_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ごらんの有様だよ!!! <
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保守
>>1乙ー
最近ディア子の足元が無性に気になる
まさかの網タイツ+ニーソ?
改めて自分の書いた物を読み返して見たら、バハ子が受け側でエロいのがないのに気付いた。
というわけで、今回はバハ子。
気合が入りすぎて、少々長いです。お時間に余裕のある時にどうぞ。
では、楽しんでいただければ幸いです。
彼女はエースだった。
戦闘のためだけに生きるような種族、バハムーン。その力は強く、生命力は群を抜く。素早さや知力は劣るものの、吐き出すブレスが
それを補って余りある威力を見せ付ける。
他の仲間が、バットン相手に苦戦している時、彼女はデブガエルも一撃で切り捨てた。他の仲間が即死してもおかしくない攻撃を、
彼女は容易く耐え抜いた。
当然、誰もが尊敬の念を抱き、誰もが彼女を羨んだ。
「すごいな、よくあんなの一撃で倒せるな」
「すごい!あんな攻撃、私なら耐えられないよ!」
そんな言葉に対し、彼女はいつもこう答える。
「貴様らみたいな劣等種とは、格が違う」
彼女にとっては、どれも当たり前。それすら出来ないのがおかしいのだ。だから、彼女は全ての仲間を見下し、軽蔑していた。
自分が一番で、自分が最も優れている。彼女は本気で、そう信じていた。事実、そう信じても無理のない環境ではあったのだ。彼女以上の、
あるいは同等の力を持つような種族はおらず、装備も貧弱な彼等の中では、彼女の攻撃力は群を抜いていたし、単純に敵の攻撃を耐え抜く
耐久力も、無視できなかった。種族ゆえの力。力ゆえのエース。彼女はそれを、ずっと当たり前だと思っていた。
パーティの仲間は、しばしば入れ替わった。力をつけていくごとに、必要な者とそうでない者が現れる。初めて除名されたのは、
錬金術師のセレスティアだった。
「君は、戦闘には向いてない。それに成長も遅い。君がこの先ついてくるのは、無理がある」
彼を除名するとき、リーダーのヒューマンはそう言った。事実、セレスティアは誰よりも成長が遅く、攻撃もまともに当たらない。
彼女としても、その意見には賛成だった。下等な種族がリーダーをしているのは鼻持ちならなかったが、先輩ということもあり、
いつも黙って従っていた。
除名を言い渡されたセレスティアは、少し寂しそうに笑って答えた。
「リーダーの判断なら、従いますよ。それに、わたくしとあなた方では、どうやら求めるものが違うようです」
負け惜しみだな、としか、彼女は思わなかった。それ故、この言葉も、彼女の中には残らなかった。
錬金術師の代わりに、司祭のフェアリーが加入した。天使という、それなりに高等な種族がいなくなり、羽虫が加入した事に関しては
非常に不快ではあったが、戦いには無関係なことと自分に言い聞かせ、彼女は従った。
次に除名されたのは、盗賊のクラッズだった。
「嫌だよぉ!どうして、せっかく装備も揃って、強くなってきたところなのに…!」
「君がいなくても、魔法がある。魔法なら、罠の解除を失敗することはない。そもそも、罠の判別すら必要はない」
「だ、だけど、アンチスペルゾーンだったらどうするのさぁ!?それだったら…」
「諦めるまでだ。これで満足かい」
それでもクラッズは嫌がっていたが、結果は変わらなかった。泣きながら寮に帰る彼を見ても、彼女は何も思わなかった。
代わりになったのは、狩人のエルフだった。が、別に盗賊技能を期待されているわけではなく、盗賊学科の使う合体技、先手必勝が
ほしいというだけのことだった。あとはせいぜい、扉の開錠にしか、彼は活躍しなかった。
そうやって、何人もの仲間が入れ替わった。だが、彼女は依然として、パーティに残り続けた。
彼女は、エースだった。
少しずつ遠出をするようになり、少しずつ地下道に篭る時間も長くなる。今、彼女の仲間は当初とまったく違う面々になっている。
戦士の彼女に、修道士のヒューマン、神女のクラッズが前線を張る。後ろには狩人のエルフに、僧侶に転科したフェアリー、超術士の
ノームという編成である。ヒューマンとフェアリーとノームは全学科の魔法を使え、クラッズとエルフも魔術師学科を経験している。
魔法がまったく使えないのは、今やバハムーンただ一人である。それでも、彼女は前線で戦い続けていた。彼女の代わりは、どこにも
いなかったのだ。
というより、彼女はいないと信じていた。
ある日、ヒューマンがみんなを集めた。それは、パーティに何か動きがあった時にする事だった。
寮に集まると、ヒューマンの隣には、フェルパーの女の子が立っていた。
「みんな、わかってると思うけど、入れ替えだ。この子は侍学科をやってる」
「それで、今回は誰が除名だと?」
まったく無防備にそう尋ねると、ヒューマンは鋭い視線を向けた。
「君だよ、バハムーン」
「……私が?」
内心、バハムーンはひどく驚いていた。が、それをおくびにも出さず、表面的には平静を装う。
「一応、理由を尋ねておこうか?」
「今までは、君の代わりがいなかった。これからは、この子が代わりになる」
「そいつが、私の代わりになれると言うのか」
鼻で笑いながら言うと、フェルパーは少しムッとした顔をして見せた。が、ヒューマンが代わりに答える。
「代わりどころか、それ以上になると思うけどね。最近、君はまともに攻撃したことがあるか?」
「………」
「ないだろう?大抵の敵は、フェアリーが開幕と同時に片付けてくれる。そうでなくとも、クラッズが捨て身で倒してくれるし、残した
相手だって、エルフと俺で片付けられる。ノームはいざという時、すぐに魔法壁張ってくれる。そうして見ると、君は一体何の役に
立つんだ?魔法も使えない、動きも遅い、ブレスより魔法の方が強力。おまけに、仲間の和を乱す……わかるかい?」
ヒューマンはバハムーンの目を見据え、はっきりと言った。
「お荷物なんだよ、君は」
さすがに、この言葉は応えた。動揺を外に出さないようにするだけで精一杯だったが、それでもバハムーンは平静を装った。
「…………そうか。貴様がそこまで言うなら、抜けてやろうじゃないか。だが、そこまで言われた以上、例えその劣等種が使い物に
ならなかったとしても、私は戻らんぞ」
その言葉に、ヒューマンは鼻で笑った。
「誰が、わざわざ呼び戻すかってんだよ。君以上の活躍をしてくれると、俺は思ってるけどね」
「はっ!せいぜい、無駄な期待を裏切られないように祈っているんだな」
その日以来、彼女はパーティを抜けた。しかし、彼女はそう重く考えてはいなかった。
自分の代わりなど、できるわけがない。そのうち、あいつらも自分が間違ってたと知るだろう。
そうなると、彼女は本気で思っていた。そんなわけで、彼女は寮での生活を、少し長めの休み程度に考えていた。
寮にいると、しばしば昔の仲間と出会った。その中でも、最初に脱退したセレスティアとはよく会った。
「やあ、バハムーンさん。お変わりありませんか?」
「貴様か。別に変わった事などない」
「ですが……あなたも、でしょう?それで変わりないとは、とても思えないのですが…」
「私は、貴様らとは違う。一緒にしないでもらおうか」
会ったからといって、何か特別なことがあるわけでもなく、万事こんな調子であった。
「そうですか。では、何かあったら、言ってくださいね。わたくしとあなたとは、同じパーティを組んだ仲間ですから」
その優しい言葉も、彼女の中には残らなかった。自分は他の奴等とは違うと、本気で信じていたのだ。
元のパーティの噂は、彼女の耳にも届いていた。あれ以来、彼等は破竹の勢いで地下道を制覇し、今では彼女の知らないところにまで
足を踏み入れているというのだ。最初、彼女は信じられなかった。しかし、至る所でその噂は聞かれ、どうやらそれが本当らしいと
気付く。おまけに今、彼女の前には、リーダーであるヒューマンがいた。
「おう、しばらくぶりだな」
「貴様か。今はハイントにいるそうだが、噂は本当か」
そう尋ねると、ヒューマンは軽蔑した眼差しを送る。
「お前が抜けて以来、パーティがうまく回るんでね。ようやく、理想形になったと思ってるよ」
「………」
「あの子はしっかりやってるよ。今じゃフェアリーと並んで、雑魚殲滅のエースだ」
「ふん、頂点が並び立つとは、おかしなものだな」
「そうでもない。やり方が違うんだからな。ま、一つだけ言えるとしたら…」
ヒューマンはまた、軽蔑した不快な視線を送る。
「あの二人と比べりゃ、お前は相手にもならないってことぐらいだな」
「……何だと?」
「おおっと、学校内で揉め事はごめんだぞ。俺が手を出さなけりゃ、お前が退学させられる程度で済むかもしれないけどさ」
馬鹿にしきった口調でいい、ヒューマンは寮へと歩き出した。
「んじゃな。俺はお前と違って、探索の準備があるから」
その後ろ姿を、苦りきった表情で見つめ、見えなくなるまで見送ってから、ようやく歩き出す。
学食に着くと、ちょうど入れ違いの形でセレスティアに出会った。
「おや、バハムーンさん。何かあったのですか?」
「いきなり何を言う」
「いえ、顔色が優れないように見えたので」
他人に顔色を悟られるなど、今までにないことだった。それが、バハムーンに大きな不快感をもたらす。
「ふん。他人の顔色を窺って生きるような劣等種が。貴様とかかずらっている暇などない」
「そんな、バハムーンさん」
怒ったりせず、むしろ悲しげに声をかけるセレスティアを無視し、バハムーンはさっさと学食の中に入ってしまう。
気持ち程度に栄養のバランスを取り、あとは完全な好みで食品を選び、席に着く。
「……何をしている」
「わたくしも、ご一緒しようかと思いまして」
さっき学食を出ようとしていたセレスティアが、目の前に座っていた。
「貴様はもう食っただろう。出て行け、食事の邪魔だ」
「なら、デザートでも取ってきましょう」
そう言って彼が席を立った瞬間、バハムーンは素早く席を替えた。これでゆっくり食事が出来るかと思い、ステーキに口をつけた瞬間。
「ここの方がよかったですか。確かに、窓際は何となく、気分がいいものです」
「………」
すぐに見つかった。歯軋りと共に肉を噛み潰すと、セレスティアは穏やかな笑顔を向けた。
「あなたの巨体は、目立ちますから」
「食うなら黙って食え!」
腹立たしげに怒鳴り、バハムーンはステーキを豪快に食いちぎる。その正面で、セレスティアはのんびりとアイスクリームを食べている。
その時、食事をする二人のところへ、一人のドワーフが近づいてきた。何となく、まだこの学校に慣れていないようだった。
「先輩、探しましたよ〜」
「おや、どうしました?また、何か練成でも?」
セレスティアが柔らかな笑顔を向けると、ドワーフはホッとしたような笑みを浮かべた。
「その、これ、分解してほしいんです」
「ハーフパンツですか。新しい防具が、手に入りましたか?」
「ううん、まだです。でも、これ分解したら、ジャージ作れるんですよー」
なんと低級な会話かと、バハムーンはうんざりした気分で思った。ただでさえ、セレスティアのせいで食事がまずいのに、こんな奴まで
来ては、たまったものではない。
「おい、貴様ら。そんな事はよそでやれ。劣等種同士の会話など、聞いてて飯がまずくなる」
その棘のある口調に、ドワーフは少し驚いたように振り返った。
「……先輩、この人は先輩のお友達ですか?」
「ええ、以前一緒にパーティを組んでいたんですよ」
「そうですかあ。強そうですもんね。それなら、私の話なんか、聞いててもつまらないですよねー」
わかっているのかいないのか、ドワーフはそう言って屈託なく笑った。その間に、セレスティアはハーフパンツを分解し、できたものを
ドワーフに手渡す。
「はい、どうぞ。ところで、ジャージの材料は持っているんですか?」
「はい〜。分解してもらったら、すぐ作ろうと思って」
「それなら、せっかくです。わたくしが作りますよ」
「いいんですかあ!?それじゃ、お願いしますー!」
結局、二人とも黙ってはくれなかった。ただでさえまずい食事が、どんどんまずくなっていく。セレスティアは何度か分解と練成を
繰り返し、やがて普段より出来のいいジャージが出来上がると、それをドワーフに渡した。
「サービスですよ。これなら、しばらく使えるでしょう」
「わーい!先輩、ありがとうございます!……でも、その、今日は分解してもらう分のお金しか、ないんですけど…」
「ですから、言ったでしょう?それはサービスです。お代はそれで結構ですよ」
「ほんとですかぁ!?先輩、本当にありがとうございます!」
嬉しそうに言うと、ドワーフはごく僅かな金額をセレスティアに渡す。おにぎり一つすら買えないような、本当にささやかな金額だった。
ジャージを受け取り、ドワーフが大喜びしながら行ってしまうと、セレスティアは軽く息をついて、バハムーンを見つめた。
「バハムーンさん。確かにあなたから見れば、わたくし達など取るに足らない存在かもしれません。ですが、そのような態度は、あまり
感心できませんよ」
「ふん。劣等種を劣等種と言って、何が悪い」
「ふう……わかってもらえないのは、残念です」
悲しげに言うと、セレスティアは席を立った。
「ですが、バハムーンさん。わたくし達には、出来ることと出来ないことがあります。それは、あなたも同じですよ」
「貴様、何が言いたい」
「動きの速さは、あなたはどちらかといえば鈍い。知力や信仰心も、あるわけではない。それに関しては、明らかに、他の種族より、
『劣っている』んですよ」
思わず、バハムーンは右手のナイフを握り締めていた。が、セレスティア相手ということで、辛うじて自制心が働く。
「……さっさと帰れ。これ以上うるさい口をきくなら、貴様とて容赦はしないぞ」
さして気にする風もなく、セレスティアは肩をすくめた。
「わかりましたよ。ですが、もしわたくしが必要なことがあれば、いつでも呼んでください。できる限り、力になりますよ」
「帰れと言っている!今貴様に望むことはそれだけだ!」
セレスティアは何も言わず、食器を下げると部屋に戻って行った。それを見届けてから、バハムーンは食事の続きを食べ始めた。
今までに味わったことがないほど、まずい食事だった。
あれ以来、バハムーンは機嫌が悪かった。ヒューマンのあの台詞に、セレスティアの追い討ちである。毎日ひどくイライラし、周囲に
当り散らしたくなるほどに腹立たしい。
そんな折、彼女はふとフェルパーを見つけた。自分の代わりとなって、パーティに加入した、あのフェルパーである。
「おい、貴様」
呼びかけると、フェルパーの尻尾がぼさっと逆立つ。そして、おどおどした目でじっとバハムーンを見つめてきた。
こんな奴に、自分は劣ると言われたのだ。そのことが、バハムーンの神経をさらに逆撫でする。
「ずいぶん活躍しているそうだな」
「先輩……あの、私は…」
「……貴様のような奴に、この私が劣るというのか…!?」
低い声で呟くと、フェルパーはさらに不安そうに耳を伏せる。そんな彼女に、バハムーンははっきりと言った。
「ちょうどいい、一本手合わせ願おうか」
「え…?」
「貴様になど、この私が負けてたまるか!この目で、貴様の実力を見るまでは、私は認めんぞ!」
その言葉に、フェルパーは一転して面倒くさそうな目を向けた。
「い、嫌です……どうして、わざわざそんなこと…」
「負けるのが怖いのか」
「ち、違いますよ!……じゃ、いいです、やりましょう。体育館でいいですよね?」
二人は連れ立って体育館に向かい、練習用の木剣を手に取る。バハムーンは大型の両手持ち剣、フェルパーは刀の二刀流である。
「じゃ、いきますよ?」
「言われるまでもない!」
言うが早いか、バハムーンは猛然と打ちかかった。体の動きこそ遅いものの、その一振りは凄まじく速い。当然、確実に捉えたと思った。
が、フェルパーは信じられないほどの速さで飛びのき、かと思う間もなく、両手の木刀を振りかざして襲い掛かった。
一本は何とか受け止めた。しかし、同時に振られた二本目は防げず、がら空きの首元を狙われた。しかし、剣はそこで止まる。
「貴様、どういうつもりだ!?」
「どうって……真剣だったら、先輩、もう死んでます。先輩の負けですよ」
「ふざけるな!私がその程度で死ぬと…!」
「だから、私の刀は簡単に首刎ねられるんですよ。いくら先輩だって、死にますよ」
ギリッと、バハムーンの歯が鳴る。直後、彼女はあろうことか、体育館の中で真剣を抜いた。
「なら、証拠を見せてみろ!木剣など、実戦とは太刀行きの速さも重さも違う!真剣で、貴様に同じ動きが出来るか!?」
「何考えてるんですか!?真剣道部でもないのに、学校内で刀抜くなんて!」
「責任なら私が取ってやる!貴様も抜け!」
フェルパーは苛立たしげな溜め息をつくと、しょうがないというように刀を抜いた。
「いいですけど、結果は変わりませんよ。むしろ、真剣なら私の方が、ずっと有利です」
興奮気味に尻尾を揺らめかせ、今度はフェルパーから仕掛ける。右の刀を受けると、チィンと激しい金属音と共に、真っ白な火花が
飛び散る。続いて振られた左の刀を、バハムーンは剣の柄で受け止めた。その隙を逃さず、バハムーンは剣を思い切り薙いだ。が、
やはり捉えたはずのフェルパーは姿を消し、直後、お互いの吐息がかかるほどの距離に彼女の顔が現れた。
「……また、勝ちです」
首筋に、冷たい金属の感触。いつの間にか、フェルパーは刀を逆手に持ち直し、バハムーンの首の前で交差させていた。
本当に殺す気だったら、首が落ちなくとも頚動脈を切られていただろう。
「もう、満足ですか?私、もう疲れてるんで、これぐらいにして欲しいです」
刀を納め、悠々と歩き去るフェルパー。それでも、バハムーンはまだ認められなかった。
「まだだぁ!まだ、全力を出し切ったわけじゃない!」
直後、バハムーンはフェルパーに向かってブレスを吐きかけた。フェルパーはギョッとした顔でそれを見ると、咄嗟に刀を抜いて顔を
庇った。ブレスが消えると、フェルパーは怒りに満ちた目でバハムーンを睨みつける。
「いい加減にしてください!だから、先輩は嫌われるんですよ!何でもありなら、先輩なんか百人束になったって勝てません!」
フェルパーは刀を交差させ、素早く詠唱した。
「パラライズ!」
「なっ……う、ぐっ…!」
たちまち全身が痺れ、バハムーンは剣を取り落としてその場にうずくまった。そこに、フェルパーがゆっくりと歩み寄る。
完全に相手を見下した目で、フェルパーはバハムーンを睨む。そして、刀をゆっくりと振り上げ、思い切り突き下ろした。
「うっ…!」
ダンッと大きな音が響く。思わず目を瞑ったバハムーンが、恐る恐る目を開けると、目の前の床に刀が突き刺さっていた。
「これで満足ですか?それとも本当に死ななきゃわかりませんか?さすがに先輩だって、もうわかりますよねえ?」
悠然と刀を抜き、フェルパーは尻尾でバハムーンの顔をべしべしと叩く。
「弱いんですよ、先輩は。そのくせ傲慢で、自分が一番強い気になって。だから、除名されたって言うのに、な〜んにもわかって
ないんですね。頭も弱いうえに力も弱いなんて、ほんっと、使えないですよね、先輩は」
刀を鞘に収めると、フェルパーは汚い物を砂で埋めるように、足を後ろにザッザッと蹴り上げる。
「いい加減わかりましたよね?もう二度と、顔見せないでください。不愉快ですから」
何一つ言い返せないまま、フェルパーは行ってしまった。
体育館の中、一人取り残されたバハムーンは、麻痺した体で必死に涙を堪えていた。もう、どうしたって認めざるを得なかった。
負けた。完膚なきまでに、叩きのめされた。あまつさえ、『弱い』と言われ、罵られ、殺されるべき場面で情けをかけられた。
恥ずかしかった。悔しかった。いっそ死んでしまいたいほどに、悲しくてたまらなかった。
そんな彼女に、一つの影が近づく。フェルパーが止めを刺しに戻ってきたのなら、どんなにいいかと、彼女は思っていた。
「大丈夫ですか、バハムーンさん?」
心配そうな、柔らかで優しい声。顔を見るまでもなく、それは誰だかすぐにわかった。
「少々お待ちを。体は、少しでも動かせますか?」
「………」
「動かせませんか。では、仕方ないですね」
顔を上げれば、涙がこぼれそうだった。そのため、バハムーンはただ、何も言わずに顔を伏せていた。が、不意にセレスティアが、
彼女の顔を上げさせた。
「ゆっくり、飲み込んでくださいね」
「ん……んっ!?むっ、ぐっ!?」
突然唇を重ねられ、バハムーンの頭は一気に混乱した。一体この男は何をしているのか。何を考えているのか。その前にどうして
こうなったのか。
口移しで、何か苦いものが流れ込んでくる。そんな物を飲み込みたくはなかったが、言うことをきかない体は、条件反射的にそれを
飲み下す。すると、少しずつ麻痺が薄れ、体の自由が利くようになってきた。口の中の物を全部移すと、セレスティアは素早く離れた。
「いきなり、唇を重ねた非礼はお詫びします。ですが、こうしなければ使えなかったもので、どうぞお許しを」
「………」
混乱が収まってくると、麻痺消しを使ってくれた事に対するお礼よりも先に、フェルパーに負けた悔しさが蘇ってくる。何とか
立ち上がり、しかしずっと俯いていると、セレスティアはバハムーンに優しく手を差し伸べた。
「とりあえず、戻りましょう。お部屋まで、ご一緒しますよ」
一瞬、その手を取りかけた。だが、言いようもない強い不快感に襲われ、バハムーンはその手を打ち払った。
それでも、セレスティアは優しい笑顔を崩さなかった。強く打たれた手を押さえることもせず、そのまま静かに手を引くと、黙って先を
歩き始める。何も言わないまま、バハムーンは剣を拾い、その後について行った。寮に戻り、階段を上がり、部屋の前まで来たところで、
セレスティアは立ち止まる。
「それでは、わたくしはこれで。どうか、今日はゆっくり休んでください」
「………」
「それから……もし、何かあれば、何でも言ってください。わたくしが出来ることであれば、いつでも力になりますよ」
最後にもう一度、優しい笑顔を向けてから、セレスティアは去って行った。その背中を見えなくなるまで見送ってから、部屋に入る。
剣を放り投げ、ぺたんと床にへたり込む。
自分はエースだったのだと、彼女は思った。
誰も敵わない力、屈強な体力。それが彼女のプライドの全てであり、同時にエースたる所以だった。
ずっと、あのパーティにいるのが当たり前だと思っていた。力ゆえに、その居場所は揺ぎ無いものだと思っていた。
今、それは崩された。プライドを粉々に打ち砕かれ、自分の居場所であった場所には、既に別の者が居座っている。
もう、居場所はないのだ。帰る場所など、どこにもない。彼女はもう、あのパーティに戻ることは、永遠にないのだ。
その日初めて、バハムーンは泣いた。
声を押し殺し、涙をポロポロ流しながら、一日中、泣き続けていた。
彼女は、エース『だった』のだ。
居場所がないと悟ってしまうと、学園生活は退屈だった。今更、他のパーティに所属する気も起こらず、またそんな誘いもなく、
無為に過ごす日々はひどく退屈である。だらだらと日々を過ごし、たまに思い出したように鍛錬をし、食事をして寝る。ショックから来る
無気力も、その退屈さに拍車をかけていた。
相変わらず、セレスティアはよく見かけた。この時はもう一人、知った顔が一緒にいた。
「鉄くず、破れた兵士服……と、タルワールですね」
「そっかぁ、ありがとう。鑑定までしてもらっちゃって、ほんと助かるよ〜」
「いえいえ。あなたとは、一緒に旅をした仲です。これぐらい、当然ですよ」
ニコニコと笑顔を振りまくクラッズ。あの時、ずっと泣いていた姿が嘘のように、幸せそうな笑顔だった。
そう思ってから、すぐに違うと思い直す。あの笑顔が、彼の本来の顔なのだ。よくよく思い返してみれば、彼はいつもあんな笑顔を
浮かべていた。ただ、昔の彼女は、彼のことなど眼中になかったのだ。それで、初めて彼をよく見たのが、彼が除名される日だったという
だけの話である。
クラッズが行ってしまうと、バハムーンはおずおずとセレスティアに近づいた。
「おや、バハムーンさん。ご機嫌、いかがですか?」
「……あいつ……また、探索に行ってるのか…?」
「ええ、そのようですよ。ただ、もうあんな悲しいのは嫌だと言うことで、一人で頑張っているようです」
そう言うと、セレスティアはやるせない表情を浮かべた。
「まあ、わからないでも、ありません。彼は本当に、パーティの仲間が、大好きでしたからね」
今では、彼女もその気持ちが何となくわかった。彼とはまた違うであろうが、彼女もあのパーティが、自分の居場所だと信じていたのだ。
「あなたは、どうです?ホルデア登山道や、パルタクス地下道なら、そんなに危険もありませんよ」
「……お前は、どうなんだ。お前こそ、探索には行かないのか」
すると、セレスティアは静かに笑った。
「小額ながら、錬金でお金を頂いてますからね。日々の食事にも困りませんし、募金することで、それなりに力もつけられるのですよ」
「……だが、実戦に出なければ、勘が鈍る。だから…」
「ふふ。それは、あなたもでしょう?」
そう言われてしまうと、バハムーンは何も言い返せなかった。たちまち、バハムーンの顔が不快そうに歪み、セレスティアをキッと睨む。
「だ、黙れ!一番早くに除名されて、最も経験を積んでいないお前になど、言われたくはない!」
バハムーンの棘のある言葉にも、セレスティアは優しい笑顔で応える。
「言い換えれば、最も早く、挫折を経験しているのですよ、わたくしは。だからこそ、言える言葉もあるのです」
「それは、そのっ……お、お前の言うとおりかもしれんが…」
言葉に詰まってしまったバハムーンを見て、セレスティアはおかしそうに笑った。
「な、何がおかしい!?」
「ふふふ。いえ、変わったなぁと、思いまして」
「だ、誰がだ」
「あなたが、ですよ。ふふ、以前なら、わたくしの言葉など、全て否定したでしょうに」
「……う、うるさい!くそっ、やはり劣等種などと関わると、ろくな事がない!私はもう帰る!」
大股で部屋に向かうバハムーン。その背中を、柔らかな声が追いかけた。
「確かに、あなたは素晴らしい方です。祖先も高等な存在で、わたくしとは次元の違う存在です。たった一人で生きる力もあるでしょう。
ですが、だからといって、誰かに頼ってはいけないということは、ありませんよ。本当に辛くなったら、いつでも、頼ってください」
「……うるさいっ!そんな真似、誰がするかっ!」
振り返らずに怒鳴ると、バハムーンはもう振り返ろうともせずに、部屋に戻ってしまった。
探索に行く気も起きないまま、さらに数日が経過した。最近そのおいしさに目覚めたホットケーキでも買おうと購買に向かう途中、
何やらセレスティアが慌てた様子で飛んでくるのが見えた。その様子を見る限り、どうやらただ事ではないようだ。
「セレスティア、どうした?何かあったのか?」
すると、セレスティアは地面に降りて急ブレーキをかけ、切羽詰った顔で口を開いた。
「ああ、ちょうどいいところに!やはり、天はお見捨てにならないでいてくれたのですね!」
「御託はいい。何があったかと聞いている」
「お願いです、バハムーンさん!わたくしと一緒にカウサ地下道に行ってください!」
「カウサ?あんな所に、一体何があると言うのだ?」
セレスティアの顔は、いよいよ切羽詰ったものになっていく。
「この間会ったドワーフさんを、覚えていますか?彼女は一人で探索をしているのですが、さっき戻った生徒が、カウサ中央で
ダイオウバサミに襲われる、彼女らしき人物を見たというのです!」
「……死ぬのも経験だ。死んだら保健室に頼めばいいじゃないか」
「あなたは、助けられるかもしれない人物を、見捨てるというのですか!?」
あまりの剣幕に、さすがのバハムーンもつい気圧されてしまった。
「あ、いや、その、そういうわけでは……ええい、仕方ないな!わかった、行ってやる!」
「よかった、助かります!実は、わたくし一人では、心細かったのですよ。ですが、あなたとなら安心です」
そう言われると、悪い気はしない。最初こそ自棄で言った言葉だったが、快く行ってやることにする。
パルタクス地下道に入ると、とても懐かしい気がした。そもそも、こんな初級の地下道に来ること自体、入学直後以来、滅多になかった。
しかし、のんびりしてはいられない。それこそ、あっという間にパルタクス地下道を抜けると、二人は休む間もなくカウサ地下道に
飛び込んだ。中央に辿りつくと、遠くで誰かが戦っている音がする。
「聞こえましたか、バハムーンさん!?」
「ああ、行くぞ」
二人は揃って駆け出した。扉を抜け、マップの中央付近まで来ると、音はいよいよ大きくなる。そして、水溜りの中に、彼女はいた。
「ドワーフさん!」
「せ、先輩〜ぃ!」
既に全身傷だらけのドワーフが、涙声で叫ぶ。だが、顔には僅かに安堵の色が見て取れた。
「バハムーンさん、いけますか!?」
「ふん、誰に口を利いている!?行くぞ!」
いばらの鞭を振りかざし、セレスティアが仕掛けた。しかし、既に何度かの復活を果たしたらしいダイオウバサミは、その一撃をあっさり
かわしてしまう。それどころか、新たに飛び込んできた標的に、巨大な鋏の狙いを合わせた。
だが、その鋏が攻撃に使われることはなかった。突如襲い掛かった炎に、ダイオウバサミは両腕を使って顔を庇う。
「下がっていろ!貴様らが敵う相手ではない!」
素早く両者の間に飛び込み、バハムーンは剣を構えた。確かにブレスは効いたはずなのだが、その傷は一瞬にして回復している。
ダイオウバサミの腕が迫る。それを飛びのいてかわし、腕を切り落とす。しかし、やったと思ったのも束の間。たちまち鋏が再生し、
再び襲い掛かってくる。
一瞬反応が遅れ、胸元をざっくりと切り裂かれる。それに構わず、今度は背中に剣を突き立てる。が、やはりその傷は回復し、
ダイオウバサミは何事もなかったかのように襲ってくる。
この敵は速攻で片をつけるしかない。しかし、それを為すには暇がない。最初は余裕のあった彼女も、少しずつ追い詰められてくる。
―――何とか時間を稼げれば……しかし、どうやって…!
その時、ドワーフとセレスティアが彼女の隣に立った。
「おい、貴様ら…!」
「一人で勝てる相手では、ないのでしょう?ですから、お手伝いしますよ」
「ふざけるな!どうして私が、貴様らの手など…!」
「ごめんなさい、先輩!でも、私も役に立ちたいんです!どうか、一緒に戦わせてください!」
断っても、無理に参加してきそうな雰囲気であった。少し迷って、バハムーンは口を開く。
「……なら、僅かな時間でいい。あいつの気を逸らせ」
「わかりました!」
全員が、武器を握り直す。ダイオウバサミが、体勢を整える。
「セレスティア、気をつけろ。助けに来たお前が死んでは、笑い話にもならん」
「わかっています。では、参りましょう!」
セレスティアが宙を舞い、上から鞭を浴びせた。ダイオウバサミがそれに気を取られた瞬間、ドワーフが迫る。そうして二人が
交互に攻撃している間に、バハムーンは静かに精神を集中した。神経を研ぎ澄ませ、全身の感覚を意識し、僅かな動きすらも制御する。
筋の一本までもを精神の支配下に治めると、バハムーンはゆっくりと構えた。
「さあ、どけ!この勝負、もらったぁ!」
剣を振りかざし、バハムーンはダイオウバサミに襲い掛かった。初太刀でダイオウバサミの殻を砕き、さらに続く攻撃が、殻に
守られていた体を切り裂く。その傷口に、バハムーンは剣を振り上げた。
「でえええぇぇぇい!!!」
渾身の気合と共に、体を真っ二つに叩き切る。さすがに体を直接斬られてはたまらず、ダイオウバサミはビクンと痙攣し、ついに
その動きを止めた。
「すごい……さすが、バハムーンさんですね。お見事でした」
「先輩、すごいですー!私、先輩のこと尊敬します!」
「ふん。これぐらい、出来て当然だ」
そうは言っても、久しぶりに聞いたその言葉は、純粋に嬉しかった。失いかけていた自信が、少しずつ蘇ってくる。
そこでふと、セレスティアが真顔になり、ドワーフに厳しい視線を向けた。
「それにしても、どうしてあなたはあんな事をしていたのですか。もう少しで、手遅れになるところだったんですよ」
「あ……ご、ごめんなさいー…。でも、その、急に目の前に出てきて、逃げられなくってぇ…」
「だから、煙玉と帰還札ぐらい用意しておくべきだと、あれほど言ったでしょう?」
「ごめんなさーい、気をつけます…」
「……まあ、いいでしょう。とにかく、あなたが無事で、本当によかった。それに、あんな強敵相手に、よく頑張りましたね」
優しい笑顔を向けるセレスティア。嬉しそうな顔をするドワーフ。
それを見ていると、バハムーンの胸に、よくわからない感情がもやもやと湧き上がってきた。何だか、とても不快だった。しかし、そんな
感覚は初めてで、それが一体何なのかを悟るまでには、かなりの時間を要した。
そして、それを認めるまでには、さらに長い時間を要した。ドワーフを部屋に送り、セレスティアと別れ、部屋で一人になってから、
彼女はようやく、それを認めた。
「ふ、ふん……らしくも、ない…!」
ドワーフと親しげに話すセレスティア。彼の言葉に嬉しそうなドワーフ。その姿を見て、彼女は嫉妬していたのだった。
一度認めてしまうと、それに馴染むのは非常に早い。
探索に出ない日々も、パーティの居場所がなくなったことも、ホットケーキのおいしさも、すぐに当たり前になってしまう。そしてまた、
今ではセレスティアに対する気持ちが、どんどん大きくなっていた。
自分以外の相手と親しげにしていると、つい嫉妬してしまう。相手が後輩だろうと、ただの練成を頼むだけの相手であろうと、また
元仲間のクラッズであっても、親しく話しているのを見るとつい嫉妬してしまった。そのせいもあって、今では彼女とセレスティアが
話す機会は、以前よりずっと多い。できればずっと、自分とだけ話していてほしいと思うほどである。
他愛のない話をし、一緒に食事をし、思い出話に花を咲かせ、たまに練成を頼みに来る相手に、帰れ帰れと負のオーラを放つ。
しかし、そんな彼女に対して、セレスティアはいつもと変わらぬ振る舞いを続けていた。他の大勢に対するのと同じように、優しい
笑顔を見せ、柔らかい口調で話し、誰とも分け隔てのない扱いをする。
それが彼の魅力でもあるのだが、同時に物足りない部分でもあった。
思えば、彼はどんなにひどいことを言おうと、またどんなに冷たくしようと、常に側で自分を支えてくれていたのだ。そんな彼に、
いつしかバハムーンは惹かれていた。なのに、そうさせた彼はいつもと変わらないのだ。それが嬉しくもあり、もどかしくもあり、
しばらくの間、バハムーンは悶々とした日々を送っていた。
何か一つぐらい、お礼をしたい。かと言って、それを自分から言い出すのはプライドが許さない。だが、何かしなければ気が済まない。
だけど口に出せば安っぽくなる気がする。でも一緒にいたい。けど恥ずかしい。
そんな思いがぐるぐる回り、以前とはまた違った不快感がバハムーンの中を満たしていく。できれば、セレスティアの方から何かしらの
行動を起こしてくれると嬉しい。しかし、彼にそんな気配はなく、また、よく考えるまでもなく、彼にそういうことは望めないとわかる。
想いはどんどん強くなり、それが抑えきれないのではと思うほどに膨れ上がっていたある日。
二人は学食で、一緒に昼食を取っていた。セレスティアはいつものように先に食べ終えてしまい、水を飲みながらバハムーンが
食べ終えるのを待っている。バハムーンの方は、ようやくデザートのホットケーキを食べ始めたところである。
「最近は、あなたの顔も、だいぶ明るくなりましたね」
ふと、セレスティアがそんなことを言った。
「パーティから脱退した直後は、それは暗い顔でした。ですけど、今のあなたを見る限り、もう大丈夫そうですね」
その口ぶりから、お別れだとでも言うのかと思い、バハムーンはそっとセレスティアの顔を窺う。すると、セレスティアはハッとした
顔をし、慌てて言葉を継いだ。
「いえ、別にわたくしが退学するとか、そんな話ではありませんよ。ただ、以前のあなたは、それはもう見ていて心配になるほど、
落ち込んでいたように見えたのですが、今はもう、そんな心配とは無縁のようですね、と。そう、言いたかったのです」
「そうか、それを聞いてホッとした」
ようやく、口の中にホットケーキの味が戻ってくる。再び手を動かし始めると、またセレスティアが口を開いた。
「それでも、この先色々な事が、ないとは言えません。ですから、今までと変わらず、もし何かあったら、遠慮なく言ってくださいね。
出来うる限り、力になりますので」
この言葉は、以前からよく聞くものだった。バハムーンの中に、ちょっとした疑問が芽生える。
「お前は、そんなに頼られたいのか?」
「ん〜、そうですねえ。頼ってもらえると、嬉しいという気持ちはありますよ。それに、わたくしが誰かのためになれるのなら、それは
とても喜ばしいことです」
そんなものなのか、と、バハムーンは思った。同時に、彼女の中で、その言葉を都合のいいように解釈してしまおうという心が生まれる。
穏やかな笑みを浮かべるセレスティアを、正面から見据える。その真面目な視線に気付き、セレスティアは表情を改めた。
「どうか、したのですか?」
「……誰かのためになれるなら、何でもするんだな?」
「もちろん、できることであれば、ですけど」
「そうか。なら……その、あれだ。あの、あれだ。えー、その……そう、でもだ。私は、そんな、誰かの力を借りるということは、あまり
したくない」
「そうですか…」
セレスティアが残念そうに息をついてしまい、バハムーンは大慌てで言葉を継ぐ。
「いやっ、だからなっ!?その、え〜〜〜〜……そう!誰かの力を借りたなんて、知られたくないんだ。だから……だから、え……と、
そ、そうだ!人目に、ついてほしくないわけだ!だから……その〜……よ、夜に、な?私の、な、その、へ、部屋に、きて、くれないか?」
真っ赤になりながら、つっかえつっかえ何とか言い終えると、セレスティアは何の疑いも持たない、純粋な笑顔を見せた。
「ええ、構いませんよ。今日の夜で、いいんですね?」
「は!?あ、ああ、そう!きょ、今日でいい!今晩で!ああ、それでいい、それでいいぞ!じゃ、じゃあまた、その、夜にな!」
慌てたように立ち上がると、彼女はホットケーキを咥えたまま、食器を下げに行ってしまった。平静を装っているつもりでも、その姿は
誰がどう見ても動揺しまくっている。そんな彼女を見て、セレスティアは呆れ半分、慈愛半分の笑みを浮かべていた。
その夜。セレスティアは言われた通り、バハムーンの部屋へと向かった。しかし、ノックしても返事がない。
「……バハムーンさん?」
もう一度、声をかけてノックする。すると、中から小さな声が聞こえた。
「か、鍵は開けてある。入ってきてくれ」
ドアを開けてみると、部屋の中は真っ暗だった。その中で、バハムーンはじっとベッドに座っている。
「バハムーンさん、一体どうしたのです?なぜ、灯りもつけずに…」
言いながら近づいていくセレスティアの足が、部屋の中ほどで止まった。
暗闇に目が慣れてくると、バハムーンの姿がぼんやりと闇に浮かぶ。その姿は、いつもの服装ではない。
「そ、その……こ、こうして二人なら、人目もないし、あの、言える……というか、できると、思ってな…」
肩は素肌が見えている。腕も、完全に露出している。胸元で握る布は、毛布のように見える。
「あの……バハムーン、さん…?」
「ま、まず言おう。その……辛いとき、支えてくれて……か、感謝する……あ、いや、えと……ありが……とう…」
切れ切れに、それでも何とか言い切ると、バハムーンは顔を上げ、しっかりとセレスティアの顔を見つめた。
「でも、お前が悪いんだ!わ、私を、その気にさせて、おいて……お前は、それ以上近づいてくれない!」
「あの、バハムーンさん?その、少し落ち着いて…」
思わずセレスティアが後ずさると、バハムーンは慌てて立ち上がった。
「あ、待ってくれっ!」
素早く腕を掴み、足に尻尾を巻きつかせる。片方ずつ手足を取られ、セレスティアは動きの取りようがなくなってしまう。
「その、驚かせたことについては、謝る。で、でも、こうしなければ、お前は来てくれないと思った。それに……恥ずかしいし…」
「………」
「だが、本気なんだ!お前には、散々ひどい扱いもしたし、それでも支えてくれた恩もある。だから、私はそれを返したい」
「で、ですから、それは…」
「なのにっ!お前は、それをさせてくれないんだ!ふざけるな!借りは返すのが筋で、貸したものは奪ってでも取り返すものだろう!?」
「だ、だからって、押し返すのが礼儀とは言わないでしょう!?」
「うるさいっ!お前の都合など知るかっ!わ、私は、絶対に借りは返す!でも、その手段がなかった!だから……その…!い、いや、
違う!いや、違ってはいないが、違う!お前は、できることならするのだろう!?なら、大人しく借りを返されろ!それから、私だって、
せめてお前に礼を……くっ、逃げ道は作らせん!いいから、とにかく、私を抱けっ!わ……私は、お前に、抱かれたいんだっ!!!」
顔を真っ赤にしながら、その階に響き渡るような大声で宣告すると、バハムーンは震えながらも、毛布を握る手を開いていく。
「こんなことを、言えるのは……お前、だけだ…。だから……頼む、断らないでくれ…」
バサッと、毛布が床に落ちる。目の前に大きな胸を晒され、セレスティアは目のやり場に困ってしまう。
目のやり場だけではない。バハムーンへの返答にも、彼は困りきっていた。普通であれば、きっぱり断ってしまうのだが、今の
この状況では、それもしにくい。そんなことをしたら、このまま殺されそうな気もする。
だが、一番困るのは、彼女の決心が本物であることだ。それに、女の子にここまで言わせて断るのも、大変失礼な気がする。
散々に迷った挙句、セレスティアは小さなため息をついた。
「やれやれ……確かに、逃げ道は完全に潰されてしまいましたね。困ったものです」
言いながら、彼はいつもの微笑みを浮かべた。
「わかりましたよ。あなたに恥をかかせるつもりはありませんし、気持ちもわかります。ですが、本当に、わたくしなどでいいのですか?」
そう尋ねると、バハムーンは真っ赤な顔に、嬉しそうな微笑みを浮かべた。
「言っただろう…?お前に……抱かれたいんだ…」
「こんなことを言うと失礼かもしれませんが、今のあなたは、とてもかわいらしいですよ」
セレスティアは、自分を掴む腕を優しく撫でる。
「あなたが、女の子として見えるのは、これが初めてです」
「う、うるさい。縊り殺すぞ」
口ではそんなことを言いつつ、バハムーンは嬉しそうな笑みを消さない。
逃げられる心配がなくなったことで、バハムーンはセレスティアの足に巻きついた尻尾を戻した。しかし、掴んだ腕はそのままである。
「腕は、放してくれないのですか?」
「それは、その……離れたく、ないからな…」
「ふふ。あなたにこんな面もあるとは、意外ですよ」
セレスティアは彼女の体を、優しく翼で包んだ。ふわりとした肌触りに、バハムーンの心が何となく静まっていく。
「いいな、お前の翼は。で、でも、翼なら私にもあるぞ」
お返しとばかりに、バハムーンもセレスティアの体を翼で包む。
「その……お前達みたいに、ふわふわではないが…」
「でも、とても温かいですよ」
羽毛はないが、代わりに血の通う彼女の翼。その翼を、セレスティアはそっと撫でた。
「翼は、その種族をよく表しますね」
「ん?ど、どういう意味だ?」
「わたくし達、セレスティアの翼は、柔らかく暖かく……しかし、先々まで血が通っているわけでは、ありません。あなた方のような、
バハムーンの翼は、ごつごつしていて、それで打たれれば怪我でもしそうに見えます。ですが、すべてに血が通っていて、包まれれば
暖かく、あなたの温もりが、直接伝わります」
愛おしむように翼を撫でるセレスティア。比較的敏感な部分なので、そこを撫でられるとこそばゆいような、気持ちいいような、微妙な
気分になってくる。
クッと、翼でセレスティアの体を押す。すぐにその意味を察し、セレスティアはベッドの方へと体をずらした。
彼がちょうどいい位置に来ると、バハムーンは相変わらず腕を掴んだまま、ベッドに座った。少し躊躇ってから目を瞑り、顔を上げる。
それこそ羽毛が触れるような、ごく軽い感触が唇に伝わる。確かめるようにそれを何度か繰り返してから、ようやくセレスティアは
強く唇を押し付けた。
彼の舌先が、バハムーンの舌を突付く。初めての感触に戸惑ったものの、バハムーンもそれを真似て舌を動かす。舌先でじゃれあい、
絡み、その感覚を楽しむ。
不意に、バハムーンが腕を強く引いた。まったくの不意打ちだったため、セレスティアは慌てて翼を戻すのが精一杯だった。
ぼふっと、彼女の体に倒れこむ。胸元に柔らかい感触があり、目の前には恥ずかしげな彼女の顔がある。
その彼の背中を、バハムーンの翼がぎゅっと抱き込む。ますます体が密着し、セレスティアも少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
「その……あんまりぎゅっとされると、どうにも動けないのですが…」
「あ、そ、それはすまない。けど、その、もっとお前の温かさを感じたくて…」
それを聞くと、セレスティアは小さく笑った。
「わかりましたよ。できる範囲で、続けましょうか」
掴まれていない方の手で、大きな胸に触れる。その瞬間、バハムーンは大慌てでセレスティアを押しのけた。
「うわっ!?な、何をするんだっ!?」
「何って、言われましても……すみません、突然でしたか」
「え、あ、ああ、そうか。いや、すまん……私が悪かった」
お互いこういう事には慣れておらず、知識もあまりないため、雰囲気はぎこちない。
「もう少し、キスを楽しみますか?」
「いや、いい。その、さ、触りたいなら、胸でもどこでも、好きに触ればいい、お前の」
強がってはいるものの、バハムーンはやはり緊張しているらしく、言葉の並びが少しおかしくなっている。それに気付き、セレスティアは
優しく笑いかけた。
「では、両方の意見を採用しましょう」
「両方って…?んっ…!」
再び、唇を重ねる。それにバハムーンが応えるのを見計らって、セレスティアはゆっくりと彼女の胸に手を這わせる。
「んっ……ふぅっ!んん……ん…!」
腕を掴む力が、一気に跳ね上がる。相当きつく握られ、かなりの痛みを伴っているのだが、セレスティアはあえてそれに触れず、愛撫を
続ける。優しくキスをしつつ、胸を撫で、捏ねるように揉みしだく。
最初こそ、緊張のために荒い息をついていたバハムーンだが、少しずつそれに変化が現れる。吐息は鼻にかかったものとなり、それに
混じって微かに声が漏れ始める。
「ん……んぅっ!うぅぅ…!」
何度か、声を抑えようとして歯を食い縛る。そのせいで、セレスティアは幾度か舌を噛まれる。さすがに危険を感じ、セレスティアは
唇を離した。
「んあ……す、すまん。何度か噛んでしまった」
「ああ、いえ、お気になさらず。これぐらい大丈夫ですよ」
言いながら、胸を撫でていた手を、ゆっくりと移動させる。わき腹を通り、腰のラインをなぞるように撫でる。そして、まだ誰にも
触らせたことのない秘部に届いた瞬間、バハムーンは恥ずかしさのあまり、その手を尻尾で絡め取ってしまう。
「……今日はやめておきましょうか?」
苦笑いを浮かべながら、セレスティアが尋ねる。すると、バハムーンはハッと我に返り、たちまちむくれた表情に変わる。
「だ、誰がそんな気遣いをしろと言った!?私はっ、そのっ……お前に……その…」
さすがに言い切るのは恥ずかしかったらしく、最初は威勢のよかった声も尻すぼみになってしまう。そんな姿がとても可愛らしく見え、
セレスティアはつい頭でも撫でてやりたい衝動に駆られたが、両手を封じられているので叶わなかった。
「大丈夫ですよ。恥ずかしがらずとも、ここには、わたくしとあなたしかいません。それに、この事は決して、他言しませんよ」
「ほ、本当だな?信じるぞ?信じていいんだな?」
「わたくしだって、こんなことを他の方に知られたくはありませんよ。ですから、安心してください」
バハムーンの尻尾が、するすると戻っていく。しかし、掴んでいる腕は相変わらずそのままである。
改めて、秘所に手を伸ばす。指先が触れると、バハムーンの体がピクッと跳ねる。
「あっ…!」
普段からは想像もつかないような、高い喘ぎ声。それを出した本人が一番驚いているらしく、顔を真っ赤にしながら口元を手で覆っている。
「可愛らしい声ですよ」
「う、うるさい!黙れ!か、可愛いなどと言われても……あんっ!」
また同じような声が出てしまい、バハムーンは泣きそうな顔で口元を押さえる。
「声を抑えることはありませんよ。わたくしとしても、あなたが気持ちいいのか、嫌がっているのか、知りたいですしね」
「うぅ……お前だけでも、聞かれるのは恥ずかしいんだ……そ、それよりっ!」
バハムーンは、強気なのか弱気なのかよくわからない目で、セレスティアを見つめる。
「その……お前にされるだけでは、不公平だ…。だから、その、私も何かしてやりたいが……ど、どうすればいいんだ…?」
「そうですねえ。わたくしがしていることと、同じようなことをしてくれればいいかと」
「お、同じことか。わかった」
そう言い、バハムーンはセレスティアの胸に手を伸ばした。そして、マッサージでもするように優しく揉んでみる。
そっちじゃない、と心の中で叫んだものの、バハムーンの心中を思い、口には出さないでおいた。
「こ、これでいいのか…?んあっ!」
「いえ、まあ、その……気分の問題ですしね」
「な、何か間違っていたか?それなら……うあっ!?ちょ、ちょっと待……うぅっ、んあっ!い、いきなり激しくするなぁ!」
余計な探りを入れられる前に口を塞ごうと、セレスティアは指の動きを強めた。割れ目をなぞり、敏感な突起を押さえつけるように
撫でつつ、優しく襞を開いて指を挿入する。バハムーンの体は仰け反り、ビクビクと体を震わせている。それに伴い、掴まれている腕が
折れそうなほどに痛み出したが、全力でその痛みに耐える。
「くっ、あぁっ!も、もうよせっ!もういいっ!十分だ、やめろっ!」
その掴んだ腕を引き、バハムーンは無理矢理、彼の動きを止める。そうして、一度ホッと息をつくと、一種思いつめたような目で彼を
見上げた。
「その……もう、そういうのは十分だ。だから、そろそろ……お、お前の、を……い、入れて……ほしい…」
「わかりましたよ。確かに、もう準備は十分のようですしね」
自身の手に付いた粘液をちらりと見て、セレスティアは優しく笑う。
「ところで……そろそろ、この腕を放してもらってもいいですか?」
「え?ああ……で、でも、できれば掴んでいたい……その方が、お、落ち着く…」
「そうですか、わかりました。でも、折らないでくださいね?」
冗談めかして言うと、セレスティアは片手でズボンを脱ぎ、ゆっくりとバハムーンの足を開かせる。
いよいよ、バハムーンの顔は不安そうになり、腕を掴む手にもぎゅっと力が入った。そんな彼女の顔を、セレスティアは翼で優しく撫でる。
「痛いようなら、すぐにやめます」
「あ……ああ…」
「それに、わたくしも初めてですしね。ゆっくり、しますよ」
自身のモノを押し当て、一度確認するように彼女の目を見る。バハムーンは頷くように、ぎゅっと目を閉じた。
先端が、僅かに彼女の中へ入り込んだ。
「んくっ…!う……あっ!」
バハムーンの体が強張り、腕を掴む手に力が入る。セレスティアは一度動きを止め、彼女の顔をそっと撫でる。
「大丈夫ですか?」
すると、バハムーンはおずおずと目を開き、かと思うと、少し拗ねたような表情を見せる。
「い、いちいち気を使わないで、いい!わ、わた……私は、へ、平気だっ!」
「そうですか。でも、無理はしないでくださいね?」
柔らかい声で言うと、セレスティアはまた彼女の中へと押し入る。やがて、微かに引っかかるような感触を覚え、動きを止めた。
「……いいですか?」
「だ、だから、わ、わ、私は、その、平気だ…!いちいち、き、気にするな…!」
さすがに怖いらしく、その声は若干震えている。
「そうは言われましても、気にしないなどということが、できるわけもありません」
優しく言うと、セレスティアは翼を彼女の翼に重ね、相変わらず腕を掴み続けている手を、ぎゅっと握り返した。
「……暖かい…」
バハムーンが呟き、その体から力が抜けていく。それを見て取ると、セレスティアは胸を重ね、空いている手で彼女の首を抱き寄せた。
「少しだけ、我慢してください」
返事を待たず、セレスティアはグッと腰を突き出した。
「あぐっ!……いっ……たぁ…!」
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
優しく尋ねると、バハムーンはどこか気の抜けたような表情で、彼を見上げた。
「お、思ったより、痛くなかったぞ…。これなら、戦闘で傷ついたときの方が、よっぽど痛い」
「そうですか。やはり、あなたは強いですね」
「でも……いきなりで、びっくりしたんだぞ」
「ごめんなさい。でも、あなたを怖がらせたくなかったので」
それは彼女もわかっているらしく、バハムーンはフッと笑った。
「動いて……いいぞ」
僅かに腰を動かすと、バハムーンは一瞬、辛そうに顔をしかめた。だが、すぐにどこか挑発的な笑みを浮かべる。
「んっ……わ、私は大丈夫だ…。だから、お前の、好きなように……うあぁ!」
その言葉が終わらないうちに、セレスティアは勢いよく突き上げ始める。彼とて今まで経験はなく、そろそろ気遣うのも限界だったのだ。
彼女の中は熱く、きつく、彼が動くたび、それに応えるように蠢動する。
震えるように締め付け、熱い粘液が絡みつく。今まで感じたこともないような快感に、セレスティアの動きはどんどん性急なものに
なっていく。バハムーンの方も、彼とはまた違う快感に、その身を委ねている。
ようやく、彼と結ばれることが出来た。とうとう、彼とこうして交わることが出来た。
満足感と充足感。そして、彼の暖かさと共に覚える、大きな安堵感。それらがバハムーンの胸を満たし、それは大きな快感となって表れる。
「うっ!あっ!セ……セレスティアぁ…!」
縋りつくように言うと、バハムーンは翼で、足で、尻尾で、腕で、彼の体にしがみつく。そして、さらなる快感をねだるように、自分から
腰を押し付け始めた。
「うあっ!バ、バハムーンさん……そんなにしたら…!」
途端に、セレスティアの動きが弱まり、今までと逆に抵抗するような動きに変わる。が、バハムーンはその腰を足でがっちりと捕らえ、
腰をぐいぐいと押し付ける。
「あっ、あっ、あぁっ!!セレスティア、もっと……あんっ!もっとしてくれぇ!」
「ん……ぐ、ぅ…!バ、バハムーンさん……も、もう…!うあぁ!!」
突然、セレスティアが一際強く突き入れてきた。それと同時に、体の中にじわりとした暖かさが広がっていく。
「あ……中に、出てる…」
陶然としたように呟くバハムーン。そして、力尽きたようにもたれてくるセレスティアの体を、優しく抱き締めた。
何度か彼のモノが体内で跳ね、その動きがなくなってしまうと、急速に物足りなさを覚える。バハムーンはセレスティアの顔を上げさせ、
少し拗ねたような口調で言う。
「もう、終わりなのか…?」
「え…?」
「……まだ、その……お前と、もっとしたいんだ…」
「ほ、本気ですか…?」
聞くまでもなく、目が本気だった。
「そ、それに、もっと気持ちよくなりたいんだ。だから、もうちょっとしてくれ…」
バハムーンという種族の体力を思い出し、セレスティアの背筋に冷たいものが走った。しかし、もう逃げ場はない。
「……が、頑張ります…」
それから延々五回ほどさせられ、セレスティアは息も絶え絶えといった感じでベッドに突っ伏している。そんな彼を、バハムーンは
幸せそうな顔で抱き締めていた。
「セレスティア、大丈夫か」
「……何とか…」
「ふふ。嬉しかったし、気持ちよかったぞ。また、できれば、その……し、したいな」
「……そうですね…」
疲れ切った声で答えると、セレスティアはふと真顔になった。
「あの……バハムーンさん」
「ん?」
その顔に気付き、バハムーンも表情を改める。
「わたくしは……あなたに、謝らなければいけません」
「ん?何がだ?」
「わたくしは、あなたを……あなたに頼られることで、優越感に浸ろうとしていました」
一体何のことだかわからず、バハムーンは首を傾げた。
「最も早くに脱退させられ、わたくしは無意識のうちに、劣等感に苛まれていました。そこに、あなたが同じようにして現れた。
そこで、わたくしは思ったのです。あなたほどの方に、頼られてみたいと……あなたほどの実力者が、わたくしを頼ったとなれば、
わたくしは……ちっぽけな自尊心を、満足させられると……わたくしは……わたくしは、あなたに対して、ひどい無礼を…」
「ふーん……ま、劣等種らしくていいんじゃないのか?」
意外な台詞に、セレスティアは弾かれたように顔を上げた。
「実際、私はお前を頼りにした。今もこうして、お前に依存している。私ほどの者に頼られているんだ。それを誇りに思うのは当然だし、
そうでなければ私に失礼だぞ?」
「バハムーンさん…」
「それに、まあ、劣等種とは言ったが、お前は天使の血族だろう?私達には劣るが、他の種族より、よっぽど高等だ。自信を持て。
お前はそれに見合う力を持っているし、私が頼りにするほどなんだ。そんなくだらないことで、うじうじ悩むな」
さばさばした口調で言い、彼女はセレスティアの肩を叩いた。
「謝る必要はない。私だって、お前に礼は言ったが、謝ってはいないしな。無礼はお互い様さ」
しばらく、セレスティアはきょとんとした顔でバハムーンを見つめていた。やがて、その顔にいつもの笑みが戻ってくる。
「ふ……ふふふ。いやはや、あなたには本当に、かないませんね」
ようやく笑顔が戻ったことで、バハムーンもホッと息をついた。やはり、こうでなくては彼らしくない。
「そんなあなただからこそ……一つ、提案があるのですが」
「ん、提案?一体何のだ?」
またもや出てきた意外な言葉に、バハムーンは再び首を傾げる。
「パーティのリーダーを、務める気はありませんか?」
「パーティ……の?」
「ええ。わたくしを筆頭に、あのパーティから除名された者は数多くいます。退学した方や、他のパーティに所属した方も多いですが、
そうでない方もいます。その中には、冒険をしたくとも叶わないという方がたくさんいます。あなたなら、その全員と面識がある
でしょうし、実力も申し分ありません。どうです?やってみる気はありませんか?」
その言葉は、それなりの魅力を持っていた。やはり、リーダーという立場には、多少なりとも憧れがある。
「……お前が言うなら、それもいいだろう。が、一つ条件があるぞ」
「条件とは、一体なんでしょう?」
セレスティアが尋ねると、バハムーンは彼の目を真っ直ぐに見つめ、にやりと笑った。
「お前が、私を手伝うことだ。そして、仲間として一緒にやっていくこと。まさか、異存はあるまいな」
そんなバハムーンに対し、セレスティアも笑顔を返した。
「こちらこそ、願ったり叶ったり、ですよ。冒険も久しぶりにしたいし、あなたと一緒にいられるとは、ね」
「よしっ!それなら決まりだな!」
彼の太腿に尻尾を巻きつかせ、さらに両手でしっかり抱き締めると、バハムーンは幸せそうな笑顔を浮かべた。
「また、お前と一緒だ!初心に返って、頑張るぞ!」
「ふふ。わたくしも、ご一緒しますよ」
セレスティアも、翼で彼女を抱き返す。二人とも、入学以来、最も大きな幸せを噛み締めていた。
翌日。地下道入り口の前には、バハムーンとセレスティア、それにクラッズとドワーフが立っていた。
「わーい!先輩達と一緒だなんて、嬉しいですー!それに、先輩可愛〜い!」
「それ、先輩に対する態度じゃないよね?」
ドワーフはクラッズを抱きかかえ、嬉しそうな笑顔を浮かべている。クラッズはすっかり呆れ顔だが、まんざらでもなさそうである。
「ま、最初はこんなものか。ディアボロスにも声をかけたんだが、奴はもう他のパーティに所属していた」
「そうですか、それは残念です。……よかった…」
「ん?何か言ったか?」
「いえ、何も」
「それにしてもさぁ、バハムーン、一体どういう風の吹き回し?僕のことなんか、どうでもいいんじゃなかったの?」
クラッズが不思議そうに尋ねる。
「それに、今まで他の人、全員見下してたのにさ。急に『仲間になってくれ』とか言い出すし」
「……私だって、今では貴様らの同類だ。同じ立場に立ってこそ、見えることもあるということだ」
「ふーん?ま、いいけどね。それに……やっぱり、昔一緒にいた仲間だしさ、誘ってくれて、嬉しかったよ!」
そう言い、クラッズは純真な笑顔を見せた。いい笑顔だな、と、バハムーンは思った。
「先輩、笑った顔可愛い〜!」
「だぁから、やめてってばー。……で、この子は何?」
「その方は、わたくしの知り合いですよ。今までずっと、一人で探索をしていたのです」
「そうなんですよー。でも、よかったですー。おかげで、先輩達と一緒になれたんですもん!」
クラッズを抱えたまま、ドワーフは屈託のない笑顔を見せる。よくよく考えてみると、かつていたパーティでは、こういう笑顔は
見なかった気がする。
「まあ、そんなわけで四人になってしまったが、残りは募集中ということで、のんびり行くか」
「そうですね。最低限の役割分担は、できるようですし」
「私、回復役ですかー?緊張しますー」
「大丈夫大丈夫!そう緊張しないで、もっと気楽にね!」
クラッズとドワーフが仲良く喋り出したところで、セレスティアとバハムーンは顔を見合わせた。
「私達は、あいつらの足手まといだったのだろうな」
「そうですね。ですが、それを責めることはできません。冒険者である以上、力を求めるのは必然ですから」
ちらりと、仲間の小さい二人を見る。
「足手まとい……か。確かに、それを排除するのも、一つの形だろう。だが、私ならそいつらも、無理矢理高みに引きずってやるさ」
「ふふ、頼もしいですね。なら、わたくしも一緒に、連れて行ってもらえますか?」
「お前は、そう見えて軽いからな。真っ先に引っ張り上げてやる。というか、翼があるんだから飛べ」
「あなたが歩く方が速いのですから、しょうがないでしょう?頼るのも、お互い様ということで」
二人は楽しそうに笑い、お互いの翼同士を打ち付けあった。
「さて、そろそろ行くぞ!私も久しぶりで、腕が疼くしな!」
彼女の言葉に、全員が答えた。そして、四人は地下道へと入っていく。
彼女はエースだった。しかし、それも過去の話。彼女より強い者もいるし、一時期の居場所も、もうない。
今の彼女は、エースではない。しかし、かつては得られなかったものに囲まれ、エースの座よりも大切なものを手に入れた。
自分を支えてくれる存在。背中を預けられる仲間。守るべき者。彼女はそれを、支え合いつつ、率いていく。
彼女は、リーダーだ。それは、この先もずっと、変わることはないだろう。彼女達の笑顔が、絶えることがないように。
以上、投下終了。
どうもパーティは一度作ると変えられないタイプ。
ちなみに真剣道部ってのはととモノ生徒手帳メーカーより。
それではこの辺で。
パーティか……
長らく使ってた龍戦⇒狩の、敵に先に攻撃されるほどの
足の遅さに流石に閉口してク侍に乗り換えちゃった俺としては
シチュ的に耳が痛かったですw
あと、プライド高い子はへし折ったあとで優しくしたいと思う俺はダメな奴
27 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 04:19:12 ID:4Rc5MOB2
>>24 乙!
おお、受身と聞いたからてっきりセレスティナが積極的に前に出ると思ったら、
なんと言うことでしょうか!純!!
バハムーンは強気な受け、セレスティナは柔らか攻めですね。
パーティの入れ替えですか……うちの場合エースがずっとエースですからね。
流石一人旅でゼイフェアまで行っただけの事はありますよ。
ただ、メタヒールは覚えとけよ君主orz
俺のUMDには妖刀とニケとししゃものデータ入ってないんじゃなかろうか?
