」
「むむむ……」
俺は横で傍で寝息を立てるフェルパーを見る。
こいつのためにもここで屈するわけにはいかない……!
その決意とは裏腹に次第に込みあがってくる感覚を我慢できる自信は正直なかった。
94 :
55:2009/07/05(日) 22:12:54 ID:Sgnu9ZmR
「その子のためにも出せないって?」
「あったりまえだろ……が……!」
「気に食わない……」
バハ姉は俺の物に強くかみついた。
「ぐあっ!?」
「本当に気に食わない。私がどれだけ貴方のことを思ってきたと?」
「……っ」
口から離し、バハ姉は俺に跨り、己の秘所へと唾液を塗りつける。
そして、聳え立つ俺のモノを半ば無理やり己の中へとねじ込んだ。
「く……ぅう」
「ちょっ……無茶……」
「黙ってなさい……!」
痛みを感じているのは間違いない。
こう見えてバハ姉はほかの男とは一切付き合ってなかった。
もちろん美人ではあるためラブレターの類はいつももらっていたほどだ。
けど……それをすべて蹴り続けているということは、当然……男女の交わりなど初めてだ。
ちなみに弱点を知りつくされているのは、未遂に何度も終わっておりその間にばれただけ。
「はっ……はっ……」
貫かれた痛みから涙を浮かべるバハ姉。
けれど、その涙はどうも痛みだけじゃないみたいだ。
「本当に……ずっとずっと想ってきたんだから……それなのに……」
「……」
「貴方が銀色の髪が好きだって言ったから、こうして銀色に染めて……。貴方が静かな方がいいっていうから……しゃべり方も変えて」
「そりゃ……そうだけどさ」
「だからって……今更私以外だなんて……」
バハ姉は思いっきり泣いていた。
声は出さない、けれど……彼女の涙が俺の胸に落ちるほど泣いていた。
だけど……。
「謝らない……からな?」
「……わかってる。けど……諦めてないからね?」
そして俺はバハ姉を抱いた。
できるだけ優しく、そして彼女が少しでも気持ちよくなるように。
一番好きな人が隣にいるにも関わらずだ……。
そして目が覚めたとき、バハ姉はいなかった。
ただ隣にフェルパーが寝ているだけで。
罪悪感とはこのことを言うのだろうか?
けど、理不尽この上ないのは確かだ。
俺はもう、こいつを一生の伴侶と決めている。
一番理解してくれていて、理解してやれている相手だからだ。
どうするべきなんだろうか?俺は……。
95 :
55:2009/07/05(日) 22:28:51 ID:Sgnu9ZmR
あとがき
あれ?もっとラブラブでエッチな話書こうとしてたのにどうしてこんなシリアス展開?
おかしいなぁ……。
えーちなみに、全開のクラッズ♀は作中では事故扱いで離脱したという話ですが、
現実では普通にロストしました。耐久力低すぎるよorz
で、ヒューマンをとりあえず忍者に転科、前線を支えるためにバハ♀戦士を投入した限りでござる。
で、そのバハ♀戦士がバハ♂の従妹設定なんだ……。
うん、疲れた……さぁLv上げの続きだー
ちなみに俺って直接的な表現できないんだよなぁ……
バハムー「ト」が気になってしょうがない
97 :
55:2009/07/06(月) 00:04:16 ID:Sgnu9ZmR
うわぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!!
気づいたーーーーーー!!!
誰か俺を殴ってくれ。頼む……。
はずかしすぎる……!!
俺を本気で怒らせたくなかったら、二度とその顔を見せないことだな
……とまでは言わないが
投下前に推敲しておこうな、ホント。
>>98にはマジで引くわ
誤字に気づけなかったくらいで2度と投下するなとか、正気とは思えん
>>98はリューサンなんだろう
見ようによっては
>>97の要請に応えている
だけとも取れるし、あんま気にすんなって
102 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 16:19:21 ID:Mn+bDNRw
話のネタになるかは分からんが、
ととモノ。のモンスターって食えそうだよな。
食糧を持たずに魔女の森とかに行って日が暮れた場合、
やはりカイワーレとかダッチュウノとかを狩って調理してんのかね?
ヤッてるのはよくあるが・・・
食べ盛りの学生に大人気とかいうのもいたし、普通に食える奴はいるだろうな
トハス定点狩りクラスの奴等になると、ドラゴンを調理して食ってるに違いない
っていうか、マンドラゴラは実際食われてるんじゃないのか?
特典DVD的な意味で
>>102 レンジャー学科で「応用野外調理実習U」を受講しないと
モンスターは食べられない(つか、食って当たっても学校で
責任取れない)らしいよ。
昔、他所のパーティがポイズムで倒したモンスターを、ノームに
毒見させた後みんなで食って全滅したお馬鹿なパーティがあった
とかなかったとか。
..と盛大にほらを吹いてみる。
106 :
102:2009/07/06(月) 21:20:26 ID:Mn+bDNRw
ディア男「今日のメニューはグロテスクワームのフライとでっぷりニンジンとかぼちゃのお化けのサラダだ」
エル子「そんな気色の悪いもの、食べれませんわ!!」
バハ男「いや、ゲテモノは美味いと相場は決まってるもんだぞ。いやならニンジンを食え」
フェア子「ニンジンきらーい」
バハ男「好き嫌いはいかんぞ。ん、なかなかいけるんじゃないか、グロテスクワーム」
ディア男「まぁ、身だけだし、毒や臭みもちゃんと抜いてあるからね。海老のような味がするよ」
エル子「そ、そうなんですの?それなら、一口だけ・・・あら、意外と良いお味」
セレ子「ディア男さん、これは食べられませんか?」
ディア男「ああ、雷のヤドリギならさっと火を通したあと触手の部分を乾すとピリッとした辛さとこりこりした触感が味わえるよ」
フェア子「あ、それ私の叔父さんがよく食べてた。でも私にはちょっときつかったかなー」
ドワ男「ディア男ー、これ食えるか?」
バハ男「よく見ろ、それは黒板消しだぞ」
ディア男「それ以前に魔法生物は基本的に食えないから」
セレ子「あら、ならこれは知ってるかしらディア男さん。ごにょごにょ」
ディア男「ふぇっ!!?」
セレ子「くす、魔法生物も食べれないことはありませんわ。現にあなたも食べましたし。でも、今夜は覚悟してくださいね」
バハ男(堕天使か)
エル子(堕天使ですわね)
ドワ男「フェア子!俺にニンジンを渡すな!!」
フェア子「あんたこそ私にかぼちゃを渡さないでよ!」
平和ですな〜。
ととモノ。2のモンスター図鑑を見たらでっぷりニンジンって生徒達に人気らしい。
カイワーレは甘い味がするらしい。面白い。
>>100 おいおい
>>97の要望に応えてやっただけだろー?
読解力がないつーか脊髄反射つーか
(;´・`)引くわあ
>>107 ネタレスをするなとは言わないが、少しはその内容も考えろってことだ
もし
>>97が
>>98をネタとして受け取ってくれなかったとしたらどうするんだ?
まさか「
>>97に読解力が無いのが悪いのであって、俺に責任は無い」とか言うつもりか?
柿ピーは食えるんだろうか
黒パーネ先生×コッパマダー?
>>108 当たり前だろ(微苦笑)
叩かれて折れるなら最初から来るなよっていうか
自分から「俺を殴れー」って言ったんだから覚悟はできてるんだよねぇっていうかー
なんかここまでくると98本人かどうかすらあやしくなってきたな
そんな事よりパーネ先生について語ろうじゃないか
俺は何故か堕パーネ先生を監禁して先生を慕ってた生徒達がネチョい事をするというシチュしか思いつかんが
なんか淫乱なイメージがあるけど、そっち方向はあまり経験無しみたいな感じで
むしろ無理に神になろうとしたショックで記憶を失って
どこかに放り出されたパーネを見付けて、エロス的な意味でいろいろ吹き込む
俺のパーティメンバーが思い付いた
ラストのクエですら全く触れられなかったからな、マジパネェ
パーネ「すみません…ワッパのコンパスが壊れてしまって…」
俺の中ではこういうイメージ
おかしいですか!?カテジナさん!!
>>110 どうも考え方の違いとかそういうので平行線だから俺はもうこの話やめるわ
お前が本気で怒ったところで、モニターの前で顔真っ赤にする以外の事はできないってことにも気が付いたし
変な顔文字使ってる上に(微苦笑)とか日本語おかしい気持ち悪いヤツに触るなよ
今回NPCにちらほらカップルが居るよな・・・
ロッシ先生はスフォリアだと思ってたんだけどな、あの二人のやり取り某ジャンプ漫画みたいで好きだったし
それにしても堕パーネ人気だよな。個人的にはお姫様な白パーネも好きだ。正統派なデザインで。
本性隠してる分エロはやりづらそうだけど
俺はゾーラとジャーニが一番だな。NPCカポーだと
最初ジャーニ氏ね馬鹿! この馬鹿!
って思ってたけど、あいつの一途さとかっこよさの前には
全俺が二人を祝福するしかなかった
>>115 はいはーい
そんなに顔真っ赤にしなくてもいいのに(笑)
こっちはMな人少ないんだなあ
本スレは堕パーネ先生にいぢめられたい人がたくさんいるみたいだが
Part32の
>>676とかもうアウアウ
>>118 ジャー ノ 「無理しなくて良いよ・・・・・」
>>121 ごめん…どうか許してほしい
だけど数ある男キャラのなかで
おまえがナンバーワンなのは本当なんだ
おまえが一番光輝いてたよ、俺のなかで
決して俺の嫁のはずだったゾーラをこの野郎とか
思っていたわけじゃないんだ
>>120 黒パーネ先生とカテリーナに2人がかりでいぢめられたい自分が(もちろん性的な意味で)
うちの新入学生みんな女だけど。いやそれがいいんだけど。もっと言えば自分がその中に混ざりたいけど。むしろ一人きりで拘束されて逃げられないところにレズレイプの嵐を(ry
黒パーネさんはディモレアさんに捕まって様々なプレイをさせられ調教されているんだ
という電波が来た
初めて投下したとき、自分のパーティを「火力不足でブレスもないすごいマゾパーティ」と評されたのは忘れられない。
なのでととモノ2ではディアボロスをパーティに入れてみた。これでマゾパーティからおさらばだ。
今回は2ネタで、ネタバレ要素はほぼ皆無。お相手はディア子戦士。
力が入りすぎてえらく長いです。お暇なときにどうぞ。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
新入生を迎えたクロスティーニ学園。生徒達はクラス分けをされ、主にそのクラスの中でパーティを組み、冒険を始める。
時には、クラスを超えてパーティを組むこともあり、あるいは特にパーティを組まず、一人で冒険をはじめる者もいる。いずれにしろ、
既に新入生の大半はパーティを組んで冒険を始めており、まだパーティを組めていないという者は、ほとんどいない。
彼女は、その少数派の一人だった。浅黒い肌に湾曲した角、そして赤い瞳を持つディアボロス。多くの種族から嫌われ、また彼女自身、
戦士らしく無骨な性格であり、他の仲間のように、要領よくパーティに入ることが出来なかった。
パーティを組まねば、危険は大きい。それでも組めない以上、一人で冒険を始めるしかないかと、彼女は思い始めている。
いつも通り、夕食の時間をだいぶ過ぎた頃に学食へ行く。中に入ってみると、生徒はほとんどいない。一つ、四人組の座った
テーブルが多少賑やかであるぐらいで、他にはぽつぽつと二人組や、勉強がてら飲み物を飲んでいる生徒ぐらいしか居ない。
そんな人気のない学食の、さらに人の少ない場所を選んで座る。やはり、周囲に人がいない方が、彼女は落ち着けた。
時間帯を外した学食は静かである。そんな中で、四人組の会話はひどく目立つ。
「よく食べるねえ、二人とも」
クラッズが感心したように呟く。それに、ヒューマンとドワーフが答えた。
「そりゃあ、腹減ってるしな〜」
「ご飯いっぱい食べないと、大きくなれないもんね」
「それは身長の話かい。それともバストの話かい」
そう返したノームに、クラッズがいたずらっぽい笑みを浮かべて言う。
「ノーム君、それセクハラって言うんじゃよ。あとで先生に言ってやろ」
「オーケー、僕が悪かった。それは勘弁してくれ」
そうは言いつつ、ノームはあまり反省していなさそうな、口元だけの笑みを浮かべている。そんな彼等を見ていると、少し羨ましい
気がした。ああいった軽口を叩ける相手など、ディアボロスは今まで会ったことがない。
だがすぐに、自分には関係ないことだと思い直し、ディアボロスは食事に集中する。サラダを食べ、ステーキにかぶりつき、二枚目の
ステーキに手を付けた瞬間、不意に人の気配を感じ、顔を上げた。
そこには、四人組の一人であるノームが立っていた。
「食事中、失礼。食べながらでいいから、聞いてくれるかな」
「……手短に頼む」
相手を警戒するように、ディアボロスは目だけをノームに向けたまま、ステーキを口に運ぶ。
「ならストレートに言おうか。まだ君が一人なんだったら、パーティの仲間にならないかい」
「お前のか。他の奴等はなんと言っているんだ?」
三人をちらりと一瞥し、ディアボロスは尋ねる。
「世間一般の、君に対する評価と似たようなものだよ」
「ずいぶん素直に答えるじゃないか。学科は?」
「僕とドワーフが普通科、クラッズは人形遣いで、ヒューマンがレンジャー。今のパーティは、この四人だけでね」
たった今耳にしたことを疑うように、ディアボロスは驚いたような顔でノームを見た。
「普通科二人に、人形遣いにレンジャーだと?私は戦士学科だ、あまり歓迎はされないんじゃないのか」
「人数が増える事に関しては、大歓迎だよ。それに今更、種族も学科も、選り好みなんかしてられない。君だって、まさか一人で
冒険しようと考えてるわけじゃないだろう」
「……その覚悟は、あるつもりだが」
そうは言いつつも、やはりそうしたいというわけではなく、ディアボロスは困ったように視線を逸らした。
「……まあ、そうだな。私としても、仲間は多い方がいい。誘いは受けると、仲間に伝えてくれ」
「よし、話は決まったね。でも、それは僕じゃなくて、君が直接伝えてくれ」
ノームの言葉に、ディアボロスは再開しようとした食事の手を止めた。
「……は?」
「君はもう仲間なんだ。こっちに来て、一緒に食べよう」
そう言われると、ディアボロスは少し不機嫌そうな顔になった。
「悪いが、それは断る。歓迎されないとわかっている相手と、わざわざ一緒に食事などしたくない」
「他三人はそうでも、僕は大歓迎だ。それでも嫌かい」
「……ノームという奴は、断りづらい状況を作る天才だな」
呆れたように言って、ディアボロスは料理の乗ったトレイを持ち、席を立った。
彼女が近づくと、ヒューマンとドワーフは少し表情を硬くし、クラッズはあからさまに嫌そうな顔をした。
「明日から、一緒に来てくれることになったよ。自己紹介、よろしく」
「……戦士学科所属だ。よろしく頼む」
「ああ、うん……よろしくね」
「ああ、よろしく…」
が、クラッズだけは返事を返さず、ムスッとした顔でディアボロスを睨んでいた。ややあって、ようやく口を開く。
「あたしは、正直あんまり歓迎しないよ。でも、贅沢は言えない立場じゃもんね」
「ふん、何とでも言え。贅沢の言えない立場というのは、私も同じだ」
「……やな奴!」
吐き捨てるように言い、クラッズはぷいと横を向いた。
「とにかく、明日から一緒に冒険するわけだから、みんな徐々にでも慣れてくれ」
そう言うノームの口元には、この状況を楽しんでいるかのような笑みが浮かんでいた。そんな彼を見ながら、一行はそれぞれ、
彼にいい様に遊ばれているような、なんとも微妙な気持ちを感じていた。
ぎこちない挨拶と食事を終えると、五人はそれぞれの部屋に戻った。
ディアボロスは荷物を置くと、ベッドにぼさっと倒れこんだ。そして、一つ大きく息をつく。
―――仲間、か。
今まで、そんなものができるとは、夢にも思わなかった。できることを願ってはいたが、どうしても自分からは距離を置いてしまい、
また他の種族からもいい目では見られない。それで結局、一人旅を始める決意を固めていたが、どうやらそれは回避できたらしい。
―――明日が、楽しみだな。
そう思うと、自然に笑みがこぼれた。そうして明日からの日常に思いを馳せるうち、いつしかディアボロスは、すうすうと寝息を
立て始めていた。
翌日の探索は、地獄と言っても過言ではなかった。誰もヒールを使えず、一つのアクセサリを全員で使い回して回復し、おまけに戦力も
あるとは言えない。素早い相手に対しては、ディアボロスがひたすらにブレスを吐き続け、何度も酸欠を起こしかけた。
しかも、なまじヒールが使えないだけに、魔力が尽きたので学園に戻るということもなく、それこそ死者が出る一歩手前まで、彼等は
戦い続けた。
「ヒューマン、大丈夫かい」
「し……死ぬかと思った…」
「トカゲの像あってよかったねー」
「とにかく、もう今日はおいしいもの食べて、さっさと寝ちゃお。あたしも何回か前に出たし、ちょっと疲れたよ〜」
そんな彼等に、ディアボロスはぼそりと言った。
「私は、先に帰って休ませてもらう」
「ディナーはご一緒できないのかい」
「ああ。もう寝たい」
「勝手じゃな〜。ま、あたしはいいけど」
「でも、少しぐらい食べなきゃ、体壊しちゃうよぉ」
「……おにぎりぐらいなら部屋にある。じゃあ、また明日」
それだけ言うと、ディアボロスは仲間から逃れるように、さっさと部屋に戻った。
実際、もう今にも倒れそうなほどに、全身疲れ切っていた。彼等に言ったことは嘘ではない。
しかし何より、その状態で、これ以上彼等といるのは限界だったのだ。ヒューマンとドワーフは少しぎこちない態度だし、クラッズは
あからさまに自分を嫌っている。そんな相手と一緒では、心休まるわけがない。
寮の部屋に戻ると、武器だけはそっと壁に立てかけ、荷物は無造作に床へと放り投げる。
武器を振り回し、ブレスを吐きまくり、一日中戦い続けたおかげで、今日はだいぶ汗をかいていた。口には出さなかったものの、
その汗が染み込んだ服を着ているのは、あまり気分がよくなかった。
ドアに背を向けたまま、ディアボロスは戦士らしく豪快に制服を脱ぎ捨てた。上着とスカートを放り投げ、下着姿になると、何とも
すっきりとした開放的な気分になる。やはり、部屋で一人になれたと思うと、気が楽である。
大きな胸を包むブラジャーも外し、ベッドに放る。そして少し前かがみになり、ショーツに手をかけ、引き下ろす。
その時、突然ガチャリとドアの開く音が聞こえ、ディアボロスはショーツを半分脱ぎかけたままの姿勢で振り返った。
そこには、フェルパーの男子生徒が立っていた。何だかポヤーっとした表情で、ディアボロスを不思議そうに見ている。
「……あれぇ?」
のんびりした声で呟くと、彼は手に持った鍵を見、ドアの番号を見た。
「間違えちゃった。ごめんね」
そう言うと、彼は何事もなかったかのようにドアを閉めた。あまりに突然のことで、ディアボロスはしばらく思考が停止していたが、
やがて状況を理解するにつれ、その顔が真っ赤に染まっていく。
「な……な、な、なな、なっ…!」
一瞬後、ディアボロスは大慌てでショーツを引き上げ、スカートを穿き直し、ブラジャーをつけずに上着を着ると、ボタンを互い違いに
かけ直し、武器を持ってドアに飛びついた。そして廊下に出ると同時に、どこかのドアがパタンと閉まる音が聞こえた。
もう、廊下はすっかり静寂に満ちていた。人の気配もなく、ドアが開く様子もない。
ディアボロスは部屋に戻り、武器を再び壁に立てかけた。着直したばかりの服を脱ぎ、部屋着に着替える。
「………」
その顔は、まだ赤い。それどころか、その目には僅かに涙が浮かんですらいた。彼女はベッドに座ると、大きく息を吸い込んだ。
「ちくしょーーーーっ!!!」
沸き立つ怒りと恥ずかしさの入り混じった悲痛な叫びが、寮の中に響き渡った。
翌朝、五人は学食で一緒に食事をしていた。せっかくだからとノームが誘ったのだが、この日のディアボロスはいつにも増して
不機嫌そうだった。
「なあ、お前……なんか、あったのか…?」
ヒューマンが遠慮がちに尋ねると、ディアボロスはギロリと睨んだ。
「……うるさい」
「おお、怖…」
「どうしたの〜?昨日はそんなに怖くなかったのに」
「……やかましい」
そっけなく答え、ディアボロスは朝食を詰め込むように掻き込み始める。ドワーフにも劣らぬ速度で食事を終えると、彼女は大きく
息をついた。正直なところ、ディアボロスは、今日は冒険になど行ける気分ではなかった。夕べのことがどうしても頭にこびりついて、
朝からひどく不快な気分である。思い出すとまた、怒りが蘇る。
気を落ち着けるように、ディアボロスは大きな溜め息をつくと、水を一気に飲み干す。タンッと音を立てて、グラスをテーブルに
置いた瞬間、一人の生徒が目に留まる。
「……あいつは…!?」
間違いなかった。大きな耳に、すらりとした尻尾。そしてあのポヤーッとした表情は、昨日部屋に入ってきた彼に間違いなかった。
「貴様ぁ!!」
その瞬間、ディアボロスは既に立ち上がっていた。驚く仲間を無視し、つかつかと足早に彼に近寄ると、突然その胸倉を掴み上げる。
「わっ、あの、何…!?」
「『何?』だと!?貴様、昨日は、よくもっ…!」
ディアボロスが呻くように言うと、フェルパーは困ったような目で彼女を見る。周りの生徒は何事かと、遠巻きに二人を見つめている。
「だから、ごめんってばぁ。間違えちゃっただけだよ」
そう言う彼の表情は、相変わらずポヤーッとしたものである。それがますます、ディアボロスの怒りに火をつける。
「間違えただけだぁ!?そんなことで、許されると思うか!?」
「……謝ってるのに…」
相変わらず、表情は変わっていない。が、そこでディアボロスは気付いた。
顔の表情には、ほとんど変化などない。少し困った目をしている程度である。だが、尻尾は力なく垂れ下がり、耳はペッタリと後ろに
寝ており、何より彼は僅かに震えていた。
そんな彼を見ていると、何だか怒りも徐々に鎮まってしまった。どうにもボーっとした男だか、妙に憎めない。
「……ふん。どうも毒気を抜かれる奴だな、お前は…」
ディアボロスが手を放すと、フェルパーはホッと安堵の息をついた。
「ディアボロス、どうしたんだい。君の不機嫌の原因と、何か関係があるのかい」
そこに、ノームがやってきた。詳しい話などしたくなかったので、ディアボロスは慌てて言い繕う。
「あ、あ、いや、まあな。昨日、部屋を間違えられて、ちょっとな…」
フェルパーはさりげなくディアボロスから離れると、ノームの隣に隠れるようにして並んだ。
「なるほど。プライベートな場所に入られるのは、気分のいいものじゃないからね。でも、彼も謝ってるんだし、許してあげれば
いいじゃないか」
「……ふん」
ディアボロスがプイッと横を向くと、ノームは隣の彼に話しかける。
「いきなり悪かったね。でも、女の子の部屋にいきなり入ったら、そりゃ誰でも怒る」
「うん、ごめんね」
素直に謝る彼は、改めて見るとさほど悪い感じはしなかった。
「ところでいきなりだけど、君はパーティに入ってるのかい」
「ううん、まだだよ」
「よし、じゃあこれも何かの縁だ。僕達のパーティに来ないかい」
「は!?」
ノームとフェルパー以外の全員が、驚いて彼の方を見た。が、ノームはどうやら本気らしい。
「あ、いいの?入れてくれるなら、嬉しいなぁ」
「おい、ノーム!いくらなんでも、誰彼構わな過ぎ…!」
「もう、一人でいるような貴重な人材は少ないんだ。この際、とにかく六人集める方が先決だろう」
「ヒュマ君、もう無理無理。あいつはたぶん、言い出したら聞かない人でしょ?」
「よくわかってるなあ……ま、いいよ。あいつの言うことも、一理ある…」
「人見知りするんだよね、あの種族って。でも、あの子はそんなに嫌じゃないかな」
話もまとまったようで、ノームは改めてフェルパーを見つめる。
「話は決まりみたいだね。それじゃ、これからよろしく」
「うん、よろしく」
ディアボロスはまだ不機嫌そうだったが、やがて少し落ち着いた声でフェルパーに言った。
「まあ、いい。部屋に入ったことは水に流してやる。だがな、お前はもう一つ、謝ることがあるんじゃないのか?」
「ん〜?」
そう言われ、フェルパーは耳をパタパタしながら考えていたが、やがて何かに気付いたらしく、耳がピンと立ち上がった。
「あ、わかった」
ディアボロスに向かって、フェルパーは頭を下げた。
「お尻見ちゃって、ごめんなさい」
パァン、と乾いた景気のいい音が、学生で賑わう朝の学食全体に響き渡った。
初めの森の中で、一行は相変わらずモンスター退治に精を出していた。フェルパーは格闘家であったため、前衛は彼とディアボロスと
ドワーフが務め、ヒューマンとノームとクラッズが後衛を務める。
手数が増えたことで、少しは一行の負担も減っている。それでも、ノームは浅場で狩りをし、今日は学園に戻ろうと主張していた。
だが、ディアボロスがそれに猛反対を示す。
「まだ、僕達には奥に行くのは早いだろう。今日は戻るべきだよ」
「嫌だ!絶対戻らないぞ!というか、しばらく学園には帰りたくないっ!」
顔を真っ赤にし、涙目になりながら、ディアボロスはそう言って譲らない。朝の学食で、大勢の生徒に事件のことを聞かれたのが、
恥ずかしくてたまらないのだ。
「あの……ごめんね。だって、それ謝るんだと思ったから…」
「だからって、内容まで素直に言う奴があるかぁっ!!……グス、どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ…」
「ごめんなさい…」
フェルパーの頬は、未だに真っ赤な手形がついている。そんな二人に、他の仲間は笑いを隠せない。
「ははは。フェルパー、お前なあ、そういう時は単に『ごめんなさい』でいいんだよ」
ドワーフは遠慮がちに笑いながら、ディアボロスにそっと近づく。
「うふふ。でも、よかったぁ。何だか、ディアボロスちゃんって近寄りがたい感じだったんだけど、やっぱり女の子だったんだねぇ」
「う、うるさい!黙れ!」
「がさつじゃけどね〜。人並みに恥ずかしいって感覚はあるのね。さすがに同情はするけどさ」
結局、あまりに強硬な反対にノームが折れ、一行はジェラートタウンまで向かうこととなった。途中、電撃床を踏んだり、ダストの群れに
出会ったりと苦戦しつつも、辛うじて全員無事にたどり着くことが出来た。
「あー、きつかったぁ。あたし、電撃の踏んだときは、もうダメかと思ったよ」
「せっかくここまでたどり着いたんだ。ディアボロスのこともあるし、しばらくはここに滞在して、鍛えることにしようか」
「……そうしてもらえると助かる。ほんとに」
「とにかく、今日はもう休もうぜ。疲れたよ」
その言葉には、全員が賛成だった。一行は重い足を引きずり、宿屋にたどり着くとすぐ部屋を取り、食事もせずに寝てしまった。
それから一週間ほど、一行はジェラートタウンに滞在し、モンスターとの戦いに明け暮れていた。その甲斐あって、一行はそれぞれに
力をつけ、初めの森程度であれば、それほど苦戦しないくらいに成長していた。
「やったぁ、ヒール覚えたよ!早く使いたいな!」
ドワーフが弾んだ声で言うと、クラッズが少し意地悪そうな目をする。
「でも、ドワちゃ〜ん?ヒール使うってことは、誰か早く怪我しろってことじゃよね〜?」
「え?あっ、そ、そういうわけじゃ……ないんだけど、その……えっと…」
「ははは、気持ちはわかるぜ。俺が怪我したら、その時は頼むよ」
「うんっ!」
ヒューマンの言葉に、ドワーフは目を輝かせている。そんな彼女を、クラッズとノームが笑いながら見ている。さらにその二人を、
フェルパーとディアボロスがやや遠巻きに眺めている。
「楽しそうだねぇ」
「そうだな。それより、もっとシャキッと出来ないのか、お前は。肩を並べる相手がそんなでは、とても安心できん」
「大丈夫だよ。ちゃんと警戒はしてるもの」
「……信用ならん」
相変わらず、ディアボロスはフェルパーにきつく当たっている。本人がきっちりした性格であるため、このぼんやりした男がいまいち
信用できないのだ。それに、以前裸を見られたこともあり、ついつい彼にはきつくなりがちである。
「ところで、そろそろ学園に戻らないかい。何かカリキュラムがあるかもしれないし、それを見逃したら洒落にならない」
ノームが言うと、ディアボロスは少し困った顔になった。
「う……それは、確かに、まあ……そうだな、そろそろ、いいか」
「久しぶりに、学食でご飯ー。何食べよっかなあ」
そう言ってうっとりとした目をするドワーフに、クラッズが笑いかける。
「ドワちゃんはやっぱり、真っ先にご飯が思いつくんじゃのう」
「ご飯より、カリキュラムの心配するべきだと思うんだけどな」
「カリキュラム……かりきゅら…………カニクリームコロッケあるかなー」
「人の話を聞いてくれないか、そこのファズボール」
そんなやり取りをする仲間を見つめ、ディアボロスは溜め息をついた。正直なところ、あまり気は進まないのだが、戻らないわけにも
いかない。
「学園、久しぶりだねぇ」
「うるさい黙れ。お前は喋るな」
「うん、わかった。ごめんね」
「それじゃ、そろそろ行こうか。ディアボロス、フェルパー、前衛は頼むよ」
今日辺り、クロスティーニが火事にでもならないかな、と、ディアボロスは本気で思っていた。
日がやや傾き始めた頃、一行はようやく学園にたどり着いた。例によって、電撃床を何度か踏んだおかげで、ノームを除く全員が
それなりに疲労している。
「うっへぇ〜、疲れたぁ……ドワーフ、ヒールありがとな…」
「ううん、いいよー。えへへ、初めてヒール使えて、嬉しかったな!」
ドワーフは元々体力があり、踊るトカゲの像を優先的に持たせてもらえたため、学園に着く頃にはすっかり元気になっていた。
「二回までは何とかなるけど、三回踏んだら、あたしの体力じゃ、あの世行きじゃね……ノーム君、助かったよ…」
「クラッズちゃん、大丈夫?」
「飛べない種族は大変だね。今度何か対策を考えよう」
そんな彼等を、フェルパーとディアボロスはやはり、やや遠巻きに見つめている。
「みんな、ご飯どうするの?」
フェルパーが尋ねると、クラッズが疲れきった目で答える。
「あたしはパス……も、寝たいわ…」
「あ、じゃあ私は、クラッズちゃん部屋に送ってくるよー。クラッズちゃん、おんぶしてあげる」
「恥ずかしいからいい……って言いたいところじゃけど、お願い…」
クラッズを背負うと、ドワーフは仲間にニッコリと笑いかけた。
「それじゃ、またあとでねー。……ふんふふんふ〜ん」
ヒールを使えたので機嫌が良いらしく、ドワーフは鼻歌を歌いながら寮へと歩いて行った。それを見送ってから、
今度はノームが口を開く。
「僕は食事の前に、図書館で何か課題が出てないか見てこよう」
「あ〜、それ俺も付き合うよ。ついでに、荷物部屋に置いてくるわ」
「仕方ない。なら、私はこいつと先に行って、席でも取っておこう」
「またあとでねぇ」
非常に気は進まなかったが、席を取るには人数が多い方がいい。なるべくこの男のことを考えないようにしつつ、ディアボロスは
学食に向かう。一方のフェルパーは、いつも通り能天気な雰囲気である。
中に入ってみると、学食はまださほど混んではいなかった。早めに席を確保しようと、ディアボロスは適当な席に荷物を置き、
料理を取りに行こうと歩き出した。
その時、近くに座っていたセレスティアの生徒が、突然席を立った。ディアボロスは避けきれず、その生徒と体がぶつかる。
「うあっと」
「痛っ」
二人はお互いに相手を見て、自分の最も苦手とする種族だとわかった瞬間、あからさまに嫌そうな顔をした。だが、黙っているのも
気まずく、ディアボロスはぼそりと呟く。
「悪かったな」
そしてまた歩き出そうとしたところへ、セレスティアが声をかけた。
「ごめんなさい、の一言も言えないんですか、あなたは」
やはり面倒な事になったと、ディアボロスはうんざりした。かといって無視はできない。
「だから、悪かったと言っている」
「それが謝っているという態度ですか?まったく……これだから、ディアボロスという種族は嫌いです。傲慢で凶暴で、さすが、魔族の
血筋というだけはありますよ。あなた方はわたくし達より、迷宮のモンスターといた方が、気が合うんじゃないですかね?」
彼の言葉は、ひどく不快ではあった。しかし、それに対して腹を立てたところで、どうなるものでもない。むしろ、また誤解が
深まるだけである。こういう手合いは無視するのが一番いいと思い、ディアボロスは何も答えなかった。
が、一方的に言って歩き出そうとした彼の肩を、フェルパーががっしりと掴んだ。
「謝れ」
「は?」
突然のことに、セレスティアもディアボロスも、何が起こっているのか理解できなかった。
「彼女に、謝れ」
その時、彼女は気付いた。彼の表情こそいつものように見えるが、その耳はべったりと後ろに寝ていて、尻尾は獲物に襲い掛かる直前の
猫のように、ピクリピクリと震えている。
「いきなり何を…?」
「謝れ!!!」
一際大声で怒鳴る彼の腕を、セレスティアは迷惑そうに振り払った。
「一体、何を謝れというのですか?わたくしが言ったことに、何か間違いでも?とにかく、わたくしはこれ以上、あなた方と
関わり合う気はありませんので、失礼させていただきますよ」
そう言い、セレスティアは踵を返した。その瞬間、フェルパーの尻尾が普段の倍ほどに膨らんだ。
「お、おいフェル…!」
やばいと思い、ディアボロスが慌てて声をかけようとしたが、もう手遅れだった。
「フギャアアアァァァオオオゥ!!!!」
怒り狂った猫の叫び声が、学食中に響き渡った。
その頃、ノームとヒューマンは図書館での確認を終え、のんびりと学食に向かって歩いていた。
「特に致命的なのはなさそうだったな〜。よかったよかった」
「まったくだね。これで単位落とす羽目になったら、泣くに泣けない」
「とにかく、飯だ飯。しっかり食って、明日から少しずつやってこう」
そんな話をしつつ、二人は学食前までやってきた。その時、ヒューマンが訝るように中を見つめた。
「ん?何か、中で騒いでねえか?」
「言われてみれば。迷惑だな、学食で騒ぎなんて」
その時、突然扉が開き、慌てた様子のディアボロスが飛び出してきた。彼女は二人を見ると、心の底からホッとした顔をする。
「ああ、よかった!お前達、手伝ってくれ!」
「え?何?どうしたんだよ?」
「フェルパーが……フェルパーが、大変なんだ!」
「フェルパーが!?」
ヒューマンとノームは顔を見合わせると、急いで学食の中へと飛び込んだ。
人ごみを掻き分け、泳ぐようにして、凄まじい喧騒の中心へと進んでいく。その中心では、数人の生徒が暴れていた。
「てめえ、いい加減にしろよ!」
ドワーフがフェルパーを後ろから羽交い絞めにし、そこにバハムーンが蹴りを入れた。フェルパーは一声呻くと、がっくりと首を落とす。
「おい、セレスティア!お前はさっさと行け!」
「く……わかってますよ。まったく……一体、何だって言うんですか…!」
ボロボロになったセレスティアが、バサリと翼を開いた瞬間、フェルパーが顔を上げた。そして、先程蹴ってきたバハムーンを
ギロリと睨む。
バハムーンが思わず身構えた瞬間、フェルパーはドワーフの腕から抜け出し、走った。しかし、身構えるバハムーンは完全に無視し、
股の間をするりと潜り抜けると、飛び立とうとしていたセレスティアに文字通り飛び掛った。
翼を押さえ込み、地面に落ちる前に空中で体勢を入れ替える。地面に落ちるなり、フェルパーは彼の腰を抱え込み、両足を揃えると、
目にも留まらぬ早さで彼の顔を蹴り始めた。
「おっと、シックスナインの体勢からの見事な猫キック。まさに猫。これぞ本当のキャットファイト」
「馬鹿な実況してんじゃねえよ!!いいから止めるぞ!!」
「止めるのは二人に任せる。僕はその後の処理をしよう」
ヒューマンとディアボロスは中心に飛び込み、再び殴られそうになっていたフェルパーを何とか救出する。相当に消耗していたらしく、
フェルパーはディアボロスが肩を貸すと、ぐったりと体重を預けてきた。
「おいおい、よくわかんねえけど、とにかくそっちもやめてくれ。こんなとこで騒ぎなんか起こしたくねえよ」
「元はといえば、先に手を出したのはそっちだぞ。それでやめろなんて、よく言えたもんだな」
「え?フェルパーが?」
確認するようにディアボロスの顔を見ると、彼女は少し躊躇いつつも頷いた。
「マジかよ……でも、なんでこいつが…?」
「ヒューマン、後は僕が受け持つ。君は下がれ」
そこへ、様子を見ていたノームが現れた。さすがにどの種族からも好かれるだけあって、彼が来るとその場の空気が少し軽くなった。
「やあ、初めまして。僕はこの三人の仲間でね、少し事情を詳しく聞かせてもらえるかい」
「ああ。そいつが、うちのセレスティアと揉めて、先に手を出してきたんだよ」
「へえ。どう揉めたんだい」
「あっつつ……わたくしはただ、そちらのディアボロスがぶつかってきて、謝りもしないので、少し叱っただけ…」
「叱っただと!?」
途端に、ディアボロスが気色ばんで叫んだ。
「人のことを、魔族だ何だと罵るのが、叱るということか!?だから貴様のような…!」
「ディアボロス、もういい。少し黙ってくれ」
静かな口調ではあったが、ノームの言葉には有無を言わせぬ雰囲気があり、ディアボロスは渋々口を閉じた。
「なるほど。大まかな状況は理解できた。……そうだな、別にどっちが悪いわけでもないね」
「……は?」
ノームの言葉に、その場にいた全員が首を傾げた。
「なるほど。そっちのセレスティアからすれば、その言葉はただ、叱っただけだったんだろう。だが、うちのディアボロスはそうは
思わなかったし、フェルパーもそうは思わなかった。その相違ゆえ、君等からすれば、フェルパーが仲間を襲うヒールで、君等自身が
ベビーフェイスだ。誰が間違ってるわけでもない。逆に言えば、全員が間違ってるとも言えるけどね」
「けど、先に手を上げたのは…!」
「それから、君等が僕等より、そのセレスティアを理解してるのと同様、フェルパーのことは、仲間である僕等の方がよくわかってる。
フェルパーはね、普通なら誰にだって手を上げる男じゃない。ぼんやりしてて、おっとりしてて、人畜無害って言葉がすごく似合う猫だ。
それが、ここまでクレイジーになるほどのことを、君等はしたってわけだ。だから僕等からすれば、悪いのは全面的に君等だ」
色々と言いたいことはあるのだが、ノームの言うことは頷けないわけではない。故に、どうしても言い返すことは出来なかった。
「もし、君等がまだ許さないというなら、それはそれでいい。けどね、フェルパーは君等二人、ドワーフ君とバハムーン君には、
まったくの無抵抗だったね。そんな相手を、容赦なく蹴れるような君等を許せるほど、僕は大人しくないぞ」
少しずつ、ノームの表情が怒りに満ちたものに変わっていく。その迫力に、彼等は思わず後ずさった。
「いいかい、今から僕が言うのは、君等にできる最大の譲歩だ。それが呑めないなら、あとは知らない」
「な、何だよ…?」
「……てめえら、さっさと失せやがれ」
ひどくドスの利いた声で、ノームは言い放った。相手はまだ何か言いたそうだったが、やがて傷ついたセレスティアを連れて、学食を
出て行った。それを見届けると、ノームは三人の方に振り返った。
「よし、じゃあ僕等も逃げようか」
「え、なんでだよ?」
「今の騒ぎで、誰も先生を呼びに行ってないとは考えにくい。校内で喧嘩したのがばれたら、下手すれば退学だ」
「あ〜、そりゃまずい。じゃ、逃げるか」
話は即座にまとまり、四人は素早く学食を後にした。フェルパーはぐったりしているものの、歩けないほどではないらしい。
「二人とも、すまない……私のせいで…」
ディアボロスが言うと、ヒューマンは笑った。
「いいっていいって。気にすんな」
「喧嘩なんてよくあることだよ。それより、フェルパーのことは頼んでいいかい」
「ああ、任せてくれ」
ディアボロスは仲間と別れ、寮へと向かって歩き出す。フェルパーはだいぶ回復してきたらしく、もう肩を貸さなくても
歩けるようだったが、ディアボロスはずっとフェルパーに肩を貸していた。
部屋への道すがら、ディアボロスはぽつりと尋ねた。
「フェルパー……あの時、なぜやり返さなかったんだ?」
その質問に、フェルパーは不思議そうに首を傾げた。
「だって、あの二人は仲間を助けるために、攻撃してきただけだもの。二人は悪くないよ」
「お前、どれだけのお人よしだ…。それと、もう一つ。なぜ、私なんかのために、あんなことを…」
「『なんか』なんて、言っちゃダメだよ。そりゃ、君はちょっと怖いし、近寄りがたいところはあるけど、大切な仲間だもの。
あいつ、君のこと侮辱してさ、許せなかったんだ。でも……迷惑かけちゃったみたいで、ごめんね」
それから、二人はずっと黙って歩き続けた。寮に着き、階段を上がり、一つの部屋の前で足を止める。フェルパーは鍵を取り出すと、
念のため番号を確認してから、ようやく鍵を開ける。
「ありがとね、送ってくれて」
「いや……気にするな」
「それじゃ、おやすみ」
最後に屈託のない笑顔を向け、フェルパーはドアを閉めた。それを確認してから、ディアボロスも自分の部屋に戻る。
いつものように、武器だけはそっと壁に立てかけ、荷物は床に放り投げると、ベッドに寝転がる。
―――どうして、あの時止めなかったんだろう…。
ふと、そんなことを考える。彼がセレスティアに殴りかかったとき、止めようと思えばいつでも止められたはずなのだ。しかし、
ディアボロスはうろたえるばかりで、結局、止めることは出来なかった。
目を瞑り、その時のことを思い返す。そして、これまでの記憶を振り返る。
―――私のために怒ってくれた奴なんて……初めてだ…。
彼ははっきりと、自分が仲間だと言い切った。そして、自分の代わりに喧嘩まで仕掛けた。
そこまで考えて、ディアボロスはようやく気付いた。
止めたくなかったのだ。彼は自分のために、本気で怒ってくれた。それが信じられず、また信じたくて、彼の姿を見ていたかったのだ。
あんなに辛く当たったのに、あんなに彼を嫌ったのに、それでも彼は、自分のために本気で怒ってくれた。仲間だと言ってくれた。
「……ごめんな、フェルパー…」
思わず呟くと、涙が溢れてきた。だが、ディアボロスはそれを拭いもせず、ただただ落ちるに任せていた。
嬉しかった。本当に仲間と呼べる相手に出会ったことが。そして、情けなかった。その仲間を、無駄に傷つけてしまった自分が。
その夜、ディアボロスはずっと、一人で泣き続けていた。
学食での乱闘騒ぎがあってから、一週間が経過した。あの日以来、ディアボロスとフェルパーの関係は大きく変わっていた。
以前なら、フェルパーが近寄るとすぐに牙を剥いた彼女だが、今は自分からフェルパーの近くに寄っていく。フェルパーもだいぶ
パーティに馴染んできたらしく、以前よりさらにおっとりとした表情になっている。
「ふぁ〜……眠いなあ」
「いい天気だからな。だが警戒は怠るなよ?」
「大丈夫だよー」
「そうか。ならいいが、あまり私を不安にさせるな」
そんな二人を見て、ヒューマンが笑いながら、そっとノームに囁く。
「あいつら、最近いい雰囲気だよな」
「そうだね。あれ以来、ずいぶん仲良くなったみたいだ」
「フェルパーってのんびりしすぎてて、ちっと不安だったんだよな。前あいつと一緒の部屋になったときなんか、朝になっても
起きねえわ、起こしてもまた寝るわ、挙句に着替えの最中に、靴下履きかけながら寝息立て始めやがってな〜。起きたら起きたで、
いっつも頭の回りにシャボン玉飛んでそうな顔だしさ」
「猫だから仕方ないよ。まあ、そういう意味では、ディアボロスはお似合いかもね」
実際、二人はよく似合っていると言えた。少しのんびりしすぎのフェルパーに、やや硬すぎるディアボロスは、二人でいると実に
ちょうどいい具合に納まっている。戦闘においても、ここ最近親しくなっている関係か、非常に息の合った戦い方をするように
なっていた。前衛二人が活躍するおかげで、探索に費やせる時間もかなり伸びてきている。
一日の大半を戦闘と探索に費やし、学園に帰れば夕食を食べて寝る。そして翌日には朝食を食べてから、再び探索に向かう、という
日々が続き、一行は見る間に力をつけていった。
一緒にいる時間が長くなれば、必然的に親睦も深まる。それまではディアボロスを蛇蝎の如く嫌っていたクラッズも、いつしか普通の
友人並に接するようになり、フェルパーも、ドワーフが近くにいても、さほど緊張しなくなっている。もちろん、元から仲の良かった
者同士は、さらに仲良くなっている。
最初は、あくまでも仲間として大切な存在だった。しかし、ディアボロスはいつしか、フェルパーを友人と思うようになり、程なく
親友になり、今ではそれ以上の関係を望み始めていた。この、実にのんびりしたお人よしの男が、いつからか愛しくてたまらなく
なっていた。だが、フェルパーは猫の血が相当に濃いのか、意外と気まぐれな面もある。自分からディアボロスに話しかけることも
あれば、時にそっけない素振りを見せもする。しかし、今のディアボロスにとっては、それすら愛らしく見えてしまう。
「うわ、また回転床!まったく、この罠ってほんと嫌じゃよねえ……で、行き先どっちだっけ?」
「え〜っと……あの木をさっきまで左手に見てたんだから〜…」
そう言ってヒューマンが指を差すと、フェルパーは自分の前に突き出された指の匂いを、ふんふんと嗅ぎ始める。
「……うん、行き先はあっちだな」
ヒューマンが急に腕を動かすと、フェルパーはビクッと首をすくめた。
「ところで今日辺り、帰ったらそろそろ何か依頼受けてみようか。もう他のみんなは、色々受けてるらしいからね」
「そうじゃね〜。あたしらも、いつまでもだらだらしてられないか」
「どんな依頼あるんだろうね?楽しみだなー」
「そろそろ、忙しくなるってことだな?確かに、楽しみっちゃあ楽しみだな」
楽しそうに話す仲間を見ながら、ディアボロスは少し憂鬱な気分になった。依頼を受け始めてしまったら、あまりのんびりはできない。
恐らくは、それらをこなすのに勤しむこととなるだろう。寮でのんびり、などという生活は、しばらく出来ないのは明白だ。
ちらりと、フェルパーを見る。彼は相変わらず眠そうな顔で、大きな欠伸をしている。
「……そうだな、頑張るか」
ぽつりと、ディアボロスは呟いた。だがそれは、仲間に向けた言葉ではなく、自分自身に向けての言葉だった。
その日、一行は揃って学食で食事をし、図書館に出されている依頼についての相談をしていた。話自体はすぐにまとまり、まずは
校長先生のお使いでも受けてみようという話になった。食事と話が終わると、そこで一応の解散となり、それぞれ好き勝手に
過ごし始める。フェルパーは食器を片付けると、真っ直ぐに部屋へと向かう。その後を、ディアボロスはすぐに追いかけた。
「おい、ちょっといいか?」
フェルパーが部屋に入る直前に、ディアボロスは声をかけた。
「ん?なぁに?」
「いや、その、少し話でもしたいんだが、お前の部屋に行ってもいいか?」
そう尋ねると、フェルパーは少し考えてから答える。
「君の部屋でもいい?」
「え?ああ、別に構わない」
恐らく、自分一人の空間に入られるのが嫌なのだろう。つまり、彼にとって、自分はその程度の認識しかないということになる。
そう思い、ディアボロスは一瞬がっかりしたが、逆に考えれば、一人になれる時間を割いてでも、わざわざ付き合ってくれるというのだ。
ならば、自分もそれなりに思われているのだろうと、彼女は驚異的なプラス思考で気を取り直す。
部屋に入ると、二人は向かい合って椅子に座った。が、話でも、とは誘ったものの、どんな話をすれば良いのか思いつかない。
「………」
「………」
「……え〜、そうだな。今度から依頼を受ける事になるが、どう思う?」
「え、どうって…?」
「ああ、えっと、そうだよな……うまくいくと、思うか?」
「うん、思ってるよ。だって、みんな強くなってきたし、僕達じゃどうにもできないようなこと、言われるわけないもの」
一度話し始めると、少しずつ緊張も和らぎ、自然に言葉が流れ出る。主に学校や探索の話をし、仲間の話をし、無難な話題が
出尽くしたところで、ふとディアボロスの言葉が止まる。
「どうしたの?」
「……なあ、フェルパー」
視線を逸らしながら、ディアボロスが口を開く。
「初めて会ったときのこと、覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ」
「そ、そうか。なら、その…」
喋りながら、ディアボロスの顔はどんどん赤く染まっていく。
「あの時……どう、思った…?」
その問いに、フェルパーは少し戸惑っているようだった。やはり、表情はいつもとあまり変わらないが、尻尾が落ち着きなく左右に
振られている。
「え、えっと……別に、その…」
「何とも、思わなかったのか…?」
「そ、そんな、僕は、その〜…」
表情が変わらないまま、フェルパーの顔も赤く染まっていく。尻尾はますます落ち着きなく、鞭のようにぶんぶん振り回されている。
「見たん……だよな?」
「え、え……な、なんでそんなこと聞くの…?」
「いいから答えろ!そ、それで、その……は、は、裸を、見て……何も、思わなかったのか!?」
ディアボロスは顔を赤らめつつ、上目遣いでフェルパーを睨むように見つめる。やがて、フェルパーの尻尾が不意に止まり、
彼はぼそりと答えた。
「……きれい、だなって…」
それを聞いた瞬間、自分から言えといった割に、ディアボロスの顔は真っ赤に染まった。それからしばらく、二人はうつむいたまま、
しばらく黙り込んでいた。
一秒が一時間にも感じられる長い沈黙が過ぎ、不意にディアボロスがフッと笑った。
「きれい、か……はは、そうか…」
「あ、あの!別に、そのっ、変な意味じゃ…!」
「はは……よかったぁ…」
溜め息混じりに言うと、ディアボロスは顔を上げた。その目が僅かに涙ぐんでいる事に気付き、フェルパーはますます慌てた。
だが、とにかく何か言おうとした瞬間、ディアボロスが先に口を開いた。
「じゃあ、お前は私を、女として見られるということだな?」
「え……え?」
「もし、本当に何も感じなかったと言われたら、どうしようかと……ふふ、お前も一応は、男なんだな」
軽く涙を拭うと、ディアボロスは席を立ち、彼の前に立った。フェルパーの耳が、ぺたんと後ろに倒れる。
「それなら、こうしたら、どうだ?」
「な、何を……あ!?」
ディアボロスはフェルパーの手を取ると、突然、自分の胸にぎゅっと押し付けた。途端に、フェルパーの尻尾がボッと膨らむ。
「あ、あのっ、あのっ!」
「……嫌か?」
「あ、いや、そういうんじゃなくって……でも、その…!」
顔を真っ赤にして慌てふためくフェルパー。その姿が、彼女の目には何とも可愛らしく映る。
「男なら、興味ないわけではないだろう?それとも、私では嫌か?」
「い、嫌じゃないけど……恥ずかしいよ…」
「私だって恥ずかしいんだぞ、ほんとは。でも、お前になら、こうするのも悪くない」
フェルパーは非常に困った顔をしつつも、振り払うのは失礼だと思っているらしく、そのままじっとしている。
「……どうだ?」
「な……何が?」
「私の胸だ」
「……柔らかくって、気持ちいい…」
「え?あ、そ、そう、か」
意外と正直に答えられ、一度は戻ったディアボロスの顔が、また真っ赤に染まる。
「で、でも、なんでいきなり、こんなこと…?」
「それは、その、今度から、依頼を受け始めるだろう?そうなったら、こんなことをしてる余裕は、なくなるだろうと思って……なら、
