この国一番の巨大娼館、ラ・ドーセ宮で春をひさぐ娼士達は三種類に分けられる。
一つ、古来より愛されてきた売春婦、娼婦・・・・全娼士の八割を占める美しい女達。
二つ、先王の時代に錬金術で作られた肉奴隷・・・・醜美併せ持つ両性のホムンクルス達。
そして三つ、僕のような男娼。
僕は四百人を超える娼士達の中でも、五指に入る高級娼士だ。脱ぐための服で着飾る毎日は忙しく、昼夜を問わず抱かれる日常に神経を磨り減らしている。そうだ、僕は日々疲れてるんだ・・・・娼士なんて好きでやってる訳じゃない。全ては金のためだ。
そう、金・・・・僕には金が必要なんだ。だから、コンプレックスの女顔と華奢な躯を生かして男娼に・・・・それも男色家専門の男娼になった。歪んで倒錯した貴族や豪商が、今や僕の御得意様って訳だ。
「アスマル様、戻ってらっしゃいますか?」
ノックの音と共に聞きなれた静謐な声が響く。
つい先程まで上客を相手に激しく交わり、手練手管の限りを尽くした僕はぐったりしていた。贈り物で埋め尽くされそうな自室に戻るや、ドレスを脱ぎ散らかしてベッドに身を投げ出してる真っ最中だ。
けだるい・・・・今日はもう予約客もいないし、このまま眠ってしまいたい。
「入りますわ、アスマル様。失礼いたします」
娼士の部屋に鍵はない。僕のような最上級の娼士も、相部屋で寝起きして街角に立たされる最下級の娼士も一緒だ。娼士とは性交に関するあらゆる技術を教育された、貴重な商品だから。商品にプライベートなんて、ない。
うつ伏せに枕へ顔を埋めていた僕は、僅かに身を捩って声の主を見詰めた。
「エルテナ、今日は部屋の掃除はいいよ。洗濯物はそこ、夕食は・・・・食欲ないな」
メイド服の少女は腰に手を当て、しどけない僕を見るなり溜息を零した。
エルテナは僕の世話を命じられてるホムンクルスだ。僕の品質を保つべく、黙って甲斐甲斐しく働いている。客は取らない・・・・彼女を愛でて抱こうなんて人間は恐らくいない。僕以外は。
「掃除も洗濯もご飯も、全てはアスマル様のことが終わってからですわ」
エルテナの一番の仕事は、僕の管理だ。毎日風呂に入れて全身を洗い、(予約客の性癖にもよるが)丹念に浣腸をして直腸を洗浄し、僕を淫らでいやらしい男娼として整える。化粧や着替えを手伝ったり、後はまあ家事全般かな。
「風呂か、そうだな。あとで・・・・あとで入るよ」
「そう言われましても。わたくしにも予定という物がありましてよ」
言ってみればエルテナは僕の召使だが、媚びる様子も畏まる気配も全くない。
エルテナはこの不夜城にいる娼士達と比べても、全く遜色ない。年の頃は十五、六くらいか?誰も適わないのではと思う程に、綺麗な顔立ちの娘だ。一点を除いて。
それもその筈、エルテナは先王が造らせた一番の寵姫だったのだから。それが理由で、王制が崩れてこの場所が後宮から娼館になった夜・・・・彼女は左目を焼き潰された。大きな眼帯と無表情はその日からだ。
でも、僕はエルテナの事が好きだ。愛想は悪いが良く働くし。何より・・・・彼女だけが僕にとって、唯一この場所で自由にできる物だから。
「全く、困った方ですわね。仕事が片付きませんわ」
「だったら、またしてよ・・・・おしおき、して」
僕の強請るような眼差しを吸い込み、ベッドの側まで来たエルテナが涼やかに見下してくる。
口でどんなことを言っても、僕はこの館で調教された開発済みの娼士だから・・・・凍てつく冷たい視線に曝され、期待に胸を焦がしながらゾクゾクと震えた。
