【巨人の星】梶原一騎作品のエロパロ【カラテ地獄変】

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1名無しさん@ピンキー
梶原一騎先生原作の漫画、劇画作品のエロパロです
少年誌発表作品、成人向け作品、問いません
SM、スカもありですが、SM専門ではありませんので、よろしく

梶原一騎先生の作品に愛情愛着ある方のみ、作品を投下してください
長編、短篇も問いませんが、1レスのみのパロディおちはご遠慮ください

age sage は指定しません
感想、リクエスト OKですが
希望にそってもらえなくて逆ギレはダメ
2巨人の星 その後1:2009/06/05(金) 17:59:36 ID:Yuou2oYK
昭和45年も11月に入り、木枯らしも吹き始め、街にはコートを着た人も見られるようになったある日、
その夕刻から川崎市内の小さな屋台では、一人の大柄な男が2杯目のコップ酒を飲み干し、大きな音を立てて
木製のカウンターにコップを置いた。
この、酒を飲んだことのない男が、しかも未成年であるにも関わらず、往来で酒を飲んでいたのは、
その日の午前中に大洋ホエールズの球団事務所であった契約更改のせいではなかった。
入団3年目にしての初の現状維持、ルーキー年以来上がり続けた年棒が据え置かれたのは、
この昭和45年シーズンの後半、特にオールスター明けから下がり始めた成績のためと
とくに消化試合の時期に入る120試合目からの全打席凡退というこの3年目の男に
球団が今一度の奮起を促すためにとった措置ともいえた。
それは、男も理解していたし、それで飲めない酒に手をつけるほどヤワな男ではなかった。

「ぶふぃ〜っ!酒ちゅうもんは、こがんマズかもんたいねっ?」
「お客さ〜ん、あんた大洋の左門選手だろ?まだ未成年じゃないの?飲めもしないのに飲んで
 そこらへんで騒ぎでもおこされちゃ、こっちも責任問われちゃかなわね〜からな。
 もうそのへんにしといて帰っておくんなせぇな。」
3巨人の星 その後2:2009/06/05(金) 18:01:04 ID:Yuou2oYK
ズボンの後ろポケットから財布を出し、400円ちょうどを木製のカウンターに
並べると、男はやや千鳥足で、再び往来を歩き始めた。
誰も彼もが自分を笑って見える。いや、そうでもないのか?しかしなぜそんなに笑っている?
何がそんなに楽しいのか?この世のどこが、そんなに面白いのか?
人生において初めてのどん底をこの日の午後に見たこの男は、道行く衆人を呪いたくなっていた。
「なして・・・なして・・・そがん言い方がありもんそ! いやワシが向こう見ずじゃったか?
 もう・・もう・・何もかもどうでもよかタイッ!」
初めての酔いが回りつつも、そう叫ぶこともままならず、心の中で吐露するしかなかった。

巨人ー中日の最終ゲームで、パーフェクト・ゲームを達成した星飛雄馬は、謎の蒸発をとげていた。
そのゲーム中に川崎市内の男のアパートに速達で届けられた封書には、
このシーズンに大阪球場で行われたオールスター第2戦から日本球界を震撼させた
大リーグボール3号の正体と、星飛雄馬の投手としての寿命、そしてこの男と
その時点で消息不明の女性、京子の今後のことについての事が書かれてあった。
4巨人の星 その後3:2009/06/05(金) 18:02:41 ID:Yuou2oYK
新聞の尋ね人欄に載せた文面『京子さん、連絡ください 豊作』。
飛雄馬の尋ね人を出していた中日ドラゴンズの伴忠太は、
「やらんよりは、ましじゃと思っちょる」と男に語った。
それにヒントを得ての半ば破れかぶれの思いつきだった。
男のアパートには電話はない。あっても京子は番号も男の住所も知らない。
もし連絡があるとすれば、球団事務所だった。男は宝くじよりも低い可能性に賭け、
この日、飛雄馬からの封書を携え、球団事務所へ契約更改に訪れたのだった。

「左門くん、契約の話の前になんだか。。。君に会いたいと言って電話があったよ。
 京子と名乗ってた。ファンか何か知らないが、ここへ今日君が来ることを告げたら
 ここへ連絡してほしいと、電話番号を伝えて、それっきり切ってしまったみたいだ。
 まあこちらでは、よく分からんが、熱心なファンならいいが、何者か
 君のほうで心当たりがあったら、そっちで判断したまえ。これだよ、番号。」
5巨人の星 その後4:2009/06/05(金) 18:04:24 ID:Yuou2oYK
メモ用紙には、球団の事務職員が走り書きした電話番号が記されていた。
番号のほかに「喫茶モンテクリスト」とだけ記されていた。
 
左門豊作は、以後、球団が来期の条件を説明しはじめたことなど、
もう耳に入っていなかった。胸の底から湧き上がる歓喜、
大声で叫びたくなる衝動と、そして今日、京子に逢える喜びと不安で
体中が痙攣するほどであった。
球団は心得たもので、良くない条件に左門があっさりサインをしたことと
好都合に捉えた。「とんだ時の氏神さまだったな。あの電話。」

事務所を出ると左門は、一階の受付横に設置されていた赤電話にとびつき
球団で渡されたメモ用紙を取り出した。
ダイヤルを回す手が震えた。声を発しようにも喉が渇きすぎていることを自覚した左門は
一度、唾を飲み込んだ。ほどなく相手は出た。「はい。モンテクリストでございますがっ?」
6巨人の星 その後5:2009/06/05(金) 18:06:28 ID:Yuou2oYK
電話の声の主は年配の女性のようであった。
「あ・・あ・・っあのワシ、いやわたくしあの・・左門と申しますが、」
「は?  はい。」
「あのわたくし左門と申しますが、そちらに京子さん、いらっしゃいますで・・・」
自分の口から「京子」という言葉を出すだけでも、顔から炎が出るほどの恥ずかしさがあった。
なんと言う愛しい響きなのか?京子!京子!
尾邸骨から脳天に湧き上がる感動に、言葉もはやり途中で止まってしまった。
というより後が、続かないのだ。息が苦しくて。

「左門さんっ!?」
電話の声が変わった。違う女性の声だ。しかし確認しようにも声が出てこない。
けれども確認などせずとも左門には分かった。あの麗しき声だ。
「左門さんなのねっ!?いまどこよっ?」「きょっ・・きょっ・・・京子さぁぁぁぁぁんっ!」
7巨人の星 その後6:2009/06/05(金) 18:08:14 ID:Yuou2oYK
「左門さん?いまどこなの?会社?事務所なの?」
「は・・はいっ!ワシいままだ事務所ですタイっ!京子さん、このお店どこに・・」
「左門さん、いま事務所なのね?そこ大洋の事務所よねっ?」
「はいっ!ワシいま、あのワシ、事務所、あの、そんで、こん店・・」
「左門さん、あたしそっち行くわよ。分かるから。そこ。」
「は・・はあ、ワシそんじゃどうしておったら・・」
「そこにいてよねっ!左門さん。あたしすぐそっち行くからっ!」
言うが早いか電話は切れた。ビル1階の受付フロアに、シーンとした静寂がのこった。
しかしその静寂を、一方的に予定を決めた京子の張りのある声、
生命力に満ち溢れた声、麗しくもキビキビとした声だけが
左門の耳に繰り返し響きそして支配した。
「どう言うて、逢ってもらおうかと、何も考えられんとながらも思案のし通しじゃったども、
 こがんにも、すぐに逢うてくれるとは!それも向こうから逢いに来てくれるとはっ!」
球団事務所の入っている大洋漁業の本社ビルを一歩出ると、
外には11月のやさしい太陽が、ビルの陰になることなく左門の真上にきらめいていた。
8巨人の星 その後7:2009/06/06(土) 15:26:15 ID:gaDIHiqZ
左門は雲の上を歩いているようであった。
そのまま膝をやや上に向けて駆け出せば、天空に向かってでも
駆け出せそうに体が軽やかであった。
ビルの前で待とうと、ビルのガランとした一階で待とうと、
とにかくもうジッとしていられなかった。
何度か本社ビルの前をウキウキしつつも軽く駆けながらも
すでに何往復かしてしまった。
気づけば、ビルの前の広い歩道に沿っている幹線道路に
架かった歩道橋の真下まで来てしまっていた。
 「いかんいかん。こがんとこまで来てしもうたら、京子さんに逢えんとばい。」
本社ビルの前まで戻ろうと、体をひるがえしたその時、
反対側の歩道に、ベージュのロングコートにショルダーの小さな皮のバッグを肩に掛け
こちらに手を振る、金髪の長い髪の女性が、左門の目に飛び込んできた。
 「左門さぁーん!」
9名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 23:16:23 ID:SD3WXMPz
なんか>>2>>3の内容見ただけで、相当な「巨人の星」マニアだとわかるw
果たしてエロにつながるのか? 続き待ってるぜ!
10名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 02:05:32 ID:xvErjhUZ
>>9
ありがとうございます
脳内では完結まで出来ているんですが、
やはりとても愛着のある「巨人の星」ですのでw

書き始めるとバカに丁寧になってしまいます

予定では、いつのことになるか分かりませんが
「新巨人の星」鷹ノ羽圭子Xロメオ南条
「新カラテ地獄変」白月王X黒真珠の椿姫
「ボディガード牙」牙直人Xウォーレンス女獣医
「愛と誠」早乙女愛Xウラナリ
などを構想しています
みなさまの作品投下もお待ちしております
11巨人の星 その後8:2009/06/07(日) 02:11:51 ID:xvErjhUZ
その麗しき姿は一瞬で、左門の視界から消えた。
歩道橋を渡るために階段を駆け出し、その階段の手すり部分に
打付けられている青い風除け板に隠れてしまったのだ。

「来るっ!こっちへ来るんだ!あの人が!」
左門もこちら側から歩道橋の階段を駆け上がり始めた。
左門の脚力は、歓喜と興奮で全開となりほぼ瞬時に階段を登りきってしまった。
息も絶え絶えに歩道橋の上を見渡した。
相手はまだ見えない。しかし軽やかに「カン カン カン」と音をたて
その存在は左門の視界に降臨しつつあった。

音がやんだ。そして「カタッ」ともう一度、音をたてた。
「左門さんっ!」
12名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 10:41:57 ID:hXn5nR8l
なんと硬派な……
13巨人の星 その後9:2009/06/07(日) 20:22:14 ID:Vmgv8GEB
息を弾ませた京子がいた。左門をまっすぐ見ていた。
しかもその顔は笑顔であった。光り輝いていた。女神であった。
11月の太陽に照らされた髪は、歩道橋の上の風になびき
そして豊かに流れ、あたかも観世音菩薩の光背のように宙を舞い
そしてベージュのロングコートに包まれた肩に舞い降りた。

息を弾ませた胸は豊かで、コートの中は夏の日の出逢いのころに似た
ボーダー柄のセーターを着ていた。
いつも手ぶらだった夏の日と違い、京子の左手はショルダーバッグの紐をささえていた。
そして夏の日に見たジーンズとシャツにだけ包まれていたグラマラスな肉体は
今は、そのロングコートに覆い隠され、左門の目に無防備に晒されてはいなかった。
しかし逆にそれが、左門にとってこの地上で唯一の女神の
その肉体の高尚さを演出していた。京子の意に図らずもである。
14巨人の星 その後10:2009/06/07(日) 20:24:31 ID:Vmgv8GEB
弾んだ息を落ちつかせるように飲み込むと京子は、
「左門さんっ!」
ともう一度、叫ぶと左門のほうへ駆け出してきた。
その姿は、左門には映画の中のスローモーションのように
1コマ1コマずつ、ゆっくりと再生された。
(なんという美しさ、なんという眩しさ、なんという麗しさ・・・・)

ふたたび揺れそして舞い出した髪は、光り輝き
そして豊かに揺れる胸は、聖母の如く
そして駆けるその脚は、美しくも生命力に満ち溢れ、
万物の母となりうるエロスを、ただ駆けるだけで左門に放射した。

どうしてよいかも考えるにも及ばず、ただ見とれて立ち尽くす左門に京子は
駆け寄ると、左門のハーフコートの裾をつかむと
それをブレーキに立ち止まった。
「やっぱり野球選手ね。左門さんのほうが全然はや〜い。階段。」
さらに息を弾ませつつ振り返り、京子は
至近距離で左門の眼鏡の奥の小さな瞳を、臆することなく見つめた。

大きな京子の瞳は、輝きそしてあの日と同じく
何事にも臆することなく、何者にも媚びない
勝気で不遜な光線を、左門に浴びせ掛けていた。

それは自分にとって、もっとも辛く長い午後の始まりになるとは
思いもせず、いや、脳裏にわずかな不安を自覚しても
たちまちに打ち消して、今目の前にある女神の面影を
いつまでも享受していたい左門豊作であった。

=つづく=
15名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 01:06:50 ID:LWx9TMs1
良い話だ
16巨人の星 その後11:2009/06/08(月) 01:14:52 ID:YuFDgk6C
来たる昭和46年シーズンは、左門豊作にとって4年目であると同時に
別当薫監督にとっても4年目のシーズンに当っていた。
2年連続のAクラスをキープしての来シーズンに
「打倒:巨人」の期待をしているファンも多かったが、
ホエールズ・ファンがより専門的に別当監督に期待していたのは、
大砲となる中核の長距離バッターの育成であった。

大毎オリオンズでの山内一弘、榎本喜八
近鉄バファローズでの土井正博のごとく、チームの顔はおろか
球界を代表するバッターが大洋から登場することが
別当の就任以来求められていることであることは、別当自身も自覚していた。
就任1年目に三原時代からの大洋の顔、桑田武と食い違い桑田は巨人に移籍。
三原派閥とは別に大洋を支配していたのは、明治大学派閥だったが、
慶応出身の別当の就任は、そういった派閥抗争を一新し、
超党派の一丸となったチーム建設を目論んで中部オーナー一族が下した結論だった。
17巨人の星 その後12:2009/06/08(月) 01:16:32 ID:YuFDgk6C
かつて近鉄で高校中退の土井正博を主砲に育て上げた、
別当の打者育成法と慧眼は、当然と別当就任と同時に入団した
左門豊作に向けられていることは、大洋番記者でなくとも
野球マスコミの一致した見方であった。

江尻、松原をも打率で上回り出した昭和45年前半の左門の活躍は、
チーム内のみならず、球界をも明るくするニュースでもあった。
しかしシーズン後半にまさかの大ブレーキ。
この年、初めて30ホーマーを記録した松原誠に
別当の一番弟子の株を持っていかれたばかりか
スタメン落ちや相手投手によっては代打を送られてしまう有り様の左門であった。

人前で溜息などついたことのない左門が、凡退時もベンチにいるときも溜息を漏らすのを
打撃不振のせいばかりでなく、いやむしろ他の原因が打撃不振を招いていることを
別当は見抜いていた。
18巨人の星 その後13:2009/06/08(月) 01:18:48 ID:YuFDgk6C
当時、同じセ・リーグで中日ドラゴンズの監督を務め
来期2年目に入る水原茂とは、
同じ慶応大学出身の別当であったが、監督としての
華々しい戦績とは反対に別当のほうが、周囲からは
「ド」の文字が冠せられるほどの慶応ボーイであった。
元来ネガティヴに物と人を見る感覚のない別当にすれば、
昨シーズン後半の左門の不振は、悪い遊びを覚えた若手選手にありがちな不振よりは、
大打者への脱皮の前に通らなければならない人間としての苦悩と捉えてやりたかった。
ゆえに起用法以外で左門を叱咤したことも、技術的アドバイスを与えたこともなかった。

「今の苦悩から立ち直れれば、もう左門は私が手取り教えるのも無用の選手になってくれる。」
別当は特に左門に関する談話を記者に漏らしたことはなかったが、
左門不振への記者からのネガティヴな質問にも一切返答したこともなかった。
あの律儀な男が、チーム納会でも別当に一切挨拶もせずに会場をあとにしたときも
親心で別当は左門の背中を見送っていたのであった。
「次の草薙キャンプで、見てからだね。左門を評するのは。」
それが特に親しい記者に漏らした唯一の別当の左門に関する談話であった。
19名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 13:18:27 ID:UUkuV5Io
羞恥とか陵辱系でもいいの?いいんだったら、投下したいけど、
左門×お京が一段落ついてからのほうが良さそうだね。
20巨人の星 その後14:2009/06/08(月) 18:50:33 ID:n7/bta0x
「久しぶりね。左門さんっ!」
走ったせいで乱れた長い髪をかきあげ、京子はさらに
大きな瞳で左門の顔を覗きこんだ。
まじかで見る京子の顔、(美しい・・・。美しすぎるたい。)
そしてまじかで呼吸している京子の息遣い。
(よか・・よか匂いがするたい。)
そして京子の全身から漂っていると思われる芳香。
その場で抱きつき、むしゃぶりつきたくなる愛おしさと、
それを許すはずもない勝気な佇まいと、気の強さが、
この数ヶ月間に彼女に起こっていたと左門の想像する流転の日々を経ても
全く失われていないことは左門を尚、うれしくさせた。

とは言え、何から話せばいいのか?薮から棒に求婚するなど想像にも及ばない左門であったが、
他愛の無い女性との会話など、いやそれすら左門には至難の業。
まして相手は最愛の女性、初恋の女性、夢にまで会う日を待っていた京子なのだから。
しかし歓喜と不安の行ったり来たりの左門の精神状態を敢えて無視するかのように
そして左門の運命を弄ぶように、次に京子の肉感ある唇からは、ある意味残酷な言葉が発せられた。
「星さんは?星さんはどうしてるの?」
21巨人の星 その後15:2009/06/08(月) 18:52:11 ID:n7/bta0x
「え?なんですばい?」
「星さんは、今日は来ないの?」
(ワシは付録とですか?)  あの新宿での初めての出逢いの日、
飛雄馬と左門が京子とディスコに繰り出した夜と
同じセリフを今、再び左門は今度は心の中で呟いた。
(これが現実じゃ。こん世の中そうウマい具合に出来とりゃせんこつば、
 ワシはわかっとったハズばい。・・・しっかしなして逢うていきなり星くんのことば、
 ワシに訊ねるたいね?なんでワシのことを訊いてくれもんそ。)
「星さん、どうしてるの?今。アタシ、試合ずっと見てたもの、あれからも。」
左門は言葉に詰まった。京子にしても左門が口達者でないことは、充分には理解している。
しかし今、左門がまごついて言葉を発せられない状態であることが、
自分の言った言葉、星飛雄馬の安否と消息のことについてのせいであることなど
さらさら気にも留めていなかったし、その左門の状態のことも理解していなかった。
京子は何も気づいていなかったのだ。
左門の自身への恋慕の気持ちなど。それが左門を発狂させかねないほども
狂おしいものであることも。
22巨人の星 その後16:2009/06/08(月) 18:53:46 ID:n7/bta0x
美しい薔薇には棘があるという。
美しい女にも様々ある。どれも同じではない。
しかしどの美しい女も棘を持っている。されどその種類は様々である。
しかしどの美しい女にもある共通した棘がある。それは、
『自分が美しいのは当然の事実であり、男が自分を見る眼は、どれも羨望に満ちているのも当然である。』
という棘である。誰かが自分に特別な好意を寄せていたとしても
美しい女は、それ以前に男たちの羨望の眼差しを受けている。
それはどの男でも共通であり、自分をそう見ない男はいない。
男は第一印象の段階で自分を見る目は全て同じである。
それ以上でもそれ以下でもない。男がそれ以上の好意を自分に寄せていても
それは問題ではない。相手を決めるのは常に自分のほうであるからだ。

左門が劣っているとか、格好が悪いとかは問題ではもちろんない。
京子にとってそれは、実にどうでもいいことの1つに過ぎない。
京子は左門のことを『自分が選択するべき男』の範囲には入れていなかった。
それは、悪意でも嫌悪でもなかった。
美しい女にだけ許される罪の無い行動と言動である。
しかし温度差のある左門の心は砕かれた。無残にも砕き壊されてしまったのだ。
ここ数ヶ月、京子に支配されている心、尋ね人を出してからの全ての思考。
そして連絡がついて、今ここで京子に逢うときを心待ちしていた心臓の高鳴り。
どれも全てが行き止まりになってしまった。行き止まり。
もうどこへ、どう進めばいいのか?左門の思考は停止した。
23名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 19:06:55 ID:n7/bta0x
>>19
ありがとうございます。
当方もこの左門X京子を、じっくり進めていきながら、
小ネタでのエロパロを、同時進行で書いていくつもりであります。

ご都合さえ宜しければ、投下をお待ちしております。

ご注意点ですが、作品のパロディは梶原一騎作品でしたらOKですよ
ただ王、長嶋、馬場、猪木、大山倍達 といった実在の人物が
陵辱行為をするという展開は自粛すべきかと思っております。(^_ゝ^)
24名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 19:11:24 ID:Yq3NUTmA
俺よりチンポがでかい男がいるとすれば、師・大東徹山とヤツだッ!
25名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 19:32:41 ID:iuL1rkkO
飛鳥拳とかチェ・ペタルなら構わない?
26愛しのブッチ様:2009/06/08(月) 22:39:58 ID:pugdI34x
●新作です
●ここに登場する人物、プロレスラー、女子レスラーは、実在するものではなく、
 また特定の個人を誹謗中傷するものでは、ありません
●ここに登場する人物、組織、団体は、実在するものではなく
 すべて架空の存在です
27愛しのブッチ様@:2009/06/08(月) 22:41:37 ID:pugdI34x
「いやがる女の子のパンティー脱がすみたいで、おもちろ〜い♪」
「やめてよぉー!この黒豚がぁー!」
「うひひひひ、勇ましく突っ張ってくれちゃうから、このブッチ様も余計に燃えるというもの」
外国人レスラー専用の新宿の京●プラザホテルではなく、
この格闘技界の闇のフィクサーがブッチのために用意してくれたホテルのスーパースイートは、
キューティーの悲鳴も罵倒も、一切外に洩らさない完全防音となっていた。
『もちろん写真は撮るんだろうが、完全に奴隷にしちまわんことにゃ、後でガタつかれるゼヨ、ブッチ』
『そりゃもう分かってまさぁ。グッシッシ。しかしセンセは何でも可能になさるお人ですのォ』
試合用の水着にリングシューズ、リング上そのままの姿で拉致されていたキューティーは、
両手にのみ前手錠を架けられたのみで今、ベッドの上で、ブッチに肩紐から脱がされようとしている。
フィクサーご用達の実働部隊がキューティーの拉致に成功したのは、
偽りのグラビア撮影、女子プロ団体側のキューティーのマネージャーもフィクサーに鼻薬を嗅がされたのと
その闇の実力を恐れたのであった。
ブッチが移籍の条件に出したのは、巨額の契約金、3年間フォール負けなしのブックシナリオ、そして
今、売り出し中の美人レスラー、キューティーの肉体だった。
金やマット上の扱いは、移籍する団体側に上乗せして集金しペイできるが、
キューティーの肉体は、このフィクサー側でのみ動き、プロレスサイドはノータッチ、
フィクサーセンセとブッチの男と男のお約束ということで今、実現しようとしていた。
28愛しのブッチ様A:2009/06/08(月) 22:43:23 ID:pugdI34x
肩紐を両方とも器用な手つきで、ブッチはズラした。
キレイなそして健康的な背中が露わになる。
「むっしっしっし。堪りませんのォ。さぁ〜てそのプリプリクリクリしたお尻を拝見いたしましょォ」
「やめろぉ〜!この黒豚!ブタ野郎!」
「何とでも言いなさい、言いなさい。このブッチ様はね〜、言われれば言われるほど燃えるのよ
 特にキューティーちゃんみたいな勇ましい女戦士にはねェ」
ズルリと下ろされた水着は、キューティーの尻の割れ目の上のほうまでしか
その白桃のようなヒップをもはや隠していなかった。
「ぬおりゃっと!」
クソ力で一気にブッチは水着のヒップの部分を引き裂いた。ビリビリッ
「オォ〜ヤオヤオヤ!まさしく白い桃みたいなおヒップちゃんだことよのォ」
「こんの卑怯モノ!こんなことでしか女とできないのよねっ!おまえは!」
「グフフフフ・・・これは、これは。まさしくその通り。ブッチ様は卑怯が売りのスーパーヒール、
 しかもまあ今回と似たような形でしかキューティーちゃんみたいなかわい娘ちゃんとは
 縁がないのも、またこれ事実よ」
「ブタッ!ブタッ!黒ブタが!おまえなんかどうせ八百長でしか試合できない弱虫野郎よ!」
「!!!・・・。あ〜。言った言った!このブッチ様が一番トサカに来る言葉を。
 チョイとお仕置きしてやらんとイカンのォ〜!」
ブッチは自分のセカンドバッグからゴソゴソと小箱を取り出し
それをキューティーの双眸に突きつけるようにかざして見せた。
日本の薬局で今日、買い求めたその青と白の小箱には『イチジク浣腸』と書かれてあった。
29愛しのブッチ様B:2009/06/08(月) 22:47:08 ID:pugdI34x
「そっ・・・それはっ!」
キューティーの顔色が変わった。その見開かれた双眸は驚愕に満ちて
勇ましい美貌を恐怖が支配した。口は大きく開かれたままワナワナと唇を震わせる。
「これ?これ、イチジク浣腸。キューティーちゃんみたいな生意気な女の子の
 お仕置き用に売られてるものアルよ。グッフッフ。」
キューティーはもちろん浣腸というものは知っていたが、それがこのような場合に
登場するとは想像したこともない。SMというものも智識としてはあったが、
セックス、和姦、強姦を問わず男女の交わりにイチジク浣腸が出てくるなど
考えも及ばぬことであった。
使ったことは一度もなかったが、そんなものを使われたら自分の肉体にどんな
事態が起こりうるか考えなくても分かったし、自分がそんな事態に見舞われることは
絶対に避けたいし、絶対に嫌だ。女なのだ。当然である。
イチジク浣腸のあとにおとずれる事態など女は、男に見られても悟られても死を意味するほどの恥辱だ。
「うひひひ。お仕置きとしては、女の子にとっては最もキツくて最も恥ずかしいのがこのイチジク浣腸あるね。
 でもキューティーちゃんはとびきり美人でとびきり生意気だから、このお仕置きしかないのネ。ケケケ。」
30愛しのブッチ様C:2009/06/08(月) 22:49:50 ID:pugdI34x
試合着でのスタジオ特写という触れ込みで訪れたフォト・スタジオの
楽屋にて、完全ないつもの試合スタイルに着替えたところを
クロロホルムを嗅がされて、連れ去られたキューティー。
目を覚ますと薄暗くされたこのスイート・ルームのベッドの上にいた。
試合着はリングシューズまでつけたままだったが、そこにいる黒い大きな影が
希代の大物プロレスラー、アボドーラ・ザ・ブッチであることを
現実として受け止めるのにしばらく時間を要した彼女であったが、
ブッチが眠ったままの自分にほとんど何もしておらず、
自分が目覚めてからの、リアクション付き陵辱ナイトを堪能しようとしていることは、
ブッチが試合着を嬉々として脱がせにかかったとき、すぐに理解した。
室内の灯りはここにきてすべて照らされた。ショーの用意が整ったのだ。

いまキューティーは前手錠とリングシューズを除いては全裸の状態である。
全裸にリングシューズというのも奇異な組み合わせだが、
花形現役女子レスラーということを充分に認識しながら楽しみたいブッチの性癖など
キューティーに理解できるはずもない。
また本来、睡眠をとるか男女の営みをするためにあるベッドに
服を着たままのブッチが、イチジク浣腸を持って自分に迫ってきていることなど
訳の分からないことであったが、自分の肉体にいまだ経験したことのない危機が、
女として最悪最低の恥辱的好意がなされようとしていることは、直感的に肌で感じ取った。
「へっ・・・変態っ!変たぁーいっ!」
「グフフ・・・ご指摘の通りこのブッチ様は変態でござんすヨ。さぁ〜て、プリプリの桃に
 プシュッとイチジクを突き刺してさしあげようかのォ。暴れると地獄突きのプレゼントよォ」
地獄突きのほうが、まだマシだとキューティーは思った。イチジク浣腸に比べればである。
「ドッコイショっと。おおぉ〜。まさしく桃のようなおヒップちゃんでござるなぁ〜。ウッケケケケ。」
31名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 23:26:29 ID:cqp/t6ya
これはwwwwww
プロレススーパースター列伝世代としては、
最初の1行で吹いたwwwww
32名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 23:30:43 ID:6rCVbH8B
ブッチの世代ならば、ミ○萩原もいいんじゃないかなと独り言w
33巨人の星 その後17:2009/06/09(火) 01:25:41 ID:AzopWD9x
「ゲームセット!」
左門の脳裏にアンパイヤの声は、遠くで、そしてやけに耳元で
非情に響き渡った。
そのアンパイヤの声は、どこかで聴いたものであった。
外野手である左門にとって、ゲームセットの声は、自分が三振で凡退したときにしか
真近で聴くことのないものであった。
ダグアウトから、外野の守備位置から、その声を聴くことはあったが、
耳に響くほどの音量で聴いているわけではない。

いつだったか、こんなに真近でゲームセットの声を聴いたのは。
左門の今ある現実と、もう何ヶ月かも過去になるその光景は、
また今ある左門の現実から、彼を逃避させるように、瞬時に思い起こされた。

昭和45年のオールスター明け、巨人ー大洋による
セントラル・リーグ後半戦の幕明けゲーム、その試合で
左門は確かに真近で、そして自分の至近距離でその「ゲームセット」を聴いていたのだった。
34巨人の星 その後18:2009/06/09(火) 01:27:19 ID:AzopWD9x
試合開始直前、メンバーも発表され、後攻のジャイアンツ・ナインが
守備位置に散ったすぐあとに、左門は別当監督に背後から肩を叩かれていた。
「どや、左門よ。」
時折に出る西宮出身の別当の関西アクセントにも意表を突かれた左門は、
別当にオールスターで、パ・リーグのクリーン・アップを三者連続三振にとった
星飛雄馬の快投が、果たして単なる椿事だったのか、
大リーグボール3号なるものであったのかを尋ねられたていた。

巨人キラー平松の登場で、ホエールズは対ジャイアンツ戦の戦績をこのシーズン
五分に保っていた。3連戦のうち、必ず1つは勝てる!
とすれば、勝負師川上哲治は、ヌケヌケと捨てゲームをしてくる可能性があった。
しかし、先発平松を川上が知る前に、ジャイアンツは偵察メンバーを入れずに
星飛雄馬の先発を発表してきた。秘密兵器、出現せりか?否、張りぼての捨石か?
しかし後半戦の初ゲームのマウンドに今、臨んでいた飛雄馬は、
オールスター・ゲームのときの印象より遥かに巨大化していたのだ。
35巨人の星 その後19:2009/06/09(火) 01:29:32 ID:AzopWD9x
「に・・・匂いますたい。監督さん。」
左門の予言通り、この日、大洋ホエールズは、昭和43年の大リーグボール1号のときと
同じく、大リーグボール3号の公式戦最初の餌食となった。
しかも左門の調子を大きく狂わせる原因は、その平平凡凡のストライクが
バットに掠りもしないことにも増して、
オールスターでの大阪移動のために新幹線の車中で
京子から左門へ陣中見舞いと称して投擲されたリンゴの描いた放物線と重なって見えたことであった。
プロの外野手が至近距離からのリンゴを落とす。。。。
京子の前でだけは、普通に何事もなく捕球したかった。
あろうことか最愛の京子が投げてくれたリンゴなのに。
なのにあの時、捕れなかったのか?くよくよしても仕方のない失態を頭の片隅にしまいつつ
打席にたった左門に、まさにあのリンゴそっくりの球筋が、飛雄馬のアンダースローによって
投球されたのだ。

左門も大洋打線もなすすべなく、打者5人を出しただけの完封負け。
まさしく2年前の真夏の夜の夢の再現であった。スイングアウトの三振を喫し
最終打者として左門が聴いた「ゲームセット」の声は、
彼のつい今しがたまでの浮き上がった心を撃沈し今また左門に再び告げられた。
「ゲームセット!」
36名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 15:12:00 ID:QTXYKhq1
>>26>>30
現実のブッチャー様はすごく女性にだけはやさしいという話だけど
ブッチ様はカ●センセイと中身がだぶるなあ
ヨウツベでみれるサントリーレモンのTVコマーシャルなんかでも
すごい明るいキャラで案外女の子にも人気ありそうだった ブッチじゃなくてブッチャー様はw
でもセリフまわしとかどこか笑えるのがとても救いだブッチ様w
37名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 20:30:01 ID:6R66Slx/
愛×石清水楽しみ
38名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 21:08:49 ID:P2FXAq6Y
巨人の星のほうは、相当な長編になりそうで、果たしてエロに到達するのが
いつになるやらといった印象だが、書き手の作品愛はしっかり感じるし、
「大洋ホエールズ」「別当監督」「巨人キラー平松」など、昭和40年代の
テイスト全開の文章は読んでて楽しい。気長に待っている。
39巨人の星 その後20:2009/06/09(火) 21:52:40 ID:M2pQzrzU
「左門さん?」
硬直し打ちひしがれた左門は、京子の無邪気な声に、
辛うじて今一度、正気に戻った。
「星さんは、どこ?」
「星さん、一緒じゃないの?」
「ねえ、星さんどこよ?」
京子の唇から発せられる名前は、星3に対して左門1である。
しかもさっきから京子は左門のことを全く訊ねていない。
その無邪気な罪の無い声は、できればオールスター戦のホームラン競争のように
左門の遥か頭上を越えて飛翔していってほしかった。
しかしその声は、ひとつひとつ間違いなく左門の胸に突き刺さった。
「星さん、一緒じゃないのっ?!ねえっ!左門さんってばっ!」バシーン!!
無邪気な女神は、どこまでも天真爛漫に、そう問いつつ今度は左門の背中を叩いた。
「黙ってたら、わかんないじゃないのよっ!ちょっと左門さん?」
「きょ・・きょ・・京子さん・・・・・・」
「何?左門さん、なに?」
「きょ・・きょ・・京子さん、ワ・・・ワシ・・・・」
「なによ?はっきり言ってよ!どうしたの?左門さん、もしかして・・」
(もっ・・・・もしかして?もしかしてって、京子さん、ワシの気持ちをよもや気づいたとばいっ?)
40巨人の星 その後21:2009/06/09(火) 21:55:04 ID:M2pQzrzU
言うより先に気づかれたか?気づかれてしまったのか?
さりとてどうする?いや、どうするも何もそんなことを気づかれて
よもやここから京子が走って逃げ出したりしないものか?
しかし、それも左門の飛躍しすぎであった。現実はかくも残酷であった。
「もしかして左門さん、具合でも悪いのっ!?」
(な・・・なんじゃ・・それはぁ〜・・・・)
左門を気遣うでもなく、さもどうでもいいように、
あたかも通りすがりの人間がうずくまっているのを気遣うが如く。
しかし京子にとって左門は、通りすがりに毛の生えたようなものでしかなかった。
(く・・・くやしかぁ〜っ!なしてこがんにワシを軽くあしらうんかっ!・・・・
 もっ・・・もう我慢できんばいっ!)
しかしそれは左門の身勝手というものである。左門の心を京子は支配していようと、
京子の心を左門が支配してるはずなどないのだ。
左門がいかに京子に恋慕の思いを募らせようと、京子に左門を恋慕しなければならない必要も義務もない。
なぜなら京子にとって左門は、かつて新幹線の中で京子が言ったように
『ただ一度、会っただけの人じゃないのさっ』・・・で、しかないからだ。
(まっこと、くやしかぁ〜っ!こがん屈辱ば、なんして・・・なんして・・・もう・・もう・・ワシっ・・ワシ・・)
41巨人の星 その後22:2009/06/10(水) 20:12:27 ID:KQtbmv8U
「ワシも知らんとばってん・・・ですたい・・。」
自分でも意外な言葉を吐いていた。人間あまりにも緊張すると
意志決定力を失うか、脳に間違った情報が送られてしまうものらしい。
「えっ?今なんて言ったの?」
無邪気な女神は、キョトンとした顔で左門を覗き込んだ。

この京子という女、あるときは女神のように天真爛漫であり、
あるときは女豹の如く凛々しくまた挑発的であるにもかかわらず
ときに無防備に相手を問わず、百面相を演じるところがあった。
それも生まれついて美しすぎる女にしかなせない所業である。
自分の顔が、『美しく見られなければ、どうしよう?』という女には普通持ち合わせている
危惧がまったくないのである。
「んっ?どしたの?左門さんっ?左門さんっ?左門ちゃ〜ん?左門く〜ん?」
(こっ・・・こがんに可愛か物言いば、するとでか?こん人はっ?)
42巨人の星 その後23:2009/06/10(水) 20:13:56 ID:KQtbmv8U
ふざけて声色まで使った京子の声は、
左門の神経を、心地よく逆撫でした。
今しがたまでの(勝手な思い込みによる)自分への不当な扱いへの怒りは、
たちまち霧散し、左門の胸に心地よいくすぐったさを覚えさせた。
思えば、それほど京子のことを知っているわけではないのだ。自分は。
それが今こうして向き合っているだけで、今まで見ることがなかった、
京子の様々な表情や話し方、体の動かし方が、ひとつひとつ
目の前で繰り広げられるだけで、左門はまたも天にも登る気持ちよさを感じた。
左門のまだ垣間見ていない京子の知られざる部分が、
どれも左門に都合のよいものでも、うれしいものでもあるはずはない。
しかし今、左門は全く疑っていなかった。京子の全て、何かもが最高に愛しいものに違いないと。

「あ・・あの・・あはは・・・あの・・ワシあの・・・あははは」
「何よっ!変な人ねぇ〜っ!急に笑い出しちゃってっ!具合悪いんじゃなかったのねっ?」
そう短く言うと、京子は不二家のペコちゃんのように両方の口尻をつり上げ
おどけたように首を傾げた。これも左門が始めて見る仕草である。
もちろん京子は左門の気を引こうとしたり、機嫌をとっているわけではない。
勝手気ままな、またも絶世の美女にのみ許される百面相のひとつに過ぎなかった。
43巨人の星 その後24:2009/06/10(水) 20:15:26 ID:KQtbmv8U
「今、なんて言ったのよっ?なにか言いかけたでしょ?さっき。」
そこで京子は、自然に、まさに自然としかいいようのない間で、
左門の前で、ファッション・モデルのようにクルリと踵を使って一回転した。
長い髪が、宙を舞う。金色の髪は、絹糸のようにキラキラと輝きながら
その持ち主であるヴィーナスに追いつき、そしてフワリとその肩に舞い降りる。
(こっ・・・こりゃまさに、こん人は・・・美の化身たいっ!まっこと!)

朝も夜も、自宅アパートでも球場でも、本拠地でも遠征中でも
一時も忘れられなかった左門のヴィーナス像は、しかしあの夏の日と、
新幹線の中だけの記憶でなかば完成していた。
その記憶を何十倍にも何億倍にも膨らませて、妄想を繰り返し補完されたヴィーナス像が
今、目の前で左門の知らなかった表情や仕草のニューヴァージョンを
次から次から披露している。何の罪のなく、何の屈託もなく。

左門は、知らぬままに、一度突き落とされたどん底から、勝手に浮上し飛翔し
この日の午前中から舞い上がっていた以上のテンションとなっていた。

すでにこの肥後熊本から引き出された牛の如き田舎者に
臆するところは臆するという行動パターンと判断力を完全に見失わせた罪な午後は、
その創造主たる太陽をまだ、左門と京子のほぼ真上に留めていたのであった。
  =つづく=
44巨人の星 その後25:2009/06/11(木) 07:07:51 ID:yBrWxuLT
東京都港区と品川区の境目に、ひっそりと雑居ビルの間に
2階建て一戸建ての青と白に塗り分けられた小奇麗な建物。
それが、喫茶モンテクリストだった。
ここの2階に住居を兼ねた女経営者、ひとみは40歳を超えていたが、
清潔感のある白のセーターに藍色のベストを身に着けたスラックス姿と
肩までかかるセミロングの黒い髪は、彼女を実際よりずっと若くみせていた。

この店に2年ぶりに京子が現れたのは、1週間前。
それは、ちょうど左門豊作が、京子の尋ね人広告を新聞に載せてから3週間が経った
10月も下旬のことであった。

ひとみは、京子の実母の親友であった。
京子が実母を亡くしてからも、それ以前からも、実の母と娘のように何でも話し合ってきた仲である。
京子の母が体調を壊したのは、まだ京子が中学生の頃であった。
患った時期も、そうでない時期も、ひとみと京子の母、英子の付き合いは続いていた。
45巨人の星 その後26:2009/06/11(木) 07:09:47 ID:yBrWxuLT
人間の寿命など、誰にも分からないが、英子が体調を壊したのと
英子と夫(京子の父)の関係が悪かったことは無関係ではなかった。
京都の旧貴族の分家から英子が、ペルシア絨毯の貿易商をしていた夫に嫁いだのは、
まだ終戦の痛々しさが日本中に残っている時代だった。
結婚後1年が経ったころ、生まれた長女の存在は、この夫婦が二人三脚で
商売を切り盛りし時代を生き抜いていく支えであった。
女の子は、英子の故郷にちなんで京子と名づけられた。
雅な気品と、気位、そしておしとやかな大和撫子に育つようにと付けられた名前だった。

しかし日本家屋に洋間が出来てきく時代と、まだイミテーション物の絨毯などなかった時代。
夫の事業は、急激に拡大し、反比例して夫婦仲は冷えた。

夫が日本中はおろか、イラン(当時は、パーレビ国王による親米政権下)やイギリス、ベルギーを
飛び回るうちに、やがて家庭を守る女性以外の女性の存在が重要になってしまった。
その女性の存在を英子が知ったのは、京子が中学生になってすぐ。
ほどなく多感な年頃の京子もそれを知るに至った。
46巨人の星 その後27:2009/06/11(木) 07:11:59 ID:yBrWxuLT
私立の名門女子大学の付属の中学校に進んでいた京子だったが、
父と口も利かなくなり、利発的ながらも玉のように育てられた素直な性格が
徐々にエキセントリックになっていったのもこの時期だった。

京子が、中学3年になるころには英子の容態は、入院を繰り返すようになり、
主に看病は、京子と、英子の同郷の親友でもあったひとみがつとめた。
英子が、京子の進路を案じ、勉学に励むよう進めても
看病を辞めない京子に、勉強から相談事まで額を突合せて面倒を見てきたひとみであった。
やがて京子がエスカレーター式に同じ付属の女子高校に進んだ直後に
英子が亡くなった。
英子と京子の家庭には、あまり上がり込まずに、いつも外で会っていただけに
ひとみは、英子亡きあとの京子の家にまで入り込むことはできなかった。

学校にも行かなくなり、周囲には突如とも取れるグレ方を始めた京子に
唯一、大人の相談相手になってやれるのが、ひとみだった。
そのひとみは、広告代理店を経営する夫とは、10年前に離婚しており子供はなかった。
京子を実の親のように面倒を見たいひとみだったが、京子が過度にひとみを心配させることを避け
徐々に新宿界隈で名うての不良少女となっている噂を聞く頃になると
二人があう回数もやがて減っていった。
そんな京子が、髪まで金髪になって、2年ぶりにひとみの店に現れたのが、1週間前だった。

47巨人の星 その後28:2009/06/11(木) 07:14:03 ID:yBrWxuLT
過去のことをあまり問いたださなかったひとみだが、
京子の様子には外見以上に重大な変化と、難しい事態に局面していることは見てとった。
夜もひとみのベッドの横に、布団を敷いて、京子は勝手にいろんな話をしだした。
ひとみは聞き役一方だったが、それは苦痛には感じなかった。

すっかり女になっていた京子、どうやら好きな人がいるらしい京子、
見た目の派手さとは違い、芯の強さと純粋さだけは、失っていない京子
しかし喫茶モンテクリストの前に高級車が横付けされたときや、
夜間の電話に一瞬ギクッと反応する京子の様子に
何者かに追われている、捜索を受けていると勘付かないひとみではなかった。
「叔母さま!大洋ホエールズって大洋漁業がやってんでしょ?」
「ああ、そうねえ・・・。まるはっていう会社が親会社じゃなかったかしらね。」
「そのまるはの大洋って本社どこなの?」
「さあ、知らないけど大きな会社だからこの東京のどこかじゃないのかしら。」
「でも大洋ってチームは、川崎でしょ?川崎じゃないのかなあ?ねえ叔母さまっ!」
「私、分からないわよ。その会社がどうかしたの?京ちゃん。」
「うんん。何でもないっ!そこに連絡つけられないかなぁ〜って思って。」
「うちの店、まるはの品物ってあんまり使ってないんだけど、聞いといてあげようか?どこかに。」
「うんん。叔母さまっ!アタシ自分で調べるっ!」
48巨人の星 その後29:2009/06/11(木) 07:18:06 ID:yBrWxuLT
人に聞くだけ聞いといて、自分ですっぱり結論を出す気ままさは、
幼い頃から全く変わらない京子の性格だった。
しかもその話を嬉しそうに声を弾ませているところを見ると
どうやら悪い方の話ではないようだった。
「そこに好きなひとでも、いるの?京ちゃん。」
「あっはっはっは!だといいんだけど、そんないいモンじゃないのっ!残念だけど。」
照れ隠しに大きく笑う京子だったが、それは何か嬉しいことに繋がることではあるようだった。
カウンターに両肘をついていた京子が、
「叔母さま、アタシ洗い物するよっ!そんくらいしか出来ないしっ!アタシ。」
遠慮はしてみたひとみだったが、一度言い出すと絶対に聞かない京子が
この店を久しぶりに訪れて、押しかけウェイトレスになってしまったのは、2日目からのことだった。

地元の人間とサラリーマンが主体客半々のこの小さな喫茶店に、
珈琲の美味しさとひとみの美貌を目当てにくる中年の客に
この臨時ウェイトレスは、その性格の明るさからすこぶる評判だった。
なかには京子のグラマラスな肉体を目を皿のようにして凝視している客もいたが、
それに辟易する京子でもなかったし、度を過ぎる熱視線を浴びせている客には
ひとみのウィットに富んだ揶揄が炸裂していたのだった。
49巨人の星 その後30:2009/06/11(木) 19:18:49 ID:SYofJigr
つい先刻、強烈な訛りを持った男性からの電話を
ひとみの横から受話器をひったくるように奪い取った京子は、その相手に一方的に
そこで待つように伝えるとこれからランチタイムになる掻きいれ時という正午前に
「叔母さま、アタシ出かけてくるっ!ごめんなさいっ!」
と言うが早いか、自分のベージュのロングコートと小さなショルダーバッグをつかんで
店の扉をカランカランとベルを鳴らし、飛び出して行った。

「あらあら、お化粧しなおす時間まで惜しいなんて、気合充分ね〜。」
元々ひとりで切り盛りしていた店である。京子がいなくても何とかなるにはなる。
ここ数日、以前は3日に一度しかここにランチをとりにこなかった馬面のサラリーマン
大谷は、日参のかいなく京子が自分に目もくれない上に
今日は自分のテーブルにお冷やも出さずに、店を飛び出していったことに落胆した。
「ママァ〜。京ちゃん何処行ったのぉ?」
ひとみは大谷のテーブルにお冷やを運びながら
「さあ〜ねえ〜。年頃だから。あの子も。」
50巨人の星 その後31:2009/06/11(木) 19:21:13 ID:SYofJigr
「もしかして恋人かなんかの所へ行ったのかなぁ?京ちゃん。」
「だから。 知りませんけど、だったらどうしたの?大谷くん。」
「ひどい奴もいたもんだよなあ〜。こんな昼時に呼び出して!しかもこのボクチンが店に来てる時に。」
「そのボクチンが、京ちゃんのお尻ばっかりジロジロ見るから。怒って出て行っちゃったのよ!」
「そっ・・そんなんじゃないやっ!ボクチンそんな嫌らしい奴じゃないぞっ!ひどいな!ママ。」
「でもちょっと難しいかもね〜っ!大谷くんじゃ。いまだに京ちゃんが注文とりにいっても
 シドロモドロじゃないの。耳まで真っ赤にしちゃってさ。このボクチン君はっ!」
「ママァ〜。そんなにイジメないでよお〜っ!ボクチンは一応お客さんだよお〜。」
「はいはい。ごめんなさいね〜。(クスクス)でもね〜。京ちゃんが、好きな男ってどんな男かしら。」
「なんだぁ?ママ知らないのかあ〜!よかったあ〜!ママ、そりゃね、きっとこのボクチンみたいな男さっ!」
「好きな女の前でシドロモドロになるような、こんな情けない男は、ありえないわね〜。(クスクス)」
「あっ!言ったなぁ〜ママ!よぉ〜し!じゃあボクチン今日、告白しちゃうぞおっ!」
「お好きなようにぃ。ところで注文何すんのよ?ボクチンは。」
「よしっ!今日はゲン担ぎだっ!トンカツ弁当っ!トンカツ弁当イッチョーッ!」
大谷は、人差し指を突き立ててプロレスラーのようにポーズをとった。
51巨人の星 その後32:2009/06/11(木) 19:23:49 ID:SYofJigr
ひとみが、注文をとって料理にかかると、大谷は大きな声でテーブルから質問してきた。
「ところでママ。京ちゃんってママのなに?娘さんじゃないんでしょ?」
忙しく手を動かしながら、ひとみは大谷に聴こえるように返事を返した。
「娘じゃないわよ。でもそんな感じだけど。」
「んじゃあ姪っ子さん?ママも美人だけど似てないよね。京ちゃんと。」
「ヨイショしてもオマケはしないわよ〜っ。京ちゃん相手にもそのくらい軽口叩けたらね〜。」
「だっ・・だからボクチンは今日・・」

そこまで大谷が言いかけたとき、店の扉がカラカランとベルを鳴らしながら開いた。
「いらっしゃいま・・・・・・」
ひとみは声を出しかけながら、無意識に途中でそれを躊躇した。
入ってきた男の異様な雰囲気にである。
「いらっしゃいませ。」
気を取り直してひとみは、お冷やを用意しかけた。
男はひとみも見たこともない男であった。男は店内を見渡すと、そのまま歩みすすみカウンターに腰を下ろした。
52巨人の星 その後33:2009/06/12(金) 00:40:51 ID:2fUZAalw
昭和45年、西暦で言うと1970年のこの時代は、
その前年あたりから向こう2〜3年にかけて日本のファッション形態が大きく変貌した時代である。
中年の服装と、若者の服装に大きな乖離が顕れ出したのがこの時代である。
見た目で、主義主張やライフスタイル、職業まで垣間見れるようになったのもこの時代である。
それまで日本の男は、ホワイトカラーもブルーカラーも
仕事以外で出掛けるときは、上下背広、夏は上はカッターシャツと相場が決まっていた。
それが当り前の時代であったのが、男はTシャツやポロシャツで外出し始め、
冬場の上着でも、それまで見た事もないようなモノが出回りだしていた。

そんな時代の中、そんな時代変化に全く以前と変わらない服装センスで街を闊歩する者は、
かなり浮いて見えた。それ以前にも浮いていたものが、さらに異様に浮き出したのである。
男の身のこなしと着ているものは、ひとみの目にも大谷の目にも明らかにその男の正体を的中させていた。
スジ者である。
53巨人の星 その後34:2009/06/12(金) 00:42:29 ID:2fUZAalw
ひとみは、お冷やを出す際に男の手元を見た。
指はちゃんと10本ある。
男の着ている服装も、それほど見慣れるタイプやブランドではなかったが、
どれもかなりの高級品であり、スーツは薄めのグレーでサージ織り。
ネクタイは、カルダンの物であったが、初めて見る相当な高級品である。指輪はしていない。
「珈琲、いただけますか?ホットで。」
これほど艶やかで、しかも低音の持ち主は、ひとみも相対したことはなかった。
おそらくテノール歌手の普段の地声は、こんな感じなのだろうかと、
ひとみは一瞬どうでもいいような想像をした。
珈琲を出すと、男は音も立てずに、スゥーと飲み干した。
アツアツのブラック珈琲をである。
「うん。いい珈琲だ。」
またあの超低音が、ひとみの胸をえぐるように響く。
「もう一杯、いただきましょうか。」
「あ・・・は・・はいっ・・・・。」
男は歳の頃なら40前後、どう見ても、さいきんめっきり見なくなったチンピラではない。
そのスジの組織の幹部クラスなのであろう。
「と・・・・もう一杯。の・・・・その前に。」
54巨人の星 その後35:2009/06/12(金) 00:44:12 ID:2fUZAalw
「なっ・・・なんでしょう。」
やや汗ばんだひとみの顔が、引きつりながら応えを待った。
男は、カウンターの止まり木をクルリと回転させ、この時間、唯一店にいたほかの客
馬面の若者サラリーマン、大谷の顔を一瞥した。
大谷も男の正体にそれとなく推理を働かせているが、口はポカーンと開いたままだ。
京子の顔を、京子の尻を見たくて、昼休み15分前に会社を抜けて、
喜び勇んでこの喫茶モンテクリストにやってきたのだった。
時計は、午前11時50分を指していた。

まるで喉元に刃物を当てられたように、大谷は、口をあけたまま硬直していた。
その大谷の様子を確認したカウンターの男は、ひとみに尋ねた。
「ここのウェイトレスさん。京子さん。」
ひとみは、声にならない声を喉の奥で、「ヒィ!」と鳴らした。
「いつお戻りですか?」
シーンとした静寂が店内を支配した。秒針の音だけが響く空間に男の低い声の余韻だけが残る。
店内をいつも流れるひとみのお気に入り、グレン・グールドのピアノ独奏のレコードは、どうに鳴り止んでいた。
55巨人の星 その後36:2009/06/12(金) 00:46:12 ID:2fUZAalw
「なっ・・・なんのことで・・・しょうか・・・・。」
美しく尖ったひとみの細い顎が、小刻みに震えながら、辛うじて男に問い直した。
「京子さんですよ。可愛いウェイトレスさん。今日、こちらにお戻りでしょうか?」
「きょ・・きょ・・京子は、・・・あの・・・分かりません。あの・・ここに住んでるわけでは、ありませんの。」
男は、ニヤリと声も立てずに笑みを浮かべた。その表情の凄みは、ひとみの足をも震えさせた。
「フッ・・・。誰も住んでるかどうかなんて尋ねては、いないんだけどな。フフフ。」
ひとみは狼狽した。言ってはいけないことを言ってしまったか?
住んでいないという言葉を、この男は、京子がここに住んでいると推理させてしまったのか?
男は音も立てずにスッと立ち上がった。
震えて身動きできなくなっているひとみの顔を2〜3秒間、恐ろしい笑みを浮かべながら凝視すると、
踵を返して大谷の座るテーブルにツカツカと歩み寄った。
大谷と向かい合うように、腰を下ろすと低い声で尋ねた。
「あなたは?どちらさん?」
「はっはぁっ?・・・・あ・・・あの・・・・・」
「あなたは、どちら様ですか?と尋ねているんですよ。」
左手の人差し指を自分の胸に手の平をつけたまま大谷を指差し男は大谷に再度尋ねた。
「あっ・・あの・・・ボク大谷です。」
「大谷さん?どちらの大谷さん?」
「ひっ・・ひっ・・ど・・・どちらとおっしゃいますと?」
「お勤め先ですよ。大谷さんの。このお近くでしょう。どちらにお勤めですか?」
「あの・・あの・・・そこの・・・はっ・・・はっ・・花形モータース・・・流通部の・・もっものですっ・・・はい。」
「一流企業ですなぁ。ほう。」
その時、今一度、店の扉ベルが、カランコロンと鳴った。
56巨人の星 その後37:2009/06/12(金) 18:03:28 ID:xPi6vHks
「京子さん、すまんこってすたい。ワシも分からんとです。星くんの行方ば。」
歩道橋の上を、吹き抜けた風は、地上よりも高さがあるためだけでなく、
左門には、とても冷たく感じられた。
「そ・・・そいでワシ・・・・・」
左門が言いかけたとき、京子はその次をまるで聞いていないかのように
心なしか溜息交じりに言葉を小さく洩らしたように左門には聴こえた。
「・・・・・・・そ・・・・そう。」
左門はまた焦った。京子の落胆ぶりは、相当なものだったからである。
「そうだったの・・・・・・・。」
では、左門が京子を探していた理由は何だったのか?
京子には、今その疑問も湧いてこなかった。
直感に優れた京子をもってしても、左門が京子に伝えようとしていることは、
想像の範囲外であったし、今、京子の頭の中はそれどころではなかった。
飛雄馬に逢えると思っていたのである。
逢いたい気持ちをどんなにか抑えてきた。
あの新幹線の車中でも、ずっと飛雄馬のことを考えていた。
でも堪えた。そして自分を繕った。周囲の子分格の竜巻グループの仲間のためではない。
もちろん左門のためでもない。
自分と飛雄馬のためにである。
57巨人の星 その後38:2009/06/12(金) 18:05:54 ID:xPi6vHks
左門と京子を照らしていた11月のやさしい太陽は、
ふたりの真上に位置していたにもかかわらず、
急に灰色の雲に覆われてしまい姿を隠した。
京子にとってまるで飛雄馬への手がかりが、飛雄馬の存在そのものが
隠れてしまったかのように。
逢わないと決めたのは、一代決心だった。飛雄馬の居たクラウン・マンションに
置手紙を置いた内容がもちろん全てではない。
しかしそれ以上、飛雄馬に言葉の綴りようがなかった。
それ以上書こうとすると、泣き出してしまってもう二度と泣きやめない気がした。
心を整理したわけではない。
しかし自分に言い聞かせた。飛雄馬のプロ野球選手としての将来を
自分が壊してしまうことはできない。
鬼怒川組とのイザコザに飛雄馬を巻き込みたくない。
巻き込んで平気な女と、飛雄馬に思われたくない。
足のつかないように竜巻グループは、関西や北陸を転々としていた。
しかしいつかは見つかるのだ。そして何らかの制裁を自分は受けるのだろう。
その現実があるから、飛雄馬を忘れられると思った。
でも忘れられなかった。
58巨人の星 その後39:2009/06/12(金) 18:08:09 ID:xPi6vHks
竜巻グループの子分格たちと京子は、
そのトレード・マークの長い髪を束ね結い、アップにして
北陸地方の3箇所の温泉街に住み込み女中として働き始めた。
芦原、山中、片山津の3つの温泉街に二人ずつ潜りこんだ。
いつまで続けられるか分からない。鬼怒川組の触れが回ってくるかも知れない。
しかし懐はもう尽きていた。どこでもよかったが、関西にいたのでは、
任侠組織の活動も活発な可能性も高かったし、第一言葉遣いで怪しまれる。
京都の修学旅行生向けの安宿も臨時従業員を募っていたが、
全国から観光客の訪れる京都では危険が高かった。

京子は福井と石川の県境にある芦原温泉の小さな旅館で働き始めた。
もう一人の子分格が同じ芦原で別の旅館で勤め、
あとの4人は山中、片山津で住み込み旅館を見つけた。
全員が同じ日に休みを取れることは、なかったが都合がつけば
北陸本線やバスを乗り継いで逢える者たちだけでも顔を合わせていた。
59巨人の星 その後40:2009/06/12(金) 18:11:12 ID:xPi6vHks
プロ野球は、見ないようにしていた。
見たら飛雄馬に逢いたくなる。今すぐにでも逢いたくなってしまう。
だから見なかったが、女中部屋にある小さな赤いボディをしたテレビで
スポーツ・ニュースだけは見れるときは見ていた。
生でないだけ、気持ちもはやらないと心で言い訳をしながら。
新聞も読んだ。連続シャットアウトで、ジャイアンツ6連覇への原動力として
活躍し続ける飛雄馬の姿は、直接見なくても
目に浮かんでくるようだった。

しかし京子は見てしまったのだ。運命のパーフェクト・ゲームを。
一階の踊り場とも言える洋間スペースに、ある日の午後
座布団を運びながらそこを通り過ぎようとすると
置かれていた大型テレビの前に客が群れをなし、大歓声をあげながら観戦していた
ゲームこそ左投手 星飛雄馬にとって最期の登板となった巨人ー中日戦の最終ゲームだった。
60巨人の星 その後41:2009/06/12(金) 18:13:20 ID:xPi6vHks
「こりゃやるかもよお!」「すげー瞬間に立ち会えるぜ。おい。」「そうそうないこったな。」
ドヤドヤと到着したばかりの地方の会社の男性ばかりの団体が
口々に好きなことや、野球智識を披露しながら、浴衣にも着替えずに
テレビに釘付けになっていたのである。

見てはいけない。見たらたまらなくなる。しかし客たちの声に
そのゲームで何が起きようとしているかは、京子には分かった。
頭の中を飛雄馬のことでいっぱいにしながら、何度か座布団を運びながら
洋間を通り過ぎた。客たちの群れた背中の隙間から
一瞬、画面を見てしまったときは、幸いかジャイアンツの攻撃中で飛雄馬は映っていなかった。
しかし運命の9イニングス目にテレビの前を通り過ぎようとしたとき
旅館のおかみも他の従業員も仕事そっちのけでテレビにかぎりついたとき
京子もちょうど手持ち無沙汰になっていたのだ。
61巨人の星 その後42:2009/06/12(金) 18:15:36 ID:xPi6vHks
大きく見えた。
久しぶりに生中継で動くリアルタイムの星飛雄馬は、
身長でほぼ京子と同じぐらいであったはずが、
とてつもなく巨大に、京子の目に映った。それはこの生中継を
見た全ての人に言えた現象であったかも知れないが。

しかしツーアウトで、ピンチヒッターに登場したドラゴンズの伴選手は、
その印象さえしのぐほど、巨大で威圧的な怪物然とした印象を京子に与えた。
まるで飛雄馬を押しつぶさんばかりに、飛雄馬の首を獲りにきた
野武士の如く、その恐竜のように大きな巨体を
バッターボックスに歩ませた伴は、
京子には飛雄馬を地獄へいざなう魔王のように見えた。

しかしゲームは終わった。アナウンサーと解説の金田正一の声が
テレビのスピーカーからわめいていたが、何を言ってるのかは全く聞き取れないほど興奮している。
その栄光の瞬間、飛雄馬の左腕は破壊されたのだった。
62巨人の星 その後43:2009/06/12(金) 18:17:47 ID:xPi6vHks
忙しい時間がやってきた。次から次へとお膳を運び
布団を敷き、動き回っている間は、飛雄馬の事態を考えようにも
それ以上は頭が働かなかった。
賄い食も喉を通らず、ひとり従業員用のしまい風呂に
全裸で身を沈めたとき、湯の波紋を見ていると、とてつもない胸の高鳴りを覚えた。

自然と京子は、自らの豊かな乳房に両手をやった。
いつしかその手が自分の乳房を揉み始めたことも自覚していなかった。
胸の早鐘のような高鳴りだけが、分かった。
しかも一向に修まる気配もない。
湯船に浸かりながら、とてつもなく大きな声をあげてしまった。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・あああああ〜んっ!」
股の繁みに手が移っていた。我に返った京子は、おのれのはしたない自慰行為のせいか
何のせいかも分からず、久しぶりに泣いた。体が壊れんばかりに泣いた。何年分もいっぺんに泣けるほど
声を出して泣いた。
63巨人の星 その後44:2009/06/12(金) 18:20:07 ID:xPi6vHks
浴衣を身につけ深まる北陸の早い秋の夜風に当るのも体に毒だと、半纏を羽織り、女中部屋でなく
旅館の渡り廊下へ歩をすすめた。もうコオロギも松虫も鳴いていなかった。
深夜に入った静寂の中庭をぼんやり眺めようにも京子の双眸には、まだ涙が浮かんでいた。
両手の袖でそれを拭おうとしたとき、酔っ払いの宿泊客が
渡り廊下を村田英雄の人生劇場をおかしなトーンで歌いながら京子に近づいてきた。
「やる〜と、思え〜ば、どこまで〜、やるさ〜♪そおれが〜男の〜魂じゃぁ〜ないかぁ〜♪っと来りゃな!」

耳障りも何もない。その歌詞まで飛雄馬のことを思えば悲しくなる京子は、
早々にそこを立ち去ろうとしたが、
「ヨォッ!お嬢ちゃんっ!アンタっ!泣いてんのねっ!グシシシシっ!」
と身のほど知らずにも京子に絡みだした。
「泣いちゃだめだよっ!ムスメさんっ!オイに語ってチョウダイなっ!何やかんやと聞きやしょうぉ!」
京子の両肩に背後から手を回すと、ヨダレを垂らしながらさらに調子付いた。
「可憐な涙が枯れないときゃぁ〜、下の滴を流しやしょぉ〜、そしたら枯れるよ、その涙、オイに任せてチョウダイなっ!」
完全に出来上がった酔客の顔面を、竜巻のお京の強烈無比なるビンタが襲った。
バチーン!
「ホゲェ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
64名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 19:19:40 ID:WLXa+ecL
左門とお京 
エロパロいうより本格的スピンオフ作品になってきた
場面転換のしかたも映画の手法っぽい
もうエロでなくても完結させろよ タイトルは【巨人の星外伝 京子の青春】にかえろ
65名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 20:11:36 ID:sS0CdQSA
東スポあたりで連載してても、何の違和感もないなw
66名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 21:42:25 ID:2w8hJqg1
「巨人の星」が終わったら、
「愛と誠」をぜひお願いします。
うる覚えなのですが、最後の方で(校庭の場面)
愛が両腕を後ろ手で縛られて、
セーラー服の前をちょっとはだけられた場面があったと思います。
その時、「私が脱ぎます」と言っていたように思います。
その時、誠が爆弾を持っているぞと脅して、一件落着だったように思います。
それの、アナーザーストーリー(ストリップ&寝取り)をお願いします。
67レスさせていただきます:2009/06/13(土) 22:06:36 ID:nyM7KP3z
>>38
ありがとうございます
気長に愛読いただければ うれしいです 見捨てないでねw
>>64
左門にエッチ行為させるのは、みなさんにはどうでしょうか?
エッチなことするのは、いわゆる雑魚キャラのほうがいいのでしょうか?
できればご意見ください
エロなしで完結という意見もありがたく思います(どうしたものかは、未決です)
文章づくりに、誰を参考にしているというのはないのですが、
自分で読むと、柴田練三郎先生の影響がでてしまっているように思います(^_ゝ^)
>>65
ありがとうございます 連載小説って難しいそうですね 書くの
閑話休題で場面転換して、舞台が仲々戻らないと苦情が殺到するそうですねw
>>37 >>66
「愛と誠」はコミックを今持っていませんw
実家にはあると思うのですが確証がありません
もちろん大スキなさ作品ですが、巨人の星に比べると>です

あと、ストーリーに過剰に暴力団が介入してくるのは、梶原一騎先生晩年の特徴ですが、
なるべくなら最小限にしたいですね(と言いつつ本作にも登場すますがw)

愛と誠に限らず、皆さんが超愛着のある作品を投下してくださるのもお待ちしています
ただ愛着がなければ、ご遠慮していただければ幸いです
梶原一騎作品って、あちこちでパロディ化され、中には実際には読んでないのではないか?と
思われるものもありますし、
パロディだけを見て、語っている人も案外いますねw
とくに「巨人の星」はその傾向が強いように思います 嘆かわしいことですね
68巨人の星その後45:2009/06/13(土) 22:11:18 ID:nyM7KP3z
昭和43年10月1日の国鉄のダイヤ改正は、俗に「ヨンサントオ」と呼ばれ、
昭和50年3月10日の大幅ダイヤ改正までの期間、
国鉄の全国ダイヤの根幹をなしたダイヤグラムを定着させた。
この43年改正で、北陸と東京を結ぶ夜行列車は寝台特急「北陸」のみとなった。
50年に急行「能登」がデビューするまでの間は、北陸が専ら
北陸地方から早朝の東京に降りたちたい旅客の輸送を専任した。

金沢駅のホームで、京子はこの地方に当分とどまる仲間たちとの別れを惜しんでいた。
芦原温泉では、酔客をノックアウトした翌朝、解雇を通知されたが、
給金配布までの期間は、置いてくれた。世の中捨てたものではない。
わずかだったが、1ヶ月分の給料も支払われた。
「姉御、星さんに逢えるといいねっ!」「きっと逢えるよっ!姉御!」
「でも気をつけてくださいっ!姉御っ!行きたくなくてもヤバけりゃ実家帰る方法だってあるよっ!」
「あっ!このバカっ!つまんねえこと言いやがってっ!姉御に謝れっ!ねっ!姉御っ!」
「いいんだよ。おまえたちが、見送りにきてくれただけでも、アタシなんだか泣きそうさ。
 でもおまえたちも、気をつけなっ!アタシみたいに、すぐカッとしちゃいけないよ。」
69巨人の星その後46:2009/06/13(土) 22:13:44 ID:nyM7KP3z
「上野ゆき寝台特別急行:北陸にご乗車のお客様、たいへん永らくお待たせいたしました。
 まもなく列車が発車いたします。
 ご乗車のお客様、すみやかに車内におすすみくださいっ!
 またお見送りのお客様方、ホームのお足元、白い点線の中までお下がりください!」
駅員の発車アナウンスが、夜の金沢駅のホームにこだました。
「じゃあ姉御、お気をつけて!」「姉御!」「姉御っ!また会いやしょーっ!」
「わかった。わかった。でもその姉御ってのは、もうやめてくんないかな?
 なんかおまえたちの世話なんにもしてやんなくて、
 ここんとこ、こっちが世話になりっぱなしで、情けない姉御も今さらあったもんじゃないよ。」
京子がB寝台の車両に乗り込むとすぐに、自動ドアが閉まった。
ガラス越しに見える仲間たちの顔は笑っていたが今生の別れでもあるかのように
どの顔も涙でクシャクシャになっていた。
「上野ゆき寝台特別急行:北陸、はい発車しまぁ〜す。次の停車駅は、津幡、つばたでございます!」
笛の音が鳴り響いた。列車がプシューッと音を立てる。電気機関車のピィーっという細く甲高い警笛が
ホームにこだまする。青い車体が、グラッと動き始めたとき、
京子は目に浮かんだ涙を仲間たちに悟られないように、ドアのそばをすぐ離れた。
髪をアップに結った元・竜巻グループの仲間たちが、ピョンピョン飛び跳ねながら
手を振る横を寝台特急:北陸がすべるように動き出す。
涙に濡れた彼女たちの目に、「北陸」と書かれたブルートレインのバックサインが映り
そしてだんだん小さくなっていった。
70名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 14:07:29 ID:Papiqjpn
>>67
巨人の星、アニメも原作も大好きです。このスレ楽しみにしてます。
お京さんがザコにやられちゃうのは…板的に必要ならば仕方ないが
最後まではいかないでほしいな。
左門と本気で結ばれるまでを見たい。ロマンチックすぎるかな。
星もいろいろからむとうれしい。
71巨人の星その後47:2009/06/14(日) 19:42:30 ID:nNVf7cwx
喫茶モンテクリストのドアのベルが音を立てたあとも、
その音を立てた主はなかなか姿を店内に現さなかった。
5秒ほど、間があってから若い柄物のシャツの上からダブダブのジャケットを着た男が、
姿を見せた。これはすでに店内にいて、大谷に何点かの質問をしていた男と違い
どう見てもヤクザである。簡単に言えばチンピラ、末端の構成員なのだろう。
チンピラは店内の凄みある男に目で合図を送った。

と、チンピラは店内に入り際、後ろ手でそのままドアのカギを架けてしまった。
これでは、客が中に入ってこれない。

凄みのあるほうの紳士然ヤクザが、立ち上がりカウンターに再び歩み寄りながら言った。
「ママさん。すいませんね。営業妨害するつもりは、ないんですよ。
 実はまだ自己紹介しておりませんでしたね。
 わたくし共は、実は・・・・・京子さんの債権者でして。」
「さ・・・さいけんしゃ?」
ひとみは、かすれた声で問い直した。
「さよう。」
大谷のほうは、いまだトンカツ弁当が食えないまま、がに股でイスに腰掛けガタガタ震えていた。
72巨人の星その後48:2009/06/14(日) 19:43:51 ID:nNVf7cwx
「お店の看板は、勝手ですが、休業とさせていただきました。
 ママさんに相談があって、本日こうしてお邪魔しておるわけです。
 残念なことに、京子さんのほうには、債務をお支払いいただくおつもりが、ないらしい。」
紳士然ヤクザは、いまだ冷静にバカ丁寧な物言いで、その低音を響かせている。
胸ポケットから、タバコを一本出すと、チンピラが火を着火しようと
小走りに近づこうとするのを、手で制し男は自分のライターで火をつけた。

「お話しようにも、どちらにおいでか、わたくし共も皆目わかっておりませんでしたし、
 やはり全くお支払いの意志がないようで。困っておりましてね。」
タバコの煙を吐くと再びカウンターの止まり木に腰掛けた。

「京ちゃんが・・・京子がお金を借りているのですか?」
ひとみも女手ひとつで、こんな一等地に店を賄っているのだ。いつもでも腰を抜かしてはいない。
見かけに寄らずエリート・サラリーマンの大谷と違って。
しかし紳士然ヤクザは、ひとみの質問に答えない。

「いくら・・・いくら借りているんですかっ?京子は。払える金額でしたら・・・・」
ひとみが、そこまで言いかけたとき、紳士然ヤクザは、先ほど火をつけようとした、
チンピラを制したように、手の平でそれをさえぎった。
73巨人の星その後49:2009/06/14(日) 19:45:54 ID:nNVf7cwx
ひとみは、回転の速い頭で事態を把握しようとした。
京子が金を借りて困っているのなら、自分が払ってやれないことはない。
その可能性がもしかしてあるかも知れないと、ここ数日考えていたからだ。
だとしたら一体いくらなのか?100万200万なら今日中にもどうにかできる。
500万か?1000万か?それならすぐには無理だ。
しかし顔の広い自分なら、知り合いを当れば1000万とはいかなくても
それに近い金額を用意してくれる知り合いもあるし、
ひとみには、それだけの付き合いの広さと信用があった。しかし今日中とはいかない。

