☆☆狩野すみれ兄貴の質問コーナー☆☆☆
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」
Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」
QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」
Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
3 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 17:40:07 ID:GzX3X0KV
ぬるぽだよ
今日からネタバレおk?
えーと、約5時間後に投下予定。
このスレでは久しぶりの竜虎モノです。
タイトル『―My road, Your road and Our road―』
去年俺が司会を務めた、友人の結婚披露宴を元にした作品で、竜虎の結婚式です。
正確に言えば、『儀式としての結婚式が終了した後の披露宴』。
また、途中に実際の結婚式で使われた曲、GReeeeNの『キセキ』が登場します。
「GReeeeNは嫌い」「つーか歌を使うな」などという方は回避をお願いします。
>去年俺が司会を務めた、友人の結婚披露宴を元にした作品で、竜虎の結婚式です。
意味がわからん。
わざわざ「元にした」なんて言う必要は全然ないわけだから
これはつまりお前が竜児と大河の結婚式の司会をした、ということを言いたかったわけだよな?
さて全裸で正座して投下を待つか
久々の竜虎………期待してます!
12 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 19:40:07 ID:ir9dWnG1
>>1 乙
>>12 E-mailの所にsage入れような、忘れただけかも知れんが
いちおつ
>>10 読点の位置を間違えたな・・・。
分かりやすく言うと「去年、俺が司会を務めた友人の結婚披露宴」を元にした作品です。
皮肉も理解出来ない男の人って
正直その情報もらっても読む気失せるだけです^^;
ボスニアで体験した実話を元にしたあみドラSSです、なんてわざわざ言う奴はいるまい。
それと同じだ。
何が発想の元になったかを説明するなんてタイガーの髪一本ほどの意味もねえ
萌えればおK
萌えなきゃNG
さあこっちは全裸で正座して待ってるんだぜ
お前が司会した竜児と大河の結婚式のSSをkwsk
>>18 論旨の是非はともかく例えが怖すぎるんですけどw
SSじゃなくて、普通のやり取りの中で
クールポコネタやった書き込みって消えたの?
おまえが正座なら俺は逆立ちだっ!!!!
そうだな。ボディビル大会で実体験した北村SSなんて言う奴誰もいないよな
ではネタバレ解禁ということなので、投下。
以下「―My road, Your road and Our road―」
3月も終わりを迎えようとしている頃。
卒業式のシーズンも終わり、外は桜が乱れ咲いている。とあるホテルの、宴会場で、1つの結婚披露宴が執り行われていた。
―My road, Your road and Our road―
結婚式を先ほど終え、披露宴会場の控え室には竜児と大河の姿があった。
竜児は2年前に大河から譲り受けたブラックスーツ。
大河は竜児が作った、特製の純白のウェディングドレス。
竜児は大河と寄り添い、幸せをかみ締める。
ようやく、2人でまた、一緒に暮らせるのだ。
そう、あれからもう1年が経つ。出会ってからならば、2年。
「そろそろ、出会って2年も経つんだな」竜児が言う。
「あっという間、だったね」
「そうだな・・・。なんだか、全部懐かしいな」
そうだね。と、大河はつぶやき、今までの思い出を語り始めた。
「出会った時は、あんたはみのりんが好きで、私は北村くんが好きで」
「お前が俺の家に闇討ちかけて・・・なんて奴だよ」
「だけど、あんたはチャーハンを食べさせてくれた」
「そこから、ずっと互いの恋を応援して、でも俺達はずっと一緒にいた・・・」
「クリスマスに、私があんたが好きだと気づいて」
「でもお前はそれを封印しようと」
「それでも、やっぱりどうしても竜児が好きで」
「お前が修学旅行で、崖から落ちて」
「あんたが私を助けてくれて、その時に北村君だと思って言っちゃったんだよね・・・」
「それで、バレンタインの時に櫛枝がお前の本音を引きずり出して、」
「私は想いを伝えようとした」
「そこにお義母さんが現われて、俺は泰子にひどいことを言って、」
「それで、私達は逃げ出した。そして、その後に、やっと私は好きだと伝えて」
「俺はキスをした。そして、プロポーズして、告白した。順番滅茶苦茶だけどな・・・。」
「でも、私は嬉しかった。」
「その後、5人で話し合ったり、2人で泰子の実家行ったり」
「でも、その次の日に私はママの所に行って、しばらく会えなかった」
「でも、新学期に戻ってきてくれた。みんな・・・驚いてたな」
「色んなことがあったんだね」
「大変だったけどな・・・」
手に掴んだ幸せを、確かめるように2人は手を繋ぐ。
そして、顔を近づけ・・・
「竜ちゃ〜ん。そろそろ時間だよ〜」
「大河。時間よ」
2人の母親が現われた。慌てて顔を離し、立ち上がる。そして、腕を組み会場へと足を進める。
***
荘厳な造りの扉が開かれる。
竜児と大河のそれぞれの母親、そして竜児と大河は、会場へと入る。盛大な拍手で、家族、友人達、恩師達が迎えてくれる。
「高須夫妻の登場です!」
司会の、北村が言う。
会場の一番前に設けられた高砂。2人だけの特等席に、大河は竜児にエスコートされながら座る。
そして、会場が静かになる。北村が自己紹介を始める。
「本日の司会を務めさせていただきます、北村祐作と申します。
新郎である高須竜児さんとは、高校1年生からの友人でして、新婦の大河さんとは高校2年生からの友人です。
自己紹介はここまでにさせて頂き、開宴の挨拶をさせていただきます。
皆様、本日はお忙しい中、私の友人の結婚披露宴にご出席していただき、誠にありがとうございます。
遠路ご出席いただいたにもかかわらず粗酒粗肴で恐縮に存じますが、どうかごゆっくりお召し上がり下さい。
お礼かたがた披露宴開宴のご挨拶と致します。」
宴が、始まった。
新郎新婦の紹介では、所々ユーモアを効かせた北村で会場が沸いた。
「夫婦としては」初めての共同作業、ケーキ入刀では、竜児と大河の身長差でケーキが倒れないか心配し、無事に入刀を終えた時には誰もが胸をなでおろした。
そして、お色直し。
今は来賓の人たちは食事を始めているだろう。
その間に、竜児と大河はお色直しの為に一旦退場。
会場では、2人の友人、家族、そして恩師から送られた祝電が披露されていた。
友人は友の幸せを祝い、祈り。家族は、大切な家族の旅立ちを祝い。恩師は、教え子の幸せを心から喜び。それぞれの想いを込めて。
再び、会場の扉に2人で立った時には、竜児はタキシードに、大河はカラードレスに着替えていた。
似合う?ああ、すっげぇ似合ってるよ。
そんな会話を目でして、再び入場する。
キャンドルサービス。
会場に居る誰もが、笑顔で祝福してくれた。特に、2-Cのメンバー、そして独身(31)も。
北村の求めに応じて、独身が祝辞を述べる。
そして、竜児は緊張で固まる体をほぐす。誰にも分からないよう、小さく深呼吸。
北村に目配せをする。北村が小さく頷き、全ての照明が一斉に消える。
会場の誰もが、何が起きたんだと口々に言う。
その暗闇と喧騒が支配する世界の中、竜児はゆっくりと、立ち上がった。
***
「あれ・・・?竜児?」
暗闇の中、大河は竜児がいないことに気づいた。
式の最中に何処へ行ったのか。竜児は何をしようとしているのか。
何も分からない。戸惑いながらも、愛しい男の姿を求めて当りを見回す。
しかし、闇に埋もれて周囲は見えない。どこ?とつぶやいてみても、答えは返ってこない。
半ば呆然となりながら、必死で竜児を探す。
その時だ。
会場に据えられた、大きなスクリーンの前が急にラットアップされる。
竜児の姿を求める大河の目が、大きく見開かれる。
急に全ての照明が消えるのはおかしいな、とは思っていた。
スクリーンに映像を投影するためか、とも思った。しかし、普通は完全な暗闇にすることは無い。
なら、まさか停電かも、と思ったのだ。
だけど、騙された。完全に騙されたのだ。
誰もが驚いていた。まさか花嫁にまでサプライズ――知っていたのは、彼らだけか。
そこには、今日だけの特別な舞台が用意されていた。
重厚なドラムの音が、腹を震わせる。足元から伝わる振動が、全身の血を震わせる。
ドラムにギター、ベース、キーボード。
彼らは軽音楽部で構成されたバンドだ。大河も2年前のクリスマスに、手を組んだことがあるメンバー。
奏でているのは、数年前にヒットした、ポップ調のラブソング。
そして、彼らを率いて前に立つのは・・・
「竜児・・・!」
大河は瞬きすら出来ない。
誰あろう、竜児が。
卒業式に、結婚式の準備。多忙な日々を送っていたはずの竜児は、いつ練習をしたのだろうか。
優しげな前奏が終わり、彼は歌いだす。
世界にたった1人だけの、大切な人へ。
明日、今日よりも好きになれる 溢れる想いが止まらない
今もこんなに好きでいるのに 言葉に出来ない
君のくれた日々が積み重なり 過ぎ去った日々 2人歩いた『軌跡』
僕らの出会いがもし偶然ならば? 運命ならば? 君にめぐり合えたそれって『奇跡』
2人寄り添って歩いて 永久の愛を形にして いつまでも君の横で 笑っていたくて
アリガトウや Ah 愛してるじゃまだ 足りないけど せめて言わせて「幸せです」と
その歌とかぶさるように、竜児の写真が映し出される。目つきは小さい頃から悪い。
そして、高校1年生の終わりで、竜児の写真は終わり、今度は大河の写真が同じく高校1年生の終わりまで、映し出される。
そして、高校2年からは思い出の日々が。
高校2年生。そう、全てはそこから始まったのだ。
夏休みの、亜美の別荘で撮った写真。
――甘酸っぱいような、苦いような、そんな感情が込み上げる。
10月の文化祭で撮影された写真。当然、竜児が般若顔で疾走する写真も。
――あの写真を買ったとき、どんな気持ちで番号を書いたかを思い出す。
12月のクリスマスパーティで撮影された写真。
――あの日の夜を、思い出す。
1月の修学旅行での集合写真とスナップ。
――竜児が、自分を助けてくれた事をかみ締める。改めて、心から竜児が愛しいと思った。
2月、聖バレンタイン。バイト先での写真。
――あの日の逃避行と、竜児のプロポーズ。一瞬だけ、初めてのキスの感覚が蘇った気がした。
2-Cメンバーの集合写真。
――自分達の為に団結してくれた、かけがえの無い仲間に感謝する。ありがとう、と。
竜児は、その胸に秘めた熱い想いを歌へ託す。
この想いを大河に伝えたい、みんなに伝えたい、と。
2人ふざけあった帰り道 それも大切な僕らの日々
「想いよ届け!」と伝えた時に 初めて見せた表情の君
少し間があいて 君が頷いて 僕らの心 満たされてく愛で
僕らまだ旅の途中で まだこれから先も何十年 続いていけるような未来へ
そして、写真は3年生へと移り変わる。
勉強をする竜児。
友達と喋る大河。
2人で行った、花火大会。
2人で行った、夏祭り。
カラオケで熱唱する竜児。
記憶に残っていたもの、残っていなかったもの。様々な写真が映し出される。
画質や、サイズ、撮影媒体など、それぞれの写真に違いはあれど、どれも同じき大切な日々。
実乃梨が泣き、亜美も泣く。北村が、春田が、能登が、泰子が泣く。
そして、大河も。
まさか、こんな企画があるとは思いもよらなかったから。
全部全部、大事な思い出。私と竜児が歩んできた道。
――桜の舞う季節に出会い、互いの恋を応援し、それでも、どうしようもなく互いを大事に想いはじめ、惹かれあい、恋に落ちた。
そして、雪の舞う夜、婚約を交わした。
だけど、凍てつく朝日の下、私達はしばしの別れ。そして、また桜の舞う季節に再会し、大切な日々を積み重ね、竜児の誕生日を指折り数え、結婚指輪を貰った――。
それが、2人で歩んできた道。
それが、私の幸せそのものだから――
写真はフィナーレを迎えようとしていた。
大学の合格発表で喜ぶ2人。
卒業式。
亜美・実乃梨・北村・大河・竜児の5人。
能登・春田・奈々子・麻耶を含めた9人。
大河と、その家族。
竜児と大河と、それぞれの家族の集合写真。
竜児・大河・泰子・園子・清児の5人。
色んな写真が映し出されていく。
そして、最後に。
「結婚おめでとう!」と。
大河の目から、滝のように涙がこぼれ出す。
歌も、いよいよ終盤に入る。
うまくいかない日だって 2人で居れば晴れだって!
喜びや悲しみも 全て分け合える 君がいるから 生きていけるから
だからいつも そばに居てよ 『愛しい君』へ 最後の一秒まで
明日 今日より笑顔になれる 君がいるだけでそう思えるから
何十年 何百年 何千年 時を越えよう
――君を愛してる・・・
誰もが感激で泣いていた。
その中、竜児は、竜児は――
「大河」
愛しい女の名を呼ぶ。
「プロポーズもした。結婚式も挙げた。でも・・・でも、もう一度、言わせて欲しい」
大河は、涙に濡れる顔をあげる。
「俺と・・・結婚して下さい」
――この世界の誰1人、見たことが無いものがある。
北村が、目頭を抑え、隠しようのない嗚咽をこらえながら、大河にマイクを渡す。
「お前の・・・番だ・・・」
涙を拭き、マイクを握る。
そして、息を吸う。
「はい・・・。あなたに逢えて、本当に良かった・・・。嬉しくて・・・言葉に出来ない・・・」
瞬間―。
何かが爆発したかの様に拍手が鳴り響く。
その後、両親への花束贈呈・手紙朗読、両家の謝辞、新郎新婦の謝辞、そして二次会。
全てを終えた2人は、舞い散る桜の下、家族と友人達に見送られ、新婚旅行へと旅立った。
行き先は、誰も知らない。そう、2人だけの秘密だ。
――この世界の誰1人、見たことが無いものが、かつてあった。
それは優しくて、とても甘い。多分、見ることができたなら、誰もがそれを欲しがるはずだ。
だからこそ、誰もそれを見たことがない。
そう簡単には手に入れられないように、世界はそれを隠したのだ。
手に入れるべきたった1人が、ちゃんとそれを見つけられる。
だから、竜児は見つけた。大河も見つけた。
「なぁ、大河」
「ん、何?」
「あのさ――、ずっと、ずっと一緒にいような」
「・・・うん!」
End
以上です。
7巻でのクリスマスパーティでの大河と対になるように書いてみました。
SSはいいんだけど歌詞勝手に引用するとアホがわくからそれだけが残念
GJ
歌詞は飛ばしちゃったけどねwww
10巻読んだ後だとこれが原作に入ってても違和感ない感じに思えるのは俺だけ?
>>27 GJっす。
俺も初投稿します。
ある洋楽の和訳を見て思い付いたモンなんですがって、題名でもろばれですね。初投稿なのでどうかご容赦を!!
竜児×大河で、題名は
「私を月まで連れてって」
です。
よろしくお願いします。
12月も近づき、吹き付ける風が冬を感じさせる寒い夜。大河のワガママで向かったコンビニからの帰り道。
外灯にその精緻な輪郭を照らし出されたお人形のような少女の口から
「ねぇ、竜児。私、月に行きたい。私を月まで連れていきなさい。」
などと訳のわからない言葉が紡がれた。
「はぁ?」と返すなり電光一閃、鋭い目潰しが凶悪な光を放つ眼を貫く。
あまりの痛みにうずくまり、しゃがんだ視線から少女へ繰り出される眼光は「仕返しに穴という穴すべてを刺し貫いてやろうか?」などと思っているわけではない。痛いのだ。ただ猛烈に。
「なんなんだよ、いきなり!!お前が訳のわかんねぇ事を言い出すから…」と言いかけて止めた。目の前の少女から溢れ出るオーラ?はまさに野獣のそれで、「次なんか言ったら、目だけじゃすまないわよ。」と明確に伝わってくる。
「ガタガタ言わずに、ご主人様の言うこと聞きなさいよ。この惰犬!」
俺は日々怠けもせずに、それなりに頑張っているつもりなのだが…。これ以上逆らっても我が身を危険に晒すだけだろう。しかしあまりにも要領を得ない内容だ。命を懸けて尋ねてみる。
「月って夜空に輝いてるあの月だろ?行きたいって言ったって、おまえ、さすがに無理だろう。」と罵声と暴虐を覚悟で言ってみるが、返ってきた反応は予想とはまったく真逆のもので、
「そう…。やっぱり無理だよね、ごめん…。」
そんな簡単に、アッサリと折れた大河のその顔はあきらかに哀しげで、そんな顔を見せられて、放っておける訳もなく…、
「そんな事言い出すには、何か理由があるんだろ?月までは無理だが、俺が行けるとこまでなら連れてってやるぞ。明日は土曜だ、多少の遠出も出来る。電車だろうが、バスだろうが、タクシーはちょっとアレだけど…まぁ少しぐらいなら大丈夫だろう。どうだ?どこに行きたい?」
そんな俺の言葉に、大河は見るみると笑顔を取り戻してくれる。
「私、星が見たいの。綺麗なのたくさん。星に囲まれて遊んでるみたいな気分になれるほど、たくさんの!!」
なんて、瞳を輝かせながら無邪気な笑顔で言ってくる。そして…
「竜児がいつも星の話してくれるでしょ?だからすっごく興味があるの。月まで行けば外灯の下の道路なんかで見るよりも、もっともっと綺麗にたくさん見れると思ったから…。」
と言って、また少し哀しげな瞳に戻る。
本心が何となくわかった気がした。
北村と兄貴の一件で、大河の心はまた居場所を見失ってしまったのだろう。もしかしたらこの大地の上からも…。それでも強くあろうとする大河の心は、上を、空を目指した。だからその為に、月を、星を求めた。
ならば俺のすることはひとつだ。
並び立つ宿命たる虎が、空を飛ぶことのできない虎が、飛ぼうともがいているのだ。それに気付いた俺が、空を飛べる竜が背中に乗せてやれば良いのだ。
「大河。ここから30分ぐらい歩いたところに神社があるだろ?」
大河は少し顔を上げ、
「あのちょっと山になってるとこ?」
と話を聞いてくれている。
「そう。その神社の上にな、あんまり知られてないんだがもう一つ祠があるんだよ。そこはな、さらに高くなってるし周りに外灯もほとんど無い。だから人もほとんど来ないんだが、実はベンチも自販機もあるちょっとした公園になってるんだ。」
「うん…。」
「人も来ないし外灯もほぼ無いから、かなり星が良く見える。さらに街も一望できる。夜景スポットとしてはちょっとした穴場なんだ。今から行くか?」
「うん!!」
カバッと勢い良く、完全に竜児の眼を見る。その瞳は先程よりもなお輝きを増し、竜児はどの星よりも綺麗なモノを見つけた気がした。
その時、ふと竜児は考え込んでしまう。
本当ならばそこは、いつか櫛枝を、好きになった人を連れて行こうと秘密にしていた場所だった。
しかし何故だか、どうしても大河を連れて行きたかった。
その答えは大河の瞳に映る、世界で一番綺麗な星を見て理解した。でも、竜児はその答えを飲み込む。心の奥底に。まるで触れてはいけない物のように…。思い出してはいけない物のように…。
「ハッーーークショイッ」
と豪快な大河のくしゃみで我に返り、巻いていたマフラーを大河の首に巻き付ける。
顔を赤らめながらされるがままの大河から、
「行こう、竜児♪」
と、ビシッと手が差し出された。
あまりの勢いに竜児は思わず手を差し出してしまう。
「もうっ、寒いんだから早く手を繋ぎなさいよ!!」
と、急かされ、握る。
大河がその手を強く握り返す。
「ずっとこのまま、変わらずに私のそばにいてね…。」
しかし竜児は大河のあまりの握力に驚き、その言葉を聞き逃す。
「えっ?なんか言ったか?」
「うっるさい!行くわよ駄犬!!」
ほのかな外灯のなか二人は歩き出す。
-竜児は私にとって唯一のかけがえの無い存在。私は竜児が…-
-大河は俺にとって唯一の…-
お互いの気持ちはまだ伝わらない。
だが胸に秘めた思いはひとつ…。
END
あとがき
携帯からだし、初投稿だしつたないもんですみません。
読んでくれた方、ありがとうございました。
>>43 GJ、GJ
ちなみにタイトルで別に分からなかったんだけど
曲ってSail to the Moon?
fly me to the moonじゃないかな
>>44-46 ありがとうございます♪
元の洋楽は45さんの仰るとおり、「FLY ME TO THE MOON」です。
最近友達がエヴァのパチンコにはまってて、懐かしくて聞いて和訳を調べたら、大河のクリスマス前ぐらいの気持ちに合うかもっと盛り上がってしまって書いちゃいました。
いゃぁ〜もうホント、誉めていただいてありがとうございました♪
奈々子様が能登を誘うとか
月に行くとか松澤を思い出すな
GJ!
終わり方が綺麗で良かったぁ〜
松澤w
懐かしいな。私は相馬派ですがね。
>>51 田村君が懐かしいか……
今奥付け見てみたらもう完結したのって4年も前のことなんだなー
まあまっちゃんは俺の嫁だが
53 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 08:36:33 ID:P4Wj+Ln/
う〜
マンボッ
田村君のss書きたいけど、書き難いんだよなー。
そもそも俺は田村というやつを知らないんだが、おもしろいのか?
わたしたちの田村麻呂くん
もともと相馬好きが集まってたんだよここにはな
まぁすっかり大河に染められちまった訳だが
広香たんと亜美たんが出会う話が読みたいな
相馬たんの黒パンツをクンカクンカしたい
>>56 面白いよ
ぶっちゃけ好意が一貫してた田村の方が好きだ
62 :
SL66:2009/03/11(水) 21:43:36 ID:PlkfLlp4
2時間20分後の午前0時に、「横浜紀行」の続編である、「我らが同志」(前編)を、
52レス(118kB)でお届けします。
おおっ
期待してますっ
>>62 ちょwww52レスwww
マジパNEEEEEEEEEEE!!!
全裸で待喜してますw
あみドラ来るコレ
全裸で精進潔斎して待つぜ
66 :
ユートピア:2009/03/11(水) 22:02:09 ID:K/dEhNt4
>>62 自分はあなたの「川嶋亜美の暴発」を読んであみドラを書き始めました。
情景描写や心理描写など、本当に凄いです。
「横浜紀行」の続編、楽しみにしてますね。
連投規制に巻き込まれないように支援必須だな
>>62 キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
やべぇよアニメ始まるまでに読みおわんなそうなボリュームww
期待
大量投下超期待
ひょーー!!
0時がまちどおしいい!
読み耽っていたらいつの間にかアニメが終わっていた…なんて事のないようにしないと
待ってました!!!
今夜は眠れない!!!
74 :
SL66:2009/03/12(木) 00:00:58 ID:PlkfLlp4
それでは、時間になりましたので、投下を開始いたします。
今回は大学での話が中心になりますので、オリキャラ(上級生)が登場します。
また、サークル活動にありがちな上級生との確執等のトラブルもあります。
エロもB止まりですが、一応はありです。
では、投下を開始します。
新入生の竜児には、もはや知るよしもないのだが、一昔前まで、大学の学食といえば、薄汚れたコンクリー
トの壁に煤けた天井、今や場末の定食屋でもお目にかかれそうにない安手のスチール製テーブルとパイプ椅
子が殺風景に並んでいるというのが相場だったらしい。
しかし、昨今は、何ごともファッショナブルでなければならないという風潮でもあるのか、国からの乏しい
予算に毎度毎度悲鳴を上げているはずの竜児たちが通う大学も、伝統的ではあるが、うらぶれた感じは否め
ない学食を数年前にモダンなカフェテリア形式に刷新した。
壁も天井も白一色で統一され、ガラス張りとでも表現できるほどに、屋外に面した箇所はことごとくガラス
で覆われたことにより、たとえ曇天の日であっても、フロア内には明るい雰囲気に満ちていた。
テーブルも椅子も白一色で統一された。それもホテルのレストランでのものと見紛うような、脚部にはアラ
ベスクをモチーフとしたファンシーな意匠がそれぞれに施された丸テーブルと椅子とが、整然と並べられて
いる。
さらには、窓辺にはベンジャミンらしい本物の観葉植物のおまけ付きだ。
もちろんエアコン完備で、快適なことこの上ない。
竜児は、エアコンどころか扇風機すらない古色蒼然とした理学部旧館の惨状と、この至れり尽くせりの学食
とを見比べるにつけ、富の公平な分配というものが如何に解決困難なテーマであるのかを思い知らされるのだ。
この学食と、ペイントどころかモルタルすら所々が剥げ落ちている理学部旧館の老朽化ぶりとの差異は、社
会の明と暗、陽と陰、持てる者と持たざる者との悲哀を想起させ、正直なところ理学部の学部生としては面
白くない。
本学は、理学部も看板学部であったはずなのだが、理学部の教授陣は政治的な駆け引きが苦手なのだろうか、
といった下衆の勘ぐりまでしたくなる。
「…ま、いっか…」
一学部生が勘ぐったところで事態は何も変わらない、という当たり前のことに思い至り、竜児は苦笑した。
投資とその効果といったテーマは、経済学部の連中にでも任せておけばいい。マクロ経済学は数学と密接な
関係があるにはあるが、それは今の竜児にとって興味の対象外だ。
それに白というのは、いずれは薄汚れ、うらぶれていくことを運命付けられた色でもある。偏差値相応に一
応のモラルを備えている本学の学生といえども、公共物の扱いはそれほど丁寧とはいえない。彼らの扱いに
よって、数年後、この瀟洒とも表現できそうな学食がどのような惨状を呈しているか、それは竜児にとって
も想像に難くなかった。
実際、既に白い壁の所々には、何かの腹いせなのか、土足を蹴り込んだ跡が靴底の形そのままにシミとなっ
て残っているのだ。
「さて、弁当でも食うか…」
面倒臭いことは抜きにして、観葉植物の傍ら、窓際の丸テーブルの席に座り、竜児は弁当箱を開けようとした。
当の丸テーブルの席には、亜美が竜児と差し向かいで座っており、同じく弁当箱を空けようとする。
学食の料理を食さず、敢えて自前の弁当を持ち込むというのは、はっきり言って、ちょっと目立つ。
実はこの学食、インテリアこそ、どこぞのリゾートホテル顔負けだが、肝心の料理は全く刷新されていない
らしい。
麺類のスープは業務用の濃縮されたものを水で薄めただけ。パスタは煮崩れる寸前まで茹だっているし、ソー
スも油がギトギトのいかにも不健康そうなものが掛けられていた。
丼物の具は、作り置きのせいなのか、何だかレトルトみたいに味気がない。カツ丼なんかは、作り置きのカ
ツの上に、玉ねぎを卵で和えて醤油味にしたものをぶっかけておしまいという具合。もちろん玉ねぎと卵の
和え物も作り置きだ。
さらに悪いことに、全ての料理に化学調味料がどっさりと使われているらしく、竜児も亜美も、一度食べて、
その後味の悪さに辟易した。
従って、高校時代に引き続き二人とも昼は弁当ということに相成った。
持参した弁当を学食で広げるのは少々肩身が狭いが、学食以外の教室等では飲食が禁じられているのだから
仕方がない。
しかし、竜児たち以外にも、弁当を囲んでいる学生、特に女子学生が、ほんの数人ほどだが居ないわけでは
なかった。やはり、あの味に馴染めない層は僅かながらも存在するらしい。何よりも、油ギトギト、化学調
味料どっさり、ついでに隠し味の砂糖も使いすぎの疑惑が濃厚な学食の料理ばかり食っていたら、いずれどっ
かがおかしくなりそうだ。
「今日のお弁当は、なぁ~に?」
軽い鼻歌混じりの口調で、亜美は弁当箱の蓋を取り、にんまりとする。
「へぇ、豆のご飯だぁ。まだ、生のグリーンピースが手に入ったのねぇ」
亜美の指摘がうれしかったのか、竜児は前髪を人差し指に、くるくると巻き付けた。竜児なりの照れ隠しの
つもりなのかも知れない。
「おう、スーパーかのうやで土曜日にゲットしておいたんだ。おそらく、今シーズン最後の豆ご飯だろう。
こいつだけは冷凍の豆ではうまくないからな」
その豆ご飯に添えられたおかずは、ハマチの照り焼きに、塩茹でしてほんの少しのバターを和えたグリーン
アスパラガス、出汁巻き卵、ひじきの煮物、それに高野豆腐だ。
「いつものことだけどよ、できるだけカロリーは抑えて、それでいて高蛋白になるようにしたつもりだ」
その竜児の説明に亜美は軽く「うん…」と言って、頷いた。それが、亜美なりの竜児への感謝の示し方でも
あった。
弁当箱の形状と大きさは違うものの、内容が全く同じ弁当を第三者が見たら、全員が全員、亜美が竜児の分
まで作ったものと思うことだろう。その作り手が、数学科に籍を置く三白眼の男子学生であるとは夢にも思
うまい。
ただ一人、竜児や亜美と同じ高校の出身である北村祐作を除けば…。
竜児とは別の意味で鈍感な北村は、この学食の料理についてもさして不満はないようで、毎日、律儀と言え
るほどに、カレーか、中華丼、餃子ライス等を食べていた。
竜児は、北村本人が望むのであれば、そのための弁当を作ることもやぶさかではないのだか、当の本人が希
望しないのだから致し方ない。相手方が望まぬ行為は『お節介』というものだ。
「そういえば、北村は? いつも、だいたい俺たちと一緒に昼飯を食うよな…。今日はどうしたんだ?」
亜美は、何かを思い出したかのように弁当箱の蓋を持ったままの手を止めた。
「ああ、そうだ、祐作は何でも他の大学の学生を連れてくるから、ちょっと遅れるって言ってたような…」
「何だよ、曖昧だな。その他の大学の学生って誰なんだよ、俺たちも知っている奴なのか?」
「あたしに言われても知らないわよ…。まぁ、ちょっとはうろ覚えかもしれないけど、祐作だって、さっき
あたしが言った以上のことは言わなかったんだからぁ!」
わざとなのか、ちょっと頬を膨らませ、まなじりを心持ちつり上げて竜児を見る。
竜児が見慣れた、ある意味では亜美の素の表情の一つでもあった。別に本気で怒っているわけではない。こ
れも亜美にとっては竜児に対するコミュニケーションの一種なのだろう。
「ほんじゃ、北村を持っていてもしょうがなさそうだから、食うか…」
竜児のその一言を合図に、二人は弁当に箸を付けた。
亜美は、「豆ご飯だぁ~い好き」と呟いて、グリーンピースの彩りが鮮やかなご飯を箸で掬って口にした。
そして、満足そうに、にっこりとするのだった。
竜児も自身の弁当を口に運ぶ。たしかにできは悪くない。少しだけ餅米を混ぜたのがよかったのだろう。何
しろ、このグリーンピースの彩りは、冷凍品では絶対に出せない。
「川嶋に喜んでもらえると、俺も作り甲斐があるってもんだ」
亜美は、高野豆腐を一切れ口に運んで、「うふふ…」と、ちょっと意味ありげに含み笑いをしている。
それにしても…、今日の亜美はいつにも増して機嫌がよさそうだ。
「でも何だよ、変ににやにやして気持ち悪いぞ。どっか具合でも悪いのか?」
理由は竜児にも分かっていた。亜美は、昨日の横浜でのデートの余韻に未だ浸っているのだろう。
「失礼ねぇ、具合が悪いとか言うんだぁ~」
「そりゃ、意味もなくにやにやしてたら、どっかおかしいんじゃないかと思われたって仕方ないだろ」
「ふ~ん…」
亜美の目が意地悪そうに細められ、その口元が「にっ!」と左右に心持ち引き延ばされる。これも亜美にとっ
て、素の表情の一つである性悪笑顔のお出ましだった。
「そっかぁ~、高須くんは、亜美ちゃんがのおつむがちょっとお目出度いとかぁ、失礼なことを思ってるん
だぁ~。ねぇ、そうなんでしょぉ?」
「別に、そこまでは思ってねぇよ…」
「そこまで? じゃ、多少はおかしいと考えてはいるわけだぁ~。高須くんって、何げにひどくない?」
亜美は、箸を持った手をふと止めて、竜児に妖艶な眼差しを送ってくる。竜児の表情を観察しながら、その
反応を楽しんでいるのだ。
竜児は、それを無視して食事に集中しようとするが、亜美のまとわりつくような視線が気になって仕方がない。
「なぁ、川嶋。俺の顔ばっかじろじろ見てねぇで、さっさと飯食え。行儀が悪いじゃねぇか」
「ふっふ〜ん、あたし止めないよ。高須くんがあたしのことを頭がおかしいとか失礼なことを思っている以
上、それに関する釈明を聞くまでは、亜美ちゃんは、高須くんをじっと見ているからね」
「勝手にしろ」
竜児は、亜美を無視し、うつむいて弁当を食べることにした。俗に言う『犬食い』で、食事中に人の顔をじ
ろじろ見る以上に無作法とされる行為だが、亜美の視線から逃れるには、こうでもするしかない。
しかし、亜美は、うつむいている竜児の顔を覗き込むように、白くなめらかな頬を近づけてくる。
そして…、
「ねぇ〜ん、た・か・す・く・ん、亜美ちゃんの目をまっすぐ見られないのは、亜美ちゃんを異常扱いした
ことを、本心では後ろめたいと思っているからなんだよねぇ? どう、図星ぃ?」
竜児の耳元で妖しく囁き、その耳朶に、ふぅ〜っ、と甘い吐息を吹き込んでくるのだ。
--いかん、耳元と股間がむずむずする。
「あ~っ、もう面倒臭ぇ! おちおち飯を食ってもいられねぇ。分かった、川嶋は正常、どこもおかしく
ねぇ。これでいいだろ?」
その一言で亜美は相好を崩し、「にやり」と露骨な笑みを浮かべた。
竜児を追いつめる新たな術策を思いついたらしい。
「そうね、あたしは正常。ということは、なぜあたしが嬉しいのか、その理由が分からない高須くんの方が
異常だってことになるわね。いい?」
「よかぁねぇよ、どこでどうそんな理屈になるんだ? 俺だって正常だ。勝手に異常扱いするな」
「あら、異常な人ほど、自分は正常ですって言い張るものよね? う~ん、何だか、亜美ちゃん心配になっ
てきちゃったぁ。高須くんって、家事と勉強のし過ぎでおかしくなっちゃったんじゃなぁ~い?」
「バカ言え、忙しいのは認めるが、頭がおかしくなるほどの忙しさじゃねぇよ」
「なら、正常であることを、ちょっと証明してもらおうかしら。昨日の港の見える丘公園で、高須くんは、
あたしに何を誓ったのぉ?」
亜美の言う『誓い』とは、亜美へのプロポーズと、亜美に永遠の愛を誓うというものだ。
誓いの内容自体に異論がなかったとしても、拷問まがいの強迫で言わされたというのが内心は面白くない。
こめかみに亜美の拳骨がねじ込まれた時の電撃のような痛みは、今も記憶に鮮やかだ。
それに、隣のテーブルに座っている数人の女子学生が、さっきからちらちらとこちらを窺っている。
こんな状況で、『プロポーズ』とか『永遠の愛』なんて言える訳がない。
「誓い、何じゃそりゃ?」
とにかく、しらばっくれる。曖昧な態度でお茶を濁してごまかすに限る。
それも北村が来るまでの辛抱だ。北村がやって来たら、話題を北村と北村が連れてくるという他の大学の学
生へ強引に切り替えてしまえばいい。
「すっとぼけるんだぁ~、高須くんは、亜美ちゃんとの誓いを!」
亜美の表情が急に険しくなった。眉と目尻がつり上がり、口がへの字に曲がっている。
『いかん、かえってドツボに嵌まったか?』と、竜児は思ったがもう遅い。隣のテーブルからは先ほどの女
子学生達が「ほらほら、痴話喧嘩が始まるわよ」と、意地悪くひそひそ話をするのが聞こえてくる。
「いや、別にすっとぼけていねぇけどよ…」
「記憶にないの?」
「どうなんだろうな…」
額に汗を滲ませて曖昧な態度で逃げ切ろうとする竜児を、亜美は不機嫌そうに睨み付けていたが、それも束
の間、すぐに大きな瞳を邪険そうに半開きにし、口元を「にやり」と、歪めた。
竜児をさらに追い込むつもりなのだろう。
「高須くんは記憶力に問題があるようね。もう一度、昨日の誓いを大きな声で叫んで、その文言と意味を脳
細胞に刻みつける必要があるわ。ねぇ、あたしが先に言うから、あたしの言ったことを復唱してくれないか
しら。昨日のように…、それも、この学食に響き渡るくらいの大きな声で」
竜児は、思わず「えっ!」と絶句して周囲を見渡した。各々のテーブルには、多くの学生たちが居た。学食
は満席と言ってよい。ここであの誓いを叫んだら、学内中の笑い者だ。
「バカ、言えるか、こんな衆人環視の中で、そんなこっぱずかしいこと!」
「こっぱずかしい、っていう自覚はあるんだぁ〜。なぁんだ、憶えているみたいじゃない。でも、あたした
ちの神聖な誓いを『こっぱずかしい』と貶めた罪は重いわね…」
「だから何だよ」
亜美の「うふふ…」という囁くような笑いが不気味だ。
「罰として、やっぱりあの誓いを叫んでもらいましょうか、ねぇ高須くぅ〜ん」
--うへ。
いやな臭いのする冷や汗で、腋の下がじわっと湿ってきた。おそらくは、竜児の顔面は血の気が引いて青ざ
めているに違いない。当面の救いの主であるはずの北村祐作は未だ現れる気配がない。
「そ、それだけは勘弁してくれ。川嶋、分かった、俺が悪かった、ごめん、ほら、この通り謝るから…」
竜児は両手を合わせて、亜美を拝むようにして、頭を垂れた。
「ふふっ、じゃぁ、誓いを叫ぶ代わりに、今度の日曜日も、どっかにお出かけ。これで勘弁してあげる」
亜美は、「してやったり」とばかりに、にんまりとしている。
「どっかって、どこだよ?」
「それも高須くんが考えるの。亜美ちゃんへの謝罪の気持ちも込めて、あたしが喜びそうなところを見繕っ
てちょうだい」
「お、おぅ…」
気抜けしたような返事の竜児を見つめながら、亜美は嬉しそうに笑っている。
結局、亜美の術中に嵌まり、いいようにしてやられてしまった。そもそも、この種の言い合いで竜児は亜美
に勝った試しがないのだから仕方がない。
隣のテーブルに陣取っている女子の一団が、にやにやしながら見ている。亜美との会話の内容をどこら辺り
まで把握されたかが気にはなる。亜美が『デート』や『プロポーズ』等のキーワードを一言も漏らしてはい
ないことが、僅かながらの救いだろうか。竜児を翻弄しながらも、こういう点は抜け目がないのだ。
「いやぁ、高須に亜美、待たせたな!」
ざわついた学食内でもよく響きそうな声が、竜児と亜美の耳朶を打った。
「遅いぞ、北村」
亜美に問い詰められていた時に来てくれてたら、という恨めしさを込めて、竜児は声のする方を見た。真っ
赤なポロにベージュのチノパンを着た北村祐作の姿がそこにあった。色の取り合わせとしては理にかなって
はいたが、いかんせん派手過ぎるな、と竜児は思った。それでも、似合いまくっているのだから恐れ入る。
そして、その北村の右脇に控えている人物は…。
「うわっ! 櫛枝? 櫛枝じゃないか!」
推薦入学で他県の国立大に体育専攻で進学した櫛枝実乃梨の姿がそこにあった。
髪型は高校時代そのままで、鮮やかなオレンジ色のTシャツに真っ赤なデニムという出で立ちだ。
真っ赤なポロの北村以上に派手だが、きらきらと太陽のようにまばゆい実乃梨には不思議とマッチする。
ネイビーのスタンドカラーシャツにチャコールグレーのデニムの竜児や、白黒の細かい市松模様のブラウス
に黒いコットンパンツの亜美とは対称的だ。
「おいっす! 高須くんにあーみん、お久!」
実乃梨は、くるくるとフィギュアスケーターのようにスピンを決めると、弁当を突ついていた竜児と亜美に
敬礼し、そして、多分、竜児だけに向けてウインクをした。
「お、おう…」
明け透けに馴れ馴れしい実乃梨の態度に竜児は面食らった。何せ、実乃梨とは『ジャイアントさらば』した
間柄。要は、竜児を『振った』相手なのだから。
「げ、元気そうだな…。櫛枝」
袖にされた相手だけに竜児の胸中は複雑だ。会えて嬉しいのは確かだが、『何で今頃?』という不可解な気
分も否定できない。
「元気、元気! それも高須くんに会えたから、元気百倍、ふぁいと〜ぉ、いっぱぁ〜つ!! なのさっ!」
実乃梨は屈託なく笑っている。
竜児は内心気が気ではない。何せ、竜児の傍らには亜美が座っているのだ。
案の定、亜美は、「むっ」とばかりに頬を膨らませている。修学旅行で大喧嘩したその相手が突然やって来
たのだ。面白いわけがない。その後、和解したようだったが、結局は表面的なものだったのかも知れない。
何よりも、かつて竜児の恋愛対象であったというのが気に障るのだろう。
しかし、その不満げな表情を、亜美は作り笑いで押し殺した。いつぞや、当の実乃梨に貶された『ウソのツ
ラ』でだ。
「あら〜、実乃梨ちゃん、お久しぶりぃ〜。でも相変わらずねぇ、派手な服装に、そのオーバーアクション。
まぁ、実乃梨ちゃんらしいって言えばそれまでかしらねぇ〜」
--か、川嶋の奴、櫛枝を挑発してやがる。
実際には、亜美に実乃梨を挑発する気はなかったのかも知れない。しかし、実乃梨がウザイ相手であること
には間違いなく、その本心が嫌味となって言動に透けていた。
「おうよ! おいら青春真っ只中、元気一杯、ド派手なファッションも若さの証拠でぃ!! 黒なんてババ
臭い色なんざぁ着てられねぇのよ」
実乃梨は啖呵を切るようにそう言うと、笑顔ながらもレーザーのように鋭い視線を亜美にぶつけ、亜美への
対抗心からか、ずいっ! と胸を張った。
そのド派手なTシャツの胸部には、実乃梨が通う大学の名が黄色いロゴででかでかとプリントされている。
--く、櫛枝もなんてことを言いやがる。今日の川嶋は黒着てるんだぞ。
一方で、露骨に『ババ臭い』と言われた亜美は、眉をぴくぴくと痙攣させて実乃梨を睨み付けた。
元々、派手な配色は好まない亜美だが、地味な服装に徹するのは、変に目立って他の学生を刺激しないよう
にとの配慮からだ。それを面と向かって腐されたのだからたまらない。
「あらぁ〜、自分の大学の名前が堂々と書いてあるシャツを着て、ここに来るなんて、さっすが実乃梨ちゃ
ん。デリケートな亜美ちゃんにはできない芸当だわぁ〜」
亜美は、嫌味たっぷりの猫なで声で、実乃梨を『がさつ』と貶めた。
磊落な実乃梨のドングリまなこに敵意が宿り、それが亜美の白い面相へと照準される。
双方の口調こそ辛うじて穏やかではあったが、互いの目線の交錯で火花が散るような緊迫感がその場には漂
い始めていた。
「まぁ、まぁ、二人とも、久しぶりだからか、会話が弾んでいるな」
北村が、傍観者っぽい立ち位置で、実に呑気なことを言っている。もっとも、これはこれで、北村一流の緊
張緩和策でもあるのだが…。
「そういえば、何故、櫛枝がここに来たかの説明が未だだったな。櫛枝は、今度の土曜日の午後に俺たちの
大学の女子ソフトボール部と練習試合をするから、その打ち合わせに来たそうだ。で、そのついでに俺たち
に会いに来てくれたんだよ」
北村の説明に、実乃梨は「おうよ!」と、誇らしげに顎を上げた。
「練習試合は、郊外にあるうちの大学のグラウンド。大橋の町からも近いから、今度の土曜日はちょっと見
に行かないか?」
「そういうこってぃ、高須くんもあたしの試合を見に来ておくんなまし!」
言うや否や、実乃梨は人差し指を、ぴしっと竜児に突きつけた。
「お、おぅ…」
険悪な雰囲気にもかかわらずコミカルな実乃梨の立ち居振る舞いに、不覚にも相好を崩したのがいけなかった。
ガツン! という衝撃と、間髪入れず襲ってきた鋭い痛みに竜児は「うっ!」と、息を飲んだ。
亜美が、じろりと睨んでいる。その亜美に思いっきり足を踏んづけられたのだ。
「あらぁ〜、高須くんだけじゃなくって、あ・た・し・も、試合を見せていただこうかしら。応援もしなく
ちゃいけないし…。ただしぃ、自分の大学の応援だけどぉ〜」
そう言って、またも実乃梨を睨み付けた。
「おうよ! 望むところでぃ!! あーみんのツラを見たら、こっちも敵愾心が燃えるってもんよ! あー
みんの応援が虚しくなるように、手加減抜きでコテンパンにしてやるぜぃ」
実乃梨は右腕を曲げ、力こぶを見せつけた。上腕には男顔負けの筋肉が盛り上がる。
「あ〜ら、脳みそまで筋肉でできている人は、力こぶもすごいわね」
罵倒に等しい露骨な挑発で、実乃梨の表情がいっそう険しくなった。
「あーみん、そりゃどういう意味だ?」
「あーら、誉めたのよ。実乃梨ちゃんはアスリート、全身が筋肉のかたまり。これって誉め言葉でしょ?」
しれっとした顔で宣う亜美に、実乃梨が怒りを顕わにする。
「喧嘩売ってんのか? いい加減にしろ、この厚化粧!」
亜美も負けてはいない。眉間に皺寄せ、大きな瞳を最大限に見開いて、実乃梨を睨み付けた。
「失礼ねぇ、ナチュラルメイクよ、この脳みそ筋肉女!」
「へん! マニキュア塗ったくった爪しやがって、ろくに料理もできねぇバカ女が偉そうに。その弁当だっ
て、高須くんにこさえてもらったんだろうがぁ!!」
痛いところを突かれたのか、亜美の表情が鬼か般若のように険悪になった。
「うるさいわねぇ! あたしだって料理ぐらいするわよ。それも高須くんと一緒に晩ご飯作ってんだから、
参ったかぁ! この体育バカ!!」
「何だ、結局、高須くんにおんぶに抱っこじゃん。話にならねぇーや、女として失格!!」
「何ですってぇ、きぃーっ!!」
もはや遠慮も自重も何もない。双方とも敵意をむき出しにして罵り、睨み合う。
一触即発、何かのはずみで取っ組み合いにすらなりかねない剣呑な雰囲気だ。
「まぁ、まぁ、亜美に櫛枝、落ち着いてくれ。ここは本学の学食、公共の場だ。その点をまずはわきまえて
くれ」
さすがにまずいと思ったのだろう。北村が、亜美と実乃梨の間にさりげなく割って入ってきた。
そして…、
「じゃ、俺は、櫛枝にうちの大学を見せて回るから」
言うが早いか、亜美と睨み合っている実乃梨をその場から引き剥がした。それも、落ち着き払って、すまし
たような淡い笑みさえ浮かべながら、実乃梨を羽交い締めにしている。態度や表情に余裕すら窺わせながら
荒っぽいこともやってのけるのが、高校時代に生徒会長だった北村祐作である。
「ちょ、ちょっと、北村くん、あの不埒な厚化粧の唐変木を懲らしめなくっちゃぁ! 殿中、殿中でござる!
ぢゃなかった、天誅ぅ、天誅ぢゃあっ!!」
不満を丸出しにして抗議する実乃梨を、
「まぁ、まぁ、櫛枝。とにかくこの大学を案内するから…」
と、人畜無害そうな笑顔でなだめ、その実乃梨を引きずるようにして竜児たちの前から立ち去って行った。
生徒会がらみでは暴力沙汰寸前の様々なトラブルがあったのだろうが、それらをそつなく収拾してきた手腕
は確かなものだったようだ。
「助かった…」
亜美と実乃梨の剣呑な睨み合いが収束した安堵感から、竜児は深くため息をつき、亜美を見た。
亜美は、怒りと興奮から目を大きく見開いて、唇をわななくように震わせている。
「久しぶりだってのに、お前は…、櫛枝を挑発しやがって」
亜美は、詰る竜児を大きく見開いた瞳で、じろりと一瞥した。本来なら魅力的であるはずのその瞳は、どこ
に焦点を結んでいるのか定かでなく、薬物依存患者もかくやのサイコっぷりだ。
「何よ、あ、あっちの態度だって、む、むかつくじゃない!」
亜美は、喚くようにそう言うと、ハマチの照り焼きに『親のかたき』とばかりに箸を突き刺した。
その箸が、突き刺した勢いでしなっているのを見て、竜児は「うへっ…」と、絶句する。
隣のテーブルから例の女子学生の一団の姿が消えていた。単に食事を終えて席を立ったのかもしれないが、
亜美と実乃梨の険悪なやりとりにいたたまれなくなって退散したという推測の方が妥当だろう。
現に、隣のテーブルのみならず、周囲のテーブルに居合わせた者たちは、まるで放射性元素か何かだと言わ
んばかりに、亜美と竜児を遠巻きにしている。
北村はよかれと思って、竜児と亜美に、実乃梨を引き合わせたのだろう。
しかし、結果は裏目どころか最悪だった。亜美と実乃梨がこれほどまで険悪になるとは北村も予想外だった
に違いない。
竜児は、「さて、どうしたものか…」と呟きながら弁当の残りを半ばヤケになって咀嚼した。
学食という公共の場での醜態もさることながら、竜児にとっては、むくれている亜美のケアが当面の頭痛の
種だった。
季節は梅雨時だが、『女心と秋の空』とは、実に言い得て妙であることを、竜児は痛感させられた。
次の日曜日もデートということで、あれほど喜んでいた亜美が、先ほどの実乃梨との一件以来、目に見えて
不機嫌になっていたからだ。食事が終わった直後はもちろん、講義が終わって一緒に帰る電車の中でも、スー
パーかのうやでの買い物の最中でも、頬を心持ち膨らませ、目を鬱陶しそうに半開きにしたブス顔は変わら
なかった。
「なぁ、お前、櫛枝のこと、未だむかついているのかよ?」
「別にぃ〜」
物憂げな返事しか返ってこないことは、想定済みだ。
「なら、何が気に入らない?」
「……」
「柄にもなく、だんまりか…」
かのうやでは鶏肉が特売だった。竜児は、鶏の胸肉が二切れ入っている特売パックをかごに入れようとした。
「あたし、今晩、ご飯要らないから…」
その一言は唐突だった。竜児は、「ええっ?!」と、驚いて亜美を見る。
「お前、今朝、通学途中の電車の中じゃ、今晩は家には誰も居ないから、俺の家で俺や泰子と一緒に飯を食
うって話だったじゃないか? それを急にどうしたんだよ…」
「別に、急に気が変わっただけ…。深い意味や理由なんてない」
「家で一人で食べるのもわびしいし、外食は最近口に合わないし、今度の金曜日に出席する弁理士試験対策
のサークルの打ち合わせもするから、俺の家でってことにしたんじゃないか? それにほら、この鶏肉は、
オーブンで焼いて、マッシュルームと一緒に生クリームのソースで和えるんだ。たしか、お前の好物だった
よな…」
「だから気が変わったのぉ!!」
説明口調で長くなりそうな竜児の話を拒絶するように鋭く叫ぶと、亜美は、ぷぃっ! とそっぽを向いた。
「おい、おい、じゃぁ、何でここの買い物にまでついてきたんだよ?」
「別にあんたについてきたんじゃないわよ! あたしはあたしで、自分の家で晩ご飯を一人で作るから、そ
の材料を買いに来ただけ。誤解しないで!!」
そう言いながら、亜美は亜美で、売場の角に重ねて置かれていた、『スーパーかのうや』の商標がプリント
されたプラスチックのかごを持ち出してきた。
「お、おい、川嶋、何をする気だ」
亜美は、相変わらずぶすっとした表情で、そのかごに鶏肉を放り込んだ。
「見りゃあ分かるでしょ、買い物よ。その鶏の生クリームソース和え、あたしも自宅で作るから…。だから、
今晩は高須くんの家では食事しない」
実乃梨に『ろくに料理もできねぇバカ女』『女として失格』と罵られたことが、かなり堪えていると見える。
「お前にできるのか?」と、言い出しそうになったが、竜児はその言葉を飲み込んだ。
これ以上、亜美の自尊心を傷付けるのは厳禁だ。
「なぁ、川嶋…」
竜児は、かごを持っている亜美の手を両手で包み込むようにして握った。
「せっかく同じ料理を作るんだったら、一人分よりも、大勢の、例えば、お前や俺や泰子の分まで作った方
が美味しいし、作ったもんをみんなで食べる方が楽しいだろう」
亜美は、「離してよ!」と言って竜児の手を振り払おうとしたが、竜児はさらにしっかりと亜美の手を握った。
「櫛枝に言われたことは気にするな。あいつは高校時代の全然料理しなかったお前しか知らねぇんだ。あの
時のお前と今のお前とが同じ様なもんだろうと侮っているだけだ。あいつの発言に根拠なんて全然ねぇ。
だから、機嫌なおして、俺の家で、一緒に晩飯を作ろうじゃねぇか、な?」
「でも、あたしが料理苦手なのは事実だし、高須くんにおんぶに抱っこなのも事実じゃない。それが、それが…」
亜美は、唇を噛み締めてうつむいた。『それが…』の後には、『悔しい』とか『情けない』といったことを
言いたかったのだろう。
「でもよ、川嶋は料理が苦手なのを返上しようとしている。立派なもんさ。櫛枝はその事実を知らない。そ
うした無責任な言動に振り回される義理はねぇ。それよりも、今よりももっともっと料理が得意になって、
櫛枝を見返してやろうじゃねぇか」
亜美はうつむいたま肩を震わせ、目頭を手の甲で拭った。竜児は、そんな亜美に黙ってハンカチを差し出す。
「なぁ、返事がねぇようだが、以前に川嶋が言ってたけど、こういう場合は法学上では『默示の同意』って
ことでいいんだよな? だったら、くよくよしてねぇで、残りの食材を買っちまおう。鶏のクリームソース
和えなら、あとは生クリームとマッシュルームが必要だし、付け合わせに温野菜が欲しいところだ。それに
サラダ。俺はグリーンサラダにするつもりだが、川嶋ならどうする? 川嶋が食べたいものがあるんなら、
それにするんだが…」
亜美はハンカチで目頭を拭いながら呟いた。
「ポテトサラダ…。麻耶と祐作のお弁当のために作ったあのサラダ、あれが食べたい…」
「お易い御用だ。家にジャガイモとタマネギとミックスベジタブルとキュウリのピクルスはあるから、あと
はケイパーか…。ほんじゃ、それを買って帰ることにしよう」
「うん…」
「おっと、温野菜を忘れていた。俺はブロッコリーにするつもりだが、それでいいか?」
「うん、それでいい…。ブロッコリーは緑黄色野菜だし、繊維質が多くてデトックスにもなるから、大好き」
こわばっていた亜美の表情が、ほんの少しずつほぐれてきたことを窺い、竜児はちょっと安堵した。
そう言えば、高二の秋に豚肉か牛肉かのどっちを買うか、スーパーの食肉売場で悩んでいた竜児に、背後か
ら適切なアドバイスをしたのは他ならぬ亜美だった。意外に、食材選びや料理の素養はあるのかも知れない。
「それと、肉料理だけじゃぁ、ちょっと味気ないなぁ…」
もう一品、何にするかを思い悩んでいた竜児の手を亜美が引いた。
「ねぇ、豆腐や、その加工品なんかどうかしら? 低カロリーで高蛋白なのも都合がいいし…」
そう言って、豆腐売場を指さした。その中でも大判の飛龍頭が目立つ。
「手作りの飛龍頭か、こいつはいい。美味しそうだし、大きくて食べ応えがあるな…」
「でしょ? オーブンで軽く焼いてわさび醤油で食べるだけでも美味しそうだし、下ゆでして油抜きしてか
ら、小鉢にエノキダケと茹でたスナックエンドウなんかと一緒に入れて、出汁と醤油をかけて電子レンジで
暖めるだけでもいいんじゃないかしら?」
竜児は、すらすらと調理の方針まで口にする亜美をちょっと驚いて見た。
「川嶋、お前、すげぇな。どこでそんなレシピ憶えたんだよ」
亜美は、意味ありげな淡い笑みで竜児を見た。
「インターネットよ…。自分が食べたい料理なんかのレシピを調べたりするだけでも結構楽しくって…。で
も、自宅じゃなかなか自発的になれなくてね。だから、高須くんにいろいろと教わりながら、少しずつやっ
ていけるってのは本当に嬉しい」
「お、おう…」
亜美の意外にも前向きな態度に竜児は驚くよりも、ちょっとした感動を覚えた。同時に、亜美の最大の魅力
が何であるかも竜児は漸く悟ることができた。それは、元モデルだというルックスでも、ファッションその
他のセンスの良さでも、如才なく振る舞うことができるクレバーさでもない。
「努力家なんだな川嶋は、それも人知れずこっそり練習するような…。勝手な想像で気ぃ悪くしたらすまねぇ
けどよ、モデルの仕事だって、誰も見ていないところで、ものすごい努力をしてきたんだろうな…」
亜美は、鼻筋に小じわを立てて、ちょっと竜児をからかうように笑った。
「え~っ、亜美ちゃん、努力なんて大嫌い。天才亜美ちゃんに汗くさい努力とか根性なんてのは、ぜ~んぜ
ん似合わねーしぃ~」
竜児もつられるように笑った。
「あくまでも表向きは努力を否定すんだな」
「努力って言えるほどのことはしてないし、実際に努力していたとしても、望んでいる結果が出ないうちに
『努力してます』ってのは、ちょっとねぇ…」
「おぅ、努力ってのは、人知れずしてこそ意味があるんだよな。これ見よがしに『努力してます』って言う
奴は品がないし、失敗の言い訳に『努力はしたんです』ってのは格好悪いからな。その点、努力しているこ
とをひけらかさない川嶋は立派だよ」
「う~ん、本当に努力なんかしてないんだけれど、高須くんがそう言うなら、まぁいいや…」
亜美は、苦笑しながらも、ちょっと嬉しそうに相好を崩している。
この後は、竜児の家での亜美と一緒になっての台所仕事と、泰子を交えての夕食。そして、金曜日に予定さ
れている弁理士試験受験生のサークル出席への準備に関連して、弁理士試験の状況を調べることになってい
る。
今日の実乃梨との諍いも帳消しにできるぐらい充実した時間が過ごせることだろう。
実際に、台所では手つきがちょっとだけ危なっかしい亜美をフォローしながらの調理、泰子との和気藹々と
した夕食があって、インターネットを使っての弁理士試験の情報収集もした。
亜美もそこそこ台所仕事ができるようになり、泰子も亜美との夕食を喜び、弁理士試験の実情を知ることも
できた。
特許庁のホームページで公開されている弁理士試験の試験問題の難解さと、合格率の低さには今更ながら慄
然としたが、竜児も亜美も、今後の目標を再確認した夜でもあった。
これで、旋風のように現れた実乃梨との一件も落着! と思われたが、そうは問屋が卸してはくれなかった…。
それも何かに呪われていたかのように事件が立て続けに生じたのだ。
まずは、明けて火曜日。
事件は、講義が終わって、大橋駅まで帰ってきたとき、ちょっと息抜きのつもりで通称スドバ、須藤コーヒー
スタンドバーでコーヒーを飲んでいた時に起こった。
理学部と法学部共通で講義されるフランス語の対策、『基本書』と呼ばれる弁理士試験の勉強に必要な法学
の専門書の話、それに何よりも、次の日曜日にはどこに出掛けるかといったことを、二人でとりとめのなく
話していた時のことだ。
「あら、ずいぶんと古い機種なのね…」
テーブルの上に無造作に置かれた竜児の携帯電話を亜美が指さした。今どきの携帯電話に比べると、分厚く、
全体にごっつい作りだ。
「おぅ、これか? そろそろ機種変更かと思っていたんだ。だが、最近の携帯は薄くてスタイリッシュだけ
どよ、ボタンまで薄っぺらで、ちょっと操作しにくくてなぁ、それで、今もこんな旧式を使っているんだ」
亜美は、「ふ~ん」と、言いながら、珍しい骨董品でも見るように竜児の携帯を手に取った。
「ちょっと、いじってもいい?」
「別にかまわねぇけど?」
その言葉よりも、亜美の指は素早く動いていたかも知れない。
青い色をしたちょっと古めの携帯電話のボタンを、カチカチと操作する。
「そうねぇ、たしかにあたしの持っている薄型の携帯よりもボタンを押してるっていう感じはするわね。こ
の操作する感触が気に入ってるなら、故障でもしない限り、機種変更する必要はないかも…」
「カメラの性能もそう悪くはねぇんだ。本体が分厚いから、レンズ部分とかの光学系の設計に余裕がある。
写りは今でもなかなかのもんさ」
文系の亜美には竜児の言うことがいまいち理解できなかったが、理系の竜児が言うことなのだから、本当な
のだろうと思うことにした。
「ねぇ、撮った写真を見てもいい?」
「おぅ、いいよ。好きにしてくれ」
別段やましいものは何も撮っていない。まれに、スカートの中を携帯で盗撮して逮捕されるような不埒な輩
がニュースにはなるが、竜児には無縁の話だ。
「へぇ~、バスの時刻表とか、大学近くの駅に掲げてある地図とか、実用に関わるものばっか。なんかこれっ
て、すっごく高須くんらしい…」
亜美が思い描く竜児像を裏切らない写真ばかりなのだろうか。くすくすと笑いながらも、その表情には安堵
するような雰囲気があった。
だが、写真を次々と見ていた亜美の表情が急にこわばった。大きく見開いた目が、その写真に釘付けになる。
「どうした?」
亜美は一瞬だけ竜児に咎めるような視線を送ったが、すぐに元の笑顔を取り戻して「ううん、何でもない」
と、首を左右に軽く振った。
--そうよ、一枚くらい、こんな奴の写真があったっていいじゃない。何かの間違いかも知れないし。
気を取り直して、亜美は次の写真を見た。しかし…、
「うっ!」
次の写真も、その次の写真にも、そしてその又次の写真にも、櫛枝実乃梨が写っていたのだ。それも大口開
けて、へらへらと、まるで写真を見ている亜美を小馬鹿にするように笑っている。
亜美はバセドー氏病の患者のように目を血走らせて、竜児の携帯に記録されている写真をチェックした。実
乃梨の写真が記録されているのは、ある意味仕方がない。竜児が実乃梨に振られる前は、それなりに双方と
も親密だったのだ。
--だが、あたしは? 亜美ちゃんの写真は?
