MUNTO、空を見上げる少女の瞳に映る世界にハァハァしたりSS投下するスレです。
投下する時は注意書きとか宜しく。
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ごらんの有様だよ!!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_______ _____ _______ ___ _____ _______
ヽ、 _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、 ノ | _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、 |
ヽ r ´ ヽ、ノ 'r ´ ヽ、ノ
´/==─- -─==ヽ /==─- -─==ヽ
/ / /! i、 iヽ、 ヽ ヽ / / /,人| iヽヽ、 ヽ, 、i
ノ / / /__,.!/ ヽ|、!__ヽ ヽヽ i ( ! / i ゝ、ヽ、! /_ルヽ、 、 ヽ
/ / /| /(ヒ_] ヒ_ン i、 Vヽ! ヽ\i (ヒ_] ヒ_ン ) イヽ、ヽ、_` 、
 ̄/ /iヽ,! '" ,___, "' i ヽ| /ii"" ,___, "" レ\ ヽ ヽ、
'´i | | ! ヽ _ン ,' | / 人. ヽ _ン | |´/ヽ! ̄
|/| | ||ヽ、 ,イ|| | // レヽ、 ,イ| |'V` '
'" '' `ー--一 ´'" '' ´ ル` ー--─ ´ レ" |
とりあえず
ムントに跨って真っ赤になりながら下界の夜について説明や手ほどきするユメミたんハァハァ
ユメミのなけなしの知識を教えてあげるんですねハァハァw
ムント様はTVになってから紳士だから新妻の好きなようにさせてるとか萌える
ユメミ最高なので創作意欲を掻き立てられるが
いかんせんアニメ自体を見ていない
ちょっと探して見てくるから一両日待っておれ
ちなみに希望シチュを先に聞いておこうか
ムント様とユメミは身長差がすごいから、それを活かした甘いのが読みたいなー
両想いなのに嫌がるユメミを無理矢理とかもアリだろ
9 :
5:2009/03/09(月) 00:54:30 ID:tyUtc1TL
一通りは見た!
自信は無いが今日の夜辺りにうpできるようにがんばりますさ
ネタは
>>6と
>>7を使ってみる
>>3と
>>4はアイデアが湧かないので今は保留
予定タイトルは
「ユメミは少女じゃいられない」で
(;´Д`)ハァハァ
12 :
5:2009/03/09(月) 12:16:47 ID:tyUtc1TL
とりあえず5節目まで出来たのでうpします
これまでオリジナルはいくらか書いて公開しているんだけどエロパロは初投稿だったりします
目の肥えてるらっしゃる方々にお見せするには拙い所ばかりですが
何とかあなたや私に実用的なエロエロ展開を書いていければと思います
それでは、「ユメミは少女じゃいられない」、始めるとします
最終回がどうなるかはわかりませんが、ifものとしてお楽しみ頂ければ幸いです
天上と地上、ふたつの世界を脅かした危機は終息を迎えた。
天上の者達は滅びを迎えんとする世界の闇を打ち払い、
ある青年は歓喜に踊り、ある婦人は安堵に涙する。
分厚い雲と一面に広がる星夜に挟まれた、天上人が住まう空の島。
声と声は入り乱れ、高空の澄んだ酸素は至る所に焚かれた朱の熱を帯びる。
今そこは、地上の人間達が催すものと同じ、祝宴の只中にある。
その輪の中に、彼女はいた。老若男女大小細太、彼等の笑顔は彼女に向けられていた。
彼女は彼等天上の人間達とは違う、地上の人間である。
ほんの少し前まで、地上を「地上」と呼ぶ事はおろかそう考える事もなく、
日々の暮らしを友人達と共に楽しみながらも未だ見えない先にある現実に悩む、
彼女自身も思っていたような普通の少女であった。
しかし今、最初はその存在を信じられなかった天上人とも、
こうして世界があり続ける喜びを一緒に分かち合い、
自分達が確かに勝ち取った未来の一歩を迎えている。
彼女は、憂いのない微笑みを隣の小さな少年に向ける。
幼い彼の赤い頬は、地上にいる何も知らない弟と、彼女――ユメミの中でぴたりと重なった。
地上に戻る――細く白い脚を横に組んで石畳の上に座るユメミは、それだけはもう決めていた。
誰の為でもなければ自分自身の為でもない、そしてそれらの逆も併せ持ったまま、
彼女は理屈抜きで自分の道を見つけ出していた。
また、天上人達も彼女があるべき場所に戻る事を口に出さずとも理解していた。
彼女はそうあらねばならない――一抹の寂しさを微塵も出さず、
彼等が少なからず惹かれた少女を送り出す今宵の喧騒は続いている。
彼女も彼等を理解し、今はただ彼等をひとりひとりを見て、談笑している。
地上のこと、天上のこと、互いにとってほんの些細な日常をありありと語り合い、
彼女にとっても彼等にとっても、驚きや関心をもたらすには充分な話題となっていた。
彼等とのひとときを、彼女は確かに全身から喜色を以て愉しんでいる。
ただ、ユメミが話を聞いてほしいと密かに願う男性は、この輪の中にはいない。
初めて出会った時からずっと見てきた雰囲気や言動から、
彼は騒がしいのが嫌いな性格なのかと彼女が想像を巡らせるのは自然な事だ。だが、
(地上と天上の未来をつないだこの時を、みんなと喜んだりすること……
ムントはどうしてしようとしないんだろう……?)
彼女は機を見て彼等に一言交わすと、ふわりとリボンを揺らして賑やかな輪から立ち上がった。
灯の照らす石回廊に響く堅い靴音。男達のやかましい歌声も、遠く微かに聴こえるだけだ。
彼女の歩みに迷いはなく、平坦な廊下の脇の上り階段へすっと身体を進め、昇り出す。
天上人達から彼の居場所を聞いたわけでもなければ、予め彼自身から教わっていたわけでもない。
彼女にはわかっていた。彼が何処にいるか、その存在を手に取るように感じていた。
小さな石段、左右に振れる後ろ髪。先程まで天上人達に見せていた笑みが、彼女から消えていた。
代わりに、何かしらの迷い、何かしらの決意が、長い睫毛と瞬きでしばしば隠れる瞳の奥に光る。
一段一段、小さく踏み上がる華奢な脚が、見た目にはわからないが確かに震えている。
静寂の中、この胸の鼓動が、身体を伝ってはっきりと聴こえる。
息が熱い。目の奥が熱い。指先の関節まで自分のものでないような錯覚。
何処にでも行けるような軽さと何処にも行けそうにない重さが、同時に細身の少女に纏わり付く。
終わりが訪れそうにない未体験の感覚。それでも迎えるべき時間は彼女の前に現れる。
広い踊り場、一枚の木の扉の前でユメミは脚を止め、正対する。
両手を組み握り、胸に抱えて長い息をつく。
躊躇いがちに俯いた少女の肖像はしばしの静止を経て、前を見据えてからはっきりと頷いた。
右手の甲で扉を軽く叩く。芯の通った音を2回鳴らし後、彼女は恐る恐る尋ねた。
「……ムント、いるんでしょう……?…………入るよ……?」
「……ユメミ……」
扉の先、殺風景な空間の中、彼――ムントは小さな声のみで彼女を迎えた。
石壁に囲まれた中央に置かれた大きなベッドはただ白く、側面にかけられた炎以外飾り気は無い。
見る者が捉えれば牢獄にも思える一室の寝床の上、
身を起こしている彼は長い左脚を伸ばし、曲げた右膝の上に両手を組んで乗せている。
彼女がこの部屋に入った時から、石壁の上方に規則的に空けられた隙間の一点を凝視していた。
出会って短いながらもずっと一緒にいた彼が見せた事の無い、
何かを求めて縋る面影が、一瞬ユメミの心を突いた。
「となり……いい……?」
何かに急かされているような気がして、訝しげに彼女は尋ねる。
「ああ……」
彼方を見つめた視線を逸らさぬまま答えた彼は、心ここにあらずといったふうである。
ベッドの縁――まっすぐ伸びたムントの脚の隣に、
天上へ来た時に彼から貰った袖の長いワンピースドレスを尻から押さえ払いつつ腰を下ろす。
彼女もまた、石壁の窓の先を見つめる。
地上から見た時と同じ、それ以上に晴れやかな星明かりが広がっていた。
互いに視線も言葉も重ねないまま、時間だけは流れていく。
伝えたいことがあった。なのに、伝えられない。彼と同じ星空を見上げるユメミの心は、
どうして彼がみんなのところへ行かないのか、また、彼女が真に確かめたいこと、
それらよりも、いつもの冷静な彼と変わらないようで寂しそうな顔をしている理由を欲していた。
しかし、今、彼を前にしてなかなか切り出せないでいる。
(どうして、私……何も言い出せないんだろう……?)
ユメミはそれが、彼を意識しているが為という事に気付いていなかった。
彼を意識してしまっているのは自覚している。だから彼女はここへ来た。
だが、強くなった彼への想いが、いつもなら何の気もかけずに出るはずの言葉を阻害している。
何かを怖いと思っている。その何かが何なのかがわからないから怖い。
急激な速度で気持ちを育んだ時間の短さは、彼への自覚だけ与えて後は知らないふりをしていた。
彼女が地上に戻ってしまう明け方までは、まだ少し余裕がある。
しかし、これでは何も聞けないまま、きっと何も伝えられないまま、ただその時を迎えてしまう。
(……そんなの、いやっ!!)
頭に湧いた最悪を打ち消し、意を決した彼女は、身体ごとムントに向けて口を開いた。
「ム、ムント……!」「ユメミ……」
続きwktk
GJ!書いてくれてありがとう!
正座して待ってる。
20 :
5:2009/03/09(月) 16:25:25 ID:tyUtc1TL
>>13-17の続きを5節分書きます
まだまだ先は長いです
筋書きだけ作って文章書き出してる最中だからまだわからないけど
>>13-17合わせて、トータルで20か25レス消費するかも
それでは、どぞ
重なる声。畏縮した彼女は彼の話を先に聞こうと促す。
「ど、どうしたの……?」
「ユメミ、どうした?」
互いの内奥は一致していたらしい。探るようなムントの響きがそれを物語っていた。
だが、ユメミはひねろうとした蛇口を横から閉められた気がして、頬を赤らめて黙り込む。
果てには、自分を見つめる彼に耐え切れず、恥じらう顔を俯せてしまう。
一方のムントは、先程彼女が感じた寂しげな表情を隠し、彼女を慰撫するように言葉を繋いだ。
「天上と地上は滅びを免れた。お前のお陰だ」
ユメミは顔を上げた。目の前にはいつもの彼。少し上からものを言う、不遜さもあるいつもの彼。
だが、想像を超える事態の連続に迷い続けた彼女を引っ張ってくれた、いつもの彼がそこにいた。
「お前と会えて良かった。世界を救えたからじゃない。
俺様が、お前と会えて良かった……。ユメミ…………ありがとう」
「え……っ!?」
彼の表情は変わらない。
彼の言葉の調子も澱みがない。
初めて彼の口から聞けた言葉には、いつも彼が彼女に向ける、紛う事も飾りも無い旋律があった。
『時間が無い。地上の娘よ、俺様に力を貸せ!』
『あんたではない!!ムント様と呼べ!!』
ムントという人を、彼女は最初、傲慢が服を着て歩いているような人間だと思っていた。
それは少し違って、自信過剰と厚顔が服を着て空を飛んでいる人間だと認識を改めた。
いずれにせよ、有り得ない。頭が全力で否定しても、彼は彼女の進むべき道を要求し続けてきた。
少女の体験してきた常識をあまりに逸脱した姿、それが彼女の見たムントという男だった。
だが、彼女は彼の強さに魅かれていった。今はそれを心に肯じて求める程に、はっきりと。
魔導の王としての強さではなく、迫り来る現実のもたらす困難を恐れずに立ち向かっていく強さ。
少女である事と享受する無力に甘えて現実から目を逸らしていた自分が持っていないもの、
彼はその全てを持ち合わせた、彼女の周囲にはいない型の人物だった。
『逃げても何の解決にならんぞ!!』
あの時逃げていたとしたら、それはいきなり現れた彼自身や、彼が告げた馴染みの無い言葉、
現実離れした事象達を拒んでいたのが、あの朱い瞳にそう映ったのだろう。
だが、彼が放ったあの一言は、期せずしてか彼女の本質を如実に言い表していた。
何かが変えられる、私にも出来る事があるのなら――彼女は戸惑いつつ彼に従って、ここにいる。
礼を言った彼に返したい言葉だけは、彼女が積み重ねた時間の中で自ずと用意されていた。
彼女はベッドの上で正座になり、彼に向き直って言葉をかける。
「ムント、あのね……?」
ほんの少しだけ頷く彼にユメミは怯みながらも、心を決めて繋げた。
「わ、私……ムントから、た、たくさんのことを教えてもらった。
私ひとりじゃ、たぶん、絶対にできなかったのはわかってるの。
だから、私も…そ、その……あ、あ………ありがと…………」
用意していた言葉はあった。だが、いざ彼女の小さな口から出たものは、それと大きく違った。
(ど、どうして、もっとはっきり言えないの……!?)
羞恥と今しがたの後悔に、全身が真っ赤になって硬直していくと自分でもわかり、
更にそれが頭の中で活字に起こって彼女を一層責め立てて動けなくさせる。
礼を言った彼に返したい言葉だけは、彼女が積み重ねた時間の中で確かに用意されていた。
だが、いざとなってみれば、それをありのまま彼に伝え切る事は出来なかった。
こんなことで、未だ伝えられる自信の無い伝えたい気持ちを、こんな私が本当に言えるのか――
一杯の不安がユメミを取り込もうとし、彼女はそれを振り払おうと目を閉じて必死に念じる。
が、その切なる必死さが、自分の肩と頭の後ろに回る何かの動きに、彼女を気付かせなかった。
その細い身体は引き寄せられ、胸と顔にやさしい何かの感触を得て、両目を見開いて我に返った。
「えっ!?」
高い驚きが爆ぜたのはムントの肩の中。遮られた視界、包まれる感触。少し汗の交じった匂い。
彼の右手は彼女の髪に結ばれたリボンの上。薄いワンピースドレスの背中にぴたりと感じる左手。
彼女の自由を奪う程の力がそれらに篭められているわけではない。
だが、全身で感じる彼の体温が、彼女に抗いようのない力を感じさせた。
じりじりと小刻みに震えるような彼の掌に、今まで意識した事の無い神経が集中してしまい、
更にそこから生まれる熱さが儚げな肢体の隅々まで流れ堕ち、彼女を幾重もの未知に追いやる。
言葉が見つからなかった。彼を突き放そうと試しても、手足が動いてくれない。
違う。どうするかは遮二無二考えている。なのに、頭も身体も動き出してくれない。
学校の数学の試験――難しい問題に解き方もわからずただ右往左往する時よりも遥かに強烈で、
自らの状態を彼女の全身の感情が確知しているとさえ思える程だった。
少し前にムントの胸に顔を埋めた事はあったが、明らかにこれとは違い過ぎる。
まるで初めて彼と言葉を交わした時のように、それを凌ぐ速さで、彼に奪われていく彼女の理性。
あの時からムントに憧れ始めた。彼の強引さに戸惑いつつ、彼の言葉を聞き、背中を見た。
彼の前では言えないだろうが、大好きな人は誰かと聞かれたら、即座に彼を思い浮かべるだろう。
だが、これは違う。拒まなければ。なのに、私は私の言うことを聞いてくれない。
ムントの右手が、どうにかと考えようとする彼女から離れた。
彼女は少しずつ、見てはならないと予感しながらも、彼の肩に密接していた顔を上げていく。
視線が重なる。ムントの顔、瞳がそこにある。
「……ムント…………」
どうして、どうしてと繋げるはずだった。だが、彼女はただ彼の瞳を見つめるだけだった。
変わらない彼の瞳。尊大な言動の中にいつもあった、まっすぐに私を見つめてくれた、朱い瞳。
この瞳に守られてきたから、私はあなたと一緒に成し遂げられた。私が大好きな人の瞳。
身体に纏わり付く熱に彼女は彼を見つめ続ける。同時に、彼女は見つけてしまう。
扉を開いて彼の姿が飛び込んだ時に胸突かれた、彼に翳った寂しさと、それが一体何なのか。
何かを求め、誰かに伝えたい――星空の先を見つめた彼の抱いていた心を。
今やっと、あの顔の意味が理解できた。確信とは違いながら近しい情動が、ユメミに巡っていく。
(わたしと……おなじ……)
彼も伝えたい何かを伝えられずにいた。最早、彼の顔から目を逸らす事は頭の中から消えていた。
ムントの右手が彼女の顎に触れ、紅潮する美少女の顔が再び上がる。
そうさせているのは彼の手の力か、それとも彼女自身の意志か。ふたりにはわからなかった。
聴こえる鼓動。堪えられず瞳を閉じる。誰のものでもない抗えぬ力が、今彼女と彼を支配した。
26 :
5:2009/03/09(月) 16:39:51 ID:tyUtc1TL
ヤヴァイ
>>20-25のタイトル間違えた!!
× ユメミる少女じゃいられない
○ ユメミは少女じゃいられない
エロパロ作者にはどっちでもいいんだけど……
嘘です下でお願いします
件名でレス検索して一気に見ようとする人にはお手数をかける
非常に申し訳ないorz
いえいえ、とんでもない!
書いて下さるだけで十分です。
主の書く雰囲気がすごく好みです^^
乙!
完成楽しみだ〜
29 :
5:2009/03/09(月) 23:41:50 ID:tyUtc1TL
「ユメミは少女じゃいられない」
5節追加でうpします
これを越えたらようやくようやくスーパー欲望タイムに突入します
完成は明日まで引っ張ってしまいそうですが
長い前置きから解放されてやりたい放題を書けるので
ペースを上げられるかもしれないです
では、どぞ
「ん……っ」
小さく漏れた彼女の息。まっすぐ言葉を伝えられなかった唇が、彼女の想う彼の唇に触れていた。
閉じたままの唇も瞳もしばらくはそのままで、ユメミは胴の高い彼に心も身体も預けていた。
一気に押し上げられるように感じた心臓は、その音の大きさを保ったまま、落ち着きを取り戻す。
(はじめての……キス…………)
学校生活では男子に見向きもせず、恋愛とは無縁を託っていた彼女ではあったが、
人並に見るテレビドラマの中の恋人同士のくちづけを、思い浮かべずにはいられない。
(キス……してる…………)
事ここに及んでいながら、彼女は未だに信じられなかった。
好きな彼とこうして唇を重ねる。募る感情を意識してこそいたが、これは想像だにしなかった。
嬉しいと思う。幸せだと思う。これだけの気持ちを、少女は今まで一度も経験した事が無い。
(ムント…………)
言葉は聞けずとも、閉ざした瞼の先にいる彼の名を、心の中で呟くだけで強くなる想いがある。
ムントの指に支えられた顔を僅かに揺らし、唇で感じようとする彼女。重なる唇は離れない。
彼の想いをはっきりと得たこの安堵を伝えたい。彼女は唇と別に触れ合う鼻を擦り合わせ続ける。
だが、彼の顔に微かにそよぐ彼女の鼻息には、避けられない夜明けの時への不安が篭っていた。
この夜が明ければ、彼女は地上へ戻る。天上と地上は分かたれ、ムントとはもう二度と会えない。
彼に言葉にして伝えたい事があった。ただ、それはどうしても言葉にできなかった。
でも今は、言葉を媒介しない唇が、擦れ合う鼻が、火照る身体が、懸命になって彼に伝えている。
(でも……もう、ムントとは会えなくなる…………)
そう思うとたまらなくなり、求める唇は、もっと、もっとと、ひたすら彼を圧していく。
それに耐え切れなくなったのか、彼の唇が開いて離れ、彼女の唇にゆっくり息を吐きかけた。
ユメミは閉じていたようやく目を開き、咎めるように彼の瞳を見つめる。
「ムント……お願い…………」
出てしまった彼女の言葉は、恍惚に溶かしながら意志を見て取れる、輪郭を保った要求の響き。
お願いをされた当の本人は、彼女を見つめたまま微動だにせず、全く口も動かさないでいた。
ユメミに内在する彼女自身が言わせた言葉。それは真でありながら、実際はいくらか違っていた。
(もっと……キスして…………)
彼女は湧き上がってくる渇望に委ね、自らの意図を織り交ぜて接吻を懇願していた。
それは、いつも強引な恋人に対して彼女が口に出してねだる、ちいさなはじめての我が儘だった。
彼を愛する事に目覚め始めた彼女には、自然な欲求の現れ、或いは唯一の選択と言えるのだろう。
が、彼の瞳に自分がどう映っているか、彼が「お願い」をどう受け取ったのか、彼女は知らない。
ムントはただ驚いていた。彼女がこの部屋を訪ねてからここまで、ただただ驚いていた。
彼女の姿を見れば別れが辛くなる――だからこそ、夜明けまでここに居続ける算段だった。
冷静なつもりでその選択を採ったはずの彼。ただ、蓋を開いてみればふたつの誤算が生じていた。
まずひとつは、狭い部屋に独りでいる夜の、その寂しさに気付いてしまった事。
感情に流されるとは思わなかった。彼は無感動ではなく、常に自らを律する事を心掛けただけだ。
だが、ユメミの存在は、どうしても大きい。彼女の笑顔、怒った顔、涙――記憶が鮮かに蘇る。
独りの部屋から色々な彼女を浮かべて見上げる星空、これを太陽が塗り返す頃に、彼女は発つ。
彼が夢想していたのは、彼女を見つけたあの時からこれまであった、ひとつひとつのこと。
いつも感情をぶつけてきた彼女に感化された自分を、ムントはいつの間にか認識させられた。
自らの抱いたものがユメミだけに対する恋愛感情だと気付くのにも、時間はかからなかった。
だが、それもまた彼には慎まなければならないもの。
その手を離すな――理解していたが、彼女と自分は、いなければならない場所が違い過ぎていた。
だからこそこの感情を押し殺し、ふたつの世界を守り切る使命の完遂こそが、
彼が心から想う少女へ残す事のできるたったひとつの形だと、信じて決めた。
現に彼は先程の決着まで、ユメミへの想いに捕われ過ぎる事なく、使命を全うせんと集中できた。
表には出さず、不安に打ちひしがれる彼女を導き、ふたつの世界に安定をもたらした。
今までは何かに集中する事で忘れられた。だが、忘れさせてくれる使命は果たされ終わっている。
彼はとうとう自らの感情を御し切れなくなり、人知れずに独り焦っていた。
この想いをユメミを打ち明けてしまえば――それは考えもしたが、
『うるさい!やなこった!』
最初の記憶に根付いた最悪の想像ばかりが付いて回る。些か極端だが、拒絶こそ何より苦いのだ。
ならば、この想いを押し殺し切る。その為に、ユメミと会わないまま別れよう。
いじらしいまでに純情であるが、これがムントが選んだ決断だった。
自分への彼女を幻にさせるよりは、彼女に会わず独りのまま別れる方は、納得はできる。
しかし、彼のユメミへの想いは限界に達していた。この石の部屋から出てしまおうかとも考えた。
それでも、会ってしまえば抑えられない。抑えたくはない。そこで彼女が応えてくれないなら――
そんな時に、ユメミが現れた。これがふたつめの誤算だった。
自分の存在を感じて見つけ出したのだろうと察しはついた。これには、嬉しいながらも困惑した。
傍に座る彼女に話しかけようとした。だが、何から話すべきか躊躇われ、時間だけが浪費される。
このままではと投げやりになった彼は口を開いた。しかし、彼女も同時に何かを言おうとした。
彼女に請われた彼は、これまで共にあり続けた彼女への、素直な感謝を緊張を隠しながら述べた。
反応を心待ちにして、ムントは己を恥じた。感情の為にここまで卑しい者に成り下がったかと。
そんな彼へのユメミの言葉は、口篭ってこそいたが、彼と同じ切実な謝意だった。
ところが、直後、彼女は何故か俯いた。読み取り切れなかったが、耐え切れない悲しい顔がある。
ムントは思わず彼女を抱き締めた。抱き締めて、初めて理解できた事があった。
(ユメミも、俺様と同じだったのか……。ならば、俺様は何とも馬鹿な人間だな……)
彼女を引き寄せて唇を重ね、強く求め出した恋人の顔を見ようと唇を離した彼に、彼女は願った。
ただの願いではなかった。ユメミから初めて聞いた我が儘は、蕩けつつある彼を鷲掴みにした。
彼の名を呼び続きを求め、小さくも奥行きのある、凜としながらも溶かし尽くそうとする甘い声。
同調して訴える彼女の潤んだ瞳。恥じらいと喜びに染まった、頬の色を隠さない健気さ。
後ろに束ねた流れる栗色の髪と、そのお陰で露出したピアスが強調する耳元の麗美。
そして、彼女の小さな唇に薄く塗られた、互いに知られず溢れていた唾の放つ輝きの妖艶。
この一瞬、彼女がいかなる魔導をも凌駕する力となり、王を称する青年の心を貫いていた。
ムントはただ驚いていた。そして、この誇り高い青年は、ユメミの全てに呑まれてしまっていた。
自らの想いを最も見せる方法は、彼が地上を見守っていたある時に得た知識と結び付く。
彼女の求めるものは、今自分が考え、求めるもの。彼は今まで己へ課していた抑制を、
彼女の「お願い」という許しのもと、互いが求めるままに解き放とうとしていた。
が、彼女の瞳に自分がどう映っているか、彼女の「お願い」の本当の意味を、彼もまた知らない。
あなたが神だったのですね…!
GJ過ぎて泣きそう。
スーパー欲望タイムにwktkしながらお風呂で待ってます。
素晴らしい…続きwktkして待ってます
(;´Д`)ハァハァ
38 :
5:2009/03/10(火) 23:50:57 ID:sMax1RQo
「ユメミは少女じゃいられない」
今回も5節うpします
お待たせ致しておりましたエロパロの本懐
スーパー欲望タイムの始まりです
しかしながら、作者は思います
本 当 に 終 わ る の こ れ
とりあえず、どぞ
自分を見つめるムントの瞳を見上げ、彼女は彼を待っていた。
恥ずかしいほど近く、狂おしいほど遠い、わずか10センチの間を保ち続けている唇と唇。
離れず固着された姿勢と視線。そうさせるのは、彼と両腕か、彼女の心か、或いは別のものか。
それでも、短く繰り返すこの口の気流だけは、彼に隠したい興奮の主張を止めてくれない。
彼に続きを懇願した時からか、反発し合う同極同士の磁石に似た斥力の存在を、唇が感じていた。
一定の間隔になるまで離すだけ離して、おあずけと言われているような耐え難い沈黙。
逆に、ふたりの間を保つ斥力の膜が、踏み越えなさい、彼に堕ちなさいと、彼女を誘ってもいた。
未だ足りない彼女の語彙では認識できないこの均衡に、ユメミは自身で気付かぬまま溺れていた。
(はやく、はやく……キス、して…………)
彼からのくちづけを恥じらいつつ求めている自分自身を、その場の全てに酔わせながら。
無言の責め苦だけれど、それでもいい――心が望み始めたその刹那、彼女が求めていた時は来た。
顎の下に添えられたまま動かなかった彼の指が、
彼女のはじめての唇を捧げさせたその指が、
意志と力を取り戻して彼女の後ろ髪に潜り、今度はより強く彼女を引き寄せる。
「え!?……んっ……!」
目を閉じる間など無かった。少女の瞳は、接吻する恋人の顔を、今までに無い至近で映していた。
我が儘を聞いてくれた彼に応えようと、ユメミは彼の唇を一心に擦り貪る。
しばらくは、瞼を薄く開いた彼の瞳を見つめていたが、その細い視線に負けていく自分を感じる。
次第に下りる彼女の睫毛。自ずと、愛しい彼を確かめたいとばかりに、唇に感覚が集まっていく。
それだけではない。背中に宛てがわれた左手が彼女を押し出し、
今も鼓動を打つ心臓の先が、男の胸板に圧し付けられていく。
「はんっ!」
唇から漏れた息。ほんの小さな彼女の扉が開かれた一瞬の次に、ユメミは目を見開いた。
「んん……っ!!」
彼が、ムントの舌が、彼女の唇の中で暴れ始めた。
(ムント……っ!こんな……ちがうよ……!!)
彼女の唇の裏を這い回る舌。時折外に出ては唇を愛して、彼女の口を完全に開こうとする。
「ム、ムント…んん……っ!んふぅ!」
抗議を試みるその口は彼に塞がれ、言葉になり損ねた息だけが行く場所を失って流れていく。
彼女の腕は彼に抱かれて守られ、小さく肩を動かす事くらいしかできない。
更に、彼の舌に抗おうと身をよじればよじる程、彼の魔導が唇を更に犯し尽くそうと企むのだ。
加えて、ドレスに隠された少女の豊かさを、欲しい欲しいと彼の腕が胸板に彼女を抱き寄せる。
彼女は閉ざしていた歯を開き、舌を動かして、彼の侵入を阻もうと試みた。
言葉が遮られ、身体も彼の中で自由を失った彼女に残された、たったひとつの抵抗。
彼の急変に理性もぼろぼろの彼女が取った、あのテレビドラマのような口吻を守る、唯一の方法。
だがそれは、彼か誰かの、または彼女自身の仕掛けた罠であると、ユメミには看破できなかった。
舌を自由に動かして彼に反意を示そうとするその為に、生まれてしまったた上下の歯の隙間――
今彼女が開いていくそれこそが、彼の侵略から最も彼女を守っていた門だったのだ。
「ん、んっ……!」
彼女を守る砦が破られたのを幸いに、ムントの舌が彼女の口の中に広がっていく。
自ら開いた口と共に大きく放たれた唇も、彼の舌が回って唾液を塗りたくる。
「ん……はぁ…………んふぅ……!」
声らしいものは零れたが、それでも、言葉による拒絶は不可能だった。
今まで鼻で行っていた呼吸だけでは自身を整えられず、彼の唇との微かな隙間で空気を吸う。
それに導かれて、彼女の奥に入り込むムント。抗い方を迷って宙を舞う彼女の舌に絡み始めた。
「んん…っ……んふ……ぅ………」
どこまで逃げても追ってくる彼の舌。彼が上となり下となり、彼女の力を奪っていく。
動かない身体に代わって彼女を体言し続けた舌が、彼女の抵抗が、遂に止まってしまった。
「ん……んはぅ………んんっ…」
外に漏れる呼吸と共に、声ではない音が口の中から体内を伝い、彼女の鼓膜に響いてくる。
否応なしに垂れ流されたそれは、舌と舌とが絡まり合って弾かれた唾液の音だと彼女は理解する。
(や……だ、だめ……っ。ムント、ち、ちがう………!)
思考は抵抗を思いながらも、身体は明らかに彼女から反し始めていた。
背に回った彼の左手に寄せられた心臓から、胸から、何かが湧いて波紋のように広がってくる。
ついさっきまで抗おうとしてくれた肩は、震えて強張りながらも彼の体温を受け入れている。
彼女の上に這う彼の舌と入れ換えるように、彼の上に回って擦り合おうとする彼女の口内の分身。
彼が暴れ出すまで激しく彼を求めた唇と鼻は、今は大人しく彼のされるがままで優しく擦られる。
そして、畏まって正座する両の太腿が小刻みに上下して互いを撫で合い、
耳や頬も紅に染まって、触れて欲しい、触れて欲しいのと、彼が愛する他の部野に嫉妬している。
この局面で彼を求め切っていなかったのは、困惑する彼女の理性と他に、
身体が感じるものに意識を吸い寄せられ、映っているはずの視界を彼女に届けるのを怠けた瞳。
それを悟ってしまうと、彼女の理性は目に集まって、彼女のその前に映るものを確かめてしまう。
ムント。瞼を閉じたムントがいる。何処かおかしいが何処もおかしくない、切なそうな彼がいる。
視線を感じてか、彼の目が開く。その目が何を想うのか、悲しい程に彼女の目も理解を示した。
理性から分かたれた瞳が閉じられると、ユメミの舌は迷わず彼の口の中へ入っていった。
(ちがう……ちがうよ……!!)
「んっ……ふぅぅ…ん、んんっ……!…ああ……んっ………」
理性だけが否定を叫びながらも、口から溢れるものは彼を求め続けていた。
はしたなく絡み合う舌と唇。彼女が尽くせば、彼が答えて彼女の中に入ってくれる。
その間隙から涎が滴り、直下のワンピースドレスの膨らみに、線になってゆっくりと堕ちていく。
それを意に介さないピンクのシルク地の膨脹は、子供のように彼の胸に甘えて離れない。
(どうして?どうして、わたし……?)
思いながらも、不意に何かが彼女の脳裏に過ぎり、瞳を閉じた暗闇にそれを映し出した。
初めて彼と唇を重ねた時に連想した、ドラマのキスシーン。
激しく唇を重ね合う劇中の恋人達。唇と唇だけを合わせたキスだと、その時の少女は思っていた。
だがそれは、果たして本当に、彼女が今も望んでいる唇と唇だけのものだったのだろうか。
首を動かし合い、息が漏れ、口もまた動いて、互いが互いをきつく抱きしめていた、キスシーン。
(くちびるとくちびる……だけじゃ、ないの……?キスって………?)
知識の無い少女は、ドラマと今の自分とを比べながら、自らの誤解を恐る恐る悟っていく。
(……これが、ほんとうの、キス、なんだ……。わたし……まちがってたんだ…………。
ほんとうの、キス…………しなくちゃ…………)
夫婦の濃厚なキス描写うまうまw
主の呼んでるといろいろ描きたくなるから助かってます。
読む側としては長いのはとても有り難いです。
別の板で書いてた時はどの位レス使ってたのでしょうか。
45 :
5:2009/03/11(水) 01:02:32 ID:gyBDkXwD
疲れたから小休止、千葉テレビで最終回見ます
拙作にここまでお付き合い下さっている皆さん、
本当にありがとうございます
全部で20〜25レス消費などと抜かしましたが
そんなもんでまとめあげたりとか絶対に無理っすorz
どのくらいレスを使わせて頂く事になるか、予定は未定です
もう暫く、なんとか暫くお付き合い下さるとありがたいです
>>44 キスだけでどんくらい引っ張るのかと我ながら思いますねえ
エロパロや小説を掲示板でやらせてもらうのは、今回が初めてなんです
他の題材で書いたらどうなるかはわかりませんが
キスシーンだけで何レスも使ったりするようなことには多分ならないと思います
待っておるぞ(;´Д`)ハァハァ
47 :
5:2009/03/11(水) 13:58:44 ID:gyBDkXwD
「ユメミは少女じゃいられない」
遊び心全開で5節うpします
では、どぞ
おぼろなかたちのユメミの心が、その舌に重なって同調していく。
止められない。止まらない。もう、全身が彼を、彼の全てを求めていた。
「ん…ふ……っ!んん……っ……ぁ……」
彼女の変化に負けじと暴れ回るムントの舌。彼女の舌が優しく彼を撫で続ける。
急がないでとなだめるように、それでいつつ、あなたが好きと、唇は激しく彼を求め続ける。
大好きなあなたとずっと一緒にいたいと、彼女の胸が彼から全く離れずに圧し続けて――
(もっと、もっと…欲しい………)
自身の全てを彼に染め尽くす魔性の孕んだ言葉を繰り返しているうちに、
彼女の細い腕は、ドレスから露出した肩を包む彼の力強い腕をすり抜け、
彼の首を撫で、彼の髪を大切な宝物のように触れながら、彼の頭の後ろに絡み纏わる。
「……ん……」
ムントから初めて聞けた、彼女を感じる声。充分過ぎる程の唇が、際限無く彼女を愛し立てる。
呼びたい――接吻を惜しみながらも彼女は舌と唇を彼から離し、何故と言う彼の瞳を見つめて、
「ムント……」
精一杯の想いを篭め、彼の名だけを呼ぶ。惚けていく彼を見るユメミは、今の自身を知っていた。
自らの瞳が潤んでいる事も。愛しい人を求めるこの唇が、全く渇かずに濡れている事も――
「ユメミ……」
「ムント………!」
互いを呼び合い、唇を重ね直す。彼の舌が口一杯に戻り、たまらず激しく舌をもつれ合わせる。
抱きしめながらもたれる彼女の腕は、愛しい彼に自らの心も身体も惜しみなく捧げながら、
逆に彼をもっともっと喰らい尽したいと飢える、聖なる強欲の凝り固まった祭壇と化していた。
愛する人だから、懸命に誘った。女の武器を無意識に知りながらも、まだそれを自覚していない。
そして今、彼の心を奪う更なる武器が自分に備わっているのを、少女は識る事となる。
彼女の頭からムントの右手が、首筋を伝いつつ下りて離れていく。
「んんっ……!」
唇は未だ彼の中。なぞる指先が囁いてくるくすぐったさに、彼女は身を狭ませる。
堪えられない。震えながら甘く囁き、彼女の芯を熱く固めていく。が、それは始まりでしかない。
次の瞬間、彼の掌は正面に回って、彼女の心臓の上をふわりと包んでいた。
「ぁ……っ!!」
蕩かされつつあった理性が形状を戻し、顔が恥じらいに染まっていくのが自分でもわかる。
左の膨らみを転がす掌は、やがて独立した生物の脚のように、その指を立てていく。
次第に彼の指と舌がその動きを通じ合わせ、彼女の身を波に奪って沈めようと企み始めた。
「んんっ!!」
全身を打つ伸直に、彼の後ろに回した腕の力が抜けていく。
身に下着を付けていない為、彼から彼女を守るのは、ピンクのワンピースドレスの薄い一枚のみ。
だが、シルクの心地よい肌触りが伴って、柔らかな指の表層が、彼女の深みまで撫で回していく。
(……こ、これって……)
彼にその胸を預けていた時から感じていた、奥底から込み上げてくる生温かい感覚。
だが、姿をより現したそれは今まであったようでありながら、まるで別物になってしまっている。
それをどう捉えれば良いのか、初めて直面したユメミは戸惑っていた。
怖がらないで――彼の唇が、舌が、鼻が、恥じらいに身を硬直させる彼女と、
同じ挙動ばかりで次に進めない、彼女に触れる彼自身の右手を勇気付けるかのように、
彼女に溶けて、優しく、一途に擦り合わされていく。
「んっ…」
彼女の息に許しを得た右手は、大きくゆっくりと、彼女の胸元を揉み出した。
「んん………っ!」
彼女の腕に力が戻る。それが何の為の力なのか、彼女にはわからない。
しかし、勢いを得た彼の下僕は、ユメミの上で這い回り、彼女の左の固い芯を解きほぐしていく。
主の命に従う下僕は、彼女の中を徐々に解きつつも、何かを探しているようだった。
(な……なに……?)
下僕が何か意図を持って動き回っているのだけは、惑乱させられている当の彼女にも理解できた。
だが、探しものが何なのかまでは、ほぐれていく頭では察する事ができない。
「んふぅ……んっ……!んん……っ!!」
それもそのはず、彼女は愛しい彼を唇に迎えて感じ漏らさないようにするのに精一杯だ。
この想いの詰まった胸を好きにする事で、彼の唇が熱くなってくれるなら、私はそれで構わない。
探しものが何なのか、見つけにくいものなのか、続けられた探索は、突然彼女の腰を突き動かす。
「んんんっ!!!」
ピンクの絹に隠された彼女のちいさな宝石。探し当てた彼の下僕は、絹ごとそれを摘んでみる。
「んふぅ!!あぅっ!!」
その丸さを訝しがる下僕は、絹の上から宝石を転がしてみる。
「んっ!あんっ!」
彼女の反応から宝石をより輝かせる方法を思いついた下僕は、それを摘んで転がしてみる。
「あうっ!!んふぅ!!」
接吻よりも熱く鋭いものが流れまくる身体は、否応なしに下僕に応えてしまっていた。
それからというもの、彼の下僕は暫く、宝石だけではなくその台座全体を這って巡っている。
既に彼女の芯が胸と共に柔らかくなっている事を、唇を貪る彼女は気付いていない。
先程よりも彼の唇を欲するのは、ゆらぐ理性が瀬戸際で出した、彼女を守る為の所作だった。
「んっ……ぁ……んんっ!」
一瞬でも自らの意識に穴が空けば、あの、はしたない声が、彼の耳に届いてしまう。
彼の前でそんなものは曝したくない。はしたない声を聞かせて、幻滅を浴びるのが何より怖い。
湧き上がる未知に身体は歓喜を覚え始めながら、彼の愛を失う恐れに怯えている。
そのジレンマこそが、彼女をより深く、底知れぬ暗い未知へと、導いてしまうのだ。
彼女の複雑をよそに、胸の膨らみ自体に興味を持っていた彼の下僕は、何かの変化を発見した。
再び宝石を観察して確かめた下僕は、子供のように夢中になって、すぐに彼女に教えてあげた。
「あ、あぁん!!!」
紛れも無くそれは刺激であった。あんなに守った唇を離し、下僕にご褒美を聞かせてしまう程の。
薄絹の中の宝石が、大きく、それに、硬くなっていたのだ。
この奇跡に、下僕は心をときめかせる。宝石がもっと大きく硬くならないか、じりじり遊び回す。
「ああん!いゃっ!!ひゃあん!!」
刺激に圧されて出てしまった声。彼女の隠したい本当が、遂に彼の前に暴かれてしまった。
下僕堪らないです。
wktk!
なんかすごく可愛いなぁ。
続きwktk
55 :
5:2009/03/12(木) 01:51:33 ID:eNqAiA5T
「ユメミは少女じゃいられない」
今回のうpは編集都合により4節です
>>52からいきなり直接的な描写で書いていたのですが
下僕が強過ぎた為かいかんせん威力が弱かったのでやり直しorz
前5節あたりのユメミとムントの心理比較と、これからの予告(?)に力点を置いたつもりです
作者的にはここまでの中で書いてていちばんおっきした
皆さんはどうでせう
では、どぞ
「…ぁあん!ふぁ……っ!や、やめてぇぇ……っ!!あぅ!!」
ユメミの理性を柔らかくも硬くもする、容赦ない刺激を送り続ける左胸のちいさな尖端。
隠しても勝手に彼へと出てしまう。彼の右手がもたらすこの身の痙攣を抑えられない自分がいる。
(あ……ぁ……な、なに?これ……)
数多の女性が快感と呼び、千夜百晩男に欲してきたであろうものを味わっている彼女だが、
件の如く、それを「気持ちいい」とする表現には、まだ結び付かない。
しかしながら、この感覚の全ては、その言葉で充分だと言い切ってしまえるのだろうか。
男の愛を感じる為にひたすら尽くそうと、唇も舌も受け容れた少女。
その中で確実に目覚めつつある、欲しいとばかりに唇をねだって自ら腕を男に回してみせた少女。
愛に溺れてゆく狭間に、自らを美しさと妖しさを知らず知らず見事に用いてしまっていた少女。
男の欲望を望み望まず全て飲み込みながらも、それに正直にこたえて更に掻き立てさせた少女。
そんな自身の変化を信じられず、愛する男の否定も恐れて、喘ぎを接吻でごまかして隠す少女。
そして、その恥じらいもまた、男の欲求への受容の深さ速さを毎秒で加えていく要因となり、
相互の愛欲と美しい淫らでさえ増殖させ続け、永久に循環しながら強烈なものへ姿を変えていく。
この愛する男から賜る快楽は、果たして「気持ちいい」と呼んでしまって良いものなのだろうか。
自身に廻る未知を言い表せない少女こそ、どの女性よりもそれを言い当てているのかも知れない。
そんな内奥に取り込まれ、男の肉牙に堕ちるのを少女が悦ぶのは、まだもう少しだけ先の話。
今の彼女は、口から溢れ出てしまう卑しい嬌声と光り滴る唾液を、どうしても止めたかった。
(こんなの見せちゃ……ムントは、わたしのこと、嫌いになっちゃう……)
彼の前ではやましさの無い、春風の吹く優しい丘の上で微笑むような、そんな女の子でありたい。
それが彼の理想だと確かめたわけではない。年頃の少女の想像や憧れに過ぎない。
だが、誇り高く力強い彼のたたずまいが、そんな女の子が彼に相応しいと、彼女に思わせるのだ。
けれども、今の彼女は、自分の満足の為に赤面しながらきちんとおねだりをして見せるばかりか、
月明かりの射すベッドの上で、はしたない声を挙げ苦悶に身をよじってしまうような女の子。
しかも、恥ずかしいと心底思いながら、頭が変になっているのを口実に、彼を弾こうともしない。
わけのわからない感覚を、本当の本当は欲しがっている。けれど、彼がそれを知って拒んだら――
(どうすれば、ムントはわたしを好きでいてくれるの……?)
