【ご主人様】メイドさんでSS Part8【旦那様】

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410 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/03(土) 13:07:09 ID:c4oWThXg

@@

結局その後二人で主人様の所に行ったのだ。
まあ、常々想像してたように主人様にリードしてもらうような感じじゃなかったけれど。
いや、寧ろ襲い掛かるようにという感じだったけれど。うう。
まあ、それはそれで素敵な思い出となった。うん。
主人様だって、私と秋乃なら、初めての相手としては文句無い、筈だ。きっと。
うん。

結果的には。

411 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/03(土) 13:08:12 ID:c4oWThXg

@@

そして今に至る訳だ。


秋乃と奪い合うようにして主人様のかちかちになったあそこを舐める。
ご主人様が、顔を紅くしながら、でもなんとなく嬉しそうにしている。

秋乃が根元を粘っこく舐めているうちに私が上から咥えてちゅうっと吸い込む。
あ、こらっと秋乃が言う。

ちょっとだけ、口を離して、私の大好きな主人様に向かって言う。

「私の口の中に出してくれたら、すっごい事してあげるから。」

主人様は私と秋乃にメロメロのように、見える。
その、自意識過剰でなければいいのだけれど、それは多分、私が6歳、秋乃が9歳の頃からずっと。
照れ屋な主人様だけれど、少なくとも私達をとても大事にしてくれている。
そんな事位は判る。

ただ、一時期、主人様がそういう事に恥ずかしがった時期があって、
それに私達が不安になって、そして自分の気持ちに気が付いた、
とそういう事なだけだ。あれはきっと。

そして大事に思っているって事は勿論私達もそうで、
だからこそこういう一つ一つが私達にとってとても楽しくて、大事な事で、
秋乃のいう、片付けなきゃいけない何かを片付けているように思えて、
下らない悩み事を片付けていっているように思えて、
いつものメイドの仕事が片付いていくあの快感と同じ感覚を、
幸せなあの感覚を、
私に与えてくれているのだ。


412 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/03(土) 13:08:49 ID:c4oWThXg
---

感想ありがとうございました。では。

ノシ
413名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 21:57:35 ID:U+qx4laC
続きGJです

なんだかんだで三人ともすごく仲が良い感じ
なんていうか、家族みたいな
414名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 22:25:08 ID:4KAclgap
くっ、萌えた
萌えちまったw
GJです
415名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 00:12:04 ID:k/j+kDwr
肝心要の本番なしかー。
416名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 01:13:46 ID:m+IRb1A7
萌え萌えですな
417名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 02:24:39 ID:pCbvuGhn
まあ待て今
>>412が秋乃と鈴子のうれしはずかし初体験を書いているところだから
418名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 18:28:44 ID:bqkWy0De
GJ!

幼馴染兼メイドで、一緒に育ってきたって感じが良かった。

それにしても年上の秋乃の切羽詰ったアプローチにワラタw
419sage:2009/10/05(月) 11:02:41 ID:bwILdQyN
保管庫で1から見たけど
利子ってツンなのか?デレなのか?
420名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 01:43:41 ID:2cLADui4
今思い切ってのSS書こうかと思ったけど
>>412の作品見て改めてSS作者の凄さってのがわかった

…もう半年ROMってきます
421名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 07:28:06 ID:fMKzdBxZ
>>420
初めは誰しも初心者だw
れっつとらい
422名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 23:57:24 ID:0xiaRjLA
頑張って書き上げて投下したものの、特定の職人に甘く新参者に厳しい、このスレの風土に耐えられずに消えてしまう>>420
423名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 00:31:38 ID:Uk3RjGnv
>>422が先頭に立って叩くに一票
424名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 02:06:25 ID:uCD+Dd4w
>>420はご主人様とのいやらしい日々をネットで公開したい淫乱さを持ちつつも、やはり恥じらいには勝てないメイドさん

>>421は、そんなメイドさんをエロくいじめたいがためにニヤニヤしながら応援し、小説を書いたら「淫乱め」と罵る予定の意地悪なご主人様

>>422は、淫乱メイドさんと意地悪ご主人様の愛のある生活を興味ないを振りして見ているものの、実はメイドさんが気になって仕方がなく、しかし不器用なため冷たくしてしまう執事
425名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 08:41:57 ID:Hg7pBBl0
すげぇww
これで二本くらい書けるんじゃないかwwww
426 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:42:53 ID:k6cIKdBK
>370
>393
の続きです。
427 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:43:37 ID:k6cIKdBK
-*

「と、いうことで。今週の日曜日に日取りは決まりましたから。」

「はあ。」
と、答える。というか答えざるを得なくて、頷く。
頷いた瞬間、不味いかな、と思い返す。

「良かったですね。あなたは器量も抜群だし、何事にもよく気が付くし、私はきっと、こういう良いお話が来ると思っていましたよ。
でも、まさか、姉小路様のご子息様からとは思いませんでしたけどね。」
ふふふ、と笑いながらそう言う和子さんにかなり引き攣っているであろう笑みを返す。
うん、やっぱりマズい。

「その、あの、なんていうか、大変光栄なんですけれど、やはり身に余る話なので」
「だめよ。」
おそるおそる言った所でぴしゃり、と言われる。
うぐ、と黙る。
428 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:44:44 ID:k6cIKdBK

「あなたの言いたい事は判ります。
姉小路家と言えば越智家までとは言わないまでも名家中の名家。
そこに越智家主人様付きとはいえ、いちメイドの身分である
自分などが嫁に行っても良いものかどうか。そう考えているのでしょう?
悩むあなたの気持ちは私にもよく判ります。いえ、当然の事とも言えます。
しかし、私の頃とは時代が違うのです。
いえ、それは悪いことと言っているわけではありませんよ。
こうやって変わっていかなくてはいけないのかも知れない事ですし、
そうであればあなたのように若く、聡明な人が変えていく、
世の中とはそういうものです。
ねえ、主人様のご学友に見初められて、
こうやって向こうからお話を頂けるなんて事は中々あるものではありませんよ。
無論、それもあなたの日々の努力があったからこそです。
遠慮をする必要は全くないのですよ。
私も鼻が高いですし、ほっとしもしましたよ。
あなたはもう21になるのですからね。
あなたのような優秀な子はいつまでも手元に置いておきたい、勿論私もそうは思いますけどね。
やはりこうやっていいお話を頂けるとなると、ほっとするものですよ。」

最早これが、のっぴきならない状況である事だけは身に染みて判る。

「これからが忙しくなりますね。無論、嫁に行くとなれば養子の手続きが一度必要になりますからね。
それは私の方から姉川家にでも頼む事としましょう。それから・・・」

「あの・・・」
はかない抵抗だとは判っている。が、一応口を出してみる。

「その、なぜ私が、なんでしょうか。姉小路家といえば和子さんの言う通り、名家ですよ、ね。
その、なんでわざわざ私なんかを。 しかも後添いとからなら判りますが、
その、私、お相手の方より年上になるんですよね。 私、お会いした事もないのに。」

和子さんがぱちんとウインクをする。
うげ。あるのか、会った事。
429 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:45:44 ID:k6cIKdBK