焦燥感に突き動かされながら、亜美は写真を次々とチェックしていく。
そうして、最後の写真を見終えた後、亜美は、竜児の携帯電話を震える手でぎこちなくテーブルに置くと、
がっくり、とうなだれて脱力した。
亜美の写真は一枚もなかった。そう言えば、竜児にこの携帯で写真を撮ってもらった覚えなんぞ、そもそも
なかったのだ。
「お、おい、川嶋、大丈夫か?」
「ない…」
低く微かな呟きだったが、怨嗟がこもった陰鬱極まりない声でもあった。
「ないって、何が?」
「一枚も、ない…」
「だから、何が一枚もないんだよ?」
亜美は、まるで幽霊か何かのように、ゆらりと顔を上げた。
「亜美ちゃんの写真が一枚もない…」
「なんだ、そんなことか…。そう言えば川嶋の写真は撮ったことがなかったよなぁ…」
内容そのものも誉められたものじゃないが、がっくりしている亜美を無視して、まるで他人事のように興味
の薄そうな口調で呟いたのが、明らかにまずかった。
「た、高須くん! あんたってぇ人はぁ…」
思いやりが欠片も感じられない竜児に、亜美は顔を真っ赤にして詰め寄った。
「う、うわ、川嶋、なんだよ、まじになるなって…。お、落ち着け」
「落ち着いてなんかいられないわよ! あたしの写真がなかったことだけでも許せないのに、これは何よ!!
なんで、実乃梨ちゃんは、あの女はこんなに何枚も写っているのよ!!」
突きつけられた携帯電話の液晶ディスプレイには櫛枝実乃梨の笑顔が映っていた。竜児は、『こんな写真、
未だ保存していたのか…』と一瞬思ったが、詰め寄る亜美の表情で状況が洒落にならないことを理解した。
「い、いや、櫛枝の写真は、く、櫛枝に撮ってくれってせがまれて、たしか、そんで撮ったんじゃないかっ
て、思う…」
真っ赤な嘘だった。古すぎて記憶は定かではないが、たしか竜児の方からお願いして写真を撮らせてもらっ
たはずだった。だが、正直にそんなことを言える雰囲気ではない。
「なんか、嘘くさい…」
女の勘という奴なのだろうか、『納得できない』と言わんばかりに、亜美はまなじりをつり上げた。
「そ、それと、川嶋の写真が、な、ないのはだなぁ、いや、川嶋はモデルだったし、普段、散々撮られてい
るから、カメラを向けられるのは食傷気味だと思ってさ、ほら、ストーカー事件とかあったろ…。そ、それ
で、こっちも撮らせてくれってのは言い出しにくかったし…」
我ながら下手な釈明だ、と竜児は思った。竜児が携帯で写真を撮ることに特に興味があった頃、亜美は竜児
の恋愛対象ではなかったというだけの話だ。亜美にとっては実に残酷なのだが…。
「今はもうモデルなんかやってないじゃない! ストーカーに写真撮られるのは気持ち悪いけど、高須くん
に撮って貰うのはそうじゃないでしょ! 高須くんは、女心の機微ってもんを、本当に全然分かってない」
「お、おう…、そ、そうなのか?」
「それに、『こっちも撮らせてくれってのは言い出しにくかった』って、どういうこと? なんでいきなり
『撮らせてくれって』話が飛び出すの? さっきの実乃梨ちゃんの写真は、実乃梨ちゃんからせがまれて撮っ
たんだよね? 高校時代でも実乃梨ちゃんの写真ですら自発的に撮らないあんたが、あたしの写真を撮らせ
て下さいって言う? おかしくない?」
「ど、どうなんだろうな…」
嘘がバレているらしいことに焦るが、ここはしらを切り通すしかない。
「だから本当は、実乃梨ちゃんの写真は、実乃梨ちゃんからじゃなくて、あんたの方からお願いして撮らせ
て貰ったんでしょ? で、その頃、あんたにとって好きでも何でもなかったあたしの写真は撮らなかった…。
もう、あんたは嘘が下手なんだからぁ、もうちょっと、ましな言い訳を考えなさいよっ!!」
亜美は、顔を真っ赤にして、今にも涙を零しそうに目を充血させて竜児を睨んだ。
竜児の下手な嘘は完全に見破られ、その嘘が亜美の心証を余計に害したことは間違いない。
「い、いや、それに、以前人づてに聞いたんだけど、川嶋ってさ、『たかが写真』とかって言ってたらしい
よな? そ、それで、撮らせてくれって言い出しにくくって…」
何とか事態の収拾を図ろうという苦し紛れの一言。だが、その一言が、致命的だった。
「なんで、あんたがそんなコメント知ってるの! 『たかが写真』ってのは、他の誰でもない、実乃梨ちゃ
んにしか言ってないのよ! それをあんたが知っているってぇのは…」
竜児は、『しまった、これ櫛枝から聞いたんだったっけ…』と思い出したが、もはや後の祭りであった。
亜美は、差し向かいの竜児の胸ぐらを、ぐいっ、と掴んで引き寄せた。
「う、いてて、暴力反対!」
「あんたは、いつだってそう。櫛枝、櫛枝、櫛枝、そればっか。本当にむかつくんだからぁ!!」
「お、お前、いつの話をしてるんだよ。む、昔のことじゃねぇか…。昔は昔、今は今だろ?」
「うるさ~い!」
亜美は掴んでいる竜児の胸ぐらを激しく揺さぶった。
「な、なぁ、櫛枝の写真にむかついているなら、そ、そんな写真、い、今すぐ消去するから。ゆ、許してくれ」
竜児自身、存在すら忘れていた写真である。実乃梨との思い出が消えるのは正直惜しいが、振られた女の写
真を後生大事に持っているがために、本妻のご機嫌を損ねるのは宜しくない。
「それだけ?」
亜美は、胸ぐらを掴んだ手を緩めない。それどころか、いっそう激しく、竜児の頭部を振り回すように揺さ
ぶった。
「ま、未だあんのかよ…」
「あったりまえでしょ! あんたは、あたしが何をして欲しいのか考えなさい!!」
「く、櫛枝の写真を消去するだけじゃダメなのか?」
「あんたって、本当に『気遣いの高須』なの? まぁ、既に看板倒れもいいところだけどさぁ」
「振り回されて、脳みそがどうにかなっちまう。たのむ、ヒントだけでもくれぇ!!」
竜児の首が、がくがくと震える。このままでは本当に脳震盪か何かになってしまう。
「あ〜っ、もう本当に察しが悪いんだからぁ! あたしが不満な点は、何と何?!」
「ひ、一つは、櫛枝の写真を撮っていたことだ…」
「もう一つは?」
亜美の声が一段と刺々しい。竜児の察しの悪さに、亜美の怒りも臨界点に近づきつつあるようだ。
「お、お前の、しゃ、しゃ写真を撮ってなかった…」
亜美に振り回されて、意識が朦朧としてきた。
「で、その解決策は? 何?」
ここまで言われれば、いかに鈍い竜児でも察しがつく。
「しゃ、写真を、お前の写真を、と、撮る、こ、これならどうだ…」
漸く、亜美は竜児の胸ぐらを離してくれた。開放された竜児は、力なくテーブルに突っ伏した。ぐるぐると
目が回り、イヤな頭痛がする。揺さぶられたことで、脳みそが震えて頭蓋骨の内面と干渉してなきゃいいの
だが、といらぬ心配をしたくなる。
「いつまで寝てんのよ! ほら顔上げて、あたしの写真を撮る約束でしょ!」
ようやくめまいが収まりつつあった竜児は、「えっ!」と小さく叫んで亜美の顔を見た。
「今、ここでか?」
「当然でしょ? さっさと、撮る!」
その亜美の顔はお世辞にもフォトジェニックとはいえなかった。充血した目を釣り上げて、眉間にシワを寄
せ、頬を怒りで痙攣させ、顔面全体は、いかにも頭に血が上ってます、というように生え際まで真っ赤に染
まっている。
「な、なぁ、川嶋、悪いことは言わねぇ。今じゃなくて、今度にした方がいいって…。今のお前を撮ったと
しても、その何だ、いい写真は撮れないような気がするんだが…」
「いいから撮りなさい! 変な写真だったら何度でも撮り直すの! 分かった?!」
竜児は「うへっ…」と、呟いて首をすくめた。今の亜美は鬼か般若そのものだ。逆らったら、取って食われ
てしまうかも知れない。
仕方なく竜児は携帯電話のレンズを般若顔した亜美に向けてシャッターを切った。いっぱしのカメラっぽい
シャッター音の後に、撮影画像が液晶ディスプレイに表示された。案の定、ひどい顔だ。
「ダメ、なってない、やり直し!」
亜美がシートにふんぞり返って、すげなく言う。「そりゃ、モデルの表情が悪いんだからどうしようもない」
と言ってやりたかったが、言ったら間違いなくただでは済まない。
撮影二回目。
「ダメ、亜美ちゃんが、全然かわいく撮れてない!」
これもすげなく却下。
撮影三回目。これも没。四回目も五回目もダメで、亜美が、
「ふん、まぁこんなところで今日は勘弁したげる」
と、すまし顔で言ったときには、もう何回撮影したのか定かではなかった。
カウンターではマスターの須藤さんとスタッフの女子大生、それに稲毛酒店の店主を含む常連客の何人かが
哀れみとも、嘲笑ともつかない視線で竜児を見ている。何のことはない、またしても公共の場で醜態を晒し
てしまったようだ。
さらに翌水曜日。
竜児は、亜美と一緒にフランス語の予習を自宅で行っていた。以前は、ファストフード店とか、スドバとか
でやっていたのだが、結局、落ち着くところに落ち着いたと言うべきか。まぁ、スドバは、昨日の騒ぎで、
そのほとぼりが冷めるまでは、ちょっと行けそうにないという事情もあるにはあるのだが…。
フランス語の講義は、次々と学生に答えさせる『ソクラテス方式』なので、予習は気が抜けない。この点で
は、北村が選択したドイツ語の方がぬるいらしい。
亜美の話では、法学では、ドイツ語もフランス語もどちらも重要だという。これは、わが国の民法典等はフ
ランス法とドイツ法とを範としているためだろう。
一方の竜児が属する理学部数学科は、フランス語を学ぶ学生が支配的だ。今や海外文献はほとんどが英語な
ので、数学に関しては積極的にフランス語を学ぶ意義はないが、どういうわけか数学科はフランス語を学ぶ
のが多数派ということになっている。
同じ理学部でもドイツ語を学ぶ学生が圧倒的に多い化学科とは対照的だ。
「ふぇ~っ、終わった…」
英語とは勝手が違うフランス語には、入学直後はかなり悩まされたが、二人合わせての共同作業による予習
が功を奏したのか、以前に比べれば、それほど手こずるものではなくなってきていた。基本的な単語や文法
が徐々に理解できてきたのだろう。
「これで、明日の講義は何とかしのげるわね」
「おぅ、先週は、理学部の多分数学科以外の学生が答えられずに晒し者になっていたな。階段教室であれを
喰らうのは、トラウマになるほどの屈辱だから、絶対に回避したいよな」
「でも、あたしたちの力を合わせた予習で、明日は怖いもの知らずだわね」
「い~や、俺、根は臆病だから、答えられる問題でも、当てられるのは願い下げだけどな」
「自覚はしてるんだ、臆病だって…」
ちゃぶ台の差し向かいにいる亜美が、くすくすと笑った。
「そんなもん、長い付き合いの川嶋には、とっくの昔にバレてるじゃねぇか。暗いところやオカルトもダメ。
高二の夏休みじゃ洞窟で怖気づいて川嶋に笑われたし、今さら格好つけたってしょうがねぇや」
そう言うと、竜児は、やおら立ち上がった。
「どこ行くの?」
「お茶でも入れるよ。最近、美味しい紅茶の葉が手に入ったんだ。セイロン島の高地で特別に栽培された奴
だ。香りがすっきりしていて、勉強なんかで疲れたときに飲むとリラックスできる」
「うわ~っ、それ、楽しみぃ!」
ちゃぶ台に一人残された亜美は、改めて竜児の部屋を見渡した。簡素、と言ってよいほど綺麗に片付けられ
た部屋には、分厚い書籍がいくつも納められた本棚が目立つ。中にはデザインやインテリア関係の洋書もあった。
「ねぇ〜、本棚にある本、ちょっと読んでいていい?」
心持ち大きな声で台所に居るであろう竜児に訊いてみる。
間髪入れず、「いいよー」という返事が聞こえてきた。
亜美はそのうちの一冊を手に取った。背表紙が英語のその本は、英国の出版社による意匠の変遷を大量の写
真で詳説するものだった。主にはロココ調からバロック、アール・ヌーヴォー等を経て現代に至るまでが、
時代毎の特色を述べながら、詳細に説明されていた。
「学校の勉強以外にもこんなものを読んでいたんだぁ…」
道理で博学なわけだ。それに理系にしては英文読解力が秀でているのは、自宅でこうしたものを読んでいた
からだろう。
人知れずの努力というのなら、こういうことを指すに違いない。
亜美は、一通りその本に目を通すと、元通りに本棚に戻した。
「あれ?」
箱でカバーされた刊行物が分厚い洋書に紛れて存在していた。亜美にも見覚えがあったそれは、高校の卒業
アルバムだ。
「こんなところに…」
亜美が卒業アルバムを手にしたのは、久しぶりだった。亜美も同じ卒業アルバムを貰ってはいるのだが、そ
のアルバムは東京の実家に預けたきりになっている。
「何だか、懐かしい…」
その卒業アルバムを手に取って開いてみた。
アルバムには写真や、学校で配布されたプリントの類がいくつか挟まっていて、ページを繰ろうとしたら、
それらがちゃぶ台の上に滑り落ちてきた。
「おっと、あたしとしたことが…」
元通りにアルバムに挟むべく、亜美はちゃぶ台の上に散らばったプリントや写真を手に取った。
「あらやだ、こんな写真持ってたんだ…」
それは文化祭でのものだった。少々、竜児と実乃梨とが手をつないでゴールしている少々癇に障る写真もあっ
たが、ミスコンの司会を務めている亜美の写真もあった。しかも、亜美の写真は、下乳がばっちり写っている。
「実乃梨ちゃんのとの写真は粗末にしてもいいけど、あたしの写真は大事になさい」
わざと怒ったような口調で呟いた。でも、竜児が自分の写真を持っていたというのは、まんざら悪い気はし
ない。
「あれ?」
写真に紛れてノートの切れ端のような紙切れも出てきた。二つ折りにされ、いくぶんシワが目立つそれは、
何てことはない紙屑のようだった。だが、わざわざ卒業アルバムに挟んでまで取っておかれていることが気
になり、亜美はその紙切れを広げた。
「何これ?」
そこに書かれていた内容を目の当たりにして、亜美の表情がこわばった。
何しろ、そのメモのような紙切れには、以下のような文言が記されていたのだ。
『コラたかすくん! みのりは怒っているよ! たいがに聞いたけど、たかすくんは転校生ちゃんとなにや
らアヤシイらしいね!? 前に屋上で言ったはずだよ、もしたいがを捨てたらそのときは…おしおきだべ〜』
とあって、文末には稚拙なドクロのマークが付してあった。
「転校生ちゃん、ていうのはあたしのこと?」
文面は、大河を気遣うものらしいが、『転校生ちゃん』を邪魔な異物扱いにしているようで、何だか気に障
る。亜美にとって実乃梨は当初から苦手な存在だったが、実乃梨も亜美のことをあまり好意的には思ってい
なかったようだ。
「やっぱ、むかつく女だわ、あいつは…」
後半部分も、亜美の神経を逆撫でするには十分過ぎる内容だった。
『いちおういっておくけどね、あの転校生ちゃんはたしかにとってもかわいこちゃんだ。でもねえ、完璧っ
ていうのは、おもしろくないんだぜ? その証拠に、いつもは貪欲なみのりんレーダー(かわいこちゃん捕
捉用触手)が、今回はビタいち反応しないぜよ』
「失礼ねぇ、何なのよぉ、これぇ!!」
完璧っていうのはおもしろくないとか、かわいこちゃん捕捉用のみのりんレーダーに反応しないとか、いく
ら当人が読まないことが前提とはいえ、結構な言い草ではないか。
実乃梨も実乃梨だが、こんなメモを後生大事に保存していた竜児も竜児だ、と亜美は憤慨した。
「こんなメモなんか!!」
くしゃくしゃにして、踏みにじり、ビリビリに破り捨ててやろうかと思ったが、思いとどまった。
竜児のいない場でこの業腹なメモを処分するよりも、これをネタに竜児を追及する方が性悪チワワの冥利に
尽きる。
亜美は、ちゃぶ台に散らばった写真を卒業アルバムに元通りに挟むと、本棚に仕舞った。手元に残るのは、
あのメモだ。
「おぅ、待たせたな」
竜児が紅茶を淹れたポットと二組のティーカップを盆に載せて戻ってきた。
「川嶋の口に合えばいいんだが…、人工的に香り付けをしていないにもかかわらず、不思議と清涼感がある。
すごく頭がすっきりする香りなんだが、人によっては膏薬みたいに感じられることもあるらしいから、もし
不味いと思ったら正直に言ってくれ。ダージリンとかの無難な茶葉に変えるから」
例によって解説口調でポットに淹れた紅茶をカップに注いでいく。ポットもカップも、白い磁器のようだが、
僅かにクリーム色を帯びた暖かな感じがする。おそらくはボーン・チャイナなのだろう。
湯気とともに紅茶の香りが漂った。なるほど、竜児の言う通り、清涼感のある香りだ。膏薬というよりも、
森の若葉を思わせる清々しい感じがする。
「いい匂いね。あたし、この手の香りは好きだわ…」
「そうか、でも、最終的な判断は、実際に飲んでからにした方がよくないか?」
「そうね…」
竜児をとっちめるのも、このおいしそうな紅茶を飲み終えてからでいい。亜美は、カップに口をつけた。
ストレート・ティーが一番だ、という竜児の勧め通りに砂糖もミルクも入れないで飲んでみた。たしかに際
立った清涼感があり、そうした補助的な味付けを要しない。むしろ、下手に何かを入れたら、全てが台無し
になってしまうだろう。
「どうだ、川嶋の口に合いそうか?」
「うん、おいしい…」
「そうか、よかった…」
亜美の言葉に嬉しそうに頷く竜児を見ていると、この男は、邪気と呼べるようなものとは本当に無縁なんだ
な、と亜美は今さらながらに思う。
その罪のない笑顔を見ていると、メモの件を追及する気が失せてしまいそうだ。香り高い紅茶にも、心を穏
やかに和ませる作用があるのかもしれない。
--でも、けじめはつけさせてもらおうかしら…。
この男に邪気はない。ただ、恋愛がらみになると致命的と言えるほどに迂闊で鈍感なのが問題なのだ。
「おいしかったぁ…」
亜美は紅茶を飲み終えて、カップをソーサーに戻した。
「おぅ、香りが際だっているお茶は他にもアールグレイとかがあるが、あれは人工的に着香したものだから
個人的には好みじゃねぇな。何か、香りがわざとらしい。その点、こいつは、着香していない素のままで、
茶葉本来の香りがする」
「そうね…」
亜美は、目を細めて、含みのありそうな笑みを浮かべた。
「いかにも高須くんが好みそうな感じのお茶だよね。万事がきちんとした清廉な高須くんみたいな感じ、か
な?」
「よせやい、万事がきちんとしているわけじゃねぇし、清廉でもねぇよ、この俺は」
亜美が無条件で礼賛していると勘違いしているのだろう。竜児は、ちょっと恥ずかしそうに鼻の頭を軽く掻
いている。
その、ある意味、自意識過剰とも受け取れそうな竜児の態度が、竜児に対する亜美の加虐趣味を刺激した。
「そうよね、さしもの高須くんも、叩けば埃が出てくるかも知れないわね。いろいろと…。例えば、こんな
のとかは、どうかしら?」
隠し持っていた例のメモをちゃぶ台の上に広げた。
竜児はそれを見て、「何だ、こりゃ…」と言いかけたが、そのメモが何であるかを知ると、「うわっ!」と
叫び、それを引ったくろうと手を伸ばした。
「だめよ!」
亜美の手の方が一瞬だけ早く動き、メモをちゃぶ台から回収していた。
亜美は、それを手早く折り畳み、それをブラウスの前立てから胸の谷間に滑り込ませた。こうすれば、竜児
にメモを簡単に奪われることはない。あの櫛枝実乃梨の直筆メモが肌に直接触れているというのは、正直
ちょっと気持ち悪いが…。
「か、川嶋、そのメモだけど、読んだのか?」
「読んだわよ、当然でしょ。結構、面白いことが書いてあるじゃない。何だか、亜美ちゃんのことを色々と
貶してくれているように思えるんですけどぉ〜」
「あう…」
「これって、授業中にやりとりしていたメモでしょ? 単なる一過性の情報じゃない。その場限りで後は捨
ててしまって構わないような…。なのに、どうして卒業アルバムに挟んでまで保存しておくのかしら?」
うふふ、と意地悪く笑っている亜美の顔を見ることができず、竜児は正座した膝の上に両手を突いてうつむ
いた。額から脂汗がにじんでくる。
「そ、それは…」
「あたしを小馬鹿にした文章が書いてあるけど、要は単なるノートの切れ端よね? この機会に捨てちゃっ
た方が、高須くんもすっきりするんじゃなぁ〜い?」
「ううう…」
竜児が捨てるに捨てられない理由は亜美にも分かっている。好きだった実乃梨から初めて貰った手紙なのだ
ろう。振られたとはいえ、それを残しておきたいという気持ちは分かる。亜美が竜児と同じような立場だっ
たら、おそらくは同じようにするだろう。そうなると、昨日は竜児の携帯電話から実乃梨の写真を消去させ
たのは、少々やりすぎだったかも知れない。
「どう? 返事がない場合は、高須くんも知っている『黙示の同意』ってことで、捨てても構わないって判
断するけど、それで文句はないわね?」
内心では、昨日のやりとりはやり過ぎだったと思っても、意地悪くニヤリと口元を歪め、目を細めて観察す
るように竜児を見る。追い詰められた竜児の姿もまた、亜美にとってはそそられるのだ。
「どうなの?」
これが最後通牒のつもりで亜美は竜児に念押しした。返事がなければ破り捨てるまでだ。逆に『捨てないで
くれ』と懇願されたら、その時はその時、策はある。
「…す、捨てないでくれ…」
「ふ〜ん、そう。亜美ちゃんの陰口をしたためた紙切れが、高須くんは、亜美ちゃんよりも大切なんだぁ〜」
さりげなく『亜美ちゃんよりも大切なんだぁ〜』という文言を盛り込んで竜児に揺さぶりをかける。詭弁め
いていて、我ながら意地の悪い物言いだと亜美は思った。
「そんなこたぁねえよ…」
正座してうつむいたままの竜児が、か細い声で力なく呟いた。
「そう? 高須くんは、こんな紙切れにご執心なのよね。亜美ちゃんよりも、ね?」
膝の上に置かれた竜児の手が握られたのが見て取れた。
「お、俺は、川嶋が今は誰よりも大切なんだ…。だけど、過去の思い出も捨てがたい。過去は過去、今は今
じゃねぇか。た、たのむ、そのメモは返してくれ」
竜児は亜美に向かって土下座した。
亜美はそんな竜児を目を細めて冷やかに見下ろす。こんな紙切れのために土下座までする無様な竜児がちょっ
と許せなくなった。それに、『俺は、川嶋が今は誰よりも大切なんだ』と言うのなら、それを証明して貰い
たい。
「いいわ、返してあげる。その代わり、亜美ちゃんの指示に従ってもらうけど、文句はないわね?」
「お、おう…」
不安気に顔を上げた竜児に見せつけるように、亜美は左手をブラウスの前立てに突っ込んで、例のメモをさ
らに奥の方へと押し込んだ。メモは右の乳房の下の方でブラジャーに挟まれている。
「メモはここよ。亜美ちゃんのおっぱいの中。もうブラジャーを脱がさないと取れないくらい奥の方に押し
込んであるわ…」
「か、川嶋、何のつもりだ…」
額に脂汗をにじませて、竜児が固唾を飲み込んだ。
「決まってるじゃない、高須くんがあたしのブラを脱がせてメモを取り出すの。大切なメモが取り戻せて、
高須くんが誰よりも大切に思っている亜美ちゃんのおっぱいを直に見ることができる。何なら、そのおっぱ
いを高須くんが好きにして構わない…。どう? 願っても無いことでしょ?」
「う、うう…」
脂汗を垂らしながら苦しげに唸っている竜児を亜美は冷やかに睨め付けた。根性がないのにも程がある。こ
のままでは、何時間でも正座したまま呻吟していることだろう。
「埒が明かないわね…。じゃあ、高須くん、あたしの指示する通りにやりなさい。少しでも逆らったら、メ
モは渡さない。いいわね?」
竜児からの返答はない。それでもお構いなしに、亜美は正座している竜児ににじり寄り、白い頬を竜児の顔
に近づけた。
そして、ハンカチで、浮き出ている竜児の脂汗を拭ってやる。
「まずはキスよ。それも今までにないくらい官能的でディープな奴…」
竜児からの返答を待たずに、亜美はバラ色の口唇を竜児のそれに密着させ、竜児の口唇と口蓋をこじ開ける
ようにして、舌を竜児の口腔に差し込んだ。入れ替わりに竜児の舌も亜美の口腔に侵入してくる。
二人の舌が艶かしく絡み合い、蠢いて、互いの頬の内側や上顎の粘膜を刺激する。
「う、うう〜ん…」
呼吸もままならない状態で、亜美は竜児とのキスに酔い痴れる。
--悔しいけど、気持ちいい…。
身体中の体液が逆流し、全身の性感帯がさらなる刺激を求めてざわめいているかのようだった。乳首やクリ
トリスが固く、痛々しいほどに勃起してくる。
性愛にはものすごく疎いくせに、何でこんなにも竜児はキスが官能的なのだろう。快楽に陶然としながら亜
美はとりとめのないことを考える。
どれぐらい口唇を重ねていただろうか。亜美は、呼吸を整えるつもりでキスを中断した。
口唇から糸のように垂れてくる唾液を手の甲で拭う。
そして、膝を崩して座ったまま両手を後ろ手にし、竜児に向けて乳房を突き出すつもりで、上体を反らした。
「さぁ、これからが肝心よ。あたしのブラウスを脱がして…」
「お、おう…」
竜児の震える指が亜美の胸元のボタンを一つ一つ外していく。緊張した竜児の鼓動までが聞こえてきそうだ。
だが、それは亜美とて変わらない。隆起した乳房の下で、亜美の心臓もまた、どくどくと激しく脈打ってい
るのだ。
ボタンが全て外され、ブラウスの前がはだけられた。
亜美のミルク色とも表現すべき柔肌が竜児の前に晒される。
「か、川嶋、ボタンは外した。つ、次は、どうすればいい?」
「脱がしてって言ったでしょ? ボタンを外すだけじゃなくて、そのブラウスを、あたしの身体から完全に
取り去るの!」
「わ、分かった…」
竜児が、ぎこちない手つきで、亜美のブラウスの前立てを左右に広げていく。亜美の白い肩が露になり、半
袖のブラウスは、後ろ手になっている亜美の両腕を滑り落ちた。
亜美は、掌を一旦は畳から離し、手首の辺りにまとわりついているブラウスを抜き取り、それを、そのまま
脇に押しやった。そして、また先ほどと同じように後ろ手にして乳房を竜児の目の前に突き出した。
その一連の動作で、白いブラジャーに包まれた亜美の乳房が妖しく揺れる。
乳房やミルク色の肌に竜児の視線を感じ、亜美は陶然となる。竜児に自分の半裸を見られているというだけ
で、羞恥心よりも喜びで胸が高鳴ってくるのだ。
「か、川嶋、次は、ブ、ブラを外すんだよな?」
背中のホックを外すために伸びてきた竜児の腕を、亜美は身をよじって避けた。ホックを外されたら、簡単
にメモを取り出されてしまう。それでは面白くない。
「背中のホックは未だいいわ…。それよりも、肩のストラップを外してちょうだい」
「お、おう…」
竜児は、ストラップに指を掛け、慎重にそれを亜美の肩から外していく。竜児の、長く繊細でひんやりとし
た指先がほてった肌に心地よい。
「いいわ…、そのままブラを上の方から、乳首が出るまでめくって…。乳首が出るまでで、いいから…」
いよいよだ、と亜美は思った。
竜児は、『乳首が出るまで』と言われたことで一瞬躊躇したかに見えたが、亜美のブラジャーのストラップ
の付け根あたりを、震える指でそろそろと引っ張った。
勃起した乳首がブラの布地に引っ掛かる。
「うっ!」
膨れ上がった乳首に刺激を感じ、亜美は息を飲んだ。
「川嶋! 大丈夫か?」
「あ、あたしだったら大丈夫…。続けてちょうだい。ちょっと、気持ちよくて声が出ちゃっただけ…」
亜美は、仰け反ったまま首を左右に振った。
竜児は、引っ掛かっていた部分を指先でつまみ上げ、そのままゆっくりと下に引っ張って、亜美の乳首を露
にした。
桜色にほんの少し褐色を帯びた乳首が、大きめの乳輪共々ぷっくりと膨れて自己主張している。
「か、川嶋、綺麗だ…。すごく綺麗だよ…」
「うん…」
亜美は半ば恍惚として竜児に頷いた。
「ねぇ、高須くん、亜美ちゃんの首筋からキスをして、そ、そして…」
興奮して呂律が怪しくなりそうだったので、一呼吸置いた。
「す、吸って…、あ、亜美ちゃんのおっぱい、高須くんに吸ってほしい…。あ、あたしのことを誰よりも大
切に思うのなら、亜美ちゃんのおっぱいを好きにしていいよ…」
仰け反っていた亜美の上体が竜児の腕で抱き止められた。竜児のやわらかな口唇が、亜美の首筋から胸元へ
とトレースされていく。
「あああっ…」
右の乳首に口づけされた。ずきん、と疼くような快感がほとばしる。
「吸って、そのまま吸ってぇ!」
乳輪を含めた部分がすっぽりと竜児の口唇に捉えられ、そのまま吸引された。ただでさえ勃起して充血して
いる乳首に、その吸引が刺激となって、さらに多くの血液が送り込まれるような気がした。
--気持ちいい…。き、気持ちよすぎるよぅ…。
左の乳首も腫れ上がったかのように固く大きく膨れている。
その左の乳首を亜美は指先でつまんでみた。刹那、電撃のような快感が襲い、全身を駆け巡った。
クリトリスがさらに固く勃起し、膣からは淫靡な粘液が溢れ出る。
「た、高須くぅん、み、右だけじゃなくて、ひ、左もぉ…。そ、それと、ごく軽くでいいから、ち、乳首を、
か、噛んで…」
それに応えるように、竜児の前歯が固く膨らんだ左の乳輪と乳首に当てられた。
「あ、くぅ〜っ!」
亜美にとって空前の快楽だった。自慰ではこれほどの疼きにも似た快感を味わったことはない。
「だ、大丈夫か? 川嶋、痛かったらすまねぇ」
亜美が痛がっているものと勘違いした竜児が、乳首への口づけを中断した。
「う、ううん、つ、続けてちょうだい。すっごく気持ちいい…」
再び、亜美の乳首が竜児の唇と舌と前歯で翻弄される。乳首が吸われ、舌先で弄ばれ、前歯で軽く噛まれる
度に、快楽が亜美の全身を駆け巡っていく。
「ねぇ、た、高須くぅん、ほ、本当は、け、経験あるんでしょ?」
あまりに刺激的な竜児の愛撫に身を委ねながら、まさか実乃梨と何かやっていたのではあるまいか、とさえ
亜美には思えた。
「ねぇよ、赤ん坊の時、泰子の乳を飲んで以来のことだよ、女の乳房を吸うなんてのは…」
亜美は、「嘘っ!」と言いかけたが、その瞬間に、竜児が今度は右の乳首を軽く噛み、舌先で転がしたことに
よる雷撃のような快感で、「うっ!」と絶句した。
その快楽に連動して、クリトリスをはじめとする陰部がズキズキと疼くように火照ってくる。
亜美はスカートの中に左手を突っ込み、ショーツのクロッチの脇から人差し指と親指を差し入れた。股間は
既にぐっしょりで、クリトリスはパンパンに腫れ上がっていた。
そのクリトリスを指先でつまみ上げるようにして刺激する。
「あ、あああっ…」
もはや意識を失う寸前の快楽に全身が支配されかかっていた。竜児の乳首への愛撫が巧み過ぎる。
亜美は、親指の腹でクリトリスをこね回すように刺激しながら、人差し指を膣に挿入した。膣に何かを入れ
るのはこれが初めてだった。正直、ちょっと怖かったが、今はさらなる快楽への欲求が何にも増して支配的
だった。
指先に粘膜の襞のような処女膜を感じた。慎重に、その真ん中にあるはずの開口部を探り当て、そこに人差
し指を押し込んでいく。
膣内は筋肉と粘膜の襞が、挿入された指を舐め回すかのように妖しく蠢いていた。
さらに奥へと進んだ亜美の指先がおちょぼ口のような突起に触れた。
「ああ…、し、子宮の入り口…」
その呟きは竜児の耳には届かなかったようだ。竜児もまた、亜美の乳房を夢中になって吸い、舐め回してい
た。
亜美は、子宮口を愛おしげに指先で撫で回した。いずれ、亜美も子を宿す時が来るだろう。何なら、それが
今日であっても構わない…。
亜美の親指が包皮が剥けてむき出しのクリトリスに触れた。痛みにも似た違和感を感じたが、指先の動きは
止まらなかった。
「あうっ!」
痛みと紙一重の激しい快感が炸裂し、人差し指をくわえ込んだ膣が収縮しながら粘液を溢れんばかりに分泌
した。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ〜っ!!」
そのまま亜美は感電したかのように、背中を海老反らせて全身を痙攣させた。
「か、川嶋! 大丈夫か?」
気遣う竜児をよそに、亜美は全身の痙攣が治まると虚ろな笑みを天井に向けて呟いた。
「いっちゃった…」
そのまま横たわり、ふぅふぅ…、と切なげに呼吸を整えながら、膣から左人差し指をゆっくりと引き抜いた。
「ぬぁ…」
ぬぽっ、という粘っこい音が微かに聞こえ、膣内を指が擦過する新鮮な刺激が亜美の身体を震わせた。
「か、川嶋、今、拭いてやるからな…」
快楽にあてられて、ぐったりとしている亜美の、顔や胸、そして先ほどまで膣内に挿入されていた左手の指
を手近にあったタオルで拭ってやる。
「高須くん…」
心配そうに覗き込む竜児のことがたまらなく愛おしくなり、両手を伸ばし、その腕を竜児の首筋に絡ませた。
「ありがとう…、高須くんが、あたしのことを誰よりも大事にしてくる、それが本当のような気がしてきた…」
「川嶋…」
亜美は、左手をブラジャーと右の乳房に間に滑り込ませ、細かく折りたたまれた紙片を取り出した。
「だから、これは返す…。高須くんの言う通り。過去は過去、今は今なんだわ…。あたしの過去に高須くん
が干渉できないように、あたしも高須くんの過去に干渉することは許されない…」
その紙片を竜児の手に握らせた。
「川嶋、すまねぇ、お前にとって愉快とは言えないことが書いてあるのに…」
「いいんだよ…、あたしが勝手に高須くんの本棚から引っ張り出してきたのが、そもそもの間違いだった…。
その上、過去と現在とを混同して嫉妬したのはあたし…。高須くんは悪くないよ」
亜美は淡い笑みを浮かべていたのだろう。心配そうに覗き込んでいた竜児もまた、安堵したように微笑んだ。
「そう、過去は過去…、あたしたちは二人で新たな歴史を作っていくことになるんだわ…」
「あ、ああ…?」
亜美の真意が理解できていないのだろう。竜児は、怪訝そうに頷き返した。
「だから、続きをしましょう。高須くんはあたしのおっぱいを啜るだけじゃなくて、あたしの全てを感じて
欲しい…。あたしも全てを高須くんに捧げるから、あたしも高須くんの全てを感じたいの」
そう言うなり、竜児の首筋に絡めていた腕を引き寄せるようにして、亜美は竜児に抱きついた。
半ば剥き出しの亜美の胸が竜児の胸に密着し、その鼓動を竜児に伝える。亜美もまた竜児の力強い鼓動を感
じた。
「あったかい…。高須くんの身体、すごくあったかいよ…」
「川嶋…」
竜児が華奢な亜美の身体を抱きしめてきた。その抱擁に、亜美は感極まって涙する。
「あたし、本当に嬉しいよ。いよいよ高須くんと一つになれるんだ…」
「俺もだ、川嶋とこうなることを、心の底では望んでいたんだ…」
亜美は、左手で竜児の右手を掴むと、それをスカートの中に誘おうとした。一瞬、竜児は抵抗するように右
手を硬直させたが、亜美が竜児の耳元で「お願い…」と甘く囁くと、呪縛が解けたかのように、素直に亜美
が導くまま、そのスカートの中に己の右手を差し入れた。
竜児の指がショーツの布地越しに亜美のクリトリスや陰裂の上を這う。
「き、気持ちいい…。自分でいじるよりか、何倍も気持ちいいよぉ」
しぼみかけていたクリトリスが再び固く張りつめ、膣からは熱い粘液がじくじくと溢れてくる。
亜美は竜児の股間に手を伸ばし、グレーのチノクロスを突き上げている陰茎を、布地と一緒に包み込むよう
に優しくなで回した。
「か、川嶋、そ、その手つき、い、いやらしいぞ…」
「高須くんの指だって、亜美ちゃんのあそこを、いやらしく弄くり回してるじゃない…。そ、それに高須く
んは、亜美ちゃんのあそこを薄いショーツ越しに弄っているけど、亜美ちゃんは、厚い布地の上から高須く
んのおちんちんを触っているんだよ、ずるくない?」
「あ、こ、こら、川嶋…」
竜児は、喘ぎながら亜美に抗議したが、竜児の股間に添えられた亜美の手は、手探りで竜児のチノパンのジッ
パーを押し下げ、ブリーフを剥いて、雄々しく隆起した陰茎を露わにした。
亜美の細長い指が、剥き出しになった亀頭を捉える。
「高須くんのおちんちん、想像してたよりも太くておっきいぃ~。それに、固くて、熱くて、びくびくして
るのぉ」
こんなに太くて大きいのが入るだろうか、と不安にはなったが、竜児と一つになりたいという不退転の決意
を思い出し、不安な気持ちを振り払った。
「お返しだ!!」
竜児の指がショーツの内側に入り込み、亜美のクリトリスを直につまんだ。
「は、はうっ! そ、そこは…」
さらに竜児の指は、亜美の尿道口と膣口を探り当て、そこを弄ぶ。本当に経験がないのかと訝るほど、竜児
の愛撫は巧みだった。亜美の歓喜に打ち震えるツボを既に心得ているかのようだ。
膣口をまさぐっていた竜児の指が、ほんの少しだけ膣内に入り込み、さらに奥まで入っていきそうな感触に、
亜美ははっとした。
「だめぇ!」
竜児の指が膣に入ったら、またオルガスムスに達してしまう。
前菜でお腹一杯になりたくなかったから、自身の陰部を掌で覆うようにして、竜児の愛撫を中断させた。
「川嶋、どうしたんだよ…」
愛撫を打ち切られて不満げな竜児に、亜美は詫びた。
「ごめんなさい…、これ以上、高須くんに弄られたら、亜美ちゃん、またいっちゃう…。二度もこんなに気
持ちよくなっちゃったら、高須くんと本物のエッチをする元気がなくなっちゃう…」
亜美は、ちょっと呼吸を整えるつもりで、言葉を切った。しかし、その間も繊細な指先で竜児の亀頭を、さ
わさわ、となで回し続けているのだが…。
「川嶋、ずるいぞ。俺にはお前のあそこを弄らせないくせに、お前は、さっきからずっと俺のを弄り倒して
るじゃねぇか…」
「ふふふ…、高須くんのおちんちんは、もう、亜美ちゃん専用なんだからね。で、このおちんちんを、亜美
ちゃんのあそこに入れるのぉ」
亜美は、竜児を上にしたまま、スカートに手を突っ込んで、ぐしょぐしょに濡れたショーツを脱ぎ捨てた。
「高須くん、裸になろう…、二人とも生まれたままの姿になって…。そして、一つになろう…。あたしは、
高須くんのものだから、亜美ちゃんの身体の中に高須くんの精液をいっぱい、い~っぱい注ぎ込んでよ」
「川嶋、そんなことしたら、妊娠しちまうかもしれねぇ…。せめてコンドームくらいは着けた方がよかぁねぇ
か?」
いい雰囲気の時に、何て無粋な、と亜美はむっとした。
「買い置きとかあるの?」
「いや…。そもそもエッチ未経験の俺がそんなもん常備しているわけがねぇ」
亜美は、不満げに頬を膨らませた。せっかくいい雰囲気になったのに、ここでコンドームを買いに行くこと
を理由に中断されたら、結局、エッチできずに有耶無耶で終わってしまうだろう。それに…。
「高須くんと初めてのエッチなんだよ、高須くんのおちんちんがゴムで絶縁されているなんて、亜美ちゃん
許せない。それは高須くんだって、そうでしょ?」
「そ、そりゃ、そうかもしんねぇけどよ…」
竜児の表情が不安げだ。亜美は、そんな竜児に気遣いはさせないつもりで、淡い笑みを浮かべた。
「あたしのことなら、気にしなくていいんだよ。なんなら妊娠したって構わない。それどころか、高須くん
の赤ちゃんを孕みたい、高須くんの赤ちゃんなら生みたい、何でだろう、今は無性にそう思う…」
「か、川嶋、もう安全日じゃなかったのか?!」
「う~ん、この前の日曜日あたりは絶対に大丈夫ぽかったけど、今日は、微妙かなぁ…。でも、さあ、女の
排卵日なんて、はっきりしないから、気にしたって仕方がないよ」
だが、竜児は、亜美の言葉に怯えるように青ざめ、頬を引きつらせ、次いで、生気を失ってうなだれた。
「川嶋、すまねぇ、俺は川嶋を妊娠させたくない。だから、妊娠の危険がありそうな時に、何の避妊具も使
わねぇで、お前とエッチすることはできねぇ…」
「ちょっと、どうしてよぅ! 亜美ちゃんと一つになるんでしょ? それが何で今になって…」
亜美は狼狽した。捨て身で竜児にぶつかったのに、ここまで来てそれはあんまりだった。
亜美は竜児の首に縋り、その首筋に白い頬を擦り付けた。今、ここで竜児を手放したら、再び、実乃梨に心
を奪われてしまうのではないか、という根拠のない不安すら湧き起こってくる。
そんな亜美に竜児は、厳かな口調で告げた。
「泰子…、お前を泰子みたいな目には遭わせたくないからだ…」
亜美は、はっとして竜児を見た。
「泰子は、十代で俺を生んで、本当に苦労の連続で、ここまでやって来たんだ。十代の女が出産して、その
後、生活していくっていうのがどれだけ大変か、俺はいやと言うほど見てきた。だから、男は無責任に女を
孕ませちゃいけねぇ…。俺の父親のように、泰子一人に苦労を押し付けるような最低な真似だけは絶対にし
ちゃいけねぇ…」
「で、でも、亜美ちゃんは…」
竜児は、それには応えず、はだけていた亜美のブラジャーを元通りにし、そのストラップを亜美の肩に掛け
た。そして、部屋の隅の方に脱ぎ捨てられていた亜美のブラウスを着せてやった。
「お前は、孕まされた女の悲惨さを分かってねぇ…。そんな悲惨な被害者は泰子くらいで十分だ。ましてや、
俺を加害者にしないでくれ…」
「加害者だなんて、大げさ過ぎるよ。たかが男女の自然な営みじゃないのぉ」
「川嶋、お前は妊娠することを軽く考えすぎちゃいねぇか? 気ぃ悪くしたら済まねぇけどよ、お前は、母
親に逆らって、役者にならずに今の大学に入ったんだよな? すでに親の心証を相当悪くしている。その上、
子供なんか身ごもったら、今渡こそ本当に勘当されちまうだろう」
「でも、それだったら、大学は休学して、あたし泰子さんみたいに頑張るから」
竜児の表情が険しく引き締まった。
「お前に泰子の何が分かる? 息子の俺が言うのも何だが、あいつの苦労は生半可なもんじゃねぇ。それに
お前が泰子のような生き方をするってぇのは、大学の卒業も下手したら諦め、弁理士になる夢も捨てなきゃ
ならねぇ…。代償があまりに大きすぎる」
「う、うん…、で、でも…」
竜児が、怒ったような、それでいて悲しそうな目で亜美を見ている。その視線の無言の圧力に、亜美は言い
かけた言葉を飲み込んで、うなだれた。不満ではあったが、竜児の言うことは正しいのだ。
「それに、『愛された証』だとかって、孕んだ子供のことを思わない方がいい。無責任な男は、女の都合な
んてお構いなしさ。俺の父親がいい例だ。生きてるのか死んでるのかすら分からない。大体が、後先を考え
ずに女を孕ませるような奴はダメなんだ。俺も危うく、そんなダメな奴に成り下がるところだったよ…」
竜児は、タンスからユニセックスのショーツを選ぶと、亜美に手渡した。
「俺の下着だけど、いやじゃなかったら使ってくれ。一応は女性が使ってもおかしくないようなデザインに
なっている。何せ、お前のショーツは、ぐしょぐしょだからな。とても穿けたもんじゃねぇ…」
亜美は手渡された竜児のショーツをおずおずと穿いた。
敗北感のような、何かに打ちひしがれた思いがする。
「そうね…、高須くんの言う通りなんだろうと思う。正気に戻った高須くんの判断に誤りはない…。今日の
ところは、あたしの方が明かにやり過ぎ。だから、もう帰るわ」
亜美はバッグを持って、玄関に向かった。竜児が亜美の後を追うようについてくる。
玄関の土間で靴を履いた亜美は、竜児に向き直った。
「ここで、いいわ…」
「川嶋…、あのよ、さっきの言い方はちょっときつかったな、その点は許してくれ…」
亜美は、竜児に対して首を左右に振って応えた。
「ううん、高須くんの言うことの方が正しいの。自分の考えが浅はかだった…。その点は反省しなきゃいけ
ない。でも…」
「でも?」
「据え膳を食べて貰えなかったっていうのは、女にとって屈辱なの。その点は分かってちょうだい」
口調は穏やかだったが、捨て台詞のつもりだった。
意識して、できるだけ丁寧にドアを閉めるようにした。そうでないと、心の動揺を竜児に見透かされてしまう。
悔しくて寂しくて悲しくて情けなくて、その場に座り込んで泣きじゃくりたくなるのを懸命に堪えながら、
鉄製の階段を、手すりに縋って、よろよろと降りた。
足を引きずるようにして門を出て、暗い路地に差しかかった時、不意に涙が溢れてきて、それが頬を伝って
流れ落ちた。
107 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 00:29:42 ID:bfKloVt0
しえん
試演
紫煙
フォームT
だっけ。シエン
四円
>「据え膳を食べて貰えなかったっていうのは、女にとって屈辱なの。その点は分かってちょうだい」
ああ、よい台詞ですね><
アニメなんてやってない地域の俺は何時までだって待てるぜ!
(;ω;)ウッ…
>>114 今ググって来た。
ダースベーダーが使ってるやつか。ダースベーダーと亜美ちゃんのエロパ…
うん、なんでもない。
支援
ライトセーバープレイか…新しいな
そして間違えた。
改めて
フォームX
(シエン)
フォームTはシィ=チョ
支援
>>116
むしろヨーダ×亜美ちゃn
なんでもない
>>120 そうだよな。なんでもないよな。とにかく続きが投下されるがwktk。
支援
レ /:::::::::rー''" / 彡/::/::/::/:::::::::!
/ /::://:/ / ,.ィ≧ュ、 `ァ〃イ^ヽ::::::::::/ ___/ ̄/ /''7 . / ̄/ ./''7 /__7 /''7ロロ
. { ゝく〈_ヽ 、 // ,〃 ィ之ノ _.´ ∨ L }::::::/ /___  ̄// / __  ̄ ./ / /__7./ /
ゝ_ >ー 〉::ト=ミュゝヾ彡=´ ̄U´ 〉 ,'::::∧`ヽ _ノ ,: / ̄ / /_ノ ./. ___ノ / ___ノ /
ヽ__/::/ ィ圦フ} `ヾ´ ̄ ゝ/彡'::/ } ./_ノ,___/ . /_____,ノ ../____,./ /____,./ 色に
-=ニ二ノ|::ヽ  ̄ノ ┬' ∨ / 早くなりたい果実 キミの光を浴びて
|::::l く 、 { / / 理想や夢は膨らむばかり 気づいてよ ねぇ
|:::::', ヽ __,. -ー- 、 l / / ___/ ̄/ /''7 . / ̄/ ./''7 /__7 /''7ロロ
l:∧\ くr=' フ´ ̄ ヽ ノ / / /___  ̄// / _  ̄ ./ / /__7./ /
!::∧ \ ', / / , ' / _ノ ,: / ̄ / /_ノ ./. ___ノ / ___ノ /
\::ヽ /\ ∨__ / / r─// ./_ノ,___/ . /_____,ノ ../____,./ /____,./
_\∨ ∧ ー─ / / // 今日も 食べてみたけど まだすっぱくて 泣いた
アニメの亜美ちゃんが切なかったので支援
支援
アニメよかった
てか春田www
そして四円
まだ規制かな。
支援
もいっちょ支援
春田支援
作者さん、今夜は厳しそうなら無理せず休んでくださいね。
というわけで一応、支援
連投規制喰らっちゃったのかな…
>>106までの段階でもGJ!
あーみんが可愛くて可愛くてもう!
しょうがないので規制が解除されるまでまた正座して待ってるよ。
全裸に靴下とマントだけで。
131 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 02:57:49 ID:y2EAE28j
私怨
>>130 ついでに乳首にこれ貼っとけ
つバンソウコウ
>>132-133 ありがとう
このスレの連中は優しい香具師が多いな
つーわけで多少は暖かくなったんで
SL66大兄は自分のペースで続きを投下してくれい
待ってるぜ
しえーん
136 :
SL66:2009/03/12(木) 04:34:54 ID:TuF2NIom
大変失礼いたしました。
まさか、連投規制にひっかかるとは…
では、再開です。
なおまたも途中でしくじったようなら、連投規制にやられたと
ご理解ください。
--泣くもんか!
