練習用殴り書きスレッド5

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334名無しさん@ピンキー
「まったく、貴方はどうしていつもそうなのですか。私の口が立たなければ、
 数え切れない程に司法のお世話になってたという事を理解しているのですか!?」
「う……うぅ……」
 俺は説教されていた。相手は俺の彼女だ。黒ぶち眼鏡に流れるような黒髪。
おでこがキュートなチャームポイントの、可愛い可愛い俺の彼女。
 でも、こんな可愛い彼女にも、二つ程欠点がある。その一つがこれだ。
 性格が、生真面目で堅物。
「過ぎた事は仕方が無いとしても、今後も同じような事を繰り返すのであれば、
 私としては貴方とのお付き合いを考え直さざるを得ないですよ? わかって
 いるのですか、孝昌さん!」
「へいへい」
「なんですかその生返事は! まったく反省していないようですね!?」
 うわ、やばい。うっかり生返事を返してしまったばかりに、彼女の逆鱗に
再度触れてしまったらしい。
「ご、ごめん! 俺、ホントに悪いと思ってるから!」
「当たり前です! “あんな事”をしておいて、悪いと思ってないのでしたら、
 私は貴方を彼として認めないどころか、人としてすら認めません」
「うん、反省してる! 今後はもう外で“あんな事”はしない!」
「……本当ですね? 誓えますか?」
 彼女の目は据わっている。これは、こちらも全力で答えないとまずい。
「誓う。俺の目を見てくれ、悠紀子」
「……」
 俺は、自分の心の中に存在している全真剣さを、自分の両の瞳に込めた。
「……わかりました、いいでしょう。今回の件は不問にしてあげます」
「よ……よかったぁ……」
「いいですか! 今後、“私の眼鏡を外では絶対に取らない”事!」
「サーイエッサー!」
「よろしい! ……ホントに、ああいうのは困るんですから、やめてくださいね?」
 上目遣いで、今まで怒りに歪んでいた表情を、ちょっとだけ困ったようなそれに
変える彼女の姿に、俺はドキンと胸が高鳴るのを感じた。
 やっぱり可愛えなぁ……こんなかわいこちゃんが自分の彼女とは、とても
信じられない。夢ではなかろうか。
「で、外では駄目って事は、家の中でならいいって事?」
「……常識で考えてください!」
 ばしーんという乾いた音が俺の頬で鳴った。痛い。夢じゃない。夢じゃなかった!
「……叩かれて嬉しそうな顔をするなんて、変な人ですよね、孝昌さんって」
「変な奴で悪かったな! ……ちょっと、現実の再確認をしてたんだよ」
「ふむ。いい事ですね。特に貴方のような常識をわきまえない人には、
 現実を確認する事で何が常識として世間で通用しているのかを
 考える事はとてもよいことだと思います」
 ……あれ? なんか俺、今凄い馬鹿にされてないか?
「でも、変って言えば、お前だって十分……」
「……何が変何でしょうか。私のどこが、どのように? え? 具体的に
 仰ってください、孝昌さん」
「すいません何でもありません許してください変じゃないです悠紀子さんは」
 一瞬で再び目の色が変わるのを受けて、俺は平謝りした。また怒らせて
しまえば、今度こそ三行半を突きつけられかねない。
「ふぅ……」
335名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 14:48:11 ID:56k4B7/w
 そんな俺の様子を見てか否か、彼女は小さくため息をつくと、軽く頬を
朱に染めた。
「……私だって、自分の“こんな所”、変だと思ってるんですよ? でも……
 ああなった時の私は“私であって私じゃない”と言いますか……」
 ……ああ、ホントに可愛いなぁ……。恥ずかしそうに、“あんな事”になった
時の事を思い出しているのだろう。その俯き加減に頬を染め、視線をあちこちに
彷徨わせている姿は、普段の彼女とは一味違い、守ってやらなくてはと
思わせるに十分なものだ。
 俺は、ちょっと気障かなと思いながら、思ったままを口にした。
「どんなお前でも、お前はお前だよ、悠紀子」
「……孝昌さん?」
「なんだい?」
「格好つけたつもりかもしれませんが、あまりに定型文過ぎて、私としては
 感動がまったくありません」
「……そうか」
 精一杯の言葉だったのにぃ……。
「だいたい、“あんなの”が私だなんて、私自身は認めませんから。恥じらいや
慎みとか、そういう言葉が一切無いんですから、“ああなった時の私”は」
「俺はそれでもいいんだけどなぁ……」
「私は良くないんです! ……でも、孝昌さんはその方がいいんですか?
 ずっと……私がずっと、“あんな風”だった方が……?」
「そんなわけないだろう!」
 俺は彼女の言葉に、思わず叫ぶように言葉を返していた。
「真面目で堅物なお前だって、俺は可愛くて大好きだからな」
「……。真面目で堅物は余計ですが……」
 彼女は微笑みながら言った。
「その言葉は……少し、心に来ました」
「惚れ直したか?」
「今のでプラマイ零です」
「のぅっ!?」
「さ、早く帰りましょう、孝昌さん」
「お、おう」
 ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、彼女の顔には笑みが浮かんだまま
だった。どうやら、破局の危機は回避できたようだ。心なしか、彼女の
足取りも軽くなったような気がする。
 さて、彼女の求め通り、さっさと家に帰って……それで、彼女のもう一つの
欠点と向き合う事にしましょうか。
 もっとも、彼女のもう一つの欠点の方は、俺には願ったり叶ったりな欠点
だったりするのだけれど。

      ――――――★――――――

「あっ、奥……んふぅ……届いたぁ、届いたよぉ……あっ、ゆすっちゃだめぇ……」