で、あれば何もこんな軟禁状態にする必要もないのではないか?
この男たちが金額を言わない以上、想像するしかないが、
金と引き換えに京子の身柄を預かるというのでは、マズいと思った。
相手は暴力団だ。人質にとられている間とはいえ安全とはいえない。
京子に何をするのか分かったものではない。
としたら京子にコイツらを今、会わせないほうがいい。
しかしいま、京子に連絡がとりようがない。携帯電話もないこの時代だった。
ならば京子が店に帰ってくるまで、何も伝えようがない。しかし会わせるのは良くない。
どこへ行ったのかも聞いていなかった。
大洋漁業の本社か?たしかそんなことを言っていた。
しかし今すぐひとみには番号が分からない。京子は自分で調べていたのだ。
それにコイツらの目の前で連絡をとるのもどうしたものか?
全部聴かれてしまうわけだし、そもそもコイツらがそれを許すかも分からない。

しかし金で解決する問題なのなら、それに越したことはない。
京子の力にここ2年の間なれなかったことの罪の意識、
亡くなった京子の母、ひとみの親友、英子に対する申し訳ないという思いが、ひとみにはあったからだ。
74巨人の星その後50:2009/06/14(日) 19:47:48 ID:nNVf7cwx
チンピラが店内のブラインドを下ろし始めた。完全に軟禁状態にするつもりか?
そして紳士然ヤクザから、顎で2階を指す仕草の命令を受けると
チンピラは、ひとみに断りもせず、2階へ上がり始めた。
「外にも。何人かスタッフがおりましてね。ママさん。臨時休業ですよ。しばしの。」
ひとみの質問にも答えようとせず、紳士然ヤクザは勝手に店の休業を決めてしまった。

「あの・・・どういうことですのっ?お金でしたら、お支払いする用意もあります。
 こんなことをする理由が、わからないのですがっ!
 おいくらなのですか?京子の負債というのは?
 金額にもよりますが、私もこんな店をやっていますが、すぐに何処かに逃げたり
 隠れたりできると、お思いではないでしょ?あなたたちも!」

やはり額面については、男は答えなかった。相も変わらずタバコをふかしている。
ドタドタとチンピラが2階から降りてきた。ボストンバッグを脇に抱えている。
AIR FRANCE と紺色のロゴが入った白いボストンバッグは京子のものだった。
75巨人の星その後51:2009/06/14(日) 19:49:54 ID:nNVf7cwx
店のドアが、カランカランと鳴る。しかしドアは中からカギがかかっていて開かない。
よくは聴き取れないが、ブツブツいいながら店の前をあとにする客の姿が
ドアの擦りガラス越しに、ひとみにも見えた。
この様子では、男のいう「スタッフ」というのは、店の前で強面で張り込んでいるわけではなく
素人目には、わからないような何気なさで、店の周囲、入り口、勝手口を見張っているのであろう。

「いま。京子さんと連絡がつきますか?どうです?」
男は、タバコを消し京子のボストンバックを受け取りながら、思い出したように、ひとみに尋ねた。
「そ・・・それは・・・聞いておりませんの。・・・本当に。」
「では、長くかかるかも知れませんね。ふむ。昼食をいただきましょう!」
ひとみは、ボストンバッグのファスナーを開けて、中を物色し始めた男を凝視しながら黙った。

「どうしたんです?そんなに怖い顔をなさらなくとも。ちゃんと代金はお支払いいたしますので。
 正規の代金をお支払いいたしますよ。タダ食いなど、もっての他ですからな。
 あっ?これですか?このバッグのことで、そんなに怖い顔をなさっている?これはですね。
 言うなれば債権者の当然の権利です。わたくし共、債権者のね。」
76巨人の星その後52:2009/06/14(日) 19:51:45 ID:nNVf7cwx
「そこのアナタ、ん〜と、大谷さん。大谷さんっ!・・・・・でしたね?」
「はっ・・・・はいっ!」  バカ面の馬面を晒してポカンと口を開けたままの大谷に、男が尋ねた。
「あなたも昼食は、まだですね?」
「はいっ!あの・・・・まだですっ!はいっ!」
「では、わたくし共に、ごちそうさせてください。お相伴させていただけますね?大谷さん?」
「はいっ!あの・・あの・・ボクっ!トンカツ弁当で・・・・・」
超オマヌケな大谷の答えを最後まで聞かずに、男はひとみに向き直った。

「では・・・・トンカツ弁当・・・この人の分も含めて、みっつ、お願いしますよ。ママさん。」
男はチンピラのほうに一瞬だけ親指を指し、大谷の分も含めてトンカツ弁当を3つ、ひとみに注文した。
ひとみは、まだ大谷の分のトンカツ弁当に、ほとんど取り掛かっていなかったから、
3つ一緒に調理にかかることになった。手間としては楽だ。

「あっ。あとわたくしの珈琲おかわり、まだでしたな。それもお願いしますよ。珈琲中毒でしてね。」
自らを珈琲中毒と言ったこの男は、名前を黒崎と言った。
黒崎が喫茶モンテクリストを訪れていたのは、もちろん仕事である。
その仕事というのは、黒崎のボスに当る鬼怒川組組長、鬼怒川次郎による、
黒崎にとって、やや面倒な命令のためであった。
77巨人の星その後53:2009/06/14(日) 19:54:02 ID:nNVf7cwx
時計は正午を回っていた。どの職場も昼休みになり、
また日本全国の茶の間も昼時となった。
この時代、現在の「笑っていいとも」など問題にならぬほど
このお昼時の視聴率を独り占めしていた番組があった。
NET(現在のテレビ朝日)が1時間番組で帯放送していた、
『桂小金治アフタヌーン・ショー』である。

しかしこの日の『アフタヌーン・ショー』は、いつもと少し違っていた。
スタジオに一向に画面が切り替わらずに、中継映像ばかり流していたからである。

中継先は、兵庫県の神戸にほど近い高級住宅街が建ち並ぶ隣の芦屋市からであった。
「いやぁ〜、ホンマに知らんのですわ。堪忍しとくなはれな。」
自宅から出てきて、自家用車に乗らんとするわずかの隙を
報道陣によるインタビュー責めに遭っていたのは、
阪神タイガースの村山実監督 兼投手であった。
78巨人の星その後54:2009/06/14(日) 19:56:09 ID:nNVf7cwx
「知らんもんを、知ってるとは、よう言いませんがな。知らんさかい知らん言うてますのや。」
ドヤドヤと押しかける報道陣は、野球記者ばかりか、芸能記者も多く含まれていた。
同じことしか口にしようとしない村山に、どの記者もリポーターも
あれやこれやと質問をぶつけるが、村山の答えは一貫していた。
「知らんさかい知らん。そんだけですねん。僕も今朝はじめて聞きよりましてん。」

画面が切り替わった。スタジオではなく、またも中継先である。
阪神電鉄本社前に集まった報道陣は、社用車に乗らんとする
阪神電鉄社長にして阪神タイガースのオーナー、野田誠三にマイクを向けていた。
「それはね。もう終わった話ですよ、あなたがた。とっくに終わっています。
 今さら聞かれても特にお答えすることも、ありませんな。」
記者が突っ込んだ。
「契約が合意に至らなかったということですか?今後、話し合うということはないんですか?」
「話し合いも何も、もうその話は終わってるんですな。
 とにかく今、言えることは花形君は、来期、ウチとは契約しないということです。
 それだけです。失敬しますよ。」
それだけ言い残すと野田は、車に乗り込み、報道陣をシャットアウトした。
報道陣がマイクを向けながら車を追いかけたが、もちろん車がまってくれるわけはないし、
野田がその件について、それ以上コメントすることも望めなかった。
79巨人の星その後55:2009/06/14(日) 19:58:09 ID:nNVf7cwx
花形満の父、花形モータース社長と野田誠三の間には、
特に親交があったわけではないが、報道陣や一般社会に知れる前に
この超一流の財界人同士で話が完結していたことは、
おそらくは、この何日も前のことなのであったろう。

画面がスタジオに切り替わった。
「バーロー!ンナロー!ざけんじゃねえってんだ!コンニャロ!バカヤロ!ふざけやがって!」
桂小金治の毒舌が待ってましたとばかりに我が意を得たとばかりに
全国のお茶の間に流れてきた。本気で怒っているのかどうかは、分からない。
しかしこの日、桂小金治と対決するために呼ばれたゲストは用なしとなってしまった。
「だいたいな!ナメてやがんだよ!アンガキャぁ!親のスネかじって、野球なんかできねーっての!
 そもそもそんなに野球スキでもねえんだろってんだ!あのな!だいたいな!
 今の若い奴ってのは、いっつもこうなんだ!あんにゃろ!ばかやろ!クソバカ野郎!ってんだ!ヘン!」
80巨人の星その後56:2009/06/14(日) 20:02:34 ID:nNVf7cwx
スタジオ内は、さながら花形満の不在裁判の場と化した。
昭和45年シーズンを持ってプロ野球を引退することを、花形は特に会見はしなかった。
しかしタイガースとの交渉はモメにモメた。本人の意志が固まっている以上、
タイガースも慰留のしようがなかった。
まだまだ交渉続行(年棒についての)と思っていたマスコミは、
今朝どこからともなく洩れた花形の引退報道に、度肝を抜かれた。

「あのなー!コイツな!だいたいな!なめんじゃねーよ!コンニャロが!
 勝負の世界ってのはな!んな甘めーもんじゃねーんだ!ンニャロが!バカが!コンニャロー!」

もはやよく聴き取れない桂小金治の怒りの爆発だったが、世間ではもう少し冷静に受け止める声も聴かれた。
当然、野球評論家や野球記者もコメントを出していたが、
全国の茶の間の人は、この桂小金治の怒り爆発で溜飲を下げたというよりは、
これがもはや既成事実で、今さら翻らないことを、あまり怒ることもなく受け入れた。
「バッキャロ!テメエ!クソバカ野郎!親のスネでもかじってろってんだ!バカが!間抜けが!オタンコ茄子が!」
81巨人の星その後57:2009/06/14(日) 20:04:30 ID:nNVf7cwx
当の本人、花形満はこの日、
かつてのタイガースでの試合映像やかつてのペナント中の
コメント・シーンをオンエアされ放題になるがままで、
自分で会見をひらいたり、声明をだすことはなかった。
すべては、とうに決まっていたのだ。

花形のこの日の消息についても
テレビや新聞社内で、いろいろ取りざたされたが、
結局つかまることはなかった。
すでに花形満は、財界の人間としての
キャリアをスタートさせていたのだ。

花形コンツェルンの様々な場所に趣き、すでに挨拶も済ませてつつあった。
あとは、現場の花形モータース等、具体的部署への顔出しと
実際の幹部社員、将来の取締役としてのスタートを控えるばかりだった。
この日、満が回る部署は10数箇所あり、
その中に花形モータース流通部:東京事業所も入っていた。
82名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 20:13:36 ID:nNVf7cwx
>>70
ありがとうございます
ご意見、参考にさせていただきます

左門豊作の名場面というと、たくさんありますが
私が好きな場面は、新巨人の星の昭和51年オールスターで
飛雄馬が右肩で、まさかのライトからの大返球をみせて阪急の福本を差した場面

ダグアウトで左門が、人目はばかることなく、大粒の涙をボロボロ流すシーンですね
こちらも貰い泣きする場面でした (^_ゝ^)
83名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 20:34:10 ID:+KiL1NqW
『桂小金治アフタヌーン・ショー』とか、懐かし映像とかでしか見たことないが、
いいねえ、時代を感じますw
84巨人の星その後58:2009/06/15(月) 20:46:16 ID:IVj2wxX8
昼過ぎから東京を覆い出した雲は、いまだ立ち去らず
歩道橋の上に吹きすさぶ11月の風を
より一層冷たくして、左門豊作の運命の如く彼の顔に当てつけられていた。

歩道橋の欄干に両手をついて、空を見上げていた京子が、
長い沈黙を破って、顔を曇った空に向けたまま振り向かずに左門に問うた。
「で、・・・・・・左門さん。」
そこまで言うと京子は、反対側の欄干のきわまで体を反転させて移動し
今度はそこに両手をついて、張りのない声で、言葉を続けた。左門のほうを見ていない。
「アタシを探していたのは、どうしてなの?」

京子には、あまり関心のないことであった。ずっと黙っているのも何と無く耐えがたかったし、
飛雄馬がなおも消息不明であれば、何か他の話でもしたかったのだが、
京子と左門の間には、なんの話題もないように京子には思えたからだ。
85巨人の星その後59:2009/06/15(月) 20:48:08 ID:IVj2wxX8
(き・・・きた。あ・・・あと・・あと・・数分で、ワシの運命は決まるのか?
 じゃども、どう言うて伝えればいいんじゃ?こがん場合は。
 そ・・・そこまで考えとらんかったとばい。・・・いかんいかん。間が空き過ぎるのは。
 けんども・・・けんども・・・言葉が、出てこんたい!・・・ううっ)
「何か用があったんじゃなかったの?・・・・・それとも・・・アタシに何か伝えることが、あったのかしら?」

京子もおのれの落胆を左門に悟られたくなかった。人に弱みを見せるのは大嫌いだったし、
人前で涙を流すのも、絶対嫌な性分だった。
わざと言葉を冷たくして、今度はもう少し強く言い放った。
「なんだったのよっ!ちゃんと言いなさいよっ!帰るわよ、アタシっ!」

言ってから(なにもこんなにイジワルに言うこともなかったか?)と京子は少し後悔した。
しかし考えてみても左門の要件に検討がつかない。
まして左門がまさか鬼怒川次郎の回し者ということも、ありえない。
単に世間話でもしたかったのだろうか?しかし新聞の尋ね人欄にまで載せるとは何事だろう?
飛雄馬のことで頭がいっぱいだった京子は、今の今まで、
そのことを疑問にも感じていなかった自分のことを、なおさら赤の他人の左門に悟られたくはなかった。
86巨人の星その後60:2009/06/15(月) 20:50:43 ID:IVj2wxX8
京子は、改めて左門のほうを見た。
困り果てて、眉毛を八の字にしてやや下を向いてしまっている左門に
京子の今の状態では、かけてやる言葉も見つからなかった。
「帰るわねっ!アタシっ!   サヨナラッ!」

帰してはいけない。今、京子に帰られてしまっては、今度ということはない。
次はどうやって逢って貰えればいいのだ?
今、伝えるしかない。しかし言葉を用意してこなかった左門の口は、
この期に及んでも、重たいまま開くことが、できなかった。
(待ってくりんしゃいっ!)

心の中でだけ絶叫したが、音声にはならず、ついに京子は
左門に背を向けて歩き出そうとしていた。
追いかけて左門がとった行動は、自分でもわけが分からなかったが、
左門のドタドタとした足音に京子は立ち止まった。
けげんな顔で振り向いた京子の目の前に、やや皺のできた封筒が差し出された。
顔をしかめた京子に、左門は本意かどうかも自覚できないまま
やっと言葉を吐き出した。
「こ・・・・これ、星くんの遺書ですばい・・・・・・・。」
87巨人の星その後61:2009/06/15(月) 20:52:57 ID:IVj2wxX8
自動二輪の免許制度が、最初に改正されたのは昭和40年である。
それまで4輪の普通自動車免許にオマケでついてきた、
排気量限定なしの二輪免許は以後廃止され、自動二輪免許を持たない者が
50CC以上のオートバイを運転することは、
それ以前に4輪普通を持っていた者以外はできなくなった。

替わりに自動二輪免許も新たに制定された。
実地試験は、125CCのオートバイで実施されるようになったが、
この時代の自動二輪免許にも、排気量の限定はない。
そして当時、360CC未満であった軽自動4輪、軽自動3輪の運転も
この昭和40年以降の自動二輪免許には付随して許可されていた。

大型オートバイのブームは、昭和45年以降にやってくるが、
以降この免許による大型オートバイによる事故が相次いだため
昭和50年になると、自動二輪免許は、中型免許(俗称:中免=現在の普通二輪、実地は400CC)と
小型免許(実地は125CC)の2種類となり、400CC以上のオートバイの運転には、
免許試験場での『限定解除審査』をパスしたものだけに許されることとなってしまう。
この『限定解除』は教習所もなく、練習も公には認められていない一発試験であったため、
日本における大型オートバイの需要は頭を押さえつけられた格好となった。
88巨人の星その後62:2009/06/15(月) 20:55:18 ID:IVj2wxX8
京子が自動二輪免許を取ったのは、昭和42年。
母を亡くしてから、高校へも通学しなくなり素行の荒れ出す少し前の頃だった。

京子が、オートバイに興味を持ったのは、ある偶然からであった。
まだ竜巻グループなど存在しないころ、台東区のバイク・ショップの
ショールームのような場所に飾られていた一台のオートバイに魅せられたからだ。
そのオートバイは、直感的に、そして性的にも、理屈を超えて
ひと目で京子を虜にした。 理由はよくわからなかった。
もしその日、その店の前を通らなかったら、京子はバイクそのものに出会っていなかったかも知れない。

見た事もないセクシーな形状、アメリカ映画に出てくるバイクとは何かが違う。
ハーレー、トライアンフといった男性的なフォルムをしていたわけではない。
街では、スーパーカブかベンリィ(当時はベンリイと言った)ぐらいしか余り見かけない。
そもそも日本製のバイクでは、まだ250CCまでしか生産されておらず(それすら希少だった)
ナナハンという言葉も存在していない頃の話である。
89巨人の星その後63:2009/06/15(月) 20:58:47 ID:IVj2wxX8
その店の前で、とり憑かれたように、バイクを凝視する少女に
この店の者が、興味を持ったのも偶然ではあった。
女性がバイクに乗るなど、日本ではありえない時代、
しかもまだ暴走族というものすら出現していなかったのどかな時代に、
京子のそのバイクを見る目線は、どこか異常なものを感じたのもあった。

「随分、熱心だな?」
この店を兄と二人で運営していた鉄二は、やや不自由な右足を引きずりながら
京子に近づき声をかけた。  京子は気づかない。
何かに熱心になってしまうと、他の事が目に入らなくなるのは、幼少時から京子の一貫した性格ではあったが。
「これ、知ってるの?お嬢ちゃん。」
まだ気づかない。  そっとしておいてあげようと鉄二が、京子から放れようとすると
この少女は、どんでもない行動に出た。
キョロキョロと左右を見ると、店の横からショールームに駆け出して入り込み、
この羨望していたバイクに、いきなり跨ったのだ。
このとき、京子は女子高の制服を着ており、当然スカートを穿いていたにも関わらず。
90巨人の星その後64:2009/06/15(月) 21:01:38 ID:IVj2wxX8
操縦方法ももちろん知らない。第一、キーが付いていないし動くはずもなかったが、
少女はハンドルを握り、右足を跳ね上げ、バイクを跨ぎ
スカートの中(おそらくパンティ)の股間で、
シートに接するとその長い睫毛の美しい瞳は、メラメラと燃え始め
そしてやがて恍惚の表情に変わった。
まるで自慰でもしているかのようだ。

あっけにとられた鉄二は、しかしすぐに声を掛けられなかった。
大事な展示品にして売り物でもあったのだが、なぜかためらわれたのだ。
ものの1分ほど、その状態が続くと、京子は「ハッ」と我に帰り
バイクから飛ぶように降りた。  鉄二と目が合った。

「す・・・すいません・・・・。あの、ごめんなさい。アタシ・・・・。」
(へんな子だ・・・・。)
苦笑いする鉄二の顔から、うつむき加減に目をそらす京子だった。はしたないとは思ったようだ。
しかしその表情は、少女とはいえ女独特の切り替えの早さなのか
何か思うところがあったのか、たちまち天真爛漫な顔になり鉄二に、張りのある声で尋ねた。
「これ、なんていうバイクですかっ!?」
91巨人の星その後65:2009/06/15(月) 21:04:00 ID:IVj2wxX8
「MVアグスタ 750S」
「あ・・・あぐすたぁ?」

MVアグスタとは、イタリアの貴族、アグスタ伯爵家のジョバンニ・アグスタが
戦前に設立した会社が開発、販売したオートバイのブランド名である。

ジョバンニ・アグスタ社は、元々は戦闘機を造っていた会社だった。
敗戦でイタリアが武装解除されると、戦闘機はすべて廃棄され
航空機すべての製造、改造を禁止されたのは、日本も同じである。

エンジニアリングがまだ黎明期だった時代、連合軍の規制しない分野に限り
その技術革新が秀でていったのも敗者となった元の三国同盟の国々には共通した特徴である。
しかしその国の人の気質かどうかは定かではないが、
4輪でも2輪でも、真っ先にレースの分野で覇権を獲ったのは、敗戦国の中と限らずとも
戦後はイタリアがトップであった。
92巨人の星その後66:2009/06/15(月) 21:06:56 ID:IVj2wxX8
アルファロメオに始まり、ランチャ、マセラティ、そしてフェラーリが牽引した
戦後のモーターレーシング界。メルセデス・ベンツの1950年代の本格的復帰までの間、
4輪のレース界、とくにグランプリ・レース(F1)では、イタリア以外のチームが
優勝を争うことななかった。しかしそれぞれのチームの覇権が、永く続きまた独占されていたわけではない。
しかし2輪に目を転じてみれば、そのイタリア4輪の時代とはわずかにかするだけだが、
永く覇権は、ひとつのチームに独占される。  MVアグスタによってである。

ワールドGP選手権シリーズにおいて、1948年に初優勝、1952年に初タイトルを手にすると
1956年〜1974年の永きに渡り、500CCクラスでは、その年間タイトルを
逃したのは、わずか2シーズンだけに過ぎない。
レーシング・マシーン、、またロード・スポーツの分野で、まだまだ信頼性もなく
バイクは故障するのが当り前と思われていた時代に、この勝率は驚愕に値する。

しかし世界を転戦といっても、2輪のワールドGPが日本でそれほど認識されていたわけではない。
当然まだ円は弱く、正規代理店も存在しなかった時代に、MVアグスタを平行輸入する愛好者も
非常にマレで、いても相当な資産家しかありえず、また大型オートバイを
趣味とするそんな裕福層も日本にはいなかった。
京子でなくとも、このオートバイのことを知っている人間などほとんどいなかったであろう。
93巨人の星その後67:2009/06/15(月) 21:10:09 ID:IVj2wxX8
「バイク乗ってるの?」
「いえ・・・、アタシ、何にも知らないの。・・・ただちょっと・・ごめんなさい・・・・・・。」
鉄二はもちろん理解も想像もしていなかったが、京子がこのバイクの見た目、
そして跨ったときの感覚に、性的エクスタシーを感じてしまったことを、京子は
賢明に悟られまいとした。 まるで人前で自慰をしてしまったかのようだ。

それと気づかない鉄二は、つなぎの汚れた作業服の胸ポケットから、
やや凹んだエコーのソフトケースのたばこを取り出すと、1本咥え、マッチで火をつけた。
京子の父親ほどの年齢で、この痩せぎすな男は、店内に置かれていた事務机の引出しから
A4サイズの茶封筒を取り出しながら、タバコの煙にけむたそうに目を細めて言った。
「だって、びっくりしたからな。いきなりだもんよ。フッ。」
「いやぁ〜っ!言わないでっ!」

店の看板とも言えるバイクに、断りもせずに、しかもスカート姿で跨っておいて、
京子は勝手に、その羞恥心から鉄二に大きな声を出してしまった。
「でも、これにそんなに熱心な奴、案外いないんだよ。本当に。誰かこいつの話を
 オイラに聞きに来ないかなあ?って思っちまうぐらいさ。
 チラッとは、見ていくけどな。誰でも。その率は高いんだけど、そこまでなんだよ。本当に。」
「そっ・・・そうなんですかぁ!」
何か少女は嬉しそうだった。何が嬉しいのかは分からない。しかし鉄二には
見た目よりも、この少女の性格と変人っぷりに、どこかひきつけられるものを感じていた。
この男もまた、自分でそれを自覚していなかったが。
94巨人の星その後68:2009/06/15(月) 21:13:47 ID:IVj2wxX8
このバイク・ショップを兄の賢一と共同経営していた鉄二は、
戦争中の学徒動員で少年飛行兵だったころ、
山梨の陸軍航空隊の予科で練習中の機体墜落によって、右足を不自由にしていた。
兄の賢一は、妻も子供もあったが、鉄二はこのとき42歳だったが、独り身であった。
一家の冷や飯食いだったが、エンジニアリングには、天憮の才があり、
二部高校に通いながら、整備士の資格に役立つ職場で働き、そして資格を取った。
父と兄の経営する金物屋には、あまり興味はなかったが、
バタバタ(自転車にエンジンを後付けする簡易バイク、無数のメーカーが割拠し一世を風靡した)や、
工業機械、エンジンのあるものなら何でも明るい智識で行動範囲を広めると
父にこの上野7丁目に畳6帖ほどの店を手に入れる保証人になってもらい開業した。
『よろず部品取り扱い』という看板を出して。父が亡くなり、兄が継いだ商売がいきずまると、
その金物屋を売り払い、上野の店を拡張して、兄と一体の経営とした。
父の店のあった場所の名残から店名を『合羽商会』とした。
ときを同じくして、上野7丁目には、バイク屋が並び始めていた時代だった。

鉄二の智識と技術で顧客に不自由はしなかったが、鉄二が本当に扱いたい商品に
興味を持つ客は全くいなかった。ヨーロピアン・レーサーにはである。
95巨人の星その後69:2009/06/15(月) 21:16:36 ID:IVj2wxX8
茶封筒から、イタリア語で書かれたMVアグスタのカタログを出し
鉄二はこのバイクのことを熱く語った。
初対面とは思えないほど、鉄二は話し始めたが、京子もすべて理解できないながらも
興味を持って、また例によって自己流に解釈し、首を縦にふりカタログを覗き込みながら
素直に聞き始めた。 もうこのバイクを自分が買うと決めてしまっているかのように。
鉄二は、すぐに二輪免許をとるように京子に薦めた。
「でもアタシ・・・習い事できるような・・・状況じゃないの。」
「あのなぁ、なに言ってんだ!一発でとれ!一発で!ちきちき教習所なんか通うバカがいるかっ!」
「ええ? でも受からないわよ。アタシ。バイク乗ったことないし・・・・」
「あのなぁ〜、おまえ、目の前に誰がいるか分かってんのか?」 いきなり【おまえ扱い】である。
「へっ?」
「特訓だっ!特訓っ!これからオイラがみっちりしごいてやるからなっ!覚悟しやがれ!」

次の日、制服でなく、ジーンズを穿いてきた京子は、鉄二に不似合いなジェットヘルをかぶらされ、
店の前から昭和通を東に横断した。ホンダ・ベンリイ125を押しながらである。
「あのなあ。ここを左に曲がれ。そしたら突き当たりになるから、また左に曲がれ。そしたらこの通りにまた出るから
 そこをまた左に曲がれ。そしたらオイラが、ここにいる。わかったなっ!」
「わかったけど・・・・・ここ警察でしょ?見つかったらどうすんのぉ?」
京子と鉄二の目の前には、上野けいさつが、デーンと建っていた。
「あのなぁ!なんだぁ?怖いのか?じゃやめとくか?」
「行くわよっ!怖くなんかないわよっ!行けばいいんでしょっ!」
習っているという意識を全く忘れ、京子は強がり、そしてベンリイをスタートさせた。

「あのなぁっー!言い忘れたが、おまわりに見つかったら、降りて、手で押すんだぞっ!おーい!」
警察署の前での鉄二の無謀な叫びも聴こえず、京子の跨ったベンリイは、
トコトコトコと音をたて、小さくなっていく、そして突き当りを左に曲がると見えなくなった。
96名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 22:38:17 ID:ZTne/nsi
この左門と京子 エロパロとしてどうかというより
2チャンに投稿するレベル超えとる
あといろんな知識と時代考証のほかにカジワラ・ツールがそこかしこに入っとる
村田英雄の人生劇場とかホゲーとかw
でも途中で投げ出さずに完結させてほしい

バイクの説明は作品にバイク登場させるのに、うそっぽくならない効果をねらってると思うけど
きつく思う奴も多いかもしれない
97名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 22:55:16 ID:elosDor6
>>96
>2チャンに投稿するレベル超えとる

全くだw スレが立ってから、ほぼ毎日定期投稿するパワーと情熱には
ほとほと恐れ入る。この手の大作は、作者が飽きてしまうことが
最大の敵なのだが、それも心配なさそう。
新聞の連載小説を読む感覚で、気長におつきあいしたい。
98巨人の星その後70:2009/06/16(火) 20:59:41 ID:aAUJkr/i
「どこ行ったんだぁ〜?あのバカっ!」
時計は、13時を15分回っていた。
「もう来るぜ〜・・・。坊ちゃまが。いねーなら、いねーで結構なんだが、途中でヒョッコリ顔出しやがったらなぁ〜。
 あのバカっ!間が悪いことにかけちゃ天才だかんなぁ〜・・・。」
花形モータース流通部東京事業所の、江藤係長は、何度も溜息をつきながらボヤいていた。
花形コンツェルンの御曹司、花形満がプロ野球阪神タイガースを電撃退団して、
グループ各セクションへの顔出しという儀式は、この日の朝、東京本社から始まり
午後からこの東五反田にある、流通事業部の東京事業所への予定となっていた。
それぞれに仕事があるので、当然、一列に並んでの訓辞を拝聴などという事はないとの
ことであったが、挨拶ぐらいはあるだろう。
財界トップへのパーティーなどでの顔見せはまだとの事だったから、
内内にというスタンスと社員は全員解釈していたが、江藤が心配していたのは、
昼休みに入ると、すでにいつの間にかいなくなっていた平社員、大谷が
午後の就業時間が始まっても、まだ部署に戻ってきていないことであった。

「やれやれ。部下に恵まれてるぜ。俺は。」
携帯電話もない時代だ。顔を合わせないかぎり、本人と口裏合わせもできない。
「そんままウチに帰ってくんないかね〜。あいつ。今日はそのほうが俺が助かるよ。」
「でも坊ちゃまも遅いですよね。13時ってことだったでしょ?」 別の部下、高木が言った。
「バカ。お坊ちゃまだよ?昼飯食うのも、ゆっくりしてらっしゃるんだ。平のくせに
 ゆっくりしてやがる野郎にも困ったもんだがよ。」
その時、ドアの外で、何人ものツカツカとした靴音が近づいてきた。
「いらっしゃいましたぁーっ!」
99巨人の星その後71:2009/06/16(火) 21:02:52 ID:aAUJkr/i
通路ですれ違う全ての職員が、ペコリと会釈かお辞儀をする。
そのそれぞれに会釈だけは、きっちりと返していた男は、
この春に新宿警察に警察庁から出向してきた。
キャリアである彼には、同じコースをたどった先輩も多かったこの新宿警察だったが、
露骨に煙たい顔をする者たちもいた。
署内の男子トイレで用を足していた山本警部補は、その最中に横の小便器に並んだ
色黒の男の一瞥を受けた。
彼を煙たがる者たちとは、捜査四課の面々である。
キャリアが最も多く所轄の警察に出向させられるのは、捜査一課である。
凶悪犯罪、殺人、傷害、強盗、など言うまでもなく所轄の花形となる事件を担当する。
本庁桜田門との連係捜査ともなると、ノンキャリアは意見をいうことはできない。
所轄を横断する捜査では、ノンキャリア同士の壁もできる。
それを円滑にする役目もあったが、山本は特にノンキャリアを見下していた訳ではなかった。

それに対し捜査四課は、キャリアは少ない。組織犯罪専門の彼らは、本庁との合同本部を設置する事件でも
その桜田門組に臆することなく、自分たちだけの嗅覚と土地勘、繋がりによって
自分たちがいなければ、どうせ何もできないだろうと高をくくっている部分があった。
彼ら四課は通称マル暴と呼ばれた。
マル暴は、地元暴力組織との癒着を指摘されることも多かったが、必要悪とされている部分もあった。
山本の横で用をたしはじめた衣笠は、マル暴20年目、しかし階級は山本のひとつ上の警部だった。
100巨人の星その後72:2009/06/16(火) 21:04:54 ID:aAUJkr/i
その職歴のスタートが警部補であるキャリアに比べて、
勤続20年目で警部というのは、ノンキャリア組では順調な出世である。
しかしそれが、すでに限界であり、今、衣笠の横にいる男は
30歳までには警視になってしまうのだ。

先に用を終えた山本は小便器を放れて、手を洗い出した。
「高等文官どの。」
衣笠はわざと戦前のキャリア制度の呼称で、白々しく山本を呼び止めた。
「お暇で結構ですな。」
ノンキャリアがこのようにキャリアに絡みつくことは、まずない。
それほど身分の差がはっきりしているのだ。
ハンカチで手を拭きながらも山本は返事をしなかった。
身分がどうのこうのではない、言いたいことがあれば言えばいいのだと思っていたが、
これ見よがしにいつもすれ違い様に、睨みつけたり、舌打ちをしている衣笠を内心、可哀想な奴だと
思っていたのだ。能率にならないこと、プラスにならないことは、しなければいい。
したくても我慢すればいいだけだ。その当り前のコントロールをしようとせずに
この新宿警察の建物を自分の聖域と思い込んでいるのは愚かに見えたし、
いい大人が他人の態度に依存しきった幼稚な態度に見えたのだ。
101巨人の星その後73:2009/06/16(火) 21:07:42 ID:aAUJkr/i
暴力団相手の捜査には、警視庁独特の難しさが存在した。
組の行動範囲(いわゆるシマ)と、組事務所で所轄の警察が異なり
合同捜査や捜査協力を依頼しなければならない場合が多く、
捜査一課と違い、捜査四課はこのような連係捜査には向いていないことが多かったからだ。

新宿歌舞伎町1丁目2丁目をシマと主張する鬼怒川組の組事務所は、
同じ新宿区でも若松町にあった。 牛込警察管内である。

しかしそれとて同じ第4方面ではないか?やろうと思えばいくらでも手がある。
東京オリンピック前から始まった暴力組織の徹底的な解体を狙った、
警察庁の頂上作戦は、好を奏し、日本の顔、東京から表向きの組事務所を退散させることに成功していた。
そんな中、牛込管内とはいえ、新宿を縄張りにする暴力団が、
いまだ目と鼻の先の若松町に堂々と事務所を構えているのを、山本は所轄四課の怠慢としか思えなかった。

事件が頻繁に発生しないとき、一課が暇になることはある。人数も多いからだ。
四課は、事件の発生率が少ない場合でも、仕事を抱えることになる。
その分かりきった現実を、言外に言わんとする大人気ない衣笠の態度に、
頂上作戦以前からのマル暴の悪い習慣の典型を見る山本だった。
(ゴキブリどもめが。)
その山本の思いは、新宿に寄生する暴力団とその担当である捜査四課にも向けられていた。
102巨人の星その後74:2009/06/16(火) 21:09:15 ID:aAUJkr/i
「遺書?」
左門は、速達の赤い帯の入った封筒を京子に差し出したまま黙っている。
「遺書って・・・・・・ほ・・・星さんの?」
まさか・・まさか・・飛雄馬が?この世の者では、すでにないというのか?

京子の立っている歩道橋は、下をトレーラーやダンプカーが通ると縦に揺れることが
さっきから何度かあった。
それが、台風の中に曝されている吊り橋のように、揺れ出したように京子は感じた。
そして歩道橋が、粉々になって砂のように崩れていく感覚に襲われた。

もはや飛雄馬は自分にとって、自分の肉体の半分以上を形成しているのではないかと
思われるほど大きな存在になっていた。それが既にいないとは、どう言うことか?
気を失ったわけではなかったが、その場に気色を失い倒れかかった京子を
左門がどうにか支え、そして受け止めた。
(よか匂いたい・・・・わしちゅう男は、いかん!こがんときに・・・・)
芳香を吸い込みながらも左門は、京子の顔面が蒼白になっているのを見た。
(美しか・・・・・・まっこと・・・・・じゃどん、こらいかんばいっ!ワシの言い方がマズかったばい。)
「ち・・・違うたい。京子さん!い・・・遺書は遺書でも、そがん意味ではなかっ!ワシ、言い間違えたばい!京子さん!」
103巨人の星その後75:2009/06/16(火) 21:20:28 ID:aAUJkr/i
「全然、大丈夫よ。どってことないわっ!」
鉄二のもとへホンダ・ベンリイ250を一周させて戻ってきた、
ジェットヘルをかぶってコミカルになっている京子の顔は、
それでも余裕とばかりに、ペロリと舌を出した。
「あのなあ、調子に乗ってんじゃねーぞ。よーし、じゃあ今度はあの向こうまでだ。」

鉄二は稲荷町の信号を指差した。
「あのなぁ、あそこを左に曲がったら、最初の信号をまた左に曲がるんだ。そしてまた戻ってくる、いいな。」
「はいっ、先生!」
おどけたように返事をすると、京子が跨ったベンリイは浅草通りを東に走り去った。

次の周回では、寿4丁目から西浅草3丁目そして入谷というルートを周回した。
京子は心の安らぎを覚えていた。エクスタシーを感じるようなバイクではなかったが、
何とも言えない安堵感を与えてくれるエンジン音と移ってゆく景色、そして風。

そして一番、京子の心を楽しくさせていたのは、鉄二の存在だった。
父親に近い年齢だったが、父とは全く違う、飾り気のないオッサンは、
京子が父から得られなかった物を、与えてくれているのだった。
ガミガミうるさい口ぶり、バイクとエンジンのこととなると子供のように喋りまくる顔。
そこには職人が持つビジネスマンではない逞しさがあった。
純粋さがあった。なにより京子を変人扱いしつつも、けげんな顔もせずに
受け止めてくれていることを、京子は自覚せずとも幸福な気持ちになった。

一週間後、京子は自動二輪の免許を取得していた。
104名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 22:56:33 ID:HFyVjJh2
>>96
ありがとうございます
コミックと違い文字だけですので、風景や乗り物そして人物ディティールを
ちゃんと描かないと読んでる人が絵を想像しにくいのでは?と考えます
漫画家は絵でそのあたりを補完するテクニックを発揮できますが、
文章だけというのは顔や息遣いまで伝わらないし読者に届きませんよね
梶原一騎先生もその辺は苦心されたと思いますが、
よい描き手にも恵まれたのだと思います
バイクのネタは・・・・wwちょっと勢いづいて書いてしまいましたね
>>97
ありがとうございます
でも飽きられない努力は、結果として飽きられたりもするんですよねw
見捨てないでどうかお付き合いください
登場人物が出揃ったところで、改めて登場人物紹介もしておいたほうが良いと考えております
105名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 04:59:00 ID:37vcyFtZ
いままでかかってここまで読んだ
もう朝じゃねーかよ ('A`)
どうしれくれるんだ?>>104
発射できる場面まで読んでそこで発射したらすぐ寝ようとおもってたのによ
でてきたのは、お京の入浴シーンとプチオナニーだけじゃねーか(´-ω-`)
おれの一晩をかえせ
といいつつ続きを待ってるぜw
106名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 11:42:42 ID:7aGNA5WH
>>104
たのむ
教えてくれ
あと何話(チャプター100とか200とか)で終わるんだ?
そしてエロにシフトするのかしないのか どっちでもいいんだ
答えられる範囲で教えてくれ
会社でこっそり読んでるがもう我慢の限界だ!

あと原稿を売るつもりはないか?どうだ
107名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 21:36:25 ID:30IciCdi
2chで、フラッシュバック形式の連載小説は画期的である
読者不在とか意に介さずすすめるべし
108名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 22:41:44 ID:V9rzTis9
>>106
自宅にパソコンがなくて、会社でだけROMってるのかな?
個人的予想だが、200は軽く超えそうな気がするから、
あきらめてパソコン買ったほうがいいと思うw
109名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 22:57:01 ID:zGEi0w0u
>>105
すいませんねw
でもハードコアなエロエロより、チラリズムのほうがよくないですかね?
どちらかというと私は成人向けでも超ハードよりも
ちょっと中学生の頃のようにそういうものが見れずに
>>106
すいませんw未定です あまりガチガチに決めて書くと
書くのが面倒になるので、ボンヤリとだけ決めて書きすすめてます
>>107
ありがとうございます フラッシュバックは根が怠け者なんで、
ころころ場面転換しないと自分が飽きてしまうからですw
柴田連三郎大先生の影響で、あういう50年ぐらいの期間を行き来するスタイルも好きなんですがw
最近では宮部みゆきの「蒲生邸事件」がこの形式で面白かったです
ちょっとしたことにワクワクした記憶のほうが残っているので・・
>>108
「実用」できるシーンは、そんなに多くない予定ですので会社で読んでいただいても
もちろんOKでございますw
110巨人の星その後76:2009/06/17(水) 23:01:59 ID:zGEi0w0u
鉄二は、独身であったが別に女性がニガテだったわけではない。
男であるし、チョイと足を伸ばせば、浅草でも面白い店はたくさんあったし、
吉原や東京のほかの土地まで風俗遊びに出掛けることもある。
もちろん川崎まで足を伸ばしたことだってあった。

店を辛うじて持ったころ(まだ畳6帖ほどの店の頃)、鉄二には結婚をするつもりの女性がいた。
それが、そうならなかった理由は、現在も鉄二が独身であることと同じ理由だった。

婚約までいっていなかったが、こそこそ付き合うつもりなど全くなかった鉄二は、
相手の女性が両親に会ってくれと頼んできた時、当然の義務だと思った。
しかしその会合は最悪の結果となった。
女性の父親が、鉄二のことをとんでもない言葉で、なじったのだ。

その鉄二がまだ若かった頃も、そしてこの物語の舞台となっている時代も
東京中には、現在まったく見ることのできない人々がいた。
上野公園や増上寺、東京駅丸の内口から皇居周辺までもいたその人々の
姿は、今日全く見ることができない。
そんな人たちがいたことすら、もう覚えていない人がほとんどだし
若い人は当然知らないし、地方にずっといた人間もその存在を知らないという。
傷痍軍人のことである。
111巨人の星その後77:2009/06/17(水) 23:03:32 ID:zGEi0w0u
戦後直後の東京や大阪には、傷痍軍人が溢れていた。
戦地でフグとなった人々のことを正しくは、そういうのだが、
女性の父親が鉄二に対して放った言葉には別の意味があった。

戦後の復興が確実なものとなった昭和30年代も昭和40年代前半も
まだ東京の人の集まる地帯には、その姿を見ることができた。
国民服を身に付け、国民帽か軍帽をかぶり、募金箱のようなものを
座って前に置くか、首からヒモでさげていた。
そして軍歌を歌ったり戦記を語りながら、通行人にいくばくかの献金を願っていた、
傷痍軍人の多くは、実は自称:傷痍軍人だったと言われている。

街中で献金がなかなか叶わなくなると、田舎から東京へ観光や用事ででてきた、
いわゆる「御登りさん」を目当てにするために、
上野や皇居前、靖国神社前、成田の新勝寺や、川崎大師に出没するようになった。
渥美清主演の映画にもあるように(その映画は鉄二は見なかったが)
物悲しさと、寂しさ、実際に手足をもがれ、それを生業の足しにしていた人もいたのだろう。
しかし戦争の記憶が遠のくにつれ、人々の目は冷たくなり、また忌み嫌われた。
112巨人の星その後78:2009/06/17(水) 23:05:14 ID:zGEi0w0u
鉄二とて御国のためとはっきり自覚していたかどうかは、
自問しても答えが見出せない。
しかし自分はもうすぐ死ぬのだということは、分かっていた。
万に1つも生きて帰れない航空隊にいたからである。
機械、そして飛行機に触れ、操縦することができたのは、天の恵み、
来世があればまた飛びたいと思っていた。
しかし負傷で出撃はできなかった。
自分が傷痍軍人と言われれば、そうなのだろう。
しかしそんな蔑みを受ける生き残ったわが身が、散っていった戦友に申し訳がなかった。

たしかに東京市井に出没するニセ傷痍軍人と同じに見られた悲しさもあったが、
そんな価値観を持つ人間を父にもつ女性であれば、本人をも苦しませることになる。
「うちの娘は、おまえみたいな傷痍軍人にだけは、やらん!」

誰も好き好んで負傷したわけではない、勝手に行くぞといって戦争に行った人間などいないのだ。
鉄二はまだ歩けるだけましだと思うことにした。
せっかく生き残った命だ。自分の天分にだけ生きてやる。何をするために自分は生きているのか?
おまえは誰だと聞かれれば、胸を張って機械屋と言えるだけの生き方をすることで、
寂しさ、悲しさ、物悲しさを吹っ切ってきた。気づけばもう40歳を越えていた。
113巨人の星その後79:2009/06/17(水) 23:07:15 ID:zGEi0w0u
鉄二は、ホンダ・ベンリイ125を、借りて乗り回している京子に、
1台のレストア・マシンを与えた。
鉄二は元々このマシンを部品取り用のスペアとして、安価で譲り受けていた。
とても走るようには直りそうにないと、最初みたとき思ったし、相手もそう思うほど
醜くぶっ壊れていた。 しかしパーツを確認してバラしてみると案外と程度が良いことがわかった。

京子は、浅草のすき焼き屋で、仲居として働き始めた。
明晰な頭脳をもっと使い道があるのでは、と鉄二は思ったが、
早く自活したいことと、人に笑顔を見せて働くことと、
そして京子は何より人が、うまそうに、すき焼きを食っているところを見るのがスキだと言った。
その心の屈託になさに、鉄二は眩しい思いをした。
ただでは京子のことだ。受け取らないに違いないと思い、
鉄二は、京子のために月賦台帳をつくってやった。
毎月の稼ぎから、これこれ、これだけ入金しろと言うと京子は鉄二に飛びついて喜んだ。
MVアグスタ750Sには、まだ早すぎると言って、京子に提案したマシンも
まさしく京子のエクスタシーをくすぐるヨーロピアン・レーシングだったからである。

昭和42年の秋から、京子は、ドゥカティ:ダイアナ・250マークVを愛車とした。
114巨人の星その後80:2009/06/17(水) 23:09:24 ID:zGEi0w0u
まだ東京近郊とは言え、道路事情は悪かった。
しかし京子は鉄二と休みがあうと、ふたりでツーリングに出かけた。
鉄二のドゥカティ・ダイアナ・マッハ1と日光や箱根に繰り出した。
この二人はかなり目立ったが、のちの時代とは違い、
自動車やオートバイ道楽している人間は、まだ少なかったし、
いてもそれは富裕層に限られていた。チンピラ暴走族はまだ出現していなかった。

鉄二はもっと大きな排気量のバイクに当然興味があったが、
自身の右足のポテンシャルを考え、250ccを乗り回した。
大型バイクを日本のメーカーは、作っていなかったし、ハーレーはタイプではなかった。
トライアンフは遠乗りには信頼性に問題がありすぎたし、ノートンは当時プリンス・グロリアより高価だった。
どちらもレストア・マシンだったが、ムチャをするために走っているわけではなかったし、
途中で京子とマシンを交換したりもした。
箱根の国道1号線を折り返し走ったとき、鉄二は、京子にバイク・レーザーとしての
才能があるのでは?と思い始めていた。そしてそれは当たっていた。
115名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 02:13:25 ID:NaqhrtlN
>>26 - >>30
愛しのブッチ様はどこいったのかな?
あそこで終わりはないだろう

>>109
伴宙太と鷹ノ羽圭子は、星の蔭の尽力で成就とはならないのかなあ〜?
あの伴の馬鹿っぽいでれでれの惚れっぷりはカジセンセも仲々人間味豊かに
執筆されていたので荒れで終わりとは残念

バイクを乗り回すツンデレ系美女というと、峰不二子がまず有名だけど
カジセンセ作品にも侍ジャイアンツの三波理化(アニメ版)と
タイガーマスク二世の有吉みどり(これもアニメ版)という美女がでてくる
しかしどちらも原作コミックではバイク乗ってないんだなw
あまり重要キャラにも描かれてないし、ツンデレ感もアニメほど出てない
とくに有吉みどりはあまり知られてないけど黒のライダースーツにハーレーというかっこよさだった
>>107
NHK大河ドラマが長い物語なのに見やすさを追求してか、視聴者アホ扱いしてんか
わからんが、絶対フラッシュバック式展開しねーんだよな 右から左へ冗長に展開するだけ
見てるともう退屈で題材に興味あっても途中でギブアップ
来年は竜馬やるそうだが、題材で引っ張っといて新撰組や武蔵みたくグダグダになりそうだ
116女悪役ブルース:2009/06/18(木) 15:30:30 ID:C9X+2lWj
氷点下ゼロの悪役女王クイーンゼロ
名古屋を拠点とする、名女プロレスに突如参戦したマスクウーマン。
素人に毛が生えた程度のインディーズ団体のレスラーのレベルでは
彼女のラフ殺法の相手にならず、日ならずしてメジャー団体の東女プロレス
に移籍した。しかし、ここでも反則を織り交ぜたラフファイトと、持ち前の
タフネスで、若手中堅レスラーに怪我人が続出。団体幹部も頭を痛めるが、
反則負け以外負けなしという戦績のため、ファンからは、早くトップクラス
のレスラーとの対戦を望む声が上がって来ていた。
117女悪役ブルース:2009/06/18(木) 15:40:02 ID:C9X+2lWj
メジャー団体といっても、女子プロレス団体の経営は厳しい。
トップレスラーに傷をつけるわけにもいかない。しかし、
クイーンゼロの悪役人気は、今までにない盛り上がりを見せて
いた。ネットの正体暴きでも、彼女の正体前歴はまったく手掛かり
さえ無く、そのミステリアスなキャラと、縦横無尽の暴れっぷりが
一部のファンの人気と、大多数の東女ファンの憎悪お買っていた。
118女悪役ブルース:2009/06/18(木) 15:50:26 ID:C9X+2lWj
そういう状況で、団体幹部会で出た対策のひとつが、素人女性
と、手錠で両手を使えないゼロとの戦い、というかアトラクション。
ゼロの背中をマットにつけたら100万円という企画は、意外なほど
マスコミの注目を集め、武道館は大入りとなった。
急遽地上波のテレビの収録も入り、力自慢の女芸人や、格闘技経験の
ある女達が続々と集ってきた。
119女悪役ブルース:2009/06/18(木) 16:02:08 ID:C9X+2lWj
後ろ手に手錠をされたゼロだが、多少の格闘技経験や力自慢では
彼女に通用するわけもなく、ゼロの軽いいなしで吹っ飛んだり、
頭突きで気を失ったりと、あまりにも予定調和的なゼロの強さに
観客も飽き飽きしだした頃、トップロープを軽々と飛び越え
颯爽とリングインする空手着の少女が現れた。
女道館空手選手権で最年少優勝を果たし、来年の世界選手権での
優勝候補の最右翼との呼び声高い吹雪純だった。
120女悪役ブルース:2009/06/18(木) 16:16:40 ID:C9X+2lWj
「世界選手権の遠征費用や、強化合宿にはお金がかかるのよ。
申し訳ないけど、勝たせてもらうわね」
そういって挑発する純に、ゼロは
「お子ちゃまのお遊戯がどの程度通用するかかかってきな!」
キッとゼロを睨みつけると、いきなり飛び蹴りを浴びせるが
軽くかわされてしまう。
「そんな大技が当たるとでも思ってるのかい!なめるんじゃないよ!」
ゼロの機敏な動きと、余裕のしゃべりに動揺した純は、接近して
正拳を叩き込む。しかしゼロの鋼のような腹筋には全く効かない。
「お嬢ちゃん、悪いけどあんたにそんなに付き合ってられないんだよ、
そろそろお寝んねしな!!」
と、がら空きの純のがら空きの腹に膝が入った。
121女悪役ブルース:2009/06/18(木) 16:26:20 ID:C9X+2lWj
くず折れる純の体を、膝で受け止め
「一応あんたにはプロレスの技で決着をつけてやるよ」
膝に乗せた純を、そのまま宙に浮かせ、頭から落ちてきた
ところを、両足で挟みパイルドライバー。
ゼロの必殺技ダブルパイルドライバーが決まった瞬間、
失神KOした純の姿を見て、後に残っていた、挑戦者たちも
恐れをなして逃げ出してしっまた。
結局ゼロの強さだけを証明しただけの形で、このイベントは
時間をかなり残して終了した。
122女悪役ブルース:2009/06/18(木) 16:46:17 ID:C9X+2lWj
団体としては、100万円はゼロに持ってかれ、怪我でもして
くれれば、多少の時間稼ぎになるとふんでたのが、
それほどの時間稼ぎにもならなっかたこのイベントも、
空手界のニュースター吹雪純を獲得することに成功した。
獲得というよりも、なんとしてもゼロを倒したいという、
純の志願による入門だった。
「あんたも馬鹿な娘だねぇ、空手を続けてれば、スター扱いされ
るのに、わざわざこんなとこにくるなんて」
これも純の希望だった、ゼロの付き人となり、控え室で2人で
いるときにそう言われ、屈辱にまみれながらも
「ふん!いつかあんたを倒すための準備よ!これぐらいいくらでも
我慢できるわ、でも私があんたを倒すまで他の奴らに負けんなよ!」
「あたしをなめるんじゃないよ!本気であたしを倒したっかたら
よーく見てな、見ることがはじまりだからね」
123女悪役ブルース:2009/06/18(木) 16:58:19 ID:C9X+2lWj
付き人としての日々が始ってから、純にとって不可解なことが
いくつかあった。当然付き人として、純はゼロと行動を共にするが
一度として、純の前ではマスクを脱いだことはなく、今だ純は
ゼロの素顔を見たことがなかった。他の新人レスラーに聞いても
ゼロの素顔を見たものは無く、素顔を知ってるのは幹部の一部らしい
ということだった。
覆面レスラーというのは、あくまでギミックで、実生活まで、
謎のままで通すというのは考えられないし、団体関係者にまで
正体を隠し通すのは、現実的に難しいはずだが、ゼロは確かに
それを実践していた。
124女悪役ブルース:2009/06/18(木) 17:16:22 ID:C9X+2lWj
そんな純の付き人としての日々が過ぎるなか、ゼロの活躍は更に
続き、ついに団体トップの1人、マスクドシャドウとの一騎打ちが
組まれた。カードが発表されて間もなく、幹部に呼ばれたゼロは
純を伴って、幹部室にやってきた。数名の幹部が座る、前に行き、
直立する2人に幹部が話し出す
「シャドウとの一戦だが、ゼロ!お前には負けブックでやってもらう」
「やっぱりね、そんなとこだと思ってたよ、はいはい分りましたよ」
純には最初意味がわからなかった
(負けブック・・・?)(なにそれ・・八百長?)(って!なんで引き受けて
んのよ?)
何か言おうとするがうまく言葉が出ない、絞り出して喋ろうとした時
「さっ、帰るよ」そういってゼロに手を引っ張られてしまった。
部屋を出ようとする二人に幹部の1人が
「ゼロ、間違ってもブック破りなんか考えるなよ、そうなったら
この業界から永久追放だからな!」
「あたしだってそんな馬鹿じゃないよ。安心して見てな」
125女悪役ブルース:2009/06/18(木) 17:25:21 ID:C9X+2lWj
2人っきりになってから、純は執拗にゼロに問い質したが、
ゼロはのらりくらりと相手にしない。
「あたしと闘うまで負けるなって言ったじゃない!!どういうつもりよ」
激昂する純をなだめるようにゼロは
「プロレスなんて何があるかわかんないんだよ、おとなしくあたしの
闘いをみてな」
そう言って純を黙らすと、ゼロは出て行った。
126女悪役ブルース:2009/06/18(木) 17:38:22 ID:C9X+2lWj
シリーズの最終戦、メインイベントで行われた
クイーンゼロ対マスクドシャドウの一戦は、過熱した
会場の雰囲気の中始まった。
純はリング下で見守っている。きっとゼロは負けない。
そんな気がしていた。
開始のゴングとともに、両者技の応酬だが、これもブック通りの
流れだった。この後シャドウが寝技を掛け、そのまま両者リング下に
落ち場外乱闘をやったら、再びリングインし、シャドウの必殺技
シャドウスープレックスからの体固めでフォールとなるはずだった。
だが腕ひしぎを掛けられたゼロはリング下になかなか落ちなかった。
業を煮やしたシャドウは、間が持てなくなったのか、寝技を解き
キャメルクラッチの体勢にスイッチすると、ゼロのマスクに手を
掛けてきた。
127女悪役ブルース:2009/06/18(木) 17:56:07 ID:C9X+2lWj
キャメルクラッチからのマスク剥ぎはもっともオーソドックスな
方法であり、シャドウも本気で剥がすつもりは無い、
間を持たせる為に、やってみただけだった。しかしゼロのマスクの
あごの部分をつかみ、引っ張り上げると一気に会場のボルテージが
あがるのがシャドウにもわかった。ゼロはイヤイヤをするように顔を左右に
振り、シャドウの手を振りほどいたが、重量級のシャドウはまだ背中の上
観客の熱気に舞い上がったのか、シャドウはゼロのマスクに再び手を
伸ばし、今度は目の部分に手を入れて引き裂きにかかった。
「うっ・・くっ・・いいかげんにしやがれ」ゼロの声も無視して
シャドウは目の部分からマスクを大きく引き裂いた。
眉毛からおでこのあたりまでが大きく露出した。そのときリング下で
純は信じられないゼロの悲鳴を聞いた
「あぁ・・いやぁ・・や、やめて・・」まさしくせつなげな女の哀願だった
しかしそれもつかの間、マスク剥ぎに集中して体を浮かせたシャドウの
体のしたを、ゼロはスルリと抜けた。
そして、シャドウに飛び掛るやいなや、シャドウのマスクを剥がしに
かかり、レフェリーの制止も間に合わず、シャドウのマスクはスッポリ
脱がされてしまった。
128女悪役ブルース:2009/06/18(木) 18:01:04 ID:C9X+2lWj
梶原一騎最後の少年漫画連載作品「悪役ブルース」は評価は低いけど、
マガジン掲載ということで、読んでた人は多いと思います。
この後、原作と同じく地下プロレスに行きます。
そこでは人間兇器バージョンでお楽しみいただきます。
129愛しのブッチ様D:2009/06/18(木) 20:05:02 ID:FOWgA2qJ
ブッチはベッドに自分の片方の臀部と膝を乗っけると
その上にキューティーを腹ばいにして乗せた。
幼児が母親に尻を叩かれるようなポーズである。
キューティーはリングシューズを履いたままの両足を必死にバタつかせる。
「やめろーっ!この変態がー!変態!変態!変態!変態!変タァーイ!」
「ウシシ。そう誉められちゃうとこのブッチ様、ますます燃えてきちゃうな〜。
 でもねぇ〜。このお浣腸のお仕置きされたあとも、果たしてそう勇ましくタンカが切れるかなァ〜?」
ブッチは器用にも片方の手でキューティーの背中を押さえつけ
もう片方の手でキューティーの豊満なヒップにあるその割れ目をグイッと広げた。
「グフフフ・・・おや、まぁ〜、可愛らしくすぼまっておるワイ。赤ん坊のようなキレイなおチョボ口よのォ。」
「いやぁ〜っ!!そんなっいやぁ〜っ!そんなとこ見ちゃいやぁ〜っ!」
露わにされたキューティーの菊門は、桜色に染まり、ありえないはずの恐怖に、小刻みに収縮していた。
「ウクク。ヒクヒクさせちゃって、まぁ〜。かわゆい菊の蕾ちゃんだことよォ。しっかしこの中の状態が
 どうなっておるかは、後のお楽しみじゃて。菊は見かけに寄らんのでなァ。」
「このド変態の黒ブタ野郎っ!おまえみたいな変態は、かならずブッ殺してやるぅっ!」
「オーオー!勇ましいことよ。おケツの穴の皺の数まで勘定されながらも、よくぞ言ったもんだが・・・・、
 チョイとオードブルとして音楽でも奏でてあげますかなぁ〜?」
パシーンッ!!ブッチの大きな掌が、キューティーの桃尻に打ちすえられた。
「キューティーちゃん、生意気が過ぎるので、オチオキでごじゃいまちゅよ〜。」
130愛しのブッチ様E:2009/06/18(木) 20:07:25 ID:FOWgA2qJ
ハクション大魔王のような語り口になったブッチの掌は、さらに
キューティーの尻を打ち据えた。
「ぎゃあっ!」
パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!
「ヒィッ!!ああーっ!うぎゃぁっ!」
たかが掌による尻叩きと言えど、相手は超大物プロレスラーである。
その掌の分厚さ、手首の返しの強さは、もちろん半端ではないし、痛みも強烈である。
「こりゃこりゃ。もういっぺん言うてみい。誰をぶっ殺すって?ああ〜ん?そおりゃそおりゃ!」
パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!パシーンッ!!
「あぎゃぁ〜っ!ヒイィ〜ッ!アウ〜っ!ああ〜っ!」
「グフフフ・・・お仕置き痛いかね?イッチョ前に生意気言うから・・・ン?ンン?」
ブッチはキューティーを乗せている自分の片方の足のズボンに生温かい感触が伝わるのを不審に思った。
「ありゃっ!!!ありゃりゃっ!お漏らししくさった!このアマ!ありゃまぁ〜!このブッチ様のズボンがビシャビシャじゃワイっ!」
痛烈な尻を打たれる感覚は、キューティーの尿道を弛緩させてしまっていた。
なんと現役女子プロレスラーが人前でベッドの上で失禁してしまったのである。
「いけない子あるな〜。キューティーちゃんは!はしたないにも程があるでしょがっ!」
尿の噴射はまだ続いていた。ブッチの黒いズボンはびしょ濡れになるも
生地が黒いから見た目は水に濡れているのと変わらなかったが、
ベッドの上には、たちまちレモン色の世界地図が広がっていった。
「おやおや。世界を股にかけるこのブッチ様も、レモン色の世界地図とは、初めて見るあるよ。ガッハッハッハ!」
131愛しのブッチ様F:2009/06/18(木) 20:09:43 ID:FOWgA2qJ
口では揶揄しながらも、ブッチはキューティーの尿失禁を不快には思っていなかった。
うれしいボーナス、ボーナス檸檬水である。
「ウケケケ。ずいぶんとまぁオシッコ溜まってたんでチュね〜。こんなに派手にやっちゃって。」
自分の腿に接してしるキューティーの下半身を流れ伝う檸檬水を掌になでつけると
ブッチはその掌をそのまま自分の顔に近づけた。
クンクンと匂いを嗅ぐ。そしてペロリと舐めた。ジュル〜
「オーホッホッホ!甘露!甘露!こりゃまた美味!オシッコまで美味しいなんてさすがキューティーちゃん!」
尻をしたたかブたれた、とは言え人前で、それもベッドの上で尿失禁してしまい
しかもその尿を賞味され感想まで述べられる屈辱に
キューティーはもう尻をつきだしたまま震えつつも、悔し涙を流した。
「チョイとお仕置き、キツすぎたかな?なんせこのブッチ様、実力世界一との異名を取るがゆえ、
 手加減したつもりが、オシッコ漏らされちゃうとはねっ!ウククク。どぉ〜れ。おや?おや?」
屈辱に震えるキューティーの桃尻は、ブッチのお仕置きによって
真っ赤に変色していた。まさに熟れきった桃の如く、周辺部分は抜けるように白いのに
尻肉のふたつの真ん中部分は、濃桃色に染まっていた。
「まさに桃じゃて、ピーチじゃて。ナーニを隠そうこのブッチ様、実は不二家ピーチネクター大好きじゃかんね〜。
 でぇ〜は、そのピーチネクターならぬ、この生意気な桃の中身を調べるとするかのォ〜。」
さきほどキューティーの尿を掬い取った掌でブッチは、ベッドに無造作に置いたままにしてあった
イチジク浣腸の小箱をつかむと、器用に親指で箱を開封し中から2個のイチジク浣腸をとりだした。
「グッフッフッッフ・・・・。悪魔の嘴の登場ォ〜!」
ここでブッチはセロハン袋を歯で噛みやぶり出てきた2個のイチジク浣腸を1個ずつ両手にとり、
リング上で見せる空手殺法の型のポーズをとった。
シュッ!シュッ!シュッシュッシュッ!シュゥ〜ッシュッシュッ!ハァ〜ッシュゥ〜ッ!シュッ!シュッ!シュッ!
132愛しのブッチ様G:2009/06/18(木) 20:11:59 ID:FOWgA2qJ
「それだけは、やめてぇ〜っ!お願いっ!後生っ!一生のお願いですぅっ!」
涙目で哀願するキューティーにブッチは、ニタニタと厭らしい笑みを浮かべ言った。
「一生のお願いってもネ、あ〜た、このブッチ様、キューティーちゃんに
 イチジク浣腸しちゃうのが、一生の念願なワケよ。わかる?
 それに案外いいものでしゅよォ〜。イチジク浣腸。
 これのあとで、一生のお願いと言って、このブッチ様の奴隷にしてくださいませ、なんて
 言っちゃうかも知れないよォ〜。むっしっしっしっし。」

キャップが外された。イチジクの先端にウルウルと表面張力で顔を出したグリセリン液がキラリと光った。
「グッバイ、誇り高き女戦士キューティーちゃん。いまからユーはこのブッチ様の牝奴隷キューティーだ。」

プスリッ
「ぎゃぁ!痛ぁーっ!」
「そんなにオチョボ口をすぼめるから、痛いあるよ。でも痛いのはココがヴァージンの証拠あるね。
 そぉ〜れ。お薬の注入ですよォ〜。」   チュー・・・・・・・・・
冷たいグリセリン液は、キューティーのS字結腸から直腸へと浸入してきた。初めて味わう不気味な感触が
キューティーの菊門から内臓へと染み込みだした。まさに染み渡るといった冷たい感触。

「あっ・・あっ・・ひゃ・・ひゃああああああああああ〜ん!」
「うひひ。いい声じゃわい。この声、この断末魔の声が、このブッチ様を充電させてくれるわい。」
133巨人の星その後81:2009/06/18(木) 22:47:38 ID:XEAGWGFZ
花形満の父、花形啓一は、社長車の後部座席で、憮然として目を閉じていた。
隣の座席に座る秘書の小泉は、腕時計に手をやりイライラしていた。
「10分以上は、遅れるな。もう少し急いでくれたまえ。」
「はい。」 運転手は短く返事をしたが、東京のど真ん中でスピードを上げてどうなるものでもない。
分かってた小泉だが、社長の手前なかば儀礼的に言ってみただけだった。
聴こえなかったかのように、花形啓一は目を閉じたままであったが、
10秒ほどしてから、思い出したように目を見開いた。 そして車の外を観た。
「馬鹿を言うんじゃないよ。君。」
「申し訳ございません。」
「別に謝ることは、ないよ。しかし自動車メーカーの経営者が事故にでも遭ってみろ。
 それこそモータリゼーション・バッシングの格好のエサだよ。」
「はっ。ごもっとも・・・・。」
辟易する小泉に、なるべく気を遣わせまいと、啓一は、またそのまま外を向いた。
聴こえないように、胸の中で溜息をついた。
車は、内幸町の帝国ホテルに向かっていた。ある財界人が催す昼食会のためである。

啓一は、その昼食会には何の関心もなく参加するに過ぎなかったが、ただこの日は、
英国式のいつもと変わらないこの上ない服装に、すこしだけ普段と違うところがあった。
左の襟に、ペンを交差させたマークのバッジを付けていた。
それは、啓一の母校出身者が、同窓生と会うときにだけ付けるバッジだった。

昼食会に遅れる遅れないは、別にどうでもよかった。
ただそこで今日会う男との25年目の再会にだけ、少しだけ興味を覚えていた啓一だった。
134巨人の星その後82:2009/06/18(木) 22:50:54 ID:XEAGWGFZ
鬼怒川次郎は、生粋の博徒ではなかった。武蔵野の農家の四男坊だった。
貧農であった。貧しさから子供時分から悪事を繰り返した。
戦前に東京のある親分の舎弟になっていたが、その組の中では目立った存在ではなかった。
この男が、その組の中で頭角を現したのは、抗争によって武勲をあげたからではなかった。
組が、誰か抗争相手にヒットマンを仕掛けるとき、幹部が主な候補者となる組員を集めて
代紋をほおり投げる。それを、拾った者がヒットマンになる。
その拾った代紋が、出所後の出世への約束手形になるのだ。

もちろんそれは、そのヒットマンが直接、手を下していなくても
誰が警察に自首して罪をかぶるか、という決め事にも使われた手段だった。
武勲をあげ、あるいは武勲をかぶり、己のステータスを上げるのに
候補者に選ばれた組員たちは、懸命に争って競い代紋を拾おうとした。
しかし鬼怒川次郎にとってそれは、さも能率の悪い出世の仕方にしか見えなかった。
そんなチャンスを与えられるまで待っていることなどないと考えたのだ。

彼は独特の嗅覚で親分や幹部たちの会話を聴き取りまた盗み聞きし、
それがセリに掛けられる前に、的を消してしまうという抜け駆けに近い方法で
ライバルたちがあげる予定だった武勲を、片っ端から横取りしていった。

何件かの殺人を、他の組員がかぶったあと、幹部のひとりになっていた鬼怒川は、
ある敵対組織の幹部をこれまた誰にも相談せず殺害し、そのまま今度は自ら服役した。

これも計算であった。帝国陸軍が、師団を繰り返し増設しはじめたとき、
戦争でゼニにもならない殺しをするために召集されるのなら、
戦争がひと段落するまで、塀の中にいたほうが得だと考えたからであった。
135巨人の星その後83:2009/06/18(木) 22:52:47 ID:XEAGWGFZ
鬼怒川の目論見どおり、彼が仮出所すると間もなく戦争は終わった。
組そのものは存続していたが、組織内の邪魔だったライバルたちは、
戦地に行ったまま帰ってきていない者、戦死が報告された者がほとんどで、
戦後に組の若頭になった鬼怒川の前から姿を消していた。

復帰してくる者もあったが、戦後の縄張り争いの大抗争に明け暮れる毎日の中
鬼怒川は組織内の邪魔者も手段を選ばず粛清していった。

組織が組織に飲まれていく抗争の中でも、
鬼怒川は持ち前の嗅覚で、血の雨の中を渡り歩いた。
そして武勲と緊急避難のための服役を繰り返しながら、
東京オリンピック前の、警察庁の頂上作戦も塀の中でやり過ごすと、
強制解散させられた組織の残党をも受け持つ条件のもと、
元の組織からのれん分けを勝ち取り、別の組織の組事務所があった若松町の
事務所を相続し、鬼怒川組の看板を掲げた。昭和41年、鬼怒川次郎は51歳になっていた。

新宿歌舞伎町の一部を縄張りとする鬼怒川組は、だから新宿がまだ内藤新宿と呼ばれた、
江戸時代の宿場町だったころから存在する博徒でも何でもなく、新興組織であった。
その縄張りは、抗争によって勝ち取ったものでもなく、
鬼怒川の以前の武勲と嗅覚によって、相続したもののひとつでしかなかったのである。
136巨人の星その後84:2009/06/18(木) 22:54:29 ID:XEAGWGFZ
その鬼怒川次郎が55歳になっていた昭和45年の10月の初旬、
鬼怒川は幹部がとった一本の電話を自分の机に回させていた。
「そいつは、仲々気の利いた心掛けと言いたいところだがな、
 こっちは、お前さんに何も要求した覚えは、ねーぜ。ただワシは誠意を見せてもらいてえと言ってるだけだ。」
普通であれば組織の主である鬼怒川が外部からの電話に出ることはない。
しかしこの電話の相手に鬼怒川は以前に大いに面目を潰されており、
それは組の構成員たちも知っていた。そしてある理由から鬼怒川はこの件に
自分から乗り出していく気になっていたのだ。
「お前さんが送ってきた東麻布のいっちょまえなマンションの権利書は拝見したぜ。
 しかしワシはモノを見てからじゃねーと、返事はしねえ。そっちの誠意あるモノを見せなって。」
暴力組織にとって東京都内の一等地に事務所を構えているのも、
肩身の狭い時代になってきていた。言葉も慎重に選んでいるつもりでも、
素人に面目を潰されていた鬼怒川は、この電話の声の主に図らずも自らの声を荒げた。
「ワシが見せろって言ってんのは、マンションのことじゃねーぞ!
 それに今、ゼニカネの話をしてんじゃねー!知らばっくれんじゃねー!ワシが言ってんのはな・・・」
ここで、鬼怒川は嫌らしく顔をニヤつかせながら、声を今一度おちつかせて相手に言った。
「お京の体だ。・・・グッフッフッ・・・・。今、お京はどこにいる?まずは、お京の顔と体を
 ワシに拝ませなって。ワシの見せろって言うお前さんの誠意とは、そのことよ。
 何もかも返事をするのは、それからだぜ。どうだい?グフフフ。」
137巨人の星その後85:2009/06/18(木) 22:55:42 ID:XEAGWGFZ
「ちっきしょ〜・・・・。電話、切りやがった。」
「親分との電話を、自分から切る野郎なんて、フザけてやすぜっ!バラしちまいやしょーやっ!」
相手の居場所さえわかっていれば、鬼怒川の若い頃なら親分に断ることもなく殺害していただろう。
「まあいい。奴も手負いだ。なんでも再起不能だっていうじゃねーか?
 素人が死ぬ気で来やがったら、こいつぁ怖かはねーが厄介だ。それより・・・」
鬼怒川が葉巻を咥えた。子分が火をつける。
「お京と竜巻のネンネどもの居所は、まだ分かんねーのかいっ!」
大声で子分どもに怒鳴り散らすと、鬼怒川は机の上をバン!と叩いた。
「8月には、大阪でお京と、それらしい女どもを見たって垂れこみがあって、
 そのあとは・・・・・。大阪での報告もそれっきりでやんす。・・・・」
幹部のひとりが間の悪そうに、ボソボソと以前とは進展していない事態を
繰り返し報告した。
「おめえら、馬鹿か?相手は年端のいかねえ女ばっかりだ。
 どんな所に潜りこんでいそうか、ちっとは考えてみやがれ。」
「パチンコ屋では、働いていないようです。関西の店には、すべて触れを回しましたが・・・。
 あとトルコ風呂にもいませんでした。ホステスの新顔にもそれらしき女どもは、見当たりません・・・。」
「なら別の可能性をさぐれっ!見つかりませんでしたってな報告は、これが最期だと思いてーな。」
子分たちが、申し訳なさそうに頭をペコリとするのを見ようともせず、
鬼怒川次郎は、窓のほうを振り返った。その窓ガラスに鬼怒川の目には己の姿は映っていなかった。
グラマラスな京子の肉体を、ムラムラと想像していたからである。
138巨人の星その後86:2009/06/18(木) 22:57:13 ID:XEAGWGFZ
帝国ホテルにつくと花形啓一は、昼食会場に姿を現し、
進み出る人たちを制して、テーブルの中を、軽く会釈をしながら自分の席へと歩み進んだ。
すこし後を小泉がついて歩く。椅子をひくのはボーイの役目だが、
小泉はそれを制して自分であるじの椅子をひいた。
しかし啓一は掛けようとしなかった。会場にいたひときわ背の高いと見られる、
眼鏡をかけた紳士の席に自ら近寄っていくところだったのだ。
「かおるよ。目立つな。君は。すぐ分かったぞ。フフフ。」
「花形っ!花形啓一君っ!待っていたぞ!おい!」
眼鏡を掛けた男は、立ち上がるとひときわ背の高い身をさらし、
会場にいる周囲の人たちの目も気にせずに、表情をくずし花形に軽く抱擁をした。
10センチ以上の身長差がある二人の紳士の抱擁はしかし
周囲を困惑させたり驚かせたりするものではなかった。
この二人ともそれぞれの世界で有名人であり、この二人が
それほど再会を喜び合う中だったことを、嬉しい事実を発見したように
喝采をおくる出席者もいたほどだったからである。
「25年か・・・・。早いものだな。そんなに経つとは。」
「いや、花形よ。永いと云えば、永いご無沙汰ではあるな。」
別当薫は、満面の笑みで同窓生の顔についた口髭を少しからかうように触った。
139名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 01:07:46 ID:Vh20tFJo
悪役ブルースにブッチ様に巨人の星と、今日はみんな執筆意欲に燃えているなw
140名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 03:18:58 ID:IPwHXpLb
>>115
フラッシュバック・スタイルはハリウッドでは敬遠されている
やっぱ痛快冒険アクション見に来る客に、それはいらないし難しすぎるというのもあるだろう
はっきり言えば客は阿呆だと思われてるとも言える
ゴッドファーザー・パートUが大作でそこそこヒットした中でフラッシュやってる最初だろう
でもこれも前作の遺産があればこその収益であり、長過ぎる本編とあわせてスタイルは不評だった

セルジオ・レオーネのワンス・アポンア・タイム・イン・アメリカ(83年)が、
フラッシュバック式ストーリーの最たるものだろうが、これも専門家の評価とは別に
収益ではドンこけだった 作品に入るこめて脳内で世界観を構築できる客にしか
受け入れられないスタイルなのだろう
お京X左門の作者のいうように柴田錬三郎が究極ともいえる閑話休題スタイルをとっていたな
慶長13年から天正10年に話が振られ、100ページ以上も慶長に戻ってこないんだよなw
まあ本だからページ戻って復讐できるが、映画や連載小説だと冒険とは言える
141名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 07:16:23 ID:/zb489p7
>>116 - >>128
楽しみだけど、悪役ブルースぜんぶ読んでない
読んでないやつでも楽しめる展開になるといいな

つぎからサブタイトルとかつけたら?