そう思えば思うほど、涙が止まらなくなってくる。
亜美は、その涙を拭おうともせず、おぼつかない足取りで彷徨うように家路につくのだった。
明けて木曜日。
例によって学食での丸テーブルを囲んでの昼食時。竜児と亜美は、実に気まずそうに黙々と同じおかずの弁
当を突いている。
「あ、あのねぇ…」
沈黙の重圧に耐えられず、亜美が口火を切った。しかし、差し向かいで席についている竜児と目が合ったと
たん、目を伏せ、首をすくめてうつむいた。
竜児も竜児で、その眼差しや物腰には、亜美に対する後ろめたさのようなものがあるのか、無駄に周囲を威
圧するはずの三白眼が精彩を欠いている。
精彩を欠くのは亜美も同様だ。
昨日は、竜児に拒絶されたと思い込み、家に帰るなり、着の身着のままで布団に突っ伏して泣いた。ひとし
きり泣いて落ち着くと、今度はシングルマザーの子である竜児の心証を害したことに気付き、また泣いた。
そのまま泣き疲れて眠りに落ちたせいで、寝起きの顔はひどいものだった。
泣きはらしたせいで、まぶたは腫れ上がり、目の下には大きなクマまでできていた。洗顔で腫れ上がった肌
を引き締め、ヒアルロン酸等が含まれた基礎化粧品でケアしたが、所詮は姑息な処置に過ぎない。げっそり
とやつれた顔は手の施しようがなかった。
亜美は上目遣いで竜児を一瞥した。昨日のことを竜児自身がどう思っているのかが気になるのだ。
まずいことに、昨日は、濡れたショーツを竜児の家で脱いで、そのまま忘れてきてしまっている。それがど
うなったのかを訊く勇気もない。
竜児のことだろうから、その日のうちに洗ったのであろうが…。
代わりに亜美が借りた竜児の下着は、未だ洗わずにそのままだ。こういうすぼらなところも恥ずかしい。
憂鬱そうに目を伏せて、亜美は切干大根の煮物を口に運んだ。
上品な薄味で美味しい。塩分が控えめだから健康にもいいはずだ。亜美も真似はしてみるのだが、こうした
微妙な味わいまでは再現できない。
それにしても、昨日のようなことがあっても、律儀に弁当を作ってくる竜児には恐れ入る。
とにかく、エッチ関連の話は、しばらくは御法度だろう。
料理や、弁理士試験等の当たり障りのないことを話して、徐々に関係修復を図っていくのがいいかもしれな
い、と、亜美は、うつむいて、もぐもぐと口を動かしながら考えた。
であれば、沈黙は銀、雄弁こそが金であるはずだ。お互いにだんまりでは埒が明かない。
亜美は再び口火を切った。
「あ、あのさぁ…、昨日は、何か、色々あったけどぉ、あ、明日のこと、ほ、ほら、弁理士試験のサークル
のこと、あ、あれについて、もうちょっと話を詰めないかなぁ〜、とか…」
言いながら顔面が引きつっていることが分かる。モデル時代に慣らした『ウソのツラ』は竜児には全く通用
しないから、実にやりにくい。
「お、おぅ、その話か…、そうだなぁ、まぁ、お、俺も法律の勉強を始めるのはこれが最初だから、実はど
んな本を買うべきなのかすら怪しくてな。その辺を含めて、法学部である川嶋の話は助かるよ」
無理に笑っているような、ぎこちない感じは否定できなかったが、竜児の反応は悪くない。意外に、昨夜の
ことは気にしていないのかも知れない。亜美は、ちょっとだけ安堵した。
もっとも、気にしなさ過ぎるというのであれば、それはそれで問題なのだが…。
「条文集は買った?」
「ああ、発明協会が発行している奴でよかったんだっけ?」
「そう、ひとまずはそれでいいわ。あとは、青本とかは?」
青本とは、特許庁が編集している『工業所有権法逐条解説』の俗称である。箱が浅葱色のような緑を帯びた
淡い青色をしているので、こう呼ばれている。特許法、実用新案法、意匠法それに商標法を中心とした法律
を解説したもので、『弁理士のバイブル』とも言える存在だ。
「買ったよ、最新の第17版。下手な電話帳よりも分厚いな。しかも、書いてある内容がちんぷんかんぷんだ。
先が思いやられるぜ」
「青本の内容は弁理士試験に必ず出るから、条文と青本をしっかり読んでおくことが合格する上では重要だっ
て、この前インターネットで見た合格体験記にも書いてあったでしょ? イヤでも避けて通れないわよ」
亜美は、ちょっと意地悪そうに「うふふ…」と、笑った。
法学では亜美に一日の長がある。勉強では敵わない竜児に、初めて一矢を報いることができるかもしれない
のだ。
「その青本には、『公信力』とか、『用益物権』とか、得体の知れない言葉があるけど、これ自体について
は青本は何も解説してねぇ…。これって、民法とかで出てくる項目だろ? それを分かっていることが前提
だとしたら、実際には、青本に書かれている以上のことを憶えて理解しなくちゃいけないってことだよな?」
「ふふ、そうね…、特許法とかは民法の特則みたいなところもあるから、民法をちょっと知っておくと有利
かも知れないわね。でも、弁理士試験で主に訊かれるのは特許法や意匠法、商標法とかだから、民法や民事
訴訟法は、特許法とかに関連がある事項だけを理解できればいいんじゃないかしら…」
たしか竜児は、青本を買って間もないはずだ。にもかかわらず、特許法と民法の関係に薄々気付くとは、大
したものだな、と亜美は感心する。
「川嶋は、民法とかも大学の講義でかなり習っているんだろ? 青本を読んで分からないところは、川嶋に
訊けばいいんだよな?」
「ええ、あたしが分かる範囲であれば、高須くんの質問に喜んで答えさせていただくわ。ただし、高須くん
が、例の誓いを忘れずに、亜美ちゃんに永遠の愛を誓うっていう条件付きでね」
と言って、竜児にウインクする。後段の台詞は、昨日のことがあった後ではどうかな? と正直思ったが、
「お、おう…」と、ちょっと嬉しそうに頬を赤らめている竜児の反応を見る限り、許容範囲だ。
一緒に大学入試の受験勉強をしていた時もそうだったが、竜児と勉強についてあれこれと話すのは、本当に
楽しい。
竜児とキスし、抱き合っている瞬間も喜びだが、性愛抜きで勉学について話し合っているだけでも、十分に
幸福だと思えるのだ。
二人揃って弁理士になれたら、法解釈について論じ合うのが日常生活の一部になることだろう。時には相互
に助言し合い、時には論争めいたやり取りがあるかもしれない。
いずれにしても、結婚して、単に家庭を持つということにとどまらない、別個の次元での二人の生活がある
に違いない。もしかしたら、亜美が求めている幸福とは、竜児との性愛だけではなく、竜児と共同で何かを
成し遂げることなのかもしれない。
「訊きたいことは色々あるけど、もうそろそろ昼休みが終わっちまう」
亜美も腕時計を確認した。あと五分で予鈴が鳴ることだろう。次の講義は、『ソクラテス方式』で恐れられ
ているフランス語だ。
「続きは、講義が終わった後に、どっかの喫茶店で話そう」
「そうね、スドバとか?」
わざと言ってみた。それを竜児も分かっているのだろう。
「冗談きついぜ、あそこで痴話喧嘩して醜態さらしたばかりじゃねぇか。いばらくは常連客のネタにされる
ぞ。特に、稲毛酒店のおじさんとかが、『喧嘩するほど仲がいいんだな』てな冷やかしをするだろうな」
そう言いながらも、苦笑している。
「そうね、犯罪者よろしく、時効というか、ほとぼりが冷めるまでは、大人しくしていましょうか」
「そうだな」
二人は、示し合わせたかのように、「ふふふ」と忍び笑いをした。
「おっと、電話だ…」
竜児は、着信を示すランプが明滅している携帯電話を取り上げた。
フリップを明けて液晶画面を見る。その瞬間、竜児の表情が、困惑したかのように曇るのが見て取れた。
「誰からの電話?」
亜美の問いに、竜児は一瞬だけだが躊躇したようだった。
「櫛枝からだよ…」
「そ、そう…」
「電話に出るぞ、いいか?」
「出るも出ないも高須くんの権利でしょ? あたしがどうこう言うべきではないわ…」
本心では、その電話は無視して欲しかった。実乃梨からの電話だというだけで、今はイヤな気分になる。
「お、おう…」
竜児は、そう言って、ちょっと遠慮がちに電話に出た。
「ああ、櫛枝か…、俺だ…」
その後のやり取りは、一方的に実乃梨がしゃべっているのか、竜児は、「ああ…」とか、「そうか…」とか
しか言わない。
亜美は、できるだけ耳を澄ましたが、周囲のざわめきで実乃梨の声は全く聞き取れなかった。
「わかった、じゃ、そういうことで…」
結局、何が話し合われたのか皆目分からないうちに、実乃梨からの電話は終わった。
「さっきの電話は何だったの?」
竜児を非難するつもりはなかったのだが、相手が実乃梨ということで、自然に表情が険しくなっていたのか
も知れない。詰め寄る亜美に、竜児はちょっと怯えるような表情を見せた。
「い、いや、今度の土曜日の話だよ。櫛枝の練習試合。ぜひとも見に来てくれとさ…」
「それで、了解したの?」
訊く前から竜児の応えは分かっていた。
「お、おぅ、北村と一緒に、行かなきゃならなくなっちまった…」
「そう…」
「それと櫛枝が、お前に先日は済まなかった、と言っていたよ」
「そう…。あたしは別に実乃梨ちゃんのことなんか気にしていないけどぉ」
嘘もいいところだ。正直、実乃梨が居なければ、とさえ思っている。
「その櫛枝がさ、土曜日は川嶋にも詫びたいから、俺や北村と一緒にグラウンドに来てくれって…」
亜美は、むっとした。冗談じゃない。
「それ、実乃梨ちゃんにオッケイしたの?」
罰が悪そうに弱々しく頷く竜児を見て、亜美は学食中に響き渡るような声で怒鳴った。
「あたし行かないからね! 行きたきゃ、祐作とでも一緒に行きなさいよっ!!」
そして、金曜日。
弁理士試験対策のサークルに竜児と亜美は出席した。
昨日の実乃梨からの電話に対する竜児の優柔不断さには、一瞬キレかけた亜美だが、落ち着いて考えれば、
それは、今に始まったことではないし、元凶は、あろうことか、実乃梨を連れてきた北村祐作なのだし…、
ということで、彼女なりには納得することにした。
まぁ、土曜日の練習試合とやらが終わったら、主犯の北村と、共犯(?)の竜児をとっちめればいい…。
それだけの話である。
肝心のサークルは、竜児と亜美以外のメンバーは十二名だった。
元々が法学部の有志で始められたサークルということもあって、うち十名は法学部生または法学系の大学院生
であり、その他は二名が工学部の機械科の男子学生だった。
そのメンバーが、講義の終わった法学部の空き教室に集合していた。
「へぇ〜、君ら一年生なのにもう弁理士試験の勉強を始めるんだ」
サークルのリーダーだという年嵩の男子学生が、感心とも呆れとも判じがたい口調で呟いて、二人の新参者
を吟味するように見比べた。どうやら、一年生のメンバーは竜児と亜美以外には居ないようだ。
「で、君は理学部数学科か」
「はい、そうですけど…」
「弁理士は理系が多い士業だけど、ほとんどが工学系だからね、ちょっと珍しくて。しかし、理学部でも一
番難しいんだろ? 数学科って」
「はい」
偏差値は一応そのようになっているようだ。
「弁理士になるって言うけど、数学の研究者とかにはならないの? または、高校の教師とか?」
「いえ、研究者になれるような素質はないし、教師もあんまり向いてないと思います。それに、俺が数学科
にしたのは、そんなに深い意味はないんですよ。強いて言えば、物理科や化学科みたいに実験がないから、
資格試験の勉強に割ける時間があるかなって程度ですから…」
榊と名乗る、そのリーダーは、竜児の説明に納得した様子で頷いた。
「う〜ん、何だか最初から資格試験狙いなんだなぁ。でも、それもありか…。それにあの試験は、司法試験
に準ずるほど手強いから、早めに始めておいて正解かもしれない。俺なんか、もう六年連続で受験している
けど、一次試験の合格止まりだからなぁ〜」
と、苦笑する。聞けば、修士二年だという。しかも、学部生のときに必須科目でしくじって留年しているの
で、学部と院とで通算八年間もこの大学にいるらしい、大柄で太り気味ということもあるが、妙に貫禄十分
なのは、そのせいか、と二人は納得する。
サークルの活動場所になっている空き教室では、既にメンバーの学生が二人一組になって、一次試験の過去
問を出題し合っていたり、来月に控えた二次試験のために、知識の要点整理をしている。
弁理士試験は、マークシート方式で短答式試験と呼ばれる一次試験、法律論文の良否を競う論文試験と呼ば
れる二次試験、法律上の知識を口頭試問で問う口述試験と呼ばれる三次試験とがある。
一次試験に合格しなければ二次試験は受験できないし、二次試験に合格しないと三次試験は受験できない。
三段階もの関門をくぐり抜けねばならず、特に二次試験である論文試験が狭き門とされている。
マークシート方式の一次試験は、条文の知識が頭にあって、過去問を解くことで『受験慣れ』してしまえば、
大体は合格レベルに達するが、二次の論文試験は、知識だけでなく、出題事例に適応した思考力が求められ、
これがために単に知識を詰め込んだだけでは歯が立たない。そのため、このサークルのリーダーである榊の
ように、一次試験には合格したものの、二次試験になかなか合格できない受験生がかなりの数にのぼる。
そのためには、条文を正確に理解し、青本等の基本書を中心とした学習を通して、法学的な思考力とセンス
を醸成することが何よりなのだが、青本その他の基本書の分厚さや難解さから、それを忌避する受験生が少
なくない。
このサークルでも、使用している教材は、資格試験対策で有名な予備校が刊行している『レジュメ』と呼ば
れるものだった。
このレジュメ、青本等の基本書から重要な部分を抜粋したもので、手っ取り早く概略的な知識を身に付ける
という点では都合よくできている。
しかし、得られる知識が断片的であることは否めず、本試験でレジュメが言及していない分野から出題され
れば、万事休すである。
「青本は使わないんですか?」
亜美の問いに、榊は苦笑いした。
「君ねぇ、あんなクソ厚いのいちいち読んでいたら、時間がもったいないだろ? 世の中にはもっと便利な
教材があるんだよ。まぁ、青本読まなくても合格した先輩方は結構居るからね」
「「はぁ…」」
ちょっと安直過ぎないか、と、竜児と亜美は思った。青本を読まなくても合格できたというのは、一昔前の
話であろう。
マークシート方式の一次試験であれば、多少のごまかしは利くかもしれない。
しかし、一から自分の文章で論述する現行の二次試験ではそうはいくまい。
二次試験の事案の設定が今よりも単純で、記すべき項目を深く論じることまでは要求されなかった一昔前は
いざ知らず、事案が複雑な上、法律上の論点を深く論じさせる出題が主流な昨今で青本軽視は命取りだ。
「なんか、期待していたのと違うな…」
それは亜美も同感だった。受験機関のレジュメに依存し、青本等の基本書を軽視する姿勢もさることながら、
お遊びのサークル然とした雰囲気が何よりも気になった。
仲間がいれば心強いのかもしれないが、それに安心し切ってしまい、真摯に学ぶということが疎かになって
いるのかもしれない。
「それに、さっきから変な視線感じない?」
亜美が竜児にだけに聞こえるように囁いた。
都合十二名ほどのメンバーのうち、二年生か三年生であろう女子学生四人が、こちらを窺っている。窺うだ
けならまだいいが、竜児と亜美、特に亜美を見ながら、くすくすと笑っているのだ。
「何か、あたし、笑われているみたい…。感じ悪!」
「川嶋は元モデルだから、それで注目されているんじゃねぇのか?」
「そうかも知れないけど、明らかに好意的じゃないわね。勘だけど、あたしが元モデルっていうのとは全然
関係なく、あたしのことを快く思ってないような気がする」
「悪意があるかどうかまでは断定できねぇだろ? 今まで通りに地味に振る舞っていれば、何てことないん
じゃないか?」
「うん…」
竜児の言う通りなのだろう。モデルだったということを妬んだ数学科の女子に因縁をつけられたことが以前
あったことで、見知らぬ者から理由なく見られることに神経質になり過ぎているのかも知れない。
「う~ん、そうだな。君らは未だ一年生だし、本試験の問題を解くのは無理だろう。レジュメもないだろう
から、条文の読み合わせをしていなよ」
ぬるい雰囲気は気になったが、それについて初学者である竜児や亜美がつべこべ言える義理はない。郷に入っ
ては郷に従うのが流儀である。幸い、リーダーである榊は人がよさそうで、面倒見も悪くないようでもある
し…。
「じゃぁ、高須くん、条文に慣れるためにも、まずは高須くんから読んでみてよ」
「お、おう…。じゃぁ、特許法の第一条から、『この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明
を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする…』」
淀みなく届く竜児の朗読に耳を傾けながら、亜美は、気になる点はあるにはあるが、これはこれでいいかも
知れないと、思い始めていた。
各メンバーがペアになっての、レジュメを使用したり、過去問を解いたり、条文を読み合わせたりといった、
勉強は、夕方五時に始まって、夜八時まで行われた。
その後は、学生サークルにつきものの『コンパ』ということになった。
「いや、ぴちぴちの一年生生が参加してくれたから、その歓迎会も兼ねてね。何しろ、川嶋さんみたいな可
憐な女子が参加してくれるのは、下心なしで嬉しい。男ばっかだと、どうにも殺伐としちゃうからさぁ~。
まぁ、元々、女子も四人いるけど、さらに増えてくれた方が、サークルが華やぐからねぇ」
そう言って、榊は、あはは、と笑う。本当によく笑う人だと、亜美は思った。少なくとも、この人は悪い人
ではないらしい。
コンパは大学近くの居酒屋で行われた。
竜児と亜美は未成年者だし、上級生のメンバーでも二年生あたりには未成年者が居る。しかし、コンパで
「未成年者だから、アルコールはちょっと…」というのは、無粋の極みとして許されない。
飲酒には否定的な竜児の前にもビールが並々とつがれた大ぶりのグラスが差し出された。
「それじゃあ、一次試験合格者は来月の第一日曜日に迫った二次試験である論文本試験の必勝を期して、そ
れと、惜しくも一次試験の結果が芳しくなかった者は、捲土重来を期して、かんぱぁーい!!」
リーダーである榊のよく通る声が店内に響き渡り、各メンバーもそれに唱和するように「乾杯!」と言い、
グラスのビールを飲み干した。
竜児も、おずおずとグラスのビールを一口だけ飲み、ちょっと顔をしかめている。
その横で、亜美は、他のメンバーよろしく、グラスのビールを、ぐっと、あおった。
普段は全く飲酒をしない亜美だが、アルコール飲料自体は嫌いではない。むしろ、美味いと思う程だ。
ただ、すぐに酔ってしまうのと、酔った勢いで竜児宅に乱入したように、酒乱の気があることを自覚してい
るので、飲酒は手控えている。
「お、川嶋さん、いい飲みっぷりだねぇ」
リーダーの榊と、サブリーダーの小林が、亜美の飲みっぷりのよさに感嘆するように言った。小林は法学系
の修士一年だ。こちらは榊と違い、そつなく単位を取得しているのか、留年の憂き目には遭っていないらし
い。細身の長身で、物静かな雰囲気を持ち、豪放な性格でビヤ樽のような榊とは正反対だが、絶えず、にこ
にこと人畜無害そうな笑みを浮かべており、こちらも悪い人ではなさそうだ。
「あたし、あんまりお酒は強くないけど、飲むのは好きなんです」
「へぇ〜、意外だねぇ。川嶋さんみたいな楚々とした人は、お酒よりも紅茶にケーキって感じだけどな」
小林が、尖った顎を撫でるように手をやった。その仕草は、単なる癖なのだろうが、ちょっとロダンの『考
える人』を連想させ、哲学的な趣きがなくはない。
「ええ、甘い物も好きです。でも、お酒も美味しいと思いま〜す」
「そりゃ頼もしいや。まぁ、もう一杯…」
「は〜い、ありがとうございまぁ〜す」
榊によって注がれた二敗目は、一気にいかず、一口ずつ飲んだ。猫さえかぶっていれば、お淑やかな美少女
で通用する。要は、酔って地が出なければいいのだ。
その後は、
「川嶋さんて、モデルやってたんだって?」
という質問も、
「いやぁ、昔の話ですよぅ、受験勉強を機に足を洗いましたぁ」
と、当たり障りなくスルー。
「お母さんは、有名な女優の川嶋安奈でしょ?」
という追求も、
「そうですけどぉ、あたしは母と違って芸がありませんからぁ、今はただの地味な女子大生ですよぉ」
と、部外者を装うようにして、これも素っ気なくスルー。
そんなこんなで、コンパの夜はつつがなく過ぎていくかに見えた。しかし、神の祟りか、悪魔の罠か、そう
は問屋が卸さなかったのである。
コンパが始まって一時間も経過した頃だろうか、酔いをできるだけ防ぐために、ちびちびとビールを飲んで
いた亜美が顔を真っ赤にして、目を回している。元々が、それほど酒に強くないのだから仕方がない。
「お、おい、川嶋大丈夫か?」
心配そうに覗き込んでくる竜児の声が、心持ち遠くから聞こえてくるようだ。
陶然とは、こういう感覚なんだな、と他人事のように亜美は思った。
「川嶋さん、大丈夫?」
未成年者に飲酒を勧めて、さらにその未成年者が酔いつぶれかけているとあっては、責任者としてまずい。
呑気であるはずの榊の口調にも、ちょっとした焦りが感じられた。
「ぜ〜んぜん、平気れす、ら、らいじょうびぃ…」
笑顔で健在ぶりを立証しようとしたが、舌がもつれて呂律が回らない。竜児と榊、それに小林の心配そうな
顔が、視野に浮かんでいる。
--ありゃ、三人とも、望遠鏡を逆さにして見たように遠くにいるような…。
なんで、竜児たちがあんなに遠くに見えるんだろうと、思い、それで漸く自分が多少は酔っているんだな、
ということを自覚した。
「全然、大丈夫じゃねぇよ」
竜児は、亜美の両肩をに手を副えて二度、三度と揺さぶった。
「た、たきゃすく、ん、あ、亜美ちゃん、ち、ちょっと酔っぱらっただけで、ずぅえんぜん、だ、だいじょ
うびなんすけどぉ〜」
「お前、べろんべろん、もいいところだぞ。そもそも歩けねぇだろ、そんな状態じゃ」
「うふ、あ、歩けなくたって、た、たきゃすくんが、きゃい、介添え、し、してくれるよね?」
「他人を当てにしている時点で、ダメだろうが…。あっ、て、お、おい、川嶋、寝るな!」
完全に酔いが回ったのか、亜美は竜児の肩にもたれて寝息をたて始める。
榊は、酔っ払った亜美に付き添う竜児を、ちょっと羨ましそうに一瞥した。
「まぁ、高須くんみたいなナイトが居るから安心かな? でなけりゃ、俺が川嶋さんのナイトになってもい
いんだが…」
「えっ?」
三白眼を点にして驚く竜児の肩を榊は軽く叩き、太鼓腹を揺すって笑った。
「冗談を真に受けるな、他人の彼女にちょっかい出すほど無粋じゃないよ。何よりも、川嶋さんが君を頼り
にしているのが、君を見る目つきとかで分かるからねぇ。しっかり守ってあげなよ」
「はい」
それから、榊は宴席を見渡した。
「それにしても、いつにも増して無礼講だな」
ひどく酔っているのは亜美だけではないようだ。
聞けば、一次試験の合格発表があったばかりだという。サークルで一次試験に合格したのは、榊と小林、そ
れに法学部の学部生が何人かという有様で、約半数が不合格だったらしい。その憂さ晴らしもあって、やけ
酒をあおっている者が少なからず居る。
そうした者は、「一点足りなかったんだよ、一点!」とか、「畜生、何であんな変な判例なんかネタにする
んだよ!」などと、真っ赤な顔で互いに愚痴を言い合っていた。
「けっこう荒れてますね…」
「まぁね、試験は合格と不合格しかないからねぇ…。合格した奴は、次の二次試験のことがあるけど、取り
敢えずはめでたいし、一次試験でダメだった奴は、失意からやけくそになっているし、まぁ、大変だよ」
「勉強している時は、結構なごやかな雰囲気でしたけど…」
「一応は理性ってもんがあるからねぇ。しかし、アルコールはその理性を麻痺させる。それで本性や地が出
るんだな…。第三者として見てる分には面白いけどね」
「はぁ…」
榊の意外にクールな発言に竜児はちょっと戸惑った。
しかし、サークルを率いているのだから、「あはは」と表で笑いながら、裏ではそれなりに苦労しているの
だな、と思うことにした。
「ねぇ、きみ〜ぃ、飲んでるぅ?」
亜美ほどではないが、へべれけ一歩手前の女子学生に袖を引かれた。
「はい、いただいてます」
酔っぱらいには適当に返事をしておくに限る。竜児も飲んではいる、ただしビールは一杯目だけ、後は烏龍
茶だけなのだが…。
「おい、おい、瀬川さん、もう、でき上がっちゃってるじゃない。大丈夫?」
「いや〜ん、こんなの酔ったうちに入りませんよう〜」
榊に瀬川と呼ばれた女子学生は、くねくねと腰を振った。その姿は、酔っているせいもあるのか、妙に艶か
しい。
「瀬川さんは、一次試験に合格したんだから、来月の二次試験で頑張らないと…。コンパで言うのも何だけ
ど、深酒せずに、明日から論文試験対策をしないとね。まぁ、それは俺も同じか」
「うふふ、初受験で一次突破、この勢いで最終合格しちゃいまぁ〜す」
と言って、けらけらと笑った。初チャレンジで一次合格が余程うれしいのかもしれない。
「初回で合格はすごいですね」
一次試験突破だけで数年かかる者も居ることを思えば、それなりのお手柄と言ってもいいだろう。
「そうなんだ、彼女は法学部の二年。元々は、法科大学院に行って司法試験を受験するつもりだったんだが、
学部生でも受験できる弁理士試験狙いに方向転換してね、で、いきなり一次合格。キャリアは浅くても、サー
クルの中ではかなりの実力者だよ。今後、勉強で分からないことがあったら、彼女に訊くといい」
「やっだぁ! 私なんて全然大したことないですよう。合格はまぐれですぅ、ま・ぐ・れ」
そう言いながら、自信満々、してやったりの嫌味な態度が丸出しだ。これが瀬川という女子学生の本性なの
かもしれない。
「そんなことよりぃ〜、ねぇ、ねぇ、その子って、君の彼女ぉ?」
顔を真っ赤にして竜児にもたれかかっている亜美を指差した。
「はぁ、一応、そうですけど…」
照れがあったのか、『一応』という文言が無意識に口をついて出ていた。それを耳にしたのか、亜美が瞑目
したままで、眉を、ぴくり、と痙攣させたように思えた。
「あっはっはっぁ、『一応』なんだぁ〜」
「あ、いえ…、まぁ、同じ高校出身ですから…」
瀬川という女子学生は、「ふ〜ん…」と呟いて、竜児と亜美とを見比べている。どちらかというと知的美人
に類するのだろうが、ちょっとつり上がった切れ長の双眸には悪意が秘められているようで、物腰や言動に
は、才女というか、知力に自信がある者特有の傲慢さが現れていた。
「でさぁ〜、君ぃ、私のこと、憶えてなぁ〜い?」
いきなりそう言われても、竜児には心当たりがない。いや、待てよ、サークルに参加してきた竜児と亜美、
特に亜美を見ながら、くすくすと笑っていた四人の女子学生の片割れだったような気がする。
しかし、そんな程度で憶えているも何もないものだ。
「いえ、すいません。先輩にお会いするのは、おそらく今日が初めてです」
「そうぉ? 今週の月曜日、学食で何があったか、もう忘れちゃったのぉ? ほらぁ、ちょっとした事件が
あったでしょぉ〜」
「あっ!」
しまった、亜美と実乃梨との一触即発のトラブルを隣のテーブルで傍観していた女子学生の一人だったのか、
と竜児は漸く思い至った。
「ふふ、世間って狭いわよねぇ〜。君の彼女と、他の大学から来た女子学生との諍いは、なかなか見ものだっ
たわ。退屈な日常のスパイスになる位の…」
「あ、い、いえ…」
厄介事というものは、とかく尾を引くもののようだ。公共の場で騒げば、それは一時の恥では済まされない。
「おい、おい、瀬川さん、新入生をいじめちゃダメだよ。高須くん、困っているじゃないか」
榊がたしなめたが、酔いで理性のブレーキが効かなくなっているのか瀬川の勢いは止まらなかった。
いや、もしかしたら、素面でもこうした陰険な女なのかもしれない。
「いえね、この子と私は初対面じゃないってことを理解してもらうために、実際に月曜日に学食で起こった
ことを、ちょっと言っただけですぅ」
「だったら、もういいじゃない。高須くんも、瀬川さんと初対面ではないことに気づいているみたいだし、
それ以上、月曜日に起きた事件とかについて、あれこれ言うことはないだろ」
瀬川は、榊の忠告に「う〜ん、そうですねぇ…」と応じかけたが、すぐに、きょとんと、とぼけたような表
情をして竜児の方ににじり寄ってきた。
「な、何ですか、先輩…」
「私を思い出してくれたのはうれしいけどぉ〜、月曜日のアレは、何か興味深いわねぇ。月曜日にやって来
た他の大学の子と、君の彼女って、何か確執があるみたいでさぁ〜、ねぇ、アレって、痴情のもつれって奴
なの? 会話にはそれらしい文言は出てこなかったけど、そんな感じしたんだよねぇ」
「き、気の回し過ぎです。そんなことありません」
「そう? 月曜日に君とその子の居たテーブルに集まったのは、みんな同じ高校の出身者なんでしょ? で、
他の大学から来た子は、君の元カノで、今、ぐーすか眠ってるその子と因縁がある、って感じがしたんだけ
ど、違う?」
鋭い! 女の勘ってやつなのか、それとも、簡単に一次試験を突破できるだけの知力の賜物なのか、そんな
ことを思いながら、竜児は、応えに窮していた。もっとも、実乃梨は『元カノ』という存在までには至らな
かったのだが、竜児のかつての願望を含めて言い当てているという点では、ほぼ正解だろう。
「瀬川さん、いい加減にしなよ。高須くんと川嶋さんの個人的な事情に、第三者であるあなたが関与する筋
合いはない。高須くんは見かけによらず理知的だし、川嶋さんだって、楚々としたお嬢さんじゃないか。そ
の二人に因縁をふっかけるようにして難癖をつけるのは止めてくれ。いくらコンパは無礼講だといっても限
度がある」
榊が表情を険しく引き締めて、瀬川に警告した。しかし、当の瀬川が動じる様子はない。むしろ、何年かかっ
ても最終合格できない榊を侮蔑しているようにすら見えた。
「楚々としたお嬢さん? あっはっはっはぁ~、冗談じゃないですよ。言葉遣いも乱暴だったし、今にも取っ
組み合いの喧嘩をしそうなほど粗暴なんですよぅ~、その子。有名女優の娘とか何とかみたいだけど、育ち
はよくないって感じぃ~?」
そう言って、竜児にもたれている亜美を指さした。同時に、竜児の肩に乗っていた亜美の手が、きゅっ、と
握られた。寝た振りをして、この屈辱に耐えるつもりなのだろう。
竜児が盾になることを意味するが、亜美が酒乱の本性丸出しで暴れるよりは、なんぼかマシである。
「先輩、勘弁して下さい。川嶋は、そんな奴じゃありません」
「あら、あら、頼もしい王子様の登場かしら? その王子様に守ってもらって、狸寝入りぃ? 月曜日に来
た子も言ってたけど、本当におんぶに抱っこねぇ。笑っちゃうわぁ~」
亜美が寝た振りなのを見破っている。鼻持ちならない女だが、勘が鋭く、頭も切れるようだ。それだけに、
扱いにくいことは間違いない。
「瀬川さん、もうやめないか! 君一人のおかげで、高須くんや川嶋さんだけでなく、コンパの雰囲気自体
が台無しだ。君も上級生なら場の雰囲気を読んでくれ」
榊の口調は、警告というよりも懇願といった感じだ。その榊に、瀬川は切れ長の双眸を向けて、せせら笑った。
「なら、どうしますぅ? 暴力にでも訴えて、私を排除しますぅ? できますかぁ? できませんよねぇ~。
やったら、よくてセクハラ、悪くすれば傷害罪ですよぉ~。それに、リーダーは、私のような才色兼備の女
子が居た方が、場が華やいでいいってお考えでしょぅ? ならぁ、粗末にはできませんよねぇ?」
「瀬川さん、酔っているとはいえ、今の君の言動はひどいものだ。サークルでの明朗な君は、どこへ行った
んだ!」
「あらぁ~ん、これが私の地なんですけどぉ? まぁ、サークルのメンバーの実力とかが不明なうちは、猫
かぶってたんですよう。で、一次試験の結果を見たら、ほとんどが不合格じゃないですかぁ~。ぜ~ん、ぜ
ん大したことないしぃ~。だから、今後はぁ、才に長けた私のぉ好きにやらせていただきまぁす。ほらぁ~、
リーダーだって、この子たちに、勉強で分からないことがあったら、私に訊くようにって言われましたよ
ねぇ。だから、この子たちは、私が面倒を見させてもらいますけどぉ~」
豪放であるはずの榊が、青ざめて歯噛みしている。瀬川という女子学生の本性がここまで悪いとは見抜けて
いなかったのだろう。
「瀬川さん、君はうちのサークルにふさわしくない。辞めてくれないか。今後は、君だけで勝手に弁理士試
験でも何でも受験してくれ」
榊の押し殺した声にも、瀬川は動じない。蚊に食われた程にも感じていないかのように、瞳をきょとんとさ
せている。
「うふ、私が出ていったら、残りの女子三人も居なくなりますけどぉ? さらに私たち女子を追って、何人
かの男子学生も居なくなりますが、それでも宜しければ、出ていきます。それに、私も含む女子四人が抜け
たら、確実にここのレベルは下がりますよねぇ~。何せ、リーダーとサブリーダーを除けば、一次試験に合
格したのは、この四人だけですからぁ~」
そう言って、あははは…、と哄笑した。
面相を歪めて邪悪に笑う瀬川の傍に、残りの一次試験合格者が寄ってきた。竜児にも、そいつらが誰である
かは察しがついた。全員が、あの月曜日、竜児たちの隣のテーブルに座っていた女子学生たちだ。
さらに、四人の男子学部生が立ち上がり、瀬川たち女子の群に加わった。合わせて八人。瀬川とそれに従う
者は、サークルの過半数に達していた。
「何て奴だ、派閥工作でもしていたのか? 卑劣なのにも程がある…。君たち女子と、それに追従する者は、
もはや仲間とは思いたくない。勝手にしたまえ!」
榊が憮然として言い放った。それを瀬川は、榊の敗北宣言と受け取ったのであろう。
「ええ、ですから勝手にさせていただきますわぁ。弁理士試験は知識と思考力を問う試験ですからぁ、真に
知力に秀でた私たち四人の女子が、ここを仕切らせていただきます。あ、リーダーは引き続きお務め下さい
ね、お飾りですけどぉ~」
「断る! 君らのような悪辣な者たちは、こちらの方から願い下げだ」
榊は、脂汗を浮かべて苦々しげに吐き捨てた。
だが、瀬川は、眉一つ動かさず、冷たい切れ長の双眸で榊を愚弄するように一瞥すると、竜児に向き直った。
「うふ、じゃあ、高須くんだったかしらぁ? いい機会だから、ちょっと特許法の問題を出すから答えてく
れないかしら? あなたに弁理士試験を受験する素養があるかどうかを見極めてあ・げ・る」
竜児と亜美の周囲には、瀬川を含む上級生の人垣ができ、逃げ場がない。
「俺は、未だ初学者で、条文や青本を読み始めたばかりなんです。ですから、先輩の出題にはお答えする能
力がありません。すいません、本当に勘弁して下さい!」
悪意がある者に許しを請うことほど無意味なものはない。それは竜児にも分かっていたが、答えられそうに
ないのだからどうしようもない。
「ふふふ、答えられるかどうかは、問題を聞いてからにしてもいいんじゃない? とにかく、私が出題するっ
て言ったら逆らっちゃダメよ。じゃあ、行くわよ。『特許法第二十九条の二の規定と特許法第三十九条の規
定の違いについて説明しなさい』。どう、簡単でしょ? 青本にも書いてあるしぃ~」
冗談じゃない、昨日や今日になって特許法を学び始めた者が答えられる問題ではない。それでも、僅か一度
か二度、目を通したに過ぎない青本の内容を思い出そうと、竜児はじっと黙って必死に考えを巡らせる。
「どうしたの? 黙ったままではダメよぉ。何か言ってくれなくちゃ、面白くないじゃない?」
「う…」
そもそも、特許法第二十九条の二と特許法第三十九条がいかなる規定なのかすら分かってないのだから、答
えようがない。たしか、両方とも先の出願が特許を受けられる、と規定したものだったとは記憶しているが、
それ以上のことは全く理解できていないのだからどうしようもない。
脂汗を流しながら苦しむ竜児を瀬川以下四人の女子がせせら笑っている。
「ま、待って下さい!!」
唐突なタイミングで発せられた声の主に、悪意のこもった眼差しが四人分注がれる。
その眼差しに晒されながら、亜美が、うっすらと双眸を開いていた。
「あ、あたしが代わりに答えます。で、ですから、高須くんは許してやって下さい」
「川嶋、寝てなくて大丈夫か? 未だ酔っぱらっているんだろ?」
亜美は、頭を左右に振って、竜児に微笑みかけた。
「うん、ちょっと、ふらふらするけど、さっきよりは幾分まし…。呂律だって大丈夫だし。それに、この問
題なら、あたし答えられるから、任せて…」
「お、おう…」
「これは、これは…、王子様を救いにお姫様がお目覚めとはねぇ~。面白いじゃなぁ~ぃ? それじゃぁ、
川嶋さんとやら、さっそく答えて貰おうかしら」
亜美は、落ち着くために一回だけ深く息を吸い込んだ。そして、双眸を大きく見開いて、瀬川たちの目を見
ながら答え始めた。
「特許法第二十九条の二は、同日出願には適用がありませんが、特許法第三十九条は同日出願にも適用され、
先願の特許請求の範囲に記載されている発明についてのみ適用があります、また特許法第二十九条の二は、
先願が出願公開等がなされていない場合は適用されませんが、特許法第三十九条は…」
蕩々とまくし立てられる亜美の答えが妥当なのか否かすら竜児には分からなかった。しかし、人を小馬鹿に
するような笑みを浮かべていた瀬川たちの表情が、予想外と言いたげに硬直したのを見て、亜美の答えが正
しかったことを確信した。
「ま、まぁ、いいわ…。では、次の問題…」
「ちょっと待て! 川嶋さんは君らの質問に正解をもって答えた。もう、二人を解放してあげなさい。二人
へのこれ以上の干渉は、いじめ以外の何ものでもない」
榊が、竜児たちと彼らを囲む学部生との間に、割って入ろうとした。
しかし、女子三人がバリケードのように立ちふさがって、それを阻止した。
「触らないで下さいねぇ。少しでも私たち女子に触れたら、酒宴でのセクハラだって主張できますからぁ~。
それに、あと一問です。この一問に川嶋さんが解答できたら、二人は解放します。いいですね?」
なす術もなく悔しそうに歯噛みする榊に侮蔑の一瞥をくれてやると、瀬川は亜美と対峙した。
「じゃあ、川嶋さぁん。川嶋さんは法学部だそうだからぁ、民事訴訟法の問題に答えて貰いましょう。『既
判力と一事不再理の違いを説明しなさい』。さぁ、答えてぇ!」
亜美は、ぎょっとした。たしか必須科目の民事訴訟法の講義で、既判力と一事不再理について説明された記
憶はあった。たしか、どちらも判決が確定すると、前訴で主張した同一の事実及び証拠に基づいて新たな訴
えをすることができない、というものだったはず。しかし、両者の違いが分からない。
とにかく、分かる範囲で言ってみるしかない。
「既判力も一事不再理も、前訴で主張した同一の事実及び証拠に基づいて新たな訴えをすることができない
という効力を有しています…」
「それだけぇ? じゃあ、川嶋さんは、既判力と一事不再理は同じものだと言いたいのねぇ?」
瀬川以下の四人が意地悪く笑っている。
「い、いえ、違うものだと思います…」
「思います、って、川嶋さんの感想を聞いてるわけじゃないのよぉ? 両者の差異は何?」
「う、あう…」
亜美は畳に両手を突いて、嗚咽のような声にならない呻きを漏らしながら、必死で考えた。たしか、一事不
再理は、同一事件の訴権が消滅し、再訴は常に不適法なものとして取り上げないが、既判力はそうではなかっ
たはず。だけど、どういった場合に同一事件の再訴に既判力が及ばなくなるのかが思い出せない。
焦れば焦るほど考えがまとまらず、じりじりと時間だけが過ぎていく。
「は~い、そこまでぇ! ダメじゃあない、この程度の問題に苦戦しているようじゃぁ。この問題は、去年
の民事訴訟法前期試験の小問なんだけどなぁ~。これが完璧でないと、下手すれば留年よねぇ。どっかのサー
クルの前リーダーみたく…」
一瞬、言葉を切って、侮蔑の目線を榊に放った。
「ま、川嶋さんは弁理士試験に挑戦する前に、日頃の勉強をしっかりやることの方が大切みたいだけどぉ~」
瀬川がせせら笑うと、他の三人も笑った。その無慈悲な笑いがうつむいている亜美を苛むように居酒屋の店
内にこだました。
「それに川嶋さんって、ちょっとかわいいけど、取り柄ってそれだけなのね。勉強はダメだし、月曜日に見
聞きした限りだけど、料理もダメ、毎日のお弁当は彼氏である高須くんに作って貰ってるんでしょぉ? ほー
んと、女として失格ね。これじゃぁ、あの元カノに彼氏奪い返されちゃうわよぉ」
そのとどめとも言える辛辣な一撃に、亜美は竜児に縋って、堰を切ったように泣き出した。
「う、う、うぇ~~ん!!」
「か、川嶋…」
「ひろいよぉ~、ひろすぎゅるよぉ~! 亜美ちゃん、にゅあんでぇ、こんら目にあうのらぁ~~!! あ
らしが、いっらい、にゃにをしふぁっていふにょらぁ~~~!!」」
竜児は、号泣する亜美を抱きしめながら、瀬川たちを睨み付けた。
「先輩方、俺たちに何の恨みがあるっていうんですか! どうしてこんなむごいことをするんです!」
「どうしてかしらねぇ、まぁ、要は公共の場である学食で騒いだ君たちが迂闊なのぉ。で、それを聡明な私
たちにつけ込まれた。ちょうど、今日のコンパを利用して、テロっていうか、クーデターを起こすつもりだっ
たから、何らかの騒ぎを起こす糸口が欲しかったのねぇ。で、お誂え向きに、何か弱みがありそうな君たち
がサークルにやって来た…」
「そ、そんな…。あんたらは、サークルの実権を握る私利私欲ために俺たちを利用したんですか?!」
「人間なんて私利私欲で生きている動物よぅ。その私利私欲に利用される方がバカなのぉ~。で、君たちは
まんまと私たちに利用された。おかげで、思い通りの結果になったわ。感謝してるぅ」
そうして、瀬川は、竜児に色っぽく投げキスをした。その何ら屈託ない立ち居振る舞いは、彼女らに慚愧の
念や良心の呵責が皆無であることを物語っていた。そう言えば、先ほどまでのへべれけな様子は微塵も見ら
れない。竜児や榊を油断させるために、酔ったふりをしていたのだろう。
「でも、それなら、俺や川嶋に意地悪い問題を出す必要なんかなかったんじゃないですか! リーダーから
『勝手にしろ』という言質を取れば十分だったはずでしょ!!」
「そうねぇ、君にちょっかい出したのは、ペットにしたかったから。君って、目つきが鋭いけど、結構イケ
メンだよねぇ? で、そっちの小生意気な小娘は、君をペットにするのに邪魔だから…。それで、ちょっと
かわいがってあげたんだけどぉ~。まぁ、理由としてはこんなもんかしらねぇ」
竜児は、怒りよりも、そのどす黒い悪意に戦慄した。
「でもぉ~、君ってさぁ、その小娘に何か思い入れがあるみたいだから、ペットにするのは難しいかもぉ~っ
て…。だから、もう、理由なんてないのも同然ねぇ。まぁ、君が面白そうだからちょっかい出した。で、そっ
ちの小娘は、多分、私たちに逆らうような気がしたから叩きつぶした。強いて言えば、こうかもねぇ」
「多分、って、そんな曖昧なことで、人を貶め傷付けるのかよ!」
「あ~ら、いやだ、熱くなっちゃってぇ~。やっぱ、君、ペットには不向きだわぁ~。それに、世の中は、
やるかやられるか、のどっちかなのぉ。やられる方や利用される方がバカなのよぉ~」
二十年に満たない人生ということもあるが、竜児にとって、これほど邪悪な存在を目の当たりにしたことは
ない。正直、吐き気がしてきた。
「さぁて、やるべきことはやったし、帰ろうかしらぁ~」
瀬川のその一言が号令であったかのように、残りの女子と四人の男子学部生が、席を立っていった。
後には、榊と小林を含む主には院生からなる古参メンバー四人と、泣き続ける亜美を抱いた竜児だけが残さ
れた。
「くそ、なんてこった…」
サークルが乗っ取られたことのショックで、残された古参メンバーは茫然としている。
瀬川たちは、今日という日にかけて派閥工作を行い、メンバーのうち女子を支持する若い男子学生を取り込
んでいたらしい。
しかも、造反組の男女比は一対一だ。瀬川たちはマンツーマンで色香を武器に男子学生を籠絡していたのかも
知れない。
「やられたな…」
物静かであるはずの小林が、悔しそうに顔を歪め、吐き捨てるように呟いた。
こうまで鮮やかに造反されると、二の句が継げない。
癪な話だが、瀬川をはじめとする女子の学部生の方が、術策に長けていたということだろう。
「それはそうと、高須くん、今日はとんでもないことになって済まなかった…。川嶋さんもいじめられて、
本当に気の毒だ」
榊が、竜児に向かって頭を垂れた。
竜児は、あわてて、首を左右に振った。
「とんでもない、奴らにつけ入るきっかけを与えてしまった俺たちに非があります。本当にすいませんでし
た。俺たちが迂闊なばっかりに…」
そうして、がらんとした居酒屋の部屋を見渡した。
「本当に、みんな居なくなっちゃいましたね…」
榊は、瞑目して、さも無念そうに唸るように言った。
「このサークルも、俺たちの代でお終いだな。ちょっと、メンバーの自主性を尊重するという名目で放任状
態だったのがまずかったようだ。結果、こんな形で乗っ取られるとは…。俺たちは、もう来年や再来年には
卒業だから、まだいいとして、君や川嶋さんは、今後どうする? 瀬川たちとは明らかに反りが合わないか
ら、彼女らと一緒に勉強するのは本意じゃないだろう。これからだっていう君たちに済まないと思うよ…」
「いえ、先輩方のそのお気持ちだけで結構です。俺と川嶋は何とか別の方法で勉強することにします」
「そうか…。でも、俺たちも、未だ学内に居るから、何か勉強で困ったことがあれば、いつでも相談に来て
くれ。答えられる範囲で対応しよう」
「はい、ありがとうございます…。先輩方は、来月の二次試験、頑張ってください。」
「ありがとう、これが最後のチャンスのつもりで頑張るよ」
竜児は、べそをかいている亜美の肩を支えながら、コンパの会場だった居酒屋を後にした。サークル自体の
ぬるそうな雰囲気は気にはなったが、サークルに参加できなくなった竜児たちを気遣ってくれる榊はやはり
いい人だった。
「川嶋、歩けるか? 俺の肩につかまれ」
またかい?
GJぅ
あと4レス頑張ってください
「う、ううう、く、くやしい、くやしいよぉ~」
「相手が悪すぎたんだ。まさか、あそこまで悪辣な女だとは…、サークルのリーダーだって把握していなかっ
たようだし、俺たちにはどうしようもないさ」
「う、うん、でもぉ…、あいつの言うことももっともだから、悔しいんだよぉ…。勉強はダメだし、料理も
ダメ、高須くんを助けるつもりで、あの女に立ち向かったけど、やられちゃって…、本当に悔しくて情けな
くて悲しいよ…。あたしって、本当に無力なんだ…」
「川嶋、そんなに自己を卑下するな。最初の特許法の問題には正解して、奴らに一矢を報いたじゃねぇか。
川嶋は無力なんかじゃねぇよ。ちゃんと俺をフォローして助けてくれた。感謝してるぜ」
亜美は、それには応えず、竜児に縋ってうつむいたまま泣き続けた。
竜児は、これからどうしたものかと思い、深く嘆息した。
第一に亜美の様子が気がかりだが、サークルがダメになったことも大問題だ。こうなると、資格試験の予備
校とかに行くべきなのだろうが、そんな時間的余裕も経済的な余裕も今の竜児にはない。
電車の中でも亜美は泣き続け、下車駅である大橋の駅が近づいた頃になって漸く落ち着いてきた。
改札口を出て、タクシー乗り場を目指す。ひとまずタクシーで亜美を自宅に送り届けるのが先決だ。普通な
ら徒歩で十分にいける距離だが、酔いが覚めても情緒が不安定な状態の亜美を駅から徒歩で帰らせるわけに
はいかなかった。
だが、亜美は竜児の袖を引き、ネオンサインが輝く彼方を指さした。
「あっち…、あっちへあたしを連れてって…」
「お前、あっちは風俗街じゃねぇか。いかがわしい店や、ラブホテルとかがある…」
亜美は泣き腫らした顔を、思いつめたように引き締めて、竜児を見ていた。
「だから、そのラブホテル…。そこへあたしを連れてって。そして、あたしを高須くんの女にしてよ…」
「て、お、おい、川嶋…」
咎めるような竜児の口調にもかかわらず、亜美は竜児の背後にまわり、両腕を竜児の首筋に絡めるようにし
て抱きついた。
「足手まといにしかならない亜美ちゃんだけど、高須くんの好きにしていいからね…。だから、あそこにあ
るホテルで、あたしたち一つになろう…」
「川嶋、早まるんじゃない。もっと自分を大事にしろ。お前は、酔っ払って、その挙句に、たちの悪い奴に
からまれて気が動転しているんだ。そんな心理状態で俺とエッチしたって、痛い思い出にしかならない…。
だから、やめたほうがいい」
「そんなことないよ…。こうして高須くんと一緒に居られるだけで亜美ちゃんは癒される気がする…。だか
ら、高須くんと一つになって、もっと癒されたい…。痛い思い出なんかにならないよ…。今、心も身体もボ
ロボロの亜美ちゃんだから、高須くんに癒してもらいたいんだよ…」
竜児の首筋に絡めていた亜美の両腕に力がこもり、亜美の華奢な身体が竜児の背中に強く押し付けられる。
その儚げなぬくもりに、竜児はたじろぎ、いっそ亜美と一つになれたら、という思いをよぎらせる。
だが…、そんな勢いだけの無計画なセックスは竜児にはできない。そんなことをしたら、泰子を犯したヤク
ザな父親と同列に堕してしまう。
「川嶋、無粋なことは言いたくねぇが、今日は危険日なんだろ? 勢いでエッチしたら、絶対後悔する。悪
いことは言わない。今のお前は、精神的に参っているから、誰かに縋りたいだけなんだ。一晩、ゆっくり休
んで、落ち着くんだ。そうすれば、きっと大丈夫だ」
「ばか…、高須くんに縋りたいから縋るのよぉ、それのどこが悪いの! 高須くんにエッチしてもらえるこ
とでしか今の亜美ちゃんは癒されないんだよぉ! ゴム付きでもいいから亜美ちゃんを犯してよ! 犯して、
犯して、犯しまくって、高須くんの女にしてよ!!」
「だから、そんなように『犯して』なんて軽々しく言ってる時点で自暴自棄になっているってのが分からな
いのか? それにだな、ラブホは、俺は賛成できねぇ…」
「どうして? あたし自暴自棄なんかじゃないし、なんで高須くんはラブホがダメなの? それもこれも、
本当は亜美ちゃんのことが嫌いで、亜美ちゃんを拒絶するための方便なんでしょ!!」
竜児にしがみついたままの亜美が再び火がついたように泣き出した。
「違う、違う、川嶋、とにかく落ち着け!」
亜美がひとしきり泣き、竜児にしがみついていた腕の力を緩めた頃合いを見計らって、竜児は亜美の両腕を
首筋から解き、亜美と向かい合った。
「なぁ、ラブホって、どこの誰だか分かんない奴が、それこそとっかえひっかえ、性欲を満たすためだけに
そこでエッチしてきたんだよな?」
「そうね、でも、それが当たり前じゃないの、所詮はラブホなんだから…」
亜美は、それのどこが問題なのかと不満げだ。
「そう、所詮ラブホだよな? そんなところで一生の思い出になるはずの体験をしていいのか? それに、
まっとうなホテルに比べれば衛生面でも不安がある。何せ、誰だかわからない奴が、エッチしまくってきた
場所だ。中にはエイズとは言わないまでも、変な病気を持っている奴が利用していたかも知れねぇ…。それ
でも、いいのか?」
竜児のもっともな指摘に、亜美が「うっ!」と絶句した。
「どうせ、一生の思い出になるんなら、清潔で安心できる場所でやりたいとは思わないか? 一時の衝動に
駆られて、いかがわしい場所で身体を重ねたら、絶対後悔する。少なくとも、俺も川嶋との初めてのエッチ
は、思い出に残るような場所でやりたい。これから結婚して一緒になっても、『あの時は』っていうように
美しい思い出として語り合える場所でやるべきだと思う。どうだ?」
言い終えて、諭すような眼差しを意識して亜美を見た。
亜美は、竜児の視線を避けるようにうつむき、羞恥からか頬を赤く染めている。
「う、うん。たしかに、高須くんの言う通りだと思う…。ラブホに行こうといったのは、勢いだけの考えの
ない行為だよね…。ごめんなさい、そして、ありがとう…。高須くんが押しとどめてくれなかったら、大切
なものを失っていた…」
竜児は、ほっとしてため息をついた。川嶋は納得してくれた。これで一安心だ、と。
「だから、あたしたちの思い出の場所は、あの別荘、高二の夏休みに一緒に行った、うちの別荘にしよう…」
「そうだな…」
別荘に行くといっても、終電が終わった今日はもう無理だ。それに、明日は必須科目である線形代数学の講
義があるし、もうチャラになっているかも知れないが、日曜日はデートということになっている。当面は、
竜児も、亜美も、スケジュール的に行けるような状態じゃない。そのうちに、亜美の昂っている精神も落ち
着いてくるに違いない。
「じゃぁ、高須くん、今からタクシー拾おうか…」
「お、おう…」
これで亜美を自宅に送り届ければ、今日のミッションは終了だ。
「そのタクシーで、別荘まで行こう。最近のタクシーはカードでも支払えるから何とかなるよ。で、別荘に
着いたら、この週末は、なぁ〜〜んにもしないで、二人抱き合ったままで過ごそう。テレビもインターネッ
トも何も見ないで、窓辺から海を見ながら、ただひたすうら抱き合って愛し合うの…。ねぇ、お願いだから、
あたしと一緒にタクシーで別荘へ行こ…」
竜児は耳を疑った。
「正気なのか? 川嶋。明日は、お前だって必須科目の講義があるんじゃなかったのか? それに出席しな
いということは、下手したら留年を喰らうおそれすらあるってことなんだぞ?」
「別にいいじゃない、もうどうだって…。世間から隔絶したような辺鄙なところにある別荘でしょ? あた
かも、この世の中に、あんたと、あたししか存在しないような…。そんな二人だけの世界に居るんなら、他
のことなんかどうでもいいわ…」
「川嶋、それじゃ単なる現実逃避じゃねぇか! そんなことをしたって何の解決にもなりゃしない。それど
ころか、別荘から帰ってきてから、現実に向き合ったときの辛さが、前にも増してひどくなるぞ」
亜美は竜児の説得をうるさそうに聞いていたが、やがて癇癪を起こしたように、怒鳴った。
「もういい! 高須くんは、やっぱり亜美ちゃんのことなんか好きでも何でもないんでしょ! ラブホは不
潔だ、別荘に行くのは現実逃避だ、って、そんなことを口実に高須くんは、あたしから逃げて、逃げて、逃
げてばっかりじゃないのぉ!!」
「か、川嶋、落ち着け! お、俺は、お前の要求通りの行為には賛成しかねるが、決して、お前から逃げて
いるわけじゃねぇ、だから、ひとまず、喚くのはやめてくれ!」
竜児にとっては、必死の説得のつもりだったが、亜美にとっては、それは不誠実な対応でしかなかった。
そして、あることに思い至り、声を張り上げた。
「そうよ、思い出したわ! 明日は実乃梨ちゃんのソフトの練習試合がある日じゃない! あんたが、亜美
ちゃんとの別荘行きを拒むのは、こういうことだったのね。許さない、許さない、本当に許さない!!」
そうして、泣きながら闇雲に青本や条文集が入った重たいショルダーバッグを振り回した。
「ま、待て、そんなもん振り回すな! 危ない!!」
亜美がバッグを振り回すのをやめさせようと、竜児は亜美の間合いに飛び込もうとした。その竜児の鼻面を
亜美のバッグがかすめた。
「うっ!」
直撃ではなかったが、鼻骨とその軟骨に、ぐにゅっ! といういやらしい感触が響き、一拍おいて鼻全体が
熱を帯びたような鈍い痛みを覚えた。そして、鼻腔からあふれ口蓋に伝わってくる粘っこい血の味。
「う、うあっ…」
竜児は、その場に跪き、鼻面を右の掌で思わず押さえた。その指の隙間から臙脂色のようにくすんだ色合い
の鼻血が、ぼとぼとと地面に滴った。
「ひ、ひぃいいいい!!」
めくら滅法振り回したバッグが当たり、竜児が顔面を血だらけにしていることに恐怖し、亜美は、絶叫して、
その場に尻もちをついて、引っくり返った。
「か、川嶋…。ま、待て…」
竜児が右腕を伸ばし、血にまみれた掌を亜美に向けてくる。
「きゃぁあああああ!!」
「お、おい、川嶋、大丈夫だ、大したこっちゃない。だから、落ち着いてくれ…」
だが、亜美は双眸を大きくまん丸に見開き、尻もちをついたまま、じりじりと後ずさりする。
怖い、とにかく怖かった。自分の振り回したバッグで、竜児を傷付けた。その事実と、そんなことをしでか
した自分自身がたまらなく恐ろしかった。
「俺なら、この程度のことは平気だから。ガキの頃は鼻血なんてしょっちゅうさ。だから、川嶋、怯えてな
いで、じっとしていてくれ…」
だが亜美は、不安と恐怖で大きく双眸を開いたまま、竜児を拒絶するように首を左右に振った。
「あっ! か、川嶋ぁ!!」
次の瞬間、亜美は地面を蹴って、立ち上がり、バッグを持って闇雲に駆け出していた。どこへ向かって走っ
ているのかすら分からない。
暗い路地、その闇の中に自分自身も溶け込んでしまいそうな錯覚に陥りながら、亜美は走った。
走っても、走っても、何の救いにならないことを知りつつ、それでも亜美は闇の中を走り続けた。
(以下、『我らが同志』後編に続く)
160 :
SL66:2009/03/12(木) 05:56:12 ID:TuF2NIom
以上です、途中、保守してくださった諸兄に感謝致します。
また、35/52がだぶっていますが、ナンバリングのミスです。
内容は、一応はつながっているはずです。
なお、後編では、亜美も実乃梨も北村も竜児も救済されますので、
今回の本編も顔負けの鬱展開は、そのプレリュードということで、
ご容赦願います。
お疲れ様。本当にGJでした。
受験終わったからってSS待ちで徹夜とはニートさながらの生活だぜorz
今回も乙です。これはまた続きが楽しみですね。
前半、実乃梨との修羅場にガクブルしてたら
後半もっととんでもないモンスターキャラが出現してワロタw
ムカつくやら亜美が可哀想やらで…
弁理士という進路にも影響がありそうで気になりますね
163 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 06:06:30 ID:JwwcFNGO
GJGJGJGJ
後半は瀬川に本気でむかつきました^^
>>160 お疲れ様です!
超GJ!&乙!
後半期待してます!
165 :
SL66:2009/03/12(木) 06:43:08 ID:TuF2NIom
結果的にスレを長時間占拠することになって申し訳ありませんでした。
なお、瀬川という極悪キャラですが、モデルが実在します。
ですので、今回の話は、実話がベースです。
まさに、「事実は小説よりも奇なり」ですね。
正直な感想
二次創作としてはリアル臭>>とらドラ臭って感じで、なんとなく違う感じがしてしまいました
おそらく自分にとって馴染みの無い環境設定で、その描写が細密すぎてそう思ってしまったかな
逆に、なじみない設定にも関わらずリアルを感じさせるのは上手いなぁと思います
続きマダー??とwktkもさせられたしww
面白かったです!生意気サーセン
おはようGJ。
正直あそこでヤラないのはいくら竜児でも……
愛すべきバカ潔癖っぷりが竜児っぽいじゃん
とまれGJ!
続きが早く読みたいであります
次スレあたりになるのかな
がんがってくらさい
>>160
前半のあーみん、ちょっと落ち着けwwって感じだったが
後半おとなしくて可愛かった
GJを送る!
SL66氏すげー
GODJOB
>>160 瀬川ウZEEEEEEEEEE!!!
しかもモデルが実在するとは(^ω^#)ビキビキ
え?キレてないっすよ?俺キレさせたら大したもんですよw
まぁ冗談はさておき作品自体はGJだったので続きをゆっくり期待していますよ。それと大量投下お疲れ様でした。
↑の者だが連レスすまん
これだけは伝えたかった
あーみんカワイイヨあーみん
174 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 11:08:53 ID:DhMde8aJ
GJ!
亜美かわええ
>>160 GJ!
モデルがいるって現実にあんなむかつく奴がいるのか……
>>160 この大学ってモデルT大ですよね?
理学部生と法学部生が落ち合うとしたら池の所か、第二食堂でしょうか?
毎度毎度リアルな描写に感心してしまいます。
素敵な大学生活で羨ましいですw
亜美は引出しが多いし、竜児との相性もいいので色々なシナリオが妄想できて、
書きやすいキャラなんじゃないでしょうか。
こちらの作品を読んで、私も柄にもなく、つい筆が滑ってしまいましたので、
ちょっと晒してみます。
なにぶんにも二次創作は初めてですので、乱文乱筆、平にご容赦を。
SL66様の作品の箸休めにでもなればと思います。
後半戦とても楽しみにしております。
川嶋安奈は女優である。
生まれつきの美貌と、才能、そして人一倍の努力と・・・幾ばくかの幸運に恵まれて
今では割りのいい仕事が、勝手に舞い込んでくる身分になっていた。
また、恐らくは選んだ連れ合いが良かったのだろう、芸能人にはありがちな家庭の不和も
彼女の元には訪れなかった。
だから、傍から見れば、それはきっと何不自由ない幸せな生活に見えるだろう。
その日、余人の立ち入りを許さぬ無駄に広い楽屋の中、ただぼんやりと鏡を見ていた。
取り出したプライベート専用の携帯のリダイヤル欄には「亜美」という名がポツポツと並んでいる。
自分の若い頃に瓜二つと評されることの多いその名前の少女は、日本人離れしたその肢体と
相まって、実際には若き日の自分よりも間違いなく美しい、と思う。
加えて、身内の贔屓目を別にしても、その少女には才能があった。
モデルと呼ばれる人種は、写真家の言葉一つで自在にその表情を変える。
その中でも、頂点に君臨する者達は、写真家の求めに応じて、周りの空気を、いや、文字通り
世界をすら塗り替えてしまう。
あの子がその中の一人になる確信はあったし、実際にその片鱗も見え始めていた。
そしてその力は必ず、女優としての大きな武器になる。
今はまだ、演技とは呼べないほどたどたどしいものだったが
いずれは、あの子には私の後を継いで女優として大成して欲しいと思っていた。
それが、何よりあの子の為になると信じていた。
ストーカーの件が解決した後、私はあの子に戻ってくるように言った。 さも当たり前のように。
その時私は、あの子がそれを断るなんて思ってもみなかった。
今思えば、あの子なりに真剣に考えていたのだろう。
本当はすぐにでも連れ帰りたかったけれど、結局私は娘の気が変わるのを待つことにした。
それはあの子が、学校や、友達の事をあんな風に話すのを始めて聞いたからだったかもしれない。
そしてそれからしばらくして、私は思い出したように、また電話を掛けてみた。
・・・泣いていた。
電話口の声は平静を装っていたけれど、母親の私は悲しいことに、それに気がついてしまう。
けれど、努めて平静を装う娘に、私は何も言えなかった。
たとえ泣いている理由を知ったとして、それに答えてやれる自信がなかったから。
いつの間にか、娘の気持ちがわからなくなっていた事に、唐突に気づいてしまったから。
だから私は当たり障りのない会話を重ねて、電話を切った。 そうするしかなかった。
確かに、仕事は忙しかった。
しかし、本当に会いに行こうと思うなら、時間を捻出するのはそう難しいことではなかったろう。
けれど私はそうしなかった。
預けたとは名ばかりで、親戚はほとんど家に居ない事も知っていたのに。
そしてまた電話を掛ける。
・・・泣いている。
また電話を掛ける。
・・・泣いている。
娘は何も話してはくれない。
・・・また、泣いている。
泣き声なわけじゃない。 いつも声は、明るい。
痛々しいくらいに「いつも通りに明るく」、「いい子」を演じている。
「・・・・・・帰ろうかな」
ある日、ポツリと漏らしたあの子の言葉に。
『帰ってらっしゃい』 たったそれだけの短い言葉が継げられなかった。
娘のために、道をならしてあげるのが、母親の仕事だと思っていた。
けれど、娘の気持ちも解らないのに、どうして『道』の行く先を決められるのだろう。
女優として自分の後を継いで欲しい、口癖のようになった私の言葉に、あの子が生返事しか
返さなくなったのはいつからだったのか。
それからしばらくは電話を掛けていなかった。
どれほど苦しくても、母親の前ですら演技を続ける娘に、どう手を差し出したらいいのか分からない。
子供を愛さぬ親など居ない。 けれど、愛することと、触れ合うことは、違うのだ。
―――携帯電話を持つ手がこわばる。
あの子は、いったい幾つの夜を、独りきり涙を重ねたのだろう。
あるいは、今はもう笑顔を取り戻してくれているのだろうか。
―――のろのろと携帯電話を操作する。
何を話そう。
あの子は父親に似たのか、私よりもずっと賢い。
不用意な事を話したら、きっと見透かされてしまうだろう。
目の前の鏡が僅かに曇って、自分の吐息の深さに驚かされる。
―――見慣れた数字の列が携帯の画面を流れていく。
次に亜美に会うとき、私はどんな貌をしようか・・・
「もしもし? ママ?」
「・・・亜美・・・。」
川嶋安奈は――――――女優である。
短いですが以上です。
この親にして、この娘ありって感じで書いてみましたw
若干鬱で申し訳ない。というか、私は鬱しか書けない人かもですw
>>178 おおww
巧いw
亜美ssでもなかなか亜美ママ出てこないから新鮮だわ
182 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 13:20:33 ID:X3RSZaCf
瀬川がムカつくので、作中でモルグに葬り去って下さい。
みのドラ物の予告編みたいなのが出来てしまったので、投稿させて頂きます。
3学期開始早々、高須竜児が……グレた。
髪を金色に染めた竜児が教師達に連行されていく。その姿に騒然とする生徒たち。
そこに居合わせた…居合わせてしまった実乃梨は、その場に立ち尽くすしかなかった。
クリスマスイブの夜、二人の本当の気持ちのために押し殺した自分の感情――
それを拒絶するかのような彼の風貌からは、普段の優しいオーラは感じられなかった。
彼から滲み出ていたのは――哀しみ。ただ、それだけ。
実乃梨の中に渦巻いてくるのは、戸惑い、後悔、そして心の奥底にしまったはずの想い。
それらを振り払うように、その場から逃げるように立ち去る実乃梨。
そして一人、悪態をつく。
「私は一体、どうすりゃ良いんだ……?」
「グレドラ」近日、投稿予定?
アニメ見て、カッとなって書いてしまいました。
スレ汚し失礼しました。
最後に、あみドラ超絶GJ!瀬川が(ry
>>178 意外な人物へのスポットナイスww
GJ
>>183 予告編だけ?
ぜひ書いてもらいたいぜー
独身(30)と大河母との友情話希望。
>>177 亜美母もまた役者、と
>>160 後編にこそねっとり粘膜描写があることを信じていますよ。
>>183 本気で竜児がヤンキーにしか見えなくなるな
187 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 17:55:47 ID:X3RSZaCf
龍児「櫛枝ぁ…俺と一緒に地獄に落ちよう。」
グレた竜児って、
それってもう身も心も不良じゃん。
見た目通りの鬼神じゃんw
でも竜児って今回の見てわかったが
やっちゃんのお陰でなんとかなってるけど、本当は
むちゃくちゃ不安定な奴じゃないか?
竜児はさ、実乃梨には初めての真っ当なプレゼントとしてヘアピン選んだけど
大河への初プレゼントには何あげるんだろうなぁ
そういや最終巻の大河復帰後すぐに実乃梨の誕生日だよな、もしかして過ぎてる?
竜虎二人で仲良くプレゼント選ぶのか
はたまた実乃梨の為にプレゼント考える竜児を見てヤキモチをやくのか妄想が止まらん
凄く今更な情報だな
つか全員に幸せ√なきゃPSP化する意味ないよなww
>>190 やっちゃんに何かあったら一人ではなかなか立ち治れないだろうね
途中までだけど、保管庫にあった事故死物が不謹慎ながら読み応えあった
独身ルートはバッドエンドですか
「我らが同志」後編で
瀬川は校舎の屋上で警察によって狙撃される
狙撃自重wwww
バッドエンド…?
一番メインのエンドだと信じて疑わない自分が泣いた
つか竜児はうお座なのに、2月14日までで17歳って誕生日いつなんだよww
ゆゆぽさんちゃんと考えてねーな?!
もう新スレかぁ
先生、ななどらが読みたいです。
>>201 30超えると誕生日という存在を忘れるらしい
204 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 23:49:56 ID:fDgt5dhe
今23話見たんだけど…
なんかしっくりこねぇ〜
なんで大河が好きなのか未だにわからん
SL66さん、すごいです
後編待ってます
瀬川は後ろから刺されるタイプだな
>>204 肌が合うというのか一緒に暮らしてゆくうちに・・・って奴だろ。
独神はまだ17歳と156か月だから竜児とのカップリングも全然いける
207 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 00:06:45 ID:KOLiD7sN
>>205 でもさ、助けた時に「好き」と言われてから
意識し始めたと思うんだけど、
これってよくある勘違いだと思う
てか、進路相談で大河に殺意に近いものを感じた
何だよ、あの破綻者
>>207 まぁ俺もアニメ見てる限りだと何で高須が好きになったのかわかんないけど、そういうのは場の空気を悪くするからアニキャラ板にでもスレ立てて勝手にやっててくれ
209 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 00:19:24 ID:KOLiD7sN
エロパロにも原作読んでない奴いるんだな
進路相談の大河の態度なんて10巻みたら理由は明らかだろ
まぁな。あのころには大河もクソ爺の現状知ってたわけだし。
信者もアンチもワンパターンな意見しか言えないのがとらドラクオリティ。
そろそろスレタイを読み直す作業に戻ってくれ
214 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 00:59:15 ID:KOLiD7sN
>>213 本当にすみません
アニメ見てたら感情的になってました
sageも出来ないのに一々反応しないでくれ
ぐあ……この雰囲気の中空気を読まず投下します。エロパロ初体験。
スレにそぐうかどうかわかりません。
ちっきしょー何だよあの試合!消化不良だよなぁ!
「別に用はないわけ?ないなら」あるよ俺の愚痴を聞けよ、とかいう戯言が電話から聞こえてぶんなげそうになる。危ない危ないせっかくのデコ電がと気を取り直し、
「お母さんに金払ってもらってるんだから切るよ」
絶対零度の声色で言ってやる。数瞬の沈黙のあと、意に介さない生意気な声で返ってきたのは家族間通話無料!だった。家族だ?だからといって愚痴聞いてやる義理はねーっつの!
