【田村くん】竹宮ゆゆこ 14皿目【とらドラ!】

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1名無しさん@ピンキー
竹宮ゆゆこ作品のエロパロ小説のスレです。

◆エロパロスレなので18歳未満の方は速やかにスレを閉じてください。
◆ネタバレはライトノベル板のローカルルールに準じて発売日翌日の0時から。
◆480KBに近づいたら、次スレの準備を。

まとめサイト
ttp://yuyupo.web.fc2.com/index.html

エロパロ&文章創作板ガイド
ttp://www9.atwiki.jp/eroparo/

前スレ
【田村くん】竹宮ゆゆこ 13皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238275938/

過去スレ
[田村くん]竹宮ゆゆこ総合スレ[とらドラ]
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date70578.htm
竹宮ゆゆこ作品でエロパロ 2皿目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180631467/
3皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205076914/
4皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1225801455/
5皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1227622336/
6皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1229178334/
7皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230800781/
8皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232123432/
9皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232901605/
10皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1234467038/
11皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1235805194/
12皿目 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236667320/
2名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 22:24:07 ID:Wocuyf/d
☆☆狩野すみれ兄貴の質問コーナー☆☆☆

Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」

Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」

Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」

Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」

Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」

Q続き希望orリクエストしていい?
A「節度をもってな。節度の意味が分からん馬鹿は義務教育からやり直して来い」

QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」

Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
3名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 22:49:09 ID:olJ/bxB+
ハイ、>>1
4名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 23:21:02 ID:yNfAf/zK
>>1乙であります
5名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 23:21:19 ID:7tN5143I
>>1
乙るぜ〜!超乙るぜ〜!!
6 ◆Joc4l4klOk :2009/04/11(土) 23:56:39 ID:A5yJshbj
>>1乙&早めにスレ立ててもらったみたいでありがとうございます。
というわけで前スレ478です。早速投下させてもらいます。
本当はこっちのSSをこのスレ初投稿にするつもりだったんですが、
なぜあのネタはあんなに一気に膨らんでしまったのか……。

大河×竜児のエロありSS、全26レスです。
アニメ24話からの派生ものなので、原作オンリーの方はご容赦くださいませ。

相当長い作品になってしまったので、暇な時間にごゆっくりお楽しみいただければと
思います。
エロは12レス目くらいから始まるので、リビドー溢れるお方はそこまでスキップだ。
7 ◆Joc4l4klOk :2009/04/11(土) 23:58:24 ID:A5yJshbj

「じゃ、じゃあ、一緒に……」
 大河の目をまっすぐ見据えて、竜児は告げる。
「……ぁ、……っ」
 一瞬動揺した大河も、口をきゅっと一文字に結び、決意を込めてうなずいた。
 
 ここは、冬の河原。
 河原沿い、ではない。次々と舞い降りる雪を飲み込み、ゆらゆらと流れる川の流れの中。
 付け加えるなら、空も太陽の恵みなどばっさり100%カットの曇天模様。
 寒い。冷たい。ついでに言うと、衣服が水を吸って体が重い。
 そんな中、高須竜児と逢坂大河の二人は顔を上気させて見つめ合っている。
 端から見れば、間違いなく頭のおかしな二人組に見えることだろう。
 
 けれどこれは、二人にとって必要な儀式。
 確かめなくてもわかる気持ち。だけど、しっかり、はっきりと言葉にして。
 互いの心に刻むための――
 
「お前が……」
「アンタが……」
「「好――」」

 ……プルルルルル、プルルブルブ……
 
 ――と、その儀式会場に機関銃を打ち込むかのごとく、空気を読まない電子音が鳴り響く。
「な、なんなの、このクソ大事なときに!」
 音の主は、竜児の右ポケットからだった。なんともタイミングの悪い着信に携帯電話が
鳴動している。
「む、無視して、早く続きを、……寒いし」
「何よそれ! そんなの台無しじゃない、さっさと取れ!」
「あ、ああ、わかった」

 ……プルルブブブ、ブブブブルブ……

 携帯電話はなおもけたたましい音を撒き散らしている。が。
「……なんかさっきから音がおかしいような?」
 嫌な予感がして、竜児は慌てて携帯電話を取り出す。
「うっわ……」
「何、どうしたの?」
 開いた瞬間に、まずいと思った。そして、すぐにその予感が的中したことに気づく。
 携帯電話の内側からは、精密機械の塊には明らかに致命的なほどの雫がぴちゃぴちゃと
垂れてきていた。先ほどから着信音がおかしくなっているのも、スピーカーに水が滲んで
いるせいだろう。
 そして、
「モニタが死んでる……」
 なおも携帯電話は不細工な音をたてて着信を知らせているが、液晶画面にはフィルタに
染み込んだ水が珍妙な模様を浮かべるだけで、完全に光を失っていた。
8 ◆Joc4l4klOk :2009/04/11(土) 23:59:27 ID:A5yJshbj

「こ、壊れちゃったの? でも鳴ってるじゃない」
「本体まではやられなかったのかな……、もしもし」
 電波の向こう側に誰がいるのかわからないが、とりあえず出てみることにする。泰子
だったらどうしようか……。

「”#$%す!、……&’る=|……!」

「……ダメだ」
 そんな心配も杞憂に終わる。どうやら、受話スピーカーもすっかり水に浸かってしまった
らしい。
 なにやら向こう側はすごい剣幕のようすだが、ガビガビとノイズのような音が耳を打つ
だけで、男女の判別すら出来やしない。
「す、すみません、どなたかわかりませんが後でまたお願いします!」
 こちらの声が向こうに通じるかも定かではないが、一言断ってから電話を切った。
「はぁ……、最悪だ」

「ああ〜〜〜っっ!!」
 いきなり目の前で悲鳴が響き渡る。
「わ、私のケータイも壊れてる〜! うんともすんとも言わないー!」
 大河は必死にキーを叩くが、反応はゼロ。完全にお亡くなりになられたらしい。
「ど、どうしてくれるわけ! ケータイご臨終しちゃったじゃない!」
「お前が俺を突き落としたり勝手に落ちてきたりしなけりゃこんなことにならなかっただろ!
 つか、まず俺が死んでないことに感謝しろ! 下手したら今ごろお前が『……死んでる』
 とか言ってオチがついてるところだぞ!」
「そんなことくらいじゃ死なないように普段から鍛えてあげてるでしょ!」
 ああ、そうか、普段からのこいつの凶行はそのためだったのかー、などと納得する人間が
この世にいるだろうか。
「そういうことじゃねえ! だいたい、プロポーズしようとした女に橋から突き落とされる
 って俺はどこの昼ドラ男優だよ!」
「ぷ、プロ、ぷろぽーず……」
「ああ、くそ、可愛いなお前は!」
 湯気が出そうな勢いで照れる大河に、ついツッコむ気力が失せてしまう竜児。
「プロポーズ……、そ、そうだ、大河! さっきの続き!」
「へ、さ、さっきの?」
「だぁから、その、い、一緒に、言うって……」
「ぁ……」
 はっと思い出し、佇まいをビシッと直す大河。竜児も改めて彼女に向き合う。
「よし、言うぞ」
「お、おうさ」
 二人でごくりと唾を飲む。
「……あのさ、大河」
「……あのね、竜児」
「その前に、一つだけ、いいか?」
「うん、私も、一つだけ……」
 そして、二人はすぅっと息を吸い、

「「……さむぅぅぅぅいい!!」」

 飛び上がるように川から抜け出した。
9 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:00:28 ID:A5yJshbj

「さぶっ! 冷た! な、ななななんなのよこれ! めっちゃくちゃ寒いじゃない!」
「それが当たり前の感覚だと思うぞ。いい感じに脳内麻薬が効いてたたたみたいだな」
 冷静に分析してみる竜児だが、その声は思いっきり震えている。
 全身が痙攣を起こしたように勝手に震え出し、放っておくと歯の根がカチカチと細かい
リズムを奏でる。
 雪の混ざる冬の風が吹くたびに、濡れた衣服がなけなしの熱量をさらに奪っていく。
「あんた、めめめめちゃくちゃ唇青いわよ」
「お前もなななな」
 身を縮こまらせながら憎まれ口を叩き合うのは、せめて気持ちだけでも余裕を持とうと
いう心理の表れか。
「とにかく、このままだと……」
「うん、死ぬわね、私たち」
 さきほどまでのラブコメ力場はどこへやら、一転、生死の境を彷徨うことになった二人である。
 ヒュオオオオ……、と高い音を奏でる風は、徐々にその勢いを上げている。

「と、とにかく何とかして暖を取らないと」
「お風呂……」
「は?」
「うち、お風呂に自動お湯張りの機能があるの。最近寒いから、ちょうどこの時間くらいに」
 そう言えば。竜児も風呂掃除の時に確認済みだ。高須家の凡庸なユニットバスとは2桁
くらいレベルが上の、浴室乾燥追い炊きジェットなんでもありの逢坂家バスルームには、
確かにそんな機能があった。
「いや、でも、お前のお袋さんが張ってるかも知れないし……」
「熱々の……」
「泰子にも気づかれるかも……」
「おふろ……」
「……」
「湯気がもくもく……」
「……ああもう、わかったよ。気をつけて戻るぞ」
 返事を返す余裕もないのか、こくこくと頭を縦に振って、大河は竜児の後についてきた。
 
 ◇ ◇ ◇

「大丈夫、部屋にはいなかったよ。私を探しに行ってるか、今日はホテルに泊まってる
 のかも」
「泰子もいないみたいだ、電気ついてなかった」
 辺りの捜索を終え、大河のマンションの玄関に再び集合した二人。
「じゃあ、いいのね……」
「おう」
「でわ……、おぉぉ風呂ーーーーっっ!!」
 許可が降りた瞬間、大河は部屋へと一目散に駆けていった。
「はぁ、やれやれ」
 相変わらず、大河は自分が決めたことには何でもかんでも一途で一生懸命だ。
 そんな大河を、竜児は間近でずっと見てきた。見てきたから。
「……俺も行こ」
10 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:01:26 ID:A5yJshbj

「「おおーっ」」
 暖色の光が灯るバスルーム。バスタブに張られたお湯からは、包み込んだものを引きずり
込むような魅惑的で温かい湯気がもうもうと立っている。
「いつものバスルームが桃源郷に見えるわ……」
「まさしく」
 大河は、今にも着の身着のままバスタブにダイブしてしまいそうな勢いだ。
 ウズウズソワソワする大河を押しとめつつ、竜児は言う。
「よし、じゃあとりあえずコートだけ預かるわ。制服脱いだら呼べよ、乾かすから」
「え、う、うん」
 真っ白なコートを預かると、竜児はそそくさと脱衣所を出る。
「えっ、あ、あの」
 
 とりあえず竜児はリビングに戻る。
 当然ながら、暖房がついていない部屋は外と変わらず寒い。風にさらされないだけマシと
いう程度だ。
 ひとまず、大河のコートをハンガーにかける。よく見れば真っ白な生地の裾が砂利やら
何やらで汚れている。後でしっかり手入れしないと。

「竜児……」
 か細い声に振り返ると、制服姿のままの大河がなにやらもじもじとした様子で立っていた。
「なんだ、まだ入ってなかったのかよ。そうだ大河、この部屋って灯油ファンヒーターとか
 ないのか? エアコンじゃなかなか暖まらなくってさ」
「あ、あんたはお風呂入らなくていいの?」
「だからさっさと入れって。俺は後でいいからさ。うっわ、でも寒っみい……。なあ、
 本当にねえのか? 非常事態なんだ、化石燃料消費したって地球様も怒んねえよ」
「ま、待ってる間に風邪引いちゃうかもしれないじゃない!」
「だーから、そのために灯油……、……お前、何赤くなってんだ」
 なぜか大河は、真っ赤に染めた顔を伏せがちにして何かを言い出そうと逡巡していた。
「だから、その、あの、は、入ろ……」
「? なんだよ、はっきり言えって」
「その、……おふろ、いっ、いっしょ、いっしょに……」
「何言ってるか聞こえねえ、もうさっさと風呂入れってば」
 しっしと追い払うように大河を風呂へと促す。
「……だぁから、その風呂に一緒に入ろうって言ってんでしょこの難聴鈍感駄犬ーーっ!!」
「ぐほああぁっ!! ……って、え?」
 大河の放った言葉の意味をしばらく把握できないまま、螺旋の軌跡を描く華麗なドリル
キックに竜児の体は冷たいフローリングの床に沈んでいった。

『竜虎沐浴』
11 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:02:26 ID:X7AELtby

「ちゃんと前隠した? 完全防備にしてから入りなさいよ」
「自分から誘っといてゴチャゴチャとうるせえなあ……、よし、入るぞ」
 裸足の先から冷たさが突き抜けてくるような廊下から、適度に暖房の効いた脱衣所に
入る。
「うん、まあ、それなら大丈夫そうね」
 その真ん中では、チューブトップのようにタオルをしっかりと体に巻きつけた大河が、
竜児の腰に結んだタオルを見てふんと鼻を鳴らしていた。
「何が大丈夫だか……」
 この状況がすでに色んな意味でアブナイわけだが。

 別に俺は後でいいと頑なに竜児は拒んだのだが、せっかくのお風呂なのに気になって
ゆっくりできないだの、いいからさっさと脱げだのと、しつこく大河は食い下がり、結局
根負けした竜児は、健全な男子高校生としてのプライドをへし折り一緒に入ることになった。
 胸元のタオルがしっかりと留まっていることを確認しながら、大河は竜児をギロリと
睨んで言う。
「あんまりジロジロ見ないでよ」
「見てねえよ……」
「こ、興奮するんじゃないわよ」
「してねえよ!」
 むしろ、肩に力が入っているのは大河のほうだ。
 さっきからこっちをちらちら盗み見ているし、動きもカクカクぎこちない。
 竜児も緊張くらいしているが、大河のテンパり具合はこっちの方が気恥ずかしくなる
くらいだった。
(でも、女はいいよな……、気楽で)
 ため息をつきながら、竜児は待ち受ける不安に肩を落とす。
 
 そう、竜児には、これからのバスタイムにあたり男ならではの懸念事項があるのだ。

「ん? おい大河、お前髪そのままで入るつもりかよ」
「あー、たまに結うけど、基本的にめんどくさいからやってない」
「お前な……、せっかくいい髪の毛してるんだからさ」
「じゃあやって」
 やれやれと、竜児はふんと鼻をならす大河の長くふわふわした髪を三つ編みにしかかる。

 ……腰のタオルはしっかりと結んである。少し動いたくらいでは外れることもないだろう。
 だが、生地の薄いタオルは「内側からの圧力」に対してはほぼ無力だ。
 
 もし万が一、大河の言うように「興奮」してしまうようなことがあれば。

 竜児の股間は、のっぴきならない自己主張をしてしまうことだろう。
 まさに悲しい男の性。読み方は自由だ。
12 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:03:26 ID:X7AELtby

(まあ……、大丈夫だろう)
 とは言え、それほど心配もしていない。
 なんのかんの言っても、目の前にいるのは手乗りタイガー、その名の通りちんちくりんな
逢坂大河なのだ。
 胸元に巻いたタオルケットも、一切の起伏なく、虚しく垂直に垂れている。
 男の「そういう」気分を発奮させるような魅力は、残念ながら乏しいと言えよう。
「なんか、すごく失礼なオーラを感じるんだけど気のせいかしら?」
「気のせいだろう!」
 ネコ科の気配察知能力は恐ろしい。気をつけないと。
 編み終わった髪の毛を持ち上げ、頭の後ろでくるくると巻いてゴムで留めて完成だ。
「ほら、出来上が――あ」

 そのとき。竜児は見てしまった。

 アップにした髪の毛の下、乳白色の淡いグラデーションに彩られた、大河のうなじを。
 栗色の後れ毛から、細い首筋、柔らかくうねる背中への流れをばっちりと。

「……っ」
「おー、ありがとー。……ん? 竜児どうしたの?」
 後ろを見やる何気ない大河の視線さえ、こちらを誘う魅惑的な流し目に見える。
 やられた。完全に不意打ちだった。
「何? どうしたの?」
「い、いや、なんでもない、なんでもないぞ!」
「変なの。さあ、さっさと入りましょ」
 動揺を隠し切れない竜児を尻目に、大河はバスルームへと向かう。
「そうだよ、昨日までとは違うんだよ……」
 竜児は前髪を掻きながらつぶやく。
 大河のことが好きだといった。結婚しようと言った。
 それはつまり、大河を「女」として見るということだ。
 今の一撃で思い知らされた。そういう目で見る大河は、思いのほか……、手ごわい。
「マジで……自制しろよ、俺」
 下腹部に高まる緊張を何とか抑えつつ、竜児は追いかけるようにバスルームに入った。
 
「んっ……、くぅっ……、ん……、はああぁ〜〜っっ、……気持ちいぃ〜〜!
 あれ、竜児、どうしたの?」
「みょ、妙な声出してんじゃねえよ……」
 バスルームに入った矢先にセカンドパンチを打たれ、竜児は思わず壁に寄りかかる。
「インコちゃんの顔、インコちゃんの顔、インコちゃんの顔どアップ……」
「な、何ぶつぶつ言ってんのよ……」
 愛するペットの力も借りて(?)なんとか湧き上がるものを抑制し、かけ湯をして竜児も
浴槽に入る。
「お邪魔しますよ……、……っと」
 大河とは反対側の浴壁を背もたれにして、ずぶずぶと体をお湯に沈めていく。
「うわっ、やだ、きゃはは! すごい、お風呂の水一気に増えたー!」
 肩の上までせり上がってくるお湯に、声を上げてはしゃぐ大河。
「子供かよ、まったく……」
 呆れながらもなんだか微笑ましくて、思わず吹き出してしまう。
13『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:04:33 ID:X7AELtby

「しかし、ほんといいお湯だな。……ふぅぅ〜〜〜」
「ぐふ、あんたも声出てんじゃないのよ」
「いや、これは仕方ないな。ほんと……」
「「気持ちいい〜〜」」
 深い溜息とともに、二人は天にも昇れそうな安堵の表情を浮かべる。
 さっきまで凍死していた皮膚の細胞が一気に活発化する。血がぐるぐると巡りだして、
全身がジンジンするくらいだ。その刺激がたまらなく心地いい。
「いいな、風呂……」
「いいね……」
 そう漏らすのがやっと、とばかりに風呂という名の幸せに浸りまくる二人。
 
「……」
「……」
 しかし。
 一旦黙ってしまうと、所作もなく。
 この至近距離、自然二人で見つめあう格好になるわけで。
 目を逸らそうにも、視界のどこかに必ず相手がフレームインしてくるこの気まずさ。
 沸き立つ湯気では隠しきれない、無防備な首筋や肩口を見つめるわけにもいかない。
 行き場を失った視線同士がかち合い、慌てて目を逸らし、また戻しては目を合わす。
 しかも、
「あっ、わ、悪ぃ……」
「い、いえ、こちらこそ……」
 折りたたんだ脚をちょっとでも伸ばすと、相手の裸足をつついてしまう。
 十分に広いバスタブなのに、なんだかとても窮屈だ。

「あー、えっと、これからどうすっか、な」
 沈黙に耐えかね、漠然とした話題を振ってみる竜児。
「これから? そっか、駆け落ち、するんだもんね……」
「その言い方は語弊があるような……。でも、まあ、そうか」
 親の承諾も得ず、結婚するために逃げるんだからそういうことになる。
「住むところとか、どうしよっか……」
 たった2ヶ月とは言え、住居がなければ話にならない。
「先立つものも乏しいしな。バイトしないと」
「ああ〜〜っ!!」
「な、なんだよ急に」
 突然の大河の絶叫に竜児はたじろぐ。
「バイト代、落としてきちゃった……」
「……がぁ」
 竜児も思わず唸る。これから色々と物入りだというのに、あの額は痛い。
 ばしゃばしゃと水を打って大河はどうしようもないことをごね出す。
「ああんもう、せっかく稼いだのにぃ!」
「けっこう割のいいバイトだったもんなあ」
「ほんとよね、アンタほとんど突っ立ってただけだし。ばかちーがいなけりゃどうなってた
 ことか」
「そ、そんなことねえだろ」
14『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:05:27 ID:X7AELtby

 口を尖らせる竜児だが、大河はそんなことお構いなしにSっ気たっぷりの笑顔で続ける。
「むしろ、あんたのそのバイオレンスフェイスのせいで客足遠のいてた感すらあったわね。
 次やるなら接客業だけは避けたほうがわぷっ!」
 突然飛んできた水しぶきに大河の声は遮られる。
「けほっ、けほっ、な……!?」
 握り合わせた両拳からぴゅーっと一筋の水を飛ばしながら竜児は不敵に笑う。
「くくく、これぞ高須流『スプラッシュドラゴン』! 人よりちいとばかし大きな手だから
 こそ成せるこの水鉄砲の威力は伊達じゃねえぜわぶっっ!!」
 津波のように襲い掛かる水流に今度は竜児の言葉が飲み込まれる。
「まったく、ちょこざいな技とくだらねえ講釈を垂れてくれちゃって。ちょっと水芸が
 できる犬だからって調子乗ってんじゃないわよ」
「ぶはっ、てめぇ、洗面器は反則だろうが!!」
「バーリトゥードな戦場、それが風呂よ。油断あるものに生きる道無し」
「な、ん、だとぉ……!」
 怒りに任せて竜児は腕を振るう。
「きゃ、ちょっとやめさないよ! ええい、こんなもの!」
 洗面器を放り投げ、負けじと大河も応戦する。
 
 ばしゃばしゃと飛び交う水しぶき。襲い掛かる水の大群と、はしゃぐ大河の笑顔が交互に
入れ替わる。
「それそれぇ! どうしたの竜児ー、あなたの実力はこんなもんなのー?」
「抜かせ! 負けてられるかよぉ……!」
 まるで子供同士。ほんとはこんなことしてる場合じゃないというのに。
 でもなんだか、しばらくはこのむちゃくちゃな時間に流されていたい。そんな風に思って
しまう。

「行くわよ、竜児ぃ……」
「な、お前その構えは……!」
 大河は両の掌を合わせて腰溜めに構える。
「やめろ、このお風呂のお湯が全て消し飛んでもいいというのか……!」
「構わぬ……! か〜め〜……」
 某野菜人というよりは、むしろ某ナメクジ星人のような面構えでにやりと笑う大河。
「……波ぁぁぁーっ!!」
 溜め込んだエネルギー(?)を一気に開放する大河。大挙して押し寄せる大波。
「ぐわああああっ!! ……って、まあそんな大したことはないな、って、……っっ!」
「ふふん、あまりの威力に言葉も失ってしまったようね」
 確かに竜児は言葉を失っている。目の前の事態に。
「お、おまっ、早く、タオル……!」
「ふあ? 何言って、………………」
 ふんぞり返した胸にちらりと目をやり、そのまま数秒固まって、
「……〜〜〜っっ!!」
 そして、噴火直前の火山のようにわななき出す大河。
 
 その間にも竜児はばっちり見てしまった。
 いつの間にかタオルが解けて、覆い隠すものもなく赤裸々に露わになった大河の胸を。
15『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:06:28 ID:X7AELtby

「あ……」
 予想も想像も何も覆さない、外見どおりの小さな胸。乳房と呼べるような膨らみは
ほんの少し、片手にすくった砂を落としてできた山程度のものしかない。
 しかし、大河の裸身の美しさは、竜児の想像を遥かに超え、ちっとも貧相ではなかった。
 ただでさえ細い胴体は、腰の辺りに向けてさらにきゅっとくびれ、締まったやわらかな
腹筋のうねりとともに、目が離せなくなるような魅力を持つ曲線を描く。
 真っ白な肌は華麗な蝋細工にも似て、半透明の輝きさえ感じる。
 ごくりと喉が自然に音を立てる。頭の中がきゅぅっと、体を覆う湯水よりも熱くなる。
「ちょっ、た、タオル、タオルは!」
 慌てて足元を探り出す大河の声に我に返って、竜児も大河のタオルを探す。
 任務を放棄したタオルは、竜児の足元に情けない姿で沈んでいた。
「ほら、これ! つか、いいから隠せよ!」
「み、見るなバカぁ!」
 さんざん見てしまった後に言われても、と思いつつ、タオルを差し出して目を逸らす。

「……もういいか?」
「……ん」
 短い返事に視線を直すと、胸のタオルを巻きなおし、耳の先まで真っ赤にした大河が
うつむいていた。
「その……悪かったな」
「ん」
 
 天井から落ちてきた雫の音だけがわずかに響く。
 ……気まずい。自分もおそらく相当赤い顔をしているだろう。
 こんな状態で湯になんか浸かっていたらのぼせてしまう――と思ったところで気づく。
「あ、お風呂のお湯減っちゃってるな」
 さんざん大暴れした結果、相当の量を外に掻き出してしまった様だ。腰の辺りまでしか
お湯がない。
「……足す?」
「そうだな、もうちょっと入りたいし」
 じゃあちょっと待ってと言って、大河は振り返って蛇口をひねる。

 勢いのよい音を立てて流れ出すお湯。
 少し空気が動いた。さて、ここからどうフォローするか。
「……じゃ、じゃあ、そっち行くわね」
「は?」
「だって、熱いし」
 確かに、お湯の出る蛇口があってはおちおち壁にもたれていることもできないだろう。
 しかし、二人が横に並べるほどの幅はこのバスタブにはない。つまり。
「相当こっ恥ずかしい姿勢になる予感がするんだが……」
「わ、私だって恥ずかしいわよ! で、でも、私たち、もう、その……、……ええいもう、
 いいからぐだぐだ言わずにとっとと私の背もたれになりなさいよ!」
 勢い良く立ち上がると、桃色に染まった顔で竜児を睨み下す大河。
 長い付き合いだから分かる。ムキになるということは、恥ずかしいけど相当やってみたい
ということだろう。
 竜児は想像する。自分に体重を預ける大河。二人頭を縦に並べてのバスタイム。
 実に恥ずかしい。が、実に男のどうしようもない欲望をくすぐるシチュエーションだ。
16『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:07:25 ID:X7AELtby

 堅物に見られる竜児だが、そういうのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。キモイと罵られ
ようが大好物だ。
 しかし、実際現実にやるとなると、まさしく嬉し恥ずかしというか何と言うか。
「わ、私もね。そりゃ裸見られたのは恥ずかしかったけど」
 大河は、一歩踏み出してくるりと反転し、小さなお尻を有無を言わさず下ろそうとする。
「竜児とは、ちょっとずつ、そういうことも」

 が、すんでのところで竜児は気づく。
(……! ま、まずい!)
 裸を見てしまった動揺で眠っていた警報装置がアラートを上げる。
 まずい、まずい、今はとにかくまずい!

「積み重ねていくのかなあ、って。よいしょ」
 しかし気づくのが遅すぎた。浴槽に腰を下ろした大河は、躊躇なく体を預けてきた。

 こつん。
 
「くお!」
「? なにこれ、硬、……いぃ!?」
 間抜けな声を出して悶絶する竜児と、腰の辺りに感じた違和感の正体に気づき飛びのく大河。
「あ、あんた、こっ、こここ、こっこここ……」
 あ、インコちゃんみたいだと、竜児は妙に落ち着いた心で思った。
 ああ、人間って酷すぎる現実を目の前にすると、こうも開き直れるもんなんだな――
「な、なに妙なトコ硬くしてんのよこの発情犬ーーっ!!」
 ばっしゃーんと巨大な水柱が上がり、竜児をそのこぼれそうな涙ごと飲み込んだ。
 
「はぁ、はぁ、びっくり、びっくりだわ! バカチワワもびっくりの盛りっぷりだわ!」
「げほ、げほっ、し、仕方ねえだろ! 男なんだから!」
「男だからって、そ、そういうこと考えてる時にそうなるんでしょ! ちょっとずつって
 言ったところじゃないのよ! 何ひとつぶ300メートルジャンプしてんのよこの
 スプリング色情犬!」
「愉快な言葉作ってんじゃねえ! お、男ってのは、その……、わ、わりと簡単に、こう
 なっちまうんだよ! 悪かったな!」
「ふぇ、そ、そうなの、……〜〜っ!! そ、そうなるのは分かったら、早く隠しなさいよ
 それぇ!」
「へ? ああっ! あ、あれ、なんで、どこ!?」
 いつの間にか、今度は竜児の股間を覆い隠していたタオルがどこかに消えている。
 大河が真っ赤な顔を逸らしている間に辺りを探す。足元にはない。
 後ろを見上げると、浴室の壁にタオルがべっちゃり貼り付いていた。さっきの大河の
攻撃によるものだろう。

「……おい、もういいぞ。いや、もういいです。スミマセン」
 もはや腰に巻いても意味がないので、大河の位置から問題の箇所が見えないように膝から
覆い隠す。
 いや、もうバッチリ見られてしまったし隠す意味もないか、と心の中で自虐的に笑う。
17名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 00:07:48 ID:CrIKiMeN
保管庫やる気あんの?
18『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:08:24 ID:X7AELtby

「ま、まったく、露出狂の気もあるなんて、あんたは一体どこまでいくのよ」
「お、ま、え、がタオルを吹き飛ばしたんだ!」
 それだけは必死に否定しておく。
「ふーん。……で?」
「で? って?」
「だぁから、その、な、なんで、そんな風になっちゃったかって、聞いてんのよ……」
 なぜか大河は湯船の中で正座している。竜児がこんな状態である以上近づけないし、
仕方ないのだが。
「そりゃ、お前……」
 じーっと睨んでくる大河。余計な誤魔化しは効かなさそうだ。
「お、お前の胸とか、その、見たから……、って言わすなこんなこと!」
「ふ、ふーん……」
 必死の告白も曖昧な返事一言で終わり。
 まるで法廷で一人喋りをさせられる被告人の気分だ。
「竜児、あんたもしかしてロリコン?」
「沈めてやろうか大河さん?」
 さすがに切れる。
「だ、だって、私の胸っつったって、こんなだし……」
「だからそういう量で単純に量れるもんじゃないっつーか、だから……、ああもう、
 つまりだな! 好きな女の裸見て勃たない男はいねえの! はい終わり!」
「お、おぅ……」
 強引に話を打ち切って、これ以上は聞く耳もたんとばかりにうつむく。
 
「………………じゃあ、さ」
 見ない聞かない返事しない。
「本当に、したくないの? そういうこと……」
「……っ」
 けれど、誤魔化したくはない。
「……してぇよ」
「……」
 大河は赤い顔をうつむけるだけで、何も言わない。
「ただ、ちょっとずつ、だろ? わかってる。だから、これとそれとは別なんだって
 ましてや、したくない相手をどうこうしようなんて、俺は思わない」
「……」
「以上だ」
 バスルームに、また沈黙が戻る。いい感じに、昂ぶりも治まってきた。
 いつの間にか風呂の湯は、肩まで届きそうな高さにまで来ていた。
 振り返って湯を止め、大河はまた竜児のほうに向き直る。

「私も、したいわよ」
「………………は?」
 静寂を破いた言葉の意味を、一瞬把握しかねる。
「だから、したくないなんて言ってないじゃない、なに勝手に決めてくれちゃってんのよ?」
「はっ、ちょ、お前」
「勘違いしないでよ! そんな積極的にしたいなんてわけないでしょ私は犬じゃないのよ!
 ……ただ、あんたが思う同程度には、私も、ってことで……」
「大河……」
19『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:09:24 ID:X7AELtby

 もじもじと、拗ねと照れが入り混じった表情で大河はぽつぽつと喋る。
「……ただ、ね。そういう私を、引っ張ってくれるなら……」
 少し、声のトーンを変えて、
「引っ張って、ほしい、わよ……」
 その言葉は抽象的で、だからこそ、大河のためらいと望みが伝わってくる。

「大河」
「えっ、わっ、ちょっと、むぎゅっ!?」
 竜児は大河の手を取り、思い切り引き寄せる。
 胸に飛び込んできた大河の軽い体。湯船の中よりなお熱くて、跳ねる水よりも柔らかい。
ぎゅっと力を込めたら、そのまま水と一緒に溶けてなくなってしまいそうな。
「ほら、引っ張ってやったぞ」
「そ、そういうことじゃなくて」
「……いいんだな?」
「……だから、そういうこと聞かないでさ、……まあ、いっか」
 大河は竜児の首に手を回し、ぎゅっと力を込めてくる。
 擦り寄ってくる顔。頬と頬がくっつく距離で、一言、ささやいてきた。
「いいよ」
 酒の香りよりもくらりとくる一言。こう言われた以上、引き下がるわけにはいかない。

「じゃあ、大河……!」
「あ、で、でもちょっと待った!」
 はやる竜児を制止するように、びしっと指を突きつけてくる大河。
「な、なんだよ」
「ダメなの! このままじゃ……、CBA@なの!」
「はあ?」
 さっぱり意味のわからない数字の羅列。
「いい? 普通の女の子の思い描く、普通の恋愛の順序ってもんがあるのよ。まず、好きだ
 って告白して付き合い始めるでしょ。それで、そのうちキスするでしょ。これがA。で、
 もうちょっと進むと、その……、エッチして、でCでプロポーズ」
「ああ……」
 いわゆる恋のABCというやつだろう。泰子の時代から、意外としぶとく現代まで語り
継がれている下世話ネタだが、どうやら大河は知らないらしい。

「なのにアンタ、今まさにその流れを完全に逆行しようとしてるのよ! どんだけ空気読め
 ない駄犬なのよ!」
「ちょっと待て! 少なくとも@はやっただろうが!」
「言われてない!」
「えぇ、そうだっけ……?」
 必死に記憶を掘り返す竜児。
 ……ああ、確かに言ってない。嫁に来いとは言ったけれども。
「けど、俺も言われてねえぞ」
「私言ったもん。記憶が朦朧としてるけど」
「面と向かってだよ」
 むむーとしばし睨み合う二人。
20『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:10:24 ID:X7AELtby

「好きだ」
「っ!?」
 大河の不意を突くように、まっすぐ目を見つめて竜児は言葉を放った。
「大河、好きだ」
 もう一度、追い討ちをかけるように告げる。
 大河の顔がみるみる赤くなるのがたまらない。
「……な、何よ。もっとこう、雰囲気作るとか、そういうのはないわけ」
 ふてくされる大河の目を無言で見つめる。ほら、次はお前の番だと訴えるように。
「……っ、好きよ、竜児が好き! これでいいんでしょ!」
「なんでキレてるんだよ……」
「やり方がいやらしいのよ、ほんとエロんっ、んん、ん……」
 お怒りの大河の隙をさらに突く。
 そっと顔を近づけて、不平を漏らすその口を塞いだ。
 初めて味わう大河の唇は、小さくて、ちょっと力を込めたら潰れてなくなってしまい
そうで、けれど心地よい反発がある。

「……これで、Aだ」
「……うん」
 唇を離すと、大河は呆けた表情で虚ろな返事を返した。
「竜児」
「ん?」
「キスって、すごいね」
「ああ」
 ただ唇を重ねているだけなのに、手が触れ合うより何倍も、相手の温かさを感じられる。
 触れている部分はごくわずかなのに、指の先までしびれそうなほど気持ちいい。
「ねえ、もう一回、A……」
「ああ」
 大河の望むとおり、竜児も望むように、自然とお互いの唇を重ね合わせる。
「ん、むぅ、んん……っ」
 自分の唇で、大河のそれを挟んでみる。弾力のある柔肉が、ぷにぷにと形を変える。
 大河も負けじと甘噛みしてくるが、まるでハムスターに噛みつかれているようにもどかしい。
「……ふふ、お風呂で何やってんだろうね、わたしたち」
「まったくだ」
 くすっと笑うと、竜児は大河の体をひょいと持ち上げる。
「うわ、ちょっと何、きゃっ」
 大河の体をくるっと向こうに向けて、そのまま胸元にすとんと収める。
 浴槽の壁にやや大きくもたれた竜児のお腹の上に、ちょうど大河のお尻が乗っかるような
格好。浮力のせいか大河が軽すぎるのか、ちっとも重苦しくはない。
「……ずいぶんごつごつとしたソファーだこと。あ……」
 大河の体を覆うタオルを解く。粉雪の積もったゲレンデのように美しいラインを描く
背中が露わになる。
「こっちからじゃ見えねえよ。だから……、手、どけろ」
「だ、だめ、あっ、く、ん!」
21『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:11:25 ID:X7AELtby

 胸を隠そうとする大河の腕を少し強引に押し割って、竜児は大河の乳房に触れる。
 ちょっと触っただけなのに、びくっと体を震わせる大河。
 敏感……、なのではなく、どこか少し恐怖心があるのだろう。
「大丈夫だ、大河」
「竜児……」
「……いや、俺も初めてだからなんの根拠もないんだけど」
「だからそういうことは言わんでいい! きゃっ、くぅ、んっ……!」
 緊張が解けたところで(?)、改めて胸に手を当てる。
 くりっとした、小さな乳首が目印。そこを中心に、あたりをまさぐる。
 ……ほんの少し、薬指と小指に感じるわずかな膨らみ。プリンの欠片のような心もとない
弾力。壊れないように、繊細な手つきで感触を味わう。
「ん、ふぅ、……!」
「気持ちいいか? 大河……」
「よ、よくわかんないけど……、っ、ドキドキ、する」
 確かに、トクントクンと大河の鼓動に合わせて乳房が小刻みに揺れるのがわかる。

「竜児は……、ん、私の胸、どう? やっぱり……」
「うん、小さい」
「ふん!」
「ぶふ!?」
 思い切り仰け反った大河から、鼻っ柱にしたたかな背中の一撃を喰らう。
「親しき仲にも礼儀あり、ちょっとはオブラートに包むってこと考えなさいよ」
「最後まで聞け! 小さいけど可愛いって言おうとしたんだ!」
「そ、そうなの? ひん! きゃ、や、あ、ちょっと、強、ぃ……!」
「人の話を聞かない奴にはなぁ……」
 少し制裁を加えてやるとばかりに、竜児はピンと立った乳首をくりくりと指で押し込んで
みた。予想より大きな反応で、胸元の小さな体が暴れだす。
「くあ、あっ、んあ! くすぐった、ん、あぅ、……!」
 力を込めるたびに、身を縮めるようにしてぴくん、ぴくんと反応する大河。
「ほら、やっぱり可愛い、……お前」
「もう、馬鹿、んっ……あぅっ」
 胸を手の平全体で包み込むように抱く。指の輪っかが一周してしまいそうな細い胴体。
熱い皮膚のすぐ下の肋骨の感触が艶かしい。まるで猫を抱いているようだった。
「タイガーだからそりゃそうか」
「何をわけわかんないことを……、ん、はぁ、くぅ……っ」
 ばしゃばしゃと荒れる水面の音と、大河の喘ぐ声がバスルームに響く。
「んんっ、竜児ぃ……、ちょ、ちょっと、痛い……」
「え、あ、悪ぃ!」
 ぱっと手を放すと、大河はくたりとうな垂れて荒れた呼吸を整える。
「ちょっと夢中になっちまった、ごめん……」
「はぁ、はぁ、まったく、こんな躾のなっていない犬に育てた憶えは……」
「俺も養ってるネコ科の躾がうまくいかなくってな」
「……そういう減らず口を叩く奴は、こうよ、うりゃ」
「くおっ! お、お前……!」
22『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:12:27 ID:X7AELtby

 いきなり股間から強烈な刺激。
 大河は湯船の中に手を突っ込んだかと思うと、ぎゅっと竜児のペニスを掴んできた。
 遠慮も思慮もない掴み方だったので、正直痛い。
「うわっ、ちょ、なにこれ!」
 と思ったら、ぱっとすぐに手を放す大河。
「な、ななんか予想以上に硬いんだけど。熱いし、なんかビクン! って跳ねたしぃ……!」
「大河さん……どんなUMAに見えようとワタクシの体の一部なので……、取り扱いには
 ご注意を……」
 なるべく平然と構えようとするが、ちょっと涙が滲んでくるのは堪えきれない。
「い、痛かったの?」
「男ゆえ……」
「遺憾だわ……」
 振り返ってぺこっと頭を下げる大河。すぐに取り直して、水面の向こうの竜児のペニスを
凝視する。

「ねえ、もう一回、触ってもいい?」
「なんでそんなに触りたいんだよ……」
「アンタだって人の胸さんざんいじりまわしたじゃないのよ」
「それは、あー、うん」
 返す言葉もない。
「それに、男って、その、ここ触ると気持ちいいんじゃないの? そういうことする時も……」
「触り方次第だ。ちなみに普段どんな風にしてるかなんて聞かれても絶対教えないからな!」
「聞きたくないわそんなもん! ……と、とにかく、ゆっくり触ればいいんでしょ」
 あ、やっぱりやるんだと思いつつ、とりあえず為されるがままにされてみる。
「……う」
「ど、どう?」
 大河の小さな手が、ペニスをきゅっと包んでくる。ほんとうにうっすらとした力だが、
他人に触られるというだけでぞくっとこみ上げてくるものがある。
「ま、まあ、普通……」
「意味がわかんない……、こ、こんな感じ?」
 きゅっ、きゅっと、まるで赤ん坊の手をマッサージするように握っては離してを繰り返す
大河。

「間違ってる、が……」
 思った以上に柔らかくぷにぷにとした大河の手の平。痛くはないが、気持ちいいかと
どうかと言えば、ものすごく眠たいのに起立を命じられているようなもどかしさだ。
 時々ぴりっと刺激が走るが、それ以外はただ圧迫されているだけという。
「じゃ、じゃあどうなのよ。教えてもらわないとわかんないわよ……」
「なんつーか、こう、こするんだよ」
「こする……。こう?」
「くぁ……っ!」
 大河の手が、するりとペニスを撫でていく。水の中のおかげで、なめらかに肉棒の表面を
滑り、カリのあたりで少し引っかかってまた通り抜ける。
「あ、気持ちいいの?」
「き、気持ち、くあ、ちょ……!」
 一転して正解にたどり着いた大河は、気を良くして何回も手を動かしてくる。
 ペニスの根元がきゅっと縮こまるような刺激が断続的にせり上がってくる。自分でする
時よりも少し乱暴で、性急で、けれど比較にならないほど気持ちいい。
 そう、それこそあっという間に――
「なんか、どんどん硬くなってる気がする、すごい……」
「ちょ、い、ちょっと待て、それ以上は……!」
「うりうり」
「だからなんでお前は人の話を聞かないんだ、――う」
 抗議している間に、限界は来てしまった。
23『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:13:22 ID:X7AELtby

「竜児、どう……、あれ、なにこれ……?」
 頭の中が一瞬明滅し、次の瞬間には竜児は湯船の中に思い切り射精していた。
 異変に気づいた大河は手を止め、水の中を漂う白いよどみをすくい上げる。
「……竜児、これ」
「そ、そんなもの触るんじゃありません!」
「ひぇっ、や、やっぱりこれ、その、あれなの? 竜児が出した……」
 手の中の白い液体を見つめる大河の顔は、まるで自由研究の観察対象を見つめる小学生の
ようだ。
「こ、こんなのが出るんだ、男って……」
「……あの、そんなに見つめられると何だかものすごく恥ずかしいんだが」
「ぺろ」
「!?」
 いきなり、信じられない光景が目の前で起きた。
「お、おま、何飲んでんだよ!」
「……うぇ、まずい……」
「当たり前だ! ……いや、俺も味までは知らんが」
 飲み込むことが出来ず、大河は竜児の精子を口の中でもごもご転がしていたが、匂いに
耐え切れなかったようで、意を決して飲み下した。
「はぁ、辛かった……」
「だから、それなら最初からそんなもん飲むな!」
「あんなすごい匂いがするなんて思わなかったんだもん。それに、昔見た少女漫画で、
 好きな人のものは飲むものだって……」
 PTAに混ざって性知識の氾濫に警鐘を鳴らしたい気分だった。
「まったく、風呂の水も不衛生だって言うのに……」
「でもね」
 振り返って、口の先をくいと上げて笑いながら、
「これが竜児の味、なんだね」
 少し照れながら、そんなことを言ってのけた。
 
「お前、なぁ……!」
「え、うわ、竜児、ちょっと!?」
 竜児は大河の肩を掴み、こちらに向けてぎゅっと抱きしめる。
 長い間に湯に当てられた体を、薄い胸から伝わってくる激しい鼓動がさらに加熱してくる。
 密着する胸、お腹、肩。背中に回した腕。全てから伝わってくる大河という存在が、たま
らない心地よさを伝導してくる。
「そういうセリフは、男にとってクリティカルなんだよ……。自重しろ」
「じ、自重もなにも、私はただ単に……むぅ」
 しばらく固まっていた大河も、細い腕にぐっと力を込めてくる。
 二人の距離がまったくのゼロになる。胸の中が愛しさではち切れそうだ。
 こんな小さな体なのに、すごい力。
24『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:14:20 ID:X7AELtby

「でも、竜児、その、終わっちゃったんじゃないの?」
「終わりって、……ああ」
 確かに出してしまった。けれど。
「まあ、そうでもないんだ」
「へ? ……! ふ、復活の巨神……」
「そういうことだ」
 密着した体の中で、一部だけ窮屈になっているのが返事になった。
 
「でもさ、本当に入れるの、その、おっきいの……」
「そういうもんじゃないか、セ、セックスっていうのは……」
 なんとなくもろに口に出すのが恥ずかしい。
 ちょっと照れる竜児の前で、大河が急にうろたえだす。
「? どうした?」
「は、入んないよ、そんな、おっきいの……」
「あんまりおっきいおっきい言わないでくれ、なんか恥ずい」
 しかし、不安になるのもわかる。自分のものがそんなご大層なものだとは思わないが、
この太さのものが体のどこかに入るかと思うと、ちょっと怖い。
「じゃあ、どうする? やっぱやめとくか?」
「お気遣いどうもだけど、あんたはそれでいいの?」
「いや、よくないです生殺しです」
「まったく、飢えた犬の目をして、思ってもないこと言わないの」
 ふうと溜息をつく大河。
 竜児はしばらく考えて、
「じゃあ、さ」
「ん?」
「少しずつ、馴染ませようか」

「りゅ、竜児、やっぱ恥ずかしい、これ……」
「俺も俺で恥ずかしいんだよ! ほら、手、どけろ」
 竜児の目の前には、大河の小さなおへそが見える。
 その少し下に目を向けると、大事な部分を必死に隠す大河の手。
「で、でもぉ……!」
「大丈夫、優しくするから」
 頭上から、大河が半分涙交じりの声で「……わかったわよ」と呟いた。
 湯船にかがんだままの竜児の前に、大河は立っている。
 大河がその手をゆっくりと放すと、うっすらと陰毛の生えた大河の秘部が露わになる。
「……っ」
「あ、あんたが恥ずかしがらないでよ!」
「んなこと言ったって、俺だって見るのは初めてなんだから……!」
 赤い顔で言い訳する。まだ肝心な部分は見えていないけれど、やたらに緊張してきた。
「じゃあ、ちょっと足、開けて」
「ん……」
 本当にほんの数センチ足を広げる大河。肉つきの薄い太腿に隠されていた部分が見えて
くる。今の竜児の角度からでも、割れ目になっていることが見て取れる。
「……触るぞ」
「ん……!」
25名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 00:15:21 ID:jDGiMZr9
C
26『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:15:22 ID:X7AELtby

 きゅっと目を閉じて、口を硬く結んで堪える大河。そんなに身構えられると、間違っても
乱暴な扱いは出来ない。
「……ひぁっ」
「……熱い」
 竜児は、大河の股の下に中指をそっとあてがい、そっと手前へとなぞる。
 くち、と濡れた皮膚がよれる音がして、あとはすぅっと、襞に沿うように指が進んだ。
「どうだ?」
「つ、続けて、ふぁぅ……!」
 大河の言葉通り、竜児は指の動きを繰り返す。
 くい、くいと指を大河のヴァギナに沿って曲げては伸ばしての繰り返し。
 大河のそこは、少しぬめっていて、柔らかく、それだけで妙な気分になる。
 重ねて、
「くっ、あ、竜、児ぃ……っ、は、あ」
 時おり大河の口から漏れる、搾り出したような喘ぎ声が上から振ってくるのだから溜まった
もんじゃない。
 先ほど精を放ったばかりの愚息は、すっかり息を吹き返したどころか、完全に猛り切って
いた。

「大河……」
「ひゃっ、ちょっと、何、んんんっ……!」
 竜児は、大河のくびれた腰にそっと顔をよせ、腰骨の辺りに吸い付くようにキスをする。
 こんな所でも、大河の肌はつるっとしていて唇が離したくなくなる。
「ちょっ、あんた、ん! 何してんのよ!」
「いや、なんとなく。気もまぎれるんじゃないかと……」
「もっとマシな、ひっ、んんぅ……!」
「まだ、ちょっと入れただけだぞ」
 キスを繰り返しながら、折り曲げた指をちょっとだけ膣内に進入させる竜児。
 ぴくっと少し腰を仰け反らせて大河は悶える。
「りゅ、りゅう、じ、くあ、ん、あ、ああっ」
 大河の膣内は、口の中のようにぬめりとしていて、竜児の指をきゅうきゅうと締め付けて
くる。
「痛いか?」
「……痛くは、ない、けど」
「もう少し、入れるぞ」
「ふあ、く、んっ……ぁ!」
 中指を第二関節まで進める。大河の中は奥に進むほど熱く脈打っている。
「どうだ?」
「だ、大丈夫、だけど、なんか、ん、あんた気ぃ大きくなってない……?」
「そんなことねえよ、俺だってめちゃくちゃ緊張してるんだぞ!」
 そう、今だってわけもわからず、おっかなびっくりやっているのだ。
 そういう風に見えるとしたら、それは、
「たぶん、お前のため、だから」
「竜児……、んあっ! 動かしちゃ、や、あっ、ん!」
 竜児は、差し入れた中指をゆっくりと上下に動かす。ぬるっとした膣壁を指が滑るリズムに
合わせて、大河の水気を帯びた吐息がこぼれ出す。
27『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:16:24 ID:X7AELtby

「ふあっ、あっ、だめ、りゅう、じぃ、ゆび、だ、あん!」
「大河……」
「ふああっ!」
 今度は、大河の太腿にキスをする。キスだけじゃ物足らず、ぺろりと舌を這わせてみる。
「だめぇ、それ、んっ! なんか、変、だよぉ、あっ!」
 わななき出す大河の体を、左手でぎゅっと抱きしめる。指の動きは止めない。
 大河の下腹部に頬を寄せる。沈み込みそうなほど柔らかい。
「ひゃっ、も、もう、んっ! あっちこっち舐めて、ほんと犬みたい、……!」
「なんだよそれ」
 笑いながら、全くその通りかもしれないと自分でも思う。
 けれど、大河の体はどこもすべすべで柔らかく、色んなところに舌を這わせたくなって
しまう。

「とりあえず、痛くないんだな」
「う、うん……、はぁ……はぁ……」
「じゃあ、ちょっと」
「ん……っ、……! くあ、んっく……!」
 少し大河の声色が変わる。人差し指と中指の二本は、ちょっときつかったのかもしれない。
「駄目か……?」
「い、意外と、駄目じゃない……。でも、んああっ!」
 その言葉に、竜児はぐぐっと二本の指を差し込んでゆく。
「くぅ、んっ、や、やっぱ調子に乗ってるわ、このどエロ犬!」
「『ど』がついちまったか……。いや、でもお前が大丈夫って言うから」
「優しくしてって、言ったでしょ、んんっ」
 竜児のちょっとした指の動きにでも反応する大河。
 ちょっと、わかってきたかもしれない。
「じゃあさ」
 立て膝をついて、大河の体をぎゅっと抱き寄せる竜児。薄い胸板に頬をぴったりと
くっつける。
 くいっとコの字に曲げた指を浅く入れて、ゆったりとしたリズムで細かく動かす。
「ふぁっ、あっ、あっ、ん……」
「これなら、どうだ?」
「ら、乱暴じゃない、けど、でも、あっ」
28『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:17:25 ID:X7AELtby

 喘ぐ大河の喉の響きが、胸板を通して伝わってくる。
 次第に、指の動きに合わせて、くちゅ、くちゅ、と水気のある音がし始めてきた。
「大河……気持ちいいか?」
「くぅ、ん、よく、わかんない、よ、ん、なんか、いっぱいでぇ……!」
 甘える猫のような声で、必死に言葉を返す大河。
 その余裕のない感じが、なんだかたまらなくいじらしい。
「大河、ん」
「ひぁっ、ちょっ、何してんの、ばかっ、ん、んんーっ!」
 心もとない乳房に頬ずりして、先端をきゅっと口に含む。
 硬くなった乳首を、少し吸い付くようにして、唇で掴んだり離したり。
「ふぁ、あ、竜児、竜児ぃ……! ん、ぃ、んん……っ!」
 指の動きを少しだけ早く、ちょっとずつ奥へと進める。苦しそうな素振りはない。
「大河、指、全部入れちゃうぞ」
「……う、うん。……っ、くぅっ、ん……ぁ!」
 窮屈な大河の中を少し強引に押し進んでいく。指先がとろけてしまいそうだ。
「は……あぁっ、りゅう、じぃ、だめ、わた、しぃ、……!」
 竜児の指先から逃れるように、小さなお尻を揺り動かしながら、体をくの字に曲げて
身悶える大河。バランスを失いそうになる体を、竜児の頭を抱きかかえて何とか耐えている。
 竜児は大河の髪を左手で撫でてなだめ、右手の指でゆっくりと、大河の中を上下に刺激
する。
「竜児、やっ、あ、んっ、あっ、も、もう……! もう、いいよ……!」
「いて、いて、わかったわかった!」
 竜児の首をぺちぺちと叩いて、中止を呼びかける大河。
「人の首でタップすんなよ……ほら」
「ん……、っ」
 大河の体を押し上げて、指をヴァギナから引き抜く。ぴくっと大河の体が揺れる。
「うわ……」
 風呂場だから気づかなかった。竜児の指は、少し泡だって白く濁った大河の愛液にまみ
れていた。

「たい、ぐわっ!?」
 口を開こうとした竜児の脳天にいきなり大河の手刀が飛んでくる。
 続けさまに何回も何回も。
「なんか、恥ずかしいこと、言ったら、殺す!」
「言わ、いて、言わねえよ! 言わねえから!」
 頭をかばいながら叫ぶが、大河はなおもびしびし殴ってくる。
「や、やめろって! 何怒ってんだよ!」
「怒ってないわよ! け、けど、なんか、なんか、……ああ、もう!」
 止むどころかさらに苛烈さを増す大河のチョップ攻撃。
「いて、痛い。割れる! 割れるから!」
「どうせだからその空っぽ鈍チン頭蓋骨にお湯でも突っ込んどいてあげるわよ!」
 無茶苦茶だ。しかもそろそろ本当に割れそうなほど痛い。
「おりゃ、捕まえた! 何なんだよ一体いきなり!」
 大河の両手首を捉えることに成功した竜児は、立ち上がって上から大河に詰め寄る。
「だ、だって、ぅぅ……」
「言わなきゃわかんねえぞ。それとも、やっぱり俺、ちょっと乱暴だったか……?」
「そ、そんなこと、なくて……」
 あーだのうーだの唸りをあげはじめる大河。
29『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:18:33 ID:X7AELtby

「……いっぱいだっただもん」
「は?」
「あんたとこんなカッコで一緒にいるだけでもドキドキするのに、キスしたり、触ったり、
 触られたりして、なんか頭の中も体の中もきゅううって、どんどんいっぱいになって、
 なんかはちきれちゃいそうで」
「大河……」
「なのにあんた、そんなのお構いなしだし」
「いや、それは……」
 何と言っていいのか分からず頭をかく竜児に、大河は、でもね、と言って、
「すごい、幸せ。幸せすぎて、怖くなっちゃったのかも」
 少し潤んだ瞳を輝かせ、屈託のない笑顔を浮かべた。
「大河!」
「きゃっ、ちょ、りゅう、んむ、ん……」
 竜児は、そんな大河を力強く抱きしめ、唇が潰れてしまいそうな勢いでキスをした。
「……たぶんまだ、こんなもんは序の口だ」
「え?」
「お前は、これから、もっと幸せになる、幸せにする! だから、」
「竜児……」
「……こんなもんで、怖がってんじゃねえよ」
「うん、……うん」
 竜児の言葉を噛み締めるように、大河は何回もうなずく。
 
「……? 竜児?」
 後ろに回した手で髪留めのゴムを探り、それを緩める。垂れる三つ編みをばさばさと
乱暴にほどく。
「……このほうが、いつものお前っぽい」
「なによそれ、あっ」
 くすっと笑う大河の肩を掴み、バスルームの壁に向かうようにもたれさせる。
 ボリュームのある長い栗色の髪が覆う背中。そっと顔を近づけ、うずもれてみる。
「お前の髪、いい匂いするよな」
「まだ洗ってないのに。あんまりフェチいこと言わないでよね。んっ……」
 さわさわした髪の向こうにある大河の背中の表面に軽くキスをする。
「大河」
「あ……、うん、いいよ、竜児。でも……」
「大丈夫、いっぱいになりすぎないように、だな」
 難しい注文だ。自分も初めてなのだから、そんな余裕はないかもしれないけれど。
 
 体を支える大河の腕に、きゅっと力がこもる。
 竜児はペニスに手を添える。良く見れば、いきりっ放しのその先端からは、透明の
カウパーがあふれ出して糸を引いていた。
「ほんと俺、犬みたいだな……」
「え?」
「なんでもない」
30『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:19:28 ID:X7AELtby

 竜児はそっと、大河の秘部に触れる。
「んっ……」
 少しだけ襞の開いた大河のヴァギナは、改めて見ると実につつましい大きさだ。
 この薄い割れ目に本当に自分のものが入るのか――
 指を添えて、そっとペニスをあてがう。少し体勢が辛いが、やや腰を落とさざるを
得ない。如何ともしがたい身長差。
「ひっ……、や、やっぱり大きいよぉ……」
「ゆっくり入れるから、痛かったら………………とりあえず謝る」
「謝って済んだら法律家はいらんのじゃ、っ……! ん……!」
 徐々に進入を始める竜児のペニスに、ぎゅっと顔をしかめて耐える大河。
 思っていたよりスムーズに肉棒を飲み込んでいく大河の膣は、竜児のそれを包み、摩擦し、
刺激する。
 カリのあたりが入り口をぬるりと滑ると、太腿の裏が痺れるような快感が走った。
「うっわ……、っ、どうだ、大河……?」
「んっ、んん……!」
 歯を食いしばる大河はまともな声になっていない。そんなに痛かったのだろうか。

 しばらく動けないままでいると、大河は深く息を吐き、
「……だいじょぶ、続けて」
「いや、そんな鬼気迫る表情で言われてもな……。痛くないのか?」
「痛いわよ。痛いけど……、ちょっと構えすぎてたわ。あんたの言うとおり、力抜いたら
 そんなに……、っ」
 微妙な竜児の動きに顔をしかめる大河。
「強がるなよ……。じゃあ、ちょっとずつな」
「うん、たすかる……。ん……、……ん……!」
 数ミリずつ、を心に刻み、徐々に腰を前に進める竜児。

 じわり、じわりと大河の中に埋没していく自分自身。
 熱い。丹念に、ねぶるように咀嚼されているような、じわりと蕩かされてしまいそうな
気分になる。
「ふぁ……っ」
 ほんの少し、引っかかるように抵抗が強くなったところで、大河の体がピクンと
反応した。
「もしかして……ここか?」
 少し腰を引いて、同じところをもう一度押し進む。
「ふああっ、そ、こ、んんっ……!」
 背中の震えに連動して髪の毛がゆらゆらと揺れる。やはりここが感じるらしい。
「ふぁ、そこばっかり、ぃ、しなくても、い、いいからぁ……!」
 上ずる声で抵抗の声を挙げられても、あまり説得力がない。
 無理に奥まで突き進めることは止め、大河の敏感なところを丹念に攻めることにする。
「大河……っ」
「りゅ、りゅうじ、あっ、あっ、ふあぁっ、んあっ!」
 大河はさらにきゅうきゅうと竜児のペニスを締め付けてくる。油断すると、あっという間に
達してしまいそうだ。ぐっと腹筋に力を入れてそれに耐える。
「大河、大丈夫か? ……怖くないか?」
 竜児は、大河の肩に顎を乗せるようにして、紅くなった耳元に語りかける。
「はぁ、はぁっ、怖いよ、でも、んくっ、気持ち、いいよぉ……!」
 大河は息も絶え絶えに、目じりに滲んだ涙を輝かせ、呂律の回らない声を上げる。
31名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 00:20:23 ID:jDGiMZr9
C
32『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:20:30 ID:X7AELtby

「どうしよう、んん、竜児、わたし、ぃ、……っ!」
「うん、大丈夫だ」
「いっぱい、いっぱいだよぉ……!」
「いいんだ、それで」
 竜児は大河のつるっとした肩に合図のようにキスをして、大河の腰に手を添えて、
ぐっと深くペニスを突き入れる。
「ふぁっ……あああっ!」
 甲高い声がバスルームに響く。
 きゅっと内股になって、何かに耐える大河。
「……ごめん」
「謝らなくても、いい。いいから」
 振り返り、チョコレートのようにとろんとして甘い視線を向けて、
「キスして、竜児」
 せがむ大河に、竜児は無言で口づける。
 ぷるんとした大河の唇の感触が、一瞬なのに、延々と唇に残って響く。
 たかだか1秒のふれあいなのに、どうしてこんなに熱いのだろう。
「大河、ちょっと抜くぞ」
「え、んんっ……」
 ペニスを大河の中から引き抜く。ぬるりと大河の愛液にまみれ、臨界を迎えてすでに
ギンギンだ。
「こっち向いて、ほら」
 少し足元のおぼつかない大河の肩を掴んで、上気した顔をこちらに向ける。
 そして、バスタブの縁にお尻を引っかけるようにして座らせる。
「これなら、もっとキスできる」
「うん、もっといっぱい、んっ……」
 大河の言葉を待たずに、竜児は唇を奪いにかかる。
 小さな口に覆いかぶさるように、力強く。少し離れて、先と先がくっつくだけのものを
何回も。
「ん、ちゅ、ふふ、くすぐったい。ねえ、竜児、もっと、もっといっぱいにして」
「怖いんじゃなかったのか?」
「何言ってんの。……あんたは、高須竜児だもん」
 なんだか文脈の繋がらない、けれど胸にコトンとくる一言。
 それを、おしゃまな猫のような笑顔で言うのだからたまったもんじゃない。
「入れるぞ」
「うん。んむ……、ん、……〜〜っ!」
 唇を塞ぎ、そのままペニスを挿入する。
 先ほどよりもスムーズだが、やはりどこか痛いのか、苦しそうに歪む大河の表情を
文字通り目と鼻の先で見てしまう。
「ふむぅ、んっ、むぅ……! ん!」
 誤魔化すように、覆い隠すように、さらにキスの激しさを強める竜児。
 唾液がこぼれようが気にしない。大河の頬についたそれまで舐めとるような勢いで
竜児は大河の口を攻め立てる。
33『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:21:30 ID:X7AELtby

 すべすべとした頬を舌が滑ると、大河の中に包まれたペニスが内側からも刺激される
ような気がした。
「ぷは、はぁ、はぁ、竜児、動いて、いいよ……」
 竜児の攻撃から解放された大河は、息を整えながら竜児に言う。
 わかった、と短く答えると、竜児は腰の動きを再開する。
 一番奥から、さっき大河が感じていた箇所。そこまでの往復をゆっくりと繰り返す。
「ふっ……あん! ふぁ……あ! りゅう、じぃ、いい、いいよぉ……!」
 きゅっと脇を締めて身悶えながら喘ぐ大河。
 なだめるようにキスをして、大河の体に手を這わせ、手探りで見つけた胸の先端を
くりくりと親指で愛撫する。
「ん、んむ……! ぷあ、いぅ、き、気持ちい、ん、んっ!」
 跳ねるように反応する大河の体。指先に伝わってくる早回しの鼓動。
「大河、っ、俺も、」
「ふぁ、あ、うん、ん……!」
「俺も、いいよ。お前で、いっぱいだ」
「うん、うん……っ」
 涙を一粒こぼし、頷く大河をぎゅっと抱きしめる。
「……っ、俺、もう、さ」
「はぁ、はぁ、ん、いいよ、竜児」
 大河は、竜児のごつごつした背中に回した手にきゅっと力を込め、
「けっこん、するんでしょ?」
 甘ったるい声で囁いた。
「……! 大河っ!」
「ふああっ、あっ! 竜児、竜児ぃ……っ! ん、くあ、あああっ!」
 思わず、腰の動きが加速する。
 ただでさえ限界だった性感が爆発するように高まっていき、頭の中でチリチリ火花が
飛ぶような感覚が走る。
「大河、大河……っ!」
「ふぁん! うあ、あっ、いい……っ、ん、んんっ! ぁ、ああ、ふあああ……っっ!」

 竜児は、大河の中に思い切り精を放った。びゅっ、びゅっ……と、2度目の射精なのに
さっきよりも勢いが強い。
 まるで精巣の奥から搾り取られるようで、付け根の辺りから切ない快感が走って膝が
折れてしまいそうだ。
「はぁ、はぁ、大河……」
「んっ……、はぁ、すご、出てるの、わかるよ、……っ」
 数秒かけて、やっと射精が止まった。余韻が残るペニスを大河の膣から引き抜く。
 先っぽから、少し残った精液と大河の愛液が混ざって垂れる。
34『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:22:31 ID:X7AELtby

(本当に、やっちゃったんだな、俺達……)
 その光景を見て、今さらながらな考えをぼんやりと浮かべる竜児。
 あまりに気持ちよすぎて思考が真っ白になり、十分に頭が回らなかった。
「あ、妊娠した」
「早ぇなオイ!?」
 たちの悪い冗談に目が覚める。乱れた呼吸を整えると、大河はいつもの憎まれ口調で
溜息混じりに言う。
「これできゃんきゃん吠える子犬がたくさん産まれてきちゃうのかしら……。まったく、
 責任取ってよね」
「当然責任は取るが、生まれてくる子供の吠え具合までは責任もてん。あと1回でそんな
 たくさん生まれない」
「冗談よ、ふふっ、……あっ」
 急に内股になる大河。下に目をやると、どろっとした白い液体が太腿を伝って湯船へと
零れ落ちた。
「あ、わ、悪い」
 何か拭くものはないかと辺りを見回すが、あいにくここはバスルームだった。
「いいよ、もう後はシャワーで済ましちゃお」
「あまり精神衛生的によろしくないが……」
「ねぇ、竜児。こいつらは外に溢れてきちゃったけど、他のは私の中へ、私の奥のほうへ、
 届くかもしれないんだよね」
「こいつらって……、まあ、そうだな」
「それって、それもちょっと怖いことだけど……、すごいこと、だよね」
「……ああ」
 神妙な面持ちの大河の頭を、そっと撫でる。
 確かに怖い。責任を取るという言葉に嘘はないが、その大きさはまだ未知数なのだ。
 でも、もしそうなったとしても。大河と一緒なら。
「ん……」
 決意を改めて、その証しに、竜児はそっと大河と唇を重ねた。
 

 風呂から上がって、竜児は乾燥機にかけておいたシャツに着替え、大河はのうのうと
髪を乾かしていた。
 その時。
「……すー!」
「たい……ー!」
 玄関の方から響く大きいノックの音に二人して身を震わせる。
「だ、誰!? もしかして、ママ……?」
「いや、待て……。……北村と櫛枝の声だ」
 そういえば携帯が壊れていたのだった。心配になって探しに来てくれたのかもしれない。
「ど、どどっど、どうしよう」
「落ち着け大河! 別に俺達が、その、しちゃったことがバレてるわけじゃない。
 とりあえずお前は何食わぬ顔で出迎えて来い!」
「ががっがががが合点!」
 しまった采配ミスだと思った次の矢先には大河は玄関に駆け出していた。
 大河が変なボロを出さないか心配しつつ、竜児は生乾きのズボンに脚を通す。
35『竜虎沐浴』 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:23:42 ID:X7AELtby

 しばらくして、玄関から「みのり〜ん」「たいぐぁ〜」という泣き声が聞こえてきた。
 どうやら、二人の間にわだかまりはなさそうだ。
 ほっと一安心しつつ脱衣所から出ると、北村が廊下に立っていた。
「高須。心配かけさせやがって」
「わ、悪い」
「お、なんだかポカポカしているな。風呂に入ってたのか?」
「お、おう。寒かったから、な」
 人に動揺するなと言いつつ、目が泳いでしまう自分が情けない。
 しかし、北村はそんな竜児をいぶかしむこともなく、ただ温かく笑いかけてくれた。
「やほ、高須くん。やぁだ、もしかしてタイガーと一緒に入ってたのぉ?」
 北村の後ろからひょっこり顔を出した亜美が、いつもの小悪魔笑顔でそんなことを
言ってくる。
「た、大河ー本当!? だめだよそんなの、大人の階段上りすぎだよシンデレラー!」
「み、みみみのりん誤解だよ! なななな何言ってんだばかちー!!」
 冗談じゃなーい、とケラケラ笑う亜美。
 どうやら大河が照れているだけで、本気で動揺していることには気づいていないようだ。
 竜児も乾いた笑いを浮かべるものの、内心は冷や汗物だった。
 
「高須、風呂上りにこんなところにいたら風邪を引くぞ」
「ん、ああ、そうだな」
 北村に促され、リビングに戻る竜児。
「あら、お風呂の電気付けっぱなしじゃない。消しとくね」
「おう、悪い」
 亜美に礼を言って、リビングに戻る。
 暖房の効いた暖かな部屋の真ん中では、大河と実乃梨がいつもの調子で抱き合っていた。
(なんだか安心するな、この光景)
 妙な安心感を感じながら、竜児はカーペットに腰を下ろ――
 
 ……お風呂の、電気?
 
