【卓球場】野村美月作品エロパロ2冊目【文学少女】

このエントリーをはてなブックマークに追加
619名無しさん@ピンキー:2013/05/10(金) 22:32:04.77 ID:G6RHXCfL
文学少女に、今話題の(?)ラヴクラフトを食べさせたらどういう味がするって言うんだろう
確か食ってなかったよな 食ってたっけか?

まあ怪奇物はけっこう食ってた気もするが
620名無しさん@ピンキー:2013/05/12(日) 02:44:09.20 ID:3Ld7yHBC
シュールストレミングの缶詰に乗ったインスマス面のデフォルメイラストまであったというに
621名無しさん@ピンキー:2013/05/14(火) 20:52:45.69 ID:1iH5tDUI
ホラーは辛口なんだったか
622名無しさん@ピンキー:2013/06/07(金) 23:19:09.76 ID:jFsLM95m
ほしゅしゅ
623名無しさん@ピンキー:2013/07/04(木) NY:AN:NY.AN ID:dKCa6d1i
そろそろ保守
624名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:hFF+WQXJ
保守
625名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
エロじゃないけどそのうち投下します。
626名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
時系列的に言えば6月後半、しーこの若紫の話が終わった頃、
葵さんに彼氏のフリをして欲しいと言われたあとの話です。
本来、葵さんにそう言われたその日に月夜子先輩に会いますけど
この話は、月夜子先輩に会うのはそう言われた数日後ということにしてください。
627名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
タイトル『雨露に濡れる花』
「雨、降り出してきたな。今日、傘を持ってくるの忘れたから、どこかで雨宿りするか。」
赤木是光は平安学園からの帰り道、誰もいるはずのない虚空を見つめながら呟いた。
「是光、朝のテレビで降水確率50%って言ってたのに。僕も傘持ってったほうがいいよっ
て言ったでしょ?」
誰もいないはずのところから何かを喋ってるのは、4月に亡くなったはずの帝門ヒカルと
いう少年だ。彼は彼自身の葬式の時、幽霊として是光にとり憑いている。
その姿も声も是光しか認識できず、その為、こうやって話している姿は、傍から見れば
奇妙としか言い様がなかった。
「降水確率50%くらいじゃあ、大丈夫だと思ったんだよ。」
「前にも同じような事言ってたね。まあ、そのおかげで式部さんと相合傘できたんだから
良かったのかもしれないね。」
ヒカルは是光にニヤニヤしながら言うが、
「うっ…。今、式部のことは話すな。」
と、苦い顔をして答えた。
式部帆夏という少女とどう接するべきか、わからなくなっていた。
その原因は、、しーこの件の後、葵に彼氏のふりをして欲しいと頼まれ、それを葵からの
告白だと勘違いしてるらしく、最近どうもギクシャクしている。
もともと、女性の扱いが苦手な是光はこれからどうすべきか、雨宿りの場所を探しなが
ら、見覚えある通りに出てきた。忘れるはずのない場所だ。
「あの場所、雨宿りできそうだよ、是光。」
是光の上で、ふわふわと浮かぶヒカルが指差しながら言った。
是光は古ぼけたアパートを抜け、公園にたどり着いた。
様々な花が咲いてる公園の中に、雨よけできそうな大きな木があり、是光はそこへ駆け
込むと、近くの花壇に雨露に濡れた紫陽花が咲いていた。
628名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
それを見るとヒカルが、
「雨露に濡れた紫陽花の花は風情があるよね。是光、知ってる?