と言うのも大人げない、寂しい寮生活を送っている弟に優しい言葉をかけてやろうと考える。ふっふっはっはっの呼吸法(小さい頃は波紋の呼吸法と呼んでいた)は乱さない。
「みどりおまえ、友達いないんだ?寮のやつらと話せばいーじゃんか。私は今走ってんだよ月に向かって」
もうみんなとは喋ったけど話し足りないんだよ、こんな時間だしおま……ねーちゃんくらいしか話せるやついないもん……
実乃梨にだって、その試合には少なからず思うところがあった。仕方ないから話し相手になってやろうと思うのだ。
それくらいのお姉ちゃん精神は持ち合わせている。
◇
「確かにワンポイントで出てきてフォアボールとか代打で三球三振もひどいけど、それよりさー」 あ待って大体わかる。じゃせーの……
「「ナカジの送りバント!」」
やっぱそうだよな!あれはひどいよ!だって一塁ランナーイチローだぜ?
「たつのりのやつ何かんがえてんだか。あの場面はランエンドヒットだろ」
そうだよな!ナカジは右方向にデカいの打てるし……
想像以上に話は弾み、いつもより長めに走ることが出来てラッキーと思いながら実乃梨はちょっとだけ昔を思い出す。
二人でよくまだ屋根がついてない西武球場へ行ったものだった。
大差で負けているとすぐつまんないと言うみどりに、バカみたいな事を言って無意味に励ましたのも思い出し、
こりゃ封印したい記録だぜ、と心の中で苦笑する。
「ま、星野の仙ちゃんよりはマシかもね」
まぁそうだけどさーあいつのせいでドラゴンズの選手辞退したようなもんだし……
そういやタイガースも岩田と藤川だけだよな。
「亀井よりは赤星だよ!」
ずっと思っていたことを拳をきかせて力説するとみどりものってくる。
そうだそうだ!大体俺はメンバー選考の時点で気にくわなかったんだよ。大体さぁ……
◇
何だかんだで、こうやってディープな野球の話がマジでできるのはこいつだけだな、
と実乃梨は思う。北村とでも出来ないことはないだろうが、
彼といるときはタイガーとドラゴンもいて、あーみんもいて、
だからこんな話はしたくないのだ。一緒に過ごす時間がMOTTAINAIと思うのだ。
こんな無駄話をするのはみどり相手でいい。
家族のドリームボーイにお姉ちゃん風を吹かしてやるのも気分がいいものだ。
そういや大河と高須くんが大変だったあのバレンタインの日も、
こいつから電話が来たんだっけ。二人は今どうしてるだろう?
ぼやぼやとした考えがだんだんと膨らんで、実乃梨の足はどんどんピッチを上げてゆく。
もうすぐ卒業して実乃梨も亜美も北村も二人とは違う道に進むけれど、
その道がぜーんぶ隣り合っていればいいと思う。
……高須竜児なら、きっと5つだけじゃなくて。
春田や能登や麻耶、奈々子、恋ヶ窪ゆり、狩野すみれ、それに自分の母や大河の母、
もしかしたら実乃梨はクソだと思うあの父親でさえも。
過去に別れた者やいずれ出会う人。
大河が好きだと思うみんなの道が寄り添って、『みんな幸せ!』ゴールに続いていることを望むかもしれない。
いや、そうに違いない。少なくとも実乃梨の知る彼はそういうやつだ。
「高須くん」
悔しさとほんの少しの未練が香る声を、みどりの誤解が幾分か救ってくれた。
えぇ?確かにチャンスには強いけど年齢が……てかなんだよくんって。友達かおまえは……
電話からの声をどこか遠くに聞きながら、まだかなわねーなくっそ、と心の中で呟く。
でも幸せの道を探して走ってるのは一緒だぜ、高須くん。
今はまだ実乃梨の中では大差で負けているけれど、いくら大差がついていたって……
『7点差?ちょろいちょろい!いいか、まず満塁ホームランで3点差!もひとつ満塁ホームランで逆転だ!うあっはっはっはっは!』
おわり
おしまいです。
>>222 弟とのパロかと思いきや何だか切ねぇ
GJ
>>222 弟との会話のネタがマニアックすぎてワロタwwwそれと悪い流れを断ち切ってくれた君の作品には両手いっぱいのGJと一握りのマカデミアナッツを贈ろうじゃまいか。なに遠慮する事は無い。うけとりたまえ。
楽天イーグルスですか、そーですか。
高須上手いよ高須。
今になってこの新スレ全部読んだ
GJなんだぜ!
SL66さんのは毎度のことながら
みのりんと弟のも良かったよ
そして誰か誕生日、星座関連
教えてくれないか?
今から読み返す気力がもう…
GJSL66さんが読みごたえありすぎて
竜児はやんごとなきご公務をはたされているのですね、わかります。
>228
鷲ヲタ自重
230 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 10:48:56 ID:QId0n3Tl
銀に輝く車体が、夜の闇を日本刀のように切り裂いていく。
目指す先は遥か北、北海道札幌市。
豪華寝台列車「カシオペア」は、東北本線を北へと走る。
列車名は、この列車と今も同じ区間を走り、以前はカシオペアの運行枠でも運行していた豪華寝台列車「北斗星」
の由来である「北斗七星」と対を成す星座「カシオペア」に因む。
オールステンレス製・オール2人用個室寝台・オールダブルデッカーと北斗星をさらにグレードアップさせたような
スタイルであり、JR東日本が1999年に就役させた。
今や珍しい、機関車が客車を牽引するスタイルだ。
牽引機関車を含めて13両編成。その最後尾にあたるロビーカーの展望席で、竜児は1人物思いにふけっていた。
いつも竜児の傍にいる大河はいない。食堂車で食事を終えた後、「眠くなった」と言って1人先に寝てしまったのだ。
大河が寝た後も暫く個室内で彼女の傍にいた竜児だが、ふとロビーカーの存在を思い出し、1人でやってきたという訳だ。
既に夜中の12時を回っているためか、ロビーカーに人影はまばらである。
竜児は後ろへと流れ去る夜景を眺める。
赤いテールライトに照らされて2本の鉄条が光る。街の夜景が後ろへ飛んでいく。
それはとても美しい光景だった。
夜だからか、妙に感傷的な気分で竜児はその光景と、大河と共に歩んできた道を重ねてしまう。
レールが歩んできた道のりなら、その道を彩る夜景は友人達だろうか。
列車は夜景などなくとも進める。しかし、夜景のない道など、美しくともなんともない。
それはただの暗闇。そんな考えに、思わず吹き出す。
――なんだか陳腐だな。
その時、携帯電話が音を出して光る。
大河からのメールだった。ふと目を覚まして竜児が居ないことに気付いたのだろう。
「竜児いまどこ?早く戻ってきて」
その文面からは少しの不安が滲んでいるのは、気のせいだろうか。
時計を見れば既に午前1時になろうとしていた。
竜児は腰をあげ、ふと目の端に何かが目に止まる。
「・・・ん?」
どうも日記帳のようだ。傍にはボールペンも。
誰かがこんな所に忘れたのだろうか。
まったくMOTTAINAI。落し物として届けるかと思い近づく。
そして、気付く。日記帳の表紙には
「カシオペア思い出ノート」
と。
ぺージをめくると、今までこの列車を利用してきた旅人達の思い出や詩が残されていた。
――よし
なら俺も、と。
「大河に出会えてよかった。沢山の友人に出会えてよかった。生まれてきてよかった。
こう思えるのは大河のおかげだ。ありがとう。
これから歩んでいく道のりはレールみたいに平坦じゃないかも知れない。でも、2人で精一杯幸せを作っていこう。」
恥ずかしさを押さえ、竜児は大河へのメッセージを目立たないように書く。
そして、個室へと戻っていく。
***
午前6時。
大河は竜児の腕の中で目覚めた。
窓から射し込む朝日がまぶしい。
その朝日に照らされた竜児の顔を眺める。竜児を印象付けるその鋭い目つきはまぶたに隠され、穏やかな寝顔を呈していた。
暫くそのままの状態が続いたが、竜児がいつまでも起きない。起こしてやろうかとも思ったが、なんとなくやめておいた。
その変わりに、朝のロビーカーに行ってみることにした。
昨日竜児が行ったと言っていたからだ。
朝日に照らし出されたロビーカーは、夜とは違う開放的な雰囲気を持っていた。
大きな窓が多いからだろうか。
展望席のソファに座り、周囲に広がる光景を眺める。普段は見慣れない、豊かな自然に目を奪われる。
そして、その目にふとノートのようなものが飛び込んできた。
何だろうと思い、近づくと、表紙には
「カシオペア思い出ノート」と。
興味を惹かれ、ページをぱらぱらとめくっていく。
そして――
「あ――」
竜児が書いたのだろう、メッセージが。
心が温まっていく。そして、笑みがこぼれる。
大河は、ボールペンをとり、竜児のメッセージの傍に自分からのメッセージを書き込む。
END
以上です。
GJ!
こんなとこにも鉄っちゃん
亀レス過ぎるが
>>160乙
毎回毎回楽しみにさせてもらってますぜ 良作ありがとう!
ただ、ひとつだけ聞きたいのが
ピクニックパニックの終盤にあった香椎が能登に埋め合わせするって話は
期待してて良いんですかい?
>>236 そんな話があったのか
香椎×能登……想像無理www
能登ってアニメだとオサレだったね
大学いったら普通に彼女ができるタイプだな
いければ、な
原作でも何故に竜児が大河に惹かれたのか明確な経緯がはっきりしてないんだよな。
そこんとこどうする?
情が移った
>>240 竜児は泰子に対して「自分が生まれたせいで泰子の人生を狂わせた」っていう負い目を感じていた。
だから「生まれなけりゃ良かった」っていうのがどこかしらにあった。9巻ではそれが爆発したしね。
竜児にとっては料理とか家事をやる事が自分の存在を唯一肯定する手段。
大河は竜児を必要として、竜児の存在を全面的に肯定してくれる存在だからなぁ。
竜児が惹かれるのも自然では?
>>242 違うだろ後半は。
竜児は誰かに愛されていると明確に自覚した経験があまりにも少なく、
故に相手からの愛を感じ取る能力に欠ける、つまり鈍感。
だから、大河がはっきりと口に出して竜児への愛を表明したことは、竜児にとって恋のはじまり足りうる出来事だったのでは?
あの服…オサレか!?
まあそんな能登が好きだが
竜児って実乃梨に対しては奥手だった割に、大河に対しては結構強気だよな。
プロポーズの言葉が「嫁にこい」だもん。
三巻時点の夢では「どうか一緒になってくれませんか、どうか結婚してください。」だったのに。
いつの間にか逆転しとる。
ここでは人それぞれ解釈して、おいしく料理してエロくしましょうってことで
>>245 大河が先に好きって言っちゃったから主導権が竜児に移ったんだよ。
248 :
SL66:2009/03/13(金) 21:58:47 ID:HtR6+uMA
>>236 >ピクニックパニックの終盤にあった香椎が能登に埋め合わせするって話
は、奈々子様の「S」っぷり、具体的には、
土曜日に講義が終わって、フリーマーケットとかを冷やかすとかやっている
亜美(プチ・デートのつもり)と竜児(単なる買い物、デートの自覚なし)を
能登を使い魔(w)にストーキングして、テンパっている'亜美と、ニブチンな
竜児を影からせせら笑って、最後は、なんか期待している能登を、
SMクラブに誘引して、女王奈々子さまが、資本主義の豚こと能登を
しばきまくって、女王様笑いをする!
というのを、書くつもりでしたが、奈々子様を毀損すると、このスレでは
抹殺されかねないので、自重しています。
ちょ、SLさん(の奈々子様)自重w
SLさん、能登のその役目、陳が代わりに努めま(ry
句読点の打ち方が気になるぜ
>>248 それはそれで面白そうですねwちと残念
後半楽しみにしてます
253 :
SL66:2009/03/13(金) 22:54:15 ID:HtR6+uMA
しかしながら、空気的に許されるのであれば、書きたいネタですね
能登をしばく奈々子様
>>253 でも、実は奈々子の方がベタぼれなことを希望
うはwななドラ書いて欲しかったと思ってるのは俺だけじゃないはずw
でも楽しみだぁw
この場合は能登奈々じゃないか
>>256 あぁ、能登奈々じゃなくて、
ななドラをSL66さんに書いて欲しかったと思った人は俺だけじゃないはずって意味だ。
紛らわしくてスマソ
能登はやっぱ木原だなぁ、と思ってしまう
>>258 狩野←北村←木原←能登←奈々子
みたいな関係
>>259 なんかそれ…本編の軸になっている関係よりも面白いなww
とらドラんぶる
とらドランザムライザー
SL66様へ
私が投下しました「川嶋安奈の憂鬱」ですが、SL66様の設定準拠で
続編を書いてしまいました。つい筆がすべってしまってw
もし、SL66様の方で問題無いようでしたら投下したいと思います。
一応、ストーリーには干渉しないように配慮してはおります。
>>233 遅くなったがGJ!竜と虎の幸せそうな雰囲気が伝わってきて俺的に好きな作品だZE!
265 :
SL66:2009/03/14(土) 06:47:46 ID:8mEHYcwQ
>>263様
期待しておりますので、よろしくお願い致します
前スレのハーレム物みたいなやつまたこないかなぁ
なぜ俺はこんなにも鈍感な主人公と周りの女の子たちというシチュが
好きなのだろう…?
現実から目を背けたいからじゃね
SL66さんの竜児、料理描写は上手いと思うけど掃除基地外描写もほしいと思うのは贅沢ですかね?
竜児「お前が好きだ!! お前が欲しいぃぃぃぃぃぃぃいい!!!!」
大河「りゅうじいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!」
1レスのみの長短編投下。
竜児幼き日の1シーン。
夕日に照らされた、緑多い公園からは、子供達の歓声が聞こえてくる。
傍にいる母親達はおしゃべりに夢中だ。
その公園の片隅に、1組の親子がいた。母親と思しき女性は、むしろ少女と言ってよい。
そして、その息子は、ほんの4歳程度だろうが、年齢には似つかわしくない鋭い目つきをしている。
彼らは、遊びまわる子供達の輪にも、おしゃべりに夢中な母親達の輪にも加わらない。いや、加われないのだ。
母親は若すぎて、息子は目つきが悪いから。
たまにしかないせっかくの休日に、2人で公園に来てもこれだ。
結局、自分達は孤独なのだ。家での為、親の援助は受けられず、友人達も皆去った。
そして、今はお母さん仲間の1人すら出来ない。
いたたまれなくなり、自宅へと帰ろうとする。
その時、息子が口を開く。
「ママ、僕は寂しくなんかないよ。ママだけで良いもん。大好きだよ、ママ。」
母親は、息子を抱きしめる。
「うん・・・やっちゃんも、全然寂しくないよぉ・・・。竜ちゃんがいるし、
それに、スーパーお母さんだもん。」
2人は、歩き出す。
「今日のご飯、何が良い?」
「んー、カレー!」
泰子19歳、竜児4歳の冬だった。
>>272 竜児「今日のご飯、何が良い?」
泰子「んー、カレー!」
こう考えたら泣けてきた
スーパーお母さん・・・
>>272の修正。
家での為→家出の為
に。保管庫管理人さんお願いします。
>>272 GJ
>>273 おいww4歳児になんてことを・・・もはや虐待じゃないか
せっかく感動したのたが一気に笑っちまった
>>273 逆だよ逆www
書いた当人には思いつかねぇや
さーて、創作でも始めようか
おまいらのリクエストを聞きまするンス☆
そういうのは誘い受けとも取られて荒れる原因になるから、止めた方がいいze
たまには田村くんかな
>>283 竜児×亜美のクリスマス以降の亜美ルート改変
木原×能登のケンカ友達みたいな関係とか
お願いできますか?
案の定妙な流れになったな
■オフィシャル海賊本「電撃h&p(はじまり&ピリオド)」掲載、「ドラゴン食堂へようこそ」の(勝手な)続編です。■
---------------------
「いらっしゃいませー」
「大河ー、今日は毎週恒例・金曜カレーの日だったよねー。――――って、え、えっ、なんじゃこりゃあ〜?!」
今日もランチしに来てくれた彼女――櫛枝実乃梨デカ、来店早々殉職!……ということはなく、
いつも通りウェイトレス姿の親友、手乗りタイガーに声をかけたら、身長145センチの小さなお嬢さんが、165センチの大きなお姉さんに。
「た、大河が、成長した〜っ?! まさか、オトナになる青いキャンディー食べちゃったとか? くそう、私も……いや! せっかくだから、俺はこの赤いキャンディーを選ぶぜ!」
「いや櫛枝、今ちょっとヘルプで亜美に手伝ってもらってるんだ。逢坂、具合悪いみたいで」「え、えっ、川嶋さん?!」
今日は逢坂仕事をお休み、いつもの小さいウェイトレスさんのいない店。
――実のところ、スプーンやフォークを床に落とすだけでなく、逢坂まで椅子から転げ落とし、仕事休ませる必殺コンボを決めたのは、
「高須、お前も逢坂と一緒に暮らしてるんだろ? いつの間にそういう仲になってたんだよ、水臭いな」
「きき、北村くん、どこでそんな事」「……いや、泰子さんが言って」って天然・北村のトドメの一撃だけど。
そんなわけで今日は、こんな定食屋に(失礼な)不釣合いなエプロン美女、川嶋亜美。
モデルとか芸能人とか聞くと、高級レストランに高級外車で乗り付け、眩いほどのセレブドレスを着こなし、完璧なテーブルマナーで高級フレンチなぞ……なんて俗っぽい想像するのだけど、
実際はこうやって、バイクに北村と二人乗りで店に乗り付け、確かにさりげなくいいもの身に付けてるけど、高価なアクセサリーなんかチャラチャラさせず、そしてエプロン姿で、カレーライスの女。
「ぷ、プロポーズ! うおぉ……やっぱり、黄色い薔薇の花持って『お嬢さんを僕にください』とかー?!」
「ああ、おじさんおばさんの家にはもう挨拶しに行った。――祐作くん、ちょっとお義母さんって呼んでみてー、とか」
「って……確か川嶋安奈の娘、って言ってたよな? あのいつまでも若々しい女性を(昔から)おばさん呼ばわりしてるって、何と恐ろしい……」
「泰子さんだって若々しいじゃないか」
「いや、アレは若々しいとか童顔とかじゃなく『幼い』んだって……店では「23でーす☆」とか言ってるんだぞ、泰子マイナス4才の時の子かよ、俺」
……あれ、今日はえらい美人さんのウェイトレスさんだ! とか、何か女優の川嶋安奈の若い頃にそっくりだよねー、とか、
あら、いつものちっちゃい女の子はお休みなの? とか、あれー? 大河ちゃんいないの〜、やっちゃんさみしいよお〜とか、
最近逢坂のおかげで少し増えてきたお客さんのかける言葉には、竜児と北村、ええそうなんですよーとかうまく相槌打って。
「えへへ☆これって、新妻、って感じかなー?」
そんな事言いながら、少し頬染め、浮かれ気味で北村と一緒に働いてる亜美のエプロン姿は見ていても幸せそうで(「でも、昔働いてたファミレスのウェイトレス制服着てくれたら、もぉご飯3杯いけちゃう!」・櫛枝談)
きっとモデルの仕事で、何十万円もするような綺麗で高価な衣装をもう数え切れないほど着こなしてきただろう彼女だけど、
今日の1着千円しない竜児手製エプロンが、幸せドレスが、本当によく似合ってると思う。
でも、そのエプロンは、フラフラ……っと力なく、幽霊のような足どりでマンションに帰った、逢坂のしていたもの。
「えー? いつもの小さいウェイトレスさんは、辞めちゃったの?」
――逢坂、お前のことずいぶん心配してくれる常連のお客さんだって何人もいるんだぞ、
お前がいないと、また『ヤクザの店』に逆戻りだよ、お前に、一緒にいてもらえないと。
***
店のすぐ隣、徒歩数十秒の豪華マンション。高須家から眩い陽射しや天日干し洗濯物を奪ってきたこの建物に、毎朝のように逢坂を迎えに行き、毎朝のように、オートロックの暗証番号を押すようになって。
毎朝起こしに行って、店ではいつも一緒、毎晩のようにあいつは部屋に転がり込んできて、メシ食ったりごろ寝したり風呂入ったり、帰るの面倒でそのまま泊まってく事だって。
……2人とも妙齢の男女なのだ、泰子がバラさなくたって、確かに誤解されるのも無理はない。
北村の婚約の話、竜児は既に知っていた。……逢坂には黙ってたが、言えなかったが。
竜児だってガキじゃない、「幼馴染が、トランク抱えて部屋に転がり込んできた」って時点で既に、『ああ、一緒に暮らし始めたんだな』と薄々感づいてはいたのだ。
以前2人だけで酒交わしながら、そんな事も話したりしてたのだ、伊達に長く親友やってないのだ。
自分も親友の幸せを手放しで喜べたら、どんなによかったことか。
――片想いしてる女の、頑張ってる女の事を知らなかったら、すぐ近くで、そいつをずっと見ていなかったら。
あの日、ラブレターを渡し間違えて、自分のドジさ加減に落ち込んで泣いてた(店で木刀を振り回しもしたが)手乗りタイガーを、何とかしてやりたいと。
……そこから始まった『ドラゴン食堂』ウェイトレスのアルバイト。だけど、いつしかこんな、すっかり馴れ合い共同生活関係に。
でもそれは、あくまでも北村の親友として、逢坂の片想いを応援してやる関係。
朝から晩までずっと一緒でも、合鍵を渡して朝ベッドまで起こしに、いや同じベッドで朝を迎えるような関係は、別の人と。
そこが2人の間に引かれていた『一線』なのだけど――――その前提条件が、壊れてしまったら。
北村のことが好きなのに――好きだからこそ、もう好きではいられない。もう想いを伝える事だって、できない。
だから恋心を傷心に封じ込めて、結婚するあいつを友人として祝福し、誰にもわからないように一人泣き、またぽろり涙を零すのか。
……そして『ドラゴン食堂』のウェイトレスとして働く理由も、店でも家でも、朝から晩までずっと竜児と一緒にいる理由も、なくなるのか。
エレベーターで二階フロアに上がり、玄関チャイムを鳴らすが、頑丈そうな扉に、鍵がかかっていない。
……あのドジはよく鍵をかけ忘れるのだけど、「私、実家と折り合い悪くて。この部屋に来るのなんか、竜児しかいないし」と言ったのだけど、
力なく帰った逢坂が鍵をかけるのも忘れたのか――または、きっと竜児が来ると判ってて、開けたままなのか。
「逢、坂……?」
「竜児……やっぱり。来ると思ってた」
確かに住んでいる住人がここにいるのに、まるでモデルルームのように全然生活感の感じられない、空疎で冷たい部屋。
その真ん中で、逢坂は、待っていた。目は真っ赤に充血し、頬には涙で濡れた痕。……きっと泣いてるかと思ったら、泣いてはいなかったけど。
「……どうしてだろう。ショックであんなに泣いてたのに、なのに、『営業時間が終わった、竜児、来てくれるかな』……って。
確証なんかなんにもないのに、本当に玄関のチャイムが鳴ってさ、わ、来てくれた! って嬉しくなって。――どうして、かな」
「……」
「ああそうだ、北村くんにちゃんとお祝い、言わなきゃ! はじめて見たけど、すごい綺麗なひとだよね!」
「逢坂。本当にそれで、いいのか?」
「……いいの! うん、もういいの」
逢坂は、健気にも、笑おうとしていた。こんな時にも関わらず、竜児の『北村の事は知ってたけど、逢坂には言えなかった』気持ちをちゃんと推し量って、
もうボロボロで、見ていて痛々しい微笑みだけど、もう泣かないと――――だって竜児が来てくれたのだから、私の側にいて優しくしてくれるのだから、こうやって包み込んでくれるのだから、もう泣かないと。
***
「どうだ、辛くないか?」
「うん、おいしい!」
閉店後の店で、2人だけのカレーライス。
お腹をすかせてるだろう手乗りタイガーのためにちゃんと一皿ぶん置いておいたカレーは、そこらへんの店が出す業務用ルー使った代物ではなく、
ちゃんと小麦粉と竜児オリジナルブレンドのカレースパイス炒めて混ぜるところから始める竜児の必殺カレー、週に1度しか出さないスペシャルメニュー。
……あのね、竜児のカレーライスが、世界で一番おいしいの! と、逢坂もお気に入りのメニューなのだ。
「本当――おいしい。あのね、私小さい頃から冷たいごはんばかりで、こうやって……あったかい、ごはんなんて……」
そう逢坂が呟くのは、もちろん、食事の温度とかレンジでチンとか、などという意味ではなくて。
たとえ一人で家事がこなせていろんな料理とか作れても、『暖かいごはん』は、家族団らんの食卓は作れない……だって、そんなのずっと知らなかったのだから、ここ『ドラゴン食堂』で、竜児のご飯で、はじめて知ったのだから。
「ウェイトレスのお仕事だってさ、最初、私絶対出来ないと思ってた。
でも、『美味しい』って喜んでくれるお客さんの顔見たら、あ、きっと私も同じ顔してるな……って思ったら、とっても嬉しくて。
私やみのりん、そしていつも来てくれるお客さんをそんな顔にすることのできる竜児って、本当に、凄いって思う」
そして、スプーン握りながらちいさく微笑んで、とても素直な言葉で、
「私、もっともっと竜児のご飯食べたいの! あと60年間1日3食食べるとして、6万5千食もあるんだよ!……これだけあったら、和食洋食中華にエスニック、世界制覇だってできるよね」
「……そうだな。逢坂、ずっと俺のメシ、食べてくれるか?」
――そう言ってから、これってまるでプロポーズの言葉だよね、しかも、どう見ても男女逆じゃん!……と、2人で笑い出しそうになったけど、
「あの時、お前を応援してやる……って、言ったよな」
「うん」
「もう、応援はできないけど――それでも、ずっと側にいて、いいか? 俺はお前と一緒にいたい、お前に一緒にいて欲しい、そう思ってる」
「私も……」
”大河、って呼んでいいか?”
店長と、ウェイトレス。竜児と、大河。ファーストキスは、一晩かけてじっくり煮込んだカレーの味がしたけれども、雰囲気台無しだとは思わない。
――他人に知られたら『失恋した女を男が慰めてたら、一線を越えてしまった』とか言われそうな、笑われそうな関係だけど、決してそんなのじゃない。
「大河……」
「んん……ふっ……ん」
2人の恋のレシピは、唇が感じる互いの柔らかで暖かな感触から始めて、
お互いの心も、金曜の夜一晩かけて、ゆっくりと重なり合わせることに。
***
「ウェディング・パイ贈呈? なにそれ」
「高校時代の友人連中がさ、『え! 北村のやつ、すごい美人と結婚するって?! よし、じゃあ思いっきり祝ってやろう!』って」
「……それで、結婚披露宴で北村くんに向かってお祝いのパイ投げをすんの?」
「新郎友人一同、祝福とやっかみも一緒にな。そのパイを、プロの料理人の俺が焼く事になってさ、思いっきり腕を振るってケーキのスポンジ焼いて、たっぷりホイップクリーム盛って」
竜児が運転する軽自動車、彼女とのドライブにかけるMDなんかついてない中古の白いサンバーバン(お店の営業車だ)だけど、
その助手席に座る大河は、今日は思いっきり豪華なひらひらふわふわ花柄模様ワンピース。たっぷりのレースやフリルがとても愛らしい、大河お気に入りの、普段着ないとっておきの勝負服。
今日はお店の定休日、大河のナビで竜児とドライブデート☆……の道中なのだ、ナビが道を間違えやしないか、多少不安だけど。
「昔そんな歌なかった? 別の女と結婚した男に教会で悪態つく女の歌。有名なウエディングソングだけど、結婚式では絶対歌えない曲」
「流石に教会でパイは投げなかったはずだぞ。……それで櫛枝も、『面白そー、私にもやらせて! うおぅ、元ソフトボーラーの右腕が唸るぜ〜、そのキレイな顔にフッ飛ばしてやる!』とか、えらく乗り気で」
さすがに何個もパイをぶつけて、新郎北村を白い正装ごとクリームで真っ白けにしたら披露宴ぶち壊しになるだろうけど、というか、そんな食べ物粗末にするような行為は、竜児のMOTTAINAI精神的にも許せないけど。
でも皆を代表して1個だけぶつけて、新郎その情けないパイ顔のまま、披露宴の各テーブルを新婦と回って皆にパイを食べてもらって、
最後にファースト・バイト、花嫁さんに顔のホイップクリーム舐め取ってもらう……ってサプライズはどうかな、お祝いだし、そういうのもいいよな……と、竜児は思ってる。
「私はいいかな、私の身長じゃ踏み台ないと北村くんの顔までパイ届きそうにないし。それに竜児のお手製パイでしょ、投げるより、食べたいし!」
「おう。大河のはちゃんと焼いてやるから、ちゃんとしたパイ。ミルフィーユだって、ピザパイだって、何だってな」「うん♪」
結婚するあいつを、2人で祝福してやろう……と、車内で目を細くして笑ってる2人、実はこいつらも、既に一緒に暮らし始めていたりして。
お前ら、前からそうしてたじゃないか……と言われたら確かにそうだけど、2人は朝も夜も一緒、ご飯もベッドも一緒。
大きいエプロンと小さいエプロン、毎日2人で店を開け、『ドラゴン食堂』も『タイガー&ドラゴン食堂』にしようか? とか、そんな話をしたり。
「それにさ、ブーケ・トスでウェディングブーケ受け取って、そのお返しに披露宴でパイ・トスってのは、ちょっとひどいよねーって」
「花嫁のブーケ受け取ったひとが、次の花嫁さん!――ってやつだろ。あれって後ろ向いて、誰に渡るか見えないようにして投げるんじゃなかったか?」
「それそれ、……ね、竜児も手伝って! 私背が低いから、でも、負けたくないから!」
「そうだな。よし、俺がお前を担いでやるから頑張れ、大河」「みのりんがね、すっごいトスキャッチの強敵なんだよ……」
来月には、恋人たちが生涯を共にしあう儀式、神の前で永遠の愛を誓い合う儀式。
……それはいつの世も、女の子がピュアに夢見てる、素敵なフェアリーテール。
次の花嫁向けにはブーケ・トスを、そして、次の花婿向けにはガーター・トスを。
新婦の脚につけていたリングガーターを、新郎が未婚の男性に投げるのだけど、ブーケ・トスで花束を受け取った女性の恋人や婚約者が会場にいたら、その人にちゃんとガーターが渡るよう投げるのがお約束。
――だって次の花嫁には、必ず、次の花婿がいるのだから。
<Fin>
大河×竜児。…10巻の感想、[[独身、いい先生ぶりだっていうじゃねえか]]に尽きるかと。
原作が結婚(予定)エンドとなった関係で、『ドラゴン食堂の続きを書きつつ』『原作1巻と同じ様な展開をさせながら』
『原作とは違うifを書く』今作はちょっと苦労。
……【胸を鍛える大河のDSトレーニング。】からずっと竜虎ばかり書いてたので、次はひとつ亜美書きたいなーとか。
GJなんだぜ
キャンディー…あんたいくつだよw
大河、年取るだけで成長しなくね?
とか思った俺は20で何で知ってるんだ説もあるけど
期待してるぜぃ
乙であります
ホワイトデーネタ誰も書かなかったんだな、残念
幸福屋の新しい画像が上手く見れねぇ
竜児「お前が好きだ!! お前が欲しいぃぃぃぃぃぃぃいい!!!!」
大河「りゅうじいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!」
高須竜児がグレた。
平和な5月の朝に、竜児は頭をド金髪に染めて登校してきた。
道を歩けば誰もが避けて通り、朝の混雑した廊下を歩いても人並みが横に割れていく。
持ち前の禍々しい目を怒らせて、辺りを睥睨しながら歩いていた。
これから訪れるであろう恐怖に誰もが怯える。
「うおおおっ、な、なんてことだ、高須がグレてしまった! うおおっ、高須がゴミを分別せずに捨てているっ?!」
北村は大袈裟に驚いていた。
「うぎゃあっ、高っちゃんが、高っちゃんが割り箸使ってるよ!」
「ど、どうしたんだ高須?! お前がそんな悪いことするなんて、どうかしてるよ」
春田と能登も、突然豹変してしまった友人に驚いて声をあげる。
「スケールちっさっ! 亜美ちゃんなんかアホらしくなってきたんですけど」
「ちょ、ちょっと奈々子見てよあれ。めちゃ怖いんですけど、ひぃっ、目が合った」
「そう? 意外と似合ってない?」
麻耶と奈々子と亜美も、かたまって竜児を眺めていた。
竜児はくつくつと笑いながら、己の恐ろしい凶眼をギラギラと光らせていた。
割り箸を使うことで熱帯雨林は消え、分別されないゴミのせいで焼却場は大忙し。
環境破壊が進み、いずれ地球は温暖化して人類が滅びてしまう。
高須竜児に一体何があったのか?
「りゅうううううぅぅぅぅぅじいいいぃっ!!!」
突然の大音声と共に、大河が虎のような速度で駆けてくる。
「……大河」
驚いた竜児が大河を見ていた。
「ごめんね竜児ッ! 黒乳首なんて言って馬鹿にしてごめん。私が悪かったわ。グレたりしないで!」
黒乳首?
「大河、お前」
「本当は、竜児の黒乳首大好きだもん。本当はいっぱい舐めてあげたいくらい好きッ! だからそんな金髪やめて!」
「おお、そ、そこまで言ってくれるのか大河。俺も、お前の乳小さいなんて言ってすまなかった! 本当はお前の小さな乳が大好きなんだ!」
二人は公衆の面前で、ひしっと抱き合った。
「あのね竜児。これからはいっぱい竜児の乳首舐めてあげるね」
大河はくねくねと身をよじらせながらそう言った。
「ああ、俺もお前の乳舐めまくってやるぜ」
「んもうっ、竜児ったら」
さらにうねうねと体を揺らして、大河が頬を染める。
そんな二人を見て、亜美は頬を引き攣らせていた。
「ねぇ、亜美ちゃんサクっとやっちゃっていい?」
「あーみん、あっしも加勢しやすぜ」
笑顔を顔に張り付かせたまま、亜美と実乃梨がこめかみに血管を浮かべていた。
ゆらり、と蠢いて竜児に近づいていく二人を、北村が止めにかかる。
「櫛枝、それはソフト部に代々伝わる伝説のBARIKANじゃないか! なにをする気だ、よせ」
亜美が竜児を後ろから羽交い絞めにして、実乃梨は竜児の目の前でバリカンをカチャカチャ言わせていた。
「へ? お、おいお前らなんだ一体」
「そんなにタイガーが好きなんだったらぁ、虎刈りにしてあ・げ・る」
「さーて、色ボケの高須くん。サクッと金髪落としちゃおっか」
「ちょ、ちょっと待て! やめ、やめろおおおおぉぉぉぉお」
竜児の悲鳴が平和な学校に響いた。
こういうの大好きだ
乙であります
こりゃ竜児やられても仕方ないww
GJ
最高であります。
>>296 オモレーwww黒乳首GJ!wwwてか虎刈りなんかにしたら余計に顔が怖くなると思うのだがwww
後ろから羽交い絞めにしたらおっぱいが当たるとおもうのだが、亜美ちゃん…
竜児にはムショ帰りという新たな称号がつくだろう
>>290 GJなんだZE!てかキャンディーwそれとファースト接吻がカレーの味って…
最高じゃまいかっ!w
なんて言えるぐらい俺カレースキーw
>亜美が竜児を後ろから羽交い絞めにして
おい高っちゃんそこ変われ
二枚目の写真の正体を亜美がからかうとか実乃梨が大河がマンション前で叫んでたの
みてたのばらすとか原作の補完してるSSを職人様書いて下せ〜(´・ω・`)
>>290 GJ!
ほんわかしたいい話にまとまって面白かったぜ
違う設定でありながら、ここまでとらドラっぽく書けるのは尊敬できる
>>290 GJ!! バイトの採用に落ちた独神も救済してやってくれw
>>306 「二枚目の写真」については、亜美がからかうとかそういうんじゃなくて、ひたすら切ないヤツだけど保管庫に入ってるぜ。
>>306 後者をからかうってのはあんまり想像つかねーな
>>310 実「りゅーじーっ!って叫んでいたくせに」
大「……え?!」
くらいのノリじゃね?
あれからかうとか…黒すぎるww
>>296gj。
俺だけかもしれんが、なんか10巻見た後だと虎×竜が違った視点で見られるな。
313 :
賢い選択:2009/03/16(月) 01:16:01 ID:UhjuvgyX
蝉が鳴いていた。
青しか無い空の中央に、白く輝く太陽が腰掛けていて、容赦なく校舎を焦がしていた。
夏休みの学校には、体育会系の部活動特有の、誰にも聞き取れないような大声が響いている。
幸太は校舎の中に駆け込んで、白いブラウスのボタンを上から外して中に冷たい空気を送り込んだ。
「暑い……」
まだ湿度がさほど高くないのが救いで、校舎の中に入ってしまえばひんやりとした空気に迎えられた。
「早く来すぎたかな」
そろそろ正午という頃に、幸太は生徒会室に向かって歩き出していた。
「こんな日に会議なんてなぁ」
文句を口からこぼしながら、廊下を歩く。
もっとも、生徒会の活動があるからこそ、夏休みでもさくらに会えるので、幸太も夏休みにわざわざ学校へ来るのが嫌なわけではなかった。
集合の時間にはまだ早かったかもしれないが、幸太は生徒会室の扉を開けて中に入った。
「ん? なんか不幸そうな足音が聞こえたかと思えばお前か、早いな幸太」
「……会長、何してるんですか」
部屋の中に入った途端目に入った光景に、幸太は呆れながら溜め息を吐く。
無敵の生徒会長、狩野すみれが、机の上に寝そべって青虫のように這っている。
「暑いんだよ……。なんだこの暑さ、どうなってやがる」
普段の凛とした雰囲気や、自信に溢れた雰囲気はこの暑さで蒸発してしまったらしい。
気だるそうに目を伏せ、長机の上を移動していた。額には汗の玉が滲んでいる。
「おっ、ここ冷てぇな」
机の天板に冷えた場所を発見して、すみれが頬をぺたりとつける。気持ち良さそうに口元を緩ませていた。
「うわぁ、頭の悪い人みたいだ」
「なんだとてめぇ、いいから下っ端はそこらへんの団扇使って扇ぎやがれ」
すみれが、近くにあった椅子を指差した。
「まったく、人使い荒いんだからこの人は」
団扇があるのなら、自分に使いたい。わざわざ人を扇いで、自分が暑い思いをするのは嫌だった。
しかし、一応は目上の人である。幸太は椅子の上に落ちていた団扇で、すみれを扇いだ。
314 :
賢い選択:2009/03/16(月) 01:16:42 ID:UhjuvgyX
「おう、いい感じだ……」
「自分で扇いでくださいよ」
「暑いだろうが」
「はぁ……。会長って、あれですね、意外と子どもっぽいですよね」
「おいおい、私はまだ未成年の子どもだぞ。何か間違ってるか?」
机の上で寝そべって、すみれはおっさん臭い仕草で腹をぼりぼり掻いている。
「暑いからってそんなダラダラしないでくださいよ。もっと下のものに示しをつけるような感じでシャキッとですね」
「ああっ? 暑いんだから仕方ねぇだろうが」
すみれが、涼やかな目を細めて、強烈に尖らせる。
「ダメだこの人」
しばらく扇いでいると、廊下のほうからドタドタと大きな足音が聞こえた。
すると扉をばーんと大きく開けて、北村が爽やかに顔を出す。
「いやぁ、すいません。遅れました!」
全然遅れてないです。まだ早いです。そう言おうとした幸太だったが、口から出てきたのは別の言葉だった。
「なんですかその格好?!」
北村は白のブラウスのボタンをすべて外し、惜しげもなく厚い胸板を晒していた。
真っ黒い髪は、さっき濡らしたばかりなのか、水滴をぽたぽたと垂らしている。
「はっはっは、あまりに暑いもんだから水を浴びてきた!」
「そんなことよりボタン留めてくださいよもう。まったく会長も副会長も……」
そう言いながら幸太は振り向いて、すみれを見た。
「おいてめぇっ! なんて格好してやがるんだ!」
すみれはいつの間にか椅子の上に座って、足を組んでいた。
さっきからずっとこうしてました、みたいな態度ですみれが声をあげる。
「暑いからってだらけてんじゃねぇ!」
「はっ、すみません! あまりに暑かったものでつい」
「……会長?」
すみれはさっきまでのだらけた雰囲気などどこかに吹き飛ばし、平然と椅子に腰掛けている。
そんなすみれを見て、北村が感激したように目を輝かせる。
「さすが会長です。こんな暑い日でもだらけることがない」
「当たり前だ。私がだらけてたら示しがつかねぇだろうが」
「えっ? いや、会長はさっきまで机の上でトドみたいに」
言いかけた幸太に、すみれが幸太の腿に蹴りを放つ。
「暑いからってわけのわかんねぇこと口走ってんじゃねぇぞ幸太。おら、北村もシャキッとしやがれ!」
「はいっ。さすが会長、大人ですね」
ブラウスのボタンを留めながら、北村は背筋を伸ばした。
幸太が、呆れかえった表情ですみれを見る。
「ん? なんだてめぇ、なんか言いたいことでもあんのか」
「いえ、なにも……」
終わりです。
>>315 おお、北村の前ではシャキッとする兄貴…新鮮だ。GJ
結構ここも落ち着いてきたな
>>316 むしろ幸太の前で自然体でいられるすみれにドキドキしないか?
ふむ…確かに北村か幸太どちらのフラグなのか気になるところですな
それと
>>315の職人さんGJです
あれデジャブ?
なんか似た話を見た記憶が?
>>321 証拠もないのに記憶だけでニタハナシとか言うのは失礼
似た話というのは竜児と大河のことじゃあるまいか
4巻で夜中にグダグダしてる竜児と大河みたい
何とも思ってない人の前で見せる姿と好きな人の前で見せる姿は全然違う
なんてのは、いにしえより散々使い古されてきたラブコメSSの定番シチュなんだから、
似たような構成の話も探せばどこかにあるだろうさ。
>>315 GJ!
解釈が別れるとこだが自然体を見せてる方が実はフラグというのを推したいな
大河もそうだよな良く考えたら
>>319 義弟の前で取り繕っても仕方ねぇ、って話でしょ。
一方で北村に対しては「会長」を演じるすみれ。ちょっと切ない。
くそう、我らが同志の続きはまだか
夜分に失礼します。
神作の続きでもなければ、あみドラですらないのですが……
みのドラの短編を投稿します。
タイトルは「夕日の下で」で、文量は2レス分です。
これは、春の足音が近づく、冬のある日の話。
――放課後。
校舎が夕日に染まられる頃、一人の男が校門に向けて駆けている。
その凶悪かつ険しい表情は、どこぞの抗争に乱入しようと考えているわけではない。
校門で自分を待つ想い人のことをひたすらに案じているだけだ。
「おーい、竜児くーーん!」
男に気付き、自らのバッグを振り回して存在を主張するのは、彼の想い人。
あぁ、いつ見ても眩しい――と昇天しかけるのも束の間、真っ先に謝罪の言葉を考える。
「すまん、実乃梨。進路相談が長引いちまって。」
「ダイの大丈夫だ!この櫛枝、竜児君との下校のためなら、いつまでも待ち続けるぜ!」
親指を立てて力強く答える実乃梨。
そんな彼女の太陽のような、眩しい笑顔に目を細める。
普段は殺人的とまで言われる竜児の視線も、彼女の前ではどこか優しく見える。
「……へっくち。」
が、太陽のような笑顔をもつ実乃梨でも、寒空の下で人を待ち続ければ体は冷えるわけで。
「お、おい、大丈夫か?つーか、顔が赤いぞ。風邪引いたんじゃないのか?」
「大丈び大丈び。しっかし、ちょっと朝あったかいくらいで、コート着て来なかったのは無謀だったねー。」
そう話しながら、体を暖めようとしているのか、スクワットを始める。
そんな強がる実乃梨も愛しいが、吐く息も白い中、このままで居させるわけにはいかねぇ。
「っと、そうだ。これを貸してやる。」
咄嗟の思いつきで差し出すのは、自らのマフラー。
だが、気丈スイッチの入った実乃梨が、そう簡単に受け取ってくれるとも思わない。
「い、いや、いいよ。大丈夫だから……へっくち。」
「ほら、無理すんなって。待たせちまったお詫びと思って使ってくれ。」
半ば無理やりマフラーを実乃梨に巻きつけてやる。
ここまでしなきゃ受け取ってくれないだろうことは既に学習済みだ。
「う、うん。そこまで言うなら仕方ない。……ありがと。」
しぶしぶ巻かれたくせに、その表情は明らかに嬉しそうだ。
ついでに言えば、その頬はさっきよりも赤い、気がする。
「へへ……あったかい。あと、竜児君の匂いがする。」
「そ、そーゆー恥ずかしい感想は言うな。」
マフラーを巻いて満足そうな実乃梨から逃げるように背を向ける。
「へーい。……でも、竜児君のそーゆー優しい所、大好きだぜ?」
少しの間を置いて、実乃梨がその背に合わさってくる。
暖かい感触に二人揃って、頬が緩む。
一瞬、夕日がピンク色に見えたのは、気のせい……のはずだ。
「しっかし、進路相談かー……竜児君はもう決めたの?進路。」
背を合わせたまま、真正面の質問をぶつけてくる実乃梨。
「……まだだ。実乃梨は体育大に進むんだろ?」
「うん。まだまだ険しい道だけど、諦めないって決めたんだ。」
そう話す実乃梨はキラキラと輝いているに違いない。
それに比べて、俺は……
近いうちに、自分の進むべき道を見つけなきゃいけないってのは分かってる。
でも――
「……でも、最近さ、もう一つ進みたい道が出来たんだ。
そっちは今の道よりも険しいかも知れないけど、私にとっては優しくて、甘い道。」
実乃梨の言葉に、どこかで聞いたことのある言葉に反応して、思考を止める。
「どんな道だ?」
「……笑わない?」
「笑わない。」
「絶対?」
「絶対。誓う。」
「……そうか。んじゃー、言おう。」
そう言いながらも、後ろからの声は止んでしまった。
だけど、長い沈黙の後、聞き取れるか分からないくらい、小さな声でそれは告げられる。
「……竜児君のお嫁さん。」
実乃梨の言葉に思わず振り返る。
「私さ、どっちの道もゴールまでたどり着きたいんだ。
たとえ、みんなに笑われても全力で頑張りたい。そう思うんだ。」
実乃梨の真っ赤な顔は、決意に満ちていて、輝いている。
だから、誓う。
「みんなが笑っても、俺が信じる。応援する。」
全力で実乃梨を支える、実乃梨の隣にいる。
それだけは誰にも譲れない。
それだけは今の俺にも見える道だって思うから。
「よっしゃ、ありがとう。竜児君がそう言ってくれるなら、頑張れる。」
そう言って、キラキラと輝く満面の笑みを俺に見せてくれる。
……あぁ、天使って実在するんだなぁ。
「そーいえばさ、そろそろ行かなくて大丈夫?」
「お、おう。そうだな。」
――実乃梨の言葉に、昇天していた意識を取り戻す。
そうだ。ぼちぼち動かないと、特売セールに乗り遅れちまう。
「へい、ハンター。今日のセールのねらい目は何だい?」
「おう。今日は金曜だから……」
不思議な色の夕日が照らす道を、二人で並んで歩きだす。
お互いの手のぬくもりを感じながら。
おしまい
以上です。
……デラウェアよりこっちの方がデラウェアっぽい話になっちまったぜorz
なお、このSSはみのりんスレに投稿された絵がモチーフになっています。
どっちに投稿すれば良いか悩みましたが、文量が1レスに収まらなかったので、
こちらに投稿させて頂きました。
それでは、長文・駄文失礼しました。
……寝よう。もう無理ぽ。
一番にGJ! 原作が終わってからだと、こういう未来もありえたのかなぁ、とか思ってしまうね
>>332 LOVEをありがとう!今日も1日頑張れるよ!
やはりあの絵がモチーフか・・・すぐピンときたぜ
にしてもよくよく考えたら、竜児の嫁になるのが一番大変なのはみのりんなのかもな・・・
北村の名言
「高須は大河でオナニーしないのか?」
やはり原作が完結したからか、勢いが落ちたね〜
>>332 最近ななドラに転んでたがみのドラはイイ、基本だな基本
>>332 あわわわ・・自分の駄絵がモチーフだなんて
すっごいうれしいです!!!><
素敵なみのドラありがとうございます^^*
339 :
98VM:2009/03/17(火) 14:24:25 ID:KUs6g6xq
・・・アクセス規制に巻き込まれました。
「川嶋安奈の憂鬱」の作者です。IDが数回変りそうなので、
今回より便宜上98VMを名乗らせて頂きます。
さて、今般「川嶋安奈の憂鬱・2」を投下致します。
本作は、SL66様の「横浜紀行」の設定をお借りしています。
単品でも読めますが、「横浜紀行」読了後の方が楽しめるかと思います。
最後にSL66様、ご快諾いただけましてありがとうございます。
やった・・・ やってしまった・・・
最悪だ。
やることなすこと裏目にでている。
「あみちゃん、おっきくなったらママみたいになりたい!」
幼き頃のあの言葉が、私の頭から離れない。
あの子の道を決めるのはあの子自身だと。
何度も自分に言い聞かせたけど、多分、心が納得していないのだ。
―――だって、ずっと夢見てきたのに。
―――ねぇ、夢をみるのは子供だけの特権じゃないでしょう?
『川嶋安奈の憂鬱・2』
久しぶりに亜美の顔を見たのはひどく寒い日だった。
待ち合わせの時間を守った娘は、高層ビルのレストランの窓から外を見ていた。
夕暮れが近い。
鈍色の空に、胡麻粒のように小さなシミが点々と西に向かって飛んでいく。
コンクリートの巨大な箱に張り巡らされた鏡は、今日は茜色を宿さないだろう。
娘が私に気づく。
ただ白を失っていくだけの背景の中、其処だけが美しく色づいた気がした。
その笑顔は前に会ったときと同じで・・・。
ほっとした。 心底ほっとした。
変わっていない。娘はまだ、私の知っている「亜美ちゃん」だ。
愛娘を正面から見るために身を滑らせる。
あっけないくらいに簡単に、私の貌は笑っていた。
互いに近況を報告しあい、とりとめのない話題で時間を浪費する。
学校のこと、仕事のこと、友達のこと・・・。
娘の話題は、今までに無く豊富だったが・・・。
窓に目を移せば、瞬く光の海。
曇り空も地上の星には関係無い。
航空識別灯の赤がゆっくり瞬くのを眺める振りをして、窓に映った娘の顔を見る。
鏡は時として、不思議と目に映る以外のものを見せてくれる。
電話の度に感じていた涙の気配は、こうしている間も消えてはいなかった。
娘が心を痛めているのは間違いない。
だが、実際顔を合わせてみれば、理由はすぐに見当が付いた。
他愛のない会話の狭間に、見たことの無い貌が覗いている。
電話では解らなかった。
それは女の貌だった。
大人なようで子供。子供のようで、驚くほど大人な時もある。
たしかにそんな年頃だ。
私に何も話さないのは、自分で何とかするしかないのが分かっているからだろう。
けれど、転校の話が出てきたということは・・・。
色々理由を付けているが、逃げ出すしかないほど追い込まれたのか。
あるいは、変に優しい所が有る亜美の事だから、色々しがらみも有るのかも知れない。
もしかしたら、意地を張って自爆した可能性も・・・。
いずれにしても、失恋なんて事になれば、娘にとっては初めての事だろう。
娘を締め付けているのは色恋ばかりではなさそうだが、大きな部分を占めているのは間違いない。
ただ好きというだけの、飯事の様な初恋とは違う、自分を犠牲にしても相手を想う、恋。
学校や、友人を語る時の言葉や仕草の端々に、そんな想いが透けている。
けれど、その想いは相手に届いていないのだろうか。
私の愛娘をここまでコテンパンにしてくれるとは、いったいどんな男なんだろう、と思うと同時に
底意地の悪い私は、劇団の話をするのにいいタイミングだな、とも思ってしまった。
既に同じ年頃の女の子が多くて、実力のある劇団には根回ししてある。
娘も前に話した時は乗り気だったし、何より演技に熱中してくれれば、恋の痛みも和らぐだろう。
「ねぇ、亜美。 前に話した劇団の事だけど、今度の日曜にでもいってみない?」
「え? う、うん・・・ あ、でも、その日はたしか撮影が」
「大丈夫よ。 劇団の方にはあなたの事話してあるし、撮影のスケジュールは調整させるから。」
「・・・・・・」
「いい?」
「うん・・・・・・。 わかった。」
喜色満面という感じではなかった。むしろ不安げな表情。
本格的な演技を学ぶのはこれが始めてだから、多少不安になるのは仕方が無い。
しかし、演劇は面白い。 実際に舞台に立てばきっと虜になる筈。
なんせ、私の娘なのだ。
モデルとしての仕事ぶりを見ても分かる。嫌いな筈が無い。
小さな役だが、早々に舞台に立てるようには手配した。
何より大切なのは「劇」という空間を身をもって感じること。
観客と役者、その間にある感情の流れを感じることだ。
技術なんて後からいくらでも着いて来る。
この子の事だ、きっと今まで通り上手くやってくれるだろう。
それより、学校での人間関係の方が厄介かもしれない。
そもそも娘は、あまり学校のことは話さないほうだった。
友達といっても、幼馴染の祐作君くらいしか思いつかない。
それが急に学校や友達のことを話すようになった。
それはいい変化だと思う。
そこに留まることは、今の彼女にとっては辛いことなのかもしれないが。
しかし、逃げれば必ず後悔が残る。 少なくとも、私の経験上はそうだった。
つい先ほどまでは一刻も早く東京に呼び戻そうと思っていたが気が変わった。
これからの女優修行の為にも、きっちり決着をつけて帰ってきて欲しい。
だから・・・
「そうそう、転校の事だけど、きりのいい新学期になったら、でいいんじゃない? 一緒に暮らせる方が
嬉しいけど、2〜3ヶ月が待てないほどじゃないもの。」
「う・・・ん。 そう、だね。 春まで・・・・。」
「そうね、春まで。 季節が変われば、まぁ色々変わるから。 転校するにはちょうどいいわ。」
この年頃の2〜3ヶ月は長い。
色々変わるし、変えられる。
第一、私の娘が簡単に負けて、ケツまくるなんて、・・・・・・お天道様が許しても、お母さんは許しません。
そして、確かに変わった。
一つは私の望まない方向に。
一つは私が仕掛けた方向に。
「お、川嶋さん、亜美ちゃん、今度CM決まりそうなんだって? なんでも例の化粧品って聞いたけど
本当なら、正に『川嶋安奈の再来』じゃなーい。 こーりゃ、話題ばっちり。 こないだ誰だっけ、写真
屋さんも言ってたけど、亜美ちゃん、相変わらず超可愛い上に艶も出てきたってぇ〜。 大ブレイク、
しちゃうんじゃなーい?」
大手事務所のプロデューサーが馴れ馴れしく話しかけてきた。
亜美風に言うならば、「しななんか作ってチョーキモイんですけどぉ、死ねば?」というやつだ。
だが、情報の速さは侮れない。
その企画は確かにある。私が若い頃出演し、大きな話題をさらったCMだった。ムカつくことに、企画
のキーワードはオカマプロデューサーの言うとおり、正に『川嶋安奈の再来』だった。
最初の一本は、当時のCMを完全再現、変わるのはモデルだけという『仕掛け』が予定されている。
この企画は娘にとって大きなチャンスだ。
年間契約で契約金も膨大になる。
しかし、まだ本決まりになった訳ではないから、私は適当にあしらっていた。
「ガードかったいなぁ。 こないだ当の亜美ちゃんにも聞いたけど、きょとんとしてたっけぇ・・・もしか
してまだ言ってなかったの? っていうか、まだまだ決まりじゃないのかなぁ〜?」
牽制のつもりか、このオカマ野朗。 自分とこのアイドル入れたいんだろうが、あんな小娘、亜美と
比べたら福笑いだっつーの! っていうか、亜美にまで馴れ馴れしく話しかけてるのかコイツ。
「さぁ? 私の仕事は女優ですからぁ。 契約とか難しい話は解りかねますの。 それより。そこ、
ど・い・て くださらない?」 ムカついたから、嫌味たっぷりに会話の終了を告げる。
「ちっ。 あ〜、そういえば今日も亜美ちゃん見かけたけど、なんか顔色悪かったなぁ〜。 もしかして
先輩方に苛められちゃってたりしてぇ。 んっふっふっふ。」
本気で嫌な野朗だ。 って、・・・娘が来てる? なんだろう? 今日はそんな予定は無かった筈。
心なし足早に楽屋へ戻る。
果たして娘はそこにいた。 確かに、顔色が優れない。
とりあえず、私は娘を伴って楽屋の中へ移動した。
スツールに腰掛け、娘にも座るように促す。
けれど、娘は固い表情で立ったままだ。
嫌な予感がする。
無意識にタバコを取り出した事に気づき、火を点けずにまた箱に戻す。
そして、重苦しい沈黙はそう長くは続かなかった。
「ごめん、ママ。 あたし、劇団には入らない。 モデルも辞める・・・・・・。」
絶句した。
何がどうなったらそんな結論になるのか、てんで見当が付かない。
「もう、事務所には言ってきた。 仕事に行く気は無いからって。 あと、転校もしないことにした。」
言葉がなかなか出てこない。
世間様でそんな我侭が通用するとでも思っているのか?
どれだけの金が動いているのか分かっているのか?
自分の顔が、普通のサラリーマンが十年働いても手に入らない金額を一瞬で稼ぎ出す事を
知らないとでもいうのか!
私の頭は沸騰した。 その瞬間、『娘の気持ち』なんてものは頭から消し飛んだ。
珍しく、亜美の方からわざわざ楽屋を訪れたのだ。
何も考えずにバカなこと言うような子じゃないのは解っていたつもりだった。
それに、大人びていても亜美はまだ子供なのだ、ということも、私は忘れてしまった。
それどころか、もう、頭の中が真っ白だった。
ただ、ただ、裏切られた気がした。
何を言ったのか覚えていない。 きっと口汚く罵ったのだろう。
正気に戻った時、
目の前には青白く、くしゃくしゃに歪んだ亜美の顔があった。
そして、そこには私と同じ、
裏切られたという思いが浮かんでいた。
「あっ・・・あたし っは、ママじゃ、無い。 ママと同じになんかっ、出来ないよ!!」
そう叫んで、走り去ろうとする亜美の手に、私の手はかろうじて間に合った。
「亜美・・・・・・。」
しかし、言葉は無い。 娘の想いを、悩みを、聞く機会を自分で壊してしまった。
私はバカだ。
娘の気持ちが解らなくなったと思っているなら。
今は話を聞くべき時だったのに・・・。
「ママ、迷惑掛けてごめんなさい。」
「でも、あたし、やりたいことが出来たの。 ついていきたい・・・ひと・・・が・・・・・・」
後半、消え入るような声を聞き取るには、
手を握っていた私ですら、遠すぎた。
握力を失った私の手から、娘が零れ落ちていく。
申し訳無さそうな横顔を最後に、
川嶋亜美は楽屋から出て行った。
いつにもまして無駄に広く感じる楽屋には、ポツンと私だけが残される。
顔を覆いそうになるのをなんとかギリギリ踏みとどまった。
そうだ、喧嘩なんか珍しくない。
今までだって何度も喧嘩した。
大丈夫、これからも上手くやっていけるだろう。
私たちは親子だから。
けれど、何か大切なものが壊れてしまった気がしてならなかった。
私は今まで、暗闇の中に輝くスポットライトに憧れて、がむしゃらに進んできた。
富も、名声も、手に入れてきた。
そして何よりも大切な宝を手に入れた。
その宝が、より強く美しい光を放つよう、自分の全てを注ぎ込むことが、いつしか私の
生きがいになった。
二人で光輝く世界に立つ事を夢みていた。
それはエゴだと。
あの子の道はあの子が決めるのだと。
そう思い直しても・・・
心とはやはり、儘ならないものなのか。
胸の内のもやもやは簡単には消えてくれそうに無い。
―――だって、ずっと・・・夢見てきたのだから。
344 :
98VM:2009/03/17(火) 14:33:02 ID:KUs6g6xq
以上です。
あーみん、超いい子です。あんないい子まずいねーって位に。
そしたら、当然、お母さんだっていい人なんじゃないかと思うのです。
というわけでこんな具合になりました。
楽しんでいただけたら幸いです。
>>344 乙です。凄く楽しめましたよ。面白いスピンオフ作品で、実際にそういう背景がありそうって感じがしました。
なんちゅうか亜美ちゃんママも幸せになって欲しいなぁ
>>339-344 面白かったー、所々に原作のあの時かと想像させる場面が良かった。
ただあーみんが書きたいのかお母さんを書きたいのかどっちなんだろう?とは思った。
あーみんは原作のバックボーンがあるから今回の描写で十分可愛かったけど、
お母さんはほぼオリキャラだから主観キャラなら娘を思う良いお母さんという顔以外に
女優!川嶋安奈って描写もあればよりキャラがと
1読者の妄想でした
>>344 竜児と初めて会ったとき、川島安奈はどんなリアクションを見せるか、
ちょっと興味深いですね
モデルとかって一瞬で一億弱も稼げるの?
……なんだ亜美ちゃんだからか…
351 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 16:47:22 ID:invvLkgc
原作完結後で悪いんだか、「狙撃」の続編を「屍虎」というタイトルで誰か書いてくれんか?
自分でも考えてみたんじゃが、どうしても思いつきゃせん。
お断りします
お断りします
ハハ ハハ
(゚ω゚)゚ω゚)
/ \ \
((⊂ ) ノ\つノ\つ)
(_⌒ヽ ⌒ヽ
丶 ヘ | ヘ |
εニ三 ノノ Jノ J
353 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 17:22:47 ID:invvLkgc
いや、そう言わずにお願いします。m(__)m
荒らしか?
