オルフェウスの窓でエロパロ 【4】

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200旅行  42:2009/06/14(日) 18:00:46 ID:OdMnw7ZB
白衛軍には第一次世界大戦の戦火をくぐり、鍛え抜かれたロシア軍の優秀な士官や
将軍たちが集まった。しかし旧軍の卓越した士官や将軍たちは赤衛軍にも勤務していた。
ときには恐ろしいことに、肉親の兄弟が敵味方に分かれていることもあった。
Y・プリュシク・プリュシコフスキー将軍は白衛軍、その弟グリゴーリィ将軍は赤衛軍、
P・マフロフ将軍は義勇軍、その弟ニコライ少将は赤衛軍、M・ベレンスはウランゲリ
将軍の白衛軍提督、その弟のエフゲーニィ・ベレンスはボリシェビキ側の海軍の
総司令官といった具合にである。
兄が弟と戦う・・・捕虜になり、息子が父を、弟が兄を銃殺する。これが内戦の
日常となった。
ある日、レオニードは林の中で赤衛軍と遭遇し、互いに遮蔽物の陰から銃を
撃ち合っていたが、突然、ひとりの赤衛軍兵士が目に入った。相手もレオニードに
気づいたようであった。
(リュドミール・・・!)
(兄上・・・!)
二人は一瞬凍りついたが、やがて、二発の銃声が響いた。
一瞬の後、兄弟は、二人とも無事に生きていることを確認した。
互いにわざと的をはずして撃ったのだった。
次の瞬間、レオニードはふっと笑って、その場を立ち去った。
リュドミールはそれを見送りながら、
(兄上・・・なんて皮肉なことだ・・・ぼくたち二人が、戦場で相まみえるとは・・・)
と考えていた。


ユリウスは、レオニードが戦闘に出ている間、軍医や看護婦とともに負傷者の
治療や雑用を手伝った。砲弾で片脚を吹き飛ばされた兵士や、負傷者の凄惨な
傷口を見ると、思わず目を背けたくなったし、負傷した兵士のうめき声や悲鳴を
聞くと耳を塞ぎたくなった。悪臭のたちこめる病室で働きながら、
(この程度のことで倒れてはいけない・・・実際に戦場で戦っている人々の苦しみに
比べたら、ぼくの境遇はずっとましなのだから)
と、強いて気持ちを奮い立たせ、包帯を巻いたり、傷口から蛆を取り去ったり、
医師が腐肉を切り取るときにそばに金盥を持って立ち、手術を手伝っていた。
夜遅くまで負傷者の世話をする彼女に、軍医が、
「大丈夫かね?もう休んだらどうかな」
「いえ、けっこうです。こうして仕事をしているほうが気がまぎれるんです」
一人で部屋にこもっていると、もしレオニードが戦死するようなことがあったらと
気が気でないので、包帯やガーゼを洗ったり、負傷者に水を飲ませたりしていた。

数週間後、レオニードが白衛軍の司令部に帰ってきた。部屋でユリウスと一緒に
いながら、彼は、
「今回の戦闘で、リュドミールと会った」
と語った。
「・・・・・・・!」
「あいつはやはりボリシェビキに入党していたのだな。一介の赤衛軍兵士として
戦闘に参加していた」
「で・・・あなたがたは、互いに・・・?」
レオニードはふっと笑って、
「いや、我々二人とも、お互いに標的をはずして撃った。仲間に対する裏切りだな」
201旅行  43:2009/06/14(日) 18:01:57 ID:OdMnw7ZB
レオニードは、エカテリンブルクに幽閉されている皇帝一家の救出を白衛軍の首脳たちに
打診してみた。しかしこれは拒否された。彼らは、
「我々には君主制を復活させる意図はないし、もし仮に復活させるとしても、ニコライ2世と
病弱なアレクセイ皇太子以外のロマノフ一族がよいと考えている」
との返答だった。また、反革命軍にとって、生きたニコライより殉教者ニコライのほうが
有益だった。この返答を聞いて、レオニードは心中で、
(皇帝陛下・・・)
とうめいた。
1918年7月17日、ニコライ2世とその家族はエカテリンブルクで全員が射殺された。
レオニードは神父に、
「皇帝陛下と御家族の冥福を願って、聖体礼儀を執り行ってもらいたい。」
と頼んだ。彼は他の白衛軍将校ともに、礼拝堂の中で蝋燭を上げ、殉教者となった皇帝に
天国を賜るよう神に祈った。
ユリウスも、ニコライ2世ばかりでなく、皇太子や皇女たちまでもが銃殺された
ことに強い衝撃を受けた。
(なんてむごたらしい・・・子供まで殺すとは・・・)

1918年はロシア中の人々が苦しみ、殺された。赤衛軍と白衛軍の双方が殺しまくった。
チェーカー(KGBの前身)の地下室でも、白衛軍防諜部の地下室でも、人々は有刺鉄線を
巻きつけられ、目をえぐりとられ、人間の皮膚で手袋がつくられ、杭の上に座らせられた。
プロの軍人であるレオニードも、野獣と化した白衛軍の兵士たちを見て慄然とした。
8月30日、レーニンがエスエル(社会革命党)の女性党員ドラ・カプランに左肩を狙撃された。
幸い命に別状はなかったが、9月にレーニンは、「赤色テロ」政令を発して、「白色テロ
には赤色テロで応じる」ことを宣言した。ペトログラードでは帝政側の政治家と軍人
512人が処刑された。
トロツキーは誕生したばかりの赤軍に、敵とみなされた者を情け容赦なく鎮圧し、
見せしめの処刑をどしどし執行せよとの指示を与えた。いたるところで銃殺が行われ、
戦闘で捕らえられた白衛軍兵士や農民ばかりか、赤衛軍の兵士や将校も、厳しい鎮圧を
遂行する能力に欠けたときには銃殺された。
ペトログラード・チェーカー議長のウリツキーがある士官候補生に暗殺されると、
報復として「打倒された階級の代表者たち」500人が銃殺刑に処された。


あるとき、アレクセイら赤衛軍が列車を止めて乗客の手荷物検査をしていると、
一人の兵士が女性にいたずらをしようとした。アレクセイはその兵士を殴りつけて、
「いいか、俺たちは革命の崇高な大義のために戦っているんだ。不埒な真似は許さないぞ!」
と叫んだ。すると殴られた兵士が、
「あれはブルジョワ女じゃないか!同志アレクセイ、あんただって皇帝に兄を処刑
されているだろう!“人民の敵”に対して何の遠慮がいる!?」
と怒鳴った。アレクセイは、
「たしかに、俺は皇帝に兄貴を殺されたし、シベリア流刑も経験した。だからこそ、
革命の正義を汚したくないんだ!俺たちは品位ある態度で人々に接すべきなんだ」
その兵士は不満そうな顔をしながらしぶしぶ引き下がった。

アレクセイには、戦闘のほかにも多くの悩みがあった。兵士たちは戦争での負傷
だけではなく、冬には発疹チフス、夏には赤痢といった病気で苦しんでいた。
アレクセイの所属する部隊が森のはずれにいたとき、突然敵の銃火をあびた。
「伏せろ!」
皆、ただちに身を伏せて応戦した。背後は森林で、前方には草地が開け、遮蔽物も
何もない空間を、白衛軍が攻撃してくる。
敵がだんだん間近に迫ってきた。アレクセイには、その一人ひとりの顔が見分けられる
ほどだった。中には、まだ頬のあたりに幼さを残した少年もいた。
赤衛軍の銃弾は、ばたばたと彼らを薙ぎ倒した。
「俺たちの弾薬には限りがあるので、無駄には使用できない!至近距離に来るまでは撃つな、
識別できる目標の数だけ発射しろ!」
アレクセイは草の上に腹ばいになって銃を撃っていたが、不意に、隣にいた兵士が、
「うっ」
と言ってもんどりうって倒れ、しばらく痙攣した後、動かなくなった。
彼はその兵士の遺体から弾薬盒をはずし、もう一度もとの場所へ戻って撃ち始めた。
やがて白衛軍の司令官は、状況の不利を悟って撤退命令を出し、敵は引き揚げていった。
202旅行  44:2009/06/14(日) 18:02:29 ID:OdMnw7ZB
アレクセイはあちこちを転戦しているうち、焼き討ちにされた村を通りかかった。
台所用具、橇、ブリキ板などの破片が散らばり、垣根は倒れ、外囲いの丸太は
はずれて内側に突き出ていた。
どの家も黒焦げになり、雪も煤や煙で真っ黒に汚れていた。
「この村はいったい何があったんだ・・・?」
と、生き残った村人に尋ねると、
「村の貧農委員会を追放した上、赤衛軍に馬を提供するのを拒否したのさ。
その結果、赤衛軍がやってきて、装甲列車から砲撃を食らう羽目になっちまった」
という答えが返ってきた。
アレクセイは彼の部隊の政治委員に、
「あの村は、政府の命令に逆らったせいで焼き討ちされたそうだが、それが党の
方針なのか?」
と聞いてみた。
「そのとおりだ。党の方針に従わない村、あるいは反革命軍に協力した村は
すべて懲罰を受ける」
「そんな・・・!彼らは俺たちの同胞だぞ」
「我々の同胞は世界のプロレタリアートだ。我々は同胞とではなく、搾取者
たちと戦い、世界のすべての困窮している人々の幸福のために戦っているのだ」
「だが女子供まで殺さずとも・・・」
「同志アレクセイ、我々の部隊が戦闘を続けられるのも、農村から食糧を徴発
しているからだぞ。もし奴らに甘い態度を取れば、赤衛軍は彼らのサボタージュの
せいですぐに干上がるだろう」
「・・・・・・」

そこへズボフスキーが割って入った。
「アレクセイ、ちょっと俺のところへ来い」
誰もいないところへ行くと、
「アレクセイ、ああいうことを政治委員に言うのはよせ。お前まで反革命分子
と疑われるかもしれんぞ」
「ズボフスキー、おまえはあの焼き討ちされた村を見てなんとも思わないのか?
女子供や老人まで情け容赦なく殺されていたぞ」
「わかっている。しかし、今は内戦だ。内戦に勝つまでは我慢しろ」
「くっ・・・」
沈み込んでいるアレクセイの姿を見ながら、ズボフスキーは思った。
(もともと情に厚くて、正義感の強いアレクセイには耐え難いことだろうな・・・
俺自身、ここまで悲惨なことになるとは予測していなかったが・・・)
その夜、焚き火の前で暖を取りながら、アレクセイは考え続けていた。
(兄貴・・・俺たちが追い求めてきたのはこのようなものだったのか?今、祖国の
人々は苦しみにあえいでいる。この内戦が終わったら、俺たちが求めていた
理想の社会が到来するのか・・・?)
203旅行  45:2009/06/14(日) 18:03:30 ID:OdMnw7ZB
レオニードは、内戦の血なまぐさい実態をなるべくユリウスの耳に入れないように
していたが、兵士たちの噂から、嫌でも耳に入ってくる。
その上、しょっちゅう響いてくる銃声は彼女に、かつて帝国警察の男に撃たれた
ときのことを思い出させた。
レオニードにとっての悩みは、白衛軍の司令官たちの嫉妬といがみあいだった。
ヴランゲリ将軍はデニーキン将軍をひどく嫌っていたし、デニーキン将軍も同じ
ことだった。コルチャークとユデーニチの陣営内でも将軍たちはいがみあいを
していた。レオニードが、
「コルチャーク将軍、デニーキン将軍、ユデーニチ将軍の3つの軍が連携して
ペトログラードとモスクワに猛攻撃をかければ、白衛軍の勝利に終わるでしょう」
と進言しても、白衛軍は分裂したままだった。白衛軍の司令官たちはそれぞれが
自分でソビエト政権を打倒しようとする功名心にはやったため、各軍はやがて
孤立することになった。
さらに農民たちは白衛軍が帝政時代の法律を復活させ、農民から土地を取り上げて
地主に返そうとしているのを見て反乱を起こした。
そのうえ、白衛軍の規律も乱れていた。デニーキン将軍がクルスクとハリコフ付近で
勝利を収めた後、白衛軍の後方は諸部隊が住民から掠奪した家財道具をびっしり
積み込んだ列車の編成で埋め尽くされていた。レオニードは、
(わたしはかつて、シベリアの反乱を鎮圧した際、規律違反を犯した兵士2人を死刑に
処したしたことがあったが、その程度ではとても追いつかないだろう・・・)
と考え、暗澹とした気分になった。
204>>203の続き 【死亡編】:2009/06/14(日) 18:04:53 ID:OdMnw7ZB
アレクセイは地図を前にして皆に説明した。
「白衛軍の各施設の位置について説明する。ここが兵器庫、ここが被服庫、ここが食糧庫、ここが
現金の保管所だ。明日、一気に攻勢をかける」
次の日の朝、赤衛軍は真正面から白衛軍に攻撃をかけた。アレクセイは部下たちに、
「行けーーーっ!」
と叫んだ。白衛軍側の反撃も激しかったが、兵士たちは味方の死体の山を遮蔽物として利用
しながら、なだれをうって白衛軍の陣地に突入した。機関銃が唸り、敵味方が入り混じって
大混乱になった。
レオニードは、馬に乗ってこちら側に突っ込んできた赤軍兵士を見て、
(アレクセイ・ミハイロフ・・・)
と気づいた。レオニードが狙いを定めて撃った弾がアレクセイの馬に命中し、彼は、
「うわっ!」
と叫んで落馬した。とどめを刺そうと狙ったとき、アレクセイのそばにもう一人の赤衛軍兵士が
現れた。
(リュドミール・・・!)
その一瞬が、レオニードにとって命取りになった。アレクセイの撃った弾が、彼の肩に
当たった。
「うっ!!」
傷口を押さえて膝を突いたレオニードに向かって、機関銃を発射したとき、一人の人間が
レオニードの前に立ちふさがって、血まみれになって倒れた。
「ユリウス!!」
レオニードが彼女を抱き起こし、一方アレクセイは、自分が撃った相手が誰であるかに
気づいて呆然となった。そのとき、
「侯をお助けしろ!」
とロストフスキーの声が響いて、白衛軍兵士たちがアレクセイたちのいる方向に向かって
一斉射撃を浴びせた。


「わああーーーっ!」
「同志アレクセイ!」
「アレクセイ!おい、しっかりしろ!やられたのか?」
「同志諸君!ここはひとまず退却だ!」
ズボフスキーはアレクセイの身体を抱えてうまに乗せた。リュドミールは、内心、兄の身を
案じながらも、アレクセイのあとについていった。