紫陽花は万葉集に言葉として登場してるんだ。紫陽花と呼ばれるのは
『藍色が集まったもの』を意味するあづさい(集真藍)がなまったものっていうの
が有力な切なんだけど、万葉集の歌に
あぢさゐの 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思わぬ
なんていう歌があるんだけどこの意味は…」
と、また花のうんちくが始まったと是光は呆れていたが、今、雨宿りしている公園は、是
光にとって思い出深い場所だ。
奏井夕雨というひとりの少女との思い出の場所。雨に濡れた紫陽花を見て是光はその姿
から、奏井夕雨というその少女との別れを、是光は思い出していた。
儚げな瞳も、心地よい声も、人から忘れ去られたようなアパートでの暖かなやりとりも、
綻んだあの笑みも、手をつないだ感触も、唇を重ねた時の幸せな想いも、初めて恋を知っ
た喜びも、僅かな間ではあっても彼女との美しい思い出は、思い出すたびに胸を締め付け
れらるような思いになる。
 ヒカルは前に夕雨のことを夕顔の花にたとえていた。
夕方から暗くなった頃から、月の光を浴びて、ひっそりと咲く花。
夕雨は別れの時、そんな花から太陽に向かって花びらを広げる花になると言った。
 次に出会うとき、笑い上戸になっていると言った。
それは儚くも美しい約束。彼女とまた出会うとき、自分はどうなっているのか。
そして、遠い異国の地で奮闘してる彼女を想うと胸が痛くなる。便りがないのは彼女が
頑張っている証だ。自分は彼女が健やかでいられるよう祈ることしかできない。それをも
どかしく想いつつ、そんな想いに浸っていたので、ヒカルの話を全然聞いていなかったが、
雨がなかなか止まないので、仕方なく雨に濡れてでも、家に帰ろうかと思い始めたら、公
園の前の通りから、車の音が聞こえてきた。
629名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
紫陽花を見ていた是光は顔を上げると、高級そうな車が公園の前を通るのが見えた。
ヒカルがその車を見てあっと声を上げると、通り過ぎたはずの車がバックしてきた。そ
して、その車が公園の入り口あたりに止まると、車からひとりの少女が降り、傘をさして
こちらに向かって歩き出した。その少女は是光の前まで歩み寄ると、是光が雨宿りしてる
木の下でおずおずと、傘を是光の方へ差し向けたので、
「車から俺が見えたのか?葵。」
と、是光が、その少女、左乙女葵に向かって言った。
「学校から車で帰宅しているところ、車の窓から外の景色を見ていたら、公園の木の下で
雨宿りしてる赤城くんが見えたものですから、運転手さんに公園の前に止めてもらいまし
た。そのままでは、雨に濡れて、お体に障るとよくありませんし、私の車で赤城くんの家
まで宜しければお送りします。」
「えっと…。いいのか?俺結構濡れてるし、車の中とか汚れちゃいそうだけど…?」
と是光が言うと、葵は
「構いません。それより赤木くんのお体の方が大事です。それに赤城くんには、ヒカルの
こととか色々とお世話になっていますからこれくらいさせてください。」
「じゃあ、すまないけど、頼む」
「はい。」
というと、葵は是光を傘の中へ入れて車へ向かう。その間、是光の上でヒカルが
「是光、また女のこと相合傘したね。傘を持たずにいるとこういう出会いもあるんだね。」
と微笑みながら言っていた。
葵と是光は車の後部座席に並んで乗り、是光の家の場所を運転手に伝えた。運転手は是
光を胡散臭そうに見ていたがすぐに運転を始めた。
630名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
「濡れた体では風邪をひいてしまいます。このタオルをお使いください」
葵は自分のカバンからタオルを出して、隣の是光に渡した。是光はありがとうと葵に言っ
て、頭を拭き始めた。すると葵は遠慮がちに是光の方を見ていたので、是光が
「どうした?」
と聞くと、
「いえ、その、雨宿りしてた時にとても悲しそうな顔をしてらしていたので、お体が優れ
ないのかと思いまして、その心配で…。」
と葵は、心配そうに是光を見ながら答えたので
「心配しなくても、俺は大丈夫だ。このくらいで風邪なんかひいたりしないぞ。」
(夕雨と頭条のことと怨霊のことくらいは噂程度で葵も知ってるだろうけど、俺が直接、
夕雨と関わりがあったことは多分知らないだろう。葵に心配させるわけにはいかないし、
夕雨との思い出に浸ってたなんて言えないからな)
「本当ですか?何かあったら言ってくださいね。その、赤城くんにはお世話になってるの
で力になりたいですし、この前も無茶のお願いしてしまいましたし…。」
と、葵が悲しそうな顔始めてしまったので、是光は困ってしまったが、できるだけ元気で
見せようと、
「俺の体は何も心配いらない。それに、この前の頼みだって気に病むことなんかないぜ。」
「すみません。赤城くんにご迷惑かけてばかりで。」
「そんなことないぞ。現にこうして俺は葵に世話になってるし、しーこの時も葵には力を
借りただろう。葵は俺に迷惑なんてかけてないし、葵に頼まれたことを迷惑だなんて思わ
ない。」
というと、葵は顔を赤くして俯くと、またおずおずと顔を上げて
「ありがとうございます。赤城くん。」
と嬉しそうな顔で言った。
631名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
そうすると是光も穏やかな気持ちになった。そして、ふと是光は思ったことがあったので、
小声ですぐ隣のヒカルに
(そういえば、ヒカル。本当に俺が青いの彼氏のふりなんてしても大丈夫なのか?)