自分で書くならともかく
他人に頼むなんて頭がおかしい
まあ書いたとしても読みゃしねえけどなそんなの
クソの続編はクソ
>>351・353
あれは話のネタもそうだし、なにより作者自体が痛すぎて嫌い。
>>354が言うように、ハッキリ言えばクソ。
絶対読みたくないから、『屍虎』って今からあぼんしとくわ。
あといい加減sageろよ。
・sageない
・書いてくれと言う割にはタイトル指定
・元になるSSが酷い
ノーSSでフィニッシュです
半年ROMってから戻ってこないでください
ここまで俺の自演
リクすること自体うざいだろ
あとは
>>356に同意
雰囲気悪くなるからこの話ここで終わりね
以下スルーで
なんか最近すっかり大河SS投下されなくなったね
竜虎SSは別所で投下されてるからね
>>359 アニメキャラ板に竜虎妄想スレがあって、SS投下で盛り上がってるから。
【人はGJが多く付くスレの方に行く】、そういうこと。実際大河SS落とした
直後に「ななドラマダー?」とか言われたら、「僕いらない子なんだね」と
凹みたくもなる。
ななドラまだー?
アニキャラにスレあんのは知ってるけどあそこは空気が違うし職人も別だろ
そもそも原作ではなくアニメの関連スレだし
最近ななドラとか大学とかオリジナル色強いのが増えてきたけど俺は王道が好きだ
>>361 竜虎妄想スレの盛り上がりっぷりに吹いたw
みのドラ派的には羨ましいの一言しか…
空気悪くなってきたね
いいぞ、もっとやれ
したらばのSSスレ…
>>363 見た感じ
ここで竜虎物を書いてた職人さんは殆ど向こうへ移った印象
エロいのはこっち
エロくないのはあっち
そういう住み分けでいいんじゃね
よし、ここで一発つまらないネタを投稿してみる
冗談抜きでつまらないから前もって言っておくぞ
2レスぶん。
『KYな奴ら』
「何で俺だけ……」
がくり、それは唐突に、本当に唐突に……・。
ある日の昼休み、竜児は教室の床に膝をつきうなだれた。
「なによ竜児」
「どうしたんだい、たきゃすきゅん」
「どうした高須」
「へ〜ついに本当に犬になっちゃったの?」
一つ見当違いな意見も飛ぶ中、竜児はツッコミもせず淡々と口を開く。
「どうして、高須なんだ。俺、気づいたんだ、今。逢坂、櫛枝、川嶋、北村……
みんな最後の文字の母音は『あ』なのに、俺だけ高須…つまり『う』だ。」
「は?」
「へ?」
「そ、それがどうした?」
「意味わかんないんですけど?」
「それだけじゃねぇ…これをよく見てみろ
あいさか
くしえだ
かわしま
きたむら
たかす
……見ろ、俺だけ3文字……空気読めてない。
しかも心なしか、『かわしま』、と『きたむら』を交互に見ていると『しまむら』に見えてくる」
「いや、高須おちつけ。最後のは関係ないぞ」
「でもでも……」
「気にすんなっ、高須くん」
無意味なことで落とした竜児の肩に、優しく手を置いたのは竜児が絶賛片想い中の実乃梨だった。
「く、櫛枝…だが俺は…」
「そうじゃねえ!これを見ろ」
大河
竜児
亜美
祐作
実乃梨
……なんか飛び出てる。私も立派なKYなんだ!」
「おう!?本当だ」
「だろう?」
「奇遇だな」
「おうよ!だから気を落とす必要なんてないんだ!」
「おう!ありがとう櫛枝、元気出てきた」
くっだらねぇ……
呟いた亜美のセリフに、
「あんたと意見が合うなんて遺憾だわ…だけどさすがにこれは……」
と大河が頷き、
「はっはっはっ……ま、よくわからんが良かったな」
真正KY男でもあるかもしれない裸族が高らかに笑った。
それは夏のある日、大人になったいつか思い出すかもしれない、
くだらない日常。
――えんど
以上。すまん、忘れてくれ、としか言いようがないorz
>>372 ワロタwGJだぜ!
一瞬、竜児が犬になるSSだと思ったぜ……
つーか、犬ネタで何か書きたくなったw
>>372 普通に面白かったww
やっぱみのりんすきだー!
>>372 ワロタwwしまむらとか・・・
KYコンビに敬礼(`・ω・´)ゝ
こういう発想が二番目ぐらいに大事なんだよな
本当に意味わかんねぇなw
いやいや、GJ。
君を僕は忘れない。
>>366 俺も同意
ここでみのドラを待とうぜ
そしてくだらない日常が学生時代にとって一番面白かったりするな
竜児と誰かオンリーも良いけど
大勢はやっぱりいいよなうん GJ
このスレ前半でみのりんのチャンスに強い高須くんうんたらの作者
みのドラかいて(´・ω・`)
>>372 いやいやw普通に尾も白かったぞwwおまいの才能に嫉妬する俺ガイルwww
それと
>>380がいってるのは>>217-
>>221の作品の事だと思うZE!
10巻P200以降を大河目線で。
タイトル「選んだ道」
では投下。
小さな体には少し大きい学生バッグを、大河は斜め掛けにして、暗い部屋を出る。
そして、竜児と泰子の寝ている部屋の扉をそっと開く。
竜児は寝ていた。布団に包まり、横を向いて、両手を目の上に重ねて。
その手の下にある寝顔がどんな表情なのかは、読み取れない。
隣の布団に包まるのは泰子だ。竜児と同じように横を向いて。
「竜児」と、世界にたった1人の恋人の名を呼んでみる。
反応はない。
もう一度、竜児と呼んでみる。それでも反応はない。
暫く2人の寝姿を眺め、これで最後にしよう、返事がなければ、これで最後。
そう決め、名前を呼ぶ。
――反応はなかった。
唇を、色が無くなるほどにかみ締め、別れの言葉を言う。竜児には聞こえていないかも知れない。
それでも良い。それでも良いから、言っておきたかった。
「じゃあ。――ちょっと行ってくる」
床板が軋み、僅かな音を立てる。
扉を閉ざす。
暗い階段を下る。
玄関にたどり着き、靴を履く。
扉を開ける。そして、門を開ける。
そっと、後ろを振り返ろうとして、やめた。
後ろを向けば、二度と動き出せない気がした。
そして、竜児と交わした約束を思い出す。
みんな幸せ
そのために、竜児と大河は一旦離別するという決断をしたはずだ。
自分は家族のもとに行く。
状況を変える。前に進む。
そうしなければ、本当の幸せは手に入らない。
頭では分かっているのだ。
それでも、ようやく想いの通じ合えた相手と、一時的にとはいえ別れるのは悲しかった。
しかも、いつ会えるかは分からない。すぐに会えるかもしれないし、もしかしたら何年も後になるかもしれない。
そう、「幸せ」の対価は、意外と大きいかもしれない。
だから、もし後ろを向けば、真の幸せよりも目先の幸せにとらわれてしまう。
だから、大河は1歩を踏み出す。本当の幸せを見つけたいから。
踏み出した街は、まだ暗かった。朝日も昇りきっていない、真冬最後の寒い朝。
空は、白い。
その下を大河は行く。
――私達の選んだ道は、これで正しいんだよね?
そう確かめるように、最初はゆっくりと。
――この道でよかったんだよね?
そう、自問とも、竜児への問いかけとも思える問いを続けながらも、大河はしっかりと歩き出す。
そして、ついには走り出す。
途中、何度も何度も振り返りそうになった。
それでも、大河は振り返らない。
まだ暗い街を、ひたすら駅へと疾走する。
何度も転びそうになりながら、何度も足を止めてしまいそうになりながら。
それでも、大河は走る。
いつしか、涙が流れていた。大河はそれに気付かない。
目からこぼれ出した涙が、風に飛ばされていく。
――約束だよ、竜児。
大河は心の中で、竜児に呼びかける。
――いつか、絶対にまた会おうね。
いつ会えるかは分からない。それでも。
――次に会った時には、みんな幸せで、私達も幸せで・・・。
そう。それが、2人の約束。
――だから、サヨナラなんて言わない。
永遠の別れなどでは、ないのだから。
――元気でね。また会う日まで。
***
息を切らして、駅へ飛び込む。
改札を通り、ホームへの階段を駆け上る。
ホームに設置されているベンチに、倒れこむように座る。
涙はまだ流れる。
嗚咽も止まらない。
ホームにいる、電車待ちの数人が、そんな大河を不思議そうな目で見る。
そして、電車の到着を告げる放送が流れ、大河は涙をふき、立ち上がる。
ドア位置に立ち、電車が来るのを待つ。
そして、空気を運んでいるような電車がやってくる。開いたドアへと大河は足を踏み入れる。その直前に、ふと空を見上げた。
――空には、まるで竜が踊るかのような雲が浮かんでいた。
END
GJ!!!!
以上です。
うまいなぁ
>>386 GJ
10巻売り切れショボーンな俺にはよくわからんが
すぐ二人は会えるんだよな??
「ちょっと行ってくる」は、普段の大河の話し言葉っぽく気をつけたのかもしれないが
ベタに「行ってきます」だったら
それはそれで直球で「ただいま」を想像してニヤニヤ出来そうだな
情景が想像できそうないい作品だね。GJ!
>>390 そこは素直に原作を読んだ方がいい。というか、ここで迂闊にネタバレを喰らうくらいなら入手できるまで出入りを控えた方が安全だと思うけど。
>>392 しかし俺はネタばれを気にしない男だった!
しかもとらドラ!はあまり想定外の展開はないみたいだし・・・
>>393 予定調和だったからねえ。
別にエロパロ読むのにネタバレも糞もry
>>388 その時の情景が完全に脳内再生されますた。ものっそい良かったですGJ!
生前の俺はネタバレを気にしない…そーゆう男だった。俺もネタバレ気にしない派w
パロディは元ネタがあってこそ派なものでね、気を悪くしたのなら謝るよ。
しかし、原作に続いてアニメもあと1話で終わりか。あの橋上の悶絶シーン(原作版)以上のものをやってくれることを期待しとくべきか。
アニメオリジナル要素だけでも色々書けそうなんだが、いかんせん筆の進みが遅いんだよなあ。ゆゆぽの爪の垢を煎じている人、いないかな。
悶絶シーン
竜児「お前が好きだ!! お前がほしいぃぃぃぃぃぃぃいい!!!」
大河「りゅうじいぃぃぃぃぃいい!!」 ドボーン
新人刑事「山さん、これはやはり心中ですかね」
山さん 「にしては二人ともわけぇな」
管理人さんGJ。
ところで、GReeeeNのキセキが出てくる竜虎の披露宴の後日談、短編「星の下」の
リンク先が「ビストロSMOP」になっております。
401 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 16:51:17 ID:M8mTBkMq
最近投下減ったな
減ったというより、ここ2スレほどが異常だっただけじゃないか
のんびり待つべ
最近、奈々子→亜美が気になりだしたんだが、仲間いる?
亜美たんのことを1番わかってるのは奈々子様だと思うんだよな
奈々子→亜美or奈々子×亜美のSSを書いてみようと思ってるんだが、需要はあるのか?
404 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 17:35:03 ID:kX9Ij0Fh
ない
俺にはないけどある人もいるだろうから
書きたいなら書けばいいんじゃね
オリキャラだしなぁ
>>403 かかれたら読もう。同意出来るかはわからないが
1番わかってる友達レベルなら良いが、女同士の恋愛感情なら
見たくない人は見ずに済むようあぼん出来る工夫をお願いしたい
と「ささめきこと」とかレベルなら全然いける俺は希望します
>>403 竜児×亜美,麻耶,奈々子の4Pなら読みたい
411 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 19:38:18 ID:M8mTBkMq
麻耶ドラならみたい
保管庫のポスター記事ワロタw
三鷹はナコルルで懲りておくべきだろ
>>289 おお、久しぶりに来たら素晴らしい竜虎SSが!
多分文章的に胸を鍛える大河のDSトレーニングの人だよね
貴方の書くSSは全部好きです
GJ
まやドラが読みたい!と書いてしまう人は自分で書けるか試してみるべき。
難しいんだって。何度か無い頭ひねってみた俺が言うんだから間違いない。
そのテの読み物にありがちな展開しか思い浮かばねえ…
二番煎じとか、下手したらモロパクになりかねんし
大河と若干かぶるって部分はどうにか回避できそうだが
エロパロに辿り着けそうな感じがしない
「我らが同志」は、瀬川エンドはなしですか?
百合
アニメのジャイアントさらば記念にみのドラが大量投下
…とか期待してたんだけど、なかったかorz
アニメキスシーンなかったな。
あれはあれで良かったが、深夜放送なのになんて純粋なw
やっぱ色々省かないと終わらないんだな。
アニメで残念なのが、大河のオモラシなんです。
原作には有るのですが、おじいちゃんおばあちゃんに一番最初に頼むのが大河のトイレなんです。
しかし、本当に二人、学生結婚するんですかねぇ?
って言うか婚姻届、両親の同意が無いとダメだよね?未成年の場合。
>>419 磯は惜しかったなあ。
あと転校脱出劇団春田ゆりちゃん先生の裏書とか。
>>417 おいww最初の数文字で期待した俺が恥ずかしいorz
みのドラ!ではないけど、アニメ24話をみた衝動より実乃梨ものを投稿してみる。
携帯からだから改行とかおかしいかもしれん・・・
2レス分
「ねぇ、櫛枝?」
「ん〜?」
「前から気になってたんだけど、あんたの『それ』、なんかの願掛け?」
大学二年の夏―――
同じソフトボールチームの友達から唐突に訊かれ、実乃梨は口につけていた拳を離した。
「え?」
「あー、それ私も気になってたんだよね」
すると隣から口を挟んだ人を筆頭に、私も私も、と何人もの人が訊いてくる。
「え?え?」
「試合の前とか投球前とか……いつもそうやって拳、口にくっつけてるじゃん?
でも普段からの癖じゃないし、なんなのかなーって」
「あ?あぁ!これかー……これなー」
一人の友人に言われ、やっと何について訊かれていたのか理解した実乃梨は、困ったように曖昧に笑う。
無意識か意識的かはわからないけれど、いつしか実乃梨は困った時、辛くなった時苦しくなった時、挫けそうな時、
また、一歩を踏み出すとき、勇気が欲しい時、その自身の右手の拳を唇につけることが癖になっていた。
――ジャイアントさらば!
あの日そうやって触れた彼……竜児の唇の感触を、未だに忘れることはない。
その拳を初めて自分の唇に当てた時に感じた喪失感も、今でもハッキリ思い出せる。
何度決めた、と言っても、それを自分に言い聞かせてきたとしても、後悔をしなかったと言ったら嘘になる。
春を思い出すと、彼と出会い話した日や、ちょっとした小さなふれあいの瞬間が頭を過る。
夏の頃には、友達になれて、亜美の別荘に行ったこと。
自分のこころの色を彼が理解してくれたこと。そして彼が自分に見せるほんの少しの好意に、気付いてしまったこと。
夏は実乃梨にとって思い出すだけで幸せになれるくらい、大切な、大切な思い出。
秋と言えば文化祭を思い出す。
汚い言葉で罵り合い、初めての喧嘩をした。手を握り合い、そして星空の下仲直りしたこと。
あぁ……
そしてそこで実乃梨は一度思考を打ち消す。
竜児と繋いだ右手の熱を思い出し、鮮明過ぎる思い出を頭に浮かばせた。
手を繋ぎ走り切ったあの瞬間、自分が竜児の隣にいることを強く望んだのを覚えている。
彼の隣にいて、それでいて二人で親友である大河を助けていければ
……それはどんなに幸せだろう。
無理とわかっていながらも、心の底ではそんな未来を強く願っていた。
それが本当に無理だと告げられたのはクリスマスの夜。
あの時、自分は竜児の隣にはいられない、そうするべきではないと思ったのだ。
あの日の選択を後悔したことなんて、数え切れないほどあった。
でも決めたから、彼女は前に進んでいける。
「ちょ、櫛枝?!あんたどうしたの?」
「へ?」
友人の声で我に帰った時、彼女の言葉の意味がイマイチ理解出来なかった。
しかしすぐに気付く。
頬を伝う熱いもの。心の鼻血だ。
「うぁ、なんでもねーなんでもねー」
「何?びっくりするじゃない」
涙は流さないと決めていても、こうしてふと油断した瞬間に唐突にこぼれだしてくる。
侮れない奴。心の中でうなる。
「あ、それでこのことなんだけどさ……」
握った拳にもう一度だけ口元に持っていき微笑む。
―――勇気を、もらえるんだ。
涙を拭ってそう言いながら見せた実乃梨の表情は、いつもと変わらない『彼女』だった。
ねぇ、高須くん
今でも私の頑張りを信じてくれているかな?
私、頑張ってるよ。
あの日言ったように辛くても苦しくても悲しくても、
頑張ってるよ。
そんな姿を、今でも応援してくれていたら嬉しいな。
まだ新しい幽霊は――君みたいな存在は見つけることが出来ないし、
もうもしかしたら一生、私は見ることが出来ないかもしれない。
それでも、一度だけでも幽霊を見せてくれたこと、感謝しているよ。
ありがとう、高須くん。
何よりも大切なこの手で、いつの日か絶対夢を掴むから。
ありがとう、高須くん。
多分君に伝えることはないと思う。
でも声を大にして叫びたくなるよ。
……今でも君が好き。
END
終わり
アニメのみのりんは原作より未練ありそうでかわいかった。
やはり俺の嫁だよ、LOVEだぜよ〜
タイトルは『拳』
目汚し失礼した!
うぉ、作者様乙です。
ちょうどアニメでやった所を上手く使っていいっす。みのりんいいなー
こ、心の鼻血……ぶわ;;
乙です!
428 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 04:11:13 ID:ml8qjOu3
いいなぁ
まとめサイトの管理人さんいつもお疲れ様です。
お手数ですが誤字があったので報告いたします。
11皿目 下から3番目
お弁当 ID:wy0qskn2 竜児×奈々子
上記の頁で後半「香椎」であるところが「木原」になっています。
非常に読みにくいので、次回更新時でいいので修正お願い致します。
>>424 最高にグッドジョブだ
文化祭後のみのりんの心情とかもそれっぽいし
もうなんかお前らキモイなw
つーかこんな携帯小説レベルの作品に二次創作も糞もねぇしよw
とりあえず鏡見て自分達のキモさ確認したら?w
やっぱクラナドとかのほうが遥かにいいね、あれは人生と呼ばれるだけある
れもん
w
w
w
る
ん
う
ー
り
っ
も
縦読みなんかいらないから、もうちょっと亜美ちゃんっぽく書いてくれ
アニメオリジナルのとこ見てたら、亜美×実乃梨(友情でも可)が読みたくなった
しかし自分ではネタが出てこんしなあ
ども!!以前、竜虎の「私を月に〜」を書かせていただいた者です。
24話のみのりんを題材に書かせていただきました。
短いですが3レスに分けて投稿します。
タイトルは
「太陽は永遠に」
です。
携帯からで読みづらいかもしれませんが、よろしくお願いします。
「高須くん・・・」
『おまえに見てほしがっている幽霊が、多分、この世にはいるから・・・』
「高須くん・・・」
『いずれおまえのこと、もっとちゃんとわかりたいって思ってる。』
「高須くん・・・」
『大丈夫。直るんだ、何度でも。』
「たか・・す、くんっ・・・」
そう呟き、思い返し、実乃梨は独り自室の床に座り込む。
駆け落ちをした大河と竜児を見送り、思いの外砕けた腰と止まらない涙に、内心自分で驚きながらも亜美の家で泣き続けた。
亜美はさっぱりとした言葉とは真逆の、まるで包み込むような暖かい体温をずっと隣に感じさせてくれていた。
ひとしきり泣き、砕けた腰にもようやく歩けるだけの力を取り戻し、大きな声と笑顔で亜美に礼と別れを告げる。
しかしその笑顔はまだぎこちなかったのだろう。
亜美は悲しみと不安に満ちた眼差しで実乃梨を見つめ
「ホントに大丈夫?帰れるの?」
と、何度も問いかけてくれた。
「もうまったくもって無問題さぁー♪」
なんて身ぶり手振りも加えて強がってみせる。
亜美は半ば呆れながら、
「ならいいけど。帰りにボケ〜っとして事故なんかにあわれたら目覚めが悪いから、ホント、気を付けてよっ!!じゃあね。」
と、口とは裏腹な優しい笑顔で見送ってくれた。
そんな亜美に心の中で深く感謝しながら、家路につく。
外はまだどんよりと暗く突き刺さる様な寒さで、走ることまではまだできない弱った身体を芯まで冷やしていく・・・
雪は止む気配もなく、降り続けていた。
家に着き、シャワーを浴びる。ちょっと高めの温度に設定し頭からかぶる。
冷えた身体を少しでも暖めたかった。さっぱりさせたかった。
でもどれほど温度をあげたって、シャワーなどでは心までは暖められる訳もなく・・・
「た・・かす、く・・・っん」
『俺は大河を追いかける!!』
自室の床に力なく、崩れ落ちるように座り込む実乃梨は止めの言葉を思いだし、ついには涙が溢れ出した。
あんなに亜美の家で泣いたのに、まだ渇れてくれない。涙も想いも・・・。
「私もけっこうダメダメだべ。」
溢れ出るものを拭いながら笑ってみるが、うまくいかない。
しかたのないことか、と心の中で独りごちる。
親友と初恋を同時に失ったのだ。
いや正確には失ってなどいない。2人は必ず帰ってくると約束した。
でも、それでも、何かを失ったのだろう。心はそう告げている。傷ついて泣いているのだから。
きっとそうなのだろう。
でも、何かを失ったと泣いているその横に、嬉しくて、嬉しくて、喜びの涙を流している自分もいるのだ。
だって親友と愛しい人が結ばれたのだ。幸せになって貰いたいと、心底願っていた2人が結ばれたのだ。
こんな幸せなことはない。これが嬉しくない訳がない。
ではなんで胸の痛みは収まらないんだろう?
-ソ レ ハ サ ミ シ イ カ ラ-
頭の中に響いたその声と同時に右の拳に唇をそっと口づける。
「忘れなくちゃいけないのにな。でも・・・」
-ワ ス レ ラ レ ル ワ ケ ガ ナ イ-
ずっと悩んでいた。
親友の幸せ、初恋に対する喜び、そして夢に向かう意地とで。
すべてを失うところだった。
私が私であるためにもっとも大切なモノを見失いかけていた。
それを取り戻すためとは言え、自分の傲慢さとずるさで大切な人たちを傷つけた。
でもその中で本心を知った。
二人の本心を。想いを。
力業でそれを引き出し、実を成した。
一番望んでいた実が成ったのだ。
こうして私の初恋は終わった。初めてで、恐らく最後のこの恋は・・・。
うんこもれた
それでも想いは消えない。消すことが出来ない・・・。
そう最後なのだから、消すことなんて出来ないのだ。だから、せめて、せめてひとつのわがままを・・・。
-オ モ イ ツ ヅ ケ ル コ ト ハ ツ ミ デ ス カ ?-
誰にも悟られず、誰も傷つけず、想い続ける。
傷つくのが自分だけならば、罪にはならないのではないだろうか?
そして誰にもその傷を見せず隠しとおせば誰も傷付けずにすむ。
その想いを秘めてずっと・・・
悩んだあげく出た答え。
嬉しくて、悲しい。
本心が2つあったって良いのではないだろうか?
帰ってきた2人を暖かく迎え、2人を永遠に応援する。多分その度に心は泣くのだろう。傷を深めていくのだろう。
それでも、2人の幸せもその時に出来た傷もすべて、私の夢に繋がる意地で創られた道を歩くための力に変える。
いや変えてみせる!!
そう誓ったのだから。それが私の意地なのだから。
ふいに窓の外に眼をやる。
降り続けていた雪はいつの間にか止み、どんよりとした雲の割れ目から朝日が漏れだしていた。
もうどれだけ時間がたったのだろうか?
拳から唇を離し実乃梨は立ち上がる。そのまま窓を開け、天を仰ぐ。
その輝きは段々と強さを増し、やがて雲を散らしていった。
眼から溢れる涙はまだ止まらない。でもその顔は太陽の光を浴び輝きを放つ。
竜児が太陽のようだと例えたあの笑顔が戻る。
実乃梨は深く息を吸い込み大声で叫んだ。
「私は前に・・・進むっ!!
進むんだーーー!!」
太陽はどんな嵐や雪雲に覆われても何度だって輝く。
輝くことを決してやめはしない。やめてはならないのだ永遠に・・・
永遠に・・・。
END
以上です。
ありがとうございました。
みのりん派の私は24話で泣きまくりました。
幸せになってもらいたいけど、良い案が浮かばずに只々悲しい作品になってしまいましたが、強く生きて欲しいと願いも込めたつもりです。
それではお目汚し、失礼致しました。
>>443 GJ、ナイスだぜ
俺もみのりん派だ、そして24話で泣いたorz
>>443 乙です。アニメオリジナルのみのりんのシーンは良かったよね。
その後をこうして作ってくれて嬉しいぜ。みのりんも良い子だよなぁほんと。
悲しいけれど、みのりんの前向きな感じが出てて上手かったと思います。
>>441 最低野郎め!
確かに、「オシッコ漏らす」のは許せるのだが
って言うか、義御祖父ちゃん、義御祖母ちゃん、への最初のお願いが
「オモラシしちゃったから、おトイレ貸して下さい」って、どういう義孫娘なんだ?
みのりーぬ(つД`)
つーか大河は漏らしてないはずだが・・・。
>>424 >>443 自分もみのりん派です。
24話見た後にこれはやばいです・・。
悲しいけどすごくよかったです><
>>449 あんた、悪いけどアニメ板やTV板じゃないんだよ。この板。
ちゃんと小説と漫画を読みな。
あの、すみません。大河は漏らしてないと思いますよ。ほんとに。
ちゃんと読み直してきたら?
だからぁ。
小説では
大河が漏らしそうになってて、竜児は祖母に、大河にトイレを貸して欲しいと頼んだ。
事になってるでしょう?
エロパロ板でしょう。ソレを誇張して書いて何が悪いの?
悪いかどうか分からないけど、
誇張のしかたが誤解を招きやすいものだったとは思うよ?
「漏らした」と「漏らしそうになった」のは違うよな
…そういう話じゃないのか
いや、もうその話は止めないか・・・・・・?
そろそろこの話題は水に流そうぜ
トイレだけにな
あまいsweet
24話並みの甘さ最高ww
146 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2009/03/21(土) 08:30:33 ID:0XK8w6Ut
おはようオマエら。
夢でな、やっちゃんが再婚する夢見たんだ……香椎パパと。
んで、奈々子がわざとらしく竜児を「お兄ちゃん」とか言って困らせたり、
これ見よがしに体のラインが出る服着て、大河が凹んだりする修羅場チックな夢だった。
あー、なんつーか正夢にならないかな。
てかやっちゃんって離婚してんの? あれ?そもそも竜児パパって生きてるっけ?
祖父母の苗字が高須・・・
つまりやっちゃんは未婚の母だと思われる
原作読めば解決するよ
ちょっくら連投しまっせ。
タイトルは「高須棒姉妹」
昼食どき、2年C組の教室でのんびりお弁当している生徒たち。
竜児はいつものメンツ、大河、能登、春田たちと一緒に弁当を食べていた。
話の都合上いきなりで恐縮だが、やきそばパンをもそもそ齧りながら春田がかました。
「あ〜あ、亜美ちゃんと麻耶ちゃんと奈々子様と4Pできたら、俺死んでもいい〜」
『ぶっ!!』
すこしはなれたところで机をつき合わせてお弁当していた当の本人たち、2年C組の花の美少女トリオである
川嶋亜美、木原麻耶、香椎奈々子の三人がそろって吹き出した。
「春田… お前バカじゃないのか」能登が心底あきれた様子で頭を抱える。
「…ソープへ行け、アホエロロン毛」弁当をつつきながら大河がいつもの台詞で流す。
「ちょっと春田、あったまおかしいんじゃね?」
春田のアブナい発言に、つり目がちの大きな瞳をさらにつり上げて、木原麻耶が竜児たちのほうを見やる。
「あ〜、すまん木原… それと亜美ちゃんと奈… 香椎さんも」能登が美少女三人組に向かって頭をさげる。
「なんで能登ちんがあやまんのよ」ぷりぷり怒る麻耶ちゃんだが、あまり迫力が無いというか、はた目には逆に可愛らしい。
その後ろで、亜美は知らん顔。奈々子はにこにこ笑ってこちらに手を振っている。
「お〜奈々子様、いまの受けたぁ〜?」相手に受けたと勘違いしてニヤける春田。
「うふふっ、さあね〜」と奈々子。
「受けてねーよ!」と麻耶。やおら上履きを脱ぎ、投擲体勢に入る。
「麻耶ったら、相手しないの」と亜美。
「モルグモルグ… 木原さーん、あとでシメとくからねーこいつ」食事中に巻き添えを喰らうのは避けたい大河が紛争介入を宣言。
「…ねーねー高須君、春田君たら、けしからないと思わない?」上履きを戻した麻耶がよくわからない問いかけをする。
履くときにちょっとだけパンツが見えてしまった竜児は、にやけ顔にならないよう努めて平静を装いながら、
亜美、麻耶、奈々子の三人をじっと見つめて言った。
「…そりゃ〜俺も男だし、ヤりたいかヤりたくないかと言われれば…俺だってその、ヤりたいぜ、お前らと」
「なっ!?」麻耶のつり目が真ん丸になった。
『!!』顔を見合わせる亜美と奈々子。
「…えっ!?」大河の箸が止まる。
苦笑いしながら能登がたしなめる。
「おいおい、高須ちゃんまでなんだよ〜 紳士たるものそこは、春田君の発言には当方としてはいささか同意しかねるとか、
このたびの氏の不適切な発言ははなはだ遺憾であるとか、もうちょいTPOに即した物言いってのがあんだろ」
竜児は弁当箱の上に箸を休め、両手を机の上に置いて指を組み、静かに話し始めた。
「だってそうだろ、ファッションモデルの川嶋に、クラスで、いや、学年でも1、2を争う美人の木原と香椎…
彼女たちと一緒のクラスになれただけでも、一介の男子高校生にとって身に余る幸せだというのに、
そのうえさらにこのナイスバディ軍団と組んずほぐれつ、めくるめく肉弾戦の一夜を過ごせるなんて、まさにプライスレス。
ゴングとともに繰り出される乙女たちの華麗なる空中殺法、飛び散る汗、しなる肉体、美しき獣たちが繰り広げるアーティスティックな戦い。
痛めつけられグロッキー状態の美少女レスラーたちが、あわや大ピンチ!というところで、三人全員が最後の力を振り絞って繰り出す
愛と友情の超必殺技…
もしそんな『ランブルローズXX』を実写化したかのような至福のカードで、極悪非道のヒール役を思う存分演じられるんだとしたら、
…この高須竜児、わが格闘人生に一片の悔いなし、だ」
「…肉弾戦?」と麻耶。
「…格闘人生?」と亜美。
「…超必殺技?」と奈々子。
「…なぁ高須、お前、すっげえ勘違いしてないか…?」目を細めながら能登が言う。
「そうだよそうだよ〜 たかっちゃん、よく分かってんじゃん。総合格闘技たるプロレスは既に芸術の域に達しているんだよ〜」
「…いきなりなにを熱く語ってんのよ、このエロ犬」連れが何を考えているのか不安になってきた大河。
「ん? どうした、4Pってあれだろ、プロレスのことだろ?」きょとんとして竜児が言う。
「ブハッ!!」とうとう亜美が吹き出した。
「……!!!」奈々子も机に突っ伏して痙攣している。
頬を緩めながら木原が言う。
「ちょっと高須君、なんで急にプロレスの話になるの? てゆうか、あたしたちをパイプ椅子でぶっ叩いたりして痛めつけたいわけ?」
「いやいやいや」
能登と春田が首を横に振る。
「高須としてはむしろ、君たち三人に痛めつけられたいと願っているようだが」
「たかっちゃんはお三方の繰り出す華麗な技の数々を全てかわさずに、この身で受け止めるって言ってんだよ〜」
「そうそう。相手の技は敢えて喰らい観客にカタルシスを与える、それが俺のポリシー」竜児が頷いた。
大河がどもりながら言う。
「ちょっとりゅうじ、あんた致命的なまでの勘違いをしてるわよ。…その、よ、よんぴーって、しゅっ、集団エッチのことじゃない!」
「集団エッチって… ま、まさか…」
「そのまさかよ! 男があんた一人で、女の子三人を相手に裸で一戦交えんのよ」
「ぬわにぃ〜!!」
頭を抱える竜児。
「高須、お前は春田よりアホだ」と能登からアホのお墨付きが下される。
「ぐわぁ〜〜〜〜! 俺は今、猛烈に恥ずかしい〜〜〜〜」身悶えする竜児。
そんな竜児の様子をじっと見ていた亜美が口を開いた。
「高須君、あたしでよければお相手するわよ」
『おお〜〜〜』クラス中にどよめきが拡がる。
「亜美ちゃん!?」びっくりする麻耶。
すっと眼を細める奈々子。
「やあねぇ、…プロレスよ、プ・ロ・レ・ス。あたし、ジムで色々と有酸素運動やってるし、すこしでも脂肪が燃やせるなら
一度試してみたいわ。パートナーと直接肌を合わせなきゃなんない競技だから、顔見知りとペア組んだほうが、なにかと気楽だし」
亜美の助け舟に、ほっとした様子で乗っかる竜児。
「お、おう! サンキュー川嶋! いつでもオーケーだぜ! 地味な寝技から高度な関節技、難易度の高いフィニッシュホールドまで
いろいろ教えてやるぜ!」
「うふっ、楽しみだね高須君! あたし、とぉっ〜ても体柔らかいから、いろんな技い〜っぱいかけてね」
「おうおうおう!」
「えーと、四の字固め、だっけ? 脚と脚をからませるような技、あれかけて」
「おう! 四の字でもなんでも、ありとあらゆるストレッチホールドをかけまくってやるぜ!」
「ほんと? 嬉しいな〜 じゃあ、何十分も、何時間も、ずっーとかけ続けてくれる?」
「おう… ってそれはさすがにこっちも身が持たねぇぜ…」
「ウェアはどーしよっかな〜 レオタードでいいよね? うふっ、それともビキニにしよっか?」
「そ、それは別の意味で身が持たねぇ気がする…」
ひたすら上機嫌の亜美に気圧される竜児。
一方、クラスの男子生徒たちはというと、亜美の連呼する「かけてかけて」の言葉を脳内で反芻し悶々としていた。
やきそばパンの残りを口に放り込みながら春田が言う。
「そういやぁ、プロレス技の本の中にカップルストレッチングってのがあったなぁ〜 恋人同士でやるんだけど、
技の有効性よりも身体を伸ばすことに重点をおいてるみたいなんだ〜」
亜美の目が猛禽類のように光った。
「でかした春田君! ストレッチいいじゃん! 恋人同士がお互いに相手の身体を伸ばし合って、リラックスしていいムードになったところで…
って、うっひゃっひゃっ亜美ちゃんもうたまんねー! …ね、高須君カップルストレッチやろ、今晩やろー!」
「いや、そもそも俺たち恋人同士じゃないし…」
エキサイトする亜美をなんとか静めようと、麻耶が両手で押し留める。
「まぁまぁまぁ、落ち着け」
奈々子も後ろから羽交い絞めにして亜美を椅子に座らせる。
「分かったから取り敢えず落ち着け」
「なぁ〜にがカップルストレッチよ。そんなの、いちゃいちゃしたいだけじゃない」大河がぶすっとして言った。
「はぁ?」
むっとする亜美を見て、あわてて竜児がとりなそうとする。
「いや、川嶋はただ、4Pの意味を間違えて恥かいてる俺に話を振ってくれただけなんだよ」
「そうかしら〜? レオタード姿のばかちーと汗だくで組んずほぐれつするうちに、湿った肌にバカエロ犬がついムラムラッとして、
そのままセックスに突入って流れじゃないの?」
それを聞いて顔を真っ赤にする亜美。
大河の挑発に、やれやれといった風でぶっきらぼうに竜児が答える。
「ま、そうなったらそうなったで、自然な流れだし。川嶋の身体ってモロ俺の好みだから、つい我慢できなくって
ヤッちまうってのはあるかもな」
「えっ…」怒っていた亜美の身体から、ふっと力が抜ける。
ほとんど告白に近い竜児の発言にいよいよ不機嫌になる大河。
「…りゅうじ、やっぱあんたってマザコンよね。やっちゃんがあんなにグラマーだから、好みのタイプもおんなじようなボインちゃんなんだわ。
よかったわね、同じクラスにばかちーとか香椎さんみたいな理想のタイブがいっぱいいて」
大河の言葉に、奈々子も目を大きく見開く。
「言えてるぜ大河、確かに俺はおっぱい星人だ。好きなAV女優は浜崎りおだ」誇らしげに己の性癖を主張する竜児。
『うんうん… わかるわかる…』クラスの男子たちから同意のざわめきが挙がる。
「えっ、そうだったの? 高須ってその… おっぱいが大きくないっつーか、むしろナイチチが好みなのかと思ってたけど」
遠慮がちに言う能登を、大河がギロリとねめつける。
「いやいやいやいや」
かぶりを振る竜児。
「んなこたぁねェよ、何しろうちの泰子ときたら、息子の俺が言うのも何だが、言うなれば女体としての一つの完成型みたいなスタイルしてっから。
物心ついた頃からずっとそんなのを毎日見てるうちに、いつのまにかあの体型こそ俺の理想だと思い込むようになっちまった」
そう言いながら竜児は、美少女三人組に向かって付け加えた。
「…でもよ、川嶋たちだってなかなかイケてるぜ。三人ともスタイルいいし美人だし」
「もう、高須君ったら、口がうまいんだから」頬をぷっとふくらませながら、麻耶は連れの二人にぼやいた。
亜美はというと、好みの身体と竜児に言われてヘヴン状態、もはや心ここにあらずといった風情だ。
奈々子のほうは、さっきから嬉しそうに自分の胸をさすっている。
「ふ〜ん、高須君って、ボディコンのおねぇさんがタイプなのかぁ…」
そう言いながら亜美に目配せをして、
「…ねぇ亜美ちゃん、これって、あたしたちにとってはチャンスじゃなくって?」
なにやら妄想に耽りつつニヤツいていた亜美は、その言葉にようやく我にかえり、
「うっ… そっ、そうね。…ってコトは」
奈々子の胸元をチラチラ盗み見ながら、
「…奈々子、あんたもやっぱ…」
「うふふっ、バレてたみたいね。そうなの。…ずっと亜美ちゃんに遠慮してたんだけど」
そんな二人の様子を見ていた麻耶も感づいた。
「えっ、ひょっとして、亜美ちゃんだけじゃなくて奈々子も彼のこと好きだったの? これって修羅場ってやつ?」
「まぁ、そんなとこかしらね。…ねぇ、麻耶ちゃんは高須君のコトどう思う?」
奈々子の問いに、麻耶は自分でもなぜか、しどろもどろになりながら、
「どうって… 高須君にはまるお… ゴホン、その、個人的な悩みでよく相談に乗ってもらってるし、クラスの男子の中では
よく話してるほうかな。目つきはアレだけど、まるおとはまた違ったタイプのイケメンだし、背は高いし、優しいし…」
「ふ〜ん」
その様子を面白そうに見ながら奈々子が言う。
「彼がもし嫌いなタイプだったら、わざわざ恋愛相談なんかしないよねぇ〜?」
「そりゃそうだよ。 …って、あれは恋愛相談じゃないって! …もう、奈々子ったらバラさないでよ」
「高須君のこと嫌いじゃないのね?」
「ぜんぜん!」
「じゃあ… さっき、勘違いした彼があたしたちとヤりたいって言ったとき、どう思った?」
「どうって…」
言葉に詰まる麻耶。それを見つめる奈々子と亜美。
しばらくもじもじしたあと、観念したのか、うつむいたまま上目使いで
「…正直濡れた」と、ぼそっと呟いた。
そんな美少女三人組の様子をうかがっていた能登。
その顔がみるみる蒼白になったかと思うと、はた目にも気の毒なほどぶるぶると震えだし、激しくむせび泣きながら
竜児に食ってかかった。
「高須てめェーっ、亜美ちゃんや奈々子様だけじゃなく、まっ、麻耶ちゃんまで… どんだけオンナ作りゃあ気が済むンだよチキショ〜〜〜〜!!」
その一方で、竜児に尊敬の眼差しを向けるアホ。
「なあ〜たかっちゃ〜ん、たかっちゃんだったらマジでハーレム作れるんじゃねー?」
竜児はというと、亜美の長いすねにプロレスブーツを穿かせたらさぞ格好いいだろうなとか、
亜美と脚を絡ませた状態で果たして自分はどれだけ勃起せずにいられるのだろうかとか、
勃起してしまったら、そのまま彼女と一戦交えずに済む可能性はどのぐらい残っているのだろうかなどと、自問していた。
数週間後。
午前の休み時間、高須君に話があると言う亜美に手を取られ、そのまま教室の外へ連れ出された。
彼女の手のやわらかい感触を楽しみながら、先を歩く小さなお尻と美しいハムストリングスに見とれていると、
いきなりスカートがくるりと半回転したので、彼女が立ち止まって振り向いたのだと分かり、竜児も歩みを止めた。
周りを見回すといつのまにか自販機コーナーまで来ていたことに初めて気付いた。
二人きりになって、彼女が頼みごとを切り出した。
「今度、あたしと麻耶と奈々子の三人で雑誌に載るんだけど、その撮影のとき、高須クンにも一緒にスタジオに来てほしいのよ」
大きなバストやくびれたウェストについつい目がいってしまい、話のほうはよく聞いていなかったのだが、よっぽど呆けた顔をしていたらしく
彼女が膝蹴りを喰らわせてきたので、それでようやく話の内容が頭に入ってきた。
なんでも、亜美が看板モデルを勤めるティーン向けファッション雑誌『Can Vi』で『素顔の川嶋亜美ちゃん』なんて記事が組まれることになり、
亜美の高校生活を紙面で紹介するその企画に、級友である木原麻耶、香椎奈々子の二人が友情出演することになったのだという。
「えっ、ひょっとして俺も、お前らと一緒に読者モデルやって雑誌に載るわけ? …いや〜まいったな〜こりゃ〜」
「はぁ〜? …なに言ってんの、高須君てバカ?」
「へっ? 違うの?」
「いま一瞬、春田君と話してるみたいだったわ」
撮影の際、業界の男たちの甘い言葉に乗せられて舞い上がった二人が、誘われるままホイホイ付いてって
"お持ち帰り"されちゃったりしないよう、ここはひとつ、コワモテの竜児を同伴して睨みを利かせてほしいと。
つまりは、亜美の話はそういうことだった。
「だってね、麻耶も奈々子もけっこうマブいじゃん? でもって業界慣れしてないし無防備じゃん?
…あたしとしてはさ〜、ウブなダチをこの業界の裏側のヤバい連中なんかとなるべく関わらせたくないわけですよ。
そこで指名手配ズラの高須君に一緒に来てもらって、二人に手を出そうとする不届き者がいたら、思いっきりガンとばして
ビビらせまくっちゃってほしいわけ。
高須君のプロフィールとしては、そうねー …大橋高校を仕切る総番長で、でもって地元の暴力団の舎弟で、
おまけに麻耶と奈々子の幼馴染で、二人にちょっかい出すような不埒モンはこの俺サマが容赦しねェぞォ〜って、
まぁそーゆー感じで、ここはひとつお願いね」
「……どーゆー感じだそれは」
竜児はため息をつき、亜美の首すじに手を伸ばし、長い指を彼女の髪の毛に絡ませて、耳元で囁いた。
「バイト代は、身体で払ってくれるんだろ?」
「えっ…」
亜美の身体がぐらり、とよろめいた。すかさず手で支えた拍子に偶然、唇同士が軽く触れ合ってしまう。
「…すっ、済まねぇ川嶋、いまのは事故だ」慌てて弁解する。
「……」亜美はぼんやりしている。
「こーゆー悪っぽい感じでいけばいいんだろ? な、な?」
「あ、…うん」
結局、腰を抜かしてしまった亜美を、お嬢様抱っこして教室まで連れて帰ったもんだから、クラスは大騒ぎになった。
撮影当日の早朝、集合場所の駅前。
髪をオールバックにしてサングラスをかけ、ド派手な『登り竜』のTシャツという出で立ちで現れた竜児に、けたけた笑い転げる三人娘。
「だってよぉ〜川嶋ぁ〜、泰子がこれ着てけっつって聞かね〜んだよ」
「あっはははっ… ふふっ、ボディガードっていうよりチンピラって感じよね」
「だって、思いっきりワルそ〜な格好してこいって、お前が言ったんじゃねーか」
「それが〜? …ワルはワルでも、あったまワルそ〜って感じだわ」
「お前なぁ… やっぱバイト代よこせよ川嶋」
「うふっ、楽しみにしててね」
「…高須君って、やっぱアブナい、…ってか可愛い」
「うふふ、今日はあたしたちの用心棒役を宜しくお願いね、高須君」
出版社の用意したレンタル撮影スタジオは、都内の雑居ビルの一角にあった。
天井の高い白ホリゾント式と淡いクリーム色のバックペーパー式の2つの本格的なスタジオがあり、傘付きの三脚ストロボライトが
何本も立っている。
ここはアダルトの撮影にも使われるとのことで、ソファルームやベッドルーム、バスルームなどがあり、学校の教室を模した一角もあった。
「こんにちは、よろしくお願いしまぁ〜す」
「やぁ亜美ちゃん、この娘たちが亜美ちゃんのお友達? 二人とも可愛いねぇ〜」
亜美が出版社の男たちに友人を紹介する。
「はじめまして、木原麻耶といいます」
「こんにちは、香椎奈々子です」
「どもども〜、初々しくてイイねェ〜。…うひゃっ、そっその後ろの彼は?」
「…俺は高須竜児っていいます。そこの二人のクラスメイトです」
見知らぬ男たちが亜美に馴れ馴れしく話しかけて、彼女もそいつらに愛想笑いしているのが竜児は気に入らない。
プロのモデルなのだから、一緒に仕事をするスタッフとコミュニケーションをとるのも仕事のうち、当たり前のことだ。
そう自分にいくら言い聞かせても、亜美が業界人風を吹かす連中と仲良さそうにしているのを見ると、元からヤバい目つきが
一層険悪になった。何より、男たちが麻耶と香椎に浴びせる、まるで品定めをするような目線に心底ムカツいた。
「高須君どうしたの? なんだか殺る気オーラまんまんじゃない」そんな男心も知らずに麻耶が茶化す。
「スタッフの人たちが警察呼ぼうかって言ってたわよ」奈々子が面白そうに言う。
「くそう、こんなんだったら大河の木刀借りてくるんだったぜ」
「あら、ひょっとして亜美ちゃんと仲良くしてるスタッフさんにやきもち?」と奈々子。
「そ、そんなことは…」
図星だ。
「あははっ、高須君って可愛い〜」麻耶がはしゃぎながら、竜児を小突き回す。
撮影が始まる。照明がこうこうと輝き、スタッフが機材をもって忙しく動き回る。
さすがは現役モデル、亜美は表情もポーズも次々に決めていく。あぁここが彼女の仕事場なんだと、竜児は思った。
学校でときおり彼女がみせるフォトジェニックな表情… よくあんなにくるくる表情を変えられるものだと感心していたが、
そのルーツを見た思いだ。
自分が撮られるだけでなく、亜美は他の二人のポーズにも注意を払い、マネージャーのように細かく指導していた。
「ほらほら、奈々子、その角度じゃ見えちゃうよ」
級友のきわどいミニスカートのすそにも気を配る。そんな亜美を眺めながら竜児はふと、
「そう言えば俺、学校の自販機コーナーでいっつも川嶋のパンチラ拝ませてもらってるような…」
と思い当たった。
休み時間に竜児が自販機コーナーに行くと、なぜか決まって例の隙間に彼女が嵌っているのだが、
缶コを買って向かいに腰を下ろすと、最初は鉄壁のスカートに守られて見えなかったのに、だんだんとガードが崩れていき、あらわになってゆく。
ひょっとしてあれは、見せてくれてるのか? まさかな…
撮影も大詰めになり、三人の同級生が揃って白銀のビキニ姿で登場したときは、竜児も感嘆した。
亜美のスタイルの良さは知っていたが、他の二人も、元々の素材の良いのに加えて、現役モデルの同級生にちょっとでも近づきたいという
努力の甲斐あってか、なかなかのものだった。
三人のなかでは一番派手めな亜麻色の髪と、愛らしい顔立ちに気の強そうなつり目がチャームポイントの木原麻耶ちゃんは、
夏のプールの授業ではもっと女の子らしいふくよかな体つきだったと竜児は記憶しているが、
目の前のキラキラしたビキニをまとっただけの姿はいつのまにかきゅっと引き締まって、伸び伸びとしたスレンダーボディへと
変身していた。
「木原って痩せたよな〜、あいつ、あんなに胸があったんだ…」
初々しく上を向き、これからも更なる成長が期待される麻耶のバストは、以前プール開きの際に竜児が大河のために作った、
高須特製乳パッドをはるかに越えるサイズと格好良さだった。
黒くて長い髪に優しそうな顔、大人っぽい雰囲気の香椎奈々子は、麻耶と同じようにすらりとした長身をしているが、
まだまだ膨らむ余地がある麻耶のそれとは対照的に、高校生にしてはあまりに肉感的に過ぎるそのバストは、
どう見ても水着のブラに収納し切れていなかった。
「…いったいお前はどこのグラビアアイドルだよ、香椎」
一学期のころは、制服がはちきれそうな胸とお尻で2-Cの男子生徒たちの熱い眼差しを集めていた彼女も、
今ではたわわな乳房に不釣合いなほどに細くくびれた腰、チューリップを逆さにしたような、という表現がぴったりの美尻という、
まるで思春期男子の性的妄想を一気に爆発させたような、見事に絞り込まれたプロポーションに変貌していた。
上体が動くにつれ、たわわな乳房がぷるんぷるんと揺れる悩ましい光景に、竜児だけでなくスタジオ中の皆の視線がクギ付けになる。
そして亜美。
もう少しで奈々子に並びそうなサイズの美しいバスト、美しくキュッとしまったウエスト、小振りで格好いいヒップに長い腿、
すらっとしたふくらはぎという、美の化身のような体形には、文句のつけようもない。
"ファム・ファタール"という言葉の意味が竜児にも分かったような気がした。
続きます
>>479 GJ!!
続き待ってます
奈々子様エロいよ奈々子様
オナニーすぎてきもい
GJ!!
これは、亜美ドラ! なんですよね?
>ここはアダルトの撮影にも使われるとのことで、ソファルームやベッドルーム、バスルームなどがあり、
の一文が気になる、もとい期待できそうです
おい
>>478 嫁にお前のレスをコピペしてるの見つかったぞ
この代償は高くつく
早急に続きを書け
晩飯を抜くと宣言されて今日はもう終わったんだよクソが
竜児が男子高校生の欲望丸出しでワロタwwおもしろかったー
くそぅ、エラーめ
いやそんな価値あるもんじゃないしいいんだけどさ
さて、寝起きのテンションで書いたヤツを
タイトルは『失恋、生まれた絆』
何にも保証出来ないぜぃ
ある雪の降る夜の事。
二人の美少女が…
「ったく、高須くんも高須くんだぜ。」
「まったく、ちょ〜同感。
っていうか実乃梨ちゃんはまだ良くね?
私なんてただの一度も女として見られてねぇっつの?ったく」
酔っぱらいと化していた。しかもジャージで。
花の女子高生なのに…
「むぅ〜あーみんは友達って感じだったからなぁ。
それに大人っぽいからねぇ。」
「ん?どゆ事?」
「推測の域を出ないが奴はロリコンの気があるんじゃねぇか?」
「あ〜それ私も思ったことある!
この亜美ちゃん様の水着姿を見ておきながらハァハァしねぇし……っ本当にそうなんじゃね?」
「あ〜〜前に春田くん達の話聞いたんだけど、文化祭でコスプレ喫茶って案あったじゃん?衣装はロリータが良いって高須くんが言ったんだって。」
「うわ、完璧じゃん。
ってかタイガーヤバくね?」
「いやまぁ大河ならケンカ強いし、大丈夫だと思うけど、
それより将来容疑がかけられたら、あの顔だ、100%捕まるね。」
「ぶっ、あっはっはっは、ウケる!あのツラだったら刑務所で即アタマっしょ。」
「最初見たときはビビったもん。
北村くんがヤンキーに絡まれてるかと思ったくらいで。」
「私も。最初会った時はマジびっくり。祐作の友達がヤンキー?とかって。」
「あっははは、これ高須くんが聞いたら相当へこむだろうね。」
「ぷっ、きっと、『ぐっ…』とか言ってうなだれるね。」
「ふふ、……ホント顔に似合わず、繊細で、優しくて……」
「…家事が得意で、お節介で……」
「そんな所に惹かれちゃったのかもね…」
「だね…」
「「………」」
「あ〜しんみりしてもしょうがねぇ!
親友の幸せを願ってカンパ〜イ!」
「カンパ〜イ!」
「今夜は呑み明かすぜぇ!」
「お〜!」
「天然ジコロ野郎がぁ!」
「ヤンキーのくせして生意気だぁ!」
ツラい恋でも何かを得て終わったなら、多分…きっと、
失恋と同時にかけがいのない絆を手に入れた二人なら…きっと、
いや、絶対、幸せを掴む事が出来る。
本当は木曜に投下する予定で…
関東auが規制されてるとか…
PC壊れてるし…今は弟のを…
今頑張って『月と太陽』の続きを書いてるのに
あ、『月と太陽』
自信ないのでいまのうちにアドバイスいただけたら
参考にしたいので
ではお目汚し失礼
>>489 GJなんだぜ。いや〜、みのりんあーみんコンビいいな、マジで。
あ、月と太陽の作者さんか……
続編期待してるよ、アドバイスとか出来ないが、どんなものでもおkだww
つわけで俺も投稿してみる。
需要がなんだか少なめの、みのドラ!だ
24話を見たからこそ、こういう未来もあったと信じてたまらなくなる
レスは10前後。つまらないだろうが見てくれたらありがたい。
あと、三点リーダーの大量使用は見逃してくれ
実乃梨×竜児・エロ無し
6巻からのIFストーリ。
タイトル『青春の影』
恋をしたのは一年生の頃。
二年になって、同じクラスの仲間になれた。春が終わる頃には、友達になれた。
夏には一緒に旅行に行き、不思議な色の心の中を、
ほんのすこしだけ覗かせてくれた。
秋には磨きのかかった奇行と、さらに奇妙な距離感で竜児を悩ませ、
ひどい言葉でケンカもした。
星空の下で、笑いあって仲直りもした。そして、
――そして、冬の始まりの今。
それは学校行事後のお約束のイベント。写真販売。
生徒達はそれぞれに筆記用具を持参し、細かに目を動かしながらそれぞれの番号
をメモしている。
そして高須竜児も例外なく……顔が怖くたって、写真部員はきちんと彼の写真だって
撮影してくれているのだ。
しかし竜児はそんなことに安心している場合ではなかった。
どちらかというとかなり非常事態に陥っていると言っても過言ではない。
幾枚も並ぶ写真を前に、竜児は石化した。
「見せてみ見せてみ」
「あ、いや……」
「ん?どした?」
「あ、や……いや…ええと……」
目の前には片想い中の少女、櫛枝実乃梨が。
竜児との距離をつめながら迫ってくる。
因みに何をしているかというと、単純に写真を見せ合おうとしているのだ。
しかし竜児も思春期真っ只中の高校生。おとなしく自分の写真だけを買っているわ
けはなく……
もちろんその握られたメモ用紙には想い人、実乃梨の写った写真の番号が大量に
メモされているのだ。手には嫌な汗と、いくつかの数字が写されたメモ用紙が、さらに嫌な汗は手のひらだけでなく背中の方にも伝って今にも流れていきそうになる。
「怪しい様子……何やらデッキに問題でも生じたのかね?」
なのに何も知らない彼女は、竜児の手元のメモ用紙を見ようとしてくるではないか。
「どら、ちょっくら私が」
「いい!」
「……ますます怪しい」
メモ用紙に伸ばされた実乃梨の手を振り払うようにして何とか死守。
不自然なものの、そのままさりげなく尻ポケットに紙をねじ込もうと
「おう! あの写真はなんだ!?」
竜児は思いっきりあらぬ方向を指さし声を大にする。
「ぃよっしゃぁっ、ついにおいでなすったか心霊写真っ!?」
オカルト好きな実乃梨は俊敏な動きでその写真に食いつく。
よし、今だ、と紙を握り締めた手をポケットへと入れようとして
「……なんて言うとでも思ったのかああぁぁーーー!!」
「おう!?」
入れようとしたが、空しくも紙は竜児の手から離れていく。
「わはははっ スピードでこのみのりんに勝てるとでも思ったかぁ!?甘い甘い〜」
「や、やめっ」
慌てて竜児は手を伸ばすが、まるでディフェンスをかわすバスケ選手のように
竜児の手から逃れながら実乃梨はメモ用紙に目を落とした。
「どれどれ、高須くんのデッキは…23、19…ふむふむ…8と35と…ほうほう」
ああああああーーーー……と、今にも叫び出しそうになるのを堪えるのが精一杯で、
頭は真っ白になっていくのがわかる。
対する実乃梨は竜児のメモと写真を交互に見比べながらひとつずつ写真を探していく。
「えっと…23…じゅ、19?………は、ち…えっと」
数枚を確認したところで困ったように実乃梨は竜児の方を振り返り、
「えっと……その、た、高須くん?」
視線は合わせず顔を赤らめて、竜児の名前を呼んだ。
そして実乃梨はそこから続ける言葉を失う。
なぜならこの数秒間で彼女の目に映った写真は、
自分の姿が映し出されたものばかりだったから。
「…………」
「…………」
「…高須く――「く、櫛枝っ!」
「な、何?」
実乃梨のセリフを遮って叫んだ竜児の声は予想以上に大きくて、実乃梨だけでなく両端にいた数人の生徒も体をびくつかせた。
「お、お前、目……視力いくつだ?」
「れ?0、5だけど?」
唐突かつ的外れな質問に実乃梨は疑問形式で返してしまう。
「近視じゃねぇか、じゃあ……そ、そりゃ見間違いだな、ははは」
「は?……あっ」
実乃梨が質問の意味を理解したときには、竜児は人ごみを無理やりかけわけて教室へと一直線。
つまり、逃げ去っていた。
「こらっ、高須くん!」
実乃梨のよく響く声は生徒達の声を押しのけて竜児の耳まで届いていた。
でも気付かない振りをした。そうすることしかできなかった。
今にも倒れてしまいそうに揺らつく体で何とか教室へ飛び込むと、そのまま自分の席へと向かう。
後は、働きが鈍くなった頭をなんとか働かせようと湿った手のひらで押さえつけて、
その真っ赤に染まりきった凶悪面を隠すため机に向き合うしかなかった。
高須竜児は見事にターンエンド、そして爆死(ルールなんかは知らないが)したのだった。
教室に入ると同時にSHRを開始させるチャイムが鳴り、独身(30)が教卓へ上がったため、
実乃梨が竜児の席来ることはなかったことが不幸中の幸いと言えるだろう。
SHR中に、燃え尽き症候群に罹った北村が何やら騒いでいたが竜児の頭には入らない。
北村には悪いが、今はそれどころではないのだ。
どうすればいい。どうしたらいい。竜児の思考回路はショート寸前、いや既にショートしていて
他のことなど考えることが出来ないくらいにいっぱいいっぱいだったから。
SHRが終わると同時に誰よりも素早く席を立ち、竜児は帰りの支度を始める。
数十分の間に考えた挙句、とりあえず今日は帰ってしまおう、という結論に至ったのだ。
一刻も早くこの場から。
そんな焦る気持ちが優先されたせいか手が上手く動かない。そのせいで掴んだ教科書を床にばらまいてしまう。
「おおう……こんな時に」
何やってんだ……。
「はい」
竜児よりも先に教科書に伸ばされた手が器用にも教科書を拾い集め竜児に渡してくれる。
その声は女生徒のもので、その声の主は―――
「おう、ありが……どぅ!?」
竜児はどこから発せられるかも疑問な声を出し、その女生徒を見た瞬間数歩飛び退いた。
目の前で竜児に教科書を差し出しながら微笑んでいる女生徒は、混乱している竜児の頭でもしっかり認識できる、櫛枝実乃梨だ。
「……っ、さ、さんきゅーな」
顔を直視することはせず、出来ず、呟くようなお礼を述べた後、
竜児は彼女のわきを通って教科書を鞄につめながら歩き出す。
「高須くん待ってっ」
後ろから自分を呼ぶ声にも答えない。規則的に並んだ机を掻い潜って出口を目指すことだけを考える。
嫌われるだろうか、嫌な奴だと思われるだろうか。
そんな不安に駆られても、竜児は止まることは出来ない。恥ずかしさで彼女の顔を直視することはできないし、
何かを訊かれたときに上手く応えられる自信なんてものもないからだ。
「待ってってば、高須くんっ!」
しかし実乃梨は諦めることなく竜児を引き留めようと追いかけてくる。
その声にはどこか憤りすら感じる。
「………」
「待てって言ってるじゃんかぁ!!」
あと一歩で教室から出られる、そうしたら駆けだしてしまおうと考えていた瞬間、実乃梨の怒声が聞こえたと共に腕をつかまれる。その拍子に電撃が走ったみたいに竜児は体を反らせて
「おおおおおううううっぅ!」
なんて間抜け声を上げて実乃梨の腕を振りはらっていた。
「おまおまおま…なんなんだよぉ」
「なっ…そっちこそなんなんだよ!」
半分涙目になって竜児は抗議。恥ずかしいのだ。
お願いだから今日のところは見逃してくれ。
1日冷静になれば明日はなんとか大丈夫かもしれないから。
そうしても土下座して頼み込みたいくらいなのだ。
だけどそんなことは出来ないし、なにより周りの空気がそうさせてくれなくなっていく。
二人の声が大きかったから教室に残っていた何人かがこちらを見ている。中には喧嘩か?
