【田村くん】竹宮ゆゆこ 15皿目【とらドラ!】

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1名無しさん@ピンキー
竹宮ゆゆこ作品のエロパロ小説のスレです。

◆エロパロスレなので18歳未満の方は速やかにスレを閉じてください。
◆ネタバレはライトノベル板のローカルルールに準じて発売日翌日の0時から。
◆480KBに近づいたら、次スレの準備を。

まとめサイト
ttp://yuyupo.web.fc2.com/index.html

エロパロ&文章創作板ガイド
ttp://www9.atwiki.jp/eroparo/

前スレ
【田村くん】竹宮ゆゆこ 14皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239456129/

過去スレ
[田村くん]竹宮ゆゆこ総合スレ[とらドラ]
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date70578.htm
竹宮ゆゆこ作品でエロパロ 2皿目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180631467/
3皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205076914/
4皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1225801455/
5皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1227622336/
6皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229178334/
7皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230800781/
8皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232123432/
9皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232901605/
10皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1234467038/
11皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1235805194/
12皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236667320/
13皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238275938/
2名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 10:55:30 ID:hwEkEg/F
☆☆狩野すみれ兄貴の質問コーナー☆☆☆

Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」

Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」

Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」

Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」

Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」

Q続き希望orリクエストしていい?
A「節度をもってな。節度の意味が分からん馬鹿は義務教育からやり直して来い」

QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」

Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
3名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 11:11:59 ID:CgR0ajeB
>>1
4名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 12:37:06 ID:Lp5URaMo
       ≡つ=つ≡つ
 ∧_∧        =つ  こ、これはボコボコであって>>1乙じゃないんだからねっ!!
 ( ・ω・)      ≡つ
 (っ  ≡    =つ     ババババ
 /   )   ≡つ
 ( / ̄∪ =つ       ≡つ
       ≡つ=つ≡つ =つ
5名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 13:45:36 ID:HapYn75x
>>1
乙ですー
6G/W :2009/05/04(月) 14:11:33 ID:L6vIwQ7A
>>1 
乙です。

前スレに投下したモノです。
一応タイトルは
『そんなこんなとらドラ』のつもりで書いみました。

前スレの
>>535
さんの昼メロの麻耶×ドラについて詳しくお願いしたい
とのレスに、触発。ずうずうしくも書いてみましたので投下します。

あと前スレで駄文にお付き合い、ありがとう御座いました。
遅れましたが御礼です。

幾つか、返答しといた方がいいのかな?と思いまして書き込みました。
全てに回答、という物でも無いと思いますが、個々、お受け取りください。

>>530
さん
人間関係ドロドロの筈なのになんか爽やかだこいつら・・・すんません。昼メロと言うよりかは、昔の海外ドラマのビバヒル白書みたいなので、と思って書いたもので。
お前等みんな穴兄弟(姉妹)!なのに親友だらけって!!て感じ。
後半辺りから竜児が竜司・・・・自分で自分を殴ります。読み返す度に恥ずかしい。。。言われるまで気付きませんでした。俺って馬鹿。
ありがとう御座います。

>>533
さん
すいません。保管のサイトからこちらに来て、予備知識無く書き込む暴挙の為、意味が判りませんでした。
検索とかで、ageとsage の意味は理解出来ました・・・が、まだ知識不足なのでしょう。
それが好意的なのか否定的なのか、もしくは効率的なのかの判断が・・・でもGJは分かりますので、読んで頂いてありがとう御座いました。

>>535
さん
亜美に説教する竜児・・・自分では、もう15年位前のコミックコンプと言う雑誌にあった漫画(タイトル忘れたな〜)より抜粋、もしくはアレンジだったのですが、インデックスさんの漫画でもありましたか。今度読んで見ます。
昼メロの麻耶×ドラについて詳しくお願いしたい・・・エロ殆んど無しでも宜しければ。なにせ初心者ですので、細かいエロ描写が出来ません。
一度試みて・・・挫折。
エロパロという場所の様で、あまり僕の路線を乗せ続けても、とも思いますので、それでも宜しければ、投下させて貰いますね。
ありがとう御座いました。

>>536
さん
上条さん化してて・・・については535さんへの回答で。
「慰謝料がわり」・・・うん。自分で読んでもわかんないですね。すいません。
一応、大河母から大河への手切れ金?みたいな感じを言いたかったです。(そのまま書けばよかったかな)
マンション付けてやるから娘を貰ってください。みたいな感じ。(まぁそんな暗黒面な母では無かったですが、ココではその方が都合が良いので)
ダイナミックな構成で面白かった。ホントに処女作かい?・・・はいです。
と、言いますか、2ちゃんに書き込む自体、初体験です。
初でいきなり投下か!と、無謀振りを発揮してしまいました。
連続が8回で止められる。や文字が多い。改行が。など、エラーだらけでしたがなんとか投下完了と言ったところです。
考えている事を文章にするのはとても難しいと実感しました。今まで読んでた作家さん!あんた達は凄い!
書いても書いても書きたい事に辿り着けず、追いついた頃にはちょっと方向性が変わっている、などは驚きでした。
俺は馬鹿なのか?とも。
多分、かなりの無茶な構成だったと思いますが、この場で、という事で許して頂けると嬉しいです。

それでは投下いきます。
まだ半分程度です。連続にも引っかかると思いますが、よろしくです。
7G/W :2009/05/04(月) 14:12:00 ID:L6vIwQ7A
『そんなこんな昼ドラ』


「私!まる・・・・北村君の事が好き!!私とつ「木原!」」
校舎の横。奇しくも以前、逢坂大河が告白し、その恋が実らなかったその場所で、木原麻耶は北村祐作に告白した。

「木原の気持ちは分かった。正直、うれしい。ありがとう」
「じゃあ」
「でも俺はお前に応える事は出来ない・・・・すまない」
「北・・・・・・・」

麻耶にとって、それは予想の範疇ではあった。あったがそれでも、突き付けられる現実は少しの容赦も無く胸に突き刺さる。

「やっぱり・・・・狩野先輩の事、忘れられないの?」
「違うよ木原。忘れられないんじゃない。忘れないんだ。忘れる必要が無いから」
「・・・まるお・・・」
「今はココに居ない。すっと先を、あの人は歩いてる。だったら俺は追いかけるまでだ!
何があっても追い付いて、いつかきっと、俺はあの人の横に並んでみせる。
だから忘れるなんて有り得ないし・・・木原と付き合う事も・・・無い」
「・・・・・・そか」
「すまない」

いつから始まった恋なのかは覚えていない。何処を?と聞かれても分からない。
でもはっきりとしたのは・・・
木原麻耶の北村への恋が、高校3年の春この時に終わった事は分かったし、その恋を、忘れないであろう事も、はっきりと理解出来た。

「それじゃあ、私行くね?まるお!呼び出したりしてゴメンね!」
「ぜんぜん構わんぞ!俺達は、友達だからな」
「ふふ。アリガト!じゃね」


見せたく無い笑顔を見せるのは、もっと見せたく無い涙を隠す為。
残酷な言葉を投げ掛けるのは、もっと残酷な言葉を押し留める為。



全てはココから、始まったのかもしれない
8G/W :2009/05/04(月) 14:12:30 ID:L6vIwQ7A
「・・ぁ!んん!!い・・・いいくぁ!!」
仄かに薄明るさを見せる、どこか豪奢で、でも簡素な部屋の一室で、川嶋亜美はその神の与えし美の造形を晒し、愛しき人との快楽に身を任せていた。
「はぁはぁ・・・イイ!!もっ・・・突い!!・・・竜児!!」
「っうぅ!!亜美!!」
軽く汗ばむ亜美の肢体を、そのじとりとした感触すらも彼女の美に一役買っているとおぼろげに考えてしまうのは、
やはり自分の心がこの恋人に囚われてしまっているからなのだろうか。
高須竜児は、どれ程の時と回を重ねたとて、決して飽く事の無いこの恋人に、羨望と高揚と陶酔。そして麻薬にも似た甘美にほんの少しの恐れを抱いて。
今日もまたその体を重ねていた。
「!亜美!おまっ!!・・・そんなシメたら・・・い、ちょ!イクって!亜」
「いいよ!キテ!!早・・く!!!りゅ!!!!ああああああああ!!!・・・・・・・」
「亜・・・美!!!」
亜美の中でドクドクと脈打つモノが、その終わりを2人にだけ告げる。

一応ゴムは付けている。
自分の母親の事が有る竜児はそう云った事にはうるさい。
もちろん亜美も重々承知だが、一度、絶対に安全だから!と竜児に生でさせた時の快感は、亜美にとっても竜児にとっても、耐え難い誘惑となっている。
それを打ち消す為に、以来、2人のセックスはその頻度を増してきたように思えた。


竜児の腕枕でまどろむ亜美は、ふと竜児の顔を見上げる。
私はこの竜児の顔が好きだ。と。
私の全てを委ねた後の、その皆が恐れる凶顔が私を見詰める。
睨んでる?呪いでもかけてる?もしかしたらこのまま埋めちゃうの??
ふふ。でも違う。
コレはこの人の優しい顔。
私の事が大事で大事で堪らないって顔。
分かるもの。チビトラや泰子さんに向ける顔と一緒。いつもは3等分だけど、この私達だけの時間の後は、竜児のこの顔は私だけのもの。

ちゅ!

亜美はそのまま竜児の首にキスをする。ほんの軽く

「ん?なんだ?」
「なんでもな〜い」
「??」

竜児は特に気にはしない。こんな時、彼は亜美の好きにさせている。
小鳥が互いをついばむ様に、子猫が互いにじゃれ付くように、そんな一時を、亜美が好んでいる事を知っていたから。

幾らか時間が過ぎ去れば、何時もの日常が音も無く近づいてくる。
それはまどろみの時間のおわり・・・・
9G/W :2009/05/04(月) 14:12:51 ID:L6vIwQ7A
「ふぅ〜〜・・・・ねぇ。今度の日曜だけどさぁ。ちょっと付き合って欲しいんだよね〜」
「ん?日曜って何!!!お前!」
竜児の視界には下着姿のままでベットに腰掛、タバコをふかしてる亜美が居た。
「ん?あっ!これ〜?」
にんまりと笑う亜美にも竜児は真剣だ。
「お前いつの間にタバコなんて吸ってんだよ!いいか?そんなものは体に良い事なんて何も無いし!金も掛かる!
そんなの吸ってたって全然かっこよくなんか無いぞ!お前だってそれ位」
エコロジストでエコノミストな高須君には、高校生の喫煙は許し難い様で、それでも亜美の笑顔は止まらない。
「あはは。これ、タバコじゃ無いわよ?」
「へ?」
そう言って亜美が竜児に渡したものは
「??なんだコレ?」
タバコの形はしているし吸うと煙も出るのだが・・・火は付いていない。
「あはは。電子タバコ。もう、竜児ったら、私がタバコなんて吸う訳無いでしょ?
亜美ちゃんの綺麗な歯がヤニまみれになるなんて有り得ないから。ふふ。竜児に見せたら面白いと思って」
「は〜・・・お前は」
「ははは。怒んない怒んない。可愛いんだから!竜児は」
「可愛!・・・は〜。敵わないよ、お前には」
どこか呆れながらも、いそいそと服を着だす竜児を、亜美はぼんやりと眺める。

ほんと、可愛い人。
こんな怖い顔のチンピラ風ヤンキー系ヒットマン属性を可愛いと思えるなんて、私ってば変態?とか思っちゃう。
でも仕方ないじゃない?彼の反応の一つ一つが私の琴線に触れてくる。
その笑みの一つ一つが私の心を捕えて離さない

「まぁいいか。で?日曜がどうしたって?」
「ん?ああ、日曜日に付き合ってよ」
「別に構わんが、何処に?」
「ん〜。この前久々に前の学校の友達から電話来てさぁ。休みに皆で会わないか〜って」

亜美も話しながらトロトロと服を身に付け始める。
「ふ〜ん。良いんじゃねぇか?お前も久しぶりなんだろ?」
「うん。まぁそれ自体は良いんだけどさ、それって向こうの男共も来る訳。でぇ、亜美ちゃんって今も昔も超可愛いじゃない?
向こうでも告られまくってたし、どうせ私に会って、あわよくばお近づきに〜って魂胆が見え見えなのよね〜」
「なるほど。俺は露払いって訳だ」
もちろん、竜児もそれに異は無い。自分の恋人に付く悪い虫は早々に高須家掃除術で徹底排除に限る。限るのだが。
「でも良いのか?」
「ん?なにが?」
「うや、その。俺みたいな眼つきの悪い奴が一緒だと、お前の友達も迷惑なんじゃないかと」
どこまでもお人好しである。
「それに俺が居ると・・・その、なんだ・・・・お前の友達も、だな・・」
「怖がるって?」
「ああ・・・ほんとに自慢じゃないが、初対面で怖がられ無かった事が無いからな、俺は。
一緒に行っても良いが、かえってお前が嫌な思いをするんじゃないか?」
ホントに自慢では無い話だ。
「ふふ。い〜の。別にそんなの気にする事無いわよ。特に嫌いな訳じゃないけど、今まで殆んど音信不通だったんだし、それで縁が切れるならそれまでよ。
どちらを取るかと聞かれたら、私は貴方を取るの。今はそれだけで良い」
「亜美」
じ〜〜ん。としてる竜児だったが
「だって竜児程度でどうこうなる亜美ちゃんじゃなくね?マジ最近すっげ〜〜美女指数上がりまくりなんだけど!
もはやコレってば芸術品よ!一般人の愚民共には耐え難い美酒なのよ?
竜児みたいなトラウマ要素でもなかったら、もうその場で私が教祖の宗教団体でも立ち上がっちゃうじゃない。もう亜美ちゃんてば忙しすぎ〜〜。
だから〜・・・亜美ちゃんの平穏無事な毎日の為に〜、亜美ちゃんの事が愛しくて愛しくて堪らない竜児君は絶えず亜美ちゃんの横に居続けるのでした〜〜。まる」
「お前は・・・」
竜児のため息もなんのその。亜美はコロコロと笑っていた。
女王様な家族と彼女に囲まれて、高須竜児の毎日は、相も変わらずせわしないのだった。
10G/W :2009/05/04(月) 14:13:11 ID:L6vIwQ7A
「おっと。馬鹿やってないでさっさと支度しろ。もう時間だぞ?」
「え〜〜。だから延長しようって言ったのに」
「馬鹿。今月もう4回目だろ?これ以上の出費は経済的破綻を招くぞ」
「もう。チビトラの家でも良かったのに」
「お前な〜。前にそれやって大騒ぎになったじゃねぇか。俺は本気で死ぬかと思ったぞ?
どこぞの川の船頭に金を要求されたアレは夢であったと信じたい」

二人が今居るのはラブホテルやらブティックホテルやらと言われている場所の一室である。
二人が情事を楽しむ為にはまだまだ場所が自由には為らず、泰子や大河が留守の高須家であったり、叔父夫婦の不在時の亜美の部屋である訳だが、
そうそう毎回そんなタイミング良く不在にはならない。
無論ホテルが手っ取り早いのだが、如何せんお金が掛かる。
亜美は仕事もしているし実家もまぁ裕福だから問題は無いのだが、竜児の中では少なくともその様な場所の支払いは自分がせねば!となっている。
亜美が出すと言ってもガンとして了承はせず、押し通せば流石に竜児もいじけてしまうのでは亜美も無理強いは出来ない。
以前、様々な事情や情勢が絡み合い混ざり合い、止むを得ず大河のマンションの一室、使われていない部屋でコトに及んだ事があった。
大河の家は竜児が掃除をしていたし、証拠隠滅も完璧にこなし、何より使用していない部屋を使ったのだが・・・大河の嗅覚はどれ程なのか?すぐにバレた。
それは筆舌に耐えない地獄絵図だった。
自宅無断使用の怒りは普段の事を思えばそれ程でも無かったろうが、何しろ思考能力と行動原理が突き抜けること秒速300メートルの逢坂さん。

自分の家で?
自分の留守に??
家族(同然)の竜児が???
たとえ口が裂けまくって耳まで到達しても親●とは言葉に出せないチョッと親しい顔見知りのバカチワワと????
凸凹X!!!!?????

言葉にならない奇声を上げながら木刀を振り回し、何かに想像能力が追い付いたのか真っ赤な顔から湯気が立ち上り立ちすくみそして立ちくらみ。そして再び暴徒と化す。
どこぞの髭眼鏡指令が勝ったな。等と呟くほどの暴走振りだった。
以来、どうしても、本当にど〜〜〜してもな状況になった時には亜美にお金を出して貰う事を渋々ながらに決定したのだった。
幸いにもまだそれは実行はされては居ないが、今月はどうにもペースが速い。時間の問題と為りそうだ。

二人がホテルを出て竜児が亜美を家まで送り、帰宅したのは7時を少し回ろうかと言う所だった。
手早く夕食を作り家族3人で囲む団欒。
泰子を仕事に送り出し、大河が最近はまってる韓国ドラマを見ている横で、何処でやらかして来たのか大きく破れた大河のジーンズの裾をチクチクと直している竜児。
そんないつもと変わらない高須家の夜であった。

ソコまでは
11G/W :2009/05/04(月) 14:13:36 ID:L6vIwQ7A
「ねぇ竜児。プリン出して」
「はぁ?またかよ。お前一体何日食えば気が済むんだよ」
「いいの!さっさと出しなさい!駄犬」
「はぁ。ったく。いいけどよ。櫛枝の奴も要らん事教えてくれたもんだ」
最近、大河は自家製のプリンに凝ってる。どうやら実乃梨に教わって作ったらしいが、料理全般が壊滅的な腕前の大河シェフにあって、唯一!このプリンだけは例外の偶然の奇跡の如く、まぁ喰えた代物だった。
インスタントラーメンすら何故か不思議現象を起こす彼女にして、コレはまさに神の悪戯としか思えなかった訳だが、以来、大河は毎日の様にこの逢坂大河特製プリン『逢プリン』(命名手乗りタイガー)を1日3個は食しているのだった。

「ほら」
「ありがと」
よっ!と身を起こした大河は早速ご自慢の逢プリンをほくほくと食べているのだが、まぁホントに幸せそうに喰らい付いている。
竜児はそんな大河に微笑みを浮かべながら、再び針仕事に意識を戻した。

「あーーーーーー!!」
「!!なななななんだ!どうした大河!!」
気が付けば大河は冷蔵庫を開けて呆然としている。
いつの間にかプリンを平らげ、台所に食器を下げにいったらしいが。
何事かと竜児が大河の下へ行くと

「・・・・・卵が無い・・・」
まぁ、そんな事も有るよね?
「ん?あぁ、明日帰りに買ってく「明日のプリンが作れないじゃない!!」・・・はぁ?」
なんの話?な竜児。大体なんで朝からプリンを
「明日私の逢プリンを食べさせるって北村君に約束したの!!これじゃあ作れないじゃない!!」
「いや、だったらさっきの喰わなきゃ良かったじゃねぇか。大体お前がさっき喰った奴を作る為に卵全部使っちまったんだろ?」
「え?・・・・・・・あ!」
作る時は覚えてて、食べる時は覚えてなかった・・・・様です。
「お前・・・・忘れて喰ったな?」
「!だだだだだって!・・・・・・うぅ」
冷蔵庫を呆然と見ていた大河は、とうとうそのまま膝を抱えて座り込んでしまった。こうなるとホント、小さくなってしまう子だ。
「はぁ・・・たく。ちょっと待ってろ。コンビニで買って来てやるから」
「ふぇ?」既に半泣き。
「コンビニの奴は高いからあんまり買いたくねぇんだけどな。まぁ手に入るだけマシだ」
「え・・・でも雨降ってるし」
いつの間にか外は本降り。
「お前に近代日本の素晴らしきモノを2つ教えてやろう。24時間開店営業のコンビニエンスストアと・・・傘だ」
言って大河の頭を一撫でして、竜児は玄関に向かった。
「竜児。あの・・・その」
「大河」
「ん?」
「行って来る」
「りゅ・・・いってらしゃい・・・・ありがと」
「おう」



外は結構な雨だったが、竜児は気にする事無くコンビニで卵を購入し、いそいそと帰宅の途についたのだが、ふと視線を奪われた。
「あれは?」
12G/W :2009/05/04(月) 14:13:58 ID:L6vIwQ7A
地面を強く叩きつける雨の中、公園のベンチで独り座る・・・・木原麻耶。
あの後、親友の香椎と合流し、そのままスドバへ。
彼女は黙って愚痴を聞いてくれたし、元気付けてもくれた。本当に、救われたと思った。
香椎と別れてふと立ち寄った公園。
なんとなくベンチに腰掛けたまでは覚えていた。それから・・・・・どうした?

どうもしない。

ただソコに居た。
居たかった訳じゃない。人が流れて、陽が落ちて、雨がぱらつき出して、なんか本降りになって・・・でもソコに居た。

分かってた筈なのに。誰も悪くない筈なのに。
どこか納得出来ない自分が居た。
アイツが悪いと叫ぶ自分が居た。
アンタもバカじゃないんだから分かってんでしょ?アイツって誰よ?そんな自問自答。そして自嘲と嘲笑。
もう何時間繰り返したかも覚えていない思考のループを遮ったのは、絶え間なく続いた雨の感触が無くなったモノだった。

「え?」

顔を上げると、ソコには・・・ヤクザが居た・・・んじゃなく、ヤクザみたいな親友の彼氏が、高須竜児が居た。
「やっぱり木原じゃねぇか!お前どうしたんだよこんなトコで!ってお前びしょ濡れじゃねぇか!」
なんか独りで大騒ぎしてる竜児に、ん?と小首を傾げる麻耶だったが、そのままボ〜っと座っているだけだった。
「!おい・・・・・木原?」
呼べど返事の無いクラスメート。どうにも竜児には分からない事だらけでは有ったが、おお!と何かが閃いた。
徐に竜児は携帯を取り出しメール。
送信・・・受信・・・送信・・・受信・・・送信・・・・受信・・・
「はぁ・・・・無茶苦茶だ・・・」
雨音に消されるほどの、竜児の呟きだった。



どれ程の時が経ったのだろう。ふと気が付けば、自分の肩に何かが乗せられている。タオルじゃない。
見るとそれはトレーナーだった。
?と思うと目の前に誰かが立っている。

「・・・あ」

ようやく思い出す。さっき目にした人物。高須竜児がそこに居た。
13G/W :2009/05/04(月) 14:14:19 ID:L6vIwQ7A
麻耶の頭上に傘を差し出して、トレーナーを脱いだのだろう。Tシャツ姿で無言で佇む姿。
横を向いていて見えるのは横顔。まだ4月の終わり。肌寒さが有る。シャツ1枚で外に立っている時間でもない。
麻耶の視線に気が付いたのか、徐に竜児と目が合う。

少し、どきりとした。

怖いから?少し違う気がした。

「・・・・高須・・くん?」
「おう」
「・・・・いつから?」
「ん?かれこれ30分」

思わず俯く。状況はなんとなく掴める。理由は分からない。でも亜美は高須竜児はそんな人間だと言っていた。
誰かが途方にくれていたなら、助ける程の力も財も無いけれど、ただソコに居てくれる人物だと。その誰かが、自分の知らない誰かで有っても。と。

「・・・・ごめんね」
「ん〜?別に」
「寒くない?」
「今日はそうでもないぞ」
「どうしてココに?」
「・・・散歩コースだ」
「ずっとココに?」
「ココで立ち止まるのがコースなんだ」
「そう」
「おう」

ふと麻耶は笑みを零す。
有る訳無い話の他愛も無い会話。
誰かがそこに居る安心感と放てば返る言葉と・・・心。口にはされない、いたわりの心。
気が付けば見詰めていた自分の足元が歪む。

「あれ?・・・・おかしいな?」
「ん?」
「高須君・・・・ちゃんと傘差してくれないから、視界が・・・悪いよ」
「・・・・・おう」
静かに頭に置かれた竜児の手は大きくて、暖かい。
「!!・・・・ぅ・・・ぅぅ・・」
「・・・思い出したか?」
そう。思い出した。

私は・・・・まだ泣いてなかった・・・・・

「うう・・・・うわああああああああ!!」

麻耶は竜児に縋り付いてただ大声で泣き出した。報われなかった自分の為に。
竜児はただ雨の中、麻耶に抱きつかれたまま空を見上げた。
今はただ、この雨が彼女の涙を隠してくれている事に、感謝するだけ。
激しい雨音が、彼女の慟哭を掻き消してくれる事を感謝するだけ。
そして願う。この雨と共に、嘆きもまた止む事を・・・
14G/W :2009/05/04(月) 14:16:23 ID:L6vIwQ7A
しばらくして、雨足が大人しくなるのと同じく、木原も幾分落ち着いてきたのだが・・・・そこからの木原はすごく面倒だった。
とにかく愚痴った。曰く

「大体まるおも!私を振るなんておかしくない?絶対変よ!頭おかしい!私って可愛いでしょ!美人でしょ!スタイルだって悪かないでしょ!
そりゃあ亜美に比べたら少しは落ちるかも知れないけどさ、それにしたって他の女子に比べても見劣りしないのよ!!それをゴメンってなに!!
大体、高3にもなって彼女も居ないんじゃやばいじゃない!まるおったら性欲ないの?狩野先輩想いながらマスターベーションしまくるの?不健康!てかキモイ!!
あのアホ(春田)にだって彼女居るのよ?なのにメガネ(能登)なんて私に気があるのかなんなのか知らないけどチョロチョロと!!
そもそも30にもなって男諦めてマンションに走るなんてゆりちゃん先生には気概が無いのよ気概が!!
分かる?絶対亜美ちゃんなんてダイエットしてるに決まってるのよ!櫛枝さんと一緒になって私を置いてく積もりなんだわ!
いいのよ!たとえバストのサイズで奈々子に周回遅れのブッチギリで置いてかれたって私にはタイガーがいるもの!!
あ!!こないだタイガーってばまるおに告んなかった?ちょっと高須君も飼い主なんだからなんとかしてよね!
そうだ!まるおにお弁当でも作ったらどうかな?それで仲良くなってから告白!ああ!!今日振られたジャン!!
大体まるおもおかしくない??振られたのよ!私!!ちょっと聞いてる高須君!!」

既に25分。あ、26分。木原は愚痴りっぱなしだ。て言うか滅茶苦茶だ。もう言ってることが全部。
同じ事をぐるぐるだけでも厄介な事この上ないのに、それがもう2転3転。
北村の批判をしたかと思えばいきなり惚気だすし、友人知人を滅多切りの辻斬り闇討ち。
俺はさっき指名手配犯扱いされた。
広くは社会批判から政治腐敗についての熱弁や町内会のゴミ分別に至るまで・・・まぁコレには俺も甚だ同感では有る。第一、資源物の分別方法についてまだまだチェックが行き届いて・・・すまん。俺が混乱してどうする。
まぁとにかく。木原はそれはもう罵声と怒声を上げ捲っていた訳だ。付近の住人にはホントに申し訳ないと思う。
まったく最近の高校生は。などと主婦の方々が定例井戸端会議場で俺達の事を吊るし上げるのが目に浮かぶ。

ようやく胸の中の不穏分子を一掃したのだろう。麻耶はふ、と息を付いて竜児を見る。
「はぁ・・・・ありがと、高須君。おかげですっきりした」
「ん?俺は何もして無いがな」
「それでも、だよ・・・ありがと」

居てくれて、聞いてくれて、滅茶苦茶言っても受け止めてくれて・・・・許してくれて。だから

「ほんと・・・・ありがと」
「おう」

竜児は最初に奈々子にメールをした。そして聞いた。
麻耶が北村に告白して、振られたと。
自分と放課後スドバでささやかな失恋祝いをして、明日ね!と分かれた事。
ふと思い出したのは少し前の大河だった。
3年になって再び告白し、再び玉砕。
そこからの大河と目の前の木原。その違い、その違和感。そして思う。

こいつはまだ、ちゃんと失恋していない。と。

泣いてもいない。怒ってもいない。どこかキチンと受け止めていない。
その事を忘れていると思った。
必ず通る道じゃない。千差万別人それぞれだ。でも竜児からみた木原の北村への想いは、頭で理解してそれで終わりに出来る程のモノでは無いと思った。
きっとどこかで思い出す。自分がまだ泣いても怒っても無い事を。
だったらその時には、誰か居た方がいい。泣くのはともかく、怒りはぶつけた方が良いモノだ。
それは自分でも出来る事。だからそれまで、傍に居た。

どうやらそのお役目も終わったようだ。
15G/W :2009/05/04(月) 14:17:29 ID:L6vIwQ7A
最初にベンチに座っていた麻耶と今の麻耶。その表情と目には雲泥の違いが有った。

もう大丈夫だな。

竜児は立ち上がりまだ座ってる麻耶に視線を送る。

「さて、俺はもう行くから、お前も早く家に帰れよ」
「え?あ!高須君、トレーナー」
「いいって、着とけ。お前びしょ濡れだったんだから寒いだろ?俺んちすぐソコだし、俺は平気だから」
「でも高須クチャン!!」
「へ?・・・・ははっはははは!!なんだよそれ」
「うううううう煩いわネクション!!・・・うぅ・・・」

中々に面白い光景だったが、風邪でも引いたか?と不安げな竜児だったが

「まぁ・・・本来なら俺んちにでも来て泰子の服でも貸してやればいいんだがな。すまんが今日はそのトレーナーで勘弁してくれ」
「??いや、何も高須君がソコまでしなくても・・・でも、やっぱりアレかな?私が高須君にお家で服とか借りたりすると、亜美ちゃんヤキモチ焼いたりする?」
それもチョッと面白いと思ってみた。彼女の様な全てを兼ね備えてるとしか思えない女性から嫉妬の対象になるのは、まぁ悪い気分じゃない。
「はぁ?なんで亜美が出てくるんだ??」
「??違うの?じゃ」
「大河だよ」
「ふぇ?」
それならば・・・ちょっと分からない。
「あぁ・・・タイガーがヤキモチ」
「違う。実は大河の奴、最近プリン作りに凝っててな」
「あぁ。そう言えば櫛枝さんとやってたよね。それ」
「おう。そんで明日北村に食べさすプリンを作ったのに、あのバカ自分で食べやがったのさ。で、卵が無くなって、俺が買い出しに来ぃ・・・散歩のついでにな」
「・・・・そうなんだ」

なんとなく、羨ましかった。
逢坂大河が。川嶋亜美が・・・・・なぜ亜美の事まで?そんな疑問が頭をよぎる。

「でも、それでどうして私が行っちゃ駄目なのかな」
「駄目とは行ってないが・・・来ない方がいい」
「なんで?」
不思議だ。
「・・・・・28回」
「何が??」
「メール。それに着信が15回。その全てにブッチかましたからな。下手をすると血を見る」
「うそ・・」
「ま、コッチにも手は有るからな。取っておきの蜂蜜プリンと、高須特製カスタードクリームを伝授してやるさ。アイツに教えるのが一苦労だけどな」
にこり。と微笑みを浮かべている積もりの竜児は、暗闇でギラリ!と凄絶に笑みを漏らしている様にしか見えない表情を見せていた。
自分の所為で。という思うもあったが、それよりも・・・
16G/W :2009/05/04(月) 14:18:08 ID:L6vIwQ7A
「ねぇ高須君」
「ん?」
「タイガーも・・・この前振られたんだよね?」
「おう」
「・・・・凄いね。タイガーは」
だってもう北村に向かい合える。だってまだ北村に、向かっていける。
「さぁ、どうかな。でもまぁアイツが振られた時はこんなもんじゃなかったぞ」
「え?それって」
「5合。一人で自棄食いしやがった。もう泣きながら。まぁ去年は電柱蹴飛ばして傾けたしな。それよりはましか」
「5合ってか電柱って」
「まぁ北村の悪口こそ言わなかったがな、狩野先輩の下に果たし状を送るって喚いてたな。アメリカまでわざわざ喧嘩しに行く気だったのか?アイツは」
「タイガーらしいね」
「まあな。でもそれだけだ。泣いて喚いて。それでも北村の事が好きなんだからソレはもう仕方ない。まだまだこれからなんだそうだ、アイツは」

どこかで負けたと麻耶は思った。
自分には無い強さとひたむきさが、逢坂大河にはあると思った。
もしかしたら自分は大河ほどに北村の事を好きでは無かったのかも知れない、とも。
「ま、アイツはアイツ、木原は木原だ。それぞれ受け止め方があっても良いと思うぞ?俺は」
「うん・・・・そうだね」
それぞれだ。だから今は、少し自分を許そう

「ねぇ高須君、ちょっと良いかな?」
「ん?なんだ?」
「いいからチョッと。コッチコッチ」
くいっ!くいっ!と手招きする木原に?を浮かべながら竜児が近づくと

ちゅ

「!!!!!き・・・きひゃら(木原)?」
唇・・ではない。筈だ、と言うギリギリの口元に、麻耶は突然キスをしてきた。
「ふふふ。コレは御礼。今日はアリガトね!トレーナー、ちゃんと洗って返すから!!じゃあね!高須君!!」
少し頬を赤らめて走り去る麻耶の姿を呆然と見詰める竜児・・・・意識を取り戻したのは18回目の着信だった。合掌



どうしたんだろ私。
まるおの事、ホントに好きだったのに。あんなに辛かったのに・・・・今それは無い。
まさか・・・よね?振られたその日に?無い無い。
親友の彼だし、なんたって怖いし。それほど接点も無いし、有る訳無いよ。
・・・そう。そんなに仲良く無いし、話もあんまりして無い・・・・のに。
「・・・・・居て・・・くれたんだよね・・・」
寒くて辛い思い出が、でも思い返すと暖かくて、優しい時間に思える。
気が付けば動いてた
「・・・もう、少しで・・・・・」
指先でなぞる唇に、彼の感触が残ってる。
ほんとうに、
「どうしたんだろ・・・・私」
17G/W :2009/05/04(月) 14:18:36 ID:L6vIwQ7A
変化。
最初に気付いたのは誰だろう。彼女の笑顔の先に。

意識。
誰が初めに意識しただろう。その彼女の視線を。

認識。
いつのまに皆が認識したのだろう。彼女がそこに居る風景を当たり前のものと。


木原と香椎が男子と話す。それがソレほど不思議な光景である訳ではない。
とくに北村と話している事は不思議ではなかったし、能登や春田ともよく話してた。
でも最近は違う。
良く見る光景、亜美と木原と香椎。そして最近、ソコに竜児が加わっていた。
竜児は普段から自分から積極的に動くタイプではないし、亜美も女友達との一時に彼氏である竜児を連れて行こうと思った事は無い。
だが最近、竜児と話していると木原と香椎がやってくる事が多い。
もちろん2人の邪魔をしに来ている訳では無いし、とくに話があるのは亜美に対してだけだった。
それでも竜児が気を利かせて席を立とうとすると何気に話しかけ、竜児をその場に押し留める。

その意味を知る者は居ない。それは本人すらも含めて。

ある日の午後。亜美と麻耶、奈々子の3人は何時もの様にスドバでくつろぎの時間を過ごしていた。

「ねぇ。麻耶」
「ん?なに?」
「ん〜。なんか最近、竜児と話してる事多いけど・・・なんか有った?」
「え?」
それは亜美の自信と信頼。彼と友への、自信と信頼。
「うん・・・あった」
「え?」
「ちょっと!麻耶それって」
「あ!違う違う!そんなんじゃなくてさ・・・・・私、まるおにフラれたじゃない?そん時」
「あ」
そこで思い出したのは香椎。
なんか木原の様子がおかしいんだけど?なんか有ったのか?と聞いてきたメールだった。
「あのメール」
「?奈々子?」
「あ、うん。前に高須君から麻耶の様子がおかしいってメールで聞かれて。たしかあれって、当日だったよね」
「そ。フラれた当日。もう雨は降るし暗くなるしお腹は空くし、でもってなんか帰りたくないし、もう最悪。気が付いたら・・・高須君が居て・・・私、泣いてた」
「麻耶」
「そっか」
親友の失恋話ほど、憂鬱で聞きたくないものは無い。
「で、それだけ!なんか泣いてるトコ見られたと思ったら、高須君の事近く感じちゃってさ。ゴメンね、亜美」
それだけ!と言って笑顔を見せる麻耶に、亜美もまた笑顔を見せる。
「OKOK。どうせウチのヤドロクが不用意に優しくしてそこ等にフラグでも立てまくってんのかと思っただけ。麻耶が謝る事なんてこれっぽっちも無いじゃない」
「そう?」
それは些細な乙女心。何をどう・・・認めたくないのだろうか。私達はみんな・・・面倒だ。
奈々子は静かに紅茶に口を付け、そのヤドロクさんに今度スーパーで会ったら嫌味の一つでも言ってやろうと決める。
「でも亜美・・・・分かんないじゃない?フラグ、私も気が付かないうちに立てられたかも・・・だったら、どうする?」
「ふふ、OKって言ったでしょ?友情は友情、愛情は愛情。上等よ、麻耶。でも覚悟しといてね?
亜美ちゃんてば、超可愛いいし超愛されてるから。それでもいいならかかってらっしゃい、いつでも、ね?」
「はいはい。ごちそうさまでした」

あはははははは

この時、亜美も麻耶も知らなかった。
この暖かくて心地いい空間に、暗い影が忍び寄っていた事を・・・・知る余地も無かった。
18G/W :2009/05/04(月) 14:19:04 ID:L6vIwQ7A
どうにも最近亜美の様子がおかしい。なにかしたか?俺。
ま、棘があるのは前からなんだが、最近本数が増えてきてそうな・・・かといってHの回数は・・・増えてきてる。
いくら俺が若くても、だな。その、流石に疲労と云うか腰が、というか。でも何となく感じる。

「何か不安な事でも有るのか?亜美」
そう。どこかアイツは不安気で、なんだか必死な気がする。
俺の気の所為だといいんだけど、な。

そんな事をぼんやり考えて歩いていると、俺の家の前に止まっていた何やら高級感溢れる車のドアが開いた。
運転席から出てきた、なにやらどこぞのSPだか敏腕秘書だかの風情の男はすぐさま後部座席のドアを開くと、ソコからは白いスーツを着たおっさんが出てきた。

「やあ。君が高須竜児君?」
「え?俺??」
なんで俺?
「はぁ、高須竜児は俺ですけど」
なんだよ?こいつ。
なんか普通のサラリーマンにはどう見ても見えない。アレか?そっちの筋の方か?
とうとう俺のこの人相は本職のスカウトマンの心をゲットしてしまったのか!
だとしたら早急に、至極穏便にお引取りを願わねば。
「はじめまして。いつも娘がお世話になっていますね。私、川嶋亜美の父です」
「すいません!俺そっちの業界に行く積もりは更々無いって言うか、俺、こんな見た目だけど喧嘩とかからっきし・・・・て、父?」
あれ?なんか聞き間違い??
「いや、業界って、芸能界?いや、そんな話じゃないんだけど・・?高須竜児君?」
おっさんが、もとい!亜美の親父さんが不思議がってる。そりゃそうだ。そうだ、が・・・
「父ぃぃぃぃぃーーーーーー!!!??」

なんとか冷静さを取り戻した俺が亜美の親父さんに話があると車に乗せられたのは15分後。久しぶりだな自分。
ここじゃ何だから、と乗せられたのはいいが、走ること20分。どうにも居心地が悪い。
親父さんも話し出さないし、なにか言おうとすると運転手の兄さんがミラー越しに見るんだよな。タイミングが掴めん。
「あの・・・・何処に?」
うん。これが精一杯。良くやったろ?ヘタレにしては。
「うん?ああ、すまないね、もうすぐ着くから。小泉、あとどれ位だ?」
「8分ほどで」
「と、言うわけだ。済まないね」
「はぁ!じゃな!!大丈夫です」
「うん」
結局分からぬまま何やら都会に来てしまってる。それにしても8分て!細かすぎだろ!と思ったら、8分後に車は止まった。
この人マジ怖えぇ。

着いた場所はでかいホテル。つか、なんか知ってるぞ?テレビとかでよく見るだろ。
何処ソコの大統領だのスターだのが使ってる奴だろ?ここ。
俺なんかは一生縁が無いと思ってたが、実際来て見ると、圧巻だな、マジで。
俺が間抜けにもポケ〜っとしてると、向こうで、ようこそ川嶋様とか言われてた親父さんが俺に声を掛けて来た。
「どうしたね?高須君。来たまえ」
「は、はい!」
そして俺が連れてこられたのは、コレもテレビで見たこと有る様な、馬鹿でかいフロアだった。
19G/W :2009/05/04(月) 14:19:28 ID:L6vIwQ7A
「ココは?」
つかなんでココに?が正解か?もうよくわかんねぇ。
「来月、ココで記者会見が有るんだ」
「記者会見?」
それが??
「ある映画の撮影開始のね。まぁ宣伝だ。君もよく目にするだろ?制作費は幾らだの出演者は誰々だのって、あれさ」
「あぁ。それなら。でも、広いですね」
「はは。これでも狭い位だよ。今度のは日米韓の合作だしね。お披露目も日本が最初じゃない。先にアメリカで会見した後、日本で会見だ。その後は韓国で」
「はぁ」
なんとも世界規模なマクロな話題だ。畳何畳のミクロな俺には無縁の話だ。
「日本からの出演者の中には、亜美も居る」
「あ!亜美が!!」
「ああ。まぁ大抜擢だがね」
親父さんの表情も明るい。そりゃあそうだろう。なんか壮大な話になって来て無いか?
アメリカに韓国だろ?すげえなおい!
「世間では安奈の七光りとか言われてるけどね、実際は総監督の一本釣りなのさ。まぁ世間がソレを信じるかどうかは難しいが、ソレを信じさせるのは亜美の仕事だ。
周囲が納得せざるを得ない仕事をすれば、評価はおのずと付いて来る」
「はい!」
亜美はどんどん光っていく。光っていってくれればいい。アイツはきっと、誰よりも輝ける奴だ。
身内贔屓かも知れないけどな?それでも俺にはそう思えた。
「君は?亜美の成功を祈ってくれるかい?」
は?なにを当たり前な
「もちろんじゃないですか!そんなの当たり前じゃないですか」
「そうか。ありがとう・・・なら話は簡単だ。亜美と別れてくれ」
「は?」

おいおい。あれ?なんだ?
ドラマか?映画か?本?まんが??おお!SSか!・・・・なんだよ、このお約束。

「あの・・・それって」
「まぁいわゆる御約束って奴で恐縮なんだがね。君も取って付けた様な定型文を聞かされるまでも無いだろう。これはひとえに、亜美の為だ。
古くて御約束だとは思うがね?でも御約束ってのは必ず有るから御約束なのだよ。そしてそれは往々にして正しいモノだ」

ちょっと待ってくれ。幾らなんでも行き成り過ぎるだろ!
御約束ってなんだよ?あぁ、分かってるさ。いまさらそんなテンプレートの定型文を聞かされるまでもねぇ。
でもソレって・・・そんなのって
「ちょっと待ってくださいよ・・・俺達にだって意見くらい・・・亜美とだってそんな話は」パサっ

親父さんは胸元から取り出した1枚の紙を、俺の横のテーブルに置いた。
見るとソコには・・・
「なんだよ・・・・これ」

俺と亜美が並んで歩いてる姿が写され写真が載ってる、何かの原稿だった。
アホみたいなタイトルと一緒に。

『大抜擢のグラビアアイドル川嶋亜美の背後に黒社会アリ!恋人はチンピラ?』
20G/W :2009/05/04(月) 14:19:49 ID:L6vIwQ7A
この服装は覚えてる。川嶋の旧友に合いに行った時のモノだ。
あの時は、向こうの男共への牽制になるからって、亜美がわざわざ黒ジャケットに紫のシャツで、わざわざ怖さを際だ出せたんだった。
おかげで男共ばかりか町中の人に恐怖を与えたみたいだ。
必要も無いのに同じ警官がウロウロしてたのを今でも覚えてる。
「どうやら亜美の前の学校の生徒から流出したみたいでね。まぁ記事の内容に付いては事実無根も甚だしい。
コッチも早めに察知したからね。記事は差し止めたよ」
「そうですか・・・・すいません」
「なぁに。君が謝る事じゃない。コレは私達、コチラ側の人間の話だ。君に落ち度は無いよ・・・
だが、亜美はコチラ側の人間だ。ごめんなさいじゃ済まないんだよ。コレはね。君にもソレは分かるだろう?」
「・・・・はい」
そう、コレで困るのは俺達じゃない。困る人達と俺達は・・・・違う。

「私達は君を知ってる。もちろん逢ったのは今日が初めてだし、会話をするのも初めてだがね。分かるよ、君は誠実な青年だ」
「・・・・・・・・」
「だが、例えばこの記事が世に出たとして、ソレを見た人はどう思うだろう?
確かに昨今、芸能人は自由だ。自由を得たと言っていい。実はこんな御約束はとっくのとうに死滅した、いわば過去の悪癖に過ぎない」
「だったらなんで」
「それは君だからだよ」
「!!俺・・・だから?」
なんだよ・・・・・それ
「世間が許すのは一般論の中だよ。青年実業家。局の人間、業界の人間。同級生や幼馴染が居たって良い。今の世の中はソレを否定的には捉えない。
中には肯定的に捕え、仕事に反映される場合もある。だが、これは本当に申し訳ないが、君の容姿は一般論として受け入れられない」
「!!・・・・」
また・・・・か・・・
「何度だって言う。私は君を知っている。亜美の性格や聞いた事情、君の家庭や、逢坂大河さんの事も加味してみても、むしろ私は君を高く評価している。
だがその記事を見れば分かるだろう。
確かにその記事は事実無根だ。だがソレを信じてしまう人達に、ソレが事実無根であると説得するのはどれ程の困難な事か、君には分かるかね?」
ああ・・・嫌と言うほど分かるさ・・・
「君が級友達と笑って話せる様になるまで、一体どれ程の時間が掛かったかね?
君ももう3年だ。既に君の人となりについて知る人間は多分に居るだろう。だがそれでも尚、君の学校に、君に恐怖を覚える者の居るのではないか?
君を直接知る事の出来る者達ですらその有様なのに、君に会う事も、会った事の有る者にすら出会う事が無い日本中の読者に、君はどうやって自分に対する理解を求めるのかね」
そんなもん・・・俺が聞きてえよ・・・・
「時間が解決するか?確かに、往々にして時間が解決するモノは少なくない。特にこの業界はね。だが、その時間とは何時だ?」
あの秘書にでも聞けばいいんじゃねぇか?分刻みで教えてくれるさ・・・
「見たまえ!この会場を。ココだけじゃない。アメリカで韓国で!埋め尽くす報道陣とフラッシュライトの中に亜美は立たねば為らない。それはもう一月後に迫ってる。
我々には、時間が無いのだよ。だが高須君、私は何も私達の事だけで君に話をしているのではない。これは君達の為でもあるのだよ」
「俺・・・達?」
俺の問いに親父さんはゆっくり頷いた
「恥ずかしながら我々の世界とは、君達が見る華やかな裏では陰惨な、醜いモノが蠢いている世界なのだよ。それは時に手段を選ばない。いや、それすらも常套手段なのだろうな。
失礼だが君の周りの事は全て知ってる」
!!
「あぁ、誤解しないでくれ。別に君の身辺調査をしていた訳じゃない。この・・・記事。コレを握りつぶす過程でね。この続きを練っているネタ下を潰した時にね」
続き?なんだよ、それ
「君の顔、だけじゃない。君と、君のお母さんの泰子さん。それに逢坂大河さんと彼女の家庭の事情」
「な!!」
21G/W :2009/05/04(月) 14:20:11 ID:L6vIwQ7A
なんだよそれ!!
「考えられないかい?でも普通だよ、この業界ではね。
まったく週刊誌って奴は性質が悪い。アイツらは売れそうなネタなら何でもいいのさ。道徳心も良心も便所の紙切れ同然にしか思っちゃいない。
ま、ソレを利用しようって我々も、所詮は同じ穴のムジナだけどね。
非常に不愉快だろうね。察するよ。でも現実問題、君と君の大事な家族は、格好のネタになる。
可哀相な話は売れるのさ、そんな家庭に育った君の様な顔の青年が今をときめくアイドルに近づく。
今、こうして話してるだけでも僕の頭の中には4つも5つも醜悪な見出しが踊り狂ってるよ。
ほんと、どうしようもなく歪んでるよね、この業界はさ。でも、今、君達はその歪んだ業界の限りなく近くにいるんだよ」

泰子と大河が・・・・なんだよ、それ。
泰子は必死になって俺を育ててくれた。毎日毎日酒飲むんだってキツイし体にだってよくない。でも金がいいから。俺の為に。
大河だってやっと笑える様になったんだ。昔見たいに触れるもの全て薙ぎ倒す手乗りタイガーじゃなくて、普通にクラスメートと笑って話せる様になったんだ。
そんな・・・やっと・・・・やっとなのに・・・・
「・・・それは駄目だろう・・・・」
もう、俺は立ってられなかった。
膝をついた俺の肩に手を掛けた親父さんの声は、ひどく優しい声に聞こえる
「私は亜美を守ってあげる事が出来る。その為なら私は何を犠牲にしても構わないと思ってる。
でも高須君。私には君達まで守る程の力は無い。君の家族を守れるのは、君だけだ。君だけなんだよ、高須君」
俺だけが・・・・・守る・・・
「済まないね、私も少し話を急ぎすぎた。確かにおいそれと決める事じゃない。
そうだな、1週間程時間を上げよう。もちろん、私だってもっと良い策が有るか検討してみる。私だって、亜美と君の事を応援したいと思っているからね。
それじゃあ今日はこれで。ああ!表に停まってるタクシー、どれでもいいから乗って帰りたまえ。フロントには話を通しておく。じゃ、1週間後」

その後、俺は自分がどうやって家に帰ってきたのか覚えていない。
気が付いたら玄関に・・・靴がある。大河か

「・・・ただいま」
「おそ〜〜い!!何やってたの!竜児!!」
「あん?ちょっとな」
「あ〜〜ん!竜ちゃん!やっちゃんお腹空いた〜〜」
「!あぁ!わりぃ!すぐ作っから、仕事には間に合わせるよ」
「竜児。今度の日曜日に皆でピクニック行こうって!北村君が!!お弁当作ってよね!私もプリン作るから!」
「お前。弁当にまでプリン入れてどうすんだよ。そうだな〜〜、お前でも作れるおかず、何か考えてやるからソレを作れ」
「ホント?!すっごく美味しいヤツね!北村君に4つ星以上の味を味わってもらうんだから!」
「お前はどんな弁当を作る気だ」

俺の家族・・・俺の居場所・・・俺の・・・・守るべき者達・・・・

お前が抱えてた不安はコレか?亜美。
どうすれば取り除ける?俺はお前になにがしてやれる?
言ってくれれば・・・言える訳無いか。お前は優しい奴だもんな・・・・

何でだろうな、亜美・・・・今、俺はお前に逢いたい・・・逢いたいよ、亜美・・・・・
22G/W :2009/05/04(月) 14:22:56 ID:L6vIwQ7A
とりあえずココまで書きました。
いきなりの大量投下、すいませんでした。
つづきできたらまた投下させてください。
名前の由来とおり
G(ゴールデン)W(ウイーク)中の存在になるかと思いますんで。
ありがとうございました。
23名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 15:32:24 ID:yFPb3up+
ちょま、木原との火遊びのお話なのに壮大なこのスケールはいったいなんなんだ!?
まさにGJと言わざるを得ないのだが…
24名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 16:25:28 ID:CJBv8X0O
GJ!
それぞれに違う想い人がいる竜児と木原で仮初め(?)の恋愛を描ききるのは難しいと思いますが、
作者様の中ではすでに話が出来上がっている様子。見事!
25名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 16:47:54 ID:FOuBOpEb
麻耶が話の中でメイン級で竜児と絡む
それだけでワクテカだぜ
26名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 17:50:59 ID:TPkwBzh+
GWラッシュに便乗して、みのドラを投稿します。
10皿目で投稿した「デラウェア」の続きで、4レスお借りします。
(夏旅行二日目の夜、竜児が実乃梨に告白して…みたいな話です。)
271/4:2009/05/04(月) 17:51:53 ID:TPkwBzh+
夕暮れ時。薄暗いオレンジ色に染められた道を二人並んで歩く。
大河のところへ。大河がいるであろう、あのマンションへ。

『ヘタレな二人を支えてあげて。』

川嶋の言葉を思い出す。朝、川嶋に誓った。二人を支える、って。
けど、今ならはっきり言える、それは間違いだ。
二人ともヘタレなんかじゃないから。
1学期開始早々、大河は北村に告白した。想いを伝えた。
結果はあれだったけど、それでも今も堂々と生きてる。
そして――

隣を歩く実乃梨の表情を見る。
夕日に照らされたその横顔に迷いはない。
その決意に満ちた表情は、普段の眩しさとは一味違う輝きを放っている、ように見える。
――実乃梨は俺に自分の汚いところをさらけ出してくれた。
そして、ちゃんと立ち直った。自分の道を力強く誓って。
二人とも、人として強いもんを持ってる。少なくとも、俺なんかよりずっと強い。
今はただ、糸が絡まってるだけなんだ。
だから、俺がそれを取り除く。それで、大丈夫なはずだ。
そんなことを考えながら歩き続ける。
実乃梨との会話はない。けれど、気まずいなんて思わない。

そのまま歩き続けて、大河の住むマンションが見えてくる。

「ん?どうした?」
ふいに足が止めた実乃梨に声を掛ける。
実乃梨は一瞬俯いた後、ニッコリ微笑んで、

「竜児くん。私はここまでだ。」

「……え?」
実乃梨の発言の意味を理解するのには少しの間が必要だった。
これは、離脱宣言…なのか?
「…ちょっと待ってくれ。何でお前が抜けるんだ?三人で話さなきゃ」
「いーや。大河が素直になるには、私はお邪魔虫なんだ。」
首を傾げる。実乃梨がジャマ?二人の仲直りはずなのに?
「わりぃけど、俺にも分かるように説明してくれないか。」
「や、それは流石に鈍……いや、竜児くんは私と大河の仲直りを思ってくれてるんだよね?
それはすっげーうれしい。けど、そうじゃない。そうじゃないんだ。その……」
どう伝えたらいいか分からない。そんな感じで実乃梨は黙り込む。

「――竜児、みのりん。」

その時。聞き慣れた声に自然とマンションの方に視線を向ける。
マンションの入り口。そこには……

「「大河!?」」

――大河が立っていた。
282/4:2009/05/04(月) 17:53:10 ID:TPkwBzh+
「二人を待ってたの。」

淡々とこちらに歩み寄る大河。その表情は……感情がないみたいに見える。
「話したいことがあるの。」
「う、うん。そ、それじゃあ、私は――うっ。」
さっきの宣言通り、実乃梨は立ち去ろうとする。
が、大河の眼差しがそれをさせない。
いつもとは違う威圧感、いや必死さが実乃梨の瞳を捉えて離さない。
「みのりんも聞いて。…お願い。」
「…分かった。けど、立ち話もなんだし、場所をかえよう。」
「私の部屋でいーよ。来て。」
どこかおぼつかない足どりでマンションのエントランスに入っていく。
いつもみたいな、何となく愛嬌のある危なっかしさじゃない。本当に危うい。
実乃梨と目を合わせて頷き合って、大河の背中を追う。
大河が何を思っているのか。その背中を眺めていても分からなかった。

そのまま、会話のないまま大河の部屋に入る。
「…久しぶりだね、この部屋に入れてもらうのも。……見違えた。」
「え?久しぶりだったのか?」
「うん。まー、ね。」
「……」
俺たちの会話に、大河は後ろを向いたまま何も反応しない。
「これも竜児くんのお陰……なんだね。」
「……そういえば、竜児にはまだ言ってなかったね。おめでと。
みのりんのこと、大切にしなかったら承知しないから。」
「お、おう。ありがとな。」
唐突に会話に割り込んで、後ろを振り向いたまま祝福してくる。
違和感はあるが、ここは素直にお礼を言うことにする。

「…それで、話って何なんだ?」
「うん、それなんだけど。」
前を振り向いて、目一杯の笑顔を作って。

「私、このマンションから引っ越すことにしたから。」
293/4:2009/05/04(月) 17:54:00 ID:TPkwBzh+
「え……たい、が?」
数秒の沈黙の後、実乃梨の途切れ途切れの言葉がポツリと聞こえてきた。
「だから、みのりん。今のうちに謝らせて。昨日のこと、今日のこと、ごめん。」
「な、何言っちゃってんだよ、大河?引っ越す!?どこに行くってんだよ!?」
大河は実乃梨に肩を掴まれても平然としてる。
「ワケ分かんねぇぞ、大河…!何だって急に……!?」
あまりの異常に、こいつが本当に大河なのかすら分からなくなってくる。

「親父に連絡した。家族で暮らしたくなったの。それだけ。」

が、大河はそれでもなお平然と、淡々と言い放つ。
「…っ!あんなヤツのところ……!」
「みのりん、親父のことは悪く言わないで。」
「でもっ……!」
唇をかみ締めて、歯を食いしばって実乃梨は黙り込む。
親父、家族……

「……親父と、家族と暮らす?それは本当なのか?」
「ちょ…竜児く」
「本当。じゃ、そーいうことだから。やっちゃんにもよろしく伝えといて。
あと、竜児。あんたにも一応、お礼くらいは言っといてあげるわ。ありがと。」
大河は微笑む。貼り付けた笑顔で。

――父親と暮らせる。それは幸せなことなんじゃないか?
だったら俺たちがそれを邪魔する権利はないんじゃないか…?
だけど、だけど。大河のこの哀しそうな笑顔は何だ?
これが幸せなわけ……ねぇだろ。

「ちょっと大河!頼む、お願いだ!私の話を聞いてくれ!!」
「…それじゃ話は終わり。じゃあね。みのりん、それと竜児。二人とも幸せにね。」
それでも、大河は最後の別れを告げてくる。
叫ぶ実乃梨の言葉に耳も貸さないで。無理やり作った笑顔のままで。

もうダメだ。限界だ――

「大河。」
「なに?――っ!?」
304/4:2009/05/04(月) 17:55:21 ID:TPkwBzh+
ぱぁんという音、思いっきり大河の頬を叩いた音がただっ広いリビングに響いた。
最低だって分かってる。けど……抑えられなかった。

「馬鹿野郎!何でウソなんかつくんだよ!?」
「……ゃ。」
「え?」
「何すんじゃ、このボケぇぇ!!」

大河の反撃、凄まじい勢いで繰り出されたビンタによろめく。
「うっさい、ウソなんかじゃないもん!私のことなんて何も知らないくせに文句言うな!」
頬の痛みを食いしばりながら大河を真っ直ぐ見据える。
その顔は真っ赤、そして肩と腕がワナワナと震えている。

「竜児くんっ、……大河っ!!」
「みのりんは黙ってて。この駄犬をしつけてやらなきゃダメなの。」
「ぇ、竜児くん!?」
大河をにらめつける実乃梨を手で制する。
…俺の話はまだ終わっちゃいねぇ。
「お前のことを何でも知ってるなんて思わねぇ!
けど、そんな顔してたら誰だってウソだって気付くに決まってんだろ!」
「っ、ウソだから何だっての!?あんたとみのりんの幸せに私はジャマなの!だから、消えるの!」
「お前がいなくなって、俺と実乃梨が喜ぶわけねぇだろ!いい加減なこと言ってんじゃねぇ!」

「うっさい!!うるさいうるさいうるさーい!!!!」

今までの怒声の倍以上のボリュームで大河が絶叫した。
「何であんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!
あんたはみのりんのことだけ考えてれば良いの!私のことなんか放っておけばいいの!」
声がエネルギーとなってビリビリと襲い掛かってくるような錯覚。でも、譲れない。
「放っとけねぇよ!!」
大河に負けないよう、精一杯叫ぶ。近所迷惑なんて気にしてる場合じゃない。
「お前が大切なんだ、お前がいなくなるなんて嫌に決まってんだろ!!」
俺の叫びに、大河の大きくて綺麗な瞳が見開かれる。
それから、フッと笑って首を横に振る。

「……ダメなの。」
「何がダメだってんだ?」
「やっぱり何も分かってない。この駄犬は。」
呆れ顔で大河は笑う。
その目はさっきまでの思いつめたそれじゃない。
でも、潤んでいるような、どこか悲しげな目。
「分からねぇから、分かるように教えてくれ!」
「…分かったわよ。本当のこと言えば良いんでしょ。」
参った、諦めたと言わんばかりに、両手を上げて。そして。

「私……あんたのことが好きなの。」
「……っ!!」

続く


長くなりそうなんで一端ここで切っておきます。すいません。
何はともあれ、とらPやってきます。それではっ。
31名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 19:59:39 ID:pr6X3xZD
ここでかよっ
GJ
ここでかよっ
32名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 21:31:35 ID:UHoC7IbH
>>22
GJ
なんか亜美パパはCVジョージだった

>>30
PSP持ってないのにとらP限定版買った俺へのあてつけだな!いいぞ!もっとやれ!
33名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 00:45:07 ID:TI9ldmbk
誰か時間に余裕のある人ミラーまとめ作ってくれよ〜
ここの流れ速すぎるorz
34名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 02:32:08 ID:j2Z/UmuX
>>33
つ【2ch言いだしっぺの法則】
35名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 02:47:45 ID:MS96JAWj
>>32
よう、俺
36名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 03:00:46 ID:D+JlbM/t
>>22
続きがwktkでならない

あンたの書くあーみんは可愛いな
37名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 09:08:52 ID:hzxplKKq
>>30
wktkwktk!
続き超期待しております
38G/W :2009/05/05(火) 15:05:24 ID:sA8fY+aB
ゴールデンウィークもあとわずか。
ちょいと急ぎで参ります。
まだ完結してませんが、出来分、投下します。
よろしくです。
39G/W :2009/05/05(火) 15:05:55 ID:sA8fY+aB
亜美の父との邂逅から数日。
竜児はその心ココにあらずだった。
でもソレは竜児本人に取ってであり、周囲の人にソレを気付かせることの無い様、竜児は神経をすり減らしていった。
皆で行ったピクニックは楽しかった・・・・らしい。
大河に教えたエビピラフは・・・味を覚えていない。
全てはどこか遠くに思えて、現実感が希薄だ。

「なあ〜。なんか最近の高須って変じゃないか?」
「え〜〜?高ちゃんが?・・・・・寝癖?」
呑気なアホはほっとこう。
「まぁ、俺も気にはなってるんだが、高須の奴はなんでもないって言うし」
能登と北村は教室の中の竜児を覗き見るだけだった。

それは亜美にとっても感じる事。
いつからか竜児の笑みに影が落ちてる。それは普段は気が付かない程の小さなものだった。それが最近は目に付くようになってきた。
「ねぇ亜美。最近高須君変じゃない?」
「ん〜・・・わかんない。でも・・・変よね」
前は偶に言われた。私に何か不安な事でも有るんじゃないかって。
不安て程でもなかったけどね。少しは有った。
それは・・・・・この私の親友の事だ。

なんで気付いちゃうかな〜って思った。竜児の良さに。
そしてきっと・・・・惹かれはじめてると思う。
ただの感。
でも何でかな、そう思った、し、不安になった。

掛かってこいなんて言ったけど、もしホントにそうなったら?
以前の私なら、ホントに上等!ッて感じだった。でも今は違う。
私はきっと弱くなった。守られて、守られ過ぎて、弱くなった。

ねぇ竜児。何が不安なの?ねぇ・・・・遠いよ、竜児。

竜児は亜美の不安を誤解して、亜美は竜児の不安を感じ取り、不安を募らせる。
日は過ぎ行き、重く暗い影は、確実に足元に伸びてくるのだった。そう、確実に・・・


「ふんふふふ〜〜ん♪」
ココ2日ばかり泰子はご機嫌だった。
「なんだか最近ご機嫌だな。泰子」
他愛も無い会話。
「え〜〜?分かっちゃう?なんかね〜ここん所来てくれるお客さんが〜。もの凄く羽振りが良くてお店も大繁盛なの」
「へ〜。この不景気に」
「ホントよね〜。なんか東京の芸能関係の人達みたいでさ〜。すけべなこともしないし、大人し〜く飲んで高〜いお酒飲んでくれて〜。たっくさんお支払いしてくの。
なんか会社の経費で落ちるんだって。やっぱり芸能界って良いよね〜。あ!亜美ちゃんも芸能人なんだから、やっぱりそんな感じなのかな〜。
竜ちゃんはそんな亜美ちゃん嫌?
やっちゃんはそんな亜美ちゃんも好きだな〜。だって亜美ちゃんは亜美ちゃんだし」
「・・・・・ああ」

着実に・・・足元に・・・・・


そして再び竜児の前にあの車が現れたのは、あの日から、丁度1週間が経った日だった。

40G/W :2009/05/05(火) 15:06:21 ID:sA8fY+aB

「やあ。高須君久しぶりだね」
「・・・・・どうも」
「場所、変えようか」

連れて来られたのは近くの高級レストランの一室。
VIPルームとでも言うのだろうか、完全に隔離された個室だった。

「済まないね。まだ食事がまだでね。失礼するよ。あぁ良かったら一緒にどうだい?ココの料理はなにかと絶品でね。
そう言えば高須君は料理が得意だったね。どうだい?口を利いてあげるからココのシェフに色々と教えて貰うと良い。きっと為にな」
「泰子の!」
「ん?」
亜美の父は話を遮る竜児を穏やに眺めている。
「母の店にえらく金払いの良い客が最近来るそうです」
「ほう?それはなによりだ」
「貴方の・・・・ですか?」
亜美の父だ。出来るだけ言葉は選びたかった。
「特に指示した積もりは無いさ。まぁ娘の彼氏の関係者の店だしね、君には・・・借りも出来そうだ。
近くに行ったら贔屓にしてくれ、位の事は言ったかも知れないね」
やわらかな肯定。
「それがどうかしたかい?」
何となく。どこか間接的に・・・金を積まれた気がした。
「君がソレをどう思うかは容易に想像が付くがね?申し訳ないが、それはお店と客の利害関係の話だ。
店に金を使われて面白くないのなら、君がそれ以上の金を使って上げれば良い。高須君。あの店は商売をしてるんだよ?」
「・・・・・・はい」

竜児は自分の予想通り、話の分からない子供では無い。
一つづつゆっくりと・・・逃げ道を潰して行けば、自ずとコチラの意図した方向へ歩を進める。
それは父の思い通りだった。

「ところで高須君。今日君に会いに来たのは、そんな話をする為でも、もちろん僕の食事に付き合って貰う為でも無い。
分かってはいると思うがね・・・もうあまり時間が無いんだよ。結論は・・・いいかな?」
「・・・・・・・・」
「私も色々と考えたよ?でもやはり現状では如何ともしがたいのさ。でも絶望的じゃない。
亜美がこの映画を成功させて、もっとこの世界でしっかりとした足場を築く事が出来れば、また状況も変わってくる。
今はただ時期が早いと言うだけなんだよ」
「・・・亜美は・・・川嶋はなんと?」
それは予想通りの問い
「ふぅ・・・それが亜美は分かってはくれなくてね。おそらく君には何も言ってはいないだろう?映画の事も、記事の事も」
そう、竜児は亜美の口から何も聞いてはいなかった。
映画の事はもちろん。あの記事の事も。
だから竜児には分からなかった・・・亜美は記事の事など知らない事が。
「あの子は君には何も言わずに一人で背負う気でいる。そして・・・最悪、映画を下りる気だ」
「そんな!!だって」
「ああ!チャンスだよ?またと無い大チャンスだ!この世界に替わりなんてごまんと居る。亜美で無ければ駄目な話なんて一つも無い。
そんな幸運を、あの子はまだ分かっていない・・・・何かと君を秤にかければ、今の亜美は君を取るのさ。それがどれ程の不幸であってもね」
あの日曜の前にも聞いた言葉・・・・アイツは俺を選ぶ・・・なら俺は?俺は・・・俺もアイツを選ぶ。例え何を犠牲にしても・・・

亜美と・・・・泰子や大河を・・・・俺は選ぶ。だから今は・・

「俺は・・・・・亜美と・・・・別れます」

俺のこの想いを、犠牲にする事にする。
41G/W :2009/05/05(火) 15:07:21 ID:sA8fY+aB

亜美の父は車に戻るとすぐに走らせた。
自分がこの町に居ることを亜美に知られるのは些か不味い。

「ふぅ。まったく。苦労させられるな、亜美にも」
「交渉が上手く纏まった様で、何よりです」
小泉は視線を送る事無く主を労う。
「ははは。子供相手に交渉もないさ。あまりに情報通り、プラン通りで些か拍子抜けだがな」
そう。全ては予定通りだった。

彼は高須竜児を認めては居ない。最初から。
先ず、外見。そして、そこから派生したものは全て否定的に捕えようとする。
物事には裏と表がある。人はその気になれば、自分の都合の良い面を覗き込むことが出来る。
俗に言う、穿った見方と言うものだ。
彼自身が竜児に言った。そういう誤解を解く為には容易ならざる時間と労力が必要であると。
そして彼もまた、その時間と労力を惜しまずして、高須竜児と言う人間を正確に見ることは出来なかった。

「大体、あんなヤンキー顔の何処が良いんだ?亜美は」
「奥様は彼を高く評価しているようですが」
「亜美からの話を鵜呑みにしてるだけだ。話にならん。私は私の娘に近付くモノは容赦なく吟味する。頭の弱いバカに娘はやれん!」
「では彼は不合格ですか」
「無論だ。結局最期には自分から亜美を捨てる選択をする。所詮その程度の男だ」

記事の事等知らない亜美は竜児が映画や仕事の妨げに為るとは思っていない。
無論、彼女から別れを切り出すこと等、有ろう筈も無い。
竜児が感じている亜美の不安は、竜児と麻耶の事を思っての不安であり、週刊誌や仕事とはまったくの無縁であるのだから。

だが竜児にとって麻耶とのあの夜のやり取りは自然だった。

彼にとってそれはあまりに自然すぎて、それが誰かの心に何かを残す、といった程の事ではない。それ故に彼には気付けない。
自らの行動や言動が、彼女達に与える影響を・・・それは彼の理解の範疇を超える。
鈍感じゃない。
ただ当たり前の事をして、それがいか程のモノであろうか?というだけだ。
したがってソコから派生する感情は、彼にとっては突然降って下りて来たモノと同義。発生した理由が分からない。
その曖昧で不安定なところに、ほんの少しの方向性。一握りの事実。
必要なのは真実ではない。事実。
それだけで人は人を動かしてゆける。
目に見えない不安を・・・・目に見える不安に変えてあげるだけで・・・・仮初の答えを、人は導き出す。

まるで自らが決断したように。

錯覚を覚えて・・・・

亜美の父は既に次の仕事に頭を切り替えていた。
小泉はそれ以上なにも言わず、ただ車を走らせる。
父親として、コレもまた一つの愛し方なのだと理解は出来るが、それでも決して耳に入る事無く、小泉は息を漏らすのだった。

すまないな。高須君。と・・・・・

42G/W :2009/05/05(火) 15:07:51 ID:sA8fY+aB


竜児が家に帰ると、階段の下に亜美が居た。
「亜美」
「や!おかえり、竜児」

あんな事があった所為だろうか。竜児にはそこか亜美が遠くい感じられた。それは亜美にしてもそうだったが。

「なんか、さ。最近竜児って悩んでそうだったから・・・・ほら!竜児ってば頭良くないのに考えすぎるトコ有るじゃない?
なんか悩みがあるなら、この天才美少女のあ〜みんが聞いてあげるからさ!話してみなよ!竜ちゃん?」
殊更元気に、言ってみた。返る言葉は・・・思ってたものとは、違ったが。

「そうか・・・なら聞いてもらおうかな」
「うんうん」

「別れよう・・・・亜美」
「え?」



ソレは唐突で、あまりにも突然で、亜美には聞こえた言葉が理解する前に霞んで消えた。
「ちょ・・・竜児?・・はは。ごっめ〜ん。亜美ちゃんよく聞こえなかったし。もう一」
「別れよう。俺達・・・もう終わりにし」
言葉を言い終える前に亜美は竜児の手首を掴み歩き出そうとする
「な!亜美?」
「行こう!竜児。おかしいよ竜児。ちょっと、てかかなり変!病院行こう!有り得」
「そんなんじゃねぇよ!!」
亜美の手を振り解いて二人は向き合う。いや、亜美は俯いて表情は伺えない。

「じゃあ・・・なんでよ?・・・だって・・・意味わかんないじゃん」
「・・・・・・・・」
「ねぇ・・・・なんで?・・・・・私なんかした?・・・・私竜児になんかした??!!」

顔を上げた亜美は強い視線を竜児にぶつける。
分かっていた。覚悟していた。だから竜児は負けない。

「・・・・お前、今度映画出るんだってな」
「え?竜児、誰から」
それはまだ誰にも言ってない
「・・・なんで言ってくれないんだ?」
「それは・・・ほら!まだ本決まりじゃないし、どうせなら竜児もびっくりさせようと思ってさ。そう!今度の映画って凄いのよ!!
アメリカや韓国と合作で、キャストもスタッフも超一流。制作費だってすっごいんだから!
まあ、私なんかそんなに良い役じゃないんだけろうけど、それでもこの仕事には、うん。賭けてるって感じ?
だから撮影が始まっちゃうと竜児にも暫く会えな」
「凄いよな!ほんと・・・・凄いよ、お前」
「竜児?」
「もう・・・・勘弁してくれないか・・・亜美」
「竜児?」

決めた・・・負けない・・・・折れない!