冒険者養成学校とかいう物騒なところに行く奴等って、本当に憧れてるだけなんだろうか。
というわけでエロ部分じゃないところが長くなりましたが、そこはご容赦を。お相手はエルフ。
いつもの如く、楽しんでいただければ幸いです。
彼は常々思っていた。
人間が平等などという世迷言は、聞くだけで反吐が出る。幸不幸の基準すら違うのに、何が平等だ。
長い尻尾をくねらせ、疲れた溜め息をつき、裸のままで今日の収穫を数える。どうやら辛うじて、明日の二食まで保障されたらしい。
静かに息を吐くと、彼はほんの少しだけ笑顔を浮かべた。
不幸の塊のような人生だった。親の顔はおぼろげで、記憶の中で曖昧に笑っている。その両親はいつの間にかいなくなり、頼れる身内も
おらず、幼い彼はたった一人で世界に放り出された。
持っているものは何もない。特別な技能があるわけでもなく、そもそも年端も行かない彼を雇ってくれる場所もない。
日々の食べ物は、食堂の生ゴミ。それすら、手に入らない時もあった。盗みも考えたが、生まれついての運のなさ故か、未遂ばかりで
一度も成功しなかったし、する気もあまり起きなかった。
夏はまだいい。やがて冬が来て、フェルパーには辛すぎる寒さとなり、食料の入手すら困難になった。
そんな、ある寒い寒い日。彼は限界に来ていた。何とかして生き延びようとは思っていた。しかし、数日間何も食べておらず、しかも
その日は、一年で最も冷え込んだ日だった。
日中を何とか堪え、日が沈み、寒さが限界に来て、やがてそれすら感じなくなり、心地良い眠気が襲ってきた時だった。
誰かが、彼の体を抱き上げた。その記憶も既に曖昧だが、その後起こった事象についてだけは、今もはっきり覚えている。
抱き上げてくれた男は、彼に食事を与えてくれ、暖かい部屋に連れて行ってくれた。だが、それは幸運と言えたのかどうか。
その事を思い出しながら、彼は大きな耳をピクンと動かす。右耳についたピアスが、ランプの光を受けて煌いた。
全ては、彼に体を差し出すことの見返りだった。痛みと恥辱に塗れた一夜を過ごす代わり、その日の命を繋いだ。
しかし、考えてみればやはり幸運だった。そのおかげで、彼は自分の体を売ることを覚えた。
男でも女でも、求められれば誰にでも身を売った。そうして得た金で、彼は毎日を必死で生き抜いてきた。
死ぬ気はなかった。死にたくなかった。何としてでも生き抜く。その一心で、彼は毎日を必死に過ごしていた。
その日一日の食事に困らなければ、十分いい日だった。明日の分の食事が保障されれば、十分に幸福。だから、この日はとても
幸福な日だったのだ。
そのままベッドに寝転がり、彼はにんまりと笑う。とてもとても、幸せな気分だった。
そんなある日、彼は客から面白い話を聞いた。何でも、地下道を探検する冒険家を養成する学校があるのだという。そこには毎年、
自分と同じぐらいの歳の生徒が入学し、冒険家を目指しているのだということだった。
別に、冒険家というもの自体には興味がなかった。ただ、その後に続いた言葉は、彼の興味を惹くのに十分な魅力があった。
「ちなみに、学校は三つあるんだが、どこも全寮制らしくてな。ま、言わば逃げ場のない缶詰状態ってとこか」
つまり、住む場所が保障されるのだ。それに、もしかしたら食事にも困らないかもしれない。
その日暮らしを続けていた彼にとって、それはこの上もなく魅力的だった。勉学はまったくできないが、その学校は冒険者を養成する
学校だ。ということは、勉強ができなくとも入れるかもしれない。
以来、彼は客を取るたびに、学校について聞きまくった。その結果、三箇所あるが一箇所はあまり人気がないこと、一箇所は名門と
呼ばれていること、もう一箇所はここ数年のうちにできた新設校だということ。そしてどうやら、その新設校がここから一番
近いらしいことを知った。
場所については地図を見ろと言われたものの、地図の見方すら彼は知らない。結局、客の一人に料金を値引きする代わり、詳細な場所を
口頭で説明してもらうことになった。
場所さえわかれば、あとは行くだけである。とっても人見知りではあるが、住む場所と毎日の食事には換えられない。何とか学校に
たどり着くと、持てる気力の全てを使って入学手続きを済ませ、試験に臨んだ。
おかしなもので、毎日を必死に生きてきた彼は生命力に溢れていた。また、日陰で行うような商売には危険がつき物で、いざという時の
逃げ足も、それが出来ない場合の相応の力も、彼には備わっていた。身近なものに縋れなかった分、困ったときは神頼みだった。
結果、彼は特待生扱いとなった。何だか妙な事になったと、彼自身不思議な気持ちだった。今までは見下されるか、あるいは好色の目で
しか見られる事がなかったのに、今では羨望と嫉妬の眼差しを受けることになったのだ。
寮での生活は実に快適だった。町の安旅館などとは比べ物にならないほど寝心地のいいベッドに、隙間風など入る余地のない造り。
食事に関しては、多少なりとも金がかかるらしいが、それは地下道を探検して得た物を売ればいいのだと言う。
ただ、当然ながらいい事ばかりでもなかった。周りの学生と彼では、価値観があまりに違いすぎた。
なぜ、食事を取れることを当然と思うのか。なぜ、手を抜くなんて真似をするのか。なぜ、こんな簡単なことも出来ないのか。
初めて組んだパーティでは、彼は驚くことばかりだった。ヒューマンは事あるごとに『面倒くさい』と呟いていたし、クラッズは呑気に
その日の夕飯の会話をしている。それはまだいいとして、戦闘での出来事は彼にとって驚愕に値した。
赤い、妙な機械のような姿をしたモンスター。仲間の反応を見る限り、それはとても強いモンスターらしかった。
実際、強かった。攻撃をほとんど受け付けてくれず、動きも素早い。そいつが放った魔法は、ひどく痛かった。
しかし、負ける気はなかった。負ければ死ぬだけである。だから、彼は全力で戦った。
が、仲間は違った。相手に怯え、ろくに力を出せず、あまつさえ敵の攻撃を避け切れず、死んだ。どうして避けようとしなかったのか。
なぜ倒すしか道がないのに、負ける気でいるのか。
戸惑いと苛立ちを感じつつ、彼は戦った。クラッズが焼かれた魔法を耐え、ノームがやられた一撃をギリギリで見切り、かわし、
無防備な背中を斬りつける。
ザ・ジャッチメントが倒れた時、生き残っていた味方は一人もいなかった。どうしてこいつらは、こうも簡単に死ぬのだろうかと、彼は
ほとんど驚きに近い気持ちで、その死体を見つめていた。
結局、貴重な金を使い、保健室で彼等を生き返らせてもらったが、その後はひどい喧嘩になった。
「どうして真面目に戦わないんだ。生き残る気がないのか」
「君は特待生だから、僕達の気持ちなんてわからないんだ」
言葉は色々だったが、要約すればこれだけの会話だった。結局、彼はそのパーティとは合わないと判断し、脱退した。
だが、行く先々、ずっとこんな調子だった。ありとあらゆる場所で同じような会話が交わされ、同じような喧嘩をし、同じように脱退する。
意見が合わないことは『特待生だから』の一言で済ませられ、まともに意見を聞いてもらえることすら少ない。もちろん、それはこれまで
まともな人間関係を築けなかった彼にも原因があるのだが、悲しい事にそれを気付かせてくれる者もいなければ、気付ける道理もなかった。
また、彼自身の素性も、それを妨げる要因の一つだった。聞かれれば何でも素直に答えてしまう上、ピアスは相変わらず右耳に
つきっぱなしのため、『元男娼』という噂は瞬く間に広がり、今では以前と同じような、侮蔑と嫌悪の眼差しを受けることも少なくない。
それでも、彼は幸せだった。住む場所と食事が保障されているのだから、それぐらい何という事はなかった。
転機が訪れたのは、入学から一年が経過してからだった。
その年も、多くの新入生が入学した。大概、新入生は新入生同士でパーティを組み、探索に出かける。しかし、中にはパーティを
組むことができず、あるいはあえて組まずにいる学生もいる。そういった生徒は、同じような余り物同士で組むか、あるいは先輩などに
拾われてパーティを組むことが多い。一部には、そのまま一人旅を始める生徒などもいる。
彼女を見たのは、そんな生徒を探している時だった。どのパーティも肌が合わず、未だに決まったパーティに入っていない彼は、新入生の
同種族の余り物が出ないか探していた。学食で昼食を取りつつ、視線だけをあちこち走らせていると、あるエルフに目が止まった。
直感だった。なぜか、そのエルフには親近感に似た物を覚えた。どちらかというと、本来傲岸不遜な態度が目立つエルフは苦手なのだが、
自分の勘を信じることにし、席を立つ。
「少し、いいかな?」
声をかけると、エルフは表情の読めない、冷たい目で見つめてきた。その時点で、彼のパッシブスキル、人見知りが発動していたのだが、
全身全霊の気合でそれを抑え込む。
「あの……えっと……し、新入生だよ、ね?」
「そうですわ」
そっけない一言。しかも、言った後でサラダを一口食べた。まるで自分のことなど眼中にないとでも言わんばかりの態度に、フェルパーは
今すぐにでも激走大逃亡を使いたい気分だったが、テンションもなく、友人もいないため諦めた。
「その〜……よかったら、パーティ組まないかなって…」
「今のパーティを抜けろというんですの」
これには、彼も参ってしまった。一人で学食に来ている時点で、まだパーティを組んでいないと思っていたのだ。もどかしげに揺れていた
尻尾も力なく垂れ、深い溜め息をつく彼に、エルフは少し困ったような目を向けた。
「一人なんですのね?」
「う、うん」
「なら、あなたが、わたくしのパーティに入ればいいんですわ」
その言葉は意外だった。パーティを組んでいると言えば、大抵は六人で組んでいるはずだからだ。
「空き、あるんだ」
「ちょうど一人分、埋まらなかったんですの。こちらとしても、ちょうどいいですわ」
何だか思惑とは違う方向に進んだが、これはこれで結構なことだと、彼は思っていた。他の面子はどうだかわからないが、彼女には
今までの仲間とは、確かに違うものが感じられた。その彼女と組めるのであれば、他の面子がどういう相手であろうと、恐らくは
大した問題ではないはずだった。
「それじゃあ、それでお願いしても、いいかな」
「ええ。仲間には、わたくしから話しておきますわ。よろしくお願いいたしますわ、先輩」
「……あれ、俺先輩だって言ったっけ?」
思わず尋ねると、エルフは冷ややかな目でフェルパーを見つめた。
「ここの雰囲気に馴染んでるから、すぐにわかりますわ。もっとも、その割には、人と接するのは慣れていないようですけれど」
「そ、そっか」
自分の勘は本当に信じられるのだろうかと、フェルパーは今更になって、そう自問していた。が、ともかくもパーティに入れば、
多少なりとも金が稼げる。ここしばらく探索に出ていないため、懐は少し心許ない。そんな理由もあり、もう逃げることはできなかった。
その翌日、彼はまた学食に向かった。指定された時間は昼食時を少し過ぎたところで、学食にも空席が多い。そこに五人がまとまって
座っていれば、さすがに目立つ。
「やあ、待たせちゃったかな」
「お待ちしましたわ、先輩」
激走大逃亡が使えないのは辛かったが、逃げるわけにもいかなかった。何とか引きつった笑顔を向けると、その中の一人、セレスティアが
優しく微笑んだ。
「そう硬くならないでください。そんなに待っていませんから」
「そ、そう?でも、その、悪かった、ね」
何気なく全員の顔を見回して、フェルパーは妙な違和感を覚えた。
今話しかけたセレスティアは別として、昨日会ったエルフ、ニコニコしているドワーフ、凄まじく暗いヒューマン、どこか茫洋としている
ディアボロス。この四人は、全員がどこか妙な親近感を覚える存在だった。それにしても、相性というものはどこの国の話だろうか。
「あははー、これで特待生が四人も揃ったね」
「へぇ……特待生…」
「エルフと僕だけ、仲間外れか。とはいえ、僕等ももうちょっとで特待生だったんだけど」
ドワーフの声は大きくて、聞くと思わず耳を伏せてしまいそうになる。ヒューマンの声は小さくはないが、ボソッと喋るので聞き取り辛い。
ディアボロスの声は、溜め息混じりに喋っているようだが一番聞き取りやすい。
「みんな、すごいんだね」
「先輩こそ……同じ、特待生…」
「そ、そうだけど…」
特待生だから、妙な親近感が湧くのだろうか。それ以外に理由があったとしても、今のところはそれしか思い当たらない。
「フェル先輩、学科は?」
「え、あ、侍……君達、は?」
「前衛から、順番に行こう。僕は修道士」
「次はあたしでいいかなー?あたしは戦士」
「……盗賊…」
「超術士ですわ」
「わたくしは、司祭学科専攻です。先輩、よろしくお願いしますね」
どうやら、苦手な種族二人に挟まれて戦う羽目になるらしいことはわかった。しかし贅沢は言えない。
多大な不安を抱きつつ、とにもかくにもパーティとしてやっていくことが決まり、フェルパーはホッと息をついていた。しかし、やはり
パーティの中でも、エルフには特別、妙な親近感がある。その正体を掴むまでは何とかやっていこうと、フェルパーは心に決めていた。
翌日から、一行は地下道の探索を始めた。最初は何かと不安が多かったが、特待生だらけのパーティ故か、全員が今までのパーティなど
比べ物にならないほどの腕前だった。何より、誰も気を抜いたり手を抜いたりしない。種族間の相性は良くないはずなのだが、それすら
全員が気にする様子もない。
傍から見れば異様な集団であり、特待生が過半数と言うこともあり、周囲で嫉妬混じりの陰口を叩かれているのは知っていた。しかし、
そんなものは気にならなかった。いくら他の奴が騒いだところで、真面目に生きていない奴に何も言える資格はないのだ。
居心地のいいパーティだった。無駄口を叩くこともなく、無用な詮索もされず、仲はいいが、全員がそれなりに距離を置いて接している。
その距離感が心地良く、幾日も経たぬうちから、フェルパーはすっかりパーティに馴染んでいた。
馴染むにしたがい、エルフとの距離がもどかしくなってくる。確かに居心地のいい距離ではあるのだが、相手を知るには遠すぎるのだ。
最初のうちは、いつか少しぐらい縮まるだろうと構えていたのだが、一月経っても二月経っても一行の距離は変わらない。
もちろん、今ではフェルパーもいちいち言葉に支えることはないし、全体的に打ち解けてきた感はあるのだが、それ以上の進展がない。
ある日、とうとう彼は思い余って、自分から行動することにした。
「やあ、エルフ。今日もお疲れ様」
「お疲れ様、先輩」
探索を終えた後の学食で、フェルパーはエルフと向かい合って座る。
「少し話したいんだけど、いいかな?」
「嫌ですわ」
「……取り付く暇もないね」
フェルパーが言うと、エルフは溜め息をついて彼を睨んだ。
「取り付く『島』もない、ですわ」
「え、ああ、そうなの?知らなかった」
「誤用は、言葉に対する冒涜ですわよ」
「ごよう……御用?」
「……誤った用い方、のことですわ…」
「謝った餅…?」
「くっ……間違った使い方のことですわっ!馬鹿にしてるんですの!?」
なぜエルフが突然ぶち切れたのかはわからないが、彼としてもその態度は腹が立った。
「じゃあ最初っからそう言えよ!わざわざ難しい言葉使うなよ!」
「どこが難しいんですの!?至って普通の用い方ですわ!」
「あ、そう……なのか…」
そう言われてしまうと、少し悲しくなってしまった。彼も確かに特待生ではあるが、生まれてこの方勉強などしたこともなく、
読み書きすら辛うじてできるというレベルなのだ。だから、彼にとっては普通すら、普通ではない。
そんな空気を察したのか、エルフは少し表情を和らげた。
「……図書館には、辞書もありますわ。暇があるなら、少し勉強した方がよろしいんじゃなくて?」
「あんまりごちゃごちゃしたの、読めないんだよな、俺」
「読まなければ練習になりませんわ。辛いからと逃げてばかりでは、いつまで経っても自分を磨くことなんてできなくってよ」
「……あ、そうだ!」
弾んだ声が出ると同時に、フェルパーの耳と尻尾がピンと立った。
「それじゃさ、今度そういうのの使い方とか、教えてくれよ。俺、本なんか読んだことなくってさ」
「それで特待生……ま、まあいいですわ。今度、何か読みやすいものでも借りて来ますわ」
「ほんと!?やった!」
とっても苦手な読み書きをしなければならないのは憂鬱だったが、ともかくもエルフと一緒にいられる。そうすれば、多少なりとも進展が
あるかもしれない。そう考えると、フェルパーの顔には抑えきれない笑顔が溢れていた。
「ずいぶん、嬉しそうですわね。殿方なら、もう少し表情を抑えるべきじゃなくって?」
「え、そうなのか?もうだいぶ仲良くなったし、普通かと思ってたんだけど」
「ま、いいですわ。ただの、わたくしの好みですわ」
どことなく引っかかる言い方だったものの、フェルパーはあまり深くは気にしなかった。そんなことより、エルフと過ごせる時間を
作れた方が嬉しくて、他の事などどうでもいい気分だった。
最初こそ地獄の日々だった読み書きの練習も、日が経つにつれて慣れていった。今では人並みに本も読めるし、少しは難しい言葉も覚えた。。
が、エルフとの距離はほとんど縮まっていない。せいぜい、それまで冷たい口調だったのが、いくばくかの暖かみを持った程度である。
「えええっと……行儀が悪いってのは、不調法でいいんだっけ?」
「ええ、それで合ってますわ」
「合ってたか、よかったー!でもなんか、俺がそういうのわかるって、自分で言うのもあれだけど、狐に包まれたみたいな感じだな!」
「つままれる、ですわ」
「あ、そうだっけ?」
「まったく、無理にそういう言葉を使おうとするから……いえ、まあ、使わなければ、覚えませんものね」
読み書きを教えている間に、彼が本当に言葉を知らないことがわかったらしく、エルフも少しはこうして気遣ってくれるようになった。
「そうだよなー、やっぱ実戦で覚えないと!ええと、そういうのは的を得た意見だよな?」
「的は射る物ですわ」
「ああ、そっか。で、得た、でいいんだっけ?」
「だから射る物っ!的を射た意見ですわっ!」
「お、怒るなってば。わかったよ、もう間違わないから」
ただ、さすがにエルフだけあって、言葉に関してはとてもうるさい。なので、あまり間違うと今でもプチプチと切れる。
「それにしてもさ、俺にとっては、君みたいに言葉知ってる人が先生じゃあ、役不足だよね」
「……それは喧嘩を…?」
エルフが、半分殺気の篭った目でフェルパーを睨む。
「え!?な、何か間違った事…!?」
「ふぅ……いえ、わかってますわ。でも、わたくしだからいい様なものの、他のエルフに同じ事を言ったら、殺されますわよ」
「間違ってたんだ…」
連続で間違い、本気で落ち込んでいるフェルパーに、エルフは呆れ半分の笑みを向けた。
「役不足は、自分の力に対して相手が不足していることですわ。そのような言い回しをしたいのなら、役者不足が妥当ですわね」
「だ、だとう…?」
「……適当、とか適切、ならわかりまして?」
「あ〜、なるほど。それが合ってるって事だね?」
「その通りですわ」
大体、毎日がこんな感じである。はっきり言って、勉強で忙しすぎて距離を縮める暇がないというのが実情だった。しかし、この日は
少し違った。
「それにしても、よく表情の変わる方ですわね。落ち着きが見えませんわ」
「そうかー?でもさ、嬉しいときは嬉しい顔するのが普通だし、悲しいときは悲しい顔するのが普通だろ?」
「殿方なら、それを内に閉じ込めるものだと思いますわ。もっとも、これはわたくしの主観ですけれど」
別に男でなくとも、弱味を見せることになるのなら、そうするのはわからないでもない。しかし、男は表情を抑えるものだという意見を
聞いたのは、これが初めてだった。
「女の子だって、場合によってはそうするんじゃない?」
「それは…」
言いかけて、エルフは口をつぐんだ。その一瞬、フェルパーは確かに、彼女の顔に悲しみと戸惑いの表情が浮かぶのを見た。
「……まあ、いいですわ。この話は…」
「少し不調法かもしれないけど、一つだけ聞かせて。君は、何か悲しいことを隠してない?」
「っ…!」
今度こそはっきりと、エルフの顔に戸惑いの表情が浮かんだ。普段あまり表情を出さない彼女が、こうもはっきりと顔に出すのは珍しい。
だが、視線を泳がせつつも、エルフは何とか表情を収め、慌てたように口を開いた。
「そ……そういう時は、不調法ではなく、無作法、の方が、適切ですわ。次からは、ちゃんとそう言って欲しいですわね」
それだけ言うと、エルフは慌てたように席を立った。
「あ、待って…!」
止めようとしたものの、エルフは振り返りもせずに行ってしまった。それを見て、フェルパーは確信した。
彼女は、きっと自分と同じような傷を持っている。だからこそ、彼女に強く惹かれたのだ。
惹かれて、その後どうするか。それを考えていたわけではない。だが、今彼の中には、一つの決意があった。
「……傷なら、舐めて治せると思うんだよな〜」
小さくなる後姿を眺めながら、フェルパーはポツンと呟いた。
その一件で警戒されてしまったのか、エルフはしばらくの間、フェルパーとの関わりを避けているようだった。しかし、その程度のことで
諦めるフェルパーではない。それこそ、先祖譲りの忍耐強さでじっとチャンスを窺い、その時が来るのを待つ。それまでは普通に振舞い、
エルフを気にしている素振りすら見せないでいた。
一ヶ月ほど経ったある日、探索を終えて学食に向かう途中、不意にドワーフが言った。
「フェル先輩ってさ、エルフと仲良くなかったっけ?」
「え?あ、ああ。よく読み書き教えてもらってたけど…」
「だよねー。でもさ、最近なんかお互い避けてない?」
ドワーフに言われ、エルフは明らかに不快そうな顔をした。ようやくチャンスが来たかと、フェルパーは心の中でほくそえむ。
「ん〜、避けてるわけじゃないよ。でも……そうだね、最近あまり教えてもらってないね」
「わ、わたくしだって別に……でも、その…」
「ふふ。エルフさんは、先輩の先生だったんですね」
セレスティアが、優しく笑う。
「勉強は続けないと、意味ありませんよ。時間が経ったら、せっかく覚えたことだって忘れちゃいます」
「それはっ、その、わかって……ますわ。でも…」
「……嫌なら、やめりゃいい…」
「嫌だなんてっ!」
思わず声を荒らげて、エルフはハッと口をつぐんだ。どうやら、エルフ自身もフェルパーのことは憎からず思っていたらしい。
「そっかー、よかったよ。俺、あんまり間違うから嫌われたのかと思っててさー」
この隙を逃すまいと、フェルパーは畳み掛けた。エルフは一瞬『しまった』という顔をしたが、やがて観念したかのようにうなだれた。
「僕なんか、筆記の勉強は大嫌いなのに、先輩はすごいな」
冗談めかして言うと、ディアボロスは笑った。ともかくも、これでエルフの逃げ道はほとんど塞がった。
「喋るたんびに、エルフに怒られてちゃしょうがないしね。ねえエルフ、今日辺り、久しぶりに教えてもらってもいいかな?」
「……仕方、ないですわね。わかりましたわ」
「ほんとか、やった!」
一瞬、ヒューマンと目が合った。すると、彼は暗い表情に僅かな笑みを浮かべ、ウィンクをしてみせた。どうやら、他の仲間は全員、
自分とエルフとの関係をよく見ていたらしい。恐らく、全員で示し合わせてこの状況を作ったのだろう。
フェルパーも少しだけ笑い、口だけで『ありがとう』と言ってみせると、ヒューマンは頷くように目を閉じ、そしてまたいつもの
表情に戻った。本当にいいパーティだと、フェルパーはしみじみ思っていた。
それからみんな揃って食事をし、それを終えると寮に戻る。エルフはあまり浮かない顔をしていたが、その後もディアボロスや
セレスティアに言われたこともあり、重い足取りでフェルパーと共に彼の部屋へと向かった。
いつも通り部屋に入り、荷物を床に放り投げる。エルフはすぐ机に向かったが、特に本を持っている様子もなく、そのまま椅子に座ると
フェルパーの方へ体を向けた。
「それで?」
「……『それで』ってのは?」
「どうせ、勉強というのは口実でしょう?早く本題に入ったらいかがですの?」
「ん〜、そう言われるとなんか……困るな」
取り繕うような笑みを浮かべると、フェルパーもその隣に座る。
「まあ間違いじゃないんだけど…」
「それなら、用件はこれでして?」
言うなり、エルフは服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ捨て、真っ白なブラジャーを外す。そんな姿を、フェルパーはきょとんとした顔で
見つめていた。
さらに、エルフはスカートを脱ぎ、ショーツに手を掛けたところで、ふとその手を止めた。
「ずいぶん、余裕なんですのね」
「いや、まあ……いきなりどうしたのかなって」
「わたくしの体を見ても、何とも思いませんの?」
「んー、きれいな体だよね。スタイルもいいし」
「……それだけ?」
「うん、それくらい」
今度はエルフが、きょとんとした顔でフェルパーを見つめる。やがて、その顔に恥ずかしさ半分、呆れ半分の笑顔が浮かんだ。
「ずいぶん、ずれた方ですのね。あなたが何を考えてるのか、時々わからなくなりますわ」
「それは俺の台詞だよ。いきなりどうして脱ぎ始めるの?」
ふぅ、と溜め息をつくと、エルフは脱いだばかりの服をまた着始めた。
「わたくしの体を求めているのかと、思っていたんですわ。とかく、殿方はそういう方が多いですし」
ブラジャーを着け、上着を軽く羽織ると、エルフは椅子に座り直した。
「でも……確かに、違いますわね。あなたは、どこかわたくしと似た……いえ、むしろ正反対の雰囲気を持っていますわ」
「君も思ってたんだ。でも、正反対って?」
「……あなた、人を愛したことはありまして?」
突然の質問に、フェルパーは少し驚いた。そして、よくよく考えてみると、そんな記憶はどこにもなかった。
「いや、ないな」
「やっぱり…。わたくしは、ありますわ。ある方を、心の底から、それこそ一生を捧げてもいいほどに、愛していましたわ」
その感覚は、彼には理解できなかった。愛したことがないのだから、理解できるはずもないのだ。
「でも、もうその方はいない。わたくしの愛する者は、どこにもいませんの」
そこまで言って、エルフはフェルパーに気だるい視線を投げかけた。
「だから、わたくしは、誰とでも寝られるんですわ」
「………」
その言葉の深い意味まではわからなかったが、フェルパーは少したじろいだ。すると、エルフは悲しげな笑みを浮かべる。
「殿方は、好きな方が何人いようと構わないでしょう?けれど、女は好きな人が一人いれば十分ですの。そして好きな方がいれば、
その方以外には体を許したりしませんわ」
「……好きな人がいないから、体を許せる?」
エルフは静かに頷いた。そんな様子を見て、フェルパーは自分もそうだから、誰にでも体を許せるのだろうかと考えていた。
「むしろ、抱いて欲しいと思うこともあるぐらいですわ。心の中で、自分を抱く方を、愛しいあの方に変えてしまう。そうすれば、
わたくしはまた、あの幸せな時に戻れる……快楽に流されている間は、あの方を忘れられる…」
どうやら、彼女の傷はそこに起因しているらしかった。同時に、その言葉は、フェルパーに一つの思いを芽生えさせていた。
「……俺じゃ、代わりにはなれない?」
すると、エルフはまた冷たい視線を送った。軽蔑の混じった、不快な視線だった。
「あら、やはりわたくしを抱きますの?」
「嫌なこと忘れられるんなら」
「それは口実でしょう?」
「じゃあ別にいいよ。お金もらえるわけでもないし」
そう言うと、エルフの表情が一気に険しくなった。
「あなたにとっては、たかがお金の問題と同列ですの!?」
「君が言ってただろ?俺、人好きになったことなんてないもん。それがどんなもんかなんて、わかんないよ」
「だからって、そんな言い方!」
「それから、たかがお金って言うけど、お金がなきゃご飯も食べられないし、宿代だって払えない。生きていけないよ」
「で、でも…!」
「それに……噂ぐらい、聞いたことない?俺に、関すること」
すると、エルフは一瞬たじろぎ、そして訝しむような目でフェルパーを見つめた。
「……ただの、噂だと思ってましたわ。嫉妬から出た、根も葉もないものだと…」
「本当なんだ。だから、俺にとっては、ヤる……えっと、体を重ねる……でいいのかな?それはお金と直結してるんだよ。だから、
つい、ああ言っちゃったわけなんだけど、別に君を怒らせるつもりじゃなかった」
ピアスのついた右耳をパタンと動かし、フェルパーは大きな溜め息をついた。つい勢いで言ってしまったが、これでエルフから
嫌われるのは、何となく嫌だった。
「そりゃ、俺そんなだから言葉知らないし、どう言ったら君が怒るのかもわからない。でも俺、嘘は言ってないよ。君が嫌なこと
忘れられるんなら、俺は君を抱きたい。……なんでだろうな?自分から相手を求めるの、俺初めてだよ」
喋ってるうちに、自分でもよくわからなくなってきてしまった。しかし、言葉に嘘はない。
少なからず、エルフはショックを受けたようだったが、やがて少しずつ、いつも通りの表情が戻ってくる。
「もしかして、わたくしのことを、好いてくれてますの?」
「そうかもしれない」
「『かもしれない』なんて、ロマンがありませんわね。そこは、そうだと言い切って欲しかったですわ」
「ん〜……できれば、君が一番好きな人になりたい」
「それは無理ですわ。記憶の中のあの方は、例えどんな貴族や英雄であろうと、まして湖に映える月であろうと、かないはしませんわ」
「じゃ、二番目でいいや」
「ふふ、本当に変わってますわね。普通、殿方は何でも一番になりたがるものじゃなくって?」
「高望みはしないよ。人間平等じゃないんだし、一番になれないことだってあるだろ?」
そう言うフェルパーの頬を、エルフは優しく撫でた。
「二番目どころか、好きになる保障もありませんわよ?」
「それならそれで、しょうがないよ。でも君が、嫌なこと忘れられるなら、それでいい」
お返しとばかりに、フェルパーはエルフの頭を撫でた。
「……男娼というものは、女の方でも抱きますの?」
「求められればね。もちろん料金はもらうけど」
「なら、商談成立ですわね。あの方の代わりに、わたくしを抱いてくださいな」
「料金はまけとくよ。仲間からまで、お金を取る気はないしね」
エルフが椅子から立ち上がると同時に、フェルパーは慣れた手つきで彼女の体を引き寄せた。
「あっ…!」
そのまま、驚いた顔のエルフにキスをする。自分からは舌を入れないが、それでいて唇を強く吸う、意外に情熱的なキスだった。
しばらくそうしてから、唇を離す。エルフはまだ少し驚いた顔をしていたが、やがてちょっとだけむくれてみせる。
「もう。キスは舌が触れ合うのが好きですのに」
「ごめん。でも俺、こうだから」
そう言い、フェルパーはペロッと舌を出す。その表面には、白い棘が大量に生えていた。
「……痛そうですわね」
「傷つけるの、嫌だからさ。あんまり激しくなくていいなら、できるけど」
ふふっと、エルフは小さく笑った。
「それじゃ、お願いしますわ」
「お望みとあらば」
再び、唇を重ねる。そっとフェルパーが舌を入れると、エルフも慎重に舌を絡める。そのエルフの舌を包むように、フェルパーの舌が
絡みつく。少し驚いて舌を引っ込めようとすると、かすかにジョリッと音が鳴った。
すぐにフェルパーは舌を戻し、少し唇を離す。
「ごめん、大丈夫?」
「え、ええ。ちょっと痛かったけれど」
「引っ込めようとすると、棘が立っちゃうんだ。安心して、俺に任せて」
「……本当に、大丈夫なんですのね?」
「それでご飯食べてたからね」
冗談めかして言い、エルフの頭を優しく抱き寄せる。すると、意外にもエルフはそのまま体を預けてきた。
改めて唇を重ね、舌を絡める。言われたとおり、エルフはあまり積極的に動かず、フェルパーに任せている。そんな彼女の舌に舌を絡め、
時々遊ぶように口蓋をなぞったり、歯に舌を這わせたりする。エルフも少しずつ慣れてきたらしく、舌が絡んでいない時は、彼の口の中に
舌を這わせてきたりする。
お互いの口の中を舐め、思い出したように舌を絡める。そうしてじゃれ合ううち、ふと気がつくと、いつの間にかエルフの上着はおろか、
ブラジャーまで剥ぎ取られていた。
「……っはぁ!ちょ、ちょっと!いつのまに脱がせたんですの!?」
エルフは慌てて唇を離し、両手で胸を隠す。フェルパーはちょっと困ったように視線を外した。
「いや、キスしてる間に。その、驚かせちゃったかな?」
「い、いきなり裸にされていれば、誰だって驚きますわ!その……本当に、慣れてるんですのね…」
「何度も買ってもらうためには、色々できなきゃね」
白いうなじを抱き寄せ、唇で甘噛みしつつ、つっと舌先を這わせる。エルフの体がピクリと震え、大きな耳がくたっと下がる。
「んっ!い、色々……とは?あっ!」
首筋にキスをすると、フェルパーは少しだけ唇を離した。
「ほとんど男相手だったけど、大きく分けて性格は三つ。抵抗されるのが好きな奴、大人しくしてるのが好きな奴、積極的にされるのが
好きな奴。まずはそれを知ること」
再びエルフの体を抱き寄せ、右手を少しずつ腰の方へとずらす。思わず体を強張らせると、フェルパーはその手を止めた。
「その中でも、さらに細かく分けられる。抵抗だって、本気で抵抗しちゃっていい奴もいれば、抵抗するフリぐらいじゃないとダメな
奴もいる。技術も、うまい方が好きだったり、ちょっと下手なぐらいが好きだったり。結構面倒くさいんだよ」
優しく抱き締めながら、フェルパーはエルフの太腿に尻尾を這わせた。その体勢では普通ありえない場所を突然触られたエルフは、
ビクリと体を震わせた。
「あっ!?な、何!?え!?」
「大丈夫。俺に任せて」
優しく言って頭を撫でてやると、エルフの緊張が少しずつ解けていく。それでもしばらくは吐息が震えていたが、それもだんだんと
落ち着いていく。それまでずっと、フェルパーは彼女の頭を優しく撫でていた。
「し……尻尾、ですのね?」
「うん。君達にはないから、慣れてないんだね」
軽く内股を撫でると、今度は尻尾が腰に絡みつく。その尻尾がするりと動くと同時に、フェルパーはエルフの後ろに回りこんだ。
「大丈夫、安心して」
耳元で囁くと、フェルパーは尻尾を離し、エルフの胸に手を這わせた。
「んくっ…!」
エルフの体が跳ねる。フェルパーの手が乳房を包み、同時に指の間で乳首を挟み込む。そうして乳首を転がすように刺激しつつ、全体を
捏ねるように揉みしだく。
「んっ……く、ぅ…!」
彼の手が動く度、エルフは体を震わせ、声を漏らすが、その声は抑え気味である。どうも、恥ずかしさ以外の理由があるようだった。
あえてその事には触れず、フェルパーは優しく愛撫を続ける。一瞬尻尾を動かしかけたが、慣れていないことを思い出してやめる。
代わりに、後ろから耳を優しく噛んだ。
「あっ!」
耳と体がピクンと動き、エルフの手が肩越しにフェルパーの頭を触る。抗議と期待が半々に入り混じった、判断しにくい行動だった。
「もう少し、こうしていたい?」
耳から口を離し、そう囁きかける。振り向いたエルフの目は、僅かに潤んでいた。
「そんな、こと……聞かれましても…」
「そっか。じゃ、もう少し続けようか」
言いながら、右手を胸から離し、腹の上を滑らせる。腰を撫で、一度太腿に触れてから、そっとショーツに手を差し込み、包むように
秘部を触る。
「んあっ…!」
のけぞり気味だったエルフの体が、一転、のめるように変わる。フェルパーの指が敏感な突起を撫で、摘み、そして襞を開かせ、体内に
侵入すると、エルフは体をくの字に折り曲げ、フェルパーの手を押さえた。
「も、もう、やめっ…!」
「もう、こんなに濡れてる。敏感なんだね」
いたずらっぽく囁くと、エルフは微かな非難の篭った目でフェルパーを睨んだ。しかし、そこに怒りはない。
「ベッド、行こうか?」
フェルパーが言うと、エルフは顔を赤くしながら頷いた。それを確認すると、フェルパーはエルフをひょいと抱き上げ、優しくベッドに
寝かせた。
上気した顔で見上げるエルフ。今までの、どこか強気な表情は見る影もなくなっており、代わりに生まれたての赤ん坊のような、何とも
不安げで弱々しい表情を浮かべている。
フェルパーも服を脱ぎ、そっとエルフに覆い被さる。途端に、その表情はますます不安げになり、両手を口元に当ててぎゅっと握る仕草が、
彼女を普段よりずっと幼く、また頼りなく見せる。
何も言わず、そっとショーツに手をかける。確認するように目を見ると、エルフは不安そうな顔のままで、こくんと頷く。
最後の布が取り除かれると、エルフは真っ赤になった耳をへにゃっと垂らし、今にも泣き出すのではないかという目でフェルパーを
見つめる。そんな彼女の頭を、フェルパーは優しく撫でた。
「安心して。辛い思いはさせないから」
その一言を聞いた瞬間、エルフの表情が僅かに硬くなった。が、それもすぐ元に戻る。
既にエルフの体は、相手を受け入れる準備ができている。足を開かせ、その間に体を入れると、エルフはぎゅっと目を瞑った。
「……いくよ?」
「うん…」
粘液に塗れた秘部に自身のモノを押し当て、ゆっくりと腰を突き出す。
「くっ……ぅああ!あっ!」
体をのけぞらせ、エルフは抑えきれずに嬌声をあげる。その声は、普段の雰囲気などまったくなく、むしろただの女の子のものにしか
聞こえない。そんな彼女の体を優しく抱き締め、フェルパーは耳元にそっと囁く。
「大丈夫?」
「は……うぅ…!う、うん…」
「無理も我慢も、しなくていいからね」
ゆっくりと腰を動かす。エルフの中は固く、まるで処女であるかのように閉じられている。フェルパーは半ば無理矢理、その中に
押し入っていく。だが、強引に分け入っているにもかかわらず、エルフが苦痛を訴えることはなかった。
「はっ、んっ!……う……ぁぁ…!」
時折、エルフは何かを呟こうとする。しかし、それは言葉にならず、ただ彼女の漏らす吐息の一つにしか聞こえない。フェルパーはそれを
敏感に感じ取っていたが、あえてそれを聞きはしない。
慣れてくるに従い、エルフの中は少女のそれから、幾度となく愛された女のそれに変わっていく。入ってくるフェルパーのモノを優しく
受け入れ、引き抜く時には、それを嫌がるようにぎゅっと締め付け、同時にエルフ自身も熱い吐息を漏らす。
少しずつ、フェルパーの動きにも変化が加わる。突き入れる時には強く突き入れ、引き抜く時にはエルフを焦らすように、ゆっくりと
引き抜く。エルフもそれに応え、突き入れられる時は力を抜いて優しく受け入れ、じんわりと締め上げる。引き抜かれる時には、
自身の愛液に塗れたモノを痛いほどに締め付ける。
「んううぅ!あくっ!う、ううぅぅ…!」
「気持ちいいよ。俺も、すぐイッちゃいそうだ」
頭を撫でながら言うと、エルフは少しだけ微笑んだ。と、今度は彼女の方から、フェルパーにしがみついた。
「んんっ……あ、あの…!」
「ん、何だい?」
エルフの体を抱き締め、フェルパーは一旦動きを止めた。
「そ、その……できれば、後ろから…」
その言葉は、少し意外だった。彼女の性格からすれば、お互いの顔が見え、なおかつ抱き合いやすいこちらの方が好きだと思って
いたからだ。まして、獣のようなその体勢を、エルフが好むとは思えなかったのだ。しかし、続く言葉で、それにも納得する。
「それで、その……後ろから、ぎゅって……抱き締めて…」
「わかったよ。君は甘えん坊だね」
いたずらっぽく笑うと、フェルパーは一度モノを彼女の中から引き抜く。ちゅぷっと小さく音がし、エルフの体がピクンと跳ねた。
彼女の体を持ち上げ、そっとうつ伏せに寝かせる。その体を後ろから抱き締めると、エルフは一瞬体を強張らせた。
少し思うところがあり、うつ伏せに寝かせた彼女の体を、ころんと横向きに直す。その上で、フェルパー自身もその隣に寝転び、改めて
後ろから抱き締める。今度は、エルフは体を強張らせる代わりに、近くにあった枕をぎゅっと胸元に抱き締めた。
再び、彼女の中へ押し入る。後ろから抱かれていると安心するのか、中はそれまでほどきつくはない。
「んぅ…!ふ、うぅぅ…!」
抱き締めた枕を口元に押し当て、エルフは声を押し殺す。恐らく、以前もこうしていたのだろう。
彼女の背中に、腹をぴったりと押し当てた状態で動くのは多少難しかったが、それでも動けなくはない。今までと違って勢いは
つけられないため、今度は突き入れる際に角度をつけてやる。
「どう?お腹の方擦るの、気持ちいい?」
「んんんっ……んぅ〜…!」
まともな返答はないものの、態度が全てを物語っている。既に吐息は荒く、熱く、抱き締めた体も真っ赤に染まっている。限界が
近いことは、誰の目にも明らかだった。
「く、ごめん…!俺も、そろそろやばい…!」
「ふっ、くっ!うう、ううぅぅ!!」
枕を噛み、必死に声を堪えるエルフの姿は可愛らしく、つい思うがままに動きたくなってしまう。それを必死に堪え、フェルパーは
彼女が一番反応する責め方を続けた。やがて、中が今までにないほど強く蠢動したかと思うと、エルフの体がビクンと跳ねた。
「ふぐぅっ!んううぅぅ!!!!」
弓なりに反った体がビクビクと痙攣し、同時に膣内も激しく収斂する。きつく締め上げたまま、体内の奥までモノを引き込もうと
するような動きに、フェルパーも一気に追い込まれた。
「俺も、限界っ…!出る!」
エルフの体を強く抱き締め、フェルパーは一際強く突き入れた。同時に、エルフの体内でモノがビクンと跳ね、彼女の中に熱い精液が
注ぎ込まれていく。それに反応し、膣内が最後の一滴まで搾り取ろうとするかのように蠢動し、フェルパーのモノを扱き上げる。
「くっ……中、すごっ…!」
「ふ……く、ぅぅ…!」
体内で何度かモノが跳ね上がり、少しずつその勢いが弱まり、やがて治まると、フェルパーはゆっくりとエルフの中から引き抜いた。
その時、エルフは呆然とした表情のまま、口の中で何か呟いた。
「……パぁ…」
フェルパーの耳には、はっきり聞き取れた。それが、彼女の傷だったのだ。
彼のモノが完全に抜け出ると、エルフはしばらくボーっとしていた。が、やがて中から溢れる精液を、自身のハンカチで拭い、
のそりとベッドから身を起こした。
「……エルフ…」
フェルパーの声には答えず、エルフは黙々と制服を身に着けていく。そして、完全に元通り着てしまうと、寂しげな目でフェルパーを
見つめた。
「……やはり、あなたのことは……愛せませんわ」
小さな声で、しかしはっきりとエルフは言い切った。
「一番にも、二番にもできない。愛することは、できませんわ」
フェルパーは小さく溜め息をつくと、落ち込んだようにうつむいた。
「どうしても、かい?」
「ええ。あなたの優しさが、わたくしには辛すぎますの……あなたが、あの方を真似れば真似るほど、あなたが私の中で、完全にあの方と
同化してしまう…」
エルフは悲しげに首を振った。
「あの方は、何人たりとも、代えられませんわ。あの方は、わたくしの中の、最も大きな方。それを、あなたで塗り潰すことは、
決してできませんの。あなたが真似れば、あの方があなたに代わってしまう。あの方は、わたくしの中の一番でなくてはなりませんの」
あまりに抽象的で、フェルパーにはその言葉が理解しにくかった。が、おおよその意味と、自分の何が敗因だったかは理解できた。
「そっか……なるべく、君の記憶にある人と、同じにしようとしたのが、まずかったんだね…」
「そこは、さすがと言いたいですわ。わたくしの表情や態度から、どのように抱かれていたのかを、瞬時に察してしまうなんて。
でも……あれほどまで似てしまうと、ダメなんですの…」
「あ〜あ、そっかそっか……女の子は難しいなあ……男相手なら、色々知ってるんだけどなあ」
フェルパーが悲しげに耳を伏せると、エルフは優しい視線を向けた。
「でも、勘違いなさらないで。愛とは違うけれど、あなたはわたくしにとって、一番好きな方ですわ。その優しさ、純粋さ……その点に
関しては、きっとあの方より、あなたの方が好きですわ」
「……じゃ、いいや。それで満足だよ」
強がりのように言って笑うと、エルフも僅かに微笑んだ。そしてドアに向かおうとすると、再びフェルパーの声が聞こえた。
「それにしても、傷は舐めれば治せると思ったんだけど……逆に、辛い思いさせちゃったかなあ」
それを聞いた瞬間、エルフの顔に今までと違う笑みが浮かんだ。それは、彼女が何か言葉遊びを思いついたときに浮かべる表情だった。
「それはそうですわ。あなたの舌では、丁寧に舐めれば舐めるほど、傷を抉ってしまいますわ」
一瞬その意味を考え、フェルパーはポンと手を打った。
「ああ、なるほど。じゃ、舌先で舐めるだけにすればよかったのかぁ」
「でも、それじゃ物足りませんわね」
「じゃあどうすればよかったんだよー」
「どう足掻いても、無理な事というものはありますわ。諦めが肝心ですわよ」
「……やっぱ、種族によっても性別によっても色々違うんだし、人間平等じゃないよなあ…」
「それには、同意しますわ。だからこそ、人それぞれに幸せがあるんですわ」
「前向きだね」
「あなたの、おかげでしてよ」
そう言い、にっこりと笑いかけるエルフ。その顔を見ると、フェルパーも心なしか幸せな気分になった。
「なら、いいか」
「ふふ。あなたとは、いいお友達になれそうですわ。それでは、ごきげんよう」
優しい笑顔を残し、エルフは去って行った。それを見送ってから、フェルパーはベッドに寝転び、彼女の言葉を考えた。
「…………じゃ、今まではいいお友達じゃなかったのか…」
どうでもいいような、重大なような、そんな疑問が、彼の中に残るのだった。
エルフと『いいお友達』になってから約二ヶ月。相変わらず、パーティの仲間とは若干の距離があった。
そんなある日、立て続けに高価なアイテムを拾ったことで、資金に余裕の出来た一行は、それのお祝いにかこつけて探索を休んでいた。
全員でセレスティアの部屋に集まり、どうでもいい話に花を咲かす。が、元々距離があるため、無難な話題はすぐに出尽くしてしまう。
いい加減解散かと思ったその時、ドワーフが少し遠慮がちに口を開いた。
「ところでさー、みんな、ちょっといい?」
「どうしたんですか?」
「あのさー、これ聞くのはタブーかとも思ってたんだけど、どうしても聞きたいんだよねー」
いつもの軽い調子で言うと、ドワーフは一同の顔を見回した。
「みんなさ、どうしてこの学校来たの?」
一瞬、確かに空気が凍った。それを察したのか、ドワーフがすぐに口を開く。
「あー、その、みんな何か似たような空気あるからさ。まあいいや。言いだしっぺだし、あたしから言おうか。みんなは言っても
言わなくてもいいよ」
軽く息をついてから、ドワーフは口を開いた。
「あたしはさ、早くに親が死んじゃってさー。ていうかさ、顔も全然覚えてないから、親なんて言われたってピンと来ないんだけどさ。
そんで、親戚中たらい回しになったんだよねー。ま、みんな裕福なわけじゃないし、要はいらない子だったってわけ。あはは!」
本人は楽しそうに笑うが、誰も笑うことなど出来なかった。
「んでさー、ご飯もらえないまま二・三日放っておかれたりさ。そんなんばっかだったから『ああ、こりゃ自分で何とかしないと』って
思って、それでこの学校来たんだ。じゃないと、いつか親戚に殺されそうだったしー」
「そ……そんな辛い話なのに、どうして笑ってられるんですか!?」
セレスティアが、信じられないと言った様子で叫ぶ。すると、やはりドワーフは笑った。
「えー、だってさ、これで笑うのまでやめちゃったら、あたし、ほんとに悲しさで潰されちゃうもん。笑ってればさ、悲しくなったって
泣かないで済むし、何となくどんなことでも楽しくなるじゃない?あはは!」
彼女は、笑うしかなかったのだ。それが彼女にとって、生きるための手段だったのだ。
「なんだ、やっぱり君も、そういうのあったんだ」
思わず、フェルパーはそう言っていた。
「お?もしかして、フェル先輩も?」
「ああ、まあね」
もう、ここまできたら全て喋った方がいい。きっと、最初に感じた感覚は、間違いではないはずだ。そう判断し、フェルパーは話し出した。
「俺のことはさ、みんな噂ぐらい聞いたことない?あれ、本当」
「……元、男娼…」
ヒューマンが、ぼそりと呟いた。
「そう、それそれ。俺もさ、親が早くに死んじゃって……でも、ドワーフよりマシだな。俺は、何となくだけど、親の顔覚えてるから」
もう輪郭すらおぼろげでも、きっと記憶にないよりどんなにかマシだろう。そう思うと、フェルパーは心の底からドワーフに同情した。
「それで、小さいから何もないだろ?だから、体売るしかなかった。この学校来たのだって、冒険なんかしたかったわけじゃない。ただ、
寮生活だって言うのに惹かれただけなんだ。少なくとも、住む場所と食べ物は確保できるわけだからさ。だから、俺はここに来たんだ」
「そ、そんな……そんなことしなくたって、何か別の方法がっ…!」
そう言いかけるセレスティアに、フェルパーは純真な目を向けた。
「ないよ、そんなの。だって、せいぜい5歳とか6歳の子供に、何が出来るんだよ。他に出来るとしたら、盗みぐらいしかないし、それは
成功しなかったし、あまりやりたくなかったし。知らない子供が死に掛けてたって、ほとんどの人には関係ない話だしね」
もはや、誰も何も言わない。そんな中、今度はエルフが口を開いた。
「愛する者がいなければ、誰とでも寝られる……でも、元より愛を得られなかったのと、愛を失ったのとでは、やはり違いますわね」
「だから前、俺と正反対だって言ったのかな?」
「そうですわ。誰かと体を重ねることは知りつつ、そこに愛はない。そこが似ているけれど、やはり正反対」
静かに息をつくと、エルフはぽつぽつと話しだした。
「わたくしは、ある方を愛しましたわ。その方も、わたくしを心の底から愛してくれましたわ。でも……普通は、認められませんわね。
娘と、父なんて間柄は」
気だるい笑みを浮かべ、エルフは続ける。
「それでも、わたくし達は愛し合ってましたわ。初恋の相手はパパ、わたくしを女にしたのもパパ。あの優しい、どんな歌い手も
かなわないテノール、彫刻の如き均整の取れた体。ああ……今思い出しても、うっとりしますわ」
あの時、フェルパーに抱かれた後呟いた一言。『パパ』が、彼女の傷なのだ。
「初めてのわたくしに、ずっと耳元で優しい言葉を囁いてくれたパパ。世界で一番好きだと言ってくれたパパ。とても物静かで、優しく、
男らしかったパパ。あの暖かな腕、体、目。ああ……あの頃のわたくしは、幸せでしたわ。世界で最も愛する方に、世界で最も愛されて
いたんですもの。でも、ある日とうとう、母に関係がばれましたの。わたくしの、声を聞かれて」
今までの表情から一転、エルフの顔に暗い影が差した。
「パパは、母もわたくしも、世界で一番愛してましたの。殿方は、器用ですわ。一番を、いくつも作れるんですもの。……皮肉じゃ
なくってよ?でも、女は違いますの。一番は一つだけ、そして一番愛されたくて、パパのそれを信じられなかった。……パパは、母も
わたくしも愛していたんですの。どちらかを選ぶことなど、出来ませんでしたわ。どちらも愛して、どちらも選べなかったパパは、
とうとう……短剣で、心臓を永遠に止めてしまいましたわ。もちろん、母はわたくしを憎みましたわ。だからわたくしは、ここに逃げて
きたんですの。あのままではきっと、母に殺されましたわ」
「……あたしの話なんか、何だかちっぽけに思えてくるなー」
ドワーフが、苦笑いしながら呟いた。
「パパが死んだ時点で、わたくしはこの世に未練などありませんでしたわ。でも、パパはそんなの望むわけがありませんわ。ですから、
わたくしは生きるんですの。パパのいなくなった世界を、命ある限り、生きますの。それが、パパに報いる、ただ一つの方法だから」
フェルパーは理解した。彼女の傷は、同時に彼女の生きる意味であり、ただ一つの指標なのだ。だから、彼女はもう誰も愛することは
できないのだ。
「……幸せを失う苦しみは、僕は味わったことがない。これは一体、幸せなのか、不幸なのか、ね」
ディアボロスが、いつも通りの茫洋とした口調で話しだした。
「僕は、先輩やドワーフと同じ。ただ、僕の場合は親に捨てられた。先輩と違うのは、孤児院に引き取られたことぐらいかな」
不幸の塊とは、こういう相手を言うのだろうかと、フェルパーはぼんやり思った。彼には、誰もが普通に得られるはずの愛すら、
与えられなかったのだ。
「種族がこんなだから、僕はいじめられたよ。何か問題が起きれば、何でもかんでも僕のせい。それが嫌で、必死に努力したけど、それも
認められず。ほんと、世界が平等だなんて言う人は、よっぽどお気楽な人生送ったんだとしか思えないよ」
その言葉に、セレスティア以外の人間が一斉に頷いた。
「陰湿ないじめも多くてさ。ご飯がもらえないとか、靴の中に刃物入れられたり、椅子に釘撒かれたり。ほんと、散々だったよ。
冬に締め出し食らったのはきつかったなあ。あの時はほんと、死ぬところだった。その後高熱出しても、誰も看病してくれなかったし。
そんな時にさ、ここの話聞いて、ここなら僕もまともに扱ってもらえる、一人で生きられるようになるって思って、それでここに来た。
ま、他の人よりは幾分かマシかな?他のみんな、重い人生背負い過ぎだよ」
そうは言うものの、彼の人生とて決して楽ではない。それに、種族ゆえの苦労をしているのは、彼だけだ。
「……初めから地獄にいるのも、不幸だ…。でも、幸せの高みにいれば、突き落とされた時の衝撃はでかい……どっちが不幸かなんて、
誰にもわからないさ…」
木枯らしが通り抜けるような声で、ヒューマンが喋りだした。
「うちは、普通の家庭だった…。父さんが商人で、母さんと、兄さんと、俺と、妹と……どこにでもいる、普通の家庭だったんだ…」
『だった』という響きが、既に不穏である。まして、今の彼を見る限り、幸せな人生を歩いているはずがない。
「でも、ある日父さんが失敗して……何もかも、失った…。それでも、みんな頑張ろうとしたんだ…。だけど、うちは爺さんの、そのまた
爺さんの代から続いた商人で……父さんは、その重圧に耐え切れなかった…」
深い深い、やりきれない溜め息を一つついて、ヒューマンは続きを話し出した。
「父さん、狂っちゃったんだ…。それで、もう死ぬしかないと思い込んじゃったんだ……自分だけじゃなくて、家族もね…」
「……続きを聞くのが怖いですわ…」
エルフが、暗い声で呟いた。実際、彼の佇まいもあって、話は怪談の様相を呈している。
「斧を持ってね、追い掛け回すんだ…。兄さんが止めようとして、頭を割られて、血を流して……兄さんに駆け寄った母さんは、首を
落とされてさ……俺は……逃げたよ…。妹が後ろで、『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って、泣き叫んでたのに……怖かったんだ、死ぬのが…。
死にたくなかったんだ……一人で逃げて、隠れて、生き延びて……父さんは、家族を皆殺しにして、自分も死んじゃったよ…」
「ひどいな。僕だったら、そんなの許せない」
ディアボロスが呟くと、ヒューマンは悲しげに笑った。
「でも、父さんなんだ……俺の、父さんなんだ…。母さんも、兄さんも、妹も、父さんだって……俺の家族だ。どうしたって、
嫌いになんて、なれないんだ。俺は、こうしてみんなを犠牲にして、生き延びた。だから、死ねないんだよ。だから、一人で
生きるために、この学校に来た…。生き抜いて、金を貯めて……いつか俺は、父さんの店を建て直してみせる……そうすれば、
きっとみんな、安らかに眠れる…」
嫌いになれないのもまた不幸だと、フェルパーは悟った。家族を殺した相手を、せめて憎めれば、彼もどれだけ楽だったろう。
同時に、フェルパーは今までに出会ったパーティの仲間達を思い出した。
いつも全力を出すわけでもなく、フェルパーから見れば真面目に生きていない彼等。それは、仕方のないことだったのだ。地獄を
見た事がない者と、地獄の中で育った者では、価値観が違って当然だ。だから、彼等は彼等で、真面目なのだ。ただ、常に死力を
尽くすということを、知らないだけだったのだ。
それに気付き、フェルパーが少し優しい気持ちになれたその時、突然セレスティアがわあっと泣き出した。あまりに唐突で、全員が
驚いてそっちを見る。
「ど、どうしたの?」
「わたくし、自分が恥ずかしいです…!みんながそんな……ぐすっ……そんな辛い思いしてたなんて、知らなくて…!
ごめんなさい……ごめんなさい…!」
裏を返せば、彼女はこういった苦労をまったく知らないで育ってきているのだ。それに気がついたのか、エルフが優しく話しかける。
「あなたは、辛い思いは、していないんですのね?」
「えっく……ひっく……わ、わたくし、みんな冒険者に憧れてきたんだとばっかり……う、うえぇ〜ん!」
そんな彼女に、五人は傷を持つ者にしかわからない、優しい微笑みを向けた。一人でも、そういう者がいてよかった。そんな思いの
篭った、世界で最も優しい微笑みだった。
「そうだ!セレスちゃん、家の話してよ!あたし、すっごく聞きたいな!」
ドワーフの言葉に、セレスティアは怯えきった目を向けた。
「い、嫌ですっ!わ、わたくしは、そんな……そんな話するなんて、そんな資格…!」
「違うよ。僕達はもう、不幸な話なんて聞きたくないんだ。世の中に、幸せもあるんだってこと、教えてくれないか?」
「そうですわ。たまには、ハッピーエンドの話を聞きたいものですわ。それに、ここには仲間の幸せを妬むような人はいなくてよ?」
普段はいがみ合うはずのディアボロスとエルフの合体技を受け、セレスティアは助けを求めるようにフェルパーを見た。
「俺も、聞きたいな。普通の家庭って、俺、憧れるんだ」
頼みの綱であったフェルパーにまでそう言われ、セレスティアはがっくりと肩を落とした。それでついに観念したらしく、彼女は
涙を拭き、重い口を開いた。
「は、はい。それなら……わ、わたくしは、普通の家で生まれました…。お父様と、お母様がいて、大切に育ててくれました…」
「ああ……いいなあ、それ…。あたしの両親って、どんなだったんだろう…」
「俺も、そんな頃があったんだよなあ……大切に、してくれてたんだろうなあ…」
遠い目で呟く二人に、セレスティアの表情が強張る。
「そ……そ……それ、で……えっと、あの……寝るとき、ご本を読んでくれたり……お誕生日に、プレゼントでリボンを…」
「誕生プレゼントかぁ……僕なんか、誕生日がわからないからって、そんなのなかったっけなぁ…」
「パパからもらったプレゼント、思い出しますわ…」
「……俺も、妹に本、読んであげたっけな…」
「う、う……うわぁ〜〜〜ん!やっぱりダメですぅ!もう許してくださいぃ〜!こんなの……こんなの、わたくし耐えられません〜!」
「待ってくれ、やめないでくれ。ここでやめられたら生殺しじゃないか」
「……俺も、思い出したいんだ…。みんなと、幸せだった頃のこと……だから、やめないで…」
「そうだよぉ!あたしだって、せっかく妄想楽しんでるんだから!やめたら怒るよ!?」
「うあぁ〜〜〜ん!!わぁ〜〜〜ん!!」
やはり、このパーティは不幸の塊で出来ているのだと、フェルパーは思った。
自分を含め、少なくとも五人はまともな人生を歩んでいない。残る一人のセレスティアは、幸せな家庭に育ったらしい。
が、やはり彼女も不幸である。少しでも運のある人間なら、その話を、こんな不幸の塊達の中で、話しているわけがないのだ。
幸せゆえに、彼女は今不幸だ。でもその分、自分達は彼女の幸せにあやかっている。
人間は平等じゃない。でも、案外妙なところでバランスが取れるのかもしれないなと、フェルパーは思うのだった。
以上、投下終了。
たまには恋人同士になれないのもありだと思った。今も反省していない。
スレ容量をやたら食ってしまったことは反省している。
それではこの辺で。
乙、そしてGJ!