エルテナとの秘め事だけが、僕のささやかな楽しみであり、辛い日々の支えだった。
ギシリとベッドが小さく軋んで、エルテナが寝そべる僕の腰の辺りに座った。
細く小さな白い手が伸びて、僕の背を撫でてゆく。ホムンクルス特有のひやりと冷たい感触に、僕は身震いしてしまう。その手は背骨の上を行き来した後、尻へとゆっくり降りていった。
今の僕はタイツとガーターベルト、そして下着だけという姿だった。
「ではアスマル様、いつものようにして差しあげますわ。ふふ、本当にだらしのない方」
クスリと笑って、エルテナがベッドに這い上がってきた。僕はうつ伏せのまま黙って、彼女の汚い物を見るような視線に酔いしれる。
エルテナは僕を跨いで膝を突くと、耳元に唇を寄せて囁いた。
「アスマル様、今日もここで男をくわえ込んで・・・・とんだ淫売ですわね」
尻を撫で回していたエルテナの手が、谷間へと差し入れられる。下着の上から敏感な窄まりを愛撫されて、僕は鼻から抜けるような喘ぎ声を漏らした。
僕の菊門は既にもう、完全に第二の性器に作り変えられていた。
「さあ、仰ってくださいな。どうして欲しいのかしら?」
「僕の、アソコを・・・・」
「アソコじゃ解りませんわ」
「お、お尻を・・・・ふああっ」
エルテナは一旦手を放すと、尻の肉を容赦なく揉みしだいた。力任せの乱暴な扱いに、自然と僕は股間が熱くなる。ベッドと自分の身体の間で、むくむくと充血して強張る僕の男性自身。
「お尻じゃありませんわ、アスマル様・・・・貴方様のココは違うお名前じゃなくて?」
「ケ、ケツマンコ・・・・ケツマンコ、吸って・・・・中出しされた精液、吸出してぇ・・・・」
エルテナは僕の足元へと回って下着を降ろし、むき出しになった尻肉を平手で叩いた。尻を上げて突き出せという合図だ。僕はもう、嬉々として腰を上げる。
客とはあんなに嫌なのに、エルテナに服従する快楽だけはやめられない。
「うふふ、アスマル様のケツマンコ、相変わらずえげつない色。今まで何本の男を味わってきたのかしら」
僕の呼吸に合わせて開閉を繰り返す肛門に、エルテナの冷たい吐息がかかる。
「アスマル様、今日のお客様はどんな方でした?わたくしに聞かせてくださいまし」
いつも通り、エルテナがちろりと舌先で僕のアヌスを舐める。僕は言われた通りに、シーツを力一杯掴んでいきみながら言葉を紡いだ。喋ることで行為が思い出され、それを知られることで興奮が加速する。
「今日のお客様は、この国の大臣様で・・・・僕はまず、お口でご奉仕して」
すっかりほぐれた穴を通過して、エルテナの舌が直腸で別の生き物のように蠢く。
「その後、僕が上になって・・・・挿れて」
「何を? どこへですか?」
「オッ、オチンチンを!ケツマンコに、ひうっ!」
静かに詰問しながら、エルテナは執拗に僕を舌と唇で肛虐してゆく。
「からっぽの直腸に、何度も中出しされて・・・・」
「そう、気持ちよかったんですか?」
「や、そんな・・・・僕は、ただお金が・・・・」
「あらあら、お金の為に?こんなにたっぷり搾り取っておいて、よくもまあ」
ジュルジュルと音を立てて、醜い中年太りの男が放った精をエルテナが吸い出す。
気付けば僕は激しく勃起した強張りを、自分でも痛い程に握り締めてしごいていた。
「ん、はふっ、ぷは・・・・アスマル様のケツマンコ、今日も雄の味が染み付いてますわ。・・・・あら?」