 いや、まさか、と慌てて腰を上げようとした竜児の目の前に、亜美が立っていた。
 ……顔いっぱいに、ベッタリとうさんくさい笑顔を貼りつけて。
「あ……」
「……。……ふふ、どうしたの高須くん、慌てちゃってぇ。大丈夫よぉ、なんかちょっと
 妙な匂いがしたから亜美ちゃんまさかとは思ったんだけどぉ……。……お風呂のお湯はぁ、
 ちゃ、ん、と、流しておいたから」
「は……、はは、は……」
「中に漂ってたモノごと、ね」
「は……」
 凍てつく、竜児の乾いた笑顔。
 その目が捉えるのは、上っ面の笑顔に潜む雷鳴とどろく黒い雲。
 もはや涙すら出てこない。このままいっそ、石膏のようにひび割れて、崩れ落ちてしまい
たい。

「大河ー、次は私と一緒に裸の付き合いと行こうぜぃ!」
「は、はだかって、何言ってんのみのりん! 竜児とは、全然、そんなこと……」
「高須ー、ほら、おいしいお茶が入ったぞー。……高須ー?」

 片隅だけに、外の吹雪が吹き込んでいるような大河の部屋。
 いろんな人に不安と希望を与えたバレンタインの夜は、こうして深々と過ぎていった。
 
-END-
36 ◆Joc4l4klOk :2009/04/12(日) 00:25:11 ID:X7AELtby
以上です。
読んでいただければ幸い、楽しんでいただければなお幸いです。

こんだけ長いと投下しんどい……。そして投下中に『カ・ラ・ク・リ』なんて
聞くもんじゃないな……。頭の中が……。
37名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 00:28:46 ID:jDGiMZr9
>>36
力作GJです。
しかし亜美ちゃんブラック良い子だな、ほんとに。
38名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 01:08:08 ID:lYJ1vDAu
>>36
GJ!! 久しぶりのエロ有り乙!
亜美ちゃんが浴槽を見たときの表情を想像するだけでたまらんですたい。

おっと>>1
39名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 01:09:26 ID:sbmNUXI/
>>36
エロかったぜ!GJ!
実際こういう展開もありそうだなw
久々に竜虎長編楽しめたよww
40名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 01:30:09 ID:DxT1ySKW
>>36
マジGJ。いろいろ溢れ出た。
時間、タイミング、内容とレベルの高さから
200人以上は賢者タイム入ったと予想。
ほぼ勘なのにハズレてる気がしないのも久しぶりな感覚。
41名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 02:11:21 ID:Q6L7BsVZ
>>36
GJすぎるだろ・・
俺も200人の中の一人な
42名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 02:49:21 ID:O9OOKltT
>>36
GJ!!

えぇ、抜きましたが?なにか?
43名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 03:11:29 ID:fjFGtmPb
人はなぜ苦しむのだろう
44名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 03:52:15 ID:I0RSY/uB
他人がいるから
45名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 04:09:13 ID:Q6L7BsVZ
他人のなかの自分が嫌い
46名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 07:07:48 ID:NGGWH6tt
素晴らしい…
竜虎たまらん
超GJ
47名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 10:44:26 ID:JZWXAizV
GJダァーッ!!!!

久々のエロ有りにもうなんというか
48 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:14:07 ID:9mnt16PD
皆さんこんにちは。
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下させて頂きます。
良作が投下された後なんでガッカリするかもしれませんが…よろしかったら読んでやってください。
次レスから投下します。
49 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:14:51 ID:9mnt16PD
[伝えたい言葉(4)]

聖夜祭も多少問題があったが成功し、色々あった高校二年の二学期が終わった。
『あの日』を境に高須君の私を見る目が変わったと思う。
熱っぽい感じ。そして大河や実乃梨ちゃんに向けているのと同じ優しい瞳。
彼女達と同じラインには並び立てた様だ。
でも…多分、高須君とは並び立ててない。
ほんの少し手を伸ばせば届くのに…。
その手を伸ばす機会が無かったのだ。
年末年始は仕事で海外に居たから…あの日の一回で止まっている。
いや…ね。スコアを競う訳じゃないけど、回数は重ねた方が親密になれるし。
でも『ただの一回きり』の逢背とはいえ、私達の中に互いの『味』はしっかりと刻まれた。
だから帰国して大河に土産を渡した時、
高須君が実乃梨ちゃんにフラれたと聞いて私は内心『チャンス』だと思った。
『大怪我した訳だ』
と、高須君と大河に言い放って、今が蒔いた種を芽吹かせる機会だと行動に移す事にする。
ここで蒔いた種の意味を教えてあげるね。
それは
『何も考えずに甘えれる存在』
と思わせる事。
意識はしなくても潜在的に感じさせたのだ。
彼は我慢強い。
そして誰より優しくて脆い。

50 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:15:29 ID:9mnt16PD
聞いた限り、彼は告白すらさせて貰えずに轟沈。
更に大河も一緒に居る事は無くなったらしい。
母親は仕事に出掛けて、寂しい夜を一人で過ごしている筈。
あ…あのブッサイクなインコは居たっけ?
ともかく、人ってのは今まで側に居た人間が居なくなると寂しくなるものだ。
特に高須君は…ね。
一人で居る事に馴れているとはいえ、急に大河が来なくなったら喪失感みたいなのは有るよね。
じゃあ…私が大河のポジションに入って、優しく包み込んであげたら………
徐々にでも惚れていってくれるかな?
実乃梨ちゃんに対する想いを抑えられた辛さ、大河が居ない寂しさを私が癒してあげれたら…。
辛い時に優しくされると嬉しいよね。
それは誰だって同じ。あの日、高須君の中で生まれたかもしれない私への『情』をまた燃やしてあげれば……私だって。
そう自室で想いを巡らせて私は携帯を開く。夜の七時…まだ大丈夫。時間が遅いからって断られる事も無い筈…。
メモリーの中から彼の番号を捜してダイヤルを押す。
呼び出し音が三回、四回。五回目の途中で繋がる。
「もしもし。今、電話大丈夫?あのさ……………」


51 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:16:40 ID:9mnt16PD
.
さて、私は彼のアパートの目の前に立っていた。
仁王立ちである。
その手にはコンビニの袋。
アップにした髪の尻尾を軽く梳いて大きく深呼吸。
彼の家に上がり込む口実は
『買い過ぎたスイーツを一緒に食べて欲しい』
なのだ。
おうっ!と、二つ返事で言ってくれたので、私は準備もそこそこに来た訳である。
って…何で説明口調な訳?
あ〜…まあ建前はそんな感じで本音は
『あの日の続き』
といった所。
身体で誘惑する?
ん〜…私にとってベストなのは高須から求めてくれる事だから。
そう誘導はしてみる……けど、あくまで彼次第。
私個人は期待しまくっている。
ぶっちゃけ欲求不満気味…かな?
言うのは恥かしいけど…あの甘い味を思い出したら……疼いちゃって…泊まっていたホテルでちょっとだけ
『一人でしちゃった…』
ちょっとだけ…ね。
蛇足だね。ごめん。
弱みに付け込んで再び関係を持つのは卑怯かもしれない。
でも言葉で慰めるのにも限界がある。
だから……ねっ?察して?
階段を上って部屋の前で身だしなみを整え、二度ノックする。


52 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:17:54 ID:9mnt16PD
「おう。上がれよ」
扉を半分開いて、ノブに手を掛けたまま高須君が中に入る様に促してくれる。
「お邪魔しまぁ〜す」
そう言いながら、玄関先で靴を脱ぐ。
これで四度目だね。
一度目はストーカーから匿って貰った時。
二度目はそのストーカーを退治した時。
三度は祐作がヤンチャ(笑)になった時。
「そこら辺に適当に座っててくれ」
通された居間の卓袱台にコンビニの袋を置いて行儀良く正座する。
台所でお茶を入れる彼を待つ私は手持ちぶさた。
何気なく部屋の中を見渡してみる。
何も変わらないね。
…でも『大河』が残っている。
例えば、置いていったまま忘れたのであろう私物。
ティーン向けのファッション誌や可愛らしい小物。
この部屋には似合わない物の筈なのに、自然に溶け込んでいる様。
それを羨ましいと思ってしまった。
「待たせたな。まあ飲んでくれ」
私と卓袱台を挟んで対面に座った彼が差し出してくれたティーカップを受け取って、様子を伺う。
ちょっと元気が無いね。
病み上がりとは聞いたけど、それより心に負った怪我が原因だろう。
その怪我は初めの内はチクチクしてるだけ。でも段々とズキズキしてくる。
彼もそうなのだろう。

53 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:19:03 ID:9mnt16PD
今はズキズキになっている頃かな?
「ありがとう。急に押しかけてごめんね?
流石に買い過ぎちゃって、食べても食べても減らなくてさ」
そう言いながら、私は行きしなに買って来たスイーツを台上に広げる。
チョコ菓子からケーキまで、まあ適当に選んだんだけど。
レジ袋にして二つ分。
彼が見たら卒倒する位の勢いで籠の中に放り込んで…この有様だよ。
「お、おうっ!すげぇ量…生菓子から優先して食わねぇとな。
って…木原や香椎を誘えば良かったんじゃねぇか?
甘い物好きそうだし」
MOTTAINAI×2的なオーラを漂わせながらプリンの蓋を開けている高須君を見やる。
「あ〜…。ほら麻耶も奈々子もダイエット中だから協力出来ないって言われたんだ」
ごめん。嘘。
心の中で謝って、人差し指で頬を軽く掻く。
今、考えついた事をさも真実かの如く言って、ケーキの容器を開ける。
卓袱台の上に山積み…では無く、丘積み?位はあるスイーツとの戦いが始まった…。
.
戦闘開始から二時間が経ち、気が付くと私達は卓袱台に突っ伏していた。
苺の乗ったショートケーキ。
こだわり卵の蕩けるプリン。
…だめだ。
もう甘い物は当分見たくない。


54 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:19:55 ID:9mnt16PD
三分の二は片付いたが、残りは無理。
「うっぷ……。川嶋…もう食べれねぇ。ギブ…」
「う…、私も限界。は…苦しい」
最初の内は良かった。
雑談しながら食べる余裕もあって、
『こうやって向かい合わせて食べていると彼氏彼女みたい〜』
とかアホな事を考えていたりした。
だが時間が経つにつれ会話が減り、自分との戦いになっていったのだ。
内容は省くけど、その結果が今に繋がる。
「…高須君。ちょっと聞きたい事があるんだ」
そして次に進む為に私は本題を切り出すことにする。
「実乃梨ちゃんにフラれたって本当なの?」
そう問うと彼の顔に僅かだが陰りが差す。
「ああ」
遠い目をした高須君が呟く様に返し、続けて口を開く。
「フラれた…より、告白させてくれなかった……だな」
そう。ここまでは私も知っている。
「うん。やっぱり悲しい?」
傷を抉る様な気分。
もしかしたら高須君にとっては考えたくない事かもしれない。
でも聞きたい……彼がどう思っているか。
もし黙秘されたら、そこで終いにしよう。
誰だって言いたくない事はある。
そう彼が言っていたのを覚えているから…。

55 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:21:02 ID:9mnt16PD
「分からねぇ。自分でも辛いのかなんて分からねぇよ、
…でも複雑な気持ち…だ」
彼は『悲しい』とか『辛い』とか言わない。
何故なら言ってしまえば実乃梨ちゃんが悪者になってしまうから。
「何故かは知らないけど、近頃は話しても煙に巻かれてた。
櫛枝は俺の事……好きじゃなかったのかもな
俺が勘違いして舞い上がっていただけなんだ」
と、彼がネガティブな事をポツリポツリと呟く。
「んな訳ねぇし。
アンタの事を嫌える奴なんかいないもん。
誰より優しくて繊細。
知れば知る程に惹かれるんだから。
実際、惹かれた奴がここに居るじゃない…この私が……」
最後の一言だけは小さく呟く。
他と同じトーンで言うとうっとうしいからだ。
彼は私の想いを知っている。
だから、わざわざ声を大にして言う必要はない。
「…そうなのか、な。その後は寝込んでしまって何で櫛枝にフラれたのか考える余裕なんて無くて、
今更モヤモヤした気持ちになるんだ。
で、明日からは学校だろ。
櫛枝とどう接したら良いのか分からねぇ」
長い溜息を吐いて彼が額に手を添える。
まあ、うん…そりゃあそうだ。
フラれた相手と今まで通り接するなんて不可能だわ。


56 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:21:56 ID:9mnt16PD
もし実乃梨ちゃんが高須君に今までと同じ態度で接するとしたら…本当に卑怯。
ううん。良い面の皮してる奴だと思う。
上手く誘導した挙句に手を離す。
そして射程外からニッコリってか?
あの娘がそんな奴だとは思ってないけど、まさか…ね。
それは高須君からしたら針の筵に座らされているのと同じ。
彼女にとっては『最善』でも彼にとっては『最悪』
「……実乃梨ちゃんに邪険に扱われたら…って考えちゃって怖いんだ?」
頬杖を突いて指で前髪を巻きながら聞いてみる。
自分でも突っ込んだ質問だとは思うけど、
溜まっている『モノ』は吐き出してスッキリさせてあげたい。
「ああ。普通に考えたら、今まで通りなんて出来っこねぇ。
出来たとしてもギクシャクする。
なぁ川嶋、お前が櫛枝の立場なら俺がそんな事したらどう思う?
やっぱり…ウザいか?」
「ウザ…くは無いけど、そんな事されたら心が痛むよね。
いっその事、無視された方が…って思う。
でも実乃梨ちゃんはどうかな?
多分、高須君の告白を無かった事にして"今まで通り゛でいたいんだよ」
最後に
『そうなら酷いよね』
と、付け加えて締めくくる。

57 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:23:02 ID:9mnt16PD
余計な一言?
そうだね。
けど事実だから、あえて濁さずに言ったの。
過程はどうあれ高須君は傷付いてしまったのだ。
想いを告げる前に断られたのだ。
彼女は恐らく『大河の為に〜』とか何とか考えたんだろうね。
そして大河は『みのりんのため〜』って。
譲り合いの精神ってやつ?
おままごとでもしてるつもり?
二人でグルグル空回りしてるだけだし。
そこに『高須竜児』の意思は無い。
彼を振り回しているだけじゃん…。
「櫛枝は…多分そう思ってる。
いや決め付ける訳じゃねぇけど、川嶋の言ってる事は…」
そう言った後、彼は絞り出す様に一言呟く。
「ふう。いいや………今は何も考えたくねぇ」
「高須君」
私は高須君の横に移動する。
膝立ちになり彼の頭を胸の中へ引き寄せて優しく抱き締める。
「忘れちゃいなよ。辛い事は…さ」
優しく頭を撫でながら私はそう呟く。
「誰にも言わないから、甘えても良いんだよ。
辛い事は全部、亜美ちゃんが持って行ってあげる。
明日からは笑っていようよ」
幼児をあやす母親の様に優しく優しく…。
そこまで言うと、高須君が私の背中に手を回す。

58 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:24:02 ID:9mnt16PD
膝立ちから正座に体勢を変えて背中を擦り、ポンポンと軽く叩いてあげる。
流石に泣いたりはしていないけど…高須君は心地良さそうにしている。
顔が見えなくても分かるよ。
何も考えずに甘えれるんだから…。
十分…二十分。
ずっと彼を抱いていた。
「ねぇ、高須君」
私は前述の誘導に入る事にする。
「おまじない…してあげよっか?」
顔を上げて私を見詰める彼の頬を両手で撫でながら微笑み、言葉を紡ぐ。
「嫌な事を忘れられる"おまじない"…」
「おまじない…?何だよ、それ」
そう言う彼の頬を撫でながら右手の親指で唇をなぞる。
誘惑してるんじゃない。
言葉で慰めれない所を慰めれる方法は一つしかないから。
他の方法を私は…しない。
何か嘘っぽいもん。
例えばカラオケにでも行くとか、遊びに行くとか…そういうのって気分転換であって、結局は忘れる事なんて出来ない。
辛い事を忘れるには人肌…だよね。私はそう思うんだ。
「ふふっ、何だろうね?」
彼を優しく押し倒し、その上に多い被さって額同士を重ねる。
「か、川嶋?」
「分かってる癖に…」
問いに答を返さないまま私は紡ぐ。


59 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:24:49 ID:9mnt16PD
「今だけは…全部忘れちゃおうよ。実乃梨ちゃんや大河の事は…。
亜美ちゃんが癒してあげる…。ねっ?」
高須君はようやく私の言ってる意味を理解したのか目を泳がせている。
嫌なら私を振りほどくよね?
でもそれをしないのは、心の奥底では『おまじない』を望んでいるから。
でも理性が邪魔しちゃう。
だから…外してあげるね。
そこまでしても拒むなら…いいよ。
それが彼の答えなのだから…。
「う、で、でも……」
身体を密着させ、彼の腕を手で押さえて甘く囁く。
「モヤモヤ…消しておかないと明日からギクシャクしちゃうよ?
そんなの嫌だよね。
だから高須君…しよっ?」


続く
60 ◆KARsW3gC4M :2009/04/12(日) 11:26:38 ID:9mnt16PD
今回は以上です。
連投規制対策で毎回中途半端ですいませんorz
あと長編になってしまいそう。
ごめんなarl
では
ノシ
61名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 11:52:38 ID:gOaom5Ng
あーもー亜美ちゃんかわいなあ
GJ!
62名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 12:08:40 ID:eallO2B2
>>6-36
GJ! 亜美ちゃん”かわいそう萌え”

>>48-60
GJ!
「辛い事は全部、亜美ちゃんが持って行ってあげる」の官能的セリフでノックアウトされました。
63名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 13:18:04 ID:SrJqmUfT
>>60
亜美ちゃん、健気だなぁ。
それに原作に上手く沿っているのが良い!GJ
64名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 15:00:17 ID:JZWXAizV
GJだぜ。。。

おいちゃん鼻血が止まらないぜwww
65名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 18:41:17 ID:pccB0loX
続きが楽しみですGJ!!
66ユートピア:2009/04/12(日) 18:41:35 ID:tT29F9B+
>>36
>>60
共にGJです。デレる大河は子猫みたいに可愛いですね。
健気な亜美ちゃん可愛いよう。マジでこんな娘いないかな……
さり気なく亜美ちゃんにピッタリな曲の「ワールドイズマイン」の歌詞が載ってるww
67名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 21:32:46 ID:FkJHQvvJ
>>36
お互いを思いやりながらのセクロスシーン、ツンとデレのブレンド加減は普通にありそうで良い
アニメ、原作は地上波、ラノベという制約があるが
それさえなければこういう展開になるのがむしろ自然だぜ
68名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 21:53:18 ID:YyfTFaa/
>>36
やべぇ
大河可愛すぎるな
GJ
69名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 11:43:41 ID:debnRRyD
>>48-60
そして亜美ちゃんは、その後一週間ものあいだ、服を着せてもらえなかったという…。
70名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 23:25:24 ID:C+jOVh3a
>>60
GJ!!続き期待してまっせ!

>>69
裸でやっちゃんから隠れる亜美ちゃんカワユス
71名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 01:20:37 ID:XGeXqQFd
修学旅行の続きまだ?
72名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:07:15 ID:xGj4PXGG
こんな時間ですが、5分後くらいにななこいの3話を投下します
地味に長いです
73名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:13:01 ID:xGj4PXGG

 朝の教室を見渡してみれば、ほんの数人しか登校してきていないようだった。
「早く来すぎたわね……」
 机に肘をついて、奈々子はふぅと息を漏らした。
 昨日の晴天とは違って、どんよりとした雲が、窓の外で分厚く滞留している。
 このままだと雪が降るかもしれない。奈々子は寒さに身震いして、頬杖をついた。
 足の痛みを押して登校したのはいいけれど、思ったよりも早く着いてしまった。
 歩く速度が遅くなるだろうと予測して、早めに家を出たのが裏目に出た。

 足元に目を落とす。
 起きたら足の甲がわずかに腫れていた。昨日、お風呂に入ったのがまずかったのかもしれない。
 湿布を貼った上に、8の字に包帯を巻いてある。その上から靴下を履いたものだから、少し上履きが窮屈で、踵を踏み潰していた。
 竜児が奈々子に巻いてくれた包帯は、膝に巻いてある。竜児が包帯を巻いてくれた時のことを思い出して、奈々子は目を細めた。
 包帯を巻いてくれた後に、そっと頭を撫でてくれた。あの自然な行為に、奈々子はやられてしまったのだ。

 昨日、勢い余って竜児に告白してしまった。返事は貰っていない。今すぐに、と決断を迫ったら断られるのがわかりきっていたからだ。
 だから、これから仲を深めていくしかない。麻耶の話だと、竜児は少なくとも告白されたことに悪い印象を持っていないようだった。
 それならまだチャンスはあるかもしれないと思っていた矢先に、麻耶は亜美に、奈々子の恋心を伝えてしまった。
 麻耶のいらぬおせっかいで、奈々子の恋には障害がひとつ立ちふさがってしまった。
「ふぅ、ほんと、おせっかいね……」
 頬杖をついたまま、奈々子は緩く巻いた髪に触れる。

「お、おはよう奈々子」
 声をかけられて、視線だけ向ける。コートを羽織ったままの亜美が、奈々子を見下ろしていた。
 視線が合うと、亜美はふいと目を背ける。右手で左肘に触れながら、亜美はぎゅっと自分の体を抱いた。
「亜美ちゃん、おはよう。早いわね」
「あ、うん……」
 何かを言おうとしている亜美を上目に見て、奈々子は口元に笑みを浮かべた。
「どうしたの亜美ちゃん? 元気無いじゃない」
「別に、そういうわけじゃないんだけど……」
 亜美が教室を見渡す。他の誰かに聞かれたくない話があるのかもしれない。
「奈々子、ちょっと、いい?」

74名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:13:40 ID:xGj4PXGG

 自動販売機の前に来てから、奈々子は対面の手すりにもたれた。痛みは随分引いてきたものの、長く歩いたり立つのは辛い。
 亜美は自動販売機にもたれながら、奈々子の足を見下ろした。少し距離を取って、向かい合う。
「奈々子大丈夫なの? ごめんね、仕事でお見舞い行けなくて」
「ううん、平気。一応歩けるようにはなったし、無理に足首曲げなかったら大丈夫よ」
「そう……」
 亜美は表情を曇らせて、視線を壁に向けた。こんなことを言うために連れてきたのではないのだろう。
 奈々子にはそれがわかっていた。竜児のことが好きだということが、亜美にも知られた。それについて話があるのだろう。
 大切な友達ではあるけれど、目下のところ恋のライバルであることには変わりない。

「あのね亜美ちゃん。ひとつ訊いていい?」
 奈々子は先手を打つことにした。
「亜美ちゃんはさ、高須くんのこと好きなの?」
「だっ、誰があんな奴のことッ」
 慌てて亜美が声を荒げる。すかさず奈々子は両手を叩いた。
「よかった、実はあたし高須くんのこと、好きになっちゃって、それで亜美ちゃんも高須くんのこと好きだったらどうしようって思ってたの」
 笑みを浮かべながら、奈々子は早口にそう言い切った。
 話している途中で割り込まれた格好の亜美は、目を丸くして奈々子を見ていた。
「うふふ、よかったぁ、亜美ちゃんがライバルじゃなくって」
「奈々子……あんた」
 亜美は目を細めて、微笑む奈々子をわずかに見下ろした。コートの肘のあたりを掴みながら、亜美は唇を開く。

「あのさ奈々子……、高須くんのこと、好きになんかならないほうがいいよ。あんなの好きになっても、傷つくだけだから」
「それは亜美ちゃんの実体験?」
 奈々子の切り返しに、亜美は言葉を失った。
「あたしが高須くんを好きになったら、亜美ちゃんは困るの?」
「それは……、だって友達に傷ついてほしくないから」
 笑顔を浮かべたままの奈々子と違い、亜美は表情を曇らせて床に視線を落とした。
「傷つく? あたし、高須くんのこと好きになって本当によかったと思ってるわよ。でも、全然相手にされてないけどね」
 竜児に告白はしたものの、返事は聞いていない。
 自動販売機にもたれかかって、亜美が俯く。
「……ねぇ奈々子、本当に、やめときなよ。あんなの好きになっても、しょうがないって」
「そう、亜美ちゃんはそう思ってるんだ。それってさ、亜美ちゃんが高須くんのことが好きで、あたしがライバルになったら嫌だから?」
「違うっ、そんなんじゃないって。全然違う」
 亜美が床に向かって言葉を吐き出した。

75名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:14:23 ID:xGj4PXGG

「じゃあ、亜美ちゃんもあたしの恋路に協力してよ。ねぇ?」
 奈々子は首を小さく傾げて、亜美の顔を覗き込んだ。亜美は唇を噛んだまま、俯いて黙っている。
 自分の体を抱くように、亜美は腕を組んだ。それから、前髪の間から、奈々子の顔を伺う。
「……なんで、高須くんのこと、好きになったの?」
「自転車で転んで怪我した時に助けてくれたの。治療してくれて、とても優しかったわ」
「そう……、そんなことで」
「あたしにとってはそんなことじゃなかったの」
 奈々子は頬に手を添えて熱い息を吐いた。
 そんな奈々子を見て、亜美は腕に爪を立てる。
「高須くんに、告白したの。でも、返事はまだ。っていうか、結構望み薄なのよ」
「告白……」
 亜美が呟いて、自販機に後頭部を当てた。
「うん。なんとか、高須くんのこと、振り向かせたいと思ってるの。亜美ちゃんがライバルじゃなくてよかったわ。亜美ちゃんみたいに可愛い子相手じゃ勝てないもの」
「……奈々子、だから、あたしは高須くんのことなんかどうでもいいの。そんなことよりも、奈々子のことが心配で」
「だったら、上手く行くように協力してほしいんだけど。高須くんって、何が好きなのかとか、よくわからないから」

 もう始業が近くなり、登校してくる生徒も多くなったようだった。
 廊下から、生徒たちの賑々しい談笑が聞こえてきた。
 奈々子が、亜美に向かって微笑みかける。 
「ねぇ亜美ちゃん、そろそろ教室戻ろっか」
 その言葉に、亜美は天井を仰ぎながら黙り込む。
「先行ってて」
「そう、じゃあ行くね」 
 右足に体重を乗せて、奈々子は教室に向かって歩き出す。

76名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:15:24 ID:xGj4PXGG


 始業前の教室に戻ると、竜児が席について鞄の中身を机に移しているところだった。
 教室の奥まで行くのは少し億劫だったが、一応会話くらいはしておきたい。
 近くまで歩いていくと、顔をあげた竜児と視線が合う。
「お、おう香椎、大丈夫か?」
 あからさまに慌てた様子で、竜児が手を挙げる。その慌てぶりに、つい苦笑してしまった。
 まだ痛む足を引き摺って、竜児の席の前まで来て、机に手をつく。
「おはよう高須くん。足はまぁ、無理しなきゃ大丈夫じゃないかしら」
「そんな他人事みたいに……。っていうか、膝のそれ、どうしたんだ?」
 竜児は体を傾けて、奈々子の膝に巻かれた包帯を見た。
「ああこれ? ほら、足痛いから歩き方変じゃない。でも、足首だから外から見えないし、見えるところに包帯巻いといたらそこが悪いのかな、って周りが思うかと思って」
「なんか、面倒なことするんだな……」
 痛みは引いてきたとはいえ、まだ健常に歩くことは出来なかった。足首の怪我では、外から怪我をしているのかどうかが伺えない。
 だから擦り剥いて怪我をした膝に包帯を巻いて、そこが悪いように見せかけていた。

「それよりも高須くん」
 奈々子は竜児の顔を覗き込んで、そして唇を舌で湿らせる。昨日のうちから、話しておくことはある程度決めていたのに、竜児を目の前にすると緊張してしまう。
「あたし、本気だから……」
「えっ?! お、おう、ああ、あれな」
 頬を赤くした竜児が、前髪に手をやって俯く。これが竜児の恥ずかしがる仕草だということは、奈々子にも判っていた。
「でもね、お互いにあんまり知らないわけだし、急にあんなこと言われても困るわよね」
「い、いや別に俺は……」
「あのね、もし脈が無いんだったらもうすっぱり断ってくれていいの。でもね、もし迷ってるんだったら、望みが少しでもあるんだったら……」
 奈々子はそこまで一気に言ってから、一度唾を飲みこんだ。一気に言わなければと思っていたのだが、上手くいかない。
 少しずつ教室に人が増えてきた。奈々子は竜児に顔を近づけて、小さな声で言った。
「もし望みが少しでもあるんだったらね、あたし、高須くんに好かれるための努力、していい?」
「えぇっ?! ええと、それは……」
 竜児はあからさまにうろたえて、持ち前の強烈な目をギラギラと輝かせている。
「お願い、高須くん……。あたしはね、高須くんに好きになってもらいたいの。そのための努力くらい、させて?」
「お、おう……」
「本当? よかった」
 ほっと息を吐いて、奈々子は胸を撫で下ろした。
「高須くんのこと、好きだから。がんばるわ」
 そう言ったところで、予鈴が鳴った。意味もなく、奈々子は振り向いて黒板の上にあるスピーカーを見上げた。
「それじゃ」
「え、あ、ああ……」
 竜児の曖昧な返事を背に、奈々子は自分の席に戻った。竜児は顔を赤く染めたまま、頬をぽりぽりと掻いている。
 自分の席に座り込むと、どっと疲れが出てきた。大きく息を吐いて、椅子にもたれる。
77名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:16:22 ID:xGj4PXGG

 本鈴からしばらくしてやってきた担任が、HRを開始する。ゆりの話をぼんやりと聞き流しながら、奈々子は肩に乗った髪に指を通した。
 竜児のことを好きになってからというものの、自分の体のどこかに触れることが多くなったような気がする。
 髪を撫でるのもそうだったし、自慰に耽るのもそのひとつだった。全部、竜児にしてほしいことだと気づいて、奈々子は唇を噛んだ。
 
 昨日の夜、自分が竜児に対して持つ好意を亜美に知られてしまった。麻耶が勝手に教えてしまったのだ。
 もし、亜美が竜児に好意を持っているのなら、亜美は何よりも恐ろしい恋敵だと言わざるを得ない。
 そこで、亜美の本心を訊いてみることにした。
「……ほんと、酷いことをしたわね」
 亜美が竜児に好意を持っているのではないかということは、薄々考えてはいた。
 直接、亜美に竜児のことが好きなのかを訊いて、違うと言った瞬間に自分の話を被せる。
 自分が竜児のことが好きだということを、亜美に告げた。
 竜児のことを好きにならないでと言う亜美の話し振りから考えて、亜美が竜児に対して好意を持っているのはほぼ間違いないと思えた。
 それでも、亜美は奈々子に竜児のことを好きではないと言ったも同然で、それを無視して亜美が竜児にアプローチをかけることは無いと思った。 

 友達に対して、酷いことをした。亜美の良心が、亜美自身が口にした言葉を反故にすることはないだろう。
 けれど、亜美がもし竜児のことを好きだと言い切ったなら、それはそれで構わないと思っていた。
 亜美が相手では、どうしたって勝ち目は薄いが、好きだというのなら仕方が無い。

 竜児に対しても、誘導するようにして、欲しい言葉を引き出すことに成功していた。
 竜児の気持ちはまだ自分に傾いてはいない。すぐに断られるようなことだけは避けたかった。
 だから、もっと時間が欲しかった。告白してしまったことは、今更取り消せない。
 これから好きになってもらうしかない。そのために、様々な策を講じないといけなかった。

 委員長北村の号令で、奈々子は考え事の世界からぼんやりと現実に引き戻された。
 曇りの日だからか、教室の中は薄暗くて、蛍光灯の明かりが頼りなく思えた。
「やらなくちゃ……」
 
78名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:17:05 ID:xGj4PXGG

 4時間目の終わりを告げる鐘が鳴ると、教室の中がわっと騒がしくなる。昼休みに入ると同時に、購買組は教室を出て行かないといけないからだ。
 奈々子は鞄の底から、お弁当を取り出した。そこに、麻耶が話しかけてくる。
「ねー奈々子、お弁当食べよう」
 手に提げたお弁当の包みを掲げて、麻耶は奈々子の席に寄ってくる。麻耶の明るい声に、奈々子は曖昧に微笑んだ。
「今日は、まるおくんと、高須くんと一緒に食べない?」
「マジでっ?! そんなこと考えてたの奈々子。つーか、めっちゃ積極的じゃん」
「まぁ、そうね」
 奈々子はお弁当の包みを持ち上げながら、竜児の席に視線を移した。どうやら、北村祐作と一緒に食べるらしい。
 机をガタガタと移動させて、向かい合わせている。

 立ち上がった奈々子が、ゆっくりと竜児の席の傍まで歩いていった。
「ねぇ、一緒にお昼食べない?」
「うおわっ?!」
「なによその驚き方、失礼ね」
 声をかけられた竜児は、肩をびくっと震わせて奈々子のむくれ顔を見上げた。
 北村が首を傾げて、奈々子の顔を伺う。
「おや、なんだ香椎。一緒に食うのか? 木原も一緒か」
「うん、まるお、一緒に食べようよ。ね、いいっしょ」
「ああ、構わないぞ。はっはっは、こういうのもたまにはいいな、どれ」
 立ち上がった北村が、近くの席から椅子をごそごそと持ってきて、麻耶と奈々子に勧める。
「ほら、座ったらどうだ」
「おい北村、お前そんな簡単に」
「ん? どうした高須」
 北村は弁当の蓋を上げながら、竜児の言葉に首を傾げた。奈々子は椅子を移動させて、竜児の隣に持ってくると、そこへ座った。
「それじゃ、食べましょ。うふふ、こういうのもたまにはいいじゃない、ね?」
 至近距離で顔を覗き込まれて、竜児の体が奈々子から離れるように傾く。
「お、おう……。ぜんぜん構わねぇけど」
「そうだよ高須くん、いいじゃんたまにはさー」
 麻耶もちゃっかりと北村の隣に座っていた。
 北村はうんうん、と頷いてから立ち上がると、教室中に響き渡るような声を上げた。
79名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:17:58 ID:xGj4PXGG

「おーい、逢坂、櫛枝、お前らも一緒に昼飯食わないか? っていうか亜美、お前もだ、どこ行くんだ。お前も弁当だろ」
 は?
 奈々子と麻耶が同時に動きを止めて、お互いの顔を見つめあう。
「なんだよ北村くん、私は大河と、らぶらぶいちゃいちゃタイム中なんだからさー、邪魔しないでよ」
「そうだよ、今はみのりんとイチャイチャしてるとこ」
 遭難という大変な目に遭った後なのに、大河は額の傷くらいしか目立った外傷もなく、いたって元気だった。
 実乃梨の背中におぶさって、肩にぐりぐりと顎を擦り付けている。
「ハハハ、気にするな。まぁみんなで食べたほうが美味しいじゃないか。今日は香椎と木原もいるしな。って亜美、おい待てって」
 北村は弁当の包みを持って教室を出ようとしていた亜美のところまで駆け寄って、その腕を掴んだ。
「あーもう、何? 触んないでよ」
「お前も一緒に来い。ほら、香椎も木原もいるだろ」
 鬱陶しそうに表情を歪める亜美に、北村は爽やかな笑顔で話しかける。
「うっさいなぁ、亜美ちゃん一人で食べるから」
「せっかく人がいるんだから、お前も来いって。みんなで食べたほうが美味いだろ」
 押し問答をしているところに、実乃梨がやってきて亜美に微笑みかける。
「そうだよあーみん、一緒に食べようよ」
 実乃梨が亜美の服の袖を掴み、くいくいと引っ張った。
「チッ、話しかけんなよ。今機嫌悪いからパス」
 亜美は目を細めて、教室から出ようと歩き出すが、体育会系の二人に引き摺られてはかなわない。
「わかったから離せっつの」
 掴まれた袖を思い切り振り切って、亜美はつかつかと歩き、麻耶の隣に座った。
 北村と自分との間に入られて、麻耶が何か言いたそうに口を開くが、機嫌の悪そうな亜美に話しかけることはできなかった。
 奈々子も、まさか大河と実乃梨、そして亜美が同席するとは予想もしていなかった。

 そこに、購買から戻ってきた春田が、机をひっつけて座っている面々を見て声をあげた。
「うおっ、っていうかなにこれ、なんか盛り上がってるねー」
 能登もこのメンバーを見て、目を瞬かせている。
「なんでまたこんなに大勢。何があったんだ高須?」
「……いや、俺に訊かれても」
 竜児にも何故こんなことになっているのかはわからなかった。
 右隣に奈々子、左隣に大河が座っている。大河はコンビに弁当をふたつ広げて、早くも昼食を食べ始めていた。
 実乃梨も自作の低カロリー、高タンパク弁当を広げながら、大河の弁当を覗き込む。
「って大河なんだよこのチョイスは、たらこパスタとご飯一緒に食べるつもり?」
「いーの、たらこスパがマイブームなんだから。たらこたらこ。へっへっへ」
 大河と実乃梨は暢気にお弁当を突付いている。亜美は早く食べてしまおうというのか、いつもよりも早いペースで次々とお弁当をかきこんでいた。
 奈々子が、こんなはずではなかったのにと、渇いた笑い声を漏らす。

80名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:18:34 ID:xGj4PXGG


 机を引っ張ってきた能登と春田が、机の上に腰掛けた。
 購買で買ってきたばかりのパンを食べ始める。
 ここに集まったメンバーを見て、それぞれ頭の中に忘れがたい日のことが思い出されていた。
「っていうかさー」
 春田がヤキソバパンを放り込みながら、朗らかに言った。
「このメンバーってさ、あれだよな、修学旅行の班だよなー。懐かしいなー修学旅行。ってこないだだっけ」
 春田の言葉に、全員の箸がぴたりと止まる。
 集まったメンバーが、修学旅行の班だということには誰もが気づいていた。
 しかし、その話題を出したいとは思わなかった。

 修学旅行では、何かと色々あった。口にしたくないことがあった。
 だから、気づいていながらも黙っていたのに、春田は何も考えずに話してしまう。
「あれ? どったのみんな?」
 怪訝そうに体を乗り出して、箸を止めたみんなを順番に見渡していく。
「ねぇねぇ、どったの?」
 ちょっとお前黙れ、と誰もが頭の中で思っていた。
 押し黙った中で、大きな声をあげたのは北村だった。

「おおっ! そういえば、もうすぐ期末試験だな。どうだ高須、自信は?」
「えっ? 俺、俺か、俺はまぁ、なんとかなるんじゃないかと。大河はどうだ?」
「はぁ? 私は全然大丈夫だし。ねー、みのりん」
「おう、私もまぁ適当にやるつもりだし。あーみんはどう?」
「……」
 会話のバトンを向けられた亜美は、無視して食事を続けていた。
 不意に訪れた沈黙に、場の空気が固まる。亜美が拒否したバトンを拾ったのは麻耶だった。
「あっ、あたしも結構がんばんないとなーって思っててさ。ほら、兄貴ノート、また見たいかなって。ねぇ奈々子も一緒にどう?」
 奈々子は話を振られて、慌てて返事をする。
「そうね、なんか凄いらしいし、あたしもあのノートの恩恵にあずかりたいなーって。それより、春田くんは大丈夫なの試験」
 北村が放った話が自分のところに来て、春田が苦いものでも食べたように顔を歪ませる。
「えー、なんだよ。なんでいきなりテストの話なのさ。つーか来月じゃね? なんで大先生も昼時にこんな話するのさ」
「ん、いやまぁ、生徒会長としては、みんなの学業の調子が気になるものだからな。いやいや、がんばらないと」
 あさっての方向を向いたまま、北村が言葉を濁す。
 春田がうげーっと天井を仰ぎ、大袈裟に体をくねらせた。そのアホな仕草に、場の空気も和む。
 ただ、能登だけは首を捻っていた。
「……なんで誰も俺には話振らないの? ねぇ、なんで?」
81名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:19:09 ID:xGj4PXGG

 放課後のHRの最中に、奈々子は眉間に指を当てながら目を閉じていた。
 昼食を一緒に食べて、距離を縮めようという案は上手くいかなかった。
 まさか北村があんなに人を呼ぶとは、想像もしていなかったのだ。
 お互いにお弁当は自作だったし、料理のことだったら何かしら話が弾むだろうと思ったのに、それどころではなかった。
「はぁ……」
 家事に関しての話題なら、お互い盛り上がれるのではないかと奈々子は考えていた。
 竜児の家事テクは相当高いレベルにあるようだし、話しているだけで参考になることはあるはずだ。

 それにしても……。
 奈々子は後ろのほうへ視線を向けた。実乃梨が目を閉じたまま、ゆらゆらと眠そうに揺れている。
 竜児が実乃梨に告白をして、振られたというが、二人の間にはあまりわだかまりのようなものが見えない。
 実乃梨は、竜児のことを意識してないのだろうか。修学旅行でも、亜美が言わなければずっと気づかなかったかもしれない。

 大河のこともよくわからなかった。
 あれだけ竜児の傍にいたのなら、竜児のことを好きになっていてもおかしくない気がする。
 大河は実乃梨とも仲がいい。だから、竜児と実乃梨の関係についてもよく知っていておかしくない。
 なのに、健全な友達のように付き合っていて、それが奈々子には余計不自然に感じられた。

「香椎さーん、起きてる?」
「えっ?」
 ぼんやりとしていて気づかなかったが、目の前にゆり先生がどっしりと立っていた。
 手に持っているのはプリントの束。奈々子はそれを受け取って、一番上だけを取り後ろへ回す。
「香椎さんは、時々ぼんやりさんね。ふふ」
 そんなことを言われて、奈々子は机に視線を落とした。
「怪我は大丈夫なの?」
「ええ、まぁ」
 曖昧に言葉を濁す。無理さえしなければ大丈夫だった。
「そう、お大事に」
 担任の微笑みに、奈々子も微笑み返す。
82名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:19:46 ID:xGj4PXGG

「ねぇ高須くん、一緒に帰らない?」
「うおぅっ?!」
「だから、なんでそんなにびっくりするの?」
 さっさと鞄に教科書やノートをしまいこんだ奈々子は、席を立とうとしていた竜児に声をかけた。
 竜児は話しかけられたのが意外だったのか、大袈裟に驚いて手を胸に当てている。
「そんなにあたしに話しかけられるのが嫌?」
「いや、全然そんなことねぇって」
 首をぶんぶん横に振って、竜児が否定する。
「本当? じゃあ一緒に帰りましょ。っていうか、高須くんの家に置いてきた自転車取りに行きたいの」
「ああ、あれか。あんなもん、そのうち持ってってやるよ。その足で乗るの大変だろ」
「そう、それじゃ今日は一緒に帰るだけにしましょ」
「お、おう」
 曖昧に頷く竜児に、奈々子は微笑みかけた。
 よかった、と心の中で奈々子が安堵する。ちょっと強引だったかもしれない。
 二人きりでの下校に胸が躍った瞬間に、鞄を背中に背負った能登が、竜児に話しかけていた。
「おーい、高須。一緒に……、ってどうしたんだ?」
 竜児と一緒にいる奈々子に気づいて、能登が眼鏡の奥の瞳をきょろきょろと二人の間に向ける。
「高っちゃんどしたの。帰ろうぜー」
 突然現れたお邪魔虫に、奈々子は微笑む。
「ごめんね、ちょっと高須くんに用事があって、あたしと一緒に帰るの」
「へ?」
「ほぁ?」
 アホのように目を丸くして、能登と春田が顔を見合わせる。そして、疑問の視線を竜児に向けた。
「えっとだな、ちょっと香椎の自転車を俺が借りっぱなしで、そんでそれを返すためにだな」
「ふーん、そうなのか。でも高須、お前夕飯の買出しとかあるんじゃないのか」
「ああ、まぁあるけど」
「あたしもそれに付き合うから大丈夫よ。ほら、行きましょ」
 奈々子は竜児の袖を掴んで、くいっと引っ張った。これ以上誰かに絡まれるのは困る。
「それじゃ、能登くん春田くん、またね」
 ぽかんとしている二人に手を振って、奈々子は歩き出した。

83名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:20:18 ID:xGj4PXGG

 商店街の中をゆっくり歩きながら、奈々子は隣の竜児をちらりと伺った。
 歩きにくそうにしている奈々子を見かねて、竜児はすぐに奈々子の鞄を預かり、背中に背負っている。
 そういった自然な優しさに、奈々子はつい惹かれてしまうのだった。
 曇った空の下に、水分を含んだ冷たい空気が停滞していた。風がないだけ、寒さはましなのかもしれない。
 夕方の商店街は人通りも多く、ゆっくり歩く二人は後ろから来る人に次々と追い越されていた。
「ごめんね高須くん。無理矢理誘っちゃって」
「ん、いや別に……」
 竜児は頬を掻きながら、奈々子に合わせて歩いていた。
「一緒にいたかったの。迷惑じゃなかった?」
「いや、別にそんなことねぇけど……」
「そう、よかった」
 竜児と一緒に歩いているだけで、奈々子は自然と笑みがこぼれてしまう。
 まだ竜児の気持ちが自分に向いているわけではない。それがわかっていても、好きな人が隣にいてくれて、優しさを見せてくれた。
「うふふ、高須くんと二人きり」
 足さえ痛まなければ、スキップでもしていたかもしれない。
「しかし、なんでまた俺なんかに……。それが一番わからねぇんだが」
「あら、高須くんはとってもいい男じゃない。一家に一台は欲しいわね」
「家電かよ」
 全自動家事マシーン竜児。ただし顔は怖い。
84名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:22:11 ID:hiLD3vq+

「つーか、あまりにも突然で、何が何やら……」
 竜児は曇天を仰いで嘆息した。
「あら、あたしにとっても突然のことよ。だって、高須くんのことをこんなに好きになるなんて全然思ってなかったんだから」
「お、おう……」
 頬を赤く染めた竜児が、前髪に手をやって俯いた。
「だから、あたしの想いが高須くんに通じたらいいな、って思ってるわ。あたしのこと嫌いじゃなかったら、しばらく付き合ってよ」
「うぇっ? つ、付き合う?」
「別に深い意味じゃなくて、お互いに時間があったら一緒にいましょってこと。でも、深い意味でも構わないわよ」
 うふふ、と目を細めながら、奈々子は竜児に近づいた。
「い、いや……。俺は、なんだ、どうなんだろう」
「考えておいてね。高須くんがあたしのことなんか嫌いで、望みはまったく無いっていうんだったらはっきり言って欲しいけど」
 奈々子の言葉に、竜児が商店街のレンガ敷きを見下ろしてうーんと唸る。
「……俺、卑怯だよなぁ。好かれてるってのが本当なのかどうかわからなくて」
「本当よ。信じて」
「え、いや、それはわかったんだけど……。それがわかってても、ちゃんと返事してなくて、なんか曖昧で」
「そういえば、高須くんは櫛枝にちゃんと振られたの?」
「ぬぉぅ、な、なななにをいきなり」
 鞄を持ったまま、竜児はたたらを踏んで転びそうになっていた。
「もしかしたらさ、なんでもなかったみたいに扱われてるんじゃないかと思って」
「……多分、その通りだろうけど」
「それで、高須くんは櫛枝に未練たらたらで、諦めきれないの?」
 竜児の表情を伺いながら、奈々子は竜児に尋ねた。あまりにも踏み込んだ質問だったかもしれない。
 そう思ったが、竜児は少し考え込むように視線を遠くに向けていた。
「正直、わかんねぇ……。なんつーか、もう、やることやり尽くして、力尽きたというか」
 言葉を確かめるように、竜児は自分の顎に手を添える。
「あいつは、俺の、憧れだったから。あんなふうになりたいと、ずっと思ってた」
「明るい性格がよかったの?」
「そう、かもしれねぇな。あいつみたいに、自分でやること決めて、進みたかった」
 憧れを語る目は遠く、少しだけ寂しそうに微笑む竜児を見て、奈々子は唇を結んだ。
「じゃあ、高須くんも自分で決めればいいんじゃない? そう思うんだけど」
「……やりたいこと、したいこと、そういうのが無いからな。失いたくないものならあるけど、俺は、どうすればいいのかわかんねぇ」
 はぁ、と息を吐いて、竜児は肩を落とした。
 奈々子が、竜児の手を取る。
「うおっ、なにを?」
「高須くん、スーパー、通り過ぎてるよ」
「え?」
 会話に夢中だったせいで、寄るはずだったスーパーの前を通り過ぎていた。
 振り向いてから、竜児は再び溜め息を吐き出す。
「香椎、どっかにネジ落ちてねぇか?」
「ネジ?」
「俺の頭のネジだ」


85名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:22:52 ID:hiLD3vq+

 スーパーで買い物をしている最中も、竜児は肩を落としたままうろうろしていた。
 野菜売り場で、土のついたままの野菜をそのままカゴに放り込んだり、タマゴのパックの上に牛乳を置いたり。
 どうにか買い物を終えたものの、竜児は店を出てすぐに溜め息を吐いて空を仰ぐのだった。
 奈々子はどうにか竜児を元気づけてやりたいと思うのだが、上手く言葉が出てこない。
「ねぇ、高須くん、あたしが櫛枝のこと訊いたのがまずかった?」
「いやそうじゃなくて、俺って、なんかダメだなぁと」
 スーパーを出て、商店街を歩く。
「はぁ、なんかもう、どうしたらいいのか」
 荷物が重いのもあってか、竜児は背中を丸めて地面を眺めたまま歩いていた。
 この曇り空のように憂鬱な心境で、竜児は重たく息を吐く。
「悪いな香椎、一緒にいるのに、こんな俺で」
 すまなさそうに笑って、竜児は奈々子を見た。
「ううん、いいの。自分が辛いのに、そうやって人を気遣えるのは、すごいと思うし、あたしは高須くんといるだけで嬉しいから」
「ほんとに、悪いな……。そこまで言ってもらって、俺って奴は」
 再び竜児は重たい息を吐いた。


 商店街を歩いていると、前方をふらふらと歩いている女性が目についた。
「ねぇ高須くん、あれって泰子さんじゃないの?」
「え?」
 竜児が顔をあげる。前を歩いている泰子に気づいて、竜児は顎を引き、駆け足で走り寄った。
 奈々子はその速度についていけず、ゆっくりと後を追う。

「おい泰子、どうしたんだよ」
「ふぇ? 竜ちゃん」
 歩みを止めた二人に、奈々子がようやく追いついた。
 泰子に挨拶をしようと思い、その顔を見る。だが、顔色を見た瞬間に奈々子は声を失った。
 青ざめていて、目もどこか虚ろだった。
「ありゃ、奈々子ちゃんも一緒だったんだぁ。あは、竜ちゃんと仲良しなんだね」
「ええ、まぁ……。それよりも、疲れてるんじゃないんですか?」
「うん、ちょっと眠いかも」
「ったく、だからバイトなんかやめろって言っただろうが」
 竜児はいかつい顔面をさらに凶悪にして、泰子に向かって言葉を放つ。
「だいじょうぶだいじょうぶ、やっちゃん元気だから」
 そう言って、泰子は微笑みながら力こぶを作って見せる。もちろん、そんなものはなかったが。
 泰子のスカートから伸びる足を見て、奈々子は傷口でも見たかのように頬を引き攣らせた。
 明らかに、ふくらはぎのあたりがむくんでいる。

「ねぇ、奈々子ちゃんもお家に来てよ。一緒にご飯食べない?」
「おいおい、何言ってんだ泰子」
 呆れたように竜児が言葉を挟む。
「あっ、行きます。ね、いいわよね高須くん」
「いや、お前がいいんだったら別に構わねぇけど……。いいのか、家帰らなくて」
「大丈夫よ。どうせお父さんも仕事遅いし」
 3人で連れ立って、高須家に向かって歩き出す。
 買い物した荷物に、二人分の鞄を背負っていた竜児が、泰子からバッグを取り上げた。
「高須くん、それくらいあたしが持つわよ」
「いや、いいって。お前も足悪いだろ」
 曖昧に微笑む竜児に、奈々子は小さく息を吐いた。
 そうやって何もかもを背負い込んでいたら、竜児も疲れてしまうのではないか。
86名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:23:28 ID:hiLD3vq+

 竜児の家にあがりこんで、奈々子は泰子をすぐに部屋へと連れて行った。
 奈々子は敷いてあった布団に泰子を寝かせると、むくんだふくらはぎに触れる。
「ふぇ? どしたの」
「ここ、むくんでますよね……。痛くはないですか?」
「平気平気、だいじょうぶだよ」
 そうは言っても、肌を内側から押し出しているかのようにむくんだふくらはぎを見て、奈々子は大丈夫だとは思えなかった。
「立ち仕事してたんですか?」
「うん、ケーキ屋さんでアルバイトしてるんだよ。余ったケーキ貰えたら、奈々子ちゃんにもあげるね」
 うつ伏せに寝た泰子のふくらはぎを、奈々子はマッサージするように撫でた。
 靴下をずり下げると、ゴムの後がくっきりと残っているのが見えた。
 おそらく、血液が下半身に溜まってしまっているのだろう。顔色がよくなかったのは、そのせいかもしれない。
「足、上げたほうがいいですよ」
「えー、そう?」
 奈々子は近くに落ちていたクッションを持ってくると、泰子の足の下に置いた。
 それから泰子を仰向けに寝させる。
「あっ、これ気持ちいいかも〜」
 無邪気に笑う泰子を見て、奈々子も微笑んでみせる。
「これでしばらく寝てたら、ちょっとはましになりますよ」
「へー、そうなんだー。でも、やっちゃんこの後お仕事行かなきゃ」
 暢気な言葉に、奈々子は目を見開いた。
「えっ? 今まで働いてたんですよね……。それで、あの、スナックでしたっけ、その仕事ですか?」
「そうなんだよ、やっちゃん頑張って働いてね、竜ちゃんの進学資金貯めるんだ〜」
 目を閉じたまま、泰子がうっとりと呟く。
 こんなに足がむくむまで働いて、夜も働くという。それがどれだけ大変なことか、奈々子にも理解はできた。
「……あんまり無理しないでくださいね」
「えへへ、やっちゃんはだいじょうぶだよ。だってお母さんだもん」
 泰子は目を閉じると、穏やかに胸を上下させた。どうやら眠りについたらしい。
 奈々子は泰子の部屋を後にして、ゆっくりと襖を閉めた。

87名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:24:07 ID:hiLD3vq+

 台所に立つ竜児が、炊飯器のボタンを押していた。夕食の準備をしているらしい。
 エプロンをして、冷蔵庫の中から豚肉を取り出している。奈々子は竜児の隣に立って、その顔を見上げた。
「おう、どうした? 別にゆっくりしててくれていいんだぞ。今日は別にたいしたもん作りゃしねぇし」
「そうじゃないの。泰子さんなんだけど……、大丈夫なの?」
「大丈夫って……、俺に訊かれても」
 竜児はまな板の上に豚肉のパックを置いて、ラップの端を丁寧に剥がしていく。
 フライパンで炒めるのだろう。コンロの上には、フライパンが置かれていた。
「あのね、高須くん。泰子さん、足がむくんでたのに気づいた?」
「いや……、そうなのか?」
「うん。結構酷いわよ。多分、血のめぐりが悪くなってるわね。立ち仕事してたのもあるでしょうけど」
「ったく、あいつ……」
 豚肉をまな板の上に広げて、竜児は包丁で適当な大きさに切り分けていた。
 奈々子はその竜児の右手の甲を掴む。
「うおっ、危ないだろ、何すんだよ」
 抗議の声をあげる竜児を、奈々子は睨むようにして唇を尖らせた。
「いいから、ちょっと聞いてよ。泰子さんの仕事、減らしたほうがいいわよ。あれじゃ倒れちゃうわ」
「……俺もそれは言ったっつの。それでも、あいつは大丈夫だって」
 竜児はまな板を見ながら、口を閉ざす。
「そう……」
 泰子は、竜児の進学資金を貯めるために働いているという。
 しかし朝も働いて、夜も働くのでは寝る時間さえほとんど無い。あの調子では、すぐに体調を崩してしまうだろうと思えた。
 けれど、人の家の事情に、奈々子がこれ以上口を挟んでもどうしようもない。
88名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:24:36 ID:hiLD3vq+

「栄養つくもん食わせるしかねぇな。もっといい肉買ってくりゃよかった」
 竜児はそう呟いて、包丁を動かし始める。奈々子も竜児の手から手をどけて、シンクの縁に寄りかかった。
「あんまり脂っこいのはダメよ。もっとあっさりしたのにしないと。それから、亜鉛の豊富なもの」
「ん、そうか?」
「納豆とか、豆腐とか、大豆食品ね。牡蠣とかもいいけど、かなり火を通さないと怖いわ。それと水」
 おそらく、働きづめでロクに水分を摂っていないに違いない。
「水は沢山飲ませたほうがいいわ。一気に飲むんじゃなくて、何回にも分けて。スポーツ飲料とかでもいいけど」
「そうなのか……」
 竜児が豚肉をパックの中に戻す。 手を水道で洗ってから、竜児は冷蔵庫の中を覗き込んだ。
「豆腐はあるな。よし、冷奴にすっか」
「あと、玉子あるわよね。あたし、玉子焼き作るわ。玉子も、栄養豊富だし」
「そこまでしてもらわなくても……」
「いいから。ちょっとくらい手伝うわよ」
 竜児は台所にかかっている時計をちらりと見て、小さく唸った。
 ちょうどご飯を炊き始めたばかりだし、玉子焼きを作るには少し時間が早すぎるかもしれない。
「それより先に、お味噌汁作ったほうがいいかしら。わかめはある? あれも体にいいから、たっぷり使いたいんだけど」
「ええと、確かカットのやつがあったっけな」
「じゃあそれで、わかめたっぷりのお味噌汁作りましょ。豆腐もあるんでしょ」
「ああ、あるぞ」
 奈々子はポケットの中から、ゴムを取り出して、首の後ろで髪をひとつに束ねた。
 それから袖をまくりあげ、手を洗う。
「じゃあ、手伝うわね」
「いや、ちょっと待て……」
 竜児はわずかに頬を赤く染めて、奈々子を見た。
「おまえ、制服だろ? これつけとけよ」
 そう言って、竜児は自分が着ていたエプロンを脱いで渡した。服、汚れたら困るからな。
「あら、悪いわね」
 受け取った奈々子が、エプロンを通す。その姿を、竜児は横目でちらちらと伺っていた。
「じゃ、はじめましょうか」
「お、おう、そうだな」
 
89名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:25:17 ID:hiLD3vq+

 奈々子は、だし巻き玉子を作ることにした。ずっと昔、父に教えてもらった料理だった。
 普通の玉子焼きに比べれば時間はかかるものの、上手くできれば、柔らかく、口にした瞬間にじわっと味が広がるようなものができる。
 インスタントの粉末だしを竜児に借りて、だし汁を作る。それから、みりんと塩と砂糖をわずかに入れた。菜箸で掻き混ぜる。玉子もコシが無くならない程度に菜箸で手早く掻き混ぜた。
 竜児も、興味深そうに奈々子の手元を見ている。
「なんかいい手つきだな」
「そう? これくらい普通だと思うけど」
 ここまではともかく、みりんと砂糖を入れたのもあって焦げやすさが随分変わってしまう。
 だし汁を入れたことで、玉子は柔らかくなり、焼いている途中でひっくり返すのもかなり難しい。
 念のために、だし汁はやや少なめにしておいたものの、それでも難しいことに変わりはない。
 奈々子は手の平に汗が滲むのを感じていた。竜児の前で失敗はしたくない。
 家での料理なら、途中で失敗してもなんとか食べられるものにはできる。形が悪くても構わない。
 しかし、竜児と泰子に出すものなのだから、綺麗な形に整えたい。

 玉子焼き鍋を借りて、すぐ傍に油を用意した。クッキングペーパーに油を染み込ませる。
 そして、奈々子はここにきて、だし巻き玉子を選んだことを後悔した。
 確かに作ることはできるかもしれないが、それでも結構な量の油を使わないと上手く焼けない。
 ついさっき、油物は控えたほうがいいなどと言っておいて、自分が沢山使うというのもおかしい。
「ん、どうした? フライ返しか?」
 竜児は、奈々子が上手く玉子を返せないのではないかと思ったらしい。片手にフライ返しを持って尋ねてくる。
「ううん、そうじゃないの……。えっと、大丈夫だから。菜箸でいいわよ」
 なんとか油を少なめで焼くしかない。
 白煙が昇り始めた玉子焼き鍋に、油を注ぎ込み、一度油を返す。それから、菜箸の先に玉子をつけて、玉子焼き鍋の上に直線を描いた。
 玉子焼き鍋の上で、菜箸の先についていた玉子がすぐに固まる。このくらいの温度なら、なんとか焼けそうだった。
 お玉で玉子を注ぎ込み、ぽこぽこ浮かんだ気泡を菜箸で突付いて潰す。火が通ってきたら、奥のほうから手前にひっくり返して玉子を畳んだ。
90名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:26:38 ID:hiLD3vq+

 焦げないよう、半生にならないように、火の通りに気をつける。
 奈々子は目を細めて、唇を強く閉じ、時々唾を飲み込みながら何度も玉子を注いでいった。
「お、おい、そんな頑張らんでもいいだろ」
 隣から奈々子の手つきを覗き込んでいた竜児が、怯えながら声をかける。
「しっ、ちょっと黙ってて」
 奈々子は真剣な表情で、じっくりと玉子を焼き上げていく。
 ここで焦がしたり、生焼けにしたり、形を崩したものを出してしまえば、竜児に情けないところを見せることになる。
 こんなことなら、もっと練習しておけばよかった。奈々子は残り少なくなった玉子をすべて鍋へ注ぎ込み、焼き上げにかかる。
 最後にまんべんなく、全体に玉子をまぶすようにして焼けば、箸で持っても形が崩れにくいものが焼きあがる。
 じっくりと、焼き加減を見た。玉子がわずかに膨らんで、そして萎むタイミングを伺う。

「ふぅ……」
 どうにかうまく出来上がった。後は巻き簾で形を整えて、もう少し冷めるまで待てばいい。
 奈々子は額を拭って、竜児の表情を伺った。竜児が、感心したように息を漏らしている。
「へぇ、うまいもんだな」
「これくらいはできるわよ」
 そう言って奈々子は微笑んで見せた。すると、竜児が合った視線を急に逸らして、頬を掻きながら言う。
「その割には必死だったような気がするぞ」
「ち、違うのよ、別に焼くのが難しいとかじゃなくて……、油物は控えたらとか言っておいて、あたしがあんまり油使って焼くのもどうかと思って……」
 竜児が、いまだに湯気をあげている玉子焼きを見おろす。
「ま、まぁとりあえずこんなもんでいいだろ。こっちもたいしたもん作るわけじゃねぇし」
 奈々子が玉子を焼いている間に、冷蔵庫からおかずを取り出していた。汁物も、わかめと豆腐しか入れていないので、すぐに出来るようだった。
 あとはご飯が炊き上がるのを待てばいいだけだ。
 奈々子はエプロンを外しながら、安堵の息を吐いた。
91名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:27:01 ID:2R5ZYRNJ
こんな夜中にまさかななこい見られるとは…
支援だ!!
92名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:27:06 ID:hiLD3vq+

「イヒィヤァ!」
「ん、インコちゃんお目覚めか?」
「なに今の?」
 奈々子からエプロンを受け取った竜児が、居間に向かって歩き出す。
 部屋の隅に吊られていた鳥篭を持ち上げて、テーブルの上に置いた。鳥篭にかかっていたカバーを外す。
「ウホッ」
「なんだよウホッて」
「あら、インコ飼ってるの?」
 奈々子も居間に行って、そしてテーブルの上に置かれた鳥篭に目を移す。
「きゃっ、な、なにこれ」
 鳥篭の中にいたのは、確かに鳥だった。しかし、その顔面を見て、奈々子は悲鳴をあげる。
 どう見ても、鳥の顔面ではない。デメキンと鳥の間に生まれてきたのではないかと思うほど出っ張った目。
 異様なまでに長く伸び出た舌が、不揃いな嘴の間からにゅるんとこんにちは。
「なにこれとは失礼な。これがうちのかわいいペットのインコちゃんだ」
「えっ? かわいいのこれ?」
 グロテスクな顔面に、奈々子はつい距離をとろうとしてしまう。
 しかし、竜児がかわいいと言っているのだし、大事なペットなのだろう。
 本当だったら近寄りたくもないアブナイ外見の持ち主だが、奈々子は恐る恐る近づいていった。
「ほーらインコちゃん、自己紹介するんだ」
 優しげに目を細めて、竜児はインコと思しき生物に声をかけている。
 うん、高須くんのペットなんだもん。あたしも、かわいがってあげなきゃ。
 グロテスクに見える外見も、見慣れればきっと不思議にかわいさが増して来るはず。
 せめてキモカワイくらいに。
93名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:27:55 ID:Mr3dxS1v

 頬を引きつらせながら、奈々子はインコちゃんの顔を覗き込んだ。
 薬でラリってしまっているかのような表情のインコを見ながら、奈々子はこれはかわいいの、かわいいの、と自分に暗示をかけた。
「ウィイイイッッ、インッ」
「そうだ、がんばれインコちゃん」
「ンドッ!!」
「くっ、そのネタはずっと昔にやっただろ!」
 竜児が悔しそうに顔を背ける。
「へ、へぇ、喋るんだ。かわいい、かも」
「ああ、喋ることは喋るんだがな」
「じゃあ、あたしの名前を言えるかしら。ほら、なーなーこって」
 奈々子はインコに向かって話しかける。暗示の甲斐あってか、グロテスクな顔面にも少し慣れた。
 かわいいとはまったく思えなかったが、それでも数秒なら正視していられる。
「いや、インコちゃんは人の名前は全然覚えなくてなぁ」
「ンナーーッ、ナッナッナッナー!!」
 インコちゃんは無意味に羽をばさばさと動かしながら、何かを言おうとしている。
「うおっ、まさか言うのか?! インコちゃんもついに次の段階へいこうというのか!」
 鳥篭を掴んで、竜児は眼光を鋭くさせていた。
 奈々子も、鳥篭に顔を寄せて、インコちゃんのユニークな顔を見た。
 ふと、奈々子は竜児と顔が近いことに気づく。思わず、唇を少しだけ噛んで竜児の横顔を見てしまう。
94名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:28:27 ID:Mr3dxS1v

「ほら、インコちゃんがんばれ」
 竜児はかなり近い距離にいる奈々子にも気づかず、ペットに話しかけている。
 奈々子もインコちゃんに話しかけてみる。
「ほら、奈々子よ。なーなーこ」
「ナッナッ!! ナマコ!」
「惜しいッ!!」
 惜しくないと思うんだけど。
 奈々子は小学生くらいの時に、こんな呼ばれ方をしたことがあったことを思い出していた。
「ンナッ、ナナポ!」
「誰だよッ?! 違うだろインコちゃん、奈々子だ、なーなーこ」
 不意に、竜児の口から自分の名前が出て、奈々子は目を見開いた。
「ほら、奈々子だって、なーなーこ。インコちゃん、がんばれ」
「ンナナナナ」
「そうだそうだ、奈々子だ奈々子。もっと」
 子供が見たら泣き出して逃げるんじゃないかと思うほど、竜児は目を細めてペットのインコを睨みつけている。
 奈々子の名前を連呼する竜児に、奈々子は息苦しくなるのを感じていた。自分が呼ばれているわけではないけれど、竜児の口から自分の名前が出てくるのが嬉しい。
 ずっと、こうやって呼んでもらえたら……。そう思うと、奈々子は胸の奥で小さな音が鳴ったような気がした。
「ナナッ!! ムリッス」
「うおおっ! 諦めた?!」
 はぁ、と肩を落として、竜児はインコちゃんの鳥篭から手を離す。
「惜しかったんだけどなぁ。インコちゃんも、その小さな頭でがんばってるんだけど、香椎の名前呼ぶかと思ったらこれだ」
「なーなーこ」
 奈々子は竜児と近づいた顔を、さらに寄せて竜児にそう告げた。
「は? なにを」
「ほら、なーなーこ」
 奈々子は口元に微笑を浮かべて、竜児にそう詰め寄った。
「香椎、どうしたんだ?」
「あら高須くんはインコちゃんより頭が悪いのかしら」
「おおおお、お前の言ってる意味がわからねぇ」
 竜児はすぐ近くに奈々子の顔が迫っていたことに今更気づいて、慌てて距離を取った。
 だが、奈々子はその距離を埋めるべく、膝でじりじりと傍に寄る。
「ほら、なーなーこって」
「な、奈々子」
「うふっ、よくできました。やっぱり高須くんは鳥より頭がいいもんね」
 顔を赤くして、後退している竜児に、奈々子が微笑みかけた。
「な、なんだよいきなり」
「ねぇ、もう一回言ってよ」
「……奈々子」
「もう一回」
「奈々子」
「もう一回」
「奈々子」
「もう一回」
「いつまでやらせんだよ……」
 呆れたように、竜児が息を漏らす。
 奈々子は自分の肩を抱きながら、俯いて目を閉じた。
「あたし、奈々子っていう名前でよかった」
「なんだそりゃ」
 
95名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:29:21 ID:2R5ZYRNJ
終わりか?
支援
96名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:30:03 ID:Mr3dxS1v