平等じゃないけど何処かでバランスは取れてる
……うん、意外と真理なのかもしれんね。
こっちもほっけができてからレアユニークのレの字も出ないしw
GJ…いい話だなぁ
平等じゃないけど何処かでバランスは取れてる
……聖書の教えにもそういうことがありましたね。
不幸も、分け与える。幸せも、分け与える。
不幸な者は、誰よりも不幸に。幸せな者は誰よりも幸せに。
そしてその両者がいつか同じ道を進むように。
……うん。
ああ、いつになったら手に入るんだエクスカリバー……
決してどこかの国のレーザー兵器じゃないですよ。
いえ、途中で三つに分けられたので……
>>48 使わない学科専用武器とか出てきて
どうしたものかと苦い顔になるのはデフォですよね
そういやファミ痛でととモノ2が発表されましたねぇ
公式もきたよ。ご意見箱しかないけど。
RPGじゃなくて、大富豪とか麻雀でドワ子たちと対戦して
「私の勝ちだね!じゃあ…今日のお昼はキミのおごりだよっ」
みたいな牌とトランプと学園モノ。でも良かったのにとか思った俺は末期。
ミニゲームみたいのにそういうの欲しいです
体育祭みたいなイベントあるから参加できたらいいなあ
ファミ通に載ってましたねえ、ととモノ2の情報。
気になったのが、ドワーフの説明文に「力が強いじぇ!」
じぇ
今回は発作が起きたのでドワ子のお尻ネタ。別に以前書いた物とは関係ありません。
舐めるなどありますので、一応苦手な方はご注意ください。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
二人は誰がどう見ても、とてもお似合いのカップルだった。
「おーい、ドワーフー。モフらせてー」
「わっ。も〜、みんなの前で何してるの〜」
ドワーフに抱きつくクラッズ。口では嫌がりつつ、まんざらでもないドワーフ。種族的な気性も合っていて、二人の仲はとてもいい。
「敵来てるよ、敵。二人とも、いちゃつくのはそこまでね」
「え〜。今始めたばっかりなのに」
「真面目にしなきゃダメだよ〜。それに、その……そんなに抱きつきたいなら、あとでいっぱいしていいからさ…」
「ほんと!?よし、それならやる気でるなー!」
比較的おっとりしたドワーフに、何とも軽いクラッズ。二人はとても、お似合いに見えた。もちろん、お互い何の不満も持っていない
だろうと、みんなが思っていた。
だが、たった一つ。ドワーフは、クラッズに対して不満を持っていた。それに対しては、何度か本人に言ったことがあった。しかし、
その不満は一向に解消されない。無視できないほど、というわけではないのだが、無視するには大きすぎる。そのため、ドワーフは
どうしても、もやもやした気分になってしまうのだった。
現れた敵を殲滅すると、クラッズは再びドワーフに抱きついた。
「それじゃ、約束通りモフらせてねー」
「も〜……いいけどさ」
「ほんと、君らって仲いいよねえ」
そう言ってヒューマンが笑う。それに曖昧な笑顔を返していると、クラッズがそっと、ドワーフの耳に唇を寄せる。
「ね、今日もいいよね?」
「え、あ……うん…」
恥ずかしさから、ドワーフの毛がもさっと逆立ち、ふかふか加減が増大する。
「んー、最高ー。ずっとこうしてたいなー」
「見てると、ほんと気持ちよさそうだよね。私もやっていい?」
「だ、ダメだよぉ〜!ほんとは、だって、恥ずかしいし…」
「あはは、そっかそっか!そこは、クラッズ君の特等席だもんね!」
「そ、そんな、特等席なんて…!」
ドワーフの毛がますます膨れ上がり、耳がへなっと垂れる。
「あ、ヒューマン、もうちょっと何か言ってー。毛の中埋まるの気持ちいいー」
「やめてよ〜、恥ずかしいんだから〜」
そんな姿がまた、とても仲良しに見える。彼女が不満を持っているなどとは、ほとんどの者が知る由もなかった。
その夜、クラッズはドワーフの部屋にいた。彼女は既に裸で、恥ずかしそうに身を縮こまらせ、腕で胸を、尻尾で大切な部分を隠している。
そんな姿が、クラッズの目にはとても可愛らしく映る。
「まだ、恥ずかしいの?」
「だ、だってぇ……恥ずかしいのは、恥ずかしいよぉ…」
「そういうところが可愛いんだけどねー。ふかふかだし、可愛いし、ほんと最高!」
クラッズも、服などとっくに脱ぎ捨てており、無造作に椅子の背もたれへ引っ掛けてある。ドワーフとは対照的に、彼は裸であることを
恥ずかしがる様子はない。ドワーフの方は、可愛いと言われたのが嬉しいのか、股間を隠した尻尾の先だけ微妙に振られている。
「それじゃ、あんまり恥ずかしがらせるのもなんだし、しよっか」
「う……うん。あ…」
クラッズはドワーフの鼻に、いたずらっぽくキスをする。
「も〜、いっつもそうやって子供扱い…」
「っていうつもりじゃないんだけどね。可愛いからつい、さー。あはは、ごめんごめん。そう拗ねないでよ」
反省とは無縁の笑顔を浮かべつつ、今度はちゃんと唇を重ねる。軽く唇を吸うと、僅かに唇を離し、お互いの舌を舐め合う。ドワーフの
長い舌を、クラッズの舌がくすぐるように舐め、そんな彼の舌を、ドワーフはその舌全体を使って舐め上げる。まるで、獣同士が親睦を
深め合うスキンシップのような、変わったキスだった。
それをしばらく繰り返してから、再び唇を重ね、またすぐに舌と舌でじゃれあう。そうやっているうちに、最初は恥ずかしげに体を
隠していたドワーフも、徐々に腕を下ろし、ただひたすらにキスの感触を楽しみ始めている。
クラッズの手が、ドワーフの尻尾の根元を撫でた。
「ひゃ!?」
途端に、ドワーフはビクッとして身を引いた。
「い、いきなり触らないでよぉ…」
「いやね、その反応が好きでさあ。だからつい、ねー」
「………」
「ああもう、わかったから拗ねないでってば。その顔も可愛いけどさ」
むくれるドワーフの頬にキスをし、クラッズはふかふかの体に抱きついた。両腕はしっかり腰に回しつつ、今度は背中から尻尾へと手を
滑らせていく。
「んあ……んん……う〜…」
彼の手が尻尾を撫でる度、ドワーフの体と耳がピクンと跳ねる。尻尾はその手から逃れようとするように、せわしなく動いている。
「やぁ〜……もう、尻尾触っちゃダメぇ…」
「でも、尻尾好きでしょ?」
「だって、私だけだもん……私も、クラッズ君のこと、気持ちよくさせてあげたいんだもん…」
「あはは、それは嬉しいなー。じゃ、二人で気持ちよくなれるようにしよっか」
クラッズが離れると、ドワーフは横向きに寝転がる。その逆方向に頭を向け、クラッズも同じように寝転がった。
ドワーフの目の前に、彼のモノがある。全身の毛をふっくらさせつつも、彼女はそれに顔を近づける。
「息かかるのも気持ちいいー」
「もっと、気持ちよくさせてあげるんだからぁ」
はむっと、クラッズのモノを咥える。咥えたまま頭を前後に動かし、長い舌を巻き付かせるようにして、丁寧に舐める。
「うっく……ドワーフ、気持ちいいよ」
そう言われると嬉しくなり、ドワーフはさらに丁寧に舐め始める。唾液をたっぷり絡め、喉の奥まで咥え込み、裏側の筋を舌先で突付く。
その度に、クラッズは呻き声を上げ、同時にモノがピクンと跳ねる。
「よーし、それじゃ僕もお返しっ!」
ドワーフの腰を抱き寄せ、股間に顔を埋める。そして、もさもさの毛の中に隠れた割れ目を見つけ出すと、そこに舌を這わせた。
「んっ!」
声を出した拍子に噛みそうになり、ドワーフは口を離す。
クラッズの舌が割れ目をなぞり、敏感な突起を舐め、突付く。その度に、ドワーフは鼻を鳴らし、快感に身を震わせる。
「ふふっ、どう?気持ちいい?」
「ん……きゃうぅ…!わ、私もするんだからぁ…!」
口でする代わりに手で扱きつつ、ドワーフは彼のモノを、飴でも舐めるかのように舐め始めた。舌が長い分、単純ながら快感は強い。
「うあっ!ドワーフ、それいい…!……ん、そろそろドワーフ、準備できたかな?ちゃんときれいにしたよね?」
「う、うん……ちゃんと、してきたよ」
「よしよし、いい子いい子」
「また子供扱いするぅ…」
秘裂からじんわりと滲み出した蜜を指に絡め、クラッズは笑みを浮かべた。そして、腰から尻尾へと手を滑らせ、その裏側を撫でるように
伝わせると、根元にある小さな穴に触れた。
「んあっ!」
「まずはじっくりしてあげるね」
穴の周囲を、揉み解すようにゆっくりと撫で、全体に愛液を塗りつける。そして、少しずつ中心へと指を動かすと、わずかに力を入れた。
「んん……うあぁ!」
大した抵抗もなく、指がドワーフの中に入り込む。途端にドワーフは体を震わせ、穴がぎゅっとクラッズの指を締め付ける。
「んー、いい反応……んっく…!ドワーフ、ちょっと加減してね」
腸内に突き入れた指を、じっくりと動かす。回し、折り曲げ、ゆっくり出し入れする。そうやって動かす度、ドワーフは鼻にかかった
喘ぎ声を漏らし、クラッズの指を締め付ける。
「少〜し解れてきたかな?ちょっと遊んであげる!」
言うなり、クラッズはドワーフの腸内に指を入れつつ、秘部に舌を這わせた。秘裂を舌で開かせ、突起を吸い、後ろの穴に指を
出し入れさせる。
「きゃんっ!やぁっ、それダメぇ!強すぎるよぉー!」
「あはは、すごく気持ちい……うあっ、ちょっ……ド、ドワーフ…!」
自身の昂ぶりからか、一心不乱に舐めていたドワーフの奉仕は激しさを増し、クラッズを急激に追い込んだ。
「や、やばっ…!ごめっ、ドワーフ、出るっ!」
「え……きゃっ!?」
モノがビクンと震え、ドワーフの顔に熱い精液がかけられる。咄嗟に目を瞑って直撃を免れると、素早くそれを咥えた。口の中でも、
それは元気に暴れ、精液を吐き出していく。その動きが止まるまで待ち、出る気配がなくなってから、それを丁寧に舐めつつ口を離す。
ドワーフは少し口をもごもごさせていたが、やがて軽く目を瞑り、こくんと口の中の精液を飲み下した。
「もー、もうちょっと早く言ってよぉ。顔、ガビガビになっちゃうよ〜」
「ごめんごめん。急に強くなったからさー。ほら、顔拭いてあげるから、ちょっと起きて」
二人は一度行為を中断し、体を起こした。クラッズは彼女の顔にかかってしまった精液を、ハンカチで丁寧に拭き取ってやる。
顔を拭き終えると、二人はどちらからともなくキスを交わした。直前に何をしていたかは、特に問題ではないらしい。
「そういえば、今日は体、あんまり臭わないね?」
クラッズが言うと、ドワーフは恥ずかしそうに目と耳を伏せた。
「中、きれいにした後、体しっかり洗ったもん…」
「あ、そこまでしてくれたんだー。それじゃさ、顔にかけちゃったお詫びと、そのご褒美、してあげるよ!」
楽しそうに言うと、クラッズはドワーフをうつ伏せに寝かせ、腰を持ち上げた。
「な、何するの?やだ、恥ずかしいよぉ…」
「いいからいいから。ん、もうちょっとお尻上げて……そうそう、それぐらい。楽にしてね」
隠そうとする尻尾を掴んで上げさせ、そこに顔を近づける。クラッズはいたずらっぽく息を吹きかけると、主人と同じように
縮こまっている小さな窄まりに、そっと舌を這わせた。
「きゃあっ!?何、何!?だ、ダメだよぅ!そんなところ汚……うあっ、あああ!!」
「ちゃんと洗ったんでしょ?それなら汚くないって」
舌先で、皺を伸ばすようにじっくりと周囲を刺激し、かと思えば全体を広く優しく舐め上げる。今まで感じたこともない刺激に、
ドワーフはビクビクと体を震わせ、何度も尻尾を下げようとする。
「やぁっ!ダメぇ!お、お尻がぁ……お尻が、こんなのぉ…!きゃあぁっ!?やだやだっ、ベロ入れちゃダメぇ!!!」
舌先がドワーフの腸内に入り込む。温かく、柔らかく、湿った舌の感触は、指とは比べ物にならないほどの快感を与えてくる。
体の中まで舐められ、敏感な部分を舌で刺激される感覚は、ドワーフに激しい快感と羞恥心をもたらす。
シーツをぎゅっと握り締め、何とかその快感から逃れようと、尻尾を動かし、腰を下げようとする。しかし、クラッズは片手で尻尾を掴み、
もう片方の手で腰を抱きこんでいるため、逃げようがない。
「や……だぁ…!クラッズくぅん…!お、お願い……だから…!あっ、うああぁぁっ!!や、やめてぇっ!もうダメっ!やめてぇっ!!」
だんだん切羽詰ってくる声に、クラッズはにんまりと笑う。
舌を引き抜き、穴の周囲を丁寧に舐め、キスをするように唇を付ける。そして、今までよりさらに深く、小さな穴に舌を突き入れた。
直後、ドワーフの体が大きく跳ね上がった。
「やっ……だぁ…!も、もうダメぇ!ダメ!!わたっ、もっ、イっ、あああぁぁぁ!!!」
背中を仰け反らせ、激しく体を震わせるドワーフ。同時に、秘裂から透明な液体が噴き出し、クラッズの体を汚していく。
少しずつ痙攣が治まり、ドワーフはそのままベッドに突っ伏す。秘裂からは愛液が糸を引き、まだヒクヒクと収縮を繰り返している。
「……ふぅ。あはは、これでお相子だね。そんなに気持ちよかった?」
クラッズの言葉にも、ドワーフはまだ反応できないらしく、ベッドに倒れたまま荒い息をついていた。ややあってから、その言葉に
答えるように、尻尾がパタンと動く。
「あは、返事もできないくらいよかったんだ。ほんとに可愛いなあ、もう」
その背中に乗りかかり、頬にキスをする。ドワーフはまだ荒い息をつきつつも、尻尾をクラッズの足に絡ませてそれに応える。
彼女の呼吸が整うまで、クラッズはそのまま背中に乗っていた。やがて、ドワーフが体を持ち上げると、素早く離れる。
「もう大丈夫?」
「う、うん」
「それじゃ、そろそろ本番いこっか」
いかにも、待ってましたといった感じで、クラッズが笑う。が、ドワーフは目を伏せ、何か言いたそうにしている。
「……ん?どうかしたの?」
「あの……えと…」
何かを言いかけ、しかし声に出すのは恥ずかしいらしく、ドワーフはそうやって、しばらくもじもじしていた。
「あの……さ?やっぱり、その……いつも、みたいに、だよ、ね?」
「うん」
「あのぅ…」
何か意を決したように、ドワーフはクラッズの顔を見つめた。
「あの、さ……前で、し、して欲しいんだけど……な…」
「ん〜」
何も考えていないような表情で、クラッズは何か考えるような仕草をした。
「お尻でするの、嫌い?」
「え、や、その……嫌いってわけじゃ、ないんだけど…」
「じゃあいいじゃない。それに、僕だとそっちの方がサイズ合ってそうだしー。それにさ、痛い思いさせたくないもん」
「むぅ〜……わ、私は別にいいのにぃ…」
「ま、いいじゃない。ドワーフのお尻、気持ちいいしさ。僕はお尻の方が好きだしねー」
そう言われてしまうと、ドワーフは何も言えなくなってしまう。ちょっと不満そうにクラッズの顔を見てから、諦めの溜め息をつく。
「……いいけどさ…」
「そうむくれないでよ。ちゃーんと、気持ちよくしてあげるからさ!ほら、するときはどうするんだっけ〜?」
「う……や、やっぱり、やらなきゃダメぇ…?」
「ダーメ」
ニヤニヤと楽しそうなクラッズに対し、ドワーフは今にも泣きそうな顔をしていた。が、やがておずおずと、自分から腰を持ち上げ、
可愛らしく尻を突き出してみせる。
「こ、これでいいでしょぉ…?」
「まだ、完全じゃないよね〜?」
既に、ドワーフの全身の毛は、普段の倍ほどに膨らんでいる。その毛が、さらにぶわりと膨らんだ。
「まだ、隠しちゃってるよね〜?」
「ク、クラッズ君がしてよぉ…!そんな、自分からなんてぇ…!」
「だぁって、無理矢理する気はないもんねー。君がしたくないんなら、無理にはしないよ」
「い、いじわるぅ〜!」
もはや、ドワーフは恥ずかしさに全身を震わせていた。しかし、下に垂れていた尻尾が、震えながら少しずつ上がっていく。先に秘裂が
露わになり、そこからはさらに遅くなりつつも、じきに尻尾の付け根と、そこにある小さな窄まりが晒される。
そこまで上げた瞬間、クラッズはドワーフの腰を抱え込んだ。
「あっ!?」
「はい、よく出来ましたー。ちゃーんと、ご褒美あげるからね!」
一度、自身のモノで秘裂を擦り、溢れ出る愛液を絡める。そして、改めて尻尾の付け根の小さな穴にあてがった。
「んっ、あ…!」
恥ずかしがるように、穴がぎゅっと縮こまる。そんな彼女に、クラッズは笑って尻尾を撫でてやる。
「ほらほら、そんなに締めちゃ入らないって。はい、力抜いて〜」
その言葉に、ドワーフは大人しく従った。彼女の体から力が抜けたのを見計らい、クラッズはグッと腰を突き出した。
固く閉じられた蕾を押し分け、クラッズのモノがずぶずぶとめり込んでいく。
「うっ……あああぁぁっ!!」
一気に根元まで突き入れられ、ドワーフは体を仰け反らせ、ビクビクと体を震わせた。
「あはは、今軽くイッちゃったでしょ?ほんと、ドワーフって敏感だよね〜」
「あ……くぅ…」
少しだけ彼女の中から引き抜き、そしてまた奥まで突き入れる。そうしてから、クラッズはドワーフの背中に抱きついた。
「ドワーフの中、すっごく温かくて気持ちいいよ。……動いても、大丈夫?」
「ん……うん…」
ゆっくりと、クラッズが腰を動かし始める。途端に、ドワーフは彼のモノをぎゅっと締め付けてくる。
ぐぷ、ぐぷ、とやや篭った音が響く。ドワーフの腸内は、根元をきつく締めつけ、しかし中の方は、そっと触れているように柔らかく、
温かい。恥ずかしさからか、常に締め上げられているため、突き入れるにも引き抜くにもかなりの抵抗を感じるが、それがクラッズに
とっては、大きな快感になる。
「んあぁ……あっ!?あうぅ……ああぁぁ…!」
「気持ちいいよ、ドワーフ。きつくて、熱くて……うくっ、すごい締まる…!」
彼女の方も、既に軽く達した直後から、再び刺激を受けているため、その快感はもはや苦痛に近い。それでも、クラッズに
抱かれているという事実が、それを快感のままに留めている。
少しずつ、クラッズの動きが乱暴になっていく。腰は焦らすようなゆっくりとした動きから、叩きつけるような激しい動きとなり、
一般的な種族とは違って、ぼふぼふという柔らかい音が部屋に響く。
腸内を激しく犯され、腹の奥にひどい疼痛を感じる。だが、その痛みもまた、彼が夢中になっているためであり、その事が痛みを快感に
変えていく。
「はっ……くっ…!ドワーフ、もう出そう!」
「うぁ…!い、いいよ……中に、いっぱい……う、うあっ、ああぁぁ!!」
彼より一瞬早く、ドワーフは再び達してしまう。同時に、肛門が激しく収縮し、彼のモノを思い切り締め付ける。
「んぐっ……す、すご…!うぅ、もう……うっ、あぁっ!!」
最後にありったけの力で腰を叩きつけ、クラッズはドワーフの背中に体を預けた。彼女の腸内で、モノがビクンビクンと跳ね、その度に
精液を注ぎ込んでいく。彼女の方は、あまり感覚はないが、彼の仕草で射精したことはすぐにわかる。
「ふぅ〜〜〜……すごく、気持ちよかったよ」
一滴残らず彼女の腸内に注ぎ込むと、クラッズは少し間延びした声で言った。
「でもさ、まだ足りないんだよねー。このままもう一回、していい?」
「………」
返事の代わりに、ドワーフの尻尾がパタンとクラッズの腹を打つ。これは彼女の肯定の合図だった。
それを受けて、クラッズはモノをドワーフの腸内に埋め込んだまま、再び腰を動かし始めた。
中の精液が掻き混ぜられ、ガポ、ガポ、とくぐもった音が響く。それが潤滑剤の役目も果たし、さっきまでより動きやすいが、その分
きつい締め付けの気持ちよさは少ない。
少し考えて、クラッズはモノを一気に引き抜く。
「うあぁっ!?」
ドワーフの体がビクンと震え、締め付けが一気にきつくなった。クラッズは辛うじて先端が中に留まる程度まで引き抜くと、
今度は雁首までを浅く突き入れ、そしてまた抜け切る直前まで引き抜く。
「やあ……ぁ…!お、お尻がぁ……ダメぇ…!」
雁首で結合部を擦られ、ドワーフは新たな快感に身を震わせる。しかし、浅い部分を突かれているため、微かに物足りなさもある。
自然と、腰が動き始める。より深く突き入れてもらおうと、より強く突いてもらおうと、クラッズの動きに合わせて腰を振る。
引き抜かれるときは思い切り締め付け、少しでも抜けないように。
突き入れられるときは力を抜き、少しでも奥に入るように。
腹の奥を突き上げられ、精液の残る腸内を掻き回される重い痛み。だが、その痛みこそが彼との行為の証だった。
「くぅっ……ドワーフ、すごくいい…!もう、また出ちゃいそうだよ…!」
クラッズが言った瞬間、ふとドワーフの表情が変わり、腰の動きが止まった。それに気付き、彼も一度動きを止める。
「ん、どうかした?」
「え……えっと、その……で、出そう、なんだよね…?」
ドワーフは恥ずかしげな顔で、肩越しに彼の顔を見つめた。
「それなら、その……ま、前から、して欲しいな…」
「え?別にいいけど……恥ずかしいから嫌って言ってなかったっけ?」
「……して欲しいの…」
「そっか、わかったわかった。それもたまにはいいかもねー、あはは」
クラッズが一度、彼女の中から自身のモノを引き抜く。ドワーフは一度尻尾をブルッと震わせ、恥ずかしそうに、ゆっくりと仰向けに
寝転がった。尻尾を内股に巻き込み、恥ずかしげな、それでいて何かを期待するような目で見つめてくる彼女は、とても可愛らしく映る。
「尻尾、どかしてね」
クラッズが言うと、ドワーフはおずおずと尻尾をベッドに垂らす。それを受けて、クラッズは彼女の体にのしかかった。
胸と胸を合わせ、モノを尻尾の付け根に沿って移動させる。そして再び、彼女の腸内に押し入っていく。
「んあ……ああぁぁ…!」
体重がかかる体位になったことで、今までよりも中の密着感は増している。すっかり解れた彼女の腸内は、クラッズのモノをやんわりと
包み込み、愛液と腸液と精液でグチャグチャになった中は熱くぬめり、時折震えるように全体を締め付ける。
それに加え、ドワーフはクラッズの腰に足を絡め、ぐいぐいと腰を押し付けてきている。既に限界の近かったクラッズは、たちまち
追い込まれていく。
と、ドワーフがクラッズの顔を見つめてきた。快感と若干の息苦しさから、どこか呆けたような表情のまま、正面からじっと見据える。
やがて、その口が僅かに開いた。
「クラッズ……くぅん…」
表情と同じように、蕩けるような声だった。
ドワーフの手と足が、しっかりとクラッズを抱き締めた。
「好き……好き、大好きぃ…!クラッズ君、大好きだよぉ…!」
自分を抱き締めたまま、うわごとのように、何度も何度も好きだと呟くドワーフ。クラッズの胸に、たまらないほどの愛おしさと、
締め付けるような痛みが走る。
「僕も……大好きだよ、ドワーフ…」
「クラッズ君、好きだよぉ……ほんとに、大好き……む、ぅぅ…!」
その言葉を聞くのも心地良かったが、クラッズはあえてその口を唇で塞いだ。喋れなくなった代わりに、ドワーフは積極的に舌を絡め、
貪るように激しいキスをしてくる。
腸内を突き上げ、唇を吸い、舌を絡める。ドワーフの鼻息が頬をくすぐり、時折くぐもった嬌声が響く。
クラッズの動きがだんだんと性急になり、結合部から響く湿った音も、激しく、大きくなってくる。
「むぐぅ……んうぅ〜っ…!」
目をぎゅっと瞑り、ドワーフは必死に快感を堪える。より強く体を押さえつけられ、クラッズは根元まで彼女の腸内に埋め込んだモノを、
さらに奥まで突き入れるように、強く腰を突き上げる。やがて、その力がさらに強くなったと思った瞬間、クラッズはドワーフの体を
全力で抱き締め、思い切り腰を突き上げた。
「んんっ……うっ、ぐっ…!」
「んぁう……ん、ううぅぅぅっ…!!」
ほぼ同時に、二人は唇を重ねたままで、くぐもった声をあげた。クラッズのモノが腸内で跳ね、彼女の中にさらに精液を注ぎこんでいく。
ドワーフの体もビクビクと震え、精液で満たされた腸内も、さらに搾り取ろうとするかのように蠢動する。
唇を重ねたまま、二人はしばらくその余韻に浸っていた。互いを労うように、唇を啄ばみ、舌先をいたずらに絡める。
彼のモノが硬さを失い、小さく萎んでくると、腸内から押し出されるように抜け出た。同時に、荒々しく犯されてまだ開いたままの
肛門から、激しく掻き回されて泡立った精液がどろりと溢れた。
二人は荒い息をつきながら、しばらくキスをしつつ抱き合っていた。やがて、どちらからともなくキスを中断し、互いの顔を見つめあう。
「……好きだよ、ドワーフ」
「私も……だよぉ…」
最後にもう一度キスを交わし、二人は目を瞑った。そして、お互いの温もりを全身で感じながら、気だるい眠りへと落ちていった。
翌日。ドワーフは仲間であるヒューマンの部屋にお邪魔していた。
「ふーん。で、ドワちゃんは初めてをあげたいわけだ?」
「う、うん……でも、何回か言ったんだけど、全然相手にしてくれなくってぇ…」
ヒューマンは、ドワーフにとっていい相談相手だった。種族柄なのか、非常に好奇心と性欲旺盛な彼女は、恋愛経験も豊富だった。
彼女自身は恋愛をゲームのように見ているし、色々な種族と体を重ねるのが楽しくて仕方ないらしい。『あとバハムーンと寝れば
全種族制覇』と語る彼女は、現在パーティの一員であるバハムーンに熱烈なアタックを仕掛けている。が、本人からは迷惑がられている。
「でもさ、別に嫌じゃないんでしょ?」
「そ、それはそうだけど…」
「それに、あいつはアナル好きってんだから、別にそのままでいいんじゃないの?気持ちよくないってわけでもないんでしょ?」
「……そうだけどぉ……ヒュムちゃんもクラッズ君みたいなこと言う〜…」
ドワーフがむくれて見せると、ヒューマンは呆れたように頭を掻いた。
「そりゃねえ。私だってアナル経験はあるけど、あれだけじゃ私イケないんだよね。でも、ドワちゃんはイケるわけだし、そもそも
考えてみなよ。処女のまんまでお尻の初めてあげる方が、よっぽど度胸いるっての」
「だ、だからぁ、それはそうなんだけどぉ……ま、前の方の初めては、少し違うんだよぉ…」
「……いや、わからなくはないんだけどね。私だって、こう見えて乙女だった頃はあるし。でもさ、本人が嫌がってたりするんなら、
それを強制するのってどうよ?実際に、本人には何度も言ってるんでしょ?それで断られてるんだから、あんまりしつこくするのは
どうかと思うよ」
「……そうかもしれないけどぉ……私のこと、ほんとは好きじゃないのかなぁ……くすん…」
とうとう涙ぐんでしまったドワーフを見て、ヒューマンは気まずそうな表情を浮かべた。
「はぁ……ま、いいよ。そこまで思い詰めてるんなら、それがわからない男にも責任があるわ。あとで、あいつと話してみる」
「ほんと!?ヒュムちゃん、ありがとう〜!」
本当に嬉しそうな、純真な笑顔を浮かべるドワーフ。その顔を見ていると、ヒューマンの中に何とか話をつけてやろうという決意が、
人知れず結ばれていた。
その夜。今度はクラッズがヒューマンの部屋にお邪魔していた。もちろん、彼女が昼のうちに彼を呼んだのである。
「それで?話って何?」
「微妙に警戒してない?別にドワちゃんの彼氏を寝取ろうとは思わないから安心して」
「そりゃ、ねえ?色々と噂聞いてるしー」
「いや、ちょっとね。女の子同士で話してると、どうしても色々知るわけよ」
軽い口調で言うと、ヒューマンは真っ直ぐにクラッズの目を見つめた。
「君、あの子の処女もらってないんだってね」
「うん」
「どうして?」
「だって、お尻の方が好きだしー。それにさ、すごく興奮するじゃない!?処女のままで、お尻だけしっかり開発されて、しかもそっちは
処女じゃないとかさ!それにあの、独特の根元はぎゅっときつくて中はふんわり柔らかくて、温かいって言うより熱いのが…!」
「熱弁振るってるとこ悪いけど、別に君の趣味はどうでもいいから」
「……そっか…」
「あからさまに残念そうな顔しないでよ、変態」
一瞬笑顔を浮かべ、ヒューマンはまたすぐに真面目な顔に戻った。
「でもね、それはわかったけど、あの子のことはちゃんと考えてる?」
「え…?」
思いもよらない言葉を投げかけられ、クラッズは目に見えて動揺した。
「そりゃあ、お尻でイケる子で、君にベタ惚れしてるっていうのはわかるよ。でも、ヤッて気持ちいいっていうのと、愛情確認ってのは
別だよね?」
「そ、それはねー。でも、好きじゃなかったら気持ちよくしてあげようなんて、思わないでしょ?」
「それは当然ね。だけど、君あの子が『初めてもらってー』って言ってるのに、断ってるでしょ?」
「う……それは、その…」
「据え膳どころじゃないよ?おいしそうな女の子が、自分から『私を食べて〜』って、調味料から何から全部揃えて言ってきてるんだよ?
それを、そこまで頑なに拒む理由って何よ?」
「………」
「言っとくけどね、女の子がそこまでするってのは相当なことだよ。特に、ドワちゃんみたいなタイプなら尚更ね。わかる?君はね、
あの子のそういった勇気とか誠意とか、全部踏みにじってるんだよ?そんなに、ドワちゃんが嫌い?」
「き、嫌いなもんかっ!」
珍しく、クラッズは声を荒らげた。普段温厚な彼が、ここまで声を荒らげるのも珍しい。
「嫌いなわけない!大好きだよ!愛してるよ!」
「じゃあどうして、あの子のお願いをそこまで断るの?」
「それは…」
そう言われた途端に、クラッズの声は力を失い、表情も暗く沈んだ。
「……好きだから、だよ…。だって、僕もドワーフも、いつかここを卒業したら、きっと離れ離れになる。そのうち、同じ種族で僕より、
もっとずっといい人見つけてさ、結婚して子供産んだりすると思うんだ。だから、初めてはその人にあげるべきだと思うんだよ。
僕なんかが、気安くもらっちゃっていいものじゃないと思うし……お尻の方が好きだし」
「つまり、ドワちゃんとは遊びってわけ?」
再び、ダガーのように鋭い言葉がクラッズの胸を突く。
「違うっ!本気で好きだよ!できることなら、ずっと一緒にいたいよ!でも……種族も違うし、そんな僕が…」
「……は〜〜〜〜ぁ…………あの子もそうだけど、君も大概、純情童貞君みたいねぇ…」
ヒューマンが心の底からの、大きな大きな溜め息をついた。
「あのね、君はそれであの子のためになってると思ってるかもしれないけど、あの子はそれでも君に初めてをもらってほしいって
言ってるの。わかる?」
「で、でも…」
「それにね、やっと好きな人に初めてあげられると思ったら、いきなり『アナルでやらせてくれ』だよ?普通だったら、思いっきり
ぶん殴ってさようならだよ、そんな男。そんな無茶苦茶な要求を黙って呑んでくれて、君のわがままに散々付き合ってきてるんだよ。
だから君も一つくらい、あの子のお願い聞いてあげなさいよ。それが、男ってもんでしょ?違う?」
もはや、反論の余地はなかった。クラッズは力なくうなだれ、ヒューマンの言葉に黙って耳を傾けている。
「あの子ね、本当は好きじゃないんじゃないかって、本気で悩んでるんだよ。安心させてあげるためにも、それぐらい聞いてあげなさい」
「ほ、ほんとに!?……そっか、そうだったんだ。うん、わかった。ヒューマン、ありがとね」
クラッズはベッドから立ち上がり、ドアへと歩き出した。
「頑張ってよ〜。早く会って、ドワちゃん安心させてあげなさい」
「うんうん、わかってる。それじゃヒューマン、またね」
いつものように人懐っこい笑みを浮かべ、手を振るクラッズ。それに手を振り返しながら、彼女は一仕事終えた達成感を味わっていた。
それから数分後。ドワーフの部屋には、クラッズとドワーフの二人がいた。二人とも例によって、既に服は脱いでいる。
「ドワーフ、ごめんね。君の気持ちに気付いてあげられなくって」
「ううん、いいよ〜。だって、こうして来てくれたんだもん」
胸と秘部を隠しつつ、恥ずかしそうに微笑むドワーフ。やはり、その顔は可愛らしい。
「じゃ、その……ほんとに、いいんだよね?」
「うん……クラッズ君に、あげたいの…」
それ以上の言葉は必要なかった。二人は強く抱き合い、口付けを交わす。
クラッズが右手を離し、彼女の秘所に触れる。途端に、ドワーフは身を引いた。
「ごめん、大丈夫?びっくりさせちゃった?」
「あ、その……ご、ごめんね……なんか、緊張する…」
「ん〜、そうだ!濡れるまではさ、慣れてる方でしよっか」
「ま、またお尻〜?……でも、濡れるまでなら、いいかな…」
許可が出たことで、クラッズは右手を彼女の腰に回し、肉付きのいい尻を撫でてからゆっくりと尻尾の裏側に滑り込ませる。そして、
その付け根にある小さな穴に、グッと指を突き入れた。
「んっ……あっ!」
「う〜ん、前でするためにお尻いじるとか、普通逆だよねえ?こういうところが、興奮するんだけどねー」
勝手な感想を述べつつ、クラッズはドワーフの腸内を指で掻き回し、抉り、周辺を指で撫でる。さすがに慣れたもので、ドワーフの秘裂は
既にじっとりと濡れていた。
「ん、これぐらい濡れてればいいかな?勝手わからないから、自信ないけど…」
「うん……たぶん、大丈夫…」
「そっか。それじゃ、その、する?」
「う……うん…」
ドワーフを優しく仰向けに寝かせ、その体にのしかかるクラッズ。彼女は不安そうに耳をパタパタと動かし、クラッズの顔をじっと
見つめている。そんな彼女の頭を、クラッズは優しく撫でてやる。
「痛かったら、すぐに言って。無理はしないから」
「う、うん……でも、大丈夫だよ…。クラッズ君がしてくれるんだもん……我慢、できるよ…」
「そっか。でも、無理はしちゃダメだよ。……じゃ、いい?」
そっと、自身のモノを秘裂にあてがう。ドワーフはいよいよ不安そうに、ぎゅっと目を瞑った。
「う、うん……クラッズ君……来て…」
「うん……いくよ?」
優しい声をかけられ、ドワーフは少しだけ落ち着いた。しかし、さすがに初めて経験するという恐怖は、そう簡単には拭えない。
しっかりと目を閉じ、来るべき痛みに備える。しかし、まだ何の感覚も襲っては来ない。
「……クラッズ君……私、大丈夫だから……入れて、大丈夫だよ…」
ドワーフの言葉に、一瞬返事がなかった。やや間を置いて、クラッズの声が聞こえた。
「……入れてるよ…」
「え…」
慌てて目を開ける。確かに、しっかりと彼のモノが入っているのが見えた。
クラッズの顔が、暗く沈んでいく。自分の失言にドワーフが気付く直前。自分の中で彼のモノが萎えていくのだけは、なぜかはっきりと
感じ取れた。
「うっ……うぅっ…………ぐすっ……ヒック…!」
それから数分。ドワーフは必死に、泣き続けるクラッズを宥めていた。
「だ、だからごめんってばぁ…!そんなに泣かないで…!」
「うっく……えっく…!そ、そりゃ、僕のは小さいけどさぁ……ぐすっ…!だ、だからって、あんなこと言わなくたってっ……ヒック…!」
「い、いじわるじゃないんだよぉ…!その、だって、小さすぎて、ほんとに入ってるの気づかなくて…!」
しまったと口を塞いだが、もう遅かった。
「う、う……うわああぁぁーーーーーーんっ!!!!」
「あ、あのっあのっ、違うんだよぅ〜……そうじゃなくって、その……えっとぉ…!」
結局、慰めることなどできはせず、気の利いた言い訳も思いつかず、彼は泣き疲れて眠るまで、ずっと泣き続けていた。
翌日、ドワーフから相談を受けたヒューマンは、顛末を聞くなり笑い転げた。
「ぶぁっはっはっはっは!!!!あーっはっはっはっはっは!!!あは、あははははは!!!ひぃ〜、お、お腹が苦しぃ〜!!」
「もぉ〜、笑い事じゃないよぉ〜」
「だ……だって、だって……ち、小さすぎて気付かないとか……ど、どんな粗チン……フェアリーかっての!!あははははは!!
し、死ぬ!!!笑い死ぬ!!!」
実際、ヒューマンの目には涙が浮かび、顔は真っ赤になっている。あと少し頑張れば、彼女は窒息するかもしれない。
「あは、あはは…!!!ゲホッゲホッ!!んっ……ゴホッ!!あ〜〜〜〜……死ぬ…」
必死の思いで笑いを収めると、ヒューマンはドワーフに同情的な視線を向けた。
「まあ、もういいじゃない。処女膜は残念ながら無事みたいだけど、形的にはヤッたわけだしさ」
「でもぉ…」
「それに……ぶっ……くくくっ……そ、それにね、私がアナルでイケないみたいに、性感帯って言っても敏感な人と鈍感な人がいるのよ。
だからたぶん、ドワちゃんは前が鈍感なんでしょ」
「そ、そうなのかなぁ…?」
「ちょうどいいじゃない。クラッズ君はアナル好きで、君はアナルが敏感で、そもそもサイズもぴったりなんだし、前は二人とも、
諸事情で向いてないみたいだし……ぶはっ!!ははははははっ!!!でも、気付かないとかさいこー!!!あーっはははははは!!!
そ、そりゃ、男としては泣きたくもなるわ!あっははははははは!!!」
「もぉ〜、そんなに笑わないでよぉ〜!真剣なんだよぉ〜!」
怒ってみせるドワーフ。あれから部屋に篭りっきりらしいクラッズ。それがまた、ヒューマンのさらなる爆笑を誘う。
真剣だからこそ、おかしすぎる。二人が純粋すぎて、余計笑える。本当に、このカップルはお似合いだと、ヒューマンは心の底から思う。
腹筋が攣りそうになり、頭が酸欠でふらつくほどに笑いながら、変に溝の出来た二人の仲をどうやって取り持ってやろうかと、
そう考えるヒューマンであった。
以上、投下終了。
なんかお尻ネタの場合は尻尾ある種族が多いな。しかしそこを弄るに当たって、尻尾は重要な要素だと思う。
さて、これでストックが尽きてしまったので、以降の投下はペースダウンします。あしからず。
それではこの辺で。
乙!
がんがれクラ夫、マジで。
…逆に人男とクラ子だとひぎぃなことになりそうだw
あと、尻尾は良いね
アナルファックと言えば精液はアルカリ性な為腸内を焼いてしまうのと
細菌とか衛生の二重の面からコンドームは必須らしいですねぇ
乙でした
クラッズがwwwこれは泣けるww
それにしてもベスト版でドワ子の声は治るのかな…
乙
負けるなクラ男、本当に。
…現在ディア男とフェア子書いてる俺が来ました。
ひぎぃじゃすまないかも知れない。
あと、種族間のアレの大きさてこれぐらいか
バハ男≧ディア男≫≫ヒュム男≧ドア男>エル男=フェル男=セレ男≫≫クラ男>フェア男
え、ノームがいないって?ノームは入れ物変えればどこまでも大きくな(ry
前スレ
>>107へ
同人の通販復活してたよ。
もう買ったかもしれないし、このスレを見てるかも分からんが…
保守
ドワ子の声直ってるらしいね
ついにドワ子を入学させる日がきそうだ
>>68 見てるし買ったよw
心配してくれてサンクスな
ドワ子の声が思った以上に女の子だった
今までの妄想分とどう折り合いつけるかなっとw
最初のいっきまーす!(だっけ?)が凄く女の子してたから
バグがなければさぞ可愛いおにゃのこだったろうに、と
凄く残念に思ってたがそれは間違ってなかったようだw
近所の店にベスト版が無い件について。
俺、ベスト版が買えたら腹黒クラッズとショタドワとバハおねーさんとドワ子の話を書こうと思うんだ…
>>71 それは良かった。
それにしても、俺の初めての同人誌購入がととモノ本になるとは思っても見なかった
75 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 20:48:25 ID:8sKtQXQn
保守
とともの2の公式サイトの絵、左端のキャラはクラッズか!?
可愛いぞ!!
今回こそあったらいいな。装備品を立ち絵に反映させる機能。
>>76 見た感じ、人形遣いのクラッズってとこかね?
俺、ととモノ2買ったらドワ子アイドルパーティ作るんだ…
色んな意味でアイドルPTになると思うが
ここのみんな文章上手いねえ。情景想像しながら読んでると心に残るよ。
79 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 17:19:29 ID:XbCy93d9
とともの2に期待。AGE
80 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 17:22:51 ID:XbCy93d9
やっぱり発売直後の本スレは「で、アニメの○○子はいつになったら使えるのか」
とか「キャラグラのみで選んだらドMパーティ余裕でした」みたいな流れになるんだろうか。
82 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 21:24:53 ID:XwhQoL1c
とともの2はCEROAか・・・
CEROCぐらい欲しかったなぁ・・・
パンチラのサービスくらい欲しかったぜ・・・
エロゲとかじゃなく普通のゲームしてる最中のサービスカットが素晴らしいのに
前回のCGが二枚だったが今回はそれ以上になってるといいなぁ
>>83 2ではステータス画面の立ち絵が装備変更に合わせて変わります!
当然、何も装備しなければ・・・・とかだったらどうする?
86 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 20:56:37 ID:TtZoxaVH
87 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 20:58:59 ID:TtZoxaVH
CGって吐露男の笑顔とかのほうか?
>>87 「こいつはくせぇぇぇッ!!ゲロ以下の臭いがプンプンするぜぇぇぇッ!!」
こうですか、わかりません。
公式サイト、更新されてタ。
ドワ子おさげ、ドワ子おさげ
キャラクター紹介の部屋、左の方にボーイスカウトのマークが・・・
気まぐれで描くととモノの不健全な絵なんかもここにうpしていいんだろうか?
ゴーゴーゴー!
期待させといて腐女子向けとかは無しなw
95 :
92:2009/05/04(月) 14:33:56 ID:gLS9TMSK
これは良いあぶない下着w
97 :
92:2009/05/05(火) 02:13:00 ID:9yHUiKLs
なんかいつぞやのエル子を思い出すなその設定
ドワ子って全身モフモフなんだよね?
性器周辺はどうなっておるのか気になってしかたがない
乳首とか
複乳ってこと?
それを気にし出すとドワ男やフェル男のナニもどうなってるのか気になってくる
骨が入ってたり瘤があったりトゲがあったりとか
バハ男も同じだよな。
そこら辺はあんまり考えないほうがいいと思う。
そういや、某カードゲームの碧麟のおじさまは二股だったなw
>>99 犬とか猫みたいな感じで、その周囲はちょっと毛が薄いと妄想してる
乳首はもふもふの毛の中から発掘するのが楽しいと信じている
てか、フェルパーもジョルー先生曰く「ちょっと毛深い」らしいけど
見た感じヒューマンと大差ないよな
あれだよ胸毛とか腹毛が普通より目立つんだよきっと
それで男子も女子も無駄毛処理が面倒で水泳とか嫌いなんだよ
フェルパーは全身に近づいて目を凝らさないと見えないレベルの産毛があると妄想
触り心地才友君羊。
なんとなく書いてしまった。
母の日が近いからかも。エロ無し。
【ディモレアさん家の教育事情】
夜の帳が下りたパルタクス学園の寮の入り口には掲示板が置かれており、学校からの連絡やロスト発生時の悼みなどは常にそこに書かれている。
生徒達は寮に戻る時は一度は確認するので誰もが一度は足を止める。しかし、その日は異様なまでに掲示板前は混雑していた。
「なんか相当混んでるな。なんの連絡だ? 皆がこんなに集まってるなんて」
寮へと戻ってきたバハムーンの少年がそう首を傾げ、一緒にいたディアボロスの少年も「そうだな」と頷く。
「いつもここまで混雑する事なんざそうそうないだろ」
「確かにな……しかし、これじゃ前も見えない」
ディアボロスがそう呟いた時、寮の入り口が開き、次はセレスティアの少年と少女が仲良さそうに寮へと入り、その混雑に驚いた様子で立ち止まった。
「ちょうどいい。おい、そこの二人こっち来てくれ」
バハムーンが呼び止め、二人がすぐに近づいてくる。
「なんなのですか、この混雑……これでは前に進めませんわ」
「相当重大な発表でもあったんですか?」
「ここからだと見えないんだ。お前さん達、飛べるだろ? ちょっと見てくれるか?」
セレスティアは浮遊能力を持つ数少ない種族であり、高い場所から遠くを見渡せるというのは迷宮探索をする上で意外と役に立つ。
しかし二人は同時に首を振った。
「ここまで遠くては流石に見えませんよ」
「前の方に聞いてみるのはいかがですか?」
「こっちの声が届くかどうかわかんねぇんだよ」
バハムーンの言葉にディアボロスは「それもそうか」と呟き、前にいるヒューマンの肩を叩き、掲示板の内容を前に聞いてくれと頼んだ。
ヒューマンは頷き、ヒューマンは前にいるクラッズへ、クラッズはフェルパーへ、フェルパーはドワーフに、ドワーフは前にいるディアボロスに、ディアボロスはノームに、と伝言ゲームのように伝わっていく。
そして最先端から再び折り返して掲示板の内容が帰ってくる。
「授業参観のお知らせぇ!?」
その内容を聞いて、バハムーンは呆れたような声を出した。
「今までそんな行事、ありませんでしたものね」
セレスティアの少女の言葉に、ディアボロスも頷く。
「ああ……授業参観って事は……」
「普段の授業を僕達の保護者が見に来るって事ですよね……」
「寮制の学校に普通そんな行事あるのか……?」
バハムーンが首を傾げた所で更に寮へと戻ってきた別の生徒が何事かとばかりに様子を探る。彼らもまた初耳なのか、驚いた様子だった。
「しかし授業参観か……俺達の保護者が泊まる場所とか、パルタクスには無いだろう」
ディアボロスがそう呟いた時、前にいたヒューマンが口を開いた。
「いや、親は寮のその生徒の部屋に泊まるんだと。それで、到着が早い親はもう何人か着いてるらしい」
「マジでか!? つーかヤバいな。俺、ヒューマンとパーティ組んでるなんて知られたらオヤジに殺されるぞ」
バハムーンが震え上がった声を出し、セレスティアの少年が「大変ですねぇ」と相槌を打つ。
「お前ならまだいいだろ……俺なんか親が問題だぞ……。出来れば来て欲しくない」
ディアボロスの少年がそんな声を出し、他の連中が「なんでだ?」と声をかける。しかし彼は「言いたくない」と言って答えなかった。
そして、その頃になってようやく身動きが取れない程に混雑していた寮の掲示板前が動き出した。
「まったく、急な話にも程があるっつーの……」
先ほど親に来て欲しくないとボヤいていたディアボロスの少年はルームメイトでもあるフェルパーの少年にそう声をかけた。
フェルパーの少年は「まぁいつもの事だよ」と相槌を返し、寮の部屋の前へと歩く。
「それにしても親に授業見られるってのもなんか恥ずかしいよなー……ほら、俺んトコ皆フェルパーだから恥ずかしがり屋多いし。立ってるだけでも恥ずかしいよ」
「ああー……フェルパーは人見知りするからな」
そして、ディアボロスが寮の部屋の扉を開けた時だった。
Tシャツにトレパン姿の女性がベッドに寝転んでいた。
二人は一瞬だけドアを閉め、そして再び開ける。
その時、フェルパーの少年はその女性が誰だとはっきり気付いた。
「あら、遅かったわね? 待ちくたびれたわよ?」
「で、でぃ、ディモレア!?」
そう、パルタクス学園だけでなく多くの冒険者養成学校の生徒達を恐怖に陥れた闇の魔導師ディモレアが何故かTシャツにトレパン姿でやさぐれ淑女を瓶ごと煽っていた。
「…………おい、母さん。なんつーカッコだ……てか、なに酒飲んでんだ!」
「……母さん?」
フェルパーはディアボロスを指さした後、ディモレアを指さす。
「ああ……信じられないかも知れんが」
「こう見えてもあたしだって1児の母なのよ?」
ディモレアはそう言ってフェルパーに笑いかけた。
「つーか、それより何で俺の寝巻き着てんだよ。普段のドレスはどうした」
「あんなカッコで寝れる訳ないでしょーが。長旅で寝巻き忘れちゃったの。いいじゃない、あんたのなんだし」
「テレポルでどこでも飛べる癖に何が長旅だよ……」
ディアボロスはそう言ってため息をつくと、寮の部屋へと入る。フェルパーも後に続いた。
「おい、母さん何時着いたんだよ?」
「今さっき。まぁ、可愛い一人息子の授業参観だもの。顔ぐらい出さないとマズいでしょ?」
「母さん、あんな事やらかしておいてよく此処に来る気になったな……。ウチの校長が卒倒しそうだぞ」
ディアボロスの呆れた言葉に、ディモレアはからからと笑う。フェルパーは自分のベッドに座ると、ディモレアは先輩パーティがハウラー地下道で討伐したんじゃなかったのかと思い出していた。
「ああ、まぁ確かに痛い目にはあったわよ? けど、それぐらいじゃ死なないの。お姉さんは」
フェルパーの思考を見透かしたかのようにディモレアは笑う。
「はぁ………で、母さん今日はここに泊まるのか? 変な事するなよ? 俺はともかくフェルパーに迷惑かけんなよな」
「バカねぇ、息子のルームメイトにそんな事する訳無いでしょ。この子が欲情するなら話は別だけど」
「それは無い。こいつは母さんみたいな年増に興味はふぐはっ!」
ディアボロスが言葉を最後まで続ける前にビッグバムが直撃し、壁へと突っ込む羽目になった。
「誰が年増よ。あたしはまだ若いの。あんたを生んだ時はまだ成人じゃなかったのよ」
「それは嘘だぐほぉっ!?」
二発目のビッグバムが放たれ、学生寮では地震かとばかりに少し騒ぎになっていた。
深夜。ルームメイトのフェルパーも眠ったのか、微かな寝息が聞こえている。
ディアボロスは起きていた。
ベッドの中に入ってはいる、だが目が冴えて眠れなかった。
明日の事が不安だ、とディアボロスは思う。
明日から授業参観である。ディモレアの事件で命を落とした生徒だっているし、入ったばかりの新入生だろうと少し探索を進めた上級生だろうと、そしてディモレアと直接戦った先輩達の中にだって、ディモレアは未だに恐怖の対象なのだ。
ルームメイトならともかく、他の生徒達はディモレアを母に持つ自分をどう思うだろう、と不安になっていた。
けれども。
それでも、母親なのである。ディモレアは。
ろくなことをしないけれど、お腹を痛めて自分を産んでくれた、ここまで育ててくれた、学費も出してくれてる。魔導師ではなく、錬金術士の道を進む自分を応援までしてくれている、母親を。
彼は、悪く思える筈が無い。何よりも、たった1人の、父親を知らない彼の、家族で、肉親であるディモレアを。
そして何よりも。
こうして、母親がすぐ近くにいるという事が、凄く落ち着くと感じている。
「……………」
ディアボロスはベッドから起き上がり、床のマットレスに視線を向ける。
寝息を立てる、母親。穏やかな寝顔。
とても、恐怖の対象であった闇の魔導師と同一人物とは思えないほど。
「母さん……」
「……眠れないの?」
そう呟いた時、ディモレアが目を開ける。まだ、起きていたのだろうか。
「あんたは、昔からそうだわ。何かあると、寝付けなくて、あたしを起こしてたわね」
まだ酒が抜けきっていないのか、ディモレアはとろんとした目つきで、ディアボロスに手を伸ばし、そのままマットレスの中へと引き寄せた。
こうして母親に抱きしめてもらうのも久し振りだ、とディアボロスは思った。
「……本当に、あたしに似ないで、あの人に似たのね。今じゃ、あの人そっくり」
ディモレアがディアボロスを撫でながら呟く。彼にはディモレアの言うあの人が誰の事か解らなかったが、知りたいと思わなかった。聞くのはまた野暮というものだ。
「……あんたには守りたいもの、ある? あの人は、守りたいものを守って消えてった。けど、消えてしまったら、遺されたあたしはどうすればいいのかって。
それで結局、ろくなことにはなってないわ………あんたはあの人に似てる。けど、消えるのだけは一緒にならないで。あんたは死なないで。どう足掻いても」
暖かい手が、身体が、母さんの息遣いが、鼓動がすぐ近くで聞こえる。
「あんただけは、生きて、ね」
ディモレアは、たった1人の息子を。今、すぐ側にいる自分の血を引く少年を、しっかりと抱き留めた。
闇の魔導師ではなく、1人の母として。
以上、終わり。
しかしディモレアはとともの。屈指の巨乳だと思うのは自分だけだろうか。
>>112 GJなんかいい話だ・・。
そしてディモレアに人妻・・・いや未亡人設定が・・・。
・・・イイかもしれん。
着物ならパンティはNGだ!とかマニアックなこと言ってみるw
>>106 近付いて目を懲らさないと見えないぐらいの産毛なら俺らの全身にもあるだろ
現在ゲームを進行中なのだが、「セクシーな着物」「あぶないパンツ」
というアイテムについてあれこれ妄想中
種族生別に関係なく装備できるって一体……?
あぶないパンツ・・・
それは装備する者の種族性別に合わせその状態を変える幻の装備。
つまり、誰が見てもあぶないと思われるように変態する装備だ。
セクシーな着物も同じ。
って考えれば万事解決!
危ないパンツ→穴が開いている ♀にとっては挿入の危険性があり♂にとっては普通に危ない人に見られる可能性がある
下着着ないで下鎧付けるのも
考えてみるとアレだよなw
危ないパンツと聞いて衝動的に書いてしまった
ヒュム君主とバハ神子で保守兼小ネタ エロ無し
ハウラー地下道、そこはパルタクスからランツレートへの最短ルートだ。
ランツレートを目指すパルタクスの学生ならば誰もが一度は通る道である。
そんな場所を二人は歩いていた。
「…おい、人間。さっきから何だジロジロ見て」
「…貴方にはジロジロ見られる心当たりはないんですか?」
「あるわけないだろう。私はいつもと変わらんぞ」
ヒューマンは盛大にため息をついた。
その様子にバハムーンはさらに苛立ちを募らせる。
「だから、何なのだ!言いたいことがあるならはっきり言え!これだから人間は…」
「…バハムーン、貴方は竜で尚且つ神子です」
「それが何だというのだ」
「それはつまり、貴方が多くの防具を装備できないことを意味します」
「回りくどいぞ、さっさと結論を言え」
「…だからと言って」
ヒューマンはバハムーンを指差し突如大声を張り上げた。
「だからと言ってその格好は何ですか!タンクトップに危ないパンツ!更に武器は皮の鞭!!どこの痴女ですか貴方は!?というかもうSM嬢でも通じますよそれ!!」
「何を言うかと思えば…これはバハムーンの神子にとっての正装だぞ。それに鞭といえばオロチ厨などという単語が生まれるほど神子と相性がいい。今から鞭に慣れておいてなんら不都合などあるまい」
「大体、この次はザスキアが待ってるんですよ!半裸で氷河に乗り込む気ですか!?」
「何、問題はない」
バハムーンはヒューマンが羽織っている毛皮のマントへと潜り込んだ。
「幸い、私よりも大きい暖房器具がここにある。それに君主は神子を護るのが仕事だろう?」
以上、保守。
タンクトップに危ないパンツは実際に使っていました。
まさしく危ないオンナww
光龍殺オロチ(蛇神)二刀は神女のメインウェポンですね!
お久しぶりです。
ととモノ2、6月25日発売だそうで。あの公式見ると、間に合うのか不安になる…。
それはともかく、ペンギンドワ子の詳細が知りたい。
とりあえず、2が出るということで、個人的に一区切りつけたくなったので、自分のパーティネタ長編を。
しょっぱなは相変わらず書きやすい、クラッズ&フェアリー。
この話も発売日までに終わるか非常に不安ですが、よろしければお付き合い願います。
絶対は絶対にない。矛盾でありつつ、それが真理。
フェルパーは顔を上げた。既に、足に力は入らず、刀を杖にしなければ立ち上がることすら出来ない。
見上げた先に、エンパスの見下したような顔がある。見回せば、周囲には仲間だったものが倒れている。
「へっ……強いよなぁ、やっぱり…」
ある程度、対策は出来たつもりだった。相手に弱化魔法を重ねがけし、自分達には強化魔法を重ねがけする。その上で、全員が一斉に
攻撃し、討ち取る。それで倒せるはずだった。
だが、そうはいかなかった。いよいよ攻撃に移ろうとした瞬間、相手は魔法を唱えた。インバリルによって、その効果は全て打ち消され、
それまでの苦労は徒労に終わった。それどころか、魔力も体力も消耗した状態での仕切り直しである。
立て直す暇をくれるほど、甘い相手ではなかった。直後、エンパスは舞い降りる剣を繰り出してきた。
避けられるわけがない。耐え切れるはずもない。その一撃で、仲間は全員死体と化した。辛うじて、フェルパーは持ち前の機敏さと
生命力で、瀕死ながらも生き延びた。しかし、次の一撃はもう耐えられない。
「下等な種族よ。これで遊びはおしまいか」
頭に声が響く。フェルパーは小さく笑い、相手の顔を睨み返す。
「さあね……次の結果次第さ…」
エンパスが構えた。死が目前に迫っているのを感じる。だが、フェルパーの心はあくまで平静だった。
賭ける手段はただ一つ。その賭けに勝てば、まだ希望は繋がる。賭けに負ければ、それまでだ。
全身の痛みを堪え、フェルパーは静かに眼を閉じ、口の中で魔法の詠唱を始める。
エンパスが迫る。もう避けることは出来ない。そして、詠唱を止めることも出来ない。
腕を振りかざしたのが見える。同時に、詠唱が完成する。
相手を見上げたまま、フェルパーは笑った。
「普段は……運なんか、ねえのにな……俺でも、運がいい時ってのは、あるもんだな…!」
剣が振り下ろされる瞬間、最後の力を振り絞り、フェルパーは叫んだ。
「ラグナロク!蘇生と回復の奇跡を!」
その瞬間、辺りに光が満ち、その光は倒れた仲間とフェルパーに吸い込まれた。それと共に、体の傷が見る間に塞がっていき、
倒れていた仲間が起き上がった。
「う……誰、が…?」
「……フェル…!」
フェルパーは、起き上がった仲間を、いつもの笑顔で見つめていた。
彼にとっては、その瞬間は希望に満ち溢れた瞬間だった。
仲間にとっては、その瞬間は絶望のどん底に叩き落された瞬間となった。
エンパスの剣が、空間ごとフェルパーを切り刻んだ。
瞬きするほどの間。その後、今までフェルパーがいた場所には、一握りの灰が落ちているだけだった。
誰もが、一瞬動くことを忘れた。だが、直後には全員が一斉に動いた。
「てめえええぇぇぇ!!!!」
ドワーフが、大斧を振りかざしてエンパスに撃ちかかる。その後ろから、小さな影が追い抜いた。
「よくもフェルパーをー!」
ドワーフに先行し、彼のチャクラムがエンパスに向かって飛んだ。
さらにその後ろ。ノームの落ち着いた声が響く。
「勢いで勝てる相手ではありません。まずは僕達自身の防御を」
「くっ……は、はい!いきますよ、フェアリーさん!」
スターダストを握り締めていたセレスティアが言うと、フェアリーは怒りを漲らせた表情のまま頷いた。
「くそ野郎……絶対、殺してやる…!」
二人の攻撃を捌いたエンパスが攻撃に移る前に、後衛三人の声が響いた。
「絶対壁、召喚!!」
魔法の障壁の前に、エンパスの攻撃は一気に無力化される。だが、こちらの攻撃もエンパスには効いていない。
「まずは二人に任せましょう。僕達はその援護を」
「はい!ノームさん、弱化魔法はお任せします!」
「グダグダやってる余裕なんかねえんだよ!さっさと片付けるよ!」
再び、後衛の三人が精神を集中させ、叫んだ。
「倍化魔法陣!!!」
普段より遥かに効果を増した魔法が、仲間と敵とにかけられる。先に打ち消された分ほどではないが、ともかくも準備は整った。
前線では、やはりドワーフとクラッズがエンパスに攻撃する。が、さすがに場数を踏んでいるだけあり、無駄な攻撃を仕掛けはしない。
「うらああぁぁ!!!」
ドワーフは武器を精霊の鎚二つに持ち替え、殴りかかる。片方は外したが、もう片方がエンパスの体を殴りつける。
「よぉし!ドワーフ、繋ぐよ!」
よろめいたエンパスに、クラッズが距離を詰めた。その手に武器はなく、彼は固く拳を握る。
修道士と見紛うような連撃が、エンパスに叩き込まれる。顔を殴り、腹を蹴り、間断なく攻撃を加える。最後の止めに顔を蹴りつけると、
さすがのエンパスもぐらりとよろめいた。
この隙を逃すわけはない。全員が、一斉に武器を構えた。
「いけええぇぇ!!!」
フェアリーの矢が続けざまに唸りを上げ、その直後にはクラッズのチャクラムが飛ぶ。
半分意識を失いつつも、体勢を整えようとするエンパス目掛けて、セレスティアとノームが飛び掛る。フレイルと杖が、同時にエンパスの
頭を殴りつけ、そこで完全に体勢を崩した瞬間、ドワーフが斧を振りかざした。
ドッ、という鈍い音。確実に骨まで断ち切った手応えと共に、全員の頭に笑い声が響いた。
「ウフフフ……アハハハ……フフフ…」
その笑い声が消えると、全員がハッと我に返る。戦闘の衝撃によって、既にフェルパーの灰は散りかかっていた。
「フェルパー!今助ける!」
誰よりも早くドワーフが駆け寄り、魔法を詠唱する。そして、彼の灰に手をかざし、リバイブルを唱えた。
それで、すべて元通りになるはずだった。また、いつも通りの時間が戻るはずだった。
彼の灰は、戻りなどしなかった。まるで風に吹かれるように、塵となり、やがて地下道へと消えていった。
誰も、声を出せなかった。誰もが呼吸すら忘れ、今まで灰のあった場所を見つめていた。
「……うそ……だ…」
呆然とドワーフが呟き、その場にぺたんとへたり込んだ。
その瞬間、フェアリーが彼女の胸倉を掴んだ。
「てめええぇぇ!!何してんだよ!?助けるんじゃなかったのかよ!?ふざけんじゃねえぇぇ!!!」
「違う……違う、違うっ!!!わ、私は……私はぁっ!!!」
「何が違うってんだよぉ!?じゃあどうしてあいつがいねえんだよ!?あんたが……あんたが、フェルパーをぉ!」
「フェアリー、やめなよぉ!!!」
致命的な言葉を発する直前、クラッズがフェアリーを引き剥がした。
「フェアリー、やめなよ……ドワーフの気持ちも、考えてあげなよぉ…!」
そう言うクラッズ自身、目にはいっぱいの涙が溜まっていた。
「わた……し……は…………あ……ああぁぁ…!」
ドワーフが泣き崩れる直前に、その体をセレスティアが抱き締め、彼女を翼で覆い隠した。セレスティアも言葉はなく、ただ黙って涙を
流していた。
「ふ……ふざけんなよ…!あいつ……あいつが、ロストするなんて……ふざけんなよぉ…!」
クラッズに抱き締められたまま、フェアリーも大粒の涙を流す。そんな彼女を、クラッズはただじっと抱き締めていた。
そんな中、ノームだけはいつもと変わらぬ無表情を貫いていた。やがて、その口がゆっくりと開かれる。
「……皆さん、そろそろ行きませんか。そんな事をしていても、時間の無駄です」
その冷たい言葉に、一瞬空気が凍りついた。
「……んだと…?」
本気の殺意が篭った声が、フェアリーの口から発せられる。
「てめえ、今なんつった!?」
「ですから、時間の無駄だと言うのです。泣いたところで、彼が帰ってくるわけでもありません。そもそも、僕達は冒険者です。
仲間を失うことぐらい、元より覚悟の上でしょう」
抑揚のない、無表情な声と顔で答えるノーム。フェアリーはクラッズの腕を振り解くと、ノームの胸倉を掴んだ。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ、この木偶野郎っ!!てめえは、仲間よりも探検の方が大事かよ!?」
「……冒険者ですから。失った仲間よりも、この先の探索の方に注意を払うのは当然かと思いますが」
「てめえっ…!」
言いかけて口を閉じ、代わりにフェアリーは思い切り強く、ノームの顔を殴りつけた。
「フェアリー!」
クラッズの声を無視し、フェアリーは再び拳を振り上げた。が、その手は振り上げられたまま、空中で止まってしまう。そんな彼女を、
ノームは無表情に見つめていた。
「……所詮は人間じゃない、ただの人形かよ……殴って損した」
フェアリーは忌々しげに手を放し、殴った手を撫でる。
「あなた達が、そのまま冒険を止めるというのなら、僕は一人でも探索を続けますが、どうしますか」
相変わらず、ノームは抑揚のない声で続ける。
「ノーム、何言い出すんだよ!?そんなの…!」
「ああ、上等だね!あんたみてえな木偶野郎となんか、こっちからお断りだってのよ!せいぜい、一人で仲間よりも大事な探索でも
続けてろっての!!」
吐き捨てるように言い、フェアリーは帰還札を取り出した。それが効力を発揮する直前、セレスティアは悲しげな瞳でノームを見つめた。
「ノームさん…」
一瞬、二人の目が合った。ノームはただ、無表情な目で彼女の目を見つめていた。
そして、四人の体が光に包まれる直前、ノームは黙って目を逸らした。
宿に戻って少し経つと、ドワーフはやや落ち着いたように見えた。セレスティアはずっと彼女の体を抱き締めていたが、やがてドワーフは
そっと、しかし強く彼女の体を押し返した。
「ドワーフさん…」
「……ごめん…………一人にして……お願い…」
いつもの彼女からは想像もつかない、悲しげで小さな声だった。そこに抵抗できない強さを感じ取り、セレスティアは黙って立ち上がる。
「……必要なら、いつでも呼んで下さいね…」
そう言い残し、部屋を出る。ドアを閉める直前、背中にドワーフの泣き声が突き刺さってきた。
静かに、ドアを閉める。するとすぐに、聞き慣れた声がかかった。
「どう?ドワーフ、大丈夫そう?」
そう問いかけるクラッズに、セレスティアは黙って首を振った。
「……そりゃそうか…。ボクだって、こんなに辛いのに……ドワーフは、ね…」
二人はやるせない溜め息をついた。
「わたくし、悔しいです……ドワーフさんが、あんなに悲しんでいるのに、わたくしは……彼女の心の痛みを、和らげてあげることも
できません…」
「そんなことないよ。セレスティアがいなかったら、もっと辛いよ。それに……その……セレスティアだって、しょうがないよ…」
二人はまた、深い溜め息をついた。
「……ところで、フェアリー見なかった?」
「フェアリーさんですか?いえ、わたくしは…」
「そっか……うん、フェアリーだって辛いよね。いきなり……だしね…」
「………」
少しの間、気まずい沈黙が流れた。
「……なんか、まだ信じられないや…。だって、今日の朝……ううん、数時間前まで、みんな一緒で、いつも通りだったのにさ……何か、
なくなるのって、一瞬だね…」
「………」
「あっ、ご、ごめん!その……無神経なこと、言っちゃったね…」
「いえ、いいんですよ。わたくしも、そう思ってましたから…」
それ以上会話も続かず、二人は黙って別れた。何もかもが壊れてしまったような、そんな空気が、一行の間に漂っていた。
暗い地下道の中。外は既に深夜で、この時間になると冒険者の姿もほとんどない。聞こえてくる音も、地下道に巣食うモンスターの
唸り声などがほとんどで、いわゆる人の気配など皆無と言っていい。
その、ある一室。床にポツンと置き去られた人形のように、一つの人影が座っていた。その青い瞳は何も見ていないようであり、
瞬き一つすることはない。
彼はただじっと座っていた。扉に背を向け、おかしな音が聞こえようと、近くをモンスターが通ろうと、ただただじっと座っていた。
そんな彼の耳に、今までとは違う音が聞こえてきた。
何者かが、遠くで戦う音。モンスターの吼える声。弓の弦が弾かれる音。そしてモンスターの悲鳴。
ややあって、今度は扉が開かれる音がした。続いて、聞き慣れた小さな羽音。それは自分の近くまで来ると不意に止み、トッ、という
軽い着地音と共に、小さな足音に変わった。
足音は自分の真後ろまで来ると、止まった。軽い溜め息のあと衣擦れが聞こえ、背中にとすんと小さな衝撃がくる。
しばらく、そのまま時間が流れていった。
「……やっぱり、こうだと思った」
呆れたような、嘲るような、そんな声だった。
「気付かれていましたか」
「そりゃあね。あんた、演技下手なのよ。……ま、あんなタイミングだったから、あたし騙されちゃったけどさ」
ノームの背にもたれかかったまま、フェアリーは続ける。
「あんたみたいな善人気取りの奴が、あのタイミングであんなこと言うわけないもんね。ほんっと、馬鹿だよね」
その言葉が、自分と彼女本人と、どちらに向けられたものなのかは理解できなかった。
また、沈黙が訪れる。が、今度はノームが口を開いた。
「僕は今日ほど、この体を恨めしいと思ったことはない」
「ん?」
「あの時……フェルパーさんがロストした時、僕は胸が張り裂けるほどの悲しみを感じた。しかし、この体は涙一つ流すことは出来ず、
それどころか、その悲しみという感情すら、どこか冷めた部分で見つめ、処理してしまう。僕は……僕は、あなた達が羨ましい。
僕は……仲間の死を、心から悲しむことすら…」
そんな彼の言葉を、フェアリーは黙って聞いていた。が、やがて苛立ったような溜め息と共に、彼女は立ち上がった。
「あ〜あ、何言い出すかと思えば……所詮、木偶野郎は木偶野郎か」
スカートについた埃を払い落とすと、フェアリーは一歩だけ歩き、肩越しに振り返った。
「あたし、あんたが羨ましい」
きっぱりと、彼女は言った。
「あたしは、本当だったら涙なんて見せたくない。例えそれがあんただろうと、フェルパーだろうと、クラッズにだって、本当は
見せたくない。他人に弱みなんか見せたくない。だから、あたしは泣けなくて、感情を全部コントロールできるあんたが羨ましい」
「………」
「わかる?人ってのはね、自分にないものを欲しがるもんなのよ。ないもんを欲しがって、あるもんは当たり前だと思って、それが
人間ってもんなのよ。わかる?わっかんないだろうなあ、あんたみたいな人形には」
「………」
その言葉に、ノームはややあってから答えた。
「……ありがとうございます」
「……ふん。皮肉にまでお礼言われたんじゃ、立場ないね」
それだけ言って、フェアリーは歩き出した。扉の前まで来ると、それに手をかけようとして、ふと後ろを振り返る。
「あんた、わかってるんでしょ?」
確信に満ちた声で、フェアリーは尋ねた。
「はい。僕も以前、司祭学科でしたから。もう鑑定は出来ませんが、どんな物があったかは覚えています」
「あたしは、絶対諦めない。あんたも、その覚悟はあるんでしょうね?」
「ええ。一年でも二年でも。あるいは十年でも、決して諦めません」
「ふん。そんなにかかったら、先にあたしが諦め……いや、それはないか。とにかく」
フェアリーは改めてノームを見つめる。ノームも、今はフェアリーの顔を見つめていた。
「あたしは、絶対諦めない。ここに絶対帰ってくる。だから、絶対に待っててよ」
「ええ。僕も、決して諦めません。ここでいつまでも、待っていますよ」
扉を開け、部屋を出る。背後で扉の閉まる、重い音が響いた。そして、再び沈黙が辺りを支配する。
軽く羽ばたき、空中に舞い上がる。が、すぐにまた降りると、フェアリーは軽い溜め息をついた。
「……いるんでしょ?出てきなさいよ」
何も見えない闇に向かって、そう呼びかける。すると、影の一角がもそりと動いた。
「ちぇ〜、完璧に隠れたつもりだったのに」
「静かすぎんのよ。モンスターの気配まで消えてりゃ、そりゃばれるっての」
「そんなの気付くの、君ぐらいだってば」
クラッズとフェアリーは、連れ立って地下道を歩き始めた。
「話、聞いてたんでしょ?」
「聞いてたけど、ボクには何のことだかさっぱり…」
「そりゃそうか。まだあたし達だって、お目にかかったことのないもんの話だもんね」
一度心を落ち着けるように、フェアリーは大きく深呼吸した。
「……フェルパーを、取り戻す」
「できるの?」
「できる、できないじゃなくて、やるの。ロストした奴すら生き返らせられるアイテムが、この地下道にあんの。蘇生の果実、女神の涙、
あるいは天使の涙10個集めて作る聖母の涙。このどれか一つを、何としても探し出す。ただ、そのアイテムはね、その場で使わなきゃ
効果ないのよ。だから、どうしても誰かがこの場に残る必要があるわけ」
「……ノームは、ボク達のこと気遣って、あんなこと言ったんだね。仲間一人、地下道に残して行くなんて、普通できないもん。
わざと、悪者になってくれたんだね」
「それに、ドワーフがねぇ。フェルパーに止め刺したのはあいつだし……無理に引き剥がすなら、ああするしかないか」
「………」
ふと、クラッズが足を止めた。それに気付き、フェアリーも足を止める。
「ん?どうしたのよ?」
「……ねえ、フェアリー」
「だから、何?」
視線を外していたクラッズが、真っ直ぐにフェアリーの目を見据える。そして、彼は言った。
「ボク達、一緒にいない方がいい」
一瞬、何を言ったのか理解できなかった。徐々にその意味を理解するにつれ、フェアリーは明らかに動揺した。
「……は…?ちょ、ちょっと、いきなり……何?てか、何、どういう意味よ、それ…?」
クラッズは思わず目を逸らしかけたが、彼女の目を見据えたまま、再び口を開いた。
「しばらく、お別れだよ」
「ちょっと……ちょっと待ってよ…!ねえクラッズ、本気!?それ、本気で言ってんの!?」
叫ぶなり、フェアリーはクラッズに掴みかかった。だが、クラッズは抵抗すらしない。
「嫌だ!嫌だよ!ねえふざけないでよ!考え直してよ!あたし、そんなのやだよぉ!!」
クラッズの体を激しく揺さぶりながら、フェアリーは涙を流した。強がりなど、できる状態ではなかった。
「やだやだぁ!!離れたくないよぉ!!フェルパーがいなくなって、ノームまでいなくなって、それでどうして、あんたまでそんなこと
言うのぉ!?あたしっ……あたし、あんたがいるから頑張れると思ってたのにぃ!!なのに、なのにぃ!!」
「フェアリー!!!」
大きな声で呼ぶと、クラッズはフェアリーの体を強く抱き締めた。突然の事に、フェアリーは思わず泣き止んだ。
「ボクも……ボクも、ほんとは離れたくなんてないよ…!でもフェアリー、今は少しだけ……他の人のこと、考えてあげなよ…」
その時ふと、フェアリーは気付いた。自分を抱き締めるクラッズの腕は、僅かに震えていた。
「例えばさ、ロストしたのが、フェルパーじゃなくてボクだったとしてさ、それでドワーフとフェルパーが仲良くしてたら、あまり
いい気分じゃないでしょ?」
「……ムカつくけど…」
「たぶん、みんなそんなこと、口に出しては言わないよ。だけどさ、辛いでしょ?どうしたって、無意識に自分と重ねちゃうよ」
「でも……でも、だからって、どうしてあたし達まで別れなきゃいけないのよぉ…!やだぁ……ねえ、クラッズ、お願いだから
やめてよぉ…!もう喧嘩もしないからぁ……性格も変えろって言うなら変えるよぉ……だから、側にいてよぉ…!」
とうとう堪えきれなくなり、フェアリーはクラッズの胸に顔を埋め、声をあげて泣き始めた。クラッズはそんな彼女を、ただ強く強く
抱き締めていた。
少し落ち着いたところで、二人は地下道を出てフェアリーの部屋に戻った。それまでにも、クラッズはずっと説得を続け、フェアリーは
ずっとそれを拒否していた。
とはいえ、クラッズの言うことはフェアリーにもよくわかる。それでも、やはりクラッズと離れ離れになるのは辛い。
今まで自分を中心に物事を考えてきたフェアリーにとって、それはとても耐え難いことだった。しかし、仲間のことを考えると、
自分勝手を言える状態ではない事もわかる。
「それにさ、フェアリー。ドワーフがその事知ったら、絶対に無理して探索続けて、何か問題起こしちゃうと思うんだ。それは絶対に
避けたいし、あっちこっち手分けした方が、色んな場所探せるでしょ?」
「それは……そうだけど…」
「今は少しだけ壊れちゃってるけど、また絶対に取り戻せるよ。フェルパーも、ノームも……ボク達のパーティも、絶対に。
だからフェアリー、少しだけ、我慢して」
いくら嫌がっても、クラッズの決心は変わる気配もない。普通なら軽く曲がるはずの彼の主張が、ここまで曲がらないのは初めてだった。
それに伴い、フェアリーも徐々に理解し始めた。恐らくは絶対に、クラッズは決心を変えることはないのだと。
「フェアリー、お願いだよ。今回だけは、ボクの言うこと聞いて」
「…………わかった…」
とうとう、フェアリーは頷いた。
「でも、絶対帰ってくるよね?全部、元通りになるよね?」
「うん。絶対、帰ってくる。ボクも、フェルパーも」
「浮気とかしないでよ?ほんとに、ほんとに絶対帰ってきてよ?」
「大丈夫だってば。そんなことしたら、今度はボクが無事じゃ済まないしね」
笑いながら言って、クラッズはフェアリーを抱き寄せた。
「ねえフェアリー、もう一つだけ、わがまま言わせて」
「……何よ?」
「お別れの前に、一度だけ、君を抱かせて」
「え…?あ…」
返事を待たずに、クラッズはフェアリーの唇を奪った。フェアリーは思わず抵抗しようとしたが、思いがけず強い力で抱き締められ、
それも適わない。
口の中に、半ば強引に舌がねじ込まれる。いつもとはまったく違う感覚に、フェアリーはただ驚き、身を固くしている。
そんな彼女を、クラッズはキスをしたままベッドに押し倒した。思わず押し返そうとした手を掴まれ、ベッドに押さえつけられたまま、
激しいキスをされる。その感覚は、自分の意のままにならないという不快感と、今まで感じたこともない感覚をフェアリーにもたらす。
苦しいほどに激しいキスのあと、クラッズは唇を離し、フェアリーの顔を見つめた。
「ちょっ、ちょっとクラッズ…!」
「お願い。今だけは、何も言わないで」
「そんな勝手……んあっ!?」
クラッズの手が、器用な手つきでフェアリーの服のボタンを外し、その下にある小さな膨らみに触れた。
柔らかく捏ねるように全体を揉み解しつつ、指の間に挟むようにして乳首を刺激する。その刺激は的確で、フェアリーの口からは
抑えきれない喘ぎ声が漏れる。
「あっ、んっ!ク、クラッズ……ちょっと待って……あっ!」
思うようにできない不快感が消えたわけではない。しかし、それと同時に生まれる感覚が、フェアリーの抵抗しようという気を奪う。
胸を愛撫しながら、再びクラッズがキスを求める。頭ではそれに従うことを拒否しつつも、気がつけば素直にそれを受け入れている。
―――どうしてあたし、こんな……
押さえつけられ、一方的に愛撫され、自分の意に反したキスをされ、どれも不快なはずなのに、それに抵抗できない。
フェアリーの腕を押さえていたもう片方の手が離れ、柔らかな腹を撫で、するりと下着の中に入り込んだ。
「やぁっ!そこは……まだぁ…!」
「でも、もう濡れてるよ」
「だからって……きゃんっ!」
くち、と湿った音が響き、フェアリーの体が跳ねる。そんなフェアリーに構わず、クラッズはさらに刺激を強める。
フェアリーの中に指が入り込み、中を激しく掻き混ぜる。指が動く度、フェアリーの体が跳ね上がり、甲高い喘ぎ声が漏れる。
その快感に麻痺し始めると、不意に指の動きが変わる。今までとは打って変わって、優しく撫でるような動きながら、最も感じる部分を
的確に責めてくる。その刺激に物足りなさを感じ始める直前、指が再び激しく動き出す。
快感に慣れることもできず、常に最も感じる動きを繰り返される。気持ちいいことは確かなのだが、強すぎる快感はもはや拷問に近い。
「ク、クラッズぅ!もうダメ!んっ、やぁっ!も、もう指はダメぇ!!」
必死に叫ぶと、クラッズはすぐに指を抜き、体を離した。強すぎる快感から解放され、フェアリーはぐったりして荒い息をついていたが、
クラッズがそっと、フェアリーの体にのしかかる。
「はぁ……はぁ……ク、クラッズ、ちょっと…」
「フェアリー、いい?」
そう言い、クラッズはフェアリーの秘部に自身のモノを押し当てた。
普通だったら、拒否している。というよりも、この時も拒否しようと思っていた。こんなに好き勝手されていて、気分がいいわけがない。
自分の思い通りにならないのは、もううんざりだった。
だが、そう思っていたにも拘らず、気付けばフェアリーは、黙って頷いていた。
クラッズのモノが、少しずつフェアリーの中に埋め込まれていく。
「あくっ……んっ……あぁっ…!ク、クラッズ、もうちょっとゆっくりっ…!」
自分で入れるのとは違い、自分の意思に関わらず入り込んでくる感覚。それは若干の恐怖と、何か例えようのない快感を伴っていた。
「ごめん、フェアリー。ちょっとだけ、ちょっとだけ我慢して」
言うなり、クラッズはさらに強く腰を突き出した。勢いがついてズブズブと入り込み、フェアリーはたまらずクラッズの腕を掴んだ。
「い、痛ぁい!!……うっく……ひ、ひどいよぉ…」
あまりの痛みに涙を流し、なじるようにクラッズの顔を見つめる。そんなフェアリーを、クラッズは強く抱き締めた。
「ごめん。でも、今日だけは、フェアリーのこと思いっ切り感じさせて」
頬を伝う涙を舐めるようにキスをし、クラッズはそう囁いた。
フェアリーの返事を待たずに、クラッズは腰を動かし始める。しかし、その動きはさほど激しくもなく、彼女を気遣うような
ゆっくりした動きだった。
「んっ……あぅっ!そ、それ以上は入れないでっ…!もう、無理ぃ…!」
「……フェアリー、ごめんね。いっつも痛い思いさせて」
確かに、体格の違いのせいで苦労は絶えない。クラッズのモノを全て入れることはできないし、そもそも普通に受け入れられるように
なるまでにも、大変な苦労を要した。だが、フェアリーはその苦労を苦痛とは思っていなかった。
「そ、そんなの……気にしないで、いいってのよ…!あんたが、気持ちよければ…」
そこまで言ったとき、フェアリーは気付いた。
思えば、全て彼のために頑張ってきた。そして今、彼に強引に迫られたときに覚えた感覚。元を辿れば、それは同じようなものだった。
もちろん、自分の意のままになる方が好きなのだが、彼に限っては、これもまた悪くはないと思える。
なぜなら、彼の思うままになれば、彼は喜ぶのだから。彼が喜んでくれれば、フェアリー自身も嬉しいのだから。
「フェアリー、辛かったら言ってね」
少しずつ、クラッズの動きが激しくなる。彼が突き入れるたび、体内の奥を突き上げられる疼痛と快感が、同時に襲ってくる。
組み敷かれ、ろくに動けない状態で何度も何度も突かれる。だが、それがまたいつもと違う快感をもたらし、苦痛と不快感を和らげる。
「クラッズ……クラッズぅ…!」
縋るように叫び、フェアリーはクラッズにしがみつく。同時に、膣内がぎゅうっと収縮し、彼のモノを締め付ける。
「うあっ、すごくきつい…!フェアリー、すごくいいよ…!」
何度も何度も、体の奥深くを突き上げ、その度に溢れる愛液がクラッズのモノを伝い、二人の間に滴り落ちる。
もう痛みはなかった。ただ、彼の動きを、体温を、感じていたかった。
いつしか、クラッズの動きに合わせ、フェアリーも腰を動かしていた。ねだるように腰をくねらせ、突き入れられればそれを
より感じようと、さらに腰を押し付ける。時折、押し付けすぎて痛みが走るのか、羽が驚いたようにピクンと動く。それでも、
フェアリーはそれをやめようとはしない。
自分のみならずフェアリーまでもが動き始めたことで、クラッズの快感は一気に跳ね上がる。息遣いがどんどん荒くなり、腰の動きも
荒く、乱暴になっていく。
「うっ……くっ…!フェアリー、ボク、もう、そろそろ限界…!」
切羽詰った声から、本当に限界が近いのはすぐにわかった。そんな彼に、フェアリーはいつもと少し違う笑みを浮かべる。
「クラッズ……お願い。もっと、いっぱい、あたしのこと感じてぇ…」
「フェアリー…!」
クラッズはそれに応えるように、フェアリーを抱き起こし、強く抱き締めた。そして、小さく柔らかい唇を強く吸う。
体重が全て結合部にかかり、かなりの圧迫感と痛みがあった。しかし、それすら今のフェアリーは快感として捉えてしまう。
「んむ……うぅぅ…!」
呻き声とも喘ぎ声ともつかない声を出し、フェアリーもその激しいキスに応える。
「んん……くぅっ、フェアリー、出る…!」
向かい合って座ったまま、激しいキスをし、クラッズは何度か腰を突き上げた。やがて、一際強く腰を突き上げると同時に、
フェアリーの体を強く結合部へと押し付けた。直後、フェアリーの体内にじわりと温かい感覚が広がっていく。
「ん……んあぅぅ…!」
体内に感じる温かさ、疼痛。それら全てが、今のフェアリーには愛しかった。自分の中で、彼のモノが何度も跳ねる感覚は、
自分が今、彼に愛されているのだという実感を与えてくれる。
クラッズが唇を離し、ゆっくりとフェアリーの中からモノを引き抜く。それが全て抜け出ると、フェアリーはベッドにぐったりと
横たわった。
「ふぁ……温かい……よぉ…」
陶然とした表情で呟くフェアリー。そんな彼女を、クラッズは心配そうな顔で覗き込んだ。
「フェアリー、大丈夫?ごめん、ボクのわがままにつき合わせちゃって…」
そう言いかけるクラッズの口を、フェアリーはそっと手で塞いだ。
「あたしも……クラッズのこと、いっぱい感じたかったから…。だから、いいの、謝らなくて」
「フェアリー…」
彼女の隣に寝転び、クラッズはもう一度、フェアリーを抱き締めた。
最も大切で、最も好きな子。その温もりを、少しでも長く感じていたかった。そして、その温もりを、肌に焼き付けておきたかった。
そんな気持ちを察したのか、フェアリーもぎゅっとクラッズにしがみついた。このまま時が止まればいいのに、と、フェアリーは
生まれて初めて、本気で思っていた。
夜が白々と明け始める頃、フェアリーは制服を元通り身に付け、まったくのいつも通りに戻っていた。クラッズの方も、既に服は
身に着けており、少し暗い顔で荷物をまとめている。
「で、それで全部?」
「うん。装備って言ったって、ボクは軽いのばっかりだしねー」
「だよねえ。大した力にもならないし、せいぜいあたしらの盾になるくらいしか活躍しないもんね」
「あはは……そうはっきり言われると、ちょっと傷つくな…」
「だから、ほら」
いきなり、フェアリーは何か細長い物を放り投げた。慌てて掴むと、それは極限まで強化されたグングニルだった。
「それ、ほんとはあたしが使うつもりだったんだけどさ、あんたにあげる」
「え……いいの?」
「今時チャクラムもないでしょ。そりゃ、あたしが強化したやつなんだから使えなくもないだろうけど、明らかに威力不足でしょ」
「……ありがと。それじゃ、もらってくね」
それを背中に括りつけると、フェアリーは寂しそうな目でクラッズを見つめた。
「何度も言うけど、絶対帰ってきてよね。じゃないと許さないから」
「大丈夫。ボクだって、またここに帰りたいもん」
「それならいいけどさ。でも……あ〜あ、せっかくあんたの新しい魅力に気付いたのにな〜」
「え?」
思わず聞き返したクラッズに、フェアリーは素早く顔を寄せ、頬に軽いキスをした。
「あんた相手なら、少しは尽くすのも悪くないかな……ってね。ま、とにかく、お別れはうまく演出してやるから、心配しないでよ。
また、みんなが帰ってくるまでは……あたしも、頑張るから」
「うん、そうだね。頑張ろう。……フェアリー」
「何?」
「大好き、だよ」
「やめてよ、恥ずかしいなぁ。それに、やっと吹っ切れたのに、別れが辛くなるでしょ。思ってりゃ十分だから、あんまり口には
出さないでね」
そう言われると、クラッズはおかしそうに笑った。
「あはは、こういうのはいつも通りだね。やっぱり、ボクだと決まらないや」
「それでいいのよ、あんたは。そのまま、変わんないでいてよね」
「少しはかっこよく決められるようになりたいけどなー」
「無いものねだりは良くないよ」
「ひどいなぁ」
二人は同時に笑った。別れを目前に控えた者同士とは思えない、いつもと同じような笑い声だった。
翌日。四人はドワーフの部屋に集まっていた。というよりも、クラッズがその部屋にみんなを呼んだのだが。
「みんな、本当にごめん。だけど……こうしてると、みんなのこと思い出しちゃって、辛くって…」
そう切り出したクラッズに、フェアリーが食って掛かる。
「つまり、何?あんたは自分一人が辛いから、他の仲間を捨てようってわけ?」
「ち、違うよ!でも……いや、違わない……のかな…」
「はっ、だったら最初から、そう言えばいいじゃない。わざわざてめえのこと良く見せようなんて思わないでさ!」
二人の『喧嘩』に、セレスティアが慌てて割り込んだ。
「もう、やめてください!これ以上、仲間同士で傷つけあうなんて……もう、やめてください…」
「ご、ごめん…」
「……ちっ、泣きゃ何でも済むってわけじゃないでしょ…」
そうは言いつつ、フェアリーは気まずそうに目を逸らした。
「その……ほんとに、みんなには悪いんだけどさ…。ボクは、その…」
言い淀むクラッズに、ドワーフは悲しそうな笑顔を向けた。
「気、使わなくていいよ…。私は、別に、気にしないから…」
一瞬、クラッズはたじろいだ。しかし、そんな様子はおくびにも出さずに答える。
「そういうわけじゃ、ないよ。ただ、その……少し、離れたいんだ…」
「そっか…」
ドワーフの目は、深い悲しみに満ちていた。その目を見た瞬間、クラッズはドワーフの体を抱き締めていた。
「お、おい…?」
「ほんと……ほんと、ごめん、ドワーフ…!一番辛いのは、ドワーフなのに…!」
一瞬、フェアリーは拳を握った。が、さすがに状況が状況なので、そのまま見逃すことにした。
「でも、絶対、帰ってくるから…!絶対に、戻るから…!」
「……ああ。待ってるよ」
その日、クラッズはみんなに見送られながら、どこへともなく去って行った。クラッズまでいなくなると、パーティがだいぶ静かになる。
それからさらに一週間ほど過ぎた頃、フェアリーもいなくなった。
「なぁんかさ、あたしとしては居心地良くないんだよね」
フェアリーの言い分はこうだった。
「そもそもさ、あんたらってあたしとは最悪に合わないんだよね。そんなとこに居続けるなんて、あたしには無理。だから、あたしも
どっかぶらついてくるわ」
それも確かに、理解できる話だった。そもそも、フェアリーはフェルパーとクラッズ以外の三人とは、相性はまったく良くなかったのだ。
その二人がいない今、フェアリーの言うこともわからないではない。
「おまけにさ、いつまでもまあ、葬式みたいな空気でさ。こんなとこいたら、あたしの気まで滅入ってくるっての」
「そっか……あんたまでいなくなると、寂しくなるな」
そう言い、寂しげに笑うドワーフ。フェアリーは大きな溜め息をつくと、その少し渇き気味の鼻をちょんと突いた。
「それ!それが嫌だっての!いつものあんただったら、全身ぼっさぼさにして殴りかかってくるところでしょ!?そうじゃないから、
調子狂うんだよね!」
そこまで一気にまくし立てると、フェアリーは軽く息をついた。
「……ま、とにかく。次会うときまでに、いつものあんたに戻っててよね。じゃないと、帰るべき場所に帰ったって実感ないしさ。
それから、あんたらは絶対一緒にいてよね。あたしのパーティはここなんだから、帰る場所が無いと困るんだからね」
好き勝手なことを言ってはいたが、その言葉は不思議と重みがあった。
「なーに。他のパーティがつまんなかったら、すぐ帰ってくるって。いつんなるかわかんないけどさ、適当に待っててよ」
「フェアリーさん…」
ドワーフの肩を抱きながら、セレスティアが口を開いた。
「何よ?」
「あなたはどう思うかわかりませんけど……わたくしは、あなたも大切な仲間で、友達だと思ってます。ですから……その…」
「あー、それ以上言わないで。背中痒くなる。鳥肌立つ」
ぶっきらぼうに言って、フェアリーは部屋を出た。見送りに立った二人に、フェアリーは皮肉な笑みを浮かべる。
「なぁによ。気に食わない奴がいなくなるから、喜んでお見送りに出てくれたってわけ?」
「ち、違いますっ!そんな、仲間がいなくなることを……喜ぶなんて…」
「ん……わかったわかった。黙って。それ以上言わないで」
面倒臭そうに手を振り、フェアリーはくるりと背を向けた。
「……帰ってくるからね」
それだけ言って、フェアリーは振り向きもせずに去って行った。しかし、それは振り向けば辛くなるからだという理由であることは、
二人とも何となく感じ取っていた。
失われた者。その悲しみに沈む者。真実を隠し、失ったものを取り戻そうとする者。彼等を信じ、待ち続ける者。
入学当初から一緒だった仲間達。今、その仲間達はばらばらになり、別々の道を歩み始めた。
それでもただ一つ、切なる願いが、彼等の絆を繋いでいた。
もう一度、パーティを元の姿に。
それを、叶わぬ願いと思う者。叶えるべき願いと思う者。叶うと信じている者。
願いへの思いはそれぞれ違っていても、彼等の心は確かに一つだった。
それぞれの道で、それぞれの思惑で。
まったく別々の場所で、一つのパーティの冒険が始まっていた。
以上、投下終了。
どうもこの先、エロパートなしの部分が入ってしまいそうで悩み中。極力入れるようにはしますが。
それでは、この辺で。
乙。
氏の作品はさまざまな人間模様が展開されてて好きです
猫ロストは俺もやらかしたなぁ。
完全回復の存在を知らぬまま泣く泣く別れを告げて
今は猫侍二世が……
乙。
くぅ、目から汗が・・・。
ロストはきつい。ダンジョンでロストするならまだしも
保健室でのロストは蘇生すら効かない悲しさ。
灰は持ち帰って涙系のアイテムが出るまで大切に保管する事をオススメしたい
うちの僧侶は妙にリバイバルが失敗しやすいからな。
まってました、乙です
ラグナロク使ってたからロストしたことないな
今はラグナロク縛りやってるけど
エロシーンは常に入れなくてもいいんじゃないですか?