チャンスは今しかないと、思ったんだ」
「………」
「お前は、私のために、本気で怒ってくれた。私はお前に辛く当たったのに、それでも仲間と言ってくれて……初めてなんだ、
お前のような奴は。それで、いつからか、お前のことが、私…」
そこまで言ったとき、不意にフェルパーが立ち上がり、空いている腕でディアボロスをそっと抱き締めた。
「っ!?」
「それ以上は、言わなくっていいよ。そういうこと言うのって、恥ずかしいもの」
「へ、変なところの気遣いはできるんだな…」
「それで、その…」
「ん?」
「……これ以上、続けてもいいの?」
その言葉に、ディアボロスの全身がかあっと熱くなった。そして、まだ握っている彼の手を、さらに強く握り締める。
「……ああ」
ふと見上げると、吐息が感じられるほどの距離に、フェルパーの顔がある。いつもの穏やかな瞳に見つめられ、ディアボロスの胸が
ドクンと高鳴る。
キスをするかと思い、ディアボロスは目を閉じかけた。が、押し付けていた手が、不意に胸をまさぐりだす。
「んあっ!?な、い、いきなり……んんっ…!」
思わず腕の力が緩んだ瞬間、フェルパーはするっと腕を抜き、ディアボロスの後ろに回りこむと、両手でじっくりと胸をまさぐる。
指先に力を入れると、吸い込まれるように沈み込む。ゆっくりと捏ねるように手を動かせば、大きな胸が柔らかそうに形を崩す。
初めて他人から受ける刺激に、ディアボロスは身を捩りつつ、抑えた吐息を漏らす。
「んくっ……お、おい、待て…!うあっ……待て、待ってくれって…!」
「……あ、ごめん。触るの、気持ちよくって…」
申し訳なさそうに言うと、フェルパーはすぐに手を放した。ディアボロスは荒い息をつき、少し非難を含んだ眼差しでフェルパーを
見つめる。
「気に入ってもらえるのは嬉しいが……わ、私は、初めてなんだからな。もう少し、その、手順を踏んで欲しいな」
それの意味するところを察し、フェルパーはそっと、彼女の顔を上げさせる。ディアボロスは嬉しそうに微笑むと、今度こそ目を閉じた。
震える唇が、そっと触れる。躊躇いがちに、唇だけが何度も軽く触れ合い、やがて少しずつ強く触れるようになり、だんだんと大胆に
なっていく。唇を触れ合わせるだけだったキスが、お互いの唇を吸うようになり、ほどなくして舌が触れ合う。
その時、フェルパーがそっと唇を離した。ディアボロスは不満げな瞳で彼を見つめる。
「もう、終わりなのか?」
「あ、ううん。そうじゃないんだけど、僕のベロ、気をつけてね」
「……?」
「あんまり強く触っちゃうと、痛いから」
そういう彼の舌には、白い棘がいっぱいに生えている。だが、ディアボロスはおかしそうに笑う。
「大丈夫だ。少しぐらいの痛みなら、気にしない」
「そう?でも、怪我しないでね」
再び、二人は唇を重ねた。ディアボロスが積極的に舌を絡め、フェルパーは躊躇いがちにそれに応える。何度か、ジョリッと痛そうな
音が響いたが、言葉通りディアボロスはほとんど気にしていない。それを受けて、最初は消極的だったフェルパーも、だんだんと
自分から舌を絡め始めた。
柔らかい唇。優しく触れる舌の感触。暖かい口内。初めて味わう感覚に、二人は夢中になっていた。いつしかお互いしっかりと抱き合い、
目を閉じたまま、ひたすらにその快感を貪る。
長い間、二人はそうしていた。が、やがてどちらからともなく、唇を離した。フェルパーは唇に残った彼女の温もりを味わうように、
一度ぺろりと唇を舐め、ディアボロスはとろんとした目で彼を見つめる。
「ベロ、大丈夫?」
フェルパーが尋ねると、ディアボロスは子供のような笑顔を見せた。
「うん、大丈夫だ。それに……ふふ、キスは一度してみたかったから、それが叶って嬉しいな」
言ってから、ディアボロスは顔を赤らめつつ、さりげなく目を逸らした。
「それで……その、もう少し、わがまま言っても、いいか?」
「あ、うん。なぁに?」
「その……む、胸、が、さっき、気持ちよかったから……また、その……今度は、直接…」
「……うん、わかったよ」
優しく言うと、フェルパーは彼女の服に手をかけた。本人はそっとやろうとしているらしいのだが、どうしてもその動作は性急になり、
ボタンを飛ばしかねない勢いで脱がせにかかっている。だが、ディアボロスは文句一つ言わず、顔を赤らめて為すがままになっている。
「あ、あと…」
「ん?」
「どうせなら、続きは、ベッドで…」
「あ、そうだよね。ごめん」
口調だけはのんびりした調子で言うと、フェルパーは彼女をひょいっと抱き上げた。
「わっ!?」
彼の思わぬ行動に、ディアボロスは思わず固まってしまう。元々屈強な体つきであり、どちらかといえば抱き上げる側の方が似合う
彼女にとって、それは初めての経験だった。横抱きに抱えられ、フェルパーの優しい目で見つめられると、何だか自分が、いつの間にか
か弱い女の子になってしまったような錯覚を覚える。
優しくベッドに横たえられ、ディアボロスは不安げにフェルパーを見上げる。そんな彼女の頭を優しく撫でてやると、彼はゆっくりと
ブラジャーに手をかけた。
今まで触ったことがないらしく、それを外すまでには意外と長い時間がかかったが、ようやく背中側にホックがあることに気付き、
何とか脱がせることに成功する。
露わになった胸を隠すように、ディアボロスは恥ずかしげに身を捩る。そんな彼女よりさらに顔を赤くしつつも、フェルパーは彼女の胸に
手を伸ばした。その手を、ディアボロスがそっと押さえる。
「あの……こんなこと言うのは、恥ずかしいんだが……その、できれば、舐めてみて……ほしいな…」
「え、いいの?あ、でも、痛いと思うんだけど…」
「ふふ、それは大丈夫だ。気付かなかったか?さすがにバハムーンほどじゃないが、私達も皮膚は丈夫でな」
言われてみれば、確かに彼女の肌は少し異質な感じであった。胸に触れたときも、何度か爪が立ってしまった気はしたのだが、
肉に食い込んだ感触はなく、また彼女も痛がりはしなかった。
「じゃあ、痛かったら、言ってね?」
フェルパーは彼女に覆い被さるようにすると、そっと乳首を口に含んだ。
「んっく…!」
ピクンと、ディアボロスの体が跳ねる。少し顔をしかめてはいるが、痛みによるものではないらしい。
慎重に、舌を這わせる。先端をザラリと舐め上げると、再びディアボロスの体が跳ねる。
「んんっ……フェルパー、もっと強く…!」
「う、うん」
一瞬躊躇ったものの、フェルパーは強く吸い付き、さらにじっくりと舐め上げる。普通なら痛みに悲鳴を上げるところだろうが、
ディアボロスはまったく違う反応を示してくる。
「ふあっ……あぁ…!ザラザラして……気持ちいい…!」
ディアボロス特有の強靭な皮膚の前では、彼の舌の棘など問題にならず、むしろそれによって快感がさらに高まっている。
フェルパーが舐める度、ディアボロスは甘い吐息を漏らし、可愛らしく鼻を鳴らす。体が跳ね、身を捩り、時にフェルパーの腕を
反射的に掴む。
フェルパーとしても、それは非常にありがたい話だった。最初こそ、彼女を傷つけはしないかと遠慮していたフェルパーだが、やがて
かなり強く胸を吸い始め、じっくりと味わうかのように、何の遠慮もなく舐め上げる。いつしか、彼は赤ん坊のように彼女の胸に
吸い付き、また片手でもう片方の乳房をまさぐっている。
次々に襲ってくる快感の合間に、ディアボロスはフェルパーを見つめる。
好きな人が、自分の体に夢中になっている。その事実は、ディアボロスに胸がきゅんと締め付けられるような快感をもたらす。
同時に、彼女の中に新たな欲望が生まれ始める。
もっと、彼に気持ちよくなってもらいたい。もっと、彼を感じたい。彼と、一つになりたい。
「あんっ……フェ、フェルパー…!」
何とか、声をかける。だがその直前に、フェルパーは自分から唇を離した。
「あの……僕、もう…」
そう言うフェルパーの尻尾は、苛立たっているかのようにベッドをバンバンと叩いている。そして見れば、ズボンの前が明らかに
盛り上がっている。気持ちは同じだったのだと思うと、ディアボロスは少し嬉しくなった。
「ああ……私も、来てほしいと思ってたところだ…。あ、でも…!」
スカートにかけられた手を慌てて押さえ、ディアボロスは恥ずかしそうに続ける。
「お前の体……私も、直接触れたいな」
「わかった。じゃ、僕も脱ぐよ」
言うが早いか、フェルパーは豪快に上着を脱ぎ捨てた。その下から現れた体に、ディアボロスは少し見とれた。
思ったより、遥かに体格がいい。とはいっても、戦士のように屈強な体つきというわけではなく、無駄のない引き締まった体つきである。
女としてというより、同じ前衛として、彼の体はつい触れてみたくなるほどに魅力的だった。
当のフェルパーは、そんなことなど露知らず、既にディアボロスのスカートを脱がせ、最後のショーツを脱がせにかかっている。
口元に手を当て、全身を紅潮させながら、ディアボロスはフェルパーを不安げな目で見つめる。だが、フェルパーは彼女を気遣う余裕が
ないらしく、ただじっと自分の手元を見ながら、ショーツをゆっくりと引き下ろしていく。
僅かにつく、黒い染み。引き下げると、そこから透明な糸が引き、同時に『雌』の匂いが立ち込める。それに反応したのか、
フェルパーは尻尾で一際強くベッドを叩くと、一気にショーツを引き下げた。
とうとう一糸纏わぬ姿になり、ディアボロスはますます恥ずかしげに身を捩る。そこに、フェルパーが下を脱ぎ捨て、ゆっくりと
のしかかる。
「あの…!」
「ん、なぁに?」
「は、初めてなんだ……だから、その、優しくしてくれるか…?」
「……うん、わかってるよ。僕も初めてだけど…」
「そ、それと、できれば体を、くっつけてくれ……お前の温もりを、直接感じたい…」
「うん、いいよ」
フェルパーはそっと、ディアボロスと胸を重ねた。お互いに伝わる体温が、二人の緊張を少しだけ和らげる。
「じゃあ、いい?」
「う、うん、きてくれ…」
とは言ったものの、さすがに経験もない上に、入れる場所を見てもいないため、フェルパーはしばらく入れる場所を探して
もぞもぞしていた。やがて、ようやくそれらしい場所を探り当て、腰をグッと突き出した。途端に、ディアボロスが大慌てで
フェルパーの胸を押し返す。
「ま、待て待て待て!!待ってくれ!!そ、そっちじゃない!!そこは違う!!」
「え、あ、ごめんね。大丈夫?」
何とか危機を回避でき、ディアボロスは心の底からホッとした溜め息をついた。
「その……入れる場所は、もうちょっと上だ」
「ん……この辺……かな…?」
「いや、もう少し上……そこの……そう、そこだ」
ようやく正しい場所にあてがうと、フェルパーは確認するようにディアボロスの顔を見つめる。ディアボロスはこくんと頷くと、
ぎゅっと目を瞑った。
少しだけ、腰を突き出す。僅かに先端が入り込むと、ディアボロスの体が強張り、呼吸が震えだす。
そんな彼女を何とか落ち着かせようと、フェルパーは何とか彼女の体の下に腕を入れ、強く抱き締めた。それで安心したのか、少しだけ
彼女の体から力が抜ける。それを見計らい、再び彼女の中に押し入って行く。
「くっ、う…!んん……つっ…!」
ぎゅっと歯を食い縛り、荒い息をつく彼女は苦しそうではあった。しかし、それ以上してやれることもわからず、またフェルパー自身、
あまり余裕がない。
やがて、少し引っかかるような感触に、フェルパーは一度動きを止めた。ディアボロスもそれを感じたらしく、苦しげに息をしつつ、
何とか口を開いた。
「そのまま……来て……くれ…」
「……わかったよ」
彼女の体を強く抱き締め、フェルパーはグッと腰を突き出した。
「あぐっ!!っく、うぅ……あ…!」
ディアボロスの口から抑えた悲鳴が漏れ、ぎゅっと閉じた眦から涙がこぼれる。同時に、フェルパーは自身のモノに、今までとは
また違った、熱い液体が伝うのを感じた。
「大……丈夫…?」
不安げに尋ねると、ディアボロスは何とか目を開け、弱々しく微笑んだ。
「だ……大丈夫、と、言いたいが……あまり、大丈夫じゃない……痛い…」
「ごめんね。抜いた方がいい?」
「いや、いい……痛いけど……抜かれるのは、嫌だ…」
フェルパーとしては、痛いほどに締め付ける中の感触と、ずっと嗅がされている匂いのせいで、欲望のままに腰を動かしたくて
たまらなかったのだが、ディアボロスの辛そうな顔が、その衝動を何とか押し止めている。
「それ、に……嬉しいんだ……お前と、やっと、一つ……に……うあっつ…!」
思った以上の痛がりように、フェルパーはいつもの表情のままで、実は非常に焦っていた。どうしようかと悩みに悩んで、フェルパーは
ふと上半身を離した。
「え……ど、どうして離れちゃうんだ…?」
「だって、痛そうなんだもの。気持ちいいの、してあげるね」
「気持ちいいのって……んあっ!?」
ザラリと、胸の敏感な突起を舐める。突然の刺激に、ディアボロスは思わず身を震わせた。
「フェルパー、そんな……うあ……んっ…!あつ…!」
少し痛がることはあるものの、やはり快感が強いらしく、少しずつディアボロスの表情が和らぎ始める。それでも、フェルパーは
まだ動かず、じっくりと胸を刺激する。
乳首を口に含み、吸い上げながら舌で舐める。もう片方の乳房は優しく捏ねるように揉みしだき、指先で先端を弄る。
「あんっ……やっ、フェル……ふあ…!」
もうほとんど、ディアボロスは痛みを感じていないようだった。フェルパーは胸を刺激しつつ、そっと腰を動かしてみる。
「んっ、うぅっ…!う……あん…!」
さすがに少しは痛いらしいが、さっきよりはずっと痛みも少ないらしい。ディアボロスの反応を見ながら、フェルパーは少しずつ
腰の動きを強めていく。
「はぁ……くぅ…!フェル、パぁ…!」
歯を食い縛り、苦痛と快感の狭間で、ディアボロスは必死にフェルパーに応えようとする。痛みを堪え、何とか腰を動かしてみたり、
中をぎゅっと締め付けてみたり、できる範囲で必死に努力している。
「うっく……ディアボロス、僕、もう…!」
ただでさえ初めての経験で、しかもそんなお返しを受けては、フェルパーも長く持つはずがなかった。切羽詰った声で言うフェルパーに、
ディアボロスは何とか笑みを見せる。
「いい、ぞ……そのまま、中で……あく…!中で、出していいぞ…!」
ディアボロスが言うと、フェルパーの動きが激しさを増した。それに伴い、苦痛も跳ね上がるが、ディアボロスは必死に歯を食い縛り、
悲鳴を漏らさないように気をつける。
「んん……うぐ、うぅ…!フェル、パー……キス、して…!」
何とか言うと、フェルパーは荒々しくディアボロスの唇を奪った。それだけでなく、腕はさらにきつく体を抱き締め、尻尾がするりと
太腿に巻きついてきた。全身で抱き締めてくれるフェルパーに、ディアボロスは今までにないほどの愛おしさを感じる。
「も、もう出そう……く、うあっ!」
搾り出すように言うと、フェルパーは一際強く腰を打ちつけた。それと同時に、彼のモノがビクンと跳ねた。
「んあぁっ!!熱……い…!中で、動いて……何か、出てる…!」
体の中で、彼のモノが何度も跳ねるのを感じ、その度に体の奥がジンと熱くなる。それが何度か繰り返され、少しずつ動きが弱まり、
やがて動かなくなると、二人は同時に息をついた。
「はぁ……はぁ……ディアボロス、大丈夫?」
不安そうに尋ねると、ディアボロスは弱々しくも、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ああ……大丈夫だ…。少し、痛いけどな…」
「とりあえず、抜くね」
「……うん」
少し名残惜しい気はしたが、それのせいで痛いのも事実である。ディアボロスが頷くと、フェルパーはすぐに彼女の中から引き抜いた。
「あつ…!」
「ごめんね、痛かったでしょ?」
「でも、嬉しかったぞ。お前に抱いてもらえて、私は幸せだ」
そう言うと、ディアボロスは自分からキスを仕掛けた。フェルパーは黙って、それに応える。
舌を絡ませ、口内をなぞり、唇を吸う。一度唇を離し、舌先でじゃれ、再び唇を重ねる。
しばらくそうやってキスを楽しんでから、二人は再び唇を離した。
「なあ、フェルパー」
「ん?」
「その……ずっと、二人でいたいな」
ディアボロスが、顔を赤らめながら言う。が、フェルパーは少し考え、答えた。
「ん〜、ずっとは嫌かなあ」
「……何だって?」
さすがに今聞いた言葉が信じられず、ディアボロスは思わず聞き返した。
「だって、一人になれないなんて、嫌だもの。だから、ずっと一緒なのは嫌だよ」
体を重ねたところで、自分はその程度でしかないのかと、ディアボロスは本気で悲しくなった。同時に、彼に対してどうしようもない
ほどの怒りが湧き上がる。
「……そうか、よくわかった。ふんっ、どうせお前は、私といたって面白くないんだよな!一人の方がいいんだろ!?わかった、
もういいよ!ぐすん、私はもう帰る!」
一方的に言うと、ディアボロスはベッドから降りようとした。が、立とうとした瞬間に凄まじい痛みに襲われ、よろめいてしまう。
「ま、待って待って。落ち着いてよ。ここ、君の部屋だよ?僕の部屋じゃないよ」
大慌てで、フェルパーが彼女の腕を掴んだ。だが、ディアボロスはその腕を振り払おうとする。
「ああ、そうだった。お前の部屋のつもりだった。じゃあわかった、帰れ!さっさと帰れ!!帰れよ!!」
「あの、だから落ち着いて。僕、君のこと嫌いなんじゃないよ」
必死に振り払おうとする腕を押さえ、フェルパーはディアボロスを抱き上げた。
「今更、言い訳でもするつもりか!?ぐす……お前は、一人の方がいいんだろ!?だったら、さっさと帰れよ!」
「痛い痛い痛い。耳引っ張らないで。髪の毛も引っ張らないで。叩かないで」
抱き上げたディアボロスに暴力を振るわれながらも、フェルパーは何とかディアボロスをベッドに戻し、ぎゅっとその体を抱き締める。
「……何のつもり…!」
「あのね、僕、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。僕にとってはさ、一人の時間って、すごく大切なんだよ」
「だから、さっさと帰れって…!」
「待ってって。君だって、部屋で一人になったら、落ち着くでしょ?そりゃ、気の合う友達だっていると思うけど、他の人と一緒だと、
自分そのままではいられないよね?だから、自分そのままになれる時間って、すごく大切だと思うんだ」
「………」
「でも、だからって君のこと、大切じゃないってことじゃないよ。君って、僕と似てるところあると思うし、ちょっと怖いけど、
今はもう、そうでもないし……すごく、すごく、大切だと思ってるんだよ」
「……くすん……なら、なんであんなこと言ったんだ…」
「だって、嘘は言えないもの。好きな人に嘘つくなんて、とてもひどいことだもの」
フェルパーが言うと、ディアボロスは彼の顔をしばらく睨んでいたが、やがてちょっとだけ笑った。
「……本当に、お前は憎めない奴だな…。でも、何でも正直ならいいってわけでもないぞ」
「傷つけちゃったのは、ごめんね。でも、君ならわかってくれると思ったんだ」
確かに、わからないわけではなかった。単に人見知りなのと、種族的に嫌われているという違いはあるが、ディアボロスも初めて会った
相手には、とても心を許せず、どうしても自分から距離を取ってしまう。そのため、一人でいる方が落ち着くという意見には、
少なからず同意は出来る。
「でも、さ。僕、君となら、今日一日、ずっとこうしてたい。今日は、部屋に帰りたくないよ」
「……ふふ」
ディアボロスは静かに笑い、涙を拭った。
「なら、最初からそう言ってくれ。私だって、今日はお前と、一緒にいたい」
そう言うと、ディアボロスもフェルパーに抱きついた。フェルパーは彼女の体を抱き締め、尻尾を太腿に巻きつけた。
最後にもう一度、二人はキスを交わした。おやすみと、仲直りの意味を兼ねた、優しいキスだった。
しっかりと抱き合いながら、二人は目を瞑った。お互いの温もりが、とても心地良かった。
学園の依頼を受けるようになって、早くも二週間が経った。今、一行は初めの森で、小休止を取っている。
「……は〜。結局、やってることなんか、ほとんど変わってねえよなあ」
ヒューマンが言うと、ノームは口元だけで笑った。
「そりゃあ、ね。まさか、あんなに楽な依頼ばかりだなんて、思わなかったからねえ」
「でもさ、どうしてあんなのばっかりなのかなー?」
お下げを編み直しながら、ドワーフが不思議そうに言う。
「あっはは。そりゃあさ、魔法使いのいないパーティなんて、あたしらくらいのもんじゃよ?」
笑いながら答えるクラッズは、ドワーフのもう片方のお下げを編んでいる。
「……それで、どうして簡単になるの?」
「じゃからね、普通は魔法使いが生命線になるわけよ。つまり、魔力が切れたら、みんな少しぐらい余裕があっても、すぐ学園に
帰っちゃうわけ」
「ところが、僕等は元々そんなのいないからね。苦労はしたけど、体力が続く限り、狩りを続けてきたし、体力を持たせるコツも
知ってる。何より、ライフラインになるほど重要な魔法使いがいない状態で、ここを突破しなきゃいけなかったんだから、そりゃ他の
パーティより、格段に実力は上になるさ」
「あ、そっかー。そういえば私、他の友達に『君のチーム強すぎ』って言われたなあ」
「あははは。出だしは遅れちまったけど、駆け上がるのは早いみたいだな、俺達」
そう言って、ヒューマンが笑う。
「けど、この先これ以上きつくなるなら、魔法使いが一人ぐらいはほしいよな……転科、考えるかな…」
「僕等としては、それは助かるね。できるのなら、お願いしたいよ」
「……転科かぁ…」
ドワーフが、遠い目で呟く。だが、その声はヒューマンとノームには聞こえなかった。
その時、不意にヒューマンの声の調子が変わった。
「……ところで、ノーム。期待するのって、悪いことじゃねえよな?」
「ああ、そうだね。過度な期待をかけて余計なプレッシャーを与えるとかはともかく、期待することそれ自体に罪はない」
「だよな。で、ボーっとした男に、しっかりした女の子がついたら、そりゃあ期待もするよな?これでこいつも、しっかりするんじゃ
ねえかってさ」
「ああ、ありがちな話ではあるね」
「そうだよな、やっぱりそう思うよな…………けどよ、あれは一体何だっ!?」
そう言って指差した先には、木陰で休むフェルパーとディアボロスがいた。
「あと、俺小休止っつったよな!?がっつり休もうなんて言ってねえよな!?」
「そうだね。僕の記憶でも、君は小休止って言ってる」
「ああ、そうだ!俺は小休止っつった!!で、改めて問うが、あれは何だ!!!」
二人は、さっきから会話に参加していない。それもそのはずで、二人の方からは時折安らかな寝息が聞こえてきているのだ。
「くぅー……ゴロゴロゴロ……くぅー…」
「すぅ……すぅ…」
フェルパーはディアボロスの膝枕で、実に気持ちよさそうに眠っている。時折、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす辺り、相当に
リラックスしていることがわかる。一方のディアボロスは、彼に膝枕をしつつ、自分もうつらうつらと船を漕いでおり、やはり
安らかな寝息を立てている。
「フェルパーはともかく、どうしてあいつまで寝てんだ!?どこに小休止で寝る奴がいるんだ!?あのしっかりしたディアボロスは
どこに消えたんだ!!」
「なかなか、人の心はままならないものさ。あの猫がしっかりするより先に、彼女にシャボン玉が移っただけの話だろう」
そんな二人を見て、ヒューマン以外の全員がおかしそうに笑う。
「うふふ。二人とも、気持ちよさそうに寝てるよねぇ〜」
「羨ましいのぅ〜、あの二人……っと、かんせーい。いつもよりもっと細かくしてみたよ」
「ありがとう〜。わ、これ面白い。何ていうの、これ?」
「お、フィッシュボーンかい。なかなか面白い編み方知ってるじゃないか」
「お前らぁー!!!お前らまでリラックスしてんじゃねえ!!そろそろ休憩も終わりだぞこらぁー!!」
ヒューマンが叫ぶが、三人は完全に無視した。
「そう焦るなって。どうせ依頼も出てないし、受けてもいないんだから。で、せっかくなら他の髪型も試すかい」
「う〜ん、私は三つ編みが好きなんだけど、他のもいいかなあ?」
「ハーフアップとかどう?あるいはサイドポニーとか」
言うが早いか、クラッズは一度結んだ髪を解き、再び編み始めた。
「おいこら、クラッズ!!またドワーフの髪弄りだすんじゃねえよ!!」
「うるさい男じゃなーもー。女の子にお洒落するなっていうのは、死ねっていうのと同じことじゃよ?」
「猫にしっかりしろって言うのも、あるいはそうかもね」
「私達も、お昼寝にしちゃう?」
「お前らあああぁぁぁ!!!」
「ゴロゴロゴロ……くかー…」
「……すぅ〜……くぅ〜…」
軽く見えて真面目なヒューマン。人を食った態度のノーム。おっとりとしたドワーフ。明るく陽気なクラッズ。そして、のんびり屋の
お人よしであるフェルパーに、『元』しっかり者のディアボロス。
順風満帆とはいえない出だしで、彼等の冒険は始まった。だが、既に彼等のパーティは、大物となる片鱗を見せ始めていた。
やがて大きくなるであろう彼等の、まだ目にも見えないような、小さな一歩だった。
以上、投下終了。
相当に削ったけど、それでも長くなってしまった……orz
次は極端に長くならないよう努力します。
それではこの辺で。
GJ
長編乙。ナイスワークだ
これからはこのパーティーが話の中心になるのかな?
楽しみだ
やはり でぃあぼろすは いいものだ
GJ
貴方のSSはいつも面白いよ。
このパーティが新しいシリーズ物になることを期待。
乙です。氏のSSは読んでいて
その作り込みの深さにいつも唸らされるわぁ
彼女等のこれからに期待期待
GJ
ドワーフの髪を結うクラッズに何だか和んだ
154 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 19:00:04 ID:xn9VIo1O
乙。
しかし師はエロを書くのがうまい。
色々と参考にさせてもらいます。
そう言えばメンバーの種族、ディアボロスとヒューマンを除けば師の卒業生パーティと同じですね。
やっぱり好きな種族をよく入れるんですね。
入学式から2週間。フェル子は悩んでいた。
パーティを組んでくれる仲間が見つからないのである。
フェルパーという種族の性質上、人見知りする上に
輪をかけてはにかみ屋のフェル子。
入学式直後のクラスでの自己紹介では壇上でクラス
メイトの視線を浴びた瞬間真っ赤に炎上して何も言え
なくなり、昼休みに隣の席のクラ子が話しかけてきたときも、
引きつった笑顔を返すのが精一杯だった。寮のルームメイト
であるノームの女の子は、部屋に帰ってくるなり幽体離脱
したかのように椅子に座ったまま動かない。フェル子と
しては気を使わなくて済む有難いルームメイトなのだが、
ノム子ルートのコネは期待できそうになかった。
(なんとかしなきゃ..)
今のうちであれば課題も難しくは無く、一人で学べる
ことも多いが、経験とチームワークがものを言う冒険者
稼業、このまま一人ぼっちではやがて落ちこぼれて
しまうだろう。
内心焦りを感じ始めていたフェル子の目に、ビラが
一杯貼り付けられている掲示板が映った。
(生徒会掲示板..?なんだろう?)
よく見てみると貼り付けられているのは、学園の各種
サークルの新入生歓迎のビラだった。
(サークルかあ..同じ趣味の仲間を作るのもいいわね)
一枚一枚吟味するようにビラを眺めるフェル子。
「剣術部野球部水泳部..運動系は苦手なのよね」
「猫耳同好会?モンスター料理研究会?うわぁ..」
勧誘のために工夫を凝らしたビラを眺めるのは楽しかったが、
ふと我に返ってみると、今まで自分が無趣味だったことに
気づかされた。
(これでは友達の一人も出来ないのは当然ね..でも
今変わらなきゃ、家を出てここへ入学した意味が無いよね。
Change!!Yes, I can !!)
一人で盛り上がりガッツポーズをとるフェル子の視線の
先に可愛い子猫のイラストが書かれているビラがあった。
(人形劇団聖飢..II?..なんて読むのかしら?)
見るからに怪しげな名前。でもイラストは可愛い。
「可愛いお人形と楽しい劇で遊びましょう」
「経験は問いません。人形遣い学科以外の人も大歓迎!!」
「周辺の施設へ出向いて巡回公演をしています。腹話術や
人形を使った手品もやります。人とのコミュニケーション能力を
磨くチャンス!!」
「新入生歓迎公演随時開催中!!」
読み進めていくうちに好奇心を刺激されていくフェル子。
(なんだか楽しそう..明日の放課後にでも見学に行ってみようかな?)
「今日のフェル子、楽しそうね。何かいいことあった?」
翌日の放課後、ようやく普通に話せる仲になった隣のクラ子が尋ねてきた。
「え?あ、そ、そう見える?べ、別に大したこと..無いんだけど..な..あはは..」
「そう..でも笑顔が出るようになったのはいいことね。じゃ、また明日」
クラ子と別れると、フェル子は逸る気持ちを抑えつつ人形劇団の
活動場所である人形遣い学科の教室へ向かった。
入り口のドアの前でノックしようとして、いつも通りに固まるフェル子。
(ダメよフェル子。この扉は私の未来。自分の手で開かないといつまで
たっても変われないわ。私は出来る!!Yes, I can !!)
たっぷり三分間逡巡した後、意を決して扉を叩く。
とんとん..
「ししし失礼します。新入生のふぇ、ふぇ、フェル子です。けっけけ見学に..」
言い終わらないうちに、ギギィィ..と無駄に重々しい音を立てて扉が開く。
「いらっしゃ〜い!!」
「ぎぃにゃあああああああ!!」
緊張でカチカチのフェル子を出迎えたのは、ハロウィンのかぼちゃのお化けの
人形と、それを操る顔色蒼白黒色二角−いわゆるディアボロス-の女生徒だった。
「部長、いきなり驚かせちゃ駄目ですよw..ささ、どうぞ中へ。遠慮なく」
部長と呼ばれた女生徒の後ろでは、副部長とおぼしき長身痩躯双眸紅玉
-こちらもいわゆるディアボロス-の男子生徒が穏やかに微笑んでいる。その右肩では
妖艶な和服姿の三毛猫人形が舌なめずりしながらフェル子に向かって手招きしていた..
「あわ、あわ、あわわわわ..」
あまりの事態に言葉を失ったフェル子の手を引き、背中を押して椅子を勧める
部員たち−もちろん漏れなくディアボロス-。
「どうしよう..新歓公演は"13日の金曜日"の予定だったけど、フェルパーの女の子が
お客さんだから"肥前鍋島化け猫騒動"にしないか?」
「おおっ!!昨年の文化祭で最優秀賞を取った副部長の十八番じゃないですか!!賛成賛成!!」
「うふふ。可愛いフェルちゃんね。そんなに緊張しないで。さあ、お茶をどうぞ」
茶人形がカタカタと茶碗を運び、ジェイソン人形がナタで羊羹をぶった切る。その様を
フェル子は椅子の上でガタガタ震えながら見つめていた。
(あのイラストの可愛い猫ちゃんは?楽しい劇ってなに?手品と腹話術ってどこ?)
突然、カチカチと拍子木が打ち鳴らされ、部屋の照明が落とされる。
「ただいまより、新入部員歓迎公演を始めます。演目はわが劇団伝統の十八番
"肥前鍋島化け猫騒動"。ごゆっくりお楽しみください..」
舞台に一筋のスポットライトが当てられる。光の中では妖艶な和服姿の三毛猫
人形がフェル子に向かってしなを作り流し目を送っていた...
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
..フェル子の中で何かが弾けた。
ディアボロス-冥界からの血脈を持つ種族。故に他の種族からは忌避される。
魔法物理に精通し、「人形遣い」は彼らの特徴的な生業の一つである。
クロスティー二学園人形劇団「せいきまつ」-人は影で「ディアボロ巣」と呼ぶ。
158 :
人形遣いの館:2009/07/08(水) 19:14:18 ID:IXTCZV2R
過去レスとHPの情報と酔った勢いだけで書いた。ゲームも持ってないしエロも無いけど
反省はしていない。
反省して二度と顔を見せるな
別に悪くはないけど、キャラスレのが喜ばれるかもしれんね
とりあえずととモノ買ってみるのをお勧めするw
今までPTメンバー6人の間だけで妄想してたが、
『100人までキャラを作れる=100人まで登録できる冒険クラブに入部してる』
みたいに考えると幅が広がる事に気付いた。
こうすれば本当はクラ男と組みたいのに学科バランス上他PTに行くしかないフェア子とか、
本人達は否定しているヒュマ男部長とディア子副部長の関係とか…
ヒャアッ たまんねえ。
純金こけし
163 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 22:12:07 ID:xn9VIo1O
>>158 面白かった。
ネタとしては良いけど、とりあえず、ととモノ買ってね。
>>159 まぁまぁ、そう過剰反応しないで。
後ネットだからそもそも顔見せてなこらなにをするやめ・・・アーーッ!!
いや甘いって
こういう屑は放っておくと調子に乗る
最初のうちに叩いて潰しておかないと
叩いて潰す必要性はあるのかな?
そこまで排他的にならなくてもいいんじゃないかと思うんだが……
>158
このタイトルに興味を持ったならまずプレイしてみようよ。
「プレイしてないけど書いた」なんて言葉はファンからしてみたらこのゲームへの冒涜だ。
そりゃ>159みたいに怒る人も出て当然。
>>158 GJ
これはよいでぃあぼろす
だが、ととモノは買おう
前作でも今作でも最初から最後までディア子入れてる俺からすると
なんか勝手にオタクみたいな空気読めないキャラに仕立て上げられてて
俺の怒りが有頂天に達した
168 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 00:30:09 ID:y/gQi0xE
169 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:30:52 ID:CMZfv5oY
初めまして
皆様に感化されてついうっかり書いてしまったので初投下させていただきます
なんか タイミング悪かったらスマセン…
いちお2仕様ですがネタばれはないっす。
ディア男×バハ子です
無駄に長くなってしまって申し訳ない!では!ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
170 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:31:36 ID:CMZfv5oY
「も〜〜〜〜!バハムーンってばそんなオクテな考えじゃいつまでたってもダメ!だよ〜〜」
初夏を迎えたクロスティーニ学園の学生寮。
夏の日差しが窓からいっぱいに降り注ぐ大きな食堂の片隅でキャッキャと甲高い声が響いた。
「ちょっと…フェアリー、声大きい!他の人に聞こえちゃうでしょ!」
丸いテーブルを囲むようにして座っているのはフェアリー、バハムーン、そしてノームの3人組の少女。
その中でも一際長身のバハムーンの少女が顔を赤らめ恥ずかしそうに周りを見回した。
「ダイジョブ、ダイジョブ!他の人の話してることなんか皆気にしないって!…で、バハムーンはやっぱディアボロスが好きなの?」
大きなくりくりと動く目を輝かせながらフェアリーがバハムーンに問う。
バハムーンは恥ずかしそうにトレイに乗っていた食後のケーキをフォークで一刺しすると「うん…」と頷く。
やっぱり〜とフェアリーとノームは互いに顔を見合わせ少しイタズラっぽく笑った。
「バハムーンちゃん、いっつもディアボロスさんの背中目で追ってるもの…」
「そ そそそそ そんな事…ないけど、な…」
「えー、だってアタシより絶対ディアボロスのことかばってる気がする!!!」
むん、とフェアリーは頬を膨らませバハムーンを覗き込む。
さすがにそれは言いすぎだとは思うが、確かに、探索中に彼の姿を目で追ってしまう事が多々あるのも事実だった。
竜騎士学科に所属する彼女は仲間を守る立場にある。
だが、要領の悪い彼女はなかなか上手く立ち回れず、仲間を危険に晒してしまうことも何度かあった。
それを助けてくれたのが、彼。
話のネタに上がっているディアボロスであった。
忍者学科に所属するディアボロスは普段はとても無口で表情も滅多に表に出さないが、何かとバハムーンのフォローをしてくれる。
「でもさー、ディアボロスもバハムーンのことは結構気にしてるッポイよね〜 私なんか一度も助けてもらった事ないのに!」
「そうかな…仲間、だからじゃない?ほら、私が倒れちゃったら皆の迷惑になるし」
ちょっと苦笑して頬をかきながら、トレイ片付けてくるね、とバハムーンは席を立つ。
その後姿を見つめながらフェアリーはのほほんとマイペースに微笑むノームに「ノームはどう思う?」と声をかけた。
「うーーーん、そうですねぇ…ワタシから見ても、ディアボロスさんも結構気があるとは思うんですけど…」
そうだ、とノームは腰につけた大きなカバンをごそごそと漁りはじめ、中から綺麗なガラスの小瓶を取り出した。
「ちょっとこの間実験室を借りて作ってみたんです…なんていうんでしょ、軽い媚薬?みたいなの」
「!!!」
何かを思いついたかのようにフェアリーはそれ貸して!とノームの手から小瓶をひったくる。
「これよこれ!!!も〜〜〜煮え切らない二人にはこれしかないっ!!!」
「あ、あんまり薬の効果は期待しちゃダメですよ……その、調合とか、間違っちゃったかも…ですし…」
ノームの忠告などまったく耳に入っていない様子で、フェアリーはフッフッフ、と一人野望に燃えていた…。
171 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:33:19 ID:CMZfv5oY
「つ、つつつ、疲れたぁあああああ〜〜〜〜…もーやだ!!!実習とか、キライキライダイッキライ!!!」
翌日は実習と言う名の迷宮探索であり、フェアリーたちは近くの迷宮へ出かけていた。
1日迷宮の中を足を使って探索し、魔物相手に戦闘を繰り広げ、流石に帰還した頃には疲労の色は隠せない。
「フェアリー、うるせぇ…余計につかれんだろ!」
大きな荷物を床に下ろしながらヒューマンが声を荒げる。
「アンタと違ってアタシはか弱いの!!!」
「か弱い?は?どの口がそんなこと言うんだよ」
またいつものが始まった、と残りのメンバーはさほど気にすることもなく片づけを始める。
「そう言えば明日は休みだね 皆は何をして過ごす予定だい?」
戦利品をお互いに交換しながらエルフが嬉しそうに声をかけた。
「ワタシは多分実験室に篭りますね…もう少しで完成しそうなレシピがあるんですよ」
「私は〜…久し振りに美味しいお菓子でも作ろうかな?」
「オレは寝る!!!とりあえずこのうるせーフェアリーと別ならどこでもいいぜ」
「なーーーんですってーーー!!!あたしこそアンタとなんか居たくないわよっ!」
あはは、と苦笑しながらエルフはさっきから黙々と一人で片付けを始めているディアボロスに視線をやった。
忍者学科だからなのか、彼は常に無表情で、必要なこと以外は滅多にしゃべらない。
「俺は……そうだな、特に何も決めていないが… 何か、必要なことがあれば、する…」
非常に絡みづらい返答にエルフは聞いた事を後悔して「そっか」と相槌を打った。
「ひゃー、食べた食べた!やっぱ疲れたあとのゴハンて美味しいよね〜」
遅い夕食を終え、学生寮の自室に戻ってきたフェアリーははい、とバハムーンにマグカップを手渡す。
クロスティーニの学生寮は基本的には2人の相部屋で、フェアリーはバハムーンと同じ部屋を使っていた。
「フェアリーちゃん特製ミルクティー!甘くて美味しいよ!」
「あ、ありがとう」
ルームメイトの好意を素直に受け取り、バハムーンはミルクティーに口をつける。
たしかにこの甘い紅茶とミルクの香りは身体の疲れを癒してくれる。
「あ、そうだ あたしちょっとブルスケッタまで行ってくるから、今日は後ヨロシクね♪」
明日は休日だし、何か用事でもあるのだろう。
妙に浮かれた声で外出するフェアリーをはいはいと見送り、バハムーンは扉を閉めて部屋に戻った。
初夏ではあるが日は既に落ちているしそんなに暑くないはずなのに、何故か身体が火照る。
制服の首元を緩めながらバハムーンはぽふっとベッドに沈みこんだ。
172 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:34:15 ID:CMZfv5oY
(…なんだろう、なんか、ヘンな…感じ)
例えようのないムズムズとした感触。
しばらくすれば収まるだろうと思ったが、身体の奥の熱さは収まるどころか逆にますます強くなるばかりだ。
「ひゃっ!」
なんとかしようとゴロゴロ寝返りを打った拍子に胸がシーツと擦れて甘い痺れるような感覚がバハムーンの身体を突き刺す。
思わず高い声を出してしまい、びっくりしたようにバハムーンは唇をかみ締めた。
(私…欲情…してる……?)
おそるおそる、自分で胸を触ってみると、やはりさっきと同じようにビリッとした電流が身体を走った。
久し振りの、感覚。
時折自分で身体を慰めることはあったが、このところは慣れない生活に全くそんな事をする余裕もなかった。
欲情はガマンするどころか、もっともっと溢れてきて止められそうにない。
「…ん…ッ…」
バハムーンはおずおずと欲望の赴くままに制服のスカートの中に自らの手を差し入れた。
そこはびっくりするほど熱く、そして下着はぐしゃぐしゃに濡れていた。
フェアリーは先ほどブルスケッタに出かけると言っていたから今日は帰ってこないのだろう。
その安心感からか開放的になったバハムーンは濡れそぼった下着を脱ぎ捨てると、ゆっくりとその秘められた部分を触り始めた。
バハムーンという種族に生まれたからには仕方がないのだが、およそ女性らしくないゴツゴツとした骨ばった手。
普段はそれを見られるのがイヤで常にグローブを装着していたが、それも剥ぎ取り無造作にベッドの脇に投げ捨てる。
割れ目に沿って指を滑らせると、ぞくぞくとすさまじい快感が背筋を駆け上っていく。
「ひゃっ…はふ…っ…」
普段の彼女からは想像もつかない甘い声で喘ぎながら必死で快楽を求める。
花芽は既にぷくりと膨れ上がり、指で触ると狂いそうなほどの快感を彼女に与えていた。
「はっ…あ、…ふぁ……っ」
目を閉じると思い浮かぶのは、ディアボロスの姿。
いつも無表情な彼がバハムーンのために微笑み、彼がしてくれるのを考えると、それだけで心が締め付けられた。
バハムーンは自らの指を中に沈め、ゆるゆると入り口付近をまさぐる。
男を知らない彼女にとって、自分の指でさえもそれ以上奥に入れるのは恐怖だった。
(バハムーン…気持ちいい?…もっと、欲しいのか?)
ディアボロスの低く心地良い声がバハムーンの頭の中でこだまする。
身体の芯まで蕩けてしまいそうだ。
「ん…あ…はっ、もっと…もっと…欲し…ディアボロ…ス…」
じわりじわりと昇りつめ、想像の中の彼の名を呼んだ―――…そのとき。
173 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:35:08 ID:CMZfv5oY
「…呼んだ、か?」
現実のバハムーンの耳に、聞きなれた彼の声が響いた。
一瞬幻でも見えたかと思ったが、バハムーンの聴力は人並み以上だ。聞き間違えるはずがない。
さぁっと全身の熱が一気に冷め、バハムーンの表情が凍りつく。
いつからそこに居たのだろうか。部屋の入り口、バハムーンのベッドが丸見えの位置にディアボロスが立っていた。
「……!!!!」
反射的に身体をシーツで隠し、逃げるようにディアボロスから視線を背ける。
何というところを見られてしまったのだろう。死んでしまいたいほど恥ずかしい。
「…フェアリーから バハムーンの具合が悪いと聞いて来たんだが…返答が、なくてな」
一旦言葉を切り、ふうっと息をつく音が聞こえる。
「その…覗くつもりでは、なかった……すまない」
いつもよりさらにトーンの落ちた低い声。
照明のない部屋でディアボロスの表情を確認するのは難しいが、やはり浅ましい女だと軽蔑されてしまったのだろうか。
恥ずかしさと、後悔の自責の念でかたかた震えるバハムーンの前にディアボロスが歩み寄る。
どうやらいつもの黒い忍装束のままらしく、ここまで近寄っても衣擦れの音すら聞こえない。
これではいくらバハムーンが人並み以上の聴力を持っていても気付かなくて当然だ。
「…み、見ないで……私…私っ……」
ぎゅっと目を瞑り、シーツを握り締める。
「…独りでして、満足できたのか?」
バハムーンが考えていたのとはまったく別の反応だった。
予想外の声にバハムーンはえっ、と顔を上げる。
「んっ!!」
それと同時に、ディアボロスの顔が降りてきてバハムーンの唇をふさぎ、バハムーンの身体は再びベッドに沈められていた。
「ち…違…っ… ディアボロス、ちがう…のっ!」
心のどこかで望んでいたこととはいえ、男性経験のないバハムーンは半ばパニック状態になってベッドの上でもがいた。
そんな彼女をよそにディアボロスはバハムーンの舌を自らの舌でからめとり、強く吸い上げる。
初めての経験なのに、頭の中がぼおっとする。
乱れた制服の前をはだけられ、バハムーンはいやいやと首を横に振った。
「やだ… 見ないで、おねが…い……」
涙目で見つめられてもまったく説得力がない。
ディアボロスはふうと息をつくとバハムーンの耳元に顔を寄せた。
「バハムーン、それ… 誘ってるようにしか、見えない」
ディアボロスはバハムーンの下着を器用に外すとぷるんとあらわになったバハムーンの白い胸をゆっくりとこね回し、
ツンと上を向いた乳首を吸い上げる。
バハムーンの皮膚はヒトより硬いと聞いてはいたが、胸などは全くそんなことはなく、寧ろ柔らかい。
大柄な身体にしては少し小さめではあったが、それでも、ディアボロスの手に余るほどの質量だ。
「ひゃうっ!」
強い力で与えられた快感に思わずバハムーンは身体を跳ねさせる。
その反応を見てディアボロスは少し嬉しそうに笑った。
「…気持ち、いいんだ」
そのままディアボロスは指先をバハムーンの秘所に這わすと、くちゃくちゃと濡れた割れ目を何度もなぞる。
「あ……っく…」
つぷっとディアボロスは指先だけをバハムーンの中に沈めた。
びっくりするほどそこは濡れていて、すぐに透明な粘液がディアボロスの指を伝い手のひらにまで落ちてくる。
空いたもう片方の手でバハムーンの花芽をくすぐり、唇と舌で乳首を強く優しく刺激する。
「や…ッ、も…… だめ… …あ…」
本人が気付いているかは判らないが、薬によって昂ぶった体の弱いところを同時に責められ、バハムーンはひくひくと身体を震わせた。
両の目尻からぽろぽろと大粒の涙がこぼれ、半分あいたままになった口からは言葉にならないあえぎ声ばかりが流れる。
「気持ちいい?……もっと、欲しいのか?」
バハムーンの想像の中と同じセリフでディアボロスが問う。
いつも、考えていた。夢見ていた。ずっと、彼を欲していた。
欲しかったものが、すぐ、目の前にある。
バハムーンの中で何かがさらさらと音を立てて崩れた。
174 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:35:59 ID:CMZfv5oY
「ディアボロス……欲し…い… いれて……欲しいの…」
蕩けそうなほど甘い声でバハムーンはねだる。
その声に思わずドキッとしてディアボロスは顔を赤らめた。
それを悟られないように身体ごとバハムーンに密着すると、入り口付近をじらすように動かしていた指を2本に増やすと一気に根元まで差し入れる。
「ひっ……ああああっ」
ディアボロスの長い指がバハムーンの中をこすり上げる。
2本の指で交互に中をかき回され、バハムーンは目の前が真っ白になる。
やがてこらえきれなくなったのか、小さく痙攣を繰り返し、一瞬彼女は意識を手放した…。
ディアボロスは無言で忍装束を脱ぎ捨てる。
ディアボロスという種族は皆大概抜けるように白い肌を持っており、バハムーンからするとある種病的なまでの白さだとも思えたが
彼もまた例外ではなく、陶器のように美しい白い肌をしていた。
だが、その抜けるような白い肌には不釣合いな、数々の生々しい傷跡。
ディアボロスが過去を語ることはなかったが、あまり良い環境ではなかったのだろうと容易に想像ができる。
「…全く、仲間は抱かないつもりだったんだが」
「…え?」
きょとんとした表情で聞き返すバハムーンに、ディアボロスはやれやれと肩をすくめる。
「あんなもの見せつけられて…あまつさえ俺の名前呼ばれて、ガマンできるわけないだろう」
今まで見たこともない、少し恥ずかしそうな顔でディアボロスは微笑み、汗で額に張り付いたバハムーンの髪をそっと払った。
「…誰かに情を抱くのが怖かった。 …それは、失うものができるという事だから」
赤い瞳を細め、ディアボロスは上を向く。
「俺は、失うものがなにもないからいつでも死ねる 誰にも、迷惑をかけずに、死ねると、そう …思ってた」
「ディアボロス!…そんな、そんなこと…」
「思ってた、って言ったろう 今は、…生きたいと思うよ」
こつんとディアボロスはバハムーンの額に自分の額を合わせ、その瞳を覗き込む。
「バハムーン…お前と生きたい 無様でもいい、生きていたい…」
175 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:36:48 ID:CMZfv5oY
「ディア…ボロス…」
両脚を大きく開かれ、上から強い力で押さえつけられる。
ベッドがきしりと音を立て、ディアボロスがバハムーンにのしかかった。
「…入れる、ぞ」
無言でバハムーンがこくんとうなずいたのを確認してから、ディアボロスはゆっくりとバハムーンの濡れた秘所に押し当てたモノを沈めていく。
「う…ッ…」
大柄なバハムーンの彼女といえども、ディアボロスのソレを納めるには少々苦痛が伴うようでバハムーンは眉をひそめてぎゅっと拳を握り締めた。
「…抱きついていい 思ってるより、丈夫にできてる」
彼女は自分が馬鹿力なのをひどく気にしていた。抱きつきたくても、抱きつけない、そんな心の内を見透かしたかのように優しく声をかけると
バハムーンは少しほっとしたような表情でディアボロスの背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。
「あ…ぅ…」
さらに奥に挿入され、バハムーンは苦しげに背を反らせた。ベッドに押し当てられた翼と尾が頼りなさげに震えている。
ディアボロスはひとつ息をつくとそぉっとバハムーンのしっぽを撫でる。
「!?」
種族の弱点なのか、普段は誰にも触られないように自らの太股に巻きつけている無防備な尾を触られ一瞬バハムーンの身体が緩む。
その隙にディアボロスはぐっと一気に最奥までバハムーンを貫いた。
「ディアボロ…ス…」
最奥まで収まったとき、ディアボロスの身体が快感でぶるっと震える。
想像以上に彼女の中は柔らかく、そして暖かく、きゅうきゅうとディアボロスを締め付けてくる。
「…くそ… すげ…気持ちいい…」
自然と、ディアボロスの腰が動いた。
「…あっ」
バハムーンの背中が弓なりに反る。身体と、白い胸がふるふると小刻みに震えた。
痛くないはずはないのだが、彼女は一言も「痛い」とは口にしなかった。
それは彼女なりの気遣いなのだろうか?