 夕方の6時を過ぎたころになって、竜児は泰子を起こしにいった。
 ひどい顔になっている泰子をまずは洗面所へと放り込み、それからテーブルに食器を並べていく。
 炊飯ジャーを居間に持ってきて、次は座布団を3人分並べた。
 奈々子も何か手伝おうかと申し出たのだが、何もしなくていいと言われて、ぼんやりと竜児を眺めていた。
 男にしては細い指で、お皿をゆっくりと食卓に置いている。奈々子が焼いただし巻き玉子も、切り分けられて並んでいた。
 泰子が戻ってきたところで、食事が始まる。居間の端っこでも、インコちゃんが与えられたエサを啄ばんでいた。

「おう、美味いなこれ」
 竜児は奈々子の焼いた玉子焼きを口に放り込んでそう言った。
「えー、これ奈々子ちゃんが作ったんだ。すっご〜い、あっま〜〜い。やっちゃん玉子焼き作ると半分スクランブルエッグになるの」
 泰子も玉子焼きを食べながら、奈々子に笑顔を見せる。
「ダシの量がちょうどよかったのがいいのか。あんまり入れすぎると柔らかすぎるし。うん、いいなこれ」
「うふふ、喜んでもらえてよかったわ」
 奈々子はなんでもないようにそう口にしながら、内心でガッツポーズをあげていた。
 竜児が、自分の作った料理を食べておいしいと言ってくれた。
 おいしいと言うだけならともかく、自分の料理の手順も覚えていてくれて、それについて言及してくれる。
 こんなことができる男子は、きっとクラスの中、いや学校の中でも竜児くらいのものではないかと思えた。

 奈々子のアドバイスに従ったのもあって、食卓に並んでいるもの自体は質素なものだった。
 それでも、竜児と一緒に食べていると、何もかもが美味しく感じられる。
 買ってきた豆腐を切っただけの冷奴だって、その味が特別に奥深いものに変わった。
 こうやっていつまでも竜児の傍にいられたら、幸せな気分でいられるのだろうか。
 奈々子は竜児の横顔を一度伺って、こっそりと溜め息を吐いた。

97名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:30:40 ID:Mr3dxS1v

 夕食を食べ終えた後、奈々子はインコちゃんをテーブルの上に置いて眺めていた。
 見慣れてくると、このグロテスクな顔面も、キモカワイイような気分になってきた気がして改めて見るとやっぱり不細工で、奈々子は首を捻っていた。
「うふふ、今度いいエサ買ってきてあげるわね」
「フオォォウッ!」
 一昔前に一世を風靡した芸人のような雄叫びをあげて、インコちゃんは羽を広げた。
 片足で立ち、グリコでもするかのように羽の先を限界まであげる。そして嘴で天井を突き刺すように頭をあげて、舌を差し出す。
「あら不細工」
「ダガソレガイイ」
「いいの?」
 インコちゃんが、片足立ちしたかと思えば、今度はカクカクと腰を振り出す。
 おかしな行動に、奈々子はつい身を引いてしまった。
「世の中不思議な生き物がいるものね」

 ふぅ、と息を吐いてから、洗い物をしている竜児の背中を見た。
 奈々子がさっきまで着ていたエプロンをして、竜児は手早く食器を洗っている。
 あまり水を使わないのは、もったいないと思っているからだろうか。
 慣れた手つきで食器を次から次へ、シンクの脇についたカゴの中へ逆さまに置いていく。
 しばらく竜児の仕事ぶりを眺めていると、泰子の部屋から、仕事へ行く準備を終えた泰子が出てきた。
「それじゃ行ってくるね」
「おう、気をつけてな」
「奈々子ちゃんも、遅くならないうちに帰るんだよ〜。竜ちゃんに送っていってもらったらいいし」
 それだけを言って、泰子は家を出て行った。
 昼間も働いて夜も仕事では、疲労が溜まってしまうだろう。
 人の家のことに口出しはできないが、奈々子はつい気になってしまう。

「さて、そしたら俺らも出るか」
 洗い物を終えた竜児が、手をタオルで拭きながら言う。
「もう少しゆっくりしていっていい? 食べた後だから、動きたくないの」
「ん、そうか。まぁそっちがいいなら別にいいんだけど、あんまり遅くなるのもな」
「大丈夫よ、お父さん仕事で遅いし」
 エプロンを外した竜児が、居間に戻って座布団の上に座り込む。
 奈々子はインコちゃんの鳥篭を指で突きながら、足を伸ばした。正座やアヒル座りをすると足首が痛むので、ずっと膝を横に倒して座っていた。
 家にいる時なら胡坐でもかけばいいのだろうけど、さすがに竜児の前でそんな座り方をしたくはない。

98名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:31:15 ID:Mr3dxS1v

「そういや香椎の親父さんってなんの仕事してるんだ?」
「なーなーこ。ね? インコちゃん」
「ウィ」
「あら、フランス語まで堪能なのねインコちゃん」
 鳥篭を小さく揺らしながら、奈々子は竜児の顔を見た。
 竜児は額を掻きながら、頭上の蛍光灯を見てる。
「名前呼ぶ、ってのもなぁ……」
「あら、さっきは呼んでくれたじゃない」
 奈々子は唇を尖らせながら、手をついて竜児に少しだけにじり寄った。
「ねぇ、あたしのこと名前で呼ぶの嫌? そんなにあたしのこと嫌いなの?」
 膝立ちで、這い這いでもするようにして竜児に近づいていく。
 小さく首をかしげて、竜児の顔を覗き込んだ。
「高須くんに、名前で呼ばれたいの。だってほら、好きな人には名前で呼ばれたいじゃない」
「おおお、お、でも、俺はだな……」
 顔を覗き込まれた竜児が、あからさまにうろたえて、後ろに進んでいく。
 竜児に、名前で呼んで欲しかった。もっともっと、距離を縮めたかった。
 心も、体ももっと近い場所にあってほしい。そう願うと同時に、断られたらどうしようという不安もあった。

「ねぇ、お願い。名前で呼んでよ」
「お、おう。わかった。今度からちゃんと名前で呼ぶから」
 竜児はそう言って、首を縦に振った。
「じゃあ今、あたしの名前を呼んで……」
 奈々子はさらに膝で這いながら、竜児へと近づいていく。竜児は背後の引き戸にぶつかり、すでに後ろに進む場所がなくなった。
「じゃあ、呼ぶぞ……。奈々子」
「うん」
 自分の名前が、竜児の口から出た。その舌で、唇で、喉で、自分の名前を作り出した。
 奈々子は一度唾を飲み込んで、それから一度鼻を鳴らした。心臓が、餅つきでもしてるかのようにぺったんぺったんと激しく動く。
「高須くん……」
「って、俺のことは苗字かよ!」
 なんの考えもなく、竜児はつい突っ込みを入れてしまう。
「じゃあ名前で呼んでいいのよね?」
「えっ?! いや、それは、別に構わねぇけど……」
「んー、はぁ……。だめ、緊張するわね……。えっと、竜児くん?」
 上目に、竜児の顔を覗き込む。奈々子の頬は赤くなり、段々と瞬きの数も増えていた。
 瞳は潤んで、竜児の顔を捉える。唇が急に乾いて、奈々子は下唇を舌で舐めた。
「ねぇ高須くん、じゃなかった、竜児くん」
「おおう、な、なんだ?」
「顔、真っ赤になってるわよ」
「そうか? 気のせいだろ。っていうか、お前も顔赤くね? なぁインコちゃん」
 ご主人の声をインコちゃんはあっさりと無視。
「ねぇ、そんなにあたしから離れようとしないでよ?」
 奈々子は竜児の顔をじっと見つめながら、さらに竜児との距離を詰める。
「いや、別にこれは……。き、緊張してるだけで」
「どうして? あたしと一緒じゃリラックスできないの?」
「おお、お前みたいな美人が近寄ってきたら、そりゃ緊張もするっての」
 意外な言葉に、奈々子は目を見開いた。
「それって……、あたしのこと、女の子として意識してるってこと?」
「ああそうだよっ、つかそりゃそうだろが」
 半ば怒るようにして、竜児はそう言って顔を背けた。
99名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:31:49 ID:Mr3dxS1v
 
「高須くん……。じゃなかった、竜児くん」
 奈々子の息が荒くなる。心臓が何倍もの大きさになったのではないかと思うほど、胸の内側で暴れていた。
 腹にコルセットでも嵌められたかのように、きゅんと内臓が締まった気がした。
 奈々子は膝で這いながら、竜児との距離を詰めて、ついに竜児の膝に触れる。
 目がとろんと虚ろになり、息苦しくて閉ざされない唇の間から、熱い息が漏れ出す。胸は何度も上下して、それでも足りなくて肩も動いた。
 太ももを、こすり合わせ、後ろに向かって尻を突き出す。
「んなっ、な、どうした?!」
 竜児は半笑いになって、瞬きを繰り返す。
「あなたのことが、好きなの……」
「お、おう」
「はぁ……。どうしよ、あたし、ちょっと興奮してきちゃった」
 奈々子は探偵のように口元に手を添えて、視線を落とした。
「こ、興奮って……」
「すごく、エッチな気分かも」
 竜児が生唾を飲み込んで、奈々子の体を見てしまう。
「ごめんね、変な女で。あたし、はしたないかも」
「おお、気、気にすんなよ」
「うん……。ちょっと待ってね、ちょっと心を落ち着けるから」
 そう言って、奈々子は膝立ちになって目を閉じ、深呼吸を繰り返す。
 竜児は呆気にとられたように、へ? と口に出して、奈々子の深呼吸を見ていた。

「はぁ……。少し、落ち着いたわ」
「そ、そうか……」
 緊張の糸が緩んだのか、竜児は残念そうに肩を落とす。
「ごめんね、いきなりこんなふうに迫られても困るわよね。危うく押し倒しちゃうところだったわ」
 奈々子は手で片目を覆って、小さく息を吐いた。
 竜児が、自分のことを女として意識してくれている。そう思うと、急に体が熱くなった。
 このまま竜児の体を抱きしめて、何度もキスをしてしまいたかった。
 肌をすべて重ね合わせて、竜児の体に溶けてしまいたいと思えた。
100名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:32:31 ID:Mr3dxS1v

 けれど、そんなことをしてしまえば、きっと断られる。
 もっとゆっくりと距離を縮めようと思っていた矢先にこれでは、先が思いやられた。
 告白だって、もっと仲良くなってからしようと思っていたのだから。

「んー、ごめんね。あたしばっかり、そうやって竜児くんを求めてたらダメだよね……」
 自分と一緒にいる時、竜児は緊張しているようだった。
 そうじゃなくて、自分といる時には安らかな気持ちでいてほしい。
 自分のことばかり考えて、押し付けるようなことをしたら、きっと嫌われてしまう。
「高須くん、じゃなかった……。竜児くんのこと考えてると、本当におかしくなっちゃうわ」
「おかしく……?」
「うん。あたしはね、別にたか……、竜児くんが求めてくれるなら、なんだってしてあげたいの。でも、あたしから押し売りするようじゃ、ダメよね」
「え? おう、そう……かな」
 竜児は引き戸にもたれたまま、奈々子が、膝立ちからゆっくりと後ろにお尻をついて、体育座りをする様子を眺めていた。
 そして、奈々子自身は気づいていなかった。ちょうど、竜児の視線からは、自分のスカートの中が見えていることに。
 竜児は奈々子のスカートの中が見えて、一瞬大きな声をあげそうになり、慌てて喉まででかかった声を留めた。
 慌てて視線を逸らし、前髪に手で触れる。意識しようがいまいが、竜児の心臓がけたたましく回転数を上げてレッドゾーンにぶち込まれる。
 吸気が間に合わず、喘ぐように浅く呼吸を繰り返した。

 奈々子が、膝を畳につけるように足を崩して座る。
 ただ、こういう座り方が楽だっただけなのだが、竜児から見れば細いウェストや、大きな胸元が強調されるグラビアポーズか何かにしか思えなかった。
 体が少し捻られ、両足は横に伸びる。あまり気を使わずに座ったものだから、スカートがわずかにめくれていて、竜児からは腿の付け根のあたりまでが見えた。

101名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:33:14 ID:Mr3dxS1v

「あんまり緊張しないでよ。ほら、もっとリラックスして、のんびりしましょ」
 奈々子がそう言って笑いかけるが、竜児は心を落ち着けるどころではなかった。
 目の前にいる奈々子は、竜児から見ても美人だと思えた。日焼けを嫌った肌はどこも白く、瑞々しい張りを湛えている。
 唇は艶っぽく光り、口元のホクロが色気を醸し出していた。ゆるく巻いた髪は黒々と輝いていて、ふわっと空気を抱き込んでいる。
 指を動かす仕草のひとつでさえ柔らかくて、男心をくすぐった。
 囁きのような、空気の混じった声は耳に優しくて、脳に直接染みこんでゆく。

「リラックス、とか言われてもだな」
 竜児は体育座りをして、膝を抱いた。
「うふふ、シャイなのね」
 目を細めて、奈々子は竜児に囁く。
「……かもな」
「真面目なのね。でも、そんなところが好きよ。がつがつしてるよりはいいじゃない」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。あんまり好きとか言われると、その……、どきどきしてだな」
「あら、好きな人に好きって言って何が悪いの? だって、本当に好きになっちゃったんだもの」
 奈々子は竜児の傍に近づくために、膝で這った。
 そして、体勢を変えて竜児の隣に座る。竜児の肩に、自分の肩を寄せて、奈々子は竜児の顔を下から覗き込んだ。
 竜児の顔は赤く、瞬きの回数も多かった。困ったように手を前髪に当てて、畳に目を向けている。
「なんつーか、意外だな。香椎がこんなに積極的だと思ってなかったし」
「奈々子ね。あたしだって意外よ。人を好きになって、もっと触れていたいとか触れてほしいとか思って……」
「お前は、ほんとにいい奴だと思う……。こんな俺なんかに好きだって言ってくれるし、泰子の健康まで気遣ってくれるし」
「俺なんか? 竜児くんはとっても魅力的な人だと思うわよ。沢山いいところがあるじゃない」
「……俺には、そう思えねぇ」
「だったら、あたしが教えてあげるわ。竜児くんのいいところを、まずひとつ」
 竜児が顔をあげて、奈々子を見る。強烈に尖った目を、いつもよりわずかに丸くしていた。
 ほんの少しだけ唇を開いて、奈々子の言葉を待っていた。
「竜児くんが、ここにいてくれること。それだけですっごく嬉しいもの」
「……なんだそりゃ。別に俺、なんにもしてねぇし」
 期待はずれだったのか、竜児が眉を寄せる。
「傍にいてくれるだけで嬉しいの。それって凄いことだと思うけど」
「なんか、難しいな……」
「竜児くんは、いい子ね」
「はぁ?」
 体育座りをしながら、爪を畳の目に少しだけめり込ませた。
 竜児は奈々子の言動を理解できないのか、首を傾げている。

102名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:34:16 ID:id2h/p4D

「お母さんに、あんまり反抗したことないでしょ?」
「なんでいきなりそんな話に……」
 奈々子の言葉に、竜児は唇を噛んだ。
 竜児の反応を横目で伺って、奈々子はさらに言葉を続けた。
「反抗しないというか、お母さんの期待に応えようってがんばってきた。違う?」
「別に俺は……」
「でもそれだけじゃいけないって思ってるでしょ?」
 竜児が顔を上げて、奈々子を見る。目を瞬かせて、小さく息を吸った。
「お母さんが無理して働いてまで進学することに抵抗があるんじゃない?」
「……ああ」
 少しだけ目を細めた竜児が、畳に視線を落とす。
「ずっと頑張ってきたお母さんに、もっと楽してほしいと思ってるでしょ」
「そりゃ、まぁ」
「だから進路で就職を希望してるんだ」
「……お前、なんでそんなこと知ってんだ?」
 竜児が怪訝そうに眉を寄せる。
「好きな人のことだから、わかるわよ」
 奈々子は、竜児が担任に呼び出されていたのを知っていた。素直に進学を希望していれば、わざわざ呼ばれることもない。
 進路に関する調査があった後のことだから、そこで進路関係の話をしたのではないかと思った。
 進学に抵抗があるのなら、残るは就職しかない。
「でも、働いてお母さんを楽にしてあげたいのなら、今だってバイトしたりとかできるわよね。それをしないのは、お母さんに止められるの?」
「お、おまえ……」
 竜児はただ驚いて奈々子を見ていた。その距離があまりにも近くて、つい竜児は視線を逸らしてしまう。
「高校出て就職しようっていうのにも、反対されてるのよね」
「エスパーかお前は」
 大袈裟に驚いている竜児を見て、奈々子は顔を綻ばせる。
 もしも竜児が、母親を楽にさせてやりたいから働こうというのなら、何も悩むことはない。
 就職するのが、心からやりたいことで、そして母親にも了解を得ているのなら、もっとやる気に満ちていてもおかしくない。
 けれど竜児はいまだに悩んでいるようだった。母親と合意を得ることができていないのだろう。
 もしくは、その道を選ぶことに、他の理由による葛藤があるのではないかと思えた。
103名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:35:03 ID:id2h/p4D
 
「竜児くんのこと、もっとわかってあげたいの」
「う……」
 黙りこんだ竜児を見て、奈々子はさらに体を寄せた。
 お互いの肩が触れあい、体温が伝わってくる。喜びのせいか、緊張のせいか、奈々子は腹部にシクシクとした痛みを感じた。
「それで、悩んでる竜児くんに、素敵なアドバイスでもあげようかなって」
「アドバイス?」
 竜児が目を輝かせて、奈々子を見ていた。すぐ近くで視線が絡み合い、奈々子が照れて口元を手で隠す。
「うん、どうすれば悩みが解決できるかアドバイス」
「お前は、どうすりゃいいと思うんだ?」
「あたしのこと好きになればいいのよ」
「……おいおい」
 呆れた様子で竜児が肩を落とす。
「あら、冗談じゃないわよ。高須くん、いや、竜児くんはね、まず自分で何かを決めて、実行しなきゃダメ」
「決める……」
 夕方に、竜児が話していた望みだった。
「だからまず、出来ることから決めなきゃ」
 竜児は引き戸にもたれて、考え込むように指で顎をなぞっていた。
「あたしは、こんな短い時間一緒にいただけで、竜児くんのこと、これだけわかってあげられるのよ」
 竜児の肩に預けていた肩をあげて、奈々子も引き戸にちょっとだけもたれた。
「そんなあたしが傍にいたら、きっと竜児くんにとってもいいことだと思うんだけど」
 囁くように、声のトーンを落として言った。竜児は、黙ったまま膝の上で腕を組んでいる。
 奈々子はわずかな手応えを感じていた。竜児の気持ちが、少しは自分に向いてきているような気がしたのだ。
 少なくとも、昨日のように、嫌われてしまうかもしれない、仲が深められないのでは、という暗い不安は無かった。

「ねぇ、少しは好感度上がったかしら」
 奈々子の言葉に、竜児が苦笑する。
「なんだよそれ、ゲームじゃあるまいし」
「ポイント貯めたら何かいいことがあったりとかしない?」
「別にねぇよそんなの」
「残念だわ。まぁ、それはともかくとして、どう? 少しはあたしのこと、好きになった?」
「ああ、そうだな……」
 竜児は遠くを見ながら、溜め息混じりにそう言った。穏やかな口調で言われた言葉だったが、奈々子の耳には鋭く突き刺さる。 
「えっ?! ほんと?」
「まぁ、そりゃ嫌いじゃねぇし、好きだって言われて嬉しいし……」
 とくに意識するでもなく、竜児は素直に言葉を紡いでいた。
 奈々子は半ば冗談で訊いたつもりだったが、ここまで好感触だと驚いてしまう。
「そ、それって、あたしと付き合うとか、そういうことも考えてるって思っていい?」
「……ま、まぁ考えてはいるけど。ぶっちゃけ、なんか展開早すぎて、いまいちどうしたもんかと」
「だったら、もっとじっくりと、時間をかけて仲を深めればいいのよ。ね?」
「そうだな……」
 竜児が、息を吐き出しながら首をこきこきと鳴らす。それから、大きく欠伸をした。
 夜の8時にさしかかろうとしていた。
「さて、そろそろ出ようぜ。送ってくから」
「そうね……、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」
 まだ、こうやって二人でゆっくりしていたいと思えた。
 
104名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:35:51 ID:id2h/p4D


 竜児の家を出てすぐに、奈々子はあまりの寒さに震えてしまった。
 曇天は、今にも雪を吐き出しそうなほどに分厚い。湿った空気が大きくうねって流れていく。
 夜の暗闇はいつもよりも深いように見えて、奈々子は身震いしてしまう。
 階段の手すりに掴まって、曇った空を見上げた。
「その格好じゃ寒いだろ。これ着とけよ」
 そう言って、竜児は奈々子の肩に自分のコートをかけた。
 制服の冬服しか着ていなかった奈々子を見かねて、竜児はほら早く着ろよと声をかける。
「えっ? でも……、いいの?」
「いいって、ほら袖通せって」
 袖の内側で引っ掛からないように、制服の袖を掴んでからコートの袖に腕を通す。
 前をあわせると、コートが随分と大きくて不恰好に思えた。
 それでも、竜児がわざわざしてくれたことに、奈々子が笑みを漏らす。
「ほんとに優しいのね」
「べ、別にこんなのどうでもいいだろ。ほれ、マフラー」
 竜児が赤いマフラーを差し出してくる。
「さすがにそんなに借りるのは悪いわ」
 奈々子は首を振って、竜児が差し出したマフラーを押し返した。
「馬鹿、あんまり寒い格好してると風邪引くぞ」
「じゃあ、巻いて」
 さすがに、これは甘えすぎかと思ったが、竜児は言われた通りにマフラーを広げた。
 奈々子の体に抱きつくように首筋に両腕を回す。そして、髪の下にマフラーをくぐらせて、奈々子の首にマフラーを巻いた。
 少しの間、奈々子は呆然としていた。

「ど、どうもありがとう」
「おう、じゃあ行くか。自転車持ってくるから、ゆっくり降りて来いよ」
 竜児は一足先に階段を駆け下りて、階段の下に置いてある自転車に鍵を差し込んでいた。
 奈々子は階段の上で、目をぱちぱちとさせて立ち尽くしていた。

「あれは……、反則よね」
 竜児のコートを着ている。竜児のマフラーを巻いている。
 その事実が、奈々子の心を爆発させそうになっていた。当たり前のように、寒いだろうからと着せてくれた。 
 我に帰ってみれば、マフラーからは竜児の匂いがして、頭の中に酒を注がれたような気分になった。
 くんくんと匂いを嗅いで、さらに肺の中にまで竜児の匂いを満たそうとマフラー越しにゆっくりと息を吸い込む。
 もし、今部屋で一人だったら跳ね回っていたかもしれない。口元がどんどんにやけていくのを止められなかった。
 神に祈る聖人のように手を組んで、体を丸めて、体の内側から溢れようとする何かを必死で押し留める。
「おーい、どうした。まだ寒いのか?」
「えっ? 違うの、そうじゃないから、すぐ行くわ」
 奈々子は、足が痛まないようにゆっくりと階段を降りた。
105名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:36:34 ID:id2h/p4D

 自転車の後ろの荷台に腰掛けて、奈々子は竜児の背中を見た。
 暗闇の中を走り出す。ライトが照らしたアスファルトが、黒々と光っていた。
 高須家の前を出てすぐに、竜児が後ろに座っている奈々子に声をかける。
「ゆっくり走るからな。落ちるなよ」
 奈々子は竜児から見えるわけもないのに、頷いた。
 さっきから、ずっと心臓が激しく律動していて、血が顔に昇っているような気がしていた。
 竜児のダウンを小さく摘んで、奈々子はカラカラに渇いた口の中をもごもごと動かす。
 どうせだったらこのまま、竜児の背中に抱きつきたかった。少し手を伸ばせば、竜児の体に腕を回せる。
 こうやって竜児の背中に肩を寄せているだけでも幸せな気分になれた。
「……い、いいわよね」
 抱き付いてしまおう。手を竜児の腹に回してしまおう。
 そう、これはただ落ちないように、しっかり掴まるだけだし。

「ありゃ、なにやってんだあいつ」
 奈々子がまさに抱きつこうとした瞬間に、竜児が声をあげる。
 ブレーキレバーに指をかけて、速度を落とした。
 どうしたのかと思ったら、ひとりの女の子の前で停車していた。
「おう大河、どっか行ってたのか」
 歩道を、大河が歩いていた。ちょうど、家に帰るところだったらしい。
 手にはスーパーの袋を提げていた。白いコートを深く合わせて、ピンクのマフラーを首にぐるぐる巻きにしている。
 大河は竜児の姿に気づいて、心底嫌そうに口を曲げた。
「うっわぁ」
「なんだよいきなりその態度」
 せっかく二人きりでタンデムを楽しんでいたのに、まさかここで恋敵に会うとは思ってもいなかった。
「っていうか、なにやってんのよあんたら」
「ちょっと家まで送ってもらうところなのよ」
 奈々子の姿に気づいて、大河は目を眇めた。機嫌悪そうに、つんと顎を上げる。
「おおうっ?! なんだその荷物。おまえっ!」
「いちいち人の荷物見るんじゃないよ」
 気になって、奈々子も大河が手に提げているスーパーの袋を見た。
 そこには台所用の洗剤と、ブラシが入っているようだった。その他にも、細々とした掃除のための道具が入っている。
「まさか掃除するつもりか?! あの部屋を、何故俺を呼ばん」
 竜児の目が暗闇の中で妖しく光る。夜道でこの目を見たら、どんな生き物だって逃げ出すのではないかと奈々子は思った。
「うわぁ、心底うざいわあんた。さっさと消えな。ほれ、しっしっ」
 大河が、犬を追い払うように手の平を振る。
 明らかに嫌そうな顔で、竜児を見ていた。
106名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:37:30 ID:id2h/p4D

 ふと、大河と奈々子の視線が合う。
 奈々子は竜児の背中に肩を寄せて、大河に微笑みかけた。
 大河の反応が見たかった。
「えっ?」
 一瞬だった。大河が目を丸くして、わずかに口を開く。
 すぐに自分が我を忘れていたことに気づいて、大河は歯を食い縛った。

 その一瞬の反応で、十分だった。
 奈々子には、大河の心中を簡単に察することが出来た。 
 大河は竜児に好意を持っている。
 その反応を見て、奈々子は鼻で笑うように大河を見下ろしていた。
 大河は、そんな奈々子を見て、そっぽを向く。

「あんた、そんなエロボクロ後ろに乗っけて何やってんのよ」
「失礼ね、エロくないわよ」
 内心否定できないものがあったが、一応否定しておく。
「ふんっ、どうせあれでしょ、その巨大な脂肪の塊に、エロ犬の竜児がサカっちゃってるんでしょ」
 大河の言葉に、竜児は眉をひそめた。
「あのなぁ、俺はただ怪我してる香椎を家まで送ってやろうとだな」
「はぁ? なんでそんなことするのよ。大体、どうしてそこのエロボクロがあんたの家から出てくるわけ?」
「別に、ただ今日は一緒に帰って、うちでメシ食ってって、そんだけだ」
「なんでエロボクロを家に誘ってんのよ。あんた、そんなことしてる場合じゃないでしょ。みのりんのことはどうしたのよ」
「それは……」
 竜児が、額を掻きながら視線を逸らした。
 奈々子にとって、その話題は出されたくないものだった。竜児が実乃梨に対して好意を抱いているという事実は、何よりも重いものに感じられる。

「タイガーには関係無いでしょ。ほら、もう家に帰ったら? あたしたちも、行かなきゃいけないし」
「あっそ。私には関係無いもんね。竜児がみのりんのこと諦めて誰を選ぼうが、私が今まで応援してきたことを無駄にしようが、竜児の勝手だもんね。ほんと、中途半端なんだから」
 せせら笑いながら、大河は竜児に向かってそう言った。竜児が苦々しく顔を歪める。
 なんていう酷い言い方だろうと、奈々子は心の中で憤慨した。竜児自身の良心に訴えるような大河のやり方は、どうやら上手く行ったらしい。
 竜児は黙ったまま、ブレーキレバーにかけた指をぐっと握り締めていた。
 今まで竜児が実乃梨に対して抱いていた想いを再認識させ、どのような形なのか奈々子にはわからないが、今まで協力してきたという恩を持ち出してくる。
 こんなやり方はあんまりだ。奈々子は、竜児の気持ちが少しずつでも自分に傾いているのを感じていたが、これでさらに距離が出来てしまったような気がした。
「ほ、ほら竜児くん、行きましょ。タイガーも帰るところみたいだし」
 奈々子が、竜児の背中を軽く叩く。冬の夜は、煮凝りのようにどろどろした冷たい空気で満たされていて、じっとしていると体の芯まで冷えてしまいそうになった。
 街灯に照らされた大河が、顎をあげて竜児の横を通り過ぎていく。このまま帰るつもりなのだろう。

107名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:38:04 ID:id2h/p4D



 奈々子の家に辿り着くまで、竜児は無言だった。何かを話しかけようと思うのだが、奈々子は声をかけることができない。
 竜児は何かを考え込んでいるようで、前だけを見たままずっと自転車を漕ぎ続けていた。
 きっと、実乃梨のことを考えていたのだろう。どれだけ長い間、実乃梨のことを想っていたのかは、奈々子にはわからない。
 わからないから不安になる。それがもし、心の奥底でいつまでも燻り続ける燠火のようなものだとしたら、いつその炎が再び竜児の体を焦がすのか。
 力尽きたと話した竜児だったが、まだ実乃梨への想いを払拭できるほどではないのだろう。
 少しずつでも、自分へ好意が向くようにと努力してきたのに、竜児自身の優しさや良識に訴える大河の言葉で、すべてが振り出しに戻ってしまった。
 大河自身が、竜児のことを好いている。だから、あんなことを言ったのだろう。奈々子と竜児が付き合うことについて、大河はよく思っていない。

 家の前まで着くと、竜児は自転車を停めて奈々子が降りるのを促した。
「自転車、どこに停めといたらいいんだ?」
「こっちの塀の中に停めてくれる?」
 薄い闇の中で、竜児が自転車のスタンドを立てて、鍵をかける。自転車の鍵を、奈々子に渡そうと、竜児はキーホルダーをぶらさげて奈々子に寄越した。
 ぽとん、と奈々子の手の平の中に鍵が落ちる。その渡し方が、奈々子には苦痛だった。手が触れ合わないように、わざわざ上から落としたのだから。
 しばらくの間、奈々子はその鍵を見つめてしまう。上から落とすようなやり方じゃなくて、しっかりと手の平の上に乗せて欲しかった。
 竜児自身は、そんなことを意識してはいなかったのだろう。自転車の前カゴに入れていたバッグを持って、それも奈々子に渡そうとしていた。
「ねぇ竜児くん……。ちょっと肩貸してくれない? まだ、足が痛くて……」
 そんなのは嘘だった。別に、家の中に入るまで5,6歩進めば十分なので、肩を借りなくてもなんとかなる。
 けれど、今は竜児に触れていたかった。竜児は快く応じてくれて、奈々子の隣に立つと、奈々子の腕を自分の首に回した。
「ごめんね、面倒かけちゃって」
「気にすんなよ」
 竜児の肩に体重を預けて、奈々子は左足に体重が乗らないように少しずつ前へ進む。スカートのポケットから、家の鍵を取り出して開錠した。
 家の中に入ると、足元にあった赤外線センサーが作動して、玄関をわずかな明かりが照らす。
 竜児から体を離して、奈々子は竜児のほうへと体を向けた。
「寒いから、閉めてよ」
「ん? ああ」
 開けっ放しにしていた玄関の扉を、竜児が後ろ手で閉めた。
108とりあえずここまで:2009/04/14(火) 04:39:06 ID:id2h/p4D


 奈々子は、竜児から借りていたコートを脱ぐと、竜児に手渡した。
「その上から羽織ったら?」
「いいよ、そんなに寒くねぇし」
 十分に寒いと思うのだが、竜児は着るつもりはないようだった。丁寧にコートを畳んで腕にかけている。
 本当は、コートもマフラーも、返したくない気分だった。竜児の匂いがするこの服を、しばらく持っていたいと思った。
 けれどそういうわけにもいかないだろう。
「じゃあマフラーくらいは巻いていってよ。それじゃ寒すぎるわ」
 奈々子は、竜児から借りていたマフラーを手でくるくると外すと、竜児の首に巻いてやろうと手を伸ばした。すると、竜児が慌てたように一歩引いて、手で制止しようとする。
「いや、自分ですっから」
「いいの、ちょっと黙ってて」
 足元を照らしてた明かりが、一定時間が経ったせいで消えてしまう。真っ暗になった玄関で、奈々子は竜児の首にゆっくりとマフラーを巻いていった。
 抱きつくように腕を伸ばして、二回ほど首に巻きつける。そして、奈々子は竜児に体を寄せた。
 竜児の首に回した手を、自分のほうへと引っ張る。痛む足で、なんとか爪先立ちになると、竜児の唇に、自分の唇を重ねた。
 ほんのひとつ、時間が積まれた。唇が離れると、竜児がよろめいて、後ろに一歩足を出す。その瞬間に、再び足元を照らしていた明かりが点いて、ぼんやりと竜児の顔が浮かび上がった。
 竜児は目を瞬かせて、唇を手で押さえていた。

「お、おおお、お」
「キス、しちゃった」
 奈々子は悪びれる様子もなく、微笑んで見せた。
 竜児が、唇に手を当てたまま視線を床に落とす。うろたえているのか、瞬きの回数が多かった。
「いきなりこんなことされて嫌だった?」
「いや、別に、そういうわけじゃ……」
 マフラーを掴んだまま、奈々子は近い距離から竜児の顔を見上げた。見ているだけで、腰が燃えてしまいそうだった。
 体の中から湧き上がる熱が、顔まで昇ってきて奈々子の頬を赤く焦がす。肺の一番底から出てくるような暖かな息が唇の間から漏れた。
 この唇を、ほんの少しの時間だけ竜児の唇に触れ合わせた。冷たい空気に触れてかさかさになった唇だったが、そこからは炎のような熱いものが伝わってきた。
 臍の下あたりが、きゅうきゅうと締まってくる。竜児にもっと触れ合っていたいと思った。その体に、自分の体を預けて、抱き締めて欲しかった。
 けれど、この人には他に好きな人がいる。その人への想いを、消火することも出来ずに、胸の奥で小さな種火を燻り続けさせていた。
 その炎を消してしまいたい。そして、新しい炎で竜児の心を焦がしてしまいたかった。

「ねぇ……。今日はお父さんの帰り、遅いの」
 奈々子は竜児の目を見据えながら、小さな声で囁いた。
 竜児と視線が絡み合う。薄明かりに照らされた竜児の顔は赤く、瞳は漆塗りの器のように鮮やかに光っていた。
「……あたしの部屋に来ない?」
 竜児が、息を飲んだ。



109名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 04:41:00 ID:2R5ZYRNJ
乙です
110名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 06:45:03 ID:jkAGamzM
間が長かったから無いかと思ってたらちゃんと続きが、嬉しい誤算GJ
そして北村の空気の読めなさは良い仕事だった
111名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 06:50:27 ID:KHTEpjtb
奈々子様の猛攻がすごすぎる
呂布の無双を見ているようだ
112名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 07:45:52 ID:4n+8fRTR
>>72-108
GJ!
奈々子…… 恐ろしい子!!
113名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 08:04:36 ID:krQieMcx
ななこい最高や
もう一生ついていきます
114名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 08:12:20 ID:MzdJGvom
奈々子様キタ━━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

GJ!!
続きも期待してます!!
115名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 09:16:04 ID:us2kBMkn
ななこい来たーーーー!!
ホント待ってました^^

GJ!!&乙です

これからも応援してます!!
116名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 09:59:49 ID:KPv0E7zC
うおおおおおおおおおおお
ななこい待ってました!!!!!
神GJです
117名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 10:49:15 ID:RRVBAyx1
奈々子様たまんねぇ・・・ GJ
118名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 13:36:05 ID:L7/KBfW6
>>72-108
うわあ…凄いね…
一枚も脱いでないのに半端ないエロさだったな…
それに、エロいだけじゃなくてインコちゃんに名前を呼ばせるくだりなんて、
物語の中の流れ的にも凄く秀逸だったと思う。
GJ!

119名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 13:42:52 ID:8ZuGQmJQ
タイムマシーンで次回の投下日までひとっ飛びしたいお
120名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 13:53:15 ID:LrtM7+hg
>>119
嬉しい事言ってくれるじゃないの
俺も続きが気になるんだぜ
121名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 14:01:13 ID:eo8pg6C7
>>48-60の「伝えたい言葉」といい、>>72-108の「ななこい」といい、
過激なエロ描写で知られるシリーズものが、今回はそろって”溜め”の回ということで
おらなんかワクワクしてきたぞ
122名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 16:15:18 ID:EAcQ44xB
ななこい最高に面白いんだけど
やっぱり奈々子様視点だと三人娘は邪魔者に見えちまうんだな……
亜美との仲もギクシャクしそうなふいんきもあるしな
123名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 16:20:33 ID:bnGIqMvY
>>122
>ふいんき
なぜか変換(ryって書いてくれないと突っ込みたくなるぜw

その辺も含めて作者に期待すればいいじゃん? 全部丸く収まるってのもアリだけど、ある
程度わだかまりが残る終わり方もアリでしょ。現実ではそういうのの方が多いし
124名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 16:48:13 ID:J3+sTZRl
女の子が堂々と女の武器を使って落としにかかる話が大好きだ
125名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 18:20:49 ID:czlaBrDd
全裸待機のし過ぎで風邪をひきました。どうしてくれる
もうみんなGJ
126名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 19:10:48 ID:KPv0E7zC
もう一回もう一回のところは思わず笑った
127名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 20:12:46 ID:voAo2EsR
バレ氏からスピンオフアニメ化の話でたみたいだが
マジバレであってくれ!
12898VM:2009/04/14(火) 21:09:43 ID:l12bsPwo
>>72-108
とても丁寧な描写で素晴らしいです。
奈々子ちゃんがいろんな意味でとっても女の子らしいですね。
あと、亜美の負け犬っぷりが実に板についてて素晴らしいw
GJです。
129名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 21:20:37 ID:VX/owwYE
また奈々子様で悶える日々が始まるお
130名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 21:28:31 ID:7n5/Jt3b
>>108
GJ。大切なことだからもう一度言う。GJ
131名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 21:47:28 ID:CLd1wHZk
ななこいヤベエw
他の人も言ってるが、竜児と奈々子を名前で呼ばせるフラグ立てが巧かったなぁ。

あとは、亜美の先手を取った奈々子が、本気を出した亜美っぽく見えたw
132名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:06:29 ID:ymKHpOxZ
ななこい…漲ってきたぁああwwww
GJ!
133名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:11:48 ID:y/OaqUXl
まとめサイトって更新されてる??
もし更新とまってるなら新しく創ろうか??
134名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:14:45 ID:vFT6SYOQ
>>133
前もこんな感じであいたから、もうちょい様子見でいいんじゃないか?
135名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:17:12 ID:sG0Q6vPh
ふ・け・つ・よぉ――――――――――――――!
136名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 22:30:47 ID:cdy6nV7B
ななこいいいよななこい

続きも期待してるぜ!!
137名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 00:13:34 ID:xo9R8kv7
>108
大雨で停車してる電車のなかで読み耽ってしまった
思わずニヤニヤしちまってる俺キモス

マジやばいくらい奈々子様カワユスエロス
次回はこのまま一気に行っちゃって欲しいぜ
138名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 00:47:03 ID:tXWmFSIn
タイガーも好きだし奈々子様も好きな俺には辛すぎるぜ……
139 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:37:55 ID:4HQUbbX8
皆さんこんばんは。
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下します。
前回の感想を下さった方々ありがとうございます。
励みになります。
では次レスから投下しますので、よろしかったら読んでやってください。

140 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:39:02 ID:4HQUbbX8
[伝えたい言葉(5)]

私は彼の頬を優しく撫でる。
手の平で形を確かめる様に何度も何度も…。
互いに見詰め合って、鼻先でつつく。
「ん…。良いよ、高須君がしたい様にしても」
そして彼が迷いつつも背中に回した手。
…それは高須君が私と触れ合いたいと勇気を出して伸ばしたサイン。
「ん…。ん、んう。ふ…、あ」
それを感じて私は高須君の唇を啄み、
重ねた唇で彼を誘い出す。
『カッコつけたり、気を使わなくたって良いんだよ?
私に高須君の弱い所を見せて…』
と言わんばかりに、言葉では無く行動で示す。
甘く吸い、続けて唇でノックする。
高須君が私にノックを返してくれるまで繰り返す。
「あ…ふ、んむ…んっ。ん…んん」
しばらくすると高須君が恐る恐るながらノックを返してくれる。
母親に縋りつく幼児の様に私を抱き締めて…。
私は顔を少しだけ横にずらして、彼の口内に舌を潜り込ませる。
「ふっ…ちゅぷ。くちゅっ」
それを受け入れてくれた高須君が愛しくて、彼の頭をしっかり抱く。
そして奥へ奥へと侵入させると、私の気持ちが徐々に高揚していく。
暖くて甘酸っぱい高須君の味。
先程食べていた物の味だと分かっていても……甘い。
141 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:40:04 ID:4HQUbbX8
「ちゅっ…く。ん…ふ、あ…、ちゅっ!ちゅぷっ」
舌を絡ませて、ゆっくり彼の口内を蹂躙していく。
『私はここに居るよ…』
そう分かる様に舌の表明で頬肉、歯茎までねっとりとねぶる。
教わった訳ではないのに、こうやったら安心させてあげれると知っている。
同時に唾液も送る。
以前、私に彼がしてくれた様に…今度は私が教えてあげるの。
これが川嶋亜美の味。
甘えん坊になれる味だよ。
ってね。
「んっ…んんぅ。ちゅくっちゅっ。ぴちゃ…」
その次は舌先で彼を絡め取って唇で甘噛みする。
『守ってあげる。だからおいでよ』
と、更に強く抱き締めて優しく吸い付く。
時折息継ぎをしながら、時間を掛けて彼の理性を外していく。
良い意味で…ね。
「ちゅっ!………んっ。高須君、お部屋に行こう?」
最後に一回、短く舌に吸い付いて私は先程した様に額を重ねて囁く。
「お、う…」
蕩け始めた顔で返事を返す彼の手を握って起こし、そのまま手を引いて部屋の中に入る。
カーテンが閉められ、暗い部屋。
綺麗に整えられたベッドの上に彼を座らせて跪く。
私は部屋着のスウェットの中に手を入れて身体を撫でる。


142 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:41:03 ID:4HQUbbX8
「暖かいね。トクントクンってしてる…」
お腹から脇腹へ…何往復もさせて擦った後、
その手を背中に回して胸に頬を寄せて呟く。
ぎこちない手付きだけど、高須君を想いやる気持ちが自然と私をつき動かしていく。
本能で知っているのだ。
相手を慈しむ時の気持ちを…。
そして、そのまま両手でスウェットの上を脱がす。
露わになっていく男の子の胸板…カッコいいね。
「ちゅっ!ちゅっ!…あ、ふ…」
私は甘く口付けをする。
まずは鎖骨の下。
求愛の印を刻む為に…。
でも公には出来ないから…本当は首とかにしたいけど…ここなら良いよね?
「んっ…!ふっ…、ちゅっっ!」
そこに舌を這わせて数度啄んだ後、強く強く吸い付く。
同時に両手を背中に回して強く抱き締めて、そのまま押し倒す。
「ふ…あ、あむっ。ちゅくっ」
「っ…う。うぅ」
続いて舌を下に這わせる。そこは可愛い可愛い高須君の乳首…。
焦らす様に一舐めすると高須君が甘い吐息を洩らす。
男の子もココ気持ち良いんだ…、それとも高須君は特別弱いのかな?
ちょっとした発見に私は嬉しくなる。
また一つ高須君の事が分かっちゃった。


143 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:42:03 ID:4HQUbbX8
「ちゅっ!ちゅっ!ちゅぱっ」
彼の足の間に身体を割って入りイジメ続ける。
唇で甘噛みし、舌先でチロチロ。
こうされたらゾクゾクってしちゃうでしょ?
おちんちんが段々おっきくなってきて、お腹に当たってるもん。
優しく吸いながら左手を背中から胸に滑らせて、指先で乳首を転がす。
今だから言うけど、一人でしちゃった時のオカズは…こうやって高須君をイジメる事を想像したんだよ。
「っふ。ちゅくっ。んん…ちゅ」
それを思い出すと私の身体が熱を帯びる。
また高須君に愛し合えるんだ。
あの痺れる甘味を貰えるんだ。
って、お腹の中がジンジンと疼くの。
「んう?…ふふっ。ちゅぴ…ぴちゃぴちゃ」
高須君が私の頭を撫でてくれる。暖かい大きな手で…。
御褒美を貰って私は嬉しくて愛撫にも熱が入る。
爪先でコリコリになった乳首を弾き、印を刻んだ時と同様に強く吸い付いて、舌で溶かす。
そしてお腹でおちんちんをスリスリ。
すると高須君がヒクンッてなる。
「か、わしま…っくふ。気持ち良い…ぞ」
その言葉を聞いて私は次の段階に進む。
彼が『寂しさ』や『辛さ』から逃避したくて、
私と触れ合っているんだと理解はしている。

144 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:43:07 ID:4HQUbbX8
でもね…心がポカポカと暖くなる。
大好きな彼と戯れ合う事が出来て嬉しいんだ…。
だから二回目なのに…大胆になれる。
淫乱の様に…。
「んっ…おっきくなってるね」
そう言いながら左手を胸からスウェットに動かして、おちんちんを撫でる。
「川嶋の舌が…気持ち良いから…おぅっ」
人差し指を上から下にツツッと滑らせて根元を摘んで揉む。
「そっかぁ…。じゃあ、もっと気持ち良い事してあげるね」
元気になったおちんちん形を確かめる様に手の平で優しく撫でる。
一回、二回…何回も愛情を込めて揉みしだく。
そして、スウェットを下着ごと脱がした後…私も衣類を脱ぎ捨てて下着姿になる。
淡い水色の下着…フリフリなレースも付いてて可愛いでしょ?
高須君の為に、一番のお気に入りを穿いて来たんだよ…。
「ん…ふ。ぴちゃ…ちゅく」
「…はぁ。んん…、ふっ」
手でおちんちんの根元を支えて、下から上へ舌を這わせ、
ジワリジワリと強く…舌の表面で可愛いがる。
高須君の腰が微かに跳ねた。
「ぴちゃぴちゃ…。っん…、ちゅくっ」
おちんちんの頭の下まで達したら、舌先で小刻みに舐め回す。


145 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:44:05 ID:4HQUbbX8
先っちょや張り出した所、そういった敏感な部分をペロペロと愛撫してあげるの。
そう…この前は時間が無かったから、今日はたっぷり時間を掛けて溶かしてあげる…。
嫌な事なんて忘れてしまえる様に…。
「ふ…っ、ちゅっ。ん…う」
竿を横笛を吹く様に甘く吸いながら、舌を絡ませてみる。
唾液を含ませた唇を滑らせて、あむあむと食べてあげると高須君…堪らないって…。
押し殺した声で喘いでいる。
「…ほらぁ、逃げちゃ駄目だよ。ん、ん」
快感から思わず腰が引けてしまっている高須君。
その腰を手で引き寄せて、おちんちんの先に口付けする。
でも支えが無いから焦点が定まらない。
仕方無しに片手で腰、もう一方の手でおちんちんの根元を揉みながら支える。
「川嶋…なんかエロい……っう!」
その様子を見ていた高須君がそう呟くので、私は
「高須君はエッチなの…嫌?」
と聞いてみる。
凄く甘えん坊なチワワの声で、ね。
「い、や…どちらかと言うと好き……だな。
…川嶋がしてくれるから…っ…良いのかもな」
「ふふっ♪高須君はお世辞が上手だねぇ?…実はね、こういう事…また高須君としたかった」


146 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:45:02 ID:4HQUbbX8
おちんちんの先を舌先で優しく舐めた後、私は続ける。
「だから高須君がして欲しい事、いっぱいしてあげる。
もっと…私にエッチな事教えて。ねっ?」
そう言うとおちんちんがヒクンッて…可愛くなっちゃうの。
「お、俺も…川嶋の事知りたい…」
素直に言えた御褒美に口内に、おちんちんの頭を含んで、ねっとりとねぶり回す。
予想していた以上に、彼は私を見ていてくれたと分かったから…。
「ちゅぷっちゅ…ぷっ。ちゅくっ!ちゅぱ!」
徐々に吸い付いて、おちんちんを呑んでいく。
少し進んでは戻り、また奥へジワジワと…。
「ちゅぷっ、ちゅくっ!ちゅっ!ちゅぱ」
舌で絡め取り、彼の体液を啜る。
我慢出来なくて漏れたエッチな男の子の味…。
ちょっと苦い……けど嫌いでは無い。
何より高須君のだもん。
『美味しいよ…』
「ちゅぷっ!ちゅぱ!ちゅっ!ちゅうううっっ!!」
「っくあっ!あ、ああぅ…か、川嶋ぁ…あ!」
おちんちんを上顎にズリズリ擦り付けて、頭の下を舌で蹂躙する。『高須君のエッチなお汁…もっと頂戴』
って強く強く吸っておねだりしてみる。
そして私はこの状況に発情していく。


147 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:46:12 ID:4HQUbbX8
アソコがジンジンと熱くほてって、
下着を濡らしていっているのを感じ、太股をモジモジと擦り合わせて我慢。
頑張ったら、きっと御褒美をくれる。だから我慢しよう。
ブラの中で乳首が痛い位に硬くなっているのも分かる。
一度サカリがついちゃうと…切なくなる、覚えたてのキモチイイ事をして貰いたくなるの。
「ちゅばっ!んん…ちゅばっ!ちゅっぷ!ふ…じゅっ!」
激しく抽出し、ねぶり、愛情たっぷりの愛撫で高須君を溶かす。
「っうあぁ!!も、もう…で、そう!」
息も絶え絶えに高須君が訴える。
だからラストスパートに目一杯呑んでおちんちんを包み、舌でチロチロ。強く吸って、擦ってあげる。
「ちゅくっ!ちゅぱっ!ちゅぱっっ!ちゅっ!っん!ん…ん、んう…」
高須君が達して私の口内に射精する…。
熱い…。
結構勢いがあるんだ…。ちょっと噎せそうになる。
かと言って途中で口を離したくはない、全部出しきるまで舌で舐め続ける。
だって高須君の精液だもん…。
教えてって言ったんだもん…。
ふふっ…こんな事してあげるのは高須君だけだよ。
私は手でおちんちんの根元を扱いて手伝ってあげる。断続的に愛撫しながら…。

148 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:47:06 ID:4HQUbbX8
レディコミだか何かでこうしていたのを思い出して、同じ様に後戯する。
出る物が無くなってもヒクンヒクン…。
おちんちんの頭に一回優しく口付けして、私は……口内で精液を転がす。
粘り気が強くて熱くてほんのり苦い…何だかエッチぃ味…。
確か飲んであげると男の子って嬉しいんだよね?
私は喉を鳴らして精液を咀嚼する。
喉に絡み付いて、なかなか飲み込めない。
でも、ゆっくりゆっくりね、う…苦い。
「んくっ…。っは…あは、飲んじゃった」
何て言うんだけ?
ああ…『ゴックン』だ。
それを高須君に見せながら私は微笑む。
唇から零れた残滓を指で掬って、悪戯っぽい上目遣いで彼を見ながら舌で舐め取る。
「はあっ…、ふ。わざわざ飲まなくても…」
身体を起こした彼が私を惚けた顔で見詰める。
「え…でも男の子はゴックンした方が嬉しいって聞いたんだけど……駄目?」
もしかしたら高須君は嫌だったのかもしれない。
はしたなかったかな…。
ちょっと心配になったので聞いてみる。
「いや…。あれだ……嬉しいけど…マズいだろ?多分…。でもありがとうな…」
そう言ってくれてくれたので私は堪らなくなる。
喜んでくれた…。良かった。
と…。

149 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:48:04 ID:4HQUbbX8
「ふふっ♪高須君…」
私はベッドによじ登り、彼の膝の上に跨がる。
「頑張った御褒美を頂戴。何しても良いよ?…高須君のしたい事しても良いから」
対面し、彼の首に腕を回して御褒美をおねだりしてみた。
「おぅ。ちょっと寝かせるぞ、よっ…と」
私は彼に抱えられベッドに寝かしつかされる…。
今更だけど、やっぱり恥かしい…。胸がドキドキしてる。
乳首を硬くし、濡らしているのを知られたら…高須君どう思うんだろう?
「あ…」
だがそんな事はすぐに霧散してしまう…。
彼が頬を優しく撫で、唇に口付けをしてくれたから…。
ほんの僅かだけど大河にだけ見せていた優しい顔で、
実乃梨ちゃんにだけ送っていた熱の込められた瞳で……私を見てくれた。
そして…自分から進んで私に口付けしてくれた。
その事実に私は目の前にピンクの霞が掛かり、思考がトロトロに蕩けていく…。
一番の御褒美だよ…。
「ん…ふぅ。んっあ…、は……ふ」
口内に侵入しようとする舌を迎え入れて、積極的に絡める。
先程より甘く…身体の奥が痺れる快感。
愛撫されている訳じゃないのに、疼きが増して堪らなくなる。


150 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:49:03 ID:4HQUbbX8
『発情期のばかちー』
に私はなってしまう…。
視界がトロンと蕩けて、夢中で彼を追う。
「っふ!…んん、あ…。んっ!」
口内で小刻みに彼が私と戯れる。
それを私は舌に甘く吸い付いて返す。
そうすると彼が…私の唾液を啜る。
そして…ブラを外される。
器用に片手を背中に潜らせてホックを外したの。
母親の物も洗濯してるから構造とかには馴れているのだろう。
…ちょっと妬けるね。それが母親だといっても…。
首から背中に手を動かし、軽く爪を立てて八つ当たりしてみる。
痛くない様にほんの少しだけ…。
そうやって『気付いてよ』と訴えかける。
別に彼女でも無いんだから妬くのは筋違いだよね。
分かってる…。仕方無いもん。
けど妬いちゃうのは女の本能だから…大目に見て。…ねっ?
「んっ、あ…あぁっ。ひうっ」
乳首を親指の腹で転がされる。ピリピリと痺れる刺激。
反対の胸に顔を埋めて、優しく舐められる。
我慢して刺激に飢えた身体に彼が愛撫してくれ、熱く蕩けていく。
「あ…、っくふ!やあぁっ…っん!」
小刻みにペロペロ舐められる、待望んだキモチイイ事。
快感に少し背中が反ってしまう…。

151 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:50:36 ID:4HQUbbX8
「ひあっ!…あうぅっ…、あんっ!」
乳首を摘まれて転がされ、ちゅぱちゅぱと反対の乳首を吸われる。
手の平で胸を揉まれ、時折噛まれる。
その度に私は甘く啼いて身体を捩らせる。
『そんなに吸ってもおっぱいは出ないよ…』
母性をくすぐられ、ふとそんな事を考えてしまう。
彼の頭を抱いて、髪を手櫛しながら背中から沸き上がる震えを耐える。
「あっ!はっ!はっ!…んうぅ!あはぁ…」
強く吸われ、舌で激しくねぶられる。揉みしだかれて乳首を弾かれる。
私は蕩けきった声で啼く。
胸だけでこんなになっちゃった…。
欲求不満とか以前に、やっぱり高須君がしてくれるから、気持ち良くて堪らなくなるのだ。
「んあっ!あ…っひ!あっあっ!ら、め…!」
続いて反対の乳首が吸われ、同じ様に愛撫される。
切なくて太股を擦り合わせて耐えているのは先程と同様。
だが御預けを食らっている気分になる。
下も触って欲しい…。
でも『好きにして良いよ』と言った手前、おねだりはしちゃいけない。
私は切なげに啼いて、彼の愛撫に身を任せるしか出来ない。
高須君の身体の下で必死に求愛の喘ぎを洩らすだけ…。


152 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:52:04 ID:4HQUbbX8
「はっう…っ!っん!んんっ!」
乳首の先がジンジンする。いっぱいして貰っているのに…
『まだ足りない』
と高須君に自己主張している。
暖かな柔らかい舌が這い、絡め取って、唇で摘まれ、強く吸われる。
胸に五指を埋め、思うままに揉みほぐされ、搾られる。
快感の波が絶え間なく襲い、身を捩らせて蕩けきった顔と声で喘ぐ。
「ひあぁ…やっ!っん!あっ!あっ!」
熱に浮かされて彼に抱き付き、瞳に涙を浮かべてしまう…。
彼の庇護が欲しくてわざとしている訳じゃない。
ただただ切なくて疼いて…彼に甘えるのが精一杯で…。
汗ばんだ身体を寄せて、高須君の腰に足を絡ませる。
高須君の辛い事を全て受け止めて、少しでも分かち合おうと彼のサインを拾う。
『上手…だよ。気持ち良い…』
と紡ぐ代わりに頭を撫で、首を反らして浅い呼吸で啼く。
チワワはチワワでも、つがいのチワワの気持ちで…可愛い高須君を褒める。
それは態度と仕草で…。
「っくふうっ!!っん!ん…、……あ」
乳首を噛まれ、身体に電気が走る…。
その電気を私は知っている。
達した時に流れる甘く痺れる電気だと…。
軽くだが達してしまった…。

153 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:53:01 ID:4HQUbbX8
一瞬だけ目の前が白くなって息が詰まる。
私はそれを自慰した時に知った…。
「お、おい…大丈夫かよ?」
私の反応が変わった事に驚いた高須君が問い掛けてくる。
乱れた呼吸を調えつつ、渇いた喉を唾液を飲み込んで潤す。
彼に達せられた事が堪らなく嬉しい。
「ん…高須君が上手だから……
亜美ちゃん、ちょっとだけイッちゃった…」
彼をしっかり抱き締めて優しい声で囁き、頭に頬を寄せて撫でる。
「……おぅ。川嶋…って暖くて…良い匂いだし、柔らかいな。
なあ…少しだけで良いから、このまま撫でて貰って良いか?」
高須君が進んで甘え始めた。
私は天にも登る気持ちを抑えて
「良いよ…甘えちゃえ」
と、更に強く抱いて頭を撫で、手櫛を続ける。
寄せた頬を擦り付けて、右手でポンポンと軽くあやして…。
造り物では無い慈愛の心で包んで癒す。
だけど高須君が見て無い所で、私はほてった身体を持て余していた。
そう。自分の身体を焦がす強い欲求に耐えながら…。


続く
154 ◆KARsW3gC4M :2009/04/15(水) 01:54:02 ID:4HQUbbX8
今回は以上です。
続きが出来たら、また来ます。
では
ノシ
155名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 02:06:58 ID:9stSgAqr
>>154
まさにGJっ!
156名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 02:09:04 ID:vNB/tA8s
GJ!!こ・・このスレすげえぞ・・
支援あげだ!!
157名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 02:56:45 ID:kbsp91As
>>154
エロすぎてしょうがない!
その文才をここで遺憾なく発揮してくれ!
臨場感がたまらんよwホントGJ!
158名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 03:08:19 ID:B1E59DUU
最高っ!!!
159名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 07:24:25 ID:Oj3Iovpt
「伝えたい言葉」の亜美は母性増量でエロさも増量だと、マザコン竜児はイチコロだな
今回の「ななこい」の続きを読んで、アマガミの隠れキャラを思い出した
160名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 13:22:39 ID:ymfaycVB
>>154
挿入してないのになんたるエロさ!!GJ!
161名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 21:42:19 ID:lipsL6n4
エロパロっぽくなってきたなぁ
GJ!
162名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 23:18:19 ID:NAXma/WB
母性を上手に表現できてますね
arigataya arigatya
163名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 00:24:04 ID:gz3sb1rL
支援あげ
164名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 00:58:23 ID:9GtZTLx4
あげって支援でも何でもないわな
165名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 02:55:25 ID:QQLTzhHw
ただの荒らし依頼だーね
166名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 04:10:09 ID:bSMoHpdt
奈々子様よんでて
昔あんなふうに人妻に言い寄られたなと思い あれ誰だこんな時間に
167名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 05:29:22 ID:6YZ20g3o
前スレの北村のAAを見たらこんなん思いついた。
168LA・北村:2009/04/16(木) 05:30:53 ID:6YZ20g3o
 狩野すみれは心のそこから驚いた。
アメリカに留学してから1年と少し。これほど驚いたのはこちらにきてからはじめてのことだった。
仕事を追え、研究室からまっすぐ帰ってきた狩野は、シャワーを浴びるとすぐにベッドに向かった。
 部屋の中は静かで薄暗い。すでに時刻は十二時を回っており、部屋の明かりといえば、ベッドサイドにあるランプが明るく光っているだけだった。
ワンルームの部屋の中にはベッドと机が置かれているだけのシンプルな部屋。
 ごちゃごちゃと家具を置くのはあまり好きではない。仕事や研究を行なうための机と、身体を休めるためのベッドがあれば十分だった。
アメリカンサイズの大き目のベッドに、狩野は静かに腰を下ろした。ベッドに腰掛けながら、寝巻きであるYシャツに腕を通す。

「寝るか……」

もう夜も遅い。明日も朝から、研究所で仕事がある。
 狩野は、ベッドサイドに置かれたランプを消すため、手を伸ばした。
指とスイッチの距離が数センチまで迫ったとき、狩野はふと気配を感じた。
 何かが動く気配と、小さな物音がすぐ近くで聞こえる。
 気配と物音は、自分の正面、伸ばしている足の向こうから、確かに感じた。
伸ばしていた手を止め、顔を上げて正面を向く。
 伸ばした足の先には、ランプの光が届かない、暗い夜の色があった。
 そしてその色の中に、はっきりとした形をもった何かが、こちらをじっと見ていた。
169LA・北村:2009/04/16(木) 05:33:11 ID:6YZ20g3o
「会長、お久しぶりです……」

暗い部屋のなかで、はっきりとした声が聞こえた。
 そして自分を呼ぶ声。名前でなく、高校にいたときに親しまれていた名称で。
あまりの突然の事態に、狩野は体がびくっと動いた。
 声こそあげなかったものの、悲鳴に近いものが喉のすぐそばまで来ていた。
 その言葉が、きゃっとか、うわっなのかは分からないが、普段の自分なら絶対に出さないような言葉だったに違いない。
 忙しく動く心臓を落ち着けるため、狩野は1回だけ、深呼吸をする。
 それだけで、乱れていた心がすっと収まり、いつもの平常心が戻ってくる。
 そして、平常心を取り戻したことを確認すると、腹に力を入れて、大声を出した。

「お前はそこで、一体何をしているんだ!!」

部屋の中に狩野の声が広がった。
 静かな夜の空気を壊すほどの大音量。
 当然、部屋の外や、隣人にまで聞こえたことだろう。しかし、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。

「お久しぶりです、会長!」

ベッドの正面にいる人物が再び挨拶を返してくる。第一声と変わらず、淡々とした口調で。
170LA・北村:2009/04/16(木) 05:34:54 ID:6YZ20g3o
「そんなことはどうでもいい!北村、お前何故ここにいる!?」
「会長、お静かに。もう夜中ですから」

狩野の大声に、正面にいる男が小さな声で注意してくる。

「質問に答えろ!なんで、お前が、私の部屋の中にいるんだ!!!」

狩野は少しだけ声を落としてから再度北村に問いかけた。
 薄暗い部屋の中。明かりといえばベッドサイドのランプのみが光る部屋の中で、正面に立つ北村祐作は、落ち着いた表情でこちらを見ていた。

「会長が留守の間にお邪魔しました。鍵は大家さんにいったら開けてくれました」
「何故お前がアメリカにいる!」
「会長を追いかけるために」
「では……」

頭の中に浮かぶいくつのも質問を押しのけ、最大の疑問を狩野は口に出した。

「何故、お前は私の前で素っ裸でいるんだ!!」

最大にして、理解したくない質問を大声で放つ。
 狩野の目つきと表情は、自然と険しいものになる。
 それもそのはずだ。日本にいるはずの人物が自分の部屋にいるのも不可解ならば、一糸まとわぬ裸でいることも理解不能なのだから。

「会長にお会いできる喜びから、嬉しくなって脱いでしまいました」

北村が腰に手を当ててポーズをとってくる。

「あとは、趣味です」

暗い部屋の中でもよく分かるほど、引き締まった体つきをぐねぐねと動かしてくる。
 ソフトボール部に所属していることは知っているが、1年以上前に見たときより、体つきはさらに成長したようだ。
171LA・北村:2009/04/16(木) 05:38:33 ID:6YZ20g3o
「どうでもいいがポーズをとるな!あと、前は隠せ!!」

くねくねと動いたり、ポーズをとったりしている北村は、一糸まとわぬ身体を目の前にさらけ出している。

「あぁ、これは失礼しました。まだ早かったですね」

そういってどこから取り出したのか。1枚のハンドタオルとさっと取り出し、自らの前を隠す。

「そんなことより会長。会長にお伝えしたいことがあるのです」

北村はそういって一歩足を踏み出し、ベッドに近づいてきた。
 さらに一歩。こちらに近づくにつれ、ランプの光を受けて、北村の全身がはっきりと見えてくる。
 鍛え抜かれた身体もライトアップされるなか、下から光に照らされる形になっているためか、北村の表情がまるでお化け屋敷の演出みたいに見える。

「会長!!」
「なんだ!」
「1年前の答え、今日こそはお聞かせください!」
「1年前……?」

北村はベッド正面ギリギリまで近寄ると、ぴしっと背筋を伸ばした。表情も自然と引き締まっている。

「私は……いえ、俺は……」一度、言葉をきり、北村は深く息を吸う。
「会長、あなたが…………好きだーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

部屋の中はおろか、窓を超えて遠くまで聞こえそうなほどの大声をあげた。あまりの大きさに、耳の中で言葉が響いていた。

「俺がここにたっていられるのは、貴方という人に恋をしたからです!
 それはあの生徒会選挙の場から、このアメリカに移っても変わりはありません!俺は、やはり貴方のことが好きです!!」

 一息に言いきったせいで息継ぎが荒くなっている。

「聞かせてください。会長の答えを!俺は、ここに立っていていいでしょうか?」
172LA・北村:2009/04/16(木) 05:40:55 ID:6YZ20g3o
そこまでいうと、北村はじっとこちらを見つめてきた。
 全て口にしました。あとは、会長、あなたが答えてください、と。口には出さないが、そんな言葉が、北村の放つ気配から感じられる。
狩野は、北村の顔を見て、ふと何かを思い出した。
 その顔にある目が、どこかで見たことのある目だと思ったからだ。
 すぐに思い出せた。1年前の生徒会選挙の時、あの体育館で見たときと同じ目を、北村はしているのだ。
 眼鏡を通してでも伝わってくる、まっすぐで熱い、バカ正直なあの頃と同じ目。
 場をわきまえずに、突然自分に告白してきたときの、あの真剣(マジ)な目だ。
 笑いたくなってきた。あの頃の言葉をそのまま引っさげて、今ここで、また自分に告白してくるとは。
北村に見えないように顔を伏せて、一瞬だけ狩野は笑った。
 そして、次の瞬間には、いつもの表情に戻す。
 顔を上げ、北村の顔を正面からしっかりと、見据えた。そして、口を開く。

「お前が立つべき場所はそこじゃない……」

そういって北村を指でさす。

「会長……」

北村な何かをいいかける。それをさえぎるように、

「お前が立っていいのは」

突きつけていた指を動かし、自分のベッドサイドを指す。

「私の横だ!!」
173LA・北村:2009/04/16(木) 05:43:11 ID:6YZ20g3o
最後はにやりと笑ってやった。自分でもはっきりと分かるくらい、口の端をあげて、北村に笑いかける。

「会長!!」

直立姿勢で立っていた北村が動き出した。
 腕を高く上げ、力強いガッツポーズととる。がっしりとした体格を持つ北村に、そのポーズはよく似合っている。

「会長ーーーーっ!!」

北村が勢いよく宙に飛んだ。そして空中で飛び込みのような形を一瞬で作ると、ベッドにいる狩野にむかって勢いよく飛び掛ってきた。
狩野は、迷うことなく右足を横になぎ張った。遠慮も躊躇も無い、一撃。北村は、まともにその一撃を身体に受けた。

「ぐほっ!!」
「それはまだ早い!!」

夜の遅い時刻。真っ裸のまま床に落ちる北村。
 びたんと、カエルがつぶれたような形でのびている北村を見て、狩野は豪快に笑った。
174LA・北村:2009/04/16(木) 05:49:17 ID:6YZ20g3o
オワリ


原作はまだ1巻しか読んで無いから会長の口調が自信ない……。
っていうかいろいろな部分が不安だ
175名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 05:52:05 ID:7oFwBYOa
北村にルパンダイブは良く似合うwwwそして会長ナイスw
面白かった、GJでした!
176名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 16:12:10 ID:n3AIrCL9
さっき初めて読んだまとめサイトの「本音サミット」すげえwwwゆゆぽ本人かよwwwwwww
177名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 16:21:58 ID:lAIt6d2o
俺は目撃したことあるぞ
高校のとき中悪いと思われてた女子3人がファミレスで口論していたことを・・・
「あれ」がそういう光景だと理解したのは卒業してからのことだった・・・

オトコはああいう共同戦線ってまずないよなぁ
178名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 16:58:53 ID:kpeRNBQM
本音サミット見ちゃうと、あれが本当に3人の本音に見えてくるから怖いww
179名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 17:14:33 ID:s7kSEkNM
>>176
マジなのそれ
180名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 17:22:47 ID:8PSw2BRV
本人が書いてるのかと思うほどクオリティが高いってことでしょ
同士の人を筆頭に、このスレには腕の良い職人さんが多いからね
知らない人にオフィシャルの外伝集ですって言って読ませたら
思わず納得しちゃいそうな、出来の良い作品が揃ってる
181名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 19:12:49 ID:mQOsmF5t
>>180
その突っ込みはおかしい
そのことは当然承知してて、その上でそこまでクオリティ高くねえよって言いたいんだろ
好きな作品はたくさんあるし、出来のいい作品がそろってるってのも同意だけど
182名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 20:08:30 ID:djXJnf27
「ゆゆぽ本人かよ」は良SSだ!
「仕事しろゆゆぽ」はよく訓練された良SSだ!(AA略)