「お会いした事はあるのですよ。忘れたのですか?
この前、姉小路様が主人様の所へ遊びにいらっしゃったでしょう。
その時あなたがお茶をお出ししたんでしょうに。」

あー出した出した。お茶出した。と思い出す。あれが姉小路様か。
そういえばそうだった。主人様がそんな事を言っていた。と思い出す。
一月ほど前に来て、主人様と楽しそうにお話をされていた人だ。
眼鏡を掛けて顎がしゅっとした印象の中々男前の人だった。
何か若手のメイドがきゃあきゃあ言ってた。

「向こうが言うには一目惚れ、だったそうですよ。
背中に電撃が走ったようだった。あんなに美しい女性は僕は見た事が無い。
なんて向こうでは言っていたようですよ。
もう寝ても醒めてもあなたの話をしているらしくて、
この話を持ってきた向こうの家令の方がもう笑う事笑う事。」

「そ、そうですか。」
と言うしかない。

「ねえ、私も、立場もありますし、あなたの言うとおり姉小路様も主人様と同年齢ということで年下となる訳ですし、
とは言ったのですけれどね、 そこはやはり若いと言ってもお偉い方ね。
姉小路家でも同じような話になったそうなのだけれど
昨今人の身分などというのは流行らないよ。結婚とは人と人とが心で結びつくものなのだよ。
とぴしゃりと言われてその話はおしまいになったそうよ。
情熱的で、素敵な方じゃないですか。」

あら、それにあなた、姉小路秋乃なんて雅な名前じゃないの。
なんぞと言いながら和子さんはぽう、とあらぬ一点を見つめている。
430 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:46:05 ID:k6cIKdBK

「日曜日までに体調を崩さないようにして、できるだけね、身綺麗にしてお伺いするのですよ。
あなたの事だからその点についても、向こうでの作法についても心配はしていないですけどね。
でもあなたは時々抜けているところがありますからね。
当日は服も出来るだけ控えめで、でも殿方の気を引くようなものにするのですよ。
そうね、あなたなら着物が似合いますし、あの桜色の振袖があったじゃない。
少しばかり派手ではあるかもしれないけれど、あれが良いわ。そうよ。そうなさい。」

さあ、決まった。と部屋から送り出されながらそう耳打ちされ、
もう上機嫌!という風に和子さんが私に手を振りながら扉を閉める。

私はさてどうしようかしら、としばし扉の前で佇むのだ。


431 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:46:33 ID:k6cIKdBK

@@

あんの御節介婆が。と毒つくのは簡単なのだけれど。
現実問題、うん、現実の問題なんだよな。と考える。

21歳でございます。年下の貴族様から見初められました。
和子さんが喜ぶのも判らないでもない。
越智家にとっても名誉な事だろう。きっと。
私にとってもきっと悪いことではない。というよりも望外の幸せと言っても良い。
年齢としても私の年は結婚するには普通か、18で学校を出た身としては少し遅いかもしれない。
同い年のメイドの仲間はそういえばもうあらかた片付いている。

私もそろそろなのだ。
そういう順番なのだ。
そういう訳だ。

学校まで出させてもらって3年間。
いつの間にか厨房付きと和子さんを除けば、メイドの中で私が一番年上になっている。
そう考えればそろそろ卒業するべき時なのかもしれない。
432 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:47:39 ID:k6cIKdBK

というか、卒業させてもらえるのだ。こんな家が今時どこにあるだろう。
使い潰せば良いものを、世間では当たり前のようにそうしているものをこの家では決してそうしようとはしない。

和子さんは19歳、20歳あたりになったメイドに必ず嫁の世話をする。それがどんなに仕事の出来る子でも、出来ない子でも、
例え18でこの家に来た子にすら、しつこい位に声を掛け、根負けした彼女達に見合いをさせ、そして送り出す。
場合によっては今の私の話みたいに家格の問題を解消する為に一時的な養子の口まで探し出す。
まだ働いていたい若いメイド達は御節介婆と和子さんの事を言うのだけれど。
でもこれは正直言って私達にとって、とてもありがたい、
いや、殆どありえない事なのだ。

それどころか私などは学校まで出させて貰ったのだ。
そう云った事について越智家に対して恩返しもまだ済んでいないというのに
その上で給金まで貰っていて、そして今、私は見分不相応な嫁入り先まで用意してもらったという訳だ。


「あ、秋乃、丁度良かった。今日さ、主人様のお風呂変わってくんない?
急に女の子になっちゃってさ。換わりに私、食事の後片付けと掃除やっとくから。」

部屋に向かって歩いている途中に私と同じく主人様付きのメイドをやっている鈴子が声を掛けてきたのを無視して通り過ぎる。
なんだかあまり話をしたい気分ではなかった。

「ねえ、聞いてんの!?」
「聞いてるわよ。交換ね。いっこ貸しだからね。」
背中でそう答えると鈴子のむくれたような声が返ってくる。

「ん、な、何が貸しよ。いつもなら喜ぶ癖に!どっちかといえばこっちが貸しでしょう?」
後ろを向いて、わかった、わかった、と言ってひらひらと手を振る。
不思議そうな顔をする鈴子を尻目に部屋に入った。

ふう、と息を吐く。

433 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:48:07 ID:k6cIKdBK

@@

でもね。と思うのだ。
贅沢を言う訳じゃないのだけれど。

それにしてもさ。
主人様は何も言ってはくれなかったのだろうか。
私としてはそう思う訳だ。

主人様が7歳の時、つまり私が9歳の時から私は主人様をお世話している訳。
贅沢を言う訳じゃないのだけれどもうちょっとこう、
何かあっても良さそうなものじゃないだろうか。

ねえ。

だってさあ、ほら、主人様のお勉強も、ご飯も、遊んだりも、全部さ。
一緒だったから。
学校とかもほら、私と鈴子は通わせてもらってたから、なんていうんだろ。
上手く言えないけどほら、一緒だったから。

434 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:48:31 ID:k6cIKdBK

身体がどうとかって言うわけじゃないんだけど、そういうのもさ、あったし。
私の気持ちとかも、伝えてはある、訳だし。
その、ねえ、出し惜しみするわけじゃないんだけど。
結構その、私としても覚悟とかも要った訳。

まあだから将来的にどうなるとかってのは確かに避けて来た所はあったのだけれども。
その結果としての主人様の判断がこれって事なんだろうか。

まあ。というよりも、あの主人様がこういう判断を出来るようになったって事なのか。
それはそれで凄いよなあ。と思う。
なんか正直ずっと子供っていうか、弟みたいに思ってたからなあ。
いつの間にか身体だけじゃなく、心も逞しくなったのかも。と思う。
それはきっと、うん。良いことだとは思う。

主人様のお世話はどうしようか。
・・・まあ、どうしようも何も無いか。鈴子なら何の問題もないだろう。
いまだにちょっと気の利かない所もあるけれど、でも別に何の問題も無い。
というか鈴子はとても優秀な訳だし。
私が抜ける分を補充するにしたって和子さんが優秀なのを入れるだろうし、
鈴子は嫌がるかもしれないけれどその子ともちゃんとやるだろうし。

あ、鈴子にも言わなくちゃいけない。鈴子こそ妹みたいなものなのだから、
話が決まったら真っ先に言ってあげなければ。
どうだろう、喜んでくれるだろうか。それとも、怒るだろうか。