苦しげなその表情とは裏腹に、バハムーンの中はディアボロスを逃がすまいと奥まで咥え、呑みこんでいく。
痺れるような、眩暈にも似た感覚がディアボロスを襲い、ディアボロスは衝き動かされるままにバハムーンを責め立てた。
「はぁんっ!…あ、…ンふぅ…」
狭い部屋の中にバハムーンの嬌声が響く。
頬を紅潮させ、ほどけた髪を振り乱してバハムーンは喘いだ。
ディアボロスが腰を突き出すたびにぐちゅぐちゅと聞こえる水音が妙にいやらしく耳に残る。
「ひゃあ…っ!ああっ…んくっ…… あっ、あっ… ディアボロス…」
名を呼ばれ、ディアボロスはわずかに動きを止めてバハムーンを見下ろした。
熱を帯びた蒼い瞳がディアボロスを見つめる。その中にあるのは、痛みではない、快楽を求める女の顔だった。
「そんな顔するな… 抑えられない…」
「ひぁっ、い…ィ… きもち、いい…やぁっ」
激しくなるディアボロスの責めに、バハムーンは知らずと腰を自ら擦り付けていた。
「いいよ… イけよ…」
空を掴むバハムーンのごつごつとした手を掴んでおさえつけると、ディアボロスはぐっと身体ごと強く覆いかぶさってめちゃくちゃにバハムーンの奥を抉る。
それまでゆるゆるとディアボロスをしめつけていたバハムーンの中が短い間隔でひくついた。
「はぁあああん…あっ…イッ…いくっ……いっちゃ…う…」
「……ぐッ…そんな、しめつける…な…」
「いや……ぁ、あ…あああああああっ」
ディアボロスを呑みこんだままのバハムーンが不規則に痙攣し、それに釣られるようにディアボロスもまた
かすれた声でバハムーンの名を呼びながらその欲望をバハムーンの中に吐き出した。
176 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:37:38 ID:CMZfv5oY
「あ〜〜〜ん☆バハムーンとディアボロス上手くいったかな〜〜〜」
その頃、クロスティーニの食堂にはブルスケッタに行くといって出かけたはずのフェアリーとパーティメンバーでもあり
ディアボロスのルームメイトでもあるヒューマンが同じテーブルで夜食をつついていた。
満面の笑みを浮かべながらぱたぱたと羽根をはためかせるフェアリー。
そんな彼女の様子を見てやれやれとヒューマンは首をすくめた。
「お前ほんっっっと他人の恋愛に首つっこむのスキだよな。しかも今回はなんだ ノームの作った薬も使ってか?」
「何よ!あの二人にはちょっとキッカケがたりないだけだったの!文句でもあるの!」
強い口調で言われていえ、アリマセンとヒュームは半ば呆れ気味に首を横に振る。
「…で、当のお前自身はどうなんだ?」
逆襲とばかりにヒュームがにやっと笑って上からフェアリーを覗き込む。
フェアリー自身はちょっと、ヒュームのことが気になっているのだが彼女の性格が災いしてなかなか素直になれない。
ヒュームはフェアリーの反応を楽しむように頬杖をついて彼女の返答を待つ。
「あ、あたしはほらっ、引く手あまたの美少女だからっ!もー、あちこち大変なの!」
「へぇ 経験豊富ってわけか。 じゃあ今度オレもお相手してもらおうかな?」
イタズラっぽく笑うヒュームにフェアリーは珍しくかぁっと頬を赤らめてもじもじと下を向く。
「ま、冗談だ。お前なんかに手ぇ出したら児童ナンチャラ法でつかまっちまうしな」
フェアリーの気持ちを知ってか否かケタケタと笑いながらヒュームはフェアリーのほうに向き直った。
そこには怒りで顔を真っ赤にした少女の姿があったわけで…
「ちょッ!おまッッ…まてまてまて!冗談だっつーの!ソレはやべぇって…!!!」
フェアリーの殺気を悟ったのかヒューマンは慌てて席を立つ。
だが哀しいかな フェアリーの方が圧倒的に素早いという事実はどうにもならず…。
「いっぺん死んじゃえ!!!イペリオン!!!!」
「ソ、ソレ…むりっ ムリムリムリ!!! ぎゃあああああああああああああああああああああっ」
この世のものとは思えない断末魔の叫び声が、静かな夜の学生寮に響き渡った―――…
177 :
とーりすがり:2009/07/09(木) 00:39:53 ID:CMZfv5oY
以上です なんかこういうとこに投下するの初めてなので
上手くいってなかったらご指摘くだせーm(__)m
アリガトウゴザイマシター!
GJ
バハムーンとディアボロス最近人気だなぁ
>>177 GJ
セレ子×ディア子って需要あったりするかな?
>>177 GJ
と言うのは簡単だが
お前のSSには中身がない
よって、とりあえずGJということしかできない
甘いよ
こういう屑は最初のうちに叩いて潰しておかないと
シリーズ第三部目スタートと言ったところか……。
レポートと同時進行って恐ろしいと思う罠。2が全然進まないという恐怖です。
んな訳で、いっちょ投下開始であります。
やはり今回もエロ無し。
長く降り続いていた雨がようやく止んだが、代わりに顔を出した太陽は容赦なくパルタクス学園を照らしていた。
そしてこの日、パルタクス学園は前期試験の日程を全て終え、夏休みに入ろうとしていた。
「いやぁ、今日は暑いな、ギル!」
最上級学年の教室の扉から出たセレスティアの少年――――生徒会長のマクスターは副会長を務める親友ギルガメシュにそう声をかける。
「ああ、暑いなぁ……雨の次は暑さかよ、ったくよぉ、俺ぁ雨も嫌いだが暑さも嫌いだ」
「そりゃそうだ。暑さが得意な奴もそうそういないだろう」
ギルガメシュの言葉にマクスターはけろりとした顔で答える。試験が終わった、という独特のテンションの高さもあるのだろう。
「ところでマック。お前、部屋の掃除はしたんだろうな?」
「大丈夫だよ、ちゃんとした」
「ちげぇよ。この前床が抜け落ちたテメェの部屋じゃねぇ、生徒会室だよ」
ギルガメシュの言葉に、マクスターは視線をそらす。生徒会長であるマクスターの悪い癖、それは重度のネコミミマニアであるという事だった。
そしてマクスターの寮の部屋の床が抜け落ち、すぐ下のギルガメシュの部屋が大被害を被ったのは先日の事。床は修復されたがその際に出て来たネコミミグッズをマクスターは捨ててないだろうとギルガメシュは確信している。
そしてその行き先は恐らく、生徒会室だろう。
「ははは、心配するな……まぁ、キノコの一つでも生えているかも知れないが大丈夫だろう」
「待て、何でキノコが生えるんだ生徒会室に!」
「雨のせいだよ」
「………掃除しろよ」
ギルガメシュがため息をついた時、マクスターは「キノコの一つぐらいいいじゃないか」と口を開く。
「何せあのクリデに至っては頭にキノコが生えたんだぞ」
「何ぃぃっ!? おい、クリデ………って本当にキノコ生えてるじゃねーかテメェ!」
「何? 呼んだ?」
変態ヒューマン戦士のあだ名を持つクリデがギルガメシュとマクスターに振り向いた時、彼の頭上から見事なキノコが生えていた。
「お前、頭どうした頭!」
「え? ああ、これね。イメチェンだよ、イメチェン。ほら、俺がモテない理由ってこの天然パーマにあると思うんだ」
「天パのせいじゃねぇだろ、テメェの場合は女に見境なく声をかけるのが原因だこの変態が。ああ、あとあのセレスティアに手ぇ出したら……」
「死にたくないから安心してくれ。ほら、わりといい形しててイカしてると思わないか?」
「色といい形といいどう見ても毒キノコだろーが! いいから引っこ抜くからこっち来い!」
「いや、ほら頭だけじゃなくて身体にも生えてきたんだよ、ほら」
クリデが上衣を脱ぎ捨て、その肉体に生えたキノコを披露するが暑い夏の昼、校内の廊下で半裸になる彼の姿はどう見ても変態である。
「いいから引っこ抜け! その前に服を着ろ! そして死ね! 死んでも死ね!」
ギルガメシュがクリデに掴みかかり、文字通りキノコを引き抜きつつ足蹴にするという器用な行為を始めた。勿論、クリデは悲鳴をあげたがギルガメシュはそれを黙殺出来る男である。
何故なら彼はパルタクス最凶だからである。
「ところでギル」
マクスターは鞄からとりだした下敷きで自分を煽ぎながらクリデを足蹴にし続けるギルガメシュに声をかける。
「なんだマック?」
「ところで、そろそろだろう? 毎年夏の恒例、ハウラー湖畔花火大会」
ハウラー湖畔花火大会。毎年夏になると行われる、ハウラー湖畔で打ち上げられる花火は毎年多くの生徒達を魅了している。
同時に、それは大きな恋のチャンスでもある、祭りの日だ。年に一度のお祭りである。
「例の彼女に声をかけるチャンスじゃないのか?」
例の彼女、それはギルガメシュが密かに思いを寄せる美化委員長のセレスティアの事だ。
今は美化副委員長を勤める一学年下のディアボロスが彼女の恋人という事になっているが、ギルガメシュは先日彼の前で彼女を振り向かせてやると啖呵を切ったばかりである。
男子たるもの、啖呵を切ったからには実行しなければ男が廃るというものだ。
「まぁ、それもそうだな……けど、あのディアボロスと行くんじゃねーの?」
「別にいいんじゃないか? 何人かで行くというのもありだろうし………」
「……悪くねぇな」
確かに、単独で行くよりは幾人かで行くというのもアリだろう。それに、どうせ多くの生徒が花火見物に出て来るのだ。学園の秩序を守る為にも行くべきかも知れない。
「じゃあ、行くか」
「ああ、ならついでなんだ。サラとユマが浴衣を欲しがっててね。買いに行こうと約束したはいいが生憎と手持ちだけじゃ足りないんだよ。買い物に付き合ってくれ」
「…………ユマっつーと保健委員のあいつか……。まぁ、いいさ。俺も付き合うぜってお前なぁ! 金足りないならそんな約束するなアホ!」
「いいじゃないか、結果オーライだ」
「どこが結果オーライだよ!」
ようやくクリデを遠くへと盛大に蹴飛ばしつつギルガメシュが怒鳴り、マクスターは微笑みを浮かべて「じゃあ行こう」と親指を立てる。
ギルガメシュはそれを見て諦めたようなため息をついた。
「……そろそろ茹で上がるな」
学生寮の一室で火にかけられた鍋の様子を見たディアボロスの少年はそう呟いた。
美化委員会副委員長。錬金術士学科所属で闇の魔導師ディモレアを母親に持つディモレアさん家の息子さんである。
「試験が終わるとメシ創る余裕があっていいなやっぱ……」
「それはそうとして茹で上がったのか、ディアボロス?」
彼の呟きに口を挟んだのはルームメイトのフェルパーの少年である。部屋の真ん中にあるテーブルに皿と箸の用意をし終えて、どうやら食べる準備は万端のようだ。
「ああ、出来たぜ。見ろよ、これ」
「わお。これは見事な……極彩色のそうめん」
ディアボロスが抱えた鍋の中で茹でられていたのは赤、青、緑に紫、橙、黒、黄色と見事に極彩色のそうめんだった。
「なんか強烈に旨そうに見えないんだが」
「仕方ないだろう。この前ルー●ック●ューブを貸した一年生のクラッズの女の子がマシュレニアの新名物だって言ってくれたんだから。食べない訳には行かないだろ」
「あいつこの前土産物屋の前から離れないと思ってたら……こんなの買ってたのか」
フェルパーは心当たりがあるのが渋い顔をする。
「……あの一年、お前のパーティだったのか?」
「ああ。ウチのパーティは学年混合だからな……お前のトコみたいに一学年で統一されてるのが珍しいだろ」
「まぁ、それもそうか……。ほい、つゆ」
「ありがと」
ディアボロスとフェルパーはテーブルに座ると、皿に山と盛られた極彩色のそうめんを啜る。
「……不味いな」
「ああ、不味い。その生姜取ってくれ」
「海苔でも入れてみるか? 少し変わるかも知れない」
「なら天かすも入れてみるか……あ、天かすもう無いな。隣りから借りるか?」
「隣りの奴が天かすを持ってるとは限らんだろ……まぁ、行ってくるけど」
フェルパーが立ち上がり、部屋を出て隣りへと向かう。ディアボロスはそうめんに嫌という程の生姜を入れていると、フェルパーの机の上にある一枚のチラシに気付いた。
『夏の風物詩 ハウラー湖畔花火大会のお報せ』
「ああ、もうそんな時期か……」
ディアボロスはチラシを摘み上げながら呟く。毎年夏に行われるイベントだがディアボロスはあまり参加した覚えはない。
パーティの仲間に誘われて行きはしたが女子の財布係だったり荷物持ちだったりとあまりイベントとしての感覚は無かった。だが。
「今年は先輩がいるからな……」
先日、密かに好意を抱いていた恋が成立して晴れて美化委員長のセレスティアと恋仲になった。
だが先輩はもうすぐ卒業である。そして告白した際、短い間でもいいからと言ってしまったし、マクスターからも「学園生活の思い出」をと言われている。
誘ってみるのも悪くないかも知れない。ディアボロスはそう思っていた。
「天かす貰ってきた……ついでに隣りの奴も食いたいって」
ドアが再び開き、ルームメイトのフェルパーが顔を出すと同時に、隣りの部屋の住人であるエルフと告白イベントでノームに対し三秒で玉砕したヒューマンが顔を出した。
「おっす。おお、見事な極彩色のそうめん」
「これはこれは……また奇っ怪なもの食べてますねぇ」
「よう……待ってろ、つゆと箸用意するから」
ディアボロスが人数分の箸とつゆを用意する間、フェルパーはそうめんに天かすを山ほどぶち込みつつ、先ほどのチラシが動いてる事に気付いた。
「ああ、それ読んでたのか?」
「ああ」
フェルパーの問いにディアボロスが答え、エルフとヒューマンもチラシを覗き込む。
「ディアボロスは今年はどうするんだ? パーティの連中と行くのか?」
「いや、委員長を誘ってみたいと思う」
「わーお、委員長越えを達成した男、やるねぇ」
「おいヒューマン、お前の口に大量の生姜をぶち込むぞ。そういうお前らはどうするんだ?」
「まぁ、僕は同じパーティのフェアリーさんと行く予定です」
「俺はパーティ皆で行く予定」
「………俺だけかよ1人はよぉ……」
ヒューマンが頭を抱え、フェルパーが元気出せと背中を擦る。ただしヒューマンが抱えたつゆの中に大量の生姜を突っ込んでいたが。
「夏の風物詩ですからねぇ。まぁ、明明後日ですからまだ余裕あるでしょう。誘ってみては如何ですか?」
「それもそうだなぁ」
「俺も委員長を誘いに行く」
「……ところでディアボロス。お前、さっきから黄色い麺しか喰ってない気がするんだが」
「赤とか緑のそうめんは確かにあるがここまで極彩色じゃねぇからな」
「待て待て待て。紫とかどう見ても毒々しい色じゃねーか! 俺に処分させるのか!?」
「いや処分してくれる奴いるだろ? ヒューマンが」
「「あ」」
「そこで納得するなよ2人共ってうぉいフェルパーもエルフもなにをす」
哀れなヒューマンは大量に残る極彩色のそうめんをフェルパーとエルフの手によってつゆも無しに流し込まされる羽目になった。
試験最終日にジョルー先生のお世話になるとは哀れである。
「………あ」
「ああん?」
ルームメイト達と別れたディアボロスがセレスティアを探しに食堂まで来た時、会いたくない人物と遭遇した。副会長ギルガメシュである。
「………こんにちは、先輩。試験、どうでした?」
「まぁまぁだな……テメェは?」
「まぁ、そこそこは」
ディアボロスはそう答えると、とにかくセレスティアを探すべく視線を逸らす。それを見逃すギルガメシュでは無い。
「どした? 目が泳いでるぞ」
「……美化委員長を探しに来たからですよ。先輩と世間話する為に食堂に来た訳じゃないですし」
ディアボロスはそう答えると同時に、セレスティアの姿を発見した。向こうも2人の存在に気付いたのか、顔を上げる。
ディアボロスがセレスティアの方に向かおうとした時、ギルガメシュも同時に歩きだした。同じ方向に。
「先輩、何で真似するんすか」
「俺もあいつに用があるんだよ」
「俺の方が先ですって」
「勝手に順番決めんじゃねぇ」
「……2人とも喧嘩しないでください、どうしました?」
ディアボロスとギルガメシュが押し合いへし合いもみ合いながらセレスティアの元へ辿り着くと、彼女は首を傾げながら口を開いた。ある意味2人が喧嘩しながら同時に接近してくる理由が解らない。
「ああ、実は頼みたい事があるんだ」
「俺がこんな事言うのもなんだがな」
「「ハウラー湖畔花火大会に、一緒に行こう」」
文字通り、同時に口を開いていた。
そして同じ理由。ギルガメシュとディアボロスは思わず視線を合わせる。
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙する、三人。
セレスティアと一緒に昼食中だったセレスティアと同じパーティの仲間達も思わず沈黙。
「……なぁ、ギルガメシュ。ちょっといいか?」
セレスティアと同じパーティのヒューマンが口を開き、ギルガメシュが視線を向ける。
「なんだ?」
「一応……セレスティアはディアボロスの恋人って事になるんだから、お前が誘っちゃマズいんじゃねぇの?」
「何でだ?」
「いや、そう言われても他人の恋を横取りするというのも」
「俺だってこいつが好きだ」
ギルガメシュは見事な迄にきっぱりと言い切る。
「……お前、あれ本気だったのかよ」
「冗談で言える事だとでも思ってんのかテメェ」
「……まぁ、言えないな」
ギルガメシュの声に怒気が混じり始めた時、ギルガメシュの背後に釘バットを持った人影が現れた。
「ギル〜、いつまで待たせてるの? 会長が待ってるからさ、ほら遊んでないで」
「あ? ああ、サラか……なんだその釘バット」
「乙女の嗜み」
「釘バットのどこが乙女の嗜みだよ!?」
サラは釘バットで素振りを一回した後、セレスティアに視線を向けた。
「ごめんね、ギルがまた何か言ってた?」
「え? ええ、まぁ……」
「おい、サラ」
「ほら行くよギル。じゃあ、頑張ってね〜」
サラはギルガメシュを半ば引き摺るようにして引っ張ると、釘バットを片手にしたまま食堂を出ていった。
「学園最凶が年下の女子に引き摺られる構図ってなんなんだが……って、うわ、戻ってきやがった! すまんギルガメシュ、別に悪口でもないからやめ」
ヒューマンが言葉を最後まで言い終わらないうちにギルガメシュの強烈な拳骨がクリーンヒットし、そのまま床に叩き付けて蹴りを連発する。
「だーかーらー!」
再び戻ってきたサラがギルガメシュの後頭部に釘バットを振り下ろして昏倒させた。
「……はぁー」
「サラ、お前苦労するんだな……」
ディアボロスの言葉にサラはため息をつく。
「まぁね。本当にさ……てか、ギルがこうなっちゃったの、あたしのせいでもあるかも知れないんだけどね……」
「え? 何で?」
「いや、君と委員長をくっつけた間接的な原因ってあたしが君に聞いたからじゃない?」
確かにそうだ。ディアボロスがサラに半ば脅迫的に喋らされ、それがタークへ、マクスターへと伝わってあの一大イベントである。
結果的に成功したはいいが、ギルガメシュ個人が美化委員長の事が好きだと言っていた以上、ある意味ギルガメシュには面白くない話だろう。そして何よりも。
「大体、サラってギルガメシュ先輩と付き合ってたんじゃ?」
「うん、そうだね。けどね………好きって言ったはいいけど、その後あたしの方から振っちゃったんだよね」
「うわぁひでぇ」
「あたしとデート中に他の女の子の事考えてたからね。けど、まぁギルらしいと言えばギルらしいけどね」
「………………」
孤高の男ギルガメシュがサラと付き合った、というニュースは学園内では語りぐさだがその後の展開を知る者は殆どいない。2人とも話さないからだ。
告白したのはサラだが、別れ話を切り出したのもサラ。
「………その他の女の子が、私だったのですか?」
「かもね」
セレスティアの言葉に、サラは寂しそうに呟いた。
ディアボロスはその時、初めて気付いた。どうしてサラが自分とセレスティアの恋を後押ししたのかという事に。
「……なぁ、サラ。お前ってもしかしてさ。まだ、ギルガメシュ先輩の事好きなのか?」
「さぁね」
彼の言葉にサラはそう答えた。
「ま、ともかくあたしは出掛けるからさ。マクスターとユマが待ってるし」
サラはギルガメシュの襟首を掴んで引っぱり上げ、そのまま去っていく。
「………………」
「………………」
セレスティアとディアボロスは思わず顔を見合わせる。
ギルガメシュが好きなのはセレスティアだが、ギルガメシュを好きなのはサラだ。もし、サラがディアボロスのセレスティアへの好意を知らなかったら。
サラがギルガメシュの事を諦めていたら。
あまり想像したいとは思わなかった。
「………どうしたもんかな」
ディアボロスは、思わずそう呟かずにはいられなかった。
「……花火」
セレスティアが口を開き、ディアボロスは視線をセレスティアに戻す。
「え?」
「花火、一緒に行きましょう?」
セレスティアは、そう言ってにっこりと微笑んだ。そう、今は。
今は、彼女との恋がまだ続いている。今は、そっちに専念するべきだとディアボロスは思った。
投下完了。
とともの1でサラとのフラグが立つのはいつかと思ったのは自分だけではない筈。
……無理でしたけど。
>>182 あんまり叩き潰し過ぎて、過疎ってしまったら責任とれよ。
たたでさえ此処のスレは人が少ないのに、これ以上少なくなったらどうするんだ。
あと、そんなにSSを叩きたいならエロなしの本スレでやれ。
だが、未プレイでの作品投下だけは俺もお断りだけどね。
>>189 毎度お疲れさまです。
本当、1でサラとのフラグがありそう。
そう思っていた時期も、俺にはありました。orz
>>189 GJ。キャラのやり取りが面白くて、毎回読んでて楽しいです
サラとのフラグは立たなかったけど、他校の女子生徒とのフラグは地味に立ってたな・・・
192 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 15:52:07 ID:y/gQi0xE
>>177 GJ!
仲の悪いフェアリーとヒューマンがツボに入った。
>>178 2はディアボロスのCPU増えたからね。
想像しやすくなったんじゃないか?
>>180 需要がないものなんてないさ。
むしろ需要過多の傾向だよ。
さぁ、百合でも薔薇でもどんどん来るんだ!
>>190 ちょっと叩かれただけで来なくなるような弱い奴に興味はないな
ワガママな子だな
どうも。最近になって、ようやくととモノ。2を入手することができました。
こいつめ、諸々の妄想ポイントが高すぎる……またこのスレにてお世話になると思います。
それでは新パーティのお披露目をば。前作と比較すると、そのまま、性転換、新規が二人ずつ。
前衛
フェルパー♂:格闘家その1。前衛最速の切り込み隊長。いずれビーストに転科させるつもり。
バハムーン♂:格闘家その2。ブレスと棒を振り回すトドメ要員。将来は竜騎士になる予定。
ディアボロス♀:ブレスも撃てる人形遣い。壁を張るのに前衛なのは体力の都合で仕方なく。
後衛
クラッズ♂:強盗ウマーな強運レンジャー。風水師にしようかと思ったけど、たぶんやらない。
エルフ♀:魔法使いその1。回復攻撃何でもござれ。この先、精霊使いにするかどうかは検討中。
フェアリー♀:魔法使いその2。撃たれ弱いけど便利なこの子は早いうちに賢者にしてあげたい。
カップリングはフェル×フェア、バハ×ディア、クラ×エルになっています。
ととモノ。2のSS第一弾は、この内のどれかをモデルにするつもりです。
現在絶賛プレイ中ですが、リクエストがあればおひとつどうぞ。
自分語りうぜえ・・・
誰も聞いてねーよ
>>196 そろそろ自重しろ。
お前のやってる事は叩きじゃなくて荒らしだ。
てか、もう夏厨が発生してるのかな…
ととモノ。2入手おめでとうですよ!
アトガキモドキ氏の作品を実は楽しみにしてたので、差支えなければバハ♂×ディア♀のカプをお願いします!
>>197 こういう屑は構ってやると調子に乗るから今後は無視でおk
書くなら黙って好きなもん書けばいいんだよ
>>195みたいなタイプの書き手には好感が持てんね
そんなことより、とともの世界で普通に手に入る相性開放系の装備品とかって
どういう風に相性開放するんだろうな?
>>201 俺は、精神や思考に干渉する類の魔法が組み込まれてるんだと思ってる
でもプラス補正まで打ち消してるから、軽い洗脳っぽいイメージ
177です
嬉しい言葉やら率直な意見dクス!
精進するよ!
名無しに戻るんだぜ
>>201 俺はおまじないみたいなものだと思ってた
「自分のホントの気持ちにもっと素直になれる!」的なスイーツっぽいもの。
ディア男「ククク…この友好の指輪が俺様の邪気を封じているのだ。見ろっ!!」
スポーン
セレ男「あー…なんか確かにムカつくわ」
ノム男「判ったから、とりあえず嵌めとけ、な?」
ディア男「あい」
206 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 21:01:05 ID:y/gQi0xE
>>189 GJ!
人間関係どんどん絡まってきますね。
お母さんの再登場を期待してます。
>>195 アトガキモドキ氏!ついにととモノ2を買いましたか!
パーティーは・・・一部被ってますね。自分のと。
投稿、楽しみにしてます!
>>201 やっぱ魔法が組み込まれてるんじゃないか?
中には相性を悪化させる類似品「仲違いの指輪」とかもあったりして。
キャッチコピーは「恋のライバルもこれを送れば勝手に撃沈☆素敵な彼を独り占めしよう!」
しかし失敗すると逆に・・・
深層心理で相手に特別な印象を抱かないようにする抑制効果のある呪いがかかってると思う。
ところで相性解放と相性無効ってどう違うの?
そういう質問は該当スレで・・・と言いたいがチト荒れてるしな
無効=自分の受ける相性を常時100%に変更
開放=自分の受ける相性の影響を最大値に変更
相性はレベルで上限があって、レベルの数値分までしか本来影響を受けない
Lv1だと99〜101%、Lv10だと90〜110%と幅が大きくなるの
ちなみに合体技で上げた分は解放とか無効の影響を受けない
相性無効=ディアボロスもセレスティアとお友達になることが出来る。
ただしヒューマンにぞっこんのフェアリーが使うと、ただのお友達になってしまう。
相性解放=元々クラッズにデレてるエルフやドワーフがデレッデレになる。
ただしセレスティアがディアボロスの前ではめると、レベル1でも純度100%の殺意が芽生える。
つまり
友好の指輪持ちのディア男が
曲がり角でノム子とうっかりぶつかって指輪が外れた時
ドンっ
ノム子(中立)「きゃっ」
ディア男(悪)「……いってぇな……おいお前、気を付
(指輪が外れて相性100→102%)」
ノム子「す、すいません! ついぼーっとして」
ディア男「……いや、いい。急いでるのか?」
ノム子「へ? えと、ちょっと実験室で錬金しに行こうかなって……」
ディア男「そうか。荷物持ってやるよ(ひょい)」
ノム子「えっ、あ……ありがとうございます」
というのもアリか。
つまり性奴隷化アイテムか
ノームをプレゼントするクエストで、そのまま受け取られていたら……
>>212 なぁ、俺はそのクエストで断ったんだが……あげるとどうなるんだ?
一瞬、あの純粋と思われるパンナの性奴隷化(♂♀関係なく)にされると想像してしまったが真相は……?
>>213 オリーブをロストさせたくなるだけだからやめておくんだ
何があるんだ!
クエストの要約
・パンナの誕生日プレゼントには何が良いか本人に聞いて来いとオリーブにパシられる
・パンナは勝手に動いて自分の為だけに奉仕する肉人形が欲しいと言う
↓ノームがパーティに居るその時、オリーブに電流走る!
・オリーブ「そういえば校長が教頭をイヤラシイ目で見ながら
『ノームは昔”生きた人形のようだ”と言われてたそうです』
とか言ってたわ! つまりそこのノームをプレゼントすればOK! 私天才!」
・選択肢発生、はいを選ぶとノームが裸に剥かれラッピング状態でパンナに手渡される。
・パンナ「いや、うん……さすがの私でもこれは無いわ……。でもこの子とはセフレでいたい」
・オリーブ「mjd? じゃあいつも通り黄金色のお菓子プレゼントにするわ」
・ノームは性的な苦行(図書館から教室までほぼ全裸で四つん這いなど)を乗り切って色々強くなった!
抜いといた
だいたいあってるから困る
2が進みつつある日々。
また短編でも掻こうかと思うけどディモレアさん家の夏休み事情が終わるまでは我慢。
んな訳で第2話投下であります。
夕方。
花火大会が近い故か、ハウラー湖畔の町は買い物客で賑わっていた。その中で一際目立つのがパルタクス学園の生徒で、浴衣の安売りセールが始まった時には多くの生徒が店に殺到する事態となった。
しかしそんな騒ぎも夕方には収まりつつあり、それぞれ思い思いの買い物を楽しんでいた。
そしてそんな中、四人のパルタクスの生徒が浴衣を選びに来ていた。
「……どう?」
試着室で試着を終えたサラが顔を出した時、マクスターは「いいね」と頷く。だが、その隣りにいるギルガメシュは黙ったままだ。
「私も出来たよ。どうかな?」
続いて隣りで試着していたユマもカーテンを開く。マクスターはやはり「ブラボー!」と叫んだがギルガメシュは沈黙する。
「うーん、実にグレイトだよ、サラもユマも。ギル、君もそう……」
「……………」
「何て事だ、ギルが呆けているなんて珍しすぎる」
「……………」
「ところでサラ、どうしてギルは呆けているんだ?」
「知らない」
「誰のせいだと思ってんだぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
サラのあまりの非情な発言にギルガメシュが吼えた。
「え、あたし? なに? そんなに美化委員長との会話をジャマされたのが嫌だった? けどギルも悪いよ、他人の彼女に手を出したりしちゃ」
「そもそもギル、君が人を好きになるというのはある意味雷と槍と鉄珠が同時に雨あられと降り注ぐぐらい珍しい事だと思うよ」
「マック、お前そこから動くなよ。望み通り殺ってやるから。安心しろ、苦しまずに逝かせてやる」
「冗談だよギル」
ギルガメシュがマクスターに文字通り既に斬りかかっていたがその剣が下まで振り下ろされる事は無かった。
ギルガメシュが剣を収め、マクスターは息を吐くと口を開いた。
「しかしギル。あの時言ってくれればまだ間に合ったかも知れないのに何で今さら……」
「あの時って何時だ?」
「ほら、準備の時に聞いただろう」
「ああ……」
マクスターが言っているのは準備の時にぽろりと漏らした、好きな相手が被ってしまったという事だろう。
「今さら過ぎちまった事を言ってもしょうがねぇだろ」
「けど、それじゃ逆にみっともなくないか、ギル」
「……みっともない、か?」
「みっともないさ」
マクスターは息を吐くと、ギルガメシュの背中を軽くたたく。
「準備の時に勇気を出していれば、まだどちらかが選ばれたかも知れないのに」
「………そうか?」
「僕だったらそうするさ。少なくとも」
「選ばれなかったらどうなる。それに……それになマック。お前、あのディアボロスと美化委員長をくっつける為にわざわざ企画したそうだろ。もし、俺が仮に言ったとしたら。
テメェは誰の為に一肌脱いだ事になるんだ? お前は誰の味方になるんだ、マック?」
ギルガメシュの言葉に、マクスターは思わず黙り込む。
付き合いが長いせいだろう、まさかそこまで考えているとは思わなかった。ギルガメシュは気遣いが出来ない人間では無いのだ。
「…………けど、言葉に出さなきゃ伝わらないものだってあるさ」
「ああ、そうだろうな。言葉に出さなきゃ、伝わらねぇものだってあるさ。マック。お前はもう一つ俺に、いや、俺だけじゃない。美化委員長にも隠している事があるだろ? あのディアボロスの事で」
「……何の話だ?」
マクスターがそう問い返した時、ギルガメシュが顔をずいと近づけた。
サラはギルガメシュが言わんとした事が分かったのか、ユマに声をかけてその場を離れようとした。
「待てよサラ」
それを、見逃すギルガメシュではない。
「お前も知ってる筈だ。そもそもの切っ掛けはお前だろうからな」
「………………」
「………おかしいとは思ってたのさ。幾ら錬金術士学科だからって、ビッグバムをホイホイ撃てるもんじゃねぇし」
魔法、というのは努力で身に付けるものではある。しかし、その前にまず素質が必要であり、例えばバハムーンは魔法が苦手で習得したとしてもさほど高い効果を発揮しない。
逆にノームは魔法を数多く習得しなかったとしても、その数少ない魔法でも大きな力を発揮する事が可能だ。
そう、所謂生まれ持った魔法の素質がずば抜けていればそれはそれで高い能力を持つ魔法使いが誕生する事になる。
例えば、闇の魔導師ディモレアとか。
「ついでに、白髪か黒髪が殆どのディアボロスの中で……血のような色をしてやがる。あいつと一緒だよなぁ? ディモレアとか」
「ギル」
「生徒名簿の中には血縁者の名前までは書く必要ねぇしな。けどよ……授業参観でそれっぽい奴を見たと言った奴がいた」
「ギル、数少ない証拠で決めつけるのは」
「だが、そうじゃないという決定的な証拠はあんのか?」
ギルガメシュの言葉に、サラが一歩踏み出した。
「ギル、もし仮にだけど」
「なんだ?」
「あのディアボロスが、ディモレアと血縁だったとか、そういうのがあったとしてどうする気なの?」
「…………ディモレアが死んだっつー保証はねぇからな。決まってるさ」
「生徒同士で殺し合いなんて……」「何人死んだと思ってやがるッ!」
サラが言葉を続けるより先に、ギルガメシュが吼えた。
「ディモレアの一件で、何人死んだと思ってんだよ……パルタクスだけじゃねぇ、ランツレート、マシュレニア……行方不明者も含めれば三桁に届く。あいつ1人のせいで、だ」
「ギル……」
「あの美化委員長だってそうだ! あいつの友達が何人もディモレアに殺られてんだぞ! 俺は許せねぇさ。あいつを……パルタクスを……パルタクスを脅かしたあいつを俺は許さねぇ!」
マクスターは、何も言えなかった。
ギルガメシュとは長い付き合いだが、その中で感じ取った事はギルガメシュは冷たく振る舞っていても熱い心を持っているという事。そして、もう一つ。
誰よりも、パルタクスへの思いが強いという事だ。
「…………………そうだよ、ギル。お前の言う通りだ」
「……ああ?」
「お前の言う通り、あのディアボロスの母親はディモレアだ。実際に、僕は会っているからな。確実だよ」
「……んだと?」
「ただ、彼自身に特に悪意がある訳じゃないさ。それは普段の彼を見ていれば分かる事じゃないか?」
「…………………」
「ギル、君がもしディモレアを討つというのなら討てばいいさ。けど、それはあのディアボロスには関係のない所でやってくれ。それともう一つ。
そんな事があるからって、君がディアボロスから美化委員長を奪う理由にはならないと思う」
「本当にそうか?」
マクスターの言葉に、ギルガメシュが呟く。
「ああ。そんな事をしたら僕はお前を軽蔑するよ。心底」
「…………お前がそんな事言うのも珍しいなマック」
「それぐらいの事だからさ」
ギルガメシュのすぐ隣りに、マクスターは同じように寄り掛かった。
「…………なぁ、ギル」
「なんだ?」
「どうしてそこまで拘る? お前には、サラがいるじゃないか」
「……………」
マクスターの言葉に、ギルガメシュは視線をそらす。
サラとギルガメシュが付き合っていた当時、ドライすぎるギルガメシュに積極的なサラというコンビではあったが、それでも決して仲が悪い訳ではなかったし、ギルガメシュもサラに気を遣っていた。
事実、今でも時折気を遣っていたり世話を焼いていたりする事もある。近寄りがたい雰囲気があっても打ち解けてしまえば冷たい言動でも優しく接してくれる。それがギルガメシュである。
そしてサラも、そんなギルガメシュの事を好きになったのは当然だったのだろう。今でもまだ、好きなのかも知れないのだから。
「確かにな。俺だって、サラの事は嫌いじゃねぇよ」
「なら、どうして」
「諦めたくねぇからだよッ! テメェも言ってただろ! 後、1年ねぇんだよ。この場所にいられるのも……パルタクスにいられるのも、後1年ねぇんだよ!」
「…………ギル?」
マクスターが呟くより先に、ギルガメシュは立ち上がって背を向けていた。そう、顔を見るなと言わんばかりに。
強がりばかり言って、いつも立ち続けている孤高の男が。
ギルガメシュが、泣いているようにも見えたからだ。
「俺は、パルタクスが好きだ。ここが、俺の故郷だって言ってもいい。帰る場所なんかない。家族もいない。何もない俺に、パルタクスは色々くれたさ。
生きる術を教えてくれた、お前みたいな友達もくれた、温かい先生もいた、そして何よりも……俺を好きになってくれた奴がいた。
そして、そんな中で、俺が本気で惚れ込んだ相手を見つけた。驚いた。何も無い俺の全てを変えちまうぐらいに。だから、好きになったのさ。
そんなんだから……そんなんだから諦めきれなかったんだよ俺は!」
ギルガメシュの叫びに、マクスターは息を飲む。今まで聞いた事が無い、親友の本音を。
マクスターは今、初めて聞いた。
「悪かったよ、ギル」
「……お前が謝るなよ、マック。お前のせいじゃねぇ」
ギルガメシュはそう返事をした後、すぐ側に落ちていた石を拾い上げる。
そして、思いきりハウラー湖へとぶん投げた。
「………叫んだら、すっきりした」
「……そうか。ふっ切れたか?」
「ん? ああ。やる事が出来たっつーか、ちょっとな」
「?」
マクスターが首を傾げるより先に、ギルガメシュは既に歩きだしていた。遠くの方で、夕陽が沈もうとしていた。
もうすぐ、夜が訪れる。
月が半分ほど昇った頃。
人気の消えたハウラー湖の岸に、1人の人影が座り込んでいた。
脇に置いた瓶の中身を時折グラスに注ぎつつ、ちびりちびりと飲んでいる。月の光に紅い髪が煌めく。
だが、その表情は曇っているままだ。
「………………あの子、最近連絡ないけど大丈夫かしらね」
ディモレアはグラスの中身を一気に煽ると、もう1度瓶の中身をグラスに注ぐ。
「玉砕して不登校とかもありえそうだわね。あの子、結構ナイーブな所もあるし。そんな所はあの人にもあたしにも似てないし」
遠くの方で足音が響く。ディモレアは気にせず、グラスの中身を煽る。
「それにしても……あの子、本当にこれからが心配だわね。何かなきゃいいんだけど」
「………もう遅いんじゃねぇのか?」
背後から声が響く。
ディモレアは後ろを振り向かずにその相手が誰かを探ろうとしたが、心当たりはない。
「だぁれ?」
「…………名前ぐらいは名乗っておくか。俺の名前は……ギルガメシュ。お前を殺す名だ」
「……ギルガメシュ? パルタクスの子?」
「知ってるか?」
「ええ。パルタクス学園の中で、ずば抜けた子だって聞いたわよ」
「お褒めにあずかり光栄だな」
ギルガメシュがディモレアのすぐ近く。僅か数メートルの距離まで来た時、ディモレアはゆっくりと立ち上がった。
「テメェをぶっ殺す」
「……出来るの?」
「やるのさ。俺は……パルタクス最凶なんだよぉ!」
ギルガメシュが剣を抜くと同時に、既にディモレアも臨戦態勢に入っていた。
ギルガメシュは一気に間合を詰めて斬り込む。力ありきの彼にとって、攻撃は当てるものではなく当たるものだ。
「甘いわね」
ディモレアは後ろに跳ぶと同時に、両手に火焔を灯す。
広範囲に広げる炎の魔法、ファイガンである。それを同時に両手に、そして詠唱無しで使用するあたり、流石と言うべきだろう。
だがしかしギルガメシュも多くの修羅場を駆け抜けた猛者である。放たれた二つのファイガンを剣の一振りでかき消した。
「チッ」
「その程度で倒せねぇよ」
「なら、こっちはどう?」
一瞬だけ、光ったとギルガメシュが思った瞬間だった。
凄まじい速度のサイコビームが右腕に直撃した。
「っ……! 今の、サイコビームか?」
「色々と応用利くから便利なもんよー? ま、無詠唱で使用出来るのなんてそうそういないけど」
「……そうだな。応用、利くな」
ギルガメシュは左手を突き出しながらそう呟く。既に射撃準備は整っている。
「サイコビームってのはな、速度を増すだけが応用じゃねぇさ。極太にするにも応用だ!」
「!」
「サイコビーム・グランデ!」
文字通り、通常のサイコビームより数倍は太いビームが、凄まじい速度でディモレアへと一直線に進んできた。
「チッ、避けるしかないわね! 魔法壁なんかじゃ止められそうにないわ……」
ディモレアが呼吸を調えつつ、ギルガメシュに視線を送る。だが、ギルガメシュの方も息を切らしていた。
サイコビームそのものも上級魔法である。それを極太になるまで魔力を注ぎ込めば息を切らすのもある意味当然だ。
「あら、今ので息が上がっちゃった? しょうがないわねぇ」
「………フン、まだまだだ」
「じゃあ、ご褒美あ・げ・る♪」
ディモレアが手をかざした直後、ほんの僅かな囁きでそれは発動された。
ただひと言。「ビッグバム」と。
ギルガメシュを中心に、盛大な爆発が起こった。
「………クッソがぁっ! ラグナロク使ってなかったら死んでたぞ!」
煙の中を突っ切り、ギルガメシュが剣を片手に飛び出す。
「舐めやがってあのババァ!」
剣を片手に周囲を探るが、ディモレアの姿は見つからない。
「あんたじゃ、まだまだあたしは倒せないわよ♪ 今の攻撃程度でラグナロク使うんじゃね」
「あんな速度で倍化魔法使ってくるとは思わなくてな」
ディモレアの言葉に、ギルガメシュはそう言い返す。
倍化魔法。精神集中から始まり、使用する魔法の威力を底上げする技術の一つで鍛練すれば習得そのものは難しくない。だが、精神集中の間は隙が出来る為、個人戦には向かない。
だが、闇の天才魔導師ディモレアは集中時間の短縮に成功した。そしてただでさえ威力の高いビッグバム。その破壊力は十分過ぎる程だ。
「………どう、降参する?」
「断る。大体な。俺を見て気付かないか?」
ギルガメシュがニヤリと笑い、ディモレアは注視する。
ギルガメシュの使う剣はデュランダル。そう、名剣の中の名剣でその能力は高い。だが、一本程度ならディモレアにとって脅威ではない。
そして、彼のぶら下げている鞘は2本分。しかし、手に持っているのは一本でもう一つの鞘は空。
果て、それは……。
「……まさか!」
「今さら気付いたか! そうさ、そこにいたら危ねぇぞ!」
ディモレアの頭上から、文字通り一本のデュランダルが降ってきた。
しかし、それを避ける事は容易い。だが、そんな攻撃で討てるものならとっくに倒されている。
そう、真打は。
「そこに絶大な隙が出来るからさ!」
ギルガメシュは既に距離を詰めていた。接近戦ではその斬撃と力強さで圧倒的な強さを誇るギルガメシュである。そう、距離を詰めればそこは彼の間合。
ディモレアは後ろに跳ぼうとする。だが、先に降ってきたデュランダルを避けている分、上手く方向転換が利かない。
「悪いな」
降ってきたデュランダルと、持っているデュランダルの2本が連続で振られた。
「っ……!」
致命傷には至らないものの、2本分の斬撃の傷が、×印に刻まれていた。
「やるじゃない」
ディモレアの言葉に、ギルガメシュはニヤリと笑う。
ギルガメシュもディモレアも、決定打こそ無いがお互いにダメージを与えつつはある。
「だが、流石にこいつはキツいぜ」
「あたしもよ。だから、いいプレゼントあげるわ。知ってる? 魔術士魔法の中で、1番簡単な攻撃魔法はファイアだけど。そのファイアの威力を極限まで高める方法」
ギルガメシュが何かを言うより先に、ディモレアは動いていた。
「魔法を使う上での弱点はその詠唱時間。どんなに強力な魔法でも、その間だけは隙が生まれてしまう。だからパーティを組むのは必要なのよね。
けどさ、もしその詠唱が無かったら? どんな攻撃魔法でも、詠唱時間無しで魔力が続く限り嵐のように撃たれ続けたら。どんな魔法壁もいずれは破れる。
そうよ、そしてあたしは……何をするでしょーか?」
ディモレアが楽しそうに笑った後、両手を突き出し、その先端に暗い闇の魔力を灯した。
ダクネスガン。闇属性での広範囲魔法だが、冥界の魔族の血を引くディアボロスであるディモレアにとって闇属性の魔法というのは容易な事だった。
そしてそれを無詠唱で、数百発に渡って叩き込む。それが彼女の必殺攻撃の一つである。
どれだけ威力が低くとも雨あられと撃たれれば、防御が間に合う前に倒せれば、それで良いのだ。
「負けて、死ね」
ディモレアの呟きと共に、闇の魔法球が文字通り嵐のようにギルガメシュを襲い始めた。
試験最終日が終わった、という事もあってかパルタクス学園の食堂は異様な熱気に包まれていた。
夕食の席に現れた生徒達は夏休みどうしようかという事を延々と話し合っていた。
そして、ディアボロスもまた、パーティの仲間達と同じ席で夏休みの予定について話していた。
「なぁなぁ、夏休みの間さ。ボストハスで合宿でもやらねーか?」
「まぁ、悪くはないけどバハムーン。試験で赤点取ってないよね?」
「黙れフェアリー。安心しろ、今回はバッチリだ!」
リーダーであるバハムーンがパーティの回復役にして大黒柱のフェアリーの問いにそう胸を張る。
「ああ、そうだ」
ディアボロスは試験で何か思い出したのか、目の前で座る同じパーティの同族の女子に声をかけた。
「なんだ?」
「魔法理論上級の試験、どうだった?」
「ああ、大丈夫だった。お前が言ってた所がしっかり出てたぞ。流石というか何というか……」
「だよねー、ディアボロス君凄いもんね。魔術士学科でも無いのに魔法理論特級受けてるもんねー」
「そもそもあの授業、対象は確か6年生だろ? あたしらまだ5年だぞ?」
「いいだろ、別に……錬金術だって特級受けてるし」
「それは錬金術士学科だからだろう。その割には戦術一般も上級受けてるし、古代言語も上級だし……なんだ、相当成績いいじゃないか」
「俺らのパーティで1番かもな」
フェルパーがずずりとお茶を啜りつつ呟く。ディアボロスは頭を掻いた。
「フェルパー、そういやお前魔術士魔法中級、どうだった? 去年、確かその授業落としてたよな?」
「心配するな、ちゃんと受けているから大丈夫さ。古代言語上級はちと怪しいけど」
「……それはお前が授業の大半で寝てたからだ」
ディアボロスがため息をついた時、ふと強烈な胸騒ぎに襲われた。
何だろう、嫌な予感がする。
「緊急事態です」
ディアボロスが顔を上げた瞬間、背後から声が響いた。どこか聞き慣れた声。
「……トロオ姉さん? どうしてここに……」
「貴方に伝えるべき必要があったと判断しました。緊急事態です。ディモレア様が襲撃を受けています」
「!」
ディアボロスはここで動くべきかどうか迷った。
自分の母親がディモレアである事を知っている人間は殆どいない。だが、もしここで動いてしまえばその後、どうなるのだろう。
何せトロオ1人にですら結構な被害を叩き出した事があるのだ。
でも、今はそんな事を迷っていてはいけない。そう、何を迷う必要がある。
母親の危機を、助けに行かない息子がいるものか。
「分かった、場所は?」
「ハウラー湖畔です」
ディアボロスは呆気に取られたパーティの仲間を置いて寮の自室へと駆け戻り、とにかく愛用の剣を掴むとテレポルで校門へと飛び、飛竜へと飛び乗った。
飛竜が飛び去った瞬間、校庭に1人の人影が飛び出してきた。
「…………」
飛び去っていく飛竜を見つめ、その背中にディアボロスが乗っているのを確認する。
「……どうして」
彼女は、そう小さく呟く。そう、彼女は。美化委員長の、セレスティアだった。
直後、また別の人影が2人、飛び出してきた。
サラと、マクスターだった。
「ディアボロスはもう行ったのか?」
「ええ……」
「マズいな、これはマズいぞ。絶対ギルの奴に違いない……」
マクスターは頭を抱え、サラは飛竜召喚札を使って飛竜を呼ぼうとするが、なかなか掴まらないのか来ない。
「あの」
セレスティアが口を開き、マクスターに声をかける。
「ディモレアって、あのディモレア、ですよね?」
「……ああ」
「それなのに、何であのディアボロス君が出掛けていくの?」
それは、と言いかけてマクスターは思わず沈黙した。夕方、ギルガメシュが言った通りの事だった。セレスティアが、ディアボロスを心配するような口でも無かった事にも気付いた。
それは……。
「…………」
サラも、何も言えないのか、黙っていた。
「答えて下さい。何か、知っているのですか?」
セレスティアが呟くと同時に、遠くの方が飛竜が舞い降りてきた。
投下完了。
転換点であります。
けど、ギルガメシュ先輩って考えてみたら超人みたいな奴だな、おやこんなじかんにだr
227 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 22:52:42 ID:54zpzbEr
GJ!