基本的にエロ入ってるわけですし
乙です
氏のこのパーティめちゃ好きだったから
SSとはいえロスト辛え・・・!
エロい人なんでエロ大好きだけどエロなくても続き読みたいです
もう思うように書いて欲しい!!
続編待ってる超待ってる
とともの。2のHPにムービーが追加されてたから見たんだが、
ペンギンドワ子とか、フェアリーと呼びたくない物体とか色々出てたな。
新フェル子はなかなか美人だ。あとディアは男女問わず悪さが増した。
セレ子が握っていたマイクは一体・・・?
吟遊詩人じゃないの?
噂の新学科、アイドルだろw
応援ブログのリンクって自己申告制なの?
なんか酷いタイトルのがいくつか混ざってるんですけどw
とともの、と打ったつもりが、Oの左隣のキーを押していたという事実。クラッズのことかフェアリーのことか。
今回エロい部分が入りません。そしていつもより短めです。エロ分がある部分まで入れると長すぎた。
エロなしではありますが、いつも通り、楽しんでいただければ幸いです。
卒業生筆頭である彼等のパーティがばらばらになったということは、母校であるパルタクスでは、あっという間に噂になっていた。
ある者は驚き、ある者は嘆き、またある者は怒り、その反応は様々だった。
この時も、一つのパーティがその噂話をしていた。
「でも、たかだか一人ロストしたぐらいで、全員ばらばらになるなんてさ。覚悟が足りなかったんじゃないかと思うね、僕は」
「でもな、フェアリー。俺は、その気持ちはわからないでもない。俺の元いたパーティは、その辛さから冒険することをやめたんだから」
「う、う〜ん。そりゃあ、僕だって仲間がロストしたら辛いけど……でも、だからってばらばらになるなんてさ…」
「聞けば、あいつらは入学からずっと一緒だったんだって話だ。仲間を見れば、そのロストした奴の顔がちらつくんだろう。俺だって、
もしあのディアボロスがロストしたら…」
そんな話を続けるヒューマンにフェアリー。その後ろに、当事者であるクラッズがいることにはまったく気付いていなかった。
苦笑いしつつその場を通り過ぎ、学食に向かって歩く。仲間と一緒であれば即座に気付かれただろうが、幸か不幸か、今の彼は、
ほとんどの生徒に気付かれなかった。
そもそも、彼は他の仲間と比べ、かなり地味な存在だった。
二本の刀を持ち、剣舞のように華麗な攻撃で敵を蹴散らすフェルパー。巨大な斧を担ぎ、ドラゴンすら一撃で切り倒すドワーフ。
あらゆる魔術を操り、強力な魔法で敵を殲滅するノーム。超術と僧侶魔法を使い、優しい笑顔でみんなを癒すセレスティア。
それに、主に弓矢と魔術を使いこなし、ありとあらゆる物を武具に練成するフェアリー。
その中にあって、罠や鍵の解除が専門であるクラッズはひどく地味であった。一言で言えば、華がないのだ。戦力としてもさほど
役に立たず、魔法も一切使えない。ムードメーカーとしての役割はあったが、クラッズという種族では珍しくもない。
そんな彼が、一人で探索するのは辛いものがある。何しろ、目的のアイテムは相当に珍しい物である。となると、それなりに
手強い地下道に挑まなければ、いつまで経っても目的を果たすことなどできない。だからといって、ハイントやトハスや
ゼイフェア地下道に一人で行っては、今度は彼がロストしてしまう。恐らく、彼が何者であるかを明かせば、仲間など向こうから
パーティを組もうと誘ってくるだろう。しかし、それはしたくない。しかも、目的の物が手に入れば、必然的にそのパーティからは
抜けねばならない。他のパーティは他のパーティの事情があり、仲間は目的を果たすための道具ではないのだ。
そんな都合のいい仲間が存在するとは思えない。だが、探さねば目的を果たせない。
どうしようもない矛盾を抱えつつ、彼は十日目となる仲間探しのため、学食に向かうのだった。
学食の一角に、深い深いため息が聞こえた。
「ほんと……なかなか、いい仲間には出会えないものね…」
そう言って頬杖をつくフェルパーの女の子。そんな彼女に、小さなフェアリーが答える。
「しょうがないよー、盗賊学科は人気だし。でもさ、うちにはエルフがいるじゃない」
「ああ、優秀な狩人だな。ポイズンガスと言って、スタンガスの箱を開けるぐらいにな」
バハムーンのからかうような口調に、エルフは顔を真っ赤にする。
「う、うるさいですわっ!花の花弁や香りならばともかく、葉に美しくないと文句を言われても、どうしようもありませんわ!」
「そう考えると……『あの人』は、やっぱりすごかったんですね」
セレスティアが言うと、全員の顔に影が差した。
「あ、そうそう。それで思い出したんだけどさ」
「ん?何を?」
学食はだいぶ混んできている。彼女達の隣にも、席が見つからなかったらしいクラッズの男子が料理の乗ったトレイを置き、席に着いた。
「あのさ、卒業生の人達の話、聞いた?」
「ああ……あの、壊滅したってやつか」
「壊滅っていうか、一人がロストしちゃって、全員ばらばらになっちゃったらしいんだけどね」
「ロスト繋がりで思い出したのね…」
フェルパーが呆れた声を出すと、フェアリーはちょっと苦笑いを浮かべた。
「でさ、その中の、盗賊やってるクラッズがさ、こっちに帰ってきてるんだって」
「ふーん」
全員が、ちらりと隣のクラッズを見た。その本人は特に気にする様子もなく、料理をおいしそうに頬張っている。
「そんな人が仲間になってくれたらさ、心強いと思わない?」
視線を戻して言うと、リーダーのフェルパーは少し眉を寄せた。
「確かに、心強いけど……そう簡単にいくものじゃないと思うわ」
「そうですわ。第一、わたくし達は、その方の顔も知らなくてよ」
「うーん、私も顔は知らないんだけどさ。えっとね、武器はチャクラム使ってるんだって」
「チャクラムね…」
隣のクラッズを見つめる。荷物の中に、チャクラムらしきものが見えた。
「でも、チャクラムなんてみんな使ってますよ。他に何かないんですか?」
「え〜っとねえ。身長はこれくらいで、身軽そうで…」
「クラッズの方はみんな、大体そんなものですわ」
現に、隣のクラッズもちょうどそんな感じであった。
「え、ええっと……あ、そうそう!その人ね、左手にケルトの腕輪はめてるんだって!そんなの、ここじゃほとんどいないし、絶対
目立つよね!」
「ケルトの腕輪ね……でも、いちいちそんなの確認して…」
ちらりと、隣のクラッズの腕を見る。そこには、独特な装飾の施された腕輪がはまっていた。
「って、いたーっ!?」
「ごふっ!?」
突然の大声に、クラッズは飲んでいた水を噴き出した。
「ゲホッ!ゲホッ!び、びっくりしたなあ。いきなり大声出さないでよー」
むせ返るクラッズに、フェルパーは取り繕うような笑顔を浮かべた。
「あ、えっと、それはごめんなさい。でも、あの、失礼なんだけど……あなた、ここの卒業生の人じゃない?」
「え?ああ、そうだよ」
こともなげに答えるクラッズを見ると、フェルパーの中に幾つかの疑問が湧き上がった。
「その……仲間が一人ロストして、それでばらばらになったそうね?」
「うん……そうなるね」
「でも、それは少しおかしくないかしら?ずっと一緒だった仲間なら、一緒にいて慰めてあげるのが筋じゃない?」
「それは…」
どうにも煮え切らない態度のクラッズに、ついバハムーンはイラついてしまう。
「面倒には関わりたくないか?それともお前一人辛いがために、仲間を見捨てたか?」
「バハムーン!」
フェルパーが強い口調でたしなめるが、バハムーンはさらに口を開く。
「それとも何か?お前にとって仲間とはその程度…」
キッと、クラッズはバハムーンを睨みつけた。それはほんの一瞬のことだった。
だが、その強い視線に、バハムーンはおろか、その場にいた全員が思わず口を閉じ、息を呑んだ。
一瞬後には、クラッズは自嘲じみた笑みを浮かべていた。そこからは、先程のような強い視線を感じさせた者の気配は感じ取れない。
「……ボク一人の辛さって所は、間違っては、いないのかもね。あんなに悲しんでるドワーフを見るのは、辛かったよ。見てるボクも、
いたたまれなかった。だけど、だからって仲間を見捨てたりなんかしない」
「で、ですけど、それならなぜ仲間の元から離れたんですの?萎れた花を見るのは辛くとも、それを支えようという気には…」
「……ねえ。恋人をロストしたことってある?」
その言葉に、全員の顔が強張った。
「ロストしたフェルパーはさ、ドワーフと付き合ってたんだ。二人とも、すっごく仲が良くってさ。それを、なくしちゃったんだよ、
ドワーフは。そんなの、慰めようなんてないよ」
「そ、それはわかりますわ。でも…」
「だから、決めたんだ。ボクは、フェルパーを取り戻す」
「え?」
全員の視線を受け、クラッズは一言一言、噛み締めるように続けた。
「ロストした人も、生き返らせられる物がある。それを、ボクは何としても探し出す。絶対に……絶対に、フェルパーを取り戻す。
フェルパーだけじゃない、ドワーフの笑顔も、そのために迷宮に残るノームも、セレスティアもフェアリーも、全部取り戻すんだ」
彼の目は本気だった。その途方もない目的を、彼は本気で為すつもりなのだ。
「……私、聞いたことあるよ。そのアイテムの話」
司祭であるフェアリーが口を開いた。
「でも、そんなの今まで見たなんて話も聞かないよ。私だって、知識としてあるとしか…」
「絶対に見つかるって、信じてる。それで、フェルパーが戻ってくれば、全部元通りになるって、信じてる」
しばらく、誰も言葉が出なかった。かける言葉を探すだけで精一杯だったのだ。
やがて、フェルパーが口を開いた。
「……その目的、私達に手伝わせてもらえないかしら?」
「え?」
「お、おいフェルパー…」
言いかけるバハムーンに、フェルパーはどこか気だるい笑みを投げかけた。
「みんな、まさか反対なんてしないでしょ?恋人を失う悲しみは、みんな知ってるものね」
「むぅ…」
「ほんとに、いいの?ボク、そのアイテムが見つかったら、また抜けることに…」
「言ったでしょ?みんな、恋人を失う悲しみは知ってるわ。そんな思いするの、私達だけでたくさん。それに、私達ちょうど、
盗賊の人探してたの。利害は一致してるわ」
フェルパーが言うと、全員が悲しく、優しい笑みを浮かべた。どうやら本当に、全員が恋人を失う悲しみを知ってるようだった。
「……ありがとう。それじゃあみんな、しばらくの間、よろしくね」
「こちらこそ、歓迎するわ。しばらくの間、よろしくね」
こうして、クラッズは彼女達と共に探索をすることとなった。
恋人を失う悲しみを知る彼女達。誰とも知らぬ、その悲しみを共有する者。
その苦しみを消し去るための冒険が、始まろうとしていた。
ゼイフェアに行った卒業生とは別に、もう一つ、学園随一と噂されるパーティがある。
問題児の集まりでもあり、素行の悪さは群を抜くが、単純なパーティとしての力だけであれば、あの卒業生をも凌ぐと言われるほどの
パーティである。実際、アイザ地下道を最初に制覇したのは卒業生一行ではなく、彼等であった。卒業生の一行は、それからさらに
一ヶ月ほどかかって、ようやくそれを達成した。
当然、彼等も卒業生一行のことは気にしていた。直接的に関わり合うことはほとんどなかったが、それでもお互い、口には出さずとも
ライバルのように思っていたのだ。
そんなわけで、ゼイフェアの彼等がばらばらになったという噂は、すぐに彼等の耳に入った。
「久しぶりに、背中が薄ら寒くなる話だ。いくら慣れたとはいえ、私達も気を抜けんな」
リーダーのバハムーンが言う。今、彼等はアイザ地下道を一周し、飛竜でパルタクスへと帰るところであった。
「もっとも、奴等が気を抜いたとも思えんが……しかし、ロストか…」
「わたくし達は、そこまで弱くは、ありませんよ。超術士もいない、全員が魔法を使えるわけでもない彼等とは、わけが違います」
セレスティアが嘲笑じみた笑顔を浮かべて言うと、エルフがそれに答える。
「ならなおさら、恐ろしい話ですわ。つまり、魔法壁も使えない、個々が代わりになれない状態で、あのエンパスを倒すんですのよ。
わたくし達が、同じ条件で戦ったら、一体何人が生きていられると思いまして?」
そう言われると、セレスティアはつまらなそうに黙ってしまった。
「んで、そのおかげで全員ばらばらになっちまったって話だろ?なんか、わかるなぁ。長く一緒にいりゃあ、その分思い出も
共有するもんなあ。長く一緒だった分、一人いなくなったら、余計それが目立つからな」
「私達は冒険者。それぐらいは当たり前。長く一緒にいられる方が、ほんとは普通じゃないのにね」
同情的に言うディアボロスに向かって、ノームが無感情な声で言った。
そんな中、ヒューマンだけは特に何も言わず、黙って寝転がっている。
「おい、ヒューマン。疲れたのか?」
「ん?ああ、心配はいらねえよ。ちょっとこの後、しなきゃいけねえことがあってさ」
「ほう?それは、初耳ですね。退学届けでも、出しに行くので?」
「んなわけねえだろ、馬鹿が」
「じゃ、女にでも会いに行くのか?」
「いや、それはないだろう」
「彼に限っては、ないですわね」
「ありえないと思う」
「彼を好きになる女性がいたら、わたくしはその方の、目か頭を、疑いますね」
「てめえら好き放題言ってんじゃねえ!ったく、これから回復してやんねえぞ」
そんな話をしていると、飛竜が高度を下げ始めた。耳元で唸る風の音が小さくなり、やがて眼下に学園が見え始め、飛竜は地下道の
入り口付近に着地した。背中から全員が降りると、飛竜はかき消すように消えうせる。
「さて、それじゃ俺はさっきも言ったとおり、用事があるからここでな」
「おう。何だか知らないが、明日に差し支えないようにな」
他にも各々、好き勝手な言葉を吐いていたが、もうヒューマンはそれらを完全に無視して歩き出した。
学食前を素通りし、中庭を通って寮に向かい、しかし建物の中には入らず、あまり人気のない建物裏に向かう。
少し薄暗い、寮の大体の窓から死角になっているところまで来ると、辺りに高い声が響いた。
「ちょっと、いつまで待たせんのよ。遅すぎにもほどがあるっての」
「しょうがねえだろ、俺等はアイザ帰りなんだから。こっちの都合も考えろ」
「知るかよ、そんなの。それよりあたしの都合考えてよね」
「はっ、いい性格してるよ、てめえは」
すっかり呆れ顔のヒューマン。そんな彼に、フェアリーは言葉ほど怒ってはいない顔を向ける。
二人は、実はかなり前から接触を持っていた。フェアリーという種族柄、ヒューマンに対しては非常に大きな好意を持っているし、
性格も似ているために話がしやすかったのだ。まして、パーティの中に善の思考を持つ仲間がいたため、彼と話していると何となく
落ち着く感じがしていた。ヒューマンとしても、この小さな女友達は嫌いではないし、数少ない友人の一人でもあり、さらには自分の
パーティとライバル関係にあるパーティの一員である。彼女と話をするのは、それなりに楽しいと思っていた。
「まあいいや。あんただから許してあげる」
「そりゃどうも」
「それで、話なんだけどね。あんた、どっかいいパーティ、知らない?」
「お前だって、あっちこっち行ったことはあるだろ?パーティぐらい、自分で探せねえのかよ」
「あんたねえ、こっちには善人気取りのノームとセレスティアがいたのよ?んなパーティ、近寄りもしないっての。そんぐらい
言わなくてもわかりなさいよ。ほんと、馬鹿なんだから」
「ああ、ああ、はいはい、俺が悪かった。……で、お前の言う『いいパーティ』ってのは、繋がりが強くて浅い奴のことだよな?」
ヒューマンが言うと、フェアリーはにやりと笑った。
「そういうこと。よくわかってんじゃん。ただ、それなりの実力ないと困るよ」
「そうだなー。この学校だと、俺等以上の奴いねえし……ランツレート……ああ、そうそう!ランツレートだ!」
ポンと手を打ち、ヒューマンは声をあげた。
「あそこにな、同じ学校の奴等も近寄らねえってのがいるんだ。あいつらに比べりゃ、俺等なんて可愛いもんだ。いつ退学食らっても
おかしくねえような奴等なんだけど、実力があんまり飛び抜けてるんで、ならねえんだってよ。男六人でいるし、結構有名だから、
探すには苦労しねえと思うぜ」
「ふーん、楽しそうじゃん。わかった、ありがと」
「あ、おい。ちょっと待てよ」
「ん、何よ?もう話は終わりでしょ?さっさと帰りたいんだけど」
「あのなあ、情報教えてやったんだから、少しは俺の話も聞けよ!」
ちょうどその時、寮の二階をノームとディアボロスが歩いていた。ディアボロスが何気なく窓の外に目をやると、さっき別れた
ヒューマンが、目立たないところでフェアリーの女の子と何やら話しているのが見えた。
「お、おいおい!ノーム、あれ見ろよ!」
「どうしたの。……あ、ヒューマン」
「あいつ、本当に女と会ってたのか……びっくりだな。何話してるんだろう?」
「フェアリーの方はわからないけど、ヒューマンは何言ってるかわかるよ。唇の動き、見えるから」
「お前、変な隠し芸持ってるんだなあ…」
見られているとは露知らず、二人は会話を続ける。
「ちぇ、しょうがないなあ。それで、何?」
「あのな……その、お前さえよければ、俺のとこに来ないか?」
「あー、悪くはないかもね。だ・け・ど!あんたのとこのリーダー、バハムーンでしょ!?冗談じゃない、そんなのと一緒なんて、
お断りだってのよ!」
「そうか、残念だなあ。フラれちまったか、ははは」
冗談めかして笑うと、フェアリーも愛想笑いのような笑みを浮かべた。
「気持ちは嬉しいけどねー。それに、あんたらのパーティなら実力も申し分ないし、あんたも嫌いじゃないし。でもね、バハムーンだけは
絶っっっっっ対に嫌。死んでもパーティ組むなんてごめんよ」
「わかったわかった、もうこれ以上は誘わないって」
そこまで聞いたところで、ディアボロスとノームは、気付かれないようにそっとしゃがみこみ、お互いの顔を見合わせた。
「……間違い、ないのか?」
「うん。間違いないよ」
「……俺、今初めて、あいつに心から同情してる」
「そう、優しいね」
そう言うノームの顔は、いたずら心に満ちた笑顔が浮かんでいた。
「どうしようか。リーダーに言おうか」
「……うーん、いっそそうしようか。あいつ、凹んでそうだしな」
話が決まると、二人はそっと、その場を離れて行った。もちろん、ヒューマンとフェアリーは彼等のことなど気付きもしない。
「ああ、そうそう。あんた天使の涙とか持ってない?」
「天使の涙?いや、持ってないな」
「そう。まあ別にいいけど、もし手に入ったらとっといて。高く買うよ」
「なんでそんなもん…?ま、いいか。高く買うってんなら、とっとくことにするよ」
「よろしく。じゃ、あたしはもう行くから、ここでね」
「ああ、元気でな」
最後に手を降ると、フェアリーは飛んで行った。もう、しばらくは会うこともないだろう。そう考えると、どことなく寂しい気分になる。
フェアリーが見えなくなるまで見送ってから、ヒューマンは寮に入った。すると、入ってすぐの場所に、なぜか仲間が待っていた。
「ん?お前ら、どうしたんだ?」
しかし、返事はない。よく見ると、セレスティアとノームは何とも楽しそうな笑顔を浮かべているのに対し、他の三人は何ともいえない
微妙な表情を浮かべている。
「お、おい。何だってんだよ?何か言えよ」
ヒューマンが言うと、ディアボロスがおもむろに歩み寄り、いきなり肩をがっしりと掴んだ。
「……気を落とすなよ」
「は?」
続けて、エルフが言葉を探しつつ声をかける。
「その……辛い心の傷も、いつか埋めてくれる存在が、現れますわ。だから、気を確かに…」
「え?え?あの、なんか重いこと言われてるんだけど……あの、だから、何?」
バハムーンが、大きな溜め息をついた。そして、同情と呆れの入り混じった声で言う。
「羽虫にまで嫌われてはショックだろうが、お前を嫌わない奴も必ずいる。気にするな。女など、星の数ほどいるものだ」
「星に手は、届きませんがね」
「こら、セレスティア!」
「いや、だから、何なんだ!?バハムーンにまでなんか慰められてるし……ほんと、なんで!?俺に何があったんだ!?」
「隠さなくてもいいよ。私、あなたの言ったこと、唇の動きで見てたから」
「え?」
そう言われて、ヒューマンは自分とフェアリーの会話を思い出した。
「……いつから聞いてたんだ?」
「途中から。あなたがフェアリー誘うところまで」
「その後は?」
「フラれてた」
そこでようやく、ヒューマンは状況を理解した。話の極一部の、しかも自分だけの言葉を聞かれた結果、大きな勘違いが生まれたのだ。
「ち、違う!違うぞ!俺はな、断じてあいつを部屋に誘ったわけじゃ…!」
「ヒューマン、もういい。もういいんだ。気持ちはわかるが、私達は仲間だ。手を差し伸べはしなくとも、お前から離れはしない」
「だから違うってんだよ!!俺はあいつをパーティに…!」
「既に六人いるのに、誘う道理も、ないでしょう?いい加減、下手な嘘はやめたら、どうですかね?」
真実を語れば語るほど、泥沼に沈み込んでいく。どう足掻いても絶望という状況を、この時ヒューマンははっきりと感じた。
「違う……違うんだ…。俺は……ただ…」
「ふふ。フェアリーにまでフラれるなんて、逆にすごい」
「……今日だけは本気で神に祈りてえ……こいつらに、真実を伝えてほしいってな…」
結局、神頼みも功を奏さず、ヒューマンは『フェアリーにまでフラれた男』という屈辱的な烙印を押される羽目になってしまった。
その一因を作ったフェアリーは、この日以来、パルタクスから姿を消した。そして、その後の行方は、パルタクスの誰も、知らなかった。
まだ生徒などほとんどいないゼイフェア学園。がらんとした寮の一室に、微かな声と物音が響く。
「ごめんね、セレスティア……つき合わせちゃって…」
「ううん、いいんです。気にしないでください」
相変わらず、暗い顔のドワーフ。常に一緒のセレスティアも、決して明るい表情ではない。
「こっちの方がいいと思ったけど……ここは、誰もいないもんな…。あいつの匂いが……濃すぎるよ…」
「………」
たちまち溢れた涙を、しかしドワーフはすぐに振り払った。
「帰るのも、久しぶりだな…。パルタクス、変わってないといいなあ」
「しばらく、ゆっくり休みましょう。時間は、たっぷりありますから。それに、わたくしもついてますから」
「……ありがとね、セレスティア」
二人は学園を出ると、ゼイフェア地下道に入った。そして、魔法球に手をかざす。
「帰る場所……か。魔法球で、ほんとに帰りたいところに、帰れればいいのになあ…」
「………」
セレスティアは無言で、ドワーフの体を翼で包んだ。翼の中で、微かにしゃくりあげる声が響いた。
「帰って、ゆっくり休みましょう。ね、ドワーフさん」
「……うん」
やがて、パルタクスには卒業生が帰ってきているという噂が広まった。しかし、卒業生の中で見かけるのはセレスティアのみで、
彼女の笑顔は確かに優しいが、どこか悲しげで、見ると胸が苦しくなるような笑顔だった。
そのおかげか、二人が好奇の目に晒されることはなかった。それほどの悲しみを抱える者を、ただの好奇の目で見ることなど、
まともな神経を持っていれば、とてもできないことだろう。
ごく短期間だけ戻ったクラッズにフェアリー。悲しみを抱え、帰ってきたセレスティアにドワーフ。
その全員に会えた幸運な者は、口を揃えて言う。『彼等は、心もばらばらになってしまった』と。
確かに、周りから見ればそうとしか見えなかった。新たなパーティに入ったクラッズに、どこへともなく行方知れずになったフェアリー。
未だ悲しみに沈むドワーフと、その彼女を支えるセレスティア。
だが、彼等は知らない。彼等が、どれほど心を通わせているか。それ故に、どれほどの痛みを持って心を通わせずにいるか。
それぞれがそれぞれの痛みを持ち、彼等は別の道を歩く。
彼等全員にとってただ一つの、たどり着くべき場所へと向かって
以上、投下終了。
三つも場面があると尺の配分がきつい……精進します。
それではこの辺で。
おつー
ちちミニ。
たぶん、「ち」のあとに、心の綺麗な人にしか見えない「ん」が入ってる。
うぉぉっ・・・
ロストのPTきたぁぁ!!目頭が熱くなる・・・・・もう一度見たかったから本気でうれしい
なんか集大成みたいな面子だなw
凄く面白かったです、続き楽しみにしてます!
ディアとノームの荒くれPTにa lostのおにゃのこ5人までいるとは
まさしくオールスターだ〜。
まとめとかないと脳味噌がわやくちゃになりそうだがw
パーティ全員が一人を取り戻す為に命張ってるんだなと思うとジーンと来るわ
160 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 00:02:03 ID:NuvCmzBy
公式サイトのキャラクターが更新されてた。
今回更新されたキャラディアボロス分多いな。
てか格闘家ディア子さん波導拳でも打つ気ですか?
あ〜もう、なんか全員可愛い。男女問わず!
とりあえず今回は声バグが無い事を祈るだけ。
マスターアップって発売二週間前ぐらいだっけ?
個人的な区切りをつけたいという気持ちがあるので、色々オールスターです。端役だったりしますが。
今回はどこまで入れるか悩んだ結果、ちょっと長めになりました。フェアリーは暴走しやすいなあ。
注意としては、5レス目に残虐描写があるので、苦手な方はそこを飛ばして読んでください。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
パルタクスに帰ると、ドワーフも少しは落ち着きを取り戻した。しかし、まだ思い出したように泣き出すことも多く、痛みが和らぐのは
当分先の話になりそうだった。
そんな彼女に、セレスティアはいつも付き添っていた。とはいえ、せっかく帰ってきているので外に出ることも多く、その際には
色々な生徒と話をしたり、後輩の悩みを聞いたりと忙しい毎日を送っていた。
話しかけてくる生徒も様々だ。単純に、壊滅したパーティの一員という興味から近づく者。卒業生筆頭という称号への敬意から近づく者。
あるいは、悲劇に見舞われた相手への同情から近づく者。
その全員と、セレスティアは真面目に話していた。元々、優しすぎる性格のせいで、パーティからあぶれたという経緯の持ち主である。
話さなくてよさそうな相手とまで真面目に話す彼女に対し、個人的な同情を寄せる生徒も少なくない。
この日の彼女は、学食で二人の生徒と夕飯を食べていた。
「先輩は、友達に恵まれてる。その対応は正しいよ」
茫洋とした口調で話すディアボロス。そんな彼に、セレスティアは少し引きつった笑顔で対応している。
元々は、彼と直接的に知り合ったわけではない。後輩の同種族の中に、死んだ魚のような目をしている子がいたため、不安に思って
話を聞いているうち、そのパーティの仲間と知り合ったのだ。何だか全員が幸せそうに見えたが、同種族の子だけはどんよりと
しているのが印象的だった。
「でも……きっと、わたくし達を想って、何かを隠しているのでしょうけれど……何か、彼女の気持ちが楽になるようなことがあるなら、
話してあげたいです。それで、少しでもドワーフさんを楽にしてあげたい…」
「そう思う気持ち、わからんではない。だがな、お前の先輩として忠告しておくが、下手な希望なら持たせるな」
そう言うのは、バハムーンである。彼女のパーティは目立たないながら、実はかなり早くからゼイフェア地下道に進出していた。
ただ、卒業生一行など、ここ最近は異常なまでに力を持つパーティが続出したため、目立っていないだけの話である。
「ど、どうしてですか?少しでも、希望があった方が…」
「絶望は、人を殺せない」
ディアボロスが、何かを悟りきったかのような口調で呟いた。
「絶望は闇みたいなもの。何も見えなければ、何も出来ない。例えば、死ぬことすら、ね」
「そんな…!」
セレスティアは何とか言い返そうとするが、バハムーンはその言葉に黙って頷いていた。
「……そいつの言う通りだ。そして付け加えるなら、希望は人を狂わせる」
「え!?」
「知っているか?犬の首だけを出して、地中に埋める。当然、そのままなら犬はただ死ぬ。だが、目の前に餌を置いてやると、
どうなると思う?」
「そ、そんな残酷なこと…!」
「そう、残酷なことだ。腹が減って、うまそうな飯が目の前にあるのに、食えない。そんな状況は、その犬の気を狂わせる。
下手な希望を持たせるというのは、それと同じことだ」
その言葉に、セレスティアはビクリと身を震わせた。
「闇の中に、確たる光があるなら、僕達は自分を見失うことはない。完全な闇なら、何も見えないから逆に楽だ。だけど、ぼんやりした、
どこから漏れるかわからない、頼りない光を目指して歩くのは、とても辛い。見たくもない、情けない自分の姿も曝け出されるし、ね。
なまじ希望があるだけに、より辛い思いをした人を、僕は何人も知ってる」
とても嫌いな種族ではあるが、彼の言葉はいちいち重く、後輩とはいえ、人生経験では彼の方が先輩のような気がしていた。
「それから、そいつはドワーフだそうだな?あの種族は、確かに強い。だが、奴等の強さは、例えるなら曲がらない大木の強さだ。
風にしなるような強さではない。ちょっとやそっとでは折れない代わり、一度耐えられないほどの風が吹けば、根元からへし折れるぞ」
そう語るバハムーンの顔には、隠しきれない悲しみの色が浮かんでいた。
「だが、折れてしまっても、それを側で支えてやる者がいれば、必ずまた立ち直る。いいな、お前は決して、そいつを突き放すな」
「は……はい」
静かながら、その言葉には有無を言わせない強さが篭っていた。セレスティアが頷くと同時に、バハムーンに一人のドワーフが歩み寄る。
「姐御、ここにいたんだ。みんな、準備終わったよ」
「ああ、わざわざご苦労。私も、じき戻る」
「わかった。それじゃ、またあとで」
来たときと同じように去っていくドワーフを、バハムーンはどことなく哀愁を帯びた目で見つめていた。その目をもう一度セレスティアに
戻すと、バハムーンは静かに口を開いた。
「仲間を失う辛さ、私にもよくわかる。だが、お前には酷な話だが、お前だけはその辛さに飲まれるな。でなければ、もう一人
仲間を失うぞ」
それだけ言うと、バハムーンは席を立った。そして食器を下げ、学食を出て行く。残されたディアボロスとセレスティアは、
少し困ったようにお互いを見つめた。
「……はは。僕のパーティには、先輩と同じ種族の人がいるから、少しは慣れてる。でも、先輩は話しづらそうだね」
「え、ええ……その、まあ…」
「バハムーン先輩はああ言ってたけど、少し付け加えよう。先輩がドワーフ先輩を支えてあげて、いつかドワーフ先輩が立ち直れたら、
今度は先輩が、支えてもらえるようになるはずだよ。だから、今だけは悲しみに飲まれないように、気をつけて」
最後に達観した笑みを向けると、ディアボロスも静かに席を立った。
正直なところ、セレスティアは今まで少し、仲間に対して疑問を持っていた。ドワーフを自分一人に任せ、恐らくは何かしらの希望を
探し求めているのだろうが、それが何なのか、またどういった希望なのかを知らされないことに、僅かな疑問を抱いていたのだ。
しかし、それも今はっきりとわかった。今、ディアボロスやバハムーンが言ったことに、仲間達は気付いていたのだ。
僅かな希望でも、今のドワーフなら縋りつく。恐らくは自分の身を捨ててまでも、そうすることは想像に難くない。
セレスティアは一人、決意した。彼女が少しでも立ち直れるまで、自分はただ、彼女の側で支えて行こうと。
みんなと戦っていた頃のように、裏方となり、自分自身の辛さも押し殺し、ただただ、彼女を支えて行こうと。
彼女達は何かこだわりがあるのか、ハイントに向かうまでの道のりは、すべて徒歩で移動していた。
パルタクスからホルデア登山道を通り、フレイク地下道を抜け、トハス、ラークと進んでようやく、空への門に辿りつく。
事実、彼女達にしてみれば、それは一種の儀式のようなものだった。かつて一人の仲間と共に、その道を進み、目標であった空への門に
たどり着いた。そしてその旅が、彼女達を一流の冒険者へと成長させたのだ。同時に、それぞれ『女』としての経験をした旅でもある。
その道筋を辿ることが、一つの儀式。思い出をなぞる行為そのものなのだ。
地下道が、その合間の中継地点が、過去の旅を思い出させる。だが、この時はさらにもう一つ、それを思い起こさせるものがあった。
「あいつ、化け物か…!?」
そう呟いたのは、バハムーンである。そしてそれは、仲間全員が思ったことを代弁したに過ぎない。
地下道に入って最初の戦闘。いきなりザ・ジャッチメントに遭遇したが、もはや彼女達の敵ではない。いつも通り、フェアリーが
真っ先に魔法の詠唱を始めた。それで、戦闘が終わるはずだった。
詠唱を続ける彼女の横から、一つの影が飛び出した。それに全員が気付いた瞬間、既にザ・ジャッチメントはチャクラムの直撃を受け、
倒れていた。
「ふう。こいつって、どうも怖いよねー。やっぱり、最初の頃にひどい目に遭ったせいかな、あはは」
チャクラムを回収し、こともなげに笑うクラッズ。だが、一行は信じられない思いで彼を見ていた。なぜなら、入ったばかりで実力を
うまく発揮できない彼が、彼より速いはずのフェアリーよりも先に、攻撃を終わらせていたのだ。
その時は、まだ単なる偶然だと思えた。だが、先に進めば進むほど、彼の異常さは目立ち始めた。
トハス辺りになれば、敵もかなり強くなる。前衛はフェルパー、バハムーン、エルフが務めていたが、生命力に劣るエルフはよく敵から
狙われた。何度か攻撃を受け、手傷を負った彼女の前に、素早くクラッズが躍り出た。
「エルフ、下がって。前はボクが引き受ける」
「い、いえ、あなたよりも、わたくしの方が…!」
「大丈夫。前に出るのは慣れてるんだ。それに、ボクだって男なんだから、女の子に守ってもらってばっかりじゃ、居心地悪いしね」
どことなく、以前いた彼と似たような事を言われ、エルフは大人しく後ろに下がった。すると、クラッズはチャクラムをしまい、
大事そうに背負っていたグングニルを掴んだ。
そこからの活躍は凄まじかった。彼の槍は確実に敵を捉え、激しく振り回されているにも関わらず、槍はまるで彼の手に
吸い付いているようだった。フェルパーやバハムーンでも、それほどの動きはできる自信がない。おまけに、敵の攻撃はすべてかわし、
掠り傷一つ負う事はない。
しかし、何よりもみんなを驚かせたのは、そんなことではない。
フェルパーが仕留め損ねた魔人フーが、クラッズを狙った。当のクラッズは、その後ろにいたダークサイズを攻撃しており、
それに気付いていない。
「クラッズ、危ない!」
「ん?」
クラッズが振り返った瞬間、魔人フーはその強靭な腕を振り下ろした。その力は凄まじく、バハムーンの腕力をも上回る。
そんな一撃がクラッズに振り下ろされ、当然誰もが彼の死を信じた。
次の瞬間、目を見張ったのは仲間だけではない。攻撃した相手自身、信じられなかっただろう。
クラッズは、それを正面から受け止めていた。槍をかざし、多少腕が震えてはいたものの、しっかりと攻撃を防いでいた。
直後、クラッズは槍を傾け、相手の腕を受け流した。魔人フーが体勢を崩した瞬間、彼はその体に飛び乗り、後ろから首を貫いた。
「あ、ありえません…!あんなの……あんなの、信じられないです…!」
「でも、現実……だよね。この目で見ちゃったんだから」
敵を全滅させると、クラッズは楽しそうな笑顔を浮かべながら口を開いた。
「あ〜、びっくりした。心臓止まるかと思ったよー、あはは」
「いや、あははじゃなくて……あんな力、その体のどこから出るの?少なくとも、私には到底、真似のできないことね」
「でも、ボクなんか元のパーティの中じゃ、弱い方だったんだよー。魔法も使えないし、力もそんなにないし、武器も微妙だったしね」
その言葉に、彼女達は一度崩され、また積み上げられた自信が、もう一度崩れたような思いだった。彼ほどの実力者が、彼本来の
パーティの中では、弱い方だというのだ。つまり、それは彼が実力を発揮できる環境になった上で、なお及ばない者がいると
いうことであり、しかもその実力者が、戦いの中でロストしたということなのだ。
ポストハスの宿屋に着くと、話題は当然の如く彼の話になった。
「『彼』の力は、時間をかければ到達できるというものでしたわ。でも、あのクラッズの力は……あれは、常識を超えてますわ」
そう言いながら、エルフは首を振る。
「そうね。私も、まさか足の速さで彼に負けるなんて思わなかったし……力でも、負けたわね」
「早さなら、私の方がショックだよー。負けるなんて、普通ありえないのに…」
「罠の解除も、すごかったですね。宝箱叩いただけで、ポイズンガスとスタンガスと悪魔の呪い判別しちゃったり」
「あんな音、私には全て同じにしか聞こえん。あいつは一体どういう体をしてるんだ?」
「あれは、装備品のおかげでもありますわ。それにしたって、飛び抜けた才能を持ってるのでしょうけれど」
全員は、揃って息をついた。それは自信を失った辛さと、彼に対する憧れの混じったものだった。
その中で、エルフは一人、微かに笑みを浮かべていた。それはどこか、艶っぽい色の混じった笑みだった。
「ごめん。君の気持ちは嬉しいけど、ボク、好きな子がいるから」
その日の深夜、クラッズの部屋から二人の声が響いていた。
「何だか、これも聞いたことありますわね。……わたくしは師に恵まれる代わり、殿方との縁には、あまり恵まれませんのね…」
つまらなそうな溜め息をついて、エルフはクラッズの隣に腰を下ろした。
「わたくしを、ただ抱くこともできなくって?」
「うん。別れ際にさ、浮気はしないって約束してるし。そうじゃなくっても、ボクはあの子のこと裏切れないもん」
「はぁ……相手が恨めしいですわ。わたくしも一度くらい、それほどまで思われる相手になってみたいものですわね」
一度不貞腐れたように寝転んで、エルフはまた体を起こした。
「それにしても、あなたは本当にただのクラッズでして?あの力、あの速さ……どれも、常軌を逸していますわ」
「ああ、それはね。ボク、何度か転生してるから」
「転生?」
「うーん、なんて言えばいいんだろ?生まれ変わりと似たようなものかな?ゼイフェアでやってもらえるんだけど、入学当時くらいの
体に戻っちゃうけど、元の部分が少し強くなるんだ」
「とても信じられないような話ですわね……でも、この目で見た以上、信じるしかなさそうですわ」
とはいえ、やはり目の前の彼はただのクラッズにしか見えず、戦闘中に見せたあの姿は幻だったのではないかと思えてしまう。
ともかくも、元々の目的であった告白は済ませたし、そのついでに彼の身体能力の秘密も聞けた。フラれたので満足はできないが、
納得はできた。それから少しだけ話をして、エルフは自分の部屋へと戻って行った。
彼女が帰ると、クラッズは溜め息をついてベッドに転がった。
―――フェアリーは、今何してるかなぁ…。
目を瞑れば、いつでもあの顔が思い浮かぶ。それと同時に、別れ際に感じた彼女の温もりが蘇る。
その温もりを思い出しながら、クラッズは静かに眠りについた。
地下道の中に、悪魔の娘の悲鳴が響き渡る。
周囲には濃厚な血の臭い。切り刻まれたモンスターの残骸が散乱し、その中央で、悪魔の娘は男達に囲まれ、犯されていた。
既に何度も陵辱され、彼女の体には乾いた精液がこびりつき、時折悲鳴を上げる以外では、もう泣き叫ぶことすらしなくなっている。
彼女の肛門に突き入れていたヒューマンが一声呻き、腰を強く突き上げる。そうして彼女の腸内に精液を注ぎ込むと、軽く息をついて
彼女から離れた。
「ん、もう終わり?」
「あ〜、もういい。飽きた」
「そう?じゃ、他のみんなも終わりでいい?それなら僕、好きなようにするけど」
クラッズらしく、笑顔でそう尋ねる。しかし、彼の笑みは、一般にクラッズという種族から連想されるような、無邪気なものとは
一切無縁の、悪意に満ちた、実に邪悪な笑みだった。
「好きにすればいい。僕ももう、興味はない」
「よかったー。それじゃ、もう終わらせるね」
満面の笑みで言うと、クラッズは腰から刀を抜いた。
ドッ、と鈍い音。血飛沫が上がり、クラッズの顔が返り血で赤く染まる。
腹に突き立てられた刀を、悪魔の娘は一瞬、驚いたように見つめた。そして次の瞬間、辺りに凄まじい悲鳴が響く。
「あっははは!締まる締まる!もうちょっと、気持ちよくさせてよ……ね!」
狂気に溢れた凄絶な笑みを浮かべ、クラッズは刀を強く握ると、彼女の腹をゆっくりと切り裂いた。悪魔の娘は凄まじい絶叫を上げ、
必死に体を動かそうとするが、既に手足は切り落とされており、ただ身をよじるしか抵抗のしようはない。
まるで解剖するかのように腹を切り裂くと、クラッズはそこに腕を突っ込む。そして腸を引きずり出すと、それを彼女の顔に
べしゃりと押し付けた。
絶叫が一際大きくなり、そして次の瞬間、彼女は動きを止めた。それと同時に、クラッズが低く呻いた。
「んっく…!……く、はぁ!ふ〜〜〜、気持ちよかったぁ〜」
まだ微かに痙攣する彼女からモノを引き抜くと、クラッズは晴れ晴れとした笑みを浮かべる。
「てめえは、趣味悪りいんだよ。俺はさすがに、死体とやる気はしねえ」
「バハムーンだってハマると思うけどなあ。ああすると、痛みと恐怖とで、ものすっごい締まるんだよ。君が首絞めてやるのと一緒だよ」
さらりと非道な事を言ってのけるクラッズに、同じく人相の悪いディアボロスが声をかける。
「だがクラッズ、最初に手足を落とすのはやめろ。俺は腕を捻り上げてやるのが好きなんだ」
「相手が相手だから、しょうがないでしょ。にしても、今日はエルフは食いつき悪かったね」
そう水を向けられると、ミスリルソードを磨いていたエルフは優しげな笑みを浮かべた。
「緩かったからね。僕としてはやっぱり、ミカヅキっ娘が至上だった」
「あっははは、斬り応えもいいからって言うんでしょ?」
「ああ、あれは悪くなかった。何が起こったかわからないって顔。あの感触。ああいう、小さな子を斬るのは、独特の快感があるよ」
「エルフ、お前もよくよく趣味悪りいな」
「ヒューマンだって、キノコの精をオナホにして殺したんだし、君が言える台詞でもないと思うけどね〜」
そんな会話を続ける男達の、すぐ近く。一人のフェアリーの女の子が、つまらなそうに装備の分解と練成を繰り返していた。
目の前で行われた虐殺にも眉一つ動かさないその態度は、ある意味で男達よりも冷酷に映る。
「あんたら、もう用事は終わり?なら、さっさとまた探索に移りたいんだけど?」
「ちっ、うるせえ羽虫が」
バハムーンが言うと、フェアリーは彼をギロリと睨みつけた。
「何?羽虫ってあたしのこと?あんた、誰に口きいてんの?」
フェアリーに睨まれ、バハムーンは渋々黙った。彼が大人しく従うその姿は、一種異様である。
「おーおー、お姫様が怒ると怖いねえ。んじゃ、また探索に戻るかい」
「はいはい。正直だるいけど、頑張ろっか」
悪魔とてこれほどではないだろうと思われるほど、非道な男達。その中に、彼女のような存在がいること自体が異常だったが、
その彼女が最も強い発言権を持っていることは、他の者の目からは、さらに異様に映るだろう。
彼女の経歴は一切不明だった。パルタクスの生徒であることは間違いないのだが、彼女は自分から何も語ろうとはしない。
ある日突然一行の前に現れ、仲間にしろと言い放った。当然、彼等は鼻で笑い、彼女を玩具にしようと攻撃を仕掛けた。
だが、五人がかりの攻撃はすべてかわされ、彼女の放つ矢に全員が瀕死の重傷を負った。あそこで謝らなければ、恐らく全員、
この場に生きていることはなかっただろう。
以来、彼女はパーティに加入し、彼等と冒険を共にしている。卓越した技術を持つ錬金術師であるため、彼等としても彼女の存在は
ありがたかった。というのも、以前仲間にいた司祭がロストしてしまったため、鑑定は店に頼らなければならなかったのだ。
目的は一切不明ながら、利害は一致している。利害関係という、脆く、強靭な関係で、彼等は繋がっていた。
再び探索に戻ろうと、それぞれが装備品を元通りに身につけ始める。そんな中、ヒューマンがそっとフェアリーに近づき、何事かを
耳打ちした。フェアリーはそれに頷き、そっと手を出す。その手にさりげなく金を掴ませると、二人はすぐに離れた。
それは一瞬のことで、他の誰も気付きはしなかった。
やがて再び、一行は地下道を歩き出した。宝と金、そして、新たな犠牲者を見つけるために。
その夜、ランツレートの寮に戻った一行は、それぞれの部屋へと帰って行った。
夜も更け、日付も変わろうという頃、フェアリーの部屋の中には、独特の熱気が漂っていた。
「んっ……んむ……んぅ…」
ベッドの上では、フェアリーが一糸纏わぬ姿となり、ヒューマンのモノを必死に舐めていた。さらに、足ではクラッズのモノを挟み込み、
やり辛そうに扱いている。
「あーあ、また君と一緒だなんて思わなかったよ」
「しょうがねえだろ。てぇか、お前はあれで十分満足したんじゃねえのかよ」
「あれも悪くないけど、こう奉仕されるのも悪くないじゃん?でも、僕が足っていうのは…」
「ん……ぷはっ!ちょっとあんたら、好き勝手言うのは構わないけど、文句言うなら帰ってもらうよ」
フェアリーが睨むと、二人は揃って肩を竦めた。
「俺は十分楽しんでるから、文句なんか言わねえよ」
「ちぇ、文句は言わないけど、羨ましいよ」
「しょうがないでしょ、あんたよりヒューマンの方がでかいんだから。足だけで済むあんたと違って、こっちは全身でやんなきゃ
イかせらんないのよ」
言いながら、フェアリーはヒューマンのモノを舐めつつ、手を使って扱いている。
「それに、こっちは色つけてくれたしね」
「あ、そういうこと……抜け目ないなぁ」
「まあな……くっ、そろそろ出そうだ…!」
「ベッド汚されちゃやだし、口に出させてあげる。出すの、もうちょっと待ってよ」
フェアリーは大きく息を吸うと、鈴口にしっかりと口をつけ、強く扱き上げた。それとほぼ同時に、ヒューマンのモノがビクンと動き、
口の中に生臭い液体が注ぎ込まれる。
顔をしかめつつも、フェアリーは何とかそれを全て口の中に収め、唇を離す。そしてすぐにハンカチを手に取ると、汚い物でも
入っていたかのように、ペッと勢い良く吐き出した。
「……あのなあ…」
「う、まだある……ペッ!ん、何よ?」
「できれば、そう嫌そうに勢い良く吐き出さねえでくれねえかな……地味に凹むぜ…」
「こんな不味いの、いつまでも口ん中入れとけるわけないでしょ、馬鹿じゃないの」
「へいへい、お姫様には敵わねえぜ…」
喋りつつも、フェアリーは一応クラッズのモノを両足で挟んでいる。が、あまり動きがないのでじれったくなったのか、クラッズは
フェアリーの両足をしっかりと押さえ、自分で腰を動かしている。
「う……僕ももう出そう…!このまま出していいかな?」
「ふざけんな、ちょっと待ってよ。頼むから顔にはかけないでよね」
フェアリーは慌てて顔の前に手をかざす。それと同時に、クラッズが勢いよく精を放った。
既に何度か出していたにも拘らず、それは思いの外量があり、フェアリーの手と体はたちまちドロドロとした液体に覆われてしまった。
「うわ……べったべた。ったく、よくこんな出るね」
例によって、汚物を見るような目でそれを見ると、フェアリーは別のハンカチで念入りに体を拭き始める。
「それじゃ、二人とも終わったんだから、さっさと帰ってよね。あたしもう寝るから」
「十万払って、足コキだけって、ぼったくりだよね。しかも出したら嫌そうにされるしさ」
「は?してやるだけありがたいと思えよ。グダグダ文句言うなら、灰にしてやってもいいんだけど?」
「……わかった、わかったよ」
「はっはっは、お姫様からしてもらえるだけで、満足しろってことだな」
クラッズはそれでも不服そうだったが、フェアリーの機嫌を損ねるわけにはいかないため、それ以上は何も言えなかった。
二人は元通りに服を着ると、すぐに部屋から出て行く。それを見届けてから、フェアリーは体を洗い、服を着てからベッドに入った。
目を瞑ると、すぐに睡魔が襲ってくる。その心地良い眠気に身を任せ、彼女は静かに眠りについた。
それからどれくらい経ったのか。フェアリーは微かな気配を感じ取り、目を開けた。
目を横に滑らせる。鍵をかけたはずの部屋のドアが、僅かに開いていた。そしてそれが、静かに閉まる。
飛び起きようとした瞬間、体の上に小さな影が飛び乗ってきた。
「おはよう、『お姫様』」
「……今度は何よ。人が寝てるところに、勝手に入ってきやがって」
目の前のクラッズを睨みつけるが、彼は人を小馬鹿にしたような目つきで見下ろしている。
「そりゃあねえ。今まで何回か金払ってしてもらってるけど、毎回足だの手だのでさ。一回ぐらい、ちゃんとヤらせてくれても
いいんじゃないの?君、フェアリーの中じゃ大きめだし、僕ぐらいならできそうだけど」
「ふざけんな。あたしはあんたらなんかに気安くヤらせるほど、安くないってのよ」
フェアリーが言うと、クラッズはにやりと笑った。
「そう言うと思ってた。でもさ、この状況でどうしようってわけ?忍者がどういうもんか、知らないわけじゃないでしょ?」
「部屋に侵入した瞬間気付かれる程度の忍者なんて、怖くもないね」
そう言ってフェアリーが嘲笑すると、クラッズの目がスッと細くなった。
「生意気な口きくなよ。僕は殺した後でゆっくりやってもいいんだけど?」
「へえ、あたしのこと殺せるつもり?それ、冗談なら笑えないけど、本気なら笑えるね」
「試してみる?」
「やってみなよ」
フェアリーが言い終える前に、クラッズは彼女の首に貫き手を放った。ほぼ同時に、フェアリーは布団を跳ね上げ、相手の視界を遮る。
僅かに、ベッドの沈み方が浅くなる。フェアリーがベッドから降りたことを察知すると、クラッズはおおよその位置を予測し、そこに
手刀を放った。直後、指先に何かが掠ったが、確実な手応えではなかった。
布団を跳ね除けようとした瞬間、不意に視界が開けた。直後、彼はその場に固まってしまう。
視界の先では、フェアリーがカラクリ人形を従え、こちらを睨みつけていた。
「こいつがどんなもんか、知らないわけじゃないでしょ?」
先ほどの彼の口調を真似て、フェアリーは嘲笑する。
「い、いつのまにそんなの…!?」
「あんたら忍者は、その体自体が武器。でもね、あたしら錬金術師は、身の回りにあるもの全てが武器なのよ」
見れば、先程まで視界を遮っていた布団はどこにもない。よくよく室内を見渡せば、机も椅子も何もかも、自分の部屋にある物とは
材質が全て異なっている。
「まさか、部屋に素材仕込んでるとはね…」
「さあ、どうすんのよ、お強い忍者さん?こいつとあたしと、やりあってみる?それとも、尻尾巻いて逃げる?」
「……ちっ!」
クラッズは舌打ちすると、ベッドから軽々と跳躍し、フェアリーの頭上を越えてドアの前に着地した。
「金さえ払えば、すぐ裸になるような女が、高いも安いもないだろうにさ!」
「女と見りゃあモンスターだろうと襲う男が、どれだけ高いと思ってるのやら。挙句に、お仲間はサキュバスとヤッてロストした
らしいじゃん?笑いに人生かけてるってんなら、相当お高い男共だけどねえ」
痛烈な皮肉を返され、クラッズは歯噛みしつつ部屋を後にした。気配が遠ざかるのを確認してから、フェアリーは全身が萎むような
溜め息をつき、ベッドに戻った。
ベッドのマットには、深々と貫き手の突き刺さった跡が残っている。それを見ると、今更ながらに鳥肌が立った。もちろん、あんな
男に負ける気はしないが、一歩間違えばここで首を刎ねられていたのだ。さっき彼の手刀が掠った羽も、僅かに切れてしまっている。
カラクリ人形を分解し、神秘の布をさらに分解し、究極の布を布団に作り直す。ついでにマットの穴も塞ぐと、再びベッドに寝転がる。
「……同じクラッズでも、大違い」
ぽつりと、フェアリーは呟いた。
「種族は同じでも、あんな奴のために、あいつを裏切れるわけないでしょ」
フェアリーは静かに目を瞑った。彼の温もりを思い出し、そこでふと思考が止まる。
―――ああ、でも一回だけ、裏切ったことあったっけな…。
性格の悪い彼女でも、さすがに罪の意識を持つ出来事。だが、その背徳感ゆえに甘美な快感を伴う記憶。
彼女の思考は、まだ全員が一緒だった頃へと遡っていく。それはたったの、二ヶ月前のことだった。
幾度目かの転生を果たし、一行は失った力を戻すため、地下道での修行に励んでいた。以前と違い、別にカリキュラムなどではないため、
一行の雰囲気は軽い。あちこちの地下道で戦い、時に圧勝し、時に苦戦し、そうして最初の頃の思い出をなぞるように戦っていた。
その日も戦いを終え、一行は宿に入った。しかしすぐに寝たりはせず、最初はみんなで一つの部屋に集まり、トランプに興じていた。
「ババ抜きも飽きたし、大富豪やらない?」
「お、いいね!やるか!」
フェルパーが乗り気な声を出すと、ノームがいつもの声で言う。
「ルールはどうしますか。かなりのローカルルールがありますが」
「え?ルールって、8切りと階段と…」
「え?階段って何?ボクのとこは縛りと11下がりと…」
「何だよそれ?縛りは知ってるけど、私のとこだとそれに激縛りってのがあって…」
「激縛りって何よ?階段縛りのこと?それより、階段は何枚から?あたしの方だと階段は二枚からで、階段革命は五枚で…」
「あの、それは後にしましょうよ。えーと、開始はスペードの3を持ってる人ですよね?」
セレスティアが言うと、一行の議論はさらに白熱した。
「え〜、俺のとこはダイヤだったな」
「ボクもダイヤ。で、最初にそれ出さなきゃいけないんだよね」
「そんなルールなかったぞ、私の方は。クラブの3持ってる人が最初で、ジョーカーに勝てるのがそれで…」
「は?ハートの3が最初でジョーカーに勝てるのはスペードの3じゃないの?」
「……本当に、各地でルールが全然違うんですね……収拾がつかなそうです…」
結局、ノームが話をまとめ、開始はスペードの3から。ローカルルールは8切りのみ採用というものに落ち着いた。それを採用したのは、
ノーム曰く、『切り札はあった方がゲームが面白いから』らしい。
ババ抜きでは、ノームが異常な強さを誇っていたが、大富豪では運が絡むだけに、クラッズとフェアリーが非常に強かった。
大抵はこの二人がトップを争ったが、ノームも持ち前の知恵でかなりの活躍を見せていた。手札があまり良くなくとも、
絶妙な駆け引きで、幾度となくトップ争いの二人を脅かしていた。セレスティアも、常に手堅い展開で、トップは取れないまでも、
いつも中間の順位を取っていた。
最下位争いは、ほぼ毎回フェルパーとドワーフであった。致命的に運のないフェルパーに、絶望的に考えが足りないドワーフは、
ある意味でとてもいいライバルだった。
手札で最強のカードが10だとフェルパーが泣けば、考えなしにカードを出したドワーフが、残り二枚が3と5だと言って嘆く。
ノームやセレスティアが不憫に思い、革命を起こせば、フェアリーがニヤニヤしながら革命返しを起こす。
そんな展開が続いて、一度だけフェアリーがフェルパーと最下位争いをしたことがあった。
「うーん、あたしは残り三枚か」
手札を眺め、フェアリーが呟く。フェルパーは残りの一枚を握り締め、尻尾をパタパタ動かしつつ、フェアリーの一挙一動を
じっくりと見ている。
「う〜〜〜〜ん……ここはとりあえず〜……8捨てておこうかな」
頭を抱えつつ、フェアリーは8を出し、そのままカードを切った。
「次は……う〜ん…………悩むよねえ、こういう時ってさ…」
「いいから早く出せって。出してみるまでわかんねえんだから」
そわそわしているところを見ると、フェルパーの最後の手札はそこそこいい物らしかった。
「う〜〜〜〜〜〜ん…………それじゃ、こっちを……うーん、そうだなあ、こっちを出しておこうかなあ」
頭を抱えつつ、フェアリーはスッとカードを出した。
そこには、8と書かれていた。
「それで〜……これは当然切れるからぁ〜……残りを出して……っと、はい終わり」
最後に出された4を見て、フェルパーはしばし固まっていた。
「フェアリー、ひどいなあ。スパッと止め刺してあげなよ」
「うっひひひ、こういうのが楽しいんでしょ。フェルパー、残念だったねぇ〜」
フェルパーはどんよりした目で、フェアリーを見つめた。
「悩む必要ねえじゃねえか……悩む必要ねえじゃねえか…!」
「あ、ごめんねぇ〜、期待させちゃったんだねぇ〜。あたし、全然そんなつもりなくってさぁ〜」
「嘘つくなああぁぁ!!!」
直後、フェルパーはフェアリーを捕まえ、激しく肩を揺さぶった。
「うわっ……ちょっ……や、やめっ…!」
「ならせめて、期待させるなよおぉぉ!!さっさと止め刺せよおおぉぉ!!」
「おいおい、フェルパー!落ち着け!そんなに怒るな!フェアリーが死ぬ!」
「八回連続最下位で……やっと脱出できると思ったのに……そう思ったのに…!う、うぅぅ…!」
フェルパーは本気で泣いていた。全員、そこまで真剣にやらなくても、と心の中で呆れ返っていた。
「わ、わかったってば…!あたしが悪かったから……ごめんって…!あと、もう揺すらないで…!き、気持ち悪い…!」
結局、この一件で大富豪はおしまいとなり、あとはフェルパーが落ち着いてから座談会となった。
色々な話をし、やがて入学当初の話になってきたとき、クラッズが言った。
「あのさ、みんな今だから言えるっていうの、あるよね?ボク達がパーティ組むことになった時さ、みんな最初どう思ったか、
正直に話してみない?」
「お、面白そうだなー。私もみんなの話、聞いてみたいな」
「俺も俺も」
「面白そうじゃん。あたしは大体何言われるか、想像つくけどさ」
「いいですね。話してみましょうか」
「では、誰から話しますか」
「いつもフェルパーからが多いから、たまには後衛から回ってみない?つーわけで、あんたからよろしく」
特に誰も反対しなかったので、順番はそれで決まった。
「わかりました。では、僕からですね。僕は最初、誰とでも付き合っていける自信はありました。事実、フェルパーさんにドワーフさん、
クラッズさんにセレスティアは、気の合う仲間だと思えました。しかし、そこで初めて、僕は性格が合わないことの辛さを知りました」
フェアリーは苦笑いとも嘲笑とも取れない笑顔で、ノームの話を聞いている。
「考えがまったく違い、全てにおいて正反対の行動をするフェアリーさんは、正直なところ苦手でした。ですが、他のみんなが
いたおかげで、僕はこのパーティに居続けることが出来ました」
「まるで、あたしがとんでもなく不快な存在みたいな言い草ね」
「過去の話です。では、僕は以上です」
フェアリーの非難をさらりとかわし、ノームはセレスティアに水を向けた。
「じゃ、わたくしの番ですね。うーん、わたくしも、ノームさんに近いです。皆さんいい人で……でも、フェアリーさんだけは、
本当に喧嘩が絶えなかったですね。どんなこともずばずば言っちゃって、いちいち皮肉とか言ってきて、本当に怒りたくなる人でした」
「あんたらにその言葉、そのままお返しするよ」
「それは、フェアリーさんの番で言ってください。では、わたくしもこれでおしまいです」
次は当のフェアリーの番である。彼女は一度、全員の顔を見回した。
「正直なところね、失敗したと思ったよ」
第一声がそれで、ノームを除く全員が苦笑いを浮かべた。
「偽善者野郎が二人もいて、やたらにあたしらを嫌う毛むくじゃらがいて、ほんっとに居心地悪かったね。でも、フェルパーと
クラッズだけはよかったかな」
そう言うと、フェアリーはクラッズの顔を眺め、そしてフェルパーの顔をしげしげと眺めた。
「……そういえば、あたし最初の頃はフェルパーの方が好きだったなあ」
「え!?」
「はっ!?」
思わぬ告白に、やはりノームを除く全員が目を丸くする。
「だってほら、耳と尻尾以外、ヒューマンそっくりじゃん?」
「お前の基準は何でもヒューマンかよ」
「いいでしょー、ヒューマンは永遠の憧れなんだから!まあとにかく、そのあんたはドワーフとくっついちゃうし、クラッズも
いい奴だったしで、こっちにしたけどさ。まあとにかく、あたしがここに留まってんのは、あんたら二人のおかげってとこね」
「そういえば、あんたってフェルパーにぶん殴られても切れないよな…」
ドワーフがそう呟くと、一行はそれぞれの記憶を思い返した。確かに、ししゃもで頭を殴られようと、肩を掴んで揺さぶられようと、
激怒するようなことは一度もなかった。それどころか、さっきは彼に謝っている。
「ああ、言われてみれば。ま、いいじゃん。次クラッズね」
「え、それ流すとこ?まあいいや。そうだなー、ボクは全員、うまくやっていけると思ったかな。セレスティアとノームはいい人だし、
ドワーフは話しやすかったしさ。フェアリーは、あの頃学科一緒だったしね。あ、でもフェルパーは、話しかけてもあんまり反応なくて、
ちょっと苦手だったかも。笑いかけても、にこりともしなくってさ。辛かったのはそれくらいかなー。じゃ、次ドワーフで」
「私か。私は、そうだなあ。フェアリーってのは、あんまり好きじゃなかったけど、あんたは言いたいことはっきり言うから、
そこは気に入ってたな。つっても、やっぱりあんまり好きじゃなかったけど。フェルパーは、言うまでもないな」
隣の彼を見つめ、ドワーフは楽しげに笑った。
「男の癖にうじうじしててさ、頼りないわ見てて腹立つわ、肩を並べて戦うなんて想像も出来なかったなあ……あ、考えてみたら、
私も最初の頃はクラッズの方が好きだったな」
「ドワーフさんとフェアリーさん、好きな人が逆でもおかしくなかったってことなんですね」
セレスティアが言うと、彼等は自分の恋人を見つめ、そして可能性の上での恋人を見つめた。
「でもサイズがダメだね。あたし、フェルパーとなんかヤッたら死ぬわ」
「いきなりそこに持ってくなよ」
そう言うフェルパーの顔は、既に真っ赤になっている。
「それにしても、クラッズさんって全員から好かれてたんですね」
「話しやすいもんなー。じゃ、最後フェルパーな」
フェルパーは頭をポリポリと掻き、少し話し辛そうに口を開いた。
「俺、クラッズ苦手だった」
「あれ…」
セレスティアは、少し困った笑顔を浮かべた。
「何つーのかな。初対面なのに、ずかずか人の領域に踏み込んでくるって言うか、馴れ馴れしいというか、厚かましいというか…」
「あ、あはは……ボク、そんな風に思われてたんだ……ちょっとショック」
「いやまあ、慣れればそれのおかげで話しやすいんだけど、俺みたいな人見知りにはそう映るってことな。あと、ドワーフは……ま、
言うまでもないよな。いきなり怒鳴られたし、声でっかいし、すんげえ苦手だった。そういや、そんな時にはフェアリーがよく
庇ってくれたっけな」
「あー、そんなこともあったね。そりゃまあ、大切なヒューマン似の、数少ない仲良くなれそうな奴がいなくなっちゃ困るし」
「それでも、あれは嬉しかったんだぜ。あとは、セレスティアとノームは付き合いやすかったな。人がいいし、必要以上に
干渉してこないしさ。俺も、大体こんなところかな」
全員が話し終わると、一行はそれぞれの顔を見回した。予想通りだった答えもあれば、意外な答えもあった。今でも耳に痛い言葉も
あったし、そんなことを思われていたのかとショックだった言葉もある。
だが、そういう事をはっきり言ったところで、もはやヒビが入るような関係ではない。それを考えると、よくもここまでになったと、
それぞれ感慨深いものがあった。
その後も少し話をし、そろそろ寝ようというところになって、またもクラッズが言った。
「あのさ、たまにはくじ引きで部屋決めない?大体、男部屋と女部屋とか、カップル同士とかでいること多いからさ」
「ん、それもそうだな。今日は二人部屋三つだから、面白いかもね」
反対する者もいなかったので、話はまたも即座に決まった。手頃なくじがなかったので、トランプのJ、Q、Kを二枚ずつ抜き出し、
それをよく切って一枚ずつ引く。
結果、ノームとドワーフ、セレスティアとクラッズ、そしてフェルパーとフェアリーという部屋割りが出来上がった。
「フェルパー、あの……ほんとにいいのか?」
「フェアリー、フェルパーに変なことしちゃダメだよ?」
さっきの話があったからか、ドワーフとクラッズは本気で心配そうだった。
「何よー!あたしが誰彼構わず手ぇ出すとでも思ってるわけ!?」
「平気だってば。何もしないから、安心しろって」
フェルパーは気にする様子もなく笑い、フェアリーはクラッズに食って掛かる。さすがにそれ以上言うこともできず、二人は渋々
納得した。結局、部屋割りはそれで確定し、皆それぞれの部屋へと向かった。
部屋に入ると、フェアリーはベッドに飛び乗り、フェルパーはその隣に腰を下ろした。
「ん〜、あんたと一緒の部屋って初めてだね」
「そうだなー。そもそも、大体は一人部屋だしな」
フェルパーを見上げながら、フェアリーは彼の膝の上に乗った。
「やっぱ、クラッズと違ってでっかいね」
「そりゃあ種族が違うからな。クラッズと同じくらいじゃ、問題だよ」
「ほんとにね」
フェアリーの目が、フェルパーの顔から胸へ、胸から腹へ、腹から腰へと下がっていき、そこで止まる。その気配を察知し、
フェルパーの顔から笑いが消えた。
「……ほんと、でっかいねえ」
「お、おい、何考えてる!?」
「そりゃ、ねえ?せっかく一緒になったのに、試してみない手はないでしょ?」
「お前、さっきクラッズに何て言ったんだよ!?」
「何よ、あんたもあたしが誰彼構わず手ぇ出すと思ってるわけ!?」
「じゃあ今の台詞はなんだ!?」
フェルパーが言うと、フェアリーは少し顔を赤くして顔を逸らした。
「だからっ……さっきも言ったでしょ?あたし、あんたが好きだったのに…」
「え……で、でも、その、ほら、それはもう昔の話…」
「そうだね、ヒューマン似のあんたが好きだったのは昔の話。今は、ヒューマンと違ってたって、あんただから好き」
「おまっ……本気で言ってるなそれ!?よせ、やめろ!俺にはドワーフがいるし、お前にもクラッズがいるだろ!?」
「好きな人が一人じゃなきゃいけないなんて、誰が決めたのよー!?」
話が平行線になることはすぐにわかった。直後、フェルパーはその場を飛びのき、懐に手を突っ込んだ。フェアリーが後ろに飛んだ瞬間、
目の前をししゃもが通り過ぎる。
「避けた!?お前、本気かよ!?」
「あんた相手に、手なんか抜けないっての」
その彼に向かって、フェアリーは魔法の詠唱を始めた。それを見たフェルパーも一瞬遅れて詠唱を始めるが、さすがにフェアリーの
素早さには敵わなかった。
「スリプズ!」
途端に、フェルパーはぐらりとよろめき、膝に手をついた。そして、とろんとした目でフェアリーを見上げ、何か言おうと口を開くが、
言葉が出る前に、その目がフッと閉じられた。
ベッドに倒れたフェルパーを見て、フェアリーは軽く溜め息をついた。
「ふー、危なかった。やっぱり強いなあ、こいつ」
言いながら、フェアリーは彼を転がし、仰向けに寝かせる。さすがに魔法で眠らされただけあって、フェルパーは気付かずに安らかな
寝息を立てている。
そんな彼を期待に満ちた目で見つめつつ、フェアリーはズボンを脱がせにかかる。いつもクラッズを相手にしているため、その手際は
非常にいい。尻尾に多少手間取ったものの、あっという間にベルトを外してズボンを下ろし、さらに下着に手をかける。
一瞬溜めを作り、息を吸って、えいっとばかりに引き下ろす。
「おお……やっぱりでっかいなあ」
露わになったそこに、フェアリーはしばし見入っていた。どう見ても、クラッズのモノより、二周り以上は大きい。
少し興奮気味に息をつき、そっと手を伸ばす。指先が触れると、フェルパーは微かに呻いた。しかし、起きる気配はない。
優しく握り、少しずつ前後に動かす。最初は彼が起きないように、注意深く扱いていたが、だんだんとその動きは速くなる。
それに従い、フェルパーのそこも反応を示し、徐々に大きく熱く屹立していく。
「うわ……こんなになるんだ。すごい…」
完全に大きくなったところで手を止め、フェアリーはそれをまじまじと見つめる。フェルパーは何だか寝苦しそうな顔になっているが、
起きるような気配はない。
いつも見ているものより、遥かに大きい。しかも、相手は他でもないフェルパーである。
自然と、鼓動が速くなり、顔が紅潮する。それに、体の芯の部分が、じんと疼くような感覚。
フェアリーはそっと、スカートに手をかけた。ショーツと一緒にそれを脱ぎ捨て、自身の秘部をそっと撫でる。
「んっ…!」
僅かながら、そこは既に湿り気を帯びている。指先の感覚を確かめると、彼女は何かを期待するような目で笑った。
「できるかな…?」
フェルパーの腰に跨り、モノを掴んで秘所に軽く押し当てる。少し足を開き、一度深呼吸すると、そこにグッと体重をかけてみた。
が、すぐにフェアリーは顔をしかめ、腰を浮かせた。
「いったたたた…!さすがに無理かぁ……そりゃ、これじゃ自分の足でも入らない限り、無理そうだしね…」
入れることを諦め、フェアリーはがっかりした顔でフェルパーから離れる。とはいえ、その目には相変わらず、いたずらっぽい光が
宿っている。
フェルパーの足の間に入り込み、そっと跪く。そして彼のモノを掴み、抱き寄せるように掴むと、優しく舌を這わせた。
途端に、それがビクンと震え、フェルパーが呻き声を上げる。慌ててスリプズをかけ直すと、フェルパーはまた安らかな寝息を
立て始めた。
ホッと息をつき、気を取り直して再びそれを舐め始める。
彼女のそれは、普段クラッズにするよりも、遥かに丁寧だった。
舌先で雁首をなぞり、先端に軽くキスをする。舌全体を使ってねっとりと舐め上げたかと思えば、舌先だけで突付くように舐める。
さらに、先程汚してしまった部分についた自身の愛液を、丁寧に舐め取る。
献身的で、愛情に溢れたその行為に、フェアリーは夢中になっていた。いつしか上着もはだけ、自身の体に擦り付けるようにして、
彼のモノを扱き始めている。
途中、何度もフェルパーは目を覚ましそうになった。その都度、フェアリーはスリプズをかけ直し、彼が起きないように細心の注意を
払っていた。
体で擦り上げ、舌で丁寧に刺激する。小さな舌を鈴口に入れ、それをほじるように舐め、手では愛おしむように撫でる。
「う……ううん…………うぅ…」
フェルパーの顔が歪み、何かを堪えるような呻き声が上がる。同時に、掴んでいる彼のモノが、さらに硬くなった。
「あ、出そうなんだ。全部、飲んであげる」
聞こえていないと知りつつ言うと、フェアリーはさらに強く扱きつつ、先端部分を口に含んだ。
同時に、彼のモノがビクンと脈打ち、熱い液体が勢いよく喉の奥にぶつかった。むせそうになりつつも何とか堪え、フェアリーは
口の中に注ぎ込まれる精液の感触を味わっていた。
―――う……こんなに多いなんて…。
ただ、クラッズと比べると勢いもあり、一度に出る量も多く、口の中に溜めておけるのはそろそろ限界だった。もうこれ以上は
無理だと思い、口を離そうとしたところで、ようやく勢いが衰え、そして止まった。
頬が膨らむほどに注ぎ込まれ、正直なところ、フェアリーは非常に困っていた。だが、下手に吐き出すわけにもいかず、何よりこれは
フェルパーが出したものなのだ。吐き捨てるなど、できるわけがない。
大きく息をつくと、フェアリーは目を瞑った。ややあって、彼女の喉がごくり、ごくりと大きな音を立て、二度大きく動いた。
「ん……ぷはっ!すごい量……それに、すっごく濃かったぁ…」
蕩けそうな目でフェルパーを見つめ、フェアリーはうっとりと呟いた。
「今の、あたしの中に出してもらえたら、すっごく気持ちよさそうなのに……ま、しょうがないか」
ともかくも、この事があとでばれてはまずい。フェアリーはハンカチを濡らし、フェルパーのそこを丁寧に拭き、さらにタオルで
水気を取り、ズボンを元通り穿かせ、自身もスカートを穿き直した。
もう寝ようと思い、最後の駄目押しとしてフェルパーにスリプズをかけてから、フェアリーはふと考えた。
「ま……これぐらいはいいよね」
そう呟くと、フェアリーはまた上着をはだけ、フェルパーの服も同じようにはだけさせた。そして、安からな寝息を立てる彼の腹に、
そっと胸を重ねる。
「あったかい…」
幸せそうに呟き、フェアリーは目を閉じた。が、すぐにまた目を開けると、彼の手を持ち上げ、自分を抱き締めさせるように、
背中へと乗せた。
「えへへ、ちょっとだけ恋人気分。……明日には醒める、夢だけどね」
今度こそ、フェアリーは目を閉じた。肌に直接伝わる彼の温もりが、とても幸せだった。
翌朝、フェルパーは飛び起きるなり、全身の匂いを嗅ぎ始めた。腕の匂いを嗅ぎ、足の匂いを嗅ぎ、しまいには股間にまで顔を近づけ、
匂いを嗅ぎ始めたのにはフェアリーも驚いた。
「うわ、さすが猫。体柔らかいねー。あんた、自分でフェラできるじゃん」
「しねえよっ!大体お前は、なんでいつもそっちに話を持っていくんだ!?」
「自分に正直だからね」
「なるほど」
妙に納得してから、フェルパーは怪訝そうな顔で、もう一度匂いを確かめる。
「にしても、ほんとに何もしてねえのか?スリプズまで食らわせといて…」
「何かして、ばれたら嫌じゃん。あんたならまだしも、ドワーフとかクラッズにばれたら、あたし殺されそうだし」
「……まあ、上だけ裸で寝てたぐらいなら、怒られもしねえか…」
結局、特に変な匂いがなかったために納得し、フェルパーはそれ以上何も言わなかった。
部屋を出て、全員が集まると、ドワーフは真っ先にフェルパーの匂いを嗅ぎ始めた。
「やっぱ、お前もそうくるか」
フェルパーが笑いながら言うと、ドワーフはかなり真剣な目を向けた。
「ほんっとに、何もなかったんだろうな!?おいフェアリー、ほんとに何もしてないよな!?」
「だからしてないってば、しつこいなあ。ちょっと上で寝させてもらったけどさ」
「……それぐらいなら、まあ、いっか」
そうは言いつつ、やはり疑わしいらしく、ドワーフはしつこくフェルパーの匂いを嗅いでいた。そんな姿を見て、フェアリーは心の中で
溜め息をついていた。
―――やっぱ、似た者同士でお似合いだなあ。あたしよりは、ドワーフの方があいつには合う、か…。
ちらりと、横目でクラッズを見る。
「ねえフェアリー、ほんとに何にもしてないの?」
「何よ、あんたまで疑うわけ?」
「いや、その……フェアリーにしては、珍しいなってさ。絶対何かすると思ったのに」
「あたしにはあんたがいるしねー」
半ば自分に言い聞かせるように、フェアリーは言った。
―――あたしとフェルパーよりは、あたしとクラッズの方が似合うし……やっぱり、こいつの方が何かとお似合いか!
そう思うと、ようやくすっきりした。これまでは、フェルパーに対する恋心が燻っていたが、これでようやく踏ん切りがついた。
それに、体格が違いすぎて何かと制約の多いフェルパーより、やはりクラッズ相手の方が付き合いやすい。
「それより、あんたこそノームと何かなかったの〜?」
「なっ!?ば、馬鹿言うな!どうして私がそんなこと!?」
「だってね〜?あんただって、ノームは嫌いじゃないでしょ〜?」
「その好きは違うだろ!!ぶん殴るぞてめえ!!」
「やめろドワーフ」
「フェアリーやめなって」
いつもの光景。いつもの雰囲気。
それは確かに、あの時までは普通にあるものだった。変わらないはずの日常。当たり前の風景。
その日も、その次の日も、これからもずっと、続いていくものだと信じていた。
―――ま、ばれてなきゃやってないのと同じだし、もう二ヶ月前の話だし、いいでしょ。時効時効。
クラッズが同じことをしたら絶対に許さないであろうが、フェアリーは実に自分勝手にそう思っていた。
半分眠りに落ちつつ、フェアリーは最後に思考を巡らせた。
―――絶対、取り戻さなきゃ。どんなことしてでも。
そう決意を固め、睡魔に身を委ねる。
この時、悲愴かつ強固で、そして邪悪な決意が、はっきりと彼女の中で固まっていた。
以上、今回分終了。
大富豪のルール、8切りとか果たして普通に通じるんだろうか…。
それではこの辺で。
ディモレア、というよりディモレアさん家の息子さんが主人公になってるけど続編投下。
エロパロ板らしく、続けばエロシーンも出て来る筈。
パルタクス学園も学校である以上、委員会制度が存在する。
学生自治を担当する生徒会を筆頭に、図書室の管理を担当する図書委員会、校医であるジョルー先生の補佐や時には治療や全滅したパーティの回収なども行う保健委員会、
校内の秩序維持を担当する風紀委員会…エトセトラ、エトセトラ。
しかし、各委員会の生徒は一癖も二癖もある生徒ばかり故か日々問題を起こしまくる為に教師の悩みの種であり、また委員会を担当する生徒の中で数少ない良識ある生徒達のストレスの元になっている。
だが、問題を起こさず、波風があまり立っていない唯一の委員会が存在する。それが美化委員会。校内美化を担当する他の委員会に比べればイマイチ目立たない委員会である。
放課後、美化委員会の主な集合場所として使われている実験室では今日も美化委員会が活動を初めていた。
「それでは、今日の活動を始めます」
美化委員長は神女学科のセレスティアの女子で、穏やかな人柄で男女問わず人気が高い事で有名だが彼女自身は恋愛に興味が薄いのか浮いた話はあまりない。
「出席を取る。……空席が二つあるな。誰か理由を知ってるか?」
その美化委員長を補佐する副委員長は意外なことに錬金術士学科のディアボロスの少年で、この物語の主人公である。そう、ディモレアさん家の一人息子の彼である。
授業参観でディモレアが姿を現しはしたものの、彼の母親である事は特にバレもしなかったので幸いにして彼の秘密は守られている。唯一知っているルームメイトも黙ったままなので流石である。
「ドワーフはザスキア氷河に行ったそうです」
「こっちのフェルパーは確かハウラー地下道に行くってさっき聞きました」
「……二人とも迷宮探索か。なら仕方ないな」
「でも今日は委員会があるって伝えてあるはずですよね? 感心できません」
ディアボロスの言葉に、委員長が口を開く。
「まぁまぁ、先輩。彼らだってパーティの仲間がいるんですから。他のパーティメンバーを無視して自分だけ学校で仕事する訳にも行かないでしょう」
「でも……今日は音楽室の掃除があるんですよ?」
「大丈夫ですよ、先輩」
ディアボロスはニカッと笑う。
「俺が三人分働きますから」
母親であるディモレアも実家でともに生活しているライフゴーレム達も家事全般が苦手故か、その全てを一手に引き受けてきたディアボロスである。
掃除など、彼にとっては寝てても出来る特技なのだ。
「……そうですか。本当に、いつも頼りになりますね。初めて会った時はディアボロスなんかで大丈夫かなって、失礼ながらそんな事思ってましたけど、本当に助かります」
「いや、そ、そんな……先輩のお陰です。先輩は、俺みたいな奴にもちゃんと接してくれてますから」
委員長が微笑みながらそう告げると、ディアボロスは思わず顔を真っ赤にする。
同時に、各委員達はニヤニヤした視線を彼に向け、彼は各委員達から視線をそらす。
「ちょ……皆さん、なにニヤニヤしてるんですか! 活動開始です、活動!」
委員長の号令に、各委員は慌てて支度を始める。
だがしかし、ディアボロスはまだ視線をそらしたままだった。
「ほら、あなたも」
「すいません、委員長」
ディアボロスは立ち上がり、慌てて準備を開始した。
音楽室の掃除を終えて、ディアボロスは図書室へと向かった。
寮の部屋に戻る前に調べものをしておきたかったからだ。ただしそれは勉強に関することではない。
「………さて、と」
カウンターを素通り、本棚へと向かう。
あたりをつけて本を取る前に、周囲を確認。誰もいないことを確認してから本を取ろうとして、急に肩を叩かれる。
「やっほー」
「……よう、サラ」
そう挨拶すると、図書委員であり同学年の同級生であるサラは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「で、キミは何の本を借りにきたの?」
「あ、いや、別に……」
手にしていた『気が利かない竜魔メンズの為の恋愛講座』を本棚に戻しつつ、そう答えたがサラは勿論、そのタイトルを見逃したりはしなかった。
「『気が利かない竜魔メンズの為の恋愛講座』……そっか、ディアボロスでも男の子だもんねぇ」
「べ、別にいいだろ。俺がこの本を借りようが、サラにはあんまり関係ないだろ」
「ふぅん。そう思う?」
サラは怪しい微笑みを浮かべている…。
「ふふふ…キミが好きな子は誰か教えてほしいなぁ、なんて思ってないよ?」
口に出してるって事は聞きたいんじゃないか、とディアボロスは思ったが同時にある事を思い出す。
サラの持つノートは様々な人の弱みを書かれている、という事で有名だ。
「……知りたいのか?」
「うん」
「教えなかったらどうする?」
「キミの秘密をね、ゼイフェアのニーナさんと、後、担任のユーノ先生に教えちゃう」
ディアボロスは一瞬でサラが言う秘密の内容を察知した。要は自分の母親の事である。
ユーノ先生ならまだしもあのニーナさんにバラされでもしたら確実に殺される。ニーナさんはそういう人だ。
「………悪魔だ」
「キミが悪魔だけど…で。どうするの?」
サラはニマニマしながら口を開いたので、ディアボロスは諦めてため息をついた。
「……委員長」
「え?」
「俺が好きなのは、美化委員長だ……先輩だ」
「…………あ、やっぱりそうなんだ。結構噂になってるけど、本当なんだ」
既に噂になっていたのか、とディアボロスは言いかけたがやめる。流石に口にしたくない。
ディアボロスは頭をかきつつ、口を開く。
「……この本を読もうとしたのもそれが理由だ……」
「うん。ディアボロスって口が悪い人多いからね。解るよ。でもさ……そんなマニュアル通りの言葉で話して、先輩喜ぶかな?」
「…………」
イマイチ言葉に詰まる。まぁ、マニュアルと言う前例は先人が記した偉大な事だから違和感はないだろう。
だがしかし、それで喜ぶかどうかと聞かれるとまた別問題だ。
「……喜ばないよね。だからさ、キミの言葉で言った方がいいと思うよ? 告白するにしても」
「…………それ以前の問題でだな」
「告白する勇気がない?」
「…………」
図星。
新聞部サラ…恐ろしい子!
「大丈夫だよ! あたしに任せて!」
「余計不安だ」
「ディアボロスの恋愛の達人を呼んで来るから!」
「誰だよ!」
そんな奴がパルタクス学園どころかそもそも存在そのものが怪しいが。
「と、いうことで恋愛の達人、我らが番長を呼んできました!」
「誰が達人や! ちゃうから! 誤解招く発言するなっちゅーねん!」
十分後、パルタクス学園の番長ことタークを文字通り引きずってきたサラは笑いながら親指を立てた。
番長が否定している所を見ると、おそらく恋愛の達人なんてのは嘘に違いない。
「まぁまぁ、ここは可愛い後輩の為を思って番長♪」
「ワイの記憶が確かやならサラもこいつもワイと同級だった筈やけど……」
番長の割に実は最上級学年じゃないターク。意外や意外である。
「やかましい! 兄貴がいるからワイらの上はマトモなんや!」
常に暴走している風紀委員長と世界で一番危険な生徒会副会長がいるという話は嘘なのだろうか。
「……あいつらを一緒にすんなや」
番長はため息をつくと、ディアボロスに視線を向ける。
「で、こいつは何したいんや?」
「美化委員長に告白したいけど勇気がないそうです」
「へぇ……あの攻略不能の委員長越えに挑むんかいな………ちなみに美化委員長にフラれた男子の数は既に三十の大台に乗っ取るで」
「多っ!」
と、いうより番長はなんでそんな事を知っているのかが不思議だ。
「で、番長のタークさん。まずどうします?」
「そうやなぁ……好感度を上げるにはまず本人から好感を持たれるのは一番いいんや」
「美化委員長の彼に対する評価は『頼りに出来る後輩』だね」
「……なんでそんな事知ってんねん」
「乙女の秘密」
サラは何があっても敵に回さないようにしよう、とディアボロスは思った。下手に敵にしようものならいろんな意味で抹殺されかねない。
「ふぅむ……好感そのものは持たれてるんやなぁ。種族相性最悪なのに」
「そうだね。でも、そんな恋ってなんかいいよね。そう、なんていうから超えにくい壁を踏み越えてやる!って感じの」
「そうやなぁ……おっと、そうやった。なら決まりやな。お前さんと美化委員長をくっつける大作戦や!」
「ファイト、おー!」
勝手に二人で盛り上がり始めた…。しかしこの場で席を離れる訳にはいかないようだ。
不安を感じる…。大丈夫なのか、俺?
今日は学生寮ではなく、実家に帰ることを決めたのは勝手に盛り上がるサラと番長のせいでもあるだろう。
どうせ二人の事だ、翌日から強烈な行動力を示してくるに違いない。そうすれば変なことに巻き込まれるのは確実だ。何せサラと番長である。
ハウラー地下道中央に隠された隠し通路から外に出て、ひたすら歩くこと数十分。
ディアボロスに浮遊能力が無いことが悲しくなるぐらい遠い道を歩き続けて、ようやく闇の魔導師ディモレアさんの家が見えて来る。要は彼の実家である。
「ただいまー」
ディアボロスがそう言いつつ玄関を開けると、いつもディモレアの一足分しか無い筈の靴が何足もある。
はて、何か嫌な予感がする。
「おー、ようやく帰ってきやがったな。遅いぞ!」
「どこを寄り道してたのか理解に苦しみますね」
玄関に顔を出したティラとケラトにそう告げられ、ディアボロスはため息をつく。
「んな事言っても今日帰るとは俺一言も言ってねぇぞ……ティラ姉さん、なんか靴多く無い?」
「ん? ああ、お前の友達が来てんだよ」
「友達?」
「おう。今はディモレア様となんか盛り上がってるけど」
ティラの後に続き、ディアボロスが奥へと向かうと同時に笑い声が起こった。
「ちょっと、遅いわよ〜」
「おお、主賓がようやく到着か」
「ホンマにお前の母さんディモレアなんやなぁ…しっかし、気さくな人や」
「いいお母さんだねぇ」
「……何やってんですか、生徒会長に番長! ついでにサラも!」
ディアボロスが帰るより先にタークとサラが先回りしてた上に生徒会長のマクスターまでくっついてくるとは。どうやら今日は逃げられそうに無いようだ…。
「なんだ、後輩の家に遊びに来ただけだろう? 別におかしくない」
マクスターの言葉にディアボロスは言葉を失い、諦めて自分の席に座る。
同時に、彼の背中をライフゴーレム姉妹の末っ子、マメーンが叩いた。
「なんだよ、マメーン姉さん」
「……晩ご飯。アロサ姉様のご飯、そろそろ飽きてきたから」
「マメーン、それは喧嘩売ってる?」
「アロサ、落ち着きないっての……そうねー。なんかちゃちゃっと作ってー。アタシは焼きそば食べたいー」
「……材料あるなら作るけどよ……の、前に母さん。台所の掃除しろ! 前に来た時カビ取りしたのにまたカビ生えてるじゃねーか!」
「アロサが作った後に片付けないのよ」
「アロサ姉さんは掃除が苦手だからなぁ……本当になんで皆、家事が苦手なんだよ。十三人もいて」
「悪うござんした……」
「トロオ姉さん、いきなり後ろに立たないで! 怖いから!」
流石ライフゴーレム軍団最強の姉、恐るべしである。
「あ、あの私手伝うから……」
「いや、スティラ姉さんは席に座ってていいから。うん」
「手伝うどころか被害を拡大するからな」
「ティラ姉様、ひどい……」
「悪い、スティラ姉さん。俺も否定できない」
「そんなに酷いんかいな……」
「ライフゴーレム姉妹で一番のドジっ娘萌えだ…なぁ、スティラさん。このネコミミをつけないか?」
「サラ、番長! そこで怪しい目つきしてる生徒会長を止めてくれ!」
サラと番長がネコミミを片手にスティラへと迫る生徒会長にシャイニングウィザードを浴びせるのを確認しつつ、ディアボロスは台所へと戻った。
さて、料理を始めよう。その前に片付けだ。
片付けを終え、有り合わせの材料で文字通り十八人分もの焼きそばを作るディアボロスの後ろでライフゴーレムやディモレア達は盛り上がっているのか、時折笑い声が聞こえて来る。
「よーし、焼きそば六人前上がりっと。誰か運びに来てくれー」
「はいはーい」
即座に立ち上がってやってきたのはドリグナである。
「じゃあドリグナ姉さん、よろしく」
「あいよっと。あのさぁ……好きな人が出来たってホント?」
いきなり核心をついてきた。
「……え?」
「いやぁ、あの子達から聞いてさ」
「なんですってぇ!? あんた、ちょっとこっち来なさい。母さんは初耳よ。どこの子?」
ディモレアがディアボロスに手招きを始め、ついでにティラやトロオも何故か何かを期待するような視線でディアボロスを見つめる。
「小さい頃は『大きくなったらティラお姉ちゃんのお婿さんになるー』とか言ってたのに、お前もとうとうそんなお年頃に……」
「言ってねぇよ!」
「そうそう。『アパト姉ちゃん、だ〜いすき』って言ってた時期が一番可愛かったよね」
「言うか!」
「………お前、ライフゴーレムに欲情してたんかいな?」
「番長、それは誤解だ」
「えー! だって私が寝ている時に『マメーンお姉ちゃん、眠れないんだそばにいて』って言ってたのに……」
「何時の話だよ!」
どうやら哀れなディアボロスの少年の夜はまだまだ長いようだ。
彼の恋は果たしてどうなる?
つづく
投下終了。
恋愛事情はまだまだ続きまっせ。
>>178 乙です
出てきたルールは全部わかったぜ
こっちじゃスペ3持ちから始めるなー
>>184 乙
今更だけどライフゴーレムってほとんど出てきてなかったんだよな
新鮮でした
しかし俺の嫁たるアロサさんは本来武士言葉なんだぜ…
8で強制的に切れる8切りと、
連番で同時に出せる(階段ってこれ?)のは知ってるなぁ
サイズ違うと精液の量も相対的にすごい量になるんだな……
人によってブツの味は千差万別なんだろうが
口いっぱいにほおばってしかも飲むフェアリーさんマジエロ。
>>184 乙。
あぁ、12姉妹とまた会いたくなってきた。
トロオ以外は図鑑でしか見れなくなるのは生殺しじゃー
>>178 乙です、まさかモブレイパーまで出て来るとはw
そしてクラPTの戦闘力が目茶苦茶凄かったという驚き
>>184 こちらも乙です
ディア男は苦労人優男ってイメージ多いのだろうかw
大富豪かぁ。
学生時代のルールは
縛り
固め
縛り固め
8切り
階段革命
4枚革命
産業革命
こんな感じだったなぁ。
189 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 18:01:49 ID:+x+kNScb
>>178 乙です。ホントに何でも出てきますね。
予想すらして無かったPTが・・・。
なんだかフェアリーに以前見たデーモンズドワーフの影が……
>>184 ライフゴーレムは爆裂拳のせいであんまり見て無かったなぁ。
頑張れディア男。
>>188 そんなにあるのか!?
俺のガッコは四枚革命と7流れだけだったぞ。
ちなみに7流れは8切り同じ。
7流れなんて初めて聞いたわw
実際やると11バックとかもほとんど通じないんだろうなあ
10飛びは?
下がりはQじゃなかったけかな?
194 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 01:38:07 ID:+rAhJpwf
公式HP更新されてたんだが、
プロモーションムービー2のラストのバルクルスに胸騒ぎがするのは俺だけか?
バ ル ク ル ス www
196 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 10:54:10 ID:+rAhJpwf
しまった!!
バルクルスじゃなくてバルタクスだ!
惜しい、それも違うw
保管庫ってもう死んでるの?
このスレ初めて見て面白かったから過去作品見たいんだけど・・・。
↑
自己解決しました。
失礼しました。
このゲームを起動するたびに思うんだが、何故におにゃのこが全員超ミニスカ&絶対領域持ちなんだ? キャラデザやってる人の趣味?
その人とはうまい酒が呑めそうだよ
>>201 その人は今頃血を吐いて、酒が喉を通らなくなっている頃ではあるまいか?
いや、原画はさすがにもう終わってるか…
ちょっといいだろうか
興味があって保管庫を覗きにきた新参なんだが、なんか作品名がオッスオッスになってるSSがあったんだよ
うひゃーこのスレの住人カバー領域広いなーとか思いながらwktkしつつ開いてみたんだが、なんと中身は普通に♂♀ものだった
なんかホッとしたような裏切られたような複雑な気分なんで、コレはコレで良いのか、それとも要修正なんだが、ちょっとお聞かせ願いたいんだが
取りあえず住人達がそれを受け入れているのに
何故修正が必要だと思ったのか聞かせてもらおうか
ヒューマン♂×ディアボロス♂か
確かに作中では『彼女』だから間違ってるな
あぁいやスマン、タイトルと中身が合ってなかったから気になったと言う話なんだ
過去ログ見れないんで、何か紆余曲折があったんだとしても知る手段がなかったものだから
>>200 100%パンチラするようなミニスカ絵なんてどこにでもあるじゃまいか
>>206 パンツはいてないがデフォの絵師もいるじゃまいかw
208 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 03:44:04 ID:x5ny+Dke
じゃまいかてらわろすw
>>202 とりあえず掲示板で訂正のお願いしてきた
今回もキャラ暴走。真面目すぎても厄介だった。
注意としては、百合モノになります。苦手な方はご注意を。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
ドワーフは部屋のドアを開けた。
そこには誰もいないはずだった。
「おう、ドワーフ。何してたんだ?」
「え!?」
フェルパーが、何食わぬ顔でベッドに座っている。驚きのあまり、ドワーフはその場に立ち竦んだ。
「え……え、嘘…!?だって、あんた……あの時、ロストして…!?」
「おいおい、ひどいな。俺がいつロストしたんだよ?」
記憶の中のものと、少しも変わらない笑顔。あの、いつもの表情。
「夢、じゃ、ないよね?フェルパー、ほんとに生きてたんだよね?」
「当たり前だろ。あの時言ったこと、忘れてないだろ?」
フェルパーは少し恥ずかしげな顔で言い、尻尾をくねらせる。それは紛れもなく彼だった。
「フェルパー!!」
こちらに笑いかける彼の胸に、ドワーフは思い切り飛び込んだ。
腕が空を泳ぐ感覚に、ドワーフは目を覚ました。
目を開ければ、そこはカーテンのかかった暗い室内。上に突き出された自分の手だけが、はっきりと見える。
空は暗く、時間がまだ夜中であることを示し、隣で寝息を立てるセレスティアがそれを裏付ける。
―――夢……か…。
一体、何度こんな夢を見ただろう。その度に夢じゃないと信じ、その度に裏切られ、それでもこうして、信じてしまう。
―――当たり前、だよな……あいつは、ロストしたんだから…。
夢を見る度、現実を突きつけられる。一度静まった悲しみが、再び蘇ってくる。
じわりと目頭が熱くなり、視界が歪む。声が震え、嗚咽が漏れる。
「う……うっ、うぅ……うえぇぇん…!」
声を抑え、ただただ涙を流し、泣き続けるドワーフ。
それを背中に感じながら、セレスティアはぎゅっと目を瞑り、声もかけられずにいた。
何度も夜中に目を覚まし、その度にドワーフは泣き出す。しかし、そんな彼女にかけるべき言葉を、セレスティアは知らなかった。
ドワーフの嗚咽を聞きながら、セレスティアは何も出来ない自分に、どうしようもない歯痒さを感じていた。
セレスティアは悩んでいた。彼女はいつもドワーフの側にいるが、だからと言って何が出来るわけでもない。
もうあれから三ヶ月経つのに、フェルパーを思い出して泣く彼女を慰めることも出来なければ、思い出さないようにすることも出来ない。
つくづく、セレスティアは自分の無力さを感じていた。
それでもきっと、ノームが側にいてくれれば、何か優しい言葉をかけてくれただろう。自分の無力さを、彼の胸の中で吐き出すことも
出来ただろう。しかし、今のセレスティアにはそれすら許されない。
「ドワーフさん、食事はしっかり取らなきゃダメですよ」
「……あ、うん…」
二人は学食で、遅い昼食を取っていた。これでも、ドワーフはだいぶマシになったのだが、それでもたまに、食事そっちのけで
上の空になっていることがある。彼女が食事を忘れるなどということは、これまでに一度だってありはせず、それが彼女の心の傷の
深さを物語っている。
「あんまり、食欲ないですか?」
「うん……ちょっとね…」
大食いで食いしん坊のドワーフが、『食欲がない』というのも相当なものである。現に今も、彼女は目玉焼き一つしか食べていないのだ。
今までの彼女なら、目玉焼きであれば二桁食べてもおかしくはない。
「でも、もうちょっと食べた方がいいですよ。それだけじゃ、体壊しちゃいます」
「うん……心配してくれて、ありがと…」
もっとも、こうなってしまうのも無理はないとも思う。入学当初からの仲間でもあり、恋人でもある大切な存在を失ったというだけでも
十分に辛いのに、蘇生失敗のときにリバイブルを使ったのは、他ならぬドワーフ本人である。
言い換えれば、彼女は自分自身の手で恋人を殺したようなものなのだ。
そんな彼女を慰めることなど出来るわけもなく、セレスティアはただただ、彼女の側にいてやるしか出来なかった。
寝る前に、二人は神に祈りを捧げるのが日課である。セレスティアは毎日欠かさず祈りを捧げており、ドワーフはフェルパーが
ロストした後しばらくは祈るのをやめていたが、最近はまた祈りを捧げるようになっている。
目を瞑って手を組み、空に向かってじっと祈る。だが、この日のセレスティアは、祈りとは別に一つの迷いを考えていた。
―――せめて、わたくしはドワーフさんの苦痛を和らげてあげたい……だけど、側にいてあげるだけでは、限度があります。
隣のドワーフは何を祈っているのか、目を瞑ったまま微動だにしない。
―――最近、一つだけ考えたことがあります。だけど、それは神の道に反しないのでしょうか?許されることなのでしょうか?
そう思いつつ、彼女はノームのことを思い出していた。
―――ノームさん……あなたなら、こんな時どうしますか?あるいは、それを実行したとき、あなたはわたくしを許してくれますか?
迷い、悩み、返らない答えに、セレスティアは組んだ手にゴンッと額をぶつけた。その音に驚き、ドワーフが彼女を見る。
何度も何度も考えたこと。何度も何度も思い止まったこと。しかし、その迷いは常にあり続け、彼女の心を支配した。
そして、今気づいたことがある。
―――相手を大切に思う気持ち……愛情の確認…。仲間を愛する気持ち……きっと、同じことですよね?
今まで、ドワーフのために何かをしてあげたいと思っていた。だが、今迷っていることを思い止まっていたのは、自分のためだった。
少しずつ、迷いが消えていく。以前の彼女なら、決して考え付かず、また考えても否定する方へと、気持ちが傾く。
―――ノームさん。あなたなら、わかってくれますよね?