「もう、川嶋亜美の彼氏で居る事に・・・疲れたんだよ。俺・・・・すまない」


43G/W :2009/05/05(火) 15:08:17 ID:sA8fY+aB


亜美には何を言っているのか分からない。
自分は、自分達は、何を何処で・・・・
「何・・・・言ってるの?竜児」
「はぁ・・・」
竜児は一つ、大きく息を吐く。力を入れなきゃ立ってられない。

「だから疲れたんだよ。お前みたいな有名人の恋人ってやつに」
「りゅ」
「最初は良いよ?そりゃもちろん好きだし、俺だって有名人の恋人なんて鼻が高い。
でも限度があるだろう?映画ってなんだよ。ハリウッド?バンビーには意味わかんねぇって。
どだい無理だったんだよな。俺、ホテル代も満足に払えない程度の奴だぞ?お前とは所詮住む世界が違ったんだ」
「・・・・誰?」
「亜美?」
亜美の目は若干の弱りを見せてはいるが、それでも竜児を真っ直ぐに見詰める
「誰かになんか言われたんでしょ?ねぇ誰!!」
「誰にも何も言われてねぇ!」
「嘘!だって急すぎ!マジ突然過ぎじゃない!映画の話だってまだ本決まりじゃないのになんで竜児が知ってるの?おかしいじゃない!
誰よ!ファン?また私のストーカー?言いなさいよ竜児!一体誰!!」
「だから誰でもないっ」
「言いなさいよ!!私から貴方を奪うのは!・・奪おうとするのは誰よ!!!許さない!!絶対ソイツ許さな」
「俺自身だ!!」
亜美は既に泣き叫んでいた。そしてソレを掻き消すほどの、竜児は怒声を上げた。
「見ろ!亜美!!」
すかさず竜児は自分の家の郵便受けを開く。ソコからは大量の手紙がばらばらとこぼれる。
「なんだと思う?なんだと思う!!」
「・・・なに?・・・これ・・・」

一つ手に取る・・・・・『死ね・・・害虫』と書いてある。
二つ手に取る・・・・・『亜美ちゃんをシャブ漬けにしたのか!!鬼畜』
三つ・・四つ・・・・どれも・・・・これも。

亜美はただ呆然と手紙を見る。
「毎日この有様だ。よっぽど世間様は俺みたいなヤンキーがお前と付き合ってるのが憎いらしい。
なぁ亜美。俺は何をした?お前と付き合って、お前を抱く事は、ソレはこんな事を言われなきゃなんねぇ程悪い事なのか?」
「こ・・・こんなの何処にでも在る中傷じゃん。ほっとけば良いのよ!こんな」
「お前は芸能人だから慣れてるだろうけどな、俺はこう見えても一般人なんだよ!こんな顔してたって俺はこの手紙一枚一枚に傷付くんだ!」
「・・・・・いや・・・」
「もう勘弁してくれよ・・・・もう俺には・・・無理だよ」
「嫌・・・・・いや・・・・い・・ゃ・・・だぁ・・・・」
既に亜美には言葉を繋げる力は無い。いまはただ、拒絶を見せるだけ。それしかもう無い。
ソレを・・・・断ち切る。

「・・・・お願いします・・・・俺と・・・・・別れてください」

竜児が亜美の前で土下座をした時、二人の間の細い糸が・・・・断ち切れたのだった。

44G/W :2009/05/05(火) 15:08:51 ID:sA8fY+aB

「はい・・・・はい・・・ええ。それで・・・・亜美の事、よろしくお願いします・・・じゃ」
携帯をなんか面倒くさげに放り投げて、竜児は一人ベンチに腰掛ける。

亜美が泣きながら去り、宛てもなく彷徨い歩いて・・・少し疲れた。

やがて夜が来て、その雲が空を覆い、空が派手に泣き出すまで、ソレほど時間は掛からなかった。

どれ程の時が過ぎたのだろう・・・・気が付けば雨が止んでいた・・・?止んでない?


竜児の前には、自分に傘を差す、木原麻耶が立っていた。


「・・・・・木原?」
「やっぱり高須君じゃない!どうしたのこんな所で!ってびしょ濡れじゃない!!」
どこか可笑しい。だってそれは
「はは・・・木原、それじゃ俺のパクリだ」
「へ?あっ!・・・ホントだ」
「くっくくく」
「ふふふふ」
「「あはははははは」」

ああ。なんか、もっと笑いたい。そんな気分に、なった。


「ねぇ、なんか有ったの?」
「・・・・・・・」
竜児の隣に腰掛けて、麻耶は静かに語りかける。
雨は以前、その雨足を弱める気配は無い様だ。
「・・・・亜美と」
「!!」
ビクンと反応する竜児を見逃さなかった。
「やっぱり・・・・なんかあったんだね」
「・・・・・・・」
「いいよ。言いたく無いならそれでも。でも私はココに居るよ」
「・・・・なんでだよ」
「ふふ。だって居てくれたじゃない?私がしんどくて、辛くて、どうしようも無い時に・・・居てくれたじゃない」
「あれは!・・・散歩コースだ」
穏やかに麻耶は微笑む。
「ココ、私の散歩コースなんだ」
「ココか」
「そ!ここ」
「座ってるじゃねぇか」
「ココで座るのもコースなの!」
「そっか」
「うん」

どこか心地良い。雨音さえも穏やかな音色に聴こえるかの様な、そんな一時。
そんな一時を終わらせたのは、高須竜児の言葉だった。

「・・・・さっき・・・・・・亜美と別れた」
「え?」
「・・・・・・・・・別れた・・・・・」
「・・・・・そう・・・・・」

雨音が、一層激しさを増した気がした。
45G/W :2009/05/05(火) 15:09:51 ID:sA8fY+aB

麻耶にはその言葉は信じられなかった。
どうして?なんでよ!
親友の恋愛の終結に、その彼氏を問い詰める筈だった。
その筈だった・・・でも耳に届く自分の声は、どこか優しげだった。

「・・・・・なにか・・あった?」
「・・・・・・・・」
「話したく・・・・無い?」
「・・・・・・・・」
「いいよ・・・・私はココにいるから・・・・今は、いいよ」
「!!・・・・・・・わりぃ・・」
「・・・・うん・・」

1週間。追い詰められて、追い詰められて・・・竜児は疲れていた。疲れ果てていた。
そして最期の力で、大切な者を守る為に大切なモノを捨てた。
身が・・・・斬られた。思いがした。

どれ程の時間が経ったろう。ようやく竜児の口が開いた。
「・・・映画・・・」
「!!・・・うん?」
「今度、亜美の奴、映画出るんだってさ」
「・・・そう。凄いね、やっぱり」
「ああ。ほんとにスゲェよ・・・・俺なんかが、そんな奴と付き合ってて良い訳ねぇよな」
「そんなこと」
「やっぱさ!身の丈に合った恋愛をしようって事さ!で、俺達は別れた!そんだけだ」
「・・・・それで、いいの?」
「・・・ああ」
「後悔、しない?」
「・・・ああ」
「・・・そっか・・・うん。高須君と亜美がそう決めたんなら、それでいいのかもね」
言うや麻耶はすっくと立ち上がり竜児の前へ
見上げる竜児の顔には幾分力が戻ってきてる。
「ほんと、なんかアノ時と逆だな。で、同じだ」
「ふふ。そうね。でも違うわよ。似てるけど、少し違う。だって高須君は泣かなかったもの」
「ま、男だしな」
「あ〜!差別発言!」
「ほっとけ」
少し、元気がでた。
「ホント、あの時と一緒・・・・だから」
「え?・・・んっ!!」

麻耶はその身を竜児に傾け、キスをした。
あの夜と同じ様に・・・・
あの夜と少しだけ違う・・・竜児の唇に・・・キスをした。

「お前!」
「ね?少し違うでしょ?」
笑顔を見せる麻耶の、それでも確かに赤い頬は、それが些細な事では無い事を物語っていた。
「じゃ、行こうか」
「は?行くって・・・何処に」
竜児には分からない。色々な事が有り過ぎて、頭がおかしくなったのだろうか。
「私はトレーナー着てないし、流石にコレを高須君に着せる訳にはいかないじゃない?下着姿になっちゃうし」
「ば!下着っておま」
「だから!・・・・ウチ、おいでよ。お父さんの着替え、貸してあげるから」
「え?・・・・ウチって、お」

「・・・・おいでよ・・・・高須君・・・」

どこかぼんやりと、でも確かに自分の意思で・・・・・竜児は差し出された麻耶の手を・・・・取った
46G/W :2009/05/05(火) 15:12:11 ID:sA8fY+aB
取り合えずココまででした。
続き、また出来たら投下します。
ありがとうでした
47名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 15:14:14 ID:lCy6ExVx
GJ
48名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 15:25:40 ID:D+JlbM/t
>>46
最終的にあーみんをシアワセにしないと許さないぞ!
ともあれ続きをwktk
49名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 15:54:13 ID:YAVWoMX7
>>46
GJ!
泣けてきた・・・
( ゚∀゚)o彡゜続き!続き!
50名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 18:06:00 ID:KkFpeefz
竜児がエロゲの情けない主人公みたいだが、でも面白い!

竜児と亜美の立場が逆だったら、男としては絶対許せないシチュだがw
51名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 19:57:40 ID:edGPEsc9
>>46
GJ!!
続きめちゃめちゃ楽しみにしてます。
52名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 14:28:16 ID:GCishCfg
4スレか5スレかに亜美SSを中途半端に投稿し、以来続きを投稿せず今日日に至るんだが、まだ需要あるかい?

というか久々に来たら15スレまで来ててびっくらこいた。

53名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 14:36:43 ID:AGJtNDN5
あるよ
54名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 14:42:44 ID:dmuXZ3Nm
よし、こい!
55名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 15:20:35 ID:9JbBqdp3
限界まで来い
56名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 16:14:18 ID:HzwqjYeZ
( ゚∀゚)o彡゜
57名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 16:29:11 ID:mcODhc5S
( ゚∀゚)o彡°
58名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:16:45 ID:Yj6ciz5W
( ゚∀゚)o彡゚I’s、I’s
59G/W :2009/05/06(水) 18:47:20 ID:w7FjeR4I
続き、出来た分、取り合えず投下します。
前スレの番外の筈が、何故か本編よりも長いものに^^;
しかもまだ終われて無いし・・・長くてすいません。
しかし今日中に書き上げねば、明日には実家を後にするのでPC環境とお別れ。
取り合えず!迷いを捨てて行きます!
投下!
60G/W :2009/05/06(水) 18:48:10 ID:w7FjeR4I

竜児は麻耶の家に招かれた。
大河の家程じゃない。でも竜児の家とは比べるべくも無いマンション。

「さ、上がって」
「ああ。って俺びしょ濡れだし不味くないか?っつかやっぱ帰るわ俺!」
踵を返そうとするも
「ココまで来て何言ってんのよ。チョッと待っててタオル持ってくるから」
「ちょ、木は」
もう誰も居ない。
「はぁ・・・ま、いっか」

少しして麻耶はタオルを持ってきて竜児に投げる。
「はい」
「サンキュ!悪いな」
「良いって良いって!う〜ん・・・」
暫く考える麻耶は
「ねぇ高須君。ちょっとシャワー浴びて温まってきなよ。その間に服を用意しとくから」
「な!!幾らなんでもソレは不味いだろ!」
「なんで?」
キョトンとする麻耶
「だ!お前、幾らなんでもクラスメートの男子をお前の家の風呂に入れるか?普通」
「だ〜いじょ〜ぶよ!今、親居ないから」
「だったら尚更だ!!少しは考えてだな」
「平気だよ。あ!それとも高須君ってばウチのお風呂で・・・その・・私のイヤラシイ事とか想像しちゃう?」
「な!!!そんなことしねぇよ!」
「だったら問題なし!そのままじゃ風邪引くし、だいいち下着まで貸す訳にいかないでしょ?
高須君がシャワー浴びてる間に乾燥機かけとけば、パンツくらいならすぐに乾くわよ」
思わず竜児の顔も赤くなる
「パパパパパ、パンツってお前」
「はいはい。わかったらさっさと行く!風呂場はソコ!で、乾燥機はココ!使い方は〜、まぁ高須君なら分かるでしょ」
「あ、ああ」
「それじゃ!行った行った」
「お、おう・・・すまん」
バスルームに消える竜児を見やり麻耶は・・・その場にへたり込んだ。
一気に顔が赤くなる。まさに真っ赤なトマト!よく今まで押さえ込んでたものである。

なんか勢いでこんなんなちゃッたけど、どうすんのよコレ〜!
亜美と別れたってなんで?いやいや聞いた!うん!理由は聞いた!でもだからって!
無い無い無い無い!大丈夫、何も無い!!そうよ!高須君てば紳士じゃない。だから何も問題ない。
そうだ!服!!

急いで父の部屋に行って服を持ってこようとリビングを通って・・・先程は気が付かなかったリビングの散らかりように気付いた。

いやああああああ!!ちょっと何よコレ!!母さん貴女は鬼ですか!!
かか片付け!そう!確か高須君って超が4つくらい付く程、掃除好きの綺麗好きって言ってた無かったっけ?
不味い不味い不味い!!ああ!!!おなべが汚!キャーーー!!父さんのパジャマがなんでリビングにあんのよ!あのボケ親父!!
そうだ!服!!

見える惨状を見えない惨状に押し込めて上乗せし、父の部屋へ・・・・さっきタオルを取りに来た時には気が付かなかったモノに気が付いた。

うぎゃあああ!!!!くさい!ってか痛い!!何よコレ!加齢臭?カレー臭??華麗腐臭なの〜〜〜〜!!!
効くの?これファブリーズ効くの?!ちょっとあの親父まともな服無いじゃない!!何コレ?ピーマって何処のパチモノジャージよ!
ウエストでか!高須君って細くない?せめて余所行きでも良いからって!なんでタンス開けるたびに匂うのよ!!って!この靴下洗ってない!!
いやあああああああああああ!!!!

竜児がシャワーを終わってバスルームを出ると、乾燥機の中の下着はすっかり乾いていて、少しウエストのゆるいズボンと前に麻耶に貸したトレーナーが置いてあった。
着替えてリビングに向かった竜児が見たものは・・・・ぐったりと疲れきっている麻耶だった。

「どしたんだ?お前?」
61G/W :2009/05/06(水) 18:48:32 ID:w7FjeR4I


「ホント、助かったよ、木原」
「良いって良いって!あっ待ってて、今コーヒーでも淹れるから」
「いや、何もそこまで」
「良いから。座ってて」

言うや麻耶はキッチンへ向かう。
帰ってきた時には、その手にコーヒーカップを2つ
「どうぞ。まぁインスタントだけどね」
「おぉ。わりぃな」
麻耶にとって、男子と二人きりで過ごすリビングなんていうのはまさに初体験であったが、それでもソレほど緊張しないですんだのは、やはり竜児の事を信頼していたからか、
もしくは緊張する必要が無かったからなのか・・・・

「それでね・・・高須君」
「ん?」
どこかリラックスした声の竜児
「さっきも言ってたけど、その・・・・亜美とは・・・」
「!!・・・・あぁ。終わった・・・・・終わりにした」
「そう・・・・でもさ、亜美の気持ちはきっと」
それは麻耶の親友への思い
「・・・・多分、アイツはまだ・・・」
「だったら」
「でも駄目なんだ!」
「高須君・・・・」
「アイツはどんどん有名になる!どんどん光ってく!!今は良い。もしかしたら今は乗り切れるかも知れない。
でもいつまでもって訳じゃ無い。いつか俺はアイツの重荷になる」
「そんな事無い!」
「成る!!アイツはそうは思わないかも知れない。でも周りは?アイツのファンは?世間の目は?」
「そんなの関係ないじゃない!!他の人なんて」
親友の為の抵抗。
「関係なくないだろ?ソレがアイツの仕事だろ!俺達とは違う。まったく関係ない他の誰かが、アイツにとっては大事な他人だろ!それが・・芸能界じゃないのか?」
「それは・・・」
それは分かる。
「木原や香椎、北村なんかは良い。傍にいてもなんの問題も無い・・・でも俺は・・・俺達は駄目だ」
「高」
「俺はどう見たってチンピラかヤクザだ」
「そんな事無い!高須君は!」
「木原だって初めて会った時、俺の事怖かったろ?」
「それは!・・・・・でも分かったもん!高須君は」
「ソレまでにどれくらい掛かった?なぁ・・・ソレを亜美を知る人達全部に分かってもらうまで・・・どれくらい掛かるんだ」
「・・・・でも・・」
「泰子は女手一つで俺を育ててくれた。そう言えば聞こえは良いけどな。結局はガキの頃に俺をはらんで男に捨てられて、水商売で俺を育てた」
「高須君!それは違う!」
「そう見る人が居ないと!なんで言い切れる!!」
「!!それは・・・」
「大河は今までソレこそ問題ばかり起こしてきた。素行不良で学校を出された事だってある。親も大河を見捨てたも同然で、口座に生活費振り込んでそれでお終いって奴だ」
「・・・・・」それは知らなかった。
「いつかマスコミに流されて、叩かれて、亜美の重荷になったら?泰子や大河の事を面白おかしく書かれたら?俺はどうすりゃいい!」
「・・・・・・」
「俺は・・・亜美を助けたい。泰子にこれ以上苦労を掛けたくない。大河を・・・守りたい・・・・」
「・・・・高須君・・」

何処と無く理解した。この人は・・・ただ守りたかったんだと。
その為に、自分の中の大事な物を、砕いて砕いて・・・・

親友への思いがあった・・・・そしてこれは、麻耶の女としての想い・・・・

「・・・・竜児」
62G/W :2009/05/06(水) 18:49:12 ID:w7FjeR4I

「・・・・・」
麻耶はふと両手を握り額に当て俯く竜児の隣に座った。

きっと、ずっと苦しんだ。
大事な人を守りたくて、大切な人達を守りたくて・・・自分の大事な想いを・・・差し出した。

あぁ・・・・私はこの人の事が好きだ・・・届く全てを守りたくて、自分を傷付ける事しか出来ない・・・不器用なこの人が・・・

「・・・もう・・・いいよ・・・」
気が付けば麻耶は竜児の頭を自分の胸に抱え込んでいた。
「!木は」
「もういい・・・・もういいよ・・・・もういい」
「・・・・・・・あぁ・・・・俺・・・」
どこか力が抜けていく。張り詰めていたものが・・・緩んでゆく。
「一杯頑張った・・・一杯苦しんだ・・・もういいよ。竜児・・・もう、休んで良いんだよ・・・竜児」
麻耶の頬を涙がつたう。なぜ?自分でも不思議だった。
その胸の不規則な鼓動は、竜児に何かを悟らせる。でも、何故か焦りは無い。どこか心地良い。
「・・・お前バカだな・・・なんで・・お前が泣くんだよ・・」
「うん・・・・バカだね・・・でもきっと・・・竜児が泣かないから」
「・・・・・・」
「だからきっと、私が泣くんだよ・・・」

竜児の手は、ゆっくりと麻耶の背に回り、彼女を静かに抱きしめた。

「ほんと・・・あの時とは、違うな・・・・・お前の涙の意味も・・・なあ、木」
「麻耶・・・・だよ。竜児・・・私は麻耶」
麻耶は竜児の頭を離し、ただ見詰めあう。
お互いの手をお互いに回し、今はただ見詰めあう。
「教えてあげるね、竜児・・・・さっきのキス・・・私のファーストキスなんだ」
どこか頬を染めて、うっすらと涙を浮かべて、それでもその笑顔は綺麗だった。

ソレは不意打ち?ソレは不覚?それとも・・・・・逃げ?
でも駄目だ。それはきっと竜児の意地。

「麻・・・木原。今の俺は・・・・少し疲れてて・・・しんどくて・・・有ればそこに縋っちまう。だからもう」
止めよう。その一言が言いたくて。でもその一言を言わせたくなくて・・・

「止め!!んぅ!!」

麻耶は再びキスをした。
それは・・・・最期の審判。そして宣告・・・
「好きだよ・・・・竜児・・・・貴方が私を見ていなくても・・・私は貴方が好き」

竜児の目から一滴、涙がこぼれた。
自分の中の何かがあげた・・・最期の慟哭だったのかも知れない・・・そして・・・・

「麻耶・・・俺もお前に教えてやるよ・・・・・・これが大人の・・・・・キスだ」
「!りゅ!!んゃ!んん!!っはぁ!!ん!!はっ、竜!んんん!!あぁ」

そして数分後・・・・二人の影は、リビングから姿を消した。

63G/W :2009/05/06(水) 18:49:42 ID:w7FjeR4I

ヴーーーヴーーーヴーーー・・・・・・

竜児の携帯はその振動を周囲に伝える。
着信音は無い。そこにあるのは・・・・・・

「・・・ぁはぁ!・・あい!・・・竜じぃひぃ!!」
「・・・はぁ・・・あ!・・・ん・・・・」

外からの薄暗さを遮り闇を濃くした麻耶の部屋で、互いを貪る2人の声しか無かった。
初めは痛みをともなった麻耶だったが、今はソレはもう無い・・・幾度目かの絶頂を迎える過程で、それは快楽へと移ろう。

「はぁ・・はぁあ!!い!!ちょっ、竜児!!またイ・・っく!!・・・イッちゃうよ!!」
「あぁ!!いいぞ!!俺・・も・・」
その激しさは麻耶の意識を刈り取らんばかりに体内を貫く
「あ!駄目!駄目駄目!!ああ・・・あ・・・・・ぁ・・・・・イっ!くぅぅぅぅぅ!!!!!!」
「!!ぅおおうぅぅ!!!麻!!!」

最期のゴムがその役目を果たした。
「あ・・・ぁあ!・・・ああ!・・・っん!!・・・・!!」
「はぁ・・・・すご・・く・・・・・可愛いな・・・麻耶」

激しく痙攣しながら、それでも竜児に抱きつく麻耶の頭を優しく撫でながら、竜児はその見知らぬ天井をただ眺めていた。
ただ思う・・・

あぁ・・・目茶苦茶だ・・・






鳴り続ける電話の向こうには、大河が自分の携帯を握り締めてた。
「っとに晩御飯の仕度もしないで何処ほっつき歩いてるのよ、あの駄犬は!」
「あ〜〜!大河ちゃん出来たよ〜〜。カップラーメン。大河ちゃんはしょう油だよね〜〜」
「今行く〜〜・・・・っとに、こんな手紙くらいで・・」
大河の前には丸めて捨てたあの手紙。
いつもは大河や泰子に見られる前に竜児が処分していたのだが、今日はあのまま地面に散らばしたままだった。
大河にとっては始めて見た手紙。
どうせ手紙の内容に傷付いて、そこら辺でもほっつき歩いていると思っていた。
「言わせとけばいいのにね〜。負け犬の遠吠えなんだから。やっぱ同じ犬同士、気になるのかしら?」
どこか突き放した言い方だが、それでも心配で堪らないのだろう、竜児の携帯にある大河からの着信履歴は17回を数えていた。

64G/W :2009/05/06(水) 18:50:08 ID:w7FjeR4I


数日。亜美は学校へは来なかった。
数日。日常は怠惰な繰り返しだった。
ただ一つの変化を除けば・・・

「ちょっといいかな?高須君」
「ん?あぁ」
実乃梨のソレを待っていたのは多分クラスの皆だったろう。
実乃梨はかつての様に竜児を屋上へと連れ出した。

「なんだ?櫛枝。話って」
「うん・・・・高須君。あーみんとなんか有った?」
「・・・・・なんでだ?」
ソレは分かりやすい疑問。亜美が仕事で学校を空ける事はよくあった。
それでも竜児の所へは毎日の様にメールや電話は来てたし、麻耶や奈々子の下へもソレはあった。
だがここ数日。亜美からの音信は無い。
大河に聞けば家でも亜美の話題は出ていないと言う。
「あーみんと連絡が取れないんだよ」
「忙しいんじゃないのか・・・色々と」
「そうかもね・・・でもなんか・・・・ねぇ高須君」
「・・・・なんだよ」
「私はずっと高須君を見てきた。多分、北村君や大河の次くらいに・・・もう一度聞くよ高須君。あーみんと・・・何かあった?」
「・・・・・・・」
沈黙は肯定でしかない。
深く詮索するのは止そうかとも思う。だが実乃梨はどこか確信を持って、今、聞いておくべきだと思った。
どれ位だろうか。沈黙を続ける竜児をそれでも真っ直ぐ見詰め続ける。
折れたのは、竜児だった。

「・・・・・亜美とは・・・別れた」
「!!どうして!」
「それは・・・・櫛枝には、関係無い」
「なんだぁそれは!関係無いってどういうんだ?」
「関係無いだろう!コレは俺達2人の問題だ!」
「!本気で言ってんの?高須君」
その視線は強い。眩しいほどに
「ああ。悪いが、櫛枝に話す事は何も無い」
言って竜児は帰ろうと背を向ける。が、その背に暗い声が掛かる
「高須君・・・木原さんと・・・何かあった?」
「!!」
その反応は実乃梨の予感を確信に変える。
実乃梨はそれ以上何も言わずに竜児を追い抜き、先に屋上を後にしようとドアに向かい、ふ、とノブに手を掛け立ち止まる。

「ねぇ高須君。私は高須君の事、親友だと思ってるし、どこか戦友だとも思ってる。私の大事な親友の大河を、安心して任せてられる・・・
でもね?・・・・いい加減な事して皆の事を傷付ける様な真似したら・・・・・許さないから・・・それだけは忘れないで」

竜児が返事をしたかどうか、ソレは定かではない。彼女の閉めたドアの音は、どこか答えを拒絶するかのような響きだった。

そしてその夜、テレビ画面に映ったのは、日・米・韓の合作映画の記者会見。そしてその列に並び立つ、川嶋亜美の姿だった。

65G/W :2009/05/06(水) 18:50:39 ID:w7FjeR4I

「ちょっと昨日のテレビ見た?」
「見た見た!凄いよね川嶋さん」
「あれって世界中で放映でしょ?なんか話大きすぎだよねぇ」

教室は亜美の話題で持ちきりだった。
「あ〜。タイガーも知ってた〜?」
アホが大河に話をふるが
「別にバカチーの仕事に興味ないもん。聞いて無いわよ。それにしても竜児も知らなかったみたいだし、竜児に位言っといてもいいのに、あのバカチー」
どうにもソレが面白く無いらしい。
「別に良いんだって言ってるだろ?大河」
「!!よく無いでしょ!大体竜児はバカチーに甘いのよ!」
「そんな事ねぇよ・・・ほんと、そんな事ねぇ」
「竜児?あんた最近おか「おっはよーーー!」!バカチー!」

それは久しぶりの登校だった。

まさに話題の最先端の我等がアイドルの登場に教室内は歓声に包まれた。
皆が亜美に駆け寄り話しかけ、映画の事、共演者の事、最近の事など、一度には処理し切れるはずも無い話題を話しかけていたが、その全てに亜美は笑顔を振りまいていた。

その喧騒に加わらないのは3人。
興味の無さそうな逢坂大河。
どこか強い視線を向ける櫛枝実乃梨。
そして彼女から視線をそらす、高須竜児。

亜美は輪を抜けて大河と竜児の下へ行く。
皆の脳裏には亜美が、竜児〜と言って纏わりつき、ソレの周りを喧しく騒ぐ大河の姿が浮かぶ。
だが・・・

「おはよう。高須君」
「・・・ああ」
 
それはどこか他人行儀。

「ちょ!バカチー!なによソレ?」
「あら逢坂さん、ごめんねぇ、小さくて亜美ちゃん見えなかった〜」
そこは何時も通りだった。でも
「そんな事はどうでもいいのよ!!それよりアンタ今竜児に」
「??ああ!なんだ、高須君、まだ皆に言ってなかったんだ。ふ〜ん」
「?竜児??」
「あらあら。高須君たら大事な大事なタイガーちゃんに隠し事は良く無いな〜。あのね?逢坂さん。私達「川嶋さん!」?」
亜美の言葉に割り込む実乃梨を一瞬見詰めるも
「あら?実乃梨ちゃんは知ってるんだ」
「何?みのりん?一体何の」
大河だけじゃない、クラスの皆が静まり、頭に疑問符を浮かべる中、亜美はその疑問符を解消した。

「隠す事無いでしょ?それにすぐ分かっちゃう事だし。丁度良いから皆にも聞いて貰おうよ。私と高須君、もう別れたから」

ええええええええ!!!!

ソレは衝撃だった。
何故だろう、他の恋人同士には無い、何か一種特別なモノが有ると、皆はどこかで思っていた。
ソレが、終わったと告げられた、亜美の口から。

「ちょっと竜児!!バカチーがこんな事言ってるけどアンタそれで!」
「良いんだよ大河」
「!竜児」
「川嶋の言ってる事は本当だ・・・俺達はもう、恋人でもなんでもない・・・・もう、終わったんだ」

66G/W :2009/05/06(水) 18:51:11 ID:w7FjeR4I


「アンタ自分が何言ってるか分かってんの!」
大河の視線は凄まじく厳しいものになっている。
自分に知らされなかった事への憤りもある。
何も相談されなかった事への苛立ちもある。

だが何より、大河は亜美を認めていた。
自分の家族の竜児と付き合うことを、竜児の恋人として在る事を、亜美ならば構わないと受け入れていた。
ソレが意味も分からずに別れた等と突然言われて、はいそうですか、と納得出来るほど、逢坂大河は物分りの良い人間じゃない。

「黙ってたのはすまないと思「まぁまぁ、逢坂さん。高須君を責めないであげて」!」
「バカチー!」
「亜美ちゃんてば少しばかり仕事が忙しくなりそうでさぁ。ほら?何かとこうゆう関係って噂の対象になるじゃない?高須君もそこんトコ気を使ってくれたのよ。
別に縁切ったって訳じゃないんだしさ、これからは良いお友達として、ね?それでいいじゃない」
亜美は極上のスマイルをうかべてそう言い放つ。
「アンタ、本気で言ってんの?」
「もちろんよ?」

ソレは亜美のギリギリの策。
納得なんかしていない。了承なんかしてる訳も無い。
だが自分に土下座までした竜児の心を変える方法など、今の亜美には導き出す事など出来ない。
そして必死で考えて、最初から始めようとした。
素の自分を隠した川嶋亜美で、それでも素の部分を分かってくれて受け入れてくれたあの頃に、もう一度戻って・・・また初めから始めようと思った。
壊れたらまた作ろう。何度でも、何度でも・・・大丈夫。高須竜児はまた気が付いてくれる・・・仮面の下で上げてる悲鳴に・・・また、受け入れてくれる。
きっとまた・・・

ソレだけが亜美の望み・・・
「ちょ!あーみん!」
「なぁに?実乃梨ちゃん。あぁ、だ〜いじょうぶよ〜。私達、ほんと、円満解決だから。ね〜、高須君?」
「・・・ああ」
「いや、あのね」

実乃梨は亜美を知っている。最初から大河と2人で素の亜美と向かい合ってきた。
駄目になった関係を、時間を戻すように取り戻そうとしている。そんな気がした。亜美の目は、どこか必死だった。
だから実乃利は焦った。
亜美は知らない。大河も、おそらくクラスの誰も。もちろん自分も確証は無い。でもどこか理解していた・・・もう、昔とは状況が違う事を。

コレでは駄目だ。今はもう、コレでは何も取り返せない。

「あーみん。ちょっと私と話」
実乃梨が亜美を教室から連れ出そうと動いた時、それは既に手遅れだった。

ぱぁん!!

「・・・え?」
教室を覆う静寂の中で、亜美の頬から大きな音がした。

「・・・・最低・・・」

ソコには、頬を押さえて呆然とする川嶋亜美と・・・振りぬいた手をそのままに亜美を睨む・・・木原麻耶が居た。

67G/W :2009/05/06(水) 18:51:44 ID:w7FjeR4I

亜美と木原が睨み合っているさなかに恋ヶ窪が来て、その場は有耶無耶に終わる。
だが、亜美の映画出演。竜児と亜美の別れ。そして亜美と麻耶の確執。
これらの事が一斉に巻き起こったクラスにおいて、冷静さを保つ事は難しかった。
大河ですら亜美や竜児の件では言いたい事は、それこそ山の様に有るのだが、木原の乱入でなんとも不完全燃焼だ。
誰もが騒ぎに巻き込まれ、そして誰もが騒ぎに乗り遅れた。
そんな不思議な空気の中、放課後を迎える事になった。

「竜児!ちょっとアンタ!ちゃんと説明しなさいよ!」
帰り支度の最中、もう限界だと言わんばかりに大河は竜児に噛み付くも
「・・・すまん。先、帰るわ」
「ちょ!竜児!!って、北村君?」
足早に帰る竜児を、それでも追おうとする大河を止めるのは北村だった。
「今はそっとしといてやろう逢坂」
「でも」
「まぁ俺からも少し話を聞いてみるさ。何か分かったら逢坂に連絡する。それで良いだろう?」
北村にソコまで言われては、大河に反論する余地は無い。
「う・・北村君がそう言うなら・・・わかった・・」
北村も二人の事は心配だった。だが今はソレより、麻耶の行動の方が、北村には不自然に思えたのだった。



皆が下校の途に付く中、麻耶と奈々子もまた帰宅しようと玄関を出ると、ふと、前方に人影を見る。
亜美だ。
亜美は1日考えた。そして麻耶と奈々子の2人にだけは、自分の本当の気持ちを告げて置こうと思った。きっと2人は分かってくれると。
確かに朝の自分の言動は褒められたものでは無いと分かっている。故意にそうしているのだから当然だ。
でもそうする事でしか、無くしたものを取り戻せないと思った。そして取り戻す為なら、周囲の誤解も怖くは無かった。でもこの2人にだけは・・・

「あの・・ゴメン。私麻耶に謝りたい事が・・・・聞いて貰いたい事があるんだけど、時間いいかな?」
ふと立ち止まる2人だったが麻耶は一人、亜美に近付く
「いいよ亜美。私も亜美に謝りたいと思ってたし」
思わず亜美の顔に笑顔が灯る。近付く麻耶が浮かべる笑みにどこかホッとしながら
「あ、良いのよそんな。確かに朝のアレは私のやり過ぎだったし。それでね?私ホントは竜児と!え?」
目の前に麻耶が来た・・・筈なのに、麻耶の歩みは止まる事無く亜美の横をすり抜ける・・・すれ違い様に言葉を残して

「・・・・私、竜児と寝たわ」

「!!!」
亜美の瞳は大きく開く。ゆっくりと、それでも確実にすれ違い通り過ぎる麻耶の言葉に、心が凍る。

「掛かって来いって言ったよね?だから・・・・ゴメンね?亜美」


奈々子はただ立ち止まり、立ちすくむ亜美と、遠ざかる麻耶の背中を見詰めるだけだった

「亜美ちゃん・・・麻耶・・・・」

奈々子の前で、2人の親友の心は・・・・・すれ違った。
68G/W :2009/05/06(水) 18:53:41 ID:w7FjeR4I
取り合えずココまでです。
もう一度の連続投下位で終わらせる積もりです。
では、作業・・・行って参ります。
69名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:21:29 ID:zebfi3KI
GJ
70名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:26:37 ID:xnmmQw8j
GJU
71名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:40:14 ID:bkowuGNC
まさしく ひるドラ!だな
72名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:53:21 ID:HzwqjYeZ
GJ!!
73名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 21:10:16 ID:3W2YmEN2
ぐれいとじょぶ!
74名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 22:18:36 ID:Yj6ciz5W
15皿目にして初の大活躍の場を与えられた麻耶、頑張りすぎだろ
最高だ、もっとやれ
75能登:2009/05/06(水) 22:24:28 ID:9JbBqdp3
あれ・・・どうしたんだろ・・・
 なんだ・・涙が止まらない・・・
76名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 22:33:05 ID:dhD+dWOt
短期間で濃厚な物語をありがとう。
続き、楽しみにしてます。
77名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:01:12 ID:v8W19Q7k
いいぞもっとやれ
そして能登の隠れNTR属性を刺激!
78名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:26:42 ID:YKIkiRc3
乙です

木原すげえな
眼鏡空気w
79名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:49:45 ID:/y51iHCy
亜美が不憫すぐる(;つД`)
80名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:51:31 ID:eR4aJVot
前スレのオレの戯言がこんなスゴイSSになっちまうとは…
とにかくGJだ
81名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 00:01:07 ID:dhD+dWOt
>>79
結果はもうわかっている話だから不憫な点などないではないか。
82名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 00:56:49 ID:uXHN+61C
!の使い方と・の使い方が……

なんか全体的に見辛い
83勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:47:30 ID:cHTP4yu4
「らく〜じゃって…最近出来たアミューズメント施設じゃん。
もしかして、竜児行った事あるの?」
「いや、ない。チケットは貰いものだ。
能登から貰ったんだ。自分が持ってても行く相手が居ないから、とか言って。」
高須が使う事になったら、その娘の友達紹介してね…とかも言ってたが…
「ふ〜ん。能登君がねぇ〜

「話は変わるが、亜美の仲の良い友達って言うと…
やっぱり、木原と香椎か?良く一緒に居るし。」
「え?うん。そうかな。
あと、実乃梨ちゃんに、まあ、ここだけの話、タイガーも入れてやっても良いかな。
これ、内緒だからね?」
「………そうか。」
「でも、どうして、急にそんな事聞くの?」
「え、いや、特に意味はない。」
「ふ〜ん。変なの。」
能登には、悪いが、紹介は諦めて貰おう。…無理だ。
「ところで、亜美は行った事あるのか?ここ。」
「ん?無いよ。でも、どんなトコかは大体知ってる。
雑誌なんかで特集組まれたりしたし。
何ていうのかな、今、話題のデートスポットって奴?」
「おう。そうなのか?」
「そっかぁ、らく〜じゃのプラネタリウムかぁ〜
竜児とは、ゆっくり時間をかけて…って思ってたけど…良いよ。
お互い、知らない仲じゃないもんね。」
「おう。え?何が?」
「ん〜。竜児も、そのつもりで、覚悟しておいてね、って事。
亜美ちゃんをそこに誘うなら。」
「何だか、よく解らないけど…
じゃあ、出発するぞ。」
「おう。」
「………。そんなにしゃくれてねぇよ。」
「あははは。まあ、良いじゃない。
ほらほら、行くんでしょ?」
何か、妙にテンション高くなったな……
こいつが、こういうテンションの時って、大概、何かを隠してるんだよな…

***

なるほど。何を隠していたのかは、すぐに解った。
こういう場所だったのか。此処は。
84勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:47:58 ID:cHTP4yu4
プラネタリウムだから、当然と言えば当然なんだが…
薄暗いのは、まあ解るとして、赤っぽい照明に、何だか良く解らないお香。
何を炊いてんだろう?詳しくは解らないが、アロマ的な何かか?
加えて、低反発のふかふかシート…
つまり、そういう場所だった。
「今の竜児とあたしには、お似合いのトコじゃない?」
隣に座した亜美は、全体重をかけて寄りかかり、べったりと俺の肩にくっ付いている。
この、いかがわしい空間で、そんな事されると、
触れ合う肌の温もりとか吐息とか、そういったものが…
って、おい。目ぇ瞑るんじゃない…
気持ち良さそうだな…くそ。俺も気持ち良いよ…ちくしょう、わりぃかよ!?…悪いんだろうな。
白状するなら、さっきからずっと気になっている事がある。
気持ち良さそうな寝顔の少し下…
「ねぇ…さっきから、どこ見てるの?」
「お、おう。……飲み物買ってくる。」
「そういうのは入る前に買っとくもんでしょ?
それに水筒に、ホット烏龍茶入れて持って来てるんでしょ?知ってるんだから…」
「………」
コイツの事だから…わざと見せつけてんだろうな…
泰子の服を貸したのは失敗だったか…
出来る事なら、一生、記憶の引き出しにしまっておきたい、一枚の写真の事を、ふと思い出す。
若き日の父母の写真。
こうはなるまいと、反面教師にし続けてきた男は、
右腕で母の肩を抱き、右手で母の乳を揉んでいたっけ…
なんだよ…すげぇじゃねぇか。
ある意味で、偉大な父だったんだな。竜某は。
天上に燦然と輝く星々は、どんなに手を伸ばしたところで、
決して、届きはしないけれど、
そこに在る地上の星は、望めば届く。伸ばせば届く。
「なぁ、亜美?」
「………」
「……お〜い。あぁ〜みぃ〜」
「………」
寝てやがる。おいおい…
眠くなるのは解る。寝不足の上に食後。
暗いトコで目瞑って、人を枕にしてりゃあ、そりゃあ。一発だろうよ。
もしかして、寝言で会話してたんじゃないだろうか?あり得るな。
85勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:51:36 ID:cHTP4yu4
まあ、寝ちまったものは仕方ない。じゃあ、寝てる間にいただいてしまおうかな。
などと、思えるのはそれこそ竜某の様な人間であり、俺には荷が重い。
かといって、このまま何もしないのでは、俺だって、少しは情けないと思う。
「亜美…寝てる奴が悪いんだからな…
だから、前借り…させてくれよな。」
俺は寝ている亜美の、特に柔らかな部位の感触を、
星空そっちのけで、上映時間めいっぱい堪能する事に決めた。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに………

***

地上数十Mの地点から、見える風景は…どうしようもなく亜美だった。


起き抜けの一言。
「………あのさぁ…前から気になってたんだけどさ」
「ん、なんだよ?」
「もしかして、竜児って不能?」
「…なッ!?おま…いきなり何出すんだよ!?」
「だってさ…チャンスだったでしょ?
亜美ちゃん寝てたんだから、好きにして良かったのに…
それなのに、ほっぺって……」
じぃ〜っと、下腹部を凝視してくる。
「使えないの?それ。」
「変な事言うな、失礼な。ちゃんと使えるよ。」
「ふぅ〜ん。じゃあ、亜美ちゃんに魅力が無いって事?」
「…何言ってんだ?
お前に魅力がないんだとしたら、
俺は、お前の為に日々犠牲になっている熱帯雨林、ひいてはこの地球に対して顔向け出来ねぇよ。」
「エコ野郎め。もういい、わかった。
一度、ちゃんと、ゆっくり、お話しよっか?ね?竜児。」
「お、おう…。機嫌なおせよ…。俺が悪かったよ。」
「べっつにぃ〜亜美ちゃん超ご機嫌だしぃ〜
そうだ、あの観覧車に乗ろうよ。あそこなら、2人っきりでお話できるでしょ?」
「………」
「…まあ、ホントに怒ってる訳じゃ無いんだよ。
竜児があたしの事、大事に思ってくれてるのは解るから。
でも、触れてくれなきゃ、やっぱり嫌なの。それは解ってくれるでしょ?
だから、お話しようよ。お互いに気になる事を全部出しきったら…
きっと、次のステップに進めると思うんだ。
あたしは、進みたいの。竜児と一緒に。」
86勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:52:00 ID:cHTP4yu4
唐突な観覧車搭乗は、まあ、こういう訳である。
「じゃあさ、てっぺんに着くまで、あたしが質問しても良い?
下りは、あたしが答えるから。」
「おう。」
「じゃあ…ずっと気になってたんだけどね?
竜児はさ…あたしの容姿について、全然コメントしてくれないよね?
内側を見てくれてる事は、凄く嬉しいんだけど…容姿はどうなの?
可愛い事は自分で解ってるよ。一応、プロだし。
でもね、竜児の好みかどうか…それが知りたいの。
例えば、短い髪が好きなんだったら、髪、切りたいし…さ。」
「可愛いと、思ってるよ。反則な位可愛いよ。好みだよ。超、好みだよ。
髪は、それ位の長さが好きだ。他も、全部、好きだ。
初めて、お前と会った時、危うくファンになるトコだったよ。
速攻で打ち砕かれたけどな。」
「そか…嬉しい。ありがとう。
今まで、言われた、どの可愛いより、一番、嬉しい。
まあ、ぶっちゃけ、何万回言われたかは覚えてね〜んだけど。なんて。」
「お、おう。」
「やっぱり、竜児は特別だよ。」
「俺だってそうだよ。亜美は特別だ。」
「ッ…もう…亜美ちゃんを悶え殺すつもり?
……次の質問、いくね?」
「おう。」
「竜児はあたしの仕事の事、どういう風に思ってる?」
「大変な仕事だって思ってる。」
「違うの。そういう事じゃなくて…続けて欲しい?それとも辞めて欲しい?
たまに聞くんだ。自分の彼女がモデルやってるの嫌だって話。独占…したいらしいんだ。
それに、前みたいに忙しくなったら、今みたいに時間作れないかも…上手い事、調整するつもりではいるんだけど。」
「亜美はモデルの仕事好きか?」
「うん…好きだよ。嫌な事もいっぱいあるけど…お仕事だもん。」
「じゃあ、頑張れ。自分が思うようにすれば良いと、俺は思うよ。
偉そうな事、言ってるけど、俺はまだ見つけてないんだ。自分がやりたい事、好きな事。
だから、そういう風に一生懸命に頑張ってる奴が羨ましいし、尊敬もしてる。
だから、応援するよ。亜美の仕事。」
ピッ…カシャッ…
「お、おう!?何だ?」
「写メ」
「見りゃ解るよ」
「今、この瞬間を永遠に残しておこうと思ってさ。
87勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:52:20 ID:cHTP4yu4
これを見ればこれから先、どんな事があっても、きっと頑張れる。」
「……いや、そんなモン一人で抱え込むなよ。
頼れよ、俺を。その都度、頼ってくれ、頼むから。」
「……良いのかなぁ〜?そんな事言っちゃって。
本気にするよ?1日に何十回も電話かけるよ?深夜でも…早朝でも、電話かけるよ?」
「望むところだ。」
「そっか。うん。それじゃあ、この写メは、もっとイイコトに使う事にするよ。」
「…魔除けとか言うなよ?」
「ん〜ん。オカズにする。」
「………。お前は下品だ。」
「え〜どうしてぇ?これ位、普通だと思うよ?」
「んな訳ねぇ。普通でたまるかよ。」
「普通だってば。全然、普通。
あたし、カマトトぶる女って嫌いなの。
え〜亜美ちゃん、何の事だか、わっかんなぁ〜い。
とか、言った方が良かった?」
「…やめろ。うら寒い。」
「でしょ?あ、ほらほら、見てよ。もうすぐ、てっぺんに着くよ?
じゃあ、観覧車のてっぺんで、恋人同士がする普通のコト…しよっか?
もう、三回目だし…上手にリードして?ん…」

………………

「なあ亜美?」
「なぁに?」
「呼んだだけだ。」
「うわ…何それ…
竜児ってさ、格好良い事言うくせに、たまにヤバイ位ガキだよね?」
「…悪かったな、ガキで。」
「拗ねないでよ。
でも、そういうトコ、あたしにしか見せないよね?
実は、ちょっと優越感感じてたりしたんだよね、ちょっと…だけね。
そういう、しょうもないトコロを見せてくれたから、好きになっちゃったのかも。
竜児の素顔はあたしだけが知ってるんだぞ、ってさ。」
「…つくづく、お前が言うな、って感じだな。
こっちの台詞だよ、それは。」
「…お互い様だと思うよ?
あたしたちって、結構、似たもの同士なのかな?
前に、あたしと竜児は対等だって言ったの覚えてる?」
「おう。別荘の洞窟での話だろ?」
「そ。対等だから、たまには、竜児のわがままに振り回されたい、とも思うんだ。
竜児の欲望を全部、この身で受け止めてあげたい。みたいな。
亜美ちゃん、ホントはドMなのかも…」
88勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:54:45 ID:cHTP4yu4
「…複雑な女の子だよな、亜美は。」
「かもね。だから、竜児にしか務まらないの。あたしの相手は。」
「光栄だよ。お姫様。
でも、喜んで、苦労する。それだけの価値はある…だろ?」
「……結構、覚えてくれてるんだね。あたしが気まぐれに言った事も、そうじゃない事も。」
「おう。」
「…だったら、責任取らないといけないね。いい女にならなきゃ。」
「そんなに気負うなよ。今まで通りで良い。いい女だって思ってるよ。
美人で意地悪でちょっとアホなお前が好きだから。」
「うん。ありがとう。
でも、褒められてるのか、微妙…」
「褒めてるよ。」
「でも、これからもっと、いい方に変わっていける。そう思うんだ、あたし。
さ、もう半周したしね、交替しよっか?ずっと亜美ちゃんのターンじゃ悪いし。
竜児から、亜美ちゃんに聞きたい事ない?何だって答えるよ?」
「おう。それじゃあ、ちょっと気になってた事、聞いてみるかな。」
「うんうん。何?」
「亜美はさ、よく自販機の隙間に挟まってるけど…あれって一体何なんだ?」
「え?…ん〜何って言われてもねぇ〜
あそこ、何だか落ち着くの。居心地が良いって言うのかなぁ〜」
「そういうもんか?」
「うん。そういうもの。
ねぇ、隣に座っても良い?」
「おう。」
「じゃあ、少し寄って?…うん、ありがとう。」
「…おう!?」
「あたしは、何かにこうやって、もたれかかるのが好きなんだ。
自販機の代わりとか言ったら、嫌な気になるかも知れないけど、
これから、ココをあたしのお気に入りの場所にしたいな。ダメかな?」
「良いに決まってるだろ?隣に居てくれって言ったのは俺の方だ。嫌な訳がない。」
「…暖かい。」
「…そりゃどうも。」
「ぷっ…照れてやんの。」
「うるせぇ…次、聞くぞ?」
「はぁ〜い。」
「俺の事、好きだって言ってくれたけど、いつから好きになってくれてたんだ?」
「…気になる?」
「なるよ。」
89勝手にチワドラP〜2S会話編〜:2009/05/07(木) 01:55:43 ID:cHTP4yu4
「…最初からだよ。」
「…初めて会った日は、思いきり酷評された記憶があるけどな、俺は。」
「え!?うそ、マジ?あれ、聞いてたの?
あの時、席、外してなかった?」
「北村と見てたよ。一部始終。全部。」
「…その事は、もう忘れてよ。
あぁ、聞いてたんだ…見てたんだ…
そりゃあ、いくら誘っても乗って来ない訳だよ。」
「…あれ、誘ってたんだ…
からかってるだけだと思ってた。」
「からかうだけなら、わざわざ別荘に誘ったりする訳ないじゃん。
好きだから、に決まってるでしょ?
あたしは、あのストーカー男から守ってくれた時から竜児が好きだったの。」
「俺、あの時、大した事はしてないぞ?
暴れたのは亜美だった気がするんだが…」
「その後よ。その後、腰をぬかしたあたしを家に上げてくれて、いっぱい慰めてくれたじゃない。」
「そう…だったか?
「覚えてないの?まあ、しょうがないよね。
あの頃は、竜児の視線はあたしに向いてなかったんだもん。
異分子の事なん、−ッ!!……んむぅ………」

「お前が、こういう事しようとしたから、頭の中ぼ〜っとしちまって…
だから、あの時の記憶が曖昧なんだよ。 覚えてないんじゃねぇ、曖昧なんだ。」
「四回目…てか、今のちょっとズルくない!?」
「ズルくねぇ。」
「…ズルいよ。ばか…」
「……泣くのはズルじゃねぇのか?
解った、解ったから。悪かったよ。」
「ホントに悪かったって思ってる?」
「おう。」
「じゃあ、あたしのお願い…ひとつだけ聞いてくれる?」
「…お手柔らかに頼むよ。」
「………抱いて欲しい。」
「な…お前、何言って…まさか、ここでか?」
「あっちの方向に、お城みたいな建物が見えるでしょ?
あそこに連れて行って欲しいな。」
「…いいんだな?」
「いいよ。竜児はどうなの?」
「ブレーキ効かないかも知れないぞ?」
「覚悟してる。」
「わかった。行こう。」

この時、俺は、とんでもないルートへのフラグを立ててしまっていた。
ここから、他のルートへの分岐は、多分無い。エンディングに向かって一直線。亜美と、二人で。

クイックセーブ。
90名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 01:58:39 ID:cHTP4yu4
投下終了です。
脳内で映像が再生されてしまった人は、残念ですが、末期的症状です。
病院へ行きましょう。
91名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 02:01:47 ID:+fvVykgs
>>90
俺の専属看護婦さんが亜美ちゃん様ならむしろオウケイ、ばっちこーい!
超絶かわいいGJだと思う>>90

ろーどろーどろーど
92名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 03:02:21 ID:/uVdjjSh
あいにく末期的症状じゃないから、
こういう情景描写がプアなのは願い下げ
ま、あぼーんすっからいいけどさ
93名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 03:15:14 ID:Z/gy/2Yz
なにこいつ、キモいんですけどー。
94G/W :2009/05/07(木) 03:37:36 ID:d5hXI9hm
何とか完結!

上手く行ったかどうかは不安ですが、ラスト、かなりまとめて何で迷惑でしょうが・・
投下します!
95名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 03:37:47 ID:c+YmkGcS
>>92
「高須君犯して……」
「……え?」
「早く……」
「いいのか?」
「そうしないと、亜美ちゃんが狂っちゃうよぉ……」
「本当にいいんだな?」
「お願い……」
川嶋は涙を流して懇願している。俺に悪魔の囁きが聞こえてくる。
早くやっちまえよ。本人がやってくれって言ってるんだから。こんな可愛い子とやれるなんてチャンス、めったにないぞ。
ほら、人助けだと思って、一気にいってしまえ!!ほら、見ろよ。もうグショグショだ。慰めてもらえなくて苦しいんだよ。早く楽にしてやれよ。
「いくぞっ!」
「ぁああぁぁぁーーっっ!!」
一気に奥まで突き入れたのだが川嶋が処女だってことに思いがまわらなかった。
奥にいくまでの途中で、処女膜らしい抵抗があったが、それも一気に破壊して最奥まで俺は挿入してしまっていた。
「ご、ごめん、川嶋、大丈夫か?」
だが、全く問題なかったようだ。
「もっと、激しく!!」
川嶋は痛みを感じているのに違いない。涙を流し苦痛にゆがんだ表情をしているのに、俺により激しい行為を要求する。
「う、うん……分かった」
俺は何か理由があるに違いないと考え、言われるままに腰を激しく動かした。
「あーっ、あーっ、いーっ、いーっ!!」
川嶋は始めてでこんなに激しくして大丈夫なんだろうか?だが、時間が経つにつれ、だんだん気持ちよくなっているように見えてきた。
最初の苦痛の表情はもう顔から消えている。今は快楽を楽しんでいる表情をしている。
そして俺も処女特有のきつい膣の刺激を受けて、程なく俺は射精を迎えた。
「川嶋、出る……出る……」
「中に出して……中に!!」
「おう……うっ、うっ、ぅおおおーー!!!」
「あっ、あっ、ぁあああーー!!」
俺が中に出すのと同時に川嶋も絶頂を迎えたらしく、ほぼ同時に絶叫していた。
「はぁ……はぁ……これで、いいか?」
「はぁ、はぁ、もう一度……」
「はぁ……はぁ……はぁ……え?」
そうは言われても、そんなにすぐには復活しない、と思っていると、川嶋がそのか細い脚で俺の体をぎゅっとはさみつけてきた。
太ももで俺のわき腹が刺激される。これはなかなか!その刺激に、柔らかくなったが、まだ川嶋の膣に留まっていた俺が復活してきた。
「そ、それじゃ、いくな……」
「うん……」
俺は川嶋の脚を掴んで、再び激しく腰を動かし始めた。
「ぅあっ、ぅあっ、……もっと激しく……もっと激しく……」
96G/W :2009/05/07(木) 03:38:06 ID:d5hXI9hm

「麻耶ー!待ってよー!!」
奈々子は声を上げ麻耶を止めようとするが、麻耶の足は止まることをせず、亜美もまた動こうとはしない。
「もう!」
奈々子が麻耶を追いかけようとした時、不意に腕が掴まれる。
「!・・能登君?」
ソコには能登と春田が居た。腕を掴んでいたのは能登。
「あ〜・・・わりぃ、香椎。木原、俺追うわ」
「え?」
「じゃあな!春田!」
言って能登は麻耶を追い掛け姿を消した。
能登の後姿に目を奪われていた奈々子と春田が亜美に視線を戻した時には、亜美はもう校門を後にするところだった。
その背が、誰も来るなと物語っていた。

「・・・・亜美ちゃん」
「・・・・・・でぇ、奈々子様ぁ。結局何がどうなってんのかぜ〜んぜんわッかん無いんだけど」
残念な奴である。
「・・・・幸せそうね?春田君」
「ふぇ?う〜〜ん・・・!!おお!そうだ〜。こんな時は皆で軽井沢行こう!軽井沢!いいよ〜。気候も良いし」
「さよなら。春田君」
奈々子は一人、学校を後にした。
「う〜ん。高ちゃんと、亜美ちゃんと、木原や奈々子様とか〜。タイガーや能登も〜。北村と櫛枝も呼んでさ〜。軽井沢良いと思うんだけどな〜〜。そんでもって」
独りで延々と妄想を語る春田だった。



「待てよ!木原!!」
能登は何とか麻耶に追いついていた。
呼べど叫べど振り向こうとしない麻耶に痺れを切らし、その腕を掴んで立ち止まらせる。
「っ!しつこい!!何よ!能登!!」
「何だよ!お前今日おかしいぞ!朝も川嶋に、さっきだって、アイツ尋常じゃなかったぞ?お前一体川嶋に何したんだよ」
「アンタには関係ないでしょ!」

麻耶にも焦りがあった。
確かにあの日、自分と竜児は一つになった。でも恋人同士になった訳ではない。
亜美と別れたとはいえ、はい!次!とばかりに自分の下に来る男では無いと分かっている。
あの日の事も、弱った竜児の心に、どこかつけこんだ所があった。それは自分でも意識している。
メールや電話はする様になった。自分からではあるが、それは楽しい一時だ。
竜児の話す、大河や泰子の日常は、それはどこか穏やかで暖かく、ソレを見る竜児の目は優しくて、自分の中の彼への気持ちを大きくする。
だがそれだけだ。特に二人きりで逢う時間を持つでもない。自分の体を求めて来る訳でもない。
それでも少しずつ。自分は竜児に近付いて行ける筈だった。

ソコに、亜美が戻ってきた・・・・同じ人を好きになった者同士。分かる。
彼女はまだ、竜児を好いている。朝は分からなかった。彼女の良いように腹がたっただけ。
でも今さっき、あの下校時に会った時、確信した。
ソレは麻耶の焦りを生んだ。でも・・・・引かない、と決めた。
97G/W :2009/05/07(木) 03:38:29 ID:d5hXI9hm


「コレは私と亜美の問題なんだから、アンタには関係無い!鬱陶しいから付いて来ないで!」
やや今の麻耶はささくれ立っているのかも知れない。心が。
歯に衣を着せない物言いになっている。それでも能登は止まらない。
彼もまた、一つの決断を下さんとしていたから。
「お前ら2人の問題じゃ無いだろう?どう見たって高須だって絡んでるじゃねぇか。川嶋は高須と別れたって言うし、そんでこのお前との、だ。
どう考えたって変だし、誰だって心配するだろう!」

能登は考える。
朝、確かに亜美の様子は変だった。どこか竜児との付き合いを否定した発言。
竜児に愛想を付かした?そんな筈は無い。それは誰もが思っている。
でも今朝は、別れてせいせいしました!って感じの物言いだった。過去には何の興味もなさげな。
竜児の友として、確かにやるせないモノが在る。それは分かる。
でも麻耶が亜美の頬を叩くには他の理由が必要だと思う。

「・・なぁ。お前なんで今朝川嶋をひっぱたいたんだ?」
「・・・・・・・・」
「それにさっき」

奈々子の声が聞こえて視線を向けた時、既に麻耶は校門へ向かってた。
奈々子の様子で尋常で無いものを感じたし、今朝の事も有った。
奈々子を制して自分が麻耶を追い掛けたが、際に亜美の横を通り過ぎた時、視界によぎった亜美の表情は、凍り付いていた。

「お前川嶋に何言ったんだよ!川嶋があんな顔するなんて・・・お前「能登君も亜美の味方なんだ」はぁ?」
突然の方向性。
「誰も味方とか敵とかそんな事」
「だってそうでしょ?男はみんな亜美の味方で、亜美の言ってる事は正しくて。そおうよね、確かに正しいわ、亜美の言ってる事。
事実だと思う。でも違う・・・りゅ・・高須君がどんな気持ちで亜美と別れたかなんて、亜美も、誰も、考えてない!そんなのって無いじゃない!」
「高須の気持ちって・・・ちょっと待てよ、今はお前の話を」
「違うの?どうせ能登だって亜美の事「そんなんじゃねぇよ!!」能登?」
それだけは譲れない。
「俺は川嶋の味方なんかじゃねぇ。川嶋に惚れてもいねぇ」
「・・・・・・やめてよ」
もう・・・止まらない。やめない。

「俺が惚れてるのは・・・・お前だ。俺は木原、お前の事が・・・・好きなんだ!」
それはいつから有った想いだろう。でも確かに芽生えて、育って、今、吐き出した確かな想い。
「くそ!何だよ!こんな時に、こんな風に言う積もりなんか無かったのに・・・・でも俺は」
「やめてよ!!」
「木原?」
どこかその目には・・敵意があった。
「私が欲しいのはアンタじゃない!わた・・・私が・・・欲しいのは・・・好きなのは」
「・・・!!おい!お前」

能登を押し留めたのは麻耶の頬をつたう涙。そして・・・言葉・・・想いのこもった、言の葉だった。

「高須・・・竜児が・・・良い・・・・届かなくても・・叶わなくても・・・竜児が好き・・・・竜児が良い・・」

98G/W :2009/05/07(木) 03:38:51 ID:d5hXI9hm

その日から再び、川嶋亜美は学校に姿を現さなくなった。
映画の撮影が忙しくなったんだろうと云うのが大筋の見方。
もちろん、違った見方をするものも居たが、それは簡単に口に出せる事ではなく、クラスの空気はいつの間にか、亜美の話題を避ける様になっていった。

「あれ?高須は?」
「ん〜〜?あ〜。高ちゃんなら進路の事でゆりちゃんに呼ばれて職員室だよ〜」
「そうか・・・?能登はどうした?」
「さ〜?な〜んか最近、一緒にご飯食べないんだよね〜能登っち」
「ふむ」

北村は顎に手をあて思案するそぶりを見せる。
「北村君?」
大河は不思議そうに北村を見やるが
「なぁ逢坂」
「へ!ななな何?」
いまだに真っ直ぐ見詰められると緊張する。
「最近の高須の様子はどうだ?」
「ふぇ?竜児?・・うん。なんか普段は変わんないんだけど・・・時々ね。なんか考え込んでるっていうか・・・言いたい事が有るなら言えば良いのに、あの駄犬」
「どうしたの?北村君」
実乃梨は何かに感づいた風だ。
ふと、北村の視線を追うとソコには麻耶と奈々子が、他の友達と皆で食事を楽しんでいた。

「う〜〜〜〜ん・・・・・・・うん。いかんな、これは」
北村は何かに行き当たる。
「北村君?」
「ウチのクラスは2年の時から面子も変わってないし、それこそチームワークの取れた良いクラスだ」
「??なになに?なんか出し物??」
春田の妄言はスルーして、ふとここ暫く無人となっている机に目をやる。
皆もその視線を追うと、ソコには亜美の机が。
「コレはもう個人の問題ではない!クラス全体の空気、ひいては今後の学業全般にも影響しかねると判断する」
「「うんうん」」「うん・・・うん?って何?」
既に北村・櫛枝・大河・(春田)は教室の隅に移動し密談モード。

「じゃあ北村君」
「ああ。ここは一気に真相の究明と障害の打破、ソレを持って現状を回復しようと思う!異議は?」
「ないぜよ」「きき北村君がそう言うなら私は」「お〜!なんか面白そう!」

ココに反撃の狼煙は上がった。
そしてその行動は・・・・
「そんじゃ〜さ〜。明後日にでも俺が高っちゃんにぃ、な〜んでこんな事になったのか聞いてみるね〜」
「「「・・・・(こくん)」」」
このアホ(春田)の発言により、作戦決行は明日に決まった。3人で平和を取り戻そうと誓ったのだった。

99G/W :2009/05/07(木) 03:39:11 ID:d5hXI9hm

ソレは放課後・・・・・
「あぁ。ごめんね、なんか呼び出しちゃって」
「良いけど・・・・話って何?櫛枝さん、タイガー」
放課後の教室。皆が帰った後に実乃梨と大河は話があると呼び出していた。
「うん。分かってるとは思うんだけど・・・色々聞きたいんだよ、木原さんに・・・色々と」
彼女の知る、彼女の中の、真実を・・・・


ソレは放課後・・・・・
「よ!いやあ、突然押しかけて済まなかったなぁ」
「はぁ?ってか何で?」
北村祐作は学校が終わった後に突然押しかけていた。
「やあ。身内の者だって言ったら通してくれたよ。まぁ、今日はちょっと亜美に聞きたい事があってな」
彼女が知る、彼女の中の、真実を・・・・


ソレは放課後・・・・・
「!なんだ?俺に何か用か?」
「ああ・・・・ちょっと、いいか?」
高須竜児の下に、それはイレギュラーな来訪者。
「珍しいな。お前が俺の家にまで来るなんて。何かあったのか?能登」
自らの想いを計る、不意の来訪者。