435 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:48:56 ID:k6cIKdBK

そうか。と気が付く。これと一緒だったのかもしれない。
主人様は優しいから。そして少し心配な位に気が弱い所があるから。
だから私の事を気遣って直接言えなかったのだ。多分そういうことなのだろう。
怒ると思った?
・・・それとももしかして、喜ぶ私を見たくなかった?
なんてね。それは自意識過剰と言うものだろうけれど。

でも、ちょっとは逡巡とかしてくれたのかなあ。
そうだといいなあ、と思う。


なんでだろう。
何で泣いているのか。私は。

つうつう、と頬に垂れる涙を拭う。
しゃくりあげる。ひっく、と声が漏れる。

お嫁さんにしてくれなんて言ってない。
いいじゃないか。ずっとずっと隣にいたかっただけなのに。と思う。
9歳の時からずっと一緒にいたのに。
私が本を読んであげて、部屋を片付けてあげて、
熱を出した時は一晩中一緒にいてあげたのに。
勉強も教えてあげたし、一緒になってボール投げもした。
あんなに小さかった背が、いつのまにか私を追い越して、
いつの間にか何でも私が一緒にやってあげていたのが、私が手伝うっていう形になっていって。
子供向けの冒険活劇のお話が、最近の流行の文学物の話に変わっていって。
主人様とかそんな事関係なく、私がその間ずっと、一番可愛がって、一杯可愛がってあげたのだ。

よりによってお友達を紹介する事なんて、ないじゃないか。
私を邪魔にする事なんて無いじゃないか。


主人様の馬鹿。
436 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:49:44 ID:k6cIKdBK

@@

「今日はなんだか、秋乃、優しいね。」

そうかしら、私は優しくしているつもりはないけれど。
湯船に浸かりながら腰だけをお湯の上に浮かせた格好の主人様の脚の間に身体を滑り込ませた格好でそう考えながら、湯船から突き出されたそれに唇を被せる。
口いっぱいと言って良いほどの逞しさ。
首を捻りながら舌を絡ませ、唇が湯面に付く位、口の奥の方まで飲み込ませる。

どくんと、口の中のそれが脈打つことで嬉しくなる。
自分でも健気だなあ、と思うような律儀なリズムでせっせと上下に首を振る。
私の口の中に唾液が溜まって口の中のそれに絡みついて粘着質ないやらしい音を立てる。
余った分が唇から漏れて、屹立したそれの側面を伝ってお湯の中へ溶ける。

嬉しそうにそれがすっごく硬くなって、私の口の中でびくんと跳ねる。

でもこれ、ご奉仕という割には私も気持良いんだよな。
と悔しくなる。
私の口の中で硬くなるそれはなんだかすごくいやらしい気分になるし、
硬くなる度に先端から出てくる唾液に混ざる苦味のあるそれも、なんだかもう、すんごくやらしい気分になるし。
それを必死で啜っている私自身もお風呂に浸かっているっていう以上に完全に身体が火照っていて、いやらしい。

何だか悔しくて、引き抜きざま、私の唾液でぬとぬとになったそれが舌の先端に丁度当たる位の位置で軽く歯を当ててやる。

437 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:50:05 ID:k6cIKdBK

「痛っ」
と、声がして、ちゅぽん、と口から離す。
「あら、ごめんあそばせ。」
こくん、と口の中に溜まった唾液と先端から漏れたそれの混じった液体を飲み干しながら謝ると、こちらを軽く睨みつけてくる。

「こら、秋乃。」
と言われる。目が笑っている。
うわあ、判ってるなあ。というか判られてしまっているなあ。
と、考えて、自分でも顔が紅くなるのが判った。
えーと、そういうつもりでは。

「こっちに来て。」
うわ。やっぱり笑っている。
おねだりした格好になるというかそう思われている。

「いや、ちょ、ちが、」
「いいから。」

ぐいと手を引かれて、ざばんと立ち上がる。

「ううぅ・・・ええと、今のはそういうつもりじゃ」
「ほら。」

小さいメイドを叱る時の様に叱られるのが好き。
悔しい位私の事を知っている。
いつもは意識してやっていたから、今日のはなおの事恥ずかしい。
438 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:50:30 ID:k6cIKdBK

覚悟を決めて、すうと息を吸い、背中を向けて湯船を跨ぐ。
脚を思い切り開いて両足をそれぞれ湯船の淵に乗せ、顔にまたがるようにする。
四つん這いの格好になるように両手もそれぞれ湯船の淵を掴む。

ええと、つまりは、思いきり、凄く恥ずかしい格好になる。
湯船に寝そべった主人様の上に、逆向きになって思い切り脚を開いた物凄く屈辱的な格好。

湯殿自体は思い切り広いのに湯船が狭いからこそ出来る格好だ。
まあ、この為じゃないと思うけど。

バランスを取る為に両足はまるで無理やり広げさせられてるみたいに思い切り広げる格好になる。
しかも両手も広げざるを得ないからカエルのような格好だ。
初めてではないとはいえ、頭がめちゃめちゃになるくらい恥ずかしい。

ちなみに鈴子はこの格好、1分と耐えられない。
私は、ええとその、いや、えと、・・・まあ、その、大好きだ。
439 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:50:51 ID:k6cIKdBK

ぴしゃん、とお尻を叩かれて、ひゃん、と声が出た。
瞬間、指が私の中を割りながら入ってきて電流が流れたみたいな快感が走った。
「んっ!」
抵抗できない格好で、見ながら触られてる。
「いやらしいな、秋乃。こんなに締め付けて。」
ああああああ、それだけで頭が爆発しそうになる。
私のそこに埋められた2本の指がゆっくりと出し入れされて、
私のそこが凄く、濡れている事を証明するような音が漏れる。
力を入れていないのに、勝手にきゅう、と指を締めるように動くのが判る。

「あっ……ぁあああああ…んっ、恥ずかしいっ!やだっはずかしいぃっ!」

お湯を割って丁度顔のところに突き出されたそれの先端に夢中でしゃぶり付く。
首を使えないから舌を使って思い切り嘗め回す。

「やだっ!んっ!見ないでっ!お願いっ!んっ!ねっ!やぁっ!」
私がそういう度に、わざと開くように指を動かしてくる。
わざと乱暴に抜き差ししてくる。
私はあんまりにも気持ちが良くて、恥ずかしくて、
口の中に必死に神経を集中させて吸い込んで、唾を塗して、嘗め回す。

鈴子にはそうしない。
鈴子にはもっと優しくする。

鈴子はお姉さんぶるのが好きな癖に、ああ見えてとても甘えたがりだから、そうしてくれる。
私にも、私がこういうのが好きって判っててそうしてくれる。
優しい性格だから。
440 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:51:12 ID:k6cIKdBK

中に入れられた指が開かれて、
「あっ!・・・んうっ!・・・はあっ・・・ああああんっ!」
下半身に感じた衝撃にもちかい快感に思わず脚から力が抜けて、じゃぼん、と湯船の中に落ちる。
お腹の上にぺたんと座った格好になる。
ぐるんと回転して思い切りしがみつく。