>>129
はやくも浣腸責めですか 展開の速さはエロパロではふつうだけど
左門Xお京のペースになれて面喰うよ

>>1
お京の人間性や生い立ち、心理描写をこれだけ書き込めるとはすごいが
ここまで書くともうお京をレイプとかSM拷問とかするの、忍びないだろ?
まあキャラも出揃ったようだし今後のストーリー展開(エロでなくとも)に期待します
142名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 14:00:29 ID:6R/eLyNw
まれにみる良スレ
143巨人の星その後87:2009/06/19(金) 20:19:27 ID:/PvPwrwV
「ええ?おまえがかぁ〜?」
鉄二は、あきれた顔で聞き返した。京子は、オートレーサーになるというのだ。
現在の大井競馬場に隣接してあった大井オートレース場に
ふたりで行った帰りに京子が言い出したのだ。
京子が見たいと言い出し、鉄二は車券も買ったことはなかったが、
未成年の京子がひとりでオートレース場に入場することはできない。
やむなく京浜東北線に乗り、大森で降りてテクテク歩いて観に行ったのだ。
車券を買うのに、興味を示さない京子に、ギャンブル目的でないことは察した鉄二だったので、
帰りの電車の中で京子が言い出したのは、驚きはしたが、予想のできないことではなかった。
「あのな〜おまえ、女だろっ?ちがうか?」
「エッヘヘ。実はちゃんと調べてるのよ。もう。女がオートレースに出たことは、あるんですよ〜だっ!」
「なぬぅ〜?ほんとかっ?知らねーぞオイラ!今日も出てなかったじゃねーかよ。女なんてひとりも。」
「今は、いないんですって!でも、オートレーサーに女がなっちゃいけないっていうルールは、ありませんでしたっ!」
「っていってもよ。ギャンブルなんだぜっ!オートレースは。」
「でも女が男に勝てることだって、あるわよ。男とだって勝負できるのっ!アタシ決めたんだー!」
こうと決めてしまったとなれば、後に引き返せというのは京子には無理なのだ。
それを鉄二はよく分かっていた。
144巨人の星その後88:2009/06/19(金) 20:21:25 ID:/PvPwrwV
「で、どうすんだよ?ああ?」
「18になると、養成所に入れるの。って言っても養成所に入るのは、
 また誰かさんの好きな一発試験に通らないといけないけどね。」
「な・・・なんだぁ。まだ先のことじゃねーか?」
「で、1年弱、養成所で勉強して、それからデビューできるの。できない人もいるみたいだけど。」
「調べてたのかよ?おまえにゃ呆れるよ。ったく。」
「それでね。・・・・・・・・エッヘヘ。」
「なんだよ。ゼニがいるのかぁ〜?」
「そんなこと、お願いしないわ。お願いしてもお金ないでしょ?」
また照れ隠しで、おどけて笑っている。こんなときの京子は、決まってその後に、
さらにまた勝手なことを言い出すのが常であった。
「その試験の日までね。アタシを特訓してほしいの。」
「ケッ!」
この少女は、すべて自分の意志で、思い通りになると思っているのか?しかし
鉄二が、いやいやでも引き受けてくれることを京子は確信していた。
それを見透かされていることを、鉄二もわかっていた。
「あのなあ〜。そんかわり、おまえ、落ちたらオイラのカミさんに、しちまうからな。んでいいなっ!」
それは、あくまで鉄二の照れ隠しだったが、その一言は京子の胸に、実は人知れず
本人も自覚することなく、ずっと残ってしまうことになるのを二人ともまだ気づいていなかった。
145巨人の星その後89:2009/06/19(金) 20:23:40 ID:/PvPwrwV
京子の両方の腕をつかみ、辛うじて抱きとめていた左門豊作は、
はたと気づいて、あわてて手を放した。
どうにか倒れなかった京子は左門に抱き支えられたことなど、意に介してないかのごとく、
左門が押し付けた手紙を、握り、大きく息を吐くと裏返しにして、
宛名の欄に目をやった。
「これ・・・・・。これ・・・・って。左門さんに宛ててじゃない。どうしてアタシに・・・・。」
一刻も早く中を読んでみたい京子だったが、こわくもあった。
左門が『そういう意味の遺書ではなく、ピッチャーとしての』と注釈を付け直したのを
聞いても、心臓は高鳴ったままだったのだ。
そしてこの高鳴りは、飛雄馬を過剰に意識したときに来るあの【うずき】をも
やがて自分の肉体に襲ってくることを予感させた。

その【うずき】が、限界まで高まってしまえば、左門の前であろうと、
公衆の面前であろうと、自分がコントロールできなくなってしまうに違いない。
前に芦原温泉でその【うずき】が襲ってきたときは、風呂場で自分ひとりだから
よかったようなものを。
146巨人の星その後90:2009/06/19(金) 20:28:33 ID:/PvPwrwV
「ワシ・・・あの・・・すんません。あの・・・・。」
左門がモゴモゴと、また謝っている。
「なに謝ってるのよっ!謝ることもないのに、やたらと謝らないでよっ!
 あなたねえっ!いつも何でもそうやって、謝ってゴマかしてるわけっ!」
左門は、たじろいだ。京子は完全にブチ切れて怒っている。何を怒っているのかよりも、
その怒らせてしまったことに、また心に中で「あっ」とい後悔した。どうしていいのかも分からないのに。
しかし、京子は怒っていたわけではないのだ。
その完全に、エキセントリックなヒステリー状態は、ある自分の症状を隠すための
とっさに出たごまかしの手段だった。
もう体中が、うずきだし、レモンを丸ごと頬張ったときに口の中にくるジーンとした感覚が
京子の全身に回ってきはじめたのである。

「ワシ・・・あの、うしろ向いとりますたい。そん間に、京子さん、目を通してくんなさい・・・・。」
ボソボソと呟くように言うと左門はその場で京子に背を向けた。
しかしその左門の仕草は、京子が飛雄馬にラヴラヴ状態なのを見透かしているようで、
さらに京子を不愉快にさせた。
「フンッ!」
いかにも仕方なく読む、読んでやるという言い訳じみた態度で、京子は手紙に目を通し始めた。
ところが・・・・・・・。
147巨人の星その後91:2009/06/19(金) 20:31:30 ID:/PvPwrwV
「最近じゃね、どっちが捜査一課かわかんねえぐらい、ウチ(捜査四課)にも、
 いろんなガイシャが飛び込んでくるんですよ。ったく。」
トイレで手を洗い終えた山本警部補に、今、用を足し終えた捜査四課の
衣笠警部が、手も洗わずに近づいてきた。
そのまま、手をピシッピシッと振っているが、やはり手を洗うつもりはないらしい。
役職では、衣笠のほうがひとつ上になる。しかしじきに山本のほうが
何階級も上に行ってしまうのだ。今からすでに敬語で話し掛けているが、山本は不愉快だった。
「この間も野球選手が、ウチに泣きついてくるような電話を掛けてきましてね〜。」

野球選手?山本は、衣笠が何の話をしようとしているのかが、とっさには判断しかねたが、
すぐに『ああ、これは先年から世間を賑わせたプロ野球を覆う黒い霧、八百長疑惑の話だな?』と思った。
ところが、自慢たらしく話す衣笠の話の内容は、それではなかった。
「星飛雄馬って知ってます?高等文官・・・いや、警部補どのはっ?」
さんざ嫌味ったらしく人に呼び掛けることさえ、我慢できないようだった。
「知ってますわな、当然。再起不能でそのまま行方不明になってるという、あの。」
148巨人の星その後92:2009/06/19(金) 20:34:04 ID:/PvPwrwV
「その星飛雄馬が、どうかしたんですか?」
不愉快ながらも、衣笠にいつまでも勿体ぶらせて話させておくのも癪である。
早く話を終わらせてほしかった山本警部補は、続きを促した。

「フッフフ・・・。その巨人の星の星飛雄馬が、お友達がヤクザに追われてるから、
 助けてやってくれと、クックック。泣きついてきたんですよ。」

「ほう・・・・。ヤクザに追われてる?」
「なんでもそのお友達・・。じゃなかった、ガールフレンドらしき女の、
 消息も分からないんですとよっ!その消息不明の女を、
 ウチが鬼怒川組からガードしてやってくれと。ガッハッハッハッハ!
 ウチは、人探しじゃないし、ガードマンもやってませんと。言ってやりましたよっ!うわっはっはっは!」
「消息不明の女・・・・・・。」
おそらく先ほど足した小便がついたままの手をポケットに突っ込むと衣笠は、
「なんならガードマンの警備会社、紹介してやろうか?と言ったら、怒って切っちまいやがった。
 こりゃ捜査一課の仕事ですかなぁ?うわっはっはっは!」
愉快犯のような高笑いで、自慢話を勿体つけて、そこで終えると衣笠は山本より先にトイレを出た。
しかしそのどうでもいい男の態度より、山本には星飛雄馬という名前と
消息不明の女という言葉のほうが、なぜか耳に残った。
149巨人の星その後93:2009/06/19(金) 20:36:23 ID:/PvPwrwV
「よぉ〜し!よくやった!黒崎を呼べ!」
鬼怒川次郎は、葉巻を咥えたまま子分に慰労と命令を同時に下した。
ほどなく、慎重180センチの細身の体をスラリとさせて、サージ織りのスーツを着た
黒崎が鬼怒川の前に現れた。
「会長。お呼びですか?」
葉巻の煙を鼻から吐いて、鬼怒川が立ち上がった。そしてすぐに黒崎に
背中を見せて身をひるがえし、窓のほうを見やった。
「お京が、あらわれたぜ。」
「ほんとですかっ?会長!」
この黒崎はじめ数人の幹部だけが、鬼怒川を『会長』と呼ぶ。別になんでもいいのだが。
「ああ。五反田で、ウェイトレスをしているとよ。グフフフ。太てぇ女だ。」
早くも鬼怒川は、その自分の映っている窓ガラスに、自分の顔でなく、京子の肉体を思い浮かべていた。

「あのアマァ〜。どうしてやるか。グフフフフ。ハンパなヤキじゃ済まさね〜ぜ。」
「会長の特別フルコースを、久々に見学させていただけそうですなっ。アッシも楽しみですよ。」
150巨人の星その後94:2009/06/19(金) 20:38:23 ID:/PvPwrwV
「グフフフ。特別フルコースなんかじゃ済ませね〜ぜ。
 今度ぁ超特別フルコースだ。おまえら幹部にだけは、見学させてやるからな。」
「しっかしあの女も、ちょっと可哀想ですなぁ〜。会長。なんせこの前、いつでしたっけが、
 会長の目を盗んで、テニス・スクールの講師と陰でイチャついてやがった会長のイロが、
 あの特別コースをやられて、頭がパーになっちまいましたからね〜。フフフ。」
「グフフ。自業自得だぜ。このワシを袖にしたんだからな。しかしお京のアマァ
 あんなもんじゃぁ済まねーぜ。このワシの面目を完全につぶしおって、
 しかも今の今まで網にかからず、逃げてやがったからのぉ。」
「我々も役得になりそうですが、会長も随分あの女にはご執心のようで・・・。フフッ」
「グッフッフッ・・・・。なんせお京のやつ、たまんねぇ〜体してやがるからのぉ。
 それにあの気の強さだ。それをヒィヒィ言わすのが、またお楽しみってことよ。」
「なるほど。しかし会長、どうなさいます?例の切り札を使いますか?」
「グフフ・・・・。それもあるが、あれは最期の切り札だぜ。最期のな。グッフフ。それよりあのアマァ
 やたら気が強ええから、ワシの手に落ちるとなると、すぐにでもテメエの舌を噛み切りやがるかも知れねえ。
 まずは、切り札は、隠しておいて、ここへ一人で来させろ。五体満足の状態でな。」
「なるほど。五体満足のまま連れて来て、そこから超特別コースでジワリジワリとおとしていく訳ですな。会長。」
「グッフッフッフ。その通りよ。ジワリジワリとなぁ〜。ウックックックックックックックック・・・・・・・。」
151名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:44:03 ID:/PvPwrwV
>>141
あらゆる可能性が最後のほうまである展開が理想ですね
>>142
ありがとうございます
152名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:47:20 ID:/rEIb5EB
リアルタイム投下に遭遇した
左門はお京とHできるの?
153名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 21:16:58 ID:/PvPwrwV
>>152
すいません まだ未定です  m(_ _)m
154愛しのブッチ様H:2009/06/20(土) 00:21:58 ID:CAsWhJUn
「こんなことして、タダで済むとは思わないことねっ!
 おまえの変態ぶりを洗いざらい警察とマスコミにブチ撒けてやるわっ!
 覚えてなさいっ!」    ペッ!
キューティーは、ブッチの顔めがけて唾を吐きかけた。ブッチの頬に命中した。
「グフフ・・・これは、ホンのアクセサリーとして有り難く頂戴しとくゼ。」
ブッチは、頬についたキューティーの唾液を手の甲で拭くと、ペロリと舐めた。
「だがなぁ〜。キューティーちゃんよォ。ブチまけるのは、このブッチ様のことじゃなくて、
 別のモノじゃないかなぁ〜? グフフ。」
「ベ・・別のモノ?なんですってっ?!・・・・・・・・・・・・・・・!っ・・・・・!!」

「ホォーレ、心当たりのものが、おいでになったようだぜ。グフフフ。どうした?さっきの威勢の良さは?」
キューティーの下腹部が、音を立てた。ブッチにも聴こえるほどの音量で。

ゴロゴロゴロ・・・・・・・ゴロ・・ゴロ・・グルッ・・・・グルッ・・・グルッグルッグルッギュルルルルルッ!
「ああーっ!こっ・・こんなっ!こんなぁ〜っ!あっ・・あっ・・・ああああぁぁぁ〜っ!」
「おや、おや、なんだオイ?腹の中に虫でも飼っておるのかぁ?ああ〜ん?」
得意満面のブッチは、ここで胸ポケットから葉巻を1本取り出し、火をつけるとうまそうに一服吸い込んだ。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・ああ〜んっ!お腹がっ!お腹がぁっ!ああ〜んっ!」
「グフフフ・・・早くも効きだしたようじゃのォ。ウヘヘヘ。こりゃいい眺めじゃわい。」

「うぐぅ!ウギギっ!くっ・・・くっ・・・苦しぃ〜いっ!お腹がっ!お腹がっ!お腹、苦しいっ!ああ〜んっ!」
キューティーの息はみるみる荒くなり、白い肌は、脂汗を浮かべだした。
(日本製のこのイチジク浣腸ってのは、随分と効くようじゃて。まだ1分も経っておらんのに、このザマとはな。)
ほくそえんだブッチは葉巻を口に咥えると、キューティーに接近した。
155愛しのブッチ様I:2009/06/20(土) 00:23:30 ID:CAsWhJUn
アメリカでもカナダでも、幾多のコールガールやホステスに
浣腸を注入し、その女たちの醜態を観察することを
至上の喜びとしてきたブッチであった。
時には精神錯乱の痴呆状態になったコールガールに対して
支払いすらせずに済ませたこともあるドケチのブッチであったが、
浣腸だけは、いつも現地調達していた。
アメリカで売られている浣腸は、塩分主体の成分であり、その効き目は
グリセリン主体のイチジク浣腸よりは、ずっとゆるやかなモノであった。

「あっ!あっ!お腹がっ!お腹がぁぁぁぁぁぁ〜・・・・・っ!」
「うへへ。ポンポンがどうしたの?ああ〜ん?こんなに汗かいちゃって。」
「お腹が・・・お腹が・・・お腹が痛くなってきたのぉっ!!!お腹、痛ぁ〜いっ!ああ〜んっ!!」

「ん?キューティーちゃん、ポンポンが痛いのォ?そりゃいかんいかんっ!」
言うが早いか、ブッチは緊急事態を告げているキューティーの柔らかく波打つ下腹部をグッと押さえつけた。
「あっ!ぎゃぁあっ!お許しぃ〜!そんなことっ!痛いっ!痛いっ!お腹、痛くて死にそぉーっ!」
156愛しのブッチ様J:2009/06/20(土) 00:25:19 ID:CAsWhJUn
「オー!オー!かわいそうに、かわいそうにのぉ〜っ!
 どぉれ、どぉれ、このブッチ様がその痛いポンポンをさすってあげるからねぇ〜。ぐしし。」
ブッチの太い指が、音を立てて波打つキューティーの腹部、とくに臍の真下あたりを
いやらしく掌を回転させながら、まさぐった。びっしょりの汗の量である。

「あひぃ〜っ!やめてぇ〜!そんなの許してぇ〜!お許しくださぁ〜いっ!」
涙を溢れさせ、ついにキューティーが嗚咽を漏らした。

「えぇ〜んっ!キューティーが悪ぅございましたぁ〜っ!お願いですぅ〜!おトイレ、おトイレにっ!」
「おトイレぇぇぇぇぇぇ〜?はぁ〜ん?」
「ブッチ様のことを悪く言ってすいませんでしたぁぁぁっ!ですからお願いっ!おトイレに行かせてっ!」
   ゴロゴロゴロ・・・・グルッ・・・グルッ・・・
「はぁ?オイ、キューティーちゃんよ。さっきベッドの上でオシッコしちゃったろうがぁ?
 こんな大きなレモン色の世界地図まで描いてくれちゃってさ。なんでまたおトイレいくのぉ?ああ〜?」

「!!!・・・・・・・」
ブッチの陰湿なイチジク浣腸によるキューティーいじめは、まだキューティーの尊厳をひっぺ返し足りないことを
悟ったキューティーは、絶望の中で、女の恥じらいを今一度、脱ぎ捨てなければならないのだと理解した。
「きちゃ・・・きちゃ・・・来ちゃったのぉっ!もう来ちゃったのよぉっ!ああ〜っ!」
   グルッ・・・グルッ・・・キュゥ〜ン・・・・ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・
「ナーニが来ちゃったの?ちゃんと言ってくれないと、このブッチ様でも分からんアルよ。」

「うっ・・うっ・・・・ウンコォッ!・・ウンコォッ!・・・ウンコしたくなっちゃったのぉぉぉぉ〜っ!あがぁ〜っ!」
157愛しのブッチ様K:2009/06/20(土) 00:26:50 ID:CAsWhJUn
「おや、まぁ〜!ククク・・・・ウンコだなんて人気ナンバー1の女子プロレスラー、
 キューティーの口から発せられる言葉とは思えませんなぁ〜。ぐしし。」

「おトイレっ!おトイレっ!早くおトイレに行かせて〜っ!あうっ!あう〜っ!」
「しょーがないのぉ〜、グフフ、で〜もキューティーちゃん、もうトイレ間に合わないんじゃない?」
「!!!・・・・」
確かに言われてみれば、今からベッドを下り両手を前手錠に拘束されたまま、
あわただしく両足で駆け出してみようにも、わずかな衝撃でもキューティーの菊門は、
口を開けてしまいそうだった。それに何より腹が痛む。便通は激痛となっていた。
そのとき、ブッチがパコンッと音を立てて何かをベッドに叩き置いた。
洗面器であった。
「ひぇっ!こっ・・・これって・・・・っ?」

「ここにしなさい。 このブッチ様が受けていてあげるからのぉ。 ぐししし。」
葉巻を咥えたままのブッチが、勝ち誇ったような顔でキューティーの苦悶の表情を覗き込んだ。

「そっ・・・そんなっ!いやぁ〜っ!絶対いやぁ〜っ!そんな恥ずかしいこと、死んでもいやぁ〜っ!」
もはや滝にうたれたほどの汗まみれになっていたキューティーの全身が、
後ずさりしようとするのを追いかけるように、ブッチは洗面器をキューティーの桃尻の真下に置きなおした。
158女悪役ブルース:2009/06/20(土) 21:26:07 ID:Rpme7ULi
呆気に取られている純の横を、他の若手たちが手に手にタオルを持って
リングに上がっていく。シャドウの正体完全暴露を防ぐためにタオルで
顔を隠すためだが、ゼロはそれも許さず、戦闘不能に陥っているシャドウを
フルネルソンに固め、無理矢理立たせ、素顔を完全公開してしまった。
シャドウが他団体で中堅どころとして活躍していたレスラーの転身という
ことはファンには周知の事実だったが、こういう形での素顔の公開は
残酷であった。マスクの下はノーメイクであり、すでに熟女の域に達している、
シャドウの、かなりいけてない素顔が暴かれたことは、多くのファンへの
残念な告知のようだった。
159女悪役ブルース:2009/06/20(土) 21:35:51 ID:Rpme7ULi
マスクを剥がされ、一度は戦闘不能になっていたシャドウだったが、
完全に正体を暴かれた怒りにキレ、ゼロに掴みかかろうとするが、
ゼロはサッと身を翻すと、リング下に降り、まだ呆然としている純の
横をすり抜け、控え室へ走っていってしまった。
後を追って純も控え室に戻った。
リング上ではシャドウの反則勝ちが宣せられ、暴れるシャドウを
鎮めるようにゴングが打ち鳴らされていた。
控え室に戻ったゼロのところには怒りを滲ませた表情の幹部が
やって来た。
160女悪役ブルース:2009/06/20(土) 21:57:36 ID:Rpme7ULi
「自分が何をしたのかわかってるんだろうな」
顔を引きつらせて、幹部はゼロを睨み付けながらまくしたてた
「せっかくメジャーデビューさせてやって、ファイトスタイルも
キャラも変えずに売り出してやったのに・・どういうつもりだ!
よりによってシャドウの素顔を完全公開するなんて、これで
マスクウーマンとしてのシャドウの商品価値は無くなった!」
「ブサイクな素顔がばれちゃあ、商品価値ゼロってかい、ふんっ!
最初にブックにないマスク剥ぎを仕掛けてきたのはあいつだぜ、
あたしは、それにのっかってやっただけさ」
「勝手なこというな!まぁもうどっちでもいい、とにかく約束通り
お前との契約は只今をもって解除する!さっさと出て行け!!」
「わかってるよ、あばよ!!」そのまま控え室から出て行くゼロを
純は追いかけようとしたが幹部に
「お前は行く必要は無い、ここに残れ」そう言われたが
「ごめんなさい、私もブックの存在するこんなところにいたくない、
私の目的は、ガチでゼロに勝つこと、それじゃ失礼しま〜す」
161女悪役ブルース:2009/06/20(土) 22:14:23 ID:Rpme7ULi
場面は変わって、車の中のゼロと純。
「本当にあんたも変わった娘だねぇ、あたしについてきたって
何も良いことは無いよ」
「兎に角私はあんたと闘って勝ちたいの!それまでは地の果てまで
だって追いかけるわ!」
ゼロの所有するミニバンの中で会話が続く。マスクをしたままのゼロ
が運転する訳にもいかず、純が運転しているが、純はブック破りに
ついてしつこくゼロを問いただした
「別にああいう形じゃなくても、シャドウを倒すことはあんたの実力なら
出来たでしょ、なんでマスクを剥がす必要があったのよ?」
「あんたもリング下で聞いただろ、あたしがマスクを破られた時、弱弱しい
女の悲鳴を上げたのを」
「あっ・・う、うん・・」つい数時間前に聞いた、ゼロの悲鳴を思い出した
なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまったようで、純の声も
消え入りそうになった。
162女悪役ブルース:2009/06/20(土) 22:29:56 ID:Rpme7ULi
「氷点下ゼロのクールな悪役女王といったって、マスクに手を
かけられてピンチに陥ればあのざまさ。そんな自分が許せなくってね、
気がついたらシャドウのマスクを剥がしてたってことさ!」
「ふ〜ん、そういうもんなんだ・・・」マスクウーマンの心情は純には
わからないが、隠しておきたいものを暴かれることへの怒りはなんとなく
わかる。
「あんただって、試合中に水着脱がされたら頭にくるだろ」
「あ、当たり前じゃない!」18歳の現在も処女で、人一倍羞恥心が
強い純には人前で水着を脱がされるなど、死よりも許しがたいことだった。
空手の合宿で風呂に入る時も、自分の裸を見られることも、他人の
裸を見るのも苦痛だった。想像するだけで顔が赤くなっていた。
163女悪役ブルース:2009/06/20(土) 22:39:00 ID:Rpme7ULi
顔の火照りがおさまったところで、純は行き先についてゼロに聞いた
「とりあえず東名に乗れって言われて乗ったけど、どこまで行くの?
あんたが前いた名古屋で降りるの?」
「いや、名古屋ではあたし達の喰ってく場所がないからね、
大阪まで行くよ。」
「大阪?」「そう大阪。あたしはつかれたから寝るよ、大阪に
着いたら起こしてよ、オヤスミ」
言うなり寝息をたて始めたゼロに今までと違う親近感を憶えながら
一気に大阪へと向かった。
164女悪役ブルース:2009/06/20(土) 22:58:43 ID:Rpme7ULi
大阪市内に入り、ゼロの細かい指示で辿り着いたのは
郊外の朽ち果てたような体育館だった。
「なんなのここは?」「ここがこれからあたしの闘いの場になる
地下プロレスの会場さ!」「地下プロレス・・!?」耳慣れない
単語に、聞き直すと「そう地下プロレス、まぁ話すより見たほうが
早いから、中に入ろう。中でみながら説明するよ」
灯りが漏れる体育館の中に2人が入っていくと、そこには
数十人の観客と、その中心に据えられたリングがあった。
リング上にはリングアナらしき男が立って、しきりに
大声で叫んでいた「さあ次の挑戦者は誰かな、早くリングに上がって!」
その呼びかけに応じて、2人の女がリングに上がってきた。
「いよっ!いいぞ!!」観客から歓声が上がる。
2人の女は札ビラを男に渡すと、服を脱ぎ始めた。しかし服の下は
下着では無く水着だった。両者のボディチェックを男が済ませると
ゴングが鳴り響き2人の女は対峙した。
165女悪役ブルース:2009/06/20(土) 23:18:55 ID:Rpme7ULi
「つまり賭けプロレスってこと?」j何も喋らないゼロに純は聞いた。
「そう賭けプロレス。元々は雄琴の温泉旅館辺りで始まったお座敷
女相撲とか野球拳なんかから派生したものだと思うけど、まぁいわゆる
キャットファイトってやつね。勝てば自分の賭けた金額の倍額が戻って
来る」
リング上では2人の女が絡み合い、じゃれあってるように闘っている
「それで何、あんたと私がこんなリングに上がって闘うわけ!?」
詰問調になる純の問いかけにゼロは
「いや、あたし一人だ!お前は闘わなくていい。このリングに一度
立つと、なかなか地上のリングには戻れなくなる」
「じゃあ、あんただってやめたほうがいいじゃないか!?」
リング上では、一方の女に疲れが見え始め、勝負が見え始めていた。
「黙ってたけど、あたしはこのリングの出身なんだよ」
166女悪役ブルース:2009/06/20(土) 23:34:18 ID:Rpme7ULi
「ゼロが地下プロレスの出身!?」
「そう、ここであたしはあらゆる格闘技のエッセンスとレスリングの
基本を教わったの。キャットファイトとはいっても、金が動くから
常に真剣勝負。当然、中には格闘センスを磨かれ強いレスラーが
あらわれることもある。あたしが全く正体不明でデビューできたのも、
非合法なこの賭博プロレス出身だったからなんだよ」
巷間マスコミで噂されていた、ゼロの正体不明の真実の理由を知り、
純は何も言えなかった。そして、リング上では無理な体勢から
バックドロップを決め勝敗が着いていた。
その後、純には予想外の事態がリング上で起こった。
勝った方の女が、負けて失神している女の水着を脱がし始めたのだ。
167女悪役ブルース:2009/06/20(土) 23:50:54 ID:Rpme7ULi
「ちょ、ちょっと!な、何してるのあれ!!」
聞かれて当たり前のようにゼロは「これが地下プロレスのルールなんだよ!
KOしただけじゃ勝敗は決まらない。全裸に剥いて、ほらあーいう風に
抱き上げて相手の股間御開帳して、初めて勝ちなのさ」
水着を脱がした女は、失神している女の上半身を起こし、太腿の下に
両手を入れると一気に持ち上げた。調度正面にいた純の眼前に
何の遮蔽もなく、女性器が飛び込んでくる。あわてて純は目をそむける」
「目をそむけるな!!いいか、女が闘って負けるってことはこういうことなんだ
よーく見て頭に叩き込んでおくんだ!!」
ゼロに叱咤され、おそるおそる顔を向けると、長円状に密生した陰毛と、それに
囲まれた陰唇が幾重にも重なり、中心の内臓へとつながる部分がまるで
生き物のように見えた。
168巨人の星その後95:2009/06/20(土) 23:52:37 ID:BC+Z0Qjy
諌死、武士道で言う主君を誡めるために、武士が命と引換えに物をいう。
そんな言葉を京子は知らなかった。
左門は飛雄馬の主君ではない。しかし自らの投手生命と引換えに伝えた内容は、
飛雄馬と左門にとっては、このような形でしか伝えようがなかったのかも知れない。

自分が、新幹線の車中で左門に投げたリンゴが魔球の正体で、
自分の不自由になった小指が元で、飛雄馬が禁断の魔球を思いついたこと、
そして気づかなかったが、実はその場に飛雄馬がいたこと。
飛雄馬が自身の投手生命を知って投げていたこと。
飛雄馬が自分のことを「ズベ公だが、心に真珠をもった女性」と左門につたえていること。
そしてこのままでは「どこまでも愛を知らずに堕落してしまう」ことを予見していること、
そして飛雄馬はこのまま去っていくつもりでいること、

すべてが堪らなかった。嬉しいとかつらいとか言うのではない。
とにかく堪らなくなってしまうその手紙の内容だった。

胸が張り裂けそうに、中から何かが湧き出してきそうだ。
そして京子の体中をレモンを頬張ったときに口の中に広がるジーンとした感覚が襲ってきた。
この感覚が来る予感はあった。いや、手紙を読む前からすでに来ていたのだ。
手紙を掴んでいる両手がジーンと痺れだした。それはすぐ肩まで押し寄せ、
つま先から伝わってきているうずきは、やがて京子の下腹部に届きそこで大きくなった。

それが胸の張り裂ける感覚と手の痺れと一体になり、ひとつのものになると
京子の脳天にせり上がって来た。

足元にハタッと手紙が何枚のも便箋と封筒ごと、音を立てて落ちた。
169巨人の星その後96:2009/06/20(土) 23:54:31 ID:BC+Z0Qjy
宇宙空間に放り出された。足元にもはや歩道橋の地面はない。
目の前にある欄干は存在するはずなのに、そこには見えない。
眼下を走っている第一京浜(国道15号線)は、にわかに消滅し、
そこはテレビでしか見たことのない星の海が広がっていた。
「ううっ・・」
声を出すが、自分の声が聴こえない。全てが無重力空間に吸収されてゆくようだ。
『消えゆく男が祈る。ひたすら祈る.』
手紙にあった文章が飛雄馬の声となって、京子の回りを漂う。
(ま・・・まって・・・!なにを・・・なにを祈るの?・・よく分からないわ・・・。)
しかしその飛雄馬の声は、こだまし反響しながら段々小さくなり、そして消えてしまった。
(まって!どこ?そこは、どこなのっ!いま、どこにいるのっ?ちょっと待ってってばぁー!)
京子は手を泳がせた。まだそう遠くには行っていないことを願いながら。
(き・・・消えないで・・・!アタシの前から・・・。消えないで!どこへも行かないで・・・。)
一瞬、あの新宿のバーカウンターで、困った表情で自分を見ていた飛雄馬の顔が、
そこに浮かんだと思った。しかしすぐに音もなく消えた。
そしたらすぐに、鬼怒川組の事務所で、燃えるような目付きで『俺の腕を、斬れ』と言ったあの
激しい顔が浮かんだ。でもまたすぐ消えた。
そして、最期はユニフォーム姿だった。京子に背を向けていた。小さい背中に16の背番号。
それが、こちらを振り向いた。笑っていた。淋しそうなのか、どうなのかは分からなかった。
でもその振り返った笑顔は、すぐにもとの向きに向き直り、京子から立ち去ってゆくところだった。
(いかないでー!そこにいてー!ずっとアタシのそばにいてー!)
そんなことは京子は誰にも言ったことがなかった。言いたいと思ったことは、あっただろうか?
いや、それを心の中でさえ叫んだことはないはずだ。かつてこんなことは一度もなかった。
背番号16を追いかけて、京子は駆け出した。いつの間にか全裸になっていた。
なんなのだ?これは。しかしそんなことに構ってられない。追いかけた。走って。
自分の前から去ってゆく星飛雄馬を。駆けた。追いつかなくては。捕まえなくては。
(待ってってば!星っ!待ちなよ!待てって!お願いよ、いかないで〜!)
しかしその姿は、やはり音もなくスッ・・・と消えた。
170巨人の星その後97:2009/06/20(土) 23:56:19 ID:BC+Z0Qjy
闇が晴れた。急に。
さっきまでの宇宙空間のような深い闇は、どこかへ突然消えた。
京子は、何分かまで前と同じように、歩道橋の上に立っていた。
自分の周りは、明るい。辛うじて日も差している。
現実に急に引き戻されても、訳が分からなかった。
もしや、もしや飛雄馬がまだ近くにいるのではないか?

しかしそこは歩道橋の上だった。
横を見た。ビルや屋敷が建っている。その一帯は丘陵のようだ。あの木々に覆われたところは何だろう?
泉岳寺なのだろうか?なぜ今、自分はここにいるのか?ではあの丘陵は白金台なのか?
反対側を見た。何本もの線路が敷かれている。すごい数だ。どこだろう?ここは。
その向こうに工場が立ち並んでいる。その向こうは海だ。東京湾なのか?

いつのまにこんなところに来ていたのだろう。飛雄馬は?
星飛雄馬は、何処へ行った?陰も形も見えない。
そっちのほうが幻覚で、いま見ている景色が現実なのだろうか?
知らず知らずに胸に手を当てた。おかしい。服を着ている。さっきまで全裸だったのに。
いつの間に脱いだのかは、覚えていない。でもなぜか自分は全裸で星飛雄馬の背中を追いかけていたのだ。
上も下もない、全く音もないような宇宙空間を自分の前から去ってゆくところの星飛雄馬を。

ハッと京子は気づいた。自分の足元に何かがある。何だ?これは?
大きな塊、庭石のようだ。動かないようだ。なんでこんなところにこんな巨大な庭石があるのか?
なぜだろう?しかしさらに驚くことが起こった。
なんとその巨大な庭石が、喋ったのだ!
「ひっ・・・・・ひぃーっ!」
「京子さん・・・・。ワ・・・ワシと・・・。けっ・・・結婚してください・・・。」
171巨人の星その後98:2009/06/20(土) 23:58:33 ID:BC+Z0Qjy
それは巨石ではなかった。人間だった。グレーのハーフコートを着た人間がうずくまっているのだ。
京子のほうに、後頭部を見せている。刈り取った髪の毛が、やや伸びたままの状態だ。
これは、土下座しているのか?なぜ土下座されているのか?
京子には何が何だか分からなかった。
それは、左門豊作の土下座した格好であった。自分に向かって土下座をしている。
なぜ左門が自分に土下座をしているのか?
いや、なぜ、今自分の足元に左門がいるのかさえ理解できなかった。

夢なのだろうか?これも。
さっきまで宇宙空間に浮かんだまま、何もない空間に歩み去る飛雄馬を追いかけていた。
それが急にここへ引き戻されたと思ったら、左門が自分に土下座している。

そうか。自分は左門と逢っていたのだ。ここで。
電話を貰い大洋漁業のあるビルに左門を待たせて、そこで逢うつもりが、
その途中のこの歩道橋の下から反対車線側を歩いていた左門を発見し
お互いがこの歩道橋にあがってきて、ここで逢っていたのだ。
思い出した。   でも。
なんで逢っていたのか?何のようだったのか?
それにいままで何の話をしていたのだったか?
京子にはとっさに思い出せなかった。それほど飛雄馬を追いかけた一瞬のトリップは、
京子にはリアルで確かにそこにあった感覚だったのだ。
172巨人の星その後99:2009/06/21(日) 00:00:26 ID:BC+Z0Qjy
「うううっ!うぐっ・・・」
何か岩が、いや左門がうめいた。言葉ではない。しかし何か声を低く出しているのだ。
今、何か岩が、いや左門が喋った。低く。
一体何を喋ったのだったか?よく聴いていなかった。
なにか大事な話だったのだろうか?内容よりシチュエーションが理解できず頭に入って来なかったのだ。

「ちょ・・。ちょっと・・・・なに?なんて・・・・それに、これ・・・、どういうことぉ?」
怪訝に京子は聞き直した。それは照れ隠しでも駆け引きでもなかった。
ほんとうに訳が分からなかったのだ。

ビューと風が京子の前を行き過ぎた。髪が目の前をひるがえり、視界をさえぎった。
その髪をかきあげて、顔を左門に向けて見下ろすと、もう一度言った。
「ちょっとぉ・・左門さん?なに?なんて言ったの?いま。」

岩は、いや左門は、土下座のまま京子ににじり寄った。
まるで正座したまま歩伏前進しているようだ。その前進は50センチほどで止まると、
またもや京子には理解できないことが起こった。
岩が奇声ともとれる大きな声を出したのである。
「ワシと結婚してくださいっ!左門豊作!一生のお願いですっ!」
173巨人の星その後100:2009/06/21(日) 00:02:12 ID:BC+Z0Qjy
「えぇ〜?困るわよ。アタシ逃げるから。」
「そう言わずに、ちょっと聴け!おまえ。」
京子は、バッグひとつ持って肩に掛け玄関で靴を履きかけた。
やや薄暗い蛍光灯の下に鉄二が、ちゃぶ台を横にあぐらをかいていた。
「逢うだけでも、逢え。何もコソコソするこたぁないだろ。」

京子は鉄二と同居していた。実家にも帰らなくなっていた京子が、
女の身ひとつで、ホテルや旅館が泊めてくれない現実に、
途方に暮れて、当時の鉄二の部屋から深夜にかかる時間になっても
出ようとしないことを、最初はとがめた鉄二だったが、
どうやら本当に家に帰りたくない様子で、しかも未成年の女性が独泊もできないのだからと
一晩泊めてしまったのが、始まりだった。

鉄二は元々は、兄がその妻と子供が一緒に住んでいる家の裏庭に、今で言うプレハブにも満たない
掘っ立て小屋のような木造の離れを建て、そこに寝起きしていた。京子を最初に泊めたのはそこである。
しかし食事は、兄一家と一緒だったり別々だったりしたが、兄の本宅の茶の間で食べていた。
風呂もその本宅で浴びていた。好きで銭湯にいくこともあったが。

しかし京子がずっと鉄二の離れで寝泊りするのであれば、その生活はそれ以前のままとは行かなかった。
鉄二はにわかに、東浅草の商工会館の裏に建っていた文化住宅に引っ越したのだった。
174巨人の星その後101:2009/06/21(日) 00:04:08 ID:BC+Z0Qjy
場所が吉原に近いことから、それを知った兄やその妻、
そしてそれを知ったバイク屋の近所の同業者や仲間は、
「鉄二が独り身に耐え切れなくなり、ついには吉原に居を構えた。」
と揶揄した。
しかし実際その築30年以上の空襲にも焼け残った文化住宅は、老年の単身者も多い
場末の雰囲気とは裏腹に、鉄二と京子の愛の巣となり始めたのだった。

低所得者層が多いその近辺だったが、治安は良かった。
近所に鉄二の父の代からの付き合いのある人間もたくさん住んでいた。
「ベッピンさんじゃのぉ〜。堀の中から攫ってきたんじゃね〜かい?ヨォッ!この野郎!」
堀の中とは、昔に堀のあった吉原遊郭のことを言ったのだが、
もちろんそんな近所の住人が本気で言っているわけではない。

京子と鉄二は、早朝から南千住の水神大橋の下の隅田川河川敷か、
荒川の四ツ木橋のたもとの河川敷で、京子のオートレーサー目指しての特訓を終えると
その文化住宅に朝食を取りに戻りそれから、鉄二は上野7丁目の店に、
京子は浅草6区から国際通りを渡ったところにあるすき焼き屋に朝10時に出勤した。

仕事は京子のほうが遅くなる。鉄二は上野から徒歩で、合羽橋本通りを
そのすき焼き屋まで京子を迎えにいく、そしてふたりで帰宅していた。
そんな生活が3ヶ月目に入ろうとしていた頃、
隅田公園には桜が舞い散る季節になっていた。
昭和43年4月、京子はすでに女になっていた。
175巨人の星その後102:2009/06/21(日) 00:06:18 ID:BC+Z0Qjy
「あのなあ、会ってちゃんと、おとっつぁんに説明するんだ。
 オイラも説明すっからよ。こういうのは、コソコソ逃げ回るのが一番いけねえんだ。」
「でも・・・・。そんな説明してわかる親なら、アタシここにいないわよ・・・。それに。」
「それに?なんだ?」
「アタシ、あの人に会いたくないの。・・・・どうしても。」
「あのなぁ〜、んなこと言ったってしょーがねーだろが。こんままいつまでもって訳にゃあ、
 おまえの住民票だってまだもとのまんまだろ?
 この際、きちんと話しようや。なっ!オイ!聴いてんのか?」
鉄二にすれば京子のためを思えばである。いつか若き日の挫折で、女性の親に会うなど
本当なら考えたくもなかった。
というより鉄二は京子を妻にしようなどとは、まだ考えていなかったのだ。
とにかくも京子の思い通り、オートレーサーにしてやる。それが第一だった。
同居は確かに好ましくないとは、思っていた。緊急事態だったので、同居してはいるが、
京子の親がダメと言い、京子も実家に帰りたくないのであれば、
鉄二が保証人になってでも、京子にアパートを借りてやればいい。
そのぐらいの手間は何でもなかったし、金額的にも不可能なことではなかった。

「そこへ座れ。おい。」
京子は素直に、玄関で履きかけた靴を脱ぎ、文化住宅の鉄二の今座っている6帖敷きの
茶の間に、チョコンと正座をした。
「いま一番大事なのは、おまえがレーサーになることだろ?
 そんためには、ちょっとやそっとのことは我慢すんだよぉ。分かるだろ?」
京子は正座したまま、首を縦に振り小さく肯いた。
「ここに住んでるのが、おまえのおとっちゃんにとって具合が悪けりゃ、
 お互い一番いい方法を考えるんだ。わかるだろ?」
176巨人の星その後103:2009/06/21(日) 00:08:13 ID:7EKycvtJ
「でもアタシ、今のままが一番いい。鉄さんとここにいるのが一番いいの。」
「あのなぁ〜。おまえ。本人目の前にしてノロケられても
 こっちゃたまったもんじゃねーやな。
 それがいいとか、悪いとかじゃねー。ちゃんとレーサーになれることを
 一番に考えるんだ。そこが一番なんだよ、それ外したらいけねえ。
 レーサーなんねえんなら、オイラとおまえもこれまでだ。なっ。
 オイラ、おまえがレーサーになるから面倒みてんだぜ。」
鉄二は言ってしまってから(しまった。。。。)と思った。

お互いに愛を囁きあったことなどないが、鉄二もまた京子を愛していた。
何よりも愛していた。レーサーになるならないは、その次だった。
しかし京子の父親がこの文化住宅を尋ねてくるというとき、
ロミオとジュリエットみたく、愛の言葉を交わすのも照れくさかった。

鉄二は京子のことを別に周囲に隠したりはしていなかった。
兄とその家族にも、仕事の仲間にも自分の店の近所にも顧客にもである。
しかし、こうだと説明したこともなかった。
女子高を休校して浅草で働き出したころ、京子はまだ辛うじて家には帰宅していた。
最初に会ってまもなく一年が経とうとしていた。家に帰らなくなり、
ここに鉄二と暮らし始め、この台東区一帯が京子の生活圏になって、
それがいつまでと続くとは考えていなかったし、とりあえずレーサーになるまでだ、
そう言い聞かせていた。しかし京子がどういうつもりなのかを
改めて鉄二は聞いてはいなかったのである。

177巨人の星その後104:2009/06/21(日) 00:11:02 ID:7EKycvtJ
上野の店にも頻繁に京子が出入りしているところを誰かが見たのか。
隅田川や荒川の河川敷でオートーレーサー目指しての練習を誰かが
目撃して、そして調べていたのかは、分からない。
あるいは、京子の勤めるすき焼き屋は大変な繁盛店である。
そこで見かけた人が父親に通報したのも考えられる。
いま、二人が住んでいる場所は吉原まで歩いて1分とかからない場所だ。
そこへ外部から来た人間が京子を見かけて、ここを突き止めた可能性もあった。

そして今日、鉄二の店に電話が掛かって来た。京子の父親の経営する
貿易会社の社員からだった。名前は名乗らなかった。
今日の夜、10時にここへ来るというのだ。京子の父親が。
断る理由はなかった。そんな遅い時間にいいのか?と逆に鉄二が聞きたいぐらいだった。
しかし相手はこちらの行動パターンまで知っているようだった。

上野の鉄二の店は夜8時まであけていた。なるべくあけているほうが、客も喜んでくれるからだ。
隣の店やその隣の店のように5時や6時にしめていたのでは、
客だって職業や学校があるのだ。マシンを診てほしいときに、診てやれないだろうと思ったのだ。
修理に時間がかかるような場合は、上野の駅前なのだ。
国鉄でも京成でも地下鉄でも都電でも、その日は電車で帰ってもらえばいい。
兄は仕入れや顧客回り、帳簿を見ていたが、この店で
マシンのことを何でも分かるのは鉄二ひとりだ。自分はなるべく店にでていなければならない。
そう考えていた。それから京子を迎えにゆき、二人で浅草近辺のどこかで夕食をとり
二人で帰宅するのは、いつも9時半頃だった。
178巨人の星その後105:2009/06/21(日) 00:12:59 ID:7EKycvtJ
「おまえが、おとっつぁんのことを言いたがらないのはな、
 よくよくの事だとは思う。言うのも思い出すのも嫌なんだろう。
 けどよ、こんままじゃどうにもなんねえ。
 おまえもこの際、おとっつぁんに言いたいこと言ってみろ。
 そのほうがいいぜ。そうだろっ?」
京子は黙ったまま、ゆっくり肯いた。観念したというより、
頭の中を整理しているのだろう。そういうとき京子はいつも黙っているのだ。
言い返したいことがあるとき、考えがまとまっているときは、
京子は鉄二には、何事も隠さずズバズバ言ってくるのだった。

「ふぅ〜っ」と鉄二は溜息をついてしまった。座布団もだしておかなければならない。
ちゃぶ台の前から腰を上げた鉄二に、壁にかけてある一枚のポスターが目に入った。
同時に京子もそれを見た。
それはポスターではなかった。大井オートレース場で、京子がカメラに収めた写真を
写真屋で引き伸ばしてもらったものを、パネルに貼り付けたものだった。

体をハングオンさせて傾けバイクを疾走させているその写真は、広瀬登喜夫の姿だった。
川口レース場の所属だったが、ダートでも舗装路でも、
この時代前人未到の大活躍をしていた当代まだ30歳そこそこのオートレーサー。
その姿を京子と鉄二は黙って見上げていた。
179巨人の星その後106:2009/06/21(日) 00:14:48 ID:7EKycvtJ
それっきり岩は何も喋らなくなった。
京子に顔を見せることもなく、土下座して、うずくまったままである。
これは、からかっているのだろうか?
何故左門が自分と結婚したいなどと言っているのだろうか?
そのぐらい京子には左門の告白が、唐突もなく、また素っ頓狂にも思えた。
「ちょっと何、言ってるの?左門さん。あんた頭おかしいんじゃないの?」

意地悪したつもりはなかった。京子とて今、他人を気遣っている心の余裕などなかったのだ。
そこへ歩道橋に一人のサラリーマンが、登ってきた。
ツカツカと歩き、京子とそして土下座したまま岩になっている左門を発見し
一瞬ギョッとなったようだ。二人を見比べるように二度見、三度見すると、そのまま立ち去った。

「ちょっと左門さん、顔上げてよ。そんな格好いつまでもされてたらアタシ、困るわよ。」
屈んで左門に寄ると、左門の岩のような背中を揺すった。
左門の背中は動かないが、凄い勢いで左門が呼吸を荒らしており、
そしてその動悸は、背中に当てた京子の手の平にも伝わった。

(え〜?まさか・・・・。まさか本気で?本気でアタシにプロポーズしてるわけ?な・・なんで?なんでよ?)
返事も何も困ってしまった。また通行人である。今度は幼い子供を連れた主婦だった。
「あのぉ〜、具合でもお悪いんですか?救急車、呼びます?私、呼びましょうか?」
主婦は、心配そうに左門を覗き込むと、京子に視線を移しそう話し掛けてきた。
「いっ・・いえ・・・。いいんです!そんなんじゃないんです!す・・すぐに良くなります。結構ですから。
 ありがとうございます。」
京子は、取り乱したが、何とかその親子連れをやり過ごした。
去っていく親子のうち、幼子だけが、二人のほうを振り向いた。そして手をつないでもらっている母親に
目線を上に向けて問い掛けた。
「ママァ〜。あのひとたちケンカしてるの?」
母親は京子の聴こえるところで返事するのは憚られたのだろう。忙しく子の手を引いて
歩道橋の階段を降りて行った。
180巨人の星その後107:2009/06/21(日) 00:17:07 ID:7EKycvtJ
京子は自分が落としてしまっていた手紙を拾い上げた。
そうだ。この手紙だったのだ。
これを読んで自分は、取り乱してしまったのだ。
そしてこっちが読み終えるかどうかのタイミングで、
左門は土下座の告白に踏み切ったのか?多分そうだろう。

立ち上がると京子は、手紙をよく整え、バラバラになったのを
便箋の(1)から(4)までを順番に揃えた。

頭を整理しなければならない。そうだ。
よく整理しないと、左門であれ誰であれ、どのような話の内容であれ、
自分は何を言い出すか分からない女なのだ。それとも黙り込んでしまうかのどちらかだ。
とにかくもう一度、読んで頭の中を整理してみなくちゃ。

左門に返事もなにもない。何か変な夢の続きが、さっきからずっと続いている感覚なのだ。
手紙を再び読み始める前に京子は左門に断った。
「左門さん!そんな格好はやめてちょーだいっ!アタシ、ほんとに怒るわよっ!」
もう怒っているではないか?
左門は蒼白となった顔を上げた。まるでそれは、判決を言い渡すと言われた被告人のようだった。
「立ってッ!左門さんっ!そしてちょっとあっち向いててっ!アタシまだ読んでないのよっ!わかったっ!どうなのっ!?」
「わ・・・わかりもした・・・・・。ワシ、ワシ、まだ向こう向いとりますたい・・・・。」
左門はゆっくり立ち上がるとパッパッとズボンの埃を払い、
そして再び京子に背を向けた。その肩はワナワナと震えていた。

=つづく=
 
181人間兇器外伝ガイド:2009/06/21(日) 13:13:58 ID:3sZ6HVsH
ガイド:
人間兇器(中野喜雄:劇画)1979年〜1985年 日本文芸社 漫画ゴラク連載
第4巻の126ページから141ページまでだけ登場するニューヨークの女子プロレス王者
を主人公にしたエロパロです
作中に彼女の名前は出来ていません
マジソン・スクエア・ガーデンのドレッシング・ルームで試合後
シャワーを浴びていたところを、人間兇器の主役、美影義人にレイプされてしまいます
凄い人種差別主義者にて、高慢チキ、身長は170センチはあるようです。
黒い長い髪に、挑発的な鋭い目をしていますが、
客の前では、典型的ベビーフェイス、少年少女ファンの対しては愛と勇気を説いたりする
マジソンのヒロインである彼女が、悪夢のシャワールームのレイプの後
空心会カラテ・ニューヨーク支部の指導員、美影義人に復讐を企てるストーリーです
182人間兇器外伝1:2009/06/21(日) 13:17:31 ID:3sZ6HVsH
ーミスティ・ブルー、リングのシンデレラー
ミスティ・ブルーは美貌の女子プロレスラーである。
当年24歳、フロリダ州セント・ピータースバーグ出身
地元フロリダで、ミス・フロリダに選ばれた後、モデルやキャンペーンガール
テレビ映画にも出演していたが、彼女の目標は映画女優だった。

野心的な彼女が、陸上競技をやっていた経験と運動神経を生かして
女子プロレスからスカウトを受けたときは、最初問題にもしていなかった。

プロレスなど所詮はサーカス、ジョービズとしては最も安物の部類に入ると思っていたからだ。
しかし、地元フロリダの興行師が、三顧の礼で願い出てきたNYの興行師
ウィリー・ギルセンバーグとのセッティングには、場所がNYのアストリア・ホテルという
超一流であったことから彼女は一度だけ応じる気になったのだ。

ファイトマネーは、1試合3000ドル、基本的に地方のサーキットには参加する必要はなく
NYマジソン・スクエア・ガーデン、ペンシルバニア州フィラデルフィア・スペクトラム
マサチューセッツ州ボストンのボストン・ガーデン
メリーランド州ランドーバーのキャピタル・センター そして
NY州ユニオンデールのナッソー・コロシアムという
月に5度だけの定期戦、スペシャル・プレミア興行大会に出演するだけ
あとは、週一度のNYのTVスタジオでのTVテーピングスに出演するだけでいいという。
月収2万7千ドルを保証された6ヶ月契約、グラビア撮影、雑誌取材は別途支払いで
試合はすべて、ミスティの勝ち、試合は10分以内でよいという。
183人間兇器外伝2:2009/06/21(日) 13:20:14 ID:3sZ6HVsH
破格の条件に、ボディガードが2名つくという。
ギルセンバーグはミスティの嫌いなユダヤ人だったが、彼の出した条件は
彼女に自分の名前と知名度を上げ、ハリウッド入りするステップとも考えられ
しかも破格の収入まで得られるという好都合。
父の推薦する弁護士立会いのもと、ミスティは6ヶ月だけリングにたつことを
承諾する契約を結んだ。

30歳過ぎのベテラン女子レスラーが、覆面女子の汚い反則攻撃に耐え、
その悪徳マネージャーにも攻撃を加えられてるブックの
マジソン定期戦での光景は、当初は観客はトイレタイムとしか考えていなかった。

そこへ颯爽とミスティが加勢に乱入した。2名の悪役をたちまち退治し
コーナーにヨロヨロと立つ覆面悪役に、抜群の運動神経を利したサマーソルト・キック
続いて場外にフラフラと立つ悪役マネージャーにプランチャ
ミスティは一夜にして、マジソンのシンデレラとなったのだった。
184人間兇器外伝3:2009/06/21(日) 13:21:57 ID:3sZ6HVsH
ミスティにプロレスへの愛着など何もなかった。
したがって相手のレスラーへのリスペクトも何もない。
それが態度にも出て他のレスラーからミスティはいい感情は持たれてなかった。

しかしこの世界はプロモーターの意思は絶対である。
しかもギルセンバーグは、男子のプロレスのプロモーターの大物だったが、
エース、マイケル・ダグラスを頂点に立て、プロレスのイメージアップを図っていた。
さらに興行のスパイスとして、ミスティに白羽の矢を当てて、
女子の試合も1試合組み込むと同時に、女子プロレスというカテゴリーの
マイナーで場末のイメージも一新し、巨額のドルが転がり込む
ビッグビジネスへの転換も考えていた。

ミスティのデビュー1ヵ月後には、人気のテレビ・アクション映画にも本人役で出演、
単なるゲストにすぎなかったが、事件に巻き込まれるも必殺キックで悪党をぶちのめすストーリー、
しかもその悪役俳優が、その次の定期戦でミスティにチョッカイをだしてくるブックにも
観客は熱狂、彼女の存在はアメリカ東部では知らない人はいないほどになった。
185人間兇器外伝4:2009/06/21(日) 13:23:46 ID:3sZ6HVsH
投げ技などもちろんできなかった。これには対戦相手がうまく協力して投げられてくれた。
受身の心得だけは、ジムで練習していたミスティだったが、
彼女の定評を得たドロップキックも本当をいうと相手にマトモに当てることもできなかった。
それでも相手はうまく倒れてくれた。
それでもミスティは相手を見下していた。所詮プロレスなんかの世界にしがみついてる女に
ロクなのはいない。多少ワザがうまくても、そんなものを真剣にやる価値もない。
自分はミス・フロリダであり、ハリウッドでも通用する美貌を持ち具えている。
一緒にされるのは、金輪際いやなことだった。

彼女がWWWF認定世界女子チャンピオンの決定戦に勝利したデビュー3ヶ月目の
マジソン定期戦のあと、ギルセンバーグは契約更新を早くも求めてきた。
ミスティは保留した。金額は最初の2倍だったが、彼女は一刻も早く汗臭いリングを離れ
ハリウッドに行きたかったのだ。事実、ハリウッドの映画専門のエージェントからも話がきていた。
それは、まだ彼女が満足する条件ではなかったが、もっと条件が良くなる可能性もあった。
186人間兇器外伝5:2009/06/21(日) 13:25:38 ID:3sZ6HVsH
「6ヶ月では弱いよ。ミスティ。せめて1年は東部の人の前に立ってファイトしないと
キミを誰でも知ってはいても、すぐ忘れられてしまう。
1年ファイトしてキミはそのイメージと人気を不動のものにしなければいけないよ。」
 
ギルセンバーグはそう説いた。彼女も考えるところはあった。
ところが事件は突然起こった。
ミスティがWWWF世界王座を初防衛したマジソン定期戦のセミファイナルのあと、
リングに登場した男子の英雄、WWWF世界ヘビー級王者マイケル・ダグラスを
激励するためリング上に残っていたミスティはダグラスにマイクを持ってこう言ったのだ。
「尊敬する帝王ダグラス!!カラテなんて問題でない、プロレスの最強を示してくださり
あたし達の女子プロレス界でも感謝してましてよ!」

そう言うとミスティはリング上のダグラスの頬にキスをした。
「サンキュー、可愛いチャンピオン」
ダグラスもマイクに音声が乗るように返した。
187人間兇器外伝6:2009/06/21(日) 13:27:40 ID:3sZ6HVsH
「カラテなんて結局は負け犬よ!帝王を怒らせたんだから。
あと一ヶ月もすれば、NY州の電話帳にカラテ・ジムの名前は一軒もなくなるわッ」

満員のマジソンの観客から、ドッと笑い声が起きた。
帝王ダグラスは、この昨今カラテ・ジムからの挑戦を受けており、
先日そのカラテ・ジムの支部長を、報道陣への公開マッチで返り討ちにしていたのだ。

このプロレスVSカラテの抗争が、ブックなのか真剣勝負なのかは、ミスティにはどうでもいいことだった。
しかしこの夜、ミスティがリング上でマイクで発した言葉は、
ギルセンバーグに要望されたり命令されたものではなかった。
あくまで彼女の機転の利いたリップ・サービスだったのだ。

その直後、ドレッシングルームでシャワーを浴びていたミスティは日本人のカラテ指導員
美影義人の襲撃を受けた。
この夜の対戦相手、黒人のジェーン・ファーゴをシャワー室から「臭い」と言って追い出し
試合コスチュームを半分上半身だけ脱いでシャワーを浴びていたところをいきなり入ってこられたのだ。
188人間兇器外伝7:2009/06/21(日) 13:29:20 ID:3sZ6HVsH
いきなりシャワー室のドアが開いた。
「キャッ!?」
「ヘヘヘヘッ・・・・・」
見たことのない大して体格も大きくない日本人が普段着で立っていた。
たんなる馬鹿な変質者かストーカー的なファンとミスティは思った。
「ナメた真似すると後悔するわよ!あたしを女子プロレス中量級のチャンピオンと知りながら
頭が狂ってるの 黄色いチンピラ?おまえ達の三人や四人・・・・」

そこまでミスティが毒づくといきなりカラテの裏拳がミスティの頬に飛んできた。
「ホゲーッ」

倒れ掛かるミスティをその変態日本人は抱え上げると、すばやく試合コスチュームを
脱がせてしまい全裸にした。

「てめえこそカラテをナメてくれたしよ てめえのケツこそ汗臭いじゃねえか!」

相手はダグラスと抗争中のカラテ一派の人間だったのだ。
189人間兇器外伝8:2009/06/21(日) 13:30:33 ID:3sZ6HVsH
「カ・・・カラテ!? ゆ・・許して・・・悪気はなかったの・・・殺さないで!」
ミスティは本気で恐怖した。相手が悪すぎる。今喰らわされた裏拳の一撃でも
加減はしていたのだろうが、ミスティが受けたことない衝撃であり
凄まじい痛みを与えられたからだ。

日本人はミスティの髪を掴んで顔を見ると、今度はその顔をシャワー室の床に向けて
押さえつけ、ミスティを四つん這いの姿勢にしてしまった。

「勝てそうな相手だとトサカにくるだけじゃなく、俺は生来、
正義の味方づら、黄金バットが大嫌いでな!女黄金バットにおれの太いバットをくれてやるぜ!」

そう言い放つと日本人カラテマンは、ミスティの四つん這いで露わになった秘所に
いきなり一物を挿入してきたのだった。
「ウギャア〜ッ」

屈辱に打ち震え、悔し涙を流すミスティに対して、ズボンを穿きなおしながら日本人は言った。
「フフフッ・・可哀想によ レイプされて騒げねえのは良家の夫人や令嬢と
女子プロレスラーだよな。おれみたいな黄色いガキのカラテ屋に手込めにされたとあっちゃ
これから商売にならねえってことを・・」
ミスティのチャンピオンベルトをその四つん這いになったままの尻に乗せた。
「そらよ 栄光のチャンピオンベルトの重みで、よーく認識しときな。」
190人間兇器外伝9:2009/06/21(日) 13:32:24 ID:3sZ6HVsH
「ハハハハ!!なんともいいザマだ!女子プロレス界の正義の黄金バット、
レイプホールドの図!」
四つん這いの尻にチャンピオンベルトの乗せられて、屈辱の涙を流すミスティを
日本人レイプ魔はそう揶揄し、高笑いしながらその場を去っていった。

ミスティは復讐に燃えた。いやらしいギルセンバーグよりもまずダグラスに相談した。
「カラテ一派との問題は、デリケートだ。私がリングで奴らをノシてしまえば、キミの溜飲も下がるだろう。」
そんな問題ではなかった。プロレスVSカラテの問題ではない。
ミスティ自身の誇りの問題なのだ。しかも相手はジャップである。

「ミスティ、落ち着くんだ。相手も武装したシンジケートだ。リング上の抗争が終われば
必ず組織を使ってでも、そやつに落とし前をつけさせてやるよ。だから待つんだ。当分は。」
ギルセンバーグはそう言ったが、額面どおりには取れなかった。恥を忍んで訴えでた甲斐がないというものだ。
しかもジャップにレイプされたことを腹の中で笑っているようでもある。

何処から洩れたのか、女子レスラーたちにも事は知れているようだった。
あの夜、シャワールームをミスティに追い出されたファーゴが言いふらしたのか。
ファーゴはジャップと通路ですれ違っていたはずである。
またミスティの悲鳴を聞いていたかもしれない。知っていて見殺しにしたのか。
ガードマンを呼ばなかったのか。ミスティは日頃の自分の態度を棚に上げて、許せないと思った。
191人間兇器外伝10:2009/06/21(日) 13:34:12 ID:3sZ6HVsH
ミスティはギルセンバーグがつけた2人のボディガード
モラレスとラモスに持ちかけ、個人的に復讐することにした。

まずファーゴをフィラデルフィアの会場で試合が終わった後に、
女子専用の控え室にファーゴを閉じ込め、モラレスとラモスによる制裁を加えた。
「いいこと、おまえ。黒人の分際でこのアタシの恥辱を言いふらすなんて、
許されるわけがないことを、よく覚えておくことね。このニガーがっ!」

ことは、ギルセンバーグにも知れていた。苦虫を潰した顔でギルセンバーグが言った。
「ミスティ。気持ちは分かるが同業者にヤキを入れるとは、やりすぎだぞ。いい加減にしたまえ。」
「フンッ!ジュー(ユダヤ人)がニガーの肩を持つわけね。アハハ!お笑い種だわね!」

ギルセンバーグは人種的侮蔑をいちいちビジネスに持ち込むことはなかったが、
すぐに別の女子のリングのシンデレラをリストアップしにかかった。ミスティは知るよしもなかったが。

問題のジャップは、空心会カラテのニューヨーク支部の指導員、美影義人とすぐに判明していた。
調べるまでもなく、美影はマジソンのリング上にもカラテのセコンドやアシスタントで登場していたからだ。

「あいつのペニスをチョン切って、口に突っ込んでやるわ。それにアタシの恥ずかしいところを見たあの目を
えぐり出してやるわっ!モラレス!ラモス!いいこと!気合を入れてもいいけど、殺しちゃダメよ。
アタシがヤキを入れてやるまではねっ!」
「わかってまさぁ。ミス・チャンプの手で、間違いなく奴が悲鳴をあげる趣向にしてみせまさぁ。」
192人間兇器外伝11:2009/06/21(日) 13:36:03 ID:3sZ6HVsH
美影がひとりでいるところを狙わなければ、空心会一派まるごととの抗争や
騒動にするのは得策ではないし、空心会は目的でも仇でもない。

美影は、ひとりでマンハッタン29丁目の中華レストランにいるところを
モラレスとラモスにマークされていた。
美影はここで週に1度か2度、ラーメンという中華ヌードルを食べに来ていたのだ。
「やっぱ日本のラーメンが恋しいぜ。醤油味のな。しっかしチト違うが、ここの
ラーメンがこのニューヨークでは、一番、日本風のラーメンに近いぜ。」

ひとりでブツブツ言いながらラーメンを食べた美影は店を出たところを、
左右からタガーナイフをわき腹に当てられて、耳元で囁かれた。
「ジャップ野郎。騒ぐんじゃねーぜ。大人しくしな。一緒に来てもらおうか。
もっとも騒いだところで、周りの人間は助けちゃくれねーってのは、分かってるだろうがな。」

「誰だ?てめえらは?プロレス団体のヒットマンか!?」
「グフフ。察しがいいぜ。ジャップ野郎。ただし俺たちの主人は、てめえのカラテ・ジムが目的じゃねえ。
おめえひとりだけ八つ裂きにしたいっていう趣向だぜ。」
193人間兇器外伝12:2009/06/21(日) 13:37:32 ID:3sZ6HVsH
美影は心当たりを探した。
(おれひとり?誰だ?うちの道場じゃなしにおれだけを仇にしてやがるってのは?)
「さあ、あのリムジンに乗りな。言われたとおりにしねえと、ブスリといくぜ。」
「わ・・・・わかった。ところで何処まで引っ張っていくつもりだ?そ・・それだけ教えてくれや。」
「るっせー!言われたとおりにしやがれっ!」

そのとき美影は、両脇にいるモラレスとラモスの肩を掴むとそれを梃子にして
両足を蹴り上げると、モラレスとラモスの顔面に同時にハイキックを見舞った。
「ぎゃああっ!」   「ウゲゲーッ」
美影はたちまちその場を走り去った。美影を殺害する目的ではなかったので、
拳銃をもっていなかったのも、このふたりには災いした。追撃できなかったのだ。

顔を押さえてうずくまるモラレスとラモスに、近くに停めてあったリムジンからミスティが飛び出して走り寄った。
「何やってるのっ!おまえたち!このドジが!それでもこのアタシのボディガードなの!?」
「も・・申し訳ねえ・・・ミス・チャンプ・・・・つい油断しちまった。キックは大して利いちゃいねーが、
なにしろ恐ろっしく、早い蹴りだったもんで・・・・。」

その3人の様子を、美影は50メートルほど離れた雑居ビルの非常階段から観察していた。
「ムフフ・・・どうやら怖い話ではなく、お楽しみのネタのほうが、ネギを背負って舞い込んだか・・・・。」
194名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 15:06:38 ID:4pydU97R
まれに見る良スレだ すばらしい 週刊誌化せよ
195巨人の星その後108:2009/06/21(日) 19:11:42 ID:qmvXuF3c
客は帰った。ほんの10分ほどのことだった。
吉原に程近い東浅草の商工会議所裏の文化住宅に訪ねてきたのは
京子の父ではなかった。その社で雇っている弁護士だった。
「京子さんを帰さない場合、依頼人はあなたのこと、被害届を提出し刑事告発すると言ってます。」
京子も中学生のころまでに何度も見たことのある顔だった。
しかしあくまで相手は儀礼的に挨拶をしただけだった。
依頼人の実の娘である、顔も幼い頃から知っているという態度はおくびにも出さなかった。
京子もそれは同じだったが、京子のほうは理由は少し違っていた。

父が来ると思っていたのだ。父が直接自分に会いにくると、迎えにくると心の中では少しだけ期待していたのだ。
それは、京子と父が和解できる最期のチャンスのように思えた。
しかし相手はそうは思っていなかったのだ。
まだチャンスはあるか、あるいはもう父と娘の関係は終わってしまったと考えているのかも知れなかった。
京子にはそれが悔しかった。なぜ自分で来ないのだ?
自分の娘ではないか?言い返してやるつもりもあった。
母を不幸にしたこと、京子に断ることなく後妻を迎えたこと、去年いっぱい家には帰っていたが、
それでも一言もお互い口を利かなかったこと、それは京子にも非はあるが、
京子はもっともっと父親に甘えたかったのだ。
しかしその気持ちは、何も伝わっていなかった。何とも思われていなかった。

それどころか今夜はこの時間に来訪すると言っておいて、代理人を立ててきている。
どこまで馬鹿にすれば気が済むのだ?
196巨人の星その後109:2009/06/21(日) 19:14:19 ID:qmvXuF3c
「未成年者、略取または誘拐です。この場合7年以下の懲役となります。」
鉄二も怒りに言葉を飲み込んでいた。
相手は続けた。
「また営利、あるいは結婚もしくは性的な目的があったと見なされる
 営利誘拐または略取だと相手が未成年の場合10年以下の懲役です。
 あたなは、被害者の保護を目的としたと主張してもそれは通りませんよ。
 いいですか?これは犯罪です。被害者の保護者つまりこの場合は依頼人ですが、
 被害者を保護する義務があり、未成年の被害者の引渡しを要求できます。
 あなたは犯罪者です。わかりますね?」
「保護してこなかったのは、そっちだろがっ!今の今まで!違うか!」
鉄二は思わず言葉を荒げた。
「それは違います。今の今まで、あなたが被害者を略取していたのです。
 ただちに被害者を解放し、そして親権をもつ依頼人のもとへ帰る自由を与えなければなりません。
 おわかりですか?さもなくばこれは、拉致監禁にも相当してきます。」
「な・・・なんだとぉ・・・・きさまぁ〜。」
「被害者をオートレーサーにするとか、そんなことが通用するとお思いですか?
 届をだせば、すぐにでも警察は飛んできますよ。上野署だって近い。」
197巨人の星その後110:2009/06/21(日) 19:17:01 ID:qmvXuF3c
弁護士は言いたいことだけ言うと帰っていった。
言うには、明日中に京子が実家に帰らない場合、被害届を提出するという。
出すのは早くて、あさっての朝だと。

それは京子の父が、京子を取り返したくてやっているというより、
何か効果的な嫌がらせをしているとしか、京子には思えなかった。
怒っていたのは、本当は弁護士がいる間、黙っていた京子のほうが鉄二より強烈だった。
「京子・・・・・。」
鉄二も言葉を探しているようだった。何と声を掛けてやればいいのか?
しかし京子は、そのように人から労われる、慰められるのは嫌いだった。
性格が勝気とかいう以前に、どうも生理的にそういうのが嫌いなのだ。
「鉄さん・・。ご・・ごめんね。ヤな思いさせちゃって。」
「あのなっ!何言ってんだ、おまえ!そんな問題じゃねーべよ。」
「うん・・・・。そうね・・・・。アタシね・・・・。アタシ・・・・ちょっと散歩してくる。」
サンダル履きで、京子は、文化住宅を出た。まだすこし肌寒い。

時間が時間だ。でなくとも京子の様子が変だ。鉄二はあとから続いた。
京子は、路地を出ると隅田川の方角に歩き出した。
鉄二は、ドテラを着た格好で、京子の後、3メートルぐらいを歩いた。
月が出ていた。丸い月だった。
198巨人の星その後111:2009/06/21(日) 19:19:21 ID:qmvXuF3c
丸い月の下、品川警察から一人の男が出てきた。
誰も迎えに来ていなかった。また少し心配した報道陣もいなかった。
一人男は、海岸通りを歩き出した。
まっすぐ歩いた。そのまま旧海岸通りに入りまた歩いた。
品川駅に向かって歩いていた。周りの景色は目に入らなかった。
横を天王洲運河が流れている。もちろんそんなものは目に入らなかった。

昭和45年の11月上旬のある日、その年の10月に身柄を拘束され、
さんざ知らないものを知ってると言えと、強要されたまま
ついには起訴された。逃亡の恐れなしと見なされての仮釈放だった。

広瀬登喜夫は、ハメられたのだった。誰が?分からない。
話を持ちかけてきて断ったからか?単に自分が邪魔だったのか?
憶測で自分が関与したと証言した奴がいたのか?
それも確かなことは、分からない。しかし警察は広瀬が関与したと決め付けていた。
暴力団が、野球選手からまで金を集め胴元となっていたレース場以外でのノミ賭博に、
10数名のオートレース選手が関与したという『オートレース八百長事件』についてである。
199巨人の星その後112:2009/06/21(日) 19:25:08 ID:qmvXuF3c
言っても聞いてもらえなかった。
警察は大手柄で我が意を得たとばかりに、広瀬を拘束した。
スターを取り調べるのは、取り調べ官のステータスだ。
自慢のネタだ。落としたくて落としたくて仕様がない。
しかし広瀬はもちろん自供などしなかった。
やってないものは、やってないとしか言い様がないからだ。
証言したほうが、検察にも裁判官にも印象が良くなると言われた。
印象をよくしようと悪くしようと、やってないものをやりましたと言えというのは、無理な相談だった。

すでに起訴されたものは何人かいた。知ってる人間だ。本当にやっていたのかどうかは、
広瀬には分からない。そして理解できなかった。
好きでこの世界に入ってきて、八百長など。
最初からオートレースの世界が八百長で、八百長と分かって入ってきたのならまだ分かる。
しかしオートレースは公営ギャンブルだし、車券は、窓口で売っている。
でもオートレースそのものは真剣勝負なのだ。
何人もの仲間が、事故で命を落とした。命がけなのだ。超のつくほどの真剣勝負の世界なのだ。
200巨人の星その後113:2009/06/21(日) 19:27:49 ID:qmvXuF3c
これで、オートレースも終わりか?
八百長では誰も車券を買わないだろう。せっかくここまで盛り立ててきたのだ。
オートレースそのものが終わる以前に、自分が最早終わりだろうか?
八百長をやったレーサーとして。
しかしやってないものは、やっていないのだ。終わってたまるかという思いが広瀬にはあった。

18歳からしかなれないオートレーサーに憧れ、
16歳で年を2歳サバを読み、この世界で走り始めた。
勝って勝って勝ちまくった。それが恨まれたのか?恨みがあるなら勝てばいいじゃないか?
『負けてくれ、このレースは。金は・・・』と依頼を受けたことはあった。
もちろん断った。当り前だ。勝敗を金で譲れなど無理に決まっているではないか?
勝つためにレースをしているのだから。
それが分からない奴がいたのか?そんな簡単なことが理解できないで、
何人もの人間が八百長をやつてしまったのか?いくらかの金を手にして
自分が永久に失ってしまうもののことを考えなかったのか?