傷を負ったレオニードは、ユリウスを抱えて、なんとか白衛軍の兵器庫までたどりついた。
(ここにある武器を赤衛軍のやつらに渡すわけにはいかぬ・・・)
ユリウスがうめいて、意識を取り戻したので、彼女をそっと床に横たえてやった。
彼女の頬に手を当てながら、
「こんなことになるのなら、お前を無理にでも亡命させるのだった・・・愛しい者たちには
生きていて欲しかったから、おまえのこともわざと突き放して国外へ逃亡させようと
したのに・・・」
「いいや・・・レオニード・・・ぼくは幸せだったよ・・・この国であなたに出会えて・・・もう
自分を偽ることなく暮らせて・・・愛する者はみなぼくを通り過ぎていった・・・でも
あなただけはしっかりとぼくを抱きとめてくれた・・・」
やがて、ユリウスの言葉が途切れ、彼女は眠るように息をひきとった。その顔に
かすかに幸福そうな微笑が浮かんでいるのを眺めながら、レオニードはユリウスの
身体を抱きかかえて頬を撫でた。
しばらくして、彼女の身体を元に戻し、そっと接吻してやった後、
(我々の血の跡をたどって、赤衛軍がここにやってくるだろう・・・奴らが来る前に、
武器を処分せねば・・・)
重傷を負った体で、レオニードは弾薬を保管した場所へ歩いていった。
(我々の負けだな・・・白衛軍は結局団結することも、帝国内の各民族の独立を
認めることも、農民たちに土地を分配することもできなかった・・・だが、敗北すると
わかっていても、わたしにはこれ以外の生き方は存在しなかったのだ・・・さらば、
祖国ロシアよ・・・おまえを救えなかった不器用な男を許してくれ。)
205【死亡編】  2:2009/06/14(日) 18:06:46 ID:OdMnw7ZB
赤衛軍兵士たちが戦闘後に負傷者の手当てをしていると、突然、遠くで爆発音が
響き、地平線の彼方で黒煙がもうもうと上がった。
「なんだ、あれは・・・?」
「おい、誰か偵察に行って来い!」
しばらくして、偵察に行った兵士が戻ってきて、
「どうやら、白衛軍が、武器を俺たちに渡さないように弾薬を爆破したらしい」
「なんだと・・・!畜生!」

赤衛軍の軍医がアレクセイの治療をしたが、彼は、
「残念ながら、この患者はあと少ししかもたんだろう」
と宣告した。それを聞きながらアレクセイは、レオニードの前に飛び出してきたユリウスの
ことを思い出して苦しんでいた。
(志半ばにして斃れるのが、おれの運命だったのか・・・?それも、かつて愛した女を・・・
故意ではないとはいえ・・・撃ってしまったあとに・・・)
アレクセイのそばにいたリュドミールが、
「同志アレクセイ、そんなに自分を責めないでください」
と言った。彼の顔を見て、アレクセイは、
「・・・そうだった、お前も自分の兄貴と敵対していたのだったな」
「ええ、そうです。ユスーポフ家を出てボリシェビキに入党したときから、覚悟はしていましたが」
「おまえは俺より若いのに、ずっとしっかりした考えを持っているな。同志リュドミール、おまえは
きっと立派な革命の闘士になるぞ」
そう言った後、アレクセイは疲れきってふっとため息をついた。
(できることなら、祖国の行く末を見届けたかったが・・・)


数日後、負傷してベッドに横たわっているアレクセイのもとに、ズボフスキーが
やってきた。
「喜べ、アレクセイ。白衛軍は敗走した。やつらはクリミア半島に逃げ込んだが、
もはや袋のネズミだ。あとはクリミアさえ陥落すれば、白衛軍は壊滅する」
「そうか・・・」
瀕死の状態でありながらも、内戦が赤衛軍の勝利に終わることがわかって、アレクセイは
満足感と幸福感に包まれていた。
「兄貴・・・アルラウネ・・・そして同志たち・・・おれはやっと、あんたたちの遺志を継いで
祖国を解放することができた・・・祖国と祖国の人民に永遠に栄光あれ・・・!!」
「アレクセイ・・・!」
「同志アレクセイ!」
「同志アレクセイ・・・!しっかり・・・!」
部屋の中に、驚きとすすり泣きの声が響いた。

1920年11月、クリミアは陥落し、白衛軍の残存勢力は英仏の軍艦でクリミア半島を脱出した。
ズボフスキーはアレクセイの遺体をペトログラードに持ち帰り、ドミートリィが埋葬されている
墓地に埋めてやった。
(アレクセイ・・・短い生涯だったが、おまえは存分に生命を燃焼しつくして生きた・・・
おまえの思い出は決して俺たちの記憶から消えることはない・・・)
ズボフスキーに続いてガリーナ、同志たち、リュドミールもアレクセイの棺の上に花を投げた。
そして葬儀が終わった後、ズボフスキーは、ガリーナと同志たちに、
「さあ、行こうか。」
と言って、皆と一緒に静かに去っていった。

THE END
206保守代わりに:2009/06/24(水) 00:54:48 ID:Y3Vhp81z
207無題  1:2009/07/04(土) 01:17:20 ID:Ws7JTp6D
どこにも居場所がないのに、誰もが、私の家だというあの屋敷に帰ったのは夏だった。
久しぶりに行って見れば、そこにあの陰気な義妹も、騒がしいだけの義弟もおらず
賓客でもないのに、邸内で暮らすあの娘もおらず、
予め知っていたこととはいえ、屋敷の私室に入った私は、ほっとした。
部屋着に着替えて、寛いでいると
「昨日から若様は奥様がお戻りになるということで、侯爵様が
屋敷の者たちに所持万端抜かりなく整えよとのご命令でして・・・」
「うるさいわね」
私には、夫のために熱弁をふるおうとする忠実な執事の口上をさえぎった
妻としてこの家に来た最初から、彼らは私を皇帝の驕慢な姪だとしか見なかった。
今更、悪口が一つ増えたところでなんだろう!
私がこの屋敷に戻ってきたのは、表向きは姪の夫婦仲がスキャンダルに発展
することを恐れた皇帝陛下のご配慮だったが、
実はその皇帝陛下さえご存じない密命を帯びていたのだ。
「どうしても」祖母のアンナ皇太后は言った。
「健康な男の子がロマノフ家には必要なのです」
祖母は、祖父の喪も明けぬ内に叔父ニコライの下に嫁いでいた
ドイツ生まれの義叔母を嫌っていた。
が、王女に生まれ望まれ皇后になった祖母は、感情だけでこのようなことを
言う人ではなかった。皇帝夫妻の待ち望んだただ一人の息子、皇太子アレクセイの疾患は
あのおぞましい破戒僧を呼び寄せ、彼への怨嗟は宮廷だけでなく市井にも満ち満ちて
ロシア全土を憎悪で覆おうとしていたのだ。
ピューリタニズムに満ちた英国宮廷で育てられた皇后アレクサンドラと違って
皇太后アンナは自分で馬車を駆り、軍艦の台所で将兵たちに手料理をふるまう闊達さで
老いたりといえど、宮廷はもちろん、軍部でも人気があった。
皇太后にないものは、ロマノフの血が流れていない、ということだけだった。
侯爵家とはいえ、ユスーポフ家はかのロシアの大帝ピョートルの寵姫を拝領した家で
レオニードの血のなかにはロマノフの血が流れている噂は半ば事実のようにして
宮廷では噂されていた。彼と、まごうことなきロマノフの私が健康な男の子を生めば
祖母はロマノフの血を引く健康な男の子、外孫とはいえ手にできるのだ。
「ますます美しくおなりだこと、アデール」私の顎に手をかけて微笑む祖母は
おそらく私たちロマノフの一族の中で誰よりも政治家だっただろう。
祖母は深く静かに行動し、息子である皇帝陛下に、姪の結婚生活の存続を懸念させ
今日、こうして私をユスーポフ家に帰宅させたのだった。
208無題  2:2009/07/04(土) 01:17:42 ID:Ws7JTp6D
車寄せの音がして、私は居室のカーテンから外を見た
馬車から降り立ったあの人が、顔を上げ、灯のついている屋敷を眺めていた。
あの人だわ。少し痩せた?激務のせいかしら・・・
灯のついている部屋を探しているの?それともついていない部屋?
あなたの心は、レオニード・・・

「奥様、若様のご帰還です」控え目なノックの後そう告げた召使に
私は返事をしなかった。
今すぐ、階段を下りてあの人を向かえたりはしない。

夫を逆上させて支配欲をそそるか
夫の罪悪感を煽ってみるか
或いは「これは皇帝命令ですのよ、あなた」そう宣言して
(ここで私は嗤いだした。皇帝陛下の命令なら、あの人は従うだろう)
あの人と同じ寝室で過ごし、その夜の果実が実ったら・・・ 
武勇に優れたユスーポフ侯爵は激戦地に赴き、そこで名誉の戦死をするだろう。
残された皇帝の姪は、彼女を哀れむ皇帝の配慮で、従兄弟の誰かと再婚し
再び皇帝の一族に戻るのだ。
そして、ユスーポフ侯爵の忘れ肩身は、慈悲深い皇太后の養子となり、
ロマノフ家の皇位を継ぐ準正皇太子となる。
家系にロマノフの血を持つと言われる高潔な軍人貴族と皇帝の姪の子と
怪しい破戒僧を宮廷に呼び寄せた、ドイツ生まれの皇后から生まれた
血友病にかかった皇太子。
喝采を持って皇位に迎えられる存在なのはどちらかは自明の理だった。

私には、皇太后たる祖母の思惑がわかっていた

ロシアのため、ロマノフのため、ユスーポフ侯爵ならきっと名誉に思ってくれる

いいえ、いいえ、おばあさま
ユスーポフ侯爵夫人たる私は、同意できません。

レオニードの足音がゆっくりと私のいる部屋へ近づいてくるのを聞きながら
私は決意した。
国家に、軍務に、そしてあの娘に
あなたの心は妻たる私以外にあってもかまわない。
命だけは、誰にも奪わせない、と。

テーブルの上にあった香水瓶を今開こうとしてる扉に投げた。
レオニードの顔が怒りに青ざめる
さぁ、開戦よ、レオニード。
あなたの命を守るためにあなたと戦うわ。
209無題  3:2009/07/04(土) 01:18:19 ID:Ws7JTp6D
「少し、休みたいわ」コンスタンチンにそう告げて
私はスツールに腰をかけた。
「アデール、ではあなたの喉を潤すなにかを」
芝居かかって跪き、私の機嫌を取ろうとする伊達男気取りにうんざりしていた私は
一刻も早く彼を追い払いたくて、
「そうね、先に私の居室を暖めてきてくださらない」と告げた。
彼は意味深い目配せを私に送り手に接吻をして、やっと私の目の前から消えてくれた。
従僕が差し出すボンボンをつまもうとした時
「犬のフリをする男につきあって、君まで愛犬家ごっこかい?」
背後から声がした。
聞きなれた声の持ち主に私は振り返らずに告げた
「ロシアの冬は寒いのよ、犬でも飼わないと凍えてしまう」
「抱き犬を抱えた老女にしては美しい」
老女と呼ばれてカッとして、ボンボンを投げつけた私の手を取った男
それは、私の従兄弟のドミートリィ大公だった。
陰気な皇后と、あの下賎な破戒僧が支配する宮廷は
彼がいなければもっと陰鬱なものになっていただろう。
どこか斜に構えたところはあるものの、美男な従兄弟は宮廷の人気者だった。
「従兄妹どの、踊ってもらえるかな」
「ええ」
彼が私をダンスに誘う時は、召使にも取り巻きにも聞かれたくない話を
私と二人だけでする時が常だった。
ユスーポフ侯爵家に嫁ぐことになるとお母様より先に私に最初に教えてくれたのも
こんな風に踊っている時だった。
「緑の迷路の森に囲まれた館に住む美女の物語を知っているかい?」
「中世フランスの伝説ね」
「その伝説が蘇ったんだよ。わが従兄妹殿のユスーポフの領地で!」
ここで、彼が何をほのめかしているのかがわかった。
誰よりも社交界に通じた彼が知ってしまったということは
皇太后の耳にも入っているだろう。
そして、早ければ明日の夜会はその話題で持ちきりだろう。
「知っていてよ、とっくに」
「ユスーポフの森の館に住む美女は氷の刃を溶かす奇跡を起こして
君を寡婦にして、僕の妻にするという奇跡は潰してしまった」
知っていたの、ドミートリィ!
従兄弟は真剣な目で私を見て言った
「皇太后のユスーポフ侯爵夫妻への保護は潰えた。
できるなら、生き残れ、アデール!」
あっと言う間に群舞になり、私と従兄弟は様々な色のドレス、軍服の中で
お互いを見失ってしまった。


END
210無題  1:2009/07/04(土) 01:18:52 ID:Ws7JTp6D
ユリが記憶喪失にならず、最初のころのようにユリをネチネチ苛めるレオと
いうのもよかったかも。

レオがロシア帝国の対外諜報部とコネをつけて、アーレンスマイヤ家について調べさせる。
報告書を読んだレオは、アーレンスマイヤ家でどんなことが起こっていたのか、だいたい見当をつけ、
ある日、ユリを自分の部屋へ呼び出す。

レオ「お前は教会の住民登録でも、パスポートでも男ということになっているが、それはなぜだ?
女のお前がなぜ性別を偽っていた?財産目当てか?」
ユリ「・・・・・・・」
レオ「お前にはフランクフルトからヤーンという主治医がついてきたらしいが、特別な主治医が
必要なほどどこか体が悪いのか?」
ユリ「ぼ・・・ぼくは体が弱くて・・・それで小さいときからずっとヤーン先生に・・・」
レオ「そうか?私にはすこぶる丈夫にみえるがな」
レオ「このヤーンという医者、ある夜突然失踪したそうだが、なにか思い当たる理由でもあるか?」
ユリ「さあ・・・もともと身元も地位もそれほど確かな人ではなかったから、大方もっと割りのいい仕事
でも見つけたんだろう」
レオ「ひょっとして、お前がこの男を殺したのではないのか?」
ユリ「ち・・・違う・・・!ぼくは殺人なんて・・・!」
レオ(単にかまをかけてみただけだったが、ユリウスの表情と様子から、ドンピシャだったことを悟る)
211無題  2:2009/07/04(土) 01:19:29 ID:Ws7JTp6D
レオ「もうひとり、お前の次姉のアネロッテも行方不明だな。この女もお前が殺したのか?」
ユリ「・・・・・・」
レオ「お前がアレクセイ・ミハイロフをこのロシアまで追ってきたのは何のためだ?単にあいつに
恋したためか?」
ユリ「そうだよ。彼を追ってここまで来た。彼に会えるのなら、このロシアの大地に朽ちても悔いは
ないと思った。」
レオ「違うな。お前がロシアまでやってきたのは、自分の犯した罪から逃れるためだ」
ユリ「違う!ぼくは彼への愛に殉ずるために・・・」
レオ「レーゲンスブルクのような小さな街では、暮らしにくかっただろうな。ロシアに来れば、
過去をすべてなかったことにして一からやり直せると思った」
ユリ「・・・・・・」
レオ「では、もうひとつ聞こう。アレクセイ・ミハイロフはお前の情熱に報いてくれたか?」
ユリ「・・・・・・」
レオ「革命の闘士に、おまえのような同志でない女など、足手まといでしかない。おそらくは
冷たく突き放されたのであろう」
ユリ(小さな悲鳴を上げて座り込む)
レオ「お前は自分が信じたいことだけを信じていたのだ」
レオ(絶望に打ちひしがれたユリウスを部屋に残して去る)