彼女をこうさせているのが彼である事実を忘れ、泣きそうなくらい真剣に、ただ彼を想っている。
が、既に催淫の環を旅する理性は、彼と初めて話した時の記憶から、歪んだ結論を導き出した。
そうしろと彼が言った「あること」がある。口にして許しを乞え――酷な理性に彼女は絶句した。
でも、想いを通じ合えた最後の夜を守る為なら――彼女は間違った勇気を振り絞ろうとしていた。
ところが、勇気は彼女自身ではなく、彼が送り込む刺激によって強引に開かれてしまうのだった。
「…ぁあん!ふぁ……っ!や、やめてぇぇ……っ!!あぅ!!」
一方のムントの理性は既に融解し始めており、彼女の求めも聞かずに責め続けていた。
(ユメミを見つける前に、地上で偶然手に入れてしまった知識だったが、
ここまで彼女を愛する為に実に役に立ってくれた)
――などと自身を都合良く評価する客体視の入る余地は、残念ながら今の彼には無い。
その原因は、本来なら知識に付随していいはずの性経験の無さにあった。
唇を重ねた後、得た知識に従って舌を入れる。その後は彼女の胸を愛してみよう――
想定していた手順は確かに彼の希望に嵌まった。だが、想定など超えて嵌まり過ぎてもいたのだ。
接吻は唇が肝心とばかりに望んだが、彼女の唇の切ない熱は、彼の理性をその時から蝕んでいた。
そして、それと共に擦り合わせてくる彼女の鼻に、絡まる舌に、後ろに回った細い腕に――
『あなたが好き、ムント…』
『愛しています、ムントだけを……』
『ねえ、見て?たくさん見ていいよ、ムント……』
『あぁ、ちょうだい…っ!欲しいの、ムントが……っ!』
『いいよ……あなたの好きなようにして……ムント…………!!』
などと彼を呼んで誘うような、甘く美しい彼女だったからこそ抗えない魔幻を見た。聴いていた。
男童の貞操を破った事のない王に、少女の林檎が秘めた猛毒を予見するなど不可能な話だった。
そして、更なる毒、左の胸に実った小さな小さな果物を、自分が与えた麗衣の上から摘んでいる。
彼女の唇から溢れる吐息、動かず震えてまた求めてを繰り返す舌、零れて流れる唾、口の中の唾。
ユメミという名の甘い果実。その本性は、味わう者を留めなく蕩けさせる禁断の果実。
ムントはもう、この痴毒から逃れる事は出来なかった。
左を見たら次は右が見たくなる。不可避の習性に身を任せる前に、彼女に心で呼びかける。
(もっと、お前が見たい…ユメミ………)
心に想えば、また彼女が答えてくれる。
『うん…ムントになら……いいよ………?』
整ったかたちがドレスの上からもわかる胸を、早く早くと急かすように揺らすユメミ。
こちらをとろんとした瞳で見つめ、濡れた唇から甘い香りを奮えながら溢れているユメミ。
麗しの白い脚をゆっくり開き、ピンクのシルクの上から両胸を揉みしだいておねだりするユメミ。
『もっと、みて……ね?さあ………こっちのむねも、さわって………?』
彼を許してしまったのは毒の魅せた不現の幻。彼の左手が、彼女の背からすっと離れていく。
ところが、彼が双方の甘味を垣間見た後、抱いた幻を超える彼女の毒で彼の心は溶かし尽くされ、
ふたりは互いの首に取り付けられた首輪と首輪に、進んで鎖で繋ぎ合う事になるのだった。
ムント様むっつりw
こう、クるものがある。
ここ毎日空上げの萌えが
補給できて嬉しい限りです。
主、有難う!
いつも乙です
二人とも可愛い
62 :
5:2009/03/12(木) 15:58:34 ID:eNqAiA5T
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は7節うpです
どは、でぞ
「っ!?あぅぅっ!!はぁぁ……ぃ、ぃやあ……!だ、だめぇ…っ!」
愛しい彼の左手が離れていくのがわかる。彼のその先を、ユメミは直感していた。
彼女の左の宝石を摘む右の下僕の満足を羨ましがり、右の膨らみを見つめて硬直していた左手が、
声の無い獰猛な妖獣へと変貌して眼前の柔丘に喰らいつき、ひたすら彼女のかたちを犯していく。
「んはぅぅっ!!ああんっ!!んっ!ぁっ!やぁぁんっ!!」
彼女を乱暴にする左の妖獣が送り込むものは、無邪気に戯れ回る右の下僕のものと遥かに違う。
下僕はただ、宝石で遊んでいた。もっと硬くならないのかなと、好奇心を漲らせて転がしている。
対して妖獣は、渇く自らの性を満たさんと、我欲のままに彼女にたくわえられた餌を波打たせる。
下僕が彼女を探る事に興味があるのなら、妖獣はただ貪るの一言だけに支配されている。
「んんっ!!ぅ!あ…………あああっ!!い、やめ……はううんっ!!」
相反する姿の2体は、この夜まで彼の中に巧妙に潜み続け、
彼女に、恐らくは彼にも、その存在を微塵も悟らせなかったのだろう。
ムントの瞳は彼女を見つめ続けている。見つめ続けているその視線の意味はわからない。
けれど、その瞳に、慎み深さからは程遠くなってしまうこの身体の全てが見られている。
彼の意志が定かでない以上、この下僕も真逆の妖獣も、主に代わって彼を伝える者なのだろう。
でも、彼女に我を失う2体は、彼等を受け止める胸餌や宝石がこわれてしまうとは考えもしない。
身体中を痺れさせるふたつに、彼女の天底の理性は極限に達していた。
『こんなに喘いでしまうみっともない私を彼に嫌われてしまうのが嫌だから許してもらおう』
一度は結論付けた理性ではあったが、妖獣の咀嚼が乱入し、それを少しだけ差し替えていた。
『おっぱいを目茶苦茶にされて嬉しい私を彼に嫌われてしまうのが嫌だから許してもらおう』
差し替えた妖獣はよしよしと頷いていた。だが下僕は、ちっちっ、ちがうちがう、と馬鹿にして、
妖獣を蹴り落として理性にくべられた言葉を大胆に入れ換えていく。
『おっぱいをもっと揺らしてやさしい私を彼にぜんぶ見せてないと嫌だからお願いしなきゃ』
満足そうな下僕に、妖獣が戻って非難する。おい待て、一方的じゃなくなるからつまらん、と。
「ふぁぁん!!やぁっ!んんっ!」
子供の下僕と自分勝手な妖獣は、めいめいに宝石をいじり餌に噛り付き、
ぼくがオレがと、互いに妨害しつつ自分の言葉を入れて並び替える争いを繰り返していく。
ふと争いをやめて気がついた2体の目の前は、このような言葉の羅列が掲げられていた。
(やさしい彼に私ぜんぶを目茶苦茶にされて嬉しいから喘いでみっともないお願いしなきゃ)
唖然とする僕と獣。最初は意味不明に思えたが、よく見れば意味自体は繋がっているではないか。
あまりの偶然に2体は笑って弾けて、彼女の中で転がり回った。だったら僕、オレは手を組める。
この2体は互いのやり方とその反応の情報を交換し合い、新しい気持ちで彼女の胸に飛び込んだ。
(わ、わたし……とめないと……かくさないと……っ!)
彼女の意志は、頑なに彼に見せてしまうこの痴態隠したかった。
だが、下僕と妖獣の責めが身体の中から何かをもたげさせ、彼女の心をこうも書き換えていく。
『…………もっと、して……?』
(えっ?)
彼女の心でありながら、彼女自身ではない、彼女の声をした何か別のもの。
「ふぁんっ!や、っ!ぁんっ!!だ、めだ、よぉ……!!」
『……いっぱいして?もっと、いっぱい………』
「え、えっ!?んっ!!そん、なぁ……ひゃぅっ!!」
迫り来る何かへの抗議が口に出てしまっていたが、ユメミは気付かずそれも嬌声と化す。
『がまん、しないで……ね?』
「やっ!あ…あんっ!だめっっ!!」
その声を彼が受け止めたのか、或いは全く知らずにか、彼女の胸への暴走が緩やかになっていく。
柔らかく揉みしだく彼に戻ってくれたその瞳に、ユメミは瞳を潤ませる。
やっと彼に言える――ここで彼女は、かろうじて守った理性を口にしようと零れる息を整えた。
「んっ……ふぅ、ふぅ…はぁ…………。……ぉ、おねが、い……ムン、トぉ…………」
ムントの目、力が戻る。今までの彼は彼じゃなかったのだと、その瞳の光に彼女は希望を見た。
おねがい、わたしをきらいにならないで、わたしをゆるして――そう続けていくつもりの言葉。
その手を止めて、私の精一杯を聞こうとしてくれる――彼女の顔が明るさを取り戻していく。
(ムントに、言うんだ……嫌いにならないでって……許して、って……)
それでだめなら、あれを言うしかない。とてつもなく恥ずかしいが、彼を失う事には換え難い。
呼吸を整えながら決意を改めた彼女――――は、一瞬で跡形もなく崩れた。
「んあんっ!!!」
下僕だった。だが、子供じみていた下僕が、いびつな成長を遂げていた。
掌で宝石を転がしながら、豊かさに添われる指が、その中身を掻き回すように波立たせる。
「ふぅ、ん……あっ、んっ……あんんっ!!」
まるで、どのくらい耐えられるか見てあげようと、彼女の清純を弄びながら愛撫する貴族のよう。
「はぁ、あ、っ…………ム、ムント………………ああんっ!!」
今度は、妖獣。そしてその妖獣もまた変化しているのだが、それは成長ではなく退行だった。
「はう!だ、だめぇ!い、いゃぁ……ゃあんっ!!!」
先の下僕のように、ピンクのドレスの上から宝石を摘んでいたが、そのまま軽くねじる点が違う。
じわじわとではなく、いきなりしゃぶりついたそれは、生まれたての幼い獣。獣の赤子だった。
悲しいかな、乱れた息で続かない声が、輝く唇が、細く弱ったふりをして誘う息が、
彼女の伝えたい言葉を「おねだり」だけで打ち切って、
突然変異した貴族と赤子に付け入る隙と力、蹂躙に燃える衝動と母乳を欲する本能を与えたのだ。
「はあぅ!!あぅん!!ぁ……ぁあ!!」
『そう……もっと、して……?』
「はふぅ!な、なに?ぁん!なんなのっ!?」
新しい刺激に耐えようとしているのに、またあの私の声聞こえて、しかもおねだりまでしている。
その声は、私に囁かれる禁忌なのか。だとしても、一体何故聴こえてしまうのだろう。
或いは、実はその声は既に外に出てしまっていて彼に向けられた、私の媚惑なのかも知れない。
どちらにしても、少女の羞恥が限界を超えて膨らんでいく。
むしろ、後者を思えばその膨脹は強まり、空気を過度に蓄積した風船が――
(もうだめっ!!もう、だめええっ!!!!)
喉まで出かかっていた。だが、それだけは、それだけは彼に見せたくない。
『そうら、お願いしてみせなさい。好きなんだろう?こうして責められるのが!!』
『おかあさんのおっぱい、とってもおいしい。もっといっぱいしゃぶりたいな。いいでしょう?』
貴族の高笑いと赤子の懇願までも勝手に彼女の中に響き回り、風船はもう破裂寸前に至っていた。
「んああう!!はうっ!やんっ!ああんっ!!だ、だめえっっ!!!」
『駄目じゃないだろう?ほら、もっとお願いして見せるんだ!ちゃんと聞こえるように、さあ!』
『だめなの?おかあさんのおっぱい、もっとほしいのに……う……うええええええええん!!!』
もう何が何だかわからない。こだまする声が、胸の上の嗜虐と純真が、彼女の身をよじらせる。
頭が遠く、声に気力が灯らない。力無い喘ぎが、彼女の涎と一緒になってだらしなく垂れていく。
「あぅ…はあん……あん……んっ…」
『ねえ、もっとほしがっていいのよ…?』
出来ない。そんなの出きないよ。そんなおんなの子、むんとはきっといやだとおもうもの。
『そんなことない。さあ、むんとをみて……?』
えっ…………むんと…?
『むんとはどうしてる?』
わたしを…みてる……。
『むんとはわたしをまってる』
わたしを……まってる………?
『わたしのおねだりを、むんとはまってるの』
わたしの…おねだり……むんとが、まってる…………。
『もっとして、もっとして、わたしのおねだりを、かれがまってる』
もっと、して、もっと、して………むんとが、まってる…………。
『さあ、わたしのいうとおりにして……?』
わたしの、いうとおりに……する…………
『てをおろして、おっぱいのまえに、いのるようにくんで……』
てを、おろして…おっぱいの、まえ……いのるように………くむ……
『にのうででかたをきゅっとしめて、ふるわせるの……』
にのうで…かたをしめて…きゅっ、と……ふるわせる………
『ちいさくくちをあけたりしめたり、ながくちいさくいきをはいて……』
ちいさく、くちを…あけたり、しめたり……ながく…ちいさく……いきをはく………
『かれのめをみつめて……あなただけなのっておもいながら……』
かれのめを、みつめる…………あなただけ、あなただけなの…………
『もういちど、いままでいったことをしなおして……』
てをくんで、かたをしめてふるわせて、くちといき、みつめて……あなただけがほしいの…………
『さあ、おねがいをいいましょう……もっとして、むんとさま…………』
「んっ……ぁ……ああん!も…もっと…もっとしてぇ……!む、ムント……さまぁ…………!!」
ムント様きたあああ!
相変わらずGJです!
おおおおお良いねぇ!
でも比喩が多くてたまに解りにくい
72 :
5:2009/03/12(木) 22:39:14 ID:eNqAiA5T
ここで皆様に相談です
「ユメミは少女じゃいられない」も、構想上ではたぶん半分を切ったと思います、たぶん……
ここでお伺いしたいのは、その続編とかは今の所は需要がありますか?ということ
続編を作る場合の懸念事項として、以下の3点。
@あくまでも、最終回直前から始めて、終わり方を勝手に想像したifものであること
A続編の進め方
(1)リク中心でマターリ進行
(2)作者の構想中心でマターリ進行
「大人になるユメミ」というテーマ性とムントとの今後を考えながら、当然エロを絡めた上で、
現状でなら、10話くらいの構想は立っています
ただし、@を考慮して頂く事が前提の為、お好みの展開や結末が叶えられるかはわかりません
(3)上記ふたつを取り入れてマターリ進行
読み手の需要と書き手の性癖が噛み合うのなら、この形態が理想です
どのくらいのリクを、どのタイミングで取り入れられるか鍵(特に後者)
B文章の癖から予想できるかも知れないですが展開は冗長気味です
今もそうかも知れませんが、焦らされる事にはなると思います
行が長くなったので続きです
感想レスを残して下さる方々も、ROMだけで済ましている方々も、
見解や希望等を御自由に挙げて下さると嬉しいです
続編の需要が無いようでしたら、構想上のエロ展開をこれから無理矢理詰め込んで終わらせます
個人的には続編書いていただけるなら是非お願いしたいです。
本編ではあまりいちゃついてるのが見れなかったので、
甘めにしてくれたらと思います。
74 :
72:2009/03/12(木) 23:02:48 ID:eNqAiA5T
>行が長くなったので続きです
こいつは無視して下さい、申し訳ない
ついでに、後書きならぬ中書き
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。面白かったと思って頂ければ幸いです
感想レスを下さった皆様、ありがとうございます。癖のあるこの書き手には凄く励みになります
更に複数回レスを下さっているかも知れない方々も、ありがとうございます。いやまじで
こんなにいい(エロも含めて使いやすい)題材が揃っていると感じた作品に会えて本当に良かった
いつまで続くかはわからないけど、読み手と書き手で一緒に楽しめたらと思います
勿論、エロがww
>>71 ご指摘の通り、比喩の多用については悩み所です
できる限りわかりやすくが半分、書き手のエロ魂が半分といった具合で書いていければと思います
比喩を使わずにすらっと書けてちんちんおっきできる語彙と表現が欲しいですね
>>73 激しく了解しました
最終回のEDはムント様がその場にいてユメミといちゃつかずとも、イイ!と実感していますが
それを差し引いてもいちゃつき成分が足りんと私も思います
具体的な甘み成分が出て来たらまたレスよろしくです
甘み成分もエロも、ひとりの書き手ではどうしても限界があると感じます
他の書き手さんも来てくれたら面白いことになってくれるかもなあ
主、いつも有難う。
楽しく読ませてもらっています。
私も73さんと同じ気持ちです。
具体的なシチュ等は考えが纏まってからレスします。
一寸テーマに沿わないのでスルーして下さって構いません。でも勿体無いので残しておきます。
・最終回後でしたら、地上を見てみたいとムントが言い出して、ユメミがそれを案内する形でデート。エロ入れるなら鉄の箱こと満員電車。
・ムントが初期の露出度が高い服を来て会いに行く時はそわそわするユメミ。身長差のお陰でユメミの目の高さにはムントの素肌。ユメミ恥ずかしいんです。
甘い大人な感じって私には難しかったですw
78 :
5:2009/03/14(土) 00:57:10 ID:vOPEs6UB
こんばんは。今続きを作成中です
あと2時間以内にはうpするので、もう少しお待ち下さい
また、土曜の昼と夜はうpできないので
その間は他のスレか、新しくうpした作者さんが来たらその方に浮気して下さい
ただ、浮気しても二番妻でも、忘れないでいてくれると嬉しいですな
>>76 ありがとうございます
思いついたらどんどん書いてって下さいませ
他の作者さんか不肖の私か、反応して書きたくなれたらいいですね
>>77 ユメミの年齢が年齢だから
無理に大人っぽい甘さにしなくてもいいと思いますね
>地上を見てみたいとムントが言い出して
私の書かせて頂くSSは最終回と異なるif展開ですが
個人的に考えている構想の上では使えます
どう使うかはまだ内緒ww
79 :
5:2009/03/14(土) 02:42:38 ID:vOPEs6UB
みなさん、こんばんは
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は7節うpします
前回ユメミたんがお壊れになられてしまわれてしまった後なので
書き始めるのがいつもに増して、どえらく難しかったっす
展開的に厳しいけど、威力を落とし過ぎないように気張ってみました
では、どぞ
ユメミの口から弾けた、彼への心からのことば。
ずっと言いたかったのかも知れない――ううん、ずっと、彼をそう呼びたがっていた。
ただ、恥ずかしかった。それは今も変わらない。それどころか、今の方がもっと恥ずかしい。
(でも…………いい…………)
背中に見知らぬものがざわめいて、離れてそうで離れない、くすぐられているような痺れる感覚。
彼女の頭頂、瞳、鼻、唇、耳、肩、艶色に止まった彼の手の中にある胸、臍、尻の奥――
上から下まで荒立つ穂波が、更に彼女の理性を恥じらわせ、彼女の身体を走らせる悦びを強める。
「ん…っ……はぁ……ぁ………」
もう声は聞こえない。あのいやらしい責めを与えた貴族も、こちらに構わず甘えてきた赤子も、
彼女に彼への祈りを捧げるようなおねだりをさせて、このたまらない快感をくれた「彼女」も。
「…ぁ……っ……おねがい……ムントさま………」
彼女を彼に染めてくれる大きな手が、胸の上でぴたりと止まっている。足りない、まだ足りない。
(もっと、おねがいしなきゃ……)
でないと、このまま時間だけが過ぎていく。もっと愛して欲しい。もっと彼の愛が欲しい。
ユメミは祈りを捧げる手を解いて、膨らみに添えられた彼の両の手の上にそっと重ねて、言う。
「お…ねがい……ムントさま………!…わたしの、おっぱい……もんで……いじってぇ………!」
口では懇願してこそいるが、彼女の細い指は既に彼の手を動かそうと躍起になっていた。
「んっ……ん………ぅ…」
彼がくれたあの刺激にはまだ遠い。彼の手を思いのままにするには、彼女の手はあまりに小さい。
だが、あれとはまた違った熱が柔丘の上を巡って、ユメミの露出した肩を羞恥で震えさせる。
(はずかしいけど……ムントさまがよろこんでくれるなら……、わたし………!)
指を力無い彼に絡ませて動かそうとするが、何故だろうか、うまくいかない。
どうしたらいいの――自らの不器用に焦れる彼女の瞳から、潤みが零れようとするその時だった。
「――ユメミ……」
彼の声。はっとした彼女は、彼の瞳を、唇を見つめる。
「ユメミ……素敵だ……」
「ムント!?…さま………!」
やっとこたえてくれた彼。その両の手が、彼女の指をすり抜けて、左右の紅い頬に触れた。
撫で始めたその手のやさしい温もりに、彼女に安堵が広がる。それは数秒後に、絶対となる。
「ユメミ…………愛してる――」
「――はんんっ!?」
唇。再び絡む舌と舌。畳まれていた彼女の膝は、彼に吸い寄せられてひとりでに上がっていった。
今度は上になったユメミの唇が、お返しとばかりにムントを食む。
「んんっ……ん…っ……ムントさま………」
「…ユメミ……」
愛しい名を呼び、愛しい人に名を呼ばれ、彼女の身も心も彼に満ちていく。
彼女の腕が、彼の腕の間を割って後頭へ回った。応えようとする彼の手も、彼女の頬を離れて、
「ん……あんっ……」
栗色の髪を掻き分けて首の裏へと回りながら、背中を伝って、下に下に、まっすぐ堕りていく。
「んんっ……!んっ!ふぅ……あ…!」
背骨の軸線上の肌をうっすらとドレスごとなぞる両の中指が、少女のか細い腰をせり上げていた。
交わす唇が解け、胸の膨らみを押し付けて、ユメミは下になる彼の肩を抱きしめる。
「あん………ムントさま……ひゃうっ!!」
彼を受け容れても尚、響き渡り続ける羞恥の奇声。彼の指が尻の分岐点で止まっていた。
止まって、広がる。広がって、ピンクのシルクに守られた尻を上から覆い、愛し尽くしていく。
「あ…………!」
言葉が出ない。胸を彼に擦りつけて身をよじらせる彼女。
そこに何の言葉も介在ない。拒むでもなく、ねだるでもなく、ただユメミをそうさせている。
彼女の尻は纏う絹に彩られ、可愛く熟れ始めて食べられるのを待つ桃の実のようであった。
「んっ……!!」
ユメミは理性を完全に埋める恥じらいに身を焦がし、彼の手を甘んじて迎え入れる。
胸の宝石を摘まれた時とは全く違う。尻から身体を駆け上がる熱は心臓から遠いが、
とくん、とくんと打つ自らの鼓動が、何故か心地良く感じてしまう。
(ムントさま……いいよ……)
彼女が気を許したその時だった。彼の手が一度硬直したと思いきや、かっと開いて鷲掴みにする。
「――はうっ!!」
ただ鷲掴みにするだけではない。彼の手は尻の至る所に触れ、撫で回し、更に掴む。
「あんっ!あうっ!ム、ムントさまぁ!?」
急激な変化。彼女が彼に陥落する前に彼が舌を侵入させた時よりも、
下僕達がこの胸にしてきた数々よりも、指の動きは支離滅裂で一貫性が無く、ひたすら速い。
彼の瞳を見れば、怪訝そうな瞼の歪みがわかる。非難とは違うだろうが、彼女は気が気でない。
視線の先は彼女の瞳でなく下を、腹の下を、中を透かすように見ている。
(なに……?どうしたの………?)
探っているか、疑っているか、はたまた確かめるかに近い、不可視の意図がこの指にある。
彼の指がまた止まり、蠢き出す。だが、今度は彼女の桃をゆっくりと揉み回して味わっている。
「ぅぁぁ……ふぁぅ…」
立ち膝で掲げた腰がぶれてしまう。ほぐされる中身が彼女に小波を起こしていく。
小さいからこそ、長くなる程に蓄積される感覚の波。それが嵐になる前に、ムントが口を開いた。
「ユメミ……?」
彼の声なら何でも耳に入るが、語尾の上がりが気になり、彼女は尋ね返す。
「ぁぁ……ん…どうしたの……?ムントさま………ぁ…」
「ユメミ……その………」
躊躇う彼はその先を言わない。明かされない答えに痺れを切らすまいと、彼女は必死に自制する。
彼の指が戯れる尻の、甘くひやりとした感触に悶えながら。
彼女が耐え続けるには長い間だったものの、意を決したらしい彼は、尚も躊躇しながら、放った。
「ユメミ…………その…………あの…………ええと……………ええとだ………………………………
ユメミ……………………尻が…………………………濡れてるん……だが…………………………」
「…………え…………っ!?…………う……うそ………………っ!!」
濡れている。その意味を理解するのに、心も身体も感覚も、硬直する事を余儀なくされたユメミ。
何処が濡れているの、本当にそこなの――彼女の瞳に、ムントは赤面するだけで何も答えない。
頭が真っ白になっていた。文字通り、何も書かれていない白紙だけが頭に思い浮かんでいた。
彼の指摘を信じられず――彼女が喜んで屈したムントの言う事は信じなければならないのだが、
ユメミは彼の後ろに回した手をそっと退き、恐る恐る尻へ下げていく。
ムントの指は止まり、彼女の果実から離れて、息を飲んでいるように血管が浮き出ている。
ユメミの指が、自らに触れた。
――――ぺちゃ。
「……い…………いやあああああっっ!!!!」
水音、触り直しても、水音。上げた手を見れば、確かに指は、掌も湿って光っている。
それは文学的表現で言う所の愛液というものだった。
悦楽に咽び羞恥に狂うユメミが気付かぬまま垂れ流した、快楽を男に訴える女の偽りない証。
しかし、ユメミは全く経験の無い、純白のまま育ってきた乙女だ。
愛液などというもの、それが我が意志に関わりなく知らぬ間に溢れる事を知らない彼女に、
この現象を認識させる知識は、たった、たったひとつだけ。
(わ、わ、わわ、わた、し…………お、おもらし…………しちゃった、の………………!?)
小水と錯誤した彼女は、自分に対してか、彼に対してか、なりふり構わず爆発する。
「なんでぇっ!!?どうしてぇっ!!?どうして、おもらししちゃうのぉぉっっ!!!!?」
「どうして、おもらししちゃうのぉぉっっ!!!!?どうして!!?なんでなのぉぉっ!!?」
ムントは彼女の豹変に言葉を失っていた。彼の中で乱心する彼女を、ただ呆然と見ていた。
今までに耳にした事の無い甲高い声で、大粒の涙を流して、首は振られに振られ、髪が舞い踊る。
少しだけ、こうしている彼女に魅かれるものを感じながら――
(――――はっ!いかん!!!)
我に返った王は、魔導を巧みに習得した頭脳で、彼女の内奥を見つめ始めた。
彼女は「おもらし」と呼んでいるこれは、自らの知識が正しいなら、膣液、膣分泌液だろう。
自ら手を見てみても、用にしては色が無さ過ぎる。
いつから出ていたかは定かではないが、臭いも無い。用ならば、それですぐにわかってしまう。
色も臭いも個体差はあると言うが、これは彼女の言う「おもらし」ではない。断定できる。
「ごめんなさい!!!ごめんなさいムントさま!!!おもらししちゃったぁ!!!
わたし、お、おもらし、おもらししちゃったよぉぉぉ………!!!ゆるしてえぇぇぇ――――」
「――――――ユメミっっ!!!!」
叫び続けてひたすら許しを願う少女の名ごと、ムントは力を強く篭めて抱きしめた。
俺様が何をのたまおうが、彼女にとっては何より恥ずべきものに変わりがない。俺様しかいない。
ユメミには自分を許せない。俺様しかいない。俺様が、ユメミを――――
(――ユメミを、必ず受け止めてみせる!!!!)
ムント様頑張れ!
てかユメミ可愛すぎるww
毎度毎度乙です
夫婦可愛いよ夫婦!
ムントがこの後どうするかwktk
おもらしワロタw
この夫婦に期待
90 :
5:2009/03/16(月) 13:11:04 ID:Swxqma5E
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は4節うpします
では、どぞ
人には、言葉にできない想いというものがある。言語で形容しがたい心的な働きは必ず実在する。
だが、それを誰もが共通して理解できる語群へと厳密に訳する辞書など、人は皆、持っていない。
そんなものがあれば、人と人が結ばれた事実や記憶は、互いの背反を咎め憎む重さや凝縮を失い、
きっと不誠実な嘘つき達だけを増やして、果てに心は腐り、打ち棄てられてしまう事だろう。
伝える事は難しい。だからこそ、人は考え、努力する。躓きながら、挫けながら、何度でも。
胸の内に秘めた言葉にならない想いを確信して、伝わらない不安にいつまでも苛まれたままで。
大切な人に、去りゆく時間と訪れる結末に後悔しないよう、ただ祈りながら、届ける為だけに――
泣き震える彼女がいる。彼女を何も言わず抱きしめる彼がいる。真剣そのものの彼の顔がある。
言葉はなく、ただ抱き止めている。頼む、頼むと期待したが、彼女の激情は止まってくれない。
『ユメミ……………………尻が…………………………濡れてるん……だが…………………………』
(――俺様は何故、あんなことを言った!!?)
既に放たれた自らの不用意な言葉に怒りを煮立て、表情を見られないよう彼女の顔を胸に埋める。
冷静になって考えてみれば、彼が言わずとも、彼女もいずれわかってしまっていただろう。
濡れた尻がその主に気付かれないでひとりでに乾いてくれるなど、有り得ない以上は。
彼女が知るのが早いか遅いか、結果的にはただそれだけの違いでしかない。だが、彼には違った。
彼女が崩れてしまった言葉を、無神経に出してしまった自らを悔やむムントには、違っていた。
彼女の拒絶を聞きたくなかったから、愛撫する殆どの間、接吻していた。舌を入れて声を封じた。
愛おしい彼女がもっと見たかったから――彼女の事を想うようで、まるで考えていなかった。
(……俺様は、卑怯だ。卑怯で、弱い……。今更、気付くか…………)
照らう自分ごと彼に縋り付いた彼女に比べ、ムントは自らを守っている彼自身を情けなく思う。
プライドが高過ぎるからこそ、気が付けば傷だらけになっていた彼女への、
隠したくもあり曝したくもある途方も無い量の懺悔が山積みになる。
彼女の笑顔も想いも踏みにじり、彼女の好意に付け込み、彼女の全てに酔いしれ、その結果が、
「わ、わた…し…!!わた、しっ……!!!いや、だよ……ちがうの…っ!!!!」
幾多の限界を超えて、今度は耐えられずに壊れようとしている、号泣に呼吸を失った彼女の姿だ。
全ては、彼が彼女に強いた事。欲するあまり彼女を引き裂いてしまった彼の、逃げられない罪。
彼女はそうは思わないに違いない。優しい彼女は、他者が傷付くのを誰より恐れるから。
それ以上に、自らが愛する彼の為にこの身体を許した彼女だから、彼女は彼を責めるはずがない。
だからこそ、彼は自らを責め立てずにはいられない。どうすれば、どうすれば己は己を許すのか。
この自分の為に全てを捨てて、尚も直面した未知に捕われて泣いている、敬うべき儚い少女に――
(――ユメミに近付けるだけの、勇気が…………勇気が欲しい!!!!)
少なくとも、呆けたまま出ていった「素敵」などという言葉で、彼女に許されてたまるものか。
向き合わなければならない。彼女と、彼女の想いに。そして、自分自身に。
魔導のように言葉を巧みに操る自信も、言葉も使わず全てを伝え切る自信も、彼にはまるで無い。
だが、やるのだ。この夜まで何も言わず俺様に付いてきてくれた、愛するべき彼女の為だけに――
「ユメミ!!」
「ユメミ!!落ち着け!!」
「ムント、さまぁ!わ、たし……わた、し………!!ううあああ………!!」
彼に反応したのではない。どんなに彼が呼び掛けても、ユメミはただ泣きじゃくるばかり。
「ユメミ!!」
名を呼んでも止まらない。抱き寄せても止まらない。
閉じこもって堅く抑えつけている彼女の心を、ムントはその腕に抱く柔肌の中に見出だしていた。
知らずに「おもらし」をし、しかも愛する男に見せてしまった羞恥と自己嫌悪がうねりにうねり、
彼女を外界からもたらされるものたちから隔絶させて、彼の声を聞けなくさせてしまっている。
下手にこじ開ければ、彼女は彼女でいられなくなる。走る予感に、彼の中で何かが相克し始める。
『…もっとこわしてぇ……ムントさま………もっとわたしを、こわしてぇ…………』
『いやだよ……わたし、こんなわたし………いやだよぅ……たすけて…ムントさまぁ…………』
彼に彼女を貪らせた魔幻が、ふたつに分裂して蘇っていた。
彼に異なる要求を訴えているが、どちらも、彼に生み出していく感情や欲望は同じものであった。
自虐を望む艶やかな声に、これ以上はと制したい。自守に泣く潤んだ声に、その通りに従いたい。
だが、いかに破壊や救済を求めようと、その響きは自失の楽園への招待に変わりがなかった。
再び彼を欲情に掻き立てて、本当の中身を暴きたい、暴いてしまいたいと、彼の下を怒張させていく。
心の中で葛藤があれば、人はそれを天使と悪魔にたとえるものだ。
天の使いは良心を説き、魔王の手下は悪徳を囁く。しかし、彼が今、彼等から聞く声は、
『おねがい……ムントさまぁ……うれしいの…たりないの……もっとわたしをこわしてぇ………』
『もういやだよ……ムントさま………だいすきなのに…こんなのみられちゃうなんて、いや…っ』
いずれも男の優しさを取り戻させようと良心に働きかけもすれば、
いずれも男の欲動のままに突き立てようと悪徳にいざなってもいる。
天使の背は悪魔の黒。悪魔の背は天使の白。天使の頭に角が生え、悪魔の頭は光輪を頂いている。
「うぐっ………ぇぐっ…………ムントぉ………ムントさま…ぁ……おもらし、しちゃったぁ……」
それがあたかも目の前の彼女に重なりながら交錯し合って現れて、
何が最良かも未だわからないままの彼の出掛かりを逡巡させるばかり。
(どうすればいい!?どうすれば!?)
身体が勝手に動いてくれる事も期待していたが、彼と彼女の望むものでないのならとも思うと、
王の情は彼を彷徨わせるだけ彷徨わせて、何度も同じ場所に戻させてしまう。
最良など無い。出て来ない。理解していながら、それでも双方が満たされるものを求めてしまう。
勇気が、勇気が欲しい。踏み出す勇気が、どうなってもユメミを受け止められる勇気が欲しい――
打ちひしがれた無力にあって、彼はただそれだけを祈り続けていた。
抱きしめているこの身体を癒してやりたい、癒してあげたい、その為なら、俺様はどうなろうと、
彼女の望みが俺様と同じものでなかったとしても、彼女の為でありせばそれで良いのだ――――
幻が消えた。
今はただ、泣いているユメミがいる。
「……ユメミ……」
心をこめて、愛をこめて呼ぶ、いつも呼んできた彼女の名前。
彼女を抱く右腕を、指をそっと彼女の顔の下に添えた。
彼女ほどではない、自らが持つありったけのやさしさで、彼女の表情を上げていく。
「…ぅ……ムントぉ………っ…」
彼女の涙。今の自分がしてあげられる事は、たぶんひとつだけ。
瞳を閉じる。
自分が嫌いで震わせている小さな唇に、
自らを知った王は、全てを捧げた。
胸の内に秘めた言葉にならない想いを確信して、伝わらない不安にいつまでも苛まれたままで。
大切な人に、去りゆく時間と訪れる結末に後悔しないよう、ただ祈りながら、届ける為だけに――
ムントさまハァハァ
ついに次回うpで50レスの大台ですね。
96 :
5:2009/03/17(火) 16:54:15 ID:QCi/IEM5
>>95 私が今回2レス分くらいしかうpしなかったらとしたらど〜するんですかw
というのは嘘っ!おっしゃる通り50回いっちゃいますよ
ありがとうございます!
冗長もいい所のSSに付き合って下さって、本当に嬉しいです
さてさて、「ユメミは少女じゃいられない」
今回は 節うpです
では、どぞ
97 :
5:2009/03/17(火) 16:56:24 ID:QCi/IEM5
ごめんなさい、使用レス数入れ忘れたorz
5レス使います
では、あらためまして
「――んっ……!」
驚きに漏れた彼女の息。
拒む事はないが、彼を引き寄せて受け容れるでもなく、ただ、彼の中にたたずんでいた。
舌は入れない。触れるだけ。それだけで流れ込んでくる、かたちを取らないユメミの姿がある。
(…震えて、いる……)
触れ合ったこの唇が、左腕の抱き寄せる背中が、無言の彼女を代弁している。
愛液を溢れさせてからこうなってしまったのは、愚鈍を自覚する彼にわかっている。
しかし、もしかしたら、彼女はその前からずっと、こうして震えていたのではないか。
先に無理に走ったのは、自分だ。ただユメミが欲しいあまり、次を、その次を彼女に求めた。
その彼を彼女は迎え容れ応えてくれたと、彼女が彼をより欲したと、百歩譲って仮定してみても、
それらの陰で、怖い、怖いと、彼に訴えて身を震わせていたのではないだろうか。
今は、恐れるユメミがいる。未踏の領域が広がっていく速さを受容し切れず、恐れる彼女がいる。
唇から自らのありのままを開いて見せようとするムントは、全身で彼女の姿を見つめていた。
閉じた瞳も、揺れる髪も、僅かな宝石がドレスに浮いた胸も、彼女が恥じる尻も、震えていた。
だが、彼は改めて思う。
この彼女もまた、美しいと――
未だ知らない領域に踏み込んだのは彼女だけではない。ムントその人も同様である。
彼が好いた彼女は、汚れのない純白そのものを完璧に体言した存在。
淫らな息で彼を誘い、あまつさえ下から汚れの鱗片を垂れ流した今は、それとは真逆であろう。
「んっ……んんっ……!」
侵されざる清らかな神秘性を女に求めるのは、女を識らない男の未熟の常である。
しかしながら、女を識らないが為に、その聖純が別の色に染め変えられるその一瞬の連続は、
憧れ続けた肉欲を遥かに勝る、ただひたすら心を奮わせる至上の美となって男を焦がしていく。
ムントもまた、識らないが故に、彼女に焦がれる。
彼女への偽りない恋に、表層の理性を朱く焼き払い。彼女の偽りない姿に、奥底の本能を蒼く燃やし尽くして。
素直に感じて想ったものを、彼女に届けたい――ムントは唇を離す。
「ふぁ……ぁ…ムント……」
自分を見つめる瞳に、涙は枯れない。頬の紅もせつない呼吸も、幼子のように乱れたまま。
だが、それもまた、美しい。ムントは口を開いた。
「ユメミ、綺麗だ…………!!」
「――――え……?」
潤んだ瞳が微かに光った。嘆き続けたその唇が、理性を取り戻して小さく開いていく。
「…ムント……いま、なんて………?」
確かめられなくとも、もう一度、何度でも言える。ムントの唇に、最早、迷いは無い。
「ユメミ、お前は、綺麗だ……!!!」
言うなり再度奪った唇。愛する少女を真に想うやさしさだけではない、男の強さがそこにあった。
「ユメミ……」
「んんっ!ん……っ………ふ…ぅ………ぁ……」
彼女に入り込む舌。犯さず、愛して、自らの言葉を証明しようとする真摯な赤い根。
硬直する振動が少女に広がる。広がって、彼の舌へ自分を無心に絡め尽くそうと、反撃を始めた。
「ん…!…ふ……ぅ…ん……!!んんっ!!んっ…!」
彼を打つ彼女の舌。受け止めながら、彼女を撫でる彼の舌。
はずかしいからきれいだなんていわないで。
恥ずかしくなんかない、お前はこんなに綺麗なんだ。
こんなわたしにきれいだなんていわないで。
お前はこんなに綺麗なんだ、今よりもっと綺麗になってほしい。
わたしがこわれちゃうからきれいだなんていわないで。
今よりもっと綺麗になってほしい、壊れても俺様が必ず受け止める。
わたしがわたしでなくなっちゃうからきれいだなんていわないで――
壊れても俺様が必ず受け止める、だから、お前は俺様を信じていろ――
「はうん!!」
物言わぬ舌戦は、湿ったドレスの尻に触れた彼の両手が終決させた。
「はぁ……ぁ…ああ……っ」
やさしく絞るように揉みほぐす彼の手の中で、腰をくねらせて悶えるユメミ。
「んっ………」
唇を固く締めて堪えると、窺う瞳でこちらを見て、彼女は言った。
「こんなわたしを……ゅ、ゆるして、くれるの………?」
窺う眼と愛くるしい息に、その言葉通りの彼女が見えた。
彼は彼女の瞳を離さず、自信を改めながら繕って、頷く。
「お前がいいんだ。お前の全部がいいんだ……」
紅らむ彼女。ドレスの桃に親和したその色に、思わず出てしまう言葉。
「ユメミ……本当に、綺麗だ………」
「……わ、わ………!」
うろたえる彼女は、彼の口撃にどうにか抵抗を試みようとするも、繋がらない。
「ユメミ……お前の全てを、愛してる。愛したい………」
「んんんっ?」
その唇は彼女を塞ぐものではなく、ひとりの男がひとりの女に捧げる、自らの忠誠の誓い。
その想いを漠と理解してくれたのか、ユメミの舌は自棄になる事も、自分を閉ざす事も無くなっていた。
「んっ……ぅ、んっっ…!」
手は尻を慰めながら、そこに伸びている腕も、できるだけ彼女を愛したいと願い接して寄りゆく。
絡み合う。心が絡み合っていく。ムントの中に湧き溢れていく充実。
これをユメミにも伝えたい。膨らんでいく強欲な想いは、舌と手をよりやさしく、情熱的にさせていく。
が、邪正いずれも合わさった彼の真心や確信とは裏腹に、彼女の唇が、静かに彼から離れた。
「…ユメミ……?」
「…………」
聡い理知を秘めた瞳。彼の中身を透かして見るような、彼女の光がそこにあった。
もう、彼におねだりをしたあの彼女でも、未知を恐れた今しがたの彼女でもない。
最初に恋し胸を突かれた光でもなく、また新しい彼女がそこにいる。
その瞳に映る彼は、自らを愛する信義の将か、自らを汚した咎ある盗人か。ムントには見えない。
彼女が拒めば、構わない――今は思えど、本当にこの心はそれでいいのか。不安が頭をよぎる。
また、拒まなければこの上ないが、彼女の意図がわからない今、勇気が少しだけ後ずさっていく。
恐らく次にユメミが口にするものが、俺様と彼女を決める。
予感に覚悟を定めた彼は、彼女が言葉を放つのを待った。
出会ったあの時から今まで、彼女が見せてくれた彼女の全てを記憶の情景に思い返しながら――
「――――ありがとう、ムント……!」
「―――ユメミ!?」
追憶から戻される。
彼は、彼女を見た。
彼女は微笑んでいた。
彼が今想っていた彼女よりも、泣きそうになるくらいやさしく、ずっと綺麗な微笑みで。
ムント様よくやった…!
夫婦の良さを実感。
50レスおめでとうございますw
読みごたえありますし、
毎日wktkが止まらないです。
104 :
5:2009/03/18(水) 01:49:38 ID:LqcVa2iV
「ユメミは少女じゃいられない」
誠に申し訳ないですが
今回のうpはたった2節です
こんな気まぐれな作者をお許し下さい
とりあえず、一献
ありがとう――
ずっとずっと、彼に伝えたかったことば。はっきり言えていなかった、感謝の気持ち。
やっと言葉にできた。彼の腰に腕を回して、胸板に顔を埋めた彼女。それは恥じらいの為ではなかった。
愛する人にこんな、こんなはしたないものを見せてしまった時、彼から、自分から逃げたかった。
だけど、彼は受け止めてくれた。私を愛してると言ってくれた。そして、私を愛してくれている――
彼女のそれは、自信と呼べるもの。だが、自分が築いたものではなく、彼が与えてくれたもの。
同じ自信であっても、きっかけが何か、それひとつ異なるだけで性質も大きく変わってくる。
ムントがユメミへ見せた信頼のかたちが、ムントへのユメミの信頼のかたちを、
今までとは少し違うものに変えさせていた。そして、彼女自身もそれに気付き始めている。
愛すること、愛されること。
愛する自分、愛される自分。
愛したい彼、愛してくれる彼。
彼を愛する自分のすがた、彼に愛される自分のありかた。
それが何かわかったとしても、それはたぶん全部じゃない。ゆっくり、少しずつ、私自身をわかりながら探していきたい。
もうすぐ彼とお別れしてしまうが、その後もきっと、たとえ二度と会えなくなっても、それは絶対に変わらない。
この想いだけは変わらずに、私は変わっていく。変わらなければならない。
愛するだけでなく、愛される自分になりたい。愛されながら愛する自分でありたい。
愛するから受け容れるだけではなく、愛される中で受け容れて、それよりもっと愛したい。
今はまだ小さいけれど、だいじなことをたくさん積み重ねて、私はたくさんのものに出会っていく。
彼が教えてくれたこと、彼と見つけたもの、そのひとつひとつをたいせつにして、これからも私は進んでいく。
遠く離れていても、彼と過ごした短い時間を胸にしまって、彼とつくった未来を信じて、いつまでも彼と一緒に。そんな大人に、私はなっていきたい――
幼い頃から空ばかり見上げていた栗色の髪の少女。
彼女の瞳に映るのは、怒りっぽくて、独りよがりで、呆れて鼻息で笑う、そんな彼の顔。
けれど、誰よりも真剣で、苦しんでいて、悲しそうで、強くて、やさしい、そんな彼の顔。
今、彼の胸から見上げた先には、彼女が映る彼の瞳がある。
左右の目から一滴ずつ、涙を零した彼がいる。それに気付かぬまま彼女を見つめる彼がいる。
ユメミは微笑むと、ゆっくり両手を彼の頬に近付けて、指でそっと、拭ってあげた。
「あ………」
驚いて間もなく恥ずかしいと照れる彼。彼女は軽く握りしめた小さい手で口元を隠し、くすくすと声を挙げて笑むと、
「…………ムント……………大好きだよ………………ずっと…………」
まっすぐ彼を見つめ、今度は彼女から彼の唇に擦り寄った。
「ん………ユ、ユメミ…………」
新しい自分の歩みをはじめる前に、この一瞬を愛して、この一瞬に愛されたい。
自分がどうなるか、彼がどうするのか、私たちがどうしたいのか。
愛したことも愛されたこともこれまでに無く、初めはキスにすら戸惑っていたユメミだが、
たとえ知識がこれっぽっちも無くても、自分のこの身体は――彼の身体とその望みに触れているこの身体は、愛することのその先を、わかりはじめていた。
「………ん…っ………………ふ、ぅ……………………」
濡れた唇を離した彼女は、頬を紅くしてほんの少し恥じらい、
彼がしてくれたことと同じように、胸の中のありのままの想いを込めて、彼の瞳に願った。
「…………ムント……ムントさま…………
わたしの……はじめてのひとに、なって…………下さい………………」
2節でもGJな回ですね!