北村は推測する。
何が有ったのかは今は分からない。
だが何かが有った。それは高須と亜美の身に有ったのだろう。そして今、少なからず、もしくは多分に、麻耶も能登も絡んでいると。
問題はその絡み方だと思う。
枠の中に居る登場人物が各々の事情を十分に把握しているだろうか?それがまず疑問。

予想する答えは否だ。

まずは情報の整理を目指す。それには個々に、そして個々にしか無いであろう情報を集める。
パズルはバラバラでは組み上がらない。まずはパーツをそろえて、全体像を把握しなければ。
北村はまずその事を優先した。
情報さえ揃えば解決策は幾らでも思案の余地がある。
何も今日で全てを終わらす必要は無い。無いのだが、時間も迫ってはいた。
明日には、微妙な人間関係の機微など分かろう筈も無い、年中頭の中は春田(だ)君が直球勝負を仕掛けてしまう。
ともすれば更なる混乱を引き起こしかねない。
最悪、そうなる前に少なくとも現状は正確に把握したい。
ソレゆえの各個撃破では無く、2正面作戦を取ったのだった。
本来であれば竜児を含めた3方同時に攻略したかったのだが、如何せん、コチラは北村と櫛枝が頼りだ。
大河は単体では武力衝突でしか威力は発揮しないだろうし、予備戦力は爆弾付だ(目下タイマー作動中)
能登の参戦は北村にとってもイレギュラーではあったが、それは結果としては一度に戦端を開く好材料と言えただろう。

そして彼らの戦いは始まった。3年C組の平穏を取り戻すための聖戦は、今、その幕を開けたのだった。
100G/W :2009/05/07(木) 03:39:31 ID:d5hXI9hm


木原麻耶はその目を真っ直ぐに、櫛枝実乃梨と向き合っていた。
「あんまり良い趣味じゃ無いと思うよ?櫛枝さん。個人のプライバシーに口出すのってさ」
既にあらかたの予想は付く。今の現状で、このギスギスした空気は間違いなく自分たちが作り出しているものだ。
ましてや実乃梨や大河は竜児や亜美に近い。
動くなと言う方が無理だろう。
「うん。私もそう思ってた。だから今まで何も言わなかったよ。高須君とは少し話したけど」
「なによ!それ」
「少しだけだよ。あーみんと別れたって、それだけ。私には、それ以上何も教えてくれない」
どこか櫛枝は寂しげだ。
「だったら私だって教えてなんて」
「でも!大河にも何も教えて無い!高須君は、ホントは大河に隠し事なんてしたくない筈なのに、私にはソレが分からない」
「ちょ!みのりん!別に私は竜児の事なんて「なんでよ!」え?」
突然の木原の大声に大河も訝る。
「なんで別になんて言うの?!あの人は貴女の為に!!・・・あなた達の・・・為に・・」
「ちょっと!それどう言う意味よ!アンタなに「私には分からなかった」みのりん?」
実乃梨は一歩前に出る。
「でも考えれば予想は付いた。したくも無いのに隠すのは、ソレが大河にとって良くない事だから。高須君は、大河を守る為なら多分何でも出来る。
その何でも出来る高須君が何もしないのは何故?きっと・・・・何もしない事が、守る事に繋がるから」
「・・・・・・」
「みのりん?」
大河はただ櫛枝を見るが、麻耶はどこか目を逸らす。
「私に言って大河に言ってない事は何?木原さんが動けて私達が動けなかった事は?」
「・・・何のこ「あーみんだよ」!!」
ふと目が合うが、最初の力強さは麻耶には無い。
「多分・・・私も大河も・・・あーみんも知らない事を、木原さんは知ってる。ソレを教えて」
「・・・貴女に教える義理はな「私にじゃない!」?」
実乃梨はスッと麻耶の前に差し出す。その小さな両肩に手を添えて、大河を差し出す。

大河はその大きな目を開いて麻耶を見詰める。
もし実乃梨の言う事が正しいなら?竜児は自分を守ろうとして何かに耐えた。今、こうしている間も。
純粋に、知りたいと思った。知らなければイケナイと思った。

「大河に教えてあげて。大河にはその権利があると思う。だって木原さん」
その声色は優しくもあった。
「大河は、高須君の家族なんだよ・・・高須君が大河を思うように、大河だって高須君を思ってる。その事を忘れてる高須君に、私はソレを教えてあげたいんだ」
「・・・・・わた・・しは・・!」
大河は麻耶の手を取っていた。
「教えて、木原さん・・・・・竜児は・・・何を抱えてるの?お願い・・・お願い・・します」
「逢・・・・・・そう・・・わかった」

どこかで折れた。竜児にとって逢坂大河が掛け替えの無い家族で有る様に、大河にとっても竜児が家族である事。そしてその、聖域性。
入れない。そう、どこかで折れた。

「私が知っているのはね・・・・高須君が亜美と別れた・・・・ホントの理由」

そうして語りだした木原麻耶の言葉を、最期まで聞く事無く大河は教室を飛び出して行った。

「あんのバカ犬がーーーーー!」と怒声を上げて。

そして全てを聞き終えた実乃梨は小さく「・・ばか」と呟いて、簡単にメールを打つ。
打ち終わって振り返れば、どこか疲れた麻耶が、静かに涙を流していた。それでも実乃梨は続けた。ココから先は、きっと大河は居ない方良い。だから寧ろ好都合だった。

「それで・・・・高須君とは?
101G/W :2009/05/07(木) 03:39:54 ID:d5hXI9hm


北村は映画の撮影所に来ていた。
本来なら入る事は出来ないのだが、亜美の親類と言う事で特例で入り込んでいた。
「ほんと、突然来ないでよね。コッチは仕事なんだから」
「すまんすまん。あっ、今日じゃない方が良かったか?」
「はぁ?別に何時でも困るんですけど。てか、コッチに居るのは今日まで。明日からはアメリカ。ロスで撮影。日本に帰ってくるのは10日後よ」
「そうか。なら今日でよかったな」
「なんの事だか・・・で?話って何」
他愛も無い話をしているが、亜美にも大体の用件は分かってる。
というか、実際、亜美も頭が付いていかないで居た。今は仕事に没頭して、仕事に逃げているだけだ。
何もしていないと視界が歪む。

竜児と寝た。

確かに麻耶はそう言った。
あの表情や仕草は嘘や冗談とは思えない。ならば事実だろう。
もう竜児の中で、自分との事は完全に終わったのだろうか?
亜美は取り戻したかった。もう一度・・・もう一度・・・でもそれはもう叶わない。
竜児を憎む自分が居た。
麻耶を恨む自分が居た。
一方で思う。自分がこんな仕事をしていなければ、こんな事には為らなかったのだろうか?と。
そんな思考のループに、亜美はもう疲れ果てそうだった。

ふと気が付けば北村は携帯を開いてる、なにやらメールを読んでいる様だ。「なるほどな」などと呟いてる。
わざわざ面会に来て、それは不快な仕草。
「あんたね。用も無いのに来ないでよね。私、もう行くから!さっさと帰って!」
荒々しく席を立ってドアに向かう亜美の背中に、声が掛かる。
「なぁ亜美・・・最近、親父さんと会ったか?」
「はぁ?意味分かんないし」
「会ったか?」
「祐作?」
北村の顔は真剣だった。と、言うより、怒りが見えた。
「・・・・ここんトコ忙しくて、会って無いけど?」
「最期に会ったのは?」
「え?そうねぇ・・・・1学期が始まる前、春休みの時、実家に帰った時かな?それがどうしたのよ?」
「そうか・・・・」
「祐作、あんた少し変「高須は会ってるみたいだがな」・・・・は?竜児が?パパに?そんな訳」
不意に北村は手にしていた携帯を机に置いた。
「祐作?」
一歩下がって、北村は亜美を見詰める。
「今、学校で櫛枝が木原と話してる」
「!!」
「お前と木原の間に何が有ったのかは知らないし、ソレは多分俺が知るべき事じゃない。でもな?亜美・・・お前が知らなきゃイケない事が、ソコに有る。
櫛枝が木原から聞き出した・・・・お前達の現実だ」
北村は言うべき事は言ったとばかりに、後ろ手に手を組み、窓の外に向かい亜美に背を向ける。
しばし、亜美は沈黙していたが、ゆっくりと携帯を手に取り、その画面を見た。


「亜美ちゃーん。それじゃあ次は衣装合わせを・・・・あれ?」
10分後、スタッフが訪れた亜美の楽屋には、無残に壊された携帯を弄びながら、笑みを浮かべて椅子に座る北村祐作の姿しかなかった。
102G/W :2009/05/07(木) 03:40:15 ID:d5hXI9hm

それは川原だった。
「一体どうしたんだ能登。こんなところに連れ出して」
竜児には分からない。
「ああ・・・・なぁ高須」
「ん?」
「聞いて良いか?」
「!!」
振り向いたのとの表情は真剣で、今の竜児には彼に聞かれるであろう事が多すぎて、直視するのは難しかった。
「高須!ちゃんと目を見ろ!」
「!!・・・なんだよ?」
「お前、なんで亜美ちゃんと別れた?」
「それは!・・・お前には関係ない・・・」
そう、誰にも関係ないし、誰の所為でも無い。
「なぁ高須。お前周り見えてるか?お前・・・今、誰も笑ってないの!お前ちゃんと見えてるか??!!」
「!!・・・能登・・」
能登の目は真剣だった。そして真っ直ぐ、射抜く。
「お前中途半端じゃねぇか!ちゃんと亜美ちゃんと別れたか?結果じゃねぇぞ?過程の話だぞ?タイガーは?アイツ何にも知らねぇじゃねぇか!
北村や俺や、春田や櫛枝は?お前親友の意味分かってるか?ちゃんと辞書で調べてみろよ!」
能登の言葉は真っ直ぐ刺さる。誰にも何も言って無いから。
自分で決めた。決めると・・・決めた。
「それでも・・・・俺は」
「亜美ちゃんはお前の事まだ好きだぞ?ていうか何も終わってねぇ。なんか一生懸命じゃねぇか!タイガーは待ってるぞ?あの手乗りタイガーが・・お前が言い出すの待ってたんだぞ?
俺達は何にも知らねぇし、お前みたいに強くねぇかもしんねぇけどよ、それでもやっぱ言って欲しいじゃねぇか!
関係ねぇよな。お前の言う通りだよ。
でもな?お前は迷惑かもしんねぇけどさ、俺達皆、お前やタイガーや亜美ちゃんと同じクラスで、最高にラッキーだったって思ってんだよ!
他のクラスの奴ら、みんな羨ましがってんだぞ?もう、誰も、お前の問題関係ねぇなんて言えねぇんだよ!」
それは能登の想い。クラスメイトみんなの想い。
良くも悪くも、竜児はクラスの真ん中に居た。いつも自分の眼つきの所為で、クラスの端に居た自分が・・・・真ん中に居た。
竜児は始めて思う。

もしかしたら、突き放していたのは自分だったのかも知れないと。

「なぁ高須。俺は木原の事が好きだ。こないだ木原に言った。でも断られたよ。木原はお前が好きだってさ」
「!・・・」
「お前・・・知ってたな?」
「ああ」
「よし。なら問題無いな」
「能登?」
どこかすっきりした能登の声に竜児が不思議を覚えると。
「好きな女を持ってかれそうになった。喧嘩を売るには上等だろ?」
「喧嘩って!なんでお前が」
理由はなんでもいい。その為に能登は来た。

「お前ゴチャゴチャ考えすぎなんだよ。だから・・・すっきりしようぜ?考えすぎとか悩みすぎとか年寄りみたいな事言ってないで、偶にはシンプルに行こうぜ!
訳のわかんねぇ不満なんか、吹き飛ばしてやる!」
それはただの一時凌ぎ。それでも、最高な、一時凌ぎ。
どこか救われた気がした。そしてそんな竜児の視界に、多分、今の自分が待ち望んだモノが見えた。

「悪いな、能登。折角だけど選手交代だよ・・・・古来から、竜に並び立つものは、虎って決まってるからな?・・・・だろ?大河」
能登が横を見ると、土手の上に逢坂大河が立っていた。その手に木刀を携えて。

「ふん!飼い犬の躾は、飼い主の役目だものね」大河はゆっくりと構える。
「手間取らせるなぁ大河ぁ・・・全部忘れるくらい、ボコボコにしてくれ」竜児は手ごろな角材を握り構える。
そして、弾けた。

「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」

103G/W :2009/05/07(木) 03:40:45 ID:d5hXI9hm

「そう・・・・高須君と・・」
「・・・うん・・・・でも駄目だった・・・どうしたって、竜児の中に私は居ない」

大河が去った教室で、実乃梨は麻耶の話を聞いていた。
麻耶が竜児の優しさに触れた事。
北村との恋の終わりと、竜児への恋の始まり。
そして、亜美との別れで出来た、ほんの少しの竜児の隙間、ほんの少しのめぐり合わせ。
たとえ体を重ねても、決して心が重なることが無かった、麻耶の悲痛。
今はただ、麻耶の涙は床を濡らすだけ。

それでも実乃梨は優しく麻耶を包む。それは自分にもある事だから。
「ねぇ木原さん。高須君はずるいよね。こうやって、木原さんの心の奥底に自分の影を落として、それでも彼の心には誰の影も落とさせないで・・・
でもね?木原さん。きっと高須君は違うんだよ」
「え?」
「木原さんにも、私にも、きっと他の誰にだって、高須君は同じ事をしちゃう。それは私達から見たら優しさだし暖かさ。
その裏に何の打算も下心も無い。そんな優しさはホントは有り得ない。その有り得ない優しさが確かに存在するから、きっと私達は高須君に惹かれる。
でもね?高須君はソレを優しさだとは思って無いんだよ。ただの当たり前の事。雨が降ったから傘を差すように、喉が乾いたから水を飲む様に、彼にとっては普通の事。
だから彼には分からない。それがどんなに尊くて、どんなに残酷か」
「・・・・ぅ・・・うう」
「気持ち良いから、嬉しいから、近付いて、寄り添いたい。高須君は受け入れてくれる。彼の中に、誰でも入れてくれる。
それは私達がそれを望んだから。ただそれだけ。理由も聞かないで、入れてくれる。きっと言っても分かんないよ。あの時の君が素敵だったって言ったって、なんで?て顔しちゃう。
でもね?彼の中に入ってしまった私達は、彼の隣に並ぶ事は出来ない。
彼を好きな人じゃない。彼が好きになった人だけが、彼の外に出て、彼と並んで歩けるんだと思う。
たぶん、今、彼と並ぶことが出来るのは、あーみんだけ」
「やっぱり・・・亜美には勝てないのかなぁ」
どこか・・・頷いてしまう。
「だってあーみんは高須君の中に入れてとは言わなかったんだよ。きっと最初から。
私は、高須君の優しさに触れて、なんか嬉しくて、どこかでもっと、もっとって思っちゃッた。
木原さんも、高須君に触れちゃった。そして、温まっちゃったから・・・・でもあーみんはね?
独りで立ってたんだよ。弱い自分を隠して、さびしい思いも、怖い思いも、全部を独りで・・
多分、自然じゃなく、高須君はあーみんに、優しくしようとして優しくした。
温めてあげたくて温めた。それは私達とは違う。
同じ結果でも、中身は違う。だから・・・ね?木原さん。私達は高須君の中に居よう。そしていつか、素敵な恋を見つけて、高須君を卒業しようよ」

それは実乃梨から麻耶に送る、同志のエール。

「櫛枝さん・・・・うん・・・・・うん」

この時から、櫛枝実乃梨は木原麻耶の親友になった。

「じゃ!行こうか!」
「え?行くって?」
それはまだ麻耶には分からない。でも実乃梨には確信。

「大河が飛んでったからさ。大河はね、難しい事は考えないで、それでもね?・・・・・一番大事なモノを嗅ぎ分けるんだよ」

104G/W :2009/05/07(木) 03:41:08 ID:d5hXI9hm

「ぅおおおりゃああ」
「ぐはぁ!」
竜児は何度も吹き飛んだ。
別に無条件でやられる積もりなんか無い。
だが基本的に喧嘩なんかしない竜児と、なんだかんだいっても手乗りタイガーである。
すでに一方的に竜児はやられていた。
それでも立つ。まだ、すっきり出来ない。
「はぁはぁ。たいがぁぁぁ!!」
「なめんなぁぁぁ!!!」
がはぁ!!
何度も、何度も、竜児は吹き飛ぶ。それでも大河は一向に手を緩めない。

「このバカ犬がぁ!あんたは私をなめた!私とやっちゃんをバカにした!そんなの絶対に許さない」
「ぐわぁ!」起き上がりざまの竜児を蹴り飛ばす。
「私はそんなに弱くない!やっちゃんはそんなに小さくない!!」
「がはぁ」掴みかかる竜児を投げ飛ばした。
「家族っていったのはアンタじゃない!家族なら守るだけじゃない!守られる事も覚えなさい!!」
「ごふっ!」大河の右こぶしがこめかみを強打する。
「アンタが何をしようが、たとえ人を殺したって、私とやっちゃんはアンタと一緒に生きてくんだ!」
「ぐあ」木刀で背中を打ち付ける。
「後ろ指差されても、石を投げられても、家族として生きていくんだ!」
「ぐがぁ!」こぶしが腹にめり込む

大河はおおよその事しか聞いていない。途中で飛び出したし、熱くなって細かい事はすでに飛んでいる。
でも竜児が自分達の為に、亜美と別れる事を決めたと知った。
亜美の仕事を思ったと。
自分ややっちゃんが晒し者になるのを止めたかったと。

キレた。

ただそれだけの事を。
それでも亜美と居て良いか?と、ただそれだけの事を言わないで勝手に結論付けた竜児に、大河はただキレた。

既にやる事は見えている。
竜児をボコボコにしてぼろぼろにしてずたぼろにして。
これ以上無い位に体に分からせてから、一緒に亜美の下に行こうと決めた。

許してくれなくても謝ろう。
許してくれるまで謝ろう。
間違って、傷つけた、川嶋亜美に。
高須竜児の家族として、一緒に謝りに行こうと、決めた。その為に

竜児。もっともっと、分かりやすくなりなさい。
きっと世界は単純な様で複雑で。
複雑な様で、単純なのだから。

「うおおおおおらあああああ!!」倒れこんで、それでも自分に笑みを向ける竜児に大河も最期の一撃をお見舞い
「やめてぇぇ!!!」は、止められた。

川嶋亜美の絶叫で。

105G/W :2009/05/07(木) 03:41:29 ID:d5hXI9hm

亜美は竜児に覆いかぶさっていた。
「亜・・・美?」
「もういいよ・・・竜児、もういい」

亜美はただ竜児に抱きついていた。
「お前、どうして」
「聞いたよ。全部聞いた。記事の事も、パパの事も」
「!!お前ど」
「ゴメンね・・・竜児の事・・・・分かっ・・・ゴメン」

竜児はどこか気が抜けた。
大河が居て、亜美が居て。
少し前まで当たり前だった空気が、久しぶりに戻ってきた空気が、心地よくて、気が抜けた。

「なぁ、亜美」
「・・・なに?」
「大河に散々やられたよ」
「そうだね」
「大河に散々言われたよ」
「みたいだね」
「・・・・・まだ、間に合うかなぁ・・・」
それは望み。そして願い。

亜美はふと竜児から離れ、あの顔を見詰める。
「前に竜児言ってくれたよね?だから今度は私の番」
「?なにがだ?」
「ふふ。ココが」
言って竜児の頭を胸に抱く。
「川嶋亜美が、高須竜児の居場所だよ」
「!!」
「川嶋亜美は、高須竜児を愛してる。誰よりも、ね?」
「ああ・・・知ってる」
「ふふ。だと思った」

不意にドンッ!となにかが突き刺さる音。
大河が木刀を地面に突き刺していた。
「ったく、アンタ達、今度から別れ話する時は回りに迷惑かけない様にやってよね!」
どこか嬉しそうに。

竜児が思わず笑おうかとした時、土手の上から実乃梨と麻耶の声が聞こえる。
どうやら実乃梨と木原も上手く言ったようだ。と大河は思っていたが、その後ろでは

「で〜?竜児。麻耶の事はどう落とし前付けてくれるのかな?」
「ぐぅ!そ、それはだなぁ」
言いよどんでる竜児の前に、いつの間にかマヤが居た。
「き、木原!」
「ぅおりゃあ!!」「ぐああ!」
麻耶は見事なアッパーカットをお見舞いした。そして
「これで決着!恨みっこなし!・・・で良いかな?亜美」
「麻耶・・・・ばっちり!」

そんな一同が川原で笑い声を上げる中、そぐわない声があたりに響く

「なにをやっている!亜美!」

106G/W :2009/05/07(木) 03:46:12 ID:d5hXI9hm

「・・パパ」
ソコには亜美の父が居た。
「撮影を放り出して何をやってるんだ亜美」
「それは」
ギロっと竜児を睨む。
「既に話は付いていた筈だ。違うかね?高須君」
「・・・・・すいません」
「わかればいいんだ。さあ亜美、早く戻「あの話は無かった事にしてください」る・・なんだと?」
竜児はそのぼろぼろの顔を上げ、真っ直ぐ見詰める。
「俺は、俺達は別れません。この先なにがあっても、家族も亜美も、俺は守っていきます」
「竜児」
亜美は竜児に寄り添うが
「ふざけるな!そんな話が通ると思っているのか!」
声を荒げる父の前に、大河が木刀を突き出す。
「キャンキャン煩い犬ね。コイツで黙らせてやろうかぁ?」
本気でやる気だ。
「なんだこいつは・・・ん!そうか!君が逢坂大河か。木刀を振り回して恫喝か?やはり記事の通りでは無いか。
これでは問題にならん方がおかしい。君とて今のそのボロボロの顔、まるで抗争でもしてきたみたいじゃないか。
分からないのか?亜美。既にお前はこいつ等とは住む世界が違うんだ!もういつまでも子供じゃないんだ。いい加減に目を覚まして現実を見ろ」
亜美は大河を押しのけ父の前に立つ。
「何も見てないのはパパの方じゃない!外見だけ見て中身を見ようともしない!どうしてそう・・・もういい!
そんなに竜児やタイガーが仕事の妨げになるならもう仕事なんて辞めるわ!」
それは亜美の譲らない決意だった。

今までソコまで反抗されたことは無かった。
父の怒りは、まさに絶頂を迎えんとしていた。
そして、


「ゆゆゆゆ・・・・ゆるさーーーー」ドガシャアアアアアアんん・・・・

「はい?」

絶叫する父の背後に見えた、超高級そうな黒い車が、なにやらもっと高級そうな馬鹿でかいリムジンに吹き飛ばされて土手を滑り落ちていった。

「なあああああああ!」

絶叫するパパと唖然とする高校生達。
そんなみんなが見詰める中、くだんの高級車の後部座席から降りてきたのは、生徒会長、北村祐作だった。
「へ?北村?」
なんで?と皆が疑問に思う中、北村がすっと道をあけると、そこから

「「ママ!!」」

川嶋亜美の母。川嶋安奈が姿を見せた。
107名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 03:46:27 ID:aHrLDttX
いわゆる台本ってやつだな
108G/W :2009/05/07(木) 03:46:44 ID:d5hXI9hm

安奈はゆっくりと皆の下まで歩いてきた。
気の所為か、父は微妙に震えてる。
「みなさん、初めまして。いつも亜美がお世話になっています。亜美の母です」
といって優雅に頭を下げる。
みんなもあわてて、より低くく下げる。

「・・・・貴方が、高須君?」
「あ、はい。その、よろし「まぁ!やっぱりなかなかイイ男じゃない?いいわねぇ。やぱり男の子はコレくらい目が鋭くないと」へ?」
わりと、てかかなり気さく。
「ちょ!ママ!」
「あら?ヤキモチ?いやぁねぇ。私くらい美しいと娘にまでヤキモチ焼かれるからつらいわぁ。そう思わない?高須君」
「へ?あ、はぁそ「まぁ!貴女が逢坂さん!ちょっと!なんて可愛いの?これはもう反則よ!罪よ!どう?あなたデビューしない?もう間違いなくスターになれ「ママ!!」あら?またヤキモチ?」
「違うわよ!」
ほんとに大女優?だがそんな彼女も空気を一変させ
「で?話は纏まったの?二人とも」
「!・・・はい。俺達は何が有って別れたりしません」
「もしどうしてもって言うなら私は仕「あ、そ。オッケー。ならそれで良いわ」へ?ママ?」
「何?」
「いや・・・反対しないの?」
「して欲しいの?」
ぶんぶんと首を振る二人。
「別に良いんじゃない?男の1人や2人や4人位、居ても居なくてもどうでも良いわよ」
「いや、4人て」
「様は誰にも何も言わせない程の大物になりなさいってことよ。どうせやるなら、ね?」
「ママ・・・ありがとう!ママ!」「ありがとうございます」
竜児と亜美が感極まっていると、当然納得出来ないお方が一人。

「ちょっと待て!私は許さんぞ!」
「あら?あなた。まだいらしたの?」
おいおい母さん、そりゃないべ?
「大体お前はいきなり出て来て勝手な事を「勝手なことぉ??」ひぃ!」
パパは何故か怖がります。
「時にアナタ。今回の一連の騒動に関して、一体幾らのお金をお使いになったのかしら?」
「か、金など使っておらん!そうだろ?小泉」
凄腕右腕敏腕秘書!たのむぞ!
「どうなの?小泉」
「言ってやれ小泉・・・・・・・・・・・小泉?」
「交通費、人件費、高須様のお母様がお勤めのスナックへの出費、高須家および逢坂家の身辺調査費用。合わせまして3562001円で御座います奥様」
「そう」
「小泉ーーーーー!!」
真っ赤な裏切り。長い物には巻かれましょう。

「さて、アナタ。落とし前を付けましょうか」





結局父は母に連行され、そのまま車へ。
「なんか、お前の母ちゃん・・・すげえな」
「ん〜。でも結構私に似てるって」
一瞬、父の姿が自分にかぶる竜児だった。
109G/W :2009/05/07(木) 03:47:05 ID:d5hXI9hm


車の中ではどこか面白くない父と、ソレを楽しそうに見る安奈がいる。
「まったく。お前も亜美も、あんな男のどこが良いのか」
「ふふ。良いじゃないですか。まだまだ高校生なんですし、これから先は何があるかわかりませんよ」
安奈は大物らしい肝の座り方である。

それにしても、と思う。
「今回のアナタのやりよう。些か出来すぎでしたわね。どう言う事かしら?」
「ふん。高校生の一人や二人、どうとでも「小泉?」ぬが!」
旦那は直情径行の頑固親父に過ぎない。安奈には一連の行動が自分の夫と一致しないのが不思議だった。
「はい。旦那様では御座いません」
「でしょうね。アナタ?」小泉の腕は知っている。
「違います。旦那様にはいらっしゃったようです。プランナーが」
?と目線で促す安奈に、しぶしぶと言った感じ
「誰かは知らん。記事の事や、話の流れなんかをな、メールが来「小泉?」ぬあ!」
「追えませんでした。正体の方は不明です」
安奈は、そう、と漏らし考え込むも
「・・・どうなの?その名無しさんは」
「はい。巧妙ですね。人を動かす事に。言ってしまえば金も力も必要ないと言わんばかりですね。何処までの絵図を書いていたのかは分かりませんが・・・見事です」
「アナタがソコまでとはね」
ふと小泉も安奈を見やる。
「奥様がココで出てこなければ、もっと続いたのかも知れませんね。もしかしたら、何処までも喜劇なのかも知れませんが」
安奈にも笑みがこぼれる。
「どうかなぁ。私にも居たのよ。プランナー。やっぱりメールだったけど。追えなかったわ」
「それは・・・同じ人物でしょうか?」
「違うわね。きっと・・・こっちのは人なんて見て無いもの。見るのは時だけ。ようはタイミング。然るべき時に必要な事を。それだけで間違えなければ思い通りに・・・
軽井沢で療養中の私に直よ?しかも全てが揃ってた。ちょっと怖かったわね。実際」

父には付いてイケナイ会話を、それでも二人は楽しんでいた。

「初めからでしょうか?」
「そっちはそうでしょうね。でもコッチは違う・・・そっちが始めた。で、コッチが」
「時計の針を進めた、といった所でしょうか」
「でしょうね。ほんと、何処のドイツか知らないけど、面白いわね〜」

安奈は本当に楽しそうだ。
「いつか・・・・どこかで出会えますかね?」
どこか小泉も楽しそうだ。

「そうね機会があ!!!・・・・・ふふ。もしかしたら意外と近いのかもね。あはははははは」

安奈の機嫌は、終始良かったと言う。

110G/W :2009/05/07(木) 03:47:42 ID:d5hXI9hm

ソコには2つの人影。
川の向こう側を走る何やら高そうな高級車に、一人は座りながら手を振り、横に立つ一人は軽く会釈をしていた。
やがて車が見えなくなる。

「は〜〜〜。結局なんだったのかな〜〜。わかる〜?奈々子様〜」
ただ佇む奈々子に話しかける。
「さぁ?春田君もそんな事を考える前に、英語でも勉強した方がいいんじゃ無いですか?」
座っている春田に声を掛ける。
お互い視線は交わさない。


「それじゃ、私はこれで」
その場を立ち去ろうとする奈々子に

「でもさ〜〜・・・なんで?」

意味を成さない言葉。でも返事は返る。
「だって気付いちゃったんですもの。はっきりさせた方が良いわ。色々と、ね?」
「ふ〜〜ん。でもさ〜、奈々子様は良かったの?ココに居て」
「だってまだ先だったもの。昔から言うでしょ?真打は最期にって・・・でも今はどこかホッとしてる。
やっぱり臆病ね、私は」
そういって微笑む先には、向こう岸のクラスメート達。

と、その笑顔が消えるや

「でもチョッとがっかりしたな」
「え〜〜?なにが〜〜?」
「信用無いのね私。ソレほど悪い結末には為らなかったと思うんだけどな〜」
どこか楽しげで、どこか非難めいている。
「いや〜〜。だ〜〜ってもうすぐ夏休みじゃ〜〜ん。高校最期の夏休みだし〜。目一杯遊びたいんだよね〜俺。皆で海とか行ってさ〜」
「ああ。それで。もう来週ですものね。夏休み」
「皆で行こうね〜、海」
「私はパスよ」
「え〜〜。なんでよ〜〜?」

奈々子はゆっくりと歩き出す。
「紫外線はお肌の敵なの。それにね・・・春田君には、色々見透かされそうだから」

春田はその場で寝転がる。
「た〜のし〜のにな〜。それにさ〜・・・見えないもんさ、特に奈々子様はさ〜」


「そう言う事にしておくわ。それじゃ。本日の御礼は近い内に」
「気にしなくて良いよ〜。御礼って怖いからさ〜」


そう言って春田が視線を送った先では、軽く後ろ手をふる奈々子の姿。
そして対岸の竜児を見る。




「あ〜あ。なんか高くつきそうだな〜高っちゃ〜ん・・・ま、いいか〜」


終わり
111G/W :2009/05/07(木) 03:48:02 ID:d5hXI9hm

何とか書き終わりました。
長くなってすいません。
もう眠い・・・あすからはPC無いので無縁の暮らし。
見る事は携帯でみてます。

それでは、ゴールデンウィーク中、楽しませていただいてありがとう御座いました。

112名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 03:49:42 ID:aHrLDttX
リロードせず割り込んですんませんした
そしてGJ、短期書き上げお疲れ様です
113名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 04:39:32 ID:vyAK3Fxj
うぅむ。GJと言わざる終えない…

今度、ココに一個載せようと思うのですが、エロ無しじゃダメですか?
このままだとなくなりそうな予感なのでw
114名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 04:48:46 ID:pa0IvZKa
ドロドロして先に結末がわかっていても楽しめた でも…

黒幕いたとはw腹黒すぎだろう
途中やたら奈々子様絡むなぁと思ったら 読み直したよw
春田は…俺はバカが好きだ

ともあれ「あれ?タイガー?え?見せ場終わり!?俺途中までカッコ良かったよね、ね!?」
不憫すぎる能登の叫びが聞こえる
115名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 05:46:05 ID:/uVdjjSh
>>111
GJ!
情景描写や心理描写が充実していて、伏線もばっちり
こういう作品を読みたかったので、感謝!
116名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 16:25:28 ID:PSWC/8AI
>>113
エロなしでもどんとこい
117名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 20:41:48 ID:01m7+yjA
>>111
お疲れ様。こちらこそ良いもの読ませてもらってありがとう。
原作10巻の北村もそうだけど、こうやって周りが友人の為に奔走する姿は読んでて気持ちが良いね。
SSであーみんママのこういうキャラ付けは初めて読んだけど、ママGJだw。
しかし奈々子様はやっぱりこういう位置付けになっちゃうのかw好きだけどさ。

>>113
あんまり待たせるとオイラの痔が悪化するので気にせず書いてください
118名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 21:19:04 ID:v98pSrrH
>>90
GJ!!
これからプレイ開始なんですけど、おかげであーみんルートが楽しみだわー
んで
( ゚∀゚)o彡゜ロード!クイックロード!

>>111
GJ!!
いい麻耶でした!あみママカワイイっすねw
しかしこの春田……できる!

>>113
風邪ひいちゃうから早期の投下を願う
( ゚∀゚)o彡゜
11998VM:2009/05/07(木) 21:33:50 ID:OAzGx3rm

こんばんは、こんにちは。 98VMです。

学生生活を描く上で、どうしても他の学友が必要になってしまいます。
本作では多くのオリキャラが登場しますので、ご注意ください。

前提: みのりんルートアフター
題名: Carnation,Lily,Lily,Rose 2
エロ: 無し
登場人物: 亜美、大河、オリキャラモブ
ジャンル: 学生生活
分量: 11レス


一人の少女が、インターホンの音に目を覚ます。
ぼさぼさの髪も、ねぼけ眼も、着崩れたパジャマも、まるで飾り気が無い。
一目でノーメイクとわかる濃淡のない白い顔は、しかし、美しい。
少女はふらふらと玄関に向かい、ぼーっとした表情で、扉を開ける。
そこに立っているのは、恐らく彼氏。
少女は、一瞬驚いた顔をするが、すぐに微笑んで…
『すっぴんでも、キニナラナイ』 とテロップとナレーションが入り、
商品名が表示される。

4月からオンエアされている、とある化粧水のCMだ。
このCMのお陰で、その化粧水は品薄が続いている。 バカ売れなのだ。
あたしは、メーカーから山ほどその商品を貰った。
こんなに、いらねっつの。 こんなんで、騙したつもりなんて、どんだけ不自由な頭なんだか。
メーカーとしては少しでも安上がりにしようと思って、あたしを起用したんだ。
ぶっちゃけ、あたしの『値段』は安い。
ところが大当たりしちゃって、後ろめたくなったのか、現物供与で誤魔化してきた訳だ。
でも、件のサークルに所属する女子学生には好評なんだな、これが。
あたしにとっては、在庫処分に大助かりって訳。
今日もサークルの部室等が集まるホールにある喫茶室の一角を占める、我らがサークルメンバーに、
化粧水を届けていたところ。
…って言ってもついでなんだけど。
なんだかんだ言って、あたしとタイガーはしょっちゅうその一角に立ち寄るようになっていた。
学内には残念ながら、あたしが落ち着いて挟まれるような自販機の隙間がなかったってのもある。
今やここは、あたしとタイガーの待ち合わせ場所でもあるんだ。
「いやはや、川嶋嬢、すまんね。 ついうっかり友人に話してしまってね。」
老紳士のような喋り方をする長身の女性はこのサークルの副会長で、3年生だったが、一浪一留一休学で、
あたしたちより5歳も年上だ。
「ふむ、君にしては迂闊。 お詫びにこの俺が姫に清涼飲料水を献上しよう。」
そして、M男先輩の彼女でもあるらしい。 
で、M男先輩の申し出を断ると色々とウザイことも学習した。
「えっと、じゃ、アイスティーで…。」
「Yes, Her Royal Highness」 やたら流暢なクイーンズでそう言うと、胸の前に手をかざしながら
礼をして買いに行く。 変態じゃなきゃ、かなりのイケメンなのに…。
複雑な表情を作るあたしに、副会長は素敵な笑顔でいつもこう言う。
「あれは病気でね。 真性であるからして、勘弁してやってくれ給え。」
なんかちょっと羨ましくなる、そんな昼下がりだった。


    Carnation,Lily,Lily,Rose   Scene.2


「あの、川嶋さんって、あのCM、本当にすっぴんで撮ってるんですか?」
この場に居る、もう一人の人物である、桐子(トウコ)ちゃんが聞いてきた。
それは、よくある質問、No.1の質問。 とりあえずQ&Aを読んで下さい。 って感じの質問だ。
「ええ。 正真正銘ノーメイクよ。 スポンサー的にはそれが必須条件だったみたい。」
「すごいなぁ…。 本当に、川嶋さんって、私と同じ種族に見えないです。 綺麗すぎて。」 
「そーんなことないよ。 あたしなんて大した事無いって。」
嘘だ。 ルックスには相当自信がある。 可愛らしさでは大河に一歩譲るものの、単純な美しさでは
負けたと思った相手は正直、まだ居ない。
だが、女としての総合的な魅力で、勝ったと思ったこともあまり無い。 その意味では本心でもある。


「そのような謙遜は美徳とは言い難い、かな。 お待たせ致しました、姫。」 
「あ、すいません。」 「いやいや。お仕えできて恐悦至極。」
M男先輩がアイスティーを持って戻ってきた。
「私、東京さ出て来たからには、有名人って見てみたいなぁとか思ってたんですけど、いきなり川嶋さんと
知り合えて、なんだか夢の様ですぅ。」
彼女はいつも訛りがでないよう、すごく気を使って喋っているが、『東京さ』とか、節々にボロが出てしまう
のが可愛い。 アクセントも平坦で独特なのだが、本人は気がついてない。
「白坂嬢ではないが、実際、川嶋嬢の加盟は我がサークルにとって大変な僥倖と言える。」
「だね。 今までになく活気がでた感じだよ。」
「それと、逢坂嬢もだな。 本当に君たちを見ていると元気が出るよ。」
「全くだ。 姫は猫とネズミが追いかけっこをするアメリカのアニメを知っているかな? 君たちは正にあんな
感じだな。 はっはっはっはっは。」 「ははははは 違いない。」
なんつーか、微妙な心境だ。 褒められてるのか、馬鹿にされてるのかわからない。
ちなみに、やっぱりあたしが猫なんだろうか?
言われてみればたしかに、最近やられっぱなしな気がする。
「川嶋さんは、逢坂さん待ちですかぁ?」
「え、ええ。 そうだけど。」
「やっぱりー。 お二人って、すっごい仲良しですよねー。 羨ましいなぁ。」
「は? あたしらが…」 危ない。 また悪い癖が出るところだった。 これでまたもや失敗してるんだ。
いいかげん、素直にならないと。
「…ん。 ま、もう二年くらい付き合ってるしね。 そこそこ仲良くはなるわよね。」
「そこそこっていうか、私、仲のいい友達って居なかったから、お二人が凄く羨ましいですぅ。」
「お、今日は川嶋さんも一緒か!」 突然割り込むように、明朗快活な声が響く。
会長様と、2年の女学生2人。 これで、ホールの喫茶室内最大勢力になった。
姦しい娘達の参入で、この一角もにわかに騒がしくなる。
けれど、不思議と不快ではない。
自分からはあまり話さずに、皆の話に相槌をうちつつ聞いている。
『その他大勢』になるのって、いままで無かったかもしれない。
この人達はあたしを特別扱いしない。 まるで空気のように存在感を無くしていられるのが新鮮で、結構心地いい。
「あ、そういえばさ、昨日逢坂さん、痴漢撃退っていうか、撃破っていうか、殲滅っていうか… なんか
とにかくやっつけたらしいよ!」
「えーーー! あんなにちっちゃくて可愛いのにー?」
…間違いなく最後の殲滅が正しそうだ。 ってか、昨日そんな事があったって、聞いてねぇし。
「ねぇ、川嶋さん、本当なの?」「え、あ。 すいません、あたしも聞いてないです…。」
ちくりと胸が痛んだ。
アイツ、なんであたしに言わないんだ?
手乗りタイガーにしてみれば、大した事じゃなかったのかもしれないけど…
やっぱり、この間の事を気にしてるんだろうか…。


大手家電メーカーのCM撮りと雑誌の撮影で、あたしが4日間家を空けた。
そして、帰ってきたその夜、またタイガーがあたしのベッドにもぐりこんで来た。
流石にしらふでは情事に至らなかったけど、アイツが抱きついてきて…
あたしは心臓が爆発しそうな位、ドキドキしちゃって、思わず突き放してしまった。
それから、あたしたちは背中合わせで寝たけど、心臓の音がバレるのが嫌で、体をくっつけるのは
ひたすら拒んだ。
それで、その翌日からあたしは、絶賛自己嫌悪中。
大河に寂しい思いはさせないって、決心した筈だったのに。
あたしって、とことん馬鹿チワワだと思う。 
それから実に半月あまり。 大河の方は特別変わりなく接してくれてるのに、あたしが勝手にキョドってる。
今日だって、ここでの待ち合わせに、化粧品届けをだしにして、めちゃくちゃ勇気を振り絞って来たんだ。
たぶん、大河はそんなに怒ってない。 だから、あたしさえちゃんとすれば、元通りのハズ。
問題は、第一声をどうするかだ。
いつもどおり、自然に、何事もなかったかのように…。
って、いつもそればっかり考えて失敗してるんだった。
だめだ、ちゃんと具体的に考えておかないと…。 あたしの事だ、また自爆する。
(よっ、タイガー、ひっさしぶり〜。)
駄目だ、全然久しぶりじゃねーし。
(あらぁ〜 チビトラいつのまに来てたの〜 ちっちゃくて亜美ちゃん、全然気がつかなかったぁ〜)
いや、喧嘩売ってどうすんのさ。
(こんにちは、逢坂さん。)
普通だ。 これなら普通だけど、でも普段と違いすぎるってか、いつもは逢坂さんなんていわねーし。
(あら、見覚えがあるけど、誰だったかしら?)
…ママの真似してどうすんだよ、あたし。 しかも、超見下しモード。
(大河、痴漢撃退したって聞いたけど、本当なの?)
コレだ! これしかない。 自然かつタイムリーで更に次の会話につなげやすい。
「……しま…さん」
「…かわしまさん」
ん? なに? なんで桐子ちゃん、青い顔してコソコソ…
「くぉんのバカ犬がぁぁぁーーーーっ! 飼い主に返事もできないのかーーーーーっ!」
「んぎゃ」
脳天に電撃が走った。 なに? なにが起きたわけ? なんか頭が超イタイんですけど。
って、いまのはチビトラの声? あたし、殴られた? いきなり… いきなり…
「いきなり何しやがんだっ、このチビトラッ!」
勢い良く立って向き直る。 勢いが良すぎて座っていた椅子が倒れた。
「どーこがいきなりよ! 何回も呼んだのに、無視してんじゃないわよ!」
言うや否や、腕をとられた。
「ちょ、いたっ あ、あっああああっ」
「おおお、見事なコブラツイストだ。」「姫、ムリは禁物だ、ギブするんだ!」
「く、あっ、ぎ…ぶ、なんか…、」「うりゃ」「うあっ あああっ ギブ、ギブ、ギブッ」
「かんかんかーーん。 いやぁ、逢坂選手、見事なコブラツイストでした。 川嶋選手も良く頑張った。」
ひでぇ。 なんか最近チビトラの奴、手加減を知らない。
悔しいから騙してやろう。 右腕を押さえつつ、崩れ落ちる。
「あ、イタッ、う、腕が…」
「え?」
「う、動かない、よ。」苦しげに息を荒げながら、切ない声を作る。
が、刹那の隙も無く動いたのは、会長とM男先輩だった。 ヤバっ。
…高校の時の男子はバカ面さげてオロオロするばっかりだったのに…。
「大丈夫かっ、川嶋さん、「姫、冷静に痛む場所を教えろ、腕は動かすな。」」
「ば、ばかちー!」冷静な二人とは正反対に、いきなり取り乱す大河。 これも予想以上の反応。
「…ごめん、今の嘘。」 すぐにばらさないと『…なんてな。』じゃ済まなくなりそう。


「………」
うっはぁ、なんかヤバイ雰囲気? みんなマジ怒ってね?
「川嶋嬢、流石は川嶋安奈の娘と言うべきか。 見事な演技だったが、…関心できんな。」
「このバカ犬、どうしてくれようかしら…。」
「いや、まぁ、なんだ、アレだな。 ここは俺に免じて、川嶋さんの事はここの会計全部持ちってことで、許して
やってくれ。」
「あ、それなら私、速攻許しまーす。」「わたしもー。」
「ふん。 しかたないわね。 私は空気が読めるから、許してやるわよ。 死ぬほど感謝しなさいよ。 この駄犬。」
「ふっ。 姫、このサークルの連中は、マリアナ海溝よりも深い思慮を持つ俺を除くと、皆単純でね。 その手の
冗談は通じにくいのさ。」
「ご、ごめんな「ああ、そうだ! そんな事よりも、大切な話があったんだった。」
会長が私の言葉を遮る。 
「ふむ。 読めたぞ、会長。 それは、次の企画に関する事ではあるまいか?」
副会長がそれを受けて、一瞬で皆の興味が移った。 助かった。 いや、助けてくれた。
うちのサークルはいわゆる『よろず企画サークル』だ。 企画、統制、管理能力を磨くといえば聞こえは良いが、
ぶっちゃけ、何でも有りのゆるいサークルだった。
「その通り。 そしてその企画には一つだけ難しい問題があるんだ。」
「だが、ここで話を出す以上は、解決可能な問題ってことだろ。 もったいぶるな。」
「うむ。 今回は、川嶋さんと逢坂さんにも参加して欲しいという観点から考えた。 」
倒れた椅子を起こし、座りなおす。 大河は… あたしの隣には座らなかった。
「特に、川嶋さんは有名人だから、街中でのレクリエーション系のイベントは少々危険だ。 だが、その知名度を
プラスに生かせて、かつ、我が大学のイメージアップに繋がるイベントもある。」
「ふむ、昨年もやったな。 チャリティー募金活動か。」 
「そうだ。他大学との協賛で実施する募金レース。 これに参加しようと思う。」
「なるほどな。 昨年は成績が振るわなかったからな。 ん? まてよ、それの日程って確か…。」
「明後日と私は記憶しているが、相違ないかね?」
「相違ない。 やるやらないに関わらず、一応は参加申請をしておいたんだが、今年は当初不参加の方針だった。」
「つまり、それが問題というわけか。 今からでは日程調整が難しい、と。」
日曜日か…。 ヤベ。 仕事夜しか入ってないわ…。 貴重なオフをそんなので潰してられっかっての。
「その通りだ。 で、川嶋さん、日曜日の予定はどうだろうか?」
「えっとぉ、たしかその日は…。」「ばかちー日中は暇だよ。」「ちょっ。」
タイガーの顔を睨みつけると、ふっと顔を逸らされた。
ずきりと胸が痛む。
な、なんなの…。 怒ってんの? あんな冗談、いつもの事じゃん…。
「それはよかった。 川嶋さん、ぜひとも参加してくれないか? なにせ、一年生が加入後、最初の本格的な
企画だからね。 君や、逢坂さん、白坂さん達、新メンバー全員と一緒にイベントをやりたいんだ。」
断れないよね…。 だって明確な理由が無いんだもん。 これで断ったら只の我侭娘だよ。
「もちろん、仕事優先で構わない。 少しでいいから一緒にやってくれないか?」
「…わかりました。 日曜日は雑誌の取材だけですから、結構お手伝いできると思います。」
「ありがとう! 川嶋さん! さぁ、みんなも、他のサークルメンバーにこの件を伝えてくれないか? 我々、
執行部はこれから詳細を詰める。 小道具や、衣装も用意しないとな。 さぁ、忙しくなるぞ。」
あたしは、不敵に笑う会長の顔を見て、なんとなく、ゴミを見つけたときの高須君の姿を連想してしまった。
それで、つい大河の方を見たけど、やっぱり、大河はあたしと目を合わせてくれなかった……。


悶々とした気分で、その日の夕刻から、撮影が始まった。
あたしは上手に顔を作って、いつも通りに撮影は進んでいたが…。
「つっ。」
右肩を中途半端に上げて止まる。
肘を肩より上に上げようとすると、肩に鋭い痛みが走った。
自然と肩を庇いながらになってしまい、写真家は敏感にあたしの変化を捉えた。
「どうしたの、亜美ちゃん。 急に表情が硬くなったな。」
「え? いえ、なんでもありません。 大丈夫です。」
それから10分ほど経った頃。
写真家は撮影の切り上げを決意した。 もちろん、それはあたしが期待通りに動けなかったから。
いくら、最近売れているといっても、こういうのは致命的。 撮影中止なんて、よほどじゃないと起きない。
モデルがダメで撮影中止なんて、少なくとも、あたしは聞いた事が無かった。
ちゃんと仕事に向けて体調管理するのは、プロなら当然なんだから。
運の悪いことに、この写真家は変人との誉れも高いが、それ以上に実力者として高名だった。
今日の一件では、あたしに相当悪い印象を持ったに違いなかったし、そういうのは直ぐに業界内を駆け巡る。
調子の好い時こそ油断しちゃだめだって、ママに言われたばかりだったのに…。

憂鬱な気分でマンションについた。 今日はあたしの家事当番だけど、帰りが遅くなるから夕食は各自で、
ということにしてた。 そんな事にほっとしている。 正直、何もやる気が起きなかったから。
そうして、やっと自分の様子が把握できてきた。 
…そうか…あたし、結構へこんでるんだ……。
マンションの共用区画に入っているコンビ二で、おにぎりを一つだけ買って部屋に戻る。
肩の事は、大河に気付かれちゃまずい。 あいつことだ。 必要以上に責任を感じて、ギクシャクするのは
目に見えてる。
「ただいま。」 自然と声は小さくなった。
「おかえり。 早かったじゃない。 もっと遅くなると思ってたわ。」
「ん。 亜美ちゃん天才だから、撮影、サクッと終わっちゃったの。」
「はぁ? また何調子こいてんだか。 本当はなんか失敗して追い返されたんじゃないの?」
ドキッとして、反撃が遅れた。
「ば… ばっかじゃね、亜美ちゃんがそんなへまするわけねぇっつの。 どっかのドジトラじゃあるまいし。」
いつもなら、ここで更に反撃がくる筈なんだけど、この日は違った。
「あんた…… どうしたの? まさか、本当にへまして追い返されたんじゃ…。」
「だぁから、あたしがへまなんかするわけないって言ってんの!」
怒鳴ってしまった…。 これじゃ図星ですって言ってるようなもんじゃん…。 
「ばかちー… あんた…。」
ちくしょう。 そんな目で見んな! 
あたしは逃げるように自分の部屋に閉じこもった。 
なんであたしはいつも、こんなにカッコ悪いんだよ…。 畜生、畜生、ちくしょう…。

そして、その夜も次の日の朝も、大河とは顔を合わせなかった。


朝、起きると右肩の様子は更に悪化していた。 肩と水平の高さにしても痛む。
鏡を見たが、外見上はわからない。 腫れないところを見ると、骨や腱には異常がなさそうだ。
昨日の冗談が本当になってしまった。
その上、大河とは決定的にギクシャクしてしまっている。 
なんか呪われてるみたい…。
この右手の様子ではノートを取るのすら苦労しそう。
でも、下手に病院にいったら、大河に気付かれてしまう。 そうしたら、きっとアイツは責任を感じて…。
駄目だ。 今そんな風になったら、あたしたちの仲はうまく修復できなくなってしまいそうな気がする。
熱はもっていない。 きっと2〜3日無理しなければ治る。
そう自分に言い聞かせる。
ジムは無理だけど、幸い、この先5日間は撮影の仕事は入ってない。 それだけが救いだった。

あたしの新聞学科と大河の社会福祉学科では、主な講義をやる建物が違う。
だから、注意してれば学内でも殆ど大河とは会わずに過ごせる。
けれど、明日のイベントを控えたサークル活動だけは避けられない。
イベントの中心に、あたしの広告塔としての役割があるし。
いまさら出れないとは言えないよね…。
気乗りしないけど、いつもの喫茶室の定位置に顔を出す。
「お。 姫、やっと来たな。 早速だが、付いて来てくれ。」「あ、はい。」
M男先輩一人だ。
「我がサークルは大学公認サークルでね、部室を持っているんだよ。 みんなそっちに集まってる。」
聞いてねーし。 そして、そんなあたしの考えを読んでいたかのように、M男先輩は続ける。
「姫は携帯の番号、教えてくれてないだろう? みんなにはメールで知らせたんだが。」
「ちなみに、すこし前に逢坂さんにも姫の番号を聞いたんだが、『ばかちー』の許可なしには教えられないそうでね。」
「すみません。」
プライベートの携帯の番号はなるべく知られたくない。 
今のところ、あたしの携帯番号を知っているのは大橋高校2-Cの仲良しグループだけだった。
「いや、いいよ。 職業柄そうそう教えられない気持ちも理解できる。」
時々、凄くまともなんだよね、この人。 
この大学は6対4で女が多い。 だから、いい男の競争率はめちゃくちゃ高いって聞いた。
M男先輩も、もしフリーだったら、凄くもてるんじゃなかろうか…。 
ぶっちゃけ、かなりカッコいい。
「ところで、『ばかちー』の語源はなんなんだ? サークル内でもかなり議論されたんだが…。 皆目見当
がつかない。 教えてくれたら、俺の一人勝ちなんだが。 むろん、ただでとは言わない。 俺を自由に踏
んでいいぞ。 場合によっては鞭と蝋燭もアリだ。 どうだ、素敵な条件だろう?」
…変態じゃなければ。
「む、残念、時間切れか。 さぁ、ここが安らぎの園、我らのアイゼルネ・ユングフラウ!」
いや、あんただけ刺さってくれって。 ってか、あんなもんで安らぐのかよ。
「おお、川嶋嬢、待っていたぞ。 早速だが、衣装合わせをしたい。 川嶋嬢は無双のスタイルを誇ってい
るゆえ、昨年の服が使えない懸念がある。」
「衣装あわせ?」
「そうだ。 募金というのはチャリティーの中でも一番難しいんだ。 バザーやアドオン形式の方が抵抗感
が無い。 だから、昨年は少しばかり工夫をした。 募金をすると、コスプレしたメンバーがパフォーマンス
をするんだ。 しかも、どの箱に入れるかで、ランダムにコスプレメンバーが変わる。」
「今年は、運がよければ川嶋亜美が現れる、というわけだ。 姫、頼んだぞ。」
「ちょ、ちょっとまってください。」 「なに、ぐだぐだ言ってんのよ、この駄犬。」
後ろから声を掛けられた。 そういえば大河の姿が見えなかったと思い、振り向く。
……やべ。 鼻血でそう。
そこにはトラの着ぐるみを着て、頬を僅かに赤く染めた手乗りタイガーが居た。
「おお! 逢坂さん! 素晴らしいぞ。 ワンダフル、グレート、ん〜マ〜ベラ〜スッ! 獣っ子バンザイ!」
あー。 会長も実は変態でしたか…。 そうですか…。
ちょー心配になってきた。 あたし、何着せられるんだ?
「この私がこんな格好してやってんのよ。 あんたは万年発情チワワらしく、Tバックでも、ブラジル水着でも
なんでも着るがいいわ。」
「ちょ「そうかーーー!  解った! 解ったぞ! うわっはっはっはっはっは。 これで俺の勝利だ! 流石
俺様。 灰色の脳細胞が炸裂だぜーーー。」
な、何事? 
「いいか、諸君。 ばかちーとは! ばかちーとはな!」
「バカチワワの略だったんだよ!」 「「な、なんだってーーーー!」」
なんなんだ、この人達。 わけわかんねー。 さすがのタイガーもあっけにとられてる。
「これで、賭けは俺の勝利だ、約束の品、貰うぜ。 ……俺が―――三角木馬だ!」
…一瞬でもカッコいいとか思った自分が恥ずかしい。 M男先輩、あんた死んでいいわ。
「阿呆どもは放っておくがよろしかろう。 さぁ。川嶋嬢、こっちに更衣室がある。 付いて来給え。」

スポーツ系のサークルの為なのか、簡単な更衣室があった。
グラウンドの近くにあるのとくらべると随分しょぼい。 でも、あたし達のサークルメンバーだけなら十分。
「逢坂嬢のコスチュームは即決だったのだが、川嶋嬢は難しいな…。」
「副会長、バニーはぁ?」
「木下嬢。 昨年それを着た君はサイズぴったりだったな。 打ちひしがれたいならサイズを確認してみるかね?」
「あははは。 泉ちゃんは今年もバニーになりまーす。」
2年の木下さんは、あたしと大河をこのサークルに引きずり込んだ面子のうちの一人だ。
いつも一緒にいる川上さんと上下コンビと呼ばれているけど、あたしには何となく、麻耶と奈々子を連想させる。
「でもでも、やっぱ亜美ちゃんはエロイ路線でいこうよー。」
「だめじゃない? たしか川嶋さんって水着封印の方向だよね?」
そう。事務所が出した方針で、あたしの水着は封印された。 ただ、昔から看板モデルを務めてるファッション誌
だけは、水着特集で着るけれど。
「はい。 アンオフィシャルでも、水着はちょっと…。」
「ふむ。 ならばあれなどどうだろう。 昨年私が着たものだが、丈がやや長いものの、着れん事もあるまい。」
「あーー、いいかも。 なんか超似合うんじゃなーい?」
「あ、エルフのお姫様の衣装!」「そうそう、それ。」
へぇ…。 それなら、ましかも。
「あったあった。」
お、なんかひらひらしてて結構可愛いかも。
「ばかちーにはもったいないわ。 やっぱあんたはバスガイドをするマイケルジャクソンで十分よ。」
桐子ちゃんに手伝ってもらって着ぐるみを脱いだ大河が憮然と言い放つ。
「バスガイド… あはははははは なーに、それ。 おもしろーい。 亜美ちゃんそんな特技あったんだー。」
「んな特技、ねーっつの!」

そんなこんなで結局、あたしの衣装はエルフのお姫様になった。 
できれば、試着は遠慮したかった。 右肩が痛いのがばれそうだから。
けれど、衣装合わせというからには着ないわけにもいかず、細心の注意を払ってなんとか着ることが出来た。
副会長だけはすこし怪訝そうな顔をしたけど、とりあえずその場では何も言わなかった。
あたしと、大河、それに、上下コンビと桐子ちゃん。 
5人の衣装が決まって、あたし達は部室へ戻ろうとしたんだけれど…。
「川嶋嬢、すまん、ちょっと手伝ってくれ。 ああ、他の者は先に戻っていてくれ給え。」
副会長に呼び止められた。
やば…。 ばれた、かな。
「川嶋嬢…。 解せんな。 その右手、どういう事なのかね?」 この人には嘘は通じなそう。
「最初は…。 本当に痛くなかったんです。 でも、夜になったら急に…。」
「医者には?」 「行ってません。」 「逢坂嬢は?」 「気付いてないと、思います。」
「ふぅ…。 逢坂嬢には教えたくないのかね? 彼女のせいで、君は肩を痛めたのに?」
「確かに、大河のせいですけど、わざとじゃありません。 でも、あいつは必要以上に責任感じるやつだから…。」
「だが、間違いは間違いだ。正すべきものは正さねばならない。 逢坂嬢が君を怪我させた事実は伝える必要がある。」
「そ、そんな、待ってください。 そんなの、あたしがいいって言ってるのに、勝手な…」
「逢坂嬢の為にならん。 川嶋嬢、君は間違っている。」
「やめてください! そんな事したら、アイツ、アイツは!」
じっと見つめられた。 鋭い、凍りつくような視線。 でも、でも負けられない。 睨み返してやるんだ!
「は、ははは。 あっはっはっはっは。 全く困った娘っこだな。 よかろう。 内緒にしておいてやる。 だが、医者
には今すぐに行き給え。 後のことは私が誤魔化しておいてやろう。」
「…ありがとうございます。」
「礼には及ばない。 いずればれるであろうからな。 その時が少し伸びたに過ぎん。 それより、さっさと医者にいけ。」


医者にはモデルだから、湿布とかは出来ないといって、結局、痛み止めを注射してもらった。
翌日の昼くらいまでは持つらしい。
案の定、特に酷い怪我ではなく、一種のムチ打ちらしい。 若いから3日もすれば動かせますよ、と軽く言われた。
けれど、その3日が辛い。
「ばかちー、そういえば今週、ジム行かないんだね。 どうしたの?」
「え、えっと、別になんとなく、だりぃってか、面倒っていうか。 ま、一週くらい休んだって平気だって。」
「…ふーん。 そうして油断してるとブタになるよ。」
「…平気だって。」
なんとか誤魔化す為に、やっぱり大河と距離をとる羽目になってしまう。 悪循環だ。
大河は何度も話しかけてくれたけど、あたしはそっけない対応しか出来なかった。

翌朝、大河はなにか言いたそうな顔をしてたけど、あたしと目が合うと言えなくなるようだった。
やばい感じだ。 こんな経験なら、今まで何度もある。 
あたしが性悪を晒してクラスで孤立すると、それまで仲のよかった子が、こんな反応をする。
話したそうで、でも周りの目があるからできなくて、そして、結局、口を利かなくなるんだ…。

いやな感じのまま、集合場所についた。
今回の募金活動の場は神宮前、明治通りと青山通りに挟まれた地域、すなわち、表参道付近だ。
場所によって、通行人の層が大きく変わる、難しい地域でもある。
タイガーは直前まで着ぐるみは未着装だが、あたしたちはマントやらポンチョやら羽織って怪しさ満点だった。
他の大学の人達も思い思いの趣向を凝らしているようで、集合場所の神宮橋は異空間になっている。
「おい、あれ、川嶋亜美じゃね?」
あっちゃー気付かれた…。 うぜぇ。
「え、マジで。」 「誰?それ。」 「ほら、あれ、すっぴん美人って」 「なんだよアレ、めちゃくちゃ可愛くね?」
「おのれ、三田村、卑怯だぞ!」
「ん〜、なにかな? 負け犬の遠吠えは、実に甘美な響きだなぁ、うあっはっはっはっはっはっはっはっはぁ。」
「ちくしょー、助っ人とは反則だぜ!」
「ぷっ。 ぶわっはっはっはっはぁ〜! 愚か! 愚か! 愚か! 助っ人? 助っ人だと? 川嶋亜美はなぁ。
我がサークルの正式な構成員なんだよ、このミトコンドリア共め! ぅあははははははははははははは。」
「……M男、うざいわ。 叩き潰してやろうかしら。」 タイガーはすでにM男呼ばわりしてる。
「三田村先輩って、他の大学にも知り合い多いんですねぇ…。 凄いなぁ…。」
「ってか、なんで司祭のかっこしてんの? 昨日あんな服あったっけ?」
「す、すみません、たぶんあれ自前ですぅ。 昨日私、『全身タイツとボンテージと司祭服どれがいい?』って聞か
れて、司祭服って答えちゃいました…。」
「…桐子ちゃん。 今回の最大の功労者は間違いなくアンタよ。 私が保証するわ。」
「あたしもそう思う…。」
「でも、今思えば『普通の服』って言えばよかったような…。」
「「……あ」」

この馬鹿げた人物のお陰で、あたしとタイガーはかなり救われてる気がした。
こんな風に、自然に会話に入れるのは、M男先輩の奇行があってこそだから。
「さぁ、まもなく国家権力に届け出た時間だ、移動を開始するぞ。」
会長が宣言して、いよいよ募金レースが開始された。

募金が開始されると、とりあえずタイガーの人気が凄かった。 小さい子達と、一部の大きなお友達に熱狂的に
支持された。
まぁ、当然だと思う。 あたしだって鼻血でそうだもん。
木下先輩もスレンダーでスタイルはかなりいいから、バニー姿にスケベな男共は大興奮。
川上先輩の看護婦姿も好評だったし、桐子ちゃんの浴衣姿も、うなじの破壊力は抜群だった。
で、もちろん、あたしも久々で自分に酔ってしまったわけで。
最近、ちょっと自信喪失気味だったけど、改めて自分の綺麗さが確認できて、正直、超気分が良かった。
それにしても、タイガーはヤバイ。
お昼時、着ぐるみを脱ぐとまた着るのが大変だから、あたしと桐子ちゃんで世話をしたんだけど…。
手が肉球になってるせいで、タイガーは自分で物を持てない。
副会長と桐子ちゃんが作ってきたお弁当を食べさせてもらっている。 もう、その時点であたし的にはアウトだ。

「そーせーじ。」
「はい。あーん。」
「あーん。」 はむはむはむ。
「たまごやき。」
「はい。あーん。」
「……………」
勘弁してくれって。 まじであたしを萌え死にさせる気かっての。 
「ばかちー、なにしてんだ。 ジュースちょうだい。」
「な、なに偉そうに言ってんだよ、チビトラ。 なんであたしが…。」
「じゃ、川嶋さん、私が。」 「あ、桐子ちゃん、ご、ごめんね。」 「いいえぇ〜。 はーい、逢坂さん。」
「ばかちー…。 ん、」 ごっきゅごっきゅごっきゅ。

結局あたしはタイガーのあまりの可愛さに直視すらできなくて、桐子ちゃんが一人で世話をした。
タイガーが時折寂しそうな顔をするのに、あたしは素直になれなくて、ついそっぽを向いてしまう…。
あたしって、全然成長してないな、と思っても、言葉がどうしても出てこなくって…。
午後になっても、あたしは極力右手を使わないことに集中して、タイガーの事は努めて気にしないようにした。
そして数時間が経って、ついに予定の時間が終わる。
あたしたちのサークルは、明らかに他のサークルよりも人が集まっていた。
皆、大成功を確信し、明るい顔だった。 けど、あたしだけは少しだけ暗い顔をしてたのかもしれない。
副会長があたしを見る目線が、なんとなく、そんな物を見る感じに見えたから。

夕刻、大学に帰ってきて、ひとまず部室に戻った。
戻るや否や、あたしは副会長に用事を頼まれた。 
それは少しばかり時間のかかる用件で、あたしが部室に戻ってきたら、副会長しか居なかった。
「いってきました。 あ、れ? 副会長、みんなは?」
「男共は資材の片付けであろうな。 コスプレ組は着替えにいったよ。 わたしも衣装の片付けにいくが、
逢坂嬢が君の分のお茶を買いに行っている。 合流したら、手伝いに来てくれ給え。」
彼女はそう言って部屋を出て行ってしまった。

部屋にぽつんとのこされて、なんか皆ちょっと冷たいな、なんて思っていると、大河が戻ってきた。
「あ、ばかちー、あんた忘れられてたみたいよ。 お茶の数足りなかったの。 飼い主として、仕方ないから
買ってきてあげたわ。」
そう言って、タイガーは何気なくミニペットボトルをあたしに放ってよこした。
取ろうとして―――
ベコン、ゴロゴロ。
右手が上がらなかった―――
床に落下して転がるペットボトル。
あたしは一瞬固まってしまう。
急いで誤魔化そうとしたけれど、なんて喋ったらいいのか思いつかなかった。
怪訝な顔をした大河は、あたしの顔を見た後、ハッとした表情に変わる。
「あ、あんた、まさか右手…。」
「な、なに?」
「ちょっと手、貸してみなさいよ。」 タイガーはそう言い放つと一息に詰め寄ってくる。
「…いやよ。」
「貸せっていってんでしょ!」
「いたっ!」
「やっぱり…。 右手上がんないのね?」
拙い。 …ばれた。
「な、なんでもないよ。」
「なんでもなくない! 私がコブラかけたからなんでしょ? 私がっ! ………私が、ばかちーを怪我させたんだ…。」
「そ、そうじゃなくて、これは……」
「もしかして、仕事でへましたのも、そのせいなの? 私がばかちーを怪我させたからっ、だからっ」
「ちょっと、あたしの話も聞きなさいよ」
「それで、ばかちー、最近変だったんだ…。 私がこんなだから…。 いっつもばかちーに頼ってばっかりなくせに……
だから、私と一緒にいるのが嫌になったんじゃないの? だからっ!」
「いいから、話聞けってっ!」
「だって、最近ばかちー、おかしかったもん! すぐに目線そらしたり! 挨拶上の空だったり! 今日だって、ずっと
キョドってたじゃないさ! いつだって、いつだってそうなんだ。 私が欲しいものは、壊れちゃう。 私が欲しいものは
いつだって、手に入らないんだ! だからっ! ばかちーの事は欲しいって思わないようにしてたのにっ!」
何いってんだ、コイツ。 なんでそうなるんだよっ!
「やっぱり! やっぱりダメだった! ばかちーがいなくなったら、私は…
「うるさい、うるさい、だ、ま、れーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「はぁはぁはぁ…ちったぁ、人の話きけっつの、このバカトラ。」
深く息を吸う。

「この肩はね、罰が当たったんだよ…。 だから、気にしてない。 怒ってなんかいない。」
「…ば、ばちって なん…」「この間はっ」
「この間の夜は、突き放して…ごめん。 あたし、ドキドキして、あせっちゃって…。 ずっと謝りたかったんだ。 でも、
あたしは、あんたが言う通りバカチワワだから…言い出せなかった…。」

大河の表情が変わった。 きょとんとしてる。 ほんと、可愛い奴。
そんな大河を見て、自分でも驚くほど優しい声になった。

「それにあたし、ああいうの、嫌いじゃないよ…。」

大河はそのおっきな瞳を涙で濡らしながらも、今はその表情に悲しみは無い。
驚きと安堵だろうか。

「ばかちー… 私の事嫌いになったんじゃないの?」
「なんでそうなるのさ? そんな訳ねーじゃん。」

大丈夫。 あたしの想いは伝わる。
目を逸らさずに、ちゃんと向き合えば、

…きっと伝わる。


「あれぇ。 もう終わりなの〜?」
「ちょ、泉、おめぇ 信じらんねぇーー。」
「バカ野朗、これからって時になんてことしやがんだ、このKYクイーン!」

「「なっ!」」
びっくりした。 ってか、マジかよ。 こいつら覗いてたの?
そうか… これって…
きっとそうだ! あたしら、副会長にハメられた!