セレスティアは静かに目を開けた。
―――神様。悩める者を救うのが、あなたのお教えになる道ならば……わたくしは、決してその道を外れてはいないはずです。
もう、迷いはなかった。彼女は静かに、一つの決意を固めていた。
「セレスティア、どうしたんだ…?」
ドワーフが怪訝そうな顔で尋ねる。それに対し、セレスティアはいつもの笑顔で答えた。
「いえ、何でもないですよ。気にしないでください」
「ほんとか…?んまあ、何でもないならいいんだけど」
ちょうど祈りも終わっていたので、ドワーフは立ち上がり、上着を脱いでベッドに座った。セレスティアも、その隣に並んで座る。
「もう寝ようか。やることも、別にないしね」
無気力な声で言うと、ドワーフはそのまま寝転がった。そんな彼女に、セレスティアはそっと近づく。
「……ん?セレスティア、どうしたんだ?」
「ドワーフさん…」
セレスティアは、真っ直ぐにドワーフの目を見つめている。
「な、何だよ…?私が何か…」
何だか居心地が悪くなり、体を起こそうとした瞬間。
まったく突然に、セレスティアはドワーフの唇に唇を重ねた。
「っ!?!?」
予想だにしない出来事に、ドワーフは全身の毛を逆立て、その場に固まってしまう。そんな彼女の首に、セレスティアは優しく腕を回し、
そっと抱き寄せた。そこでようやく、ドワーフは我に返った。
「んっ……ぶはぁっ!!!セ、セレスティア何すんだよっ!?」
慌ててセレスティアを突き飛ばし、ドワーフはベッドの上を後ずさった。セレスティアは少し困った顔で、ドワーフを見つめている。
「ドワーフさん、嫌ですか?」
「嫌に決まってるだろ!私にそのケはない!あんた、何考えてんだ!?ていうか、どうしちゃったんだよ!?」
「うん、わたくしも悩んだんですけど……わたくしは、ドワーフさんのこと、大切な仲間だと思います」
「そ、そうか。で、それで何でこうなる!?」
「前、ノームさんが言ってました。性……その……えっと、その……こ、こういう行為は、愛情の確認のためにも、するものだって」
「うわ…!」
ドワーフは真剣な顔で、思いっきり体を引いた。
「それと、相手を大切に思ってなければ、できないことだとも。わたくしは、パーティの全員が、大切で、愛すべき仲間だと思ってます」
「愛情の意味が違うだろそれ!?その愛と、あんた……じゃない、ノームの言う愛は、別物だろ絶対!?」
「それでも、愛情には違いありませんよ。それに…」
そこまで言うと、セレスティアは不意に悲しげな表情になった。
「こういうことしてると、少しの間だけでも、嫌なこと、忘れられますから…」
「あ……う……セ、セレスティア、気を使ってくれるのは嬉しいけど……ほんとに気を使ってくれるなら、これはやめてくれた方が…」
ドワーフの言葉を完全に無視し、セレスティアはドワーフの体に抱きついた。
「お願いです……今日だけは、嫌がらないでください…!」
「だ、だからセレ…!」
その時、ドワーフは気付いた。自分の体にしがみつくセレスティアの体は、小刻みに震えていた。
「お願いですから……今夜だけ、わたくしのわがままを許してください…」
悲しげな声。その口ぶり。それを聞いた瞬間、ドワーフはその理由に気付いた。
今まで、ドワーフは自分の悲しみに飲まれ、彼女のことなど思いやりもしなかった。しかし考えてみれば、セレスティアも大切な仲間を
失い、恋人は冷たい言葉を吐き、その場で別れる羽目になったのだ。それでも、彼女は何も言わず、ただ自分のために付き添い、
他の仲間がいなくなった後も、ずっと側にいてくれた。
セレスティアが潤んだ瞳を上げ、そっと唇を近づける。だが、もうドワーフは逃げようとしなかった。
温かく、柔らかい唇が重ねられる。少し迷い、ドワーフは自分から、積極的に彼女の唇を吸う。いきなりのことに、セレスティアは
少し驚き、体を離そうとした。が、今度はドワーフがその体を抱き締め、逃がさない。
そうしてしばらく唇を重ねてから、セレスティアの抵抗がやや本気になったところで、ドワーフは手を放した。
「ドワーフ……さん…?」
「ごめん、セレスティア」
開口一番、ドワーフはそう言った。
「私、自分のことばっかりで……セレスティアだって、辛かったよな。なのに、私のことずっと気遣ってくれて……ありがとう」
寂しいのは、ドワーフばかりではない。セレスティアも、寂しかったのだ。ドワーフはようやく、それに気付いた。
ドワーフの言葉に、セレスティアは優しく微笑んだ。
「いいんです。でも、その……ほんとに嫌なら、やめますけど…」
「いいよ、もう。それにあんただって、嫌なこと忘れられる」
今度はドワーフの方から、セレスティアを抱き締める。もちろん、女同士ですることに対しての抵抗が、ないわけではない。
それでも、今はそうしていたいと思っていた。自分も彼女も、ただひと時でも、辛いことを忘れられるのだから。
抱き締められたセレスティアは嬉しそうに微笑み、ドワーフの唇をいたずらっぽく啄ばむようにキスをする。
「ふふ。前にいっぱい触らせてもらいましたけど、やっぱりふわふわで気持ちいいですね」
「セレスティアのは、柔らかくって温かい。唇の形違うと、感触も違うな」
ついフェルパーを思い出してしまい、ドワーフの表情に影が差した。が、完全に物思いに沈んでしまう前に、セレスティアが
唇を強く吸い、現実に引き戻す。
「もう。せっかく恥ずかしいの我慢してるのに、余計なこと考えちゃ、やーですよ」
軽い調子で言うと、セレスティアはまたもキスを仕掛ける。今度は舌が入り込み、ドワーフは一瞬身を引きかけた。しかし、すぐに
思い直し、自分からも積極的に舌を絡める。すると今度はセレスティアが驚き、唇を離そうとするが、やはりすぐにやめる。
舌を絡め、互いの口内を味わい、つっと唇を離す。二人とも、少しずつその目に情欲の光が混じり始めている。
「ドワーフさんって、舌長いんですね。あんなに口の中に入ってくるの、初めてです」
「そういう種族だからね」
「それに、舌が温かくって……ノームさんは、温かくはな……んむ…!?」
さっきのお返しとばかりに、今度はドワーフが唇を奪い、後に続く言葉を封じる。さらに、ドワーフはセレスティアの服に手をかけ、
ゆっくりとボタンを外し始めた。セレスティアは最初気付かなかったが、半分ほど外されたところでようやくそれに気付き、
慌ててドワーフの体を押しのける。
「ド、ド、ドワーフさん何するんですか!?」
「何って……脱がせようかと」
「……あ、ああ、そう……ですよね。で、でも、その、恥ずかしいですよ…」
「一応、経験あるんだろ…?」
「で、でも、恥ずかしいものは恥ずかしいんですっ!他の人の前で、裸になるなんて…」
「一緒に風呂入ったじゃないかよ…」
「それとこれとは大違いですっ!」
何とも面倒臭い性格だと思い、ドワーフは苦笑いを浮かべる。
「あんた、自分から仕掛けといてそれはないだろ…」
「あ、いえ、その……えっと、気付かない間に脱がせようとしないでくださいよぉ…」
「わかったわかった」
「そ、それと!わたくしだけ裸っていうのは嫌ですよ!?ド、ドワーフさんも、ちゃんと、その、脱いでくださいね!」
「はいはい…」
仕方なく、ドワーフは自分の服に手をかける。ボタンを外し、袖から腕を抜こうとしたところで、ふと動きが止まる。
セレスティアは、じっと自分のことを見つめている。見られていると思うと、何だかとても気恥ずかしくなってくる。
「……あんまり見るなよ…」
「ドワーフさんも、恥ずかしいんじゃないですか」
「そりゃ、だって……そうだな」
迷っていても仕方ないので、ドワーフは覚悟を決めて服を脱ぎ捨てた。とはいえ、全身毛で覆われた彼女の体は、セレスティアから
見ると、服を着ているのとあまり変わらないように見えた。が、ドワーフはムスッとした顔で、胸元を隠している。
「こ、これでいいよな?」
「ドワーフさんの体、ふさふさですね」
「あ、あまり見るなってば。と、とにかく、これで次はあんたの番な!」
言うが早いか、ドワーフは素早くセレスティアの体を捕らえ、残りのボタンを外し始めた。やがて全てのボタンが外され、
服を脱がせると、下着に包まれた形のいい乳房が現れる。
二人は少しの間、お互いの体を見比べていた。
「胸、大きいな……柔らかそう…」
「あ、あんまり見ないでくださいよぅ…。それに、その、ドワーフさんだって、胸は……えっと、かっこいい立派な胸板…」
「それ、褒めてるのか?それとも遠回しな嫌味?」
「あっ、いえっ!その、ほんとにそう思っただけで、嫌味だなんて…!」
「あはは、いいよ気にしないで。ただの冗談。その褒められ方、嫌いじゃないしね」
何度か躊躇いつつ、ドワーフはそっと、彼女の胸に手を伸ばした。
指先が僅かに触れ、セレスティアがピクンと体を震わせる。
「んっ……ドワーフさん…!」
「あ、大丈夫?その……触っても」
「……ええ」
引っ込めた手を、もう一度伸ばし、再びセレスティアの胸に触れる。掌で包み込むと、何ともいえない柔らかな感触が伝わる。
「すごく……柔らかい…」
「んん……も、もう。わたくしも、触らせてもらいますからね…!」
そう言うと、セレスティアはドワーフに体を寄せ、肩を掻き抱くようにする。その手が少しずつ滑り、背中を撫で、腰を撫で、
時折ゆらりと揺れる尻尾に触れた。
「ひゃんっ!?」
「きゃっ!?」
いきなり甲高い悲鳴を上げられ、セレスティアは驚いて身を離した。当のドワーフも、目をまん丸にして彼女を見つめている。
「も、もう〜、いきなり尻尾触るなぁ…」
「ご、ごめんなさい。あの……尻尾って、触っちゃまずいですか?」
「いや、その……悪く、は、ないけど……いきなりは、びっくりするよ…」
「じゃ、前もって断った方がよかったです?」
「だ、だから!その、いきなり触るのはダメなんだってば!だって……だって、尻尾なんだぞ!」
セレスティアにはまったく理解できない理由であったが、どうやら尻尾を触られるのは、かなり恥ずかしい事らしいのは察しがついた。
「じゃ、しばらく尻尾はなしですね?」
「う、うん。そうして」
彼女としては、ふさふさした尻尾はとてつもない魅力があったのだが、そう言われてしまっては触るわけにもいかない。
少し考え、また胸に手を伸ばそうとしていたドワーフを、ぎゅっと抱き締めてみる。
「わっ!」
突然でドワーフは驚いたようだったが、お互いの温もりが心を静め、くっつけあった胸に伝わる相手の鼓動が、何ともいえない安らぎを
二人にもたらす。その例えようもない快感に、二人はしばらくそうしていた。
「胸、当たってる」
ドワーフが呟くと、セレスティアは少し顔を赤らめた。
「ドワーフさんの体、温かいです。ふさふさで、温かくて……気持ちいい」
「セレスティアも、温かいよ。柔らかくて、すべすべしてる」
言いながら、ドワーフはセレスティアの腕を撫で、真っ白な翼を撫でる。
「羽も、ふわふわで手触りいいな」
「あ、そう言ってもらえると嬉しいです。翼を褒められるのって、すっごく嬉しいんですよ」
セレスティアは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる。喜ばれれば、やはり悪い気はしない。
「その、セレスティア」
「何ですか?」
「えーと……もっと、続き、しないか…?」
その意味を理解すると、セレスティアの顔がボッと赤くなった。だが、顔には恥ずかしげながらも笑みが浮かんでいる。
「いい……ですよ。で、でも、やっぱり恥ずかしいですね」
「私だって、そりゃ、そんなこと言うの恥ずかしいけど……でも、今はもっと、気持ちよくなりたい」
ドワーフが手を伸ばし、セレスティアのスカートに触れた。躊躇いがちに手をかけ、そっと引き下げる。
完全に下着姿となったセレスティアは、真っ赤な顔でドワーフを見つめている。そんな彼女に、ドワーフは軽くキスをする。
「ドワーフさんのキスって、ふわふわした感じで、気持ちいいです」
「私としては、しっとりしたキスとか憧れるんだけどな」
胸を隠すブラジャーに手をかけると、セレスティアは慌ててその手を押さえた。
「ダメなのか?」
「だ、だって、またわたくしだけ……ドワーフさんも、下脱いでください!」
「え……わ、私はブラしてないだろ!?」
「でもスカート穿いてるし、スパッツも穿いてるじゃないですか!」
「……わかったよ、しょうがないなぁ…」
どうもセレスティア相手だと強く言えず、ドワーフは渋々スカートに手をかけた。下に穿いているスパッツがあるとはいえ、
スカートまで脱ぐとかなりの恥ずかしさがある。
「な、なぁ、こっちはまだいいだろ…?ていうか、ここはまだ勘弁してよ…」
耳を横に垂らしつつ言うと、セレスティアはいきなりドワーフをぎゅっと抱き締めた。
「ふふっ。ドワーフさん、可愛い」
「……あんた、私のことからかってる?」
「そんなことないですよ。ほんとに、ドワーフさんがすっごく可愛く見えるときがあるんです」
「私は愛玩動物じゃないぞ…」
抱き締められているので、セレスティアの体はそれこそ目の前にある。ドワーフは手を伸ばすと、彼女のブラジャーのホックを外した。
ぽろりとブラジャーが落ち、形のいい胸が露わになった瞬間、セレスティアは小さく悲鳴を上げて胸を隠し、ドワーフから離れた。
「ず、ずるいですよぅ!あんなときに脱がせるなんて…!」
「いちいち驚くなってば。あと、いちいち逃げないの」
セレスティアを強引に抱き寄せ、ドワーフは彼女の胸に吸い付いた。途端に、セレスティアはピクンと体を震わせる。
「んっ…!ドワーフ、さん…!」
されることは何度かあっても、するのは初めてである。ドワーフはいまいち勝手がわからなかったが、乳首を口に含んだ感触が意外と
心地良かったので、それを舌で転がしつつ、赤ん坊のようにちゅうちゅうと吸い始めた。
「やぁ…!ドワーフさん……あん!いきなり激しすぎますよぉ…!」
初めて聞く、セレスティアの艶っぽい声。それを出させているのが自分だということに、ドワーフは微かな興奮を覚える。
が、恥ずかしさからか、ぎゅっと頭を押され、ドワーフは一旦唇を離した。セレスティアは胸元を押さえ、僅かに潤んだ目でドワーフを
見つめた。
「はぁ、はぁ……ドワーフさん、その…」
「もうちょっと、優しくした方がいい?」
ドワーフが尋ねると、セレスティアは顔を真っ赤にしつつ、こくんと頷いた。
今度はそっと抱き寄せ、もう片方の手で胸全体を覆うように掴み、優しく揉みしだく。
「んぅ…!そ、それ、いいです……んん…!」
セレスティアは目をぎゅっと瞑り、ひたすらに恥ずかしさと快感に耐えている。それを見て、ドワーフはいたずらっぽく笑い、
もう片方の乳房に顔を近づけると、つんと尖った乳首を舐め上げた。
「あっ!?やっ、ドワーフさん……あんまり、舐めちゃ……あんっ!」
まるで犬が舐めるように、ドワーフは何度も何度も、彼女の乳首を舐め上げる。その度に、セレスティアの体がピクンと震え、抑えた
喘ぎ声を漏らす。やがて、その体がじっとりと汗ばみ始めた頃、ドワーフはそっと彼女の腰を引き寄せた。
「あぅ……ドワーフさん、今度は何す……ふあぁ!?」
ビクンと、セレスティアの体が跳ねる。内股から回された尻尾が、ショーツの上から彼女の秘裂を撫でていた。
「やっ、何…!?うあぁっ!!ド、ドワーフさん待って…!あっ!ま、待ってくださいよぉ!」
必死の思いでドワーフの体を突き放すと、セレスティアはとうとう力尽きてベッドに転がった。
「はは、ずっと膝立ちだったし、疲れた?」
「そ、そうじゃなくて……いきなり激しくするの、なしって言ったじゃないですかぁ…」
「ごめんごめん。でも、まさかこれで終わりじゃないよな?」
「それは……その…」
ドワーフはセレスティアの隣に寝ると、優しく顔を自分の方へ向けさせ、すっかり赤くなった唇にキスをした。
「セレスティアは、そのままでいいよ。私が、続きしてあげる」
耳元で囁くと、ドワーフは彼女のショーツに手をかけた。セレスティアは両手で真っ赤な顔を覆い、ドワーフの為すがままになっている。
いつの間にか、すっかり立場が逆転している。しかし考えてみれば、セレスティアのリードなど最初から望めないことはすぐにわかる。
むしろ、彼女がドワーフを誘ったことすら、奇跡に等しい。それはドワーフもわかっているので、少し物足りない気がしつつも、
特に何も言いはしない。
ゆっくりとショーツを引き下ろす。僅かに透明な液体が糸を引き、それと共に『雌』の匂いが立ち込める。その匂いに、ドワーフの
体の奥がジンと疼いた。
「やっぱり、スタイルいいなあ」
思わず言うと、セレスティアは翼でサッと体を覆い隠してしまった。
「あ、あんまり見ないでください…」
「気持ちはわかるけど……羽、あると続きできないよ」
「で、でも恥ずかしいんですよぅ…」
翼を開いてくれる気配がなく、ドワーフは困った顔で彼女を見つめる。が、翼で覆いきれていない部分を見つけ、にやりと笑う。
「じゃ、しょうがないな。いきなりいくよ」
「え、何が…?きゃあっ!?」
ドワーフはセレスティアの足を開かせると、秘裂を丁寧に舐めあげた。セレスティアは慌てて足を閉じようとするが、ドワーフは
しっかりと押さえつけ、それをさせない。
「や、やだっ!いきなり……あんっ!ド、ドワーフさん……んあぁっ!やめっ……やめてくださ……あっ、あっ、あっ!!」
長い舌が、割れ目全体を包み込み、まるで撫でるように舐め上げる。さらに、最も敏感な突起を、舌全体を使って強く刺激され、
セレスティアの体がビクビクと震える。
「やっ!し、舌がっ……うああ!!ドワ……ドワーフさんっ!!お願い、待って……待ってくださいよぉ!お、お願いですからぁ!!」
必死に快感を堪え、セレスティアは何とか上半身を起こすと、翼と手とを使ってドワーフの頭を押し返した。ドワーフはぺろりと
舌なめずりをすると、いたずらっぽい視線でセレスティアを見つめる。
「はっ……はっ……い、いきなり、ひどいですよぅ…」
「だって、体隠しちゃうからさ」
「そ、それと!」
いきなりセレスティアが大きな声を出し、ドワーフの毛がふわっと膨らんだ。
「また、その、わたくしだけ脱いでるじゃないですか!ドワーフさんも、ちゃんと脱いでください!」
「あ、ばれた?……しょうがないなあ」
出来ればこのままで通したかったのだが、ばれては仕方がない。ドワーフはさらに全身の毛を膨らませつつ、スパッツに手をかけた。
それをゆっくり引き下ろすにつれ、ぴっちりと押さえられていた毛が膨らんでいき、逆に体のラインが見えなくなっていく。
太腿辺りまでスパッツを下ろすと、ドワーフは尻尾を内股に巻き込み、大切な部分を隠してから、ようやく脱ぎ捨てる。
お互いに一糸纏わぬ姿となると、恥ずかしげに足を閉じるセレスティアの隣に寝転ぶ。
「セレスティア、もっと楽にして」
優しく声をかけると、ドワーフはセレスティアにキスをしながら片手で胸を愛撫する。
「はう…!ドワーフさん…!」
さらに、もう片方の手でセレスティアの腹を撫で、そのまま下へとずらすと、秘裂へと滑り込ませた。くちゅっと湿った音が鳴り、
セレスティアの体が跳ねる。
「あんっ!やっ……そんな、強く…!」
ドワーフの指が、秘裂全体をなぞるように撫でる。その指全体に愛液が絡みつくと、ドワーフは割れ目の中へと指を入れた。
「い、痛ぁっ!」
「え!?」
突然の悲鳴に、ドワーフは慌てて手を離した。一方のセレスティアは、非難するような目でドワーフを見つめている。
「ドワーフさん、ひどいですよぉ…」
「え、えっと、え?あれ、痛かった?でも、その、指だけで……え、まさか、もしかしてセレスティアって、経験ない…?」
「ドワーフさんの指、太いじゃないですかぁ……そんなに太いの、入れたことなんかないですよぉ…」
「……そういえば、ノームってあれ付いてないとか言ってたっけな…」
ノームとセレスティアが、普段どういう行為をしていたのかを想像し、それが今の状況とよく似ていることに気付くと、ドワーフは
妙におかしくなった。それと同時に、セレスティアが彼を思い出して辛くはないかと、一抹の不安を覚える。
「セレスティア……その、無理とか、してないか?」
「何が…?ああ、大丈夫ですよ。ドワーフさんとノームさんは、全然違います」
聞いたことで逆に思い出させてしまったと、ドワーフは心の中で頭を抱えた。そんな彼女に、セレスティアがそっと手を伸ばす。
「ん?セレス……ひゃあ!?」
セレスティアの手が、内股に巻き込んであった尻尾を撫でた。上から軽く撫で、根元を掴み、内側を優しく撫で上げる。
「やっ、あっ!セ、セレスティア、そこは……うあっ!」
「ふふっ。もう、尻尾触ってもいいですよね?」
彼女は忘れていなかった。羞恥心と快感に翻弄されつつも、尻尾を触りたくてたまらなかったのだ。
「セレ…!んっ……ま、待って……ふぅ、んっ、あぁ…!」
「ああ、ふさふさ……それにドワーフさん、そんなになっちゃって。うふふ、可愛いです」
敏感な部分を撫でられる快感と、ほとんど触らせることのない部分を撫でられる恥ずかしさから、ドワーフはセレスティアにしがみつき、
ブルブルと震えていた。尻尾も、彼女の手から逃れようとせわしなく動くが、さすがに逃げ切れるわけもない。
柔らかな手が、優しく尻尾を撫でる。毛を撫でつけ、裏側から毛の薄い部分をなぞり、時に毛並みに逆らい、愛おしげに擦る。
その度に、ドワーフは体をピクリと震わせ、切なげに鼻を鳴らす。最初は多少威勢の良かった声も、徐々に小さく弱くなっていき、
今では彼女の漏らす吐息とほとんど区別が付かない。
「うあ……んん……セ、セレスティアぁ…」
「さっきまでと反対ですね、うふふ」
セレスティアとしては、別に性的な意味で撫でているわけではない。単に、とても可愛らしくて触り心地のいい尻尾を
撫でているだけなのだが、自身が楽しんでいるせいか、その触り方、力の入れ具合は、何とも絶妙なものだった。
「セレスティア……お、お願い、待って……んうっ……ちょっと待ってぇ…!」
まるで子供のようにしがみつき、潤んだ瞳で哀願するドワーフ。そんな彼女の頼みを断れるはずもなく、セレスティアは尻尾から
手を離した。
「何ですか、ドワーフさん?」
「はぁ……はぁ……あ、あの、えっと……い、嫌じゃなかったら、さっき、私がしたみたいなこと……して、欲しいな…。
尻尾、気持ちいいけど……ちょっと、物足りなくて……わ、私も、してあげるから…」
その言葉に、セレスティアの全身が再び真っ赤に染まる。しかし、その顔には優しい微笑みが浮かんでいた。
「わ、わかりました。でも……優しく、してくださいね?」
ここまでくると、もうお互い色々と吹っ切れていた。ただ、自分が気持ち良くなるため、そしてまた、相手も気持ち良くさせたいという
思いが、二人を突き動かす。
セレスティアの指が、躊躇いがちにドワーフの秘部に触れる。
「んんっ…!」
「ドワーフさん、その、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫……もっと、激しくても平気だよ…」
そこはすっかり濡れており、触ればたちまち愛液が指に絡みつく。セレスティアは嫌な顔一つせず、そこにゆっくりと指を沈めた。
「んあっ!そ、そこぉ…!わ、私も…!」
快感に体を震わせつつ、ドワーフもお返しとばかりに、セレスティアの秘裂を指でなぞる。
「あんっ!それ、気持ちいいです……あっ!」
今度は指を入れず、ドワーフはその全体を擦り、敏感な突起をくりくりと転がすように刺激する。ドワーフの指が動く度、セレスティアの
体がピクンと震え、それに釣られて彼女の指の動きも激しくなる。
「うあぁっ!セ、セレスティア、激しっ…!ふあぁっ!」
「んうっ……あぁ!ドワーフさんっ、そんなに激しくしちゃ……きゃんっ!」
お互いの秘部を指で慰めあい、二人の呼吸はどんどん荒くなっていく。ドワーフは空いた片手でセレスティアを抱き寄せ、セレスティアは
空いた手でドワーフの尻尾を撫でている。それはもう、単に触りたいだけというわけではなく、快感を与えるための刺激としてだった。
「セレス、ティアぁ!もっと、もっと激しくしてぇ!」
「はうぅ…!ドワーフ……さん…!そ、そんなに強く擦ったらぁ…!」
欲望のままに叫ぶドワーフと、襲い来る快感に必死で耐えるセレスティア。反応こそ違えど、もう二人とも限界はすぐそこまで来ていた。
「も、もうダメ!!セレスティア、もうイッちゃうよぉ!!」
「うぅ、ドワーフさん……わ、わたくしも……もうっ…!」
指の動きがさらに激しくなり、二人はお互いを強く抱き締め合う。そして一際大きな嬌声が上がった。
「もう、あっ……くっ……うあああぁぁ!!」
「んあ……うっ……んううぅぅ!!」
ドワーフが体を仰け反らせ、大きく体を震わせる。それとほぼ同時に、セレスティアの翼がいっぱいに広がり、ドワーフをさらに強く
抱き締める。きつく抱き締められる感触が、相手の体温が、声が、すべてが快感となって体の中を駆け抜ける。
二人はしばらく荒い息をついていたが、やがて少しずつ、体から力が抜けていく。ややあって、お互い同時に達してしまったことに
気付くと、二人はぎこちない笑顔を交わした。
「セレスティア、結構激しかった」
「その……ドワーフさんだって、あんなに強く…」
ドワーフが、軽くセレスティアの頬にキスをする。しかし、その表情が不意に曇った。
「……セレスティア。私達が初めて探索に行ったときのこと……覚えてる?」
「え?あ……はい、覚えてますけど…」
余韻に浸る間もなく始まった話に、セレスティアはやや困惑しつつも答える。
「大して力もないのに、真ん中まで行っちゃってさ。それで、クラッズとフェアリーがポイズンガスを間違って開けて……それから、
みんなやられてった…」
「あの時、わたくしは仲間を見殺しにしなければなりませんでした…。わたくし自身も、やられちゃいましたけど…」
「その後な、あいつ……フェルパーは…」
セレスティアは一瞬、話を遮ってしまおうかと考えた。だが、真剣な顔で話すドワーフを見ると、それは憚られた。
「私のこと、励ましてくれたんだ。もう、私は諦めちゃって、みっともなく泣き出してさ。それを、あいつは励ましてくれて……出口で、
ザ・ジャッチメントに会っても、あいつは諦めないで、私を庇って、煙玉使って、逃がしてくれた」
「ドワーフさん…」
「それでな、あとであいつと話したんだ。戦士じゃ、仲間を守るのは難しい。でも、私は僧侶になる気もなかった。戦う力だってなきゃ、
誰も守れないから。だから神女になるって決めたんだ。そしたら、あいつは、『じゃあ、俺は侍になる』って…」
悲痛な笑顔を浮かべ、ドワーフは話し続ける。
「どうして侍なんだって、聞いたんだ。そしたら、あいつ……侍は、元々主君を側で守る人のことだって……だから……だ、だから、
あいつも侍になって……うっく……大切な人の側で、その人を守るんだって…!」
笑顔のまま、ドワーフはぽろぽろと涙を零した。大粒の涙が後から後から、頬を伝って流れていく。
「はは、笑っちゃうよ……だって、ほんとに、その通りになっちゃったんだから…!でも、馬鹿だよあいつは……ひっく……守るのは
いいけど、残された方はどうなんだよ…!こんなっ……こんなに悲しい思いさせて、それで満足なのかよって……ぐすっ…!」
「ドワーフさん……その…」
「でもさ……あいつはきっと、本望だったよな…。あいつのおかげで、私達は生き延びられたんだ……命張った甲斐、あったよな…」
涙も拭かず、ドワーフは目を瞑った。その顔には相変わらず笑みが浮かんでいたが、その笑みは今までのものとは違った。
「……あいつのことで泣くのは、これが最後だ…。もう、泣くのはやめだ」
そう呟くと、ドワーフはグッと涙を拭い、顔を上げた。目は赤いものの、その顔にはもう悲しみの色などどこにもなかった。
「セレスティア、ありがとな。それと、今までごめん。あんなことまでさせちゃって、ほんと、悪かった」
「いえ……そんな、いいんですよ」
「あんただって、辛かっただろ。今まで支えてもらってばっかりで……今度は私が、あんたを支える。もう二度と、情けない顔はしない」
そう言い、ドワーフはセレスティアを抱き寄せた。その腕は力強く、温かく、触れているだけで心が休まるような腕だった。
そしてこれこそ、いつもの彼女の腕だった。もう、悲しみに沈むだけの彼女はどこにもいなかった。
「……でも、ドワーフさん。あと一回ぐらいは、泣いてもいいですよ?」
「あはは、優しいな、セレスティアは。でも、あと一回、あと一回って甘えが出れば、結局何も変わらない。これで、最後にしとくよ」
これでよかったのだと、セレスティアは思った。
彼女は、何も知らない。だが、知らないままがいいのだ。例え今でも、希望があることを知れば、ドワーフはたちまちそれに縋る。
痛む心を抑えつけ、知らないままにしておくのがいいのだ。それが、彼女のためになるのだから。
「あ、で、でも、その、こういうのは、今回だけにしてくれよな!こ、今回は、その、私もしちゃったけど、ほ、ほんとはこういうの、
い、嫌なんだからな!」
「うふふ、大丈夫ですよ。わたくしだって、こんなに恥ずかしいお願いするのは、今回だけです。……あ、でも、また尻尾、
触らせてくれません?」
「やだよ!……で、でも、どうしてもって言うなら、まあいいけど…」
「わぁ、ほんとですか!?嬉しいです!」
弾んだ声で言うと、セレスティアはドワーフに抱きついた。少し警戒しつつも、ドワーフはその体を抱き返す。
大切な仲間で、今まで自分を支えてくれた恩人。一日限りの恋人で、少し気の抜けない無邪気さを持つ少女。
何より、今のドワーフにとって、彼女はただ一人残った、大切な大切な仲間だった。
パルタクス地下道に、悲鳴に近い叫びがこだましていた。突如現れたクイーンスパイダーに、入学間もないパーティが襲われたのだ。
全員ぼろぼろになり、死を覚悟したその時、辺りに力強い声が響いた。
「どけっ!お前達は下がってろ!」
同時に、目の前に飛び出す小さな影。一行とクイーンスパイダーの間に、一人のドワーフが立ち塞がっていた。
「あ、危ないですよ!そいつ、すごく強いんですから!」
「心配するな。負けやしない」
自信満々に言い放つ彼女に、一行はなおも声をかけようとした。その時、彼等の体を柔らかい光が包み、かと思う間もなく、傷口が
全て塞がっていった。
「え、あれ?」
「あ…!?」
彼等の目に飛び込んできたのは、まるで天使そのもののような笑顔を見せるセレスティアの姿だった。彼女は一行の頭上を飛び越えると、
ふわりとドワーフの隣に舞い降りる。
「ドワーフさん、いけますか?」
「私一人で十分。あんたは、そのひよっこ達見ててやってくれよ」
「はい。でも、気をつけてくださいね?」
「任せなって」
クイーンスパイダーが、突然の乱入者に襲い掛かる。ドワーフは大斧を片手に持ち直すと、腰につけていた退魔の盾をかざした。
ドワーフを貫こうと繰り出した足が、盾に弾かれる。その隙を逃さず、ドワーフは片手で斧を振り上げた。
「はぁっ!!!」
裂帛の気合。振り下ろされる一撃。
次の瞬間、新入生達は自分の目を疑った。片手で繰り出された大斧は、クイーンスパイダーの胴部を、真っ二つに断ち切っていた。
「う、嘘!?一撃!?」
「す、すっげぇ〜…!」
「あ、ほら!やっぱりあの人、あれだよ!ここの卒業生って人!」
ざわざわと騒がしい彼等を尻目に、ドワーフはセレスティアに笑顔を向けた。
「これで、ここもしばらくは安全だな」
「ドワーフさん、さすがですね」
「後ろを気にする必要がないからね」
ドワーフが笑うと、セレスティアも笑顔で応える。そうしてから、セレスティアは新入生達へ顔を向ける。
「地下道中央は、こうした強いモンスターがうろついてますから、気をつけてくださいね。体が大きいから、よく見てれば戦闘は
避けられますよ」
優しく言うと、セレスティアは彼等に補助魔法をかけてやった。
「うわ、なんだこれ!すげえ!」
「わあ、私のより効果高いや」
「先輩、ありがとうございます!」
彼等の言葉に笑顔で応え、セレスティアはドワーフの方に向き直る。
「それじゃ、次行きますか?」
「ああ、そうしようか。それじゃあんたら、頑張れよ」
それだけ言うと、二人はたちまち光に包まれ、消えていった。
パルタクスでは、二人は有名だった。あちこちの地下道にいる強大な敵を、たった二人で撃破して回るパーティ。途中で全滅しそうな
パーティに会えば、たちまちその危機を救い、去っていく。二人はもはや、英雄のように見られていた。
その強さ。その行動。それは確かに、彼女達を英雄たらしめていた。
しかし、その行動理念は、二人の中では違っている。
ドワーフは、もう二度と自分のような者を出さないため。セレスティアは、ドワーフに、ただ一つの事に打ち込んでもらいたいがため。
涙で滲んだ視界の中では、仲間が離れた本当の理由も見えない。そのまま今に至ったことが、好都合でもあり、不幸でもある。
何も知らず、一つの目標を新たに見つけたドワーフ。
おぼろげながら理由を知りつつ、それを胸に秘めるセレスティア。
折れた心を立ち直らせ、セレスティアをぐいぐいと引っ張るドワーフは、しかしやはり、影では彼女に支えられ続けているのだった。
以上、投下終了。
セレ子は出だしだけ暴走してあとは動かないから困った。
とりあえず、発売日までに終わらないのが確定したので、ちょっと泣いてきます。
それではこの辺で。
ドワ子復活かぁ、他の仲間達が心配だ・・・特にフェア子・・・・・
しかし泣けるとかよりセレ子のせいで笑いっぱなしになってしまったww
乙。暴走したセレスも乙w
立ち上がったか、彼女らがまた笑いあえるのはいつの事やら……だなぁ
ボス掃討に打ち込んでいる間に、別働隊がどうにかしてくれればあるいは……
続き投下。
しかしエロはまだ先になりそうな予感。
初心すぎるディア男の情けない語録。
「……ほう。同じ委員会の先輩、ね」
ディモレアはそう言って笑った。
ちなみにディアボロスはそれらの情報を全て白状させられる為にアイアンクローをかまされ、ビッグバムを三回撃たれと散々だった。
サラと番長は既に聞いていた話だったので苦笑していたが、何故かマクスターは真剣な顔つきだった。
「ふむ、なるほど……まぁ、僕もあの子は嫌いじゃないけど。そうだな……」
「で、その子あんたの先輩って事は、もう最上級生? もう一年ないじゃない」
「そうですね、もう進路を決めなけりゃいけない頃ですね。そうだ、僕もどうしよう」
ディモレアの言葉にマクスターが頭を抱える。
「アタシが今働いてる魔導書館の研究員に枠がいくつかあるみたいだけど、あんた考えてみる?」
「遠慮しときます。僕は君主学科なんで学科違いです」
「あら、そう。パルタクスは歴史が浅いから実績が少ない分、推薦も無いしねぇ。あんたは錬金術士学科だっけ? まだ望みあるわねぇ」
ディモレアの言葉に、マクスターとタークは頭を抱える。戦術系学科の就職事情は厳しい。
「けどよ、後一年無いんだろ? なんで好きなら好きって言わないんだ?」
「ティラ姉さん、それが出来たら苦労はしねぇ」
「甲斐性ねぇな」
「……………」
何も言い返せないディアボロス。
まぁ、確かに彼自身もそうだと思っている。
錬金術士学科も前衛をこなせなくはないので所属パーティでも前衛、しかも魔法や鑑定も出来るパーティの中核である。
だが、それでも好きな人に告白も出来ない意気地なしである。
「……あんたねぇ。ダメよ、あの人を見習い……」
ディモレアがそう言いかけて黙る。ディモレアは息子である彼に、父の話をあまりしていない。
本人が父親の顔を知らないのに、そんな事を言ってもと思っているのだろうか。
「……ここは僕たちがひと肌脱ぐしかないようだ」
マクスターが神妙な面持ちで呟き、番長が驚いた視線を送る。
「で、何するんや兄貴? そうは言っても」
「ターク。学校に帰るぞ。すいません、お邪魔しました」
マクスターは文字通り番長を引きずりつつ立ち上がって頭を下げる。
「あら、もう帰るの? もう夜遅いわよ?」
「いえ、今から準備をせねば。心配するな。お前の恋、必ず叶えさせてやる」
「何する気ですか、会長」
ディアボロスの言葉に、マクスターは親指を軽く上げる。
「僕を信じて任せろ!」
「あんただから不安なんですけどね」
ディアボロスがため息をつくより先に、マクスターは番長を連れて去っていった。
しかし、何をするというのだろうか。
二日の時が流れ、ディアボロスは実家から学生寮へと戻っていた。
ちなみに、深夜にも関わらず番長を引き連れて学校へと戻ったマクスターの一大企画準備は生徒会全部を巻き込んだもので生徒会メンバーは毎朝疲れた様子だったという。
そして、朝。
ディアボロスは朝食を取るべく、食堂でいつも自らのパーティが座っている席へと向かうと、普段より多くの生徒が食堂に集まっている事に気付いた。
「お。戻って来たのか?」
同じパーティのバハムーンが彼に気付き、大きく手を振って位置を示す。
「ああ。おはよう、皆揃ってるのか……」
「ああ。お前が最後さ」
同じパーティで同じく前衛をつとめるフェルパーの男子が頷き、対岸に座る後衛を担当する三人の女子達が「遅ーい」と口を揃えた。
「悪い、最近寝不足で……」
「実家に帰ったのに寝不足ってなんだよそれ」
フェルパーの問いに、ディアボロスは黙り込む。まさかライフゴーレム達にラブレターの書き方を延々と伝授され続けたとは口が裂けても言えない。
その内容についてサラに散々こき下ろされたのも恥ずかしくて言えない。
まさに悪夢のような日々である。
「それにしても……今朝は生徒が多いな」
「ん? ああ、まぁな」
「そりゃあ、もちろんアレがあるからだよ」
「パルタクス中の生徒が来てるんじゃない? 皆結構楽しみにしてるっぽいし」
何か含みのある言い方をしたバハムーンに続けて、盗賊学科のクラッズと僧侶学科のフェアリーの少女達がそれぞれ言葉を続ける。
「アレってなんだ?」
「私に聞くな。委員会に所属してるんだから、お前は知ってると思ったんだが」
超術士学科の同種族の女子はあきれた顔でそう答え、バハムーンがため息をついて口を開いた。
「ああ。昨日の夜、お前は帰ってすぐ寝ちまっただろうから知らないかも知れないけどよぉ……。生徒会長がイベントの発表したんだ」
「会長が? そのイベントは今日やるのか?」
「ああ。その内容はな……」
「「「愛しのあの子にオモイを告げるヒinパルタクス」」」
バハムーンの言葉の後に、三人の女子が口を揃える。この三人、実はハモる事が多いのだろうか?
「……は?」
ディアボロスが思わず聞き返すと、バハムーンは口を開いた。
「だから、好きな人に向かって全校生徒の前で告白するイベントなんだと。で、今朝から希望者を募ってやがる」
「……マジかよ」
マクスターが言っていたひと肌脱ぐとはまさにこの事なのだろうか。そうだとしたら、全校生徒まで巻き込むのはスケールがでかすぎないか?
「あ、ちなみにパルタクスだけじゃなくてマシュレニアやランツレートの生徒が相手でもオーケーらしいぜ。確か何人か希望を出してる」
「スケールでかすぎだろ!」
ディアボロスが盛大に叫んだとき、背後から文字通り背中を叩かれた。
「ちょっといいか?」
「あ、会長。いった―――――」
ディアボロスが言葉を続けるより先に、マクスターは即座にディアボロスを引っ張って食堂の隅まで向かうと、声を潜めた。
「これでお膳立てはした。お前はイベントの最後に予約してある」
「え、でも」
「でもも糞もあるか。後一年も無い。それは解ってるだろう? お前も男なら、腹をくくれ」
「………………」
「頼むぜ。彼女に、学生生活で最高の夢を見させてやれ」
マクスターの言葉に、ディアボロスは何も答える事は出来なかった。
だがしかし、もう既に賽は投げられた。決まりきった事なのだ。
「おい番長! あれはどういう事だっ!」
朝食を済ませたディアボロスはいつものように屋上にたむろっていた不良グループの中からわざわざ番長を引っ張りだすと、盛大に首を揺さぶった。
「ちょ、タンマ、落ち着けや、マジ勘弁ぐぐぐぐるじい」
「番長に何すんだ!」
「邪魔だ引っ込んでろ! ビッグバムかますぞ!」
「もう既に撃ってるしー!」
止めに入った不良達をビッグバムで屋上から中庭まで吹っ飛ばしてから再び番長をつかむ。
「で、あんな事言い出したのは会長だな? なんで止めなかった?」
「ちょ、ちょい待ちいや。あのやな、止めた所でアニキは聞く筈も無いし、ワイもそれが一番やと」
「だからと言って俺を勝手にラストなんかにするんじゃない!」
「……なら、くすぶったままか?」
「…………」
「黙ったまんま、時が流れたら先輩卒業しちまうがな」
確かに番長の言う通りである。
しかし、イマイチ勇気の無いディアボロスにとって全校生徒の前で告白なんて百歩譲っても不可能に近い行為だ。
「………お前ら、何の話してんだ?」
「あ、悪い。すぐ終わる」
騒ぎを聞きつけたのかそれともディアボロスを探しに来たのかバハムーンが顔を出し、ディアボロスはそう答える。
「で、どうすればいいんだよ俺は……勝手に決められても」
「諦めて腹ぁくくるしかないやろ? もうお膳立てはしたし、そもそも今回の為にめっさ準備してきたんや。今年度の二度目はもう無いんやで」
「来年はどうあがいても無理だしな……」
「なぁ、お前まさか……告白するのか? なんだよ、スミにおけねぇなぁ」
「……バハムーン、なんで今の会話だけで解ったんだよ」
「いや、おい番長どういう事だのあたりから実は聞いてたんだが」
「全部じゃねぇかよ!」
ディアボロスの突っ込みにバハムーンは頭を掻きつつ笑う。同時に他のパーティメンバー達も校舎から屋上へと続く階段の陰から次々と姿を現した。
「おめでとう」
「頑張ってね。叶うといいね」
「お前ら、他人事だと思って……」
ため息をつく。
しかし、と彼は同時に思う。
番長の言う通り、イマイチ勇気がないままくすぶっていればそのオモイはおかしな方向に転がる事もありうる。実際好きなのだから。
その事を先輩に心配されて(スケールがデカすぎる)お膳立てをしてくれたのはお節介ではあるけれども。
普通に考えれば感謝するべき事なのかも知れない。本当に、後一年。
「後、一年か……」
一年、と言えば。
そういえば委員長と出会ったのも、一年生の時だった気がする。
初めての委員会に配備されたのは自分よりちょっぴりだけ年上の先輩がいて。それで……。
「だあああああああああっ!」
ディアボロスは手を大きく左右に振り回す。
そりゃ、昔から知っているんだから。好感を持たないというのが変だったのだろう。
好きだと言えば好きな訳で。一緒にいたいとかそばにいるだけで幸せとかそういう単純なものだけじゃなくて一言で言い表せないような。
「………頑張りぃや」
番長が背中をポンと叩くのが、どこか嬉しかった。
イベントは、今夜。
つづく
投下終了。
委員長がろくに出てない事実;
GJ!
キャラの扱いが巧くて読みやすい!
いいね〜
こういうほのぼのラブコメモノは癒される・・・・
頑張ってくれディア男w
2の公式サイトの4コマに出てくるヒュム男がカワカッコイイうえにモテるのはss向けじゃね?
234 :
よこお:2009/06/13(土) 17:28:40 ID:FU7E7d+r
ROM専だったのですがSS投下してもよろしいのでしょうか
うーん、腐女子は自重するべき?
ちなみにSS対象になる私のPT(all♂)は
フェア(超→魔)×バハ(戦)
他にフェル(戦)×セレ(君)
ヒュマ(戦→侍)×ノム(司)
ととモノで腐、しかも竜受けってどんだけマイナーだよって感じですが
2chに書き込む場合は名前欄は極力無記名で
書き込むときはメール欄に半角でsageと書きましょう
〜〜って需要ある? 的な書き込みは誘い受けと思われるので自重
自分の作品について長々と語るのもNG
♂×♂については投下前に注意書きをすればおk。投下は自由なんだから
一応見てきたんだけど、数字板にはととモノスレって無いんだな。なんか意外だ
あと聞き流しておkだけど、お腐れの方々はどうも謙遜と自虐が過ぎる節があるから、
売り込むにしても自身自身の事よりも自分が書いたSSの萌えポイントやらを語って欲しいね
>>235 >>236 おおお反応ありがとうございます、そして無知ですみませんorz
以後そのようにしたいと思います
注意書きがあればとのことで、準備が整い次第投下しにきまっす^^
2公式のレンジャークラ♂がレンきゅんにしか見えない私
ウホッ楽しみにしてるぞ
冒険者の皆様、こんばんわ……なんだかすごく懐かしいね、ここは。
覚えて下さっている方はまだいるのでしょうか、すっかりレアモンスター化したアトガキモドキです。
というより、ととモノ2の出現に哀愁を感じ、またここに舞い戻ってきたワケなんだけども。
うん、また何かSSを造ってみたいんだ。突然いなくなったクセに、図々しい輩でゴメンよ。
もしリクエストがあれば、喜んで承ります……です。
気弱なフェルバー♀が一流の冒険者になるために頑張ってヒューマン♂に弟子入りする話、というのは?
制服を剥がれて裸のまま退学させられたBP6のヒューマン♀とかどうよ
よくよく考えると希望に胸ふくらませて入学したやつを
強制的に退学させられるプレイヤーって何様なんだろうな?
オリーブ×ティラミス×ジェラートの3PでGO
>>242 プレイヤーなんて存在しません
才能がない(BPが低い)から制服を置いて逃げ出すのです
スレが賑やかになってきましたね。2発売したらもっと加速するかなあ。
今回はエロ分ありません。それと切る場所に悩んで長めになりました。
ともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
全員がバラバラになった日から、半年が経過した。
ドワーフとセレスティアの活躍は、パルタクスから遥か遠くの、空への門にいるクラッズの耳にも届いていた。
「あなたが、自分のパーティの中じゃ弱い方だって言う理由、よくわかったわ」
同じく彼女達の活躍を聞いたフェルパーが、笑いながら言う。
「クイーンスパイダーも、ダイオウバサミも、災いの大樹だって一撃で倒しちゃう人と一緒じゃ、弱いわけよね」
「周りもお前と同じ、化け物揃いか。同じ学校にいた生徒とは、とても思えないな」
「でも、最初はボク達だって弱かったんだよ。バットンの群れに、みんな瀕死に追い込まれたことだってあるんだから」
「ふふ。なら、その強さは絆の強さ、でもあるんですね」
セレスティアが言うと、フェアリーがバハムーンに皮肉っぽい笑みを送る。
「私達じゃ、一生追いつけないかもねー」
「……うるさい、言うな」
「ん?何かあったの?」
クラッズが首を傾げると、エルフがそっと耳元に囁いた。
「以前は、あなたと同じクラッズの女の子がいたんですの。でも、バハムーンと喧嘩して、その子はもう今じゃ別のパーティですわ」
「そうだったんだ。それでねえ…」
半年もいると、クラッズはすっかりこのパーティに馴染んでいた。さすがに元のパーティにはかなわないが、これはこれで居心地のいい
パーティだと思っている。また、エルフにやたら気に入られており、同じ盗賊系学科ということもあって、罠の解除を教えたりするのも
なかなか楽しいものだった。
とはいえ、目的を忘れたりはしない。一行は来る日も来る日も地下道に潜り、体力の続く限り宝箱を漁り続けていた。それでも、やはり
伝説といえるほどのアイテムは、そう簡単に出はしない。天使の涙も、求めると見つからないもので、クラッズはそこに至るまでの
全ての交易所を覗いたが、一つとして売ってはいなかった。
「それにしても、空への門の交易所って、何か特別な仕入れルートでもあるんでしょうか?」
「いきなりどうしたの?」
「だって、気になりませんか?前にバハムーンさんが、アスカロン買って使ってみて、やっぱりオルナがいいって売り戻したら、
買値より高く買い取ったじゃないですか。あれ、どうしてでしょうね?」
「……地下道みたいに、人智の及ばないものがいきなり現れることだってあるんだから、他にそんなことがあっても不思議じゃないわ」
緊張感のない会話を交わしつつ歩くのは、ハイント地下道の中央部である。かつてここに来たときは、一周するのが精一杯だったが、
今では余裕を持って歩き回ることが出来るほど、彼女達は成長していた。
中央部を軽く突破し、折り返しのL5へと入る。今回はマップナンバー58番で、棺桶から飛び出すモンスターを薙ぎ倒しつつ、
反対側への道を開いていく。
「ここ、面倒で嫌だよねえ」
「それに、アンデッドばっかりで嫌になりますわ。こんなところ、早く抜けたいですわね」
そんなことをぼやきつつ、一行は中央のアンチスペルゾーンへ足を踏み入れた。ここは危険ではあるが、宝箱も多い。その一つも
逃さないつもりで、一行は次々にモンスターと戦う。普段はエルフがアンロックを使うことも多いのだが、こういう場所ではクラッズが
それこそ水を得た魚の如き活躍を見せる。
「まずは音だね。ガスの場合はさ、音の響き方が違うんだよ」
今、クラッズは敵を倒して得た金の宝箱の前にしゃがみこみ、エルフに罠の判別の仕方を教授していた。
「全部同じに聞こえるかもしれないけど、ま、これは慣れだよね。これはガスじゃないから、別の罠。開ける時に引っかかる感じが
あったら、石つぶてが多いね」
「でも、開けるなんて危ないんじゃなくて?」
「だから最初に、ガスかどうかを判別するわけ。たまに、開けると何かが混ざって、ガス発生させるのもあるけどね。でも、これは
そういうのじゃなさそうだし……うーん、ワープかな?」
いまいち自信が持てないらしく、クラッズは慎重な手つきで宝箱に触れる。そして何やらあちこちいじると、不意にかちりと音がした。