これはwktkせずにはいられない。
おおおおお素敵な夫婦だ
109 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 23:12:55 ID:1N6h9dU4
おお!ムント×ユメミを見つけてしまった!
赤面しながら見ています。二人のラブラブ話が見たかった・・・!!
待ってました!!!(泣)
アニメでは天上と地上が繋がった事ですし、二人はいつでも会える環境
になったようですので是非最後はハッピーエンドでお願いします!!
111 :
5:2009/03/20(金) 00:29:29 ID:dQkI1e0u
>>109 ありがとうございます
アニメでは天上と地上が繋がりましたが、
このSSでは、あれでもないこれでもないと愚策を練って
天上地上を繋げないままそれなりにちゃんと終わらせたいと思います
お口に合うかはわかりませんが、まずは見届けて頂けるとありがたいです
「ユメミは少女じゃいられない」
前回の2節うp、御好評頂けたようでほっとしてます
今回は4節うpになります
では、どぞ
彼は少し微笑み、何も言わずに頷いて、彼女の唇に返答を重ねた。
彼女の全身に駆け巡る羞恥。けれど、恥ずかしい一方で、不思議と嬉しく感じる。
(ぜんぶ……つたえ、たい…………ぜんぶ……ほしい…………)
はじらいとよろこび、矛盾しながら自分を全て彼に伝えたい彼女の想い。
「…んっ……ん……」
まだよくわからない、ありのままの自分を彼に見せたい彼女の願望。
「………んふぅ……ぁ……」
そして、彼の愛を求めている、彼女の奥に秘められた熱。
「…ん、んんっ……ムントさま………」
その為の言葉なら、もう彼女には要らない。
中に彼の舌を迎える頬は、彼女を紅に照らわせる。
薄く開いたままの瞳は、彼の蕩ける視線に背けないでいる。
抱きしめられた肩は、小刻みに震えて彼を迎え、触れ寄るふたつの柔丘は、彼の中へ鼓動を届けてくれる。
満ち足りた微笑みは、舌を絡めた唇が埋め尽くして、彼女の全てを余す所なく愛する男へ――
「…ふぁぁ………ムント…………」
彼の名を呼べば、心が、身体が、あたたかくなっていく。
すみずみが彼で満たされていく。それでいて、彼女はこう思う。
(でも、もっと……ほしい――)
「――ユメミ」
「ムント……?」
唇を離した彼、見つめる彼女。ムントの指はユメミの太腿の内に触れさせながら、そっと下りていく。
「あん………っ!」
「服を……脱ぐんだ…………」
その手は、シルクのドレスの広がる裾の下で、彼女を待っている。
できない。できないわけじゃないけれど、したくない。したくないわけでもなくて、してほしい。
赤くなり切った自らの顔を感じていたが、何の拒絶もせず、ユメミは彼に求めた。
「…………ぬがして…ムント、さま………」
彼の手を見たら、考えるよりもか細い懇願の方が先に出ていた。
少しでも触れていてほしいから、自分で脱ぐより彼に脱がして欲しい。
が、しかし、
(あっ……!!)
ワンピースドレスの下には、何も纏っていない。
いつもは下着をつけているが、この桃衣に着替えた時に外していたのだ。
思い出した彼女は焦って彼に背を向け、首だけ、彼の顔を見ないように振り向きながら、いそいそと付け加えた。
「う、うしろから……ね………?」
脱ぐにせよ脱がしてもらうにせよ、前後や横がファスナー等で開かないこのドレスは――
そもそも天上界にファスナーなるものがあるか定かではないが、
どうしても肩口の広さを生かして頭から脱ぐ格好にはなってしまう。
そうすれば腕は上がり、前を向き合ったままでは彼に上から下まで隠せず、特に恥ずかしい部分だけが先に見られてしまうのだ。
全部を見て欲しいとは思えども、彼女にも心の準備というものがある。彼が何と言おうと、これだけは通すつもりだった。
そんな少女の複雑さを知ってか知らでか、
「ああ……」
彼女を安堵させる響きと軽薄でもある調子で、彼は彼女から身を離す。
彼にしてもらうのも恥ずかしいが、この少しの間もたまらなく惜しい。
腿とともに愛に濡れる尻を持ち上げたユメミ。後ろ髪を靡かせて直し、彼の手を包んで、合図を送った。
彼女と同じように後ろで立ち膝になったムント。
「ユメミ、手を、頭の後ろに……」
「……うん……」
彼の言うままに、ユメミは両腕を掲げ、髪の後ろで手を組んだ。
「……ぁ」
この体勢で背中が伸び、胸が張る。それだけなのに、小さい声が出てしまう。
――――とくん。
心臓だけが飛び出て、彼に見られているかのよう。私の中を彼に見られれば、もっとせつない音を打つのだろう。
そうして、彼女と彼の待ちわびた、ひとつの時が来た。いよいよ、男の両手が、シルクの裾の中に入っていく。
(………っ……!)
入って、太腿から、桃を剥いていく。中の実を傷付けないよう、そっと彼女の肌を上へなぞりながら、腕で絹をたくし上げていく。
「あっっ!」
伝う触感。息を漏らすユメミに指が一瞬止まるが、再び始まった両の上昇は、より遅くなっていた。
(……わ、わあああ!!)
それでももうきっと、後ろから見下ろす彼には、私のおしりが見えてるかもしれない。
そう思うと、これから訪れるであろうもっと恥ずかしいことに耐えられるのか――
「――はんんっ!!」
不安を瞬く間に忘れる程掻き消したのは、腰をなぞる彼の指。
「んんっ……はあぁ……」
たった数本の指なのに、
(はやく…っ……はや、くうぅ………っ!)
彼女の気持ちを焦らして、
「あんっ!」
左右から臍のあたりに移ったと思えば、
「え……あ、はぁぁん………!」
彼女の真下に見える膨らみが、ピンクのドレスの中からいくつもの鈍角を作ってうねり出す。
それは、温かい彼の指。
波打てば波打つ程、薄く輝くシルクを透かしてユメミの豊かさの中を露にしていく、彼女の尻蜜に濡れた指。
「ぅ、っ…はぁぅ!あう!あんっ!!ム、ムントぉ!!」
彼女を揉む指が広がる。時に気まぐれを起こし、彼女の突起を転がしては離し、また転がす。
「んんんっ!!!」
また欲しかったかもしれない、外からの刺激。呼応して内から拡散する、身体の火照り。
後ろにいて彼の顔が見えない不安がある。逆に、彼に見えていないからこそ抑えを失った自分もいる。
(だめっ!もうだめっっ!!)
たまらずユメミは声を上げた。
「あああん!!ム、ムントさまぁ!!あ、あついっ!だ、めっ!!あつい、よぉ……!!」
止まらないムント。彼女は
「ぬ、ぬがして……はやく、っ……は、やくっ!ぬがしてぇぇっ!!!」
全身を震わせたその声。指は止まった。
「ム、ムン…ト……」
指は、胸の上に立ちながら、両方の脇の下へゆっくりを保って滑り出し、一瞬、
「ひゃうう!!!」
音抜けの良い響きとともに、彼女の身体が、ベッドに膝をついたまま大きく跳ねる。
くすぐったい――彼女もよく知っている感覚。
今彼女が向き合う未知の中にもそれはあるが、完全にくすぐったい刺激だと思って理解できたのは、はじめてだった。
それだけ知覚しながら、綺麗に口を開いた彼女。小さな口の中には空白が生まれている。
この空白が、ムントの腕と掌に、彼女を羞恥に詰める猛速を与えていた。
「ひゃっ!!」
首の下まですっと捲くり上げられる絹。
捲くり上げられて、彼女のふたつの柔らかさが、隠されていた宝石が、新鮮な外気に震えて光っている。
「あ、ぁ……!」
現れたそれを、それと下も、隠したかった。まだ、まだ見られたくない。絶対まだ見られたくない。
だが、隠す為の彼女の腕は、彼の両腕によって上にまっすぐ伸ばされる。
すると、捲くられたドレスが彼の手からふわりと落ちて、白い裸身を再び覆い隠す。
「…………ふぅ……」
彼女はほっと長息する。だが、上に挙げた腕はそのまま。
次の瞬間、ピンクの絹は一気に彼女の頭の上まで捲くられる。
「――――っ!?」
絶句の間もなく脱がされる袖。どこに注意を払えばいいかわからず、ユメミはただ彼のされるがままでいる。
(あ、あ……あ…)
改めて気付かされた、自分の中を走り回る恥ずかしさ。
だが、天の羽衣は纏っていた少女を無視し、彼女と彼の腕からベッドの上へと舞い堕りてしまった。
脱がされるユメミ。全てをさらけ出した時、二人は・・・。
どうなるかドキドキです。
アニメが終わっても主が書いてくれているから、
萌え補充できます。
ありがとう…!
118 :
5:2009/03/21(土) 12:51:11 ID:YyT1NH5H
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は少ない2節うpです
尚、勝手ながら今回より、投下宣言の約5分後からうpを開始させて頂く事とします
何卒ご了承下さいますよう、謹んでお願い申し上げます
では、どぞ
(――――っ!)
咄嗟にユメミは自らを隠した。
左腕は両胸を。手は右肩から下がったところを掴み、自らの身を抱きしめる格好になっている。
右手は、右の掌は、彼女の小さな臍の、少し下。
緊張に狭めた股に指を潜らせて、見える所も見えない所も彼から守ろうとしている。が、
(…ぁ……)
覆ったそこからは、先程の滴りの残りが垂れて指先をかすめ、彼女を一層赤くさせる。
もっと、もっと彼の愛がほしい。その一点に偽りも無ければ陰りも無い。だから、膝を曲げて身を屈めようとはしない。
しかし、それでも、心いっぱいの恥じらいが、彼の瞳から自分を守ろうと彼女を動かして、彼女を動かなくさせている。
少女の努力と葛藤は実に健気なものであろう。彼女にとっては耐え難い代物には違いないとしても。
そんな責め苦にあって、ユメミはいつの間にか気付いてしまう。
(み……みられてる……っ!!)
彼女の後ろの柔肌に、彼の視線が突き刺さっている。
髪で隠れているはずの首筋に。髪の隠さない両肩の細さに。それと、尻の小ささにも。
顔は見えない。見られない。それなのに、ムントが自分を見つめているのはわかってしまう。
彼がすぐ後ろにいるからこそ、五感以外のものが彼女を敏感にさせてしまっていた。
だが、彼女を隠してくれるものはもう無いのだ。
男の性と向き合って克つ事は、甚だ容易ではない。初めてならば、尚の事。
声にすれば彼は止まってしまう。耐えるしかない。されど心は乱れるばかり。
(わたし……やっぱり…………だめっ!はずかしいよ!でも、でも…………っ!)
彼を愛し、彼に愛される為に飛び越えなければならない壁は、今の彼女にはあまりに高い。
でも、彼なら、飛び越えてくれる、越えさせてくれる――身を焼く激情の中、彼に期待する彼女の裸がここにある。
実体を持たない、肌を焦がす線が、止まった。
彼に触れていない全身が報せてくれていた。同時に、入れ代わるように広がっていく彼の温かさも教えてくれる。
「あ……っ!」
立ち膝の脚の間、左右のふくらはぎに割って入る彼の左膝。
狭めていた股肢が少しだけ開いて、奥の奥に溜まっていたものが彼女を隠す右手に滴り堕ちる。
意識を改める間もなく、小さな少女の肩は、大きな王の手に引き寄せられ、栗色の髪は彼女の背中と彼の胸の中に。
ユメミを引き寄せたムントの腕。膨らみとその先を隠す彼女ごと、その長さで包み込んでいく。
「…………っ!!」
心は驚いても、声は出ない。彼女の波紋は次第に平らを保ち始め、穏やかな水面に温かい微風が吹き込んでいく。
後ろから抱きしめられている。背中を彼にあずけている。上から下まで、見えない彼に触れている。
温もりに瞳を閉じ、ユメミは彼に身を委ねた。
恥じらいや勇気、情愛や不安、今もぶつかり合っている心の僅かな疲れを、彼のやさしさに寄り掛かって休めていた。
本当の本当は、これから自分がどうなってしまうのか、全く別の自分になってしまうのか、わからなくて、怖い。
けれど、彼に、受けとめてほしい。受けとめて、愛してほしい。彼を、彼がほしい――
そして、温かい彼の腕の中で、閉じた瞼に湧き上がる熱さを得て、もうひとつ、彼女は自分の本当を見つけていた。
(ずっと……ずっと、こうしていたい…………)
「――――ユメミ……」
彼の声。
彼女の瞼から溢れる、ひとつの粒。
涙ではなかった。
涙のかたちをした、何か別のものだった。
彼女の左腕が下りていく。
下ろして上がったその手は、彼の左の二の腕にそっと掴まった。
彼の両腕が、抱擁を解いていく。
抱きしめられなくても、私はあなたの中にいる。
そして、小さな右手もまた、彼女の下から離れた。
ぐっと自らを握る指に、ほんの少しの願いと、踏み出す気持ちをこめて。
121 :
5:2009/03/21(土) 16:46:08 ID:YyT1NH5H
「ユメミは少女じゃいられない」
妄想オーラが止まらない今日は猛追をかけます
今回のうpは5レス使用
では、どぞ
もう、隠さない。瞳を閉じた女の決心がある。
彼に全てを見てもらいたいと、願いながら踏み切れなかった境界を、やっと越えられた。
それとは別に、少女の恥ずかしさも、ちゃんと残ってしまっている。むしろ強いくらいの炎の朱が、彼女の中で暴れていた。
遮る視界の下、ふたつの膨らみは、どんな色で彼の瞳に映るのだろう。
その膨らみの先は、どんなかたちで彼の指を待ち望んでいるのだろう。
そして、この身体の下は――勝手に進行する想像を掻き分けて、彼の指が胸の豊かさに疾る。
「はぁ!ん……っ!」
彼の手の温度、音を増す心臓の響き。彼女は目を開き、顔を俯ける。
包まれていた。自分のふたつの恥じらいが、包まれて、ほぐされていた。
ゆっくりと曲がって、伸びて、また曲がって。彼の指の1本1本がそうする度に、彼女の芯に彼が入って、広がっていく。
「ああぅ……ぁ……んっ…………」
伸曲を繰り返しながら、双方の人差し指と中指が、彼女のピンクの先端を摘む。
「はぅっ!!」
摘んでは離す。離しては摘む。他の指も負けじと彼女に触れながら、微かな刺激を彼女に送る。
「んっ!ああんっ!!ぁ…………は、ぅぅ……」
時に左右から包み込み、時に上からふわりと抑え、時に下から激しく揉み上げる。
絶え間無き変性の富んだ責めに、彼女の頬は緩んでいた。
「ああう……んあっ!ぃ、いやんっ…………はぁ……い、い……あんんっ!!」
「ふ、あぁ……いい、ムントさま………すき…………」
屈む腰を彼の右手が抑える。左手は彼女の心の上を、下から抱えて揉みほぐしている。
「ああん……いい…っ……だい、すきっ…………ムント……だいす、きっ…………!」
その声は喜んでいた。唇から声と一緒になって、熱を帯びた吐息が溢れていく。
彼がやさしくしてくれているのはわかる。私のはずかしい気持ちをわかって、彼はやさしくしている。
けれど、彼女は望んでいた。彼の好きなようにしてほしい。もっともっと、痺れてひりつくこの感覚が、あの感覚がほしい、と。
「ム………ムント、ムントさまぁ…………あんっ……」
呼んでも、彼の指は止まらない。それで良かった。でも、足りない。彼女は奮えながら、彼への願いをつなげた。
「お、おねか、ぃ…っ…………もっと、もっ…と………いじって……?」
それに反応して、彼の胸が背中から離れた。彼の顔が、彼女のちょうど右後ろに下がっている。
願いはまだ果たされない。
ユメミは少し振り向いて、彼の瞳を見つめながら、もう一度おねがいをする。
「お、おねがい、します…………ムントさま……んっ……もっと、いじって、わたしを………いじっって、ぇ…………」
彼の指は依然として変化に変化を織り交ぜている。彼女の腰に当てられた手が戻り、双丘全体にやわらかい温かさが揃う。
それでも、願いはまだ果たされない。
その時、ほんの一瞬だけ、彼は彼女の望みに、望むところに触れてくれた。
「はんんっ!!」
彼女の声を変えさせたそこは、ドレスを脱ぐ前に彼が一生懸命になっていたところ。
だが、本当にほんの一瞬だけだった。稲妻が止むと、すぐに彼の指はそこを離れて、膨らみ全部をほぐしてくれるばかり。
刹那に俯けた顔はそのままで、彼女はもう一度、もう一度おねがいをする。
「ぁ、あぁ……そ、そこ…なの…………」
息は乱れている。しかし、もっと乱れさせてほしい。乱れる度に、嬉しい何かが、たまらない何かが欲しくなる。
それなのに、願いはまだ果たされない。
俯いたまま、彼が聞き漏らさないよう、彼女は声を挙げてはっきりとおねがいをする。
「そこ、そこっ……もっと…………して…………?」
願いはまだ果たされない。
彼は無言のまま、指を波打たせて揉みほぐすばかり。彼女はおねがいをする。
「お、おねがい……そこ、そこを、もっとぉ…………」
願いはまだ果たされない。
指を波打たせて揉みほぐすばかり。だが、俯いた彼女の右耳に、彼の微かな声が聞こえた。
「『そこ』、とは……どこだ…………?」
願いはまだ果たされない。
代わりに、息の秘めた男の熱が耳から首筋へ拡散する。
それに悶える自分を感じてもいたが、確かに聞こえた彼の問いに、彼女はおねがいをする。
「そ、そこ……っ!」
願いはまだ果たされない。
もっと耳に近付いた彼の囁きが、彼女の鼓膜に響いた。
「……『そこ』とは、何だ?はっきり言え……」
願いはまだ果たされない。
柔らかさを慰撫されながら、やわらかくなる彼女の思考。彼女は自らの過ちをようやく悟った。
私にはわかっていても、彼にはわからなかった。だから、「そこ」が何なのかと答えを求めたのだ、と。
これでやっと、もっと彼と私を感じられる。彼を理解した安堵に首を上げ、彼女はおねがいをする。
「ぁ、あぁ…………ち、く…び……」
願いはまだ果たされない。
その語を言った後、忘れていたはずの恥ずかしさが、何故か猛烈な勢いで這い戻って蘇ってきた。
蕩けかけていた理性も舞い戻って来たが、それが返って彼女を羞恥に駆り立てる。
そして、彼の囁きも、また。
「どうした?もっとはっきり言ってくれ……」
(――――ぼ、ぼくねんじんっっ!!!!)
この全身を巡る羞恥も、奮える心の底から願いも、彼はわかろうとしないのか。
わかって、わかってよ。どこかに逃げてしまいたい気持ちと更に先を欲する衝動に駆られた必死さに、彼女はおねだりをする。
「……ちく、び……ぁんっ…………ちくび、いじって、いじってぇ…………」
――願いはまだ果たされない。
揉み続ける彼のあたたかい掌は、一向に変わらない。変わろうともしない。
「ぁ……はぁ…………は、あっ……」
息が爆ぜる。出し尽くした自分を彼は見ていないのか、聞いてくれなかったのか。
彼に振り向いて、その切れそうな息で、甘く蕩かしたその息で、男の頬を凪いで訴えようとする。
(おねがい……おねがい……っ)
妖しく潤んだ瞳。ユメミは限界だった。もうこれ以上は、耐えられない。がまんできない。
それなのに、ムントは何かを殺したような平静な顔で、こう言うのだ――――
「――もっと、もっと、はっきり言ってくれ」
少女の中で、何かが音を立てて、こわれた――
彼女は自らの胸に遊ぶ彼の手を上から掴み、これ以上無いほど高く大きな嬌声で、はしたなくいやらしいおねだりを叫んだ。
「ちくびっ!!もっとちくびをいじってほしいのっ!!
おねがいっ!もっともっと、してぇっ!!だいすきなムントさまに、いっぱいいじられたいのぉっ!!!
いじいじしてっ!?ころころしてっ!?いっぱい……いっぱいいっぱい、わたしのちくびをいじってぇっ!!!!」
彼の指が動き、彼女のふたつを摘んだ。
「あ、あああんっ!!!」
摘んで離れない。摘んだ指と指に挟まれ圧され合う彼女。
「んっ!!ああううっ!!」
圧しが軽くなったかと思えば、人差し指の先で上から転がされる彼女。
「やあん!!あんっ!!あうっ!!」
転がす指が、人差し指から親指に代わり、その腹の中で大きく回される彼女。
「はあうっ!!いいっ!!あんっ!!あふぅ!!」
くねる腰も蕩ける理性も忘れた彼女。その頬から一滴の涙が流していながら、ユメミは彼を求め嬉々として喘いでいた。
恥も壊れるくらい、ただ嬉しかった。流れる涙もただ、彼を求め続けていた。
時間が着実に流れながら静止した空間で、ユメミはムントにひたすらねだっていた。
「あんっ!!ぃ、いい……いいよぉ……もっと、んんっ!!もっといじってえぇっ!!!」
言われるまでも無く、彼の激する指は、ただ硬くも紅くもなった彼女の乳首を弄んでいた。
ちいさなちいさなピンクの宝石。触れられて、摘まれて、転がされる度に弾ける、彼女のだいすきなたからもの。
だいすきなたからものが、だいすきなムントさまにいじられている。いじられて、こんなにあいされている。
彼を感じる身体は、この嬉しさを彼に伝えたいと、肌を奮わせて、声を挙げさせて、ユメミをはしたなくさせていく。
「はああんっ……ぁん!ああんっ!だめっ!いいっ!!いいの……っ!ムント、さまっ……!!」
その時、乳首を摘む指が、一瞬だけ強くなった。
「ぁあんんっ!!!」
奮えて悶えた後、彼女ははっとした。もしかしたらと、彼女は彼の名を呼ぶ。
「んっ!ムント、さまっ………………はんんっ!!!!」
やっぱり、強くなった。
(ムントさま……これが、うれしいんだね…………?)
男を見つけた彼女の唇にあるのは、自らの喜色と、彼に応えたい想いだけ。
「ムントさまっ!んっ!ムント、っ、さまぁ……ゃあんっ!!わたしの、わたしの……ムントさまっっ!!あああんっ!!!」
彼の名前を呼ぶごとに、心地いい痺れがどんどん強くなっていく。
「あううっ!ムントっ!!ムントさまっ!!ああんっ!んっ!あっ!!ああっ!!ムントさまぁっ!!!」
それを見つけた彼女は、もう躊躇わない、止まらない。ただ彼を呼び続けて、その度に生まれる愛に溺れていく。
分厚い石壁に反響して、よりきらびやかになって彼女の耳に還ってくる嬌声が、
瞬間ごとに新しくなっていく、彼を愛し彼に愛されている自分への歓喜の天国を、
そして、今はもうこの肌の熱さと奮えに換えられる、先程まで自らを苦しめていた羞恥の地獄を、
男の愛欲の中で裸になって何もかもをさらけ出した少女の内奥に引き起こしていく。
彼女の悦びが、彼女自身を紅く熟れさせて、その熟れを、彼女は悦ぶ。悦びも熟れも、際限なく彼女を変えていく。
抗えず抗いたくないこの乳首の刺激の中で。
だが、ひとたび慣れて当たり前になってしまえば、同じ刺激であっても、そのもたらすものは違ってくる。
少女は彼に乳首を弄ばれ、確かに嬉しかった。今もそう思って喘いでいる。
しかし、男が愛する正直な心は、更なるものを求め始めてもいた。
(もっと……はずかしいこと……してほしい…………)
ムント様、やるぅ〜。
恥ずかしい事を言わせるなんて、罪なお人。
早くムント様も脱いでv
ムント様もだけど
主はいつまで焦らすのか…ハァハァ
129 :
5:2009/03/22(日) 21:20:50 ID:l02glVHq
>>128 大丈夫、書き手も自分で焦らされて既にぶっ壊れています
とにかく、着実に1話の終わりには進んでいますので、その点はご安心を
今回はそれを感じられるような内容になったのかなとは思いますが
36節を越えた
>>72で「半分」などとぬかすこの書き手のこと、あまり信用しない方が賢明かと
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は5節うpします
では、どぞ
身体の奥、彼女の底が疼いている。
ユメミは彼にどうされたらもっと恥ずかしくなれるか、知らない自分を識り始めていた。
愛する彼に犯されたい。彼の唇や指に開かれる恥態を拒んでいた彼女は、もういない。
彼の想うようにしてほしい、彼の求めるがままに愛し愛されたいと願う、ひどく冷静なまま増殖する情熱が勝っている。
彼の意のままになりたい。今だけは、この今だけは、彼の言うことを全部聞きたい。彼のすることを全部受け容れたい。
「あうっ!!い、いい、の……ムント……っ…」
――そして、もっと彼を愛したい。彼女の身体が叫んでいる。
尖端を転ばせるムントに嬉悦を漏らしているうちに、彼女は自分の下の変化を感じさせられていた。
左右の太腿の内側が、生温かくて、冷たい。
ちいさな突起の刺激に耐えて俯く。俯くふりをしながら、自らを確かめる彼女。
何かが下に流れて、線をつくって潤いを与えている。断続的に溢れては落ち、内股は少しずつ輝きの線を増していた。
(………………また…………おもらし……してる…………わたし…………)
これは本当に恥ずかしいと赤面する少女。
「んんっ!!」
男の指は未だ止まない。だが、そのたまらないくすぐったさと甘さが、彼女の価値観を劇的に翻していく。
(わたし………うれしいから、お…おもらし……してるんだ……
ムントさまのゆびに、おもら、し……させられてる…………
すごく……う、うれしい………っ!うれしいのっ!!)
胸も脚の内側も、彼を感じる熱さでいっぱいになっていく。
恥ずかしくて、嬉しくなること――彼にしてほしいことを見つけたユメミは、
黙っていながらも息を荒くさせているムントに振り向いた。
「ん……っ、ム、ムント、さまぁ………ああん!!はうん!!」
針のように繊細で鋭い感覚。名前を呼べば、彼は必ずそれを送ってくれるのだ。
失念していた刺激に耐えながら、ユメミは息を整えて、もう1回、彼を呼ぶ。
「ねえ、聞いて…ぇ……ムントさま………」
今度は針が刺さらない。少しだけ残念にも思ったが、これからもっと彼にしてもらえる。だから、がまんできる。
自らを言い聞かせるのに気を向けていた彼女を、彼の声が戻す。
「……どうした、ユメミ?」
彼の両手は彼女の望みを知らないのか、落ち着きと余裕が感じられる程、彼女を大きく揉みしだいている。
彼は、彼の手は、私のおねだりを聞いてくれるだろうか。彼女は不安に思う。
だが、聞いてもらう為にどうすればいいかは、はしたないおねだりをさせてくれた、あの「私」から既に教わっている――
――さいしょは、んっ、てを、おろ、す……っ………ちょっと、だけっ……さ、さわって、みようかな………
………んんっ……す、すご、ぃ……っ。いっぱい、ぬれてる…ぅ…っ………ひんやり、して………あんっ……
……はあんっ…あ、んっ………わたし…さっきも、んっっ、こんなに、だ、だしちゃってた、のっ、かなぁ…………
んんっ……そうだ……むんとさまに、あぁん……ちゃあんと…おねがい、しなきゃ………
ちゃんと、んっ、いえるかな…こえっ、こえがっ、こんなに、はんっ、なっちゃって、る、のにっ………んぅぅっ……
「ねえ……ふともも、んあっ……さわってぇ…………?」
ええっと……それから、や、やんっ……いのるようにして、てとてをむねのまえでくむ……んっ……
…………ちがうっ……ちが、うんっ……いのるように、じゃ、ないっ、よぉぅ……わたし…………っ
い、いのる、のっ……いのらなきゃぁ、お、おねがいしなきゃ、あん、だめだ、ょっ……
だ、だって、はぁ、むんとさま、おっぱいさわって、ゃっ、はんっ、ばっかり、じゃないっ……
あううっ………はんっ……す、すごく、いい、けどっ、ちゃ、ちゃんと、おねがいは、し、なくっ、ちゃああっ…………
「おねがい……ぁん……あし、さわって……さ、さわって、く、ださいっ……んっ……」
もっ、とぉっ、おっぱいっ、もんでっ、ほしいけど、っあぅっ、が、がまん、しなくちゃ…ぁ…が、がまん……がま、んんっ………
………………あ、あんっ…………ゆび…っ……てが……さがっちゃう…………
はぁ、はぁ……もっと、してほしいけど、がまんしなくちゃ…………わたし………ムント、さまに……
きっと……ムントさまに………………お、お……おもらしに……きづいてもらえ、ないっ………
あ……やっと、ぁ、はぁ……きづいて、もらえたぁ………さわってくれるの…………
でも………わたしの……お、おもらし、に…………さわって、くれるかなぁ…………
はぁ……はぁ………いわなくちゃ……もういちど、おねがい、しなきゃ…………
…………はずかしい、はずかしい、よ…っ…………でも、おねがい、するの………わたし、おねがいしなくっちゃ………
「そう……はぁ、はぁ………さわって……?」
そう、おねがいするなら、にのうでをせばめて、かたを…………
…………やあん……かってに、ふるえちゃう……もう、ふるえちゃってる……
わたし……どうなっちゃうんだろう………おかしくなっちゃったのかなぁ…………
むんとさまがすきなのに、こんなにおかしくなって、いいのかぁ………
………そっかぁ、いっぱいいじってもらって、あいしてるから、いいんだ……
そう、おかしくなって、いいの………むんとさまのためにおかしくなって、うれしいんだもの…………
もっと、もっと、おかしくしてほしいなぁ…………はずかしいこと、いっぱい、いっぱいしてほしい…………
そうすれば、きっと、はしたないおもらしが、たくさん、たくさんでて……
むんとさま、わたしをきれいって、きれいだって、いってくれるんだから…………
むんとさま、あいしてるって、わたしのぜんぶをあいしてるって、いってくれるんだから………………
あっ、そう、だった………つづき、しなくっちゃ………おねがいのつづき…………
えっと………ちいさく、くちを………あけたり、しめたり……して……
「ふぅ……ぅうっ………ムントさま………ムントさま………」
もうすこし、こえはたかいほうがいいのかなぁ……そうしたら、むんとさま、よろこんでくれるかなぁ………
「あんっ……はぁんっ………ムント、さまぁ…………っ!」
…ど、どうして、おっぱいやちくびも、いじられてないのに……こんなこえが、でちゃうんだろう………
……ちがうっ、だめえっ……わたし……むんとさまに、またいじられたくなってきちゃう………
おもらししちゃったって、わかってもらって、さわってもらって……
きれいだって、あいしてるって、ずっといっていてほしい…………
それから、きす、するの………たくさんたくさん、きすしてほしい………
きすしながら、わたしの、は、はずかしいところ………だ、だめ、やっぱり、はずかしい…………
で、でも、きっとここも、さわられたら、ちくびみたいにおかしくなっちゃうんだとおもう………
…
だって……だってぇ………さっきから、すごくあついんだもん………さわられたら、びくびくしちゃうんだろうなぁ………
けど、わたしから、そこをさわってほしいとか、いじってほしいとか…………やだ、やだっ…いえないっ……
さっきみたいに、ちくびをいじってくれたときみたいに……どこってきかれたら…………
だめっ……いえない………いえないよぉ………そんなはずかしいことっ……………
「――ぅ、んっ…!!」
あっ…あああんっ……………さ、さわって、くれた………あんっ、く、くすぐっ、たぃっ…………
や、やだぁ……ふと、もも………くすぐったくってぇ………
「んっ………ム、ムント…ぉ………」
こえが、でちゃう………
むんとさまっ、だめっ、はずかしいっ………でもっ、でもっっ……ど、どうし、てぇ………
い、いい………くす、ぐったくって、っ、だめっ、いいっ……
「ム、ムント……ムントさまっ……!」
おねがいしなきゃ、ちゃんと、ムントさまの、めを、みてっ……ぁ、っ…………
………………き、きれい………………
……………………こんなにあたたかい、めをしてる……………………
…おもらししちゃった、わたしを、はぁっ……こんな、はしたない、わたしを………いじられて、うれしいわたしを…………
いわなきゃ……いわなきゃ………っ
「ムントさま……ムントさまだけ、なのっ………!!」
きす、してぇっ………そして、もっと、もっと――――
「ムントさまっ!!!キスしてぇっ!!!いっぱいいっぱいキスしてっ!!!
キスして、いっぱいいじってぇ!!!おもらししてるそこを、いっぱいいじってぇっ!!!!
もっと、もっとぉっ!!わたしをおかしくしてぇぇっ!!!!だいすきなムントさまにっ、おかしくされたいのぉっ!!!!」
おおお!!
いよいよそこまでやりますか!!!
ムントは願いに答えるのでしょうか。
おねだりするユメミが可愛いです。
無事に二人が結ばれるといいな・・・。
136 :
5:2009/03/24(火) 03:14:34 ID:5afQeg8Q
「ユメミは少女じゃいられない」
今回も5節うpします
では、どぞ
淫らな残響が消えて、静まり返った石壁の部屋。
ユメミの太腿に添えられたムントの左手が、しっとりとした肌を柔らかく圧していく。
「あんっ……」
その圧に逆らわず、彼女はベッドに預けた膝を、震わせながら、開いていく。
「…ああ………っ!」
もう片方、彼の右の指は、腿の内側を這い、彼女の望みへ届こうとしていた。
いじってくれる。やっと、やっと――ユメミが待っていた、切望していた時に差し掛かる。
「…………は、ぁ……っ!」
直接そこに触れていない今でさえ、口の中を舌で愛されたり、彼に恋するこの胸を弄ばれるのと同じものを感じている。
ぜったいにおかしくなるはず。おかしくなりたい。ユメミの下は、彼の指の始まりを待っていた。
そして、彼女と彼のひとつは、はじまった。
(……あ…………)
ふわり、ちくり。指、彼女を隠す茂みに差し掛かる。
未だ揃い切っていないが、成長する道の途中の、彼女に茂む羞恥の森。
彼女のおもらしに濡れた、決して嗅げない催香に正気を失わせる淫美の湿地。
その黒には、侵入を断じて拒む硬さも、易々と許す柔らかさも無い。
深くはない茂み。それでも、童貞の王を迷わせるには、充分過ぎた関門であった。
「――ひゃんっ!!」
強い痺れが肌を伝い、ユメミの全身を奮わせる。
彼は閉ざされた門に触れていた。それを開こうとはせず、ただ触れていた。
「ひゃうっ!!」
指の腹が、短く擦って、離れる。
「ふぁあんっ!!」
指の腹が、長く撫でて、離れる。
「はんんっ!!!」
再び、一瞬だけ訪れる、乳首を摘まれた時よりも強い鋭さ。
「んあっ、ああぁ……」
一転、いたわるようにやさしく圧しながら、緊張する白い裸をほぐしていく。
繰り返される刹那と永遠の交差。ここで、別々の指がそれぞれの役割を持っていた事を、彼女は気付いた。
「はうっ!!ひゃああん!!あふぅ!いっ!!!」
その数は2本。1本が終わればまたもう1本、それが終われば先攻の1本が彼女の門に触れる。
張り出した胸の頂が揺れ、膝から下は爪先まで伸長し切り、色の無い稲妻が彼女の全身を駆け巡る。
「はぅあぁ……うあんっ!!い、いいっ!!あああんっ!!!」
どんなに鋭くやさしくなっても、互いを尊重して譲り合う律義な彼の指。
彼女は唇を噛み締め、瞳を瞼で抑えつける。細い首は快楽を堪えて、俯いては反って、左右に振っては戻してを反復する。
その度に後ろの男を栗髪がくすぐって、満ち足りながら尚も求める嬉悦を、乱れ振り撒くほのかな香気に乗せていく。
「んああう!!もっ、とぉっ!!!ふぁううっ!!!いいのっ!!!」
そして、加速する2本の指は彼女を弄ぶだけでなく、その奥に秘められた奈落への想像や期待も速め、彼女を一層欲張りにさせる。
その先が、そのずっと先が見えたような気がした。もっと愛してくれる彼の姿が見えたような気がした。
なのに、なのに――突然、彼は止めてしまう。
彼女が声を挙げようとした時、背後のムントが耳元で小さく囁いた。
「ユメミ、どちらがいい?」
「……え……っ?」
「見ろ。どちらがいい?」
問いに促されるまま、茫とする瞳を開いたユメミ。
目の前には、彼の右手。軽く握った手に開かれた、人差し指と中指。
薄い輝きをまとった、彼女より長い人差し指と中指。
「あっ……」
輝きが、線を成して、堕ちていく。その堕ちた先は、広く染みた白いシーツ。
(こんなに……おもらししちゃってたんだ……)
はずかしくて、うれしくて、でもまだ、めちゃくちゃにされたい――
「――ユメミ、どちらだ?こちらか?それとも、こちらか?」
自信が無さそうに窺う声と、声に合わせて宙に曲がっては伸びる彼の指へ、彼女は視界を戻す。
問いの意味は理解できた。擦るか撫でるか、どちらが気に入ったかという事だろう。
けれど、人差し指と中指、どちらが擦ってどちらが撫でてくれていたのかまで、彼女は気にはしていなかった。
初めての感覚に気を取られ、自らを保つ事で精一杯だったからには、そんな余裕など、この少女には無い。
彼にどっちがどっちだったのか聞き直してみようかと思いながら、ふと、彼女は自分が言ったおねだりを思い出す。
右後ろに接するムントに振り返り、その朱い瞳を見つめると、ユメミは照れつつ彼の忘れものを咎めた。
「キス…………まだ、してくれて、ない…………」
この返答を予想していなかったのか、ムントの顔に驚きの色が広がるのがわかった。広げながら、彼は微笑む。
「ふっ……そうだったな…………」
瞳を閉じ、近付く唇。彼女の脚を開いていた左手が離れて上がり、彼女の左の頬は彼へ寄せられて、ふたりは重なる。
自らの唇と舌を絡ませながら、彼女は愛する男の唇を唾液で塗りたくっていく。
彼女の頬に触れる彼のその手が、その指が、内腿に流れた自らの愛の証で濡れていた事も忘れて。
はしたない蜜が頬に触れて塗られている事も、徐々に襟首へ垂れ堕ちている事も気付かずに――――
最初はこの唇だけで充分過ぎた。しかし今は、唇だけではもう満たされない。
――別れの夜に彼の愛をこの身体に刻んでほしい――
というような、美辞麗句に彩られたささやかな想い出づくりなどとは、全く違っていた。
ただ、欲しかった。彼の愛が欲しかった。気がつけば、彼の愛が欲しくなっている自分がいる。
彼が望めば望む程に応えてしまう身体、彼を感じる度に、今まで知らなかった自分が次々に現れて先を求めてしまう。
そして、今もまた――
「――んっ…………ムント……指……いじってぇ……………んんっ……」
彼に開かれつつある秘められた場所への刺激を、彼女は彼の舌に溺れながら求め続けていた。
「…ん………だから、どちらだ……?」
焦れた口調は彼女の勝手を無視しているように聞こえていても、彼の唇と舌はやさしくて温かい。
それに、くちづけしながら情感たっぷりに擦り合わせてくる鼻と、そこから漏れる息も、
彼女がどちらの指が好みか、焦らず慌てず、心を昂らせて待ってくれている。
とは言え、答えなければ彼は進んでくれない。わたしを進めてくれない。ユメミはムントにどう答えるか考えてみる事にした。
中指と人差し指、どちらの指がどちらの役割を果たしていたのか――それはわからないが、彼の問いの要所はそこではない。
そっけなく擦った鋭さか、じっくり撫でた柔らかさか、どちらが良かったかが問題なのだ。
それを見出だした彼女は、今こうして唇をくれる彼を、今までの記憶を思い浮かべながら見つめてみる。
いつも尊大で、ひとつひとつの言葉にどこかつれないところがある自分勝手な彼。
その陰で、彼女を正面から見ては想い、限りないやさしさやいたわりを与えてくれる彼。
そのどちらもムントという人で、彼が彼女の恥じらいに触れた指は、どちらも彼そのもの。
どちらのムントも大好きなのだ――そう考えると、どちらかひとつを選ぶなんて愚かしい。
答えは出た。口にして伝えようと、彼を見つめたまま、舌と唇をゆっくり離す。
「………!!あ……」
ところが、離れたその時、ムントが声を漏らした。
唇を惜しむのではなく、何かに不意を突かれたように出た、そんなふうにユメミには聞こえた。
その驚きが何かに向けられている事に気付いた彼女。その瞳も彼の見るものを映す。
(……これ、つば…………なのかな……?)