…ってことだろ。巷のオフィシャル公認SSやコミケの同人SS本より
「当たり」に巡りあえる確率は高いけど、ここにゆゆぽが来てる確率なんて
ほぼゼロ、仮にあったらそれこそ「こんなスレ見てないで仕事しろゆゆぽ」だ。

まあラノベ作家の中には「自分のスレ」の動向に一喜一憂してる人も多いらしいけど。
…んな暇あったら仕事しろ。
183名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 20:44:51 ID:ayNy9IeN
まあ…何だ、よく分からんが亜美ちゃんは俺の嫁って事ですね

わ か り ま す
184名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:00:08 ID:Xm+vIU1X
>>183
亜美が欲しければまず俺に認められろ、とかそこにいる上半身裸の男が喋ってたぞ?
185名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:16:22 ID:Eqxkbn6F
本音サミット読んできた
みのりん→クラッシュ女
亜美→周回遅れ女
とか、ヒドス
『妹が産まれたら、手のひらを返すように可愛がりだす大河』
って10巻の内容だよな?この作者エスパーかよ。
実際は、弟だったけど、ほとんど正解だよな。
で、これの続きってまだ更新されてないの?
もしかして、保管庫の更新が止まってる間にある?
186名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:21:35 ID:gz3sb1rL
>>167
うああGJっすww会長いいなあ
2つも作品書いてもらえるなんてほんと前スレAA貼ってよかた。。
187名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:58:18 ID:O3ArnAP4
>>167
GJ!
こういった、情景描写とかが細密な奴の方がSSとして楽しめる。
188名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 22:20:42 ID:BF30fk++
ごめんごめん、良SSだ!の意味ね。
さすがに最近の作者の仕事量を考えるとSS書いてる暇なんて無いでしょw
189名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 22:25:20 ID:XDwSHIoq
>>167-174
GJ! つうか俺も今書いてるssで、「間接照明で下から照らされて影のない裸体」とか
似たような表現してたんで、びっくりしたw
190名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 22:50:05 ID:n3AIrCL9
>>188=>>176です
すんまそん
191名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 14:04:01 ID:QRU+Y/UB
>>174
さすがに口調ぐらい覚えてから書けよ
192名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 14:47:52 ID:jWYxVqNb
>>174
文体が整っていて読みやすいし、情景がリアル。
GJ!です。
あと、色々とあるノイズは気にせず、次の作品も宜しくお願いします。
193名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 20:13:25 ID:cfz+XFk7
大河がインコちゃんのくちばしでイカされてしまう情景が浮かんだ。
194名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 23:08:34 ID:39AI3ivJ
拘束された亜美のまえで、大河、実乃梨、竜児がまぐわってる
彼氏が自分以外としてるの許せるなんて頭おかしいとかわめく亜美
実乃梨の黒い囁きと大河の普段見せない幸せ全開の顔につられ
三人同時にでもいいから同じように自分も愛して、ちゃんと自分も見て、と堕とされる
そんなSSが読みたい
195名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 23:38:16 ID:RfPvt+6o
>>194
言いだしっぺの法則を知ってるかい?
196名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 23:52:17 ID:ZP3IQpQ6
亜美は同情でも受け入れるタイプ
「それって同情?だったら…だったらそれでも良い。」
そんなSS希望。
197名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:10:57 ID:/aMTOdhq
かつてないエロスの予感に俺の服はその役目を放棄した
198名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:17:34 ID:rk88ssR0
>>194
さあ早く書くんだ!
199名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:21:17 ID:W+e8vLdO
満員電車だからスーツを脱ぎ捨てて全裸で正座したくてもできないもどかしさよ
ビクンビクン
20098VM:2009/04/18(土) 02:27:25 ID:MDja+Wsu
>>196

嘘をついた。
高須くんの気持ちを利用した。
なのに・・・
「川嶋・・・ まさか、お前がそんな事・・・ いや、追い詰めちまったのは俺なの、か?」
どうして、君はあたしを罵ってくれないの・・・。
どうして、こんな時まで、優しいんだよ・・・。
蒼い時が流れる。
凍りついたような、愛情も、温もりも無い、そんな空間で。
ただ、時計の針だけが動いている。
「本当に、・・・本当にいいのか?」
搾り出すような彼の声。
「それで、それでお前が・・・「それって、同情? だったら・・・だったらそれでも、良い。」
その先は聞きたくなかった。
「そう、か・・・。」
悲しそうな色をした三白眼があたしを見下ろす。
たった一歩、たった一歩で彼の唇が目の前に・・・。
けれど、それは永遠に届かない。 もう、あたしが手に入れることは無い。
こんな事をしたあたしは、この夜が明けたら、彼の前には居られない。
彼にとって、今までの「川嶋亜美」はたぶん、居なくなるんだ。
彼の手が肩に掛かる。
一枚一枚、あたしの鎧がはがれていく。
真っ暗な部屋の中、不自然なくらいに白い肢体が露になって、微かに息を呑む気配が漂う。
けれど、目の前に居るはずの彼の顔があたしには見えない。
歪んで、形を成さない・・・。
彼の指が乳房を這うのと、自分が泣いているのに気付いたのはどちらが先だったか。
首筋に落ちる唇の感覚。
初めて他人の手を知った乳房。
胸の奥でチクチクするのは、快楽か、それども、後悔か。
いや、いずれ快楽に塗り潰される。
肌をまさぐる指が、吐息が、唇が、一時の天国へあたしを導いてくれるだろう・・・

という感じですか?www
続きのエロシーンは他の職人様におまかせでwww
一発書きなので、ちょっと変かもですが、ご愛嬌。 では。

201名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 02:34:57 ID:6ZFHC7ex
ちょwww仕事はえええwwww
GJですww
202名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 09:17:10 ID:nes2cNsU
ケンカはこちらw
【隔離】場外乱闘専用スレ【施設】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239770078/
203名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 11:52:40 ID:evSeDYA9
>>200
GJ!
204ユートピア:2009/04/18(土) 16:51:49 ID:4EWkvkas
こんにちはです。
次から「太陽の煌き〜U〜」を連投します。カップリングはあみドラ!です。
途中、連投規制になると思うので、そこら辺はご了承ください。
では、行きます。
205ユートピア:2009/04/18(土) 16:53:36 ID:4EWkvkas


太陽の煌き〜U〜









「ねえ高須くん、こんなもんかな?」

「お、おう、そんなもんだな……」

太陽の光が眩しい、とある日曜日の午後。
竜児の家であるアパートの台所、そこには何故かエプロンをした竜児と実乃梨が並びながら何か作業をしていた。
実乃梨の手元を見てみると、完成されたケーキが置かれていた。

「ごめんな、高須くん。オイラ、パフェの盛り付けは数え切れないくらいやったけど、ケーキは作ったこと無いんだよね。働いてるファミレスは業者から買ってたから、皿に載せるだけだったんだよ」

「そ、そうか」

竜児は隣に実乃梨がいるせいか、笑顔が強張っている。
そんな竜児に比べて実乃梨は、今日も太陽のような輝く笑顔だ。

「え〜、では、今から2−Cの文化祭の出し物である『ドラゴン食堂』の、細かい事まで決める会議を始めたいと思いま〜す!」

竜児が声のした方に振り返ると、居間に2−Cの主要メンバーがいた。
大河に亜美に北村は勿論のこと、能登に春田に木原に香椎までいる。テーブルの上にはジュースに竜児特製のフライドポテト。まずは竜児
の腕前を見せるわ、と張り切って大河が竜児に作らせたものだ。

「何でよりにもよってウチなんだよ……」

肩を落としながら言う竜児。
何故こんなことになったかというと、時間は遡る。





 ◇ ◇ ◇





「会議が必要だよな〜」

とある昼休み、竜児、北村、能登、春田の男子四人で昼食をとっていたときに、突然脈絡も無しに春田が言い出した。

「……はぁ?」

当然、何の会議なのか三人は見当もつかないし、そもそも何故春田がそんなことを言い出したのか分からなかった。
三人が訳が分からず呆然としていると、春田が言い出した。
206ユートピア:2009/04/18(土) 16:54:51 ID:4EWkvkas
「文化祭のことを色々と決めないといけないよね。メニューとか、値段とか」

春田が言いたかったのは、文化祭でやる『ドラゴン食堂』の諸々の話し合いだった。
そこで初めて、三人は「あぁ」、と納得することが出来た。

「でもさ、そんなの文化祭の準備って事で、後々決めることが出来るだろ?授業の時間とか放課後を使ってさ。だろ、大先生?」

「その通りだ。文化祭が近づけば午後の授業は全て文化祭の準備の時間に割り当てられるからな。時間が足りなくなるようなことは無いと
思うから、そんなに焦る事は無いと思うぞ?」

「でもな〜……」

能登と北村、二人から言われても、まだ渋る春田。

「何でそんなに早くやりたいんだ?」

「んとね、学校じゃお菓子とか食いながら出来ないじゃん?どうせなら楽しくやりだいからさ、誰かの家で出来ないかな〜って。」

「……」

春田の言い分に問いただした竜児、それに能登がジト目で春田を見る。
どんな理由かと思えば、そんな子供じみた理由か。そんな風に思っているのだろう。
しかし、北村はそうじゃない。顎に手を当てて、「そうか……」などと言っている。

「どうせなら女子も含めてさ〜。亜美ちゃんとか亜美ちゃんとか……」

「結局それが本音だろ……」

竜児が呆れてそう春田に言ったが、春田にはもう聞こえていなかった。自身の妄想ワールドに旅立っていた。アホな顔を更にアホにして、
気持ち悪い笑みを浮かべている。

「亜美ちゃん、大胆だね……ううん、そんな亜美ちゃんでも俺は全然イケるよ……」

聞こえてくる独り言は聞かなかったことにする竜児と能登。アブナイ独り言を言っている春田を意識しないようにして、ぞれぞれ竜児は自
前のお茶を、能登は購買で買ったジュースをズズズと飲む。

「おい皆、決まったぞ!会議の日時は今週の日曜、メンバーは俺たち男子四人に逢坂、櫛枝、亜美、木原、香椎の九人だ!」

春田に気を取られていた二人の耳に、北村の明るい声が聞こえた。

「はあ……?」

訳が分からず、間抜けな声を出す竜児に能登。
春田は未だ妄想ワールドから帰ってこない。
207ユートピア:2009/04/18(土) 16:55:55 ID:4EWkvkas
「そして肝心の場所は、高須の家に決定した!」

「はぁ!?」

北村の言い分に、流石の竜児も声を荒げて驚いてしまった。同時に勢いで椅子から立ち上がってしまった。
そして一気に教室が静かになり、クラスメイトの視線が竜児に集まってくる。しかし、今の竜児にそんなことを気にしている余裕は無かっ
た。
無理も無い。本人の了承も無しに、いきなり家で会議をやることを決定されたんだ。高須じゃなくても、人間なら誰でも怒る、ないしは驚
くだろう。

「ちょっと待て、何で俺の家なんだよ!?」

「何でって、逢坂が高須の家にするって……」

竜児の叫びに、北村は大河の方を向きながら答えた。
竜児も大河の方を見たが、そこには気味の悪い笑顔を浮かべながら、「うへへ、北村君と過ごせる、北村君と……」と、呪文のように唱え
ている大河の姿が見えた。
そんな大河を見て、竜児はため息をつくしかなかった。もはや諦めの境地に達していると言ってもいい。

「しょうがねえ、ウチで良いよ」

「そうか!いやー、やはり高須は頼りになるな!流石は俺の親友だ!」

そう言いながら北村は、女子の方にOKの報告をしに行った。

「良いのか、高須?」

「構わねえよ。その代わり、ウチはボロアパートだから、そこら辺は勘弁してくれよ」

「分かった、把握しとくよ。」

「おう」

そんな感じに話している竜児と能登。
そんな中、春田はというと……

「亜美ちゃ〜ん、ナース姿もめちゃくちゃ似合うよ〜……」

涎を垂らしながら自身の世界に完全に旅立っていた。もう回りは見えていないどころか、音さえも聞こえていないだろう。
アホだった春田の顔は、今や見ることも出来ないほどに気味の悪いものになっていた。

「はあぁぁぁ……」

そんな春田を見て、竜児と能登は一緒のタイミングで物凄く長いため息をついた。







 ◇ ◇ ◇





そんなこんなで、日曜日になって、高須家に2−C主要メンバーが集まった。
そして、竜児と実乃梨は主に料理方面の確認などを行い、他のメンバーはメニューの値段などを決めることになった。
208ユートピア:2009/04/18(土) 16:57:13 ID:4EWkvkas
「うまっ、何なんだよこのフライドポテト!ファミレスとかのより数段美味いぞ!」

フライドポテトを食べた能登が、余りの美味しさに驚きの声を上げる。竜児の料理の腕前は知っていたが、予想の斜め上を行く美味しさだ
った。

「え、ホント?じゃあ俺も……うおお、デリーシャーッツ!」

「春田、それを言うなら『デリシャス』だ」

春田のアホっぷりに冷静なツッコミを入れつつ、北村もフライドポテトに手を伸ばす。
長い半月形に切られ、油で揚げられたフライドポテト。適度に塩がふられたフライドポテトの傍らには相性抜群のケチャップが添えられて
いる。北村はまずはケチャップを付けずに、フライドポテト自体の味を楽しもうとする。

「っ!確かに、本当に美味いな。とても男子学生が作ったものとは思えない。」

口に入れた瞬間に漂ってくる香ばしい香り。外はサクッと、中はホクホク。塩加減も多すぎず少なすぎず、絶妙な量だった。
竜児が作ったフライドポテトは、まさにフライドポテトの理想形であった。

「うわ、本当だ!このフライドポテト超美味しい!」

「こんな美味しいの食べたこと無いよ!」

「ウフフ、高須君って、本当に料理が上手なのね」

2−Cの美少女トリオも、竜児特性フライドポテトを絶賛した。
集まっている7人全員が「美味しい」と言ったのだ。これは絶対に食べる人全員が「美味しい」と思うだろう、と皆は思った。

「これは人が集まりそうだな」

北村が嬉しそうに言った。
そんな北村に、他のメンバーも同意の意思表示として、力強く頷いた。

「いやーいやー、ケーキって意外と作るの難しいね。高須君のフォロー無しじゃ、あたしでも無理だわ」

実乃梨が、竜児によるケーキ作り指南を受け終え、皆がいる居間に戻ってきた。
そして、ピタリと固まった。ある一点を凝視して、信じられないといった顔つきになっている。

「どうしたの、みのりん?」

そんな実乃梨を不審に思ったのか、大河が尋ねた。
そして実乃梨は、大河の問いかけにある一点をビシッ、っと指差しながら叫んだ。

「どうしてフライドポテトが無くなってるのさ〜!?」

そう、そのある一点というのは、空になったフライドポテトの皿。
実乃梨が来る前に、7人はあまりの美味しさにフライドポテトに伸びる腕を止めることが出来なかったのだ。
209ユートピア:2009/04/18(土) 17:00:11 ID:4EWkvkas
「す、すまん櫛枝、つい……」

「悪かったよ……」

北村が後ろ頭を掻きながら、能登が苦笑いを浮かべながら謝った。
他の皆も、実乃梨の落ち込みように流石に悪いと思ったのか、頭を下げながら「ごめん……」と言っている。

「うう、フライドポテトが無くて力が出ない……」

ひざ立ち状態で両手を床につきながら、実乃梨はそんなことを言った。どこぞの顔がパンで出来ている愛と勇気だけが友達の国民的アニメ
のヒーローみたいな言い分だな。顔が濡れても力が出なくなるのだろうか?

「ほ、ほら櫛枝、今からまた作るから、元気出せ?」

後ろから竜児が実乃梨にそう言った。
そして実乃梨は振り返り、慰めてくれる母親を見る子供のような目で竜児を見上げた。

「うう、本当……?」

「っ!?」

反則だった。今のはレッドカード何十枚分の重みがある。それくらい反則だった。
潤んだ目での上目遣い。このダブルパンチにノックアウトされない男子はいないだろう。竜児も例に漏れず、完璧なノックアウト。ハート
には実乃梨が放った矢が突き刺さっている。顔がみるみる内に赤くなるのが分かった。心臓が早鐘のように脈打つ。

「お、おうっ、任せろ、きゅ、きゅしえだ……」

緊張のせいか、かなりどもりながら、あまつさえ実乃梨の名前を噛みながら言った。
苦し紛れの照れ隠し、竜児は前髪を手でいじる。必死に赤くなった顔を隠そうとしている。

「どうした高須、顔が赤いぞ?」

「っ!?」

そんな高須の努力も水の泡、北村の発言により、全員に竜児の状態がバレてしまった。
そんな中、不気味に笑顔を浮かべている人がいた。それは、猫を被っている腹黒な亜美だ。その顔に嗜虐の笑みを浮かべて、目を細めて竜
児を見る。

「あら〜、高須くん、何で顔が赤くなってるのかなぁ〜?もしかして、あまりにも実乃梨ちゃんが可愛くて照れてるのかな〜?」

亜美の発言に、竜児はギョッとなって亜美を睨み付ける。別に赤と緑の螺旋の凄くきれいな色の力で亜美をねじ切ってやろうとしている訳
ではない。驚愕しているのだ。聞く人が聞けば、竜児は実乃梨のことが好きだ、と言っているようなものだ。
実際問題、勘の鋭い香椎は竜児の想いに気づきかけた。

「こらばかちー!適当なこと言ってんじゃないわよ!竜児はただ、またフライドポテトが作れることに喜びを感じて赤くなってるだけなの
よ!」

だが、大河の一言でその勘は消え去った。それほどまでに大河の言い訳は適格だった。日ごろの、掃除などの時の竜児を見ていれば、自然
と頷けてしまう内容だった。竜児が家事に注ぐ情熱は並々ならない量だ。
210ユートピア:2009/04/18(土) 17:00:54 ID:4EWkvkas
「ふ〜ん、まぁ、そういうことにしといてあげるわ」

亜美はニヤニヤ笑いながらそう言って、ジュースに口をつける。
竜児は「はぁ……」と安堵のため息をつく。そして、大河にアイコンタクトを送る。『ありがとう』と。そして大河も竜児にアイコンタク
トを返した。『感謝してるなら今夜のご飯を肉にしなさい』と言っているように竜児には見えた。しょうがねえな、と苦笑いを浮かべなが
ら再びため息をついた。

「じゃ、じゃあ、フライドポテト作ってくるから、少し待っててくれ、櫛枝。」

「うん、分かったよ高須くん。なるべく早くね、ばい菌の男の子とドキドキする女の子にやられちゃうから」

「お、おう……」

実乃梨の言葉に、何とも言えない感情を抱きつつ、フライドポテトを作るために再び台所に戻っていった。






 ◇ ◇ ◇







「えー、では、今からメニューとか値段とかを決めるわけだが……」

と、北村が今日の本題を切り出した。脇道に逸れまくっていたのは、春田が何もしなかったせいだろう。今も笑顔で北村に全てを丸投げし
ていた。春田の無能っぷりに、ここにいた全員がため息をつき、やっぱり春田はアホで無能なんだということを再認識した。

「ぶっちゃけ、これは高須と櫛枝に決めてもらうしかないわけだが、具体的には決まっているのか?」

実乃梨の方を見ながら、北村は尋ねた。
実乃梨は手をあごに当てて、考える仕草をする。

「あたしは、パフェとかケーキとかのデザート系。パフェはバイトで慣れてるから速攻で作れるけど、ケーキは無理」

実乃梨は顔を歪めながら言った。ケーキが作れない自分が不甲斐ないのだろう。人生全部全力投球な実乃梨にとっては、些細なことでも自
分が許せないのだろう。

「じゃあ、ケーキは無理か……」
211ユートピア:2009/04/18(土) 17:02:17 ID:4EWkvkas
「ううん、大丈夫だよ。前もって下拵えをして、後はデコレーションだけするなら、あたしでも出来る。だから、あたしに任せて」

「そっか、なら大丈夫だな」

実乃梨の頼もしい発言に、つられて笑顔になる北村。そして次に、北村の視線は、台所でフライドポテトを作っている竜児に向けられた。

「高須、高須はどんなメニューを考えているんだ?」

「えっとだな、今作ってるフライドポテトに焼きそば、パスタ数種類にサンドイッチを考えてるんだが、どうだ?パスタは事前にソースと
かを作っておけばすぐに出せる。」

北村の質問に、目線は今作っているフライドポテトに注ぎながら、竜児は北村だけではなく皆に問いかけた。

「それだけあれば充分じゃねえの?文化祭なんだから、そんなに張り切ったメニューじゃなくてもいいし」

と能登が同意した。
能登に続くように、他のメンバーも全員が同意した。その様子を見て、北村は満足げに頷いた。

「よし、次は値段の話になるが……」






それから少しして、竜児特製フライドポテトが出来上がった。
油を充分に切ったフライドポテトを皿に盛り、皆の前に持っていく。

「出来たぞ櫛枝。新しいフライドポテトだ」

「よっしゃ!待ちに待ったよジャムおじさん!」

誰がジャムおじさんだよ、と心の中でツッコミつつ、皿をテーブルに置いて、竜児も会議の輪の中に入る。
早速実乃梨がフライドポテトに手を伸ばす。ケッチャップを付けて、一息に口の中に入れる。

「あ、ばかっ、まだ出来立て……!」

「っ!?あふ、あふ……!?」

竜児の忠告も遅かったのか、実乃梨は口を手で隠しながら必死に冷まそうとしている。
それも効果が余り無いのか、熱さに悶え続けている。
212名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 17:02:49 ID:kFG2C6Y/
C
213ユートピア:2009/04/18(土) 17:03:13 ID:4EWkvkas
「ホラ、飲み物!」

竜児に差し出されたジュースを目にも留まらぬ速さで受け取り、全部を口の中に流し込む。
最後に、「ぷはっ」と言ってコップから口を離した。

「あ、熱さで味が分からなかった……」

がっかりしているのか、声がいつに無く小さい。

「ほ、ほら、まだまだあるから、慌てるなって」

「うん、そうだね、もうあんな熱いのは味わいたくないし……」

はあ、とため息をつく。
そして再びフライドポテトに手を伸ばす。今度はさっきの失敗を犯さないように、半分に割って充分に冷ましてから口に入れる。

「うわ、おいしい!ウチのファミレスのより全然おいしいよ!」

そう、笑顔で竜児に告げる実乃梨。

「お、おう」

竜児はそっぽを向きながら返事をした。友達に自分の料理を褒めてもらうのは勿論嬉しいが、実乃梨に褒めてもらうのでは嬉しさの度合い
が違った。背中が痒くなるような、ムズムズとした感覚が身体を走る。ニヤニヤしないようにするのがこんなに難しいことだとは竜児は思
わなかった。

そしてそれからは、皆で再び竜児のフライドポテトに舌鼓を打った。
竜児の視線は常に実乃梨に向けられていた。終始笑顔で食べていた実乃梨を見ていて、竜児の胸は幸福に満たされた。自分は本当に実乃梨
のことが大好きなんだな、と再確認した。

「よし、元気百倍みのりんマン!」

フライドポテトを食べ終わった実乃梨が、そんなことを言った。実乃梨の後ろから輝く光が出ているのは気のせいだと、竜児は思おうとし
た。
そして食べ終わったところで、再び会議が再開された。
214ユートピア:2009/04/18(土) 17:04:31 ID:4EWkvkas




 ◇ ◇ ◇

それからしばらくして、今日の会議は終了した。
今日決まったのは、主にメニューとその値段。それに、ウェイトレスとして接客する女子に、制服の上からエプロンを掛けるということが
決まった。エプロンを提案したのは竜児だ。理由としては、制服に汚れがつくかもしれない、そう思うと料理に集中できないから、だそう
だが、真意は分からない。知っているのは神様と竜児本人だけだ。

「よし、じゃあ今日はこの辺で終わりだな」

そう北村が言った。それを合図に、皆各自で帰り支度をし始める。
竜児は帰り支度をする必要が無いので、空になった二皿を洗おうと、皿に手を伸ばす。
そして皿に手を掛けた瞬間。

その竜児の手の上から、実乃梨の手が重ねられた。

「っ!?」

「あ……!?」

重ねられた瞬間、反射的に手を引っ込めてしまう二人。そして、そのまま赤くなり俯いてしまう。

「ご、ごめん高須くん……せっかく作ってもらったんだから、洗い物位はやろうかと思って……」

「お、おう……」

暴れている心臓をどうにかしようとするが、どうにもならずにホトホト困り果てる竜児。

「じゃ、じゃあ俺はコレ洗ってくるから……」

最終手段として、皿を持って台所に向かう。自分の緊張を誰にも悟られまいと、逃げるように台所に来た。
そして皿を洗い始める。まずは軽く水で濡らして、必要最低限の洗剤をスポンジにかけて、ゴシゴシと皿を洗う。

「じゃあ高須、俺たちは帰るけど、手伝わなくていいか?」

皿を洗っている竜児の背後から、北村が声を掛けてきた。

「お、おう、いいぞ。後は俺だけでも充分だから」

「そうか、ならお言葉に甘えて俺たちは帰るとするか」

「そうだな。じゃあな高須、また明日」

北村の言葉に、他のメンバーも帰りの挨拶をする。

「じゃあね高っちゃん。グッベイ」

「春田、それを言うなら『グッバイ』だぞ」

本日何度目かの北村の冷静なツッコミが春田に炸裂する。だが、春田はそんな事など気にしてないかのように、ニコニコと笑顔だった。
そして、男子三人は高須の玄関のドアを開けて帰っていった。
215ユートピア:2009/04/18(土) 17:06:01 ID:4EWkvkas
「じゃあね高須くん、また明日」

「高須くん、フライドポテト美味しかったよ、ありがとう」

「お邪魔しました、高須くん」

亜美、木原、香椎もそう言って高須家から出て行く。

「じゃあね竜児。さっきの約束、忘れないでよ」

大河がそう言いながら、ドアから出て行く。大河が言った約束とは、今晩のおかずをお肉にしろ、という先ほどのアイコンタクトのことだ
ろうと竜児は思った。

そして、最後に。

「じゃ、じゃあな高須くん。また明日」

そう言いながら、実乃梨も帰ろうとする。
だが、

「く、櫛枝……!」

竜児が実乃梨を呼び止めた。
竜児の方に振り向く実乃梨。

「な、なにかな?」

「そ、その、だな……」

呼び止めておきながら、竜児は言い淀む。顔を真っ赤にしながら、口を開けたり閉じたりしている。

「や、やっぱりいいや。何でもねえ」

「……?変な高須くん。じゃあね」

「お、おう。また明日」

「うん、また明日」

そう言って、今度こそ実乃梨は竜児の家から出て行った。

外の階段を実乃梨が降りるカンカンという音が無くなり、しばらく経った後に竜児は盛大なため息をついた。
216ユートピア:2009/04/18(土) 17:06:57 ID:4EWkvkas
「はぁぁぁぁ……死にてえ……」

洗い物を一旦止め、台所の洗い台に手をつき、目を閉じながら、そんなことを言った。
自己嫌悪なんてレベルじゃない。自分自身の不甲斐なさに怒りを通り越して呆れてくる。たった一言を言えないなんて、自分はなんて臆病
なんだろうと。そんなことじゃ、告白なんて夢のまた夢、もしかしたら本当に夢で終わってしまうかもしれない。

「……」

閉じていた目を力強く開ける。
夢で終わらせない。そう硬く決意する。絶対に、夢では終わらせない。想い続けてきた日々を、無駄にはしない。

「絶対に、言うぞ……」

そう言いながら、洗い物を再開する。

高須竜児が櫛枝実乃梨に言いたいこと。
それは、文化祭で一緒に回って欲しいということ。文化祭でのデートの申し込みだ。






 ◇ ◇ ◇





実乃梨は自分の家に帰ってきた。
皆と別れて、少し足早になりながら、家に向かった。
そして家に着くなり、真っ先に自分の部屋に向かった。自分の部屋に入り、そのままベッドにダイブする。

「はぁ……」

枕を抱きしめて顔に当てながら、ため息をつく。
疲れた。率直にそう思った。しかしその疲労は、肉体的な疲労ではなく、精神的な疲労だった。

「高須くん……」

実乃梨は自分の心境に戸惑っていた。

「高須くんと話してると、ドキドキする……」

他の男子と話していても感じない、胸の高鳴りを竜児との会話から感じていた。だがそれは、ただ苦しいだけではない。全身に甘く広がる
緊張みたいだった。顔が赤くなっていなかったか、今になって心配になってきた実乃梨。
だが実乃梨は、この胸の高鳴りが何から来るものなのか理解できなかった。今までの人生で、感じたことの無い感情だった。凄く心地がい
い筈なのに、酷く胸が苦しくなる。胸の辺りをギュッと握る実乃梨。

「何なんだろう……」
217ユートピア:2009/04/18(土) 17:07:33 ID:4EWkvkas
クラスメイトの高須竜児。ヤンキー顔で怖がられているが、実際は優しい男子。自身の親友の大河の友達、と大河は言っている。家事が得
意で、特に掃除には妥協しない。今まで誰にも話さなかった、実乃梨の内面の話をした。それだけだ。それだけなのに……

「この感情は何なの、高須くん……」

もっと竜児と話したい。もっと竜児と一緒にいたい。もっと竜児と触れていたい。そう実乃梨は思った。

「……っ!?」

先ほど竜児と手と手が重なったときのことを思い出した実乃梨。そのことを思い出し、再び顔を赤くする。心臓が跳ね上がる。

実乃梨は知らなかった。今まで一度も経験したことが無かったから。
それらの感情は、『恋』という感情からくるものだと。

知らない間に、種は蒔かれていた。そしてそれは、実乃梨が知らない内に芽吹いていた。あとは、二人がきれいな花を咲かせるのみ。

実乃梨は知ることになる。
好きな人といれる嬉しさや幸せを。

文化祭。

それが、全ての運命のスタート地点だった。
218ユートピア:2009/04/18(土) 17:10:48 ID:4EWkvkas
今回はこれで終了です。今回もあまりメインの二人が絡まなかった。難しいですね、たくさんキャラを出しちゃうと。
一応、次回で終わりになる予定です。
今回、いくつかネタを入れてみました。ウザかったら言ってください、二度とネタは入れませんから。
あと、料理関係の知識が皆無なので、見る人が見れば矛盾だらけになるかもしれないですけど、そこら辺は小説ということで勘弁してください。
それでは、今回はこの辺で。自分の拙作を読んでいただき、ありがとうございました。
219ユートピア:2009/04/18(土) 17:12:31 ID:4EWkvkas
すみません、カップリングはみのドラ!でした。間違えました。すみません。
あと、一箇所改行がおかしい箇所があるので、そこを保管庫では直してくれるとありがたいです。
220名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 17:13:33 ID:AQMwulfO
すげえ騙し討ちを食らった気分だ・・・
221名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 17:34:40 ID:xOuOY0Pg
>>205-219
竜児×実乃梨「太陽の煌めき〜U〜」

GJ、前作覚えてなかったので、タイトルで亜美の実乃梨への嫉妬ものかとオモタ
ほのぼの、ドキドキで良かったれす、学生時代の委員会活動を思い出すよ
普段のクラスでと違う状況での女の子との触れ合い…、たまらん
222名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 18:16:58 ID:xsJuM9OT
>>218
乙!…乙!
223名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 18:42:19 ID:XOWA1lnu
>>218
待っていた、待っていたぞ!
次回に期待
224名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 19:51:34 ID:9zy8wXmE
どこから亜美の巻き返しが来るかと思ったら…みのドラwww
まぁGJなんだけどさw
225SL66:2009/04/18(土) 21:43:39 ID:SuMMRXeP
冒頭の「あみどら」に幻惑された
でも、GJ!
226名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 22:23:12 ID:7q83/7sl
>>218
同志よ…GJであります!!
227名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:06:41 ID:TEC23bZS
>>218
GJを送る!
そして他キャラで盛り上がってるときにKYになるのは怖いから
今投下する
需要はかなり少ないと思うのだが、もしかしたらこの手の話が好きな人がいるかもしれないと賭けてみた。
アニメの設定で、大河がいない1年間の話。
竜児×実乃梨
竜児をさらに鈍くして、エロゲの主人公っぽくしてみたww
鬱展開(?)なので注意を。
故にキャラが全員暗めの思考になっているので同じく注意を。
かなりの長編になってしまったので何回かにわけて投下しようと思う。
タイトルは『初恋』
228名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:07:24 ID:TEC23bZS
秋風の吹き始める9月――
その日の夜は、高須家で食事会が行われていたのだ。
食事会……なんて上品なものではなく、実際はただ高須家を借りて皆が食べ、飲んで(といっても酒類ではない)
騒ぐだけの高校生らしいパーティーとでも言おうか。
メンバーは竜児、実乃梨、亜美、北村、それに能登、春田、麻耶、奈々子。
大河を除く、修学旅行メンバー全員。
主催者は北村であり、北村の召集により散り散りになった元2‐Cのこのメンバーがそろったのだ。
そしてこの3年の9月という、皆が忙しく中途半端な時期に集められたのにはもちろん理由があり、
それは竜児の親友である北村が、
「高須を元気つけよう」と提案したからであった。
受験に忙しいこの時期に誰一人欠けることなく集まった理由は……つまり皆、気づいていたのだ。
大河がいなくなり半年、竜児が日に日に元気を無くしていくことに。
例えばそれは竜児の凶悪面に拍車がかかり始めた、とか、制服によく皺が出来ているといった実に竜児らしいことなのだが。
元気つけよう、というのは何とも抽象的であり具体性がなく、
結局は今日のようなパーティーを開いて竜児を誘うという、少し的外れな計画になってしまった。
それでもみんなと馬鹿騒ぎをしている間の竜児は少なくとも楽しそうに笑っていた。
自分たちにはこのくらいしかできないけれど、という皆の不器用な優しさがつまったパーティーの帰り道の出来事。

「んあ!?やべっ」
「なに?どうしたのよ?」
「財布落としたかも……」
薄明るい街灯のみが灯った道のど真ん中で、実乃梨はポケットを探りながら慌てふためく。
「えぇ?櫛枝何しちゃってんの!?」
前を歩いていた男3人集も振り返り、呆れ顔を浮かべた。
「ポケットになんか入れておくからでしょ……高須くん家に落としてきたんじゃないの?」
「俺に関節技なんてかけてるからだよ〜アホだな〜」
「やや…ひどいなあ……てか春田くんには言われたくなかったよ、最後の一言」
「え?俺なんつったけ〜?」
あまりのアホの記憶力のなさにさすがに実乃梨は驚愕して、
「もういい……ごめん、私ちょっと戻って財布回収してくるからみんな先行ってて!」
しかしそんなアホに構っている暇はなく、一人来た道を引き返すことにした。
「ああ、気をつけろよ」
「はいよ!」
一度太ももを叩いてからくるっと華麗に身を翻し、薄暗い来た道を走っていく。
229名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:07:48 ID:oWDLytDW
「あれ……?」
結局帰り道のどこにも財布は落ちておらず高須家まで引き返してしまい、しかし呼び鈴を鳴らしても
一向に竜児が出てくる気配はない。
「お邪魔しまーす……高須くーん?いる、よね?ちょっと忘れ物しちゃって……」
「…………」
「高須くーん?」
何度呼びかけても返事がないどころか、電気すらついていない。
もう寝てしまったのかとも思ったが、竜児が家の鍵を開けっぱなしで寝ることなんてするだろうかと、
勝手ではあるが家の中に上がらせてもらうことにした。
一歩二歩と軋む床を踏みしめながら居間までたどり着き
「………っ」
月明かりに照らされた部屋の中で、実乃梨は見てしまった。
「……高須、くん」
がっちりと組んだ膝に顔をうずめ、少しだけ聞こえる鼻をすする音は聞き間違えなどではなく、
「……く、櫛枝!?」
案の定実乃梨の声にやっと気づき驚いて上げられた顔は、かすかに涙で濡れていた。
「ど、どうしたんだ?」
焦ったように涙を袖口で拭い、部屋に入れずに立ち尽くす実乃梨へと声をかける。
「あ、えと…財布、忘れちゃったみたいでさ……落ちてなかった?」
竜児の声で我に返り部屋の中に入ってきた実乃梨は要件を伝え、
「あ、ああ これか?」
「うん、そう。ありがと」
エプロンのポケットから出された財布を受け取りポケットへと押しいれた。
「………」
「………」
何だか気まずくて、しかしこのまま何も言わずに帰ってしまっていいべきなのか実乃梨は考え、
悩んだ末ポケットからハンカチを取り出し竜児にさし出した。
目を見開いた竜児はそれを受け取り強く握り締める。
「ご、ごめん。私、帰るね」
しかしこれ以上出来ることはないと思い、帰ってしまおうと踵を返したとき、
「………っ」
無言で伸びてきた竜児の手が実乃梨の指先を掴み、そのまま行く手を阻んだ。

230名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:08:11 ID:TEC23bZS
振り返ることはせずに、その腕を振り払おうとしたとき、
「なぁ櫛枝……」
「な、何?」
長い間噤まれていた竜児の口から発せられた声はいつも以上に覇気がなく、暗く沈んでいて――
「俺の傍に、いてくれないか?」
「………っ」
そしてそんな声で言われた言葉に、実乃梨は答えることも出来ず腕を振り払うことも忘れ、だた呆然と立ち尽くした。
「……それは、大河が居なくて寂しいから?」
やっと出た言葉は自分のものとは思えないほどにどこか冷たく鋭い。
「……悪い、迷惑だよな」
「………」
そう言いながらも、強く掴んだ指先を竜児は離そうとはしない。
迷惑――、本当にそうだよ。そう言えるのならどれほど楽だろう。
黙ったままの実乃梨の手を、竜児は冷たい自身の手で一層強く握る。
何も言えなかった。何を言っていいのかすらわからなかった。
怒るべきなのか、同情するべきなのか。
振り返ってはいけないと思いつつ振り返ってしまい、
「………っ」
実乃梨は深く後悔することになる。
誰もが恐れる三白眼に似つかわしくない浮かんだ涙。
まるで捨てられた子犬のように竜児の存在は小さく見え、
哀れみとも同情とも違った感情が湧きあがってきて、下唇を強く噛みしめその感情を抑え込んだ。
そんな声で、涙で濡れた顔で言われたら断ることなんてできないのに。
胸の奥で疼く痛みの意味が実乃梨にはよくわからなかった。
浮かぶのは大切な親友の顔。絶対に傷つけることのできない相手、
だけど目の前にいる人も同じくらいに大切で……
「……いいよ」
「――え?」
今の自分には頷くことしか出来ないのだと、実乃梨は既に理解していた。
それが正しいのか、正しくないのかはわからなくても。

231名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:08:52 ID:TEC23bZS
◇◇◇
一人が辛くて、寂しくていつから自分はこんなに弱くなったのか。
すがるように投げかけた実乃梨への言葉、
「……いいよ」
「――え?」
返ってきた答えは予想外のものであった。
冗談で言ったわけではないのだが、実乃梨は上手くはぐらかして遠まわしに断ってくるものだと思っていたから。
「高須くんが寂しいなら、傍にいてあげる」
月明かりに照らされた実乃梨の顔は困ったようにどこか憂鬱気で、それでも今までに見たことのないほど

優しげで柔らかなもので、竜児は溢れる涙を止めることが出来なかった。
「……本当か?」
「うん。『大河が戻って来るまで』、ね」
「おう……ありがとな」
「だから泣くなや……な?男だろ」
「……おう」
掴んだ手をゆっくりと引きはがされ、正面に座った実乃梨にハンカチで強引に涙を拭かれる。
相変わらず複雑な表情をした実乃梨は何かを言いたげに竜児を見て、
だけど何も言わずに窓から差す月明かりに目を細めていた。
斜め前に見えるマンション。
かつては大河が住んでいて、毎日そこで顔を合わせていた。
今は誰もいない。ベランダを開けても、顔を合わせる相手はいない。
再び胸を襲う寂寥感に竜児は近くに置かれた実乃梨の手を掴もうとして、止めた。
大河もこんな気持ちなのだろうかとふと思うと、改めて自分がどれほど弱い人間なのかが思い知らされるのだ。
みんなが幸せになることを望んだ。周りの人みんなが。もちろんその中には自分と大河も含まれていて、

なのに、どうして上手くいかないんだろう。
「……櫛枝」
「ん?」
「ありがとう」
竜児の言葉に少し黙って、そして「一緒に大河を待とう」とその一言だけを実乃梨は小さく呟いた。
232名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:09:47 ID:J0yZeUkz
>>218
やっぱみのドラはいいですな。GJ!!
233名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:10:02 ID:oWDLytDW
彼女の友達、友達の彼氏。だけどお互いは初恋の相手。
大河が戻って来るまでの間、一緒にいる。
交わされた奇妙過ぎる約束、友達以上恋人未満な不思議な関係。
誰にも内緒で始まった、俺たち……私たちの物語。

お互いの寂しさを少しずつ癒していくうちに、その関係が変わるなんて思ってもいなかった。
自分たちは子供で、どうしょうもなく幼くて、先の悲しみなんて想像も出来ずに。
誰かの幸せの裏には誰かの不幸が必ずあるのだと、気づくことなど出来なかった。

頑張る姿を、想いを、ずっとずっとずっと信じて伝え合っていくと誓った相手。
その絆は、永遠を約束されたはずだった。

―――続く




というわけで続きます
何だかキャラ崩壊の予感(主に竜児が)
そこは突っこむな!最近は二次創作が一人歩きし始めちゃってるんだ。
のんびり続きを書く予定。
うぜー書くな、と言われたら止めるかもしれんorz
では、目汚し失礼。みのりんLoveだぜよ〜
234名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:15:19 ID:BZVwhaix
>>233
GJ!ごめん!途中で書き込むとは…なんたる失態!

続き待ってるぜよ〜
235名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 00:42:06 ID:OPjK6tTW
>>233
何という破壊力、超GJ!そして、鬱だ…
続きを超期待して待ってます。
23698VM:2009/04/19(日) 01:56:14 ID:5N61890/
こんばんは、こんにちは。 98VMです。

「あみママ! -1-」

出来ました。 今回すごい難産でした。 鬱シーンがないと私はダメダメなようです。
基本的に本シリーズはあみママのセレブな生活を軸に亜美ちゃんの様子をちょこちょこ
観察する、みたいな?方向になります。 
確定的に需要は無さそうですが、お暇な方に付き合っていただければと。

前提: 川嶋安奈の憂鬱シリーズ
題名: あみママ
エロ: 無し
登場人物: 安奈、亜美、竜児 他
ジャンル: セレブなママ、ややほのぼの?
分量: 5レス
237あみママ! -1- 1/5:2009/04/19(日) 01:57:20 ID:5N61890/

私はあまり人前で泣いたことがない。
私のキャラは『泣かない』キャラなんだそうだ。
確かにここ数年、『泣き』のシーンを撮った記憶が無い。
一番最近に人前で泣いたのは、あの霧雨の夜の事だ。
さすがの夫もぎょっとしていた。
TVに映っているのはお笑いバラエティ。 で、明かりも点けずに滅多に泣かない私が天を仰いでいた
のだから、さぞかしシュールな光景だったろう。
何故、涙が止まらなかったのかは正直、自分でも判然としない。
娘の仕事を取られた悔しさだったのか。
それとも、夢が壊れてしまった悲しさだったのか。

ちょうど、亜美の歳くらいの時には、一晩泣き過ごしたこともあった。
文字通り、涙が枯れて疲れて寝てしまうまで、泣き続けるのだ。
もちろん、その頃は一人で泣いていた。
その頃も、その後も、ずっと、一人で泣いていた。
だから、誰かの胸の中で泣けるって事が、温かい事だとは知らなかった。
でも、今は違う。
あの日も、散々涙を流したのは夫の腕の中だった。
泣いたからといって何かが変わるわけでもない。
失った仕事は戻ってこないし、娘が仕事を再開することもないだろう。
でも、とりあえず、私の夢のお葬式は終わった。
あとは、また前を向いて歩いていくだけだ。
心の中で颯爽と前を向いたつもりだが、ちょっぴり後ろ髪が引かれる。
私の夢、ちゃんと成仏してくれるだろうか…


    あみママ!  -1-


梅雨らしい雨もないまま、蒼天に焼け付く光の季節がやってきた。
お肌の天敵である。
若い子はまだいい。 日焼けしても健康的とかなんとか言っていられる。
だが、もともとメラニン不足の私には鬼のような季節だ。
私の場合、褐色のお肌になるんじゃなくて、文字通り焼け爛れる。
この上なくデンジャーな季節なのだ。
だから、外出時には色々と気を使う。
エンジ色の羽がついた黒の鍔広の帽子、サングラス、サテンブラックの長手袋、シンプルなサテン
ブラックのベアワンピースにワインレッドのオールレースストールを突っかける。
このクソ暑いのに、黒を選んだのは、UVカットもさることながら、地味な色がいいと思ったからだった。
本当はファミリーユースで買ったのに、亜美が別居してるおかげで、すっかり私の買い物用になって
しまった黒のスカリエッティも併せて、黒ずくめになってしまったが。
私用を済ませたら、そのまま仕事に行くつもりだったので、マネージャーと事務所の運転手が来てい
たが、運転手は私の車を運転すると聞いて固まっている。
「あなたのお給金じゃ買えないでしょ? 運転できてラッキーじゃない。」
ちょっと悪戯っぽく笑ってからかう。 老年と言えた運転手が退職して、若い子が運転手になった。
頼りないけど、からかいがいはある。
「私、右から乗るのって初めてなのよね。 や、さ、し、く、してね。」
意図的に所々言葉を省く。
ほおづきみたいに真っ赤になった。 かわいい奴。 
一方、マネージャーは呆れている。 かわいくない奴。

238あみママ! -1- 2/5:2009/04/19(日) 01:58:15 ID:5N61890/

そのかわいい運転手は、最初はガチガチでクラッチをつなぐ度にガクンガクンとやっていた。
この車のセミオートマは癖があって100km以下では走りにくい。
しかし、都内を抜ける頃には目が爛々と輝いて、運転も随分慣れてきたようだった。
目的地に近づくと、道行く男子高校生がみな立ち止まって車を見る。
やっぱり、男の子は車とか好きらしい。
その車が自分らの通う学校の方へ向かっているならなおさらだろう。
やがて目的地の来客用駐車場にセクシーな車体が辿り着く。
ここに来るのは初めてだった。
二人にはここで待つように言い、おもむろに車から降りる。
付近にいた生徒達から、歓声ともどよめきともつかぬ微妙な声が沸きあがった。
校門には『大橋高校』と書いてある。
そう、今日は夏休み前の三者面談の日なのだ。

校門から、昇降口に向かう間、なにかの部活の一団が学校の敷地内をランニングしている。
それを監督するように、褐色の肌のいかにもな先生が腕を組んでいた。
教員には挨拶しておこう。
私は社交的で、話の解る気さくな父兄なのだ。
一昔前のクロエのサングラスをちょっとずらす。
最近の流行とは違うやや細めのシルエットだが、私の顔に置くと十分な大きさだ。
斜めに流した視線を束の間伏せて目礼する。
そして、おもむろにサングラスを戻しながら、目が隠れた頃に微笑みを作った。
撃墜確認。
うん。 私ったら、先生ともキチンと親交を深める模範的な保護者だ。

校門から昇降口までは、さほど離れていないが、それにしても暑い。
夏の強い日差しに炙られて、コントラストの飛んだ野外から見ると昇降口は真っ暗に見える。
それでも、見えた。 昇降口では、すでに娘が待っていた。
目が逢う瞬間、娘の顔に喜色が浮かぶ。
監督と脚本家を怒鳴りつけてまで時間を取った甲斐があるというものだ。
私が学校行事に顔を出すのが、この前はいつだったのかなんて、はっきり言って思い出せない。
それくらい久しぶりだったのだ。 三者面談といえど、娘は嬉しいのだろう。
が、それも束の間。
娘は、きりりと顔を引き締めて、
「ママ、おっそーい。 遅刻だよ? ちゃんと時間に遅れないでって言ったじゃん。
 それに、なに、その格好。 普段着で来ないでって言ったでしょ?」
いきなり手厳しい。 しかたないでしょ、運転手がヘタレだったんだから。
「はいはい。 ごめんなさい。」 でも、素直に謝る。
「うっ…、ま、まぁ、ちゃんと来たからいいけどさ…」
信用ないなぁ…。 ドタキャンなんか、時々しかしてないじゃない、とは言わないでおこう。
これでも最近としては破格の友好的態度だ。 機嫌を損ねたくは無い。
「これ、そんなに派手かしら? 地味な色を選んだのよ?」
「色以前に、そんなワンピ、普通の父兄は真昼間から着ないんだっての。」
「あら? そうなの? これけっこう涼しいのに…。」
「そりゃ、それだけ背中パックリあいてれば涼しいでしょ。 もう。」
うーん。 一般的な父兄についてのリサーチが足りなかったらしい。
「それより、もう先生待ってるから…」
239あみママ! -1- 3/5:2009/04/19(日) 01:59:04 ID:5N61890/

「川嶋ぁ〜〜」
私を呼んだのでは無いのは明らかだが、名前を呼ばれて、つい声の主のほうを向いてしまった。 
って、な、なんだあの悪鬼羅刹の如き面相の男は!
なんであんなのが、うちの娘を……まさか、新手のストーカー!
「高須くん…」
「わりぃ かわし… あ。」
よく見ると少年だ。 というかここの生徒なんだから、少年に決まってる。
「あ、これ、私のママ。 ってか、流石の高須君でもTVで見たことくらいはあるか。」
「お、おぅ。 あの、は、始めまして、…たっ、高須竜児です。」
少年は凶悪な面相で、…いや、怯えてるのか?
「ママ?」
あ、いけない。 …思わずメンチ切ってたわ。
「え、あ、ああ。 亜美の母です。 馬鹿な娘だけど、仲良くしてあげてね?」
表情を180度転換。 極道姉さんモードから聖母の笑顔モードへ。
「い、いえ、こ、こちらこそ。」
顔に似合わず、どちらかというと純朴そうな少年だ。 よくよく見ると優しげな佇まいがある。
「亜美ちゃん、馬鹿じゃないもん。 ね、高須君?」
「おぅ、川嶋…さんが馬鹿だなんて思った事は一度もねー…です。」
「ふふふふ。 なーに、緊張してるの〜」
「だって、お前なぁ、親御さんの前なんだぞ。」
「………」 なんだろう、なんかひっかかる。
「亜美ちゃんのママ、美人でびっくりしちゃったぁ?」
「っていうか、なんで… そうか、三者面談なんだな…。 あ、そうだ、これ。 前に川嶋…さん
に頼まれてたノート。」
「あ、有難う。 高須君のノートって凄く見やすいから。」
「おぅ。 それじゃ、その、これから面談なんだろ?」
「うん、本当に有難うね。」
「ああ、返すのはいつでもいいからな。 …じゃ、失礼します。」
私に向き直って会釈して去って行った。 なかなか礼儀正しいじゃないか。
だが、なんだろうこの違和感。
娘の横顔を覗き込む。
感情の見えない顔をしている。 わが娘ながら、なかなかやるな。
「今の子、なんていったかしら?」
「え、高須くん、だけど? 顔に似合わず、頭いいの。 あたし、私文クラスだから、国立受けるには
 理系科目は自力でやらないと。 彼、国立理系志望だから。」
やはり動揺はない。 気のせいか?
「ふーん…そうなの。」
一応、憶えておこう。 高須… 高須… 高須… 高須、なんだっけ?

240あみママ! -1- 4/5:2009/04/19(日) 01:59:57 ID:5N61890/

娘に連れられて、校舎の中を進む。
目指す目的地は案外近かった。
『面談室』 今の学校はこんな部屋があるのか…。
私の頃は…もしかしたらあったのだろうか? 学校の事なんか、正直殆ど覚えてない。
僅かに覚えているのは嫌な思い出ばかりだ。
「失礼しま〜す。」  娘の余所行きの声とともにドアが開かれる。
その中途半端な大きさの部屋には、三十路に届くかどうかくらいの若い女教諭が待っていた。
「先生〜。 ごめんなさーい。 ママがなかなか来なくってぇ〜。」
「い、いいのよ、川嶋さん。 それより、お忙しいところ、ほ、ほんとうに来て頂いて、す、すみません。」
何?この先生。 遅れて来た相手にへりくだってどうすんのよ。 もっとしゃんとなさいっての。
「いえ、思ったより車が混んでて、遅れてしまいましたわ。 ごめんなさいね。」
私の返した言葉にまた気を遣う。 なんとも、さえない先生だ。
かくて、面談は開始されたが…。
なかなか要領を得ない。 私を前にして緊張しているようだったので、いつもこうなのかは解らないが。
飽きてきた。 さっさと終わらせよう。
「で、先生、要点を掻い摘んで言うと、亜美は私立文系クラスだけれど、国立を第一志望にしていて、
今の成績では、その第一志望はちょっと難しい。 カリキュラム的にも不利。 それでよくて?」
「あ、は、はい…。」
つまり、『考え直せ』ということだ。
亜美を見る。
静謐な顔は親しくないものには無表情に見えるだろう。 
けれどそれは、難しい事は解っている、だが、諦められない。 そんな顔だ。
「あなた、随分、成績が上がったのね…。」
「え、う、うん。 でも、まだまだこれくらいじゃ…。」
「先生? カーブは緩やかになるでしょうけど、仮にこのまま成績が伸び続けたら?」
「…可能性のあるラインには乗れる、と思います。」
「そうですか。 」
さて、どんな顔を見せてくれるか。
「……亜美、あなたにできて? すぐに演劇を諦めた根性無しのあなたに。」
「!!!」
細く繊細な髪が宙に舞うほどの勢いで、紅潮した顔を向けてきた。
う〜〜ん。 ゾクゾクするようないい反応。
「いいわ、国立第一志望って事で。 その代わり、滑り止めは私が指定する私立大学を受けなさい。
それと、浪人は許さない。 万一全部落ちたら進学も諦めてもらうけど、それでいい?」
「お、お母さん、それはいくらなんでもちょっと… ひいっ」
三十路が余計な口を挟もうとしたが一睨み。
「どう? 約束できる?」 勝ち誇ったように、出来るわけないわ、と言わんばかりに。
目に涙を溜めた娘は…
「いいわ、それでっ。 絶対、ぜぇっっったい、合格してやるんだからっ!!」
そう言い放つと、勢いよく席を立ち、ドアに向かう。
「じゃ、先生。 そういう事で。」
酸欠の金魚のようになっている気の毒な三十路を残して私も後を追う。 まだ、言う事があるのだ。
「待ちなさい、亜美。」
立ち止まる娘。 振り向いた顔には悔し涙が一筋。
「ちゃんとママを校門まで送りなさいな。」
最高の笑顔を作る。
眉間のシワが、怒りを越えて憎しみに近い感情を抱いているのを、雄弁に物語っていた。

241あみママ! -1- 5/5:2009/04/19(日) 02:00:41 ID:5N61890/

無言で足早に歩く娘の1歩後ろから、話しかける。
「亜美、聞きなさい。」
反応無し。 こちらも相手を無視して続ける。
「私より綺麗な女なんていくらでもいる。 私より演技の上手い奴なんていくらでもいる。 けどね、
川嶋安奈は私だけ。 最高の自分で居る限り、誰も私の場所には辿り着けない。」
娘の足が止まった。 しかし、振り返りはしない。
「だから、あなたも最高の自分でいなさい。 それがどんなあなたなのか、私には解らないけど。」
私の言葉の真意を測りかねている表情で、娘が振り向く。
「ま、無駄だと思うけど、せいぜい頑張りなさいってこと。 負けると思ったら、そこで御終いよ。」
そして、少し冷やかし加減に付け加えた。
「劇団の時みたいに、3日やそこらで終わったらつまらないもの。」
琥珀がかった大きな瞳に強い意思の炎が灯る。
娘の怒りは、少しばかり違った感情に変わったようだ。 それでいい。

「今日は来てくれてありがと。」
校門のところまで来て、やっと小さな声で話してくれた。
「ママが学校に来てくれたのって、小学校低学年の時以来だね。」
そうか… 記憶にない訳だ。
「たまには、親らしい事もしないと、ね。」
そうそう、忘れる所だった。 不愉快な誤解は解いておかねばなるまい。
「あ、それと、オカマ野朗はこっぴどく懲らしめておいたわ。」
「え?」
「あの変態に私が何か頼むなんて有り得ないわ。 全部あなたの誤解よ。」
「でも、ママと大山さんってよく話してるって…」
「あれはね、話というのではなくて、果し合いというのよ。」
「な、なにそれ…。」
「あのオカマ野朗はあなたが生まれた頃からの宿敵なの。 またあなたにちょっかい出したらすぐに
ママに知らせるのよ。 ぶっ殺してやるから。」
「ママ…。 亜美ちゃん、犯罪者の娘にはなりたくないんですけど。」
「あー 大丈夫、マネージャーに殺らせるから。」
やっと少しだけ笑ってくれた。
敵役は大いに結構、私にくる役の3分の1は実際、悪役だ。
でも、別れ際に、もう一度だけ笑顔が見たかったのだ。


結局、娘は駐車場までついてきた。
「じゃあね。 あんまり無理しないのよ。 第一志望になんて受からなくていいから。」
対する娘も、挑発するような表情を作り、
「ママも無駄なこと考えなくていいよ。 あたし、滑り止めなんか必要ないから。」
心底楽しくなった。
ついつい吹き出してしまう。
娘は馬鹿にされたと思って、いっそう私を睨む。
私はそんなのは気にせずに、笑顔で別れの手を振る。
大人の余裕を見せ付けられた気がしたのか、娘は赤くなって俯きがちに手を振り返す。

そんな娘が可愛くて、けれど、同時に巣立ちが近づいているのが感じれて。 

TVスタジオまでの道中。
愛車に左側から乗り込んだ私は
かわいい運転手君に、車酔いになってもらう事にした。

24298VM:2009/04/19(日) 02:01:24 ID:5N61890/
以上です。
うーん、なんか微妙。 でもこれ以上手を入れられない、そんな感じ。
納得はいってないのですが、積み直すのもちょっとムリ、みたいな。
・・・・・・すまんです。 続きます。

最後に、ニッチ作家の決意を一つ。
「僕はッ GJが付かなくてもッ 書くのを止めないッッ!」
243名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 03:04:45 ID:wJO+yLyG
『鈍感な彼が倒せない』
歌・逢坂大河 櫛枝実乃梨 川嶋亜美

気が付いたら竜児の隣に立ってる
そしていつも同じ事を思う
諦めずに、恋のキューピッドに挑戦するけど
私が恋に落ちるよ〜
キチンと告白すれば竜児の恋は叶う筈だったのに
私のせいで私のドジで彼の恋が実乃ら〜ないよ〜
竜児の視線が何回やっても避けれない
後ろに下がって距離を取ってもいずれは距離を詰められる
チョキで目潰しも試してみたけど駄犬相手じゃ意味がない
明日は絶対避けるから、今日は竜児に甘えて優しくしてもらう〜

間奏

気が付いたら、試合ひっくり返されてた
そして、練習に身が入らない
諦めずにクリパ断って練習するけど、すぐにフラグ立てられる〜
高須君さえ良ければ一緒に夢見て欲しいけど
大河の事とか私の意地とか他の事が邪魔を〜するよ〜
彼の告白素直な気持ちを返せない
気付いて無いフリ試してみたけどヘアピン着けてちゃ意味が無い
それでも彼が好きだから私あ〜みんと拳で語り合う〜

間奏

気が付いたら自販機の隙間に埋まってる
あたしの気持ちに気付いて欲しい〜
諦めずに、身体押し付け色仕掛けるけど いつも虎に睨まれる〜
あたしが本気になれば楽に落とせる男と思ったのに
別荘行っても雪山行っても彼が振り向いてく〜れない
何がダメなの?そんなにあたしが嫌いなの?
実乃梨ちゃんやタイガーみたいにあたしの事も見て欲しい
遠回りにアピールしたって気付いてくれなきゃ意味がない
いつか絶対振り向かせるからあたし転校だけは最後まで取っておく〜
244名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 03:18:07 ID:EFDAVbyO
>>242
こいつはクセェー!!GJの臭いがプンry
>>243
ワロタ 一番がちょっと恥ずかしいw
245名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 04:22:00 ID:rLdqkEW/
>>236-242
俺は素敵なオリキャラから透けて見える亜美が見たいんだよ!
その亜美から透けて見える竜児が、そして亜美ママVS竜児(ある意味一方的に)が
見たいんだ〜!……ふう、取り乱してすまん
序章としてはこのもうちょっと感が実に良い感じだ、竜児と接触だけとか
当然続編ごとに徐々そこらへんを満たしてくれることを願っているぜ、GJ
246名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 05:08:37 ID:UFtuKd/X
>>218
GJです!
続きが気になってたので最初のあみドラ宣言にびっくりしましたw
個人的にそういうネタは好きですw


>>233
続きが気になりすぎるー・・
GJです!
どうなることやら・・><
247SL66:2009/04/19(日) 07:00:04 ID:ho/WHR3F
「ぶっ殺す、だなんて、やっぱりぃ〜、芸人なんて成り上がりだからぁ〜、品がないのねぇ〜」

と、極悪キャラの瀬川が言うほど、亜美ママはいいですねぇ、GJ
248SL66:2009/04/19(日) 08:05:31 ID:ho/WHR3F
追記
川島安奈は、竜児の存在を認識したあたりがスリリングですね
そうか、三者面談という手があったか…
いずれにせよ、改めてGJ!
249名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 08:57:29 ID:IGDzWWl7
>>227-233
GJ! 竜児の喪失感は原作・アニメとも終了したぼくらの心情とも通ずるものがあると思った。

>>236-243
GJ! ついに作詞家にまで手を広げたか…

竜児「去年の夏は、娘さんに別荘にお招きいただきありがとうございましたっ!」
安奈「あら、そうだったの…」(ジト目で亜美をみる)
亜美(どきどきどきどき……)
竜児「備え付けの輸入物の寝具類、高級タオル、どれも肌触りが良くて気持ちよかったです」
安奈「あら、高須くんって趣味がいいのね」
竜児「でも、一番の収穫はお母様の超高級ランジェリーの穿きごこちを堪能できたことです!」
安奈「あらあら、しょうがないわねぇ」
亜美「こらあぁぁぁぁぁ!」
250名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 17:25:56 ID:wQ1L6Ckc
>>242
「僕はッ GJが付かなくてもッ 書くのを止めないッッ!」

こういうのは、マジでたまに荒らし認定されたりするから書かないほうがいいぞ
251厨房にて by SL66 (某所から転載):2009/04/19(日) 18:01:43 ID:ho/WHR3F
鍋の中では、根菜類と鶏肉の煮物が、ふつふつと煮えている。
竜児は、薄口醤油を目分量でその煮物に加え、一煮立ちさせてから味をみた。

「これぐらいかな? だしが利いているから、強い味付けは不要だろう」

その傍らに立つ亜美が、不思議そうに目を細めて竜児の手つきを観察していた。

「ねぇ、どうして、和風料理の調味料は、『さしすせそ』の順に入れるの?」

「お、おう、それはだな、『さ』の砂糖は分子のサイズが大きく、『し』の塩とかの電解質に比べて
食材に浸透しにくいから早めに入れるんだ。
それから『す』の酢、『せ』のせうゆ、これは醤油のことだが、これらはあまり早く入れてしまうと揮発性の成分や
香りが飛んでしまう。それで、砂糖や塩の後に入れるんだ」

「へぇ、そうなんだぁ…」

亜美は、細めていた目を心持ち見開いて、竜児の博学ぶりに感心した。

「『さしすせそ』のルールは、単なる経験則なんだが、科学的にも矛盾がない。昔の人の知恵は侮れないな」

その言葉を受けて、亜美は、ふっ、と脱力したように微笑した。

「そう、侮れないわね、何事も…」

その微笑にただならぬものを感じたのか、竜児は「ん?」と、一瞬、怪訝そうに眉をひそめた。亜美がこういった謎めいた
微笑みを浮かべるときは、何かをネタに竜児を追及する場合が少なくない。それを、亜美との短からぬ付き合いを通じて、
竜児も把握していた。

「何だよ、意味深だな」

「別にぃ〜。ただ、この前、誠実だけど朴念仁な高須くんの意外な一面を見ちゃったからねぇ。ほ〜んと、侮れない」

そう言って、竜児の顔を覗き込むようにして、白磁のような頬を近づけてきた。

「な、何だよ?」

不安そうに、どもっている竜児に、目を細めたお馴染みの性悪笑顔で迫ってみせる。

「ねぇ、実乃梨ちゃんとは、完全に吹っ切れたんじゃなかったのぉ? この前、かのう屋のレジの前で、何だか楽しそうに
二人でいるところを亜美ちゃんは目撃してしまったんですけどぉ、あれって、どういうことかなぁ? 亜美ちゃん、わかんなぁ〜い」

そう言いながら、ラックから、おもむろに出刃包丁を取り出し、その刃先を、爪の先で軽くなぞって見せた。
竜児の顔が蒼白となり、額には脂汗が滲んでいる。

「あ、あぶない。そ、そんなもん仕舞ってくれぇ!」

亜美は、取り乱している竜児に、にっこりと微笑みかけた。しかし、右手に持った包丁の刀身を、ぺたぺたと左掌に当てながらである。

「まぁ、実乃梨ちゃんにやさしくしてあげてもいいんだけどぉ、亜美ちゃんのことは実乃梨ちゃんよりもやさしくしてくれるんでしょうねぇ?」

竜児は慌てて首を縦に振っている。

「するする、や、やさしくする」

「な〜んか、嘘くさいんですけどぉ〜。まぁ、いいわ。嘘だと分かったその時は、亜美ちゃん、さくっとやっちゃうぞ」

そう言って、包丁を仕舞い、うふふ、と意味ありげな含み笑いを、竜児に向けるのだった。
252SL66:2009/04/19(日) 18:05:16 ID:ho/WHR3F
向こうに誤爆したネタとこっちにも投下しました
ほのぼの料理ものっていいですねぇ、刃物さえ振り回さなければ…
25398VM:2009/04/19(日) 18:37:59 ID:5N61890/
>>252
 GJです。
 長編やってる中の短編って、面白い切取りできて良いですよね。
 ちゃんと伏線取り込んでいるところ、流石といわざるを得ないです。
 で、ちょっと横道ですが、SL66様って、「ノッティングヒルの恋人」好きじゃないですか?
 …勘違いだったらすみません。


>>250
 ご忠告ありがとうございます。
 ギャグのつもりでしたが、それで荒らし扱いされたら悲しいですね。
 それとも、案外ウザがられてるんですかね?
 だったら撤収しますが…。
 実際、私のはエロでもパロでもないので、ちょっと気になってはいたんですよね。
254名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 19:07:52 ID:G55Drdod
コテ雑含めて俺はウザイと思ってるけど
間違いなく少数派の意見なので気にせず今のままの貴方達でいてください
255名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 19:08:03 ID:hizVdr0r
まとめに収録されてるものでも非エロが多いし、そんなに気に病まなくてもいいんでないの?
256名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 19:18:59 ID:OUOlxaR8
>>253
住人は誰も迷惑がってなんかないですよ、むしろ楽しみにしてる人が殆どです
250や254みたいなのはアンチの戯言なんでスルーしておいた方がよいかと
257名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 19:30:41 ID:9071RAJ9
某所ってどこですか?(´・ω・`)
258名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 19:47:37 ID:WBoCxA1X
いやコテつけたまま雑談はわりと嫌がられると思うけど…
259名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:02:50 ID:vuRCGdP9
>>256
いや、これでアンチの戯言っていくらなんでもおかしいだろ

>>250みたいな忠告がアンチ発言になるんなら、お前のレスも完全にアンチの戯言になるんだが
260名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:15:13 ID:OUOlxaR8
作品を投下するでもない、ただの名無しが、わざわざ職人さんの気分を害するような発言をする意味がわからん
不条理な職人叩きが原因で廃れていく作品スレは少なくない
俺はゆゆぽスレがそれらの二の舞になって欲しくないんだよ
261名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:16:16 ID:dIsDY7Cz
確かにアンチって言うよりも忠告だな
そういう意見の人もいる、という程度で頭に入れとくことは大切だと思う
色んな意見があるのは当然でどれが正しいなんていいきれないし、だからといって少数派がアンチとは限らないわけだから
長文スマソ
262名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:29:49 ID:vuRCGdP9
>>260
あれで気分が害すのかよ
お前みたいになんでもかんでもアンチ、荒らし認定してるようなやつがいる方が余程スレの
為にならんと思うがね
263名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:36:53 ID:G55Drdod
喧嘩は止めて俺の嫁みのりんについて語ろうぜ>arl
264名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:38:06 ID:EFDAVbyO
>>263
お前もしかしてallって書こうとした?
てか嫁みのりんとか言った?
265名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:41:04 ID:dIsDY7Cz
おいおい、みのりんは俺の嫁だぜ>春田
まぁ>>263の言う通り言い合いはそろそろ止めて>>233>>243に続く良作をみんなで待とうぜ
基本ここのスレはみんないい奴なんだから
266名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:42:10 ID:Yq9NmAXw
267名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:44:18 ID:dIsDY7Cz
>>242だったな、
ある意味>>243も良作だがww
連レスすまん
268名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 20:47:53 ID:pb5cZoEV
>>263
貴様このスレに裏口入スレしたな
269名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 01:06:39 ID:ivznAMyq
職人は感想を見て、自分なりに判断すれば良い
荒らしや無茶苦茶な批評だと思えばスルーすればいいし
明らかにGJがなかったり熱狂的な数人しか喜んでないと思えば考慮すればいい
だから予防線みたいな前置きや言い訳みたいなあとがきは特にいらない
くわえてこういう場所で職人に作品以外で個性出してほしいと思ってる人は少なそう
270名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 02:37:28 ID:zEyX55TF
保管庫管理人様。お疲れ様です!
何か本当に大変そうですが、更新頑張って下さいっ。
(もちろん、リアルと体調最優先で!)
271名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 02:56:10 ID:2zvh7b/E
自分はもっといろんなタイプの作品読んでみたいんで細かいことは気にしないですね・・。
好きなCPやシチュじゃなきゃ読まなければいいと思うし、
だから職人さんたちはCPとかシチュをそんなに気にしなくてもいいじゃないかと。

長々とすみません。

後、保管庫管理人さんお疲れ様です。
私生活含めて更新大変ですが頑張ってください。
272名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 04:15:37 ID:Z28xqiWO
管理人さまお疲れ様です。
私生活が大変忙しいということですが
もし宜しければ、管理を引継ぎたいのですが いかがでしょうか??
273名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 08:14:50 ID:1d/19OgG
>>272
別に「引継ぎ」なんてしなくても、自分でイチから
保管庫作って、本家からリンク貼ってもらえば良くね?