数日後、執事がレオニードのもとに来る。
執事「あの・・・若さま、どうもあの方の様子がおかしゅうございます」
レオ「どのようにだ?」
執事「部屋の中を歩き回って、なにやらわけのわからないことをしゃべっておいでです」
レオ(ユリウスの部屋へ向かう)
レオ「私だ、ユリウス。入るぞ」
(部屋の中に入ると、テーブルの上に酒瓶とグラスが置いてある。そのそばに、ユリウスがぼんやりと
突っ立っている)
レオ「どうしたのだ?」
ユリ「夢みたものは・・・うたかたのきらめき。永遠へと連なることのない望み。光を闇につなぎ、栄光を
不信心につなぎ・・・」
レオ「何を言っている?」
ユリ「はは・・・あなたの言ったとおりだ。ぼくは母に、財産目当てに性別詐称させられて、アーレンスマイヤ
家に入り込んだ。そして、レーゲンスブルクの音楽学校に入学した、そこでクラウス・ゾンマーシュミットと
いう名の上級生と知り合い、彼に恋をした。彼が本名をアレクセイ・ミハイロフという名のロシア人だと
知ったのは、もう少し後のことだった。でも、僕には彼が何者であろうと関係なかった。体中のすべてが
ちぎれて熱い想いとともに飛び散りそうなほど、彼を愛していた。でも、彼はぼくを騙して置いてきぼりに
した」
212無題  3:2009/07/04(土) 01:21:10 ID:Ws7JTp6D
レオ「やつとはそこで知り合ったのか。で、おまえはなぜ殺人を犯した?」
ユリ「ヤーン先生が、僕の母を犯そうとしたから。カッとなって、ペーパーナイフで刺し殺した。アネロッテ
姉さまは、前アーレンスマイヤ夫人、僕の父、小間使いのゲルトルート、ヨアヒム・フォン・シュワルツコッペン
を殺した悪魔だった。その上に、僕の母とマリア・バルバラ姉さまも殺そうとした。だからロシアに逃げてくる
直前に毒殺した。アネロッテ姉さまの目的は、ロシア皇帝の隠し財産を自分が手に入れることだった」
レオ「・・・なるほどな」
ユリ「愛する者はみな僕を通り過ぎる・・・幸せは一瞬たりとも僕の上には留まらない・・・この世に生を
受けたことそのものが神に背いていたのだというのか・・・」
レオ「で、これからお前はどうするのだ?」
ユリ「わからない・・・でも、できればもう一度だけクラウスに会いたい・・・もう一度だけ、あの胸の中に
・・・あの腕の中に・・・」
レオ「現実を直視しろ。やつは今シベリアの監獄にいる。再会などできるわけがない」
ユリ「現実?現実がぼくにとって何の役に立つの?それにこの世にあるものが、幻想の中のものより
優れているとは限らないでしょう?」
レオ「・・・・・・」
ユリ「クラウス・・・!クラウス・・・!僕を連れて行け・・・もう一度だけでいい、クラウスのあのまぶしい
瞳を見たいんだ・・・!」
レオ(座っていた椅子から立ち上がり、ユリウスに近づくと、彼女の腕をぐいと握る)
ユリ「なっ・・・なにをするの、ユスーポフ侯!」
レオ「おまえに現実というものがどういうものか、教えてやろう」
ユリ「やめて!放して!」
レオ「今だけは私も感情のままに振舞う。お前と同じようにな」
レオ(ユリウスをベッドまで引きずっていって、彼女を押し倒す」
ユリ(悲鳴を上げる)
213無題  4:2009/07/04(土) 01:21:53 ID:Ws7JTp6D
数日後、ユリウスの部屋に、精神科の医者が入ってくる。完全に発狂したユリウス。
医者「こんにちは、ご機嫌はいかがですか?」
ユリ「あ・・・なたは誰?クラウスはどこなの?」
医者「彼はペテルスブルクの別の場所であなたを待っています。さあ、私と一緒に行きましょう」
ユリ「彼があなたを迎えによこしたの?彼は無事なんだね?」
医者「そうです。表に馬車が待っています」
(二人は部屋を出て、玄関に向かう)
リュド「ヴェーラ姉さま、あの人をどこに連れて行くの?もうこの家には帰ってこないの?」
ヴェーラ「ユリウスはね、病気なのよ。だから別の場所で集中治療を受ける必要があるの」
(医者とユリウスは、外で待っていた馬車に乗り込む。出発した馬車は、ペテルスブルク市内の××地区に
あるユスーポフ家所有の館へ向かう)
医者「着きましたよ、さ、降りて」
ユリ(言われるまま、馬車を降りる)
医者「こちらへ。私の後についてきてください」
ユリ(医者の後について邸内に入り、部屋までついていく)
医者「ここがあなたの部屋です。彼は今夜、ここに来る予定なので、それまで待っていてください」
ユリ「クラウスは・・・今すぐ来てくれないの?」
医者「彼は危険を避けて地下に潜っているので、昼間は来ることができないのです。夜になれば必ず
来ます」
ユリ「そう・・・」


(夜になり、レオニードが館を訪れ、ユリウスの部屋に入ってくる)
ユリ(レオニードのほうに駆け寄る。発狂したユリウスは、もはやレオニードとクラウスの区別もつかない)
ユリ「クラウス・・・クラウス・・・本当にクラウスだね?幻じゃあないね?」
レオ「ああ・・・私は幻ではない」
ユリ「君をさがしたよ。連れて行ってくれると約束しただろう?」
レオ「ああ、わたしはこれから、しょっちゅうここを訪れるようにする」
ユリ「本当?もう僕を置いていかないね?」
レオ「ああ・・・」
ユリ(伸び上がって彼に口づけする)
レオ(ユリウスを強く抱きしめ、しばらくしてそっと彼女を抱き上げ、ベッドまで運んでいき、そっと横たえる)
レオ(ユリウスのブラウスのボタンを一つずつはずしていき、ズボンと下着をずり下げる)
ユリ(身体を固くしながらも、抵抗はせず、じっとされるがままになっている)
レオ(彼女にキスをしながら舌を絡め、口の中をなぞる)
ユリ(息苦しさを感じながらも、いつのまにか彼女のほうからも舌を絡めている)
レオ(ユリウスの全身をくまなく愛撫し、ゆっくり時間をかけて味わった後、彼女の膝を割って中に
入ってくる)
ユリ(初めてのときほどではないが、それでもわずかな痛みを感じる。しかしレオの抽送が続くうちに、
身体の奥底に不思議な感覚が芽生えてくる)
ユリ「ああ・・・クラウス、クラウス!」
レオ(ユリウスが他の男の名を呼んだことで、一瞬萎えるが、再び猛然と突き始める)
ユリ「あっ・・・あ・・・ああ・・・っ」
レオ(ついにユリウスの中で果てる)
ユリ(涙を浮かべながら)「愛してる・・・」
レオ「私もだ」
(二人は抱き合って眠りにつく)

THE END
214ユリウスが帰ってきたのだワン!  1:2009/07/04(土) 01:30:38 ID:Ws7JTp6D
この前、長いこといなくなってたユリウスが戻ってきたんだワン。
ボクもすごく嬉しかったし、ヴェーラもリュドミールも喜んでたワン。
でもあのレオニードっていう男だけは何故か嬉しそうじゃなかったのワン。
「よく帰って来たな」って言ったきりユリウスの顔を見ようとしないし、ゴハンの時も何だかよそよそしかったワン。
ケンカしてユリウスは家出をしてたワンか?
だったら今夜はボクを抱っこして一緒に寝てくれるに違いないって思ったから、
ボクは夜、いつも通り書斎でレオニードっていう男が仕事をしてる足元にいてユリウスが迎えに来てくれるのを待ってたのだワン。

足音が聞こえて扉をノックする音がして、ユリウスが部屋に入ってきたのワン。
「ハッハッハッハッ〜〜〜〜オンオンオンオン!!!!」(ユリウス!待ってたワン!ボクを連れてって!)
ボクは息をはずませて、寝巻き姿のユリウスに飛びついたんだワン。
抱っこしてくれたユリウスはお風呂上りのすごくいい匂いがして、ボクはうっとりしたのワン。
「ブラックス、レオニードはまだ仕事をしてるのかい?」
まだだワン、と答えるボクの声を遮って
「もう済んだ」って声と本を閉じる音が後ろから聞こえたのワン。
ユリウス、家出した事を謝りに来たのワンか?だけどレオニードっていう男の今日の様子だったら簡単に許してくれそうにないワン。
怖いからやめたほうがいいのワン〜〜!(怯)
だけど、ユリウスは怖がらずににっこりしてボクを床に降ろしたんだワン。
レオニードっていう男が机から離れて仕事をしてるときのままの顔でユリウスとボクのほうに近付いて来るから、
これからユリウスをひどく叱るのかなってボクは怖くて固まってしまったのワン。
ユリウスも怖くなったのか急に真面目な顔で
「ごめんなさい・・・。勝手なことをして邸を抜け出したりして・・・外の世界を見てみたかったんだ」
って謝ったんだワン。
そうしたらレオニードっていう男がユリウスのほっぺに手を近づけたワンから、きっと叩かれるんだと思ってボクは目をつぶってしまったワン。
「外の世界を見て貴重な経験をして来たのだろう。お前にはそうする事が必要だったに違いない。
だが、もう・・」
叩かれる音がしないのでボクが目をあけたらユリウスはレオニードって男に抱っこされてたのワン。


二人が仲直りしたのは嬉しかったけど、ボクはちょっとがっかりしたのワン。
だって、また二人だけで隣のベッドがある部屋に入っちゃって、ボクは置いてきぼりにされたんだワン。
それにあのレオニードっていう男は急にユリウスを苛めて泣かせたり叫ばせたりするからボクは安心できないのだワン。
何かあったらボクだって外から大きな声を出して助けることくらい出来るかもしれないから、
その部屋の扉の下の隙間から中の匂いを嗅ぎながら耳をそばだてたんだワン。

扉の向こうで「寂しかっただろう」って男の声が聞こえたのだワン。
「・・・あなたは寂しくなかったみたいだね。僕が帰ってきてもずっと知らん顔・・・・ん・・・」
ユリウスの声が途中で止まったからボクはユリウスが首を絞められたと思って緊張したのだワン。
「憎まれ口を叩いていると後悔するぞ」ってレオニードっていう男の声がしたからボクは体を硬くして中の気配をうかがったのだワン。
215ユリウスが帰ってきたのだワン!  2:2009/07/04(土) 01:31:05 ID:Ws7JTp6D
だけど聞こえてきたのは服を脱ぐ音とキスの音と、そのあとは時々ベッドが軋む音だけで、すごく静かだったのワン。
ユリウスはどうしてるワンか?って心配になってきた時に、ユリウスの溜め息のような息遣いが聞こえて来はじめたんだワン。
時々「あ・・・」っていう声が混じってたけど、すごくリラックスした嬉しそうな溜め息だったからボクはホッとしたのだワン。
でもボクはどこか落ち着かないのワン。家出の事をレオニードって男が蒸し返すかも知れないし、最初は優しくしてても
いつも途中からユリウスを苛め始めるんだワン。
少しして、ベッドがひどく軋んだ音がしたと思ったら、それまで聞こえていたユリウスの声が急に聞こえなくなってしまったのだワン。
どうしたワンか?
本当に何の音もしないのワン。二人とも眠ったワンか?と思い始めた時に「う・・・」っていう男の声の押し殺したような声が聞こえたんだワン。
変だワン、あの声はいつもユリウスが悲鳴みたいな声を上げた後でレオニードっていう男が出す声なのだワン。
でも、栗の花みたいな匂いはしてこないし、男の声は一回っきりじゃないし、ますますおかしいのだワン。
何をしてるワンか?
ボクが長いことやきもきしながら中の様子をうかがってると、またベッドが軋む音が一度して、
キスの音の後に「お返しだ」ってレオニードっていう男の声がした途端、ユリウスの小さい悲鳴が聞こえたんだワン。
ボクが緊張して耳を澄ましてると、いつも聞こえてくる何かを舐めているような音がし始めたのだワン。
ユリウスが辛そうな声を出しながら、時々、「いや」とか「やめて」って言ってるんだけど、その声、ちっとも嫌そうじゃないいんだワン。

何回目かの「やめて」の時に、本当に舐める音が止まったらユリウスが悲しそうな声で「やめないで」って言ってるのだワン。
ここがユリウスのわからないとこなのワン。
レオニードっていう男もボクと同じでわからないみたいで、ユリウスに「やめて欲しかったのだろう」と聞いてるのだワン。
ユリウスは何も答えなかったけど、レオニードっていう男の鼻で笑うような声のあと、濡れてるところを指で掻き混ぜるような音と
舐める音が一緒に聞こえてきて、ユリウスは前よりもっと辛そうな声に変わったのワン。
それなのに、なんで今度はやめてって言わないのワンか?
本当にわからないワン〜〜(混乱)
ボクがあれこれ考えてると、ユリウスの「あ・・・、も・・う・・・駄目・・・・・来て・・・・」って、途切れ途切れの苦しそうな声が聞こえたのだワン。
レオニードっていう男はユリウスを可愛がってるのか苛めてるのかわからないワンって前に言ったけど、
苛めて面白がってるに違いないのだワン。
扉の向こうから聞こえてくる音も殆ど無くて、ユリウスが何をされてるのかわからないけど、
時々もう我慢できない、っていうような声にならない声だけが聞こえてくるのだワン。
ユリウスは何故だかはわからないけど、きっとボクがゴハンやおやつをお預けされた時みたいな気持ちになってるのだワン。
でもこの後、いつもユリウスは脚の間にレオニードっていう男のお腹の下のほうに付いてる大きな長いものを突き立てられて
もっと苦しそうで痛そうな声を上げさせられるのに、何でそんな事をして欲しいのかボクにはさっぱりわからないのワン。
どうしてボクがそんな事を知ってるワンかって?一度だけ見てしまったのワン!すごく怖かったのワン〜〜(怯)