彼女と彼との間にかかって揺れる、一条の光の曲線。
その先の彼の唇は彼女の唾液が光っている。そして、彼女の唇もまた、そうなのだろう。
これ以上唇と唇を離せば切れてしまいそうな、細いつながり。
彼も彼女を見つめたまま、不動を保っていた。
彼女もこれを切れさせたくはなかった。何か不思議な感情を、この短い橋に感じている。
彼女は言葉も息も止めた。
彼女が彼に答えを言わなければ、ふたりは進まない。
それでも、少しでも唇を動かせば切れてしまう。ふたりが進む為の答えは言えない。
胸が締めつけられる。熱に浮かれていた全身の神経が、このたった1本の筋に向いている。
次第に揺れは収まった。だが、安心する息はつけない。また揺らしてしまえば元も子もない。
落ち着きを自らの中に閉じ込めた分、膨らみの内側にしまった鼓動が、
――――とくん、とくん
大きく音を響かせる度に、それに合わせて儚いつながりが小さく跳ねていく。
彼女は言葉も息も止めていた。このつながりが切れないでいられる強さを与えるつもりで、唇に神経を集中させる。
そんな事で切れずにいてくれるか、理屈としては通らない。けれど、これは絶対に切ってはならない。
確かな直感が少女の脳裏に過ぎり、そうせざるを得なくさせていた。
これが切れてしまえば、つながりが、彼とのつながりが、
彼との今までが全部詰まった、本当にたいせつなつながりまでもが断たれてしまう、そんな気がして――――
先に動いてつながりを断ち切ったのは、彼だった。
律儀なムント様。
愛されているユメミは幸せ者ですね。
いいね(*´Д`*)ハァハァ
144 :
5:2009/03/25(水) 16:56:35 ID:tl+z3dIq
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は8節うpです
では、どぞ
(76)
先に動いてつながりを断ち切ったのは、彼だった。
(あっ!!だめっ!!切れちゃぅ――)
彼女が声に出して彼を制止する間もなく、ぷつりともいわずに、それは切れた。
次の瞬間、ユメミの唇をムントが奪う。
「んんんっ!!」
先程のやさしいキスとはまるっきり違う、唇も舌も荒々しい彼。
絡まる舌に流れ乗る唾液。その温かさを受け容れ、ユメミは舌を動かしながら喉に流し込む。
(……ムントの、つば…………)
その挙動に気付いたのか、ムントは唇を塞ぎながら唾液の量を増やし始めた。
拒まない。飲み込んでいく。喉が動いてしまう。
(…………おい…しいっ………)
味はわからない。実際においしいと感じているわけではない。
けれども、彼自身が身体の中に入り込んできてくれている気がして、それが彼女にそう感じさせている。
「んっ……んむっ…………んふぅぅ……!」
そして、想いは味覚に作用し、本当においしいものだと彼女に刷り込ませる。
(おいしいなあ…………ちょう…だい……たくさんちょうだい…………)
想うたびに甘くなる、その美味に気付いていく。
彼の唾液を送り出す舌が、嬉しく感じてしまっている。
そう感じる自分がいる事もまた嬉しく感じる。
(…すごく、いい………)
与えてくれる彼に言葉で求めたい。嬉しい自分を改めて伝えようと、彼女は唇を離した。
「んは、ぁ……
…………ぁあ……っ!」
開かれたふたりの隙間には、再び光の橋がつながっていた。
(あっ………)
つながりは切れていない。しかも、前より輝きは強く、いくらか太く粘っていた。
これなら切れない。切れたとしても、何度でもつながれる。
「……ぁ………ムントさま……つば…ぁ………くださいっ………」
喉への甘美をねだる瞳は、ただ男の唇を見つめている。
数回のおねだりを経て、ユメミは既に、自らの瞳の持つ力に気付き始めていた。
その証拠に、薄く開いた彼の唇の中で、舌が小さく動いている。彼の息もその乱れがはっきりわかる。
恥ずかしいが、狙っていた。それでも、不安はある。
彼に聞き入れてもらえなかったらと思うと、恥ずかしさだけが放り出されてどうしたらいいかわからなくなる。
だからこそ、彼女は願う。彼に受け容れてほしいと。彼に拒絶されたくない、と。
「……ムント、さま………」
そして、その切実が、偽りの無い深い信愛が、ユメミの瞳により確かな魔力を事を、彼女自身知る由も無い。
女は男を瞳で殺す。男は女の瞳に殺される――
地上の世俗ではしばしばそう言われる事はあるが、彼女を愛するこの天上の男はどうなのだろう。
今、彼女の瞳は彼の唇を見つめている。ユメミを抱いてこれまで、彼女が自分に何かを願う時は、必ず自分の眼を見ていたと思う。
しかし、今回は違う。瞳の先も、麗しい睫毛も、ただ自分の唇に向けられている。
そこから少し視線を下げると、彼にねだった後の唇が――唾に濡れて放たれるピンクの輝きが映る。
その先には、互いを渡す橋。彼を衝動に灼く、彼女の淫靡のひとつを象徴する掛け橋。
彼を待ち望んでいる唇も、彼の眼を直視しない瞳の色も、物言わぬまま訴えてくる言葉はひとつ。
――――ほしい
「ユメミっ!!!」
たまらなくなった彼は、輝きの渡しを乱暴に巻き取って、彼女の唇を貪った。
「んっ……!んんっ………!!」
それを避ける事なく受け止めて這わせてくる舌と、嬉悦に擦れる鼻から漏れる息に殺される。
あらわになって揺れる白い胸と、唇と同じ桃色の尖端を奮わせる少女の可憐さに殺される。
甘い香りの長い髪、見え隠れするうなじ、肩から腰まで整った細さ、程よく肉感をたたえた尻に殺される。
唇と肌が伝える、望み通りに流し込んであげた唾を飲み潤す可愛い仕草に殺される。
瞼を閉じて見えない瞳に殺される。見つめ合おうとそうでなかろうと、彼女の瞳に殺される。
彼女のすべてに、彼は何度も殺される。
殺されては強引に少女に蘇生させられて、また殺されては蘇らせられる。彼女のすべてに、理性がかたちを失っていく。
彼が抵抗を試みて彼女を導こうとしても、彼女はより綺麗になって、一層大きく廻る悦楽の循環に彼を堕とし込んでいく。
自分をこうしてくれる彼女を、彼は心から綺麗だと想う。綺麗な彼女をもっと見たいと想う。
彼女からすれば、この場において主導権を得ているのは彼だろう。しかし、彼自身の認識は逆だ。
それでも、王の沽券が、彼女に殺されたままの自分を許さない。蕩ける理性を、巻き上がるプライドでかろうじて形成し直す。
唾を止め唇を離し、彼は彼女に問う。
「――ユメミ、どちらの指が、良かったんだ?」
繰り返して聞くこの問いを、彼女はしつこいと思うかも知れない。
しかし、彼女の望みを第一にしているつもりの青年には、いくらか大事な問題だ。
人差し指の擦り方か、中指の撫で方か。
全く違うものを彼女が欲していたとしても、それを知る上でもひとつの足掛かりにしたい。
本心では、彼女をひたすら貪りたい。この問いに彼女を逡巡させた時間も取り戻して、彼女を惜しみなく愛し抜きたい。
一秒でも長く、彼女を見ていたい。一瞬一瞬で絶え間無く変わっていく彼女を見たい。
その為にも、唸り続ける獣欲を抑えられる限り、彼女が思うままに尽くしてみたい。
その結果、彼女の望み通りの自分がいるか、自信は無い。
だが、そうある事が彼女への想いに沿うかたちだと、彼は信じている。
さて、彼が愛する当の彼女は、彼の問いに真剣に考えてくれているようだった。
その表情の色からは、しつこいと思っていないらしい事が窺え、彼はいくらか安堵する。
ユメミの選択自体はそこそこ重要だ。ただ、ムントが密かに関心を持っているのは、彼女の選択の他に、もうひとつ。
彼女がその選択を、どう表現するか。
どんな言葉を使い、どんなふうに身体を使って訴えるか。
綺麗で可愛い彼女を想像するにしても、いつも自分のやましい妄想を軽々と超えていく彼女のこと、彼の期待は膨らむばかり。
彼女は赤くなりながら、彼に軽く頷いて見せた。彼女の選択は決まったようだ。ムントの鼓動は今か今かと高鳴る。
少しだけ恥じらいながら彼の瞳を見つめてくる。そして、愛液に濡れた彼の右手を両手でそっと包み、彼女は言った。
「……どっちも…………!」
「……どっちも……とは、両方…………?」
言葉の意味がわからずに聞き返すのではない。その答えを想定していなかったから、念を押して聞き返す。
「うん、どっちも……。すぐにひゅんってするのも、じわじわするのも、よかった…………」
答えた彼女は、羞恥まじりの微笑みを照らし、彼の指を自らの細い指でやさしく握りながら、ねだる。
「だから、その…………
りょうほうのゆびで……ムントさまのすきに…………
おもらししちゃったここ…………もっと……すきにさわって…………?」
すきにさわって――そう言われても、今の彼には彼女が悦んでくれる事が何より先決だった。
だが、彼女がどんな想いでその言葉を口にしたか、それに、
――わたしの……はじめてのひとに、なって…………下さい………………
あの言葉にしても、自分を信頼し切っている証に外ならない。それがわからない彼ではない。
一方で、童貞の彼には女体への、彼女への興味が凄まじく強い。
それに任せて彼女の言葉に甘え過ぎれば、きっといつか彼女を置き去りにして傷付けてしまうだろう。
彼女の胸をドレスの上から揉みしだいていた時は、ただ彼女の柔らかさに心を奪われていた。
何も考えていなかった。彼女の事も、自分自身の事でさえも。しかし、だからこそ、
――んっ……ぁ……ああん!も…もっと…もっとしてぇ……!む、ムント……さまぁ…………!!
自分を初めて様付けで呼んだあの懇願が無ければ、恐らく彼女への行為は際限なく進み、
果てに内容も増して完全に拒絶され、こうして心を開いてくれる事も無かったかも知れない。
彼女が何を企図して言ったのか、厳密にはわからない。
「はじめてのひと」にしても、ひとつひとつの「ムントさま」にしても、「すきにさわって」にしても。
ただ、それだけこの自分を本当に愛してくれているのは理解している。正直、有り難く、身に余る。
彼女のありのままの感情にはいつも圧倒されていた。今の彼女はそれらよりも凄まじく、自分にとって掛け替えの無いもの。
故に、彼女の愛に、忠実でありたい。彼女の好むままに触れる事が、彼の望み。
そして、彼女を恥じらいに困らせて可愛くする事は、その次に大きい彼の心からの欲求だった。
「……答えてくれた、ご褒美だ。ユメミ……」
などと言う自分に照れつつも、心の奥に押し隠して彼女を見つめた。
女は男を瞳で殺す。男にも、女を殺せる瞳がある。男の瞳に迷いはいらない。知識ではなく、直感だった。
見つめた先、恍惚を浮かび上がらせる彼女。嬉息を漏らして見つめてくる。
(これは…………!!)
殺される。彼女が何か言えば俺様は殺される。殺されたい、しかし、その前に彼女を――
秘所に伸ばそうとする右手がひどくゆっくり感じられる。いや、確かに遅い。抑え付けられたようで、意のままにできない。
彼の指が再び始めて彼女を乱れさせるより先に、彼女の言葉が間に合った。
「……うん…………
ごほうび……ください…………!」
振り向き見上げる彼女の唇を奪う。
背後から彼女の正面に下ろした右手で、少女の秘肉の表層を擦り撫でる。
「んんっ!!んむぅぅ!!」
同時のご褒美に腰をよじらせる彼女。
よじらせながら搾り出すように、下から少しずつ零れていく愛液。
「んふう!!んぅっ……んんっ!!」
彼女の声。唇で遮った時の、曇りながらも瞬間で高く跳ねて漏れる息。
「んはぁ……あうっ!!ゃあんっ!!ひゃあぁっ!!」
彼女の声。遮るものが無い時の、次々と溢れて空間に反響を繰り返す、切ない嬌声。
どちらも好きだ。どちらのユメミも可愛い。愛撫する彼は、唇を重ねたままでもなければ、放りっぱなしにもしない。
舌に唾液と唾液を絡ませてから、離す。
「ふぁぁ……ああんっ!!」
白い顔に赤。彼女のつぶらな瞳と一緒に映る、離した唇が奮えるのがたまらなくて、
「ユメミ、か、可愛い…………」
今まで口に出した事の無い言葉が、発音も慣れないままで無意識に出てしまっていた。
刺激の悦に浸りながら、ひどく冷静に驚く彼女がいた。
この男が言いそうにない言葉。いや、高く飾った彼の脳内には元から絶対に存在しないと思っていたことば。
「んっ……ぁ…ムン…ト………いま、なんんっ!て………なんて、あんっ!いったのっ………?」
自分の耳を疑うユメミは、彼の指に触れられて声を乱しながら、彼に聞き直す。
男の瞳を見つめる彼女は、答えを待っていた。しまったと言わんばかりの顔で、ただ彼女を見つめてくる彼。
だが急に、指に愛されている下の撫でられ擦られる強さが増して、腹まで破裂してしまいそうな感覚を持ち始めていた。
(も、もう………だめっ………)
彼を待つ辛抱強い理性もこわれそうで、全身が、熱い。でも、もっと熱くなってほしい。
彼女の全てが下の入口に遊ぶ彼の2本の指に集まっていく。
「ひゃうっ!!」
さする。
「んああぅっ!!!」
なでる。
「ゃんっ!!だめええっ!!!」
さすりながらなでる。探索するような彼の指に、何かが開かれていくのをユメミは感じた。
「ん、んんっ…………あ……!はぁ………っ!!」
怖れと期待がそれぞれ微かに混ざりながら、訪れる時に彼女は息を飲んだ。
徐々に開かれて外の空気が入り込んでいるのか、熱が冷えてたまらない。冷気もまた熱と同じで、彼女をおかしくしていく。
「は、はずかしい……っ………」
彼も自分もそれが見えない。それだけが幸いだ。
もしも彼に見られたら、或いは自分に見えたら、すぐさま彼女はこわれてしまう。彼の視線によって、彼女自身の羞恥によって。
だが、視線も感じている。羞恥も感じてしまっている。彼の瞳が彼女を見ている。壊れてゆく彼女を見逃すまいと。
「ああんっ!!はあああん!!だめぇ……だめええっ………」
こわれちゃう。こわれたくない。ゆびをとめて。わたしをみないで。
「ひゃああん!!あうぅっ!!いぃっ!いいのぉっ!!!」
こわして。こわれたい。ゆびをとめないで。わたしをみて。
「あうううっ!!ムントさまっ!!だめっ!いいっ!ムントさまぁ!!ムントさまあっ!!!」
もう、こわれちゃう。
でも、そのまえに、わたしにもういちど――
「ユメミっ!!綺麗だっ!!可愛いっ!!!」
(えっ…………?)
彼女の時間が、止まった――そして、止まった時間が遅れを取り戻そうと、猛烈な勢いで彼女を巻き取っていく。
「うあああんっ!!!だっ、だめええええっっ!!!!」
唇が、胸が、下が、全身が熱い。千々に乱れて彼女を壊し愛していく。
意識が薄れる。彼の顔が、瞳が見えなくなる。
逆に感覚だけは残酷な程鮮明で、下から溢れ出る音だけが脳裏に響く。
「はあんっ!!あああんっ!!お、もら…しっ……!!いやあっ!!!だめえっ!!!あくぅっ!!」
彼の指のひとつが、開かれた中へ、コマ送りのように遅々と、入っていく。
「あううぅっ!ひぃああんっ!!!ぃゃ、やめてえっ!!いんっ!!!あつ…いぃっ!!」
ざらざらと、じりじりと潜る指の痛み。しかし、次第に滑らかに、温かくなって、
「はあぅっ!!ああうっ!!!」
臨界状態の彼女の中で蠢いて、彼女を自壊の先へと超えさせようとする。
(あああっ………もう……もうだめっ!!!)
ユメミは彼の唇で、出てしまいそうな声を塞ごうとする。
「んんっ……んふぅ!!んんんっ………ふはぅ!はああうっ!!!」
けれど、唇に力が回らない。意識に力がはいらない。
「ムントさまあ……!わたし、わたし………あああああっ!!!!」
しろくなる、しろくなっていく。もう、こわれちゃう、おかしくなっちゃう。
「――――ユメミっ!!好きだっ!!好きだ!!!」
むんとさまのこえ。きこえる。ああ、しあわせ。もう、おかしくなっちゃう。
「わ、わたしもっ!!すきっ!!だいすきぃっ!!!しあわせなのっ!!
ムントさまっ!!わた、しを………おかしくしてええっ!!!」
「ユメミっ!!!」
「ムントぉっ!!!!
ふあああああんんっ!!!!
ぁああああああううあうっ!!!!」
白い裸は爪先まで痙攣し、悦びの嬌声が失われていく。
乳首が小刻みに奮え、膝と膝の間、それに腿の内肌を伝って、こわれた雫が堕ちていく。
力が入らない。
どうやって力をいれたらいいのかさえ、わからない
ぼんやりする
めも、あたまも、どうしたんだろう
あれ、だれか、いる
だれか、なにか、いってる
なにも、きこえない
やっぱり、おかしくなっちゃったんだ、わたし
でも、どうしてなんだろう
とっても、きもちいい――――
とうとう未知なる領域へ。
次も頑張ってくれムント様。
いっちゃったんだねユメミ。
ムント様も可愛いなw
いつもありがとうー。
155 :
5:2009/03/25(水) 22:47:01 ID:tl+z3dIq
称えるスレを見てみたらGJなSSが書かれてた
キスマークとか発想になかったので、くやしいような、うらやましいような、それでも萌えるから人間って不思議
2話以降の構想をまとめながら部分部分を作っている今日この頃ですが
それに当たってこの書き手、困った事がひとつあるので皆様に御教授願いたい
もしも公式で設定が存在するようでしたら、この書き手を嘲笑しながら教えて下さるとありがたい
それは、ユメミと
@ムントとの年齢差
Aチカラくんとの年齢差
アニメ内や公式HPでは見つからなかったので、何かしらご存知の方がいらしたら、お願いします
公式設定が無ければ、書き手の推測や力任せで書いてしまいますが……
設定ではムントとか天上人の年齢は不明となっていました。
でもムントの外見は少年なのでユメミより二つ年上に見えます。
最初は14〜15歳ぐらいで、現在は16〜17歳だと勝手に想像しています。
続きが気になる。
ムントとユメミ大丈夫かな。
ちょ、つづきまだかぃw
1話乙でした!
ユメミをいたわるムント様(*´Д`*)モエー
2話も正座で待機。
160 :
5:2009/03/29(日) 23:55:05 ID:4T10uAR1
そう急いで下さるな
まだ1話は終わりではありませんぞ
ご心配をおかけしてしまい、ごめんなさい
話ごとの終わりには「終わり」と打つことだけはお約束します
あとは、今後をご覧あれ
>>156 年齢設定の件、ありがとうございます。こちらでも考えて2話以降に繋げます
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は3節うpです
では、どぞ
――メミ……!
…ん………んん……っ
……こえが、きこえる……
おねがい……わたしを、おこさないで……
いま、とっても、しあわせなのに…………
――……ミ……!……ユメミ…………!!
…………うるさいなあ……
もうちょっと、しずかにしてよう……
こんなに、きもちいいのに……すごく、しあわせなのに……
――ユメミ…!……ユメミ……!!
…………わかったよう、おきるよう……
…………そのかわり、もっときもちよくしてくれないと、わたし、おこります……
……もっとわたしをしあわせにしてくれないと、ゆるして……あげないんだから……
だから、おねがい……もうちょっとだけ――――
「――ユメミ!!!」
「――――っ!?……ム……ムン、ト…………?」
声。
ユメミの瞳の真上には、右側から不安そうに彼女を覗き込む青年の顔。
微睡みか、頭がぼんやりする。何故か荒くなっていた呼吸と昂っている鼓動は、正常な間隔を段々と取り戻していく。
目が覚めたような、覚めていないような、はっきりしない。それでいて、心地いい。
秒を重ね、彼女は自分がまっすぐ仰向けになっていると理解した。それがベッドの上であると気付いたのは、更に数秒後。
枕と毛布の柔らかさが頭と背中に伝わり、彼女の意識を無理なく起こしていく。
右肩には彼の左手が触れられている。ぴたりと触れる掌の体温。愛しい人の、やさしいぬくもり。
(……あたたかい)
身体の芯まで染み込んでくる。血液が体内を駆け巡っている。
自分の身体。普段はそうでもないのに、今はひどくありありと実感している。
全身、心身の隅々が、新鮮な世界を得ていた。今までとは、何か違う。肌に触れる空気の感じ方でさえ。
先程と同じ場所、同じ部屋の中にいるはずなのに、まるで別の部屋、別の場所の中に移されたように思えて不思議だった。
「ユメミ……」
ムントの顔がやさしくほぐれていく。ユメミはただ彼を見て、枕に沈む頭を頷かせた。
(……わたし、なんで、こうしてるんだろう……?)
ふと、彼がしてくれた事を、ひとつひとつ思い出してみようと、彼女は記憶を辿らせる。
(……キス、してもらって……それから…………っ!!)
――早速、恥ずかしい。
彼を見つめながら顔が熱くなっていくのがわかってしまう。首を背けるだけの力も、まだ戻っていない。
彼の表情が見えるから、余計に彼と自分が蘇ってくる。どんなふうに彼が自分を愛して、どう自分が応えたか。
もうこれ以上は思い出したくない。改めて冷静になって思い返すと、あれは自分じゃない。
湧き上がる何かに壊されていった。自分が自分じゃなくなる、何もできなくて、怖いと思った。
なのに、自分は阻まなかった。激しく、はしたなく、求め続けた。そして、こわれてしまった。
途中からどうなってしまったのか、あまりよくわかっていない。だが、感覚だけは鮮明に残ってしまっている。
(わあっとあつくなって、ひりひりして、ちょっとだけ、いたかった。
…………でも――)
未だに下が熱い。居着き残って離れてくれない熱さに、嬉しい感情ばかりが込み上げてくる。
まっすぐ見つめる彼に見つからないように、彼女は左手を、そっと臍の下に沿えてみる。
(…………まだ、あつい……)
彼に愛された場所には、直接触ってはいない。
それでも、下腹に溜まった情熱はユメミを照れつつ微笑ませ、彼女の心を包み込むように落ち着かせ始めていた。
「……ユメミ、大丈夫か……?」
「…………うん、たぶん……」
ほっとしながらも怪訝そうに尋ねる彼の声
(……あ…………!)
丸裸の自分が見られている。
彼の直視に耐え切れず、彼女は赤くなった首をいっぱいに左に背けた。それでも、
「……ユメミ…………良かった……」
何が良かったのかはわからないが、彼の呼び声には、やはり向き合わずにはいられない。
朱い瞳を見たら、どうしても呼びたくなってしまう、愛しい人の名前。
「ムント……!」
そして、どうしても求めてしまう自分がいる。
肘に力を入れ、催睡に引っ張られている上体を無理に起こす。もう間近に彼の顔が、唇がある。
瞳を閉じた彼女。どちらからということもなく、唇と唇が引き寄せられていく。
「んっ……」
ユメミはムントの首に腕を回すと、抱えたまま彼を引き込み、ベッドに倒れた。
「……っ!……ユメミ……!」
「…ムント、さまっ……!ん、んっ……!」
上から入り込む彼の舌、下から受け容れる彼女の唇。
覆い被さるように、彼が彼女の白い肌の上に降りていく。
「んんっ……」
温もりをより確かめられる重さは、苦しくならない。彼がうまく自重を逃がしてくれているのだろう。
ユメミの肌は上から下まで、彼に触れて、彼を感じていた。けれど、まだ足りない。もっと、彼のあたたかさに触れたい。
彼女は首に絡める腕を弱めた。ユメミの何かを察し、ムントは彼女から唇を離す。
「ユメミ、どうした……?」
「……ムント……おねがいが、あるの……」
足りないのは、体温。
「ムントも…………。
おねがい。ムントさまも、はだかになって……?
………だきしめて、ほしい………わたしを…………」
女の求めより少し空け、男は黙って頷いた。
わーい、いよいよムント様も裸にv
どきどき。
ユメミ誘うの上手。
165 :
5:2009/03/30(月) 23:43:18 ID:OIexCzJE
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は8節うpします
では、どぞ
大きなベッドの上、愛し合うふたりがいる。
少女の右には、男がいる。
男の左には少女がいる。
肩までかけられて盛り上がる毛布の中、ふたりは身体を向かい合わせ、触れ合っていた。
まるでそれは競うように、互いのすべてを寄せ合わせて、離さない、離れない。
少女は男の頭に細い両腕を回し、飽きることなく唇を吸い、舐め続けていた。
男の手は、少女の尻を揉みほぐし、その柔らかさを愉しんでいる。
男の胸板を擦り圧す、少女の豊かな膨らみ。張りのあるかたちは、男の裸肌で上下に奮えていた。
「んんっ……んむ、っ……」
「……ん……」
互いのありのままは、ふたりの上を包む毛布で隠されている。
だが、相手を感じる悦だけは、塞ぎ合った唇から零れてしまっていた。
唇が感じる。擦れ合う鼻が感じる。胸が感じる。抱き寄せて離さない腕が感じる。
身体の上から下まで、肌の温度を遮るものは何も無い。
汗と汗とが絡み合い、毛布から熱と一緒に溢れ出す、ふたりの匂い。
少女も男も、愛する者の全てを逃がすまいと、ただ求め合っていた。
愛する者の求めを受け容れたいと願い、ありのままの姿で迎え合っていた。
「……ムント…いたく、ない?」
唇だけ彼に触れながら、ユメミは問いかける。
「…大丈夫だ……。初めはその、驚いたが……」
彼の頬もそれを物語って、いくらか緩んでいる。
「いたかったら、いつでもおしえて……?よわくするから……ね……?」
小さな声。囁くように小さな声。それでも、静まり返る部屋の中、熱に密する距離のこと、相手に聞こえないはずがない。
「最初から、痛くはない…!少しだけ、そうだ、ただ少しだけ、驚いただけだ……!」
間近の視線が恥ずかしそうに逸れる。くすくす笑うユメミに、彼が難癖をつける。
「な、何が……おかしい……!」
「だって……ムントさま、いじっぱりなんだもん…………こどもみたい」
いじっぱり、こども、そのどちらかに反応したかは定かではないが、
「痛くないと言っているだろう!それに今は――」
「……いまは?」
抗議は自ら墓穴を掘ることになったようで、彼女はその追撃機会を見逃さない。
尋ねるユメミに、彼は視線のやり場を失う。耐え切れなくなったらしい彼に、彼女の唇は強引に塞がれる。
「ん、んんっ!んふぅ、ず、ずるいよぅ……」
尻を揉み上げる大きな手、その指圧が強くなった。
「ねぇ、ぁんっ…こたえて……?いまは、どうなの……っ…ゃぁん………」
是が非でも彼女は男の口から聞きたかった。刺激が邪魔しても、きちんと尋ね切って、瞳も彼から逸らさない。
「……ぅ…」
それでも、彼は答えようとしない。ユメミは彼の指に堪えながら、
「…おしえてくれないなら、ぁん、はさむの、つよく、んっ!しちゃうからね……?ああんっ!……
それに、うごかして、こするんだから……ぁっ………だから、うぁあん……おしえて、っ、ね……?」
「ま、待て!わかった!俺様が悪かった!」
焦って詫びる彼を頬で笑む彼女。
「じゃあ……ちゃんと、いって……?」
迫る彼女に男は沈黙する。尻を愛する手も止まっている。
「それは、その……」
再び彼が押し黙ると、毛布に潜る彼女の両脚が蠢き出した。
「っ!!は、ぁっ……!!いいんだ!!痛くないんだ!!ユメミっ!!」
彼の声。尻に添われた手が、彼女を再びほぐし始める。
「それじゃあ、あんっ、こたえにっ、なってませんっ……!どう、なんですかぁ?ムントさま……っ!」
――毛布の中、男の熱と欲望の凝縮された赤黒い怒張は、少女の白い腿、股と膝との中間で、やんわりと挟まれ続けていた。
彼女に包まれ、彼女が嬉色に身をよじる度に肌と柔らかな内側が蠢めき、彼はただ為されるがままの快感を頂いていた。
どうしてこんなことになっているのか――若き魔導国の王は必死に彼女の可愛い虐めが終わるのを堪えていた。
彼女に請われて服を脱ぎ、裸になった。だが、いざ男の剛直を見られると、恥ずかしいものがある。ましてや、
「……そんなに、おおきいの…………?」
などと開いた口に手を当てながら聞かれれば尚更無理だ。
大きかろうが小さかろうが、それが正しかろうがそうでなかろうが関係が無い。
とにかくもう、特徴を意味する語を声に出して言われれば、頭を振り回し狂ってしまいたくなる。
散々今まで少女の裸を恥ずかしめてきた事を棚に上げ、この男は、毛布の中に潜る事を彼女に提案した。
首を傾げる彼女を半ば強制的に隣に寝かせ、一緒に毛布を被り、抱き合いながら唇を重ねた。
ユメミはどうやら口吻が好みらしい。ムントも口吻の触感は気に入ったが、そうさせたのは間違いなく彼女だ。
元々彼女の抵抗を塞ぐ為に取った行為だが、彼女の方から驚くようなくちづけをするようになっている。
下の見てくれへの関心を薄れさせる為に、好物で納得してもらうつもりだった。餌付けとまでは言わないが、打算はあった。
このような青年の内奥も知らないまま、彼女は彼の思惑に嵌まっていた。そして、舌も唾も彼より多く絡めてくる。
とは言え、この股間への視線に対する羞恥の有無に関わらず、こうして毛布に包まって彼女と抱きしめ合いたかったのも事実。
彼女の火照りを逃がしたくない。そんな情に駆られた彼の、理性的な働きを差し挟まない欲求は確かにあった。
この男、善意的に解釈すれば、純も侫も半々というところであろう。打算と欲求、どちらが純か侫かは無視するとしても。
それでも、彼女は彼の腕の中で一心に唇を貪っている――
かと言われれば、そうではない。彼もまた然り。
抱き合おうとすればする程、彼が恥じた自らの化身が、やたら彼女の腿に当たるのである。
自分以外の人肌にそれが直接触れるのが初めての彼は、痛覚に似たものを感じた。特に尖端が彼女に触れた時、刺激は大きい。
耐えられないものではない。だが、瞬間的に強い痛みなので、どうしても顔には出てしまうらしい。
それを見逃さなかったのか、彼女は彼に聞いてくる。
「……ムントさま、これ、いたいの……?」
不安げな彼女の瞳を見て、痛いなどと言えるわけがない。彼は何でもないと虚勢を張った。
問題は、その次の彼女の言葉。
「……なら、よ、よかったぁ……。
ムント、な、なんだか……『あたって、いたい』っていうかおをしてたから……。
じゃあ……ふ、ふとももで、はさんでも……い、いいかな……?」
「な、な、ななな、何だと……っ!?ユ、ユ、ユ、ユメミ、い、今、なな、何と言った!?」
何故、何だそれは。この局面で挟む、しかも太腿でと言われたら、挟まれるのはこの魔羅だけしかない。疑う余地は無い。
可愛さにごまかされながらの唐突さに、彼も動揺せずにはいられなかったが、彼女は恥じらいながら、尚も言う。
「……えっ…?……あ、あの……ム、ムントさまの、お………お………ぉ、ち…………っ!
と、とにかくっ!これがあたって、あしがはなれてるのが、い、いやなんですっ!!
もういいっ!!ふ、ふとももで、もう、はさんじゃうっ!!」
「な、あ、お、おいっ、ユメ……ふううっ!!」
「んっ……!ふむぅぅっ!!んんっ!!」
彼女の絶叫に異議を唱えんとした彼だったが、ものを言うべき唇が奪われては致し方ない。
かくして、彼の直立不動は、彼女の腿にいじり倒される事となった。
初めはまだ痛覚があった。包皮の露出した鎌首が彼女に埋もれていく度に、
「ぅうっ!!」
情けない声が唇から漏れていってしまう。
ただ、彼女はそれを聞きながら、挟み加減を得ようと試みていた。
上になっている左の腿を少し浮かしては挟み、彼の反応を見て圧を工夫するユメミ。
ムントはそんな彼女を愛おしく思う。尻に手を回して可愛がりたくもなる。唇も休めたくはない。
そして、魔羅が彼女の内腿に進んだ分だけ密着し、乳房の感触がより強くなる。
「ん、んんっ……ぁ……」
尻の愛撫に身をよじる彼女が膨らみを圧し寄せて擦り込もうとすればする程に、
腿も釣られて細かく、じわりと蠢いて、彼の欲もまた擦り昂られてしまう。
か細い脚だが、柔らかい。それに、温かい。未だ自慰も経験していない王に、快感への慣れや抵抗力など無い。
それでも、この美しい少女の献身を拒む術もなく、拒む気も起こせず、王はただ愛おしい娘のいいように嬲られて、今に至る。
恥ずかしいことをしている。けれど、彼に裸を見られたり、胸や下をいじられている時ほどではない。
むしろ、うれしい。ささやかな想いが、彼の猛々しい熱とともに腿から込み上げる。
時折彼から漏れる甘い息、悶えて緊張する目尻、食いしばる歯、そのひとつひとつを彼女は逃さず気を張っていた。
痛いかも知れない。いいのかも知れない。一様でない彼の反応に、挟む腿の圧力を根気よく加減する。
その繰り返しに、微かに震える瞬間がある。腰ごと引こうとする時もあれば、硬い尖端だけ震わせる時もある。
柔らかくなってしまう時もあれば、より硬くなる時もある。それを繰り返す彼に、ユメミは気を配って包み挟む。
おねがいが通じて裸になってくれた彼。真っ先に彼女の目に入ったのは、いきり立つ彼の下。
「……そんなに、おおきいの…………?」
驚嘆は自ずと出てしまう。時々一緒にお風呂に入る弟のそれと比べると、あまりにも大きい。
「ぁ……、あ…………」
それに、赤黒く輝く尖った頭が、脈を打って、奮えている。
(おとなになると、こんなかたちになるの……?)
露出し切った彼の尖端と同じものは、弟の包皮にも収まっている。だが、ユメミの足りない常識では検証が追い付かない。
彼女が弟と彼との間に連想したのは、成長よりは変形に近い。大きさが変わるのではなく、かたちが変わるのだと。
いずれにしても、彼のそれが一体何の為のものなのか、その憶測は立っていた。
(でも、きっと、これが…………)
彼の指に愛された彼女の下の穴、そして、彼女の見つめる彼の下。
同じ位置にありながら、男女それぞれが異なって持つ凹凸。
憶測は立っていた。彼に愛される中で彼女が悟った、男女が愛し合うことのひとつの果て。
(わたしのなかに……はいる…………)
ムントがわたしのはじめてのひとになってくれる。
こんなにおおきなものがはいっちゃったら、わたし、こわれちゃう。
けど、さっきの、まっしろになっちゃったあのきもちが、もういちど、ほしい。
むんとが、ほしい――
「ユ、ユメミ……っ!」
彼の声に我に返り、
「ど、どうしたのっ?ムント……」
慌てて不自然な問いが彼女の口から零れる。
「ユメミ、ね、寝床に入ろう……!」
答えた彼もまた不自然で、おかしく感じられる。めくられた布団の中に、彼女は彼の腕に強引に導かれる。
「えっ?どうして……んっ……!」
知りたい理由はそのままで、裸になった彼に押し倒されながら、唇をついばまれる。
「んっ……」
気がつけば、彼と一緒に毛布に包まれていた。知りたかった不平は、彼の舌と、直に触れた肌の温もりに掻き消される。
(ムントさま……あたたかい…………)
求めた体温が期待よりもっと心地よく、彼の舌に愛されながら、彼女は悦楽に浸っていた。
「んんっ……はむぅ…………あんっ…………」
彼の左手が腰に潜って後ろに回る。右手も彼女を乗り越えて、尻の果実を揉み回す。
「あん……っ!」
刺激に悶えながら、彼女も彼に倣って、両腕を彼の後頭に回し、より密接しようと企む。
――今、彼の中にいる。彼にこの身体を捧げている。そう思うと、鼓動が大きく高鳴って、彼女の内側を熱くする。
この嬉しさを伝えたい。唇を塞がれたユメミにできるのは、柔丘を彼に擦り寄せることくらいだった。
「んっ……ん、んん、っ……!」
心臓に彼の温かさが溶け込んでいく。寄せた膨らみに彼の鼓動が広がっていく。
胸の挙動はよりしなやかに、情熱的になるに従い、硬く尖った自らのふたつの敏感が、彼女をとめどなく淫らにする。
「あんっ……んんっ!ふぁぅ……」
ただ、挙げる嬌声と裏腹に、彼女の理性は守られていた。
そんなもの、自分では崩したかった。だが、彼女の注意に引っ掛かるものがひとつだけあるのだ。
それは、太腿に時々触れる、ムントの象徴。
抱き合って触れては退き、再び密になろうと寄り合っては触れる。
触れたその一瞬一瞬に、彼の舌や目元がいくらか歪むのを、ユメミは気付いたのだ。
痛みが走っているような、釣り張った表情。それを全く無視して自分の嬉悦に埋没するなど、彼女にはできない。
ひょっとしたら、やっぱり痛いんじゃ――彼女が尋ねても、
「いや、痛くない。このままでいいんだ、ユメミ」
無理にやさしい口調で否定しようとするから、彼を苦しめたくない気持ちが一層大きくなっていく。
愛する男の表情から真実を読んでいながら、彼女は彼の取り繕う偽りを立てた。
「……なら、よ、よかったぁ……。
ムント、な、なんだか……『あたって、いたい』っていうかおをしてたから……」
平素から気位の高い彼を守る為に嘘をついた。それに甘えて、このままでいいとも思える。
しかし、それで自分が満たされないのも、容認できるものではない。脚まで彼に触れて、彼を感じたい。
「じゃあ……ふ、ふとももで、はさんでも……い、いいかな……?」
ムントを離したくない、離れてほしくない。その為にだったら、恥ずかしいことだって、聞ける。
それでも、彼はただ聞き返すばかり。何を、どうすると。
何を、どうする――それは彼からすれば誤解なのだが、彼女の受け取り方は違う。そう聞こえた。そう受け止めた。
何を、どうするのか。確かめて、もう一度言わせて、わたしにはずかしい想いをさせて、いじわるしようとしている。
恥ずかしい。彼の思惑通り、本当に恥ずかしい。だが、照らってばかりでは先に進めない。
「……えっ…?……あ、あの……ム、ムントさまの、お………お………ぉ、ち…………っ!」
進みたい。彼の隅々までぜんぶ、肌で感じたい。どんなに願ってみても、どうしても、言えないことばは存在してしまう。
分からず屋で朴念仁で、自分は嘘をつくのにわたしには恥ずかしいことを言わせようとする、
どうしようもなく自分勝手な彼に、彼女も怒らずにはいられない。
「と、とにかくっ!これがあたって、あしがはなれてるのが、い、いやなんですっ!!!
もういいっ!!ふ、ふとももで、もう、はさんじゃうからっ!!!」
言いながら、既に腿を開いて挟み込んでいた。挟めば奮える彼が、子どもみたいで可愛く思える。
そして、駄目だと言いたげなムントの唇を、彼がユメミに今までしてきたように、彼女は無理矢理塞いで黙らせる。
太腿の加減を試す度に変わっていく彼の顔がある。そこにあるのは苦痛の色だけではない。
(こんどは、わたしのばんなんだから……)
それは、彼女をおかしくさせた彼への報復か。それとも、彼女に愛を与え続けた彼への返礼か。
彼女が思い返すのは、先程の、おかしくなっていた自分のこと。
彼の指が中に入って、最初は痛かった。けれど、次第に痛いだけではない、何かを感じた。
その何かは様々だ。だが、彼女の得たひとつに、気持ちいいと思った自分がいた。
痛くもあるのでその言葉で全てを満たすとは限らない。頭が真っ白になったあの感じが「気持ちいい」なのかわからない。
もっと別のことばか、「おかしくなる」や「こわれる」の方が正しいのかも知れない。
少なくとも、彼もまた自分と同じで、最初は痛くてもだんだん気持ちよくなっていくのではないか。
自分が彼に指を入れられた所と同じ部野から生えたものであるからには、彼女の推測は全く根拠が無いわけではない。
とは言え、まずはやってみてから――彼女は唇と胸と腿で、愛しい彼に気持ちよくなってほしいと、ひたすら奉仕する。
いずれ、この硬いものが、あついあつい自分の下の中に入る事を思い、恥じらい、期待に焦がれながら――――
「――それじゃあ、あんっ、こたえにっ、なってませんっ……!どう、なんですかぁ?ムントさま……っ!」
彼女に迫られているムントは、即答も能わず、まともに答えを模索する事もできない。
これ以上強くされたら、我慢できない。何かが出る。今も出そうなのに。
しかし、この、何かが出そうな感覚が、たまらない。彼女の太腿が、たまらない。
もう正直に言ってしまいたい。だが、彼のプライドがそれを認めない。それでも、
「ねえ…………ムントさま…………うそついちゃ、だめだからね……っ」
――――嗚呼、何と可憐で淫靡な囁きか。千男万女の上に立つ若い王は、このひとりの少女に屈してしまわずにはいられない。
ましてやこの両腿は、彼女のおもらしに濡れている。愛液が快感を加速させる事に気付いてしまえば、彼はもう抗えない。
「き、き……気持ち、いい……!」
遂に出てしまった本音。妖しく微笑む彼女は、挟み込む腿の圧を強めて、柔肌に擦り合わせていく。
「きもちいいの?はぁ……っ、うそじゃない?」
「嘘ではないっ!ユメミの脚、気持ちいいっ!!」
「ほんとう?ねえ、ほんとう?」
「本当だ!!」
「ほんとうにっ!?」
「っ!?あくうっ!!」
強烈な刺激。口は確かめようとしながら脚の圧を強めて瞳で迫る彼女に、ムントの忍耐は限界に差し掛かっていた。
「ユメミっ!!駄目だっ!!出るっっ!!!」
「でる、って……なにが……?」
「駄目だ!!手を放せっ!!!」
何かはわからない。だが、このままでは彼女の腿に出してしまう。彼女を汚す、汚いものだ。それだけは予感していた。
が、彼女は彼の後ろに回す腕を解こうとはしない。脱出しようとする彼の抵抗に、絞める力はむしろ強くなる。
「ぃやだっ!!はなれちゃ、だめっ!!はなさないでっ!!わたしを、はなさないでぇ!!!」
「出るっ!!ユメミっ!!!う、くぅっ!!!出るぅっ!!!」「わからないけど、いいよ!?だしてっ!?だしていいの!!」
「――――くぅぅっ!!」「ぁ、ああんっ!!」
大きく擦られ、彼の剛直はぶるんと奮えた。奮えて、彼女の内股に放たれていく。
「ぁあっ!?ムントさまっ!!あ、あついっ!!なに!?これっ!?」
止まらない柔挟に、止まらない放出。残さず漏れなく受け止める腿に、彼の鎌首も自らの汚れで塗られていく。
「う!うっ…!」
両腿に搾り尽くされた彼。その感じるものは、漏れた苦悶とは全く逆。
「…………ユ、ユメミっ!」
名前を呼んで、熱を抱いたまま冷静を取り戻す。潤んだ瞳が、濡れた唇が映る。
「ムント……んんっ……!んっ……あ、あついよ……ムント…………」
「……く、はぁ………………気持ち、良かった……………………ありがとう、ユメミ……ん…………」
「んぅ…っ………………よかったぁ……………………ムント、だいすき…………んふぅ……!」
呼びながら、ふたりは口吻を交わす。
汚れた彼女の腿も、いくらか硬さを失った彼の分身もそのままに、ふたりは暫し、もつれ合った。
まるでそれは競うように、いたわるように、互いのすべてをさらけ出して、離れない、離さない。
も・・だめ。
ラブラブすぎる・・・。
ユメミのご奉仕に、まいりましたv
す、すごいな
上手い!
176 :
5:2009/04/02(木) 00:44:02 ID:jw4xsUcX
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は3節うpです
1話の書きたい場面は8割かた今回で終わり
これを越えたらあとは合体直前の愛撫、合体、1話の締めで終了です
それでもまだ多少かかるけれど、ようやく先が見えてきたのが本当に嬉しい
出来は別にして、この書き手、今、安心してます
長丁場になってしまっているから何度でも言いますが、皆様、ここまで読んで下さって本当にありがとうございます
1話のおわりのはじまり、では、どぞ
「んんっ……ムントさま………
……すごく、ふるえてる…………ぁん……だいじょうぶ…………?」
精を出し尽くしても尚、ユメミの腿の中で脈打つムントの分身。
硬さも太さもいくらか失われつつあるが、愛する少女に包まれ、彼女の愛液と自身の白精の纏わり絡む心地よさが、
「ん…ぅっ……あ、ああ……ユメミ、気持ちいい…………」
再び彼に炎を灯し、その姿を取り戻させていく。
「……ちいさくなったり、おおきくなったり、するんだね…………?
また、かたくなってきてる…………すごく……あつい……!」
安堵する瞳は彼を凝視してこそいるが、彼女の関心は彼の象徴に向けられているようだ。
「お前が、綺麗だから……気持ちいいから…………こう、なる……!
ずっとさっきから、こうだったんだぞ…………?」
経験もなく知識も偏っており、男のしくみをいまいち把握し切れていない彼ではあったが、
彼女のひとつひとつのすがた、彼女がしてくれたことが、彼自身をより大きくさせている点において、確信があった。
彼女をずっと見てきたからこそ、彼女が自分をずっと見てくれたからこそ、初めて知る自分がいる。
ここに至り、彼の象徴自体にも、彼女に自分の抱いた気持ちを言い表す事にも、彼は恥じらいを感じなくなってきていた。
男の汚れを何の嫌悪もなく受け止めて、今もそれを拭いもしないで、自分を優しく挟み込んでくれる。
驚嘆か、安心か。感謝か、尊敬か。快楽以上に純粋な感動が、羞恥に縛ろうとする理性を解放させていた。
しかし、そんな彼の内面の変化に関係なく、今の彼女はなかなかに欲張りだ。
「うれしいけど…………もうひとつ、なにか……たりないなあ…………」
「……な、何だ……?」
彼が尋ねると、少女は紅潮する頬をふくらませて詰問してくる。
「…きれいと、きもちいいと……ほかになにか、いうことがあるんじゃないのかなぁ…………?」
「わ……………わ、わかっている……!」
前言を撤回せねばならない。彼にもまだ、口に出すには恥ずかしい言葉はある。
「………ユメミ……か、か……
……………………か、可愛い……!」
この言葉も、そのひとつ。
「…………うん……」
満足そうに頷いて、唇を寄せてくるユメミ。
舌が絡む。言葉に代えて立てる大袈裟な唾の音。気がつけば、彼女に釣られて同じように流し込んでしまう彼がいる。
「ユメミ……ぅ……ん………可愛い…………」
「んふぅ……ぁ……んんっ…………ムントさま……」
唾の音をもっと聞きたい。唾の音をもっと出したい。彼を感じたい。彼に応えたい。
もっと、もっと、彼に可愛いと言ってほしい。彼に愛がほしい。彼を愛する自信が、もっとほしい。
彼にしてほしいことがある。その為に、たくさんたくさん、彼がほしい。
「んんんっ……!」
「……ふ、ぅ……可愛いよ、ユメミ……」
「ムントさま……んっ…………」
今のままでも充分過ぎる。このままキスして抱き合って、彼の熱さや気持ち良さを感じてさえいられれば。
そのくらいのしあわせを、熱い唇と舌にも、心拍の高鳴り合う胸にも、彼が満ちて広がった腿にも抱いている。
けれど、そのしあわせたちは、愛し合う果てを彼に求めていた。そして、彼女自身もまた――
「ムント……ムントさま…………」
見つめれば、やはりやさしい彼がいる。私を見てくれている。
「ユメミ……」
「……ムント…………!」
ちいさな声で、名前を呼んで、鼓動が重なり合い、決して切れない銀の橋が、ふたりの間につくられる。
「わたし……わたし…………!ムントさまの、んんっ!!」
伝えたい言葉が、聞いてほしいことばがあった。なのに、唇が邪魔をする。嬉しいけれど、舌が邪魔をしてくる。
(このままでも、いい…………でも、このままじゃ、いやなの…………)
閉じた瞳に溜まり出す涙。それが枕に零れ落ちようとしていた時、
「んっ……!」
ムントの腕が毛布を払い、あまりの唐突に涙が止まる。
曝されるふたりの裸体。篭った熱が放散して、代わりに冷気が舞い込んで肌をかすめる。
「あ、ぁ…………ムントっ……!!」
改めて彼に見られるのは恥ずかしい。
冷気に当てられて理性が働いたか、ユメミは瞬時に彼から腕と腿を離して、胸元と陰部を庇って隠す。
「うっ…!」
突然の彼女の挙動に弱い苦悶を漏らす彼。寝ながら僅かに屈めた腰には、白く光る男の怒張がある。
(…………す、すごい…………!!