「秋乃の中で。」
「あああああああああっ」
声だけで達しそうになって耳元で声を上げると、私の腰を軽々と持ち上げてきて。

そして入れてくれる。

「んああああああああああんっ!」
凄く逞しいそれが、私を貫く。
嫌になるくらい甘ったるい声が私の口から出てくる。

「いやっ!太いっ!だめっ!いやっ!だめえええええ!」」
私から動く事なんて出来ない位激しく上下に動かされる。
私達の動きで湯船の表面がざばざばと揺れる。

「いやっ!はずかしいっそこ、そこだめですっ!あああああっ」
力強い両手でお尻を掴まれ上下に揺さぶられて私の身体と共におっぱいが上下に跳ねる。
自分の意思に関係ない、私を求めてくる動き。
私で気持ちよくなってくれている動き。
揺れているおっぱいを口元に近づけるとちゅうと強く吸い込んでくれる。

上下に揺さぶられながら私は両手を使って主人様の頭をぎゅっと抱きしめる。
信じられないくらい愛しくて、恥ずかしくて、色んなことが頭を過ぎって、
次の瞬間、頭の中が真っ白になる。

441 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:51:34 ID:k6cIKdBK

@@

「今日、秋乃、僕の部屋へ来る?」

ゆっくりとタオルで身体を拭っている所でそう言われた。
少し考えて、首を振った。
何て言おうかと、一瞬考える。何といっても断った事なんて無かったから。
「いえ、え、ええと、実はちょっと体調が悪いので、」
ちょっとのぼせ気味で、大して考える事も出来ず頭の中に浮かんだ言葉をそのまま口に出す。

「えっ!」
「あ、ええと、全然、大した事は無いのですけど。」
嘘を吐いてしまった。と自分で言っておきながらショックを受ける。

「早く寝なきゃ駄目だよ!」
ばさっと私が拭っていたバスタオルを奪われて私の体に掛けられる。
馬鹿だな、と言われて私の身体がごしごしと擦られる。
まるで大事なもののように、丁寧に。

何だか何もいえなくて私は立ち竦んだ。
本当ならそんな事させちゃいけないのに。
私はメイドなんだから。さ。

442 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:51:55 ID:k6cIKdBK

「折角なのにごめんなさい。」
ごめんね。
心配そうに私の事を見てくるのを、見上げながら言った、

「そんな事いいから!きちんと乾かさないと駄目だよ。
早く部屋に戻って、寝なきゃ。」
全く、そう云う事は早めに言ってくれないと駄目じゃないか。
時々抜けてるんだから。と言われながらごしごし、と頭を擦られる。
耳の後ろを指でくすぐるようにしながら手が頭の後ろに回って、
首の後ろを上下に擦るようにタオルで水滴を拭う。
私がいつもやってあげていたやり方だ。
そのやり方で、頭をごしごしと擦られる。

泣くまい、と努力した。
でも俯いて気取られないようにするのが精一杯で、やっぱり無理だった。

443 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:52:28 ID:k6cIKdBK

@@

前日に頬に小さなニキビが出来るというアクシデントがあったものの
無事にその日は訪れた。

和子さんが本気になって着付けた桜色の着物は自分で言うのも何だけれど似合っていた。
形も良い。腰周りがどの角度から見てもすらりと柳腰に見えるようになっていて
自分で着付けるとこうは中々ならない。
さすが年の功だ。とは口には出さない。
髪は編みこんでうなじを出すようにした。
和子さんと二人で鏡を覗き込む。完璧ね。との呟きにそうかも、と思う。
うん、まあ、中々のものかも。

見せたいな、とふと思ったけれど、主人様の部屋に声は掛けなかった。
外出する時にそうしないのは初めてだな、とそんな事を考えながら。

444 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:53:02 ID:k6cIKdBK

和子さんが呼んだ車に和子さんと一緒に乗って、先方の待つ料理屋へと向かう。
和子さんは母親代わりだ。
車に乗る瞬間にふと庭先に目をやると、箒を持って目を丸くしてこちらを見ている鈴子と目が合った。
車の出しなにひらひらと手を振ってやる。
帰ったらさぞかし質問責めにされる事だろう。

主人様の付き添いでしか入った事の無いような、素晴らしい庭園のある料理店に着いて、一番奥の部屋へ通される。

襖を開けた瞬間、おお、どよめくような声が聞こえた。
この前お屋敷で見た、しゅっとした印象の人と、かなり年配の恐らく父親。
そして母親であろう女性と、御付きのメイドだろう若い女性。

「はじめまして。本日はお招きをいただきましてありがとうございます。」
と、挨拶をする。
和子さんが続いて挨拶をする。

445 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:53:25 ID:k6cIKdBK

私達の挨拶ももどかしそうに立ち上がったその人が、ちょっと背は主人様より高いくらいかも。私に手を差し出してくる。
「今日は来てくれてありがとう。」
ぎゅっと手を握られる。
ゴツゴツとした手だった。

慣れるだろうか。慣れる事が出来るだろうか。と思う。

出来るかではない。そうしなきゃいけないのだ。
ここまで来て、私に嫌という権利なんて、いや、そんな事を思う方が間違っている。
和子さんが、主人様が与えてくれようとしている私の幸せを逃す権利なんて、私には無い。

その人の顔を見て、にっこりと笑う。
2重写しにしちゃいけない。そんな失礼な事は出来ない。そう心に誓う。

446 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:54:02 ID:k6cIKdBK

話は和子さんを中心として非常にスマートに進んだ。
スマートに進むように作られているのだから当たり前といえば当たり前だ。
和子さんはこの道のベテランでもある訳だし。
話のもっていき方も何もかもがなんだか先程の乗り心地の良い車の如く、素晴らしく澱みなく進行する。
趣味、好きな本について、休みの日にはどんな事をしているのか。礼儀作法は?云々。
私が少しでもつっかえると和子さんがすかさずフォローして私の事を褒めたり、上品にからかったりしてくれる。
その人も見た目よりもずっと話上手で、なんやかや、と私に話を合わせてくれ、好きな作家も一緒だと云う事で、その話をする。
そしてつつがなくといえばつつがなく進んだ後、暫くして、二人で話でもしてきなさい、と言われて庭に放り出される。

その人が先に立って、私に手を差し伸べてくるのを、雪駄は履き慣れないのもあって、
手を取ってもらって庭へと降りる。
降りたら手を離してもらえるかと思ったけれど、そのままに手を引かれる。

石造りの小さな橋と池とそこにいる艶のある赤色の鯉、
直射日光が当たらぬ様に所々に配置されている整えられた竹薮。
そこから放射線状に薄く差す日光。
歩く度に音のする綺麗に形の揃った敷石。
見事に作りこまれた回遊式庭園の中を手を引かれながら歩く。
447 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:54:34 ID:k6cIKdBK

「今日は、本当に、嬉しかった。」
と、その人が言う。そして本当に嬉しそうに笑う。
「私の方が年上なのに、宜しいのですか?」
そういうとぶんぶんと首を振る。
「そんな事は全く、何も問題などありません。
私はあの日、越智のお屋敷であなたを見てからというもの、あなたの事が忘れられなかった。」