「あ、あ、あ、あ、 あん、あんた、 ら…。」
「はっはっはっは。 なに気にすることは無い、さぁ、熱いぶぇーぜを交わしたまえ。」
「うぉーーーりゃぁぁぁぁあっ!」
「ぐおぁーーーーーっ。」

一瞬の後、タイガーのフライング二ールキックが、ものの見事にM男先輩に炸裂したのだった。


その後、サークルの皆でイベント成功の打ち上げパーティーになった。
あたしは雑誌の取材を速攻で終わらせて、二次会になんとか滑り込みセーフ。
かなり適当な受け答えになっちゃったけど、どうせそのままなんて載りゃしないんだ。
それにこの間、撮影中止なんて大失敗しちゃったし、仕事なんて来なくなるかもしれなかった。
そんな事より今は、サークルのみんなと達成感を分け合いたい。

今回はタイガーもお酒は自重したようだ。
M男先輩はタイガーのフライング二ールをくらってもピンピンしてて、なんか人間とは思えなくなってきた。
なんだかんだいって、あたしもタイガーもすっかりサークルの雰囲気に呑まれてる。
それはたぶん、悪いことじゃない。
ギクシャクしてたタイガーとの仲もすっかり元通り、いや、それ以上になったと思う。

そしてカラオケで散々騒いだ後、大河と二人、弁慶橋の近くで止める気もないハイヤーを待っている。
あたしはちょっぴりアルコールも入ってほろ酔い気分。
水無月の夜の空気はちょっとしっとりして、本格的な夏を迎える前の最後の涼しさを湛える。
あたしも、大河も、しばらく前から一言も言葉を交わしてない。
けど、なんだかその沈黙が心地いい。 不思議な気分だった。
ひっきりなしに走り去る車の騒音も、なぜか気にならない。
「日付変わっちゃったね。」
不意に大河が呟く。 
「昨日はどんな日だった?」
「色々あったけど、楽しかった。」
「だね。 あたしも楽しかったかな。」
「…かえろっか、ばかちー。」
時折赤い文字が流れる道路わきで手を上げる。
ほどなく、車が滑り込んで、

「今日は、一緒に寝よっか?」
 
無意識に唇からこぼれていた。
車の窓に映った大河の驚いた表情は、開くドアに一瞬で連れ去られる。

「…犯すなよ。」

「……それはこっちの台詞だっつーの。」



                       Scene.2   - Cut -
13198VM:2009/05/07(木) 21:43:48 ID:OAzGx3rm

以上です。 
いかがでしたでしょうか?
いやはや、二次創作って難しい。 下手に手を出す物じゃないと知りましたw
次の投下は未定です。
132名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 22:27:53 ID:IzFHd/IH
同じ亜美どらでも、>>90>>111とで、全然、違うな。どっちもグッジョブ。

>>111
完結乙。完璧な昼どらでした。

>>90
会話中の動きが見えちゃった俺、末期だわ。次はエロ期待。



133 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:01:11 ID:GAYjDqag
皆さんこんばんは。
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下させて頂きます。
前回の感想を下さった方々、ありがとうございます。
貴重な意見も頂けたので、今後に活かしたいと思います。
では次レスから投下します。

134 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:02:07 ID:GAYjDqag
[伝えたい言葉(8)]

川嶋の手の平が額から頬へ流れ、慈しむ様に撫でてくれる。
幼い頃、泰子が撫でてくれた時に感じた心休まる気持ち。
無条件に気を抜いて、何も考えずに身を任せれる。
鼻をくすぐる女の子特有の甘さと、彼女の香水の匂いが俺を酔わせる…。
弱めにしてある暖房で暖められた川嶋の甘酸っぱい匂いが心地良いんだ。
「川嶋…」
俺は彼女の腰に両手を回して抱き付く。
もっと彼女を感じたくて、腹に顔を埋めて深呼吸する。
さっきより濃い川嶋の匂い…。
女の子に対して、こういう事をするのは駄目だろうな。
でも……抑えが効かない。
よほどの事が無い限り、川嶋は受け入れてくれるから…。
それを知ってしまった俺は、彼女に『甘える』という事に抵抗が無くなっていく。
鼻先を押し当てて、徐々に抱き付く力を強める。
それを川嶋が手櫛で返して許容してくれた。
無条件に与えられる優しさに触れて、嬉しくて…気持ち良くて。
余計な考えは頭の隅に追いやられてしまう。
「…この部屋、寒いね」
そうポツリと川嶋が呟く。
「…暖房の温度、上げるか?」
と、俺は言った後…邪な事を考えてしまう。

135 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:03:06 ID:GAYjDqag
それは川嶋の気持ちを踏みにじってしまう事だと分かっている。
だが、言ってしまう。
欲求に負けてしまって。
「…それとも俺の部屋に行くか?
ここより暖かいぞ」
と…。
とりわけ変な事を言っている様には聞こえないだろうけど、真意は…違う。
寒さを防ぐ術……川嶋と抱き合ったら暖くなれる。
そうしたら俺は堪らなくなるだろう。
また彼女の事が欲しくなる。
それが前述の『欲望』という訳だ。
下心丸出し…だよな。
下手したら嫌われるだろう。
言った後、襲ってくるのは強い後悔。
だから慌てて言い訳しようとした瞬間、川嶋が呟く。
「…うん。行こっか?」
そう頭上から聞こえて俺は耳を疑う。
確かに『うん』って言った。
川嶋なら俺の言っている意味は理解しているだろう。
暖房のある部屋からわざわざ寒い部屋に移動して暖まるとか……普通、おかしいと思うだろ?
実は『そのままの意味』で捉えているとか?それは無い筈…。
下品な言い方になるけど、暗に『ヤラせろ』と言っているんだぞ。
それを踏まえて了承したのか?
こんな風にグルグルと考えを迷わせている内に、川嶋が再び口を開く。

136 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:04:05 ID:GAYjDqag
「行こう…、ねっ?」
やっぱり川嶋は察しているのだろう。
微かに甘さの混じった声で俺を促す。
「…すまん。川嶋…実は嘘付いてた」
やっぱり…駄目だ、こういうのは。
彼女の優しさに付け込む様な酷い事はしたくない。
「上手く部屋に誘い込んでヤってやろう、って最低な事を考えちまった。
俺、川嶋の事を忘れられなくて……。
またしてみたいって思って、思わず言ってしまったんだ。
…ごめん」
そう…最低だ、俺って奴は。
軽蔑されても仕方無い。
ほら…何にも言ってくれねぇ。
こりゃ嫌われたな…絶対に。
当然の報いだ…。
そう結論付けて俺は彼女から決別の言葉を掛けられるなり、罵倒されるなり…断罪されるのを待つ。
だが川嶋は黙って懺悔を聞いた後、俺を覗き込んで問い掛けてきた。
「それって身体目的?
それとも……私の事を知りたい、仲良くなりたい、甘やかされたい、って想ったから言ったの?」
「それは…川嶋に甘えたかったから…」
そう聞かれた俺は迷わずに後者を選択する。
…彼女に心の弱い部分を晒して甘えたかったのだから…。

「ん。だったらエッチ…しても良いよ」

137 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:05:21 ID:GAYjDqag
再び俺は自分の耳を疑ってしまう。
だから川嶋が紡いでくれる言葉を余さず拾って確かめようとする。
「"部屋で暖まる"って、そういう意味だって端から分かってるし。
分かってるから、行こうって言ったの。
だって高須君は相手を思いやれる奴だから、変な下心なんかで誘ったりなんかしない」
彼女がクスッと微笑んで紡ぐ。
「人を好きになるのって理屈じゃないもん。
高須君が私に寄り掛かりたい…甘えたい。
そう想って言ってくれたんでしょ?
なら…良いじゃん、それで。
私は高須君の事が好き。高須君が少しでも私を想ってくれているなら……理由なんか必要無い」
「…おぅ」
妙に説得力のある川嶋の言葉に感心してしまう。
同時に
『健気だな』
と想う自分がいた。
『好きだから…良いよ』
自分の事を『身体だけ』で見ているのかもしれないんだぞ?
実際は違うけど、俺はそう考えているのかもしれない……。
でも信頼してくれて身体を許しても良い…って言ってくれている。
胸がキュッと締め付けられる感覚。
そう…これには……墜された………完璧に惚れちまった。
そうだ。理屈なんかじゃねぇよな。


138 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:06:05 ID:GAYjDqag
人を好きになるのに理由付けなんか…いらねぇ。
俺は起き上がって彼女と向き合い、つぶらな瞳を見詰めて口を開く。
「………俺、川嶋としたい。

お前の事が好きだから…」
でも、このくらいの『理由付け』なら良いよな。
彼女を想いたいから…。
「うん。私も高須君の事が好きだから、したい…な」
頬を染めた彼女が微笑んで俺の手を取る。
そして俺は彼女を引き寄せる…。
「あ…」
胸の中で川嶋を抱き締めて背中を撫でる。
「まだ全部の気持ちが整理出来てないから告白…は出来ないけど
いつか絶対に言うから…絶対に」
そう紡ぐと川嶋が身体を震わせる。
こう言ったのは、俺が彼女に対して誠実でありたい…そう伝えたい為。
「あはは…そういう事はまだ言わなくても良いって…しっかり考えて…って言ったじゃん?
気が早くね?
でも………凄く嬉しい」
額をグリグリと胸板に押し当てて、
鼻声を隠す様に茶化した口振りで彼女が笑う。
だけど…しっかり気持ちは返してくれる。
その可愛らしさに俺は堪らなくなる。
どちらからともなく、一緒に立ち上がって、
引き立てる様に彼女の手を引っ張って部屋の中に入る。

139 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:07:24 ID:GAYjDqag
部屋の灯は点けず、そのままベッドの中に潜り込む。
「制服…シワになるよ」
掛布団の中で彼女に覆い被さり、リボンを解こうとした時そう言われる。
「後でアイロン掛けてやるよ」
ハンガーに掛けたり、畳んだり、そんな時間すら惜しい。
「だぁめ…汚れちゃう。
ねっ?亜美ちゃんは逃げないから…
制服…掛けさせてくれないなら、やめちゃおうかなぁ〜」
意地悪な笑みを浮かべ、彼女が囁く。
「おぅ。分かった、ほら脱げよ」
逸る気持ちを抑えて起き上がり、そう促す。
「高須君が脱がせて」
すると川嶋がそう返して起き上がり、俺の膝の上に乗る。
横向きになり、両手を首の後ろに回し……膝を立てて…さ。
スレンダーな身体付きだからか、胡座をかいた俺の膝にスッポリ収まった彼女は華奢で…可愛くて…。
お姫様…みたいだよな。
俺は黙ったままブレザーに手を掛ける。
何も言わないのは…胸がドキドキしていて、うわずった声になりそうだから。
ボタンを一つ、二つと外し、肩口から片方づつ袖を滑らせる。

彼女が首に回した手を片方だけ外し、脱がせるのを手助けする。

140 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:08:43 ID:GAYjDqag
首筋に当たる彼女の吐息がくすぐったい。
そう。暖くて…甘い川嶋の吐息が俺を高揚させる。
続いてリボンを解いて、ブラウスを脱がせに掛かる。
右手でボタンを外しながら、並行して左手でスカートのジッパーを下ろす。
徐々に露わになっていく彼女のきめ細かい白い肢体……綺麗だ。
月明りで映えて白さが増している…。
最後に靴下を脱がせて、衣類を畳んで…よし。っと…ハンガーを取らないとな。
川嶋の膝裏と背中を腕で支えて、ゆっくりベッドの上に降ろす。
一瞬だけ彼女の身体が硬直し、すぐに身を委ねたのを感じた。
たったの数秒の動作。
それでも反応を返す川嶋が愛しい。
立ち上がって壁に吊したハンガーに制服を掛けて、俺はベッドの端に腰掛ける。
掛布団を彼女に被せ、自分の部屋着を脱ごうとしたら、川嶋が手で制する。
「亜美ちゃんが脱がしてあげる…」
掛布団を羽織り、四つん這いで俺の横へにじり寄って甘く囁く。
そして膝立ちになり、スウェットの端に指を掛けて、インナーのTシャツと共に優しく壊れ物を扱う様に脱がしてくれる。
それは残ったズボンも同様に…。
ただし下着だけは残してくれる。

141 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:09:35 ID:GAYjDqag
「…おいでよ高須君」
そして元の位置に戻った川嶋が手招きする。
「おぅ…」
なるべく冷静を装ってはいる。けど…
実際は胸が高鳴っている。
三回目…でも俺にとっては初めてと言っても過言では無い。
本当に彼女を抱きたい。
そう想って行なう契だから…。
俺は掛布団の中の川嶋に覆い被さる。
ギシッとベッドが軋んで鈍い音を立てる様子を、何処か遠くで聞いている気分になる。
「ふふっ。高須君…」
川嶋が俺の後頭部に腕を回し、グッと引き寄せる。
朝、自販機で顔を寄せた時より近く…。
零距離で、額同士を重ねてジッと俺を熱ぽく見詰める。
ほんの僅かに潤んだ瞳、朱の差した頬…甘い川嶋の匂いも吐息も間近に…。
「んっ…、ふ。ちゅ…、ん」
堪らず、俺は彼女の唇に吸い付く。
甘い声を洩らし、更に強く頭を引き寄せられ、川嶋が啄んで誘う。
だから俺は彼女の口内に舌を潜らせて返す。
「あ…、んっ、くちゅっ…っは。んんっ」
舌先で彼女を捉えて、絡ませ…戯れ合う。
川嶋が俺の舌を唇で何度も甘噛みし、唾液を含ませてくる。
ゾクゾクとした震えが背中から首を巡って、腰へと伝い、また背中へ…。

142 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:10:21 ID:GAYjDqag
「ふっ…、くちゅ…ちゅ、ふ…あ…、ちゅぱっ」
徐々に顔をずらし、奥へ奥へと侵入すると、鼻っ面に当たる彼女の鼻息が荒くなっていく。
ねっとり絡ませてくる舌、甘酸っぱい唾液…。
そして、俺の行為に敏感に反応してピクンと身体を跳ねさせて、強く強く腰に足を絡ませる。
下着の中で息子が目覚める。
それは川嶋が秘部を押し当ててくるからだ。
と…自分に言い訳してみる。
仕方無いだろ。
プニプニと柔らかくて熱い『川嶋』がグイグイ押し付けられるのだから…。
「んあ…た、たかすくぅんっ…。まだ足りない…よ…。あむっ」
息継ぎしようと口を離すと、川嶋がそう呟いて唇を貪られる。
送られる唾液を啜って、俺も送る。
重ねた唇から彼女がゴクッと音を出して咀嚼する様子が伝わり、俺は発情する。
「くちゅっ!く、うぅん…はっ!ちゅっ!ちゅっ!」
『もっと…もっと頂戴…』
そう催促する様に川嶋が強く吸う。
舌を、唇を…情熱的に求められる。
俺も川嶋が欲しくて互いの舌を探って、弾いて、寄せて…口内を啜る。
それを嬉しそうな喘ぎを洩らして受ける彼女と溶け合う。

143 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:11:23 ID:GAYjDqag
「ん、ふ…ちゅっ!………あ」
離さないとばかりに強く寄せてくる川嶋から唇を離すと、名残惜しそうな声を洩らす。
トロンと蕩けた目で…俺を見て、期待に満ちた様に身体を捩らせるんだ。
それは俺も同様で、背中に手を滑らせて抱き心地の良い川嶋の身体を撫でる。
手の平に吸い付くきめ細かい柔肌。
それを拘束する下着を外そうとまさぐる。
「んふ♪今日はこっち…」
そう言って彼女が俺の右手を取って胸元に誘導する。
フロントホックだったんだ、そりゃあ背中を探っても見付けれねぇや。
人差し指と親指でホックを摘んでグッと内側に寄せる。
そっと指を離すと下着が外れ、胸板に柔らかい胸が当り…密着する。
「高須君、ブラ外すの馴れ過ぎ…」
『妬いちゃう…』
そう最後に呟いて川嶋が手で頬を撫でる。
泰子の下着、いや衣類全般を洗って畳むのに馴れているから、当然の如く構造も知っている訳だ。
川嶋だって、それは知っている。
だけど嫉妬してしまう。そんな姿が凄く可愛いく、いじらしい。
「あ…っん、ん。あ、はぁ」
俺は『妬くなよ』と言う代わりに彼女の胸を手の平の中に収める。

144 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:12:30 ID:GAYjDqag
収まりきらず零れ、マシュマロの様に弾力を返す大きな胸。
その質量を堪能する。
手の平で円を描く様に転がし、指先を軽く食い込ませて揉みしだく。
「っあ…。んくっ!………ふ、ふあぁ…あ」
瞳を閉じた川嶋が甘く啼く。
AVの女優が見せる『演技』なんかでは無く、
本当に気持ち良さそうに、甘く甘く…切ない喘ぎを洩らして…。
俺が川嶋を啼かせている…んだ。
自分が『上手』なんかでは無いと分かってても、目の前で啼く姿を見てしまうと更に息子が張り詰めていく。
この段階で弾けんばかりに硬くなっている。
それを感じたのだろう。川嶋が俺の腰を更に強く引き寄せて、クイックイッと秘部を擦り付けてくれる。
「あ…ふぅ…。んあっ!あ、あぁ…」
硬くなった乳首を捉えて、軽く摘む。
すると熱を帯び始めた身体を密着させて震わせる。
「や、あぁ…っ。あっ!」
摘んだまま優しく引っ張って指の腹で転がす。
背中に動かされた手が俺を掴む。
爪先が少し食い込み、微かに痛みが走る。
それは多分、彼女が蕩け始めたから無意識にしている事。
擦り付ける秘部が敏感な部分に当たり、手の平の中でも愛撫されて欲情しているんだ…。

145 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:13:51 ID:GAYjDqag
凄く柔らかくて気持ち良い…何回揉んでも、そう思ってしまう。
モチモチのプルプル…そんな表現がピッタリな彼女の胸を夢中で揉みほぐす。
指先でピンッと乳首を優しく弾いて、弾いて…続いて親指の腹で転がす。
「は…っ、は…あ。ん、あ……キモチイイよぅ…」
耳元で甘ったるい声で啼き、そう囁かれる。頬に舌を這わせながら…。
「どこがキモチイイんだ?…教えてみろよ」
俺は彼女をイジメてみたくなる。
…恥かしい事を言わせたり、羞恥を煽る様な行いをして可愛い反応を見てみたいのだ。
「あふ…。……おっぱい……んあ」
クスクスと笑いながら川嶋が囁く。
ハアハアと欲情した吐息を俺に吹き掛けながら……。
「それじゃあ分かんねぇよ。ほら…ちゃんと言ってみろ…なっ?」
川嶋は必死な俺の姿を見て、楽しそうに…そして愛しそうに見やって教えてくれる。
「ん…ふぅ…。高須君と触れている所……全部キモチイイよ…」
ああ、やっぱり彼女の方が一枚上手だ。
上手くあしらわれてしまった。
でも…可愛い反応に違いは無い。
川嶋らしさ…が出た答だと思う。
「ん…、ふふ♪んっ…、んあっ…」

146 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:15:06 ID:GAYjDqag
なら、もっと溶かしていけば更に可愛い反応が見れるかもしれない。
だから俺は身体を下にずらしていく。
頭まで掛布団の中に隠れて、彼女の胸に顔を埋める。
大きくて、柔らかくて、暖くて、甘い香りがする川嶋の胸。
呼吸に合わせてフルフルと躍る桃色の乳首。
それを口に含んで、優しく吸う。
舌先で軽くつついた後、小刻みに舐めながら…。
「あ…う、んんっ。は…。あっ!」
犬歯で甘噛みし、軽く引っ張る。
すると川嶋の啼き声が僅かにだけど大きくなる。
やっぱり良いんだ…コレ。
昨夜した時には『痛み』なのか『快感』なのか分からなくて止めちまったけど…。
また一つ分かった。
それが嬉しくて…俺は徐々に強めていく。
「んうっ!は…っう!はっ!あっ!あっ!」
ねっとりと唾液を絡ませながらねぶり、唇で強く揉む。
啄む様に…圧迫し、布団の影から彼女を観察する。
ここから見えるのは彼女が顔を横に向けて、人差し指を噛んで耐える姿…。
でも抑えきれない切なげな艶声と、熱を帯び始めた身体のギャップ。
その仕草が妙に色っぽく、健気で…もっと乱してみたくなる。


147 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:16:11 ID:GAYjDqag
「ひあっ!あっ、あぁっ!!や、た、たかすくぅんっっ!は…っあっっ!!」
次第に俺は気付き始めていた。
川嶋は敏感なんだって…。
あと、物の本に『身体の相性うんねん』とか書いてあったし…。
以外と『相性』が良いのかもな、俺達。
川嶋が俺の愛撫で乱れている姿が自信を付けさせる。
俺は入れ込む、彼女との繋がり…『相性』をより強く結ぶ為に。
「ふっ!ふっ!……あくっ!!うぅっ…ん!!」
最後に一回、強く吸い付いた後、乳首から口を離す。
そして反対の乳首を強くねぶる。
初めは優しく…なんかじゃなく、先程同様に強く激しく。
彼女に聞こえる様にわざと愛撫の音を発てて。
何回も何回も小刻みに乳首を舌で弾いて、時折ねっとりと舌を這わせる。
同時に強弱を付けて吸い、唇で、歯で甘噛みする。
川嶋が俺の頭を掻き抱く。
頭だけじゃない、太股で脇腹を挟んでグッと引き寄せてもいる。
「あっん!!んっ!!んっ…はっ!あ!」
布団の中で濃厚になっていく甘酸っぱい川嶋の匂い。
俺をクラクラさせ、陶酔させる媚薬だ。
川嶋は不思議だ…。この匂いは俺を落着かせてもくれるし、こうやって酔わせもする。

148 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:17:05 ID:GAYjDqag
こんな事を言うと彼女は嫌がるかもしれないけど…。
『母性』と『女』を兼ね合わせて持っているんだな…って。
優しく包んで手を引いてくれる母性。
強く寄せて、全てを受け止めてくれる芯の強い女性。
上手く言い表せないけどさ、普通なら誰だって惚れてしまうだろ。
そんな魅力的な彼女の愛情を一身に受けているのだ俺は。
まだ付き合ってすらいない、気持ちを整理するとか宣ったヘタレな俺なんかに注いでくれている…。
川嶋が言ってたよな。『大河が家族で、実乃梨ちゃんが太陽なら……私は何だろうね?』
みたいな話。
ああ、さっき飯食いながら言ってたんだ。
『女神』だ…。
くっせぇ事言うけど…うん。そうだ。
家族が入り込めない、太陽が差し込まない…そんな部分を見てくれているのは女神…なんだろうな。
「は…あ。高須…くん?どうしたの?」
そう問う彼女の声で俺は我に返る。
愛撫するのを忘れてたみたいだ。
「ん…何でもねぇ。…下着、脱がすぞ」
ともかく、俺は川嶋を悦ばせる事に喜びを感じていた。
そして…甘酸っぱい彼女の匂いも味も欲しくて仕方無い。

149 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:18:17 ID:GAYjDqag
繋がるだけでは物足りない。
彼女の全てを見て、感じて、自分の物にしたい。
そんな感情が芽生えていく。
「うん…。ねぇ高須君、指はいいからさ………舐めてよ。
…亜美ちゃん、高須君に…して貰うの…好きなの。我慢出来ない…」
俺の願いをトレースする様に、おねだりする彼女。
思わず願望を口に出して言ってしまっていたのかと疑ってしまう。
でも心の中で止まってはいたのだろう。
何故なら、そういう時に彼女が紡ぐからかいの言葉とかが無いから…。
「おぅ。じゃあ…」
俺は更に深く布団の中に潜る。
折れてしまうんじゃないかと思ってしまう程に括れた腰、でも貧相という意味では無い。
無駄な肉が無いんだ。
それでいて必要な部分は魅了たっぷりに…。
だから全体的に柔らかい、例えば…。
『ココ』とか…。
彼女の下着に指を掛けて慎重に脱がせる。
それを腰を浮かせて手助けしてくれる彼女の柔らかい尻を撫でながら…。
そう。柔らかい部分…それは下腹部全体。
尻は勿論。太股や……秘部周りの『土手』とかも…。
決して薄くは無い、だが濃くも無い整えられた陰毛に隠された柔肉。

150 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:19:20 ID:GAYjDqag
「ごくっ…」
甘酸っぱい彼女の『雌の匂い』、その生々しさに俺は生唾を飲み込む。
……嫌いじゃない匂い、何より川嶋の匂いだから…好き。
彼女の膝小僧を持って、グッと開きながら少しだけ上に反らせる。
そして膝裏に両腕を差し込み、その状態を維持させて……人差し指で撫でる。
下から上にゆっくり、秘部に沿ってなぞっていく。
「んっ…。はっ…あ」
くちゅ…。
微かに潤っている秘部から聞こえる泣き声…。
熱くてトロトロな『川嶋の涙』
ピクンと腰が震える姿に興奮しながら、俺は顔を埋めていく…。


続く

151 ◆KARsW3gC4M :2009/05/07(木) 23:20:56 ID:GAYjDqag
今回は以上です。
続きが出来たら、またお世話になりに来ます。
では
ノシ
152名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 23:52:56 ID:aPMFcIOk
良いところでGJ!!
153113:2009/05/08(金) 01:07:04 ID:wbD8usyc
先日に書き込みした>>113です。
文才も無く、理解できない点等出てくるかと思われますが作ってみました。

一応、設定はアニメのラス後の話を書いてみました。
もしかしたらストーリー設定等が既出かもしれませんが悪しからず^^;
154その後のとらドラ:2009/05/08(金) 01:09:55 ID:wbD8usyc
「大河、好きだっ!」

 3年の卒業式後、竜児と大河は1年振りの再会をした。
 これはその、1年後の話。
 「高須竜児、汝は逢坂大河を妻とし、生涯愛しみ合う事を誓いますか?」
 「誓います」
 「逢坂大河、汝は高須竜児を夫とし、生涯支え合う事を誓いますか?」
 「はい、誓います」
 そう、今行われている事は婚姻の儀式。竜児と大河の結婚式である。
 この一年、色んなことがあった。

 高校を卒業し、久々の再開をした竜児と大河。
 「大河、もう絶対お前を離したりしないからな」
 「…駄犬の癖に生意気よ、でも私も離したりしない」
 卒業式後、竜児の家で再度約束を交し合い、そして唇を交し合った。
 「…んっ」
 「あらあらぁ、やっちゃん焼けちゃうわぁ」
 「!!」
 「泰子!いつの間に!」
 ジャストタイミングで泰子登場。竜児の母にして、見た目と頭脳は独神(恋ヶ窪ゆり先生31歳)
 に引けをとらないくらい若いパワフルかーちゃんである。
 「…帰ってきたらただいまくらい言えよな」
 竜児は顔を赤らめた。それはもうヤカンが沸騰するくらい赤くなっていた。
 泰子は不思議そうに
 「あらぁ?言ったわよぉ?」
 この台詞。相変わらずの天然だ。
 「やっちゃん、ただいま!」
 大河は泰子に抱きついた。
155その後のとらドラ:2009/05/08(金) 01:10:20 ID:wbD8usyc
 「大河ちゃんおかえり♪」
 「やっちゃん…く、くるしいぃ…」
 「あらやだぁ、ごめんねぇ」
 泰子の豊満な胸に窒息しそうになる大河。
 …これでまた以前のような暮らしが戻ってくるのか。
 …でもまたこいつのことだから食い散らかしたり、身の回りの世話もしなくちゃいけないのだろうか。
 竜児の顔色を喜怒哀楽で現すのであれば、喜→哀→喜→哀→…と変わっていく。
 「りゅーちゃん、変な顔になってるぅ」
 「…相変わらずキモいわね」
 「キモいとか言うな!それに俺の顔は変じゃねぇ!」
 「三白眼の癖に?」
 「うっ…それは言わないでくれ…」
 竜児は思わず涙目になった。それでも本当に落ち込んでいるわけではない。
 相も変わらずの減らず口。どぎつい性格。変わってないな…
 竜児の目が怪しく光る。このまま人を殺すのではないかという目つきに変わってくる。
 でも嬉しいのだ。竜児にとってかけがえのない人との他愛もない会話。
 この一年、どれだけ長かった事か。
 大河が居なくなったあの日から、この日をどれだけ待ち焦がれていたか。
 竜児は嬉しいような恥ずかしいような、そんなキモチでいっぱいになり前髪を触っていた。
 「と、とりあえず、飯でも作るか」
 「さんせーい♪」
 「私、トンカツが食べたい」
 「はいはい、分かりました」
156その後のとらドラ:2009/05/08(金) 01:10:45 ID:wbD8usyc
 竜児はキッチンに向かう。
 冷凍庫にあるトンカツ用の肉を取り出す。だからといって衣が最初から着いている揚げるだけのではなく
 ステーキサイズの肉を凍らせてあるだけの物。
 その肉をレンジで解凍する。
 解凍している間に付け合せのサラダ、皿の上に肉しかないのは寂しいのでニンジンのグラッセとインゲンを軽く塩コショウで炒める。
 解凍が完了したら、今度は卵を掻き混ぜ、パン粉を取り出す。
 一度肉を軽く焼き、その後卵につけ、パン粉を塗して揚げれば完成である。
 「いただきまーす」
 「はいはい、召し上がれ」
 大河が自分の料理を食べている。
 本当に戻ってきたんだと再実感する竜児。
 大河を見ていて思っていた。
 すると
 「変わってない…竜児の味だ…」
 大河の頬から流れる一条の涙。
 「おう!?どうした?」
 「この一年…寂しかった…」
 「大河…俺もだ…」
 抱きしめあう二人。
 大河が大丈夫なのであればいつでも会いに行けた。
 それでも一度決めたら動かない大河の性格は、どうにも卒業するまで我慢しなければ気がすまなかったのだ。
 どれだけ会いたかったのだろう。
 どれほどの寂しさを費やしていたのだろう。
 でもそれは竜児とて同じ事であった。
 大河の事を理解していたから。
 だからこそどこにいるか、どこに住んでいるか聞かなかった。
 大河は竜児を信じている。だからこそ竜児も大河を信じ、1年待っていたのだ。
 互いを抱きしめあう力が強くなり…
 「キッ…キッ…キスシチャイナヨ!」
 「!!」
 インコちゃんからの煽りを受ける。
 「なっ…なんって事を言うの!この不細鳥!」
 大河の睨みにインコちゃんの羽がどんどん無くなって行く。
 「た、大河!お前またインコちゃんを不細工にするつもりか!」
 気づいたときには足の付け根くらいまでしか羽が残っていなかった。
 「あぁ…インコちゃんがぁ…」
 涙目になる竜児。
 「ア…アバ…アバババ…」
 インコちゃんの羽が元に戻ったのは1ヵ月後であった。

 続く
157wbD8usyc:2009/05/08(金) 01:13:43 ID:wbD8usyc
以上となります。
アニメを見た時に、書きたいという思いに駆られっぱなしで作りました。
原作は…6巻までは読んだのですがまだ7巻以降は読んでません;

次に貼り付けられるとしたら、日曜日くらいになるかと…

ではまたのちほど〜
158名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 01:35:28 ID:z0lNKigf
もつかれ
159名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 02:52:38 ID:IqD53ZTD
>>119
GJ!!!
続きまってたぜ
やっぱ、とらチワコンビはいいわー(´∀`*)

ところで、あーみんのキャラソンのyesの歌詞の"君"ってやっぱ竜二?
亜美→竜二の曲なの?
どうしても、君=大河で亜美→大河の曲にしか聞こえないんだがww
君の味方、応援してる、一緒にいる、とか大河に向けての言葉だろ
160名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 19:34:32 ID:jd4v7OSo
>>151
GJ!!
続きが気になるう〜w
161名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 20:37:40 ID:y+zMcMJR
ハッ!?

そろそろ高須棒姉妹の続きが来る気がする……。
162名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 21:13:01 ID:tsFl0P8+
>111
sageろと言われたのにsageない。
無用な改行。
気持ち悪い自分語り。全レス。

今度PC環境でオナニーまき散らす用意できたら、そこから半年ROMれ。
163名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 21:42:42 ID:ryfcvZ1K
アンカもまともに付けられないクズが何言ってんだ。
今スレから、何か変なの沸いたな。
164名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 21:50:40 ID:tsFl0P8+
165名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 21:52:50 ID:dekCzc3U
ID:tsFl0P8+

NG完了っと
166名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:05:41 ID:74R8SUYL
>>162

黙れ、そして腐れ
なんて引用はこいつにはMOTTAINAIか
167名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:17:13 ID:yNjmATZY
大河「あくしゅー!」
168名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:25:26 ID:z6oVFHQu
このカスはかなり前からいるよ
優秀な書き手が登場すると、「キャラ崩壊」だとか
「自分語りウザい」とか、下らないことをグダグダ書いてくる
で、こいつも書き手で、誰だか目星もついてるけどね
169名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:28:51 ID:MXpvq12U
触らない。NGに放り込めばいいだけの話。
170名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:31:32 ID:z6oVFHQu
で、こいつに限らず、この手のカスがタチ悪いのは、
すぐにID変えて自演すること
ほんとに死んでほしいよマジで
171名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:35:28 ID:ryfcvZ1K
>>168
嫉妬かよ。最悪だな。
どうせ、下らない作品しか書いてないんだろうな。
172名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:38:18 ID:z6oVFHQu
噛みつく相手を間違ってるぞ
何なら、いい精神病院を紹介してやるんだがな
173名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:47:10 ID:hU6q7vJB
投下してくれた職人さん達にGodJobと言いたい。
ひとまずおまいらここで区切っとけ。
荒れるのはいやん。
174名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 22:52:56 ID:WUZK4R/C
ほっとけばいいよ
自分の価値を自らとしてるんだから
175名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:04:56 ID:6HS4pv9e
**ドラの続きって投下されてませんでしたか?
教えて厨で申し訳ありませんがどなたかお教え下さい。
176名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:14:11 ID:tsFl0P8+
いや、NGにするのは勝手だけど、sageないとか
(しかも、一度忠告されてる)
内容の優劣以前の問題なんだが。

おまえら、内容が優秀ならそれで良いの?
177名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:17:53 ID:qNND5Ixa
>>175
多分、前々スレ(13皿目)にあったと思う。確かではないが。
見たのは間違いない。まとめ待ちってのもありかと。
178名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:20:13 ID:6HS4pv9e
>>177
ありがとうございます。まとめ待ってみます。
179名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:34:57 ID:6xF7zEMB
>>176
良いに決まってる。
逆に聞くけど、あなたはどっち読みたい?
ついでに言うなら、このスレ流れ早いから、sageようが、ageようが、どっちでも良い。
上の方にあると変なの湧くっていうけど、もう湧いちゃってるから意味ないじゃん?
180名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:36:04 ID:DbiGs/pk
てかこいつマジでこのスレに投下した事のある職人なのか?
目星が付いてるなら教えてくれ、どんな糞作品を投下したのか気になるw
181名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:38:27 ID:ryfcvZ1K
>>172
誤解だ。俺の書き方がまずかった許してくれ。
噛みついてるんじゃなくて、同意の意味で取って欲しい。
182名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:41:52 ID:6xF7zEMB
俺も知りたい。教えて欲しい。すごく気になる。
晒されたら赤っ恥ですねwwww
183名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:45:38 ID:4fExkKlE
しかし外れていたらとても失礼だぞ
184名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:46:17 ID:z6oVFHQu
いくつもコテハン持って、作品投下してっけど、
どれもハチャメチャで落ちがない奴って言えば分かるでしょ

こいつが最悪なのは、自演で自分の作品をヨイショするだけじゃなくて
他者をIDころころ変えて貶めること
185名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:26:57 ID:k0Q/WclY
書き込めるかな
186名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:28:23 ID:k0Q/WclY
おっ、OCN規制解けたみたいだ
>>161
明日、高須棒姉妹の続きを落とします。
187tsFl0P8+:2009/05/09(土) 00:46:20 ID:49gO0Ikj
内容が優秀ならsageなくてもいい。
流れが早いなら、変なの沸いちゃってるならいい。

いや、それはおかしい。と、思うんだが・・・。

自分ではごく普通に散見される不特定多数による
スレ内自治のつもりだったが、俺が特定の「変なの」になるとは
思いもよらなかった。

俺は>111のような双方向のリアクションを望んでる職人は
それこそブログなりHP持って好きなようにやるべきだと
思ってるんだけどね。

読み手書き手スレちゃんとROMってくるわ。

あと俺はまったくもってただの読み手側人間だから
(っていまさら書いても俺に似た思想の書き手がいるみたいだが)
変にまわりに迷惑をかけないでおくれやす。

長文キモい。
188名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:52:41 ID:nu/bvCcc
>>186
キタ ━━━ヽ(´・ω・`)ノ ━━━!!
189名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:09:46 ID:793jT1pP
>>187
sageないことの指摘、あまり自分語りはなるべくしないようにという指摘
普通にどのスレでもよく言われることを指摘してるだけなのに
何故これほど反発されるのか、自分の書き方も自省すべき
何度か言ってても聞かないといって、オナニーだの汚い言い方する必要はない

ただID変えてるだの、職人の自演だの根拠無く言ってる人間も問題
190名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:14:22 ID:5MdWvLMW
自治スレとか議論スレとかいろいろ隔離場あんだろ。まとめてそっちに行けばどうだろう。
191名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:43:46 ID:M6f9Hd6S
最近過疎ってきた気がしてましたが、まだ結構人が来ているようですね。
よかったです^^
一方で、一書き手として、作品投下で盛り上げる事が出来ず、お恥ずかしい
限りでございます。 力不足を痛感致しました。
皆さんにご満足頂けるかわかりませんが、がんばってみます。
192名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:45:38 ID:yUPYgM2X
一気に伸びてたから投下きたと思ったら…
wktk損だぜ
193名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:48:47 ID:1K32RBxN
今更だが、

>>151
GJ&続きマジ待ってます!!
先日は勝手に埋めネタに作品名だしてスンマセンでした!

>>186
( ゚∀゚)o彡゜ 姉妹!姉妹!!
194名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 01:48:57 ID:k0Q/WclY
>>191
誰か知らんけど、アクセス規制で感想を書き込めなかった輩もいますんで。
195名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 03:04:12 ID:os8j+gh9
落ち着いた感じなので、ちょっと投下します。
196勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:04:52 ID:os8j+gh9
「いきなり、お尻っていうのは、どうなのよ?
そりゃあ、好きにして良いよ、って言ったけど…
ちょっと、マニアック過ぎない?
普通、前が先でしょ、常識的に考えて。
ん〜、竜児ってぇ〜実は…かなり変態さん?」
何を言うか、常識的に考えて…変態はお前の方だ。

−遡る事、約一時間。観覧車での、2S会話において、3ドキドキ、2シンクロを修めた俺たちは、
その後の、お楽しみイベントを消化すべく、亜美が言う所の、
『お城みたいな建物』にチェックインした。
「へぇ〜色んなタイプのお部屋があるんだねぇ〜
ね?どれにする?」
ズラ〜っと、提示された写真をみる限り、右から三番目の部屋が、良さげだった。
「その部屋とか、良いんじゃないか?
「ふぅ〜ん、センス良いんじゃん。」
「どうも。インテリアには結構、拘りがあるんだ。時間と…先立つモノさえあれば。
その手の雑誌にだって、目を通してるし。」
「へぇ〜意外。そんな趣味があったんだぁ〜」
「おう。意外ってどういう意味だ?」
「聞きたい?」
「…いや、やっぱりいい。」
−なんていう、他愛も無い会話も、
「………」
「………」
長くは、続かなかった。
部屋に入るなり、亜美は、黙りこくってしまうし、
俺も、情けない事に、沈黙の徒であった。
2人して、ベッドに座って、向かい合う相手の口元を、見ていた。
実際、亜美の目を見ていないから、本当に、亜美が口元を見ていたかどうか、
それは定かでは、無いが、口元に視線を感じていたし、
亜美も、同じく、『何か、喋れよ』と、思っていたのだろうと思う。
「………黙ってないで、何か喋ってよ。」
ほらな、やっぱり。何か、コイツの考えてる事が、だんだん、解る様に…
「………お前こそ。
……ッ!?ッて、ちょ…何すんだよ。」
なってなかった。
「何って…サービスだよ。」
何を思ったか、亜美は俺の腕をひっ掴み、自分の胸へと引き寄せた。
布地越しにさえ、確かに感じる、その未知の感触に対し、
俺の腕は、熱したヤカンに触れた時の様な、無意識的後退を試みた。
だが、亜美は、ものすごい力で、ギリギリと締め上げて、俺の腕を離しはしなかった。
197勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:07:21 ID:os8j+gh9
「で、どうよ?亜美ちゃんの胸は。」
その柔らかさと言ったら、むにゅ、でも、ぐにゅ、でも表現しきれるモノじゃなくて、
言うなれば、もにゅ、そう、もにゅ。
押せば、手がどこまでも埋もれて行くような感覚。
こんなに張り出しているのに、全く、押し返して来ないのである。
そして、この手を焼く様な、高温。
「やわらかくて…熱いな。」
「ふふっ、そりゃあ今、亜美ちゃんすっごくドキドキしてるもん。熱いに決まってるよ。
…ねぇ?服の上からで良いの?直に触れてみたくない?」
そう言うと、亜美は、俺の腕から、手を離し、貸してやったそのテのワンピースをスルスルと脱ぎ捨て、
白と淡いブルーの可愛らしいデザインの下着を露わにした。
ーってか、直だと?直…服越しにさえ、これなのに直だなんて…
やるのか?俺は、ついにやるのか?………よ、よし。やってやろうじゃねぇか…
「こわ〜い顔してるよ?ヤル気満々?嬉しいなぁ〜
じゃあ、下着は…竜児が外してよ。」
「お、おう。」
はぁはぁ…お、落ち着け。これはまだ下着だ、そう、まだ下着。
頑張れ頑張れやる気の問題だやれるやれる自分を信じてお米食べろ熱くなれよ…うおお〜
「ふ〜ん…可愛くないなぁ〜」
「お、おう。って、何が?」
「だってさ…ブラのフック一発で外せちゃったじゃん?
『焦らないで…ココだよ、ココを外すの…ゆっくり、ね?』
ってやるのが、夢だったのに…な〜んか悔しいなぁ〜
てか、ブラ外した事あんの?」
頑張って、外した俺にまさかのダメ出し。知るか、そんなもん。
「ね〜よ。止めた事はあるけど。
ウチの洗濯は、全部、俺の仕事だからな。
畳む時、フック止めなきゃ、だらしねぇだろ?」
「ふ〜ん、そうなんだぁ?」
「と、いうか、返せよ、俺のドキドキを。ムダに緊張して損した。
マネキンにさえドギマギする善良な男児を捕まえて何を言うんだお前は、まったく。」
と、俺は、今度はちゃんと、亜美の目を見て話した。
198勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:07:55 ID:os8j+gh9
「あ、ホ〜ントだぁ。目ぇ逸らしてやんの。ね、ちゃんと見て?」
亜美は俺の頬に両手を添えて、ギギギと、強引に視線を下へと降ろさせた。
突如、視界に入ってきた(実は、さっきから、チラチラ見てたんだが)
ミルク色の肌と、ピンク色の乳首が、幻想的な何かに思えた。
まるで、生きている、というか、胸に人格があるみたいで、変な言い方になるが、乳首と目が合った、そんな気がした。
「そんなに、食い入る様に凝視されちゃったら、亜美ちゃん、恥ずかしぃ〜い〜。
…ふっふ〜ん。見とれちゃった?」
「むっムリヤリな事すんじゃねぇ!!」
首は動かせないので、目だけ亜美の鎖骨辺りに上げつつ、抗議した。
その鎖骨が、また扇情的で…なんなんだよ、もう。
「嬉しいくせにぃ〜顔真っ赤じゃん。」
「うるせぇ。」
頬に添えられた手が今度は、両肩に添えられて、
「ほらほら、リラックス〜リラックス〜肩の力抜いて。」
グイグイと指圧してきた。
痛い、痛いって。逆だ、逆。正面から押すな。
「硬くするのは、ほら、もっと下だよ。」
いやらしい笑みを浮かべつつ、亜美の視線は俺の下腹部へと落とされていた。
「また、下ネタかよ。
お前って…美人の癖に、発想が結構オッサンだよな。」
「えっ…?オッサン?
この亜美ちゃんが?」
「おう。それもハゲでメタボで下卑た感じの。」
「…や、それは言い過ぎだって…
女の子なんて、ホントは皆、こんな感じだって。」
「はいはい。」
「ホントだってば。」
この女は、半裸で何を必死に力説しているのだろうか…
あまりのシュールさに、少しだけ、肩が軽くなった気がした。
相変わらず、亜美の身体は、美し過ぎる造形で、そこにあるのだけれど…
「やっぱ、綺麗だな。彫刻みてぇだ。」
「…日々、磨いてるからね。…好きにしていいよ。
鑑賞用で終わらせたら、MOTTAINAI。でしょ?」
好きに…か。
199勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:08:43 ID:os8j+gh9
全部、欲しいな。
そう思い、まずは全身を抱き寄せようと、腰に手を回した。
その時、豊満な尻の感触を少しは享受した…かもしれない。
だが、それは不可抗力であり、俺はあくまで、腰に手を回したのだ。
しかし、無情にも、冒頭へ、話は繋がるのである。

「まぁ、竜児が、どうしてもこっちが良いなら、あたしは受け入れるよ。
でも、オススメはしないな、そのための器官じゃないからさ。多分、気持ちよく無いよ。」
などと、言いつつ、亜美は背を向けた。
「いや、違うから、何、勘違いしてくれてんだよ。てか、こっち向け。」
「え?何?お尻じゃないの?」
「違うに決まってるだろ!?
いきなり、飛び過ぎだろ、そこは。」
「えぇ〜〜もう、紛らわしいなぁ。」
腰をクネクネさせながら、残念そうな表情をする。
「…もしかして、期待…したのか?」
「え〜まっさかぁ〜。ナイナイ。
そんなアブノーマルなトコ…ある訳ナイって。」
「…うそつけ。演技下手だな。プロなんだろ?」
「う…。そ〜だよ、どんな感じか、興味あるよ。
『もう、後ろじゃないと満足出来ない。』とか雑誌に書いてたのに…
自分でやっても気持ち悪いだけでさ、良く無かったよ…
でもさ、好きな人にやって貰ったら、どうなのか…知りたくなるじゃん。悪いッ!?」
普段…どんな本読んでんだ…コイツは…
いやいや、そうじゃなくて、それも気になるが、今は、そうじゃなくて、
「逆ギレかよ!?
別に悪くねぇよ。無いけど、何で嘘付くんだよ?」
「だって…絶対、引くじゃん?
女の子がお尻とか…絶対、いやらしい子だって思われるじゃん!?
そんなの…ヤだよ…耐えらんない…」
と、半泣きでのたまう亜美。
「…お前の基準がわからん。
それがアウトなら、他にもっとあったろ、アウトが。
別に、今更、引いたりしねぇよ。
エロかろうが何だろうが…返品する気はねぇ。
てか、何が耐えらんない…んだよ?男はそういうの、割と喜ぶんだぞ?」
「嘘…だって、竜児は、特に綺麗好きだから…
そういうの絶対、嫌がると思って…」
「嘘じゃねぇ。そりゃ、不衛生には違い無いが…
汚れたって洗えるんだ、何度だって。綺麗になるんだよ。
それに、俺だって、性欲はある。掃除機じゃねぇんだ。」
200勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:10:40 ID:os8j+gh9
「と、まあ、こんな感じだ。詳しい内容は省かせてもらう。
飲食店で話す様な事じゃねぇしな。
その後は、お前も知ってる通りだよ。
学校サボったのが泰子にバレて大変だった。
お前にも迷惑かけたみたいですまなかった。」
「まぁ、それは良いんだがな…高須よ、お前、人の幼なじみに何て事してくれてるんだ…亜美も亜美だが。」

俺の人生で、忘れられない1日から幾日後の放課後、
珍しく、部活も生徒会活動も休んだ北村と一緒に、毎度お馴染みのスドバに来ていた。
まぁ、俺と色々、話をする為に、わざわざ休んで来たんだろうけど…
むさ苦しくも、男2でスバド。
「細かい事だが、一応、言っておく。
俺の亜美だ。お、れ、の。」
「むぅ。何だ、この負けた感…
別に、亜美が誰と付き合おうが関係は無いが…
高須、今だから言うが、お前は、逢坂か、櫛枝か、と思っていたぞ。」
「…櫛枝については、コメントしないが、何故、大河が出てくるんだ?
アイツの名誉のためにも言っておくが、大河の事は好きとかそんなんじゃねぇ。」
特に北村、お前にだけは勘違いされたままだと困る。とまでは、流石に言えないが。
「ほう。その割には親しげだった様に思うが…
それに、女子を下の名前で呼ぶなんて、周りに勘違いしてくれと言わんばかりだ。」
何だ?今日の北村はやけに噛みついてくるな…
「お前だって、亜美を呼び捨てにしてるじゃないか。」
「幼なじみだからな。お前達は違うだろう?」
「同じ様なモンだろ?家が隣なんだ。
泰子とも仲良いしな。」
「なるほど…じゃあ、これは言わないつもりだったんだが…」
似合わないニヒルな笑みを浮かべるメガネ。
マジで何か様子が変だ…どうしたんだ北村の奴は。
「何だよ?」
「高須と亜美、あれだけ、公然とイチャついてるのに、
周りが、まるで冷やかさないのは、どうしてだと思う?」
201勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:11:33 ID:os8j+gh9
「さぁな。皆、そんなに興味ないんじゃないのか?
というか、別に、公然とイチャついてねぇ。」
「そうか。生徒会に何通か、クレームが届いているんだがな。
『自動販売機が使えません。死ねばいいのに。』とか色々。
新学期初日、お前達が、学校をエスケープした日な、逢坂が暴れたんだよ。
そりゃ大変だったぞ。逢坂が退学にでもなったら、俺は逢坂に対して、お詫びのしようも無いから、
必死で止めようとしたんだが…俺、1人じゃ止められなくてな、
櫛枝と、2人がかりでなんとか止められたんだ。
まぁ、そんな事はどうでも良くて、問題は逢坂が、何故暴れたか、だ。」
『竜児とばかちーの事で余計な詮索はするな。
何か言う奴がいたら、私が、地獄の道連れにしてやる。』
と、大河特有の巻き舌を北村は見事に再現してみせた。
「新学期早々、2人して休めば、そりゃ注目される。
しかも、2人とも席に鞄を置いたままだ。まぁ、それは俺が、生徒会室に一時、保管させてもらったんだが、
まあ、クラスはちょっとした騒ぎになった。
逢坂は、全部理解した上で、無遠慮に騒ぐクラスメートが許せなかったんだろう。
まあ、そういう訳だから、2−Cにおいて、お前と亜美の事は、禁則事項となったんだ。
例外は、亜美と特に仲の良い、木原や香椎が、軽くからかうのが許される位か。」
大河が暴れた?北村の制止も聞かない位?何故だ…何故そこまでしてくれたんだ?俺の…ため?
「まあ、その事はさておき、高須よ。ここ、2、3日、亜美が学校を休んでいるが…
まさか、何か、あったのか?したのか?
俺の目を見て正直に言え。」
「別に。何も無いし、してもない。仕事で海外に出てるんだよ、今。
電話かメールで、連絡はちゃんと取ってるから心配すんな。」
「そうか。お熱い事で何よりだな。聞くんじゃなかった。」
はぁ、と心底気だるい感じで、溜め息をつく。
「北村…疲れてんのか?お前、変だぞ?」
「いいや。疲れてなんかない。
俺は嫉妬してるんだ。」
「嫉妬?」
「ああ、嫉妬だ。
俺は、お前の事が好きだったのに…
それなのに、亜美に取られてしまって、傷ついている。」
……………
「冗談だよ。そこまで露骨に嫌そうな顔する事ないだろう。」
「いや、するだろ普通。
ていうか、お前の冗談は解り難いんだよ。」
202勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:13:56 ID:os8j+gh9
「俺が言うのもなんだが…可愛い事は可愛いからな、亜美は。
親友に先を越されてしまった俺は、なんとなく取り残された感じがして、
ちょっと嫉妬してるってだけだ。」
「…そうか、いや、でも、お前には…」
大河が…危うくそう言いかけて、なんとか飲んだ。
「…いや、何でもない。」
「…何だ?煮え切らない奴だな。
なあ高須?お前、俺の事どう思う?
変な意味じゃない。性格と言うか…人間性の話だ。
好きか嫌いかじゃない。本当にどういう性格の人間だと思う?」
「何だ?いきなり。
北村は、そうだな…真面目で頭も良くてスポーツも万能。そして、生徒会長。じゃないのか?」
「ふむ、なら、その性格が作られた俺だとしたら、お前はどうする?」
「いや、どうもしないが…」
「聞き方が悪かった。
もし、亜美の性格が…いや、亜美はよそう。参考にならん。
そうだな、逢坂と櫛枝のキャラクターが作りもので、
本当の逢坂は、豪快で鮮烈なキャラクターじゃなく、
控えめで悩んだり泣いたりする様な女の子。
櫛枝のポジティブさも実は、ネガティブな影を孕むものだとしたら…どうだ?」
…櫛枝は知らないが、大河は、本当にそういうとこもあるんだけどな…
「大河はさておき、櫛枝は、ちょっと考え難いな。」
「そうか。もし、そうだったらショックを受けるか?」
「いや、ショックは受けないが…
と、言うか何の話だ?これは。」
「あ、あぁ、スマンスマン、ちょっとした心理テストだ。
別に深い意味はない。」
「なくはないだろ…おま−
ピロロロロ〜ン♪ピロロロロ〜ン♪
「おや、携帯鳴ってるんじゃないか?」
「おう。ホントだ。
…亜美からのメールだ。」
「ほう。お熱いな。
良かったら見せてくれ。」
「おう。ほら、別に大した事は書いて無いぞ?」
203勝手にちわドラP:2009/05/09(土) 03:14:24 ID:os8j+gh9
from:あ〜みん
sb:水着買ったよぉ〜☆
添付:
こっちでおニューの水着買っちゃった☆
亜美ちゃんに似合うかなぁ〜どう?↑
修学旅行用なんだけど、ちょっと地味かな?
楽しみだねぇ〜沖縄♪

「あ、添付ピクトは見るなよ?」
他人に見せるには、ちょっと布地が少なすぎる気がする、
後で、そう返信しておこう。
「おぉ、そういえば、もう、修学旅行だな。
楽しみだ、沖縄、青い海。」
「おう。そうだな。確かに楽しみだ。」

この後、北村の様子も普段と変わりなく、俺たちは、修学旅行の話から普通の雑談をし、
適当にコーヒーを飲んで家へ帰った。
この日、北村が漏らした妙な話の事など、修学旅行に行くまで、完全に忘れ去っていた。

つづく
204名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 03:15:00 ID:os8j+gh9
本当は、今回で終わりにする予定だったのですが、
以前から考えていた、『もし、修学旅行が沖縄だったら』を、この際やってしまおうという事で…
例によって伸びます。すみません。
雪山は修羅場でしたが、沖縄はどうなのか。
次回からは『僕が考えた沖縄旅行』です。
設定は引き継ぎますが、ちわPはひとまず完結。ありがとうございました。
205名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 03:28:44 ID:WIGmWQcC
>>汚れたって洗えるんだ、何度だって。綺麗になるんだよ。

名シーン台無しwwあと、大事なとこ端折るなww

北村が哲学しだしたぞww何か、良作の予感。期待してマンスルス―
206名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 03:29:40 ID:M6f9Hd6S
>>204
>乳首と目が合った
この一言に惚れました。 超GJw
207名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 07:28:16 ID:olSujCcK
191 名無しさん@ピンキー [sage] Date:2009/05/09(土) 01:43:46  ID:M6f9Hd6S Be:
    最近過疎ってきた気がしてましたが、まだ結構人が来ているようですね。
    よかったです^^
    一方で、一書き手として、作品投下で盛り上げる事が出来ず、お恥ずかしい
    限りでございます。 力不足を痛感致しました。
    皆さんにご満足頂けるかわかりませんが、がんばってみます。

206 名無しさん@ピンキー [sage] Date:2009/05/09(土) 03:29:40  ID:M6f9Hd6S Be:
    >>204
    >乳首と目が合った
    この一言に惚れました。 超GJw

自演乙
208名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 08:21:35 ID:o7gapYcm
何処が?
209名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 08:21:57 ID:QNdzwwHx
長島
210名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:06:55 ID:6D3U0Are

これより連投します。以前投下した「高須棒姉妹」の続きです。
211名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:07:32 ID:6D3U0Are

−これまでのあらすじ−
エロパロの快感原則の見えざる手に導かれて、川嶋亜美、木原麻耶、香椎奈々子の三人とラブホにインすることになった高須竜児。
三人の若きヴィーナスたちとのアダルトな三輪車の夜が始まる…


竜児がついさっき盛大にぶちまけて、生臭い匂いが充満したままのシャワー室で、三人のナイスバディ軍団はきゃあきゃあ喚きながら、
真っ白なボディソープを互いにドバドバぶっかけ合った。
「そ〜れ、亜美ちゃんのおっぱいにぶっかけ〜」
「いや〜ん」
美しく先の尖った隆起に、まるで精液のようなホワイトリキッドが飛び散って、べとべとに汚してゆく。その悩ましい光景に、竜児は思わず固唾を呑んだ。
「ちょww高須君ったらガン見してるぅ〜」麻耶がはやし立てる。
「あ〜ら、カオ真っ赤だよ、高須君?」悪魔的な笑みを浮かべながら、亜美がバストを手で寄せてうりうりとしてみせる。
「お、お前ら、男子の純情をおちょくんなよな」
「やっだぁ、冗談よ、ジョ・ウ・ダ・ン」つっと指を伸ばし、竜児の唇を押さえる亜美。
「わっぷ、石鹸が口に入った」
「…もう、高須君たら、亜美ちゃんの裸ばっか見て〜」奈々子がぷんすかしながら、その見事に育ったおっぱいをぐっと突き出して挑発する。
いつも清潔で品の良い彼女のイメージからは想像もつかないような、パワフルかつゴージャスなグラマラスボディ。
その魔性の肉体に白色透明の液体が流れるようにまとわり付いて、歳に似合わぬ濃厚な色気をむんむんと放っている。
「うおっ、か、香椎、それ」
「ちょ、奈々子、その胸チョーヤベ〜って」と麻耶。
「うっわ〜、奈々子ったらそれマジエロくね?」と亜美。
「エロイエロい!」
「え〜、エロくないよ〜」奈々子が恥ずかしそうに言う。
(すっげぇエロいんですけど…)と竜児は思った。

彼女たちは、ボディソープを身体じゅうにべたべた塗りたくると、くすくす笑いながら互いに手をつないで、竜児の周りをぐるりと囲んだ。
「…おッホン」
亜美が咳払いすると、
「パンパカパーン! 第一回、ドキッ! モデルだらけのトリプルボディ洗い大会、開催―――!!」
「ひゅーひゅー」
「ポロリもあるでよ〜」
まるでミスコンの司会のときのような亜美のアナウンスに続いて、麻耶がお約束の合いの手を入れると、周りから一斉に、
竜児に向かって自分たちの身体をぎゅうぎゅうと押し付ける。
「そぉーれっ、ウォッシュウォ〜ッシュ!」
「うりゃうりゃ〜」
「ほれほれ、ここか〜、ここがエエのんかぁ〜?」
娘たちは、いるかのようにつるつるした身体じゅうをつかって、竜児の身体をそのすみずみまで丹念に洗い始めた。
「うおっ、ちょ、くすぐってぇ、お前らサービスし過ぎだって」
「なに言ってんのよ、ホントは嬉しいくせにぃ〜」
「うふっ、あそこは正直みたいね」
「いやこれは俺の意思とは関係なく、健全な男子たるもの、当然の生理的反応であってだな…」
「あ〜ら、じゃあ、やめよっか?」
「…いえどうぞ続けてください」
「ふふっ」
肉の林のような3対の脚線美に囲まれて、なんとなく、食虫植物のウツボカズラに捕まって、ゆっくり消化されていくミツバチにでもなったような気分。
(…でもよ、最初から全部丸見えなんだし、ポロリはなくね?)
と、その煽り文句にささやかな疑念が浮かぶ。
212名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:08:08 ID:6D3U0Are

先ほど抜いてもらったばかりとはいえ、そこは若さみなぎる17歳、ぴっちぴちの若い身体にムラムラッときて、すぐに元通りになるマイサン。
きゅっとくびれたトルソーの、へそから股にかけて手を這わせてゆくと、これからの楽しいひとときへの期待が、いやが上にもどんどん高まってゆく。
調子に乗って、硬く勃起したペニスをそれぞれの股間に押し当てていくと、亜美の場合は脚が長すぎてスマタになってしまい、
奈々子には“これはあたしんだ”とばかりに、しっかりと握り締められ、麻耶には「てめぇなにすんだ」と笑いながらぺちんとはたかれた。

「…男の子のお尻って、素敵」ゴツゴツした竜児の尻を撫で回しながら、奈々子が言った。
まるでナイフで削ぎ落としたような、その鋭いヒップラインに、彼女たちの話題が集中する。
「メンズアンダーウェア専門で、ヒップだけのモデルってのも、いいかもしれないわね」亜美が感心して言った。
「なんだよそりゃ」
「それを言うなら、やっぱAV男優じゃない?」と麻耶。
「あ〜、言えてる言えてる」と奈々子。
「…お前らなぁ」
「ねぇねぇ、まるおのお尻も、こんなに格好いいのかなぁ?」
自分自身、引き締まって、まるで第二次性徴前のようなお尻をした麻耶が言う。
竜児は、(いいケツの持ち主って、ひょっとして、おんなじようにいいケツした相手に惹かれるのかなぁ)などと思いつつ、
「あいつのほうがもっと筋肉質で締まってるぜ」と答えた。
「え〜そうなんだ〜 なんか嬉しーな」と麻耶。
(そうか嬉しいのか)と竜児は思った。
「あたしは、高須君のお尻のほうが好きよ」そう言って、いきなり亜美がキスしてきた。
ファッション業界屈指の美貌に、濡れた髪が悩ましくへばりついている。ぴんと跳ねた髪の先から水滴が滴り落ちるのが見えた。
「高須君、あたしにもキスして」続いて奈々子が求めてきた。
唇が触れ合ったとき、そのはしに小さなホクロがちらっと見えた。デカい乳房が竜児の胸にぐっと押しつけられ、吸い付くように形を変えた。
最後に、淡い金色の髪の毛をびしょびしょに濡らせて焦げ茶色にした麻耶が、ほっそりとした肢体を寄せてきて、おずおずとキスしてきた。
だんだんと荒くなってゆく四人の息づかいと、お互いをまさぐり合うかすかな音だけが、狭いシャワー室の中にこもって聞こえる。


シャワーから出てきて、みんなでわいわいはしゃぎながら、お互いの身体を拭きっこする。
薄暗い室内で、足元の間接照明に照らされて影のないピンク色に染め上がった裸体は、まるで夢の中のように現実感を失ってみえた。
蜜のようにかぐわしい乙女の柔肌をタオルごしに堪能していると、
「でえいっ!!」
ふざけた亜美にいきなり、まわし蹴りを喰らった。
「おわっ!!」
その一撃をみぞおちにまともに喰らい、さながらワイヤーアクションのようにぼぉーんと宙を舞い、ベッドの上にすっ転がる。
しかし、先ほどのゴージャスなサービスの余韻に浸っていたせいか、派手な視覚効果の割には、あまり痛みは感じられなかった。
「あっ痛ぅー…」
蹴られた腹をさすりながら、それでもまだビンビンに勃起したままの息子を見て思った。
(今の一撃、もし急所に喰らってたらヤバかった…)
「きゃははっ、なに今、亜美ちゃん足で蹴ったの?」木原が手をぱちぱち叩いて喜ぶ。
「なんか今、すっげぇ飛んだんですけど?」と奈々子もくすくす笑っている。
「いってぇな、何すんだよ川嶋」
しかし、おっ立てたチンコをぶらぶらさせていては怒ってみせるのも難しかった。
「ちょっと蹴られたくらい何よ。いいじゃん、気持ち良いこといっぱいしてもらったんだし」
シャワーを浴びたまんまの姿にタオルを首にかけただけの亜美が、腰に手を当てて見事なモデル立ちをして言った。
めまいがするほど長く伸びた脚と、高く切れ上がった股を隠そうともせず、まるで銭湯の女湯にでもいるかのように堂々としている。
下半身のラインを誇示するかのような大胆なポーズを見ながら、
(…なんか『ルパン三世 死の翼アルバトロス』の峰不二子みたいで、イカしてんじゃん)と竜児は思った。
213名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:09:09 ID:6D3U0Are

亜美はベッドの上の哀れな獲物を見下ろして、
「そんじゃ、まず、あたしからでいい? …さぁ〜て、高須君の初物いただいちゃおっかな〜」
そう言って、自分の言葉に思わず頬を赤らめた。
(…つーか、そこで恥ずかしがるくらいなら、まず先に前を隠せよ!!)と竜児は心の中で突っ込んだ。
「い〜んじゃね? 亜美ちゃんが言いだしっぺなんだし」
同じようにお股全開で、ふんぞり返っている麻耶が言う。
(麻耶ちゃん、…あんた、北村よりよっぽど堂々としてるぜ…)と竜児は感心した。
「…ていうか、それを言ったら、あたしたちみんな初物じゃないの?」
やっぱり何も隠してないというか、わざわざ両手を背中で組んでいるもんだから、胸もお股もぜーんぶ丸見えになっちゃってる奈々子が突っ込む。
三人とも、今日の撮影にそなえて綺麗にムダ毛を処理していた。まるでローティーンのようにつるつるの股を眺めていると、竜児はなんだか微笑ましい気分になった。
「まぁ、それもそうか」
そう言いながら亜美は、缶チューハイを開け、景気付けにグビグビやり始めた。その美しい喉元が上下に動くさまに思わず見惚れてしまう。

(女の子の身体って、…どうしてこんなに綺麗なんだろう)

竜児のほうも、こうなったら彼女たちとのひとときのスキンシップを心ゆくまでエンジョイしてやろうという気になっていた。
いわゆる不純異性交遊というものに少なからず抵抗を感じていた竜児だったが、さっきシャワー室でしてもらったエッチなサービスの天にも昇る気持ち良さのあとでは、
そんな硬派な自制心はどこかに吹き飛んでしまっていた。
他のクラスメイトには内緒で、彼女たちと男女の関係になってしまうのがなんとな〜くうしろめたかったり、この関係を、これからもずーっと内緒にしてゆくのが、
これまた愉快でたまらなかったり。

(でも… 誰かとヤッてる最中、最初から最後まで、他の二人にじっとみられてるってーのも… いくら友達っていっても、ちょっと恥ずかしいよなぁ…)

(…ていうかよくよく考えたら、これって三股じゃねーか。二股よりもっと悪い。…いや、そもそもまだ、三人の誰とも付き合ってるわけじゃないから、正確には三股って
ことにはならねーんだろうけど、だったら、これって一体…)

麻耶がバッグから煙草の箱を取り出して封を切り、口に一本咥えた。
「あたしさ〜、いっぺんフェラチオってやってみたいんだけど」
「え…?」奈々子が目を丸くする。
(え、女の子が喫煙!? …け、けしからん!)びっくりする竜児だったが、しかし、パンツを脱いでいる手前、偉そうに注意もできない。
「麻耶って煙草吸うんだ?」亜美も驚いた様子で言った。
(そう言うお前だって、さっきから思いっきりチューハイかっくらってんじゃね〜かよ…)と竜児は思った。
「いや、マジでこれが初めて」
そう言いながら火をつける麻耶。煙を吸い込まずに、口の中だけですぱすぱ吹かしている。
「な〜んだ。…それ、あたしにも一本くれ」
「あたしも〜」
結局、三人ともぷかぷかやり始めた。
(あそこがヤニ臭くなるじゃねーかよ…)と思う竜児だったが、黙っていた。
「そんでさ、前もってこれ吸ってたら味が麻痺して、精子の苦いのがマイルドになるかな〜っなんて思って」
「ね〜よ」亜美がゲーッとなる。
「誰が言ったの、そんなの」と、すぱすぱしながら奈々子。
「あたしが勝手に考えた」
「それってさ〜麻耶… ひょっとして、高須君は練習台?」亜美が意地悪っぽく聞く。
「まぁそんなとこ… ごほっげほっ」
咳き込む麻耶を見て、亜美と奈々子はクスクスと笑う。
「練習台ねえ…」
(…麻耶ちゃんのことだから、さっき彼を手でイカせたときの反応が面白くって、もっと色々やってみたくなったんじゃないの?)
先ほどの竜児のアクメ顔を思い出し、奈々子は微笑んだ。
214名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:10:01 ID:6D3U0Are