お預けされてかわいそうだったユリウスの声がとうとう涙声になって、すごく恥ずかしそうな小さい声で「中に入れて・・・」って言ったら、
やっとレオニードっていう男はユリウスがして欲しがってる事をしたらしいのワン。
そうしたら、ユリウスの苦しいのか嬉しいのかよくわからない叫び声が聞こえてきたのだワン。
ボクはいつもここで何がなんだかわからなくなるのだワン。
ユリウス、気持ちいいワンか?それとも痛いからやめて欲しいワンか?
「いい」って言ったり「もっと」って甘えた声を出したり、「やめて」って悲鳴をあげたりするから
レオニードっていう男もイライラして怒るワンか?
そういえば家出の事も本当は怒ってるのかも知れないワン・・・。
だっていつもよりユリウスの声が大きいし、さっきから何度も特に高い声を上げては静かになったり、ベッドが軋む音だってすごいのワン。
きっとレオニードっていう男はユリウスを壊してしまうくらいに何度もあの先が少し大きくて尖って反り返ってる棒みたいなもので
ユリウスを突き刺して苛めてるに違いないのだワン。
216ユリウスが帰ってきたのだワン!  3:2009/07/04(土) 01:31:31 ID:Ws7JTp6D
どのくらい経ったワンか、急に声と音が静かになって、終わったのかと思ってホッとしたら、今度はお尻が何かにぶつかるような音がし始めたのだワン。
ユリウスの声は小さくなったけど、それは何かに塞がれて聞こえにくくなってるみたいなのだワン。
やっぱり家出の事でお仕置きされながら手で口を塞がれてるのワンか?
ボクが心配してるとレオニードっていう男も、どうだ、なんてユリウスに聞いてるのワン。
手で口を塞がれてるらしいユリウスが返事の代わりにまた一回高い声を上げた後、音が止むと
今度はお尻を叩くような音はしなくなってベッドがゆっくりと軋む音とキスの音だけになったのだワン。
お仕置きは終わったのワン?
そうしたらユリウスの「僕ばかり何度も・・・・あなたも一緒に・・・」って、すごく恥ずかしそうに、ちょっと不満そうに言ってる声が聞こえたのだワン。
何の事なのワン?二人は一緒にいるのに、何でユリウスだけなのワン?本当にわけがわからないワン〜〜(悩)
ボクが一生懸命考えているうちに、また扉の向こうから聞こえてくるユリウスの声と男の息遣いと、
ベッドのギシギシいう音が大きくなっていたんだワン。
ユリウスは声も息も乱れてしまって、ボクはユリウスが今に死ぬんじゃないかと本当に怖くなったのワン。
レオニードっていう男も声を噛み殺してるみたいなんだけど、耳のいいボクにはちゃんと聞こえていたのだワン。
最後に聞こえた二人の声は、名前を呼び合ったように聞こえたんだけど、それはボクにだって聞き取り難いような声だったのワン。

扉の下の隙間からは男の汗の匂いとユリウスのいい匂い、それからいつもの栗の花みたいな匂いがしてきて
ボクはこの匂いを嗅ぐとホッとするようになっていたのだワン。
だってこれ以上ユリウスの苦しそうな声を聞かなくて済むし、静かになった後、
ボクに話しかける時よりももっと優しい声で二人が何か話してるのを聞くとボクも嬉しくなってくるのだワン。
だけど、ホッとしていられたのもほんの束の間だったのワン。
今夜はそれで終りじゃなくて、明け方近くまでユリウスは何度となく叫び声を上げさせられて、
ボクも寝るどころかその度に緊張させられてヘトヘトになったのだワン。
ユリウスが無事なのはもうわかっているけど、あの声にはちっとも慣れないのだワン。

ユリウスがレオニードっていう男の事を大好きなのは、あんな酷いことをされても平気だってことでよくわかるけど、
反対にレオニードがユリウスをどう思ってるのか、ボクは同じ男だけど全然解らないのワン。
ボクはまだこんなに小さいからユリウスは相手にしてくれないけど、
ボクだったらユリウスにもっと優しくしてあげて、絶対にあんなふうに苛めたりしないから、
いつかユリウスはボクの事をレオニードっていう男より好きになるに違いないのだワン。
それにボクはここの誰よりも昔からユリウスを知っているのだワン。
負けないワン!
アオオ〜〜〜〜ンオンオン アオオ〜〜〜〜ンオンオン!!!

「やかましい!!」

怒られちゃったのワン・・・・。

<おしまい>
217ラスプ×ユリ  1:2009/07/04(土) 01:34:28 ID:Ws7JTp6D
このカプに嫌悪を感じる人はスルーお願いします。



《冬宮の中のラスプーチンの部屋》

ラスプ「久しぶりだな、ユリウス・レオンハルト・フォン・アーレンスマイヤ」
ユリ「お、おまえは・・・僕に一体何の用だ?」
ラスプ「そなたに確かめたいことがあってな・・・」(言うなり、いきなりユリウスのブラウスを引き裂いて
彼女の胸を露わにする)
ユリ「なっ、何をする!?」
ラスプ「ほう・・・お前は本当に女だったのか。ならばこちらはどうだ?」(そう言って、ユリウスを押し倒し、
ズボンと下着を脱がせる」
ユリ「やっ、やめろ!」
ラスプ(ユリウスの脚をM字形に開き、中をじっくり観察する。薄紅色の襞を両手で開き、指を中に差し込む。
ラスプ「わしとしたことが、そなたが女であることに気づかなかったとは・・・わしの聖なる術も、そろそろ
焼きが回ってきたのであろうか」
ユリ「もうやめて!離して!」
ラスプ「まあよい。そなたには、ついでにわしの聖なるよろこびを授けてやろう」
ユリ「聖なるよろこび?」
ラスプ「今からそなたはこの聖者ラスプーチンのものとなる。二人だけの聖なる儀式には堅苦しい衣服
などいらぬ!私の足元にひざまずく貴婦人たちはみな裸体のままでこのように喜びをわかちあうのじゃぞ」
ラスプ(そう言って、香炉で麻薬を炊く)
ユリ(全身を震わせているので、歯がカチカチと鳴る)
ラスプ「寒いのなら、このわしが暖かくしてやるぞ。今度は誰にも邪魔されずに、ゆっくりとそなたのことを
知ることができる」
ユリ(必死で首を振る)「そんなことになるぐらいだったら、死んだほうがましだ・・・」
ラスプ「そなたはわしに抱かれるのが、それほど嫌なのかな」
ユリ(うなずく)
ラスプ「しかしそなたは、レオニード・ユスーポフには何度も抱かれたのであろう」
ユリ「あなたには、関係のないことだ」
ラスプ「そなたは、レオニード・ユスーポフに本気で惚れたのか・・・?」
ユリ「もうやめて、そんな話は!」
ラスプ「この雌犬が!」(そう言ってユリウスの横っ面を引っぱたく)
ユリ「きゃあ!」(悲鳴を上げて床に倒れる)
ラスプ「抵抗しても無駄じゃぞ。ここは冬宮の奥深くのわしの部屋じゃ。叫び声を上げても誰も来ない」
ユリ「お願い、他のことだったら、何でもするから・・・」
ラスプ「そなたのような女に、他に何ができるというのじゃ?そなたはアレクセイ・ミハイロフを追って
きながら、レオニード・ユスーポフの愛人になった。そなたのような尻軽女には、このような扱いが
ふさわしいのじゃ」
ユリ「お願い・・・」
218ラスプ×ユリ  2:2009/07/04(土) 01:34:51 ID:Ws7JTp6D
ラスプ「恐れることはない、そなたはわしに抱かれたら、今度はわしに夢中になるであろう」
(そう言って、ユリウスの身体の上にのしかかる)
ユリ「助けて!」(なんとかしてラスプーチンの身体をどけようとするが、びくともしない)
ラスプ(ユリウスの、小ぶりだが形のいい乳房をわしづかみにする。さらに、指の腹で彼女のバラ色の
乳頭を刺激する)
ラスプ「おお、乳首が固くなってきたようじゃぞ」
ユリ「あっ・・・」
ラスプ(指先で数回弾いた後、そのバラ色の乳頭を口にくわえ、さらに舌先で固くなった乳首を転がす)
ユリ「ひっ」
ラスプ(さらに乳房を揉みしだきながら、交互に乳首を吸う)
ユリ「いやっ、いやっ・・・」(ユリウスは頭をのけぞらせ、背中も反り返らせる)
ラスプ(ユリウスの脚の間に手を差し込んで)「ふっふっふっ・・・すっかり濡れておるではないか」
ユリ「そ、そんな・・・」
ラスプ(指を伸ばして割れ目に軽く突き入れる。蜜があふれる中で、指先をゆっくり上下させる)
ユリ「あっ・・・あああ」
ラスプ「おお、こんなに濡れておる。ピチャピチャと音を立てるほどじゃぞ」
ラスプ(さらに指を深く挿入し、ゆっくりと掻き混ぜる)
ユリ「ひいっ・・・ああっ・・・」
ラスプ「ほれ、ここもこんなに腫れておるぞ」(そう言って、ユリウスの秘豆の鞘を剥き始める)
ユリ「あああっ、あうっ・・・!」
ラスプ(ユリウスの両脚を持ち上げ、そのまま彼女の身体を丸めるように、脚を前へ押し倒す。ユリウスの
腰が浮き、両膝が胸につきそうになる)
ユリ「いやあ!レオニード、お願い、助けてよ!」
ラスプ「あの男はここには来られぬ」
ユリ「レオニード!助けて!レオニード・・・」
219ラスプ×ユリ  3:2009/07/04(土) 01:35:19 ID:Ws7JTp6D
ラスプ(ラスプーチンの巨根が、ユリウスの濡れた裂け目に押し当てられる)
ユリ「ひいっ」
ラスプ(ラスプーチンのものが、強引にユリウスの中に押し込まれ、奥まで到達する)
ユリ「ああっ・・・!」(絶望し、身体から力が抜け、顔は苦痛と嫌悪感で歪んでいる)
ラスプ(そのまま、抽送を開始する。ラスプーチンの巨根が裂け目を割って抜き差しされ、ユリウスは
突かれるたびに衝撃で背中をビクンと反り返らせる。彼女の顔は嫌悪感で歪んでいるが、心とは
裏腹に膣は収縮と蠕動を繰り返し、彼に快楽を与える)
ラスプ「おお、おお、そなたの下の口は積極的じゃな。こんなにも絶妙な動きを示しておる」
ユリ「あああ・・・」
ラスプ(荒い息を吐きながら、律動を速める。ラスプーチンが突き上げるたびに、ユリウスの身体も揺れる。
不意に荒々しい動きになると、彼は呻き声を洩らし、彼女の中に自分の体液を注入し、全身の重みを
ユリウスにあずけてがっくりとなった)
ユリ「ああっ・・・!」(絶望的な声を上げる)
(しばらくの間、二人とも疲れて横たわる。ぜいぜい、はあはあという喘ぎ声が聞こえる)
ラスプ(ユリウスの身体を裏返してうつ伏せにし、髪をかきあげ、耳の後ろを舐める)
ユリ「ひっ」
ラスプ(さらに首筋、肩甲骨の下の窪み、脇腹、足の指などを丹念に愛撫し、舐める)
ユリ「ああ・・・」
ラスプ「このような場合、レオニード・ユスーポフはそなたにどうしてくれたのじゃ?」
ユリ「そんなこと、聞かないで・・・」
ラスプ「わしのほうが、不器用なあやつより良いであろう?」
ユリ「・・・・・・」(空気中の麻薬の香りを嗅いで、次第に意識がぼんやりとしてくるユリウス)
220ラスプ×ユリ  4:2009/07/04(土) 01:36:12 ID:Ws7JTp6D
ラスプ(再びユリウスの身体を仰向けにし、ユリウスの顔と身体をじっくり眺める)
ラスプ「美しいのう・・・何度見ても美しい・・・レオニード・ユスーポフめ、女にはまったく興味がないような
顔をしながら、実は隠れてこのような美女を嬲っておったのか」
ユリ「レオニードを悪く言わないで!」
ラスプ「あの融通のきかない男がそんなによいのか?あの男はどのようにそなたを可愛がってくれた?
こうか?」(ラスプーチンの手がユリウスの陰核に伸びる)
ユリ「ひいぃぃっ」(ユリウスがビクンと腰を浮かせる)
ラスプ「少し指先がかすっただけで、こんなに敏感に反応するとは・・・さては毎晩のようにあの男に
可愛がってもらっていたのじゃな」
ユリ「ち、ちが・・・」
ラスプ(いきなりユリウスの臍を舌で舐め、次いで乳房の腋を舐め、頂上に到達すると、乳首を舌で弄ぶ)
ユリ「は・・・うっ・・・」(身体が上気して赤く染まり、全身に汗が噴き出してくる)
ラスプ「あの男なら、回数をこなすだけで、女を歓ばすことなどできまいと思うておったが・・・意外な
特技があったものじゃ。この女の身体を、ここまで開発するとは」
ユリ「お・・・お願い、やめて・・・」
ラスプ「やめてと言うが、そなたのこの部分はたっぷりと蜜で濡れておるではないか」
ラスプ(ユリウスの白く長い脚を開き、秘書に指を突っ込み、出し入れを始める。そのうち膣壁のある
箇所に指が触れる)
ユリ「あううぅっ!」
ラスプ「ふっふっふ・・・ここがそなたの弱点のようじゃな」
ユリ(身体をのたうたせ、美しい金髪を乱しながら顔を左右に振る。その顔は涙で濡れている)
ラスプ(己の肉棒に手を添え、ユリウスの秘所に突き当てる。潤みきった花弁は開ききり、簡単に亀頭が
入り込む。完全に挿入すると、一定のリズムで腰を動かし始める)
ユリ「あっ!はぁっ・・・!んっ!・・・んんっ、はぁんっ!」(彼女の声は、次第に艶やかな響きを帯び始める)
ラスプ「ふっふっふ・・・宮廷の貴婦人も、ペテルスブルクの娼婦も、女というものは皆同じじゃな。最初は
ためらっていても、わしに貫かれると、じきに心よりも腰のほうが先に動き出すようになる」
ラスプ「これではどうじゃ?」(いきなり、ユリウスの身体の最奥部を突く)
ユリ「あぁぁぁぁ!」
ラスプ「ふっふっ、このようなはしたない声を出すとは・・・そなたは根っからの好き者なのじゃな」
ユリ(永久にこのままの状態が続くのではないかと思い、ついにすすり泣き始める)
ラスプ(ラスプーチンの腰の動きが次第に速く、激しくなる。角度を変え、これでもかとばかり激しく
ユリウスの中を突く)
ユリ「あっ・・・!あっ・・・!ああっ!」
ラスプ「おおっ!」(ユリウスを貫いたまま全身を硬直させ、彼女の中でラスプーチンのものが、脈を
うつように膨張し、精を吐く)
ユリ「ああぁぁぁ!」(叫び声とともにユリウスも絶頂に達し、そのまま意識を失う)
ラスプ(ユリウスの中から自分のものを引き抜くと、彼女が失神していることに気づく。金髪をかきあげ、
頬の涙をぬぐってやりながら)
ラスプ「ふっふっふっ・・・そなたもあの男と別れて何かと寂しかろう。だが、これからは身も心も幸福に
満たされて日々を送れるのじゃ」