「……うん、やっぱりそうだった。もう、これで罠は発動しないはず」
「こういった罠の解除は、わたくしの手には余りますわ…」
あとはもう何の警戒心もなく、クラッズは箱を開けた。そして、中に入っていた物を取り出す。
「……ん?何だろこれ?実?」
「実、みたいですね。命の果実でしょうか?」
「ここから出たら、私鑑定するよー。それまでは、ちょっと待ってねー」
そんな調子で残りの宝箱も片付けると、一行はアンチスペルゾーンの外へと出た。そして、手に入れたアイテムを、フェアリーが
順次鑑定していく。
アイテムを鑑定している彼女を見ると、クラッズはどうしても恋人であるフェアリーを思い出してしまう。錬金術師と司祭という
違いはあるし、身長もだいぶ違うが、やはり同じ種族だけあって、似ているのだ。ただし、性格は似ても似つかないが。
不意に、フェアリーの動きが止まった。一瞬恐怖状態に陥ったかと思ったが、どうもそういうわけではないらしい。
「……おい、フェアリー。どうした?」
バハムーンが声をかけても、反応はない。五人はふと、フェアリーが持っている物に視線を送った。それは、先程金の宝箱から出た
実のようだった。
「おいフェアリー、返事ぐらいしろ。その実がどうかしたのか」
「……出たよ…」
呆然とした声で、フェアリーが呟く。
「出たって、何が?」
「……正直ね、嘘だと思ってた…。でも……でも、これ間違いないよ…」
「だから、それがどうしたの?一体それは何?」
痺れを切らしたフェルパーが尋ねると、フェアリーは顔を上げた。その顔には、驚きとも歓喜とも付かない表情が浮かんでいた。
「だから、出たんだってば!!ずっと探してたのが!!ただの言い伝えだと思ってたのが!!これ、間違いない!!蘇生の果実だよ!!」
一気にまくし立てたフェアリーの言葉を、最初は誰も理解できなかった。あまりに唐突過ぎて、それを理解するだけの心の準備が
なかったのだ。ゆっくりと、時間をかけてその意味を理解するにつれ、それぞれがようやく反応を示し始めた。
「本当に……本当に、蘇生の果実なんですか!?それじゃ、これでクラッズさんの仲間が、生き返らせられるんですね!?」
「おい、本当なのか!?なら、これでようやく、半年間休まず地下道に潜り続けた苦労が報われたってわけだな!」
「ついにやったわね。でも、それじゃあ……これで、この旅は終わりね」
「とうとう、この時が来てしまったんですのね……これでもう、お別れですのね…」
純粋に喜んでくれるセレスティアにバハムーン。一抹の寂しさを見せるフェルパー。そして、あからさまに寂しげなエルフ。
彼女達一人一人の顔を見回し、クラッズは口を開いた。
「みんな、本当にありがとう。その、こんな時になんて言えばいいのかわからないけど……みんなには、色々お世話になって、本当に
感謝してるよ。ここでお別れになるけど、ボク、絶対にみんなのこと忘れないし、本当に楽しかった」
もう一度、全員の顔を見回し、クラッズは笑った。
「でも、この場でお別れって言うのはひどいよね。ここを出るまでは、ボクはこのパーティの一員だよ」
「いっそ、この地下道に駐留しませんこと?」
「ダメよ。エルフ、あなたが寂しいのもわかるけど、彼には彼の帰る場所があって、そのために私達といたのよ」
「わかってますわよ。でも……はぁ、寂しくなりますわ…」
「エルフ、懐きすぎ。ほんと、惚れっぽいんだからー」
「ヒューマンなら誰にでも惚れるあなたに、言われたくはありませんわ」
この地下道を出れば、あとはもう別れるだけである。やはり名残惜しいものがあり、少しでもその時間を引き延ばそうと、
一行は地下道の隅々まで探索する。普段なら行かないような部分にまで足を踏み入れ、ついでに未完成だった地図を書き足していく。
L5を回り、L4を制覇し、L3を踏破し、L2を越える。そして最後のL1も、もう目の前まで出口が迫っていた。
クラッズ自身も、その足取りが軽いとは言えなかった。もちろん、すぐにでも飛んで行って、みんなと会いたいという気持ちはある。
だが、半年間ずっと一緒にいた彼女達と別れるのは辛い。おまけに、こちらはそのお礼だってしてはいない。
複雑な気持ちを抱え、それでも出口に向かって歩く。やがて、ゲートが見え始めたとき、その前で誰かが揉めているのが目に入った。
「ん?どうしたんだろ?」
「喧嘩……でしょうか?」
ただの喧嘩だと気まずいので、一行は目立たないようにそっと近づいてみる。
どうやら、同じパルタクスの生徒らしかった。が、様子がおかしい。ヒューマンとセレスティアが、ドワーフの女の子の腕を握り、
無理矢理ゲートの外へ連れ出そうとしている。そのドワーフは、泣きながらそれに抵抗している。その周りでは、クラッズとフェルパーの
女の子が、沈痛な面持ちでそれを見つめていた。
「嫌だぁ、嫌だぁ!!あたいはここに残るんだぁ!!」
「そんなこと言ったって、もうどうしようもないだろ!?もう無理だ、諦めろ!!」
「そうですよ!あなたが残ったところで、彼が喜ぶわけでもないでしょう!?」
「ふざけんな!!だって、あいつは……あいつはぁ…!」
二人の腕を強引に振り解くと、ドワーフはその場にへたり込んだ。
「畜生……ずっと、ずっと一緒じゃなかったのかよ…!これじゃあたい、何のためにてめえの名前聞いたんだよ…!くそ……くそぉ!!」
「ねえ、しょうがなかったんだよ……だって、もう同じ間違い、したくなか…」
「ふざけんじゃねえ!あたいを守って、それでてめえがロストすりゃ満足なのかよ!?あたいは、あいつの元恋人の代わりじゃねえ!!
……ちくしょぉ…!こんなんだったら……あいつの名前なんて、聞くんじゃなかったぁ…!」
話を聞く限り、彼等は仲間をロストしたらしかった。ぼろぼろと涙を流すドワーフを見ていると、彼女達も心が痛んだ。
ふとクラッズを見ると、彼は非常に険しい顔でそれを見ていた。その顔からは、ある種の覚悟のようなものが見て取れる。
それが意味するものに、バハムーンが真っ先に気づいた。
「おい、余計なことを考えるな!」
言うなり、バハムーンはクラッズの前に立ち塞がった。
「お前は、何のために今まで探索を続けてきたんだ!?大切な仲間が待っているんだろう!?決して、見ず知らずの他人を
助けるためじゃないだろう!?」
その言葉に、クラッズは悲しげな笑みを浮かべた。
「……ありがとう。でも、ダメだよ……無理だよ…」
歩き出そうとしたクラッズの前に、フェルパーが並んで立ち塞がった。
「あなたは、半年間の努力を無にしようとしてる。あなただけのじゃない。それは、私達の努力でもあるの。それはわかってる?」
さすがに、その言葉は効いた。クラッズは口を固く結び、ぎゅっと目を瞑った。が、やがてその顔が、寂しげに微笑む。
「ごめん。でも、見過ごせないよ」
しばらくの間、クラッズと二人は睨みあった。他の三人はどうしていいかわからず、固唾を呑んでそれを見守っている。
やがて、フェルパーがフッと笑い、道を開けた。
「おい、フェルパー…!」
「仕方ないわ。これは、彼の問題。それに……あの子も、大切な人をなくしたみたいだし、ね…」
「……ありがとう」
クラッズは蘇生の果実を道具袋から出すと、二人の間をすり抜けて彼等の元に向かった。
「あの、ちょっといい?」
「……誰だ、てめえ…」
突然現れた人物に、泣いていたドワーフを含めた全員が訝しげな目を向ける。そんな彼女に、クラッズは蘇生の果実を差し出した。
「まだ、戻らないで。これ、あげるから」
「……何のつもりだよ、てめえは!?こんな変な実が何だって…!」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
それを地面に叩きつけようとしたドワーフの腕を、仲間のセレスティアが慌てて抑えた。
「これは……蘇生の果実じゃないですか!?こんなものを、一体どこで…!?」
「蘇生の……何だよ、それ…?」
きょとんとしているドワーフに笑顔を向けると、クラッズは仲間の元へと戻った。
「クラッズさん…」
「……さ、行こ。今日は、何だか疲れちゃった」
気の抜けた声で言うと、クラッズは一足先にゲートを潜った。他の仲間も一度顔を見合わせ、小さく溜め息をついてゲートを潜る。
外に出ると、バハムーンが真っ先に口を開いた。
「馬鹿だ、お前は」
「………」
「一体、この半年間は何だったんだ。徒労もいいところじゃないか」
「バハムーンさん、もうやめましょうよ。それに、クラッズさんは、間違ったことをしたわけじゃないじゃないですか」
「どっちが正しいとも、言えないけれど、ね」
「でもさー、あの状況で無視しろって言うのもひどくない?助けられるんなら、やっぱり助けてあげたいよー」
「惜別の時は伸びましたけれど、複雑な気持ちですわ……素直には、喜べませんわね」
クラッズはしばらくうつむいていたが、やがて大きな溜め息をついた。
「みんなには、悪いことしちゃったと思う。でも……あの子、ドワーフでさ……うちのドワーフと、重なっちゃって……ごめん…」
しばらくの間、誰も何も言えなかった。
やがて、フェルパーが重い空気を取り払うかのように、明るい声を出した。
「まあ、仕方ないわね。あげちゃった物はしょうがないし、また探し出せばいいじゃない。その間は、彼もここにいてくれるしね」
「……はあ、そうだな。その分、私達にもいい物がもらえるよう、願っておくか」
苦労して得た物はなくなってしまったが、ともかくも別れの時は先延ばしになった。一行は何とも複雑な思いを抱え、明日の探索に
備えて宿へと戻っていった。
部屋に戻ったクラッズは荷物を床に投げ出し、ベッドに寝転んだ。後悔というほどのものはないが、かといって割り切れるわけでもない。
おかげで、仲間が揃う日も、フェルパーを取り戻す日も、また見えなくなってしまったのだ。
何度も溜め息をつき、ベッドの上をゴロゴロと転がる。そうして一時間も経った頃、不意に部屋のドアがノックされた。
「ん?だぁれ?」
「あ、やっと見つけた。その、あたいだよ。ハイントで会った…」
名乗った覚えもないので、宿帳を見たわけではないだろう。どうやら、宿の部屋を片っ端から回って探していたらしい。
クラッズはベッドから飛び降りると、ドアを開けてやった。すると、そこにはハイントで会ったドワーフと、一人のエルフが立っていた。
「あの時、ありがとな。おかげで、こいつ取り戻せた」
「君が、僕の恩人なんだね。どうも、ありがとう」
そんな二人を、クラッズは意外な思いで見つめていた。恋人をなくしたのだとは知っていたが、それがまさかエルフだとは
思いもしなかった。もっとも、フェルパーとドワーフという組み合わせも、あまり見るものではないが。
「でも、その、後で話聞いたんだ。お前、あれずっと探してたんだってな……なのに、そんなのあたいにくれちまって…」
「ああ……いいよ、気にしないで。いつかまた、見つかるよ」
「そうそう。僕も聞いたんだけど、君のパーティは他が全員女の子らしいね。両手に花どころか、花束の中で冒険できるなんて、
そりゃあ羨まし…」
キュッとドワーフの靴が鳴り、続いて膝が回る。腰がエルフの方へ向き直り、それに引っ張られるように上半身が回転し、最後に
それらの勢いと体重を全て乗せた拳が、躊躇いなくエルフの鳩尾へと飛んだ。
「ぐぼぁっ!!」
ドッと鈍い音と共に、エルフの体がくの字に曲がる。
「うぜえんだ、てめえは!黙ってろ!!」
どうやら、性格的にはうちのフェアリーに似ているようだと、クラッズは苦笑いしつつ思った。
「だから、その、さすがに、あんなの探し出すのはできねえと思うけど、なんかあたいができることねえか?少しでも、お前に何か
お礼がしてえんだ」
「ん〜、そうは言われても、別にそんな…」
そこまで言って、クラッズはふと思い出した。
「……あ、それならさ。君、天使の涙持ってないかな?」
「天使の涙…?大天使とかでもいいのか?」
「いや、天使の涙。それ持ってたら、譲ってくれると嬉しいんだけど」
「そっか……でも、ごめん。あたいは持ってないんだ…」
その時、うずくまっていたエルフが、掠れた声を出した。
「ぉ……ぁ……れ、なら……くが…………って…」
「ん?何だよ、何か言ったか?」
エルフは苦しげに息をしつつ、何とかヒールを詠唱した。痛みが消えると、エルフはすっくと立ち上がる。
「天使の涙だろう?それなら僕が持ってる。一つでいいのかい?」
「あ、できればいっぱいあると嬉しいな」
「そうか。三つしか持ってないけど、それでもいいかい?」
「一個でも嬉しいぐらいだから、十分だよ。ありがとう」
エルフから天使の涙を受け取ると、クラッズは二人に笑顔を向けた。その笑顔に、二人とも少しホッとしたような表情を見せる。
「ほんとに、ありがとな。他にも何か、あたいにできることあったら言ってくれよ」
「ありがとね。じゃあ、その時はお願いするよ」
「ああそうだ。よければ君の仲間を紹介してもらってもいいかい。可愛い女の子達を独り占めするなんて、もったいな…」
それ以上の言葉は、彼の股間共々、ドワーフの足に蹴り潰された。
「――――っっっ!!!!っっっ〜〜〜〜!!!!」
声なき悲鳴をあげ、床に倒れるエルフ。それを見ていたクラッズまで、大事なところが、とても痛くなってくるようだった。
「え〜と……できれば、そのエルフ君のこと、もうちょっと大事にしてあげてね…」
「ん、ああ。こんな野郎でも、大事な奴なんだ。大丈夫、これぐらいじゃ死にやしねえし、もう死なせもしねえから」
「いや、大丈夫じゃないよそれは…」
「とにかく、ほんとありがとな。あたいが何かできるなら、いつでも呼んでくれよ」
そう言い、ドワーフは床に倒れるエルフを引きずって、部屋へと帰っていった。エルフは引きずられながら、何とか手を上げて
クラッズに手を振っていた。
満面の苦笑いでそれを見送ると、クラッズはまたベッドに戻った。このまま寝てしまおうかと思っていると、隣の部屋から壁を叩く
音が伝わってきた。それを聞くともなしに聞いていたクラッズは、突然跳ね起きる。
驚いたような目でしばらく壁を眺め、壁を叩く音が消えると、今度はクラッズが壁を叩き返した。それは聞こえてきた音と同じく、
不規則に聞こえて、ある一定の規則性を持ったリズムで鳴らされる。
クラッズが壁を叩き終える。ややあって、やはり向こうから同じような音が返ってきた。
「やっぱり…!やっぱりそうだ!」
一人呟くと、クラッズの顔に、ぱあっと明るい笑みが広がった。
それは、彼とフェアリーだけが知る暗号だった。彼女が盗賊だった頃に、二人で秘密の会話をするときのために作ったのだ。
『どうしてここがわかったの?』
『宿帳にあんたの名前があったから。部屋調べたら隣空いてたからね』
壁一枚を隔てて、フェアリーがいる。それだけで、クラッズはいても立ってもいられない気分になる。
『フェアリー、元気でやってる?どんなパーティにいるの?』
『元気。パーティはあんたに関係ないでしょ。そういうあんたはどうなのよ』
『ボクも元気だよ。パーティのみんなとは仲良くやってる』
色々聞きたいこともあり、話したいこともたくさんあった。だが、いざ話せる状況になると、それはなかなか言葉に出来なかった。
『ところで、例のアイテムは見つかった?』
突然の質問に、クラッズは一瞬うろたえた。見つけたには見つけたが、それを他の人にやってしまったなどと言ったら、フェアリーは
本気で怒るかもしれない。
『まだだよ』
『嘘だ』
即答で返され、クラッズは血の気が引く思いだった。
『一瞬、間があったでしょ。それにね、変な噂してる奴がいたんだよね。仲間をロストしたパーティに、蘇生の果実をただでやった
お人よしがいるってさ。言い訳があるなら、一応聞くよ』
クラッズは大きな大きな溜め息をついた。やはり彼女には、嘘など通用しないらしい。
『その子、ドワーフでさ。ロストした人が、恋人だったらしいんだ。だから、うちのドワーフと重なっちゃって……ごめん』
それに対する返事は、しばらくなかった。たっぷり1分ほども経ってから、壁越しにもわかるほどに、大きな溜め息が聞こえた。
『ノームとかセレスティアじゃあるまいし、お人よし発揮すんのも大概にしなさいよ。もう無いものはしょうがないけどさ。で、何か
収穫はないの?』
どうやら、一応はわかってくれたようで、クラッズはホッと息をついた。
『お礼ってことで、天使の涙三つもらったよ』
『へえ、こっちは天使の涙四つある。これで七個だから、あと三つね』
『ねえ、フェアリー』
今まで浮かんでいた笑顔が消え、クラッズは力なく壁を叩いた。
『……会いたいよ』
それに対し、ややあってから返事が来る。
『あたしは、会いたくない』
彼女との付き合いは長い。その言葉が、そのままの意味ではないことは、クラッズにはよくわかっていた。クラッズとて、一度会えば、
もう離れられなくなってしまうだろう。
『わかってる。早く会えるように、頑張らないとね』
『そのチャンスを、どぶに捨てたあんたには言われたくないっての。それから、天使の涙はあたしが預かるから、部屋の前に置いといて』
『わかった。置いたらドアノックするよ』
クラッズはベッドからポンと飛び降り、天使の涙を道具袋に入れ、部屋を出た。そして隣の部屋の前に置き、ドアをノックするとすぐに
部屋の中へと戻った。
ドアが閉まると同時に、隣のドアが開く音がする。続いて道具袋が床に擦れる音が響き、ドアの閉まる音がする。
それを確認してから、もう一度ベッドに戻る。そこで耳を澄ましていると、比較的すぐに返事があった。
『確かに三つ、預かったよ。あと三つ探すのが先か、他のアイテムが先か。どっちにしろ、あんたも頑張りなさいよ』
『わかってるよ。フェアリー、絶対一緒に、帰ろうね』
『言うまでもないこと、いちいち言わないでよ。それじゃ、おやすみ』
以後、ノックの音は消えた。直接言葉を交わしたわけではないが、それでも嬉しかった。久しぶりに、彼女と話が出来たのだ。
それに、彼女の無事も確認できた。それだけでも、クラッズは満足だった。
ベッドに寝転び、目を瞑る。今日はいい夢を見られそうだと、クラッズは半分眠りかけた頭で思っていた。
パルタクスから飛竜が飛び立ち、空への門へと向かって飛んで行く。さすがに距離があるため、いくら飛竜とはいえ、多少は時間が
かかる。そこに至るまでの景色もすっかり見飽きている一行は、それぞれ思い思いに過ごしていた。
「なあエルフ。最近、ファインマン校長はボケてきていないか?」
「いくらお姉様がヒューマンを嫌いとはいえ、校長をそんな風に言うのは…」
「いや、違う違う。この前、総合カリキュラムの特級を受けただろう?その前に、校長に挨拶しておこうと思って校長室に行ったのだ。
そうしたら、『卒業証書はどうしたのですか?』とか言われてな……勘違いだとは言いにくいから、そのままもらってしまった…」
「……きっと、総合カリキュラムを受ける前から、校長はお姉様が無事に終えられると信じてたんですわ」
「そうだといいんだがな……あの卒業生達と間違われたんではないことを祈ろう」
そんな話をするエルフとバハムーンを尻目に、他の仲間は怪談で盛り上がっていた。
「でな、デーモンズの奴等とか、俺等生徒にそっくりな奴がいるだろ?その見た目に騙されて、不意打ち食らって、殺されたパーティが
あるんだよ。でだな、そのリーダーだった奴が、最初に後ろから叩き潰されたらしいんだ。だから、そいつは自分が死んだことにも
気付いてねえんだよ」
「おい……やめろ。もうやめろ。やめてくれ。それ以上はいい。言うな」
ディアボロスは耳を塞ごうとするが、ノームがニヤニヤしながら両手を掴んでいるため、それもできない。
「他の奴は、その後にやられたから、あの世にちゃんと行ったんだろうな。でも、そいつは仲間がいきなり消えて、そいつらを
探し回ってるんだ」
「やめろ。よせ。ノーム放せ、放してくれ。おい、ほんとに放せってば!」
「セレスティア、手伝って。私だけじゃ押さえ切れない」
「ええ、いいですよ。あるいはパラライズでも、唱えましょうか?」
「先に魔力使ったら、リーダーに怒られる」
セレスティアはディアボロスの左手をがっちりと押さえ、ノームは右腕をしっかりと掴んだ。
「こら、セレスティア!ノーム!放せってばぁ!!!」
「でな、自分が死んだことにも気づいてないもんだから、そいつは地下道から出てくるんだってよ。それでな、空への門の宿屋の、
どこか一室が、そいつらが使ってた部屋なんだ。そこに泊まるとな、もうだ〜れも起きてないような夜中にな、音が聞こえるんだよ。
廊下をゆっくり歩く、ぎしぃ……ぎしぃ……って、小さな音がな。それがだんだん近づいてきて…」
「うぅおおおおぉぉぉあああぁぁぁ!!!やぁぁめぇぇろぉぉ!!!」
「やれやれ、うるさいですねえ。少し静かに、していただきましょう」
さすがにうるさかったため、セレスティアは精神の石をぱちんこにかけると、至近距離から撃ち込んだ。ディアボロスは一声呻くと、
ブルブル震えながら黙り込んだ。恐怖の震えか痛みの震えか、また痛みで黙ったのか特殊効果で黙ったのかは不明である。
「足音はな、部屋の前で止まるんだよ。それで、コンコンってノックが聞こえてな『俺だよ、開けてくれよ』って声がして、
それでも出ないと、鍵をかけたはずなのに、ドアがゆっ……くりと開き始めるんだってよ。そんでな、その向こうには、頭を砕かれて
血塗れになったそいつがいて、笑いながら部屋に入って…」
「おい、いつまでくだらない話をしている。もうすぐ着くぞ」
バハムーンの声に前を見ると、確かに空への門が見え始める頃だった。しかし、着くにはまだ少しかかる。
「何だよ、いいところなのに。お前はこういうの嫌いか?」
「アンデッドなど怖くもない。それより、着く前にそいつを何とかしておけ」
バハムーンが顎で示したのは、両手を押さえられながら無言でのたうち回るディアボロスである。しっかり沈黙効果は出ていたらしい。
「はいはい、わかったよ。ちゃんと回復しとくって」
「それから、少し気を引き締めた方がよろしいですわ。これから戦う相手が、誰だかわかってまして?」
「わかってますよ。ですが、例えエンパスといえど、負ける気は、しませんがね」
とはいえ、そう言うセレスティアの表情は少し硬い。やはり、過去にロストした者が出ているということで、不安はあるのだろう。
それは全員同じらしく、以後はあまり会話もなかった。ただ、近づいてくる空への門を見ながら、それぞれの準備を整えていた。
パーティとしての力だけなら、卒業生を凌ぐといわれる彼等の戦いは、そう言われるに相応しい高次元での安定を見せる。
最初に魔法壁を張り、その間にバハムーンとノームを除く全員がラグナロクを詠唱し、一気に体勢を整える。例えインバリルを
唱えられても、必ず一人が魔力回復の効果を起こしているため、そこから崩れることもない。非常に手堅く、安定した戦いをし、
エンパスを討ち取ったときも、全員ほとんど傷らしい傷はなかった。
「みんな、無事だな」
「何も落とさなかったね。つまんない」
「次の機会に、期待しましょう」
死者も出ず、ホッと一息つく一行。その時、ディアボロスが何気なく部屋の中を見回すと、何かが落ちているのに気付いた。
「……ん?何だありゃ?」
気になって近づくと、少しずつそれがはっきりと見えてくる。そしてその正体に気付いた瞬間、ディアボロスはその場に立ち竦んだ。
それは物ではなく、ノームの依代だった。生きているのか死んでいるのか、この暗い地下道の中で、糸の切れた操り人形のように
座り込むその姿は、異様に不気味に映る。
「おい、どうした?」
「い、い、いや、あれ……だ、誰だ?つーか、生きてるのか…?」
ディアボロスの言葉で全員が気付き、そちらに視線を送る。
「……さすがにわからんな。ノーム、お前はどうだ?」
「私だって、わからない。中身が入ってるかどうかまでは、同種族でもわからないもん」
「なら、確認してみるか。ディアボロス、頼む」
「え、えええっ!?お、俺ぇ!?」
「一番近いからな。怖いなら私も一緒に行ってやるが?」
「う……わ、わかったよ!行きゃいいんだろ!?……でも、なるべく近くにいてくれ…」
ディアボロスはおっかなびっくり、生死不明のノームに近づく。元々が人形であるため、もちろん生命反応はない。
そっと前に回りこんで見ると、目は虚ろに開かれたまま、微動だにしない。
何だか怖いのでまた後ろに回ると、ディアボロスは溜め息をついた。そこに、バハムーンとエルフもやってくる。
「どうだ。わかったか?」
「ずいぶんいるみたいで、えらく汚れてるな。生きてるか死んでるかはわからねえけど、でも、死んでるなら無事でいるわけもないし…」
ギギ、と、微かな音が鳴った。ディアボロスの背中に、冷たい汗が流れる。
ゆっくりと、後ろを振り返る。
ノームの首が、体はそのままに真後ろを向き、ディアボロスを虚ろな目で見つめていた。
「ぎゃーああああぁぁぁ!!!!」
「きゃあっ!?やだ、やめてよっ!!」
「お姉様に何するんですの!?」
「ばかぁっ」
ディアボロスは咄嗟に、近くにいたバハムーンに抱きついてしまった。直後、女三人の声と共に、それぞれがディアボロスを強打する
音が響く。彼はそのまま地面に倒れ、半分意識を失っているらしい。
「……すみません、驚かせるつもりはなかったのですが。誰かが来るのは、久しぶりですね」
ギリギリと音を立てながら、ノームが体を動かす。
「なんか、一瞬えらく可愛い悲鳴が聞こえたような気がするんだが…」
ヒューマンが言うと、バハムーンはドラゴンそのもののような目で彼を睨んだ。
「……気のせいだよな、は、ははは…」
「あら……もしかして、あなた、卒業生の方ではなくって?」
エルフが尋ねると、ノームは静かに頷いた。そして、体も首の方向へ向け、倒れているディアボロスにヒールを唱える。
「ええ、その通りです。あなた方は、パルタクスの方ですね。とても強い方々だと、よく噂を聞きましたよ」
ノームの言葉に、セレスティアが鼻で笑った。
「皮肉、ですかね。あなたのような卒業生から見れば、わたくし達など、取るに足らないでしょうに」
直感で、バハムーンは危険だと感じた。話を聞く限り、ノームは善の思考を持っている。だが、こちらは悪の思考を持つ者が三人もいる。
このまま話していれば、喧嘩が起こることも十分にありえる。
「おい、もう話は終わりだ。帰るぞ」
「もうかよ。ま、いいけどな。にしても、なかなかいい土産話もできたよな。卒業生のお方が、こんな所で一人でみすぼらしい姿を
晒してますってな。校長に聞かせてやりゃ、大喜びだろうよ」
「セレスティア、ヒューマン、いい加減にしろ。無駄話などしていないで、さっさと帰るぞ」
「おやおや。何をそう、慌てているので?……ああ、仲間を失って、他の仲間にも見捨てられた彼を見るのが、不快だと、いうこと
ですかね。それなら、わたくしもわかりますが」
既に、お互い言葉と行動で、性格を把握している。彼のような善人が、この仲間達は気に入らないのだ。
「さっさと行くぞ!無駄話はそれで終わりだ!」
「……うぁ、頭が痛てぇ……大声出すな…」
ディアボロスがようやく起き上がり、辺りを見回す。バハムーンは、なおも何か言おうとしていたセレスティアとヒューマンの髪を掴み、
出口に引きずっていく。エルフもその隣にいる。が、ノームは彼の前にしゃがみこみ、何やらニヤニヤと笑っていた。
「……ふーん、待ってるんだ。帰ってこないかもしれないのに」
「必ず帰ってくると、信じています」
「馬鹿じゃない。どうせみんな、あなたのことなんか忘れてる。あなたは舞台に置き去られた人形。舞うこともなく、喋ることもなく、
来ない主人を待ち続け、そのまま朽ちる、哀れな人形」
「……決して、そんなことはありません。ドワーフさんも、クラッズさんも、フェアリーさんも、セレスティアも、必ず戻ってきます」
その一言で、彼女は気付いた。何気なく聞き流してしまいそうな、たった一言に、彼女の女の勘が働いた。
「へえ、好きなんだ。そのセレスティアが。ただの人形のあなたが」
「……ええ」
「あはは。人形がどう恋をするの。人形をどう愛せるの。その子があなたを好きって言うのは、所詮ただの同情。哀れな人形を可哀想に
思って、好きになってあげてるフリをしてるだけ。それにも気付かないなんて、あなた、ほんとに可哀想」
「………」
「人形が」
吐き捨てるように、彼女は言った。そこには、普段抑揚のない喋りをする彼女の言葉とは思えないほどの、強い侮蔑の響きがあった。
「その子も可哀想。あなたみたいな人形に好かれて、それに付き合ってあげなきゃいけないなんて。それとも、その子もあなたみたいな
馬鹿なのかしら。あはは、だとしたら、すごくお似合い」
彼は無表情に、喋り続ける彼女を見つめている。
「でも、やっぱりそれはない。だって、その子もあなたを捨てて、パルタクスに戻っちゃったんだから。どうせあなたは、みんなから
捨てられた…」
「おいノーム、いい加減にしろっ!!!」
突如、凄まじい怒鳴り声が響いた。彼女が驚いて振り向いた瞬間、パァンと乾いた音が辺りに響いた。その衝撃で彼女は地面に倒れ、
頬を押さえて唖然とした顔でディアボロスを見つめる。
やがて、眉が寄り、唇がわなわなと震え、たちまちその目には涙が浮かんだ。
「う……う、うわあ〜〜〜んっ」
まるで子供のように泣き出した彼女を苦々しい目で見つめ、ディアボロスは彼の前にしゃがみこんだ。
「その……悪かった。これで勘弁してやってくれねえか」
「彼女は、泣けるのですね」
相変わらず無表情に、彼は言った。
「は?」
「いえ。それより、逆にあなたに辛い思いをさせてしまったようで、申し訳ありません」
「あ、いや、そんな……こっちこそ、悪かったよ。もう、あんなこと言わねえように、きっちり言っとくから」
「あまり、辛く当たってはいけませんよ。彼女は彼女で、抱えているものがあるのですから」
「は、はあ……と、とにかく、俺等はこれでな!おいノーム、行くぞ!」
「ふえぇぇ。ぶつなんて最低っ。馬鹿っ。もう知らないからっ」
差し出した手も取らず、ノームはディアボロスを置いてさっさと飛んで行ってしまった。
「って、おいおいおいいぃぃ!!みんなまだ行くなよ!!俺を置いていくなぁぁ!!」
大慌てで仲間の後を追うディアボロス。その彼もいなくなると、辺りはまた静寂で満たされる。
彼はまた、元のように座ると、静かに目を瞑った。そしてポツリと、呟いた。
「……セレスティア…」
一行はパルタクスに帰らず、そのまま宿に泊まった。明日はアイザ地下道に行こうという話になっていたためである。
「やれやれ、とんだ騒動を起こされるところだった」
ベッドに倒れこみながら、バハムーンがぼやく。そんな彼女に、エルフがそっと近寄る。
「でも、大事に至らなかったのだから、良しとしなければいけませんわ。……ふふっ、それより、お姉様」
エルフの手が、バハムーンの大きな胸に触れた。途端に、バハムーンはビクリと体を震わせる。
「んあっ!エ、エルフ、待てっ!ちょっと……あっ!ちょっと待てぇ!!」
何とか身をよじり、エルフの手を掴むと、エルフは不服そうな顔でバハムーンを見つめる。
「あ、あのな、いいか!?その、するのは構わないが、タチは私でネコがお前だ!いいな!?」
「タチ……猫…?」
「あ、うー、その、あれだ!攻めが私で受けが……じゃない、する側が私で、される側がお前だ!いいな!?いいよな!?」
「嫌ですわ」
「言うことを聞けってば!わ、私はリーダーだぞ!」
「二人でいる限りは、リーダーも何もありませんわ」
「ずるい、そんなの!」
ぐるりと腕を回して、エルフがバハムーンの腕を解く。そうして掴みかかろうとした瞬間、不意にノックの音が響いた。突然の事に、
二人とも思わず身構える。
「こんな時間に……誰だ?」
外は既に暗く、もう起きている者もほとんどいないだろう。そんな時間に来訪者が来るなど、普通はありえない。
「どなたですの?」
「……俺だよ……開けてくれ…」
か細い声が聞こえ、二人は一瞬顔を見合わせた。脳裏に、昼間ヒューマンが話していた怪談が蘇る。
「あんな話……嘘……だよな…?」
「……お姉様、もしかして怖い話も苦手ですの?」
「こ、怖くなんかないっ!馬鹿にするな!」
「じゃあ、どうして震えてますの?」
「……お化けは嫌い…」
「アンデッドとどう違うと…」
「全然違うじゃないかぁ!」
再びノックが響き、バハムーンはますます激しく震えだす。仕方なく、エルフは刀を携え、ドアへと向かった。
「おい……早く、開けてくれよ…」
いよいよ、話が真実味を帯びてきたような気がして、エルフは静かに鯉口を切る。そして、鍵を外すと勢いよくドアを開け、
同時に刀を抜いた。
「うおわっ!?」
「……なんだ、あなたでしたの?」
「な、な、なんだじゃねえ……こ、こ、殺す気か…!?」
首筋に刀を突きつけられ、冷や汗を流しているのはディアボロスだった。エルフは気の抜けた溜め息をつくと、刀をパチンと納める。
「あの怪談の真似をして、怖がらせようというつもりでして?」
「違うわっ!怖いのは俺の方だってのっ!せっかく、死ぬほど怖いの我慢してここまで来たのに、おまけに刀突きつけられるとか…」
ディアボロスもようやく人心地ついたらしく、全身の萎むような溜め息をついた。そこに、いつの間にか威厳を取り戻したバハムーンが
声をかける。
「それより、こんな時間に何の用だ?非常識にも程があるだろう?」
「あ、ああ、それは悪かったよ。でも、ちょっと頼みがあってな…」
「何かあったんですの?」
「あ〜、二つあってな。一つは、ノームを説得してほしい。あいつ、完全にへそ曲げちまってさ、謝っても聞いてもらえねえし、
お菊人形けしかけられるし……んでもう一つは、どっちかゼイフェア地下道についてきてほしいんだ」
ノームの方はともかく、彼の意外な頼みに、二人は目を丸くする。
「ゼイフェア地下道に?それはまたなぜ?」
「……あの、エンパスの部屋にいたノームと、話をしたい。きっちり謝りたいってのもあるしな」
「どうしてわざわざ…?」
「当たり前だろ。喧嘩吹っかけて、あいつをぶち切れさせたのは俺達だ。それを、ろくに謝りもしないなんてこと、俺にはできねえ」
本来は善の思考を持つディアボロスである。中立的になったとはいえ、今でもたまに、こういった善寄りの思考が出るときがある。
「ぶち切れ…?あいつは、そんなに怒っていたか?私には、特にそうは見えなかったが」
バハムーンが言うと、ディアボロスは少し溜め息をついた。
「なあ、エルフ。お前ならわかるんじゃないか?人間、本当にぶち切れたときって、どうするよ?怒鳴るか?騒ぐか?」
「……いえ、恐らくはその前に切り捨てるか……それ以前に、真の怒りの前には、言葉など出ませんわ」
「だろ?あいつもそうだったんだよ。あのまま放っておいたら、それこそ殺し合いにだって発展しかねなかったかもしれない。
それを、ノームに言っても聞いてもらえないんだよなあ……でも、あの場面じゃ殴るのもしょうがねえじゃねえかよ…」
ぶつぶつ言って頭を抱えるディアボロスを前に、二人は顔を見合わせた。
「こいつの言うことも、わからんではないが……どうする?」
「でも、どうしてそれをわたくし達に?あなたなら、一人でもたどり着くことはできるんじゃなくって?」
「え?だって、ほら、そりゃあその……怖いじゃねえかよ……あのデーモンズの奴等とか、幽霊なんだぞ!?」
「………」
今度は違う意味合いで、二人は顔を見合わせた。お互い口には出さずとも、呆れ返っているのはすぐにわかる。
「ま、それなら仕方ないな。私がついて行って…」
「あ、お姉様。それならわたくしが地下道に行きますわ」
「えっ!?」
バハムーンとディアボロスが、同時に声をあげた。それもそのはずで、元々エルフは種族柄ディアボロスを嫌っているし、
男と接するのが平気になった後も、過去の記憶からディアボロスにだけはなかなか慣れなかったのだ。それが、彼とたった二人で
地下道に行くなどとは、どういった心境の変化なのか。
そんな心を読んだかのように、エルフがそっと、バハムーンに耳打ちする。
「お姉様も、怖いのは苦手なのでしょう?それに、ノームもリーダーであるお姉様の言うことなら、きっと大人しく聞きますわ」
「う、それは……むぅ、それもそうか…」
一瞬悩んだものの、バハムーンはすぐに頷いた。
「わかった。なら、ついて行くのはお前に任せる。二人とも、十分に気をつけろよ」
「わかってますわ。それじゃあ、早く行きましょう」
探索が目的ではないため、最低限の装備をすると、エルフとディアボロスは部屋を出る。その後に、部屋着から制服に着替えた
バハムーンも続く。
「悪いな、こんな時間に面倒なこと頼んで。でも、感謝するよ」
「問題が起これば、それを何とかするのもリーダーの役目だ。気にするな」
「それじゃあ、お姉様。また後で」
最後に軽く手を上げて挨拶すると、三人はそれぞれの場所へと向かって行った。途中、遠ざかるエルフの背中を見て、バハムーンは
少しだけ心配そうな顔をし、そして大きな大きな安堵の溜め息をついていた。
エンパスの部屋に、ポツンと座るノーム。その耳に扉の開く音が聞こえ、彼はゆっくりと振り向いた。
「よお。昼間は、悪かったな」
そこには、数時間前に見たディアボロスとエルフが立っていた。
「それと……今のも、ちょっと悪かったな。期待、させちまったか?」
「いえ、いいんですよ。わざわざ、二人だけでここにきたのですか」
「ああ。あの……昼間、うちの奴が迷惑かけちまって、ほんとごめんな」
「いえ、こちらこそすみません。仲間のことを言われたもので、つい」
あくまで無表情に、しかし優しく答える彼に、エルフは少し興味を持った。男は今でも得意ではないが、彼はさほど嫌な感じがしない。
「それにしても、意外でしたわ。あなたのような、森の中の、深き湖の如き心を持った方が、あれほどの怒りを見せるなんて」
そう言われると、ノームはエルフの顔を見つめ、少しの間を置いて答えた。
「いかに高い木々に囲まれた湖といえど、風が吹けばさざなみも立ちます。嵐となれば、周りの木々すら押し流す、荒れ狂う濁流にも
なりえますよ」
意外な答え方に、エルフは少し驚き、同時にこのノームに対し、大きな好感を抱いた。
「素敵な方ですわね。あなたのような方、嫌いじゃなくってよ」
「おいおい、エルフ、どうしたんだ?お前、男は苦手じゃないのかよ?」
「あら、女性でも苦手な方はいますわ。同じように、殿方でも最初から好感を抱ける方だっていますわ」
「へえ、まあいいけど。……ああ、それで、その」
ディアボロスはまた、ノームに視線を移す。
「お前は、ここで仲間を待ってるのか?」
「ええ」
「ずっと?一歩も動かないでか?」
「ええ」
「……こんなこと聞くの、失礼かもしれないけど言わせてくれ。お前はどうして、そこまで仲間を信じられるんだ?」
ディアボロスの問いに、ノームはすぐには答えなかった。しばらく答えを探すようにうつむき、やがて顔を上げた。
「さあ、なぜでしょう。理由はいくらでも付けられますが、彼等を信じることに、理由などないのかもしれません」
「……やっぱ、お前らには敵わねえな…」
溜め息と共に、ディアボロスはそう呟いた。その言葉に、エルフが口を開いた。
「わたくしは、何となくわかりますわ。わたくし、お姉様のことは全て信じられますわ。例え、どんな事があっても」
「セレスティアとかヒューマンはどうだ?」
「……微妙ですわね。でも、信じられないかと聞かれれば、それは違いますわ。少なくとも、リーダーを裏切るような真似は、
絶対しないと信じてましてよ」
「リーダーねえ……あ、そうだ。リーダーで思い出したんだが、お前のとこ、パーティをまとめるリーダーっていないのか?あ、いや、
答えたくないなら答えなくていいんだけど…」
そう尋ねると、ノームは少しだけ首を傾げた。
「特に、いませんね。常に先頭にいたため、フェルパーさんがリーダーだと思われることも多かったようですが、決してそういうことは
ありませんでした。誰が上でもなく、下にも立たず、それ故に、僕達のパーティはここまでこられたのだと、僕は思っています」
「上がいないからこそ……か。俺達とは大違いだな。もっとも、俺達が横並びになったら、あっという間にパーティ崩壊だな」
「僕達の形が、最善とは限りません。あなた達が最善とも限りません。その場その時、その人次第で、最善などいくらでも変わります」
それはいかにもノームらしい、客観的な言葉だった。
「やっぱり、ノームってのはすげえよなあ。うちのはちょっとあれだけど」
ディアボロスがぼやくと、ノームの雰囲気が僅かに変わった。
「……彼女は、特別です」
「はい?」
「先程のことで、あまり責めてはいけませんよ。彼女の気持ち、僕にもわからないわけではありません」
「そういや、それ昼間も言ってたな。よければ、それ、もうちょっと詳しく聞かせてくれねえか?」
ノームは少しうつむき、目を瞑った。やがて、意を決したように目を開くと、抑揚のない声で話し出した。
「僕達は、生身の体を持ちません。それが、時にありがたくもあり、憎らしくもあり。生身を持たない故に、抱えるものもあるのです。
生殖すら必要としない僕達に、その機能はなく、それ故に愛し、添い遂げることも必要としない。他種族と交われば、それはより大きな
引け目となります。体をいくら真似たところで、僕達は生身ではない」
言うなり、ノームは首だけをぐるりと真後ろに回した。
「うわ…!」
「生身を模した体ではあっても、この通り、所詮は人形です。僕達はどう足掻いたところで、生身の人間にはなれない。それに大きな
劣等感を覚える者も、実はとても多いのです。僕自身も、そうでした」
首を元に戻し、ノームは変わらぬ声で続ける。
「恐らくは、彼女もそうなのでしょう。あの依代は、限りなく生身に近い。しかし、どこまで近づいても、本物にはなれない。
近づけば近づくほど、むしろそれを遠く感じる」
彼の言葉に、ディアボロスは彼女の体を思い出していた。あれほどまで精巧な体をもってしても、結局は生身ではない。
どんなに精巧であっても、それはやはり『人形』の体なのだ。
「そんな体を持つ僕達が、あなた方と同じ心を持つという保証はありません。元々アストラルボディしか持たない僕達は、感覚すら
あなた方と違う世界にいる。だけど、それでも僕達は、誰かを愛することがある」
ノームの手が、記憶の誰かを抱き締めるように、自分の胸を抱く。
「彼女は、特別です。限りなく生身に近い依代を持ち、あなたを愛することが出来た。彼女は、それが誇りであり、プライド。
だからこそ、人形そのものの僕が、彼女と同じ愛情を持っていることが許せなかった。人形は恋などしない。自分は人形ではない、と」
「……そんなの、間違ってますわ!」
ディアボロスが口を開くより先に、エルフが叫んだ。
「生身だとか、そうじゃないとか、そんなことはどうでもいいはずですわ!人を愛する心は、誰しも平等にあるはずでしょう!?」
「そう、それは理屈ではわかっています。ですが、そう簡単に、割り切れはしないのです。理屈と心は、違う」
他ならぬノームである彼の言葉は、ひどく重く響いた。そして、ディアボロスが口を開く。
「俺は……あいつが人であるための、道具か?」
怒っているような、悲しんでいるような、とらえどころのない声だった。
「俺……俺は、ほんとにあいつが好きだよ。あいつも、そうなんだと思ってた……けどっ…!それじゃ、俺は何なんだ!?それこそ、
俺は道化の操り人形じゃねえかよ!愛された気になって、恋人気分になって、それは全て、あいつが人でいる気になるための道具か!?」
「いえ、それは違います」
はっきりと、ノームは言った。
「彼女は、人であるために、あなたを愛したのではありません」
「じゃ、何だって言うんだ!?お前がそう言ったんじゃねえのかよ!?」
「誤解を与える言い方をしたことはお詫びします。ですが、いくら人の真似と言っても、誰かを愛することは、そう簡単に出来ません。
彼女は、人となるためにあなたを愛したのではなく、あなたを愛したから、人になれたのですよ」
その言葉に、ディアボロスは一瞬身を固くした。やがて、全身の萎むような溜め息をつき、首を振る。
「……そんな童話、あったっけな。白馬の王子様ってのも、楽じゃあねえもんだ…」
「先程、あなたは操り人形と言いましたが、その糸を操るのは彼女なのでしょう。なら、愛するように仕向けられた人形とはいえ、
そう仕向けたのは他ならぬ人形遣い。彼女があなたを愛する気持ちに、偽りはありませんよ」
無表情に言い終えると、ノームは静かにうつむいた。そんな彼を、エルフはどことなくうっとりした目で見つめている。
「やはり、あなたは素敵な方ですわね。いつか、ゆっくりお話でもしたいですわ」
「ありがとうございます。僕も、その時が来ることを願いますよ」
もう話すこともなく、二人は軽い挨拶をすると、ノームと別れて部屋を出た。
扉が閉まると、ディアボロスはエルフをしげしげと眺めた。
「何ですの?そんなに人のことをじろじろと…」
「いや……お前、あのノームのこと好きになったのかなーって」
「そうですわね。でも、わたくしの彼に対する『好き』は、愛や恋というものとは別物ですわ」
「そうか。でも、話してみたらそっちの意味で好きになるとか、ありそうじゃねえか?」
「絶対にありませんわ。確かにいい方ですけれど、愛情を抱く相手にはなりえない方ですわ」
「そうかなー?でも、絶対なんてのは言い切れねえんじゃねえか?」
「ないったらないですわ、しつこいですわね!彼は話し方が素敵だと思っただけで、大体わたくしにはお姉様が…!」
そこまで言って、エルフはハッと口を押さえた。それに対し、ディアボロスはきょとんとした顔で彼女を見つめる。
「バハムーン?あいつがどうしたんだ?」
「い、いえ……あの、その…」
「ん?……あ〜、わかった」
ディアボロスはエルフの顔を見ながら、にんまりと笑った。
「リーダー差し置いて、彼氏作りたくねえとか思ってんだろ」
「え?」
「いや、お前があいつに懐いてるのは知ってたけど、ほんと懐いてんだなー。女同士の友情って奴か?」
そう言って笑う、超が付くほどの鈍感男を見つめ、エルフは苦笑いを浮かべた。ここまでくると、ある意味ではこの男も
好きになれそうな気がしてきた。
「でもさ、お前はお前で、あいつはあいつなんだし、そんなところには気を使わなくってもいいと思うんだけどなー」
「……ま、いいですわ。きっとお姉様も、これだからあなたをパーティに入れたのでしょうね」
そして、恐らくはノームも、これだから彼を好きになったのだろう。鈍感で、純情で、頭は悪くないくせに、どこか抜けている。
だからこそ、彼は彼女の劣等感にも気付かず、それ故に無用な同情もせず、ただ一人の女の子として扱ってくれるのだ。
以前ほどは痛まなくなった記憶の傷を覗き、エルフは溜め息をついた。
「……わたくしがもっと慎重で、初めにあなたに出会っていれば、もしかしたら今頃は……ね…」
「ん?何か言ったか?」
「何でもないですわ。さ、早く戻りますわよ。あまり遅いと、お姉様が心配しますわ」
「はいはい、ほんとお前はバハムーン好きだな。でも、ま、それも確かだし、さっさと戻るか」
軽い調子で言うと、ディアボロスは懐から帰還札を取り出す。その指にはまった友好の指輪を見て、少しエルフの心が痛んだ。
装備に頼ってまで、彼は仲間でいてくれている。ほぼ全員に嫌われつつも、それでも彼は仲間としてずっと頑張ってくれているのだ。
帰還札が効力を発揮する寸前、エルフはもう少し、この男に優しくしてやろうかと、ぼんやり考えていた。
「あー、痛てえ……くそ、俺達が何したってんだよ…」
「やれやれ。何もあそこまで、怒ることは無いと、思うのですがね」
頭にできた瘤にヒールを唱えながら、ヒューマンとセレスティアがぼやく。二人とも、あの後バハムーンに鉄拳制裁を食らい、頭に
いくつもの大きな瘤を作っていた。
「まして、仲間でもない相手に、どうしてあそこまで気を、使うのか……わたくしには、理解、できませんね」
「俺もだ。くそ、絶対お前より俺の方が怪我ひでえぞこれ…」
「そんなことより、ヒューマンさん」
不意に、セレスティアの表情が変わり、ヒューマンは訝しげに彼を見る。
「ん?何だよ?」
「……あなたは、このパーティに入って、後悔はしていませんか?」
「後悔ぃ?なんでそんなこと?俺は別に、後悔なんかしてねえよ」
「そうですか」
どうでもよさそうに言うと、セレスティアは、ふう、と息をついた。
「わたくしは、少し、後悔しています」
「……どうして?」
「あのノームを、見たでしょう?わたくしは、ああはなりたく、ありません」
いつもの彼からは想像も付かない表情で、セレスティアは続ける。
「よく、言われますね。人は、何かを守るためなら、より強くなれる、と。故に、仲間がいる者は、強くなれる、と」
「ああ、よく言うな。で?」
「ふざけた言葉だと、思いますよ。誰しも、弱味があれば、それを全力で、守るでしょうに。仲間に限らず、ね。わたくしからすれば、
仲間など、弱味にしか、なりません」
仲間の目の前で、セレスティアははっきりと言い切った。
「確かに、弱味を攻められれば、全力で守るでしょう。ですから、守るものがある人間は、強いと言われる。しかし、はなから全力を
出せるなら、弱味など、ない方がいい。本当に強いものは、失うもののない人間、ですよ」
「………」
「例えば、仲間を人質にされれば、どうです?そうなれば、仲間などただの、足枷です。それに、彼のような…!」
忌々しげに顔を歪め、セレスティアは吐き捨てるように言う。
「仲間が、戻ることを信じていると。よくできた、お涙頂戴の美談ですよ。ですが、仲間にとって、それは美談たりえますかねえ?