「まっ、いいけどさ〜、…本番はこれからなんだから、噛んだりしちゃ駄目よ?」と亜美がクギをさす。
「げほっ」むせながら頷く。
「高須君はどうする? …祐作の代わりに練習台になってあげる?」ベッドのほうを向いて、亜美が言った。
「…おっ」
「?」
「…お、おな」
「ま〜たインコちゃんかよ… で、オナニーがどうかした?」と亜美。
「…おなが」
「おなかが痛いの?」と奈々子。
「…おながいします」
「正直でよろしい」

キュートなつり目を好奇心にキラキラさせながら、竜児の足をがばっと大きく開く。
「じゃあ高須君、やらせていただきま〜す」
「…うっ」
麻耶のやわらかい手に触れられて、さっきのシャワー室での目の眩むような快感がフラッシュバックしてきて、ぞわぞわっとする。
普段から北村のことで相談を吹っかけてきては、ボディタッチしてくることもあって、その手のぬくもりは竜児にとってはお馴染みだ。
本人は無意識にやっているのだろうが、こんな美少女にべったらべったらされるというのは、多感な男子高校生にとってなかなか素晴らしい体験であり、
世の大人たちがキャバクラにハマる気持ちが竜児にもなんとなく分かった。
ピンク色に照らし出された少女独特の華奢で均整のとれた身体を見ながら、これでもうちょっと言葉遣いが可愛ければ、美人度がさらに3割はアップするだろうにと、
いつもながらにちょっぴり残念な竜児であった。
亀頭の先にちゅっと口付けしながら、
「なんかヘンな感じだよね… 高須君とこんなことするなんて… あたし思ってなかった」
「俺もだよ」
自分がこんな風に、付き合ってもいない相手と愛を交わすということが、竜児も信じられない。でも、別にそれがいけないことだとも思わなかった。
麻耶の振る舞いには不思議といやらしさが感じられず、行為のすみずみに親しみがこもっていて、まるで教室でダベッているような大らかさがあった。
(能登、悪りぃな… そっと扱うから許してくれ)
唾液に濡れた亀頭を、鼻息が優しく撫でる。
ペニスが温かい肉袋に包まれ、奥まで呑み込むように吸い込まれた。

「んぐっ… はむっ… ふむっ…」
やわらかな乳房が竜児の腿にぺちぺちと当たる。
亜麻色の髪がゆさゆさとリズミカルに揺れ、ふわふわと股に降りかかるのが竜児にはこそばゆい。甘くくすぐったい髪の匂いが漂ってくる。
(なんて気持ちいいんだ…)
自分の上で揺れる金髪を見ながら、竜児はふと、夏に学校のプールで溺れて助けられたときに、大河が自分の上に馬乗りになっていたことを思い出す。
遥かに遠い夏の情景は、すべすべした肌の感触や眩しい日差し、口の中に広がるカルキの味といったさまざまな記憶を竜児に思い出させた。
「んっ… んっ… くっ…」
今、竜児の腰に顔をうずめて激しく頭を上下させている少女は、あのときの大河の手足をぐっと伸ばして、小さなお尻はそのままに、胸だけばいーんと
増量したようなナイスバディ。
その細く引き締まった肉体をバネのように利かせながら、好奇心旺盛な唇で竜児自身を大胆にむさぼり、ピッチや強弱を変えて攻め立てていく。
竜児は全身の力を抜いてリラックスして、彼女に身をゆだねた。
腰の奥がむずむずするような感じがして、だんだんと理性が麻痺していくのがわかる。
記憶の中の大河と、目の前の麻耶の姿がゆっくりと混ざり合ってゆき、今はいつか、ここはどこか、はっきりと分からなくなる。

「高須君、どう? 気持ち良い?」
そう言うと、麻耶は高須棒をいったん口から放して、舌先でもてあそぶように亀頭をれろれろとねぶりはじめた。その言葉にようやく我にかえる。
「あぁ、凄く気持ちいいよ、…麻耶ちゃん」
親しみを込めて、下の名で呼んだ。
215名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:10:53 ID:6D3U0Are

窓際のテーブルセットに座った亜美と奈々子の二人は、ベッドで奉仕する麻耶を眺めながら、ぺちゃくちゃとおしゃべりしている。
四つん這いになって、こっちにお尻を向けているせいで、麻耶のつぼみのような性器があらわになっていた。
「麻耶ちゃ〜ん、写メ撮っていいっスか〜?」奈々子が友人の恥ずかしい部分に携帯を向ける。
「ひゃめろ〜」高須棒から口を離さずに麻耶が言った。
「ちょww誰に送るんだよ」と亜美。
「いやちょっと能登君に」と奈々子。
「ブハッ! …だめだだめだ」ウケながらも亜美が制止。
「じゃあ北村君に」と奈々子。
「ならいい」と麻耶。
「よくねぇったら」あきれながら亜美が携帯を取り上げる。

友人のあられもない姿を見せ付けられて、二人の話も自然とあけっぴろげなものになっていった。
「…じゃあ、亜美ちゃんは、ありのままの自分を受け入れてもらって、それで彼のことが気になりだしたんだ」
竜児の『昇り龍』Tシャツを股に挟み、その匂いをくんかくんかと嗅ぎながら奈々子が言った。
「ん〜、それもあるけど」
奈々子の隣りで、長い脚をびしっと組んでエマニエル夫人のポーズで座っている亜美が言う。
「身の回りをきれいに整理整頓してるトコとか、ポイント高いかな〜」
「ふんふん」相槌を打つ奈々子。
「そう、たとえば、奈々子がファッションモデルやってて、スタジオで撮られてるとして」
「ふんふん」
「撮影中にさー、なにかの備品が要るってなったときに、カメラマンのバックの中がもうぐっちゃぐちゃで、あせって中ひっかき回してあっちこっち探してるのと、
バッグの中がきれいに整頓されてて、探してるモノがパッと一発で出てくるのとでは、撮られてるこっちも、なんかノリが違うっしょ〜?」
「あ〜、それ、分かる分かる」
豊満な肉体にTシャツを摺り付けながら一人悦に入っている奈々子。そんな彼女を見ながら竜児は思った。…臭いフェチにも程がありますよ香椎さん…
「あたしもさ〜、今日撮影されてて思ったけど、撮られる快感って、凄いよね」
「うん」
「もしね、カメラで撮ってくれてるのが高須君でね」
「お〜」
「あの射るような鋭い目つきでファインダーごしに、じっと見つめられているとしたら、亜美ちゃんはどう?」
「そりゃ〜もう、シャッター音がパシャッと」
「パシャッと」
「…鳴った瞬間、もうイキまくり」
「濡れちゃうよね、やっぱ」
「ひょっほっほっ、たまんね〜なぁオイ!!」
「だよね〜」
オバサンのようにはしゃぐ亜美と奈々子。ふと、廊下のほうから、他の客のかすかな話し声が聞こえて、はっと黙り込む。そして、クスクス笑いながら乾杯する。
缶チューハイをグビグビやる二人を見ながら、竜児は、自分を咥えこんだ麻耶の動きと、彼女たちの喉の動きが、なんとなくシンクロしているような気がした。

いかにも非日常的に、あざとく演出された大人の宿泊施設の一室で、二人の女の子、しかも、二人とも自分に対して少なからず好意を抱いてくれている…
…そんな子たちの前で、平然と別の女の子に口で奉仕されているなんて、なんか俺、もう人としてだめだと竜児は思った。
216名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:11:36 ID:6D3U0Are

「たひゃすくん、ひつでもらしていいよ」
高須棒にむしゃぶりついている麻耶が、くぐもった声で言った。
快感のあまり、全身がざわざわと総毛立ってくる。喉がカラカラに渇き、両足がぴんと突っ張る。
「麻耶ちゃん、口を離してくれ、…もう、出ちまうッ」
言葉とは裏腹に、同級生の喉の奥深くまでペニスを突き込むように、繰り返し腰を打ちつける。
ふっと肉棒を口から離し、亀頭をちゅうちゅう吸いながら、
「いいよ、…まやのくちのなかにだして」
そう言うと麻耶は、再びぐっと深く咥え込み、きゅうぅぅ、と何度もバキュームしてきた。
潮のように高まってくる射精感。彼女の頭に伸ばした手で、その動きを制しようとするが、舌の動きまでは止められなかった。
「うぅっ、まっ、まやちゃん、俺、もう…」
咥えたまま、両手で彼の腰をしっかり抱え込んで、そのまま放たれるのを待った。
竜児の腰の動きがいっそう激しくなった。
「…でっ、出るっ!」
そのまま麻耶の喉の奥に向かって突き込みながら、ありったけ射精した。
激しく腰が突き出され、腹筋が大きく痙攣をしたかと思うと、そのままぐったりとなった。
『やったぁ〜〜!』テーブルセットの二人が歓声を挙げる。

「んぐっ!?」
気の強そうなつり目がぱちくりして、でんぐり返った。
「んんんんんん〜〜〜!!!」
口を押さえてベッドから飛び降りるやいなや、脱兎の勢いでシャワー室にばたばたと駆け込んでいく。
「うっげぇ〜、なにこれ、にっがぁ〜い」
ガラガラガラ〜、ペッ!! とうがいをしている麻耶を見ながら、大笑いする他の二人。

よろよろとシャワー室から出てきた麻耶が涙目で言った。
「あ〜、…あれをごっくんするのは無理っス、絶対無理っス。マジで勘弁して欲しいっス」
「ご免な麻耶ちゃん、だって、『くちのなかにだして』って言ったから…」
「あ、いえいえ、どうぞ気にしないで」健気に笑ってみせる麻耶。
「でも祐作のなら呑むんでしょ?」と亜美。
「ゔっ、それは…」
(いくらまるおのでも、こればっかは無理かもしんねぇ)と麻耶は思った。
(そっか、やっぱ苦いんだアレ)と亜美は思った。
(…高須君のだったら、むしろご褒美です)と奈々子は思った。


麻耶とチェンジした亜美が、濡れたタオルで竜児のペニスをいとおしそうに拭ってくれる。
(あたし、これがずっと欲しかったんだ… やっと、触らせてもらえるんだね…)
ぱちん、と避妊具をハメた。

「えぇっとぉ〜… そのぅ…」
竜児と正面から見つめ合いながら、亜美は何を言っていいのか分からない。
いつ、如何なるときも相手を魅了することができる彼女の演技の才能をもってしても、初めてのセックス、しかも意中の男が相手とあっては、いつものように
如才なく振舞うことが出来ずにいた。
クラスのムードメーカーとはいえ、会話をつなげていくことすらぎこちない。うまく雰囲気を盛り上げて相手を手玉にとってゆくことなど、とうてい無理だった。
緊張のあまり、落ち着かない表情になる亜美。
217名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:12:43 ID:6D3U0Are

(…こいつ、アガッてんのか?)
ガチガチになった亜美に、いつものサービス精神がむくむくと頭をもたげてくる。
(それに、初めてって言ってたし、…すぐ挿れちまったら、なんかMOTTAINAIしな…)
「亜美…」
「うん?」いきなり下の名前で呼ばれて、当惑しながらも微笑む。
「疲れてる?」体を撫でながら聞く。
「え?」
「疲れてるよな、亜美?」肩甲骨のしたから割れた背中にかけて指でなぞっていく。
「…うん、まあ」
「マッサージさせてくれ」
「は?」
「だから、川嶋さんにですね、ちょっとエッチなマッサージを」
「なにそれ。…ひょっとして、プロレス? だったらまた次の機会に…」
ここまで来ておいて、またシカトされるのだろうか。
「いや、その、…ヤる前にさ、お前の身体を頭のてっぺんから足のつま先まで、じっくりとすみずみまで舐めまわすようにだな…」
「た、高須君?」なにか変わった性癖の持ち主だったのだろうかと、不安になる亜美。
「だから、つまり、…大橋高男子の憧れの的であるお前の身体を、心ゆくまでナデナデしてみたいんだよ」
「それはいいけど… ちゃんと、してくれるんだよね?」
「もちろんさ」

亜美の腿を長い指で優しく掴むと、一日の立ち仕事のせいか、筋肉がパンパンに張っているのがわかる。
(…モデルって肉体労働だよなぁ…)竜児は思った。
手のひらで押すようにして撫でさすっていくと、凝りに凝っていた筋肉がとろけるように柔らかくなっていく。
「うん… 気持ちいい…」
あたたかいミルクを飲むようにリラックスして、だんだんと身体から力が抜けていく。

「亜美、…お前、ホントに凄ぇ身体してんな…」
「うふっ、嬉しい…」
すらりと伸びた骨格に、肉食獣のようになめらかな筋肉がついている。どこから見ても美しい、完璧な肉体だった。
しかし竜児にとって、自分に全てを差し出しているその姿は、欲望の対象というよりは、大事な友達だった。
美しい友への尊敬と親しみの念を込めて、ボディラインをなぞるように身体のすみずみまで丹念に揉みほぐしてゆく。
肩から肘、手首。そして股、ひざ、足首。それぞれの関節をひねり、周りの筋肉を伸ばす。
足裏の土踏まずに、肘を押し当ててぐりぐりっとすると、嬉しそうな悲鳴が挙がった。
「ちょ、痛いわよ」
「でも気持ちいいだろ?」
「…うん」
顔全体を両手で包み込むようにして、表情をつくる筋肉を解きほぐし、そのまま、長い指を首すじから胸元までゆっくりと這わせる。
紡錘型の乳房をぐいっと掴み、その下を走る胸の筋肉と一緒に、むにゅむにゅとこねくり回す。
「あぁ…」
初めて味わう肉の悦びに、生きたマネキンのように美しい裸体がぞくぞくと快感にうち震える。
あちこちに初々しさの残る少女の肢体が次第にその表情を変えていき、官能的な女の色香を放ち始める。
目の前の肉体が快楽のうねりに呑み込まれてゆくさまに竜児は魅せられる。
さっき麻耶に2回続けてヌイてもらっていなければ、我を忘れてむしゃぶりついていたことだろう。
悩ましい流線型がみせる変化を、まるでピアノの調律師のように注意深く観察する。
ピンク色の乳首にそっと唇を近づけ、ついばむように優しく噛んだ。
「ふぁ… あぁん」
背筋が震えるほどの快感に、亜美の眉根がつっと寄せられ、細いあごがわななくように反らされる。
細くくびれたウエストを左右から挟んで、ぐいぐいと絞るようにマッサージしてゆく。
竜児は、じっとりと湿ってきた肌に顔を近づけて、毛穴から滲み出してきた汗を舐めとった。舌の上でワインを転がすように、じっくりと味わう。
(…これが、亜美の味…)
まろやかな味わいのなかに発情した女のフェロモンが感じられた。
218名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:18:42 ID:6D3U0Are

「たか…す…くん」
囁くように名前を呼ばれて、竜児が見上げると、どーんと張り出した二つの乳房の向こうに、亜美のせつなそうな表情があった。
「…すぐには挿れないよ」
涙を滲ませた大きな瞳に吸い込まれそうになりながら、竜児は言った。
(まだだ…)
下腹部を這っていた唇が、ゆっくりと下へ降りて行き、股間にキスの雨を降らせる。
(もっとだ、もっと亜美を味わっていたい)
秘部を縁取るひだに沿って舌を這わせてゆく。特有の酸性の匂いが、つんと鼻をついた。
「ひあっ、うあぁっ」
亜美の下半身に甘美な衝撃が走った。僅かに残った、なけなしの理性が容赦なく削り取られて行く。
豊満なバストがぶるぶると震え、濡れ羽色の髪が流れるように激しく揺れた。
「亜美、好きだ…」
愛している、とは言えなかった。このあとすぐ、他の二人も抱くことになるから。
亜美が激しくいやいやをしながら喘ぐように答える。
「好きッ高須君、大好きッ」
こりこりっとした陰核を唇で優しく噛むと、竜児の目の前で腹筋が絞られるようにうねり、長い脚が伸び上がるようにぴんと突っ張った。
ダブルベッドのスプリングが激しく軋む。激しく跳ね上がる身体の上で、荒波に翻弄されるボートのように揺さぶられる。
太腿を両肩に乗せて、舌を使って彼女の性器を激しくこね回す。
「たかすくん… あっ、たし… もうっ」
亜美の身体がびくびくと痙攣する。
「も、もう、イッちゃう〜」
涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにして、亜美は絶頂に達した。


二人の同級生は、まるで痺れたように息を呑んで、ベッドの上の行為を見つめていた。

(亜美ちゃん、前戯でイカされちゃった… 高須君ってマジでチョーテクニシャンじゃん…)
まるで人気AV男優のように、手と舌だけを使って友人を手際よく絶頂へ導いた竜児を、麻耶は熱い眼差しで見つめていた。
ついさっき、口いっぱいに頬張った彼のペニスのつるつるした感触と、勢いよく放たれた精液の苦い味を思い出す。
(…もうすぐ、あたしも、あんな風にイカされちゃうんだ…)
ぐったりした亜美を見つめる彼の目には、麻耶がちょっぴり苦手な、あのいつもの鋭い眼光は影を潜め、穏やかで包み込むような優しい表情が浮かんでいる。
友人の身体をいとおしむように撫でる彼の手を見ながら、あの長い指で自分もうんと可愛がってもらえると思うと、じんとして濡れてしまった。
(これから、まるおの親友と、セックスするんだ)
それが祐作への当てつけなのか、自分への罰なのか、自分でもよく分からなかった。

(高須君ったら、あんなに私の身体に触れてくれたのに、ひどいよ…)
お互いすべてを脱ぎ去って、シャワーを浴びながら身体をくっつけ合い、じゃれあったのもつかの間、ずっと想い続けてきた相手が美しい友人と愛し合うところを
目の前でたっぷりと見せ付けられて、最初から分かっていたとはいえ、奈々子の乙女心はちくちくと痛んだ。
手が無意識に動いて、さっき彼がしたように豊満な胸を揉みしだく。真っ白い肌が、ほのかに桜色に色づいてゆく。
…見た目のスタイルの良さでは到底敵わない。でも、女っぽい体つきや抱き心地のよさでは、負けてないはずだ。
奈々子は、自分がどれくらい女として彼を楽しませられるかということを、亜美に見せつけてやりたかった。


                                 続きます
219名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 11:04:06 ID:tIU5/C68
GJ!続き楽しみにしています
220名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 11:18:13 ID:k57hZ3yr
スケベ
221名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 11:27:11 ID:VrdZ3I8Y
GJ
(;´Д`)ハァハァ
222名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 11:34:40 ID:olSujCcK
Gj!
私にゃ、こういうエロスは到底書けない。こう見ると、一行ごとの改行って不要だなって思うよ。
上の方で、改行がどうしたとか、下らないカスがいたけど、別段、改行の有無は作品の良否を左右しないことが、この作品ではっきりした

223名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:11:09 ID:8KxpL1WZ
ハーレムGJ!!!
エロ描写も素晴らしいのですが、最中のそれぞれの心情描写も
光りますね。続きが楽しみです!!
224名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:26:45 ID:rK+Zhoo8
「伝えたい言葉」といい「高須棒姉妹」といい、何たるエロさw
GJ!GJ!
225名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:27:44 ID:793jT1pP
シュチュエーションは無茶苦茶なのに、納得のエロさと雰囲気
226名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:36:45 ID:QNdzwwHx
驚きの色気
227名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:43:05 ID:E440lPgs
この勢いでななこいの新作とかこねーかな
228名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 17:01:31 ID:1K32RBxN
>>218
GJ!!
ハーレムたまらんw待ってます!
229名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 18:21:25 ID:793jT1pP
なんかここのハーレムもの見てるせいで、竜児の三年時のバレンタインは
ギャルゲのヒロイン全員同時攻略時のような絵しか思い浮かばんな
230名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 18:22:50 ID:nu/bvCcc
高 須 棒 姉 妹

エロ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─イ !!!
231名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 19:13:49 ID:IYQU9uZk
gj

>>222
いらんのは無意味で冗長な改行な。
議論スレとか一読をおすすめする。
232名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:17:08 ID:2DNilP0J
けしからん!
もっとやれw
233名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:40:15 ID:XDwHfoYl
寸止め……だと……?


続き!続き!
234名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 21:52:13 ID:VrdZ3I8Y
今回の贈りたい言葉といい高須棒姉妹といい

 寸 止 め 上 手 w

風邪ひいちゃうどころではありませんwww
235名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:24:46 ID:PdYnOTJc
駄作に3レスばかりお借りします。
習作と思ってもらえると助かります。

【タイトル】イイコト

【注意】
・時間はアニメ後の高校3年生あたりです
・純愛好き、大河好き、竜児好きは見ない方がいいです
・デレはありません。
・組み合わせは敢えて秘密で。
236名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:26:12 ID:PdYnOTJc
「んふっ・・・」

声にならない声が静かな教室に響く。
一瞬、自分の身に何が起こったのかが理解出来ない。
何か柔らかい物が触れたような感覚と、込み上げてくる熱い思い。
そして触れたはずの物体は離れていく。
何が起きたのかわからない?いや、わかってる。わかってはいる。


――彼の唇が私の唇に触れたんだ――


その事実を認めると、彼の視線が急に私へ羞恥を促す。
にもかかわらず自然と笑顔になるのは何故だろう。

決して短くない時間、私はそれを望み求め続けていた。
思い、焦がれ、渇望し、時に涙した。
そして今、それを得ることが出来た。その喜びは何物にも代え難い。
それでもその直後には「もっと、もっと」と求めてしまう自分がいる。

そんな事を思いながら再度唇をねだると、彼は私の口内に舌を潜り込ませてくる。
私を強く求めてくれているようでただ素直に嬉しい。
彼がこんなにストレートに、愚直に、私を求めてくれる事はそう無かったから。
私と彼との間でそれは致し方の無い事。
でも、嬉しいものは嬉しい。それは否定のし難い事実。
237名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:27:12 ID:PdYnOTJc
その喜びに一人浸っている束の間に、今度は熱い接吻と共に私の身体へ腕をからめてくる。
腕に、お尻に、背中に、首筋に。
それはゾクゾクという感覚と共に、私の身体を支える力を奪っていく。
私はたまらず背後の壁へ崩れかかる。
彼は追い討ちを掛けるかのように両の肘で私の頭を柔らかく挟み込む。

後ろは壁。横は腕。そして眼前には愛しの三白眼。

逃げ場など、もう無い。
当然、その先が幸せであるとわかっているので逃げる気も起らない。
さて今度はどのように私を料理してくれるのかしら・・・。

そう思った次の瞬間、彼は本当の意味でのフレンチキスと共に、スッっと私から距離を取る。
何故?と一瞬いぶかしむ私。

「悪い。夕飯の買い出しがあるからそろそろ帰るな」

彼はそう言って、申し訳なさそうにそそくさと帰っていってしまった。
私の気持ちを置き去りにして。
238名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:28:13 ID:PdYnOTJc
教室に残されたのは私一人。

ちょっとガッカリ。いや、結構かな。
それでも、その先を期待させといて酷いな、とは思わない。
今はこれだけで十分幸せだったから。
今日はこれで満足しなきゃね、と自分に言い聞かせる。

そして私は、彼の帰る先に思いを馳せた。
そこは彼のお母様と、もう一人のいる場所。
私の立ち入る隙間など無い。

初めからわかっていた。全てが満たされる恋ではないことを。
人に他言することの出来ない恋であることを。
そう、それはわかっていた。だから私は覚悟を決めた。

心が寂しい時は、彼の唇の感触に思いを寄せて紛わせよう。
身体が寂しい時は、彼の指が私の胸を鳴らす事を思い出して身体を鎮めよう。
そうやって足りないものを補っていけば、私の孤独なんて消えてしまうはず。

いつか、いつか・・・。
そうやって淡い期待を抱きながら、この胸を焦がす日々を送っていこう。
そうすればきっと、私にもイイコトが舞い降りてくるだろうから。



そんなことを思いながら、奈々子は帰宅の途についた。
239名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:28:55 ID:PdYnOTJc
以上です。

単に奈々子を登場させたかっただけです。
失礼しました。。。
240名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:34:40 ID:0cZWOn9m
GJ
だが最後の一行まであーみんだと思ってたw
241名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 01:05:28 ID:UaiscrIK
GJ!
その1シーンではなく前後の話が知りたいなw
242名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 02:24:42 ID:mnM5wofb
GJ!!!!!!!!
243投下:2009/05/10(日) 04:09:57 ID:ruJgUBgB
他スレに浮気している間に、スレがのびている……。
とらPの影響か?


何度「プレパレード」を聴いても、あのフレーズは
こういう意味で歌っているようにしか思えない……。
それを形にしてみた。
みんな大好き(?)恋ヶ窪ゆり(DOKUSIN!)だ!
244START:2009/05/10(日) 04:11:46 ID:ruJgUBgB

『コンキガダイジ!!』


「プレ、プレパレード、いつか君を捕まえる〜」
 学校でのとある休み時間
大河と2人、のんびりと廊下を歩いていると、突然大河が歌いだした。
 鼻でふんふんとリズムをとりながら、小さな声で歌っていく。
 何故かご機嫌で、楽しそうだ。
 目の前を楽しそうに歩く大河のつむじを見ながら、竜児は話しかけた。
「なんだ?突然歌なんて歌いだして……」耳に届く声に首をかしげる。
「聴いたことない曲だな。なんて曲だ?」
「はぁ、あんた、この曲知らないの!?うわっ、やばっ……」
信じられないものを見るような表情で、大河が振り向く。
「あんた、どんだけ、現代の流行から遅れて歩くつもりなの?恥ずかしいっ!」
「やばくない?」とか「本当に現代人?」などの言葉を後につけながら、
 哀れんだ視線を飛ばしてくる。
 そこまでじとっとした目を飛ばさなくても。
 大河の視線から逃げるように顔をそむける。
「うるせぇ、どうせ俺は流行には疎い人間だよ……」渋々と、自分の弱点を認める。
「発売して10週連続トップ3にランクイン。初回限定版は初日に即日完売!!
 今、どこのショップに行っても山の如く積んで売られているこの曲を知らないとは……。
 あんた、駄犬からさらに格下げされるわよ」
大河の目が、いつもの犬畜生を見る目つきではなく、それよりもワンランク下のものを見る目に変わる。
犬畜生にも劣るものってなんだ?
……………………虫?
それはイヤだ。
罵るだけ罵った大河は、もういいや、と締めの言葉を残して前を向く。
 再び始まる『大人気』の曲。
 どうやら、また最初歌い始めたようだ。
 余計な事をいってまたボロクソにいわれてはたまらないと思い、竜児は大河の後を静かに歩いた。
「傷ついちゃうの 傷つけちゃうの 純情プレパラート〜」
 廊下を歩く靴の音と、大河の声だけが耳に伝わってきた。
245名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 04:13:35 ID:ruJgUBgB
  休み時間も残り少しという時、もうすぐ教室に着く頃。
 竜児は、廊下の先に見知った姿を見つけて声をあげた。
「あ、先生」
廊下の先から、こちらに向かって歩いてくる教師の姿が見えた。
竜児たちのクラス担任であり、現在独身道爆走中という恋ヶ窪ゆり先生(29歳)。
胸の前で数冊の教本を抱え、少しゆっくりした歩調で歩いてくる。
次は先生の授業ではないから、別のクラスに行くところなのだろう。
先生は、そのまま竜児たちのクラスを通り過ぎ、こちらに向かってきた。
向こうも、こちらの存在に気づき、にっこりと笑顔を向けてくる。
「2人とも、そろそろ授業だから教室に入りなさい」
「はい、わかりました」竜児は軽くお辞儀も加えながら、返事をした。
 そのまま、担任とすれ違う。
 一方の大河はというと、あんたなんてどうでもいいわという空気を体中から出しながら、歌い続けいる。
 担任の挨拶より、歌のほうがいいのかよ。
 あきれつつも、何も口にしないで、竜児は大河の後を追った。

「タエテ タエテ コンキガダイジ!!!」

教室に入ったらいってやろう。あいさつぐらいしろよ、と。
 歌ってないで挨拶くらいしろよと、一言いってやらねば。
 そのまま歩くこと数歩。
 もう目の前まで教室の扉が近づいていたとき、竜児は、背後でどさっという音を聞いた。
「なんだ?」
首だけを曲げて後ろを振り返る。
視線の先には、廊下で固まっている恋ヶ窪先生の姿があった。
 足を前に踏み出したまま、ぴくりとも動かない。
 胸で抱くように抱えていた教本は、今は床に散らばり、その中の数冊が
 ページを見せるように開いている。
さきほどの音は本が落ちた音なのだろう。
 しかし、どうして?
何故先生は固まったまま、ぴくりとも動かないのか。
石になったかのように、動かないその姿を見て、竜児は足を止めた。
「先生?」不思議に思い、声をかける。
 数メートル先にいる先生にも届くように声はちゃんと出した。
 ちゃんと届いているはずだ。
 しかし、返事がない。
「竜児、何してんの?もうチャイムなるわよ」
「え?お、おう。今、行くよ……」
大河が呼んでいる。
 早くしなさいよと、文句を言いながら、扉を閉めようとする。
未だ動かない担任教師が気になったが、竜児は歩きだす。
途中、一度だけ後ろを振り返ってみたが、先生が動き出す気配はない。
疑問に思いつつも、竜児は自分のクラスに入り、後ろ手でドアを閉めた。
「何かあったの?あんなところで止まって」
「いや、別に……」
自分でもよく分からないことを口にしても仕方がない。
 そのまま、席について授業の用意をしていると、チャイムがなった。
246名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 04:14:25 ID:ruJgUBgB
  人気のなくなった廊下にチャイムが響く。
 その音を合図に、恋ヶ窪ゆり(29歳独身)はゆっくりと動き出した。
錆付いていたロボットが動くかのように、ギクシャクした動きで落ちた教本を拾っていく。
 顔には引きつった笑みを浮かべ、苦笑いをしている。
 口の端を大きく持ち上げ、あははははと乾いた笑い声。
頭の中では、先ほど聞こえてきた逢坂大河の声が勝手にリピートされる。
「コンキガダイジ……コンキが大事……婚期が大事……婚期……」
恋ヶ窪ゆり(29歳独身)
婚期は、まだあると思っている。


オワリ。
247名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 04:19:52 ID:ruJgUBgB
投下してから気がついたけど、行頭の間がめちゃくちゃだ……。
気をつけます。


そしてがんばれ恋ヶ窪ゆり!
(結婚パロとか書こうかな……)
248名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 07:49:57 ID:oEmLLAsm
>>243-247
ワロタ
249名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 10:01:07 ID:pEIkHKhJ
婚期ww
その発想はなかったな……Gj
250名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 13:40:05 ID:7RswYVZg
婚期と根気ネタはとらドラジオでも使われていたな
251名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 13:51:36 ID:ZKok+nkB
やる気!婚期!いわき!
252名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 13:54:07 ID:wEe/wCAC
とらドラPで奈々子様ルートがなかったことに絶望して初SSを書いてしまった。
まだ途中までしかできてないけど切りがいいところまで投下させてもらいたい

設定はとらドラPの一場面からの派生で組み合わせは「ななドラ」
ややゲームのネタバレあり
タイトルは「ななどらP(ぽーたぶる)」で
253ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:55:17 ID:wEe/wCAC
高須竜児、別名「ヤンキー高須」
その凶悪な眼から「手乗りタイガー」と並んで全校生徒に恐れられる存在。
文化祭のミスコンやその後の幸福の手乗りタイガー伝説のことを考えれば、
今現在はタイガー以上の恐怖の対象かもしれない。
同じクラスということで他の一般生徒に比べればいくらか彼の内面を知ってる私でも、
やっぱりその凶眼は少し刺激的過ぎてあえて近づきたいという相手ではなかった。
きっと今回のことがなければ卒業まで深く関わることはなかっただろう。
大変であったろう彼には悪いけど、
彼との繋がりをもてたことを今回の事件に感謝しなければいけないわね。


              *******
254ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:56:30 ID:wEe/wCAC
1月3日。
初売りセールだとか、少し遅めの初詣だとか、三が日の最後ということで賑わいを見せている街、
そんな中、私と麻耶は談笑しながら私達にとって馴染み深いスドバに向かっていた。
スドバで待ち合わせ、その後ジムへ。
正月の高カロリーな食事でちょっとふくよかになってしまった体を引きしめるのが今日の私達の目的。

お互い会えなかった間の近況報告がそろそろ終わろうかといった辺りで目的地に着く。
そこで私たちが見たのはもう一人の同行者である亜美…
と高須君・たいがーちゃん・実乃梨ちゃんの予想外の面々。
ここからじゃ話の内容は聞こえないけど亜美はどこか不機嫌そう。
いろいろと疑問はあるけど、まずは亜美に声をかける。

「おまたせ、亜美ちゃん」
「ううん、全然。ちょこっと早く来ちゃっただけだよ」

まずはお決まりの待ち合わせトークから。
さっきまでの不機嫌さは消え、いつも通りの対応をする亜美。
不機嫌なのは気のせいだったのかしら?そんなことを思っていると、
そこへ予想外の登場人物の一人、実乃梨ちゃんが参入する。

「お、いいねいいね、3人並ぶと目の保養だね〜」
「もう実乃梨ちゃんったら〜、そんなに見ないでよ。
 お正月でおいしいもの食べすぎちゃってちょっとぷにぷにしてきちゃってるのに。
 今だって麻耶ちゃんと奈々子の3人でジムに行こうって言ってるくらいなんだよ?」

そう、亜美の言うとおり今日の目的は3人でジム。
亜美の言葉がきっかけで、向こうについてからのことに思いをはせる。
それは麻耶も同じみたいで、
「マシントレーニングって初めてなんだ」とか「あたしはプールが楽しみ」だとか
これから行くジムについて2人で盛り上がっていると、
それまで怪訝な顔していた高須君が口を開いた。

「じゃあ、俺たちと似たような所に行くんだな。
俺達は能登のタダ券でらく〜じゃに行くトコなんだ」
255ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:57:13 ID:wEe/wCAC
「「「らく〜じゃ!?」」」



3人の声が綺麗にハモった。らく〜じゃと言えば今話題のスポットで、
プールにジムはもちろん、アロママッサージなんかのリラグゼーション施設も充実していて
人気を集めているらしい。
私たちも興味はあったけど、入場料が高くて行くにいけなかった。

言葉にはしないけど正直うらやましい。
麻耶なんかは「いいな〜、行ってみた〜い」と言葉にしちゃってるくらいだし。
らく〜じゃかぁ…いいなぁ。
そんな風に思っていると、そこへ新たな登場人物から声がかけられた。

「なら、一緒に来ればいいじゃん」


              *******


ダタ券が余ってるからおいでという能登くんの言葉に甘えることにした私たち3人は
らく〜じゃの更衣室にいた。
ほんとはたいがーちゃんと実乃梨ちゃんもいるんだけど、
更衣室につくやいなや2人の世界に入っちゃったみたい。
そういうわけで今は亜美と麻耶の3人と今朝のやりとりについて談笑中だ。

「まるおってほんとに仕切りうまいよね〜、さっきもちゃんとみんなまとめてたし」
「そうね、あれじゃ恋ヶ窪先生とどっちが先生か分からないわね」

らく〜じゃのタダ券は当初のメンバーらしい高須くん北村くん能登くん春田くん、
たいがーちゃんに実乃梨ちゃん、それに加えて私たち3人となぜか春田くんが連れてきた
恋ヶ窪先生の10人で全て消化されることになった。
10人というのは結構な大所帯でらく〜じゃでどう過ごすかでもめたんだけど、
北村くんの仕切りで午前中はプールで運動・午後は自由行動に決まった。
麻耶にはその北村くんの姿がかっこよく見えたみたいでかなりご機嫌だ。


「まるおとらく〜じゃなんて、新年早々ついてるな〜」
「うふふ、ご機嫌ね麻耶。タダ券をくれた能登くんに感謝しなきゃね」
「えぇ〜、いいよあいつに感謝なんて。期末試験の勉強会とかでもなんかウザかったし」
256ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:58:04 ID:wEe/wCAC
私はその場にはいなかったけど麻耶は勉強会で能登くんが北村くんとたいがーちゃんを
くっつけようとしたことをまだ根にもってるみたい。
さっきタダ券のお礼をいう私と亜美に、「今が人生最大のモテ期だ」なんて言ってた姿が浮かび、
なんだか能登くんがかわいそうになった私は思わずフォローしてしまう。

「能登くんがいなきゃここにはこれなかったんだから少しくらいは感謝しなきゃ…ね?」
「うう〜、なんかやだなぁ…」

あまりフォローの意味はなかったみたいね…むしろ逆効果だったかしら?
一応フォローはしたしこの話題はこのくらいでいいかな。
ここでふと亜美を見てみるとどこか元気がない表情。
朝の不機嫌そうな顔と関係があるのかしら?そんな風に思いながら声をかけてみる。

「亜美ちゃん、さっきここのアロママッサージが話題になってるって言ってたわよね?
 よかったら午後から3人で行かない?」

「えぇ、それも楽しそうね」
「おぉ〜いいじゃん、行く行く!」

ノリノリの麻耶と対照的に、亜美はやっぱりどこか元気がないみたい。

「なんだか元気ないわね、亜美ちゃん高須くん達と何かあったの?」
「え……、ううん、なんにもないよ。
 心配してくれてありがとう、奈々子」

言葉とは裏腹に表情はどこか優れないまま。もう少し踏み込むべきかしら。

「そう?私にはそうは見え「ばかちーおっそい!着替えにどんだけ時間かけるのよ!」ないわ」
「うるさいわね〜今行くわよ。
 さ、麻耶ちゃん、奈々子ちびとらはともかく高須くん達を待たせちゃうとわるいから行きましょ」

着替え終わったたいがーちゃんの催促の声で有耶無耶に終わってしまった。
ま、午後からの自由行動で話をする機会はあるわよね。そう思いながら更衣室を出て行く
みんなの後をついていく。


               ********
257ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:59:05 ID:wEe/wCAC
プールでのエクササイズでみんなで汗を流し食事をとった後、私達3人はアロマテラピーを
体験しに向かうことにした。
期待に胸を膨らませながら受付に辿り着いたところで麻耶が一言。

「なんか一度に2人しか体験みたい、どうする〜?」
「私は後でいいから、麻耶ちゃんと奈々子行ってきなよ」
「いいの亜美ちゃん?じゃあ先にいくね。奈々子は〜?」

亜美は気を遣って先を譲ろうとしてくれる。
これはいつも通りの亜美の態度なんだけど、スドバでのことや更衣室でのこともあるし…
少し悩んでから答える。

「私は少しプールサイドでゆっくりしたいから後でいいわ。
 亜美ちゃんこそなんだか元気ないみたいだし先に行きなよ」
「え?そうかな?亜美ちゃんは元気だから気を使わなくていいよ〜」
「まぁまぁそう言わずに…ね?
 それにプールサイドでゆっくりしたいってのはほんとだから亜美ちゃんいってきなよ」

少し強引だったかしら?
けど亜美が少しとはいえ心の変化を表に出すのは珍しいことだし、
友人としてここは気を使わないといけないところよね。
たまには亜美を休ませてあげないと。


                *******
258ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 13:59:47 ID:wEe/wCAC
こうして亜美と麻耶に先を譲ることにして私はさっきの言葉通りプールサイドで休むことにした。
人気のスポットだけあってそれなりに利用者が多いみたいであちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。
その歓声をBGMに今朝の亜美の様子がおかしかったことについていろいろと考えていると、
どこかで聞いたことのある男の人の声で呼びかけられた。

「おう香椎、一人なのか?」

声の主は高須くん。その凶眼は健在らしく高須くんの周囲だけ妙に人口密度が低い。
私も正直逃げ出したいけどクラスメイトを無視するわけにはいかず適当な答えを返す。


「ええ、今亜美ちゃん達がアロママッサージを体験しててその間ゆっくりすることにしたの。
 そういう高須くんこそ一人でどうしたの?」
「俺か?俺は午後は一人でゆっくりすることにしたんだ」

なんだかオヤジみたいね。
そんな考えが浮かぶと同時に、いつもの癖でからかいの言葉が出てしまう。

「だめじゃない、男の子はもっと活動的じゃないと。そんなんじゃモテないわよ?」
「う…一応病み上がりなんでな、ここは大目にみてやってくれ」

言葉に詰まってこちらを見る眼光が鋭い…おもわず言葉につまる。
初めて二人で話したけどやっぱり迫力が違うわね。顔には出さないようにしないと。

「病み上がり?なにかあったの??」
「クリスマスの後インフルエンザにかかっちまってな、まだ本調子じゃないんだ。
 香椎こそなにかあったのか?なんか表情が優れんぞ」

思わぬ気遣いの声。眼の迫力はそのままだけどその声音は随分と優しいものに変わってる。
眼光を除けば、その表情も心なしか心配そうなそれに見えなくもないわね…
とはいえやはりその眼光の威力は凄まじく、ついついはぐらかしてしまう。

「え?そんな顔してたかしら?気のせいじゃない?」
「いや、声かける少し前から見てたがそんな顔してたぞ。なんか心配事か?」
259ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:00:38 ID:wEe/wCAC
言葉はやや断定的だったけどやっぱりその声音は優しい。
きっと彼から声をかけたのだって私を心配してのことだったんだろう。
眼光にあてられて逃げ出したいと思ったことを詫びつつ返答に悩む。
亜美のことを聞いてみるべきだろうか…
高須くんと亜美は仲がいいみたいだし何か知ってるかもしれないし。

逃げ出したいと思った罪悪感からか、それとも優しい声音に気を許したからか、
少し間を空けて、高須くんに亜美について聞いてみることにした。

「実は朝から亜美ちゃんの様子が少しおかしくて…」
「川嶋が?」
「そうなの、亜美ちゃんがそういうのを表に出すのって珍しいから少し心配で…
 高須くんはなにか心当たりない?」
「心辺りか…そうだな…」

高須くんは目を伏せ考え込む。一般客は思わず息を呑むような凶悪な顔だけど、
そこにわずかな不審を感じ取った私は、もう少し畳み掛けてみる。

「どんな些細なことでもいいから知ってることがあったら話して、お願い。
 友達として亜美ちゃんのこと心配なの」
「いや、知ってることといってもだな…その…」

いまいち煮え切らないわね。さっきからの態度を見れば何か知ってるみたいなんだけどな…
彼から言葉を引き出せすにはどうすればいいかしら?

思案していると不意に麻耶にくっついて北村くんと話をしたときのことが浮かぶ。

確かあの時、高須くんのことを怖がってた麻耶に対して、
北村くんは「アイツは優しくていい奴だ」ってベタ褒めしてたわね。

その時の私には到底信じられなかったけど、さっき私のことすごく心配してくれてたみたいだし…それなら…

「優しい人って聞いてたけど高須くんって案外ひどいのね、亜美ちゃんのこと心配じゃないの?
 そんな態度とられちゃうと私あなたに幻滅しちゃうかも…」

北村くんの言葉通りならこんな風に追い詰めればきっと何か答えてくれるはず…

「いや、ちょっと待ってくれ!そんなつもりじゃないんだ!!」
「じゃあどういうつもりなの?」

「…分かった、知ってることを話すよ。」
260ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:07:35 ID:wEe/wCAC
少し考え込んだ後、私の狙い通り高須くんはポツポツと話し始めてくれた。

「信じられんかもしれんが、今の俺にはインフルエンザにかかって倒れた、それ以前の記憶がない。
 川嶋のことは少し前に話をして思い出したんだが、
 実をいうと能登に聞くまで香椎や木原が誰かも分からなかった。
 今日こうしてらく〜じゃに来たのだって記憶を取り戻す手かがりになればと思ってのことなんだ。
 だからもし記憶を失う前、クリスマス以前に、俺と川嶋に何かあったとしても今は何も答えられない…
 すまん。」

記憶喪失、普通に考えたら眉唾ものよね。
だけど高須くんの態度にさっきまでの不審は感じられない。
それどころか言葉の節々から彼の誠実さがにじみ出てるようにすら感じられる。
これまでの態度や言葉と合わせて、彼を信じてもいいかという気になった私はさらに質問を重ねる。

「高須くんが記憶喪失ってことは分かったわ、記憶を失った後なにかあったってことはないの?」
「特に変なことを言った覚えはないし、多分ない…と思う」

なるほど、とすれば何かあったとしたら記憶をなくす以前…だけど今はそれを知るすべはないと。
少し期待はずれの気持ちを覚えながら、次にする質問を考えているとき、ふと思った。

高須くんは記憶喪失で、今は記憶を取り戻そうと奮闘中。
けどそんなこと彼に言われるまで私は気づかなかったし、きっと麻耶だってきづいていないだろう。
記憶がないのに、それを私達にきづかせないように振舞うってとても大変な事なんじゃないの?
なのに彼は私を気遣って声をかけてくれたし、
今だって亜美のために話すつもりはなかっただろうことを教えてくれた。

そんな優しい彼に私は何をしたの?気遣ってくれるのをいいことに質問を浴びせた。
搦め手も交えて彼の言葉を無理に引き出した。なんだか悪者みたいね…私。

自己嫌悪の気持ちを覚えた私はここで質問を切り上げることにした。


「そう…、分かったわ。
 ごめんなさいね、自分のことで大変なときに変なこと聞いちゃって」
「いや俺のことはいい、それより今は川嶋のことだろ?
 今の俺は役に立たないかもしれんが、できることがあるならさせてくれ」
261ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:09:49 ID:wEe/wCAC
高須君の真剣に亜美を心配する声、言葉。一度認識した彼の優しさの更なる裏付け。

…やっぱりこれ以上彼を困らせるわけには行かないわね。

「高須くんは今は自分のことだけ考えて、亜美ちゃんのことは私がなんとかするから。
 そうね…もうすぐ亜美ちゃん達のマッサージも終わる頃だし、本人に直接聞いてみることにするわ」
「待て、そんなことしても川嶋は……川嶋は?…」
「…高須くん?」

不意な沈黙を不信に思って声をかける。

「なんだかいきなりぼぉっとしちゃったけど大丈夫?」
「大丈夫だ…今ので少しだけ記憶が戻っただけだ」

記憶が戻ったという言葉に思わず驚き、それとともに得られる記憶を取り戻すきっかけになれたという安心。
よかった…私も高須くんの力になれた。これで只の悪者ではなくなったわね。

「何か思い出したの?」
「川嶋のことを少しな…
 さっきあいつに直接聞くといってたがそれはやめたほうがいいと思うぞ」
「どうして?」
「川嶋に聞きに行ってもうまくはぐらかされるに決まってるからだ。
 あいつはあぁ見えて子供みたいなところがあるからな、
 そんなことをしたら返って意固地になって無理しちまう」

前半は同意、けど後半は少し意外な言葉。亜美は私から見ればずっと大人な娘だったから。
だけど、彼が言うからには本当なんだろう、とも同時に思う。

「そっか、分かったわ直接聞くのはやめにする。
 うふふ、高須くんは亜美ちゃんのことよく分かってるんだね」
「な…!そ、そんなことねぇよ」

この表情、初めてみたわね、みるからにテンパっちゃってる。
…少しからかってみようかな。
262ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:10:35 ID:wEe/wCAC
「そう?さっきだってすっごく真剣に亜美ちゃんのこと心配してるって顔してたし、
 正直少し妬けちゃうわ」
「!?……はぁ…、香椎まで川嶋みたいに俺をからかうのかよ」

今度は困り果てたって顔…いつのまにか罪悪感は消えて、なんだかすごく彼を身近に感じてる。
困った顔をなんだかカワイイわねって思っちゃう私はSの気があるのかしら?
きっとこういう顔がみたくて亜美は高須くんをからかってるのね。
亜美が元気になったら一度話してみようかしら?

「冗談よ、気を悪くしたのなら謝るわ」
「ほんとに勘弁してくれ…」

うふふ、情けない顔。さっきまでの優しい言葉からは想像できないわ。

っといけない、そろそろ行かないと。彼とお話し過ぎたわね。

「ごめんなさいね、
 そろそろほんとに行かないと亜美ちゃん達を待たせちゃうから私はもう行くわね」
「おう、力になれなくてすまんな。
 もし俺にできることがみつかったならいつでも言ってくれ」

さて、これからどうしたものかしら。
高須くんは記憶喪失、亜美に直接聞くのはNG。
他に何か知ってそうなのはたいがーちゃんと実乃梨ちゃんだけど、きっと何も得られないでしょうね。
それどころかたいがーちゃんも実乃梨ちゃんも暴走しちゃってかえって状況が悪化するかも、
二人の暴走のベクトルは違うけど。

正直手詰まりね。
亜美ならきっと自分で解決するんでしょうけど、友達として何かしてあげたい。
やっぱり高須くんの力が必要かしら?

…そうね、彼に協力してもらいましょう。
さっきみたいに記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないし。

一度階段へ向かった足を引き返し今度は私から高須くんに声をかける。
263ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:12:43 ID:wEe/wCAC
「高須くーん」
「おうっ!?どうした?川嶋のとこに行くんじゃないのか?」
「その前にひとつお願いがあるの、いいかしら?」
「おう、なんだ?」
「携帯のアドレス教えてくれない?
 亜美ちゃんのことでなにか思い出したことがあればこっそり教えてほしいんだけど」
「いいぞ、ええっと赤外線は……っと、これでいいか?」
「ありがとう、高須くんも記憶のことで私にできることがあればいつでもいってね」
「ああ、そのときは頼む」

こうすれば高須くんはきっと亜美のことをもっと考えてくれるだろうし、
それがきっかけで記憶を取り戻すかもしれない。
もしかしたら私が高須くんの力になれることだってあるかもしれない。

「うふふ、それじゃ今度こそ行くね」
「また後でな」

正直お互いにとって無駄になるかもしれないけど何もないよりはいいわよね…
そう、これは一種の保険よ。
そう自分に言い聞かせながら亜美のところへ向かう。
264ななどらぽーたぶる:2009/05/10(日) 14:15:39 ID:wEe/wCAC
とりあえずここまで
「****」は一応場面の区切りに使ってます。

改めて読むと状況描写があまりに少ない+稚拙だな。。。
今後の展開も含めアドバイスをもらえたらうれしいです。
265名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:18:19 ID:L9N+OHcd
わからんが奴らは水着だよな、携帯はどこから?
いや内容は面白かったからGJだよ
266名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:27:03 ID:wEe/wCAC
>>265
説明不足だったけどプールは午前中だけで午後はジムとかがメインで昼食後一度着替えたってことに
脳内変換してくれると助かります


267名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:34:47 ID:wEe/wCAC
更に補足
プールサイドで休憩ってのはゲーム内のイベントをキャラ変えてそのまま流用しました。
ただこのままじゃ矛盾解決できませんね。
ちゃんと推敲の際に訂正するべきでした。

ご指摘ありがとうございます。
次はもうすこし念入りに推敲することにします。
268名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:45:35 ID:Qnf+LmX2
「麻耶ちゃん」じゃなくて「麻耶」じゃね?
269名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:52:44 ID:wEe/wCAC
>>268
奈々子と亜美の台詞の区別をつきやすくする為に
奈々子は「麻耶」、亜美は「麻耶ちゃん」と呼称を統一してみました
ただやっぱり違和感ありますね…
間際らしい部分以外はどちらも「麻耶」でいくことにします
270名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:59:16 ID:s6vKB1nP
なんにしてもGJ
271名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 15:16:11 ID:EV+eqFas
これはwktk
272名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 19:13:42 ID:ka4O1mZm
『ななこい』の続きも読んでみたいなぁ
273名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 20:39:14 ID:irK0Mgbu
乙なんだが「ななどらぽーたぶる」っていうタイトル大丈夫?

タイトル見て、一瞬ななどらの続き?って思ったんだけど、俺だけかな??


スレ初期の人気作の一つだし、騒がれたりしないかな?気にしすぎ??
274名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 20:58:13 ID:PdYnOTJc
まぁ勘違いすることもあるだろうけどいいんでね?

それより、誰か俺に文章力をくれ・・・orz
275名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 21:34:54 ID:k8l7qv3m
>>274
やらんわい
276名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 21:45:47 ID:gj8m5lzB
俺の無駄毛ならやるよ
277・・・・・・ ◆OVNYPzgZN2 :2009/05/10(日) 22:03:31 ID:wJir/2ha
ネタバレ。CBは女子校生。
278名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 22:56:48 ID:Vjn8NVs1
何か最近、亜美率が異様に高い気がする
全く、けしからん。
279名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 22:58:28 ID:gj8m5lzB
じゃあ俺が頑張って北村率を上げるか……
280名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 23:07:52 ID:lqJ9lO9B
ここってもしかして暗に「春田x独神」が定番になってる?
スピンオフ2で春田が恋の相談を独神に持ちかけたからかな?気のせい?

いや、春田x瀬奈さんが好きなんだけどそれもアリかな、ってねw
281名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 23:53:21 ID:KhzJfSgN
>>280
定番になってようがいまいが
君は君の書きたいカップリングで書くんだ
さあ早く
早く
282名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 00:09:38 ID:Gnt/DEmM
どうも、>>154-156まで書いていた者です。
続きが出来たので一応載せますが…凄腕の人がいっぱいいるので
出すのは恥ずかしいですが…自分の腕磨きのため貼ります;
283その後のとらドラ2:2009/05/11(月) 00:10:12 ID:Gnt/DEmM
「それじゃぁやっちゃんは仕事に行って来るガンス♪」
「あいよ、気をつけてな」
「いってらっしゃい」
 泰子の仕事を見送る竜児と大河。
 竜児には気になっていたことがあった。
「戻ってきたって事は、また隣の家に住むことになるのか?」
 そう、大河の住まいである。
 戻ってきたということは、当然また向かいの家になるわけだ。
「んまぁその方が気楽でいいんだけど、どうしようか迷ってる事があるの」
「迷ってる事?」
 大河にある提案がある模様。
「うん、竜児だけの意見じゃ決められないと思う事」
「そうか、なら泰子が居る時に聞いたほうがいいな」
「やっちゃんは反対しそうな気がするけどね」
 大河は苦笑しながら言った。
 いったいどんなことだろう。
 竜児には考えもつかなかった。
284その後のとらドラ2:2009/05/11(月) 00:10:41 ID:Gnt/DEmM
「とりあえず、今日はどうするんだ?」
「一応荷物を持ち帰ってきたから、整理しようと思う」
「おう、何なら手伝ってやろうか?」
「結構。っと言いたいところなんだけど、荷物が結構多いのよね」
 多い?多いだと?
 そうなると片付けることができる…
 竜児の目が怪しく光った。
 誰かを殺そうとするような目つき。でも本当はそうではない。
 竜児は三度の飯より掃除や片付けが好きなのだ。
 大河が戻ってくる日まで、大河の家の掃除は一日たりとも怠らなかったくらいだ。
「うわぁ…相変わらず変態の目つきになってる…」
「へ…変態とか言うな!」
「あんたのその癖は直したほうがいいと思うよ…」
「…ほっとけ」
 竜児は呆れながら大河の荷物を運ぶ。
 ダンボールの数にして…12個、出て行った時は少なかったのに…
「この荷物、ここらへんでいいか?」
「うん、ってか任せた」
 任せたっておま…
「だって、片付けるんでしょ?」
「いや、んまぁ言ったが…」
 反論できない竜児にさらに追い討ちをかけるかのように
「しまう場所が間違ってたらその首がないと思いなさい♪」
 ひたすら満面の笑顔で怖い事をさらっと言いのける大河。
「間違ってたら指摘してくれ…」
285その後のとらドラ2:2009/05/11(月) 00:11:09 ID:Gnt/DEmM

 片付けをしている最中に気になっていた事を思い出す。
「んで、さっき言ってた迷ってる事ってなんだ?」
 大河は体をピクっと動かし、何やら悩みつめた表情になったがやがて意を決したように話始めた。
「…この家に住むのって、私一人じゃない?」
「うむ」
「それでいつも竜児の家でご飯とか食べてるじゃない?」
「そうだな」
「ここまで言って分からない?」
 大河は上目遣いで寂しそうに言う。
「いや、そこはかとなくそれかなぁと言うのはあるんだが…つまりこの家に皆で住もうって事か?」
 この家に3人で住む…
 竜児にとって、悪い話ではなく、むしろ本当に住んでいいのかという気持ちでいっぱいだった。
 何を隠そう、趣味の一つとして外国のインテリアが載っている雑誌を読むのが好きで
 大河の家には竜児が圧倒するほどのインテリアが揃っているのだ。
 それに、家が大きい分掃除し甲斐があるというもの。
「竜児には拒否権はないとして、やっちゃんがいいって言うか心配なのよ」
 何故俺には拒否権が…ってかその前に…
「って家賃とか幾らだよ?」
「家賃?ローン無しで買ったハズだから大丈夫よ?」
「な!マジで?」
「確かね」
 うちはあんなボロアパートで、一応家賃を払っているわけなんだが…
 このブルジョアめ!
 竜児は金銭面の管理もしている。
 その上で一緒に住むとした時の、この家の家賃が幾らだか気になっていた。
 部屋の数だけだと4LDKはある家。
 普通なら六桁くらいの家賃はありそうな家なのだ。
 それで家賃がないとなると、相当生活が楽になると竜児は踏んでいた。
「なら、後は泰子の問題か」
「うん、一応やっちゃんが高須家の大黒柱なんだから、明日聞いてみよう」
「そうだな」
 荷物の片付けをしながらこの家に住む事になった時の部屋割り等を考えていた。
 考えているうちに顔がにやけていた様で
「またキモい顔になってる」
 と大河に悪態をつけられたのは言うまでもない事実である。
286名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 00:13:50 ID:dXSt2eQv
しえん
287Gnt/DEmM:2009/05/11(月) 00:14:44 ID:Gnt/DEmM
以上となります。
書いていて、やっぱり自分に文才は無いなぁとか思いました。
書きたい事(情景描写)を上手く表現できないので、今後も頑張って
書いていこうと思います。

あ、一応続くという事でw
288 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:44:01 ID:wdzjWpBr

「・・・・・・よし、と」
朝、7時55分。
天気快晴、ただし室内暗し。
木造二階建て戸建、二階部分の借家。私鉄の駅から徒歩十分、南向き2DK。
家賃、八万円。
「泰子、じゃあそろそろ行ってくるから」
そういって、鏡の前で最終確認。口周り、清潔。肌、ニキビ無し。髪型、まぁ、OK。眼元、・・・・・・いつもどおり。
鏡にはドス黒い威圧感と闇の狂気に踊り猛る般若の顔――、もとい普段と変わらない、いや普段よりも少しやる気と希望が浮かぶ高須竜児の顔が映る。
289 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:44:37 ID:wdzjWpBr

そういえば、去年のこの時期は新しい髪型に挑戦しようとしていたっけ。そして自分でも許せないほどに合わなかったっけ。
そんなことを思い出し、前髪を少しだけ弄くりながら、台所に用意した二つの弁当箱を通学用カバンに丁寧に入れる。
「竜ちゃ〜〜ん、やっちゃんの分はぁぁ〜〜〜?」
泰子が慌ただしく部屋からかけ出てくる。顔周りに収まった髪は初々しく、持ち前の童顔と相まって以前よりいっそう若く見える。
「そこに置いてあるだろ、・・・おう!?泰子、その恰好で行くのか?」
全く落ち着きのない実の母は、相変わらずの肌見せ&脚見せキラキラファッションで全身完全武装している。
去年の竜児なら何も気にしなかったであろう泰子の限界ギリギリの服装も、今となっては気にかけずにはいられないものがある。
「だってぇ〜、前のお仕事のときの服しかないんだも〜ん」
290 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:45:12 ID:wdzjWpBr

泰子の仕事は、雇われママだった大橋唯一のスナック毘沙門天国のママ、魅羅乃ちゃん(自称永遠の23歳)からオーナーの意向で
こだわりのお好み焼き・弁財天国のやすこちゃんに変わっていた。
泰子だけではない。去年の一年間で、竜児の周りではたくさんの変化が起こった。たくさんの喜びと、笑顔、たくさんの悔しさと、やるせなさ、涙を伴って。
だが、去年の出来事をつらつらと回想している暇はない。今日から新学期だ。高校最後の一年間が始まろうとしている。

これがモタモタとしていられようか。

「出かけるときは戸締りしっかり確認しろよ!行ってきます!」
「はぁ〜〜い〜行ってらっしゃぁ〜〜〜い〜」
泰子の甘ったるい声に見送られ、外廊下の階段を駆け降りる。新聞を取りに出ていた大家さんに挨拶をし、となりに聳える高級マンションの前を駆け抜ける。
またも激動の一年に思いをはせそうになりながら、ただしその鋭い三白眼ははっきりと前を見つめる。

291 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:45:58 ID:wdzjWpBr

「ぬぁ〜にをモタモタしてんのよぶぁか竜児!!」
腰までゆらりと垂れる栗色の髪にすっぽりと隠れてしまうような華奢な体つきに、透き通るような白い肌、フランス人形のような精緻な美貌。
いわゆる美少女の要素をこれでもかと詰め込んだ体躯は、しかし一見小学生と見紛うようなミニサイズ。
そんな美少女から出力されたとは思えないようなドスの聞いた罵声を朝っぱらからかっ飛ばすこの女こそ、逢坂大河、大橋高校にその名を轟かせる
手乗りタイガーその人である。
「おう、すまん大河。朝準備にてまどっ」
「どうせまた変わりもしない髪型いじって延々鏡とにらめっこしてたんでしょ?全くいいかげんにしなさいよ、浮かれポンチ竜児」
「なんだよいいじゃねーかよ、今日から3年になって新しいクラスになるんだし、誰だって気使うだろ」
「あんたのその前髪つくりよりも大事な時間があるって言ってんのよ」
大河はそう言ってぶすっと視線をそらす。悪戯な春風にウエーブのロングヘアが踊る。
「こう・・・もっとその、ふ、ふた、り、の時間を大切に・・・とかなんとか思わないわけ!?」
すべて言い終わらぬうちに、手乗りタイガー渾身の右フックが竜児の脇腹を襲う。竜児の鈍い悲鳴もむなしく
「あんたね、クラス替えよ!私は文系で、竜児は理系なんだから、当然クラス変わっちゃうじゃない!それはつまり、一緒にいられないってことよ?
だ、だからそう、こうやって一緒にいられる時間を・・・たいせつに・・・」
292 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:46:19 ID:wdzjWpBr

ごにょごにょ、とうつむきながら話す大河の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやり、改めて感じる。この小さな虎の愛おしさ。
140センチそこそこの美少女とは思えない暴言と暴力の嵐。横暴で、わがままで、食い意地が張ってて、全校生徒規模で手乗りタイガーなんてあだ名で恐れられ、
でもドジで泣き虫で、それでいて壊れそうなほどにまっすぐに生きるこの少女。逢坂大河の、愛おしさ。
竜児と大河は、付き合っている。それどころか近い将来の結婚までを誓い合っていた。それもこれも高校2年生という時間を二人、互いの一番近くで過ごしてきたその結果だった。
ただ、ここにたどり着くまでにたくさんの悩みとぶつかってきた。一度はすべてから逃げてしまい、二人だけで生きてゆこうとも考えた。
でも二人だけの幸せを放棄して、今ここにたどり着いたことは、今のところ正解だと思っている。その暫定的な回答を完璧な正解にするための一年が、今日から始まるのだ。
「ごめんな大河。ほら、遅れちまうから行こうぜ」
全ての思考を一度沈め、しかし未来への希望と決意は握りしめ、穏やかな気持ちで歩きだす。隣には大河。手はどちらともなくつながっている。
「明日はもっと早く来なさいよ」
「俺はお前の寝坊の方が心配だよ」

293 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:47:13 ID:wdzjWpBr

「ぅおぉ〜〜い〜〜高っちゃ〜ん!タイガ〜!」
春の陽気に、春田の暢気。背後から間の抜けた声が自分たちの名前を呼ぶのが聞こえる。となりの大河が「はぁ・・・・・・」わざとらしいため息をついたのもついでに。
校舎前のスペースに毎年張りだされる新クラス表。一番奥に張り出された3年の掲示を見て、改めて高校最後の一年なのだと思い知る。
「おう春田。お前何組になったんだ?」
「おっす〜!え〜俺〜?おれD組〜亜美ちゃんとぉ〜麻耶様とぉ〜奈々子様もぉ〜高っちゃんは?」
ひょーー!ハーレム完成〜と小躍りする春田とさりげなく一歩距離を取る。
「おれはB組。んで大河はCだ。」
「うお〜高っちゃんB組って国選じゃん!さっすがぁ〜じゃあなに、北村大先生と一緒じゃな〜い」
なんで最初に会うのがこのアホロン毛なわけ?ていうかアホのくせに進級できたんだ、あそーか裏口入学だから・・・まぁでも卒業はむ
竜児はこの際隣から聞こえるエンドレスの小言は聞こえないふりをすることに決め込んでいた。
これでもし大河と実乃梨が同じクラスでなかったらと思うと背筋が凍る思いだ。
「おう、そうだな。北村は・・・どこだろう?」
「呼んだか?高須。」
竜児の方をポンと叩く手と、挨拶のつもだりだろう、律儀に上げられた右手のその長い指。
「おう、北村。また一緒のクラスだな。」
294 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:47:50 ID:wdzjWpBr

いまどき珍しいくらいの坊ちゃん刈りの黒髪に、銀ぶちメガネに飾られた瞳は大きく、綺麗な顔立ちはにっこりと笑う。
大橋高校生徒会長、北村祐作とはこれで三年連続で同じクラスだ。
「逢坂に春田も一緒か。クラスは違うが今年もよろしくな、二人とも。」
春に似合うさわやか全開の笑顔であいさつする北村は優等生そのものだ。
「ぅおいぃっす〜き〜たむら〜」「おはよう北村君」
二人の挨拶もそこそこに、
「とぅあいが〜〜〜また一緒のクラスじゃんか〜〜〜!」
「みのりん!」
猛然と走り込んできた実乃梨に、大河が飛びつき空中で合体する。そのまま大河のあたまを「よしよ〜し」とがしがしと撫でまわし、大河も幸せそうに実乃梨の胸に顔を埋める。
「今日から3年・・・か。」
竜児の見上げるは、いつもと同じ、青い空。
295 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:48:11 ID:wdzjWpBr
始業を終え、新しい教室で、最初のロングホームルームを行う。
「みんな今日から3年生だ。進路を早めに確定することが受験を勝ち抜く第一歩となる。すでに連絡済みではあるが、今日は午後から体育館で進学説明会がある。
昼休みをはさむから各自遅れないようにな。」
「はぁ・・・」
「どうした、高須?」
今年もしっかりとクラス委員に内定した親友、北村が話しかけてくれる。新しい一年、などと浮かれてはいたものの、結局自分はこうなのだ、と思い知る。
「いやぁ・・・、クラスの奴らが明らかに俺を見てるんだが」
「あぁ・・・そうか。いやでも気にすることはないぞ、高須。去年の文化祭の活躍もあって、ヤンキー高須は実はヤンキーじゃないって噂も出てるくらいだからな。」
「ヤンキー・・・」
竜児の溜息も出きらぬうちに、ドグゥアン!バン!!とクラスのドアがものすごい音を立てて開く。
壊れんばかりの勢いで開かれたドアの向こうに見えるのは竜児には見なれたウエーブのロングヘアー。クラス中の注目を小さい体に余すことなく集め、つかつかと
竜児に向かって真っすぐ歩いてくる。
296 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:49:41 ID:wdzjWpBr

「手乗りタイガー・・・」「なんでここに・・・」「相方の高須を連れだしに来たのか・・・」
クラスの連中のひそひそ話を目で制しながら竜児の前の席にちょこんと座る。小さく収まった大河のうつむく顔はさっきの威勢のよさはどこへやら、顔を赤らめて
竜児を控えめに見つめる。
「どうした、大河?ていうか、あんな登場しなくても・・・」
「ごはん」
「あぁ飯か?ほらよ・・・。全く、待ってれば今届けに行ったのに」
「ちがう、そうじゃなくて」
「じゃなんだよ」
自分の通学用バッグから朝用意した大河の分の弁当箱を目の前につきだしながら聞き返す竜児をちらちらと見る顔はもとのミルク色の白さも忘れ
「そ・・・の、一緒に食べようよ」
「ん、おう。な、なんだそういうことか。それはいいけど・・・ここでか?」
クラス連中の視線は大橋高校の二大ヤンキーの競演に釘づけになっている。「高須君が手乗りタイガーに貢物だ・・・」などと。
「ここはちょっと不味くないか・・・」
「じゃあどっかで」
「どっかって・・・」
机ひとつを挟んで向かい合い悩み始める二人の間に、天声のように北村の言葉が割り込む。
「飯を食うなら、いいところがあるぞ」
2971 ◆FoOn3tEqLg :2009/05/11(月) 00:50:02 ID:wdzjWpBr