ようやく出てきたよお母さん。
そして強いよお母さん。
三角関係はどうなるんだろうか。
それ以前に、ギルガメシュ先輩生きてるのか?
ディモレアお母さんに謝る事。
一人で倒してスミマセン。ボコ殴りにしてすいません。
二週目する時はちゃんと六人で挑みます。
うちのディアボロスがついにエンパスを殴り殺すことに成功しました。
7回程殴り殺しましたよ。愛って素晴らしい。
せっかく作品を投下してくれた作者さんに対して、感謝の一言もないのか?
どんだけ腐ってるんだこのスレの住民は
>>227 1人で殴り殺してって、ディアボロスすげぇ!
しかもエンパスを七回ってまさかレベル50の最強エンパスまで全部?
見事すぎますぜ、227氏! 愛って全てを越えるんですな。
やっぱりお母様ってあの時点で本気を出していないのですよ、きっと。
二回目のレベル50の時もキング・クリムゾン使えばいいのに。
で、連投になる感じですけど今夜は第3話投下であります。
「こんだけ撃っとけば、充分かしらね」
ディモレアは最後のダクネスガンを放つと、そこで手を休めた。
少なく見積もっても二百以上、元々広範囲の魔法なので攻撃範囲から抜け出そうにも次から次へと襲う攻撃からは避けきれない。
「……なかなか強かったわよ? けど、あたしにはまだまだね」
ディモレアはもう返事が返ってこないであろうと思いつつ、そう声をかける。
だがしかし、未だに舞い上がる土煙の中から、返事は帰ってきた。
「サイコビーム・グランデ!」
先ほどの、極太のサイコビームが返事代わりとして。
「ッ……ガァッ……!?」
土煙の中から不意打ちに近い状態では流石に防御も回避も間に合わず、ディモレアの脇腹にそのサイコビームが突き刺さる。
「っ……嘘、生きて……」
「………死ぬかと思ったぜ、ったくよぉ……」
土煙が晴れ、その中にはギルガメシュが立っていた。
「あれだけの数を、どうやって!?」
「サイコビームの応用だ……威力はねぇが速度が早いのを散らして迎撃したのさ。それでも潰せなかった分は剣で弾いた! 仕損じたの何発か喰らったけどよ」
「…………そういう使い方もあるのね、失念していたわ」
まさかサイコビームで弾幕を張るとは。そういう攻撃方法も無い訳ではないが、ギルガメシュのように防御に使うというのも驚いた。
そして何よりも。先ほどの極太サイコビームといい、弾幕といい、ギルガメシュは魔法の才能もかなり高いのだろう。
「単なる力馬鹿じゃないのね」
「当たり前だ……どこまでも強くなるには、色々やるっきゃなかったからな」
ギルガメシュを視界に捉えながら、ディモレアはマズいなと思っていた。
先ほどのサイコビームと、二回の斬撃。これだけで、かなりのダメージを負っている。
それにダクネスガンを二百発以上も無詠唱で連続で叩き込んだせいで、魔力もかなり使ってきている。
「…………1人相手に、ここまで苦戦するなんて」
「何か言ったか?」
「独り言よ。あんたをどう料理するかって」
「クソ、しっかしマズいな」
ギルガメシュは呟く。実際、極太サイコビームも何発も連続で撃てるものではないし、その前にもビッグバムやダクネスガンを何発か喰らってダメージ自体は少なくない。
お互いに、刻々と憂うべき状況に立ちつつある。
「それにしても、今さらあたしを狙いに来るなんて驚きだわね………どんだけ執念深いのよ」
「卒業する前に果たすべき事だと思ったのさ。それに……俺個人として許せない事がある」
「それは?」
「俺のパルタクスを、脅かすんじゃねぇ」
ギルガメシュはデュランダルを一振りすると、両手でしっかりと掴んだ。真っ直ぐに。
「………………あんたは、あの学校好きなのね」
「ああ。大好きさ」
ギルガメシュはそう呟くと同時に、強く踏み込もうとして、何かに気付いた。
上空にいつの間にか飛来してきた飛竜から飛び出した人影が、落ちてくる。
「……来やがったか……」
ギルガメシュが呟くと同時に、彼はディモレアの前にやってきた。
「遅かったな」
「………やっぱ、先輩でしたか。こんな時になって襲撃してくるなんてね。それに……食堂にいませんでしたし」
ディアボロスが立ち上がりつつギルガメシュに声をかけると、ギルガメシュは鼻で笑った。
「別に俺がディモレアを倒しに来る事ぁおかしな事じゃねぇだろ。パルタクスの平和を脅かす奴は許さねぇ」
「俺の事、知ったんですか」
「ああ。今日、だけどな」
「………そして、すぐに、ですか」
「ああ」
お互いに、黙り込む。
「あんた……どうして」
「トロオ姉さんから聞いた。だから、すぐに飛んできた」
「別に放っておいても」
「俺の母さんだろ! 死んで欲しくないよ!」
ディアボロスが剣を抜いた時、ギルガメシュが呟く。
「………一つ教えてやる。何で俺が今夜、ここに来たか分かるか?」
「………?」
「テメェも知らねぇ筈がねぇだろ。ディモレアの一件で多くの生徒が死んだ。その中には、色々混じってる。例えば、あのセレスティアの仲間とか……弟とかなぁ!」
「っ!」
ディアボロスは、頭をハンマーで殴られたかのようなショックを受けた。
ディモレアが生徒に恐れられているのは知っているし、実際自分の学校の生徒に犠牲者が出ている事も知っている。だが、彼女の。
そう、自分が恋い焦がれて、本当に恋人になった彼女の大切な人が、傷ついていたのは。
そして彼女が、自分の母親がディモレアだと知ったら。
そしたら、自分は、どうすればいいんだろう。
「だからだよ……だからテメェは無理なんだよ。俺には分かるさ」
「そんなの……」
言ってみなければ分からない、と言いかけてギルガメシュは首を振る。
「バカ言え。テメェが今、誰に剣向けてんのか分かってんのか? 俺に向かってだ。ディモレアと闘う俺に剣向けたっつー事は、テメェはもう俺の敵だ。そして、テメェはディモレアの味方だっつー事だ」
「…………」
ディアボロスは、剣を下ろす事が出来なかった。
ギルガメシュの言う通りだ。自分は今、母親を守ろうとしているだけなのに。それなのに、それでもそれは、パルタクスの平和を脅かした敵をかばい立てする事になって。
それで、それで……。
「ん?」
ディモレアが空を見上げた時、飛竜が再び舞い降りてきていた。
「ギル!」
「……マックか?」
まず最初に飛竜から飛びだしたのはマクスターだった。
「お前……やる事って、まさかこの事だったのか?」
「ああ」
「…………」
マクスターに続いてタークとサラが飛び降り、そして最後に出て来たのは―――――。
「……嘘、本当に……生きて……」
今、1番来て欲しくない相手だ、とディアボロスは思った。
だって今、自分は母親を守る為に剣を抜いているけれども、でも、その相手は。
「……先輩」
「どうして、ディモレアが……生きて……」
「まだ死んでないからに決まってるでしょ」
ディモレアが呟く。だが、セレスティアはそれを認めたくなかった。平和は戻ってきた。ディモレアは倒されたから。でも、今目の前にいる。
ここにいる。そしてその前に立っているのは、自分の事を好きだと言ったディアボロスの少年。
「……どういう、事なの。どうして、君が」
「先輩、俺は」
「どうして君がそっちにいるの!? 剣を向ける相手が、違うんじゃないの!? だって、その人は」
「解ってますよそんなの!」
ディアボロスの叫びに、ギルガメシュは剣をひょいと真っ直ぐに構えた。
「そりゃあ、普通の奴はな。自分の母親に剣向けたりは出来ねぇさ。どんな悪人だとしても、そいつにとってディモレアは自分の母親でしかねぇ。そいつがどれだけの重罪人だとしても、な……」
「………ギルガメシュ君、まさか、この事を知ってたんですか?」
「今日知った」
セレスティアの問いに、ギルガメシュは答える。
「けど、テメェの弟がディモレアに殺されたって事は前から知ってる」
「………」
セレスティアは黙り込む。ディアボロスも黙りこむ。
何も言えない、状態。
そうだ。誰だって、家族ほど大切な存在は無いだろう。
ディアボロスにとって、母親が唯一の家族だ。けれども、その母親はパルタクスの生徒を始め多くの人を傷つけた。
そんなの、解っている筈だった。理屈の上では。
だから、秘密にし続けていた。誰にも言わなかった。けれども、いずれ打ち明けようとは思っていた。自分の事をもっと知って欲しかったから。
でも、それが本当は無茶苦茶な事だったと今日知った。
自分にとって母親以外の何者でもないディモレアは、他の人にとっては重罪人でしかないという事だ。どこまで言っても。
そして、好きになった相手にとっても。それは、同じ事だった。
「……ディアボロス。テメェに最後の選択肢だ。テメェは誰に剣を向けて、誰の味方になるんだ?」
「………………」
ディアボロスは、迷う。
母親を死なせたくはない。けれども、ここで剣を向ければ、自分は。
恋人の、敵になってしまう。
「っ………どうすりゃいいのか、解らないよ……」
ディアボロスが呟いた時、セレスティアが動いた。
背中に背負っていた槍を。
名槍と名高い、ニケの槍を真っ直ぐに構える。
ディモレアに向けて。
「……どいて」
「………………」
「そこをどいてください、ディアボロス君」
「……………」
「貴方にとっては母親でも、私には……私には……弟の仇でしかないから! でも、君を傷つけたくない! だから、そこをどいて!」
「!」
「どいてぇぇぇぇぇっ!」
セレスティアは、誰よりも早く駆けた。
後ろから追いすがろうとしたマクスターも、タークも振り切り、そこから動く様子を見せなかったディアボロスをかわすように、ディモレアの首元だけを狙って。
でも、その槍が深々と突き刺さったのは。
「………え?」
紅い鮮血が飛び散る。けど、その刃が突き刺さったのは、ディアボロスだった。
「……………先輩、ごめんなさい………」
紅い血が噴き出る。セレスティアは槍から手を離すと、ディアボロスはその場にゆっくりと崩れ落ちた。
「……アンタぁッ!」
ディモレアは文字通りディアボロスの元へと慌ててすっ飛んでいき、すぐに抱き上げた。
「しっかり! 解る? 呼吸はしてる? 大丈夫、だから、目を」
ディアボロスを抱き上げ、必死に介抱するディモレアの目の前で、槍から手を離したセレスティアは、呆然とした目つきでそれを見ていた。
「……………嘘、どうして……」
「おい!」
そんなセレスティアを、ギルガメシュは慌てて掴むと、即座にその場から強引に離した。
「ギルガメシュ君、私……」
「そんな事より、ここを離れるぞ」
「ギル! ディアボロスを、あのままにしておくつもりなのか!?」
ギルガメシュの言葉にマクスターが叫んだが、ギルガメシュは首を振る。
「バカ、このままこの場にいたらディモレアに殺られるぞ!」
ギルガメシュが叫んだ瞬間、まさに文字通りマクスター達の目の前に、サイコビームが突き刺さった。
「………覚悟、出来てる?」
ディモレアの声。過去にパルタクスの生徒達と対峙した時の余裕ある声とは違う。そう、純粋なる憎悪と殺意だけに溢れた冷たい言葉。
そしてそれは、セレスティアを恐怖のどん底にたたき落とすには充分だった。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
その叫びが響くと同時に、ディモレアから放たれる魔力が一瞬で増大する。
「ヤバい、伏せろッ!」
ギルガメシュの叫びの直後、周辺を薙ぎ払うかのようにビッグバムが放たれる。
辛うじて直撃こそしなかったものの、それでもその威力は凄まじいものだと解る。
「ギル、お前のせいだぞ!」
「テメェらだってなぁ、せめてセレスティアを止めてくりゃいいのに何で連れてくんだ!」
「無茶言うな。いつまでも隠し通せることじゃなかったんだから。それより、あれどうするんだ!?」
「いいか、マック。そもそもテメェなぁ、セレスティアの弟がディモレアに殺られたってことテメェだって知ってた筈なのに何でくっつけたりしやがったんだ!」
「そんなの本人同士の問題だろう!」
「テメェが育てた種だろうが! 蒔いたのはサラだけどよ!」
「じゃああたしが悪いのギル!?」
「ああ、もう兄貴もギルもサラも落ち着けや! それよか、ボヤボヤしてると殺られるで!」
タークが慌てて割って入り、三人は一瞬で意識を現実に引き戻した。
「で、どうするんだあれ?」
「………マック。周辺の植物が枯れ始めてる。要は周辺の魔力も全部吸い尽くしてるってことだ。ディモレアが」
「………つまりそれは?」
「まぁ、死ぬな」
ギルガメシュの言葉に、マクスターは「お前なぁ」と呟く。
「と、ともかく逃げるぞ」
「ああ。ターク!」
「了解やで!」
タークが飛竜を呼び寄せ、走れそうに無いセレスティアを背負って走り出し、サラもそれに続く。
ディモレアは逃がすまいとばかりに、手を向ける。
「おおっと、そうはさせるかよ!」
ギルガメシュは右手を突きだし、精神集中からサイコビームをぶつけた。
ディモレアはサイコビームにサイコビームをぶつけるという荒技で相殺しつつ、もう片方の指に光を灯した。
1、2、3、4、5と。5本。
「……死ねぇーッ!」
5本の指それぞれからサイコビームが放たれた。
サラ、ターク、マクスター、ギルガメシュ、そしてセレスティアとちょうど5人分である。
ギルガメシュも負けてはいない。
威力はないが速度と数だけは大量にばらまけるよう、威力を調節したサイコビームを弾幕のようにばらまく。
「飛竜の準備はまだか!」
5本のサイコビームをたたき落としたはいいが、次に襲ってきたのはディモレアの十八番とも言うべくダクネスガンだった。
「後はギルだけだって……うぉい! 何であんなに数あるんだ!?」
「くそ、出来る限りたたき落とすが全部は無理だ!」
ギルガメシュが再びサイコビームを撃とうとしたが、その時に気付いた。
精神的疲労が激しくて、集中が出来ない。どうやら魔力を使いきってしまったらしい。
「………ヤバい、当たるぞ」
ギルガメシュが呟いた時、ダクネスガンが逸れ、湖の方へと消えていった。
そしてそのまま、次弾が放たれる様子は無い。
「……今のうちだ!」
ギルガメシュは飛竜に飛び乗る。5人を載せた飛竜が、飛び立つ。
「……………」
ディモレアは最後のダクネスガンが消えたのを見送った後、自分の足下に視線を向けた。
「大丈夫……?」
自分の足をしっかりと掴んだ、息子の姿。血塗れで、息も絶え絶えの。
「母さん……」
「どうして、止めたりなんか……」
「……好きな人を、傷つけて、欲しくなかったから……」
ディアボロスの言葉に、ディモレアは息を飲む。
「……………ごめん」
「……母さんが、謝ることじゃ……」
げほ、と血の塊が口から零れた。同時に、ディモレアは自分の顔から血の気が引いたのを感じた。
「……走るわよ。絶対、死なせたりなんかしないから……!」
ディモレアは息子を抱き上げると、自分の住み処へと走り出した。
パルタクス学園が朝を迎え、その部屋の住人であるフェルパーの少年は目を覚ました。
「朝、か………」
そう言えば昨晩はルームメイトのディアボロスは戻ってこなかったが、剣が消えているあたり、どうやら迷宮探索に出掛けたままのようだ。
「あれ?」
だが、その割には夕方に風呂に行った時はちゃんといた、というより一緒に風呂に行った筈である。なのに、風呂に入った後に深夜から迷宮探索に出掛けたのか?
不自然だなぁ、と彼が考えた時、部屋の扉がノックされた。
「はいはーい。開いてますよ」
「悪ぃ、ちょっといいか?」
扉を開けると同時に入ってきたのは、ルームメイトと同じパーティを組んでいる同学年のフェルパーだった。
フェルパーは人見知りする種族だが同じ種族同士なら問題は無い。そしてルームメイトと同じパーティを組んでいるフェルパーは実力もあるので時折ルームメイトの伝手で頼みごとをすることもある。
「どうしたのさ、珍しい……あれ? 何でパルタクスにいるんだ? 迷宮探索に行ったんじゃ?」
「行ってないよ、うちのパーティは。昨日、うちのディアボロス、帰ってきてないか?」
「いや。帰ってない。どうしたのさ?」
「ああ……昨日の夜、夕食の後、急に飛びだして行った後、戻ってきてなくて」
「………マジか?」
「部屋に戻ってるかなって思ったんだけど……いないのか」
「ああ……。行方不明か? とにかく、探してみよう。知りあいを当たってみる」
「ああ。うちのパーティの連中にも、探すように言ってみる」
2人のフェルパーは頷きあうと、お互いに部屋から飛び出し、違う方向へと向かっていく。
そしてこの日。パルタクス学園中を、電撃的なニュースが駆け巡り、学園中が揺れに揺れる事態となった。
投下完了。
ディモレアさん家はいつも苦労しています。
けど、お母様は強いです。そんな親の一人息子ですので。
すげえ気になるところで終わってるな……いわゆる焦らしプレイですねわかります
続き期待してるぜ
177です 一本書けたのでまた投下しにきました。
今回はヒュマ♂×フェア♀で。
どーもエロばかりになってしまう…中の人がエロいんです。たぶん。
>>235 乙です!ハラハラドキドキしながら読んでます
今後の展開がーーー。気になりすぎて落ち着かない。
ディアボロスの無事を祈る!!!
「いっけぇええええええ!!」
フェアリーの放ったぱちんこの弾が一直線にヒューマンめがけて飛んでくる。
「オイオイオイ…本気かよ」
ひらっとそれをかわしつつ反撃を叩き込もうとしたその時…
ガツン!!という鈍い音とともに頭上から大きな岩が飛んできてヒューマンの頭を直撃した。
「隙あり!KOいっただき〜☆」
暗くなる意識の向こう側で妙に癪に障るフェアリーの甲高い声を聞いた気がした。
実戦形式の午後の訓練が終わり、ディアボロス、エルフ、ヒューマンの3人は男子用更衣室に備えられたシャワールームで汗を流していた。
「いてて…ちっくしょ、フェアリーのヤツまじでオレに何の恨みがあるんだよ…」
頭にできた大きなタンコブをさすりながらヒューマンははぁとため息を漏らす。
「…彼女はお前がスキなんじゃないか?ほら、好きなヤツほどいじめたいとか、言うだろう」
タオルで髪を乾かしつつディアボロスが言う。
「…ソレ どんなガキだよ… オレはロリコンじゃねーし。もっとこう、ナイスバディなかわいこちゃんが良いの!
…バハムーンとか」
バハムーンという単語にぴくっと反応しディアボロスがヒューマンを睨みつける。
「バハムーンに手、出したら……判るな?」
「怖ぇ… 大丈夫だって、ダチの女に興味はねーし! …でさ、エルフはどうなん?好きなコとか、好みのタイプとか、どうなのさ?」
自分に向けられた殺気をさらっと流しながら、ヒューマンは向かいで制服に着替えていたエルフに話を振った。
エルフは顔を上げるとしばしうーん、と考え込む。
「僕は…そうだな、エルフとか、セレスティアとか…女性らしい、おしとやかな子が好み、かな?」
「ま、普通そうだよな…ウンウン」
自分に言い聞かせるようにうなずきながら、3人は年頃の男子学生らしく女の子の話で盛り上がりながら更衣室を後にした。
その夜、夕食を終えたヒューマンは珍しく屋上で一人剣の素振りをしていた。
今日フェアリーに負けたことがよほど悔しかったのだろうか。
「あ いたいた!ヒューマン!」
「…うぇ なんだよ」
黙々と素振りをしてたヒューマンの耳に聞きなれたフェアリーの声が飛び込んで来る。
「別に用事はないんだけど…なんとなく」
「んだよソレ…邪魔すんなよな」
少しイライラした口調でヒューマンは言うと、フェアリーの方に目をくれることもなく素振りを続ける。
フェアリーもむっとはしたが、そこは一応ガマンして少し離れた縁のところに腰掛けてじっとその様子を見つめていた。
しばしの後、ヒューマンは一旦剣を納めるとフェアリーの方に向き直る。
「用事がないなら帰れよ。明日もあんだろ、寝て魔力回復しといた方がいいんじゃねーのか」
「ヒューマンは寝ないの?」
「オレは大丈夫だ」
「じゃああたしも起きてる」
ワケの判らない理屈を言い出しフェアリーはぴょん、と縁から飛び降りるとヒューマンの側までふわふわと飛んできた。
「…コドモは寝る時間だろ」
肩をすくめてヒューマンは帰りなさい、とでも言うように階下に繋がるドアを指差した。
『コドモ』という単語がフェアリーの胸にぐさりと突き刺さる。
いつもは中々素直になれないけど、今日ばかりは素直になって午後の訓練でのことを謝ろうと決意してきたのに。
コドモ扱いされているという事実と、自分の計画があっという間に崩壊された悔しさと。
フェアリーは唇をかみ締めうつむくとぽろぽろ涙をこぼし始める。
「おい 何泣いてんだよ」
「コドモじゃないもん!!」
フェアリーはわんわんと泣きながら勢い余ってヒューマンに抱きつく。
だが二人の間には相当な身長差があるので、フェアリーはヒューマンの腰にぶら下がるような格好になってしまう。
「ちょ 何してんだよ!」
「あんたがいけないの!!!」
ほとほと困り果てた様子でヒューマンはとりあえず落ち着け、とフェアリーを引き剥がすと屋上の床に座らせる。
「ひっく、えっぐ…コドモじゃない…もん…うあああああん」
「判った、それは謝る。…とりあえず、なんか取って来るから、待ってろ」
ヒューマンは小走りに駆けていくと自分の荷物の中からコップを2つと、水筒、それにお菓子の包み紙を持って戻ってきた。
「ほら、これでもやるから泣きやめよ」
コップを渡して水筒の中のコーヒーを注ぎ、チョコレートらしきお菓子をフェアリーに手渡す。
本人はわかっていないようだが、その子供扱いがますますフェアリーの逆鱗に触れたらしくフェアリーは手にしたチョコレートをぺしっとヒューマンに投げつけた。
どれぐらい経っただろうか。
突然、それまでヒューマンに背を向けて座っていたフェアリーがヒューマンの方に向き直る。
「…スキなの」
ずびび、とタオルで鼻水を拭きながらぐしゃぐしゃになった顔でフェアリーが言う。
「……は?」
一瞬何を言われたのか理解できなかったヒューマンはぽかん、と口を開けたまま固まってしまった。
「ヒューマンが、好きなのっ!!」
ぽろりと、ヒューマンの手からコップが床に落ちる。
勢いよく流れるコーヒーなど見向きもせずヒューマンはまじまじとフェアリーを見つめた。
「子供じゃないから…えっちだってできるもん!」
「いやいやいや、ちょっと待てって。 オレはヒューマンで、お前は、フェアリー…だぞ?」
「だからどーしたのよっ」
「冗談じゃねーよ 抱ける訳ねーだろ!!!」
声を荒げるヒューマンにフェアリーはずいっと近寄る。
「どうして?」
「どうしてもこーしてもねぇって…お前、自分のサイズ判って言ってんのか?……どこに入るんだよ!」
「入るもん!!」
「むちゃくちゃ言うなって!」
「そんなのやってみなきゃ判んないじゃん!」
思わずフェアリーはヒューマンの膝の上に詰め寄ると、制服の胸元をがしっと掴む。
フェアリーを見下ろすヒューマンは無表情で、何も口にしようとはしない。
フェアリーは怒りなのか恥ずかしさなのか、顔を真っ赤に染めたままキッとヒューマンをにらみつけると
そのまま背伸びをしてヒューマンの唇に口付けた。
とても、上手とはいえないつたないキス。フェアリーは一生懸命舌を伸ばしてヒューマンの唇を舐める。
舌を探そうと頑張るが上手くいかず、苦しくなってフェアリーはぷはぁ、と口を離した。
なみだ目でそっとヒューマンの表情を見上げたそのとき、それまでされるがままだったヒューマンが動いた。
強い力でぐっとフェアリーを抱き寄せ、唇を重ねる。噛み付くような、激しいキス。
抜けるくらいに舌を強く吸われ、フェアリーは思わず声をこぼした。
唇が解放されたと思う間もなく、ヒューマンは細いフェアリーの肩を掴んで地面に押し倒す。
ボタンが弾けるのではないかと思うほど強い力で制服の前をはだけられ、あっというまに上半身はキャミソール一枚の姿にさせられる。
「……泣いても赦してやらねーぞ」
聞いた事のないほど低い声でヒューマンはささやいた。
急くようにヒューマンは制服の上着を脱ぎ捨て、シャツの前を乱暴に開ける。
バハムーンやディアボロスほどではないが、その鍛えられた身体はフェアリーに男を意識させるには十分すぎるものだった。
ヒューマンの首にぎゅっと両腕を回して抱きつき、フェアリーは目を閉じる。
「…んっ、んぁ……っ」
弄ばれ、吸われて立ち上がった白い胸の小さな乳首は、ヒューマンの指先が触れるだけでフェアリーに痺れるような快感を与える。
「……かぼちゃパンツ、ねぇ」
フェアリーのスカートの中に手を突っ込んで中を確認していたヒューマンがため息まじりの声で呟いた。
「ちょっ…と、そんなマジマジと見ないで…ってば」
「すぐに脱がせるから別にイイけど」
そう言って遠慮の欠片もなくヒューマンはフェアリーのかぼちゃパンツをずり下ろすと、その先の秘所に手を伸ばした。
柔らかい毛の感触と、指先に感じるぐちゃっとした濡れた感触。
思わず逃げ腰になるフェアリーをがっしりと押さえ込むと、ぐいとその指先を既に潤ったフェアリーの割れ目に押し付けた。
「〜〜〜〜〜ッ!!」
「ふぅん、やっぱりココが弱いのか」
ヒューマンは少し笑うとフェアリーの敏感な突起を弄りはじめた。
指先でこね回し、ぎゅっと強く挟んで、軽くつめを立ててみる。
「…ひゃっ、やっ、…あ、んぁうっ」
その強烈すぎるほどの刺激に、フェアリーはあっという間に意識を手放した。
「お前、さ …実はこういうコトしたこと、ないだろ?」
ぐちゃぐちゃとフェアリーの中を指でかき回しながらイタズラっぽくヒューマンが問う。
「そ そんなの…関係ない……じゃん…… んんぅっ」
「見栄っ張りっつーか何つーか…まぁ、お前らしいけど」
ひょいとフェアリーをひざの上に抱え上げ、大きく脚を開かせる。
フェアリーからも良く見えるように、少し前屈みになるとヒューマンはフェアリーの耳元に顔を寄せた。
「フェアリー、お前すげーぐちゃぐちゃ」
後ろから耳元で囁かれ、フェアリーは恥ずかしさで顔を真っ赤に染める。
「や… やめ… やだぁっ」
「身体はイヤって言ってないけど?」
これでもかという程中をかき回され、ひくひくとフェアリーの小さな身体が痙攣を始める。
その、快感の一番大きな波がくる直前、ヒューマンはすっとフェアリーから手を離した。
「え……や やめちゃヤダ…」
「さっきのいやだ、と言ってることが違うじゃん」
くすくすと笑いながらヒューマンはフェアリーの腰を強く抑えつけた。
制服のズボンの前を開いて晒されるヒューマンのモノ。
フェアリーはその大きさに一瞬びくりと身体をこわばらせたが、言い出したのは自分だと言い聞かせ大きく息を吸い込む。
ぴたり、と熱い器官がフェアリーの小さな秘裂に押し当てられる。
「…い゛や゛ああああああああああっ!!!イタ、いた…ぃ…いたあああああいっ!!!」
耳をつんざく程の、フェアリーの悲鳴。
「おま…聞こえちまうだろ…っ…ぐぁ…」
余りの痛さに全く動くことが出来ず、フェアリーは固まったままただ唇をかみ締める。
ヒューマンはヒューマンで、フェアリーの中のキツさに別の意味で動くことができず大きく息を吐き出した。
「……だから…無理っつったじゃねーか……」
少し呆れたような声でヒューマンがぼそぼそと呟く。
フェアリーの痛がり具合を見て流石に無理と思ったのか、ヒューマンはフェアリーから身体を離そうと上体を持ち上げる。
そんなヒューマンの様子に気付いたのか、フェアリーは痛みを堪えて必死に彼にすがりついた。
「やだよ……やめないで」
「痛いんだろ、無理すんなって」
「…や…いやなの…」
ぷるぷると首を横に振り、フェアリーは涙を流しながら言葉を吐き出す。
今、このまま離れてしまったら、もう彼は二度と自分をきちんと見てくれない気がした。
いつものように顔を合わせる度に出てくる激しい罵り合い、それすら、無くなってしまいそうで。
「なんなんだよ…」
「ヒューマンが好きだから……やだ、離さないで…」
「…ほんっとガキだな 壊れてもしらねーぞ」
半ばあきらめたような口調でヒューマンは呟いた。
おさえつけるように片手でフェアリーの頭をかき抱くと、ヒューマンは激しく動き始める。
身体の中をえぐられるような激しい痛みにフェアリーは思わず悲鳴を上げそうになるが、ヒューマンの胸に顔をうずめてそれを押し殺した。
痛みなのか、快楽なのか、それすらも判らず、体中の感覚がなくなってくる。
ただただ、ヒューマンの熱だけが身体を通じてはっきりと感じ取れた。
「…ヒューマ…ン…… だいすき…」
薄れゆく意識の向こうで、ほんの少し、ヒューマンが笑ったような気がした。
「ううっ……痛いよお……死んじゃう…」
「…自業自得って言葉をしらねーのか、お前は…」
起き上がることすら出来ないフェアリーをひょいと抱え上げると、ヒューマンはゆっくりと歩き出す。
「今のうちになんか上手い言い訳考えとけよ」
誰もいない学生寮の廊下を歩きながらヒューマンは小さく笑った。
「う゛ーーー…あたしが…こんなっ…いたたたた…」
「ほれ、部屋ついたぞ。立てるか?」
フェアリーの部屋の前までたどり着き、ヒューマンはよっと抱っこしていたフェアリーを降ろした。
「じゃ、オレは戻る。 あんま遅くなるとアイツに何か突っ込まれるしな」
フェアリーに背を向け、ひらひらと頭の上で手を振るヒューマン。
「ま 待って!!」
「ん?」
振り返ったヒューマンの表情は、さらっとした、つかみ所のないいつもの物に戻っていた。
「その……えっと……あ …ありがと」
顔を赤くしながら消え入りそうなほど小さな声でフェアリーは呟いた。
「おー、お前にお礼言われるとはびっくりだ。こりゃー明日は槍でも降るか?」
けらけらと笑いながらヒューマンは身体をかがめ、フェアリーの頭に手を置いて耳元に顔を寄せる。
「…可愛かったよ」
「!!!」
一瞬にして耳の先まで赤くなるフェアリーをにやにやと笑って見つめたあと、ヒューマンは背を向けて歩き出した。
「あ そうそう オレきっとお前のこと好きになるよ。そんな気がする。 じゃーな、オヤスミ!」
「おかえり」
「うおっ びびった…おま、電気くらい点けろよな」
ヒューマンが自室に戻るとそこには既にルームメイトのディアボロスが帰っていた。
「…明るいところより、暗いところのほうが、落ち着く」
「…そ そうか、そりゃ悪かった」
相変わらず変わったやつだと心の中で呟きながら椅子に腰掛け、だらんと全身の力を抜く。
「…フェアリー、大丈夫か?」
「ん…なっ ななななななっ!!!!」
あまりのことに動揺し、ヒューマンはがたんと椅子から転げ落ちた。
そんなヒューマンを見てディアボロスは思わず笑みを浮かべる。
「図星、か」
「て…てめっ…」
「オレはロリコンじゃないとか何とか言ってた割りには…くっくっ」
面白そうにディアボロスは喉の奥で笑う。
「…性格ワリーぞお前」
「それはお互い様だと思うが」
ヒューマンは勢いよくベッドに倒れこみ、天井を見上げながらふぅと息を吐き出す。
「…明日どんな顔して会えばいいのか良くわかんねー…」
「普通で、いいだろ しおらしいお前達とか想像するだけで鳥肌ものだ」
「…そりゃそうだ オレも気持ちわりぃ」
笑いながらヒューマンは目を閉じる。
また、いつもの学園生活が明日から始まる。
あの甲高い声でドヤされないとそれはそれで面白くない、と、そんな事を思い浮かべながらヒューマンは深い眠りに落ちて行った。
投下完了。
ヒューマンはきっと悪になりきれない中立なヨカン。
では。
>>235 乙でした
参観日の時といいやっぱディモレアは性格わるいな
息子を大事にするのは当然だが自己中過ぎてやはり憎い・・・
>>243 こちらも乙です
ヒューマンからさりげなくイケメン臭が
そしてエルフが普通過ぎて気になってしまう
入れない地下道があるままエンディングを迎え、そのまま探索不能になった事に気付き、二週目スタート。
ついでに先生方の口調を全部覚えておかねば。
今回は2ネタで百合モノになります。お相手はドワ子。
では、楽しんでいただければ幸いです。
他の同級生と、明らかに異なる急成長ぶりを見せるパーティは、クロスティーニの中でもちょっとした話題になっていた。
ただ、今はその成長も少し止まっている。というのも、ヒューマンが魔法使いに転科し、その修行に専念しているからだ。
それなりに装備はいいため、ヒューマンは一人で鍛錬に出かけることも多いが、念のためにとクラッズやドワーフが、よく彼に
ついて行く。それ以外の仲間は、寮でゆっくり寛いでいたり、装備品の調整をしていたりと好き勝手に過ごしている。
この日は、ヒューマンとドワーフとクラッズが初めの森に出かけており、暇だからとフェルパーも後からついて行った。
残ったディアボロスは、装備の強化でもしようと思い、いくつかの素材を持って実験室へと出かけた。
「そうよぉ〜。あなた達だって、鍛えれば強くなるわよぉ。もっとも、筋肉がつくわけじゃないから、アタシみたいな体には
なれないけどネ」
「そうですか、やはり強くはなれるんですね。でも先生みたいな美しい体になれないのは、残念ですね」
「あらヤダ!あなた上手ねぇ〜」
頭の痛くなるような会話を背中に聞きつつ、ディアボロスは黙って用事を終わらせようとした。しかし、声の一つが聞き覚えのあるもので
ある事に気付き、振り返ってみる。
「ノ、ノーム!?お前、一体何を…!?」
「ん、ああ、ディアボロス。錬金かい」
「あなたのお友達?その子、なかなかいい体してるわぁ〜」
「は、はぁ。ど、どうも…」
全身が一気に粟立つのを感じながら、ディアボロスは何とか頭を下げる。
「えと……ノーム、お前は何を…?」
「何って、ジョルジオ先生に相談に来てたんだよ。僕は君達みたいに、明確に強くなるって感覚がないからね」
「心配しなくても大丈夫よ。依代に馴染めば、その分動きやすくなるわ。そうすれば、今よりもっと力も出せるし、素早く動けるように
なるってわけよ。詳しい話は、ガレノス先生に聞けば色々教えてもらえるわよぉ〜」
「ありがとうございます。でも、僕としてはジョルジオ先生と話している方が、面白いので好きです」
「あら、それってもしかして、こ・く・は・く?」
「……ノーム、私は錬金だけして、部屋に帰る…」
これ以上、彼等の会話を聞くのは耐えられなかった。あとはもう、耳から入ってくる声を全て意味に変換せず、ただの雑音として処理し、
黙々と錬金を済ませると、実験室を出る。
外の清々しい空気を胸いっぱいに吸い込み、ディアボロスは大きく伸びをした。ロングソードが強化されたことより、あの実験室を
出られた開放感に、ディアボロスは大きな喜びを感じていた。
ふと視線を滑らせると、初めの森入り口から、こちらへ歩いてくる四人組が目に入った。編成を見る限り、鍛錬に出ていた彼等だろう。
「おう、ディアボロス。何してたんだ?」
まだ余裕のありそうな顔で、ヒューマンが声をかける。
「武器の強化をな。お前は、もう終わりか?」
「ああ。ようやく、フロトル覚えたから、もういいやって思ってさ」
「ヒーラスぐらい覚えようとは、思わないんだな…」
「だって、面倒くせえもん」
そう言って笑うヒューマンを、ドワーフが不思議そうに見つめている。
「ヒールとかするの、嫌い?」
「ん?ああ、いや、そういうんじゃねえんだ。ただ、魔法使いってのは、あんまり性に合わなくてさ」
「そうなんだ。でも、もったいないなあ」
「そりゃ、後ろから弓射てた男が、いきなり魔法じゃもんねえ。合わないのは、しょうがないよ」
「ディアボロス、ただいまぁ」
相変わらず眠そうなフェルパーが、眠そうな声で言う。しかし、尻尾がピンと立っているのを見て、ディアボロスはすぐに気付く。
「どうしたんだフェルパー?嬉しそうだな?」
ディアボロスがそう言った瞬間、三人は顔を見合わせた。
「……なんでわかるの、あれ…?」
「俺に聞くなよ……ほら、あれだ。猫飼ってると、気持ちが分かるようになるって言うだろ?」
「尻尾見たんだと思うけど」
ぼそぼそと話す三人をよそに、フェルパーはディアボロスに笑顔を見せると、腰からヌンチャクを取り出した。
「これ、拾っちゃった」
「へえ、いい武器だな。けど、お前は素手の方が得意なんじゃないのか?」
「そうでもないよぉ。こういうのは得意だよ、ほら」
直後、フェルパーはブンブンと凄まじい音を立てながら、ヌンチャクを振り回した。すぐ隣にヒューマンがいるのだが、
彼に当てるようなことはせず、しかしヒューマンは慌てて飛びのいた。
「あっぶねえなお前は!!いきなり振り回すんじゃねえよ!!」
「ん?あ、怖かった?ごめんねぇ」
「けど、ほんとうまいもんじゃなー。あたしなら頭にぶつけるわ、あれ」
「あーもう、まったく、お前は……まあいいや。とにかくさ、フロトルは使えるようになったし、そろそろパニーニの方にでも
行ってみようかって話してたんだけど、どうよ?」
「そうだな。確かにここ最近は、こっちでも依頼はないし、ちょうどいいか」
「よし、決まりだな!んじゃ、ノームにも話してくるわ」
そう言って寮に向かおうとするヒューマンを、ディアボロスはすぐに止めた。
「ノームなら、実験室にいるぞ」
「お、そうなのか?あれか、またジョルジオ先生と話してるのか」
「え?知ってるのか?」
ディアボロスが不思議そうに尋ねると、ヒューマンは笑った。
「そりゃ、あいつとは元々友達だしな。パーティ組む前から知ってるんだぜ」
「あたしとドワちゃんも、パーティ組む前から友達じゃよ。ね」
「うん」
「あいつ、変わり者だからなー。じゃ、後であいつには話しておくとして、明日辺りから行動開始でいいか?」
「ああ、わかった」
「ほいほーい。じゃ、今日はもう部屋に戻ろっか」
少し退屈な日々に飽き始めていた一行は、何の異論もなくそれに従うことにする。まだ見たことのない学校と、新たな迷宮。
それらに思いを馳せ、一行はそれぞれの部屋へと戻っていった。
まだ眠るにも早く、ノームとヒューマンは同じ部屋でカードゲームに興じていた。
「それにしても、一時はどうなることかと思ったよ」
ヒューマンの持つカードの一枚を選び、それを抜き取って裏を見る。そして手札から一枚を抜き出し、ペアになったカードを捨てる。
「あれは嫌い、これは嫌って選り好みをしてくれたおかげで、結局二人だけになるところだったね。あの時は、僕は君がこの学園に、
スラップスティックでもやりに来たのかと思った」
「うるせえな。それなら、わざわざそれに付き合ってるお前は何だったんだよ」
ヒューマンはノームの手札から一枚引き、それをそのまま手札に加える。
「困った友人を放っておけない、ちょっとお人よしの三枚目、でどうだい」
「よく言うぜ。ところでお前、普通科のままでいいのか?お前ならレンジャーにだってなれるだろ?」
「ああ、変える気はないよ。僕等が魔法を習うにはここしかないし、スペシャリストになる気はない。広く浅く、色々できる方が、
僕には合ってるさ」
再び、ヒューマンの手札からカードを選び、ペアになった一組を捨てる。
「錬金術師っていうのも、あるらしいぜ?」
「ああ、少し気にはなってる。まあ、その時の気分で決めるさ」
「気分かよ。ま、別に悪いことじゃ……うえ!?」
「ははは。ジョーカーおめでとう。じゃ、カードを引かせてもらおうか」
「ま、待て待て待て!!ちょ〜っと待てよ!よーく切ってから引かせてやる!」
まだまだ、彼等が眠るのは先の話になりそうだった。
一方、ドワーフとクラッズも同じ部屋におり、こちらは既に二人ともパジャマに着替えている。
「パニーニ学院かあ。行くの、今から楽しみじゃねー」
「うん。どんな所なんだろうねー」
ドワーフはお下げを解き、それを手櫛で整える。クラッズは、ドワーフのもう片方のお下げを解いて、丁寧にブラシで梳いている。
「確か、ここの姉妹校で、肉体派の学校じゃったと思うよ。ドワちゃんなら、狂戦士学科とかあるけど、どう?」
「やだよ、それ。私、ほんとは戦うのって、あんまり好きじゃないの。みんなのお手伝いとかする方が、好きなの」
「あら、そうなの?じゃ、もしかして前衛とか、やってて辛い?」
「ん〜、それはいいんだ。なりたいのがあるから、それになるために頑張るのはいいの」
「お、転科前提で普通科なんじゃね。でも、そんなに入るの難しい学科ってあったっけ?」
クラッズの言葉に、ドワーフの手が止まった。そして、少し悲しそうな目でクラッズを見つめる。
「私……成績、よくなくって…」
「あ、ごめんごめん。ドワちゃん見てると、とてもそうは思えなくってさ」
明るく言うクラッズに、ドワーフの顔も少し明るくなった。
「でも、クラッズちゃん、ごめんね…」
「え、何が?」
「私のせいで、クラッズちゃん、色んなパーティに誘われてたのに、入れなくって…」
「あー、その話はいいのいいの。ドワちゃんと一緒じゃお断り、なんて言う意地の悪いパーティ、こっちから願い下げじゃよ!」
「……ありがとね、クラッズちゃん」
そう言う彼女に、クラッズは優しく笑いかけた。その笑顔を見ると、ドワーフも心なしか気持ちが軽くなる。
「あ、そじゃ。ドワちゃんって、何学科に入りたいの?」
「……あの、あのね、笑わないって、約束してくれる…?」
怯えたように尋ねるドワーフに、クラッズは明るく笑った。
「あたしが、友達を笑うような奴に見える?」
その言葉に、ドワーフはホッとした笑顔を見せた。そして、他に誰にもいないにも関わらず、そっとクラッズの耳に唇を寄せる。
ぼそぼそと何事かを囁くと、クラッズはなるほどと言うように頷いた。
「そっかそっかー、なるほどねー。でも、今まで頑張ってきたし、そろそろ転科できるんじゃない?」
「うん、そうだといいなぁ」
「だいじょぶじゃって!ほらほら、うしくんも応援してるよ〜」
いつの間にか、クラッズは右手に牛の人形をはめていた。彼女の手に操られ、牛はぺこりと頭を下げる。
「あはは、可愛いね」
「そう言ってもらえると嬉しいな!じゃ、うしくんからも一言」
『褒めてくれてありがとな』
凄まじく野太い声が響き、ドワーフはぶわっと全身の毛を膨らませた。
「な、な、何、今の声…!?」
「何って、うしくんの声じゃけど?ほら、牛って鳴き声低いし…」
「なんでそんなとこだけリアルに…」
『おう、脅かしちまってごめんよ』
やはり野太い声で、牛がぺこりと頭を下げる。
「ま、人形遣いじゃからね〜。こういう声も芸のうちってね!」
「……すごいね…。他に、どんな声出せるの?」
「お、聞いてくれる?ギャラリーいるのは幸せじゃのぅ〜!じゃ、次はこっちのかえる君に登場してもらおー!」
嬉々として人形劇の準備を始めるクラッズ。それを楽しげに見守るドワーフ。仲良し二人組の部屋からは、深夜までずっと、
楽しげな声が聞こえていた。
フェルパーの部屋は無人で、近くにあるディアボロスの部屋。そこから、二つの寝息が聞こえている。
「くー……くー……ゴロゴロ……ゴロ……くー…」
「すぅ……すぅ……んん、ん……暑……すぅ…」
布団をしっかりと掛け、その上でフェルパーは、ディアボロスにぴったりと寄り添っている。おかげで、ディアボロスは暑そうだが、
起きる気配はない。
「くー……あったか……くー…」
「すぅ……あっつ……すぅ…」
微妙なすれ違いを起こしつつも、二人は幸せそうに寝息を立て続けていた。
その翌日、一行はパニーニ学院へと向かった。既に全員、力をつけすぎており、剣士の山道を何の問題もなく攻略していく。滝を潜るのを
フェルパーが嫌がった以外は、特に問題もなく学院にたどり着き、そして学食で夕飯を食べ始めたとき、ヒューマンが口を開いた。
「あのさ、俺ここで転科したいんだけど、いいかな?」
「転科?レンジャーに戻るの?」
クラッズが、きのこサラダのきのこを、隣のドワーフの皿に移しながら尋ねる。
「いや、ガンナー学科。俺、元々はそれに興味があってさ。でも、クロスティーニじゃ習えねえだろ?だから、しょうがねえから、
似た感じのレンジャーやってたんだけどさ」
「ガンナーかぁ。なんか、かっこよさそうだよね」
ドワーフが言うと、ヒューマンは嬉しそうに笑った。
「だよな?わかってくれて嬉しいぜ」
彼に笑いかけられると、ドワーフは少し恥ずかしげに視線を逸らした。それを、クラッズは無言で見つめる。
「だから、あとで職員室行ってこようと思うんだけど、構わないか?」
「転科するのは、お前の自由だろう。私は別に構わん。……あ、これおいしいな」
ディアボロスはどちらかというと食事に夢中らしく、どうでもいいといった雰囲気を醸している。
「なりたかったものなら、僕が止める理由もない。頑張ってくるといいさ」
「ガンナーって、どんな学科なの?」
少し興味を惹かれたらしく、フェルパーが尋ねる。
「ん、そうだなー。俺みたいなヒューマンしかなれねえ学科で、銃を使うんだよ」
「君の種族しかダメなんだ、そっかぁ。あ、じゃあ僕は何になれるのかな?」
「お前は、確かビーストだったはずだ」