じゃりじゃり、と音を立てて歩く。
右手に繋がれた手。少しごつくて、温かい手だ。
私はそんな事ばかり考えている。
何だかちょっと違う。

いつものと違う。

ほう、と息を吐いた。顔を上げる。
人の好意を無にして、きっと私は、馬鹿なんだろう。
何だかちょっと違うなんて自分でも説明できない子供染みた理由で和子さんの、主人様の顔を潰すのだ。
「すみません、今日のお話なのですが、」

私が言いかけたその瞬間だった。

「すみません!申し訳ない!!」
後ろ側から大きな叫び声が庭に響いて、ひゃっと飛び上がる。

448 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:55:12 ID:k6cIKdBK

びっくりした。
                           
きいたこともないくらい、大きな声だ。 こんな声、出せるんだ。

走ってきて、私の手を掴む。

「お、おい、」
その人が言う。
主人様が、走ってきてその人から奪い返すように私の手を掴んだ主人様がその人に向かって頭を下げる。

「すまない、八尋君。今日の話は無かった事にしてくれたまえ。」
「帰るよ、秋乃。」
そう言って、ぐい、と手を引かれる。私はぼう、としながらこくり、と頷く。

私は主人様にぐいぐいと手を引かれながらとつとつと歩いた。
きっと私は随分と目を丸くしていた事だろう。勿論周りの人間もだけれど。

歩いて料理店から出て、すぐ側にある公園だろう。連れられるままにそこを通る。
私にはそこがどこだか判らない。お屋敷の方向なのかすら。
手を引かれながら歩く。
漸く広い芝生と周囲を綺麗に紅くなった紅葉に囲まれている公園の中心付近まできて、急に振り向かれる。
真っ赤に染まった葉が私の桜色の振袖の裾に落ちる。

そして主人様は大きく息を吸って、
「何で僕に言わないんですか!」
と、怒鳴った。

449 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:56:34 ID:k6cIKdBK

「はいっ」
と反射的に思わず答える。主人様は怒ると何故か敬語になる。
昔からそうだった。

「あ、あ、秋乃、僕は怒っているんですよ。鈴子が屋敷中に聞きまわって、
漸く家令の1人に事情を知っているのがいて、
そして僕の所にすっ飛んできて、そして話を聞いてびっくりしました。」

「そ、その、あなたが彼を好きだと言うのなら仕方の無いことです。
自分が今、その、随分と常識はずれな事をした事も判っています。
しかし、しかし秋乃も、酷い、その、あまりに酷いじゃないですか。
僕に一言の相談もなくこんな。無論、その、秋乃には秋乃の人生がある。
そう云う事は判ってはいる、います。でも、でも、
その、こんな事を人伝えに聞いた僕がどんな気持ちになると思っているんですか?
こ、これを聞いた時、ぼ、僕は・・・その、秋乃がそういう事に気が回らない、そういう人じゃない事は知っているから、
だ、だから若しかしたら言い辛かったのかもしれない。そうも思いました。
あなたが彼を好きになり、であれば確かに僕にはきっと言い辛いという気持ちもあったのだろう、とそう判ります。
僕にだってその位の想像は付く。付きます。
だ、だから、僕の今日の行動を秋乃は軽蔑するかもしれません。でも、
しかし、であればこそ、であればこそやっぱり僕は秋乃にきちんと言って欲しかった。」

「ええと、その、それって・・・」
何か重大な齟齬があったのだ。と気がつく。
でも、彼は私の表情に気がつかないようで、言葉は続く。

450 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:58:00 ID:k6cIKdBK

「でも、でもこれだけは言わせて下さい。
もう遅いかもしれないけれど、その後、あなたの気持ちを聞かせて貰いたい。
若しかしたら僕がはっきりしない事で、秋乃も、鈴子も、僕がメイド相手に本気にならない、
なんて、そういう男だと思われてるかもしれない。
でも違う。違うんです。
僕がその、決められないでいたのはそう云う事じゃないんです。
そんな事はどうでもいい、いや、考えた事すらありません。
秋乃も、鈴子も僕にとってそんな、そんなような事を考える存在なんかじゃない。
そんな事じゃなくて、僕は子供の頃から一緒に居た秋乃と、鈴子と、そして僕を好きだといってくれるその事が嬉しくて、
だからはっきりといえずにいたんです。だらしないと思います。思っています。
でもどちらかを選ぶなんていう決心をする事が出来なかったのです、
いえ、正直に言えば今もです、しかしそれはけしていい加減な気持ちだからではなく、」

彼の話は続く。
真っ赤な紅葉の葉が、私と彼の間に落ちる。
主人様は私に言い聞かせるように、私の顔の高さに合わせるように膝をかがめている。
うーん。やっぱり、このひとは、私より大きくなったんだなあ。

「聞いてますか?聞いて下さい!秋乃に怒ってるんですよ、僕は!」
ちゃんと聞いてください。と声が続く。
451 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 20:58:23 ID:k6cIKdBK

しかし私はもうそんな言葉は聞いておらず、
主人様の前に回って、踵を少し上げて爪先立ちになって、
初めて出会った頃に比べて随分と大きくなった背と、
少し男らしく厚くなった胸板に身を預けるようにして、
そしてそれに比べれば幾分細いともいえる首筋に手を廻しながらぎゅうとしがみつくようにした。

頬と頬を合わせるように、そう云う風にしながら私は今、昔そうした時のようににっこりと笑っているのだろう。

そうやって、赤い紅葉の葉を肩に乗せながら、ぎゅうと、ぎゅうと、ぎゅうと、私は可愛らしい主人様を抱き締め続けるのだ。



452 ◆/pDb2FqpBw :2009/10/15(木) 21:00:04 ID:k6cIKdBK
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感想、ありがとうございました。
本シリーズはこれでおしまいです。

では。

ノシ
453名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 00:02:39 ID:YmSZbOIi
ご主人様GJ!

そして、作者もGJ!
454名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 02:45:25 ID:WzH3rX77
GJ!

やっぱり、ご主人様知らなかったのか、あの場面でこなきゃ駄目だよなw
いい話でした。
455美果と旦那様とアパート ◆CKHo.sFTP2 :2009/10/21(水) 07:33:01 ID:HHNQ1Krf
最終話です。



「絶対にイヤです。使うならお一人でなさればいいじゃありませんか!」
旦那様を睨みつけ、声を荒らげて抵抗する。
困った顔でこちらを見ていらっしゃるあの方の手には、妙にファンシーでポップな色調の瓶が握られていた。
わざとらしいハートマークとFOR LOVERSの文字を見れば、それが何であるかなど私にだって分かる。
聞けば、おととい薬局でゴムを買う時に目につき、ついでに買ってきたのだという。
断りもなしに事後承諾だなんて、全く何を考えているんだろう。
「どうしても駄目ですか?たまには、こういう物も……」
「イヤだったらイヤです。そんないかがわしい物なんか使いたくありませんっ」
あくまで拒否して、なおもすがろうとする旦那様を振り切り、足音も高く女中部屋に戻る。
戸口にありあわせの物でバリケードを築きあげ、私は何もかもを一切無視して早々に寝ることにした。