「・・・で、ここか。」
「確かに他に人はいないけど」
「っおう!まださみいぞ・・・」
二人が北村に薦められたのは、屋上。4月とはいえ春一番の吹き荒れる地上五階相当の気温は一層低く。
「とととりあえず、どこかに座りましょ」
「おう・・・、そうだな」
せっかくだから遠くまで見えるところがいい、とわざわざ寒いところに向かう大河を、竜児は四歩、五歩の距離で追いかける。
「っっっっうううさっむううう」
適当に二人腰をおろしたフェンス際。自分の弁当箱を足元に広げた大河が脇に潜り込んでくる。
「っおう!?大河・・・、その、くっつきすぎだ、誰か来たら」
むす、とおちょぼ口を作って見せ、そのまま胸のあたりに顔を預けよりかかってくる。さすがに動けない。
竜児の瞳孔が赤黒い光を孕み、目の前の少女を取って今日の昼飯に頂くは肥えに肥えさせた極上の娘の肉と血のワインじゃー、というのではない。
ただ恥ずかしいのだ。いつも一緒にいた大河とはいえ、この距離感はほとんど未体験ゾーンだ。ただ、イヤかと聞かれれば、そうでもない。
「だってこのほうがあったかいし・・・、それに!誰も来ないからこんな寒いとこにわざわざ来たんじゃない」
「いやもちろんそりゃそうなんだが」
「・・・じゃあ何も問題ないじゃない。・・・イヤ?」
突き刺すような乾いた空気に揺られ、大河の柔らかく温かい髪のにおいがふわりと鼻もとに届く。もう一度言おう、イヤかと聞かれれば、そうでもない。
「いや!いやいや・・・いやじゃない、いやじゃないぞ」
「なによ、いやなのかいやじゃないのかはっきりしなさいよ」
298 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 00:50:38 ID:wdzjWpBr

竜児の対応が期待はずれだったのか、さすがに二人だけの屋上とはいえ恥ずかしさがでてきたのか、それとも目の前の弁当に我慢ならなくなったか、
大河はくっつけていた頭を直して、箸を持つ。
「いただきます、は?」
「いただきまーす」
「ん、このきんぴらおいしい!」
「おう!そいつは昨日の自信作だ」
自分の分のきんぴらを一瞬で平らげた大河は不意打ち、竜児の弁当からきんぴらをつまみ、口元に運ぶ。
「おあっ、大河おまえ!・・・ってあーあー」
口に運ぼうとした端からきんぴらがこぼれ、スカートの上にぽつりと落ちる。拭いてやるからじっとしてろ。このドジめ、と竜児がティッシュを取り出したとき、
不意に強い風が視界をふさぐ。
「きゃあ!」
大河のスカートは盛大にめくれ、上に乗っていたきんぴらも飛ばされてしまう。
「・・・見た?」
「見てねえ!見えてねえ!」
「見たのね・・・このエロ犬!!」

少々行儀の悪い春風もしばらく一緒だが、ここでおだやかに、だけど少し慌ただしく昼を過ごすのも悪くはなさそうだ。
299名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 01:07:38 ID:W+YaLYqE
終わり?
300 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 01:48:54 ID:wdzjWpBr

「亜美ちゃんだ・・・」
「あの川嶋亜美と・・・同じクくクラス」
「ちちち近い近すぎるまぶし過ぎる・・・」
「さ、ササインを・・・」
そこかしこから漏れる男子生徒のため息混じりの歓声を一身に受け止め、これでもかと鉄仮面の上からの営業スマイルを振りまいてみせる。
チワワ目をめいっぱいに潤ませ、わざとらしいほどのボリュームで、
「やぁ〜ん、亜美ちゃん感激〜♪このクラス、すっごい良い人ばっかりみたぁ〜い。みんなあ、よろしくね〜☆」
午後にはまだ直視などしたくもない進路についての学年集会が控えた、春休み明けの昼下がりだというのに、3−D組には(主に男子生徒の)
まるで今日入学したばかりというような希望に満ちあふれた笑顔が踊っていた。いつぞやのキャンプファイヤーよろしく笑顔の輪の中心で燦然と輝くのは
現役女子高生カリスマモデル、川嶋亜美である。165センチのすらりとした長身に、その細身に不釣り合いとも思える美しいバストライン。
完璧なまでの整いを見せるパーツを詰め込むには小さすぎるような小顔。郊外の公立高校の制服を着てなお埋もれることなく輝きを放つセレブオーラ。
あまりに完璧な外見で包むのは、その実黒さの塊としか思えぬ我がままお姫様的性格。
「あーあ、大したイケメンもいないし、外れねー」
と、3秒前とは打って変わってダルそうに、つまらなそうにぼやいてみせる。
「もともと期待なんて薄いしー。それに亜美ちゃんにはやっぱり本物の芸能人しかいないっしょ!ね、それよりさ、駅ビルに新しくフルーツパラダイスできたの、知ってる!?」
「え、そうなの?フルーツならそこまで気にせず食べられていいわよね」
こんな黒さを見せる亜美とも慣れた様子で会話を続ける二人も、亜美の影に隠れることなく美しさを見せている。
どこから情報を仕入れてくるのか駅ビル事情に異様な詳しさを見せ、またすこし明るく染め直し、丁寧にトリートメントされたストレートヘアを揺らす木原麻耶に、
ギャルっぽさを売りにファンを獲得している麻耶とはまた別の層から熱烈な支持を受ける、穏やかな空気感に妙な色気を醸す口元のホクロがチャームポイントの香椎奈々子。
2−C美少女3人組は、かくして今年も同じクラスでガールズトークに花を咲かせる。
301 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 01:49:15 ID:wdzjWpBr

「おれ、3Dになれてよかった・・・」「成績たいして良くなくてよかった・・・」
なぞと感動に打ちひしがれる男子生徒の中で一人、「進級できてよかったあ〜」とずれた喜びをかみしめるロン毛が一人。
「おい春田、お前去年もあの3人と同じクラスだろ?おれらのこと紹介してくれよ!」
「ぬぉ〜んのん。俺でもあと一歩のところで攻略しかねた亜美ちゅわんが振り向くわけないってえ〜!ま〜あ〜、おれは瀬奈さんがいるから攻略の必要なんて〜ウフフ」
「なんだよ春田気持ち悪いな、お前。」
「お〜い春田ー!」
さっそくそのフランクさで新しいクラスでものらりくらりとアホを咲かせる春田を、廊下からの声が現実へ引き戻す。
「おー能登っち〜」
黒ぶち眼鏡に、ランダムにたち跳ねるショートヘア。春田と、そして竜児の親友能登久光は、春田を呼びつけながら全く春田のことなど見てはいない。
「げ、能登・・・。」
不意に目が合った麻耶に露骨に目をそらされ、バツの悪そうに春田に挨拶をする。
「なになに〜、能登っち〜麻耶様見に来ちゃったの〜?あ〜、それとも〜新しいクラスにともだちいなくて〜こっち来ちゃったとか?」
「なに言ってんだよ違うよ。ほら、春休み約束したじゃん、駅ビルに古着屋で来たらしいから行ってみようぜって」
「あぁ〜駅ビルね〜!」
春田のプライベートもクソもないアホボリュームで聞こえた単語に、麻耶が少しだけ反応したのを知るのは隣の二人だけで。

302 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 01:49:44 ID:wdzjWpBr

5年ほど前に塗り替え工事が竣工し、実乃梨の入学当時はそれこそ新設同様に綺麗だった校舎と比べて、グランド裏にこぢんまりと建てられたこの部室棟の汚さ、ボロさはどうだろう。
グラウンドの土が春の強い風に舞い上げられ、玄関口は埃っぽく、かといって中に入れば運動部とはいえ年頃の女子の部屋とは思えぬ異様な匂い。
グラブやスパイクにしみ込んだ汗と、雨でたまった湿気の最悪コンボに対して強引に制汗スプレーやらファブリーズやらで対抗した悲惨な戦いの後の傷跡も、
人間慣れてしまえば関係ないのだろうか。
重苦しい音とともに開いた安っぽいドアを開けて、見なれた面々に挨拶をする。
「やーやーおはよう諸君。元気かい?」
「あー櫛枝先輩お疲れ様でーす」
「おうおうおっつかっれーい」
運動部特有のTPOなど無視した万能あいさつで先に部室にたむろしていた後輩たちと軽くコミュニケーションをとりつつ、奥のロッカーの上、
丸められたジャージやら誰のものかもわからない置き勉用教科書やらがひしめき合う中に目当てのファイルを見つける。
303名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 01:51:03 ID:j7z2/vDy
>>282-287
今回はオチが無かったのね

>>288-298
GJ!文体にゆゆぼへのリスペクトを感じます。

次にssを投下する時は、最初に「これから連投します」と断りを入れて、
最後に「おわり」・「続く」を入れるようにしていただきたい。
304 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 01:59:37 ID:wdzjWpBr

「いやー危ない危ない。失くしたかと思ったよ」
「なんです?それ」
「明日からの部活勧誘のチラシの原本さー。いいか〜、みんなで死ぬほどばら撒くんだぜぇ〜。」
「あー勧誘・・・。めんどくさい〜」
後輩の一人が読んでいたマンガを伏せて、泣き真似をしてみせる。女子部とはいえど部室なんてこんなもんだ。忘れ物だって暇つぶしだってここにくれば大抵なんとかなる。
「おいおい舐めるんじゃねえぜ、今まで連綿と続いてきた女ソフを廃部に追い込むようじゃあ、部長の名折れってもんよ。」
そういって実乃梨は気をつけをし、見えないマイクの高さを調整し、わざとらしく脱帽して一言。
「過去の部長は引退式で言ったもんさ・・・、『わが大橋高校女子ソフトボール軍は永久に不滅です』ってね」
後輩たちの微妙なリアクションなど気にもせず、実乃梨は颯爽と部室を後にする。
あっという間に3年生になってしまった。必死こいて必死こいて練習して、あと二カ月もすれば夏の予選だ。
でも怖くはない。焦りもない。自分のやることは見えている。自分の進むべき道は見えている。
その道は、決して一人で見つけたものではないと思う。たくさん笑って、たくさん悩んで、時に泣いて。
自分のしていることは、自分のしてきたことは正しかったかと道に迷ったかもしれない。ものすごい遠回りをした一年だったかもしれない。
バカなミスで試合に負けたこともあった。バカなことを言って親友を泣かせることもあった。後悔は数えきれない。でもよいのだ。
それを、一人の力ではなかったけれど、乗り越えた自分がいると信じられる。
高須君は、まっすぐ進む自分が好きだと言ってくれたのだ。彼は分かってくれた。大河も、あーみんも、北村君も。今の自分にはたくさんの理解者がいてくれているのだ。
スタンドで応援してくれている人に、一番の投球を見せずに何がピッチャーだろう。
ソフトも、普段の生活だって、バイトだって、全力投球のフルスイングをしてやるのだ。

「やってやるぜーーー!!」

櫛枝実乃梨、17歳。背番号は1。エンジンは、いつでも全開――。
305名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 02:01:29 ID:+p2gg3u/
>>297
酉!酉!w
306 ◆hDb8Trq50U :2009/05/11(月) 02:03:22 ID:wdzjWpBr
いきなりの投下ごめんなさい。全くテンプレ等見てませんでした。
魔がさしてのとらドラ!勝手にアフターです。なんとなく前に進む2Cの面々を書きたくて。北村がいませんが・・・

とりあえずこれで切ります。また同じ設定で今度はしっかり話になっているアフターss投下しようと思ってますので、そのときはどうかよろしくです。
307名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 02:19:48 ID:7lTNPd2O
>>306
乙。次回作頑張ってくれいッ
308名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 19:05:33 ID:FWzXqvPj
あみものって単語を見てばかちーと竜児の編み物での妄想が膨らみそうでできなかった…
309名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 20:35:12 ID:+p2gg3u/
竜児の編み物か
良さそう(素面)
31098VM:2009/05/11(月) 22:06:12 ID:k52Uhtdk
>>308
これはまた難しいお題目ですねw
でも、ちょっと書いてみましたよ。
次から2レスで。 内容は、即席なのでそれ相応w
31198VM:2009/05/11(月) 22:07:12 ID:k52Uhtdk

『トントントン』
軽快に、しかし、どこか悪戯っぽく、階段を駆け上がる軽い音。
木造のボロアパートのドアが軋みを上げつつ、しかし、静かに開く。
「ごめ〜ん、高須君、忘れ物しちゃったぁ〜。 亜美ちゃんってば天然だからぁ〜。」
玄関から唐突に踊りこんだ影は、天使の顔をした悪魔だった。


 ― あみもの ―


「うおっ、川嶋!」
なによ、そのオバケでも見るような反応は…。
ん? なんか今隠した…
「亜美ちゃん、勉強道具忘れちゃったからぁ〜。 取りに来たの。 迷惑だったぁ?」
「お、おぅ。 いや、迷惑ってことはないが…。 俺の部屋に置いてあるから、今取って来る。 
だから、そ、その、そこにいてくれ、ちょっと散らかってるからな。」
そういって高須くんは、そそくさと隣の部屋に…
散らかってるって… なんにもねーじゃん。
怪しい。

「おぅ、川嶋待たせたな、ってお前なにくつろいでんだよ!」
「え〜、だってぇ、亜美ちゃん、台所に突っ立ってるの、超だりぃし〜。」
「お前なぁ…」
スカイブルーの編み物らしき糸の塊。 あれがさっき隠そうとした物…
さては、またチビトラに…
「亜美ちゃん、ここに来るまでに疲れちゃった〜。」
「疲れるような距離かよ。」
「だって〜 まだ5月なのに、なんか、この暑さおかしくね?」
「確かにな、地球温暖化ってやつだろ。 先日、扇風機を出したから、それで我慢してくれ。」
「亜美ちゃん、馬鹿だからぁ、そういう難しいのわかんなーい。」
「…川嶋。 お前、頭は悪かねーんだから、真面目に勉強すればいい大学いけるぞ。 大体な、
俺の家でみんなで勉強しようって言ったのはお前なんだぞ。 そのくせ全然やる気ねーじゃねーか。」
「な〜に〜? お説教? うぜっ、超ウゼェ。」
「あのな…。」
「高須くーん。 亜美ちゃん喉かわいたぁ〜。 それにちょっと小腹すいちゃった。 なんか作って〜。」
時間稼ぎしなくっちゃね。 あの物体の正体確かめるには。
「…はいはい。 しょうがねぇな。 お姫様はよ。 食ったら帰れよー。」
「は〜〜〜い。」
どれどれ。 あ、やっぱり… サマーセーターじゃん。 ほぼ完成ってところかな。 
あ、この色好きかも。 可愛い〜。
でも、この大きさ、やっぱりタイガーの…
むくむくと悪戯心と、ちょっぴりの嫉妬心が湧き上がる。 うん、ちょっぴりだよ、ちょっぴり。 嫉妬心はね。
着ちゃえ!
上着をすばやく脱いで、サマーセーターを着てみる。
うっは、やっぱちっちぇー。 胸ぱっつんぱっつん、臍モロだし。
んふふふ。 これで高須君の事からかっちゃえ!
31298VM:2009/05/11(月) 22:08:04 ID:k52Uhtdk
*
「できたぞ、ビスケットとチーズ、それにスライスサーモん? うおっ、川嶋、お前!」
「高須くーん、どうよ? このセクシーなバストライン」
「うおぉぉぉ! か、返せ!」
「え〜。 それって、脱げ、って事〜。 やーん、高須君のえっちー。」
「えっちも何も、勝手に人ん家のもん着てんじゃねー! しかも、未完成品だぞ、それ!」
わざと胸を張って見せ付ける。 ニットの網目が開いて、下着の色も形も丸見え。
「おぅ! 胸を突き出すな!」
のびあがって、臍を見せ付ける。
「おおぅ! のけぞるなー!」
真っ赤になって照れちゃって、可愛い〜。 コイツはもうタイガーのものになっちゃったんだし、この位の
悪戯、許されるよね?
「おのれ、川嶋〜 舐めるなー!」
「ん、ぁあん。」
「うお! す、すまん!」
「高須くん、どこ触ってるのぉ? 亜美ちゃん、ちょっと感じちゃった…」
「ほら、ブラの先っちょが網目にひっかかっちゃう…。 これ以上亜美ちゃんのカラダ反応しちゃったら…
ほどけちゃうかもよ? あ、み、も、の。」
「か、かっ、かっ、くぁわ嶋、お、お前、な、なんつう事を!」
「だってぇ、さっきみたいに触られたら、女の子なら誰だって感じちゃう。」
「な、何いってん…」
「ましてや、それが… 好きな人だったら、我慢なんてできないよ……」
「…だ、よ…。」
「………」
「………」
「………なんてな。」
「お、お前なぁ………。」
「あはははははははは。 なーにマジになっちゃって〜 高須君ってやっぱ、しょーもなー。」
「へい。へい。 どーせ俺はしょーもない奴ですよ…って、それ、返せよ!」
「ん〜 仕方ないなぁ、返してやるかっ。」
「なんで、恩を売るような言い方なんだよ…。」
「あははははっ……あっ」
「うおっ!」
悲劇は突然やってくる。 
――― 網糸がさっきつけた扇風機に絡まった ―――
「きゃぁぁぁぁ、 た、高須くん!」
「うおぉぉぉぉ!」
たちまちのうちにセーターはほどけて、見るも無残な姿に変わる。 同時にあたしはソデだけ残して上半身ブラ一丁に…
「うあああああああああああ! なんてこった! 糸にモーターの芯の油がついて… 台無しだぁぁぁぁ!」
あたしの半裸はシカトかよ…
でも、悪いことしちゃったな… 高須君にも、タイガーにも…。
「ゴメンね… 高須君…。」
「くっ。 なんてこった、もうこの糸は使えねぇ… なんて、なんて、MOTTAINAI…。」
お詫びに、ちょっとあたしの胸の感触を………。


                                                        おわり。
31398VM:2009/05/11(月) 22:08:52 ID:k52Uhtdk
お粗末さまでした。
314名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 22:12:52 ID:ldwc0A0d
最後まで半裸ガン無視www
315名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 22:44:06 ID:j7z2/vDy
>>310-313
ウェストのくびれたボインちゃんがセーター着てるのって、特に横から見たりするとアレですよねぇ
大河用に編んだセーターを亜美ちゃんが着たんじゃあ、胸のあたりがさぞヤバかったであろう
316名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:09:21 ID:+p2gg3u/
(;´Д`)ハァハァ
317名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:12:06 ID:JCPQYWoA
318名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:36:41 ID:FWzXqvPj
>>313ありがとう、そしてGJ
ほんのちょっとした他人の思い付きをこんな早さでこれほどの質と量で描いていただけるなんて感無量
319 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:15:57 ID:owwOkHMN
編み物であみもの の流れにぼくいものらせていただきます。
エロありませんがごかんべん。5レス分です。
320 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:16:47 ID:owwOkHMN
あみもの

――つむぐ 【紡ぐ】
(動ガ五[四])
綿・繭から繊維を引き出し、よりをかけて糸にする。
言葉を紡ぐ、紡ぎ出す思い

「うっわ、亜美ちゃんもうそんなに進んだの?はっや〜!あたしなんてまだぜんぜんだよ〜」
よく響く麻耶の声は、心地良いまどろみに沈みかける竜児の意識にもかろうじて届いていた。
「もう昨日から夢中になっちゃって〜、私ってこういうの、好きなんだ〜」
今日は昨日の晩の簡単炊き込みご飯が主役の秋色弁当。
多少冷えたとてそのしっかりとしみ込んだ旨みを残した秋の味わいは、大河のおかわりの魔の手から死守した甲斐もあったってもんだ。
そんなウマい弁当を食って、秋も深まる10月の昼下がり。なにともなく目蓋が降りてきてしまうのもしょうがない。
ぷつぷつと途切れ始める思考。やがて意識も―――
「ね、竜児!あれ!りゅうじってば!」
「ふぐっ」
沈まない。ああ、おれって今寝てんのかな、これ気持ちいいな、寝てるんだろうな、などと曖昧な夢見心地を堪能していた竜児の脳を、切れのある空手チョップが襲う。
昨日あれだけ明日の昼に残すからと説明したにも関わらずおかわりを要求し続け(いつもどおり2合分食ったにもかかわらず、だ)、
ついには冷蔵庫の大河用プリン二日分まで出してやっと収まったかのように思えた大河の機嫌を、またも損ねる事態が起こったのだろうか。
さっきまでの夢のようなまどろみは本当に夢だったのかもしれない。さらば穏やかな昼下がり、などと別れを惜しみ、大河の指さす方を振り返ってみる。
「おう、編み物・・・。川嶋たち、珍しいことやってるな」
321 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:17:12 ID:owwOkHMN

「あの発情エロガキ三人組、今度はあんなミエミエの作戦でバカな男を釣ろうってわけね」
ケッ、っと顎をしゃくって目も合っていない相手を威嚇する大河をスルーし、寝起きの鋭い三白眼で編み物に講じる木原、香椎、川嶋の2C美少女三人組をにらむ。
毛糸で編み物なんてつまらねえ、やはり紡ぐ糸は娘の髪の毛と引き裂いた肌の繊維からと魔界じゃ相場は決まっている、などとはもちろん考えず。
ただ編み物をする女子への淡い憧れをぼんやりと胸に抱いているだけなのだ。
もしも、もしも自分の好きな女子が――櫛枝実乃梨が――自分のために手編みのマフラーなど編んでくれたら・・・。
「たっかすくぅん、なにぼんやりこっち見ちゃってんのぉ?」
気づけば亜美が目の前に。手にはなにやら上質そうな紺色の毛糸がついた編み針をくねくねと躍らせている。
「おう!?あ、ああ川嶋。お前編み物なんて出来たんだな、なんか意外っつかなんつーか」
「やっぱあ、編み物くらい女の子ならできちゃわないとぉ。好きな人に思いを込めて・・・なんてね」
くす、と口元を緩ませる亜美の悪戯な視線は竜児からゆっくりと大河へ。ねぇタイガー?と、挑発的に。
「な、なによ。私にだってできるわよ。編み物くらい。余裕よ、よ・ゆ・う」
偉そうに組んだ腕を解き、手真似で編み物をしてみせる大河の手はしかし滅茶苦茶な動き。
無理なら無理って言えばいいのに〜と、小笑いしながら席に戻る亜美を視線だけで突き殺さんばかりの勢いで睨みつけた大河のなんちゃって編み物は異様な加速を見せる。
「あんのエロバカチワワめが・・・」
322 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:18:43 ID:owwOkHMN


高須家秋色ご飯週間第二弾の栗ご飯を三人でおいしく頂き、食器を全て洗い終えたあたりで、玄関が開く。
ちょっと家からとってくるものが、と食後のお茶もそこそこに出ていた大河が戻ってきたのだった。
「お前、それ・・・。帰りに用事が出来たからスーパー寄らずに別で帰るって言いだしたのはそれでか」
慣れた手つきでノールック食器並べを決めながら、感嘆ともあきれともつかぬ声を出した竜児の目線の先には大河の持った紙袋。
膨れ上がる見なれたチェックの紙袋の中からは水色の毛糸がちらちらとその頭をのぞかせる。
「ばかちーたちに感化されたわけじゃ決して、決っしてないんだけど。その、確かにいい作戦だし、北村君にあげたら喜ぶかな・・・と、思っ、て」
定位置に座り込むと大河は袋の中から毛糸やら針やらハサミやらといったどうやら一気に買いそろえたらしい編み物セットを広げ始める。
「そりゃ喜ぶだろうな。男の夢みたいなもんだし。」
「ほんと!?」
「ああ。誰だってそうだと思うぜ。でも大河お前、編み物できんのか?」
きょとんと竜児を見上げる大河の顔をみて、不安ははっきりと確信に。
「できるわけないじゃない。なんのためにここに持ってきたと思ってるのよ。竜児、おしえて!」
「はぁ・・・。あのな、おれもさすがに編み物まではやったことねえよ。たしかに主婦染みた高校生であることは自覚してるが、そこまでどっぷり主婦やってるわけじゃねえ」
「ええ!?あんたじゃあこれどうすんのよ。買っちゃったじゃない!」
「お前が勝手に買ってきたんじゃねえか!・・・とにかく編み物本みたいなもんを買ってくるしかねえんじゃねえか。俺らだけじゃどうしようもねえ」
「そ、そうね」
迫る冬にまだ負けぬとばかり秋虫たちが鳴きかわす10月の夜に、足音が二つ。
323 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:19:08 ID:owwOkHMN

「失礼しましたー」
放課後、最近では珍しく一人歩く大橋高校1,2を争う凶悪ヤンキー高須竜児は、そろそろ時期も終わる秋の紅葉に掛けて職員室を血の海にした帰り、ではもちろんない。
担任の恋ヶ窪ゆり(晴れて三十路突入、同時に独神と生徒から崇められ始めた)に週直の日誌を提出しに行っただけである。
「わわわわわたしなんてもう三十路だし、絞ってもストレスと加齢でドロドロになった汚い血しかあわわわあああ」
などと竜児の突然の訪問に怯えきっていた独神とはあまり関わらないように用件だけを済ませ、まだ4時半だと言うのに日もすっかり傾ききったグラウンドをぼんやりと眺めてみる。
「ハッ、今日はかのう屋の特売タイムセールだった!しまったあああ」
さっさと机を整頓して帰ろうなどと考えながらあわてて教室のドアを開ける。
「・・・川嶋?」
「あ、高須君」
「珍しいな、お前が一人で残ってるなんて。」
どうやら木原も香椎も一緒ではないらしい。実乃梨はもちろん部活だし、大河も亜美に感化されて編み物を始めて以来何度も失敗しながら(そのたびに竜児が驚異的な飲み込みの良さで修正していた)
ようやく基本の編み方がモノになり、それからというもの学校が終わるなり家で毛糸と針相手に奮闘中だ。もちろん大河に関してはよほどのことがない限り亜美と学校に残るなんてことはしないだろうが。
「出来たんだー、これ」
亜美が紙袋から取り出したのは綺麗な紺色のマフラー。丁寧に編まれたのが傍目でもわかる。夕日に照らされて、肌ざわりのよさそうな毛糸は黒っぽく艶めく。
「おう、先週からやってたやつか。綺麗に出来てるじゃねーか。」
「大変なんだぜー今。お前が大河にけしかけるからよ、あいつもマフラー編み始めたんだけどこれがへたくそで・・・、川嶋?」
ガチャガチャと乱れた机と教卓を整頓しながらふと見た亜美の表情は物憂げで、竜児は思わず手を止めてしまう。
「・・・どうした?」
324 ◆hDb8Trq50U :2009/05/12(火) 04:19:57 ID:owwOkHMN

「ねぇ、これ。高須君にあげる・・・」
丁寧に両手ですくい上げるようにしてマフラーを取り上げ、亜美はゆっくりと竜児に近づく。夕日に照らされた伏し目がちの表情は、その手のマフラーよりも艶っぽく、透き通るよう。
「か、川嶋?」
あまりの美しさに一瞬息を飲み、躊躇なく目の前まで歩みを進める亜美に思わずのけぞり、自分で整頓したばかりの教卓にぶつかる。
教卓の脚がこすれる音が鈍く教室に響く。まるでキスをするときの恋人同士みたいに、亜美の両腕が竜児の首に回される。
「・・・っ」
息ができない。半年近くほとんど共同生活、疑似家族を形成していた大河とも、間違ってもこんな距離感で接したことなどない。どうしていいかわからない。
ゆっくりとマフラーを竜児の首に一巻き。滑らかで優しい毛糸の感触と、かすかな亜美のにおい。顔が近い。距離がない。頭が沸騰してどうにかなりそうだ。これはまずいんじゃないのか。
「私の気持ち、こめて編んだんだ」
竜児を見上げる潤んだチワワ目と一瞬だけ目が合ってしまい、とっさに目をそらす。夕日が真赤だ。眩しくて目があかない。だがもしかしたら俺の顔はもっと赤い。
「川島・・・ぐっ!」
「なぁーんて、言ったらどうするぅー?」
首にぐるりとまいたマフラーの両端を亜美が締め上げる。その顔に憂げな少女の表情はなく、あるのは悪戯な小悪魔の微笑みだけ。
「顔真っ赤にしちゃってぇーなに考えてたの?」
「お、おっおまえが!!へんなことすっからだろうが!」
思わず大きな声を出してしまう。顔が熱いのはおちょくられた恥ずかしさか、それとも。
「なーにムキになっちゃって。つまんないな」
しらけるー、と呟きながら亜美は自分の席へ。バッグを肩にかけ、いつものぶすっとした黒亜美モードに表情変化、つかつかと竜児の方へ戻ってくる。
「これ、返してよ。私の。高須君にはもったいないくらいの良い毛糸使ってるんだから」
首元から片手でするりとマフラーを抜き取り、ドアの前で振り向いた亜美の表情は今度は鉄仮面の営業スマイル。
「からかっちゃってごめんね、高須君。また明日♪」
「なんなんだよ・・・。顔コロコロ変えて」

その後、なぜか何度教室中の机を整頓しても落ち着かなくて納得いかなくて、結局かのう屋のタイムセールに乗り遅れ、
いろんな意味で疲れ果てて家路についた竜児を待ち受けるのが、もはや原形をとどめぬ水色毛糸の塊であることを、まだ彼は知らない。

おしまい
325名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 04:40:13 ID:Ih7Dwv0H
>「私の気持ち、こめて編んだんだ」
亜美ちゃん様に言われたら間違いなくオレは失神するね。

>毛糸で編み物なんてつまらねえ、やはり紡ぐ糸は娘の髪の毛と引き裂いた肌の繊維からと魔界じゃ相場は決まっている
悪さに天井はないのですか、面白いけれども。

亜美ちゃん萌えSS超GJ。
326名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 05:36:45 ID:qrst2AZ0
結局マフラーはどうしたんだろーね
327名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 06:42:29 ID:sDGXhLuy
GJ!
情景描写や心理描写をしっかり書く職人さんが増えたな
良い傾向だ
以前は、「会話文だけでSSは十分成立する」とか言ったのがのさばっていたことを思うと、
隔世の感
328名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 08:07:59 ID:5uEZ39FY
>>327
成立はするんだけど、むしろ難易度高いし あと評価が分かれやすいんだな
329名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 10:13:53 ID:dOgsjN6E
GJ!!かなりGJ!!!!!
情景描写が上手くて、俺の好きな雰囲気の作品だわ
マフラーを竜児の首に巻くところは、萌え死ぬかと思ったぜ
330名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 10:20:34 ID:cR07YoH9
331名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 11:39:37 ID:Di5Hm2Xa
他の書き手を引き合いに出してけなしつつ褒められたんでは、褒められたほうも素直には
喜べないと思うのですよ。
大事なのは、その文章が読み手の脳裏にどんな情景を描くかということであって、
対話形式でも、よく訓練された読み手であれば、自動的に間島さんや釘宮さんの声で脳内再生されますから
「あのキャラたちの、こんなシーンが見たい!」という欲求を満たす手段としては、
アリだと思います。
あの阿修羅像に例えるくだりには吹いたw
332名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 12:05:37 ID:Lb5aX4nv
GJ!


ここは流れが速すぐる……
333名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 16:17:34 ID:oSP7SsDA
待望の麻耶が活躍するSSが二つ見れたし
少数派なのが好きな自分としては、ゆりちゃんがメインヒロインのSSを期待だな
今までいくつか作品あったけどゆりちゃん×竜児のがっつりメインではなかったしな
ななドラみたく、いかにも原作の雰囲気を引き継ぎながら
メインヒロインに不足無しってかわいさを見せてくれるSS希望
334名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 18:46:09 ID:C7ksNEwG
>>324
切ないですねぇ〜。
この身の引きっぷりこそ、亜美の真骨頂と言えましょう。
渡せなかったマフラーの行方で一本書けそうですわw
GJです。
335名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 20:05:18 ID:AY9pVIZz
>>327
ようカス。お前まだこのスレに居たんだ?
下らねぇ事書いて無いで早くいつもみたいにクソみてぇな作品投下しろよ
あ、日にち跨ぐの忘れるなよ?
336名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 21:28:49 ID:sDGXhLuy
>>335 みたいな輩がいるって、このスレはどんだけレベル低いんだ
337名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 21:30:40 ID:NSSR3w4v
抽出 ID:sDGXhLuy (2回)

327 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/05/12(火) 06:42:29 ID:sDGXhLuy
GJ!
情景描写や心理描写をしっかり書く職人さんが増えたな
良い傾向だ
以前は、「会話文だけでSSは十分成立する」とか言ったのがのさばっていたことを思うと、
隔世の感

336 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/05/12(火) 21:28:49 ID:sDGXhLuy
>>335 みたいな輩がいるって、このスレはどんだけレベル低いんだ
338名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 22:08:26 ID:MW5+A/PR
>>327
直訳すると、
例の人の作品が受け入れられて、情景描写や心理描写をしっかり書く俺が受け入れられないのはオカシイ。
情景描写や心理描写をしっかり書く俺GJ!
ってことか?
てか、いつまで引きずってんだよ?もう大分前の話だよな?俺が皆を代表して謝るから、もう二度と書き込まないでほしい。
その節は、たくさんGJしてあげなくてすみませんでした。
339幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:15:12 ID:76IiuHm0
「ななどらぽーたぶる」ってタイトルでSS投下した者です。
続きができたんで投下します。
前回タイトルが「ななどら」と被っているという指摘があったので
これ以降はタイトルを「とらドラP! 幻の奈々子√」に変更させていただきます。
もしまとめサイトに掲載されるのであればお手数ですが管理人様の方で
前回投下分も「とらドラ!P 幻の奈々子√」としていただけると助かります。

以下注意事項
*「ななどらぽーたぶる」の続きです。
*展開はPSP版ゲーム「とらドラP!」の一場面からの派生です。
*「ななどら」の作者様とは別人でその作品との関連は一切ありません。
*プロットの都合上ゲームのネタバレを含みます。
*当方SS初心者ですので気づいた点があれば遠慮なくご指摘ください。
340幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:15:56 ID:76IiuHm0
               *******

亜美たちのところへ向かった私は入れ替わりにアロママッサージを体験することになった。
マッサージはやめて亜美と話をするべきかな?って思いもしたけど、
こんな機会めったにないんだし…いいよね?

鼻腔をくすぐる心を解き解すような香りに体に加わる心地よい刺激。
本来なら身も心も委ねてしまいたいところだけど、今はそんなわけにもいかない。
体だけ預けて、心に思うのは亜美のこと。

亜美になにかあったのは確実。そしてそれは多分スドバ前に居合わせた3人に関係してる。
まぁ後半は勘の域を出ないんだけど、
正直なところそうであってくれないと私にできることはないもの。
モデルのお仕事や、ご両親との間でなにかあったとしたら、
私には気休め程度の言葉をかけることしかできない。
けど、あの3人に関係してることなら私にもきっとできることがあるはず。

問題は「なにが」起きたのかを知る術がないこと。
亜美とはそれなりに付き合いがあるけど、思い当たるようなことはない。
最近のメール・電話のやり取りにも変わったところはなかったし、
一緒に遊んだときもそれは一緒。

残された可能性としては私の知らない所でなにかがあって、
それを亜美がずっと隠していたって事だけど…もしそうならどうして今になってそれが表に出たんだろう?
いくら考えても、答えも、そこに続く道筋も見えてこない。

頼みの綱の高須くんは記憶喪失だし…ん?記憶喪失!?
そうじゃない!その「なにか」が高須くんの「記憶喪失」そのものってことはないかしら?
記憶喪失って本人にとっても周囲の人にとっても大変なことだし、
亜美に影響を与えた「なにか」になりえるんじゃない?
だけどそれなら「記憶喪失」と亜美がどう関わってくるの?
記憶喪失の原因に亜美が関わってるとか?ダメね…全然分からない。

やっぱり高須くんに記憶を取り戻してもらうのが一番の近道なのかもしれない。
それなら私にとっても彼にとってもきっと「いいこと」のはずだ。

よし、決めたわ。私も高須くんの記憶を取り戻すお手伝いをしましょう。
そのためにはまずさっきの「保険」をフル活用しないと。
うふふ、その前に麻耶にマッサージ中の亜美の様子を聞くことも忘れちゃだめね。


マッサージが終わった私は亜美達と合流することにした。
マッサージのおかげか、その間に考えたことのおかげか、少しだけ視界が明るくなった気がしていた。


                   *******
341幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:17:44 ID:76IiuHm0
亜美達と合流したはいいけど、
みんなとの集合時間が迫ってるって事でゆっくり話をする時間はなかった。
それとなく麻耶に亜美ちゃんの様子を聞いてみたけどめぼしい収穫はなし。
麻耶…北村くんと一緒でうれしいのは分かるけどもうちょっと友達に気をかけて欲しいな。

着替えを済ませらく〜じゃの外へ。
みんなで改めて能登くんにお礼を言って解散…
のつもりだったけど帰り道で話してるうちにみんなでご飯を食べようってことになったみたい。
北村くんと一緒ってことで麻耶はノリノリだし、
私としても悪い提案ではなかったから麻耶に付き添うことにした。
私達が行くからか亜美ちゃんも一緒に食べていくみたい。
ついでに先生も北村くんの気遣いで参加する事になった。

帰り道の都合で能登くんと春田くんとは別れた後だったんだけどね。
能登くん、なんだか哀れね。心の中で応援してるわ…行動に起こすつもりはないけれど。

と、そんな風なことを考える内に私達8人はジョニーズについた。
各々好きな物を頼み、文化祭の打ち上げの話なんかをしながら和気藹々と食事、
そんな中で実乃梨ちゃんのおばけ屋敷の話を聞いていた先生から思わぬ話題がでた。

「そういえば…みんなは展望台の幽霊の話、聞いたことありますか?」

先生によると神社の先にある展望台で先生の友人何人かが幽霊をみた…らしい。
北村くんが地雷を踏み抜いたせいで、
失恋の古傷が開いた先生が早々にお手洗いへと消えたため、詳細は不明だけど。

北村くん…いい加減にしとかないといつか女の子に刺されるわよ?
342幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:18:37 ID:76IiuHm0
北村くんに呆れつつ(こればっかりは麻耶も呆れてたみたい)
先生について亜美と麻耶と3人で思うところを話し合っていると、

「肝試し、やらない?」
「大河!いい!それ、ナイスアイデア!!いつやる?」
「冬休みも残り少ないし明日なんてどう?みのりん?」

タイガーちゃんの突然の提案とそれに反応する実乃梨ちゃん。
なぜか乗り気な北村くんに、タイガーちゃんによって参加が決定された高須くん。
3人(+1人)によってどんどん予定が決まっていく。
なんで真冬に肝試し…流石手乗りタイガーっていったほうがいいのかしらね?
かわいそうな高須くんはタイガーちゃんに逆らえずになんだか微妙な表情のまま黙り込んでるし。
タイガーちゃんは高須くんの記憶喪失のこと知ってるのかしら?

「え〜、あたしはパスだなぁ、明日予定あるし」

麻耶は予定があって行けないみたい…本心は北村くんといたいんだろうけど。
「私もそういうのには興味ないかも。」と私も断る。
正直こういうのはほんとーに興味が湧かない。きっと亜美も同じだろう…

「そう?あたしは面白いと思うな」

え?うそ?なんで?
亜美は普段からそういうの興味なさそうだし、
ましてや今は内心あの3人から距離を置きたいんじゃないかと思っていた。
けど予想に反して亜美の口からでたのは肯定的な意見。
もしかしてあの3人との間になにかあったってのは私の勘違い?

そんなことを考えている内に明日の肝試しの決行が決定。
その後、お手洗いから帰ってきた先生の地雷を、再び北村くんが踏み抜き、
気まずさに耐え切れず誰からともなく解散が宣言された。
北村くん…


            ********
343幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:20:37 ID:76IiuHm0
ジョニーズで解散した後の、亜美と麻耶と3人で喋りながらの帰り道。
私は今朝からずっと様子がおかしかった亜美に、
さっきのジョニーズでのことも含めていろいろ聞きたくてチャンスを伺っていた。
けど、高須くんのアドバイスから直接的な言葉は使えないし、
自然に話題をふるのは思いのほか難しくて、話の内容は取り留めのないことばかり。

「らく〜じゃ、最高だったよね〜奈々子」
「麻耶ったら〜、
 本音は北村くんがいたらどこでも最高〜、なんじゃないの?」
「えぇ〜、そんなことないって。
 今日は特にアロママッサージがヤバかったな〜、ね?亜美ちゃん?」
「…えぇ、そうね麻耶、
 ほんとに気持ちよかった〜、また行きたいな〜」
「だよね〜、また能登のヤツがタダ券くれないかな〜」

やっぱり亜美の様子はどこかおかしい。
いつもなら私と麻耶、どちらが話を振ってもすぐに返事があるのに。
北村くんといられて有頂天な麻耶は気づいてないみたいだけど、
さっきから少しだけ返事が返ってくるまでに間がある。それに亜美から話題をふってくることがほとんどない。
なんだか今は考え事をしてるみたい…かな?

「ほんとにご機嫌ね、麻耶
 私はちょっと疲れちゃったなぁ〜、プールでの運動が思ったよりハードだったし…
 亜美ちゃんはどうだった?」
「そうね〜、仕事柄いつも運動してるし、丁度いいくらいだったかな?」
「亜美ちゃんほんとにすごいなぁ、なんていうか…パワフル?
 明日も肝試し行くんでしょ??あぁ〜予定がなければ私も行ったのに!!」

麻耶から予想外のフォローが入る。
肝試し(ていうか北村くん)が麻耶なりに気になってのことだろうけど、
これなら比較的自然に肝試しについて聞けるし、もしかしたらうまく亜美の本心を聞きだせるかもしれない。
心の中で麻耶の無意識の妙手に感謝した。
344幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:21:17 ID:76IiuHm0
「女の子に向かってパワフルって…それちょっとひどくな〜い?
 肝試しなんてそんなに体力関係ないじゃない」
「それもそ〜だね〜、ごめ〜ん、亜美ちゃん」
「うふふ、けど私ちょっと意外だったなぁ、亜美ちゃんがああいうのに参加するなんて。
 ああいうのはキライなんだっておもってた」
「そんなことないよ〜」
「あ、私もそれ思った!普段の亜美ちゃんからは想像できないもん!」

麻耶…あなたもしかして亜美のことに気づいてて、あえていつも通りに振舞ってるの?
もしそうだとしたら今までの私は随分とこの親友に対して失礼な考えを持っていたのかもしれない。
親友の行動に感謝と尊敬と疑問を持ちながらもう一人の親友の返事を待つ。

「ただ、今日はなんとな〜くそんな気分になっただけだって〜、ほんとに。
 

 …それに今は、いつもと違うこと、してみたいんだ…」


「え…?」
「な〜んでもない。
 あ、私こっちだから!じゃあまたね、奈々子、麻耶」
「うん!ばいばい、亜美ちゃん。
 奈々子、私もここで帰るね。ばいば〜い」

「…ええ、さよなら、亜美ちゃん、麻耶」

最後の方は声が小さくてつい聞き返しちゃったけど、さっきの言葉の中に亜美の本心が見えた気がした。
意識して聞いていなければ聞き逃していただろう小さくか弱い声。
まるで今にも消えさってしまいそうな儚さを感じた。
亜美は一体どんな思いを込めてその言葉を口にしたんだろうか…

亜美の真意を見抜くことができないもどかしさと、
聞き逃すことなく亜美の、親友の声を聞けたという安堵。
相反する2つの感情が一人帰路についた私の中で渦巻いていた。


                    *******
345幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:22:40 ID:76IiuHm0
家に帰った私は一人寂しくおせち料理の残りを食べるお父さんを食卓に残し、
自室のベットの上で考えにふけっていた。

「今はいつもと違うことをしてみたい」

亜美が別れ際に言った本心であろう言葉。
きっとその為に今日一日様子がおかしかったんだろう。
いつもと違うことっていうのは、肝試しに参加することよね?
確かに肝試しってのは亜美のイメージから離れているけどそれがどういう意味をもつの??

ただのイメチェン…のはずはないわね。
亜美の様子から考えたらもっと別の、深い意味があるはず。
だけどそれがわからない。

次に考えるのは何故、「今」いつもと違うことをしようとしているのかってこと。
思い当たることといえばやっぱり高須くんの記憶喪失…
けど亜美の言葉を聞いた今、これに関して不用意に動けなくなった。
だって亜美はもう行動を起こしてしまっているもの。

昼間は高須くんの記憶を取り戻すことが一番の近道だって思った。
だけどもしも亜美を動かしたきっかけが高須くんの記憶喪失なら、
記憶を取り戻させることで亜美の思いを無駄にしちゃうかもしれない。

亜美の行動の結果が出るまでは高須くんのお手伝いはできないな…
記憶を取り戻そうと頑張っている高須くんには悪いけど、私にとってはやっぱり亜美のほうが大切だもん。


「あ〜あ、”保険”無駄になっちゃったかな」


思わず口を突いて出た独り言。
思いのほか、それを残念に思っている自分。
なんでこんなにも?亜美のためには仕方のないことなのに。

「保険」、高須くんの連絡先が無駄になったことのどこに残念がる必要があるんだろう?
そう考えてようやく私は気づいた。

あ…私、自分から男の人の連絡先聞いたの初めてだ…

相手に求められて交換したことはあった。
だけど「自分から」は一度もなかった。

元々積極的に動くことを苦手にしていたこと、
中学生の頃くらいから感じられるようになった私の体へ向けられる男の人たちの目線、
そういったことからか私はどこか男の人が苦手だった。
なのに何故、高須くんには私から連絡先を聞こうと思ったんだろう?
亜美のためにどうしても必要だというのなら分かるけどあくまであれは「保険」なのに。
346幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:23:43 ID:76IiuHm0
プールサイドで高須くんと話したときのことを思い出してみる。
浮かんでくるのは私を気遣う優しい声、そして真っ直ぐに私を見るその凶眼。
そうさ、高須くんは「真っ直ぐに」私を見てくれていたんだ。

あの時の私の服装は水着の上に上着を羽織っただけ、
春田くん辺りならきっと露骨に私の体に視線を送ってきていたはず。
けど高須くんはそうじゃなかった、しっかりと私の眼を見てくれていた。
その眼光こそ鋭かったけど、今思えばそれだけ真剣に私のことを考えていたんだろう。

私はあのときの高須くんの態度がうれしかったのかもしれない。
男の人に優しくされたことはあっても、そこにはいつも下心が見え隠れしていた。
下心を感じることなく男の人に優しくされることなんてほとんどなかった。
同じ「優しさ」でも下心のあるなしでこうも印象が変わるんだ…

彼の優しさに気を許し、亜美のことを打ち明けた私。
私の行動と彼の行動を比較して罪悪感を持った私。
偶然とはいえ彼が記憶を取り戻す助けになれたことに安堵する私。
彼が不意に見せた子供っぽい表情をどこか身近に感じた私。
ただの保険と言い聞かせながら「自分から」彼との接点を持とうとした私。

昼間の私は自分でも気づかないほど自然に彼を頼っていた。
彼に対する信頼から彼に亜美のことを打ち明けた。
罪悪感を持ち、それがなくなったことに安堵したのだって根底にそれがあったから。
彼を「頼れる人」だと思ったからこそ子供っぽい表情を身近に感じ、そして「自分から」行動した。

優しくて頼れる人…ね。
昨日までは目つきが悪くて近づきがたい人ってイメージしかなかったのに、
たった一度二人で会話しただけでそのイメージが大きく変わってしまっている。

人はみかけによらない、そんな簡単なことを忘れていた自分を戒めつつ、
湧いてくるのは彼に対する興味。
もっと親しくなれば、彼は一体どんな意外な一面をみせてくれるんだろう。

……このまま「保険」を無駄にしちゃうのはもったいないわね。


               *******
347幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:25:18 ID:76IiuHm0
お父さんの催促で準備したお風呂に入った私はベットの上で携帯を片手に考えにふけっていた。
さっきまでと違うのは考えてることが亜美のことではなく高須くんとの「保険」のことだってこと。
彼に興味が湧いて「保険」を別の目的で使おうって決めたのはいいんだけど、
具体的にどうするか全然いい考えが浮かばない。

そもそも最初は亜美のためにそれを使うつもりだったし、彼もそのつもりでいるだろう。
さっきからいろいろメールの文面を考えてはいるんだけど、どれもこれも不自然なものになってしまう。
最初に亜美のことに関係したメールをするって手を考えたんだけど、これはリスクが高い。
優しい彼のことだから、そうすればきっと話に乗ってきてくれる。
だけどそれは彼が記憶を取り戻すきっかけになりかねない。
亜美のために、そして彼女を心配する私のために彼は必死で記憶をとりもどす糸口を探すだろう。
私の送るメールの文面や今までみんなと交わした会話。
一体何がきっかけになるかわからない以上不用意に刺激するわけにはいかない。

もう一度文面を考えるためメール作成画面を開くと、
それとほぼ同時にメール受信中のアイコンが点灯した。

「from:高須竜児
 クリスマスイブのパーティで何かがあって、それを大河が知っているらしいってことが分かった。
 結局アイツは何も教えてくれなかったが、どうにかその周辺のことは思い出せた。
 だけど肝心のパーティのことがどうしても思い出せない。
 川嶋にも関係してることかもしれないんだが香椎はなにか思い当たることはないか?」 

クリスマスイブのパーティか…
真っ先に思い浮かぶのはタイガーちゃんと2人でステージに立っていた亜美の姿。
けどあれがその「何か」とは思えないし、他に思い当たることは…

そういえばあのステージの少し後、急に亜美の姿を見なくなたっけ…
最後に見たのは…確か……

そうだ!あの日最後に見た亜美は確か高須くんと話をしてたわ。
もしかしてそこで何かあったの?
タイガーちゃんの姿もステージ後見なかった気がするし、
それならあの娘が何か知っててもおかしくない。
348幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:26:11 ID:76IiuHm0
クリスマスパーティについて知っていることを高須くんに返信しようとして手を止める。
果たして彼にこのことを話していいのだろうか?
これでもし記憶が戻ってしまったら亜美の思いはどうなるの?
クリスマスに何があったかを知ることと、今の亜美の思いを優先すること。
どちらが亜美にとって「いいこと」なんだろう?

亜美の思いを優先する。
聞こえはいいけどそれは私にとって何もかも不確かなまま事態を放置するってこと。
一方クリスマスになにがあったかが分かれば、
今はまだ見えてこない亜美の真意が見えてくるかもしれない。
そうすればきっと私が彼女のためにできることが見つかるはず。

…そして高須くんも記憶を取り戻すことを望んでいる。

覚悟を決めた私はメールの作成を再開し、私の知る限りのことを彼に伝える。
彼からの返信を待つ時間がもどかしい…何度も新着メールを問い合わせてしまう。
そうやって待つこと20分。ようやく彼からの返信。

「from:高須竜児
 川嶋と話したこと、別れ際のアイツがどこか不機嫌だったってことは思い出したんだが、
 肝心の話の内容が思い出せない。他に思い当たることはないか?」

ダメだった…
知ってることは全部伝えたし、他に私に残されてるものと言えばパーティ中にとった写真くらいしかない。
メールでってのがダメだったのかしら?
やっぱり電話で直接話したほうが情報量が多いはずだし…
そう思い電話をしてもいいかメールで聞いてみる。
間もなくして彼からの着信。
349幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:27:40 ID:76IiuHm0
「もしもし、高須くん?」
「おう。…すまん、何も思い出せなくて」
「気にしないで。こればっかりは仕方ないことだもの。
 私が知ってるのはさっきのメールで伝えた分が全部なの。後はパーティで撮った写真があるくらい…」
「写真があるのか?迷惑じゃなければそれ見せてもらえないか?
 何か思い出すきっかけになるかも知れん」

私の手元にある写真は携帯で撮ったものとデジカメで撮ったものの2種類ある。
携帯で撮ったほうはメールで送れるけど、デジカメで撮った方は無理。
…それなら一度会った方が早いわね。

「写真を見せるのは構わないんだけど、メールで送れないものもあるから…
 ねぇ、高須くんさえよければ一度会わない?
 そうすれば全部の写真をみせれるんだけど、どうかしら?」
「香椎さえよければ是非そうして欲しいんだが…いいのか?」
「気にしないで。
 困ったときはお互い様よ。それにこれは亜美のためでもあるんだしね。
 会うのはいつがいいかしら?高須くんの予定は?」
「それなんだが…香椎は明日予定あるか?
 できれば明日の肝試しまでに会いたいんだが…」
「明日?随分急なのね?」

本心を言えば肝試しの後のほうがいい。
亜美のことを考えれば、明日一日は彼に記憶喪失のままでいてもらったほうが都合がいい。
クリスマスの出来事を知るのはその後でも遅くはないはずだし…
そう考えながら彼の答えを待つ。

「…明日の肝試しには俺なりに思うところがあってな。
 もちろん無理にとは言わんが、予定がないなら明日会えないか?」

プールサイドで亜美のことを真剣に考える高須くんの顔を思い出す。
きっと電話越しの彼も同じ顔をしているだろう。
彼に対する信頼を自覚すると同時に昼間感じた罪悪感が蘇り、咄嗟に答えを返してしまう。

「分かったわ。明日会いましょう。
 場所はスドバでいい?時間は…そうね14時くらいでどうかしら?」
「ああ、それで頼む。無理を言って本当にすまん。」
「うふふ、気にしなくていいって言ったでしょ?
 それじゃあもう切るわね、また明日、高須くん」
「ああ、また明日」


通話を終えた私は携帯の画面に目を向けたまま時間を忘れ、ただただ考えていた、
一度は亜美を優先すると決めながら、今は彼を優先した自分の選択について…
350幻の奈々子√:2009/05/12(火) 22:30:48 ID:76IiuHm0
今回は以上です。
一応ここまではゲームの進行をベースに会話選択キャラを奈々子にしたって感じです。
次からはオリジナル展開のが部分多くなるので遅筆になると思います。申し訳ありません。
今後の展開も含め思うところがあれば是非ご指摘ください。
351名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 22:45:34 ID:R/oq+2QY
このスレ通して読めば大体気づく。

gj言うやつの一人にあまりにも程度の低いやつがいることを。
最初住民の質が低いのかと思ったが
そいつただ一人が低かったことに安心したぜ。
352名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:46:57 ID:oSP7SsDA
>>351
そういうこと書くのが1番レベルが低いことに早く気付け
353名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:51:48 ID:As7SE3zb
で、奴が投下してた作品はどれなんだ
昨日から気になって仕方ない
354名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 00:14:17 ID:l09pnI31
新参にその作者について産業で
355名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 00:35:34 ID:Jyq7kXul
>>339-350
GJ!とらドラP!は未プレイなのですが、ゲーム中にどんなイベントがあるのか
なんとなく伝わってきました。
個人的には、亜美と麻耶と奈々子にアロママッサージできたら死んでもいいです。
356名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 03:08:48 ID:al+pqlqv
奈々子よかった、GJ!
ゲームでも攻略出来たらいいのにな
357名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 03:29:56 ID:EqyEodGU
さくらのSSが少ないことにびっくりした
358名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 03:33:13 ID:qq9cPpvi
今から、ちょっと投下しますね。

亜美は冬休み、ハワイで撮影の仕事だった。
という点を補完した上で読んで頂けると助かります。
原作通りだから、大丈夫ですよね?
359チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:34:51 ID:qq9cPpvi
北村との会合より、さらに数日後。
その日は休日で、俺は、昨晩の疲れもあり、と、いっても単に、曇っていた鍋を磨いていただけなのだが、
昼前だというのに、だらしなく惰眠を貪っていた。
我ながら、自堕落だとは思うのだが、泰子は、まだ寝ている様で、飯の準備や洗濯は既に終えているし、
掃除については、まぁ、掃く、拭くはしてある。掃除機をかけて泰子を起こすと悪いからな。
等と、ひとしきり言い訳をしておいて、布団の中で安穏としていた訳である。
だが、そういう時間は長くは続かず、そう、具体的に言えば、携帯の着信音によって、終わりを告げた。
ディスプレイに『あ〜みん』と、表示されていなければ、
少し、不機嫌になったか…事によっては、居留守位の事はしたかもしれない。
人間、脳が半分、眠っていると、何をするか解らないから、怖いものである。
『もしもし?』
「…おう。」
『あれ?何か、元気ないね?』
「今、起きたトコなんだ。」
『竜児が寝坊?珍しいなぁ〜調子良くないの?』
「いや、昼寝だよ。寝坊じゃねぇ。
別に調子は悪く無いぞ、心配してくれてありがとな。」
『うん。問題ないなら良かった。』
「おう。そういえば、亜美、この時間に電話出来るって事は、もう帰って来てるのか?」
『うん。昨日の晩に。
ホントは、すぐに電話したかったんだけど…
家に付いたら、倒れちゃって…気付いたら寝ちゃってた。』
「おう。お疲れ様。
てか、亜美の方こそ大丈夫か?」
『うん。いつもの事だもん。これでも、一応、プロだし。
それで、今から会えないかな?』
「おう。いいぞ。
どこで、待ち合わせにする?」
『…ん…とね、その…亜美ちゃんの家まで来て欲しいなぁ〜なんて。』
「おう。かまわないぞ。
って…言っても、俺、亜美の家、どこにあるか聞いてなかった気がするが。」
『うん。まだ、言ってないもん。
大橋で待ち合わせしよっか?近くなんだ。』
「おう。それじゃあ、お土産に何か作って行くから、30分後に大橋で良いか?」
360チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:35:37 ID:qq9cPpvi
『…今、スグが良い。スグに会いたい。』
「俺だって、早く会いたいけど…
手ぶらって訳にはいかないだろ?」
『イイよ手ぶらで。
今、家の人居ないからさ。』
「え?お前1人なのか?」
『そうだよ。』
「女の子が1人の時に他人ん家に上がり込むなんて…けし−
『からなくないから。
てか、こないだ、初めての女の子に あ〜んなハードな事しといて…
そんな事、言う気!?』
「冗談だよ、冗談。解った。スグ行くから。大橋だな?」
『うん。待ってる。』
「おう。」

電話を切った俺は、泰子が飢え死にしない様、昼飯をテーブルに広げ、蠅除け篭を乗せ、
その横に、メモを残し、あと一仕事だけしてから、家を出た。

「おっそ〜い。」
亜美は、橋の真ん中で仁王立ちになり、悪態を付きつつも、
満面の笑みで、俺を迎えた。
「…ぜぇぜぇ…無理言うな…はぁはぁ…これ以上…走れるかよ…ごほっごほっ…」
柵にもたれかかり、持参した水筒から、ぬるめの烏龍茶をコップに注いだ。
へたりこんだ俺の半身を、亜美の影が、にゅっと伸びて覆った。
「なっさけないなぁ〜」
亜美の事だから、また意地の悪い顔で俺を見下ろしている事だろう。
まぁ、そんな亜美も嫌いじゃないから…と、頭を上げると、
「ほら、手。掴まって。」
天使の様な笑顔で、スッと手を差し伸べる亜美が、そこに居た。
「お、おう。」
「ふふふん。感動した?超イイ娘の亜美ちゃんに。この優しさに。」
手を取った俺が立ち上がった瞬間、天使の様だった口の端が、ニィ〜っと、意地悪く歪んだ。
おう。ここでくるのか。これだよ。この黒さだよ。これが亜美だ。
この時、亜美の黒さが愛おしいと、思える程には、俺は、亜美に慣れていた。
「おう。」
「あれ?おう。…なんだ?絶対、するか。だと思ったのに。」
「おう。色々、思うトコがあるんだよ。心境の変化っつーか。」
「へぇ…。じゃあ、良い娘の亜美ちゃんには、何かご褒美があるべきだよね?
…このまま家まで、手、繋いだままでいよっか?」
など、と言いつつ、手を握り変えて、見せつける様に、顔の高さまで上げた。
「おう、よろしく…」
「ヤダ、緊張してんの?
手、繋ぐ位、今更じゃん?もっとスゴイ事いっぱいしたよね?」
361チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:37:35 ID:qq9cPpvi
「お前だって…緊張してるんじゃないのか?声、上擦ってるぞ?」
「そ、そんな事…ないよ。」
「おう、あるな。」
「…可愛くねぇ奴。」
「…可愛い奴。」
「ふんッ。言ってろ。ばか。」
プリプリ怒りながら、大股で歩く亜美は、
一度も手を離す事無く、俺を家へと連れて行った。

***

……………
通された部屋は(中略)。
吉幾三ばりのないない尽くしで、生活感が特に無かった。
「大丈夫。実家はちゃんとオシャレだから。」
「いや、それは、まあ、良いんだが…
ここのスペースに何か違和感がな…」
そう。俺が座っている場所は、どうにも奇妙だった。
元々、在るべきモノが無いというか…其処にムリヤリ作られた場所…の様な。
「ああ、そこはいつも炬燵があるんだ。
今日は暖かいし、竜児が来るから、邪魔だと思って片付けたの。違和感は、それじゃない?
…てか、流石、変態掃除魔…初めて来た彼女の家で、
最初に気になる事が、それ?」
と、言いながら、俺の隣に腰を下ろす亜美。
「おう。ダメなのか?」
「別に。それが、竜児だし。嫌いじゃないよ。」
いつかの様に、肩に頭を預けてくる。
亜美の旋毛は…右巻きなのか…
女の子の髪の匂いって…何故こうも良い匂いなんだろう…
日本未発売の最新限定リンスだったっけ?
フワフワでポカポカな匂いに、俺は、少し微睡んでいた。
「何か…眠い…時差ボケかな?」
「俺も…まだ眠い。寝不足だ。」
「このまま…お昼寝しよっか?」
「初めて来た彼女の家で、最初にする事としては…どうなんだ?」
「良いんじゃない?かなりバカップルっぽいけど…」
「そうか。」
「そう。てか…もう、亜美ちゃん限界…おやすみ。」
「おう。おやすみ。」
そのまま、2人寄り添う様にして、泥の様に眠りこけた。
−そして、しばらくして、足が酷く痛み、俺が先に目を覚ました。
いつの間にか、アグラを掻いた俺の膝を亜美が枕にしていた。
足は、痺れて感覚が無くなりつつあったが、気持ち良さそうな亜美の寝顔を見ると、
起こす事が、とても残酷な様に思えて、…そのままにしておいた。
362チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:37:59 ID:qq9cPpvi
それでも…ヨダレはマズイだろうな、年頃の女の子が。
ましてや、こいつはモデルだし、起きた時、顔にヨダレの痕がついていたら、憤死するんじゃないだろうか?
そう思い、俺は、亜美を起こさない様に頑張りながら、
何とかポケットから、清潔なハンカチを取り出し、
そっと…その子供の様な、あどけない口の端を拭いてやった。
それから、さらにしばらく経って、流石に痺れが限界に達しそうになった時、
長すぎる睫毛に護られた瞳が、パチリと開いた。
キスもされていないのに、お姫様は眠りから醒めたのだった。
「おはよ。」
「おう。おはよう。
起き抜けに悪いんだが…頼みを聞いてくれないか?」
「え?何?」
「頭…上げてくれ。限界だ。」
「あ、あぁ!?ゴメン。スグどくから。」
お姫様は、あわてて飛び起きた。
「足…大丈夫?」
「おう。痺れてるだけだから、放っておけば、すぐ取れる。」
「ゴメン。いつの間にか…枕にしちゃって」
「気にすんなよ。疲れてたんだろ?」
「うん。ホント、ゴメン。」
「いいから。」
俺は、その場にスッと立ち上がり、ピョンピョンと軽く飛んでみせた。
「ほら、痺れも取れた。」
まだ、若干、鈍い違和感が、あるにはあるが、引きつる様な痺れは取れた。
「………」
すると、無言で亜美が、つん、と俺の足に触れてきた。
「おう?」
「ホントだ。いや、やせ我慢してるんじゃないかな?と思って。」
「…それで?してたらどうするつもりだったんだ?」
「竜児は、飛び上がったんじゃない?」
「お前は?」
「とりあえず笑う。あはははは。」
…何なんだ?一体。
「あははは。じゃねぇ。寝ぼけてんのか?」
「ん〜どうだろ?ちょっと、ボ〜っとしてるかも?」
「疲れてんのか?」
「ん…少し。竜児のおかげで大分リフレ−きゃあッ!?え、何?」
ホントにボ〜っとしていたので、不意打ち同然に、膝で半立ちになり、亜美の肩を抱いてやった。
「疲れてんなら…マッサージしてやるよ。」
「え?マッサージ?
……マッサージにかこつけて、いやらしい事する気でしょ?
シたいならシたいって言えば良いのに…」
363チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:40:09 ID:qq9cPpvi
「そんな台詞を吐いた事…後悔させてやる。
俺のマッサージは108式まであるぞ。」
「え?マジ?ガチマッサージ?
でも…それはそれでどうなのよ?
一緒の部屋に居て、そんな気が起きないなんて…あたしに対して、ものすごく失礼じゃない?」
「…いや、そんな気が、全く無くも無いぞ?二割位はある。
ただ、疲れてるみたいだから、とりあえずは普通にマッサージしてやろうと思って。」
「ふぅん。じゃあ、普通じゃないマッサージもするんだ?」
「…後でな。」
「二割っていうのが、気になるけど…解った。
あたしの身体、竜児に預けるから…好きにしてよ。」
「おう。」

***

「痛いッ痛い痛い。痛いってば…ちょ…聞いてる?」
「我慢しろ。痛いって事は、どっか悪いんだ。」
頭、顔、肩、腰、腿、と順番にもみほぐしている間、
ずっと静かにうたた寝していた亜美だったが、
足裏マッサージを敢行したとたんに、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。
まあ、予想はしていたが…やっぱ身体の内側病んでたんだ…コイツ。
「信じらんない。親指一つでここまで、人を痛がらせるなんて。
マジ痛い。てか、どっかってドコ?」
「さあ?本でチラッと見ただけだからなぁ…
心臓だったか、肝臓だったか、胃だったか…腎臓だったかも?」
「ヒィ…痛い、イタタタタタ…アァ…ちょ、ヤメ…タイム、タイムだって…」
端正に整えられた顔が、苦痛に歪み…眉間には深い亀裂が刻まれていた。
何か…ゾクゾクする。
俺に、こんな趣味は絶対に無いはずだった。
人の嫌がる事をしてまで、己が欲求を満たそうとは、到底思わない。
でも…これは?俺は今、亜美の身体の為にツボを刺激している。
その結果、亜美の表情は苦痛に歪み、俺の加虐心を煽っている。
これは…何だ?
「くぅぅぅ……い、いい加減に…しろぉぉぉッ!!」
364チワP〜修学旅行前の日常〜前編:2009/05/13(水) 03:40:40 ID:qq9cPpvi
スパコ〜ン
と、勢いよく、頭を叩かれた。
「おう。は、俺は一体?」
「一体?じゃねぇ〜っつの。亜美ちゃんを殺す気?
もう二度と立てなくなるトコだよ。超、超、超、痛かった。」
「面目ない。つい。」
「もう。それで、今のって何のツボなの?
すっげぇ、痛かったんですけど。」
「ええと。……聞かない方が良いんじゃないか?
俺も、適当な本で得た適当な知識だし。」
「…気になる。言って。」
「いや…でも。」
「いいから。言ってみなって。」
「……卵巣。」
「は?え?ら、卵巣?」
それきり、亜美は、固まって動かなくなってしまった。
やはり、言わない方が良かったのかもしれない。
が、言ってしまったものは、仕方ない。後の祭り、という奴である。
そして、解凍された亜美が、
「それって…すごくヤバくない?え?でも、毎月、ちゃんと来てるよ?
そういうのとは…また別?うそ…どうしよ…」
などと、聞いてもいないのに、プライベートな部分を赤裸々に暴露していた。
「いや、だから、悪いと決まった訳じゃ…
俺は、医者でも何でも無いんだし、そんなに心配しなくても…
そんなに気になるなら、一度、検索受けてみたらどうだ?」
「うん。そうする。
けど、今すぐはムリだよね?」
「まぁ、急がなくても良いとは思うが。」
「今すぐ、検査する方法があるには、あるんだけど…」
「ん?」
何か、コイツが何を言うか、解るような…
「使えるかどうか…試してみれば良いんじゃない?」
やっぱり。
「いや…それはどうだろうな。
というか、疲れてるんじゃないのか?」
「疲れてるからこそ、シたいんじゃない。
…ヤなの?もしかして。」
「いや、望むところだけどよ。
何か、マッサージにかこつけて…になっちまったなぁと思って。」
「もう。つまんない事気にしないの。
あたしがシたい様にするんだから、竜児は横になっててよ。」
「お、おう。」
促されるまま、横になった俺の上に、
完璧、ヤル気満々な亜美が覆い被さってきたのであった。

つづく。
365名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 03:41:16 ID:qq9cPpvi
ひとまず、終わりです。
ありがとうございました。
366名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 04:22:07 ID:kAb0GG7N
読点がなんか不自然だな
367名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 07:24:35 ID:zHVN3p7d
原作通りなら竜児と亜美が名前で呼び合う事無いんじゃね?
368名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 09:44:32 ID:vuPWMw2m
付き合い始めて、そこそこ経ってる設定なら良いんじゃね?
369名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 12:13:24 ID:/zOp3gYU
GJ。俺は、結構読みやすい文章だと思うけどな。

Pの亜美ルートだと、亜美は竜児を呼び捨てにしていたから、名前で呼び合っていても特に違和感ないな。

続き期待だけど、この作者さんのエロ文では抜けない俺がいる。日常のひとコマみたいなのは、超巧く書く人なのに何かMOTTAINAI
370名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 12:47:49 ID:vuPWMw2m
>>369
へぇ。とらPだと竜児って呼ぶようになるのか。ますます欲しくなってきた。
371名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 20:34:19 ID:zkEgHEl7
亜美ルートのエピローグ限定だけどね
372名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 20:59:43 ID:vuPWMw2m
エピローグかよw

とはいえ評判通り良さそうだな。
373名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 21:12:56 ID:Hj0kHF38
保管庫更新来ないか…

ここは俺が保管庫作るしかないな!
374名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 21:45:42 ID:7VVwrhqD
>>373
頑張れ( ̄3 ̄)/
375名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 21:49:56 ID:wpkgDKIQ
ここほど保管庫更新にうるさいスレ他に知らん
急かしてやるなよ
376名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 21:50:09 ID:1xXwMzGE
奇遇な事に自分も今作ってるw
日曜あたりにはできそう。
377名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 22:29:44 ID:JbqiaB45
何にせよ期待しとく。
378名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 23:27:20 ID:HWz0d6gI
まとめで奈々子様日記形式を見て、思いつき書き出し。
SSとは微妙に形式ちがうかなぁと思うんで、不安もありますが、行かせてください。
次レスで投下行きます。
379日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:28:35 ID:HWz0d6gI
香椎奈々子の日記より抜粋。
4月24日。
今日、私に高校での初めての友達が出来た。
名前は木原麻耶。人見知りの私なんかとは違ってとても明るくて今時の女の子って感じ。
突然彼女に話し掛けられた時はホントにびっくりした。
でも嬉しかった。とても、嬉しかった。
今日まで、なんか学校に行くのが憂鬱だったけど、明日から学校に行くのが楽しみになっている。私って結構ゲンキンなんだろうか?
また明日。そんな言葉が嬉しかった。
明日は麻耶とアドレスを交換しよう。私から、言おうと思う。
明日が楽しみ。

5月1日。
明日からGW。私は麻耶と一緒に町にショッピングの予定や一緒に遊ぶ予定を立てた。
今から楽しみ。
最後の休みには他の友達も一緒に公園で遊ぼうと言う事になってる。
男子も来るらしくて私は少し不安。だけど麻耶は楽しみらしい。北村君も来るらしいから。
クラス委員の北村君も6日は部活が休みの様で、麻耶の立てた計画に参加出来るみたい。
でも、麻耶は意外と分かりやすい。筈なのに気が付かない北村君はどうかと思う。
私にもいつか好きになる男子が現れるのだろうか。今はそれが少し不安で、少し楽しみ。


木原麻耶の日記より抜粋。
5月8日。
死ぬかと思った。いや、殺されるかと思った。
GWの最終日にはまるお達と遊んですっごく楽しかった。だから私は浮かれていて、なんとウチの高校の恐怖の対象と廊下でうっかりぶつかっちゃった。
私と同じ1年。クラスは違うけど、その存在感で今や大橋高校の2大番長の一人、高須君と。
思いっきり出会い頭にぶつかって、その場に倒れた私を彼はすっごく睨んでた。私もつい、どこ見てんのよ!なんて言っちゃった。
だって私ってぶつかって転んだんだけど、思いっきりスカートめくれちゃったの。もう死にたい位恥ずかしかった。結構周囲に人も居たし、皆にパンツを見られたかと思ったらホントに泣きたくなった。
でも誰も私のパンツなんか見てなくて、というより私の場所から目を逸らしてた。一緒に居た奈々子もガタガタ震えてた。
高須君が「おい」って私に手を伸ばしてきて、ほんとに泣き出した時に先生達が大勢来てくれて、高須君は職員室に連れてかれた。
取り敢えず今日は助かったけど、週明けの月曜日に学校に行くのが怖い。どうしよう


高須竜児の日記より抜粋。
5月8日。
今日もまた散々だった。登校時に通り掛っただけなのにウチの生徒に絡んでた他校の生徒にビビられてまた俺の縄張りとやらが増えた。
授業中は明らかに俺の番を飛ばして問題をあてがわれていく。なんとか1学期中には解消してぇ。
まぁ先生やクラスメイトはおいおい分かってくれるだろう。いままでもそうだったしな。だが問題は他のクラスだな。
今日も廊下でぶつかった女子が居たが、助け起こそうかと思ったら泣かれて、挙句職員室まで連行された。
先生は悩みがあるなら言ってみろと言っていたが、この現状こそが悩みのタネなんだが、どうにも理解してもらえない。
ま、いいか。皆俺に注目してて、あの子のスカートがめくれちまった事に気付かなかった。やっぱ恥ずかしいもんな。うん。
にしても、泰子のお陰でアレくらいでは何も感じなくなっちまった俺は、自分がジジイの様に思えて、なんか今日は凹んだ。

380日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:29:10 ID:HWz0d6gI

相坂大河の日記より抜粋。
5月15日。
また告白された。うざい。でも今度の人はなんか変な告白だった。
私に接触してきた変な人は彼で二人目だ。一人目のみのりんとは友達になった。彼とはどうなんだろう?