「ふーん……僕も、一緒に行ってみようかなぁ」
フェルパーの意外な言葉に、全員が思わず彼を見つめた。
「え?何?ビースト学科行きたいの?」
「うん、行ってみたいなぁ」
「いや、無理だろお前じゃ……どう考えても向いてない…」
「いや……むしろ、私は向いてると思うが」
「僕も、向いてると思うよ。あの学食での騒ぎを思い出すと、あながち悪い選択とも思えない」
言われてみると、あの時の彼は、理性のたがが外れたような動きをしていた。それに、普段はボーっとしているが、やたら猫のような
動作をすることも多い。それを考えると、確かに向いているとも思えてくる。
「……まあ、あれだ。いずれにしろ、転科が認められるかどうかは別問題だからさ。せっかくだし、一緒に行くか」
「うん、そうしよ」
「二人とも、頑張ってくれよ」
それから二人は、食事が終わるとすぐに職員室へ行き、転科の手続きを始めた。幸い、二人ともそれは認められ、明日からそれぞれの
科へと移ることとなった。
「んじゃ、少し転科でゴタゴタあるからさ。落ち着くまで、みんな適当にやっててくれな」
「みんな、またねぇ」
「ああ。わかった」
「フェルパー……無理、するなよ」
「いってらっしゃーい」
「また、しばらく暇になるってことじゃね。ま、のんびりしよっかー」
しばらく勉強漬けになる二人と別れ、一行はそれぞれにあてがわれた部屋へと向かう。そして、二人の転科が無事終了するまで、またも
のんびりした日が続くこととなった。
それから一週間ほどが経った。部屋は一人一人に割り振られていたものの、ドワーフとクラッズはよく一緒の部屋で過ごしていた。
「いよいよ今日じゃねえ。二人が戻ってくるの」
「ふんふふ〜ん……そうだねー。二人とも、どうなったかなあ?」
ドワーフは鼻歌を歌いつつ、丁寧にお下げを編みこんでおり、クラッズは荷物からリボンを取り出し、それをどこにつけるか悩んでいる。
「ヒューマン君、かっこよくなってたりするのかな?うふふ」
そう言って笑うドワーフを、クラッズは少し冷めた目で見ている。
「ドワちゃん、もしかしてヒュマ君のこと、好きとか?」
「えっ!?」
唐突にそう聞かれ、ドワーフは驚いたようだった。しかし、すぐにその顔は笑顔に戻る。
「ん〜、そう、かな?少なくとも、嫌いじゃないよー。ヒール覚えたときも、最初にやらせてくれたし、すっごく頑張ってるし」
「それは単に、みんなで電撃の踏んで、ヒュマ君が被害ひどかっただけじゃと思うけど…」
「でもさ、その前から使っていいよって言ってくれてたし、いい人……あっ、やん!」
ドワーフはビクリと体を震わせ、慌てて尻尾をずらした。そこにリボンを付けようとしていたクラッズは、少し驚いたようにドワーフを
見ている。
「あ、尻尾はまずかった?」
「う、うん。いきなり触られちゃうと、びっくりするな…」
「ごめんごめん。そこに付けたら、かわいいかなって思ってさ。それじゃ、これはやめにして、そっちのお下げやってあげる」
「うん、ありがとうー」
手先が器用な分、髪を結うのは非常に早い。二人はほぼ同時にお下げを編み終えると、揃って部屋を出た。
寮の入り口には、既にノームとディアボロスがいた。二人とも椅子に座り、のんびりと寛いでいる。
「やあ、おはよう。相変わらず可愛らしいね、二人とも」
「ノーム君は相変わらずじゃのぅ。そういうとこ、嫌いじゃないけどさ」
「お前は誰彼構わず、そう言うんだな」
そうディアボロスが笑うと、ノームはいつものように、口元だけの笑みを浮かべた。
「正直なだけさ。それに、君にはきれいだ、って言っただろう」
「あんまり変わんないよー。でも、ノーム君って面白いよね」
「その『面白い』が、ストレンジじゃなくてファニーであることを祈るよ」
その時、後ろから足音が聞こえ、四人は同時に振り返った。
「よう、久しぶり」
そこには、一週間ぶりとなるヒューマンが立っていた。ハンドガンを携え、マントと帽子を身に付けた姿は、今までとは
だいぶ変わって見える。
「お、ヒューマン。ずいぶんイメージ変わったじゃないか」
「だろ?どうだ?」
「ほんとだー。かっこいいね」
「へへっ、ありがとな」
得意そうに言うと、ヒューマンはドワーフに笑顔を向けた。
「あれ、まだフェルパーは来てないのか?」
「ああ、まだだよ。ディアボロスがお待ちかねなんだから、早く来ればいいのにね」
「い、いや、私はそんな…」
頬を赤く染め、ディアボロスは思わずうつむいた。と、そこにもう一つの足音が近づく。
「みんな、久しぶりぃ」
「おう、やっと来たかフェル…」
その瞬間、五人はその場に凍りついた。
燃えるような真っ赤な髪に、二股に分かれた尻尾がゆらゆらと揺れている。腕にも赤い毛が生え、指先には長く伸びた鋭い爪がある。
元々の面影など、きれいさっぱり消えているほどの変貌ぶりであった。
誰も口を開けない中、フェルパーは不意に、以前とまったく同じ笑顔を見せた。
「見て見て、これ。尻尾、二股になったよ」
そう言い、彼は二股になった先を交互に動かしてみせる。その姿は、心なしか得意げだった。
「か、変わったな、お前…」
「うん、変わったよねぇ。爪もすごく伸ばせるようになっちゃった」
「……でも、元の部分は、まったく変わってないんだな。安心したぞ」
ディアボロスがホッとした笑顔を見せると、フェルパーも眠そうな笑顔を見せた。
「よし、せっかく転科してきたんだ。外でその実力、見せてもらわないかい」
「お、いいねー。じゃ、行ってみようか」
「フェルパー。これ、お前の装備だ」
ディアボロスがヌンチャクを差し出すと、フェルパーはそれを受け取らず、じっと見ていた。
「……ん?どうしたんだ?」
「んー、ごめんね。僕、今は武器使うより、素手の方がいいんだぁ」
「そうなのか?前はあんなにうまく使ってたのに…」
「今は、獲物を爪で裂く感触が、直接手に伝わるのが好きだから〜」
その言葉に、五人は再び凍りついた。フェルパーはそんな仲間を見回し、困ったような笑顔を見せた。
「あ、やだなぁ。冗談だよぉ」
「……その姿で言われると、冗談に聞こえねえんだよ…」
「あたしなんか、最初モンスターと間違えたわ…」
「私も…」
「とにかく、今は素手の方が好きだからさ。それ、君にあげるね」
「そうか。少し寂しいが、そういうことならもらっておこう。さて、ほどほどに頑張るか」
「いや、しっかり頑張ろうぜ……新しい学科の修行も兼ねてんだし…」
そうして、一行は一週間ぶりに学院の外へと向かった。転科した二人でなくとも、久しぶりに動くため、体は多少鈍っている。
そんな一行の最初の相手は、二匹のささくれシャークだった。かなりの強敵ではあるが、一行の士気は高い。
「おっと、早速お出ましか。俺の腕、見せてやるぜー!」
軽い調子で言うと、ヒューマンは銃を持った右腕を直角に上げ、左腕はその隣で胸をかばうように添える。
「戦うのって、久しぶりだねぇ。それじゃ、僕も…」
フェルパーはそう言うと、大きく息を吸い込んだ。
「ウナアアァァオ!!!」
興奮した猫の鳴き声と共に、フェルパーの雰囲気が豹変する。目は獲物を狙う猛獣の目と化し、まさにビーストの名に違わぬ姿である。
そんな二人の様子を見て、他の仲間は軽く顔を見合わせた。
「……フェル君には天職じゃのう、これ」
「うん、すっごく似合ってると思う」
「ヒューマンも、なかなか悪くなさそうだな」
「二人がどこまで強くなるか、楽しみだね。さ、僕等も負けないよう、頑張るか」
直後、フェルパーが地を蹴り、ヒューマンの銃が火を噴いた。それを合図に、一行は戦いの中へと身を投じていった。
その日一日をモンスターとの戦闘に費やし、ヒューマンとフェルパーは見る間に力をつけていた。もちろん、他の仲間も相応に
力をつけている。特に、クラッズが魔法壁を張れるようになったため、戦いの安定性は一気に上がった。
そんな中で、ドワーフの様子が少し妙だった。戦闘などは至って普通にこなすのだが、時々何か考え事をしている。どうやら、何かに
悩んでいるようで、しばらくしてから、ドワーフは不意にヒューマンへ尋ねた。
「ねえ、ヒューマン君」
「ん?なんだドワーフ?」
「あのさ、転科って、どうだった?テストとかあるの?」
「ああ、簡単な審査みたいなもんだな。相応の力があれば、そんなに難しくないよ」
「そうなんだ。あの、転科したあとは、どう?色々、大変?」
「そうだな〜、やっぱり戦い方は全然違ってくるし、場合によっては魔法の基礎とか習わなきゃいけないし、最初は結構きついかな。
見ての通り、慣れてからは実戦だから、ま、最初だけだよ」
そんな会話があって、一行は日が暮れるまで戦ってから、パニーニ学院へと戻った。そして学食で、揃って夕飯を食べていると、
ドワーフが意を決したように口を開いた。
「あの……みんな、ちょっといい?」
「ん〜?どうしたの?」
フェルパーがのんびりした調子で尋ねる。クラッズはドワーフが手元を見ていないのをいいことに、ハンバーグの付け合わせで出てきた
コーンを、全てドワーフの皿に移している。
「あのね……二人とも、戻ってきたばっかりで悪い気がするんだけど……わ、私も、転科したいの」
「お、転科?何に?」
ヒューマンが尋ねると、ドワーフは一瞬たじろいだ。
「あの、えっと、それはまだ言えないんだけど……私、ずっとなりたいのがあって、それで…」
「またしばらく、探索には出られなくなる。カリキュラムも受けられない。そうなるのを、君は心配してるんだろ」
ノームが、気のない感じで言う。だが、その口調は優しい。
「でも、ずっとなりたかったんだろ。なら、気にすることはない。僕等のことは気にせず、行ってくればいいさ」
「さっすが、いい男じゃのぅ〜」
「学園きってのジェントルマンだからね」
「何を言ってるんだお前は。とはいえ、俺も同じ意見だな。頑張ってこいよ」
「そうだな。フェルパーも戻ってきてるし、私は構わない」
「今度は一緒だもんねぇ」
最後の二人は大いに私情を挟んでいる気がするものの、反対する者もなく、ドワーフは嬉しそうに目を輝かせた。
「ほんとに!?みんな、ありがとぉー!」
「ドワちゃん、いよいよじゃね〜。頑張ってきてよ!これ、あたしからの前祝い!」
そう言い、クラッズはドワーフの皿に、ピラフに入っていた小エビを全部移した。
「ありがとー。これ、おいしいんだよね」
「いや、ドワーフ……それ、クラッズが嫌いなもん寄越しただけだと思うぞ」
「えへへ、こんなにもらえて嬉しいな」
「……聞いちゃいねえな…」
仲間の反対もなく、ドワーフは食事を終えると、すぐに職員室へと向かった。他の仲間は、それぞれ自分の部屋へ戻る。
それからしばらくして、人形の手入れをしていたクラッズの耳に、ノックの音が飛び込んできた。
「はいは〜い?誰〜?」
「クラッズちゃん、私。入っても、いい?」
「ああ、ドワちゃん!もちろん、大歓迎じゃよ!」
すぐさま、笑顔で迎えるクラッズ。ドワーフも笑顔ではあったが、その表情は心なしか硬い。
「あのね、転科、できるって」
「おおおお!!よかったじゃない!!おめでとう!!」
「うん、ありがとう。あの……それでね」
不意に、ドワーフは寂しげな笑顔を浮かべた。その表情に、クラッズも表情を改める。
「ん、何かあったの?」
「うん。髪の毛がね、邪魔になるから、切らないといけないんだって。だから、クラッズちゃんに手伝ってもらおうと思って…」
言いながら、ドワーフは大きなお下げを弄っている。腰まで髪を伸ばしていて、また毎日結い続けたお下げである。やはり、それを
切るとなると、何かと寂しいのだろう。
「こ、これはまた、ずいぶんと大仕事が…。ドワちゃんは、ほんとにいいの?」
「うん。これ切るのは寂しいけど、とうとう転科できるんだもん。それに、クラッズちゃん、いっつも一緒に編んでくれて、
嬉しかったから、できれば一緒にやってほしいなって」
寂しそうではあっても、その口調に躊躇いはなかった。その覚悟を知り、クラッズも意志を固める。
「……よし、わかった!せっかくの転科じゃし、そのお祝いも兼ねて手伝うよ!」
「ありがとね、クラッズちゃん」
そう言うと、ドワーフは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。二人は早速洗面所に向かい、鋏ではなくダガーを用意する。
大きなお下げを掴み、ダガーの刃を押し当てる。ドワーフも、もう片方のお下げに刃を当てているが、そのままじっと手元を
見つめている。
「ドワちゃん、やめるなら今じゃけど…」
「……小さい頃から伸ばしてたし、さすがにちょっと寂しいな。この先っちょの方なんか、私がこれっくらいのときから一緒なんだよ」
ドワーフは自分の腰辺りを手で示し、昔を懐かしむような目をした。
「でも……うん、もういいよね。よし、やる!もう伸びないわけじゃないし、私も変わっていかなきゃいけないもんね!」
自分を鼓舞するように言うと、ドワーフは今度こそしっかりと刃を当てた。そして、一度深呼吸し、一気にダガーを引いた。
ザバッと小気味良い音が響き、大きなお下げが床に落ちる。それを見て、クラッズも決心がついた。
「よし、それじゃ、こっちも行くよ!」
「うん、お願い」
再び小気味良い音が鳴り、もう一つのお下げも床に落ちた。ただ、こちらはドワーフが切ったものより、やや短い。
「……どう?気分は」
「う〜ん、そうだなあ……首がすっごく楽!」
思ったより明るい表情で、ドワーフは冗談っぽく答えた。
「そりゃ、このボリュームじゃもんねえ……いや、持ってみたらほんと重いわ」
「わぁ、すごくさっぱりしてる。ん、でもこっち側はちょっと長め?」
「ああ、それはね。せっかくなんじゃから、お洒落の余地は残そうと思ってさ」
クラッズはポケットからリボンを取り出すと、ニッと笑った。
「あ、それ朝の…」
「これからは、全部一人でやっちゃうと思うけどさ。今日ぐらいは、あたしが結ったげる!」
「……うん!」
クラッズはドワーフの髪をまとめ、あっという間にポニーテールに仕立て上げた。編みこむ必要がなくなった分、さすがに早い。
こざっぱりとした髪形になったドワーフは、クラッズににっこりと笑いかけた。
「ほんと、ありがとね〜。私、頑張るから」
「うん、いい笑顔!応援してるよ!」
「うん!それじゃ、行ってくるね!」
笑顔を交わし、ドワーフは部屋へと帰って行った。それを見えなくなるまで見送ると、クラッズは洗面所に戻り、ドワーフが切った
お下げを丁寧にまとめ、袋の中に入れた。その顔には、嬉しさとも寂しさとも取れない、何とも複雑な表情が浮かんでいた。
それからまた一週間。一行はそれぞれ好き勝手に過ごしており、フェルパーとディアボロスに至っては、部屋でのんびりしているのが
一番幸せだとのたまうようになっている。
ドワーフは、あれからまったく音沙汰もなく、現状がどうなっているのか、まったく見当もつかない状態である。とはいえ、
フェルパーもヒューマンも、ちょうど一週間ほどで転科を終えた覚えがあるため、そろそろ戻ってくるだろう程度には考えていた。
その夜、ヒューマンはノームの部屋に遊びに行こうと思い、寮の廊下を歩いていた。既に夕飯は食べ終えており、このまま寝ても
構わなかったのだが、やはり少し退屈なのだ。
のんびりと廊下を歩いていると、ふと前の方に見慣れないドワーフがいるのが見えた。派手な格好をしていて、仲間である普通科の
彼女とは大違いである。
が、そのドワーフはヒューマンの姿を認めると、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ヒューマン君、久しぶりー!」
「え…!?え、何?お前、あのドワーフ!?」
髪もだいぶ短くなり、ずいぶんと垢抜けた姿になった彼女に、ヒューマンは戸惑った。あの、良くも悪くも垢抜けないドワーフと
同一人物だとは、声を聞くまでまったく信じられなかったほどである。
「そうだよ!えへへ、やっと転科のごちゃごちゃしたの終わってさ、クラッズちゃんのところに行くつもりだったんだけど…」
「ずいっぶん変わったもんだ…」
相当、あちこち気を使っているのだろう。全身の体毛もよく手入れがされており、尻尾を振る度に毛がしなやかになびいている。
ただ、獣独特の臭いだけは相変わらずだが、これはフェルパーやドワーフ曰く『匂いも個性のうち』ということらしい。長く一緒にいる
ヒューマンも、もうそれには慣れきっており、別にそれが不快だとは思っていない。
「えへへ〜、アイドル学科になったんだから、気を使わないとさ!でも、クラッズちゃんに最初に会うつもりだったんだけど、
会えて嬉しいな」
そう言うと、ドワーフはにっこりと笑った。以前よりかなり明るく見える彼女の笑顔に、ヒューマンは内心ドキッとした。
そんな彼の胸中など露知らず、ドワーフは少し表情を改め、以前の面影が感じられる顔になった。
「それで、その……どう、かな?似合ってる?」
「………」
その問いに、ヒューマンはすぐに答えられなかった。
答え自体は、既に彼の中にあった。『似合ってる』『かわいい』『転科してよかったな』などと、いくらでも言うべき言葉はあった。
しかし、それを口に出すのは、あまりに恥ずかしかった。彼女に面と向かって、それらの言葉を出すのは、ひどく抵抗があったのだ。
一瞬言葉に詰まり、その言葉を頭の中に浮かべ、ヒューマンは何だか気恥ずかしくなり、顔を逸らした。そしてそれを悟られないよう、
彼は照れ隠しをつい口走った。
「あ、あ〜、そうだな。でも、アイドルならクラッズの方が似合いそうだな、はは…」
その瞬間、ドワーフの表情は凍りついた。パタパタと振られていた尻尾が止まり、力なく垂れ下がる。
「そ……そっか…。あ、あはは、そう、だよね。確かに、クラッズちゃんの方が、似合いそう…」
力なく言うドワーフ。その時、ヒューマンは自分が恐ろしい過ちを犯した事に気付いた。
「あっ……あっ、いやそうじゃねえんだ!!俺は、その…!」
「う、ううん、いいの!だって、ほんとにクラッズちゃんだったら、似合うと……思うし……きっと、可愛いと…」
必死に笑顔を続けようとしていたドワーフの目に、涙が溢れた。それに気付いた瞬間、ドワーフはぐしぐしと目元を擦る。
「ご、ごめんね!変なこと聞いちゃって!ま、またね!!」
「あっ、おい、ドワーフ!!」
止める間もなく、ドワーフはその場から走り去った。後を追おうにも、ヒューマンの足は凍りついたように、言うことを聞かなかった。
彼女が見えなくなり、辺りに静寂が戻ると、ヒューマンは唇を噛んだ。その時、不意に気配を感じ、ヒューマンは振り返った。
「何をしてるんだ、こんなところで」
「ああ……ノームか…。いや……その…」
「その様子じゃ、何か悩み事らしいね。カウンセリングでもしようか」
「……そう、だな……じゃあちっと、聞いてくれ…」
ヒューマンはノームの後ろを、力ない足取りで、ゆっくりと歩き出した。彼の周りに渦巻く後悔の念を、ノームは敏感に感じ取っていた。
しかし、敢えて何も言わず、ノームは無言で、部屋へと向かって歩いていった。
クラッズは部屋で、人形を操る練習をしていた。ただの芸だけではなく、戦闘にも人形を使っているため、うまく操れるかどうかは、
そのまま自分の命にも直結する事柄である。そのため、練習にも真面目に取り組み、いかに効率よく、またうまく動かせるかを
研究するのに余念がない。
そんな彼女の耳に、小さなノックの音が聞こえた。下手すれば聞き間違いかとも思えるような、とても小さな音だったが、クラッズは
すぐにそちらへ顔を向けた。
「は〜い、誰?」
「……私…。入って、いい…?」
「おお、ドワちゃん!ちょっと待ってね!」
すぐさま人形を置き、クラッズは部屋のドアを開けた。が、ドワーフの姿を一目見た瞬間、クラッズの表情が変わった。
「……どうしたの?」
「え…?う、ううん、何でもないの……ぐす…」
「何でもなくないでしょ?目元の毛、黒い跡ついてるしさ。とにかく、中おいでよ」
優しくドワーフの手を取ると、クラッズは彼女を中へ招き入れた。二人で並んでベッドに座り、クラッズはじっと彼女を見つめる。
ドワーフのことは、よくわかっている。気弱に見えても芯は強い彼女が泣くようなことは、普通はありえない。だが、クラッズは
これまでの経緯と、彼女の行動から、既に何があったのかを大体察していた。
「ヒュマ君、じゃね?」
ずばり聞くと、ドワーフはビクリと体を震わせた。
「やっぱり……あいつ…!」
「い、いいのいいの!だって、別にヒューマン君が悪いわけじゃなくって、私が、変なこと……勝手に聞いただけ……だから…」
それでもヒューマンをかばう彼女に、クラッズは少し呆れた。同時に、ヒューマンに対する凄まじい怒りと、それを押し潰すほどの、
ある衝動が生まれる。
これはチャンスだと、クラッズは頭のどこかで冷静に考えていた。恐らく今を逃せば、もうチャンスはない。この、一度きりの
チャンスと、ヒューマンに対する怒り。それが、彼女の行動を決めた。
クラッズはドワーフにそっと近づき、頭を優しく撫でた。
「……ね、ドワちゃん」
「くすん……なぁに…?」
「悲しいのが消えるおまじない、してあげよっか」
「おまじない…?」
きょとんとした顔のドワーフ。そんな彼女を撫でている手が、不意に止まる。そして、静かに動いたかと思うと、彼女の首を掻き抱く。
何をするのかと、ドワーフが不思議に思った瞬間。クラッズはドワーフの唇に、自分の唇を重ねた。
「んむっ…!?」
驚いたドワーフは逃げようとしたが、首に回された手がそれをさせない。その手から何とか逃れようとしていると、クラッズはそっと
唇を離した。
「ぷはっ!ク、クラッズちゃん、何するのぉ…!?」
「ふふ。じゃから、おまじない。気持ちいいでしょ?」
「あ……あの、だ、ダメだよ!わ、私達、女の子同士なのに、こんなの…!」
「おかしいことじゃないよ。あたし、ドワちゃんのことが、好き。ドワちゃんのこと、誰よりも知ってる」
優しく言うと、クラッズはドワーフの頬を撫でる。
「ドワちゃんが、転科するためにすっごく頑張ったことも、転科できるって喜んでたのも、そのために大事なお下げ、切ったことも…」
「クラッズ……ちゃん…」
「ね?じゃから、ドワちゃん……悲しいの、あたしなら消してあげられるから。あたしに、ドワちゃんの悲しいの、消させて」
静かに言うと、クラッズは再び、ドワーフに唇を寄せる。ドワーフは一瞬身じろぎしたが、抵抗はしなかった。
クラッズの小さな唇が、ドワーフの唇に重ねられる。ドワーフは慣れない行為に怯えたように体を強張らせ、僅かに震えている。
そんな彼女を、クラッズは優しく撫でてやる。小さな手が毛皮の上を滑る度、ドワーフの震えも少しずつ消えていく。
震えがある程度おさまってくると、クラッズは慎重に舌を入れた。さすがにドワーフは驚いたようだったが、クラッズは優しく、
かつ強く彼女を抱き、まるで舌で撫でるように、彼女の舌に触れる。
最初は戸惑うばかりのドワーフだったが、やがて怖々と、クラッズの舌に自分から舌を触れさせる。
その瞬間、不意にクラッズがドワーフの体に体重を預けた。
「んう…!?」
しっかりと唇を重ねたまま、クラッズはドワーフを押し倒した。そこで一度唇を離し、組み敷いた彼女を優しく見下ろす。
「ね、ドワちゃん。女の子同士じゃから、おかしいって思うかもしれないけど、こうも考えられるよ。女の子同士じゃから、
男なんかより、よっぽど相手のことが、よくわかるって」
「で……でもぉ…」
「それにドワちゃん、ちょっとだけじゃけど、応えてくれたよね?」
「あ、あの、それは、だって…」
「いいのいいの。そう怖がらないで、ね?」
ふさふさした頬を撫で、クラッズは優しく笑った。そうしつつ、頬を撫でる手が少しずつ下がっていき、ドワーフの服に手をかける。
「あっ、や……クラッズちゃん…!」
「いいからいいから。あたしに任せて」
小さな手が、服のボタンを外していく。それを全て外し、前をはだけさせると、クラッズは胸から腹へと手を滑らせる。
「うあ……クラッズちゃん…」
「あは、ふかふかじゃのぅ〜。いい手触り」
しばらく楽しむように腹を撫で、少しドワーフの緊張が解れてくると、その手を胸へと這わせる。
「んんっ…!」
驚きと恥ずかしさから、ドワーフはついその手を掴んでしまう。クラッズは無理に振り払ったりせず、彼女に優しく微笑みかけた。
「あっと、びっくりしちゃった?」
「だ……だって、だって……そんなとこ、触られたことなんか…」
「そうじゃよね、恥ずかしいよね。気持ちは、あたしもわかるよ。でも、今はあたしに任せて」
「で、でも、やっぱりダメだよぉ……ね?クラッズちゃん、もうやめよ?もう、私、十分だから…」
「ん〜、つれないなあ。さっきみたいに、応えてくれないの?」
「あ、あれはっ…!」
ドワーフは毛を膨らませつつ、恥ずかしげに顔を逸らした。
「ね?悲しいのも、寂しいのも、全部あたしがなくしてあげる」
自分の手を押さえる腕の力が弱まったのを見計らい、クラッズは再びドワーフの胸に手を這わせた。
「ん……あ、あ…」
「ドワちゃん……あたしは、ドワちゃんのこと、好き」
胸を優しく愛撫し、クラッズは彼女の耳元で囁く。
「あたしは絶対、ドワちゃんのこと笑ったりしない。無神経な言葉を吐いて、ドワちゃんを傷つけたりしない」
クラッズの言葉に、ドワーフはピクリと身を震わせた。
「そ……んな、こと…」
「ドワちゃんのこと、あたしは誰よりも知ってる。すごく頑張り屋さんで、芯が強くって、こんなに一途な子じゃっていうの、
全部知ってるよ。じゃから、ドワちゃん……ドワちゃんには、あたしがついてる」
クラッズの言葉の一つ一つが、ドワーフの胸に響いた。彼女の言葉は、傷ついた心に優しく響き、それが心の中にいたはずの人物を
覆っていく。
「クラッズ……ちゃん…」
小さな手が、優しくドワーフの胸を優しく愛撫する。だが、もうドワーフはその手を押さえようとはしなかった。慣れない刺激に、
どうしても手を上げて押さえかけはするが、その手がそれ以上動くことはなく、ただぎゅっと目を瞑っている。
クラッズの手の動きが、ただ撫でるだけのものから、少しずつ、捏ねるような、揉みしだく動きへと変わる。
「んっ……あ、うっ…!」
「ふふ。ドワちゃん、かわいいよ」
耳元で甘く囁き、クラッズはその耳を甘噛みする。背筋にピリッとした感覚が走り、ドワーフは身を震わせた。
「やんっ!な、なんか……変な…!」
「耳も、気持ちいいでしょ?もっと、気持ちよくしてあげる」
楽しげに言い、クラッズは左手でドワーフの乳首を摘んだ。
「んあっ!?や、あ…!」
そこをクリクリと指先で弄りつつ、右手を撫でるように滑らせる。胸から腹、下腹部と通り、ショートパンツのベルトを素早く外すと、
いきなり下着の中へと突っ込んだ。
「きゃあ!?ク、クラッズちゃん、そんなところ……やぁん!」
慌ててその手を押さえようとするも、クラッズは素早くドワーフに覆い被さり、その動きを封じてしまう。
「ダメダメダメぇ!そんなとこ、触っちゃやだぁ!」
「でも、ドワちゃんも、一人ですることくらいあるでしょ?」
「ない!ないよぉ!そんな恥ずかしいこと、しないよぉ!」
ドワーフの言葉通り、そこはぴっちりと閉じられており、クラッズの指すらも侵入を拒まれるほどだった。
「あらら、ほんとに純情なんじゃのぅ〜。さすがアイドル学科行くだけあるなあ。じゃ、ここの気持ちよさ、じっくり教えてあげる」
どこか楽しげに言うと、クラッズは割れ目に指を挟みこみ、ゆっくりと前後に擦った。
「はうぅ…!や、やめ…!」
「まだまだ、こんなの序の口じゃよ。もっといっぱい、気持ちよくしてあげる」
クラッズは内側から、器用にショートパンツと下着を脱がせる。尻尾は少し厄介であったが、思ったよりはすんなりと脱がせられた。
恥ずかしげに足を閉じるドワーフ。クラッズは再び秘裂に指を沈み込ませ、左手では胸をじっくりと揉みしだく。
「あっ、んっ……クラッズ……ちゃん…!」
「ドワちゃん、何も考えないで、感覚にだけ集中してて」
耳元で囁くと、クラッズはドワーフの胸に吸い付いた。
「うあっ!!クラッズちゃん…!す、吸っちゃダメぇ…!」
ドワーフが言うと、クラッズはちゅうちゅうと、わざと大きな音を立てて乳首を吸う。その音が、今クラッズにされていることを、
より強くドワーフに意識させることとなり、それが彼女の中の快感をさらに高める。
胸を優しく揉まれ、口で愛撫され、秘裂を擦られるという、今まで感じたこともない刺激。それを受けて、まったく知らない感覚が
自分の中でどんどん大きくなり、ドワーフは怯えた。
「や……ぁ…!クラッズちゃん……や、やだ…!なんか、変なっ……やだ、怖いぃ…!」
「んっ……ぷは、ドワちゃん、大丈夫。あたしがついてるから」
「やだ、やだぁ……変なのが……んんっ…!もう……んぅ…!やめてぇ……怖いよぉ…!」
「じゃ、怖くないようにしてあげる。ちょっと待ってね」
そう言うと、クラッズは一度ドワーフから離れ、着ていた服を脱ぎ捨てた。完全に裸になると、クラッズは再びドワーフと体を重ねる。
「こうすると、温かいでしょ?一緒にいてあげるから、怖がらないで」
笑顔で囁くと、クラッズは再びドワーフの秘部に手を伸ばす。
「だ、ダメぇ…」
「気持ちよくしてあげるから、怖がらないで、素直に感じて。大丈夫、あたしはドワちゃんに、ひどいことなんてしないから」
再び触れると、クチュッと湿った音がする。既にドワーフのそこは、愛液でじっとりと濡れていた。
「ほら、ドワちゃんのここ、こんなになってるんじゃよ」
「う、うそぉ……わ、私……私…!」
「お漏らしじゃないから安心して。女の子は気持ちよくなると、こうなるの」
指についた粘液を見て、クラッズは満足げに笑った。
「それじゃ、もっともっと気持ちよくしてあげる。ドワちゃん、楽にしてて」
秘裂を擦り、胸に手を這わせる。責め方に変化はないのだが、まったく経験のないドワーフには、それでも十分な刺激である。
「んっ、あっ!ひゃう!あ、あ、あ……ま、また、何かぁ…!」
「大丈夫じゃよ。怖くない。一緒に、いてあげるから」
言いながら、クラッズはドワーフの秘裂を擦りつつ、親指で最も敏感な突起に触れた。途端に、ドワーフの体がビクンと跳ねる。
「きゃあぁ!?や、やだ!それダメぇ!!か、体がビリってぇ!!や、やだ、やだ、怖いよおぉ!!!」
すっかり怯えきって叫ぶドワーフに、クラッズはそっと唇を寄せた。
「大丈夫。あたしに、任せて」
静かに言うと、クラッズはドワーフの唇に優しく唇を重ねた。
「んぅ…!ううぅ〜!!んん〜!!」
それでも、ドワーフはしばらく何か叫ぼうとしていたが、やがて体が弓なりに反り返り、ブルブルと震え始める。
「ふ……んっ…!んぅー!!」
縋りつくように、ドワーフはクラッズの体を抱き締める。あまりに強い力に、クラッズはかなりの痛みを感じていたが、それでも
行為をやめようとはしない。それどころか、止めとばかりに指を彼女の中に入れ、すっかり尖った突起を、親指でグリグリと弄った。
「んむぅ!!ん……んうううぅぅぅ!!!」
一際大きな声と共に、ドワーフの体がガクガクと痙攣した。それを全身で感じながら、クラッズは言葉に出来ないほどの喜びを覚える。
痙攣が徐々に治まり、弓なりに反った体が落ちると、クラッズは指を引き抜き、そっと唇を離した。
「ドワちゃん、イッちゃったね」
「はぁ……はぁ……はぁ……い…………いまの……なにぃ…?」
頭がボーっとするらしく、ドワーフは間延びした声で尋ねる。
「うふふ、気持ちよかったでしょ。男相手じゃ、こんな風にはいかないんじゃよ?」
荒い息をつくドワーフを抱き締め、クラッズは静かに囁く。
「ドワちゃん、大好き。あたしは、ドワちゃんが好き。あたしは絶対、ドワちゃんを悲しませないよ」
「………」
「順番が滅茶苦茶になっちゃったけど……ドワちゃん……あたしと、付き合ってくれる?」
心の中にいたはずの男。それはいつしか、クラッズに覆い隠されていた。
消えてはいない。しかし、その影を見るのは、今の彼女にとって、あまりに辛かった。
既に、彼女の求めに応じ、愛撫に応え、とうとう体まで許したという事実。その上で、彼の影を見ることなど、彼女には出来なかった。
「……うん…」
小さな小さな声で、ドワーフは答えた。そして、ぎゅっとクラッズにしがみつく。
「よかった、嬉しいな!ふふっ、ドワちゃん、大好き!」
ドワーフは静かに目を瞑った。今日は、あまりに色々なことがありすぎた。
目を閉じると、様々な感情が襲ってくる。何かを失ってしまったような喪失感と、その代わりに得た充足感。そして、クラッズの
温もり。それらを感じながら、ドワーフは一粒、涙を零した。
その頃、ヒューマンはノームの部屋で、それまでのいきさつを話していた。
「それで……あいつ、走って行っちまって……俺、追いかけられもしなかった…」
「……ふーん、なるほど。話はよくわかった」
無表情に答えると、ノームは席を立った。
直後、ノームはヒューマンの顔を思い切り蹴り飛ばした。あまりの衝撃に、ヒューマンは椅子ごと引っくり返る。
「ぐあっ…!て、てめえ、何しやがる…!?くそ、歯が折れたぞ…!」
「ああ、ごめんごめん。間違えた」
「何をだ!?」
ノームは屈みこむと、ヒューマンにヒールを唱える。歯も無事治り、ヒューマンが立ち上がろうとした瞬間。
再び、ノームの蹴りが顔面を襲った。
「あがぁっ!!は……鼻が…!」
「よし、今度はちゃんと入ったか。さ、治してやるよ。で、次はどこがいい」
「ふざけるな…!くそ、何の恨みがあるんだよ…!?」
「何の、だと」
言うなり、ノームはヒューマンの胸倉を掴みあげた。流れ出る鼻血が袖を汚しても、ノームは一向に気にしない。
「それをてめえが聞くか、馬鹿野郎が。てめえが何したか、胸に手ぇ当ててよく考えてみろよ」
「ノ、ノーム…!?」
「誰が、忌憚なきご意見を聞かせてくれって言った。てめえが転科して、同じ事を聞いたとき、ドワーフはなんて答えたよ。あのな、
そういう時は嘘でも、似合ってるって答えてやるのが筋だろう。それとも何かい、てめえはそんなにドワーフが嫌いか」
「ち、違うっ!」
ノームの腕を振り払い、ヒューマンは叫んだ。
「俺は……俺は、そう言ってやるつもりだったんだよ!でも、あいつの前で……言葉が、出なくなって…!」
「それを差っ引いても、君の行動は最低だな。彼女の心より、自分のプライドの方が大切だってかい、笑わせる。大体、そんな大事を
引き起こしたんなら、僕に相談なんかする前に、すぐ追いかけろ」
「……今からでも、間に合うか…?」
「行動しないより、した方がマシさ」
「そうだよな……そうだな、俺、謝ってくる。ノーム、痛かったけど、ありがとな!」
自分にヒールを唱えつつ、ヒューマンは部屋を飛び出して行った。その後ろ姿を見ながら、ノームは口元だけで笑った。
「……まあ、十中八九、手遅れだろうけどね」
ヒューマンはまっすぐにドワーフの部屋を訪ねたが、そこにはいないようだった。しばらく悩み、そこで彼女がクラッズの部屋に行こうと
していたことを思い出し、今度はそちらへ向かう。
部屋の近くまで来たとき、不意にクラッズが部屋から出てきた。だが、彼女はヒューマンを見ると、明らかに不機嫌そうな顔になった。
「お、クラッズ。ちょうどいいや。あのさ、ドワーフ見なかったか?」
「………」
「おい、クラッズ?」
だが、クラッズは何も答えず、ただじっとヒューマンを睨みつけている。
「クラッズ、何か答えて…!」
そう言いかけたところで、クラッズは無視するように視線を逸らし、代わりに牛の人形を突き出した。
『こいつは、てめえと喋る舌はねえってよ』
突然響いてきた野太い声に、ヒューマンはビクリと身を震わせた。
「な、何だよ?どういうこと…!?」
『どういうこと、か。はっ、それだからてめえとは話したくねえってんじゃろ』
声が変わってはいても、訛りが出てしまう辺り、やはり彼女が喋っているのだと認識できる。
『てめえは、ドワーフに何をした?』
「う…!」
『あの子に、何を言った?どうしてそんなことを言った?恥ずかしかったか?くだらねえプライドか?はんっ、いずれにしろ、
てめえがしたことは最低じゃ』
何一つ言い返すことが出来ず、ヒューマンは唇を噛んだ。そんな彼を、クラッズはギロリと睨みつける。
『あんたは、あの子が好きなんじゃと思ってたけどな。見当違いか』
「ち、違う…!そんな…!」
「じゃあどうして、ドワちゃんをあそこまで傷つけた…!?」
牛人形を介さず、クラッズは直接、怒りに満ちた声で言った。
「自分のくだらないプライドを優先するあんたに、あの子を好きになる資格はない。でも、あんたには感謝しなきゃね。傷ついた
女の子ほど、落としやすい状況なんてない」
「え…?お前……何を…?」
その時、クラッズの部屋のドアが、ゆっくりと開いた。
「クラッズちゃん…?誰かと話して……あ…」
姿を見せたのは、紛れもなくあのドワーフであった。だが、ドワーフはヒューマンに気付くと、一瞬嬉しそうな顔をしたものの、すぐに
視線を落とした。
「ドワーフ…!」
声をかけようとしたが、ドワーフの表情が苦しげに変わる。そして、何か取り返しのつかないことをしたという後悔の表情を見せると、
部屋の中に駆け戻ってしまった。
「わかったでしょ?もう、あんたの出る幕はない。あんたに……ドワちゃんは、渡さない…!」
怒りの篭った声で言うと、クラッズは踵を返し、部屋のドアを開けた。
「クラッズ、待ってくれ!」
後を追おうとした瞬間、クラッズはスッと手を突き出し、何かに触れるような動作を見せ、空中をトンと突いた。直後、ヒューマンは
見えない何かに思い切りぶつかった。
「痛ってぇ…!」
そんな彼を見ながら、クラッズはゆっくりとドアを閉めた。その姿がドアの影に隠れる直前、クラッズは勝ち誇った笑みを浮かべた。
ドアが閉まり、がちゃりと鍵のかかる音が虚しく響く。
魔法壁に頭と拳を押し付け、ヒューマンは血が出るほどに唇を噛み締めた。そこに、パチ、パチ、とゆっくりした拍手の音が響く。
振り向いてみると、そこにはいつのまに来ていたのか、ノームが立っていた。
「……いつから、いたんだ…」
「最初から」
「……わかってたのか、こうなること…」
「当たり前だろ。クラッズのドワーフを見る目は、ただの友達っていうものじゃなかった。それに加えて、男の照れ隠しに女の強がり。
喜劇の材料にはもってこいじゃないか」
口元だけの笑みを浮かべ、ノームは続ける。
「ふふふ。実にいい筋書きじゃないか。愛しのインナモラータは、気付けばなんと、コロンビーナになっていたのです。
ああ、なんと哀れなインナモラート。彼女に手を出そうとした彼は、アルレッキーナに打ち据えられました、とさ。君はやっぱり、
この学園にスラップスティックをやりにきたのかい」
「俺は……どうすればいいんだ」
「君はどうしたいんだ。これを悲劇にするか、喜劇にするか。それは君次第だ。少なくとも、僕はデウス・エクス・マキーナには
ならないよ。もっとも……君がその降臨を待つというなら、それこそ、とんだ喜劇だけどね」
「……何が言いたいのかわかんねえ。俺にもわかるように、言ってくれないか」
「簡単に言えば、人を頼るなってことさ。役者は君だ。僕は神でも何でもなく、一人の観客。せいぜい、面白い筋書きに期待してるよ」
どことなく人を小馬鹿にしたような口調で言うと、ノームは部屋へと戻って行った。
「くそっ……失敗を取り返すこともできねえで、俺はどうすりゃ…!!」
悔しそうに呟くと、ヒューマンは魔法壁を思い切り叩き壊した。一人残されたヒューマンは、まるで舞台に取り残された役者のように、
寂しげだった。
クラッズは自分の部屋で、静かに寄り添うドワーフを、優しく撫でていた。
―――ドワちゃんは、渡さない。あんな男より、あたしの方が、幸せにしてあげられる。
頭の中でそう思い、しかし寄り添うドワーフを見ていると、少しだけ心が痛んだ。
―――でも、状況を利用したあたしも……天下御免の、卑怯者かもしれないけど、ね。
それでも、クラッズはこの幸せを手放したくなかった。それに、ドワーフは自分の方が幸せにできると、信じていた。
「……ねえ、クラッズちゃん…」
「ん?どしたの?」
「私の、切ったお下げ……とってあるんだね」
ドワーフが言うと、クラッズは一瞬ビクリと体を震わせた。
「あ、あ〜、そうじゃね。せっかくじゃし、その、ほら、記念と言うか何と言うか」
「うふふ、嬉しいな……そういうところ、好き……だよ」
彼女の無邪気な言葉に、クラッズの胸がさらにズキズキと痛む。
―――言えない……あれ使って一人でするためにとっておいたなんて……絶対言えない…。
とても本人には言えない秘密を抱えつつ、クラッズはいつまでも、ドワーフを優しく撫で続けていた。
部屋への道すがら、ノームはどうしても、こみ上げてくる笑いを抑えることが出来なかった。
「ふふ。本当に、しばらくは退屈しないで済みそうだよ」
口元に笑みを浮かべ、誰にともなく呟く。
「気付くかな、あれに。気付けば喜劇、気付かなければ、彼には悲劇。僕にはどっちに転んでも、喜劇」
彼は実に楽しそうに笑い、天井を見上げた。
「くく……喜劇か、悲劇か、いずれにしても、僕等観客は楽しめる。でも、気付けよヒューマン。まだ、希望は消えてはいない」
悪人とも善人とも取れる呟きを残し、ノームは部屋へと戻った。あとにはただ、静寂が広がっていた。
些細なほつれから、予想以上の大事に発展してしまった彼等。その日、彼等の間には深い亀裂が入った。
その亀裂が埋まるのか、それともそこから裂けてしまうのか、それは誰にもわからない。
ようやく、駆け出しから進んだ一行にとって、大きな試練が始まろうとしていた。
以上、投下終了。
ジョルジオ先生は言葉の端々に☆とか入るけど、そこは割愛しました。
それにしても、スレが活気付いてていい事です。
それではこの辺で。
乙です
ヒューマンカワイソス(´・ω・`)
ドワ子も可哀相だがヒューマン可哀相すぎるぜ・・・そしてクラッズが微妙にあくどいww
仲直り出来るようヒューマンの健闘を祈る
人間模様が複雑な事になっとるのぅ。
ていうかこの状態でパーティ組めるのか?
マスク相性補正が恐ろしくマイナスってそうで怖ぇ!w
百合厨としてはクラッズを応援したい気もするが、可哀想だからヒューマンを応援したい気もする。
とにかくGJ、ああ先が気になる!
それにしても、ゲーム中だと相性補正は上がるばかりで下がることはないけど、
普通に考えれば喧嘩とか三角関係とか人間関係のいざこざで急に相性下がることもありそうだよな
267 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 02:25:52 ID:ioFm+BYX
GJ、序盤からすごいことになってますね。
さてはて、雨降って地固まるか、それともそのまま地滑りを起こすか。
今回のノームは感情豊かだな。ロストフェルパーのノームは平和主義、無感情だったのに。
後書きのジョルジオ先生をジョルー先生と勘違いした大馬鹿者は俺だけか。
さてはてとか言わんでくれるか
キモくて鳥肌が立つんだ
ヒューマンはもっとブチ殴られていい
亀裂が修復不可になったとしてもそれはそれで。
まぁ、さもなくば一時離れて成長してから…という道もあるか。
間違うのは人間のサガ。しかも思春期だしな…ヒューマンは叩かれた後改めればよろしい
むしろ暫くすれば醒めそうな幻想に走ったクラッズが哀れであり腹立たしくもあり
ちょっと早漏すぎる妄想だが
ととモノ3はストレガ出てくるんだろうかねえ
別世界のお話にしても出て来れそうな去り方したし
今回のエキストラダンジョンのボスみたいなポジションで再登場希望。
実はフラン⇔リモン←ノヴァって関係で
禁呪に手を染めたのはリモンに認めてもらいたかった焦りから……
とかだと切なくていいなあ。
正直ストレガ大嫌いなんだぜ・・・
自分勝手やって被害者面して復讐とかいって手当たり次第に殺す
>>271の設定だとしても結局ただの糞ビッチだし、ストレガは思い切り暗い過去なら許せたのにな
純粋に私利私欲で動くラスボスよりたちが悪い・・・
ストレガはちょっと残念だったなぁ。もう少しストーリーを掘り下げて欲しかった。
一連クエの締めもちょっと歯切れ悪かったしね。
時が過ぎてもデーモンとして生き続けてるノヴァを思うフランやリモンの心境を考えると・・・。
3以降に出るなら本編に絡まないけど、知ってる人は知ってるキャラ、みたいなポジションがいいかなぁ
続編でからんじゃうとしたらデーモン道まっしぐらの敵としてしか浮かばねえ…
>>273が妥当かなあ
カッサータ砂漠の魔法のランプの「こすったら出た」
カッサータ砂漠のサキュバスが落とす「粗末な皮」
誰か、誰かパーネ先生が優秀な手駒を増やす為に生徒を次々と魅了するパーネ攻めは書けないか?