おしまい
221無題  1:2009/07/04(土) 01:38:27 ID:Ws7JTp6D
《シベリア、アカトゥイ監獄1ヶ月目》
看守「若僧!出ろ!」(鍵を開ける)
アレク(看守の後をついていく)
看守「今日からここがお前の新しい部屋だ。入れ」
アレク(中に入ると、広々とした個室で、質素だが机・椅子・ベッドなどの家具も備え付けられている)
アレク「なぜおれはこの部屋に移されることになったんだ?」
看守「そんなことは俺は知らん。所長にでも聞け」

《シベリア、アカトゥイ監獄2ヶ月目》
看守「食事だ」
アレク(皿を見てみると、いつものような腐ったジャガイモではなく、やわらかい肉と酢漬けキャベツが
入っている)
アレク「今日からは、みんなこの食事に変わるのか?」
看守「いや、他の囚人たちは今まで通りの食事だ。お前の食事だけがこれに変わる」
アレク「なぜだ・・・?なぜ俺だけ?」
看守「俺が知るわけないだろう?」

《シベリア、アカトゥイ監獄3ヶ月目》
看守「お前には、監視付きで中庭を散歩する許可が出た」
アレク(扉の外に出、看守のあとについて庭へ出る)
アレク(中庭に出ると、久しぶりに見る木々の緑が眩しい。外の空気を吸い、深呼吸しながら歩き回ると、
生き返ったような気分になる)
222無題  2:2009/07/04(土) 01:38:51 ID:Ws7JTp6D
《シベリア、アカトゥイ監獄4ヶ月目》
看守「お前に差し入れだ」
アレク(看守が大量の本を持ってきたのを見て驚く。『フペリョート』『ロシアにおける労働運動』などもある。
アレク「なぜ俺だけがこんな待遇を受けられるんだ・・・?」
看守「今夜、所長の部屋に来い。彼がお前に説明してくれるそうだ」
*****
看守「出ろ」
アレク(すっかり暗くなった監獄内を、看守のあとについて歩く)
看守「ここだ。入れ」
アレク(中に入ると、所長が彼を待っていた)
所長(机の上の書類を見て)「アレクセイ・ミハイロフか。確かに本人だな」
アレク「この監獄では、おれだけが特別待遇を受けている。なぜだ?」
所長「今からその理由を教えてやる」(そう言って、机の上の電話をかけ始める)
所長「おお、ユスーポフ侯爵ですか。はい、囚人はここにおります」
所長(アレクに受話器を渡して)「レオニード・ユスーポフ侯が、お前と直接話したいそうだ」
アレク(受話器を受け取る)
レオ「久しぶりだな・・・アレクセイ・ミハイロフ・・・」
アレク「レオニード・ユスーポフ侯、あんたが俺の待遇を?」
レオ「そうだ。所長に金を払って、お前の待遇を向上させてもらった」
アレク「なぜあんたがそんなことをする・・・?」
レオ「私はお前の恋人と取引をした。彼女がわたしに身体を差し出す代わりに、お前の監獄内での
生活が快適なものになるようにとな」
アレク「なっ・・・それは、ユリウスのことか?」
レオ「そうだ。ユリウス・レオンハルト・フォン・アーレンスマイヤと名乗る金髪のドイツ人女性。彼女は今、
ここにいる」
223無題  3:2009/07/04(土) 01:39:16 ID:Ws7JTp6D
アレク「それが本当なら、ユリウスを電話に出せ!」
レオ「もう別れてしまった恋人でも、声が聞きたいのか?」
アレク「そんなの、デタラメだろう」
レオ(いきなり、ユリウスの脚を開かせ、花びらの奥のピンク色の突起を指で刺激する)
ユリ「ひぁぁっ!あ・・・あっ!」
アレク(ユリウスの声を聞いて呆然となる)
アレク「やめろ!俺の待遇をもとに戻せ!その代わり、ユリウスに触れるのを止めろ!」
レオ「おまえはペテルスブルクでユリウスに会ったとき、彼女を突き放してきたのであろう?お前が
捨てた女を私が拾うのが悪いのか?」
アレク「・・・・・・!」
レオ「それに、もうこの女の身体は私に馴染んでいる。まだ気持ちはついてきていないようだがな。
行為の最中に、何度も痙攣するし、ここはもうこんなに濡れている」
レオ(指先をユリウスの中に出し入れすると、ピチャピチャと音がする)
レオ(いきなり、ユリウスの両脚を抱え込むと、一気に奥まで貫く)
ユリ「あああぁぁ!」
レオ(最初はゆっくりと、次には激しく突き始める。そのたびにベッドがギシギシと軋み音を立てる。
結合部からは蜜が溢れ出、レオニードが抜き差しするたびに湿った音を立てる)
ユリ「あぁぁんっ・・・!はあっ・・!あぁっ・・・!」 (次第に声が甘い響きを帯び始める)
アレク(電話口から聞こえる声と音に、顔が青ざめる)
レオ「今後も、この女が私を満足させるたびに、お前の待遇を向上させるから、安心しろ」
レオ(そう言って、電話を切る)
所長「さあ、用は済んだ。おまえはもう部屋へ戻れ」
224無題  4:2009/07/04(土) 01:39:37 ID:Ws7JTp6D
その夜、アレクセイは一晩中、ユリウスとレオニードの身体が絡み合った光景を頭の中に描き続けた。
抱かれているときの彼女の表情や身体の動きまで、彼は想像した。
アレクセイは自分の頭を壁にぶつけたくなるほど苦悩していた。一分が一時間ほどにも感じられた。
まんじりともせずに朝を迎えたとき、アレクセイは疲れ果て、こんなことならペテルスブルクで再会
したとき、二人そろって憲兵に射殺されていれば良かったとさえ思った。
その後も、アレクセイの待遇はどんどん良くなっていった。清潔なシャツや新しい靴が支給され、冬には
毛布や毛皮の外套などの防寒具が差し入れられ、夏には監視付きで、近くの川へ釣りに行くことも
許可された。入浴もしょっちゅうさせてもらえるし、書物も新しいものがどんどん加えられた。
しかし、そうして生活が快適になればなるほど、アレクセイの苦悩は深まっていくのだった。ユリウスが、
他の男に抱かれている姿が頭から離れない。
アレク(なんということだ、ユリウスがあの男に身を売り、そのおかげで所長が俺の待遇を変えていたとは
・・・)
すぐにも脱走したい思いに駆られたが、監視の目が厳しくて、とても抜けだせそうにない。
アレク(ユリウス、お前のことを思えばこそ、ペテルスブルクで再会したとき突き放してきたというのに・・・)
アレクセイの食事には、紅茶やお菓子も添えられるようになり、あるときなど、バイオリンが
差し入れられたこともあった。それを見ると、兄のドミートリィや聖ゼバスチアンでの日々を思い出す。
アレク(ユリウスはどうしているだろうか、あの男のもとで苦しんでいるだろうか、それとももう俺のことなど
忘れただろうか・・・)
225無題  5:2009/07/04(土) 01:39:59 ID:Ws7JTp6D
《ユスーポフ邸、レオニードの寝室》
レオ(ベッドの上にユリウスを座らせ、彼も座った姿勢になる。いつもどおりゆっくりと時間をかけて彼女に
キスをし、唇を下へ滑らせ、ピンク色の突起を甘噛みし、舌で転がす)
ユリ「あ・・・ああ・・・っ」
レオ(ユリウスの背を反らさせ、腰を上げさせる。そして自分のものに指を添え、彼女の身体の中心に
押し当てる)
ユリ(爪先に力を込め、脚をさらに大きく開いてレオニードが突いてくるのを待つ)
レオ(ユリウスの腰をつかみ、一気に突く)
ユリ「あぁあぁんっ・・・!」
レオ(自分のものを根元まで入れると、ユリウスの腰を抱え上げ、上体を引き寄せて向かい合い、下から
突き始める)
ユリ「・・・はっ!・・・っん!・・・っぁんっ!」
レオ(上下に動くたびに荒い息を吐き、それがユリウスの喉元にかかる)
ユリ(身体が動くたびに彼女の輝く金髪も激しく揺れ、しまいには嗚咽を漏らす)
レオ「うっ・・・!」(そう言って、ユリウスを抱き寄せながら横たわる)
ユリ「あ・・・」(目に涙をにじませながら身体を震わせる)
レオ「清純な処女が、私に抱かれて淫らな娼婦になったかのようだな」
ユリ(思わず、何か反論しようとする)
レオ(ユリウスの口を手でふさいで)「お前が私を満足させればさせるほど、あの男の生活も良くなるのだ。
ベッドの上では、もっと淫らに振る舞うようにしろ」

・・・こうして、アレクセイは脱獄するまでの6年間を、快適にすごすことができたのであった。

おしまい
226無題  1:2009/07/04(土) 01:42:04 ID:Ws7JTp6D
お互いの体にワインをかけて、それを舐め合うレオとユリ

レオニードはユリウスの脚を上げさせ、足の裏から爪先にまで舌を這わせていった。
「あん、レオニード、くすぐったい・・・」
ユリウスがもがき、彼の口の中でワインと唾液にまみれた指先を縮めた。
レオニードはユリウスの白い脚の形の美しさに見とれながら、左右のふくらはぎを
堪能し、膝裏を舐め、太腿に舌を這わせやすいように屈曲位をとらせた。

ユリウスの太腿を舐めながら、やがてレオニードの舌は真っ白な内腿のの間の
肉の果実に届いた。
湖のような状態になったその部分を舐めると、ワインとユリウス自身の愛液が
混ざり合った味がする。
ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ・・・
「あはっ、ふはああああっ」
ユリウスが腰をがくがくと揺する。
あたかも彼の舌先を歓待するように、膣口がとろみのある液を滴り落とす。
液体が窪みに溢れ出て、会陰部へと流れ出した。
「ふっ、おまえという女は…・・・もうここは湖のようになっているぞ」
その光景をじっくり眺めながらレオニードは、もう一度生唾をゴクリと飲み込んだ
あと、舌先を美しいバラ色をした秘肉に近づけていった。舌を入れ込み、舐め啜る。
「あっ、あっ、あーっ」
ユリウスが、ズルズルと啜る音に会わせるように喘ぎ声をあげ、腰をくねらせて
悶え始めた。

レオニードがたやすく敏感な小突起の位置を探り当てると、そこも彼女の体の
他の部位と同様、最初はワインの、ついで蜜の味がした。
根元から先端に向けて、あますところなく舌が這い回る。女体の神経がすべて
集まった蕾は、久方ぶりの刺激に嬉しそうに震え、ユリウスの体に電流のような
快感をまき散らし、レオニードの鼻腔にはオスの欲情をそそるメスの誘惑臭が
広がった。
「あーっ、レ・・・オニード・・・も、もっと・・・」
彼の舌がじらすように弱くする一方で、適当にアクセントを持たせて触れる。
彼女のピンク色の小さな真珠に磨きをかけるように、微妙な動きを続けていた。
「いやっ・・・レオニード、おかしくなっちゃいそう!」
そう口走りながら、ユリウスは両手につかんだシーツを引っ張っていた。
レオニードがやっと顔を上げ、腹部、臍、とのぼってきて乳房を舐めはじめた。
肌からにじみ出る汗とワインが混ざり合い、さらに体臭と酒の香りも混じり合って
男の官能を刺激する。
彼の舌は、美しい形にほどよく隆起した二つの丘陵に到達した。
レオニードの舌は、左側の丘陵の麓をゆっくりと回っている。その回転する位置が、
少しずつ上がっていくようだった。
ユリウスの神経は、乳首に集まっていた。早くそこまで到達してくれればいいのにと、
焦れったくなる。
しかし、彼の舌は容易に頂上まで上がってこないで、彼女を焦らす。
やっとのことでレオニードの舌が頂上まで到達すると、埋まっていたピンク色の
乳首は固くなって、丘陵の頂に置かれた丸い蕾になっていた。
彼の唇が吸い取るように、乳首を口の中へ迎え入れると、そこもやはり汗と
ワインの味がした。
「うっ・・・・・・」
うめき声を洩らして、ユリウスは両足を踏ん張るようにした。
片側を存分に舐めてから、反対側に移る。彼女はハァハァと息づかいを荒くし、
力なく彼に身を任せる。
227無題  2:2009/07/04(土) 01:42:43 ID:Ws7JTp6D
反対側の丘陵も、同じように丹念に舐め回し、今度は腋に移った。
ユリウスの腋には甘酸っぱい匂いがこもっていた。舌を出して、そこを
ねっとりと舐める。
「きゃっ、やん、はあぁ、だめぇ」
舌を這わせるごとに、彼女はますます身悶える。けれど、こぼれる笑い声の
中にも、艶めかしい響きが感じ取れた。
さらに首筋とうなじを舐め、
「ここは・・・どうだ?」
そう言って、ユリウスの耳の内部に舌を差し入れて、耳の穴を舌先でくすぐり立てた。
「はうん・・・あふう・・・」
彼女は鼻にかかった喘ぎ声を口から漏らし、軽くかぶりを揺すり振った。
やっとレオニードが彼女の全身のワインを舐めとると、ユリウスが、
「レオニード・・・今度は、ぼくがあなたに・・・」
そう言って、ベッドの上に起き上がると、レオニードのものを両手に包んだ。
口に含むということにはほど遠く、頬張るのがやっとであった。その硬度は
彼女の口の中で、妥協することを拒むように、堅固になりきっていた。
彼のものに愛おしさを覚えて、ユリウスはそれに口の中で舌を触れる。
それはワインと先走りの混ざり合った味がした。
ユリウスの口の中でレオニードの巨大な鉄柱は、いっそう硬度と量感を増していた。
その素直さに、レオニードの興奮が感じられる。
彼女は思いつくままに動作と技巧を変え、動きが速さを増して、ユリウスの金色の
髪が揺れた。
彼女の舌の、繊細で柔らかい感触に、レオニードは息を止めた。
「うっ・・・くくく」
テクニックの巧拙よりも、ひたむきに彼に尽くそうとしているユリウスの姿に、
愛おしさを感じた。また、目をうっすらと閉じてバラ色に上気した彼女の頬は、
ユリウス自身も興奮に陶酔していることを示していた。
228無題  3:2009/07/04(土) 01:43:15 ID:Ws7JTp6D
ユリウス自身は、レオニードの愛撫と舌技に報いるために、最後まで続けるつもりで
いたのだが、不意に、彼女の髪に彼の手が触れて、頭を押さえつけるようにした。
レオニードが行為を中止しろと指示していることがわかったので、ユリウスは口を外した。
彼の光るように充血したものに唇を寄せたまま、彼女はしばらく荒々しい息づかいを
続けていた。
「なぜ・・・・・・?」
ユリウスが聞くと、レオニードは笑いながら、
「お前を、満足させてやりたいからだ」
と言って、再び彼女を仰向けにさせ、脚を抱え込むと、唾液と蜜液でいっぱいになった
部分に先端を合わせると、ゆっくりと腰を沈めていった。レオニードの鉄柱が根元まで
入るのを待って、ユリウスの通路は強く締め付けてきた。その締め付ける力に逆らって、
鉄柱は滑らかな通路を出入りする。
「ああっ・・・、いいっ・・・」
ユリウスは全身をヒクヒクと痙攣させた。その痙攣に合わせて通路が収縮する。
その動きがレオニードには愛おしい。彼が腰を動かすたびに、彼女は艶めかしく
体をくねらせながら、リズムを合わせ、締めたり緩めたりを繰り返している。
肉襞の感触は、彼にこれまで経験したどんな女よりも強烈で甘美な刺激を与えていた。
「は・・・ん、すっごく、・・・いいっ!」
ユリウスの細い腰をつかみ、ずんずんと強く深く突いてやると、彼女は、
「は・・・恥ずかしいよ・・・こんなに・・・感じ・・・」
そう口では言っていても、蜜壺は恥じらいを抑えることができず、レオニード自身に
貫かれるたびに、くちゅくちゅと鳴りながら絡みついてくる。彼が何度も何度も
突き続けてやると、ついにユリウスは
「あ、あう、うーっ!」
と悲鳴を上げて体を弓なりにのけぞらせ、それと同時にレオニードも
「うっ!」
とうめいて頂点に達し、彼女の中に白濁を噴き出した。