翌朝以降も、なるべく旦那様の傍に寄らないようにして、会話も必要最低限に抑えた。
いくらあの方のご希望だからって、こっちにも自分の意志ってものがある。
何があっても拒否だ拒否!と鼻息を荒くしていたのだが、さらに数日が経つうちに、心境にほんの少し変化が訪れた。
私が今、女中部屋で使っている布団を捨てる日が近付いてきたためだ。
粗大ゴミの日は清掃局に確認済みで、有料シールの用意ももうしてある。
どうせ布団を捨てるのなら、「あれ」を一度くらい試してみてもいいかも。
そんな考えが、日ましに私の頭の中で膨らんできた。
まだ使える物を捨てるという罪悪感も、いっそ「あれ」で布団をもう使えないほど汚してしまえば消えるかもしれない。
美果が駄目なら、他で試してみようなどと旦那様に思われても困るし。
あの方がそんな考え方をなさるとは思わないけど、それはそれ、万が一ということもある。
もしかしたら、もったいないオバケに二倍祟られそうで怖いけれど。
たった一度、旦那様の顔を立てて一度だけなら。
こうして、私はぎりぎりで覚悟を決めた。


「あの、旦那様」
布団をゴミに出す前夜、私は意を決してあの方の前に立った。
お風呂上りに、また机に向かわれる前に用件を切り出さないと。
「どうしました?美果さん」
ここしばらく避けていた私が目の前に立ったのを妙だと思われたのか、パジャマ姿の旦那様が首を傾げて私を見られる。
「こないだの『あれ』ですけど……。まだ、捨てていらっしゃいませんか?」
私が問うと、旦那様はもう一度首を傾げ、しばらく考えた後に頷かれた。
「ええ。僕の部屋の棚に仕舞ってあります。あれが、どうかしましたか?」
問い返されて言葉に困り黙ってしまう。
まさか「今晩使いません?」なんて……。
言えるだろうか、いいや言えるわけもない。
せっかくの決意が頭の中でぐらぐらと揺れはじめ、私は所在無くエプロンのフリルを指先で弄り回した。
単刀直入に言うより、あの日から今日までの心境の変化を、順を追って説明するのが無難だろうか。
「美果さん、もしや」
指先以外は微動だにさせず黙っていると、こちらを見つめていた旦那様が何かに気付かれた風になる。
「気が変わった、ということですか?」
「あの……、えっと……。はい」
旦那様が重ねて問うて下さったのを幸いに、微かに頷く。
「もう使う気が失せてしまわれたのなら、いいんですけど……」
旦那様のお察しがいいことに感謝しながら、それでも、遠慮がちにお伺いをたててみる。
こんなにうじうじと煮え切らない物言い、私には縁の無いものだったのに。
いっそ、カラッと明るく誘った方がよかったのかもしれない。
複雑な思いに駆られながら、ご返答を待った。
「その気になってくれたのなら何よりです。では、使ってみましょうか」
短いような長いような間を置いて、旦那様がいつもと変らぬ調子でお答えになる。
浮き足立って鼻血でも出そうな私に比べ、なんと余裕のある物腰だろう。
「本当に、構わないのですね?」
「は、はい」
さすがだと暢気に関心していたところに、念を押され慌てて答える。
妙に高鳴り始めた胸をそっと押さえ、気付かれぬよう深呼吸をした。
456美果と旦那様とアパート ◆CKHo.sFTP2 :2009/10/21(水) 07:34:03 ID:HHNQ1Krf
準備をしてきます、と旦那様が自室に立たれたので、私は先に女中部屋に戻って待つことにした。
突っ立っているだけでも何なので、とりあえず布団を敷いてみる。
床の準備なんかしたら、この後のことをすごく期待しているように思われそうだけど。
私がこうするのは、こないだ拒否した時に言い過ぎたのが後ろめたいのと、段取りをしておく、ただそれだけのため。
別に、あれを試すことに乗り気で、好奇心が抑えられないとかじゃないから。
誰に向けるでもない言い訳は、頭の中で並べているつもりが、いつの間にか小さく口からこぼれていた。
布団を敷いてその脇に座り込み、意味も無く布地を指で突っついて待つことしばし。
ノックの音をさせてから、旦那様が女中部屋のドアを開けて顔を覗かされた。
しかしその手には、あの可愛らしい瓶ではない別の瓶をお持ちになっている。
あ、あれは来週の資源ゴミに出すために洗って干していた米酢の空き瓶じゃないか。
「用意ができました」
旦那様がにっこりと笑って部屋に入ってこられる。
「用意?」
私がおうむ返しに言うと、旦那様はええと頷いて、瓶をこちらに差し出された。
「説明書きには希釈式だとあったので薄めたのですが、比率がよく分からなくて」
試行錯誤するうちにこうなりました……と、五合瓶にほぼ満タンに入った中身を示される。
受け取って、私はそれをまじまじと見てしまった。
これがあの、いわゆるローションという、あれなのか。
透明な液体が、小さな泡を含んで容器に納まっているさまは、ゼリー状ドリンクのようにも見える。
揺すると瓶の中で緩慢に動く様子は、中華料理のあんかけみたい。
こんなの、本当に使って大丈夫なんだろうか。
「心配には及びません。人体には無害であると明記してありましたから」
私の疑問を解消するように旦那様が仰って、さあさあと瓶を取り戻し、私をうながして布団にいざなわれる。
組み敷かれたところでハッとする。
布団は捨てるからいいけど、メイド服が汚れるのは困る。
それを言うと、旦那様は頷いた後にローションの瓶を少し離れた場所に置かれた。
「服を着たままでも使えるようなのですが、美果さんが嫌なのならやめておきましょうか」
まるで私が脱ぎたがっているかのように言われ、思わず頬を膨らませてしまう。
いくら気心の知れた方の前だからってポンポン脱ぐような、私はそんな恥知らずじゃないのに。
でもやっぱり服が汚れるのは困るので、釈然としない気持ちのまま頷く。
旦那様のお手にエプロンの結び目が解かれ、腰の戒めが軽くなる。
ちなみにだけど、旦那様の後に私もお風呂は済ませている。
決意を示すのにパジャマでは不足だから、自分の戦闘服ともいうべきこの格好で旦那様の前に立とうと思っただけ。
でも、いつもは徐々に脱がされるのに、段取りのためとはいえ最初から全部だなんて恥ずかしい。
それじゃますます私が「あれ」に興味津々で、ノリノリみたいに見えるもの。
旦那様がエプロンを畳んで下さっている間に照明を落とそうと、一旦起き上がる。
しかし、スイッチに触れたはずの私の手は、背後から伸びてきたあの方のお手に動きを止められた。
「美果さん、明かりを消してはいけません」
「えっ……」
「何かあってはいけませんから、今日はこのままいたしましょう」
旦那様に手を捕らえられたまま、布団に再びお尻をつけて座る。
そんな、電気をつけたままするなんて困る。
変な場所とか表情とか、明るかったら全部見られてしまいそうだもの。
「ね、美果さん」
今回だけだから……と諭すように言われてしまうと、どうしても嫌だとは言いにくい。
私がしょうがなく頷くと、旦那様はワンピースのボタンに手をかけられた。
手際よく脱がされ、ブラもストッキングも外されて、身に纏っているのは下半身の布一枚だけになる。
「旦那様も、脱いで下さらなきゃ困ります」
私がこんな格好なのに、旦那様だけパジャマ姿だなんてずるい。
明るい場所で裸になっている恥ずかしさを隠すように、私も旦那様の着衣をお脱がせして、汚れないよう遠くにやった。
「では」
旦那様が瓶を掴んで手元に寄せられる気配がする。
いよいよ始まるのだと、なぜだか体が小さく震える。
これって、武者震いってやつなのかな。
「寒いですか?」
問われたのに首を振ってみせ、私はシーツをくしゃりと握り締めた。
457美果と旦那様とアパート ◆CKHo.sFTP2 :2009/10/21(水) 07:35:17 ID:HHNQ1Krf
抱きかかえられるようにして、布団の上に横たえられる。
「始めましょうか」
その声が耳に届いた次の瞬間、胸元がいきなり冷やりとした。
「んっ」
水やお湯とは全く違う液体が肌にかかる初めての感触に、体が大きく跳ねる。
「動かないで。じっとしていて下さい」
旦那様が、まるでお医者様のように指示される。
でも、よく分からない物に肌を一部分でも覆われているのは、何となく居心地が悪くて。
お言葉に従いたい気持ちとは裏腹に、どうしても身じろぎを止めることができない。
化粧水、乳液、ボディーソープに軟膏の類。
肌につけたり塗ったりするあれこれを思い浮かべてみても、それらとは全く違う質感なんだもの。
気もそぞろになっている私を尻目に、旦那様がさらに瓶を傾けられる。
「あっ……」
増やされたローションが、胸の谷間を滑り落ちる感触に思わず声が出てしまう。
「おっと」
胸を通り抜けておへその辺りへ向かおうとするローションを、旦那様の手がせき止める。
流れに逆らうように押し戻されたそれは、今度は私の首元へ一直線に向かってきた。
顔をかばおうと反射的に出した手の平が濡れ、ローションが指の間に入り込む。
そこをすり抜けてさらに下へと滴るほど、この液体はさらさらではないみたいだ。
むしろ、私の手首からひじを伝って体の脇へと流れ落ちたがる。
このまま布団に吸収されてはもったいないのではという、ケチな考えが頭をよぎった。
これ以上ローションが落ちないよう、ひじを突っ張るように持ち上げてみる。
力を入れた手の平がずるりと滑り、右の乳房を滑り降りるように撫で下ろした。
「あ、んっ」
驚きと、それとは別の何かを含んだ声が唇を割る。
未知の液体をまとった手で触れた胸は、やけに敏感になっていて、故意ではない摩擦にも違う意味を持たせた。
面白い、もう一度やってみたいと興味がそそられる。
旦那様に止められないのをいいことに、私は恐る恐る手の平を後戻りさせた。
「ん……あ、あ……」
肌に乗っかったローションが、まるで吸い付いたみたいに手の平と胸をぴたりと密着させる。
それなのにつるつると滑って、手の平が元の位置に戻ろうとするのを邪魔して、下に引き戻そうとする。
まるで経験したことの無い新しい触感に、全身の感覚が鋭敏になるのが分かった。
起きているのに、さらに目を覚ましたみたい。
もういっぺんやってみたい、今度は、ごくゆっくりと。
好奇心に導かれるまま、鎖骨の辺りまで濡らしていたローションをすくい直した手で胸を撫で下ろす。
指先に触れた乳首は、一瞬でも分かるほど固く立ち上がっていた。
ほんの一往復半、しかも自分で胸を撫でただけなのに、なんで。
頭に疑問符が浮かんだのとほぼ同時に、またローションが垂らされる。
今度は胸元ではなく、左の乳房のてっぺんを狙って。
「あ、ああっ!」
少し冷たくどろりとした液体が、細く長く左の乳首を狙い打つ。
言いようもないほど背筋がぞくぞくして、私の呼吸はいっぺんに乱れた。
なのに両腕は体をかばうでもなく、ローションの瓶を傾けている旦那様のお手を掴むでもなく。
私はただ、陸に上げられた魚のように体をびくつかせ、口をぱくぱくとさせるだけで。
「はっ……あ……」
どれくらいそうしていただろうか、いつの間にか左胸に落ちるローションは止まっていた。
しかし息を整える間もなく、体の脇へと流れ落ちようとするそれを旦那様のお手がすくい、胸の頂上を通って心臓の方へと戻す。
「やんっ……あん、んっ……」
粘っこい刺激に胸を蹂躙されて、呼吸がまた乱れてくる。
私がそんな状態でいるのを面白がるかのように、旦那様の指は何度も同じ動きを繰り返した。
気がつけば、いつの間にか右胸も同じように弄ばれている。
ただ手を左右に動かすだけの単調な動きで、愛撫と呼べるほどのいやらしさなど、これっぽっちもないのに。
それでこんなに感じているなんて、私は一体どうしてしまったんだろう。
「あ、やっ……」
ローションをまとった旦那様の親指に乳首を嬲られ、むずかったような声が出てしまう。
まるで、そこをねっとりと舐められているような錯覚に支配されていく。
458美果と旦那様とアパート ◆CKHo.sFTP2 :2009/10/21(水) 07:36:35 ID:HHNQ1Krf
気持ちいい、もっともっと触って欲しい。
旦那様の手首を掴み、胸に押し付けるようにしてねだる。
さっきの行為で濡れた手の平には、旦那様の体温がはっきりと感じられた。
一緒にお風呂に入って、お湯の中で触れられている時より、何倍も鮮やかに。
私の求めに応じるように、旦那様が両手を動かして下さる。
そのうちにローションを足そうと思われたのか、ふと旦那様の両手が胸から離れた。
「ひゃっ」
にちゃ……という音と共に、旦那様のお手と私の胸の間にローションの糸が何筋もできる。
引いた糸はその緊張に耐え切れない順番に切れ、体温を含まない間があったことを示すかのように、肌に一瞬の冷たい感触を残した。
全く見なくても、幾筋もの糸の一本一本が切れていくさまが思い描けるくらいに。
お手が触れていなくても感じることがあるなんて、今の今まで想像すらできなかった。