ウシ君とカエル君ワラタw
ととモノはフレーバーアイテム多めなのがいいよね
俺の中ではパーネ先生はドSとみせて潜在的ドM
>>276氏のを見てパーネ先生エロイな!ってことで書いてみやした。
とりあえず投下〜
「聖術がうまく出来ない?」
パーネがオウム返しに聞いた質問に、ヒュム男はコクコクとうなずいた。
クロスティーニ学園の職員室に、最近魔法学科に入学したばかりの男子ヒューマンが訪れていた。
聖術が上手くいかないので、相談に来たのだ。
・・・というのは嘘で、本当は他の生徒以上に聖術の出来はよかった。本当の目的は、パーネとの時間を作るためだった。
こうして話している間にもヒュム男の視線はチラチラと白く細い首筋やみずみずしい唇、服で覆い隠しているものの豊かな
大きさの胸、しなやかなくびれに視線がいっていた。
「それじゃあ・・」
一瞬でもそれらに気をとられていたのだろう、身を乗り出し顔を近づけたパーネにヒュム男は不意をつかれ、
カッと耳まで赤くなってしまう。
「聖術カリキュラム基礎はもう終わってしまいましたが・・・・熱心なあなたのために、特別に個人レッスンをします」
柔らかい笑みと共に伝えられた「個人レッスン」の響きに心の中で小躍りするヒュム男。
「あの」憧れのパーネ先生を短い時間とはいえ独占できるのだ。
声を聞くだけで心拍数が上がるというのに、自分は一体どうなってしまうのか。
「では放課後に・・・・そうですね、東館3階に空き教室があったハズです。そこで練習しましょう」
パーネの言葉に首を立てに力いっぱい振り、二つ返事で元気よく「はい!」と言い返し、
職員室からの退室ぎわに小さくガッツポーズを取ってしまうヒュム男。
「ははは、大人気ですなぁ、パーネ先生」
「ヴァシュラン校長・・」
通りかかったのか、校長のヴァシュランが声をかける。
「理由は何にせよ、学ぼうという強い意志を持つ生徒はどんどん伸ばしてあげたい。
パーネ先生、よろしく頼みましたぞ」
「ええ・・・・お任せください、校長。しっかりと『教育して』きますわ・・・」
翳りのある笑みに、その言葉にある含み。この2つを察知できる者はその時職員室にはいないのだった。
「え、先生・・・これって何なんでしょう」
放課後、夕刻。意気揚々と空き教室に向かったヒュム男を待ち受けていたのは、まず目隠しだった。
そして椅子に座らされ、数メートル離れた机の上に空きカンが乗っている。
なんというか、期待してたのはパーネ先生に手取り足取り教えてもらうことで・・・。
「聖術が上手くいかないのは、心の乱れによるものです。まずは視界という一番雑念の入りやすい部分をシャットアウトし、
集中力を高めてあのカンをシャインで弾き飛ばすんです」
「・・・これって授業のときより数倍難しいんじゃないですか・・?」
聖術カリキュラム基礎の時は、不浄なる者、ゾンビのダミーを使い「穢れを祓う」ことをイメージさせシャインの練習をした。
しかし今回は不浄な者でもない無機物、しかも目隠しつき。
・・・アテが外れたなぁ・・・
こうなればさっさとカンを倒して終わらせよう・・・とするが、やはりかなりの難度である。
10回、20回と外した所で魔法力が尽きて来て息切れしはじめる。
「うーん、ヒュム男君、ちょっと姿勢が悪いかもしれません。照準も、こう・・」
と、不意にパーネが後ろから近づきヒュム男の姿勢を正し、指先の照準を直す。
むにゅう。
不意に、ヒュム男の後頭部に果てしなく柔らかいものが押し付けられた。
それがパーネの豊かな二つの膨らみであると理解するや否や、一気に体温が上がった。
鼓動が早鐘のようになり、指先が軽く震える。
「どうしました?指先の照準がズレてますよ」
「おあっ!?」
むにゅ、むにゅ。
身を乗り出そうとするパーネの胸が更に強く押し付けられ、もはや照準とか呪文とか綺麗に頭から消え去っていた。
言葉を発することもままならず、加えて自分のあそこが大きくなってきてるのを察知し、必死に冷静さを取り戻そうとする。
だが、遅かった。
「・・・・ヒュム男君・・?」
やや厳しい声色に変わったパーネの声に、ビクッと身をすくませるヒュム男。
「これは何ですか?」
「せ、先生ッ!?」
既に小さくテントを張っている股間に、パーネの白く細い指が伸びる。
その指が服の上からヒュム男のモノを触ったとき、ついに堪えきれなくなった。
どくん!と一気に膨張し、隠しようがないほどズボンを持ち上げた。
・・・終わった・・・俺、終わったわ・・・・
股間のモノとは反対に、意気消沈するヒュム男。
そのヒュム男に、パーネが追い打ちをかける。
「聖術という神聖な術を行使するのに、不浄な所をこんなに大きくして・・」
細い指がズボンの上から屹立したモノをこねくり回す。
パーネ先生の指が自分のモノを触っている、という事実だけでヒュム男は達しそうだった。
しかし、それこそ超えてはいけない一線。耐え切らねばならない。
奥歯をかみ締め、絶え間なく送られてくる快感に耐える。
「しかも教師である私に欲情するなんて・・・聖術を行使するものとして許されませんよ?」
「ッ、あ・・・!先生・・・それは・・ッ!」
耳元で囁き、優しくタッチする程度だった手は、服の上から強くモノを触ってくる。
パーネの吐息が、耳元で聞こえる。甘い香りが鼻腔をくすぐる。
思考を溶かされながら、ヒュム男は必死に耐えていた。
「こんないけない生徒だったなんて・・・先生悲しいわ・・・」
ズボンのチャックをおろすと、枷を失ったヒュム男の一物はぶるん、と姿を現した。
すでにガチガチに硬くなっており、時折透明な汁を滲ませながらビクビクと震えていた。
「ぱ、パーネ先生・・・!?や、止め・・・!」
「ふしだらなあなたのココに、厳しい罰を与えなければいけませんね・・・」
ついに、直に白魚のような美しい指が触れた。やさしく表皮を撫でさすると裏筋をなぞり、
硬さを確かめるように柔らかく指で包み込んだ。
そこで、我慢の限界だった。
「く、はっ・・!先生、俺っ・・!」
言い終わる前に、ヒュム男は精を解き放っていた。
開放感と共に吐き出される大量の白濁。それはパーネの手のひらの中に溢れ、びちゃびちゃと美しい指を汚していった。
それを吐き出すヒュム男の一物もまた白濁に汚れていく。
「先生・・・その・・・すんません・・・・」
何を言えばいいかもう判らなかったが、何故かヒュム男はそう口にしていた。
不意に訪れる沈黙。荒くなった自身の息以外は聞こえない。その沈黙が何より痛い。
が、そこで何かを舐めるぴちゃぴちゃという音が聞こえた。目隠しのせいで見えないが・・
「パーネが何を舐めているか」に思い当たると、ヒュム男は口を開かずにはいられなかった。
「せ、先生、まさか・・・俺の・・」
「勘違いしてはいけません・・・ん、ぴちゃ・・・罰はまだ終わってませんよ?」
声は、すぐ目の前から聞こえた。パーネの顔を見ることは適わないが、見えないが故に
淫靡な笑みを浮かべたパーネが汚れた手を舐めとっている光景をヒュム男でも容易に想像することができた。
「第一の罰です・・・しっかり受けてくださいね」
すると、ヒュム男の顔に何かが押し付けられる。布地だろうか、それに濃い雌の匂いに、軽く汗の匂い。
「判りますか?私の下着ですよ・・?フフっ」
ぷつん、と。ヒュム男の理性が、飛んだ。このパーネというセレスティアの魅力に、この状況に、己の欲望に、ブレーキを
かけることが出来る要素は既になかった。
「先生、先生っ・・!」
「フフフ、そうそう。たくさんお舐めなさい・・・犬のように」
押し付けられた下着に夢中で舌を這わせる。呼吸は出来ないが最早関係ない。
パーネ先生の汗の匂いが、味が、全てが甘露。思考をドロドロに溶かしていく。
唾液まみれになろうと舌を這わせ匂いを嗅ぎしゃぶりつき吸い立てる。
「ふふ、こんなに夢中になって可愛い・・・。こんな可愛いペットが欲しいわ・・・」
ヒュム男の頭をやさしく撫で、下半身から絶えず送られてくる快感に恍惚とするパーネ。
その時、無我夢中でパーネにしゃぶりついていたヒュム男が顔を不意に上げた。
「せ、先生、俺、俺ペットでもいいから・・ッ!・・・!」
「この先も一緒にいさせてくれ」とは言えなかった。最後のところで欠片の理性が踏みとどまった。
この状況は明らかに異常である。もちろんパーネと一緒にできるならこれ以上ない幸せだが、
この先の学園生活を考えると一抹の不安を覚えなくもない。
しかしやはりパーネ先生との情事は捨てがたい。
と、そこで天使のフリをした意地の悪い堕天使が悩むヒュム男の背中を押した。
目隠しを取り払ってやり、天使の笑みを向ける。
「・・・いいですよ。ヒュム男君。先生が飼ってあげます・・・ずっとね」
くす、と相手の心を容易に蕩けさせる極上の笑みを贈る。言葉で答えはしなかったがヒュム男の顔が明るくなる。
ヒュム男から見ればまさに天使の笑みであったが、ヒュム男がその下にある堕天使の歪んだ笑みを知ることはなかった。
じゃあ、行くわね・・・んっ・・」
座ったままのヒュム男にまたがり、パーネが肉棒をその身に埋めていく。
ずぷずぷという感触と一緒に快感が打ち込まれていく。
「くぁ・・・先生、最高です・・・っ」
「ふふ、ヒュム男君ダメよ・・・?私はもうあなたの『飼い主』なんだから」
一瞬呆気に取られるヒュム男をさしおいて、パーネは肉棒を根元までずぶりと呑み込んだ。
それだけでヒュム男はまた達しそうになったが、これも必死に堪えた。
「さぁ、どう言えばいっぱい飼い主に気持ちよくしてもらえるんでしょうね・・?」
意地の悪い・・・少し堕天使の本性を垣間見せた意地悪な笑みで、腰をぐりぐりと回すパーネ。
そのたびにヒュム男の思考は乱され、なんと言っていいのか判らないまま生殺しにされる。
「飼い主への礼儀もなってない駄犬は必要ありませんよ・・・?」
くすくす、と酷な事を言うパーネ。慌てふためくヒュム男だが、腰を上下させ始めたパーネにまたしても
思考を邪魔される。と、唐突にヒュム男が口を開いた。
「ぱ、パーネ様っ・・!」
脈絡もなく発された言葉に、パーネも動きを止めるが・・口の端に笑みを浮かべると、ヒュム男に聞きなおす。
「・・・もう一度、です。飼い主に聞こえるようしっかりと・・」
「パ、パーネ様っ・・・!パーネ様の中に・・・出したいですっ・・・」
その言葉を聞き届けると、非常に満足そうな笑みを浮かべパーネがうなずいた。
「いいでしょう・・・・私の中への射精を許します」
そう言うと激しく腰を振り、ヒュム男を責め立てる。ぎちぎちと膣が肉棒を締め上げ、ヒュム男から
搾り取ろうとする。じゅぼじゅぼという淫らな水音が響き、今にも射精しそうなほど肉棒は膨張している。
「くは、ッ・・!パーネ様っ・・!もう・・!」
「ふふ、初めてにしてはよく我慢したほうです・・・。さあ、私の中で果てなさい・・」
きゅうっ、と締めつけられたかと思うと、ヒュム男の肉棒からは大量の白濁は吸い出されていた。
ありえないほどの、初めての快楽にヒュム男はありったけの精液をぶちまけ、そのまま消えつつあった
意識に呑まれていった。
「これで9人目・・・ね」
気を失ったヒュム男を見ながら薄暗い部屋の中、手の中で小さな光を弄ぶ。これはヒュム男の魂の一部であり、先ほど
果てる際に無防備になった魂から吸い出したものである。パーネがこれをもつ限りこのヒュム男はパーネの
忠実な駒であり続けるだろう。
「私のために・・・全ての世界を統べる神のために働いて下さいね・・・私の下僕(ペット)たち」
月明かりの下、パーネは堕天使の顔を隠すことなく笑ったのだった。
投下終了でありんす。長くてすいません。
しかも書き終わってみれば「次々と生徒を・・・」どころか一人しか落としてない有様。
途中微妙にあまーい感じになってしまったのも。反省点イパーイ・・・。
ではこの辺でー。
グッジョブ!グッジョブ!
むしろ期待通りな出来映えに歓喜してます!
ああっパーネ先生マジパネェ(笑)
パーネ様!パーネ様!パーネ様!
…ふぅ
よいさくひんをありがとうございました
よいしごと!
いわゆるNice work.ってやつだ!
ブラボー!おおブラボー!
冒険者の皆様、こんばんは。久しぶりに出たアトガキモドキです。
バハ×ディアのSSがようやく完成したので投下します。相変わらずのぬるま湯仕様。
少々エロ分の割合が少ないですが、どうか御了承くださいませ。
筆足らずで言葉足らずなラブコメモドキをお楽しみください。
鬼ってなーに?と聞かれたときに、一言で答えるのは難しい。
それは地獄の番人だったり、ろくでもない人のたとえだったりするから。
でも、鬼は笑うし、涙も流す。酒好きの人情家で、憎めない奴です。
西洋では鬼のような人のことを、悪魔と言ったりするとか、しないとか。
「ぐすっ、えぐっ……ちくしょう、あいつらぁ……」
もうどれくらい歩いただろう。眼球を焼くような塩水は、ぬぐっても次々に溢れ出てくる。
その手に光っていた銀色の輝きは失せ、暗い肌の色しか映らない。
髪は泥にまみれ、顔は赤く腫れ、服の下は痣だらけだろう。いつまでも耳に残るのは「悪魔のくせに」という言葉。
家を出たときは幸福な気分だった。誰かにこれを見せたいと思っていたら、近所の悪ガキどもに囲まれた。
みんなに難癖をつけられて、がらの悪いひとりに小突かれてからは、あんまりよく覚えていない。
「何したってわけじゃないのに……なんで、どうして……どこがイヤなのさ?」
この黒い角か。この紅い目玉か。それとも気に入らないのはこの血筋か。
悪魔の子に生まれた運命をこれほど呪ったことはない。
悲しみが怒りと憎しみにシフトしつつあるとき、その声は背後から話しかけてきた。
「あ、おい、おまえ!どうした、泣いてるのか?」
返事をせずに振り返る。頭髪も尻尾も翼まで蒼い少年は、この辺りでは顔の知れたバハムーンだ。
彼の父は一帯の領主なのだが、その息子はどこにでもいるやんちゃ坊主で、勝手に抜け出しては近所の子と遊んでいる。
バハムーンのくせにフレンドリーで、友達の輪に入りやすい、よく言えば親しみやすい印象だ。
口調といい態度といい、明らかに心配してくれているはずなのに、強がりと苛立ちがそれを拒む。
「うるさい!構うなよ、ほっといてくれ!いつでも自分が正しいと思って!だからバハムーンは大嫌いだ!」
いつもこんな感じだ。ここ一番で素直に慣れない性格、必ずどこかで損をしてしまう。
怒鳴り散らしてすぐに後悔の念が押し寄せてくるがもう遅い。再び歩き出そうとした矢先、少年が目の前に立ち塞がった。
「おれのことなんか嫌いでもいい。ほっとけるわけないだろ、助けさせろ」
「え?なにそれ……だって、ディアボロスだよ?悪魔の子なんか、ほっとけばいいのに」
「そいつが悪魔でも鬼でも関係ない。泣いてる女の子を助けるのに理由がいるのか?」
初めてだった。今まで助けてくれるどころか、自分から関わろうとする子供は誰一人としていなかったのだ。
ここは、この子を信じるしかない。むしろ信じてみたいとさえ思った。
近所の子供達に腕輪を取られた。銀色の誕生日プレゼント。代わりに取り返してきて……お願い。
任せろと親指を立ててくれた男の子は、単身戦いを挑みに行ってくれた。
当時、ディアボロスとバハムーンは6歳。冒険者養成学校クロスティーニ学園に二人して入学する、もう10年も前の話。
「あ、ねえねえディア子。フェルパー見なかった?」
放課後をとうに過ぎて日も傾いたころ、通りすがりによく知った顔のフェアリーから声をかけられた。
この子とは古いよしみで、フェルパーは彼女の幼馴染。入学してすぐ同じパーティに誘ってくれた仲である。
大抵はセットで一緒にいるが、もう片方を捜しているということは見失ったか、はぐれたか。
フェアリーとは教室が異なるから、隣りのクラスで誰かに聞くのが一番手っ取り早い。
「いいや。ボクは全然見かけてないけど」
「そっか。じゃあまた修行してるのかな。ホントにもう、バトルマニアなんだから!」
腰に手をあて、わざとらしく頬を膨れさせ、困ったか呆れたか分からない表情。あるいは諦めの色があるのかも。
二人、特にフェアリーの方が、何かとフェルパーの世話を焼く。傍から見ればカップルと大差ない。
そしてフェルパーにはライバルがいる。あいつが起きて鍛えてる間は寝ていられない、ってくらい熱心な。
「……ねえフェアリー。ヘンなコト聞くよ?」
「ん?な〜に、ディア子」
「フェルパーの、具体的にどんなところが好き?」
普通、学校の女子生徒と言えば噂話、こと恋愛話には敏感だ。
けれどフェアリーは慌てず騒がず、しかもろくに悩む様子もなく答えた。
「う〜ん、そーね。なんて言うかこう、どこまでも猫そっくりなところ?」
「そっくりって、実際猫じゃないか」
「うん、そうだけどさ、仕草とか雰囲気とか、捨て猫を見て、あたしが飼ってあげたい!って思うのにすごくよく似てるの」
「なにさそれは……小動物系、ってこと?」
「よく分かんないけど、たぶんそんな感じ。どうしてもほっとけないのよね〜」
お茶を濁してはにかむフェアリー。夕暮れの校舎に白い歯が眩しい。
「それで、ディア子は彼のどんなとこが好きなの?」
「え、ええ?ちょ、なにさ、いきなり!」
「またまたあ。ずっと一緒に遊んでたから分かるよ。素直になっちゃいなよ、どんなとこが好きなの?」
まさか、こっちに振られるとは思わなんだ。
フェアリーとはもうだいぶ長い付き合いで、その分いろいろ知ってる。知られてる。
でも、いきなり聞かれてもな。えっと……優しいところ?強いところ?男らしいところ?それとも……。
「あ〜、うん、その、え〜っと」
「あははっ、ムリして考えなくてもいいよ。また今度、ゆっくり聴かせてね!」
肩を軽く2回叩いてウィンクをくれると、フェアリーは羽をぱたつかせて廊下を飛んでいった。
しばらく呆然と見送ってしまったが、後ろ姿が見えなくなってから我に帰る。
そうだ。ボクも会いに行ってみようか。どこにいるかは大体分かる。
フェアリーとも友達で、フェルパーの好敵手。それから、ボクの……初恋のひと。
午後の授業とホームルームが終わってすぐに出かけたとしたら、かなりの時間が経過している。
適当に差し入れを見つくろってから、初めの森まで足を運ぶ。モンスターも現れない雑木林の端に、目的の人物はいた。
「四百、九十、三!四百、九十、四!」
硬質な髪を総立ちさせた、お古ジャージに短パン姿の蒼いバハムーンだ。
逆立ちした挙句に腕立てをしている。額を滝のように流れる汗は、長時間の鍛練を物語る。
体重は決して軽くないハズなのに、よくもまあこんな筋トレができるよ。感心を通り越してちょっと呆れるね。
「四百、九十、八!四百、九十、九!……五、百!」
「いいかげんにしたら?腕がもげるよ」
呼びかけると顔ごとこっちを向いて、軽やかに跳ねて地に足をつける。ジャージで豪快に汗をぬぐい、小さく息を吐き出した。
「よっ、ディア子か。俺になんか用事か?」
「いいや。遅くまで見かけなかったからさ。ほら、おやつ食べない?」
「お?なんだ、くれるのか?」
購買部の紙袋をちらつかせると一気に眼が輝く。相変わらず食いしん坊が治らない。
包みを手に取り三色団子を取り出す。お茶があればそこそこの一服になったろうけど、小遣いの都合で我慢してもらおう。
「はは、ありがてえ。んじゃ、遠慮なく頂くぜ!」
嬉しそうに笑いかけて団子を食べ始める。なんでもよく噛んでゆっくり食べるのは小さい頃からバハ男の癖。
「それにしても、毎日こんなことしてるんだ。やっぱり、フェルパーも鍛えてるから?」
「ん。それもあるけどよ、それだけじゃないんだぜ。俺さ、竜騎士になりたいんだ」
時間をかけて二本目の串に手を出す。大柄な手に小さい団子のギャップと、モグほっぺが見ていて面白い。
バハ男は食べ物に感謝されそうなほど美味しそうに味わって食べる。あんまり爽やかで微笑ましいくらいだ。
「親父が言ってた。一流の竜人は、剣と戦よりも命と情を重んじるんだ」
現役の領主である実の父親をことのほか尊敬しているバハ男は、しばしばその言葉を引用する。
「敵をバタバタ薙ぎ倒すだけじゃなく、身体を張って仲間を守ってやれるような男に、俺はなりたい」
「へえ。いかにもバハ男らしいね」
「そうか?まあそんときゃ、お前のことも全力で守り通してやるからな」
お前のことも。複数形だ。でもそれが告白じみて聞こえるほど、過剰に意識してしまう。
悔しいけどフェアリーに言われた通りで、やっぱりボクはバハ男のコトを気にしてる。
それでもそんな気分でいられないのは、最後の事実が突っかかるから。
だって、バハ男に告白したことも、あっちから告白されたことも、ないんだもの。
「ところで、ディア子はどうして人形使いになったんだ?」
「え?ぼ、ボク?」
三本目の団子をたいらげたところで、バハ男に聞かれる。今日はよく質問攻めにあう日だ。
ただこれだけはどうしてもごまかそう。なにせ学科を選んだ理由のひとつが……、
「あ〜、これはその、さ」
殺伐とした迷宮の中に、癒しを求めたからなんて、言えない。
「ほ、ほら。人形使いって、魔法壁習うでしょ?ディアボロスのボクは嫌われがちだけど、それでも何か、力になりたくてさ」
昔誰かに似たようなことを言われた気がして自分でも可笑しかった。
とりあえず間違った内容は含まれていない。魔法壁の展開は、人形使いが誇れる強力なスキルだ。
バハ男はふぅんと相槌を打つと、耳に慣れた清々しい声で話し始めた。
「やっぱ俺は、お前のそんなとこが好きだな」
「ふぇえ?」
本気で心臓が飛び出すかと思ったのは生まれてこの方初めてだ。ちょっと寿命が縮んだかも知れない。
「なんだかんだで仲間のこと気にかけてたり、笑った顔が可愛かったりとかさ。そうそう、そんな照れた顔もな」
にっと歯を見せたバハ男の笑顔に、ボクはもう完全にやられていた。
春風みたいな力強い声が好き。穏やかな海にも似た豪快な性格が好き。野山みたく逞しい腕や背中が好き。
彼の父が言う立派な竜王が慈愛にあふれているならば、ボクはお妃様になってもいい。
さっきから胸の動悸がずっと激しくて苦しい……いつからロマンチストになっちゃったんだろう。
「さ〜て!今日はもう遅いし、飯食って着替えてさっさと寝るぞー!」
空っぽの串を袋に放り込み、大きな身体で背伸びをする。
いつもよりずっと「異性」として意識するバハ男に、ほとんど無自覚のまま叫んでいた。
「ば……バハ男!」
「ん?」
「あ、あのさ、大事な話があるんだ。明日の夜、またここで待っててくれるかな?」
眼を合せるのも精一杯で極限まで早口で喋るボクに、バハ男は快く返事をしてくれる。
「おう!修行しながら、のんびりまってるぜ!」
二度目の輝かしいはにかんだ顔は、今までより少し嬉しそうに見えた。
今夜は眠れないだろうなと思いつつ、頭の中ではもう明日の夜に向けた作戦会議が始まっている。
翌日。昼休みの隙を見計らって、パーティの名義で使われている学生寮の倉庫へ向かう。
ここには日頃から荷物管理を買って出るレンジャー科のクラッズと、手伝いに来ている魔法使い科のエルフがいる。
「乙女の化粧水?あーアレね。たくさんあるから持ってってもいいけど」
「うーん、出かけるカッコでもなさそうだし……ディアちゃん、なんに使うつもり?」
「ああ、いや、ちょっとさ」
「ははーん。さてはディアっち……恋だね」
自前の現金帳簿片手に倉庫を漁っていたクラッズが、いきなり振り向きそう指摘する。
「えっ、ちょっ、ウッソ!ディアちゃんたら……そうなの?」
「他の用事でこんな道具使わないでしょ。お相手はたぶん……バハっちかな?」
すっかり名探偵気取りのクラッズ。一発必中、そのものズバリで言い当てられるのはなんで?
それはそうとして、信じられないって顔を手で隠して指の間からこっち見るのやめてよ、エルフ。
どういうワケか見事なまでに推理が的中しているので、ここはじたばたせずカミングアウト。
「ん……そうだよ。大事な話があるって、昨日ついその、勢いでね」
別にやましいコトなどないのに、視線をそらし今日のために呆れるほど手入れをした灰色の髪を弄ぶ。
「えー……と、なんて言うか、ディアちゃんも女の子してるのね」
「いいことじゃないの?はいこれ、化粧水。出来るだけ直前に使うといいよ」
クラッズから化粧水の瓶を手渡される。光源にかざすと、淡い虹色に煌めく怪しくも美しい液体。
瓶の中身に視界を集中していたから、エルフが左手に触れたときにはひどく驚いた。
「もうちょっと飾り気があった方がいいんじゃない?ちょっと粗末でなんだけど、わたしがおめかしさせたげる」
肌色と呼ぶには色黒の指に友好の指輪がはめられたことに気付く。
確かに木くずから錬金された、お世辞にも高級でないものだけれど、久しぶりの装飾品は思いのほか気に入ってしまう。
かける言葉も分からないまま視線を上げて二人を見る。ディアボロスに向けるものとは思えない暖かな表情で迎えてくれた。
「大丈夫よ。きっとバハ君も分かってくれるわ。もっと自信持って!」
「おっと、お代はいらないよ。大事な彼氏のためにとっときな!」
友達がこんなにいいなと感じたコト、今までに何回あったかな。
「二人とも……ボク、頑張ってみるよ。ありがとう!」
感謝の言葉なんて、今じゃ小さくて着けることもできない銀の腕輪を、誰かさんに取り返してもらって以来だ。
そのうち午後の予鈴がなり、三人は蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの教室へ飛んで帰った。
いよいよ今夜は大勝負。クラスにある自分の席に座ると、指輪をはめた左手を強く握りしめた。
その夜は星がまたたく月夜で、影踏みが出来そうなほど明るかった。
約束した場所へ行ってみると誰もいない。だがしばらく待つような間も開けず、どこからかバハ男が現れた。
「お、来たな。今ちょっと水飲みに行っててさ」
ジャージに短パン、いつもの修行スタイル。色気もへったくれもない格好だけど、この際それには眼を瞑ろう。
「んで、大事な話ってなんだ?」
「あ……う、え〜っと、その」
つくづく思う。否定されたくない話をするときは、口数がやけに増えるか、口ごもってなかなか言い出せないかだと。
確かに伝わらなかった場合のことは想像もつかないし、考えたくもない。
だけどここまで来て尻尾を巻いて、うやむやにするのはもっと嫌だ。
覚悟の上で呼び出したハズ。怯えるんじゃない、想いを伝えろ!
「ば、バハ男のコトが、好きなの!ボクを、彼女にしてください!」
最後は瞼をきつく閉じて絶叫する。恥ずかしさで死にそうになることの辛さが今ならよく理解できる気がする。
何よりもここでの沈黙がきつい。返事を待つまでの間が怖くて心臓が張り裂けそうになる。
「……ディア子。とりあえず眼ぇ開けて俺を見ろ」
いつもと変わらない爽やかな声が余計に不安を煽ったけれど、おっかなびっくり視界を開く。
ごちそうを前にしたときとは違う、もっとぎらぎらした野性的な眼差しで、バハ男は口元を震わせていた。
そんな顔をされるだけで驚くのに大手を振って抱き締めるものだから、小さく跳びあがって短い悲鳴をあげてしまう。
「ひゃあ!」
「あーよかったっ!お前が俺のこと好きでいてくれて、ほんっとーによかったぁ!」
背骨が折れるほど思いっ切り抱き付かれたけど、さっきまでの苦痛と比べたらなんてことない。
それよりもバハ男の言葉が気になりすぎる。まるで、告白を待ってたみたいで。
「え……そ、それって、もしかして……」
「俺の方から言おうと思ってたけど、ごめんな。どうしても怖くってさ。お前に先越されちまったよ」
「じゃ、じゃあ、バハ男もボクのコト……」
「おう!初めて会ったときから、ずっと気になってたんだぜ!こんにゃろー!」
またしても強烈な抱擁を貰う。幸福と安堵がいっぺんに押し寄せて、痛みでない方向で涙がにじむ。
いつだったか流した瞳を焼けつかせるような痛いものじゃない。もっと綺麗で、透明な、それ。
「……フフ……ねえ、バハ男」
「ん?」
「彼女になってすぐで悪いんだけどさ……わがまま言っていい?」
急に幸せがなだれ込んで来たせいで、どこか頭のねじが飛んでしまったのかも知れない。
「今すぐここで、ボクを抱いてよ。バハ男に愛されてる証が欲しいな」
喋り終わる前にはもう制服のボタンを一つ二つ外して、胸元をはだけていたんだ。
「お、おい、ディア子……んむっ!」
バハムーンが口答えをするよりも早く、首に手を巻いて唇を塞ぐ。
強引に顎を開かせ舌を入れる。咥内の愛撫に戸惑っているのか、バハムーンはされるがままだ。
「んはっ、うむ、んん……」
「ぐっ、んむう……」
やがて息苦しくなったところで、ディアボロスの方から口を離す。
今度はバハムーンの方が混乱して、呆気に取られた間抜け面をしている。
注意深く見なければ分からない細さだが、舌と舌を透明な糸が繋いでいた。
「はぁ、はっ、ボクの、ファーストキスだよ。奪われるよりは奪うって決めてたんだ」
「ディア子、お前……」
「ねえ……ボクって、魅力ないかな?やっぱり、ディアボロスとするのは、イヤ?」
キスまで奪っておいてどうかと思うが、今一つ自身が持てないらしい。
血を磨ったような紅い眼に、うっすらと水分が溜まっている。
「ふぅー……自分から襲っといて、そりゃあないだろ。少しびっくりしただけさ」
頬を撫でながらいつもと変わらない調子で優しく微笑んでくれる。その笑顔が何より嬉しかった。
「よかった。じゃあ……このままシテくれる?」
「嫌だったらすぐに言えよ。いつでも止めてやるからな」
「あは、バハ男優しい。ねえほら、脱がせて……」
半裸の上着をちらちらとひらめかせて、積極的に誘惑する。バハムーンはすぐ制服に手をかけ、そっと着衣を剥がしてゆく。
月明かりとはいえ、夜は薄暗い。しかしディアボロスの肌がそのせいで暗い色でないことはどちらも熟知している。
「……気持ち悪いよね。こんな色の、肌なんてさ」
上が下着一枚になったところで動きを止めたバハムーンに、やや自虐気味にディアボロスが呟く。
「いや、そんなことないぜ。凄くきれいだ」
「バハ男……あっ、ひゃあん!」
それなりに自慢のサイズの乳房を、バハムーンの手はすっぽりと納めてしまう。
壊れ物を扱うように、穏やかな力加減で揉みほぐされる。
「へえ。可愛い声出すじゃんか」
「そ、それは……んっ、ヘンな感じ……」
「ん、嫌か?なんかまずかったか?」
「ううん。誰かに触られるのと、自分で触るのが違うなって思っただけ。バハ男の指気持ちイイよ。もっと続けて」
それはそうだろう。自分で触るより、想うひとに触れられた方が敏感に決まっている。
「はあっ、バハ男、乳首も吸ってぇ……」
自分でも不思議なほど甘い声で懇願し、さらなる快楽をバハムーンに要求する。
胸の感触を楽しんでいた彼は何も言わず、灰色の肌に映える桃色の先端に自らの口をつけた。
「んふ、はむっ、れるれる、じゅるっ」
「ふぁあ!スゴイよ……ゾクゾクするぅ……」
怯みや緊張も若干あるだろうが、それはほぼ全て快感による刺激。
ときどき激しい自慰を求めるとき突起を指でつまんだりするものの、やはり異性に弄られるそれの比ではない。
バハムーンの舌使いは思いのほか巧みだった。それとも寄せている想いのなせる技だろうか。
「んああ、イイよ。ソコもっと……ひあうっ!」
突然、電流を巡らせたような鋭い感覚がせりあがって来る。視線を落とすとスカートの中に鱗の生えた長いものが見えた。
「ああっ、バハ男ソコは……はあぁ!」
「最後までやるつもりでいるんだろ?だったらしっかりほぐさないとな」
「ふあ、これ意外とクセになりそう……やあん、アソコが痺れてくる……」
口を半開きにしてだらしなく真紅の瞳をとろけさせる。想像以上に彼はテクニシャンだった。
果実と秘部を同時に攻められ、すっかり出来あがってしまったらしい。
「はうぅ……ねえ、きてバハ男。もういいでしょ?」
「ぷぁ……お前がいいなら、それに合わせるよ」
豊満な胸部から唇を離す。バハムーンの口からは、キスしたときよりも長い線が引いていた。
「下、脱がせてあげる。もっとこっち寄って」
両手を差し出すと、尻尾を引っ込めたバハムーンが這うように詰め寄り、パンティを脱がせながら覆い被さる。
充分に主張している短パンをずり下ろして、隠れていたモノを露わにする。予想を大きく上回る肉棒がついに外気に晒された。
そそり立つ巨根と言い表しても過言ではないそれを見ていたら、不意に頭部が涼しくなる。
「え、あれ?」
「ああ、うん。ないほうが俺好みかも。見れば見るほど可愛いぜ、ディア子」
帽子がなくなったことに気付いても、それがどこに置かれたのか捜したり追いかけたりはしなかった。
赤らんだ頬と至近距離で直に見つめてくるその原因が、注意をそらすことを許さなかったのだ。
「ほんとにいいのか。引き返すならまだぎりぎり間に合うぞ」
「ここまできて、そんなこと言うなんてなしだよ。ボクはバハ男だけに愛されたいんだから」
「分かった。馬鹿なこと聴いたな。たっぷり愛してやる」
いつの間にかジャージを脱いでいたバハムーン。確認とお詫びのつもりだろうか、唇を合せる軽いキスをくれる。
分身を掴んだバハムーンが矛先をまだ汚れの知らない肉の芽に向け、狙いを定めると一息に突き入れた。
挿入した側にもされた側にも、生々しい感触が伝わった。
「くうぅ……うあ、つあぁ……」
「お、おいディア子。痛いか?大丈夫か?」
「平気、だよ。絶対に、抜いちゃダメだからね」
強がって笑いを浮かべるディアボロス。だが実際の痛みはごまかしようがない。
ただでさえ処女の姦通は痛感がともなうのに、それが竜の血を引く男のモノを受けてとあってはより耐えがたい。
荒い息継ぎをし身じろぐばかりで、とても行為に及べる様子ではなかった。
「ディア子。俺は、どうしてやったらいい?」
「ん……さっきみたいに、おっぱいをシテくれると嬉しいな……」
息も絶えだえの要求だったが、見た目よりも落ち着いていたバハムーンはすぐに行動をもってこれに応えた。
五本の指でやんわりと胸の肉を包み込み、人差し指が突部を刺激する。
「あぁ、ソコ。気持ちイイや……意外とボクの弱点だったりして……ふうんっ!」
むせかえるような甘い息を吐く。上半身を弄ばれるうち、挿入された男の凶器が微弱な出し入れをしていることに気付いた。
「ふあ……イイよ、バハ男。もう痛くないや」
「そうか?でもきつかったら教えろ。出来るだけ優しくしてやるから」
「うん。ありがとう。だけど……思いっきり犯しても、いいよ?」
鍛え上げられた胸板にしがみ付き、吐息のかかる距離で耳打ちする。顔がよく見えず、反応が分からない。
慎重にバハムーンの腰が引き上げられ、摩り込むように子宮を貫かれた。
「ふわあぁ!すごっ、深いよぉ……」
「ディア子、お前のナカ気持ち良すぎて、俺あんま持たない……っ!」
「はぁん、ボクも、バハ男とセックスしてるってだけで、長く続かないかも……」
お互いに耐性が見込めないならば、後は短期決戦と相場が決まっている。
バハムーンが血塗られたペニスでがむしゃらに狭い内部を攻めれば、ディアボロスの溢れる愛液と初々しい喘ぎが返ってくる。
竜王の息子と悪魔の娘はオスとメスとして快楽に身を任せ、恋い焦がれていた相手の身体に酔いしれた。
「はぁ、はぁ、ディア子!気持ちイイのか?」
「あうん、はあん!スゴイ、スゴイのっ!初めてなのに、こんな感じちゃうなんてっ!」
「おっ、今のでここがきゅんってなったぞ?お前、言葉攻めに弱いだろ?」
「ば、バカぁ……ううん、あん、はああっ!」
必死に抱き付くディアボロス。いつしか痛みは消え、自分の方から淫らに腰を振っていた。
一人称も態度もボーイッシュな彼女が、男性の象徴によがり狂っている。射精感を高めるには充分な材料だ。
「うお、ディア子やばい、俺もうイキそう!」
「な、ナカで射精して!ボクもダメ、イッちゃうよ!」
「ああっ、ディア子、ディア子っ!イクぞ!ナカでイクぞ……うああっ!」
絞り取られるような熱と蜜が襲い、純正を破ったばかりの内部へ精液を注ぐ感触が響いた。
「あっ、ああイク!あ、あ、ああーーーっ!」
どっぷりと熱いオスの精を流し込まれ、たまらず昇天するディアボロス。
身体全体を痙攣でうち震わせ、バハムーンに密着したままいやらしい叫びをあげて果てた。
「と、止まんね……はあぁ〜っ」
「奥に、奥に来てる……バハ男の熱いの、いっぱあい……」
絶頂の余韻に浸るバハムーンとディアボロス。慣れない初めてということも合わせ、ほとんどの体力を吐き出してしまった。
やがて甘美な全身麻酔が消えると、そこには荒っぽい吐息だけが残る。
迫りくるモンスターを蹴散らすものではなく、相手を強く想う、恋人同士のブレス。
「ふぁっ、待ってバハ男。抜かないで」
「え……ちょっと俺も、これ以上は……」
「ううん。もう少しだけでも、このままでいたいな。って」
企みのない微笑で頼むと、バハムーンはゆっくり身体を下ろし、ディアボロスと重なる格好になる。
知り合ったのはずっと前だというのに、これほど肌が触れあったことはない。
「あ……流れ星」
宝石の輝きを散りばめた夜空に、一筋の直線が駆け抜けた。
「そういえばさ、昔は夜が綺麗だと、こっそり二人して星を見に行ったよね」
「そうだな。確か流れ星は、唱えれば願いが叶うとかなんとか……」
「小さいころはそんなの信じてなかったけれど、今となってはホントのことなんだね」
「へえ。なにか願いごとが叶ったのか?」
「ボクね、見るたびにずっとお願いしてきたんだよ。バハ男がボクから離れないように、って」
翼の辺りに回していた手を、バハムーンのそれに合わせて絡める。
大きさも質感もまるで違う掌。幼い頃からこの手に救われてきたんだなと思うと、一層彼が愛おしく感じる。
「バハ男……ボクのコト、好き?」
「ああ好きだ。いや、大好きだ」
「嬉しいよ……ありがとう。いつでも傍にいるからね……」
星座盤の月空を背景に、唇だけの長いキスをひとつ。
これからもきっとおままごとでは済まされない苦難がいくつもあるだろう。
迷宮探索は命懸け。だけどお年頃の乙女にとって、恋愛事情はそれ以上。
長いながいひとつの戦いに、ちょっと幸せな終止符を打った。そんな、竜と悪魔のお話。
アトガキモドキが現れた!
アトガキモドキからは敵意を感じない
以上、熱血系バハ男×ボクっ娘ディア子、不器用な二人仕立てでした。
ボクっ娘キャラが苦手な皆様、イメージを大きく害された方々には、この場でお詫び申し上げます。
改めて見返してみるとわかるよ。壮大な長編や鬼畜SM系はこの男には絶対に書けない。
だってディア子のセリフとかセレスティアみたいだもの。こんなに乙女でいいのか、悪魔っ娘!
「吾輩の辞書にバットエンドの文字は無い」……だめだ俺は……早く、なんとかしないと……。
次書くとしたらフェル×フェアかエル×クラか……NPCもいい味出してるんだけどなあ。
また思い出したように現れると思います。今夜はこれで。それではノシ
アトガキモドキは挨拶をして立ち去った
しかしアトガキモドキ氏の前に回りこんだ!さぁ!ディア子の続きを!さぁ書いtうわらば!(首切り)
GJすぎます・・・・!只でさえ凶悪な可愛さのディア子が・・・・ッ!
アウチ自分の用件を忘れてました!しかも↑途中送信! orz
スレ消費すいません。ID変わってしまいましたがエロパネェ先生書いた者です。
沢山のレスありがとうございました。とても励みになりました!(`・ω・´)シャキーン
実は密かに続きモノ(しかもNTRとかとんでもない)を考えたのですが、今夜はディア子に乾杯です。
爽やかディア子ちゃんの後にドロッとパネェ先生は・・・・頂けませんねw
アトガキモドキ氏GJでした!そして皆さんありがとうございました〜
ボクっ娘大好物なのでマジ萌えた、ディア子可愛い。可愛すぎる。
とにかくGJ!このディア子好きなので、良ければまた登場させてやってください。
アトガキモドキ氏GJ!
いつもいい仕事してますねぇ…。ディア子ってなんてかわいいんだろう。
そういえば昨年1スレ目が立った時から長いですねぇ(しみじみ)懐かしいなぁ去年の夏。
家で使っているネット環境がまたアクセス規制のあおりを受けてしまった……。
使っているプロバイダ全部規制されちゃうのが悲惨なので今夜は大学近くのネカフェより。
第4話を持ってきました。
ギルガメシュが目を覚ました時、時刻は昼を回っていた。
もっとも試験休みなので寝坊をしても特に何かを問われることは無い。だがしかし、学園内が騒がしいなとは思った。
普段は学生寮はそこまで騒がしくは無い。食堂や校庭は騒がしくとも学生寮で騒ぐ生徒はいない為、珍しいことだ。
「………ああ」
そう言えば、昨日の夜ディモレアに襲撃をかけ、その息子のディアボロスが乱入し、そして―――――。
ディモレアが学園まで追い掛けてきたりはしていないようだ。運が良かったというか何というか……。
起き上がり、まずは朝飯、というより昼飯の時間なので食事をしに行こうと、ドアを開けた時、数人の生徒がギルガメシュに注目した。
「どうした?」
「……いえ、何も」
「なら、どけ。俺は寝起きなんだ」
生徒達を避けつつ、食堂へと向かう。
昼食の時間だというのに生徒の数が少ないのは試験休みで遊びに行ったからだろうと勝手に解釈する。
「おばちゃん、ラーメンセット1つ」
「では、僕も同じのを」
「……マック。いつからそこにいた?」
「今さっきだ」
突き出されたラーメンセットのトレイを抱えてギルガメシュとマクスターは近くの席に並んで座った。
「あれから、何かあったか?」
「いいや。あのディアボロスからの連絡も無い……と、いうのも僕が今さっき起きたからだけど」
「お前もか……俺も、起きたの今だ」
「珍しいな、ギルが寝坊なんて」
マクスターはセットに付属するチャーハンをラーメンの中にぶち込みつつそう答える。
「だからマック、テメェなぁ。チャーハンをラーメンの中に入れるんじゃねぇ」
「いいだろそんなの! 好き好きだよ!」
「ったくよぉ、テメェは本当に舌が狂ってるよな。コーヒーには砂糖を何杯も入れる癖にミルク入れないなんて」
「僕は牛乳が嫌いなんだ。大体、ギルだって酢だこにマヨネーズなんてかけてるじゃないか!」
「何だとぉ!? カレーにソースなんかかける奴に言われたくねぇよ!」
「カレーにタルタルソースを混ぜて喰う奴が言う台詞か!」
「……あの、会長、副会長、何を……」
マクスターとギルガメシュがその声に振り向くと、生徒会書記を担当するセレスティアの少年が困った顔で見ていた。
「ああ、お前か。マックの奴な、酢だこにマヨネーズをかけるのがおかしいとか言いやがるんだ」
「ギルだってカレーにソースをかけるのが変だと言うんだ! 普通だよな?」
「あの、普通はカレーとか酢だこに何もかけたりしませんけど……」
「「こんの邪道がぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」
「それが普通ですって!? てか先輩方なんでそんなに気が立ってぐぐぐぐぐぐ」
「生徒会書記が会長と副会長のコンビに苛められてるぞー!」「誰か先生呼べー!」
たまたま昼食に来ていたユーノ先生がマクスターとギルガメシュに拳骨を浴びせて止めるまで、哀れな書記はジャイアントスイングで壁に突っ込む羽目になった。
「……ったく、お前達なぁ、熱くなるのはいいが他人を巻き込むんじゃないっての」
「……すんません」
「面目ないです」
ユーノは出席簿の角で2人の頭を小突くと、ため息をついた。
「それと、ギルガメシュとマクスター、お前達帰り遅かったけどどうしたの?」
「え? まぁ、野暮用です。なぁ、ギル?」
「ああ」
「……そうか。ならいいんだけどさ。それともう1つね。生徒が1人行方不明になってるんだけど、何か知らない?」
「誰ですか?」
「錬金術士学科5年のディアボロス。ほら、この前のイベントでラストを飾った奴だよ。覚えてるだろ?」
マクスターとギルガメシュはそれを聞いて思わず顔を合わせた。
どうやら学園に戻ってきていない、というとなるとまだディモレアの元にいるのだろうか。
「それと、そいつに冠して変な噂が飛び交ってんだよ。あのディモレアの子供だなんて、ね。そんなバカな話が……」
「有り得たら、どうします?」
「……マック?」
ギルガメシュは思わず、そんな事を呟いたマクスターに視線を向けた。人との和を重視するマクスターにしてはある意味珍しい発言だった。
「………そうだね。そいつがあたしの生徒であれば、あたしの生徒だよ。そいつがあたしに剣でも向けてこない限りはどんな奴であろうと生徒だよ。
だから教えられる事、全部教える」
「……そうですか」
「で、なんでそんな事を聞くんだいマクスター?」
「………その噂、事実だからです」
「そうかい」
マクスターの返答に、ユーノは興味無さげに呟いた。
「失礼します」
「おう」
ギルガメシュとマクスターは職員室を出ると同時に、顔を見合わせた。
「で、ギル。お前はどうする気だこの事態? 相当マズい事になりそうじゃないか?」
「…………放っとけ」
「おい、ギル」
マクスターが追い付くより先にギルガメシュはさっさと行ってしまい、マクスター1人が残された。
「まったく参ったな……」
そんなマクスターの背中を、叩く1つの手。
「で、昨日何があったんだマクスター? あらいざらい吐かなかったらどうなるか解ってるよな?」
ゼイフェアのニーナ校長以外に対して1度もキレた事が無い筈のユーノ先生が凄まじい怒気を発しているのを、マクスターは6年間の学園生活の中で初めて遭遇した。
「ギル、戻ってこい今すぐ」
夢の中で、彼は笑っていた。
けど、どうして笑っていたのだろう。彼は、もしかしたら、私がこの手で殺してしまったのかも知れないのに。
「――――――ッ!」
セレスティアが目を開くと、見慣れた学生寮の天井が視界に飛び込んできた。
昨夜、戻ってきてからそのまま眠ってしまったのだろう。いや、もしかしたら昨日の事は夢だったのかも知れない。そう思って、身体を起こす。
手にこびりついた、乾いた血糊が、それが現実であった事を語っていた。
「……夢じゃな、かったの…………」
夢じゃない。彼がディモレアの子供である事も。弟がディモレアに殺された事も。そして自分の手で彼を刺した事も。
どうすればいいのか、解らなかった。
「お、起きた?」
部屋の扉が急に開き、ルームメイトのエルフが顔を出した。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
「え、うん……」
「それとさ、何か大変な事になってる」
「……何!?」
セレスティアが慌てて立ち上がると同時に、エルフは一瞬その様子に驚いたがすぐに言葉を続けた。
「うん。君のトコの彼氏がディモレアの子供だったとかで、凄い噂になってる………」
「知ってる……」
「そう? え?」
エルフは思わず耳を疑った。勿論、エルフもセレスティアの事情を知らない筈がない。
なのにどうして、と言いかけて彼の方が秘密にしていたのかな、と思い直した。
「……………それで、どうするの?」
「……どうしよう。ねぇ、私、さ……」
「どうしたの?」
「刺しちゃった」
「え?」
「刺しちゃった。昨日……私、彼刺しちゃったよ……」
セレスティアの言葉に、エルフは思わず「え」と呟く。
「……ディモレアが、敵だって解ってた。だから、ディモレアを刺す筈だった……だったけど………」
「彼が、割って?」
エルフの言葉にセレスティアは頷く。
「その時……ディモレアが彼に駆けよって必死に助けようとして、それで…………私、それで、私、そんな怖い事しちゃったんだって!」
「……………」
「私にもあの子がいた……ずっと側にいてくれたから、あんなお別れが来るなんて思ってなかったけど……けどさ、それだけ大切なものって、彼にもあるんだよ……。
私にとってはあの子の敵でも、彼にとっては大切なお母さんだったんだから…………」
「……………」
「どうしよう、私、彼刺しちゃったよぅ………」
落ち着いて、とか安っぽい言葉なんか言えなかった。
エルフはただ、黙って涙を流すセレスティアの背中を優しく撫でる事しか出来なかった。
「………まず最初ッから説明してもらおうな、テメェよぉ……」
学生寮の一室。即ち、ディアボロスが普段寝起きしている部屋で、殺気が込められたバハムーンの声が響き渡ったのは、その日の昼下がりだった。
バハムーンに殺気をぶつけられた挙げ句、部屋の中心で締め上げられているのはこの部屋の住人の片割れのフェルパーである。
2人部屋の狭い部屋に、ディアボロスと同じパーティを組むバハムーンとフェルパー、そしてディアボロスの女子とクラッズ、フェアリーのパーティ仲間と部屋の主のフェルパー。
そして、その隣室の住人であるエルフとヒューマンの少年までと合計8人がひしめき合う中で部屋の主はつるし上げを食っていた。
「いやだから、俺が聞いたのはこの前の授業参観の時だって。実際来たんだから……」
「いや、それは解ってる。で、問題は何でテメェはそれを黙ってたんだ? ああん?」
バハムーンの言葉に部屋の主は真っ青な顔になり、慌ててフェルパーが仲裁に入った。
「バハムーン、落ち着けって」
「これで落ち着かずにいられるか」
「……そんなに腹が立ったのか? ディモレアの子供だったって事を隠してた事」
「ああ。それを俺らに話してくれなかったっつー事に腹が立つ! 俺ら信じてもらってねぇようなもんじゃねぇか!」
バハムーンの怒声に、パーティの面々もそうだとばかりに頷く。
「……ああ、そっちなんだ」
部屋の主であるフェルパーは彼がパーティの面々に信頼されているんだなぁ、と理解して勝手に頷く。
「で、問題の彼はいまどちらにいるのでしょう?」
「知らん」
口を挟んだエルフに、ディアボロスがそう答えた。
「少なくとも昨夜以降、完全に連絡が途絶えているからな。昨日の事を知っている者がいれば良いのだが」
「俺、聞きまくったけど解んない」
「あたしもー。図書委員のサラも知らないって言ってた」
クラッズの言葉にフェアリーが首を傾げる。
「ええー? サラが知らないなんて珍しいよねー」
「いや、幾らサラでも知らない事ぐらいあるだろ……」
ヒューマンの言葉の後、沈黙が部屋を支配する。
仲間の行方が解らない事が、こんなにも空気を重くするのかと彼らは思った。
「「「「「どこに行ったんだ、あのバカはぁーッ!」」」」」
しかしそれでも。仲間の行く末はわかっていないのだった。
「こんな所で寝てると、風邪ひくよ?」
「……あ?」
太陽が西に傾き始めた頃、パルタクス学園の屋上で寝転がるギルガメシュに、サラはそう声をかけた。
「なんだ、サラか……」
「………昨日の事、というより、彼の事、学校中で話題になってるね」
「らしいな」
「……何とも思わない?」
サラの言葉に、ギルガメシュは視線を少しだけ上げる。
「いずれ、解る事だろうが。それでどうするかは、俺らがどうこうする事じゃねぇだろ」
「でも、彼いないよね?」
「ああ。今、ここにいねぇなぁ」
「…………………で、どうするの? ギルは」
「何をどうするんだ?」
次の瞬間、サラの平手が、ギルガメシュの頬を打った。
「何の責任も無いとでも思ってんの!? このままだと彼、ここにいられなくなっちゃうかも知れないんだよ!?」
「んな事ぁ知ったこっちゃねぇ。あいつが俺に剣向けてディモレアの盾になった以上、あいつは俺らの敵だって事だろうが」
「……そんなの」
淡々と続けるギルガメシュに、サラは震える声で呟く。
「そんなの納得出来る訳ないでしょ!? だって、同じ生徒なんだよ! 同じ学校に通う、仲間なんだよ!?」
たったそれだけの事で、傷つけあう事なんかないとサラは続けたがギルガメシュは興味なさげに空を見ていた。
「……ギル!」
サラが怒りを露にしかけた時、屋上に疲れた顔のマクスターと珍しくこめかみに青筋を浮かべたユーノが顔を出した。
「ギルガメシュ、お前そんな所にいたのか」
「何スか、ユーノ先生」
「お前なぁ……その態度は無いだろ」
ユーノはギルガメシュの頭を軽く小突く。
「相当マズい事になるぞ、この調子じゃ。あの美化委員長……あのディアボロス刺しちゃったって、事実か?」
「事実ですよ」
「……………で、その後は誰も確認してない。そうだな?」
「確認しようがないでしょう」
「お前が蒔いた種なのに収拾つける気あんのかテメェはぁーッ!」
ユーノの強烈な膝蹴りが炸裂し、ギルガメシュは1度宙に舞う羽目になった。
サラは「天罰だね」と呟きマクスターは「恐ろしい」と呟く。
「そもそもギルガメシュ。お前、何で急に襲撃をかける気なんてなったんだ? お前、最近色々と問題起こし過ぎだぞ。美化委員長に一件に然り」
「……………」
「言いたくなければ、と言ってやりたいけどそういう訳にも行かない。つまり……」
ユーノは、ギルガメシュに顔を近づけた。
「全部話せ」
ユーノの言葉に、ギルガメシュは視線を少しだけ伏せると、今よりほんの少しだけ昔のことを思い出した。
まだ、彼が入学したばかりのことを。
「……先生は知らねぇ時期だろうな、まだ俺らが一年のころだ」
ギルガメシュは、ゆっくりとそう呟くと昔のことを思い返し始めた。彼が、初めて恋をした瞬間の日を。
投下完了。
2でのユーノ先生見てると1のころの先生はどこいったんだろうとマジで思う日々。
ついでに王子とギルガメシュ先輩は会わせてはいけないコンビだと思います。
だって王子の命の保障ができなくなるから。
312 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 23:53:19 ID:ry5qvAhb
そこ途切るか!?