つーか、保管庫やる気なら作品・キャラ・短長編別等、
作品数が多くなった現状に対応したメニューつきの、
新たな保管庫を作ってほしい。
274名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 18:03:20 ID:j9UIyRi9
wikiでも誰か作れよ
275名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 18:05:54 ID:Be15eSbV
言い出しっぺの法則
276名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 18:07:56 ID:4rlx7mnI
スレが実質的に二分されてしまって、管理人さんもやる気が出ないんでしょうねぇ
277名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 19:04:59 ID:/dPFIuL6
スレのSS保管庫なんて、月イチ更新してたら「管理人頑張ってるなー」
ぐらいの更新頻度で普通問題ないんだって。
過去スレそのものも保存してるんだから>保管庫

…でも最近「竜虎モノはあっちで」って感じになってるのは確か。というか
あっち活況すぎ。しかもレベル上がってる。
278名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 19:16:40 ID:3eXrb6rr
今週中に更新するって管理人さんも言ってるからもちょっと待とうぜ
大河×竜児スレについては、基本的に「竜虎モノ」だけしか扱ってないからな〜
こっちは他カップリングや田村君、ゆゆぽ新作なんかも扱えるからどっちもどっちだ
279名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 21:12:33 ID:ivznAMyq
禁書なんて違う掲示板の保管庫両方みとるよ
これだけの速度で多数の作品が投下されてる状況の方が異常なんだから
普通のとこは久しぶりに作品投下、ついでに保管庫更新とかだし、違って当たり前だろ
280名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 21:30:39 ID:Y3Uzs6QT
あんまりここであっちの話題を出さないで欲しいな
折角あっちは良い感じで機能してるんだから、アニメ化直後のこのスレみたいに、
新参が大量に移ってきてスレの空気が変わったら嫌だし
281名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 23:01:07 ID:MHDPsqSZ
wiki作れる人でやる気があるなら新しく作っても良い感じするけどね。
小説&アニメ終了、ゲーム化とピークを迎えてる状況で一人に
全てを任せるのは流石に無理があるのでは?
逆に今の状況での保管庫更新次第で、今後のスレが活性化するかの
運命を握っているような感じがする。

周りに仕事を振らないで1人で抱え込んでいる状況に見えるよ。
そのうち責任感で潰れたりしないだろーか。
282名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 00:06:40 ID:+us5k7Uh
ここの他にSS置いてるとこってどこなの?

キャラスレ?
283名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 00:29:20 ID:nWKRyTll
キャラスレ。
284 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:37:24 ID:dUD6E10a
皆さんこんばんは。
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下させて頂きます。
前回の感想を下さった方々ありがとうございます。
もしかしたら連投規制に引っ掛かるかもしれませんので御了承ください
では次レスから投下します。
285 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:38:39 ID:dUD6E10a
[伝えたい言葉(6)]

「よしよし…。甘えん坊さんだね…可愛い。クスクス」
行為を通じて彼と私の距離は一気に縮まる。
普通は男の子って
『可愛い』
とか
『甘えん坊さん』
って言われると否定するよね?
でも高須君は否定せず、心地良さそうにしている。
母性がくすぐられて堪らなくなり優しい気持ちになって…。
だから十分位かな?
また彼と甘えん坊タイムに突入した。
気分は『お母さん』
でも身体の奥はジンジンと疼く熱を秘め続けていた…。
『エッチぃお母さんだね…』
何よ?別に良いじゃん惚気の一つや二つ…。
これはお互いの"おまじない"なの。
私にとっては高須君との距離が縮まる"おまじない"
高須君にとっては嫌な事を忘れて癒される"おまじない"
凄く尊くて大事な事…。
素の私を見てくれる彼と仲良しになりたい寂しがり屋なチワワからの…背伸びした"おまじない"
「ん…う…っ。は…あ、……んくっ!」
彼の手が徐々に背中からお腹へ、そして更に下に滑っていく。
「俺、川嶋に気持ち良くなって貰いたい。だから…良いよ、な?」
そう高須君が頬を赤く染めて問い掛ける。


286 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:39:32 ID:dUD6E10a
「んう?…あは、お願い。亜美ちゃん切ないや…、いっぱい溶かして……、ふっ」
もちろん、私が拒む事等有り得ない。
高須君になら何をされても良い。
恥かしい事も、無茶な事だって何だって…。
「んっ!あっ…ん、はっうぅ」
下着の上に指があてがわれ、一瞬だけ動きが止まる。
バレちゃったかな…濡らしている事。

人差し指と中指が緩慢な速さで、優しく秘部に沿って躍る。
「ふあぁあ…っ。んあ…っふ…、あふぅ」
一撫でされただけで下腹部からゾワゾワした快感が沸き上がる。
お腹の奥がキュンッて…やっぱりなっちゃう。
くちゅくちゅ…って鳴らさないで…?
ヤダ…恥かしいよぅ。
そう考えても身体は、高須君に愛されたくて勝手に守りを解いていく…。
身体を起こした高須君が、私を可愛がってくれる。
立てた膝が愛撫される毎に広がっていき、蕩ける快楽の海に溺れていく。
「っんん!んあぁっ…、あっ!」
下着の脇から忍び込んだ指が直接秘部に触れ、敏感な部分を転がされる。
シーツを足の指で挟み、ギュッと握り締めて堪える。
「んっ!うっ…んんっ!…ら…、あっ!」
腰が砕けそうな彼の指遣い。

287 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:40:21 ID:dUD6E10a
軽く弾かれ、摘まれると目の前がトロンと蕩けてしまう。
それを何回も繰り返され、私はイヤイヤする様に首を反らして喘ぐ。
「やっあぁっ…、ひうっ!っは!」
指を押し付けて圧迫されながら擦られ、強い刺激に息が詰まる。
私は酸素を求めて喘ぎ、自分の欲求が高まっていくのを感じる。
「っふ…!ん…んくっ…、はあぁっ」
彼の愛撫が止まり、御預けされると思った瞬間、今度は下着を横にずらされて膣の入口を指先でくすぐられる。
この弱い刺激がもどかしい…。
蕩かされた身体が貪欲に快楽を欲して疼く。
だから…腰が動いちゃう。クイックイッて…。
高須君にサカってしまうの。
「おぅ。我慢させちまったな。すまん、じゃあ挿入るぞ?」
そう言って気遣ってくれる彼に、蕩けた微笑みを返す。
「あ…、あっ…ん…」
私の膣の中に指が挿入て来る。
膣壁を擦りながら、ゆっくりゆっくり…。
ちょっとゴツゴツしているけど、高須君の指…気持ち良いよ。
「んうぅ…、っん!っあん!あっ…」
奥へと拡がる甘い震え。
優しく掻きながら私を酔わせる。
何の抵抗も無しに美味しそうに高須君を…しゃぶってる……。


288 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:41:35 ID:dUD6E10a
「川嶋、気持ち良いか?」
「んあ…い、いよぅ…。はふっ…、ひあっ!」
甘えた声で喘ぎながら返事をすると、高須君が御褒美をくれる。
指をね…くの字に曲げて、引き抜くの…。
凄くゾワゾワって…身体の力が抜けていくんだ…。
「はぁ…っん。あぁ…、は…ぅ」
指が根元まで挿入られて、小刻みに掻き回される。
身体も思考も淡く溶けていく。ヒクヒクと腰が震えて、頬が弛んでいくのが分かる。
「あっ…あぁっ…!ら…めっ…ひうっ!」
ゆっくり抽出し敏感な部分を圧迫され、強い刺激を与えられる。
「はっあっ!!ああっ!た、たかすくぅんっ!あんっ!」
抽出に抉る様な動きが加わり、速く、強くなっていく。
グリグリと膣肉を掻き分けて、指先で弾かれて…私の身体がビクンッと跳ねる。
弾かれるのは敏感な部分も…だ。
転がされ、弾かれ、摘んで揉まれる…惚けてしまう彼の情が込められた求愛…。
膣の奥がジンジンと熱く蕩けて、泣いて、甘える。
足の指がシーツを引っ張る。
強い刺激から逃れる為か…それとも逃げない様に踏みとどまる為か…分からない。
トロンって蕩けちゃってるから分かんないや……。


289 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:42:34 ID:dUD6E10a
「んくっ!…は…、っ!んっ!っんう!」
抽出が速く、激しくなっていく。
ギュッと閉じた瞳の中で白い光が爆ぜて、身が竦む。
「はっ…は…!ん…。…ああっ!」
膣から指が引き抜かれ、呼吸を調えようとした瞬間、今度は更に痺れる刺激に襲われる。
中指と薬指が挿入ってきたのだ。
膣内を探る様に掻き回しながら…。
「ひっ!あっ!あふっ…だ、めぇ…そこゾクゾクしちゃう…んあっ!」
自慰していて見付けた膣内の弱い場所…。
指を挿入て第二関節の辺り、ちょっとコリコリした所があるんだ。
そこ…凄く気持ち良い。
高須君も見付けちゃって…優しく擦ってくれるんだ。
「おぅっ…わ、悪い。大丈夫か?」
でも私が『駄目』って言ってしまったから高須君やめちゃった…。
「ん…。はっ…ウソ…だよ……続けて欲しい…な」
身体を起こして、彼の手を取って催促する。
「じゃあ…続きをするから、もし痛かったら言えよ?」
高須君が優しく私を労ってくれる。
もしかしたら
『刺激に慣れていないのに無理してるんじゃないか』
…と、考えてくれているのかもしれない。
やっぱり優しいなぁ…高須君は…。

290名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 00:42:46 ID:vgKqwP6o
支援!
291 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:43:27 ID:dUD6E10a
余計な心配は掛けさせたくない。
今だけ…ううん、出来ればこれからも私の前でだけは気遣いとか、やめて欲しい。
だから恥かしいけど…言ってしまおう。
「大丈夫…。痛くなんてないよ。そこ…好きなんだ…。
ひ、一人エッチ…する時に触るし…」
最後の方は小さな声で…。
「お、おぅ。…これ、気持ち良いか?」
そう言って私の背中を腕で支え、
高須君は、また私を溶かし始める。
「っん、…うん。気持ち…いい、よ。ふあ…」
愛でる様に指先で触れて、ゆっくり擦られる。
その蕩ける甘い疼きに絆された私は、トロンと熱に浮かされた笑みで彼に紡ぐ。
彼の胸元に頬を寄せ、浅い呼吸で喘ぎ、汗ばんだ身体を擦り寄せる。
高須君の気持ちをないがしろにした娘達の『匂い』…消してあげる。
新しく亜美ちゃんの匂いを刻んであげるから…忘れない様に…消えない様に…。
「あふっ…、あ…あ、はぁ…あっ…。くふぅんんっ!」
奥へ奥へと侵入する指が膣肉を撫で、ゆっくり引き抜かれる。
印を切る様に組んだ指が弱い部分まで戻って、膣肉を弾く。
翔んだ様なフワフワした快感。
背中も首も反ってしまう程に…。
切なさが増していく…。

292 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:44:20 ID:dUD6E10a
「あっん!ふっ…!んうぅっっ!やああぁ…、あっ!あっ!」
根元まで一気に貫かれ、膣壁を小刻みに掻き回される。
そして、微かに指を曲げて膣肉を絡め取りながら抽出されて、発情しきった啼き声をあげる。
何回も何回も…意地悪な悪戯をされて、私は堪らず腰を使って甘える。
「川嶋にしてやりたい事があるんだ」
しばらくすると、不意に愛撫する手を止めて高須君が言った。
ボーッと蕩けた私は荒く息をしながら彼を見詰める。
「口でしても良いか?…川嶋もしてくれたし。俺もしたい」
そう言われた私は、ただでさえ熱い身体が更に熱くなっていくのを感じる…。
「で、でも…イヤじゃない?…んっ」
「俺がしたい事しても良いんだろ?
川嶋をもっと気持ち良くさせたい…。
してやりたいんだ」
心臓がバクバクしている…。
して貰いたい…でも恥かしいよ。
耳も頬も…顔全体、いや頭が沸騰しそうな程、カッと熱くなって……羞恥心が襲う。
だけど…良いよ。
私は勇気を振り絞って頷く。
言葉を紡ぐ事…余裕なんて無くなる。
…ちょっとだけ前進した…かな。

私を…今までより見てくれているって事…なんだよね?

293 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:45:27 ID:dUD6E10a
だって高須君が私に、そういう事を…恋人同士しか出来ない様なスキンシップをしてくれる。
『したい』って言ってくれたのだから…。
…亜美ちゃんは幸せ者だよ…。
私はベッドに身を横たえて、高須君を待つ。
膝を立てた私の前に彼が蹲った。
下着に手が掛けられ、丁寧に脱がされる。
そして膝小僧を持たれ、足を大きく広げられて…顔が下腹部に埋められる…。
「んあ……、んっ!…ふ…っあ!」
まず柔らかくて暖かい舌が焦らす様に、ゆっくり秘部を下から上に這う。
「ふっ!あん!っん!んうぅ…!」
舌の表面でねっとりと舐めあげられて、私は身体を震わせる。
ヌルヌルな高須君の舌が…気持ち良い。
敏感な部分に当たる鼻息がくすぐったい。
「は…ぁん。ふあっ…。あくっ!」
なぞる舌が敏感な部分に触れ、私は微かに跳ねる。
すると高須君が、そこを舌先でチロチロ。
速く、弱く…クリトリスだけをイジメられるの…。
「あはぁ…!だめぇ…弱い所ばかり、っう!舐めちゃ…んんっ♪」
そう甘えた声で言うと、今度は速さはそのままで強く強く舐められる。
私を悦ばせようと頑張る高須君が愛しい…。
ああ…そっか…。分かったよ。

294 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:46:35 ID:dUD6E10a
『嫌な事』を忘れるには私だけが押し付けたら駄目なんだ…。
『私がしてあげる』
じゃなくて
『私と頑張ろう』
なのだ。
触れて、戯れ合って、重なって…そうしたら高須君を癒す事になる…。
その過程で少しづつ『嫌な事』を拾って、持って行ってあげれば良いんだ…。
「んんっ!!あっ!!あんっ!…くふぅっっ!!」
だから私は彼に
『もっと愛して』
と、腰を使っておねだりする。
『気持ち良くて堪らないよぅ…』
そう伝える為に喘ぎながら…。
二人で甘えん坊になって…溶けちゃおう?
「ああっっ!!はっ…うぅっ!!んあっ!!」
その想いを感じ取ってくれたのか高須君が優しく吸って、返してくれる。
秘部を指で拡げて、心地よい甘さでクリトリスを吸ってペロペロ…。
刺激を貰えて敏感になっていた身体が…私を更に熱く疼いて、酔わされる。
「んうっ!!やぁ…あぅ…ひあうぅっ!!!」
クリトリスを唇であむあむ甘噛み、吸い出されて舌先でコリコリ…。
強い快感に私は高須君の頭を両手で押さえて啼く。
熱くほてった身体を彼に押し付けて…貪欲に求めてしまう。
「きゃふぅっっ!!たかすくぅんっっ!!ら、らめぇっ!!…んくっっ!!!」

295 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:47:39 ID:dUD6E10a
荒く息をしながら、高須君の頭を押さえ付けて腰をフリフリ…発情期の雌犬の様にサカってしまう。
紡ぐ言葉とは真逆な私の行為。
多分…私は好きなんだ。
スケベな事が…。
でもね、それは高須君とだから…だよ?
大好きな高須君にだけ見せてあげれる『仮面を被らない川嶋亜美』の一面。
「はっ!んはぁぁ…ああっ!!ひうぅ…っ」
高須君が私の手を掴んで拘束し、強く啄む。
荒々しくしゃぶり回して、身体に彼の味を覚えさせられる。
私は汗ばんだ身体を捩らせて乱れる。
彼の為に躍る。
「ん…川嶋ってすっげぇエロい。良い匂いだし…」
舌で舐めあげた後、そう言って再び顔を埋める。
「っ!…やあぁ、そ、そんな所…嗅いだら、っふ!だ、だめだってぇ!ひあぁ!!」
鼻がヒクヒクって…私の雌の匂いを嗅がれる。
愛液ってさ、お世辞にも良い匂いなんかじゃ無いよ…。
生々しい匂いだし…。
恥かしい…駄目だって、ねぇ高須…く、ん。
「あぁんっっ!!ひっ!あっ!!あっ!!」
そう思っていても、私は更に興奮していく。
これ以上は無い程に高揚していると思っていた気持ちが、もっともっと高まっていくの…。

296 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:48:36 ID:dUD6E10a
「っう、んん!!あっ!!ふ…っ!!」
吸われ、ねぶられ、私は顔を横に向け、指を噛んで酔い痴れる。
足の指でシーツを絡め取って手繰り寄せて、トロンと蕩けてしまった秘部から伝わる甘い痺れを堪能する…。
「は…。なあ川嶋」
しばらくの間、口で愛撫された後、高須君が顔を上げて呼び掛けてきた。
「っふ…。は…あ……。ん…?」
「そろそろ…挿入ても良いよな?…準備も出来てるから…」
身体を起こし、口元の私の残滓を腕で拭いて、高須君が囁く。
私はコクリと微かに頷いて、身体の力を抜く。
「ん…、ふあ…。んっ…んう」
私の膝を割って入った彼が秘部をおちんちんでなぞる。
ゆっくりゆっくり…挿入しやすい様に愛液を絡めていく。
硬いおちんちんが擦れ、私は期待に満ちた声で啼く。
「んう…。っんう?ふふ♪……んっ!…っは、ああぁ…」
滑って捕らえどころが無いのだろう。
挿入しようと試みて、失敗した彼に微笑みを返し、
熱さを湛えたおちんちんを持って膣口に誘導する。
そして一瞬、膣口に圧迫感を感じた後、私の中におちんちんが挿入ってくる…。
「っひあ……っ!!んんっっ、ん…あ」


297 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:49:26 ID:dUD6E10a
硬くて太いおちんちんが私の膣肉を押し拡げて、ゆっくり…探る様に……ううん味わう様に挿入される。
「っふ…。あ、暖かい…蕩けそう、だ」
彼が心地良さそうに呟いて、そのまま腰を進める。
下腹部から背中へ登ってくるゾワゾワした震え。
二回目だからかな?
ほんの少しだけ痛くて…でも身体の奥から沸き上がる熱を伴って疼く衝動…。
前にも言ったよね?
『私達は生き物』
だって…。
彼に抱かれる悦び。
そう、雌の本能が…燻って疼く。
「た、かすくん…ギュッてして?」
その疼きを我慢し、彼が根元まで貫いた後、私は両手を広げておねだりする。
「か、わしまっ…!」
彼が伸し掛かって私を強く抱き締める。

唇を荒々しく重ねて、強く突き上げられる…。
「んむっ!くちゅっ!ひあっ!!ちゅぷ!っくふ!!っあ!!あっ!!」
それを契機に高須君が膣の奥にガツガツと力強く打ち込む…。
その乱打に私の身体が彼の下で悲鳴をあげる。
一撃される毎に目の前で白い光が爆ぜて、強い快感に気を失いそうになる。
「っう!!ちゅぱっ!ふ!あっ!!ああっ!!た、たかすくぅんっ!!もっと優し、…んくっっ!!んっっ!!ふっ!」

298 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:50:20 ID:dUD6E10a
息継ぎをしようと唇を離し、彼に懇願すると…再び口付けされる。
「んっ…ふ、くちゅ。ちゅっ!」
だが荒々しさは抑えられて今度は願い通り、優しく愛してくれる。
舌を彼の口内へ手繰り寄せられ、甘噛みされながら吸われて、
円を描く様な腰遣いで、膣肉を掻き分けて…グリグリされる。
「んあ…。くちゅっ…、ふっ!んうぅ…、ふ。ちゅくっ、ちゅくっ………あふぅ」
舌で互いの唾液を含ませ、啜り合う。
高須君が唇を離して、緩く、緩慢に抽出しながら私の頬を撫でる。
「すまん…。川嶋が可愛いくて…堪らなくなっちまった。
もう乱暴な事はしないから…ごめんな?」
私が彼の理性を外す原因を作ったのだから仕方無い。
そんな事より、今さ…
『可愛かった』
って言ってくれたよね?
うん。聞き間違いではなく、確かに…。
それだけで私、堪らなくなっちゃうよ…。
大好き…。
「ん♪…良いよ、気持ち良かったもん。
でも、ちょっとでも永く高須君を感じていたいから…優しくして欲しい、な」
高須君の耳元で甘ったるい声を出して、目一杯甘える。
気取った口調とか余計な事は考えず、素直に…女の子らしい甘えん坊になるんだ…。


299 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:51:12 ID:dUD6E10a
「っう…どうだ?」
彼がスケベな腰遣いで、膣内をねっとりと掻き回しながら問う。
『川嶋のキモチイイ所を教えてくれ』
って、意味かなぁ…?
「はぁ…、はぁあ…。もっと奥でぇ…グリグリしてぇ……んうぅ」
硬い張り出しに膣肉を絡め取られて、私はうっとりとしてしまう。
でも、もっともっとゾクゾクしちゃう所…『女の子の大切な部分』をほぐして…。
「うっあ…、すげぇ吸い付いて…っはぁザラザラ…っふ」
そう身体と声を震わせて高須君が私の『具合』を伝える………スケベめ。
「んあ…亜美ちゃんの中…ザラザラ?んんっ……ウソだぁ」
甘ったるい声で私は返す。
だって膣壁がザラザラって何よ?
自分で…ゆ、指を挿入ても……そんな所無かったもん。
「ここだよ…っう、おぉぅ。…ほら」
そう言って、彼が膣壁をおちんちんで擦る。
この感じは、おヘソから数cm下の辺り…。
そこをズリズリと斜め下からイジメられる。
「んあ…ぅ。そんなの…わかんなぁ、い。あ…っん。だからいっぱい…教えて?」
短い感覚で抽出される心地良さは、身体が縮こまっていく様な感じ…。
それは宙に浮いた足の指が、虚空を掴もうと開いてしまう程の、淡く微弱な痺れ…。


300 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:52:07 ID:dUD6E10a
「あ…っ、んくっ…。ふ……、ああぁっ…。っ!ひぁっ!」
抽出が始まる。
ゆっくり挿入て、ちょっと速めに抜く…。
おちんちんの頭が抉りつつ押し拡げてくると、切ない疼きが和らぐ。
そして引き抜かれると、浮遊感と熱くほてった疼きが燻る…。
離したくない…って言ってるみたいに、キュンッて大事な所が切なそうに締まる感覚。
時折、思い出した様に力強く突き上げられると一瞬だけ息が詰まって、身体がビクンと跳ねる。
太いおちんちんが膣壁を擦りながら、硬い頭がコツン…。
私は、それを受け止めてモミモミ。美味しそうに食べている。
覚えたての彼の形と味が欲しくて、夢中で甘える。
「あはぁっ!!…っふ!んんっ!!ひうっ!!たかすくぅ、ん!っあ、ひ…!」
私達は溶けて一つになる。
背中に回した手で強く抱き締め、腰を捩らせて耳元で喘ぎ、首筋を舐めて求愛する。
そう、高須君とキモチヨクなる為に躍る。
「あんっ…、あっ!!んんっ!!あぁ!!くぅっ…んっ!!」
だから私も…したいな。
「は…、あっ!たかすくぅんっ!あ、亜美ちゃんもしてあげたいっ…、あっ!ねっ?はあ、させてよぅ」

301 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:53:14 ID:dUD6E10a
私は高須君に抱き起こされる。
「じゃあ…してみるか。川嶋、ちょっと我慢しろよ」
私達は繋がったまま、器用に足を組み替えてみたり、押したり引いたり……、簡単に言うなら絡まり合いつつ体位を変えていく。
「ん…、あふぅ…。中で暴れて、る…。ひゃっ」
「お、おおぅ…擦れる。それに…キュッて…」
とか互いに呟きながらグネグネと…。
「うん…じゃあ続き、しよっか?ほら高須君寝転がって…、ん」
何とか体位を変え、胡座をかいた彼の上に跨がった私は、そう言って肩をポンと軽く押して寝かせる。
高須君の上に馬乗りになっちゃった…。
…これ、何だかやらしい…。
さっきより…深く挿入っちゃってるし、攻め側だから…。
「ん…あ…。くっ…ふ…あ」
私は高須君の胸に手を置いて、ゆっくり腰を前後させる…。
凄い…気持ち良い。
強い刺激で腰が蕩けちゃいそ、う…。
上手く動けないよぅ…。
「あ…。んくっ!…ひ、あぁ…。あ…」
膣の奥をおちんちんでスリスリ…。
トロンとした甘い痺れに私は夢中になる。
「は…あ、はあ。はっ…、はっ!」
続いて腰をくねらせてみる。
さっきより、疼きが増してピリピリした電気が走る。

302 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:54:04 ID:dUD6E10a
「あっ…、んうぅ。んっ!は…うぅ」
膣内でおちんちんが大きくなった。
高須君も良いんだ?
じゃあ…これは?
「んあっ!…ふあ!んっ!んっ!」
彼に覆い被さり、抽出を始める。
高須君がしてくれたより、ほんの少し速く。
跳ねてしまう身体を彼に預けて膣肉で搾る。
「んあっ!は…!あっ!!あっ!!あんっ!!」
彼の頭を抱き締めて、強く、激しく踊る。
膣内がトロントロンに溶けて…切なさが痺れと入れ替わり、
腰砕けになる強い快感の海に呑まれていく…。
「あっ!!あんっ!!キ、、キモチイイ?たかすくぅんっ!あっ、あっ!!」
私は発情しきって蕩けた声で問う。
「っくぅ!お、俺もキモチイイぞっ!はっ!うあっ!!」
すると高須君が私を抱き締めて返してくれた。
私を強く突き上げながら…。
「んあっっ!!だ、めぇ…バ、バカになっちゃうっ!んうぅっっ!!!腰がバカになっちゃうよぉ!!ああっ!!」
お尻を掴まれて、大事な所が壊れてしまうと思う位、奥へ奥へ…おちんちんを激しく叩き込まれるの。
私は彼を夢中で貪る。
私は腰を前後に振って…、高須君は力一杯突き上げる…。

303 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:54:49 ID:dUD6E10a
獣みたいに荒々しく求め合って、登り詰めていく…。
「あっ!!イ、イッちゃいそう!!ああっ!!らめっ!!イッちゃうよぅっっっ!!!」
目の前で星が輝いて、息があがる。
私は酸素を求めて喘ぐ。
「あっ!!あっっ!!あっ!!あ、あんっ!!は、あぁっ!!んあっっ!!!!」
高須君の乱打が激しくなり、私は目の前が真っ白になって…一瞬だけ身体の筋肉が硬直する
そう…雌豹の様に身体を反らしながら達してしまった…。
「くぅっ!!!」
と、同時に高須君が呻いて、私のお尻を持ち上げて、おちんちんを引き抜く。
そして…お尻に熱い飛沫が掛かって…。
全身から力が抜けて、ボーッと蕩けた頭が、それを何処か遠くで行われている事の様に知覚する…。
高須君も…イッちゃったんだ……。
熱い……、あ…お尻におちんちんが当たってる。
ブルッと大きく身体を震わせながら、心地良い事後の甘さを堪能する。
高須君の胸元に頬を寄せながら…。
.
「なあ川嶋」
高須君と抱き合って互いの体温を感じながら、幸せな気持ちで事後の余韻を噛み締めていた。
すると、彼が私に問い掛けてきた。
「ん…なぁに?」

304 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:56:03 ID:dUD6E10a
「…俺、川嶋と居たら嫌な事を忘れてしまえるけど…溺れてしまいそうなんだ。
いや、もう溺れてしまってる」
そう言って高須君が私を抱き締める力を強める。
「俺は川嶋に惹かれている…んだと思う。でも…これで良いのかってのも思うんだよ。
櫛枝が好きだって想いを…自分の事を否定してるみたいだから……さ」
「…実乃梨ちゃんを好きな気持ちが本当なのか…分からなくなってるんだ?」
しばらく考えた後、高須君が呟く。
「ああ…。俺は自分が惚れっぽい訳じゃねぇと思ってる。
でも…揺らいでしまう。
もう言っちまうけど、俺は川嶋の事、好きだ…。
じゃあ櫛枝の事は?
って……なるよな」
高須君が言ってくれた言葉…
『好きだ』
を、私は頭の中で反復させて天に舞い上がってしまいそうな気持ちになる。
でも高須君は真面目な話をしている。浮かれている場合ではない。
「……自分の心を見詰めてみたらいいじゃん」
私は返す言葉で、そう紡ぐ。
これは私の率直な意見。
「焦ったら…後悔するかもよ?いっぱい悩んで、考えて、試してみて…さ。時間が掛かっても見付けれたら、その時に決めなよ」

305 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:56:53 ID:dUD6E10a
心に迷いがある今なら、高須君の事を引き寄せれる。
でも、私はそれはしたくない。
高須君がしっかり自分の心に問い掛けて、自分の気持ちとしての答が欲しいから…。
「私も…一緒に考えてあげる。
実乃梨ちゃんや大河とも普通に接して、私とも過ごしてみて見付けようよ。
そうして最後に高須君の"たった一人の大切な人"に答えてあげれば良いんじゃないかなぁ?」
私は微笑んで、彼の頬を両手で撫でて続ける。
「だから……協力させてよ。明日から放課後は亜美ちゃんと一緒に居よう?」



続く
306 ◆KARsW3gC4M :2009/04/21(火) 00:58:00 ID:dUD6E10a
今回は以上です。
次回からは竜児視点です。
続きが出来たら、また投下させて頂きます。
では
ノシ
307名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 01:10:30 ID:vgKqwP6o
GJ! エロイw お疲れ様でした。
308名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 01:30:34 ID:HfljwRnB
グジョーブ!待ってますよ。
読んでて竜児とあーみん、うまくいって欲しいなと思ったよ
309名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 01:40:19 ID:oAC2HLMI
>>306
もうホントにGJ!!
続きを待ってまっせ!!!

俺もあーみんには幸せになってほしい。


…さて、裸の待機組みは今頃賢者タイムか。
310名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 01:48:36 ID:GAqACNUb
すばらしい
311名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 06:33:02 ID:DjgWQ077
>>306
この二人には幸せになってもらいたい
GJ! 今後の展開も期待してます
312名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 16:56:07 ID:TNUORHF0
とらドラ4巻の特典小説、貼ってた人いたからこっちにも
http://imepita.jp/20090421/533430
313名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 17:31:07 ID:5K7EtLJ2
行為じたいもさることながら
亜美ちゃんの雌心理がエロかわいいですね
お疲れ様です
314名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 18:04:48 ID:RldVS5nx

雌心理ワロス

たしかにメスっぽくて可愛いなあ亜美
31598VM:2009/04/21(火) 21:21:05 ID:pP3lO36M
こんばんは、こんにちは。 98VMです。

お騒がせして申し訳ありませんでした。
真に勝手ですが、お詫びは作品投下をもって代えさせて頂きます。

前提: みのりんルートアフター
題名: Carnation,Lily,Lily,Rose
エロ: 無し
登場人物: 亜美、大河、オリキャラモブ
ジャンル: 学生生活
分量: 11レス
けたたましい音に、うんざりして手を伸ばす。
最初はお上品に鳥の声を流すそれは、ある程度放置されると臍を曲げて騒ぎ出す代物だ。
いつもは、鳥の声で目覚めるのに、今日はどうやら目覚めが悪いみたい。
何度かパタパタと手を上下させて、ようやく静けさを取り戻す。
なんだか、おなかの辺りが重苦しい。
頭はまだ眠っているみたい。
昨日は… なんだっけ?
ああ、そうだ。 新歓コンパとか称してお酒を飲まされたんだっけ…。
それで… それで…
「!!」
稲妻の様に記憶がよみがえり、勢いよく頭を起こした。
やっぱりだ。
おなかが重苦しいのも当たり前だ。
そこにはやや栗毛色がかったふわふわの髪の毛が広がっていた。
「くぉんの、チビトラァ…。」
めちゃくちゃいい笑顔で寝てやがる。 あんな事があったってのに、なんつー幸せそうな…。
ってか、なんであたしの上で寝てんだコイツ。
亜美ちゃん、ちょームカついた。
「おきやがれ、このクソチビがぁーーー」
怒号一閃、渾身の力で布団をひっぱがしてやった。


    Carnation,Lily,Lily,Rose   Scene.1


手乗りタイガーはころころと転がったけど、キングサイズのベッドのお陰で転落は免れた。
もそもそ蠢くソレは無視して、時計を見直す。
今日の講義はあたしもタイガーも午後からだ。 
大学生活は始まったばかりで、まだ生活のリズムが出来てない。
それに、仕事さえなければ、大学という所は割と時間の融通が利く。
お陰で、すこしばかり時間にルーズになってしまったみたい…。
目覚ましの時間をセットし直すのを忘れていた。

危ない、危ない。 逆のシチュエーションなら即寝坊だ。
昨夜、寝たのは… いや、今日だ。 それに夜というより朝だった。
「あふっ… んぁああ〜〜。 ……ぁら。 ばかちー おはよ。」
「おはよ。 っじゃねーっつの。 なんであんた、あたしのベッドに入ってくんのさ。」
「ん〜〜? あんたのベッド? だって、こっちの部屋のほうが居心地いいんだもん。 ばかちー
のくせに細かいこと気にすんな。」
「ちょ、ちゃんと話し合って決めたでしょ、部屋割り。 っていうか、家賃殆どあたしが出してるん
だから、あたしが大きい部屋使うのが筋だろがっ。」
「部屋の大きさなんて言ってない。 ばかちーが居る部屋のが居心地いいの。」
「なっ… な、なにいってんのさ!」
「あ、赤くなった。」

「……てんめー、窓から東京湾に捨てっぞ、こらぁ!」

朝からムダに体力を消耗するドタバタを演じつつ、
今日ばかりは、『なんでこんな事になっちゃったんだろう』と思わずには居られなかった。


大橋高校2年の冬。 あたしと実乃梨ちゃんは修学旅行で大喧嘩をした。
その後だった。 高須君とタイガーと実乃梨ちゃんが目に見えてギクシャクし始めたのは。
どう考えても、あたしのせいだ。
焦ったあたしは、最後の手段に訴えざるを得なかった。
その手段ってのは、真っ向勝負で高須君に迫ること。
そうすれば、タイガーも実乃梨ちゃんも、譲り合いをしている場合じゃなくなって、素直になれる
んじゃないかと思ったんだ。
けれど、完全に予想が外れてしまった。
タイガーが、あたしに対してまで、全速力で身を引きやがった。
都合、あたしは、実乃梨ちゃんと一騎打ちになっちゃって…。
自身のプライドと、喧嘩のしこりもあって、引くに引けなくなったあたしは、必死になって高須君
の気を引こうとした。 たぶん、あわよくば、なんて心の底では思ってたんだろう。
でも、ルックスだけが取り得のあたしが実乃梨ちゃんに敵う筈も無く、見事に完全敗北した。
そして、高須君と実乃梨ちゃんは結ばれた。
作戦通りだった。
作戦通りだったけど、あたしは自分が思ってるより、高須君の事が好きだったらしく。
やせ我慢して平気な面を取り繕うとしたあたしは、実にあっさりと、壊れてしまった。
そして、その挙動不審になったあたしを救ってくれたのが、タイガーだった。
あいつはあたしの思惑に気がついてやがった。 けれど、あたしが壊れちまう程、高須君の事
が好きだとは思ってなかったらしい。 そりゃそうだ。 あたしだって知らなかったんだから。
あいつは、一晩中、泣き喚くあたしの傍にいてくれた。
それは傷の舐めあいだったのかもしれないけれど、こんなあたしのことを本気で心配してくれる
奴がいるんだって事が、あたしはたまらなく嬉しかったんだ。

それから、あたしとタイガーはクラスは離れてしまっていたけれど、同じクラスに居たときよりも、
一緒に居ることが多くなった。
それに、タイガーのお陰で、実乃梨ちゃんともなんとか関係修復が出来たし、一時は、あたしを
避けるようになっていた高須君とも自然に話せるようになった。
それにしても、あのクソお人好しなヤンキー面は、これ以上あたしを傷つけないようにと思って、
避けていたってんだから朴念仁もここに極まれりって感じで、むしろ実乃梨ちゃんが気の毒に思
えてしまったものだ。
そんなこんなで、大橋高校の最後の一年が過ぎて、あたし達はそれぞれの道に進んでいった。
…筈だった。
あたしは奇跡的に第一志望にしていた私大に合格した。
一方、タイガーもあたしと同じ大学を受けていて、学部は違ったが、合格していた。
そしてあいつは、後でよりランクの高い大学に受かったにもかかわらず、そっちの大学の入学
手続きはせず、事も無げにこう言ったのだ。
「たいして偏差値かわんないし、ばかちーからかってたほうが面白いもん。」
そうして、あたし『達』の大学生活が始まった。

大学生活を始めるにあたって、あたしとタイガーの利害が最初に一致したのは住処の件だった。
タイガーはなにか思惑があるのか、母親とは離れて暮らしたい様子だったし、あたしもまた、一人
前になるまで、家に帰りたくなかった。
3月に入ると、あたしは、大学受験のために休んでいた仕事を本格的に再開した。
すると、受験で殆ど仕事をしていなかったのが、逆に市場の飢餓感をあおったのか、復帰第一号
となったファッション誌は文字通り秒殺され、ちょっとした話題になった。
そして、その後はあっという間だった。 あたしはたちどころに『話題の人』になり、大学に通い始
める頃には人気が爆発していた。
特に4月からオンエアされているCMの反響は凄く、出演依頼も捌き切れないほど来はじめてい
るらしい。 そんな訳で、パパラッチ対策という仕事上の要求もあって、どこかのマンションを借り
たほうがいいという話になった。 まさに渡りに船。
かくて、あたしとタイガーはルームシェアして共同生活をすることにしたのだった。
ちょっと長くなってしまったが、これがこれまでの物語。
だが、重要なのは、共同生活が始まってからの、いや、とりわけ昨晩の出来事の方なんだ…。


くの字に折れ曲がったちょっと変わった形のフラット。 一番端の、コンサバトリーに面した大きな
部屋があたしの部屋で、洗面所と浴室を挟んでタイガーの部屋。 その先にも一つ部屋があって
その更に先に約100平米のLDKがある。 全部の部屋が東京湾に面していて、玄関もトイレも
2箇所づつ。ついでにお風呂も東京湾の夜景を見下ろしながら入れる、ほぼ全面ガラスといって
いい大きな窓がついている。 地上48階立てのビルの最上階にあるこの部屋は、値段相応の
快適さを誇っていた。
「せっかく目、覚ましたんだから、おきちゃいなよ。」
「…ねむいぃ。」
「ったく。 いつまで経ってもガキなんだから。  ほらほら、今起きたら、特別に朝食作ってやる
からさ。」 「ほんと? ばかちー。」 「ほんと、ほんと。」 「…わかった。」
…疲れる。
本当は今日の朝食当番はタイガーの番だった。 生活能力が皆無のあたし達は、共同生活を
始めるにあたって、家事は公平に分担し、お互いに切磋琢磨しあって、人並みに家事の出来る
女になろうと誓い合った。
けど、ふたを開けてみて一ヶ月。
一週間に5日はあたしが家事をやっている。 
本気でこのチビトラは依存体質にできてるらしい。
そして、なんとなく面倒を見てやりたくなるような、一種悪魔的な可愛らしさがあった。
半分眠りながら、ダイニングにちょこんと鎮座していると、まるでフランス人形のようだ。
「できたよ、チビトラ。」
「うん。 …なに、これ、ばかちー。」
「……目玉焼きよ。」
「…こっちは?」
「……みりゃわかんだろ。 トーストよ、トースト。」
「トーストというよりトーテン…」
「食っても死なねっつの!  てか、文句言うんなら食うな!」
「スープはまともだ…。」 「わざと言ってんのかよ… そりゃインスタントだよ。」
とはいえ、タイガーはいつも文句は言うが残さず食べる。 決して美味しくは無いのに。
たぶん、一応は感謝してくれているのだと、思う。
「今日の講義さ、ばかちーも午後からだよね?」
「うん? そうだけど。」
「なんで、こんなに早く起きたの?」
「起きたんじゃなくて、苦しくて目が覚めたのよ。 誰かさんの頭が重くてね。」
「あ、ばかちーTVつけて。」
おぃ。 自分に都合悪いことは華麗にスルーかよ。
ってか、オメーの方がリモコン近いじゃん。 と思いつつも、手を伸ばしてTVをつける。
65インチのプラズマTVに国営放送の天気予報が映る。
「夜には雨かぁ。 傘もってった方がいいかな。  そういえば、ばかちー今夜仕事だっけ?」
「うん、それなんだけど、今日はどうせ打合せだから、せっかく早起きしたし、午前中にずらして
もらおうかなって。」
「へー そんな事できるんだ。」
「いや、普通は無理だよ。 でも今日は皆、午前中空いてた筈だから。」
「そっか。 んじゃ、今晩は私がごはん作るね。 だから、ちゃんと帰ってくんのよ、駄犬。」
口では駄犬とか言ってるけど、これはチビトラ流の照れ隠し。
こいつもあたしと同じ、本質的には寂しがりやなんだと思う。
「あのねぇ、そもそも今日はあんたの当番じゃん。」
「だから作るって言ってるんじゃない。 文句あんの?」
「はいはい。 なるべく早く帰るね。 あんた一人にやらせると、血まみれの料理でてきそうだし。」
「うっさい、馬鹿にすんな。」
「…してないよ。」 出来るだけ優しく言ってやる。 実際、馬鹿になんてしてない。
「ん、ぐ。」 あはっ 照れてる照れてる。
「じゃ、あたし、シャワー浴びたら出掛けるから、片付けお願いしていい?」
「うん。 そのくらいはサービスしてあげるわ。」
一旦、部屋に戻ってマネージャーに電話する。 OK。 予定の繰上げは歓迎されることが多い。
洗面所で改めて自分の顔を見た。やっぱりクマができてる。
まずいなぁ、と思いながら手早く服を脱ぐ。
このバスルームは洗面所側も全面シースルーになっていて、日中はやたら明るい。
大きな鏡に映った朝日に照らされる自分の裸身を見て、あたしは昨夜のことを思い出していた。 
---------------------------------------------------------------------------

昨日は大変だった。
この春、一気に話題の人になってしまったあたしは、学内ではなるべく目立ちたくなかったので
サークル活動とかには所属しないつもりだった。
だが、チビトラが講義で知り合った学生に半ば拉致状態で連れ込まれて、結果、あたしまで巻き
込まれてしまった。
タイガーが焦った声で電話を掛けてきやがって、あたしは大慌てで呼び出された場所に行った。
電話口のタイガーはすっかりテンパっていて、こいつぁヤバイと直感した。
あいつは大人しくさえしてれば、ぶっちゃけあたしと大差ないくらい可愛い。
なもんだから、かなりしつこく勧誘されたんじゃないかと思った。
あるいは逆に、ここでタイガーが暴れだして、新たな伝説が誕生しても拙い。 
だが。
自惚れでもなんでもなく、あたしの出現はタイガー以上にセンセーショナルだって事が、あたしは
すっぽり頭から抜けていたんだ。

大学の敷地の一番奥まった所にあるホールに、特徴的な小柄なシルエットを発見する。
「大河!」
「え? 川嶋 …亜美?」
「うっそだろ… 逢坂さんの友達って…。」
「ちょ、ちょっとまって。 ばかちーと川嶋亜美って、全然結びつかないんだけど…。」
こ、こいつは。 初対面の相手にあたしのこと、『ばかちー』って紹介してんのかよ…。
マジありえねぇ。
「あ、逢坂さん、これ、どういう事?」
悪質な勧誘を受けてた訳ではなさそうだ。 あたしは問い質そうとしたが、当然もう手遅れだった。
「うんとね、…勢いに流されて、ばかちーと一緒なら入ってもいいって言っちゃった。」
それ、反故になさい。 今すぐ、直ちに、たちどころに、間髪居れずに! 
と言いたかったが、もうすっかり舞い上がっているメンバーの皆さんの前で、そんな厳しい台詞を
吐く訳にはいかない。
猫かぶり的に。
「ちょっとまって、逢坂さん。 あたし、なんの説明も聞いてないんだから、すぐには決められないわ。
だから、今日は保留にさせてもらって…。」
うっ…。 メンバーの皆さんの視線が痛い。
「やっぱり、そんな都合よく亜美ちゃんとお近づきにはなれないか〜。」「私等とは住む世界が違う
もんね。」「まさに高嶺の花だよ。 うん、一瞬だけど、いい夢見させてもらった…。」
断られる前提の話になってる。 たしかに断る気満々なんだけど。
そんなにあからさまにがっかりされると、ちょー可愛くて、ちょー良い子な亜美ちゃん的には無視し
難いじゃねーかよ。 ってか、こいつら計算済みだろ。 あたし以上に腹黒なんじゃね?
「ばかちー、ごめん、私つい口がすべっちゃって…。」と、あたしにしか聞こえない声で呟くタイガー。
って、お前がそこでシュンとすんなよ。 よけい心が痛くなるじゃん…。
もう。 しょうがない。
大河が入ってもいいって思ったんなら、少なくともおかしなサークルではないだろう。
「あの、じゃあ、あたし、仕事とかで幽霊になっちゃうかもしれませんけど、それでよかったら…。」
これしかない。 別に出席を強要されるわけじゃないだろうから、幽霊サークル員になればいい。
みんなの顔がぱっと輝き、直後に歓声が上がる。
自分のナルシーな部分が、「さあ、心して喜べよ愚民共。 この亜美ちゃん様が所属してやるんだ
からなぁ。」とのたまって、微妙に心が沸くのがちょっと情けない夕暮れだった。

そして、そのままなし崩し的に第二回新歓コンパと称する飲み会になった。
運悪く仕事は入ってなくて、ちやほやされて舞い上がったタイガーが正直にあたしが暇なのを言って
しまったのだ。
人間関係がリセットされた大学では、逢坂大河は凶暴な手乗りタイガーではなくて、ちっちゃくて超
可愛い新入生に過ぎない。 あまりちやほやされるのに慣れてないタイガーはその状況にすっかり
テンパッてる。 そして、その様や、ドジっぷりが更に皆の『可愛がり』に拍車をかけた。
おかげで、タイガーは普段の聡明さがすっかり失われ、失言しまくって、あたしの立場は急転落だ。
要するに、猫かぶってるあたしには、タイガーの口を塞ぐ手立てがなかったって訳。
「川嶋さんって、案外親しみ易いんだー。 正直もっとお高くとまってるかと思ってたー。」
「毒舌なんて無問題。 一つ二つ欠点なかったら、かえって可愛くねーべ。」
「いや違うな、貴様、間違っているぞ! 俺はせっかくだからその『毒舌』ってやつで罵ってもらうぜ。 
これこそが漢のジャスティス!」
「うはっ、でたな! M男!」 「あはははは、きもーーーーい!」
おもいっきり猫かぶりがリークされた。 
人の口に戸は立てられない。 事務所にバレたらめちゃくちゃ怒られそうな事態なんだけど、それで
もあたしは実際に性悪チワワぶりを発揮して、タイガーの口を止めるって選択肢は採れないで居た。
けれど、今回はその小心さが功を奏したようだ。
「みんな、聞いてくれ。 今日、この場で明らかになった川嶋さんの秘密は絶対に他言無用。 俺達
の仲間の尊厳は、神の名の下に俺達が守る。 いいなー、みんな。」
会長が芝居がかった様子で宣言する。 神の名の下にって所が、いかにもこの大学らしい。
共通する秘密を持つってのは、コミュニティーの絆を深める常套手段。
この会長、なかなか才能があるみたいだ。
それと、ちょっとだけ、仲間って響きに心が揺れた。 

そうこうするうちに、宴もたけなわとなって、そろそろ酔っ払いが出てくる頃合になる。
「飲んでるかーーーー、ばかちーーーーー!」
叫び声と一緒にクロスチョップが飛んでくる。
あたしは仕事の関係でちょっとは飲んだことがあったから、上手いことペース配分していたけど、
何時の間にお酒を口にしたのか、タイガーがべろんべろんになっていた。
「でへへへ。 私、ばかちーよりも可愛いって。 ねぇ、ばかちー、悔しい? 悔しい?」
ダメだコイツ。
「はいはい。 大河はあたしよりずっと可愛いよ。」 あきれているようで、実は本心だったりする。
「む〜〜〜。 なによ、その余裕は……。」 膨れた。 酔っ払いの相手は大変だ。
「その余裕の源はぁ〜〜  閃いた!  こぉーこかぁーーーーー!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
サークルの全員がどよめいた。
それもそのはず、タイガーはあたしの胸を両手で鷲掴みにしていた。
あたしはあまりの事に固まって、反応できたのはタイガーに数回乳を揉まれた後だった。
「なっ、なにしやがんだ、このバカトラーーーー!」
「おおおおおおおおおおおおお!」
で、おもいっきり地がでてしまった。 にしても、なんでそこで感嘆すんだよ…。
その後はすっかりカオスな展開になってしまったけど、正直、こんなに笑ったのは久しぶりで、ちょっと
だけ、サークル活動って楽しいかもと思ってしまった。
実際、おぼっちゃん学校っぽいところがある本学は学生の質もいいのか、サークルのメンバーはみな
好人物だったし。
それに、信じ難いことに、結局本性を晒してしまったあたしに、皆、やんややんやの声援をくれた。
M男先輩に至っては、「姫ー! 俺を、俺を踏んでくださーーーい!」 と叫んで飛び込み前回り受身
をしてくるし…。 しかも上半身裸にネクタイ締めて…。 マジで変態だった。
この学校に通い始めて一ヶ月弱。 
大学ってすごい所だって、やっと実感させてくれた新歓コンパだった。
ところで、チビトラのやつがどうなったかって言うと。
最後の三本締めが終わった所で、いきなり吐きそうになって、近くにいた女の子にすばやくトイレに
護送されていった。 あたしもすぐに後を追ったが、その女の子は凄くてきぱきとタイガーを介抱して
くれて、あたしの出る幕は無かった。
みんなに「トウコちゃん」と呼ばれていたその子は、結局、あたしとタイガーがタクシーに乗るまで、
介抱を手伝ってくれた。
特別美人じゃないけど清楚な感じで、あたしと同じくらい綺麗なロングヘアーの彼女は、あたし達と
同じく一年で、東北出身だとはっきりわかるくらい訛っている。
そして、別れ際、その子はおずおずと『友達になりたい』と告げてきた。
もちろん、断る理由なんて無い。
不思議なものだ。
一度殻を破ってしまえば、なんてことは無い。 こんなにも自然に、人と触れ合えるんだ。

帰りのタクシーの中、酩酊する天使のかわいい頬に、
あたしはこっそり感謝のキスをした。

そして、なんとかマンションまでたどり着き、めちゃくちゃ苦労して、タイガーを部屋のベッドに横たえ
た時に、事件は起きた。
いきなり、かぱっと目をあけたタイガーは酔っ払い特有の目つきであたしの首に手を掛けると、一気
に引き倒された。
あたしもジムで鍛えてるから、身体能力にはそこそこ自信があるけど、このチビは次元が違う。
マジで男並みに力があるんだ。
あたしはあっという間に、チビトラに組み敷かれてしまった。
20cm以上も小さい相手に、大の字にベッドに張り付けにされるのは、はっきり言って屈辱的だ。
でも、本気になったタイガーとの力の差は歴然で、あたしは身じろぎするのが精一杯。
そのまま寝せようと思ってたから、部屋の灯りは点けてない。
月明かりだけの部屋のベッド。 足を開かされて馬乗りされれば、女の本能が恐怖を訴える。
お酒で目の据わったチビトラが、口を開く。
「ばかちーに、キスされた夢をみた…。」
夢じゃない。 たしかにキスをした。
「だから、お返し。」 恐怖に目を閉じる。
…おでこだった… 唇を奪われるかと思って、恐怖したが、流石にそれは無かった。
ほっとしたあたしを見て、チビトラが邪悪に微笑む。 ヤバイ。 こいつ完全にラリってる。
次のキスは首だった。
見た目はふわふわだが、やや硬い髪の毛が私をくすぐる。
チビトラのキスは降り止まない。
やがて、あたしは両腕を頭の上で組むようにタイガーに片手で押さえられ、空いたほうの手で衣服を
はがされた。
「ばかちーのおっぱい、おっきい… それに、すごく柔らかい。」
いつの間にかブラもはがされ、胸が曝け出されてた。
タイガーの柔らかい唇と、髪の毛が私の肌を刺激する。
首筋、喉元、肩口、そして乳房へと、タイガーのキスが降りしきる。
自分でも知らなかった性感帯を刺激され、あたしの脳幹は蕩けていく。
どこからか聞こえてくる甘い声が、自分の声だと気がついた時には、あたしはもう抵抗する力を失っていた。

「ばかちー、ひくひくしてるよ。」 くすくす笑いながらそんな事を囁く。
急に胸を激しく揉まれて、あたしは大きな声で啼く。
自慰をしたことは有った。
けれど今は、次にどこを刺激されるかわからない。 
たったこれだけの違いが、これほどあたしを興奮させるとは。
それと、こうして征服されていくことも、あたしを興奮させている要因の一つなのかもしれない。
抵抗力を完全に喪失したことを確信したのか、タイガーはあたしの手を押さえていた手も、あたしの
体を燃やし尽くす為に使い出す。
「竜児も、こんな風に胸を揉むのかな…。」 耳元で紡がれる囁き。
反則だ。
それからタイガーは、何度も『竜児』という単語を囁く。
淫靡な雌の匂いにあてられたのか、トロンとした目であたしを見下ろしながら。
その単語が届く度に、三白眼の男の面影が脳裏にちらつく。
こんなの無理だ。
とてもじゃないけど、耐えられない。
執拗に繰り返される愛撫。
上半身しか刺激されていないのにも関わらず、永遠とも思えるほどに繰り返されたそれに、
あたしは今にも達しそうになっていた。
そしてついに、愛撫は下半身に近づいていき…
ショーツを押し上げる丘にチビトラの指が達した時、あたしは無様に激しく身を震わせた。
けれど、タイガーの愛撫は止まらない。
「かわいい…。」 言葉とは裏腹に、残酷にもタイガーの指はショーツの隙間から、腫上った一番敏感な部分を
探し当て、容赦なく愛撫する。
それはもう嬌声というより悲鳴。
「ぅあっ ああっらぁ めて、 いぁあっ あぁぁ しん ぅあっ じゃ、ぅう ああっぁ」
呂律は回らず、何を言いたいのかも定かでないが、必死で声を上げる。
けれど、タイガーは止まらない。
ただ、ただ、タイガーはあたしの様子にも気付かずに、目の前の裸身を征服し続けているのか。
絶頂に身を震わせるあたしを、それまでと変わらずに刺激し続ける。
朦朧とする意識の中、その異常性に理性がほんの少し目を覚ました。
一心不乱にあたしの体を貪る小さな影を見上げる。
大河の顔は下を向き、髪の毛に隠されている。
僅かに体が傾き、そのちいさな顔に月明かりが差し込んだ。
白濁していた意識が、たちまちのうちにクリアになっていく。
快楽に歪んだ心が、凍りつく。

大河は泣いていた。 泣いていたのだ。

そして、いままで自分の嬌声で掻き消されていた、搾り出すような小さな悲鳴。
「竜児…、竜児…、竜児…」

その瞬間、あたしの心は空っぽになった。 唯一つ、目の前の少女への想いを除いて。


あたしは、でも、抱きしめるしかできなかった。
たぶん、大河は本格的にお酒を飲んだのはこれが始めてなんだろう。
アルコールは心を裸にする。
いったい、どんな気持ちだったのか。
たぶん、大河はあたしに慰めてほしかったんだ。 ずっと黙っていたけど、独りで寂しかったんだ。
あたしはどうしようもないクズだ。
コイツが辛くない筈なんかない。 
けれど、あの日、あたしが号泣した日、先に泣かれてしまったら、自分のために泣くことなんて、コイツ
にできる筈が無い。 馬鹿みたいに相手を思いやるコイツが泣ける筈がないんだ。
それなのにあたしは自分だけ助けてもらって…。
―――友達面してたんだ。
こんな最低な人間、見たことが無い。
けれど。
そんなあたしの事を、大河は欲しがっている。 
言葉はもう無い。 いまさら言える事なんて無い。
ただ、一緒にいてやること、それだけがあたしに出来る事なんだ。
「ばかちー… なんで泣いてるの?」
「そんなの…しらないよ、バカトラ。」
「やっぱ、ばかちーは馬鹿だね。 だから、ばかちーなんだ。」

それからあたしはゆっくりと大河の服を剥ぎ取った。
ちいさいけど、女の子らしい胸がはだける。
大河はむずかるように胸を隠そうとするけど、そんなの許さない。
今度はあたしが抱きしめてやる番なんだから。
今はこの小さな体がどうしようもなく愛おしい。
青い月に照らされて、二つの傷ついた魂が溶け合う。
男だとか、女だとか関係ない。 
ただ失われた欠片を求める二人は、互いの優しさで隙間を埋めるしかないのだ。

----------------------------------------------------------------------------

昨夜の情事の痕をすっかり洗い流し、洗面所に帰還する。

―――なんでこんな事になっちゃったんだろう。

あたしは正常だ。
決して女の子が好きってことはない。
男にちやほやされると、たまらなく気分がいい。
無改造という条件なら、ほぼ間違いなく芸能界に並ぶものが居ないこの美貌は、男をたぶらかす為に
あるといっても過言ではない。
けれど、今日のけろっとした大河の様子に多少なりとも落胆してるのも事実だ。
あんな事があったのに、実にいつもどおりの朝の風景。
夢だと思ってるんじゃあるまいか? そんな想像さえしてしまう。
濡れた髪を、チューブワームが並んでいるような超吸水性タオルで巻き込み、纏める。
…そういえば、大河の部屋のシーツ。
あたしの愛液で汚れてるんじゃなかろうか?と思い出す。
洗面所を出て、大河の部屋のシーツを確認する。 やっぱり濡れている。
急いでシーツを引っ剥がした。 今ならシミにならずに済みそうだ。
そこまで行動して、あれ? と思い起こす。
今日の家事当番は大河だ。
さすがに洗濯くらいはやらせるべきじゃないかと思い直した。
そこでとりあえず身支度をしてしまうことにした。
出掛けに叩きつけてやらないと、またあたしがやらされる羽目になるからだ。
チビトラの依存体質が只事では無いのは、この一ヶ月で思い知った。
高須君って、マジスゲー奴だったんだなと、しみじみ思う。
身支度を終える頃、おおむね髪も乾く。 この超吸水性タオル、見た目はキモイが優れものだ。

丸めたシーツとセリーヌのバッグを抱えてリビングに戻る。
手乗りタイガーはソファーにちょこんと腰掛けて自堕落にテレビを見ていた。
片付けが中途半端だ。 シンクに食器が残ってる。
「あんたさ、洗い物くらいちゃんとやりなよ。」
「また食器割ったら、ばかちー怒るくせに。」
割るのが前提なのかよ。
「べつに割らなきゃいいだけでしょうが。 だいたいさ、食器洗い乾燥機に入れるだけなのに、なんで
割っちゃうかな。」
「割らない保障ないじゃない。」 「そりゃ、そんなの無いけどさ、そんな事いってたらいつまでも何も
できないままだよ。 あたしら、誓ったじゃん。 家事の出来るまともな女になるってさ。」
「しかたないわね、特別にやってあげるわよ。 割っても怒んなよ、駄犬。」
「はいはい。 怒んないよ。」
「あと、タイガーこれもお願い。 シーツ洗っといて。 洗濯機の使い方は覚えたよね。」
「うん。   これ…。」
流石になんか反応するかな?
「よごしたのあんたじゃない。 なんで私が洗濯すんのよ。」
「だぁから、当番にしただろが。 で、今日の当番はあんた。 以上説明終わり。」
「ふ…ん。」
どういう神経してんだ、こいつ。 高須君、あたし、あんたのこと本気で尊敬するわ。
「じゃ、頼んだよ、あたし、もう行くからね。」
「しょうがないな、やってあげるわ。」
溜息をつきつつ、玄関に向かおうとすると、後ろから小さな声が聞こえた。

「ばかちー…。」
「今度は何?」
「……ありがと。」
「はぁ? なに、急に。 なんの話よ。」

「……だからっ、昨日の夜はありがとうっていってんの!」

小さな声に振り向いてタイガーのほうを見ていたあたしは、あわてて玄関の方を向いた。

「な、なにいってんのよ…。  亜美ちゃん、意味わかんねー。」

そう吐き出しながら

あたしは顔が笑っちゃうのを抑えることができなかった。



                       Scene.1   - Cut -
32798VM:2009/04/21(火) 21:30:48 ID:pP3lO36M
以上です。
328名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 22:55:42 ID:IKQfVNjY
GJ!

本当GJ!

ヤバイなにがって?
俺のなかで新しいものが目覚めそうwww

ぶっちゃけ大河の親友ってみのりんじゃなくて亜美ちゃんだと思ってる
329名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 22:58:47 ID:IENyVC20
すばらしきかな、百合
330名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 23:12:07 ID:rr26DaRi
百合ですなぁ百合百合ですなぁw
いいっすねぇ!
331名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 23:14:56 ID:pvrz1vKQ
GJ!大河あーみんは正義
 
にしてももう300kb超えですか
332名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 23:20:18 ID:2DrC2A5o
まぁ百合じゃないけど百合っぽい表現あるし、エロもある
投下前の注意事項はなんの為に?
333名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 23:39:38 ID:qCfgBAhx
た、確かにエロかったなww
まぁいいけど
334名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 06:33:27 ID:KMvVcRd5
しかし、こーゆーのを読むと
今更ながらに全部竜児の嫁にしちゃうのが
みんな幸せ!なんではないかと思ってしまうな
ハネムーンサラダのハーレムエンドみたく。

女子からは男の幻想と言われるのは承知の上さ┐(´д`)┌
335名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 07:36:31 ID:CrV+9zPk
続くんでしょ?
続くんだよね?
続けてよ〜〜〜
336名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 12:49:55 ID:VfNjQtdg
>>335
タイトルの末尾に「1」とあるってことはきっと「2」が控えてるってことだよ
一緒に全裸で正座して続きを待とうぜ
337名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 16:25:52 ID:DmW7ZExr
>>315-327
GJ!
文才のある人というのはえてしてヒネッた表現に行きがちなものだが、
いつもながら読んでいて引っ掛かりのない、素直に流れるような文章で、
とても読み易い。

以降の展開では、「トウコちゃん」がなにか仕出かしてくれるんかなぁ?

あ〜みん、仕事も復帰して、人気も急上昇。いいトコ住んでて、まさにポップ・アイコン。
でも傷心抱えて、大河に無理やりヤられちゃって、やっぱり”かわいそう萌え”。
338名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 17:18:31 ID:+ZXJQ1oq
エロゲとかのハーレムものは大抵主人公が普通のやつだから嫌いだが
竜児は家事をはじめとして人間的にスペックが高いから許せるんだよな
339名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 17:24:41 ID:Ew7suSoH
エロゲの主人公は萌えの妨げにならぬよう無個性化されてるのが普通だからな
好きになれるわけがない 
竜児は俺の嫁
340名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 17:32:52 ID:CN68aBaX
まあ惚れられるのに納得がいく主人公だったら良いって事だな
341名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 17:53:23 ID:/7C1wBv+
もう竜児は三人娘とハーレム同棲しちゃえばいいよ
342名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 18:00:19 ID:MzIoWAPz
竜児こそ新のヒロインだからな
343名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 03:22:42 ID:QGSsAqv9
「さあ高須きゅん♥今宵は二人っきりで熱い熱い夜を過ごそうじゃないか!」
「ちょ、ちょっとみのりん!今日は水曜なんだから三人でする日じゃない」
「そうよ。昨日は高須君はタイガーの相手をイヤイヤ務めたんだから今日は亜美ちゃんのおっぱいに甘えていい日なのよね」
「む。私よりちょっとだけナイスバディなのを微妙に誇ってないかいあーみん?」
「だって事実じゃない?」
「むー」
「そんなことない!竜児は、お前の胸がスキだって言ってくれてるもん!」
「私の日は乳首にいっぱいキスしてくれて櫛枝櫛枝って言いながらいっぱい愛してくれてるんだもんにゃ〜愛だよ愛!
っていうか、私は合宿で今週末いないんだから今日くらい高須キュンを独占させてくれたっていいじゃないか〜〜♪」
「亜美ちゃんだってロケで月曜火曜って高須君に愛されてないんだよ? 今日はたっぷりねっぷり愛して貰わないと
亜美ちゃん禁断症状でどうにかなっちゃーう☆」
「このばかちー!先週の私の日、生理だったからあんたに譲ってあげたじゃない!今日くらい遠慮しなさいよね」
「そんなの覚えてなーい♥高須君が『川島のおっぱいは最高だ』って何度も何度も言ってくれて
生でシてくれて、亜美ちゃんの女の子の部屋にあっつい精液をたっぷりぶちまけてくれたことしか覚えてないなぁー♥」
「こ、こ、このばかちー!!!スキンは必ずつけるって約束じゃない!!!!」
「おいおいあーみん、そりゃあ反則ってもんじゃあないかい?あたいだって高須キュンの熱くて熱くて濃いい白濁液を
一番奥で受け止めたいっていう欲望を抑えるのに必死だってーのに」
「えー? 亜美ちゃん忘れっぽいからそういうのわかんなーい」
「このばかちー!」
「ふーん? まあ、ちびっこタイガーじゃ高須君は生でする気がおきないだけなんじゃなーい?」
「こ。ここここ、このばかちー!!!!1111!!!
 そんなことないもん!竜児、いつだって私のこと大好きだよっていってくれてるもん!
 こないだなんか、私のお尻の穴におちんちん入れて、すっごく可愛がってくれたんだもん!!!」
「…」
「……」

「…・・・そいつは聞き捨てならねえなぁ?なあ高須の親分さんよぉ?」
「高須くん?どういうことなのか、亜美ちゃんにもわかるように説明してくれるよねぇ?」



いや、その、なんだ。あの、その、つまりなんていうか。
み、みんな仲良く?っていうか?三人が仲良くしてるのが俺は嬉しいって言うか?

「亜美ちゃんにはそういうの求めてくれたことないよね?」
「高須っちー。この不肖櫛枝実乃梨、高須君のどんな欲望だっていつでもまっすぐに受け止める覚悟完了なんだぜい?」
「亜美ちゃんのお尻のあなにはキスしてくれるのに、入れたりはしたくないの?」
「なっ!? あーみんにも意外なところで差ぁつけられちまった!! 
 この実乃梨嬢は高須の師匠が望むんだったらアナールにキスでもなんでもしてあげられるんだぜぃ?」

いや、その、櫛枝も川島も、そんな目の据わった顔で迫ってこられてもこまるっていうか…



その晩
高須竜児は
合計12回の射精を強いられ
翌朝
真っ白になった竜児と
妙につやつやてかてかした三人娘が
キングサイズのベッドの上で観測されたという
344名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 04:11:58 ID:gYPsGkRJ
>>327

GJ!!
大河&亜美の組み合わせっていうのも面白いですね。
文体やリズムもよく、楽しかったです。

…………大河×亜美か……やっぱバカチーは受けっぽいな……
345名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 04:13:51 ID:gYPsGkRJ
sage忘れた……
346名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 07:20:30 ID:vNP18wr/
>>343
竜児「……た、太陽が黄色い……」

ていうか、最後の一行、観測したの誰?
347名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 09:43:01 ID:IJfu9hAD
GJ!!!!