だなんて適当ぬかしている奴までいるのだ。
それになにより、
「待ってよう……お願いだから」
「………っ」
掴んでいた腕をゆるゆると離して降下、竜児の制服の袖の裾を摘まんで、開いてる反対の手では自分の顔を隠しながら
頼み込む少女の腕を振り切ることはもう竜児には出来なかった。
「………」
竜児は立ち尽くして実乃梨をそっと見た。その視線に気づいた実乃梨は一瞬だけ頬を染め、竜児がもう逃げないことを確信したのか、
その袖を少し強く引っ張り歩きだした。
竜児は黙って実乃梨の歩幅に合わせて少しだけ後ろをついていく。そんな二人の姿を訝しげにクラスメイトは見るが、そんなものは気にしないことにした。
二人はただ無言で歩き続けた。訊きたいことは沢山ある、言いたいことだって沢山ある。
でも言わない……今は。
校内から出ても実乃梨は竜児の制服を離すことなく数歩前を歩き続けた。
制服を掴んだ実乃梨の手が時々竜児の指と擦れる。
そんな小さな触れ合いに心拍数を上げながらも竜児は頭を混乱させながら、
やはりひっぱられるがままに彼女の背中を追う。
突然実乃梨はいつもの通学路とは違う道を歩き始めた。
それは勿論竜児だって普段登下校には使用しない道、河原へと続く人通りの少ない道だった。
冬の始まりの風が、そっと二人の髪をなびかせた。
土手の草はところどころ茶色く変色し始め、風だけでなく草木までもが季節の変わり目を知らせている。
無言で歩いていた実乃梨が竜児の制服から手を離して土手へと続く石段を数歩降りて、
ゆっくり腰をおろした。
つられるように竜児も少しの距離を取って隣に座った。
「………」
「………」
「…高須くん」
やっと実乃梨が口を開き、竜児の名を呼んだ。
どうしてだろう、とても久しく彼女の声を耳にしてないように、
その声が懐かしく感じてしまう。
「これ」
「お、う……」
実乃梨はポケットから一枚の紙を取り出し竜児に手渡す。
その紙を受け取り、それが何なのかを理解していた竜児はバツが悪そうに紙に目を落とした。
「……ん?」
そこで竜児はあることに気づく。
写真の注文書きのメモ。自分が几帳面にメモした数字の横にひとつ、
明らかに筆跡の異なる字が書き加えられていた。
恐らく実乃梨の字で『85』と。
「な、なあこれ――「さっきね」
竜児のセリフを遮って実乃梨は早口で続ける。
「高須くんが指した先に、一瞬だけ見えたんだ。
85番…その写真、副男レースの写真だったの。
ゴールしたときのね。私、その写真買おうかと思ってる。高須くんも一緒に買わないか?」
そして「記念に」と付け足して。
そのセリフにドキっとして、竜児は言葉に詰まる。
副男レースのゴールした時の写真――
二人揃ってひどく顔を歪ませ、ゴールへ辿り着いた瞬間の。
どんなにひどい表情なのだろう、想像は出来る。でもそれがどんなにひどい顔だったとしても、あの時握った指の熱さは忘れることはないだろう、きっと一生ものだ。時が過ぎどんなにつまらない大人になっても、その時お互いが隣にいることがなかったとしても……
あの温度だけはいつだってこの手に蘇る、何度でも。
「い……」
「嫌だったらいいよ。番号、勝手に書いてごめん」
声のトーンは変えずに俯く実乃梨。
「い、嫌じゃないっ」
そんな彼女の表情を見て、やっとのことで言葉が出る。
嫌じゃない、嫌なわけがない。
嬉しさで顔が次第に熱くなっていくのが自分で分かる。
「俺も買う、買おう…記念に」
メモを握り締めて、喜びでにやけた顔を必死に隠しながら、そのままメモをポケットに突っ込んだ。
「…ありがとう」
だからそう言ってほほ笑んだ隣にいる実乃梨の笑顔を、目が眩んで直視することは出来なかった。
「………」
「………」
要件はこれだけだったのだろうか。
恐らくそうであろう。しかし実乃梨は帰ろうとせず、竜児もまたその場に座り続けた。
実乃梨が自分と写っている写真を買おう、と誘ってくれた。
わざわざこんなところまで来て。
それはどんな思いで誘ってくれたのだろうか。
竜児の頭はそのことでいっぱいいっぱいだが、もう一つ考えていること。
それは先程の写真のことを実乃梨はどう考えているか、ということだった。
あんなのを見てしまったらどんなに恋愛沙汰に鈍そうな実乃梨でも、
さずがに自分の想いに気付いてしまっただろう。
だから今さら誤魔化すことはできない。
言おう、言うしかない。1年近くこの胸に秘めていた想いを。
先程は混乱していて思考がまとまらなかったが、
冷静に考えるとこうするしかないのだ。
唾をのみ、竜児は固く拳を握りしめる。その手にはうっすらと汗が滲み、熱を帯び始める。
高鳴る心臓を押さえつけながら竜児は眩しすぎる夕日と実乃梨の顔を交互に見つめて、
何回も深呼吸、そして……
「きゅっ……く、櫛枝」
第一声は少し裏返りながらも落ち着いて実乃梨の名を呼ぶ。
「ん?」
「その、さっきは…さっきは、無視して悪かった」
廊下でのこと、教室でのこと。
「……い、いいよ。気にしなーい気にしないぜ」
へへ、と動揺を隠す笑顔で、いつものノリで、実乃梨は続けようとする。
「あ、あのな…それで、さっきの写真のことなんだけど…あれは、あれは」
俺はお前の写真が欲しかった、……好きだから。
そう、その一言を言えばいいのだ。
だけど上手く口が開かない。
絞り出すように声を出そうとしても、声にならない。
「その、だな……」
そんな竜児の姿を何も言わずにまっすぐ実乃梨は見つめて微笑む。そして
「あれは…俺は…んぐっ」
やっと次の言葉を紡ぐことが出来た竜児の口を抑え込み
「なんのことかな?」
「………っ」
そう無邪気にもう一度だけ笑った。
まるで、全てをなかったことにするように。
「んーーーっ」
突然の出来事に戸惑う竜児を置いて、実乃梨は一人続けていってしまう。
「私は何も見てないよ?見たとしても……錯覚かもしれないね。」
「…んーー!?」
「そっか」
一人そっかそっか、と何度もうなずく、そして竜児の口から手を離し立ち上がる。
「『見えたのは錯覚』なんだね。私、目悪いし。 きっと勘違いだね」
「…な、にが」
「ごめん、私なんだろうな……浮かれてたのかな。
先のこと何も考えてなかった、うん。本当なんつーか、あれだ。」
彼女にしかわからない独り言のような呟き。
そう言った実乃梨の顔は困惑と憂鬱に固められていても、一応は作られた笑顔だった。
「いや、意味わかんねぇよ」
彼女の言うことも、そんなことを言う理由も。そしてその表情のワケも。
「今日は付き合わせちゃってごめんな。これからバイトなんだ。これで帰るよ」
でも実乃梨は答えることはなく、逃げるように竜児との距離を数歩離して
「高須くん」
それでも名残惜しそうに竜児の名を呼んだ。
冬の始まりの風が少し強く吹いて実乃梨の髪が靡かれ、
一瞬隠された彼女の顔を、表情を竜児は見逃す。
「人は見たこともないものを初めて見たとき、びっくりするんだね。
見えてなかった、それは錯覚だったって……打ち消したくなるんだね。
あーみんの別荘で高須くんが言ったこと、やっとわかった」
「………っ!?」
そう、そしてやっと気づいた。
回りくどく遠すぎる彼女の言葉の中に隠された本当の意味を。
彼女が自分に伝えようとした言葉の意味を。
もしそれが本当だとすれば、自分の勘違いでないとするのなら――
でも実乃梨は最後まで竜児に本意を伝えることはなく、
踵を返して階段を上り始める。
最後のセリフは、もう、写真のことではなかった。
そんなことを、竜児はもうとっくに理解していた。
――だから……。
「櫛枝っ!逃げんな!」
「………あっ」
階段を登りきったところの実乃梨の手を竜児は掴んで引き留めた。
階段の段数分だけ実乃梨の目線は高くなり、二人はほぼ同じ目線になって向かいあう。
先に逃げたのはどっちだ?俺じゃないか。
自分に叱咤しながら、だがかまうもんか、と心の中で開き直る。
「お前は、お前は……見えてたんだよっ!」
唐突に竜児が言った言葉に隠された、もう一つの『見えていた』
の意味を実乃梨はちゃんと理解している。
だからこそ言い返すことはできない。
――高須くんは、幽霊、見た?
あぁ、見た。見えている。
それを錯覚だとか、見間違いだったとか、ごまかしたり逃げたりしない。
「そのだな……さ、錯覚なんかじゃなくて」
だから実乃梨にも認めてほしい、もし見えているのならば。
――私の世界を変えていったら、そしたら、もしかしたら、いつかさ……
いつか見えると本当に信じているのなら、
その存在を誤魔化さないで、打ち消さないで欲しい。
「か、勘違いなんかでもなくて」
――いつかさ――
彼女に見られたい、そう心から願っている幽霊が、ここにいるのだから。
「お前は見えていた!」
そう思うことは自惚れだろうか。
短い会話の中でそう解釈したことは、都合が良すぎるだろうか。
「………」
「………」
力が抜けていき、握った手が離れる。
竜児は必死に言葉を探す。実乃梨が逃げてしまわないよう、繋ぎとめておくために。
しかし語彙が少ないのではないが、どうしても上手い言葉が出てこない。
「…ねえ、高須くん」
「な、なんだ?!」
「私、見えていたよ?全部」
「……あ、ああ」
タイミングよく彼女の方から声をかけてくれた嬉しさと、
こみ上げてくる恥ずかしさで頷くことが今の精一杯。
でも実乃梨も泣きそうで嬉しそうな複雑な表情で、同じように声を絞り出しているようだった。
「……一緒に帰ろうか」
「おう」
微妙な距離感を保ちながら二人は、河原の人通りの少ない道を歩き出した。
そんな二人の背中を傾きかけた夕日が照らし長い影を伸ばす。
ただ無言で歩き続ける二人には、お互いに言いたいことが沢山ある。
でも上手くは言えない……今は。
「高須くん」
「おう!?」
竜児が告白のタイミングを行くぞ行くぞといいながら何回も逃してしまって、
15回目をのタイミングを逃した直後、ずっと無言だった実乃梨の口が開いて竜児の名を呼んだ。
その声は普段の彼女からは想像もできないほどに小さい、
川のせせらぎにも負けてかき消されてしまうんじゃないかというほどに。
「…高須くん」
「聞いてるよ」
それでもその声に答える。答えたいと思うから。
「高須、くん」
「いるよ」
なんだか照れくさくて実乃梨の顔を見ることは出来ないけど、竜児は再びその声に答えた。
すると実乃梨は薄い下唇を少し噛み締め、一度ぎゅっと瞼を閉じる。
数秒そのまま何かを考えるようにじっとして……
そして、歩きながら一歩分だけ竜児の方に寄り添って
「………好き」
「………っ」
呟くように、囁くようにだた一言を口にした。
その瞬間竜児の心臓は暴れ出し、血液が沸騰するのではないかというくらい体温が上昇する。
隣を歩く実乃梨は顔を紅潮させ、しかしそれを見せまいと俯いて髪で隠しているのがわかる。
高ぶる想いを、跳ね上がりっぱなしの心拍数をどうにか落ち着かせ、
汗で湿った右手を何度もズボンに擦りつけると、
竜児はその手をゆっくり実乃梨の左手へ伸ばした。
「………!?」
びくっ、と体を反応させながらも数秒の間をあけて実乃梨も竜児の手を握り返す。
そして竜児はうるさすぎる心臓の音を自身の声でかき消すように、
「……俺も、好き、だ」
出せる限りの勇気を出し尽くしていた。
「………」
「………」
二人は黙ってうつむき、お互いの顔を見ずに伸びる影だけを見つめて、
どちらからというわけでもなく手を握る力を強めた。
恥ずかしいから指を絡めたりなんてしない。
小学生みたいに稚拙な繋ぎ方で、だけど、体温はちゃんと伝わる。
溢れる想いが止まらない。
でもやっぱり照れくさくてお互いの顔は見ることは出来ない。
その代わりお互いの存在を確認するために、手を離すことなく握り続けた。
そして一点で繋がれた自分たちの影を見つめる。
二人の影は離れることはなく―――。
恋をしたのは一年生の頃。
二年になって、同じクラスの仲間になれた。春が終わる頃には、友達になれた。
夏には一緒に旅行に行き、不思議な色の心の中を、ほんのすこしだけ覗かせてくれた。
秋には磨きのかかった奇行と、さらに奇妙な距離感で竜児を悩ませ、
ひどい言葉でケンカもした。
星空の下で、笑いあって仲直りもした。そして、
――そして、冬の始まりの今。二人は………
END
以上
改行とか上手く出来てないし、詰めすぎてて読みにくくてすいません
べったべったの青臭い恋愛モノが書いて見たかった
後悔も反省もしていないが、ちょいと自重した方がいいかと思ったorz
みのりんと竜児はなんだかんだで付き合ったら障害は多くとも幸せになれる
俺はそう信じている。
そして竜児の憧れの恋心もいつかは、お互い支え合っていく愛に変わったと思う
とりあえずみのりんLOVEだ…!
自重することなんかないよ…良かったよ…最後に素晴らしいSSを読ませてもらってジャイアント感謝している
>>500 GJ
みのりん派の俺からすればキターって感じだ
こんな未来もあったのかなと思うと泣ける・・・
うーむ揃いも揃ってGJだ。
504 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 21:57:50 ID:qbYqBDTa
GJ!!!!
最高だぜッ!!!
もっと、みのりんのSSこいーーー
これは良いものだ
みのりん名シーンのオンパレードじゃないか
>>500 いいよいいよー
でも親友に見向きもしてもらえなかった北村が不憫だw
>>500 同志よ、GJだ!!
もし予告通りの御仁ならば、我らがスレでまた会おう…。
>>500 なんかもうみのりん関連すべてやばいな・・泣
素敵なSSありがとうございます><
あの時、あの瞬間の保険室で
「…あのヘアピン、どうした?」
「え?あぁ、あれは―」
応えようとする高須くんの言葉を私は遮る
「あれはきっとイヴに、私に、プレゼントしてくれるハズだったんだよね」
「それは―」
また私が遮る
「ごめん、最初はホントにわかってなかったのよ―」
なんでだろう?
「あのヘアピン、何処に有る?」
「俺の部屋に有る…けど」
言わせない、聞きたくない
「うん、私はアレを貰わない」
どうして?
どうしてだろう?
私は誰と喋ってるんだろう?
誰が高須くんと喋ってるんだろう?
―それは私の意地なんだ
意地?いま私の代わりに高須くんと喋っているのは私の中の
――意地
「私、もう一つ見えてるモノ、有るよ」
駄目だ
「高須くんは―」
だめだ
「大河が―」
ダメ、言っちゃ―
「す―」
ダメダ
「き――」
意地が私の中から高須くんを見つめている
高須くんも私を通して私の意地を見つめている
ワタシハシッテル
―何を?
タイガハタカスリュウジガスキ
―うん
タカスリュウジモタイガガスキ
――うん…
だから、私の中から高須竜児を、逢坂大河を笑顔で送り出すんだ!
そして、追い出すんだ、二人の中から、弱い私を!
「だから、ジャイアントっ?!」
「待てよ、櫛枝―」
何故か身を乗り出してくる高須くん
予想外です
それ台本に無いよ高須
が―しかし愚かな!愚かだぞ高須竜児ッ!
そこで前に踏み込むとな?!
インファイトなら断然私の方が早いッ!!
「すわらばぁ!!」
パンッと乾いた音が鳴る
咄嗟に捻りを加えた私の幻の右は綺麗に高須竜児の口元を捉えたのだった
私は決めたんだ
もう泣かないんだ
…絶対に泣いてなんか、やらないんだ!さらばッ弱い私ッ
ドサッ、と少し遅れてサンドバックが地面に落ちた様な音が聴こえた
(聴いた事ないけど)
窓から差し込む茜色の中で、私は赤く染まった拳にそっと口づける
愛しかった彼との間接キスは―
血の味がした
さよなら、私の初恋
さよなら、弱い自分
そして―
―続かない
511 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 05:07:21 ID:4VLnwxP5
なんかワロタww
でもGJ!!!!!みのりんサイコーだッ!!!
>>500 GJ
甘い、甘い過ぎる・・・
しかもみのりん名シーン多い
>>510 みのりんやらかしたww
高須の決心鈍ってね?
前に出て何言いたかったんだよ・・・
>>510に触発されて俺もパロ書いた
パクリっぽくてすまん
勘違い暴走みのりん
「高須くん、私は大河を追うよ……まだ話は終わっちゃいないからね。君はどうする?」
「…………」
大河は、大河は…
大河の気持ちは、俺しか知らない。
あいつはそれを隠そうとしている。だったら…
「高須くんっ」
「俺は!追い――」
「わかった」
「は?」
そういうと実乃梨は教室を出て右に曲がり始める。
「高須くんは左から。私は右から。行こう!」
「お?ちょ、待て」
しかし竜児の声も聞かず、実乃梨は持ち前の脚力で長い廊下を駆けて行ってしまう。
「畜生…行くしかねぇ!」
どうせまた落ち合える。だから竜児も駆け出した。
二人が落ち合った中間、2-Cの教室には誰もいない。
「昇降口だ!」
「まて櫛枝…っておいっ」
またも実乃梨は先に駆け出してしまう。
「はぁ……」
昇降口でため息をつく大河。そんな彼女の耳に親友の声は唐突に響く。
『大河!聞こえる?
ねぇ大河、あんたはずっと知りたがってたよね?私も――私は、高須くんが、高須竜児が好きだよ!
好きだった、ずっと好きだった!』
「………」
泣き出しそうに大河は顔を歪めて
『でも、あんたに譲らなくちゃとも思ってた!
親友のあんたが高須くんを必要としているならって!
それは傲慢な私の勘違いだったんだ!私もあんたを舐めてた。』
実乃梨の声は全部聞こえていた。大河の耳に、届いていた。だけど……
「違うんだよ、みのりん」
だけど、大河の声は実乃梨には届かない。
保健室―――
「私が泣くなんて思うの?」
「思うだろそりゃ、普通に。でもな櫛枝、さっきは言いそびれたけど――」
「なら報われるよな」
「え?」
またも実乃梨は竜児の言葉を遮り、何故だか過去の話をし始めてしまった。
無視するわけにもいかず、竜児は聞く。
「あのヘアピン、どうした?」
「ああ、あれは」
話が変わったのをチャンスに言わなくては、と竜児は
「あれはきっとイブに私にプレゼントしてくれるはずだったんだよね?」
「それは――」
「ごめん、最初は本当にわかってなかったのよ」
意味は違えど、わかってないのは今も一緒だ。
「あれ、今どこにあるの?」
「俺の部屋にある――」
「うん、私はあれをもらわない」
「ぐっ」
こいつは一体何度……
「私ね、見えてることもう一つあるよ。高須くんは大河が、好き」
「…いや」
「え?」
やっと言える。こいつは一体何度俺の言葉を、想いを遮れば気が済むと言うのだ。竜児は半ば呆れながらも
「櫛枝、お前は根本的に勘違いをしている」
「よし、高須くん、ジャイアント」
「俺の話を聞け!」
「さらば!」
「いてぇ!鼻を殴るな!何なんだお前は!」
「見えてるものに…え?」
やっと、竜児の声が耳に届いたらしい。
「は・な・し・を・き・け!」
「え?…でも大河は、高須くんは…」
うろたえる実乃梨。そう、彼女の見えているものの何割かは全て勘違い。
「そう、そこだ。俺は大河が好きなんじゃない、お前が好きなんだ!」
「だよね高須くんは…えぇ!?」
「それに大河は俺が好きなんじゃない、お前が好きなんだ!」
「だよね大河は…えぇ!?」
二回目の驚き。同じ反応をする。
「いいか!?俺の話を良く聞け?一度でも遮ってみろ、一回につき一枚ずつ服脱がすぞ」
「え…あ、はい」
「まずだ、お前が勘違いしている一番の原因は修学旅行のことだ。でもあれはな――」
「でもあれは大河が」
「ん?」
竜児の目が実乃梨を射ぬく
「あ、すいません」
「あの時、大河が言った言葉。それをお前は勘違いしている。
いいか?今から大河があの時言った言葉を言うぞ?
聞けよ?!ちゃんと聞くんだぞ。一度でも遮ったら全裸だぞ?!」
―――こんな時に助けにくるのは、絶対竜児だって……竜児はいつも私を助けてくれる。
だから私、竜児のことが好きなんだと思ってた。
でも違ってたんだ……
北村くん、あのさご利益ないね。失恋大明神。お願いしたこと、全然叶わないんだもん。
この気持ち全部消して、私を強くしてって。ダメだよ全然。
竜児とみのりんが上手くいって欲しいって思ってても……どうしたってみのりんのことが
――好きなんだもん。
「は?」
「わかったか?これが紛れもない真実、大河が隠そうとしていた気持ちだ」
「……え、えぇええええ?!」
放課後の保健室に絶叫がこだました。
ちゃんちゃん
感動シーンを申し訳ない
ついでに
>>500の感動も壊した気がする・・・
お。奈々子様の波が落ち着き、みのりんの波が来たか?wktk
>>515 GJGJ
話を聞け!ってのは一度みのりんに言ってみたいセリフ
>>515 すでにコントの域だなw
笑わせてもらった、GJ!
おっと、見落とすところだったぜ。
>>510 1レスで笑わされるとは。GJ!
10巻、漏れも読んだが...。
「わたしたちの田村くん」続編フラグのような気がしてならん。
10巻のラスト、カラオケ「おれのこえ」に行くっぽいのが書いてあるが、
同名の店「おれのこれ」が田村くん2巻の中盤ででてくる。
――田村くん2巻あとがき
『ある日しれっと続刊が出てしまうかもしれません』
っと田村くん3巻を待ちわびるオッサンが通りますよっと
俺は完全新作を希望
いいね。みんなGJだよ♪最高だよ♪
みのりんの風は心地よいなりなぁ〜
もう一度奈々子様が降臨することを祈っています
528 :
SL66:2009/03/22(日) 19:40:25 ID:OXdEqghg
能登を調教するビザール姿の奈々子様
調教に失敗したら、麻耶に押し付ける奈々子様
いえ、なんでもありません。忘れてください
さすが、このスレのクラウザーさんだ
次回作の構想ですねわかります
そういや甘々みのドラとか、とらドラを書いてた人のちわドラの続きって、投下されてないよな。
気長に待ちはするが、風邪だけはひかせないでくれよw
>>515それ俺も考えてたよ!その設定を元に亜美フラグの話を書こうとしてたのに書けないじゃないか(笑)
532 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 01:34:29 ID:C9WfARVC
>>531 それはそれとして、書いてみればいいんじゃないかい?
書いてみるか!?そんなことホイホイ言っちゃって後悔すんなよ?じゃあのんびり待っていてくれ。
とらドラ!に嵌まりはじめて未だ二週間。なのに気づいたらエロパロを書いていた。
な、なにを言っているかわからねーと思うが(ry
頭がとらになりそうだった…。
そんな新参ですが、過去ログ見てるとエロの投下ってわりと少ない?
もしかして需要少ないのかしら?
エロがなくても楽しめる、いや、エロがないから楽しめるのが高須クオリティなのだよ。確かにエロパロでは異端だが、俺は十分満足してるぜ?
>>534 エロ投下待ってるよ!!
エロが少ないのが悲しいんだぜ!!
>>535 エロがないから楽しめるとか言うのならわざわざエロパロでするのおかしくね?
エロがあってこそのエロパロなのに・・
別におかしくない すくなくともこのスレでは
横入りゴメン
今、みのりん中編エロ無し構想中なんだけど
投下するならやっぱキャラスレの方が良いかな
別にここでもいいんじゃない?エロなしだからエロパロにはダメってことは
ないと思う
ここはエロ有りの方が少ないぞ。
542 :
534:2009/03/23(月) 14:59:43 ID:SR1PpmNM
なんか「エロ」ってことばがゲシュタルトほうかいしてきた。
いや、エロありなしの是非の議論を吹っ掛けに来たわけじゃないんだw
そんなもんは他スレでも見飽きてるので。なんでもありだからエロパロっていいんじゃん?
ただ、このスレでエロを求めてる人がどれくらいいるかなー、という何気ない質問だったんだ。
少し長いやつになりそうだから、モチベーションあげたくて。
>>536 お前のためなら頑張れる!
>>534 俺のようにエロがなきゃ嫌な人もいる!!
頼んだぞ!!
545 :
539:2009/03/23(月) 15:56:37 ID:G1JukKh0
むしろ自分が場違いかと不安だったんだ
エロ無しなのに長めを落として良いのかと思い…
変な発言してスレの皆さんすいません
>>542 めちゃ期待してます!
なしでもありでも文としてなっていればいいんじゃないかな
わざわざ否定する必要はない気がする
エロのみが読みたい奴は期待損って感じになっちゃうかもしれないけど、それはまぁ仕方ないっつーか
とりあえず・・・どんどん投下しちゃえよww
色んな作品読みたいし
エロなし対エロの比率は大体8対2でエロありが少数派だからな。
気にしないでいいよ。
どんなSSでもウェルカムだけど、まあ竜虎ものはこのスレよりあっちのほうがいいかもね
自分はどっちでもいい派です。
エロは別に期待してないけど
見させてもらってる側なんでなんでもよいかと
みのドラ読めれば・・><
解決亜美ちゃんねる
あんなに長時間、つまり起こされて、から、夕食後?早朝まで?
一緒にいてお互いに手を出さないって凄い。
きょうだいとか、おやことか そんな感じなのかな?
着替えとかは別みたいだけど、洗面所、便所、風呂、は何か有れば一緒のを使うわけだし、洗濯はほとんど一緒みたいだし。
なのでエロって言うのが難しいです。
>>487 こういうやり取り好きだどちらも幸せになってほしい
>>491 みのドラ!いいよみのドラ!
487で思った みのあみの友情SSいいな
GJ!
もう一度ななドラ復活期待
奈々子様の活躍はここでしか見られない・・・
初めましてになります
今まで傍観者だったんですが せっかくなので参加したいと思います
竜司×大河です
「ねぇ…暇だわ…」
思わず声がもれてしまう
「俺は見ての通り忙しいがな。」
流し台の方から聴き慣れた心地良い声がする
「本当に忙しい人は『忙しい』なんて言ってる暇もないのよ。」
いつも通りの全く新しみのない会話をダラダラと垂れ流し続ける
といっても自分はこんな会話が、彼の話し方が、声が、好きだ
ただそれが聞きたいがために、何度もどうでもいいぐちをこぼしているのも
あの鈍感野郎は気づかないのだろう
そんな事は何度も繰り返しているので、今更百も承知だが
「ふぁあああぁぁ…暇すぎて死にそうだわ。暇死ってあるのかしら。」
「ねえよ。そんなに暇なら『手伝う』っていう選択肢はお前にはないのか?」
「……そこまで言うならそのお皿洗い代わってあげようか…?」
「えっ…えーっと…それは遠慮しておく…。」
フンッ と鼻を鳴らして畳に寝転がる
いつの日にか披露した私の手際でも思い出したのだろう
ワンピースがめくれるのも気にせずにゴロゴロと右へ左へ転がる
水の流れる音と一緒にしていた、食器同士が擦れる音が聞こえなくなる
まさにギラギラという表現がぴったりな目線がザクザクと自分に刺さるのを感じる
畳のわらが服に付くのを気にしているのだろうか
それとも、めくれた服が気になるのだろうか
後者ならいいなぁ となんだか変な気持ちになって、顔が急に熱くなって自然と転がる速度が少し上がる
何が目的だろうが彼が自分の事を気にしてくれている事が何よりもうれしい
だから、しばらく気づいていないフリをしてそのまま転がり続けてみたり…
数十秒たつと、やっと我に返って『MOTTAINAI』と繰り返し呟いて蛇口をひねって水を止め、作業に戻ったようだ
それを確認し、少しがっかりして自分も体を起こす
すると、やっと作業が終わったのか彼が手を拭いてテーブルに着く
「ねぇ竜司、何か面白いことやって。もしくは言って。」
「無茶振りするなよ…。そんなに暇ならまたゲームでもするか?」
やり飽きたわとバッサリと切り捨てて軽くため息をつく
「はぁ…使えないわねぇ…これじゃあ付き合ってようが無かろうが同じようなものね。」
竜司は、はいはいと受け流しながら頬杖をついて、ちゃんと見てるのか分からないが、テレビのニュースを眺めている
「私はね、刺激が欲しいわけよ。革命なわけ!あんたもあれを見習いなさいよ。外見に負けずに闘ってるじゃないの。」
と指差したテレビでは、黒人が歴史上初の大統領に当選したサクセスストーリーをつづっている
「ほら、まずは真似て言ってみたら?」
「えぇ?マジかよ?えっと…チ…チェ…チェエンジィ!」
「うわぁ、似なさすぎ。良かったわね、そんな恥をさらしたのが私の前で。なぜなら私はこんなにも寛大な心の持ち主だから…(キラキラ)」
「それが言いたかったのか…。」
まぁねーと流して再び畳に仰向けになると、だんだんお昼ご飯後の最強の刺客、睡魔がちらつき始める
「刺激ねぇ……前にさ、春田に合コンやろうぜって誘われたんだけど、あーいうのって何するんだろうな。」
「…あんたさぁ、それ、行ったわけ?」
「行けるわけねえだろ。18年近く付き合ってきたこの目が与える影響ぐらいとっくに熟知してるよ。自分で言って悲しいけど…」
「DAYONEー☆あんたがあーいう場にいたらフィールドは闇に変更、悪魔族とかの能力が上がりそうだもの。」
「俺自体はドラゴン族なんだが。」
「そんなのどーでもいいわよ。くだらない事言ってるんじゃない。」
ふぁあああぁと一つ大きなあくびをして、すでにかなり重たい目蓋をこする
「んー…合コンかぁ、私もあんまり知らないなー。初めて会った人とあんなに仲良くおしゃべりしたり、ゲームしたりなんて考えられない。」
「俺もお前があーいう場にいるのなんて想像できないな…。」
「でもまぁ、やるっていったら『王様ゲーム』とかじゃないの?所詮私もテレビの知識だけど。」
「王様ゲームか…やってみるか?」
「仕方ないわね、暇だし、あんたのお遊びに付き合ってあげるわ。」
よっこいしょっと、と無意識におっさんのような掛け声とともに上半身を起こす
「で、どうやって王様を決めるの?バドミントン?それともぷよぷよ?なんでもかかってきんしゃい!」
「さりげなく自分の勝てそうな種目ばかり推すなよ。そうだな…ご飯食べたばっかりで、外で運動はきついな…。」
竜司が空中を見つめて真剣に考え始めたので、その間にゲームを取り出して
「やっぱりぷよぷよでしょ?とにかく、さっさとゲームの準備しよ。あんたも罰ゲームに怯えてないで早くする!」
「おい、ちょっと待て。あーあー、せっかくこの間まとめておいたのにぐちゃぐちゃにするなよ。
少しだけ伸ばして、またまとめてその針金でだなぁ…」
竜司も横でコードを縛りながらセットしていく
「そうだ大河。この間、能登に借してくれたゲームがいくつかあったよ。せっかくだからそこから一つ選ぼうぜ。」
ちぇっ と舌打ちして竜司がゲームソフトを持ってくるのを待つ
その間、罰ゲームに何をさせてやろうかと企みを繰り広げる
正直特に具体的にやって欲しいことが見つからない
というか、そんなものがあれば暇になんてならない
どうせなら普段できないような…それこそまさに刺激的な事をやらせてやろうと必死で思考を巡らせる
が、全く思いつかない…竜司は何を考えてるんだろう
どうせエロい事でも考えてるのだろう…まったく…竜司はまったく…
「…大河?」
「んにゃ?!!なによ?!驚かさないでよバカ!!」
「お前滅茶苦茶だな…驚かしてなんかねえよ。」
一人で妄想をつっ走っている所に当の本人が割り込み思わず挙動不審になってしまう
「持ってきたって言ってるんだよ。何ぼーっとしてるんだ?眠たいのか?」
「うるさい!眠たくなんかないっ!すぐに子ども扱いするな!………!!」
「…?…大河?」
これだ。絶対これだ。これしかない。
竜司はいつも世話焼きおばさんのように、私の事を甲斐甲斐しく世話をしてくれる、気にかけてくれている
…まぁ…そんな所も好きなんだけど…
…そういうことじゃなくて、子ども扱いされる事が気に食わない
いつもそれじゃあやっぱり悔しい
たまには私も竜司に、仕返しとか復讐って訳ではないけど…
子供扱いされる気持ちを味わわせてやりたい
そして…たどり着いたのが
『幼児プレイ』
いつも人の世話ばかりしている竜司にこれ以上恥辱的なプレイがあるだろうか
『竜ちゃ〜ん、ご飯ですよ〜。あ〜んしてくださいね〜。』
『竜ちゃ〜ん、歯を磨きましょうね〜。』
『竜ちゃ〜ん、お着替えしましょうね〜。』
『竜ちゃ〜ん、お風呂は入りましょうね〜。』
後ろ2つは少し変態チックだったが全く気にならなかった
自分ももしかしたら相当アレなのかもしれない
いつの間にかにやけていたのに気づき、ハッとして隣を見ると
世にも奇妙な、可哀想なものを見る三白眼と目が合う
「お前やっぱり眠たいんじゃねーの?やっぱりしばらく昼寝するか?」
「ぃ、いいって言ってるでしょ?!ほら、早く準備する!」
「とっくに準備は完了してるが…」
「うっ…うるさい!ソフトはどこよ!」
「お前の目の前だよ。」
「ううっ…なによこのクソゲーどもは!」
「それは知らん。能登に言え。」
「あんのクソメガネぇぇ…」
無実のクラスメイトを噛み殺さんばかりの迫力だが、正直そんな事は全く頭にない
というかソフトもしっかり見ていなかったので、竜司がまた白い目でこっちを見ているのが分かる
やっとなんとか平静を取り戻し始め、ソフトを改めて眺める
実際見る限りクソゲーに鹿見えないものしかなかったが
なんとしても勝ちたい目的ができたので真剣に考えこむ
その中から一つを選び
「ぷよぷよがないのが遺憾だけど、まぁこれでいいわ。」
「…うすうす感じていたけど、俺の意見は端から Out Of 眼中なわけだな…。」
「当たり前じゃない。何を今更言ってるの。ぐずぐずしてないで始めるわよ。」
半分無視しながらハードにソフトをセットする
「なぁ、結局何で勝負するんだ?」
「テトリスよ。あんたでも分かるように簡単なやつを選んであげたんだから感謝しなさいよ。」
「流石に俺でもテトリスくらいわかるぞ。やったことねぇけど…」
勝った と思った
自分もテトリスはあまりやらないが、同じ落ちゲーならばまず負ける事はないはず
3回勝負ね。コテンパンにしてくれるわ と吠えて、内心罰ゲームを想像してにやけっぱなしのままルールの設定をする
あぁ、もうすぐ恥ずかしさに俯きっぱなしの竜司が拝める…と胸を大きく膨らませ、STARTボタンを押し、ブロックが落ち始める
ありえない
結果的にいうと、惨敗だった
なんなの、こいつ…強すぎ プロじゃないの?
決して自分が弱いわけではないと思う
しかし、消しても、消しても、下からブロックが、竜司の攻撃が上がってくる
焦って回転を間違え新たな隙間ができる
イライラしてふと竜司の画面を見ると
綺麗にきっちりと1ブロック分の穴が縦に一列だけ、底まで伸びている
そして、その次のブロックがぴったりとその縦の穴に収まる…自分の画面が再び下からせり上がり…
私は竜司に完敗した
当初の目的とは裏腹に、駄々をこねる子供のようにリベンジを叩き付けるものの
竜司は快く、…むしろやりたくてしょうがないと言ったほどに、それを受け、また快勝する
自分のLOSE回数が20に達した所で流石にコントローラを置いた
竜司が少し残念そうな顔をしたのが視界の端に見えた
「もういいのか大河?諦めるのか?」
「…もういいわよ、あんたの勝ちで。…あんた本当は経験者でしょ。普通じゃないもん。」
「いや、本当に初めてだったんだ!自分でもビックリしてる。…それにしても、テトリス面白ぇ…。」
よく考えればテトリスなんてまさに竜司のためにあるようなゲームだった
結局竜司は一度もミスをする事も無く、隙間ゼロのまま私に全勝を収めた
選択ミスだ…と落ち込んでいると、竜司がゲームを律儀に針金でまとめ直しながらボソリと
「食費削ってウチも一つ買おうかな…。」
「何言ってるの…?あんた私にトマトピューレに調理されたいの…?」
「…言ってみただけだよ。ていうか、その脅し結構本気で怖いな…。」
「冗談でもそんな事言うからよ。ああーもおー負けたあー。」
力尽きて後ろに倒れ、胡坐を崩して力いっぱい伸びる
なんでこんな事に必死になってたんだっけ?
「でさ、大河。王様の命令だけど」
あぁ、そうだ、王様ゲームだった
ああ、惜しいなぁ、やりたかったなぁ
本当に無意識だった
「幼児プレイ…」
呟いていた
「お前が前に言ってた……って…今なんて言った…?」
しまった
ドジったと思った時にはもう遅かった
竜司の目が、驚きからだんだん危ない光を帯びたものに変わり始める
「ちょっ、まっ、りゅ、竜司?えっと、その、今のはその、えっと、」
必死に前言撤回を図ろうとするものの
一度零した言葉はもう戻せない、無かった事にはできなかった
「…サラダを作ってくれ…って考えてたんだが、止めた。それで新しい命令があるんだが…」
…ダメだ…あんなの竜司の十八番だった
聞き逃してくれるわけが無い
命令を変えてくれることもなさそうだ
半ば諦めて返答する
「……なんなのよ…?」
竜司の口が心底楽しそうに曲がる
「そうじゃなくて、『なんでちゅか?』だろ?ふふっ…まずはお昼寝しましょうか。…大河ちゃん?」
支援?
終わりです。読んでいただいた方、ありがとうございます。
今更になりますがタイトルは【暇つぶし】でお願いします
かなり前に書いたんですがずっとアクセス規制くらってました
本当はこの後のPLAYを夢に見て、起きてすぐ忘れない内に書こうと思ったんですが
自分の表現力の限界を感じて挫折… orz
エロパロスレにおいて致命的…
トイレや風呂に連行される大河を想像して一人悶えてます
続きを書くつもりは今のところありませんので脳内補完して頂ければと。
よかったら誰か書いて貰っても決行です。むしろ楽しみにしてます★
それでは失礼いたします…
追記:すいません…文中ミスです
鹿→しか
でした…誤字失礼いたしました…
>>564 うはぁ、続きが気になるぜ…!
二人特有の雰囲気が出てて、すごく心地良い。
いいモン読ませてもらった、乙!
GJ
幼児プレイは有りだな
あと竜司じゃなくて竜児ね
続き見たい〜
>>554-564 デビュー作にしちゃ文章の流れが読み易くて、なかなか。
行間を空けなくても、保管庫に入るとhtml形式になって行間が広くなるから、空けなくてもいい気がします。
幼児プレイみたい!
>>564 竜虎の掛け合いがおもしろかった
普通に上手いね、GJ!
また竜虎SS書いて下さい
>>564 GJ
竜児と大河の幼児プレイ…凄く…見たいです…
皆さんこんばんは。
前回の投下から時間が経ちましたが
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下させて貰います。
次レスから投下します。
[伝えたい言葉(2)]
マットに二人して腰掛けて私は語りかける。
「高須君は好きな娘居るって言ったじゃん。それってさ…実乃梨ちゃん?」
そう言うと、高須君の目元が微かに細くなり、無言のまま私から目を反らす。
私の問いの真意が分からないから、言いたくない…。そんな雰囲気だ。
「…それを聞いてどうするんだよ?」
しばしの沈黙の後、彼が絞り出す様に呟く。
「ん…理由を聞きたい?そうしたら教えてくれるの?」
問いに問いで返し、続けて問う。
正直、立場が逆ならウザくて仕方無いだろう。
別に意地悪とか、からかってやろうと思って言っている訳では無い。
「言わないと駄目なのかよ、誰にも言いたくない事だってあるじゃねぇか」
「……大河には言えて、亜美ちゃんには言えない訳だ。ふぅん」
と、カマを掛けてみたりする。
…絡まった糸は解くより、切って繋いだ方が楽だよね。
「別にそんなのじゃねぇ。…訳を教えてくれよ。じゃないと言えない」
予想通りの答を聞いて、私は高須君の顔を下から覗き込んで見詰める。
あくまでも真剣な目差しで…。
「………高須君の事が好きだから……じゃ理由にならないかなぁ?」
そう。真剣に、自然に…。
目を見開いた高須君から視線を逸らさず、私は続ける。
「もちろん、男の子として…ね。だから気になるじゃん。
その相手が私じゃない事位分かるし、おおよその見当は付いてるけど知りたいな」
一息で言葉を紡いで、私は上目遣いで彼を見ながら、返事を待つ。
「…櫛枝だよ」
しばらく考えた素振りを見せて、彼が紡いだ一言。
分かりきっていた事なのに、本人の口から言われると切ない。
恐らく、素直に言えば私が満足するとか諦めるとか思って言ったのかも知れない。
彼らしくない、割り切った考え。
ひとまず牽制と言った所だろう。
何とかして、この状況から早く抜け出したいという事なのか?
「だから…川嶋と付き合う訳にはいかねぇ。ゴメン」
高須君が申し訳なさそうに私に謝る。
何で謝るの?別に…そう言わせたい訳じゃない。亜美ちゃん嫌な女みたいじゃん。
変な作為が有って聞いたわけでは無いのだ。
しいて言うなら『確認』の為だ。
糸を繋ぐ為の…ね。
良い人を辞めて、自分が求める者を手にする。
それに必要な情報が欲しかったのだ。
予想では無く、明確な事実が無いと…糸は紡げない。
もちろん、それは私なりのやり方でやらせてもらう。
側だけ取り繕った人間だった私の仮面を取り除いて、新しい道を高須君は開いてくれた。
好きになってしまった。
今は好きな人に振り向いて貰おうと、必死で尻尾を振ってキャンキャン啼くチワワ。
私は、大河みたいに彼が守ってやりたいと思わせる存在にはなれない。
実乃梨ちゃんみたいに彼の太陽にもなれない。
なら、私は高須君と対等に並び立つ存在になりたい。
いつだったか…ああ、ストーカーの件の後に同じ事を言ったよね。
「そっか。…うん。ゴメンね、何だか今日は変な事ばかり言ってる」
私は顔を俯かせて深呼吸した後、彼に聞いてみる。
「付き合って…とかは言わない。
でも…それでも高須君の事、好きでいて良い?」
「おうっ、それは…俺が決める事じゃないと思うぞ」
そりゃあ、そうだよね。
他人がどう想おうが勝手っていいたいんだろう。
「でも報われないかもしれないのに、想われているのは心苦しいし、川嶋だっていつか後悔するんじゃないのか?」
つまりは
『勘弁してくれ』
って事だ。
彼がそう思ってなくても、言い方を変えたらそうなる。
穿った見方かもしれない、けど事実。
「私じゃ嫌?」
「嫌…とかじゃない。川嶋は綺麗だし、一緒にいて面白いけど俺なんかじゃ釣り合わない。
それに俺は…櫛枝の事が本気で……」
嫌じゃない…か。
好きでも無いし、嫌いでも無い。
ちょっと仲の良い女友達って感じなのかな?
ちなみに私は男女で友人関係は成立しないと思っている。
一緒に居て、惹かれ合って…それでも『トモダチ』のままだなんて不可能だと。
男のXとYの染色体と、女のX染色体は互いを求め合う様に出来ているのだ。
本能だよ。上手く出来ているよね?
人間だって動物なのだから当たり前、雄は雌を求める。逆も然り。私は高須君に惹かれ、高須君は実乃梨ちゃんに惹かれた。
だから相手と『トモダチ』以上の仲になりたいと願う。
私の現状は片想い。掴もうとしても、高須君は先に進んで並び立てない。
だが唯一、同性の友人関係と同じ様に対等に、かつ瞬時に並び立つ方法があるのだ。
私は高須君の唇に人差し指をあてがって制する。
「全部言わなくても良いよ。高須君は優しいもん。絶対に他人を傷付けれない奴だって…知ってる」
そう。だからこそ私が今から言う事は『いけない事』だと諭されるよ絶対に…。
それが何かって?
それはね…高須君に抱いて貰う事。
私が高須君と対等になるには、男女の関係になるしかない。
極論かな?でも真理だよ。
理性とか倫理は抜きにして…ね。
理由は前述の通り。私達は『生き物』だから…それで察して欲しい。
「高須君…一度しか言わない。すっごい我儘だし、
間違った事だけど…、お願いがあるんだ。聞くだけ聞いて貰えないかな?」
彼の手を握って、私はゆっくり一言一句を噛み締める様に紡ぐ。
「私を………
抱 い て よ
」
「は、はぁ?」
呆気に取られた風に見える彼の手を更に強く握る。
「お、お前何言って…え?その抱く…って意味解ってんのかよ?」
しどろもどろになりながら高須君が私に聞き返す。
私は軽く頷いて肯定とする。
「そんなの無理に決まってるじゃねぇか!付き合っても無いし、川嶋は絶対に後悔する。
本当に…好きな奴が出来た時に過ちだったって気付く。その時には遅いんだ!」
彼が静かな怒りと哀しみを湛えた瞳で私を諭す。
「後悔なんてしないよ!私は…私は……冗談とかで言ってるんじゃない。
だって高須君の事が好きだから…抱かれたいの」
「っ!…もっと自分の事を大切にしろよ、一度しか無いんだぞ?
それに…俺には重すぎる。
川嶋が好きだって言ってくれても、自分の事で精一杯なんだ
櫛枝しか…考えれない。
だから撤回してくれ。今なら聞かなかった事にするから」
「嘘だ…。自分一人で精一杯だなんて嘘だよ。じゃあ何で大河にはベッタリなのよ?
自分の事だけでいっぱいいっぱいなら、他人の面倒なんて見れる訳無いじゃん。
今、言ったのは建前?…私は蚊帳の外なわけ?」
自分でも何を言っているのか分からない。
まるで彼の心が読めるとばかりにまくし立てて…さ。
てかこれじゃ逆ギレだよ…。
私は大河にも実乃梨ちゃんにも嫉いている。
同じ教室に居て、壊れ物を扱う様に優しく接して貰って…私は放置。
そしてたまに気紛れで優しく接する。
いや、本当は彼が私にも…誰にだって優しく接しているって理解している。
でも比較しちゃう。
『アイツにはあんな風にして、私にはこれだけ?』
些細な違い、それを目敏く見付けて一喜一憂していたのだ。今だってそう。
「大河は関係無いだろ?ともかく無理だ。悪いけど、出来ない。
川嶋にもいつか好きな奴が出来る。そいつに悪いし」
例えば
『実乃梨ちゃんが好きだって言いながら、大河には甘々な保護者面して、私に対しては少し冷たい』
って心にも無い事を考えている。
高須君の言っている事は正論…。
確かにこの先、好きな人が別に出来たとして…少し位は、軽率だったって思うかもしれない。
けど、それでも後悔はしない。
絶対に…。
私はチワワの目で上目遣いに見ながら懇願するの…。
「…高須君の事、諦めれないもん。本当に大好きで焦がれて…」
好きな人に抱かれた事、それを悔やんだりしない。
それは、もし実らない恋だったとしても私の中で輝いて色褪せない。
「私にだって…恋をする権利はある。高須君にも実乃梨ちゃんにだって…皆にあるんだよ?
それを間違いだなんて言わないで…お願い、高須君…私と寝てよ」
そう言って私は待つ。彼の返事を…。
飾らない本心、大人ぶっているけど、私だって…皆と同じだもん。
火遊びで大怪我じゃなく、どうせなら全力でぶつかって大怪我したい。
少しづつ、深めていって仲良くなれたら…
『大怪我して良かった』
って思えるじゃん。
今日、明日…短期間なら大怪我に見えても、長い目で見れば良い結果になるかもしれない。
そう。すぐに結果が見えるものじゃないんだから…。
「……絶対に後悔しないんだな?」
長い沈黙を破って、口を開いた高須君が私に問い掛ける。
「うん。しない」
私は微笑みながら返す。
互いの顔を見詰めながら、触れた手を握り合う。
「気持ちが通うかは分からない。でも…優しくはするから」
まだ手が触れただけじゃん。
でも高須君らしいなぁ。
その言葉は…もう少し後で欲しい…な。
とか、ちょっとだけ心の中で惚けてみる。
「…そこの跳箱の裏。入口からは死角だし、良い感じの隙間だよね。
そこで……ねっ?」
熱を帯びた頬を隠す為に俯いて、繋いだ手をしっかり握り、空いている片手の人差し指で室内の端を指差す。
「お、おうっ!ここでするのかよ。てっきり…別の場所かと」
「うん。"ここで"だよ」
理由を述べるなら
『心変わり防止』
である。
ほら…何だかんだ今の状況ってさ。
場の空気に流されている感も少なからず有るよね?
もちろん私じゃなく、高須君がね。
『川嶋がここまで言うなら良いよな?』
みたいな感じ。
だから、ここで機会を逃すと思い直しちゃう。
しえん
『ああ、やっぱり無理だ』
って考えてしまうだろう。
それのポカ除け。
「川嶋は良いのかよ?ここ結構埃があるんだぞ。ほら、そこの端とか隅とか
おおうっ…何という惨劇」
高須君がビシッと数ヵ所を順に指差しながら、口元を歪ませて邪悪な笑みを浮かべる。
『川嶋ぁ、お前の初体験を埃たっぷりでムード無しの場所で台無しにしてやるぜ』
とか…考えているのでは無い。
十中八九、頭の中で高須棒を振るって埃と戦っているのだろう。
「はいはい。惨劇、惨劇…っと。こうしたら運命は覆せるよ」
私は自分のジャージの上を脱いで立ち上がる。
そして、先ほど指差した場所に屈んでジャージを広げて置く。
いやぁ亜美ちゃんって天才?
「ほら、高須君も来てよ」
笑顔で手招きすると高須君が私の横に並ぶ。
「まあ、うん、確かにそうなんだけど根本的な解決にはなってないような」
不本意そうな彼の頬を、両手で撫でながら私はからかってみる。
「あ…、そっかぁ高須君はマットの上でしたかったんだ
入口から丸見えだもんねぇ、亜美ちゃんと繋がってる所を誰かに見せたかったとか。
やだぁ…そんな趣味あったの?」
わざと会話のキャッチボールを止めて、クスクスと笑いながら…ね。
しかも私から誘ったのに、高須君が望んでいる様な口調で…。
「いきなり斜め上に考えたな。それは勘違いだ。そうじゃなくて、埃がだな…」
「野暮な事は言っちゃダァメ…んっ」
私は彼の後頭部に手を回して体重を掛けて抱き付く。
「おうっ!」
尻餅を付いた彼の肩に顎を乗せて甘えた声で囁いてみる。
「優しくしてね。忘れる事なんて出来ない位に…高須君の事をしっかり私に刻んで……」
もちろん私も高須君に刻んであげる。
『川嶋亜美の味』
を…。
男の子は初体験の味を忘れないって聞いた事がある。
だから…忘れる事の出来ない味を覚えさせてあげるね?
大河や実乃梨ちゃん…他の娘とした時に
『川嶋の方が良かったな…』
って思わせる位の『雌の味』を…ね。
胡座をかいた彼の膝の上に座って、背中を胸に預ける。
そして両手を彼の手に添えて胸元に誘導してあげるの…。
「んっ…。ん、う…」
私の胸を手の平に納めた彼が、恐る恐る探る様な手付きで揉み始めた。
インナーのTシャツの上からゆっくりゆっくり…。
互いに一言も発せず、私の抑えた声と衣擦れの音だけ。
「川嶋って良い匂いだな…」
私の首筋に顔を埋めた高須君が、感慨深そうに呟く。
「ふふっ…高い香水使ってるからね…、んっ…は」
「違うぞ、香水じゃなくて、川嶋がだよ。すっげぇ甘い…」
高須君が鼻っ面をグリグリと首筋に押し当てつつ、十指を胸に埋める。
恋人にする様に紡ぐ言葉と、興味津々に私を探る手付き…。
それだけで私の身体は熱を帯び始める。
「ふ…っ、んっ。あ…、ん」
寄せて、上げて、優しく優しく、まるで硬直した筋肉をほぐす様に揉まれる。
自分で揉むのと違い、ちょっとくすぐったい。
でも…身体がねピクンってしちゃう。
…まだ直接触られてもいないのに、気持ち良いの…怖い。
「なぁ…良いよな?」
そんな私の変化を本能で感じ取ったのか、彼がTシャツの端を掴んで聞いてくる。
つまりは直接触りたいのだろう。
私は頷いて微かに身体を震わせる。
演技なんかじゃない…。
期待と怖れ…だよ。
「は…っ、んんっ!くすぐったい…」
Tシャツの端から忍び込み、腹から胸の方に滑る手の感触、
少しづつ下着を押し上げてくる指先…それらの感覚に私は身体を捩らせる。
「っあ…、ふっ!んぅ…」
下着が外れ、大きな手の中で胸が揉まれる。
初めての異性の愛撫は、くすぐったくて、ちょっと痛くて…気持ち良くて、甘く疼く。
「ふあっ…あ。あっ…んっ…んっう」
指先から零れ落ちそうになる胸を掬う様に絶え間なく揉まれて、私は啼く…。
心臓がバクバクと回転数を上げて、レッドゾーンを差す。
『高須君に揉まれてる…スケベな手付きで揉まれてるよう…』
「ひうっ…や…、あふっ!」
高まる興奮が、身体に変化をもたらす。
その変化を見つけた高須君がね…親指の腹で転がす。
硬くなり始めた乳首をクリクリって…切なくさせるの。
「んっ!はあっ…う…!」
ゾクゾクとした震えを伴って、ピリピリと痺れる甘い刺激。
目の前が蕩けてしまう気持ち良さが私の身体を駆ける。
「初めてだから勝手が分からないけど…気持ち良いか?」
「はっ…ん。わ、わかんな…ぁっ…い。はうっ!」
耳元で問い掛ける高須君に、蕩けた声で返事をすると今度は更に強い刺激が走る。
ビクン!って身体が跳ねてしまう。
乳首を摘まれたのだ。
「あ…もしかして痛かった…か?」
「ううん…大丈夫、んあ…」
そう返すと、また摘まれる。
人差し指と親指で転がされながら…ね。
これ…身体がフワフワしちゃう。
本当に気持ち良いんだ……癖になっちゃいそう。
じゃあ、じゃあ………『下』は、もっと気持ち良いのかなぁ?
試した事なんて無いから分かんない…けど高須君がしてくれたら気持ち良いよ、多分。
それは…あと少し先だろうけど…期待する位は良いよね。
高須君も期待…しちゃってるし。
さっきからお尻に『硬い物』が当たってるんだ…。
これって高須君も乗り気になって…期待してくれているって事だよね?
「あっ!だ…めぇ、そんなに強くしたら…ぁ」
甘えた声で喘ぎ、彼の愛撫を甘受する。
柔らかさを味わう様に揉まれ、もっと啼けと言わんばかりに、
何回も繰り返して強弱を付けて悪戯されて堪らなくなる。
「あふぅっ…!ひぁ…、あっ!ふっ…!」
自分でもビックリする位、甘えきって媚びた声が出てしまう。
作り物じゃない本物の啼き声が…。
「っふ…、たかすくぅん…そ、そこは…っん!……やぁあぁ…」
高須君の右手が腹を滑っていく。
その手がジャージの上から太股を撫でる様子に、私は羞恥を覚えて思わず抑えに掛かる。
ああ、次は…アソコなんだよね?
待って…恥かしいよぅ…高須君。
蕩け始めた思考が一瞬だけヘタレる。
やっぱり…ね、恥かしいじゃん。
体育の授業あったし…その…汗かいたから…汚いよ。
そんな考えも、次の瞬間には霧散してしまった。
太股を撫でられながら乳首を強く転がされて、再び視界がピンクの霞に覆われる。
「おう…やめとくか?」
彼の優しい声を聞いて、制止しようと伸ばしていた手を重ねて、おねだりしてしまう。
「はあは…ぁ、して…。私に…もっと教えて?」
高須君に可愛がって貰って下腹部が熱くなっていく…トロトロに溶けていくの。
身体の奥が熱を帯びて切なくキュウ〜って疼く感覚。
私は自身のスケベな部分を自覚してしまう…。
大河風に言うなら発情期の雌チワワかな?
うん…そうだね。
高須君に愛撫されて……気分が高揚してる…。
初めてなのに…しかも、まだそこに触れられてもいないのに………濡れさせてしまっている。
「んうっ……あっ…。あっあっ」
太股を擦る手が段々と内に伸ばされ…それに比例して閉じていた足が開いていく。
私は『女の本能』に身体の自由を奪われる。
「川嶋、ここ触るぞ」
返事を待たず、胸への愛撫を続けたまま高須君が二枚の薄布の中に手を差し入れる。
一枚はジャージ、もう一枚は下着。その奥の『部分』に向かって、彼が繊細な手付きで進んで来る。
私はされるがまま。高須君に全てを託す。
したいようにして良いんだよ?
断りなんか入れなくても、これは私の望んだ事だから…。
だからもっと…
『私を乱して』
と、彼の頬に自分の頬を擦り付ける。
これは、私の一方通行な愛情表現…。
口付け出来ないキミへの精一杯の求愛だから…大目に見てね?
続く
今回は以上です。
続きが出来たら、また来ます。
では
ノシ
>>590 わっふうるわっるふ」!!
GJ続きを即
グッジョブだ!
待ってるぜぃ
多分ココだと思うんだけど
下腹部がキュンってなる
って表現があったSS
誰かわかる?
>>590 GJ!!
っていうか、生殺し過ぎるぜ
続きを期待してる
ちょwww生殺しwwwww
この握りしめた俺のジュニアをどうしてくれる!
596 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 23:52:59 ID:L2Yeb7sg
今日も今日とて、我らが高須竜児は買い物を終え、帰宅中である。
ふと足を止める。
なぜならば、同年代だろうか誰かに似てなくもないとても可愛らしい女の子が竜児を凝視していたからだ。
(なんだ・・・・?俺、何かしたか・・・?)
龍児は考えてみるが、その女の子に見覚えはない。その間も女の子は竜児から目を離していない。
竜児は近寄って話しかけてみることにした。
「えっと・・・きm」
「その鋭い眼光、やっぱりお父さんだ!」
「・・・・は?」
女の子はそう言うなり、竜児に勢いよく抱きついた。
ちらドラ!(娘的な意味で)
とりあえず、離れそうになかったので竜児はその女の子を自宅へ連れてきた。
女の子の名前は”留美”、彼女はそう名乗った。
そして、苗字は”高須”。驚くことに彼女は自分の娘なのだと言う。
どう考えても年齢的におかしいのだが、彼女が言うには
「近道をしようと裏路地を歩いていたら、いつの間にか・・・・。」
と、言うことらしい。え?何これ?俺は夢を見てるのか?いや、頬をつねってみたが痛い。
現実だ。
「とりあえず、そのお父さんと言うのはやめてくれないか・・・?」
「えー、じゃあ・・・苗字は一緒だしぃ、竜児くんで☆」
そう言うと彼女は嬉しそうに竜児に抱きつく。
「ちょ・・・くっつくn」
バターン!
「バカ犬―!暇でしょ、暇よね、だからみのりんとばかちー連れてきてやったわよ!感謝しなさい!って、誰その女・・・」
おお・・大河から禍々しきオーラが見える・・・。
「いや、えーっと・・・」
「どうしたんだい、大河―!立ち止まったりなんかしてー!」
「バカ犬が女の子連れ込んでるのよ、このエロ犬・・・・。とりあえず離れなさいよあんた!」
「ちょっと、バカトラ、早く入ってよ邪魔だから」
「あ、お母さん!」
「・・・ん?」
「「「・・・・・・」」」
「えーと、留美ちゃん」
「留美でいいよ」
「そ、そうか、じゃあ留美・・・、聞くの忘れてたけどちなみに母親の名前は何て言うんだ・・・?」
「え?もう!決まってるじゃん、高須亜美だよ!」
「「「「・・・・え?」」」」
ああ・・・、空気が凍るってこんな感じの事を言うんだろうなぁ・・・。
っていうぶっとびネタは需要ある?
ぜひお願いします
「ヨメイロちょいす」を思い出した
601 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 00:55:12 ID:GmM2uGTQ
ありだ。おおいにありだ。
タイトルがちらドラになっていた。
いや、ちわドラって書いたつもりだったんです、本当にすいませんでした。
>>590も
>>597もなんてところで止めてくれるんだ。早く続きを書いてください、このとおりですm(__)m
冬の日の朝、学校の真っ白なグラウンドで二人の少女が雪玉を投げ有っている
「やー、あーみんも、なかなかやりますなぁ」
少女の一人――
櫛枝実乃梨が軽く息を整え、冷たく透き通った空を見上げて言う
「どんな、体力、してんだよ、手加減し、ろってぇの」
あーみんと呼ばれたもう一人――
川嶋亜美の方は息も切々だ
「いやー、さすがに指先もカッチカチやぞ?ゾックゾクするやろ?」
「そりゃただ指かじかんだ上に風邪ひいただけじゃねーの」
亜美のツッコミになははと笑って、実乃梨は真っ赤になった自分の手を見つめた
――ジャイアントさらば!
彼の唇が触れたこの手
つい、昨日の事が思い出されてしまう
高須くんと大河、今頃、どこら辺だろうか?