と、言うと、
ヒカルは、
(葵さんも困ってるみたいだし、是光なら任せられるから気にしてないよ。)
と相変わらず、何を考えてるのかわからない笑顔でそう言った。
すると、葵が
「どうかなさいましたか?」
と言ってきたので、是光は誤魔化そうとして咄嗟に、
「えっと、さっきの公園で見た紫陽花が…その…、気になって…。」
というと是光が言うと、葵は小首をかしげながら、
「紫陽花ですか?確かにあの公園に咲いてましたが…?」
葵が疑問符を頭に浮かべたように、また是光に問うので、是光は
「その…。そうだ!ヒカル!そう、ヒカルが前に紫陽花の話をしてたのを思い出してな。
あいつが紫陽花のうんちくを話してるのを思い出したから…。」
是光ははっと、ヒカルが言ってたことで誤魔化しながらいうと
ヒカルが是光に
「是光、途中から僕の話全然聞いてなかったじゃないか。」
拗ねたように言ったが無視した。
 すると、葵が
「そういえば、私もヒカルに紫陽花の話を聞かされたことがあります。紫陽花がどうして
紫陽花と呼ばれてるのかとか…。」
とヒカルのことを懐かしむように言ったので是光も
「そうそう、それとか。紫陽花にまつわる歌がが万葉集だっけか?なんかに載ってて、
えっとなんだっけかな…。」
「それでしたら、私もヒカルに聞いたことがあります。万葉集には紫陽花にまつわる歌は
2つあって…。」
そこまで葵が言うと、車が止まった。
「もう着いたか。」
是光がそう言うと、窓の外を見れば、是光の家の前についていた。
「できればもう少し、赤城くんとお話していたかったです。でも、仕方ありませんね。」
「学校でも会えるし、携帯にメールでも電話でもいつでもしても構わないんだぞ。」
と葵は是光とのおしゃべりを惜しんだが、是光がそう言うと
「そうですね。また学校で会いましょう。それと、その、今度の件よろしくお願いします。」
と葵は頭を下げた。
「ああ。何かあったらいつでも言ってくれ。また、学校でな。」
「はい、それではまた。」
葵は笑顔で是光にそう言った
 是光は車から降りて、葵は車から是光に手を振りながら是光の家から遠ざかっていった。
(そういえば、赤城くんが言っていた紫陽花の歌の意味は確か…。)
632名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
是光は家の玄関の扉を開け、「ただいま」と言うと、奥からパタパタと走る音が聞こえた。
すると是光に向かってきて、しがみついた少女は
「是光お兄ちゃん!おかえりなさい!」
と元気よく是光を出迎えた。
 その少女、若木紫織子は少し前から赤城家の住人となった。可愛らしいツインテールの
その少女は、是光を本当の兄のように慕っている。是光がしおりこの頭を撫でてあげると
嬉しそうに笑い是光を見上げた。
 紫織子が赤城家に来てからわずかの間だが、もうすっかり馴染んだようだ。最近は、紫
織子より少し前に、赤城家に来た猫のこるりと、家ではよく一緒にいる。なので、紫織子
が是光を出迎えた時に、こるりがいなかったので、
「しーこ、こるりはどうした?」
と是光が紫織子に聞くと、
「んーと、こるりはねぇ、お部屋の隅で窓から外を眺めてるよ。」
と、無邪気な笑顔のままで紫織子は答えたのを聞いて、是光は少し動揺した。
夕雨のアパートにいる時に、こるりはよくそういう行動をとっていたのを覚えていたの
で、驚いたのだ。
そんな是光の動揺が顔に出ていたのか、紫織子は是光の顔を見て不安になり、
「大丈夫?是光お兄ちゃん。具合悪いの?」
と心配そうに見つめていた。
(情けねぇ。葵にもしーこにも心配されるなんて)と是光は思い、
「何でもないぞ。」
と、できるだけ穏やかに答えた。
そんな、是光を紫織子は訝しげに思ったが、是光がそう言うので、
「それなら、早くお風呂に入ったほうがいいよ。外雨降ってるし、今は大丈夫でも風邪
ひいちゃうかもしれないからね。それと今日のご飯、私も作るの手伝ったんだよ。ご飯は
約一緒に食べよう?」
「そうだな。腹も減ってるし、風呂入ったらすぐに飯にするか。」
と是光が言うと安心したのか「うん」と嬉しそうに言って、また、ぱたぱたと居間の方
に走っていった。
是光はその後、風呂に入り、家族とご飯を食べると、自分の部屋に戻った。すると、こ
るりがじっと是光の部屋の窓から外を見ていた。
633名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