品川駅についた。売店はまだ開いていた。夕刊を買った。財布は品川署で没収されたが、仮釈放時に戻ってきた。
中は減っていた。こんなもんか?天下の公僕が。アホらしくて腹も立てる気がしない。
夕刊にはまだ『オートレース八百長事件:続報』として事件が載っていた。
表一面は、フランスのドゴール元大統領急死のニュースだったが、
内面は、まだまだオートレース八百長事件のことが、あれこれ書かれていた。
読む気もしない。川口までの切符を買うと広瀬はその夕刊をゴミ箱に捨てた。
201巨人の星その後114:2009/06/21(日) 19:31:28 ID:qmvXuF3c
日は少し傾いていた。薄雲に覆われてはいたが、辛うじてその光を
雲のスクリーンに弱められながらも、今、京子と左門のいる歩道橋に届けていた。

どれくらいの時間がたったのだろう。
ここで左門と今日会ってから。
とても永く感じる。久しぶりに左門の容姿を発見して、道路越しに声をかけたのは、
もう何日も前のことのように京子は感じていた。

冷たい風が通り抜けた。その冷たさは、京子の肉体のうずきを
静めて撫でるように通り抜けていった。慰めのつもりか?
慰めなどいらないのに。そんな中途半端なやさしさなどいらない。
欲しくもなんともない。京子が欲しいのは、強引に手を引っ張ってくれるような
乱暴なやさしさだ。頭ごなしに、押さえつけてでも京子を思ってくれるやさしさだ。

でも、それは、どこにもなかった。結局。
何度か今まで、それをあてにしてしまったことはあった。
けれどやはりそんなやさしさは、自分には与えられないものだったのか?
202巨人の星その後115:2009/06/21(日) 19:34:03 ID:qmvXuF3c
星飛雄馬から左門豊作に宛てられた手紙を、
京子は今二度、読み終えた。体のうずきは、消えていた。
それをおせっかいに気遣うように風が撫でてゆく。いらない。そんな気遣いはしてほしくないのだ。

左門にとっても、酷な話ではあったろう。彼なりに決心してきたのだろう。
それにずっとさっきから左門を待たせている。会ってからそれが伝えたいことだったのだろう。

京子にはやっと状況が飲み込めた。しかし左門をさっきから放置しておいて、
それがマズいとか申し訳ないとか、思わないわけではなかったが、
とても今の自分にそんな余裕はなかった。

落ち着くと悔しさがこみ上げて来た。勝った、負けたではない。
京子が悔しかったのは、あの遠い日に父が自分でやって来ず弁護士を寄越したときの感覚に似ていた。
左門がいい人なのは京子も知っている。分かっている。人の本質を見誤ったことは、自分ではないと思っている。

しかしそれとこれとは、別だ。飛雄馬が自分を避け、嫌うのなら仕方ない。嫌われたくない。
酷い女などと思われたくない。不潔な女だと思われたくない。それは女心だ。会えないまでも。
嫌われたなら諦めもつく。

しかし左門に自分へプロポーズせよとは一体何なのか?
するしないは、左門が決めればいいではないか?音も立てずに自分の前から去っておいて、
それが、星飛雄馬よ!おせっかいだというのだっ!
どうしても、それがベストだと考えるのなら星飛雄馬よ!自分の前に現れて何故そう伝えない?
何故男たちは、自分の前から姿を消したままなのだ?!いつもいつも!

203巨人の星その後116:2009/06/21(日) 19:36:18 ID:qmvXuF3c
京子は、手紙を持ったまま手を後ろに伸ばした。
後ろを向いているように言われてから左門にはかなりの時間が経過していただろう。
もしかしたら、もうこっちを向いているかも知れない。

「うう・・・。も・・・もうよかですか・・・・。」
案の定、左門は自分のほうをすでに向いていたようだ。
京子が後ろ手に差し出し返した手紙を受け取った。

そのとき京子は左門にはっきりと言った。その語彙は、いつもの竜巻のお京に戻ってた。
「左門さん。」
「あ・・・あの・・・・は・・は・・は・・・はい?」
「あなた、卑怯よっ!」
「は・・・・はぁ?・・・・え・・・・ええ?」
「あなたは、卑怯者よっ!」
「ワ・・・ワシが・・・ひっ・・ひっ・・卑怯モン?」
「そうよっ!あなたは、最低の卑怯者よっ!」
204巨人の星その後117:2009/06/21(日) 19:47:32 ID:qmvXuF3c
「ワ・・・ワシが・・・サイテーの卑怯モン?・・・うぅ・・・ううっ!」
「あなたね。アタシのことが好きなら好きと、どうして最初からハッキリ言わなかったのっ!?
 勇気がなかったから?断られると思ったから?
 それなら言わなきゃいいじゃないっ!そんなに腰抜けな男にアタシが、いい返事をするわけないって
 分かってるんなら言わなきゃいいでしょっ!ちがう!?
 それを星さんに・・・。星飛雄馬に、元気付けられたからって、
 このアタシが、オーケーすると思ってっ!?
 それで勇気百倍になって、アタシを探しといて、こんな手紙を見せて、
 それでアタシが、『ハイ、分かりました』なんてっ!
 アタシが言うとでも思ったのっ!?
 何か勘違いしてるわっ!あなたたちはっ!アタシを何だと思ってんのよっ!
 猫の子、くれてやるみたいに、『はい、そっちでどうぞ』なんてっ!
 いい加減にしてもらえないかしらっ!」
京子の声はだんだん大きくなってゆく。さらに大きくなって左門の胸を突き刺した。グサグサと突き刺し続けた。
「星もサイテーだわ。見損なったわ!アイツ!でもねっ!」
京子は左門のほうを、振り返った。もはや修羅のような顔をしていた。これがあの左門の女神さま
ヴィーナス、左門が思う美の化身と同じ女性なのだろうかと思うほど、目を見開いて
憎悪に満ちた顔と声で、左門に言い放った。

「アンタは、最低よっ!人間として男として、最低だわっ!最悪よ!クズよっ!」
言うが早いか、京子は駆け出した。カンカンカンと歩道橋を降りてゆく靴音が聴こえる。
そしてその足音もすぐに消えてしまった。左門は追いかけられなかった。
いや、身動きひとつできなかった。
終わった。何もかも終わった。左門豊作一世一代の賭けは終わった。
歩道橋の上に、白々しくお慰みのような風が吹いた。11月の弱い太陽がまた照り出した。
205巨人の星その後118:2009/06/21(日) 19:50:01 ID:qmvXuF3c
隅田公園の桜は、散り始めていた。
風は冷たかった。酔っ払いたちは、土手を南へと流れて歩いていた。
人の流れが疎らになりはじめ、夜桜見物のための提灯だけが
宴のあとのゴミの散らばった地面を照らしてた。
月は丸かったが、その光は弱く、川面にフラフラとその分身を漂わせている。

桜橋は黒いシルエットだけが、横たわりまるで、怪物が川を大跨ぎして
川に浮かぶ月を覗き込んでいるようにも見える。

京子はコンクリートの防波堤に肘を当て、川を見下ろした。
言問橋の上をまだ酔っ払いが闊歩しているようだ。
花見用の屋形船も灯りを消して今夜は店じまいなのだろう。
黒い長い影となって、京子の前を行き過ぎた。
『さあ、楽しかった祭の時間は終わりだよ』と言っているようだった。目に映るなにもかもが。
「京子・・・・・。」
背後で鉄二の声がした。
206巨人の星その後119:2009/06/21(日) 19:51:32 ID:qmvXuF3c
「京子、もう帰ろう。あしたも練習だ。・・・・・なっ!」
京子は無視したわけではなかったが、返事ができなかった。
「そんでな。一度、家に帰れ。なっ!それからふたりでまた考えよう。
 オイラたち、ちょっと急ぎすぎたな。ちゃんと手続き踏んで、それから
 やり直そう。なっ!」
もちろん全部、聴こえていた。でも返事はしなかった。
なんとなく面倒なのだ。それに嫌だった。こんなふうに弱々しく自分を諭してくる鉄二が。
もっと強引にいつも引っ張ってくれていたではないか?
何でも勝手に決めてしまっていたではないか?
京子が何か言おうとすると決まって「うるせえ!オイラの言うこと聞け!こらっ!」
と、頭ごなしに何でも進めようとしたではないか?
それを京子は、腹を立てたこともあったが、どこか面白く愉快で
そして逞しく思えたのだ。一度、京子の父親から圧力がかかったからといって
この豹変振りはなんなのだ?これが男が言う男のやさしさなのか?

「オイラにも考えがあるんだ・・・・。でもな・・・・。とりあえず一度、帰るんだ。
 悪いようにはせん。なっ!京子?・・・京子?聴いてるのか?」
207巨人の星その後120:2009/06/21(日) 19:53:20 ID:qmvXuF3c
なんなのだ?その気遣うような物の訊き方は?
もっと強引だったんではないのか?この男は?

鉄二は恐れていた。最悪の事態をである。あの若き日の挫折を。
それは、自分がこの世にいてはならない人間のように感じられた
あの遠い日に味わった屈辱へ、自分を引き戻そうとしているように思えた。
それをいつも京子に隠してきた。
というより、見せなかった。見せる必要もないと思った。
京子は何も自分を特別扱いしなかった。全く恐れようともしなかった。
女っぽく振舞って歓心を引こうともしなかった。
あまりにも、ありのままの少女だった。だけに、自分の挫折は説明などしなかった。
弱音など見せたくなかった。その天真爛漫さをありまま享受していたかった。

京子も弱みを見せなかった。家庭の事情は説明していなかった。
お互い感じたままに接してきたのだった。それが何かズレだした。

京子にとって今一番辛かったのは、父が姿を見せずに、圧力だけをかけてきたことだった。
なぜ姿を隠しているのだ?なぜコソコソ影で動き回っているのだ?
それでも男か?それでも父親か?手を下さずに解決すればそれでいいのか?
まして京子がそれに、『はい、分かりました』と言うとでも思っているのか?

しかしそんな京子の心中を、もちろん鉄二は今、理解できずにいた。
208巨人の星その後121:2009/06/21(日) 19:55:40 ID:qmvXuF3c
「鉄さんっ!」
「・・ん?・・・あ・・ああ?」
不意に呼ばれて鉄二は慌てた。まだ京子をどうやって説得しようか考えている途中だったのだ。
「鉄さん、アタシね・・・・。明日、休むわ、仕事。」
「え?・・・あ・・うん。そうだな。」
「それでね・・・・。アタシ、区役所いってくる!」
「く・・・区役所?なんでまた・・・・・。ん?まさかおまえ・・・・・・」
「うふふ・・・。婚姻届・・・じゃないわよっ!」
そういうと京子はいつもの京子に戻り、鉄二をからかうときにするキャッキャッとした幼女のような
はしゃぎ様に転じて、鉄二を驚かせた。
「ええ?オイ!?婚姻届じゃなきゃ・・・・区役所、なにしに行くんだ?オイ!」
京子は隅田川に沿って歩き出した。鉄二も後を歩く。
「住所変更してくるっ!江東と台東、両方いくのよ。」
「オイ!待て。あのなあ。そら今ぁマズいぞ、おまえ。それに・・・。」
「それにね。」
京子は一方的に鉄二の言葉をさえぎって言った。
「そのあと、警察いってくる。上野署に。」
209巨人の星その後122:2009/06/21(日) 19:57:38 ID:qmvXuF3c
「上野署いってどうすんだよ?」
「向こうは、被害届出すって言ってんでしょ?だったら被害者のはずのアタシが、
 被害者でも何でもない事情を、先回りして説明しておくのも、ひとつのテだわ。」
「テって、おまえな〜。それでうまくいくかどうか・・・」
また京子が一方的に鉄二の言葉をさえぎった。
「うまくいくかは、どうかは、やってみなきゃ分からないわっ!そうでしょっ!?」
京子が声を荒げて大きくしたことに、鉄二は反応できず言葉を失った。

「免許証の住所も書き換えてもらわないと、いけないし。
 そのあと、すぐにお店に行くわ。アタシ。鉄さんのお店に。報告に行くから。」
「うん?・・・あ・・・ああ・・・。」
「そうと決まったら、もう帰りましょっ!もう遅いわっ!」
そういうと京子は、踵を返して、鉄二の前を通り過ぎると、吉原近くの文化住宅のほうへ歩き出した。
自分からこんな夜中に散歩にいくと言って、連れまわしておいて勝手なもんである。
サンダルがカランコロンと鳴り始めた。
しかしその勝手さ、我儘さに、鉄二は京子がペースを取り戻したと思い、
黙って京子のあとをついて、文化住宅への帰路を歩き始めた。
鉄二のサンダルもカランコロンと鳴り始めた。
=つづく=
210女悪役ブルース:2009/06/22(月) 15:13:17 ID:MnDHToms
醜悪だった。惜しげもなく拡げられた女の股間を見ながら純はそう思った。
そしてそれを陶酔しきった表情で見ている男達も醜悪に見えた。
「刺激が強すぎたかもしれないけど、次はあたしの闘いぶりをみてな」
そう言ってゼロは、二人の女がいなくなったリングに入り、叫んだ
「次はあたしだ、誰でもいいからかかって来な」ゼロの登場に会場は騒然となった。
「お、おい、あれ東女のクイーンゼロだろ」「本物か!?」「俺見たことあるけど
本物だよ!」「昨日のマスクドシャドウとの試合はブック崩れだって、2chの
書き込みにあったが、本当だったんだな!」ゼロを本物と確信して、観衆のボルテージは
上がり、対戦相手が早く出るように、騒ぎ出した。しかし、実力ナンバー1の声が高い
ゼロと闘うということは、間違いなく、負けて剥かれることを意味する。
誰も出てこない中、やっと一人の女がリングに入ってきた。
211女悪役ブルース:2009/06/22(月) 15:26:43 ID:MnDHToms
「ゼロだか100だか知らないけど、あたしがぶっ倒してやるよ!」
現れたのは、実力者が挑戦してきた場合の隠れ用心棒。
体も大きく、格闘経験抱負そうだが、ゼロの表情には余裕があった。
大女は水着姿になり、ゼロもジャケットとズボンを脱ぐと、タンクトップと
ショートタイツの姿になり、ゴングが鳴った。飛び出す大女をゼロは
ボクシングのジャブで迎え撃つ。いきなり鼻血を出した大女は、エキサイトして
ゼロに反撃するが軽くかわされ、ゼロのローキックやハイキック攻撃に
何も出来ずくず折れ、フィニッシュはゼロの必殺技ダブルパイルドライバーで
決まった。用心棒の大女の実力が折り紙つきなのは、観客が一番よく
知っている。あらためて、ゼロのガチンコ強さを証明したことになった。
212女悪役ブルース:2009/06/22(月) 15:48:17 ID:MnDHToms
リング下の純は、ゼロのプロレスだけではない、空手やボクシングも
ミックスした強さを持っていることに驚愕した。しかし驚ろきは
それで終わらなかった。まさか水着剥ぎは、仮にもメジャー団体で
活躍したレスラーがやるとは思わなかったが、ゼロは平気で、大女の
水着を脱がし、その巨体を持ち上げた、再び純は女性器を見せ付けられ
たが、先程よりは落ち着いて見れた。
大女は毛も薄く、陰唇が丸見えで、色素の沈着も薄く少女のようだった。
「こいつのオマンコ見るのも久し振りだな、相変わらず顔に似合わず
可愛いことだ」「しかしこいつが勝てないんじゃ、ゼロに勝てるのは
月子くらいなもんか?」会場の声を聞きながら、配当金を受け取って
リング下にやってきたゼロにじゅんは
「おめでとう、でも月子って女があんたに勝てそうとか言ってるよ」
「ここにあんたを連れてきたのも、格闘センス、身体能力ともに
抜群の、月子・・白金月子を見せるためって意味もあったんだよ」
「そんな凄い選手がここにいるの?」「いる。それも半端じゃない
あたしだって本当に勝てるかどうか・・・」「ゼロが勝てるかどうかって、
そんなに強いの、それなら確かに、その子の闘いを見てみたい」
「ほら、もうそこに来てるよ」純がリングを見上げると、スパンコール
の水着をまとった、美少女がリングインするところだった。
213人間兇器外伝13:2009/06/22(月) 18:12:00 ID:qbPZPCEe
ーミスティ・ブルーの落日ー
新聞のテレビ欄で、ある夜の番組を確認していた美影は、
空心会の道場裏の寮になっているアパートメントでテレビをつけた。
アナウンサーが、カメラを向いてインフォメーションしていた。

「さあ、今夜のエキサイティング・ナイト・ウォーは、明日、ユニオンデールのナッソーコロシアムで
行なわれるWWWF女子チャンピオン、ミスティ・ブルー7度目の防衛戦の前哨戦であります!
スペインの張り切り娘、マリア・ナヴァーロが、ミスティとタッグチームを結成し、
悪の怪力デュオ、ジャマール・コングと明日の挑戦者アナコンダ・パティのコンビと対戦です!」

ミスティがコンビを組むマリア・ナヴァーロは実は、ミスティに内緒でその後釜として仕込まれている、
新鋭の女子ファイターだった。ラテン系住民の多いニューヨークにおいて、ラテン系ヒロインを立てることで
ギルセンバーグが新機軸を打ち出そうとしているのを、もちろんミスティは知らない。
顔はまだ幼く、体もミスティより一回り小さい。しかし性的な対象というよりは、
万人に愛されるヒロインといったイメージだ。明らかなセクシー系のミスティとは男の目には見劣りはするが。
214人間兇器外伝14:2009/06/22(月) 18:14:30 ID:qbPZPCEe
試合は、ミスティが攻め込まれ、それをマリアが救出するブックで終わった。反則勝ち。
明日のタイトルマッチ、ミスティ危うしという演出である。
「クックックッ・・・・まあしかし猿でも分かるような幼稚な演出だぜ。チャンプのアマは
ハリウッド志望と雑誌で読んだが、もうちょいうまく演技できねーのかよ?」

テレビを寝転んで見ながら美影は噴出しそうであった。
しかしその右手をパジャマの股間に突っ込んで動かしている。
「しかし演技じゃねー大ピンチでっせ。明日は。試合じゃなく、その後にな。ウックック・・・。」

ナッソー・コロシアムはマンハッタン島から東へ30分行った所にあるインドア式の円形劇場だった。
最大観客動員数は、マジソンにやや劣る1万5000人、アクセスはよく
NY州以外のコネチカット州やロードアイランド州からの観客も期待できる定期大会であった。

試合は、ミスティに無断で、片八百長ブックが行なわれた。ミスティがアナコンダ・パティに
攻め込まれその攻撃は、やや加減抜きに加えられ、ミスティを慌てさせたのである。
「ちょ・・ちょっと何考えてんのよっ!本気で蹴ってくるなんて!アンタ、このアタシが誰だか分かってんのっ!?」
215人間兇器外伝15:2009/06/22(月) 18:18:23 ID:qbPZPCEe
そのとき、控え室から通路を走って、マリアが救出に駆けつけたのであった。
会場はヤンヤの喝采。試合はミスティの反則負けとなるが、ルールでタイトルは防衛とされたが。
リングのシンデレラ、ミスティ・ブルーの初の黒星であった。

控え室でミスティは、マリアにビンタをかました。   ピシッ!
「なにすんのよ!?」マリアが言い返した。
「こっちのセリフだわっ!アタシはおまえのヘルプなんていらないし聞いてもいないわ!
ブックにもないことをすると、後でどうなっても知らないわよっ!このラティーノ(ラテン系への蔑称)がっ!」

「なによっ!八百長じゃなきゃ何にもできない弱虫チャンプのくせにっ!」
「おまえ、ギルセンバーグに干されるわよ。ホッホッホ!せいぜい強がったところで
アタシに人気じゃ叶わないし、ギルセンバーグがドルになると見てるのは、このアタシなのよっ!」

そこへギルセンバーグが現れた。このユダヤ人興行師は、女子レスラーを商品としか見ておらず
女子の更衣室にも平気で断りもなく入室してくるのであった。
「マリア。今日はよかったぞ。グッドジョブだ。客もおまえとアナコンダのシングル・マッチを楽しみにしとるようだ。」
顎をしゃくりあげて、腕を組み、得意な顔でマリアは、ミスティを睨みつけた。
「なっ・・・・なんですってっ!?グッドジョブって・・・それじゃまさか・・・・??」
216人間兇器外伝16:2009/06/22(月) 18:20:05 ID:qbPZPCEe
「ミスティの人気もひと段落したんでな。新たなヒロインとしてマリアをプッシュすることにした。
当分ふたりで、チームをつくりマリアを客に馴染ませたあとで、
ミスティ。おまえはヒールに転向するんだ。ヒールのチャンプとして
マリアと抗争してもらうよ。この抗争は売れるぞぉ〜。フフフ。」

「な・・なんですって!そんな話はきいてないわっ!アタシはリングのシンデレラ、ミスティ・ブルーなのよ!
こんなラティーノのチンチクリン女の惹き立て役を、なんでアタシがやらなきゃならないのよっ!?」

「ミスティ。契約は守ってもらうぞ。君との契約はあと3ヶ月ある。その間にしっかりマリアを売り出すからな。」
「どういう了見よ!こんな女にこのアタシの代わりが務まるわけがないし、人気でも雲泥の差よ!」

「ミスティ。よく聞け。いいか?君は確かに人気がある。君の功績はわたしも認めているさ。
女子レスリングが、うす汚く侘しく物悲しい見世物から、もっと多くの人が声援を送るメジャーな人気を得た。
しかしだ。君は少しセクシーすぎるんだ。それは男性客を魅了するが、わたしはプロレス・ビジネスに
更なる可能性を見出している。家族でテレビや会場で楽しんでもらうカテゴリーにしてゆくには、
もっと健康的で中性的なヒロインが必要だ。男が、妻や母親に見つかって慌ててチャンネルを
変えなきゃならんセクシャルなイメージでは、これ以上のメジャー化は見込めないのだよ。」
217人間兇器外伝17:2009/06/22(月) 18:22:14 ID:qbPZPCEe
ミスティは落胆したが、所詮サーカスなのだ。いつまでもこんな見世物スポーツに
関わってむきになっても仕方がない。
3ヶ月、適当にやって、あとはハリウッドに行くのだ。もう大作アクション映画の話も来ている。
自分は成り上がるのだ。もっともっと。こんな見世物スポーツしか能のない醜女どもの相手は
いつまでもしていられない。

ホテルについたミスティは、ボディガードのモラレスとラモスに悪態をついた。
「このラティーノの馬鹿ボディガードたちっ!臭い体でいつもでもこのアタシにくっついてるんじゃないわよ!」
モラレスとラモスは、プエルトリコ出身の三流レスラーだった。食えないので、
ギャラアップか他地区へのブッキングを、ギルセンバーグに申し出たところを
このミスティのボディガードを、週750ドルで持ちかけられたのだ。

世界王者クラスで週給1万ドル、並みの一流で4000ドル〜5000ドル、三流なら週給700ドル〜800ドル
アメリカでは宿泊費や交通費は自分持ち、しかも三流では毎週試合にありつけるかどうかも分からない。
交通費も宿泊費も出る今の仕事に不満はなかったが、常々頭にきていたのは
ミスティの人種差別的な言動と態度だった。
「お高くとまってやがらー。オイ!ラモス!ちょいと今晩はあのアマをほっといて、どこか飲みにいかねーかい?」
「ああ。いいな。小銭はそこそこあるし、今までこれと言ってトラブルもねえ。一晩ぐらい抜け出したとことで、
どってことあるめえーしな。」
「ああ。いこうぜ。このユニオンデール一帯は、俺たちラテン系も歓迎の店も多いぜ。ガハハ。」
218人間兇器外伝18:2009/06/22(月) 18:24:06 ID:qbPZPCEe
大して腕に覚えもないが、図体だけはでかい2匹のボディガードが
夜の町に繰り出したことも知らずに、ミスティは素早くオールヌードになると、
シャワーを浴び始めた。シャワーが終われば一杯引っ掛けて寝てしまおう。
今日は面白くないことが多すぎた。

そのとき、ミスティの部屋の鍵を、カチャカチャ回す音がしていた。
もちろんミスティは気付いていない。その侵入者は、鍵が架かっている事を
悟るとチョップでドアノブそのものを破壊した。
それほど大きい音はしなかった。音もなくミスティの一室に侵入すると
外れたドアノブを元の位置に戻した。取れてしまっているが、見た目では分からない。
実際に回せばすぐ分かることではあるが。

侵入者の影は、シャワールームに忍び寄った。シャワーを浴びている音がしている。
擦りガラス越しに女の背中が見えていた。
「いっひっひ・・・たまんねえな。どうも。据え膳食わねば男の恥!さあ饗宴の始まり始まりぃ〜。」
美影義人は、乱暴にシャワールームのドアを開けた。 ガチャーッ!
「キャッ・・・きゃぁあああああああああああああぁ〜っ!」
219巨人の星その後123:2009/06/22(月) 20:43:57 ID:2sMsUxBz
左門は、第一京浜(国道15号)沿いの歩道を歩いていた。
両手をハーフコートのポケットに入れていた。
妹のチヨが川崎市内のスーパーマーケットで買ってきてくれたものだ。
服はすべてチヨ任せだった。左門が自分で買いに行ったことはない。
また、チヨにあれこれ好みを注文したこともない。

一家6人、すべてが不公平感なく、着るもの、食べるものが当るように
家計をやり繰りして、買いあててくれているのだ。よくやってくれている。
何も文句を言うことなどない、よくできた妹だった。

そのチヨが買っておいてくれ、今朝左門が着てでかけたこのハーフコートでも、
今日の冷え込みは、左門にはややこたえる思いがした。

なんという言われよう、なんという断られよう、なんという自分の否定されよう
左門には今、自分がどこを歩いているのかも分からなかった。
220巨人の星その後124:2009/06/22(月) 20:46:34 ID:2sMsUxBz
しかし京子の言い分もわかる。京子は飛雄馬を愛していた。
それも知っていた。その飛雄馬が身を引き身を隠すということは、
京子にとって飛雄馬との連絡も手がかりもなくし、飛雄馬への思い、
飛雄馬への恋を断ち切ることを迫られるものだった。

その横からプロポーズとは、いささかでなくともデリカシーがなさすぎた。
というより乱暴だった。ムチャだった。

しかし左門は、計算ずくで飛雄馬の手紙を見せたわけではなかった。
そんな予定はなかったのだ。京子が「用がないなら帰る」と言い出したので
とっさに出してしまったのだ。
しかしこれとて弁解も弁明も釈明もない。すべては最悪の結果に終わってしまったのだ。

飛雄馬からの手紙を見せて、それをあたかも動物園や博覧会の入場券か招待券のように見せれば、
そこを通り抜けられるようなものであるはずがない。
あの誇り高き女豹、京子のゲートがそんな簡単に開くはずもなかった。
でもそれが今わかったから、どうなるというのだ。
あろうことか左門は京子に「最低、最悪、クズ」とまで言われてしまったのだ。
221巨人の星その後125:2009/06/22(月) 20:48:44 ID:2sMsUxBz
左門は、うなだれて歩きながらも、どうにか顔を上げた。
そして当りを虚ろな目で見渡した。
「ど・・どこじゃ・・・・?ここは?」
虚ろな状態で、下を向いて歩いている間に、どうやら方角を間違えてしまったようだ。
左門は、球団事務所へ行くために今朝、、国鉄の川崎駅から京浜東北線に乗った。
そして田町で降りたのだ。契約が終われば、また田町から行きと同じ電車に乗って
そして川崎まで帰るはずだった。
それがこんなところまで歩いてきてしまって、左門はすっかり方向を見失っていた。
「京子さんは、どっちへ行ったんじゃろ?・・・・しかし。」
しかしそれを突き止めたところで、どうするというのか?
剣もほろろに、ケチョンケチョンに言われてしまい、改めて話のしようもない。
それに、今、左門は京子が怖かった。恐れた。新宿の映画館で始めてみた
不良少女という佇まいとは違う、京子の本当の怖さを見た気がした。

しかしなぜかその怖さが、左門の胸に残るのであった。
その怖さを今日、引き出してしまったのは、自分だという思いから。
「それにしても、ここはどこじゃろ?」
222巨人の星その後126:2009/06/22(月) 20:51:43 ID:2sMsUxBz
右手が坂道になっている。そしてその坂一帯に生える大きな巨木が茂った向こうに、
ひときわ高い建物が見えた。高輪プリンスホテルである。

「こ・・こりゃ、大きなかホテルたい。すごか。これはなんちゅうホテルじゃったろか?」
左門にはホテルの名前まで分からなかった。しかしそのホテルだけでなく、
もっと広い範囲で木が生い茂っているように見える。
「こりゃ誰かお屋敷か何かじゃろか?はて。どこじゃろ?」
そうひとりブツブツ言いながら歩いている左門に、ひとりの男がブツかった。
ドスンッ!かなり強くブツかった。どうやら相手も探しものをしながら歩いていたのだろうか?
よける意識が、左門にも相手にも全くなかったような、あたりようだった。
「あっ!」  相手は声を上げた。そして左門の顔を見た。

「ん?」 左門はその顔に、見覚えがなかった.しかし相手はさらに「ああっ!」と叫んだ。
223巨人の星その後127:2009/06/22(月) 20:53:48 ID:2sMsUxBz
しかしそれだけだった。相手は、そこでニヤリと笑った。
そのとき左門の胸には何か引っ掛かるものがあったが、
それが何か、どういうことかまでは自己分析できなかった。
それほど虚ろだったのだ。 相手は絡んでくると思った。
着ているものは、どことなくこのところ東京ではあまり見ないチンピラのようだったからだ。

しかし相手は、左門を鼻で笑うような顔を作るとそのまま通り過ぎた。
一体、何だったのか?自分をどこかで見たから、あんな声を上げたのか?
見られた顔と言えば、自分は野球選手だった。日本全国誰でもとはいかないだろうが、
見た瞬間に大洋の左門と分かる人間はかなりいるだろう。
初対面の京子が、そうだったように。

しかし男は、どんどん行き過ぎていった。やはり探し物でもしているのか?
左門には、どうでもいいことだった。
すると、左門が今度は大きな声をあげた。「ああっ!」

品川駅だった。第一京浜を田町ではなく、反対方向に歩いてしまい、品川まできてしまったのだ。
木々の生い茂る一帯は、この当時まだ品川プリンスも、新高輪プリンス(現在のグランドプリンス高輪)もなかった。
毛利公爵邸や北白河宮邸などが、主不在のまま放置されていたのだ。高輪プリンスだけが開業していた。
左門の前方には、京浜品川駅(現在の京急品川)も見えていたが、左門は国鉄の品川駅の
きっぷ売り場に向かった。こちらのほうが、川崎までなら20分そこそこ。速い。
左門はもう一刻も速くこの場をあとにしたかったのだ。この憂鬱な午後から。

さっきぶつかった男が、放れ際に、ニヤリと笑ったのも、自分の情けない顔を笑ったのに違いない。
品川は端っことはいえ、大都会東京だ。今の情けない顔をした自分が
スタスタ歩けるような場所ではない。そう思った。しかしそのぶつかった男の
ニヤけた顔が、左門には少し頭にきていた。よくないことだ。左門は思った。
224巨人の星その後128:2009/06/22(月) 20:56:09 ID:2sMsUxBz
新宿警察 捜査一課の山本警部補は、微妙な立場にいた。
彼はキャリア警察官で本庁から新宿署への出向できていたが、
他のキャリア出身の上役からは彼も計りづらい距離を置かれていたのだ。

父の山本浩一も警察官だった。キャリア、もちろん戦前でいう高等文官試験に合格したあと
警察官になっていた。戦前の治安維持法行使による悪評で、
警察庁を定年を待たずに出た人間は浩一の上司にもいた。
しかし罪に問われたものはいない。
東京裁判などの軍事裁判は、あくまで国際的戦争犯罪に対してのものである。
国内で戦前ファシズムに積極的に加担した人間が裁かれることはなかった。
軍事裁判が正当なものかどうかという問題はさておきである。

したがって特高や政治犯係が、公職を追放されたわけでも何でもなかった。
元・特高で衆議院議員にまでなったものもいる(その息子が与党の執行部に現在もいるが)。
司法関係における繋がりは強固なものだった。
一度、身をおいたものはその恩恵を充分に受けられる。汚職や脱税を犯して罪を問われたところで、
恥を知らなければ泣きつけば、誰かが庇ってくれる。良くも悪くもそういう世界だ。
凶悪犯や痴漢などは、救いようがないかも知れないが。
225巨人の星その後129:2009/06/22(月) 20:58:39 ID:2sMsUxBz
しかしその世界が絶対に許さないあるマークを付けられると、
その人間は司法の世界における全ての人脈と権益を失う場合がある。
ヤクザではない。レッドパージのことである。

日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、昭和20年8月9日に対日参戦したソビエトは、
日本軍の武装解除のあと、その占領地域にいた日本軍、開拓民、文官を
シベリアを始めとするソビエト領内各地に労働力として連行、抑留した。
俗に言うシベリア抑留である。外モンゴル、シベリア、カムチャッカ、朝鮮半島北部に
連行、抑留され強制労働に当った人も数は、150万人から200万人以上。
日本の土地を踏むことなく極寒の異国の地で傷害を終えた人は少なく見ても
6万人、一説によると15万人とも20万人とも言われている。

しかし抑留ののち、日本への期間が叶った人々にも多くの苦難が待ち構えていた。
レッドパージ、赤狩りである。現地で共産党社会主義教育もしくは洗脳を受けたとされる帰還者に
日本の警察当局はひとりひとり調査したわけではない。
『洗脳を受けたであろう』と認識され、公職、とくに司法関係への復帰者へは、
常に尾行が張り付き、その交友関係もマークの対象とされた。

時は日米安保闘争の時代、政府にとっては、潜り込んだ可能性があると見た
ソビエト・コミンテルンの回し者は見えない敵だったのだ。
226巨人の星その後130:2009/06/22(月) 21:02:34 ID:2sMsUxBz
そのマークは政府与党から当選していた国会議員にも向けられていたというだけに、
戦前の待遇からの延長で警察、公安組織に復帰を果たしたものにも、
その疑いの目は当然向けられた。

シベリア抑留からの帰還者は、公職においてでもその処遇を大きく制限されていたのである。
元・特高などの役職がそのまま継続されたのに比べて、戦後の司法制度の中の
大きな闇をそこに見る問題である。

山本浩一はシベリア帰還者でなはかった。彼はパージする側に立たされた。
そして警察庁の中で、高等文官であるなら当然の昇進を繰り返しながら
彼が担った任務は、警察庁内部での赤狩り実働部隊の影の幹部だったのだ。

その任務は彼自身は、自分に適性がないと認識し、また当初は上司にそれを訴えた。
しかし拒絶することは、そのまま出世の道を閉ざされるか、赤のレッテルを貼られることを意味した。
その任務は彼を疲弊させた。摘発され追放された人間は後を絶たなかった。
裁判も何もあるわけではないのだ。起訴するわけではない。逮捕するわけではない。
事実上、追放してしまえばそれで済むのだ。多少の荒療治も推奨された。

だが実際に、共産主義洗脳を受け、ソビエト主導の世界や世界社会主義革命の旗のために
公安内部での反国家行動をとった人間など実の数ではそれほどいなかった。

結局は、警察庁での権力争い、派閥抗争にそれが利用された側面が一番大きいのだ。
227巨人の星その後131:2009/06/22(月) 21:06:21 ID:2sMsUxBz
浩一は自ら図らずも、警察庁の中で恐れられる人間となった。
彼の心象を損なうことは、その司法キャリアの終焉を意味すると恐れる者までいた。
そして逆に、それだけ忌み嫌われた。決して耳に届かない範囲で。

浩一は、昭和39年に退職した。最後の肩書きは警視正であった。さらなる昇進はありえた。
しかし彼は自らそれを固辞した。身内を売り渡す役目を担わされた罪の意識は、
彼の肉体と精神を蝕んでいた。退職するとすぐに脳梗塞に見舞われ、
一命は取り留めたが、左半身不随が残った。まだ55歳であったのに。

日常会話はできるようになった山本浩一だったが、彼は一切の警察官、警察、司法OBとの
関わりを絶った。隠居といえば聴こえはいいが、世捨て人になったのだ。

退職後も彼への罵詈雑言を憚らずに警察内で言う人間は数多くいた。
むしろ山本警視の退職後にその闇の任務を知った者も多かった。
そんな中、浩一の息子がキャリアとして本庁に入ったのだ。彼に逆恨みの感情を持つものも多くいたのだ。

浩一は息子が警察官になることを望んではいなかった。しかしなるなとは言わなかった。
息子が警察組織の中で父が長年に渡ってしていたことを知ったのは、警察官になってすぐ。
父の口から直接、聴かされたのだった。
228巨人の星その後132:2009/06/22(月) 21:10:28 ID:2sMsUxBz
山本警部補は、自分の周りに漂う微妙な空気の正体を知った。
それは、相手がキャリアであろうと、ノンキャリアであろうと関係はなかった。

かつて仲間の中から、赤の認定と追放、スパイを探す逆スパイとして恐れられた男の倅である。
ある、意味、当然といえば当然の感情であろう。

新任のとき、その親や類閥に付き添われて挨拶の顔見せをするキャリア警察官は多い。
いや、たいていはそうである。
親にも誰にも付き添われず、この新宿署に赴任してきた山本警部補に、
そういう態度で接したらよいのか、この建物内にいる殆どの者が苦慮していた。
その父親をかつては恐れ、そして今は恐れなくてもいいという現実があったとしてもだ。

彼が捜査から外されることは、なかった。しかし特に親しい先輩というのもいなかった。
自ら先輩諸氏への過剰な接近を遠慮した部分もある。
逆に彼に積極的に関わってくる人間もいなかった。
山本は警察内部の人間関係に期待することは最初からしなかった。
その感覚を自分で捨て去ろうとした。捜査には関わりもなく、また警察官としての
職務に影響を与えることを敗北と考えた。だけに彼が捜査四課などの
馴れ合い体質を嫌悪した遠因もそこにあったのだ。
足を引っ張り合いつつも、常に群れようとする習性。陰口を言い出したら止まらない女の腐ったような体質。

「警部補!今日、昼めし、どうなさいます?」
明るく、自分より年長の部下が聞いていても彼は、たいていは決まって答えていた。
「いや、私は弁当もちですので。お構いなく。」
「いいっスね〜。おふくろさんの手づくり弁当っスかぁ〜。それが体にゃ一番っスね〜。」
心にもないお世辞にいちいち動じてはいなかった。彼は机で一人黙々と母の作ってくれた弁当を食べていた。
229巨人の星その後133:2009/06/22(月) 21:13:00 ID:2sMsUxBz
鉄二が文化住宅に帰ると、京子の姿はなかった。
京子のバイク、ドゥカティ・ダイアナ・マークVは戸外に停めてあるままだった。

今日は仕事を休むと言っていた。江東区と台東区の区役所にいったあと、
上野署に向かい、出される可能性の高い鉄二への被害届の事情説明と
運転免許の住所欄の書き換えを済ませると言って、
その後、上野駅前の鉄二の店に顔を出すといっていたが、京子は日が暮れても
現れなかった。胸騒ぎがして、店を早めに閉めて、鉄二は、京子の仕事帰りを
歩いて迎えにいく道筋を走った。京子が仕事にでていないのも忘れて
一度、浅草6区に向かって走り出してしまった。気が動転していたのだ。
すぐに文化住宅への近道にルートを変え、灯りの消え、カギの架かった自分の住まいに
走りこんだとき、後ろでドタンッと音がした。
広瀬登喜夫のパネルが落ちたのだった。
身の回り品わずかだけを持っただけで、京子はこの文化住宅から姿を消したのだった。

置手紙も何もなかった。オートバイ用の黒一色のライダースーツも置かれたままだった。
230巨人の星その後134:2009/06/22(月) 21:14:44 ID:2sMsUxBz
翌朝から鉄二は京子を探し始めた。
憚ったが、江東区の京子の実家へも電話した。京子は帰っていなかった。
すき焼き屋もその日で退職していた。
京子が行きそうなところは全て調べた。当った。聞いて回った。
しかしどこにも京子の面影も足跡も見ることはできなかった。

虚ろな毎日が過ぎていった。京子が消えて3ヶ月がたったある日、
夏の日の夕方だった。
鉄二は、住まいの前にカバーをかぶせてずっと放置してある京子の愛車、
ドゥカティ・ダイアナ250マークVに目がいった。
カバーを取ってみた。きれいであった。毎日の朝の練習が終わったあと、
京子は河川敷の泥や砂を取り除くために、練習後、いつもこの愛車を
ここで洗っていた。それから勤めに出ていたのだ。
最後に練習した京子が消えた日の朝もそうだった。あるじが消えてダイアナも淋しそうだった。

「俺がしばらく面倒みてやっからな。うんうん。その内、京子も帰ってくるさ。
 そのときすぐにまた乗れるように、きっちりメンテしとかなきゃな。」
鉄二はマシンに語りかけると、スターターをかけた。
ここでは、メンテナンスできない。一度、店に持っていこうとした。
231巨人の星その後135:2009/06/22(月) 21:17:26 ID:2sMsUxBz
鉄二と京子は話していた。もうすぐ1年か2年あとに、ホンダが
日本のメーカーとしては初となる大型オートバイ、ドリーム号CB750FOURを出す可能性があるという。
「そりゃ扱うさ。オイラが扱うために出るようなマシンじゃねーかよ。」
「うれしそうね〜。ホントに。」
「ああ。どんなモンかは、まだわかんないけどな。おまえも乗るか?」
「うん・・・。でも・・・。楽しみじゃないと言えばウソになるけど、
 アタシやっぱりアグスタがいいわ。アタシって。一度こうと決めたら絶対浮気はしない性質なのっ!」
「フッフ・・。そうだったな、そうだったな!それがおまえのいいところだ。
 練習も音をあげるなよ。一発で通れ、一発で。」
「そりゃ通るわよ。何せコーチの腕がいいし、それに落ちたら誰かさんのカミさんにされちゃうからね。エッヘヘ。」
京子はいらずらっぽく笑っていた。オートレーサー養成所の試験までは、結婚の話はしない約束だったのだが、
ときどき京子の方がその約束を破って、結婚についてポロッと口にしてしまうことがあった。
京子は、そのつもりだったのだろうか?

京子に代わって運転する鉄二のダイアナ・マークVは、商工会館裏から、馬道通りへ出て
言問通りを入谷方面の西へ向かって右折しようとしていた。入谷の交差点から鉄二の店「合羽商会」は
南へ昭和通りを走ればすぐである。右折しようと信号で停止し、再スタートをかけたとき、
クラッチが滑った。1速ギアが入らない、もう一度やったが、入らなかった。乗りなれないマシンだが、
こんなはずはない。もう一度試そうとした時、鉄二はバイク乗りが、してはならない事態に陥った。
別にしても構わないのだが、試験場などで、右足立ちは審査中止である。バイクと停めて立つ場合は左足を地面につける。
当然すぎることである。しかしギアが入らず、右折しようとして鉄二は馬道の信号で立ち往生しかかった。
そこで、つい右足をついてしまった。こんなことは、ヘボライダーなら誰でもやってしまうことではある。
しかし戦闘機墜落のとき、鉄二の右足は、その脚力は左の4分の1もなくなっていたのだった。

付いた足に力が入らず、鉄二が運転する京子の愛車ダイアナ・マークVは、交差点内で右向きに横転した。
鉄二の右足を下敷きにしたまま。信号が変わった。抜け出せないでいた鉄二とダイアナ・マークVに
言問橋方面からダンプカーが前方不注意で進入してきた。衝突音が響き
鉄二のジェットヘルは、宙高く飛ばされ、あたりに凄まじい鮮血が飛び散った。
ダイアナ・マークVはズタズタに大破して、部品もそこかそこに散乱した。
=つづく=
232名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 21:30:46 ID:d2R15Pu6
めちゃいいねここ!!
文章力あるし、世界観そのまんま!!
朝日奈薫子好きだったな
233名無しさん@ピンキー:2009/06/23(火) 12:46:50 ID:14TI8gCJ
ますます良スレ化
おれとしては、人間兇器外伝、巨人の星、悪役ブルース、ブッチ様の順のランクだな
勝手にランクづけして悪いけどw

人間兇器外伝はヒロインがお京みたい描き込まれてなくて
高慢チキなのに適度にバカッぽいところが面白いw

正直お京にはもう危ない目にあってほしくないな 幸せになってほしい
234名無しさん@ピンキー:2009/06/23(火) 16:20:53 ID:blUBwVFa
良スレ(・'''・)ψ
235人間兇器外伝19:2009/06/23(火) 19:29:43 ID:CeYQp/H3
「ヘッヘヘヘヘヘ・・・・。待ち人来たれりだぜ。」
「ひっ・・ひゃぁぁぁぁぁ〜っ!」
最も恐れていた奴が現れたのであった。
「ひっ・・ひっ・・あぅっ・・あぅ・・・。」
「ヘヘヘ。忠実なボディガードどもは、遊びにいったぜ。もっともいたところで、
どってことねえが、女チャンピオン様は、エラい好かれようだね〜。」

「うぅっ・・・。この間は、わ・・悪かったわ。ごめんなさい。お見それしたわ・・。許して・・。」
「許して?フフッ。問わず語りに、てめえが仕組んだことまで、白状してくれたな。
さぁ〜て。お許しというなら、まず態度で示しなって。」

ミスティは絶望的状況の中、美影を突き飛ばしてシャワールームからの脱出をこころみた。
素っ裸で、逃げるつもりも何もなく、ただヤミクモに逃げようとしたのだ。
そのとき美影のローキックがミスティの美しい太腿に炸裂し、ミスティはその場に尻から倒れた。
バスッ!
「ぎゃあ〜!」
「いひひひ。抵抗すればするほど、痛み目にあうぜ。もっとも痛いのがお好きなマゾなら別だろうがな。」

美影は、ズボンのベルトをシュルリと自分で引き抜くと、ピシーッとミスティの前で鳴らしてみせた。
「や・・やめて。わ・・・悪かったわ。ムチはやめて・・・。アタシ、プロレスラーだもの・・。」
236人間兇器外伝20:2009/06/23(火) 19:32:02 ID:CeYQp/H3
「だったら、ムチの痕だらけで、マゾ・レスラーとしてデビューしなっ!」
ピシーッ!
「うぎゃああっ!」
ピシーッ!パシーンッ!ピシッ!ピシッ!
「ひぃい〜!あぎゃぁ〜!うぎゃおー!オゲ〜!」
「泣け!泣け!泣け!リングでいいかっこばかりしてやがるニセ・チャンプがぁー!」
ピシー!パシー!ピシッピシッ!ピシーン!
ミスティの裸体に、容赦なく美影のムチが炸裂していく。もっとも一応加減はしているのだが。
「お許しぃ〜!後生ぉ〜!お慈悲をぉーっ!あぎゃあ〜!」

「グヒヒヒヒ。お慈悲をかけて欲しけりゃ言うことを聞くか?」
「きっ・・ききます!ききまするぅ〜!何でも!何でもしますぅ〜!」
「よぉーし。いいコだ。それじゃまずそこで、バスタブに腰掛けなって。」
「ううっ・・。は・・・はい。」
ミスティは猫足型のバスタブの縁に腰掛けた。

「おーし。そんじゃそこで、オナニーしなっ!」
「・・・!」
「やらねーなら、ムチのお仕置きをまだまだ続けてほしいか?」
「やっ・・やりますわ。で・・ですからムチはやめて。お願い・・・。」
237人間兇器外伝21:2009/06/23(火) 19:33:56 ID:CeYQp/H3
ミスティは、オナニーは好きであった。元々性欲は強いし、
妄想力もあった。しかしこんな風に男に見られながらなど、もちろん経験はない。
しかしムチで叩かれるよりは、マシだ。屈辱的なことこ上のないが・・・。

ミスティは、美影に凝視されながら、オナニーを始めた。
左手で乳首を摘まみながら、右手を繁みに忍ばせた。肉芽と穴をさぐりながら
声を上げてしまった。
「あっ・・あっ・・・あ・・・・あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・あああ〜ん!」
「ギャハハハッ!こりゃ傑作だぜ!WWWF認定女子チャンピオンのオナニー・ショーと来らぁ!」
「あ・・・・あ・・・・わ・・笑わないでぇ〜ん。あ・・・あ・・・。」
(おいおいっ!ヤキを入れに来たつもりが、気持ちよがってやがる!これじゃこちとら納まらねーっ!)

「そんぐらいにしなって。てめえひとりで天国にいかれちゃこちとら当てはずれ。お次は・・・」
「ひっ・・・ま・・・まだ何かやるつもり?もういい加減にしてっ!こんなに恥ずかしい事させて、まだ・・」
「恥ずかしいぃ〜?てめえでシコシコと乳首まで摘まみあげて励みやがって、どこがぁ〜?あはは!」

「ああ〜ん。ですからそんなに言葉でイジめないでぇ〜。せめてベッドで、ふつうに・・・。」
「ふつうに?ふつうに何をするんだ?」
「ですからアタシの体が欲しいのでしょ?ベッドでお相手しますわ・・・。」

「甘ったれんじゃねーっ!」
ピシーッ! さらにムチが炸裂した。
「ぎゃあああっ!お許しぃーっ!」
238人間兇器外伝22:2009/06/23(火) 19:36:45 ID:CeYQp/H3
「何か勘違いしてやがるな?おーし。こうなったら一生の思い出をプレゼントしてやるぜ。
せっかく用意もしてきたんだからな。」
そう言うと美影はニンマリと笑い、上着のポケットを探り出した。

「一生の思い出?用意?なっ・・・なにを・・なにをする気?」
「そのバスタブの縁に両手をついて、ケツをおったてな!」
「うぅ・・・・。なにを・・・・?」
言われるがまま、ミスティはバスタブに両手をついた。
自然と尻を突き出したモオモオさんポーズになってしまう。

(こいつを女に使ってみるのが、夢だったが、さて・・・。どんなことになるか?ククク)
プスッ!   グサリ!
「ぎゃあっ!なッ・・何をしたの?」
他人に触らせたこともない、ヒップの中心の菊門のすぼまりに、硬質な尖ったモノが突き刺された。

「エヘヘヘ・・・・。浣腸だぜ。腹黒い女チャンプのお腹の中を、こいつで調べてやるのさ。」
「・・・・・!!!・・・!カ・・・カンチョウ?」
「そうさ。腹の中を調べてやるから神妙にしなって。ウクク。」
「カ・・カンチョウって、便秘したときに使うあのっ!?」
239人間兇器外伝23:2009/06/23(火) 19:39:27 ID:CeYQp/H3
「そうよ。その浣腸だぜ。またこのおれに復讐などしようと、していないか
その腹の中の具合を、こいつで見届けてやるからな。それこそ一生の思い出になるぜ。」
「そ・・それだけはっ!それだけは、やめてーっ!他のことなら何でもしますっ!ですから・・・・」

その時、ミスティの直腸に薬液が、浸入してきた。冷たくドロッとした感触が、
S字結腸のあたりを、しみこんで来る。自分の尻のあたりで、チュー・・・という音がした。

「あひゃ?あひゃひゃ・・・ひゃぁあ〜ん!きっ・・気持ち悪い・・・・」
「うひひひぃ〜。どうだ感触は。せいぜい下のお口で味わいなって。」

「あっ・・あっ・・いやぁ〜ん!いやっ。いやよぉ〜。あああ〜ん!」
「でししし〜。どうかなぁ?お浣腸の味は?」

「うぐぅ〜・・・。ひ・・・ひ・・・いやぁ〜。気持ち悪ぅ〜いわ。いやよ、こんな・・・あ・・・あ・・・」

(ひひひ。女いたぶるのに、浣腸とは我ながら悪魔のアイデアだが、こりゃ中々注入のし甲斐があるぜ。
さて、この後どうするか?効き目と結果を、目にしたいものだが、果たしてこんなイイ女が、本当に
そんな醜態を晒すのか?まだイイ女が●●をヒリ出すって現実を目の当たりにせんことにゃあ、
どうもまだ信じられねえ自分がいやがる。どんなイイ女でも●●を垂れやがるってことを
感覚として認識できねえが、なんの。この目で診りゃ幻想なんて、フッ飛ぶに違いねーさ・・・・。)
240人間兇器外伝24:2009/06/23(火) 19:41:21 ID:CeYQp/H3
浣腸のプラスチック容器をミスティの震える菊門から引き抜いた美影は、
その浣腸の嘴先を、目に近づけて凝視してみた。
(なっ・・・なぁ〜んにも付いてやがらね〜。まさかイイ女は●●なんて下劣なモンは、
ヒリ出さねーんでは?)

幼稚な疑問が美影の脳裏に涌いた。この男がいとも簡単にレイプ魔に変貌するのには、
その心の根底に女性への恐怖があったからである。   しかし・・・・

ゴロゴロゴロ・・・・・・・きゅ〜ん・・・・
ミスティの腹が鳴り出したのだ。美影は狂喜した。
「きたっ!きたっ!きたぁーっ!そおれっ!見せなっ!最低最悪の醜態を診せなって!ホレホレ!」

「ああっ!ああっ!ああっ!ト・・・トイレに・・・トイレ行かせてぇ〜っ!」
「トイレ?トイレ行って何すんだいっ?なんならここで、やりなっ!俺が診ててやるぜっ!」

「診るなんて・・・こんなところを診られるなんて・・・そんな・・そんなところ
診られるなんてっ・・・死ぬほうが、マシよっ!ああっ!痛いっ!お腹が!お腹が痛いっ!」
241人間兇器外伝25:2009/06/23(火) 19:43:07 ID:CeYQp/H3
「うひひひひ。どんなモノが出てくるか、さぁ〜てお立会いだぜ。
美女の腹の中には、案外とってもかぐわしい薔薇の香りのする物体でも
溜まっていて、そいつが、これから出てくるのかな?いひひ。ワクワクするぜ〜。」

美影は、ヨダレを垂らし放題になっていた。生まれて初めて診る女の醜態。
オナニーも四つん這いも見てきたが、浣腸の結果どうなるかは、未見である。
「あっ・・あっ・・・お腹、いたぁ〜いっ!」
美影は、鼻の下を伸ばし放題で、腹を押さえてうずくまったミスティの尻に
顔を近づけた。

BURI!BURIBURIBURI!   BUBUBUBUBU〜!

「わっ!わわ!くっ・・・・くっせー!なんだ?これぇー!」

実は溜め込まれていたミスティの腸の中から、茶色い固形状の大便が、
凄まじい爆裂音とともに、飛び出してきたのだ。
「くっ・・・くっせー!オイ!オイ!なんだよぉー!コレは!ウウゥ!くせ〜のなんのって!オオ!くっせ〜!」
242人間兇器外伝26:2009/06/23(火) 19:47:53 ID:CeYQp/H3
正直、美影は閉口したかったが、サドの血が、ミスティにとっては
残酷すぎるその匂いについて言及した。

そのひと言ひと言が、ミスティの羞恥心を増大させ、その美貌のプライドを
ズタズタに引き裂いたのだった。

シャワールームの中は、強烈無比なる汚臭が、たちまち充満した。
「うーっ!臭せーぜ!臭いモンはやっぱり。いや、人並み以上の臭さとでも言うか・・・・・。」
(これが女の糞か・・・。やっぱ臭いもんだな・・・。まいったぜ。実際・・・。)

美影は、さっきから出しっぱなしになっているシャワーの水流で、ミスティの菊門から
ぶりぶりと音を立ててヒリ出された悪臭極まる大便を、排水口へと流していった。

「もうちょっとマシなモンをヒリ出してくれると期待したが、こりゃ百年の恋も醒めるぜ〜。」

美影の言葉責めは、容赦なくネチネチと続き、女にとっての最悪の醜態を晒す現実とあわせ
ミスティのミス・フロリダとして、リングのシンデレラとしての美の象徴としての自尊心を
完全に崩壊させてしまうのであった。
どうにか排水口に消えたその固形状の大便は、流れていったが、
絶対に他人に嗅がれたくない悪臭は、シャワールームに充満したまま消えなかった。
「くっせ〜な!オイ!ええ?」
(臭いのを、ひたすら言葉で責めつづけてやるか・・・。これで、いこう・・・!)
243人間兇器外伝27:2009/06/23(火) 19:50:14 ID:CeYQp/H3
山吹色の汚れも、シャワーで洗い流した美影は、
完全に放心状態のままのミスティを、抱きかかえるとベッドの上に放り投げた。
バウ〜ンと音がして、ミスティの肉体は、一度二度と跳ね上がり、そして落ち着いた。
仰向けになったまま、動かないミスティを眺めながら美影は素早く自らの洋服すべてを脱ぎ捨てた。

「さぁ〜て、お待ちかねのベッドタイムだぜ。ククク。」
美影は、ソロォ〜とミスティの腹を撫で上げた。
「いっひっひ。せっかくお腹の中まで綺麗にしてやったんだ。朝までネットリ、シッポリと
この%8
244人間兇器外伝27:2009/06/23(火) 19:53:50 ID:CeYQp/H3
山吹色の汚れも、シャワーで洗い流した美影は、
完全に放心状態のままのミスティを、抱きかかえるとベッドの上に放り投げた。
バウ〜ンと音がして、ミスティの肉体は、一度二度と跳ね上がり、そして落ち着いた。
仰向けになったまま、動かないミスティを眺めながら美影は素早く自らの洋服すべてを脱ぎ捨てた。

「さぁ〜て、お待ちかねのベッドタイムだぜ。ククク。」
美影は、ソロォ〜とミスティの腹を撫で上げた。
「いっひっひ。せっかくお腹の中まで綺麗にしてやったんだ。朝までネットリ、シッポリと
このボディを賞味させてもらいまっせ。どれどれ。」

美影は、まるでプロレスの股裂きのようにミスティの両足を掴むと、ガバッと広げた。
「クックックッ。どうやら精神的ショックが相当なようだな。ま、無理もないか。
あの醜態を曝け出した直後ではな。」

クンクンとミスティの繁みみ顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
「ふうむ。こりゃオシッコの匂いだなぁ?さっきおケツは洗い流してやったが、前は洗ってなかったからな。くひひ。」

放心状態のまま、宙を見ているミスティの顔を今度は、さすりそして撫でつけた。
「もはや完全に抵抗能力も失ったようだな。ふふっ。なかなか可愛くなったじゃね〜か。」
美影は、ミスティのまだ濡れたままの肉体を時間をかけて賞味しはじめた。
245巨人の星その後136:2009/06/23(火) 22:50:31 ID:ZDOxjSEk
京子は都営浅草線を高輪台で降りた。
薄暗い階段を地上へと上がっていく。構内はガランとしていて誰もいなかった。

左門に酷いことを言ってしまったことへの自己嫌悪もあった。
冷たいプールにでも飛び込んで、頭を空っぽにしたかった。
自分が構内を歩く靴音までもが耳障りだった。

やはり脳裏に飛雄馬の手紙が、何度も飛雄馬の朗読する音声つきで再生された。
それも振り払いたかった。でも、頭を離れなかった。
『できるなら京子さんと、むすばれてくれ。彼女を幸福にしてやってくれ』
大きなお世話だ!
『彼女はズベ公でも心に真珠をひめた女性だ』
かいかぶってもらわなくても結構なのよ!
『しかしほうっておけば、愛を知らぬままどこまでも堕落してしまう』
どうせ堕落しかかっているが、そんなに心配なら、自分がでてきてアタシを抱きとめてくれないのだ?
『貴兄(左門)は彼女を熱愛しているのだから、ためらわずたった今からでも・・・』
結局、飛雄馬は自分を愛してはいないのだ。自分は愛されていなかったのだ。
いきなり女の自分から愛を告白してしまったり、悪ぶったり、自分から遠ざかろうとしたりした。
でも何もかも自分の一人よがりだったのだ。
自分は愛されなかった。心奪われた男に。ふられたのだ。拒絶されてしまったのだ。
慰める方法もない。自分で何をするか、してしまうかも、よくわからなかった。

知らず知らずに地上に出ていた。そうだ。ひとみの店を手伝わなくては。
ほとんど断らずに勝手に出てきてしまったのだった。
目まぐるしくウェイトレスとして動き回るほうが、今の自分にはいいかも知れない。
次から次へと注文をさばいているほうが、余計なことを考えないですむ。クヨクヨしなくて済む。
そういえば、今は何時だろう?ランチタイムは終わってしまっただろうか?
246巨人の星その後137:2009/06/23(火) 22:52:15 ID:ZDOxjSEk
桜田通りを西へ向いて歩いた。ほんの1〜2分で着いてしまう。
ひとみの経営する喫茶モンテクリストに。
その間に、笑顔を取り戻さなくては。クヨクヨした顔を見せないように
自分を切り替えなくては。明るく振舞えるように、頭をシャキッとさせなくては。
ひとみに迷惑ばかり掛けられない。ひとみに申し訳がない。

女子高に通わなくなり、すき焼き屋で働き始めた頃、ひとみは京子にいろいろ注意した。
家に帰らなくなった頃にも、すき焼き屋までやってきて
どこに寝泊りしてるのか、お金はあるのか、男でもいるのか
根掘り葉掘り聞いてきた。それが、面倒だった。困った。
ウソをつくのは嫌だったし、本当のことを言えば心配をかけてしまう。
それで、ついつい疎遠になってしまっていた。
自分のところに住んで学校に通っては?とも提案された。

それが今になって住まわせてもらっている状況だ。
ひとみの足手まといになりたくない。ひとみを困らせたくなかった。

店が見えてきた。さあ、切り替えてグイグイ働くぞーっと思い歩幅を大きくした京子だったが、
「ン?なんだろう?」 店の看板が出ていないし、ブラインドが下りているのか電気が消えているのか
店の窓が暗い。まだ昼の時間帯だし、あたりも明るく、灯りが目立つ時間ではないが、
店そのものが、営業している活気がない。
247巨人の星その後138:2009/06/23(火) 22:53:46 ID:ZDOxjSEk
店を閉めてしまったのだろうか?何か急用で。
あるいは、自分がほとんど勝手に店を抜けたので、臨時休業したのか?
しかし京子も今朝から、ひとみと一緒に今日の日替わりランチや
昼に良く出る定食の下ごしらえをしていたのだ。

あの仕事熱心なひとみが、そんなに急に店を休業したりはしないはずだ。

その時である。桜田通りに面している店の正面に横の路地からクルリとひとり男が姿を見せた。
京子は知っている顔であった。鬼怒川組のチンピラである。
「あ・・ああっ!」
思わず京子は声を上げかかった。口を押さえてそれを飲み込むと、
素早く店から遠ざかり、手前のゆるい坂道に身を隠した。

通りに面している神社の木立に身を潜めた。そして店のほうをよく見てみた。
別の角度から見てみると、チンピラはひとりではなかった。少なくとも3人はいて店の回りを徘徊して
屯しながら、周囲に目を光らせている。モンテクリストは、鬼怒川の手のチンピラによって包囲されてしまったいるようだ。

マズい。これは困った。ひとみにだけは、迷惑を掛けたくないと思っていたのに、
やはり暴力団の網は、一週間でその縄張りである新宿から、この五反田まで広げていた。
京子は自分の認識の甘さをのろった。そしてハイエナのような鬼怒川組のことも。
248巨人の星その後139:2009/06/23(火) 22:57:00 ID:ZDOxjSEk
中のひとみは、無事だろうか?危害を加えられてはいないか?
自分が出て行って、ひとみを解放させることを京子は考えた。

しかし鬼怒川組の目当ては何だろう?金か?
しかし以前、自分が指詰め未遂に終わり、星飛雄馬に救出されたとき、
鬼怒川は言っていた。飛雄馬に対してである。京子も覚えていた。
『せっかくだが、もはやことは金の問題ではないんでな。
 お京はおまえに惚れくさった!惚れたという個人的理由で
 この鬼怒川の名をちらつけせ、ケンカを仲裁しおったとは、
 金をくすねたより、許せんまねだ。』
そこに京子は鬼怒川次郎の本音を見ていた。当初、鬼怒川は、
『なろうことなら、女の悲鳴はききたくねえ性分でな。』
と京子にホザいていたが、本音ではなかったろう。というより、
京子の前で、そんな見栄を張った鬼怒川に京子は薄ら寒く気味の悪い感覚を覚えていたのだ。
(アタシの体ね・・・・。目当ては・・・。スケベ野郎めっ!)
京子は木立に身を潜めながら、歯軋りをした。

しかし京子の憎悪に満ちた視線は、チンピラのひとりに虫の知らせを与えてしまった。
「んん?・・・・!オイ!いたぞっ!お京だっ!」
「なにぃ〜?」  「どこだ?どこだ?」  チンピラどもの叫び声が連鎖的にたちまち大きくなった。
「あそこだぁーっ!」 ひとりのチンピラが身を隠している京子を指差した。

京子は、神社の境内の中へ駆け出した。
「追えーっ!追えーっ!逃がすなぁー!あのアマァ!とっ捕まえて、親分にヒイヒイ言わされやがるように、
 素っ裸にして縛り上げて、お届けするんだーっ!」
「オーッ!」
チンピラどもが、あたかも鬨の声をあげながら、京子を追いかけ始めた。
249巨人の星その後140:2009/06/23(火) 22:59:27 ID:ZDOxjSEk
淫らな願望と、サディスティックな欲望が、チンピラどもを一致団結させていた。
京子は袖ヶ崎神社を通り抜けたが、その抜けた先の大きな民家の塀の並ぶ路地で
行く手と退路を、チンピラに遮られた。絶体絶命である。人通りもまったくない。
「イヒヒヒヒヒ・・・。ついに追い詰めたぜ。女豹ちゃんよ。いや、こうなりゃ子猫ちゃんか。」
「グヘヘヘ・・・。親分特別のご執心だ。見れば見るほど、ハクいスケだぜ。」
「さあ、おとなしくお縄について、俺たち全員にヌードを晒しなって!ケヘヘヘ。」
「親分のスペシャル・コースのお仕置きで、いい声で泣くところを見学させてもらうぜ〜!」

4人のチンピラが早くもおのれたちの妄想を口にして、京子へ距離を詰めた。
やはりそういう淫らな趣向になるべく、京子を拉致しようとしているのだ。
「さぁ〜て、そのプリプリしたお尻を、ひっぱたかれる前に神妙にしなって・・・。グフフ。」

スケベ根性全開でせまってくるチンピラをそれぞれ睨みつけると、京子は柘榴坂へ向いて闇雲に駆け出した。
逃げ切れるかどうかより、嫌悪と憎悪からこのチンピラどもに体を触れられるのも汚らわしい感覚があったからだ。
「グッヒッヒッヒ。そうはいかんのよ。子猫ちゃ〜ん。」
言うが早いか、行く手のチンピラの一人が京子を抱きかかえようとした。
京子は反射的に、チンピラの股間に膝蹴りを見舞った。 ドゴッ!
「ホゲ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
口から泡を吹いて悶絶するチンピラを突き飛ばすと、京子はふたたび駆け出した。
「待てー!待ちやがれー!往生際が悪いと、お仕置きのエゲツなさも2倍3倍になるぜーっ!」
「追えーっ!追えーっ!お楽しみを逃がすなぁー!」
=つづく=
250名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 21:31:11 ID:awlLxbca
本日、「巨人の星その後」休みます
明日からまた投下します どうぞよろしく
251名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 17:54:35 ID:YhI4z1ww
連日の投下お疲れさんです。
最終回まで応援し続ける所存です。
252名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 18:44:29 ID:wqebm30a
なんというまれにみる良スレ
253名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 21:13:20 ID:eB8gyWTc
>>251
ありがとうございます 励みになります
昨日、久しぶりに東京品川方面に出かけたので、フィールド・ワークてがらに
歩いてみたのですが、暑さでヘバってしまいました ヽ('A`) ノ
浜松町駅から飛雄馬の住んでいた設定のクラウン・マンションがありそうな
東麻布へも増上寺か芝公園を抜けて歩いて何分ぐらいかも検証したかったのですが、
こちらは完全に取りやめ 時期が悪すぎましたね (^_ゝ^)
>>252
ありがとうございます
254巨人の星その後141:2009/06/25(木) 21:15:59 ID:eB8gyWTc
最早、スケベ根性全開のチンピラどもの手に落ちるのは時間の問題だった。
しかし京子はとにかく走った。
あの角まで走れば人通りがあるかも知れない。それで助かるかどうかは分からないが。
いくら東京の中とはいえ、この一帯はあまり人は歩いていない。柘榴坂まで出れれば別だろうが
そこまで振り切れる自信は京子にもなかった。
角を折れた。  ドスンッ!  何か大きなものに京子はぶつかってしまった。
何だろう!?そこで尻餅をついて倒れた京子の目に飛び込んできたのは、
この肌寒い中、半袖である人間の太い腕と、そこに描かれた孔雀の刺青だった。
(いっ・・・・入れ墨!こ・・・ここにもヤクザが・・・・)