なんと言う焦らしプレイ。
GJ!
ギルガメシュが宙を舞う。流石にユーノ先生には勝てないか。
早く2を終わらそう。うん。そうしないと追いつけない。
>>アトガキモドキ氏
まさかのディア子の一人称がボク!
ボーイッシュかと思ったら意外と可愛い物好きのボクっ娘と頼れるお兄さん系の男の話しって大好きだから
読んでてかなりきゅんとしました。そして言葉攻めに弱いディア子が可愛過ぎる・・・
遅れましたが、リクエストに答えてくださってありがとうございます!
>>ディモレアさん家の作者氏
これからのディアボロス君とセレスティアさんが気になる。凄く気になるんですが。ディアボロス君の安否含め。
それにギルガメシュの昔の話も・・・この人にも幸せになってほしいなぁ、とか。
とりあえず、御二方GJです!
お二方とも、乙です。
ここの板では初投下ですが、私も絆の人やディモレアさん家に触発されて書いてみました。
「トトもの2」準拠のラブコメ(エロ有)予定。よろしければ、ご一読ください。
---------------------------------------
『クロスティーニ学園せい春日記』
その1.命の恩人に一目惚れって、ソレってどんだけ〜?
15歳の誕生日を迎えて一念発起した俺は、いつも自分をヘタレと馬鹿にする幼馴染を見返すべく、住み慣れた故郷の町を離れて冒険者養成学校として名高い"クロスティーニ学園"へと旅立った!
一人前の冒険者(ココで"一流"と言わないあたり、自分の器がよくわかってるよな俺)になったら、故郷に帰ってあのタカビー女の鼻を明かしちゃる!
──そんなことを思っていた時期が、俺にもありました。
しかしながら、今の俺は絶賛行き倒れのピンチ!
フッ……やっぱ地図も持たずにこの山道をひとりで抜けようってのが無茶だったか。
戦闘の心得なんかはないけど、故郷でいぢめっ子から逃げ切ることで鍛えられた逃げ足には自信がある。実際、何度か遭遇したモンスター相手でも、すべて無傷で逃げおおせたし。
ただ、そのおかげで自分の現在位置を見失って山の中をさ迷うハメになることまでは計算外だ。持ってきた食糧も尽き、もう二日も何も食べてない。
日が沈んだんで、木の根元に座り込みひと休みしているが、今となっては明朝再び立ち上がる気力が湧いてくるかどうか……。
あ、いかん、なんかこー、意識が朦朧としてきたかも。
「あ、あのぅ、大丈夫ですか?」
まるで銀の鈴を振るような(いや、銀の鈴なんて見たことないけど)音色の声で話しかけられて、目を閉じかけていた俺はノロノロと顔を上げた。
いつの間にか昇っていた満月をバックにして、そこに女神がいた!
あ、いや、女神っつーのはもちろん言葉の綾だけど、要はそれくらい綺麗で可憐で愛らしい美少女がいたと思ってくれ。
「え、えーと……そのぅ」
腰まで伸ばした癖のないスミレ色の髪がサラリと夜風に揺れている。
ルビーを思わせる深紅の瞳には一点の曇りもなく、目の前の行き倒れ(まぁ俺のコトなんだが)の身を案じる慈愛に満ちている。
たぶん、俺と同じくらいの年頃だろう。背は高からず低からず。スタイルは細身だけど、出るところはそれなりに出てるみたい。
少しでもキッカケがあればぜひともお近づきになりたいと切望すること間違いなしな、無茶苦茶俺の好みにストライクド真ん中な容貌と雰囲気の娘だった。
僅かに尖った耳と頭部から伸びた黒い角が、俺と同じ人間──ヒューマン族ではないことを物語っていたが、その時の俺には正直そんなことはどうでもよかった。
この世に生を受けて苦節15年。女の子と縁のない(幼馴染のアレは除く)人生を送ってきた俺にも、ついにラヴ運が!?
だが、そんな俺の口からその時出たのは、情けないことに口説き文句なんかではなく。
「は……腹減ったぁ」
という誠に雰囲気ブチ壊しな一言でしかなかった。
* * *
「……プハァ、ごちそうさん。いやぁ、助かったよ」
「クスクス……お粗末様でした」
窮状を察して快く手持ちの食糧を分けてくれた彼女と、そのツレの少女のお陰で、俺は何とか人心地を取り戻すことができた。
話を聞くと、彼女たちも俺と同じくクロスティーニ学園へ行くつもりらしいので、頼んで同行させてもらうことにした。
「──もっとも、順調に行けば明日の昼には学園に到達できる見込みですが」
OH、なんてこったい。目的地からそんな目と鼻の先で俺は人生の終焉を迎えかけていたのか。それじゃあ死んでも死にきれねーぞ。
とりあえず今晩はここで野宿するということなので、焚火を起こし干し肉をかじりながら、差し支えのない範囲で互いの身の上なんかを話すことにする。
俺を助けてくれた女神様、もとい美少女は、ディアナと言う名前らしい。ディアボロス族の出身で、来月の誕生日で15歳になるとか。
彼女の連れの女性グノーの方は、パッと見、俺達より1、2歳年上に見える。グノーも人形のように整った美貌の持ち主だったが、ノーム族なので外見にあまり意味はないとのこと。
年齢を聞いたら、いつもの無表情が嘘のような笑顔でニッコリ微笑まれたので、慌てて質問を取り消すことにした。
うーむ、やっぱりレディに年齢聞いちゃいかんというのは、種族を問わず不変の真理なんだなぁ。
「はい、ヒューイさん。お茶をどうぞ」
「お、ありがとう、ディアナちゃん。うーん、甲斐甲斐しい女の子っていいなぁ。いいお嫁さんになれるぜ」
「そ、そんな……大げさです」
透けるように色白な肌をポッと赤らめる様が、またGOODだ。
「──それにしても、貴方はディアナのことを避けないのですね」
もぢもぢしている彼女を横目に、グノーが俺に聞いてきた。
「? どーいう事?」
「──もしかして、貴方の故郷というのは、かなり田舎だったり小さな村だったりしますか?」
「うんにゃ。ここから歩いて3日ぐらいの土地だし、大きくも小さくもない中規模くらいの町だと思うけど?」
「──だったら、ディアボロスと言う種族が他種族からどう見られているかくらいは、ご存知ではないのですか?」
「ああ、そのことか」
チラリとディアナに目を走らせると、彼女は寂しそうに俯いている。
「ま、知ってるっちゃ知ってるけど。でも、それがどーしたってんだ。俺は、自分の命の危機を救ってくれた恩人を差別するような、人間の屑になる気はないぜ?」
ニッと、ディアナとグノーのふたりに微笑んでみせる。
「それに、俺が小さい頃よく遊んでもらった兄貴分みたいな人も、ディアボロスだったけど、スゲェいい人だったからな。
逆に、一般に善良と言われてるセレスティアにも、とんでもねーヤツがいることも身をもって知ってるし……」
高笑いする腐れ縁の幼馴染を思い浮かべて、背筋に寒気が走る。
「だから、○○って種族だからってだけで、人をひとくくりにするのは正直あまり意味ないと思うぞ。むしろ、男なら誰だってディアナちゃんみたいな美人とお知り合いになりたいに決まってるって!」
一般論に見せかけつつ、俺としては一世一代の告白……のつもり。や、もちろん、真意が伝わるなんて期待しちゃいねーけどさ。ヘタレだよな、俺。
「あ……」
それでも、俺の言葉の何かに感激してくれたのか、ディアナの目が涙で潤んでいる。大方、ディアボロスってだけで色々差別されて辛い目にあってきたんだろうなぁ。
「──大変に興味深い人ですね、貴方は」
相変わらず殆ど表情を変えていないが、グノーさんの声に呆れの成分が混じったことはわかる。
「そうだ! もし差支えがなかかったら、ふたりとも学園についたら一緒にパーティ組んでくれないかな?」
ちょっとしんみりした空気を変えようと、俺は声を張り上げた。
「──私は構いませんが……」
チラとディアナに目をやるグノー。
「えっと……折角仲良くなったヒューイさんと一緒に冒険できるのは、とってもうれしいんですけど……ホントにいいんですか、わたしなんかと組んで?」
まぁ、確かにディアポロスのいるパーティとあっては、加入したがるメンツが多少減るかもしれない。
しかし、それでも、俺としては彼女と共にいたいという気持ち方が強かった。
会った早々で"恋"だの"愛"だの言うのはイタ過ぎるかもしれないが、少なくとも「一目惚れ」くらいは言っても罰は当たらないだろ?
容姿も性格も雰囲気も好みにドンピシャな女の子に出会って、しかも冒険を共にする仲間になれるなんて幸運は、人生の中でもそうそうない奇跡的な出来事なんだし。
最初は、まずお友達ならぬ仲間から始めて、戦友、親友と進み、やがては公私両面でのパートナー、恋人を目指すのだッ!」
「──ヒューイさん、最後の方、思考が口からだだ漏れですが」
!?
「あ、あのぅ、俺、どこから口に出してました、か?」
「──「会った早々で〜」ぐらいからでしょうか」
やべぇ……。
恐る恐るディアナの方を見ると、先ほどとは比べ物にならないくらい真っ赤になって、フラフラしてる。
「え、えーと、その……ディアナ、ちゃん?」
「は、ハイッ! にゃんでそう?」
あーあ、噛んで口調がフェルパーみたくなってるよ。
「俺の正直な気持ちは、聞いたとおりだ。正直、君とお近づきになりたいという、冒険者としては不純な動機もあるけど、それでも俺を仲間に入れてくれるかな?」
真剣な目をして問いかける俺の姿に、やや落ち着きを取り戻したのか、スゥハァと深呼吸するディアナ。
「構いません。と言うより、大歓迎です! あの、仲間としても、その、お友達としても、今後よろしくお願いしますね」
「──ディアナに異論がないなら、私も構わない。よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ」
焚き火を前に俺達は互いに堅い握手を交わしあったのだった。
「──ところで、ディアナ。さっきの貴女の挨拶には少し不適切な点が」
「え? そ、そう?」
「いや、グノーさん、俺、別に礼儀とかそんなの気にしないから」
と言う俺の言葉をあえて無視するように、グノーがディアナに何か囁いている。
「……ほ、本当に、それ言うの?」
「──古来からの習わしです。初心者の場合、こういうことは形から入るのが鉄則でしょう」
「う……確かにそうかも」
グノーに諭されたディアナが、俺のほうに向き直ると、いきなり草の上に正座し、三つ指ついて頭を下げる。
「ふつつか者ですが、以後よろしくお願い致します」
グハッ! に、新妻モード……は、破壊力が高すぎる……!
「──いい挨拶です♪」
口元をニヤリと歪めるグノーに、俺は再び意識が遠くなりながら、万感の思いをこめて「GJ!」と右の親指をサムズアップすることしかできなかった。
<つづく>
以上です。次回は学園について実際にパーティを組むまでです。Hは、2話の終わりか3話頭に入る予定。よろしければおつきあいください。
*ヒューイ
ヒューマン・男・中立/普通(→ガンナー)
筋力と速さが高いが、知恵・精神が普通、生命力と運が低いというビミョーな数値の少年。本人いわく「子供のころに大病して体を壊したせいで体力がない」んだとか。
基本的にはお人好しな単純バカ。ただし、既成の常識や権威より、自分の目で見たものを信じる傾向がある。
同年代の人並み程度にはスケベだが、奥手なので女性とつきあった経験はない(実は幼馴染が妨害していたのも一因)。ただし、学園に来てからはディアナに首ったけで、彼女とラブラブな交際を続けている。
※イメージは、「人間・男・普通科」の少年を少し痩せて小柄にした感じ。髪の色は焦げ茶。
*ディアナ
ディアボロス・女・中立/アイドル(→人形遣い)
ちょっと内気だが、優しく礼儀正しく聡明な女の子。ただし、少々天然気味。
ディアボロスでありながら、速さと運が16と高く、その他もすべて12以上と高め。
実際、その角がなければ、誰もディアボロスとは思わないほど、奥ゆかしく好印象な女性で、学園内には隠れファンも多い……のだが、本人は気付いておらず、ヒューイ一筋。
※イメージは、「ディアボロス・女・人形遣い」の娘の肌を同アイドルの娘と同じ健康的な色にした感じ。目線もいくぶん柔らかい。
*グノー
ノーム・女・善/レンジャー(→錬金術師)
経歴不詳のノームの女性。ボディはハイティーンの美少女のものだが、実年齢は不明。ディアナの母親に恩義があるらしく、彼女に付き添って学園に来た。
現在のレベルはヒューイたちと一緒だが、どこからか多様なアイテムを調達してくるなど謎が多い。回復魔法が使えるので、少なくとも普通科経験者であることは確実。
※イメージは、「ノーム・女・普通」。ただし、足元は黒ストではなくアイドルみたいな黒ニーハイ&戦士っぽいロングブーツ。
ヒューイ……何故かの誰かを思い出したよ
GJ
乙です
主人公の外見コッパみたいな顔したスポーツ狩りのヒューマンしか浮かんでこないんだぜ・・・・
しかしヒューマンのノリがとても好みだw続き楽しみにしてます
>>ディレモアさんちの作者さん
ディアボロスがパーティーのメンバーにちゃんと心配されてて何だか安心した。
そういえばライフゴーレム達はディレモアと暮らしてたみたいですが、この話のライフゴーレム達は学校には行ってない感じですか?
とりあえず続きを全力で楽しみにしてます。
>>317氏
幼なじみに今からwktkが止まらない・・・www
ディアナも可愛いけどノームのお姉様が良い感じです
こちらも続きをを楽しみにしてます。
間違いなく幼馴染のセレスティア(多分前衛系)が後追ってくるだろコレはwwwww
そしてディア娘と鞘当て開始だな!
面白かったです、GJ
パーティー内の結束を高めるためにディアナ主催でお食事会が企画されるものの、
折り悪く三人参加限定依頼が舞い込んできてしまう。
ヒューイを巡って対立するディアナと幼なじみセレスティアだが、料理の練習で絆創膏だらけのディアナの指を見て一人で依頼を果たそうとする…
あれ?なんでこんなシーンが頭に浮かぶんだ?作者さんマジで続きを早めに頼んます!
>322
巨乳フェルパー参戦ですね、分かります
「剣士モード解除、ビーストモード、始動……ッッ!!」
優しく礼儀正しく聡明なディアナ……様
もうよしなにしか浮かばない
326 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 21:42:33 ID:GugNQxQD
あれ、いま御大将がクロスティーニ学園の制服を着ているのが見えたが、気のせいか。
最近このスレ盛り上がっていい感じですね。
最近の流れのせいでディア子の株が急上昇中。ディア子可愛いよディア子!
さてパネェ先生続きモノ書くか別のネタ書くか拙者もディア子に走るか・・
皆さま、感想や期待のコメントありがとうございます。
ちょっと長くなってしまいましたが2話を投下させていただきます。
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『クロスティーニ学園せい春日記』
その2.お〜きくなった〜らなんに〜な〜る?
「──とりあえず、クロスティーニ学園まで来ることができたワケですが……」
ディアナとグノーに出会った翌日の午後、俺達3人は無事に学園にたどり着いていた。
「──私たちがパーティを組む以上、入学手続きに際してひとつ注意することがあります」
学食のすぐ外のカフェテリアみたいになった場所で、俺とディアナを前にして、グノーがちょっとしたレクチャーをしてくれている。
……つーか、わざわざ眼鏡(たぶん伊達)まで、どこからともなく取り出してかけてるあたり、何気にノリノリだな、ヲイ。
「それって、前衛と後衛のバランスのこと?」
ちょこんと首を傾げるディアナ。あいかわらず抱きしめてお持ち帰りしたいほどの可愛らしさだ。
「──その通り。では、ヒューイくん、前衛として主に活躍する学科を4つ挙げてください」
いきなり指示されたものの、このノリなら多分来るだろうと思っていた俺は慌てない。
「ハイハイ、えーと……戦士、格闘家、剣士。それと……忍者かな」
「──正解です。それ以外に種族固有の狂戦士や竜騎士などもありますが、当面は考えなくてよいでしょう。それで、ヒューイくんはどの学科を選択するつもりなのですか?」
うーん、俺の場合、力と素早さは人よりかなり秀でてるんだけど、逆に生命力と幸運がり低めなんだよなぁ。
個人的な好みで言うなら、魔法使い系より武器で戦うほうが性にあってるとは思うんだけど、戦士にしてもレンジャーにしても不安材料があるし。
「──ふむ。意外に自分のことを把握してるのですね。ちょっと感心しました。それでは、当面は普通科を選択してみてはどうでしょう?」
グノーの俺に対する評価の低さは(深く考えると悲しくなってくるので)さておき、普通科というのは、実は俺も考えていたところだ。
自分で言うのも何だけど、器用貧乏な俺にはそれが一番無難な選択だと思うし。装備次第で前衛にもなれるというのも悪くない。
「うっし。ねーちゃん、俺、普通科の星になるよ!」
「──それでは、次にディアナの学科なのですが……」
……はいはい、スルーですか、そうですか。
いぢける俺を尻目にゴソゴソと傍らのカバンを探って何やらスケッチブックを取り出すグノー。
「──すべての能力が中の上以上ですから、この学園でディアボロスが選択できる学科は、忍者以外どれを選択することも可能です」
ペラリとスケッチブックをめくると、そこには玄人はだしの達筆な絵柄で学園の制服を着たディアナのスケッチ画が描かれていた。
なになに……"ディアナ・普通科(想像図)"……って、ちょっと待て。
「い、いつの間にそんなもの描いてたんですか、グノー?」
温厚なディアナもさすがに、ちょっと引いている。
「──まぁ、隙を見て」
隙!?
「──間違いました。暇を見つけてはコツコツと」
ジーーーーーーッ。
俺達ふたりの疑惑の視線を受けて、流石に少し気まずくなったのか、コホンと空咳をするグノー。
「──私個人としては、この"ディアナ・人形遣い"も捨てがたいのですが、人形遣いはどちらかと言うとある程度中級以上になってからの方が役立つクラスです。
そこで! 私がオススメしたいのはこの"ディアナ・アイドル"ですね」
何枚かパラパラとめくったところにあるのは、いかにもそれ風なファッションに身を包んだディアナの姿を描いたスケッチだ。
ゴスロリ風のミニワンピースを着て、手には長手袋、足にはハイソックスを着用。そのいずれも黒を基調に白いレースがふんだんに使われている。
髪型は細いリボンでツーサイドテイル……俗に"ツインテール"とも呼ばれる形にまとめられ、その上にメイドさんでおなじみの白いヘッドドレスを着けている。
兎のぬいぐるみを抱きしめて、恥ずかしそうにしている様は、ディアナの個性をうまく表していると言えるだろう。
ハッキリ言って、滅茶苦茶似合っていた。
「グノーさん」
「──はい」
「同じく、賛成!」
「──はい。では本件は賛成2、保留1で可決されました」
「え? え? コレって多数決で決まるの!?」
可愛らしくうろたえるディアナの肩をポンと叩くグノー。
「……もう、決まったことなんです」
「い、いや、でも本人の希望もきいてほしいって言うか……」
「──ディアナ。私たちはパーティ、すなわちチームとして戦うことを誓いました。最初に言ったでしょう? チーム全体のことを考えて学科を選択しましょう、と。"One for All"の精神ですよ」
「その言葉の後ろには、"All for One"と続くんじゃないかしら!?」
美少女ふたりのじゃれ合いと言うのは心和む風景だったが、このままではラチがあかないよなぁ。
「ディアナちゃん、そんなにアイドルになるの嫌か? 可愛いし絶対似合うと思うんだけど」
「え? あ、あの嫌というワケではなく、恥ずかしいって言うかですね……」
真っ赤になってうつむきながら、両手の人差し指をツンツンと合わせているディアナ。
あ〜、もぅ、どうして素でこんなに萌える仕草をしてくるかなぁ、この娘は!
「──つけ加えますと、ディアナは特に、生命力と幸運の能力が高い。それはまさにアイドル向けと言えるでしょう。また、アイドルはMP、いわゆる魔力の伸びも早いので、のちのち魔法を使う学科に転科する際に有利とも言えます」
「だってさ。どうする、ディアナちゃん?」
しばし躊躇していたものの、キッと顔を上げて俺の方を見返してきた。
「ヒューイさんは、本当にわたしにあんな可愛らしい格好なんかが似合うと思いますか?」
「ああ、もちろん。少なくとも俺なら、惚れ直すこと請け合いだな」
その言葉にポッと顔を赤らめたディアナは、やがて蚊の鳴くような声で「じゃあ、やってみます」とつぶやいた。
* * *
さて、そんな風に騒いでいるところを、オリーブとかいうヒューマンの女の子に聞きつけられて、俺達は入学式の行われる講堂に連れて行かれた。
式と名前のつくものでの校長先生のお話とゆーやつは長いと相場が決まってるんだが、この学校の校長は意外とお茶目な人柄らしく、アバウトに切り上げてくれたんで助かったな。
まぁ、クラス担任がいかにも厳しそうな男の先生だってのは確かにあまり嬉しくはないが……オリーブみたく暴れるほどじゃないだろう。
コッパは隣りのクラス担任のパーネ先生に憧れてるみたいだけど、俺はどうも上品なセレスティアの女性は苦手だしなぁ。まぁ、あくまで個人的な経験上だけど。
職員室で学科を選んで入学手続きを済ませ、制服を受け取って寮の部屋で着替えてみる。
「ふむ、これはなかなか」
まぁ、ありふれたブレザーとスラックスなわけだが、やっぱ新しい制服ってヤツは、こー身が引き締まるってゆーか。
「そぉかぁ? ワイはどぅも、こういう堅っ苦しいカッコは苦手やのぅ」
と、いきなり上着の前を全開にして肘まで袖をまくり、ベッドの上でグテーーッとしてるのは、俺と同室のルーフェス。
ピンと頭から突き出た耳を見ればフェルプールなのは一目瞭然だが、野生味のカケラも感じさせないダラケたヤツだ。
これで格闘家志望ってんだから、世の中をナメてるとしか思えんなぁ。
「いやいや、生命力と運が9で冒険者を目指す物好きな人間もおるご時世やからのぅ」
「フッフッフッ……言うじゃねーか」
と、凄んでは見せたものの、こいつがそう悪いヤツじゃないことは、何となくわかる。
そーいや、俺達のパーティ前衛が足りてないよな……と思いだした俺は、ダメ元で誘ってみたところ、アッサリOKをもらうことができた。
「そや! ワイの連れに魔法使い科のモンがおるんやけど、そいつも誘ぅてエエか?」
ああ、そうしてもらったほうが助かるしな。
「ほな、早速声かけてくるワ」
じゃあ、俺もディアナ達にそのことを報告してくるか。
* * *
で。
女子寮の部屋を訪ねてノックしたところ、「どうぞ」と返事があったんで、ドアを開けたんだが……。
目の前には、制服を半脱ぎ(いや、着てる途中だから"半着"というべきなのか?)状態の、肌もあらわな女性の姿が。
「──きゃー、ひゅーいさんのえっちー」
いや、そんな風に棒読みで悲鳴(?)をあげられても。
「……何やってるんスか、グノーさん?」
目の前の女性がディアナではなかったのは、幸運と見るべきか不運と言うべきか。
もっとも、意中の少女でなかったとは言え、相手も知り合いの妙齢?の美女。
本当なら慌てて目をそむけるべき局面なんだろうけど、照れるでもなくモゾモゾ着替えを続けられてては、意識する方がバカらしくなってくる。
「──それでは、しばしお待ちを」
いやいや、だからって、ワザワザ俺の方向いてスカートの中見せながらストッキング履かなくていいですから!
「──黒ストはお嫌いですか?」
いえ、どっちかっつーと好きですけどね。で、改めて聞きますけど、何してるんです?
「──着替えです。それとも、貴方を誘惑してディアナと私と貴方の泥沼の三角関係を構築しようとしているように見えますか?」
ちょ……シャレにならんこと言わないでください!
「……冗談です(チッ)」
チッつった! 今この人「チッ」って言ったよ!?
「──空耳です。それで、何か御用があったのではないですか?」
「ええ、まぁ。ひとつは、パーティの仲間のアテがふたりほどできましたよ」
「──学科と種族は?」
「格闘家と魔法使いですね。ひとりはフェルパーの男で……もうひとりは何だろ?」
しまった。ルーフェスに聞いときゃよかったか。
「──ふむ。フェルパーですか。最悪ではありませんが、良くもないというところですか」
「ああ、ディアナちゃんとの相性ですか……」
確かにディアボロスと相性がいい種族って限られるからなぁ。……つーか、そもそも相性が「良い」と言い切れる種族っていないんじゃなかったっけ。
「──貴方があの娘を愛妾にしてくださるなら、問題の大半が片付くのですが」
「わはは、そーいうオヤジギャグは勘弁してください」
大体俺としてはお妾さんなんかじゃなくて、ディアナちゃんとはキチンと交際して結婚し、暖かな家庭を築くのが目標なんスからね。
「──本気ですか?」
さすがに、ディアナのお姉さん代わり……だよね? まさか母親代わりじ(ギロリ)……いえ、何でもないです。と、ともかく、姉代わりな貴女にまで、冗談でそんなことを言いませんよ。
「ま、とりあえずはお友達から始めて、しばらくしたらデートにでも誘ってみるつもりですけどね」
「──なるほど。……だ、そうですよ、ディアナ」
へ?
あ、壁際に置かれたタンスがガタガタ揺れたかと思ったら、中からディアナが転げ落ちて来た!
「な、なんでバラしちゃうんです、グノー!?」
例のスケッチ同様、ゴスロリなミニのワンピースに着替えている。ああ、こりゃ、眼福眼福。
「──いえ、男女間の恋愛の機微で、こういう盗み聞きのような真似はフェアではないと思いましたので」
と、澄ました顔でのたまうグノー。
何でも、俺がノックしたときはふたりとも着替えの最中だったのに、グノーが「どうぞ」と返事したので、ディアナは慌ててタンスに隠れたらしい。
……そーいや、ドレスの背中のボタンがいくつかはまってないよーな。
「ですが、よかったではないですか。彼は、私の見たところ、誠実さA、誘惑耐性A、家庭志向度A、将来性B+といったなかなかの優良物件です。まぁ、ヘタレ度もBと決して低くはありませんが、そのへんはこれから女の側が教育していけばすむことです。
それに第一、貴女の方も彼のことを憎からず思っているのでは?」
「そ、それは…「それは本当っスか、グノーさん?」 ヒャッ!」
割り込んで尋ねる俺の勢いに、ディアナが小さく悲鳴をあげる。
「あ、ごめん、ディアナちゃん」
「いえ、わたしこそ、結果的に盗み聞きする形になってしまって……」
申し訳なさそうに頭を下げる彼女の顔を見ていると、ついさっきまでのテンパった脳ミソが、一気にクリアーになっていくのを感じる。
そーだよなぁ。こういうコトは他人の口からじゃなく俺本人がディアナ本人に直接聞くべきことだよな。
うし、覚悟を決めろ、ヒューイ。分の悪い賭けは嫌いだけど、状況はそれほど絶望的ではなさそうだし。
「じゃあ、俺からひとつ質問。俺は、前にも言ったとおり、ディアナちゃんのことが好きだ。今すぐでなくてもいいから、恋人になってくれたらいいな、と思ってる。
で、現時点でのディアナちゃんの正直な気持ちを聞かせてくれないか?」
ふぅ〜、言いきったぞ。よくやった、デカした俺! さて、彼女の答えは?
「え、えーと……その……」
俺の告白に真っ赤になったディアナだが、それでも何とか答えを返そうとしているのは、彼女の誠実さの表れだろう。
「わたし、も……ヒューイさんのことは嫌いじゃありません。いえ、たぶん好きだとは思います。でも、まだ会って2日しかたってませんから、恋人になれるかと言われると、ちょっと自信がないです」
や、まぁ、確かに妥当な結論だろう。出会った瞬間に運命を感じる俺のほうが、むしろ「どんだけ少女漫画なんだよw」って感じだし。
「そっか。うん、今はそれで十分だよ」
ポンポンとディアナの頭を軽く撫でて部屋を出ようとした俺の上着の裾を、ギュッとつかむディアナ。
「で、ですから、ちょっと卑怯な言い方かもしれませんけど、友達以上恋人未満の、その、"ボーイフレンドとガールフレンド"から始めませんか? わたし、今まで"ボーイフレンド"と言える人がいたことないですから、うまくやれるかわかりませんけど……」
!
「うん、ありがとう。ディアナちゃんの初めてのボーイフレンドになれるなんて光栄だよ」
小躍りしたい衝動を押えて、極力優しく微笑んでみせると、ディアナはパアッと花が開くような笑顔を浮かべてくれた。
「あ、あのっ、では、ふつつかものですが、よろしくおねらいしましゅ」
あ、また噛んだ。どうやら、ディアナは緊張が極限に達すると口調が乱れるらしいな。……なんか可愛い♪
「いえいえ、こちらこそ。それとその挨拶、2回目だから。あんまり頻繁にやると有難みが薄れるから、3回目は俺ん家に嫁ぐ時までとっとこーな」
「ハイッ! ……あ」
肯定すると言うことがどういう意味なのか気づいたのだろう。先ほどにも増して茹で上がったように赤くなるディアナ。
グハッ……萌え尽きたぜ、真白によぅ。
……アレ? どうしたんです、グノーさん。いそいそとドアの外に出てこっちを覗き込んで。
「──いえ、話が弾んでいるようですので、あとは若い者同士でしっぽりと」
いや、「しっぽりと」じゃなくて!
「──ぬっぷりと、ですか? それともぬぷぬぷと?」
いやいやいや、その擬音の意味、わかるよーな気もするけど、わかんないから!
外から鍵かけないで! ふたりにしないでーーーーーッ!
* * *
「ふぅ、あのままでは、危うく取り返しのつかない過ちをおかすところだった……」
「──いえ、責任とっていただければ過ちにはなりませんよ? それに和姦なら"犯す"とは言わないのでは」
「わ、わか……」キュウ〜〜。
「こらこら、ウブで可憐な乙女がいるんだから、滅多な発言はやめなさいって」
ディアナが目を回してるじゃねーか。ほんっと、今どき珍しいくらいの純情可憐な娘さんだなぁ。いや、もちろん「むしろ、ソコがイイ!」んだけど。
「──まるで、私が百戦錬磨で酸いも甘いも噛み分けた年増女のような言い草ですね。これでも殿方を知らぬ生娘ですのに」
ええっ!? ゴメン、正直意外。グノーさんって……え〜と、ホラ、大人っぽいから。
「──失敬な。これでも開発度0%の無垢なる処女ですよ
……ボディは」
「そーゆーオチかいっ!」
あ〜、これって相手がノーム族だからこそ成り立つギャグだよなぁ。
「──それはさておき。ヒューイさんは、先ほど「ひとつは」とおっしゃってましたが、それなら他にも用事があったのではないのですか?」
ああ、そういやそだっけ。
「ん〜、いやね。俺、グノーさんがどけの学科選択したか聞いてなかったからさ」
俺達3人にルーフェスたちふたりを加えて5人。パーティメンバーはあとひとり余裕があるけど、どういう学科の人間を勧誘するべきか考えないといけないし。
「──なるほど。一理ありますね。私の職業はご覧のとおりです」
いや、ご覧のとおりったって、アイドルのディアナみたくドレス着てるわけでもないし、忍者みたくマフラーしてたり、人形遣いみたく人形背負ってるわけでもねーし……もっとも、ノームは後のふたつにはなれないけどさ。
……と言うか、大概の学科は学園の制服の上に防具付けてるだけなんだから、今の段階じゃわかんねーって。
「──ふむ。言われてみれば確かに。私は、今回はレンジャーを選びました」
その「今回は」って台詞が気になるけど……ま、いいや。レンジャーってことは、後衛か? 確かに盗賊技能持ちは必須だよな。
でも、確か女子のレンジャーってスカートじゃなくてショートパンツを履いてたような気がするんだけど?
「──あれは邪道です。そもそも、前衛に立ちもっとも激しい動きをするはずの戦士系の各学科が皆制服のスカートを履いていると言うのに、なぜにレンジャー科の女性だけがショートパンツを履くのでしょう?
後衛だって同じです。魔法使いが魔法をバックファイアしたり、人形遣いが人形の操作を誤ったり、アイドルが触手系のモンスターに襲われたりと、常にスカートの中を外部にさらされる危険はあるのです!」
「いや、最後のは、ねぇって! エロエロな漫画か小説の読み過ぎだ」
「わ、わたし、エッチなモンスターに襲われちゃうんですか!?」
「──そうです。ですから、初めてくらいは好きな殿方に捧げておく方が……」
や、頼むから、ディアナにヘンなコト吹き込むのはやめてください。
「ヒュ、ヒューイさん、魔物に貞操奪われるくらいなら、いっそ……」
「だーかーらー! 嬉しいけど、ほんっとうれしいけど! ディアナちゃん、軽率な発言は自重しなさいって。俺が自制心を保てるうちに!!」
「──ふむ。誘惑耐性A+と。なかなかの精神力ですね。見直しました」
あ〜、もうグダグダだよ。
「──故に。私は抗議の意味も込めて、レンジャー科に在籍中も、制服のスカートで通そうかと思う次第です」
はぁ、そうスか。ま、一男子としては、ミニスカの方が目の保養になってうれしーですけどね。
「──見つめ過ぎです。このフェチ!」
言いがかりだぁ!!
ディアナちゃんも、対抗心燃やしてパンチラしようと葛藤しなくていいから! だいたい、グノーさんは、俺達のこと真顔でからかってるだけなんだし。
「(──あながちそれだけでもないのですけどね)」ボソリ
<つづく>
----------------------------------------
以上です。うーむ、この調子だと、Hシーンは第三話の終わりくらいになりそう。
ちなみに、皆さんの予想通り、3話には、あの子が登場予定です。
できれば連休中に投下したいと思います。
333 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 04:33:02 ID:039c8zPv
GJ!!
グノーさん暴走しすぎww
読んでる間ニヤニヤが止まらないwww
アイドルディアボロス・・・自分と同じですね。でも一つだけ決定的な差があります。
性 別 が 真 逆 と言う事。
・・・後悔なんてしてませんよええ。これでも一度は桃源郷を目指した身ですから。
第三話、ついに出てくるのか、幼馴染が!!!
楽しみだ!!
特にディアナと会った時の反応が!
第三話、楽しみにしてます!
幼なじみのセレスティアが、ヒューイとディアナが仲良くしてるのを見て嫉妬
→「どうしてディアボロスなんかと・・・」→ヤンデレ化 という展開が浮かんだ
・・・修羅場・三角関係スレに帰るか・・・
ノム娘さんはフェル男君orその相棒と良い仲になるのか
それともディア娘さん一筋wなのか
茶化すためにセレ娘・ディア娘・ヒュマ男と泥沼の四角関係にするのか
それが密かに楽しみですw
純情で陽性なディアボロスって存外に良いな…
本人は人気者の素質を持ってるのに
産まれのせいで忌避されがちとか俺のツボすぎる
「学園日記」の3話、難産でした。しかもHは無理やりの後づけ方式。とりあえず、よろしければお読みください。
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『クロスティーニ学園せい春日記』
その3.熱血のウォブル
懸念していたディアナたちと、ルーフェスたちの対面だが、予想に反して案外うまくいった。
「それでは、今後はパーティの仲間として、よろしくお願い致しますね」
「はぁ……こちらこそよろしゅぅに」
ニッコリ笑ってペコリとお辞儀するディアナの様子に、ルーフェスは呆気にとられたかのように反射的に頭を下げてる。
「……なぁ、ヒューイ」
ツンツンと脇腹をつつかれた。
「ん? どうかしたか?」
「自分、パーティのツレは中立属性のディアボロスや言うてへんかったか?」
「ああ。それが?」
「どこがやねん! どう見たって善属性のハーフエルフやないかい!」
「いや、頭にちゃんと角があるだろーが。それに生徒手帳も見せてもらったけど、確かに中立属性だったぞ?」
学園に入学すると支給される"生徒手帳"。一見ただの手帳に見えるこれは、実は歴としたマジックアイテムで、持主の体力・魔力・能力値といったパラメーターや属性その他がキッチリ数値化されてわかる代物なのだ。
「はぁ、さよか。世の中不思議と理不尽に満ちとるのぅ。あないなエエ娘が……」
確かに、世間一般の"ディアボロス"という種族に対する偏見からは、180度かけ離れたお嬢さんだよなぁ。
「……やらねーぞ。あの娘は俺ンだ」
「安心せぇ。ワイには既に心に決めた女性(ひと)がおるさかい」
む。それは確かに有難い。
ディアナみたいな優良物件だと、ほかの男性からもターゲットにされること間違いなしだが、やはり同じパーティに属しているというのは大きなアドバンテージだ。
その点、今んところ、ウチのパーティの男は、俺とルーフェスだけだからな。ルーフェスがライバルになる気がないというのは助かる。
……待てよ。そうなると、6人目は女の子のメンバーを探すほうがいいってことか。
俺が「むむむ」と首を捻っている横で、グノーが、ルーフェスが連れてきた魔法使いと話をしている。どうやら旧知の間柄らしい。
「──しかし、まさか貴女と一緒に戦う日が来ようとは」
「ワシもお主とこんな形で再会するとは思いもよらなんだわ。まっこと、人間万事塞翁が馬よのぅ」
いやに古めかしい言葉遣いをしているのがルーフェスのツレの魔法使い。80歳を超えた皺くちゃのばーさん……ではなく、特注の学園女子制服を来た可憐なフェアリーの女の子だ。
身長はおおよそ俺の鳩尾よりちょい上、ヒューマンで言うと10歳児くらいか? フェアリーにしては大柄だけど、この種族の特徴か、いかにも可愛らしい美少女といった顔立ちをしている……ディアナには負けるけどな!
「ホホホ、言ぅてくれるのぅ若僧。まぁ、それも恋は盲目な年頃故、無理もなきことじゃが。お主がこのパーティのリーダーかえ?」
えーと、そう言えばリーダーとか決めてなかったよーな。
「わたしは、ヒューイさんでいいと思いますけど」
「──上に同じ」
「エエんとちゃうか。ちなみにワイはやらんで? 面倒そうやし」
「ふむ。婿殿がよいと言うならワシにも異論はないが」
いかにもおまいら適当だな、ヲイ……ってムコぉ!?
「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったかえ」
ニヤリと微笑むフェアリー少女(?)。いつもの浮遊をやめてフワリと床に降り立つと、スカートの裾(特注だけあって膝下2センチくらいの長さがあるのだ)をつまんで、優雅に一礼する。
「我が名はフェリア。フェリア・タイターニア・イオランテ・ル・フェイ。そこなルーフェスと許婚の契りを交わせし者よ。以後お見知りおきを」
ええっ!? 許婚って……フェリアの娘さんとかとじゃなくて本人とかよ?
「──そこが突っ込みドコロなのですか?」
や、だってグノーさんと旧知の仲ってことは、このロリっぽい妖精さんも見かけによらず、相応の……ヒィッッ!
「洞察力はなかなかじゃの。しかし、淑女の年齢を詮索するのは感心せぬな」
「御免なさい、もう言いません、勘弁してください!」
バッと床に這いつくばって土下座する俺。ああ、我ながらなんたるヘタレ。
いや、だって、あの時のフェリアの視線からは「そんなに死にたいのか、虫ケラ?」って殺気がビンビンに伝わってきたんだぜ?
国レベルで二桁も習得者はいないと言われる超上級魔法イベリオンでもブチかまされるかと思った……。いや、そんなわきゃないんだが。
「ふむ。危険に対する勘もまずまずか。確かにリーダー向きの逸材かもしれぬな」
え、えーと、もしかして、習得なさってるんでしょーか、イベリオン?
「安心せい。今のワシは一介のレベル1魔法使いに過ぎぬ。それ相応の力しか振るわぬよ。でなければ婿殿の鍛練にならぬでな」
……たはは、使えるんですね、やっぱ。
「──(ゴホン)聞いてのとおり、フェリア殿は熟練の呪文使いです。先ほどおっしゃられたように、自らに枷を課しておられるようですが、それでも私たちの冒険の大きな助けとなってくださることでしょう」
あのグノーが"殿"づけ&敬語! やっぱり、凄い人、いや妖精ってコトかぁ。
「いやいや、グノーよ。ワシもこのパーティの一員となったからには仲間として対等に話してもらって構わぬよ」
「──そ。じゃあ、よろしく」
いきなり軽いなぁ、ヲイ!?
ま、いーや。一連の騒ぎのおかげで、まだ一度も冒険に出てないにも関わらず、この5人のあいだに妙な親近感ができたみたいだし。
そう思えば、俺が土下座した甲斐も……いや、やっぱディアナの前でああいう醜態をさらしたのはマズいか。
チラリと彼女の方に視線をやると、きょとんとした顔で俺を見返し、ホニャッと微笑ってくれた。
ああ、ちくそー、メンコイなぁ、この娘は!
「まぁ、フェリアにあんな暴言吐いて黒焦げにされんかっただけでも、御の字ちゃうか」
「ルーフェスか。そーすると、お前さんが言ってた女性って……」
「お、おぅ、そぅや! ま、フェリアはワイのこと気に入ってくれとるみたいやけど、現状では釣り合わんコトは百も承知しとるさかいな」
少しでも彼女の隣りにいるのにふさわしい男になるために、この学園に来たのだそーな。
確かにロリババアで巨乳美人(純粋な身長比率で考えると、人間換算でEは堅い)な超一流の元賢者を嫁さんにするのは、一介のフェルパー風情では荷が重そうだもんな。
俺としても、冒険で腕を磨きつつディアナのハートをげっちゅうwすると言う目的があるのだから、その気持ちはわからんでもない。
「がんばろーぜ、お互い!」「おぅ!」
ガシッと、腕を握りあう俺達。
「「めざせ、"冒険者として功を為しつつ美人で可愛い嫁さんをゲットするぜ"計画達成!」」」
ふたりの漢の心が通い合った瞬間だった。
「ねーねー、アレ、何してるのかな、グノー?」
「──ま、やる気を出してくれたのはいいことですしね」
* * *
「あのぅ、ところで、あとパーティにはあとひとりメンバー枠があるわけですけど、どうしましょうか?」
それなんだよなぁ。
現状、普通科の俺が前に出るとしても、格闘家・普通科・レンジャー・アイドル・魔法使い……という構成だから、できればもうひとり前衛がほしいところだ。
お、鴨ネギ来たーーーッ!
「なぁ、オリーブ、この時間でココにいるってことは、ひょっとしてまだパーティ……」
「ああ、何だパーティメンバー探してたんだね。残念でした、私はもう別のパーティに入ってるよん」
チッ、そう上手くはいかねーか。
「あ、でも6人目になる予定の生徒の到着が遅れててね。ここ2、3日は暇だから、そのあいだ1、2回なら冒険につきあってあげてもいいよ?」
「本当か!?」
それでも助かるな。
「そやな。幸いオリーブも普通科みたいやし、前衛は務まるやろし」
「うむ。パーティのコンビネーションを確かめつつ、真に必要な人材を模索するには丁度よいかもしれぬのぅ」
ルーフェスたちも頷いている。
「いいんですか、オリーブさん?」
「いいっていいって、ディアナ。困った時はお互い様だし。ま、その代わりパーティ抜けるときは稼ぎの6分の1は分けてね」
そりゃまぁ、妥当な意見だよな。もっとも、レベル1パーティが1、2度冒険に行ったからって、大した金は稼げんだろうけど。
「──でしたら、その分は前払いというのはいかがでしょう?」
? グノーさん? いや、ウチのパーティ、そんなにお金持ってないでしょ。
「ええ、現金は。しかし、冒険に出るにあたって私から皆さんにお渡ししようと思っていた物がありますので」
いつぞやのカバンから、次々に武器防具を取り出してテーブルの上に並べるグノーさん。
「──こちらのメイジクラブ+2はルーフェスさんに。カーボンマイク+4はアイドルのディアナ専用ですね。私は皮の鞭とブーメランでいいでしょう。フェリア用には、ライトスリングでよろしいですか? 生憎ぱちんこ弾しかありませんが」
「うむ。武器を持って戦うのは久方ぶりゆえ、あまり助けにはならぬと思うがの」
まぁ、イベリオン使える賢者だったんなら、魔法唱えるのが普通だよな。
「──では、オリーブさんには、この猛毒針のメイスでいかがです? 命中にマイナス補整がないぶん、使いやすいと思いますけど。あと報酬はコレを現物支給ということで」
「ええっ、いいの!? でも、それって結構高いんじゃあ……」
「──武器は使ってこそナンボ、ですから」
ニッコリ笑うグノー。
普段が無表情なだけに笑うと美人度が一気にアップするんだけど、この人の場合、何か企んでそうで怖いんだよなぁ。
「え、えーと、グノーさん、俺には何かないのかな?」
「──ヒューイさんの場合、素早さを活かさない手はありませんね。コレなんていかかでしょう?」
と、グノーが差し出したのは……おもちゃの鉄砲!?
「わーい、鉄砲だぁ、バキュンバキュン……って、アホかぁ!」
「──お気に召しませんか?」
「いや、その、グノーさんにこういう冗談は似合わないと思うんですが……」
それともいじめ? 妹分を取られることに危機感を覚えた小姑のイビリ?
さすがに対応に困っている俺の袖をクイクイッと引っ張るディアナ。
「ヒューイさん、ヒューイさん。それ、玩具みたいに見えるかもしれませんけど、れっきとした実用武器です」
「いいっ、マジで?」
「ええ、本気と書いて"まじ"と読むくらいマジです」
おそるおそるグノーの方を振り返ると、意外なことに怒ってはいないようだ。
「──初期の遠隔攻撃が可能な武器としては、単発の攻撃力が比較的高めの銀玉鉄砲です。弾丸としては鉄の弾を用意しました。お気に召しましたでしょうか?」
穏やかに、優しげにさえ微笑むグノー。
こ、こぇ〜〜っ!
「は、ハイッ、喜んで使わせていただく所存です!」
将来ヒューマンの専門職のガンナーに就くことを見越しておくなら、今のうちから銃に慣れとくのはいいことだよな、ウン。
「──それから、お古ジャージの上も6人分用意してありますので、冒険の際には着てきてください」
至れり尽くせりだッ!
にしても、これだけの武具を、一体どこから……。
「──いい女には秘密がある、ということで納得していただければ」
わ、わかったから、皮の鞭片手に妖しく微笑まんでください! 心臓に悪い。
ところで、隊列についてはどうしたもんかね。
「うむ。その点については、ワシから提案させてもらおうか」
フェリアの意見は確かに武器の特性を考えれば、納得できる合理的なものだ。
しかし……。
「何で俺が4番手なんスか!?」
フェリアの言った隊列は「ルーフェス・オリーブ・ディアナ・ヒューイ・グノー・フェリア」という順番だった。
「防御と体力、および武器の特性を考えた順番じゃな」
「あ〜、確かにヒューイ、体力がえらい低いしのぅ」
「同じ普通科で女の私より、HPないもんね」
「──恨むなら、1クレスポ半しかない己の生命力の低さを恨むべきかと」
何だい、みんなして言わなくていいじゃんか! とくにグノーさん、その謎の表現はなぜかこーグサッとくるんでやめてください。切なくなる。
「あの……ヒューイさん、わたし頑張りますから。それにわたしの使うマイクって近接武器ですし……。
ヒューイさんの銃は、後列からでも届くんですよね? それでわたしが歌ってるあいだに、バンバン敵をやっつけちゃってください」
うぅ、ディアナちゃんは、やっぱりいい娘だなぁ。
──後日、生徒手帳を見て、イカサマしてるであろうグノーやフェリアはともかく、オリーブはおろかディアナにまで体力面で遥かに負けてることを知って、さらに落ち込むハメになろうとは、その時の俺は気づいていなかった。
* * *
てなワケで、いろいろあったものの、早速冒険に出かけた俺達だったが、いや、さすがに最初から装備が充実してるとスゴいわ。
考えてみりゃあ、普通の初心者パーティだと、全員ダガー&学園制服装備ってのがあたりまえなんだから、当然後衛は通常攻撃には参加できない。
ところが、俺達は6人全員が攻撃可能。それもダガーなんてメじゃないレベルの攻撃力を備えてるのだ。
もっとも、グノーに言わせると、この程度の装備はすべて最初の場所で揃うものらしいけど。
学園近くにある「初めの森」では、特定の場所に現れるダスト以外に怖いものなし!