ローションを足して、旦那様がまた私の両胸に手を密着させられる。
今度は優しく揉むように愛撫されて、私はいよいよ声を高くして喘いだ。
とろみのある液体をまとった手で触れられるのが、こんなに気持ちいいなんて。
ぬるぬるするのも、当初想像していたような不快さは全く無い。
それどころか、摩擦が軽くなったせいで「もっと」と欲望が煽られる一方になる。
この辺でとか、もういいとか遠慮する気持ちがどこかに飛んでいってしまったよう。
限界まで固く立ち上がった乳首に触られるのは、本来なら痛いはずなのに。
ローションのおかげで滑りがよくって、痛くないどころか、その、絶妙だ。
旦那様がお手を動かされるのに合わせて、くちゅ、ぴちゃ……と粘っこい水音が立って、私の羞恥を煽る。
まだ触れられていないのに、脚の間がじわじわと熱くなり疼き始めた。
あまりにも、そこを愛撫される時の音と今している音がそっくりだから。
二箇所を同時に愛撫されているような錯覚を起こしそうになる。
旦那様も、こういった小道具を使うという初めての経験を楽しまれているようで。
好奇心を抑えられないといった様子で、いつもよりずっと念入りに愛撫して下さっている。
全てをお任せして、私は喉が痛くなるくらいにいっぱい声を上げて、たまに叫んでしまって。
時間を忘れるくらいに耽っていたのだけれど、ふとした変化に気付いて眉根を寄せた。
柔らかいお餅をこねるように滑らかだった旦那様の手つきが、あちこちに引っかかるように動きが悪くなりかけている。
やだ、さっきの方が気持ちよかったのに。
もしかして、私の体温でローションが乾燥してしまったのかも。
液を足したらまたぬるぬるが復活して、元の素晴らしく滑らかな愛撫になるのかな。
そう考えながら枕元の瓶を横目で見やっていると、ひとりでにそちらへ手が伸び、指先が瓶を掴んだ。
「美果さん?」
気がつけば、私は不思議そうに尋ねられる旦那様に、おずおずと瓶を差し出してねだっていた。
これを使うのは嫌だと散々ごねていた私は、どこに行ってしまったんだろう。
釈然としない気分になった時、胸にまた液体の落ちるとろりとした感触がする。
望みどおりにローションがまた垂らされたことに、私の頭は自己批判を遠くへ追いやった。
「んっ……あんっ……あ、ああ……」
再び旦那様の手の動きが滑らかになり、胸に快感を呼び起こす。
やっぱり、こっちの方がずっといい。
ひとりでに腰が浮き、身をくねらせて悶えてしまう。
まるで、旦那様の愛撫を誘っているみたいだ。
このローション、まさか使うとエッチな気分になる成分が含まれてるんじゃないだろうか。
少し怖いように思うけれど、こうなってしまえばもう、今更どうすることもできない。
明かりが煌々と灯った部屋で素肌を晒して、あられもなく喘ぐ姿を旦那様に見られている。
すごくいけないことをしているという罪悪感と高揚感が、触れられる快感を底上げして、私を夢中にさせて。
冷静な思考が奪われて、いけない欲望だけが全身から溢れそうなくらい、どんどん湧いてくる。