仲間の信頼に応えるには、彼等はまた、あそこに戻らねば、ならない。戻る戻らないは自由。しかし、戻らなければ、非難される。
何とも、馬鹿げた話です。信頼、友情、善意。それらは人を、否応なく束縛する、優秀な鎖ですよ。だからわたくしは、そんなもの、
ほしくはなかった」
そこまで言うと、セレスティアはフッと笑った。それは、自嘲の多分に混じった笑みだった。
「彼等のような善人は、わたくしには、理解できない。モンスターが減れば、それだけ被害は減る。それは目に見えてわかることなのに、
敵意のないモンスターを見逃す。こちらの善意が通じるモンスターも、いないとは言えないでしょうよ。ですが、それは全体の何割
いますかねえ?一握りの中の、さらに一つまみ程度でしょうに。彼等は奇麗事ばかりを口にして、現実など、見ようともしない。
自分の理想と違えば、悪人と悪し様に罵る。善意を盾にした悪意ほど、恐ろしいものはない。まったく、彼等は大した、悪人ですよ」
「おいおい、お前どうしたんだよ?いきなり語り始めちまって。あんまり頭殴られて、少しおかしくなったか?」
ヒューマンが茶化すように言うが、セレスティアは完全に無視した。
「だからわたくしは、彼等のような人間を見ると、腹が立ちます。理想で生きていけるなら、これほど楽なことはない。そうは出来ない
からこそ、苦しいというのに。卒業すれば他人となる仲間より、お金を。善意の通じる、数少ないモンスターの命より、力を。それで、
わたくしはよかったんですよ。ですが、ねえ…」
そこで一旦言葉を切り、セレスティアは首を振った。
「わたくしが腹立たしく思うのは、あのノームの考えを、少し、理解できてしまうと、いうことです」
「どの辺がだよ?」
「きっとわたくしも、パーティの誰かがロストすれば、必死で生き返らせようと、するでしょう。それこそ、自分の命を、賭けてでも。
リーダーのバハムーンさんや、男嫌いのエルフさん、あの薄気味悪いノームさんに、そしてあなたのような仲間など、わたくしは、
ほしくなかった。友人と言えるようなものなど、いらないものだったんですよ」
「……あれ?一人抜けて…?」
「ですが、今のわたくしは、それらを大切なものと思ってしまっています。これはもう、どうしようもないこと、なのでしょうね」
セレスティアは大きく息をつくと、窓際に近づき、満天の星空を見上げた。
「ですけれど、やはり、彼のようにはなりたくない。わたくしは、彼とは、違います」
「んで?どうするんだ?今からすげえ勉強でもするのか?」
「弱味を、作った以上は仕方、ありません。それを、守りきればいい。……転科でも、してみますかね」
そう軽く呟くセレスティアの目には、強い決意が宿っていた。
「……お前、素直になれねえ奴だよな。俺を守りてえから転科するって言ってみろよ?」
「気持ち悪い。死んでください」
「即答かよ、ひでえな。ま、いいけどよ。お前に守ってもらうなんて、寒気がするぜ」
「あなた以外を守れるよう、努力しますよ」
軽く言ってはいるが、今までずっと司祭を続けてきた彼にとって、これは相当勇気のいる決断だったはずである。今転科すれば、
また努力が一からのやり直しになるからだ。
しかし、彼の目に迷いはなかった。
欲しくもなかった、手に入れてしまった仲間を守るため。あのノームのようにならないため。
新たな一歩を踏み出す決意を、セレスティアは、はっきりと固めていた。
以上、投下終了。
ようやくノム子に悪っぽい言動させられた…。
それではこの辺で。
久しぶりに胸が張り裂けそうな思いを味わったよ
このリンクのさせ方はズルい。ズルすぎて涙が出た
ここで書いてる人は文章のプロか・・・?
乙です・・・
全てのPTの絆か・・・しかしあいつら出すのは卑怯だぜ・・・・
フェア子が・・・フェア子が心配過ぎる・・・・・無事で居てくれ
ディアボロスのところのパーティとノームのやりとりも鮮烈でとても良いんだが、
やっぱりシナックとカルアネデスに感想の大部分を持ってかれちまうなぁ
こいつらはエピソードがあまりに濃すぎた。もう一度読み直すのに畏れがあるくらいだ
誰か思い出せなかったがそうかこいつらだったのか
GJ・・・
これまでの作品を違和感なく絡ませて来る氏の執筆能力にはもう畏敬すら覚えます。
同じ時代を同じ場所で生きていればいずれ出会えるものなんですね。
それと、書いてる時に混乱しませんか?同じ種族が出てくると。
ノームとノームの会話とか、同種族間の言い合いだと特に。
でも氏の作品は読んでても混乱しないんですよね。
やっぱり各キャラにそれぞれの存在感があるからかな。
参考にします。
>>239 アアアア、アトガキモドキ氏!!
なんだかもう二度と出会わないと思ってたライフゴーレムがまた現れたような気持ちです!
リクエストですか?
えと、無理なお願いかもしれませんが「バハ姉×クラ坊」でひとつ。
人との出会いが人を変えるが
どう変わるかは出会った人とその人次第か…
いよいよ来週か
なぁ……公式サイトの四コマあるよな?
あれの一つに猫舌猫背のせいでフェルパー達に懐かれるってのがあるんだ。
……つまり、俺もそうすればめくるめくるニャンコ達の楽園にうわ何するやm(ry
第3話ついに上がった……。
けど、まだまだ続きそうなんだけど;
夜が近づきつつある。
ディアボロスは、落ち着かなかった。
マクスターの無駄な計らい故に、告白する側の生徒は顔を合わせないようにわざわざ別室待機が言い渡されている。
つまり、彼が出るのは最後という事になる。前に来る連中がどんな告白をするかというのは聞けないのである。
まぁ他人のを参考にした告白台詞なんて無粋だとサラは言いそうだが。
「ああ、不安だ……不安すぎるぞ俺……! 大丈夫か俺!」
何せ朝まで告白する勇気のカケラも無かった彼である。ヘタをすると本当に言えないまま卒業する可能性だってある。
そして、未だに。
「何て言えばいいんだよ、俺……」
台詞の一つも考えていなかった。情けない男である。
イベントのメインとなる会場は食堂で、食堂に集まった全校生徒の前で好きな相手に思いを告げる、という内容のイベントだが。
しかし、場合によって対象が被る場合も出て来るし、自分の好きな相手が別の相手が好き、という場合もある。
そしてもう一つ。
告白する、とは言っていないが別の相手が自分の好きな対象に告白するという事に気付いてしまった場合、である。
そして見事に、それに引っ掛かった男が1人いた。
肩書きは生徒会副会長。君主学科のセレスティア男子で学年は最上級。
成績も優秀な方だが性格はやや悪い為、セレスティアという種族の中では人を選ぶタイプ。
その名前を―――――ギルガメシュといい、どこぞの英雄と同じ名前を付けられていた。
「最悪だ……」
「何がだ、ギル?」
ギルガメシュの呟きに、マクスターは隣りで楽しそうに、実に楽しそうにイベント会場でもある食堂を眺めながらそう答える。
生徒会役員は運営の為に結局付き合わされる羽目になったようだ。
「今回の事さ……俺らさぁ、今年度で卒業なんだよな」
「まぁ、そうだな」
「だからマックよぉ、俺らが告白を思い立った所で参加できねぇんじゃ意味ねぇだろうがよ」
「そうは言われてもなギル……」
マクスターはギルガメシュに視線を送り、そこで彼が心底最悪な顔をしている事に気付いた。
まさか後輩1人の為に学校全土を巻き込んだ、とは流石のマクスターも言えなくなってしまった。
「……なぁ、ギル。お前、好きな人でもいたのか?」
「…………ああ」
「そうか」
マクスターはギルガメシュから視線をそらし、息を吐いた。
穏やかな種族でディアボロスと仲が悪い、というのがセレスティアという種族の特徴だが、彼は別にディアボロスじゃなくとも周囲に比べてやや孤立しがち、というか孤高の存在であった。
そう、セレスティアにしては珍しく自己中な奴で、そして彼自身も積極的に友人と関わろうとはしなかった。
入学当初はセレスティアの模範生(マクスター共々)のような存在だったのに、とマクスターは思う。
しかしそんな彼が、このイベントで女子に告白をしようと考えていたとなると。
「なぁ、ギル……だったら、今からでもまだチャンスはあるかも知れん。タークに手伝わせるから……」
「いや、いいよマック……。そいつに対して、告白するっつー野郎が1人いんだよ。そいつに悪い」
「……………………そうか」
それが誰かは解らないが、珍しいなとマクスターは思った。
「………そいつが、その子を幸せに出来るかと思うと、俺にはそうは思えねぇけどよ……」
ギルガメシュはそっと呟く。
「なんか言ったか、ギル?」
「うんにゃ、空耳じゃねぇの?」
「そうか」
マクスターが視線を戻し、ギルガメシュはそっとマクスターが気付かぬうちに、待機していた部屋を出る事に決めた。
そう、マクスターは気付かなかった。
同時に、ギルガメシュの中に渦巻き始めた思いにも。
イベントが発表された時は、お祭り好きの生徒会長の気まぐれかと思ったが、いざ始まってみるとあながちただのお祭りでは無い様子が出て来ていた。
例えば、あるドワーフの男子によるエルフ女子への場合。
「いいか、オレはお前の事を1ミリたりとも好きだなんて思っちゃいねぇからな! けどよ、今のパーティ解散したくねぇんだよ、お前の魔法が無駄に便利だからな!
だからよ、連携云々も考えておくべきだから付き合っておくべきかなんて思っただけだ! 勘違いするなよ!」
「何言ってますの? 勘違いも甚だしいですわね! 私だって貴方みたいなドワーフなんかゴメンこうむりますけど確かに貴方のような前衛がいるから安心して闘えるのも事実ですわ。
まぁ連携云々を考えて日常生活を共にするのも悪くない話ですけど私は貴方の事は嫌いですからね! 忘れては困りますわよ!」
「好きだなんて絶対言わねぇからな!」
「当たり前ですわ! 私もよ!」
……見事なツンデレ具合である。
他には、あるヒューマン男子によるノーム女子への場合。
「好きだ」
「嫌です」
「ぐはぁっ!?」
僅か3秒で玉砕。
女子から男子というパターンもある。
例えばあるフェルパー女子によるディアボロス男子の場合。
「……あ、あうぅ……にゅぅ……」
「……………」
頑張れ、という声が響く中、フェルパーはゆっくりと口を開いた。
「お、お、お、お前の事を、あ、愛してる……」
「そうか」
「……………」
「ならば、付き合おう。俺もお前を愛している」
ディアボロスの人間関係の不得手さが露呈していた。大変である。
「先輩、面白いですか?」
美化委員長であるセレスティア女子が熱心に告白してくる人々を眺めているのに気付いたサラがそう口を開いた。
「あら、サラさん。ええ、なかなか面白いですね」
「先輩も人気高いから告白される可能性、あるんじゃないですか?」
「に、人気高いってそんな……」
「別名『委員長越え』を達成した男子は1人もいませんけどね」
「………何か恥ずかしいですね、そういうの。それに、私はもうそろそろ卒業ですし」
例え誰かに告白されたとしても、もうすぐ終わってしまう学園生活の中でどれだけの事が出来るのか、と思ってしまう。
どれだけの事が出来るのか解らないけど、決して其れは多くは無いだろうし。
「……でも、先輩が人気高いから先輩と過ごしたいって人も多いと思いますよ」
「そうかも知れませんね」
そして何よりも、彼女自身が好きな人は、今は誰が―――――。
『では、次の人でラストとなります。最後をハデに飾って、頑張ってねー』
食堂に声が響き、一斉に拍手が巻き起こる。トリを飾る奴がどんな奴なのか1目視てみたいのだろう。
そんな中から現れたのは、1人のディアボロスだった。
「頑張って」
サラがそんな声をかけ、少年は頭を掻く。そして彼女に彼は見覚えがあった。
同じ美化委員会で、1学年だけ下の副委員長。仕事にしても、頼りにしている。頼りに出来る、珍しいディアボロス。
「……好きな人がいる。その人が俺に振り向いてくれるかどうかなんてのは、正直に言うと自信が無い。けど、この場に立ったからには、俺は正直にその思いを伝えたい、と思う。
やっぱ恥ずかしいんだよな……」
ディアボロスが頭を掻き、委員長は思わず噴き出す。そんなコミカルな姿を見たのは初めてだ。
「………俺の、いる、委員会の、先輩だ」
周囲の視線が、一斉に美化委員長である彼女に向けられた。
「え? 私、ですか?」
「……はい。先輩です」
思わず答えた彼女に、ディアボロスはそう答える。
少しだけ震えている。けど、ディアボロスは1歩前に進んだ。
「俺は……俺は、貴方の事が好きです。ただ、好きになったとか、そういうんじゃなくて、不器用で、実は勇気もあんまりないけど、そんな俺でも頼りにしてくれる、貴方が好きです」
ここで言葉を区切り、少しだけ息を吐く。
彼女は黙る。彼はもう1度だけ息を吸い込み、言葉を続けた。
「もうすぐで、先輩は卒業します。だから、今が最後のチャンスだって、教えてくれた人がいました。卒業してしまったら、もう殆ど機会が無くなっちゃいますから。
俺はまだ1年あるけど、先輩はもう1年無いんです。そんな短い間だけでも、いいんです。俺は貴方が好きなんです」
「………そんな短い間で出来る事は……」
たかが知れてる、と彼女が答えようとして彼が言葉を続ける。
「それだけでもいいです。貴方を好きでいられれば」
「…………」
二人の距離が縮まる。ディアボロスが、歩み寄る。
「…………そんな事言われても……」
彼女の言葉に、ディアボロスがダメか、と息を飲む。
「もう、困りますね……。けど、貴方の事は嫌いじゃないですから」
「……………」
「短くても、いいなら。いいですよ」
その答えは。
肯定。
ディアボロスは今すぐ叫びたい程の衝動に駆られたが、それはどうにか自制する。だが。
食堂にいる全校生徒はその結果に驚愕し、そして。
一斉に、拍手が巻き起こった。
祝福だ。そう、祝福なのだ。
「……先輩、これから」
「ええ、よろしくお願いしますね」
拍手の中で、ディアボロスはそっと彼女の手を取って、自分の側に引き寄せた。
もう誰から視てもそうだろう。そう、彼らはもう。お互いを想う者達なのだと。
その中で、1人だけ拍手をしなかった人物が抜け出していくのを、誰も気付いてはいなかった。
投下完了。
恋愛事情は後2,3回は続くかもな……。
乙です。
がんばったディア男。GJ。
でもまだ頑張れディア男。
そして出てこなかったがディモレアさんが見ていたと俺は確信している。
ん、キルガメシュ……?もしや、作者殿は以前ディア男×バハ子を書かれた人ですか?
違ったらすみませんが、その作品でも同じ生徒副会長で同名のキャラがいたので。
乙ー
ディア男も乙!
ここいらで一悶着きますか、3秒で玉砕したヒュム男に敬礼しつつ次回を楽しみに待ってます!
>>277 おお、覚えてらっしゃる方がいましたか!
イエス、まさにその通りです。
書く作品が皆ディア男が出て来るのばっかりなのは1番愛用してるからです。
でも錬金術士は成長速度が遅い遅い;
それでも頑張って1軍にいますけど。
>>278 恋には波乱が付き物なのですよ。
哀れなヒュム男には合掌で送りましょう。
>>279 やはりそうでしたか!
ところであの作品で出てきたギルガメシュとこちらのギルガメシュは同じなのでしょうか?
もし同じならばあの台詞はディモレアさん家シリーズの伏線なのか?
>書く作品が皆ディア男が出てくるのは一番愛用してるからです。
分かります。うちのディア男もそろそろ4回目の転生間近です。
恐ろしいことにディア男だけ。
他のメンバーは一度も転生させていないどころかレベル30以下で永久駐留です。
ディアボロス一人旅は面白いですよ。苦労しますけど。そこは愛でw
>>280 イエス。二人は同一人物です……要はギルガメシュはサラにフラれてしまった訳ですが。
いえ、実はあの後彼を主人公に何か書こうかなと想っていたんですが……
そのまま忘れてしまいまして。
で、ディモレアさん家シリーズを書いてるうちに彼の存在を思い出したのでせっかくだから、と出演中です。
わぁお、ディアボロス一人旅。いいですよねぇ。
学科によっちゃ苦労するけどディアボロスってなんでもそつなくこなせるレベルですからねー。
自分は1軍メンバーが元々相性が悪すぎたけど催眠術を使ったり合体技使いまくったりで相性を良くしました。
結果、ある意味凄いパーティが(全員性格悪・学科のバランス悪)ディモレアを倒してたというオチが……。
2でもディアボロスは他種族より孤立しがちなんだろうなと妄想しつつ。
でも、可愛いので許す。一途に愛ですよ!
ヤバいな…2の発売を前にしてまたしてもメンバーの名前を考えるのに悩ましくなってきた…
なんていうかありきたりなアニメやラノベから持ってくるんじゃない、学園物で複数集めて
まとまりのあるような名前を付けてやりたいんだよね
科目構成と科目に合わせた名前とそのキャラの肉付け…WIZ系はプレイする前から悩まされるなw
発売日とかキャラメイクだけで疲れて寝ちゃうしな
このスレは本スレの騒動と無縁すぎて吹いた
まあSSや妄想にはゲーム上の仕様なんか関係ないか
1と2の世界観を合わせて魔術師になれる1ノームを羨む2ノームとか
2ノム娘(あ…彼は…魔法書を小脇に抱えて…そうですか…魔術師学科だったのですね…道理で博学…?あの隣を歩いているのは…)
そこにいるのは紛れもなく自分と同じ種族のノームの娘、しかしその胸に抱えているのは彼と同じ魔術師学科の教科書…
そう彼女は新型である自分よりも古い型であるが魔術師の道を歩んでいる同胞…
自分の方が新しく優れた存在であるハズ…
しかし彼の隣を歩きその横顔を見上げている表情は自分よりもずっと豊かに見えた。
2ノム娘(………)
我知らず心臓部のポンプがうずくのを感じた…。
こんなん?
同じ世界で1から2の年月的にもそんなに差はないはずだから、1キャラと出会う2キャラというのは普通に有りだと思う
>>285 なんか知らんが頭の中でサンホラのスターダストが流れ出した。
お揃いね私達これでお揃いねああ幸せ
バッドエンド
彼と彼女を見かけるとカッコいいと思って、突然心臓部のポンプを押さえて
「っぐわ!・・・くそ!・・・また暴れだしやがった・・・」とか言いながら息をを荒げて
「奴等がまた近づいて来たみたいだな・・・」なんて言ってた
ドワ子に「何してんの?」と聞かれると
「っふ・・・・邪気眼(自分で作った設定で私の持ってる第三の目)を持たぬ物にはわからんだろう・・・」
と言いながら人気の無いところに消えていく
>>282 のむひょん
ろーぜん
おばま
こきんとー
ぷーちん
きむ
丁度6人いるぜ!
スレ違いで悪いがWizみたいに1から2にキャラを転送できるんじゃないのか?
いわゆる“転校”というヤツか…
そこら辺情報を全く仕入れてないんだよな俺、てか発売されることしか知らん
>>292君はしないよね…?“転校”
>>293そうゆうシチュエーションもアリなんだろうけど
転校になったらパーティーごとになるだろうからな
昨日best版買ったんだけどドワ子の声で勃起したのって俺だけじゃないよな?
2が出たらヒューマン♂がクラッズ♀になるTS的な話でも書いてみようかと思ってるけど
そういうオリジナル設定でキャラの名前アリな話ってここにはあまり向いてないかな?
向いてる向いてないかというと向いてないんだろうけど
有りか無しかで考えると当然有りだろ
名前の有無は作品のクォリティーになんら関わるものじゃないよ
だから自分でこれは良い作品だ!って思えたものならばそこにキャラクター名は有っても良い
転生したつもりが転性だったんですね、わかります。
FF11の菱餅思い出した
>>268 基本的に頭の中で勝手に動くキャラを書き起こすタイプなので、自身の中では混乱なし。
書くときは同種族の場合、性別が違うなら地の文を「彼・彼女」に統一。あとは喋り方で区別つけるようにしとります。
絶対絡ませたくないのは、メインパーティのセレ子とa lostのセレ子。
今回はサイドストーリーっぽい感じです。お相手はヒュマ子。
それでは、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
パルタクスの寮の一室。既に日は落ち、もう多くの生徒は寝ている時間である。
その部屋からも、一つの寝息が聞こえていた。それと、本当に注意しなければ聞こえないほどの、ごく微かな物音。
女の子らしい安らかな寝息を立てるヒューマンを、異常なほど注意深く見つめるクラッズ。片時も目を離さず、瞬きすらほとんどせずに、
慎重にベッドから抜け出していく。
たっぷり五分ほどもかけ、クラッズはようやく床に足をつけると、緊張を静めるように大きく、ゆっくりと息をついた。
そして、今度はゆっくりと忍び足で歩き出し、ドアへと向かう。盗賊らしく、足音や衣擦れなど、まったくと言っていいほど聞こえない。
ドアに手をかけると、彼女はまた大きく深呼吸をした。その深呼吸も、ゆっくりと、音が出ないようにしている。
もう一度ヒューマンを見、起きる気配がないことを確認すると、クラッズは慎重に鍵を外し始めた。盗賊にしては、やや不慣れな手つき
ではあるが、それは音が出ないように気を使っているせいもあるのだろう。
これまた五分ほどをかけて、無音で鍵を外す。クラッズはまたヒューマンをちらりと見て、彼女が起きていないことを確認すると、
ゆっくりとドアを開け始めた。
微かに軋む。すぐに手を止め、ヒューマンを見る。
起きないことを確認し、さらに一分ほど待ってから、再びドアを押す。今度はもっとゆっくりと、慎重に。
再び、キ……と軋む。クラッズはすぐにヒューマンを見る。変わらぬ寝息を確認し、今度は数分待ってから、再びドアを開け始める。
そんな調子で、隙間が彼女一人分開いたとき、既にドアを開け始めてから三十分は経過していた。
クラッズの顔に、微かに喜びの色が広がった。彼女は隙間からするりと抜け出すと、次は慎重にドアを閉め始める。
開けるときよりは早く閉め、最後に音が出ないよう、ゆっくりとノブを戻す。それが終わり、ようやく息をついた瞬間。
「どこに行くつもりなのかな〜?」
「ひっ!?」
クラッズは悲鳴をあげ、その場に尻餅をついた。そこには、確かに部屋で寝ていたはずのヒューマンが立っていた。
「あ……あ…!」
「こんな時間に、あんなに慎重に出てくなんて。さてはデートかな〜?」
屈託のない笑みを浮かべるヒューマン。そんな彼女を、クラッズは怯えきった目で見つめていた。
「でも、ダメだよ。今日はもう、寝る時間だからねっ!」
「や、やだ……もうやだぁ…!」
「わがまま言わないの〜。ほら、一緒に寝てあげるから」
そう言い、ヒューマンはクラッズを抱き上げた。しかし、その優しげな言葉とは裏腹に、彼女を抱き締める力は異常に強く、クラッズは
苦しげに顔を歪ませる。
「く……苦、し…!ごめん……な……さいぃ…!」
「ん?何を謝ってるのかな〜?私に何か、言えないようなことでもしてたのかな〜?でも大丈夫、君なら許してあげるから!」
「誰……か…………助……け…」
クラッズを抱いたヒューマンが部屋入ると同時に、ドアがバタンと閉まった。続いてカチャリと鍵のかかる音がし、辺りはまた、
元のような静寂に包まれた。
翌朝、ヒューマンの部屋にクラッズの姿はなく、代わりに一人の男がいた。
「あの子の人気、落ちないねー。みんな、そんなにあの子好きなの?」
「何回ヤッても、いい反応するからじゃないのかね?あいつ、全然慣れるってことないし」
「あはは〜、そうなんだ。私、ほんとにいい友達持ったな〜」
「いい友達を、普通金で売るかよ…」
呆れたように笑い、彼は目の前の少女を見つめる。
人懐っこそうな笑顔を浮かべ、何とも無邪気に見える彼女は、その実相当な悪人である。金次第で自分も友達も売り払い、現に今では、
相部屋になった哀れなクラッズが、毎日身売りを強要されている。恐ろしい事に、彼女はそれに対する罪悪感など微塵も持っていない。
「そんで?今日の用事は?」
「あー、そうそう。あの子の稼ぎもいいんだけどね、そろそろ私も何かしようと思ってさ。てことで、相談なんだけど〜…」
楽しそうに笑い、彼女は無邪気な笑顔で話し出した。しかし、その内容は無邪気などとは程遠い、悪意に満ちたものだった。
パルタクスの共用倉庫前に、一つのパーティが集まっていた。その中の一人、バハムーンが、呆れた感じで口を開く。
「まったく。急に転科などされても、装備品なんかろくな物はないぞ」
「あなたのお下がりで、十分ですよ。それに、これは十分、使える物です」
黒曜石の剣を振りながら、セレスティアは満足げにそれを見つめる。
「あと一つ、ほしいところでは、ありますがね」
「……この子は、貸さないから」
そう言い、ノームがお菊人形をぎゅっと抱き締める。
「借りる気も、さらさらありませんのでご安心を」
「お、いいのがあったあった。これ、お前も使えるようにしてやるよ。あとはエンジェルカード、エンジェルカード…」
「早く、してくださいね」
「それにしても、どうして急に転科なんてしたんですの?それに、超術士なら既にノームがいましてよ?」
「さあ、どうしてでしょうね?」
エルフの質問に、セレスティアはとぼけてみせる。その理由を、ヒューマンは唯一知っているが、言えば後でひどい目に遭わされそう
なので、黙っていた。
「……よし、あった。んで、これを練成して……ついでに、できる限り強化もして……っと、ほいよ、もう一本」
ディアボロスから投げ渡されたドリルブレイドを、セレスティアは左手で受け取り、それを軽く振ってみる。
「……さすがにまだ、同時に扱うのは、難しいですね」
「なに。アイザかハイント辺りを一周する頃には、楽に扱えるようになるだろう」
「生きていれば、ですがね」
「まあ、なんだ。今日一日、お前はパルタクス地下道でも行ってろよ。その間、俺等は休んでるからよ」
ヒューマンは嫌味も込めて言ったのだが、セレスティアは皮肉な笑みを浮かべつつ頷いた。
「そうですね、怠け者のあなたには、それがいいでしょう。では皆さん、また、明日にでも」
「ああ、気をつけろよ。それから、明日に差し支えない程度にな」
「……ほんと、お前はいい性格だよな…」
仲間と別れると、セレスティアはすぐにパルタクス地下道へと向かった。体はすっかり鈍っているとはいえ、さすがに装備は以前と
比べ物にならないほど良い物を身につけており、また魔法も強力なものを覚えている。群がるモンスターを蹴散らし、余裕を持って
中央までたどり着くと、彼はそこで魔力が尽きるまで戦い続けた。
魔力もなくなり、ちょうどお腹も空いてきたところで、セレスティアはバックドアルで学園へと戻る。そして学食へ行こうと
歩き出した瞬間、不意に後ろから声が聞こえた。
「そこのセレスティアさん、ちょっと待って〜」
面倒臭そうに振り向くと、そこには人懐っこい笑顔を浮かべるヒューマンの女の子がいた。
「あのさ、君、最近楽しいことってあった?」
「あなたに会うまでは、楽しかったです。では、わたくしはこれで」
「ちょっ、ちょっ、待って待って、待ってってば!もー、つれないんだから」
ヒューマンが慌てて腕を掴むと、セレスティアは忌々しげにそれを振り払う。
「一体、何なんですか?わたくしは、あなたに用など、ありません」
「君にはなくても私はあるの!だから話聞いてってば!」
「強引な、方ですね。なら、さっさと用件を、言ってください」
ともかくも話を聞いてもらえそうで、ヒューマンはホッと笑顔を浮かべた。
「あのさ、君ってあの有名な、強〜いパーティの人だよね?」
「はて、強いパーティなどいくつでも、ありますがねえ」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜、あのバハムーンがリーダーの、アイザを一番最初に攻略したパーティだよね?」
「ああ。それなら間違い、なさそうですね。で、それが何か?」
「やっぱりそう!?わ〜、やったぁ!私、ずっと憧れてたんだ〜!」
そう言って子供のように喜ぶヒューマンを見つめ、セレスティアは呆れたような溜め息をついた。
「……では、わたくしはこれで」
「や〜ん、もぉ!クールなんだから!でも待ってよ、話終わってないから。あのさ、そこで提案なんだけど〜」
ヒューマンはセレスティアを上目遣いに見つめ、いたずらっぽく微笑んだ。
「今からデート、しない?」
「なぜ、わたくしがそのようなことをしなければ、ならないんですかね?面倒なので、お断りします」
「だぁってぇ、一回でいいからそんな人と付き合ってみたくてさ。お互い楽しめるし、それぐらい、いいじゃない、ね?ね?」
それからしばらくの間、二人は押し問答を続けていた。セレスティアは頑なに拒否していたが、ヒューマンは一向にめげない。
やがて、うんざりした感じで、セレスティアが溜め息をついた。
「やれやれ。ヒューマンらしく、節操のない方です。ですがたまには、そういうのも楽しいかも、しれませんね」
そう言うと、セレスティアは苦笑いを浮かべた。
「わかりました、負けましたよ。なら一日、お付き合いしましょう」
「ほんと!?やったぁ!それじゃ…」
「では学食に、行きますか」
「って、うわっととと!な、なんで学食?で、ちょっと、あんまり引っ張らないで」
「わたくしは、お腹が空いているので。せっかくですし、一緒に食事でもしましょう」
「わかった、わかったから、そんなに引っ張らないでー。ちゃんと隣歩くから」
ヒューマンはセレスティアの隣に並ぶと、腕をしっかりと絡ませた。セレスティアは少し微笑み、翼で肩を抱き寄せる。
それからの二人は、もう誰が見ても恋人同士にしか見えなかった。仲良く並んで食事をし、お互いに腕を絡めていたり、楽しそうに
話をしていたり、初めにセレスティアが頑なに彼女を拒んでいたことなど、想像も付かないほどである。
実際、セレスティアは楽しんでいた。元々の性格ゆえ、恋人などできるはずもなく、パーティの仲間には女の子もいるが、三人とも
一癖あって、少なくとも恋人にしたいとは思わない。無条件に懐いてくるこのヒューマンは、そういう意味では新鮮だった。
「少し、中庭でも散歩、しますか」
「いいよー。君って、結構引っ張るタイプなんだね」
「これでも、男ですから。ああ、ですがその前に、お手洗いへ行っても、いいですかね?」
「あ、さっき水飲みまくってたもんね。行ってらっしゃーい」
セレスティアがトイレに行っている間、ヒューマンはそれとなく周囲を見回した。そして、何かを確認するように頷くと、すぐまた
元の表情に戻る。
それとほぼ同時に、セレスティアがトイレから出てきた。そんな彼の腕に、ヒューマンはまた齧りつく。
「やれやれ、ずいぶん甘えん坊な、方ですね」
「えっへへー。せっかくなんだから、甘えなきゃ損だもん」
周囲に見せ付けるように甘えるヒューマンを、さらに周囲に見せ付けるようにして、セレスティアは堂々と歩く。
中庭を歩き、ベンチで話をし、屋上で景色を眺め、学食で夕飯を食べる。そして、二人で寮に戻ると、ヒューマンがそっと唇を寄せる。
「ねえ……ここで、お別れしちゃう?」
それに、セレスティアは笑って答える。
「含みのある、言い方ですね。言いたいことがあるなら、どうぞ、はっきりと」
「も、もう〜、いじわるだなあ」
ヒューマンは顔を赤らめつつ、困ったように笑った。
「じゃ、言い直し。私の部屋に、来ない?」
「それは、あなたからのお誘いと見て、間違い、ありませんよね?」
「もう、女の子に恥かかせちゃダメでしょ。そんなの……決まってるじゃない」
さすがに、セレスティアもそれ以上は続けなかった。優しく笑いかけて彼女の肩を抱くと、二人は黙って歩き出した。
階段を上がり、廊下を歩き、いくつ目かの部屋のドアを開ける。ちらりと部屋を見回して、セレスティアはヒューマンに尋ねる。
「おや、相部屋ですか」
「うん。あ、心配しないで。その子、今日一日は帰ってこないから」
「では、気兼ねなく出来そうですね」
「そう……あっ」
言うが早いか、セレスティアはヒューマンの顎に手をやり、強引に唇を奪った。ヒューマンは驚きながらも、必死にそれに応える。
気遣いというもののない、自分勝手で熱烈なキスだった。舌をねじ込み、唇を吸い、時には呼吸すら妨げられる。それでも、ヒューマンは
それに耐え、自分からも舌を絡め、首にしどけなく縋り付いてみせる。
顎にやった手を、セレスティアはそっと離す。そうして何の前置きもなく、彼女のスカートに手を入れ、下着の上から秘裂を擦った。
ビクリとヒューマンの体が震え、首に回していた手の片方が離れる。そして、かなり強い抗議の意を込め、自分の秘部を撫でる手を
捕らえた。
「……何を、するんです?」
セレスティアは唇を離すと、意地の悪い笑みを浮かべる。
「な、何って……その、いきなりすぎるよぉ」
「そもそもは、あなたのわがままにわたくしが、付き合っているのです。それぐらいは、我慢してもらいましょうか」
「そ、そんなぁ。でもだからって……あんっ!」
ヒューマンの意向などお構いなしに、セレスティアは彼女の胸に手を這わせる。ヒューマンは、鼻にかかった可愛らしい喘ぎ声を
上げつつも、やはり少し不満そうに彼の手を押さえようとする。しかし、セレスティアはその手を軽く振り払ってしまう。
胸全体を揉み解し、指先でつんと尖った頂点を転がすように弄ぶ。初めて味わう感触を、セレスティアは存分に楽しんでいた。
思った以上に柔らかく、温かい。彼女が時折漏らす喘ぎ声も、なかなか可愛らしいものだった。
その時、ヒューマンが手を押さえようとするのを止め、セレスティアにぴったりと抱きついた。そこまで接近されては、さすがに
胸を触ることも出来ない。
「何を、しているのです?」
温かくて、これはこれで気持ち良いなと、セレスティアは思った。
「もう、君ばっかりしちゃって。私だって、してあげるもん。だから、ね?ベッド、行こ?」
「そうですか。そういうことなら、あなたの提案に従うのも、悪くはないですね」
セレスティアをベッドに座らせると、ヒューマンはその前に跪き、優しくベルトを外す。一度顔を見上げ、恥ずかしげに笑いかけると、
そっと彼のモノを掴む。
「ん、思ったより大きいんだ」
「そんなに小さいと思われていたのは、心外ですねえ」
「だって、線が細いしさー。ま、とにかく、気持ちよくしてあげる!」
楽しげに言うと、ヒューマンは優しく彼のモノを扱き始めた。動き自体はそんなに激しくないものの、かなり手馴れているらしく、
指の力の入れ具合、擦り上げる角度は絶妙で、セレスティアに激しい快感をもたらす。
親指を裏筋に押し当て、引くときにはやや力を抜き、押し込むときには軽く押し当てるように力を入れる。また、雁首の部分に
指が引っかかるように持ち、時には少し強く握りこむ。
そうでなくとも、他人からそういう刺激を受けるのは初めてであり、セレスティアにとっては十分に強い刺激だった。
「くっ……ずいぶんと、慣れているようですね?」
「ふふ〜ん、少しは経験あるからね。気持ち良いでしょ?」
少しずつ、手の動きが速く、激しくなっていく。その快感に必死で耐えるセレスティアを見て、ヒューマンは楽しげに笑った。
「ふふ、可愛いな〜。じゃ、もっと気持ちよくしたら、どうなるかな〜?」
実に楽しそうに言うと、ヒューマンはセレスティアのモノにいたずらっぽくキスをし、それをゆっくりと咥えた。
「う、ぐ…!」
セレスティアの手が、ぎゅっとシーツを握る。その反応に気を良くし、ヒューマンはそれを口の中に納めたまま、ねっとりと舌を絡める。
喉の奥までそれを咥え込み、また強く吸いながら顔を引く。そうしてまた、吸う力に任せてグッと喉の奥まで納める。
と、ヒューマンの頭を、セレスティアが掴んだ。
「ん?……んぐぅっ!?うぶっ!!」
訝る間もなく、セレスティアは乱暴にヒューマンの頭を揺さぶる。喉の奥に何度も彼のモノが当たり、ヒューマンは激しくえずく。
あまりの苦しさに、何とか体を離そうと突っ張るが、髪の毛を掴まれているために大した抵抗も出来ない。
彼女のことなどお構いなしに、セレスティアは自分の欲望のままに彼女を動かす。やがて、自分からも腰を動かし始め、ヒューマンが
いっそ噛み付いて止めようかと思った瞬間、セレスティアが低く呻いた。
「くっ……うぁ!」
喉の奥に突っ込んだまま、セレスティアは思い切り精を放った。出された方のヒューマンは、必死で咳き込むのを堪えている。
何度も何度も、喉の奥に精液が当たり、その度にひどくえずくのだが、それでもじっとそれに耐える。
やがて、満足したセレスティアが彼女の口内から引き抜くと、ヒューマンは激しく咳き込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ!ゴホッ!……も、もう〜、ひどいんだからぁ」
口の中の精液をハンカチに吐き捨てつつ、ヒューマンはなじるようにセレスティアを見つめる。
「ですから、言ったでしょう?元はといえば、あなたのわがままに、わたくしが付き合っているのですから」
「で、でも、君だって楽しんでるじゃないの〜」
ヒューマンはそう言って口を尖らせるが、セレスティアは気にする様子もない。
「それとこれとは、話が別、ですよ」
「ひど〜い」
「それよりも、これで終わりでは、ありませんよね?」
「え?きゃっ!?」
言うが早いか、セレスティアはベッドから立ち上がると同時に、体を入れ替えつつヒューマンをベッドに突き飛ばした。そしてスカートと
ショーツとを一緒に掴むと、乱暴に引き下ろす。
「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなりそんな……痛っ!」
慌てて押さえようとする手を、セレスティアは強く捻り上げた。そして後ろからのしかかると、まださほど濡れていない秘裂に、
自身のモノを押し当てる。
「ま、待って待って!ね?もうちょっと準備してから……う、うああぁぁっ!!!」
彼女の言葉に耳も貸さず、セレスティアは一気に根元まで突き入れた。あまりの痛みと圧迫感に、ヒューマンは背中を反らし、全身を
強張らせる。
「いったぁ…!い……意地悪なんだからぁ…!」
「男ですから。多少強引なのは、目を瞑ってもらいますよ」
そう言うと、セレスティアはヒューマンの腕を捻り上げたまま、腰を動かし始めた。あまり濡れていないため、セレスティアが動く度に
強い痛みが走り、ヒューマンの口から抑えた悲鳴が漏れる。それでも、快感がまったくないわけでもない。
「あっつ…!うぅ……ん…!あっ……あぅ…!」
悲鳴の中に、少しずつ甘い響きが混じり始め、それに従って少しずつ滑りがよくなっていく。
やはり経験は豊富らしく、ヒューマンの中は柔らかく解れ、全体をやんわりと包み込むように締め付ける。そして突き入れる毎に、
熱い愛液が溢れ、セレスティアのモノにねっとりと絡みつく。突き入れるときは柔らかく受け止め、抜けるときは撫でるように
締め付けてくる。
「んっ!うっ!ど、どう?私の中……あんっ!き、気持ち、いい?」
「ええ……気持ち、いいですよ」
「えへへ……んあっ!君のも、すごく……んんっ……気持ち良いよ…!だ、だから…」
腕を捻られつつも、ヒューマンは何とか肩越しに振り返った。
「もうちょっと……優しく、して…。君の顔、もっと見たいよ…」
「……そうですか。それも、いいですね」
セレスティアが手を放すと、ヒューマンは一度彼のモノを引き抜き、ベッドに仰向けに寝転んだ。
「ですが、キスは、しませんよ」
「わかってるよ〜。私も求めないから、安心して」
冗談っぽく言うと、ヒューマンはセレスティアの首に腕を回す。そんな彼女の顔を見ながら、セレスティアは再び彼女の中に押し入る。
「んうぅ……さっきと違う場所、擦れるぅ…!」
甘い声をあげ、ヒューマンが身をくねらせる。汗ばんだ体が艶かしく動く姿は、何とも扇情的に映る。
既に、セレスティアの呼吸は荒く、動きは性急になってきている。そんな彼を、ヒューマンは蕩けそうな笑顔で見つめる。
「うっ!あっ!い、イキそうなの?もう……あっ!出ちゃいそう?」
「はぁ……はぁ…!ええ、そろそろ……限界ですね…!」
彼が答えると、ヒューマンは嬉しそうに笑った。
「んんっ!いいよ、そのまま出しちゃって……今日は、平気だから……中に、熱いのいっぱい頂戴…!」
「言われなくとも……くっ、そのつもりでしたよ…!」
セレスティアが乱暴に突き上げ、ヒューマンの中がぎゅっとそれを締め付ける。何度も何度も子宮を叩くように突き上げ、そして一際
強く突き上げると同時に、セレスティアが低く呻いた。
「もうっ……くっ!」
直後、ヒューマンの体内に、熱いものが流れ込んだ。それを感じると、ヒューマンは恍惚の表情を浮かべる。
「うぁ……お腹、温かいよぉ……出てるよぉ…」
ヒューマン自身も達していたらしく、その体は弓なりに仰け反り、手足の指もピンと張り詰めている。
しばらく、ヒューマンはそうして痙攣するように体を震わせていた。やがて、体が落ちると、セレスティアはゆっくりと彼女の中から
自身のモノを抜き出す。くちゅっと湿った音がし、抜け出たあとから精液がどろりと溢れた。
二人とも、しばらくそのまま荒い息をついていた。やがて、ヒューマンが顔を上げ、セレスティアににっこりと微笑みかける。
その笑顔は、何とも無邪気なものに見えた。しかしセレスティアは、その中にある、自分と同じような雰囲気を感じ取っていた。
直後、突然部屋のドアが開き、数人の男が入ってきた。どの人物もガラは悪く、一見して面倒な人種だとわかる。
「おいおい、ずいぶん楽しんだみてえだなあ。人の女相手によお」
ちらりとヒューマンの顔を見ると、彼女は舌をペロッと出した。
「ごめんね〜。でも、十分楽しんだからいいでしょ?あはは」
言うなり、ヒューマンは素早い身のこなしでベッドから降り、まだ滴る精液すら気にせず、サッと下着を身に着け、制服を着直す。
「ま、そういうことでさ。あ、でもね、もちろん絶対に痛い目見てもらおうってわけじゃなくってね?出すもの出してくれれば、
無事に帰してあげるけど〜」
そう語るヒューマンを、セレスティアは微笑みながら見つめている。
「どう?君、転科したばっかりでしょ?さすがに、この人数には勝てないよね〜?だからさ、大人しくしてた方が身のためだと思うけど。
お金の使い方、知らないわけじゃないでしょ?」
それでも、セレスティアは微笑みを絶やさない。その笑みは、慈愛などではなく、激しい侮蔑の笑みだった。
「やれやれ。わたくしも、舐められたものです。美人局とは、今時、流行りませんよ」
「おい、お前、何言って…!」
セレスティアが、両手の人差し指を前に突き出し、こっちへ来いと言うようにクイッと曲げた。その瞬間、二人の男がビクリと震え、
言いかけた言葉が止まる。
「ん?あれ?どしたの?」
「あなたの失敗は、二つ。一つは、わたくしに恋愛感情を持つような女性は、ありえません。相当な、マゾヒストでもない、限りはね。
もう一つは、監視の目を途切れさせたこと、ですよ」
セレスティアが糸を操るように指を引くと、二人の男はよろよろと歩き出した。
「え?え?ちょっと、何して……っ!?」
「それに、あなたに言われるまでもなく、お金の使い方なら、よぉく心得てますよ。こんな風に、ね」
男の背中には、それぞれ剣が突き刺さっていた。それに、男達は無理矢理歩かされていたのだ。
セレスティアは立ち上がり、とりあえずズボンだけを穿いた。そして、自分の両隣に来た男の背に刺さる剣を、逆手でゆっくりと掴む。
「わかりましたか?あなたの計画など、最初から全部、お見通しです」
鞘から剣を抜くように、セレスティアは剣を引き抜いた。同時に、二人の男は力尽き、倒れた。
「……そっか、やっちゃったな〜。トイレの中は予想外。そういえば、テレポル使えるんだもんね。保健室行くぐらい、わけないか」
「お、おい!?どうする!?」
「ああ、どうするか悩む必要は、ありませんよ。見れば、わかっていただけると、思いますが」
そこで一旦言葉を切ると、セレスティアはにっこりと微笑んだ。
「端から、あなた方を、無事に帰す気は、ありません」
直後、セレスティアの手から剣が飛び、さらに二人の男が斬り倒された。残った男は反撃に移ろうとしたが、セレスティアは素早く
意識を集中した。
「ぐあっ……あああぁぁぁ!!!」
途端に、男は頭を抱えてのた打ち回った。そこに、ドリルブレイドがゆっくりと近づき、直後、男の腹に突き刺さる。
それを引き抜こうとした瞬間、セレスティアの目の前に何かが飛んだ。反射的に首を傾けて避けると、頬に鋭い痛みが走った。
「………」
頬を指でなぞると、べっとりと血が付いていた。前を見ると、例のヒューマンがヨルムンガンドを構え、こちらを見ていた。
「ほう。いい、切れ味ですね」
「あらら、みんなこんなに早くやられちゃうなんて、使えないな〜。でも、ま、いっか。現金は募金箱にぶっ込んだんだろうけど、
装備だけでもいいお金になりそうだしね」
ヒューマンの手元で、鞭がそれ自身、意思を持つかのように動く。
「痛い目に、遭ってもらうよ」
そう言ってヒューマンが無邪気に笑いかけると、セレスティアも優しげな笑顔を向けた。
「それはこちらの、台詞です。元々、あなたのことは、楽しんだあと殺すつもり、でしたしね」
ヨルムンガンドが、一直線にセレスティアの顔目掛けて飛んだ。セレスティアは顔を傾け、それをかわそうとする。その瞬間、
ヒューマンが手首を返した。途端に鞭は軌道を変え、セレスティアの首目掛けて跳ね上がった。それで、確実に仕留めたはずだった。
だが、次の瞬間、ヒューマンは驚きに目を見開いた。
「なるほど。なかなかの、使い手ですね」
それこそ、難なくといった感じで、セレスティアはその一撃をかわしていた。それどころか鞭を踏みつけ、反撃を完全に封じている。
「ですがこれなら、うちのディアボロスの方が、遥かに、巧い」
ヒューマンの背に、冷たい汗が流れた。これは戦っていい相手じゃないと、本能が全力で危険を告げる。
セレスティアの手の動きに従い、二本の剣が宙を浮かび、こちらに鋭い刃を向けた。
「では、さようなら」
その手が動く直前、ヒューマンは素早く口の中で詠唱を始めた。そしてセレスティアが腕を振りぬいた瞬間、ヒューマンは叫ぶ。
「テレポル!」
直後、ヒューマンの姿は掻き消え、剣は虚しく壁に突き刺さった。
「……逃げましたか」
そう呟くと、セレスティアはゆっくりと制服を着直した。そして、口の中で何やら詠唱を始める。
一方のヒューマンは、屋上で荒い息をついていた。
「焦ったぁ〜……あんなに強いなんて、聞いてないよ」
思わず口に出してから、ヒューマンは鞭を手元に戻した。
「さて、どうしよ。とりあえず、地下道にでも隠れようかな」
「その必要は、ありませんよ」
突如後ろから響いた声に、ヒューマンはビクリと体を震わせた。そして地面に身を投げた瞬間、今までいた場所を二本の剣が通過する。
「言ったでしょう?あなたを生かしておく気は、初めから、ありません」
それでも浮かんでいる笑顔に、ヒューマンはゾクッとした。
「さあ、それでは天国へ、連れて行って差し上げますよ」
剣が回りながら周囲を旋回し、セレスティアが腕を振り抜く。
「テレポル!」
それと同時に、ヒューマンは再びテレポルを詠唱した。今度は誰もいない校舎の空き教室に出ると、ヒューマンは素早く後ろを向いて
鞭を構えた。
―――絶対、後ろを取ろうとするはず。なら、そこを攻撃すれば…。
「ほう。わざわざ後ろを、取らせてくれますか」
「ええっ!?」
慌てて振り向いた瞬間、凄まじい勢いで剣が飛んできた。魔法を詠唱する暇がなく、ヒューマンは咄嗟に意識を集中し、瞬間移動を
使った。そして再び寮の屋上に出ると、辺りを注意深く見回した。
―――後ろは読まれた。なら、次もまた前?ううん、それはない。でも、後ろもない。なら、次は…。
次もくると考え、ヒューマンは横に注意を向ける。死角を突いてくるのなら、後ろが取れない以上は側面を取るだろうと考えたのだ。
だが、セレスティアはなかなか来ない。少し不安に思い始めたとき、上から微かな羽ばたきの音が聞こえた。
「う、うそぉ!?」
咄嗟に身を投げ出した直後、今までいた場所に剣が突き刺さった。それは石造りの屋上の床に、ざっくりと突き刺さっている。
「テ、テレポル!」
ヒューマンは焦っていた。自分も腕に覚えはあり、そう簡単には負けないつもりだった。まして、魔法は全学科のものを使え、
それらを駆使すれば、あの卒業生にも、それに次ぐ力を持つというパーティにも、一対一なら負けない自信があった。
だが、あのセレスティアは、こちらの考えをことごとく読み、その裏をかき、しかも戦闘力ですら、自分を上回っている。
何より恐ろしいのは、あのセレスティアには、躊躇いが一切ないのだ。男であれば、自分が初めて関係を持った相手なら、多少なりとも
情が出るだろう。だが、あの男は本気で自分を殺しにかかっている。万一の場合は、そこにつけ込めると考えていたのだが、予想に反して
手加減など何一つない。
策略とわかった上でそれに飛び込み、存分に楽しんだあと、その相手を殺す。とんでもない悪人だと、ヒューマンは自分のことを
棚に上げて思った。
―――とにかく、逃げなきゃやばいな。あんなの無理無理!