その入れ墨の主の体が大きすぎて、京子にはその顔が目に入って来なかった。顔はずっと上にあった。
京子は思わず、顔を見上げた。みたこともない大男だ。しかし・・・・。
「ひっ・・・!ひえぇぇーっ!」
さすがの女豹、京子もブザマな悲鳴を上げてしまった。男は金髪、青い目をしていたのだが、
その顔は、口のあたりがゴリラのように盛り上がり、その目は青い瞳にも関わらず、
目の周囲は腫れぼったく、まるで新種の類人猿のようだったからである。
255巨人の星その後142:2009/06/25(木) 21:17:44 ID:eB8gyWTc
「どうやら網に魚がかかったようですな。」
黒崎は、喫茶モンテクリストのカウンターでこの日5杯目のコーヒーカップを置くと
胸ポケットにタバコを探りながら、その勝ち誇ったような顔をひとみに向けた。
「ご面倒をおかけしましたな。ママさん。それに大谷さん。
 我々は、じきに御いとまさせていただけそーですよ。」
火をつけ煙を吐くと、黒崎は大谷のほうにも振り返りニヤニヤと寒々とした笑いを浮かべて
止まり木から立ち上がった。背筋を伸ばして屈伸運動のように反り返った。
「京子さんには、ウチの事務所までご足路ねがうことになりますが、」
ひとみと大谷の顔を見比べてから、黒崎はブラインドを指で広げて外の様子をうかがった。
「しばし京子さんと我々の間で、契約が成立するまでの間、我々がここで長い昼食をとったことは、
 ご他言しないで、いただきたいですな。御両人さま?」
目を細めて外をうかがっている黒崎の目は、外の様子も見ながら別のことを考えていた。
自分の雇い主、鬼怒川次郎の言い放った京子への淫らな願望と、その時の見るに耐えないほどの
醜い鬼怒川の表情をである。想起し、黒崎は複雑な思いだった。

鬼怒川の構成員や、拉致した敵対組織の人間に対するヤキの入れ方はハンパではなかった。
黒崎も極道であるが、その彼でさえ正視に堪えかね嘔吐を催すほどの行為を
鬼怒川は実践していた。眉ひとつ動かさないというわけでもなく、実に嬉々として加虐行為を愉しんでいたのだ。
戦争による殺戮で倫理観と摂理を失い、猟奇的な趣向に脳を支配された人間はいるのだろうが、
鬼怒川は戦時中ずっと塀の中にいた。鬼怒川の殺人は戦争とは関係がなかった。
それだけに黒崎は、鬼怒川が精神を病んでいるのではないのか、もはや人間の感覚を
失っているのではないか?と思うことがたびたびあったのである。
256巨人の星その後143:2009/06/25(木) 21:21:11 ID:eB8gyWTc
鬼怒川組の事務所にある地下室で、その悲惨な運命をたどった人間が
男の場合は鬼怒川は多くの構成員にその様子を見物させた。
しかし構成員ですら、それに立ち会うのを辞退したがる者がいるほど
鬼怒川の「仕置き」は凄惨を極めていた。

このような場合、組長自らその行為を行なうことはないと思われがちだったが、
鬼怒川次郎は自ら率先して、残虐行為を行なった。
構成員への見せしめの意味もあったのだろうが、黒崎にはもはやそれが
鬼怒川の趣味の領域になっているとしか見れなかった。

白装束に身を固め、手に出刃包丁を持ってそれを行なう鬼怒川の顔を
黒崎が盗み見たことがあった。ほとんど嬉々としており
白目を剥いてヨダレを垂れ流しながら生贄を切り刻んでいく鬼怒川の顔は
修羅や羅刹を超えた地獄の獄卒とも言えるものだった。

寝台の上に仰向けにされ、手足を拘束された生贄はどれも声帯が壊れるほどの悲鳴をあげた。
それすら鬼怒川は『もっとも心地よい音楽の時間』と言い放ったのだ。
喜んで協力している構成員はひとりもいなかった。それに立ち会うと3〜4日は食事も喉を
通らない組員がほとんどだった。それを鬼怒川は『イッチョ前の極道になるために教育』
とすら嘯いていた。その直後ですら鬼怒川は酒を飲みうまそうに食事をした。
塀の外にいようと、鬼怒川次郎はすでに地獄の住人となっていたのだった。
257巨人の星その後144:2009/06/25(木) 21:23:38 ID:eB8gyWTc
鬼怒川の陰湿なところは、生贄の肉体に最初に出刃包丁による損壊を
与えたあと、その生贄が絶命するのに、とてつもなく長い時間を掛けることだった。

絶命させずに解き放たれた者もいた。しかしその全てが延々と続く恐怖の時間によって
精神を破壊されていた。ひとりの例外もなく発狂してしまうのであった。

血まみれになった白装束と両手を見やり、悪魔の行為が終わった後も
鬼怒川は悦に浸っていた。組員の誰もがその生贄が明日は我が身でないことを願ったが、
生贄に我が身を重ねて憐れまない者は一人もいなかった。鬼怒川次郎を除いては。

鬼怒川は、若き日からのドスと匕首による殺戮によって、すでに猟奇的な殺人中毒者と化していたのである。

生贄が女の場合は、その肉体に後々まで残る損壊を加えることはなかったが、
鬼怒川らしい自意識なのか、相手が女の場合は立ち会う構成員は少数であった。
なるべく女相手の加虐行為は、組員に見せたくないのであった。

女が鬼怒川の残虐行為によって絶命した例はなかったが、全員が精神を破壊されていた。
そして痴呆化した女たちは証言能力もないことから、歌舞伎町界隈の特殊な店で働かされていた。
そのあとの顛末については知っている組員は多くいたが、
女が発狂にいたるまでのプロセスに立ち会った者はごく少数だった。

そしてその実態もその後の女たちの哀れな生涯を、京子たち竜巻グループは全く知らなかった。
鬼怒川が知らせないように厳命を下していたからである。その悲惨な女たちの運命が、
京子たちへの見せしめと抑止力になるよりは、鬼怒川はまだ自分がそのような変質者であることを
京子たちに知られたくなかったのだ。その卑劣な自意識には黒崎でさえ反吐が出る思いをしていた。
258巨人の星その後145:2009/06/25(木) 21:26:12 ID:eB8gyWTc
京子がぶつかってしまい、尻餅をついてしまった巨漢の外国人というか
新種の類人猿は、その腫れぼったい奥の小さな青い瞳で京子を見おろしていた。
さすがの京子も恐怖で、あいたまま口がワナワナ震えている。
京子が他人に見せたことにない顔である。ほとんど失禁しそうなほど京子は驚愕していた。

しかしこの金髪の類人猿の出現に、京子を追ってきたチンピラどももその足を止めてしまった。
それに気もとめずに類人猿は、その場にしゃがみ込んだ。
サルのような顔が、クシャクシャになった。それは類人猿の笑みであったが、
京子にはそうとは取れなかった。まだ口をガクガクさせたままだ。
「I,m sorry. Girl? Are you OK?」
類人猿が何か喋ったが、京子にはその意味は聞き取れなかった。
類人猿はひとりではなかった。もう一人は類人猿ではなく、背格好もごく普通の日本人だった。
「すんませんね。お嬢さん。大丈夫っすか?彼、あやまってんだけども・・・あの・・・。」
その痩せて額の禿げ上がった日本人は、しかし張りのある声で京子を気遣った。
あんがい若いのかも知れない。 よく見ると京子の目の前の類人猿は、
映画俳優のジーン・ハックマンにも似ていた。
259巨人の星その後146:2009/06/25(木) 21:28:28 ID:eB8gyWTc
たじろいで事態が飲み込めていなかったチンピラどもが、
それぞれ顔を見合わせたあと、声をあげた。
「なっ・・・なんだ?こいつ、構わねー!攫っちまえー!」
チンピラどもが、尻餅をついたままの京子に駆け寄ろうとすると
類人猿の一瞥がチンピラどもを沈黙させた。
「ウウッ・・・・。」

その眼光は京子に見せた人懐っこいジーン・ハックマンのような顔とは一変し、
日本のヤクザをも押し黙らせるほど、鋭くケンカ慣れしたように、ふてぶてしかった。

その季節はずれの半袖シャツから孔雀の入れ墨が見える発達しきった両腕を見せた類人猿は
すっくと立ち上がると京子を回りこんで、チンピラどもの前に立ちはだかった。

恐怖を押しのけて、京子に駆け寄ろうとしたチンピラのひとりが類人猿にぶつかった。
ギロリと鋭い眼光をチンピラに向けた類人猿は、そのチンピラの胸倉を掴むと
自身の頭の上まで担ぎあげた。
「アアーッ!アワワ・・・」
まるで野菜でも放り投げるように、そのチンピラをポイッと放すと、
この類人猿の連れの日本人が、類人猿に囁くように声を掛けた。
「Hey! Harley! You Don't matter! Understod?」
しかし類人猿は不適な笑みを浮かべたまま、チンピラどもにノソリと歩み寄った。
「コンニャロー!こいつ何だぁ?化け物ぉー!米軍じゃねーな?」
260巨人の星その後147:2009/06/25(木) 21:31:00 ID:eB8gyWTc
チンピラどもが虚勢を張ってこの怪物に向かおうとして、何も出来ないでいる間、
京子は、すばやく事態を飲み込んだ。
どうやら類人猿のような外国人はチンピラどもと何の関係もなさそうだ。

奇声をあげてまた走り寄ってきた別のふたりのチンピラが
類人猿を回り込んで京子を掴もうとすると、類人猿は
信じられないフットワークで、こんもふたりのチンピラの腰のベルトの背中部分を掴んだ。
「アリャ?アリャリャ?アワワワ・・・・・!」
何も出来ないで、口をパクパクさせているこのチンピラ2匹を
今度も類人猿は、野菜でも品定めするかのように自分の目の位置まで担ぎ上げた。
京子にもチンピラにもこの類人猿の大きさは、常識の範囲を超えていたが、
実際には190センチそこそこであった。

しかしとてつもなく規格外のサイズの怪物の出現に誰も、その具体的サイズを測ることなど無理だった。
唯一、この怪物のことを知っていると見える怪物の連れの日本人がまた、怪物に言い寄った。
今度はさっきより声を大きくしている。
「Hey!Hey!Hey! Harley! Stop!Don't It!Don't It! Take It Easy! Take It Easy!」
261巨人の星その後148:2009/06/25(木) 21:33:23 ID:eB8gyWTc
その若禿の日本人の連れのほうを、ニヤリと笑って一瞥すると
怪物は2匹のチンピラを、荷物でも放り投げるように、ポイッと手放した。
怪物類人猿のクソ力は、しかしチンピラ2匹を木の生い茂る
空家となっている大きな屋敷の塀にドタンと打ちつける格好となってしまった。
「No!No!No! Harley! Harley! Can't you hear Me?Can't you hear Me?]
3人のチンピラがあっという間に、転がってしまった。
怪物はもう残った一人のチンピラを見ることもなく、京子に歩み寄ってきた。

京子はゾッとした。しかしその怪物が、童話の王子様のように手を差し伸べて
京子を立たせようとしたのを、京子は我が目を疑ったが、
抜けそうな腰のまま、素早く立ち上がると、怪物の顔を見た。
思い出せないが見た事がある顔かもしれない。
しかし断じてジーン・ハックマンではなかった。
振り返るとチンピラどもは、腰をさすって立ち上がろうとしているのが3人、
あっけにとられて立ちすくんでいるのが1人。京子はこれ幸いと駆け出した。

「あっ!女が逃げるぞー!追え!追えー!」
しかしそのチンピラの号令は声が裏返っていた。京子は振り返らずにひたすら駆けた。
なんとか柘榴坂の人ごみに、紛れ込めた。辺りは品川税務署やブティックなどのある活気ある一帯である。
「チッキショー!どこ行きやがったぁ〜?探せ!探せー!」
動揺隠せないチンピラ4人は、京子の姿を目で追いつつも、一度だけ怪物を振り返った。

しかし怪物類人猿と連れの若禿日本人の姿も、すばやく辺りから消えていた。
=つづく=
262名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 21:46:23 ID:b2I0BiiQ
Harley・・・孔雀の入れ墨・・・ま、まさか!?
263女悪役ブルース:2009/06/25(木) 23:14:09 ID:ah02sNDH
取り巻きのヤンキー達をリング下に従え、颯爽と現れたのは金髪をなびかせ
た長身の美少女。観客からは「月子!!月子!!」のコールが起きてる。
「なんなの、これ・・こんな場所でこんな人気があるなんて」
それまでの殺伐とした雰囲気と打って変わった会場の空気に純は疑問を
投掛け、タオルを首に巻いたゼロが答えた。
「白金月子、あんたの年じゃ知らないだろうけど、一昔前の女子プロレス界
で、アイドル的人気を誇ったキューティームーン。月子はその娘。母親譲りの
美貌と、総合格闘技の選手だった父親のDNAを受け継いだ、おそらく現在の
女子の格闘界では最強の女があの子さ」
よくは知らないが、そんなリングネームの人気女子レスラーがいたのは
憶えている。しかし、体は大きいが線が細く華奢に見えるこの少女がそんなに
強いとは感じられなかったが、間もなく怯えたような目つきでリングに上がって
きた女との一戦がゴングと共に始まると、その認識を改めずにいられなかった。
264女悪役ブルース:2009/06/25(木) 23:34:40 ID:ah02sNDH
ほぼ瞬殺に近かった。怯えきって近ずいてこない女の片腕を取り、
ロープに振ると、純にはどんな技を掛けるつもりかまったく読めない
スピードと、奇異な動きで相手を、これも見たことのないホールドで固め、
更にその形からスープレックスにいき、あっさりとKOしてしまった。
1分とかかってないだろう、悪魔の技で失神している女の、月子は
アイドル然とした戦前の顔を捨て、悪女のそれとなり水着を脱がした。
抱き上げての大股開きはやらないが、女の下半身を浮かせマンぐり返しにし、
女の尻に足を乗せる、なんとも屈辱的なポーズを取った。
純の角度は正面からずれてるが、正面の男達が、凝視する先には
抱き上げポーズと変わらない、大股開きの股間があることが容易に
わかる。だが、月子はその羞恥ポーズを長くは続けず、女を解放すると
純のいるコーナーに近ずき声を掛けてきた。
265女悪役ブルース:2009/06/25(木) 23:54:33 ID:ah02sNDH
「お久し振りね、クイーンゼロ・・」
「あぁ・・・母さんは元気か?」
「元気だよ、目は治らないけどね・・・。琵琶湖の畔の別荘で父親と
暮らしてるよ・・・それよりなんであんたが、この修羅場のリングに
帰ってきたんだい。このリングにいればいずれあたしと闘かわなければ
いけなくなる日がくるよ・・・母さんがあんな目にあった時も、援助し
てくれて、あたしに格闘技の基礎を教えてくれたあんたを、クイーンゼロ
をこのリングで倒すなんてしたくない・・・それともそこの空手お嬢ちゃん
とあたしを闘かわせようとでも思ってるの?」
「純とお前を闘わせたって、結果は見えてる。だけどあたしをナメるんじゃ
ないよ、まだまだお前ごときには負けない。それにキューティーが硫酸を
かけられた時、あたしも別な落とし前をつけられて、いわば同病相哀れむ
感じで手助けしただけのこと、そんなに恩に着る必要は無いよ。それより
あたしにひん剥かれないよに用心しな!」
「相変わらずだね、まっ、あんたがその気ならこっちもやりやすいけど」
そういうと、反対コーナーに戻り、リングを降りると、取り巻きに囲まれ
会場を去っていった。
266女悪役ブルース:2009/06/26(金) 00:09:46 ID:vfGYw8aZ
月子の試合が最後で、場が解散していくなか、ゼロと純も外に出た。
純には聞きたいことがやまほどあった
「私が、あの子に勝てないってどういうこと!それにあの子とあんたの
因縁は、聞いててなんとなくわかったけど、あの子のいう通り、なんで
このリングなの、勝てないといいながら、私とあの子、月子を闘わせたいと
思ってるんでしょ?」
一気にまくし立てられて、鼻白みながらゼロは
「あたしにも色々考えがあるんだよ、兎に角今日は安い宿か下宿見つけて
早く寝る!」
一周間連泊なら一泊2000円の宿を見つけ、そこに2部屋とり泊まることに
なったが、昨日から今日にかけての出来事を反芻し、純は眠れなかった。
結局、運転の疲れが出て眠りについたのは明け方だった。
267女悪役ブルース:2009/06/26(金) 00:16:21 ID:vfGYw8aZ
誰も楽しみにしてないなか、オナニー状態で書いてるような
もんだけど、スレ汚しの文章にもう少しお付き合い下さい。
現在原作のニューヨークの闇のプロレス編をなぞっていますが、
この後のメキシコ、東京編は端折って、この話に区切りがついた
ところで終了します。
268名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 00:22:53 ID:3GjoOTK4
>>267
いやいやGJですよ!書いてくれる人は皆、ネ申でありカジセンセですよw
原作の雰囲気をうまくエロパロ風にアレンジしてて、私は好きです。
269名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 08:52:03 ID:ndpCpgZB
>>267
ぜひメキシコ編、東京編もやってほしいですな
人間兇器メキシコといえばあの伝説的高慢チキ女、プロモーター令嬢モニカを思い出す

こちとら悪役ブルースは未読だけど、それでも楽しめますよ
あと女子レスラー紅子も未読なんだな〜 そのテイストも入れて書いてもらっても楽しみかも

でもこんもスレ既出の四作品中、三つが女子プロレス関連とは・・・
みなカジセンセにエロいトラウマをもらった箇所は共通してるということかw
270名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 19:00:26 ID:y0sblJPi
>>267
女悪役ブルース、ながくやってよ
もう原作世界から、乖離してもいいでね?
原作の登場人物を主人公にしてるわけじゃないし
プロレス、マスク剥ぎ、負ければご開帳、地下プロレスとかだけで
原作世界を踏襲してると考えていいんでね?
>>1はどう思うか知らないけど、別にこれだけ文章力あれば文句ねーでしょ?
つづけろつづけろ
連載はみっつぐらいほしいよ 正直
>>262
どうやら>>1の時代考証はプロレスにも及ぶようだねw
この先たのしみ
271名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 22:29:57 ID:MZ9uO+M8
>>262
お気づきいただいて、どうもです。誰かひとりレスラーを出したかったんですw
>>267
執筆ありがとうございます 応援しています 長くても短くても結構ですよ
また終了されるのであれば、ぜひ次回作も大大期待しております
自分もオナニー状態の投下をする身です
執筆者同士ですので、書評は差し控えさせていただきますが、いつも応援しています
がんばりましょう (^_ゝ^)
>>268
ですね 読み手さんからの励ましはとても力になりますよ
>>269
自分もプロレス大好きです でも実をいうと実際の女子プロレスは今も昔も
あまり見てません まああまり愛着をもってしまうと今のお京みたく
大事に扱いすぎてエロ化を躊躇してしまう部分もありますが、プロレス物も書きたいですね
>>270
女悪役ブルース、ノープロブレムどころか大歓迎しています

皆様の投下もお待ちしております
今、投下していただいているみなさんのように、ちょっとしたガイドも入れていただけると
一層わかりやすく、世界に入りやすくなるので、その手法も歓迎しますよ
272巨人の星その後149:2009/06/26(金) 22:32:37 ID:MZ9uO+M8
この怪物の手を引っ張り、別の屋敷塀の裏まで入った若禿の男は、
そこまで来るとこの怪物の類人猿の母国語で声を殺したまま叱咤した。
「ヘイ!だめじゃないか!リングの外で腕を振るっちゃ!」
類人猿は、申し訳無さそうに顔を人懐っこく崩すとシャツの胸から覗く黒い胸毛のあたりをボリボリと掻いた。
頭の金髪は染めているだけのようだ。
「すまない。ジョー・・・。しかし連中はガールを4人で襲いかかろうとしてたんだぜ。
 黙ってるわけにも、いかねーだろが。ちがうか?ジョー。」
ジョーと呼ばれた若禿の男は、なおも声を殺したまま類人猿を叱咤した。
「ハーリー!あれは、ヤクザと言ってジャパンのマフィアなんだよ!わかる!?」
「オー!ジャパニーズ・マフィア?ハッハッハ!じゃあマフィアからガールをヘルプした俺は
 なおのこと、グッド・ガイだったということになるな!ジョーよ。ハッハッハ!」
ジョーと呼ばれた男はそれ以上、類人猿を叱咤せず、腕を引っ張ってその場をあとにした。

ジョーと呼ばれた男は、名を樋口寛治といい、日本プロレスというプロレス団体の外国人世話係をしていたのだった。
元はこの男もレスラーだったが、今は堪能な英語力と、外国通な知識で巡業に参加する外国人の世話を専門としていた。
ジョー樋口という名前で、後の全日本プロレスでレフェリーとして、日本中の茶の間にも顔が浸透するのは
このまだ2年あとのことである。誰も日本ではまだ彼の顔を認識していなかった。

怪物の類人猿は、ハーリー・レイスというアメリカ人レスラーで、この昭和45年の11月13日から予定されていた
日本プロレスの巡業シリーズ「インター・チャンピオン・シリーズ」のために来日していた。
後から遅れて来日するジン・キニスキーやジョニー・バレンタインより格はまだ下だったが、
その二人が来日するまでは、第一線で馬場と猪木の両エースと日本全国で熱闘を繰り広げる予定で
この近くの高輪プリンスホテルに宿泊していた。少し早く来日した彼は退屈を訴えて樋口と辺りを散歩していたのだった。
彼がNWA世界チャンピオンとして、日本でも超一流の扱いを受けるようになるのには、
この物語の時点からまだ3年を要することになるが、このときハーリーレイスは
まだ27歳の若き強豪のひとりに過ぎず、日本中の人が彼の顔もまた認識はあまりしていなかったのである。
273巨人の星その後150:2009/06/26(金) 22:34:41 ID:MZ9uO+M8
その1週間前の早朝のことであった。
京子を乗せた金沢発の寝台特急「北陸」は、上野駅に到着しようとしていた。
「えー、永らくのご乗車、たいへんお疲れ様でございました。
 間もなく列車は、終着駅、上野に到着したします。
 えー、本日は寝台特別急行「北陸」をご利用いただきまして、ありがとうございました。
 間もなく上野、上野、終着駅の上野に到着いたします。
 ご乗車のお客様方、えー、どちら様も身の回り品、お手回り品をお忘れなきように
 お降りになられますよう、お願いいたします。
 特に、列車の洗面所、お手洗い付近へのお忘れ物が大変多ございます。
 今一度、、身の回り品、お手回り品をご確認の上、降車のご用意をいたしてください。
 はい、間もなく上野、上野でございます。
 えー、お乗換えのご案内をいたします。北陸本線、仙台ゆき特急「ひばり」はお降りになられまして・・・」

延々と乗り換えの連絡案内が車内で放送されていた。
こんなに長々と喋られて、頭に入る人間がいるのか?乗り換えのつもりがある乗客は、
自分でとっくに調べてあるのではないか?この延々と続く車内放送に
息を殺して耳を傾けている乗り換え客がいったいどれだけいるのか?

そう疑問に思った京子は、少しだけ笑ってしまうと窓の外を見た。
3ヶ月ぶりの東京である。しかし上野には、3年ぶりだ。その年月を京子は数えたことはなかったが、
「上野」という響きには、とても懐かしいものを感じた。
まだ道を踏み外す前、最後のまっとうな青春の日々を送った土地、この台東区に
京子は万感の思いで、降り立った。
274巨人の星その後151:2009/06/26(金) 22:36:55 ID:MZ9uO+M8
芦原温泉で、解雇を言い渡されて間もなく、顔を合わせた元竜巻グループの
一人が京子に一枚の新聞切り抜きを見せてきたのであった。
『京子さん連絡ください豊作』の尋ね人だった。
その尋ね人を、左門が出したことに間違いはないと思われたが、
その後ろに巨人ー中日戦のあと、消息を絶ったという星飛雄馬の影を見た京子だった。
飛雄馬が野球人であるが故に、自ら遠のいた京子だったが、今こそ飛雄馬は自分を必要としている。
今、自分だからこそ飛雄馬の力にならなければならないと考えていた。
飛雄馬の冷え切った心と肉体を自分が暖めてやらなければならない、
使命感のようなものを感じていた。

飛雄馬の周辺には何人かの知り合いがあるだろう。巨人軍関係者や
京子は構成を知らなかったが、飛雄馬の家族、そして友人たち、
しかし飛雄馬と京子の共通の知人は、左門豊作ひとりなのだ。
飛雄馬が消息を眩ませていても、左門が何か知っているのではないか?
あるいは飛雄馬が、目立つ名前であること、鬼怒川組のマークの可能性を考えて
左門に京子の行方を依頼している可能性があると京子は拡大解釈していたのだ。

それほどに京子は星飛雄馬を欲していた。逢いたかったのだ。何としても。
鬼怒川組の網にかかる危険性のある東京潜入ではあった。
しかし野球人としての生命を絶たれた飛雄馬に今、自分はできる限りのことがしたい。
そう考えての寝台特急「北陸」での東京潜入であった。
275巨人の星その後152:2009/06/26(金) 22:39:17 ID:MZ9uO+M8
早朝であるにも関わらず、上野駅はざわめいていた。
まだこの時代、ジャイアント・パンダのオブジェのない浅草口を京子は通り過ぎた。
左手に白いボストンバッグ、右肩に小さなショルダーバッグをかけていた。
入谷口通りへ出た。懐かしい空気だ。大都会東京の香りというより、
自分の生まれた土地であるというより、京子にとっては何より特別な場所である。上野は。

ここからクルリと回り込めば、合羽商会はすぐそこである。
昭和通に出た。交差点の向こうに、上野警察署が見えた。
京子が始めてバイクを運転しスタートさせた場所である。
初めて無意識にバイクに跨ってしまったのは、今いる場所を少し北にいったところ、
鉄二がいたはずの合羽商会だった。
懐かしさは、心地よいながらも、その心が痛い部分もあった。
ここでは、何もかもよくしてもらった。鉄二だけでなく、鉄二の兄の家族にも、
吉原近くの文化住宅の住まいの近所の住民にも。浅草のすき焼き屋でも。

ある日それらすべてから、京子は去ったのだ。去りたくなってしまったのだ。
良くされすぎたのが怖かった。何も求めてこないやさしさが怖かった。
そしてそんな毎日を破壊すべく寄越された父の使いが怖かった。

そしてぶっきらぼうだったのに、急にソフトに優しくなり始めた鉄二が怖かったのだ。
276巨人の星その後153:2009/06/26(金) 22:42:10 ID:MZ9uO+M8
鉄二に合わせる顔があるだろうか?今の自分に。
この3年近く自分は何をしていたのだろう。新宿に流れ着き、肝っ玉の大きさを
何人かの同世代の女の子たちに慕われ、彼女たちの恐喝行為を
逃れようとする平凡なサラリーマンの男たちにをやり込めているうちに
京子はその女の子たちの中で知らぬ間に君臨していた。
同僚同士で肩を組んで酔っ払っている平凡なサラリーマンのいい大人たちが
京子たちに泣きを入れるのに、とりわけ京子は溜飲を下げた。
あらぬ言いがかりをかけ、痴漢の疑いまでかけて、
京子たち10代の女の子や、世間体という見えない影におびえる大人の男たちを
いびり倒すのを京子は、我が意を得た思いであった。
京子は自分がどんどん凶暴にそして悪質になって恐喝を繰り返すのを
胸の中では自覚していた。しかしそれを誰も止めなかったし、諭す人間もいなかった。
星飛雄馬が最初で最後である。彼女を叱りつけたのは。

その飛雄馬は当初は知らなかったが、京子より1つ年下だった。心をいとも簡単に
奪われた。その精神の純粋さに。思えばあのミラノ座での飛雄馬のビンタ1発でまいってしまったのかも知れない。

京子が、ぬるま湯につかったようなビジネスマンを狙い撃ちにして恐喝し続けたのは、
彼女の中に憎しみの感情しか残してくれなかった父への復讐があった。
自分ではそれを振り払おうとしても、世間体を恐れて平謝りする男たちを見ていると
自分でも分からないほどに、胸の中がムカついてきて、より陰湿な恐喝を続けていた。

何かが自分をストップさせ、何かが自分を包み込んでくれるなどと
爪の先ほども考えていなかった毎日に、飛雄馬は突然あらわれ京子の目を覚ましたのである。
277巨人の星その後154:2009/06/26(金) 22:44:15 ID:MZ9uO+M8
思えば鉄二も、やさしかった。それに余計なことは言わなかった。
決め事のあるときは、いつも一方的に決めてきた。
それが逞しかった。嬉しかった。いとおしかった。引きずった右足について
鉄二が自分で語ったことも一度さえなかった。
目を閉じていれば、何でも引っ張ってくれる気がした。
あの父の差し金の弁護士が、やってくるまでは。

急に後ずさりしたわけではなかったが、困り果てた鉄二を見ていられなかった。
鉄二に頭がきたわけでもない。ただ鉄二を困らせたくなかった。
足手まといになりたくなかった。

上野を出てから、まだ疑惑の段階だったが報じられたオートレース八百長疑惑。
そのニュースを新宿の西口にある電気店の街頭でみた京子は、
自分の青春が終わったことを知った。自ら見切りをつけたオートレーサーへの道を
オートレースのほうが後を追いかけて、やめておけと伝えてきた思いがした。

鉄二に会うつもりは京子にはなかった。逢ってももうどうしようもない。
ただ店だけは、最後になるかも知れない。見ておこうと思った。
まだこの時間だ。店は開いていないだろう。誰も着ていないはずだ。
278巨人の星その後155:2009/06/26(金) 22:47:16 ID:MZ9uO+M8
店はそのままあった。看板もそのままであった。
まだ開店していなかったが、ショーウインドーの中は見れた。

そこにかつて憧れたMVアグスタ750Sは、もうなかった。
かわりにそこにあったのは、去年、出たという日本初の大型オートバイ
ホンダ・ドリーム号CB750FOURが、置かれていた。

ガラス越しに京子は店の中をよく見通した。
店内の壁に貼られている一枚のポスターに目がいった。
それは3年前にここを始めて訪れたときと同じポスターだった。

MVアグスタ・レーサーに乗りマシンを傾け疾走するイタリア人ライダー
ジャコモ・アゴスチーニのポスターだった。
MVアグスタの撤退後は、ヤマハの専属ライダーとして
日本チーム所属ライダー初のワールド・チャンピオンとして有名になる前、
まだMVアグスタ所属のライダーとして、タイトルを取り捲っていた時代だったが、
このときは日本ではまだ知る人ぞ知る存在でしかなかったアゴスチーニ。
通称:アーゴのポスターは色あせながらも、そのままそこに貼られていた。
「京子っ!」
不意に呼び止められ京子は、驚嘆した。誰だ?しかし聞き覚えのある声ではなかった。
以外にもそれは、女性の声だったのだ。京子は振り向いた。
279巨人の星その後156:2009/06/26(金) 22:53:08 ID:MZ9uO+M8
京子はヤクザの追っ手を逃れ、柘榴坂を降り切ると、そのまま品川駅前の信号を赤信号で渡りきった。
第一京浜に面して交番があったが、そこまでは、まだ50メートルほどあった。
走りこもうとしたその時、国鉄の切符売り場にある男の後姿を見た。
見覚えあるグレーのハーフコートのやや背を丸くしているその後姿は左門のものだった。
今日は、思わず立ち止まった。
信号の向こうの柘榴坂に目をやった。チンピラが4人、キョロキョロしながら歩いていた。
京子が向き直り、ふたたび左門に目を向けるとその姿は改札口の中にきえるところだった。

京子は複雑だった。今、左門に飛びついて助けを求めるのも、つい20分ほど前の出来事からして変だし、
しかも左門は現役のプロ野球選手なのだった。
巻き込むわけにもいかない。しかしこのとき京子は、さきほどまでの恐怖の時間を走り抜け
急に左門の背中を見たときに、なぜか懐かしさを覚えたのだった。
その素朴な佇まいが、とても恐怖の時間を通り抜けた京子には、心に一握の灯火を
灯された奇妙な安堵感を与えたのだった。
280巨人の星その後157:2009/06/26(金) 22:55:09 ID:MZ9uO+M8
しかし左門は京子に気付かず、改札口の中に消えた。
精気もなく、うなだれながらトボトボ歩く左門の姿に、京子はつい20分ほど前に
自分が左門にした行為を思い起こさせ、自己嫌悪に陥らせた。
(アタシって・・・最低の女だわ・・・。)
振り返ると、まだ京子を発見していないが、チンピラどもは信号を渡ろうとしていた。
京子は、息を大きく吸い込むと品川駅を芝浦方面に、走りぬけた。

喫茶モンテクリストでは、黒崎がこの日、25杯目の珈琲を飲み終えていた。
ひとみにすれば、チンピラどもが京子を発見して追いかけていった事態は、
緊急に対策を講じたかったが、黒崎が居座っている。
しかもこんなに珈琲を飲んでいるのに、トイレにいく様子もない。
いってくれれば、そこに透きができ、通報でも何でもしようがあるのだが。

「遅いなぁ・・・。なにしてるのかなぁ?全く。ねえ、ママさん。」
ひとみは返事をしなかった。大谷は、ボンヤリ下を向いたままである。
「あ、そうだ。おふたりにまだ聞いてないことがあった。」
黒崎は自分で自分の手を打つと、二人の顔を見比べた。
281巨人の星その後158:2009/06/26(金) 22:56:58 ID:MZ9uO+M8
「星飛雄馬って、この店にきましたかね?」
ひとみも大谷も黙っている。
「そのくらい、いいでしょ?こたえてくれても。大谷さんはどう?」
「いやぁ〜。ぼかぁそのぉ、あの・・・。見たことないです・・・。ホントに。」
ひとみは、少し間を置いてから言った。
「その人が、どうかしたの?」

「いや、どうもその星飛雄馬が、京子さんのいい人らしいんだが、ここには現れたかどうかと思ってね。」
「あのこは、ここに来てからは、特定の人間とは会ってませんよ。ほとんどここから出てませんから。」
「あ、そう。ふ〜ん。」
黒崎の言葉はだんだん横柄になってきていた。当初のバカ丁寧さはやはり演技だったようだ。
そしてその質問にもあくまで参考に聞いたまでで、それほど二人のこたえを当てにしているわけでもないらしかった。

しかしこの質問が、黒崎には後におおきな誤算となることなど、まだ知る由もない。
「あっ、ひとり帰ってきた。でも手ぶらだ。後から来るのかな?」
ブラインドの隙間から外を覗いていた黒崎が、おどけた調子で言った。
京子が捕まったのか?ひとみは、気が気でなかった。
カラリンとドアが鳴る。黒崎は、中から鍵を開けてチンピラを中に入れた。
282巨人の星その後159:2009/06/26(金) 22:59:24 ID:MZ9uO+M8
「若頭!すんません!逃げられました。とつぜんプロレスラーみたいな外人が邪魔しやがって・・・」
黒崎はチンピラの話をまたしても、手の平で制すとそれに歩み寄った。
ボゴーン!
黒崎の顔面パンチがチンピラを直撃し、チンピラは歯をふきこぼしながら、ドアまで吹っ飛ばされた。
またドアが、カランカランと鳴る。
「バーカ!若頭なんて呼ぶんじゃねー!大馬鹿野郎!」
「す・・・すんません・・・。く・・黒崎さん・・・。」
倒れて口を拭うチンピラの顎に今度は、黒崎の革靴によるつま先蹴りが炸裂した。
パコーンッ!
「グフエ〜〜〜〜〜〜っ!」
「今度ぁ名前、呼ぶのかよ。脳タリンがっ!それに逃げられたって何だ?逃げられたって!ああ?!」

豹変した黒崎の姿に、ひとみは顔を背けていただけだが、大谷はガタガタとまた震え出した。
黒崎は幻滅していた。この鬼怒川組のチンピラは、元々は警察に強制解散させられた組織の残存の寄せ集めである。
いかにも鬼怒川直系の生え抜きのようなことを、新宿でホザいているのが、多かったが、
寄せ集めなのに、直系も何もなかったのだ。黒崎自身、解散した組の幹部クラスだったのを
新興の鬼怒川組が旗揚げされるときに、滑りこんだにすぎない。鬼怒川に杯を預けてはいるが、
あの男に惚れたり、拾われたりして、この道に入ったわけでもなかった。
便宜上、そうなっただけだ。それだけにチンピラというか末端構成員のレベルも、こんなマヌケがいるほど
そうしようもない部分があった。
283巨人の星その後160:2009/06/26(金) 23:01:42 ID:MZ9uO+M8
「おまえな。今は素人衆んところで、シキテン張ってんだぜ。ペラペラ役職喋ったり、
名前呼んだり、あげくに『逃げられましたー』か?あん?
おまえな。帰ったら会長に解剖されるぜ。なぁおいっ!」
チンピラは血まみれの顔のまま、歯が飛んで喋るのも難儀しながら、泣き叫びだした。

「ぎゃぁーっ!あれだけは、お許しください〜!あれだけは〜!ゆ・・指、詰めますぅー!」
黒崎のパンチとキック、そして「解剖」という言葉と「指詰め」という言葉。
にわかに穏やかでない世界を垣間見せられたひとみは、
それでも顔を背けたまま、反応しまいとしていたが、大谷は違った。
ガクガク震えたまま、何か言葉にならないことを口にし出したのだ。
「ワウワウワウぅ〜・・・・。ヒィヒィヒィ・・・ヒックヒウック・・・ワゥワゥ〜。」
「あんた、うるせーぜ!チョイ!」
黒崎が大谷に文句をつけようとしたとき、店の電話が鳴った。
ジリリリリ〜ン!

=つづく=
284女悪役ブルース:2009/06/26(金) 23:37:34 ID:TFV9BEdR
昼近くまでまどろんでいた純を起こしたのは、部屋に入ってきたゼロだった。
「いつまで寝てんだい!もう昼だよ、さっさと起きな!」
寝ぼけたままの純に、ゼロはコンビニ弁当を渡し、二人でブランチを
始めた。そこで少し昨日のことを思い出した純はゼロに食べながら尋ねた。
「そうそう、あんたと月子の因縁話聞かせてよ」
「あまり深く話すと、あたしの正体までバレちゃうからね、簡単に説明
すると・・・・・・」
ゼロが語った内容は、月子の母キューティームーンこと、鈴木由美子が
当時の東女プロレスに入団した時代まで遡って語られた。グラビアアイドルから
衝撃のプロレス転向を果たしたキューティーは、実力は無いがそのアイドル人気で
デビュー後瞬く間に人気を博した、しかし、実力の伴わない人気は、他のレスラーの
不興を買うこととなり、半場いじめに近いラフファイトを続け、キューティーは
1年を待たずに引退に追い込まれた。
285名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 23:42:36 ID:FWD62VJj
おお、やっぱりレイスだったか! それに連れの日本人がジョーさんだったとは。
これは気付きませんでした。あなたの遊び心に脱帽です!
286女悪役ブルース:2009/06/26(金) 23:52:08 ID:TFV9BEdR
引退と同時に、キューティーは付き合っていた柔道家の白金達男と
出来ちゃった結婚をした。達男は次期オリンピックの柔道無差別級でのエントリーが
確定していた、国内最強の柔道マンだった。
この時できたのが、月子なわけだが、この後夫婦は大阪のある企業から
プロレス団体設立と、その設立メンバーとして参加して欲しいとの依頼を受ける。
由美子は、不完全燃焼で終わったプロレスへの復帰は望むところだった。
また達男も、柔道では食っていけないことはわかっていた、子供も生まれ
将来を考え、二人は夫婦での参加を決めた。
この新大阪プロレスの参加メンバーには、白金夫妻以外では、達男の
後輩に当たる柔道家が数名と、由美子が東女時代に可愛がっていた後輩数名。
この由美子の後輩の中の一人がゼロだった。
287女悪役ブルース:2009/06/27(土) 00:13:58 ID:BQ7kR6/+
プロレス界全体が、思想闘争や世代間抗争で新団体が出来ては
消えたり、合併などの離合集散を繰り返していた時代、
プロ柔道のエッセンスを持ち込んだプロレスと、明るく楽しい
女子プロレスとを標榜した新大阪プロレスのコンセプトは間違って
いなかったが、いかんせん選手のキャラや実力が伴わなかった。
男子の闘いは、最高につまらない柔道風プロレスと酷評され、
女子も、キューティー以外にスターがいなかったこともあり、
あっという間に、新大阪プロレスは経営危機に陥ってしまった。
ここで素直に団体解散なり、他団体への営業譲渡をすればよかった
のだが、キューティーは、あろうことかやや遅れて設立されたが、
老舗団体から若手中堅をごっそり引き抜き、今や日の出の勢いの
KKWPのリングに乱入したのだ。
キューティーに従うのは、若き日の、まだ素顔の新人レスラーだった
ゼロ一人。
だが結局この乱入劇も、マスコミにもとりあげられず、二人は
控え室に連れていかれフルボッコにされた。更に、KKWPのバックに
広域指定暴力団H組が付いていたのが二人の不幸だった。
キューティーは、顔に硫酸を浴びせられ、それが原因で両眼失明。
ゼロは、そこにいた数名の男達に手足を緊縛され、抵抗できないまま
レイプされた。
288女悪役ブルース:2009/06/27(土) 00:29:50 ID:BQ7kR6/+
当然新大阪プロレスは倒産。失意の達男は廃人同様となり、
視力を失った由美子も、どうすることも出来なかった。
そんな時、仇のはずのH組から地下プロレスへの誘いが
ゼロのところへやってきた。まだ荒削りだが、実践で揉まれれば
強くなると判断したのだろう、失うものの無いゼロは
地下プロレスに参戦した。
そこでの稼ぎを白金夫妻に渡し、まだ幼い月子にレスリングを教えたり
した。その後、海外に出たゼロはマスクを被り、悪役としての地歩を
築き、日本に帰国。準メジャーの名女プロレスに参戦・・・
以上が、ゼロが純に語った内容だった、
「もう遠い過去の話さ、そんなに哀れそうな顔でみるなよ!」
ゼロにそう言われても純には何もいえなかった。
「まぁ気にするな、とにかく今日はあたしは用事があるから、
あんたは、この先のスポーツジムに行ってトレーニングででもしてな」
そういうと、ゼロはさっさと出て行った。
289女悪役ブルース:2009/06/27(土) 00:57:06 ID:BQ7kR6/+
>>268->>271
ありがとうございます、読んでもらっている方がいると思うと素直に
嬉しいです。
一番最初にも書きましたが、悪役ブルースは梶原作品の中でも特に評価の低い
一作で、その原因の1つが、メキシコ編あたりからの物語の破綻でしょう。
最も魅力的キャラのミスターゼロはメキシコ編の終了と共に物語から退場して
しまい、プラチナ・アポロも東京編の途中で消えていき、迷走を続けるストーリーは
国際はぐれ軍団まで登場させたところで、梶原逮捕事件で打ち切り。
その後真樹日佐夫の手で無事完結すことになるが、このあたりのストーリーを
エロパロにもっていくのは自分の力では無理です。
ただし、地下プロレス編の完結には、まだしばらくかかります。
一応の完結をみたら、女悪役ブルース外伝みたいな感じで単発物の投下も
考えてます。
ちなみに悪役ブルースと同時期にヤンマガで連載されてた紅子も
私には忘れがたい作品です。所々に紅子のエピも挿入しています。
残念ながら単行本化されていない紅子のストーリーはうろ覚えで、
ストーリーの端々に頻出していたエロカットを思い出しながら書いてます。
その後はやはり不当な評価を受けているが、私個人は大好きな
「初恋物語」や「青春山脈」のエロパロ化に挑戦しようかとも構想してます。
風呂敷ばかり大きく広げちゃったけど、長い目でお願いします。
290名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 01:06:40 ID:WNn3p7qN
>>289
乙です。いろいろと構想されてますね、楽しみです。
気長におつきあいしますよ。
291名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 08:24:42 ID:xW3og4V1
>>278
ジャコモ・アーゴナツカシスギw
>>289
キューティーは人気あるね このスレでも
いじりたくなるヤラしさと清潔感があった

しっかし美人レスラーの負け→コーマン全開おしっこポーズはカジセンセも
いくつもの作品でやっちゃってるけど、みんなも大好きだなw

>>1
一応の完結を見たカラテ地獄変・牙だけど
ボディガード牙と、新カラテ地獄変はフェイド・アウトのエンディングだから
こってりした続編が可能だと思うんだが、どうだろう
事件性のある一話ものでも読みたいんだけど自分で書けないんでw
292:2009/06/27(土) 18:25:59 ID:BllmiH94
アクセス規制が、でた場合は2〜3日間、予告なしに
「巨人の星その後」を休載する場合があります
あらかじめご了承ください
>>285
今度はどんな遊び心を入れられるか、また考えたいと思っています
>>289
「初恋物語」や「青春山脈」、楽しみにしています
>その後真樹日佐夫の手で無事完結すことになるが、このあたりのストーリーを
>エロパロにもっていくのは自分の力では無理です。
その辺りもぜひチャレンジしてくださいよ つかみ所のないモヤッとした部分を繋げるストーリーを
期待します
>>291
アーゴは、ポスターも下敷きも持ってました ヤマハ時代のものですがw
ボディガード牙と、新カラテ地獄変 ぜひ触ってみたい題材です
とくに新のチャンプキラー・ゴルゴは大好きなキャラですねw
293巨人の星その後161:2009/06/27(土) 18:28:18 ID:BllmiH94
「出ろよ。ママさん。」
黒崎は、アゴをしゃくるように、ひとみに指示をした。
ひとみが、髪をかきあげて、電話に出ようとすると、大谷が裏返った声で、さえずった。
「わぅわう〜・・・。ウググぅ〜・・・。」
「るっせーって言ってんだろがぁっ!」
黒崎のブチ切れた声が店中に響いた。ひとみが受話器をとった。
「はい・・・。モンテクリストですが・・・。」
黒崎は素早くカウンターを飛び越えると、ひとみの握る受話器に耳を近づけた。
相手は何も喋らない。黒崎は胸ポケットの万年筆を取り、電話横のメモ用紙に走り書きした。
『お京か?かくにんしろ!』   ひとみは、少し間を置いて一度、唾を飲み込んでから聞いた。
「京ちゃん?京ちゃんなの?」  まだ相手は黙ったままだ。
黒崎はまた走り書きした。『ここに、もどらせろ!』

しかしひとみは、何も言わなかった。なおも電話の相手は沈黙したままである。
黒崎はさっき書いた『ここに、もどらせろ!』の走り書きした部分を指でトントンと叩いた。
そして今度は『はやく!はやく!』とまた走り書いた。

まだ相手は黙っている。ひとみも黒崎の要件を伝えようとしない。
シビレをきらして黒崎は、カウンターの上を手の平でバン!バン!と叩いた。
294巨人の星その後162:2009/06/27(土) 18:30:55 ID:BllmiH94
「き・・・切れましたわ・・・。」
恐らく今のカウンターをバンバン叩く音で、相手が京子なら
この店が、鬼怒川の手のものに占領されていることを悟ったに違いない。

「イギ〜・・ウゥ・・」
大谷のうめき声を耳にしながら、黒崎はタバコに自分で火をつけた。
そして大谷に近寄ると、そのコメカミにその火を押し付けた。
「わぎゃぁーっ!熱っ!熱っ!ウギャギャァー!」
思わずひとみは、目を背けた。
「ママさん、悪いがあんたも、同じ目にあってもらうよ。非協力的だった罰としてな!んん?」
黒崎は残酷な予定をひとみに告げると、眼下に異変を感じた。
大谷が失禁していたのだ。

「かぁーっ!みっともねーなっ!便所行って、パンツ脱いでこい!このとっつぁん坊や!」
大谷の背中に蹴りを入れ、店内の突き当たりにあるトイレに大谷を促した。

その時、店のドアがまた、カランコロンと鳴った。
295巨人の星その後163:2009/06/27(土) 18:32:49 ID:BllmiH94
黒崎が、鍵を開けると、チンピラ3人が入ってきた。
「も・・申し訳ござんせんっ!に・・・逃げられやした・・・。」

黒崎は天井を仰いだ。
「おれ、もーやだよ。おめえらの面倒みんの・・・。」
ひとりのチンピラにツカツカと歩み寄ると、しばらくそのチンピラの顔を眺めた。
10秒ほど沈黙があった。
そしてその沈黙は、黒崎の右フックで破られた。チンピラがスケート場で転倒したように
店内の床を滑っていく。
「バカヤローッ!雁首そろえて、入ってくる奴があるかー!」
チンピラどもは、まだマゴマゴしている。そのときトイレで、ガチャーンとガラスを割れる音がした。
「ほれ、言わんこっちゃない・・・・・。」
大谷が、体の分まで開かないように作られているトイレの窓ガラスを突き破って脱出したのだ。
「ヤッ・・・ヤッロー!」
チンピラが、外へ回り込もうと駆け出すのを、黒崎はその後ろ襟を掴んで制止した。
「ムダだ。おい。ズラ駆るぞ。このアマァだけ連れてなっ!」
「ええ?あのトイレ野郎、ほっといていいんっスか?」
「お京が、さっき電話してきやがったみてーだ。サツに垂れこみやがったら、踏み込まれるぜ!
 そん前に、とっとと人質いただいて、事務所ヘゴーだ!早くしろ!トンマども!
 あの臭せートイレ野郎は、人質になるほどお京と知り合いじゃねー。ほっとけ!」
296巨人の星その後164:2009/06/27(土) 18:34:47 ID:BllmiH94
「ほな、良いお年を」
ホテル阪神のエントランスで、江夏豊は手をあげて挨拶した。
片手をポケットに突っ込んだままである。
それは、チームの監督に対して礼儀を失しているということを
江夏にも分かってはいた。しかしこのときは意図的に悪感情を表明してみたかったのだ。
監督にして、自分と同じタイガースの投手でもある村山実に対して。

村山は、それを声も立てずに横目で見送る格好になると、誰にも聴こえないほどの
小さな舌打ちをした。
系列のホテルでなくとも、自家用車はベルボーイが正面エントランスに回してくれる。
しかし村山は自分で地下駐車場に向かい出した。
車が回されてくる間、エントランスに突っ立って待っているのが、我慢できないほど嫌だったのだ。
誰かに会えば、何か話し掛けられる、邪険にすればその相手がどこに何を言いふらすか分かったものではない。

それどころか大阪のスポーツ新聞社が、聞き入れたり、目撃したりすると
その取るに足りないことが、一面記事になったりするのだ。村山はもう辟易していた。
もうシーズンが始まる前、できたら自首トレ開始前までは、もう誰とも顔を合わせたくなかった。
向こうが好き好んで歩み寄ってこようと、今の村山には雑談や四方山話でさえ面倒に感じられた。
297巨人の星その後165:2009/06/27(土) 18:37:25 ID:BllmiH94
この日は、このホテルで「新春特別対談:村山VS江夏」というタイトルの
雑誌記事の企画で、江夏と顔を合わせた。
アホらしいことだ。対談することなどないのだ。シーズン終盤から顔も合わせなくなっていたし、
『来年は優勝だ!』といった分かりきった当り障りのない内容の対談ですら二人の間ではありえなくなっていた。

対談は、「とばし記事」だった。内容は記者が勝手に書くのだ。適当なことを想像で。
それを村山と江夏が、校正で目を通すだけである。今日のホテルでの顔見せは
あたかも二人が対談したように見せるための写真撮影のためだった。

何も喋らずポーズだけつけて、さも会話しているようなスナップを撮らせるだけの、やっつけ仕事。
できれば勘弁してほしい類の仕事である。

しかし村山は大学の先輩から『巻頭カラー記事で、いくさかい。大阪は阪神でいかんな売れへんのや。頼むさかい.』
とせがまれ、渋々受けたにすぎなかったが、その義理さえない江夏にしてみれば、
アホらしさは、村山以上に感じていたのだろう。
298巨人の星その後166:2009/06/27(土) 18:40:08 ID:BllmiH94
村山と江夏の仲が冷え込んだのは、ある大阪のスポーツ新聞の記事がきっかけだった。
この昭和45年シーズンから監督兼任となった村山だったが、
チーム事情が決してよくないながら終盤戦にはジャイアンツを脅かし優勝争いに漕ぎ着けた。
結果は2位だったが、名門タイガースとしては、それは許されるギリギリ・ラインの順位だった。
新任監督として2位は上出来との声は多かった。しかし3位ならもう大阪ではボロクソになっていただろう。

他球団やもう一方の人気球団ジャイアンツのファンに比べて、阪神ファンには「暖かく見守る」という視点は
存在していない。それは村山もわかっていた。負けが込むととにかく一斉に揶揄するのだ。

不調に根拠などないのだが、特に大阪のスポーツ紙は、何でもネタにした。
オーナーや球団社長の交代など、何の根拠もないことまで「火のないところに・・・」のやり口で、
タイガースの問題点を創造し、また大きくした。要は売れればよいのだが、関西きっての事情通という
どうでもよい栄冠まで欲し出すと、もう新聞上は、フィクションのかたまりになっていた。

このシーズン、村山は、自身三度目となる最優秀防御率タイトルを手にしていた。
監督として采配をしながら、先発に押さえに中継ぎに七面六臀の登板をした。
そこまですることはなかったが、終盤ジャイアンツが負け出し、優勝の可能性がタイガースに出てくると
もうそんなことは言ってられなかった。登板間隔があくと、「監督特権のズル休み」と書かれてしまうのだ。
299巨人の星その後167:2009/06/27(土) 18:46:02 ID:BllmiH94
書かれることには、馴れて、諦めてはいてもその報道がチームに与える影響を考えると
休めなかった。血行障害の腕を、洗面器の湯につけて村山は登板を繰り返した。
その結果は、シーズン防御率0.98というとてつもない数字となって残った。
短いイニングでのショート・リリーフが中心となった自身の登板スタイルも影響した数字である。
しかしこの記録が問題となった。

「あんなもん、おのれの調子ええ時だけ、登板しとったらワシでもできる数字や。」
大阪のスポーツ紙によると、そう江夏が談話を発したというのだ。
シーズン閉幕の1ヶ月前のことであった。
仮に江夏が本当にそう発言したのだとしても、本気で言ったわけではないであろう。
茶化し気味に、監督の偉業を揶揄してみただけなのだろうが、新聞の論調は違った。
『江夏、村山采配を痛烈批判!』『江夏激怒!監督はズルイ!』
もう開いた口も塞がらない村山だった。もし本当にそんなことを言うとすれば、考えたくもなかったが、
それも阪神の悪しき伝統だった。関西の他球団(当時のパの阪急、近鉄、南海)にくらぶれば
タイガースの人気は圧倒的であった。それだけに選手個人個人にタニマチもすぐについた。

一軍半ほどの選手でも、すぐにお近づきになって、酒の席に連れまわし自身の顔の広さをアピールしたがる
タニマチには用心して接するようにと、村山は自分の経験も踏まえて選手に注意を促していた。
300巨人の星その後168:2009/06/27(土) 18:48:43 ID:BllmiH94
村山は投手であると同時に監督でもある。タニマチのうるさい誘いにもいちいち乗っていられなかった。
それを「天狗になっとる」「あいつはワシに義理を欠いとる」「何様のつもりや」
「オーナーに進言して今年で更迭や」などと好き勝手に逆恨みしてくるのだ。
そして、これら悪しきタニマチが江夏を誘い出すのに成功でもすれば、もうそこは
村山の不在裁判の場と化してしまう。江夏にしてもまだ21歳〜22歳なのだ。判断力も完璧は望めない。
「江夏、おまえは村山に騙されとる」「あいつは人間として最低や」「もう村山は終わりや」
「わしらがおまえを男にしたる」「わしだけが知っとる話やが村山は今期でクビや」
「実は村山には金を返してもらっとらん」「村山はホンマはホモや」「村山はシャブやっとる」
とすき放題を江夏に吹き込むのだ。すべて鵜呑みにしないまでも、江夏にも不信感が涌く。

それらタニマチとのセッティングを注意してもまた、「あいつはワシらを恐れとる」
「都合の悪いことを言われんために必死になっとる」などと江夏に吹き込むのだ。

そこへ来て田淵の負傷による長期欠場(広島の外木場による頭部死球)、そして花形満の退団である。
暗澹たる村山にしかし、地下駐車場で、呼び止める声があった。
「お〜い!ムラやないか。なんや。もう帰んのかいな?」
(堪忍してーな、もう!)
面倒臭くも村山は振り向いた。
301巨人の星その後169:2009/06/27(土) 18:51:05 ID:BllmiH94
声の主は地下駐車場の照明にシルエットになっていた。
しかし村山には正体は、分かっていた。
「ああ・・。ご無沙汰しとりまんな。」
「なんえ、お前。もう帰んのかいな?」
「ええ。もう用事おまへんね。もう最近、梅田まで出てくんのが怖ぁ〜て怖ぁ〜て。」
相手はズカズカと村山に近づいてきた。
村山にはこの大阪の野球マスコミの重鎮が得意が、面倒な相手だった。
しかし愚痴を言わせてもらうチャンスの可能性もあった。

「オイ。なんや、花形やめよったんかいな?どういうこっちゃ?」
(なんや、なんや。そんな話かいな・・・。こら当てが外れたで。しもたなぁ〜。)
村山は心の中で後悔した。相手は、村山にとって大学でもプロでも先輩ではない。
しかし大阪のスポーツ紙に連載を持ち、大阪発のタイガース戦の中継には
必ず解説者として登場するだけに、敵には回せなかったのだ。
「すんまへん・・。話は、上のほうで、ついとりましてん。もう喋ることものうて・・・。」
面倒臭そうに、村山は花形退団の顛末を相手に話し出した。早く帰りたい。村山は心底そう思った。
302巨人の星その後170:2009/06/27(土) 18:54:37 ID:BllmiH94
「ふ〜ん。そら災難やのぉ?大事な四番の退団が監督をツンボ桟敷にきまっとるとは・・・。」
「さいでんねわ。早よ忘れたいだけの話ですわ。」
やっと帰れる。村山はそう思った。しかし相手は意外なことを村山に教えた。
「けど、オイ。ムラよ。わし聞いとったぞ。いっぺんな。まぁデマやどや分からんさかい
 内緒にしとったけどな。もう10月には本決まりや言うてな。
 わし、そんなアホな!思とったんやけどな。」
「へぇっ?なんだす?笠はんが聞いてはった?ってそれ誰からだすの?」
これは村山も穏やかではなかった。自分で内緒であったとしても、
この笠原和夫が知っていたとは、正直、怒りにも似た感情が芽生えたからである。

「誰や思う?ま、ええわ。勿体ぶらんと教えたろ。あのなぁ。ワイの大学の先輩やねん。」
「笠はんの先輩?ほな早稲田の誰かだったいな。」
「せや。財界の人間でな。花形のおとうが、満の退団は本人の意志や言うて、そっちへ洩らしとったらしいで。」
「な〜んや。そんな話だっかいな。財界の話やったら、ワシ関係おまへんがな。
 うちのオーナーも早耳で聞いとったらしいけど、ワシには説明なかったんや。
 財界でどないに動こうが、ワシらには何の関係もおまへんわな。
 わし、また別当はんからでも聞かはったんや、思いましたがな。」
303巨人の星その後171:2009/06/27(土) 18:56:31 ID:BllmiH94
別当薫と笠原和夫は、同窓生ではなかった。しかしそれ以上の関係があることを
村山は知っていてこう言ったのだった。
「なんでやな。大洋の監督が先に知っとったらエラいこっちゃで。八百長やなんや言われるこの
 ご時世に。」
「それもそないだんな。」

昭和18年10月の、早稲田大学の敷地内にある戸塚球場で、行なわれた
戦中最後の早慶戦を、別当と笠原は戦っていた。
その前年に職業野球、そして中等野球も休止に追い込まれ、東京六大学野球も
この昭和18年をもって休止となった。リーグ戦はすでに機能しておらず、
慶応が早稲田に試合を申し込む形で実現したこの最後の早慶戦は、公式戦でも観客を入れて行なわれたわけでもない。
身内、在校生、その家族が見ただけの非公開試合である。

早稲田から南海ホークス、高橋ユニオンズ〜トンボ・ユニオンズ(監督兼任)と渡った笠原のキャリアは、
常に宿敵:別当薫を対立軸にして展開された。それは三原VS水原ほど有名な早慶代理戦争とはならなかったが。
しかし引退後の笠原は別当とは懇意にしていた。それは関西野球マスコミでは何ら錦旗とはならないものだったが。
「けど、懐かしいで。まだ安部球場いうたんや。あの時分はな。いま早大球場いう人間おるけどの。
 ワシら(早大OB)には安部球場、そやないもんは戸塚球場いうな。球場いうても、観客席ももうない
 ただのグランドなんやけどな。」
「へぇ〜。さよか・・・。」
さもどうでも言いとばかりに、村山は生返事をした。思い出話に付きあわされるよりは、どう言って
帰りを切り出そうか、それしか考えてなかったからである。
304巨人の星その後172:2009/06/27(土) 18:58:44 ID:BllmiH94
桜田通りに面したビルの玄関にドヤドヤと男たちの靴音が響いていた。
花形満は、花形コンツェルンの一翼、花形モータースの都内の出先部所
この五反田の流通事業部への視察と挨拶を済ませて、次の予定に向かうつもりでいた。

時計は2時半を指していた。30分の遅れスケジュールである。しかし気を揉んでいるのは
花形ではなくそのお付きの人間たちだった。
お付きは、この流通事業部で、さらに増えようとしていた。
付いてこなくてもいいものを、自分の顔を売るためと担当部署での武勇伝にと、
ノコノコ、ベタベタついてくるのだ。
花形は顔で晴れやかに挨拶を交わしながらもこんな「おべっか使い」ばかりでは、
会社の命運も危ないのではないか?と危惧し始めていた。

花形は愛する明子の身を案じ、グループで使う興信所を明子の身辺調査に使ったことがあった。
そういう父、啓一のごく側近たちには恐ろしく切れ者がそろっていたが、末端の事業所となると
どうもやたらと腰が低いだけで、肝心の仕事の話ができない。
社員個人個人は、よく働いてくれているのだろうが、それを直接管理する立場にある者たちに
すこし問題があるのではないか?と花形は考えはじめていた。
顔にこそ出さなかったが。
305巨人の星その後173:2009/06/27(土) 19:02:02 ID:BllmiH94
流通事業部をあとにしようと正面玄関まで出てきた満の一行に、
この流通部の人間たち5〜6人が玄関までついてきた。
案内役と部門の説明に当った担当者は2人、あとの3〜4人は花形の今回の行幸に
直接は関係していないのだ。
職場放棄ではないか?仕事をしなくていいのか?部署を勝手に放れて揉み手をしながら
満につきまとうことが仕事ではあるまい。
いてもいなくてもいい管理職なら、体系を考えなくてはいけないかも知れない。
こんなところで顔を売り込まれるより仕事をしてほしいのだが。

うるさく付きまとう蝿のような連中を撒くつもりはなかったが、満は自然と早足になった。
それでも蝿たちは運動不足の太鼓腹をゆするながら、ドタドタとついてきた。
建物の外へ出た。社用車のドアを運転手があけようとした。
「ぼくは、そんな大そうな人間ではありませんから。結構ですよ。何ならぼくが運転しましょうか?
 時間も押しているようだ。」
「そ・・そんな坊ちゃま、滅相もございません・・・。」

「だからその坊ちゃまは、やめてくれないかと、さっきから何度も・・・」
花形の目に、奇妙な人間が目に入って、一瞬、彼は黙り込んだ。
「あ・・あれは?・・・・あれはなんだ?!」

=つづく=
306名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 21:18:21 ID:Aktw15zu
>>292
規制に巻き込まれてるんですか、大変ですね。
お気になさらず、好きなペースで投下してください。

今日の江夏と村山の確執のくだり、一昔前に流行った
ドキュメンタリー小説風で最高ですね。プロ野球の歴史の
教科書を読んでいるようで、楽しいですw
307:2009/06/28(日) 23:36:00 ID:1/7Ts/TC
>>306
ありがとうございます 面白いですか?
う〜ん。もっと実在プロ野球ネタを散らしとくんでしたねw
でも正直、昭和45年となると、仲々資料もないんですよね
S50年以降ならベースボール・マガジンも安くあるんですが、
この時代のは結構します 彩色写真の表紙のS30年代ほどでは、ないですが。

それに実家にあるはずのBBMのバックナンバーなんか見だすとそれこそ1日中読んでしまいますよねw
ただS50年以降のは、チラホラあるはずですので、いつか
新巨人の星のスピン・オフを書くのに役立てたいですね

さて、村山と江夏なんですが、この45年の軋轢は決定的な決裂にはなりませんでした。
S47年に村山が指揮権を返上、金田正泰氏がヘッドから監督代行になる時期が決定的と言われてますね
江夏懐柔に、村山の悪口を金田正泰が吹き込みまくり、投手陣に江夏派と村山派を作ってしまいます。
心身ともにボロボロになった村山は指揮権も奪回せず、1選手として引退していきます。
しかし今度は金田と江夏が対立。江夏は村山が自分に他意を持ってなかったことを知り、
そして村山引退試合での、あの阪神投手陣による騎馬体の村山登板が実現しました。
しかしこれは、江夏ら投手陣の金田体制への反旗の表明にもなり、
タイガースはこの年優勝を確実にしていながら130試合目で巨人の逆転優勝を許すという
空中分解チームになってしまいました。
このS48年のドキュメント本でいいのがないんですね。。。読みたいなあ。。
308巨人の星その後174:2009/06/28(日) 23:41:03 ID:1/7Ts/TC
ヨレヨレになった背広姿の男は、腹ばいになって、
事業部の門を、這いずりながら入ってくるところだった。
顔は憔悴しきっており、目の焦点は定まらない。なぜかズボンはビシャビシャのようだ。
「あれは一体?どうしたことだ?ここの人間か?」
(あっちゃ〜・・・・・・!)
心の中で舌打ちし、思わず額に手を当ててしまったのは、事業部の中間管理職の江藤だった。
(なんで、よりによってこんな所に出てきやがる?それになんだ?あの格好は?)
「こりゃーっ!バカモン!バカ!バカ!バカモーン!こんな所でテメエ何してやがるっ!?」
大谷に走り寄った江藤は、その 部下を叱咤するポーズと上役への印象付けのために
そして仕事熱心な自分という演出のために大谷にストンピングの蹴りをかまし連発した。
「このバカ!バカ!バカ!大馬鹿野郎が!テメエなんざクビだ!クビ!よくもこの俺に恥をかかせやがって!」
ドカスカと蹴りが、うつ伏せに這っている大谷の背中に炸裂し出した。

「こらっ!キミィ!」
花形が駆け出してきた。
(やったぁ〜。坊ちゃまも俺に協力して、このバカを叱咤してくださりそうだぜ〜。俺のイメージ作戦、まんまと進行中!)
しかし花形満が叱咤したのは、大谷ではなく江藤だった。
「なんてことをするんだっ!キミは狂人かっ!?」
(へ?そ・・そんなバカな・・・。この俺が狂人?)
「うちの社の人間が何かトラブルに巻き込まれているんだぞっ!その上から暴力を揮うとはキミは何を考えているんだ!?」
309巨人の星その後175:2009/06/28(日) 23:42:49 ID:1/7Ts/TC
「いえ、あの、その・・・そうですよねぇ〜?にっしっし。全く仰せの通りで・・・。」
何の一貫性もないこのバカな中間管理職を突き飛ばすと
花形は大谷に駆け寄った。そしてその身を上半身だけ起こしてやった。
「おい!おい!きみぃ!きみぃ!しっかりするんだっ!どうしたんだ!何があったんだ!?」

大谷は、相手が自分の社の御曹司だなどとは、気付いていない。
何かうわごとのように、口をパクパクさせている。

花形はこのじぶんより5〜6歳は年長のような部下の顔を見た。顔は知らない。
しかし顔には血がついている。よく見ると頭にガラスの破片が刺さったままである。
そこからの出血が止まっていないようだ。
「おいっ!何があったんだ!?どこでこんな目にあった!?しっかりしろ!」
花形は大谷の顔を掴むと、自分のほうに向けさせた。
「うわ・・うわ・・・・。あのママさん・・・・・京子さん・・・・・。」
「ママさん!?京子さん!?その人がどうかしたのか!?話してみたまえっ!おい!きみぃ!」
なおも要領を得ない大谷の話というよりうわ言だが、どうにか固有名詞が出てきた。
「おい!しっかりしろ!危ない目にあったのか!?そのママさん京子さんが、どうしたんだ!?」
「ほ・・・・ほし・・・・・」
「何?いま何と言った!?よく!よく話すんだ!もう安心していいんだぞ!」
「ほ・・・ほひ・・・ほひさん・・・星飛雄馬の・・・代わりにママさん・・・・」
「なっ・・・なんだとぉ!星飛雄馬!?いまきみは星飛雄馬と言ったのか!?」
思わぬところで、かつての自分の宿命のライバルの名を聞いた花形満は驚愕した。
310巨人の星その後176:2009/06/28(日) 23:44:29 ID:1/7Ts/TC
上野の合羽商会のショーウィンドーを見ていて
不意に女性の声で名を呼ばれた京子は振り向いた。
声は自分を呼んだのではなかった。小さなヨチヨチ歩きのまだおムツをした女の子を
母親らしき女性が呼び止めていたのだ。
「これっ!きょうこ!じっとしなさいっ!これっ!」
勝手にヨチヨチ歩き回る女の子に母親が追いついて抱き上げた。
「これ〜。きょうちゃん。パパのお仕事ジャマしちゃダメでちゅよ。」
女の子をあやしながら、女性は京子に気付き、さりげなくお辞儀をした。
割烹着を着て、中は綿のようなズボンを穿いている。年は30歳ぐらいだろうか?
髪は姉さん被りをしているので、長いのかそうでないのかは分からない。
左胸に女の子をダッコしながら、右手で合羽商会の通用口の鍵を開けようとしている。
「え?」
驚いた京子の目にさらなる驚愕の事態が目に飛び込んできた。
店に沿った昭和通に停められた軽トラックの助手席から、松葉杖をついた男が降りてきたのだ。

男は杖をつかないと歩行がままならないらしく、そしてその頭髪は白いものが半分以上を占めていた。
「きょ・・・京子!」
「て・・・鉄・・・鉄さん?鉄さんなの!?」
311巨人の星その後177:2009/06/28(日) 23:46:49 ID:1/7Ts/TC
「どこへ、行ってたんだ?」
「はっ・・・申し訳ございません。」
「何も謝ることはないんだよ。何か火急のようでも告げてきたのかね?」
「そっ・・・それが・・・。満坊ちゃまからで・・・。」
「ない?満がぁ?あいつ今日は、顔見せに回ってるんじゃなかったのか?」
「はあ。それが・・・。うちの社の者が何かトラブルに巻き込まれたようでして。
 興信所のほうを使わせてほしいと・・・。」
「あいつ、勝手に社の興信所を使いおって。先日も会社以外のことで使うなと注意したんだ。
 興信所はお前の探偵ごっごを担当しているところではないと。」
「はっ。では・・・。この件は・・・・。」
「こんな場所で困った話を持ち込んでくれたもんだな。あいつ。仔細を聞いている暇がないよ。まったく。」
「はぁ・・・・。では・・・。いかに・・・・。」

帝国ホテルでの会合の最中、ホテルにかかってきた本社からの電話に、急いで出た花形啓一の秘書の小泉だったが、
その要件は難渋を極めるものだった。御曹司の満が、興信所の人間を何人か回して欲しいというのだ。
これは、小泉の領域の仕事であったから満は小泉に連絡をとりたいらしいのだが、
社長の啓一が一緒にいるのだ。耳には入れておかなければならない。
返事も何も事の詳細を図りかねる啓一も、小泉に指示の出しようがなかったのだ。
「なにかトラブル発生かな。花形よ。」
手洗いから出てきて使ったハンカチをポケットにしまいながら、花形の旧友、別当薫が二人に近づいてきた。
「恥ずかしい話だよ。別当。息子が何かトラブルを目撃して、力を貸せと言ってきてるんだ。こんな時に。」
「息子?ああ。満君。花形満かぁ。正直、彼が実業界に移籍してくれたおかげで、今年はタイガース戦に
 エース級を回す必要がなくなったと喜んでいたんだ。もちろん冗談だがね。」