「葵さんやしーこの前ではそんな顔はしないように頑張ってたみたいだね。」
と、いきなり、自分の肩の上の方からそんな声がした。どうやら是光が考えてることがよ
くわかってるみたいだった。
 「ダメだな。こういう雨の日、しかも今日は、あのアパートの近くの公園に、行ってる
から、余計に夕雨のことを意識してるみたいだ。」
 「是光は誠実だね。君は夕雨のこと、後悔してないって言ってたけど、やっぱり寂しい
かい?」
「何度も言ってるけど、後悔はしてねーよ。ただ、寂しくはあるかもしない。何て言えば
いいのか、モヤモヤするというか、自分でもよくわかんねーんだよ。」
是光は頭を掻きながら、自分の唯一の男友達に自分の心境を吐露した。
「こるりもなにか思い返してるみたいだしね。僕にとっても夕雨は大切な女の子だし、君
の気持ちもわからなくもないよ。」
「葵と話してる時、お前は割と大人しくしてたけど、俺に気を遣ってたのか?」
「何のことだい?」
と、ヒカルは是光の質問にすっとぼけた。
「葵さんやしーこも心配してたけど、実際、雨に濡れてるんだから、今日は早く寝たほう
がいいんじゃない?」
「まあ、そうだな。そうしとく。」
ヒカルはそう言ったが、是光はヒカルが体調の心配をして、早く寝るように勧めたのでは
なく、是光がいろいろ考えすぎる方を心配したのは、良く分かっていたので、素直に、応
じることにした。
(ヒカルにも心配されてんな)そう思い是光は眠りについた。

翌朝、是光が起きると雨はまだ止んでいなかった。テレビによれば今日の午後には晴れ
るらしい。
「朝、雨降ってなくて、午後、雨降るならまた傘を忘れて誰かと相合傘してたかもね」
と、ヒカルが冗談めかして言ってた。
「まるで俺が、女と相合傘したくて傘を忘れてるような言い方はやめろ。」
是光はきつめにヒカルに言うと、
「そうなの?てっきりそうかと思った。雨の日の相合傘、僕は好きだな。濡れた服を恥じ
らいながら隠そうとする仕草とかまるで…」
女の話になってヒカルは熱く語りだしたので、是光はこの分だとなかなか止まらないので、
聞き流して、さっさと学校の支度をして、家を出た。
634名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
学校に着くと、下駄箱で式部帆夏にバッタリ会ってしまった。葵の件で勘違いしてる帆
夏とは今会うといろいろ気まずいのだが、ここで、何もしないのも男らしくないので、
「うっす」
と、ヤンキーみたいな低い声で帆夏に挨拶した。是光自身は、自然に挨拶してるつもりな
のだが、帆夏は「うっ」と呻いたあとじっと、是光を睨み、顔を赤くしてぷいっと顔を背
けて、スタスタと歩き去ってしまった。
「ヒカル!見たか、アイツの態度。くそっ。何なんだよ。昨日は、授業中に何度もメールし
てくるし、さっきの俺の挨拶も無視して、これだから女は…。」
と言いながらも最後の方はだんだん口調が弱々しくなっていた。
「まあ、式部さんは葵さんとの件を勘違いしてるだろうし。しょうがないよ。でも、式部
さんがああいう態度をとっちゃうのは、それとは別に君のことを意識してるからだよ。」
とズバリ言われて、是光は言い返せなかった。
 教室に入り席に着くと、横で帆夏が携帯をいじりながらこちらをチラチラ見ていたが、
だからといって、葵のことを正直に話すわけにもいかないので、誤解されてこんな態度を
取られるのも理不尽だと思ったけれども、どうすることもできないので、席に座って、朝
のHRを待った。
 朝のHRを終え、授業が始まっても、雨は振り続けた。是光は窓際の席なので、授業が
退屈なとき、窓の外を眺めていた。
(そういえば、この学校、植物が結構植えてあるな。)
是光は、そう思って周りを窓の外の景色を見渡した。裏庭の緑は竹林だろう。中庭に桃色
の花や橙色の凌霄花、白い木槿が綺麗に咲いてるのが見えた。
 なんだか、なんとなく紫陽花を探してみたけど教室の窓からは見つからなかった。そも
そもこの学園には紫陽花は咲いてないのかもしれない。ヒカルじゃあるまいし、花をいち
いち意識することなんて今までなかったから。
 昼休みになり、購買へ昼食を買いに行くとき、隣の帆夏がまたチラチラと見ていたのに
は気づいていたけど、帆夏が特に何かを言ってくるわけではなかったので、そのまま教室
を出た。
「式部さん、是光のことを気にしてたみたいだけど、何か言わなくていいのかい?」