でも……やっぱり、いたかった、かな…………?)
驚嘆しつつも彼の表情の歪みが気になり、恐る恐る、少女は陰部を隠していた右手を奮える鎌首へ伸ばそうとする。
鎌首を瞳に映すと、彼の尖端から彼女の間に、白い線が目に入る。その線の先は、彼を挟んで愛した自らの腿。
男のものに纏わり付く光と同じ白濁液が、粘って垂れて、少し開いた細い脚の隙間に幾多もの糸を引いていた。
(これが……あの、あついもの……)
得心がいったとばかりに自らの両腿にこびりついた彼の白汁を見つめる彼女。
彼の股間に触れようとしていた右手が、視界に目立つそれに引き寄せられていく。
「っ!?ユメミっ!?」
制止を叫ぶ彼の声が聞こえた時には、彼女の指は既にその白さにさわっていた。
(……あったかい…………)
その熱に瞳は蕩け、彼の愛が注がれた腿を暫く撫で回す。
ただ、それと同時に、彼のしたことや、ばつの悪そうな彼の表情の意味を、ユメミは冷静に受け止めてもいた。
ここで思い出すのは弟のこと。先程、ムントの剛直を見た時もそうだが、男の子の下の身近な比較対象は弟しかいない。
弟が生まれる前の幼かった頃は、父とも一緒にお風呂に入っていたと思うが、その時は下のことなど意識もしていなかった。
だからこそ、ムントのこうしたものを目にするにつけ、最近記憶に新しい弟のことばかり頭に浮かんでしまう。
彼女の弟は自制ができない年頃なのか、お手洗いに行く前に我慢できなくなってしまうことがある。
ユメミが家にいれば、泣きわめく弟をなだめて下に履くものを換えたり後始末をする。姉の仕事と両親から言われてきた。
だが本音は、姉だから当然、というものでもない。弟の為にもあまり認めたくはないが、多少の抵抗は感じたりもする。
しかしながら、泣きじゃくって謝ってくる弟を見てしまえば、あやさずにはいられない。許さずにはいられない。
特に最近は、弟に「おしっこがきたないもの」という意識が芽生えたらしく、弟自身が恥ずかしいというよりも、
『ね、ねえぢゃあん、ご、ごべんなざい!!ごべんなざああい!!!』
汚いもので他者を煩わせた強迫的な気持ちの方が強くなっているのがわかる。
だからこそ尚更に、なだめて励ましたくなる想いが強まる。いっぱいのあたたかな気持ちで許してあげたくなる自分がいる。
今、彼は格好が悪そうな顔をしている。それに、真っ赤な顔には申し訳ないと書いてある。
おとなとこどものちがいはあるが、ムントの顔が、弟と全く同じに見えた。
「ムントさまも、おもらししちゃったね……?」
微笑んで言う彼女に、狼狽して何も言えない彼。
ふふっと零して、彼女は彼に笑いかけた。
「わたしも、おもらししちゃったし、これでおあいこ。ねぇ、それでいいでしょう?」
「ユメミ……?」
「それで、いいの……………………んっ……」
それ切り、彼女は彼にくちづけをする。右手は腿に触れ、胸を隠した左手を、彼の下へ下ろしながら。
「んっ……ムントさま…………」
「ユメミ……っはぁっ!!」
左の細い指が、彼をやさしく包む。彼に纏わるおもらしを搦め捕りながら、力を篭めず、たださする。
「ん……っ、ムントさま…………おねがい…………」
その先は、言えなかった。欲しいだけでなく慰めたい想いも絡み、うまく言葉が見つからなかったから。
「……おねがい、ムントさま…………」
その先は、言わなかった。彼と同じ気持ちだと、ただ彼を信じて待ちたかったから。
愛が、愛が痛い。
なんて深い愛だv
先はどうなるんでしょう。
やっぱりユメミの御奉仕がないとなぁー
って勿論あるんでしょけどw
182 :
5:2009/04/03(金) 18:40:40 ID:NdidEFac
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は11節うpです
では、どぞ
「く……っ!」
紛れも無い、汚濁。
なのに、この少女の指は、戸惑いもなく触れている。
汚されたのに、汚れるのに、「おあいこ」と言うこの少女の指は、躊躇いもなく慰めている。
「……ぅっ…かぁっ……!……んん!」
彼女の唇が、彼の唇にじわりと触れる。舌が唇に這い、やさしく濡らしてくる。
彼女の息が、さらりと流れ込む。口内に広がり、自らを恥じる情にそっと靡く。
彼女の胸が、圧してくる。昂る心音をふわりと包んで、自責する彼の心を柔らかく鎮めてくれる。
「ぅうっ!……ぁっ…!はぁ………っ……!!」
快感が蘇る。ただ触れているだけの彼女の指が、この上なく愛おしい。
美しいこの少女が愛おしいからこそ、脳が快感を分泌する。彼女の献身に応えようと、男の衝動が勝手に頭をもたげていく。
汚されたのに、汚れるのに、ユメミは、この俺様を、許すと言うのか。許してくれるのか。
胸が、許してくれる。
唇が、求めている。
息が、誘っている。
指が、導いてくれる。
この先を、健気に求めている。この先を、不安を殺して導いている。
この先を、妖しく誘っている。この先を、微笑んで許している。
唇と舌が広がる中、微かに、より確実に抜けて聞こえる、白液をまとった指の緩い音。
彼女と擦れ合いながら硬く立っていく鼻。口吻の時には必ず擦り寄せてきた可愛い鼻と、恥じらいと興奮に零れる細い息。
綺麗で清らかな髪の匂い、熱く淫らな汗の匂い、その全てを含みながら幾重にも増して届けてくれる、彼女の香り。
彼女は何も言わず身体で代弁するばかり。その身体で。淫らなまでに熱を帯び、神聖なまでに白く輝く、その身体で。
(…………駄目だ……!もう……!!)
右腕は彼女のくびれた腰の上、左腕は下から彼女を受け止める。彼女の揺れる誘惑を受けながら、手は柔らかく震える尻を撫でる。
彼女は何も言わず身体で代弁し続けるばかり。男の抑制はか細い糸にぶら下がり、もうじき切れる。
ユメミの尻が、あたたかい。ユメミの指が、たまらない。ユメミの胸を、揉み倒したい。ユメミの唇を、吸い尽くしたい。
ユメミの中に、入れたい。ユメミの中に、放ちたい。ユメミを、愛したい。ユメミを、汚したい。
ユメミに、許されたい――――
「――もう我慢できないっっ!!!!」
「んっ!ム、ムント!?」
横たわる彼女を仰向けに倒した彼の腕。驚きに震えるちいさな唇を、無造作に啄む。
朱の瞳は、彼女しか見ていない。一瞬見開いてから細長い睫毛と一緒にゆっくり閉じていく、彼女の瞳しか見えない。
彼女の裸に魅き寄せられて。彼の首に巡る、細い腕に引き寄せられて。
「んんっ!?んふぅ!!」
舌で唇を犯しながら、彼女の左の膨らみを右手で揉みしだく。
「ぷあっ………ユメミっ!好きだっ!!!」
「んはぁ!あぅっ!ムントっ!!あああうっ!」
彼女から離した唇は、下がって下がって、彼女の右の胸の上。
「あ、はんっ!ムントさまっ!?」
この目に映る、彼女の胸。白くて柔らかい、彼女の胸。緊張にちいさく奮えている、桃色の尖端。
「ユメミ……!」
「っ!!ああんっ!!やんっ!!ふぁああ!!」
左手を這わせ、揉みながら、吸っていた。
「あ、あふぅっ!!あんっ、ぁ、ぁぁっ、ああんっ!!」
寄せながら、唾を舌に這わせて塗りつけていた。
「ひゃうっ!!あんっ!!ぃ、やああんっ!!」
指を波打たせながら、舌の先で圧し転がしていた。
「っっ!あああんぅっ!!!はああうっっ!!!」
そして、思い切り、唇で吸い尽くした。吸いながら舌を暴れさせた。吸い尽くして、尖ったところの上に、やさしく口吻をする。
「んんんっ……!!ム……ムント、さまぁ……!」
彼女の先が、輝いている。何よりも美しく、何よりも憐とし、誇りながら恥じらう、ピンクの突起。そこを、摘む。
「ああう!!」
その周囲に指を回しながら、摘む。
「はんっ!あうっ!えあううっ!!」
転がすのは左手に任せ、彼の唇はもう片方のまるい硬端へ。
「ふぁぅぅ!や、やああんっ!!」
唾をたっぷり含ませながら舌で塗りつける。
「あうっ!!はんんっ!!あううっ!!!」
塗った唾を、強く吸う。彼女にも聞こえるような音を出す事を意識して、強く吸う。
「そ、そんなおとぉ、させないでぇ…!やああぁんっ……!」
やさしく、唾液をじっくり滲ませるように、舌を這わせる。ちいさくほのかな桃を灯す乳輪にも、大袈裟な炸音を立てて。
「はぁん……いっ!ひゃうううっ!!!」
左手に摘ませるのも忘れてはいけない。それにかまけて、舌も怠ってはならない。
「ぁ、は、はふ、あ、あん、ああぁっ!」
右手で乳首を摘みながら、その尖先を舌で擦る。
慣れない舌が少しだけ疲れた。柔丘から唇を離し、両手でそれぞれの膨らみの弾力を愛する。
「はぁっ……あぅ………」
彼女の上気する呼吸。聞きながら、それぞれの人差し指で、それぞれの尖端を転がす。
「あ!あうっ!ひゃんっ!!だめっ!!また、ぁ、また、おかし、くっ!なっちゃううっ!!」
肩をよじり首を奮わせるユメミの嬌声。聞き入れ、聞き流す。ムントは彼女の胸から手を離し、彼の後頭に回る彼女の腕を取る。
華奢な少女の手。軽く握って指を絡ませながら、彼女の顔の横、枕に押しうずめる。
「ぁ……は、ぁ……っ」
小さな唇、乱れる呼気、一筋の涎。そのすべてを強引に貪る。
「んんっ!んっっ!!んふっ!んう!」
負けじと圧してくる彼女の唇。ベッドから浮き上がる背、迫り上がる胸。
「ん、ぁふ……ん……んああう……んむぅ……」
穏やかな息に反して、彼女の舌は激しい。指を握り返してくる力は、抗う為のものではなく、伝える為のものと知る。
舌は彼女の唇を舐めて、右の頬に垂れた涎の跡をなぞる。
「ぁ……」
頬に口吻をする。舌は出さない。唇だけで彼女に伝える。
「……ムント、さま……」
うっとりとする彼女の瞳。頬を愛されて、圧していない唇に圧されて、彼女の首が倒れていく。
露出した首筋。彼は握った指を離し、そこにかかった栗色の髪を左手でかき上げる。
「ぁ……ぁ…っ」
指の先だけ、わざと首筋に触れさせた。奮える膝が、曲がっていく。
頬から耳元へ唇を移す。舌を出す。
「ひゃっ!あんっ!く、くすぐったいっ!!やんっ!」
耳元から襟首へ舌を下ろす。襟首から喉の下、喉の下から、谷間へ。
「はぁんっ!」
舌を這わせながら左右の頬に感じる彼女の柔らかさ。暫くそこに頬を擦り寄せる。擦り寄せた柔らかさに、口吻を。
「あっ!!あ、あぁ……っ……!」
彼女が悦に入っている間に、右手を別動させていた。それは彼女の股の上で、入り込む隙を窺い待つ。
「ム、ムントさま……」
彼女は彼の望みに気付いたらしい。両膝が曲がり、開かれていく。
「……ゆび…………いれて…………?」
視線。頷き合うふたり。彼女の顔を見守りながら、ムントの親指が彼女の恥肉の表面をほじる。
「あ、ぁ!はあぁっっ!!」
捩込ませるように、重くじわりと、彼女をほじる。彼女の唇が吐息に奮えている。
「ううっ!うあああぅっ!」
入口を確かめ、人差し指と中指を揃えて入れた。濡れた内壁が急に締まるので、少し無理をして割り入れざるを得ない。
「あああん!!んんあう!!もっ、と、もっとぉ、やさし、くっ、してえぇっ!!」
歯を食いしばって枕を掴む彼女がいる。中の右手はそのままに、彼女の耳元で囁く。
「……ユメミ、力を、抜くんだ……」
一瞬、反射的に力が抜けた。かと思いきや、圧が強くなり始める。
力を抜けと言われても、難しいかも知れない。それでも、彼は言う。
「……力を抜くんだ……ユメミ…………」
――……力を抜くんだ……ユメミ…………
……ぁ……ちからを、ぬく……
むんとさまが、いって、るっ……
そうしなくちゃ……あんっ……ちから、ぬかなくちゃ……
でも……ちょっといたい、しっ……ちからをぬいたら、もっといたくなっちゃうかも…………ぁぁん……
けど、わたし、ほんとうに……ちから、いれてるの……
…………わかんない……うぅ、ちから、はいっちゃってるのかなぁ…………
――……ユメミ…………
……ぁ、ああ…………むんとさま…………
むんとさまの、こえ……あったかぁぃ………あったかい、よ…………
――…………ユメミ、可愛いお前が、もっと見たい…………
…………わたしも、むんとさまに、みてもらいたい……きもちよく、なりたいの……
……むんとさま…………わたし…………えっ…?
――……ユメミ…………
あ、あああんっ!!!
――――……ちゅぷっ、ちゅ…………
ああんっ!もっと、しゃぶってぇ……!!
いっぱいいっぱい、ちくび、しゃぶって、くださ、ぃ……!
――――……れろれろ、ちゅっ、ちゅるっ…………
はあうぅ……しあわせ…………あんっ…!
そう……なめてぇ…………あっ、あくうっ!!
――――……くちゅううぅ…………
ぁああああんんっ!!はいっっ、ちゃうっ!!だ、だめえっ!!
むんとさまのゆび、はいって、るうっ!!あうっっ!!
――――……くちゅ…………
あんんっ!!だめっ……ひかないで…………ゆび、だしちゃ、だめえっ!!
だめなのっ!だめっ!だしちゃだめっ!!もっといれてっ?もっともっと、なかにいれてっ?
おねがいっ!!ぉ、ぁん、おね、がいっ、しますぅっ!!
いたくして、いいからぁ、だからっ、いれてえっ!!!
――――……くちゅぅぅ…………
はううっ!!やだぁ……っ!い、いたいぃっ…!はいっちゃっ、たあぁ……!!
だめえっ!!だしてえっ!!だ、だめ、おかしくなっちゃう!!きもちいいっ!!
――――……く、ちゅ…………
あぅんっ!!だめぇ!!ちがぅぅ、ださないでぇっ!!
ださない、でぇぇ…!ださないでよぉ…!
――――……ぐちゅぅぅぅ…………
やあぅっ!!!ああふぅ!!!き、もち、いぃ……!!
――――…………ぐり…………ぷつっ……
やあぁああぁんんっっ!!!い、いたいいっっ!!いたいよっっ!!!あううっ!!あぅっ!はうぅっ……!!
そ、そんなに……なかにまで、いれないでっ!!!い、いたいっ!!!だめえっ!!
――――……ぐり、ぐり…………
あ!ぁっ!ぐりぐりしちゃ、だめぇ……はぅ……い、いた、ぃ……あううっ……!!
だめっ……やだ……っ…………は、はずかしい…………やだぁ……っ…………!!
――――…………くちゅぅっ……
あんっ!だめっ!ださないで!ぬかないでぇ!ぬいちゃ、だめぇっ!きもちいいっ!!
はぁんんっ!!やだっ……なかまで、いれてぇ…?
おねがい……がんばるからぁ………おねがいっ、ださないでぇ…!なか、からっ、ぬか、ないでぇっ、ひいっ、てぇ……?
――――……くちゅ……くちゅぅぅ……
はあんんっ……!!あ、ぁぁ……い、いい…………いたいけど、はぅぅ……
――――……くちゃ、くちゃ…………
あうぅ……おと、きこえちゃ……ぅ…………あああんっ!!
――――……くちゃぁ……くちゅぅぅ……
だめぇ……はあんんっ……いっぱい……いれて…………いっぱい……ぬいて…………
――――……くちゅ、くちゃぁ、くちゅぅ、くちゅ、くちゅ……
あん、ああんっ……きもちいい……きもちいいの……いたく、ない…………あっ、た、かい……っ!
むんとさま、の、ゆびっ……あったかくて……あったかい…………んんっ!!
――――……くちゃ、くちゃ、ぴちゃ……
あんっ!!はんっ!!だめっ!!
―――……くちゃ、ぴちゃ、くちゃぁ……
ゃ、ああんっ……そ、そんな、あんっ!!!
――……ぴちゃ、くちゃくちゃ、ぴちゃ……
はんっ!はやく、しちゃ……はやくしちゃぁ……ぁあ!!
――…くちゅぅ、ぴちゃぴしゃぴちゃ、ぷちゃぷちゅくちゅっくちゅっ…
だ、だめええっ!!おかしくなっちゃうぅ!!だめえっ!!きもちいいっ!!ん、あん、はん、あぅ、んはぅ!あんっ!
―…くちゃぴちゅくちくちゅぷちゃちゅぱくちゅぴちゃぴちゃちゃぷちゃぽ…
あ、んっ、やんっ、は、あ、ぁ、いい、いやっ!あんっ!あんんっ!だめえっ!
きこえ、ちゃうっ、むんとさまに、むんと、さま、にっ、いやらし、い、こ、えぇっ、きこ、えちゃ、ううぅっ!!!
―ちゃぴちゃぷちゃぴちゃぴちゃぷちゃちゃくちゃくちゅぴちゅくちゃぴちぴちゃちゃぽくちゅぱちゅ
やああんんっ!!だ、だめ、え、っっ!は、はん、あ、ぁふ!だめ、あ、ふぁあ!ああ、ぅ、うあうっ!!!
も、もう、ぅぁうっ、はぁんっ!もう、あんんぅっ!だ、だめえええっっ!!!!
――――ぴ、くっ
うあああんんっ!!!はああぅぅぅっ!!!んああああんぁあはんんっっ!!!!
――少女は再び、果てた。
この前に彼女の下を愛していた時と同じように、今はもう響声も止み、ぐったりと、身を奮わせている。
前回を見た時は、彼女の身体に何か悪い事がと思い必死に声をかけたが、今はそれより比較的冷静でいられる。
自分が彼女に白い汚れを放った時と同じなのか、いや、違う、自分はこんなにはならなかった――
彼は考察しながら、彼女の締まる淫肉から、そっと指を引き抜く。
「ん、んんっ……!」
やはりどうやら、大事中の一大事、というわけではないらしい。
ただ、痙攣はしている。息も荒い。暫くは様子を見た方がいいのかも知れない。
これが絶頂、女の快楽の絶頂というものだろう。知識には入れていたが、それにしても想像を遥かに超えている。
彼女相手に事前に仕入れた知識など役に立たないのは理解していた。再三驚かされているが、どうしても慣れない。
翻弄される自分が、みっともなくもあり、嬉しくも感じる。ただ、この彼女の姿は、正直、嬉しくて、可愛い。
だが、奇妙な事がひとつある。彼女が最後に嬉悦を叫んだ、あの時――
――――も、もう、ぅぁうっ、はぁんっ!もう、あんんぅっ!だ、だめえええっっ!!!!――――
抜き差しを速くする為というわけでもないが、彼女の中に入れた人差し指と中指以外の右手の3本は、握って畳んでいた。
しかし、動かし続ける指の、ひいては手首の疲労を逃がそうと、彼は不意に親指を開いていた。
その親指が、彼女の入口の「あるところ」に触れた。たった一瞬だけ。ただ触れただけ。ところが、
――――うあああんんっ!!!はああぅぅぅっ!!!んああああんぁあはんんっっ!!!!――――
その時に身体が大きく奮えて、あの甲高い声が出た。直後の痙攣も、前回より大きかったと思う。
(……あれは、一体……何だったのだろうか……)
確かめる必要があるか。彼女の秘部を覗こうと、彼が閉ざされて今も奮える脚に手をかけた時――
「――――ムント…………」」
「ユメミ……!」
気がついた、または、気を取り戻した、と言うべきか。薄く瞳を開いて見つめてくる彼女がいる。
彼女の顔の傍に、彼も顔を近付ける。自分の関心事は後回しにできる。
彼女が呼ぶなら、彼は応える。彼女が彼に応えてくれるように。
横たわる彼女の首の下に左腕を滑らせて、彼女の隣に寝そべるムント。
彼はこの時、ユメミの差し出す左手を右手で握り返し、指が触れてから、後悔する。
(ぁ……!)
濡れていた。挿送していた人差し指と中指、右手全体も、彼女のあたらしいおもらしを浴びていた。
「…………わたし、また…………しちゃったんだ…………」
その声は、明るかった。下手な遠慮は無駄と悟る彼。
「……ああ、凄かった……」
「だ、だめっ!はずかしいから、いわないでぇ!」
むくれる少女に、彼は微笑みを零す。
「わ、わらわないでよう……!」
「いや、違うんだ。お前が、可愛くて、な……」
「……そういったら、なんでもだいじょうぶだなんて、おもってない?」
「…………少し、な」
「……うふふっ……!」
「……ふ……」
笑って、ふたりはくちづけを交わす。
「…んっ……」
「…………ん……」
唇だけの、やさしいくちづけ。いたわるくちづけ、ありがとうのくちづけ。
「…ん………ム、ムントさま………………」
「……どうした?ユメミ……」
「……お、おねがい……ムント…………ムントさまを、き、きもちよく、きっと、できるから…………」
「ユメミ…………!?」
「きもちよく、なってもらうために、わ、わたし……がんばるから…………だから……だから…………」
「……ユメミ…………」
「……ムントさま…………
…………わたしの…………わたしの…………」
「…………その先は、い、言うな……」
「えっ?ム、ムント、さま……!?」
「……ユメミ…………」
「…………ムントさま……?」
「…………………………
……駄目だ、何も思い浮かばないな………………」
「ムント……」
「その先を言うのはお前じゃない、俺様の役目だ…………そう思っていたんだが、なかなか出て来ないな………………」
「……………………
……………………ばか」
「ば、ば、ば、馬鹿とは何だ馬鹿とは!?」
「…………くすっ」
「っ、わ、笑うなっ!!」
「ふふふっ、ムント、ひとことでいいよ」
「ユメミ……?」
「……きもちはわかってるから、うれしいから、でも、ひとことだけ、いってほしい」
「………ユメミ…」
「おねがい、ううん、わたしからの、さいごのおねがい。だから、ムント……きかせて…………?」
「…………『さいご』の、か……」
「………………うん」
「…………わかった……
……………ユメミ……
………あ、あ、 ――」
「………………………
…………………はい…………」
「…………面と向かって言うと、その…………恥ずかしい、ものだな…………」
「ぅふふっ……」
「そ、それなら、俺様も、お、お前に『さいご』の、お、お願いだ!き、聞いてくれるか?違う、ぜ、ぜ、絶対に聞け!!」
「……え…?……うん……いいよ…………きかせて……?
…………ムントのおねがいを…………きかせて…………?」
「あの、その…………俺様も、だな、その………… 、なるから、
お、お前も、お、 、なってほしい…………。
…………………………だ、駄目か…………?」
「…………う、うるさい……や、や、やなこった…………」
「……………………駄目、か…………」
「あ、あ、当たり前ですっ!そんな恥ずかしいお願い!き、聞いてあげませんっっ!」
「お、おお、お、お前っ!人にはあんなに恥ずかしいことを言わせておいてっ!!」
「ム、ムントのおねがいのほうが、もう、すっごくはずかしいぃっ!!!す、すけべっ!!!へ、へっ、へんたいっ!!!!」
「お、お前――――!!…………ん……っ!」
「……んんっ、んふぅ…んむっ………んぅっ…」
「ん……っ……ぅぅ…ユメミ………ん……」」
「…んっ……ぁ………んんむっ………ムント……………………ありがとう……………んんっ……」
「ぅ……ん、っ……はぁ…………ユ、ユメミ…………?」
「…………わたしも、ムントを、あなたのことを…………あいしています………………
……だから…………おねがいです…………ムントさま、きいて……ください………………
…………わたしの、ほんとうのさいごのおねがい…………かなえて、ください……………………
………あなたを、きもちよく……させて、ください………なんでも、すきなこと、して……………ください………………
……わたしを、きもちよく………おかしくして……たくさん、いじって…………キスして…ください…………
…………わたしの、おもらししちゃった、この、なかに…………はしたない、わたしのここに………………
………………………………あなたの…………いれて…………ください……………………」
193 :
5:2009/04/03(金) 19:03:59 ID:NdidEFac
申し訳ない、10節うpの間違いでしたorz
>>193 こんな長いの初めて見た。
乙、そしてがんがれ!
神GJ!がんばれ!
196 :
5:2009/04/04(土) 22:21:57 ID:KQmDwhlG
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は4節うpします
では、どぞ
――――即答は、できなかった。
時間が重い。彼女の「ほんとうのさいご」の願いに、ムントは答えられないでいた。
応えるつもりはある。が、これで彼女とは終わってしまうという抗いようの無い事実に、畏縮してこたえられないでいる。
彼女の想いは理解している。理解し切っている。互いの壁が取り払われたからこそ、彼女もまた願ったのだ。
いずれにせよ、彼女の願いは自分の願いでもあり、彼が叶えるのではなく、一緒に叶えたい。
それでも、恥を快楽も、想いもまた分け合ったこの時に、終焉が近付くのを恐れずにはいられない。
胸が、苦しい。苦しくて、この胸を自らかっさばいてしまいたい。
彼にも彼女にも、いるべき場所がある。自分もユメミも、いるべき世界が違う。
だからこそ、彼女は戻ると決めた。彼もそうあるべきと考えた。
ただ、彼の抱くその根拠は今、頑なで単純な「いるべき、あるべき」よりもいくらか彼女を考慮したものとなっていた。
彼女には、家族が、友人がいる。彼女の大切な人達は、彼女の世界にいる。
彼等に別れを告げずにこの世界に留まる事も、それ以前に、彼等との別れ自体も、彼女は決して望まない。
彼もまた、彼女の嘆き悲しむ姿を望んでいない。いかに大切であろうと、ひとつの愛の為に切り捨てていい絆など無い。
互いに求め合ったこれまでも、彼女は天上に残るとは言わなかった。彼もまた、それを彼女に強いずにいる。
彼はそんな彼女が嬉しかった。どんなに理性を失っても、堅い決断だけは損なわれていない。そんな彼女が嬉しかった。
そう感じる自分自身にも、彼は納得している。
だが、その一方で、自らを情けなくも感じていた。
ユメミへの想いは、彼女の意思を無視しその手を取って従えさせるような、狂える程に猛られるものでは無いのかと。
ならば、彼女はどうなのか。彼女はこの自分の手を取って、天上ではない、自らの世界に引き込もうとしないのか。
可能か不可能かは関係無い。俺様の意思も関わらず、彼女がそれをしようとするのかしないのか、それだけを見ていた。
だが、わからない。彼女はそんな人間ではないと思うが、彼が思うだけであって、実際はどう考えているのかわからない。
彼女を理解し切ったつもりでいたが、実はそうでもなかったらしい。それすらも、情けない。
――――あの、その…………俺様も、だな、その…………おかしく、なるから、
お、お前も、お、おかしく、なってほしい…………。
…………………………だ、駄目か…………?――――
あれが「さいご」の願いなどと、今この時の意味を認識していなかった自分が、最も情けない。
彼女の「ほんとうのさいご」を聞いた後だからこそ、この軽率さも、彼女の優しさも、浮き彫りになっていく。
彼女の手を、握りたくなった。両手でそっと握った細い指は緊張こそしているが、やわらかく、それに、あたたかい。
やさしく彼女を包もうとする彼の指。逆に、その内奥は千々に乱れていた。
(この手を…………!!この手を取って、ユメミと共に歩めたら!!!いつまでも共に歩めたら…………どんなにか!!!!)
言ってしまいたい、しかし、決して言ってはならない。彼女が拒めば、傷付くのは彼女自身だ。
(ユメミも俺様も、傷付く為にしているのではない!!!!)
湧き上がる未練を全力で否定し、彼は天井を仰いだ。
彼女から見えない朱色の瞳から落ちまいと、光るものが彼に留まっていた。
彼は意を決し、涙を強引に枯らして、彼女の瞳を見た。
今このひととき、全霊を以て彼女を愛し抜く。ひたすら彼女を愛し抜く。
そして、彼女の愛を余す事なく受け止める。彼女の身体も心も味わい尽くし、自分もそれに応え切る。
口には出さず、胸の内に滾らせて、後はただ彼女と向き合うのみ。
決意に似た願いこそ、彼女への「ほんとうのさいご」。彼女の想いもまた、言葉は違えど心は同じであると信じて――――
「ユメミ、お前の願い、一緒に叶えよう……!!」
「……ムントっ……!!んっ!んふぅ!!」
――――キスが、熱い。
彼のこころが、あつい。
手を握ってくれた時、優しい彼がそこにいた。
けれど、なぜか上を向いた一瞬、凄く寂しそうな顔をした彼が見えた。
本当にこれで「さいご」なのだろうか。これで「さいご」でいいのだろうか。
お願いを口にしながら、ずっと考えていた。せめて「さいご」に、「さいご」だから、自分にそう言い聞かせながら。
強くなりたい。たとえ遠く離れても、私を愛してくれる彼の為に、彼を愛する私の為に、強くなりたい。
でも、本当は、ずっとずっと、こうしていたい。彼とずっと一緒にいたい。ずっと彼の傍にいたい。
けれど、それでは、彼と一緒に取り戻したお互いの世界を生きられない。違う、私の世界で、私を変えていきたいんだ。
帰らなくてもいいのに、帰りたい。帰らなければならないのに、帰りたくない。
どうして彼はずっと一緒にいろと言わないのか。
どうして私はずっと一緒にいてと言えないのか。
違う場所で信じ合っていても、彼が傍にいなければ、私に彼が見えなかったら、私は――――
「んっ!!ムントっ!!やくそくしてっ!!!」
「ユメミ!?」
「わたしをずっとみていてっ!!わたしをみつけてくれたように、わたしをずっとみていてぇっ!!!おねがいっ!!!!」
「……ユメミ…………」
「……もっと、もっと……つよくなる、つよくなるからっ……!!!
ずっと、ずっと、みまもって……みまもっていて……っ…!!!」
「ユ、ユメミ……!!」
「……っ、ぇっ…………
さいごのおねがいなんて………っ!
……できない、よぉ…………!!!」
彼がいないこれからを思うと、涙が止まらない。前ならこんな事は無かったのに、涙が止まらない。
「約束する!!!だから、ユメミも!!俺様に誓え!!!」
「ムント…っ!!!」
強い瞳の彼がいる。私が大好きな彼がいる。
「俺様を信じろ!!!お前を信じろ!!!俺達を信じ続けろ!!!俺もお前を見守る!!信じ続けている!!!!」
「…………うんっ!!!ぜったい!!ぜったいだよっ!?」
「絶対だ!!!絶対、約束は守る!!!お前も守れ!!!いいな!!!!」
「うんっっ!!!んっ、んふぅ!!んむうぅぅっっ!!!!」
キスと口吻、ユメミとムント。
ふたりの舌が縺れ合う。唇が擦れ合う。唾が絡み合う。ふたりの口が、満ちていく。
「んふぅ……ムント……!!やくそく、んっ、だよ……!!」
薄く瞼を開けた彼女。彼も同じく半目を保って、彼女を見つめる。
「絶対、だ……ん、お前を、お前だけを、見続けている……!!」
彼の右手が彼女の下に、彼女の左手が彼の下に、交差しながら擦り寄っていく。
「んんっ!!んああっ!!!」
「うっ!!あ、ぁぁ……っ!!」
彼の指は彼女の下の突起を緊張させ、彼女の指は彼の下の袋を柔らかくしていく。
「そ、そこ!!だ、だめっ!!!あ、あんっ!!!」
「好きにしろと言ったのは、ぅっ、お前だ!!!」
「だめえっ!!おかしく、なっちゃううっ!!!」
「あぅっ、おかしくしろと、言ったのも、お前だっ!!!くぅっ!!!」
身をよじらせながら互いを叫び続けても、手は、指は止まらない。止めたくない。絶対に止めない。
彼女の指が彼の怒張を掴んで摩り始め、彼の指も彼女の中に2本入りながら刺激の核の皮を剥いていく。
「うああうぅっ!!!や、はあんっ!!だめええっ!!!」
「くあぅっ!!ユメミ!!少しやさしく、触ってくれっ!!」
「ああんっ!!ムントさまだってぇ!!もっとっ、やさしく、し、ないとっ、ぁああんっ!!はんっ!!あんっ!!」
彼女の腰を潜って彼の左手は尻を愛し、彼女の右手は彼の頭と枕の間を摺り抜けて頬に回る。
彼女の尻にあてがわれた大きな手、彼の右頬を撫でているちいさな手。
「んんっ!!はぅ!!んふぅっ!!ぁ、んん、んっ!!」
「ぅ、っ……ん…ふぅ……く!あっ!はぁっ……!!ぁ……っ!」
きつく抱き締め絡み合い、それぞれの口の中で舌と舌が暴れ、恋人と恋人は淫らな熱の吐息で必死に快楽を伝える。
「あ……ああんっ!!んっ!んむぅぅっ!!!」
「ぅ、はああっ!ぅぁ、うっ……ユメミ……!!」
「あんっ!ぁ、はん、はぅ、んんっ、んぅっ!ぁぅ…ムント、ムン、トぉ!ああうっ!!ムントさまぁっっ!!」
細い指が彼の根本から先まで撫で巡り、太い指が彼女の奥の柔壁へ突き刺さっては引き戻される。
彼の竿には先刻に出た古い白濁、彼女の猥口からは今湧き出る新しい愛水。
「だ、だめっ!だめぇっ!!おかし、くぅぅっ!!ああああんっっ!!」
「ぁ、ぁはぁっ……いいんだ!おかしくなっていいんだ!!ユメミ!!」
「はぁ、あん、ムン、トさ、まっ!わたし、のっ、ゆびっ!!きも、ち、いい!?ふぁああんっ!!!」
「気持ちいい!!ユメミの指、気持ちいいっ!!ユメミ、全部っ、気持ちいいっっ!!!」
「う、うれし、いぃぁっ!!ぁんっ、うれしいっ!!んんっ、んっ、ぁんっ!」
ふたりの上からも下からも異なる音が反響し合い、互いが互いを深淵まで蕩かしていく。
相手に求め自ら進んで柔らかな胸元と締まった胸板を圧しに圧し、愛する匂い、愛される匂い、愛し合う匂いに染め堕とす。
「はうぅっ!!やんっ、はんっ、だめぇっ、まだ、だめえぇっ!!ムントさまっ!あああんっ!!」
「ユメミっ!!ユメミっ!!!」
「ぁんんっ!!ぃやああぁっ!!キ、キスっ!!ひぅぅっ!キスしてぇっ!!!だめぇっ!!はんっ!!!」
「ユメミ!!!」
強く唇を貪り合うが、次第に彼女の力が、唇も舌も、抜けていく。彼の愛を受け入れ切って、ただたたずむばかりに。
「ユメミっ!!」
「だ、だめええええっ!!お、おかっ、おかしくっ、おかしいっ!!こ、われ、ちゃうううぅっっ!!!」
(――っ!?まだ待つんだっ!!!)
彼は咄嗟に指を彼女の中から抜く。
「はぅぅっ!!は、ぁぁ、ぅぁぅ、はぅ……ぁ、はぁ……ぁん、っ………ムント、さま…っ……どう、して………?」
息は乱れて身は奮え、それでも彼女の朧な視界は彼の輪郭を取り戻し始めた。
おかしくなるのに、こわれちゃうのに、しあわせなのに、どうして止めるの――責める彼女の唇に、何も言わない彼が重なる。
「…………んっ……」
キスしながら、彼の右手が彼女の左肩を押し倒して仰向けにする。その右手はユメミを倒すと、左手と一緒に彼女の両脚へ。
「あ…………っ……!!」
開かれた。彼の手が開いた。違う、自分でも開いていた。彼と一緒に開いていた。彼が脚の間に移り、正面から視線が重なる。
「ぁ、は……はずかしい……!!!」
そんな自分が恥ずかしい。恥ずかしくておかしくなりそう。
(はしたないばしょをむんとさまにみられてる)
秘められていたユメミを、彼は見ている。微かに開いた淫肉の赤熱を、彼は見ている。その先の彼女の瞳を、彼は見ている。
(ぴくぴくふるえておかしくなっちゃうあそこがはずかしい。くちゃくちゃにこわれちゃうあそこをみられてる)
奮える猥唇を、奮える突核を、彼は見ている。自らの放った汚れの残る両膝を掴む、その手に伝う奮えを、彼は見ている。
(きっと、おもらししてる。いまもでてる。おしりにたれるのがわかるもん。あんっ、でてるよっ、みられてるっ)
愛液が跳ねる。垂れる。断続的に溢れ、腿より怠け堕ちる白濁と混ざるのを彼は見ている。もう一度出た。それも見ている。
「ぁ、ぁぁ…………!」
言葉を失う彼女に微笑み、彼は体勢を整えながら、脈打つ自らの下を彼女の入口に近付けていく。
「……あ、あん……っ…………!!」
尖端が、秘肉に触れた。表面が圧され、中に残った汁が溢れては、彼の長大へと伝い流れる。
「ユメミ……可愛い…………可愛くて、綺麗で…………凄い…!!」
「はうんっ!!」
感嘆する心と同時に、彼の理性は鍵穴を探す。
今日まで彼女が意識せぬまま守ってきた、だいじなだいじなピンクのたからばこ、その中身を開ける鍵穴を。
あともう少し。
頑張れムント様、ユメミをモノにするんだ!
将来の魔道国王妃に・・・!!
いっけね、魔導国だった。
203 :
5:2009/04/06(月) 19:18:08 ID:8+uu0hfE
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は合体前半
7節のうpになります
では、どぞ
彼女の穴が、見つからない。指でならすぐに見つけられるのに、敏感なはずの尖端は見つけられないままでいる。
彼が、入ってくれない。ほしくてたまらないこの心を虐めて嬲り、羞恥に濡れた中へ入れず表層を焦らしてばかり。
赤黒い亀頭が、桃色の秘肉を圧し擦る。圧して圧されて汁と汁が混ざり、猥らな輝きと水音が生まれる。
「んぅっ!ん、あぁっ!!」
「……っ、うっ……!」
このままでもいい。けれど、我慢できない。互いにそう思っているのに、なかなか先に進んでくれない。
彼女の柔らかい門壁が、固く閉ざして彼の侵入を拒んでいる。彼の硬い化身が、埋もれた穴の在りかを探せないでいる。
「はぅ………ムント、いれて……?」
「あ、ああ……ユメミ…………」
答えながら、彼は彼女の脚をもう少し開く。そうすれば、入口がはっきりとわかるはず。真先を圧し当てたまま、開く。
「ぅんっ!ぁ、はぁぁ……んっ……!」
白い胸元とピンクの宝石が揺れる。彼女は右の細い指を、唇に宛がう。くわえずに、濡れた唇にただ宛がっている。
「ぁ……お、おねがい…………いれて…………?」
彼女の左の指はそろりと彼の先に這い、
「うっ……!!はぁ、ユメミ……」
軽く摘んで、自らの入口へ導こうとする。
しかしながら、この時彼は入口を見つけていた。見つけてみれば、予想より下の露肉をまさぐっていた。
だが、穴の口へ上ろうとする彼を、彼女の指が、ふたりの意に反して更に上へと擦り上げる。
「ぅおうっっ!!」
「んあぅっ!!!あふ、うぅっ!!!そ、そこ、ちがう、んっ!!!」
淫核と鬼頭、繊細な彼女と彼が触れ合う。
触れて揺れても、離れる事は無い。擦り合えば擦り合う程、紅くなっていく彼等のふたつ。
「やあぁ、んっ、ん、っ……!!ちがうけ、ど……」
「ぁ……あ、ぁ……」
「……あつくて………へんっ、に、なっちゃうぅ………」
彼女の指が彼をそこに圧し当てるのか、彼の意思が彼女のそこへ擦り寄るのか、ふたりにはもうわからない。
恥ずかしさに悶える快感。奮える裸体の美しさ。その当たる僅かから伝わる熱。密に抱き触れない身体と身体の歌う疼き。
愛する者の恥ずかしいところに自らが触れている事実。自らの恥ずかしいところが愛する者に触れている事実。
嬉しいと思う。偽りは無い。それでも、違う。
彼は鍵穴のありかを彼女から教わって見つけた。彼女は鍵穴のありかを彼に教えて見つけさせた。
なのに、入れられないでいる。
赤黒い尖端と紅奮する小突を、温い音を立てて擦り合わせては悶えて咽ぶだけで。
出会った時は、彼が彼女の手を取って力強く導いていた。
一度事が終わって、その手を取る事を願いながら分かたれていたふたり。
彼女は彼の夢を見て、その手を届ける術を探していた。彼は彼女の過去を見て、その手を届ける事を躊躇った。
やがて、彼女は右も左もわからなくとも、差し出したその手は彼の心を開かせて、彼に彼女と向き合う決意を与えた。
強く握って引っ張り回した、大きな手。やさしく触れて大切な気持ちを教えた、か細い手。
一緒に歩みたい。けれど歩めない。
何を言っても正しくなる理由達が、彼女と彼を今、再び、分かとうとしている。
熱の凝縮した場所と場所だけが離すまいと合わさって、寄せに寄るその姿はいじらしくもあった。
焦れている。焦らされている。それで良かった。焦らされたままずっとこうしていたい。終わりなど、欲しくない。
だからふたりは何も言わない。ただ恋人を感じる声のみが溢れ出ていくだけで。
「ぅ、く……うぅ……!!」
「んっ…あ、あぁ…っ……!!」
快楽を訴えるはずの声と声には、悦とは明らかに異なるものが混ざっている。
見つめ合う恋人達の瞳には、涙が流れていた。
瞳も目尻も潤んでいない。それでも、確かに涙が流れていた。
破裂しそうな刺激を得ても尚、狂う事を許さない。天国と地獄を感じる。違う。天国の姿をした地獄がある。
別離を拒むふたりの見るもの、抱く想いは全く同じだ。しかしながら、男女の刺激の体感には、隔絶する程の開きがある。
ユメミはもう限界だった。
ムントに愛されて露出した充血の突起が、彼と進んで擦り合っていながら、彼女の忍耐を絶えず鋭く抉り続けていた。
このままでと願う強い精神は、小さな臨界を何度も超えながら耐えさせていたが、同時に少女の身体を疲弊させてもいた。
猛烈に駆け巡る女の快感と、心の片隅から消えずに固着した少女の悲嘆。
身も心も灼き尽くす天上の地獄で自分を保つには、今の彼女はまだ、弱かった。
(もう……だめええっ!!!)