ふと、わきの下に旦那様の手が入り込み、前触れも無く抱き起こされる。
びっくりして目を開けると、鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くで見つめられていた。
恥ずかしさに下を向くより一瞬早く、旦那様が唇を重ねてこられる。
するりと忍び込んできた舌が口中を這い回り、私の舌を絡めとった。
「く……ん、んっ……」
愛撫の余韻にぼうっとしながらも必死でキスに応え、置いていかれないように頑張る。
459美果と旦那様とアパート ◆CKHo.sFTP2
旦那様の腕を掴もうとした両手はずるりと滑り、手首の辺りでようやく止まった。
それでは物足りなくて、私は旦那様の背に腕を回し、あの方を抱きしめるように捕まえた。
愛撫されるのもいいけれど、こうして密着しているのも大好きだ。
こうしてくっついて、旦那様の香りをいっぱいに吸い込むと、胸に明かりが灯ったようにほの温かくなる。
塞がれている唇も口角が上がって、まるでキスをしながら微笑んでいるみたいになる。


私の気がすむまで唇を重ねていて下さっていた旦那様が、体を起こされる。
また組み敷かれるかと思いきや、私は今度は背後から抱きかかえられ、あの方の胸に背を預けた。
旦那様を座椅子にして、体重を全て預けて寄りかかっているような体勢。
普段とることのない形に、私は背筋を緊張させた。
「旦那様?」
振り返って旦那様のお顔を窺うと、心配ないとでもいうような微笑が返ってくる。
私が頷くと、体の前であの方の両手が動き、またガラス瓶が傾けられる。
「あっ」
瓶からローションを受けた旦那様の左手が、私の胸元にそれを塗りこめるような動きをする。
再び与えられた快感に、私は思わず自らの体を凝視した。
旦那様の長い指に液体を塗りたくられた両胸が、部屋の明かりを反射して妖しく光る眺めは、とても刺激的で。
まるで自分の体ではないような錯覚がして、そこから目が離せなくなった。
お屋敷にいた頃に見た、白桃のコンポートやゼリー寄せにされたメロンのタルトを連想させる照りと輝き。
触れてみると、たっぷりと垂らされたローションでぬるり、つるりと指が滑る。
手を離すと、粘着質な音を立てて、まるで気泡を含んだ細いつららのような糸が何筋も引く。
何度も同じ動きを繰り返し、同じ感触に酔う。
見慣れた自分の体が、まるで初めて触れる珍しい何かになったみたいで、手を止めることができない。
そんな私の心中を知ってか知らずか、旦那様は胸に触れていたお手を止め、私の下着に右手をかけられた。
いくらもかからず脱がされたそれは、ほんの一瞬見ただけで、正視できないくらいにじっとりと湿っているのが分かった。
綿の下着があんなになるなんてと、私は怖れにも似た思いで、それが軽く畳まれてあちらに置かれるのを見送った。
胸に垂らされたローションが、覆う物が無くなった下半身へと伝い落ちていく。
控えめに生えている茂みなどやすやすと踏み越えたそれは、私の脚の間へ入り込み、どろりとした感触を残して姿を消した。
流れ落ちた後をたどるように、旦那様の指が私の体をなぞる。
力を入れていないくらいに弱い触れ方なのに、私は体を大きく跳ねさせた。
みぞおちからおへそを通って、茂みを通り抜けて、脚の間へと指が分け入るさまを、息をすることも忘れて感じる。
気づいた時には、旦那様の5本の指が脚の間にぴたりと押し当てられていた。
ローションで濡れそぼった指が、それと同じくらいに濡れて熱を持った場所を覆っているのは、それだけで頬に血を昇らせて。
そこの柔らかさを楽しむように指にほんの少し力がかかるだけで、掠れた悲鳴が唇を割る。
指から逃げたくても、背後は旦那様に抑えられていて、腰を数センチ引くこともままならない。
「あ……んっ、あっ!」
旦那様の指が、脚の間をゆっくりと撫でさすり始める。
ほとびてしまうほどに湿っている敏感な場所を上下に擦られて、私は背を大きくそらし、喉をむき出しにして喘いだ。
中から溢れた物で十分潤っている場所をさらに濡らすかのごとく、ローションを塗りこまれて。
指先だけの微かな力とは思えないほど、その刺激は鮮烈に私のそこを捉えて夢中にさせた。
時々わざと動きを止められると、体を揺すって抗議したくなるほどに気持ちいい。
「旦那様……んんっ」
柔らかい襞を丹念に撫でていた旦那様の指がある一点を捉え、ぴたぴたと叩くように刺激する。
体の中で一番敏感な場所に与えられた快感に、私はそこを責め苛む旦那様の腕に掴まった。
爪を立てるほどに力を入れて声を堪えようと頑張るのだけれど、濡れた手ではそうすることなど無理なこと。
ローションで滑って肉芽を十分触ってくれない旦那様の指に、快感と同じくらいもどかしさをかき立てられて、どうしようもなくて。
二つのもどかしさに思考を奪われ、いくらもしないうちに、私は脚を閉じることも忘れてしまっていた。
「美果さん」
旦那様が耳元で小さく呼びかけられる声にさえ感じてしまい、熱い吐息が漏れる。
見開いた私の目は壁際に置いた小さな鏡をとらえて、そこに映っている我が身を見てしまった。
旦那様に後ろから抱っこされて愛撫を受け、あられもなく身をくねらせる己の姿。