ヒカルはそう言ったけど、是光は、
「何か言いたければ、あいつから言うだろう。俺から何かを言っても余計に誤解させかね
ないしな。」
「へぇ〜、一応は是光なりに考えてるんだね。君は、あまり説明がうまいほうじゃないか
ら、余計に泥沼になりかねないしね。」
なんだか、先ほどより明るくなったようにヒカルがそう言った。
 購買について、パンを買い教室に戻る途中に斎賀朝衣と偶然出会った。
(そういえば、しーこのことはこいつに結構、助けてもらってるんだよな。)
そう思ったので礼くらいしないと、生来の気質として真面目な是光は思ったけれども、冷
たい目をこちらに向けてきたので、少しためらって、話をどう切り出すか考えていたら、
目の前にはもう朝衣の姿はなかった。
「まあ、お礼を言う機会はまだあるさ是光。」
一連の動きだけで、是光がどう思ったのか分かったらしいヒカルは、是光にそう言って、
慰めた。外を見ると雨が弱まってきていた。
635名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
今日の授業が終わると、部活に入ってもいない是光は、家へ帰ろうとしたとき、帆夏が
是光に向かって何か言おうとしては口を噤むのを繰り返して、
「あんた、今日、ずっと窓の外見てたけど、どうして?」
と、やっと話を切り出してきた。
葵のことに関して何か言われると思ったので、少し意外だったが、
「少し気になることがあっただけだ。それがどうかしたのか?」
是光が質問の形で返すと
「なんとなく、あんたが辛そうな顔してるように見えたから。」
「そんなことねーよ。でも心配してくれたんだな。ありがとう、式部。」
帆夏に心配させてしまったことを悪く思い、礼を言うと、
「べっ、別にそんなことでお礼を言わなくていいよ。大丈夫ならいいけど。」
顔を赤くしてそっぽ向いてしまった。
気まずい空気が流れ出して、それに耐えられなくなったのか、、
「じゃ、じゃあね…。」
か細い声で帆夏が言うと
「おう、また明日な。」
と、是光が答えると、帆夏はまた、顔を赤くして俯きながら、足早にして帰っていった。
 
是光も帰ろうと教室を出て廊下に出ると、授業中に少し思ったことを思い出し、ヒカル
に聞いてみた。
「なあ、ヒカルこの学校って紫陽花って咲いてんのか?」
ヒカルは是光がそう言うのを予期していたようで、いつも花なんてっていう是光が、そん
なことを言っても意外そうな顔せずに、
「僕の今からいう場所に行ってくれるかい?」
是光はヒカルが言った場所へ歩き出した。その途中で裏庭にいる頭条を見かけた。向こう
もこちらに気づいたらしく、
「赤城か。どうした、こんなところで」
と聞いてきたので、
「裏庭の奥に用があるんから、ここを通るってだけだ。」
是光がそう答えると、頭条は
「裏庭の奥…?あそこは確か…。」
と、頭条は是光の言葉を訝しめた。頭条はそれから、何も言わなくなったので、是光は庭
を抜けようとすると雨は止んでいた。雲の切れ目から日が出始めている。
 そうして竹林の生えている裏庭を抜けると、多くはないけれども紫陽花の花が咲いてい
た。
636名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
雨露に濡れていた紫陽花が陽の光を浴び、反射している姿は昨日見た、しとしと降る雨
の中で咲いていた紫陽花とはまた違った印象を持たせていた。
 ヒカルがそれを愛おしそうに眺めながら、紫陽花について話し始めた。
「ねぇ、是光。昨日、紫陽花にまつわる歌が万葉集に2首あるといったよね。その一つが
昨日言った、
あぢさゐの 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思わぬ
この歌はね『あじさいが幾重にも群がって咲くように変わりなく、いつまでも健やかでい
てください。私は、この花を見るたびにあなたのことを思い出しましょう。』って意味なん
だよ。是光、今の君の気持ちにピッタリなんじゃないかな。」
 ヒカルの言葉を聞いて是光は、
(そうか、俺はただ夕雨に元気でいて欲しいんだ。あいつがもう元気で自分の力で、前へ
進むことを祈ってるんだ)是光はまたしっかりこの紫陽花を見て思った。
かつて、ヒカルは夕雨を夕顔のような花だと言った。夕雨は、自分はそんな花から太陽
に向かって花びらを広げる花になるといった。