5月14日。
起きた。帰った。寝た。

5月15日。
べつに


木原麻耶の日記より抜粋。
5月22日。
今日は学年レクリエーションだった。まぁ皆で親睦を深めようって感じ?楽しかった。
少し離れた自然公園で午前中からのんびり。昼食は皆で何かを作って食べる。ほんと、ゆっくりした1日だった。
奈々子がとても料理が上手いのが判明して驚いた。でも聞いたら彼女の家は父子家庭で料理は奈々子がしてるみたい。どうりで上手な訳だ。
奈々子は簡単に数品のおかずを作ってくれたけど凄く美味しかった。まるおも美味しそうだったし、今度奈々子に教わろっと。
そうそう、そんな奈々子が驚く程の料理を作った人が居るらしい。私達は固形燃料で済ませてたんだけど、どうやらその人は炭まで持ち出して火を起こしたみたい。
またその料理が美味しくて。まるおが持って来てくれたのを少し食べたけど、アレはお店でお金を取れるレベルだと思う。
誰が作ったのか見てくれば良かったな。


香椎奈々子の日記より抜粋。
5月22日。
驚いた。あの恐怖の大王、闇夜の帝王の高須君はとんでもなく料理が上手だった。
北村君の持ってきたものがあまりに美味しかったから、何か参考になればと思って場所を聞いていってみたけど、ソコには数人のクラスメイトに料理を振舞う高須君が居た。
私達には恐怖の対象でしかない彼も、クラスメイトには危害を加えないのか、数人の女子に質問されては、彼は料理のコツを教えていた。
私にはふと、この高須君の方がむしろ本当の彼の姿なのかと思えた。それ程に、今日の彼は楽しそうだった。
前に北村君が「高須は良い奴だ」と言って皆にえ〜と言われていたけど、もしかしたら本当なのかも。

5月29日。
まったくテストの真っ最中だと云うのに今日も夕食の買出し。これで成績落ちて文句言うようなら今後一切おかずは2品以上は作らないから!
でも今日の買出しはビックリした。スーパーで高須君を見つけた。
どう見ても万引き少年かなにかと間違われそうな彼だったけど、真剣にお肉や魚を吟味してかごに入れてた。なんか手製のエコバックも持ってたわね。
でももっとビックリなのは、私が彼と話をしたこと。まぁ話っていう程のモノじゃないけど、思わず彼に見入ってた私はカップラーメンの積み上げにぶつかって山を崩しちゃった。
床に散らばった品を私が慌てて拾っていたら、彼がいつの間にか手伝ってくれてた。
なんか手馴れた手付きで山を直して、全部綺麗に積み上げたら満足そうに笑みを漏らして去っていった。
ありがとうって言ったら、?って首を傾げて、でも「おう」って。それだけ。
彼が居なくなった後で、店員さん達が彼の積んだ山を恐る恐る調べてた。
まぁ確かに積み上げた後に漏らしてた彼の笑みは邪悪な笑みに見えたし、なにかの仕掛けに成功した犯罪者みたいだったけど、なんか失礼しちゃうよね!
?なんで怒ってんだろ、私?
381日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:29:43 ID:HWz0d6gI

木原麻耶の日記より抜粋。
5月30日。
やっと中間テストが終わった。地獄の日々よさようなら〜。
ま、私はそんなに頭良くないし、赤点さえ取らなきゃ問題無い無い。それにしてもまるおは頭が良い。勉強も出来るし、意外と女子に人気が有るのを、本人は自覚していないのだろうか?
最近、少しまるおが気になる。どうしよう
今までも気にはなっていたんだけど、なんかこう、もっと仲良くなりたい、みたいな?
もっと積極的に成った方がいいんだろうか


高須竜児の日記より抜粋。
6月10日。
球技大会の出場競技を決めたが、どうにも俺の動向が鍵を握っているようでなんとも息苦しかった。
それでも最近では能登や、違うクラスの北村って奴と友達になれてるし、クラスの連中も、初めの頃ほど俺を怖がらなくなった。
中学の時と比べても最速じゃねぇか?さすが高校にもなると人を見る目も多少は育つというものか。
なんとか1学期中には、少なくてもクラスの中では恐れられないようになりたい。
よし。取り合えず、球技大会を頑張って、また1歩、皆に近付こう。

6月15日。
不思議だ。というか驚天動地だ!俺の携帯に、史上初の女子のメルアドがメモリーされてる。
最近、スーパーかのう屋でよく会うウチの高校の1年の香椎さんだ。
俺にはきっかけや出会いは思い出せないのだが、とにかく、彼女とは偶然にスーパーで会って何となく話をするようになった。まぁもっぱら料理の話だが。
どうやら香椎さんも片親らしい。俺と一緒で、彼女も家の食事は全て自分で作っているそうだ。どこか親近感が沸く。
前のレクの時に俺の料理を喰ったらしい。あの時は外だったし火力も大して無いし、そんなに美味い物が作れたとは思えないが、それでも褒められるのは嬉しい。
色々と料理で聞きたい事があった時聞いて言いか?と聞かれたので、俺でよければと。そしたらアドレスを交換する事になった。
それにしても、どうすればいい?やっぱ女子とアドレス交換したら御礼のメールは常識なのだろうか?でも関係無いメールでもして迷惑がられても。
いや!料理の話をすれば。でも、なんでこの時間に、もう2時だし彼女も寝てるだろう…でももし待って、いやそれは無い無い。
あぁ!どうすればいいんだぁぁぁ


北村祐作の日記より抜粋

6月20日。
今日は球技大会だった。部活動の関係でソフトボールには出れなかったがサッカーで準優勝を決めた。まずまずの結果だ。
だが本日一番の収穫といえば、なにやら不穏な噂の絶えない高須がだいぶクラスに打ち解けていた事だ。
話してみると高須はホントに良い奴だ。何故にアイツが皆に誤解されているのか。まぁ確かに眼つきや表情には剣はあるのかも知れない。
だが些かみんな外見に捕らわれすぎだと思う。
でも良かった。明日からはもっと高須と話す機会を設けよう。クラスは違うが時間は作り出そうと思えばどうとでもなるものだ。
俺が何をしてやれるかは分からんが、それでも俺はアイツの友達だし親友になりたいと思ってる。なぜかそう思える奴だ、高須は。


高須竜児の日記より抜粋
6月27日。
おかしい。どうやら俺は……恋をしたらしい。
北村の所によく現れる彼女、櫛枝実乃梨に。
あぁ、彼女はなんて可愛くて明るくて元気で、確かに一種独特の個性というか感性というか、そんな斜め上の動きをする時もあるけど、それをひっくるめても俺には眩しい位魅力的な女性だ。
なんとかお近付きになりたいが、如何せん俺と彼女に接点は無い。
北村ともいつも一緒に居るわけじゃ無いしな。しかしコレはなんとかしなくては。
最近櫛枝さんの事を思うと夜もあまり眠れない。おかげで寝不足気味だし、そうなると一層この俺の眼つきが。
最近ようやく打ち解けてきたクラスメイトの距離が少し離れた気がする。
しかし…あぁ、だめだ。今日も眠れそうに無いよ、櫛枝さん。
382日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:30:19 ID:HWz0d6gI

櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
7月10日。
カラオケ屋のバイトとファミレスのスケジュールがずれた。ブッキングは避けてたのにぃ!
どうする!どうなるのわたしぃぃぃぃ!

7月14日。
まずい!ジョニーズのパフェ超うめぇ!店長アンタ最高だ。張り紙があったからバイトを申し込んだ。
受かると良いな。


逢坂大河の日記より抜粋。
7月20日。
どうやら私は北村君の事を好きになったみたい。
あんな変な告白だったのに、なんでか彼の事を目で追っちゃう。
でも私は一度彼を断った。今更私から告白なんて出来るわけ無い。
みのりんと北村君は同じソフト部だし良く話してる。
みのりんが羨ましい。


木原麻耶の日記より抜粋。
7月30日。
どうしよう。
今日皆で海に行ったらはぐれちゃって、なんか性質の悪そうな人達にからまれた。無理矢理連れてかれそうになって、でも誰も助けてくれなくてどうしたらいいか分からなくなってたら、助けてくれた人が居た。
あの高須君だった。彼はこの辺りの支配者なのか、「お前等死にたいのか?」の一言で彼等は慌てて逃げ出してった。
彼は私に気が付いた様で「確か貴様」って言って来て、思わず私は逃げちゃった。
あれ以来だったけど、高須君はきっと前に廊下で私の所為で先生に捕まった事を覚えているんだ。
助けてくれてホントに嬉しかったのに、時効寸前で交通違反で捕まった心境だ。あぁ夏休みが終わらなければいいのに…


高須竜児の日記より抜粋。
8月20日。
海の家でのバイトも今日で終わりだ。泰子の知り合いって事でもあったし、皆親切にしてくれた。楽しいバイトだった。
もうすぐ2学期が始まるのだが、少しばかり憂鬱な事が。
先月の末になんか香椎さんの友達を見かけた。なんかガラの悪そうな…まぁ俺に人の事を言えた義理は無いが、それでも彼女の友達には見えない感じの奴等と一緒だった。
「お前等知り合いか?」と声を掛けたんだが、何処をどう聞いたのか「死にたくないです!すいませんでした!」と逃げてっちまった。俺って一体。
「確か木原さんだったよな?」って言ってる間に彼女も逃げてった。なんかしたか?俺。
変な誤解を受けてなきゃいいんだが…無理か。気が重い。


9月2日。
生徒会に呼ばれた。どうやら最近北村は生徒会の方にも顔を出しているらしく、アイツが俺の友達と云うのを問題視する意見があるようで、生徒会長直々のの呼び出しとなったようだ。
誤解されるのはもう慣れているが、それで北村に迷惑が掛かるのは困る。
だが少し話していたら会長のアニキは笑い出した。やはりアニキは変わってる。
でもどうやら俺は危険人物では無いと分かってくれたらしい。最後には生徒会に誘われたがコレは丁重にお断りした。こう見えても一家の主夫は忙しい。

383日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:30:53 ID:HWz0d6gI

北村佑作の日記より抜粋。
9月3日。
やはり会長は素晴らしい人だ。高須と縁を持っている事を良く思っていない者が居る事は俺にも分かってはいたが、どうやら昨日、会長は高須と話をしたらしい。
「良い友達を持ったな」と言ってくれて、高須にはいつでも生徒会室に顔をだしても良いと伝えておけと言われた。
外見に惑わされず、そして懐が広い。やはり俺は会長の事が好きだ。
今日、俺は改めてそう感じた。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
9月14日。
私の人生の幕を下ろそうかという事件勃発。
体育祭の出場種目を決めている最中、逢坂さんが暴発した。誰かが彼女の逆鱗に触れたらしい。もう!空気読んでよ!
逢坂さんは教科書の入った机ごと教室のドアに投げ付け、ノシノシと出て行った。まだHR終わってないのに…
私がその机を片付けようとしたら、なんと高須君が通り掛かった。腰が抜けた。
だって高須君ったらもの凄い顔で私を睨むし、それでギラリと目を光らせてニタリと嘲笑った。
助けを求めてクラスのみんなを見たけど、みんな目を逸らした。薄情者!
彼はなめるように私を眺めて目を光らせて去っていった。
きっと私は……狙われた。
ううぅぅ。まだ結婚もしてないのに私はこのまま高須君に陵辱されるのね。あぁ、そのあときっとそれをネタに強請られて、これから先彼専用のメス奴隷なのね。
さよなら母さん。


高須竜児の日記より抜粋。
9月14日。
最近は随分と穏やかになった。今度の体育祭も楽しみだ。まぁ騎馬戦には出たくないが。
昼食時には皆に何か作ってやれないかと考えてる。1学期のレクではみんなに俺の事を理解してもらうきっかけになったからな。まぁ、いい想い出だ。
それにしても驚いたのはA組だ。
HRが終わって帰ろうとしたらゴミが廊下に出ていた。
あいてるドアから見えたのはゴミ箱をなぎ倒している机と床に座り込んでいた先生。
にしてもあの散乱振りはどうだ。掃除してぇ。
多分普段手を抜いているに違いない。ゴミ箱が有ったと思われる隅にホコリがたまってた。高須棒の出番か?
思わず顔がニヤケちまった。放課後誰も居なくなってからこっそり教室に行ってみたが、やはり掃除のしがいがある隙間だった。
無論勝ったがな。


香椎奈々子の日記より抜粋。
9月17日。
体育祭の準備で今日もてんやわんやだった。
私達のクラスは球技大会ではB組に煮え湯を飲まされた。今度こそはと男子の息も荒い。
そんな話をメールですると、高須君も体育祭は楽しみだと言っていた。でも嫌な事も有るらしい。足が遅いわけでも運動が苦手な訳でもないのになんで?聞いたら「騎馬戦でまた目立っちまう。せっかく最近」と言う事。まぁ彼の存在はクラスにとっては武器だ。
でもホント、荒事が嫌いな高須君らしいと思った。
彼は体育祭には皆で食べれる昼食を女子の有志と作るらしい。どちらかと言うと男子の領分では無いのだけど、彼は楽しそうだ。
少しだけ…その女子達が羨ましいと思ってしまう。

9月19日。
今日の体育祭は大いに盛り上がった。結果私達は最優秀クラスに。ホントにみんな嬉しそうだった。もちろん私も。
それにしても高須君達の作った料理は美味しそうだった。
さっきメールしたら「みんな美味いって言ってくれた」て喜んでた。彼は意外に単純だ。何気ない事で喜ぶ。ほんと…単純。
384日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:31:36 ID:HWz0d6gI

櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
9月30日。
なんか私のテンションは皆の中から浮いたみたい。傍に居るのは大河だけ。
分かる。皆、私がどこか適当に流してフランクな様で距離を置いてると思ってる。
でもそれは当たってる。
私はきっと誰よりも臆病だ。自分を否定されるのが怖い。
ただ女だと言うだけで私は野球に否定された。もう否定されるのは嫌だ。
こんなんじゃダメだって分かってる。でも、変えられない。
誰か……助けてよ


木原麻耶の日記より抜粋。
10月6日。
私は何か間違ってたんだろうか?今日、うっかり階段で足を踏み外してひねってしまった。
もの凄く痛くてつい涙を流したら、誰かが腕を掴んで肩に回して私を引き起こしてくれた。
高須君だった。
夏以来、私はずっと高須君を避けてたから今まで会う事は無かったけど、相変わらず彼は怖い。
でも彼は黙って肩を貸してくれて保健室まで連れてってくれた。何度かいいって断ったんだけど「黙ってろ」って聞いてくれない。
保健室で保険医に私を預けて帰ろうとするから「どうして?」って言ったら「なんかお前いつも泣いてるよな?」って手を伸ばしてきた。
思わず目をぎゅっと瞑ったけど、彼の手は私の頭を撫でて、それから何も言わず出て行った。
私は、今までなにかを間違っていたのだろうか……

10月7日。
驚いた。昨日の事を奈々子に話したら「高須君らしい」って笑ってた。
なんと奈々子は彼とは仲が良いと言う程ではないけど、よく話すらしい。スーパーのお買い物仲間だとか。どんな仲間よ!
今ではすっかりメル友みたい。
夏休みの海での事を話したら、「ふふ。きっと何かの誤解ね。彼らしいわ」と笑った。
本当にただ助けてくれただけなのかな?だとしたら私はきっと凄く失礼だったと思う。
「気にする事無いわよ。きっと高須君は気にして無いから、麻耶も気にする事なんて無い」奈々子はそう言ってくれた。
でも…どうしよう


逢坂大河の日記より抜粋。
10月15日。
なんか文化祭の出し物についてゴチャゴチャ言ってた。興味ない。
今日もみのりんは部活だから私は一人で帰った。最近また部屋が散らかってきた。また業者呼んで掃除させなきゃ。
コンビニ行って立ち読みしてファミレス行って時間潰して、ゲーセンに行ったらアホな男共に絡まれたからゴミ箱に捨ててやった。
どうして世界はこんなに腹立たしいんだろう。

10月29日。
なんか文化祭が始まった、らしい。
なんかオカマバーみたいな喫茶店をやるらしい。私には関係無い。やること無いもん。
料理も出来ないし、愛想も振りまけない。だから行かない事にした。
北村君の顔を見れないのが少し寂しい。みのりんに会えないのが少し寂しい。
私の事を呼んでくれるのはみのりんだけだもん。見てくれるのは、みのりんだけ。
背が小さいと、人の目には私の姿は映らないんだろうか…悪いのは小さい私なのかなぁ……
385日記。徒然に。。:2009/05/13(水) 23:32:23 ID:HWz0d6gI
とりあえずここまでです。
それでは
386名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 23:44:52 ID:BAw87aM7
> 「お前等死にたいのか?」

クソワロタ
387名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 23:45:52 ID:TeOVhwx1
なんか新鮮だった GJ
388名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 23:56:26 ID:pJyeYHXI
>>385
GJ。
それぞれの登場人物の心理描写が面白い。
あとうゆりセンセー妄想自重してください
389名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 23:57:15 ID:Jyq7kXul
アルジャーノンを思い出した
390名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:03:31 ID:8O9zbs6M
>>385
GJな歳時記ですなぁ
とりあえず麻耶が可愛い。是非、続けて下さい。
391名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:08:18 ID:DZiZzQzQ
>>385
GJ
素晴らしい
392名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:11:54 ID:s1Sh7NQt
この調子で>>365みたいな心理描写を放棄した作品が、このスレから無くなれば良い。
393名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:14:19 ID:yKzStpE1
>>385
GJです!
個人的にゆりちゃんの日記が面白かったw
続きが気になります^^
394名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:19:00 ID:5Q+jJqbl
>>385
なんだこの日記は。
このままだと竜児がすべて旗を集めてしまう><

みのりん鬱々してるなあ。
395名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:21:41 ID:lldLSQcB
>>392
あれはストーリー性もないし、ボキャ貧だし、誤字は多いし…
とにかく、書き手の知的レベルが低すぎる
以前はともかく、投稿作品全体のレベルが上がった今じゃ、邪魔なだけだね
396名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:25:00 ID:Zo74IueK
一人芝居ごくろうさまです
397名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:26:03 ID:e76zXFiA
今、ヒドイ自演を見た。







もしかして、俺釣られてる?
398名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:37:20 ID:e76zXFiA
釣られついでにマジレスしとくと>>365読んで心理描写が云々とか、どんだけ文盲なんだよ?
そんなアホはこのスレにお前しか居ないからID変えてもバレバレ。いい加減止めれ
誤字が多い事だけは同意してやるが、それでも、この作者さんは充分高いレベルの作品を投下してくれてるよ。
399名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:40:36 ID:czhYfNQM
最近は文の質にこだわりすぎな気がするな
投下したい職人さんが尻込みしそうだ
どんな文でも受け入れて高め合おうとしてた前の雰囲気の方が俺は好きだった……
なんてマジレスしてみる
400名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:42:46 ID:lldLSQcB
>誤字が多い事だけは同意してやるが、
まるで当事者www
まぁ、知的レベルをどうにかしろとか、無理な要求はしないが、
せめて、もう少し賢くなってくれ
401名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:43:23 ID:Zo74IueK
マジレスすると一人がID変えながら手を替え品を替えケチつけてるだけだと思うよ
職人さん達も気付いてるでしょう
402名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 01:07:31 ID:XOfoWKC+
お前ら初めてか?
力抜けよ
403名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 01:13:25 ID:ujZSaxGB
>>382
>「確か貴様」
>「確か木原さんだったよな?」
ワロタ
404名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 01:25:00 ID:Lukc2hkg
寝る前に>>385の読み耽って良い気分だったのに自演までする自分を情けないと思わないのかね
人様の文章にケチつける暇があるんなら自分の文章力を高める努力に使ったほうが有意義と言うものだよ
劣等感に苛まれるのも程々にな
405名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 02:51:10 ID:qfSw+app
>>379-384
GJ!
と言いたいのだが…、このままだとあ〜みんが出てこなくなる気がする
のは気のせいですか?もしかして出てこないという設定?
406名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 05:59:12 ID:piKVgLwa
>>405
あーみんは2年生にならないと登場しないから、もう少し待ちましょう。
407名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 07:22:25 ID:DZiZzQzQ
あみん大人気だなー
わたし待つわ
408名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 12:20:36 ID:EFeTE3xp
「死にたいのか」と「たしか貴様」はワロタwwww

続くのかな?
続くならはやくくれ!
待ってまーすww
409名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 15:21:25 ID:dS2EnqDk
ゆりちゃんに早くフラグが立つ日記をお願いします
410名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 17:17:37 ID:IQyesjCU
>>402痛みは一瞬だ。
411名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 20:23:19 ID:7euKeHV5
>>410
アーー
412日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:50:56 ID:b8m+aupD
なんか受け入れよろしい様子なので、続、投下させてもらいます。
次レスから行きます。
投下
413日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:51:30 ID:b8m+aupD

高須竜児の日記より抜粋。
10月29日。
今日の文化祭、ウチのクラスはホラー喫茶だった。何で俺が店長なんだ!
まぁ店は盛況でなによりだった。それに嬉しいことが一つ。北村が顔を出した時、一緒に櫛枝さんも来てくれた。
こんな事ならやっぱり高須特製のスイーツでも作っておくんだった。
でもどこか浮かない顔をしていた。ろくに口も利けない俺には何をどうすることも出来ない。
今はそれがモドカシイ。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
10月29日。
せっかくの文化祭。大河は姿を現さなかった。心配で何度か電話をしたけど出てくれない。
メールでは来週はちゃんと顔出すって書いてあった。やっぱりどこか、大河の居場所はココには無いんだと思った。
私じゃ役不足なんだね?ごめんね、大河。


狩野すみれの日記より抜粋。
10月29日。
今日の文化祭、なんとか2日の日程を組みたかったが結局学校側に押し切られた。
この屈辱を晴らすべく、私は来期も生徒会長に成ろうと決めた。
今年、2年であるにも関わらず、私を支えてくれた先輩達の無念を晴らす為にも、来年の文化祭では一矢報いる覚悟だ。
まぁ出し物は去年も今年も大した違いは無かったのが不満といえば不満だな。
でも、1年のクラスのオカマ喫茶と高須竜児のデビル店長は中々に笑えた。北村が何故服を脱いで飛び回っていたのかだけは理解に苦しむ。
高須の奴は相変わらずか。それでも愚痴を零しながらも店長役をやるのも、また相変わらずか…ま、今度買い物に来たら少し安くしてやるさ。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
10月30日。
懺悔って何処ですればいいの?協会?お寺?
文化祭を欠席した逢坂さんの家に今日行ってきた。風邪では無かったようだし、来週からはキチンと学校に来ると約束してくれた。
でも彼女の家は……私は今まで逢坂さんの何を見ていたのだろう。
アレは家じゃない。アレは、檻だ。
手に負えない、きっと負いたくない子供を放り込んだだけの豪奢な檻。
憤りを隠さない逢坂さんの事を私は怖い。でも憤りを隠さない生徒を怖がって突き放す教師に、私は成りたくない。
もう一度、やり直そう。まずは…生徒を信じよう。だから今夜から高須君対策の5重ロックを止めてセコムを解約した。
信じてるからね、高須君。


10月31日。
夜と同じ私。
高須君。先生は信じてたわよ。
少し涙が出た。そして寝不足。今日はもう寝よう。
414日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:52:18 ID:b8m+aupD

木原麻耶の日記より抜粋。
11月15日。
今日は冬物を買おうと奈々子と街へ出掛けた。最近私は変だ。まるおの事を追いかけるように目で追うのに、その視界に高須君が入ると彼も追ってしまう。
なんか自分で自分が分からない。
母さんにちょっと聞いた。そしたら母さんも高校生の頃は色んな人に目が行ったって。
自分で思う程、私が気が多いって事じゃないみたい。てかそう思いたいじゃない?
でもこのままでは駄目だ。
北村君と高須君は仲のいい友達みたいだし、その二人をなんて…いつか二人が私を巡って決闘?それはないか。
でもやっぱり、そんなのは駄目だよねぇ

11月18日。
今日、クラスの武井君に告白された。
私はゴメンとしか言えなかった。でも「他に好きな奴居るの?」と聞かれた時、答える事が出来なかった。
多分……好きな奴ら、だから。
ゴメンね、武井君。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
11月19日。
なぜか突然、C組の武井君に告白された。超びっくりだぜぇ!
でもなんで?って思っちゃうし、私には彼と付き合う理由が無い。彼との未来は見えないもの。
どうしてだろう。皆には見えて、私には見えない。その恋や愛と言うモノを、私にもいつか見える日が来るのだろうか。
最近大河も幾分落ち着きを得た気がする。まぁ周りがなれた所為もあるのかな。
でもなんか違う。きっとウチのクラスにあって大河はお客さんなんだ。
それが少しムカついて、少し悲しかった。

11月22日。
うをぉぉぉ!期末間近!今夜は大河の家で泊り込みで勉強だ。
大河は意外に、と言っては失礼だけど成績は良い。分からないところは教えてくれるし、教え方も分かりやすい。
良い友達をもったよ!あたしゃあ。言うと大河は真っ赤になった。ほんと、可愛い大河。


香椎奈々子の日記より抜粋。
11月26日。
まったく、このテスト前の忙しい時期に信じられない。武井君が告白してきた。
まぁクリスマスも近いし、焦る気持ちも分かるんだけど、正直付き合い切れない。もちろん丁重にお断りした。
第一彼は麻耶にも告白してたのを私は麻耶から聞いてる。他にも何人も。私が聞いただけでも他のクラスも入れて15人。
ホントにもう。彼女と呼べる人が欲しいのか、好きな人と彼氏彼女になりたいのか。彼にはその辺がまるで見えてない。子供過ぎる。

12月3日。
ようやくテストが終わった。今日は自分への慰労を兼ねて少し夕飯を奮発しようかと思ったら、スーパーで会った高須君も同じ考えだったみたい。
気が合うね、高須君。
買い物して歩きながらおしゃべりして。まぁ殆んど会話なんて料理関係だけど。それでも私は楽しかった。気が付いたら私の家の前に。
そしてもう一つ気が付いた。彼はずっと私の荷物を持ってくれてた。結構買い込んだし重かった。私は家に入るまで気にしてなかった。
ろくに御礼も言わないで、まるで持ってもらうのが当たり前みたいに。自分がとても卑しい人間に思えた。そして怖かった。
嫌われそうで、怖かった。

415日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:52:51 ID:b8m+aupD

高須竜児の日記より抜粋。
12月3日。
人を殺せば懲役何年だ?マジで調べねば為るまい。今日、スーパーの帰りに香椎さんからとんでもない話を聞いた。
櫛枝さんに言い寄った男が居て、ソイツは他にも何人もの女子に告白してるらしい。
なんか何人かの名前を言っていたが怒りに頭が真っ白で耳に入ってなかった。ごめん香椎さん。
それにしてもどうするべきか。ええい!答えは見えてる!櫛枝さんを毒牙に掛けんとする痴漢野郎は絶対に野放しには出来ん!
こうなったら明日は思い切り顔を作ってソイツを脅かしてやる!人を脅かそうと思って脅かすのは初めてだが、俺はやるぞ!
今日は徹夜でゲームして目にクマを作ってやる。
まってろよ武井とやらーーー!!

12月4日。
今日、我が宿敵と相対しようと思っていたのだがソレは叶わぬ夢と消えた。
俺は学校に着くまで4度の職務質問と2箇所の交番巡りをする羽目に。それほど目付きが悪いのか俺は。
まぁ武井という奴の事ばかり考えていたから多少は心当たりもあるのだが。
結局誤解が解けてお巡りさんも謝罪してくれたのはいいのだが、あのパトカーで校門まで送ってくれたのは余計だった。
俺は釈放された犯罪者の様な扱いを受ける羽目になった。
気を取り直して武井って奴を探してみたら、何やら奴は誰かに午前中に告白して、どう言う訳か病院送りに成ったらしい。
何があったんだ?一体。


逢坂大河の日記より抜粋。
12月4日。
久しぶりに殺意を覚えた。どっかの馬鹿がまた告白して来たのは良いけど、言うに事欠いて「どうせ手乗りタイガーも独りで寂しいんだろ?」だってぇ?
もちろん、手近の机で思い切り退場させたわ。どっかに運ばれてったけど知った事じゃない。
ああ!もう!思い出しただけで腹が鳴るわ!

12月13日。
街中が綺麗。私の好きなクリスマスまであと少し。今日は皆に送るプレゼントを買ってきた。喜んでくれるかな。
見てるよ?と言ってあげたい。居ても良いんだよと言ってあげたい。
私に言ってくれる人は居ないけど……だからせめて、子供達には伝えてあげたい。


香椎奈々子の日記より抜粋。
12月15日。
なんかクラスが浮き足立ってる。まぁしょうがないか、もうすぐクリスマス。そして冬休みだものね。
今年は麻耶と一緒にクリスマスを過ごそうかって話しをした。なんか楽しそう。
麻耶はそれとなく北村君の予定とか聞いてたから一緒にパーティーでも持ちかけたのかな?
明日詳しく聞いてみよう。
夕方スーパーで会った高須君はお母さんのお店で振舞うケーキを大量に作るらしい。腕によりを掛けるって意気込んでた。
その顔を見た子供が泣き出して、オロオロしてた高須君が可笑しかったし、可愛かった。
でも咄嗟に破ったノートで作ったゾウさんで子供は泣き止んだ。高須君、なんの特技?それ。
子供は笑顔で帰っていったし、見送る高須君の顔は優しかった。みんなの知らない彼の顔を見た私は、少し得をした気がした。

416日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:53:39 ID:b8m+aupD

木原麻耶の日記より抜粋。
12月16日。
まるおが昨日の返事をくれたけど、どうやらまるおはOKだけど高須君はパーティーには来れないらしい。奈々子に聞いたら夜までケーキを沢山作って、その後はもう寝るそうだ。夜中にお母さんが帰ってから2人でまた祝うんだって。
まるおはパーティー出来るって。まるおと過ごせるクリスマスに胸が躍る。高須君が居ないクリスマスに胸が痛い。
そして、二人と過ごせないクリスマスに、私はどこかホッとした。
まるで二股掛けてるみたい。まだ告白もしてないのに。高須君となんてまともに会話も無い。
少し、奈々子が羨ましい。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
12月18日。
ふっふっふっ。ボーナス万歳!バックでしょ。ジャケットでしょ。あっ!欲しい靴が有ったんだ………貯金しよ。


狩野すみれの日記より抜粋。
12月21日。
生徒総会も終わりこれで一段落だな。今年もクリスマスのバイトを頼まれた。まぁウチもかきいれ時だし断る積りも無いが、年頃の娘だと言う事も分かって貰いたいもんだ。
ま、どうせ今年も相手は居ないが。う〜ん。まるで自分がモテないかの文面だ。断ってるだけだ。うん。自信を持とう。
はぁ…結構堪えるんだけどな。アニキは無いだろ普通。せめてアネゴにして貰えないかな。

12月23日。
ちょっと待て!なんか変な事になったぞ!高須がウチの店に買い物に来た。これはいい。いつもの事だ。何の気なしにあいつ等はクリスマスをどう過ごすのか聞いてみた。ほんの世間話だ。
「俺は母の店で振舞うケーキを作って夜は母と過ごします。北村達はなんかクラスメイトとパーティーらしいですよ」と言っていた高須の表情はどこか穏やかだった。まぁ友人と過ごすのもいいが家族と過ごすクリスマスも良いさ。
どうやらアイツがケーキを作るらしい。器用な奴だ。
で、つい、だ。ホントについ、「いいな。そういうのも」と言ったらアイツが少し考え出して「先輩。もしよかったら、俺と一緒にどうですか?俺の家で二人で」と言いやがった。
大体だな、私と高須は対した接点も無くてだ、いくらそんなどこか余裕を持たせた優しげな笑みで言われた所で私が何故「お、おう。いいかもな、偶には、そういうのも」なんて言わねば成らんのだ!!
なんか不味いぞ!色々と……まぁ服は選んでおこう。礼儀だ礼儀…


高須竜児の日記より抜粋。
12月23日。
今年も去年とあまり変わらないクリスマスになりそうだ。でも良いイチゴが手に入った。明日が楽しみだ。
北村からの誘いも有り難かったが、こればかりは仕方が無いな。でもまぁ櫛枝さんでも居ればお袋には泣いて貰う積りだったが、ま、いいか。
それに狩野先輩と約束もしたしな。しかし先輩も女の子だよな。手作りのケーキを羨むなんて。北村に聞いていたが料理はあまり得意ではないと言うのは本当だったか。でも下級生の俺に教えを請うのもやはり言い出しづらいのだろう。
気を利かせてみて、「俺の家で二人でケーキを作ってみませんか?」と声を掛けてみた。それならば教えるとは成らないだろう。俺は一緒に作る人に対してアドバイスをするだけだ。
うん。我ながら良いアイデアだと思う。ナイス!俺!
先輩も了承してくれたし「いいかもな」なんてやはり照れ隠しだろう。年上で女性だしな。後輩の男子にケーキ作りを教えてもらうのは恥かしいのかも知れない。
大変だなぁ、女の人は。

417日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:56:16 ID:b8m+aupD
北村佑作の日記より抜粋。
12月24日。
今日のパーティーは楽しかった。香椎の作ってくれた料理はとても美味しかったし、場所を提供してくれた先生にも感謝だ。
夕方に高須に会った。なにやらケーキの材料を買い込んでいたようだ。
ほんと、あいつの料理の腕は日に日に上がっていくな。
アイツもパーティーに来れれば良かったのに。とは言っても違うクラスだしな、無理にも誘えないか。
うん、来年はまた違った1年になるだろうからその時に考えるとしよう。
今日はとにかく楽しかった。それで充分だ。
そして来年こそ、俺は会長と過ごすクリスマスにしたい。いまはそれを願い事とする。


香椎奈々子の日記より抜粋。
12月24日。
今日のパーティーは楽しかった。私の作った料理の数々はあっさりと攻略された。ほんと、男子は良く食べる。作った人間としては嬉しい限りよね。
先生の家に向かう時、高須君に会った。
びっくりしたわ。高須君ったら黒いスーツに白いワイシャツ。オマケに髪を上げてたから一瞬分からなかった。先に分かった麻耶が凄いと思った。
声を掛けたら彼は気付いてたみたいだけど、麻耶が居たから怖がらせない様に声を掛けない積りだった見たい。気にしすぎよね。
どうやらお母さんの店にケーキを届けに行くところだった。
店の中にも入るし、やっぱり酒場だから制服やジャージは不味いとあの格好らしい。確かに違和感無いけど、染まり過ぎるのもどうかと思うわね。完全にシマを見回るスジの方っぽいもの。言うと彼は凹むから言わないであげた。
精々絡まれないように気をつけてね?と言ったら
「お前達もな。香椎さん。木原さん。じゃな」と言って去っていった。
今夜のパーティーを一緒に出来ないのは、まぁクラスも違うし仕方が無いか。来年、一緒のクラスに慣れるといいね、高須君。
クリスマスに願いが叶うなら、私はそれを、願いとする事にした。


木原麻耶の日記より抜粋。
12月24日。
今日のパーティーは楽しかった。まるおと過ごすクリスマス。なんかウキウキしてワクワクして、私は終始笑顔だったと思う。奈々子に笑われそうだけど、仕方ないのよ!恋する乙女は忙しいの!
だけどどっかで引っかかってたのは来る時に会った高須君だった。
見掛け時思わず「あ!高須君?」と言っちゃったけど奈々子に不審に思われなかったか心配。でも今日の高須君は、何て言うか、決まってた。
確かにちょっとVシネマに出てくる893さんっぽいけど、それでも何時もとは雰囲気が違って、なんか大人っぽかった。てか、大人に見えた。
奈々子と話してる彼を私はただ見てるしか出来ない。
結局まともに話はした事無いのもんね私。でも去り際に私の名前も言ってくれた。奈々子から聞いたんだろうけど、覚えていてくれて嬉しかった。
まるおと過ごすクリスマス。大人な高須君を見れたクリスマス。
今年のクリスマスはなんか楽しい。
来年、もし叶うなら今年と同じ位、ううん。今年よりももっと素敵なクリスマスを迎えたい。その時私の隣に居るのは誰なのか、私にはまだわからない。
でも、きっと奈々子はそばに居る。それだけは願う必要の無い規定事項だと思うから、私の願いはもう叶ったのかも知れない。
そう、思った。
418日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:56:53 ID:b8m+aupD

櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
12月24日。
今夜は家族でクリスマスパーティー。楽しかった。どうやら弟は高校野球の名門校から特待生の話が来てるみたい。おぉ!我が家の期待の星だねぇ。
私は決めた!私はもう野球に未練は残さない。ソフトで、私は私の夢を見る。そうしないと、きっと私は前に進めない。
このままだと私は何も出来そうに無い。大河は今日もきっと独りだ。
大河の家族の事も、今の暮らしの事も、私は全部知っている。でもそれだけだ。
今の私に出来る事はたかが知れている。そばに居る、それしか出来ない。
でも今夜私が大河の所に行ったって、それはきっと同情だ。友情だけど同情でもある。
私はもっと強くなろう。誰に何を言われても、それがどうしたって言い切れるくらい、強くなろう。
他の誰でもない、私の為に。今夜、私はそれを誓った。サンタさん。私はアナタに何もねだらない。だから聞いて。私の宣言。
他の誰にも言わない。これが私の決意表明。私はきっと強くなる!


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
12月24日。
今夜は不思議な夜だった。大学の同期とお酒を飲んだ。かなり早い時間から。
お互い独身でこんな日に二人で逢えるなんて、少し自棄酒気味だったかな。あぁ、自分が悲しい。
彼女と別れて独り寂しく帰ろうとしたらなんか男に絡まれた。そうよね、酒場だもん、酔っ払いの独りや二人、ってか大勢居るんだもの、この独身に絡んで来る奇特な人もいるわね。
「うっさい!」って邪険にしてたんだけど、なんか2人増えて3人の男に囲まれて、ああ、もうなんで私ばっかりって泣きたくなった。前世で何人殺したの?私。
そしたら「おい」って。見たらなんか怖そうな男性が睨んでて、酔っ払いだって3人居るんだし「ああ?」とか凄んでたけど、更に横から「おぉ竜ちゃん。なんかあったのかい?」って黒い服着た怖いパンチが声かけてきた。
酔っ払いは逃げてっちゃった。ざま〜みろ〜だ。
で、私はそのお兄さんにお礼言ったんだけど、なんかフラフラしちゃって、「物騒だからタクシー乗り場まで」ってそのお兄さんが一緒に歩いてくれた。
私はなんか色々と話したと思う。バシバシ背中叩いたりして肩組んで絡んでみたり。今思えば埋められてもおかしくない危険行為。
でもお兄さんは黙って聞いてくれて偶に返事くれて、なんか……嬉しかった。
タクシー乗り場で私を置いて去ろうとしたから「また逢える?」って聞いたら、?って顔してたけど「もちろんですよ」って微笑ってくれた。
名前も聞かなかったけど、私に微笑ってくれた。竜さん…竜…
ヤクザ者と女教師。なんか合わないかな。でも良いじゃない!よし!今夜は竜が如く3を一晩でクリアするんだから!
あの優しい竜さんを想って。
419日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:57:21 ID:b8m+aupD

狩野すみれの日記より抜粋。
12月24日。
参った。今夜のクリスマスは私はどこかおかしかった。
あんなパーティードレスみたいなモノを着たのは初めてだし、その、なんか待ち合わせの間中、周囲の視線が痛かった。そんなに似合わないのか?だが何人かナンパは来たんだ。それほど変でもないんだろう。
適当にあしらってたんだが、頭の悪そうな奴等が来た時は面倒だが身体に教えてやろうかと思ってたら高須が来た。一瞬ヤクザかと思ったが、まぁ私以上にそう思ったのが馬鹿共の様で、速効逃げていきやがった。根性の無い。
それにしても、今日の高須は、その、張り切り過ぎというか、似合ってると言うか……割とイカしてたぞ、うん。
「じゃ、ウチに行きましょうか」と言って歩き出した高須を私はまず止めた。
なんだ、別に怖いとかそう言うんじゃなくてだな、早い。そう!早いと思うんだ。私達はその、まだお互いをよく知らない。うん。そう!こういう事は順序というか雰囲気と言うか!いやいや、別に雰囲気さえよければって事では無くてだな。
だいぶ意味不明だったんだろう。高須も、?って顔で停まってた。わかるぞ高須、私も同じ心境だ。
「取り敢えず。今日のところは食事にしないか?実はウチにホテルのディナー券があってな。拝借してきた」そう言うと高須は驚いた顔をしていたが、券を見て本日限定というのと、12時にはクローズするというので納得したようだ。
アイツとの食事は、まぁ楽しかった。どうにも私達は高校生には見えなかった様だ。ウェイターがワインを進めて来たが丁重に断った。
高須が居て便利なのは全てのサービスがしつこくない事だな。私には丁度いい。
食事を終えて高須は私を家まで送ると申し出たが、私はタクシーで帰ると断った。
今日は変な夜だ。あまり高須と居ると、なにかもっと変な夜になりそうだ。
それが良い事か悪い事、私にはわからない。きっと今はまだ、私は判りたくないんだと思う。
ならばそれでいい。今はそれで良いと、私は自分に言い聞かせたんだと思う。


高須泰子の日記より抜粋。
12月24日。
今日はぁ、竜ちゃんのが作ってくれたケーキをお客さんとやっちゃんの同僚の人達と皆で食べた。
すっごく美味しかった。はやく竜ちゃんも一緒にお酒飲めるといいのにねぇ〜。
なんか、外で竜ちゃんが誰かと話してたってお店のボーイさんが言ってた。竜ちゃんってばかっこいいからナンパでもされたかのかな〜。
でも中々竜ちゃんを好きになってくれる女の子が居なくてぇ、やっちゃんは少し心配してるでがんす。
お客さんの商店街組合長さんが、商店街で風船配ってたサンタさんが急に休んじゃったって困ってた。
どうしようかな〜って思ってたら、竜ちゃんどうしてる?って。
バイト代はずんでくれるって言ったら竜ちゃんやるって。
困ってる人をほっとけない竜ちゃんは〜、みんなに優しいでやんす。
やっちゃんが帰ってきたら、竜ちゃんはサンタの格好のままで待っててくれた。
今日は素敵なクリスマス。
だってやっちゃんところには本当にサンタさんが来てるんだもん。
竜ちゃん。メリークリスマス。
420日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 21:58:55 ID:b8m+aupD

逢坂大河の日記より抜粋。
12月24日。
今日はすっごいクリスマスだった!サンタが居たのよ!サンタさん!!
どうせ独りだし、なんか寂しいし、いつもみたくコンビニやファミレス行ったけど、なんか居心地悪くて。
家にも帰りたくないから独りで公園にいたら、風船が前に出てきて、そしたらサンタさんが前に居たの!
サンタさんが私に風船差し出して、ぼ〜っとしてたら、?って首傾げるの。なんかおかしいかった。
私が「私んち誰も居ないから帰りたくないんだ〜」って言ったら暫く考え込んだサンタさんはね?なんと袋からケーキを出したの!
手作りっぽいケーキで、「これサンタさんが?」って聞いたら、コクンって!すっごいよね!サンタのケーキよ!!
サンタさんは懐からフォークを2本出して2人で公園でケーキを食べた。すっごく美味しかった。どんなお店のどんなケーキよりも!
「これで光るツリーが有ったら最高なのにね」って言ったらまた考え込んだサンタさんは急に、ポン!と手を打って私を抱き上げた。
そのまま滑り台を逆走して上まで登って私を肩車してクルって振り向いたら、ソコには夜景が在った。
いつもの私の目線よりずっとずっと高い所から見る夜の街は凄く綺麗で、なんだか少し涙が出た。
サンタさんもビックリしたみたい。なんかオロオロしてたんだけど、紙を取り出して色々折り出した。
このサンタさんは器用なサンタさん。キリン、亀、ライオン、馬も竜も居た。私はホントに笑った。久しぶりに、本当に笑ってた。
でもなんかサンタさんが私と遊んでるのは怪しい、と言うか住宅街にサンタが怪しいのか、「お巡りさんあそこです!」ってどっかのおばさんが叫んだら警官が駆けてきた。
サンタさんは私を抱き抱えて一目散に逃げ出した。すっごく面白かった。
私はずっと大声で笑ってたけどサンタさんは必死だったみたい。それがまた面白くて。ふと私の家が見えたから、ココで降ろしてって言うとサンタさんはそっと降ろしてくれた。
「また逢える?」って聞いたら「お」ってなんか言おうとしてくれたけど、警官が来たからまた走って行っちゃった。
今日は不思議な夜。きっとあのサンタさんは私の事を子供だと思ったのね。でも良いわ。サンタさんだけは特別に許可してあげる。
だってこの寂しい筈の夜を、素敵な光で照らしてくれたもの。きっとまた逢える。だってあのサンタさんは私のサンタさんだもん。
421日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 22:00:14 ID:b8m+aupD

高須竜児の日記より抜粋。
12月24日。
今年のクリスマスはなんか変だったな。これならあの時北村の誘いを受ければ良かったと思う。ま、クラスが違うしそれは無いか。
それにしても私服姿の香椎さんは初めて見たな。なんか新鮮だった。と言うか可愛かったな。うん。きっと今夜もモテた事だろう。
友達の木原さんには悪い事をしたかな。どうも彼女は俺の事を怖がってるみたいだしな。う〜ん。今度一度香椎さんに頼んでそこらの誤解を解いてもらえないだろうか。
しかし、確かA組の担任だよな、あの人。やっぱり俺の事は分かって無いんだろうな。
あの先生、いつも俺を飛ばして当てるから俺あの先生と学校で話した事無いもんなぁ。逢えるか?と聞かれれば確かに学校で嫌でも逢うんだが、逢ったところで分かんないだろ?
ま、酔ってたみたいだし、いいか。愚痴も聞いちゃったし、大変なんだな先生も。
でも折角ケーキを作ったのにな。狩野先輩に教えながらと思ったから1個は作ってあったが、なんで先輩は急にケーキ作りを辞めたんだ?
大体、始めからあの格好ではケーキは作れないだろうし…!!やっぱりアレか!
今日は狩野先輩デートだったんじゃないか?ソレを俺と約束しちまったから仕方なくデートを切り上げてきたとか。
それでケーキなんて作れない格好だから仕方なく食事に。あぁ!なんてこった。そうだよな。イブに日程を持っていくなんて俺はなんてマヌケなんだ。せめて昨日にしとけばよかったろうに。今度何か埋め合わせをしよう。
だがまず侘びはキチンとしないとな。先輩に聞いておこう。挨拶に行くのはいつが良いか。
それにしてもあんな可愛い女の子を一人で公園にいらせるなんてどんな親だ!泰子の店に追加で持ってってやろうとしたケーキだったけど、酔っ払い共に喰わせるよりあの子に食べて貰った方がケーキも浮かばれるってもんだ。
あの警官さえ邪魔しなければあの子を家まで送ってやって、馬鹿親の鼻の穴に高須棒でも捻じ込んでやったものを〜。
もうあの子は眠っただろうか。こんな紛い物の凶眼サンタじゃない、本当のサンタに逢えると良い。せめてソレが夢であっても。
あの子にせめて良い夢を。俺のサンタへの願いは、それに尽きる。
さて、もうすぐ泰子が帰ってくる。ケーキは無くなっちまったが、いいさ、偶には俺も酒を飲もう。今夜くらいは良いと、俺は思う。

422日記。徒然に。。:2009/05/14(木) 22:00:42 ID:b8m+aupD
取り合えずココまでです。
まだ続けるつもりです。
よろしくです
423名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:04:02 ID:igxyIvLo
なにこのフラグ乱立っぷり。すげー面白いんだが。
だが一番笑えたのは武井君か。どうせなら会長にもアタックしてほしかったなー。

なにはともあれ非常に面白かったです。
424名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:31:43 ID:FhR8AlEw
会長好きな俺歓喜wwwGJ!!
425名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:34:51 ID:dS2EnqDk
上条竜児さんがここにいる!!

すげぇなはちゃめちゃな展開だけどしっかり筋になってて
ひとつひとつは妄想できても、うまいこと繋ぎあわせる技術にびっくりしたGJ
ただゆりちゃんが竜さんの正体に気付くフラグはなかなか立たなそうなのが唯一残念
426名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:43:39 ID:piKVgLwa
めちゃくちゃ面白い!
フラグたてまくりなのがアレだけど、それぞれが
簿妙にシンクロしているのが上手すぎる。
2年生になってから原作とどこまで同じにして
どこから変えてくるのかが今から楽しみです。
427名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:47:25 ID:DZiZzQzQ
実に素晴らしい……!!
竜児を中心に廻る運命の歯車が後の原作の世界とガッチリ噛み合っていくさまが!

それにしても会長の無自覚なツンデレ振りには萌えるwww
ゆりちゃんもカギ5重+セコムとかやりすぎw
2人とも正装した竜児に惚れたっぽいし、どうなっちゃうのwww
428名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:52:27 ID:bg2vzxRM
武井君ひどすぎだろw
429名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:54:32 ID:8O9zbs6M
麻耶可愛いよ。麻耶。
兄貴可愛いよ。兄貴。
あとはあーみんさえ居てくれれば、思い残すことは無い。
以上。
ああ、そうだ。忘れてた。 武井GJ! 
430名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 23:05:45 ID:9eTobMvc
趣味:フラグ
431名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 23:13:17 ID:yKzStpE1
面白いー!
武井くんw
続きが楽しみすぎる

ゆりちゃんがんばw
432名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 23:17:35 ID:3Uq/y9Da
>>412-422
GJ! よく出来てるじゃないスか!クオリティ高須!

…でも一番びっくりしたのは、一日置かずに続編が来たことです。はや!
433名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:04:27 ID:i2695/YE
忙しいって宣言してあって、まだ3週間しか経ってないのに保管庫がどうのこうのと言ってるやつらは何なのかね……

前の更新だって1ヶ月開いたんだから、もっと長い目で見たらいいのに
434名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:05:25 ID:dc/zYowu
誰か竜児と亜美ちゃんのローマ再会モノを…
435名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:14:00 ID:TG+6gtKo
>>433
自分で保管庫作ると言ってる分には問題ないだろう。
管理人さんを急かすような発言はよろしくないが。
436名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:17:49 ID:kCp1KrAa
次スレの季節になっても更新されないようなら
テンプレから強制的に外しますけどね
437名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:18:23 ID:Q+hTI0/5
>>422
竜児さん、師匠と呼ばせて下し。
あと会長とクリスマスに会う約束をした事がばれたら北村と拳で語り合う事になりそうなのは気のせいか。
そしてこれだけフラグが乱立しているのに想い人との縁はからっきしなのはこれいかに
438名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:34:52 ID:oEVnXLl3
今の保管庫の管理人さんは自分からやると言って始めた手前、止めるとは言いだしづらいんだと思う。
やる気のある人がいるならそちらに引き継いで貰った方がみんなハッピーでしょ。
無責任に現保管庫の更新を待てと言うのは、鬱病患者に頑張れと言うのと一緒で、管理人さんを追い詰めるだけだと思うぞ。
439名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:45:33 ID:IE/ASjEu
>挨拶に行くのはいつが良いか。
次のフラグは装填済みってことか。
440名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 02:10:15 ID:rPybUKVY
この流れならあの川島さんをして異分子といわしめるのもわかりますw だって今更入る余地ねーもんw
441名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 02:38:00 ID:FeU65eEt
個人的な感傷だけど、ここが過疎ってた頃からお世話になっている管理人さんだし、俺はもう少し待ちたい

もちろん、管理人さんが生活の負担になってるから止めたいというなら、その意思を尊重して、多くの感謝を捧げたいと思う。
442名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 02:41:27 ID:zRUW+9qv
過去の分さえ保管してあれば後は過去ログ、ローカル保管しているからおkというのはエゴですね。
つか大丈夫だろ月イチぐらいで保管してくれるだろよ@プレッシャー

それよりもミラーの管理人がんばってくれよ。
443名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 03:08:43 ID:9sqoYAML
勿論現まとめ管理者の方には日頃から感謝はしているが
何個もまとめあるスレとかいくらでもあるし、あんまり難しく考える必要は無いと思うのだが
保管庫とは別に、住人が誰でも追加できるようwikiとかを作ってるスレもあったりな
444名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 03:59:06 ID:FeU65eEt
保管庫が複数なのは俺も良いことだと思う
以前もまとめよりミラーの方が読みやすいっていう住人がいたし
ただ、しっかりしてる管理人さんがいるし、何回か小さく荒れてるからwikiで保管の段階ではない気がする
445名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 03:59:09 ID:rfH3Ek5r
>>443 賛成!
毎回更新の事で荒れるより、良いんじゃない?
本家は本家なんだし
446名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 04:03:56 ID:2ZU4uHea
会長可愛いなぁ、ゆりちゃんもニヤニヤしちゃうなぁ
とらドラP見つからないなぁ…
447名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 04:34:03 ID:MBy57HFr
ただ携帯で見るのには辛くなってきたのでwiki欲しいというのもある。
平日仕事でも昼飯の時は一人だから、ここのSSじっくり読めるし。
448名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 08:57:11 ID:XQ8hv9d6
高須竜児の日記より抜粋。
4月1日
かゆ
うま
449名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 09:28:29 ID:VuEQXgnm
邪推かもしれないけど、竜虎モノの投下が極端に少なくなってきてから
保管庫の更新が止まってる気がするんだよね。
対して、少し経ってから某スレの勢いが付いて保管庫もいい勢いで更新されてる。
まあ、憶測だからこれ以上明言はしない。
450名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 12:03:15 ID:/jQV2H4+
前から気になってたんだけどここ以外にもとらドラもののスレあるの?
それっぽい検索ワードで検索してみてもひっかからないんだが
451名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 12:04:28 ID:fdk8Sj23
452名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 12:05:58 ID:/jQV2H4+
あ、他の板か
サンキュー。今度時間ある時じっくり読んでみるよ。
453名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 12:26:21 ID:dQK7zsLz
これだけフラグ立てて、
あまつさえ仮に全員とヤっちゃったとしても
誠死ね状態にはならないであろうと思われる
竜児の人柄の良さは異常(笑)
454名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 13:23:20 ID:qVwQJCpI
日記の人GJ
竜児の鮮やかすぎるフラグ立てっぷりにワロスw
つか女性の一人暮らしは5重ロックとセコム止めない方がいいんじゃないかw
455名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 14:02:45 ID:bSKa8GVQ
おい、もう400越えたのかよ……


職人の皆様GJ
456名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 18:04:08 ID:25P2ajR0
男の子牧場に登録されて、国民的フラグマスターになる竜次様
457名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 20:55:12 ID:uX3zlkM0
感想の上条竜児わろたw
たしかに上条さんに匹敵しかねないフラグペースだw
458名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 21:24:45 ID:YPWN3eaW
元居た学校での亜美ちゃんの日記とか、え〜今月もあたしが表紙でいいんですかぁ時代の亜美ちゃんの日記とか、
ストーカーに脅える亜美ちゃんの日記とか、転校を決意した亜美ちゃんの日記とか、転校したら誰も連絡くれなくて凹む亜美ちゃんの日記とか、
読んでみたいと思いました。
459名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 21:31:31 ID:fdia/RkN
>>458
そこまで考えてるなら自分で書いてみなよwwww
まあ徒然日記の作者にも期待したいけどさw
460名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:45:22 ID:Bc8uaX2o
>>449
邪推かも〜〜明言はしない。
とか言いながら全て書いてるお前は低脳すぎるぞ?

自己中の「俺の話聞いてよ〜」君としか思えない。
自分じゃ何もしないくせに想像で人を貶めんな

まとめしてくれる人に感謝こそすれ、
気分悪くなるような事を書くお前は消えろ


と、脊髄反射してみた。反省はしている。
461名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:54:16 ID:uSLpnd6u
ここってNoelありなの?
462名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:54:23 ID:FzX38lZM
キャラスレの保管庫が更新早いのは、あっちのスレ自体に即興的な作品がが多いってのも
あると思う
ここはじっくり書いて投下、ってのが多いし
463名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:19:27 ID:FIjBbPA3
週刊とらP! まだ更新されてんのなw なんか嬉しい。
464名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:44:05 ID:qKn7VJsw
まとめサイトが携帯だと入りきらない(´・ω・`)
携帯で見れて、キャラ別とかのインデックスがあるの作ってくれるならおおいに期待
465名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:51:13 ID:VuEQXgnm
>>460
カカカ
お前いい奴だな

貶したつもりはないよ
明言を避けたのは第三の可能性って奴だ
考えたくはないかもしれんがな
466名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:54:20 ID:YPWN3eaW
管理人さんは今、新型インフルエンザに侵されて大変なんです。
とかだったらイヤだな。千羽鶴折るよ
467名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:57:30 ID:+6Kcs/B+
忙しいならその旨をこのスレにでも報告してくれれば有りがたいとは思う
無理になんて勿論言わないが
468竜虎スレまとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/05/16(土) 00:06:35 ID:G/950V1k
別人ッス
469名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 00:08:10 ID:KrwY1ium
こっちにも居たのか
あなたのGJっぷりには常々頭がさがる思いだぜ
470名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 00:29:36 ID:sGtEkvS2
頼む誰か教えてくれ。

香椎は北村の事なんて呼ぶっけ。
北村君?まるお?
471名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 00:31:06 ID:tvmJGBW/
まるおくん
472名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 00:41:04 ID:sGtEkvS2
>>471
ありがとう。そのフレーズでスキーの
「やだ、まるおくん本当にそこまで天然なわけ?ほとんど暴力」を思い出した。
助かった。
473名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 00:58:47 ID:Pzz8x9Xt
>>464
PC買え&携帯ならファイルシーク通せ直リンで見るな
474日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:22:23 ID:xiCq7Tuk
連夜の登場許されよ。
400超えて投下自粛気味なのかも知れませんが、出来分、行かせて下さい。
次レスより、投下します
475日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:22:56 ID:xiCq7Tuk

高須竜児の日記より抜粋。
12月28日。
う〜ん。既に大掃除が終わってしまった。年に一度のビックイベントなのに我が家の狭さが恨めしい瞬間だ。
冬休みに入って、能登が合コンをやろうと何度か言って来てる。
行った事は無いが興味はある。明日会って話をする事に成った。
だが俺は櫛枝さん一筋だ!ほんの社会見学なんだ。きっと彼女は分かってくれる。
そう信じよう。まぁ俺の存在を知って貰う事の方が先だが。

12月29日。
どうやら合コンは来年の15日らしい。ウチの学校の女子だという。
おいおい、俺が行って大丈夫か?怖がらせるだけなんじゃないかと思ったら、どうやら俺が行く事は向こうも承知らしい。
てことは怖がられて無い?なんか嬉しいぞおい!
初詣には神様に奮発するとしよう。しかしだ。
俺には櫛枝さんが居る以上合コンで上手く行く訳には行かない。まぁ心配する事も無いかモテた事無いしな、俺。
不味い、自分で凹んで来た。もう寝よう。


逢坂大河の日記より抜粋。
12月30日。
今日は大掃除をしようと思って、徹底的にやってくれと業者に倍額払った。
見違える程綺麗になった。まぁ金額分の事はあるわね。
みのりんに合コンに誘われたけど断った。だってなんか馬鹿らしいし、鼻の下伸ばしたエロサル見たら問答無用で殴りそうだもん。みのりんを困らせたくない。
そうそう。みのりんと初詣の約束をした。そういえば小学校時以来初詣なんて言ってない。
服どうしようかな。着物着ようかな。ちょっと悩む。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
12月30日。
大河に合コン断られた。私も乗り気じゃないんだけどさ、北村君がどうしてもって言うから女子ソフトの面子で集めたけど、出来れば大河には、もっとこう云う場に出て欲しかった。
少しでも、その足を外に向けて欲しいと思う。
ま、15日は軽く遊んで終いにしよう。北村君もそれでよさ気な事言ってたし。
彼をせっついた能登君って人には悪いとは思うけどさ。
きっと私はまだ恋愛をしないと思う。他にもっと大事な事が有るから。


香椎奈々子の日記より抜粋。
12月30日。
麻耶は田舎に家族と帰省で16日に帰るそうだ。なんか一気に冬休みが退屈になった。
今日はゴロゴロ。明日も精々が年越し蕎麦を作る位かな。
ウチはお父さんと二人だし、正月もそんなに騒ぎ立てる事も無い。
と思ってたけどチョッと待って!ウチが親子二人で味気ないって事はもしかしたら高須君も?
何げにメールしてみたら案の定、特にする事も無くゴロゴロしているそうだ。
「なぁ香椎さん。良かったら一緒に初詣にでも行かないか?」彼からのメールが来て3分後。
「考えとくわ」その3秒後「行きましょう、高須君」
お父さん。年越し蕎麦は緑のたぬきね。何も手に付きそうに無いもの。

476日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:23:25 ID:xiCq7Tuk

木原麻耶の日記より抜粋。
12月31日。
やっぱり長野は空気が良い。寒いけどね。
1月中旬まではウチは毎年お爺ちゃんの家に来てる。今年もそう。
奈々子やまるおと一緒に年末年始を過ごしたかったけど、家族だって大事だもんね。
まるおは2日から家族で北海道に行くって言ってた。どうせスキーに行くなら長野に来ればいいのに。
高須君とは何も話してない。奈々子が言うには彼は特に変わらずゴロゴロしてるらしい。
まぁそれでも家事全般をこなしてるんだから、私達よりは忙しく動いてるんだろうけど。
最近思う。私は何故彼に惹かれてるんだろう?そもそもホントに惹かれてるんだろうか?
特に話もしない他のクラスの男子を、気にする理由はあまり無い気がする。
彼と離れたこの機会に、少し真剣に考えてみようと思う。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月1日。
明けましておめで父さん!
大河との初詣は明日になってしまった。大河はどうやら朝方までゲームをやってたみたいで何度起してもすぐ寝てしまう。
仕方が無いから「明日行こうね」とメールを打ってマンションを後にした。
夕方からは家族と初詣に出掛けた。この街に大きい神社は一つだから誰かと会うかと思ったら北村君に会った。
今年もよろしくね、北村君!
部活のみんなにも会って、なんかソフト部って気が合うのか結構な人数が揃ってたら、神社雇いのカメラマンさんが一枚写真を撮ってくれた。
記念に部室に飾ろうって話した。


香椎奈々子の日記より抜粋。
1月1日。
新年明けましておめでとうございます。
今日はなんか良い一日だったかな。午前中に高須君と待ち合わせて二人で神社へ初詣に行ってきた。
高須君の和服姿が似合ってた。彼に言わせれば正月といえば着物らしい。私も着物にすればよかった。
神社に入った所で、ふ、と気配を察知。振り返ればお父さんが尾行していた。高須君にちょっと待っててと言って私はお父さんを捕獲。
正月料理は抜きに決定。
だいぶ時間を取ってしまって申し訳ないことしちゃったけど、高須君は気にしないって。ホント、彼が怒ることはどんな事なんだろう?
でもなんか待ってる間にオミクジとお参りはしちゃったみたい。ちょっとむくれちゃったかな。そしたら行くぞ、って。彼はまたオミクジとお参りをしてくれた。
2度やれば効果も2倍だと笑ってた。正月早々怖い笑みだったけどもう慣れたかな。
高須君は大凶を引き当てた。初めて見たわ。彼は呆然としてたけど無理も無いわね。
なんか神社に雇われてるって云うカメラマンさんが一枚写真を撮ってくれた。高須君はいいって言うから私が貰った。
今私の部屋にはその写真が飾ってある。
どこか照れくさそうにしている高須君と私。私ってこんな笑顔で撮った写真有ったっけ?
ふふふ。今年は良いお正月だった。
477日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:23:50 ID:xiCq7Tuk

恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月1日。
また年が明けた…もう29回目ともなると新鮮味も失せるわね。
実家の母からまた探りが入った。どうやらまたどッかのお節介さんが大きい写真を持ち込んだ様だ。
大体、近年は私くらいの年で独身なんて普通じゃない!まったく世情に疎いというかなんと言うか…だめだ、正月早々に落ちそうだ。
初詣?どうせ凶しか無いオミクジなんて引くもんですかい。あっと!昨日借りてきた仁義無き戦い見なきゃ!
今夜も徹夜だわ〜。ふふふ。


狩野すみれの日記より抜粋。
1月1日。
謹賀新年!
まったく正月早々どういう積もりだ。
朝から家族で初詣に出向いたが、どうも商店街の人と会ったらしくいきなり独りになった。それはいい。
高須に会った。人の事は言えないが奴もどうやら独りの様だった。それにしても中々に和服の似合う奴だ。
似合うじゃないか。と言ってやったら「先輩もその着物、お似合いですよ」だと。ふん!当たり前だ。ええい!笑われたのが腹立たしい。
「ま、正月に着物は一種の正装だからな」といった筈だ私は。よく覚えてないが……
ついでだし、お参りとオミクジを付き合わせた。それにしても、私の小吉も気に入らないが、どうすれば大凶なんて引けるんだアイツは?
確か1・2枚しか入ってないのが慣例なのだが、ある意味強運な奴だ。ま、それでも木に括ればそれで問題ないからな。
私の着物の袖を気にしてアイツが私のくじも括ってくれた。そんなに気を回さなくてもとも思うが、悪い気はしないのが不思議だ。
カメラマンが写真を撮ってきたのには驚いたが…コレは私が回収した。こんな写真は人には見せられん!
そろそろ親父達の話も終わる頃だろうと別れたが、際にあいつが「今度、両親に会いに行きますから。やっぱりケジメはキチンとしないといけませんし。挨拶もまだだったし気になって」と……
チョッと待て!気が早いだろ!一応「そのウチにな」とだけは言っといた。てか断れよおい!
なんか変な正月だったが、偶にはこういうのも良いかもな。随分楽しそうじゃないか?写真の中の私は。

478日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:24:16 ID:xiCq7Tuk

高須竜児の日記より抜粋。
1月1日。
う〜ん。めでたい。
初詣。能登に断られたし北村も無理だったから独りで行こうかと思ってたら香椎さんが付き合ってくれた。持つべきものは友人だ。
香椎さんは随分かわいい格好をしていた。う〜ん。俺なんかと一緒では迷惑ではなかったろうか?まぁ変なナンパの露払いになる自信は情けないが有りまくりだからな。
それで役に立ったと言う事で勘弁して貰おう。
神社に着くなりどうやら知り合いを見つけた様で「ちょっと待ってて」と言って消えてしまった。ま、大きな神社はココだけだしな。知り合いにも会うか。
能登は来ないみたいだし、俺が見かけるとしたら北村くらいなんだが…!!櫛枝さんも来るんじゃないか?!と辺りをキョロキョロ見回したら、狩野先輩が居た。
どうやら先輩も一緒に来てた人が知人を見つけたらしい。ご同類と言う訳だ。
しかし先輩の着物姿はとても良かった。思わず似合うと言ったのだが「べ!別にお前の為に着たんじゃないんだからな!」と捲し立てられた。
そんなに強く言われなくても分かるんだが。
ついでだからとお参りとオミクジを一緒にと言われた。俺は香椎さんと来てるんだが、まぁ先輩も一人では味気ないだろう。付き合った。
大凶だった。しかもその後で香椎さんとも引いたがまた大凶。死亡フラグでも立ったのか?俺。
なんかカメラマンが居てバシバシ写真を撮っては渡してくれるんだが、1枚100円とはこれ如何に。
香椎さんには渡してあげたのだが、狩野先輩は自分で持って行ってしまった。何も先輩が払う事無い。ココはやはり俺が払わねばならんだろう?
「今度料金払いに行きますから。やっぱりケジメはキチンとしないといけませんし」とは言った。
たかだか100円の事ではあるがな。男としてソレくらいの甲斐性は持ちたい。クリスマスの侘びもある。この場でも良かったのだが先輩が
「そのうちにな」と言って行ってしまった。100円とはいえ、受け取って貰うのは骨が折れそうだ。
結局いつもよりも多少賑やかな正月で終わったか。さっき能登と北村に明けオメメールはした。あぁ、今日有った事でも書いてやれば良かったかな?あいつらも暇してるんだろうし。ま、いっか。もう寝よう。

479日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:24:45 ID:xiCq7Tuk

能登久光の日記より抜粋。
1月1日。
新年オメ。
な〜んか世間は初詣で正月気分らしいが俺にはあまり関係ない話だったな。
30日に高須に初詣に行かないかと言われたが野郎二人で行ってもな。断った。
高須には悪い事をしたな。アイツが学校外で行動を共に出来るのは俺か北村位だろう。北村はどうやら家族で初詣らしいし、ま、お互い暇な寝正月を楽しもう。
楽しみは合コンまで取っておけ高須!お前に損はさせんぜよ!と言う訳で俺は終始三国無双オンライン三昧の正月な訳だが。
武井からメールが来た。どうやら奴は修羅になったらしい。負けてたまるか!