何度も意識してきた限界が嘘のように、何と言う事も無かったかのように、彼女の理性を痺れ尽くしていく。
(…………むんと、さま…………)
彼との別離を、受け容れた。彼との先を、求めた。快楽にこわれた心は、彼を摘む指を動かして、自らの中に導いていく。
「あ………っ!」
呆と呑まれた。彼はただ呑まれた。俺様が、ユメミの中へ入っていく。
「ぁ、はあぁぁんっ!!あ、ああっ!!」
ゆっくりと、入っていく。入り込んでいけばいく程、彼女の中は柔らかく、きつく締まっていく。彼はただ咽ぶ彼女を見ている。
「ぅ、あうぅ……!んっ、ふぅぅ、あんっ、はんんっ!!」
彼女の指が、中へ入れていく。咽ぶ彼女の瞳を見ていたら、彼はこのままではいられなくなった。
(………………一緒に、入れよう…………)
彼女が彼を中へ入れていく。彼が彼女の中に入っていく。彼が彼女を変えたように、彼女が彼を変えたように。
奥まで達し、彼が体重ごと彼女に身体を傾けて、突き圧したその時、
「だめえええっ!!!ぁああああんっ!!!だめえええぇっっ!!!」
悦びとも嘆きとも見分けられない声が、石壁の部屋を痙攣を響き渡らせ、ふたりの空気を一瞬で塗り返えた。
「あ、はぁ……ぁん、あんんっ、はぁ、ぁ、あん…………」
どこも見ていない彼女の瞳。ユメミを案じるムントは彼女の中から自らを退き始める。
「あ、んっ!ま、まってぇ……ぬかないで……」
制止に留まる彼。留まり、脈打つ彼。
「んふぅ!あ、はぁぁ…っ……!」
中の奮えが、絶頂に弱った彼女を撃つ。
「あ、あんっ!!んあうぅ……!!」
圧しながら、彼は彼女の上に自らの身体を覆い被せた。
開かれた彼女の太腿にこびりついた精液が、自らの汚れが、彼女を圧している彼の脇腹に纏わりつくのも受け容れて。
「ユメミ……」
目の前には彼女がいる。目の前には彼がいる。やさしくささやく彼がいる。もっとほしがる彼女がいる。
彼の腕が両脇から彼女の背へ潜ると、顔と顔がもう間近にある。
「ぁ、あんっ……ムントさま………ぅ、はぁっ、ぁぁっ…………キ、キス、して…………?」
求めた唇が、重なっていく。応える唇が、引き寄せられていく。
口と口が深く愛する程に、彼が彼女の奥へ、より深く入っていく。
「んんっ!んっ、んんぅっ!!んあぅ!!」
「……ん………ぅ、んっ……」
もっと、奥に来てほしい。熱い彼が、もっとほしい。彼の背中に腕を回して、唇を寄せたままきつく抱きしめようとする。
だが、彼の背中は何故か丸まったまま。期待する胸の膨らみを厚い胸板で圧してくれない。
「んふぅ!!んんっ……!?」
塞がり続けた唇に、ユメミはムントとの身長差、この場合は特に、腰から上の高さの差があり過ぎる事を思い出した。
やさしく激しいくちづけをしてくれる代わりに、ぴたりと抱きしめてくれる温もりが得られない。
(そ、そんな……だって、いままでは……)
キスをくれた今までの彼を思い出すユメミ。
彼の舌を受け容れた時のキスは、膝立ちになって彼を見上げる格好になって、彼が顔を近付けてくれた。
後ろから彼が虐めてきた時のキスは、後ろにいる彼に振り向いてねだり、彼が顔を近付けてくれた。
ふたりでベッドの上に寝そべって抱き合っていた時のキスは――身丈の差など気にする必要が無かった。
ここに至って彼女は知った。彼は彼女の求めるままに、その身を彼女の為だけに丸めては伸ばし、尽くしてきたのだと。
「あ、あぅっ!はあぁんっ!あんっ!!んっ!んふぅ!!んんっ!!」
彼の温かさが嬉しい。彼のやさしさに気付かなかった自分が恥ずかしい。
キスを求めれば体温が、体温を求めればキスがなくなる。
どちらもほしい欲張りな彼女の脳裏に、本当に傍にいてほしい人達が浮かんでいく。
「んふぅ!んん、あっ!!あんっ!!あうぅっ!!」
彼と共に天上で添い続ける事を願えば、母と、父と、弟と、友達と、会えなくなる。いなくなる。
彼等と共に地上へ戻る事を望めば、魔導国の、天上の王である彼が、ムントが――――
求める代償。唇と温もり、重なる残酷な現実を直視できないまま、彼女の腰は彼の挿送に合わせて揺り振れる。
泣いていた。彼女は泣いていた。
嬉色に流れたその涙の本当の意味を、完全にではないが、彼女の中を圧すムントも察していた。自ずと察せられてしまう。
だからこそ、彼女の唇と下を、ユメミを愛し尽くそうと、必死に献身する彼がいる。
「あん!!あんっ!!ああんっ!!!ん、んむぅっ!!んっ!!んっっ!!!」
彼女の声を聞けば、鼓膜から中が蕩けて心地いい。柔らくもあり強張りもする彼女の中も、温かくて気持ちがいい。
だが、今は自分の事よりも彼女の為にあるべきと、熱を伝える事だけに腰の動きを意識し、
愛を聞かせる為だけに唇を、舌を、濡れた彼女に絡ませて、今だけは心も身体も全てユメミに捧げたいと願い想う。
何も言わずに。何も言えずに。愛しいてるとさえ言わずに。愛しているとさえ言えずに。
「んっ!!んんんっっ!!んああぅぅっ!!ん、ふうっ!!ふうぅぅっ!!」
彼女の息が密度を増す。彼女の唇が荒くなる。彼女の中の奮えが小刻みに速くなる。彼女の声から恥じらいが消えていく。
絶頂が近い。数度も目にした彼女の果てる瞬間への記憶は、彼に彼女を覚えさせていた。
彼は唇を離し、振り圧す腰の動作を緩めた。息を切らす彼女。その瞳が何を訴えるものかは知っている。
瞳と瞳。彼女の背に回した腕で、髪と肩を撫でながら、ムントは囁いた。
「ユメミ、いいんだ。気持ちよくなって……」
「……ムント、さま……ぁ……?
…………えっ!ぁ、あんっ!!あああんっ!!」
突き刺す。突き、刺す。圧し込んでは戻し、突いては突いて突くし尽くす。
「ぁ、あ、ん、んあ!あぅ、はう!あん!んっ!ああん!!だ、だめ!!だめえ!!!だめえええっ!!!」
速まる腰に従って、彼女の声は切れては大きく、淫らになっていく。
ここに来て、王にも余裕が無くなっていた。彼女に突き刺した剛直から、ひりつく熱が全身の体感を一層加速させる。
「あ!ああ!!はんっ!だめえっ!!だめ、だめえぇんっ!!!こわれちゃう!!!きこえちゃううぅっ!!!!」
「ユメミっ!!一緒に、一緒に…………っ!!!」
「うん!!いいよっ!!!ああああうぅ!!!んはあああああんんっっ!!!」
奮えが目に見える、奮えが身体に伝わる、奮えが心に届く、彼女が果てる、果てながら、彼を包む柔壁が一気に締まっていく。
締まり挟まる快感を得ながら、まだ堪える彼。堪えて集中するその視線が、ふと彼女の唇を映してしまう。
薄く開いた彼女の唇。ちいさく濡れた、ユメミの唇。何をも言わず、薄く開いた、ピンクのくちびる。
「う!!く、くううぅっっ!!!」
気が奪われた瞬間、弾けて、流れていく、中へ、流れ込んでいく、全身が遠のく、虚脱が彼を引きずり堕としていく。
だが、それでも、まだ、
「ぅ、ユメミ……!」
彼は汚れを放つ化身を彼女の奥まで圧しやったまま、目の前にある唇を、息を乱して奮えるユメミの唇を――――
「ん、んんっっ!!」
一度強引に貪ってから離し、唾に塗れた舌で彼女の唇をなぞりつつ、零れる息を感じながら、彼女の舌が絡まるのを待った。
「……ん、ん…っ……んんっ…………んっ………………」
「……ん…………う、んっ……」
その舌は、唇は、もう、泣いていない。一筋の涙を流して、陰の無い微笑みを見せてくれる彼女がいる。
「んっ……ムントさま…………だいすき……んんっ…………」
「…………愛している、ユメミ………ん……」
唇を重ね続けるふたり。部屋の壁上の小さな窓から見える夜空は、未だ暗いまま、夜明けを告げる青みを帯びる気配も無い。
「ムントさま……まだ、だいじょうぶ…………?」
彼女が気にするのは時間ではない。彼女の中で硬さを失いつつある彼だった。
彼女も腿で彼を絶頂に導いていたが、それ以前に彼女が愛する彼だからこそ、今の状態を理解できる。
「あ、ああ、大丈夫だ……」
「…よかっ、た……じゃあ、もっと、きもちよくなれるね………わたしも、ムントさまも…………」
舌は入れず、唇が触れるだけ。それでも擦れる鼻は、愛おしさを伝え合って満ち溢れている。
「…………ああ。だが、さっきのようにまで戻るには、もう少しだけ、かかるかも知れん」
そう言う彼に残念そうな色は無い。こうして彼女に触れるだけで、興奮している自分がいる。ところが、
「…………そのまま、うごかして……?」
「ユメミ?」
ねだる彼女に驚く彼。彼女は続ける。
「……このままでいいから、ちょっとだけ、うごかして…?……ムントさまが、きもちよかったらで、いいんだけど……」
「…………この、硬さでか?」
「うん」
適切な表現か定かではないが、今の下の硬さは、彼が思う最大時の半分程度。
男は硬くなったものを穴に入れる、女は硬くなったそれで快感を得る。
そう思い込んでいた彼には、彼女の可愛らしい懇願が、些か奇妙に聞こえた。
二度も出し尽くした後で、多少は痛い。いや、痛いのとは違うようだが、少しだけ休めたい気はする。が、
「おねがい……うごかして……?…………ね……?」
「……………………ああ……」
未完が故に男を溶かす、いじらしい艶色に彩られた彼女のおねだりは、魔導の王を跪かせるのに充分過ぎる威力を持っていた。
彼は蕩けて、何も言わずに腰をやさしくユメミの為に動かす。
「んっ……ああんっ……!」
奮える嬌声に彼は蕩けて、腰をやさしくユメミの為に圧しつける。
「はあぁん……あんっ、もっと、わたしの、いりぐちに、ちかいっ、ところを……んあん……っ……お、ちん……あんっ」
力ない嬌声に彼は蕩けて、腰を少しだけ引き、穴からちょうど入った中、入口に、柔棒をユメミの為に前後させる。
「あ、はんっ、そこ……そこぉ……っ!やわらかくて、すき………ムントのおちんちん、すきっ、だぁいすき…………っ」
蕩けた嬌声に彼は蕩けて、自らの腰を左右に揺らし、彼女の穴の入口を、ゆっくり、ゆっくり、ユメミの為に掻き混ぜる。
「あ、ああぁん!!だ、だいすき!きもちぃ、いっ!!ムントさまぁ、あっ、だいすきっっ!!」
彼女もまた、ムントの為に快感の嬉色を隠さず、ムントの為に肉棒を味わい、ムントの為に腰を揺らしていた。
彼女の表層からやや埋もれたところで、彼女の愛と彼自身の精に濡れ撫でられるうち、
彼の欲がまたもや硬さを取り戻して、よりはっきりとした刺激を彼女へ与え始めた。
「あ、あう、んんっ!あんっ!」
締まる。締めつけてくる。可愛い叫びを挙げ胸を奮わせてながら、ユメミは自分を締めつけてくれる。
それでも、彼への刺激は鈍い。放った直後で仕方がないとは言え、蕩け切った彼には我慢などできるはずもない。
「んっ!!!あ、あぁ……ぅんっ!!!」
奥へ、奥へ、圧し込んでいく。彼が彼女に放った白濁が愛液と混ざり、圧されて外へと溢れて出ては堕ちる。
「はん、んっ……!んはぅ!あ、あぁ……ムントさま…………あつくて…………かたくっ、て…んっ……!ぅ、ああんっ!!」
シーツを掴んで身をよじる彼女。背中は勝手に浮き上がり、脚に力が入らない。それでも腰は彼に従って揺れてしまう。
「あ、んっ、ふ、ふぁう、あうっ!あん、あんんっ!!」
喘ぐユメミをその目に見ながら、彼は彼女に被さる上体を起こし、開かれた白い脚を腕で抱え掴み、彼女を引き込む。
「んはうっ!!あんっ!ぁ、ああ…ん……っ!!ム、ムントぉ………!」
彼に映るは切ない瞳。彼に映るは綺麗な少女。少女の裸体と、胸の膨らみ。
分身を圧しこみながら、ムントはユメミの柔らかいふたつの丘へ手を伸ばす。
「ム、ムント……あ、あふんっ!!」
揉む。弾力が、心地いい。指を広げて、揉みしだく。
「うあんっ!ムントさま、は、はずかし……ああんっ!!」
紅潮する彼女の抗議は、彼の律動に遮られてしまう。
「あ、あはぁっ!!あんんっ!!だ、だめえっ!!!ああんっ!!」
時には激しく犯して、
「ぁ!んっ!!は……あ、あぁ……ん………んんっ………」
時にはやさしく愛し、
「んはぅぅ!!だ、だめっ、やだっ!い、いれて?ちゃんと、いれて?」
時には彼女の入口に先だけ埋めて掻き回しては焦らし、
「あ、ぅ……お、おねが、ぁ、ぃ……っ…………いれて…?………おくまで、ほしいの…………っ!」
時には彼女のおねだりを聞きながらゆっくりゆっくり入れる。
紅く火照った秘肉を辱める。それは童貞の王が少女のはじめての肉体から学んだ、ユメミの為の巧みさであった。
蕩けても、ユメミの為の彼がいた。それでも彼は、奥までは入れてあげない。まだ入れてあげない。
代わりに彼女の胸の上に宛がう指で、ユメミの敏感なところを摘んであげる。
「んっ!!!ぇうっ!!あううんっ!!だ、だめ、だめだよぅっ!!だめなのっっ!!!はああん!!!」
ふたつの尖端を彼に転がされ、彼をくわえている彼女の下がはしたない涎を垂らし、彼の挿送に跳ね飛んでていく。
そんな事など、彼を受け容れる快感に全ての神経を注いでいる彼女にはわからない。
彼女にはわからない。だが、ムントが彼女に教える。乳首を摘んで弄ぶ彼が、悦んで腰を揺らす彼女を見下ろしながら教える。
それに用いるのは、言葉ではない。
ムントは律動を止めた。
「あ、は、はぅ…………んっ…………」
ただ入ったままであっても、中で彼がおおきな鼓動を打っている。それだけで、この身体は感じてしまう。
むしろ、彼のあたたかさは、こうして動かさない時の方が、より切実に広がっていく。
終わらない快楽に奮えながら、自然とそう感じる彼女は嬉しくなった。
このままでも、動かしてくれても、別のことをしてくれても、きっと気持ち良くなれる。期待が果てずに大きくなっていく。
だからこの瞳は彼の姿を見つめて離さない。右手を胸から放して、繋がっているはしたないところに触れる彼から、離れない。
「あ、あんっ……!」
繋がるあたりを、彼の指が触れて巡っている。そこから離れた指は、伸びて、近付いて、彼女の顔の上で止まる。
「あ、ああ…………!!」
一滴、白く透明な粘りの汁が、頬に堕ちる。
「んっ、ぁ、ああっ…………!!」
一滴、下唇へ、白い糸を引きながら、堕ちる。
数滴、透明の液が粘りなく堕ちる。直感的にそれが新しいと、彼女は理解する。
(……また、おもらし、しちゃってたんだ…………)
透明のものは私のおもらし、白いものはムントのおもらし。白く透明なのは、ふたりのおもらし。
(わたしのなかから……でていたの………?)
彼が触れていたのは、繋がっていたあの部分。
(……やっぱり、むんとさまもさっき、おかしくなって…………)
彼女は両手で彼の右手を取る。糸の垂れる指を、垂れた瞳で見つめながら、
(…………わたしのなかで……おもらししちゃったんだね…………?)
下唇に垂れた精を、ちいさな舌で舐めていた。今も唇に垂れゆく白精を、舌で絡め取っていく。
(………………ほしい…………)
その手を、滴り光るその指を、ユメミは濡れた唇へ導いた。
「……んっ………」
彼の人差し指の先で、閉じた唇をなぞる。彼に濡れる。彼に濡らされてしまう。ムントが、唇に広がっていく。
「んん、んっ……」
人差し指以外の指は握られて畳み込まれる。唇に当たるその指に、ユメミは微かに力を感じた。
「ん……ん…っ!」
指には彼女の中へ入る意思は無かったが、ユメミはその力に従順になって、閉じた唇と唇の隙間に彼の指を埋め込ませる。
「……ん、ぅ……」
くわえた唇へ、指の上から熱い液が堕ちて垂れる。舌を出し、指と共に舐めていく。
蕩けた彼女の瞳は、彼の畳んだ親指から、白い糸が自らの首に垂れ下がっていく様を映し出す。
(あ…………もったいない……)
それがどれだけおかしい感覚か、何度も彼におかしくされた彼女にはもう意識できない。
続けて彼の手から堕ちていくふたりのおもらしを舐めるつもりで、
ユメミは彼の指をくわえたまま中へ導き、舌を這わせて舐め続けた。
そこにいるのは、ひとりの少女。しかし、彼女は少女でありながら、もはや少女ではない。
(……むんとの、むんとさまの、あじ…………)
淫らに垂れて美しく蕩けた瞳で、とろりとした彼の味を、抗う理由もなく受け容れているひとりの女。
(…………むんとさま……うれしい……)
少女から女へのユメミのひとつの成長は、彼女を愛して弄んだ、今この唇にくわえた男の指からはじまる事となる。
_,,..i'"':,
|\`、: i'、
.\\`_',..-i
.\|_,..-┘
もう、ラブラブすぎて失神しました。
ユメミがどう教育されるのか、期待。
リアルで鼻血が出たww
ムント様のおにんにん舐めてあげるねなユメミたんもよろしこ
ムント様えっちぃ。
このまま妊娠させるつもりでやっちゃってください。
孕ましてやるお(^ω^)
なんというエロスw
だがもっとやれ。
いや、やってくださいお願いしまつ。
218 :
5:2009/04/09(木) 01:14:21 ID:B7AjXXov
「ユメミは少女じゃいられない」
合体部の後半…………の前半ですorz
今回は7節うpいたしやす
では、どぞ
「ん、んっ……ん、む……っ……」
ムントを口にふくむユメミから、淫らに漏れる声と息。彼に満ちるふたつの口は、彼の愛と欲望を悦んで享受していた。
上の口は、彼の指。ふたりの絶頂の汁が絡み付いた、強くて太い右の人差し指。
舌を這わせ、わざといやらしい音を立てながら舐め取り、汁の味を、指の味を、彼を感じている。
下の口は、彼の鎌首。あたたかい愛とたまらない白汁が詰まった、硬くて熱い鎌首。
微動だにせず様子を窺う蛇の首が、処女を失った秘肉を少しずつ貪り、やさしい快楽を浸透させていく。
(もっと、ほしい……)
彼女の欲求に同調して、彼をくわえ込むいずれの口からも、はしたない涎が垂れ下がる。
「ん、んふぅ………んんっ………」
彼の左の指に乳首を摘まれ、絞り出されるように弾ける声。その声は、先のように大きくもなければ強くもない。
彼女の感度が鈍くなったのでも、飽きが回ったのでもない。むしろ最初に彼にいじられた時よりずっと敏感になっていた。
深い官能の淵に囚われた彼女は、彼の指をくわえるうちに甘い快楽を自ら得られる事のできる声を見つけ、
それを繰り返し用いていくに従って気持ちいいと感じられ、まだ足りないと願う彼女に更に淫らな声を出させ続けていた。
この声も好きになってほしい。いやらしくてはしたない私の全てを好きになってほしい。もっとはずかしくしてほしい。
自らを貶める事で深い快感を得られる。それを彼に見られる事でこの身体はより激しく燃えておかしくなれる。
意識せずに識っていた自らの性質をはっきりと知覚すると、彼女はもう、ムントの為に羞恥をこわす事を躊躇わない。
「んふ、んっ……んんっ……」
彼の指を掴んで口に導くのは右手だけに任せ、左手は心臓の上、その尖端に堕りていく。
「んっ…………!!」
細い指で、摘んだ。
「ん、んっ、んふぅ…………!」
それから、揉みほぐす。
その指には、彼の手を取った時にこびりついた、彼女と彼が愛し合ってつくったあたたかい粘り。
「んっ!んん、んぅ……っ…………」
自分のおもらしで乳首の先を塗っている。彼のおもらしで乳輪を塗っている。
ふたりのおもらしをこの胸に、いっぱいに撫でて塗り広げている。
その手を胸に這わせたのが揉み摘む為である事も忘れ、彼女は暫くその行為に没頭していた。
(ああ……はずかしい…………けど…………
むんとさまのおもらしが、わたしを………………)
恥じらいと愛おしさが錯綜し、気付かぬままに彼を感じる腰を揺れ動かしていた。
「ん、んぅ、ん……んんっ…………」
動きを見せない剛直を締め擦るユメミ。時間が経って自らに気付いても、彼女は止まらない。彼女にも止められない。
ただ、自分勝手だった腰は、気付けば気付く程、彼の為、ただ彼の為だけに、その動きを変えていた。
なるだけやさしく包み込むように試みながら腰を揺らす。できるかはわからない。あくまで彼女の気持ちの問題だった。
せり上がる快感に腰は絶えず動き続け、彼の熱を感じようと、彼に気持ち良くなってもらおうと懸命に奉仕していく。
これに我を取り戻したか、ムントは彼女の腰の動きに合わせ、淫肉の貪ろうと鎌首をもたげ始めた。
「んっ!んんっ!!んっっ!」
律動が戻る。自分で彼に尽くすのとは違い、力に任せた快感は彼女の期待を超えて満たしていく。
自分が腰を揺らす時は、その拍や強さを意識して調整できる。だからこそ、得られる快感もある程度は予測できる。
何分にもはじめてだから手探りではあったものの、彼からの快感を自ら得る糸口を少しずつ掴み出していた。
自分で彼を求めても気持ちいい。しかし、彼が与えてくれる感覚にはやはり及ばない。
「んっ!はぁんっ!!んあっ!!」
だが、彼に合わせて一緒に腰を動かせば、もっともっと、気持ちがいい。
あまりの快感に唇にくわえた指も、精愛の汁を胸に塗るのも忘れ、ユメミは嬉嬌を高く捧げて彼を迎え入れる。
「あん、ん、ぁ、ああんっ!あ、ふあ、んん、やあんっ、んあっ、はんっ!」
小刻みに悶える彼女をよそに、彼の右手の指が、するりと唇から抜け出していってしまう。。
「ん、あうっ!だ、だめっ!ゆびっ、ちょ、ちょうだいっ?ムントさまのゆび、ほしいよっ!!」
喘ぎながらねだってみても、彼の指は退いていく。胸の膨らみに触れた、その左手も。
「や、ぃやあぁっ!ムントさまっ!もっと、いじってぇ!あんっ!いじってよぉっ!だめっ!ああんっ!!」
彼女はムントを見ていた。引いた彼の左手は彼女の脚を掴む。そして、彼は聞いてくる。
「ユメミ……指が、欲しいんだな……?」
息が切れても、やさしい声は変わらない。朱い瞳も彼女を見つめている。
刺激に乱れている彼女は咽びながら安堵して、
「ぁ、は、はいっ!ほし、いっ!ほしい、のっ!ムントさまの、ゅ、ゆびっ、ほしいですっ!!あんっ!!うぅん!」
精一杯願った。泣きそうな声で。違う、くれないのが切なくて、既に目頭が熱くなっている。
「ム、ムントさまっ、くださ…いっ!あうぅん!!ゆ、ゆび、ムントのっ、ゅ、ゆびっ……お、ね…がいっ……!!」
挿送の速度が遅くなっていく。それはやがて完全に止まり、走り続けて息を切らすように、彼女の中で脈を打つ。
「ぅ……ん、んぅ……ぁ…………」
彼の指が、繋がる秘部へ下りる。
「あ、ん……っ」
人差し指をくれた前と同じように繋がる根本を触れ回し、ふたりの汁をその指に絡め集める彼。
(…………こんどは……たくさん、くれるの……?)
指もほしい。けれど、ムントの汁もほしい。いびつな期待にユメミの胸は膨らみ、奮えて揺れる。
だが、その指は、応えない。それが愛を届けるのは、濡れて待ち望む唇にではなく、彼女が忘れていた全く別の場所。
「ぇ!?あんっっ!?はううぅっっ!!!!」
彼をくわえて離さない陰唇の、少し上で勃起している桃核。
包皮を剥きながら集めた蜜を塗り込んで、人差し指の腹で円を描いて擦り回していく。
「あうんっ!!!はう!!!ち、ちが…あはんっ!!!」
指を求めている場所が違う――否定しようとする彼女だが、敏感過ぎる核をいじられて感じてしまい、言葉が繋がらない。
しかも、指だけではなく律動までも再びはじまる。外も中も刺激が駆け巡り、簡単に理性の境界へ追いやられるユメミ。
「あ、はう!!あうっ!!あ、う、ちが、んあ、ひゃふぅ!あ!はん!!あ!!や、やだ、ぁ、ふぁ、んんっ!!!!」
首を振り回し、声を挙げに挙げ、背はベッドから浮き、乳首が揺れる。
彼女の許容を超える刺激を受け続けさせられる彼女は、自らの痴態を御せないまま過剰な快感に苦しんでいた。
「あふぅ!!や、ぁ…………あああぁはああぁんんっ!!!!――――」
果てる、果てて、意識が真っ白になる、それも一瞬だけ。
「――――あぅ!!!ぁ…ああんっ!!!や、だ、だめっ!ああぁ…あんんっ!!!!」
果てた後のしあわせな微睡みも、彼のもたらし続ける残酷な刺激が奪い、彼女の意識を連れ戻して更に責め立て続ける。
波が止まない。彼が止まらない。痙攣する脚の感覚が無くても、はしたないこの中だけは、鋭敏に彼を感じてしまう。
(さ、さっき、こわれちゃったのに、ま、また――)
「――はぁんん!!!んっ!!んっ!!あぁんん!!!」
シーツを掴み、それでも足りずに掴み直して、精一杯我慢しようとする。
痛くはない、確かに気持ちいい。しかし、悦楽に果てる事を許さない責め苦は、ユメミを望まぬ狂乱へと追いやっていく。
「あぅ!!!あんっ!!ん、は、うぅ、あああんっ!!!」
ユメミの中が、彼に掻き混ぜられている。
「ひふぅ!!んは、はあう、んあう、やんっ!!!あうああんっっ!!!」
彼の硬い尖端が奥の柔壁へ当たり、圧しては引き、引いては奥へ圧し込みを繰り返し、彼女をじっくり掻き混ぜている。
「ひゃんん!!あん、あはぁっ!あ、あぅ、あ、んはぁ!!だ、だ…め、い、あああんっ!!!」
ユメミの外が、彼に撫で回されている。
「やああん!!!はんっ!!!だめええええっっ!!!!んゃああああうっっ!!!!」
絶頂に奮える露出したピンクを親指の腹で圧し擦って、彼女を愛おしみながら撫で回している。
「ぁ、ん……は!はううっ!!!あうっ!!!」
ユメミが、彼にこわされていく。
「あ、んあ!い、いや!ああ!!ん、く…あふぅ!!だめぇ!!もう、やめてぇ!!!だめええっ!!!!」
中はやさしく掻き混ぜられ、外はぐちゃぐちゃに撫で回されて、ユメミがこわれていく。
「お、おねが……ああう!!!や、ああふ!!!だ、だめえええっ!!き、もち……ああああんんっっ!!!あんぅ!!!!」
「……ぁ………あ…………ん…………はぁ………は、あぅ…………」
止まった。
息が爆ぜて、平静を取り戻せない。
脚も腕も痺れて動かず、自分のものではないような感覚。
動かない。けれど、頂を突き抜けた残り火は、まだこの身体をくすぐっている。
「ぁ、ああ……ん、んう…………」
中で、彼が奮えている。
あれだけこわれたはずなのに、まだ気持ちよくなってしまう自分がいる。
「あ、んあ……っ……!!」
脈動で内壁の肉を打つ彼の刺激は、今さっきのものに比べれば遥かに小さいのだろう。
それでも、気持ちいい。頭がまた、真っ白になる。
せっかく戻りかけた身体の力が、抜けていく。どこかへ飛んでしまうように、自分がすっと抜けていく。
「――――ぁ、は、あぁ……ん、ぁ……あっ……」
身体がおかしくなっている。感覚がこわれている。
もう二度と元のからだには、元のこころには、戻れないのかも知れない。こわれておかしくなったまま、もう二度と――
(――でも…………べつに、いいや…………)
ずっと気持ちよくいられるなら、彼とずっと気持ちよくいられるなら、ずっとこわれたままでいい、おかしくて構わない。
「…………ムントさま………………きもちいい………………しあわせ………………」
思わず零れた想いは、彼に聞こえるだろうか。聞こえたなら、彼は何と言って答えてくれるだろうか。
その後はどうやって気持ちよくさせてくれるだろう。どうやって恥ずかしく、おかしくさせて、こわしてくれるのだろう。
考えていた通りに地上へ戻るか、意志を翻して天上に残るか、葛藤を忘れる程に彼女はこわれていた。
仮に今、ムントが彼女を地上へ返すまいとすれば、彼女はその蕩けた瞳で頷き、永遠に彼の愛を受け容れ続けるのだろう。
だが、そんなものはもう、彼女にはどうでも良かった。
(むんとさま…………はやく、もっと………………つづき…………)
こわれた少女の身体と心は、未だ彼を求め続けている。
唇からは細く荒い息が漏れるだけで、言語を思いのままにできる程には回復していない。
それでも、汗と熱に紅い輝きを放つ白い肌の奮えは、視界も定まらない彼女を打って、
「う……ふぅぅ……あん…………ぁ……」
痺れたままの彼女の腰を代わりに揺らし、止まったままの彼に続きを訴えさせている。
微睡みの中で感じる彼は、よりあたたかく、よりやさしく、より激しい。
しかし、次第に全身の神経が蘇り覚醒するに従って、夢のような心地よさも消えていく。
それでも、寂しくはなかった。下の中に収まっている彼の輪郭が、返ってありありと強く感じられて溢れていくのだから。
「あ、んん……ムントさま…………ぁ、あんっ!ああんっ!!」
彼女の復調を待っていたかのように、彼の腰が動き出す。
「あんっ!!んふぁあ!!あんっ!!だめぇ!!!」
「ユメミ!!ぅっ!!出すぞ!!!」
随分と聞いていなかったムントの声。彼女は嬉しさに甘えておねだりを叫ぶ。
「いいよっ…いいのっ……いっぱい、いっぱいだして……?わたしのなかに、いっぱい………ああんんっ!!!」
「ああっ!!うっっ!!!」
止まった。止まった尖端が、ぶるんと弾けた。
「あ、あんっ!!!!んはうううぅっ!!!!」
流れ込む。彼が流れ込んでくる。さっきはわからなかったのに、今度は彼が中でおもらしをしているのが何故かわかってしまう。
大きく奮えた怒張は、途端に硬さを失い、少しずつ縮んで柔らかくなる。だが、
「はう、うんっ!いいのっ、もっと、ついてぇ!!ぐりぐりしてぇ!!」
いくらか減退した柔らかさも、今は彼女の愛してやまないの彼のひとつ。
彼もまた枯渇の疼きに耐えながら、締まる彼女の中に緩む自らを突き立てていたが、
「あんっ……ん、はあ、ああっ………ム、ムントさま……?」
「………………凄い…………凄いな、ユメミ…………」
暫くしてそれは感嘆と共に止まる。
訝しがる彼女の両手を取って、彼はふたりの繋がっているところへ導いていく。
「あ…………っ!?」
触れてみて改めて実感できる、彼が中に入っているという事実。
「……は、はいってる…………!」
「……そうだ……それに、こんなに…………」
彼の塞いだ泉から、今も湧き出る愛の水。
「ぁ……は、はずかしい…………あんっ……」
「そうだ……こんなに、出してしまって…………」
彼女に見せるように浮かび上がる彼の左手から、彼女の腹に滴り垂れる白銀の糸。
「あんっ……わ、わたし…………」
「…………綺麗だ、ユメミ……」
「ぁ……はあんっ!」
脈打つ彼にも、彼の声にも、身体は奮えてしまう。悶えて恥じらいを隠したい彼女に、彼は追い討ちを畳み掛けていく。
「…………ユメミ……これを、お前の指で、すくって取るんだ」
彼の瞳が、彼女を見つめている。
「……ぁ…………は、はい…………」
疑問も持たず言われるがまま、彼女は泉から溢れる水を、指に絡めて汲み取っていく。
「…………た、たくさん、でてる…………」
今もまだ新しいものが流れて指に伝っている。
「それを、ユメミ、お前の胸に、塗るんだ……」
彼の瞳が、彼女を見つめている。やさしい瞳で、彼女を見つめている。
「…………むねに、ぬるの……?
「そうだ、さっきお前がしていたように……」
「わたしが……していたように…………」
彼の瞳が、彼女を見つめている。あたたかい瞳で、彼女を見つめている。
「…………ユメミ、さあ…………」
彼のやさしくあたたかい魔導が、彼女を見つめ、
「………………はい…………ムントさま…………」
彼女の瞳が彼に蕩けて従順な色に染まり堕ちる。
彼女の指が、惜しみもせずにふたりの繋がる下から離れていく。くびれた腰に、臍に、指先から垂れていく。
「ん、んっ……!」
愛に濡れた細い指が、ふたつの膨らみにふわりと舞い堕りて、その柔らかな白さとは別の白い輝きで自らを塗り替え始めた。
「ん、んぅっ、あ……!」
彼女の胸が、濡れていく。彼女の指が、塗っていく。
透けた愛液と濁った精液が、膨らみの上で合わさって、彼女を清らかな白で汚していく。
(あぁ…………はずか、しい…………でも……)
塗りたくる指を、自らに弄ばれる胸を、彼女はただ見つめていた。
(でも…………きもちいい…………)
それが胸の触感だけによるものでも、下の中の彼の膨張だけによるものでもない事を、彼女は薄々感じていた。
やがて塗り込む汁が足りないと思えば、その指は胸を離れて、泉へ再び汲みに行く。
「ぁ、ん………」
少しだけ寄り道して、入口を塞いでいる彼の太くて硬い周りを撫でながら、その指にとろみをたくわえていく。
「ん、んぅ、っ……」
汲み出せば、それを零さないように胸に持ち帰って、硬くなったピンクの宝石に塗り込ませればいい。
「あ、あぁ……!」
揉めば汁が絞り堕ち、それをすくって弾力ある双丘になじませる。
足りなくなったら、また同じように泉へ行けばいい。
ただ、今はまだ充分だ。胸の頂きから肩や首元まで垂れ流れているくらいなのだから。が、
(……もったいない…………)
彼女は白濁が粘り垂れる先の肌に左の人差し指を当て、行く手を遮って搦め取る。
(…………つかまえたぁ……)
逃げる汁を指で捕まえると、
「ユメミ……」
「…………ムントさま……」
淫水に戯れる彼女は、呼び止める彼に気付き、ちゃんと見つめて応えた。すると彼は頷いて、
「………………舐めるんだ……」
彼女のしたいことを、言葉にして促してくれる。
ユメミは嬉しくなった。彼が見ていてくれたから。これをどうしたいか、わかってくれていたから。
それよりもっと嬉しかったのは――彼が、舐めていいと、許してくれたから。
「…………はい……ムント、さま…………」
彼の言うことを素直に聞いて、彼女はその汁を唇に持っていき、指ごと啄む。
「ん、んんっ……」
ふたりの味。味が先程と違うのは、彼と彼女の指の違いだろうか、或いは彼に愛された胸のかいた汗か。それでも、
(…………もっと、ほしい……)
左指を唇から離して胸に戻すと、今度は右の指。ムントに視線で許しを乞えば、彼は黙って頷いてくれる。
(……むんとさま……みていて…………)
たくさん味わえるように、彼にたくさん見てもらえるように、右胸に塗られた愛精の透白を5本の指に集めて、唇に宛がう。
(…………わたしを、みて…ぇ…………)
下を打つ熱さも忘れ、ユメミはうっとりとした瞳と心で、まっすぐ視線をくれる彼と、唇の上の濡れた指を見つめていた。
濡れた5本の指で唇をなぶる彼女は、そのひとつひとつにこびりついた愛と精を舐め始める。
まず最初にくわえるのは、人差し指。
「ぁ……んっ……」
指先を、唇の中で掻き回し、ふたりの味を舌に、口の中に染み込ませていく。
人差し指が切れたら、次は中指。中指も切れたら、薬指。舌で唾液と絡めて汁を取り込み、渇いた喉を潤していく。
「…………こく、んっ……ぁ…………」
小指には唇の表面を撫でさせる。口紅を塗るように、なぞって撫でて。小指が終われば舌を出して唇を舐め、親指を迎える。
親指を口に入れて、いっぱいいっぱいしゃぶる。いっぱい、いっぱい、ユメミはあまえてしゃぶってとろとろになる。
(…………あ、あかちゃん、みたい…っ………!)
恥じらう彼女を、彼が見つめている。その瞳は満ち足りたようでもあり、驚いたようにも見える。彼女も瞳を反らさない。
彼女は親指をくわえたまま、はしたなく濡れた胸を肩で寄せて、腰を揺らす。彼女も瞳を反らさない。
満ち足りた彼の瞳を反らさせまいと、ユメミは甘える瞳を反らさない。反らさず、くわえた親指を右手ごと胸に下ろして、
「…………ムントさま、あんっ、ムントさまぁ……!」
彼の名を呼び、中のものが硬くなってくれたのを感じて腰を揺らし、ちいさな唇を奮わせては細い裸を咽び喘がせる。
「ユメミ……」
彼の声。こうして名前を呼ばれるのは何度目だろう。その度に嬉しい気持ちが心の奥底から湧き出て、
「ぁんっ……はい、ムントさまぁ……」
何度呼んだかわからない彼の名前を呼んで応え、今はふたりのおもらしを塗ったこの胸をいつもいつも期待に弾ませた。
その度に気持ちよくさせてくれた彼が次に言うものも、彼女をまだ見ぬ快楽にときめかせるには充分過ぎるもの――
「――ユメミ、お前の胸を綺麗にして、指を綺麗に舐めた……そのご褒美を、お前に…………」
「んっ……ご、ごほうび……?」
揺れる彼女の腰が止まった。
(ごほうび……って、何だろう…………きっと、きもちいいこと、だよね………………あっ……!!)
彼の言うご褒美の想像に気を取られた事に、はっと気付く。ユメミは腰を再び揺り動かして、中に収まる彼を愛し挟む。
「ご、ごほうびっ……ください……っ!ちゃんと、きもちよく、あんっ、きもちよくするから、ぁんっ!
ごほうび、くれるの、んあぅ、ぁ、んんっ!やめないで、はんっ、やめないでぇ……!!」
もしかしたらこの腰が止まって彼が気持ちよくなくなったら、ご褒美がお預けにされてしまうのでは――
たまらない彼女の不安をよそに、彼はやさしく微笑んで、言った。
「たくさん用意してあるから、慌てなくていい。だから、ユメミ――――もう一度、俺様にねだって見せてくれないか?」
「ぁ…ん………おねだり、するの…………?」
少し驚いた調子で尋ねた彼女に、彼は頷いて、続けた。
「ああ。どんなふうにしても構わない。可愛いお前にねだられて、ご褒美を…………その……」
「………………はい、ムントさ、まっ……!ああんっ!!」
嬉悦に笑む彼女は、何かを言おうとする彼より先におねだりを――おねだりの中の最初のおねだりを口にする。
「……ムントさま、ぁ、んっ、わたしのこと、ほらぁ、ああんっ……みてぇ…………?」
あう、二人が壊れていく。
でも、それがいい。
ご褒美って何だろう。
このまま究極のエッチを極めてほしい。
イクの書くのが巧すぎる
ご褒美wktk
228 :
5:2009/04/11(土) 16:12:48 ID:qNnb1g9M
「ユメミは少女じゃいられない」
今回は12節うpです
次回の締めで1話終了になります
では、どぞ
上気したユメミの心は、より確実に彼に届くようにと、過激で過剰なおねだりのかたちを身体に取らせていく。
「んっ、ん、ふぅぅ……っ!」
彼女と彼の透濁に塗られ、華奢な肩と腕に寄せて挟まれる、ふたつの柔丘。
そのふたつを行き来して、ご褒美を頂く前に我慢できないと更に塗り広げては、下から揉み摘んで刺激を与える勝手な左の指。
「んぁっ!あん、んっ……!」
自らに摘み撫でられるピンクの尖端は、硬く強張り健気に奮えては、彼の視線を誘いながらも恥じらっている。
両腕に挟まれ左手が這い回っても、弾力ある胸のかたちはそのままで、分厚く塗られた光沢が柔らかな白に生えて輝く。
「……ん、んぅ、ぁ、ぅうんっ……」
右の指は、彼女の下。彼と繋がり続けている、猥らで欲張りな彼女の下の口。
中にくわえる彼の根本を撫でながら、感じ合うふたりの証をその指先にかき集め、露出した突核になすりつける。
「あ、ああんっ!!はぅん!!んっ、んああっ!!」
切なく掲げられた嬌声は彼を求めて石壁に跳ね返っては、肌と同じく一糸まとわぬ彼女の心に乱れて響き渡る。
(ぁ、は……はずかしいっ…………で……でも……おねだりするの…を………み、みてもらわなきゃ、だめなのっ……!)
自らの声に恥じらうユメミが心に願えば願う程、肩は奮えて胸を強く挟み、揺れる腰は彼に深くなぶられて、
声も指も願いも、得体の知れない何かに操られるまま、留まる事の無い激流に任せて、より淫靡な彼女へ変異させていく。
「あんっ!んっ、ムントさまぁ、みてぇ、ぁ、んっ、はんんぅ!!もっと、もっとみてぇぇ……ぁああ、んんっ……!」」
唇の放つ熱、麗しく伸びた睫毛、悶える首筋、彼の視線を感じない場所は、最早どこにも無い。
それでも、まだ足りない。視線に飢える彼女は、彼を求めて喘ぎ続ける。
「み、みてぇ……あなたに、みてほしいの……もっとわたしの、ん、はしたないわたしを、んっ…わたしをみてっ……!」
その指で、腰で、自らを果てなく零落させながら、ユメミは彼の視線を求めて喘ぎ続ける。
彼の瞳の朱色が、彼女の膨らみを見つめる。彼女は両手で揉みしだいて、乳首を摘む。
「ぁ、ん、んぅ……っ……!」
彼によく見えるように、ゆっくりと、やんわりと揉み、ちいさく摘み転ばせている。
彼の瞳の朱熱が、彼女の唇に突き刺さる。彼女は指をくわえて、とろりとした瞳で彼に恋する。
「ぁ、はぁ……ぁ…………ん、んっ……んふ、んむぅ……っ……」
彼によく見えるように、舌を外に這わせて、1本1本大切そうに舐めていく。
彼の瞳の灼熱が、彼女の秘部を溶かし尽くす。彼女は両手で脚を広げ、彼を収めた入口を開く。
彼からよく見えるように、紅い陰肉を揺らして汁を散らせ、敏感過ぎるところは――
「あ、はんっ、んんっ!や、やだぁ!でも、あんっ!だ、だめぇっ!はずかしいぃっ!!なの、にっ、ぁ、ああんっ!!」
彼に見られるだけで激情に奮え、羞恥と一緒に擦り合わされて彼女の快感を昂らせる。
そして、彼の瞳が、彼女の全てを見ている。
「あ、あぁんっ!だ、だめ、みないで……い、いやっ、みてぇ…わたしを、もっと……あ、はああぁんっ!!」
彼女の全てが、彼に見られて、感じている。か細い身体の下から上まで、そして、心の奥深くまでも。
ご褒美をもらう為という理由も、これがおねだりをする為の行為だった事も、
「あ、んんっ、もっと、みて…?みてっ、みて?わたしをみて、きもちよくさせて?あんっ!だめ、はずか、しぃ……っ」
刺激を求める彼女は忘れ、彼に見られる事を望む。
ご褒美ではなく、彼に見てもらいたい、それだけをねだり、嬉しそうに泣いてみせる。
今、彼女に悦をもたらしているのは自身の指や腰なのだが、魔導の王の視線に彼女自身の感覚は既に崩され、狂わされていた。
「あ、んん、ああっ……!いいよ…?みてぇ……?」
想いの詰まった胸を、その瞳に弄ばれて悦ぶ。
「はんっ!あ、んんっ!!もっと、みて、ぁ、あんっ!!」
恥じらうちいさな尖端を、その瞳に転ばされて咽ぶ。
「ひゃん!!は、あんんっ!!そこは、そこはだめえぇっ!!!みないでぇっ!!ふぁんんぅっ!!!」
露出して隠れようのない桃色の突起も、その瞳を拒めないまま、いじくり回される鋭敏さに奮わせる。
「んあ、あんっっ!!もっと、なかまでっ、わたしをみてえぇっ!!あ、あああんっ!!!」
突起を辱められながら、その瞳を中へ、より奥へ、受け容れていく。その瞳を奥へ導く為に、尻を振り揺らして喘ぐ。
彼に自らの慰めを見られるそれは、彼女にとってはまさしく、彼の視線でなく瞳そのものから直接快楽を得ているに等しい。
耐え切れずに閉じた瞳の向こう、灼熱をまとった朱色の瞳がいくつも見える。
「あ、ふぁ、あぁ、はん、ぁ、ぁ、んんんっ!!いいっ!!ぁっ!いいよぉ、あん!はんっ!!もっとみてえぇっ!!!」
ユメミは悦に咽んで奮えて喘ぐ。いくつもの瞳の与えてくれる刺激が女芯に集まり、彼女を責めて容易く限界へと追いやる。
「だ、だめえっ!!もっと、もっと、ん、き……も………ち…………ぁああんんっ!!!」
真っ白になる。何もかもが消えていく。彼の瞳も、消えていく。消えて、ひとつに、真っ白になっていく。
「やだぁ!!みてぇっ!!わたし…ふぁあああぅ!!だめ、だめ、やだ、だめえええっ…………だめえっっ!!!!」
その白さも、彼の瞳に見取られながら、広がって、ユメミを埋め尽くす。
「はんんんっ!!!や、やああぁっっ!!!!ああぁぁあはあんんあぁぁぅっっ!!!!」
「ぁ、あ…………ふ、ぅ、ぁ……ん、んん…………っ」
一体これは何なのか――――独りで果てた彼女に、ムントは皆目見当がつかないでいた。
彼は彼女を見ていた。指で自分を撫で、腰を振り続ける彼女を見つめていた。乞われるがまま、ただ、ユメミを。
彼は彼女の中にいる分身を、自分からは動かさなかった。彼女がご褒美をねだるまで、待たなければならなかったから。
(しかし……これは一体…………?)