昨日、公園で見た曇天や雨、梅雨の季節に咲く紫陽花は、暗くなった頃に月の日明かり
を浴びて咲く夕顔に通ずるものを感じたけれど、雨露が陽の光でキラキラと輝き、鮮やか
な紫や青や白の色で咲く紫陽花は印象をがらっと変えたように見えた。
ヒカル教えてくれた歌のように、夕雨が健やかでいられるように祈りつつ、紫陽花を見
るたびに彼女を想おう。
ヒカルはにこやかに是光を見てる。是光は雲の隙間から出てきた太陽を見上げて言った。
「すっかり、晴れたな」
637名無しさん@ピンキー:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:eoRUic0l
以上です。
長々と駄文失礼しました。
もしお暇で興味あるならどうぞ。

夕雨可愛いよ夕雨
638名無しさん@ピンキー:2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:RfcDnWrl
f
639名無しさん@ピンキー:2013/08/05(月) NY:AN:NY.AN ID:tOyudm3F
そろそろ保守
640名無しさん@ピンキー:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:pej9HE3c
保守
641名無しさん@ピンキー:2013/09/07(土) 21:13:20.59 ID:r/lXWoAH
ほす
642前巻のあれのとこ:2013/09/09(月) 03:20:19.74 ID:sJrqc2W4
震えた手。
かけようとした声を抑えて、必死に耐えている彼の手を葵はそっと握る。
ただ彼の隣にいることしかできなくても、共にいることが支えになると信じて。
「葵」
「はい」
「ありがとう」
嗚咽混じりの言葉に、手を握って答える。
「忘れてるかもしれませんけど、わたしのほうがお姉さんなんですよ」
「はは」
そうだったな、と是光は笑った。
「なので、こういうときくらいお姉さんになります」
ありがとう。
掠れてしまった言葉を葵は優しく受けとめる。葵の暖かい優しさに是光は甘えて、すがるようにその手を握る。
「赤城くん。こっちです」
是光の手を引いて、近くの公園のベンチに座った。
「ここなら誰もいないので、泣いてるところ見られません」
「こっちだってもう大丈夫だ……」
子供みたいに涙を流して笑っている是光に葵が微笑む。
「赤城くんは、嘘が下手みたいですね」
ぐしゃぐしゃの是光の顔をそっとハンカチで拭う。
「正直者が取り柄らしいからな……」
「なら、正直に泣いてもいいんですよ。赤城くんの泣き顔はわたしだけの秘密です」
「……デカイ貸しになりそうだな」
「そんなことしません」
是光の精一杯の強がり。
だから……。
「赤城くん?」
顔を向ける是光に葵がそっと抱きつく。
「あ、葵?」
慌てたところに、そっと声をかける。
「これなら、わたしでも赤城くんの顔は見えません」
「で、でもよ」
「人の体温って、落ち着くんですよ」
恥ずかしくて、さくらんぼのように頬を赤く染める葵。それを見られないように是光を強く抱き締めた。
「……ありがとう」
是光は葵をそっと抱き寄せる。温もりにすこし懐かしさを感じながら優しく力を込めた。
643前巻のあれのとこ:2013/09/09(月) 03:21:20.40 ID:sJrqc2W4
「今日は、赤城くんに感謝されてばかりの日ですね」
「お姉さん、なんだろ?」
「ですね」
是光の髪を撫でる。
いつもは、気が強くて優しい少年が今だけは傷ついた子猫のように儚げで、かわいらしい。
「葵」
「はい」
「人に抱きしめられるってなんか、照れくさいな」
「……わたしだって、恥ずかしいんですよ。でも、赤城くんのお母様も本当はきっとこうしたかったんだって、そう思います」
「そうだったのかな……」
「そうなんです」
吐息も鼓動もなにもかも近くて、でも、それが嬉しくて。
「葵は、お母さん役にもなるのか」
少しだけ元気を取り戻した是光が呟く。
「な、なりません。……もう、あんまりからかうと怒りますよ」
漏れた嗚咽を聞かないふりして、答えた。
「……葵は、暖かいな」
「落ち着けそうですか?」
「ああ。それに、いい匂いだ」
「今度こそ怒りますよ……」
小さな抗議を是光は無視して。
「葵。あとすこし、こうしててもいいか?」
その消え入りそうな声に愛しさを感じて。
「もう、ちょっとだけですよ」