=つづく=
312女悪役ブルース:2009/06/29(月) 13:49:10 ID:kU7tj06O
ゼロに言われた通り、純はスポーツジムで少し筋トレをやったが、
ゼロがいないという状況に、どうしても一人で地下プロレスの会場に
行きたいという誘惑に負けそうだった。
昨夜、地下のリングに立つのは自分だけと念を押されたが、どうしても
格闘家としての血が騒ぐ。負ければ全裸公開のリスクよりも闘いたい
という意識のほうが強かった。
結局、ゼロの言い付けや、股間ご開帳の羞恥への恐怖よりも、闘いへの
怪しい誘惑に勝てず純は朽ちた体育館へとやってきてしまった。
リングではすでに女の闘いが始まっていた。
昨夜と同じ光景がリングでは繰り広げられていた。どちらかがKOされるたびに
女性器が公開される。昨日からの連続で、免疫が出来てきた純は、今日は
女達の股間をじっくりと観察してみた。同じようでいて、一人一様な毛の生え具合
や、陰唇の肥大具合は見ればみるほど吸い込まれるようだった。
更に肛門にも目を転ずれば、色素の沈着具合の差や、意外と痔持ちの女が多いことに
驚かされた。
だが純の目的は、自分がそのマットに上がることだった。
313女悪役ブルース:2009/06/29(月) 14:24:05 ID:kU7tj06O
「仕方ないよね、闘いたいんだもん・・・・」
独り言と共に、リングに上がった純を見て観衆は騒ぎ出した。
「空手の吹雪純だぞ!」「こいつクイーンゼロについてきてたんだ!」
「空手界の美少女と言われてた小娘だ、適当な奴じゃ勝てねーぞ!!」
反対のコーナーからリングインしてきたのは、ヤンキー風の女だった。
「おっ!相手は月子の親衛隊長か!!こりゃあ面白いな」
どうやらヤンキー娘は月子の取り巻きの一人のようだ、相手にとって
不足なし、純は服を脱いで事前に仕込んであった試合用の水着姿になった。
相手も水着になり、ゴングがなる。
こういう試合経験のない純は様子をみようと、突っかけなかったが、
ヤンキー娘が純に飛び付いてきた、何をするかと思えば、いきなり腕に
噛み付いてきた
「痛タターッ!!」悲鳴と共に純は相手を引き離すが、今度は体重をかけて
純を倒すと、首筋に噛み付いてきた。頚動脈でも捉えられたらたいへんだ
「いいかげんにしろ!!このバカ女!!」言い捨てながら純のフックが
ヤンキー娘の横顔に入った。一瞬昏倒したかにみえたが、今度は
純の上に馬乗りになり、水着の肩紐に手をかけてきた
「いいぞーっ!やれやれ!!」観衆からは声があがるが、純にすれば
相手の意識がある内に、水着に手をかけるなど、ありえないと思っており
初めて公衆の面前で、肩紐とはいえ水着をずらされたことに動揺した。
ヤンキー娘はさらに水着を脱がそうと力を入れるが、先に純の
肘が入った。それでも昏倒せずふらふらと立ち上がる姿を見て、
純は地下プロレスの実力の一端を見た気がした。
驚異的な打たれ強さと、噛み付きや水着剥ぎというそれだけだが、
その戦法も磨けばここまでなるものなのだと実感した。
しかしこんなところで負けたり、水着を剥がされるわけにはいかない。
空手時代誰もかわせなかった、得意の左回し蹴りでなんとかこの
しぶとい相手をKOした。
314女悪役ブルース:2009/06/29(月) 15:07:31 ID:kU7tj06O
賭け金を受け取って、リングを下りた純は闘いの熱を冷ますため
体育館の外に出た。人影のない駐車場の隅に向かうと、突然後ろから
声をかけられた
「ちょっと、待ちーや!!」
振り向くとそこには、見たことのない女が立っていた。
その女は闇夜に溶け込むように黒ずくめだった。
背中までかかる長い髪。アキバのメイドが着てそうな黒のワンピース。
黒のタイツに黒のブーツ。
顔は美人だが、異様に眼力を感じるメイクが施されている
あまり若くはみえない女は続けて話しかけてきた
「あんた、空手の吹雪純やろ?」「そ、そうだけど、何?」
関西弁にコスプレ趣味の熟女という、いかにも怪しい組み合わせに
純は警戒を解けなかった。
「あんた、クイーンゼロの子分になってるみたいやけど、
ゼロのプロレスを教わったって、月子には勝てないよ」
「別に私はゼロの子分じゃないし、それにゼロのプロレスでは
月子に勝てないってどういうことよ!!」
フフンと鼻で笑うと女は
「昨夜の月子のファイトを見たやろ、あの子のテクニック、パワー、
そして時折見せる残忍な反則は、まるでミラクル3!奇跡の完成度なんよ!
とてもゼロでは月子には勝てない。もちろんあんたも今のままでは勝てへん」
「確かに月子は強いけど・・・それより、あんた何者よ!さっきから
むかつくことばかり言って、あんたも月子親衛隊の一人なの!?」
「あたしの名前は毛利礼子!レーコって呼んで」
「モーリレーコ・・・そのレーコさんがあたしに何の用なの!?
月子に勝てないとか、そんなことだけ言いたいわけじゃないでしょ?」
315女悪役ブルース:2009/06/29(月) 15:29:22 ID:kU7tj06O
長い黒髪を掻き分けながら、レーコは続けた
「みっともない話やけど、あたしは月子に負けてるんだ」
「レーコが月子に負けた・・じゃああんたは地下のレスラーなの?」
「そう、最近はやってなかったけど、あんたとクイーンゼロがここに
来てるって話を聞いたもんやから、久しぶりにきたんだ。」
「それで月子に負けたレーコが、私になにをしたいの?もしかして
観客のいないこんなところでやりあおうってんじゃないでしょうね」
身構える純にレーコは笑いながら
「あたしたちがやりあったって何にもならへんよ。実はね、あたしは
月子を倒せる若い子を鍛えたいと思ってたんだけど、今日のあんた
のファイトを見て、もしかしてあんただったら・・って気になってさ」
「でもゼロに鍛えられたってだめだって、さっき言ったじゃない、
あんたは何か特別な格闘技術でもあるの?」
「月子に負けたとはいえ、あたしはアマレス出身でね、当時の
コーチに反則スレスレのサブミッションを教え込まれて、ケンカには
強いんだよ」
サブミッションか・・・確かに自分にもゼロにも関節技は無い。
それがプラスされれば・・・
「論より証拠や、体育館に戻ってあたしが一戦やるから、あたしの実力を
よーく見てみーや」
316女悪役ブルース:2009/06/29(月) 15:47:20 ID:kU7tj06O
体育館に戻ると調度インターバルで呼びかけをやっていた。
レーコは駆け足でリングに上がると、大声で叫んだ
「ひさしぶりに登場のレーコ様とやりたいのは誰だ!!」
「モーリじゃないか!お前どこいってたんだ!」
「月子が地上のプロレスからスカウトされてる噂を聞きつけて
舞い戻ってきやがったな!!」
「へへへ、月子に負けて晒されたお前の毛むくじゃらのオマンコ
まだ瞼に焼き付いてるぞ〜」最後の野次に顔を紅潮させ
「うるさい変態ども!!二度とお前らに見せてたまるか!!とにかく
だれでもいいからはやく上がって来い!!」
そこでやっとあまりつよそうには見えないデブの女が上がってきた。
しかし、レーコの強さは純の想像以上だった。一瞬で決まった
サブミッションはデブ女の肩をはずしてしまった。
転げまわるデブ女は水着剥ぎも出来ず、また観客ものぞんでいないよう
だったのでレーコはそのままリングを下りた。
「どうだい?」「びっくりしたよ、あんまり強いんで」
純にそう言われレーコは満更でもないという顔をしたが
「ところでレ−コ・・・ちょっと聞きたいんだけど・・いい?」
「ん、何だい?」「レーコってそんなに毛深いの?」「ば、バカ・・」
317072:2009/06/29(月) 16:06:20 ID:AG/wMVVy
無DVDなら
検索→裏 DVD ATEAM
激安!!
キャンペーンも。。。
318人間兇器外伝28:2009/06/30(火) 10:14:00 ID:b52YtCSP
「ククク・・・・キリッとした挑発的な眸も、完全に痴呆化したみたいに
焦点が定まらないようだな。」
ベッドに運ばれ、肉体を無抵抗で美影に触診されるミスティは、しかし
その美影の言葉ひとつひとつが、自分の脳髄に刻み込まれていくのにも抵抗できなかった。

「すっかりツンッとしたところが、なくなったようだが、
ごっこいココは、まだ随分とツンケンしてやがるぜ。ヘヘッ。」

そう言うと美影は、ミスティの両方の尖ったまま隆起している乳首を
両方いっぺんに、やや強めに摘まみあげた。   クイッ

「アエ〜・・・・・・・・・。」
「ぬししっ。いい声で泣くじゃね〜の。ついでにこっちの涙も溢れてきたなっ!」

今度はミスティの繁みをかき分けると割れ目を凝視しながら、ヒダを器用に指で撫でてきく。
「あは・・・・あはぁ〜ん・・・。」

「グーシッシッシ!だが俺はサドでな。気持ちよくしてやるのは、専門外なのさ。
痛気持ちいいという感覚を、今夜じっくり目覚めさせてやるぜ。」
319人間兇器外伝29:2009/06/30(火) 10:17:23 ID:b52YtCSP
美影は左手でミスティの割れ目を器用に割り広げると、
その奥に鎮座するポッチのような肉の芽を、右の指で摘み上げた。 キュッ
「ハヒィーッ!アオオオオオォォォォーっ!」

「がぁーはっはっはっはっはっ!もはや洪水どころか、お漏らしの如く濡らしちゃってからにぃ〜!」
ベッドの上で、ブリッジのように背中を反らせるミスティを、ご満悦そうに見やった美影は、
その浮き上がったミスティの腰に手を入れると、そのままゴロリと裏返しにした。
そして四つん這いの姿勢にしてしまった。

「どうもこちとら屈折していてな。女の目線にこっちが晒されないこのポーズでなきゃ
本領発揮とはいかねーのさ。顔じゃなく、このおケツが女の全人格とばかりに見下した体位でねーとな。」

そう吐露すると、美影はミスティの尻を、グイッと割り開き、放射状のすぼまりを室内の蛍光灯の灯りの元に
晒して、今度はそこを両方の目で凝視したまま、しばし黙り込んだ。穴のなくほど凝視したあと、
「くひひ。この可愛い菊の蕾が、つい今しがた、あの『クサい物』をヒリ出したとは・・・。お釈迦さまでも知るまいて・・・。」
「ああぁ〜んっ!」

一番言われたくないことを、女心を毟り取るとるように美影に言われたミスティは、うつ伏せのままの
顔をベッドにうずめたまま子供のように泣き声をあげて、嗚咽した。

(クックックッ・・・。泣け。泣け。泣き喚けっ!今夜のうちにその中途パンパなガラスのプライドを
木っ端微塵に砕いてやるぜ!この無抵抗になった肉体に、言葉で責めを同時に浴びせ続けることこそ、
わが法悦境!チビワル美影義人の真骨頂だぜ。)
320人間兇器外伝30:2009/06/30(火) 10:19:28 ID:b52YtCSP
「オット!女チャンプの腹黒い腹の中を、浣腸で改めてやったが、
まだ中を検査してなかったぜっ!俺は女が屈服した態度をとろうが、
内臓まで目の当たりにせんことにゃ、気が済まんたちでなぁ〜。」

美影はミスティの割れ目の粘液を人差し指で、トロリと掬い上げると、
目の前に露わになっている菊の蕾のそのすぼまりの中心に押し当てた。 ぐっ
「あっ!そ・・・そこはっ!」

「エヘヘヘ・・・。触診してやるぜ。さんざ『クサいの』をヒリ出して、俺の目を楽しませてくれたが、
中にまだ『クサイの』が残っているかどうか・・・?検査の手続きに甘んじよ。ウクク。」
グニュゥ・・・・
「アオオオォォォォ〜!」

「ぐーしっしっ!野太いのをヒリ出しちゃったから、結構柔らかくなってんじゃないのっ!さぁ〜て中は・・・」

美影のいやらしい指はミスティの直腸にやすやすと侵入すると、その中で、クニッと曲げてみせた。
「あへぇぇぇぇぇぇ〜んっ!」
321人間兇器外伝31:2009/06/30(火) 10:21:35 ID:b52YtCSP
ちゅぽんっ!

音を立てて菊門を、引き抜かれた指を美影は凝視すると、
その指先を自らの鼻孔に近づけた。  クンクンクン
「どぉ〜やら完全にクリアになったようだな。腹の中が・・・。
無理もねーか。さっきのこの俺の浣腸で、あんなに『野太いモノ』を
ブリブリとブチまけたんだからな・・・。うっしっしっしっ。」

女心を完全に逆撫でし、ズタズタに破戒しつくす美影の言葉責めは、容赦なく続いた。
その卑劣さは、いちいちサディスティックなアイデアに満ちており、
もはやミスティの精神を完全にへし折ってしまったのだった。

「も・・・もっと・・・もっとイジめて・・・。」
「なぬぅ?」
「もっとイジめ抜いて・・・メチャメチャに言って・・・ああ・・・・。」

「ヌッフッフッフッ・・・。ついに出たな。女チャンプの降参というよりは、屈服宣言が。
たっぷり、しっぽり、ねちねちと、イジめ抜いて・・・クク、股関節がグニャグニャになるまで
やりまくってやるぜぇ〜!」
322人間兇器マニア:2009/06/30(火) 10:33:27 ID:b52YtCSP
さんざ誌面を汚している人間兇器マニアの俺ですが、
人間兇器のどこがいいかと言われると、月並みだがやはりストーリーと絵だ
中野喜雄の書く高慢チキ女の描写センスは最高で、美影がニューヨークで2対1の
コールガールをだましてやっちまうところに出てくる小悪党な性悪女の掻き方が最高です
あと特に白人女が好きというわけではないが、俺が背低いから背の高い女をやるのに憧れてる
この4巻の女子チャンピオンやリンダ・イザベラ、あと銀行でヌード四つん這いにされる貴婦人が最高です

実際ではちょっと古いですが、浅野ゆう子やピンクレディのMIEにムラムラしてました
今でもヌード写真集はお宝として取ってます
323名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 15:20:43 ID:4GxqUd0n
なんという良スレ
どうせならスレタイに【虎の穴】や【蛇の穴】に
ケツの穴をかけてほしかったかな?

ミスターX「フフフ。伊達直人よ。わがケツの穴出身の3千人の反則専門ライターが、
キサマを次から次へと襲うからな。せいぜい首を洗って待っておれ。
いいか。伊達直人よ。ケツの穴の実力を甘くみるなよ。ケツの穴をな。フフフ。
わがケツの穴を裏切ったものには、死あるのみ。ケツの穴の恐怖をとくと味わうがよい!」
324巨人の星その後178:2009/06/30(火) 20:35:18 ID:9JEe91oQ
別当の手前、黙り込んだままの小泉に、別当は気を聞かせて
その場を立ち去ろうとした。それを啓一が止めた。
「いいんだ。恥ずかしい話だが、君に聞かれてまずい事でもないさ。」
言うと啓一は、小泉に話の詳細を話させ始めた。
「この男と私は、隠しだてすることもない仲さ。今日、旧交を温めそれを再認識した。続けたまえ。」

「はい。申し上げます。何でも、うちの五反田の社員が、誘拐事件に巻き込まれた可能性があるらしいんです。
 いきつけの喫茶店を占拠され、そこの経営者が、拉致されたようで・・・。」
「おい。それはもう興信所レベルの話じゃないな。本当だとしたら。うちから何人か人をやって、
 どうのこうのするレベルじゃないぞ。なぁ別当。」
「確かにそうだね。拉致されたのが、君の会社の人間でなかったとしても、それは許されまじ犯罪だよ。」

「はい・・・。それで、何でも相手というか犯人グループは、ある女性の身柄を引き渡す要求をしていて、
 その女性が現れないので、星飛雄馬の代わりにその女性経営者を拉致したというのです。」
「おいおい。話がわからなくなってきたぞ。君。なんだと?星飛雄馬?あの巨人の星飛雄馬かね?」
「星飛雄馬が事件に巻き込まれているとなると、これは行きがかり上のトラブルなどではなく、
 相手は何か大きな犯罪行為をするつもりで、そんな行動をとっているんじゃないのかね?これは勘だが。」
啓一につづいて別当も事態を案じ始めた。
325巨人の星その後179:2009/06/30(火) 20:37:38 ID:9JEe91oQ
「はぁ・・・実は坊ちゃまもそれを案じておられて、今から興信所の人間を手配してもらえれば、
 これからその喫茶店に様子を見に行くと仰ってます。」
「あいつの正義感は、まあそれはいいんだが、これは警察の領域だぞ。きみ。なあ別当。」
「そうだね。それも早急に動いたほうがいい。しかし人質がいるんだろう?」
「はぁ・・・・」

小泉は、電話をしてきた満と、啓一そして別当という三つの処方箋、トリプル・スタンダードに
完全に身動きをできなくされてしまった。
もはや自分の判断では、どこにも指示ができない状況だ。

「今日、ここに警察関係者はいないかなぁ?誘拐事件なら早め早めに捜査本部をつくる必要があるだろうから・・・。」
「別当。わが慶応OBに警察トップはいたかなぁ?同期でなくともいいんだが・・・。」
「う〜ん。急にそう言われてもなぁ・・・・。」
「!ひとりいただろ?我々の先輩というか、君の先輩の同期に!」
「ああっ!いた!山本・・・警視か?鬼警視!まだ現役だったかなっ?たしか水原先輩(水原茂・当時中日ドラゴンズ監督)と同期だったと思うね。」
「連絡つくかね?その山本さんに?!」
「分からん。やってみよう。水原さんにも頼んでもらったほうが、いいな。この場合。
 敵軍の将とは言え、こういう時、先輩を頭ごなしに話をしては礼に失する!」
啓一はすばやく結論を出してしまった。
「別当!きみは水原先輩に連絡してみてくれよ!わたしは山本警視に連絡をつけてみるっ!」
「いいとも!善は急げだっ!」
別当薫も慌ただしくパーティー会場から、ホテルのフロントに向かった。
326巨人の星その後180:2009/06/30(火) 20:40:19 ID:9JEe91oQ
品川駅で国鉄の改札に消えた左門豊作に声を掛けそびれた京子は、
品川駅を通り抜けて、旧海岸通を歩いていた。
途中で電話ボックスを見つけ、電話をかけた。110番へだ。
「はー。あのおっしゃることが、良く分からないですけどね。誘拐されたんじゃなく、
 誘拐されたかも知れないってだけでしょ?」
「だから、警ら課か何かの人に見に行ってほしいんですっ!住所は・・・・」
「あー。それでしたら、高輪署に電話してください。番号言いますよ。いいですか?」
京子の電話は品川署に繋っていたのだ。それにしても不親切すぎる。
この時代まだ黒電話しかなく、署内では、内線を転送できたが、外へは全くできない。
高輪署にかけなおした。

「あのですね。誘拐されるかも知れないとか、されたかも知れないじゃ警察は動けないんですよ。分かりますかね〜?」
こちらも話しにならない。京子は、ひとみの身を案じていたが、連れ去られるところを見たわけではない。
「なんなら行った先が分かるんでしたら、そっちの警察におかけになったら、どうです?」
「あの、じゃあ新宿の新宿の警察署の電話を教えてください!」
「新宿?新宿署でいいですかぁ〜?」

京子には歌舞伎町界隈が新宿署管轄で、鬼怒川組事務所が牛込署管轄だなどと分かるはずもない。
「はい。新宿署の番号を教えてくださいっ!」
327巨人の星その後181:2009/06/30(火) 20:42:48 ID:9JEe91oQ
隠居の身の山本浩一、元警視正は車椅子に駆けて、自宅の箱庭を見ていた。
七かまどが、色づいていた。もう秋も終わりのようだ。妻が手入れしていた嵯峨菊もすっかり
花を萎れさせていた。
電話が鳴った。誰も出ない。一向に出る様子がない。浩一は妻を呼ぼうとして
今日は今朝から妻の体調が優れなく、病院に行かせたのに気付いたのだった。
だから自宅には浩一ひとりしかいなかった。左半身不随の浩一を妻がつきっきりで
介護してくれている生活になってから、6年が経とうとしていたのだ。
浩一は車椅子を自走して、電話の近くまで近づこうとしたとき、
家の中の敷居に車椅子がつかえ、進めなかった。やむなく立ち上がろうとして
浩一はその場にうつ伏せに倒れてしまった。
そのとき電話が鳴り止んだ。

誰だったのだ?妻か?朝から病院に出かけもう3時半になろうとしている。遅い。
検査に検査を重ねられ、重大な疾病でも見つかったのか?
それとも病院は、とっくに後にして今デパートにでもいて、夕飯に寿司かローストビーフのどちらがいいか
などと尋ねに電話してきたのだったろうか?
浩一は時間をかけて立ち上がった。サイドボードを掴んでどうにか立ち上がれた。
(なんだ。立とうと思えば、案外簡単に立てたじゃないか。)
328巨人の星その後182:2009/06/30(火) 20:44:42 ID:9JEe91oQ
その時、もう一度電話が鳴った。浩一はすぐに受話器をとった。
そのはずみで体がふらついたが、食器棚に掴まって、どうにか転倒せずに済んだ。
「はい?山本ですが?」
自分で電話に出るのは久しぶりだ。もう何年ぶりだろう。
もう少しで自分の役職を言ってしまいそうだった。
「どなたですか?もしもし」
「ああ。すいませんね。そちら山本浩一さんのお宅でしょうか?」
「はあ、さようですが、お宅は・・・・?」
「うや〜。久しぶりですな。わたし水原です。水原茂ですよ。覚えてますかぁ〜?」
「ええ?水原ってあの水原ぁ?」
「っておい。忘れたのかね?君は山本だろ?山本浩一くんだろ?」

浩一は驚いた。久々の電話の相手が、大学の同級生とは言え、あの水原茂だったとは?
今、この相手は何をしてたんだろう?巨人の監督だったはずだが、そうか。東映の監督になったんだった。
しかし何のようだろう?浩一にとって、水原は痛し痒しの同級生だった。

言うまでもなく水原は、戦後満州からシベリアに抑留されていた。
浩一のレッドパージに合わされた警察官僚、警察の重要人物の中には
身の潔白と釈明のための機会を、水原を頼って浩一に依頼してくる者が何人かいたからだ。

その話か?しかし今の自分はもう現役の警察官僚でもなければ、鬼警視でもない。
しかし水原の電話の要件は、浩一には意外なものだった。

=つづく=
329巨人の星その後183:2009/07/01(水) 20:13:01 ID:A0NbzH5R
「京子、おまえに謝らなけりゃなんないことが、あるんだ。」
一気に10歳以上は老けてしまっていた鉄二は、松葉杖がないと歩行がままならないようだった。
京子は、不忍池の弁天さまのお堂がある中ノ島へ続く小橋(天龍橋)を渡った。
鉄二は、ゆっくりと後ろを歩いてきていた。
「ごめんなさいね。歩けるの?」
「ああ。大丈夫だよ。慣れてるから。」
「そう。足、悪くなったの?」
「いや、そうじゃないんだ。オイラが謝りたいのは・・・」
「謝ってなんかいらないわっ!アタシが勝手に消えてしまったんだし、それに・・・」
鉄二は京子の強い声に黙ってしまった。
「かわいい赤ちゃんだし、奥さんもステキな感じの人だわ。」
「いや、それじゃねーんだ。そん事じゃねーよ。オイラが謝りたいのは。」
京子は振り向いて鉄二を見た。初めて逢った時から喋り方こそ変わらないが
その容姿は別人の如く変化していた。
髪はほぼ白髪になり、顔はなぜか片方がゆがんでいた。左右不均等になっていたのだ。
足を引きずりながらも筋肉質だったその体は、ガリガリで案山子のようになっていた。
松葉杖がなくとも、相当な年月が経ったせいなのか、外見でモノを判断しない京子にも
その鉄二の姿は痛々しかった。
330巨人の星その後184:2009/07/01(水) 20:15:23 ID:A0NbzH5R
京子と鉄二がふたり佇む小橋から、不忍池の水鳥が見えていた。
京子は知らなかった。こんな都会の真ん中の池にも渡り鳥がくるのだ。
鴨は3〜4羽しかいなかったが、ゆりかもめの数が目立つ。20羽はいるだろう。
極寒の地から、安らぎと食べるものを求めて、とてつもない距離を飛来する。
そして春になればまた飛び立ってゆくのだ。

京子は考えた。今の自分に安らぐ場所があるのか?あるいは何処かに安らいだところで
鬼怒川の追っ手が来るだろう。いればそこに迷惑をかけてしまう。
最愛の飛雄馬は左門の尋ね人の件から、行方がわかればいいが行方不明のまま。
かつて愛した鉄二は、家庭を持ち一児の父となっていた。

ひとみの店に顔を出すのも、このときの京子はまだ決めかねていた時期だった。
「あのなぁ、京子。」
鉄二は口癖の「あのなあ」を頭において話し始めた。自分が一方的に話す前は
鉄二は必ずこの「あのなあ」を言葉の頭におくのを京子は思い出した。
「あのなあ。おまえのダイアナ。マークVな。あれ、オイラがお釈迦にしちまったんだ。すまんっ!」
「え?・・・・・・そんなこと・・・・。もしかしてその時に事故で体を・・・・・・?」
331巨人の星その後185:2009/07/01(水) 20:17:04 ID:A0NbzH5R
「ああ。ドジっちまってな。九分九厘死んでたらしいや。」
京子は改めて鉄二の顔を見た。よほど酷い事故だったに違いない。
そして今の鉄二の痩せっぷりを見るに、どこか内臓も損傷したのではないか?
「今の家内がな・・・。実はそん時の看護婦だったんだ・・・・。」
「そうなの・・・・。いい人みたいね。」
「ああ。地獄に仏とは、まさにアイツのことさ。でも・・・。」
「マークVなら、もういいの。アタシ・・・もうバイク乗ってないし・・・。」
「おい。あのなあ。お前、ちゃんと免許の更新したか?もうじき3年だぞ。違うか?」

そうだった。あの胸ときめかせて、バイクの免許を取ったのが、もう3年前なのだ。
この3年、自分は何をしていたのだろう。父の影におびえ、鉄二の元を去り、
自分は3年もの間、何をしていたのだろう?

「おい。今どこにいるんだ?教えろよ。住所。」
京子は、フッと寂しそうに笑うと、鉄二から顔を背けた。
「そんなもの、ないわよ。今のアタシには・・・。」
鉄二は何も言わなかった。長い沈黙が続いた。京子が鉄二による年月を感じたのと同じように
鉄二も自分を見て、どう思ったのだろう。髪を染め、そして追われる身を北陸から出てきて
当てもなく東京についたばかりの落ちぶれた自分を。
332巨人の星その後186:2009/07/01(水) 20:19:13 ID:A0NbzH5R
「もう乗れないの?バイク・・・・。」
「さあ・・・・。わかんねえや。乗ってないからな。」
「知ってる?広瀬登喜夫、捕まったんでしょ?八百長で。」
「ああ。酷いな。まさかあの広瀬が・・・・・・。」
「ほんとに八百長したのかしら・・・・。」
「どうだか。ありゃ組織的な犯罪だかんな。ひとりじゃできねーし、またひとりだけヤだって言ってもな・・・。」
「アタシ・・・してないと思うな。広瀬登喜夫は・・・。そういうことができる人とできない人は
 はっきりタイプが分かれるとアタシ思うの。」
「う〜ん。だといいよな。野球でも八百長盛んみたいだが・・・。」
「野球は誰も彼もやってないわよっ!そんな人ばっかりじゃないっ!」
思わずムキになってしまった。気付いて京子は黙った。
鉄二も言葉を返さない。意外なほどふたりには会話がなかった。

今日、逢うつもりで上野の店にきたわけではなかったし、鉄二も京子とまさか逢うとは
思ってなかったにせよだ。沈黙が続いた。
「京子・・・・。実はな・・・・。いや・・。」
言いかけて鉄二は躊躇した。こんなことがあまりある男ではないのだが。
「京子、おまえ、どこか落ち着くところあんのか?」
言いたいことを、どうも取り替えたようだ。
333巨人の星その後187:2009/07/01(水) 20:21:20 ID:A0NbzH5R
「ごめんなさい・・・。アタシ、まだどうなるか分からないの。」
「うん。そうか・・・・。あのなあ、京子。」
「アタシのことなら、心配しないでっ!大丈夫よっ!」
また心にもなく強がってしまった。

「そ・・そうか・・・。じゃな京子、落ち着いたら場所、教えてくんねーか?」
「ええ?どうして?」
別に鉄二を避けるわけではなかったが、京子の居場所を知りたがる鉄ニの真意を図りかねた。
「ごめんね・・・。鉄さん。アタシ、もう鉄さんと関われるような人間じゃないの・・・。アタシ・・・。」
「なんも言うなっ!居場所、きまったら教えろよっ!店の電話わかってんなっ!じゃなっ!」

言うと鉄二は店のほうに松葉杖をつきながら背を向けて歩き出した。
かなり歩き辛そうだったが、ヒョコヒョコと慌ただしく去っていった。

京子はその後姿を見送ったが、じきに目を不忍池の渡り鳥に転じた。
どうなるか分からない自身の身の上は、渡り鳥を観察しても何も見えてこない京子だった。
334緊急告知!!:2009/07/01(水) 20:29:29 ID:A0NbzH5R
「巨人の星その後」と並行しながら新連載を開始します

「巨人の星その後」は規制にかからない限りは毎日、執筆予定ですが
新連載のほうは不定期連載となります
>>323にインスパイアされて思いつきました
「巨人の星その後」と違いどういうストーリーにしていくかは全然考えていませんが
思いつく限り執筆するつもりです
最初の投下です どうぞよろしく

335虎の穴 異聞1−1:2009/07/01(水) 20:32:00 ID:A0NbzH5R
ヨーロッパ・アルプスの奥深く、万年雪と岩肌しかなく、
植物は草も花も全くない不毛の地に1940年代から、ある機関が存在していた。
戦時中はドイツの総統別荘、あるいは占領下フランス各地、ベルギー、オランダから
盗み出された絵画、芸術品の数々をドイツ軍が秘匿するための秘密画廊、
そしてドイツ第三帝国政府の要人のための高級売春クラブなどが、そこにはあった。

ドイツの降伏で戦争が終わると、自由フランス軍、イギリス軍がかの地に踏み込んだが、
そこはナチス協力者として追われ逮捕される可能性のあるバチカンのカトリック神父、バチカン官僚
、そして先に失脚していたイタリア、ムッソリーニ政府の旧要人たちの
隠れ家にもなっていたのであった。
ドイツが横領していた芸術品すべての返還と、ナチス関連資料、逃亡したドイツ将校の資料と引換えに
連合軍は彼らの身の安全と国際軍事裁判への免訴を約束した。

身の安全を保障された彼らは、ひとつだけ引渡しを免れた財産を運用することを考えた。
戦後、バチカンが裁かれることなく、法皇を頂点とした布教活動を再開すると、
同時にその財産は、世界中に運用のためにバラまかれた。
336虎の穴 異聞1−2:2009/07/01(水) 20:34:02 ID:A0NbzH5R
バラまかれた先は、パリ、ロンドンの社交界、そして最も多くは
アメリカ西海岸、ハリウッドだった。

その財産とは戦時中にナチスがヨーロッパ中から拉致してきた女たちであった。
そこで非人道的な調教を受け、様々な性戯を修得させられ、そして女体への屈辱から
一度、人格を崩壊させられた後に洗脳され、ナチス将校たちの愛妾として
また鼻薬を嗅がせる必要のあるヨーロッパ中のナチス傀儡政権の要人たちの接待を担った女たち。

その女たちは、ドイツ降伏後、自分たちの魅力をバチカン要人、そして連合軍に一時的に利用すると
国際的売春諜報組織を結成した。
バチカンの組織力を利用することで、彼女たちはどこへでも潜り込んだ。
またハリウッド映画界をも、自分たち、また自分たちが育てた女たちによって
映画会社の株主、監督、プロデューサー、を篭絡し思うがままに操った。

磨きぬかれた美貌と性戯テクニックは素人やダンサーからノシ上がろうとする女性など問題ではなかった。
その選び抜かれた女たちを製造する場所は、戦後もそのヨーロッパ・アルプスに鎮座し続けた。
337虎の穴 異聞1−3:2009/07/01(水) 20:36:20 ID:A0NbzH5R
吹きすさぶ風雪の彼方、またあるときは紺碧の空の下、
巨大な女神像が、そびえていた。
高さ60メートルのブロンズ製の女神像。戦時中にナチスが建立したものである。

しかしその内部は、世界中に送り込まれる女たちの秘密の特訓場となっていた。
当然、全世界への女たちへの司令室にもなっている。

世界中から攫われてきた若い女たちは、ここで人格を破戒する責め苦を受け、
そののちに洗脳を受けた。

そして全世界の財閥、皇室、王室、そして国際的銀行組織、映画界、芸能界に送り込まれ
情報収集と陰謀の実践、頑強な旧態然とした支配層の分断分裂、
さらには映画出演、歌手デビューして善良な庶民をも洗脳した。

一体この組織を実際には誰が運営しているのか、ナチスやバチカンから正式に相続したのは誰なのか
全ては謎に包まれていた。
しかし女たちは、自分たちを束ねるその女神像がそびえる機関のことをこう呼んだ。
『女の穴』と。
338虎の穴 異聞1−4:2009/07/01(水) 20:38:38 ID:A0NbzH5R
今この女神像の台座部分の内部の一室では、
頭からクー・クラックス・クランのような形をした真紅の頭巾をかぶった
3人の幹部女性と13人の構成員の女が、ある一点を凝視しているところだった。

その一点とは、鋼鉄製の丸く平たい手術台に仰向けで大の字で固定された
全裸の女の乳首だった。
白いとんがり頭巾の担当医師(これも女)が電極をその乳首に
洗濯挟みのようなクリップで固定した。
きゅっ!
「ぎゃああああっ!」
「うふふ。まだ序の口だよ。そぉ〜れ。も1つ。」
含み笑いをしながら白頭巾の医師は、もう一方の乳首にも電極をはさみつけた。
「うぎゃああっ!」
「痛いかい?ふふ・・・。でもまだ挟んだだけだよ。本当の地獄はここからさ。」
白頭巾が手元に運んである大きな機具のスイッチを入れた。

ビリビリビリビリーッ!
「うんぎゃぁああああああああああああああああああああああああ〜!」
分娩のような大声を上げ全裸の女はのけぞった。
339虎の穴 異聞1−5:2009/07/01(水) 20:40:16 ID:A0NbzH5R
真紅頭巾の幹部が言った。
「おまえたち、よく見ておくのだ!われら女の穴を裏切ったものが、たどる末路を!」

13人の構成員たちは、頭巾をかぶっておらず素顔だった。
なぜか全員がバニーガールの格好をさせられている。
そのひとりひとりの顔は、どれも類稀な美貌だったが、どの顔も恐怖に青ざめていた。

白頭巾が言った。
「うくくく・・・。顔を背けずによく見ておくんだね。あんたたち。自分も馬鹿な真似をしてこうならないように・・・。
さぁ〜て、これは洗脳でもお仕置きでもないさ。今日、この女は「女」でなくなるんだ。
その女でなくなる儀式をこれから、じっくり見学するんだね。いっしっし。」

白頭巾はその手に、メスをとった。全裸の女が電流を流されながらも哀願する。
「それだけは!それだけは、やめてー!お許しー!お許しくださいー!」
「チト静かにさせてあげようか・・・。」
真紅頭巾の幹部の一人が、細長いタバコの先に火をつけた。
そしてそのタバコを全裸の女の臍につき立てた。
「あぎゃああああああああー!」
「さあ、やっておしまいっ!」
メスが女の繁みに近づいていく。
もっとも大きな悲鳴と絶叫とともに、手術台とあたりは鮮血に赤く染まった。
340虎の穴 異聞1−6:2009/07/01(水) 20:42:06 ID:A0NbzH5R
儀式は終わった。乳首に電流を流されながら麻酔なしで局部にメスを入れられた女は
白目を剥いて失神していた。
「このあと、コヤツは女としての機能全てを奪われたあと、人工的な生殖器を移植され、
一生をハンブルグとアムステルダムの飾り窓で過ごすのだ!少々顔も売れているから
それと判らぬように顔も整形されてな!その売上もすべてわれら女の穴の出先機関が管理する。
逃げることも、できぬ!麻薬漬けの体にされて、その特殊な麻薬で客を喜ばせる妙技もできるが、
その特殊麻薬がないと自身は全く性的感覚を得ることができなくなるのだ。
もちろんその特殊麻薬は我ら、女の穴だけが調合できる!」

真紅頭巾の幹部が、一列に整列させられているバニーガール姿の構成員たちに大きい声で説明した。
声からするとこの幹部は40歳は超えていそうである。

別の幹部が、スイッチを押すと血まみれの全裸の女を固定した手術台は、ウイ〜ンと音を立てて
床のレールの上を移動していき、隣の部屋に消えた。

また別の幹部が別のスイッチを押すと天井からスクリーンが下りてきた。そして映写機がまたレールに乗って
その部屋に登場した。
映写機が作動した。まず女の穴のエンブレムともいうべき、唇を斜めに描いたマークが映された。
次に映し出されたのは、既に故人である有名な女優の在りし日の顔だった。
「1950年代、アメリカのセックス・シンボルといわれたこの女も元は我らの同志だった。」
341虎の穴 異聞1−7:2009/07/01(水) 20:43:51 ID:A0NbzH5R
中央の幹部が、おそらく胸につけられたピンマイクに乗った音声で説明を始めた。
「しかしその任務の途中、我らの作戦を無視し、勝手な行動をとったため、
肛門から猛毒を注入され、変死体となって発見された。この女が39歳のときだ。
この女の任務はその国の大統領を篭絡し失脚させることだった。
しかしこの女は私情をはさみ、忠実に任務を遂行しなかったのだ!
もちろん死因は特定されてはいない。わかるか!?」

画面が切り替わった。次はボーダー柄の水兵風のシャツにパンツルックの
髪の短い金髪の女性だった。こちらに笑顔を向けている。エクボも可愛い。
「この女は、パリの暗黒街に送り込まれたが、これも忠実な任務遂行を怠った。
フランスの映画俳優と恋愛に落ち、組織よりそちらを取ったのだ。
セシル・カットと呼ばれた短い髪型は一世を風靡し活動的な女性のシンボルとなったが、
パリ市街の自家用車の中で変死体で発見された。彼女の暗殺に
我ら女の穴は「勝手にしやがれ作戦」と名づけた。もちろん死因は判明されていない。」

次は黒髪を真ん中で分けた目の大きな女性の写真だった。
「この女はハリウッドでの情報収集とある映画会社大物の失脚の指令を受けて
女優として活躍しながら、行動をとらせていた。我らに無断で勝手な結婚をし
組織を抜けようとした。結果我らが洗脳した殺人集団によって猟奇的に殺害された。1968年のことだ。」
342虎の穴 異聞1−8:2009/07/01(水) 20:46:58 ID:A0NbzH5R
写真がまた替わった。今度は金髪で頬骨のやや出た大きな青い目をした女優だ。
「この女を知っていよう。この女は、ある公国の王位継承者と世紀の結婚をした女優。
しかしヨーロッパ王室外交の中枢を撹乱する目的を果たさず、
その結婚にただ乗りし、我らのお膳立てしたその生活に己を見失い
贅沢三昧のあげく、自動車事故で死んだ。つい先日のことだ。」

幹部が替わり別の幹部が話を続けた。
「今日、絶叫の中、おまえ達の前で気絶した女は、ロック・ミュージシャンとして
我らが業界に送り込んだ。プレイヤーとしての特訓もさずけ、
若くして業界に潜り込ませ、レコード業界に陰謀を仕掛ける作戦を
これも勝手な恋愛によって放棄し組織を脱退しようとした。
解散したグループのリーダーでもあり、ギタリストでもあったあの女は、
今日、女としての機能を失った。」

幹部は、3人が肩を並べ、構成員たちにまた述べた。
「いいか。おまえたち。訓練され、磨かれた美貌と性戯で我らの任務を遂行さえできれば、
セレブな生活と名声が手に入れられるのだ!それを忘れず忠実に任務をまっとうせよ!
ステータスのある暮らし、名声に溢れた男たちの相手をして、その任務さえ遂行していれば、
何不自由ない生活ができるのだ!くれぐれも愛などに絆されて己を見失うな!
男は全て利用すればよいのだ!自分のステータスを上げ任務のためにな!」

幹部の声が響き渡る広い部屋は、内部がブロンズと琥珀で出来ていた。この部屋の
はるか頭上では、女神像がアルプスの吹雪の中、東を向いていた。

=第1章、おわり=
343名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 21:07:47 ID:wbEeXJXB
これはすごいwwwwww
確かに『虎の穴』は、巨大犯罪組織『虎』の一部門、レスラー養成機関に
すぎないという設定がありますから、売春婦養成機関があっても不思議では
ないですからね。

それにしても、同時に2本も連載できるエネルギーには驚きです。
くれぐれも無理をしないで、楽しませてください!
344左門VS星:2009/07/02(木) 13:10:18 ID:CpxvQgy/
ヽ( 〇⊇Ο)/「星くん!こん勝負だけは負けれんとですたい!」

ヽ(σ_σ)ノ「左門さん、お京さんは譲るよ」

ヽ( 〇⊇Ο)/「譲るとは、どがんこってすばい?星くんはお京さんの体ば、抱いたとですか?」

ヽ(σ_σ)ノ「そんなこと、おれの口からは言えないよ 左門さん」

ヽ( 〇⊇Ο)/「言えんとは、そらどがんこってすか?返答次第ではこん左門豊作、鬼にもなるたい!」

ヽ(σ_σ)ノ「勘弁してくれよ。タイプじゃないんだ。あまり気の強いのは・・・」

ヽ( 〇⊇Ο)/「気の強かばってん、そがん所がまたよかとです!こらこっちの話ですたい」

ヽ(σ_σ)ノ「好きにしてくれよ。俺は代打専門で復帰するつもりだ」

ヽ( 〇⊇Ο)/「代打で寝取るちゅうこってありもんそ?そがん許せんばい!」
345名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 15:17:09 ID:P8SmQyef
>>340->>342
マリリン・モンロー
ジーン・セバーグ
シャロン・テート
グレース・ケリー
力作予感 我蔭於声援
346名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 18:58:56 ID:8u++/u+2
純とレーコはその後の試合を見ずに、体育館を出ると先程二人が話をした
駐車場の隅で、特訓を始めた。空手ともプロレスとも違う筋肉を使う稽古は、
純にはキツく30分程でフラフラになった。それを見てレーコが
「よし、今日はここまで、明日からは時間掛けて鍛えてやるから、気合入れて来ーや」
「あしたもここでやるの?」
「いや、明日からは、純とゼロが泊まってるホテルの先にあるスポーツジム
でやる、午後から始めるから寝坊すんなよ」そういうとレーコはさっさと行ってしまった。
ホテルに帰った純は、怒られると思いながらも、自分が地下のリングに上がったことを
ゼロに伝えようと思った。とりあえず自分の荷物を片付けてゼロの部屋に行き
ドアをノックした。するとスーッとドアは独りでに開いた。
中に入るとゼロはいない。鍵の掛け忘れか、オートロックの癖が抜けてないのか、
慎重なゼロにしては珍しいことだった。その時デスクの上に置かれた、0の文字が
刺繍されたゼロのマスクが純の目に入った。見ても触ってもいけないような気が
したが、おずおずと純はマスクを手に取ってみた。
347女悪役ブルース:2009/07/02(木) 19:14:18 ID:8u++/u+2
中身を失ったマスクはなんとなく間の抜けた感じがするが。このマスクを
ゼロが被ったとたん、強烈なオーラを発散することは純が一番良く知っている。
それにしても、ここにゼロのマスクがあるということは、今ゼロは素顔で出かけて
いるということ。このまま待っていたら、帰ってきたゼロの素顔が見れるかも。
そんな考えが一瞬純の頭に浮かんだが
「いやいや、それはマスクウーマンへの礼儀に反するし、24時間一緒にいる私にも
絶対明かさない正体・・・きっと何か理由が・・・もの凄いブスとか・・
いやマスクからのぞく目鼻立ちからも逆に素顔はかなりの美人のはず・・・
きっと深い訳が・・・」
「まっ、でもちょっと被るくらいかまわないよね・・・」
そう独り言を言いながら純はゼロのマスクを被った
「マスクってけっこうきついし大変。よくこんなの被って試合出来るもんね」
その時突然ノックの音が
「いっけないゼロが帰ってきちゃった・・・でも自分の部屋ノックする
奴はいないか・・・。ハーイどうぞ開いてますよ」
純の声に反応して、ドアを開け入ってきたのは凶悪な意思を含んだ
面構えの男と女だった。
348女悪役ブルース:2009/07/02(木) 19:33:21 ID:8u++/u+2
「な、何あんた達」
「組の上層部からの言いつけでね、お前さんを迎えにきたんだよ」
男がそう言い。女は純の後ろに回った。
「組ってなによ、私には用は無いよ!帰って!」
「俺達はお前を連れてくことしか支持されてないんだ、おとなしく着いて
こいよ。手荒なことはしたくないんだ」
「うるさい!嫌なものは嫌だ!さっさと、ウッ!・・・」
後ろに回っていた女にいきなりガーゼを口元に押し当てられ、呼吸とともに
純の意識は遠くなった。
「じゃ、俺がかついで行くか」男は純を背負ったが、その時再び扉が開いた。
「お、お前は」「な、なんで貴様がここに」男と女は、部屋に入ってきた素顔のゼロを
見て叫んだ。
「お前達こそ何やってるんだ!?クイーンゼロを拉致でもするのかい!?」
「しまったな、こんなところでみつかるとは」男は悔しそうに呟やいた。
「今あたしが廊下で大声をあげれば、お前達一発で警察行きだよ。」
「くそーッ」女も悔しそうにはき捨てた
「気絶してるゼロを、おとなしくここに置いていけば、見逃してやるけどね」
「本当か!!」「あぁ本当さ、さっさと出ていきな」
ゼロに言われて二人は部屋を猛ダッシュで出ていった。
349名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 19:38:43 ID:RFRpihYI
>>347
細かいようだが、タイガーマスクの5巻だな
タイガーのマスク被ってふざかてる大木がミスター?に襲われるシーンの再現だね
いいんじゃないでしょうかね
こういうエピをチョコッとはさむのもw
350女悪役ブルース:2009/07/02(木) 19:56:44 ID:8u++/u+2
「まったくこの子は何やってんだか・・・」
そう言いながら、ゼロは髪の毛をパパッとアップに纏めると、純が被ってる
マスクを剥がし自分が被った。そして純に活を入れようとしたが
「このままじゃばれるかな・・・」そう言って、着ている服を脱ぎ、
ロッカーに入れ、いつものゼロの服を着ると、今度こそ純を中腰に起こし
活を入れた。
「ん・・う・・ん・・あれ・・ここどこ」「何寝惚けてるんだ、ここは
あたしの部屋だよ!お前なんであたしのマスク被ってひっくり返ってるんだよ!」
「あっ!そうだ、怪しい男と女いなかった!?」ゼロには考えがあるらしく、事実とは
異なることを告げた
「そんな奴らいないよ、それよりなんであたしのマスク被ってたんだよ!!
何も知らずに帰ってきたあたしの素顔を見るつもりだったんだろう!?
そして、あわてて顔を隠して恥ずかしがる、みっともない姿もみるつもり
だったんだな!!」
「そんなこと考えてないよ!!それに、あんた顔を隠して恥ずかしがるような
キャラじゃないじゃない!」
「どんな風に思ってるかしらないけど、素顔を隠すためには、覆面レスラーっての
パンティー脱がされそうな女の子みたいになっちゃうのよ」
「ふ〜ん・・・でもね、ちょっとだけゼロの素顔が見れるかもって
ドキドキしたのは本当だけどね」
「まったくこの子は・・・そう簡単にあたしに美貌の素顔は見せないよ。
でもあたしの意思とは逆に、マスクを剥がされるという形であんたが
あたしの正体を知るときがくるかもね」
「そんな・・・」
351女悪役ブルース:2009/07/02(木) 20:06:31 ID:8u++/u+2
>>349
私が一番好きな梶原漫画はタイガーマスクなもんで、
全アジアプロレス選手権のこのエピは必ず入れようと思ってた
んだけど、たまたま1さんの虎の穴異聞が始まったんで、
イメージがかぶってしまうんでどうしようかと思ったんだけど、
予定どうり書いてみました。
今月中には完結させますから、もうしばらくお付き合いください。
352巨人の星その後188:2009/07/02(木) 21:54:06 ID:RFRpihYI
「警部補。お電話です。」
「ぼくに?誰から?」
「お父様からですよ。」
ノンキャリアの刑事から受話器を渡された山本警部補は、奇妙な感覚をおぼえた。
家から職場に電話がかかってくることなど、なかったし
あったとしてもそれは母からであろう。
寝たきりではないにしても、左半身不随の父が、自分の職場に電話を寄越すなど
いい話であるはずもない。山本は心して電話に出た。
「とうさん?そうしたんですか?」
「すまぬな。デカの職場に電話するなど、よくないことだとはわかっているんだがな。
 しかし、いいか?これから父さんのいうことを良く聴け。そしてあとは自分で判断しろ。」
単刀直入に聴こえた父の声だが、やはりどこか弱々しい。
「ええ。仰ってくださいよ。父さん。」
「うむ。その前にな。ふたつだけ報告がある。実はな。母さんが入院した。」
「ええ?どうして?!どこが悪いんですか!?」
「今はそれをお前に説明している時間はない。しかし母さんは、まだしっかりしている。
 そう長い入院にはならんそうだ。自分で付き添い婦まで手配してしまったほどだからな。」
「とうさん!ぼく帰りますよ!それで病院はどこですか?」
「いいか。もうひとつ報告がある。明日からワシは老人ホームに入ることになった。
 これでも力を貸してくれる友人がいてな。空きがあったんで、すぐ入れるそうだ。」
353巨人の星その後189:2009/07/02(木) 21:55:47 ID:RFRpihYI
「とうさん!なんで急にそんな大事なことを!それに母さんは何て言ってるんですか?!」
「あす、施設の人が迎えに来てくれて、ついでに着替えの荷造りまでしてくれるそうだ。
 万事、案ずることは、ないからな。」
山本は言葉を失いながら、考えた。いくら自分がデカだからといって、また子供が自分ひとりだからといって
少し用意が良すぎはしないか?今日、家に戻ってそれから家族会議とまで行かなくても
話をすればよいではないか?こうも手際よく決めてしまう父の行動力と決断力には感服してしまいそうだったが、
逆にそれだけに、これから父が「用」と言っている要件が只事ではない予感がした。

その時、山本の隣の電話が鳴っており、それを山本にさっき電話を取り次いだ刑事が応対していた。
そちらは、かなりの大声で電話している。山本は、少し気が散ったが、父の電話が火急の用であるようで、
その父の電話に集中しようとしていると、隣で刑事が大きくわめいた声で、山本はビクンッと反応した。

「あのね〜。だからそれは牛込署なの!ここは新宿署!わかる?!」
山本にはピンと来るものがあった。牛込管轄の事件を、ここ新宿署にかけてきそうな電話といえば
それは、鬼怒川組に関連したことに違いないと瞬間的に判断した山本は、急いで電話の向こうの父に告げた。

「とうさん!すこしだけ!すこしだけ電話切らずに待っていただけますか!?少しだけなんです!」
父の返事を待たずに山本は隣の電話を引ったくった。
「もしもしっ!電話変わりましたっ!お話を聴きましょう!続けてください!」
354巨人の星その後190:2009/07/02(木) 21:58:06 ID:RFRpihYI
その引ったくった電話を3〜4分聞くと山本はそれを切り、父の電話に再び出た。
「すいません。とうさん。実は・・・。」
「いっぱしのデカになってきたようだな。よくは聴こえなかったが、
 今の電話と関連しとるかも知れんな。わしの話も。」
「なっ・・・なんですってぇっ!?とうさん!詳しく聴かせてくださいっ!」
「うむ。わしの古い友人から電話があってな。その友人の友人が経営しとる会社の社員が、
 この事件に巻き込まれたようなんだ。ケガもしている。そこでだ。・・・・・」
父の話は、3分ほどで終わった。
「いいか。これは命令するのでも、依頼するのでもないぞ。今のお前のいる一課がどう判断するかは
 ワシには分からん。お前がどう動き、どう周囲と判断するかはお前に任せる。
 あとは、ひとりのデカとして、お前が判断してくれ。わしが言うのは、それだけじゃ。」

父の電話を切った山本は、10分後には新宿署の署長室にいた。
同じ一課の大下警部を伴っていた。
「それは、確かな情報だとしたら、鬼怒川を叩くチャンスだな。だが、この件は四課は知っているのかね?」
署長の古場は、大下と山本に質問した。
「聴いているかどうかは、分かりません。しかし今朝方、衣笠警部が、過去にそれに関連する電話が
 星飛雄馬を名乗る男からあったと、私に話していました。」
「う〜む。よしっ!衣笠を呼べ!」

=つづく=
355虎の穴 異聞2−1:2009/07/02(木) 22:01:32 ID:RFRpihYI
1982年、ネバタ州ラスベガスの最高級ホテル「ザ・サンズ」の最上階スイートに
一人の女が訪ねてた。夕方から始まったこのホテルの名物ショーが1時間前に終了しており、
出演者はすでにこのスイートでシャワーを浴びて遅い夕食を取っているはずである。

美鶴代は、プロのコールガールではなかったが、先日このホテルのプールを泳いでいるところを
この部屋の主に見初められていた。
ステージに上がる前に「今夜、部屋にきてくれるかな?」という誘いに勿体をつけて一度は
断った美鶴代だったが、結局は快諾し、ここを訪れていた。

ドアがあくと部屋の主にして人気歌手はバスローブ姿だった。
「OH〜!ミッチー、来てくれたんだね?わたしはハッピーだよぉ!」
人気歌手はすでに60歳を超えていた。しかしそうは見えないが、周囲の歌手やスタッフは彼のことを
敬意と畏敬をこめて「サー」と呼んでいた。
サーは、あまり酒は飲まなかったが、この日本からの類稀な美女に自慢話を続けるのだった。
「『地上から永遠に』という映画は、見たかな?君の年齢じゃ知らないかな?」
「見ましたわ。いつか。名画を専門に上映する映画館で。あなたは完全に主役を食ってましたわ。」
嘘である。その映画を参考までに見たのは、アルプスの山中の女神像の中である。
356虎の穴 異聞2−2:2009/07/02(木) 22:03:04 ID:RFRpihYI
「あの映画はね、プロデューサーがわたしを降ろそうとしたんだ。わたしは役作りにも励み、
再起を賭けていたからね。それをあらぬゴシップをわたしのせいにして、『おまえはクビだ!』
『ハリウッドの空気を二度と吸えないように追放してやる!』とまで息巻いてきた。
わたしは残念だったよ。こんな汚い言葉を使う人間がわたしの再起を握っていると思うとね。」

「でもあなたは出演なさって、映画も見事にヒットしてますわ。あなたも演技派としての評価を固めた。
そのプロデューサーとはうまく仕事ができたということでは、ありませんの?」

「クックック・・・・。正義はわたしにあったのだ。奴が言ったことは全部が濡れ衣だった。
それを認めようとしない奴は、あるとても悲しい思いをしたんだ。神の手によってね。」

「神の手?どういう意味かしら?」

「わたしのフレンドのことさ。彼らは自らの行為をあとから『神の手』というのさ。その神の手が、
奴、馬鹿プロデューサーの自慢の馬の首を切り落として、奴のベッドの潜りこませておいたのさ。ハハハ。」
357虎の穴 異聞2−3:2009/07/02(木) 22:04:41 ID:RFRpihYI
「まあ、こわい!それ本当ですの?」
「ハハハ!ジョークだよ!ジョーク!ある映画がわたしをモデルにしたと
嫌がらせをしたつまらんマフィア映画のワン・シーンさ。
そんなことが本当にあるわけないじゃないか!ハハハハ!」

「あ〜。よかった。あなたが、そんな恐ろしいことに関わってらっしゃるとは
とても思えませんもの。あなたは、とっても紳士。そうでしょ?」

「Oh!ミッチー。君は私を理解してくれるんだね?思ったとおりの素晴らしい女性だ。」

「まあ、お上手ね。そんな言葉は映画の中でしか聞けないと思ってましたわ。」
「NO!これは映画じゃないさ。ミッチー。きみは素晴らしい。そしてセクシーだ。」
老歌手は立ち上がった。そして美鶴代を抱きしめた。

「日本の女性はね。わたしも初めてなのさ。なんと言うキレイな肌、透き通るようだ。このきめ細かい肌は
白人にはないものだね。さあ、わたしを喜ばせてくれるね?」

美鶴代はシャワーを浴び、そして老歌手に体を委ねた。老歌手の一物は機能しなかったが、
替わりに舌と指で丹念に美鶴代の肉体を撫でまわした。
美鶴代は、白々しい印象も相手に与えず、ヨガリ声をあげ、老歌手を満足させるのに勤めたのだった。

358虎の穴 異聞2−4:2009/07/02(木) 22:06:24 ID:RFRpihYI
朝が来た。うららかな日差しがカーデンの隙間から覗いていた。
老歌手は、目を覚ましたが、体がだるい。なにか痺れているような感覚を覚えた。
とくに下半身に、麻酔薬のような痺れ感があった。

「おかしい・・・・。!な・・なんだ?これは?」
自分の下半身がベットリとしている。何かの液体をこぼしたような感じだ。
まだ粗相をしてしまうまでは、耄碌していない。
しかし何だろう?この奇妙な感覚は?サイド・スタンドの灯りを点けようと
老歌手は、ベッドの中で半身をひるがえした。
その時、この男の目に信じられないものが飛び込んできた。
サイド・スタンドの上に、なんと切り取られた男根が、切った断面を下にして、
そこに立っていたからである。

一瞬、玩具の類かとも思ったが老歌手はすぐに身に起こった事態を把握した。
「ああああああああああああああああああああー!」
声がスイート・ルーム中に響いた。
「ああああああああああああああああああああー!」
声は同じ最上階フロア中に響いた。
「ああああああああああああああああああああー!」
声は、このホテル「ザ・サンズ」の外まで響いた。
その声が響くホテルのプール・サイドを美鶴代は、ゆっくり歩いていた。
「ごめんなさいね。ミスター・フランク。あなたはアタシには紳士だった。でもこれは仕事なの。」
359虎の穴 異聞2−4:2009/07/02(木) 22:16:27 ID:RFRpihYI
>>343
ありがとうございます どんな機関にするかは、まだ思案中です
ありふれた犯罪組織(007に出てくるような)やマフィアは嫌なので
あっと驚く組織にしたいですねw
>>345
ありがとうございます
>>351女悪役ブルースさん
気にしないでください。タイガーマスク競作しましょーよ!
あの素晴らしい作品をイジるのが自分ひとりというのは不自然ですしね
あと「青春山脈」も競作したいですね!個人的には魔子が好きですが、火乃兄弟の序章以前もいいかな
と考えています
「虎の穴」は子供時代、アニメ見ながら怖い感じがしました。ミスターXとかボスとかの
会議もなんか暗〜い感じで、おどろおどろしいイメージがありました
コミック12巻で出てくる虎の穴も子供にまでリンチするとんでもない人外魔境という
イメージでした
360名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 22:52:00 ID:uhnanAGa
美鶴代はもしや、ケイちゃんの相方の、あのミーちゃんですかい!?w
3611:2009/07/03(金) 22:34:25 ID:GYjymebJ
>>360
じぶんはMIE表記のころが大好きですね 映画「コールガール」は中学生だったのに
オッサン風に変装してまで観に行きましたからねww
ある意味、自分の「最初な」ひとです その映画の衝撃はまだ残ってますね
それほどエロいわけでもないけど、アイドルが娼婦役というのはインパクトがありました

背の高めなスレンダーな人が好きですかね 一番好きだったのは中島ゆたかさんです
芸能活動もマイペースな人ですね あまり媚びずに 
お京も実は旧じゃなく新に出てきた黒髪スレンダーな京子が好きです
虎の穴2話はフランク・シナト●がゲストでした さて次回は誰でしょうw
362巨人の星その後191:2009/07/03(金) 22:36:57 ID:GYjymebJ
1分ほどで衣笠警部がドタドタと入ってきた。
凄い顔をしている。まるでゴリラだ。署長室に入るなり、まず山本を睨みつける。
「なんすかっ?署長。」
「君は、鬼怒川組からある女性をガードしてほしいという電話を取ったのだね?」
「それは、事件でもなんでもねーでしょがっ!?」
「直接、事件に関係ないとひとりで判断したのかね?」
「判断も何も、事件になってねーもんを動きようも聞かせようもありやせんぜ!」
「しかし一課の山本君に、君は話しているじゃないか?なぜだね?」
「ウグッ・・・そ・・・それは」

詰まらぬ自慢話の延長か、一課への嫌がらせとは、まさかここでは言えない。しかし。
「ちっ・・・チッキショー!チクりやがったなっ!コンニャロー!」
衣笠は普段の慇懃な敬語も捨てて山本に掴みかかった。
一課の大下が、なんとかそれを止める。
しかし、その様子を見ていなかったかのように古場署長は、即決してしまった。

「よしっ。本部設置は後回しだ。大下、山本は牛込署に協力を仰いで、鬼怒川組を張れ。しかし直接、中には踏み込むな。
 害者を発見しだいの現行犯が最上だ。でなくともウマくいけば鬼怒川組をガサ入れする口実を作れる!」
「はいっ!」
山本、大下は、古場と同じキャリアで本庁からの出向組である。通称:桜田組と言われる。スタスタと二人は署長室を出かかる。
古場だからこそできる横断捜査である。捜査本部が開設されるかどうかは、まだ分からないが。
「署長っ!待ってくだせーよっ!こりゃワシら四課のヤマですぜっ!」
363巨人の星その後192:2009/07/03(金) 22:39:44 ID:GYjymebJ
笠にかかるように、署長の机にがふさり不満を洩らすのは四課の衣笠だ。
「衣笠ぁ〜。」
呆れるように、からむ衣笠を制して古場は言った。
「誰も四課に出るなとは、言ってない。牛込も一課四課を出してもらうつもりだ。」
「えっ?それじゃあ・・・」
嬉々として衣笠は署長室を飛び出した。

すぐに階段を降りている山本、大下に追いついた。
「おいっ!野郎!いいカッコはさせんぜっ!グフフ!」
山本は、大きく溜息交じりに息を吐きながら衣笠の顔を見た。
「カッコの問題じゃないでしょ?」
「んだとぉ〜?テンメイェ!俺様にケンカ売んのかいっ!?」
「そぉーじゃないっ!ただ張り込みは遠慮してもらいますよっ!アンタ達四課は
 やつらに顔が売れすぎている!わかるでしょ?」
「なにぃ〜?よかろうっ!いいぜ。ただし現行犯になったら、ワツパ架けるのはこの俺様だぜっ!」
「それは、お好きなように。だったらウチは、鬼怒川次郎にワッパを架けるほうを頂くとしますかっ!」
「なっ・・なんだとぉ〜っ!?そんなデケエ山じゃねーだろがっ!オイ!待て!待てよっ!高等文官野郎!」

初動緊急配備が敷かれた。第4方面が、警ら課、捜査課と筒抜けの案件となる扱いである。
被害者の拉致監禁が確定次第に合同捜査体制がオープンとなり本部が設置される。設置場所は牛込署になるが、
本部長は刑事部長である本庁の警視が自動的に任官される。前線のデカたちは、そこに伺いを立てて
実働体制に入るが、この場合当然キャリア警官に有利な人選と作戦となる。
「これだから、合同捜査ってのは、ヤッカイだぜ。トンビに油揚げで手柄を攫いやがる!そーはさせるかっ!」
たたき上げデカの衣笠は、気合を入れなおした。
364巨人の星その後193:2009/07/03(金) 22:41:25 ID:GYjymebJ
黒崎らを乗せたセンチュリーは、外苑西通りを北上していた。
明治通りとの交差点を過ぎ車は青山霊園のY字路を左に取った。

鬼怒川次郎への連絡を終えたばかりの黒崎は憮然として右手に見える
青山霊園の欅並木と、鬱蒼とした楠木林を眺めていた。
黒崎の左側にひとみ、その左にチンピラが座っていた。

そのチンピラが声をわななかせながら黒崎に哀願してきた。
「ア・・・アニキ〜。おネゲーです。あの解剖だけは、勘弁してくんなまし〜。ウウゥ。」
「情けねー声だすんじゃねーっ!」
ひとみを中央に挟んだまま、黒崎が声を荒げた。
「おめーだけじゃねえ。会長はたいそうご立腹だ。どの道おれも落とし前つけなきゃなんねー。」
黒崎は溜息をついてしまった。
「しかし会長も女の尻、追っかけてヤキが回ってるのかもな。えらいご執心だが、ここまでしなきゃ
 なんね〜かね?俺も分からなくなつてきたぜ。・・・・しかし。」
ひとみに相手を勝手に取り替え、黒崎はチラッとだけ顔を見るとまた目を外に向けて言った。
「こっちにゃ切り札がある。それがある限りお京は、どっちみち会長の思い通りにならざるを得ん。
 好むと好まざるにな。ええ?ママさんよ。まあ好んであの狒々爺の慰み者になる女はいねーがな。」
「京子を、どうするつもりですの?」
「それは、俺に聞かれても分からねーや。会長のお望み次第、お好み次第さ。うちの会長は何しろ悪趣味でね。」
しかし残酷な京子の運命を口にしつつも、黒崎の口調は決して楽しそうではなかった。
365虎の穴 異聞3−1:2009/07/03(金) 22:45:13 ID:GYjymebJ
1980年、イギリス北部のネス湖のほとりにあるボートハウスは濃霧に隠れていた。
このボートハウスはそうはいっても全体が石造りで、強固な佇まいを見せていた。
それもそのはず、元々王室が18世紀後半に水鳥撃ちのための
ボートハウスとして建造したものだった。

このボートハウスの主は、イギリスきっての億万長者だったが、ここを購入したのは、1973年。
ロック成金だった。黒魔術的なイメージで自らを神秘化し、ツアー以外で人前に姿を見せることはなかった。
そのツアーでさえ、300万ドルをかけたと言われる自家用ジェット機で移動し、
ホテルは最上部2フロアを借り切っていた。インタビューには一切応じず謎に包まれた人物。

1944年にチェルトナムで生まれたこの男は、最初はスタジオ・ミュージシャンだった。
録音中に手をつけたヤング歌手の恋人を、歌もろくに歌えないどうしようもない流行歌手に
寝取られたこの男は、その復讐のために一度は断った5人組ロックグループに加入した。
そのグループのもう一人のギタリストと驚異のツイン・リード・ギターのコンビで一世を風靡したが、
相方のギタリストが脱退してソロになると、そのグループも低迷した。

そこで男はグループを刷新、新メンバーでそれまで誰もやっていなかった黒人ブルースを
ヘヴィな音量でプレイする、とんでもないハイトーンのヴォーカルと破壊的なドラマーの力を借りて
スーパーグループを結成。1968年暮れにアメリカのアトランティック・レコードと20万ドルで契約し
地道なツアーを続けるうちに、グループの人気は凄まじいものとなっていた。
366虎の穴 異聞3−2:2009/07/03(金) 22:46:54 ID:GYjymebJ
1969年にリリースしたセカンド・アルバムはビートルズの最高傑作アビイロードを
チャート1位から引きずり落とし、コンサートの観客動員数は
ローリング・ストーンズやザ・フーをも軽く凌ぎ出した。
野球場やフットボール・スタジアムを続々とソールドアウトにし、平日にも関わらず
郊外のスタジアムに6万人〜7万人の観客を動員した。

グループの絶頂期は1977年まで続いた。パンクロックやニューウェーヴの登場に
にわかに古さが目立ち始め、そのスタイルも揶揄され始めたのだった。

しかしアメリカでは新譜は売れに売れていた。ウォームアップともいえる、
4年ぶりのツアーをヨーロッパで始めると評価も概ね好評で、彼らは
そのメイン・マーケットであるアメリカ・ツアーをこの秋から予定していた。

しかしこの年の9月、グループのドラマーが死亡した。アルコールを飲みすぎて起こった事故だったが、
グループは存亡の危機に立たされていた。
367虎の穴 異聞3−3:2009/07/03(金) 22:49:22 ID:GYjymebJ
「いや、ツアーはやるさ。ゆう子。」
男はあっさりと打ち明けた。ゆう子とは、彼女がまだ12歳だったころ
来日したこの男が目をつけた愛妾だった。

やや少女趣味のあるこの男は、魔術趣味などでカムフラージュしていたが、
実は完全なロリコンのかつサディストだった。
年に何度か、ゆう子がこのボートハウスに来てくれることを楽しみにしていた男は、
さらにドラマー死亡のあとの予定を問わず語りに話し始めた。

「奴が死んだのはそりゃ痛手さ。でも俺たちがアメリカに行くのが一体どれほどのドルを
生むと思ってるんだい?死んだ奴に構ってちゃドルは得られないさ。」

「やっぱりズィミーは、とってもドライなのね。」

「ドライも何もあるかよ。これはビジネスだぜ。たかがビジネス、されどビジネスさ。来年は
ストーンズが全米ツアーやるだろ?そこに真っ向からブツけてやるのさ。あいつらのスタジアムに
閑古鳥が鳴くようにな。あっはっはっは。新しいドラマーなんて、どうにかなるさ!」
368虎の穴 異聞3−4:2009/07/03(金) 22:51:23 ID:GYjymebJ
「ちょっとは死者を弔うなり労う神経は、やっぱりズィミーにはないのね〜。
でも少し安心したわ。全然いつもと変わらないズィミーで。」

「俺はそんなに酷い人間かな?グループ内での覇権争いで殺人までやってるところも
あるんだぜ。どことは言わないがな。こんなウマい儲け話を、そこまで感情的になっちゃ
儲かるものも儲からないぜ。俺は常にクールなのさ。フフ。」

「うふふ。クールだけど、ケチでも通ってるわよ?ちがって?」
怪しい目つきでズィミーを挑発しながら、ゆう子は軽口を叩いた。
「オイオイ!おれがケチだって?それはないぜ。おまえにだってガッポリ小遣いやってるだろ?
それにな。俺はつまらんパーティーなんかで散財するのはゴメンだ。
人と係わり合いになっても、儲かるとは限らんし、俺には人との関わりなど必要ないからさ。
俺は自分で描いた設計図に基づいて飛行船を飛ばしているだけさ。これが一番確かなのさ。人の意見よりもな。」

「クレバーで、ビューティフル、それが飛行船の飛ばし方ね?」
「そうさ。さあ今日も可愛がってやるから、手を後ろに回しなって。俺は縛った女にしか勃起しないんだ。」
「可哀想なズィミー。あたしが少し慰めてあげるわ。」
ゆう子は屈みこんで、ズィミーのジッパーを下げた。

「うぎゃぁぁあああああああああ〜!」
ズィミーの男根は切断された。このグループの新ドラマーとの全米ツアーも中止となり
マネージャーは12月になって、グループの解散を発表した。
=第4話へつづく=
369名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 23:31:23 ID:5MT3NwHs
今度は浅○ゆう子か…「女の穴」恐るべしw

おかげでちょっと影が薄くなってるけど、巨人の星のほうの
衣笠、山本、大下は選手としては登場しない、ということなのでしょうか?
370:2009/07/04(土) 22:14:09 ID:9CQkc1eK
>>369
刑事たちを登場させないと、話が終わらないと思い登場させました。
しかし刑事ひとりひとりに人間性を持たせるのが仲々に難しく
実在の人物をそのまま刑事にしてしまいましたw
カープとドラゴンズの選手は、登場させる予定がなかったので、
刑事や会社員で登場してもらっています
自分はやはり良し悪し含めてタイガースファンなので、タイガース陣営には
もうすこし登場してもらう予定です

虎の穴3話は、レッドツェッペリンのジミー・ペイ●を登場させてみました
371巨人の星その後194:2009/07/04(土) 22:18:15 ID:9CQkc1eK
電話を切った鬼怒川次郎はしばらく黙っていた。
子分どもは、誰も声を掛けない。薮蛇になるのがオチだからだ。

やがて鬼怒川は立ち上がると机の上の花瓶を手にとると、そのまま床に叩きつけた。
ガシャーン!と音がして、また事務所に静寂が戻った。
「クロの奴、ドジ踏みやがって〜っ!」
言うと今度は、窓際に移動し外を眺めた。背を向ける鬼怒川に声をかける組員はひとりもいない。

「まあいい。エサが増えただけだ。お京はどのみちここへ来る。そんときゃぁ〜。もぉ〜徹底的に・・・。」
突如、妄想を語り始めた鬼怒川が急に黙った。
「オイ!ありゃなんだ?」
外を見てる鬼怒川が顔をしかめた。
「はい。ありゃいつものマッポの見張でしょ?先月は大久保あたりで抗争が相次いだんで、ウチにもああやって見張りが・・。」
「んな、こたぁー知っとるわいっ!てめえらどこに目をつけてやがんだっ!?」
「はぁ・・・?」  力なく組員が生返事をする。
「ありゃおめえっ!第8機動隊でも警ら課でもマル暴でもねえー!ありゃ捜査一課だぞっ!」

ドタドタと組員たちが窓際に移動してその様子を見る。
「一課といやあ、事件用のデカだぞっ!この件、足がついでんじゃねーかよっ!このドジばっかどもがぁっ!」
組員たちが、声もなく頭を鬼怒川に下げはじめる。そして動かなくなった。
「オイ!クロたちに、ここに来ねーように伝える方法はねーのかいっ!?ここに来ちゃヤベえゼっ!」
372巨人の星その後195:2009/07/04(土) 22:20:42 ID:9CQkc1eK
上野不忍池で鉄二と別れた日の京子は、そのまま西へ歩きだした。
どこへ行く当てもなかった。ただ上野駅へ引換えして電車に乗る気持ちにはなれなかった。
もう上野という場所に戻るには、自分は相応しくない気がしたのである。

ドボドボと朝の無縁坂を歩いた。誰にも縁のない自分に相応しく思えた。
そのまま東大構内を通り抜け、いつしか菊坂を抜け白山通りへ出た。
道端に一枚のポスターが貼られていた。プロレスのポスターだった。
馬場と猪木の顔が刷られているが、あとは知らない顔ばかりだった。
ポスターの右上に金髪のサルのような顔の外人選手の上半身姿がある。
見たことのない顔だった。
目を移すと地下鉄の入り口があった。
あんぐり口を開けた暗い入り口に何か引き寄せられるように京子はそこに身を入れた。

ぼんやり顔をあげ案内板を見た。京子の目にひとつの駅の文字が飛び込んできた。
『芝公園』
意を決すると京子は、90円の切符を買った。行ってみるのだ。飛雄馬のマンションに。今一度。
あえないかも知れない。何か手がかりがあるかも知れない。
京子は都営千代田線に乗り込んだ。
373巨人の星その後196:2009/07/04(土) 22:23:05 ID:9CQkc1eK
芝公園駅の構内から階段を駆け上がると、公園は秋の装いだった。
足元はすごい落ち葉だ。ここにこんなに紅葉が多かったことは、京子は知らなかった。
走って東照宮の横を抜けると通りを一本渡り、また公園を抜けて東京タワーを右手に桜田通りに出た。

見えた。クラウン・マンションだ。東麻布1丁目の信号を渡り、あたりを見渡した。
どうやら鬼怒川組の張り込みはなさそうだった。
マンションへ入り、エレベーターの9階を押した。
胸がときめいた。ドキドキしている。もし飛雄馬がいたらどうしよう。
すぐに抱きついてしまうだろうか?いや、そんなはしたないことでは、いけない。
左腕をまず案じたほうがいいだろうか?
いや、飛雄馬は自分をどう向かえてくれるだろう。いや歓迎してくれるか?
いや、そんなことは、どうでもいい。考えても分からないことは考えない。
とにかく胸がときめいた。
エレベーターは9階でとまった。
降りた。フロアはシーンとしていた。一度だけここにきている。

あの日は、別れの手紙を添えた。さよならをするつもりだった。
今またこうして来てしまった。どうする?