彼女の異変に彼はいくらか恐れを感じていた。理由の見えない事態に、堂々としていろと言う方が無理であろう。だが、
(…………だが………………美しい…………!)
絶頂を終えた後の彼女が、ムントはたまらなく好きだった。
息を切らし、ちいさな唇と乳首を奮わせ、腕と脚の力を失い、白い肌から熱を放つ――果てた彼女の美しさが、ここにある。
愛したくなる可愛いらしさと、守りたくなる無防備さ。
ユメミに恋い焦がれ彼女を守りたいと思ってきたが、その想いに応えてくれるような姿が、確かにここにある。
彼がいくら汚しても彼女は汚れを許し、惜しみない愛を彼に与えてくれた。その度に美しくなり、深い愛を与え続けてくれた。
彼女に何があったかはわからないが、少なくとも、彼を置き去りにして絶頂に及んだ事を、ムントは笑って許す気でいた。
彼女から学んだ慈悲と寛容に似た想いに浸る彼ではあったものの、
(……ご褒美を求めず、最後を迎えた…………これは、いかがなものかな…………)
この一点だけは、どうしても、女に懇願した男子の面体にかけて、無視され続けるわけにはいかなかった。
彼はユメミが覚醒した後、彼女にどうしてもらうか、どうなってもらうか、微笑みと険しさの混じった顔で考え始める。
しかしながら、その強い瞳こそ、彼女を狂わせ勝手をさせた元凶であると、勝手な彼もまた気付けないでいた。
「――――ユメミ、ユメミ!」
しろいやみが、きえた。くろいやみが、みえる。
きもちいいだるさが、きえない。みたくてたまらないむんとのひとみが、みえない。
「――ユメミ、おい、ユメミ!!」
「……………………ムント……」
むんとのこえが、きこえる。きこえるむんとのすがたが、うつらない。
わたしのこえが、きこえる。きこえるわたしのすがたが、映らない――――
「ユメミ!!!」
「――――あ…………ムント………さま…………」
また、おかしくなっていた。おかしくなっていたのか。
それに気付けば、感覚だけはゆっくりと戻っていく。彼の硬いものが、彼女の中から抜かれている事もわかる。
それを咎めて彼にまた入れてもらおうとしたその時、
「……………あれ……?わ、わたし…………」
何かが違う。今回は少しだけ、今までのおかしくなった時とは明らかに違っていた。
(むんとの、こ、これで……おかしくなっちゃったの……?
……あ、あれ……おかしいな……?……へんだ、へんだよ…………?)
得体の知れない不安は、いつしか、穏やかでないその正体を、彼女に突きつけていく。
(………………おもい、だせない…………!!あれ?なんで!?
どうして、どうされておかしくなっちゃったのか……なんでだろう?ぜんぜんおぼえてないっ…………!?)
記憶を手繰ってみても、彼に何をされておかしくなったのか、全く思い出せない。
今までの場合も全てを覚えているかと言われれば、微妙だ。真っ白になったその時は、意識も記憶も全部抜け落ちている。
しかし、今回は完全に記憶が欠落している。いつもなら、彼にされた事が何だったのかだけは残っているのに、今回はまるで覚えてない。
「…ムントさま……わたし…………?」
「…………覚えて、いないのか?」
彼女の動揺を察してか、訝しげに彼が聞き返す。
ユメミが恐る恐る頷くと、ムントは思案する面持ちで、彼女に尋ねてくる。
「……どこまで、覚えている?」
「えっ?え、えっと…………」
言われて、彼女はとりあえず確実に覚えているところから、記憶を整理してみることにした。
(むんとさまが、わたしのなかに……えっと、その…………)
思い出すだけでも恥ずかしく、よくこんな事ができたものだと、自分で自分を責めていいのか感心していいのかわからない。
ただ、彼に愛されて、気持ち良かった。彼を愛して、しあわせだと感じた。どんなに恥ずかしくとも、これは確かな気持ち。
全身から火の吹きそうな自分を、ユメミは彼への想い、彼女の実感で制して、記憶を繋ぎながら思い出してみる。
まず思い出すのは、彼が彼女の中で果てた時。彼が中でおもらしをしてくれた時。
(むんとさまが、わたしのなかでおもらしして……おもらしがながれていくのが、はっきりわかって……それから……)
ふたりのおもらしを、胸に塗った。舐めた。
(……そ、そう!それから、むんとさまが…………そうだ!!ごほうびをくれるって……
…………って、どうしてごほうびをくれることになったの?それに、ごほうびって…………な、なんだったかな……?)
ここで、彼女にいまいち思い出せない部分が出て来る。その後は、
(それから、えっと…………むんとさまに、わたしをみて、って、そういって、おねがいして…………)
その後は、
(………………………………ああ、だめだぁ……もう、おもいだせない………………わかんないよ……………………)
お願いをした先から今までの間は、全く思い出せない。だが、この間に何かがある。彼もそんな口ぶりだった。
そうなれば、気になる。彼女は彼から聞き出そうと試みた。
「……ムントさま、おしえて?ムントさま、わたしに、なにをしてくれていたの?」
「……どこまで覚えているか、わかったのか?」
さっきの問いに答えていない。失念していたと気付き、彼女は恥じらいつつも、頷いて、
「…………えっと……えっと………………
………わたしを、み、みて、って……ム、ムントさまに、おねがいしたところまで、かな………?
わ、わたしが、その、おっぱいを…さわったり………ゆびを、しゃ、しゃぶったり、してた…………その…………」
「……わかった。その後からが、はっきりしないという事か」
「………………ええ……そういうことに、なるのかな…………」
直視する事もままならず、ムントから瞳を反らすユメミ。
「…………そうか、成程…………」
呟く彼がどんな顔をしているかはわからない。恥ずかしくて顔を合わせられる気がしない。だが、
「……あんなふうになったなら、そんな事もある…………のか……?…………むうぅ……」
独りで唸る彼の言葉に何かが気になる彼女は、恥じらいを堪えて彼を見た。
「『あんなふうに、なる』って……どういうこと…………?」
「…………あ、いや、その…………」
答えを躊躇う彼に、彼女が上体を起こして向き直り、詰め寄る。
「………………おしえて?……ムントさま…………」
暫く彼は黙っていたが、やがて彼女を真っ直ぐ見据えて、
「…………聞いても、驚くな」
「…………おどろかない、ぜったい……」
「…………嘘じゃないから、信じろ」
「…………うん……」
そして、翻らない彼女を見つめて、彼は答えを明かした――――
――――聞き終えても、彼女はさして驚きを見せない。
正直なところ、多少は驚いたものの、記憶が欠けていると気付いた時に比べれば、動揺は小さい。
彼の説明はいくらか強引に聞こえたが、信じると約束したからには、疑う気は起こさない。
それに、彼から言われて、少しずつ思い出していた。その時の自分の姿を、快感を。自分の放っていた、声を。
――お前はその指で、自分で胸を揉んでいた。
『あ、んん、ああっ……!いいよ…?みてぇ……?
はんっ!あ、んんっ!!もっと、みて、ぁ、あんっ!!』
――それから、お前は、指で…………それに、自分から、激しく動かして…………。
『ひゃん!!は、あんんっ!!そこは、そこはだめえぇっ!!!みないでぇっ!!ふぁんんぅっ!!!
んあ、あんっっ!!もっと、なかまでっ、わたしをみてえぇっ!!あ、あああんっ!!!』
――お前は自分を見ろと、俺様に言いながら、自分で自分を、こわしていったんだ。
『あ、ふぁ、あぁ、はん、ぁ、ぁ、んんんっ!!いいっ!!ぁっ!いいよぉ、あん!はんっ!!もっとみてえぇっ!!!
だ、だめえっ!!もっと、もっと、ん、き……も………ち…………ぁああんんっ!!!
やだぁ!!みてぇっ!!わたし…ふぁあああぅ!!だめ、だめ、やだ、だめえええっ…………だめえっっ!!!!
はんんんっ!!!や、やああぁっっ!!!!ああぁぁあはあんんあぁぁぅっっ!!!!』
ムントのご褒美が欲しくて、気持ちいいご褒美を期待して、いつか何かがずれてそんな私を彼に見せた。
簡略してまとめた彼女は、溜息をつく。
彼の話が本当なのはわかる。その点は、些か変な表現になるが、安心している。が、逆に強くなってしまった不安がある。
完全な冷静を取り戻してしまった今、この先を求め続けられるのか、彼にご褒美を求められるのかどうか。
冷めてしまったわけではない。まだ彼を、もっと彼を感じていたい。欲求は確かに、この胸に膨らんでいる。
けれど、自分から求める勇気も、気持ちよさに任せた勢いも、今は出そうにない。独りでおかしく求めた時ほどには、とても。
(…………これで、こんなので、おわっちゃうの……?)
熱いものが瞼に込み上げてくるが、それでも、どうしようもない。何もできない。
「…………ムント、わたし――」
声が出ていた。だが、すぐに遮られる。
熱い彼の唇に塞がれて。黙ってこの身を引き寄せる、強い彼の腕に包まれて。
「……んっ……ん、んふぅ……」
何を思っていても、勇気が無いと恐れても、ユメミの身体は正直だった。
唇が、舌が、彼を求め絡み合おうと動いていく。
腕が、彼を離すまいと、首にしがみついていく。
真っ直ぐ伸びた脚が、彼にもっと近付きたいと、畳みながら彼に擦り寄って、膝を立たせていく。
胸が、彼を愛したいと、胸板を撫で圧して、自ら塗ったふたりの愛と精を彼にも塗り広げていく。
下が、彼に愛されたいと、その中に残った感じ合った証を、立った腿や膝を伝わせてシーツの上に垂れ堕としていく。
「…ん、んむ、んっ…………ムント……すき…………んふぅ、んっ………」
声が、その心よりも先に、彼を好きだと言う彼女の声が、感じる息とともに溢れていく。
閉じた瞼から零れる涙が、闇しか映らない瞳が、願っていた。
(…………これで、さいごにする。だから、だから…………!)
ユメミの心が今、願っている。
(だから……わたし…………!!)
彼女は唇を離し、瞳を開いた。
彼の顔は、やさしい。やさしく彼女を見つめている。
彼女と彼は頷き、抱き合った腕を解く。
正座の姿勢を取るムント。ユメミはその両膝を開いていく。
開かれた彼女の間に、畳んだ両脚を滑り入れる彼。
腰を下げ始めた彼女の尻を彼は両手で支えながら、更に脚を入れていく。
腰を下ろしつつ、腕を彼の首に回す彼女。だが、
「ひぅっ!!」
下ろした秘部に彼の亀頭が触れた。彼女はたまらず腰を退かせて、彼の腿の上に尻餅をつく。
「……大丈夫か?」
笑うでも咎めるでもなく、彼女を案じるムントの声。
「…………だ、だいじょうぶ…!」
ユメミは尻を上げた。彼の首から右腕を離して、その指で、ふたりの汁に濡れた彼の硬いものを、そっと包む。
再び腰を下ろす彼女を、彼がその腕で支えている。彼女の尻が、そっと、そっと、下りていく。
「あ、んうっ!!!」
先に触れた。先が、亀頭だけが、中に入った。堪えていた。けれど、彼女はもう進めない。
引き退がりたい。でも、引き退がりたくない。絶対引き退がりたくない。
「ぁ、ん、んんっ!!!」
気持ちいいはずの刺激が、今は彼女を阻む分厚い壁に化している。取り払わなければ、この先に、さいごに進めない。
「――ユメミ」
少し下にある、彼の顔。
彼女の左の尻から、彼の右手が離れる。離れて、彼を包む彼女の右手と重なる。
「……一緒だ……俺様とお前と、一緒に、な…………」
「ん、っ…………ムント……………………
………………………………うん…………!」
女は瞳を閉じて、腰を下げる。
男は瞳を下に向け、自らが入るのを見届ける。
「ん、あ、ぁ……!」
「…っ、くっ…!」
いつまでも終わりそうにない時間、ふたりは祈っていた。何者にでもなく、ただふたりに祈っていた。
そして――――
「――――はんっ!!!あああぁんっっ!!!」
「くうっ!!ユメミ!入っ、たっ!!」
「わかるっ!!おくまで、ぁ、はんっ!ああんんっ!!!ムントさまぁ!!!!!」
壁と感じていた刺激が、今は本当にたまらない。彼が熱い。脚の力が抜けて痺れる。
それに、気がつけば、彼の顔が、真っ正面にある。彼の瞳も、唇も。
(………ぁ、あっ……むんと…………むんとさま…………!!)
見上げるでも、見下ろすでもない、すぐ真っ正面に。それでいて、全身が彼に触れている。
彼に彼女の全身を抱きしめられるだけでなく、彼と繋がったまま、彼女も彼の全身を抱きしめる事ができる。
温もりが、ここにある。唇も、ここにある。繋がったままなのに、どちらもここにある。
ベッドに寝かされて彼の愛をこの中に受け容れた時は唇しかなかったのに、今度はどちらもここにあるのだ。
(さっき、さっきはできなかった……けど、けどっ!!!)
感極まった彼女は、彼を強く抱きしめ、胸と下に彼の熱を感じながら、愛する唇を、大好きな唇を遠慮も自制もせずに貪っていた。
「んんっ、んっ、んふうぅ!!ん、はぅ、あんっ!!ああんっ!!!ん、んむぅっ!!」
貪っていた。彼の全てを貪っていた。
鼻を擦り合わせながら、彼の唇に舌を送り込む。彼の舌も受け容れて、その愛にこたえていく。
「ん、んっ、ん……んんっ……こく、こくっ…………んふぅぅ……んっ、んふぅ……」
彼のくれる唾を飲み込んで、彼女もお返しにと唾を集めて、舌に絡めて送っていき、彼も飲み込んだら唇を離す。
「んあぅ!はぁんっ!!あうっ!んっ、あんっ、ぁ、はぁっ、あん、んあぅ、ふあぁ、あううっ!!!」
唇と唇の間に、銀の橋。彼女の唾に含んだ精液の粘りと愛液の輝きが、より強く、より煌めいて、ふたりを結びつけている。
「ふああ……んっ、んんっ……!!」
それでも彼女はキスが好き。彼とするキスが好き。
彼の匂いを香りながら、唇と唇、舌と舌、鼻と鼻を擦り合わせて、愛する想い、愛されたい想いを溶け込ませていく。
「んっ、あ、んうっ、ぁ、はぁん、あんっ!あ、あぁ!あたたかい、ムントさま、あたたかいの!!ぁああんっっ!!」
彼の首に回した腕に少し力を入れて、胸の膨らみで圧し寄せる。彼の体温が、彼の鼓動が、この身体に染み込んでいく。
胸に塗られた汁の滑らかさが彼にも伝わり、圧されて擦られるピンクの乳首がこの上なく鋭い刺激を駆け巡らせる。
「あんっ!!ふぁあんっ!!!いいっ!!!ああんっ!!!」
下から突き上げてくれる、硬く太い彼の愛。奥の柔壁を打ってめり込み、彼女の息は乱れ散る。
「あ、んっ、ふぁ、ぁ、はぅっ、ぅ、ああんっ!!!はん、ぁ、あ、うぁぅ、ん、んっ、あああうっ!!!」
彼の上下に従って、彼女もまた腰を振る。始めはうまく噛み合わなかったが、今はどちらがという事なく、一緒になって愛し合う。
「だ、だめえっ!!ムントさま、わたし………ああああんっ!!!」
「いいぞ、我慢しなくていい!!」
「は、はいっ!!わたし、わたし………ぅ、ん、あああんっ!!!あ!!はあああぁああんっっ!!!!」
彼を強く強く抱きしめながら、全身を奮わせて、
「あ、ああ、あん…………っ、ぅぅ、はぁ、は、あぁ………………ん……んぅ……………………」
彼女は事切れる。真っ白になっても、許さない、まだ離さないと、彼が唇を寄せてきて、
「……………ん、む…………」
「…………………ん、んんっ、ん……んふぅ…………」
揺れる桃尻もやさしく揉みほぐして、強張った身体を慰めてくれる。
そして、暫くして力と感覚が戻ったら、再び一緒に腰を動かすのだ。
「あ、あんっ!あ、ぁ、いい、いいの、ふうぅあぅ、あうぅ、ああん、あ、はん、あん!」
「ユメミ、また、おもらししてるぞ?」
「ぁ、あんっ!うんっ、きこえて、るっ!!きこえちゃう!!あ、はあんっ!!!」
もしも声や腰では伝わらなかったとしても、それに代わって、はしたないおもらしが彼に気持ちよかったと教えてくれる。
それでも、はしたないものだから、恥ずかしい。隠したい彼女は、決まって彼に求めるのだ。
「ねえ、ぁ、あん、キ、キス、してぇ?……ぁ、はんっ!お、お…ねが、い………キス、して…………ああんんっ!!!」
ただ、たいていの場合、彼はこたえてくれるが、時々、本当に時々、ムントは朴念仁で意地悪だ。
「……駄目だ……!恥ずかしい顔のお前を、もう少し見たい」
こうして、唇を与えてくれない事もある。そうなれば、彼女はむくれて、
「ぁんっ……だめぇっ…!!こ、この……わからずやっ!!!んんっ!!んっ!!んむんぅっ!!!」
無理矢理彼の唇を奪って、彼の舌に落ち着きを取り戻してから、
「……ん、ぁ、はぅ、ああん…………ムント、ムントさま…………だいすき………………ああん、あんっ…………ん……」
彼の瞳を恥じらいながら真っ直ぐ見つめて、もう一度キスをする。
ベッドに寝かされるよりも、この態勢で愛される方が気持ちいい。それに、自分がしたい愛し方も何ひとつ損なわずにできる。
そして、より主体的に腰を揺り動かせる事で、彼に尽くしている、彼に私の身体も心も捧げていると深く実感できる。
陰りのない充足が、彼女が今識っている全ての性感帯を鋭敏にさせていき、
「あ、んっ!!ああんっ!!!」
あまり馴染みの無かった耳元にも新しい快感を広げ、
「そこ………もっと…もっと、なめてぇ………んっ!!はぅっ!!」
その開発を求め、彼女を可愛くおねだりさせていく。
「は、あ!っ……んっ…あ、あんっ…………ぁ、あ…うあんっっ!!!」
耳元を舐めるのに気を取られたか、彼の突き上げる速さが鈍くなっている。が、代わりに1回の刺激の強さは増している。
「や、は、はんっ!だ、だめぇっ!!もう、なめるの、だめっ…!!く、くすぐっ、た…ぃ………ああんっ!!!」
下は強く荒々しく、舌は細々と丁寧に、彼女を愛して遊んでいる。
「…………ユメミ、少し、後ろに傾いてくれ」
「あんっ……どうしたの……?」
「……ご褒美を、やろう…………」
「え?あ、あんっ!!」
彼女の返答を聞かず、ムントは前に傾いて、抱きしめるユメミを解く。
彼女を傾かせながらその両腕を下に降ろし、彼女の身体を支えさせる。
膨らむ胸が反った背中に突き出され、彼の目の前に曝された。
「ぁ……ああ……は、はずかしいぃっ!!」
「いいんだ。もっと恥ずかしくなって、揺らして見せてくれ」
「あぅ…………んっ、ん…………」
狂おしい程愛おしく、意地悪な視線に恥じらいながら、ユメミは彼の言う通りに豊かな胸を左右に揺らす。
「……こ、こう?」
「…………そうだ」
「――んあうっ!?ああんっ!!」
彼女の奮えた右の胸を、彼が甘く噛む。
「はあああんっ!!だめぇっ!!ああふぅうん!!!」
もう片方、左の胸を、彼が右手で揉んで、摘む。
「ああんっ!!だ、だめえぇっ!!そ、そんなに、ぺろぺろしないでぇっ!!あ、ああぅ!!」
甘く噛まれたその胸に、彼の舌が容赦なく這い回っていく。更に、
「あ、んふっ!!あふぅ!!!あ、はん、あ、あんっ、んんっ!!あ、ぁ、やんっ、あんっ、あああ、あはぁんっ!!!」
下から突き上げる彼。後ろに傾いた分だけ彼が彼女の中の前の方を圧し上げて、
「うあああん!!!だめぇっ!!おかしく、おかしくっ!なっちゃ………はあああう!!!!」
まるで最も敏感な下の突起を中からいじくられているようで、彼女の波がひとりでに荒立っていく。
「だめぇ!!は、はずかし、ぃいっ!!ああんっ!!!なめないでぇ!!おねがいぃっ!!!」
「ユメミ、どうした?ご褒美が、欲しくないのか?」
「ほしい、ほしいよっ!け、けどっ、これ…………やああああんっ!!!」
彼に胸を好き勝手にされている自分が、ご褒美をあげている方なのではないか。抗議は彼の挿送に阻まれて、
「や、んっ、はん、ああんっ、んあぅっ!!!あんっ!んんっ!んあううっ!!」
はしたなく感じる声と、突き上げられて跳ね散るおもらしの音ばかりが流れていってしまう。
乳首を舐めては吸い、揉みほぐしては摘み、突き上げては突き上げる。彼に弄ばれた身体は、正常な判断を失っていく。
「ユメミ、もっと、おねだりするんだ」
「あんっ!え、えっ?お、おねだりっ?あ、はんぅ!!」
「ご褒美をもっと下さいと、おねだりするんだ!」
「あ、はぅ、は、はいぃっ!ム、ムント、さまっ!!もっと、ご、ごほう、びっ!く、くださいっ!!はん、あう!!!」
自分はご褒美をもらっている、快感に蕩けた彼女は、彼に言われる事でご褒美を求める側になり下がる。
「そうだ、どんなご褒美が欲しい?」
「あぅっ、はうっ!おっぱい、もっ、とっ、しゃぶって、ぁ、んあ、はん、ぺろぺろなめて…………あんっ!!!」
「それから?」
「ち、ちくびっ、ちくびを、いっぱい、いっぱいいじってぇ!!あふぅ!!!んんっ!!!」
「それから?」
「やんっ!わたしの、わたしの、だめぇっ!わたしのなかを……はぁんっっ!!!ぐちゃぐちゃに………ぁああうっ!!」
「それから?」
「え?えっ?あ、あんっ、ん、んぅ、えうぅっ!やんっ!!わ、わかんないっ!ああんっ!!」
彼女がねだったのは、今彼が与えているご褒美。聞かれ聞かれてそれが尽きれば、後のご褒美なんて、彼女にはわからない。
「ユメミ、見るんだ……」
「あ、あんっ!んんっ、ふぅあ、はう、ひゃうぅ、くっ、あん、は、ぅぁ、うっ!!んあんっ!!!」
快楽に囚われながら、彼女は彼の声を聞いた。そして、見た。
目の前に掲げられた、彼の左手を。
「さあ、どんなご褒美が欲しい?」
言いながら、彼は舌を彼女の左胸に移し、右手でやわりと絞りながら、乳首を吸っていく。
「あ、ああんっ!!あんっ、はんっ!こっちのおっぱいも、こっちのちくびも、ごほうびちょうだいっ?あぁ……んんっ…!」
感じながら、彼の愛を失った右胸を揺らして誘う彼女。だが、
「…………違う。ユメミ、お仕置きだ」
「え、ええっ!?あ、ああああんっっ!!!だめぇっ!!」
胸をやさしく噛まれ、腰は激しく突き動かされ、彼女の意識が、記憶が飛んでいく。
「だ、だっ、だめっ!!!こわ、れっ、ちゃうううっ!!!だめ、だめぇ、やんっ!!あんっ!!ああっ!――――」
白い闇の射すその寸前、彼は律動も舌も指も同時に止めた。
「あ、はぁ、あん……んっ、ぁ……や、だ、だめ、あ……とめないで…………あぁっ………ん、っ…………」
そして、息を切らす彼女の眼前に左手を差し出すムント。
「ユメミ……もう一度だ。どんなご褒美が欲しい?」
「……ん、ぁ、はあ、ぁ、ああんっ…………おねがい………わたしを、おかしく、して…………?」
「駄目だ。お前が欲しいご褒美を、きちんと言えるようになるまでは、な」
「……ご……ご、ほう……び…………」
虚ろな瞳でただ呟く彼女は、何も考えず、求める。
「……わた…し……ムントさまに、めちゃくちゃにされたら、ん、なんでもうれしいの………
だから、もっと、ぁん……なんでも、してほしい…………わたしを、あなたに、こわされ、たいの……………」
何も考えていないからこそ、それは彼女の本心であった。彼も理解していた。
「…………どうされたら、一番嬉しいんだ?」
一番や二番などといった序列は無いだろう。彼も理解していた。だが、彼女の口から聞きたい。
「………………わ、わたし………………わたしは……………っ…………
…………わたし、ムントさまに、だきしめられてきもちよくなるのが、すき…………
でも、むりやりキスされたり、おっぱいをいじられたりするのも……すき…………
はずかしいところ、たくさんいれられて、たくさんおもらしされて、すごくきもちいいの…………
ムントさまになら、なにをされても、きもちよくなれるし、おかしくなれるし、こわれちゃうの…………
でも………でもね、いちばんこわれちゃって、いちばんはずかしくて、いちばんあなたをすきっておもったのは、
……ムントさまのおちんちんがはいって……すぐうえの、すごくかんじちゃうところも、ゆびでいじられちゃったとき…………
すぐにおかしくなっちゃった、すぐにあなたのこと、もっとだいすきになって、たくさんしあわせなきもちになれたの………
だから、ごほうびは…………
……キスをして、もっといっぱい、キスをして…………
ちくびもころころして、いっぱいいっぱい、かんじさせて…………
それから、わたしのなかにいれて、たくさんたくさん、わたしをかきまわして…………
いちばんはずかしくて、びんかんなところ、ゆびでいじっておかしくして、ムントさまにこわしてほしい…………
だから、おねがい…………
あなたのごほうび、わたしに、ください…………………」
黙って頷いた彼は、傾けた彼女の身体を抱え上げ、締め擦りながら言った。
「……ユメミ、止められないから、絶対に、腕を離すな……」
「……………はい……」
彼女は愛しい彼の首に腕を回し、いっぱい抱き寄せる。
「…………いくぞ」
「………………うん…………!」
彼はやさしく、ゆっくりと、挿送をはじめた。
「ん、んっ……!あ……ん、う………!んん、んふぅ………」
同時に、キスをする。
「ん、んんっ……んふ、うぅ…………んぅっ……!」
激しい彼女の舌遣い。受け止めながら、擦り寄る右胸に、左手を割り込ませる。
「ん!!んん……!んっ……ぁ………ふぅぅっ……!!」
乳首を摘んで、圧し奮えるユメミの熱を愉しみながら、右手を、繋がっている場所に潜り込ませて、
「んんうっ!!!んああっ!!はんっ!!!」
敏感な彼女の、最も敏感な反応をくれるところを、穏やかに撫でていく。
「はんっ!!!あ、あんっ!!き、きもちいいっ!!!きもちいいよおっ!!!あんっっ!!!んんむっ!!!!」
しなやかに尻を揺らしながら、彼女は彼の唇に貪り寄って、その淫らではしたない痴態を、彼の為に捧げていく。
感じる息が、唾液と一緒に絡み合い、速まる彼の剛直に乱れては、彼女の濡れた唇が奮える。
「あ、はあああんっ!!!ムントさまあっ!!もっと、わたしを………うあああああんっ!!!!」
尻が小刻みに強く奮え出す。彼女の絶頂は近い。
彼女の求めた4つのご褒美、それを欠かさずに与えて果てに導きたいと願う彼は、腰も指も唇も、懸命に動かしていく。
「あ、はぁん、んんっ!!!んふぅ、んっ、ん、ぅ、ぁ……んんむっ!!!んっ!!んんんんっっ!!!!」
首に回す腕の力が、無造作な強さに変わっていく。しがみついて、彼女は唇を離す。
「んふぁ……あ、いいっ!!もう、こわれちゃううっっ!!!うれしいっ!!!た、たくさんっ、こわしてぇっ!!!」
乳首も、下の口も、一番感じてしまう恥ずかしい場所も、彼で満たされ、こわされて。
「あううんっ!!はあああんんっ!!や、だ、だめ、だめぇええぇっっ!!!!」
「ユメミ!!おもらしだ!!たくさん出ているぞ!!」
「え?あ、は、はず………………ふああああああああぅんんっっんっ!!!!」
羞恥に爆ぜて、ユメミは肩から下を痙攣させる。感覚が遠のき、記憶も意識もあやふやになっていく。
だが、彼は止まらない。締まる彼女の淫肉に、自らの化身を圧し込んで、
「ぁんっ!!!あ、だ、だめ、ほんとに、こわれちゃううっ!!!あ!はんっ!ああんっっ!!!」
それぞれの指で乳首と陰核を乱暴に擦りながら、更に奥へとねじ込んでいく彼。止まらない。
新鮮な彼女のおもらしが滑りをよくさせて、気持ちいい。もう止まらない。
「ユ、ユメミ……き、気持ち、いいっ……!!」
「あん、はあう!!こわれちゃう、こわしてぇ!!ムントさまが、ムントさまにきもち、あぁんっ!!よくっ……んくっ!!」
胸が、尻が、唇が奮えている。今しがた達したばかりだと言うのに、再び彼女は果てるのか。
「はぁ、ぁ、んあう、きゃうっ!!きも…ち……ふああぅ……あうう……だめぇ……あ、んっ!!はんんっ!!!」
一瞬、意識が飛んだ。彼女は彼の強い怒張の突き上げに自らを取り戻すが、
「あ、くぅん、んふぁう、あう、うんぅ、へぅ、ぁ、はぅ、あんっ、あ、あああんっ……こ、こわれ……うはぁんんっ!!!」
気を保つのもままならず、昂る刺激と身体の熱に、心が安定を失い始める。
(……だ、だめっ!!このままじゃ、わたし………!!でも、きもちいいっ!!こわれたい!!!こわしてぇっ!!!!)
その危うさを感じていながら、こわれる事を拒まない。尻を揺らして、彼にすがりつき泣き叫ぶ。
こわれるからだ、こわれるこころ、こわれていくユメミ。そして、ムントもまた――――
「ユメミっ!!!出るっ!!!!」
「ああ、あん、ムン、ト、さまっ、ん、ゃ、はぅん、いい、よぉ……いっぱい、いっ、ぱい…だして…………ね?
…ぁ……ああん!!はんっ!!!いい!!!うああんっ!!!おかしくしてぇ!!!もっと!!!もっとぉっっ!!!!」
音、律動、愛液、涎、垂れ堕ちる。蕩けて蕩けて、彼女はもう、こわれてこわれて。
こわれたユメミは、ムントのもの。ムントにこわれて、ユメミはうれしくこしをふる。
「はあああんんっ!!だめええええっ!!ふぅんんっ!!ん!んっ!くぅん!き、きちゃう、きちゃうよ
は、んっ!!くる、きちゃう、だめ、あ、は、んぁ…………………ふぁああああああぁぁああああんんんっっっ!!!!!」
ユメミの意識が、記憶が、堕ちる。
何も、残らない。
心地よい愛悦の海に、何もかも、堕ちていく。
何もかも、消えていく。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………ぁ…………………ん………………………………ん、んっ……………う………………………………
………………あれ…………?……ここ、どこ……………?…………………わたし、どうしちゃったんだろう…………?……
………………………………………………………………………だめぇ…………なにもおもいだせない……………………………
………………………でも、いいや………………いまは、すごく………………きもちいいの………………………………………
……………ぇ…………………………あ、あれ…………?……………これ、なんだろう……………………………………………
…………………………………………………くちのなかに、なにか、はいってる……………………………………………………
…………………あれぇ………さっきから、はいってたかなぁ………………ううん…なんか、おかしいなぁ……………………
…………………………でも………………ふしぎなあじがする………………………………んんっ…………………………………
…………………ちゅる、っ………ふしぎなあじの、すごくとろとろしてるよ…………この、しるみたいな、とろとろ………
……それに、この、ぼうみたいな………ちょっとまがってるけど…………………………ちゅ………んんっ……………………
………………んふう……………………………すごくぴくぴくしてて、かたくて…んっ………あつい…………………………
……………………………ぷるぷるしてるし、びくびくしてるから……………いきてるのかな………?…………………………
………………かんだら、いたいよね……?…………………そのかわり、ぺろぺろしてあげる………………ふふふっ…………
……………ちゅ………ちゅ…………くちゅ……ちゅゆっ…………ん…………ちゅぅっ……………ちゅぱ、ちゅぱ……………
……………ふうぅ…………もっとつよく、すうの?…………………わかった……………じゃあ、つよくするね………………
…………んふぅ、ちゅぽっ………ちゅ、ぢゅ………りゅっ………くちゅ、ちぱっ………くちゅ、くちゅ………………………
……………ん、ちゅ、ちゅううっ……………あれ…………?…………………なんだか…………ん、んんっ、きゅちゅっ……
……んぱぁ…………はぁ、はぁ………………きもちよく、なってくる…………んん、んふぅ………ん、くちゅ、ちゅっ……
………ちゅる…っ……くちゃ、くちゅ……………んむっ、んっ、ちゅ、ちゅゆっ………んむ…ふうぅ…………………………
…………さっきより、かたい……………そう、あなたも……………きもちいいのね…………うれしい………んっ……………
……………ん、んふ、ちゅ………ちゅぽ、くちゅ、くちゅぅ……………………………………ん、んんっ………………………
…………………ん、ちゅ………………………くちゅ……………ちゅ、ぽっ…………………………ん……………………………
……………ん……………………………ちゅ…………………………ぁ……………………おいし…い………………………………
…………………………でちゃうの…………?………………うん……………だして、いいよ…………?…………………………
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ムント様の攻めが凄い。
男の欲望(本性?)を剥き出しにしたベッドテクニックに酔いしれました。(鼻血)
次回で終わりなのかな。何か寂しいな。
ラストが脳内再生されてたまらん
5氏の書くフェラを文章で読みたかったけど、声と音だけっていうのも乙
自分だけイってしまったユメミにムント様のお仕置き炸裂。
第2章があったら更なるムントの激しい愛の嵐に期待。
しかし、小説がお上手です!
これだけの文章の才能がおありになるのですからHPを開設したり、同人誌
を作ったりしてほしいです。本が出たら必ず買うけどなぁ・・・。
このスレ立ててほんとに良かった!
5氏ありがとう!
5氏に出会えて良かったよ〜(´Д`)
246 :
5:2009/04/13(月) 23:58:12 ID:EmCwx3Hm
「ユメミは少女じゃいられない」
今回で1話を締めます
11節うp
では、どぞ
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………ん、んんっ………………………………………………………………
PRrrrrrrrrrrrrッ!!
…………………………………ん…………ん……?……………………………………うるさいなあ…………………………………
PRrrrrrrrrrrrrッ!!
………………………………ムントさまぁ…………………………もうちょっとだけ………ねかせて………………………………
PRrrrrrrrrrrrrッ!!
……………………………………………………………………もう、わかりました………おきますよっ……………………………
PRrrッ!!
………………………………もしもし…?………………………………………………むんとさまぁ……?…………………………
『ユ、ユメミさんっ!?ど、どうしたんですかっ!?』
…………あれ……?……………たかし……?…………………どうして、むんとさまのでんわに、たかしがでるの…?………
『ユメミさんっ!!もしもしっ!?ちゃんと起きてますかっ!?』
…………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?
『起きてますかユメミさんっ!?もしもし!?』
「――――タ、タカシっ!!!?」
見慣れた部屋。カーテンに漏れた冬の寒陽。
ぼんやりしていた頭が、通話先の少年の高い大声と、素っ頓狂な自分の驚声に、いくらか目覚めていく。
(…………私の、部屋……?)
間違いなく自分のベッドの上にいる。ユメミは意識を改めると、寒さも忘れて跳ね起きた。
「私の部屋っ!?あれ!?ムント、ムントは――」
『もしもしぃ!!ユメミさぁん!!もしもしぃっ!!』
掛け布団をめくり除けた右手に持つ携帯電話のスピーカーから、耳慣れた少年の声が聞こえる。
はっとした彼女は、反射的に慌てて電話を顔の右に当てやり、出た。
「ご、ごめん、タカシ!寝てた!!ど、どうしたの?」
『どうしたの、って、ユメミさんがどうしたんですかぁ!』
「…………え?」
咎めるような泣き付くような大音量が、寝起きの彼女の耳をつんざく。
『…………バイト、遅刻ですよぉ!』
「あ…………あっ!!」
遅刻、友人・タカシのその言葉に、彼女の頭の中が猛烈な速度で整理されていく。
今は朝。だったら、あれから、もう次の日になってしまっているのか。
昨日はタカシの家の神社のバイトがお休みで、イチコやスズメ、クラスのみんなと一緒にモンタローランドに行った。
それから、色々あって天上界に行って、ムントと――――そっちは今は後回し。
とにかく、あれが本当に昨日1日のことで、日付が飛んでいたりしていないのなら、今日は間違いなくバイトがある。
時計を見る。短針は9を指していた。今日からのお勤めは8時半より始まり、身体のお清めをする時間はとっくに過ぎていた。
急がなければ。でも、その前に――
「――タカシっ!ごめんっ!今日って、何月何日っ!?」
『へ?じゅ、12月26日ですよ!ユメミさん、どうしたんですか?だ、大丈夫ですか?』
訝しがるタカシをよそに、それを確かめた彼女は、理解した。
「ご、ごめん!!すぐ行くから、イチコとスズメに――――」
言いかけて、彼女は止まった。スズメとイチコも、後から天上へ来た。ふたりとも、どうしただろう。
アクトの危機を解決した後の魔導国の祝宴で、ふたりは天上の人達と踊っては歌い楽しんでいた。ユメミもそれは覚えている。
だが、彼女はその途中でムントのもとに行った。だから、ふたりがその後どうしていたか、どうなったかはわからない。
もしかしたらと思うと、気が気でなくなる。続く彼女の問いは焦りを帯びる。
「…………タカシ、イチコとスズメはっ!?」
ふたりもこちらに戻っているのだろうか。咄嗟に出てしまった横着な質問。だが、横着で良かった。
天上の事など全く知らないタカシはタカシで、ユメミの切迫した問いを履き違え、
『スズメさんは電話があって、体調が悪いみたいで、今日はお休みです。
イチコさんはもう来ていて、おふたりの代わりに売店をひとりでやってくれてます』
彼女の求めたい回答とは違う説明を、いつもと変わらぬ丁寧な調子で繰り広げる。
けれど、これで充分だった。少なくともふたりとも、こちらに戻ってはいるらしい。
とにかく、バイトには出なければ。昨日の事を考えるのは、今日の事をこなしてからでも遅くはないはず。
それに、イチコと会えば、いつどうやってこちらに戻って来たのか、確かめられるかも知れない。
「わかった!私もすぐ行くから、イチコにそれまでよろしくって言って!それからタカシ、ごめんなさい!」
寝坊してしまった事を謝ると、電話先のタカシの口調は、最初の慌てぶりとは打って変わって、
『わかりました!あ、今日は凄く寒いから、温かいものを食べてから来て下さい。
それから、道もまだ凍ってると思うので、くれぐれもお気をつけて!』
彼女を気遣い、無理をしないように慰撫するものだった。
「うん、ありがとう!それじゃあ、また後で!」
『はい、また!』
お礼を言ってタカシの挨拶を聞き、携帯を下ろして終話ボタンを押し、彼女はふと考える。
今思えば、タカシはどんな時でも人を気遣って、自分のやることや言うことをよく考えているように見える。
時には軽挙なところも見せるが、それは親しい人の前だけ。見かけはひ弱だけれど、根っこの部分は彼女より大人だ。
いつもはあまり感じなかったが、何故か今日に限っては、それがとても助かるものだと、ユメミは実感できる。
勿論、既に遅刻している申し訳なさや気後れもあって、そう思えてしまうのかも知れない。
けれど、遅れても尚やたら責め立てずに心を配ろうとする今の一言二言は、女の子にとって確かにありがたいのだ。
(もしも、これがムントだったら、どう言うだろうなぁ……)
彼に置き換えて考えていたら、何故か恥ずかしいイメージを思い出してしまい、掻き消すように彼女は我に返る。
「と、とにかく…………着替えて髪もちゃんとして、仕度しなきゃ!!」
独りごちて想像の彼から逃避し、パジャマ姿の彼女は布団から出て、
「さ、さむぃ……っ」
年の瀬も近い冷たさに身を震わせながら、当たり前のようにカーテンを開く。
「……………………っ!?」
「おかあさぁん!おかあさぁん!」
ユメミが身仕度を整えて朝食を摂り、急いで家を出てから、暫く後のこと。
眠たさに瞼をこすっているちいさな男の子が、玄関の中で何かを見つけたらしく、しきりに母親を呼んでいた。
台所にいた母親は家事の手を止め、幼い大声で呼ぶ我が子に何事かと、彼のいる玄関へスリッパの音を立てる。
「チカラ、どうしたの?」
「ねえちゃん、わすれもの!どうしたんだろ?」
男の子は見つけたそれを指差して、母親に教える。教わった母親もまた、首を傾げながら不思議そうに呟く。
「……あら……どうしたのかしら、あの子。忘れていくはずは……無いわよねぇ…………?」
高さの違うふたりの視線の先には、一本の傘の刺さった傘立てがあった。
娘が、姉が、外に出歩く時にはたとえ晴れの日であっても必ず決まって差す為、常日頃からそこに刺してある傘だった。
神社に着き、お清めを済ませて装束に着替えたユメミは、神体にお祈りをしてから、売店にいるイチコのもとへ駆けていった。
「ユメミ!遅いよっ!!」
「はぁ、はぁ、ごめん、イチコ……!」
彼女が謝ると、憤慨する親友の表情は、水を打ったように気楽な笑顔に変わった。
「じゃあお詫びに、帰りに何か、ごちそうしてもらおうかなっ」
「ふふふっ、安いものならね?イチコはよく食べるから」
「じょ〜だんじょ〜だん!けど、バイト上がったらケーキ買って、スズメのうちに行こう?」
「うん、それがいいよ。そうしよう!」
お休みしているちいさい親友は、体調が悪いと言っても、恐らく女の子の日だろう。お話くらいは充分にできる。
「それに……」
イチコの顔が、真剣な色に変わっていく。
「……その、あそこでのこと……スズメとも、話さなきゃ…………」
「…………うん、そうだね……」
天上界のことをイチコは忘れているのではないかと、ユメミは密かに恐れていた。
ほっとしたユメミの頷きを見取って、イチコは一息ついてから、続ける。
「……何が何だか、どうなってるんだろ……
モンタローランドのあるあの辺りとか、昨日はあんなにめちゃくちゃになってたのに、
今はそれも全然無かったみたいに元通りになってるし…………」
ここへ来る途中に、ユメミも見ていた。隆起した大地も突然降ってきた柱も嘘のような、幼い頃から親しんだ街の景色。
遠くに見えるモンタローランドの観覧車も、横倒しになっていたはずなのに、今は何事もなく立って回っている。
それに、朝御飯を食べていた時にテレビで見たニュースでも、天上の水鏡に見た地上の天変地異の事は取り上げられず、
毎日のように特集企画が組まれていた異常気象に関する報道もぱたりと無くなった。
「……無かったことに、なってるのかな?」
ユメミが推して零すと、イチコは溜息をつきながら答えた。
「なんだかワケがわからないけど、そうみたいね。しかも、あんなことがあったのを知ってるのは、アタシ達だけかも。
ううん、違う。みんなが覚えていないというか、みんなにとっても、無かったことになってるんじゃないかなぁ……
昨日のことも、うちの父さんに聞いても『頭がおかしくなったか?病院行くか?』とか言って、取り合ってくれないし……」
「…………やっぱり、そうだよね……」
ユメミもまた、物憂げに溜息を漏らす。
家を出る前、テレビを見ていた時は母親も一緒だった。だが、母親には特に変わった様子は見受けられなかった。
母親は、いつものように、あら嫌な事件ばかりといった具合に、流れる報道を変わりなく見ていた。
ユメミは母親に何を尋ねる事なく、黙って味噌汁をすすった。イチコの言った推測を、彼女もこの時ある程度察していた。
テレビを見る母親に、一連の地上の出来事について聞こうとは思った。しかし、彼女は躊躇った。
小袖と袴では寒いからと朝から温かいものをこしらえてくれた、優しい母親を困らせたくなくて、聞くに聞けなかった。
あれは夢だったのだろうか――未だに疑念を晴らせずにいるユメミに、
「――でもさ!」
イチコは急に明るい声に早変わりさせ、彼女に笑いかけた。
「みんなが忘れても、アタシ達は忘れてない。あの浮島も、絶対にあった。
嘘なんかじゃない。無かったことになんて、なってない。これって、アタシ達だけが覚えてていいことなんだよ、きっと」
「……イチコ………」
自分の不安をわかった上でこうも言ってくれる親友に、彼女の胸に嬉しさが込み上げる。
そう、あれは夢なんかじゃない。絶対にあったできごと。
彼女とイチコ、スズメのできごと。そして、ムントとの、できごとも――――
昨夜の心地よさが、眠りから醒めた今もくすぶっている。
彼のくれた熱くてやさしいキスの感触を、この唇は忘れられないでいる。
小袖の中に晒しを巻いた胸も、彼の指を、舌を、はっきりと覚えている。
彼のくれた温もりは、寒さに震えるこの肌をあたためてくれている気がする。
どんなに不安に苛まれても、この身体は彼のくれたしあわせに満ち溢れている。
下もまた、彼のものがまだ中にあると思えるほど激しく愛し合った跡が残り、袴に隠れた脚が今もまだ奮えている。
恥ずかしいけれど、夢じゃない。あれは絶対に夢なんかじゃない。ムントはいた。そして、私を愛してくれた。
私のこの想いも、嘘じゃない。それに、ムントがくれた想いも――――
過ぎたる確証を得ながら一抹の疑いを消せなかった彼女だが、共にあの場所にいたイチコの言を得て、
ようやく心から自分を信じられる、何を思い煩う事なくこの気持ちや感覚を甘受できると、かつてない安堵に心が満ちる。
「…………あれは、夢なんかじゃない……」
空を見上げるユメミの呟きは、自分に言い聞かせる為のもの。
これからの時間を、少しずつ大人になっていきたい自分に、勇気を奮い立たせる為のおまじない。
彼がいないこれからの時間を、寂しさで泣いてしまわないように、この心をあたたかく包んであげる為の魔法の言葉。
「そうだね……。あれは、夢なんかじゃ、ない…………」
イチコもまた、彼女と同じ空を見上げて、感慨深そうに呟いた。
ユメミの見上げた瞳に広がるのは、雲ひとつさえ流れない、凍える冬の青い空。
自分が他人とは違う事を知った幼い頃から、彼女が願っていた皆と同じ青い空。
願っていたはずなのに、見上げた瞳からは一粒の涙が溢れ、彼女の冷たくなった頬を伝い、小袖の胸に落ちていった。
「ルイ!人手が足らんぞ!人をもう少し回してくれんか!?」
魔導部隊の一団を監督する老師・テオは、巡察する若い参謀を遠くに見つけ、懇願の叫びを挙げていた。
高貴を思わせる青髪の参謀は、しわがれた鳴声を聞き、足を止め、張りのある声で叫び返す。
「昨日のホルグウズ戦にて負傷した者達の回復がままならん!