あとちょっとだけ、わたしも甘えていたいですから。

ほっしゅ
葵って響きが好きだ
644名無しさん@ピンキー:2013/10/05(土) 22:31:50.25 ID:AVXhzjQ4
そろそろほしゅ
645名無しさん@ピンキー:2013/10/19(土) 22:47:07.95 ID:5Wgnc8cs
保守
646名無しさん@ピンキー:2013/11/09(土) 21:00:30.63 ID:kc+c8l43
そんじゃ保守すんべ
647名無しさん@ピンキー:2013/11/12(火) 21:42:45.88 ID:XWnU2oJy
秘密よ、大好きなの。
648名無しさん@ピンキー:2013/12/02(月) 23:05:23.80 ID:+ssx/tuw
保守
649名無しさん@ピンキー:2013/12/25(水) 15:23:04.43 ID:bCAsjBDv
そろそろ新刊ほしゅ
650名無しさん@ピンキー:2014/01/01(水) 21:56:18.87 ID:Yw8hgdXS
新刊読んだんだが、なぜか夕雨が笑いながら帆夏を滅多刺しにするシーンを幻視した。
651名無しさん@ピンキー:2014/01/13(月) 23:29:38.28 ID:LCG9GfmV
エローな展開

ぱーぷるは抱いてほしいけどなかなか言えなくて
是光もそういうのを求めてこなくて
自分は魅力がないんじゃないかと悩んで
ネットで相談しようかと思ってでもさすがにそれはどうかと考えなおして
似たような悩みを抱えている人の恋愛相談読んで余計にドツボにハマって
是光の前で半泣きになってから本音言って結ばれそうな感じ

しーことする時は……年齢が低すぎていまいち想像できんが
あるとすればしーこが強引に押し倒して
最初はおいやめろと言ってた是光だけど
無理矢理濡れてないところに入れようとして痛みに涙こらえてそれでもしようとするしーこを見て
覚悟決めて抱きそうな感じ

夕雨とする時は
わりと長い間キスだけでのプラトニックな関係だったけど
ふとある日突然互いに互いを求め合って
言葉もなくそういう関係になってそう
あるいは是光が生理的な作用として身体が反応してしまい
夕雨がなんとかしてあげたくて、たどたどしく、どうすれば……いい? と聞いてきそう

先輩とする時はヒカルが滅茶苦茶うるさそう
「君も知ってると思うけど、月夜子は見た目よりもずっと繊細なんだ。
経験者として君をリードしよう、なんて態度を取ってるけど内心はドキドキでいっぱいなはずだよ
だから男の子として是光が安心させてあげなきゃ」とかなんとか言ってきそう

葵さんの場合は…………ヒカルが消えるまでとても抱けないだろうなあ
いくらなんでもそれやったらヒカルが一発昇天してしまう
652名無しさん@ピンキー:2014/02/07(金) 23:48:16.29 ID:vi6wnEU1
ほしゅ
653名無しさん@ピンキー:2014/03/10(月) 23:44:40.51 ID:nCF9HsQ6
保守
654名無しさん@ピンキー:2014/04/02(水) 02:45:41.63 ID:i7WotvOv
保守
655名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 00:08:17.21 ID:oaYGQix/
アニスとシャールが抱き合って寝てるとことか見てみたい
656名無しさん@ピンキー:2014/04/18(金) 14:48:23.65 ID:rcqqaRQ5
ヒカルが地球にいたころ……ってヒカルの存在が邪魔すぎて書き辛いんだが
657名無しさん@ピンキー:2014/04/18(金) 20:40:32.87 ID:rGhhD5t+
>>656
ヒカルは濡れ場突入しそうになったら、気を利かせてその場からスッと消えると思うんだけどなあ。

単に見えなくなっただけで、事後に是光へあれこれ忠告するまでが1セット。
658名無しさん@ピンキー:2014/04/19(土) 09:00:46.05 ID:3A5XWAA2
>>657
ヒカルは是光から何メートルと離れられないでしょ
家のトイレの中まで入って来ちゃうんだから
659名無しさん@ピンキー:2014/04/19(土) 12:53:50.61 ID:O5R3PjIt
あの空気読めない幽霊でも是光くんの視界に入らないようにする配慮くらいはできるはずだぞ!