いつの間にか二人とも汗がひき、呼吸も正常に戻っていたが、眠っているのか
目覚めているのか、よくわからないような気分であった。
まだ体のあちこちに余韻が痕跡をとどめ、全身の力が抜けきって、この快い
疲労感に、いつまでも浸っていたかった。
やがてレオニードがユリウスの肩を抱き、彼女も彼の胸に顔を寄せ、そこに
涙を垂らした。
「泣くことはないだろう」
「だって・・・幸福なんだもの・・・」


END
229《狂人ユリウス Part2》  1:2009/07/04(土) 01:45:06 ID:Ws7JTp6D
アレクセイが蜂の巣のように銃弾を浴びてネヴァ河に沈み、ユリウスが彼の子を死産して発狂した後、
レオニードは秘かに彼女を住まわせているアパートを訪れた。
料理女に、
「どうだ?彼女の様子は?」
と尋ねると、
「だめでございますよ。なにしろ赤ん坊を死産したときから全く一言も口をきいてくださらないんです」
と答えた。
「そうか・・・ならば、あれが飲む酒にこれを入れて欲しい」
と睡眠薬を差し出した。
ユリウスの夕食を用意する際、料理女はワイングラスに睡眠薬を入れた。
彼女が黙ってそれを飲むと、しだいに目がとろんとし、最後には持っていたワイングラスを床に
取り落とした。
彼女が椅子からぐらりと落っこちそうになったので、料理女が慌てて体を支えると、レオニードが
入ってきて、ユリウスを抱き上げて寝室まで連れて行った。
意識を失った彼女をベッドに横たえ、部屋着を脱がせると、
「ユリウス・・・」
と言いながら彼女の唇をふさいだ。ワインの匂いと甘やかな体臭が入り混じり、レオニードの欲望を
刺激した。
これまで何人もの女を知っているが、彼女の乳房に触れた彼の指先は、まるで初めて女に触れた
ときのように震えていた。
230《狂人ユリウス Part2》  2:2009/07/04(土) 01:45:27 ID:Ws7JTp6D
乳房を揉みしだきながら中心の乳首に触れると、たちまち固く尖りだした。乳首を啄ばみながら、
この白い形のいい胸を、あの男はしょっちゅう目にし、愛撫し、吸っていたのだと思った。
その後、膝を割って脚を開かせると、白い太腿の奥に女の部分が現れた。色素の薄いピンク色の
花びらが、ぴったりと口を閉じている。柔肉のあわいを広げると、ぬめぬめと光る薔薇色の器官が
あった。そこからかすかに女の匂いが漂ってきた。
レオニードはその部分を舐めまわし、花びらや陰核を吸い上げたり、舌先でつついたりした。
ついに我慢できなくなり、ユリウスの中に入ろうとしたが、レオニードの屹立はなかなか沈まなかった。
意識を失った彼女のそこは潤っていない。
彼はどうしたものかとしばらく考えたが、ふと、髪を整えるために用いる椿油のことが頭に浮かんだ。
ちょうど部屋の中にその瓶が置いてあったので、指に油をつけて花びらに塗りつけ、さらに肉壁の
内側にも塗りつけていった。さらにレオニードの男の部分にも塗りつけた。
再び挿入を試みると、ゆっくりと亀頭が沈み、やがて根元まで埋め込まれた。それから、ゆっくりと
腰を動かし始めた。抜き刺しするたびに、ユリウスの肉襞がレオニード自身にまとわりつく。
しだいにレオニードの抽送の速度が速くなり、彼女の金色の髪や乳房も揺れ動く。
(ああ、ユリウス!ユリウス!)
心の中で叫んだ後、最後に、苦しみにも似た快感が彼の体を駆け抜けていった。
ぐったりと彼女の体に体重をあずけたあと、そろそろと腰を離した。ユリウスの花弁から白濁が
こぼれおちた。
彼女と初めて出会った日から11年、やっと想いを遂げることができた感慨にふけっていた。
しばらくの間、彼女の顔を撫で、唇に優しくキスをした。
息づかいがおさまったあと、レオニードは衣服を身につけ、彼女にも部屋着を着せつけてやった。
そしてユリウスを抱き上げた後、階下にいた料理女に、
「お前は私の部下とともに残って後始末をしろ」
と言いつけ、馬車に乗り込んでユスーポフ邸へ向かった。
231《狂人ユリウス Part2》  3:2009/07/04(土) 01:45:49 ID:Ws7JTp6D
1819年、パリ郊外にあるユスーポフ家の館――

ロシアから亡命してきたユスーポフ家の人々は、この館に居をかまえていた。
ユリウスが揺りかごの中の赤ん坊を見て、
「誰・・・?この子・・・」
「お前が産んだ子ではないか」
レオニードが答える。
「そんな馬鹿な・・・ぼくは、死産したはず」
「あれはお前が見た夢だ。赤ん坊の死産も、ロストフスキーがスパイだったというのも、みんな悪夢
だったのだ」
「ああ、そうだったね。あんな場面は前にも一度、経験したことがあったよ。ぼくは苦しんで悪夢の
さめるのを待っていた。さめてしまえば苦しみはおしまいだ」
しばらく赤ん坊の顔をしげしげと見てから、
「でも、この子、髪が黒いよ」
「ヴァシリーサ・ミハイロヴナ夫人から聞かなかったのか?ミハイロフ家はもともと黒髪の血統なのだ」
「そうだ、思い出したよ。ミハイロフ家で生活しているとき、おばあさまから聞いた。アレクセイは母親の
血を継いで、亜麻色の髪なんだね」
「さあ、もう寝よう」
「赤ちゃんにお乳をやらないと・・・」
「乳母がついているから大丈夫だ」
ユリウスは、寝室でレオニードに抱きつきながら、
「あ・・・あ!アレクセイ、ぼくの・・・!」
と言った。ベッドの中で、レオニードに抱かれながら彼女は、
「ああ・・・こうしているとあなたの腕の中で、どんどんぼくが自分自身になっていくのがわかる・・・
どこかに長いこと閉じ込められていた本当のぼく・・・存在することを許されなかった本当のぼくが
もどってくる・・・」
「たぶんそれは思い出さないほうがいいことなのだろう」
「うん、そうだね・・・このままでいいんだ・・・」

こうして、発狂したユリウスは、レオニードとの間の子を、アレクセイの子供と思い込んで
暮らしましたとさ。

≪完≫
232《媚薬》  1:2009/07/04(土) 01:46:53 ID:Ws7JTp6D
ペテルスブルクのアパートを引き払ったアレクセイは、ウスチノフが娘のシューラのために建ててやった
別荘に住んでいた。アルラウネに、しばらくペテルスブルクを離れていたほうが賢明だといわれたから
だった。
シューラが自分を慕っていることは知っていたが、ドイツからロシアに帰ってきてからのアレクセイは、
一度も女を抱いていなかった。祖国と革命運動に対する思いが深すぎて、女などに関わっている暇は
ないと思っていたし、彼が唯一、愛している女はユリウスだけだった。
一方、シューラはアレクセイを手に入れるために一計を案じた。
ある日の夕方、シューラが食事ののったトレーを持ってアレクセイの部屋に入ってきた。
「シューラ、なぜ君がそんなことを・・・?」
「通いの家政婦が突然具合が悪くなったの。だから、代わりに私が持ってきたわ」
「ありがとう。君にそんなことまでしてもらうなんて・・・」
「気にしないで。このくらい、大したことじゃないわ、アレクセイ」
彼が食事をしているのを眺めながら、シューラが、
「アレクセイ、この間は父があなたに不愉快な思いをさせてごめんなさい。侯爵家の高貴な血がうちの
家系に混じることを望んでいるだなんて・・・」
「もう済んだことだよ。それに、俺は君に対しては別に悪感情を抱いてはいない」
料理を食べ、ウォッカを飲んでいるうちに、アレクセイの頭はぐらぐら回り始めた。
(いったいどうしたことだ・・・?俺は、こんなに酒に弱いはずでは・・・)
頭を抑えながらふらふらと立ち上がると、目の前に、男装をした金髪の女がいた。
(お・・・まえ・・・ユ・・・ユ・・・リウス・・・)
女の頬に手を触れると、
(ユリウス・・・ユリウス・・・!なんということだ!いつ・・・どうやってここまで・・・いったい・・・なんという
ことだ、こんなところで・・・)
女が抱きついてきて、
「あなたを愛しています・・・あなたを愛しています・・・!」
と言った。
女と唇を合わせていると、もはや自分を抑えることができなくなった。これまでアレクセイが犠牲にして
きたものの記憶が走馬灯のように甦った。
「はなさない・・・!もう決して・・・!」
そういうと、女を抱き上げ、ゆっくりとベッドに押し倒した。
(ああ、ユリウス、ユリウス・・・!やっとお前と思いを遂げることができた・・・!)
アレクセイはこれ以上はないというほどの幸福感にひたっていた。
233《媚薬》  2:2009/07/04(土) 01:47:14 ID:Ws7JTp6D
次の朝、アレクセイが目を覚ますと、もう外は明るくなっていた。隣に横たわっている女に、
「ユリウス・・・」
と声をかけると、その女が身体を起こした。その顔を見て、アレクセイは驚愕した。
「シューラ・・・!お、おれはいったい・・・」
アレクセイが驚きのあまり声も出せないでいると、そこに偶然アルラウネが入ってきた。
「アレクセイ、もう起きているの・・・?、まあ、いったいどういうことなの、これは!!」
ベッドの上にいる二人の姿を見て、アルラウネはそう叫んだ。
するとシューラが涙を浮かべながら、
「アルラウネさん、昨日の夕方、私がアレクセイの食事を持ってきたんです。それを食べ終わった後、
彼が突然私を押し倒して・・・」
部屋にシューラのすすり泣きの声が響いた。アルラウネは、
「とにかく、二人とも服を着なさい。アレクセイ、あなたはあとで私の部屋に来るのよ」
と言い残して出て行った。
アレクセイがアルラウネの部屋に来ると、彼女はいきなりバシッと彼の横面を張り飛ばした。
「なんてことをしたの!あなたは!アルコールで見境がつかなくなったの!?」
「そ、それが・・・俺は昨夜の記憶が全然ないんだ・・・」
「あなたのことだから、ウォッカを飲みすぎたんでしょう。本当になんてことをしてくれたの!これで
ウスチノフさんとの関係も終わりだわ!!」
反論することができず、アレクセイはうなだれていた。
アルラウネはため息をついたが、やがて、
「こうしていてもしようがないわ。これから私はシューラを連れて、ウスチノフさんのところへ行って来る。
いいこと、あなたはこの別荘から一歩も出てはだめよ」
そう言うと、呆然としているアレクセイを残し、シューラと一緒にペテルスブルクへ帰っていった。
234《媚薬》  3:2009/07/04(土) 01:47:36 ID:Ws7JTp6D
一週間後、アレクセイが滞在している別荘へアルラウネが戻ってきた。
「シューラとウスチノフさんと私の3人で、じっくり話し合ったわ。ウスチノフさんは最初は怒ってらした
けれど、あなたが責任を取ってシューラと結婚するのなら、今回のことは不問に付してもいいと
おっしゃっているわ」
「で、でも俺は・・・」
「アレクセイ、あなたはあのお嬢さんを傷物にしておいて、責任を取らないつもりなの!?それは
男として、もっとも卑劣な行為よ!」
「・・・・・・」
こうして、アレクセイはシューラと結婚せざるをえなくなった。田舎の小さな教会で、人目をしのんで
結婚式を挙げたとき、シューラの顔は喜びに輝いていたが、アレクセイの頭の中は、不審と後悔と
疑問が渦巻いていた。
(あのとき、俺の前にいたのは、確かにユリウスだった・・・あれは俺が見た幻覚だったのか・・・?)
疑問を感じながらも、それからのアレクセイは、ウスチノフの婿として工場経営に携わることになった。

ユリウスがコンコンとレオニードの部屋のドアをノックすると、
「入れ」
と声がした。
「そこへかけたまえ、ユリウス」
彼女が椅子に腰かけると、
「アレクセイ・ミハイロフのことだがな、どうやらやつは結婚したようだぞ」
「え・・・・・・」
一瞬、レオニードの言った言葉の内容がつかめなかった。やがて彼の言葉の意味が飲み込めてくると、
「そ、そんなはずが・・・」
「本当だ。やつは、ウスチノフという裕福な実業家の娘と結婚したらしい。シュリッセリブルクに工場を
二つ経営している。その娘と結婚すれば、工場も邸宅も別荘も船も車も、すべて婿養子であるやつの
ものとなる」
「・・・・・・」
ユリウスはしばらく言葉も出なかったが、やがて、
(クラウス、クラウス、君は財産に惹かれてその女性と結婚したのか?それともその女性自身を
愛したのか?君がぼく以外の女に心を移すはずがないと思っていたのは、単にぼくがオルフェウスの
窓の伝説にとらわれていただけなのか・・・)
顔を真っ青にして、ユリウスはよろよろとレオニードの書斎を出て行った。
235《媚薬》  4:2009/07/04(土) 01:48:00 ID:Ws7JTp6D
その後、レオニードは、ロシア中部にあるユスーポフ家の領地を視察に行った。
(ときどきは、管理がうまくいっているか見ておかねばな・・・)
彼が馬に乗って森の中を進んでいくと、道ばたに一人の薄気味悪い老婆がたたずんでいた。
「もし・・・そこのご領主様・・・」
「私に何の用だ?」
「わたしはこの辺で薬草売りをしている者ですが・・・媚薬をお買いにはなりませんか?」
「媚薬?くだらん」
さっさと通り過ぎようとすると、その老婆は、
「あなたさまの周囲に、心の悩みを抱えている女性はおりませぬか?この媚薬で、その女性の悩みを
解いてやることができましょうぞ」
「・・・・・・」
くだらないと思いつつも、彼はポケットに手を入れ、金貨を数枚取り出した。
「さあ、これを受け取れ」
「ありがとうございます。これが、私が処方した媚薬でございます」