ふと、電車の中で幸せそうにお互い手を取り合う二人の姿が頭に浮かび胸の奥がきゅっとなる
「隙有り!――あ゛」
想いに耽っていたせいか亜美による不意を付いた渾身の一投は
そのまま実乃梨の顔面に見事に叩き込まれたのだった
605 :
2:2009/03/25(水) 00:56:47 ID:12yUlmoa
「ご、ごめん!実乃梨ちゃん大丈夫?」
「ん?全然全く大丈夫だっぺよ、ナイスピッチー」
こんな柔らかく握られた雪玉で怪我する筈もない
実乃梨は意外にも心配そうにする亜美に向かって左手をひらひらさせて笑顔を返そうとする
「げ」
その時、赤い雫が落ちた
ポタ、ポタと、白い雪の上に小さな赤い花が咲いていく
鼻血だ
反射的に顔を右手で拭うが何の意味も無く、その滴る勢いは増すばかりだ
――ありゃ?ちょっとヤバいかも?
急にドキドキと心臓の鼓動が速まった様な気もする
何でか息苦しく感じたりもしてきた
何だか意識まで朦朧とする
やべーぜ超やべーぜ
不詳この櫛枝実乃梨、失恋した翌日に鼻血の海で討ち死にとは…不覚でゴザル
もし死んだら新聞になんて載るんだろう
花の女子高生鼻血噴出死事件
容疑者川嶋亜美を逮捕
しかし凶器と思われる様なエロ本は発見されず
そんで後日、凶器は被害者の自作ポエム集と発覚
死因はそれを容疑者が音読した事に因る悶死
…とか勝手な事を書かれんのかな
高須くんと大河ワイドショーとか見て何て思うかなぁ
と、勿論鼻血ごときで死ぬわけも無いのだが朦朧とする意識の中、そんな方向に思考が向かう
606 :
3:2009/03/25(水) 00:57:23 ID:12yUlmoa
そして思い出すのは彼のこと
――死ぬ前に高須くんの声がもう一度聴きたかったなぁ、もっと話せたら良かった
畜生、昨日の今日でもうオレっち、高須竜児の事を考えちまってるぜ
ニクいねあん畜生―済まねぇ大河
でも死ぬ時は走馬灯がなんとやら
だからこんな時くらい許してくんねぇ、大河よぉ…
「―高須くん」
泣きそうになった
――はは…結局全っ然前向けてないや、私
「――高須、くん」
あの時実乃梨の声に、おう、と応えてくれた、彼―
涙が溢れてくる
「高須くん、高須くん」
こぼれる涙はもう止まらない
「聴いてるよ」
声がした
急に意識がハッキリとする
知っている声、優しい、彼の、声
「高須くん」
「居るよ」
顔を声のする方へ向けると彼が――高須竜児がそこに、居た
「見てみろよ、綺麗だろ?」
彼はまだ欠けているクリスタルの星を天井の照明に翳して言う
「壊れたってちゃんと直るんだ」
「ふぇ?」
状況が飲み込めず、涙を拭いながら辺りを見回す実乃梨
607 :
4:2009/03/25(水) 00:58:44 ID:12yUlmoa
広く大きな壁中に飾られている、飾られていく、きらびやかな飾り物たち
そして実乃梨の視界の中に、そこに存在するのが当然とでも言わんばかりに威風堂々とした巨大なXmasツリーが飛び込んで来る
ここは、大橋高校の体育館――
ツリーの星を壊してしまった、あの日の
「ええーっ?!」
実乃梨の声が体育館中に響き渡るのだった
『とき×みの』
―つづく
あぁリロって無かった
>>602さんごめん
予告無しで申し訳ないorz
って言うか、地震をもって書いて良いですよ。
ええ、もぅ震度100くらいの。
高須亜美と高須竜児の子供ね。
あーーーと 亜美は亜美でも、きっと「川嶋亜美」でなくて
「逢坂亜美」なんだろうなぁ (違
611 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 01:31:07 ID:UI0pV2af
aruni
kimatterudaro ---
「……むむむむむ。」
上座に座して、何やらウンウン唸る生徒会長を尻目に、
富家幸太(彼女有)は以下の様に考えていた。
まったく…せっかくの春休みに、緊急召集なんて…冗談じゃないよ。
今日は、さくらちゃんとデートだったんだぞ…
など、と。そして、
「あのぅ…会長…それで、今日は何するんですか?」
心底、気だるい感じで問うた。
「バカヤロウッ!!会長ではないッ!!
監督と呼べッ!!監督と。」
叱責された。
「はぁ?」
意味が解らない。
そういえば、前任のおっさんも、時々、意味の解らない事を言ってたような…
「俺は、今、ここにOBC…つまり、いわゆるひとつの、
オーハシ・ベースボール・クラシックの開催を宣言する。」
「……はぁ?何考えてんす…
「幸い、今は、春休みだ。授業はない。
台風時の緊急連絡網から、全校生徒に連絡をいれろ。
明日、プレイボールだ。」
「…ムリに決まってんでしょ…そんな事…」
最近の会長は、前会長になんだか似てきた…
「何がムリなもんかッ!!
やれぃッ。動け。働け。文句を垂れるな。
先週、卒業した三年生も忘れるな?
全校生徒による、OBCだからな。」
などと、言われているが…
大きな間違い。この人は、前会長よりぶっ飛んでる。
「…いや、だから、ムリですってば…」
「貴様ッ!!貴様は 、あのイチロー選手の最終打席。
あれを見て何も感じなかったのか?
感じたろう?踊ったろう?湧いたろう?脱いだろう?
不可能など無いッ!!」
「…はぁ。」
いや、見てないし。試合…だいたい今時、野球位でそんな…
「…監督ッ。あたし感動しました。
やりましょう。OBC。」
エエエエェェ〜〜〜
「…幸太くんも、やるよね?一緒に。ね?」
「あ、いや…」
「ねッ!?」
「………」
翌日。イチロー選手に感動した生徒は、意外と多かったらしく…
全校生徒の半数以上(卒業生含む)が、グラウンドに集まった。皆、暇なのか?
そして、滞りなく、開会式を経て、クラス毎に別れる事となった。
ああ、さくらちゃん……
***
ニーC組
「うおおお〜優勝だぁ〜世界一だぁ〜〜!!
私は世界を取るぜぇ。掴み取るぜぇ。うおおお〜。」
「そうだ。その意気だ。櫛枝。先発は任せたからな。
お前の腕で、俺を男にしてくれッ。」
「おぅよ。任せて下さいッ。監督ッー」
「うおおお〜」
「うおおお〜」
「…なんか、すげぇ気合いだな。
しかも北村の奴、相変わらず、発言がセクハラだし。」
「まあ、みのりんも気にしてないようだし。
良いんじゃないの?」
「よしッ。皆、集まってくれ。
コレがうちのオーダー表だ。見てくれ。」
一番 サード 逢坂
二番 ショート 高須
三番 キャッチャー 北村
四番 ピッチャー 櫛枝
五番 ライト 能登
六番 レフト 春田
七番 セカンド 香椎
八番 センター 木原
九番 ファースト 川嶋
「お〜俺、イチロー選手と同じライトじゃん!?」
「能登…アンタがエラーしたら、あたしがカバー入らなきゃ…
なんだから、しっかりやってよね。走るのヤダし。」
「…んもう。なんだよ。そんな言うんだったら、見せるよ。
魅せてやるよ。華麗なグラブ捌きを。」
「あ〜ん。亜美ちゃん…野球とかした事ないし…こわ〜い」
「亜美。お前は立ってるだけで良い。
打撃も守備も期待してない。」
「あんだと!?てめッ。祐作。
はいはい解った。キレた。亜美ちゃんキレた。
やったるわい。亜美ちゃんの本気見せたるわ〜い。」
「ねぇ、みのりん?サードってどこ?何すれば良いの?」
「ん〜?ああ、サードは三塁手だよ。
ほら、あそこが三塁。
あ、ショートが高須君なのか。
じゃあ大河は、思い切ってボールに突っ込んじゃえば良いよ。
大河の後ろは高須君が守ってくれるからさ。
きたむ…監督にしては粋なオーダーだね。
打撃も守備も大河の後ろが高須君だ。
高須君。大河を頼むぜ。しっかり守ってやってくれ。」
「お、おう。」
「えへへ。お願いね。頼りにしてるからね竜児。」
「おうッ。任せとけ。」
誰か続き頼みます
なんだこの嵐は(荒らしじゃないよ)
最後まで書いてないだけで発想が良すぎるからみんな書いてください
そして
のとまや!だからしょうがないけど外野は男の方が…いやなんでもない
>>614 ピッチャーを竜児にするとあの眼光で何も知らない敵バッターは……
>>597 それってもちろん、留美ちゃんは、亜美の美の遺伝子を受け継いでいるんだよね…?
もし高須の遺伝子が発現してて、「亜美ちゃん、生まれてくる子が不憫だから、高須君とケッコンすんのやーめた」
とかならねーように
わかったぞ...........
みんな俺から大河を奪う気なんだ........!
そうにちがいない!!
ぐぅうううう俺から大河をとったら何が残るんだよぉぉお!!!
621 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 17:21:24 ID:FAc2OYbr
ついに最終回でつね
それもそうだがsageようぜ
竜児はキャッチャーじゃないのか女房的に考えて
>>623 女房的ww
なんだこの完成してない作品連投は…orz
気になるジャマイカ
竜児と亜美の娘は留美ちゃんかぁ
かわいいとしか書かれてないけど、母親よりもスレンダーで、髪が長くてツインテールなのを希望
胸は、母親よりも控えめ
いや、目の前に初音ミクのフィギュアがあるからなんですけどねorz
で、歌唱力に非凡な才能を発揮、母方の祖母である川嶋安奈が芸能界に入れようとしている
とか、妄想してしまった…
>>625 某TAWARAみたく、父親が実は大物893とか言われそうだなw
芸能誌じゃタブー扱いされたりとか。
>>623 大河の剛速球は難なく受け止めるのに
あーみんの変化球はポロポロ落とすキャッチャーか
原作でも竜児の祖父は税理士
ここは、原作通りに祖父の跡を継ぐか、「我らが同志」みたく、
亜美と一緒に弁理士とかの堅気でいてほしい
893設定には正直食傷気味
で、娘は、隔世遺伝で祖母(川嶋安奈)に似ている、とか?
>ここは、原作通りに祖父の跡を継ぐか
ここは、原作に出てくる祖父の跡を継ぐか
に訂正
>>579ですけども、予想以上に需要あるみたいなので続き書いたらまた投稿しますー。
とりあえずタイトルは「娘はちわドラ!」でどうですかね、ええタイトル命名に定評の無い私です。
留美ですけど、特に容姿は可愛らしいとしか決めていないのでお好きに妄想なさってください。
春田「おい、たかっちゃん、その可愛い子誰よー!」っていう反応です。
とりあえず竜児には全く似てないよ!
名前はオーソドックスに竜児のりゅう→留→る で 美は普通に亜美の美ですねー。
とりあえず明後日辺りには投稿したい。と言うか単純な話しか書けないよ私!
どう見ても
>>597でした。本当にありがとうございました。
すいません。
>>628 どう転んでもあの小心主婦男は893なんかになれるタマじゃないだろ
まあ普通に街歩いてたら893以外の何者にも見えないがな
「なあ、あの子って歌手のRUMIじゃね?」
「ホントだ!可愛いなあ・・・・・・でもRUMIと手繋いでるオッサン、何モンだ?」
「あっ!抱きついた!オッサン照れてるけど…って、グラサン取ったらまるっきり893じゃん!!」
「マジで!?RUMIが893の隠し子ってのはホントだったのか!?」
とかいうのが噂の真相
>>631 期待してまっせ!
じゃあ、ちょっと小ネタでも投下。失礼しますよ。
〜もしも修学旅行が沖縄だったら〜
『高須くぅ〜ん?どう亜美ちゃんの水着姿?あ、そのやらしい目つき、もしかしてほれちゃったぁ?』
『この水着新しく買ったんだ〜!どうよ?やっぱ亜美ちゃんかわいい?』
『前に別荘で見せた水着だけど、みんなは見るのは初めてなんだよ?でも、高須君は二回目。なにか優越感感じない?』
『なんか男子の目線がいつもより、凄いんだけど… 高須君ちょっと私隠してくれない?そこのパラソル行こうよ』
『…なんか高須君に守られてる手乗りタイガーみたい…。いつもタイガーはこんな気分だったんだ…。なんかうらやましいなぁ…』
『あぁ〜…、ちょっと日差しが強くて熱中症みたい…。高須君ちょっと肩借りていいかな…?』
『え?飲み物くれるって?…でもそんなわざわざ新しいのじゃなくて、さっきまで高須君が飲んでたやつでいいよ♪』
『あ〜おいしぃ。ありがとう♪ …どうしたのそんな缶見つめちゃって… あ!関節キスってやつだ!別に亜美ちゃん気にしないけどなぁ…』
『高須君はその缶を意識するって事は私を意識してくれるの?そうだといいなぁ…。さっき、実は私ドキドキしたんだぁ…』
『…川嶋』
『ん?な、何高須君!?ち、近いよ!!』
『川嶋、…川嶋ぁ!』
『え?そんな?高須君いきなり大胆!ちょっ…、よ、夜までまってぇ〜!!』
* * *
…って私は鏡に向かって何してるんだろうか…。そんな事ありえないのに…。
というか沖縄で高須君と話す機会あるのかな…まぁ無くても作るけどね!亜美ちゃん頑張るもん!
さて、水着&ビーチで高須君を落とすシミュレーションは出来たし…次はやっぱ風呂上りかしら…
お風呂に行くタイミングは高須君をマークしてれば分かるし…ちょうど湯上りで、髪を艶やかにうなじを見せる!
和風美人って感じで…ごみ拾いのときの濡れた感じじゃなくて、こう…エロくね!
というか、勝負は行きと帰りの飛行機の中!隣になるように仕向けなくちゃ!
そうそう、今日はHRで修学旅行の話してるらしいから、麻耶にメールで内容伝えるように言ってあるんだよね〜。
〜♪〜♪
お、きたきた♪うわさをすれば何とやら。え〜っと内容は…
「え〜ん!亜美ちゃ〜ん!!
なんか沖縄の旅館が燃えちゃったらしくて雪山になっちゃった〜!!」
え!?何このメール?間違い??と、とにかく麻耶に電話よ!
* * *
本当だったんだ…
ど〜しよ〜!せっかく亜美ちゃんの高須君を落とす計画その名も『ちわドラ!』計画が…
雪山かぁ〜…
『高須くぅ〜ん!どうこの新作のウエア!なになに〜?ほれちゃったぁ〜?』
『リフト一緒に乗ろうよ!初めてなんでしょ?教えてあげる!』
『うわ!高須君どこ行くの!?そっちはコースじゃないよ!』
『まったく止まれないなら早く言ってよね?…にしてもここどこ?』
『もぅ!凄い吹雪!これじゃあヘタに動かない方がいいわね…。ちょうどそこに山小屋があるから非難しましょ!』
『寒いわね…。え?ウエア貸してくれるって?いいよそんなの!…でも寒いよね?』
『こういう話知ってる?着込むことより肌を重ねあったほうが暖かいらしいよ…?』
『わ、私はかまわないよ!だって、高須君だもん…』
『じゃ、じゃあ脱ごっか…』
別に有りっちゃ有りかも…
以上です。
なんか無性に書きたかったんだ…
ではノシ
637 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/26(木) 00:53:50 ID:BSNtm72e
妄想乙女な亜美ちゃん…
イケる!
現実的に竜児がなれそうな職業を以下の点を踏まえて考察してみた
@竜児は作中を読む限り国立大でも通用する理系
A竜児は片親で経済的余裕もない
B性格的には安定を求めていると思われる
C現在100年に一度と呼ばれる大不況中
結論:竜児は高校卒業後は防大に行って自衛官になった方がいい、防大は金掛からんし、給料もらえる。寮生活は厳しいが竜児なら普通に過ごせるレベル
>>636 GJです!
ところで聞きたいのですが、
原作が終わってアニメが終わっちゃっても
皆さんいてくれます…か?
ついに終わったちゃった(´;ω;`)
しかしこのスレはまだまだ続くぜ!
あーみん幸せにしたい人はポータブルで
投下します。携帯からなんで変なところがあったらごめんよ
爽やかな春の風も、朝ではまだ少し肌寒い。竜児は一度窓を閉めてから、再度弁当の仕上げに取りかかった。今日の昼食は久々に力作だ。何しろ自分はこの弁当には特別の誇りがあるのだ。
ガチャ ズカズカズカ
そんなことを考えながら手早く弁当を仕上げていると、朝から(昼間でもダメだが)呼び鈴も鳴らさず、勝手知ったる他人の家と入ってくる人影一つ。
「もう少しで終わるからそこに座って待ってろ。泰子はまだ寝てるから静かにな」
「へいへい。あ、またピーマン入れてる〜。亜美ちゃん嫌いだってよく知ってんでしょ?」
「十年以上押しつけられ続ければそりゃ、な。ピーマンは栄養素が豊富なんだよ。彩りも良くなるしな。」
相も変わらぬ対応を繰り返しながら、竜児は『二つ』の弁当のふたを閉じた。
勝手にもしもシリーズ 亜美の幼なじみが竜児だったら
「あー、今日からまた学校だよ…。っとにマジだり〜」
「新学期の初っ端からそれかよ…今日はクラスの発表とLHRくらいだろ」
「ていうかそんだけしかないならお弁当いらなくない?あ〜、今日のお昼はピーマンと戦わないといけないのか〜。ホントだり〜」
「だからピーマンの栄養は美容にいいと…」
亜美の弁当は竜児特製である。必要な栄養素を考え、出来るだけ亜美の期待に応え、そして人気者の彼女に変な噂をたてぬようわざわざ二つは別メニューで毎朝作っている。
彼女は贔屓目を抜かしても相当な美人だ。サラサラの髪に整った顔、均整の取れたプロポーション。ありふれた言葉だが実際にこの3つが揃っているのはめったにみれない。実際、彼女が現役のモデルだと聞いた人は、大抵驚くより先に納得する。
そんな彼女の武勇伝を聞くたびに竜児はこの上なく誇らしく思うのだ。こんな彼女が幼なじみであり、この美に、弁当を通して自分も多少なりとも貢献している事に。
「亜美ちゃーん!おっはよー!」
「おはよー麻耶、奈々子」
「今年もうちらクラス一緒だよ。ついでにまるおも」
「ああ、だから朝から麻耶がテンション高いのね」
「えぇ!?いゃ、そーゆーわけじゃ…」
竜児の栄養談義がトマトは世界を救うまで行った辺りで二人は学校につく。一足先にクラスを知った亜美とその親友たちを横目に、クラスが張り出された掲示板に身を向ける。
かなりの人だかりに、しかし自分が行けば人は減るだろうと(確信を持って)思ってしまったことに自己嫌悪に陥るが、幸い想像が現実になり、更に彼を落ち込ませる事態は彼の親友の手により回避された。
「おぉ高須!また同じクラスだな!やはり俺達は結ばれる運命のようだ!」
余りにも誤解されそうな言い回しではっはっはと高笑いする親友にははは…と苦笑いを返す。
ふと、その意味する事に気づき、幼なじみの方を見やると、あからさまに引きつった顔を見せる木原ににこやかに手を振ってくれる香椎、そしてそっぽを向いた亜美がいる。何やらこっちには一瞥もくれないが、考えてることはよくわかっている。何せ大切な幼なじみの事だ。
あれは照れ隠しだ。
その後、初日からはっ倒された幼なじみを抱きかかえながら手乗りタイガーと激闘を繰り広げた亜美が、
ずっと幼なじみという距離に安心していたけど彼を好きな人が出てきて悶々とした挙げ句だんだん今までの距離では満足できなくなるという幼なじみのお約束パターンに陥るのだが、それはまた別の話
うぅ……(´;ω;`)
駄目だ、、良い物語すぎる……
大河と竜児はホントに幸せになって欲しい……
彼らに天下無敵の幸運を……
以上です。アニメ?やってませんが何か?くそう
某所のある作品にかなり影響を受けてます。シチュだけですが。心当たりがある人は笑って許して。最悪本人が見てそうでちょっとビビり中。
発想の元は竜児って自分に理解があって、そばにいてくれる人には心許しちゃいそうかなと思ったから。自分に自信ないやつだし。三人娘はそういう人に遠慮しちゃうタイプだし。んじゃ幼なじみ最強じゃね?っていう。
あとシリーズって書いたけど次回未定。てゆーか誰か悶々亜美ちゃん書いて。
>>648 イイヨイイヨ〜GJ!
こういうもしも〜シリーズ大好きだ
あらすじ
WBCに影響された生徒会長が、OBC(オーハシ・ベースボール・クラシック)を開催した。
ニーCでは、監督(自作自演)からオーダーが発表され、盛り上がるチームを余所に、
大河と竜児の2人は、そっちのけでイチャついていた。
第二話「野球をしようと君は」
「え〜っと、それじゃあ、このオーダー表を大会本部(生徒会)に提出しなきゃならんのだが…」
コホン。と、ひとつ咳払い。
ニーC代表監督である北村祐作は、威厳たっぷりに、
「提出にあたり、チーム名を考えなければならん。
何か、案のある者はいないか?」
と、メンバーを見渡す。すると、皆、視線を下に向ける。
意見が無いので、頭を垂れる。自分に振らないでくれ。そういう意思表示。
では、無い。「やっぱ、これしかないっしょ。」「ウフフ。」「ですよね〜。」「わかります。」「フヒヒヒ。」
ああ、やはりな。と、代表監督も視線を下にやる。
1人を覗く全員の視線が、一点を指している。
そこには、羽を休めるため、グラウンドに降り立ったエンジェルの如き、
精緻で高貴で色々意地汚い、大橋が誇る、初代マドンナが居た。
「な、何!?りゅ、竜児とみのりん以外こっち見んな!!
爆発すんぞ、オルァアアア〜!!!」
『侍・タイガース』
誰とも知れず、何だかパクリ臭いけれど、
C組としては、他に考えるべくもないチーム名が、提案された。
「うむ。やはり、我々のチーム名として、それが一ば
「い…ヤダヤダ!!予感はあったけど、やっぱ、それか!!
私はヤダ。断固、拒否!!」
「むぅ…なぜだ、逢坂?俺は良いチーム名だと思う。」
ジイッと、代表監督に顔を覗きこまれ、いたたまれなくなったのか、
大河は逃げる様に、ピュッと後ろに居た竜児の影に、
その小さな身体を潜り込ませ、チョコンと、顔だけ出して
「だって恥ずかしいもん。
侍・ドラゴンズが良いよ。うん。そうしよう。
決めた。私は、侍・ドラゴンズに一票。
反論は受け付けません。」
「そんな事言わないでさ、タイガー。」
「そうそう。別に、今更、恥ずかしいもないでしょ?
アンタの名前なんて、校内中に知れ渡ってるんだから。」
「そんなの、ばかちーだって一緒じゃん。
なら、『毛むくじゃらチワワーズ』でも良いよ。」
「……黙れ、チビトラ。」
SMASH!!!
スパコ〜ンと、小気味良い、快音を響かせ、
『脳天直撃!!亜美チョップ』が、炸裂。
そこから先は、悪魔も目を覆う、凄惨で、実に醜い、小競り合いが展開された。
「あ〜あ。こりゃ処置無しだ。高須君、頼んだ。」
「おう。」
そして、水入り。
***
「…落ち着いたか?」
「…んみゅ…」
後ろから、包み込む様に抱きしめられた大河は、
牙を剥き、獲物に飛び掛かる己が本分も忘れ、
グニャグニャに溶けていた。とかちつくちていた。
すんでの所で、一命を取り留めた獲物が
「ケッ!!やってらんね〜よ。
死ぬまでやってろバカップルがッ!!
あ〜あ、可哀想な亜美ちゃん。」
などと、ぬかしているが無視。
だって、死ぬまで、やるつもりだから。だから、良いのだ。
「コレが盗塁。で、バント、ヒットエンドランな。
上から、ト、バ、ヒ、だ。」
「監督〜あの二人、聞いてないけど、良いんですか?」
「仕方ないだろう。
良くないと思うなら、何とかしてみてくれ。」
「え〜冗談じゃないって。大先生がムリなもん俺が出来る訳ないじゃん!?」
「なら、諦めろ。」
「監督ッ。あの二人には、後で、私めがサインを伝えておきますッ。」
とかも聞こえる。けど、無視。
世界の外で何が起きたって、私の世界は、竜児の腕の中。関係ない。
私には竜児が、竜児には私がありさえすれば、他は要らない。ココが世界なんだ。
「なぁ、大河?『侍・タイガース』どうしてもイヤか?」
「…んにゅ…」
「俺は良いと思う。強そ、もとい可愛いと思う。」
「可愛い?」
「そうだ。俺は虎が好きだ。可愛いから。愛してるから。」
こちょこちょ、と下顎を撫で撫で。
ゴロゴロ唸り、目を細め、
「本当?竜児は可愛いって思うの?」
「おう。」
「だったら…良いよ。」
虎、陥落。
***
「大河ぁ〜思い切って振ってこ〜〜!!
イッパツかましたれッヘイヘイヘイヘイ♪イッパツかましたれッヘイヘイヘイヘイ♪」
『侍・タイガース』の第一試合、哀れな最初の犠牲者は、名も無き一年生チーム。
彼らの名は、オーダー表を交換した監督のみが知り、他は誰も知らない。
そして、彼もまた、彼らの名に興味が無い。
したがって、『名も無き一年生チーム』である。
「逢坂ゎぁ〜〜ッ!!構わないから初球から、かっ飛ばしちゃえ!!!」
ピッチャー君にとって、先頭打者手乗りタイガーは、悪夢に他ならなかった。
最近、彼氏が出来て丸くなった。と、専らの噂だが…
まかり間違えて、万一、ぶつけようものなら、乱闘必至。
手乗りタイガーは、自分達ナインをモルグに叩き込み尽くす事だろう。
しかも、噂の彼氏さん…高須さんだっけ?ネクストバッターズサークルに居る人。
めちゃ怖い。何か凄い眼でこっち見てるし……
自分の肩に、チーム全員の命が掛かっている。
比喩じゃなく、マジで。
雑念塗れのピッチャー君。大きく振りかぶって、第一球。投げました!!
握りも甘く、腕の振りも、リリースポイントもイマイチなピッチャー君から繰り出された球は、
ヘロリと、情けない軌道で、伸びもキレも無く、打者の手前でバウンドするクソボール。
ちょうど打者の胸辺りまで跳ね…
コヵキン!!
綺麗にセンター返し。
「〜♪」
と口笛など吹きつつ、スキップ。一塁は悠々セーフ。
「うおぉ〜大河すっげぇ〜すげぇよ大河。」
「フフン。言った通りだろう?
逢坂はマジに原石なんだ、磨けば、お前にだって負けないさ。」
「うぉぉ〜何だか燃えてきたぜぇ〜〜」
先頭打者の出塁で、沸き立つベンチ。
その後、二番、竜児は、送りバント。
地味なので、実乃梨以外の誰にも評価されなかったが、
ラインに沿うように真っ直ぐに転がす、見事な送りバントであった。
三番、北村は四球を選び、四番、櫛枝が走者一掃のスリーベース。
五番、六番が共に凡退。チェンジ。
この結果を、六番は「あちゃ〜」などと、気楽に受け止めていたが、五番は、心底落ち込んでいた。
良いとこ見せたかったのだ。下位打線に。特に八番に。
それが、平凡な外野フライに終わってしまった。非常に…落ち込む。
しかし、五番が思っているよりも、下位打線の彼に対する評価は高かった。
彼女らは、野球に明るくない。したがって、平凡な外野フライでも、
「あ、けっこう飛んだ〜」とキャーキャー騒ぐ。
と、いう訳で、八番は「能登も結構やるじゃん」とか思っているのだが…
そんな事、五番は知らないのだ。
裏では、テンションの上がりきった剛腕が、一年生を震えあがらせ、五回コールド。
『侍・タイガース』上々の滑り出しである。
***
「あのさ…次の試合まで時間あるから…
キャッチボールでもしない?
イヤなら別にアレなんだけど…良かったら…」
五番は、勇気を振り絞り、八番を誘う。
はぁ、なんで、あたしがアンタとキャッチボールなんかすんのよ。バカじゃね?
と、いう返事を覚悟していた五番だったが、意外にも…
「え?別に良いけど…
その代わり、ゆっくり投げてよね、ゆっくり。」
との返事。先の試合で、五番は割と活躍した。
第一打席こそ凡退したが、第二、第三の打席では犠牲フライで打点2をあげている。
麻耶的には何が凄いのかよく解らないが、あの櫛枝が、
「犠牲フライは立派な仕事。犠牲フライ無くして勝利無し。
求められる場面で、フライを上げる事は、プロでも難しいんだぜ?
なかなかヤルな能登君は。」
と、言うのだから凄いんだろう。
そういう訳で、麻耶の中での能登株は、本人の知らぬ所で上がっていた。
申し訳ないけど、ここまでなんだ。
ゴメンね、変な所で切って。
このスレの職人さんは、タイトル付けない人が多いなぁ
某掲示板の某作品スレだと序章とか銘打たれてるが
続かず断念されてる作品が一杯あったり、初めての人でも付ける人が多いのに
なんでなんだろな?
一部を除いて長編が少ないからじゃね?
659 :
ありそたそ:2009/03/26(木) 09:40:27 ID:u+TWovHO
初めて書き込むます。
竜児×大河の本編アフターみたいな…感じか? な? 今のところ3スレ。
SL66様の一連の作品群に「ななこい」などの奈々子様関連SSなどのここの職人様マヂぱ
ねぇですね。
思わず触発されて、思わず書いてしまった俺は中二病ですすみませんすみません。
あらかじめ言っておきますが、エロパロなのにエロなくてすみまs(ry
タイトル「カルパッチョ×ジョンベネ」です。俺センスないです。
「うわー、私プラネタリウムって初めて! すっごい楽しみ!」
きょろきょろと受付周りのチラシや、売店の星座盤や天球儀を忙(せわ)しなく大河は眺めながら、竜児の手をより一層強く握った。
ふう、とため息をついた竜児の、まるでその様は小さな子供を連れた年の離れた兄妹のようで――これじゃ恋人同士には見えないんだろうな――と苦笑いを浮かべる。
「こらこら、もちっと落ち着け、もうガキじゃないんだから少しは大人しくしろよ。…まぁ、俺も小学生の時以来だから実は楽しみなんだけどな」
本人にとっては生暖かい視線のつもりでニヤリと(周りの人からはニヒルな)笑みを浮かべて、自身も少し浮ついていることを知らながらたしなめる。
「なによ、竜児だって結構しゃいじゃってるじゃない!」
普段出さない稚気を見て取り、竜児の懐に入って大河が竜児の面長を仰ぎ見る。うっ、と一瞬怯んだものの「お前ほどじゃないの」と竜児は平静を装うが、ちょっとだけ可愛いと思う自分に情けなさ(こんなことでうろたえる)内心で肩を落とす。
「もー、のりが悪いんだから! 竜児にはもっと若さってやつを持ってもらいたいものだわね。ただでさえ主婦染みちゃってるんだから!」
「はいはい…っと、なになに…」
手にとったこれから見る予定のプログラムを読む。
「今からやるのって特別プログラム〜宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』〜だって。全天周ドームCG映像でお楽しみいただけます…か。あ、次の放映は『夏の星座を楽しもう』だってさ。時間によってプログラムの内容が違うみたいだけど、これで良いよな?」
「良いじゃない。私、星なんて大してわかんないけど宮沢賢治の銀河鉄道だったら知ってるわ。確か、カルパッチョとジョンベネが猫だったわよね?」
「ちげぇよ、全然ちげぇ! カムパネルラとジョバンニだ。お前本当に知ってるのか? それになんで猫なんだよ。人間だよ人間!(竜児はアニメの銀河鉄道の夜を知らない)」
「うっさいわね、わかってるわよ! 一々細かいこと言ってると目つき悪い上に禿げ上がって凄いことになるわよ」
「ちょ、おま! ハゲは関係ないだよハゲは!」
教室のごとくいつものやり取りが始まろうとする寸前、アナウンスが流れるは『上映中は席をお立ちになりませんよう、また他のお客様がいらっしゃるので、お静かにお願い致します。お客様には〜……』と、タイミングを計ったようであった。
「……」
「……」
「ま、もちょっと静かにな」
「そ、そうね」
アナウンスのさることながら、恐らくはこの施設(プラネタリウム)の常連客や受付嬢の視線もあって小さくなる二人だった。
「へぇ、建物はちっさそうだったのに中っておっきいのね…」
「おー。確かに。結構席もあるみたいだしな」
二人ともプラネタリウムの意外な大きさと、全天周のスクリーンの非日常的な造形に驚きながら感嘆の声をあげる。
「あ、席とらなきゃ。私こことーーっぴ!」
「こら、はしゃぐな。周りのお客さんに迷惑になる」
懲りてない、と自称気遣いの竜児はハラハラ。周りのお客さんに迷惑ではないかと眦(まなじり)を多少ひきつらせて頭を垂れる。ぺこぺこぺこぺこ。
――謝るために生まれてきたんだ、俺。
――無茶しやがってwwwww
「は〜い!」
対して、大河は超然としており、素直なのは声だけだった。
「あと席はなるべく映写機のそばの方な。そっちの方が全体的に見れるらしいぞ」
「うわー、でた。竜児のうんちく」
「うんちくっておまえ。一応ちょっとくらいは下調べするだろ。普通」
「あー、はいはい。普通。確かにあんたにとってはフトゥーよね。じゃ、ここで良いわね」
「おい、気をつけろよ」
竜児が確保した二つ並んだシートに大河は腰掛けて背もたれに委ねた瞬間――「うぉっ!」と勢いをつけて倒れたシートの衝撃に声をあげる。
(きゃぁ! じゃないんだよな…こいつ)
プラネタリウムのシートは映画館などと違い、夜空に広がる星を"見上げる"ようにして観るため、シートは最初から角度が大きく設定されており、天頂付近の星座を眺めやすいように工夫されているが、知らない人は普通に背もたれることで、予想外に驚くことがままある。
「なによこれ…」
「いや、上見上げるんだから普通だろ…」
「たっく、なら最初からそう言ってよね」
頭をぶつけた訳ではないものの、腰を少し起こして髪を整える仕草で大河はつぶやく。
「注意する前に突っ込むからだ。ドジ」
「………」
じとー。大河のねめつける視線に
「なんだよ」
俺は間違ってないじゃないかと、大河の隣に腰掛けて、首を向ける。
意外に近い顔と顔の距離に――うわ、睫毛長いな。こいつ――などと、素直に思うや否や、またしても竜児はうろたえる。
「もっと早く言ってよね。そういうのはアンタの役目。ご主人様が気分を害さないようにするのが臣下の勤めよ」
身を乗り出し、少しばかり意地の悪い笑みを浮かべ、更に顔を近づけて大河は竜児の三白眼を捉える。
「…お、おぅ」
若干首を引き気味に応えた竜児だが、刹那、鼻先が触(ふ)れる。
(顔が近いぞ大河!)
内心ドキドキしながらそっぽを向き、本人なりに"かわしたつもり"で、普段の前髪をさわる癖に近い仕草で、触れた鼻先に右手で触れる。
竜児が自身を意識したことがわかって、大河は竜児の首に両手を添えてもう一度自分の方へと向きなおさせる。
無理やりな仕草に、竜児は首の痛みを訴えるのをギリギリで押さえ(周りに他のお客もいるため)乾いた声で「なにするんだ!(!マークが全角⇒半角になるくらいは控えた)」と、視線が重なった瞬間、息を呑む。
「私ドジなの。だから竜児……"わかった?"」
薄暗くなり始めたドームだが、非常口の緑光が大河の視線を浮かび上がらせる。
大河を支えるのは誰か――自分以外に他はない。彼女の父でも母でも誰でもない。彼女の親友にもそれを譲ってやるつもりはない。それは自分自身で決めたことだ。いつかの冬、川面での言葉。大河に向かって誓ったことに嘘はない。
支えるばかりでは疲れてしまうが、そこはそれ。大河は自分の足りない部分、沢山あるだろうソレを補って、足を止めた時であっても力強く牽引することだろう。
「……んなの、当たり前だ」
親子ではない他人が、多少の打算と諦め。加えて、それは信頼かもしれないし友情かもしれない様々。大河と竜児の場合に当てはめれば、それは近い将来に夫婦という形をとるになるかもしれない。そうして、相互扶助を行う。家族になるとはそういうことなのかもしれない。
「ならいいのよ」
プラネタリウムのプログラムが始まる。3DのCGで作り上げられた、星の輝き。汽車の響きが響く。物語の冒頭で、川面から飛び立った白鳥が夜空へと消えて、南十字星へと昇華する。
大河は星の世界へと身を委ね、竜児はそっと隣に座る大切なヒトの手に触れる。
小指の腹で甲をくすぐられて、暖かさが伝わって……二人は静かに手を握り合った。
663 :
ありそたそ:2009/03/26(木) 09:48:12 ID:u+TWovHO
とりあえず勢いって怖いと思いました。
不満は全部職人様方の良作SS所為にして終わるますorz
SL66様の亜美ちゃんは俺の中で確実に亜美afterとなりました。
奈々子様が俺的脳内嫁レベル急上昇中で、
3人娘⇒4人娘になってます。いつのまにか。
職人様方の作品の続きが非常に気になります。楽しみにしております!
つーかみんなレベル高すぎw
機会あればまた
乙
良い甘さ加減ですね
>638
>結論:竜児は高校卒業後は防大に行って自衛官になった方がいい、防大は金掛からんし、給料もらえる。寮生活は厳しいが竜児なら普通に過ごせるレベル
待て
寮に入ったら泰子と大河の世話は誰がするんだ
いや、泰子も竜児を一人で育てたんだからある程度の家事はできる
シングルマザーを舐めたらあかんよ、ソースはうちの母ちゃん
大河の子育て姿見たら竜児は二度と傍を離れないだろうよ
>>667 やっちゃんは料理は出来るらしいが凄まじく時間がかかるらしいな
正直に言おう。
アニメ最終話の大河の「もう一度……」で軽勃起した。
あれは、反則じゃね?
このリビドーをSSに……。
残念ながら俺は一気に萎えてしまっtry
給与の出る大学校イコール防大、だけじゃないぞ。
他防衛医大(所沢)、海上保安学校(舞鶴)、海上保安大学校(呉)、気象大学校(柏)、航空保安大学校(泉佐野)とかがあって、
理系の竜児には大橋から近いであろう気象大学校をお勧め。自分で気象図を書いて洗濯物外干しできる日を特定する、
趣味と実益兼ねてるぜ。
>>673 海上保安大学校に行ったら海猿だなwww。「海ドラ!」とか?
なんか北村の方があってそう
このスレだと竜虎ものはあまり求められてないかもだけど
原作終了後の妄想SS投下します
タイトルは『未来への一歩』
証言その1
「木原麻耶でーす。あたし、見ちゃいました。
この前薬局に行ったら、おばさんたちに混ざってチラシ片手の高須くんがいました。
なんか両手にオムツ三つも抱えて、おっきなエコバック持ってレジに並んでました。
オムツだなんて……ねえ?」
証言その2
「えっと、能登久光です。文系だから高須とはクラスが分かれたし、、
放課後とかも忙しいらしいからあんまゆっくり話もできないようになっちゃったんだけど、
この前昼に廊下で見かけたとき、すっげえ眠そうな顔してたんだよな。
また何か悩んでるのかと思って聞いてみたら、『最近夜泣きがひどくて』だって。
………夜泣き?誰が?」
証言その3
「春田浩次です。この前見たっす。いつも行くスーパーで瀬奈さんと菓子見てたら、
あ、瀬奈さんってのは、ガールフレンド。え、知ってる?フヒヒ!
それで〜、そうそう、二人で菓子見てたら、野菜コーナーで高っちゃんがカゴ持って大根選んでた。
そばにはなんか赤ん坊抱えたタイガーがいて、粉ミルクみたいなのをカゴに入れようとするタイガーに、
『それはあっちのスーパーのほうが安い。」だって。
そのまま赤ん坊あやしながらレジに二人で並んで……ほとんど新婚状態?」
「だーかーらー!」
当人達の前で好き勝手に噂する三人に大河は声を張り上げた。
「あの子は弟だって言ってるでしょ。年は離れてるけど。」
言って、大きなため息。
「大河、落ち着けって。みんな分かってるんだから。」
そんな大河を竜児は隣でなだめる。
そんないつもの光景に友人達は声を出して笑った。
大河が復学して一週間が経った。
新学期初日に突然帰ってきた大河を見たときのみんなの驚きようといったらなかった。
二人は互いのことも家庭のことも、みんなに詳細に説明した。
大河は心配かけたことを謝り、そして友人達一人一人に丁寧に礼を言った。
みんなは何も言わず黙ってそれを聞いてくれて、
そして、暖かく祝福してくれたのだった。
今日は天気は快晴。女性陣のリクエストで、昼食はみんなで校舎裏の芝生で食べることになった。
生徒会室で眠っていたビニールシートを引っ張り出し、お弁当をつついてのプチお花見。
わいわいとみんなで雑談し、しかし話題の中心は、やっぱり竜児と大河のことだった。
「目元とか大河にそっくりで凄い可愛いかったよね、あーみん。」
「そうね〜、高須くんに似なくてよかったじゃん。」
だから弟だってのと再度のツッコミに笑顔を浮かべる実乃梨と亜美。
先週末二人はそれぞれバイトや仕事の予定をキャンセルし、
他のみんなも予定の都合をつけ、大河の新しい家に行ってきた。
両親共に仕事で不在の中、朝から子守に奮闘していましたといった竜児と大河に迎え入れられ、
ちょうど寝付いたところだったという赤ん坊の顔を見てきたのだ。
可愛らしい赤ん坊と、助け合いながら子育てをする新婚の若夫婦といった構図。
最高のツマミが手に入り、話題は尽きない。
「もう、みんなダメよそんなに茶化しちゃ。」
そんな奈々子の助け舟。
「香椎の言うとおりだぞ。笑い事じゃない。」
そう、実は笑い事じゃないのだ。
拳をにぎしりめる北村。
「でもよ〜、こんな噂信じるやついるのか〜?」
春の陽気を吸い込むように春田は大きく伸びをし、のん気に言う。
「タイガーがさ〜、赤ちゃんを出産するために、学校休学してたなんて噂をさ〜。」
そう、大河が帰ってきて以来、どうやらこの学校では密かにそんなトンデモな噂が流れているらしい。
おそらく大河が弟を抱えているところをどこかで誰かが見ていたんだろう。
放課後に制服のまま赤ん坊を抱え、周囲の注目を集めまくっている様を竜児は思い起こす。
とはいえこんなバカな噂を信じるようなやつがいるかというと、
「それが意外と信じてるやつが結構いるみたいなのよ。」
げんなりとして大河は言った。
3年になり、友人たちもクラスはバラバラ。
このメンバーでも大河と同じクラスなのは奈々子だけになってしまった。
旧2年C組のクラスメイトたちはともかく、他の生徒たちにとってはいまだに手乗りタイガーは畏怖の対象のようだ。
一ヶ月以上も休学して、突然帰ってきた逢坂大河が、なにやら放課後赤ん坊を抱えて買い物をしてたりしてるらしい。
そんな好奇の視線が教室でも飛び交っているのだという。
「別にそんなくだらない噂なんてどうでもいいんだけど、
あの子が変な目で見られてるってのは、いい気はしないのよね。」
元々他人の噂なんか気にしない性格の女ではあるが、弟が絡む以上話は別らしい。
だからといって暴れたりするわけにもいかず、大河は若干イラついていた。
そんな大河は竜児の態度に不満顔。
「大体ね、あんたはなんでそんなに余裕なのよ。
あの子がその……私と……、あ、あんたの子供じゃないかって思われてるのよ?」
「え、それは……。」
思わぬ一撃に竜児はたじろいだ。
好機とばかりに大河は一気に距離を詰め、触れ合いそうな距離で竜児の瞳を見つめる。
「なによ。何が言いたいのよ。」
「いや……、俺は、お前と一緒にいられて幸せだし、お前と一緒にあの子の世話をしたりできるのが嬉しいんだ。
周りの噂なんて放っておけよって、そう思えるぐらいに。だから……。」
小さな、でも力強い声で竜児は答える。
大河はその言葉に射抜かれたように固まり、頬を真っ赤に染めた。
「……な、なによそれ。そんなこと言われたら何も言えないじゃない……。」
なんとかそう搾り出すように呟き、しかし絡めあった視線は解かれない。
「大河……。」
「竜児……。」
呆れる一同。
全員で心の中で総突っ込みを入れる。
あんたらが人目をはばからずイチャイチャしてるから、こんな噂流れるんだろ、と。
「まあまあ、人の噂も八十五日って言うじゃない。」
なんとか冷静に言う実乃梨。
クラスは変わってもやっぱり一番の親友だった。
もちろん大河だってこんな噂が一時的なものだってのは理解してる。理解してるのだが、
「でも、このままだと私より先生のほうが大変みたいだし。」
「あー、確かに……。」
大河のクラスの担任、独身こと恋ヶ窪ゆりは、大河が帰ってきてからというもの、
以前以上に大河のことに気をかけているらしい。
この噂が流れ始めてからというもの、目に見えて化粧が荒れ、
心労でしなびれている担任の姿を思い起こす。
せっかくの春なのに、これでは彼女の春はさらに遠のいてしまうのではないだろうか。
「でもさ、噂って基本的に自然消滅を待つ以外にないよ。」
「こういうのって否定しても無駄よね。」
「今まで散々タイガーの噂話してきた俺らが言うのもなんだけどな。」
そんな能登の余計な一言に女性陣から冷たい視線。
たじろぐ能登を横目で見つつ、大河は先ほどから無言でなにやら考え事をしている亜美に気づいた。
「なによばかちー。なにか言いたいことでもあるの?」
「ん、別に……。」
歯切れの悪い返事。釈然としない大河はさらに問おうとするも、
「ほらほら、それよりもうお昼終わっちゃうよ。
ここで話しても噂が吹っ飛ぶわけじゃないんだから、この話はひとまず置いておこうよ。」
すぐさま亜美に遮られる。
「お、そうだな。もうすぐ午後の授業が始まるな。」
「やべえよ〜、俺次の授業当たるんだよ〜。」
じゃあちゃんと予習しとけ、と冷たいツッコミ。
それを合図に皆慌しく立ち上がる。
「ほら、大河。早くしろよ。」
「うん……。」
竜児は納得せずといった様子で牛乳パックを吸う大河の手を取り立ち上がらせる。
そんな大河をじっと見つめていた亜美が無言のまま北村に駆け寄り、なにやら耳打ちをしていたことに、
そのとき、誰も気づかなかった。
次の日の昼休み。
あいにくの天気のため、今日はいつものように大河と奈々子のクラスに集まることになった。
一足早く弁当を持ってやってきた竜児が二人や周りの生徒の机を動かしていると、
実乃梨と麻耶もやってきた。
「みのりーん!」
「おー大河よしよし。」
大河は実乃梨の胸に飛び込むと、小さな身体をさらに小さく丸め、頭をスリスリ。
これは昼の日課のようなものらしい。
麻耶は高須の姿を見つけると左右を見回し、口を開く。
「あれ、高須くん今日はまるおは?」
「北村なら今日は恒例の失恋大明神の放送だって言ってたぞ。」
「えー、今日まるおいないのー?」
露骨に肩を落とす麻耶。能登がまだ来てなくてよかったなと竜児は思った。
「北村くんもいないし、あーみんもいないし、ちょっと寂しいよね。」
「え、ばかちーも今日ダメなの?」
「なんか用事があるって慌しく出て行ったよ。今日はムリなんだって。」
つまんなーいと大河。より強く頭をこすり付ける。
能登と春田もやってきた。
机を並べ、弁当を揃え、手を合わせるのとほぼ同時に、
〜♪〜〜♪♪♪
聞きなれた陳腐な伴奏。
『みなさんこんにちは。失恋大明神こと、生徒会長の北村祐作です。』
北村のやっている失恋大明神の放送が始まった。
「おーはじまったはじまった。」
「いつも思うけど、このイントロなんとかならないの?」
「なんかまるおの趣味らしいよ。」
「ダサいよね〜。」
各々雑談しながらも耳を傾ける。
『今日は予定を変更して、急遽スペシャルゲストに来ていただくことになりました。
紹介します。みなさんもよくご存知、モデルの川嶋亜美さんです。』
『川嶋亜美です。みなさん、今日はよろしくお願いしま〜す。』
思いがけないゲストに一同停止。
「え?あーみん用事って、えー!」
「聞いてないよ〜。」
「亜美ちゃん今まで頑なに拒否ってたのにどうしたんだろうね。」
驚くみんなを尻目に放送は続く。
『川嶋さんはモデルとして活躍される傍ら、学校の各種イベントにも積極的に参加してもらっています。
新入生の皆さんも、学校のパンフレットの表紙を飾る川嶋さんの写真をご覧になられたことがあると思います。
我が生徒会のご意見箱に寄せられる意見の実に8割を占めていた、川嶋亜美ちゃんをゲストに!の声に、
本日ついに応えることができました。川嶋さん、今日はよろしくお願いします。』
『こちらこそお願いします。』
『さて、早速ですが、川嶋さん最近嬉しいことがあったそうですね。』
『そうなんですよ〜。実は、あたしの親友に弟ができたんです。
まだ生まれたばっかりなんですけど、すっごい可愛いんですよ〜。』
『それはそれは、おめでたいことですね。』
『その親友は、不器用なんだけど幸せそうに、一生懸命に弟さんの世話してるんです。
あたしも親友たちの笑顔を見てると、パワーが湧いてきて、ガンバローって気になってくるんです。』
「これって、大河のことだよな……。」
「ばかちー……。」
食事を運ぶ箸が止まったままの竜児と大河。
ぶりっ子モード全開の亜美の独壇場はその後も続いた。
その日の午後から、大河を取り巻く雰囲気はガラリと変わった。
好奇の視線は影を潜め、しかしクラスメイトたちから弟のことを聞かれたという。
「写真を見せたら可愛いって言われたわ。」
ぶっきらぼうに答えるも、どこか嬉しそうな大河。
放送の反響は凄かった。
すぐさま亜美が褒めていた子というのが大河の弟だという噂が流れ、
その笑顔を見ると願いが叶うなんて話も飛び交っているらしい。
そしてなにより、亜美の一言が効いた。
「まさか亜美ちゃんが失恋して今はフリーだなんてな。」
「ひょっとして俺にもチャンスありかも。」
二人の横を通り過ぎた生徒たちが願望を語っている。
そう、放送後半の恋愛話で亜美が語った、
『片思いしてた人に恋人ができて、今失恋中なんです。』
の一言で、大河のよからぬ噂はあっさり吹き飛び、いまや学校中で亜美のことが話題となっていた。
「ばかちー、かばってくれたのよね。」
「そうだな。あいつは認めないだろうけど。」
祐作がどうしても一回出てくれってうるさかったから出ただけだっつーの!
放課後に廊下で会った亜美はそう言い残すと、
スキャンダルが判明した芸能人のように取り巻きに囲まれながらさっさと帰ってしまった。
「ばかちー、私のこと……親友だって。」
「あぁ、親友だな。」
「私、ばかちーに助けられてばっかりだね。」
「大河……。」
喜びと申し訳なさが入り混じった複雑な気持ち。
大河は数秒かけて深くため息をつき、さらに続ける。
「ばかちーだけじゃないわ。みのりんにも、北村くんにも、みんなに助けられて……。」
「お前だけじゃないぞ。」
「え?」
「俺だってそうだ。俺だってあいつらに助けられてばっかりだ。
みんなに助けられて、それで今こうして……、」
竜児は左手に繋がれた大河の右手をしっかりと握り締めた。
その確かな存在を確かめ、続ける。
「こうして、お前と一緒に歩いていられる。」
「竜児……。」
「大河、幸せになろうぜ。みんなで、一緒に。」
このまま真っ直ぐに歩き続ければ、きっとキラキラと明るい未来にたどり着ける。
みんなで幸せを掴める。
「うん!」
力強い大河の言葉と共に、二人はまた一歩、幸せへの旅路に歩を進めた。
End
以上です
アニメは三年生編のない終わり方だったみたいで残念
乙
アニメの終わり方は俺も残念だった。
まあ、でも北村が卒業後兄貴を追って留学するってのと、
能登と麻耶がなんやかんやで良い感じになるっぽいってのがはっきりしたのは良かった。
その辺りのエピソードは原作の方でもきっちりスピンオフとして書いて欲しいな。
乙
ちゃんと原作読んだんだけどやっちゃんって結婚してないって言ってたっけ?
最終回それだけが気になった
>
>>684 乙
なんて可哀想な亜美ちゃん。
結局、一番可哀想なのは、いつだって亜美ちゃんなんだよな。
何かこの先、風水とかに依存して、若手芸人と結婚してすぐ破局。とかになりそう。
>>684 亜美の大河に対する気持ちが、凄い伝わりますね。GJです。
自分も久々に投下したいと思います。書き散らしですが、書かずにいられなかった。
タイトル:煮豆
689 :
煮豆:2009/03/27(金) 00:23:24 ID:NfqwWEPC
「だぁ、もうちょっと落ち着いて食えよ、大河」
いつもの昼の風景。竜児、大河、実乃梨、北村はくっ付けた二つの机を囲み、それぞれの弁当に箸を伸ばす。
がしがしと弁当をかき込む大河は、頬をハムスターのように膨らませていた。
「まぁ、でもその気持ちも分からんでもない。高須の作るご飯は、本当に旨いからな」
「ダイエット戦士の私でも、目の前に出されたら即ルパンダイブだね!
心どころか、食欲から理性から何まで奪っていきやがるぜ、とっつぁ〜ん!」
北村と実乃梨のべた褒めに、おぅ、と小さく答えつつ満更でもない。
隣でがっつく大河を見て、口端を吊り上げる。
毒入り弁当が最後の晩餐とも知らず、愚かな手乗りタイガーめ…!なんて思っているわけでは当然ない。
特に感想をきいたわけではないが、食べ終わった後の大河の満足気な表情だけでも十分嬉しいのだ。
だから、何となく笑っただけなのだ。
竜児の視線に気付いた大河は、「なによ」と視線だけで伝える。
竜児も、「何でもねぇよ」と視線で返すと、大河はふんっ、と鼻息一つ、また弁当に向かい始めた。
「なに〜?ちびタイガーは、今日も愛しの高須くんの愛・情・たっぷり☆お弁当なんだぁ」
ぼぉぅっふっ!と北村にタイガーショットが炸裂する。
「うおぉぉぉ!だ、大丈夫かい、大河!と北村くぐほぁっ!!」
飛び出した煮豆が北村の鼻の右穴にミラクルフィットし、しかし北村は動じない。全く動じない。
突然現れた亜美の言葉に、大河は激しく動揺してむせる。竜児は慌てて茶の入ったコップを渡した。
大河は勢いよくコップをあおり、喉に流し込んだ。
「ぐぇっほ、ぐぉっほ、ぜー…ぜー…」
何というか、華の女子高生が決して出してはならないような呻き声だった。
「こ、この、ばかチワワ…げほっ…い、いきなり、なに言い出す、のよ…」
「あ、ごめんねぇ、逢坂さん。そんなに驚くなんて、全然思わなくてぇ」
全く悪びれた様子のない亜美に、これもいつものように大河が食って掛かる。
のだが、それより先にはっきり通る声で北村が発した。
「亜美、食べてる人を驚かすようなことをするなと、小さい頃から言われてるだろ!」
意外なところからの参戦に、二人は北村の方を見やり、
「「ぶふっ!」」
大河と亜美は仲良く吹き出した。顔面おかずだらけ(煮豆in鼻穴)の北村を見て、誰が耐えられようか。
現に、実乃梨は一番最初の被害者となっている。
「人をとやかく言う前に、お前は早く顔を拭くなりしろよ!
あああ、鼻の中に俺の手塩にかけた煮豆(こども)が見事すぎるくらいはまってやがる…」
「大丈夫だ、俺はこの程度じゃ全く動じないぞ、高須!」
「人として動じろ!しかも誰もそんなこと聞いてねぇし!!」
別のベクトルで魅力溢れる三人の女の子が腹を抱えて笑い、別の意味で顔面凶器の男二人。
片や己の弁当の末路を嘆き、片や煮豆。この場は、混沌としていた。
690 :
煮豆:2009/03/27(金) 00:24:09 ID:NfqwWEPC
皆が落ち着いた後は、いつものやりとりだ。
大河と亜美がじゃれあい、実乃梨は大河に加勢し、亜美は竜児にくっつき、とばっちりを受ける竜児。
北村は基本的に傍観者だが、いざという時のストッパーになっていた。
そんな件が終わる頃。
「あーあ、あたしもお弁当ほしいなぁ…」
亜美にとって、それはただ呟いたつもりの一人言だった。のだが、
「おぅ、それなら、川島の分も作ってきてやろうか」
「………へ?」
「なっ…!?」
目敏く聞こえてしまい、かつ実行に移す辺りが、高須竜児という人間なのだ。
きょとん、という表現が似合いすぎるくらい、亜美と大河は間の抜けた状態だった。
「ち、ちょっ「二人分作るも、三人分作るも大して変わらねぇしな。何か苦手なものとかあるか?」
「と、特にないけど…本当にいいの?」
まさかの展開に、猫被りも女王様モードも忘れ、素のままで聞き返す。
こんな旨い話が、弁当なだけに!と実乃梨が呟いたが、誰も聞いておらず一人落ち込む。
「は、話を聞きな「俺は全然構わねぇけど。いや、川嶋が迷惑とかなら止めとく――」
「ぜ、全然迷惑なわけないし!むしろ超楽しみだし!」
「おぅ、楽しみにしてもらえれば、作りがいがあるってもんだ」
その言葉に、亜美は素直に「うん」と答えた。
その時、2-Cの教室にいた者は、天使と修羅を同時に見たという。
口の動きだけで「やった」と無邪気に微笑む、正に天使のような川島亜美を。
口の動きだけで「殺るか」と有邪気に微笑む、正に修羅のような逢坂大河を。
ちなみに、竜児の作る弁当の数が徐々に増えていくのは余談である。
終わりです。
うん、ただ北村に煮豆を突っ込みたかっただけです。すいません。
タイトルも良いの浮かばなかったんで、煮豆です。主役は煮豆です。すいません。
>>691 GJ
最終的に六人分とかになって普通に家計に響くようになりそうだw
チワワかわいいよチワワ
>>691 GJ
落ち込むみのりんかわえぇ
最終的には9人
そのあと独神が加わるんだな…
そして給食へ……
北村「たまには外で、裸で食う弁当もいいな、ハッハッハ」
………
生徒A「おいおい、高須先輩と川嶋先輩、お揃いの弁当だぜ」
生徒B「本当だ!いいのかよ彼女いるのに…って手乗りタイガーも同じ弁当!!」
生徒A「手乗りタイガーが弁当作るとは思えないよな…、てことは…」
生徒A・B「「彼女以外の女に彼女と自分の弁当作らせてる!!」」
生徒B「さすが高須先輩ハンパねぇな、しかも作らせてるのがモデルの川嶋先輩って」
>>691 これもまたドラゴン式「みんな幸せ!」か。GJです。
>>686 みんながスルーしてるので悪いんだが、あえてスレ違い気味に。
原作とアニメはイコールじゃない、ということ、ただそれだけさ。
>>691 煮豆ワラタwGJ!それと作者の暴走気味な思考にもGJ!w
あーみんカワイイヨあーみん
竜児とくっつく以外であーみんが報われるのってないのかね
>>699 友達じゃね?
少し腹黒とわかりながらも仲良くしてくれている、木原や奈々子さまの存在であーみんは報われた気がするけど・・・
>>700 …少し?
けど、個人的には竜児×大河が好きだけどあーみんにも幸せになって欲しいな
正直あの五人の中で一番かわいそうな気がするから
あれ?
みのりんっていつ王女になったの?
王女みのりんSS…無理あるか
みのりんは、
王女っていうよりも、近衛師団の師団長閣下
か?
>>702 お前の言った意味が最後までわからなかった俺はまだまだだなorz
>>705 いや、たまたま居間に行ったら
みのりんっぽい声がっていう
で、月と太陽2をその内投下しようと思うんだけど…見たい人いるのかねぇ…
前回ビミョーっぽかったからアドバイスいただけたら今の内に考えなきゃ
>>707 我等に授けよ!そしてスレを埋めよ!
カマーン!!
>>707 いいから早く投下するんだ。アドバイスがほしいなら専用のスレがあるだろうし。あんたの発言は自分の作品を読み直して感想を言えって言ってるも同然だよ。
面白かったから続きplz
>>707 おいおい、いつまで俺を裸にさせとく気だい??
投下待ってるぜ
>>707 同じみのドラ派、そしてバレンタイン投稿組として言わせて下さいな。
ガンバ。期待してまっせ。
ところで、ぼちぼち完成するみのドラが10レスほどになるのですが、
投稿は次スレまで待った方がよろしいでしょうか?
>>707 9時からやってた「ルパンVSコナン」にでてた王女のこと?
声優さん、堀江さんだったね
713 :
711:2009/03/28(土) 00:34:32 ID:/EPjFWcZ
…なぜ完成してから質問しなかった、俺orz
とりあえず完成しましたが、次スレまで待機することにしました。
一人で勝手に騒いでしまって、本当に申し訳ないです。
いや、妄想してたら長くなったんで自分も次スレにするつもり
まだ完成はしてないし
ここペース速いし
風邪には気を付けよう
俺も他職人さん待ってたら―
てかこないだリアルになった
連続ゴメン
みんな優しすぎるぜ…
俺頑張るよ!
で投下が終わったら故郷に帰って結婚するんだ!
>>699 つ「竜児のセフレ」
>>707 うるせえ
こちとらずっと全裸で待ってんだ
とっとと投下しやがれこのスカンチ野郎!!