たぶん!
660名無しさん@ピンキー:2014/04/20(日) 09:07:05.27 ID:6zCbWURQ
>>659
それで押し入れの中からこっそり覗き見るわけですねw
661名無しさん@ピンキー:2014/04/23(水) 18:43:27.40 ID:KfXN4Bt7
完結したらヒカルの二次創作もきっと増えると思うんですよ
ヒカルが消えて書きやすくなるし
662名無しさん@ピンキー:2014/05/02(金) 21:35:56.23 ID:yj3F3AVc
未練タラタラな朝ちゃんで一編書こうと思っても筆が進まない何故だ
663名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 15:22:11.03 ID:g/3dDM8k
完結したけど書き込み増えないな
664名無しさん@ピンキー:2014/06/01(日) 04:04:40.90 ID:hR6WJ3+c
常日頃人がいるかどうか、反応してくれるかどうかがこういうとこの全てだから……
665名無しさん@ピンキー:2014/06/01(日) 21:38:05.57 ID:6+sdWSj1
書こうかなぁと思ったことはあるが、ヒカX是か是Xヒカのどっちにしようかと迷っているうちに、こいつら肉体の接触が出来ないじゃんということを思い出したので萎えた。
666名無しさん@ピンキー:2014/06/13(金) 05:06:06.56 ID:GhFw/9/H
「赤城くん、好きです」
葵の精一杯の告白。
勇気を出した一言は、目の前の是光にしっかりと届いたはずだった。
右手で頬をかいて、困ったようにはにかむ彼。
そんな是光を見ながら、葵は言葉を待つ。心臓の鼓動は、自分のものとは思えないくらい早くて、張り裂けてしまいそうだった。しっかりと地面に立てているかどうかもわからないくらい緊張していた。
「葵」
「は、はい」
近づいてきた彼は、ポン、と頭にそっと手をおいた。
男らしいごつごつとした手は、葵の頭をそっと撫でたあと、強引に体を抱き寄せた。
「あ、あの……」
戸惑う葵をよそに是光は抱きしめる腕にやさしく力を込める。
何よりも分かりやすい答えだった。
「こういうのは、俺から言いたかったな」
葵は応える代わりに、力を抜いて、是光に体を預けるように寄りかかる。背中にそっと腕を回して、全身で是光の体温を感じた。
「赤城くんが、悪いんです」
そうじゃないですけど……。
一歩踏み出したくて、踏み出せないそんな自分が嫌だった。だからこそ、自分から変わろうとしたその結果だった。
こみ上げてくる嬉しさと恥ずかしさを抑えて、少しだけお姉さんぶる。
「はっきり、してくれないから、ここまで言わせたんです」
言葉に本心といたずら心を込めて。
「ごめんな、葵」
知らないふりをして是光の胸に顔をうずめる。
そんな葵に聞いてもらいたい一心で、明るい声で是光が言う。
「そうだな。よし、10分前に時間を戻そう」
「なんですか、それ」
突然の提案。
葵の抗議をそのまま流して是光は、葵をよりいっそう抱き締める。
「10分間の記憶、忘れたな」
「……忘れられないです」
「忘れてくれ」
「……無理、です」
ふてくされる葵を是光が宥める。
「一度しか言わないからな。ちゃんと聞いといてくれ」
「え……」
そんな囁きとともに是光は、抱きしめた葵をそっとはなして、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
「葵。俺はお前のことが好きだ。だから、ずっと俺の隣に居てくれ」
まっすぐな一言。
是光に見つめられたまま、葵の頬はさくらんぼのように赤く染まっていく。恥ずかしさで是光の視線から逃げようとする葵をもう一度強く抱きしめた。
「ちゃんと俺の告白、聞いてくれたか?」
カッコつけたわけでもなんでもない、ただの言葉。
「赤城くん。記憶なんて消えるわけないじゃないですか」
声が震えてしまう。
笑って誤魔化そうとしたのに、貰えた言葉の嬉しさで涙が溢れそうになる。
是光は、わかってるとでもいいたげに、葵の頭をそっと撫でていた。
「で、返事は?」
ほんとに……赤城くんはずるい。
「わたしも……大好き、です」


眠保守
667名無しさん@ピンキー:2014/06/19(木) 00:44:16.97 ID:fsBBT/n9
新作記念保守
668名無しさん@ピンキー