いや、あのときとは状況が変わった。飛雄馬はもう野球人ではない。
それにケガをしている。自分が力になるのだ。愛を尽くすのだ。
どんどん自分に言い訳を言い聞かせながら、京子はそのドアに近づいた。
ドアノブに触れた。手がビーンと痺れた。なんと、ドアは開いていた。
374巨人の星その後197:2009/07/04(土) 22:25:12 ID:9CQkc1eK
「なんでワシが、あんなやつと・・。アホか?」
我儘ではなかった。当然のプライドである。そのプライドが通じたのか?
我儘が通ったのか?いや我儘ではない。決めるのは自分なのだ。

この日、ホテル阪神での村山監督との撮影と「とばし記事」のためのウソ対談を終えた江夏豊は、
その足で同じ梅田でも阪神エリアとは国鉄大阪駅を挟んで反対側になるエリア、阪急梅田駅の構内を抜けて
新阪急ホテルに向かっていた。
大阪万博へ向けたリニューアル工事で、何がなにやら分からなくなっていた阪急梅田構内は、
久しぶりに来るとすっかり変わっていた。
デパートと駅構内をつなぐコンコース部分は全部の壁面がステンドグラスとなり、
床も大理石になった。
「ウチの親会社とは、えらい金のかけようが違うで。」
レーバンのサングラス越しに江夏は、今年の春に新しくなっていて初めての阪急構内の散歩を
楽しみながら、キョロキョロとその構内を眺めながら闊歩した。
両手はポケットに突っ込んだままだ。
そうと知らなければ、スジ者に見えそうである。
375巨人の星その後198:2009/07/04(土) 22:27:07 ID:9CQkc1eK
江夏がこの対談を依頼されたのは、大阪のスポーツ新聞の阪神番記者からだった。
当初の対談相手を一笑に付したのは、当然。ムリを言っているのは記者のほうだった。
相手にしても困惑するだろうし、対談にならないのではないか?と江夏は危惧したが、
そんなことも分からずにセッティングしようとする新聞社の姿勢を疑った。

当初の相手は近鉄の太田幸司投手だった。
関西球界を代表するセ・パの若手投手を、という趣旨に江夏が前出のセリフを吐いたのだ。
太田の投手としての能力が、まだまだ発展途上で未知数といえど自分に失礼ではないか?
太田はほとんど一軍で登板していない。いくら昨秋ドラフト1位、前年の甲子園のヒーローといえ
来期5年目を迎える江夏とでは釣り合わない。
まして相手はアイドルと言われているのだ。強面の江夏が辟易したくなるのもムリはなかった。

そのさらに前年の昭和44年シーズンを前に入団してきた田淵幸一のアイドル人気にも江夏は辟易していたのだ。
嫉妬の感情もないといえばウソになるが、東京育ちの超のつくお坊ちゃまの田淵の
横に立つのは仲々憚られた。誰がノーといったわけでもない。江夏が遠慮したくなったのだ。
そのさらに前年には財閥の御曹司、花形満が入団している。これもデビュー前から「球界のプリンス」と言われた。
その1年前に入団していた江夏のファッション・センスが特に良し悪しがあったわけではなかったが、
彼らお坊ちゃまと同じような物を身に付けるのは、なんとなく嫌だった。
江夏の着るもの、身に付けるものはそれらと反対方向に向かった。
それが、人から「ヤクザみたい」と言われようと、お坊ちゃまに迎合するには嫌だったのだ。
376巨人の星その後199:2009/07/04(土) 22:30:19 ID:9CQkc1eK
新阪急ホテルにつくと、新聞社の人間がロビーにいた。
相手は先着して部屋で待っているという。
わざと遅れたわけではなかったが、多少は遅れてもいいと思っていた。
こっちは、もうスーパースター。相手は太田ほどのペーペーではないにしても
自分と同格ではないと江夏は考えていた。

ドアを開けてもらうと開いては立ち上がって進み出て江夏に挨拶した。
「あっ!どーも!始めましてっ!どうぞよろしくっ!」
握手を差し出され、それに答えた江夏だったが、口のほうは
「え?あ、・・・ああ。おうっ!」
と口篭もりながらも、横柄に返した。意図的に横柄にしたわけではないが、
相手の快活な出だしに少々戸惑ったのである。
(なんや?大阪弁ちゃうなぁ・・・。こいつ、どこの人間やったかいな?)

同い年だが、相手は1年ノンプロにいたせいで、プロでのキャリアは江夏が1年上になるが、
自分より年長で大卒で入団が自分より遅かった田淵にも「ブチ」と呼ぶ江夏にも
相手の慇懃さには面喰った格好だ。
(まあ所詮は10勝そこそこのピッチャーや。)
先ほどまでの村山との、やっつけ仕事よりはマイペースを貫けそうで江夏は心の中で安堵した。
対談記事の相手は、阪急ブレーブス山田久志と印刷された名刺を差し出してきた。
=つづく=
377虎の穴異聞4−1:2009/07/04(土) 22:32:36 ID:9CQkc1eK
1983年の年の暮れ、クリスマスも近い時期に、アムステルダムの飾り窓を美鶴代は歩いていた。
辺りはまだ明るい。午前中なのだ。しかし飾り窓は営業している。全部でないが。

公娼制度が合法化されているこの街では、そこらへんのカフェにも堂々と娼婦がお茶の時間を
過ごしている。しかしそこで客引きや営業行為の延長と見られる行為は禁止されている。

そのひとつのカフェに入り美鶴代は、ホットチョコレートを頼んでいた。
そこへ、ひとりの大柄な金髪女性が現れた。
「ミッティー!アタシよ。分かる?」
「・・・・・!・・・リ・・・リタ?リタなの?」

女は金髪をセンターで分けるとその長い髪を腰まで垂らし、赤いキャミソールの上からカーディガンを
羽織っていた。身長は美鶴代より5センチほど高い。白人の中でもかなりのグラマーで
キャミソールからのぞく乳房はこぼれそうに大きいし、ヒップも太ってないにしては、かなりのヴォリュームだった。

「顔が・・・・。うん。でも言われれば分かるわ。大きく変わったわけではないみたいね・・・。」

しかしリタの身の上を思うと美鶴代の胸はつかえた。あの凄惨な制裁の一部を美鶴代も見ていたからだ。
378虎の穴異聞4−2:2009/07/04(土) 22:34:16 ID:9CQkc1eK
「ごめんなさいね。今さらあたしみたいな人間に尋ねてきてほしくないわよね?」
「それほどでも・・・。それにミッティー。あなただけは組織でも親友だったから。」
「ありがとう。体の調子はどう?大丈夫?・・・・じゃないわよね。」

「それが案外と深刻でもないのよ。淡々と毎日がすぎていくようよ。組織の人間も昔どおり
たまに会うんだし、してることは一緒よ。明けても暮れてもペニス!ペニス!ペニス!
そればっかりよ。」
大きく溜息をつくとリタと呼ばれた女性は、美鶴代の要件を聞いてきた。
「まさか抜けようとしてるんじゃない?そうでしょ?」
「え?そう見えるかしら・・・。」
「あたしには、そう見えるわ。ということは組織の人間も、見ようと思えばそう見るかもね。」
「抜けたいのはあるわ。でも方法も何もわからなくて・・・。あたしが組織に入れられてもう14年になるの。
でも毎日それを考えていたわけじゃない。でも最近はね・・・・。」
「14年って、それじゃあなた今いくつよ?そんな子供の頃からいたわけ?あたしは・・・もう忘れたわ。」
「まだ小学生のころよ。あれが人生の転機だったのね。悪い転機。でもよくそんな頃にあたしを・・・。」
「そりゃ特別いい女になると、見込まれたんでしょうよ。奴らの目が節穴じゃなかったことは、確かね。」
「うれしくないわ。ちっとも。」
379虎の穴異聞4−3:2009/07/04(土) 22:36:20 ID:9CQkc1eK
美鶴代にホットチョコレート、リタにバニラ・アイスクリームが運ばれてきた。
「冬でも食べるの?アイスクリーム。」
「あたし、これが一番好きなの。こっちの人間がみんなそうとは、言わないけど。」
リタはパクパクとアイスクリームを食べ始めた。

「ねえ。リタ。教えて。抜けることが成功した人っているの?」
「成功って言っても死ぬまで追いかけられるんだから、死ななきゃ分からないわよ。でも、
原因不明で死んだり、急死だったり、不自然な死だと怪しいからほとんどいないわよね。
でも、まだ逃げ続けてるのがいるって話は聞いたことがあるわ。」
「誰かしら?それ。あたしが知ってる人かしら。」
「でも堂々とセレブしてられるわけじゃないんだから、公に姿見せないんじゃ生きてるか死んでるか
誰にも分からないわよね。王宮か米軍基地にでも隠れていれば無事でしょうけど。
C.Vっていう女優、逃げ回ってて、まだ見つからないって話よ。」

美鶴代は落胆した。ホットチョコレートを口にする気にもならない。
「死んだわ・・・。その人。たしか今年の秋だったと思う・・・。」
「じゃあ限りなくムリってことじゃないの?あんまりキツい仕事与えられないように祈りながら、
セレブな生活をそれなりに楽しんで、仕事続けるしかないじゃない?あたしが言うのもおかしいけど。」
380虎の穴異聞4−4:2009/07/04(土) 22:38:59 ID:9CQkc1eK
「ねえ。幹部の連中って、元はあたしたちと同じ仕事をしてたんでしょう?
年を重ねれば幹部になる人もいるんでしょうけど、そうじゃない場合あたしたち
年になればどうなるのかしら?」
「永遠に仕事ってことじゃないの?40〜50歳になっても、キレイでいられる人間もいるし
スリーパーと言って、組織が縁組した結婚をして、その家庭や家族を内部から崩壊させる任務も
きいたことあるもの。出産まで任務になるってね。誰がそうなのかは、知らないけど。」
「ねえ。リタ。『女の穴』って誰が運営してるのかしら?どういう人物が何のためにここまで
網を広げて、世界に陰謀を張り巡らせていくの?あたしにはそこが分からないわ。」
「外交は夜、作られるって言ったのは誰だっけ?いたでしょ?そんな政治家が。でもそうね。
あたしの想像だけど、バチカンじゃないわね。きっと。」
「どうして?元はバチカンがナチス・ドイツから横領せしめた娼婦たちを食い物にし始めたんでしょ?」

「それは、凄く初期でしょ?何らかの理由で、誰かにバチカンはその組織を横取りされて、そして復讐もできなかった。
ということは、それより大きくて巨大な組織かも知れないわ。それにね。あのM.Mが死んだでしょ?ずっと昔に。」
「ああ。ベッドで全裸で死んでたっていう・・・。たしかアヌスから劇薬を入れられたと聞いたわ。」
「そうよ。その彼女の仕事上のダーリンはケネディ大統領でしょ?ケネディは合衆国史上、唯一のカトリック教徒の大統領だった。」
「ケネディ翻弄が目的なら、敵はプロテスタント系の大組織ってこと?まさかフリーメースンとか?」
「バチカンが黒幕ならケネディ接近は、しないんじゃない?女ボディガード雇うんならともかく、M.Mじゃあね。」

リタの言葉はあまり参考にならなかった。しかし彼女が生きていてこうして自分と話しているだけでも、美鶴代は嬉しかった。
=第五話につづく=
381女悪役ブルース:2009/07/05(日) 12:47:38 ID:6cYjRAn0
ゼロのマスクを被った純が拉致されそうになった日から数日は、
純もレーコとの特訓以外、外出は控え地下プロレスの会場にも行くのを
止めていた。この事件について、純はレーコにも話をしたが、
しばらく地下のリングに上がるなとしか言わなかった。
そんな日がしばらく続いたが、ある日我慢出来ずに純は例の体育館に
足を伸ばしてしまった。
そして、レーコとの特訓で、空手プラス寝技関節技がかなり身についた
との自負もあり、無謀にも月子に挑戦してしまった。
382女悪役ブルース:2009/07/05(日) 13:03:09 ID:6cYjRAn0
「モーリの奴とこそこそ稽古してるらしいことは知ってるよ、
でもそれであたしに勝とうなんて100年早いんだよ」
「やってみなくちゃわからないじゃない!!」
純は月子の、あの怪しげなホールドにもっていかれないよう、
手4つに誘ってみた、月子はにやにやしながらその注文にのった。
すかさず、純はカンガルーキックを月子のドテッ腹にお見舞いした。
しかし純が月子に浴びせた技はこれだけだった。
同時に立った二人だったが、月子の目に見えないハイキックを
もらい、純はダウン。無理矢理起き上がされ、前回見せられた
スープレックスで頭から落とされ、意識が半ば飛びかけてる中で
「あんたに本当の寝技ってものを教えてやるよ、レーコに教えて
もらってる技が子供のお遊びだってことをね!」
そのまま首と胸に圧力を感じながら純の意識は遠くなっていた。
383女悪役ブルース:2009/07/05(日) 13:30:09 ID:6cYjRAn0
完全に落ちたのを確認すると、月子は技を解いた。
「生意気なガキが!あたしに挑戦した罰として精々恥をかきな!!」
補強が施されていない、普通の水着を着用していた純は
あっという間に水着を剥ぎ取られ全裸にされてしまった。
しかし、ここで純にとって幸か不幸か意識が戻ってしまった。
「イヤーッ!!」
自分が全裸に剥かれていることに気付き、悲鳴を上げるが
「空手日本一の美少女のストリップだ、たまんねーぜ!」
「いよッ気が付いたみたいだぜ、こりゃたまんねえ羞恥プレイに
なりそうだ」
観衆の下卑た野次に、純は涙を流した。
「意識が戻ったんなら仕方ない、あんた自分でお股開いて
お客さんに見せな」月子の命令に、敗者は何も抗せないことは
純もわかってる。手ブラ手マンで隠しながら立ち上がるが、
股を開くどころか、あまりの恥ずかしさと悔しさに体が硬直して
動かない
「自分で出来ないなら、あたしが持ち上げて、開ききってやろうか」
月子の言われ、純は泣き声で
「じ、自分でやります・・・」
そう言うと、両手を下ろした。まだ発展途上の小さめの乳房が現われ、
下も生えかけの陰毛が現われた
「へッへッー!これが空手美少女の裸か!幼児体型で、まるで子供じゃないか!」
「いや、でもなかなかいい体だぞ。ほら早く股開けーッ!!」
溢れ出る涙を流しながら、その瞳をギュッと閉じると、
純は一気にしゃがみこんで、M字に開脚しようとしたが、
その瞬間リングの下から声が掛かった
384女悪役ブルース:2009/07/05(日) 13:39:45 ID:6cYjRAn0
「待ちなッ!!」そこにいたのはゼロだった。
「ゼロ!!お前に止める権利は無いよ!!」
月子に言われてもゼロは動じない
「わかってるよ。でも純にはこれでも、もう充分なだけの屈辱だよ、
このくらいで勘弁してやってくれないか?」
少し考え込むように、うつむいた月子だったが
「今回一度切りだよ!2度はないからね!」
「感謝するよ月子・・・」
ゼロは純にタオルをかけ、リングを下りると
観衆のブーイングを無視して、帰っていった。
385女悪役ブルース:2009/07/05(日) 13:53:37 ID:6cYjRAn0
>>359
ありがとうございます。私が考えてる青春山脈のエロパロ化は基本的に
戦後編です。エロパロ妄想家としては、戦記物として非常に優秀な火乃家の兄弟
よりも、三国人が跳梁跋扈し、破壊と暴力がみなぎる戦後の荒廃と
その時代をステゴロ一つで生きる火乃正の人生の方がエロに持ってきやすそうで
好きです。梶原論者に多い、最後は女子プロレスでかたがつく最悪のラスト
というのも、私にすれば女子プロレスで片が付いて何が悪いといったとこです。
お互い、評価の低い梶原作品に、パロディーとはいえ陽を当てていきたいですね。
386巨人の星その後200:2009/07/05(日) 17:31:46 ID:BGwXDGgw
室内は静まり返っていた。
まだ早い時間帯であるから、ブ厚いカーテン越しにも日の光は室内に差し込んでいた。
首だけを入れ、中を見渡したが何もなかった。

京子はかすかな飛雄馬の面影を期待していたのだが、そこには何もなかった。
オールスター中に飛雄馬に鍵をもらい、「中の物や金目の物を持っていけ!」と
言われ竜巻グループとここを訪れたことはあったが、結局は鍵を開けずに
走り書きの手紙をドアの隙間に差し込んだだけで立ち去っていた。

京子は中を見渡すと、恐る恐るその身をかつての飛雄馬の部屋に入れた。
ガランとして家具のひとつもなかった。
もちろん飛雄馬の匂いらしきものも何もなかった。

つい1月ほど前まではここにいたはずである。
ここで生活していたはずである。しかし最愛のその男の足跡も生活の香りもなかった。

京子は天井を見上げた。アイボリーの天井は何も語らなかった。
何か手がかりが欲しかった。何か温かみが欲しかった。

しかし冷たいその部屋は、京子の心をますます冷えさせ、
逆に飛雄馬への思いを募らせるのだった。
387巨人の星その後201:2009/07/05(日) 17:35:25 ID:BGwXDGgw
「なんや?そんなもん。もう終わった話やないか。」
江夏は、記者に振り向いて不満を洩らした。
「あのな。デーゲームを晩に録画で放送しよるやろ?時々。
 あんなもん、一番しょうもないんや。あれと同じやで。自分らの言うてることは。」
「まあ、そう言わずに。話題性云々よりもこれは検証ですから。
 お二人に感想をお聞きすることで、お二人の視点の違いや野球感も浮き彫りにできるんではないかと・・。」
山田がこの日はじめて、横から言葉を入れた。
「面白いんじゃないですか?なかなか江夏選手とボクのお互いのことを話すのは、
 自然と言葉も重くなるんで、そんな雑談みたいなことから入るのも。」
目論見を先に言われて記者は、山田の洞察力に感嘆する思いだったが、
江夏が気を悪くしたのではないかと、同時に危惧した。

「まあええで。気晴らしにでもしてくれっちゅうこっちゃな。おもろい。おもろい。そんで?」
「投手にとって、星飛雄馬の大リーグボールとは、どう映ったか?これが最初のテーマなんですよ。」
「ワイはええけど、それで新聞売れるんかいな?ワイはそれを心配したってるんやで。」
「下手投げのボクが呼ばれてるのって、こういうことですか?」
山田も疑問を挟んだが、こちらは面白半分といったところで、江夏のようにゴネてはいない。
「いえいえ、そうではないですよ。それもないとは言いませんけど。
 それにこれは、紙面じゃなくて、正月用に出す増刊号に載せる対談ですから。ページもたっぷり取る予定ですんで。」
「なんや今日は、かつがれてばっかしやで。ホンマ。」
388巨人の星その後202:2009/07/05(日) 17:37:25 ID:BGwXDGgw
ひとみを後部座席の中央に乗せた黒崎たちのセンチュリーは、
抜弁天通りから職安通りに出ると、団子坂へ向いて東に走ると
すぐに抜弁天のバス停前を北に折れた。

鬼怒川の事務所まではすぐである。
しかし様子が変だ。事務所まで50メートルほどに近づくと、組員が走り寄って
手を振っている。何かトラブルでも起きたのか?
その手の振りようは、『行け行け』と合図しているようにも見えた。

「なにやってやがんだ?口で言わなきゃわかんねえぜ。」
黒崎が窓を開けた。チンピラが小声ながらも声を尖らせて言った。
「行ってくだせえ!通り過ぎちゃってくだせえっ!サツが・・。」
「なぬぅ〜?オイ!聞いたか?事務所を通り過ぎろっ!スピード上げてなっ!」
黒崎はすぐに察知できたが、運転するチンピラは、不恰好にもエンジン音を高く響かせてしまった。
グイーン!

そのエンジン音は、張り込み中の捜査一課のデカたちを振り向かせてしまった。
山本もいた。彼が振り向いた時、センチュリーはスピードをあげて組事務所を通過するところだったが、
彼の目に後部座席の中央に女性が乗っているように見えた。
「警部!見ましたか?」
山本は大下警部に尋ねたが、大下は見過ごしていた。
「いや、見えなかった。君は何か見たのか?」
=つづく=
389虎の穴異聞5−1:2009/07/05(日) 17:40:37 ID:BGwXDGgw
1984年が明けたある日。美鶴代は曇った空の岬に立って海を見ていた。
静岡の御前崎、ここは彼女の生まれ故郷ではなかったが、
幼少の日々を過ごした土地だった。

彼女が物心ついたときには、既に父はいなかった。
母とまだ赤ん坊の弟がいた。母は目が不自由だった。
信州の山奥の棚田農家の小作人に生まれた母は、生まれつき目が不自由で、
11歳のとき、新潟のはなれ瞽女(ごぜ)に奉公に出されたという。
よく覚えていないと母がいうには、瞽女としてデビューしたのは、恐らく14歳か15歳であったという。

瞽女とは目の不自由な女性が、音曲(三味線や鼓、踊り)をしながら旅を続ける職業芸人のことである。
親方のいる本家をはなれ、年中を流しで渡り歩く瞽女のことを、はなれ瞽女という。

恋愛や結婚は禁止されており、されど毎年滞在する地主や網元の大旦那、世話役の
慰みになることは、折込済みであったとも言われている。
いわゆる春を売るのは表向きはないとされていたが、事実上の娼妓であったとも言われる。
年老いて親方衆になると、旅は免除され、新顔の少女や幼な子の教育や芸の稽古方となる。
※詳しくは、水上勉著「はなれ瞽女おりん」を参照のこと
はなれ瞽女の毎日の中、美鶴代の母は身篭ってしまった。美鶴代のことである。
父親は不明であったが、庄内地方の酒田の造り酒屋の旦那に家に置いてもらい美鶴代を育てた。
その頃のことを美鶴代はボンヤリとしか覚えていない。
390虎の穴異聞5−2:2009/07/05(日) 17:42:40 ID:BGwXDGgw
しかしまたも誰かの手がついて身篭ってしまう。
どうやらその造り酒屋の跡取息子であったという。その息子が母に熱を上げるので
母は結局、暇を出された。幼い姉弟を養育施設にあずけ母は再び瞽女として
各地を流しはじめた。しかし親方からも破門された母には何ら瞽女同士の互助制度もなく
間もなく柏崎の駅のホームで凍死していたという。すでに結核も病んでいた。

送金の途絶えた美鶴代姉弟に、養育施設は退去を迫ってきた。
補助制度で入所できる施設を自治体に探してもらうと、山梨県にあるという。
しかし一人分しか空きがないと言われた。
実はその少し前、当初の養育施設にいた頃からの栄養状態がよくなかったためか
目が弱い遺伝のためか、弟が失明した。

盲人施設が無料で引き取ってくれるという。大阪の貝塚市にある施設という。
そこへ幼い弟を美鶴代は送っていった。美鶴代6歳、弟はまだ4歳だった。

その盲人施設では、弟は所持品の全てを没収された。母の形見も写真も「どうせ見えないのだから」
と持って入れないのだという。また外部から連絡されても取り合えないとも言われた。

弟は見えない目で、鬼のような職員に片手を引かれたまま美鶴代に手を振った。
「おねえちゃーん!おねえちゃーん!」
盲人施設を後にした美鶴代は、最寄の水間観音という私鉄の駅で、ひとり泣いた。
弟に見せまい、聴かれまいとしていた涙を一気に流した。
そして心に誓ったのだ。もう二度と泣かないと。
391虎の穴異聞5−3:2009/07/05(日) 17:44:32 ID:BGwXDGgw
美鶴代が移って入所した山梨の孤児院は、この世の地獄だった。
寮父や寮母は鬼そのものであり、衛生的にも栄養学的にもその経営は出鱈目だった。

暴力と私刑は当り前。また寮生同士の戦いも壮絶を極めた。
そして美鶴代ら寮生は、限界ギリギリまで栄養状態を陥されいつもガリガリだった。
タイガーマスクの「ちびっこハウス」も貧乏で大変だったが、
こちらは経営者側の性根の髄まで腐りきっていた。

しかしどんなことでも我慢できた。遠い大阪の盲人施設にいる弟のことを思えば。
しかし寮父がまだ8歳になったころの美鶴代に性的関心を向けてくると
そうとも言ってられなかった。美鶴代は脱走した。

歩きつかれて、海を見たいとたどり着いて行き倒れたのが、この御前崎だった。
今日とおなじ灰色の空のした、黒潮が波飛沫を上げていた。

その磯の岩肌で、美鶴代はひとり当時かそれ以前に流行していた唄をうたった。
「ガード下の靴磨き」という歌だった。
392虎の穴異聞5−4:2009/07/05(日) 17:47:46 ID:BGwXDGgw
「お上手なのね。あなた。」
鼻にかかったような甘ったるい、しかし大人の女性の声だった。
「アタシはひとりぼっちなの?」
女性は屈みこんで美鶴代に尋ねた。着の身着のままの美鶴代を家出少女だと思ったのだろう。

しかし女性は美鶴代の身の上をきくと、肩を抱くと自分の住まいに連れ帰った。
そこはその女性の住まいではなかった。
彼女が私財を投げ打って設立した肢体不自由児養護施設だった。
「あなた、ここにいてもいいのよ。ここにいてあなたの上手な歌を聴かせてあげて。」

生まれて初めてやさしくされた。美鶴代は肢体不自由児ではなく健康体だったが、
その施設に寝起きすることになった。
昼は普通に小学校にいった。美鶴代の分は補助金は当らない。
その女性、『鞠子』が養育費を出してくれているようだったが、まだ子供の美鶴代には
そこまで分からなかった。小学校から施設に帰ると美鶴代は職員を手伝い介護をした。
そしてレクリエーションの時間は唄を歌った。美鶴代は母譲りなのか唄はとてもうまかったのだ。

その御前崎の黒潮を見下ろす丘にたった肢体不自由児施設は「樅の木学園」と言った。
=第6話につづく=
393:2009/07/05(日) 17:59:46 ID:BGwXDGgw
>>385
「青春山脈」戦後編たのしみにしています
>というのも、私にすれば女子プロレスで片が付いて何が悪いといったとこです。
全く同意です。なにかそれがイケナイとことのように言われますよねw
じゃどんなエンディングがいいのか聞きたくもなりますよね

紅子や地獄変、人間兇器に同じような場面が出てくるとか批難されてもいますが、
本当はみんな楽しみにしているくらいなのに、どうして本音を言わないんでしょうかね?w
地獄変シリーズも梶原先生の汚点みたいに言われています
納得いきかねますし、名声を顧みずドスケベ路線を開始した梶原先生に男を感じますよ 私は
394巨人の星その後203:2009/07/06(月) 21:58:17 ID:NtAaVbjS
「シーズン通して出来んのやったら、意味がないとは言わんけど、
 まあワシと山田君には関係ない話やな。」
「ですね。オールスター明けから無失点って言っても、優勝決定までも持たなかったんですから。」
山田久志も江夏に同調した。迎合したわけではなかったが、
昨シーズンはじめて10勝の大台に乗せたが、17敗した山田にもシーズンを乗り切ることの
難しさが身をもって理解していたからだ。記者が言った。
「14奪三振が1回、15奪三振が5回、16奪三振が2回、ほとんど昭和43年の江夏さんをしのぐペースです。
 まあ全部8月9月10月だけの話ですがね。」
ムッとしたが江夏がすかさず返した。この男の記憶力の凄さはすでに有名だった。
「ワイのその2年目のシーズンは、たしか10三振が7回、11三振が4回、12三振が3回、13三振が3回
 14三振が2回、16三振が1回のはずや。けどな。それ自体がどうこうや言うんやないで。
 シーズンで全部でなんぼ取ったか見て欲しいんはそこや。」
「凄い記憶力ですね〜。数字も凄いんだけど。」
山田が感嘆とゴマ擦りを兼用して合いの手を入れる。
江夏は星の大リーグボール3号が旋風を巻き起こした昨シーズンでも340個の三振を奪っている。
成績は21勝17敗。しかし2年前の昭和43年には現在でも破られていない401奪三振を達成している。
その2年目のシーズンは25勝12敗だった。
「これは、書いてくらんでもええけど、取ろう思たらナンボでも取れんのや。ワイは。
 それをせんのは、シーズン中通して登板するバランスやわな。1試合だけ登板したらあとは寝てても給料
 くれるんやったら、27個とは言わんけど16個よりは取れるで。ホンマ。」
江夏が現在も伝説に残るオールスターでの9者連続三振を達成するのは、この来シーズン
昭和46年の西宮球場でのことである。まんざら大風呂敷を広げたわけではない。
「星がシーズン通してあのペースやったら、そら大したもんや。けど前半にわずか1勝、後半で8〜9勝
 やったら、どうっちゅうことないで。ワイにシーズン後半だけ出て1年分給料くれるいうんやったら
 さしてもうてもええで。まあ勝率だけは凄いけどな。」
「いあやぁ〜。厳しいなぁ。今年10勝で17敗もしちゃった僕からすると。あはは。でも問題はこの勝率ですよね。
 そこが魔球の魔球たる所以と・・・。こう言いたいんでしょ?」
395巨人の星その後204:2009/07/06(月) 22:00:06 ID:NtAaVbjS
山田が記者に振ったのを制して江夏が続けた。
「そらON様様やろうが。ちゃうか?ワイでも山田でも味方が打ってくれんことには勝てへんがな。」
「ですよね〜。でも江夏さんが18個取った日も延長線でしたが、
 これなんか味方が打ってくれない産物では?」
記者が江夏に武勲を混ぜた皮肉を返した。だんだん江夏が饒舌になってきている。
「誰が延長まで放りたい思うて放るかいな。味方が打ちよらへんさかい放るんやがな。
 けどあの18個とった日かてワイは狙うてへんで。あそこまで一人で放って負けたらアホらしいよってな。」
「結局は星くんは故障しちゃうんだから、故障するのを承知で投げてたとか
 言ってる人いたけど、ボクはそれはないと思う。まあ江夏選手らタイガースが追い詰めてたと
 いうのが、あったとしてもね。無事これ名馬じゃないけど、ケガしたらお金にならないんだからね。」
「いやホンマ、山田の言いよる通りやで。魔球ちゅうのは、おのれも壊すんで魔球いうのと違うか?
 ワイ、星と投げおうて負けがついたことあったけど、なんやあんまし悔しいなかったな。不思議と。」
記者がデータを江夏に示した。
「江夏さんが今年、毎回奪三振をやった試合が2度ありますが、いずれも完封でそれも僅差のゲームでしたよね?」
「広島戦(9月6日:広島市民球場)は味方が1点しか取ってくれんかったしな。ヤクルト戦(4月12日:甲子園)も
 接戦やったが、結局3点貰うたさかい楽になった。あんときは3安打完封のはずや。100球も放ってへんやろ?」
「そうです!99球ですねっ!」
「そやろ?けどその日は12個しか取ってへんのやな。なんでか言うと楽なときは楽するからや。ピッチャーは。
 点差がついたら、あとは勝ったらええ。負けてたまるかいっちゅうときは、バッタバッタ取りにいってしまうもんなんや。」
396巨人の星その後205:2009/07/06(月) 22:01:54 ID:NtAaVbjS
「結局は故障しない程度でどれだけ勝てるかってことですよね。」
山田が適当にまとめようとした。
「ピッチャーちゅうもんは、勝ってナンボや。三振とろうが四球が少なかろうが
 そんなもん評価にはならへん。勝ってナンボちゅうことは、いくつ勝てるかっちゅうことや。
 まあウチの監督みたいに、すごい防御率が自慢の人もいてはるけどな。」
江夏が口にした村山への微妙な皮肉は誰もからまなかったが、耳には残った。
「まあ故障を隠してたとか、故障を承知でとか言われとるみたいやけど、
 こらちょっと星が可哀想やで。巨人の川上はんも知ってて使うとったとは言えんがな。
 そら、知らんかった言わはるやろ?ほんなら星だけが馬鹿見たみたいやわな。
 巨人から功労金が出るんかどや知らんけど、もうピッチャーとしてはムリなケガなんやろ?
 故障は知りませんでした、いや実は知ってましたとか読売も報知も書かへんやろ?
 そんなもん消耗品ちゅうのがあるからな。デパートのバーゲン用の洋服みたいなもんや。」
「江夏さ〜ん。書けないですよ。今のは。」
「書けへんちゅうことは、今のピッチャーの地位がそんだけ低いんや。投手ひとり壊してギリチョンで優勝しても
 監督は批難されへんやろ?杉浦はん壊した鶴岡はん。稲尾はん壊した三原はん。みな名監督ちゅうことになっとるがな。」
「ますます書けませんよ〜。江夏さん。」
今この話を黙って聞いている山田久志は、のちにオリックス・ブルーウェイヴにて投手酷使が露骨な
監督、仰木彬と対立してビッチング・コーチを辞任することになる。
その仰木彬は、現役時代は三原脩監督に西鉄ライオンズで野球のイロハを学んだ。
397虎の穴異聞6−1:2009/07/06(月) 22:03:41 ID:NtAaVbjS
鞠子は最初やさしくしてくれたが、ある日言った。
「ミチちゃん、私と戦ってくれる?」
当時、鞠子の運営する施設は経営上も法律上も大きな問題を抱えていた。
まだ、障害者に「生きる権利」や「学ぶ権利」など認知されていない時代だった。
鞠子が運営を思い立ったのは、ずっと若い頃だったが、オープンさせることができたのは
彼女が35歳のとき、昭和37年だった。
美鶴代が鞠子に拾われたのは、8歳のとき、昭和41年、施設ができて4年目のことだった。

鞠子は元々、歌手だった。戦後の焼け跡だらけの復興期に何枚かのヒット曲を出した。
彼女も孤児だったが、類稀な天性の歌唱力と小悪魔のような顔立ちで人気を博した。
そのいつまでたっても幼児のようなベイビーヴォイスは、彼女を特別な位置の歌手にし
そして女優、声優としても活躍の場を伸ばした。

しかしある日、川の土手で絵を描いている子供に出会った。親がついていたが、
それはまだ学校があるはずの時間帯だった。鞠子が尋ねると親は
「この子は学校に行かなくてもいいんです。通学免除をされているんです。」と言った。
義務教育ではないのか?おかしいと思い鞠子が調べると、当時障害児は「通学するべからず」という
恐ろしい教育方針がまかり通っていたのだ。
398虎の穴異聞6−2:2009/07/06(月) 22:06:01 ID:NtAaVbjS
最初は、障害児のためのハウスをつくった。すべて私財だった。
そして学校の機能も持たせることに成功した。そこに行き着くまでには
文部省、自治体、厚生省との凄まじい戦いがあった。

そんな鞠子の実質上の養女として生活するようになった美鶴代は幸福を感じていた。
自分も勉強して、もっと困っている人の役にたちたい。そしていつか弟も迎えにいきたい。

初めて人から愛され必要とされ、そして温かい棲家を得た美鶴代の一番しあわせな時間が
3年ほど続いたのだった。
そんなある日、学園の子供たちと美鶴代が合唱団をつくって、県下のある小学校を訪問したときの
ことだった。美鶴代も引率の職員も目を離した間に、学園生がそこの小学生に暴行を受けたのである。
その園生は服をやぶかれ、模造紙を丸めた棒のようなもので袋叩きにあっていた。
小学生たちにすれば、ほんの悪ふざけだったのだろう。しかしその暴行は美鶴代の倫理には許容できなかった。
本棚に置かれていた花瓶で、その小学生のひとりの頭部を殴打したのだ。

美鶴代は直ちに補導され、学園の運営も窮地に立たされた。補導され児童相談所に置かれていた美鶴代に
相談所の職員が淫らな行為を仕掛けてきた。偶然、机に置かれていたボールペンでこの職員の眼球を突き刺すと
美鶴代は脱走した。なぜかまだ11歳なのにもっと以前から美鶴代の逃避行は続いた。
樅の木学園に帰るにも鞠子に迷惑がかかるのでは?と思い、夜道を歩いていると声を掛けてくる女性がいた。
男性ではなかったから美鶴代は安堵した。しかしそれは『女の穴』からのスカウト=人攫いだったのだ。
1969年、昭和44年のことだった。
399虎の穴異聞6−3:2009/07/06(月) 22:07:48 ID:NtAaVbjS
美鶴代が、ヨーロッパ・アルプス山中での音楽、フィジカル、そして性戯の特訓を
受けた後に日本の地を踏んだのは、1975年、昭和50年、彼女が17歳のときだ。

優勝した新人タレント・コンテストは、やらせだった。最初から美鶴代が優勝することになっていた。
そこから彼女のアイドル歌手としてのキャリアがスタートした。
全く面識のなかったもうひとりの女子とコンビを組まされ寝る暇もなく活動した。
その間に、「女の穴」で特訓を受けた性戯を使う仕事は何度かあった。
相手はTV局のプロデューサーや音楽プロデューサーといった小物だった。
『大して喜ばせる必要もない』と「女の穴」の影のマネージャーは言っていたからだ。

しかし忙しい最中、美鶴代は弟がいる施設を訪ねた。しかし
「そんな人が入所した記録はないし、現に入所していない」と言われた。
訳が分からなかったが、「女の穴」のマネージャーは言った。
「我ら女の穴のネットワークで必ず探し出してやるから、今は仕事に集中しろ」と。

そうして1980年、美鶴代のグループは解散した。美鶴代はヌードにこそならなかったが、
ぐっと大人向けの芸能活動も始めた。そして一度「女の穴」に戻り再教育を受けると
要人への接近、諜報活動など目的も意味もわからないまま、芸能活動と並行して実行する毎日だった。
400虎の穴異聞6−4:2009/07/06(月) 22:09:49 ID:NtAaVbjS
美鶴代が海岸から殺風景な県道にでて、バス停へ向いて歩いていると
一台のマイクロバスがその横を追い抜いていった。バスは急停車した。
マイクロバスから、もう白髪の混じった長い髪の女性が降りてきた。
「ミチちゃん!ミチちゃんなのね?」
「せんせい!鞠子先生!」
二人は10年何年ぶりに再会した。その場で抱擁した。

鞠子から美鶴代の所属する芸能プロに何度か手紙と花束が届いていた。アイドル時代から。
忙しさにかまけて、再訪できなかった樅の木学園に美鶴代はこの日、帰った。

「アイドルの頃も見てたのよ。でも今はそれよりさらに綺麗になったわ。あなた。」
「先生。ごめんなさい。ずっと来れなくて。それにその時・・・。」
「あれはいいのよ。相手も悪いんだし、大きなケガにはならなかったの。それよりまだ忙しそうなのね。」
美鶴代はどこまで説明していいのか分からず困った。しかしこの園長室も以前よりは豪華になっていた。
鞠子自らお茶を入れてくれたが、学園の経営はうまくいっていると見える。
「弟さんには会えたの?」
「それが・・・・。行方がわからなくて・・・・。もうずっと以前。入所した直後からぷっつりと・・・。」
「わたしが聞いといてあげるわ。必ず力になるから。でもあなたはここの事を心配しなくていいのよ。」
鞠子は表立った芸能活動はしていなかった。唯一テレビの「まんが日本昔話」のナレーターをしていた。
=第7話につづく=
401名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 23:18:45 ID:p76tLFv2
ああ、鞠子って誰かなと思ってたんだけど、宮○まり子だったんですね、納得。
402名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 01:49:03 ID:vsET9x2j
純は自動車を運転してたから18歳以上だと思ってたけど、もしかして
無免許運転?それとも梶原ワールドだから、小学生でも運転できるの?
403女悪役ブルース:2009/07/07(火) 20:39:16 ID:HliNT8JY
「ありがとうゼロ・・・あそこで助けてくれなかったら私・・・」
ホテルに帰ってからも泣き続ける純にゼロは
「純が月子に勝つにはまだまだ時間がかかる。あたしにちょっと
考えがあるから、もうしばらく今まで通り自主トレをやってな」
純はゼロにレーコの存在を伝えるべきか迷ったが、何も言わなかった。
翌日純はレーコとジムで会い、昨夜の顛末を話した。
「だからまだ早いってあれほど言ったやろ。ゼロが助けに入ってくれへん
かったら、あんた今頃立ち直れないほど精神やられるとこやったで」
「・・・うん・・・だからね、どうしても強くなりたいの。
なんとかして、月子にリベンジしたい」
「その気持ちは分かるんやけど・・・」
「何、何か都合悪いの?」
「いや、噂で聞いただけなんだけど、月子はその才能が買われて、
地上のプロレス団体みちのく女子プロレスにスカウトされてるらしいんだ」
「本当!!じゃあ、私はもう月子と闘えないってこと!?」
「ゼロが何か考えがあるっていったんやろう?まあ、今は何もせんと
練習に励むのが一番だ、さっいくよ!!」
404女悪役ブルース:2009/07/07(火) 21:03:26 ID:HliNT8JY
それから数日、朝から出かけていくゼロを見送り、ジムでレーコと
稽古をするという日々が続いたが、ある日レーコが用事があると
早めに稽古を切り上げた日、こちらもいつもより早く帰ってきていた
ゼロに声をかけられた
「今日は体育館にいくぞ!」「えっ!!」
あの日以来体育館には行ってない。裸を見られた男たちの前に立つのも
嫌だし、羞恥に耐えられない気がしたが、ゼロに誘われた以上、
行かない訳にもいかない。二人は体育館に向かった。
相変らず蒸せた空気の中で行われている、地下プロレスのリング。
純は周りに気付かれないよう帽子を目深にかぶっている。
そんな中、月子がいつものように入場してきた、しかしそこで
いつもと違うことが始まった。レフェリー兼リングアナウンサー兼胴元
の男がメガホンで喋りはじめた
「この地下プロレス最強の女王月子が、遂にメジャー団体みちのく女子プロレスに
スカウトされ、明日大阪を離れ東北に行くことになりました」
観客から、歓声とも、失望ともとれるようなどよめきが上がった
「つきましては、月子最終戦としてハンドカフマッチ3連戦、つまり手錠マッチを
3戦連続で行います!さあ希望者は名乗りを上げて!!」
405女悪役ブルース:2009/07/07(火) 21:32:10 ID:HliNT8JY
ブルロープマッチのように互いにロープで繋がっていても、
ある程度距離があるのと違い、手錠マッチは互いが至近距離で
闘わなければならない。当然使える技も限られる。
月子の天才技もかなり使えなくなる、そこでもしかしたら勝てると
勘違いした女二人が名乗りを上げた。そして続けて三人目の女が
声を上げる「最後はこのあたしクイーンゼロだ、文句は無いね月子」
「な、何言ってるんだよゼロ!自分でも勝てるかわからないって
言ってたじゃない!やめなよ!」純が必死に制止するが
「外野は黙ってな、あたしが月子ごときに負けるわけないだろ、
ボコボコにKOしてひん剥いてやるよ」
「ふん、面白いやってやろうじゃないか!」
月子もやる気満々だった。
最初の二人は、ほぼ何も出来ず、月子のグラウンドテクニックに
締め落とされ、裸に剥かれた。遂にゼロの出番、リング上で手錠を
したところで月子が少し悲しそうに言った。
「あたしの本音はあんたとは闘いたくないんだ、金に困ってるんなら
少し回してやるから、今回は止めたほうがいいんじゃないか?」
月子の温情に、逆に噛み付くようにゼロは
「勝手なこと言うなよ、まるでお前が絶対勝つような言い方しやがって
勝つのはあたしだ、お前の地下最後の闘いで、最高の辱めを与えてやるよ」
言い終わらないうちにゼロは、すっと沈み込みカニばさみで月子の足を
絡め倒すと馬乗りになりパンチを叩き込んだ。
しかし月子はすぐにブロックし、ゼロの顔面に張り手を入れ、間髪入れず
立ち上がった。
「あんたがその気なら、こっちも本気でぶっ潰してやるよ!!本来なら地下のリングで
マスクなんか認めないんだけど、色々事情もあると思って見過ごしてやってきたけど
お前を裸にひん剥いた後、そのマスクも剥がしてやるよ!!」
「いいぞぉーッ!やれやれ!!」「ひん剥け!!ひん剥け!!」
観客のボルテージもあがる中、ゼロ最後の決戦が始まる。
406女悪役ブルース:2009/07/07(火) 21:55:41 ID:HliNT8JY
>>402
純の年齢設定は、元ネタの吹雪純也と同じ18歳から20歳です。
美少女キャラを強調し過ぎたせいで、わかりずらくなったかも
しれませんが、その辺はご勘弁を・・・
>>393
人間兇器も、地獄変も劇画原作者として頂点を極め、その後の
狂気の時代を体験した、カジセンセが辿り着いた、ひとつの
着地点的な作品だと思いますね。突き詰めたときの
人間の弱さとか、本音の部分、そこを暴き出すことによって、
人間の本質を描きたかったんだと思います。
と偉そうなこと書いても、雑誌連載当時はマスク剥ぎや水着剥ぎに
フルボッキしてただけですけどね。
ところで、コールガールが封切りされた当時、私は高校生でしたので
1さんは私より2.3歳下と推測しますが、巨人の星の時代のプロ野球知識
たいしたもんですね、今後も楽しみにしてます。
407巨人の星その後206:2009/07/07(火) 22:08:16 ID:8W26kNgM
「実際、どんな球だったんですかね?その3号って。」
息苦しさを覚えた山田は、不意に自分でも意外なほどいいタイミングで話題をそらした。
「ワイはバッターボックスで見てるで。適当にバット出したらヒットになった。ウソみたいやけどな。」
江夏は急な話題の転換にも反応した。
「最後の中日戦でも、誰やった?伴か?フワーとしかようスイングできん状態で、よお飛ばしよったな。
 その辺が謎でもあり、正体でもあったんやろうな。」
記者が星の投球フォームの写真を出してきた。
それを見た同じアンダースローの山田が思わず声をあげた。
「アレッ!丸見えじゃないですかっ!?握りがっ!」
「そやろ?ワイも見た。どう見ても平平凡凡なまっすぐの握りや。それがどないに変化したかまでは知らんけどな。」
「こんな丸見えの真っ直ぐの握りじゃ打者はヤマ張りますよね。もしかしてそれも作戦だったのかなぁ?」
山田の疑問に誰もが沈黙したが、江夏の場合は少し違った。この男は投球モーションに入ったあとでも
平気で握りを変えることができたからだ。江夏晩年の西武時代の捕手、伊東勤は、『セット・ポジションで足を上げてから
、リリース寸前でも握りを変える事ができる投手は結局ひとりしか出会えなかった』と言った。
それが江夏である。いまさら昭和54年の日本シリーズでの9回のスクイズ外しを言うまでもなく
それは、スクイズを見抜いたところで、ノーサインのウエスト・ボールを足を上げてから握りで実行するなど
到底できない前提で西本近鉄が実行した作戦を簡単に潰したもとでもわかる。
408巨人の星その後207:2009/07/07(火) 22:10:54 ID:8W26kNgM
「ボクもアンダーですけど、こう投球時に腕をバックスイングするときは、
 握りを打者に見えないようにしてます。手の甲しか見えないようにね。
 でも、この星君のバックスイングは握りが丸見えだ。」
「そやろ?ワイも握りは見えんようにはするな。
 だいたいアホばっかしやし、そこまで見とらへんけど見とるやつは見とるからな。
 見られたかて、どうっちゅうことあらへん思うけど、打者の心の中に
 1割でもカーブがあるとないでは全然違うよってな。
 王さんのときは関係あらへん。ワイ王さんときは、まっすぐしか放らへん。
 あの人もそれ知ってはるさかい、ワイも隠さへんねん。隠すつもりなかったら
 手を後ろにやるんにも、思っきし引っ張れるさかいな。」
「なんかすごい話になってきたな〜。なんか今日、来てよかったぁ〜。」

ウソか本音か分からない山田の感嘆が室内に響いた。
「変化球やったか、まっすぐの系統やったか、そらワイにも分からん。
 けど腕を酷使する投球やったんは間違いないわな。
 どやねん?山田。おまえのアンダーもそないにキツいんか?」

まるで年長者のように不遜な江夏の態度にも意に介さず山田が答えた。
「キツいの何にも、それしか出来ないし。それにボクのアンダーはそんなに本格的でもないと
 思ってるんですよ。」
「そりゃまたどうして?」  記者が尋ねる。江夏は黙ったままだ。
「ボク、高校1年まで、サードでしたから。」
409巨人の星その後208:2009/07/07(火) 22:12:57 ID:8W26kNgM
「エエッ?ホンマかいな?ワイも高校入るまでは、野球のヤの字も知らなんだんやで。」
野球のヤの字がどうかは、定かではないが江夏が中学まで陸上部だったのは事実である。
山田の告白にこの日はじめて江夏は表情をくずした。

「ボクのアンダーはサードからの送球のときサイド気味だったのを少し傾けただけなんですよ。
 サブマリンとか何とか言われますが、星君のほうが本当のサブマリンかも知れない。」
「それであの剛速球が下から投げられるんだから、凄いですよね。」
記者の合いの手よりも「剛速球」という言葉を山田に送られたことにムッとした江夏が話題を変えた。

「だいたいアレちゃうか?星のおやじさんが、えらい小さい時分からスパルタで鍛えたちゅう話が、
 よう出たけど、こと投手に限ればそれは、いらんのと違うか?」
「ですよね。それはボクも思います。野球教育が早ければ早いほどいいかは、疑問の残るところではありますね。
 ボクでもピッチャーになって初めて知ったルールも随分ありましたから。」
「まあ下半身とか体の粘りとか、まあ体質もあるんやろうけど、それがない奴が早くから体質改善に走るんはええやろ。
 けど投手として早くから投げ込みやるんは、危ないな。もっと体が出来て大人の体になってからでええ思うな。」
記者が、ゴマ擦りでなくとも、二人に賛辞を呈したのは自然な流れだった。
「そりゃお二方だから言えることなんじゃないですか?まっすぐで通用してるし、事実勝ててるから。
 星の場合、まっすぐが通用しなかった。だから大リーグボールという選択肢に行かざるを得なかった。でしょ?」
「ゴマ擦ってもらわんでもええけど、小さいときのシゴキが逆にまっすぐに限界を与えたとも言えるで。
 小さい時やまして星は高校1年で中退やろ?ナンボ巨人の二軍シゴキが凄いいうても、体できてへん子に
 そないビュンビュン放れ言うのはムリがあるな。まあ星のおやじさんと巨人も同じ考えちゅうか、根性論やな。」
「ですよね。ウチの米田さんや梶本さんでも、過度な投げ込みはするなって言われますからね。それであれだけ
 長く勝ちまくれるんですから。」
「ははは。太田幸司があかんのも、甲子園で放るすぎたんちゃうか?笑たら悪いけど。ホンマはもうアカンのちゃうか?」
「今のも書けませんね〜。江夏さん。」
410虎の穴異聞7−1:2009/07/07(火) 22:15:34 ID:8W26kNgM
1984年の新春、赤坂プリンスホテルには初めて来日する珍客が旅装をといていた。
この人物はインド政府発行のパスポートを持っていたが、これは便宜的にインドが発行しただけであった。
国賓扱いにはできない理由があったが、人物は形式上はある国の国家元首だった。

美鶴代は、伽をするだけの指令を受けてこの男の部屋を訪ねていた。
男は一緒に風呂に入りたがった。宗教者もやはり人間だと美鶴代は思った。
しかしこの形式上の国家元首にて宗教上の頂点にいる初老の男は意外なことを美鶴代に言った。
「あなた、女の穴から来たのですね?」
美鶴代は驚愕した。自分の闇の身分をなぜ知っているのか?この男は一体何者なのか?
「あなた、今、わたしのことを殺さなければならない。そう思いましたね?」
男の英語は美しかった。貴族だけが使うクイーンズ・イングリッシュである。幼年期から高等な教育を
受けていると見られる。しかし今、目の前で首までジャグジーに浸かり気持ち良さそうに喋るのだ。
「その必要はありませんよ。ご安心なさい。私はずっと女の穴の女性を贔屓にしてきたのですから。」

「睨下は、一体どういうお方ですの?」
「わたし?わたしはダライ・マラ14世。それ以上でもそれ以下でもありません。こうして美しい女性と時間を過ごせるのも
とっても楽しみです。これは、いけないことでは、ありません。それにわたしはもう30年以上女の穴の女性をめでてきました。」
411虎の穴異聞7−2:2009/07/07(火) 22:18:02 ID:8W26kNgM
美鶴代が資料を受け取りまた自身でも調査したこの男の素性は
もうひとつ理解に苦しむものだった。この睨下と呼ばれる男は、
密教の頂点にいるという宗教上の役職や、事実上中国に併合されかかっている国の
国家元首的な存在という以外に、欧米や文明各国では理解できない人生を歩んでいた。

14世というからには、14代目である。しかしその相続の仕方が俄かには理解できない。
先代が死去すると、全国土の中からその生まれ変わりを探し出すというのだ。
そして先代しか知りえない事柄、教学上の質問を何点か与え、安々とそれに答えたその
発見された幼児が、先代ダライ・マラの生まれ変わりとして国家と宗教上の地位を相続するのだ。

この14世は50歳をすこし出た年齢のはずである。とすれば元首になったのは、戦争の時代、
1937年〜1938年の頃のはずだ。「わたし3歳で即位しました。」と自分で言っているのだ。

元々のダライ・マラは密教の菩薩のひとつ、観世音菩薩の生まれ変わりなのだという。
日本全国どこにも祭られている観音菩薩がこの目の前の男として生まれ変わっているとは
とうてい信じられない。しかしその一見肯綮無燈な宣言とシステムは、実はほとんど謎に包まれていた。
412虎の穴異聞7−3:2009/07/07(火) 22:19:45 ID:8W26kNgM
「観音さまは女でしょ?という質問がよくあります。仏教ではそれを
『口元の紋様を見なさい。観音さまは女ではありません。元来、仏教では
女は成道に達し、阿羅漢果を得られないとあります。』とムキになって言います。
馬鹿をいいなさんなと、私は言いたい。今時そんなこと言ってたら女性蔑視だと叩かれます。」

「では、観音さまは男性なのですか?それとも性別はないんでしょうか?睨下。」
「ふふふ。どちらも違います。観音様は女です!完全にね。密教が形成されるより前の時代に
西のほう、多分ヨーロッパかエジプトから伝来した女性神、これがいつしか仏教と融合したのでしょう。
マリア像と観音像はよく似ていますから。あるいは古代エジプトのイシス神ともね。」

睨下はヌケヌケと言った。ほとんど自分の宗教を冒涜している発言だ、自分自身をも。
「すごく大胆なお説ですわ。今こうして一緒にお風呂に入っているのが睨下だというのを忘れてしまいそうですわ。私。」

「元々ね。キリストが出てくる前は神はふたつだったんです。人間はこのふたつの神しか信じない。
神はこれふたつだけなんですよ。それを呼び名や戒律を変えて少しずつのズレがありますがね。」

「ユダヤの神と、もうひとつは何でしょう?ブッダかヒンズーの神ですかしら?」
「どちらも違いますよ。あんなものは人は信じていない。キリスト以前からあり、人間が文明を築きはじめてから
、ただふたつの神が人間を支配しているのです。それはね・・・。」
413虎の穴異聞7−4:2009/07/07(火) 22:23:02 ID:8W26kNgM
「それは貨幣、お金、つまりマネーね。もうひとつは自然、大自然ですよ。
このふたつだけが人間を支配するのです。おわかりですか?美しい人よ。」

睨下は指で輪をつくりマネーと言った。この奇妙なバランス感覚はやはり国家元首としての顔なのか?
「では、古代からあって今もユダヤ教やイスラム教の元になった神は、架空の存在なんですの?」

「いえ、ちがいます。あれがつまりマネーと自然なんですよ。エイブラハムが神に
『私のために自分の子供を殺して見せなさい』と言われて殺そうとするでしょ?
誰が目にも見えない神のために子を殺しますか?神の正体はマネーなんですよ。
まあ自然と置き換えてもいいですが・・。否応なく支配するのが神。人間の都合で
出たり消えたりするのは神ではありません。それをキリストが突っ突いた。そこに愛が
人を支配できる可能性を説いたのです。だから彼は殺されます。しようがありませんね。」

「何か夢を見ているようですわ。睨下のお口から、そのようなことを聴かされるとは・・・。」
「あなた、女の穴の正体に興味がありそうですね?洗脳には個人差があります。
その美しい人が持っている感性、感受性、それまで洗脳で奪うことはできません。当り前の話です。
でも、いいですか?考えてもみなさい。正体なんてどうでもいいのですよ。どこかの財閥や
大きな宗教組織が、それを運営し、情報を盗み出し、自分たちの支配体制を維持しようとする。
しかしいつかは誰かに倒されます。永遠はありえません。そしたらまた別の何かが取って代わり
同じことをするのです。いま、あなたが私のお風呂に贈りこまれたようにね。」
414虎の穴異聞8−1:2009/07/07(火) 22:26:03 ID:8W26kNgM
「睨下は、わたしのこともよく知ってらっしゃるみたいですわ。
なんだが何を言っても、見透かされてるようで私、言葉に詰まります。」

「女の穴の実体が何かというより、今あなたが心配していることを
当ててみましょうか?例えば女の穴の黒幕が、バチカンだったとする。
或いはフリーメースンだったとする。或いはロスチャイルド家かロックフェラーかも知れない。」

「ええ。そのどれもが可能性がございますわね。ひととおり考えてもみましたの。」

睨下は泡風呂の中で、手を伸ばしてきて、美鶴代の乳首をコリッと摘まんだ。
「アウッ!」
「要するにこういうことです。巨大な組織にあなたは庇護されており、また同時に管理も監視もされている。
その巨大な組織が例え揺るぎない権力を持っていたところで、今その権力がこの世界の中で
負けかかっているか、勝ちかかっているか、そのどちらなのかを知りたい。でなければ気合の入り方も違う。そうですね?」

「アウ〜ッ!いっ・・痛いですわ。睨下。お乳が・・。お乳がちぎれそぉ・・・。あっ。」

「これは、ごめんなさいね。痛かったかね?あなたは痛いのがお好きと見たんだが・・・。それでだ。
勝っているほうか?負けているほうか?その答えを知りたいですか?」

「ええ。知りたいですわ。せめてそれぐらいは、知る権利があってよさそうなものですもの。」

「いいでしょう。お教えしましょう。では、今、ここで私の顔にオシッコをして見せなさい。
恥ずかしがることはない。ことには何事にも浄財を積まねばなりません。日本ではお賽銭というのですか。」
415虎の穴異聞8−2:2009/07/07(火) 22:27:59 ID:8W26kNgM
「まあっ!睨下のお顔にオシッコを!?そんなはしたないこと・・・。」
「いいのです。あなたのものなら汚いなどとは思いません。それとも・・拒否しますか?」

「な・・なんだか怖いですわ。そんな仰り方。でもホントによろしいのですか?」

「わたしがしてほしいと言ってるんだ。恐れることなどないよ。あとは少し恥ずかしいのを
こらえてほしいものですね。しかしあなたのような美しい人が恥じらいながら
オシッコをするのは、とても宗教的に面白いと思いますよ。わたしは。」

「まあ・・・・。で・・では、失礼して・・・。」
美鶴代は泡風呂から体を起こすと、湯船に半分寝そべった状態の睨下の顔を大股開きに跨いだ。
「フフフ。絶景ですな。またとない光景だ。これぞ100万ドルのいい眺めだ。」
「いやですわ。睨下。茶化さないでください。・・・あっ・・あっ・・出ますわ。」

美鶴代の大きく開かれた股座の繁みから、黄金色の液体が放物線を描いて落下しはじめた。
「あ〜ん。とっても恥ずかし〜い。いやっ!いやっ!見てはいやぁ〜ん。」
美鶴代の小水は、睨下の禿頭に命中し跳ね返った。一度噴射されはじめた女の小水はとまらない。
「うむ。うむ。美味なるかな。美味なるかな。それにしても、すごい勢いだ。ブルルルゥ〜!」
416虎の穴異聞8−3:2009/07/07(火) 22:30:27 ID:8W26kNgM
「いやですわっ!睨下は変態でしたのねっ!変態っ!変態っ!」
自分の意思で小水を噴射しておきながら、美鶴代は動転した。股座を押さえて湯船をでると
そのままバスルームから飛び出し、ベッドに顔をうずめて泣いた。
いくら女の穴で特訓を受けたとはいえ、人前で放尿するなど想像もしていなかったのだ。
睨下の言葉巧みに、それを誘導されてしまった自分が悔しかった。
話の続きをききたくて、そして自分の正体を知っていそうな睨下に、何か心のドアを
開けてしまった。しかしそのついでに放尿まで見せてしまうとは。
自分のはしたなさと、あさましさ、そしてそのブザマな自分の姿を頭に描いて
やりきれない思いが募ってきた。性交をする娼婦なら裸と裸の付き合いになるが、
放尿姿まで曝け出しては、もう自分は人間とは言えないとまで思った。

「フフフ。変態でも何でも結構ですよ。言われてもね。あなたのオシッコ姿、そして味覚はとてもワンダフルでした。」
「やめてーっ!言わないでーっ!何も言わないでーっ!」
恥ずかしさが全身にこみ上げてきた。自分で自分をコントロールできなくなりそうだ。

「しかしね。あなたがわたしに望んだ話。これは、してさしあげますよ。何しろオシッコまでご馳走になったんですからね。フフフ。」
美鶴代は全裸のまま、ベッドに突っ伏して顔をうずめたままだ。
「すこしショックだったようだね。よろしい。よろしい。そのぐらい恥じらいがなくては、いい女とは言えません。
では、お聞かせしましょう。そう。あなたの組織が今、どんな状況になるかでしたね?」
しかしダライ・マラ14世は、そう言ったきり黙りこんだ。そして前のめりに倒れた。腰にバスタオルをまいたまま。
417虎の穴異聞8−4:2009/07/07(火) 22:34:41 ID:8W26kNgM
黙りこくってベッドに倒れこんだダライ・マラ14世を不審に思い、美鶴代は少しだけ顔を上げた。
まだ目には涙が浮かんでいる。恥ずかしさの涙である。
しかしダライ・マラのバスタオルのみで裸の背中には短剣が突き刺さっていたのだ。
とても深く。それはおそらく心臓まで達しているのであろう。ほとんど即死である。
いま、短剣を引き抜けば鮮血が迸るであろうが、ほどなく血液は凝固してしまうのだろう。
いくら観世音菩薩の生まれ変わりとは言えど。
美鶴代は自分のあさましい放尿姿を見たものが、この世から消えたことを安堵したいところであった。

しかしこの部屋には、侵入者がいた。黒ずくめの上下に顔まで隠していたが、やがて侵入者は
物も言わずに顔に巻いた黒い布を自ら解き出した。
「だっ・・・誰?誰なの?!・・・・・・・・・・・ゲッ・・・ゲエッ!?」
なんとその顔は、ダライ・マラ14世そのものであった。背格好も何から何まで瓜二つである。
これは、いったいどういうことなのか?美鶴代は頭の中で事態を把握しきれなかった。

「これ、こいつね。わたしの偽者ですよ。そっくりコッキリに作り上げられたね。あなた。心配しなくていいよ。」
「あなたは・・・・誰?誰なのですか?あなたが睨下を殺し・・・」
「わたし?わたし本物のダライ・マラ14世です。あなた、そんな怖い顔してはいけません。いいですね?」
「・・・・・・で・・・でも帰ってなんと説明すれば・・・・」
「説明?女の穴にですか?説明するかどうするか?それは少し考えましょうか。それにしてもこいつは、
すこし話が多すぎますね。元が賢くないので、人の受け売りをすぐ人に話したがるのです。偽者はだいたいこうですね。」

美鶴代にはついさっきまで会話していたダライ・マラが真っ赤な偽者とは思えなかった。妙にリアルだったのだ。
その話す内容も。そして美鶴代に悔し涙を流させたその変態性癖もだ。キツネにつままれたような気分だ。
「ダライ・マラ14世はあなたといい夜を過ごしました。それだけです。さあ、死体を片付けます。あなた見ないほうがいいね。」
=第9話につづく=
418:2009/07/07(火) 22:45:35 ID:8W26kNgM
>>406女悪役ブルースさん

手錠マッチは、実際にはあったんでしょうかね?あっ。今回のような短い手錠です。
むかしゴング誌などで見たのはけっこう長い手錠でしたよね?マードツクVSマレンコとか。
短い手錠マッチは、タイガーマスクのタイガーVSコンビクト戦しか知らないんですが、
あれは痛そうでしたね。あのルールで強い人は相当強いんでしょうが、
かなり実力差が出てしまう試合方式かも知れませんね。強い人がメチャメチャ強くなりそうですので、
今回の試合行方は楽しみです。

むかし野球マニアだったんですが、引越しやなにやらで随分、資料が散逸しましたw
改めて買うのも、見たら買ってしまいそうなんで、その手の古本屋やヤフオクは見ないようにしていますw
タイガースのユニフォームは昭和43年〜昭和48年までのホーム用が一番かっこいいと思いますが
実際に見てるのは、もう少しあとの時代からですね。
419名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 15:57:06 ID:jX3V3VwG
良スレ
420巨人の星その後209:2009/07/08(水) 22:10:44 ID:9XOcu+Hl
「令状は持ってんのかよ?一課のエリートさんよ?」
「まだ誰もガサ入れするとは言ってないがな。ところで黒崎の顔が見えんな。」
「おたくにゃ関係ねー話だと思うがな。ところでアンタこんな所に踏み込んでちゃ
マル暴から縄張り荒らしだって言われんじゃねーかい?」

鬼怒川が焦っていた。女ひとりに、ここまで手こずり、しかも捜査一課が出てきているのだ。
大下警部と山本警部補に事務所への来訪を受けたことも計算外だった。
しかし焦燥の鬼怒川にさらに予定外のことが起こった。
事務所のドアがバタンと開いたとき、顔を現したのも意外な男だったからだ。

「マル暴もお忘れなく。ちゃんとここに来てるぜ〜。」
衣笠であった。
「なっ・・・。なんだ?アンタまで。こりゃどういうこったい?」
「別にお茶飲みにきたわけじゃねーよ。組長のさんの顔を久しぶりに拝みにきたのさ。」
衣笠は馴れ馴れしく口をきくと、鬼怒川の机に尻を半分だけ乗せてタバコに火をつけた。
421巨人の星その後210:2009/07/08(水) 22:12:39 ID:9XOcu+Hl
「黒のセンチュリーが見えねーなぁ?車検にでも出したかい?組長さん。」
「しっ・・・・知らねーぜ。大方そんなこったろうよ。」
「そいつぁおかしいぜ。この前の8月に車検だったろが?組長さんよ?」
「知らねーつったら、知らねーつってんだろ!あんたらもしつこいなっ!」
「汗ダラダラだぜ。組長さんよ。もう年末だってのによ。」

鬼怒川へ軽口を叩くのは衣笠の真骨頂である。これには、山本と大下も舌をまいた。
「だいたい、アンタらお門違いだぜ。ここは牛込署管内、おめーさん方は新宿署だろが。」
「ヘッヘッヘッヘ。そう来ると思ってたぜ。組長さんよ。オット!牛込からのお客人も、ちゃ〜んとお見えだぜ。
 なあっ!牛込の皆さんよ!」
衣笠がドアのほうへ大きく声をあげると、ドアから牛込署の刑事2名が現れた。
「なっ・・・なっ・・・こりゃどういうこったい?おめーさんら何が目的だ?」
「ヤクザがいけねえとは言ってねえやな。お前さんらにも生活があるだろうしな。
 だが、素人パクって迷惑かけちゃ〜いけね〜ぜ。え?組長さんよ。」
「何の話かワシには皆目わかんねえな。グッフッフッフッフ。年末で成績あげなきゃなんねえんで
 おめえさん方、トチ狂ってんじゃねーのかい?同情はするがな。」
「あいにく同情されんのは、そっちみてえだぜ。組長さんよ?」
「なっなんだと!?コンニャロー!マル暴とみて丁重に扱ってやってりゃ調子に乗りやがって!」

そのとき鬼怒川の机の上の電話が鳴った。
422巨人の星その後211:2009/07/08(水) 22:14:25 ID:9XOcu+Hl
ジリリリリーン!
「どうしたい?出ねえのかい?組長さんよ?」
「ウグッ・・・・・・。」
「子分から重要な連絡かも知れねーぜ?組長さんよ。出ねえでいいのかい?」

鬼怒川は渋々といった具合に受話器をとった。
そのときである。衣笠が電光石火の速さで、その鬼怒川のとった受話器に耳を当てたのである。

「もしもし?もしもし?会長呼んでくれねーかな?俺だよ。黒崎だ。おい?おい?何黙ってんだよ?」

鬼怒川はひと言も発せなかった。今、黒崎に指示をだせる状況ではないし、現状を説明できる状況でもない。
事態を察したのか、黒崎からの電話は切れた。
「あんたら、こんなことしてタダで済むと思ってねーだろうな?いいだろ。こっちゃ弁護士を呼ぶぜ。いいな!」
逆切れの鬼怒川が負け惜しみばりに威勢を張って、5人の刑事に叫んだ。
「令状もなく踏み込んできて、電話まで妨害かよ?ええっ!?」
「オイオイ。待てよ。組長さんよ?誰も電話を妨害なんかしてねーぜ。悪くいってもらっちゃ困るな。」
「とにかく弁護士を呼ぶからな。あんたらも知ってるだろ?元検察のお偉方だった先生だぜっ!」
423巨人の星その後212:2009/07/08(水) 22:18:16 ID:9XOcu+Hl
まだ車を走らせつづけていた黒崎と組員たちは、一度進路を目白方面へ向けた。
「おい。あんまし走り回るんじゃねー。網に架かったら一巻の終わりだぜ。この車のナンバーは、
 足がついてんだ。」
「へい!兄貴!」
「さてと、ここらが思案時だな。ここでママさんを解放して、お京の体はまた後ほどってことでも、いいんだが
 サツが張り込んでるようじゃ、もうチャンスもなさそうだしな。会長をあまり恋慕の想いで
 悶々とさせ続けるわけにも、いかねーしな。そこでだ。ママさんよ。」

黒崎は、横に乗っているひとみに目を向けた。どことなく目に覇気がない。喫茶モンテクリストで
虚勢を張っていたときより、幾分この男も疲れているように、ひとみには見えた。

「いっちょ会長の色恋にお付き合いするか・・・・。オイ!慎吾!」
「ヘ・・・ヘイッ!兄貴!」
モンテクリストで黒崎に殴られ歯をブラブラさせて泣きを入れていたチンピラ、慎吾が返事をした。

「おめー。解剖も指詰めもいやだろ?」
「へいっ。そ・・・そりゃもう!」
「だったらここで、いっちょ会長のために男になんなっ!」
「へいっ。アッシは何をすればいいんで?」
黒崎はすぐには返事せず、運転している別のチンピラに声をあげた。
「おい!行き先は、第8機動隊だっ!夏目坂から団子坂へ出ろ。第8機動隊の前で慎吾だけ降ろす!」
=つづく=
424虎の穴異聞9−1:2009/07/08(水) 22:20:48 ID:9XOcu+Hl
黒ずくめの自称本物のダライ・マラは、死体をバスルームまで引きずってゆくとドアを閉めた。
背にリュックサックを背負っていたが、それに何か道具が入っているようだった。
閉められたバスルームから何か機械音が響いてきた。何かエンジン音のようなものが響く。
何をしているのか皆目検討がつかない美鶴代は、バスローブを着た。

今のうちに逃げてしまおうか、しかしついさっき起きた出来事に頭が混乱していた。
そのうちに自称ダライ・マラがバスルームから出てきた。
黒ずくめの格好で腰に何か道具が入ったベルトを巻いているので、まるで大工か工務店の人間のようだ。
顔も同じアジア人で日本人に近い。ちょっと電気工事にきたおじさんのようにも見える。
しかし顔はダライ・マラ14世なのだ。
「今、処分したよ。もう何も残っていないから、日本の警察がきても安心ね。」
さっきの偽者のように指で輪をつくり、OKのようなサインをした。