僕の菊門をねぶっていたエルテナが、右手の動きに気付いた。背後に怜悧な笑みを感じて、僕は全身の肌が粟立つのを感じる。
「まあ、アスマル様ったら手淫で・・・・そうですわね、お客様が可愛がるのはココですものね」
ズブリと僕の肛門が、エルテナの指をあっさり飲み込んだ。それが二本に増えて広げてくると、僕ははばからず嬌声をあげる。身体は正直でありすぎた。
「アスマル様、またわたくしに見せてくださいます?ココだけでイくところ」
「は、はい・・・・見てください。僕は、ケツマンコだけで射精する、ヘ、ヘンタイですぅ!」
エルテナの指が腸壁をこすり、前立腺を刺激してくる。ただ僕に挿入して締め付けを愉しみ、臭く汚い白濁を吐き出すだけの客とは違う・・・・エルテナの指は的確に、僕の一番敏感な部分をせめてきた。
僕は絶叫と共に達して、溜まりに溜まった精液を迸らせた。
「いつみても凄いですわ、お尻だけでこんなに・・・・アスマル様は本当にお好きですのね」
「す、好きですぅ! 僕はケツマンコ、大好きなんです・・・・だから、だからっ」
エルテナが一度立ち上がり、その身を包むメイド服を脱ぎ捨ててゆく。淡雪のごとき純白の肌がさらされ、僕は肩越しに彼女の固く充血した怒張を見た。
それはスタイルの良いエルテナの痩身に不釣合いな程に、グロテスクな大きさだった。
「アスマル様、これでおしおきして差しあげますわ。さ、もっとお尻を上げて」
僕はもう、振るえる膝に力を込めて、つま先でベッドを蹴るように尻を突き出した。
濡れそぼるエルテナの穂先を、とろけきった僕のアヌスがたやすく飲み込む。赤子の腕ほどもある屹立が僕の中にドンドン挿入され・・・・根元まで埋まって、内側からその形に僕を押し広げた。
「あらあら、相変わらずゆるいケツマンコですこと。ほら、もっと締め上げてくださいまし」
下腹部を満たす圧迫感に、僕は声にならない絶叫を叫びながら括約筋に力をこめる。エルテナは余裕の笑みで僕の腰をガッチリ掴むと、長いストロークでピストン運動を開始した。
「ああっ、あん・・・・いいですわ、アスマル様。流石はこの館で最高のケツマンコ」
「ひっ、ひううっ!ふああ・・・・あは、お腹いっぱい。エルテナ、そこ・・・・そこえぐってぇ」
少女とは思えぬ腰使いでエルテナは、グラインドを交えて激しく僕をせめたてる。
汗が弾けて肉がぶつかりあい、僕のペニスはその度に揺れて透明な粘液を垂らした。
「さ、今日もたっぷり中に出してさしあげますわ・・・・アスマル様、私の子を孕んでくださいな」
「エルテナの、あ、ああ、あかちゃん!妊娠、妊娠するのぉぉぉ」
既に正気を失った僕は、涎を垂れ流しながら絶叫していた。そして僕の中で肉柱が一際大きく固く脈打ち・・・・膨張して破裂したと思いきや、大量の精液がドクンドクンと断続的に流れ込んできた。
ホムンクルスの精力は常人の比ではなく、たちまち僕の下腹部が妊婦のように膨れていく。
「ふあ・・・・出てる、エルテナのせーえき、いっぱい・・・・」
「全部下のお口で飲んでくださいまし。この後お風呂で、全部綺麗に出させて差しあげますわ」
こうして僕は今日も、たっぷりとエルテナになぶられた後で一緒に風呂に入った。ベッドの上以外ではエルテナは忠実で従順な下僕で、たちまち僕は高級男娼として磨き上げられる。
そうしてまた、金のために汚らわしい男達に身体を開くのだ。
全ては金のため・・・・僕自身とエルテナを、身請けする金を稼ぐために。
<了>