レオニードはペテルスブルクの邸に帰り着くと、料理人に媚薬を渡して、
「これを毎日、ユリウスの夕食に混ぜろ」
と命令した。
一方ユリウスは、ずっとクラウスへの失恋の悲しみに浸っていたが、次第に自分の身体と心に異変が
起きているのに気づき始めた。
レオニードの逞しい腕や胸を見、あるいは彼の近くを通り過ぎて、かすかに男の体臭が漂ってくるとき、
一瞬、目がくらむような、何ともいえない気分になる。
(そんなはずはない、何かの錯覚だ・・・第一、ぼくはまだクラウスを・・・)
236《媚薬》  5:2009/07/04(土) 01:49:19 ID:Ws7JTp6D
ある日、ユリウスは再びレオニードの書斎に呼び出された。
「アレクセイ・ミハイロフはもう他の女と結婚したのだから、そろそろお前が何者で、なんのためにやつを
このロシアまで追ってきたか、話してもいいのではないか?」
そう言われて、ユリウスは戸惑い、激しく迷った。クラウスに失恋した悲しみで、涙がにじみ出て来た。
彼女の頬を涙が伝い落ちるのを見ると、レオニードは椅子から立ち上がって、静かに抱きしめてやった。
彼の手が彼女の背中に触れると、そこから刺激が体中に広がり、ユリウスがおののいて身じろぎすると、
レオニードが彼女を押さえた。
「動くな」
そう言うと、静かに彼女を抱き上げて隣の寝室まで運んで行った。
寝台に横たえられ、唇をふさがれると、何とかして抵抗しなければならないと思ったが、身体にまったく
力が入らない。それどころか、身体の奥に奇妙な感覚が起こってくる。
レオニードがブラウスのボタンを上から下へと外していき、ズボンとショーツを脱がせても、ユリウスは
無抵抗のままだった。彼の前に裸身をさらしたことで、羞恥に震えそうだったが、薄桃色の乳首を舌で
触れられると、
「あ・・・」
と声を洩らした。
レオニードが彼女の体のあちこちを、強弱をつけてなめ回したり吸ったりすると、くすぐったさと、
身体の奥からむず痒さと疼きの伴った妖しい感覚が起こり、自分の身体に何が起こっているのか
わからないという恐怖心にとらわれた。
彼が膝を割って太腿を押し上げ、陰核を舐めると、ユリウスは声をあげ、中から蜜が流れ出した。
まだ17歳の彼女のその部分は、驚くほど初々しかった。それでも、男を刺激するメスの匂いが鼻腔に届く。
やがて屹立した己のものをユリウスの中に入れようとすると、彼女は怯えて、
「やめて・・・お願い・・・」
と言った。
恐怖を浮かべた彼女の顔を見ると、多少の憐憫を覚えたが、それでも行為を中断するつもりはなかった。
女は誰でも、一度は通らなければならない関門なのだ。
「痛いのは最初だけだ、我慢しろ」
レオニードは体重をかけて腰を沈め、そのとたん、
「ひっ」
という悲鳴があがった。それから一気に屹立を根元まで突き入れると、耳をつんざくような悲鳴が、
ユリウスの喉からほとばしった。
ゆっくりと抽送を開始すると、彼女は唇をぶるぶると震わせ、苦悶の声を上げ続けた。やがて、
「うっ!」
と声を発して、彼の精がユリウスの子宮に向かって迸っていった。
事が終わって、レオニードが彼女の股間を布でぬぐってやっている間、ユリウスはしゃくりあげるような
声をあげて泣いていた。
237《媚薬》  6:2009/07/04(土) 01:49:41 ID:Ws7JTp6D
その日から、毎晩のようにレオニードは彼女を抱くようになった。ちょうど芸術作品に磨きをかけるように、
毎夜、ベッドの中で手取り足取りして何もかも教えてやり、性感を開発した。
一方ユリウスは、まだクラウスに未練を残していながらも、身体が彼を求めていることに衝撃を受けた。
彼の手が彼女の身体に触れるたびに、うずくような感覚が走り、熱を帯び、震えが走り、やがて目も
くらむような絶頂に行き着く。
彼女は必死にそれらの感覚を忘れようとしたが、やがて夢の中にまでレオニードが現れるようになった。
夢の中で、彼がユリウスの前に立ちふさがり、彼女は必死に逃げようとするが、ついに捕らえられ、
押さえつけられて、力ずくでものにされてしまうのだった。彼女はそれを恐れていたが、心の反面では、
そうされることを望んでいるのだった。夢の中で彼にねじ伏せられ、荒々しく扱われると、それが決して
嫌ではなく、むしろもっと手荒に扱って欲しいという気分にすらなるのだった。
びっしょり汗をかいて目を覚ますと悪夢を思い出し、十字を切って、心の中で自分の罪深さを神に懺悔した。
ひとりで毎日悩み続けていたが、やがて彼女の症状はもっとひどくなっていった。
彼が仕事で長い間邸を空けていると、明け方、一人寝のベッドで目が覚めたときに、抱き寄せてくれる
男の腕を欲している。
夜、ひとりでレオニードのことを考えていると、彼に抱かれたいと望み、彼の手で身体を開かれることを
夢みているのだった。彼と愛を交わせばどうなるかと想像すると、それだけで陶然とし、気がつくと、
自分で自分の身体を慰めているのだった。そんなときは、身を汚すまで止めることができない。
(ああ、ぼくはいったいどうなってしまったのか・・・クラウスに失恋したせいだろうか・・・いっそのこと、教会に
行って告解でもしたほうがいいのだろうか・・・
238《媚薬》  7:2009/07/04(土) 01:50:09 ID:Ws7JTp6D
久々にレオニードが邸に帰ってくると、その晩、ユリウスを彼の寝室に呼び、彼女を全裸にしてから両手首を
布でベッドに縛り付けた。
彼はユリウスの白い乳房をつかみ、舌で乳首をなめまわしたり、耳朶を噛んだり、あちこちの敏感な部分を
刺激した。やがて、顔を上げると、
「脚を開け」
とユリウスに命令した。
彼女が、いやいやをするように首を振ると、
「いやなら、私はお前をこのままにして、部屋を出て行く。朝になって、掃除に来たメイドに自由にしてもらえ」
ユリウスの顔が青ざめ、
「やめて・・・」
と嘆願した。
「なら、言うとおりにしろ」
羞恥に顔を赤く染めながら、ユリウスはゆっくりと脚を開いていった。
「もっとだ」
その言葉に、観念したように彼女は自分の脚を最大限に広げた。
その眺めをレオニードがじっくりと楽しんでいるのを見て、
「あなたなんか嫌い・・・ぼくにこんな恥ずかしいことをさせて・・・」
「嫌いと言うわりには、ここはもう濡れているではないか」
彼はそう言うと、肉の土手を広げ、指で花びらをもてあそんだ。さらに、レオニードの指が肉芽の上で
円を描くように動き始めると、ユリウスの腰がびくっと跳ね、
「あうっ・・・」
という声が洩れた。
「ふふ、お前のこの部分はよく感じるからな」
そう言うと、彼女の股間に顔を埋め、ぬめぬめ光っている部分を割って舌を入れた。ユリウスはもはや
誰はばかることなく声をあげ、ついに、
「やめて・・・もうだめ・・・」
と喘ぎながら言った。
「そうか、やめてほしいのか」
レオニードが行為を中断すると、彼女は哀願するような表情で、
「レ・・・オニード・・・お願い・・・」
「何をしてほしい?あれを入れて欲しいのか?」
彼の言葉に、ユリウスの顔が赤くなった。
「意地悪・・・そんなこと・・・」
次の瞬間、レオニードはユリウスの膝の裏に手を入れて高く上げ、
「さあ、言わないといつまでもこのままだぞ」
と焦らすように言った。
「来て・・・来て・・・ここに・・・」
「よく言った」
そう言うと、ようやくいきり立ったものを彼女のぬらつく柔肉に突き刺してやった。
ユリウスが喉から押し出すように声をあげ、身体を痙攣させた。入り口とその近くの肉襞が収縮し、
彼のものを快く締め付ける。白い喉をのけぞらせ、恍惚とした彼女の表情が、いっそうレオニードの
欲望を刺激する。身体を前に倒してユリウスの唇をふさぎ、舌と舌を絡み合わせた。
彼の腰が微妙な動きを始め、奥深くを突いたり、亀頭で浅い襞の上部をひっかくように刺激した。
再びユリウスが声を洩らし、眉をしかめて切なそうな表情を見せた。
「これが・・・好きなのか?ここを擦られるのがよいのか?」
すすり泣くような彼女の声を聞きながら、レオニードは腰を動かし続けた。ユリウスは腰を淫猥に
くねらせ、もはや二人は単なる一対の獣と化していた。
239《媚薬》  8:2009/07/04(土) 01:50:32 ID:Ws7JTp6D
レオニードは、ユリウスの身体を愛撫しながら、
「お前は、罪悪感を感じているのか?」
と聞いた。彼女が息をはずませながら頷くと、
「性行為は不浄なものではない。お前のここが濡れているのも、女として健全な身体をしている証拠だ」
そういって、彼女の蜜壺に指を突っ込んだ。
「もう、お前を裏切って他の女と結婚した男のことなど忘れろ。いまさらくよくよ考えても詮無いことだ」
ユリウスが、がっくりと諦めたような表情をすると、
「私が留守の間、寂しくはなかったか?身体が疼かなかったか?自分で自分を慰めていたのか?」
その言葉に、彼女が耳まで赤く染めたので、
「そうか、やっぱりしていたのだな」
そう言うと、彼女の両足をつかんで広げ、顔を押し込むと、会陰から花びら、肉豆に向かって舌を
滑らせていった。ユリウスの腰が浮き上がり、彼から逃れようとしたので、太腿をがっちりとつかみ、
そのまま肉豆が凝固するまで舌で優しく刺激し続けた。
「ああっ、だめっ!」
「どうだ?自分でするより、私のほうが良いであろう?」
「はっ・・・ああ・・・」
寝台の上でのたうち回る彼女を見ながら、レオニードは媚薬の効果に驚いていた。どうせインチキだろうと
思っていたが、これほどに効き目があるとは・・・
一方、夕食に毎日媚薬が混ぜられているなどとはつゆ知らないユリウスは、自分の肉体の淫乱さに
泣き出したくなった。
「ひどい・・・ひどい人・・・」
「なにがひどいのだ。お前は本当は、このように扱われて喜んでいるのであろう?」
そう言ってから、彼女の脚を高々とすくい上げ、一気に奥まで貫いた。ユリウスが声を上げて顔をしかめた。
彼の胸を押して止めさせようとしたが、びくともしない。
レオニードは彼女の体が壊れそうなほど激しく突きながら、
「こういう手荒な扱いはどうだ?ん?言ってみろ」
「・・・あっ!・・・ああっ!・・・ああっ!」
いつの間にかユリウスの腕が彼の背中に回され、彼女のほうから腰を激しく動かして彼を求めていた。
240《媚薬》  8:2009/07/04(土) 01:50:54 ID:Ws7JTp6D
濃密な愛の営みを終えた後、疲れきってユリウスが眠ってしまうと、レオニードは彼女を抱きしめ、
「ユリウス、お前は私だけのものだ。お前は私が女にした。もう私から離れるな」
と囁いた。
「んっ・・・」
眠ったまま、ユリウスがかすかに身じろぎした。
アレクセイ・ミハイロフが実業家のウスチノフの娘と結婚したという報告を読んだとき、心のどこかにほっと
している自分がいた。
あの男が他の女と正式に結婚したとなれば、さすがにユリウスも諦めざるをえなくなるだろう、と考えた。
失恋したばかりの彼女には残酷だと思ったが、どうしても彼女を自分のものにせずにはいられなかった。
髪をかきあげ、ユリウスの顔を見た。もはや生娘ではなくなっているのに、眠っているときの彼女は、
天使のように無垢に見える。
この純粋な容貌の娘が、夜になると彼の下で驚くほど淫猥な動きを見せて乱れることなど、誰も想像が
つかないだろう。
このところ、彼女の身体はますます丸みを帯び、そこはかとない色香を漂わせるようになっていた。
抱けば抱くほど、ユリウスに対する執着が強くなり、渇いた人間のように彼女を求めずにはいられない。
実のところ、長いこと邸を留守にしている間、レオニードも彼女のことが恋しくてならなかったのだ。
彼女の喘ぐ声、切なげな表情、白く滑らかな肌、彼の下でくねくねと動く身体、彼のものを優しく締めつけ、
微妙にうごめく襞・・・それらのものを思い出しただけで、彼の体中の血は熱くなった。
レオニードは自嘲的にふっと笑って、
(まったく、これではどちらが媚薬を飲まされているのかわからぬな・・・)
彼はこれまでアデールを含めて数人の女を抱いた経験があったが、どの女を相手にしても、心は冴え冴えと
冷めていた。これほどまでに熱く燃え、愛おしさでいっぱいになり、絶対に手放したくないと思ったのは
初めてだった。
(あの媚薬がなくなったら、またロシア中部のユスーポフ家の領地に行かねばなるまい・・・)