「あ・・・あなたが本物のダライ・マラ14世?本当に?」
「いかにもそうですよ。変な自己紹介だけどね。あっ。あなたは、もう私とセックスしなくていいですよ。ご安心なさい。」
「・・・・・って、仰られても・・・。」
「世の中、悪いのが、いっぱいいてね。私はこうして自分の身を自分で守っている。今のはね。
私の影武者のひとり・・ではなくて、その影武者に成りすました中国のスパイでしょうね。」
425虎の穴異聞9−2:2009/07/08(水) 22:24:45 ID:9XOcu+Hl
「中国のスパイ?どうしてまた・・・。」
「私に何かいろいろ失言させてね、世界中が私の相手をしなくなるようにしてるんです。
インド政府が私を守ってくれるわけはないし、どこの政府もそう。だから私はこのぐらい自分でするんですよ。
影武者はね。チベットから有志が何人か亡命して、私にために勤めてくれてるんです。
これも何人もいるわけじゃない。2人だけね。でも私は本物。安心しなさい。」
「あの・・・、このことは私の組織は知っているんでしょうか?それとも・・・。」
「知っていて、ここにきたんじゃないんですか?あなた。今の精巧な偽者のことは知らなくても・・・。」
「何が何だか分からないわ。それに死体を処分したって・・・・?」

「このスイートルームの浴槽は大理石ね。硫酸水にもすぐには傷まない。だから適当な大きさまでカットしたら
あとは排水口に流れていくよ。まあかなり細かくカットしないとダメだけどね。すりおろすように細かく。」
「まあっ!」
この自称本物は、さきほどの男ほど英語は流暢ではない。しかし発音はきれいだ。
「さっきの男が話していたこと、部分的には本当ダネ。私がずっと女の穴の世話になっているのも本当。
でも奴らあなたたちのこと、随分と知っているようだったね。こりゃ危険だよ。これは報告しなさい。イイネ?」
「は・・・はい。でも、これはどういうことなのかしら?本物のあなたがそんな格好で忍び込んでくるなんて。」
「奴らおいおい偽者が退治されたこと知るでしょう。でもそれまで時間稼ぎします。いいですか?
あなた、何もなかったようにして帰りなさい。そして女の穴のマネージャーにこのことを報告しなさい。
しない場合あなたが怪しまれます。いいですか?」
美鶴代はまた言葉を失った。
426虎の穴異聞9−3:2009/07/08(水) 22:27:55 ID:9XOcu+Hl
「女の穴の実体について、話してましたね?でもそれは私も知らないヨ。」
「それじゃあ今の偽者は知っていたんですか?」
「多分知らないでしょう。あれは小物だから。おそらく憶測をあなたに切り売りして
変態じみたことするきっかけにしようとしたんでしょう。組織の存在については、知っているようだったが、
これは私も意外ネ。よくない事、おきなければいいネ。」

「それにしては話が上手だったわ。とっても。ただの中国の工作員かしら?」
「洗脳能力ですか?私に、そして私の影武者になりすます訓練しているうちに、勉強したんでしょネ。」
「具体的な話をしていたわ。神様の正体とか・・・。」

「う〜ん。あなた賢い女性ネ。いいでしょ。ひとつ教えましょう。トゥーレ協会ってご存知?」
「トゥーレ?それは神秘主義と民族主義のドイツの秘密結社ですわね。戦前の。」
「そう。素晴らしい。あなた、とても教養がある。そのトゥーレがどうなったか知ってますか?」

「最初はヒトラーとかの寄り合い場所だったはずだわ。その教義もナチスは取り入れた。でも・・・。」
「そう。でもその後どうなったか誰も知らない。あれはナチスにひさしを貸して母屋を乗ったられたんですネ。
で、ナチスに解散させられた。地球が空洞で、このずっと下、地面の裏側にもうひとつの世界があって、
そこから全ては造られる。そして極北の地から使者が現れて、人類の英知を掌る。
ゆえにアーリア人が尊いとかそんな話。どう思うね?美しく賢い人よ。」
427虎の穴異聞9−4:2009/07/08(水) 22:33:28 ID:9XOcu+Hl
「馬鹿馬鹿しいといえば馬鹿馬鹿しいですわ。ただ思うのは、そんなことを大真面目に言う目的と
そして元ネタが何かということですわね。そのことが不思議ですわ。その手の話では、いつも。」

「素晴らしい。あなたの感性は娼婦にしておくのは勿体無い。実にそのとおりですよ。
まあひとりぐらいはそんなことを大真面目に言っている人がいても、周りはだいたい分かっているもんです。
絵空事、嘘八百だとね。考えてもみなさい。テンプル騎士団とか、シオン修道会とか。ネ?
キリストの血脈や、聖杯の存在が明らかになったら?それで世界はひっくり返るんですか?
違いますね。キリストの子孫がいて、その人が世界を統一するなんて言うなら、
どうしてとっくに統一してないんですか?今ごろになって出てきて、キリストの末裔だと言って
それで世界に君臨できますか?もし誰かがキリストの子孫を名乗って大統領選挙に出たら
100人の自称キリストの子孫が対立候補に名を連ねるでしょう。イスラムも黙ってない。」

自称ダライ・マラは冷蔵庫からコーラを出してきてビンごとゴクゴク飲んだ。小水を飲ませろとは言わないようだ。

「教義とか宗教はね。大昔なら人を救うこともできました。でもこれからは無理ですネ。
今も言ったように、教義や血脈は、結局は政治に利用されるだけです。大儀銘文というのネ。
でも、大儀銘文のために戦争すると必ず負けます。100%負けます。それをイギリスもアメリカも知ってた。
だからドイツも日本も負ける。アメリカはベトナムで大義銘文に拘った。そしたらやっぱり負けた。
戦争は勝つためにする。それだけ。大儀銘文のためじゃない。勝てばいいの。それだけ言ってる方が有利。
大儀銘文だすと戦争やめられなくなる。これからの宗教は得か損か、金になるかならないか。
それオンリーね。だから女の穴がどんな大儀銘文を出してきても、あなた真剣に聴いてはダメね。それ絶対うそネ。」
=第10話につづく=
428巨人の星その後213:2009/07/09(木) 21:35:36 ID:nK+cLvD5
「それは知らんな。あとひとりでパーフェクトがパー?
 そら可哀想やな。」

記者の予想に反して、江夏と山田の対談は快調だった。
思いのほか江夏がよく喋りだしたのだ。これは初対面の山田にも意外なことだったが、
彼もこの時間を楽しんでいた。

「阪神だと昭和25年に倉敷での国鉄戦で、当時はまだ投手だった田宮謙次郎さんが、
 27人目の打者、中村にレフト前ヒットを打たれてパーになってますね。
 あとは巨人時代の別所さん。国鉄の村田元一が一度ずつあります。」
「田宮はんが、ピッチャーやったちゅうのもワイは知らんかったで。」
「僕も初めて聞きましたね。」

記者は続けた。
「でもこの人たちはまだ幸運だったほうです。あとひとりでノーヒットノーランから負け投手になった人もいるんですから。」
「誰や?そんな運のない奴は?」
「2人いるんですよ。ひとりは当時阪神のバッキー。昭和38年の甲子園での大洋戦で浜中に二塁ベース直撃の内野安打を打たれて、
 カッカ来てそのあと打ち込まれて敗戦投手。」
「はっはっは!傑作やな。そら。二塁ベース直撃で内野安打されてパーでは、ワイでもカッカ来るで!」
「運なさすぎですね。ちょっと。」 
山田も同情を禁じえない話だったようである。
429巨人の星その後214:2009/07/09(木) 21:37:23 ID:nK+cLvD5
江夏は笑いを堪え切れないようで、腹を抱えて笑いだした。

「はっはっはっはっは!その運のないのが、あのバッキーのおっちゃんやったちゅうんが、
 余計におもろいがなっ!はっはっはっはっは!」
「江夏さん、もうそのときチームメイトでしたよね?」
「いや、昭和38年いうたらワイ知らんねんけど、2年だけチームメイトやったな。
 ワイの1年目と2年目は。そやけどこらゴッツウおもろいで。はっはっはっは!」

「あんまり笑っちゃ失礼なんじゃないですか?」
山田が、心配そうに江夏の馬鹿笑いを見て案じている。

「ワイ、あんま喋ったことないんや。バツキーのおっちゃんとは。日本語はうまかったけどな。
 けどな〜。コントロールはメチャメチャ悪かったなぁ。あのおっちゃん。」
「ホント。行き先はボールに聞いてくれって感じに見えましたよね。」

まだ江夏は笑いが止まらないようだ。
「そ・・・そやけど藤本のおじいちゃんやから使いこなせたんやで。あのおっちゃんは。
 コーチにも、よう楯突いとったもんなぁ〜。」
430巨人の星その後215:2009/07/09(木) 21:39:30 ID:nK+cLvD5
「でも江夏さん。まだ笑いが止まらないようですが、もっと可哀想なピッチャーがいるんですよ。」

「なんや?まだあんのかいな?もうあんまし笑わせなや。腹筋強なっていいかも知れんけど。」

記者はメモをめくりながら、その可哀想な投手の話を始めた。
「江夏さんの入団1年前、山田さんの入団2年前にあたる昭和41年の9月26日ですね。
 後楽園球場で、なんと長嶋さんが休んでた日に、ノーヒットノーランまであとひとりまで行った投手がいます。」
「誰やいな?早よ言いいな。また思っきし笑たるさかい。」

「中日の佐藤公博投手。9回あとひとりで、バッター柴田でした。」
「なんや?王さんちゃうんかいな?」
「僕も王さんだと思いましたが・・・。」
「柴田に右中間を破るツーベースを打たれます。これでノーヒットノーランはパー。しかしまだ完封が残っていました。
 ここでバッターは王貞治。」
「そら敬遠やな。普通に考えて。勝負する理由があらへんがな。」
「僕もそう思いますね。」

「ところが、王を敬遠で歩かせツーアウト1塁2塁、ここでバッターはキャッチャーの森。ゲームセットのはずが、
 なんと森の逆転サヨナラ・3ランホームラン!」
「あっはっはっはっはっは!これも傑作やなっ!あっはっはっはっは!それがサヨナラで敬遠のあと森やったちゅうのが
 余計おもろいがなっ!はっはっはっはっ!」
「笑いすぎですよ。江夏さん。しかも森さん、呼び捨て。」
431虎の穴異聞10−1:2009/07/09(木) 21:41:43 ID:nK+cLvD5
同じ夜の深夜、美鶴代はヒルトン東京(後のキャピトル東急=現在改修中)脇の日枝神社の石段にいた。
辺りは誰もない。東京のド真ん中で真っ暗なのは、ここぐらいか。

向こうからコツコツとヒールの音を響かせてひとりの女が近づいてきた。
姿が見えた。両手をコートのポケットに入れ、その片方の手首に杖を下げている。

ロイド眼鏡に山高帽、どうみても胡散臭く、かえって目立ちそうである。年は50歳を越えているだろう。
「話は聴いた。今日はご苦労。」
それだけ言うと老女は、通り過ぎようとした。
「それだけっ?あたしはこれからどうすれば!?」
「今夜はタクシーで、成田へゆけ。全日空ホテルに部屋を取っておいた。
明日の朝、テキサス州ダラス行きの便に乗れ。現地の空港でミスZがコンタクトを取る。」
「これ以上なにも聞かないわけ?あたしに?」
「聴くことはない。今日はもう休め。航空券はホテルにある。以上だ。」

いつもこの連絡役というかマネージャー、ミスXは必要以外のことはほとんど喋らない。聴きもしない。
美鶴代にはこの老女の目がニガテだった。とにかく暗いのだ。それでいて鈍く光っている。
しかしこの夜、ミスXは美鶴代にひと言付け足した。

「放尿プレーごときで顔を赤らめ羞恥に自己を失うようでは、いけない。今一度おまえは
本部で特訓をうける必要がありそうだな。」
なぜ知っているのだ?そんなことまで。美鶴代が一番触れて欲しくないことを。
美鶴代は返事をせずにその場を駆け出し、外堀通りでタクシーを捕まえた。
432虎の穴異聞10−2:2009/07/09(木) 21:43:41 ID:nK+cLvD5
自称ダライ・マラの本物は言っていた。
「組織の大儀銘文は全部ウソだ。」と。
そしてこうも言った。
「人間を支配するのは利益(マージン)と恐怖(テラー)だけである。」と。

「いいですか?復讐は人を動かす動機になります。しかしそれは、復讐を遂げたら終わります。
でも終わらない復讐があります。それが、逆恨みです。
逆恨みは最初からボタンの掛け違いをしています。だから恨みの素が解決しても消えません。
もっとも性質の悪い人間の動機です。これは、テラーかマージンかでいうとテラーですね。
その人が持っている、或いは受けたテラーが根底にあります。
何かのマージンのために女の穴が存在するのではなく、この恨み、
見当違いの恨み、逆恨みがバックボーンだと女の穴はとても危ないことになります。
恐怖に支配されつつも、その行動の目標を間違えているのですから。」

女の穴が危ないのだろうか?或いはその兆候がどこかにあるのか?本部が何か的外れな行動に出ているのか?
言外にダライ・マラはそう言いた気だった。
洗脳の技術をあっさり公開してくれたのは、最初の偽ダライ・マラだった。しかし後から現れた自称本物も
何かとてつもないオーラを出していた。彼らは実は誰の手先なのか?どちらかが本物だったのか?

考えてみても分からなかった。胸にモヤモヤした感情を抱えたまま美鶴代は再び日本へ戻ってきていた。
あの日から3週間、ダラスでの仕事を終えて、美鶴代を乗せた飛行機は成田に着陸した。
433虎の穴異聞10−3:2009/07/09(木) 21:46:00 ID:nK+cLvD5
美鶴代は成田空港のタクシー乗り場で、ミスXと接触した。
「ご苦労。ダラスでの首尾は上々だ。そしてお前はテストにも合格した。」
(テスト?あれがテストだったわけ?)
美鶴代はこの3週間、テキサス州ダラスで受けた任務をこなしながら、
ある機具の取り扱い説明を受けていたのだ。使用もしてみた。
ミスXは、コインロッカーの鍵を美鶴代に渡した。

「品川駅のロッカーに機具が入っている。それをもって的と接触しろ。
 的は先週からお前が気に入っているようだ。しかし抜かるなよ。場所は高輪東武ホテルだ。」

美鶴代は高輪東武ホテルに正面から入った。その「機具」はハンドバッグの中に納まるサイズのもので、
既に品川駅で入手していた。ホテルに入るなり背の高い若い外国人が声をあげた。
「ミッチー!待っていたよ!もう来てくれたんだねっ!?」

身長は2メートル近くある。しかし体は華奢だ。金髪の長い髪が肩にかかっている。
男はいきなり美鶴代を抱擁した。
「デビッド。人がみてるわ。少しお利口さんになれないの?」
「誰がなんと言おうと構うもんか。僕は君に逢えないなら日本に来なかったさ。」
434虎の穴異聞10−4:2009/07/09(木) 21:48:35 ID:nK+cLvD5
二人が肩を組むようにして、エレベーターに乗ろうとすると、
目の前をとてつもない大男が立ちはだかった。
「デビッド。グルーピー遊びも程々にしとけよ。俺はお前のオヤジさんに
 お前を見張るように言われてるんだからな。」
「パパは関係ないさ。僕は僕だ。それに、フランク。ユーが僕を見張るなんて無理だよ。
 だってユーは目立ちすぎる。まぁミスター馬場には、試合では頑張るからと伝えておいてくれよ。」

デビッドはからかうようにフランクという男に口答えすると、美鶴代とエレベーターに乗ると
すぐさまドアをクローズさせた。
そのフランクと呼ばれた男もデビッドと同じく2メートル級の大男だったが、肉体のデカさはデビッドの比ではなかった。
ゴツい胸板に発達しきった脚部。まさに「動くダビデ像」といった感じだった。
しかし顔は、後ろでポニーテールにした髪まであたかもキリストのような顔立ち。そして髭。
一度見たら忘れない顔で、ギョロリとした眸の色はダークブラウン。見るからにユダヤ系の顔立ちだ。
「さっきの人、あなたの見張りなの?」
「関係ないさ。フランクも自分のビジネスで日本に来てるのさ。それに彼のほうが、僕よりずっとギャラが高い。
 まあ2〜3年のうちに逆転するつもりだがね。彼、フランクはとってもグルーピー嫌いなのさ。奥さんオンリーなんだって。
 そんな人生、何が面白いのか分からないし、僕にはありえないけどね。オット。君がグルーピーだって言ってるわけじゃないよ。」
=第11話につづく=
435名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 21:57:49 ID:p0oRJd/N
フランクは言うまでもなく、あのキングコング。
そして・・・エリック家の悲劇につながるわけですね・・・。
436虎の穴異聞11-1:2009/07/10(金) 20:23:12 ID:liLyNeKj
「デビッド。面白いマシンがあるの。試してみる?」
「どんなマシンだい?コレか。どうやって使うんだい?」
「ここをペニスにはめるのよ。そしたらペニスが通常の何倍にもなるの。」
「へぇ〜。面白そうじゃん。これでさらデカくなった僕のおチンチンで、
 いつもよりさらにミッチーをアヘアヘ、ヒイヒイ言わせられるんだね。どれどれ。」

部屋に入るなり一緒にバスを浴びようと言って、強引にバスルームで美鶴代を脱がせ、
バスルームで乳くりあったあと、ベッドに腰を下ろし、コーラを飲んでいたデビッドは
美鶴代の見せた機具を面白そうに眺め手に取ると自ら早速、装着した。
「ふ〜ん。なんだか乙な気分になってきたな〜。あっ!ホントだ!スゲーデカくなってるよ!」
「それはいいけど、そのマシンに全部発射しちゃわないでよ。お楽しみはこれからなのよ。うふふ。」
「わかってるさ。でもコレ、気持ちい〜い!スゲエな。あっ!あっ!ウゥッ!グエェ〜ッ!」

それだけ言うとデビッドはベッドに仰向けに倒れてしまった。白目を剥いている。
(あれ〜?どういうこと?まさか・・・死んじゃったんじゃ・・・・・?)
デビッドの瞳孔は開ききっており、口から泡を吹いて絶命していた。
(うそぉ〜?死んでしまうなんて聞いてないわ!なんなのよ!?これって!)

デビッド・フォン・エリックは来たる全日本プロレスの蔵前国技館興行で、天龍源一郎とUNヘビー級タイトルマッチを
争うことが決定している。死亡してしまっては、マズい。もちろん美鶴代は殺す指令など受けていない。

そのとき、デビッドのこの部屋に鍵が架かっているのを、ドアを壊して誰かが侵入してくる音がした。
ドカーン!バキバキッ!
(だっ・・・誰なの?凄い力・・・。まさか・・まさか・・・さっきの・・・・?)
ドアノブ部分を破壊して寝室に侵入してきたのは、さっきロビーでデビッドに話し掛けてきた大男であった。
「尻尾を出したな。子猫ちゃん。いやっ。薄汚い女の穴の工作員か?」
「ひっ・・・ひえぇぇぇぇぇぇぇぇ〜っ!」
437虎の穴異聞11-2:2009/07/10(金) 20:25:30 ID:liLyNeKj
「このアマァ。こっぴどくお仕置きしてやるぜ。グッフッフッフッフ。」

美鶴代は、近くにあったコーラ瓶やテレビのリモコン、ハンドバッグを大男に投げつけるが
そんなものは、もちろん全く効果がない。
大男は美鶴代の髪をつかむと、いきなり物凄いビンタを顔面に食らわせた。バツーン!
「グエッ!」
美鶴代の口から血が飛び出てほとばしる。大男は美鶴代の胴体に手を回すと、軽々と持ち上げた。
そしてもう片方の手で美鶴代の尻を平手で叩きはじめた。
「そらっ!お仕置きはケツだぁっ!」
ビシッ!バシッ!ピシッ!パシッ!
「ぎゃぁあああああああ〜っ!お許しぃ〜!後生!お慈悲〜っ!」
「お慈悲は、ないぜ!そらっ!お仕置きだっ!」
今まで味わったことのない強烈な臀部の激痛に美鶴代は、じきに声もあげられなくなった。
かわりに尻が真っ赤に染まり、そして湯気をたてている。そして間もなく美鶴代の太腿を一条の液体が流れ始めた。
「おやおや。もうお漏らしかい?可愛いベイビー。しょーがねえ。ちょっくらシャワーで冷水でも浴びせてから、
 お仕置きの再会だぜ。グッフッフッフッフ。・・・・グワッ!」

ユダヤ系の髭面大男の後頭部に何かが命中した。美鶴代は辛うじてその方角を抱え上げられたまま見た。
438虎の穴異聞11-3:2009/07/10(金) 20:27:56 ID:liLyNeKj
「ゆ・・・・ゆう子?」
「美鶴代っ!何やってんだっ!早く逃げなっ!この化け物はアタシに任せなっ!」

ゆう子は、両手にヨーヨーを持っていた。これのひとつが化け物の後頭部にさっき命中したのだ。
なおもゆう子はヨーヨーを振り回した。3発4発と化け物の顔に命中し、化け物は美鶴代を手放した。
ドサッと絨毯の上に落下した美鶴代に、ゆう子がリュックサックを放り投げた。
「服、着てる暇はないよっ!それと的のペニスに着いてるの持って屋上に逃げなっ!こいつは、デスパーの化け物さっ!」
「で・・・デスパー?」
「説明してる暇はないよっ!足手まといさっ!早くいけっ!」
「ゴ・・・ゴメン。ゆう子。じゃ後でね。」
「ああっ!命があったらねっ!」

美鶴代はデビッドの死体から機具を取ると、全裸のまま、部屋から駆け出し屋上に上がった。日は暮れている。
誰もいない。リュックを開けてみた。黒のつなぎ服と何かビニール地の折りたたまれたものが入っていた。
リモコンのようなものが一緒に入っていて、『ON』のボタンを押すと、ドバッと音がしてジャンプ笠のようなものが
ひらいた。パラグライダーのようだ。こんなもの、どうすればいいのだ?思い出した。アルプスで練習させられたことがあった。
その時、屋上への非常扉がガターンと音をたてて開いた。
「いたぞっ!あの女だっ!捕まえろっ!」
439虎の穴異聞11-4:2009/07/10(金) 20:30:32 ID:liLyNeKj
声の主は5〜6人はいるようだ。捕まってはどうしようもない。
しかしこれだけの人数が待ち伏せていて、それと知らずに仕事しようとしたことと、
今ゆう子が階下でどうなっているか、それが気にかかった。
何から何まで変だ。しかも的が死んでしまうのも聞いていなかった。

美鶴代は全裸のまま黒いつなぎ服を着ずに脇に抱えたまま、パラグライダーを助走させた。
たちまち凄いスピードに乗り、パラグライダーは高輪東武ホテルの屋上を離陸した。

ひとたび離陸すると、この高さでは凄い風力だった。美鶴代が背負ったパラグライダーは
すぐに目の前にある品川プリンスの横っ腹に激突しそうになったが、
練習を思い出し、右手のレバーを引くと急上昇した。ほとんど気を失いかけたが、
なんとかパラグライダーはゆるい上昇カーブを描いて安定飛行に入った。

下は、品川と五反田、高輪の夜の街である。まさか上空を全裸の美女がパラグライダーで飛行しているとは、
誰も想像していまい。東武ホテルの屋上で何か叫んでいた男たちを除いては。

しかし美鶴代は、ゆう子が気がかりだった。果たしてあの器用なふたつのヨーヨーで
あの化け物が退治できたのか?美鶴代はさっき失禁してしまった濡れた股間に
上空の夜風があたり寒気がするのをこらえて、2月の夜空で飛行を続けた。
「それにしても・・・・・。デスパー・・・。デスパーって何?」
=第12話につづく=
440巨人の星その後216:2009/07/10(金) 20:33:13 ID:liLyNeKj
花形啓一と別当薫は、慶応大学の同期生だった。
昭和21年の秋に同時の繰り上げ卒業した二人には、来年、昭和46年の3月
大きな節目の行事を控えていた。

慶応大学OB会は、三田会という。慶応三田キャンパスから取られたこの会は、
実は細部に分かれており、実業界には実業界三田会、
野球選手には野球三田会、などというように同じ業界に身をおく者同士は顔を合わせる機会は多い。

しかしこの次の春は、花形啓一と別当にとっては、卒業から25年目の春にあたる。
三田会全体は、そのOB全員に、卒業から25年目の春に二度目の入学式を授けるのだ。

そして50年目の春には二度目の卒業式が行なわれ、二通目の卒業証書が授与される。
25年目に健在な者は必ず出席するし、50年目に健在な者も必ず出席する。

これが慶應義塾大学の伝統なのだ。
「うまく動いてくれたのかな?警察は。」
「さあ。しかし相手が暴力団だと、大人しく白旗をあげるかどうか。第2第3の犯罪が起きなければいいが・・・。」
別当も案じていた。そろそろ二人とも帝国ホテルをあとにする時間になっていた。別当はボーイに尋ねた。
「どこかテレビのニュースを見れる場所はあるかね?」
ボーイに案内され支配人室に通された別当、花形、小泉の3人はそこのテレビで意外なニュースを見た。
『新宿区の第8機動隊本部が火炎瓶をもった男に襲撃されました。繰り返します。今日午後4時20分頃・・・・。』
=つづく=
441登場人物紹介(巨人の星1):2009/07/10(金) 20:37:58 ID:liLyNeKj
※年齢は、昭和45年現在での設定
★京子 19歳 東京都江東区出身
  元・新宿の女不良少女グループ「竜巻グループ」のリーダー
  15歳のとき母と死別したあと、父親の再婚問題から裕福な家庭を家出、
  浅草のすき焼き屋で働いたこともあるが、徐々に新宿一体で、名を馳せていく。
  オートバイは、750ccでも乗り回せ、オートレーサーを志したほどの腕前。
  情熱的で涙脆いが、意地っ張りの負けず嫌い。自分を美人だと自覚しているが、
  それに群がる男には興味がなく、我儘な自身を理解してくれる男性に脆い。
  飛雄馬に惚れぬいており、それが募ると襲ってくる肉体のうずきを制御できない。
★左門豊作 20歳 熊本県出身
  大洋ホエールズで来期4年目を迎える強打者、京子に片想い中。
★鉄二 45歳 東京都台東区出身
  上野7丁目で、バイク屋「合羽商会」を兄と経営。バイクの知識は天才的。
  戦争中に航空隊で右足を不自由にしている。京子の初恋の相手。
  台東区内で、京子と同居していたこともある。
★ひとみ 44歳 京都府出身 
  京子の母、英子の親友であった。京子の母親代わり。
  五反田で喫茶モンテクリストを経営
★山本警部補 23歳 東京都世田谷区出身
  新宿警察の捜査一課勤務のキャリア警察官、父浩一は元・警視
★衣笠警部 44歳 埼玉県春日部市出身
  新宿警察の捜査四課勤務(マル暴)、勤続22年目のたたき上げデカ
★山本浩一 61歳 東京都世田谷区出身
  元・警視正 退職後、脳梗塞で左半身不随に 慶応義塾大学出身
★古場署長 48歳 新宿警察署署長
★大下警部 25歳 新宿警察捜査一課勤務 
★花形満 20歳 神奈川県横浜市出身
  先シーズンまで阪神タイガースのクリーンアップを勤めた強打者、
  すでに退団し、父が総帥である花形コンツェルンで実業家デビュー
★大谷 25歳 山梨県出身 
  花形コンツェルンの末端社員、京子に一目ぼれしたが性格は凡庸。
★江藤 39歳 福岡県出身
  花形コンツェルンの中間管理職、大谷の上司
★高木 30歳 静岡県出身 江藤の部下
★花形啓一 50歳 神奈川県逗子市出身
  花形コンツェルンの総帥、自分の代で自動車産業に進出
  大企業にまで成長させた。慶応義塾大学卒
★小泉 39歳 神奈川県横須賀市出身 花形啓一の執事兼秘書
442登場人物紹介(巨人の星2):2009/07/10(金) 20:39:45 ID:liLyNeKj
★村山実 33歳 兵庫県神戸市出身
  阪神タイガース監督 兼投手 関西大学卒
★江夏豊 22歳 兵庫県尼崎市出身
  阪神タイガースのエース
★野田誠三 75歳 兵庫県加西市出身
  阪神電鉄社長 阪神タイガースオーナー 京都帝国大学卒
★笠原和夫 50歳 大阪府出身 野球解説者
  元トンボ・ユニオンズ監督 早稲田大学卒、別当とは戦中最期の早慶戦を戦った
★別当薫 50歳 兵庫県西宮市出身
  大洋ホエールス監督、左門を心配している。慶應義塾大学卒。
★水原茂 61歳 香川県高松市出身
  中日ドラゴンズ監督、元・巨人、東映監督 慶応義塾大学卒。
★山田久志 22歳 秋田県能代市出身
  阪急ブレーブスの来期3年目の投手
★ハーリー・レイス 27歳 カンサス州カンサスシティ出身
  プロレスラー 日本プロレスに来日中の大物外国人
★樋口寛治 36歳 神奈川県横浜市出身
  日本プロレスの通訳兼外国人世話係り 法政大学卒 柔道三段
★鬼怒川次郎 55歳 東京都武蔵野市出身
  暴力団鬼怒川組の組長 かつて10回以上の殺人を犯しており
  加虐性の変態性欲者になっている
★黒崎 45歳 東京都福生市出身
  鬼怒川組若頭
★慎吾 22歳 鬼怒川組の組員
★広瀬登喜夫 30歳 愛知県出身
  伝説的オートレーサー、この物語の時期は、冤罪の八百長事件に
  巻きこまれていて出場停止中、後に驚異の復帰を果たす
  川口オートレース場所属
4431:2009/07/10(金) 20:46:06 ID:liLyNeKj
>>435
ありがとうございます
レスラー登場には、やはり気を遣いますが、どうぞ長い目で見てやってください。
虎の穴異聞は、女性キャラを今後増やしていくつもりです。
ヒロインがひとりだと、「京子」のようにマドンナ化して、
こちらも人物描写過剰ぎみになり、エロ方向にシフトが困難になってしまいますのでw。

今後は味方、敵、含め女性キャラ増量で励みたいと思います。
巨人の星は最終段階に入りつつあります。人物紹介を入れましたので、どうぞ参考までに。
444名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 03:15:54 ID:R1DjIcIR
このスレの執筆者陣の想像力と書く力には感服
今後はエロ風カラテ西部劇や、女子プロ野球、変態スーパースター列伝なんかにも
挑戦してほしい
445女悪役ブルース:2009/07/11(土) 10:53:32 ID:THsCZWOo
距離がとれないというのは、格闘技においてどれほどハンデになるかと
いうことを、月子は十分知っていた。しかし、一定以上の実力差があれば、
それを補って余りある。実際に最初の二人は何も出来ず月子にKOされた。
だが相手がゼロクラスの実力者となれば話は違う。
下手に固め技にいって、大技で切り替えされたら、一瞬で自分がKOされる
可能性も十分にある。地下デビュー以来一度も敗北を知らない月子に
とっても、ゼロは最強の敵であり、地上のプロレスでデビューするに
当たっての試練としては十分だった。
互いに相手の息使いまで聞こえそうな近距離、睨み合ったまま、どちらも
手を出せない。いつもなら過激な野次で二人を煽る観衆も、この時だけは
静かだった。デビュー以来無敗の月子が、もしかしたら敗北する可能性が
わずかでも存在し、月子が全裸に剥かれることも考えられる。
月子が勝った場合も、地上のプロレスで実力1のゼロが全裸を晒すこと
になる。それに月子はゼロのマスク剥ぎも宣言している。謎に包まれている
ゼロの正体が暴かれることにもなる。観衆達にもいつもと違う緊張感が
漂っていた。
446女悪役ブルース:2009/07/11(土) 11:27:22 ID:THsCZWOo
先に仕掛けたのはゼロだった。三沢並みのエルボーを月子の顔面に
叩き込む。ゴッ!!ゴッ!!と重い打撃音が響く。くず折れそうになる
月子を、手錠の作用で無理矢理たたせ、今度は腹にニーを入れる。
2発、3発膝が入る度、月子の体が大きくしなり、体が落ちていく。
4発目を叩き込まれ、ついに月子は腰からストンと落ちた。
リング下で見ている純には、意外といっては失礼と思いながら、
今更ながら、ゼロのガチンコ強さ、デスマッチ慣れに感心した。
実力的には互角でも、月子の持つ怪しい格闘センスは、純が今まで
見た格闘家の中でも、群を抜いてる。どんな技も通じる気がしなかった。
しかし、ゼロのラフファイトは確かに月子を追い詰めている。
ゼロはダウンした月子の首に足を絡めると、やや変形だが首四の字を決めた。
痛め技としてではない、決め技として、グイグイと首を絞めていく。
月子の顔から血の気が引いていき、青ざめていく。
月子の敗北が現実味を帯びてくると、観衆は騒ぎ出した
「おいおい、本当に月子が負けちゃうのか」「へへっ、それはそれで
お楽しみだぜ」「ゼローッ!いいぞーっ!そのまま脱がしちまえ!」
「客なんて残酷なもんだよな月子。勝ち続けてる時は持ち上げてくれても、
一旦負けそうになればこんなもんさ。どれ、じゃ客の要望に応えてやるか」
そう言うとゼロは、少し体を浮かせ、月子のスパンコールの水着に
手を掛け、調度胸の辺りを引き裂いた。
そこはまるで、一度も陽に当たったことがないような白い肌が露出し
乳首はギリギリ見えないが、形の良い乳房のふくらみは見えた。
「いいぞーっゼローッ!全部脱がしちまえ!」観客の声に、ゼロは
更に大きく水着を引き裂こうと体を浮かしたが、その為足が
月子の首から一緒に浮いたのを月子は見逃さなかった。
447女悪役ブルース:2009/07/11(土) 11:58:54 ID:THsCZWOo
一瞬で、首を抜くと月子は強靭な体のバネで、カウンター気味に
自分の足で、ゼロの首を挟むと首投げで、ゼロを頭から落とした。
膝立ちになった月子は覚めた目で
「少し見せ場を作ってやったら、調子に乗りやがって!よくも
あたしの水着に手を掛けてくれたな、お礼はたっぷりしてやるよ」
リング下の純は落ち着きが無くなってきていた。
やはりゼロでも月子には勝てない、この後のなぶり殺しのような
凄惨なリング上での処刑が目に浮かぶ。
「水着を破られた恥ずかしさで、テコの原理みたいに体が動いただけの
くせに偉そうなこというなよ。ほら、優しく脱がしてやるからこっちに来な」
ゼロの強がりもなんとなく、無理があるのが純にはよくわかる。
ゼロの挑発など無視するように、月子はゼロに体を絡ませると、ヘッドロック
で頭を締め付ける。すかさずゼロはバックドロップにいくが、月子が宙空に
浮いたところで、手錠のチェーンが引っかかり、逆に月子に浴びせ倒された。
「この程度の返しがあることも読めないようじゃ、あたしには勝てないよゼロ」
マウントポジションをとった月子の攻めは、ゼロに一切反撃を許さない
一分の隙もない、寝技のラッシュだった。縦四方横四方と、チェーンが
邪魔をするが、確実にゼロの全身から力を奪っていった。
再びマウントの体勢に戻ると、タコ殴りにゼロの顔面にパンチを入れる。
何発その重いパンチが入ったろう、残忍な笑みを浮かべて殴り続ける
月子に、会場が静まり返りだした時、ゼロの口から血が吐き出され、
そこでやっと、月子は攻撃の手を止めた。
448女悪役ブルース:2009/07/11(土) 12:38:16 ID:THsCZWOo
「ふんっ!やっとお眠りしたかい、それじゃさっそく脱がすとするか。
おいっ!レフェリー鍵をはずしな」
リング下にいたレフェリーが上がってきて、ゼロの手首にかかって
いた手錠をはずし、すぐレフェリーは下に降りた。右手に手錠がぶら下がった
状態で、月子は失神しているゼロの服に手を掛けた。
タンクトップと、パンタロン風のズボンを脱がすと、上下とも
黒の下着を着けていた。そのままゼロを中腰に起こすと、まず
ブラジャーの紐を解きにかかる。ポロンとその黒のレースのブラは
はずれ、下に落ちる。表れた乳房はかなり貧乳で、乳首だけが
やけに黒かった。
「はははっ!悪の女王様がこんな貧乳だったとはな」
「それにこの女、やけに乳首が黒いな。かなりのヤリマンじゃねーのか!」
観客の声が、純には辛かった。自分を守ってくれた、ゼロを本当なら
今度は自分が守らなければいけないはずだ。だがどうしていいかわからない。
悩んでいるうちに、リング上の処刑は続く。
ブラに続けて、黒のレースパンティーに月子の手が伸びズルズルと脱がされた。
「ウオーッ!」歓声ともつかない声が会場に上がる。
そして遂に、月子はゼロの太腿の下に手を入れると、勢いよく持ち上げた。
「ヒャッ!ヒャッ!遂にやったぜ、クイーンゼロのオマンコだ!」
「すげーなこの女、ケツまで真っ黒だぜ!」
観衆の言う通り、ゼロの陰部は剛毛に包まれていた、臍の下、間もなく
から、濃い毛の密生は始まり、陰唇を囲む毛は、いやらしくよじれ、
肥大し、黒々とした大陰唇をも包み、中心で小陰唇の中が赤く濡れそぼる
のが余計に淫猥だった。更にその濃い毛は尻の割れ目まで達し、肛門の
周辺も覆っていた。
全てを晒されたゼロの股間を、純は見つめていた。この体育館に来てから
何人もの女の裸を見てきたが、ゼロの裸が一番美しく思えた。
その時、ゼロの肛門が大きく収縮を始めた、まるで大便でも出るかの
ように上下に収縮した。純はちらりとゼロの顔を見たが、一瞬目が会ったような
気がしたが気のせいか、次の瞬間には先ほどまでと同じく、口を半開きに失神した
ゼロの顔がそこにあった。
449女悪役ブルース:2009/07/11(土) 13:04:24 ID:THsCZWOo
(早くしなきゃゼロのマスクが剥される!間に合わない!!)
気持ちはあせる純だが、ゼロの股間から目が離せない。
観衆からは、更に下品な歓声が上がってる
「氷点下ゼロどころか、沸点100度位のコーマンしてやがるな!」
「どんどん濡れてきてるぞ、それともおしっこ抱っこで、本当におしっこかな!?」
笑い声が上がるが、確かにゼロの股間から、尿とも愛液ともつかない
液体がたれていた。そして純に気になる会話が聞こえてきた
「なあ、俺どっかでこのマンコ見たことあるような気がするんだけどなあ」
「ははは、クイーンゼロがお前のカーちゃんだってか!」
「馬鹿野朗!!そんなんじゃねーよ!・・・でも思い出せないんだよな」
「どうせこの後マスクが剥されりゃわかるこった」「それもそうだな」
男達の会話の間、抱えたゼロを月子はゆっくりとリング上を一周して
視姦させ終えるとこだった。
あせる純の目の前にレフェリーの男が立っていた。
(そうだ・・・)思いついた純はレフェリーの後ろに立ち
「鍵を寄越しな」「バ、バカなこというな!!まだ終わっても、グッ・・・」
延髄に手刀を入れ昏倒させると、ポケットから手錠の鍵を抜き取った。
リングの上では、一周し終えた月子が、ゼロをマットにおろし、
再び中腰にすると、マスクのアゴの部分に両手を沿え宣言した
「只今よりクイーンゼロのマスクを剥ぐ!!」
「いいぞーっ!やれやれーっ!」
「地上のリングでも謎に包まれていたゼロの正体を、俺達だけがみれるぞ!!」
「ケツの穴まで見てしまったら、謎の正体もクソもないがな」
450女悪役ブルース:2009/07/11(土) 13:35:14 ID:THsCZWOo
アゴからマスクは捲り上がっていった。
シャープに尖ったアゴが見え、開口部からも見えていた、失神してだらしなく
開いた口が見えてくる。脱がしに関しても、エンターティナーの月子は
一気にマスクを剥さず、ジリジリとゆっくり剥していった。
「そんなにじらすなよ月子ーっ!」「でも正体はなかなかの美人みたいだぞ」
さらにマスクは捲り上げられ、形良く高い鼻が露出した、素顔の下半分が見え
顔の雰囲気がわかる程になってきた。
「なんか見たことがあるような顔の気がするなあ・・」
そして目の下ギリギリまでマスクは捲れ上がり、素顔の3/2が見えている
目だけが隠れているが、ほとんど顔の表情までが読み取れそうなほど
だ、一部の観衆から「もしかして、こいつ・・・」
何人かが、ゼロの正体に気付始めた。
その時
「デヤーッ!!」飛び蹴りと共にリングに純が飛び込み、月子をロープまで
吹き飛ばした。
「お前、こんなことしてただで済むと思ってるのか!」
月子に恫喝され、すぐその月子の側に行くと
「だからこうするの」ガチャリ・・
月子の片手に残ってた手錠の片方をロープに掛けてしまった。
「こ、この野朗!!」
全裸のゼロを純が担いだその時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
「や、やばい!警察の手入れだ!!」「みんな早く逃げろ!」
一気に体育館の中は修羅場と化す。
「早くあたしの手錠を外しな、あのガキぶっ殺してやる!!」
「鍵は私が持ってるよ〜ん」純が鍵を右往左往する観衆の中に投げ入れた。
「クソッ!ロープを切れ!あのガキーッ!」月子の怒りは納まらない。
「月子まずいよ、警察が来る前に取り合えず逃げよう!
あのガキはそれからにしよう」
それぞれが、それぞれに散っていった。
451女悪役ブルース:2009/07/11(土) 13:44:45 ID:THsCZWOo
>>418
おそらく国内では手錠マッチの前例はないでしょう。海外でもほとんど
ないでしょうね。こういう現実には有り得ないデスマッチを作品世界に
持ち込むのも梶原作品の特徴ですね。

現在私のパソコンが壊れていて、この書き込みは仕事帰りか、休みの日に
ネットカフェで書いてます。レスが遅くなり申し訳ありません。
間もなく、虎の穴の魔神像を模った、自作PCが完成しますので、
それまで失礼をお許し下さい。
452名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 16:15:46 ID:qtaNY8Ff
>>437

>「そらっ!お仕置きはケツだぁっ!」
スーパースター列伝 乙
453巨人の星その後217:2009/07/11(土) 21:39:52 ID:Vy98Sezv
鬼怒川組事務所と目と鼻の先にある機動隊第8本部からは黒い炎があがっていた。
鬼怒川組に張り付いていた山本、衣笠らの新宿署の刑事たちにも
パトカー無線でその様子は伝わっていた。
一時的に、刑事達はパトカー、覆面パトカーに戻っていた。

「どこの過激派よ?公安はもう本部おいたの?」
「わかりません。われわれ、牛込は一度、署に戻るように言われています。
 新宿の皆さんには、その指示は出ていないようですが・・・。」
「もう面倒くせーな!いちいちお伺いたてんのがよ!もっとパッとできないのかね?!パッと!」

衣笠はイラついていた。降って涌いたような機動隊への襲撃事件に本庁も牛込も公安も
テンヤワンヤなのは、わかるとしても、指示系統が錯綜していては、今、衣笠たちの踏んでいるヤマは
動きようがない。

「おい!山本警部補さんよ?なんか聞いてる?」
「指示が出ていないということは、このままここに張り付いてるしかないということでしょ?」
「カァーッ!アンタはいいねぇ〜。上に忠実にしてることに疑いを持ってないから。」
「どういう意味ですか?」
「いや、別に。」
衣笠は鼻の横をコリコリと掻きながら、上目遣いに山本を見た。
454巨人の星その後218:2009/07/11(土) 21:42:58 ID:Vy98Sezv
「ところでよ。山本っさんよ。聞いたぜ。」
衣笠は鼻で笑うと、胸ポケットからショートピースの箱を出すと
1本取り出しマッチで火をつけた。

「何をですか?」
「お母様が入院されたそうじゃねーか?いいのかい?こんなところにいてよ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「大事な大事なお母様の具合がお悪いときに、顔を見せねーでいいのかい?
 親孝行したいときには・・・って言うぜ。意地悪で言ってんじゃねーぜ。今度ばかりは。」
「フッ・・・。衣笠さんに心配してもらえるとはね・・・。うちのお袋も幸せ者だ。」
「おい!心配じゃねーのかよ?アンタ一人っ子なんだろ?」
「キレイゴトを言うつもりは、ありませんが、僕もデカの端くれですからね。」
「デカは親の死に目に会えねーし、畳の上じゃ死ねねーってあれか?
 アレはあんたらキャリアにゃ関係ねえ話さ。這いずり回るのは、俺ら糞デカの役目でな。」
「糞デカ?」
「なんだ?知らねーのかよ?糞デカの意味。」
「いえ、知りませんね。教えて下さいよ。」
455巨人の星その後219:2009/07/11(土) 21:45:18 ID:Vy98Sezv
そのとき、新宿署の四課刑事が鬼怒川組の前に駐車された
パトカーから走り寄って来た。
「衣笠さーん!山本警部補ーっ!」
「あん?機動隊本部が爆破でもされたか?」
「大変です!大変なことが分かりました!」
「だから何だよっ?」

息を切らしてその刑事は驚くことを二人に告げた。
「じっ・・実は、第8機動隊に火炎瓶投げ込んだ奴・・・・。鬼怒川組の構成員らしいんです!」
「なっ・・・なにぃ〜!?」
「何ですって!?」

「ですんで、衣笠さんっ!面通しと尋問に立会いいただきたいと、牛込が言ってきてます!
 すぐここを離れて、ご一緒くださいっ!」
「オイ!マジかよ〜っ!?なんでアイツラそんなこと、しやがったんだ?」
「変ですよ。これは。衣笠さんっ!」
山本も衣笠も驚きながらも腑に落ちないものが、あった。
「チッキショー!鬼怒川のジジイに直接、聞いてやるっ!」
衣笠は鬼怒川の事務所に再度、入り込もうとした。山本も続く。
「おいっ!組長さんよっ!なんのつもりだいっ!?こりゃ!・・・・・・・・・・・!!」
「ま・・・まさか、衣笠さん!」
山本は衣笠と鬼怒川組の事務所に踏み込むと、すぐに顔を見合わせた。
「鬼怒川のジジイっ!ズラかりやがった!こいつぁ一芝居うちやがったっ!」
=つづく=
456虎の穴異聞12−1:2009/07/11(土) 21:48:37 ID:Vy98Sezv
ゆう子の放ったヨーヨー攻撃は、しかし怪物を一時的に面喰わせただけにすぎなかった。
「カマーン!それでおしまいかよ?グッフッフッフッフ。」
「ヤローっ!今度こそくたばりなっ!」
ゆう子は、一旦2個のヨーヨーをキャッチすると、それの内部から鋭利な刃物状の部分を取り出した。
まるでヨーヨーに仕込まれた三枚刃の手裏剣のような形だ。これが喉元にでも命中すれば、致命傷を負わせることができる。
しかしゆう子の投げた2個の三枚刃手裏剣は、いとも簡単に怪物にヒモ部分から掴み取られてしまった。
自分の投げるヨーヨーは時速170キロは出ているはずだ。それを見切ってキャッチしてしまうとは、
この化け物は反射神経も只者ではない。真っ赤なレーシング・スーツに身を包んだゆう子の顔は青ざめた。

「遊びは終わりだぜ。」
怪物はヒモごとヨーヨーを巻き取り奪い取ってしまうと、自分の後方に投げ捨てた。
「チッキショーっ!」
ゆう子が、空手のポーズから上段のまわし蹴りを見舞い始めた。それは美しく華麗な蹴りだったが、もちろん通用しなかった。
「窮鼠猫を噛むと日本では言うそうだが、猫キックは見るには楽しいが、それで俺様を倒せると思ってる所が可愛いぜ。」
バスッと音がしてゆう子の華麗な回し蹴りはキャッチされてしまった。
「はなせーっ!はなしやがれーっ!」
片足を捕まれたまま抵抗を見せるゆう子のもう片方の足を怪物はキャッチすると、そのまま逆さ吊りに持ち上げた。
「そらよっ!」
「うぎゃあーっ!」
グイーン!と怪物は力まかせに、ゆう子の両足を左右に開き、股裂きにした。逆さ吊り股裂きの刑の格好である。
ゆう子は、これだけで完全に失神してしまった。目を剥いてヨダレを垂れてしまっていた。
457虎の穴異聞12−2:2009/07/11(土) 21:50:22 ID:Vy98Sezv
「さて、どうしたもんかね?」
喋っているのは、さっき屋上まで、美鶴代を追跡していた真っ黒なサングラスにダーク・スーツを御揃いにした
5人の男たちだった。どれも欧米人のようだが、髪の色はマチマチで金髪も黒髪も、そして白髪まじりもいる。
「俺はデビッドを検死してもらう手続きをしなきゃならん。プロモーターの馬場に代わりのコンテンダーを来日してもらう手筈もな。」
怪物はいうと部屋の電話を掴んだ。
「その馬場ってプロモーターは、この話を事件にせずにまとめられる人物なのかい?フランクよ。」
「多分な。馬場のバックにはテレビ局と大手新聞社がついている。それも日本のメディア王と言われるところの新聞社だ。」
「だろうな。昔に国交もないのにチベットからダライ・マラ法皇を来日させたこともある実力者のようだな。
 現在はその2代目だが、中国にも遠慮なしに先日もダライ・マラを再来日させたらしい。」
「こっちのほうは、俺に任せてもらえればいいが、その女スパイの処遇はお前たちに任せるぜ。」

「なんだって?フランク。こんな上玉の女を拷問するのに、お前さん立ち会わねーってのかい?」
「ああ。この俺だってサドッ気がないわけじゃないが、どうもひとりの女を人数で寄ってたかってってのが苦手でな。遠慮しとくぜ。」
「おいおい。フランク。こんないい女を拷問するのを面白がらんとは、お前さんは変人の部類だぞ。」
「一度しか言わねーぜ。お前たちの部屋へ持っていってからヤリな。ここには、じきに検死官も来るんだ。」
「うししし。そうかい。わかったぜ。じゃあ首尾が終わったら知らせてくれや。俺たちゃ隣の部屋で饗宴と洒落込むぜ。」

サングラスの男たちは気絶したままの、ゆう子を運び出して、部屋から出て行った。
「ひとりじゃ何にもできねえバム(うじ虫)どもめっ!」
フランクは呟いてから電話を回し始めた。白目を剥いたデビッドの遺体はまだベッドに仰向けに横たわっていた。
458虎の穴異聞12−3:2009/07/11(土) 21:52:27 ID:Vy98Sezv
ゆう子は失神から回復すると、すでに自分が全裸にされているのを悟った。
手は後ろ手錠に拘束されて、絨毯の上に裸体を転がされていた。
「気がついたかね?勇敢な女スパイちゃんよ。グッフッフッフッフ。」
「ど・・・どうしようってのさっ!さっさと殺しなって!」
「グッフッフッフッフ。その身に寸鉄帯びておらんことは、充分に身体検査させてもらったぜ。だがこれからが本番だ。
 昔からスパイは絞首刑ときまっとるが、おまえは絞首刑ではなく、おまえの”女”を吊られるのだ。」
(”女”を吊る?こいつら、サディスト揃いのようだけど、一体アタシの体に何を・・・・。)

ゆう子の杞憂は、自身の運命をしかし悟るものではなかった。男たちは魚釣りで使う
ナイロン質の釣り糸のリール状のカートリッジを持ち出してきた。
「なっ・・・なにをする気だいっ!?やめろ!やめろってばっ!変態どもがっ!」
「せいぜい尖がって見せなって。そのほうが痛ぶり甲斐があるってもんよ。もっとも大事な所がじきに尖ってくるぜ〜。」

男たちは、4人がかりでゆう子の手足を押さえつけ、もうひとりがゆう子の花弁を器用に割り開くと、そこに鎮座する肉の芽を摘み上げた。
「きゃっ!なにを・・・・!?ま・・・まさか?」
「その『まさか』だぜ。グッフッフッフッフ。そぉ〜れ。出来上がりだ。いい声で泣きなって。」
ゆう子の肉芽に結び付けられた釣り糸は、天井のシャンデリアにそのリールをくぐらせると、ひとりの男がそのリールをキャッチして手に持った。
「アッ・・・アッ・・・・ヒッ・・ヒエェ〜ッ!」
「ガッハッハッハッハッハッハッハッ!一丁上がり〜っ!これぞ首吊りならぬクリ吊りの刑!」
459虎の穴異聞12−4:2009/07/11(土) 21:55:34 ID:Vy98Sezv
「ア・・・・・・・ア・・・・・アッ・・・お・・・お慈悲を・・・・・・」
ゆう子は、クリトリスが千切れてしまわないように、ブリッジで耐えようとした。
たちまち全身から脂汗が流れ出した。濃厚な女のフェロモンが室内に充満し始めた。

「フフフッ・・・。女の穴の女スパイも、こういうザマを晒しては、おしまいだな。」
「首吊りのほうが、ましと思わんか?女そのものを吊る。つまり陰核をナイロン釣り糸で吊り上げられるよりは。」

天井のシャンデリアの光にナイロン糸がキラめいている。その下では、ゆう子が地獄の拷問に耐えてつつ、
ブリッジしながらも、その肉体は小刻みに震えていた。
「そろそろ味付けするか。フフッ・・・。」
男のひとりが、コーヒーフレッシュのポーションを取り出すと、ゆう子の”女”が吊られたままの股間に垂らし始めた。
「ヒッ・・ヒェ・・・。」
「なぜコーヒーフレッシュを垂らしたか?その訳がすぐに分かるぜ。」
男がそこに一匹のチワワを連れてきた。リードを付けられたままのチワワは辺りをピョンピョン飛び跳ねていたが、やがて
ゆう子の股間をクンクンし始めた。
「やめてえーッ!!」
チワワはゆう子の股間に注がれたコーヒーフレッシュをペロペロ、ピチャピチャと舐め始めた。
「ヒエエエーッ」
なおもチワワは、小さな舌でゆう子の股間をくまなく舐めてゆく。
「アオオ〜ッ 殺してえ〜ッ!!」
「快くなるのが怖いとは因果な話よな。」
男たちの笑い声が室内にこだまする。「アハハハハハ!」 「ガハハハハハハ!」
ブリッジで耐えるゆう子に、さらに残酷な仕打ちがなされた。男のひとりがシャンデリアに架かっている釣り糸をツイッと弱く引っ張ったのだ。
「ギエエエーッ」
ゆう子の股間から噴水のような小水が、噴き出した。それがチワワにかかりチワワは「キャウン」と小さく鳴いた。
「天国と地獄に片足ずつかけてやがる。クククッ・・・・。」

=第13話につづく=
460:2009/07/11(土) 21:58:53 ID:Vy98Sezv
>>451
虎の穴の大魔神像PC、写真もUPしてほしいものです
たいへんそうですが、ご健闘を祈ります
>>452
ありがとうございます
461名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 02:05:43 ID:q2V/KWdv
エロパロ板らしくなってまいりましたwww
首吊りならぬクリ吊りの刑ってのも、カジセンセっぽいセンスでいいですねw
462名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 03:02:14 ID:DgEUx+QF
バター+マルチーズがコーヒーフレッシュ+チワワになってる点もセンス抜群ww
463名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 19:31:38 ID:OI5wXknW
>>458
>>459
この陰核吊り上げなめ犬責めは新カラテ地獄変の
伝説的シーンだからなw
陰核吊りは団鬼六のオリジナルだが
ここになめ犬をドッキングさせたのはカジセンセの天才的サド気質wwww

おれが好きなのは斬殺者で女忍者がさせられた股間綱渡りw
乞う期待
464巨人の星その後220:2009/07/12(日) 22:10:36 ID:veu2dsmO
京子は、東五反田の喫茶モンテクリストに戻ってきた。
用心しながら戻ってきたので、時計はすでに午後7時を回っていた。
表通りをなるべく通らず、路地ばかりを伝え歩いて戻ってきた。
桜田通の店の玄関ではなく、路地裏から勝手口に出た。
店の灯りは消えていた。この裏側から見たら周辺も真っ暗である。

勝手口のドアノブを回してみた。ドアは開いていた。
ひとみが拉致されたことの確証はなかったが、それで仲々警察にも取り合ってもらえなかった。
しかし最後に繋がった新宿署の刑事が動いてくれるようだった。
当初は、牛込に電話をかけなおすように、またタライ回しにされかかったが。

店の中に入った。シーンとしている。人の気配もない。
スイッチを押して店内の灯りを点けた。厨房と店部分の明かりがパッと点いた。
やはり誰もいなかった。カウンターの上に京子の白いボストンバッグがチャックがあいたままの
状態で放置されていた。中を改めたのだろう。そしてやはりひとみの姿もない。
念のため2階にも上がってみた。やはり誰もいなかった。
465巨人の星その後221:2009/07/12(日) 22:12:12 ID:veu2dsmO
カウンターの上には、メモが遺されていた。
『お京か、かくにんしろ』『ここにもどらせろ』『はやくはやく』と
走り書きされた文字は、かなり急いで書かれたもので
ひとみの字ではなかった。昼間に柘榴坂付近でヤクザ
追いまわされたあと、京子が品川駅の裏側の電話ボックスから
この店に電話をかけたときに、ひとみが応対したとき横にいたヤクザが書いたものだろう。
電話に出ていたひとみに、こも要件を伝えようとしたものであることは、京子にも察せられた。

どうしたものか?警察に。午後にきいた新宿警察の番号に
その後どうなったか問い合わせてみようか?連れ去られたひとみが、ヒョッコリ帰ってくるようにも思えなかった。
その時、電話が鳴った。
誰だろう?警察か?いや警察ならここに電話してくる用はないはずだ。もしや・・・。

まさか左門が、今一度電話してくることもあるまい・・・。とすれば・・。
京子は電話を取った。声は立てずにしばらく聞き耳をたてて、相手の様子をうかがった。
しばらく相手も黙っていた。しかしそののち、受話器から聴こえた声は京子にとって反吐が出るほど
嫌な相手の声だった。

「お京か?・・・・お京だな?おい。味なマネ、してくれんじゃねーかい。サツに垂れこみやがったな。」
「そっちの用はなんだい?叔母さまは無事なんだろうね?」
「グッフッフッフッフ。用は分かってるはずだがな。言わなきゃ分かんね〜かい?ああ?」
「このスケベ野郎っ!スケベじじいっ!どうしろって言うのさっ!?」
466虎の穴異聞13−1:2009/07/12(日) 22:14:41 ID:veu2dsmO
デビッド・フォン・エリック急死の報道は、急性心不全との診断とともに翌日発表された。
蔵前国技館で行なわれる予定だった試合は急遽アメリカからリッキー・スティムボードが来日し代役を務めた。
その試合は、ジャンボ鶴田がニック・ボックウィンクルを破り、日本人初のAWA世界チャンピオンになった試合の
セミ・ファイナルとして行なわれたが、試合はもり上がらず天龍のシングル初戴冠という事実以外にファンの記憶に
残るものにはならなかった。

それから1ヶ月がたった3月下旬、代官山のフィットネス・クラブにある温水プールは、本日貸しきりの案内板がつるされ、
締め切られていたが、中にはひとりのグラマーな女性が悠々と泳いでいた。ビキニ姿である。
その周りにはカメラマンが2人、照明とスタイリストが、合計6人、つきっきりで撮影に臨んでいた。
「オッケー!あがりっ!しのぶちゃん、グッジョブだったよ。お疲れ様〜。」
グラビア撮影が終わり、まだ20歳になったばかりのしのぶと呼ばれたグラマーな女性は
マネージャーからタオルを渡されるとそれを手にとり、そのグラマーな肉体を拭きながらプールサイドを歩いていた。

「しのぶちゃん。あのお方が見えてるわよ。」
マネージャーは顎でその方角をさすと、しのぶにひとりの老女を案内した。プールサイドに不似合いな
マント姿に山高帽、ロイド眼鏡といった場違いな雰囲気は案内されずとも、しのぶは気付いていた。
「仕事も順調なようだな。トリプルB。ところで本職のほうの指示にきた。これを持って京王プラザホテルにゆけ。
 名前を告げフロントに預けてあるものを受け取るのだ。ミッションは、本日午後9時。以上だ。」
老女は、小さなピルケースを渡しその場を立ち去った。
「ねえ。あの人、誰なの?身内?ときどき突然現れるけど・・・。」
マネージャーが問いただすが、しのぶは手を振りそれを遮った。それだけの動作で巨大な乳房がユサユサと揺れる。
「うるさいわねっ!アタシに質問は許さないって言ったはずよっ!今度くだらない質問をしたらクビにしてやるからっ!」
しのぶは、高慢チキに30歳前後の女マネージャーに毒づくと、大きな胸と桃尻をユサユサ揺らしながら更衣室にむかった。
467虎の穴異聞13−2:2009/07/12(日) 22:16:31 ID:veu2dsmO
しのぶは、京王プラザホテルのフロントで受け取ったもの、ハンドバッグの中を改めた。
(またコレかぁ・・・・・・。)
思わず溜息を洩らしたが、ホテルを出ると前のタクシー乗り場からタクシーに乗り込んだ。
「ちょっと待って。え〜と・・。赤坂プリンスよっ!急いでねっ!」
高飛車にそう告げると、バッグの中を物色した。
(やれやれ・・・。またガキじゃなきゃいいけど・・・。アタシの相手ってガキばっかりなのよね〜。ガキはアタシの大きなお乳が
 タイプなのかしら?嫌だな〜。年下は嫌いなんだけど・・・。)

ホテルは赤坂プリンスについた。しのぶはボーイを相手にせずツカツカとヒールを鳴らして中に入った。
ビキニではなく、ブリリアント・ブルーのワンピースだが、それでも巨乳と桃尻はユサユサと揺れる。
横目で凝視しているロビーの紳士は、全員が鼻の下を伸ばしていたが、しのぶはもちろん目もくれない。

ホテルの新館正面から、西出口へ回るとしのぶは、料亭清水の庭園を音もなく通り抜け、紀尾井町通に出た。
そのままニューオータニの庭園から通用口へ入ると、非常階段を登り始めた。
(やれやれ・・・。こんな重労働だと、また足が太くなるわ・・・。ったく。)
最上階のスイートルームのドアをノックした。
「グッド・イヴニング・・・。お待たせしたかしら?」
しのぶは、すっかり営業用の顔になっていた。
468虎の穴異聞13−3:2009/07/12(日) 22:18:20 ID:veu2dsmO
スイートルームの主は、まだ童顔の白人青年だった。まだ少年かも知れない。
(うわぁ〜。またガキじゃん!嫌だね〜。ガキのくせにプロの女抱くなんて、こいつサイテー!)

「WOW!チャーミングだぁ!やった!やった!今夜はサイコーにラッキーだよ!」
少年はソファから立ち上がると、いきなりワンピース越しに、しのぶの巨乳をギュッとワシ掴みにした。
「ちょっと痛いわよっ!いきなり。坊やは、いくつなの?」
「ボクまだ16歳さ。で、オッパイの大きな年上の女性じゃないとダメなんだ!ユーはまさにタイプだよっ!」
(バカか?こいつ。誰が好き好んでテメエの相手になんかなるかっ!?哺乳瓶でもカジってなっ!)

少年は、史上最年少でポーランドの国際ピアノ・コンクールで優勝したばかりの神童らしい。
しかし、しのぶは音楽のことは興味がなかったし、このように才能に天狗になったガキが大嫌いだった。
シャワールームはガラス越しに見えるようになっている。ガキからしのぶが見えるように、
しのぶからもガキが見えていた。早くも自分の一物をしのぶのシャワー姿を見ながらシゴいているようだ。
(勝手にオナニーでもして、そのまま寝てくれないかなぁ〜?ああ嫌だ嫌だ!)

しのぶがシャワーを出るとベッドに歩み寄るまでに少年が飛びついてきた。
「早く早く!ボクもう我慢できないよっ!」
「はいはい。おませさんね〜。」
469虎の穴異聞13−4:2009/07/12(日) 22:19:59 ID:veu2dsmO
ベッドで少年は、しのぶの乳房を堪能していた。揉み、舐め、乳首を吸い、そして摘み上げたりした。
「ちょっと痛いわよっ!何、考えてんのよっ!」
しかし少年は無視して、今度はしのぶをうつ伏せにした。
「大きなお尻だ。大きな桃みたいだな〜。こんなお尻に頬ずりしてみたかったんだぁ〜。」
今度は、しのぶの桃尻に頬ずりをし、さらに手の平で愛撫した。
(コイツ、インポの年寄りみたいだわね・・・・。よっぽど屈折してるんだろうけど・・・。)

そのとき、少年の指が、しのぶの尻の割れ目に滑り込んできた。そこにある菊の蕾をさぐりあてた。
「きゃぁっ!変態っ!」
しのぶは慌てて体を起こすと、少年の顔にビンタを食らわした。ビシーッ!
「痛っ!何もブたなくてもっ!」
「そんなことする変態は、絶対お断りよっ!アタシはこう見えても日本じゃスーパーグラビア・アイドルなんだからっ!」
「悪かったよ・・・。気を悪くしないでくれ・・・。二度とあんなところには触れないよ。」
「約束よっ!今度触ったら、その100万ドルとかいう指を切り落とすわよっ!」
「ウン。でも、おっかないな〜。でも怒った顔も最高にセクシーさ。ユーは。」
(バ〜カ!早く仕事を片付けよっと!)

=第14話につづく=
470:2009/07/12(日) 22:26:39 ID:veu2dsmO
>>461
微妙な言葉の言い回しって梶原一騎先生は天才ですよね
「いうなれば尻の穴固め(アヌス・ホールド)!!」とか「赤貝の剥き身」とかww
いいニュアンスがあんなふうにヒラめくことができたら、いいんですがw
>>462
バターを塗りこめるというのは、チト抵抗がありますw
>>463
そうですね 「斬殺者」はぜひ参考にしたい作品です 時代モノも挑戦したいですが。。
471虎の穴異聞14−1:2009/07/13(月) 20:52:59 ID:Y0HXYx61
「ねえ。これ飲んでみない?余計に気持ちよくなるし、
 おチンチンがグーンと大きいまま長持ちするお薬なの。」
「ウンウン。ボク何でも言うこときくよ。これ飲めばいいんだね?」

(こういうところは、やっぱガキなのよね〜。助かるわ。)
少年は薬を飲んだ。すると目を輝かせ、またしのぶにシャブリついてきた。
「ちょ・・・ちょっと・・・。待って。もうひとついいものがあるのよ。」
「何?何?なんだい?」
「これよ。これをつけてほしいの。とっても気持ちよくなるマシンなのよ。」
「ウンウン。これ付けるんだね。でも、ちょっと待ってよ。ひとつ確認してから。」
「確認?なんの?なにを確認するの?」

一瞬しのぶは、ギョッとした。何か自分の正体にまつわることなのか?そういえば最近、女の穴のメンバーが
任務中に消息を絶ったことが何度かあったはずだ。
「ウン。ぼくね。これを確認するのさ。」
そう言うと、少年はさっきしのぶの肛門に当てた自分の人差し指を自分の鼻孔にあてがった。クンクン。
「あ〜。いい匂いだ。この匂い。ボクの女神様でもお尻の穴は、こんな匂いがするんだぁ〜。フフッ。」
「ばっ・・・バカッ!変態っ!早くそれを付けなさいっ!」
(こいつ、スカトロジストなのね・・・。キモ〜い。早くそのマシンつけて逝っちまって死んじまいなっ!)
472虎の穴異聞14−2:2009/07/13(月) 20:55:17 ID:Y0HXYx61
「グワッ!グエッ!うっ!うわぁ〜・・・・・・っ!」

少年はペニスに言われた通り、機具を装着すると、すぐに奇声をあげて絶命した。
(あ〜。よかった。終わった。終わった。やれやれ・・・・。)
しのぶには、同じ女の穴のメンバーの美鶴代のような殺人への良心の呵責は微塵もなかった。
それに、巨乳のせいで、年下の少年ばかりの好みとして、あてがわれるのを不満としていた。
セックスに未発達でテクニックもないガキの相手では、演技ばかりが大変で割に合わないとさえ考えていた。

しのぶは、少年のペニスについた機具を外すと、キャップをしてハンドバッグにしまいこんだ。
この機具を使って仕事をするように命じられるようになったのは、ここ1ヶ月のことである。
それ以前は、ターゲットの男根の勃起時を切断し、特殊な容器に入れて持ち帰るスタイルだった。

ターゲットが勃起しないときには、相手が表沙汰にできないように、これもペニスを切断してしまうのだったが、
その場合は、ペニスは置いてきてもいいのであった。
しかしいくら相手が表沙汰に出来ないからといって、ペニスを切断される事件を次から次へと起こすわけにもいかない。
そこで、女の穴司令部は、この機具を開発し使用を命じ始めたのだろうが、難点はターゲットが絶命してしまうことだった。

どちらにせよ、しのぶにはどうでもいいことだった。新たに薬も使うようになり、ターゲットの勃起率、膨張率も上がっていた。
仕事は効率よくできるに越したことはない。しのぶは、男に多くを求めず専らオナニーで性欲の処理をしているのだった。
473虎の穴異聞14−3:2009/07/13(月) 20:57:44 ID:Y0HXYx61
しのぶは、音もなく誰にも姿を見られずにニューオータニを抜け出すと、
来た時と同じルートで赤坂プリンスに戻り、新館正面から歩き去ろうとしていた。

そのとき、ひとりの青年が、しのぶに声をかけてきた。
「グラビア・アイドルのしのぶさんですね?ファンなんですっ!握手してくださいっ!」
しのぶは、その青年に一瞥をくれたが、フンッと顔を背けるとそのまま去ろうとした。黒い長い髪が青年の頬をうった。

「さっき、ニューオータニにいらっしゃいませんでしたか?」
(・・・・・・・・!)
しのぶは、立ち止まった。そして振り向いて相手の顔を見た。知らない顔だ。
「な・・・・なんのことかしら?変な言いがかりをつけると、タダじゃすまないわよっ!アタシを誰だと思ってるのっ!?」

「知ってますよ。よく。グラビア・アイドルの・・・・そして或る時は・・・。」
「ま・・・待ってっ!待ってちょうだいっ!話があるなら聞くわっ!ここでは何だから、そうね。どこかでお酒でも飲みませんこと?」
しのぶは、憔悴したが、顔には出さず、怪しい笑みをつくり相手を篭絡するペースに持ち込もうとした。
「うふふふ。アタシのファンなんでしょ?」
「お酒ですか?でも僕はまだ未成年なんですよ。そうですね。僕の部屋にいらっしゃいませんか?」
相手の青年は屈託なく明るく話し掛けている。何者か知らないが、相手はガキだ。どうにでも悩殺できる。
「でも、それじゃなんか怖いわ。アタシの知ってるホテルに行きませんこと?うふふふ。」
474虎の穴異聞14−4:2009/07/13(月) 20:59:45 ID:Y0HXYx61
しのぶが青年を案内したのは、赤坂からタクシーで1時間半以上かかる、
横須賀の先端、観音崎にあるコテージだった。窓から浦賀水道が見える。たたら浜に面している。

ここは、女の穴が幽霊法人に表面上は経営させている仕掛コテージである。
何人もの男が、色気に誘い出されて、ホイホイ乗ってきて、命か陰茎を失っていた。
しのぶは、ここを自身の判断で使うことは初めてだったが、何度か指令の元に任務を遂行してきた。

「へえ。ステキな所ですね。それに海も近いし、ロケーションも最高じゃないですか?」
「そこのソファーに掛けなさいな。まだ未成年って言ってたわね?早く帰らなくちゃママが心配するんじゃないの?」
「ああ。僕、この国に両親はいないんですよ。アメリカなんです。」
(・・・・・・!こいつ何者かしら?まあいいわ。すぐに消してしまうんだし。)

「帰国子女なわけ?道理で垢抜けてると思ったわ。女遊びにも垢抜けているかしら?」
そこで、しのぶは突然ワンピースを脱ぎ去り、下着姿になった。こぼれそうな巨乳と滑らかな腹のライン、肉感たっぷりの太腿が露わになった。
「どう?アタシが欲しいんでしょ?だったらアナタは誰?質問に答えること。それが条件よっ!」

青年はしかしグラマラスなしのぶのセミヌードが突如現れても、にこやかに微笑んだままで、眉ひとつ動かさなかった。
「条件?条件っていうと・・・・コレのことかいっ!?」
青年はやや鋭い声を出すと、手をしのぶのパンティーのヒップ部分に回し、
そこに挟まれていたブローニング銃をすばやく抜き取った。
「あっ・・・・!アアッ!許してっ!殺すつもりは、なかったのよっ!お願いっ!殺さないでぇ〜っ!」

=第15話につづく=
475巨人の星その後222
「言う通りにしねえと、大事なママさんが、どうなるかはわかってるだろうな?」
「どうしようっていうのさっ!?」
「どうにも、こうにもおめえが、これから言う場所へひとりで来りゃそれで問題はねえぜ。
 言っとくが、サツに垂れこむなよ。今度サツに垂れこみやがったら、タダじゃおかねーぜ。」
「どこへ、来いっていうのさつ!?」
「グッフッフッフッフ。それはな・・・・・。」

鬼怒川は言うだけ言うと電話を切った。
行くしかないが、それで自分がどうなるかだ。待っている運命は想像できないぐらい悲惨なものだろう。
この身を「はい。どうぞ。」とくれてやるには値する相手ではないし、
自分がその屈辱に耐える自信もない。

京子は、しばらく静寂の中で思いつめたが、キッチンに立ち尽くしていて、あるものが目に入った。
思えば飛雄馬、左門というのは思い出深い存在だ。
彼らと顔を合わせていると心が和んだ。

鉄二もよくしてくれた。しかし縁がなかったのだ。