まだ容量全然余裕あるし
最近このスレそんなにペース速くないから問題ないべ
>>715 やだっ!お前死亡hry
……いやなんでもねぇ
投稿待ってるぜ
てs
>>719すまん誤爆した。
この前の進路の話題が出てたからちょっと妄想してたのを投下してみる。
ちなみに全て架空ですから。妄想ですから調べないで下さい。
2-cの打ち上げ
今日は卒業式が終わってから3日という卒業という寂しいという思いから新たな進路に向けて
の期待に胸を膨らましているという時期。
前々から予定していた高須宅身内打ち上げが開催されようとしていた。メンバーは竜児、大河、
櫛枝、北村、川嶋、能登、春田、麻耶、香椎の修学旅行のメンバー8人。
竜児はこの打ち上げを楽しみにしていた。クラスの打ち上げは2年の頃のクラスメイトほどク
ラスがまとまってるということはなく、まぁ受験とかあるし3年は2年ほど学校行事がなかっ
たから当たり前といっては当たり前なんだが。打ち上げもなかった。
「えーそれではみんなの進路決定祝いを開催します。えぇーみなの新しい門出を祝ってかんぱ
ーい。」
乾杯の音頭を取るのはわれ等が元生徒会長北村。
「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」
8人がいっせいにかんぱいの嵐。
「それでは、みんな乾杯もおわったところでみんなの進路と輝かしい未来の抱負をお聞かせ下
さい!ではまずは言いだしっぺのおれから。」
おお。パチパチパチパチパチ
「俺はC州立大学に留学します。会長が行ってるM工科大学とは比べ物にならないけどいつか
会長に追いついて会長のサポートするのがおれの夢だ。だから技術者の道をおれは行く!必ずや
ってやる!みんなとは会える機会は減ってしまうかもしれないけど長期休暇は帰ってくるからよ
ろしくな!じゃあ次は…」
「わたし」
そういって麻耶はたった。
「私はN女子大学人間社会学部に進学します。社会福祉を学びます。それで…より気配りが出
来るいいオンナになっていきます!」
恥ずかしそうに意気込んだ。そこでバカの春田が
「大人の階段を昇るんだね。」
「しね、春田。」
能登が春田に腹に軽いパンチ打つ。
「次はわたしね」
奈々子がロングの髪を気にしながら立った。
「私は、H大学法学部に進学します。正直、まだ何になりたいとかはないけど社会のルールを
学ぼうと思って、あと未来の夫探しかな。」
「大丈夫。法学部は女子3割だからブスでもモテモテ、普通はアイドルになるという噂。奈々
子様なら信者がたくさんできるよ。もう神になれるって。」
「ありがと、能登くんは?」
能登がチューハイ片手に立ち上がる。もう酔ってるのか弱いな。
「俺はN大学文理学部英文学科に進学!将来は音楽雑誌の編集者!狭き門だけど挑戦しま
す!」
「次はわたしだぜ〜〜。わたしはN体育大学に進学!将来は実業団!はい、次あ〜みん。」
「は?短くね?!恥ずかしがりやがって。よし、わたしも進学します。なによ高須くん意外そ
うな顔して。今や芸能界も学歴は必要なのよ?!腹立つことに学歴のあるなしで教養があるかな
いかを判断するやつもいるの。まぁそれは建前でわたしだって大学生活はしてみたかったから
したんだけど大学はM大学!なによ。また意外そうな顔して…なにそんな勉強したかだって、
したけどAO入試よ。小論文のテストは苦労したけど面接はもう楽勝。きっと面接官のエロ教
授どもは亜美ちゃんの美貌に驚愕。人間性に感心よ。学部は情報コミュニケーション学部。こ
の学部来年からAO入試しなくなったからほんとラッキー。亜美ちゃんもう神様に愛されてる
としか思えないわ。だから高須くんそんなかわいそうなものをみるような目でみないでよ。ま
ぁ仕事と勉強の両立をめざす!これが抱負。はい次たいがー」
「ああ〜いま大変遺憾なことが判明してしまいした。私も残念ながらばかちーと同じ学校に通
います。M大学文学部社会心理学科し進学します。結論から言うと竜児とはまだ結婚はしませ
ん。親と和解したし、ママも罪滅ぼしに大学に通わせてあげたいって言ってたの。昔のわたし
だったら反発してたわ。でもね、親に罪滅ぼしの機会を与えてあげるのもいいんじゃないかっ
て。それに心理学には興味があったの…よし。次締めに竜児!頼んだわよ!」
「おれもみんなと同じ進学。金銭的なものは祖父と奨学金で通える。大学は大河と川嶋と同じ
M大学経営学部!おいおいみんな微妙な顔するなよ。最初は国立大学受けるつもりだったんだ
けどな滑り止めの滑り止めに受けたここがまさかの奨学金給付生としての権利を有しての合
格とか書いてあってな。迷ったけど、学費免除は正直嬉しいし、なにより大河はもう合格して
てここに進学することが決まってたからな。もうこれはM大学しかないだろ。そして将来の抱
負は何とか難関だけど税理士の資格を取りたい。そして大河と結婚して3階建て地下二階付き
家を建て子ども3人つくる。以上。」
続かない
>>721-723 「とらドラちわ!」が始まるんですねわかります><
そういう続編なら、亜美ちゃん閣下がないがしろにされない次作ならば・・全裸で待つよ・・・
>>717、ありがとうございます。
あと、
>>723GJ!大河VSあーみんに超期待です。
つられて、自分もやっぱり投稿しちゃいます。みのドラです。
タイトルは「プリドラ」で、文量は10レスになります。
先日投稿した「夕日の下で」の続きみたいな感じです。
夕日が街の中に沈もうとする時間帯。
主婦たちでにぎわう商店街を、制服姿の二人が並んで歩く。
実乃梨は、マフラーの暖かさに思いっきり頬を緩ませながら。
竜児は、男の意地みたいなものがあるのか、顔がニヤけるのを全力で阻止しながら。
お互いを気遣ってか、歩くスピードはゆったりしている。
そのママゴトのようなぎこちなさが、かえって奥様方の目を細めさせる。
が、当の二人は周りの生暖かい視線など気にならない。
もっとも、お互いの手の温もりに気を取られて、周囲に気を回す余裕がないだけだが。
というわけで、二人は今、アベック下校を決めている最中。
「今夜はちゃんこ〜、ちゃんこ鍋〜。ちゃんちゃかちゃんちゃん、ちゃんこ鍋〜。」
調子はずれな歌を口ずさむ実乃梨。
そんな実乃梨を見て、何だか新婚生活みたいだ……と心の中ではニヤケまくる竜児。
――2月に色んなことがあって、色んなことが変わった。
その最たる例が、実乃梨が高須家の団欒に加わるようになったことだ。
実乃梨の部活・バイトが遅くならない日は、こうして一緒に買い物して……
そして、二人でご飯を作って、大河と泰子も加えた4人でワイワイ食べる。
そんな生活に4人全員が満足していると竜児は思う。
実乃梨は「みんなで食べるおコメはうめえよ。マジで。」とご満悦だ。
両親が共働きの実乃梨にとって、大人数での食事は割と珍しいことなのかも知れない。
大河も今じゃ熱烈歓迎ムードだ。
一時は、母親との関係、実乃梨との関係で、どうかなりそうだった。
けど、最近は母親との関係も上手く行ってるみたいで、ウチに顔を出せるほどだ。
それに、実乃梨との仲も前以上に良くなった気がする。
お互いの遠慮がなくなったお陰か、何だか仲の良い姉妹のように見える。
泰子も同じ感想を持ったのか、「4人家族になった」と大はしゃぎだ。
ついでに言えば、泰子と実乃梨は一発で打ち解けていた。
お互いの外向的な性格はもちろん、波長というか電波が合うんだと思う。
天然コンビの迷走ぶりに、俺と大河が苦笑いさせられることも珍しくない。
もちろん、俺も三人の笑顔を間近で見られて嬉しい。
ずっと、このまま――
なんて贅沢なことは言えないけど、こんな日々が当分は続いて欲しいと思う。
そんな、みんなが幸せだって胸を張れる毎日を送っている。
「――あ。」
唐突に実乃梨の足が止まったのを受けて、竜児も足と思考を止める。
「何だ、買い忘れでもあったか?」
「いや。あれだよ、あれ。」
実乃梨の指さす先、そこには……ゲームセンター?
「竜児君。プリクラ撮っていかない?」
恋人からツーショットのお誘い。
普通の高校男児なら胸躍らせるような展開、だが……
「早く帰らねえと、大河と泰子がうるせえぞ。それに、写真とかそーゆーのは……」
そう、竜児は写真が大の苦手だ。
目つきの悪さのせいで、どうせロクな写りにはならない。
無理に笑おうとすれば、心霊写真扱いされかねない……というか、された実績を持つ。
出来れば撮りたくない、そんな空気を伝えようと試みる。
「ちゃちゃっと済ませりゃ無問題!それに、時には思ひ出も大切だぜ?てなわけでゴー!」
が、実乃梨は竜児のささやかな抵抗をキレイに受け流す。
そして、そのまま竜児の手を引っ張って全速前進。
何だかんだ言って、実乃梨の尻に敷かれ始めていることを実感する竜児だった。
「――で、連行されたのはいいけどよ。プリクラとか初めてだぞ……」
暗くてうるさいゲームセンターの奥にある、プリクラの機械の数々。
女子高生たちの好奇の視線を全身に浴びながら、竜児がぼやく。
「へ?北村君たちと撮ったりしないの?……っと、こいつに決めたぜ。」
「いや、野郎でプリクラとか普通ないんじゃねーか?」
反論しながら、実乃梨のおめがねに適った一台のカーテンをくぐる。
「まぁ、私もそんな撮ったりしないから、似たようなもんだべ。
こないだ大河と撮ったくらいだし。あっ、亜美とも撮ったなぁ。」
「……結構撮ってるじゃねえか。」
竜児と会話しつつも、設定のボタンをバシバシ押していく実乃梨。
その手つきは明らかに初心者のそれではない、気がする。
どうやら、細かいところは実乃梨に任せてしまった方が良さそうだ。
……しかし、大河がプリクラねぇ。
川嶋は得意の外面でポーズを決め込んでるのが目に浮かぶけど……
大河は未知数というか、どんな仏頂面をしてるか興味深い。
「なぁ、実乃梨。今度、大河と撮ったやつを見せてくれよ。」
何の気なしの言葉に、実乃梨の手がピタリと止まる。
「……この場合、文脈的に『大河の』プリクラが見たいって理解でいいのかな。
まぁ、気持ちは分かるけどさ。」
「大河、可愛いしね。」とつぶやいて、ボタンを再び押し始める。
さっきよりもボタンを押す力が込められているように見えるのは気のせい、だよな?
「い、いや、誰のが見たいとか可愛いとかじゃなくてだな。これは、その……」
「わはは。冗談、ジョーダン。初歩的なトラップだぜ?城ノ内君。」
いたずらに成功したみたいな笑顔で、こちらを振り向く。
……実乃梨には敵いそうにないな。
「さぁ、竜児君。準備は整った。撮るぜぇ〜、ちょう……」
『それじゃー、一枚目!笑って、笑ってー!』
実乃梨の声に被さる形で、機械から声が聞こえてくる。
『3,2,1――』
いきなりのカウントダウンに、竜児の顔が強張る。
隣には満面の笑顔をカメラに向ける実乃梨。
急に自分の存在が場違いな気がしてきて、羞恥心が……
――パシャ。
「んもー、竜児君。恥ずかしがったら、そこで試合終了だぜ?」
「す、すまん……」
恥ずかしさのあまり、俯いてしまった竜児を笑顔で叱る。
「それはそれで可愛い」とか思っているかどうかは本人のみぞ知るところ。
『2枚目!ポーズを取ってね!』
息つく暇もなく、次の案内が聞こえてくる。
「これで終わりじゃねーのか。つーか、ポーズって何だ?」
「ほれ、あれだ、あれ。」
実乃梨の指差す先、液晶には一昔前の芸人のポーズを取るギャル二人が映し出されている。
それは、いたずらに胸を強調した前かがみのポーズで当時、お茶の間を沸かせた……
「だっちゅーの。」
竜児が答えを出すよりも早く、実乃梨がポーズを取る。
腕で胸がよせられるせいで、制服の上からでも実乃梨の胸の形が露わになる。
こ、これは――
「りゅ、竜児君もやってくれんかね。非常にハズイんだが……」
竜児を促す実乃梨の顔は真っ赤だ。
ただ、竜児はあまりの衝撃に、ポーズを取るどころか体を動かすことすら出来ない。
ただただ立ち尽くして、凶悪な視線で実乃梨の胸を射抜くのみ。
あまりに露骨な視線に、実乃梨の顔も俯く。
恥ずかしがったら負けというのが、実乃梨のプリクラ哲学。
けれど、竜児の視線……世間一般で言う、セクハラの前には敵わないことを知る。
――パシャ。
「「へ?」」
『三枚目!ポーズを取ってね!』
フラッシュが光ったかと思えば、液晶にまた別のポーズが表示されている。
「……って、あんなんを撮られちまったってのか!?」
「てゆーか、私の方がハズイってばよ!一人であんなポーズ取らされて……
私、もうお嫁に行けないっ。くすん。」
手を目の下に添えて、泣きまねをする実乃梨。
ただ、乙女の純情を踏みにじられたらしく、実際に涙目だったりする。
「わ、悪い。つーか、本当にごめん!」
「い、いや、謝らなくていいんだけどさ。っつーか、最後の発言はスルーかよ。
……えぇい、次だ次!」
――この後、ヤケクソ気味の実乃梨に負けて、ワケの分からんポーズを取り続けた。
一昔前に流行ったポーズを取るのは、相当に恥ずかしい。
けど、何となく楽しいと感じ始めている自分もいる。
やっぱり実乃梨といると楽しい、心からそう思う。
それでも、これだけは言いたい。
……巷じゃ、こんなんが流行ってるのか?
『これでラスト!』
「はあはあ、次で最後だぜ……って、こ、こいつは――」
液晶には、お互いの両肩に手を置き、カメラ目線で決める美男美女……には程遠い二人組。
この顔とポーズ、最近のお笑い番組で見たような気がする。確か――
――って、実乃梨の肩に触れて、撮影しろって!?
「くっ、次から次へと。これが世界の選択か……?」
『3――』
頭を抱えてつぶやく実乃梨に対し、容赦なくカウントダウンを始める機械。
いや、そもそも、別にポーズの指示に従わなくても……
「えぇい、ナメんな!」
腹を括ったのか、竜児の肩を掴む実乃梨。
「さぁ竜児君、時間がない!君も掴むんだ!」
「お、おう!」
慌てて実乃梨の肩を掴む。
「よし、そいじゃ、せーの……!」
カメラに顔を向け、声を揃えて言う。
「「YES、フォーリンラブ。」」
――パシャ。
ま、間に合った……
感想なんか言うまでもないだろうが、あえて言いたい。
「死ぬほど恥ずかしい……」
「あ、あの竜児君……」
実乃梨の声に反応して正面を向くと、すぐ間近に実乃梨の顔。
一気に顔が熱くなるのが分かる。
「お、おう。」
「ちょ、ちょーっと、お顔が近いかなー、なんてさ……」
実乃梨の言葉と一緒に吐息まで伝わってくる。
まつげを数えられるくらいの距離。
実乃梨の眼には、自分以外の何も映っていない。
これは近い、近すぎる。
でも、動けない。
うるさいはずの周りの音が全く聞こえてこない。
静寂の空間の中で、どんどん実乃梨に吸い寄せられていく。
潤んだ眼、赤い頬、心地良い匂いのする髪……そして、唇。
実乃梨の全てに吸い寄せられていくような感覚。
たとえ動けたとしても、離れたくない。
もっともっと近づきたい、そんな衝動に駆られる。
「わ、悪い。何つーか、離れられないんだが……」
「そ、そりゃー奇遇だ。わ、私もなぜだか離れられねーよ……」
お互いの意志がシンクロしていることに微笑み合う。
そして、近い距離をさらに近づけて行く。
少しずつ近づくごとに、心臓がオーバーヒートで急停止しそうになる。
脳みそからは変な液がドバドバ出てきて、もう何が何だか分からなくなっている。
鼻と鼻がくっ付くような距離で、実乃梨の眼が閉じられる。
これはもう……抑えられねぇ。
実乃梨の唇に少しずつ近づいていく。
ピンク色の健康的な唇。
そこに、自分の存在を刻み込みたい。
――俺は、実乃梨が欲しい。
『――プリントする写真を選んでね!』
機械から聞こえてくる無機質な声に、思わず掴んだ肩を離す。
何度もアナウンスしてたみたいだが、今まで全く聞こえて来なかった。
どうせなら最後まで聞こえないままにして欲しかった。
それ以前に、この機械、空気が読めなすぎる。
「も、もう終わりなの、か?」
「お、おう。そ、そいじゃープリントする写真を選ぼうじゃねーか。
……こいつ、ミュートボタンを設けるべきだね、うん。」
「おう、激しく同意だ……」
――制限時間の関係から、ほぼ実乃梨の独断でプリントする写真が選ばれた。
ちなみに、2枚目、実乃梨の悩殺プリクラは真っ先に除かれていた。
……少し残念だが、仕方ない。
「これで終わりか。長いようで、意外にあっという間」
「――なに勘違いしてるんだ?」
へ?
「まだ俺たちのバトルフェイズは終了してないぜ!」
「な、何いってんだ?もう写真撮影は全部、終わったじゃねーか?」
「速攻魔法発動!落書きタイム!」
「――要するに、このペンで何か書けば良いんだな?」
「おうよ!さぁ竜児君、制限時間は一杯だ。たっぷりと書きたまえよ?」
撮影スペースから、落書き専用のブースに移って、ペンを持たされる。
俺は最初に撮った写真の落書きを担当することになった。
……それはいいんだが、いったい何を書けば良いんだ?
実乃梨の方はと言えば、何やら色々と書き込んでる。
顔にいたずら書きしたり、背景を書き足したり……
本当に器用なやつだ。
さて、それで俺は何を書き込めば良いんだ……?
「……竜児君はさ。やっぱ大河の方が可愛いって思う?」
何を書くか頭を捻っている最中、実乃梨が話を切り出してくる。
「時々思うんだよ。本当に私なんかで良いのかなーって。
実際、大河の方が可愛いし、あーみんの方が綺麗だし。」
「いや、そんなこと……」
「けど、恋する乙女としては、ウソでも自分の方が良いって言ってもらいたいわけよ。
ただ、そう言われたら言われたで、気遣われたーみたいなさ。」
落書きの手は休めず、こちらを見ることもなく、実乃梨は話を続ける。
「自分でもバカなこと言ってんなーって思うよ。
けど、一回頭の中をチラつき出したら、離れてくれねーんだ。これが。」
「実乃梨。俺は……」
「……ごめん、変なこと言っちった。今のは忘れてくれ。」
一応の作り笑顔で、その場をごまかそうとする実乃梨。
けど、分かっている。
実乃梨の不安はとてつもなく大きいものだって。
どんなに好きだとか可愛いだとか囁いたとしても、実乃梨が安心することはないって。
遠くから見れば、実乃梨はいつも太陽のように眩しい。
でも、そんな太陽の内面は結構危なっかしい。
繊細で、不安定で、自信がなくて……何よりも、それが見えにくい。
ずっと傍で見てないと全く分からないくらいに。
だからこそ、実乃梨の隣で支え続けたいって思う。
お前が俺なんかのお嫁さんになりたいって言うんだったら、俺は喜んでそれを受け入れる。
そのくらいの腹は括ったつもりだ。
だから、もっと自信を持って欲しい。
そんな想いを文字にする。
「……竜児君。」
実乃梨の見開かれた眼をまっすぐ見つめて、はっきり告げる。
「人と比べるのは好きじゃねーけど、俺はお前が一番、可愛くてキレイだと思う。
そんでもって、お前と結婚したいって思ってる。……それじゃ、ダメか?」
「……ダメ、なんかじゃねー。ありがとう、竜児君。」
実乃梨の顔が一瞬にして溶けきる。
目から流れてくる涙は嬉しさからくる暖かいもの。
ここ最近、流した冷たい涙とは正反対のもの。
文字も言葉もぶっきらぼうになっちまったが、気持ちはちゃんと伝わった。
太陽の奥底に引きこもって一人で怯えている女の子のところまで、ちゃんと届いた。
泣きじゃくる実乃梨の頭にポンと手を乗せて、竜児は微笑む。
「私も、書ぐ。」
涙を拭いながら、1枚目の写真に落書きする。
ピンク色で書かれた文字に、竜児の顔も綻ぶ。
柔らかくて暖かい笑顔、実乃梨にとって最高の笑顔。
つられて実乃梨も泣きながら笑う、曇りのない笑顔で。
「また、撮ろ。プリクラ。」
「おう!」
「それで、続き、しよ。」
「お、おう。しよう。」
実乃梨から搾り出される声。
続きってのは……で、間違いないんだよな?
来週にでもまたここに来よう、そう胸に刻み込んで二人は笑い合う。
竜児と実乃梨の初めてのプリクラ。
その1枚目、青とピンクの落書きにはそれぞれ、こう書かれていた。
「おれの嫁」
「大好き」
おしまい
以上です。長文・駄文にスレの流れを読めないなど、色々と申し訳ない。
なお、前回同様、みのりんスレに投稿された絵をモチーフに作文させて頂きました。
絵師様に大感謝であります。
それでは、失礼しました。
>>723 GJ
具体的だなぁ…つか春田省かれた気がするんだけど…まさかダブったんじゃ
ないよな?俺の見間違い!?
>>736 GJだよ!!
やっぱ俺みのりん派だわ…これで今日も安眠できるぜ
>>736 超GJ
2828っていうよりスゲーぬくい文章だった
文章に愛があるよ愛が
最近のプリクラはポーズ見本とかあるのか…
皆さんの文章内容だけじゃなく纏まり方が素敵ですね
自分大長編になっちゃったんで推敲&大幅カットだ
カットなんてもったいない
>>737 春田ごめん。お前だけは何になるか全然空想できんかったorz
何が言いたかったというと竜児と大河と亜美を同じ大学にしたかったということです。
>>723 GJっす
春田は親父の後継ぐか、専門らしいな、たしか
>>736 プリクラSSついにキター
GJ
可愛いよみのりん
>>736 こちらこそありがとうございます><
心が暖かくなるみのドラSS
やっぱりみのドラが好きです。
みのりん可愛すぎる
春田は美大だろ
>>736 もしこの組み合わせが実現してたら、あり得そうな暖かい話ですな。お見事です。
>>741 進路の想像は後日談系SSでは大事な要素だし、いい感じに仕上がってる。春田が浮いちゃったのが残念だけどね。
そういえば原作は本編と外伝の接続に気を遣っている印象があるけど、春田の進路話がやや微妙なんだよな。
具体的な日時は不明だけど『春になったら……』は秋から冬の時期、どう見積もっても9巻以前っぽいのに。あれか、意外とウソが上手いというフリだったのか。
>>736 GJ!同じみのりん派として嬉しく2828しっぱなしでした♪
俺も以前みのりんSSを書かせてもらったモンなんですが、2レス分に分けて投稿したいと思います。
タイトルは
『この先も、ずっと・・・』
です。
よろしくお願いしまっす!
私は誰かを好きになったことなんてない。愛するということがよく解らない。今までだって、これからだって、きっと変わらない。なのに・・・
-罪悪感は、なくなった?-
その言葉がまた頭の中で跳ね、胸に突き刺す様な痛みを走らせる。
いったいなんの事だい?
あっしにはまったく持ってなんの事やら、見当もつかねぇーな〜♪・・・・・なんて冗談、自分自身に通用するわけもなく、答えはすぐに返ってくる。
『高須竜児が・・・好き』
おちゃらけてもふざけても誤魔化す事のできない痛み。何度否定しても返ってくる答え。繰り返した分、痛みはより強さを増し、答えはより鮮やかさを増していく。
-だから私は誰も好きになんかなっていない!!-
そんな言葉が虚しく心を揺るがす。そしてまた痛みが走る。
そんな頑なな無限のループを描いた思考を遮るかのように、
カッキーン
鈍く響く音と白いボールが青い空と実乃梨の視界を切り裂いて行った・・・。
「気にしなくたって良いよ。練習試合だしさっ!」
「元気出してください、部長!」
口々に実乃梨を励ましてくれる部員逹。なんとか笑顔を作ってみるが多分うまく笑えていないのだろう。
部員逹の目がそれを如実に伝えてくれていた。
「私、ちょっとグラウンドを走ってくるね!!」
いたたまれなくなって、その場を逃げ出す。
「何をやってんだろう、私は!?このままじゃダメダメだ」
なんとかしなきゃと焦る気持ちとは裏腹に、思考のループはいまだ、頭と心の片隅で周り続ける。
「このままじゃもっときっと、取り返しのつかないような大きな失敗をしてしまいそうだよ・・・」
泣き言めいた口調で独りごちる。そして、後々思い知る。この時の予想は、きっと神憑り的なものだったのかも知れないと言うことを・・・。
ガチャーンっと大きな音をたて、打ち上げたボールはガラスと星を砕いた。
それは親友の大切な、とても大切なクリスタルの星。崩れ落ちたツリーの残骸の中にあっても一際その存在を主張するかの様な輝きは、実乃梨の眼を捕らえて離さず、罪悪感だけが頭と心を支配していった。
独りで直させてと強がり座り込むが、眼が霞んでよく見えない。指も震えてうまく機能しない。そんな実乃梨を見かねて横に座り、黙々と手伝ってくれる竜児の言葉が、暖かさが眼からついに涙を溢れさせた。 気付けば何度も何度も名前を呼んでいた。
『直るんだ、何度でも』
その言葉が実乃梨の中に染み込んでいく様な気がした。
「本当に、すみませんでした!」
実乃梨は深く頭を下げる。部員逹も一緒になって頭を下げてくれる。
「こんな部長で、ごめん・・・・・・!」と部員逹にも頭を下げる。
そんな実乃梨の肩を何人かが優しく叩いてくれた。
また泣き出しそうになる目頭を押さえて体育館を出て走り出そうとしたその時―
「明日、来てくれよ!パーティー!・・・・・・おまえと一緒に、過ごしたいから!」
心臓が鳴った。今まで聞いたこともないような大きな音で。暖かさが心に広がる。また名前を呼びたかった、でも―
「こんな迷惑かけちゃったんだもん。行けないよ、私は」
その思いを押し殺すように言葉と共に首を横に降る。それでも竜児は―
「でも待ってるから!」
力強く真剣に語りかけてくれる。一瞬頬が紅潮しかけ、あのループを思い出し青ざめる。そして、
-この人を好きになってはいけない-
明確なループの答えを導きだす。
「・・・・・・待たないで。行かないからさ」
と実乃梨はついに走り出す。何もかもを振り払うように。
「待ってる!!」
竜児の真っ直ぐな言葉が実乃梨の背中に突き刺ささった。
心がまた痛みを増していった・・・。
「櫛枝、もう今日はあがろうよ。」
「部長、今日は終わりにして、帰りにみんなでスドバ行きませんか?」
多分気を使ってくれているのだろう。だが実乃梨は部員逹の行為を無にするようにバットを振り続ける。
今はどうしても独りになりたかったから。
「先に上がっちゃってくんな♪後片付けは私が全部やるからさっ!」
いった言葉の明るさとは対照的な顔色に、誰もそれ以上、声はかけられなかった。
そのまま独りでバットを振り続ける。もうどのくらい経ったのだろうか?辺りも暗くなり、空には月が輝いていた。ふと月明かりに気がつき素振りをやめ、夜空を見上げる。
『おまえと一緒に、過ごしたいから!』
不意に竜児の事を思い出し、また視界が霞む。
「好きになっちゃいけないんだ・・・。だって高須くんは大河の大切な・・・」
思い、涙が流れる。
初めて人を好きになった。でもそれは絶対に叶わない恋。叶えてはいけない願い。
-人を好きになる事が、愛する事がこんなに辛いなら知らなければよかった。蚊帳の外でいた方がどれ程良かっただろう?
初恋も叶わず、夢も挫折する。私は今まで何を頑張ってきたのだろう?
これからどうすればいいのだろう?-
思考のループは混迷を極めていた。なんとかそれを振り払うようにもう一度バットを振る。
二度三度振るうちに嫌な痛みが手に走った。
豆がつぶれ血が流れる。
「あはっ♪こりゃもう、どん詰まりだな♪」
笑顔でそのまましゃがみこみ、顔を膝で抱える。
膝と膝の小さな隙間から嗚咽が漏れてきた。
声を出して泣いていた。
「痛いよ・・・。淋しいよ・・・。寒いよ・・・」
冬の夜風が身体と心を芯まで冷していった。
「高須、くん・・・」
堪えきれず、思い人の名を呼ぶ。
「高須くん・・・」
『おう』
先程の語らいを思い出す。
「高須くん、高須くん・・・」『聞いてるよ』
ずっと隣に居てくれた体温を。
「高須くん・・・」
『いるよ』
もう一度・・・
「高須くん・・・」
「『いるよ』」
身体と心が少し暖まった気がしてもう一度呟く・・・
「高須くん・・・」
「いるよ」
もう一度・・・
「高須くん・・・」
「たがらいるよっ!」
もういち・・・ど?
「高須くん・・・っふぇ?」
「たがらいるってばよっ!」
カバッと実乃梨は勢いよく顔をあげる。肩にかけられているコートに気付く。
そして目の前に立つ竜児に気付く。
「えっあっえ?何で高須くんがここにいるの?」
驚きのあまり動きが鈍り立ち上がった衝動で前に転びそうになり、竜児に肩を抱かれる形になる。
「おう!?あぶねぇなぁ〜。大丈夫か、櫛枝?」
頬が上気していくのが手に取るようにわかった。慌てて立ち直そうとするが、色々と噛み合ってどうもうまくいかない。
そんなあたふたしている実乃梨の身体を堪えきれずに竜児が抱き締める。
「・・・っ!?た、高須きゅん、な、何をするんだい!?」
「わ、悪い!つい・・・」
真っ赤になる実乃梨を見て竜児も顔を赤らめ手を離す。
暫しの沈黙。
先に口を開いたのは竜児だった。
「待ってるって言ったけど、待ってるだけじゃ何も変えられないと思ったから、自分から来たんだ。」
唐突な答えに実乃梨は困惑する。
「ど、どーいう事かな?」
しどろもどろになりそうな口を抑え、なんとか言葉を紡ぐ。
「お前が何でここにいるんだって聞いたからそれに答えたんだよ!」
「いや、そーじゃなくって、何で私に会いに来たのかってことを・・・」
言いかけて実乃梨は言葉を止めた。彼は好きになってはいけない相手なのだ。
冷静を装い、淡々と語る。
「私は待たないでって言ったよね?それは来てほしいって意味じゃなくて、会いたくないって意味なんだよ、高須くん。」
と静かに言って竜児に背を向ける。ぐっと涙を堪えて。
「早く帰って。大河が待ってるんでしょ?寂しい寂しいって泣いちゃってるかもよ?」
すこし意地悪く言い放つ。私は彼に嫌われなければならないのだ。そうじゃなければ、大河が不幸になるから・・・
「大河にはちゃんと言ってきた。これから櫛枝に会って気持ちを伝えてくるって。」
胸が痛んだ。それを逆に力に変え、怒気を孕んだ声で伝える。
「私は高須くんになんか会いたくなんてないの!!練習の邪魔になるから早く帰ってっ!!」
後ろを向いたまま叫ぶ。顔見ては到底言うことなんてできないから。もうすでに涙は溢れる寸前なのだから。それでもと、竜児も一歩も引かない。
「俺はお前に想いを伝えたい!お前が、お前の事が一年半以上も前から好きだったってことを、ずっとお前だけを好きだったんだってことを・・・お前に、櫛枝実乃梨にそう伝えたいだっ!!」
それはもうすでに、告白以外の何者でもない言霊であった。
「そ、そんなんじゃもう伝えちゃってるのと同じじゃないですか?高須くん・・・」
小声で独りごちる。実乃梨は後ろ向きのまま考えた。思考のループの行き着いた答えを、好きになってはいけないという答えを。考えて・・・・・・止めた。
すでに溢れている涙が、頭と心のなかに占める暖かい感情が、自分の本当の答えだと理解したから。理解できたから。
「高須くん・・・」
実乃梨は振り返り竜児を見つめる。涙でグシャグシャになった顔で真っ直ぐに竜児を見つめる。そして・・・・・・
「私も高須くんが・・・高須竜児が好き!」
最初は小さく、だが次第と感情の高まりに合わせ最後は大声で叫ぶ。
「櫛枝!!」
「高須くん!!」
2人は抱き合う。冷えた身体に熱を分け与えるように、優しく包み込むように。抱き締め合う。
しばらく体温を感じあった後、すこし冷静になり、恥ずかしさからズサッと実乃梨が身体を離す。
ほわんほわんとよくわからない形に手足を動かしながら、竜児と少し距離をとる。その間中も「あひゃひゃ、あひゃひゃ」と顔を赤らめながら笑っている。
しばらくして涙がやっと気になり出したのか掌で拭う。すると、
「おう!?お前、鼻、鼻血」
「ふぇっ?な、なんと〜」
好きな人の前でなんたる失態、焦り掌を見るがそれは鼻血ではなくつぶれた豆からの血で。
「なんだよも〜高須くん。鼻血だなんて言うからビックリしちゃったじゃないかい。このあわてんぼさんめっ!」
焦りと照れからさらに紅潮した顔を竜児に向けようとしたその時?-タラッ-っとたしかな擬音とぬめっとした生暖かい水滴が掌に落ちる。
「あれっ?」
「いや、ホントに出てるから!!とりあえずとめなきゃだろ、こっちこい!」
優しくも力強い手つきで、実乃梨は抗うことすらできず引き寄せられる。
モジモジとしながらも竜児に向け顔をあげる。
竜児が優しくティッシュを鼻に詰め、そして―
「櫛枝、お前って案外人の話を聞かないよな。どっか抜けてるし。そのくせ独りで悩み込んでる・・・
でも、これからは俺がいる。俺がお前を支えていく。夢もUFO探しも俺が隣で手伝ってやるからな!!・・・好きだ、櫛枝」
「高須くん・・・私も好き、大好き」
お互いの唇が重なる―
唇から伝わる熱が彼とならこれからの苦難を乗り越えられると教えてくれた。理由はわからないが、実感はある。だって―
私は誰かを好きになったことなんてない。愛するということがよく解らない。今までだって、これからだって、きっと変わらない・・・そんな頑なな思考のループ。その終わりを、今日私は知ったのだから。
彼が教えてくれたのだから。
だからきっとこの先も、ずっと・・・・・・2人で・・・・・・
END?
月明かりに照らされる2人を見つめる、これまた揃いの影2つ―
「本当に良いのちびトラ?」「良いの。2人が幸せなら。だって良いことでしょう?
親友と好きな人が結ばれるなんて、これ以上の幸せなんてないもの」
「まぁ〜アンタが良いなら別に良いけど〜」
「それにね」
「っん?」
「私にはアンタもいるもの」
「なっ!?な、なにバカなこと言ってんのよ、ちびトラ!!」
「さっ行くわよバカチー。ファミレスでなんか奢って!」
「はぁ〜!なんでこの亜美ちゃんさまがアンタなんかに奢んなくっちゃなんないのよ!!」
「つべこべ言わずにさっさと歩く!!」
「アンタねぇ!」
「失恋したもの同士仲良く行くわよ・・・」
「えっ!?ちょっとアンタそれどーいう意味よ、あみちゃんわかんなーい。って、おい!!ちょっ待ちなさいよ、ちびトラー!」
哀しみを乗り越えて立ち去る影も揃って2つ。でこぼこだけと、どこか似ている影2つ・・・・・・。
END
以上です。
すみません全然2レス分じゃ収まりませんでした。
始終シリアス、最後にちょこっとコメディにしてみました。
みのりんのHappy end、全く考えつかず自分で書いていて悲しい結末になりそうななって焦りました。
お目汚し失礼いたしました!
GJ
乙です
GJ
こういう展開いいよー!!
あれ何か視界がボヤけ…
リアルに泣いた俺は負けか?
>>761 なら俺も負け組だ…
原作とアニメが終わった今、みのりんSSはHappyENDでも泣ける…
三人娘どれも泣ける…
誰もいない深夜に、こっそりと投稿してみます
でも、長いので多分途中で切られるだろうな・・・
ふたりだけの(修学)旅行 【竜児×亜美 H未満】
年が明け新学期、大河に励まされ何とか登校した竜児を待っていたのは三泊四日のはずの沖縄修学旅行が、二泊三日の冬山に変更されたという知らせだった。
太陽輝く沖縄よりは、灰色の雪山が今の自分にこそお似合いかと自嘲気味になった竜児が、本屋をスルーし、立ち寄った病院で待っていたのは、年末の入院費用の請求書・・・
そこには、高須家の家計を根本から揺るがすような金額が記されていた。
「ありえねぇ・・・どうすんだよ、これ・・・」
翌日、少し早めに家を出た竜児は教室には立ち寄らず、まっすぐに職員室に向かった。
クラスメートたちが来る前に担任を捕まえて、話しておきたいことがあったのだ。
ところが・・・職員室のドアを開けると、独身の机の前には意外な先客がいた。
今年初めてその御尊顔を拝ませていただいた2−Cの、いや全校のアイドル・川島亜美が
何やら独身と揉めている様子。
考えてみれば、あのイブのクリパ以来の再会と言うことになるのか。
そして自分は、亜美の忠告に従わず大怪我をした上に大病を患ったわけで・・・
「だーかーらー、無理なんですってばー」
「でもね、川嶋さん・・・一生に一度の、高校二年の修学旅行なのよ?」
「それは分かっていますけど、旅行の出発時間が、普段の始業より早くなるなんて思ってなかったんです。ですから、無理なんです」
「それは、予定が急に変更になっちゃったから・・・あら? 高須君? 早いのね」
独身がようやく竜児に気がついたらしく、笑顔を向けてくる。
同時に亜美が、ギョッとした表情で振り向いた。
どうやら、竜児には聞かれたくない話をしていたようだ。
「おはようございます(結婚)むりちゃん先生。ちょっと先生にお話がありまして・・・」
「まさか高須君まで、修学旅行欠席します、なんて言わないわよね?」
担任のいきなりの一言に(何でいきなり言い当てられてるんだ? とうとう独身術に目覚
めたのか? それとも30歳までだと魔女になるというあれか?・・・)などと思いつつ
そんなことは、顔には決して出さないようにする竜児。
「あっ、そうだ! 高須君からも言ってあげてくれないかな?」
「・・・・・・何をですか?」
言ってることが意味不明、こういうところが三十路にして独身たるゆえんなのでは・・・
「川嶋さんが、修学旅行に行かないって言うのよ」
「えぇっ?」
あわてて亜美の顔を見返す竜児に、亜美はチッと小さく舌打ちして目をそらし、
「行かないんじゃありません、行けなくなったと言ったんです」
知られたくなかった・・・という表情で、竜児から顔をそむける亜美。
「川嶋、どういうことだよ」
亜美は答えず、代わりに独身が説明する。
「ほら、沖縄が雪山に変更になったでしょう。それでバスの出発時間が、沖縄に行く時の飛行機の予定より、ずっと早くなっちゃって・・・」
独身の話を受けて、渋々という感じで説明を始める亜美。
「あたしは、前の日に地方でグラビアの撮影があるの。飛行機に乗るバスの時間なら、
間に合うはずだったんだけど、雪山スキーのバスの出発時間には、始発で帰ってきても間に合わないの。だから修学旅行には、行けないの」
「そうなのか・・・」
川嶋も居残り組か・・・などと喜べるはずもないが、
「だから・・・電車で後から追いかければ、お昼過ぎにはゲレンデで合流出来るってば!」
「みんながバスで楽しく旅行してるのに、一人寂しく電車なんて嫌です! 高須君だってそれくらい、わかるでしょ?」
「おう・・・つうか、お前が一人旅って時点でダメダメだろうと思うが」
竜児としては、素直に自分の思ったままを言ってみたつもりだったのだが、
「・・・亜美ちゃんのこと、電車にも乗れないようなダメ人間だとか思ってるわけ?」
亜美の目つきがきつくなる、睨んでいる一方で拗ねてるような顔にも見える。
「そうじゃなくて・・・お前みたいな綺麗な女の子が、一人で電車旅なんかしてたら大変なんじゃないのか?ってことだよ。ナンパとかいろいろとさ?」
言った途端に、亜美の整った顔がマンガのように真っ赤になっていった。
これは極めて珍しい反応だと言える。
普段なら、『高須君ってば、何当たり前のこと言ってんの〜お・ば・か・さ・ん〜』
くらいの返事が帰って来ても、よさそうなものなのだが・・・。
「まぁ・・・た、た、確かにそういうのはウザいけどね」
何故かしどろもどろになっているし、こういう亜美も珍しい。
「うーん、川嶋さんの場合は確かにそういう心配があるか・・・いいわねぇ・・・若くて綺麗で、スタイル良くて、モテモテで・・・17歳で・・・将来が・・・(ブツブツ)」
担任が何やら暗黒面に落ちていきそうなので、慌てて止めに入ることにする。
「い・・・いや、先生もまだまだ全然若いじゃないですか!」
「・・・17歳の高校生に、三十路過ぎた独身女を“若い”と言われてもねぇ・・・」
マズイ・・・却って独身の心の何かに触れてしまったようだ。
「う゛・・・おい川嶋、何とか言ってやってくれよ」
亜美は未だ赤い顔のまま、ぼんやりと夢見心地のような感じだったが、
「え?何?・・・ああ、ゆりちゃん先生のこと?・・・大丈夫ですよう。先生だってまだ17歳と165カ月なだけじゃないですかっ」明るく笑う亜美、
「お前っ! よりによって、なんて危険な表現法を使うんだっ!」
「165ヵ月!・・・4950日!・・・118800時間!・・・分だと・・・」
「先生!分とか秒とかいいですから! 生命誕生30億年の歴史に比べれば13年なんてゼロと同じですからっ! しっかりして下さい、先生っ! (結婚)むり先生っ!」
いきなり名前を素で間違える竜児に、ゆりが突然正気に戻った。
「高須君・・・先生の名前は恋ヶ窪ゆりです。恋崖っぷち結婚むり、ではありません・・・」
(誰だ、それ?)という気持ちは押しとどめて、竜児は話を元に戻そうと試みる。
「先生(の結婚)がむりか、ゆりかは置いといて、今は川嶋の旅行の話じゃないんですか?」
担任としての使命感が独身三十路の絶望感を上回ったのか、(結婚)むり先生が正気に戻る。
「はっ、そうでした。川嶋さんが旅行行かないとクラスの皆・特に男子が寂しがるわよ?高須君も、川嶋さんが旅行に来なかったら寂しいわよね? つまらないわよね?」
いや、竜児一個人がどう思おうと亜美の旅行不参加の決定に何かの影響を与えられるとも
思えないのだが・・・と竜児が答えを探していると、
「えーっ?先生〜・・・高須君が『あたしが行かないと寂しい』なんて思うわけないじゃ
ないですか〜」
「そ、そんなことはないわよね、ね、ね? 高須君?」
「いや、おれは別に・・・」
「さ・び・し・い・わ・よ・ね!!!」
この野郎少しは空気読めよ、あんた北村君と並んで川嶋亜美と仲の良い男子の双璧じゃ
ねーのかよ!・・・などという担任(独身三十路)の心中など分かろうはずもなく
「まあ、みんなは寂しがるだろうなぁ・・・俺には、全く関係ないけどな」
竜児の、あまりと言えばあまりの暴言に担任の眦がカッと吊り上がる。
同時に、亜美の視線が凶悪にきらめいて、
「ほら先生、高須君は亜美ちゃんが旅行に行こうが行くまいが『関係ない』んですって〜」
亜美の口調は完全に、竜児を非難しているとしか思えないトーンに変わっている。
「・・・高須君、どうしてそこで『川嶋の行かない修学旅行なんて嫌だ!お前が行かないなら俺も行くのをやめる! やめゆうぅぅぅ』くらいのことが言えないの・・・」
独身が頭を抱えて溜息を漏らす。亜美が
「高須君がそんなこと言うわけないじゃん」と小さな声で呟いたが誰にも聞こえていない。
学園祭でもクリスマスパーティーでも、自分がどんなに頑張ってみせても竜児が見ている
のは、手乗りタイガーと実乃梨ちゃん。
そんなことは嫌というほど知っているし、自分が一番になれないのも分かっている。
そもそも竜児は「川嶋の周りには大勢いるんだし自分は特に必要ない」と考えている上に
「大河は一人きりなんだから、俺がいなくてはダメだ」と思っている節がある。
亜美が「竜児一人がいてくれればそれでいい」と思っても、そんなことは信じてくれない。
自業自得とは言え、竜児が亜美のために旅行に行かない、なんてことはありえない・・・。
だからなのか・・・少しずつ自分の内に内にと、潜って行きかけた亜美の耳に、その声は
錯覚としか思えなかった。
「先生、俺も、修学旅行、行きません!」
「そうそう、高須君、やれば出来るんじゃない・・・って、えぇっ!?」
独身の声にびっくりして、亜美も竜児の顔を見つめる。
今、なんて言ったのだ、この男は? 修学旅行に行かない?
「・・・と言うかですね。川嶋とは関係なく俺も、修学旅行には行けませんので」
「「はぁ?」」
独身と亜美の声が重なる。
「朝早くから先生を探していたのは、それを伝えるためだったんですけど・・・」
「「何で?」」
またしても二人同時。
竜児は亜美の方をちらりと見て、一瞬ためらった後、
「冬休みにインフルエンザで、何日か入院してしまいまして」
独身が首を傾げる・・・だから? と思っているのが明らかだ。
入院の件は、大河の「あんたが年末にでも死のうものなら、みんなの予定が滅茶苦茶に
なっちゃうでしょ!」との一言で、独身には連絡済みである。
亜美の方は、そもそも入院の事実自体を知らなかったはずで、目をぱちくりしている。
「その時の入院・検査・点滴なんかの費用請求が来たんですが・・・高須家の家系を圧迫するくらいの額になっているんです・・・」
「・・・・・・つまり、修学旅行の積立金を返還してもらって、それに当てようと?」
返事をせずに、竜児はうなづいた。
独身は一年生の時には副担任だったし、高須家が複雑な家庭環境なのも、理解してくれて
いるはずだ。
そもそもが、三泊四日の沖縄旅行なんて竜児には贅沢過ぎる話だった。
母親の泰子がどうしても、というから行くつもりになっていただけなのだ。
年末に突発事態が発生した今、しかもこの心理状態で冬山なんてはっきり言って行きたく
ないに決まっているし、行けるわけもない。
大河がなんと言おうと、これが最後のチャンス・イベントだろうが先立つ物がないのでは
如何ともし難いのが現実というものだ・・・実乃梨とも顔を合わせなくて済むし。
「そんな・・・川嶋さんだけじゃなくて、高須君まで。高須君が行かなかったら・・・
行かなかったら・・・」
独身の声が、だんだんと小さくなって行く。
きっと頭の中で、言葉をどう続ければ良いのか考えているのだろう。
「・・・そう!高須君が行かなかったら絶対に北村君が寂しがるわ! 春田君や春田君や春田君なんかもっ!」
・・・川嶋の時は「クラスのみんな」で、俺だと北村と春田なのかと思わず苦笑。
そう思いつつ、入学当初だったら、俺が休むと知ったら、クラスのほとんどが大喜びした
だろうなぁと思い直す・・・当時副担任だった、この独身も含めてなのだが。
今は数人とは言え、自分の不在を寂しがってくれる奴らがいるはずだ。
「そうそう、あと能登君もね!」独身が何やら続けているのをサラッと流して考える。
実乃梨はともかく、大河は自分が行かなければ、多分だが寂しがってくれるだろう。
・・・って、大河? 何かが引っ掛かったが、独身の声でそれも消えてしまった。
「ねえ、高須君・・・どうしても無理そうなの?」
「残念ですけど、家計の危機なので。それに・・・」
「それに?」
「いや何でもないです。それより遅れてなら行ける、川嶋の方を説得した方がいいんじゃないんですか?」
さりげなく話をそらして亜美の方を見ると・・・亜美は何かを考え込んでいた。
「川嶋?どうかしたか?」
竜児の声に、はっと我に返ったように、
「えっ?何?高須君?」
あわてた様子の亜美を、竜児は訝しく見つめる。
「高須君はご家庭の事情だから仕方ないとして、川嶋さんは出来るなら行った方がいいんじゃないか、ってことです」
「うーん・・・・・・」
顎に人差し指を当てる、というマンガでも最近は見かけないポーズで固まっている亜美は、
さすがにモデルというべきか、顎のラインも人差し指の細さも、そこらの女子高生が束に
なっても、足元にも及ばないだろう美しさ。
それも無意識のうちにだろうから、恐ろしいったらない。
真剣に考え込んでいるためか、表情はいつものぶりっ子仮面とも腹黒ちわわとも違って
年相応の少女のものになっていて、それが竜児には嬉しく映る。
(めったに見せないけど、こいつもこういう顔が出来るんだよな・・・)
こんな時間に……!
朝の光を浴びた亜美の姿につい見とれていると、少しして亜美が妙なことを言い出した。
「・・・先生? あたしが修学旅行に行けなかった・・・として、ですね」
「なあに? 川嶋さん」
「その三日間の扱いって、どうなるんですか? 修学旅行って授業の一環として行われているんですよね? お休みしたってことになっちゃうんですか?」
「え? え・・・えぇと、どうなるのかしらねぇ?」
おいおい、質問してるのは川嶋の方だろ、生徒に聞き返してどうする。
と心の中で突っ込みつつも、亜美の質問の意図は竜児にも分からない。
「他の先生方に確認しておいていただけませんか? 昼休みにでも聞きに行きますから」
「それはいいですけど・・・休み扱いなら行くけど、違うなら行かない、なんていうのは先生、認めませんからね」
「いえ、行けないことは決定なんですけど・・・ちょっと気になることがあるので」
独身は納得していない顔ながらも、必ず確認すると約束してくれた。
取りあえず要件は済んだので、職員室を出て亜美と並んで教室に向かうことにする。
それにしても、こいつが行けないと知ったらみんな(特に男子)はガッカリするだろうな、
たとえ沖縄じゃなくなったとしても・・・などと竜児が考えていると、
「ねぇ高須君、旅行に行けないことタイガーにはもう言ってあるの?」
亜美が痛いところを聞いてきた。
「まだ誰にも言ってねぇ・・・まず独身に言わなきゃな、と思ってたからな」
「ふーん・・・タイガーがっかりするだろうねぇ・・・もしかしたら実乃梨ちゃんも」
亜美の言葉に、とたんに脚が重くなるのを感じてしまった。
イブの夜、先に帰ってしまった亜美は、あの後に何があったのか知るはずもないのだ。
自分が実乃梨に振られた、などということは・・・。
「・・・櫛枝はがっかりしたりはしないと思う。大河も、今年からは俺離れをして一人で頑張る、みたいなこと言ってたから多分平気だろう」
会話に少し、間が空いた。
あー・・・人がいたとは・・・お恥ずかしい限りです(汗
「みのりちゃんと何かあったの?」
目を細めて竜児の顔を見つめる亜美の様子には、いつものからかう様子が見られず竜児は
意外に感じた。
好奇心でも厭味でもない気遣うような目に見え、ついつい腹黒魔女の前で本音を漏らして
しまう。
「イブにふられた・・・つうか、ふられる前に告白自体を拒否られた、以上」
「・・・それで、熱出して寝込んでたの?」
まただ。
今の言葉にもからかってやろうという響きがない、それどころか竜児のことを心配してる
かのような柔らかさ・暖かさが感じられる・・・間違いなく気のせいだろうが。
「熱が出たのはインフルエンザのせいだ、三日間入院して退院後も自宅療養してた」
「大変な年末年始だったんだね・・・」
まあな、と竜児は苦笑する。
「大河にクリスマスケーキ焼いてやれなかったし、年越しソバも、雑煮もおせちも作ってやれない年末年始だった・・・大掃除も出来なかったしな・・・川嶋は?」
「イブのパーティーの後、クリスマスから実家に帰って年末年始は海外・・パパとママが
日本に帰った後は、そのまま向こうでお仕事よ」
「羨ましがるべきなんだか、大変だなと同情するべきなんだか・・・微妙な年末だな」
亜美が、むっとしたような微妙に怒ったような顔を竜児に向ける。
「本当に大変だったのは高須君の方でしょう。日本にいたら、絶対お見舞いに行ったのに」
「店が休みで、泰子が面倒みてくれたからな。俺は横になって呻ってただけだし、川嶋が
来てくれても何も相手してやれなかったよ」
「それでも、お見舞いに行きたかったの! でもまあ、元気になって良かったね、って・・・」
亜美が急に言いよどむ。
竜児は首をかしげて亜美の方を見た。
「・・・元気になったのは、体の方だけだよね。まだ二週間しか経ってないんだもんね」
何が二週間なんだ? と聞き直しそうになって、竜児は自分で自分にあきれてしまった。
イブに実乃梨に振られてから、まだ二週間だと亜美は言っているのだ。
そんなことも忘れているのか、自分は。
インフルエンザの高熱で、記憶を無くしてしまったとしか思えない気がした。
「・・・まあ、さっき先生の前では言えなかったけど、正直なところ今の俺は、冬山に行きたいような心境でないのは確かだよ」
「そう・・・だよね・・・」
つぶやく亜美の声を始業のチャイムがさえぎった。
修学旅行の話題で浮かれまくっているクラスメートの中、竜児は『自分が行けなくなった』
ことを切り出せずに、そのまま何となく休み時間を過ごしてしまっていた。
大河も実乃梨も北村も、すごく旅行を楽しみにしているのが分かり、言えなかったのだ。
今日は午前授業をはさんで、午後はホームルームで旅行の班を決めれば終わり。
そこで言うしかないか・・・と教室を見まわしてみて、ふと気が付いた。
そう言えば亜美の姿が見えない・・・多分、旅行に行けない間の扱いがどうなるのかを
独身に確認しに行っているんだろう、と考えていたら当の川嶋亜美が教室に戻ってきた。
何だかよく分からないが、つかつかと竜児の席までやってきて、右手を差し伸べる。
「高須君、三日間よろしくね」
教室が一瞬しんとなった後、ざわめきだす。
(何で高須ばっかり・・・)
(亜美ちゃん、やっぱり高須君狙いかぁ)
(つうか、これフライングじゃね?)
(これでまるおくんとタイガー含めた四人は、同じ班確定っ?)
やかましい教室を置き去りに、竜児の頭の中は???で一杯だ。
三日間よろしくって・・・俺もお前も居残り組じゃねーかよ? 旅行行けないだろうが?
「はいはいはーい」
独身が両手を叩きながら教室に入ってくる。
「それでは、みんな席に着いて〜。これから修学旅行の班分けをします。今日は班分けが終わったら、自由解散です。班ごとに旅行の計画を練るもよし。取りあえず帰るもよし。
八人で男女混合の班を作って下さ〜い」
八人・・・うちのクラスは41人だから、行けない俺と川嶋を除くと39人、一つの班は
七人になるってことだな・・・などと竜児が考えている所で
「高須ぅ!」
「高っちゃん」
「高須〜」
男三人衆がやってくる。
「当然、俺たちの班の男子はこの四人だよな!」
はっはっはっと笑う親友には申し訳ないと思うのだが。
「あ、あのな北村・・・」
説明しようとしたところに、今度は大河の声が飛ぶ。
「竜児っ! あたしみのりんと組むけど、竜児も入れてやってもいいわよっ」
「おお、逢坂と櫛枝か。これも当然、俺たちと同じ班だよな、高須」
「いや・・・あのな、北村聞いてくれ」
言った瞬間、実乃梨が目をそらして俯いたのが分かった・・・
そう言う意味じゃねーんだよ、櫛枝! と竜児が言いかけた瞬間、
「高須君・・・あなた、まだ話してないの?」
独身の低い声が耳に届いた。
大河が何事?と竜児を見る。実乃梨も伏せていた目を上げる。
北村はきょとんとした顔で独身のことを見つめている。
「・・・みなさんにお知らせすることがあります・・・私から、言っていいのね?」
独身の視線に、竜児はうなずきで返す。
「高須君は・・・事情により、今回の修学旅行には参加しません」
一瞬、教室が静まり返った後、
「竜「えぇぇぇぇぇぇっ!」児、何で!」という大河の叫びを北村の絶叫がさえぎる。
ああ・・・俺は少なくとも男友達には恵まれたみたいだな、と思う竜児の意識の中・・・
「高須、何でだよ!」「高っちゃん!」「高須寂しいよぅ高須」という男子の声がするが、
独身がゆっくりと第二弾攻撃に移り・・・先制弾が単なる挨拶のような核爆弾を落とす。
「実はもう一人、修学旅行に参加出来なくなった人がいます・・・・・・」
教室中が静まり返った。
(高須が行かないってことは、タイガーか?)
(いや、タイガーは高須の不参加、知らなかったみたいだゾ)
(じゃあ、北村か?)
(北村は絶叫してただろーが!)
・・・クラスの雰囲気がどんどんと怪しくなっていく。
(まさか・・・)
(嘘だろ・・・)
(そんな・・・)
(やめてくれよ・・・)
「川嶋亜美さんが、仕事の都合で修学旅行に行けなくなりました」
独身の宣言に、2−C全体が悲鳴を上げた・・・主に男子の絶叫なのだが。
阿鼻叫喚というか地獄絵図というか・・・混乱の極みに陥った2−Cの中で、
「と・に・か・く! 高須君と川嶋さんを除いた39人で5つの班を作って下さい!」
独身の怒号に近い叫びが響き・・・大河の班は、櫛枝、木原、香椎、北村、能登、春田の
七人で決まったようだ。
普段なら自分と亜美が加わるだろうから、まあ不自然なことはないだろう。
その七人が取り囲んでいるのは、自分と亜美だ。
「竜児、何で?」
「・・・」
「高須! お前が行かないなら俺も行くのやめる、やめゆうぅぅ!」
「高っちゃん!」
「高須ぅ〜」
「亜美ちゃん、どうして? まるおは知ってたの?」
「仕事って・・・沖縄行こうねって言ってたじゃない」
一斉に騒ぎ立てるな、つうか櫛枝が勘違いしていると嫌だし、とっとと説明してしまおう。
「年末にインフルエンザで入院した。んで旅行に行く金がなくなった。以上」
う゛・・・と黙り込む男子軍団。
北村だけでなく能登も春田も、高須家が決して裕福な家庭ではないことぐらい知っている。
知っているから何も言えないのだろうし、それはむしろありがたいとも思う。
「でも・・・」
知っていても納得できないらしいのは大河か。
楽しみにしてたみたいだもんな、修学旅行。
「日程の変更で、集合時間に間に合わなくなっちゃったの」と一方の亜美。
「え〜・・・亜美ちゃんがいないなんてつまんないよ〜」
「仕方ないよ、麻耶。お仕事なんだから」
何となくしょんぼりする七人の中で、やはり空気を読めない約一名が、
「でもでも〜じゃあ、高っちゃんと亜美ちゃんは三日間、何してんの? 家でゴロゴロ?
それとも二人で、どっか別のとこ行くとか? あ、群馬がいいよ! 群馬っ!」
「なっ! なんですってーっ!」
大河が睨みつけるのは、理不尽な気はするが春田じゃなくて竜児だ。
「そう言えば、さっき三日間よろしくとか言ってたな。何のことだ、川嶋?」
「ん?あ〜そうそう。さっき、ゆりちゃんに聞いたんだけどぉ」
ニコニコと極上の天使スマイルを向けてくる亜美に、嫌な予感が広がって行く。
「修学旅行ってさぁ〜学校行事の一環なわけじゃない? つまり課外授業なわけ・・・
んでもって、それに参加できない可哀想な亜美ちゃんたち二人は〜」
いつの間にか教室中が静まり返って、亜美の話に注目しているのが竜児には恐ろしい。
「みんなが楽しくスキーしてる中、出された課題をこなさなきゃいけないんだって」
なるほど・・・居残り組は自由行動じゃなくて、プリントか何かで自習なのか。
何だ、そんなことか・・・と教室も普段の様子に戻るが、話はまだ続くようで、
「でもでも〜あたしと高須君が『二人っきりで』教室来ても仕方ないじゃない? 二年は
みんな修学旅行行っちゃってて、二階のフロアには誰もいないんだし、先生方も引率で
いないわけだし」
(誰もいないフロアに亜美ちゃんと高須が二人っきり!?)
(そんなの押し倒せって言ってるようなもんじゃないか!)
(うわ・・・亜美ちゃん、貞操の危機? まじでなのぉ?)
・・・教室内に不穏な空気が立ち込め始める、最大の瘴気は目の前の小さな少女からだ。
「・・・おい、ばかちー。何が言いたい」
亜美は余裕の目付きを大河に向けて言い放つ。
「だ・か・らぁ〜逢坂さんがスキーを楽しんでる三日間、代わりに亜美ちゃんが高須君の家に行って、二人で寂し〜くお勉強しなきゃならなくなっちゃったってこと。わかる?」
「「「「「「「なっ!!!!!!!」」」」」」」
大河だけじゃなく、実乃梨まで含めた七人が一斉に絶句する。
というかクラス全部が固まったのを見て、あわてた竜児は、
「ちょっと待て川嶋。学校に来ても仕方ないのは分かるが、何で俺んちでやるんだ?」
(俺んちで・・・犯る、だってよ!)
(高須君、犯るきまんまん?)
今やクラス全員が竜児と亜美の周りを取り囲んでいた。
もはや聞き耳を立てる気すらないらしい。
固唾を飲んで亜美の返事を待っていると、答は意外なところから返って来た。
「それはですね、高須君」
空気の嫁ない独身がいつのまにか、すぐ近くに来ていた。
つうかその存在感の薄さも、独身の理由の一つなんじゃないのか?
合コンとか行っても、ただの人数合わせだろアンタ・・・。
「川嶋さんのおうちは、修学旅行に合わせて、皆さんも旅行に出かけちゃうらしいの。
そうすると家には、川嶋さん一人だけになっちゃうでしょ?」
ここでいう「おうち」は亜美が世話になっているという叔父さん夫婦の家のことだろう。