そして観測したのは俺www
348名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 09:47:23 ID:OHU1NctE
>>345
IDがRJ りゅうじ
349名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 16:09:12 ID:+9zCzT1s
>>315-327
GJ!
他の人も書いてるけど、自然な感じに上手だよね。
タイトルも印象的だなあと思って
頭に残ってたんだけど、絵のタイトルだったのね。
今日字面を見かけてびっくりした。
スレチすまん。
350名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 21:02:45 ID:IJfu9hAD
原作が終わり、アニメも終わったのにも関わらずここが生存してるのはすごいことなんだよな。。。
351名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 22:47:44 ID:ft23jJNA
>>338
スペック高いのに結構ヘタレなところも竜児の魅力だ
遭難した大河を心配しながらガタガタ震えてたところとか可愛かった
352名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 22:56:42 ID:hv7frhfK
>>351
そんな尋常じゃない状態に陥ってるのに自分の本心に気が付かない
鈍感なところも萌えるwww

つーかさ、まかり間違ってみのりんと上手くいってもこんなんじゃ
結局別れるのが関の山だよな。
353名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:07:12 ID:gXkQh4i5
そんなことないと思うけどな俺は・・・
354名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:10:44 ID:6UdSbWj9
北村が草なぎな件について
355名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:11:47 ID:ByCXhN4H
竜ちゃんは、
居所がないタイガー、
夢を追いかけるみのりん、
仕事に頑張るあーみん、
誰であろうときっちり包みこめるデカイ人なのです。
356名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:29:50 ID:vdIaOY/T
そんなことないと思うけどな俺は・・・
357名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:48:19 ID:v55pwyFm
亜美ちゃんは、そんなに仕事に固執してるイメージが無いな
他に何もないから頑張ってるだけで、竜児が側にいるなら、引退しそう。

「ねぇ、高須君は亜美ちゃんの仕事どう思う?」
「おう。どうって?…別にどうとも。」
「はぁ!?普通、なんかあんでしょ?
彼女がモデルなんて鼻が高いぜ。とか、
モデルなんて辞めろ。俺だけの亜美だ。とかさ。
ないの?そ〜ゆ〜の。」
「そんな事言われたって、お前はお前だからなぁ。
別に今更、モデルだからって特別に何か思わねぇよ。」
「ふぅん。そうなんだ…そんな事言うんだ…そう解った。
実はね、亜美ちゃん、明日、朝から撮影のお仕事なんだぁ〜
でも、明日はサボる事に決めた。今日は高須君ん家にお泊まりするね?」
「ちょッ。待て川嶋。ダメだって。それはダメ。
仕事はちゃんと行かねぇと、ダメだって」
「や〜だ。亜美ちゃんもう今日で引退するぅ〜。き〜めた。
高須君の心無い一言が亜美ちゃんの人生を狂わせるんだよ?
ゾクゾクするでしょ?気持ち良いでしょ?」
「…頼むから。解った。悪かったから。
だから、仕事行ってくれ。な?」
「え〜どうしよっかなぁ〜じゃあさぁ……」

こうですか?わかりません
358名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 00:33:54 ID:uxRsndam
「今日、いっぱいいっぱい愛してくれたらゆるしてあげる」
「お、おぅ…」



「どうだ、亜美。許してくれるか?」
「許すっ、許すからぁっ、そ、そんな連続でだめぇ」
「でもまたお前の気が変わらねぇように、いっぱいいっぱい愛しとかないと」
「ふぇ、えぇ、も、もう十分だよぉ、これ以上されたらなんかぁ頭真っ白にぃぃ」
「大丈夫だ、お前が気絶したら、気絶したままじゃいられねぇくらいよくしてやるから」
「や、やぁぁ」
「今日は亜美、昼寝してたし、変な時間寝て寝坊しないように朝までずっと愛し合おうな」



こうですよ、わかります?
359名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 00:55:21 ID:iaijxz3h
ぽまいら……最高だwww
360名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 02:45:39 ID:+f7ywE9Y
>>357-358

分からないので、続きを頼む。
361名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 03:49:23 ID:+f7ywE9Y
相変わらずエロいSSが思いつかないけど、こんなのができたから投入。
DVD4巻を見て、「恋ヶ窪ゆりは夏に何があったのか」という想像で書いてみた
362START:2009/04/24(金) 03:59:14 ID:+f7ywE9Y
『恋ヶ窪ゆりのカウントダウン30』


 時は夏。
 日中のジリジリと照りつける太陽も、姿を隠す夏の夜。
 恋ヶ窪ゆり・29歳・独身は、成人してから住み続けているアパートの一室で、一人ぼんやりしていた。
 自分以外は誰もいない部屋。
 中央に置かれた折り畳み式のテーブルの上には、大量の缶ビールと携帯電話。ツマミの姿はなく、あるのは空になった大量の缶ビールだけ。
 ゆりは、仕事を終えてから延々と一人晩酌を続けていた。
 部屋の中は静かだ。静か過ぎる気もする。時計の針の進む音が聞こえ、あと30分ほどで0時になるところだった。
 0時を過ぎれば日が変わる。日が変われば、一日歳をとる。たった一日の経過が、今日は重大な意味を持っていた。
 恋ヶ窪ゆり。生まれて29年。日が変わると、30年。
 明日は、生誕30年を迎える記念すべき日だった。

「全然嬉しくないわーーー!!」

缶ビールを片手に絶叫する恋ヶ窪ゆり・29歳。
20代最後の夜を向かえ、今日まで様々な日を過ごしてきたが、一向に実る気配はなかった。
夏という開放的な季節に期待して、ちょっと避暑地とかに遠出して出会いを求めたり、
 海の開放的な雰囲気に触れるため、新品の水着を持って海に出かけたりした。(どちらも一人で)
しかし、それらが良い結果をもたらすことはなく、貴重な夏の日々は虚しくも過ぎ去っていった。

「何よ……避暑地に一人できちゃいけないっての……海はみんなのものなのよ……一人海で戯れてたって別におかしくないでしょ……」

今となっては忘れ去りたい記憶を肴に、ひたすらビールを煽る。
 酒はすべてを忘れさせてくれる。忘れさせてくれるよね?と自らに問いかけながら、一人晩酌は続いていく。
3632:2009/04/24(金) 04:00:15 ID:+f7ywE9Y
缶ビールの数が二桁になろうとした時。0時まであと20分をきったころ。
テーブルの上においてあった携帯電話が突然震えだした。
マナーモードのままにしてあったため、テーブルの上でガタガタと動き出す。
 普段は『もしかして、この電話って電話じゃないんじゃないの?誰からも着信がないから、メーカーが契約きったんじゃないの?』と思ったりしていた。
いつもは静まりかえっている電話が、今は細かく、テーブルの上で揺れている。
ゆりは大急ぎで電話に手を伸ばし、画面を開いた。
表示されている名前を見て、さらに驚く。頭に、衝撃が走った。

「え、なんで?どうして?」
自問自答を繰り返したいところだが、早くしないと電話が切れてしまう。ゆりは決心し、電話の通話ボタンを押して耳に当てた。
「も、もしもし……」
「あぁ、ゆり?俺、ケンジ。覚えてるかな、高校の時3年間同じクラスだった高須ケンジだけど」

電話の向こうから聞こえてきたのは、普段連絡などまったく取り合っていない、昔の同級生からの電話だった。
何故?どうして?
 未だ頭の上には、はてなマークが浮かんでいる。そもそもどうして私の番号を知っているのだろう。

「去年同窓会やったときに携帯の番号交換しただろ。それで電話かけたんだけど」
「あ、あぁ、そうだった……交換、したっけ……」

1年ほど前に行なわれた同窓会に、ゆりは様々な期待を胸に参加した。
久しぶりにあう同級生は皆、一様に大人になっていた。
 変わらない者もいれば、サナギが羽化したかのように綺麗になった子もいた。
 学生時代と変わらぬイケメンのクラス委員長なども来ていたし、密かに憧れていた同級生とも会話をした。
久しぶりの出会いを楽しみながらも、ゆりは出席したメンバー(主に男)に獣のような視線を投げかけていた。
隙あらば捕獲!キャッチ&ノーリリース!!この気を逃すものですか。と、心のうちは、狩猟を行なう狩人だった。
3643:2009/04/24(金) 04:01:38 ID:+f7ywE9Y
「久しぶりだな。去年の同窓会以来か」
「そ、そうねぇ。突然のことでびっくりしたけど……」

未だ電話をかけてきた理由は謎だが、ゆりは久しぶりの電話に話を続ける。

「今日はどうしたの?突然電話なんてしてきて」ゆりは思っていた疑問を口にする。
「ああ、ちょっとね……家で酒飲んでたら、急にお前のこと思い出してさ」電話ごしの同級生も、お酒を飲んでいたようだ。
「ゆりさ、明日誕生日だろ?」そして、突然誕生日のことをいわれた。ゆりはとても驚いた。
「覚えてるか?俺の誕生日も明日なんだよ。高校のとき、何度かからかわれたろ?『誕生日が同じだなんて、なんか運命とかあるんじゃない?』ってさ」
「そ、そうだったけ……」

ゆりは思い出そうと頭をひねったが、まったく記憶になかった。
高校生の時にそんなこと言われたっけ?
『運命の相手なんかじゃないの?』とは。今の自分にとって、喉から腕が出るほど聞きたい言葉だ。

「明日で30歳になるんだなぁ、って考えてたら、お前のこと思い出してさ。もしかしたら同じようなこと考えてるんじゃないかと思ってさ」
「あはは、ま、まぁ……」

ゆりは笑いながら、手に持っていた缶ビールを置いた。
10本目突入の缶ビールはまだ蓋を開けていない。冷蔵庫から出した缶ビールの表面には、たくさんの水滴がついている。

「高校の時もあったけど、なんか俺たち、時々意見があったりしていただろ?この前の同窓会の時もさ」

 そういって久しぶりの同級生は、昔の話を始めた。
ゆりは相手の話に相槌をうちながら、久しぶりに話す相手に次第に興味が湧いてきていた。
最後にあったのは、1年ほど前の同窓会。
 変わった、変わらないなどの些細な話から、今何やっているのとか、結婚したのとかの話にもなった。
 電話ごしの同級生は、1年前の同窓会で、いまだ独身の身だということを笑いながら話していた。
 いい相手に恵まれないとか、出会いがまったくないなどの話に、ゆりは笑いながら話していた。
 しかし、心の中では『私もよ!出会いどころか、異性とのエンカウントすらないのよ!
 誰だ、この世の男性とのエンカウント率設定したの!責任者出てこい!!』と心中穏やかではなかった。
似たような境遇の者同士。話が進み、ゆりは携帯の番号を交換した。今のいままで忘れていたが、まさか今日電話がかかってくるとは思ってもいなかった。
3654:2009/04/24(金) 04:02:52 ID:+f7ywE9Y
「あと十分で0時か……。それでお互い30代突入だな」
「え、えぇ……。そうね……」

電話での楽しい会話も、この話になると、気分が重くなる。
ゆりは次の言葉が思い浮かばず、黙り込んでしまった。
会話が止まり、静かになった部屋で様々な考えが浮かんできた。
久しぶりの同級生も、自分と同じように最後の20代を物思いにふけっていた。
 きっと私と同じように、一人っきりで、部屋の中、一人晩酌で過ごしていたのだろう。
 地球上にいる似たような境遇の者同士。きっと何かの波長があって、今のこの電話につながったのかもしれない。
これがもしかして運命なのでは。
ゆりは心臓が少しずつ高鳴っていくのを感じた。
居住まいを直し、正座になって電話を握りなおす。相手に聞こえないように、一度咳払いをして、しゃべる準備を整えた。

「あ、あのね。もしよかったらなんだけど……」

今から会わないか。会って一緒にお酒でも飲んで、これからの30代を楽しく過ごさないか。
そして、独身同士、何かの運命で出会った二人はいい関係に発展し、そして……

「こ、これから、」ゆりは意を決して言葉を出した。
「あ、すまん、そろそろ電話切るわ。なんか妻が呼んでるみたいで」

ゆりは出そうになっていた言葉をとめた。ついで、思考も止まった。

「つ、妻?」突然出てきた言葉にゆりは疑問を投げかける。
「ああ。あれ?知らなかったか?同窓会の1ヶ月後くらいに、俺結婚したんだよ」

電話ごしの相手は笑って結婚のことを告げてきた。
3665:2009/04/24(金) 04:03:39 ID:+f7ywE9Y
「同窓会の時に昔の彼女とも再開してさ。そのまま昔の関係に戻って結婚したんだ」
「へ、へぇ……そうだったんだ」

おめでとうの言葉は出ず、そのまま固まる。
聞けば先ほどまで二人仲良くお酒を飲んでいたみたいで。
 少し酔いを覚ますと席を立ったときに、この電話をかけたらしい。電話の向こうから、小さく女性の声が聞こえてきた。

「それじゃあまたな。機会があったらみんなで飲もうぜ。それじゃ!」

電話は静かにぷつっと切れた。
耳に電話をあてながら、ゆりはしばらくの間固まっていた。顔は苦笑いの表情で固まったままだ。
そして、数分後、部屋の中に音楽が流れ出した。
部屋の壁にかかっている時計が0時をさしている。
毎日、0時と12時になると短い音楽を奏でる壁掛け時計。
ゆりは固まったまま、目だけを動かして、時計を見た。
0時になった。日付が変わった。今日から私は30代。あぁ、30代……。


「なんじゃそりゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


すでに切れている電話に向かってゆりは絶叫した。
思わせぶった電話をよこしやがって。期待してしまったではないか。
そういってゆりは、携帯電話を部屋の床にたたきつける。畳敷きの床でバウンドし、携帯は床に転がった。

「んがーーーーーーーーーー!」
 
一度は置いた缶ビールを再び手に取る。プルタブを一気に倒し、口につける。

「結婚がなんじゃーー!!」

喉を鳴らしてビールを流し込み、10本目を瞬く間に空にする。
 テーブルの上のビールが全て空になると、ゆりは立ち上がり、冷蔵庫の前まで足音立てて歩いていった。
扉を開け、新たなビールを手にする。

「今日はヤケ酒じゃー!!」

正しくは『今日も』なのだが、それを教えてくれる人物はおらず、ゆりはもてるだけの缶ビールをもって、リビングに戻っていった。

「独身がなんだーーーーーーー!!」

30代最初の夜。
その日、歳の数と同じだけの缶ビールを、ゆりは空にした。
願わくば、10年後に40本のビールを空けないことを、密かに心の内で祈りながら。




オワリ
367名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 04:07:40 ID:+f7ywE9Y
きっとこんなんあったのかなぁと書いてみた。
電話の同級生の名前は適当。竜児とは何の関係もないです。

夏休み明け、このことを引きずったゆりちゃん先生が竜児に絡む
っていう話に続けようかなと思って名前設定しただけで。

オリキャラすみません
368名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 04:12:17 ID:b74+R/QK
>>367
全俺が泣いた

独神はなんとかシアワセになってもらえんもんだろうかねえ・・・



>>358
で、続きは?
369名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 09:35:10 ID:0EgQDGWe
涙が止まりません。

誰か独神を幸せにしてあげて。
370名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 10:31:52 ID:cn6kj/WQ
ちょっと独神と結婚してくる
371名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 10:40:43 ID:FSfvZchz
俺、ゲーム版でゆりちゃんと幸せになるんだ…
372名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 13:37:10 ID:ISk7lyWd
>>361-367
GJ! しかしこの高須ケンジ、なにげにひどい。
373名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 14:24:31 ID:FXvTG6SP
GJ
俺も29なんだが最初のくだり読んでたら俺も一緒に叫びたくなってきたよ…
374名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 14:46:36 ID:zKf1AfOg
剛逮捕のとき、真っ先にここのあーみんSSを思い出した俺は末期
375名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 16:48:12 ID:Eg7zV43T
つか今どき独身(30)とか普通だよな
ゆりちゃん可愛いからまだまだだし
独神になるにはあと10年くらい猶予があるさ
376名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 18:02:10 ID:8bh+7Xp0
何故ゆりちゃんが売れ残っているのか理解できない
377名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 18:13:18 ID:ISk7lyWd
>>374
どのssを連想したのかわからん
378名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 18:21:49 ID:988EYSJt
>>376
教職ってゆりちゃんの頃よりちょっと後まで採用絞るわ仕事はてんこもりだわでマジ出会い無いらしいよ。

団塊がいなくなってマシになりつつあるみたいだが…
379名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 18:32:49 ID:Eg7zV43T
そういえば高校時代の女教師が出会いがないとか言ってたな
黒マッチョにも言い寄るくらいだから大橋高の男教員のレベルは低いだろうし
生徒に手出すとクビだし
大変だな、
380名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 19:51:52 ID:Tu9VyQu6
中学一年の時に担任だった女性教師(独身)が、実年齢28の癖に25と偽っていたことを思い出した。

色々と切羽詰まってたんだろうな……
381名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:12:04 ID:qR9df3W0
ゆりちゃんのエロって誰か書いてたっけ?
382名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:37:29 ID:pT2zWzsd
待ち焦がれていた独神ものが遂に!と思ったら切ない、切なすぎる…だがそれがいい。Gjです。

>>381
ノシ
383名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:46:21 ID:1GJzXcal
>>381
9皿目にあったよ
夢オチで
384名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:55:28 ID:DszmZOJz
>>381
竜児ゆりがあった気がするが>>383のいってるやつだったかもしれん
385名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 20:57:05 ID:qR9df3W0
独神が生徒に手を出してしまう時の葛藤とか
その辺を描けたらなーとか思ったり思わなかったり。

>>382
作者様でしたか。失礼しました。

>>383 >>384
まとめサイト内を「独身」で検索するのを忘れてたw
情報サンクス。今読みました。
386名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 22:40:07 ID:cn6kj/WQ
俺ずっとやっちゃんより独神の方が年上と勘違いしてた
387名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 23:18:07 ID:w0XE1ndv
GTOでも言ってたが実際夫婦で学校関係者ってのは多いな。んなもんで両親が関係者だと先生の知り合いが増える増える。 実際担任が元親父の同僚とかあったよ。
とそういう境遇の俺が言ってみる
388名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:01:43 ID:zKf1AfOg
>>377
「ビストロSMOP」
11皿目にある
みなさん地デジに変えましたか?www
389名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:09:09 ID:LKceEKFd
本家よりそっちを連想したとは・・・この変態めww
390名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 07:56:44 ID:kKkmbFjL
>>388
先取りし過ぎワロタw
391名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 10:57:31 ID:VXabFcdm
保管庫更新キター!
管理人さんお疲れです
392名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 12:06:33 ID:0XaMMlIR
保管庫の人乙
これだけ作品が多いと管理も大変だ
393名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 13:27:30 ID:lhIrkcrd
スタバでちんこ勃てつつニヨニヨと保管庫をケータイで眺めてる

どう見ても変態です
ありがとうございました
394名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 20:14:42 ID:/bP/+zsh
保管庫の更新お疲れ様です。

395名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 20:48:59 ID:+E5FVKHW
>>386
独神三十路超えてると間違えたのか、やっちゃんが義務教育中に竜児産んだと間違えたのかによって罪状が違う
素直に言ってみなさい。
396名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 23:59:22 ID:xBkk7BKu
「ちょっと高須くん!!」
「ど、どうした川嶋?そんな怒った顔して…」
「どうもこうも、亜美ちゃんのスレ落ちちゃったじゃない!!なんで高須君保守してくれなかったの!?」
「え、えぇ!?」
「もう、タイガーや実乃梨ちゃんのスレは残ってるのに…」
「か、川嶋、俺にはお前が何をいってるの分からないが… 怒ってるんだな?それならすまん」
「…亜美ちゃん落ちちゃった」
「おいおい… そんなに落ち込むことは無いだろ?」
「落ちちゃったのよ! …高須君が落としたのよ…」
「何!? 俺のせいなのか!?」
「…そうよ。高須君がオトしたの。 …亜美ちゃんを。だから…」




続きは脳内補正でカンベン。
397名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:09:07 ID:BA6qoWug
香椎麻耶スレも落ちてるんだぜ・・・
そこも含めて脳内ry
398名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:17:40 ID:pvSANP6J
>>396の続き

川嶋「ちゃんと責任とってよね!!」
高須「責任って・・・。俺は一体どうすりゃいいんだ?」
川嶋「バカッ。高須君のバカッ」
高須「またバカって言った。そんな事言われてもわからねぇよ・・・。」
川嶋「もう・・・。亜美ちゃんが何をして欲しいかよーく考えてみて」
高須「川嶋がして欲しい事・・・・・・。俺にはさっぱりだぞ。」
川嶋「よーく考えてって言ったでしょ?よーく考えて」
高須「ええっと・・、川嶋が俺にオトされてして欲しいこと・・・・・・?」
川嶋「そう、私がして欲しいこと。何だと思う?」
高須「オトされたんだから・・・・・・。あ、そうか!!」
川嶋「やっとわかった?それでどうしてくれるの?」
高須「新しいスレを立てればいいんだな!!」
川嶋「・・・・・・」


川嶋「あーあ、もう疲れた。亜美ちゃんかーえろっと。バカの相手してるとバカがうつっちゃうし〜」






すまん。こんな駄文しか書けなかったorz
399名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:26:13 ID:ALxdVM+H
あれ、アニメのハヤテのごとく見てもマリアさんが前ほど萌えないし
自虐ギャグが前より悲しい、何故だろう(´・ω・`)
400名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:28:27 ID:kbcXK/M2
ここでやる話じゃない
が、以前よりもノリが自重しているようには感じる
401名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:35:48 ID:BA6qoWug
どくしんさんじゅうななさい
402名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:52:05 ID:yFzaUbLu
>>398
本当は立ててほしかったんだよな。

まぁ、勃てるモノは違うかもしれんが。
403名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 05:14:55 ID:OVUm+y/G
男を勃てろ!
404名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 21:19:07 ID:+vOKfrQV
『あたし、○なこ! これから毎日ず〜〜〜〜っと筋トレつきあってね(はぁと)』

いっしょにとれーにんぐ!


だれか このねたで たのむ
405名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 23:48:10 ID:l8QzKBMx
だいぶ過疎ってきたな
406名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 23:49:59 ID:kbcXK/M2
まぁブームってのは一気に熱くなって、一気に冷めていくもんさ
40798VM:2009/04/27(月) 00:02:35 ID:HuIpZq5x
なんか投下が少なくて寂しいので、ちょこっと書いてみました。
あみママ 番外編です。 余計に寂しくなったらゴメンw
408Where there's a will, there's a way.:2009/04/27(月) 00:04:21 ID:JYth7PIv

- Where there's a will, there's a way. -  あみママ! 番外編

「やっほ〜、亜美ちゃん、元気してたぁ?」
「…大山さん」
「あっら〜? なーんか、いきなり不機嫌?」
…カチャ
「あらん? 亜美ちゃん、いきなり電話って、どうしたの〜。」
「ママに、大山さんがちょっかい出してきたら直ぐに知らせろって言われたんです…。」
「へ? ど、どうしてかしらぁ?」
「亡き者にするって言ってましt
「ちょっ、亜美ちゃん、ストーーーップ、電話ストーーーーップ!」
「……大山さん。 冗談ですよ。 多分。」
「いやぁ〜、安奈さんの場合、ちょっとマジかも〜って思わせちゃう所が凄いのよね〜。」
「っていうか、大山さん、マジびびってるし…。」
「だって、ねぇ。 安奈さんよぉ?」
「…あの、ママってそんなに怖いですか?」
「怖くはないわよぉ? ああ見えて、人一倍優しい人だしぃ。 でも、これまでの実績を考えると、ねぇ。」
「実績? って…」
「あら? 亜美ちゃんって、意外とママの事知らない?」
「えっ。 そ、そんな事…」
「ふーん。」
「……」
「あのね、安奈さんって、わりと若いのに、芸能界でデカイ顔してるじゃない?」
「は、はぁ…。」
「安奈さん、昔、スキャンダルを仕掛けられた時があったのね。 それが酷い言いがかりなんだけど、
マスコミは面白ければいいわけじゃない。 だから色々書き立てられたのよ。 …ま、仕掛けたのは
あたしなんだけど。」
「…はぁ…」
「そしたらね、生放送の記者会見で、普通なら言わないような私生活の事まで、ゼーンブ暴露しはじめ
ちゃってね、もう、周りは真っ青よ〜。 関係者はいつ自分の話が出てくるかって、もう、気が気じゃなく
なっちゃって、直ぐに会見中止。 あまりの潔さっていうか、スキャンダル話の不自然さが丸見えで、
あっという間に沈静化しちゃったのよね。 で、むしろ、安奈さん、カッコイイーって人気アップよ…。
ほんと、まいっちゃったわ。」
「…」
「あとはね、主役奪って、安奈さんを脇役に蹴落としたのよ。 さらに、脚本家に圧力かけて、いい台詞
根こそぎ無くしちゃったり。 ま、これも、あたしが仕掛けたんだけど…。」
「…はぁ…」
「そしたらね、もうアドリブ入れまくりで、主役を食っちゃって。 監督だって、シビレル演技見せられちゃう
と、台本と違ったって、OK出しちゃうでしょ。 もう、すっかりどっちが主役かわかんない位で、またしても
安奈さんの人気アップよ…。」
「…」
「もう、他にもそんな武勇伝ばっかり。 亜美ちゃんのママはね、周りの状況は素直に受け入れて、あっさり
主役渡しちゃったりしてもね、自分でどうにかなる部分になると、本当にもう、力ずくで奪い返しにくるのよ。
あたしがコネとか総動員して、外堀埋めてもダメなの。 だって、安奈さんは誰にも頼らないんですもの。 
自分自身の力で無理やり押し渡ってくるのよ。 いつも。 だから、亜美ちゃんのママにはね、誰も文句つけ
られないの。 自分の力だけでやり遂げられちゃったら、否定しようがないですものね。」
「………」
「ん? 亜美ちゃん、どうしたの?」
「…最高の…自分。」
「え?」
「そうか…、あたしまだ、自分が出来ること、全部やってない… そうか! 大山さん!」
「は、はい?」 
「ありがとうございます。 あたし…、あたし、もっと、勉強がんばります! それじゃっ!」
「へ、 あ、いや 亜美ちゃ…」
「あーあ。 いっちゃったよ。 勉強じゃなくて、仕事復帰して欲しかったんだけどねぇ。」

「…でも、ま、いいか。 あーんなに素敵な笑顔、見れちゃったしね…。」

409名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 00:31:54 ID:phiVxjoS
GJ
短くてもよかった
これからもあみドラ頑張って!
410名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 00:48:51 ID:as90w5+O
ゲームが発売されたらまた盛り上がるんだと思います。多分
411名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 01:58:23 ID:u4Bg3vW0
このためにPSP買ったんだぜ
亜美ハッピーエンドがあるからな

独神エンドもあるの?
奈々子エンドも?
412名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 06:13:25 ID:mgqasK0p
奈々子様はなかった希ガス。。。。。。
413名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 06:53:01 ID:W7u3ZnYT
独神ルートがあれば問題ない
414名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 07:10:55 ID:a0fRqSp9
Pには瀬奈さんは出てくるだろうか
アニメでの出番があまりにも少なすぎて悲しい
415名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 12:48:24 ID:NvmZ5974
うおお
改めて修学旅行の前スレの高須棒姉妹の続きが読みたくなってきた
416名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 13:20:34 ID:xeLU7X9W
>>415
すいません今書いてますんで、GW明け頃かと
417名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 16:50:57 ID:+4G2afEz
>>416
おいおいマジかよw 続編製作中ってだけでほとんどイキかけるw
418名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 17:09:08 ID:NvmZ5974
自レス、訂正orz
>>415
誤:修学旅行"の"前スレの高須棒姉妹の続きが読みたくなってきた
正:修学旅行"の続きと"前スレの高須棒姉妹の続きが読みたくなってきた

>>416
> すいません今書いてますんで
まじっすか━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
GW中は裸+靴下(良心)で過ごします!
419名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 17:50:23 ID:YzJwdE2N
すでに裸^q^
420名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 19:28:41 ID:mgqasK0p
>>419
風邪ひかないように気をつけなさいよっ!!
421名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 21:45:12 ID:X5kJAZq5
高須棒姉妹の続きも読みたいけれどななこいの続きも読みたい!
422名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 21:50:50 ID:3kku2IN5
自分はとき×みのと温泉の続きが気になるなぁ
修学旅行のも気になる
423名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:23:53 ID:J1sm3iGR
いますげぇ電波が来た
ファミレスにいる竜児、大河、亜美
そこに通り掛かる亜美と知り合いのモデル、友達ではない
竜児席をたつと、いつか聞いたような竜児の悪口をそのモデルが
大河がキレる前に亜美が思わず…
424名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:29:18 ID:+4G2afEz
>>423 さあ、続きを書くんだ('∇')ノ
425名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:37:02 ID:KxWxymB9
>>423
+   +
  ∧_∧  +
  (0゚・∀・) ワクワクテカテカ
  (0゚∪ ∪ +
  と__)__)   +
426名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:39:23 ID:wxfhGc/A
>>397
サブキャラ総合スレだよな?能登春田も忘れないでくれ

確かに過疎り始めてるが
キャラスレに投下してる人もいるからまだ大丈夫だと信じたい
427名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:40:22 ID:7xH+rVgY
ゲーム発売一カ月くらいまでは持つと予想
428名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 22:57:52 ID:mgqasK0p
我がスレは永久に不滅ですっ!!
429名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:08:57 ID:pkdru0kK
禿同
もっと続いてくれ

個人的には修学旅行と、本編アフターのみのドラ展開(タイトルあったっけ?)と初恋の続きが気になるところ
しかしどんなのでもいいからそろそろ投稿ラッシュが来てほしいところだ´`
43098VM:2009/04/27(月) 23:18:27 ID:JYth7PIv
>423
「なーに、あのチンピラ顔〜。 趣味悪ーい。 川嶋さんって、あんなの友達なんだ〜。
それとも、こっちのちんちくりんの彼氏? きゃはははは。 だったらぁ、お似合いかも。
でも、あの三白眼、私の事見てどぎまぎしまくりって感じじゃなーい? 私、取っちゃおう
かなぁ〜 なーんて。 全然いらねーけど。 きゃはは…」
いつか見たような光景。私は思わず平手を繰り出そうとしたけど…
―バシャッ―
それより早く、ソイツは水浸しになっていた。
「いやーん、ごめんなさい、亜美ちゃん、手すべっちゃったぁ〜」
「…川嶋さん、これ、なんの真似?」
「だぁから〜 手すべっちゃったの。」
「ふざけないで! アンタ、有名女優の娘だからって、調子に乗ってんじゃないの?」
「はぁ? 調子に乗って、みてくれだけで、初対面の人馬鹿にしてたのはアンタだろが。
ヤンキー面? はっ。 てめーの顔、鏡で見てみろって、この三下。」
「ぐぐぐぐっ、アンタ、先輩に向かって何、その口の利き方。ちょっと人気があるからって
このままで済むと思わない事ね、ふんっ。」
「はいはい。 ご丁寧に負け犬の捨て台詞まで言ってくれちゃうなんて、サービス満点。
さっすが、売れない大先輩。 亜美ちゃん、感激〜 なんてな。」
ソイツは水滴を前髪から滴らせつつ、真っ赤になって店を出て行った。
「…ばかちー、あんた、先輩にあんなことして平気なの?」
「べっつに。あんな奴、どうってことないよ。」
それより、なんでこんなに怒ったのか、ってのが気になって仕方ない。
まさかと思うけど、やっぱり、そういう事なのかな…。 
そしたら私…。

たとえば、こんなんどうですか?
431名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:21:12 ID:7xH+rVgY
かまわん
続けろ
432名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:25:57 ID:mrfiXxrp
つ、続けろ!おっ・・・俺のことはいいから早く続けろッ・・・!
433名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:32:34 ID:CpFJuUqP
馬鹿。お前何書いてんだすみません是非続きを裸で待っています
434名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:37:49 ID:J1sm3iGR
俺の妄想がちゃんとした文章に…、幸せだ
電波や妄想ばかりのスレは問題なのはわかってるんだが、職人さんありがと〜
43598VM:2009/04/27(月) 23:59:41 ID:JYth7PIv
>>430
んじゃ、ちょっとだけ続ける

窓の外を眺めながら、斜めに視線を向けてくるコイツは、バカチワワなんて呼んでるけど、
実際、凄い美人だ。 本物に会うまでは、私もそのバランスのとれた長身に憧れてた。
けれど、何より全てを見抜いているようなその視線が一番印象的。
「何考えてんの? バカトラ。」
「ふえっ、べ、別に、なんも考えてないわよ!」
「…初めてあんたに会った時の自分思い出して腹が立っただけ。 そんだけよ。」
やっぱり、見抜かれてる…。
「おぅ、なんだ、お前ら、また喧嘩してんじゃないだろうなぁ。って、あれ、川嶋
の先輩って人はどうしたんだ?」
竜児が戻ってくるや否や、こんな事を言う。
そして、ごく自然に私の隣に座る。
今まで、こんな時のばかちーの顔って見てた事無かったけど…。
一瞬だけど、私達から視線を逸らした。
やっぱりだ。 たぶん、そうなんだ。 ばかちーも竜児の事、本気で…。
「お仕事忙しいんでしょ、帰っちゃったよ。 それとも、高須くん、美人が一人減っちゃって
残念なのぉ?」
「べ、べつにそんなんじゃねぇ。 って……おぅ、大河、どうしたんだ、お前? なんかぼーっとしてるぞ?」
「うぇ、え、え、 な、なんでもないわよ。」
「お前なぁ、あからさまにおかしいぞ。 川嶋、俺が席たってる時になんかあったのか?」
「さぁ。別になーんもなかったけどぉ?」
ど、どうしよう。 なんか、こんがらかってきちゃった…。 
私、どうしたらいんだ…。

ごめん、疲れた。 続かないw
436名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 00:15:48 ID:Wu7J7+lD
GJ
オラwktkしてきたぞ
437名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 00:39:56 ID:YbymfqTC
>>435
続きが気になって眠れません。助け下さい。
438名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 06:15:18 ID:xWW9QXVd
GJ!!!!

ちょっと描いてみるといってかけるのがすごい。。。
439名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 19:24:41 ID:6okVR6KH
田村くんがまったく投下されないから相馬さんは俺の嫁
440名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 14:49:03 ID:TFhb2+nC
雌チワワまだー?
441名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 14:55:44 ID:gd8QVvaS
ゴールデンウイークにはいったらものすごい勢いで消費するんだろうなぁ

おいちゃん鼻血が止まらないぜwww
442名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 16:18:29 ID:8h7wJp2c
>>441
人生で転んだのかい?
443名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 16:28:30 ID:gd8QVvaS
廊下で転んだんだよっwww
444名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 17:22:56 ID:nxv/uHlY
ごめん萌えない
445名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 20:28:23 ID:qtaOOfc1
お……お前らジャイアントさらばやる気じゃねえだろうなw
446名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 20:42:07 ID:EE55669e
人生にジャイアントさらばか・・・
せめてP!クリアするまでは生き抜けよ・・・
447名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 20:44:21 ID:8h7wJp2c
よくよく考えると、「ジャイアントさらば」が成立するキャラってのも凄いよな。
448名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 21:38:34 ID:J3xitbUB
>>446
IDがすげぇwwwww
449名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:54:07 ID:gd8QVvaS
>>446
もう少しでチートイなのにwww
450名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 23:05:38 ID:EE55669e
自分でも驚いた・・・

GWにラッシュがくるだろうか・・・?
451名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 23:07:04 ID:53x2Ec48
みんなGWはとらPやるんじゃない?
452名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 23:33:58 ID:OvacSgIj
>>451
無茶言うな、未来人
453名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 01:52:02 ID:Ujk0T2HX
ついにゲーム発売か。
このスレの反応を見てPSP本体購入の検討するか……
454名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 02:36:58 ID:lHKN3R8M
田村にお弁当作ってるのは楽しいんだけど、最近はおかずのレパートリーが増えなくて困ってるのよね…

買い物カゴを手に、スーパーの陳列棚を覗きながらゆっくり歩く少女、相馬広香は明日のお弁当の中身をアレコレ考える。

「この前のハンバーグは反応良かった見たいだけど、そう何回も一緒じゃあちょっとね…」
「揚げ物もいいけど、やっぱバランスよく食べてもらいたいし…」
「でも、男の子って野菜より肉だよね?… どうしよう?」
「ここままじゃまた同じおかずのローテーションになっちゃう…」

カゴの取っ手の金具部分を指先でもち、両手を後ろに揃え、トコトコとスーパーを一周する。
ここのスーパーは店をグルッと回ると入り口に戻るのではなくそのままレジにつく様になっている仕掛けだ。
あと少しでレジに着くというところで相馬は立ち止まる。

「あの人、前の人を睨んでるわ…。そんなに混んでもないし…全くせっかちな人ね」

目の前にはレジに並ぶ数人の姿。並ぶといっても二、三人程度で大して時間もかからない。
それなのに前の人をまだかまだかと、むしろ蹴って退けてしまうんじゃないかと思うほどの目つきの人がいる。

「しかも、制服!? にしては買い物カゴには菓子類じゃない…」

その怪しい三白眼の高校生の後ろに並び、少し観察する相馬。

「次の方どうぞー」
「はい」

うわ!近くで見るとさらに怖い目つき!今店員さん殺すのかと思ったわ…てかこのまま私と目が合ったら出口で待ち伏せされて襲われるんじゃ?
やだよー!助けて田村ー!!

「あ、袋は要りません」

え?

「あ、あとポイントカードありますから」

んんっ!?

外見ヤンキーにしてはずいぶん主婦くさい言葉がでてきたわ…
それに、買い物の内容って大分私と似てる?あ、その卵安いしおいしいよね。

「ありがとうございましたー。次の方どうぞー」
「あ、はいはいっ!」

つい目の前のヤンキーに目がいってしまった。もしかしたらお使いだったのかな?
それにしては返ってきたポイントカードを見てるときの目がヤバかったわ。
明日田村に話してみよーっと。

「あ、ポイントカードあります。あと袋は要りません」






というわけで相馬が>>439の嫁行きは阻止。
ってか、かなり久しぶりの田村ネタ。しかも竜児使ってしもうた。
チャチなネタでスマン。ノシ
455名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 02:40:23 ID:wveFCTO5
GJ!!
田村君読んだことないけど面白かった
原作読んでみたくなった
456名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 03:11:42 ID:5tf1hDk2
妙なところでニアミスwwwwww
457名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 07:57:34 ID:eRvQbaC9
あぶねー相馬さんまで竜児に持ってかれるところだったぜ
458名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 14:09:49 ID:2pq5rjsU
相馬さんって…誰?
459名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 15:17:18 ID:Cdn8/zii
相馬は少しダメ人間の田村にベタ惚れなくらいだから、竜児になびくかは微妙
460名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 15:23:48 ID:+eykQRqp
>>458
確か、わたしたちの田村くんに出てくるヒロイン
まだ1巻の冒頭しか読んでないからどんな人かは知らないけど
461名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 17:21:21 ID:W6dCyVnl
>>458
まっちゃん乙w
田村君は相馬も確かに可愛いがやっぱりまっちゃんが一番ですよ
462名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 17:27:23 ID:0j2i6w66
田村くんは短い話ながらどっちとくっつくかドキドキさせられたなぁ…
463名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 17:37:25 ID:2F3kVKnJ
>>461
いやいや、ツンドラの女王が一番でしょ
46498VM:2009/04/30(木) 22:14:20 ID:PhovspHB
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
みんながゲームをやっている隙に、「あみママ! -2-」投下します。
今回は実在する人名などが入っていますが、あくまでこの話はフィクションです。
なお、亜美パパ、ママのセレブ度については高額納税者番付100位くらいのパパ
平均的な有名女優より収入の多いママ(副収入がありそう)、で設定しています。
具体的には、パパは推定課税所得7億5千万、ママは推定課税所得7千万です。

前提: 川嶋安奈の憂鬱シリーズ
題名: あみママ
エロ: 無し
登場人物: 安奈、亜美、亜美パパ 
ジャンル: セレブなママ、しっとり系?
分量: 8レス
46598VM:2009/04/30(木) 22:15:10 ID:PhovspHB

「アートポスターの方がよっぽどましね…。」
そう吐き出して、点けたばかりのタバコを微妙なグラデーションとスミレの柄が彩る小皿に押し付ける。
本来それは灰皿ではないが、大きさと縁の厚みがちょうどよくて、灰皿代わりにしていた。
私がタバコを吸うのはよっぽどイラついた時だ、というのは、どうやら聞いていたらしい。
小柄な男は、何度もハンカチで汗を拭う。
先日、先輩にあたる女優から、いい画商がいるといって紹介された。
それで早速呼び出してみたのだけれど。
さっきから、私に見せるのは下らない現代作家のシルクスクリーンばかり。
そもそも、この小男は美術の造詣が深いとはとても思えない。

この応接室は夫が欧州に行く度に、どこからか買い漁ってくるアンティークに満たされている。
アールヌーヴォーやら、チッペンデールが交じり合いつつも、妙にバランスがとれたカオスな空間。
繊細な彫刻が施されたロココ様式のサイドテーブルにさりげなく置いてあるガレの花瓶は夏色の青。 
季節とともに置き換えているが、いずれも風景文なのは私の趣味だ。
ガレ本人の手によるものではないが、すべてガレの工房で一つ一つ手作りされた逸品である。
だが、男はそれに気がついた様子も無い。
第一、今灰皿にしているコレも、ドームの工房の品なのに、見ようともしない。
さらに、私の背後にある暖炉の上には3枚の絵が飾ってある。
私を前にしている男からは当然、これ見よがしに見える位置だというのに…。
それぞれ、ヤン・ファン・ホイエン、エドモンド・ブレア・レイトン、ギュスターヴ・ロワゾーの真作。
あえて時代も作風もまちまちの3枚を飾っておいたが、これも反応なし。
夫の自慢のコレクションもこれでは虚しいばかりだ。

いらついて、男の持ってきたカタログをなかば奪い取るように引き寄せた。
紹介してくれた女優の顔を潰す訳にはいかない。 なにか一つは買ってあげないといけないだろう。
もう、この男の話なんか聞いていられない。
勝手にぱらぱらとカタログをめくる。 男はどぎまぎしながら口を挟むチャンスをうかがっているようだ。
それにしても、こうも下らない絵ばかり、よく集める。
どれもこれも原色ギラギラの派手なものばかり…ん?
……なーんだ。 あるじゃない。
見つけたのはブーグローの『プシュケの誘惑』のエッチング。 本人の監修サインつきだ。
この絵は本物を見たことがあるが、モノクロだと全然印象が違う。 …気に入った。
「これ、貰おうかしら。」
男は微妙な表情だ。 何故なら、かなり安いのだ。 100万円もしない。 この男、本物の俗物らしい。
だが、これは掘り出し物だ。 私にとって、絵画の価値は美しいかどうか、この一点のみ。
その意味で、この版画は十分な価値があった。
そうだ。
これは亜美の部屋に飾っておこう。 
ちょっとした悪戯気分。 果たして娘は、気に入ってくれるだろうか。


    あみママ!  -2-


夏というものは当然、暑い。
とりわけ、東京の暑さは人工的で、酷く不快で我慢ならない。
やはり、夏は避暑地でバカンスに限る。
暑苦しい東京では、きっと勉強にも身が入らないだろうと思って、亜美を誘ってみることにした。
学校ももう夏休みだし、私も珍しくまとまった休みが取れそうだった。
そして、何より、夫が高名な老舗競売所の競売を見物に、ハイゲイトに住んでいる友人の家を訪ねる
というのだから、付いて行かないのは損というものだ。
46698VM:2009/04/30(木) 22:15:55 ID:PhovspHB

前に遊びに行ったのは亜美が中学校に入ったばかりのことだったから、5年以上前になる。
あの辺りの町の雰囲気は好きだったし、ハムステッド・ヒースでピクニックというのもいい。
避暑地ではないが、あの街は真夏でも25℃を超えることは少ない。
考え出したら止まらなくなって、うきうき気分で娘に電話したのだが。
「なに考えてるのよ、ママ! あたしは受験生なの! 一週間も遊んでる暇あるわけないじゃん!」
ものすごい勢いで怒られた。
私は大学受験なんてしたこと無い。 ソレは一週間程度の夏休みも取れないものなのか?
そう思って、説得しようとしたら…
「一番大事な時期なの! 8月に入ったら第一志望の大学をターゲットにした模試もあるし、今遊んで
たら… そうか、ママは私に大学受かって欲しくないんでしょ! だからっ……」
流石にここまで言われるとへこんだ。 そんな事考えてない。 私は受験勉強なんていわれてもピンと
来ないだけなのに。
しかし、電話でも空気は伝わるらしい。
さんざん私を罵った後、急に黙り込んだ娘がもう一度話し出した時は、蚊の鳴くような声だった。
「…ごめんなさい、ママ。 …言い過ぎた。 ちょっと行き詰ってる教科があって… 本当にごめんなさい。」
「いいのよ、私こそ、勝手に盛り上がっちゃったみたい。 ごめんね、亜美。 それじゃ、勉強頑張ってね。 
あんまり無理して体こわさないのよ?」
がっかりしたせいか、普段めったに無いくらい落ち込んだ口調になってしまった。
「あっ、ママ待って。 えっと、あの、…3日くらいなら、家に帰っても、いいかなって…。 ほ、ほら、
伯父さん達も、夏休み温泉に行きたいって言ってたし、そしたらあたしあの家で一人になっちゃうし。」
…ほんとに、もう。 優しい子。 
きっとさっきの罵った言葉こそが本心。 受験の事で火の付くような思いなんだろう。 それなのに…。
でも、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。
上手く演技が出来ない時、あんまり焦ってもいい芝居にはならない。 そんな時私は、少し芝居の事を
忘れる事にしている。 良くわからないが、勉強だって似たようなもんだろう。
荒野を進むためには、時に立ち止まって先を眺めるのも大切だ。
「それじゃ、伊豆の別荘に行かない? あそこなら近いから、移動の時間も少なくて済むし。 去年、
あなたが使って以来だから、たまには使わないと荒れてしまうわ。 もちろん、勉強道具も持ってね。」
「う、うん。 わかった。 火曜日からなら、あたし、都合つくから。」
「火曜日ね。 迎えに行くわ。 えーと…朝の5時頃でいいかしら?」
「うん。 大丈夫。」
「亜美」 「なに? ママ。」 「…ありがと。」 
照れくさくて、言い終わったらすぐに電話を切った。
46798VM:2009/04/30(木) 22:16:28 ID:PhovspHB

「あなた。 御免なさい、ロンドン行けなくなったわ。」
「ん? どうしたんだい?」
「亜美を誘ったら断られたの。 でも、3日くらいなら勉強休んでもいいって言うから、伊豆の別荘に行く
事にしたわ。」
「ふむ。 そうか。 …そういえば、今回出品される例の風景画、君も気に入ったやつだが…。」
「ええ、あの絵、どうかしたの?」
「鑑定結果が出てね。 やっぱりパティニールの筆が入っていたよ。」
「あら。 残念ね… どのあたり?」
「驚いたことに、君が言っていた通り、遠景がそっくり全部そうだったようだ。」
「あら、まぁ。 じゃ200万じゃ…」
「ああ。 もう、どう考えても落ちないだろうねぇ。 僕としてはパティニールの筆が入ってなかった方が
良かったよ。 がっかりだ。 はははははは。」
それは、緑に霞んだ遠景が、空気の湿度さえも感じさせるような綺麗な絵だった。
夫が複数の画家による合作らしいと言ったので、きっと遠景を描いた人と、それ以外を描いた人に分か
れているんだろうと思った。 どうやらそれは正鵠を得ており、夫がもしかしたらパティニールかも知れな
いと言ったのもまた正解だったらしい。
だが、そのせいで、この絵は夫の軍資金では手が届かなくなってしまったという訳だ。
同じ絵なのに、誰が描いたかで極端に値が変わるのは、理不尽極まりないと思う。
「そういう訳で、僕も一番のお目当てが崩れてしまったことだし、是非とも仲間に入れてくれないかね?」
「あなた…」
「なに、オークションならインターネットでも、電話でも参加できるさ。 せっかく200万ポンド用意したんだ。
亜美が気に入ったのを落とすのもいいかもしれない。」
「もう、あなたは甘やかしすぎよ。」
「君は厳しすぎさ。」
膨れっ面を作りつつも、夫の優しさは素直に嬉しかった。
もちろん、夫も今回の競売は楽しみにしていた筈なのだ。 けれど少しも未練を感じさせず、本当に羨ま
しげに『仲間にいれてくれ』という、そんな鷹揚さが、私のようなあばずれを救ってくれている。
「それに…」
左の唇だけが笑う。 夫の得意な表情だ。
「亜美の水着姿は、あの絵よりも綺麗だろうからね。」
「……馬鹿。」

46898VM:2009/04/30(木) 22:17:15 ID:PhovspHB

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夏の伊豆に車で来るものではない。
ターンパイクで大観山に抜けて海岸線を避けたが、それでもかなり時間がかかった。
とはいえ、わが家の家族はぶっちゃけ超目立つ。
私と娘が連れ立って電車に乗るのはあまりにも無謀である。 サングラス程度では誤魔化し切れない。
そういうわけで、夫の運転するレンジローバーヴォーグでのろのろとドライブする羽目になった訳だ。
この車はあんまり好きじゃない。 私だったらカイエンを買っていた。
日本じゃこの車が活躍するような悪路なんて無いんだから。
亜美はもちろん、車になんか興味が無く、退屈そうに窓の外を眺めていて、少しばかり可哀想に思える。
しかし、天気は最高だった。 明日も、明後日も良いらしい。
夏の入道雲がもこもこと紺碧の空に生えている。
特に、ビューラウンジから見た芦ノ湖と富士山は見事で、このときばかりは亜美も歓声を上げたのだが。
しかし、それでも長時間のドライブは退屈になりがちだ。
そして、こんな時に一番頼りになるのは、やはり夫だった。
「亜美、勉強ははかどってるかい?」
「う…ん。 まぁまぁかな。」
「歯切れが悪いな。 どれ、一つパパが手伝ってやろうか。」
「え、…でも。 化学とか、物理とかだよ?」
「はっはっはっは。 パパを侮るなよ、亜美。 大方、高分子化学とか、不完全弾性衝突あたりで躓いて
るんじゃないか?」
「えっ。 な、なんで分かっちゃうの?」
「いや、女の子はその辺りで躓くことが多いからね。」
「…そうなんだ。 実は、幾何異性体の構造式を書かせるやつとか、ちょっと行き詰ってて…。」
……何を言ってるのか、私にはちんぷんかんぷんだ。 
本当に私の娘なんだろうか? 頭よすぎね?
夫のお陰で亜美の退屈は晴らされたが、私はなんだか仲間はずれにされた気がして、ちょっと寂しい。

結局その後、別荘に着いても二人で勉強をやっていた。 いったい何しに別荘に来たんだか…。
しかし、亜美はいくつかの壁を越えることが出来たみたいで、凄く輝いた笑顔を見せてくれた。
お陰で、夕食までには亜美の機嫌も上々になり、久しぶりの家族そろっての晩餐は楽しいものだった。
私も、数少ないレパートリーから、久々の手料理を披露したのだが、意外な好評に胸を撫で下ろす。
食事が終わると、夫は亜美に明日のオークションのカタログを見せ始めた。
これなら、私も混ざれる。
「どうだい、亜美。 気に入った絵があったら教えてくれ。」
亜美はそれが何なのか、あまり深く考えずに見入っているようだ。
私も額をつきあわせる。
「パパはこれがお気に入りなんだが…。」「あら、私はこっちのほうが好きね。」
亜美の意見を引き出すために、私達がまず主張する。
「あたし、これがいいな…。」
しばらくして娘が選んだ絵は、真っ白な雪景色を描いた絵。
作者はあまり有名ではないが、いい風景画を多く遺しているノルウェーの画家だった。
寒々しい曇天の下の雪景色。 黒いシミのように見える凍った川に、僅かに光が差し込む様は物悲しい。
画面の多くは青みがかった雪と灰色の雲に閉ざされ、遠くに見える家の赤いレンガだけが色彩の全てで
あるかのような、そんな絵。
しかし、私も夫も、思わず口元が緩んでしまう。
黒いシミは氷の下から覗いた水面。 そして川沿いには骸骨の様な一本の木が芽を膨らませている。
一見北極圏の厳しい冬を描いたかのように見えるが、実は違う。
そう。 この絵は春の絵なのだ。
絵というものは、目で見るのではない。 心で見るものだ。
だから、安心した。
絶妙に計算された光が、川沿いの木の新芽を照らすように。
娘もまた、長い冬を抜け出そうとしているのかもしれない。

「いい絵ね…。」「…ああ。 素晴らしい。」
だから、私達夫婦は、心の底からこんな言葉を呟いていた。
46998VM:2009/04/30(木) 22:17:50 ID:PhovspHB

翌日は、午前中は娘の勉強、午後は水浴びだった。
もちろん、私もスタイルには自信がある。
同じ年代の女優仲間では並ぶものは殆ど居ない。 大抵は圧勝だ。
だが、流石に十代の娘には逆立ちしたって勝てっこない。
ましてや、自分の娘はその中でも頂点のグループに属するのだから、恥ずかしくて水着を着る勇気はなかった。
亜美は亜美で、親に色気を振りまくつもりは毛頭なく、地味なワンピース姿で、夫と水泳対決している。
もっとも、もともと亜美は地味な服装を好む。
普段のあの子は実は『見られる為』の姿だ。 だからこそ、こういう気兼ねない時間は大切にしたい。
飾らない姿の亜美には、輝くような美しさはない。
静かで、柔らかい、しっとりと染み込むような美しさ。 
いつかそういった魅力で、人々を虜にする時が来ると思っていたのだけれど…。
ああ、止めよう。 未練がましいぞ、私。
きっと、この新進気鋭の脚本家とやらの台本なんか読んでいたからだ。
岩場に囲まれた小さなプライベートビーチは爽やかな海風に晒されて、なかなかに心地よい。
これでも一応、バカンスなんだから、仕事のことは忘れよう。
そこで私は、アドリブの構想にしか使えない台本を顔に被せて、昼寝を決め込むことにした。

「セッション1はこちらの時間で19:30からだ。 それまでには夕食を済ませよう。」
「セッション1? なに、それ。」
海岸から戻って、リビングでくつろいでいた私の元に、夫と娘の会話が届いてくる。
昼寝中に亜美に蟹をけしかけられて、追いかけっこを演じた私はすっかり疲れ果て、先に別荘に撤収していた。
昨日、亜美が選んだ絵を落とそうとしていることは、まだ言っていない。
時間を確認し、おもむろに夕食の支度を始めると、夫がオークションの説明をしているのが聞こえてきた。
あのドキドキ感は口で説明できるものじゃないのに。
「あなた、それはいいから、先にお風呂の用意をして。」「ん、ああ。 相変わらず君は人使いが荒いなぁ」
わざとらしくぼやきながらも、よく手伝ってくれる夫に、私は助けられっぱなしだ。
それから、亜美には初めて披露する、最近俳優仲間に教えてもらった新メニューでの晩餐を楽しむと、いよいよ
オークションの時間だ。
とはいえ、初めての亜美にはインターネットオークションくらいしかイメージが湧かないらしい。
だが、夫がカタログを手に、電話で参加するのは最古の歴史を持つ老舗競売所のオークション。
一声で日本円にしたら150万単位で金額が上がっていく。 そしてその速度も速い。
一つの作品に数分かかることは稀なのだ。
そして、前日、亜美が選んだ絵のロット番号が告げられたのだろう。 夫の口が開いた。
しかし、それはたったの2度。『買う』という意思表示と『手を下ろさない』という意思表示だけ。
にやりと、左の唇を釣り上げる。
「…53万だ。」 「あら、案外安いのね。 それなりの画家なのに。」
「え?」 亜美はきょとんとしてる。
「この絵を落とした。 買ったんだよ、亜美。」
「53万ポンドって… 8000万円!? マジなの、パパ?」
「コミッションや保険料もあるからね、支払額は1億弱かな。 だから、今回はこれでお仕舞いにしよう。」
「最近、こういう古典的な風景画は安いのねぇ…。 なんだか、ちょっと寂しいわ。」
「抽象画は20億超えるのもザラだからね。 値段なんて有って無い様なものだよ。」 
亜美はポカンとしている。 それも道理。 我が家は確かに裕福だが、億に達する買い物をポンと済ませた
現場は、おそらく初めて見たはずだ。
しかも、それは自分が気に入った品物なのだ。 夫が数ある作品からそれを選んだ理由がわからない娘ではない。
「パパ、それって…」
「ああ、今回はね、亜美が気に入った絵を買うことに決めていたんだ。 いい絵を選んでくれて良かったよ。」
上手に茶化す。
「この絵が届いたら、また帰ってらっしゃい。 あなたが選んだのですもの、実物、見たいでしょう?」
亜美は、己の生まれの幸運を再認識したのだろう。
そして、それは今の亜美にとって決して気持ちのいいものでは無かったようだった。
47098VM:2009/04/30(木) 22:18:37 ID:PhovspHB

「難しい年頃ね。」
「ああ。 やはり、今回のオークションの落札代金の殆どがチャリティーに回るというのは教えておくべきだったかな。 
あの子はすぐに自分を悪者にしたがる。 自分が幸運なのを罪だと思ってしまうんだろうね。 既に定まった事をどう
こうするなんて出来ない、大切なのはこれからどう行動するか、なんだがね。」
「でも、まだあの子は子供なのよ。 辛くなれば捨て去ってしまいたくもなるだろうし、逆に押しつぶされてしまうかも
しれないし…。 なんだか心配で。」
「捨ててしまうのは『有り』だと思うけどね。 まぁ、それを選ばれたら、僕たちにはとても辛いんだが。」
まもなく日付がかわろうかという時間、亜美が海岸に下りていく姿をみつけた。
デッキに下りた私の傍に、いつの間にか夫が現れ、最初から其処にいるのが当たり前であるかのように会話が
始まった。
「やっぱり、私がいけなかったのかしらね…。 …あなたには何度も叱られたわ。」
「今更、仕方ないさ。 君も大変だったんだ。」
私のせいじゃない、とは言わないあたりが夫らしい。
亜美のことは、ほったらかしにしすぎたと思っている。 夫とした喧嘩の殆どが亜美の事だ。
夫が居るから大丈夫と思って、幼い頃の亜美の相手は殆どしなかった。
出産と育児で2年近く休業して、焦っていた。 仕事に精一杯だった、というのは言い訳なんだろう。
夫は何度も、母親の愛情は別物なんだと言って、私を叱ったものだ。
きっとそのせいで、亜美の心には『孤独』という怪物が住み込んでしまっている。
「優しい子に育ってくれたじゃないか。 それによく人を見抜く。 怪我の功名だが、役にも立つさ。」
保身の為、人の心の動きを捉えるのに卓越した。 それは、悲しい能力だ。
「あの子には色々無理強いしてしまったのかもしれないわ。 いつも素直に従ってくれるから、それで良いと
思っていたけど、やっぱり嫌だったのかしらね…。」
「どうだろうね。 やはり、年頃なんだろう。 色々自分で考えたくなるし、それに君なら僕よりわかるだろう?
最近、急に艶っぽくなった。 好きな男ができれば、女は変わるものなんじゃないかね?」
「そうなの、かしらね……。」
一人海を見つめる亜美の後姿を遠目に見る。
確かに、恋をしている。 そして、それは相当に辛い恋らしい。
「片思い、という感じだなぁ…。 あれは。」
「あなたが見てもそう見えるの?」
「なんていうのかね、すっかり尻尾が丸まってる感じだ。 恋敵が、あの亜美を完封するような女の子なら、
僕も男として興味が有るねぇ。」
「もう… あなたったら…。」

「それに、君のこんなに弱々しい姿も、男として放っては置けない。」
急に静かに囁く様な口調で話しかけられ、心臓がトクリと鳴った。
ゆっくりと向かい合う。
優しい瞳は、初めて会った時と変わらない。
背中に夫の手が添えられ、私は静かに目を閉じる。

―――突然、閉じた瞼に接吻された。
驚いて、顔を離した私に、悪戯っぽい声が届く。

「勇気が出るおまじないだ。」
そして、夫は道をあけ、私の背中に添えた手に微かに力を込めた。
47198VM:2009/04/30(木) 22:19:11 ID:PhovspHB

「惚れた男は振り向いてくれた?」
足音で気付いていたのだろう。 海岸に下りてきた私に、亜美は驚かない。
娘は月明かりに白い肌をよりいっそう際立たせ、苦笑いを浮かべつつ星空を見上げる。
「…どうして、……わかっちゃうかな。」
「そりゃ、あなたの倍以上女やってるんですもの。  …ま、半分はハッタリだけど。」
「あはっ」
短く笑って、月明かりで微かに輝く水平線に視線を戻す。
その彼方に、娘が何を見ているのか、推し量ることは出来ないが。
「多分、ダメ、かな。 …でも、いいの。 どっちにしても、今のあたしが彼にしてやれる事って、変わらないと思うから。」
たった一年、離れて暮らしただけで、私の娘はこんなにも大人になっていた。
人を愛することを覚えた。
けれど、まだまだだ。 
人の面倒は見れても、自分の面倒が見れないんじゃ、笑い話にもならない。
「そう。 まぁ、あなたがしたいようにすればいいんじゃない? でもね、ちゃんと相手に伝える努力もしないとダメよ。」
「べつに、いいよ。 本当はあたし、彼の傍に居れなかった筈なんだ。 だから、あたしがやってる事って、たぶん、
只のおせっかいなんだよ。」
「本当はって、ねぇ。 実際、そうはなってないんだもの、傍に居れないってのが嘘だったって事よ。」
「え?」
「当たり前でしょう? これからの事は解らないけど、過去の事は変えようがない。 たった一つの真実よ。だから、
あなたがその人の傍にいるのは、偶然じゃない。 必ず、なにか意味がある。」
「意味って… あたしが、彼の傍にいるって事に? そんな、そんな筈ないよ… だって、だってあたしは卑怯で、
臆病で… なにも出来なかっただけなんだ…。」
まったく、遺伝子ってのは厄介だこと。 こんな所まで似なくていいのに。
若い頃の私はちょうどこんな感じだった。 自分のことが嫌いで、誰かに甘えたがって拗ねていた。
「それでも、よ。 人と人って不思議なものなの。 きっとあなたにしか出来ないこと、伝えるべき事がある。 だから
あなたは、その人の傍にいれるのよ。」
「そんなこと言われたって… わかんないよ。 だったら、あたし、…どうすればいいの? どうしたら、伝わるのさ…。」
まったく困った甘えん坊だ。
がっしりと肩を組むように頭を抱き寄せて、こつんと小突く。
「いたっ」
「ばーーーか。 それくらいの事、自分で考えな。」 
娘はたちまち膨れて小さな声で呟いた。
「……ママはいっつもそればっかり…ずるいよ。」

しばらく抱き寄せていた娘を解放して、私は背を向ける。
「さーて、馬鹿娘の相手もしてあげたし、ママは寝ようっかな。」
「ふーーん、『寝る』の。」 
なかなか言うようになった。 少しは元気が出たらしい。
「そうよ〜。 『寝る』の。 だからぁ〜。 じゃましないでね。」
波の音と共に、娘の呆れた気配がただよってくる。
こんなふうに娘と、女として話せる日が来るのを、私は望んでいたのか、いなかったのか。
足元の砂の音が、波の音より耳障りになる頃、私は一度だけ振り向いた。
娘はずっと私の背中を見ていたのだろうか。
その表情は月の蒼い光でははっきりとは見えない。
けれど、確かに目が逢って、娘が笑った…気がした。
47298VM:2009/04/30(木) 22:19:39 ID:PhovspHB

2泊3日の短いバカンスはこうして終わりを告げた。
家に着いたのは夕刻で、今晩は亜美も泊まっていく事になった。
けれど、明日からはまた娘の顔は見れなくなる。

一年ぶりで、我が家の玄関をくぐった亜美の表情は悪くない。
行き詰っていた課題も夫のお陰で解消できたようだ。
結局私は、恋の悩みを聞いてやるくらいしか出来なかったが、それでも、少しは役に立てたのだと、信じたい。
少しばかり穏やかな表情になった娘を見て、言いたい事は沢山あったはずなのに、その悉くが、どうでも良くなった。
娘が私をどう思っているのかは、解らなくなってしまった。
けれど、それが私の想いに関わることなんてない。 
そんな当たり前のことを、私は忘れそうになっていたのかもしれなかった。

しばらくリビングで過ごした後、娘は自分の部屋を久しぶりで訪れる。
一年以上使っていなかった娘の部屋。
一つだけ変わっていることがある。
それは、別荘に出掛けるちょうど前日に届いた『プシュケの誘惑』。

願わくば、プシュケーよ。
神話のように、亜美に囁いてやってほしい。

愛とは、見ることでも、確かめる事でも無い。 愛とは、信じる事だ―――と。

47398VM:2009/04/30(木) 22:20:57 ID:PhovspHB

以上です。
すみません、題名入れるの失念しました…。
続きます。
次の投下は「C,L,L,R2」の予定。
474名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 23:28:04 ID:9F1NTDHu
>98VMさま
gjでした!亜美ママかわいいっす
475名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 23:45:57 ID:4DooBPxN
エロパロ的に、背徳的というか非道徳的なのはアリ?ナシ?
476名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 23:52:52 ID:mP1bx622
>>475
例えば?
477名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 23:53:47 ID:zR5JGlkD
>>475
竜ちゃんがやっちゃんや園子さんを美味しくいただく話とかなら許す
478名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:07:56 ID:X6vJknaL
>>476
大して非道徳的でもないんだけど
竜児が大河と平行して奈々子様を愛人にする、みたいな。
479名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:13:11 ID:O3aZqKKl
>>475
ばっちこーい
480名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:15:22 ID:W//4+eGm
>>478
いいんじゃね?別に
二次創作だし・・・浮気っぽい話はこの前も投稿されてたし
481名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:27:15 ID:v1GEAJCd
>>478
竜虎がくっついた後でもちょくちょく手を変え品を変えちょっかい出してくる奈々子様にはちと萌えるな。

「竜児ぃぃぃっっっ!!くぉのおお腐れ駄犬がぁぁぁっっっ!!」
「まて大河、話を、は話を聞け!!」
「うおおおりゃあああ!!!」
ゴギン
482名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:27:23 ID:X6vJknaL
>>475に回答ありがとうございます。
大丈夫そうなので書き進めたいと思います。
おおまかには書き始めてるので、近いうちに投稿出来る様に頑張ります。
483名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:36:54 ID:GZwtBx+k
>>482
最近、投下が少ないから、バシバシ書いてほしいなぁ。
自分も書くのもいいけど、読むのはもっと楽しみです。
484名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 00:56:18 ID:O3aZqKKl
楽しみに待ってるよー
485G/W:2009/05/01(金) 03:11:06 ID:RfGKTqqR
2ちゃんの投下は初なんで、上手く出来るか・・・・
よろしければ
486G/W:2009/05/01(金) 03:15:12 ID:RfGKTqqR
そんなこんなとらドラ  





「竜児ーーーーー!りゅうぅぅじぃぃ・・・・りゅーーーじーーーー!」

実乃梨の前では大河が泣き叫んでいた。
必死に竜児の名前を呼び、その両目から涙を流しながら、ただ泣き叫んでいた。

本当に自分が自分の思いを高須竜児にぶつけていいのか?
逢坂大河はそれでもいいのか?

それを今一度確かめようとココに来た。そして見てしまった。


高須竜児を必死に求める逢坂大河の姿を・・・


自分の考えは間違ってはいなかった事を認識した。
自分と同じく、大河も高須の事を好きなのだと。

実乃梨は決意する。
自分はまだ止まれる。思い留まる事が出来る。と。
そして逢坂大河が望むならその背を押してやる事も出来ると。

一度、父親との事で大河を傷付けた事は、実乃梨の中で抜けない棘となって心に残っている。
もう2度と大河を傷付けたくない。
それは自らの、親友に対する偽らざる想いだった。たとえそれで自分の想いに蓋をする事になったとしても。

実乃梨は一歩を踏み出そうとした。
大河の傍に。
涙を拭い、安心させる為に。

でもその一歩は止まる。その視界にクマの着ぐるみの姿が目に映る。クマの頭を抱えたその顔は、見間違える筈も無い人物。

「・・・・高須・・くん?」

実乃梨の視線の先で、高須竜児は大河の前に立っていた。

「うっぅ・・・りゅーー・・じぃ・・・うううう・・りゅー「何だよ?」じ!!ふぇ?」

涙でぐちゃぐちゃの顔を見上げると、其処には驚いた顔の竜児が立っていた。

「お前!一体どうしたんだよ!なにか「りゅーじ!!!」へ?って!大河?」

気が付けば大河は竜児に飛びついていた。

無くなったと思っていた。もう傍にいちゃ行けないと思った人がそこにいた。
大河はただ竜児の名前を呼び続け、縋り付いていた。
高須はただ困惑していたが、やがて穏やかな笑みを浮かべながら大河の小さな身体を優しく包み込んでいた。
487G/W:2009/05/01(金) 03:16:58 ID:RfGKTqqR
「で?どうして泣いてたんだ?」

どれ程の時間が経ったのかは分からない。ようやく落ち着きを取り戻してきた大河に竜児は静かに問い掛けていた。
大河はボツボツと話していた。自分が思った事を。
散々大泣きした後だからなのだろうか。自然と大河は自分の偽らざる心情を語っていた。

竜児に縋っていた事。
竜児の隣に居続けたかった事。
実乃梨と竜児が上手くいった時、自分はもう竜児の傍には居れなくなる事。
それが・・・嫌だった事。

それらの言葉は確かに竜児の胸に入っていく。物陰に潜む実乃梨の胸にも。

「はぁ〜〜。ったく何かと思えばそんな事かよ」
!!