木原麻耶の日記より抜粋。
1月1日。
アケオメコトヨロ!
夜になってようやくメール規制が取れた。ほんとうざい。
いつもと同じお正月。この年でもお年玉が貰えるから田舎は好きよね。
奈々子にメールしたら今日は高須君と初詣に行ったみたい。
今更ながらなんだけど、もしかして奈々子って高須君の事?前は本人は否定してたけど。
でも考えたら奈々子がメールする男子なんて高須君位しか居ないじゃない。私は、だったらどうするんだろう。
別に私が高須君を好きって決まった訳じゃないし、でも気になるのは確かだし。
ああ!もう!!新年早々なんなのよ!


逢坂大河の日記より抜粋。
1月2日。
起きたら2日に成ってた。
?1月1日は何処に行ったの??
みのりんと初詣に行ったけど、不思議な正月だった。


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
1月2日。
既に4食カップラーメン。奈々子の機嫌が悪い。余程初詣を尾行したのが怒りに触れたらしい。
しかしあんなにおめかしされると父としてはだなぁ。
それにしてもあの男。どうみても神社の縁日を取り仕切る侠客では無いか!
奈々子に悪い虫でもと思ったが、まさかモスラ級の怪虫とは!どうする?殺るか?いや、むしろ殺られそうだな。
スイス銀行の56513に入金でもして凄腕スナイパーに狙撃でも依頼するか?もしくは掲示板にXYZと書き込みを…
なんにせよ手を打たねば成るまい!
さっき奈々子が買い物から帰って来た時、袋の中に赤いキツネが見えた。明日はうどんか。
480日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:25:43 ID:xiCq7Tuk


北村佑作の日記より抜粋。
1月6日。
明日で北海道ともお別れか。中々楽しい旅行だったな。
それにしても帰ったら櫛枝や能登と打ち合わせをしなければな。まぁ俺は行く積りは無いが、高須が来れるのは喜ばしい事だ。
まだまだアイツに関する誤解はあるからな。いい機会だと思う。
これを機に少しでもアイツの良さが広まってくれれば良いのだが。
そう言えば高須の好みは聞いてなかったな。今度聞くとしよう。


高須竜児の日記より抜粋。
1月8日。
とととととととんでも無い話を聞いた!
なんと合コンは女子ソフト部との合コンと言うじゃないか!そして向こうの幹事は櫛枝さん!!
待てよ!幹事って事は出席するんだよな!無効な漢字の間違いって事は…落ち着け俺!な分けないだろう!。
それにしてもでかしたぞ能登!北村!お前達が親友で俺は最高に幸せだ!!
いかんな、今から興奮してきた。まぁ落ち着こう。すていすてい
決戦は来週だ。能登の奴め。そうならそうと3ヶ月位前には言っといてくれれば良い物を。いや、奴を責めるのは止そう。功労者には違いない、うん。
いかん!金!!幾ら有れば良い?貯金は…87万か、足りるか?いやしかしこれは今後の為に。だがココで役目を果さねば。いやしかし…
落ち着こう。ステイステイ
なんだこの幸せ感は!そうだ、俺はこの日の為に今まで不毛な青春を送って来たのだ!はっ!服!!
やはりココは若者受けするファッションで!いや、俺も充分若者じゃないか!自信を持て、俺!!
プランだ、プランを立てよう!全ては15日の為にだ!あぁこんな物を書いてる場あ


香椎奈々子の日記より抜粋。
1月11日。
今日街で高須君を見かけた。声を掛け様かと思ったけど、出来なかった。
高須君は走ってた。でもなんで鋲付きの革ジャンと革パンツだったんだろう?
皆が怯えていた。さっきメールしたら声を掛けてくれれば良かったのにって。私にはハードルが高いと思うんだけど。
どうだった?って来たから、あの格好は止めた方が良いと言って上げたんだけど、返信が「nfbdu32q9r hr@yu 90」と滅茶苦茶になった。ごめんね高須君。

1月12日。
今日も高須君を見かけたけど、髪が金髪になってた。ほんとにどうしたんだろう?
何か悩みがあるなら聞くよ?とメールしたら「さんきゅ」とだけ。
ちょっと心配になってきた。

1月13日。
スーパーで高須君に会った。……高須君、だよね?
なんかサラリーマン見たくなってた。あのテカテカの7:3は無いと思う。
帰りに話を聞いてみたら、明後日に合コンに行くらしい。それでもうどうしたら良いか判らなくなってるみたい。
初めてで緊張してるのは分かるけどそれはちょっと…って言ったら真っ青になってた。時間無いもんね。
クリスマスの時みたいな格好で良いんじゃないかとアドバイスしたら凄く嬉しそうに笑ってくれた。
最近はかなり彼の笑顔になれてきたわね、私も。
それにしても…なんか北村君にはムカついた。あと高須君にも。だからご免ね。
多分、あの格好だと皆に怖がられると思うけど許してね。ちょっとの意地悪くらい。許してくれると思うから、ね。
481日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:26:38 ID:xiCq7Tuk

高須竜児の日記より抜粋。
1月14日。
おお!もうこんな時間だ。もうすぐ合コンの日付と成る。
かなり困惑した一週間だったが、香椎さんのお陰でなんとかなりそうだ。ありがとう香椎さん!
女子の見立てなら間違いないだろう。
それでも黒のスーツと言うのは気が引けた。迷っていたら泰子が違うスーツを出して来た。白地に黒線の入ったものだ。
どう見てもチンピラ風だが、まぁ俺が着れば所詮一緒だ。香椎さんを疑うな高須竜児!明日はこのスーツにしよう。
俺の目が危険だと言っていたのも解決済みだ。薄いサングラスを泰子が持ってた。伊達だがな。
……良いのか?香椎さん。なんかもの凄い悪い人間が鏡の向こうに居るのだが……いや、疑うまい。全ては櫛枝さんの為だ。
もう寝よう。明日は早い。

1月14日。
まずい。かれこれ1時間。一向に眠れん。このままでは不味い。
忘れるところだった。去年のクリスマスに万が一櫛枝さんに会えたらと思って買っておいたネックレスを持っていかねば。
分かってる。そんなに都合よく仲良く成れるとは思っていない。でも合コンとはつまり男女が仲良くなる為の集まりだろう!
ならば準備しておいて不味いという事もあるまい。これを内ポケットに忍ばせて……なにやら物騒なモノを懐に忍ばせている様にも見えるが…いや!櫛枝さんの為には仕方がないだろう。うん。
お!!まずい!早く寝よう。


櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
1月14日。
させと、明日は合コンだねぇ。まぁ私はそう云うのは苦手。もっとも、苦手ってだけじゃダメだよね。
でもきっと私はまた軽く訳分かんない事言って皆を煙に巻く。
誰にも私の中には入らせないんだと思う。
不安なんだね、私は。きっと皆も不安だけどそれを越えて来る。私にはまだ無理だ。
でも少しづつ越えていこう。サンタに誓ったしね!
だからきっと、少しづつ。


木原麻耶の日記より
1月14日。
今日奈々子に聞いた。どうやら明日は高須君は合コンらしい。ちょっと信じられない。
ソレまでの高須君のテンパリ振りはかなりのモノだったらしい。奈々子は大笑いしてた。
ま、そんな経験とか無さそうだもんね〜。でもちょっと釈然としないのは乙女心だよね。
でも奈々子もたいがい小悪魔だよね。テンパッてる高須君に衣装のアドバイスしたみたいだけど、それがもう!
白スーツに黒シャツ。薄めのサングラスに黒のコート。エナメルシューズに出来れば白いマフラー垂らして。ってそんな奴居ないって。
まぁ奈々子も幾らなんでも高須君もソコまではしないだろうって笑ってた。
でもそんな高須君の格好で合コンに行ったら?あはは。やっぱり二人で笑ってた。
見てみたかったな。高須君がどんな格好か。ま、25%位はアドバイス聞いたりして。
そんな彼を思い浮かべて、ちょっと楽しくなった。

482日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:27:13 ID:xiCq7Tuk

高須竜児の日記より抜粋。
1月15日。
…………なんでこうなるんだ………
現在23:58。長野にてコレを書く。何故?駄目だ、整理しよう。
朝は予定通り家を出た。服装はバッチリだ!香椎さんには感謝の言葉も無い。100%アドバイス通りに出来た。泰子は何枚も写真を撮りやがった。
俺の中では、どう見ても3代目を継いだばかりの若親分にしか見えないが、いや!香椎さんを疑うな!
確かに道を歩いていても、会場のある町まで電車に乗っていてもかなり不審がられたがいつもの事だろう。OKOK。
俺の胸には櫛枝さんに渡すネックレスもある。金は10万!奮発したぜ!どうしても零れてしまう笑みは仕方が無いだろう。
だが仕方が無いでは済まされない方々が駅で待ち構えていた。警官&刑事さん。電車の運ちゃん手廻し良すぎだろ?
「ちょっと形だけなんで時間いいかな?」と優しく言われても、こう10人に囲まれては優しく感じられないな。
ふっ。だがコレすらも今日の俺には織り込み済みだ。分かってるさ神様。櫛枝さんへの障害だろ?OKOK。
俺のポケットには生徒手帳や健康保険証。住民票や泰子の名刺。あまつさえ学校行事でとったスナップまで多数持参だ。どの様な状況からでも俺が普通の高校生であると証明するのに15分と掛かるまい。その為に1本早めの電車にも乗った。
すべて計算通り!グッジョブ俺!……ココまでは、な。これから先が俺には分からん。
「わかりました」とついて行こうとした瞬間、行き成り白い煙と言うか、これは消火器なんだが、それが俺達を覆いつくしたんだなこれが。
で「こっちよ!竜さん!」って俺の手を引いて走ったのは、どう見てもA組の恋ヶ窪先生だった。はい?
なんかテンパッてる感じの先生が「ココに隠れて!」って俺を突き飛ばしたのは列車のドア。その後先生は「あっちに行きました!」とか言ってた。
どうやら逃がしてくれようとしたらしいが、「長野行きゆりかもめ。はっしゃいたしま〜す」って!長、ゆりかもめって!!
遅かった。ドアは閉まった。出せと叫ぶ俺に向けた先生の笑顔が苦々しい。いつの間に恨みを買ったんだ俺は?優雅に手を振るあの姿と共に、櫛枝さんが遠のいていく。
もちろん切符なんて持ってない。車掌に見つかりどうしたもんかと困り果てていたら、どっかのおばさん。いや、お姉さんと言った方がいいな。が「私の連れよ」と助けてくれた。
一言で車掌が引き下がるとは凄い人だ。それからその人と一緒に座って、まぁ事情を聞かれたりしたから話してた。
どうせ長野までノンストップだ。もうどうにも出来ないし助けてくれた人に問われたら答えるのが筋だろう。で、話てたら「で?先生を恨んでるわけだ」
と言った。なんで?
「いや、別に、結果はどうでも助けてくれようとした訳ですし、恨んではいないすけど?」なんでか笑われた。でも「うん!君、合格」だとさ。何にだ?
長野に着いたら駅にはソレはもう素晴らしい数のお巡りさんがお待ちになってたな。ま、この車両に逃げ込めばココで降りるしか無い訳だしな。結局、警官10人振り切っての逃亡か。こいつは時間が掛かりそうだ。メールは降りる前にしておこう。
釈放された時はもう22時を過ぎてた。帰りの特急なんてもうない。なんでか切符はあのお姉さんがくれた様だ。俺が無罪だったら渡してくれと預けたらしい。でも誰だ?あの人?
なんとか宿を見つけ様としたが俺の姿を見るなり満室になるようだ。長野は寒いぜ。色々と。
で、これまた不思議なんだが、なんでか木原さんが居た。なんでだ??よく分からんが、木原さんが公園のベンチで泣いてた。
どうも木原さんは弱い子の様だな。こんなに可愛くて弱い子を何故回りの人は放っておくのか理解に苦しむ。木原さんも合コンでもして彼氏でも…合コンの言葉で俺が泣きそうになったな。
しかし放ってもおけないので話しかけたら、木原さんは大泣きして抱きついてきた。あぁ、周りの目が痛い。ほら、誰か電話してるし。
5分と経たずに俺にとってはオリコン1位よりも今日一日聞きなれた音が白黒ツートンの赤灯カーと共に登場。誰が高校生を泣かせてるヤクザなジゴロだと?30分前に別れた刑事と再会を果たした俺は、彼の配慮で宿直室に泊めてもらってる。
初の長野で顔見知りに成れたのが刑事さん一人とは……長野なんて大嫌いになりそうだ。
とりあえず明日は帰れるが、能登よ。よもやとは思うが櫛枝さんとアドレス交換なんかしてようものなら、今夜の内に携帯と別れを惜しんでおくんだな。
それにつけても………なんでこうなるんだ?
483日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:27:43 ID:xiCq7Tuk

恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月15日。
あぁ!今日偶然に竜さんに会えた。でも再会を喜んでる場合じゃなかった!彼ったら警官隊に囲まれてたの!どうしようって思ったけど…不思議ね。私もう動いてた。
ほんと、どうしちゃったのかな、私。
近くに有った消火器を使って煙幕にして彼を引きずり出した。私だって知って彼ったら「なんで?」って。ふふ、わからないのよね?私にも。
彼を開いてる列車のドアに隠して警官達を明後日の方に誘導した。タイミング良かったわ。丁度その列車が動き出したもの。でも彼は「ゆり!」って。
覚えててくれたのね、私の事。ふふ、心配して叫んでるけど、平気よ?
「私はアナタの相棒ですもの…ね?竜」
あの顔はきっと勝手に残った私に怒っているのでしょうね。でも平気よ、貴方さえ無事なら私は平気。
それに私だって逃げきったわよ?相棒だもんね、私は。
また会いましょうね?竜。
そして貴方を撃ち落して見せるわよ?20代最期の私の恋だもの。


北村祐作の日記より抜粋。
1月15日。
どう言う訳か高須からメールで合コンに来れない旨の知らせが来た。何故か長野に居るらしい。なんでだ?高須。
返信は来なかったが、きっと何か事情があるのだろう。
合コンの方はやむを得ず俺が出て人数を合わせた。
まぁ特に何がまとまる訳でもない。皆で食事してカラオケ行って、それで終わりだ。
だが櫛枝よ。お前はソレでいいのか?いや、俺も人の事は言えんか。
やっぱ、難しい事だらけだな、高須。


木原麻耶の日記より抜粋。
1月15日。
ビックリした。超驚いた!
私は最近ちょっと変で、色々考える事とか有って、それで高須君が合コンするって聞いて、訳が分かんなくなった。
奈々子はどう思ってるの?私は?高須君はなんで合コンに?私だってこんな所にいなければって。
きっと自分でもおかしい位周りが見えてなかったのね。なんか家族の前で爆発して、お父さんにぶたれた。
もう、なんか疲れたな……独りで公園に居たら、本当に独りになった気がして、なんか泣けて来た。駄目駄目だぁあたし。
そしたら誰かが前に立って、いつか誰かにされたみたいに私の頭に手を乗せて……
「やっぱり木原さんはいつも泣いてるよなぁ」って……高須君が微笑みながら私の頭を撫でてた。
なんで?って思う前に、抱きついてた。泣きながら、抱きついてた。彼は驚いてたけど離さない。
どうしてこの人はいつも私の困った時に居るんだろう。どうして泣いてる時に居るんだろう。
こう見えても私は明るい人間で通ってる。みんなそう思ってる。
でも高須君は違う。この人には、私は弱くて泣き虫で…でも、居てくれたんだよ、君は。
その後の事はよく分からない。なんでか高須君はパトカーに乗せられてどっか行ったし、騒ぎで駆けつけたお父さんは私に抱きついてきた。
やめてよね!子供じゃないんだから!でも、凄く心配してくれて、嬉しかった。
明日向こうに帰る。帰ったら高須君に御礼を言おう。そして、奈々子に言おう。
私は、まるおと高須君。どっちも選べない位、どっちも好きだって!
手加減しないからね?まるお!奈々子!そして、高須君!!
484日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:28:11 ID:xiCq7Tuk

川嶋安奈の日記より抜粋。
1月15日。
今日は随分面白い子に会った。本当に、面白い子。
聞けば喜劇ね。その眼が気に入って車掌から助けて上げた無賃乗車の高校生。高須君。
どう転んだらあんな馬鹿な事になるのかしらね。ほんと、いい暇つぶしになったわ。でも、彼は良いわね。
先生を恨まないかと聞いたら、?って顔して否定した。責任を誰かに預けない。なるほどね、面白い訳だ。
駅に付いて警官隊を見てやった事といえば、合コンへの不参加の連絡だけ。ま、見送ってあげたけど、彼は落ち着いてた。ホントはモノホンだったりして。
私が最期に彼に聞いた言葉。「コレが映画なら、貴方は自分にどんなキャッチコピーを付けるのかしら?」一瞬きょとんとしてたわね。まぁ無理ないけど。
別に答えなんて期待して無い。状況もあれだしね。でもドアが開いて、何十人は居る警官隊の中に独りで進んでいく前に笑って言ったわね
「決まってますよ。俺はいつでも『推定有罪』です。だから笑って歩いていきます」ってさ。
だからもう一度言ってあげた。「やっぱり貴方、合格よ」
意味分かったのかしらね?でも応えた笑みは良い画になってたわよ?
ふふふ。大橋高校、か。さっき資料を取り寄せとく様に言っといたし、明日には色々分かるでしょう。
亜美はまだ頑張れるかな?あの子もストーカー如きでまだまだ小者だけどね、これなら丁度良いわ。
精々もって3・4ヶ月ってトコでしょ。ま、目一杯背伸びして、私の所に泣き付いて来なさい亜美。貴女にとっておきの逃げ場所を与えてあげるわ。
その日まで、待っててよね?高須竜児君
ふふふ。ほんと、こんな楽しい一日は久しぶりだった。
485日記。徒然に。。:2009/05/16(土) 02:28:39 ID:xiCq7Tuk
今回はココまででした。
あーみん熱望論!わかります!もうちょいです!
では。
486名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 02:41:44 ID:YBH9qalW
奈々子さまは黒いしアニキは乙女だし
ゆりちゃんは恋するヒロインだしその上亜美ママとな!
長野行き声出してワロタ。
テンポ良くてこれはいい。

しかしコレは亜美ちゃん様参戦も期待できるなあ。
487名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:01:48 ID:HPDcQrwD
相変わらず聞き間違いが酷いw
フラグの乱立っぷりにGJ
488名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:08:46 ID:MGBXlfI5
自身のスキルで作り上げるフラグ、俺はそれに敬意を表する

それにしても正装の竜児ってのが簡単に思い浮かぶのが恐ろしい
489名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:15:31 ID:HhI7slBy
徒然日記wktk
1日中待ったかいがありました!!

ともかくGJです
続き期待してます!!
490名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:16:02 ID:KrwY1ium
メインヒロイン格三人が何故か一番遠いというこの状況
何が起きているんだ…
491名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:29:59 ID:Ucy2sOuy
ゆりちゃんやべぇw
492名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 05:10:54 ID:siLFAdDZ
やばい、最高w
全員いいキャラしすぎで
聞き間違いも声を出して笑った
493名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 05:46:50 ID:nj8jm+pV
GJ
竜児は韻踏むのが好きみたいだな
494名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:03:36 ID:iSy2wsFU
長野www
495名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:05:21 ID:tvmJGBW/
貯金87万とかいう話を持ちだすなww
合コンに必死な竜児が一番可愛かった
496名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 06:28:08 ID:bHa6IDI5
>1
497375:2009/05/16(土) 08:02:28 ID:WDH2V7/d
498名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 08:05:55 ID:2mCTsRjN
待ってました!
長野行きの顛末といい合コン準備といいテンポと構成の良さにはひたすら感心しますよ。
このスレでは新しいタイプの書き手さんですね。

今度料金払いに行きます

今度両親に会いに行きます
ヒドスwwww
499名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 08:57:28 ID:wfzqBVLS
女子ソフト部の合コン参加者が武井の毒牙にかかってなきゃいいが
500名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 10:28:02 ID:APjoykdQ
>>485
奈々子パパといい、亜美ママといい、武井といい、サブがいい味出している。
その一方で、竜児の日記が面白すぎる。
…そして麻耶が可愛すぎる。
ただ、櫛枝一人が浮いている感が心配だ。 とにかく面白いです。GJ!
501名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 10:48:55 ID:llm4fYrL
なんか麻耶は夜の公園で泣いてるイメージが定着しつつある
502名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 11:12:57 ID:e9OwTxAh
奈々子、麻耶よかった
亜美ママがでたってことはそろそろ亜美も…
503名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 11:14:37 ID:bTxGRRA2
フラグネ申<竜児
504名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 11:23:10 ID:B1Px2oiO
ゆりちゃんw自重w

あーみん参戦wktkだw
つかみのりん大丈夫か?汗
505名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 11:24:20 ID:xNsGKGE+
ある意味警察がフラグ成立に一役買ってますな
彼が櫛枝フラグを立てるのは何時の日か
506名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 11:39:59 ID:ZfGoL/Dr
日記形式ということで若干書きやすいのかもしれんが、それでもこのハイペースで
毎日投下のうえ、質をたもって楽しませてくれるのには大感謝だ
507379:2009/05/16(土) 12:16:13 ID:0DW7+2MY
508名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 16:21:46 ID:/VXXVTer
田村麿さまとか元祖ななドラの続きが読みたいなー
アニメ化以前からいた古参の職人さんとかでまだ常駐してる人居るのかな
509名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 18:28:47 ID:fEluCfJ4
今回も面白かった。
「両親」と「料金」、「ゆりかもめ」と「ゆり!」ww
もしかしてホントにゆゆぽだったりしてw
メインの三人娘をあえて外し気味にしているのが秀逸ですね
どれみんな好きだけど、奈々子と麻耶の展開が好きかな
続き楽しみにしてます!
510名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 19:01:40 ID:ZfGoL/Dr
そういう間違いでいうと

正月に着物といえば正装だからな

正月だから着物を着てるんだからな

お前の為に着たんじゃないんだからな

この会長のテンパり方が最高だった
511名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 22:13:19 ID:2mCTsRjN
みんなで聞き間違いを探す読者参加型エンターテイメントにもなってるwww
512380:2009/05/16(土) 23:12:53 ID:78v3ZXPI
513名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:59:18 ID:227d1KvB
忙しくて1〜2週間ほどこのスレに来て無かったが
その間にこんな名作が投下されているとは・・・!
個人的には>>448のかゆうまにクソ吹いたwww4/1になにがあったんだよww
514日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 01:59:41 ID:Qzpzk8KN
どもです。
そろそろスレも佳境でしょう。
連投申し訳ない。
続編投下、次レスから行かせて貰います。
515日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:00:14 ID:Qzpzk8KN

香椎奈々子の日記より抜粋。
1月17日。
今日、麻耶が私に言ってきた。「私はまるおが好き。でも高須君も同じ位好きだ」って。
どっちかなんてまだ麻耶には選べないんだろう。
でも、私はどうなんだろうか?
私はまだ麻耶程に高須君が好きとは言えない。多分まだ、限りなく好きに近い、友達。それが本当。
高須君とは今日もスーパーで会った。多分明日も、明後日も。
ねぇ?私にとって貴方はなんなの?高須君。貴方はどう思う?
明日はもう始業式。どこか慌しい冬休みだった。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月17日。
夜のニュースで長野県で暴力団組長が殺されたと言うニュースが流れていた。
上手く行ったのね?竜。
生徒を導く立場の私がこんな事を口にする。もう後戻りは出来ないのかも知れない。
貴方はこれからどうするの?地下に潜るの?ガラをかわすの?
でも良いわ。私はここに居る。だから……また、逢えるわ、竜。
さて、明日からは3学期かぁ。夜は夜、昼は昼。使い分けないとね!
とりあえずゴルゴ13の続き読まなきゃ!今日は43巻ね


狩野すみれの日記より抜粋。
1月18日。
このままではどうにもいかんな!これは早々に解決しなければ成らない問題だ。
大体、高須の奴も私を見つめ過ぎだ!始業式で私が話してる間中ずっと見つめて来やがる。これじゃぁ…集中出来ないじゃないか……
いや!まずだな、私は確かに高須の奴は見所のある奴だとは思ってたし、面白い奴だとは思ってた。
だが!別に男として見た訳じゃないし、確かに何度か二人で、その、行動はしたがそれは偶然と言うかなんと言うかで、特に他意が有った訳じゃない。
一体なんで奴は私に?アイツにそんなフラグを立てた覚えは無いぞ。
もうココまでだな。近々アイツを呼び出してはっきりさせよう。コレわ。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月18日。
今日から学校だ。まぁいつも通りの生活が始まる。
でも北村君は凄いよねぇ。いつの間にかしっかり生徒会役員として壇上に上がる立場になってる。
まぁアニキ会長なんて2期目だし、全校生徒が注視する中で堂々と話してるなんて凄いんだよね。だって去年もなんだし。私には無理だ。
そうそう、北村君が「高須が合コンに行けなかった事を櫛枝に謝っておいてくれって言ってたぞ」って言ってきた。
私はそんなに真面目に合コンしてなかったし、高須君って噂と違って律儀なんだね。ちょっとビックリだ。

516日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:01:57 ID:Qzpzk8KN

木原麻耶の日記より抜粋。
1月20日。
冬休みの間に私は自分の気持ちと向き合うことが出来た。これからはまるおともっと親しくなろう。
でも問題は高須君だ。私は奈々子みたいに料理しないから買い物もあまりしないし、料理の話も出来ない。
昨日奈々子の買い物について行ったらスーパーで高須君に会ったけど、結局私とは会話が続かない。
なんか無いかな〜。取っ掛かりが無いのよね!取っ掛かりが。
でも帰りに突然私に手袋貸してくれたのには驚いた。
私だけ持ってなかったの気付いてたみたい。なんか嬉しかった。途中から道が違うから返すって言ったんだけど「良いから使っとけ」って。
人の言葉も聞かないでさっさと行っちゃった。奈々子がジト目で見てたけど、良いじゃない?言った筈だよ?奈々子にはさ。
明日、なんて言って返そうかな〜。この手袋。

1月22日。
少し遅れたけど放課後、高須君に手袋を返した。なんか一人じゃ呼び出せないし、困ってたらまるおが声を掛けてくれた。
でもなんかすっごい不味いよね私!
だってまるおの事が好きで高須君の事が好きで、高須君に借りた手袋をまるおの口利きで返すってアリ?無い無い!!
でもさぁ、まるおも高須君も私の気持ちなんて知るわけ無いじゃない?告白もして無いし、高須君とはまだあんまり接点ないし。
なぁんかもう「これ!ありがと!」だけ、言えたの。「おう」って貰ってくれたけど彼もそれだけ。
それから少し放課後の一時を誰も居ない教室で3人で居たけど、なんか高須君とまるおは二人で普通に喋ってるんだけどさ、私は蚊帳の外って感じ。
「じゃ!私帰るから!」って飛び出しちゃった。ちょっと勿体無い感じだったけど仕方ないよね。
でも最期に高須君が「わざわざ悪かったな」って。ホントにお人よしだよね。助かったのは私なのにさ。


香椎奈々子に日記より抜粋。
1月22日。
……どうしよう……
明日と明後日の土日は用事が有るからって麻耶に嘘を付いた。だって………麻耶にどんな顔で会ったら良いかまだ分かんないから。
今日、図書室で調べ物に時間掛かっちゃって、で教室に忘れ物したのを取りに行ったら麻耶が飛び出して行った。声を掛けようと思ったんだけどその前に「悪かったな!」って。
なんでウチのクラスから?って思った。だって高須君の声なんだもの。
私がビックリして固まってたら北村君の声が「でもホントに良いのか?高須」って聞こえてそして「良いんだよ……俺は香椎が良いんだ……」「そうか。ま、良いならいい」
………………どうやって家に帰ったのか覚えてない。
夕飯は出来合いの物を買って来た筈なんだけど、食卓にはお米とプリンとお味噌汁とコーンスープが有った。
「お父さん変わったご飯ね?私、なんか食欲無いからもう寝るわ」って言ったらコクコク頷いてた。変なお父さん。
はぁ……どうしよう……私
517日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:02:22 ID:Qzpzk8KN

狩野すみれの日記より抜粋。
1月24日。
明日、私はケリを付け様と決めた。
奴がどう言う積もりか、そして私は……どういう積もりなのかを、な。
高須竜児を呼び出して聞こうと思う。
何故奴は、クリスマスの夜に私を誘ったのか。
だが私はあの夜、奴を暗に遠ざけ拒んだ。それでも奴は正月には笑ったし、両親に会いたいとも言う。奴の想いはなんだ?
ソレを明日、私は高須に聞こうと思う。お前はどう答えるんだろうな?高須。


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
1月24日。
やはり奴を殺るしかない。
奈々子の様子がおかしい。いや、おかしいを通り越してあやしいのレベルだ。
何故3食ひたすら赤飯を喰わせられるのか私は問いたい!が、理由は分かってる。いや、他には考えられない!
あの初詣の時の侠客に違いない。しかし幾らなんでもココまでとは……まさか!!
赤飯……可愛い奈々子……赤飯……刺青持ちの腐れ外道……赤飯……もう女子高校生な奈々子!!!!
奈々子?そうなのか奈々子ぉぉぉ!!
ふ、ふふふ、はははははぁぁって舐めるなよ外道!一介のサラリーマンとて一人の娘の父!貴様如き鬼畜にむざむざ娘をシャブ漬にされて堪るか!
待ってろよ?奈々子。明日から父さんはジム通いだ!あの外道に怒りの右ストレートをぶち込むまで父さんは諦めんぞ!!


北村祐作の日記より抜粋。
1月25日。
今日もいい天気だった。登校時に高須に会ったので一緒に登校した。
それにしても高須は意外に音楽に精通しているようだ。なんでも色んなパターンで曲を組んだMDを数種持ってるようだ。
その詳しいシチュエーションは明かしてはくれなかったが、お勧めを1枚貸してくれた。なんでもドライブ用だとか。免許でも持ってるのか?高須。
でも良かったぞ。まぁ礼を言っても受け取らないお前だ。俺もあまりしつこくは言わないさ。
良かったろ?と聞いてくるのは良いが、暗闇では止めた方が良いな、その仕草は。でもまぁ。
「ああ。確かにお前が「アレは歌詞が良いんだ」って言うだけの事はあったな」ていうとなんか恥ずかしそうにしてたのが印象的だ。
でもアイツに、皆にも聞かせてやるのか?って聞いたら静かに首を振って「一人で良いんだ…たった一人に聞いて欲しくて、ソレを創ったんだからな」と。
見てれば分かる。そのたった一人に、お前の手は届いては居ないんだな、高須。
俺は親友の想い人を知らない。でもせめて上手く行って欲しいと、今夜は願いたい。

518日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:02:47 ID:Qzpzk8KN

櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月25日。
いや〜。やっぱりアニキ会長は凄いよ。
ウチの学校って野球部も男子ソフトも女子ソフトも有っていつもグランドの事では困ってた。
そしたらアニキが学校とか教委とか市役所とかに掛け合って、市営の野球場一つの占有許可を勝ち取ってきたの。
もちろん有料なんだけど、生徒会の予算内でなんとか治める額に交渉して、全てに納得させちゃった。
ホント、とんでもないお人だよアンタ〜最高。
放課後に生徒会室にグランドと球場のローテーションを持っていった。
お礼したら「勝ち取って良かったと思える位、頑張ってくれよな」だって。く〜!かっこいい!!
無論!頑張るぜ!!私の夢に向かって、まっしぐらさ!!


高須竜児の日記より抜粋。
1月25日。
ついにココまで来たか。思えば遠く苦しい日々だった。
今日生徒会室に放課後呼び出しを受けた。何かしたかと思ったが、俺が行くと生徒会室から櫛枝さんが出てくるじゃないか。くそ!なんで走っていかなかったんだ俺は!
が、まあいい。今の俺はそんなぐうたらな過去の俺すら許してやれるのだ。
生徒会室に入ると狩野先輩しか居なかった。俺を見ると「来たか」と言って先輩は窓際に立った。
始めは何かと思ったが「お前に聞きたい事がある」と来た。それは良いのだがどうにも要領が掴めない。
盆に水がどうしたとか時計がどうしたとか。俺が「それで何が言いたんでしょうか?」て聞いたら、少し怖い顔になったけど、多分、ようやく本題に入ってくれた。
つまり「一度は失敗した、筈のモノを追い求めて、お前はそれで何を得ようというんだ」と聞いてきた。あの目は真剣だった。
あの目が無ければ俺は気が付く事が無かったろう。誰よりも誠実で頼りがいが有って、皆にアニキと慕われてる存在が俺に偽らずに答えろと訴えてくる。
或いは俺がもう少し早く来てれば無かった話しなのかも知れない。そして遅れて来てもまた、俺には気付けなかったのかも。だが運命は俺に味方した。GJ運命!
この目と、この問いの向こうに、俺には櫛枝実乃梨の姿がはっきりと見えた気がした!1度の合コンの失敗で諦めるのか?と。諦めなかったところでどうなるのか?と。
俺と面識のあまり無い櫛枝さんには、こうして狩野先輩に託すしか無かったのだろう。北村には恥ずかしいだろうし能登では駄目駄目だ。OK。OKだ櫛枝さん。
俺は狩野先輩に言ってやった。「何もかも全てです!俺はソコにある全てが欲しい!」
無論、狩野先輩にだって役割がある。色々言ってきたが悉くを返したさ。だってそうだろう?
何度失敗しようが俺の何が失われようが知ったこっちゃ無い。それは俺の問題だ、櫛枝さんは変わらずソコに在る。だったら。
「その為に全部失ったって、手に入ればチャラですよ。きっとソコにはそれだけの価値が在る。少なくとも俺には」
先輩も納得してくれたのか、押し黙って窓に向かった。俺は狩野先輩の後姿に礼を言って、こんな仲介役を引き受けてくれた頼もしき先輩に無言で頭を下げた。野暮はなしだ。
去り際に「お前に手に入れられた方は不幸かも知れんぞ」と言ってきた。愚問ですよ、先輩。
もうすぐ聖なる2月14日が訪れる。あぁ、俺の人生最良の日が今日確かに近付いた。
俺は最大の功労者である狩野先輩に感謝しながら、今夜は眠るとしよう。

519日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:03:10 ID:Qzpzk8KN

狩野すみれの日記より抜粋。
1月25日。
ふぅ。どうやら私の負けの様だ。
高須は私にはっきりと言った。私の全てが欲しいと。アイツは一度も私の視線から逃げなかった。
2度、3度と失敗したら?「失敗が怖くなくなりますね」
他の誰かと付き合うかも知れんぞ?「道順なんて関係ありません。最期に俺に辿り着けばそれで良い」
最期まで振り向かなかったら?「関係ないです。振り向くまで諦めない。いや、いつかきっと振り向かせて見せます」
たとえそれで全てを失うとしてもか?……か。
私の価値か…自分の価値は自分で決める積もりだったのだがな、私は。
それにしても随分と勝手に価値を付けてくれたものだ。
愚問か、ホントに愚問だな、高須。
「俺を選ぶってんならそれは選んでも不幸にならないって確信があるから選ぶんです。だから、俺達が不幸になるなんて、絶対に有り得ない!そんな男に、俺は成ります!必ず」
良いだろう、高須竜児。私達が不幸になる筈が無いと言うのならそれを証明して見せろ。そんな男に、成ってみろ……竜児。


高須竜児の日記より抜粋。
1月26日。
おかしい。何度かグランドをうろうろしてみたが櫛枝さんからのリアクションは無い。
どうしたんだ?照れてるのか?
うん!そうに違いない。
明日はもっと気を使おう。まったく、気の効かない俺でゴメンね櫛枝さん。

1月27日。
下校時、誰も居ない廊下ですれ違ったのだが……素通り?
あれ?

1月30日。
偶然に狩野先輩に会った。こないだの話ですけどと聞いたら行き成り腕を掴まれて廊下の隅に。なんと先輩は言った。
「あの時の言葉は預かっておく。私は見てるぞ?高須」と言われた。
なんて事だ!俺はソコまで狩野先輩に疑われているのか!!つまり櫛枝さんに俺はふさわしく無いと?
ふふふ…いいだろう。昨日の友は今日の敵。今日の敵は明日の友だ!
見ていてください狩野先輩!俺は必ず櫛枝さんにふさわしい男に成って見せます!!
はぁ、でもこれでバレンタインは無くなったな。
520日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:03:35 ID:Qzpzk8KN

逢坂大河の日記より抜粋。
2月4日。
どうしよう。っここここ今年のバレンタインデーって何月何日だっけ?去年と同じで良いの?
今までは誰にもあげた事無いけど、今年は、その、北村君にあげようと思う。
幾らの買えば良いんだろう?4万円くらいで足りるのかな?でも手作りの方が…あぁ!どうしよう!!


木原麻耶の日記より抜粋。
2月7日。
う〜ん。今年はどうしようかと思う。去年とかは無視だったけど、まるおや高須君にはあげたい。
でも高須君はクラスも違うし、中々ねぇ。
まるおは同じクラスなんだけどなぁ…そうか!他の男子にも義理チョコあげれば良いのよね!
それでまるおにもあげれるし、まるおのだけにカードか何かを…でも高須君は?私はもうまるおなの?自分で分かんない…あぁ!どうしよう!!


木原奈々子の日記より抜粋。
2月9日。
あ〜あ。もう、なんでこうなっちゃうかな〜。
この前までは普通に高須君にチョコあげようと思ってたのに、彼があんな事言ってたら、普通にって感じじゃ無くなるじゃない。
いや、もちろん嫌いじゃないんだけど、てか、もしかしたら私だって…でも麻耶とか押しのけてって程でも無いのも確かなのよね、きっと…あぁ!どうしよう!!


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
2月11日。
は〜。ねぇ竜。貴方は何処に居るのかな〜。
そりゃあ終われる身なんだし、そうそう逢える訳じゃないわよ?第一、2度しか逢った事無いんだし。
でもね、それでも逢いたい女心位は分かっておくべきよね、大人として。うん。
せっかく奮発して買おうと思ってるのにな〜…あぁ!どうしよう!!


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
2月12日。
へいへいへい!!!買って来たぜチロルの山を!
君は何チロルだい?お〜!挨拶出来た君には3チロルを進呈〜!!
うんうん。やっぱチロルだよね〜〜はっ!!明後日まで持ってたら私食べちゃう?…あぁ!どうしよう!!


狩野すみれの日記より抜粋。
2月13日。
あぁ………どうしたものかな。
521日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:04:01 ID:Qzpzk8KN

木原麻耶の日記より抜粋。
2月14日。
今日は結局、クラスの男子数人に義理チョコをあげた。まぁ同じ班とか係りとか、そういう人。
もちろん、まるおも含んでる。カードとかも考えけど、やっぱり辞めた、だってまだ私自身の気持ちが分かんないんだもん。
だから、まるお。今年はまるおも義理チョコだよ?限り無く本命に近い義理チョコ。
でも「ありがとう木原。いやぁ、今まで余り貰った事無くてな。かなり嬉しいぞ」って言ってくれた。
ありがと、まるお。少し報われたよ。
高須君には無いんだ。やっぱこうしちゃうと不自然だから。だから来年は、もっとし自然になろうよ、ね?高須君。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
2月14日。
結局は待ち人来たらず。ま、分かってたもんね〜だ。
でも仕方ないでは済ませる訳には行かないわね。そろそろ策を練りましょう。
第一あの人の名前も知らないんじゃ…そうよ!あのパンチに聞けば!
今度、あのパンチを探して竜さんの事を聞き出そう。
そうすれば逢える。あの人に、もう一度…。
待っててね、竜。さて、ナニワ金融伝見よっと。


狩野すみれの日記より抜粋。
2月14日。
今日は随分と校内が浮き足立ってたな。まぁ無理もあるまい。こういうイベントで盛り上がれるのも今の内だけだろうしな。
私は特にあげる相手もいないし積もりも無い。義理もな。
1枚幾らの義理など不要だ。
今日は特に処理しなければ成らない事案も無いし、早々に帰宅する事にした。
偶には店でも手伝った方が良いだろう。
相も変わらずお得意さんの、目付きの悪いウチの男子生徒が夕飯の買い物に来てたからな、偶々だ、チョコを一つおまけしてやった。
ま、今日はそれだけだ。


香椎奈々子の日記より抜粋。
2月14日。
色々考えたけど、今日は高須君にはチョコをあげなかった。ちょっとタイミングが悪いよね、今。
私達は多分、仲の良い友達だったから、もしかしたら高須君は期待してたかも。
前に話した事有ったもんね。未だかつて貰った事無いって。気が向いたら私があげるよって言ったら喜んでたっけ。
なんか思い出すと、やっぱりあげればよかったかな?って。でも、無理だよね、今は。
ほんと……貴方の所為よ?高須君。
522日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:04:25 ID:Qzpzk8KN

逢坂大河の日記より抜粋。
2月14日。
きききき今日、北村君にチョコをあげた。
ちょ直接なんて無理だから下駄箱に入れたけど、ちゃんと受け取ってくれるかな。
色々考えたけどやっぱりこういうのは手作りが良いって本に書いてあったから、初めてだったけど…形はそれなりに上手く行ったと思う。
失敗し過ぎて3万円くらい掛かったけど、でも、作れたもん。
こうやってカード書いて、その、もし。、ね。良かったら付き合って下さいって………書いたカードがなんでココにあるの???
……………来年また頑張ろう


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
2月14日。
うんうん!毎年恒例の奈々子の手作りチョコレート。
ホントに奈々子は優しい子に育ってくれた。それだけに悲しい。なぜ奈々子があんな外道に蹂躙されね、いや、今日は止めよう。
これから先、あと何年、奈々子はこうして俺にチョコをくれるんだろうな。
いつかこのチョコも俺ではなく、アイツの選んだ相手に渡されるんだろうな…こうやって高須君へ、なんて書いたチョ………奈々子が慌てて部屋に飛び込んで来て、きのこの山と取り替えてった。
そうかいそうかい。奴は高須君と言うのかい……くっくっく、ふはははは!!やあ高須君!海で石でも抱かす君!!ははははは!!!


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
2月14日。
いや〜〜。配った配った!チロル祭りは健在だよ!
文化の極みだとは思わないかね生徒諸君!
でも、いつか私もチロルじゃない、ホントのチョコを渡したい。それはきっと先の話。
できるなら良い話になると良い。
そんな良い話に出来る人に、私は巡り会いたい。
今日はそう、思った。


高須泰子の日記より抜粋。
2月14日。
今日は〜。来てくれたお客さんに、やっちゃんからチョコレートを渡す日なのだ〜。
いつも来てくれてありがとうの感謝の気持ちを一杯い〜っぱい詰めるでがんす。
だから今日は皆が笑顔の日。
毎日こうだといいね〜、竜ちゃん
523日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:04:52 ID:Qzpzk8KN

高須竜児の日記より抜粋。
2月14日。
コレはどう言う事だ。まさに非常事態だ。
俺の下駄箱にチョコレートが入っていた。何処から見てもチョコだ。エックス線もガンマ線も必要ない。これはチョコレートと言われる代物だ。
差出人は無い。無いが、コレが俺の下駄箱に入っていたと云う事はつまりは…俺に!!
おいおいおいおいおい!!!本気なのか?自分を大事にしてるのか?君はって落ち付け俺!クールにクールに
だが、誰かが分からん。そもそも俺にチョコなどくれる人に心当たりなど無いのだが……!そう一人居た。
確か前に何気ない会話をしたのを覚えてる。コレは香椎さんだ、と思った。
香椎さんとは何故か最近会う事が少なくなったが、それでも間違いなく、俺の親しい友人の一人だ。
ありがとう。香椎さん。
俺は香椎さんに感謝の思いと、お礼の言葉を心の中で唱和しながらチョコを少しかじったのだが。
脳天から爪先に電気が走った!というか、落雷に等しい衝撃に違いない。これは……なんだ?
一体どう云う化学反応を起せばこんな味が生み出せるんだ!お前の身になにが有ったと云うんだKAKAO!!
コレはもう、一つの武器だ。いや、兵器だ。
ちょっと待ってくれ。この物体が生み出され送り込まれた経緯は分からん。だが、コレが香椎さんの物で無い事は確かだ。
彼女の料理の腕は大体察しが付く。こんな人外魔境の定番料理を作る人じゃない。だとすれば一体……あぁ!!!
そう、俺は思い出してしまった。ある光景を。アレは入学したての親睦レク。違うクラスの違う班で、カレー鍋に何かを入れようとしているのを班の人達が必死で止めていたあの光景を。
あの時確かに思ったものだ。きっとあの人の味覚は班の人達からすると有り得ないのだろう、と。だが問題はその人物だ。
櫛枝さん……まさか極度の味覚音痴だと言うのか!!く!涙が……いや、泣いてる場合じゃない!
だとすればコレは櫛枝さんから俺へのバレンタインチョコレート!!おいおいおい!!!立ってるじゃねぇか櫛枝フラグ!!だが…くっ!チョコが俺の死亡フラグに見えやがる!
試しにもう一口喰ってみたが……ふっ、時間が10分程ワープしたぜ。
ぬぅぅぅ。どうする?高須竜児。この櫛枝チョコを喰い残すなど許されん!断じて有っては成らん行為だ!行為なのだが、コレは本気で命に関わる。本気と書いてマジだ!
たった2口で時を駆けたぞ?この大きさを…なぜ普通の板チョコサイズがこれ程デカク見えるんだ。櫛枝さん、やっぱ君はすげぇ!
しかし、このままでは……どうする。どうすれば、いいんだGOD!?
だがその時俺の脳裏には櫛枝さんの笑顔が写った。どこかで、何かの歯車が、しっかりとはまった気がした。
そうさ、何を悩む必要がある?櫛枝さんのチョコで逝けるならそれはむしろ本望だろう?高須竜児よ。
もし15日のコレを書けなかったとしたなら、俺はもうこの世には居ないだろう。だがコレだけは記そう。

後悔は無い、と。


2月15日。
櫛枝さん。大橋総合病院の個室のテレビは有料だよ。
明日には退院出来る。
大丈夫。ありがとうと笑顔で言える。きっと。
524日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 02:05:15 ID:Qzpzk8KN
連投失礼。
あ〜みんごめんな><
では
525名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 02:11:22 ID:SSxr47Ml
おっ来てる!
今から読むが先にGJと言っとく
526名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 02:50:38 ID:egxvsjUh
今回もGJ!
「歌詞」「香椎」、「高須」「抱かす」ww
そして、ついに竜虎に接点が!
今一番楽しみなSSだ。
次も期待してます。
527名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:01:37 ID:VihtuiFJ
奈々子パパ 最高です。
笑ったw GJ
528名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:11:41 ID:cHTKql9X
GJ!!!!超GJ!!!!!!
とらドラPくらい面白いんだが・・・

そいや提案なんだが明日も徒然日記さんがくるかもだからちょっと早目に
次スレたてておかないか?
529名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:12:59 ID:FUiHnLj6
竜児は何も悪くないのにえらいことになってるw
530名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:29:24 ID:HrANMYV4
ゆりちゃん哀れすぎほろり
つか会長が可愛すぎるんだがマジで…
531名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:31:43 ID:Y+qQB1WK
時をかける竜児〜食ってられないチョコがある〜                 お目汚しスマソ
532名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:40:19 ID:Y+qQB1WK
下げ忘れたスマソ
533名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 07:00:19 ID:fJlrpn4P
電車の中で読んではいけない作品だなコレ……
笑いを堪えきれずに死ぬかと思った
534名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 07:01:25 ID:v8yv2p+m
ヤバい
一番可愛いと思うのが竜児な俺は異端なのか?
頑張れ竜児
535名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 07:11:06 ID:K1hWIHWx
木原奈々子って誰?
536名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 07:53:08 ID:8HRdY+XO
>>514-524
GJ! 四日連チャンで投下とはゴイス
537381:2009/05/17(日) 08:56:33 ID:QnsUyD56
538名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 09:05:16 ID:cyZ6kdxn
竜児w
続きが楽しみだ(´`)
GJです
539名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 10:33:53 ID:4EY397pf
GJ!
奈々子の気分の影響をモロに受けてしまう奈々子パパが哀れw
あーみんの出番も待ち遠しいけど、ニアミス程度かな?
540名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 12:04:57 ID:RksStlrM
4日連続とはw
しかし、のちの修羅場を考えたら怖いな
541名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 12:33:10 ID:sVqwJ3AQ
いやあ面白いな〜
竜児と会長の解釈のズレ笑えるし、大河はやっぱり竜児のところに間違えてチョコ入れるのかwww

作者さん、もし書いていただけるならエンド誰か一人に絞るのはMOTTAINAIほどのSSだと思うので、
各キャラごとにマルチエンディングを書いて欲しいです


542名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 12:36:55 ID:nHkmCdVw
>>541
おおそうだよな
ぜひ時間があったらお願いします
543名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 13:59:41 ID:/3AWvDe/
会長エンドと奈々子エンドと独身エンドがあれば逝ける
544名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 14:17:59 ID:FA12FTV8
>>543
独身ENDは独身のままだからこそ映えるってもんだ

結婚=BADENDだ
545名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 15:10:06 ID:2NP3QuVP
奈々子父「おお奈々子ななこ、お前はいつの間に、そんなに見事に育ちおってからに〜」
奈々子「きゃあぁ〜」
…てな展開あり?
546382:2009/05/17(日) 15:39:35 ID:yhViwQbB
547名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 15:40:15 ID:FA12FTV8
>>545
そこから助けて高須君になって同棲開始か
548名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 16:18:17 ID:fJlrpn4P
書き手さんの頭の中には既に結末が描かれているだろうから今から書き手の意向にそぐわない分岐を
あれこれ考えてもらうのも負担だし野暮ってもんよ
549名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 17:29:43 ID:7O/B4nXt
○○エンドとかダレるだけだからイラネ
最初は良くても、段々劣化してクソ化するのが目に見えてる。
丁寧な作品なんだから、わざわざ質落とさなくて良いよ。
綺麗に最後まで纏めてくれ。
550名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 18:08:42 ID:+y34Gy/i
日記の人連日GJ
竜児うろたえすぎてワロスw

>既に4食カップラーメン
>袋の中に赤いキツネが見えた。明日はうどんか
>食卓にはお米とプリンとお味噌汁とコーンスープ
奈々子父は竜児を殴る前に栄養失調で倒れると思うw

毎回面白いけど最後を最期って誤字がちょっと多いかも
20代最期の私の恋だもの あたりはハマってるかもしれないんでアレだけどw
551名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 19:08:36 ID:bC/Vrl6+
まぁ一読者としては、日記物はハーレム系として見てたから
竜児が勘違いで突っ走ってるのはなんか微妙だったな
実乃梨が自分を好きなんだと思い込むのは、男からみるとコメディ色より情けなさが目立つし
会長の勘違いが可愛いのとは少し違うから、竜児のその勘違いは必要か?って感じはする
552名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 19:31:31 ID:v8yv2p+m
竜児の勘違い爆走はアニメ3話を見ているようで個人的には微笑ましかったがな
まぁ、感じ方は人それぞれか……
553名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 19:58:33 ID:bC/Vrl6+
うん、あくまでそういう感じ方する奴もいたって感じで
この流れでの続きも楽しみにしてます
554383:2009/05/17(日) 20:39:59 ID:CFgJd2zX
555名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 23:38:49 ID:IMXBwO0p
そろそろ次スレを建てに行ってきます
規制が掛かってなければいいなあ
556名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 23:45:42 ID:IMXBwO0p
建ちますた

【田村くん】竹宮ゆゆこ 16皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242571375/
557日記。徒然に。。:2009/05/17(日) 23:47:33 ID:c5YMvzZG
こんばんわです。
470超えてるんで今日はどうしたらいいかと思ってたんで、次スレに落しますね。

毎晩落して、他の人の投下の妨げになってる気がします。
ほんとにすいません。


もうちょっとで、あがります
558名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 23:49:01 ID:egxvsjUh
おおっ!
今夜もキターーーーーー
楽しみだぁ
559名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 23:53:21 ID:IMXBwO0p
なんというジャストタイミング!
次スレを建てた甲斐があったというものですよw
56098VM:2009/05/18(月) 00:03:52 ID:iIEzo+75
>>434
埋めネタのつもりで亜美&竜、ローマ再会物を書いたんですが、なんか30k
越えてるかもしれない気がしてきたので、次スレに投下します。
ただ、日記が面白過ぎて、投下に勇気が要るww 日記GJ過ぎw
561日記。徒然に。。:2009/05/18(月) 00:09:49 ID:5W55/Xpl
98VMさんのいつも、いや、多分全部読んでます!
いつも読み手なんで、楽しみにしてるんです。
お願いします。

いろいろすいません
562名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 00:12:21 ID:rowlnRiJ
>>560 なん・・・だと・・・
頼む早く投下を
563名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 00:30:21 ID:2xaQTeCD
>>560
    _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 ローマ!ローマ!
  (  ⊂彡
564384:2009/05/18(月) 12:11:55 ID:VNPdjzr9
565413:2009/05/19(火) 18:54:11 ID:a2sT/6/i
>379
566名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 19:18:07 ID:c2MPm4t+
しおり付けてる奴は早く専ブラ入れろ
567名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 02:52:57 ID:SA7qTjIF
うめー
568名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 03:01:52 ID:ru4IFStX

      ,'    : . : .〃      ハ:. : . : . : .jl       __ __
        {     : . {{    / ∧:. : . : ./:|     '.:´::::::::::::::::::` 丶
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         `ヾ、ー-- '┴ '''''"´ : . :   |ハ:::W!     ` ,> ヾ::|::l:::::l:::l  AA使って手っ取り早く埋めちまおうって話だ!!
              \ : . : . : . : . :  「7>!、、  ヽイイび゙犲V::::::l:::|
                  ヽ . : . : . : . : ノ|ィ7てカ`     ゞつン 小:!::|:::|
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569名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 03:06:45 ID:ru4IFStX

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          /     〈   j: . : {:::::/:::イ ./ /;::ハ``\_ヘイ/;::ヘ\\:∧::::j: . : . ,
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        ヘ       {  i: :::: . ∨i/::::{', 弋とソ     弋とソ ´ /j:::::∨ i: .::::. i
         >‐'ヘ   {  1::::::::::!: . :::::ト',        `       ハj:::: : . j:::.:::::::|
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     ー─---───-{ j  ,' }ヽ     Y     >tZtニ=、、 ヘ::::ヘ 1    ヽ.ー-、
                j j    j  ヘ    /   〃゙´ /ハヽ ヾ;、 ヾ::::{      `   ',
570414:2009/05/20(水) 03:08:13 ID:MPdrQxdP
>380
571415:2009/05/20(水) 07:05:56 ID:1QOaCgDk
>381
572名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 08:57:34 ID:VlvGIB+Y

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573名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 08:58:26 ID:VlvGIB+Y

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        ヘ       {  i: :::: . ∨i/::::{', 弋とソ     弋とソ ´ /j:::::∨ i: .::::. i
         >‐'ヘ   {  1::::::::::!: . :::::ト',        `       ハj:::: : . j:::.:::::::|
     , ' ´    \ ヽ V::::::::::V: .:::i::::ゝ   ー----‐ 7    /´j:::. : . j:::::::::::i 
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574名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 12:59:27 ID:HnCb0o8y

亜美の別荘に行くのは大河と実乃梨じゃなくて麻耶と奈々子。
竜児が麻耶に協力していたら、という設定で。

前に書いたものの上手く締められなくて挫折したモノで少し埋めてみます。
三人称で書いていたのですが、途中で入れた奈々子の視点のところだけ。
次レスから投下します。
575竜児no:2009/05/20(水) 13:00:30 ID:HnCb0o8y

会話は途切れることなく、続いていく。
今まであまり話したことなかったのに自然と言葉が口から溢れた。
高須君の隣を歩いていることになんの違和感もない。
凶悪な瞳と感じていたものが、逆に愛らしく思えてしまう。
高須君の眼の奥が光るのは、必ず料理や掃除の話の時だ。
それがわかってしまうと面白い。
何を恐れていたんだろう。
何を怖がっていたんだろう。
こんなにも優しい人は滅多にいないのに。
うわべだけを見ていた自分が情けなくなった。

高須竜児に対する印象の逆転。
そんなことが私の中で起こっていた。


麻耶と一緒にまるおのところに行くと必ず煩わしそうに睨まれ、すぐに何処かに行ってしまう高須君。
そんなに私たちのことが嫌いなんだろうかと思っていた。
まるおに高須君のことを聞くと「良い奴だ!!」と胸を張って答える。
本当なんだろうか、と疑っていた。

二年になってから高須君に対する見方が少しだけ変化した。
始業式の後だったか、手乗りタイガーに廊下で殴られて、のされていた高須君。
そんなことがあったのになぜかその後すぐ大河と仲良くなり、『付き合っている』とか『同棲している』とかいう噂を立てられていた。
大河が教室で暴れ、その噂は払拭されたけど、そんなことに関係なく大河と高須君は前より仲良くなったように見えた。
それから人形のように可愛いけどドジで着飾らない本心で行動する大河をフォローしている高須君の姿を眼で追うようになった。

亜美ちゃんが転校してきてから、また高須君に対する印象が変わる。
男女問わず誰もが振り向く美しさを持っている亜美ちゃんが高須君に興味を持っているようだった。
何かある度にちょっかいを出しに行く亜美ちゃんの姿。
楽しそうだった。
なんでだろう?
そんなことを考えた。
亜美ちゃんほど綺麗で可愛く日本人離れをした容姿を持っていて、動作のすべてが絵になる女性を私は知らない。
色んな雑誌を見て、モデルの女性を見ても亜美ちゃんの方が魅力的に見えた。
その魅力はこれから拍車を掛けて大きくなっていくだろうことも理解できる。
性格はだんだん変わってきたように感じたけど、どれだけ毒づいても友達思いで優しいところは何一つ変わらなかった。
付き合いはまだ短いけど親友と呼んでもいいくらいに仲良くなれた。
そんな亜美ちゃんが気にしているらしい高須竜児。
576竜児の印象:2009/05/20(水) 13:01:27 ID:HnCb0o8y

仕事をしながら学校へ行っている亜美ちゃんは、今まで色んな男の人を見てきただろう、と思う。
年齢など関係なく言い寄ってくる男もいただろうし、誰が見ても完璧な格好良さを持っている男もいただろう。
芯が通っていて、大人の魅力があるような男もいただろうし、子どものように我が侭で嫌な男もいただろう。
でも色んな人を見てきた亜美ちゃんが唯一興味を持っているのは、三百眼で怖くて不良、ヤクザにスカウトされたと聞いても皆が納得するような高校生。

授業でプールを使うようになり、ちょっかいを出すだけではなくなった。
高須君を賭けて大河と勝負するという亜美ちゃん。
私には亜美ちゃんの気持ちが全く理解できなかった。

今回麻耶のために協力してもらおうということになったけど、初めは乗り気じゃなかった。
印象はいい方に変わってきて、気になってはいたけど、一緒に泊まり掛けで旅行するほど仲良くはない。
一緒に別荘に行くっていうのも正直怖かった。
最悪、高須君のことは亜美ちゃんとまるおに任せようとも考えていた。
最近話すようになったからか、麻耶に協力してくれるんだろうか、という心配はなかった。
でも今日の話も本当なら日を変えて亜美ちゃんが来てくれる日を選びたかった。

偶然にも須藤バックスに来る前にバッタリと高須君に出くわした。
正直なところ、どうしようかと思った。
態度には出さないけど、強張った私に高須君は自然に話しかけてきてくれた。

…意外。
話しやすかった。
楽しかった。
スムーズに話が進んで行く。
麻耶の気持ちにも気付いていて、それが自分の親友のためにもなると思ったのかはわからないけど、真剣に考えてくれていた。
目つきが悪いだけ、料理の出来る物腰の優しい少年。
一緒に麻耶のことを考えて、共感してくれる同級生。
話してみると、とっつきやすく純粋な男の子。
気が付くと惹かれていた。

麻耶が少し時間に遅れてくるまで二人でデートをしているような感覚に陥ってしまった。
麻耶が来てからも別荘にいる間、どうするかは、ほとんど二人で決めていた。
麻耶は膨れていたけどあまり気にしない。
私の様子がおかしかったのか麻耶は急に『付き合っちゃいなよ』なんて言い出した。
一瞬で緊張が体中を駆け巡る。
きっと不自然に停まっていたに違いない。
気付かれなかったらいいけど…。
577名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 13:06:30 ID:HnCb0o8y
あぁ、削りすぎたせいか、全然埋まらなかった…。

いろいろ書いてみたりしたけど、
亜美や実乃梨の言動、奈々子の腹黒さが上手く表現できません。
やっぱ難しいですね。

では失礼します。
578名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 13:23:25 ID:ru4IFStX
うおおおおおおGJ!!!!!
別荘の奈々子も見たいです・・・!!
579名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 13:35:48 ID:HnCb0o8y
別荘でちょっとあって、竜児と奈々子と上手くいったっていう部分だけとか
告白する部分とかを投下しようとしたら10kb超えていて入らなかったので
麻耶の視点で書いた部分です。

短すぎて、全然埋められませんでした。
580竜児の印象:2009/05/20(水) 13:37:33 ID:HnCb0o8y
別荘での計画を立て終え、須藤バックスを出てスーパーに向かうあたしたち。
あたしは電話をしているフリをしながら、後ろから奈々子と高須君の様子を見ていた。

意外…似合ってる、あたしはそう思ってしまった。

強面の高須君は外見と内面は全く違うものらしく、さっきからあたしと奈々子のことを気に掛けながら歩調を緩めて歩いて行く。
おしとやかで落ち着いた奈々子は、料理が得意でしっかり者でスタイルも良い美人。
凶悪な顔面のせいで誤解を受けてきた竜児をちゃんと受け止める器量もある、と思う。
前々から奈々子と一緒になる男の人はきっと幸せだろうなぁと思ってはいたが、奈々子は同年代の男にあまり興味がないようだった。
だけど、今、高須君と一緒に居て楽しそうに微笑んでいる奈々子がいる。
後から奈々子に確認してみようと密かに心に決め、あたしは二人の会話に入っていった。
581名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 13:39:40 ID:ru4IFStX
次スレに続きを書くってのはどうだろう・・
正直埋めネタにするにはMOTTAINAIような気が・・
まぁAAで埋めようとした俺なんかが言える義理ではないのだが・・orz
582名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 13:43:51 ID:HnCb0o8y
もっと書いたつもりだったんですが、本編はそれなりに長かったのに麻耶の視点を探してみたらこれだけ…。
ということで以上です。

では失礼します。
583名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 14:14:44 ID:xWhtHR4c
GJ!
  _  ∩
 ( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ( ⊂彡
584名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 16:54:00 ID:RpKBguIL
とりあえず
×三百眼 ○三白眼
585名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 18:30:42 ID:4e1kgcd0
三百眼というとあれか、竜次の目は昆虫のようになってるんだな。
そりゃ怖がられる筈。目つきが怖いぐらい何だ、と思っていたが、それなら納得だわ。
586名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 18:43:36 ID:h8ZrXQw0
おい!気持ち悪くなったじゃねーか!
587名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 18:54:56 ID:HnCb0o8y
確かに気持ち悪い…。
これから竜児を見る度に何度も思い出しそうです…。

ご指摘ありがとうございます。
なんで一発で変換できないのか気になってたんですけど、その理由がわかりました。

なかなか好評なようで良かったです。
588名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 19:15:53 ID:P4LugxqE
三百眼・・・
どうやって打ちこんでたんだ?
さんびゃくがん?
589名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 19:24:20 ID:4e1kgcd0
>>587
誤字やら脱字やら誤った表現やら勘違いやらは誰にだってあるからまああんまり気にすんな。
作品は良かったよ。非常に良かった。埋めにはもったいないぐらいに。
590名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 19:49:02 ID:JtDXEZ6m
日本語は不自由だけど作品はよかったよ
591名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 21:56:39 ID:172pcqw/
「白」には「びゃく」という読みもあるし(白夜とか)、最初に間違えて憶えこんでしまったんだろ
592名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 22:31:02 ID:4gcgOoPK
もし竜児が目を閉じてれば、目つきが悪くても関係ないことに気づいたら
どうなるんだろ?
593名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 22:35:54 ID:t5DoZczq
さんぱくがん^p^
594名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 23:10:11 ID:RpKBguIL
>592
それは虎の仕置きで赤いまがくしを咲かせろってことか……むーざんむーざん。
595名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 23:13:10 ID:kNPPZoJZ
確かそんなSSあったよね
あれは良いものだった
596416:2009/05/20(水) 23:13:28 ID:BsIclLxM
>382
59713:2009/05/20(水) 23:53:49 ID:nA4j7aTh
597
598名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 23:54:56 ID:RpKBguIL
まとめサイトで読める?
599名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 00:43:58 ID:d8b1DdeZ
>>587
こういうの見ると、やっぱエロパロの主流層って中高生あたり
なのかなあって思うわ
次は辞書とか使って頑張れな
600名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 00:48:15 ID:d8VSpXFA
何を言ってるんだ・・・
601名無しさん@ピンキー
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