≪完≫
241《エステティシャン・ダーヴィト》  1:2009/07/04(土) 02:00:05 ID:Ws7JTp6D
その日、朝からダーヴィトは、ユリウスを動物の脂肪を溶かした水に浸からせ、全身をくまなくこすって
垢を取り除いた。
「さあ、全身の力を抜いて。体に歪みがないかチェックするからね」
(背中や肩を揉む)
「ダーヴィト・・・これ、何やってるの?」
「脊椎や骨盤にズレや歪みがあると、神経圧迫や血行障害を引き起こすからね。こうやって調べて
いるんだ」
(なおもマッサージを続ける)
「はい、大丈夫だ。今度はオイルを使ってマッサージするからね」
ダーヴィトがユリウスの体にオイルを塗ってマッサージを始めると、部屋の中に芳香が広がった。
「このオイル、いい香りだね」
「蘭から抽出したエキスで作ったオイルなんだ。美しい女性を磨くには美しいものから作ったオイルが
ふさわしいってわけさ。じゃあ、バストアップマッサージから始めるよ」
そう言って、ダーヴィトは両手を使って、乳房を優しく上に上げるように、弧を描くイメージでゆっくり
マッサージし始めた。
「ダーヴィト、やめて・・・そんなところ・・・」
「こうすると、乳房の血行がよくなり、乳腺を刺激する事でバストアップが促されるんだ。また、乳がんの
しこりを早期発見することにもつながる。恥ずかしいだろうけど、少しの間我慢して」
その後、乳房から腋下に彼の手が移動し、手ではさむようにもんだり、さすったり、おさえたりした。
「ダ、ダーヴィト!くすぐったい・・・!」
ユリウスが耐えかねて身体を動かすと、
「腋下にリンパ液が滞留すると、新陳代謝が悪くなるんだよ。脇下のリンパは特に、リンパの流れが
滞りやすい場所なんだ。はい、もう終わったよ。次はうつ伏せになって」
ユリウスが言われたとおりにすると、首筋から背中の中心線、ヒップにかけてマッサージを始めた。
彼女の大理石のような白い肌の上を、ダーヴィトの細く繊細な指が滑っていく。
242《エステティシャン・ダーヴィト》  2:2009/07/04(土) 02:00:27 ID:Ws7JTp6D
「はあっ・・・」
彼に体をマッサージされているうちに、空気中の蘭の芳香とあいまって、頭が酔い心地でふらふら
し始めた。
(普通の男の、単調で荒っぽい愛撫とはまるで違う・・・)
そう考えながら彼に揉まれているうち、切ない快感が起こり、全身が火照り、体中の血が騒いだ。
(この愛撫が、少しでも長く続いてくれたらいいのに・・・)
そう思いながら、ぐったりと横たわっていた。
「次は、脚をマッサージするよ」
そう言ってから、彼は足の裏、くるぶし、ふくらはぎ、膝の裏、太腿を愛撫し始めた。くすぐったさが、
次第に快感に変わっていく。
「くうっ・・・」
「太腿は、こうやってマッサージしないと、セルライト(凸凹した脂肪の塊)ができてしまうんだよ」
両脚をじっくり撫で回した後、ダーヴィトは、
「じゃあ、次は髪を洗うよ。カミツレを水に溶かしたものを用意しておいた」
ユリウスの髪を洗いながら、
「相変わらず綺麗な髪だな・・・頭皮の汚れを落として、清潔にしておこうね」
ダーヴィトは、ゆっくりと髪を洗い、頭皮もマッサージした。
「ああ・・・気持ちいい・・・」
彼は髪を洗いながら、ユリウスの耳に、かすかに息を吹きかけ、首筋をそっと撫でまわした。
「あっ・・・」
肌がざわめいてくる。
「ほら、終わった。髪が乾くまで、少し待っているんだよ」
タオルで水気を取り、それをユリウスの頭に巻きつけた。
彼女が芳香とマッサージ効果でボーッとしながら横たわっていると、
「じゃあね、悪いけど、膝を立てて脚を開いてくれるかな」
「そ、そんな・・・いや・・・恥ずかし・・・」
「恥ずかしいだろうけどね、この部分も清潔にしておかないと、病気の原因になるんだよ」
ユリウスは、恥じらいながらもしぶしぶ脚を開いた。
ダーヴィトはユリウスの足もとに座ると、体を傾けて、脚の間をのぞきこんだ。
「いや、やめて」
至近距離から恥ずかしい部分を観察されて、彼女は泣きそうになった。
「ユリウス、君のこの部分はとても綺麗だよ・・・何も恥ずかしがる必要なんかないよ」
そう言って、水でユリウスの女陰を洗い始めた。
243《エステティシャン・ダーヴィト》  3:2009/07/04(土) 02:00:48 ID:Ws7JTp6D
「あ・・・」
クリトリスに水が当たり、彼女の体の奥底から奇妙な感覚がじわじわと湧き上がってくる。
洗い終わると、ダーヴィトは指に催淫剤をつけ、それをユリウスの膣とクリトリスに塗り始めた。
「ダ・・・ダーヴィト・・・何をしているの?」
「これは女性ホルモンの分泌を活性化する薬だよ。肌がツヤツヤになる」
ダーヴィトの指が女性器に触れるたびに、早くも子宮のあたりが切なくなり、体が疼く。
「はい、塗り終わった。今度はもう一度全身マッサージをするね」
再び彼はユリウスの頭、肩、胸、腹、背中、脚などを揉みはじめた。その刺激に彼女の体は敏感に
反応した。
「はあっ・・・んんん・・・うう・・・」
体温が上昇し、汗が滲み出てくる。唇から切なげな喘ぎ声が漏れ、腰がくねくねと動きだす。
体のあちこちをダーヴィトの指で責められて昂奮し、ユリウスの女の器官からは透明な愛液が流れ出し、
会陰にまで滴り落ちた。
「ああ、可愛いよ、ユリウス・・・君の体が、女の歓びを十分に感じている証拠だ」
「やっ、やめ・・・」
せっかちな男は、すぐに女の中に自分のものを入れようとするが、じっくりと時間をかけて焦らせば、
女のほうから求めるようになるのだ。
ダーヴィトは山羊の毛でつくったフェイスブラシをとると、それを水に浸けて濡らし、彼女の体の上を滑らせた。
腋下のようなくすぐったいところ、乳首、臍の穴などをそれで愛撫する。
「くううっ・・・ううんっ・・・」
(本当は羽毛で愛撫してやりたかったが・・・ユリウスにはこれで十分だろう・・・)
「はあっ・・・はあっ・・・あっ・・・」
「どうしたんだ?ユリウス」
「体が・・・熱い・・・ダーヴィト、お水を・・・」
「水か、よしよし」
そう言ってミネラルウォーターが入ったグラスを渡してやった。ゴクリと冷たい水を飲み干すが、それでも
ユリウスの体の火照りはおさまらない。
「ダーヴィト・・・ぼく・・・どうなっちゃたんだろう・・・」
「さっき塗った薬が悪かったのかな?じゃあ、舐めとってあげよう」
ダーヴィトはユリウスの脚を抱え、ひくついているクレバスに舌を差し入れた。
244《エステティシャン・ダーヴィト》  4:2009/07/04(土) 02:01:09 ID:Ws7JTp6D
「ひいっ!」
法悦が体中を駆け抜ける。さらに花びらを広げ、蜜でぬめぬめ光っている部分を舐められて、彼女は体を
大きく痙攣させ、我を忘れて声を上げ続けた。
「ユリウス、君の体はどこもかも綺麗だ・・・この手と指・・・とても毎日ピアノを弾いているとは思えない」
そう言って彼女の白くほっそりした手に接吻し、そのまま舐め続けた。
「ああっ・・・」
いまや体のどの部分に触れられても反応してしまう。全身が性感帯になったようだ。
「ああ、ダーヴィト・・・助けて・・・」
「もう限界なのか?しょうがない子だな、よしよし」
そういうと、ひくひくと収縮を繰り返しているユリウスの濡れた部分に己をあてがい、ゆっくりと沈めていった。
暖かく柔らかい襞が、ぐいぐいと締め付けてくる。
(すごい効き目だ・・・あれを塗っただけで、こんなに締まるとは・・・)
そう思いながら、出し入れを繰り返す。
「ああ・・・いい・・・ああ・・・おかし・・・くな・・・」
頬を上気させ、眉間に皺を寄せながら悶える美女の姿が美しい。
ダーヴィトは繋がったまま自分が下になり、ユリウスを上にした。
「ユリウス、自分で動いてごらん」
ダーヴィトの言葉に、彼女はゆっくりと腰を動かし始めた、最初は不器用だったが、しだいに体が
しなやかに動くようになっていく。
「はあっ・・・あああ・・・いい・・・ああ・・・もっと・・・」
ダーヴィトも下から腰を突き上げ、ユリウスも自分で動きながら快い刺激に恍惚とする。
「ああ、ユリウス・・・君の体は、尽きることのない蜜の壺のようだ・・・こんなに、僕の体の上にまで・・・」
「はあっ・・・ああん・・・ううん・・・」
体が火のように熱い。狂おしいまでの快感に、身も心も溶けてしまいそうだ。貪欲なまでに求め続けた後、
ユリウスの口から悲鳴に似た声が迸り、同時にダーヴィトも体内に白濁を迸らせた。
「どうだい、ユリウス?体の火照りはおさまったか?」
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
(今度は、ユリウスをバーデン・バーデンの浴場に連れて行ってやろうか・・・)
毎日、彼女のために美容法を考案するダーヴィトであった。

                                                 おわり
245無題  1:2009/07/04(土) 02:02:03 ID:Ws7JTp6D
曉にはまだ早く
周りの輪郭も暗闇にとかされたように朧げな部屋にて


誰かに呼ばれたような感覚で、
眠りから引き戻されたユリウスは、
夢と現実が、急には区別がつきかね
ぼんやりと思案をめぐらす。

そして、ユリウスをその両腕に抱き寄せたままの状態で
眠りに落ちてしまった彼の腕の重みに気付き、
やっと、安心した彼女は
そっと愛しい男の名を呼んだ

「アレクセイ・・?」

規則的に聞こえてくる、安らかな呼吸の他には、
何の返答もなく・・

゛ふふ・・何だか、子供みたい・・″

艶やかな朱唇に微かな笑みを浮かばせる
それでも、少しばかりの寂しさを感じたユリウスは
今まで、これほどの至近では眺めた事がなかった彼の寝顔を、この際じっくりと観賞することにした。

柔らかく乱れた亜麻色の髪
精悍な輪郭、
利かん気の強そうな眉
不敵な、でもどこか人懐っこいひかりを湛えた瞳・・(今は閉じられているけど、)
意外と長い睫毛と
陰影がくっきりと浮き上がる、彫りの深い顔立ち
そして・・夕べ、何度も愛を囁いた唇・・・。

その刹那
昨夜の二人が脳裏に蘇って、
彼女は、その白い頬にだんだんと熱を溜めさせてゆく

゛あぁ・・夕べ、僕は・・″

言葉に尽きせぬ程の愛しさが、
彼女の胸に満ちてゆく
同時に、彼を愛した全ての時間を取り戻したいという切ない願いも込み上げて
彼を映した瞳から頬へと伝い落ちる涙
自然に零れ落ちる言葉

「・・愛してる・・」

そっと唇を重ねる
246無題  2:2009/07/04(土) 02:02:30 ID:Ws7JTp6D
その時、眠っているはずのアレクセイにいきなり引き寄せられ、
今まで眠っていたとは思えない素早さで、あっという間にベッドに組み伏せられた。
そして、
アレクセイのいかにも悪戯めいた瞳が、ユリウスの瞳を覗き込み
再びゆっくりと重ねられていく唇。

゛!!″

驚いている間にも、アレクセイはユリウスの口咥を蹂躙し味わい続け、彼女の吐息が甘いものへとかわり初めた頃、漸く解放する。


いきなりの深いくちづけに、上気しているだろう貌を視られるのが、何となく気恥ずかしいユリウスは、アレクセイから視線を外し

「・・何か、飲む物でも持って来るね・・」

もっともらしい理由をつけて
シャツを羽織り、立ち上がろうとした。

だが、羞恥を隠そうとするユリウスの様子は、一層可愛らしく
アレクセイは立ち上がろうとする彼女を、背後から両腕で優しく拘束すると
僅かに笑みを浮かべた唇を彼女の耳朶に寄せ、いつもより艶を含んだ声をユリウスの耳に流し込む

「俺が味わいたいのは。。。」

「なっ・・に・・す・///」
247無題  3:2009/07/04(土) 02:04:09 ID:Ws7JTp6D
咎めるような言葉は
あまりにも甘い響きで、全く効果はなく
かえって、密かに彼を悦ばせるだけだった
アレクセイは、ユリウスの透けて輝くような金髪にくちづけをし
聴き取れない程の声音で

「俺の、エウリディケ・・」

と呟く

゛え・・?″

彼から初めて聴く言葉にも拘わらず
何か、懐かしい雰囲気を感じる、
ユリウスはその感覚が何処からやって来たのか、確かめたくて
記憶に繋がる淡く輝く糸を、必死で手繰り寄せようとした。

彼女の半ば上の空な様子に、
アレクセイの眼に妬けるような暗い閃きが走った

ユリウスの意識を、自分に引き戻すように
彼はいきなりに、彼女の華奢な両腕をその腕にとらえた
そして、掌で彼女の繊細な手指を包むようにして絡め取り。
ユリウスの背を自分の胸へ引き寄せた後、
無防備になった項へと、唇を這わせる。

そうして、彼女の意識が完全に自分に向かった事を確認すると

白く肌理細やかな肌に、
薄紅い花びらのような痕を、
ひとつ落とす

最愛の女性と夕べ初めて褥を共にし
、此処にいるのは彼等二人だけなのに
アレクセイは、眼の前に居る彼女の意識を、彼から奪っているものが、気になっていた。
ユリウスの心の底に眠っている自分の幻に嫉妬しているのにも気付かず・・
248無題  4:2009/07/04(土) 02:04:44 ID:Ws7JTp6D
二人の手を重ね合わせたまま
アレクセイはユリウスの白く滑らかな乳房を柔らかく揉み上げる、
もう一方は、夕べ彼に篭絡され溶かされた処へと導き
そして、わざと彼女の指を触れさせる
更に、潤み初めていたそこのぬめりを利用しながら
細い指を小さな芽に導いてゆく

「あっ・・そん・・な・・」

彼と自らの指によってもたらされた、些か強すぎる刺激から身を攀って逃れようとするが、
アレクセイはそんな彼女の様子に気が付かない素振りで
更に深く、彼女の指を弄んでゆく

ユリウスは、突然の事態に逼迫していく体と意識を、流されないよう何とか押し止めながら
些か悪戯が過ぎる彼の愛撫に
何故かいつもの彼らしくないものを感じたユリウスは
今のアレクセイに重なる、彼の表情と勘気に思い至る。
白皙の肌を薄い紅色に染めながら、

「ねえ・・アレクセイ・・・?今も過去も・・・僕の心の中にあなた以外にいったい誰がいると・・?」


白薔微の蕾が綻んでゆくような微笑を浮かべ
ユリウスにそう尋ねられると
アレクセイは、ちょっとばつが悪そうな表情を浮かべたあとで

ユリウスが羽織っていたシャツをそっと脱がせ
白い花が咲いたように床へと落とし
彼女をゆっくりとベッドへと押し倒していった。

ユリウスの金の滝のような髪がシーツの上に広がり、
アレクセイの髪が彼女の鎖骨を撫でる

互いの瞳に相手を映しながら、
彼が彼女に何事か囁いた後
何か言いかけた彼女の言葉を
その唇に引き取った。

それから・・・・

・・・それから先は・・・・


。。。。二人だけの秘密。。。


−了−
249無題  5
 おまけ

いつもより早目に党本部に赴き、精力的に活動にいそしむアレクセイ

大真面目な顔で議論に熱中している時、
ズボフスキーが近付いてくる。

「なんだ、遅かったなズボフスキー!、ああそうだ、ガリーナに世話になった礼もそこそこにユリウスをつれてっちまったな・・、今度あいつと一緒に礼を・・・」

いつもよりテンションがたかいアレクセイの顔をじっと見ると
「まあ、その件は後って事で」
「・・何だ、妙な顔して・・」
「お前、酷い顔してるぞ?眼の下なんか凄い隈だ」
「なっ・・!?」
「今が、一番楽しい時期なのは解るが、何事も程々にな」
思いあたることに咄嗟に何も言い返せずにいると

「彼女にも、宜しく言っておいてくれ」

言いたい事は伝えた、という顔付きで去ってゆくズボフスキー


−おしまい−