呆れた!と言わんばかりの竜児の声に大河と実乃梨は目を見開く。

「そんな事って!あんた私がどん「余計な心配してんじゃねぇよ。ばか」だけ!ばばば」

混乱する大河をヒョイと持ち上げ、竜児は階段に腰掛け自分の身体の上に大河を座らせ、寒くないようにその身を包み込む。

「ちょ!竜児!私の話を「いいか大河」え?」
488G/W:2009/05/01(金) 03:17:28 ID:RfGKTqqR
竜児は静かに、でも力強く、語り掛ける。

「たとえこれから先どんな事が有ったって、お前は俺の隣に居て良いんだ。どんな事が有ってもだ」
「ばか!そんな訳に」
「良いんだよ。仮に俺が誰かと付き合ったとする」
「!!」

その言葉で大河は身を硬くする。さっき自分が考えた事だから。

「でもお前と俺の関係は何も変わらなくて良いんだ」
「・・・どうして?・・・」

小声で伺う大河は不安を隠そうとはしない

「だって俺達は家族じゃないか」
「か・・・・ぞく?」
「おう。泰子も言ってたろ?ウチは泰子と俺と大河の3人家族だって」
「・・・・・うん・・・」
「だからお前はずっと居て良いんだ。
俺が誰かと付き合ったって、たとえ結婚したってお前の飯はウチで食え。
いつかお前が誰かと結婚したいならお前の旦那を一発殴らせろ。
喧嘩したら何時でもウチに帰って来い。お前と泰子の二人くらい俺はきっちり食わせてみせる!
正月は毎年3人で初詣に行くぞ?
高校を卒業したら家族旅行に行こうぜ?
いつかお前の子供が生まれたら俺と泰子で面倒見てやる。きっとお前に似て可愛い子になるぞ?
だから・・・・な?大河。お前はいつまでも、俺の隣にいて良いんだぞ」

静かに語る竜児に抱っこされて、大河はただ泣いていた。
でもそれはさっきまでの涙とは意味が違う。まるで逆の、うれしい涙。

「・・・・居ても良いの?」
「おう。居ないと困る」
「ずっと?」
「ずっとだ」
「もう・・・独りは・・・い「独りにはならない。だって、家族が居るんだぞ?」・・・うん・・・うん」

その日、その夜、聖なるクリスマスの夜に

逢坂大河は新しい、そして本当の、家族を手に入れた。

「ほら、風邪ひくから中に入ってもう寝ろ。俺はこれから学校に行かなきゃな!」
「うん!竜児、頑張ってね!」
「おう!」

やがて竜児は走り去り、大河は出て来た時とは打って変った笑みを浮かながら、足早に自宅へと戻っていった。

実乃梨は独り佇んでいた
二人の会話を聞いていた時、竜児の言葉を聞いた時。大河の笑顔を見た時。
自分の中の何かが、はっきりとした。
489G/W:2009/05/01(金) 03:18:24 ID:RfGKTqqR
「どうすんだよ・・・」

誰も居ない、服は着ぐるみ、プレゼントも無い。
自分の間抜けさに竜児は溜息を漏らした。
ほんとに間抜けだと思う。
さっきの大河との会話で自分の大河に対する気持ちをはっきりと認識した。

そして思う。

今日、色々な事が自分の中でスッポリと納まったと。

何故かは分からない。
でもこのクリスマスの準備から始まって今日のこの夜までの出来事は、自分の気持ちを改めて見詰めなおすことが出来た期間だった。

櫛枝実乃梨と距離が開いた所為もあったろう。
さっきの大河の涙の所為もあったろう。
亜美との会話の所為もあったろう。
北村と大河の所為もあったろう。

全ての思いが錯綜して、今、驚くほど自分の中は凪いでいた。

「今なら・・・「それ・・・いいクマだね」・・櫛枝」

櫛枝実乃梨と高須竜児は夜の校門で相対する事になった。

「よう」
「よう」

二人はどこか他所他所しく。でもどこか近しかった。

「その・・・悪い。実はプレゼントが有ったんだけど、さ。今は持って「あのサ!」!何だ?」

竜児の言葉を遮った実乃梨はまっすぐに竜児を見詰める。

「さっき・・・大河の家の前に行ったんだ」
「!!え?それは」
「ねぇ高須君・・・大河はもしかしたら、家族としてじゃなくて、高須君の事が好きなんじゃないかな?・・・私は、そう思ってた」
「ああ。そう言う事か」

竜児はまた一つ、何かが納まった気がした。

「違うよ櫛枝。それは違うんだよ」
「分かんないじゃない。大河の気持ちなんて」
「分かるんだよ。俺には」
「それは高須君が思ってるだけで、ホントは大河は「俺も同じだったから分かるんだ」!・・同じ?」
490G/W:2009/05/01(金) 03:19:07 ID:RfGKTqqR
竜児は静かに夜空を見上げ、自分の後悔をかみ締める。でもそれは一瞬。

「俺は父親を知らない。知りたくもねぇって思ってる。ソイツのおかげで俺はこんな顔になって散々皆に怖がられてきたんだからな」
「・・・・・・・」
「櫛枝も覚えてるだろ?大河のオヤジの事」
「・・・うん」
「俺は知らないから・・・父親って良いモンなんだって思い込んだ。込もうとしてた。
いい大人も悪い大人もいい加減な大人も無い。ただ父親はいいモンだって思ってたんだ・・・
でもそれは俺の思い込みでしかなくて、錯覚でしかない。
大河の為の判断と、俺自身の感情の区別が、あの時の俺にはまるでついていなかった」

それは後悔。竜児の表情には後悔があらわに見て取れた。

「それは・・・分かるよ。アタシだって、昔」

それは実乃梨の傷でもある。だから言わせない。

「大河はさ。知らないんだよ。家族って奴を・・・家族を・・・好きになるって事を、さ」
「家族を?」
「ああ。・・・・あいつはきっと俺の事を好きだ。でも同じ位に泰子の事も好きなんだ。だって俺達は家族だからな。
俺や泰子だって大河の事は大好きさ。アイツの為なら何だってやってやりたい。
でもさ、大河はその好きと、北村への好きの区別が付かないんだよ。家族への好きを・・・今まで知らなかったから」
「高須君・・・」
「家族に好かれたことも、守ってもらった事も無いから・・・自分の好きに応えてくれた家族が居なかったから・・・大河はそれを知らない。
あいつの中では、好きは好きでしかない。だから追い詰められた。
俺の隣には、俺が一番好きな奴しか居られないと思ったから。そんな訳ないのにな・・・
大河にとって、好きの椅子は一つしか無いんだよ」
「・・・だから・・・さっき」
「ああ。アレは俺の本当の気持ちだ。俺達は家族だからな」
「そう・・・そうだね!」

実乃梨は納得していた。そして理解した。
そして改めて告げる。さっき思った事を・・・

「高須君・・・幽霊の話、覚えてる?」
「おう」
「うん・・・櫛枝は・・・もしかしたら高須君が幽霊じゃないかって思ってたんだ」
「・・・・・・・」
「でも違った。さっきさ、大河と話してる高須君を見てて分かったんだ。
私はただ、高須君と一緒に歩きたかったんだって」
「櫛枝・・・」
「私は大河が大好き。これから先、私の人生が続いていく限り、私は大河と一緒に笑って、騒いで、バカやっていきたい。
でもね?二人じゃないんだ。私は高須君ともそうしたいって思ってる。

私は高須君が好き!

私の好きな大河を優しく見詰める高須君が好き!
大河の我が侭に振り回されている高須君が好き!
これが私の本当の気持ち。だから」
「俺はお前が好きだ」
491G/W:2009/05/01(金) 03:19:34 ID:RfGKTqqR
竜児は静かに実乃梨の言葉を遮る。

「ごめん。私も高須君の事は好きだけど、私と高須君の好きは違う」
「そうだな。それは俺も思うよ。だって、俺が好きなのは・・・いや、俺が憧れてたのは櫛枝実乃梨の笑顔だからな」
「高須君?」

竜児の顔には強い意志があった。

「多分、初恋だった」
「!!」
「それは間違いない。それはお前が眩しかったからだ。
お前は笑顔で、元気で、訳分かんなくて・・・でも、最高に輝いてた」

実乃梨の顔も少し赤く染まる。

「俺には無いものだし、俺には向けられないものだったから、俺はお前に憧れた」

竜児の周りには自分を恐れる視線しかなかった。

「でもお前は最近俺から距離を置くようになった。きっと大河の事、だよな?」
「・・・・うん」
「不思議だったんだ。それなのに、俺はあんまり悲しくなかった」

それは自分の疑問だった。
実乃梨と会えない事が、自分にダメージを与えなかった。

「だってさ・・・俺にじゃなくても、お前は笑ってたじゃないか」
「!!」
「俺に向けられては居ない・・・でもお前の笑顔が其処にあった。俺はそれだけで満足だった。パーティーにくればもっと見れると思った。
プレゼントを渡せば見れると思った。見たかったんだ・・・
ただ、お前の笑顔が、俺は見たかった・・・憧れた笑顔を、さ」

実乃梨は黙って高須を見詰めていた。
高須もまた、逃げる事無く見詰め返していた。

「パーティーでさ、皆の笑顔を見てて思ったんだ。
俺の一番見たい笑顔が其処に無いって。で、驚いた。
だってさ、俺が居たいのは櫛枝の隣じゃないんだ。櫛枝の前に立って居たいんだ。
隣に並んじまったら、お前の笑顔、見れないじゃないか。
その時思ったんだ。ああ、俺の初恋はとっくに終わってて、憧れが好きになったんだって。
笑顔の櫛枝に憧れてた・・・そして櫛枝の笑顔を、俺は好きになった」
「・・・高須君・・・」
「だから、これから先も、俺の好きな笑顔を、俺に見せてくれよ、櫛枝」
「うん・・・・・うん!」

其処には2つの笑顔があった。

高須竜児の初恋と櫛枝実乃梨の初恋だったかも知れないものが、今確かに幕を下ろした。

「それじゃ!櫛枝は帰るよ!」
「送ってくって」
「平気だよ!それに、どうせ大河は待ってるよ?お腹空かせてさ」
「うわ〜。有り得る。あいつ殆ど喰ってなかったからな」
「あはは。それじゃね高須君!また、学校で!」
「おう。またな!櫛枝」

クリスマスの夜は静かに終わりを告げる。


この後、竜児が大河に急かされて軽食を作り、酔っ払って帰ってきた泰子を交えて朝方まで騒いでいた事は、記すまでも無い。
492G/W:2009/05/01(金) 03:21:49 ID:RfGKTqqR
ちょいと長いです。
続けていいのか分からず、とりあえずココまでで。
可であれば続、行きたいと思います。
ども
493名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 05:19:19 ID:XlDC+ay0
>>492

God Job!!
竜児、大河、みのりんの心がよく書けていた。
特に竜児とみのりんのシーンが良かった……
なんかイィ!
494名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 05:22:09 ID:ol9l50TW
田村くんものキテるー!!
495名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 06:17:04 ID:kKyYl08Z
グッッッジョーーブ!!!!

久しぶりの投下に気が狂いそうだぜwww
496名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 07:03:21 ID:W//4+eGm
朝からなんか泣いてしまった・・・
GJ!
497名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 14:24:09 ID:1GcKlgPA
「多分、初恋だった」ってセリフどっかで聞いた記憶あるんだけどわかる人いる?
498名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 14:33:56 ID:b/3vlwg0
>>464-473
GJ! 竜児マジ逆玉… なんか格差社会を感じさせる内容で、
読んでいてちょっとヘコんだりもするけど
あ〜みんの「うちにお嫁に来る?」のセリフは
「養子に来て」ということだったんかなーとオモタ

http://z2-ec2.images-amazon.com/images/P/B001IAAPOM.01._SCRMZZZZZZ_.jpg
499名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 14:35:01 ID:GvYSw40F
乙!!
 
 
>>497
俺の記憶が正しければギアスのルルーシュがユフィに対して最後に言った言葉

500名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 14:35:39 ID:4H8GDQ3Z
ルルじゃね?ユフィん時の
501名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 14:46:58 ID:1GcKlgPA
>>499、500
すっきりした!ルルーシュだ。ありがとう。
502名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 23:35:21 ID:M6V1N2is
>>473
GJ!
亜美ママかわいいよ亜美まま
98VMさんの描くキャラクターはみんな活き活きしてて素晴らしいです
503名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 02:19:38 ID:wo+wl4uo
とらドラP!付属のスピンオフで竜児×大河×亜美の3P設定来ましたが誰か書きませんか?(笑)
504G/W:2009/05/02(土) 03:42:37 ID:EXLmeH6F
なんとなく可、ぽいので続き、投下します。
エロが無いので申し訳ない。
505G/W:2009/05/02(土) 03:45:14 ID:EXLmeH6F
冬休みも終わり、3学期に入ったある日。
「ん?おう!川嶋」
竜児の前に佇む亜美が居た。

「げぇ・・・・・・・・」
「おい・・・久しぶりに会った級友になんだよ?それは」
「私、高須君の事嫌いになったから。バカだから」
「バ・・・お前なぁ「きゃはははは!!やーいやーい!」大河・・・うるさい」

竜児の横に居た大河は大笑いしている。そんないつもの光景を見ながら亜美は息を漏らす。
「あ〜あ。ま〜だやってるんだ?高須君」
「何をだよ」
「なんでもな〜〜い」
「訳わかんね〜な・・・で?こんなところで何やってんだ?」
「別に。チビトラに用があんのよ」
「大河に?」

3人は近くの喫茶店に入り、亜美は大河に袋を一つ渡していた。

「はい。これ、頼まれてた奴」
「お〜」

どうやらハワイで仕事だった亜美に大河が何か頼んでいたらしい。

「いつの間に土産をやり取りする仲になったんだ?」
「土産じゃないわよ。ちゃんとお金払うもん」

いいながら大河は袋を受け取る。
亜美の居ない間に修学旅行の行き先がいきなり雪山に変わっていた事等を話しながら、大河は独り席を立った。

隙を見計らったかの様に亜美は竜児に話し掛ける。
「結局、ま〜だ家族ごっこを続けてる訳だ。高須君は」
「またソレか」
「いいけどさ。大怪我する前に止めた方がいいよ?ホントにさ」
ソレだけを言い残し、亜美は二人を置いて帰って行った。

「あれ?バカチーは?」
「ん?ああ、先に帰ったぞ」
「ふ〜ん・・・あぁ!そうだ竜児。私いま思い付いたんだけど、今夜は肉が良いと思うのよ!うん!そうしよう!!」

どこまで行ってもお肉が大好きである。

「あのな〜。昨日も肉だったじゃないか。今日は魚だ」
「え〜。ケチくさいわね!この駄犬」
「だ・・・いいのか?そんな事言って?」
「??何よ??」

どこかで踏んだヤマが上手くいった悪党の表情では有るが、竜児はニヤリと笑みをこぼす。

「これからスーパーかのう屋に行くんだが・・・今日はプリンが特売なんだがな」
「!!おっきい奴?」
「特大の奴だ」
「早く行くわよ!!竜児!!」

既に大河は店を飛び出さん勢いだ。
「ゲンキンな奴」
竜児のぼやきにも「売り切れたらどうすんのよグズ犬!」聞いてはいないようだ。
506G/W:2009/05/02(土) 03:46:06 ID:EXLmeH6F
そんな穏やかな日が数日過ぎた時、一つの異変が有った。







「ね〜。りゅうちゃ〜ん。大河ちゃんまだ〜〜。やっちゃんお腹空いた〜」
「待て待て・・・おかしいなぁ。大河の奴電話に出ねぇぞ?」

何時ものように夕食の支度を済ませたのだが、大河がいっこうに姿を見せようとしない。

「え〜。どうしたの〜〜」
「わからん!とにかく大河の家に行って来る」
「早く呼んで来てねぇ〜」
「分かってる」

竜児はツカツカと隣のマンションへ。
合い鍵を使い、勝手知ったる他人の家たる大河の部屋へ

「大河〜。寝てるのか〜〜?入るぞ〜〜」

寝室に入って見えたのは、大きなベットに突っ伏する大河の姿だった。制服のままで横たわる姿は、どうやらそのまま眠ったかの様だった。

「なんだ、寝てるのか?まったく、制服のまま寝る奴があるか。飯も喰わ・・・・大河?」

大河の傍まで来て見ると、大河の様子がおかしい事に気が付いた。
制服のまま横たわる大河は荒い息を付きながら額にびっしり汗を浮かべていた。

「大河!お前どうし」

思わず抱き上げる大河の表情はひどく顔色が悪い。思わず竜児の言葉が詰まる。

「りゅ・・・じ・・・・なんか・・・寒い・・・苦し・・・りゅうじ・・・」

額に手を当てただけでソレとわかる高熱を、竜児はその手に感じていた。

「凄い熱じゃねェか!お前!何時から具合悪かったんだよ!」
「・・・だって・・大丈夫だと思ったんだもん・・・ごめん・・・・」
「くっ!」

竜児は思わず歯を噛み締める。
大河を責めるのはお門違いだ。どうして自分はこんなになるまで大河の様子に気が付かなかった?

「なにをやってんだよ!俺は!!」

自分を罵倒するも今はそれ所ではないと頭を切り替える。

507G/W:2009/05/02(土) 03:46:42 ID:EXLmeH6F
「待ってろよ大河!」

言うや、竜児は大河をベットに寝かせると素早く家を飛び出し自宅に駆け込む。
戻って来た時には泰子と共に部屋に駆け込む。

泰子は素早く大河を着替えさせ、薬を大河に飲ませる。
その間に竜児もスポーツドリンクや精の付く物を買い、病人食を手早く作り食べさせた。

「取り合えず泰子は仕事に行けよ。大河は俺が看てるから」
「うん・・・じゃあ大河ちゃん。りゅうちゃんが居てくれるから、安心してゆっくり休むんだよ〜」
「・・・うん・・・ありがと。やっちゃん・・・」
「うん!」

そうして泰子が居なくなった後、竜児は簡単に部屋を片付け

「それじゃあ俺はリビングを片してそっちに居るから、何か有ったら呼べよ?」

言い残してその場を離れようとすると、大河の手が布団から出て竜児のシャツを掴んでいた。

「?大河?」
「・・・・・えっと・・・・その・・・」
「・・・どうした?大河」
「・・・だから・・・ううん。なんでもない」

小さく言って離した大河の手を布団の中に戻しながら竜児は微笑む。

「ココに居るよ・・・大河」
「!!・・・・りゅ」
「ココに居る。俺はココに居るから、今は眠れ・・・な?大河」
「・・・・・うん・・・・」

やがて寝息を立て出した大河を見詰めながら、竜児は思う。

コイツには、どうして今までこうしてくれる人が居なかったのだろう。と。

大河がこのマンションにやって来てから竜児と知り合うまで、それなりの期間が有った筈だ。
風邪を引かなかったとは思えない。空腹を覚えた事が無かったとは思えない。
最初見た部屋の惨状は、今でもはっきり思い出せる程ひどい有様だった。

「・・・いいさ。昔は昔、今は今。だろ?大河」

竜児は昔を忘れる事にする。それはコレからの自分達には必要の無いものだから。

裕福にはならないかも知れない。
良い事ばかりではないだろう。

でもやっていこう。

それだけは、決して失わずに、家族だけは失わずに

「やっていこうな?大河」
508G/W:2009/05/02(土) 03:47:16 ID:EXLmeH6F
竜児はただ其処にいた。

時折うなされた大河が竜児を呼ぶ時、「居るよ」と声を掛ける。
うなされる大河が布団を乱した時に改めて布団を掛ける。
冷やして、汗を拭いて、熱を測って・・・そしてまた、声を掛けて。
やがて朝を迎える頃には、大河の容態も幾分落ち着いたものになっていった。


「大分熱も下がったな」
「うん。もう大「大丈夫じゃねぇよ!」ぶ〜。平気だってば」

言って起き上がろうとする大河を右手一つでベットに押し込む。

「だ〜めだ!昼間は泰子が看てくれるから、お前は今日は学校休んでろ!」
「え〜」
「もうすぐ修学旅行だろ?キチンと治して置かないと雪山なんか行ける訳無いだろ?行きたくないのか?」

言われるとおずおずと布団に潜る大河

「・・・・行きたい・・・」
「だったら今日は寝てろ。いいな?大河」
「・・・・分かった。その代わり!帰りにイチゴ買ってきて!甘い奴」

それで良いのかと思いながらも

「分かったよ。とびっきり甘い奴を買ってきてやるから、お前は大人しく寝てろ。いいな」
「ふふふ。は〜い」

言うや布団にスッポリ入ってしまった。
やれやれ、と息を漏らし、竜児が部屋を出ようとすると「ありがと」と小さく聞こえる。
振り向く必要も無い。どうせ布団に潜ったままだ。竜児は笑みを浮かべながら、静かに部屋を出て行った。





学校に着き、大河が風邪で休む事を告げると、一応の騒ぎにはなる。
健康の代名詞みたいな逢坂大河の事、余程の大病かと。

「まぁ今朝には大分熱も下がってたしな。今日一日ゆっくり寝てれば大丈夫だろう。明日になっても熱が有る様なら病院に行かせるさ」
「へ〜大河がね〜。アタシお見舞いに行ってもいいかね」
「当たり前だろ?櫛枝に来て貰えたら大河も喜ぶさ」
「よし!それじゃあ放課後、皆で逢坂を見舞いに行こう!」
「「「「お〜〜!!」」」」

そんな光景をどこか引いて見ている亜美は不機嫌だ。

「亜美も行くだろ?」

北村の誘いにもそっけない。

「はぁ?私はパス!なんで私がチビトラの見舞いなんかに行かなきゃなんないのよ。ただの風邪でしょ?」

仲が良いんだか悪いんだか分からない。
竜児の率直な感想ではあったが、今は特に気にはしないでおこうと思う。
なぜか今の竜児にはおっくうに感じられる。
自分でも感じる違和感に気が付いたのは、かなり手遅れの状況になってからだった。

竜児は3時間目の体育の時間に、みんなの前で倒れたのだった。
509G/W:2009/05/02(土) 03:49:40 ID:EXLmeH6F
「・・・・39.5・・・あなた、よく出てきたわね。こんな身体で」
保険医も呆れていた。
「いやあ・・・ちょっとだるいなぁ、とは思ってたんですけどね」
「は〜。ちょっとじゃないでしょ、ちょっとじゃ。もう今日は帰って寝るなり病院に行くなりしなさい。恋ヶ窪先生には言っておくから」
「はぁ。すいません」

なんの事は無い。
一晩中、大河の看病をしていた竜児は、どうやら大河の風邪がうつったらしい。
とっとと帰って寝よう。
竜児がそんな事を考えながら教室に戻ると、其処には目を疑う光景があった。
「あ!高須」
北村の声の先に、机に座っている・・・逢坂大河が居た。
「大河!!お前!何やってんだよ!こんなトコ来て!」
「もう治ったのよ。バカ犬」
「治っ・・・ホントか?」
「本当よ!」
言うがその顔色は明らかに優れない。
どうやら実乃梨や北村も感じているのだろう。無理をしないで帰れと言っていた様だが、大河はガンとして受け入れなかった様だ。
「おまえな〜。泰子は?俺が学校に行ってる間はお前の事を頼むって書置きしてきたぞ?」
「・・・・・・・もん・・」
「はぁ?」
「・・・やっちゃん。居ないもん」
どうやら昨日は飲み過ぎたようだ。
「ったく。まだ寝てやがんのか。仕方ねぇ。ほら!取り合えず帰るぞ!大河」
「嫌!帰らない〜」
「ダダをこねるな!俺も帰る!」
「・・・・なんであんたも帰るのよ・・・」
幾分、大河の態度も和らぐ。
「仕方ないだろぉ?泰子が無理なんだから。それに、これ以上駄々を捏ねるようなら・・・・イチゴは無しだ」
「!!ずるい!!」
「今引き下がるなら、オマケにヨーグルトも付けてやる・・・どうよ?」
すでに竜児は勝ち誇っている。
「・・・・じゃあ・・・・帰る」
「おう」
言うや竜児は自分のカバンと大河のカバンを抱え
「悪い北村!そういう事だから、先生には言っといてくれ」
「分かったよ高須」
「お大事にね〜大河〜。学校終わったら見舞いに行くからさ〜」
「うん。ありがとみのりん!・・・北村君も・・・ありがと」
「おお。早く良くなれよ、逢坂」

既に竜児は帰り支度を済ませていた。

「行くぞ〜。大河〜」
「分かったわよ!うるさいわね駄犬!!」
「おまえな〜」
「いいから早く行くわよ!イチゴも買ってかなきゃダメなんだから」
「分かったから怒鳴るな。だいだいお前は」

次第に小さくなる二人の会話を聞きながら、皆は4時間目の授業の準備を進める。ふ、と誰かが気付く。
「あれ?高須君って・・・さっき倒れなかったっけ??」
「あ!そういえば」
510G/W:2009/05/02(土) 03:50:08 ID:EXLmeH6F
皆の頭に疑問符が付いた時、担任が教室にやってきた。どうやら次は恋ヶ窪の授業の様だ。

「は〜い。皆さん席に付いて〜」

いつも通りの先生にこれまた何時ものように。

「先生。実は高須なんですが」
「ああ。聞いてますよ。彼はもう帰りましたね。
まったく、39度5分も熱があったって言うじゃないですか。皆もあまり無理して学校に来ないで、キチンと休む時は休んで下さいね。」
「え?」
「9度って・・・誰がですか?」

?を浮かべる一同に

「だから高須君です。ホント、朝から具合が悪かったでしょうに。病院に行ってくれると良いんですけどね・・・・・・・どうしたの?」

恋ヶ窪の目に、クラスの皆の呆けた顔が映る。

クラスメイトの目には竜児は具合が悪い様には見えなかった。
大河の体を心配して、いつものように大河に悪態を付かれながらも行動を共にする。
自分達の目には高須が39度以上も熱が有るとは考えられなかったのだ。




「・・・そうですか。そんな事が・・・」

先程あった出来事を恋ヶ窪に聞かせると、彼女はそう漏らして静かに笑っていた。
しかし有る程度の結論は、生徒の中でも出始める。

「やっぱりアレよ!愛の力よ!」
「あははは。言えてるかもね〜」
「ま、好きな女の為に無理してんのよね〜。やっぱ男はそうでなくちゃ」

そんな喧噪に亜美は独り黙る。

面白くない。

高須も大河も自分の気持ちを誤魔化しながら家族ごっこを続けている。そう思うと面白くない。
そして一層感じる。
自分の居場所は其処には無いと。
そう思っていると、ふと恋ヶ窪が口を開く。

「はいはい、そこまで!まぁ皆さんの言っている事も分かりますよ〜。でも先生は少しだけ違うと思いますよ」

何が?と思う。

「え〜。でも先生、じゃあ他に何があるんですか?」
「ふふふ。あなた達にはまだ分からないでしょうねぇ。でもいつかきっと、あなた達にも高須君の事が分かる日が来ると、先生は思いますよ。
今はまだ分からなくてもいいんです。
高須君は、皆さんよりもほんの少しだけ早く手にしちゃっただけ・・・ほんの少しだけ、前に居るだけですよ」
「え〜。ゆりちゃん、分かんないよ〜」
「はい。この話はココまで!授業に入りますよ〜」

ソレで二人の話は終わり、いつもの、そして竜児と大河の居ない日常が進んで行く。
511G/W:2009/05/02(土) 03:50:49 ID:EXLmeH6F
「分かってる。ちゃんと考えてるから。修学旅行が終わった頃には、きっと結論出すよ」

夜、亜美は母親と電話をする。最近は毎日だ。
話は亜美の転校について。
もともとストーカー騒ぎがおさまるまでの短期の予定だったのだ。それを延長しての在学でしか無い。
もうそろそろ帰って来る時期では無いか?との事なのだ。

亜美もそろそろ帰ろうかと思っている。
ココに居たい気持ちもある。もちろんある。
でも、同じだけ、居たくないという気持ちもあった。

ココには見たくない光景が有るから。
入れない光景が有るから。

そんな少し沈んだ空気を、亜美は自分で振り払う。
ふ、と恋ヶ窪の言葉が頭を過ぎる。

「ねぇママ」
『ん?なに?亜美』
「うん・・・例えば、さ・・・ママが熱出しちゃったとするじゃ無い?」
『え〜?な〜に?いきなり』
「だから例えばだってば!・・・それでね、ママは倒れちゃうくらいの高熱で、本当に具合が悪いの」
『ふ〜〜ん。それで?』

母親は取り敢えず亜美を促す。

「うん・・・それでね・・・ママの傍にはもう一人居て、ソイツも風邪をひいて具合が悪いの。
で、ママったら、ホントは自分の方が熱だって高いしフラフラな筈なのに、だけどソイツの為なら全然へっちゃらで、ソイツの事ばっかり心配するの」
『・・・・・それで?』
「自分が辛い癖に、ご飯作って、薬飲ませて、我が儘聞いて、ただただソイツの看病するの・・・ソイツの為なら・・・出来るの」
『・・・亜美?』
「・・・・・・そんな相手・・・ママにも居る?」

電話の先の娘の空気に、自分の娘の心情をなんとはなしに察する。
娘もしっかり青春してるんだ、と微笑む。

『もちろん。居るわよ』
「そう・・・やっぱりママもパパの為なら何だって出『あははは!パパの筈無いでしょ〜〜』きる・・・へ?」

母親の笑い声に遮られ亜美はキョトンとする。

「え・・・でも」
『あのね〜。もしパパが亜美の言う【ソイツ】だったら、ママはそんなもん勝手にしろって言うわよ』
「え?勝手にって」
『当たり前でしょ?私だって具合悪いんだから、自分の事は自分でやれって言うわよ。
実際そうして来たし。今までも』
「じ・・・じゃあ・・・誰?」

どこか母親から呆れた空気が流れ込んでくる気がする。

『馬鹿ね〜。そんなの、亜美しか居ないでしょ?決まってるじゃ無い』
「え?私??」
512G/W:2009/05/02(土) 03:51:27 ID:EXLmeH6F
『他に誰が居るの?
今だってそう。今までだって、これからだって。ママは亜美の為なら何でも出来るわよ?
パパだってそうよ?私達はね、貴女の為なら、自分の身体なんて後回しに出来るのよ。
ホント、不思議と出来ちゃうものなのよ。ふふふ』

母の言葉を、どこか呆然と聞く。

『亜美は覚えて無いでしょうけどね。
貴女が小さい頃に夜中に凄い熱を出してね、パパはそんな貴女をおぶってパジャマのままで救急病院に担ぎ込んだのよ。
その時パパったら39度以上も熱を出してずっと寝てたのに、そのまんまの格好で外を全力疾走。
ま、結局後で倒れちゃって、ママが二人分の看病しなくちゃいけなくなったんだけどね?』
「そ・・・・そうなんだ・・・」

覚えてる筈も無い。
でも、きっと確かに有った話。

『全ての夫婦がそうだとは言わないけどね。取り敢えずパパとママは対等だと思ってる。並んで歩いていこうと思う。
だからどっちかがどっちかを犠牲にって話には為らないし、辛い時は辛いって言う。
どっちかが風邪なら面倒みてやるし、二人とも風邪なら、二人でダウンしちゃえばいい。

でも亜美は違うのよ。

亜美はね?パパとママの大事な人。自分達なんかよりずっとずっと大事な人。
ソレで貴女が幸せに成れるなら、私達は命だって惜しくないのよ?
だからママの、ママとパパの【ソイツ】は亜美しか居ないのよ』
「ママ・・・・・・」

亜美はもしかしたら初めて聞いたのかも知れない。

自分の事を、親がどれ程愛しているかを。
自分がどれ程愛されているかを。

そしてどこかでしっくりと思う。

そうか・・・・ごっこ、じゃ・・・・・無いんだ。

逢坂大河は高須竜児が体調を崩してる事をたぶん知らない。
高須竜児は逢坂大河の体調が良くなる為なら、自分の体調なんて気にしない。

父娘なのか兄妹なのかは分からない。でも確かに、彼等は家族なのかも知れない。ごっこなんかじゃ無く・・・本物の。
血の繋がらない家族なんて普通に在る。複雑な事情の家族なんて何処にだって在る。
ただ自分とは違うだけで、それはゴッコなんかじゃ無い。
でもそこでまた一つの答えが出る。

「そっか・・・やっぱ駄目じゃん。アタシ」

竜児にとって、大河はホントの家族。自分を後回しに出来る位、大事な家族。
ソレをゴッコ呼ばわりした自分には、やっぱり居場所なんか無い。彼の中に、自分の居場所は。

『亜美?』
「ねぇママ。私やっぱりソッチに帰るわ。ホント、もう潮時だしさ。
ほら、こっちって何も無いし、仕事にだって支障も出るし、そっち戻って本腰入れ『亜美』て・・・何?」
『とりあえず、話してくれない?亜美が・・・・なんで泣いてるのか』
「え?・・・泣いてなんか」
『私は理由を聞いてま〜〜す。言い訳なんかじゃ無いんだけどな〜〜』

何処までも・・・やっぱり自分は母親似だと思う。
そうして亜美はぼつぼつと語る。
513G/W:2009/05/02(土) 03:53:55 ID:EXLmeH6F
自分はクラスメイトに酷い事を言ったと。
きっとそれは言ってはイケない事だった。
周りの人間関係にも波風を立てた。きっと自分が居ない方がみんな上手く行くと思う。
後からやって来た自分には、居場所なんか無いと。

『そっか〜。ママの知らない所で、亜美も青春してるんだ』
「やめてよ・・・そんなんじゃ無いから。それにもう」

どこか沈んだ声の亜美に、母の声は明るい。

『でも平気よ。そんなの』
「ママ?」

亜美は驚く

『その彼、いつも話してる高須君?彼は亜美に言われた事なんて気にしてないわよ』

それは自分でも分かる。かれは自分の言葉なんて聞いてくれない、と。

『ふふふ。違うわよ。貴女の言う事を聞いていないんじゃ無い。ただ許してるだけ』
「許す?」
『そーよ。守る者を持った高須君は、きっとあなた達よりもほんの少しだけ大人なのよ。
ねぇ、前に貴女、ママに言ったわよね?自分は皆から大人って言われてるって』
「・・・うん」
『それで?高須君はどう?彼も貴女の事、大人って言ってたりする?』
「!!・・・それは・・・」

思い出すのはいくつかの光景。

ちゃんと喰えと肉を渡しながら子供だよなぁ、とぼやく姿。
海辺で自分に語る姿。
自動販売機で交わす何気ない会話。自分の言葉に呆れる素振りを見る姿。

「・・・・高須君は・・・・私を」
514G/W:2009/05/02(土) 03:54:25 ID:EXLmeH6F
『きっと彼は貴女を子供だと言うわね』
「!ママ、どうし」
『でもだからって馬鹿にはしないでしょ?
私は彼とは逢ったこと無いし、亜美から聞いた限りしか分からないけどね?
彼は昔から誤解されて生きて来た。
母一人子一人で支え合って生きて来た。
今は守るべき家族も増えた。
彼が生きていく為には、子供のままでは無理なのよ。

人を許す強さを持たなきゃ生きてはこれ無い。
人を支える強さを持たなきゃ生きて行けない。
人を守る強さを持たなければ守れない。

貴女と同い年の彼がそうなる事が良い事なのかどうなのかは分からないわね。でもそうなってしまったモノは仕方がないわ。
だから彼はあなた達よりも少しだけ大人に成らなければいけなかった。
そんな彼だから、その、逢坂さん?彼女の家族になった。
貴女が彼に家族ごっこをしてるって言った事は、確かに不躾で非礼な事なのかも知れない。でもね?彼はきっと気にしてないわよ。
きっと分かってると思う。
貴女だけじゃ無い、他の人から見て、そう取られてもおかしくない状況だって事位、彼は十分分かってる。
そしてそう言われたからって、その人を嫌いになったり視野の狭い人間とは思っていない。
だってそんな事で一々気にしていたら、彼、やってらんないでしょ?その凶悪そうな顔で散々誤解されてきたのに。
彼から見たら亜美はまだまだ子供よ。
貴女の言葉に負ける彼じゃ無い。貴女の言葉でグラつく彼じゃ無い。貴女の言葉なんて、幾らでも許せるのよ、彼は。
だから貴方は、なにも気にする必要は無いのよ?亜美』

母の言葉は亜美の心に沁み渡る。

「ママ・・・・」
『今度彼に逢ったら、謝るまでもしなくていいわ、その事、彼に聞いてみなさい。きっと彼驚くわよ。
亜美がそんなに気にしてるなんて思っても居なかったって』
「・・・そうかな」
『そうよ。何時だって、子供を許すのは大人なのよ』
「なによそれ。ソコまで子供子供言われるのも癪なんですけど」
『あはは。ごめんごめん。大丈夫よ。少しって言ったでしょ?ちゃんと女の子としても見てくれてるわよ?彼は。
あぁ、一度会ってみたいなぁ。亜美が好きになったその高須く「ちょちょちょちょちょ!ちょっと待ってよ!!」え〜な〜に〜?』

亜美の顔は真っ赤に染まる

「べべべ別にあいつの事を好きとか無いから!有りえないから!!
だってヤンキー顔だよ?亜美ちゃん可愛し、マジ釣り合わないから!」
『はいはい』
「ちょ!聞いてる?ママ」
『聞いてますよ〜。でも困ったわね〜。亜美が男の子に夢中なんてパパが知ったら大騒ぎね〜。
亜美が帰って来ないならウチが引っ越すとか言い出すんじゃ無いかしら』
「だから聞いて無いじゃ無い!私は別に高須君に夢中とかじゃ無いし!!」
『あ!でもそうしたらママも高須君見れるし、逢坂さんも見れるわね。うん。悪くないかも』
「だから私の話を聞け〜〜〜〜〜〜!!!」

賑やかに、それでも温かく、亜美は母との会話を経て、一つの答えを貰った気がした。
515G/W:2009/05/02(土) 03:56:23 ID:EXLmeH6F
2日後。

風邪が治った竜児と大河が教室に来ると、クラスの皆の態度が幾分変わった気がした。
それは気が付かない程の些細な違い。
ただの認識の違い。
亜美が母としたような会話は、クラスの多くが自分の親や兄弟とした会話であった。
そんな会話を伝え聞いたクラスの者も居る。
小さな誤解と新しい認識。
姿を現した二人を、どこか新鮮な感じで、みんなは見詰めるのだった。





昼休み、クラスの喧噪から離れたいつもの場所で、亜美は一人、販売機の隙間に身を沈めている。

「よう。ま〜たそんなトコに挟まってんのか」

若干の呆れを含んで、でもどこか呑気に竜児が現われた。

「い〜のよ。ココは私の場所なの」
「そうかい」

言ってコーヒーを買い、竜児は亜美の前に座り込む。
特に何を決めた訳では無い。ただそうする事が自然なだけ。

「ねぇ、高須君」
「ん?なんだ?」

 亜美は聞こうと思う。母に言われた通り。

「その・・・ごめんね」
「・・・は?」

竜児はなんの事か分らないと口をあける

「ほら・・・前に私言ったじゃない?家族ごっこは止めなよって・・・あれ」
「ん?ああ、その事か」

母は謝るまでも無いと言った。でも一言口にしたかった。

「ごめんね・・・高須君とタイガーってさ、不自然だって思ってた。なんか色々誤魔化してるって・・・でも違った。
私にはソレが分らなかった。だから・・・・」

其処まで言って言葉に詰まる。
自分の言葉で更に自覚し沈む自分が居る。
亜美は自分の膝に顔を埋める。

「はぁ?なんだよ。そんな事気にしてたのか?お前、つまんない事気にする奴だな」

竜児の声はどこか楽しそうだった。
516G/W:2009/05/02(土) 03:57:47 ID:EXLmeH6F
亜美が顔を上げると其処には念願の物を手に入れ笑みを零している麻薬の売人の様な顔がある。
亜美は怖がらない。何故ならこの表情は彼が、彼の大事な少女に向ける顔だから。

あぁ。と思う。

母も言っていた。そんな事気にしてたのかって驚くと。
その言葉の通り、彼は・・・彼には許せるんだ。
亜美の言葉も態度も、素の川嶋亜美を、彼は許せるんだと自覚した。

「別に良いじゃねえか。お前が感じた事を俺に言った、それだけじゃねぇか。
お前の言ってることも間違って無いと俺は思う。
ただ何と言われても俺は大河の事が気になるし、これは仕方ねぇって思ってる。
あいつドジだし、やっぱほっとけねぇんだ。」
「うん」

亜美は静かに頷き、勢い良く立ち上がる。

言いたい事は言った。
聞きたい事も聞けた。

もう、自分の中での結論は変わらないんだと云う事も・・・分った。

だから

「ねぇ高須君」
「ん?まだなんかあんのか?今日のお前、少しお」
「私、転校するから!」
「お!お前何言って」

竜児にとって、ソレは唐突だった。

「別に急に決まった事じゃ無いわよ。元々ストーカー騒ぎが終わるまでの間だけの積りだったし。
むしろ少し遅過ぎた位よ」
「だからって転校する事ねぇじゃねぇか」
「ううん。きっと私が転校した方が上手く行くよ。みんなも」
「どういう意味だよ」

竜児の顔に険が増す。
普通の人間であれば間違いなく逃げ出すか失神するだろう。

「そのままよ・・・ほんと、そのまま。何やってんだろうね、私。
途中からやってきて、自分の居場所でもないのにチョロチョロチョロチョロ。
仮面被って、知った風な顔して、結局何も上手く出来ない癖に・・・ほんと、何やってんだろうね、私。
だから居なくなるの。ココには私の場所は無いから」
517G/W:2009/05/02(土) 03:58:18 ID:EXLmeH6F
「なんだよそれ!」

竜児は思わず声を荒げる。

「一体誰がお前の場所が無いなんて言ったんだよ!誰も言ってねぇじゃねぇか!
木原や香椎とは友達じゃねェのかよ!北村は!能登や春田だってお前と居れて楽しそうじゃねェか!
櫛枝だって、大河だって!ココはお前の居場所じゃないなんて思ってねェよ!!」

亜美は少し離れた場所まで歩を進め振り返る

「・・・高須君は?」
「俺だって同じに決まってるじゃねぇか!」
「そう・・・ありがと。でもね、やっぱりこのままじゃダメだって言ってるんだ」
「誰がだよ!」

多分、竜児が見た中で、一番の笑顔。でも、どこか悲しい、寂しい、笑顔で


「私自身が・・・だよ」


「おま!」

竜児の言葉を聞かず、亜美は廊下の向こうへ歩いていった。


「なんだってんだよ」

竜児は自動販売機の前で独り佇んでいる。

あのクリスマスの夜に、少しだけはっきりした事。
色々な事。
そして今、亜美が転校するという。
人と時間が動いていく中で、何も出来ないのかと自問する。

出来ない?

そこで思う。
何をしたい?なにが出来ない?



「あぁ・・・上等だ」

竜児は一気に駆け出した。
その形相に廊下に居る生徒達はいっせいに道をあける。
自分の形相に慌てふためく声が上がるが今は気に止めない。

「上等だ!川嶋ぁ!!」

竜児の激走は更に激しさを増したのだった。
518G/W:2009/05/02(土) 03:59:04 ID:EXLmeH6F
そろそろ皆、昼食も終わったかと云う時間に亜美はクラスに戻った。
ふとドア口で立ち止まり教室内を見渡す。

馴染んだクラスメイト達が賑やかに居る。
このクラスは楽しかった。
大河や竜児の存在も大きいだろう。でも、ソレを抜きに考えても、以前に自分が通っていた学校より、この学校は楽しかった。
でも、もう終わらせなければ成らない。
他の誰でもない、自分で決めた事だ。

自分で決めた。

高須竜児は自分より少し先を歩いていた。
ホントは自分が少し先を歩いている筈だった。
だから今はココには居られない。
いつか彼に追いついて、ほんの少し先を歩いていける。そんな自分に成りたいから。
だから今、ココを離れようと思う。

「あ!亜美」
「亜美ちゃん。どうしたの?」

奈々子と麻耶が声を掛けてきた。
この2人には、先に言っておきたい。
いや、今、自分で言うと決めた筈だ。竜児に話した決意のままに。

「あのね・・・私二人に・・・皆に!話があるんだ!」

ふ、と教室の注目が集まる。
人の視線には慣れている。でも、今感じている視線は居心地が良くない。

それは不安だから。

自分が転校する事を告げた時、どんな反応がかえるのだろうか

引き止める声が上がるのか?
そうか、と聞き流されるのか?
送り出す言葉を浴びせられるのか?
自分と云う存在は、この級友達にとってどの様なモノなのだろうか。

きっと依然までの自分はそんなモノには興味が無かったと思う。
人との繋がりは心の表面を滑っていて、中には入っては来なかったから。
あの日あの時、其処に居た誰か。
ただそれだけの他人。
でも今は何処か不安を感じる。
みんなの中に、自分が在って欲しいと願ってしまう。

「どうしたの?亜美」
「亜美ちゃん?」

親友2人の問いかけに、意を新たに背筋を伸ばす。

「うん。実はわた「川嶋ーーーー!!」し・・って?なに??」
519G/W:2009/05/02(土) 04:00:17 ID:EXLmeH6F
全員がが振り返ると、ソコにはけたたましくドアを開け放った竜司がが立っていた。

「りゅ!竜児!!??」
「ほぇ?高須君??」

大河や櫛枝だけじゃない。クラスの皆が驚いた。
本来高須は目立つ事を嫌う。
その彼が何故?と

「確認しとくぞ?聞こえるか!聞いているか!!川嶋!川嶋亜美!!!」

「え?」

それは一瞬。なにも考えられない。
確かに呼ばれた自分の名前がどこか遠い。

呆然。そんな川嶋を見る級友もどこか呆然。
だが竜児は止まらない。鋭い視線と怒声を抑えず、ゆっくり亜美に近づいていく。
その空気に皆は思わず道を空けた。

「お前何勝手に自己完結してんだよ!何勝手に転校するなんて決めてんだよ!ふざけんじゃぇぞ川嶋ぁ!」
「て!転校ってなんだ高須!」
「え〜〜!何それ!亜美!!」

ソレを聞いてクラスでも亜美に問い詰める者も出る。
どういう事なのか。なんの事なのか?と。
だが亜美は答えず、竜司を見詰める。

「居場所が無いって何だよ!上手く行かないって、一体何を下手打ったってんだよ!お前自身が駄目って言ったって、そんなの関係ねぇんだよ!」
「か!関係ないって」
「お前の意見は聞いてねぇ!上手くなんて行かせる必要もねぇ!たかだか高校生の俺達が、何をどう上手く生きれるってんだ!何を!どうだ!!」
「・・・・それでも!・・・・・私だって!」

既に竜司との距離は手を伸ばせば届く程の距離になる。
竜司の視線と言葉は真っ直ぐに自分に刺さってくるのを感じる。

でも、だからこそ決めた。
今よりも少しだけ・・・・今よりももっと・・・・近付きたいから。

「私だって考えた!いろいろ考えて決めたのよ!高須君にとやかく言われるすじ「足りねぇ!もっと考えやがれ!!」!・・・高」
520G/W:2009/05/02(土) 04:09:14 ID:EXLmeH6F
竜司はその手で亜美の頭を両側から挟み込み、自分の視線に真っ直ぐ亜美の目を向けさせる。
これから先の言葉は、何が何でも真っ直ぐ聞いてもらう、と。

「上手く行かなきゃ俺らに振れ!波風なんて立ててナンボだジャンジャン立てろ!お前に考え付く事なんて知れてんだよ!せめて皆で答え合わせ位してみろよ!
居場所が無いなんて言わせねぇぞ?仮に無いなら入り込め!それが嫌なら創り出せ!出来なきゃ独りでポツンと立ってろ。俺が幾らでも連れて来てやる!
いいか!お前の居場所なんか幾らでも造ってやる!何処にだって在る!例えその全部が無くなったって、お前の居場所は絶対在る!!

ココが!!!」

竜司は思い切り亜美を抱きしめて、叫んだ。
いつの間にか、涙を流している川嶋亜美を包み込んで・・・

「高須竜司が!お前の居場所だ!!」

全ての音が消えた様な空間で、ただ抱きしめられていた亜美の手がおずおずと、だがしっかりと竜司の背中に回され、竜司は確かに声を上げた


「俺はお前を!お前の事を








521G/W:2009/05/02(土) 04:10:44 ID:EXLmeH6F
「じゃあね!行って来ます!」
「ああ!父さんも後で行くから、気を付けて行くんだぞ!」
「は〜〜い」

うん。まさに晴天!
今日は私達の卒業式。
色々あった3年間。きっとこの高校生活は私にとっての生涯の思い出になるのだろうと思う。
3年通ったこの通学コースも、今日で最期なのかと思うと、感慨もひとしおだ。

「おっはよーー!奈々子ぉ!!」
「!!おはよ。麻耶」

麻耶とはきっと生涯を通じての親友になると思う。
もちろん、先の事なんて分からないし、私達だって喧嘩とか一杯するんだと思う。
でもきっと、最期には親友って呼べる。そんな存在に私達は為れると信じている。

「いよいよだね〜。なんかあっと言うまだったよね。高校生活もさ」
「そうね。でも楽しかったわ。私は」
「うん・・・・私も。でもなぁ、折角なんだし、彼氏くらい欲しかったよねぇ。花の女子高生時代にさ」
「ふふ。それもそうね」

結局私達には特定の彼氏と云う存在は居なかった。
結構モテたんだけどね?ホントよ?
でも麻耶には色々と上手くは行かないモノばかりだったよね?心配したんだけどな、私もさ。

3年に進級して、麻耶はまるお君に告白したけど、結果はある意味予想通りで、麻耶がまるお君と付き合う事は無かった。
もちろん、たった一度の断りで引き下がってしまった麻耶に言いたい事も有ったけど、それでも麻耶が決めた事だから私は何も言わない事にした。
その後、なんか能登君と色々あったり、高須君も絡んだりで、結構ドタバタも有ったけど、それはそれで良い思い出なのかも知れない。



「おっす!二人共!」
「おはよ〜〜」

そんな私達に掛かるこの声は

「能登君、春田君」
「おはよ」

彼ら二人と私達は同じ私立大学に進学を決めた。
522G/W:2009/05/02(土) 04:11:53 ID:EXLmeH6F
春田君に関してはまたまた裏口入学の噂が囁かれる程だったけど、まぁその噂も、多分私だけが気付いてるもう一つの真実でなんとなく私は納得してる。
ほんと、春田君ってば2年の時にもなんか年上の彼女が居たみたいだし、その筋のキラーなのかしら?

私が知っている秘密は、春田君と恋ヶ窪先生が付き合っている事。

3年に入ってから成績が急カーブで上がって行った時には驚いたけど、この事実に気が付いた時の驚きに比べたら雲泥の差だったわね。

ほんと、不思議。

手のかかる生徒は可愛いってホントかしら?
教師に為るのだけは辞めておこう。なにがあっても。

能登君と麻耶はどこかまだぎこちない。
まぁ色々有ったし、まだしっくりはいかないのかも。
でも同じ大学に進むんだし、二人の気持ちもそれとなく向き合ってるから、そう遠く無い日には二人が恋人関係になる事は、私の穿った予想ではないと思うんだよね。
良いと思うよ?私はね。







「お!来たな!お前たち」

卒業式を控えて、どこかそわそわしてる教室に入るとまるお君が話し掛けて来た。

「おはよ、まるお!」
「おはよぉ」
「おっす!北村!」
「ぉい〜〜す!」

まる・・・北村君には本当に世話になった。まぁなんだかんだで、私達に近い男子の中で、私が一番話したのは彼なのかも知れないな。
523G/W:2009/05/02(土) 04:13:14 ID:EXLmeH6F
彼は国立の大学に合格して、これから先、宇宙工学を学ぶらしい。
きっと気持ちはアメリカに向かっているのだと思う。
家庭の事情でアメリカ留学が出来なくなって、それでも尚、アノ人の事を思い続ける事が出来る。
北村君は本当に強いと思った。
それは何者にも替えがたくて、だから一回の断りであきらめた麻耶には、やっぱり北村君は駄目だったんだと思わせてくれた。
これほど強い想いを持つ人に向き合いたいなら、自分もまた、それ程の想いを持つべきだと思ったから。










「おいぃぃぃっす!皆の衆!」

「あ!実乃梨ぃ!」
「実乃梨ちゃん、おはよぉ」

いつも元気一杯の櫛枝実乃梨ちゃん。でも今、彼女は多分この学校で1・2を争う有名人。

「おお!櫛枝じゃないか。来れたんだな、卒業式」
「モチのロンだぜ旦那!一世一代の晴れ舞台!何があっても出らいでか!」

彼女はいまや時の人だった。
女子ソフトボールの日本代表の強化合宿にたった一人の高校生として呼ばれ、2年後のオリンピックに向けた日本代表の有力選手になってる。
大学は東京の体育大学に推薦が決まっているし、もう殆んど試験は免除みたいなものね。
校門の前のマスコミも彼女を目当てで集まってくる人達も多い。

彼女って可愛い。

その事にウチの学校の男共が気付いたのは彼女がテレビに映るようになってからと云うのが、なんとも間抜けな話だと思う。
まぁ彼女の奇行はいまだに変わって居ないけど、私はそんな彼女も嫌いじゃない。
今では結構気さくに話しが出来る親友の一人。
ほんと、私の親友には有名人が多いのね。
実乃梨以上にマスコミの注目を集めているのも私の親友ですもの。もちろん!
524G/W:2009/05/02(土) 04:14:18 ID:EXLmeH6F
「おっはよーー!みんな!」

そう。川嶋亜美。

「おはよ!亜美」
「亜美ちゃん、おはよう」
「おはよーー!あーーみん!!」


彼女はこの1年で一層その魅力に磨きが掛かったと思う。
もう、美少女ではなくて美女の域。偶に一緒に温泉とかジムとか行くけど・・・・・色々と自信を無くしそう。
でも、彼女は私達の前ではただの同級生。ただの女子高生。

そして、大事な親友。

きっと彼女がこの学校に来なかったら、私の高校生活も、こんなに充実したモノには成らなかったと思う。
出会えてよかったよ。私は。
彼女は今ではモデルだけではなく、ドラマやバラエティ、映画なんかにも出てる、もう立派なスター。
大学には本人は行くつもりだったみたいだけど、現状はそれを許さないみたい。
実際、こうして学校に顔を出すのも最近では稀になってきている。
それだけ忙しくて良い事なんだろうけど、やっぱり少しさびしい。
これから先、大学生と社会人。私達の付き合いも疎遠になりがちに成るだろう。
彼女はそんな事関係ないって言った。私達は変わらないって。
信じたい。いまはそれしか言えない。


ほんと。この学校は楽しかった。
そして、特に2・3年の時が・・・・そう。あの2人に逢ったから・・・・・噂をすれば






「おう!?皆来てるな」
「だから急ごうって言ったのに!この駄犬!」
「おま!大体何度も起こしたのに起きなかったのはお「みっのり〜〜ん!!」聞けよ!!」

毎度お馴染み、手乗りタイガーこと逢坂大河とヤンキー高須こと高須竜司。
525G/W:2009/05/02(土) 04:16:24 ID:EXLmeH6F
大橋高校の2大番長は、私にすばらしい思い出をくれた2人だ

逢坂さんと高須君は北村君と同じ国立大学に進学が決まった。
逢坂さんは3年になった時に、再び北村君に告白して、また玉砕していた。
でも彼女は諦めない。
まだ自分は出来る精一杯をしていないからって、いつか言っていたのが忘れられない。
麻耶には悪いけど、きっと、もしかしたら、北村君が振り向くのはこんな人なんだと思った。

精一杯、全身全霊で。

ただそれだけのことが、私達には出来ない。
それを苦もなくやってのける逢坂さんは、本当にすごいと思う。
もしそれが実らなかったとしたら?
きっと彼女は後悔はしないだろう。それほどまでに、彼女は精一杯出し尽くすと思うから。
その強さを持てない私達は、少しづつ傷ついて、それでも進んでいく。
それしか、彼女達に追いつける術は無いのだから。

逢坂さんの事を逢坂さんと呼べるのは、もうあと僅かな時間しか無いだろう。
彼女は卒業後、晴れて正式に、高須家に養子縁組となり、高須大河となる。
すでにもう一緒に暮らしている。
住居はもともと逢坂さんお家だった高級マンション。
逢坂さんのお父さんが何故か訴えられたり、挙句捕まったり、お母さんも彼女の処遇で悩んでいるところに高須君のお母さんが直談判したようだ。
慰謝料代わり、なのだろうか。
逢坂さんは、高級マンションと家財道具付きで高須家に即決で引き渡された。
猫や犬じゃ有るまいし!そうも思ったけど高須君や逢坂さんは一向に気にした風もなくて、儲け儲け!ってな感じ。
きっと3人の中ではどうでも良い事なのね。
家族がいれば、もうそれで良いんだと思った。


「竜司!!」
「あん?」
「これ!!バカチーにとられた!!」
「おまえ・・・」
「ちょ!何ヒトの所為にしてんのよチビトラ!大体あんたが」
「うるさいバカチー!あんたがさっさと」

いつもいつもの事だ。
こんな時は決まって

「分かったから騒ぐな。ボタンぐらいすぐ付く。いいから上着を脱げ」
「うう・・・間に合う?もうすぐ卒」
「大丈夫だ。お前は櫛枝のところへでも行ってろ。今日の打ち上げ、誘うんだろ?」
「!そうだった!!ねーー!みのりーーん!!」

逢坂さんはボタンの取れた上着を高須君に預けて実乃梨ちゃんの処に飛んでいった。
高須君はやれやれと言った感じで裁縫道具を取り出していた。
きっと彼の事だ。ドジな逢坂さんが何をやらかしても云い様に、様々な準備をしているのだろうと思う。
526G/W:2009/05/02(土) 04:18:04 ID:EXLmeH6F
今にして思う。

私達の中心には、いつも彼が居た。

逢坂さん、北村君、亜美ちゃん、そして麻耶や能登君。
そりゃいつも楽しい事ばかりじゃない。正直、しんどい事も多々あった。
それをひっくるめて、私は彼に出会えてよかったと思う。
本当に、良かった。

あの日、彼ははっきり言った。私達の目の前で




「俺はお前を!お前の事を誰よりも愛してる!!」




本当に今まで色々有った。
そして今、彼の横には

「ほんと、アイツには甘いんだから。竜司は」
「仕方ないだろ?ボタン取れたままじゃ」
「私もボタンとっちゃおーかなーー」
「分かったから抱きつくなよ。針持ってんだから危ないだろ?亜美」

ごろごろと子猫の様に纏わり付く亜美ちゃんをたしなめながら、それでも穏やかに笑みをこぼす高須君。
喧嘩したり、家出したり、やきもち焼いたり、一回なんか別れたり。
ほんと、彼らには色々あったし、それはもちろん、私達を含めて、まさに青春って感じだった。
亜美ちゃんはモデルを辞めるか芸能界に本腰入れるかで大騒ぎもあったし、なにより高須君。
彼と麻耶・・・関係持っちゃったしね。ホント、修羅場を見たわね、アレは。
男女の愛憎、男の友情、女の友情
青春ってより昼メロ?
でもま!なにも無いよりは刺激が有った方が良いと思うわ。終わりよければ、ね?


「そうそう!式にはパパとママも来てるから。後で竜司に話したい事もあるから時間取ってくれって」
「マジかよ」
「あらぁ?亜美ちゃんの家族に会いたくないの〜〜?」
「いや、別に嫌って訳じゃないんだけどな〜・・・・亜美の親父さん、すぐ決闘とか言い出すし・・・お袋さんは俺を芸能界に入れようとするし・・・苦手なんだよ」
「あははは。いいじゃない。やりなよ、役者。むいてると思うけどな〜」
「ヤクザ役か?」
「そうそう。なんか日に日に大人っぽくなってくしさ。竜司、どんどん恐顔になってくでしょ。まさに天職よ」
「お前な〜・・・ほんと、どうしてお前は俺を傷つけるような事をポンポンと」
「ふふふ。どうしてかって?それはね、亜美ちゃんが幸せだからだよ・・・・・竜司と居れて」
527G/W:2009/05/02(土) 04:18:54 ID:EXLmeH6F
ほんと、最期まで私の高校生活に花を添えるのはこの高須竜司君。
さぁて。
私は卒業式が終わった後に考えている作戦を思うと思わず笑みがこぼれる。
状況良し。現状確認。
タイミングは皆の注目を集める時に。
誰の目にも分かる様に。

高須竜司の第2ボタンを貰う。

実はすでに高須君にはこっそりと了承を貰っている。ほんとに彼はそういった事に鈍い。あっさりと了承してくれた。
まぁ、ただの記念だから!といった私の言葉に、軽く同調したに過ぎないけど。
ま、皆の前で私が要求するとも思って無いんでしょうけど、私は皆の前で要求する。きっと彼は首を傾げながらもその場で引きちぎって渡してくれる。
ごめんね。その後との喧騒が目に浮かぶんだけど・・・・許してね?