もはや、優先するものは自分の命だった。いくらなんでも、殺されてはたまったものではない。テレポルと瞬間移動を連続で使い、
居場所を悟られないようにし、合計17回目の移動で、ヒューマンは校舎の屋上に移った。ここなら、見晴らしがいいため、追われても
すぐにわかる。
しばらく辺りを見回し、気配を探る。鞭を構え、片時も警戒を解かないまま、数分が過ぎる。
「はぁ……はぁ……もう、さすがに来ないよね…?ていうか、来ないでほしい…」
思わずそう呟いた瞬間、微かに空気が揺らいだ。
「ご期待に沿えず、申し訳ありませんね」
「わぁっ!?」
すぐ後ろに、セレスティアが立っていた。そしてゆっくりと、剣を振りかぶる。
もはや場所など考えていられない。ヒューマンは全力で、とにかく出来うる限りの早さで魔法を詠唱した。
「さようなら」
「テ、テレポルー!!!」
剣がヒューマンの首を飛ばす直前、辛うじて詠唱が完成し、ヒューマンは姿を消した。獲物を失った剣が虚しく宙を舞い、セレスティアの
手元に戻る。
「……また、逃げましたか。さて、今度はどこに…」
ポジショルを唱えようとした瞬間、寮の一室から、聞き覚えのある凄まじい悲鳴が聞こえてきた。それを聞くと、セレスティアは
呆れたように笑う。
「……やれやれ。探す必要も、ないようですね」
そう呟くと、セレスティアはテレポルを唱え、寮のある一室へと向かっていった。
「……何やってるの」
ディアボロスの部屋に、抑揚のない声が響く。
「あ……お邪魔、して、ます…」
苦しげなヒューマンの声。その彼女を、ノームが呆れたように見つめている。すぐ近くでは、ディアボロスが泡を吹いている。
「ちょ……ちょっと、色々あって……よけれ……ば……助けて……ほしい、な…」
ベッドのすぐ脇の壁から、ヒューマンの上半身だけが突き出ている。慌てて適当に飛んだため、体半分が壁の中に埋まってしまったのだ。
「ふーん。本当に、壁の中に飛ぶことってあるんだ」
「み、みたいねえ……私も、初めてだよ……がふ…」
その時、誰かがドアをノックした。
「誰」
「わたくし、ですよ。そのヒューマンに、用がありまして」
お菊人形がドアへ出向き、セレスティアを招き入れる。そうして部屋に入ってきた彼を、ヒューマンはとても困った顔で見つめた。
「あ……はは…。お仲間、の、部屋……だったん、だ…。ついて、ない、なあ…」
「おーい、さっきすげえ悲鳴聞こえたけど、何事だ?」
今度はヒューマンの声が、ドアの外から響く。
「えっとね、知らない子が壁に埋まってる」
「え、マジで?ちょっと見せてくれ。それ俺も見てえぞ」
部屋に入ったヒューマンは、半分壁に埋まった同種族の女の子を、見世物でも見るような目で見つめる。
「で?お前は何してるんだよ?」
「いえ、少し事情がありましてね」
「事情って、どんな?」
「そうですね。話すと少し、長くなりますが」
セレスティアはここまでに至る経緯を、細部に至るまで懇切丁寧に説明した。その途中からディアボロスも意識を取り戻し、一緒に
聞いている。
「……と、いうわけです」
「……お前だけは……俺の仲間だと、信じてたのに…」
「フェアリーにまでフラれるあなたの同類に、しないでください。この女が、逆向きに埋まっていれば、あなたも楽しめたでしょうが」
「お前の使ったあとなんてごめんだ!とにかく、さっさと殺しちまえよ」
「そうね。殺しちゃえ」
何の躊躇いもなく言う三人を見て、ヒューマンは絶望的な溜め息をついた。
「ああ……私も、ここで終わりかぁ……あはは……まずっちゃった、なぁ…」
「では、さようなら」
セレスティアは穏やかな笑みを湛え、剣を振り上げた。
「って、おい!!ちょっと待て待て待てぇぇ!!!」
そこに、ディアボロスが大慌てで割り込んだ。それでも振り下ろしてきた剣を、ディアボロスは瞬時にバックラーを練成して受け流す。
「何を、するんです?」
「お前、正気かよ!?そりゃ、お前も怪我させられたんだし、腹立つのはわかるけど……でも、殺すのはやりすぎだ!それにここは
俺の部屋だ!」
「何を言い出すかと思えば……死体など、地下道にでも捨てれば、ばれはしません」
「俺が言いたいのはそうじゃねえ!殺すってことがやりすぎだってんだ!!てかお前、他のは殺してねえだろうな!?」
「一晩たっぷり、苦しむぐらいの怪我を、させてありますがね」
「あとで案内しろ!一応同じ生徒同士なんだし、殺させはしねえぞ!」
意外なところで首が繋がったようで、ヒューマンは不安げな目でディアボロスを見ている。
「では、わたくしにどうしろと?美人局をするような方を、そのまま見逃せ、と?」
「あ、いや、そうは言ってねえよ。でも、その、ほら。何か代案があるだろ?示談にするとか、色々さ」
「示談……なるほど。それも悪くは、ありませんね」
そう言うと、セレスティアは壁に埋まるヒューマンに、にっこりと笑いかけた。
「あなたに聞きますが、ここで首を落とされるのと、全財産を失うのと、どっちがいいですかね?」
「え……う、その……死にたくは、ないかな〜……あはは…」
「では、あなたの持つお金を全て、わたくしに渡してください。あなたのせいで、わたくしの財布は空に、なったのですから」
「あ、そんなら俺も便乗させてもらうぜ。お前、天使の涙持ってたらよこせ」
「じゃ、私も。何か人形、持ってたらちょうだい。じゃないと、この子があなたの目、掻き回すから」
目の前で、セレスティアが剣を握り、ヒューマンが魔法詠唱の準備をし、お菊人形が不気味に動いている。拒否権など、あるはずもない。
「わかった、わかったよ……全部、言う、とおりにする、から……そろそろ、出し、て……苦しい……よ…」
話がまとまったことで、ノームが彼女を瞬間移動で出してやり、全員で彼女の部屋へと向かう。ディアボロスは、そこに横たわる男の
治療を始め、他の三人は彼女から物をせびる。
「ほう。随分と、持っていますね。一千万は、ありそうです」
「天使の涙は二個か。ま、いい。もらってくぜ」
「うふふ、熊の人形。嬉しいな」
「も、もうこれ以上は、何にもないよー。これで、許してくれる?」
その言葉に、三人は顔を見合わせる。
「ヒューマンさん。あなたも、させてもらえば、どうです?」
「だから、お前のヤッた後なんてごめんだっつーの。ま、いいんじゃねえの?」
「無理しないで、しちゃえばいいのに」
「こいつの後だってのが嫌なんだよ!」
よくよく、上には上がいるものだと、彼女は思った。セレスティアはまだわかるが、その仲間にまで物を取られることになるとは、
予想もしなかった。学園随一の問題児の集まりとは、あながち誇張ではないかもしれないと、彼女は考えていた。
「よし、とりあえずの回復はしたぞ。一応、保健室に放り込むか」
「そうですか。では、戻りますかね」
「あ〜、帰ってさっさと寝るか」
「ね、帰ったら続き、しよ」
「……ディアボロスもセレスティアも、お前ら死ね」
彼等が帰ると、残ったヒューマンはぺたんとへたり込んだ。何だか、もう何もかもどうでもいいような、そんな無気力感だけが残った。
大きな溜め息をつき、ベッドに座る。
「……ほんと、失敗しちゃったなあ…」
そう呟くと、ヒューマンはまた、大きな大きな溜め息をついた。
夜も白々と明け始める頃、一晩中陵辱を受けたクラッズが部屋に戻ると、ヒューマンは何だかいじけたような顔でベッドに座っていた。
「……ヒュマ、ちゃん…?」
そう呼びかけると、ヒューマンはゆっくりした動作で顔を向けた。
「ああ、おかえり。今日も可愛がられたみたいだね」
何だか、声に元気がない。それに、全体的に覇気がない。
「あの……何か、あったの?」
「ん?……あはは」
クラッズが尋ねると、ヒューマンは乾いた声で笑った。
「ちょっと、まずっちゃってさ。私、一文無しになっちゃった。お金も、アイテムも、ぜーんぶ取られちゃった」
彼女からお金もアイテムも取るような相手とは、一体どんな化け物なのだろうかと、クラッズは思った。
同時に、クラッズの心に、微かな希望が宿る。彼女はそっとヒューマンに近づき、隣に座った。
「あ、でも、全部じゃないか。そう……全部じゃ、ないよね」
独り言のように呟き、ヒューマンはクラッズを見つめた。クラッズの胸が、期待に高鳴る。
ヒューマンは、その顔にニッコリと笑顔を浮かべ、言った。
「私には、君がいるもんね」
クラッズの顔に、泣き笑いのような歓喜の笑顔が浮かんだ。
「そ……そうだよ!ヒュマちゃんには私が…!」
言いかけたクラッズを無視し、ヒューマンは続けた。
「君がいれば、お金なんていくらでも作れるか」
たった一言。その一言で、クラッズの希望は消えた。
浮かびかけた笑顔は消え、その目に絶望の色が広がる。同時に、彼女の中で、最後まで残っていたものが、ぷつりと音を立てて切れた。
消えたはずの笑顔が、またその顔に広がる。クラッズはそっと、ヒューマンに寄り添った。
「そう……だよ…。ヒュマちゃんには……私が、いるもん……私達、友達だもんね…」
彼女は結局、自分のことは金儲けの道具としてしか見なかった。もう、それを認めざるをえなかった。唯一の希望が消えた今、彼女の
心はそれに耐え切れなかった。
「どうしたのー?急にそんなに可愛くなっちゃって。昨日までは、友達じゃないって言ってたのに」
そんな彼女に、クラッズは笑いかける。しかし、その目は虚ろで、彼女の遥か向こうを見ているようにも見えた。
「ともだち、だもん。私は、ヒュマちゃんのともだち…」
『友達』という、空虚で無意味な言葉。その言葉が、もはや何の意味も持たないことは、クラッズ自身よくわかっていた。
しかし、それでも彼女は、その言葉の響きに縋るしかなかった。そうしなければ、もうクラッズは生きることも出来なかった。
死は変わらず、彼女にとって、最も恐ろしいものだった。その方が、ずっと楽な道であるにも拘らず。
「……そうだね。君は、私の友達だもんね。あはは」
「そう、だよ。ずっと、そばにいてあげる……なんでも、してあげる……ともだち、だもん…」
そう言い、クラッズは笑った。そんな彼女を、言い換えれば金づるを、ヒューマンは逃がさないよう抱き寄せる。
二人の部屋からは、乾いた、しかしどこか幸せそうな笑い声がしていた。
偽りの幸せに縋るしかないクラッズの、壊れた笑いは、いつまでもいつまでも、響いていた。
以上、投下終了。
ちなみに次回で一応の終わりになるのですが、最終章まで入れると長すぎるという状況。
とりあえずの終了部分まで投下して、最終は一日くらい空けて投下しようかと考え中。
ともあれ、今しばらくのお付き合いを。
それではこの辺で。
乙です
天使の涙が揃ったかな?
しかしどこのヒュム子かと思ったらそのヒュム子かww
その話読み返したばかりだったからタイムリー過ぎるw
そしてラスト、全裸で正座して楽しみに待ってます!
おっつー
楽しんであと殺すつもりって悪魔かw
セレ男とディア男って生まれてくる種族間違えたじゃ……
読んでて危うくMに目覚めるところだった
残り二日で二学期が始まりますね。こんばんわ、アトガキモドキです。
今回のリクエストは、バハ×クラで。前にも一回やった組み合わせですが。
あまりに久しぶりなものですから、やりやすいカップリングでやらせてもらいました。
エロ分は少なくて微妙かもしれません。そこはブランクってことで御容赦くださいまし。
迷宮での戦闘、学内における暴動による死者265名。内ロスト並びに蘇生拒否7名。
宝箱の罠による行動不可、及びそれにともなう死者348名。内ロスト並びに蘇生拒否13名。
その他行方不明者並びに失踪者、合計約9名(それぞれの被害件数は割合。別途資料参照のこと)。
――パルタスク学園某年度資料より 死亡・ロストに関する年度内報告なり。
学生寮の設備のひとつに、パーティー単位で使える倉庫がある。生徒手帳と卒業証書があれば、母校のそれは卒業後も使用可能だ。
ゼイフェアから遠く離れた古巣、パルタスクの寮に帰って来た一行。荷物の鑑定もとうに終わり、後は倉庫に詰め込んで解散のはずだが。
「……ねぇ〜、お腹空いたぁ。ゴハン食べようよぉ〜」
いつまでも沈黙した空気に耐え切れず、ヒューマンがぽろりと不満を漏らす。それでも無反応なパーティーを前に、今度は呆れたような溜息。
「もうこの話やめにしない?だって、しょうがないじゃん!今日だけで何回したぁ?」
「そんな事言ってたら、ここ三日で何回だ」
「そうね……10回強ってところかしら」
普段から目付きの悪いディアボロスだが、今日は一段と眼光がきつい。ノームが告げた回数を聞くなり、けっと唸って明後日の方を向く。
キャプテンのフェルパーは愛用の鬼徹を小脇に抱え、腕組みをしたまま眼を瞑ってしまい地蔵のごとく微動だにせず。
彼らがこの一室に集合し、椅子と机に陣取ってはや三十分。重い装備から制服に着替え、だがそれ以外は何ひとつやっていない。
「……〜ああッ!たく、それもこれもクラ坊!」
痺れを切らして罵声を飛ばし、思い切りテーブルを叩き付け、バハムーンが椅子を倒して立ち上がった。
先程まで貧乏ゆすりに忙しかった脚でそのままずかずかと床を踏みつけ、一直線にクラッズのもとへ。
「そもそもオマエがいつも通りなら、今頃はみんなでメシ食ってんだぞ!わかってんのか!」
「…………」
上から指をさされ怒鳴られるクラッズは、返事を返さずうつむいたまま。天空の弓を背負ったままで、バハムーンにつむじを向けている。
狩人を先行する彼以外には、盗賊検定の資格を持つものがいない。したがってアンロックを頼らない場合、罠外しの全てはクラッズの仕事だ。
ところが何を間違ったか、最近の彼はスランプであった。ありったけの盗賊装備を揃えても、せいぜい三割前後の成功率。
それが延々と続いているものだから、もはや迷宮の探索そのものが危惧されているに等しかった。
「他にできる奴なんかいないのに、オマエがそんなんでどうするんだよ!今日なんかスタンガスにかかって、キャプテンが無事でなけりゃどうなったか!」
バハムーンの小言がなおも続く。唇を一文字にきつく結んだまま、クラッズはだんまりを決め込む。
「だいたい、反省会なんてシロートのやることだ!一年坊じゃあるまいし、こんなことでイチイチ長々と!」
「…………うるさい」
「ああ?うるさいだあ!?クラ坊、自分の立場が解って――」
クラッズはバハムーンが言い終わるより早く、背中に手を伸ばし弓を構えると、弦をめいっぱい引き絞った。
「うるっ、さあああいッ!」
甲高い声で怒りを吐き出し、眼を見開いて弓の緊張を解き放つ。
いつの間に、どこから取り出したのか、天空の矢が一本装填されていた。
クラッズが自らの腕を握っている。放たれた矢はバハムーンの頭上を抜け、天井に換気口を作っていた。
仮にも竜殺しを想定して錬金された天空の弓矢。距離や狙いどころを考えても、直撃すればまず即死だろう。
「……身内に得物向けていいなんて、どこのどいつに教わった」
鞘付きの刀で弓ごとクラッズの攻撃を弾き飛ばしたフェルパーは、のしかかるような口調で暴走を戒める。
「今度オレの仲間に同じことしたら……問答無用でぶった斬るぜ」
「……っ」
癖の強い頭髪が若干盛り上がり、尻尾に至っては針山そのもの。モンスターにすらめったに披露しない、フェルパー特有の激昂状態。
威嚇を通り越して完全に殺気立っているフェルパーに睨まれ、クラッズは我知らず生唾を飲み込む。
今まさに喉元へ食らいつかんとするプレッシャーに、バハムーンはもちろん取り巻きも冷汗を垂らす。
「はァ……気に入らねぇ。今日はもう止めだ」
怒りだか諦めだかわからない調子でぼやきを吐き、フェルパーは鬼徹を引っ込めた。
ひとつだけあるドアへ踵を向けつつ、背中越しに今後の予定を伝える。
「明日は休みだ。一日使って頭冷やしな。明後日は同じ時間に集合だぞ」
そこまで喋りながら扉の目前まで歩くと不意に立ち止まり、振り返ってバハムーンを一瞥した。
「ああそう、今日の倉庫番だけどな。バハ子、お前がやれ」
「はあ?」
彼らにとっての倉庫番とは「倉庫整理の当番」であって「倉庫の番人」という意味ではない。
「あたしは昨日やったばかりだぞ?ていうか、今日はクラ坊の当番だろ!」
「本人がそんなんじゃあ、とても任せらんねぇ。それと、かんしゃく起こした罰だ」
もうそれが当然だとばかりに、返事を待たずフェルパーは行ってしまう。
ドアが閉まる乾いた音が響くと、ディアボロスが舌打ちしつつ立ちあがった。
顔の筋肉が眉間にしわを造り、相当苛立っているようである。力任せにドアを開け広げ、肩がすくむほど乱雑に戸を閉める。
「あ〜あ!まったくもう、やんなっちゃう」
おおげさに溜息をついてみせると、悪態を突きヒューマンも席を立った。
あんまり面倒なコトに巻き込まないでね。と言い残して廊下の先に消えてゆく。
「……じゃあ、先にあがるから」
この一分弱の間で最も静かに部屋を後にし、ノームがいなくなり二人だけが残った。
普段ならクラッズを膝にのせて抱き締めなかなか放さないバハムーンだが、互いの間にこれほど剣呑な空気が流れたことは一度もない。
どちらも視線を合せることなくその場に立ち止まって動かなかったが、たまりかねたバハムーンが唐突に叫んだ。
「あー、くそっ!何だってんだよ、ったく!」
怒声を撒き散らし早足でドアへ向かい、ディアボロスより大きな音を立てて走り去る。
クラッズは声をかけることも追いかけることもできず、誰もいない倉庫に立ち尽くしていた。
「ここ、空いてる?ちょっといいかしら」
一悶着のあった翌日、賑わう食堂のテーブルに突っ伏してちびちびとジュースをすするクラッズに、聞き慣れたチームメイトの声が聞こえた。
「あっれー、珍しいね。いつもの相方は?」
「私が一人でいるのって、そんなに珍しい事でもないわよ」
向いの椅子に腰かけたノームに、やや皮肉めいた挨拶をする。しかし、今はすっかり無気力なため、頭も声のトーンも上がらない。
基本的に全身造り物であるノームは飲食の必要がない。それでも中には変わり物がいて、わざわざ消化器官や味覚を付けたりするとか。
湯気が立ち上るコーヒーカップをクラッズの目前に置いた我が隊のノームは、おっとり電波系の「変わり物組」である。
「部屋にこもっているかと思ったら、こんなところで暇を潰しているなんてね」
「クラッズの性だよ。人混みのが落ち着くんだ」
「ふうん。私は一人の方が好きだけど」
ノームは皿ごとカップを手に取り、まだ熱いであろうコーヒーに口を付ける。特に火傷を気にしなくてもよいのだろう。
「まあ、あなただけでも元気そうでよかったわ。だいぶ打ちのめされてるみたいよ、バハ子」
いきなりの発言と情報が耳を強打し、僅かな飲料で激しくむせ込む。
というか、このうなだれる自分の姿を見て、元気そうだと評価するとは。
「げほ、げほっ、ごむはっ!な、なにさ、いきなり!」
「彼女、昨日は一晩中倉庫に居座って、結局帰って来なかったんですって」
新聞の記事を朗読するように淡々と話を続けるノーム。もう何度も見たガラス玉の双眸に、心臓まで見透かされているようである。
「ああは言っても、あなたと喧嘩にまで発展した事が相当なショックだったみたいね。おまけに最後は攻撃までされる始末」
「だってさ、みんな罠の識別と解除がどんなに難しいか、解ってないんだよ。普段からボクに頼りっぱなしのくせに」
「そうまで言うならなおの事よ。いつでも頼ってきた人物が、役立たずなんて思いたくないもの」
無表情なままノームの口調が強くなる。凍てつくような、刺すような眼差しが、二つある眼球から降り注ぐ。
ひるんだクラッズの隙を突き、さらに厳しい言葉でたたみかける。
「少しでいいから考えてみなさい。斬るべき人が斬り、癒すべき人が癒し、支えるべき人が支える。それが冒険者のパーティーってものでしょう?」
「…………」
「例えがちょっと残酷だけど、バハ子からブレスと刀を奪ったら役立たずよ。スランプなのはともかくとして、少しは無力を認めるべきだわ」
反論はできなかった。というより、ここで言い返すと、どんな名文句でも屁理屈と化す予感がした。
しかし、現時点で盗賊技能の増強はいよいよ限界である。かといって、基本学科に戻るのも癪に障る。
だとすると、残った選択肢はひとつ。能力的にも非力にならず、且つ目的を確実に達する手段は、盗賊技能のある上級学科。
「ねえノム子、転科願いの受付っていつまで?」
「日没が門限だったかしら。受理されるには半日かかるけど」
「ごめん、あとで返すから支払いよろしく!」
伝票を押しつけ早口で喋る間にも、すでに足先が出入り口を向いていた。得体の知れない感情に急かされ、体力を惜しまず全力疾走。
走り出す直前に背後から、わずかだがノームの声が聞き取れた。
「がんばりなさい。これはあなたと、バハ子だけの問題でもないのよ」
倉庫の壁にもたれかかって体育座りで考え込むうちに、バハムーンはいつの間にか眠ってしまっていた。
気づいたころにはもう夜が明けて、朝食をとるような時間でもなかった。というかもとより食欲などなく、倉庫から超完熟みかんをくすねたきり。
一日くすぶった気分でいた挙句、自室に戻ってベッドに身を投げ出し、時計を見ればもう日没。天井を見つめてぼんやりとまどろむ。
結局、寮に開けた大穴は、募金による弁償という形で決着を見た。これはヒューマンに聴いた話だが、もっと大事なことを尋ねる勇気は出なかった。
「……クラ坊」
ふと、口をついてクラッズの名が出る。一日顔を見ていないだけなのに、もうずっと会っていない相手に思える。
あんなに悪く言ってやるつもりはなかった。他の誰かに怒鳴らせるくらいなら、自分が言ってやろうと思った。
いや、違う。あたしはうぬぼれてたんだ。クラ坊が相手ならなにをしても平気だと、変なところで油断していたのだ。
今ならクラ坊に謝れる気がする。きちんと詫びを入れて頭を下げて、それでいつものクラ坊なら許してくれるはず。
この際つまらないプライドなど気にしていられない。早く起き上がって、あいつを探さないと。
「やっと見つけたよ。ここにいたんだ」
「え?」
それは鼓膜になじんだ声だった。甲高い少年の可愛らしい音程。いつも抱きついて放さない相手の声。
どこから聞こえたのかを考えるより早く、バハムーンはベッドに押さえ付けられる。叩きつけるというほうが近く、突然の加重にバネが強く軋む。
「うわっ!むむう!」
続いて両手を掴まれ口を封じられる。いずれも凄まじい怪力を誇り、バハムーンの抵抗を意に介さない。
襲撃者は六本の腕を持ち、全身を布に包んだ人形のようだった。ぼさぼさとたわしのような髪を生やし、顔には切れ目が走っている。
上段の二本に両の腕を抑えられ、中段の腕二つがバハムーンの顔を覆い、下段の一対が脚をベッドに押しつける。
「そいつはカラクリ人形さ。武器も仕込んであるから、抵抗はやめときなよ」
「……!」
今度は声の方向がはっきり解った。唯一自由な両目を動かし、目線を自分の横に向ける。
遊士の服と上忍の袴に身を包み、黒ずきんで顔を隠していても、バハムーンはすぐ正体に気がついた。
「ついさっき転科の手続きも済んでね。ボクは狩人から忍者になったんだ」
「むぐっ、むううっ!」
「何か言いたげだけど、聴いてあげないよ。ブレスとかされたら大変だからね」
クラッズは右手を持ち上げたまま、軽やかにベッドへ乗りあがってくる。手元で人形を操っているのだろうか。
そのままゆっくり左手を伸ばし、制服に着いたリボンをほどく。身体のラインをくすぐったくなぞり、上に着た制服に指先をかける。
「昨日はジャマが入ったからね。これからボクは、ひどいことをするよ」
くぐもった声でそう告げると、一息にバハムーンの上半身を剥ぎ取った。
上衣が脱がされるのと同時に、豊満な果実が大きく波打った。
バハムーンの弾力ある女性の象徴は、学生の平均をはるかに凌駕している。
「んん!」
「あはは、相変わらずおっきいね」
適当にからかうと、クラッズはそれに掌を置いた。しばらく撫で回していたかと思えば、急に乱暴な手つきで揉みしだく。
「っつ!うむうっ!」
「スゴイや。思いっ切り掴むと、指が埋もれちゃうよ」
「んっ、うんっ、んんっ!」
乳房はこれでも急所のひとつである。指が食い込む勢いで鷲掴みにされては、握られた部分は痛むばかりだ。
身をよじるほどの苦痛を受けても、押さえこまれた状態のバハムーンはほとんど身を任せるばかりである。
「へへ……あっれ?乳首、起ってきてるね」
徐々に硬化している突起にクラッズが注目する。先端が尖りつつあるそれを凝視され、一層バハムーンの顔が紅潮した。
「はは〜ん。さては、犯されてるのに感じちゃってんだ〜?」
「ん、んぐぅ……んむぅ!」
またしてもバハムーンの身体が跳ねる。口元の覆いをずらしたクラッズが、桃色の先に舌を這わせたのだ。
舐め取るような舌使いから、大口を開けてむしゃぶりつく。強烈な吸引と甘噛みとを繰り返し、バハムーンの乳首を捏ねくり回す。
決して不快な感覚ではないのだが、これではレイプも同然である。巧みな前遊にも素直に悦べない。
「はむっ、ちろちろ、じゅるる……あ〜、おいしい」
「んぐ、んむうう!」
「れろれろ、んじゅる……っぱあ。ふふふ、ホントにイイ身体してるよね」
クラッズが上目使いでいたずらに笑う。もはや完全に悪人面だ。黒い影がかかったような、今までに見たこともない企んだ表情。
その顔は未知の不安を与え、謎の恐怖心がバハムーンを包み込む。怯えや、寒気がいっぺんに襲いかかる。
フィアズにかかったら、きっとこんな感じだ。困惑するバハムーンをよそに、クラッズの手先がスカートに伸びた。
人形が強引に股を開かせ、はしたなく開脚した格好になった。小さな指が下着に侵入し、すでに湿った肉の芽をなぞる。
「ん、ん〜!」
「ほ〜ら、やっぱり。もうグチャグチャだ」
言うが早いか、二本の指を挿入し激しく内部を掻きまわす。容赦のなさに悲鳴を上げそうだが、呻き声しか出てこない。
「指だけでもうキッツキツだよ。たっぷり濡れてるし、イキそうなんでしょ?」
「うんん、うむ、ん〜!」
「ココ、イイんでしょ?オッパイといっしょにシテあげるよ。ほらほら、ボクの指でイッちゃいなよ!」
「んぐ、ん、ん、んん〜〜っ!」
手淫に耐え切れず絶頂し、身体が弓なりになって果てても、ろくに喘ぐことすらできなかった。
細指の責めに潮を吹き、しばらく痙攣が止まらずにいた。
「うわ〜、すっごい。ほら見て。ビチャビチャだよ」
指を引き抜いてバハムーンに見せびらかし、わざとらしく粘着質な音を立てる。
満足気に微笑むクラッズからしてみれば、してやったりといったところか。
「あむ、んん……いいね。発情したメスの味だ。よっぽどムリヤリなプレイが好きなんだね」
「…………」
「さてと、今度はボクがシテもらう番だ。ここらで深呼吸ぐらいさせてあげるよ」
クラッズが払うように右手を動かすと、人形が口元から腕をどけた。
ようやく自由になった喉元に大量の空気がなだれ込み、呼吸すら不満足だった状態からひとまず解放されたことになる。
それでも絶頂の余韻といまだにバハムーンの精神を縛る緊張感が、深呼吸を息苦しい過呼吸にしてしまう。
「っは、げほっ、げほっ!はあ、はあ……」
「あんまり休んでられないよ。すぐに喉の奥を塞いであげるからね」
左手だけで器用に袴を脱ぎ、クラッズが下半身を露わにする。すでに充分な主張をしており、これからの行為は想像に容易い。
「ほら、しっかりして。まだ本番もやってないんだから、バテるには早すぎるよ」
「……どうして……なんだよ」
「え?」
ぽつぽつと話し始めたバハムーンの頬には、透明な水滴が縦に筋を描いていた。
酸素の吸引さえ満足でないのに、嗚咽を漏らしながら喋り続ける。
「あたしが嫌いになったなら、面と向かってそう言やいいだろ!パーティーから外されたって構わないし、いっそクラ坊に殺されるなら本望だ!」
「な、なに……言ってるのさ」
「わざわざこんなマネしなくったって、クラ坊はもうあたしを知ってるだろ?どうしちまったんだよ、クラ坊ぉ……」
泣きじゃくったバハムーンの姿を見た者など、パーティーの誰一人としていないだろう。そもそもこんな痴態もクラッズしか知らない。
普段は強気な彼女が号泣し、必死になって訴えている。クラッズに真性の強姦癖があったら、鳥肌が立つほど興奮する場面だろう。
小さなレイパーは沈むように下を向き、小さな手を力の限り握り締めた。
「そんなの……決まってるじゃんか」
頬や顎の筋肉を力ませ苦虫を噛み潰したような顔をして、くっと面を上げクラッズが叫ぶ。
「気持ちイイからに、決まってるじゃんか……バハ姐が好きだからに、決まってるじゃんか!」
唇を震わせて絶叫すると、大粒の滴が眼尻から零れ落ちた。
呆気にとられ半口を開けた間抜け面のバハムーンそっちのけで、クラッズは勝手に言葉を連ねる。
「ボクだって、バハ姐大好きだから!ハブるとか殺すとか、そんな方法で仕返しなんてやれっこないよっ!」
それにボクはもうバハ姐とシてるから、たいして思いつめることもないじゃん。ボクが思いついた報復なんて、こんなもんしかなかったんだよ。
バハムーンよりも多くの涙を流し、より大きな声でクラッズは嘆いていた。
「やっと……名前で呼んでくれたな」
慌てて涙をぬぐうクラッズに、バハムーンが優しい声で呼びかけた。
「クラ坊、思いっきり抱き締めてやる。だから、このおもちゃをどけてくれないか?」
「あ……うん」
恥ずかしいのか目線をそらしたまま、すっとクラッズの右手が上がる。とたんに文字通り糸が切れたように力無く人形が崩れ落ちた。
バハムーンはそれを掴んで床に投げうち、諸手をあげてクラッズに跳びかかる。
「この、大バカヤロー!」
「う、うあっ、うわあああ!」
「ああ、怖かったっ……マジでどうなるかと思ったじゃねえか、ったくこんちきしょう!」
二人して涙腺が崩壊し、おいおいと喚きながらきつく抱き締め合う。
本当に思い切り抱擁されたクラッズは背骨が折れる思いだったが、そんなことはもはやどうでもよかった。
肌の弾力や温もり、何より愛する女性の香りに全身を包まれ、背中の痛みすら愛おしく感じたのだ。
「あうっ、大好き!バハ姐大好きっ!」
「ああ〜もう!愛してるぜ、クラ坊っ!」
抱きあったまま大好きと愛を連呼し、戦争に出た恋人と再会を果たしたような騒ぎで泣き続けた。
しばらくしてバハムーンの涙は引っ込んだが、依然としてクラッズは彼女の胸を濡らしている。
「はあ〜……それにしたって、クラ坊」
収拾がつかないクラッズの耳元に、眼を赤くしたバハムーンが囁く。
「ぐす……なに?」
「お前、忍者の才能はあっても、レイプの素質はからっきしだな」
「えへへ……相手がバハ姐だからだよっ」
軽口を挟んでにっと歯を見せるクラッズ。無垢な少年そのものの笑顔は、見慣れたいつものクラッズだった。
つっかえていた不安が全て抜けおち安心しきったバハムーンは、頭を垂れ始めた彼の股間に手を触れた。
「ひゃっ!ば、バハ姐!?」
「ほんとにあたしのコト大好きなのか……こっちで教えてくれないか?」
身を乗り出し若干眼を細めて誘惑する。クラッズは照れた顔で頷き、か細い声で生返事を返す。
指先で上下にさすってやると、すぐに先程までのサイズを取り戻した。
「ああ……バハ姐の指、気持ちイイ……」
「どんどん硬くなってきてるな……さっきより大きくなってるんじゃないか?」
「バハ姐、お願い……もう挿入れさせて……」
「ん……いいぞ。めいっぱい、よくしてくれ」
肉棒から手を放しベッドに横たわると、自らの指でバハムーンの秘部が開かれる。
クラッズはそれに自身を押しあて、体重を乗せて一息に貫いた。
たっぷりと湿り気を帯びたバハムーンが、クラッズを抵抗なく包み込んだ。
「あはあっ!は、挿入った……っ」
「バハ姐の、すごい……アソコがきゅうきゅう締めつけてくる……っ」
繋がっただけで身悶えるクラッズ。一度は果てたバハムーンの蜜壺が、求めていたものを受け入れて歓喜している。
熱い液体に満ちた内壁に締めつけられる感触をほとんど生殺しだった陰茎に与えられ、それだけで軽く達しそうになった。
「はあぁ……たまんないよ、バハ姐ぇ……」
「ああん、きて、クラ坊。もう、我慢できない」
「う、うん……動くよ」
股下に多少力を入れながら、ゆっくりと腰を動かし始める。
何しろ辛抱がきくぎりぎりの快感なので、気を抜けばすぐに肝心なものも抜けてしまう。
バハムーンを少しでも早めに導こうと、序盤からクラッズは激しい行為に及ぶ。
「はんっ、ああっ!クラ坊、い、いきなり……ああんっ!」
「はぁ、はっ、気持ちイイよバハ姐!グチャグチャでヌルヌルで、サイコーだよっ!」
「く、クラ坊のも、硬くておっきくて……ふああっ!奥まで届いてるう!」
「バハ姐!もっと、もっとやらしい声聴かせて!」
淫らな言葉を撒き散らしながら、部屋中に甘い空気が充満していく。
バハムーンはクラッズに抱きついて放さず、離ればなれだった両者の存在を確かめ合うように肌を擦り合わせる。
「クラ坊、キスして!キスしてくれえっ!」
だらしなく舌を晒しバハムーンが接吻を要求する。以前まぐわったときもそうだったが、山場でキスをするのが好みらしい。
軽く頷いてクラッズもそれに応える。唇よりは舌を重ねる口付けで、くちゅくちゅと水っぽい音が耳に染み入る。
十数秒と続いたディープ・キスの末に、クラッズの男根に限界が見えてきた。
「んはっ、バハ姐、ボクもうイキそう!顔に、バハ姐の顔に射精したい!」
「あっ、イイぞ、クラ坊!好きなところに、イキたいところにいっぱい射精してぇ!」
「あーイク、ああーイクッ!バハ姐……うああっ!」
最後にひと際強く腰を打ち付けると、爆ぜる寸前の自身を引き抜く。急いでバハムーンの口元にそれを運び、解放された咥内に亀頭を向けた。
待ち構えていたように喉の奥までクラッズの分身を咥え込み、極限まで敏感になったそれを吸い出すが如く舐め上げる。
「うはっ!ああぁ〜!すごっ、止まんない……バハ姐、それダメえ……っ」
「ん……ちゅぽ。はあん、クラ坊のザーメンおいしい……」
「ふあ……腰が抜けて……力入んないよ……」
「んふふ……じゃあそのままじっとしてろよ。今夜一晩、抱き枕にしてやる!」
満面の笑みで抱き締められるクラッズと、本気で夜明けまで自分の部屋から出すまいと目論むバハムーン。
まだまだ二人の熱い夜は続くのだが、ここまでの一部始終を窓から覗き込み静かに立ち去る観察者の存在には、後にも先にも気付くことはなかった。
「カン!……きゃー!リンシャンスッタン、清老頭!32000点オールぅ!」
「ダブル約満……だと?」
「はいはいチートチート」
「……なんという神配牌」
「あははっ、独り勝ちぃ〜!や〜ん、今晩何奢ってもらっちゃおっかな〜」
フェルパーの故郷では「4人で遊ぶならコレ一択」なボードゲームをやっていた一行だが、最後はヒューマンの豪快な皆殺しに終わった。
一撃で開始前の持ち点すら枯渇させる非常識な大当たりが、冗談半分でディアボロスが口にした「負けたヤツは晩飯奢り」を、さも贅沢な賞品にしてしまう。
当の本人は慌てて懐の温度を確認し、ノームは軽く嘆息するのみ。しばらく渋い顔だったフェルパーも、負けを認めるとがっくりとうなだれた。
「あら、お帰りなさい。どうだった?」
背後の気配を機敏に感じ取り、ノームが窓の方へと振り返る。鍵を開けてやろうと歩み寄った先には、ウサギのような生物が一匹。
召喚士が契約した使い魔は、必ずどこかに所有者のサインがある。魔兎獣の耳に描かれた眼が点のコミカルで愛らしい大蛇は、彼女直筆の目印だ。
「……そう。お疲れ様」
「なんて言ってた?」
「官能的に仲直り出来たそうよ」
それを聞くとフェルパーとディアボロスが笑い飛ばし、ヒューマンは手を叩き大袈裟に喜ぶ。
任務を全うした魔兎獣を抱き抱え、膝に乗せて牌の並ぶテーブルの椅子に座る。召喚獣の言葉が解るのは、召喚士であるノームだけである。
「ふう。それにしても、恐れ入ったわ。キャプテン、あなた本当に策士ね」
「あん?」
「最初からこうなるって解ってて、二人に喧嘩させたんでしょう?」
「……まあな」
謙遜気味に返事をするフェルパー。居合わせた二人も会話に参加する。
「だよね〜。いくら罠にかかるからって、散々いっしょにやって来た手前、今更転科してくれなんて言えないもん」
「それでもクラ坊とバハ子がケンカ始めるまで部屋にカンヅメって作戦は気に入らない。まったく、俺まで待ちくたびれたぞ」
「御両人が人情家で、しかも恋仲だったから可能な作戦よね。あのテーブルでクラッズが走り出さなかったらと思うと、ぞっとしないわ」
口ぐちに一連の作戦行動と、計画通りのエンディングに評価が出る。ある程度否定的な部分はどうあれ、全体的には満足の行く結果だ。
立案者のフェルパーはしばし得意気な顔をしていた。キャプテンってすごいよね、とヒューマンから賛美の言葉が出ると、確信的な面持ちで答えた。
「狐の妖術、尻尾の数まで。猫の妖術、歳の数まで」
「え?な〜にそれ」
「むか〜し昔の御先祖様が、一族に残した言葉だそうだ。かつてのフェルパーは歳をとるたびに、ひとを騙す力を増していったらしい」
「一子相伝の猫騙し、ってか。それじゃあ上手く行くわけだわなぁ」
「当然だろ。オレを誰だと思ってんだ」
賄賂を受け取った悪代官か、一仕事終えたやくざ者を思わせる。半眼を開いて語る普段は中立のフェルパーは、悪党意外の何者にも見えない。
「謀ってのは成功して当然だろ。お前らとは種族として他人を騙してきた年季が違うんだよ。阿呆どもが」
いつも腰に差している鬼徹が、数倍怖ろしいもののように見えた。
例の二人は翌朝まで顔を見せず、残った四人で食事に行くころには空高く月が昇っていた。
アトガキモドキが現れた!
アトガキモドキからは敵意を感じない
というわけでバハ×クラ2です。そもそもSSが久しぶり過ぎて、自分の文章のダメっぷりにワロタ。
私には長編とかシリーズものとか、そういうことはからっきしできません。ついでに鬼畜系は書けません。苦手なので。ああダメな子。
さて、最初に書きましたが、いよいよ2ですね。買うかどうかは、未定のままですが。
でもせっかくだから、買うべきだと思います。あれだけの月日が経っているというのに、覚えてくださった方もいましたし。
何より依然と変わらぬノリでリクエストが出たことが嬉しかったです。
ありがとう……僕にはまだ……帰れるところがあるんだ……こんなに嬉しい事はない……っ。
新パーティーができたらお披露目がてら、またここに戻ってみようかと思います。
読んでくれた方、ありがとうございました。皆様、明後日にはよい門出を。それではノシ
アトガキモドキは挨拶をして立ち去った
乙です
吹き出しにちょっと違和感感じましたが凄く面白かったです
そしてフェル男がカコイイ、場合によってはヒュム男より主人公っぽいし
やはりフェル男は良い!
ただ2のフェル男は主役っぽさが減って悲しいが・・・
>>313 GJ ヒュマ子ざまあw
このセレ男になら掘られても良いごめんやっぱり嘘
>>329 GJ このバカップルめw
バハ子可愛いじゃないか…!
あぁ、ヒューマンとクラッズってあいつらかw
まぁ鬼畜を体現したようなセレスをカモにしようとした時点で
死亡フラグビンビンだったが…身から出た錆とはいえ二人とも哀れな…
>>329 GJ!!
リクエストを叶えてくださるとは!!
相変わらずのバカップルが見れて満足ですww
アトガキモドキさん、いつまでも待ってますよ!
忠誠のハチマキってなにに対する忠誠なんだろうと思ってたけど、
アイドルが出てきたおかげでハッキリしたな。
335 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 01:25:02 ID:NNdkFU7G
ただ巻くのは俺達だがな
残り容量があんまりないな。次スレ立てておくか?
このスレって流れ緩い方だしまだいいんじゃないか?
長編を投下する予定の職人さんがいるなら話は別だが
480くらいまでは焦って立てる必要ないと思う
まぁ、2でテンション(妄想)をしっかり溜めた冒険者が乗り込んでくる可能性もあるわけだが
ダークゾーンで周りが見えなくて手を伸ばしたらうっかり触っちゃいました、みたいな事故を装って
憧れの魔法使いセレ子のおっぱいを触ってやろうとしたら、間違って戦士バハ子のおっぱいを触ってしまい
無言の圧力をかけてくるバハ子に、殺されるとガクブルしてたら予想に反して「・・・ばか。」と照れたように小さく言われ
普段男勝りな彼女の意外な一面に思わず
みたいな妄想をしつつ、ずっとソフトが届くのを待っている。
早くバハ子やセレ子に会いたいぜ・・・!
そういや此処ってSS投稿するときネタバレとか気にしたほうがいいんだろうか?
>>338 ある事実を忘れてやしないか?
「妄想戦士のキャラメは長い!」
つまりは未だプレイすらしてない連中だっている筈。
ここは親衛隊のズラリとならんだちんこにアイドルが跪いた口だけ使って
忠誠のハチマキを巻いて回るという妄想をしてゆっくり待ってようぜ
やっとソフトが届いたぜ!
PSP充電してなかった。
相変わらず2でもパーティー構成が男1女5な件
バハ子とディア子の扱いに苦労する人間男を想像すると萌える
俺はPSP握っている自分を七人目の戦闘力の無い司令塔の班長兼マッパーにして六人全員女にしてるぜ
俺はドワ子とフェル男のカップルプレイ
二人だけだから全く進まない
3P要員とかそれぞれの浮気相手とかスワッピング用カップルとか用意すればおk
格闘ヒュム子と普通バハ男のカップルを妄想したが
ただのプロレスになりますほんとうに(ry
つかバハムーンに甘噛みされると悲惨なことに
真っ赤なリボンが巻かれた骨ガムをプレゼントされて最初は憤慨するものの、
試しに恐る恐る口にしてみてすっかり気に入ってしまいあむあむ♪と噛み続けるバハ娘
そして時々舐め方とかが異様にエロくて目のやり場に困る仲間
しばらくこのスレにはこれそうに無いな。
日曜に、日曜になれば届くんだ!!!
恋愛事情の第4話完成。
ただ、中途半端感が否めないのを許してくれorz
ちなみに俺、2でディア男錬金術師が出来ない事を知ったので。
滅茶苦茶可愛いディア子戦士とバハ子格闘家の百合に目覚めてしまいました。
マジで可愛いよディア子戦士とバハ子格闘家。
ディア子人形遣いの笑顔も眩しすぎるが。
お祭り騒ぎさながらのイベントが終わった。
見事、成立したカップル達はそれぞれ部屋に向かったり深夜にダンジョンに潜りに行ったり好きな場所に行ったりと様々だった。
ディアボロスは、晴れて自分の恋人となった美化委員長と手を繋いで、夜の校内を歩いていた。
どこかアテがある訳でも、行きたい所があるという訳でもない。ただ、手を繋いで歩きたかったのだ。
凄く、どきどきする。ディアボロスはそんな事を思っていた。
「そう言えば……こうして、2人きりになるなんて、初めてかも知れないですね」
ディアボロスがそんな事を考えていた時、委員長が急に口を開いた。
「あ……そ、そうですね」
2人が知りあったのは委員会活動だ。そして、委員会活動は大抵は集団で行動している。
事実、2人が2人だけの状況なんてのは今まで限りなくゼロに近かったのだから。
「正直、ちょっとだけ照れてます」
「先輩もですか? 俺もです……」
「同じですね……」
委員長の言葉に彼が振り向き、お互いにちょっと笑む。
「………屋上、出ますか?」
ちょうど、廊下の先に屋上へと続く階段が見え、彼がそう口を開いた。
「ええ。行きましょう」
もう1度2人は手を繋ぎ直すと、階段を登っていった。それを睨む、人影が一つ。
「…………」
月明かりの下で、ディアボロスとセレスティアは並んで座っていた。
特に会話がなされる事は無い。奇妙かも知れないが、それでも2人にはそれだけで充分だった。
「いい月ですね」
「ええ」
それだけで、会話が終わってしまう。続かないのも問題ありだ。
「…………」
そこでディアボロスは、少しだけ困った。どうすればいいか、と。
「……………」
「ねぇ」
「はい?」
「一つ、聞いてもいいですか?」
「何ですか?」
ディアボロスが姿勢を正そうとした時、セレスティアはそれを手で制す。
「硬くならないで下さい」
「……はい」
「貴方の事を、聞きたいのです」
「え?」
「ディアボロスはセレスティアと仲良くないでしょう? だから、どんな事をしているのかなって」
「ああ……」
古代の魔族の血を引くディアボロスと、古の天上人の血を引くセレスティア。
遥か古の時代から対立し続けていた二つの種族は、その血が薄まってきている今でも対立は続いている。
お互いがお互いを恨み、対立する。必ずしも明確な理由など無く。古から続く因習として。
だから、理解していないのだ。お互いを。
「……どうでしょう。やっぱり、人によって様々だと思いますよ」
「あの」
「……はい?」
「敬語、やめてくれませんか? 何て言うんでしょう、委員会の時と同じみたいで……」
「……………ああ。わかりまし……じゃない、わかった」
ディアボロスはどうにか言い直すと、セレスティアはにっこりと笑った。
「なら、貴方の事を教えて下さいます?」
「ええ……俺は……俺は、父の顔を知らずに生まれた。どこの誰かも聞いた事は無いが、ただ冒険者だったという事だけは母から聞いていた。
母は、なかなかの魔導師で、幼い頃から俺に魔法を教えてくれた。凄く不器用で、自分勝手な母だったけど、それでも俺を愛してくれた。
この前の授業参観にも、わざわざ来てくれた。恥ずかしかったけど、嬉しかったな……」
「…………お母様は、優しい方だったんですね」
「ああ。凄く、優しい。ただ、な……」
「ただ?」
「周りを上手く愛せない人なんだ。俺と父には愛を注げても、それ以外の人を愛する事が苦手なんだ。凄く、不器用だ」
「…………」
「パルタクスに入学するまで、友達とかを持った事も無かった。住んでいた場所が人家から遠く離れてたってのもある。だから、パルタクスに来たのは新鮮だった。
貴方に出会えたのも、凄く良かった。セレスティアは怖いものじゃないって、教えてくれたから」
「え? わ、私がですか?」
「ええ。先輩はディアボロスが怖いって思ってたって言ってましたよね?」
ディアボロスが意地悪そうに聞くと、セレスティアは「ええ」と恥ずかしそうに答えた。
「俺もセレスティアは怖いものだと思ってましたから」
「……あらら」
そして、2人して同時に笑った。
「………本当に、サラや会長には感謝しないとな」
ディアボロスはぽつりと呟く。もちろん、セレスティアはそれを聞き逃していなかった。
「あら、どうしてですか?」
「今回の企画の事ですよ。会長が発案したのは、ご存知ですよね?」
「ええ」
「その……」
ディアボロスは頭を掻くと、息を吸い込んでから一気に喋る事にした。企画の裏の事実を、包み隠さずである。
「俺が、先輩の事が好きだと言う事がサラにバレてしまいまして。そのサラから聞いた会長がたった三日で準備したんです」
「そうなんですか……ってええーッ!? み、三日で?」
「そうです、三日で」
信じられない事に、たった三日で企画から実行まで終わらせたのである。
生徒会長マクスターの凄まじいパワーに呆れる。
「それは凄いですね……でも。それなら、私もマクスター君に感謝しないといけませんね。貴方と、こうしていられるようになったのが嬉しいですから」
「ありがとうございます……俺もです」
そう、たった三日で叶った夢。
実現出来たのは、自分1人だけじゃなくて、踏みだしたのは自分1人でも後押ししてくれた友がいたから。
それが、ディアボロスにとって1番嬉しかった。
後押ししてくれる友を沢山得て、素敵な愛しい人と巡り合えた事を。それが、嬉しかった。
「………俺、もう死んでいいや」
ディアボロスは、今が自分にとって人生最高の時間だと思った。
屋上から校舎へと続く階段に、1人のセレスティアが立っていた。
盗み聞きは決して彼―――――ギルガメシュの趣味では無い。しかし、それでも今夜はそれを行っていた。
そして、知った。ディアボロスがセレスティアを思い、セレスティアもまたディアボロスに心を開いている事実に。
「………ヒデェ奴だな、俺も」
ギルガメシュはぽつりと呟いた。今、お互いが恋に落ちた以上、横から入る余地は無い。
その恋を奪おうにも、ギルガメシュは自分に勝ち目がない事に気付いていた。自分で解る程、酷い奴だと自分でも思っていたから。
「クソ……」
ギルガメシュが階段を降りようとした時、階段を降りた先の廊下に、人影が立っている事に気付いた。
「こんばんは、ギル」
「……サラ、こんな時間に何してんだ?」
「ギルが来ると思って、待ってたんだよ」
図書委員会の、一コ年下の少女、サラ。
新聞部で、噂好きで、手にしたノートに書かれた他人のありとあらゆる弱みは教師すらも黙らせる。
そして、彼女はギルガメシュが昔付き合っていた彼女。
彼の事を好きだと言った少女。
そして、彼を拒絶した少女。
「……俺が? なんでだよ」
「あたしは、ギルがあの子の事、好きだって事知ってたもん」
あたしと付き合っていた頃から、とサラは口には出さずにそう続けていた。
ギルガメシュは何も言えずに、ただ黙っていた。
「……そこは寒いよ、ギル。あたしの部屋においでよ。お茶ぐらい、出すから」
「……………ああ。テメェの茶ぁ飲むのも久し振りかもな」
ギルガメシュの手を、サラは優しく手に取った。
どこかふてくされたギルガメシュと、明るいままのサラ。だが、ギルガメシュは知っている。
ギルガメシュが好きな少女とディアボロスが結ばれた大元の原因は、サラにあるという事を。彼はもう知ってしまっていた。
消灯時間を過ぎたパルタクス学園は、完全に静まり返っていた。
活動するものは殆どいない。だが、ディアボロスとセレスティアはまだ屋上にいた。だが、つい先ほどまでとは違い、ディアボロスはセレスティアに覆いかぶさるような状態のまま、動いていなかった。
そう、彼は迷っていた。このまま手を出してしまうべきか、否かという事に。
セレスティアは抵抗するかと思っていた。だが、彼女は拒むことをしなかった。
そもそも、ディアボロスも男である以上、本能的にむらむらと来る事だってある。そして、まさに文字通り人生最高の時間であった彼は、あろうことかそのまま押し倒してしまった。
この後どうするべきか。拒んでいない以上、手を出しても構わない。けれども、ディアボロスはまだ不安だった。
そう、だって今は良くても―――――。
「……怖い、んですか?」
動かないディアボロスに、セレスティアは口を開いた。
「私は、大丈夫。だから、貴方も」
不安にならないで、というより先に。
ディアボロスは、ようやく覚悟を決めたのか、息を飲んで口を開いた。
「行くぜ」
そう言って、ディアボロスはセレスティアの口を塞いだ。
唇と唇を重ね合わせ、そのまま舌をセレスティアの口の中へ。
そう言って、ディアボロスはセレスティアの口を塞いだ。
唇と唇を重ね合わせ、そのまま舌をセレスティアの口の中へ。
「ん……」
舌と舌を絡ませ、何度も何度もその口の中を動かす。深いキスの後、唇を離すと滴が糸を引いていた。
ディアボロスはもう1度接吻をすると、片手をセレスティアの身体へと伸ばす。服の隙間へと手を入れ、その手を這わせていく。
「ん……んん……」
唇を塞ぎ、舌をまだ絡ませたまま。ディアボロスの手が、セレスティアの胸の膨らみに触れ、そして、ゆっくりと揉み始める。
柔らかく、手触りのいい乳房に触れてディアボロスは少しだけ気分が高揚する。
唇を離し、もう片方の手をセレスティアの着衣に掛け、外していく。
「先輩は、身体も……素敵ですね」
「え……そんな……か……んっ」
セレスティアが答えるより先に、ディアボロスの両手がセレスティアの乳房を揉み始め、そしてそれを徐々に激しくさせる。
そう、激しく。セレスティアが時折あげる喘ぎに痛みが混じってきた頃、ディアボロスはようやく手を離した。だが、それで終わりではない。
「……………」
「…………え」
ディアボロスが何かを言ったが、それはセレスティアには聞こえなかった。だがしかし、彼女が気付いた時にはもう、下着に手がかけられようとしていた。
「ちょ、まさ――――――」
前戯も無しにそのまま挿れるの、と言うより先に、ディアボロスは既に今まさに勃ったばかりのそれを取りだしていた。
セレスティアは、初めて視るそれを大きいなと思った。想像していたよりも、ずっと大きい。
それが入ってくるという事に、少しだけ不安を覚える。
だが、もう既に遅い。
ディアボロスは、それをそっと挿れ始めた。
「……んっ……っ……!」
「痛っ……!」
「い、痛い、ですか?」
「…………へ、平気」
半分近くまで入った所で一旦止める。無理に入れば裂けてしまいそうな程だ。
だが、悪くないとディアボロスは思う。初めてやる事に、少しだけ快感を覚える。
「い、行きますよ」
「は、はい……」
ディアボロスの手がセレスティアを抱きかかえるようにして起こす。
文字通り抱えられるように起こされたセレスティアの肢体に、ディアボロスは接吻を始める。
繰り返される接吻に銜えて、腰もゆっくりと動かし始める。肢体と中への同時の刺激に、セレスティアは思わず声をあげる。
「っ……んっ……」
「……っ………なんか……強いっ……」
「強いって……そりゃ……! 俺は、強いですよっ」
ディアボロス相手に何言ってんだが、とディアボロスが言いかけた時セレスティアは口のカタチだけで違う、と答えたが同時に来た刺激に再びあえぎ声をあげる。
「ひぁっ、ふぇっ……ひぃ、ぅっ」
「だから、先輩、ダメなら、駄目って、言って」
極力、気を遣おうと口では言っても、やっている事はもう既に雄と代わらない。
腰を打ち付け、その肢体を存分に楽しむべく、あちこちをぺろぺろ舐め始める。そして、二度と離さないとばかりにしっかりと抱きしめて。
「でも、先輩っ……」
「ひぅっ!」
腰を打ち付けている中で更に勃ちあがったのか、セレスティアの中でディアボロスのそれが一際硬くなったのを感じた。
ここまで硬くなれば、その先端から出て来る筈の―――――。
「………だめっ、きょ、きょうは」
「え? 何か」
言いましたか、と言いかけるより先に。セレスティアの中に、それが吐きだされようとしていた。
「きょ、きょうはだめぇぇぇぇ!」
慌ててディアボロスが引き抜こうとしたが、既に立ち上がっているそれを引き抜こうとしても、上手く行かない。
そして何より、ディアボロスはまだ続けたかった。
「大丈夫ですよ」
ディアボロスはきっぱりと答える。
「あなたの子供なら、きっと可愛いですから」
そう言って微笑む。その顔は、月を背にしても尚、美しかった。
ディアボロスとは思えないほどに。
投下完了。
次で恋愛事情は最後になる予定。
>>354 乙です
エロよりも日常描写のほうでニヤニヤしている俺がいるw
しかし、2発売で人が全然いないね…
せっかくだから2をプレイしながら、
PTの脳内ストーリーをSSにして書いてみようかなと思ったけど、
ほとんどエロくなりそうにない……投下しようか迷ってる
今までエロのないSSがなかったわけじゃないし、個人的には気にしなくていいと思う
内容によっては、無理にエロを詰め込んだら逆効果になる可能性もあるし
PSPに入るウィルス・・・
CFWがあるぐらいだからありそうだな
というかんな怪しいデータわざわざ使ってまでやりたいやついるのかWiz系って
来週あたりになったら2のネタバレSSもOKかしら?
◆BEO9EFkUEQ氏、学園というより無法地帯だなw
363 :
358:2009/06/28(日) 18:02:41 ID:JJc8hH5y
PSP用のウィルスはもうあったはずですが
不特定多数の方が利用する2chでウィルスを流すなんて
そんな良識に欠けたことをしようとは思いません
気が向いた方は安心してご利用くださいね
>355
わおサンクス!
けど学園の日常生活の方が書きやすいのは事実。コメディ要素の方が多いし。
ただ、冒険があまり無い事に気付いた……。
んな訳で恋愛事情最終話の第5話投下。
ギルガメシュ先輩が大活躍する瞬間。
遠くの方で、鳥の鳴き声が聞こえる。
もう朝なのか、とサラが眼を開けた時、すぐ目の前に大きな背中がある事に気付いた。
昔何度も視た背中。今も時々視る背中。
「ギル……もう、行くの?」
「ああ」
かつての恋人はサラに視線を向けずにそう答え、制服に袖を通す。
「あたしの事、怒ってる?」
今の彼の思い人を彼から奪ったある意味直接の原因はサラにあると、彼は夜の微睡みの中ではっきりと口にした。
そのひと言について触れただけで、それ以降彼は何かを話したりはしなかったが。
「怒ってねぇよ。むしろ……感謝してるさ」
「……どうして?」
「あいつに嫉妬してあのディアボロスを半殺しにした所で、委員長が俺に振り向く訳でもねぇ。だいたいそんな事したらマックに悪ぃ」
生徒会長であるマクスターと副会長のギルガメシュ。ある一点を除けばセレスティアの鑑であるマクスターとその真逆を行くギルガメシュは性格が正反対だが、それでも彼らは1年生からの親友だった。
それはマクスターの弟である番長のタークにも代わらず、タークとも仲が良いサラに対しても同じだった。
だからサラは彼を好きになった。でも、ギルガメシュにはサラは映っていなかった。
「そう。優しいんだね、ギルは。相変わらず」
「優しくねぇさ。本当に優しかったら、こんな事を考えたりもしてねぇよ。けどよ……サラ。俺がお前に感謝してんのは、お前が俺にやるべき事を教えてくれたって事だ」
「……どこが?」
「あのイベントを企画したのはマックだ。けど、お前がマックやタークにあのディアボロスの事を言わなけりゃ、始まりもしなかっただろ? あいつを後押ししたのはお前らだ。
けど、お前らがしたのは後押しだけだ。あいつ自身が踏み出したから、あいつは手に入れたに過ぎねぇ」
「そうだね……あたしが切っ掛け、だもんねぇ」
「ああ。だからだ。欲しけりゃ、俺が自力で手に入れればいいだけの話だ。委員長が、俺に振り向くようにな」
ギルガメシュはベッドから立ち上がると、部屋を出ようとして一瞬だけ立ち止まった。
「サラ」
「……なに?」
「ありがとな」
最後にそう告げると、ギルガメシュは素早く部屋を出ていった。
1人残されたサラは、ついさっきまでギルガメシュが座っていたベッドの縁にそっと触れる。
まだ、微かな温もりが残っていた。
「……………本当に。自分勝手だよね、ギルは」
サラは、ベッドの縁に触れたまま、昨夜からの一糸纏わぬ姿のまま、そう呟いた。
ディアボロスは焦っていた。非常に焦っていた。
昨晩の行為の果て、目覚めたセレスティアはただひと言「これからよろしくお願いしますね」と告げて自室へと帰っていった。
それが明け方の事でそれから一睡もしていない。ついあんな事をしてしまったはいいが、果たしてそれで良かったのかと非常に焦っていた。
もしこのままセレスティアとそのパーティの仲間が激怒して襲撃をかけてみようものなら学園全土を巻き込んだ挙げ句に一夜で振られたとなれば生徒会役員の逆鱗に触れかねない。
特に苦労していた鬼の副会長ことギルガメシュ先輩なら確実にディアボロスを殺しに来るだろう。
そんな事を考えつつ怯えて自室に引き篭もっていたが隣りで寝ているルームメイトのフェルパーはぐっすりと安眠してそれが保たれていたので少なくとも学園が朝を迎えるまでそんな事は無かった。
「………おはよう、フェルパー」
「おはよう……頑張れよ。今日からも」
ルームメイトのフェルパーは眼を覚ましてそう告げると、さっさと出掛けてしまった。どうやら朝から迷宮探索らしい。
ディアボロスはともかく自分のパーティの元へ向かおうと、部屋を出た。
食堂に辿り着くと、既に他のパーティメンバーは揃っていた。
「よう! 遅かったな」
「おはよう、皆早いな最近……」
バハムーンは相変わらず元気そうに口を開き、その後同じパーティのフェルパーも「おはよう」と声をかけてくる。
ディアボロスがその間に座り、既に置かれていたお茶を啜り込んだ時、2人は左右で同時に口を開いた。
「「昨夜はお楽しみでしたね?」」
ディアボロスは口に含んでいたお茶を真正面に座る盗賊学科のクラッズの顔面目掛けて盛大に噴き出した。
「うわっ! 何すんのもー!」
「お前、何してんだいきなり?」
「ちょ……ごほっ、げほっ、お前らいきなり何を言いだすんだ!」
「そりゃー、夜に2人ッきりつったらアレだろうがよ」
バハムーンは実にのん気にそう口を開き、フェルパーもうんうんと頷く。
「おい、バハムーン。あれってなんだ?」
超術士学科の同族の女子がそう口を開き、バハムーンは「そりゃああれだよ。男女の営みだよ」と平気な顔で答えた。
「変態」
「助平」
「鬼畜」
上からディアボロス女子、クラッズ、フェアリーの順である。何で朝からそんな事を言われなければならないのだろうか。ディアボロスは今すぐ首を吊りたい気分になった。
「まぁまぁ、そんな酷い事じゃないですから。落ち着いて下さい、皆さん」
背後から声が響き、6人が慌てて振り向くととうのセレスティアが真後ろの席に座っており、その近くに同じパーティであろう上級生達が苦笑していた。
「おいおい、セレスティア。まさかとは思うけど……」
「彼、激しかったですよ?」
上級生のヒューマンの言葉に、委員長は平然と答える。勿論、男子全員の顔が紅くなったのは言うまでもない。
「……い、いいんですの!? 相手ディアボロスですのよ?」
「構いませんよ、私は。少なくとも、彼なら面倒を見てくれそうですし。優しく」
「な、なんですってー!」
そのエルフの言葉に、食堂にいた全員が一斉に振り返る。ディアボロスは思わず頭を抱えたくなった。
「……俺、どうすりゃいいんだ」
なにせここまでバレてしまったのなら、ある意味危険と言えば危険である。
何せ、セレスティアに好意を抱く男子は多いし、彼女とあまつさえ性交まで行ってしまったとあらば嫉妬はおろか闇討ちまでされかねない。
女子からは驚愕、男子からは嫉妬の感情を思いっきり受けながら、ディアボロスは視線を食堂の扉へと向ける。今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られる。
「……おい、何処に行くんだ?」
先ほどセレスティアに問いかけた上級生のヒューマンがディアボロスに視線を向け、逃げ出そうとしている事に気付く。
「い、いえ。お茶噴いちゃったんでお代わりを」
「今、俺持ってきたけど」
同じパーティのフェルパーが意外そうな顔を向けてくる。
「いや、俺特殊なブレンドのハーブティーしか飲まないと決めてて」
「お前の好みぐらい俺も知ってるから大丈夫だよ。あと、お前好き嫌い無いだろ」
フェルパーの言葉にディアボロスは咄嗟に考えつく。
「俺、錬金術士学科じゃないですか。ドークス先生の朝の補習が……」
「ドークス先生そこで朝飯食ってるぞ。ついでにお前、錬金術の成績、学年で10位以内じゃん」
「この前知りあった一年生のクラッズにルー●ックキュ●ブを返して貰わないと……」
「これだよねー。貸してくれてありがとー」
いつの間にか現れた一年生のクラッズの少女がルービ●クキ●ーブを差し出している。
「ランツレートの学生に借りた10G返さないと……」
「ああ、返してもらうぜ。ありがとな」
いつの間にか現れたランツレートの学生がディアボロスの財布から10Gだけを抜き取っていく。
昨日のイベントに来ていたランツレート生はまだ残っていたようだ。
「……で、お前は何処に行く気だったんだ?」
「逃げさせて下さい先輩お願いします」
「あー。そうだろうなぁ。確かに委員長人気高いし、このままじゃ嫉妬の雨に晒されるぜ。俺も委員長とパーティ組んでるから時折嫉妬される」
「ですよねー。解ってくれますよね先輩!」
「だが断る」
「あんた悪魔だ!」
「悪魔はお前だ!」
「おい、ディアボロス! お前逃げるのか? ズラかるつもりか? 待てやコラ」
上級生のヒューマンだけでない。同学年のドワーフがディアボロスの肩をしっかり掴み、逃がすまいと離さない。
嫉妬の焔に燃える男達が文字通り集まってきた、その時だった。
「おい、ヒューマン! テメェ、何下級生相手に絡んでんだ!」
怒声と共に、1人の人影がディアボロス達の元へと突っ切ってくる。
誰もが知っているその顔。ある者は恐怖の象徴と呼び、またある者は鬼の副会長と呼び、またある者はパルタクス最凶の男と呼んだ。
副生徒会長、ギルガメシュ先輩である。
「ぎ、ギルガメシュ? い、いやぁ、これはだな」
「どけ。俺はそのディアボロスとセレスティアに話があるんだ」
「……俺に?」
ディアボロスは同時に血が凍るかと思った。何せあのギルガメシュ先輩である。何をしでかす気だろうか、この人は。
「ヤバい、ギルガメシュ先輩が朝からキレてるぞ! こいつはヤバいぜ!」
「パルタクス最凶のお出ましだ。朝から食堂に血の雨が降るぞー!」
「誰か先生呼んでこい! その前に保健委員も呼べ! 死人が出る可能性もあるぞ!」
「下級生は指示に従って避難して! おかしもの言葉をよく守るのよ!」
「下級生だけじゃねぇよ、俺達も逃げるぞ! 死にたくねぇー!」
周りが文字通りざわめくと同時に何が起こったのか理解できてない下級生の一部が泣き出したり慌てて逃げようとして転んだりと騒ぎ始めた。
「静かにしろテメェら! 朝っぱらからんな事するかアホ! ただ話に来ただけだ!」
ギルガメシュの言葉に、食堂は一瞬で静まり返る。
「あー……そうか。お前ら、本気なんだな」
「いや、まぁ、そうです」
「なんですか、ギルガメシュ君」
セレスティアがディアボロスを庇うように立った時、ギルガメシュは少しだけ視線をそらした。
「俺もお前の事が好きだと言ったらどうする?」
「「え?」」
2人と同時に、周囲も顔を見合わせる。あの破壊力溢れるギルガメシュの言葉とは思えない。
「………つー事でだディアボロス。解るな? 俺はテメェに宣戦布告する……昔っから言うだろうが、恋は戦争ってな」
ディアボロスは文字通り頭が真っ白になりかけた。殺される、確実に殺される。
「ギルガメシュ君、それはどういう事ですか?」
「……言葉通りの意味さ。先に撃墜した方が勝ちだとは言うが、それをキャッチするのが撃墜した奴だとは限らねぇって事さ」
ギルガメシュはそう告げると、セレスティアとディアボロスに視線を向けて微笑んだ。
「話はそんだけさ。じゃな」
ギルガメシュがくるりと背を向け、周囲は再び顔を見合わせてざわめき始めた。
「こ、抗争だ……パルタクスが二つに割れるぞ……」
「ギルガメシュ先輩が、先輩が、とうとう殺っちまうぞ! ど、どうしよう俺? どっちにつけばいい?」
「俺、今年で卒業なのによりによって最後の年に殺し合い勃発かよ……」
「嫌だぁぁ、俺死にたくないよ今まで生き残ってたのにー!」
「だから何でそんな話になるんだテメェらはよぉぉぉぉぉぉ! 今、んな事言った奴前に出て来い! 出て来なけりゃこっちから行くぞ!」
文字通り全員を半殺しにしかねないギルガメシュの剣幕に、弾き出された発言者であろう男子達は青ざめた顔で逃げ出そうとするがそれをギルガメシュは逃す事無く叩きのめし始めた。
「………なんなんでしょうね?」「さぁ……?」
セレスティアの問いに、ディアボロスはそう答える。
だがしかし、一つだけ気付いた事がある。この恋は、始まったばかりも多難だったが始まった今となっても多難だと。
投下完了。
恋愛事情は終わりだけどディモレアさん家シリーズはまだ続きます。
三角関係の果てをお楽しみに。
乙ー
三角関係とはまた粘っこくなりそうな要素ですなw
まぁそれよりもお母様がどう絡んでくるかが心配だ
お母さんとライフゴーレムがくると血の雨どころか確実に血の嵐だな。
とともの2来たぜ!!いくぜ!!全員アイドル!!
>>370 残念ながら、それは短い夢に終わりそうだ・・・TT
>>370 * ぜんめつした・・・ *
д д д
д д д
* Bでぬけます *
373 :
370:2009/06/29(月) 17:25:34 ID:+I63YiQe
いや、頑張ればいけるぞ。
直前で夢は諦めたが、
うちのアイドル、ディアは戦士で力に10Pふったドワーフやバハムーンより攻撃力高かった。
回避力、防御力も戦士と同じ。ブレスも吐けるから集団戦もOK。
こいつ・・・出来るぞ!!
あ、アイドルディアはBP50で入学したイノベーターさ。
374 :
370:2009/06/29(月) 17:26:47 ID:+I63YiQe
一度クリアしたらアイドル一人旅でもしてみようかな。
今回普通に歩いて壁にぶつかったら石の中にいるとかあるから困るな
ここの人たちもそのうち2のSSを書くんだろうか
アイドル一人旅ってドサ回りっぽくね?
ロケだよ、きっと。
ヒント:田舎に泊まろう
380 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 00:02:56 ID:GsB9HAct
つーか2もここでいいの?スレタイ的な意味で
イインダヨー
本スレでパーネ先生の妄想が膨れ上がっている・・・w
堕パーネは可愛いからな
屈服させたがりにもオススメな人だしな>堕ーネ
まじぱーねぇ
なんつって
_, ,_ パーンe
( ‘д‘)
⊂彡☆))Д´)
>>385
リモンとフランに萌えた。
NPCに萌えるとは思わなんだ…
いるのか分かんないけど一応保守
次スレ立ってたのか…
ログ壊れてらしいorz
ココももう495KBだからな
AAでも張って埋めてしまったほうがいいのか?
_____ .|\__ ,
\  ̄`ヽ. | 〉 /|__
___\ ヽ、 ∨ / /
,. ''"´ `> ''"´  ̄ ̄ ̄`"'< ̄/
_/ / ` く
,. -‐/ / / _/`'-ヘ. \
/ ,' | ,' //_` ! ! ',
〈 | ', |ァ'7'てi` | -,ハ | |
. \ 、‐─-'\ 〈 '、_り ァr'、`!/ ,ハ|
` ー-`i ー-- ⊂⊃ 、り ノ7 / 次スレでもよろしくね!
ヽ. | | , ─-、 ⊂! /,l>
>ー- ..,,,__\| ヘ ! ノ ,ハ ̄ , ┐
\,. ─-\ |> 、.,_,,.. イ| . | / !
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`7´ ̄`ヽ.,__|:::!、 || _|| ,ハ]/ ! ./
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ああそうか、500kbで制限だったか・・・それで次スレだったのね。