全体攻撃してくるダストだけはちょっと厄介だけど、多くてもせいぜい4体くらいしか現れないから、フェリアの魔法(ファイア)で減らしつつ、残りのメンツでタコ殴りにすればいーし。
ふつうなら、レベル1魔法使いなんて3、4回もファイア使えば魔力が切れるんだが、なにせ、フェリアは最低でもレベル36以上の(そして多分、推定レベル50は堅い)賢者から転科した魔法使い。
毎ターン、ファイアを使ってもMPがタプンタプンに余りまくってる。当然ヒールもいくらだってかけられるわけで……。第一、いざとなったらグノーでさえヒールどころかヒーリングが使えるんだもんなぁ。
故に。一度も学園に帰ることなく、ほんっとに丸一日=24時間、初めの森で戦い続けてました、ハイ。
ええ、おかげさまで、いちばん経験値が多く必要なはずのアイドルのディアナまで、レベル3に上がることができたけどね。
当然のことながら「レベル1」のフェリアやグノーもレベルアップ! ……ア〜ンド、MP全快。
……正直、「レベルアップしたときに魔力が回復する」というこの世界の法則を定めた神にケンカ売りたくなったよ、ったく。
「うがーーーーーーっ! も〜イヤ! もぅ、触手生やした木も、ピノキオモドキも、デブいカエルも見たくな〜い!!」
と、オリーブがいつものカンシャクを爆発させた時、思わず「勇者降臨!」と褒め讃えかけたくらい。
まぁ、さすがのフェリアたちも、無理言って参加してもらったゲストをこれ以上引き回すつもりはなかったようで、そのまま学園に帰還とあいなった。
「よかった……ホントにオリーブが入っててくれて……よかった!」
「おぅ……いくら、魔法で体力回復して、モンスターが落とす生ハムやらおにぎりやらで腹は満たせる言うても、やっぱ寮の学食で晩飯食うてベッドで眠りたいワ」
俺とルーフェスが涙を流してオリーブの両手を握り、感謝の意を示したことは言うまでもない。
「いや、私もそれなりに修行になったし、武器防具のほかに消費アイテムをいくつかもらえたからいいんだけどね……」
苦笑するオリーブ。
「でも、アンタたちこれから大変よ? 正式メンバーが加入したら、あのふたりのMPが続く限り、引き回されるんでしょ?」
!!
思わずorzな姿勢になる男ふたり。
「アハハ、まぁ、頑張ってね。その分成長も早そうだし、いいじゃない」
* * *
そして、翌日からは6人目のメンバー探しと平行して冒険と言う名の特訓が始まったワケだ。
幸いパーティが万全でないことを考慮してか、最初の時みたいな強行軍じゃなくなったものの、それでも一日の3分の2近くは冒険に行ってる計算になる。
その合間に、依頼を受けてダンテ先生をボコしたり(いや、さすがに俺たちはヤられちまったんだけど、グノーとフェリアが2ターンかけて魔法でフクロにしたらしい)、変態性マッチョや怪しいマッドドクターの依頼をこなしたり、校長のお使いに行って来たりもした。
それにしても、オリーブの腐れ縁の幼馴染だとか言うジェラートって娘と初めて会った時は、てっきりヤツが学園まで追って来やがったのかと思って、腰抜かしそうになったぜ。
いやぁ、世の中によく似た人間が3人はいるって言うけど、種族の壁さえ飛び越えて、見た目どころか声や性格までソックリな女が身近にいようとは……世間って、広いようで狭いんだなぁ。
ま、コッパのドリンク剤事件は、ありゃ完全に自業自得だよな。俺と違って甲斐甲斐しい世話焼きな幼馴染がいるクセに、その娘をシカトした罰だ、ワハハハ。
でも、諸々のアクシデントの結果、ディアナとの距離も結構近くなったんじゃないかと思うんだ。
具体的には、初日が「ほとんど"友人"に近い"ボーイフレンド"」だとしたら、一週間経った今は「限りなく"恋人"に近い"ボーイフレンド"」くらい?
「ほほぅ、そのたとえに、なんぞ根拠はあるんか?」
いや、何と言うか、漢の勘?
「あ〜、女の勘とちごて、そりゃ全然アテにならんワ」
む! それじゃあ聞くけど、ルーフェスの方はどうなんだよ?
「ふ……」
あ、コイツ、鼻で笑いやがったな!?
「なんだかんだ言うて、ワイらは許婚やからのぅ。そりゃもう、暇を見つけては、超らぶらぶでえろえろやで?」
ら、らぶらぶでえろえろ……コイツがヘンな見栄張ったりしない奴だってことはよーく知ってるだけに、多分嘘じゃないんだろう。くそぅ、いいなぁ、何か負けた気分だ。
……ん? 待てよ、ラブラブはともかく、エロエロの方は、まさかこの部屋でサカったりしてないだろーな?
「ああ、安心せぃ。ニャンニャンする時は、いつもフェリアの部屋つこぅとる」
そ、そーか。フェリアと同室の娘には悪いが、まぁ、がぶりんちょに噛まれたとでも思って、あきらめてもらうしかないな。
「まぁ、大概は気ぃ利かせて出てってくれるしのぅ。いっぺんだけ昼寝しとる横でヤったこともあるけど」
羞恥プレイ!?
「いや、さすがにフェリアが嫌がってな。結局念入りにスリプズかけて、目ェさめんようにしてからシたんや」
素直に別の場所捜すか我慢しろよ、コンチクショウ!
しっかし、フェリアはいくら妖精族としては長身っていっても、人間換算で10歳くらいの体格だろ。キチンと出来るもんなのか? いや、答えたくないんなら、いーんだが。
「……なぁ、ヒューイ。女のアソコからは、赤んぼの頭が出てくるんやで? それに比べたら、ワイの貧相なモンくらい、どないでもなるワ」
自分で貧相とか言うなよ、哀しくなるだろ、男として!
「そやけど事実やしな。成人フェルパーの平均チン長からしたら、たぶんひと回り小振りやと思うけど、でも、そのお蔭で、今フェリアとHが存分に楽しめとるんや。何でも大きければエエっちゅうモンとちゃうで?」
おお、な、何か、ルーフェスがひと回り大きく見える! ――言ってるコトは真逆だけど。
「で、お前さんの方の進捗具合は、どやねん? キスくらいはしたんか? それともまだ手も握れんのか?」
「ちょ、バカ、手くらいいつも繋いでるって。キスだって、まぁ、2回ほど……」
「お!? ヘタレかと思たら、意外にやるやんか」
……ディアナが別れ際に頬っぺにチュッてしてくれただけだけど。
「やっぱり、そないな所やと思ぅたワ。なぁ、ヒューイ、ちっとは男らしくリードしたりや。あのテの娘は、どちらかて言うたら、男に頼りたいタイプなんとちゃうか?」
うぅ……そりゃ、俺だってわかってるんだけどな。強引に出て嫌われたって思うと……。
「――甘いですね。ナイトメアが落とすハニートーストより大甘です」
わっ、グノーさん、いつの間に……と言うか、どこから?
「ドア、開いた音、せんかったんやけど……」
「――気にする必要の無い些細な事です」
いや、気になるよ! レンジャーの盗賊技能をこんなところで無駄に駆使しないでよ!
「――それはさておき。ヒューイさん、貴方は堕落しました!」
ビシッと俺に人差し指を突きつけるグノー。
「あぁ、堕落て言うたら、アレか。フェアリーとかセレスティアが飛び過ぎて疲れてた時に……」
そりゃ、ついら……
「――ベタな漫才はノーセンキューです」
ああっ、せめて最後まで言わせて!
「――ヒューイさん、貴方が私達と初めて会った時のことを思い出してください。あの時、貴方は、溢れ出る煩悩のままに、いつかディアナをモノにするという妄想を大きな声で口走ったではないですか!」
そーいう言い方されるのは心外だが、確かに否定はできないかも。
「――あの時の貴方は、若さと希望に満ちていました。
一人前の冒険者を目指しつつ、「オレはディアナと添い遂げる!」と言い切る貴方の迷いの無い瞳に、私は「嗚呼、この人になら大事なディアナを託せる……多分託せると思う……託せるんじゃないかな……一応婿候補に入れておこう」と思ったのです」
むぅ、信頼されてるんだかいないんだか。
まぁ、シスコン(って言うのか、姉貴分と妹分の場合も?)傾向の強いグノーに、それなりに認められてるのは、一応確からしい。
「――それが、ちょっと冒険者レベルが上がって、ディアナに「お友達から始めましょう」と微笑まれたからって、当初の野望を忘れて牙を無くした狼、いえ駄犬になり下がるとは……」
「ヤレヤレだぜ」ってな感じに肩をすくめて、いかにも「ハンッ」と言わんばかりに軽蔑した視線を向けてくるグノー。
M属性の強い人間なら、これだけの美女の蔑みの眼差しにゾクゾクくるのかもしれないが、生憎、そーいう趣味は俺にはない……と思う。
「わ、わかってますよ。ただ、この一週間、学園でも、冒険の準備と身体を休めるのに忙しくて、ディアナちゃんとデートとかしてる暇なんかなかったでしょう?」
「――デートする暇なんてものは何とかやりくりして作るものです。そこの万年発情豹男のように」
「ヒドっ! 姐さん、キッついワ〜」
いや、しかし、ルーフェスの奴は、あれだけハードな冒険の合間を縫って、フェリアと逢い引きしてんだよな。
そのバイタリティと甲斐性は、確かに見習うべきかもしれん。
「――とは言え、生後15年間にわたって色恋沙汰と無縁の生活を過ごしてきたヒューイさんに、海が見える素敵なレストランにエスコートしたあと、夜景の綺麗なホテルでの大人の一夜に繋げる素敵コンボを使いこなせるとは思っていません」
わるぅござんしたね、ヘタレで。
「――そこで、このチケットを進呈しましょう」
なになに……「クロスティーニ学園 カフェ&バー 新装開店招待券」?
「――幸い、明日は一日休養日です。とりあえず、ヘタレ屋なヒューイさんでも、それと勉強会を口実にすれば、ディアナをデートに誘い図書館で勉強→カフェで夕食→展望台で☆を見る→気分を盛り上げてA、状況次第でB……という流れに比較的容易に持ち込めるかと」
いや、そりゃ、有り難い話ですけどね。いーんスか? ディアナの"保護者"として。
「――そうですね。気分次第でCにまで雪崩れ込みたくなるかもしれませんが、やはり女の子にとって"初めて"は特別ですから、よく考えていただけると助かります。
確かに星空の下で……というのも悪くありませんが、明後日は通常どおり冒険に出かけるのですから、ディアナの歩行に支障をきたすような真似は自重してください。小豆とお米の買い置きもありませんので」
ヲイヲイ……。
ん? てことは、俺がディアナと初エッチできるのって、休日前の晩に限るってことかYO!
<つづく>
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以上。すんません、ツンデレ(ヤンデレ?)セレスティアを出すところまで、辿りつけませんでした。
当初の目論見では、ヒューイとディアナのデート現場に鉢合わせする予定だったんですが、そのデート自体が4話に持ち越しとなったので……。
それでは納得がイカン! と言う方のために、ちょっとHな番外編を用意しましたので、よろしければ続けてどうぞ。
学園せい青日記 番外編『素敵なラブリーガール』
「遅いですよ」
ディアナがくすりと笑う。いつも俺達やクラスメイトに向けているのと変わらない、優しい笑顔だった。
「悪い。待たせたか?」
俺は後ろ手に自室のドアを閉めながら、中へと入った。
「でも、こんなムサ苦しいトコでいいのか?」
「初めては、この部屋でって決めてたんです。それでいいですよね?」
異論はない。あるいは最適なのは、俺達が初めて出会ったあの森の中がベストなのかもしれないが、さすがに初っぱなからアオカンはないだろう……グノーにも釘刺されてるし。
「あおかん、ですか?」
「や、その単語は覚えなくていーから」
猫のようなしなやかな足取りで、扉の側にいる俺に近寄ってくるディアナ。
さすがは歌って避けて殴って前衛もこなせるアイドルだ。一応、筋力では俺の方が勝ってるはずだけど、全身のバネを使われたら、押え込めないかもしれない。
そういや、アイドルって声が大きいよなぁ。この寮、そこそこ防音はしてあるはずだけど、隣に聞こえたら、ちと気まずいな……なんて、どうでもいいことを考えたりする。
「大丈夫ですよ、多分」
俺の考えてるコトがわかったのか? もしかして、また口に出してた!?
「そうじゃありませんけど……なんとなく、わかる気がするんです」
だって、大好きな人のコトですからとはにかむディアナと、その言葉に照れる俺。
……いかん、これじゃあ、いつもの通りだ。
「それでいいんだと思いますよ。いつものわたし達でいることが、むしろ大事なんじゃないでしょうか」
む。深いな。だが、一理あるか。
とりあえず、いつもみたいなキスをする。
僅かに彼女の唇が震えているのが感じ取れた。
「怖いか?」
距離は殆どゼロ。目の前に立ったディアナがほんの僅かに上目遣いで微笑をくれる。
「ぜんぜん、へっちゃらです……と言ったら、嘘になるでしょうね。でもいいんです」
今日は貴方とひとつになりたい、そう覚悟して来ましたから。
そんな健気なコトを言う恋人を抱き締めずにいられようか、いや、おれまい!(反語)
衝動のままに、彼女の身体をぎゅうっと強く抱き締める。
「きゃっ!」
一瞬身体を強ばらせたディアナだったが、すぐに力を抜いて俺に身を預けてきた。
背中に腕を回し、その柔らかな感触を受け止める。ふわりと揺れた髪の毛から甘い匂いがする。
ディアナの匂いだ。出来るものなら全て独り占めしてやりたい。ディアボロスらしくない彼女の、唯一俺にとって「魔性」とも言えるその香りを肺いっぱいに吸い込んでやる。
「あなただけなんです」
腕の中でディアナが呟く。
「グノーはわたしの中にお母さんの影を見ています。それは多分、フェリアも同じ。ルーフェスさんは、いい人ですけど、それでもやはりフェリアさんの見方に影響されているでしょう」
クラスメイトだって、やっぱりディアボロスだからか、ちょっと壁を感じますし……と、切なげに笑う。
かつて世界を救った"奇跡の5人"の血を引く者。
"5人"を裏切った"6人目"と、5人のひとりの間に生まれた、「祝福されると同時に呪われた娘」。
――そんな、無理やり背負わされた宿命に、どれだけこの娘は疲弊し、押しつぶされそうになってきたのだろう。
俺なんかにその全てを肩代わりできとは思っていない。
それでも。
この娘のそばにいて、その苦しみの一部だけでも背負って、試練に共に立ち向かってやれるのなら……。
俺は、自分の残りの人生すべてを賭けても惜しくない。
「今のわたしが、"わたし"個人であることの意味は、たった一つだけ。あなたが、わたしをひとりの女の子として認識し、その腕で包み込んでくれるから」
だから、とディアナは続ける。
「もし、あなたの温もりを失ったら、わたしは自分のココロを保てなくなるでしょう。だから、そのときは――」
俺は彼女の唇を塞いだ。
そんなことになんかさせやしない。
たとえ誰からの祝福を受けなくとも、俺はディアナと添い遂げる。
たとえ、呪われた苦難に満ちた茨の道だとしても、絶対に離したりなんかしやしない。
「ん……」
こじ開けた唇の奥から、おずおずと彼女の舌が伸びてきた。すかさず俺の舌を絡み付け、積極的に歓迎し、柔らかくて暖かな彼女の舌の感触を十分に堪能してやる。
彼女の吐息は限りなく熱く、交じり合う唾液は蜜のように甘い。
俺と彼女の互いを欲する気持ちが重なっていく。
絡み合う舌の感触が、思考を少しずつ侵食していく。
抱きしめた彼女の身体の感触が、俺の脳の思考領域をクラックする。
――彼女(ディアナ)が、欲しい。
その言葉だけが俺の脳裏で無限リピートされ、半ば無意識的に彼女の胸に手を伸ばしていた。
学園の制服でも、いつものアイドル正装のゴスロリドレスでもない、薄水色のワンピース越しに豊かなふくらみに触れる。
ビクッと一瞬身体を震わせたものの、彼女は拒むことなく、俺の掌を受け入れている。
フニフニしたマシュマロのような餅のような、そしてそれらのいずれとも微妙に異なる感触が、俺の掌から脳を占拠していく。
「……ヒューイ、さん……ベッドに……」
唇を離し、恥ずかしげに言いかける彼女の口に人差し指を当てて押し留める。
「待った。急がなくても時間はタップリあるんだ。ゆっくりしようぜ」
暴走しそうな俺自身を止めるように、彼女と手を繋ぐ。
正式に恋人になる前の、仲の良い"ボーイフレンドとガールフレンド"だった頃から続けてきた儀式のようなその行為は、焦りはやる俺達の気持ちを鎮めてくれる効果があった。
「ん……もぅ大丈夫です、ヒューイさん」
熱っぽい目を細め、そう囁く彼女。
「思い出しましたから。これまで、どれだけヒューイさんがわたしのことを大切に、大事にしてくださったかを」
そういうことなら、むしろ俺の方が、初めて会った時以来、ずっとディアナの世話になってると思うけどな。
まあ、信頼してくれると言うのも悪い気はしない。俺だって彼女の体をじっくりと味わってみたいからな。
「えっちですね」
男の子は、好きな女の子を前にしたら、皆エッチになるんです!
「そんなに力説されても……」
困ったように言いながら、彼女は目を閉じてくれた。ご期待に応えて顔を近づける。
今度は軽く触れるだけのキス。それから彼女の耳元に唇を寄せて、囁く。
「……大好きだよ、ディアナちゃん」
何度も口にした言葉だが、これを聞く度に、ディアナの顔が世界中の幸せを独り占めしたかのような、うれしそうな表情になるのだ。俺自身、彼女の喜ぶ顔が見たくて、バカみたく「好き好き大好き」を繰り返すようになった。
あ〜、順調(?)にバカップル化してるよな、俺達。
そう思いながらも、一向にそれを止める気にはならない。
「ちょっと、くすぐったいかもしれないけど……」
と断ってから、彼女の耳に唇を近づける。
ねっとりとした熱い感触が耳に触れたせいか、彼女がぞくりと身を震わせる。
まだ目を閉じたままだが、何をされたのかはすぐに分かったのだろう。それでも懸命に喘ぎ声を漏らさないようにしている様が可愛かった。
そのまま、舌を彼女のディアボロスたる徴の角へと滑らせる。
「ひゃ、うっ!」
「気持ち良い?」
「そ、そんなの聞かないでくださいぃ〜」
一見硬そうなソコも、確かに愛しい彼女の一部には違いなくて、ほのかな熱と弾力を伝えてくる。
聞くところによれば、ディアボロスが角を触らせるのは、家族などの親しい身内か、連れ合いに限られるらしい。
その意味で、俺の行為を受け入れてくれるということは、彼女の気持ちを的確に表しているのだ。
ただ、敏感なのか僅かに触られただけでもディアナ真っ赤になってしまうのだけれど、それでも身を縮めてふるふると堪えている彼女の様子は、俺の右脇腹の浪漫回路を果てしなく刺激してくる。
「ディアナは可愛いなぁ〜〜」
どこぞの変態紳士の心の叫びに、思わず同調してしまう。
「ふえっ!? い、いきなり、何ですか?」
「いや、何でもない。ただの妄言だよ」
くすりと笑って彼女と三度目のキスを交わす。
「じゃあ、そろそろ始めようか……もっとエッチなこと」
* * *
「……てところで、目が醒めちまったんだ」
「なんや、夢オチかいな。まぁ、童貞の想像力では、それが限度やろしな」
「うっせい、童貞言うな!」
コンコン
「どーぞー」
カチャッ……
「あの、ヒューイさん、今、お暇ですか? その、もしよろしければ、わたしと……」
「むぉっちろん! 愛しいディアナちゃんのお誘いとあらば、たとえ火の中水の中ダンジョンの中、このヒューイ、何処なりとも駆けつける所存でござい」
「クスクス、大丈夫です。今日は、お買い物につきあっていただきたいだけですから。それで、その……お弁当も作って来たんですけど」
「OH! 恋人の手作り弁当とあっては、万難を排して戴かないワケにはいくまい。まずは、初めての森の入り口あたりまで、ピクニック気分で出かけよーぜ。買い物は、そのあとでいい?」
「ハイッ!」
浮き浮きと腕組んで出かけていくふたりを見て、「ま、アイツらは当分、あのままでもエエんかもしれんな」と呟くルーフェスだった。
−FIN−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上。マジですんません。この続きは正夢となるべく、そのウチちゃんと書きますので、ご勘弁。
348 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 17:39:59 ID:owSPOHDf
GJ!!
ルーファスのキャラが良い。
そしてがんばれ、ヒューイ。
ディアナとのデートの後に本当の試練が待ってるぞ。
番外編の方を見ていたらヒューイとディアナが某08小隊とダブったのは俺だけか?
正夢待ってるぜ!!!あと何度か出てきた伏線にも期待。
番外編のタイトルが「学園せい青日記」になってるのは番外編だからですか?
GJ!
ってかヒューイの生命力6ですか!
>>349 1クレスポと半なら9じゃないかw
なんにせよGJです
351 :
347:2009/07/20(月) 18:36:46 ID:HtgAI52/
>348
はわっ、すみません。素で間違えてた。正しくはご指摘どおり「学園せい春日記 番外編」です。
>350
おっしゃるとおり、9で正解です。
ついでに、新加入のふたりのプロフも載せときます。
*ルーフェス
フェルプール・男・善/格闘家(→ビースト)
ヒューイが学園に来てできた最初の友人(ディアナ達とはそれ以前に知り合ったため)。
筋力は高いが、精神力の低さがややネック。
立派な格闘家を目指してはいるが、根が無精者なのでその歩み具合はイマイチ。
それでも、仲間(主にフェリア?)のためなら体を張るくらいの気概はある。
※イメージは「フェルプール・男・格闘家」そのもの。ただし、目が糸目。
*フェリア
フェアリー・女・中立/魔術師(→賢者)
ルーフェスの育ての親的存在(10歳から育てた)にして婚約者(!)。じつは、実の娘とルーフェスを密かに争奪して勝利したという背景があったりなかったり(本人いわく「包容力と胸の差」、娘いわく「男はみんなマザコン」)。じつは体型的にはパーティで一番のグラマー。
(ディアナがC、グノーがDでフェリアがE相当。後にくるセレスティアさんは貧乳)
※イメージは、「エルフ・女・普通」に魔法使いの服を着せ、フェアリーの羽を生やした感じ。
忘れてた。これが一応ディアナのイメージ……って、まあ単なる公式絵の色変え版ですが。
ttp://up2.viploader.net/pic3/src/vl2_159869.jpg
08とかぺらぺらとか小さいネタ入れんなw
ととモノやるような人はSWとかTRPG系も好きな人多いのかねぇ
そしてセレ娘はやはりジェラート互換だったか
想像通りで吹いたw
>>351 乙です
グノーさんヒーリング持ちとか何物ですかww
装備の充実と良い怪しさ満点だ
あと前から思ってたが何故にわざわざフェルプール?w
ちなみに魔法はイベリオンじゃなくてイペリオン
フェルプールと聞くとスターオーシャンのアレ思い出す
別に剣持ってにゃんにゃんする子でも無いんですけどね
俺もフェルプールを知ったのは初代スターオーシャンだったなぁ
あっちにゃより猫に近いレッサーフェルプールとかいたが
>>353乙です。
フェリアさんのイメージとしてジョルジオ並の大きさで美人なフェアリーを想像しましたぜ。
だがディアナさんかわええ。健康的な色のディアボロスってこんなに印象が変わるとは驚きだ。
>>312 まぁユーノ先生強い先生ですので。
ギルガメシュ先輩相手でもビンタとか膝蹴りとか普通にやってそう。誰に対しても。
でも先生の愛情なのですよ。
>>313 ギルガメシュ先輩は結構凄い半生を生きてきた子です。
パルタクス入学前にも色々あってあんな性格になっちゃってるけど根はいい子、の筈。
うん、いい子の筈なのよセレスティアだから。
2人の恋の行方はまだまだ続きます。ついでにディアボロスは主人公ポジションにいるから大丈夫。
>>320 このパーティは1での自分の1軍パーティだったり。けど、凄くバランス悪いけど仲良い子達なんです。
うん、バランスは悪いのです。
そうですねライフゴーレム達は学校に行ってません。
一応トロオはゼイフェアで図書室のお手伝いはしてるけど毎日いる訳じゃないとか。
ライフゴーレム達は皆でディアボロスのお姉さんなのです。
ディアボロスが何だ! バハムーンの何が悪い!
と、言うことで流れを読まずにととモノ。2のOPより
ヒューマン(剣士)×バハムーン(戦士)
の短編です。どうぞ。
ある晴れた日。場所は『始めの森』。クロスティーニより歩いて数分で着くその森に、一人の女性がいた。
彼女の種族はバハムーン。
見る限り、彼女は冒険者養成学校の生徒で、学科は『戦士』だろうか。右手には簡素な剣を持ち、左手にレザーシールドを携えていた。
彼女は今年の新入生だ。しかし、彼女以外の生徒の姿は見えず、彼女一人しかいない。
不機嫌そうに彼女は『始めの森』を歩く。出会った敵は器用にダガーとブレスで倒しながら、先へと進む。すると、
「おーい。そこのポニーテール」
ふと、声が聞こえた。
周りには人影すら見えないから自分の事かと彼女は(少々苛立ちながら)その声の方向へ顔を向ける。すると、そこにはこれまた一人のヒューマンがいた。
装備を見る限り学科は『剣士』だろう。ふと彼女は自分だってポニーテールじゃないかと不満を言いそうになり、一応堪えた。
その剣士はこちらを見た事に気付いたのだろう、「やぁ、こんにちは」と彼女に挨拶をした。
彼女はそれに「こんにちは」とだけ言うと早々に立ち去ろうとして、
「おいコラ待たんかポニーテール少女」
呼び止められた。
彼女は出来うる限りの威圧を放ちながら振り返る。しかし、剣士はそんなの意にも介さず彼女に聞いてきた。
「お前さん、新入生だろう? これは先輩からの御節介だが、これ以上一人で行くのは止めておけ」
いきなりそんな事を言われ、彼女は不機嫌そうだった顔をより不機嫌そうにして、返答する。
「指図するな。下等種族」
それだけ言うと彼女は先へ進み始めた。
「おいポニーテール、それ以上行くな」
そこへ再び剣士の声。酷く馬鹿にされたように呼ばれた彼女は、苛立ちながら剣士へと振り向く。
「貴様……死にたいのか?」
剣の切っ先を剣士へと向け、彼女は告げる。
すると剣士は背中のバックから『うしさん』という人形を取り出し、ポンと彼女へ放り投げる。
受け取った彼女が何だこれはと不振に思う。
「ソイツを進行方向に投げてみろ」
? マークを頭に浮かべながら彼女が渋々言われた通りにしてみる。
すると、放り投げられたうしさんは地面に付いた瞬間、バチッという嫌な音と共に一瞬でウェルダンを通り越し、炭となった。
唖然とした彼女を後目に剣士は告げる。
「『始めの森』と言っても電気床や電気壁はある。下手するとバハムーンといえ、死ぬぞ」
剣士の言葉に彼女は冷や汗をかく。もしアレが自分だったらと思うと、いきなり身近に死の臭いを感じ、足が竦んでしまう。
「地図はあるか? 俺は御節介やき何でな」
そんな彼女に剣士は問う。呆然としていた彼女は素直に肯定の意を表した。
「少し、貸してくれ」
彼女は剣士の提案に条件反射をしたかのようにポケットから地図を取り出し、剣士に渡した。
「あらら、殆ど埋まってないじゃないか」
剣士の感想についムッとした彼女は五月蝿いと呟いた。
聞こえていたのだろう、剣士はすまんすまんと謝る。
その姿に何だか自分が幼くて恥ずかしく感じた彼女は、頬を赤く染めて俯いた。
「俺の地図をあげてもいいが、それだと為にならんしな……是非も無い、か」
そう言うと剣士は彼女に地図を返すといきなり手を掴んできた。
「!? なっ……!」
肉親以外初めて触る異性の感触に、先程赤く染まった頬が更に赤く染まっていくのを彼女は感じた。
半ば混乱気味に振り解こうとした彼女の手を剣士は更にしっかりと手を握る。
「おっと、暴れんなよ? ――フロトル」
剣士がそう呟くと彼女の足が数センチばかりフワリと浮いた。
「うわっ!? え? えぇ!?」
突然の未知なる感覚に狼狽えた彼女はただでさえ危なげな体勢もあってバランスを崩し、
「きゃぁあ!」
「おっと」
剣士の胸へと頭を預ける格好――更に詳しく言えば手は握られたまま、上半身ごと剣士に預け、足はバランスを崩すまいと内股というやや情けない格好――へとなってしまった。
当然、彼女は抗議する。
「い、いきなり何をするんだ!」
「ハッハッハッ、悪い悪い」
「こ、この……! うわぁ!?」
ちっとも悪びれていない様子の剣士に、文句の一つでも言おうとすればまた変な風に体を預けてしまう。
仕方がないので再び出来うる限りの威圧を持った目で睨んだが、やや涙ぐんだせいで半減していた。いや寧ろ。
「いやぁ、涙目で睨まれると何だか……いいな」
「っ!? へ、変態!」
「何を言う。男はみーんな変態さ」
当たり前のように言う剣士に苛立ちが募るが、この体勢では立つことすらままならない。どうするものかと試行錯誤をしていると、
「ホラ、立てるか」
剣士が自分から彼女の体勢を直してきた。
「え……? う、うん……」
その予想外の対応に拍子抜けた彼女は、怒りがすっかりどっかへ行ってしまった。
「フロトルは慣れるのに少し時間が掛かると思うが、これで電気床を踏んでも大丈夫だ。ただ、電気壁には気を付けろよ? フロトルでは防げないからな」
「あ、あぁ……」
先程までのからかい口調は何処へ行ったのか。剣士は春風のような優しい感じで彼女に教える。
そんな剣士の突然の優しさに彼女は三度頬が赤くなるのが分かった。その顔が少しばかり綻んでいたのは――彼女でさえも知ることはないだろう。
そんな一時を過ごしていると、突然剣士が振り向きながら剣を抜き構える。
「? どうか……」
「まいったな、お客さんだ」
「え?」
彼女の声を合図にしたかのように茂みから出てくる。
「くっ!」
彼女はすぐさま反応し、グッと足に力を込めて構えをとろうとする。が。
「うなっ!?」
フロトルに未だ慣れていない彼女は、マトモな体勢を取ることも出来ず、倒れそうになる。
「大丈夫、か! っと」
そこへすかさず剣士がフォローに入ってきた。鞘を持つ左手で彼女を支え、刀を持つ右手でモンスターの群を牽制する。
「あ、ありが「足に余り力を入れるな。足は構えるだけで慣れない内は上半身だけで敵を叩くように迎撃するんだ。いいな?」
「……」
彼女の言葉を遮っての剣士の警告に彼女は黙りになった。その様子に気づいた剣士は、当然問い掛ける。
「おい? どうかしたか?」
「……別に。(お礼ぐらい、素直に受け取ればいいのに……)」
「……すまん。後ろの方が聞き取れなかったからもう一度――」
「う、五月蝿い! 何も言ってない!」
彼女は何故だかスゴく不機嫌そうに呟く。
ただの聞き間違いでここまで怒る女心の難解なる理解度に剣士は少しだけ難しい顔をして、すぐ止めた。
「とりあえず、難しいのは後回しだ! お前の背中は俺に安心して任せとけ!」
「……いいか。また、今度で……」
半ば嬉しそうに構える剣士の後ろ姿をチラリと見て、彼女はボソリと呟いた。
「? 何がだ?」
「だから何でもない!」
この剣士と彼女が後に名コンビと名を上げ、名カップルと茶化され、学園史に名を残すのは――もう暫く後のことである。
「しかし……驚いたな」
「はい?」
「着やせする方なんだな」
「……は?」
「胸」
「……――〜〜!?」
「ザッと、そうだな……8じゅ――」
「いっぺん、死ネェエエエエエエ!!」
「うぉおおおおおお!?」
ドギャーン
……もう暫く後のことである。
ワッフル!ワッフル!
以上です。短いです。変態です。
(以下無視して構いません)
保守代わりになればいいかな。と一瞬思いましたが活気付いているから意味ないなぁと意気消沈。日々は光陰矢の如しと言いますが、次に会えるのは何時になるのか。
ではまた会う日までサヨウナラノシ
う・・・うしさぁぁあああああああん!!!!
・・・ふぅ、乙です
戦士バハ子可愛いよ戦士バハ子
剣士ヒュム男のグラは好きじゃないがあのグラをおっさんに変えてイメージしたらイケメン過ぎて困ったぜ
364 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 00:58:09 ID:n5y6IgoV
うしぃぃぃぃぃぃぃ!!!
GJ。うーん、ディア子もいいがバハ子も捨てがたいなぁ。
だが俺の中で一番可愛いのはフェア子なのさ。
大きいのには興味な@(イペリオン→鬼神斬り
なんてこと、第5話の為の容量が足りないかも知れないなんて……!
>>362氏乙です。
保守代わりに自分も一発小ネタを投下しよう。
世界中の荷物が集まるボレンタ港。彼、との待ち合せ場所はボレンタ港全体が見渡せる小高い丘の上だった。
魔法の名門ブルスケッタ学院を卒業してはや1年。そんな私も、気が付けば文筆家としての日々をそれなりに多忙に送っているが、つい最近やってきた仕事は数年前に起こった事件の調査だった。
そしてその中で浮かび上がってきた、ある1人の学生の事。
世界すらも救ったというクロスティーニ学園の伝説のパーティの中でも、彼の存在はとても大きかったと記録には残る。そのパーティの面々が今どうしているか、彼も今どうしているか私は知らない。
だが、彼らを知る1人の人物とコンタクトを取る事が出来た。そして私は、その彼と会う約束をしている。
「……アンタか?」
約束の場所に来た時、そう声がかかった。ふと振り返ると、1人のセレスティアの青年が私の背後に立っていた。
「……では、貴方が?」
「ああ。間違いないな」
彼はそう呟くと、近くのカフェを指さし、そのまま椅子に座る。私も対岸に座る。
私が今回、話を聞きたい話題について告げると彼の顔つきは少しだけ緩む。鋭い目つきだっただけに、少し怖かった。
「……奴の話か? ああ、知ってる。懐かしい話だ……知ってるか? ディアボロスってのは、大きく分けて三つに分けられる。種族としての誇りに生きる奴、
ただ純粋に力を追い求める奴、古の叡知を学び教える事を生き甲斐とする奴、この三つだ。けど、あいつはそのどれでも無かった」
セレスティアの青年はそう言って笑う。
彼は『白銀の死神』と畏れられたセレスティア。『彼』の元友人。
「あの日、パーネ先生の指示で、氷河の迷宮、大橋、忘却の道、海底洞窟、終わりなき塔。ほら、今はもう無くなっちまったけど、あっちに見える塔の残骸があるだろ?
その五ケ所に封印されているドラゴンオーブを探す事だった。そのうちの、氷河の迷宮では俺達のパーティはもう手に入れたんだ」
懐かしいように、淡々と語る。
「けど、氷河の迷宮で俺達の仲間が1人いなくなっちまった。それで、パーティの補充を行ったんだ」
そして青年は、そこで彼と出会った。
大橋の近くで駐留していた彼らの元へ、リーダーであるヒューマンの少女と彼がやってきた時、他のパーティは彼がディアボロスである事に驚いた。そしてもう1つ。
「新しくパーティに加えてもらう事になったんだ! 皆よろしく! 所属は、普通科の1年。種族は見て解るけどディアボロス。
趣味は、ルー●ックキ●ーブ。ほら、あの立方体の各面の色を揃えろって奴。結構早いのには自信あるんだ。誰かやってる奴いたら今度競争しようぜ。
……まぁ、いいや。さぁ、行くかぁ!」
ディアボロスにしては信じられない底抜けの明るさ。
リーダーであるヒューマンの少女も普通科で普通科が2人並ぶという通常のパーティではおかしな事にもなっていた。
「最初は、ディアボロスで、おまけにリーダーに誘われてきた奴だ。俺は本気で嫌いだったね。パニーニ学院で堕天使に転科してからは特に。
けどな、あいつの凄い所は……凄かった」
前衛は既に間に合っていた為か、後衛に回されて遠距離攻撃用の銃を持たされたその少年は、そこで天才的な才能を発揮する。
運がそう良くない故にディアボロスは盗賊には向いていない。忍者に転科すればなれない事は無いが、しかし彼はその銃の命中率が凄まじいほどだった。
「そこらへんのガンナーよりもずっと上。俺達前衛が敵の前衛とぶつかると、その前衛は次から次へと体勢が崩れる。そして俺らが前衛を倒す時には、後衛はとっくに蜂の巣になっていた。
驚いたね。銃を使う奴なんて、ヒューマンぐらいだしそのヒューマンでも数が少ない。だが、奴は百発百中だった」
迷宮に現れた、ディアボロスの、ベストオブベストの狙撃手。
「イヤッホゥ! またまた、命中!」
誰よりもノリが良く、また誰に対しても明るい。そんなディアボロスは、気が付けば好かれていた。そう、嫌っていたセレスティアですらも。
「ああ。気が付けばあいつと一緒に迷宮探索に出掛けるのが楽しくなっていた。ジョークばっかり飛ばして、戦闘にもなれば片っ端から蜂の巣だ。
奴の目の前に立つモンスターは至近距離まで近づく前に蜂の巣だった。けどな、そんなあいつも躊躇った事があった」
パーネと、彼らの担任であるダンテ。2人の陰謀で、世界をまたにかけた戦争が始まる。
その過程、バケモノに変えられた級友を前にした時、彼は躊躇ったという。
「普段は銃をモンスターに当てては喜ぶ。外した事なんて無い。だが、そんなあいつが当たらない。いや、当てられなかった。
どうしてか、って気になったよ。そしたらさ、目に涙を一杯浮かべて言うのさ。『俺には撃てない。俺には撃てないよ』ってな」
セレスティアは寂しそうに言葉を続ける。
「ここで撃たなかったら、怪我人が出るぞ」
「けど……ティラミスが可哀想だ。俺には」
「駄目だ、撃て! 撃ってくれ! あいつは俺らには止められない! 撃つんだ!」
セレスティアを含め、私がインタビューした彼と同じパーティの面々は本当に、ここで撃つ事を進めた事を後悔したと語っている。
最終的に、彼は撃った。バケモノに変えられた級友は、頭部の一発で命を落とした。
級友を元の姿に戻す事は不可能に近く、仕方ない事だった、とその級友の恋人であったドワーフの少女も語った。彼女は命日になる度に、欠かさず献花に来る仲間達がいるという。
「そして最後の最後……級友を殺したっつー思いもあったのかも知れない。あいつは、どんどん壊れていった」
四天王、女帝、次から次へと現れる強敵を全て狙撃した。
「コッパが死んだ後から、あいつはだんだんジョークを飛ばさなくなった。敵に対する躊躇いも無い。どんどん、非情になっていったんだ。
四天王の1人、ビットは当初は俺らに優しくしてくれた。ビットは、俺らに自分の行為を止めて欲しかったとまで言われてる。けど、あいつはそれでも射殺した」
非情になった彼を、仲間達は怪訝に思うようになった。そんな彼が呟いた、些細なひと言。
「俺、どうすればいいのかもう解らないよ。何回引きがね引けばいい?」
セレスティアは語る。
「こいつはもう無理だ、って俺は思ったよ。繰り返される戦いに、あいつの心が耐えられなかったんだろう。あいつは優しすぎたのさ。
だから俺は、皆に言った。こいつはもう無理だと。パーティに加える事は出来ないってな。
………皆、あいつの事を好きになってた。けど、仕方なかったのさ。あいつにパーティから外れるように言った時、あいつ自身はやっぱり残して欲しかったって思ってたんだろうな。
けど、寂しげに笑って解ったって言ってた。その時にな。あの野郎、よせばいいのに餞別代わりにルービッ●キュー●だぜ? 6コ、な。6コめは後任に渡してくれって」
そして、最後の最後になって、パーネと対峙した時だった。
新たな仲間はパーティ仲間を頑張って助けた。しかし、それでも重傷を負ったのだ。
「ヤバいと思ったね。白銀の死神がついているのに、無様な真似出来るかって。そこへあの野郎、ひょっこり来やがった」
たった1人で最難関の迷宮の最深部へとやってきた彼は、そこで再び銃を握る。
トリガを引いて引いて引きまくった。隣りのクラスの担任であった彼女を蜂の巣にした。
「だがな、やりすぎたらしい。まさか塔は崩壊するとはね。新しく来た奴は、フェアリーだったんだ。飛ぶ事は出来ても、力はない。
そのうち、崩壊する瓦礫が直撃しちまった。置いていかなきゃ、皆死ぬと思った。けどな、そこへあいつがすっ飛んできた」
「バッカ野郎! ここで死んで何の為に戦ったんだよ! いいか、生き残るぞ!」
「落ちてくる瓦礫も、あいつは何もかも撃ち抜いた。フェアリーを抱えたまんまだ。凄かったぜ。だから俺は思ったよ。こいつにパーティに戻ってきて欲しいとね」
だが、それはフェアリーを斬り捨てるという事。
「でもな、それが叶う事は無かった。クロスティーニに戻ってから、あいつはいなくなった。翌日職員室に行ったら、退学したんだと。
俺達を助けに来た、その日が最後だった。部屋に荷物がそっくりそのまま残ってたんだよ。鞄一杯のルービ●クキュ●ブがな。
……お陰で今じゃ俺も趣味の1つだ。でもな、1つだけ言える事がある。あいつが生きてるかどうかは解らん。けど、生きてるならもう1度迷宮に潜りたいね。
あいつと肩を並べて、あいつがジョークを飛ばすのを皮肉で返して、俺達前衛の仕事を全部奪っちまうような、あいつと。もう1度、会いたいよ」
セレスティアの話はここで終わる。
だが、その伝説の生徒は事実だったという事だった。世にも珍しいディアボロスの話。
そう、私はいつか彼に出会ってみたいと思った。それがいつになるかは解らない。だが、いつか会いたかった。
投下完了。
まぁ小ネタとして楽しんで下さい。
次に会う時は次スレでありますな!(ビシッ
369 :
351:2009/07/22(水) 09:33:42 ID:bpy85m+7
「尊き龍乳(みたま)の為に散って逝った英霊(うしさん)に向かって敬礼!」 バハ子とヒュム夫、GJでした。
すんません、WIZ以来の癖で、ついフェルパーをフェルプールと表記しちゃいました。あとイペリオンについては素で間違って覚えてたorz
>ディモレア作者様
短編乙です。ディアボロスの凶相ってやはり肌色と目つきが原因だと思うので、目元の可愛いディア娘の肌を白くすると、途端に萌え度が3割増しだと思うのですよ。
(アイドルディアの目元をいぢるのもアリかも)
それでは、私も埋め代りに3.5話投下させていただきいたします。
----------------------------------------
『クロスティーニ学園せい春日記』
その3.5.キミが大っ嫌い……切なくさせるから
ずっと昔、あたしはあたしの世界のお姫様だった。
あたしの暮らす屋敷でも町でも、あたしに逆らう者はいなかったし、ちょっと反抗的な人でも、パパの名前を出して脅せば、すぐに態度を翻した。
けれど。
そんなある日、あたしはアイツに出会った。
半ば引退した著名な冒険者の息子。アイツとアイツの両親だけは、あたしを「ただの女の子」として扱った。
最初は腹も立ったけど、でも、その内ににそう言う風に接してもらえるのも悪くない……ううん、新鮮で嬉しいことなんだってわかってきた。
アイツに手を引かれて、以前は見向きもしなかった町の子供たちの世界に足を踏み入れることで、初めて自分が「すべてを与えられている」ように見えながら、何も持ってなかったことに気付いたから。
町へ出かけて庶民の子供達と遊ぶことを、パパは心良く思ってないみたいだったけど、お祖母様が庇ってくれたから、あたしはアイツと一緒に下町を、森を、野原を、駆け回って遊ぶコトができた。
ある日、アイツとあたしは、森の漁師小屋でひとりのケガ人を見つける。
その人は、たぶん15、6歳のディアボロスで、駆け出しの冒険者なんだって言ってた。
「ちょっと仕事でドジ踏んじまってな」と笑うその人は、明るく活気に満ちていて、ウチの町でごく稀に見かけるいぢけた目をしたディアボロス達とは、まるで別の種族みたいだった。
(もっとも、彼らが卑屈で精気がないのは、セレスティアであり、町の事実上の支配者でもあるあたしの家が、暗に圧力をかけているからだってことは、後に知ったのだけれど)
ケガと言っても、命にかかわるほどじゃなく、一週間も寝ていれば治るとのこと。彼のことを黙っている代わりに、あたしたちは彼の旅の話を聞かせてもらうことになった。
あたしもアイツもひとりっ子だったから、陽気で気さくな彼と話していると、まるでお兄さんができたみたいで、なんだかとてもうれしかった。
彼の方も、ヒューマンのアイツはもちろん、セレスティアであるあたしのことも妹分として分け隔てなく可愛がってくれた。
「僕も、いつか、父さんたちやアニキみたいな冒険者になる!」
「ふ、ふんだ。弱虫なアンタは、まほう使いかレンジャーになって、後ろからえんごしてなさい。アタシが強いせんしになって戦うから」
「え〜〜、なんかカッコわるい……」
「ハハハ、そんなにガッカリするなよ、ヒュー。セレの言うことにも一理ある。冒険者は適材適所だ。パーティを組んだ仲間、それぞれが最適な役割を果たすのが一番重要なんだから」
「そーよ! おにーちゃんがいうとおりなんだからぁ」
アイツがあたしに付けた「セレ」と言う愛称を呼ぶことを許したのは、アイツとあの人だけ。
アイツとふたりだけの秘密を共有できたこと。そして、あたしたちのことを見守ってくれる"お兄ちゃん"がそこにいたこと。
それはとても幸せな一週間だった。
けれど……同時に、運命はひどく残酷だった。
頻繁に森へ出かけていくあたしのことを心配したパパがつけた見張りによって、彼が発見されてしまう。
あと一日遅ければ、ケガの治った"お兄ちゃん"は旅立ち、見送るあたしたちは彼のことを幼年期の良き思い出として胸にしまっておけるはずだった。
あるいは、歩けるようになった"お兄ちゃん"を、あたしの家は論外としても、たとえばアイツの家に連れていくことも出来たはずだ。
そうしたら、その後のアイツとの関係も随分変わっていたに違いない。
でも……時計は巻き戻らない。
無人とは言え他人の小屋を無断で占拠していたことで、彼は咎めだてを受け(それには、たぶんにディアボロスに対する偏見もあったのだろう)、せっかくケガが治りかけた身なのに袋叩きにされたのち、追放となった。
「どうして、アニキの居場所がバレたんだろう……」
泣きそうなアイツの言葉に、あたしは何も答えられなかった。
「お前のせいじゃ、ない、よな?」
すがるような彼の言葉には、あたしのことを疑いながらも信じたいという響きが宿っている。
──それでも、あたしは何も答えなかった。
あたし自身が告げ口をしたわけじゃない。
でも、あたしがいたからこそ、今回の悲劇が起こったのもまぎれもない事実だ。あるいは、あたしがもっと気をつけていれば、今回のことは防げたかもしれない。
その思いが、否定の言葉を紡ぐことをためらわせたのだ。
「なんとか言ってくれよォ!!」
今度こそ本当に泣き出すアイツを尻目に、あたしは耳をふさいで逃げ出すことしかできなかったのだ。
それから、あたしはひとりで町に出ることは禁止されてしまった。
アイツとも会えずに、ひたすら"ヴァンガード家令嬢としてふさわしい"教育を受ける毎日。
「あたし」から「わたくし」へと一人称を変え、「パパ」を「お父様」と呼ぶようになった12歳のころ、ようやく自由な外出が許されるようになった。
護衛付きとはいえ、ようやく町に行ける、あいつと、ヒューとまた会える!
けれど、再会したあいつは数年前の姿が嘘みたいな、下品で、無作法で、おちゃらけた軽薄な少年になっていた。
そんな彼の姿に苛立つわたくしは、会うたびに口論を重ね、あいつを罵倒するようになってしまった。
今ならわかる。
あいつは──彼は精一杯、あの日旅立った"お兄ちゃん"みたくなろうとしてたんだろう。
でも、その時のわたくしは、そんな事にも気付かず、売り言葉に買い言葉で彼を見下し、上から目線で物を言うことしかできなかった。
そうして、「優秀な冒険者の、不肖の息子」対「町の名士の、高慢な令嬢」という構図が周囲にもすっかり定着してしまい、結果、ますます彼の居場所を奪ってしまう結果になる。
当たり前の話だ。わたくしの家に逆らえば、この町で商売していくことすら難しくなる。
彼の両親は確かにヴァンガード家に媚びたりはしなかったけど、それは昔のコネがあるからこそ。それにしたって表だって逆らうような真似まではしていない。
彼が同年代の少年少女のあいだで孤立しているのを知りつつ、それでもわたくしは彼にちょっかいをかけることを止められなかった。
それが、いまや唯一の彼との関わり、「腐れ縁の幼馴染」という唯一の絆だったから。
でも……まさか、彼が町を出ていくなんて!
………………
彼が山ふたつ越えた場所にある冒険者学校に入りたがっていることは知ってましたから、町に2軒ある本屋から、そこに行くまでの地図はすべて買い占めておきました。
仲のいいメイドには「お嬢様、そこまでしなくとも」と呆れられましたけど。
だから、最初は隣り町に遊びにでも行ったのかと思っていました。
けれど翌日も翌々日も町で彼の姿を見かけることはなく……。
まさかと思って彼の家に押しかけ、両親に聞いてみたところ、「クロスティーニ学園に入学にし行った」とのこと。
(そんな! 戦いの心得もないクセに、地図も持たずに!?)
無謀としか言いようがありませんわ。
もしや途中で行き倒れているのでは……と人をやったところ、幸い無事に学園に辿り着いて入学していることが判明しましたのでひと安心です。
そうとなれば、わたくしがとるべき道は、ひとつだけです。
渋るお父様を「町を治めるヴァンガード家の娘として恥ずかしくない強さと経験を身に着けるため」と説得し、今日、わたくしもまた学園へと旅立ちました。
さすがに地図は持ちましたけど、お伴も護衛も不要です。
彼だってひとりで学園まで行けたんですもの。このわたくしに同じことができないはずはありませんわ!
彼と違ってキチンと家庭教師に習った剣の心得もありますから、駆け出しの戦士としては十分通用するでしょうし。
そして……学園に着いたら、今度こそ素直になりましょう。
彼のパーティに入れてもらって、もう一度、昔みたいに友達としてやり直すのです。
「──行きますわよ、セーレス」
レイピアとバックラー、そして高貴な制服の上下に身を固めたわたくしは、自分自身を鼓舞するように呟いて、ほの暗い山道へと足を踏み入れて行きました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上、ちょい短めですが、4話へのつなぎ。
セーレスの心情を描くべきかどうか(タダのタカビーツンデレ娘にしとくべきか)迷ったんですけれど、上のような某ゲームのコノメ様っぽい形になりました。
このままではディアナちゃんが(ヒロインとして)くわれちゃうので、彼女にもテコ入れが必要かも。タダでさえ濃いメンツの中で影が薄いですしね。