たった一つの、大事な私の初恋だもの。


その恋を、打ち明ける事も出来ない弱い私に捧げる






これは賑やかな・・・・・レクイエム。




終わり
528名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 04:23:47 ID:uZVQZhfZ
なんかGJなのキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

これは平行世界の竜司のことだから修羅場が多いSSでも安心。

しかし奈々子様ならば、奈々子様ならきっと最後に竜司を掻っ攫ってくれるに相違ない。
529名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 05:57:13 ID:nPGy6EZ+
大河が養子となると竜児と大河は兄妹(姉弟)?
で、竜児と亜美が婚約
でもその前に竜児が麻耶と浮気済み
春田が瀬奈さんと別れて独神と恋仲

なにこの昼ドラ!wwww
530名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 06:34:12 ID:s51Ne+DL
人間関係ドロドロの筈なのになんか爽やかだこいつらー!
後半辺りから竜児が竜司になってましたな
531名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 07:26:05 ID:0ppCi3Mn
GJ!
この展開は予想できなかったw
532名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 07:32:23 ID:FvRW8XuI
>>527
有りそうでなかった、3人とも思いを遂げるハッピーエンド。
最後に奈々子様で締めたのが秀逸です。
こちらの亜美ママは、普通にいいママですねぇ。 うちのひねくれ者とは大違いだw
とっても面白かったです。GJ!
533名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 08:42:13 ID:LooeQhtX
GJ…なんだが、とりあえずsageないか?
534名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 09:14:38 ID:toUxDpDB
GJキタ━━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

破壊力バツグンだぜぇ〜
535名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 12:03:02 ID:b1rFON1B
亜美に説教する竜児が某イマジンブレイカーみたいなんだがw
とりあえずその昼メロの麻耶×ドラについて詳しくお願いしたい
536名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 12:23:16 ID:ej67JXqu
>>504-527
GJ! あ〜みんを引き止めるところで、竜児がなんか上条さん化しててワロタ。
>>525の、「慰謝料がわり」というのが、誰に向かって、何に対しての慰謝料なのかよくわかんないけど、
ダイナミックな構成で面白かった。ホントに処女作かい?
537名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 16:12:48 ID:toUxDpDB
もう429だな。。。
538名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 18:26:38 ID:ouhuYH5r
GJ かなり面白かったぜ
でもあの竜児の告白の仕方は、既に亜美に好かれてるの自覚してないと
できない方法だよな

539 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:32:36 ID:DisHX8W4
皆さんこんばんは。
[伝えたい言葉]
の続きが完成したので投下させて頂きに来ました。
前回の感想を下さった方々、まとめの管理人さんありがとうございます。
今回から少しの間、竜児視点です。
エロは今回は無し。
では次レスから投下します。

540 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:33:59 ID:DisHX8W4
人を好きになるってのは、凄く暖くて気持ち良い事だ。
同時に、凄く辛くて切ない事。
俺は17歳の冬…それを嫌って程思い知った……。

[伝えたい言葉(7)]

恋をした。
そして一年以上想い続けて、失恋…端的に言うならフラれた。
いや、フラれた…じゃねぇ。
あれは…牽制だった。
櫛枝実乃梨…。
好きで焦がれて…段々と仲良くなれて舞い上がって、想いを告げようとしたら……叩き落とされた。
『私を好きにならないで…』
と、遠回しに言われた。
その直後から体調を崩して、しばらくの間は忘れる事が出来た。
胸の中に残った失恋の痛みを。
冬休みの間は…そんな感じだった。
でも、体調が日増しに良くなり、聖夜祭の夜の事を考える余裕が出て来ると……駄目だった。
自分の何かが悪かったのかもしれない…。
櫛枝は俺の事を…友達以上には見てなかった…。
他に好きな奴が居るんじゃないか。
そんな事ばかり考えて…墜ちていく。
正直参っていた。
翌日からは学校。
櫛枝とまともに接する為の準備…心構えなんか出来ず終い。
最終日は、ほぼ自室に籠っていただけ…。
そんな時だった。
川嶋亜美がやって来たのは……。

541 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:35:17 ID:DisHX8W4
.
俺は川嶋と寝てしまった…。それも二度も。
最初の一度目は彼女の『初めて』を奪ってしまった。
そして、二度目は前夜の事。
失恋の辛い胸の内を彼女に告げたら、同情したのか…優しく包んでくれて……誘われるままに再び寝てしまった。
彼女が簡単に身体を許す様な奴では無いと俺は思う。
川嶋は俺の事を好きだと言っていた。
行動、言動。それらからも、それが偽りの無い事実だと分かっている。
行為を通して彼女は俺から『辛い事』を忘れさせ、癒して、包んでくれた。
そして気付いた。
情は情でも『同情』では無く『愛情』を持って接して、身体を許したんだと…。
そう理解した時には、彼女に…恋心が芽生えている自分が居た。
俺の心は川嶋に傾いていく。
彼女達を天秤に掛ける訳では無い。でも……。
好きになるなら……自分を見てくれる奴の方が良いに決まってる。
もう傷付きたくなんか無い……。
でも、櫛枝に告白して半月も経ってねぇ。良いのか俺?それでよう…。
現実逃避…。
結局は色々な事から逃げたくて川嶋に縋っているだけ…かもな。
と…昨晩、川嶋が帰った後からずっと自問自答している…。

542 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:36:19 ID:DisHX8W4
『……協力させてよ。明日から放課後は亜美ちゃんと一緒に居よう?』
それは彼女を抱いた後、微笑んで頬を優しく撫でながら言ってくれた言葉…。
『一緒に居て考えよう』
とも…言ってくれた。
俺はその優しさに救われている。
いや、昨日の今日だけどさ…。
だって肝心の大河は相手してくれねぇし……川嶋の言う事のストレートさの方が救われる。
とにかく、もう少し考えて…決めよう。
川嶋が言ってたように。
そう考えをひとまず纏めて間も無く、俺はまた墜ちてしまった…。
通学路で少し髪の短くなった『いつもの櫛枝』に逢って…
眩しい筈なのに…何でか心がズキズキして……シカトしちまった。
そして教室で
『櫛枝失恋!』
とか煽られても動じてなんか無くて…ああ、そういう事なんだって…。
彼女にとっては蚊に噛まれた様なもんだったんだ…俺からの告白なんて。
『ちょっと仲良くしてたら、何でか惚れられてたんだぜぇ?
ありえねぇし』
って言われている様な気持ちになった…。
クソッ…被害妄想もいいとこだ。
櫛枝は『幽霊』が見えなかった…それだけなのに。
そう、ちゃんと言ってたじゃねぇか。


543 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:37:06 ID:DisHX8W4
俺は自己嫌悪に陥る。
噛み締めた唇から口内に伝わる血の味…。
居た堪れなくなり、逃げる様にして向かう先は自販機の前。
きっと『そこ』に彼女は居る筈だから…。
こんな情けない俺を叱咤してくれる奴が…。
だが…そこにまだ川嶋は居なかった。
俺は彼女の『隙間』に入って待つ。
母親の帰りを待つ子供みたいに…。
無性に逢いたくて仕方無かった。
「おはよう高須く〜ん。ところで、そこは私の"隙間"なんだけどぉ〜」
ホームルーム開始十分前。そう言って川嶋は現われた。
「…おぅ」
俺の目の前に屈んで、ニッコリ笑う川嶋を見やって呟いた。
いつだったか、今と同じ様な状況があったな。
「どうしたのよ?こんな所で……、あ〜、もしかして…」
彼女の顔が鼻先数cmまで近付く。
傾げられた顔、艶のある唇、そして甘く爽やかな香水の匂い。
「……ズキズキなんだ?
ピカピカ太陽な実乃梨ちゃんを見て、ここに避難して来たって感じ?」
「…ちげぇよ。この隙間に誘われただけだ。
…埃を取ってくれと轟き叫んでるんだよ」
図星を突かれた俺は、つい言い訳じみた反論をしてしまう。
阿呆だ…。

544 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:38:13 ID:DisHX8W4
「何よソレ。ま、いいや。ほら…」
そう言ってクスッと一回笑い、手を差し延べられて手を掴まれた。
そのまま引き上げられ、川嶋が俺を上目遣いに見ながら
「頑張れっ」
と、俺の胸にコツンと軽く拳を押し当てて、簡潔に結ぶ。
俺の付け焼き刃な言い訳なんて見透かされている訳だ。
たった一言。だけど気持ちは目一杯詰まったエール。
それを受け取ったら『頑張る』しか無い………いや『頑張れる』
でも、それって何を『頑張ろう』としているんだろうな?
……わからねぇ。
.
大河からの無言の圧力を背中に受けつつ、何とか全ての授業を終えた。
櫛枝に声を掛けるどころか、目すら合わせれずに一日を終えた訳だ。
『頑張れ』なかった。
このまま時だけが過ぎて二年生が終わって、気が付いたら卒業とかに成りかねない。
やっぱり気まずいだろ…。
お互いに…。
いっその事さ、櫛枝が望んでいるであろう『友人』から『親友の部活仲間』に戻って、疎遠になって……。
つまり自然消滅……それが最善の関係なんだろうか?
そう考えを巡らせていたら、川嶋が俺の横に来て身を屈める。
「ねぇ高須君」


545 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:39:22 ID:DisHX8W4
「おぅ。どうした?」
そう問うと、彼女が辺りをチラッと見渡した後、こう囁く。
「…帰ろう?」
そうだった。今日から川嶋と…一緒に過ごすんだよな。
あ…飯とかどうするんだろうか。
「うちで晩飯食っていくか?」
すると彼女が破顔し、嬉しそうに返してくれる。
「良いの?ほらお母さんも居るんじゃ…」
「泰子は付き合いで外で飯食ってから仕事なんだとよ。だから心配しなくても良いぞ」
泰子が居たんじゃ川嶋も気を使うだろう。
だから、彼女が全てを言い切る前に遮る様にして言った。
「そっかぁ。うん、居ないんだ…へぇ」
残念そうだけど嬉しそう。
そんな相反する表情を浮かべた川嶋を見て、思わず口元が弛む。
器用な奴…。
そういや近頃の川嶋って素直だよな。
気持ちを隠さずにぶつけてくる…様な気がする。
俺も、もっと早く彼女みたいに行動が出来たら…結果は違ったのかも知れない。
もう望みは無いのだろう…多分。
櫛枝は…幽霊もUFOも見えなくなって、ツチノコなんか捜さなくても良くなったんだから…。
それが俺の勘違いなら、どんなに良かった事だろう。
でもそう考えて何故か違和感を覚えた。

546 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:41:02 ID:DisHX8W4
本心では
『これで良かった』
って、思ってしまう自分への違和感。
やっぱり…俺は川嶋に惚れてしまっているんだろうな。
それも辛い時に優しくして貰って…とか単純な理由。
だけど、それが何より嬉しくて川嶋の事が気になっているのは事実だ。
誰かに慰めて欲しくて、聞いて貰いたくて、優しくしてもらいたい。
そんな時に側に居てくれているのは、大河でも櫛枝でも無く…川嶋だから……。
脈が無いと分かってしまって早々、心変わりしてしまった自分を認めたくはない。
けど認める以外に進む道は無い。
「おぅ。狩野屋に寄って買い物して帰ろう」
櫛枝との事を応援してくれている大河には申し訳無いけど…いつか説明しよう。
今は話す勇気は無い。
「うん!」
そして微笑む彼女の顔を見ながら、思考を切り替える。
川嶋と一緒に歩むには、どうしたら良いのか………。
そうだ、自分が出来る限りの方法を試してみよう。
何でも良い。
川嶋に言われるままに甘えてみる…とか。
「…高須君。ねぇったら」
「ん…、お、おぅっ!」
そんな事を考えながら歩いている内に、狩野屋の前を通り越してしまっていた。

547 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:42:07 ID:DisHX8W4
「あ、そうだ。亜美ちゃん買いたい物があるんだ〜。ちょっと行ってくるよ」
そう言って、来た道を戻っていく彼女を見送り、俺は店内に入る。
うん。今日はロールキャベツだな…キャベツが安いし。
今朝の広告のセール品を思い出し、生鮮コーナーに向かう。
渇いた唇を舌舐めずりし、目の前の棚に群らがる主婦や主夫達の中に割って入る。
押し合いへし合いする彼等も、今日ばかりは俺を見ても絶対引かない。
ここは戦場なのだ。
古参兵な主婦に至っては、俺みたいな一兵卒等は怖くないと手に取ったキャベツすら奪っていく。
何せ普段より百円以上も安い、店にとっては赤字覚悟の出血大サービス。
俺は熾烈な乱戦の中で、ただひたすらに目に付いたキャベツを手に取っては吟味し、次の獲物を定める。
この殺気立った状況に恐慌状態になった若い新兵が、その場から逃げ出す様を横目で見つつとうとう付けた。
鮮度、重量、そして一番重要な身の詰まり具合…。
それが合格ラインを越え、かつ、高水準な獲物を…。
痛めたら最後、こんな上物はなかなか無い。
慎重に手に取って俺は古参兵に奪われない様に強く抱く。


548 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:43:19 ID:DisHX8W4
その様子を見て突貫してくる敵兵を躱し、
買い物カゴに入れてしまえば俺の勝ちである。
至高のキャベツを得て、新たな戦場へと旅立つ。
合挽肉…これを手に入れなければならない。
玉葱、パン粉、タマゴは冷蔵庫に有った。
後は…。
.
「…で、亜美ちゃんは一時間近くも待惚けを食らっていたんだぁ」
「…すまん。ついつい他の物も目に付いて…」
会計を済ませて恍惚感に包まれながらマイバッグに戦利品を詰め込んでいると、川嶋が非難の目を向けてきた。
曰く一時間近く待っていたらしい。
店の中でも入れ違いになって合流出来なかったとか。
俺は低身低頭で謝り、説明に始終したのだった。
「まぁ良いよ。待惚けの埋め合わせしてくれたら」
少しだけ頬を緩めた彼女がそう言う。
「埋め合わせ、な。出来る範囲なら何でもするぞ」
川嶋の機嫌が治るなら…。
そういう意味を含ませて俺は『埋め合わせ』の内容を問う。
「ん〜…、何にしようかなぁ。う〜ん」
下唇に人差し指をあてがい、考える姿に一瞬だけ目が奪われる。
グロスで艶の増した、煽情的な桃色の唇…。
昨夜、貪った彼女の唇の味を思い出して、俺は堪らなくなる。

549 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:44:14 ID:DisHX8W4
と、同時に深い自己嫌悪に陥る。
川嶋の事を無意識に『そういう目』で見てしまった自分を殴りたい気持ちになってくるのだ。
だけど考えるのも無理は無いだろう。
情深く包んでくれた川嶋を…
そして俺の身体の下で汗ばんだ肢体を寄せてしがみつく姿を覚えてしまっているから…。
蕩け、憂いを帯びた切ない表情で甘く喘いでいた事や、
熱く受け入れてくれる彼女自身の『味』『匂い』…それ以外にも沢山有る。
『川嶋亜美』を身体と脳裏に刻まれて、気を抜くと思い出してしまう。
「…じゃあ美味しい晩ご飯を食べさせて」
優しく微笑んだ彼女が、唇に当てていた人差し指で俺の鼻をつついて囁く。
鼻先に口付けされた様な気分になってドキッとしてしまう。
頬が、耳が、顔全体が熱く熱を帯びていく…。
「おぅっ!任せとけ!絶対に満足する飯を作ってやるよ!」
照れ隠しにグッと拳を握って、目の前でガッツポーズしながら彼女に告げる。
「あは♪期待しちゃうわよ?」
元通りの明るい顔で川嶋が続ける。
「じゃあ急ごう?私、お腹減っちゃった。誰かさんのせいで」
悪戯っぽい上目遣いで見詰められ、手を差し出される。

550 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:45:27 ID:DisHX8W4
「…バッグ、半分持ってあげる」
と、言われてもマイバッグは一つだけだ。
まさか鞄でも持ってくれるのか?
「そうか、じゃあ頼む」
そう思った俺は鞄を川嶋に渡……そうとして阻まれる。
「それじゃなくて、こっちだよ」
と、彼女が笑いながらマイバッグの持ち手を片方掴む。
つまり、残った片方を持てという事だ。
これって歩きにくいんだな。
互いの歩幅を合わせて並んで歩く訳だから。
間隔を開けて歩くのは難しい。
だから必然と寄り添う様になるのだ。
互いに一言も発せず黙々と歩を進める。
何と言えば良いのか……照れる。
傍目から見たら、恋人同士が仲良く帰っているみたいに写るだろう。
スタイルの良い美人と目付きの鋭いガラの悪い男…のカップル。
必然と目立っている。
それを川嶋も感じているのだろう。
少し俯き加減で歩いている。
…こういうのって良いな。
川嶋と……いつか、こうやって歩きたい。
ふと、そう想った。
こんな袋なんか介さずに直接手を握って……って。
そこで櫛枝の名前が出て来なくなっている自分が少し悲しい。
一度想い始めたら、凄い勢いで惹かれているんだと自覚する。


551 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:46:31 ID:DisHX8W4
歩みに合わせて揺れ、街頭を反射してキラキラと輝く彼女の艶髪。
吐く息は白く流れていく。
微かに赤みが差した頬。
…綺麗だ。
意識すると体温が上がり、マイバッグを持つ手が汗ばむ。
…今更だけど緊張している。
影が重なって一緒に溶ける様すら堪らなく愛しい。
もし…俺が恋人になりたいと望んだら川嶋は…良い返事をくれるのだろうか。
多分、即答で了承してくれて晴れて恋人同士になれる筈。
でも、それだって100%では無い。
俺は自身が惚れやすい性格なのかも、と疑ってしまっている。
仮の話、優しくして貰えたら他の娘でも、恋をしてしまうのかも知れない。
偏見無しで受け入れてくれて、自分と正反対な性格の櫛枝に恋"していた"ように……。
進行形では無く過去形……になっちまったんだな、櫛枝との事。
だから自信が持てない…。
川嶋がそれを察したら断られるかもしれない。
…それが一番怖い。
そりゃあ『もし』とか『かも』なんて仮定の話を想像しても意味が無いかもな。
でも、俺は臆病になっている。
また痛い目を見たら、立ち上がれ無いだろう。
『結局は恋愛"ゴッコ"じゃん』
とか嘲笑られたら…。

552 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:47:32 ID:DisHX8W4
俺は擬似恋愛…しているのか。
いや違う。しっかりと恋している。
あ、そういえば川嶋が言っていたよな。
『焦ったら…後悔するかもよ?いっぱい悩んで、考えて、試してみて…さ。
時間が掛かっても見付けれたら、その時に決めなよ』
と…。
絶対に見付けてやる。
この感情を一時だけのものにしたく無い。
出来るなら…永く、ずっと…こうして…。
そう想えたら、ちょっとだけ心が軽くなった。
今朝、川嶋から貰った
『頑張れっ』
は、自分に自信が持てる様に……迷い無く、川嶋に想いを告げる為に使おう。
「着いた」
「着いちゃったね」
時間が経つのは早い。
この甘い一時の名残惜しさからか、俺達は同時に呟いてしまう。
彼女も残念そうだから…恐らく、俺と同じ事を想っていたのだろう。
だが終わりでは無く始まりで、バラバラな歯車が一つハマった訳だ。
『一緒に買い物して家まで帰って来ただけ』
たったそれだけで大きく前進した。
川嶋ってすげぇよ。
今までの俺なら一年掛かりで進んだ道を、僅か数時間で進めてしまったのだから。
彼女を居間に通して、俺は早速夕飯の準備に掛かる。

553 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:48:35 ID:DisHX8W4
川嶋の為に存分に力を奮って、美味いと言わせたいから…。
.
「高須君さ、ちょっとだけ優しい顔付きになったよね」
それは晩飯を食い終わって、しばらくしてだった。
二人で何をする訳でも無く並んで壁にもたれ掛かっていると川嶋がそう言った。
「はあ?…優しい顔付きって、俺そんなにヤバい表情してたか?」
この鋭い三白眼の事か?
これは生まれつきだ…ほっとけ。
「険しい顔だったんだ、夕方まで。ほら、なんか近寄り難いっていうか」
ああ、そういう事か。
そう言われれば、今日は学校で誰も話し掛けてこなかったな…。
能登や春田すら。
「何て言ったら良いのか、おぅ、少しだけ気分が楽になったんだよ」
俺のちょっとした変化。
それも自分でも気付かない様な、些細な変化を感じ取ってくれる川嶋に驚きつつ、
襖に貼られた桜のパッチを見ながら俺は淡々と呟く。
大河が木刀の切っ先で開けた穴を塞いでいるパッチ…。
剥れ掛かっているソレを見ても、何故か直そうとは思えない。
このまま剥れてしまっても…って、何でだろうな。
今は大河の事は関係無いのに、そう思ってしまった。


554 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:49:21 ID:DisHX8W4
「ふぅ〜ん。そっか、良かったじゃん」
俺の顔を下から覗き込んだ川嶋が優しい笑みを浮かべて、続けて紡ぐ。
「一歩前進したんだ。もう…ズキズキ無くなっちゃった?」
心に負った怪我の痛みは引いたかと問う川嶋に返事を返す。
「いや、まだ痛ぇよ。ズキズキしてる。
でも………川嶋のおかげで楽になってるぞ」
それは隠さずに伝える。
大切な事だからだ。今、彼女に一番教えたい言葉…だから。
「…うん」
川嶋が姿勢を元に戻して恥かしそうに俯いて呟く。
「一人でウジウジ考えているより、こうして居てくれるだけで嬉しいし助かってる
ありがとう」
そう締めた後、一瞬迷って彼女の頭を撫でる。
「うん…、ん」
バカにするなって言われたら、すぐに止めるつもりだった。
でも彼女は気持ち良さそうに俺に撫でられている。
目を閉じて、うっとり…は言い過ぎかもしれん。
でもそう表現するのが正しい…感じがする。
それはそうと、今なら……試せるかも。
川嶋に甘えれる……よな。
昨日みたいに。
その…変な意味じゃなくてな。
甘えさせてくれって言ったら……昨日みたいに優しくしてくれるだろうか。

555 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:50:06 ID:DisHX8W4
「なあ、川嶋。お願いがあるんだ。聞くだけ聞いてみてくれないか」
そう考えると俺の中で火が燻り始める。
だから駄目元でお願いしてみる。
「ん、なに?」
「…膝枕してくれないか」
そう言うと、彼女が微笑んで頷く。
「良いよ……おいで」
足を横に崩してスカートの裾を正し、太股をポンポンと軽く叩いて呼ばれる。
慈愛に満ちた彼女の優しい声に吸い寄せられる。
膝に頭を乗せて、落ち着きの良い部分を探る。
川嶋がくすぐったそうに膝を動かす。
二、三度、後頭部を擦り付けて俺は息を吐く。
柔らかい…それに暖かい。落ち着く…。
目を閉じて、心地良い膝の感触を堪能する。
すると額に暖かい手が当てられ、優しく撫でられる。
「まだ痛くても、いつか絶対に治るから…。
……亜美ちゃんが治してあげる。
いつでもこうやって甘えても良いよ」
そう言ってくれた事が嬉しくて、俺は強く頷く。
こうやって優しく接してくれるだけで……強くなれる気がした。

続く

556 ◆KARsW3gC4M :2009/05/03(日) 01:51:18 ID:DisHX8W4
今回は以上です。
次回はエロ有りなんで勘弁してやってください。
では
ノシ
557名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 01:52:04 ID:7/fUYKgU
もつかれ
558名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 02:24:05 ID:NvxcZn9F
>>556
乙!GJ!!
ダメだ。あ〜みんが可愛すぎる。ニヤニヤして待ってます。
559名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 04:45:30 ID:FQIFWuim
>>556
今までのもよかったですが、今回のは特に素晴らしかったです。
まぁ、こんな娘が近くにいたら普通の男は堕ちる罠w
GJです。
560名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 09:56:03 ID:Ujr/ffPS
エロがなくても問題Nothingだぜ

とにもかくにもGJキタ━━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
561名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 10:59:40 ID:AzMJmBqf
ファイル整理してたらSSが出てきたので、せっかくだし投稿します。
10皿目で投稿した「思春期」の続きで、微エロ注意です。
(竜児がゆめせーするヤツ、で分かる方がいれば幸せです。)

なお、ネタバレ以外の何者でもありませんが、みのドラです。
5621/8:2009/05/03(日) 11:00:53 ID:AzMJmBqf
「――うぉ、北村!?服を脱ぎ出すな!あと、こっち来んな!!」
「高須!!俺はもうダメだ、我慢できん!上半身裸のお前は最高だ!!」
い、息が荒いぞ、気持ち悪ぃ!てゆーか、俺の腕を掴むな!
「はっはっは!さぁ来い、高須。俺はどこからでもお前を受け止める!!」
ふ、ふざけんな!とにかく、離せ!!
「そうか…なら、俺からイクぞ!ほら高須、力を抜け!!」
「うわ、ズボンを脱がすな!や、止めろ、北村!そ、そこだけは……!!」

「アッ――――!……ってあれ?」

…た、確かさっきまで居間で女子連中に尋問されて、挙句にまた迫られて、
その途中、いきなり暴走し出した北村にまた襲われて…
――ゆ、夢、だったのか?俺の貞操はまたしても無事なのか?
ん?「また」って何だ?自分で言ってて訳が分からねぇ。
まさかあんな夢を何回も見てるわけじゃあるまいし…
ま、まぁとにかくだ、北村とはもう二度と関わらないことにしよう。
うん、それで間違いない。

頭を切り替え起き上がる。
そして、最初にズボンとベッドをチェックして、と。
よし、異常なし。…っ何やってんだ、俺。
ゆめせーなんてする訳ねぇだろ、いや、ゆめせーって何だよ。
さっきから意味不明なことばっか頭に浮かんでくるな。大丈夫か、俺――

「竜児ー!!起きろーー!!」

ドンドンと扉を叩く大きな音。そして、大河の声が聞こえてくる。
しまった、もうこんな時間かよ、つか昼!?今日はみんなで勉強会だってのに……
「はい、遅い!入るよー。って、あんたホントに今起きたばっかなの!?この惰眠駄犬!」
バンっとドアを開け、部屋にズカズカ入ってくる。
そして寝間着姿の俺を見るやいなや、さっそく罵ってくる。
「ところで、何で部屋の匂いを嗅いでんだ、お前は。」
「え?…確かに。竜児んちの悪臭なんか嗅いで何したいのよ、私は。遺憾だわ。
そ、それより、さっさと着替えなさいよ。みんなもう来てるから。」

言いたいこと、気になることは色々あるが、とりあえず速攻で着替えて居間へ。
見渡すって程でもない狭い居間を見渡せば、みんな好き好きにまったりしてる。
…ところで、何でウチに集まってるんだ?勉強なら大河の家の方が……
「それはさー、高っちゃんちだったら、疲れた時にゲームとか出来るじゃん?」
「春田。お前、勉強する気ゼロっしょ。」
すかさず能登が突っ込む。全くもって同感だ。
おい、春田。お前の点数底上げも今回の目的の一つだってこと忘れんなよ。
5632/8:2009/05/03(日) 11:02:51 ID:AzMJmBqf
他を見てみると、木原と香推がインコちゃんと戯れ…
「うわっ、何このインコ?チョーキモくない?」
「確かに、個性的な顔ね…」
って、木原!お前、インコちゃんに何てことを!
「むっ、むかっ、む……」
おう、インコちゃんも何か言い返してやれ!
「…無限ループ?」
ダメだ…こりゃ。ていうか、無限ループって何だよ。
「みんなー、静かに勉強するでヤンスよー…」
泰子、そんなはしたない格好でいきなり出てくるな!そのまま寝るな!
おい、北村!はしたないに反応するな!それと、ズボンを脱ぐな、こっち来んな!!
…あぁ、ツッコミが追いつかねぇ!

そんな感じで、本格的に勉強する空気になるまでに結構な時間が掛かった。
ウチで勉強会やるのは失敗だ、どう考えても。

そんな賑やかな状況の中、一人だけ妙に静かなヤツがいることに気付く。
そいつは普段はむしろ、誰よりも賑やかな……
「く、櫛枝。どうかしたか?体調でも悪いのか?」
「……今度こそは負けられねー。」
「は?」
「い、いや!何でもないのだ!わははは…」
明らかに疲れた様子で空笑いする櫛枝。…本当に大丈夫なのか?
「…おい、高須。何でさっきから俺を避けてるんだ?」
北村。お前は俺に近寄るな。頼むから俺の半径500M以内に来ないでくれ。
「はっはっは…そんなこと言うなよ!俺とお前の仲じゃないか!」
うわ、俺と肩を組むな…!は、離れ…

――その時だ。

俺の部屋の方からドンっと、大きな音がした。
北村を振り払い、慌てて自分の部屋に戻る。
そこには……
「は、春田!?おい、大丈夫か…って。お、お前、そ、それ…!」
「ご、ごめん、高っちゃん。マンガ探してたら本が落ちてき……あ。」
転んだのか、春田が痛そうにしりをさすってる。
マンガ探してしりもちをつく?どんな状況だよ…なんてイチイチ気にしない。春田だから。
むしろ問題は、本棚から飛び出した数々の本が散乱していたこと。その中には…

「うっさいわね。なんなのよ…ってりゅ、竜児、ああ、あんた…!?」

本棚に巧妙に隠しておいた、俺の「ひとつなぎの大秘宝」。
…もとい、エッチな本の数々が交じっていた。

俺の次に部屋の様子を見に来た大河が固まって、
それからは例のごとく、他の皆も次々にこの光景を見ては固まっていく。
いや、みんな。違うんだ。こ、これはだな…
5643/8:2009/05/03(日) 11:03:48 ID:AzMJmBqf
「みんな、違うんだ!」

春田がこの期に及んで何か騒ぎ始める。ま、マズイ。こ、この流れは…
「今回は事故で見つかっちったけど、高っちゃんのこの隠し場所は凄ぇんだぞ!
他の本に挟んで隠す!俺、その発想はなかったよー。俺なんかさー…」
春田…お前はやっぱりどうしようもないアホだ。
頼むから、お願いだから黙っててくれ。
「ベッドの下に隠してたら、母親に見つかった」とかいう話を誇らしげに語るアホ。
そんなアホを除く全員が硬直する中、ただ一人。川嶋だけが静かに動き出す。
スタスタと綺麗な歩き方でエロ本のヤマの前へ。
フッと笑ってから、その中の一冊を拾い上げ……お、おい待て!それは…!

「高須くぅ〜ん?こ・れ・は、何かなぁ?」

拾い上げた本から少しだけハミ出していたものを抜き取り、俺に向かって突きつける。
そ、それは…

「わ、私の写真…?」

櫛枝が驚愕の表情を浮かべながら、ポツリと正解を口にする。
…そう。川嶋が掲げたのは、櫛枝の写真。文化祭の写真として合法的に入手したもの。
「こんないかがわしい本に実乃梨ちゃんの写真を挟んでぇ、一体ナニしてたのかなぁ?
亜美ちゃんには分からないから教えてよぉ〜。ねぇ、高須君?」
ニマァ〜と口端を歪めて、すっ呆けた調子で問いかけてくる。
「え?高須君って…?」
「高須、お、お前まさか。まさかだよね……?」
完璧な状況証拠に周りの連中も俺に驚愕の視線を向ける。
えぇい。こうなりゃヤケだ。

「…あぁ、そうだよ!俺は櫛枝のことが好きなんだよ!
一年以上も前からずっと好きだったんだ!だから、だから……
その写真でお…自己処理してたんだよ、文句あるか!?」

――ハッと我に返った時には時すでに遅し。バカ正直に全てを白状していた。

部屋中に沈黙が走る。櫛枝を見るが、俯いていてその表情を窺うことはできない。
が、耳が真っ赤なのははっきり見える。
――凄まじい罪悪感。こんな最悪な告白してどうすんだ?
しかも、夜のおかずに……なんて気持ち悪いだろ。普通。
…嫌われた、櫛枝に嫌われた。もう終わりだ、おしまいだ。
せめて北村に襲われる前に死のう……
5654/8:2009/05/03(日) 11:04:46 ID:AzMJmBqf
「あれぇ〜?私たち、ひょっとしてお邪魔かな〜?
それじゃ〜、お邪魔虫は退散しましょーか?ね、みんな?」
「おい、お前ら何をする!?俺はこの後、高須と…!」
能登と春田が北村をガシっと確保。暴れる北村を二人がかりで引っ張り出す。
そして、他の面々も意味ありげな視線を送った後、俺の家を出ていく。
…な、何がどうなってるのかよく分からねぇけど、とにかく皆ありがとな。
あと、春田。ここに来てお前を見直した。サンキューな。
え?北村?俺はそんなやつ知らねぇぞ。

こうして、櫛枝と居間で二人きりになる。
まずはとにかく謝らなきゃ…な。
「く、櫛枝。」
「ひゃい!?」
…大丈夫か?
「だ、ダイジョーブ、ダイジョーブ!アナタヲぱわーあっぷシテアゲマショー!!」
「…誰だ、お前。」
不可解な言動に思わずツッコミ。いや、今はそんなことより。
「そ、それで…ごめん、本当にごめん!嫌いになった…よな?」
「い、いやー、ど、どう言えば良いか分からないんだけどさ……」
鼻っ頭を軽くかきながら、櫛枝は苦笑いする。

「正直、ホッとした。」

「え?」
な、何がだ?
「高須君が…女の子が好きな人って分かって。」
「…はい?」
「あのね、高須君。私、ずっと…そう、夢を見てたんだ。ずっと。
私と大河とあーみんと…とにかく色んな女の子みんなで高須君を取り合うって夢。」
「そ、そりゃあ…随分な夢だな。現実じゃまず有り得ねぇ。」
思わず苦笑いする。が、櫛枝は真剣さを少し混ぜたような笑顔で俺を見つめ続ける。
「ま、現実的かどうかは別にして。それで、最近やっと私のターンが来るようになってね。
あともう少しで高須君が私のモノになるってこともあったんだ。でも…」
「でも…?」
「…言っちゃって良いのかね?セーブはちゃんと済ませた?」
「いや、セーブはしてないし、嫌な予感しかしねーけど…構わねぇぞ。」
「じゃあ言うぜ?高須君が私のモノになる寸前で、その度に…」
…その度に?
5665/8:2009/05/03(日) 11:06:13 ID:AzMJmBqf
「き、北村君に奪われていたのだぁーー!!」

…想像通りの衝撃の内容に、何も言葉にできない。
「……え?よく分からないって?し、仕方ない。もう少し分かりやすく言えばだね…
高須君が北村君に掘られて射せ…」
「分かった、分かったから!だから頼む、それ以上は言わないでくれ!!」
「いやいや。どうせならその時の情事を事細かに話させてくれよ?」
「お願いします、お願いします!それだけは許してください!」
やっと興奮が収まったのか、むふーと息を吐く櫛枝。
いや、俺と北村の情事なんかで興奮して欲しくないところだが。
「とまぁ、そんな夢を見続けたせいでさ。高須君は男の子が好きって思い込んでた訳だ。
…実際、何だかんだ言って、満更じゃなさそうに見えたしさ。」
いや、それはないから絶対に安心してくれ。んなもん断固拒否する。
「うん。てなわけで、ものすご〜く安心したのだよ。」

「んで、高須君。もうバレバレかもだけどさ、さっきの返事を言わせてくれ。」
さっきの返事……?あぁ、告白のことか。――って、バレバレって……?

「私も高須君のことが好きだ、大好きだ。」
櫛枝はススっと俺の前に来て、そのまま腕を俺の背中に回して密着。
要するに、告白されてそのまま抱きつかれた。
「え?あ…う」
いきなりの状況に言葉が出てこない。そんな俺を尻目に、櫛枝は続ける。
「色んな夢を見て…それで、やっと気付いたんだ。絶対に誰にも譲りたくないって。
でも、気付くのが遅かった。そのせいで、そっから先は……長かった。
本当に、長かったよ。りゅ…高須、君。」
言葉に詰まる櫛枝の背中に手を回して、抱きしめ返す。
どうしようもなく愛しくて、その苦しみを少しでも和らげてやりたいって思ったから。
「竜児って呼んでくれよ。み、実乃梨。」
実乃梨の体。それは温かくて柔らかくて――小さく震えていた。
実乃梨は夢というよりかは、限りなく現実に近い形で苦しんでたんじゃないか。
何となくそんな気がした。

しばらくお互いの感触を確かめ合った後、どちらからともなく離れる。そして。
「え?み、実乃梨?い、いきなり、な、何を……?」
「ナニって…夢の世界の私の敵討ち。悪の根源を絶たないと惨劇は終わらないからね。」
そう言いながら、俺のズボンのチャックを下ろし、息子を器用に取り出して……
5676/8:2009/05/03(日) 11:07:13 ID:AzMJmBqf
「はむっ」

――咥えた。

「おうっ!?」
いきなりの刺激に俺の息子が一気に目覚め、大膨張する。
想い人のいきなりの行為に息子がパニックになり、脳中に限界のアラームが鳴り響く。
いや、さっきまで実乃梨を抱きしめてたわけでだな、実はもともと最高潮だったんだが…

「み、実乃梨!もうダメだ!出ちまう!」
「――っ!!」

――息子が吐き出す精液を実乃梨は全て飲み込む。
力尽きた愚息から口を離し、顔を上げて俺に微笑みかける。
…かと思えば、一気に顔を紅潮させ、バッと俺から距離をとった。
「ご、ごめん!竜児君!ちょっと気が動転しちまって…!ゆ、許せっ!
と、とにかくこれで惨劇はおしまいだ。そ、それじゃあ、おいらはお暇させて頂くぜぃ!」
一気にまくし立て、そのまま帰ろうとする。
「み、実乃梨!」
その腕を掴んで、こちらに抱き寄せる。
「りゅ、竜児君!今のは、惨劇を終わらせるためにどうしても必要なことで、
だ、だから、その、決していやらしい意味じゃなくて…!」
真っ赤な顔で必死に釈明してくる実乃梨を見てると、本能が理性を大きく振り切って…
「悪い、実乃梨。もう抑えられねぇんだ、許してくれ…」
「え?な、何が…――」



「――…ねぇ竜児君。」
蕩けきっていた頬をキュッと引き締めて、ベッドに横たわる俺に寄り添ってくる。
「竜児君も似たような夢を見てたってホント?」
「おう。」
実乃梨が見てた俺が北村に襲われるって夢。
俺もずっと似たような夢を見てた気がするんだ。
「そっか。…思うんだけどさ。私たち二人が似たような、んでもって、
やたらリアルな夢を見てたって事はさ、その夢は実在する異世界だったりするのかな?」
「そうかもな。」
有り得なくはない。確かめる術はないけど。
けど……
5687/8:2009/05/03(日) 11:08:04 ID:AzMJmBqf
「もしそうだとしたら、異世界の俺は北村の餌食になったことになるな…」
考えるだけで恐ろしや。思わず合掌してしまう。
「嫌な…事件だったね。まぁそれは置いといて、あれが異世界だとしたら、
他にももっと色んな世界があるんだろうのかなって。
私、色んな夢でみんなと竜児君を取り合ってたの見たしさ。…どれも負けちゃってたけど。」
実乃梨の視線の先はどこか遠い。
その夢の実乃梨ってのは、ここにいる実乃梨じゃないのか?
…そう思ったが、真相は俺には分からない。

「…ねぇ、竜児君。私達さ、他の世界の私達の分まで幸せにならなきゃじゃない?」
「お、おう。そうだな。」
「だから、さ。……ね?」
耳元に囁きかけてきた甘い声に、再びスイッチが入る。
そのまま、本能の赴くままに実乃梨を抱きしめる。そして――



「――それじゃあね、竜児君。」
「悪いな。遅くまで、その…付き合わせて。」
「ううん、大丈夫。何ちゅーか、まぁその、なんだ…良かったし、さ。」
おう…っそうだ。もう外も暗いし、家まで送ってくぞ。
「おっ。そいつぁ、ありがたいね。二人の愛についてトークしようじゃねぇか、竜児君。」
「おうっ!」

「いってらっしゃ〜い。あ、竜ちゃん、出かけるなら鍵持って行ってねー。」
「おう。分かった…って泰子!?」
泰子が玄関まで出てくる。ひょ、ひょっとして……
「私だけじゃないよぉ〜。ね?インコちゃん?」
「み、実乃梨あ愛してる、竜児君おっきい、いく、いくいくイク…」
い、インコちゃんがそんな生々しい言葉を覚えちまうなんて…
…って俺たちのせいだよな、明らかに。
「ふふ、実乃梨ちゃん。やっちゃん、実乃梨ちゃんのことギザ応援してるからねぇ〜。
竜ちゃんのこと、よろしくねぇ〜。」
「は、はい!お母様!何卒、ご指導ご鞭撻の程、賜りたいと存じて御座いまして……!!」
「そ、早漏!早漏!そそろう!早漏!」
インコちゃん、何て下品な言葉を…!ってゆーか、んなこと言われてねぇぞ!?
569名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 11:08:15 ID:8x+DC6u6
さすが川島さんの本気だ。高須の鈍感さなんてなんとも無いぜ
5708/8:2009/05/03(日) 11:09:22 ID:AzMJmBqf
***

帰り道。薄暗い道を並んで歩く。
…家まで送るって言って正解だったな。最近、色々と物騒だしな。
「――そういえば、竜児君。お昼に言ってたアレって本当なのかね?」
「アレ、とは?」
「え、あー、やー。ほれ、アレだよ、分からんもんかね。」
指をモジモジさせながら、何かを伝えようとしてくる。けど、全くよく分からない。
そもそも、さっきまであんなにアクティブだったのに、何をそんなに恥ずかしがってんだ?
「いや、さっきはさっき。今は今だと思わんかね?んで、アレってのは、そ、その、
私の写真でお、おオn…じゃなくて、じ、自己処理してくれるってヤツ。」
「……おう。本当だ。」
今さら言い訳する必要もないと思って、せめて男らしく堂々と認めることにした。
「そ、そっか。なら、竜児君の自家発電のために今度、私のそーゆー写真を進呈しよう。
…最近は写メっていう便利なツールもあるわけだしね。」
「お、おう。…ど、どう答えりゃいいか分からねぇけど、ありがとな。」
「もちろん、他の本は捨ててね?」
「お、おう……」
実乃梨の凄まじいニッコリの前に、「ひとつなぎの大秘宝」との決別を悟ってしまった。
さらば、俺の日々を支えた英雄たちよ……悲しくない。決して悲しくなんかないぞ。
「うん。それじゃ、ご褒美。」
一方的に唇を押し付けて、
「そんじゃ、ここまでで大丈夫!じゃーまたね!」
薄暗い明かりでもはっきり分かる真っ赤な顔で満面の笑みを振りまいた後、
走り去っていった。

…頬が緩みっぱなしなのが分かる。両手で頬を叩いて、気合入魂。
よし、帰るか。

それにしても、さっきから後ろを尾けられているような――っ!?



――ッ!!


おわれ


以上です。色々とすいません。
それでは、お目汚し失礼しました。
571名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 12:02:10 ID:DTqzYBPl
>>570
GJなのだが、最後ww
勘弁してくれ・・・の展開に吹いた
肝心なシーンは飛ばすんですね、しかし多いにおk
572名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 13:02:42 ID:PrB4LdR0
>>539-556
GJ! 理屈っぽい男と、ひたすら官能的に攻める女の対比が良かった。
二度も身体を許しておきながら、なぜか日陰の女っぽいところが
なんとなく彼女らしくて泣ける。
それにしても、学校の帰りに二人で買い物して家路につくだけのシーンなのに、
なんでこんなに心理描写がエロいんだよ…。

>>561-570
GJ! みのりんとのエッチは、淫らな行為というより親愛の情が込もった
スキンシップという感じ。
さあ、目の前のPCのローカルなファイルをもっともっと公開するんだ。
573名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 13:55:53 ID:NOk/V3Sy
竜児〜!うしろっうしろっ!ケツが危ない、逃げて〜
574名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 16:25:49 ID:DTqzYBPl
嫌な事件だったね・・・
ひぐらしかww
北村こえーよ・・・
575名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 18:07:46 ID:3DeH6PoR
大河に襲われるのかと思ったらktmrかよwww
576名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 21:14:12 ID:groRkQFk
KARsさんの亜美にはもう少しツンデレ成分を追加して欲しい……
とても心優しい亜美は感動的で官能的ですらありますが………
一ファンの希望であります
577名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:33:55 ID:EWSe3Mky
今から、6項程投下します。
578勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:34:50 ID:EWSe3Mky
『結局…高須君は、一度だって、あたしの事、実乃梨ちゃんや、
タイガーみたいには見てくれなかったじゃないッ!!
あたしは…あたしは…あたしだって、好きなんだよ…好きって言いたいんだ。
高須君が好きなんだって…言いたいんだよぉ……』

櫛枝に振られ、いや、振られる事さえ出来ず、自分を見失った俺は、事情を察していた川嶋に当たり散らした。
怒りとエゴをぶちまけ、川嶋を傷つけてしまった。
楔の様に胸に突き刺さるのは、その時の川嶋の言葉。
俺の事が好きだという、川嶋は今までみせた事のない
無防備で今にも壊れそうな表情をしていた。
川嶋の告白が何度も何度もリフレインし、その夜は川嶋の事ばかり考えていた。
そして、夢を見た。川嶋の夢を。
大波で街も家も何もかも流されて無くなってしまって…
波に攫われて底へと沈む俺を川嶋が引っ張り上げてくれて…
夢の中の俺は、川嶋の事が好きで、川嶋も俺の事が好きだった。
『2人一緒に生きていこう。』手を取り合って…そう誓いあった。
朝になって、すぐに罪悪感に苛まされた。
川嶋が俺を好いている事を知った途端に、俺は、櫛枝から川嶋に鞍替えみたいな
そういう真似をするつもりなのか、と。
夢の中の俺は、ただ純粋に川嶋が好きだった。様に思う。
なら、現実の俺は?純粋に川嶋が好きだ、なんていう風には割り切れなかった。
そう思うには、色々、ありすぎた。
けれど、答えは出さなければいけない。
俺は、櫛枝に自分の告白を無かった事にされ、傷ついた。
川嶋に同じ思いをさせる訳にはいかない。川嶋のため…じゃない。俺は、川嶋を傷つけるのが怖かった。
また、川嶋のため…と、川嶋の好意にあぐらをかく様な真似をするのが、もっと怖かったのだ。
ただ、早く答えを出そうにも答えが見つからなかった。
この場合の答えとは、川嶋の告白に対する返事の事を意味する。
すなわち、イエスorノー。川嶋のクローズドクエスチョンに対する返事なのだが…
俺は答えを決めかねていた。あまり、猶予は無い。
学生は学校へ行かなければならない。
579勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:36:08 ID:EWSe3Mky
ほとんど、一番乗りで校門をくぐった俺は、
朝の誰にも踏み荒らされていない、気持ちの良い校庭を通り過ぎ、校舎へと入った。
いつもより早く着いたのは、早足でまっすぐに登校したからだ。
櫛枝と顔を合わせたくなかった。だから、大河も起こさなかった。
それと、一人で考える時間が少しでも欲しかったのだ。
そして、教室に着いた俺の足を、寝不足と喉の渇きとが自販機へ運ばせた。
「げッ…」
「おう…」
こんな朝早くから、自販機に挟まれたソイツは
「マジ、ありえないんですけどぉ。
朝から、今、一番会いたくねぇ奴と…さ・い・あ・く!!
てか、なにその顔!?隈なんか作って…ほとんど、犯罪じゃん!?
亜美ちゃんこわ〜い。」
と、 開口一番、毒づいた。
………そんな表情で毒づかれたって、腹も立たねぇよ。
「悪かったな…夢見が悪かったんだ。あと、お前も隈出来てるぞ。
いつもより、化粧が濃いみてぇだけど、全然隠れてねぇ。」
「はぁ!?夢?
てか亜美ちゃん…隈なんか出来てねぇし。
高須君、目つきだけじゃなくて視力まで悪いんじゃん?」
「川嶋の夢を見た。あと、俺は両眼とも裸眼で1・5以上ある。」
「……あたしの夢?」
「おう。」
「ふぅん。もしかしてぇ〜夢の中で亜美ちゃんに欲情して、
あ〜んな事とか…こ〜んな事とか…したの?」
「おう。」
「おう。て…あ〜ヤダヤダ。
高須君も所詮、単純な男って訳だ?
告白されて、それで…って訳?」
最後の台詞から、川嶋の口調が変わっていくのを、俺は気付いた。
「そうじゃねぇ。…とは、言わない。そうかも知れねぇ。
実際、昨日はお前の事ばかり考えてたんだから。
軽薄だと思うなら、そう思えば良い。
俺だって、我が事ながら、そう思うんだから、なおさらだろ?
はっきり言えば、昨日から俺は川嶋の事が気になっている。」
「なによそれ?同情?ふざけないでよ。
……あたしは、そういうのが嫌だから、無かった事にしようと思ってるのに…
やめてよ…あたしに惨めな思いはさせないで…」
「同情?お前こそふざけんなよッ!!
無かった事に…されてたまるかよッ。
お前に同情なんかしねぇよ。
580勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:38:27 ID:EWSe3Mky
お前みたいな、勝手な奴知らねえ。
わがままで自己中で腹黒で、いつも人を見下した様な態度で、人を取って食った様な事言って…
最後まで、そうするつもりなのかよ?
俺の隣にいてくれよッ同じ地平の同じ道の隣を歩いてくれよッ。
川嶋ぁ〜〜ッ!!お前に居て欲しいだッ。」
悩んでいた答えは、あっさりと出てしまっていた。
「………」
うん。と、頷いた川嶋は、そのまま泣き出してしまった。
猫の様に丸めた背中をさすっていた俺は、下の階からざわざわとした人の気配を感じた。
マズイ。この階に上がってくる…
咄嗟に、泣きじゃくる川嶋を抱えて、俺は、校舎の外へと飛び出した。
−−−そして、今。
「そろそろ、降ろしてくれない?恥ずかしいし…もう立てるから。」
「おう。」
「高須君にお姫様だっこされるなんて…
シュチュ的には最高なんだけど…ね。
また、今度してね?」
復活した川嶋は、いつも通り、俺をからかいだした。
いや、これは川嶋の素直な願望なのかもしれない。
「おう。」
「フフッ。嬉しい。
…けど、良いの?あたしで、ホントに。」
「お前以外にそんな事したら…即、通報モンだろ?」
「もう…そっちじゃないわよ。
隣に居るのは、あたしで良いの?
実乃梨ちゃんやタイガーじゃなくて?
ホントにあたしでよか−−−ッ……ンン……」
………
「良いんだよ。川嶋が。
正直言うと、決めかねてたよ。
けど、勢いで、言っちまった。
あれが、俺の本心って事なんだと思う。
夢に見る位だからな。好きだよ、亜美が。」
「…ズルいよ。こんなの。
やりなおし。もっかい、やりなおし。
ほら、目瞑って……」

二度触れた亜美の唇は、二度とも火傷しそうな位に熱かった。

「ね、りゅ〜じ?これからどうするの?」
「どうするって…あ、学校…ヤバイ。もう、間に合わねぇ。」
「え〜いいじゃん。今日は、学校なんて。二人で居ようよ。
デートしようよ、ね?」
「おう。まあ、今日は仕方ない…よな?
それで、ドコに行きたいんだ?」
「ん…とねぇ〜。それじゃあ……」
581名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:40:24 ID:Qpdsj/Rh
>川嶋ぁ〜〜ッ!!お前に居て欲しいだッ。」

告白で噛んでる竜児に萌えたw
582勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:40:33 ID:EWSe3Mky
亜美に連れてこられた店は、高校生には、少し敷居の高い、洒落た喫茶店だった。
朝から優雅にコーヒーを嗜む高校生は、
見事に周りから浮いていた。
紅茶を嗜む女子高生は、店の雰囲気に馴染んでいるようだが…
この時間帯に制服姿という違和感は、どうにも拭い難く…
「どうしたの?ソワソワしちゃって。」
「あのさ…俺達、何か浮いてないか?」
「別に気にしなくて良いんじゃない?
あたしは、竜児以外は、目に入らないし。
張りぼてとかカボチャとか思えば良いのよ。外野なんて。」
そう言うと、亜美は、紅茶を一気に飲み干した。
「…そんなもんか?」
「そんなものよ。
あ〜。さては、竜児…デートとか初めてなんでしょう?
うんうん。そっかぁ〜初めてなんだぁ〜」
「…初めてだよ。…悪いかよ?。」
「ん〜ん。初めての相手が、この超絶可愛い亜美ちゃんじゃあ、
緊張するなっていう方が無理だよね〜」
「うるせぇ。」
亜美の奴は、随分、慣れてるみたいだけど…
こういう店でデートとかした事あるのか?
誰と?どんな奴と?
こいつの事だから、そりゃあモテるんだろうけど……
形容し難い感情がふつふつとたぎるのを胸の奥で感じていると…
「あ。」
「おう。どうした?」
「え、いや…」
亜美は空のカップを凝視し、何やら、困り顔だった。
見れば、ケーキが半分以上残っている。
ケーキと紅茶をバランス良くとらないから、そういう事になるんだ。
ほら、俺のを見ろ。こうやって、ちゃんとバランス良く食べれば…ん?待てよ?
「もしかして、亜美も、デート初めてなんじゃないのか?」
「……ふん。ばか。忙しいの、あたしは。」
ぷい。と、そっぽを向く。
ああ、こいつは拗ねるとこういう顔をするのか。可愛いな。
こういう店を選んだのも亜美なりの背伸びだったんだな…
「なあ?それ食ったら、一旦、家に戻ろう。
どこ行くにしても、制服のままじゃあな。着替えた方が良い。」
「え?でも…
あたし帰れない。この時間だと、きっと、おじさまもおばさまも家に居るから。
服は、どこかで買わない?」
583勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:41:06 ID:EWSe3Mky
買い物がしたいんなら、付き合うが…俺は買わないしなぁ…
この場合、何より、MOTTAINAI気がする。
「家に来いよ。泰子の服で良かったら、貸すからさ。」
「竜児の家?うん…いく。
何かさぁ、こういうの駆け落ちみたいだよね。」
「駆け落ち?俺は家に帰るのにか?」
「あたしにとっては、だよ。」
「…解んねぇ。」
「いいよ。解らなくて。」
「…じゃあ、早く残り食っちまえ。
ほら、俺のコーヒーやるから。」
「え〜亜美ちゃん、苦いのヤダ。」
「わがまま言うんじゃありません。」
「じゃあ…食べさせてよ。アーン。」
「…はいはい。解りましたよ。ほら、アーン。」
「アーン。」

***

途中で、「食べたばっかじゃ動けない。おんぶ」だとか「手繋いでくれなきゃヤダ」だとか、
お姫様全開な亜美の要望を、逐一、聞き入れていたせいで、随分、時間が掛かったが、とりあえず、家に着いた。
「少し位、叱ってくれたって良いのよ?」
なんて言うくらいなら、自重しろ、ったく。
ただ、今まで、亜美が甘えてくる事なんて無かったから、
俺としても、ついつい、全部、聞き入れてしまったんだ。
大人だとばかり思っていたけど、そんな顔もするんだな…と、ついつい。
「…あのさ…これ…」
「おう。着替え終わったか?」
「うん…でもさ…」
「…なんだよ?サイズ合わないか?」
「サイズじゃなくて…もっと違う部分が亜美ちゃんには合わないかなぁ〜って…
亜美ちゃん、一応、清純派だからさ…
ちょっと、アダルト過ぎない?特に胸元が…」
「そんな事ねぇよ。………」
泰子の服は基本的にジャージとそれ系の服しかない。
普段着と余所行き様だ。
このモデル様がジャージなんか着る訳はないので、選択肢は限られてくる。
「…じゃあ、何で、こっち見ねえんだよ!?何で、頬、赤らめてんだよ!?
あ、ちょ…そっぽ向いてんじゃねぇよ。
こっち見ろボケェッ!!」
泰子が着てても、何も感じない服だったが…亜美が着ると…
厚めの化粧も伏線だったのか、ちくしょう。
「…さっき甘えてたお前はどこ行ったんだよ?多重人格かよ!?」
「だから何よ?そんな事知ってんでしょッ!?」
「知ってるよッ。だから、好きなんだよッ。」
「ッ……。サングラス貸して。
前に竜児にあげたサングラス、貸して。
あれ、貸してくれたら、この服でも良い。
流石に素顔じゃ外歩けない。」
「おう。」
584勝手にチワドラP:2009/05/03(日) 22:42:00 ID:EWSe3Mky
「ちゃんと…残してあるんだ……」
「当たり前だろ?引き出しに入れてある。」
「そっか。」
「でも、お前が、露出度の高い服を嫌がるなんて意外だよな。
それ、ビキニなんかよりは布地多いぞ?」
「……あのね。もう一度、言っておくけど、亜美ちゃんは露出狂じゃねぇから。
幼なじみだからって祐作と同列視するのやめてくれない!?」
「そうなのか?」
「そ・う・な・の。」
心理学というものは、どうにも画一的で、あまり好きでは無いのだが、
俺は、今のところ、亜美に3つの側面を見いだしている。
先程言った様な、多重人格ではなく、例えるなら、阿修羅像のイメージに近いかと思う。
1、大人ぶる
大衆向けの亜美、所謂、外面という奴だが、
自分が主導権を握りたい時に、俺に向けられる気がする。
2、毒づく
俺にとっては、一番、亜美らしさを感じるもので、見ていて安心する。素の亜美、なのか?
3、甘える
ついさっき発見した。
今までは、プライドが邪魔して出て来なかったんじゃないだろうか?
周囲への遠慮もあったんだろうな…悪い事したよな…
まあ、要するに全部足して亜美な訳だから、深く考える必要は無い気もするが、
普通の女の子と付き合うより三倍疲れる気がする。
三倍魅力的だ。とも言えるが。
毒舌家の癖にお人好し。露出癖があるのかと思えば、恥ずかしがるし、一体、何なんだろう。
見ていて飽きないな、コイツは本当に。
「なあ、亜美?」
「ん?なぁに?」
「どっか行きたいところあるか?」
「別に…無いよ。背伸びしたってバレるし…
竜児が一緒なら、どこだって…いいよ」
「だったら…ここにしないか?」
そういって、俺は亜美に一対のチケットを差し出した。
『らぐ〜じゃ・プラネタリウム』

クイックセーブ。
585名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:46:55 ID:b4jpq1lM
>>584
ロード!ろーど!!

GJなので早く続きをプレイしてください。
エロまだ〜エロまだー
586名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:51:17 ID:EWSe3Mky
と、いう感じで続きます。
ゲームをやった人とやっていない人、どちらの為に書く悩みます。

以下、私語り。(スルー推奨)
懺悔しますと、私、色々忙しくなりまして、続きもの投下しては、蒸発を繰り返しております。
覚えている人は居ないと思いますが『○○エンド』とか調子に乗ってメチャクチャ分岐させたりして、ネタギレを苦に蒸発した過去があります。
今回は、マジで最後まで書ききりたい。


何が言いたいかというと、Pで戻った一人です。
587名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:00:03 ID:/GA355Di
お前みたいな、勝手な奴知らねえ。
わがままで自己中で腹黒で、いつも人を見下した様な態度で、人を取って食った様な事言って…
最後まで、そうするつもりなのかよ?

から、いきなり↓

俺の隣にいてくれよッ同じ地平の同じ道の隣を歩いてくれよッ。
川嶋ぁ〜〜ッ!!お前に居て欲しいだッ。」

となる竜児の心理描写がよくわからない


588名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:15:55 ID:8x+DC6u6
>>587
強面で買い物上手できれい好きで女の子にモテモテな高須さんの心理なんて俺にはもともと良くわかりません
589名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:17:48 ID:DTqzYBPl
ぶっちゃけ原作の高須さんの心理もわかりませんでした
590名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:19:35 ID:b4jpq1lM
まあ、ファンタジーだしさ。
591名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:23:38 ID:u6vAlAsA
>>586
GJ!



そろそろ次スレ立てないとやばいな
592名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:39:23 ID:G6Avvh7t
>>587
あんたみたいな、駄犬知らない。
ケチでへタレでお人よしで、いつも失敗ばっかの、あたしを慰める様な事言って…
最後まで、そうするつもりなの?

から、いきなり↓

私の隣にいてよッ同じ地平の同じ道の隣を歩いてよッ。
竜児〜〜ッ!!あんたに居て欲しいのよッ。

これでどうすか?

マジレスすると「お前みたいな、勝手な奴知らねえ」は振りで、言いたかったのは「お前に居て欲しいだ」の方じゃないの?
てか、もしかして、ゲームにこんなシーンあるの?だったら、pspとセットで買います。
593名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 23:58:53 ID:AzMJmBqf
>>586
何だ、この破壊力は……?胸キュンで呼吸困難になった。超GJっす!
色々ENDっていうと、とある神職人が真っ先に浮かびますねー。お疲れさんです。
プレッシャーかけるようでなんですが、他の続きも期待してます!(みのドラ物とか特に)

あと、KYながら訂正が一点。
>>570の最後の最後、「おわれ」じゃなくて「おわらない」でした。
すいません、お邪魔しました。
594名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 00:20:20 ID:Mwmo8Lmv
>>586
続き期待してまっせ!

>>593
おわらないんだな??


+   +
  ∧_∧  +
 (0゜・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゜∪ ∪ +        
 と__)__) +
595名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 00:24:28 ID:30l6rcPq
>>556
遅ればせながらGJ!
耽美的な文体が毎度毎度楽しみです
続編期待
596名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 01:05:02 ID:plECM42P
>>581
漏れは小池フォントかと思って
思わず池上遼一画の竜児とばかちーを思い浮かべた。
597名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 01:06:12 ID:T/jYM2n2
>>586
GJ!!
文体も読みやすくて楽しかったです。
こう、スラスラ読める文を書けるのはウラヤマシ……
そして早くセーブデータをロードするんだ!
598名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 07:00:11 ID:HapYn75x
>>586
ロード!ロード!
続きをとても楽しみにしています!

> 『○○エンド』とか調子に乗ってメチャクチャ分岐させたりして

もしかしてサミットか腹黒様の作者様ですか?(勘違いならスミマセン)
599名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 10:57:43 ID:hwEkEg/F
600名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 10:58:48 ID:OcdQ7LDL
>>586
さすが亜美ちゃん
ワールドイズマインすぐるwww
601名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 12:33:53 ID:Lp5URaMo
>599
602名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 12:50:14 ID:a+k1AGfN
>>598
両方とも途中で止めちゃってホント申し訳ないです。
腹黒様はちょっとだけ書いてあるんで、
溜まったら投下しますよ。
603名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 13:44:15 ID:HapYn75x
>>602
やはりあの作者様でしたか!
しかも腹黒様の続きも期待していいんですか━━━━(゚∀゚)━━━━!!
腹黒様でもサミットでもキャラクタの表現が忠実かつ素晴らしくて
ファンになったので復活は大変嬉しいです
楽しみにさせていただきます!
604名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 23:12:32 ID:QzcidlT3
大河×竜児のエロエロ甘甘いなのがよみたいなぁ…
605名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 00:27:12 ID:+McX8Jxk
>>604
竜虎スレに行ってみては?
606名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 00:41:24 ID:6Y2fapnN
竜虎スレはエロNGじゃないのか
607名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 01:11:02 ID:wGr4G+ic
竜虎エロあまり無いよね(´・ω・`)
608名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 02:08:06 ID:uaI8RVVE
竜虎スレはエロだめだね。

しかし、俺も大河と竜児のエロくてサッカリンより甘いのは読みたい。
609名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 02:15:47 ID:lzKjoSkw
最近のだと
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/686-690
が好きだなあ。このくらいの匂わせるぐらいのでも十分戦えるのであります
610名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 07:47:01 ID:aF+GeCWy
>>604
このスレの最初に(>>7)超あまあまでえろえろなのがあるじゃないか。
611名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 14:17:36 ID:YAVWoMX7
>>7は竜虎エロの名作ですね
612名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 18:18:54 ID:Q8yyRMDo
5巻にも書き下ろしついて欲しいなぁ…
もしくは大河→会長のハガキ
613名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 18:46:19 ID:YAVWoMX7

 バ

 カ

  。


って書いてあるだけのハガキが特典?www
614名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 20:44:23 ID:8W+8U4os
欲しいなwww
615名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 21:41:45 ID:nJYcN/Hh
>>609
それ泣けるしエロいしでかなり気に入った
やっぱり竜虎が好きだわ
616名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 22:45:22 ID:uaI8RVVE
http://yunakiti.blog79.fc2.com/blog-entry-2834.html

公式、やってくれるぜ!!
617名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 23:19:32 ID:hzxplKKq
>>616
The☆犯罪だなこれ・・・
618名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 23:36:06 ID:gleDUeeA
北村君の子供だけど 竜児の子にしちゃえ☆
619名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 23:43:17 ID:hzxplKKq
>>618
え・・・裸族の子!?
ちょ、まww
竜児の子じゃないの?
詳細きぼん
620名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 23:45:23 ID:9zcbSm7O
心配しなくても竜児の子犬だよ
621名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 00:13:18 ID:1Yt70oyj
三人も孕んだのに臨月近いのに胸が哀れなままなのが泣ける

>>619
とらP買ってやりなはれ
622名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 00:43:37 ID:C2Q/Bz5t
>>621
とらPがどうしても入手出来なくてな・・・
ところでこの哀れ乳・・・母乳の方は大丈夫なのだろうか
623名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:18:23 ID:oos3T/7x
さてと、こんな夜中に埋めネタ投下。
2レスほど失礼しますよ。
624名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:20:14 ID:oos3T/7x
ある昼休み、目の鋭さだけを除けば掃除、洗濯、家事、炊事を趣味とするちょっと変わった男子高校生、
高須竜児が席に座り、弁当の準備に取り掛かる。

「フフフ、今日は最高傑作。泰子の仕事場の残りものと、冷蔵庫にあった残りもので出来た、
 食材費0円弁当だ。」

彼が弁当を机の上に広げ、ご満悦に箸を持つ。
今この顔を見たものはトラウマになると思われるだろう。見るからにして、箸が箸じゃない。
むしろ凶器。顔面も凶器。弁当の中身は凶器とは程遠いが…
そこへ一人、彼女もまた一般の女生徒とは違う。ツヤのある黒髪、制服の上からでも分かるクビレ、
そして体の半分以上あるとわかる長い足。月並みの表現ですまないが、絵に描いたようなスタイル&フェイスの持ち主だ。
それもそのはず、彼女、川嶋亜美は、ティーン紙の表紙を飾る今を輝く現役女子高生モデルだ。
亜美が高須の前の席に横向きに座り、上半身は高須に向く。

「ねぇ… 高須君…?」
「なんだ川嶋?」
「また落としたようね…」
「えぇ!? またって…」

竜児の頭につい先日の出来事が甦る。

「あッ…!スレの事か!? なら心配ないぞ。さっきも保守しといてやったぜ」

竜児が親指を立てグッとポーズを取る。まるで暗殺に成功したかのような顔だ。
だが、納得していないような顔で竜児を見つめる。あまりの凝視振りに危険を察知したのか、竜児は箸を置く。


「…それはそれで良いんだけど、亜美ちゃんが言いたい事とは違うのよねぇ〜…
 とりあえず 川嶋 高須 でスレ検索してみなさい」
「お、おう。」ポチポチ

竜児が携帯電話を取り出し、ネットを開く。

「どう?検索結果は?」
「いや、特にコレといって目立つもんは…あッ!!」
「…気付いた?私達二人を妄想するスレが落ちてるのよ。…これで言いたい事がわかったでしょう?」

竜児は携帯電話を閉じ、落胆の表情を見せる。

「…すまねぇ川嶋。俺とした事が…」

精一杯の謝罪なのか、机に両手を置き、額を下げる。
そんな竜児に亜美は声を掛ける。

「…いいのよ高須君。所詮私達に考えられるネタなんて逢坂さんと高須君のスレ比べたら微々たるものよ。」
「か、川嶋!」

亜美の一言で竜児が立ち上がる。だが、亜美は口を開く。

「…この前は私のスレが落ちるし… まぁ、これは立て直してもらったから良いとして、
 私たち二人のスレが落ちるなんて… もう、潮時か…な。」

亜美は机に肘を付け頬杖をかく、目線は良く晴れた大橋の空を見ている。
625名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:22:14 ID:oos3T/7x
「いや!待て川嶋!まだエロパロが残ってるじゃねぇか!最近流れが速くなってきたしまだまだ余地はあるって!!」

竜児は励ますためだろうか、亜美の手首を掴む。ただ、亜美の痛くないように。
掴まれた亜美はきょとんとした顔で竜児を見つめる。

「…ホントに? …まだ亜美ちゃんと高須君がすっごくラブラブイチャイチャ出来る可能性はあるの?
 ニヤニヤGJじゃなくて!?
 
『ぁあ〜!!亜美ちゃんイっちゃう〜ッ!!』

 っていうぐらい興奮するのが投下されちゃう?」
「ちょっ…川嶋、声大きすぎるって…」
「どうなのっ!?高須君!!私は聞いてるの!」

亜美は机をたたく。

「いや、だから少しボリュームをだな…」
「されないの!?されなかったら亜美ちゃんこのまま捨てられちゃうの!?」
「川嶋、とりあえず落ち着け!いいか、俺の話を聞くんだ…」
「…遠慮しとく。高須君の事だから慰めながらやんわり否定するんでしょ…」
「違う!俺が言いたいのは…まず、とらPは川嶋ルート全エンディングクリアしたし、大多数の人は川嶋の犬エンドに入ってる。
 最近では『伝えたい言葉』の作者がちゃんと俺らの…その…なんだ。おまえの言うイチャラブしてる…ってのを書いてくれてるし、
 SL66氏だっておそらく今、続編を書いてくれてる。それにエロパロが無くなっても…」

竜児は一旦息を整える。

「無くなっても、…お、俺と川嶋が居なくなる訳じゃないからこれからもイチャラブできるだろ!」
「た、高須君!!」




ギシギシアンアン
626名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:23:25 ID:oos3T/7x
うん。これで終わりなんだ。途中からめんどくなってきたのがバレバレやね。最後のほうはスマン。
とりあえず竜虎スレのギシギシアンアンみたいのが書きたかったんだ。すまん。
あ、因みに>>396の『亜美スレ落ちちゃったネタ』も私です。>>398さん、続きなんて書いちゃってくれてありがとう!
ではオヤスミ ノシ
627名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:23:47 ID:Mb82QlXO
GJwwwwwwwww
628名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 03:25:21 ID:oos3T/7x
あ、まだ10kbほど残ってら…
埋めネタのつもりが全く埋まってなかった…w
スマン
629名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 04:08:29 ID:onscCLhU
ギシアンオチをここで見られるとはwww
630名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 09:55:18 ID:JYcisfms
gjwww
631名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 10:30:10 ID:xTtdqrzP
さっきも保守しといてやったぜ
……竜児がかわいい件ww
632名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 18:09:41 ID:4jEy3Nzb
メタなネタなのに何故か萌えたぜ。
ところで、ゲームは限定版を発売日に購入済みなのにゲーム機を持ってない俺の背中を押してくれ。
633名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 18:14:18 ID:kGZrHg5Z
>>632
好きなキャラにもよるが、とらドラ!が好きならばプレイするべき
俺もこれのために本体買ったからな
6341:2009/05/06(水) 18:52:21 ID:jvMWQnY2
635名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:15:47 ID:HzwqjYeZ
>>633
お仲間w
636名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:40:49 ID:C2Q/Bz5t
本体買ったのにソフトが手に入らない罠ww
悲しいから背景の色変えたりして遊んでる
637名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 20:42:51 ID:QWA6zeBt
明後日とらPが届く予定の俺も勝ち組になれるのか。

ひとまずばかちーは俺の嫁ですけん
638名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 21:56:29 ID:vybnF12O
あみはおれのだからごめんな>ale
639名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 22:01:09 ID:Ry5RgoFu
>>638
もしかしておまえarlって書こうとした?
640名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 22:01:40 ID:5WkRCbcj
もしかして、arlって書きたかったの?>638
641名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 22:31:40 ID:dhD+dWOt
もう許してやれよw
642名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:18:07 ID:HzwqjYeZ
このスレの偏差値はいくつなのw
643名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:22:43 ID:9JbBqdp3
裏口ぐらいw
644名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 23:39:22 ID:C2Q/Bz5t
泰子並みww 
17くらいだろ
645名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 01:59:33 ID:YunYymYv
とらPのばかちー90点END、アルバムコメントで北村に家で飯食わせたと報告する竜児。
でも、飯だけかぁ?とつい邪推してしまう俺ガイルwww

大河腹ボテENDがあるぐらいのゲームだから、そーゆーことだよなぁ。
646名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 02:14:27 ID:am76z894
>>645
なるほど…だから北村はニヤニヤしていたわけだ。
そしてみのりんENDも空白の期間にナニがかあったかを考えても良いわけだ
647名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 02:23:47 ID:wflT197y
とりあえず全員となにかあったと考えておk
648名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 17:39:04 ID:baqC1Stf
性欲
649名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 23:02:24 ID:+3w4yJ6g
650名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 01:44:37 ID:DbiGs/pk
651名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:19:20 ID:9nXVPcbP
しかし勢いがなくなってきたなー
652名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:46:20 ID:4fExkKlE
>>651
次スレに移ったからじゃね?
653名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:46:45 ID:HC+EnqoS
投稿が無いから駄作を投げづらい
654名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:48:59 ID:HC+EnqoS
あ、次スレあるのか。
655名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 23:56:32 ID:ZODssqgX
ぶっちゃけ時代はけいおんだからな…

俺は女の子同士「しか」ないけいおんは苦手だが。
ぶっちゃけツンデレ大河のほうがいい。
656名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 00:08:25 ID:YUShehif
657名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 02:05:53 ID:WIWFE0iw
>>655
埋めついでに少し同意
やっぱり竜虎みたくニャンニャンしてるのが見たい
まあ、けいおん!も好きなんだけどw
658名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 04:55:48 ID:dgy9XNud
>>655
竜×けいおん!なら見たいな、誰か書いてくれないかなw
659名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 07:42:37 ID:AUI9JPVt
660名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 08:12:54 ID:0Ez94N42
tesuto
661名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 08:41:43 ID:QNdzwwHx
tetsuo
662名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 00:44:09 ID:UaiscrIK
あのさ、さっきチューボーですよ!見てたんだけど、
未来の巨匠役で竜児とかありかな?ゲストが亜美ちゃんで。

ナレーター『さて、今回の未来の巨匠は高須竜児君。まず一日の始まりはランチの下ごしらえから…』

玉ねぎを一生懸命炒める竜児。そこには普段より熱のこもった姿があった。
(川嶋見てくれてるかな…。これが今の俺だ…!!)


〜スタジオ〜
「…ちょっとなんで高須君が出てるの!? 必死に玉ねぎ炒めてる高須君かっこいい…」
「巨匠!川嶋さんの様子が!顔が真っ赤です!!!」
「いただきました! 恋する乙女に星三つ!!!」


とか。
もしくはアレか、もうすでに町の巨匠役で出てくる。そこには夫の姿を見つめる大河が…!!

ナレーター『今回の巨匠は大橋に店を構えてまだ間もないが、巨匠の目つきと奥さんのキャラクターで有名になった高須竜児さん。こんな顔してますが、腕は相当なものです。』

「あのお店のシェフ、同級性なんです。食べに行くといつもあの手乗りタイガーのせいで静かに食べれないし、それにこの前なんかは…」
怒りでこぶしを握る亜美。
「きょ、巨匠!川嶋さんが怒りをあらわにしています!鬼の形相ですね!!」
「い、いただきましたっ!ほ、星ゼロ!!て、撤収〜!!」
663名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 01:05:30 ID:qDyfF6mC
>>662
ちとワロタ
664名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 02:06:15 ID:yNZeYPF/
恋する乙女に星三つ!
のフレーズが素敵すぎだw
665名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 03:54:47 ID:mnM5wofb
「恋する乙女に星三つ!」www
666名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 09:15:58 ID:dJSi10/L
666
667名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 13:11:41 ID:mwmoVZQB
667
668名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 13:23:53 ID:0cZWOn9m
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           |八 ∧乂∧/'´  ∨/ |  | ハ
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669名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 14:06:23 ID:oEzLRor8
670名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 15:16:52 ID:tVu3IJaj
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     ,| | : : : : : : : : | : : : : : : ,'`` ´ヘ: : : : : : : :',:|
     |: |: : : : : : イ : |: : : : : : :|    |: : : : : : : :|:|
     |: |: : : : : :/| :メ : : : : : :| /  |: : l : : : : |:|
     |: :| : : : : |ト<、ヾ : : : :k,´ _, ャヤ|: : : : ソ |
      |: :ヘ : : : | |i:::んリ\: |ヾ ´fi:::んリi,': : : ン: : |
     ,|: : : ヽ : ヽ弋:シ  `   ゞzシソ: : /: : : |
     ,': : : : i:ヽ_:\     ,     ∠ ;イ:| : : : : |  イタズラこぞうにはオシオキしちゃうぞ
    /: : : : :| : : ヾ´ ,rヽ        イ: i | : : : : |
    /: : :_; 斗:':::´::|.Y | | ー -‐  , イ ,|`:ヽ!、: : : :|
   //::::::::::::::::::::::||´| | |ヽ  _, </ /:::::::::::::`::‐:!...、
   ハ::::::::::::::::::::::::::::::| | | | |二,、ィ´  /::::::::::::::::::/:::::::::〉
  /:ヘ::::ヽ:::::::::::::::::::::| |. ! |rv入   /:::::::::::::::/:::::::::::::/
  |: :ハ::::::\:::::::::::::::::|    |/ヽヘ  /::::::::::::/:::::::::::::::::/
671名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 19:16:32 ID:i2p/Lhwx
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672名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 03:16:32 ID:UwIv1NAv
673名無しさん@ピンキー
      ,. < ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ > 、
    /               ヽ   _
   〈彡                Y彡三ミ;,
   {\    \|_ \>ー 、  ト三三ニ:}    亜美様1発ヤラヂデぐだざい
   人{ >、,___.>、/三 ヾ\ |わ三彡;!
  /./ トミ;,_       Y/  \>ノー〜=- "
  V / /!   ̄ ̄ ゝ  |   /  _
  し/'┴──----─''|  ン}\-ヾ彡
              ヾ、___ノー'''`