ムントもシュザ達も、懸命に治療に尽くしているが、全員が快癒するには時間がかかる!
一通り見回って状況把握を終えたら、私も加わる!それまでは、現行のまま尽力してくれ!」
「ムント様御自ら、治療を!?」
前例の無い王の振る舞いを伝え聞き、古株の魔導師は驚きを隠せない。それはテオだけでなく、彼に従う部下達も同様だ。
復興作業の巡察視は、その行程の指揮や監督だけが役割ではない。若年にして人の上に立つ参謀は、その役目を心得ていた。
「そうだ!ムントも皆と同じ、復興の為に魔導を注いでいる!
魔導師よ!!世界がアクトの循環を見た今、我等の力は無限だ!!民の為、その身に宿した魔導を振るえ!!!」
「「「「おおおおぉっ!!!!」」」」
涼しい青髪とは真逆の、熱気を帯びた大音声。その場にいた魔導師達は野太い歓声で答えた。
彼等は意気を改め、魚雷や光弾で破壊し尽くされた街を、手当たり次第に元の姿へ戻していく。
「はああああああっ!!」
「やっぱり凄えや!どんなに魔導を使っても、アクトが切れる気がしねえ!!」
「ムント王万歳っ!姫様万歳っ!!」
その急行程にしおれ始めていた魔導師達が気炎を燃え上がらせたのを見て、テオは呆れて鼻息をつきながら、
「全く、近頃の若いもんは…………」
これから修復する区画の、爆風に盛り返された石畳の道の上に立ち、屈んでその手を足元にかざす。
「――――――ひょおおっ!!!」
手から光が荒れた道へ迸ったかと思えば、一瞬で石畳が整復され、彼のアクトに活性されたか、石の間に野草が花を咲かせる。
「おおっ!!」
「テオ様!流石です!!」
「ほ、ほ。老木と思い侮ってはならんぞ?さて、この調子で続けるかの?」
「「「「おうっ!!!」」」」
再び気勢を挙げると、魔導師達は働きに働き出す。古参の威厳を見せた老師は遠くの若い参謀に笑って見せる。
参謀――ルイもまた微笑みを返し、供の者達を引き連れ、颯爽とその場を後にした。
涼しい表情のルイは次の被災地域に歩を進めつつ、部下の報告に耳を傾けていた。
それを受け、手元で紙に何かを書き出しては、真横の部下に指示を告げながら1枚1枚渡している。
その軽やかな挙動、その目に映った湧き返る人々とは裏腹に、ルイの内心は悩みに悩み、いつもにまして穏やかではなかった。
(……むぅ……どうしたものかな…………)
若き参謀を悩ませる要因は、主に3つ。
ひとつは、復興作業の計画の立案。当座の課題であり、数量的には3つの中で最も多い。
その中身は、先日までの戦いでぼろぼろになった街や王宮、かつてムントがアクト消費軽減の為に消し去った領土の復旧である。
復興とは言うが、気長に取り組めるものではない。その時間を徒に費やす国の姿は、そこに住まう民の心理に深く影響する。
彼等の生活を安定させる事が大前提だが、復興にいちいち時間をかけ、体制に対して余計な不安を抱いて欲しくはないのだ。
また、復興を急ぐのには、国防上の理由も関わる。魔導国の守り手たる魔導師達がこれを行う為だ。
いくらアクトが無限とは言えど、魔導を酷使すれば肉体や神経の疲弊は避けられない。
そこを連合やホルグウズのような物量で押してくる敵国に突かれれば、強大な力を持つムントがいても、防ぐのは難しい。
それらの国が動きを見せないうちに、最低限の箇所から復興を進めているのが、今この時である。
ルイの巡察は、これから復興する区域の優先度評価と、それぞれの箇所に必要な人足の査定を目的としていた。
計画は情勢によって左右も頓挫もするが、それらの整理と把握は、その都度の計画を練る上でも、
万一敵の上陸を許した際にどう守りどう布陣すればいいかを計る上でも、有用になる。
国防の為、復興に必要な時間が知りたい。どのような状況に陥ろうとも、軍事統轄に参与する身としては当然の事だった。
あらゆる可能性を視野に入れて動くルイだが、十中八九、近日中の侵攻再開は無いと踏んでいた。
ホルグウズや連合が侵攻してきた際に奪取した艦艇を飛ばし、領空内から監視を強化しているが、未だ変わった報告は無い。
念の為、数個の魔導師大隊も復興に参加させず、急遽の事態に備えて待機させているが、
テオの求めるように、彼等を復興人員として振り分け直すべきかとも考えている。
これまで、魔導国全体が軍事行動を優先した為、蓄積した戦火の痕を後回しにしてきた。ルイ自身も例外ではない。
だが、アクトの循環を見た天上界は、その情勢を変えようとしている。散々仕掛けてきた連合もホルグウズも動きを止めている。
消耗した国力を休ませながら蓄え、再編する方向へ移すなら、今を置いて他に無い――参謀ルイの直感が働いていた。
ふたつめは、今後の天上界の展望である。復興のような間近のものではないが、軍事参謀としてどうしても考えてしまう。
確かにルイの読みでは、近日中の侵攻は無い。だが、これからの魔導国のみならず、天上の行く長期的な道筋は読めない。
この世界がどのように変化するか、アクトの循環とそのもたらすものを期待したい本心はあるが、期待し過ぎるのは危うい。
前のアクト危機が解決された後は、天上に満ちたアクトを見て連合内の数国が離反し、相争う様相を呈した。
アクトを巡って戦乱の起きたこの世界は、一度アクトに満たされても、戦乱は止まなかったのだ。
時空の歪みに堕とされたホルグウズ王・グリドリもそうだが、結局アクト云々は戦の名分でしかない。根本は、野心だ。
次に誰が何をするかは、ある程度蓋を開くまで読めない。予測を重んじる頭脳労働者には、これが耐えられないのだ。
国防の為に安定した戦力を保有し続ける必要はあるが、民心を強いて無駄な緊張を抱かせ続ける事もルイは避けたい。
だからこそ、アクトの循環という転換期を迎えた今後の情勢は、早めに予期できるに越した事はない。
目下の大敵、連合とホルグウズがどう動いて来るが、それが掴めるだけでも、可能性は大分絞られる事になる。
だが、活発過ぎたその2国は、全く動きを見せないでいる。
そのお陰で復興作業が順調に進められるのは喜ばしいが、どうしても不安は消えない。
むほっリアルタイム遭遇☆
そして、みっつめは、ムントの事。細かい質の参謀を悩みに悩ませる最大の難事。
地上の姫君達が去ってから、ムントはどこか遠くを見るような目をするようになった。
とは言え、ムントの受け答えは明瞭であり、指示も的確である。王として変わらぬ姿で振る舞っていたが、
身近に接してきたルイには、その繊細な違いがはっきりと見え、そうなった原因も理解できた。
(やはり……ユメミ様の事が…………)
王は昨夜から奇妙だった。宴には出ず、呼びに行っても独りにしてくれと取り合わず、自室のひとつに篭り塞いでいた。
そしてそこは、先代と王妃がアクトの海に還って以来、ムントが深く悩んだ時に必ず入る部屋。
ルイもムントの心中を慮り、宴に出ろとは言わなかった。いや、言えなかった。自分では無理だ、そう思った。
ムントが悩むのは、たったひとりの少女の事。そんなムントに声を届けられるのもまた、たったひとりの少女。
だからこそ、ルイ自身も姫と敬ったその少女が宴を離れて帰って来なかった時、ムントの参謀として心底安堵したものだ。
だが、彼女が去った後、魔導師の復興作業への割り振りを協議しようと玉座の間に参ったルイが見たのは、
王の椅子に座せず、下界を眺めたままで大きな石窓立ち尽くす、寂しそうな瞳をしたムントの姿だった。
ルイが言上を躊躇っていると、ムントは自ら巡察すると言った。思わずルイはそれを阻み、
「い、いや、それは私がやる。ムントは、先の戦いで傷付いた戦士達の慰労も兼ね、彼等に治療を施してくれないか?」
口から咄嗟に出た上申を、ムントもああとだけ頷いて、負傷者達の治療の為に今も救護施設にいる。
(……ムントの心は、ユメミ様に…………)
それが悪いとは思わない。グリドリの猛威に発現したあの輝き、アクトの奔流を見れば、惹かれるのは自然の流れだ。
更に、宴の合間に垣間見た振る舞いを見れば、可憐で慎み深く、慈悲深くもある姫君に、ルイもまた敬意を抱いていた。
もしも彼女がムントと結ばれ、晴れて王妃となったなら、この魔導国も眩しい程に恩寵に満ちた国となるのだろう。
王妃になり民を愛でる彼女を見てみたくもあり、苦難に塗れたムントにも心から安らげる時間をと願ってもいる。
これは自身のみならず、国民全員の総意と言えるだろう。ルイは確信している。
しかし、姫には戻るべき場所がある。だからこそ、ムントは別れを選ばざるを得なかった。
アクトの循環が戻り、世界と世界は隔たれた。もう二度と、ふたりが会う事はないのだろう。
(だが、局外者は最早存在しない。それに、ムントの力を以てすれば――)
考えて、ルイは止めた。確かに可能だが、それはムントがこの世界から消えるという事を意味する。
時空を超えるには甚大なアクトを消費する。その為、ムントは日頃からアクトを温存し、その力を貯えていた。
超えた先の世界のアクトが自身の力として摂取できない性質のものなら、再び戻るだけの力の回復は不可能となる。
そして、姫君の住まう世界は、アクトを力に替えられない。
様々な世界のアクトに順応できた古代の天上人なら可能だったそうだが、異なる世界のアクトを絶った現代人には不可能らしい。
ムントが彼女を天上へ連れて来た時は、この世界と彼女の世界との間の、時空の境界が曖昧になっていたから可能だった。
ましてや、局外者が力を貸していたという状況があったからでもあると、予見師であるリュエリから後になって教わっていた。
姫をその都度天上に呼び寄せ、好きな時にご自分の世界に戻って頂く事も当然考えたが、それは避けるべき選択だ。
時空を超える事が禁忌とされたのは、古代の過ちによるものでもあれば、単純に、危険なのだ。
少しでも意志が揺らげば、時空の壁を超えた瞬間に、どちらの世界からも存在が消えてしまう為である。
だからこそ、ムントは彼女との接触には慎重になっていた。彼女の意志にしても、ムント自身の意志にしても。
姫もムントも自分の世界を捨てられない。だが、だからと言って、ムントが報われないままで良いものか。
このままでは、いずれ王としてもムントという一個人としても、望ましくない姿になっていく。ルイが悩んでいたその時――
「――ルイさまぁ!」
後ろから少年の声。
「トーチェ!!」
振り向いたルイは、慌てて走る少年の名を呼び、並々ならぬものを感じながら歩み寄る。
「はぁ、はぁ……連合から通信が、あって……講和の使者を送るって……!!」
「講和だと!?」
「リュエリ様が、ムント様に知らせに行くようにって……そうしたら、ルイ様が見えたから、先にお伝えしなきゃって……」
講和――その言葉は、ルイの苦悩を無理矢理中断させるには、充分過ぎた響きを持っていた。
ムントが手をかざすと、膝から下が失くなっていた男の脚が、光の中から浮かび上がる。
浮かび上がったそれは、もう片方の脚と同じように、屈んで、伸び、元通りに動く。
「あ、ああ!!ありがとうございます!!!ムント王!!!」
男は涙を流しながら、自ら治療を施してくれた赤髪の王に何度も何度も頭を下げた。ムントは微笑み、
「国を守ってくれるお前の働きは、俺様も知っている。今後も民の為にその力を振るって欲しい」
「は、ははっ!!」
男が緊張した面持ちで返事をするのを見て、彼は付け加えた。
「だが、無茶な突撃はするな。戦術が乱れるとルイが怒る。
それに、手足を失くすのも、これで4度目だろう?お前の家族も心配しているぞ?」
「は、はいっ!!肝に命じます!!!」
真っ青になった男の肩を叩き、ムントは立ち上がる。
ムントは国の全ての魔導師達の事を知っている。名前、性格、生年月日、使う魔導の性質、得意な戦法、家族の名前――
記憶力は生まれ持ったものではなく、その強大な魔導と同様、幼い頃から努力して培ったものだ。
自分が至らないせいで、連合諸国は魔導国に従わず、それどころか今日まで続く長年の戦争を招いてしまった。
だからこそ、民の為に自分は励まなければならない。彼等を守る為に。彼等が魔導国に生まれた事を誇りに思えるように。
こうして治療を求める者達と向き合っていれば、ユメミのことをいくらか考えずにいられる。
ムントは巡察を代わりに引き受けてくれたルイに感謝していた。
ルイは常にこの自分の事を考え、一手も二手も自分より先に進み出た場所から提言してくれる。口は悪いが、頼れる部下だ。
それに、身近な配下の者達も、自分のことを気遣ってくれているのがわかる。
ユメミの名を出さずに、ただひたすら治療に邁進させようとするのが、押し黙った表情から見て取れる。
だが、いつかは、ユメミのことを考えなければならない。
ユメミをいつも見守っていると約束した。それは、天上から地上を見守り続けるだけでいいのだろうか。
(………………いかんな………)
やはりどうしても、ユメミのことを考えてしまう。だが、暫くはこれでいいのかも知れない――
「ムント様ぁ!ムントさまぁ!!」
「トーチェか?」
声に向いた彼は、よたよたと駆け寄ってくる少年の姿を認めた。
「どうした?」
「連合から通信が、あって……これから講和の使者を送ってくるそうです!」
動揺はしなかった。彼は付き従う配下の者に向き直り、
「俺様はここを離れる。シュザ、後は頼んだ。それから、トーチェの膝を」
一際精悍な大男が黙って畏まるのを見て、颯爽と駆けていった。
「ムント様……」
その後ろ姿を見守るトーチェの膝に、シュザが大きな身体を屈めて、手をかざす。
急いで報せる為に走って躓いた時に転んだ膝は、シュザの魔導でその傷を消した。
「あ、ありがとうございます!」
慌てて取り繕ったトーチェのお礼に、優しい瞳をした大男は頷くと、走り行く王の姿を黙して見届けていた。
ムントが玉座の間に入ると、既に主立った文武官達が集まっており、彼等は王の姿に揃って一礼する。
玉座への道を真っ直ぐ空けて、幾重にも列を成す臣下達。ただひとり、長い紫髪の麗女が玉座の側に控えている。
「状況は?」
玉座へ歩みながら、誰にでもなく下問する彼。
「つい先程、連合評議会より通信が入り、
『急遽の事なれど魔導国と連合との講和を結びたく、これよりその使者を送らせて頂く故、言上をお聞き願いたい』
という、従来とは正反対の、丁重な言辞でございました」
「リュエリ様のご裁可にて、迎え入れる旨の返答を発しております。到着予定は、陽が真上に昇る刻との事です」
「使者団と思わしき艦艇の出航を掴みました。巡洋艦1、護衛艦2。こちらに進路を取り、到着時刻と符合する速度です」
官吏達の報せを聞きながら、ムントの歩は止まらない。乱れぬ報告だが、彼等が喜びに似た興奮を押し殺しているのがわかる。
「そうか」
玉座に座った彼は、参謀の名を呼ぶ。
「ルイ、この講和、偽策と思うか?」
講和の使者に見せかけた、何らかの策略の可能性、その有無を聞いている。
「今の時点では何とも言えん。事の後だけに、真に講和や休戦を望んでいる事は充分あり得るだろう。
だが、詭計もまた考慮して、医療班以外の魔導師部隊の復興作業は中断し、艦隊の監視、要所の重点警護に当たらせるべきだ」
ムント自身は、講和については望ましいと思う。アクトの循環を経て、連合の姿勢が軟化したかどうか、見定めたい所だ。
だが、家臣達からひしひしと感じる浮かれ気分は、劇的なアクト危機回避の後とは言え、ムントは危ういと思っていた。
とは言え、上に立つ者がそれを指摘しては、下の者は気後れしてしまうもの。気を締めるにも、暗に諭さなければならない。
慎重肌のルイならば、ムントの意が通じる通じないに関わらずうまく代弁してくれる、彼はそう期待してルイに尋ねたのだ。
王の目論みは的中し、偽計の可能性を示唆され、文武官達の気が引き締まっていく。
もっとも、微かに頷いて見せるルイもまた、ムントの意図はしっかりと汲んでいたようだが。
「偽計か否か、他に意見はあるか?」
ムントの問いに、進み出る者はいない。それを確かめ、彼は続ける。
「ならば、使者の出迎えは第3防衛線にて、2中隊を選び向かわせる。
指揮はマテュ、お前に任せる。連合には俺様がこれから話をつけるので、お前は防衛線上で艦艇を留め、中を調べろ」
「ははっ」
指名された老官は、うやうやしく拝命する。
「使者の入国中においては、会見場近辺を中心に警備を敷く。監視・警備に総括者を設け、相互に連携してもらう。
監視総括はパルカに命じる。特に入国許可を出す使者一行以外が上陸しないよう、監視を担当させる部隊には徹底させろ」
「おうっ!」
「ルイ、警備総括を、大隊指揮官以上の魔導師から、お前の裁量で選べ。会見にはお前も出てもらう。
言うまでもないが、先の戦いの勝敗に関わらず、相手は講和を携える使者だ。
警備に従事する魔導師各位には、過剰な威圧で迎えぬよう、各隊指揮官に厳命の上、伝達させろ。いいな」
「了解した」
「使者入国中の警備・監視については、各総括に委任する。これは、魔導国王としての決定である。
魔導部隊指揮官各位は、これより、警備・監視に当たる魔導師隊の分担・配置の協議に入れ。
リュエリ、ルイ、内政官各位は、事前にいくらか講和条件等を詰めておきたい。大会議室へ移動しろ。以上!」
文武官が解散し、玉座の間にはムントと、その傍に立つリュエリのみとなった。
「ムント、了承を得ず、独断で返答を与えた事、申し訳ありません」
講和の使者を受け入れるかは、本来ならば王の決定する事項である。今回はリュエリが決定し、直後にムントに報せた。
だが、ムントは特に気にするでもなく、
「リュエリ、お前だから、信頼している」
リュエリの予見が、この講和は魔導国の不利になるものではないと見抜いたのだろう。
それ以前に、リュエリ自身の政治判断能力は、自分もルイも舌を巻く程の高度なものである。だから信頼できる。
ムントが王として最も多くの事を学び、最も頼りにしてきた人間――それがこの、天上絶世の美女であった。
魔導国の誰もが敬慕する女性を傍らに仕えさせるムントには、国内外から羨望の目を向けられる事が多い。
だが、ムントの心はひとりの地上の少女にあり、ひとときの静けさにあって、彼は彼女の事に思いを巡らせる。
こうした王の姿を、ユメミには見せなかった。ただひとりの男として彼女と向き合い続けた。
それで良かったとは思っている。ただ、彼女に見せなかった自分を見たら、ユメミはどう思うだろうか。
ふと考えて、ムントはリュエリに尋ねる。
「リュエリ、俺様の未来が、見えるか?」
これから自分はどんな人間になっているか、違う、ユメミに対して自分はどうなるのか、師である彼女に聞いてみたくなった。
「……………………いいえ、ムント……」
答えるまで間があった。
「……わかった」
満足そうに頷くと、ムントは玉座を立つ。
「――――ムント、ひとつだけ、見える未来があります」
見えないと言ったはずの答えに彼が振り向くと、リュエリは続ける。
「近いうちに、貴方は、選択を迫られます」
「選択?」
「はい。重要な選択を、幾つも求められる事になるでしょう」
「……選択、か」
ユメミに関する事か、或いは別の事か、これから臨む講和の会談にまつわるものかも知れない。
「その選択を何を以て選ぶのか――選択それ自体よりも、その所以が、貴方にとって大切なものとなるでしょう」
選ぶ理由、予見者であり師である女性の言う意味を、ムントは考え、頷いた。
「…………わかった。行こう、リュエリ」
彼は歩き出す。リュエリも彼の後に従った。
リュエリには間違いなく、自分の未来が見えている。彼は確信していた。
しかし、その未来を安易に指し示しては、彼の選択もまた、想いも篭らないものに成り果ててしまう。それも理解している。
いずれにせよ、選ばなければならない。それまでは大いに悩み、葛藤するのだろう。
ただ、リュエリの言は、それでいいと言ってもいる。選ぶ理由――今は全く見えないものが、簡単に手に入るわけがない。
ユメミの事を無理に押し殺すのはやめよう、彼はそう決めた。
彼女の事をいつも考え、天上から見守りながら、常に王としての責務を果たす。
(…………忘れるなど、やはりできない。したくも、ない……。今は、それでいいはずだ)
ひとつの選択を終えた彼は、文官達の集まり大会議室の扉を、力強く開け放った。
「ユメミは少女じゃいられない」 第1話 『別離の夜』 終
終わったぁ〜。二人が再会する事を願いますv
次回も頑張って下さい!!
260 :
5:2009/04/14(火) 01:01:52 ID:ms8mgTU2
1話をご覧頂いた皆さん、改めまして、ありがとうございます
暖かいレスを下さった皆さん、ありがとうございました
お陰様で何とか1話を終わらせることができました
特にうp開始当初からご覧頂いていた方々、お疲れ様でした
拙いSSに1ヶ月もお付き合い頂いて、申し訳なくもあり、ありがたく存じます
>>6>>7 当初の希望シチュにお応えできたか、自信皆無です
スレを立ててくれた
>>1>>244 この1ヶ月間、いい勉強をさせて頂きました
本当にありがとう
今後もお目を汚すかと思いますが、楽しんで頂けたら幸いです
うp再開は、今の所19日(日)の夜を予定しています
では、また
わーい、楽しみにしてます!!
切ないお話ですが、読みごたえのあるパラレルワールドでした。ムント×ユメミ万歳!!!
保守
ラブラブのとこもとてもよかったけど、
>>248からの部分は、テレビの後日談としてものすごく読み応えがあったよ。
ありがとう、本当にありがとう!
長文、乙でした!主の文才に脱帽したw
続きも楽しみにしてます!
ムントとユメミがどういう風に再会するのかwktk
266 :
5:2009/04/19(日) 19:35:05 ID:qb3rFAvu
>>261-265 ありがとうございます
圧縮保守の方も乙です
圧縮は近いようでまだ先みたいだけど、どうなんでしょうね
劇場版の公開も祝してうp再開します
「ユメミは少女じゃいられない2」
よろしくお願い致します
第1回は10節構成です
《第2話全体の注意事項》
・ユメミ×ムント
・TVアニメの結末とは異なるIf展開で進行
・絡みはなし
・SSオリキャラあり
・2話全体で全8回程度、どなたか折りを見て次スレを立てて頂けるとありがたいです
では、どぞ
1日の授業が終わった、いつも通りの帰りのホームルーム。
早いもので、あの事件からもう5ヶ月が経ち、イチコ達は中学3年生になった。
去年と同様に幼い頃よりの親友達と同じクラスになった事もあり、社交的なイチコが新しい学級に慣れるのは難しくはなかった。
だが、イチコは今、実に難しそうな顔をしている。緊張するのはイチコだけでなく、クラス全体がそのようだ。
そんな一同を教壇から見回すのは体躯の大きい担任。邪悪ささえ感じられる教師らしからぬ笑みを浮かべては、
「――さぁて、お前達ぃ、お帰り頂く前に、前から言っていた通り、今から中間テストの個票を配る!!」
「だああっ!?」
「き、来たあ!!」
「や、やべぇなぁ!!」
「うわぁ、どきどきする!」
その無情な宣告で、皆を混沌に落とし込んでいく。
イチコもまた結果を恐れて慌てふためいてはいたが、ふと、去年の出来事を振り返り、担任の怒号をよそに物思いにふける。
「ぶつくさ言うな!名前の順に呼ぶから、呼ばれたら取りに来い!麻生!」
「はい!」
わくわくする体験をした、去年のクリスマス。死ぬほど怖い思いもした、去年のクリスマス。
「部活もいいが、勉強もしっかりやれよ?次、今村!」
「にゃあ〜」
人知れず大きなことをした、去年のクリスマス。勇気と切なさの意味を知った、去年のクリスマス。
「『にゃあ〜』じゃねぇっての!まぁ……頼むから、転ぶなよ……?」
「は〜い!…………にゃあ!?……………………い、いたいにゃぁ…………」
あれから彼女達は、少しずつ大人になっている――はず。
「……全く、言ってるそばから!…………怪我は……してないな。痛くても、そっとしておくんだぞ?」
「……にゃぁ…………」
「………ともかく……お前はまぁ…いつも通りで、何と言ったらいいかわからん!いい所はこの調子で勉強するんだぞ?」
「にゃあ〜」
とは言え、時間は早いもので、もう中学3年生。年度末には受験を控え、来年は高校生になる。
「『にゃあ〜』は結構!次、小野!…………小野っ!!」
「――は、はいっ!!」
名前を呼ばれた。イチコは席を立ち、教壇で個票を片手に視線を送るいかつい担任のもとへ向かう。
着実に大人への階段を昇っていっている、そんな今日この頃なのだが、
「………………しっかりやれ」
「…………は、はい……っ……」
席に戻りながら個票を開くと、やはり思わずにはいられない。
国語 48点/100点(平均: 49点) 136位/258人
数学 38点/100点(平均: 52点) 181位/258人
英語 51点/100点(平均: 54点) 140位/258人
理科 27点/100点(平均: 48点) 214位/258人
社会 45点/100点(平均: 50点) 146位/258人
3科 137点/300点(平均:155点) 157位/258人
(前回順位:132位)
5科 209点/500点(平均:253点) 172位/258人
(前回順位:146位)
あれから自分は、少しずつ大人になっている―――― の だ ろ う か 。
見開きになった個票を何度閉じて開いてみても、結果は変わらない。
各教科の採点答案を返された時から覚悟はしていたが、個票として順位付けされたものを改めて見ると脱力してしまう。
小野イチコ――明るく活発で頼れる人気者の彼女だが、勉学にだけはどうしても自信が持てずにいた。
(……これ……父さんにまた、ぶつくさぶつくさ言われるよっっ……!!!)
イチコが恐れる父親は、決して厳格な質ではない。どちらかと言えばやや抜けた所がある、職人気質の中年であった。
そんな父親は、娘の出来の悪さは知った上で、彼女が高校に入れるなら進学先はどこだっていいとさえ思っている。
ただ、そのおおらかさか諦めの為か、毎回個票を見せる度に、
『――――まあ、俺に似て頭は良くないから、ちょっと馬鹿でも仕方ないわな』
勉強にあまり自信の無い彼女に、気楽な口調で小突きに小突いてくるのである。
前回の年度始めのテストはたまたま順位がぐんと上がったが、その祝いと称して赤飯を炊いて近所に配ったりと、
大袈裟に騒いで返って娘を小馬鹿にしているような気がして、イチコは今回あまり机に向かう気力が湧かなかった。
とは言え、つまるところは自分のせいである。それでも、どこかで人のせいにしてしまっている自分がいる。
こんな自分は、本当に少しずつ大人になっているのだろうか。おいてきぼりを喰らっているような気がしてならない。
「次、日高!」
「はいっ」
先程呼ばれて転んだ親友も、今名前を呼ばれて前に出ている親友も、着実に大人に近付いている。
特に、担任から好評を得て照れながら席に戻っていく親友・ユメミは、あのクリスマスから、本当に変わった。大人になった。
勿論、勉強ができるから大人だという事ではない。自分の父親は確かに勉強なんてできないだろうが、ちゃんとした大人だ。
ユメミがここ最近、勉強ができて成績が伸びるようになった事は、何事にも頑張り始めたひとつのかたちでしかない。
体育にしても、学校やクラスの催し事にしても、学校以外の事にしても、ユメミはとにかく積極的になった。
2年生の3学期は自信を持って励む事、挑む事自体を試行錯誤しているといった感があったが、
3年生になってからのユメミを見ると、その毎日でじっくり確実に変わっている気がしてならない。
そして、同性のイチコから見ても羨ましいくらい、ユメミは魅力的になった。
現にイチコは、クラスメイトの男子の何人かから、ユメミについて根掘り葉掘り尋ねられたりする事もある。
そんな事は去年までは全く無かったのに、3年生になってから、前から気になっていたなどと言い出す輩が増えていた。
ユメミへの好意を隠さない彼等には感心こそするが、だからと言って、聞かれた事の全てに答える気は無い。
ユメミのプライバシーを守る以上に、イチコには彼等の事が気に食わなかった。
去年のクリスマスまで、ユメミは端から見れば少し変わった女の子だと思われていた。表現を躊躇わなければ、変人だ。
晴れの日にも傘を差し、唐突に何かを呟いたりもすれば、そう見られても仕方が無い事なのだろう。
ましてや、幼稚園の頃に嘘つき呼ばわりされた出来事は、その時から中学まで一緒だった人間は知っていて、
噂は背びれ尾びれをつけて学年中に知れ渡り、ユメミに踏み込んで関わろうとする温かい同輩は僅かしかいなかった。
ユメミに好意を持ってイチコへあれこれ尋ねてくる級友達は、いつかユメミに奇異の視線を浴びせていた男子達。
その奇異が無くなり懸命に励んで磨かれていくユメミが現れ始めたら、元々の可愛い外見もあって掌を返し出した男子達。
人間として必ずしも責められるものでないとしても、そんな彼等ではユメミといい関係になんてなれない。させたくもない。
それに、今のユメミの輝きは、たったひとりの男の為だけにある。ただ、その男ともう一度会えるのかは、わからない。
普段はおくびにも出さないが、相当不安にも思っているはずだ。最近のユメミの変化はそれを振り切る為のものかも知れない。
忘れたくない――時々弱音を漏らす事もある、そんなユメミを支えてやりたい、忘れさせたくはないと、イチコは思う。
今や自分とスズメだけが知るユメミの真実。それを受け止められるだけの優しさが彼等にあるとは到底思えないのだ。
だからこそ、級友達には肩入れできない。今もユメミに群がって、テストの順位を聞きながら接点を持とうとする男子達には。
「日高、凄えじゃん!最近順位上がってるしさ!」
「本当だよな!前はそんなでも無かったと思ってたけど……これは凄いよ!」
離れた席から遠目に見ながら、イチコはやはり、ユメミは大人だと改めて思う。
「まぐれだよ、まぐれ。たまたま問題が勉強した所と合ってただけなの」
過剰に褒められても尚、微塵も自慢せずに謙虚に答えるユメミを、もう大人だと思う。
級友達の好意に薄々気付きながらも、何一つ普段と変わらずに笑って接するユメミを、本当に大人だとイチコは思う。
河川敷、一様に同じ制服を着た中学生達が歩いては走り、叫び回ってはしゃいでいる。
その中に、横に並んで歩く3人の少女がいた。
「イチコイチコ!テストのじゅんいみせて?」
一際小さい真ん中の女の子が、左のショートカットの少女にテスト個票を催促する。
「……あんまり見せたくないけど、ね…………」
溜息をついたイチコはそう言うと、歩きながら鞄の中から個票を取り出した。
「……はい。その代わり、スズメ、アンタのも見せなさいよ?」
「にゃあ〜」
ちいさい親友――スズメは受け取った個票を開く前に、鞄から自分のものを不器用な手つきで取り出すと、イチコに渡す。
「はい!」
「どれどれ…………………………って、ええぇっ!!?」
スズメの結果にイチコは思わず叫んでいた。いつもの傾向とは言え、常識から逸脱しているスズメには流石に慣れない。
国語 38点/100点(平均: 49点) 173位/258人
数学 100点/100点(平均: 52点) 1位/258人
英語 36点/100点(平均: 54点) 188位/258人
理科 93点/100点(平均: 48点) 6位/258人
社会 42点/100点(平均: 50点) 161位/258人
3科 174点/300点(平均:155点) 115位/258人
(前回順位:125位)
5科 309点/500点(平均:253点) 105位/258人
(前回順位:113位)
「…………こ、こりゃアンタ………………先生もどう言ったらいいのか、わからないはずだわ…………」
「やったぁ!イチコにかったぁ!!」
わいわいはしゃぐスズメに、愕然としていたイチコはむきになって反論を試みる。
「あ、アンタねえ!アタシの方が、国語と!英語と!社会で勝ってるの!3勝よ3勝!アタシの勝ちよ!」
「じゅんいだったら、あたしのほうがうえだもんにゃ〜♪」
「……ぐ、ぐむむ、むぅ……」
どうあがいてもスズメを覆せずに追い込まれたイチコに――
「――――ふふふっ」
彼女達の右の、栗色の髪にリボンをつけた少女が微笑みを零す。
「ユ、ユメミっ!!笑ったねえっ!!」
「だってぇ、ふたりともおかしくて……!」
抗議したイチコに、笑みの止まらないユメミ。面白くないイチコは皮肉ぶって返す。
「あぁそうですとも、頭が良くてあらせられる日高さんには、アタシ達なんておかしくて滑稽なことでしょ〜ね?」
「も、もう、意地悪言わないでよ!」
困った顔を見せたユメミに、イチコが笑いながら促す。
「じょ〜だんよ、冗談!さ、ユメミのも、見せて?」
「え?うん……」
ユメミは頷いて、鞄の中から個票を取り出すと、
「えへへ〜♪みせてみせて〜!」
スズメが出して来た手にそれを渡し、スズメは覗き込むイチコと一緒にそれを開いた。
「わあ〜!!」
「こ、こりゃ、随分と……」
国語 81点/100点(平均: 49点) 19位/258人
数学 84点/100点(平均: 52点) 25位/258人
英語 87点/100点(平均: 54点) 23位/258人
理科 76点/100点(平均: 48点) 34位/258人
社会 98点/100点(平均: 50点) 4位/258人
3科 252点/300点(平均:155点) 21位/258人
(前回順位: 32位)
5科 426点/500点(平均:253点) 19位/258人
(前回順位: 31位)
「すごいすご〜い!!」
「……随分と、上がっちゃったねぇ…………」
上げ幅自体は大きくないものの、自分が経験した事の無い5科20位以内という数字に、イチコは驚嘆を隠せない。
「まぐれまぐれ。たまたまだよ」
謙遜するユメミだが、いつも一緒にいて彼女を見ているイチコには通用しない。
「まぐれでこんなに順位が上がるわけないってば!それも、去年の今頃はアタシよりも成績の悪かったアンタが!!」
「そ〜だそ〜だ〜!」
スズメも乗っかってユメミを詰る。ユメミは困りながら、
「ま、まあ……塾にも行かせてもらうようになったからね……」
反論してみるものの、イチコは更に指摘を加える。
「塾って言ったって、4月に通い出してから、まだ1ヶ月でしょ?去年の3学期から、ずうっと上がり調子じゃないのさ」
「う……ま、まあ、ね…………」
ユメミの顔が赤くなる。そろそろ限界かとイチコが思った時、
「ユメミ、しゃかい、もうすこしでひゃくてんだったのに、おしかったにゃ〜」
スズメの何気ない一言に、ユメミとイチコは押し黙り、その表情を変えていく。
「…………うん……」
「そ、そうだね……」
ユメミの社会科の98点。たった1問を間違えただけの事。しかし、それは単なる些細な誤答ではなかった。
社会科を担当するユメミ達の担任の方針で、本来は公民のみから出題される中間テストは、地理・歴史の問題も混ざっていた。
ユメミは公民の授業や1・2年で教わった地歴の復習をしっかりこなして、テストに臨んでいた。
過信ではなく、今回は100点を取れた――そんなユメミに返ってきた答案は、98点だった。
(あれ?どこを間違えたの?)
見返してみると、歴史の分野、「桶狭間」と書いた箇所が、赤ペンで斜線を打たれていた。漢字も間違えていない。
ユメミは当然、修正を申し入れた。イチコもそれに加わった。ふたりとも同じ答えなのに、同じ採点ミスがあった。
ところが――
『…………小野はともかく、日高までどこか抜けたのか?』
担任はまるで非常識なものを見るような目で、ふたりに呆れる吐息を漏らしていた。
ユメミもイチコも、席の周囲の友人達に確かめた。だが、彼等の答えは違っているのに、揃った違う答えなのに丸がついている。
どうしたんだ、珍しいと物笑いにされながら、ユメミは羞恥心以上に奇怪さを感じずにはいられなかった。イチコもそうだ。
該当する設問は、中世の戦国大名・織田信長に関する文章の中に穴抜きされた語を答える形式で、以下のようなものだった。
『――永禄3年(1560年)5月、信長は《 A 》の戦いで今川義元を倒し、
松平元康(のちの《 B 》)と同盟を結び天下統一へ向けて足掛かりを築いていった――』
テレビのバラエティ番組でもよく取り上げられるものである以上、当然常識の範疇のはずである。
なのに担任は誤答と言って、教科書を読み返して見直すようにと指示するばかり。
その日、家に帰って歴史の教科書を読み直し、そこに記された内容にユメミは唖然とした。
『――――永禄3年(1560年)5月、信長は、京へ上る途中の今川義元を攻め、
義元の家臣であった松平元康(のちの徳川家康)を寝返らせ、岡崎城にて義元を討ち取った。[岡崎の戦い]――――』
(な、何?こ、これ……?)
岡崎――――ユメミは自分の目を疑った。
すぐさまイチコにも連絡を取ったが、やはり桶狭間だったはずと言い、親友もまた周囲の認識との違和感を拭えずにいた。
ところが、ユメミが母親にそれとなく尋ねてみると、
『え?岡崎の合戦でしょう?どうしたの?』
と言って不思議がるばかりなのだ。
まさか――――はっとして、ユメミはすぐに歴史の教科書にくまなく目を通した。
(…………やっぱり、ある……!!)
自分の抱いていた常識と明らかに違う箇所が、桶狭間・岡崎の他に、もう4つある。教科書の記載が、変わっている。
前からずっとこうだっただろうか。違う、歴史が、変わっている――有り得ない話だが、そうとしか考えられない。
冷静に記憶を辿らせながら推測してみても、やはり自分の勘違いではない。
4月、塾に入る際に受験した入塾テストでは、その4つのうちの2つが出題され、
自分が常識と思った答え、教科書に記された内容が変わる前の回答で、正解だった。そう記憶している。
だから、ずっと前からという事はない。教科書が、常識が、歴史が変わったのは、比較的最近ということなのか。
むしろ、今回のテストの直前に一通り教科書や資料集、塾テキストで確認したので、
少なくともそれまでは、教科書も塾テキストも自分が常識と捉えていた記載を取っていたはずだ。
よって、こんなふうになったのはつい先日――中間テストを受けて答案が返された、その数日の間ということになるのか。
それはまるで、去年のクリスマス、天上界から戻ってきた時に持った錯覚に近い。
浮島が現れた騒動も天地の変異も皆の記憶から消えていると知った時に抱いたような、得体の知れない錯誤感。
イチコも岡崎でなく桶狭間。ならば、一緒に天上へ行ったもうひとり――スズメはどうだっただろうと思い、
連絡を取って確かめてみたものの、元々社会科が苦手なスズメは、桶狭間の戦いですら覚えていなかった。
根拠も手掛かりも足りない。だが、ユメミは天上界で磨かれたその悟性で、確信した。
自分とイチコ、天上から帰ってきたふたりだけが、この歴史の変化を認識している。その答えは天上にある、と。
ただし、得られた確信は、同時に微かな不安をも新たに湧き上がらせる。
(……もしかしたら、天上界に……ムントに、何かあったのかも…………)
考え過ぎかも知れない。けれど、テスト返却から今日までの間、切なる心配は彼女の片隅にちいさく居座っていたのだった。
イチコやスズメと別れたユメミは、駅前に向かっていた。
彼女の行き先は、4月から通い始めた学習塾。彼女の母親とも待ち合わせの約束をしている。
授業日ではないが、テスト個票が渡される今日は、学校が終わったら母親と一緒に来るように塾長から言われていた。
その塾での、三者面談。テストの個票を塾長に見せて、先日既にコピーを提出した各教科の答案を見ながら総括し、
弱点を明確にしながら今後の学習方針を相談するという、塾側が原則として生徒や保護者にその都度徹底している面談である。
駅前のロータリーに出ると、ユメミの通う塾のビルと、その入口で待つ彼女の母親の姿が見えた。
「お母さん!」
彼女が呼ぶと、母親が気付いて微笑む。駆け寄った彼女に、母親が呼びかける。
「お帰り!……って言うのも、変かしら」
「ふふふっ!」
笑い合うふたり。母親は安心した表情で、続ける。
「じゃあ、中に入りましょうか。時間は早いけれど、先生もお見えのはずよ?」
「うん!」
満面の笑みで応えると、彼女は母親に先立って塾の中に入っていった。
ユメミと彼女の母親に向かい合うのは、恰幅のいい髭面の壮年。
大手塾の進出に遭っても駅前で地道な取り組みを続け、著しい口コミの支持を受けている、言わば、やり手の塾長である。
3人が向かい合う面談室の卓の上には、ユメミのテストの答案と様々な資料が、面談前から既に置いてあった。
挨拶もそこそこに、ユメミから渡された個票を一見し、それを母親に渡しながら、塾長が言う。
「お嬢さん、順調に伸びてますよ。この分なら、お母さんが以前仰ったように、上位の県立高校も、充分に目指せます」
「あ、ありがとうございます」
恐縮しながら個票を受け取った母親は、それを開いてから驚いたりと、なかなか忙しい。
「あ、あら、あらあら!19位だなんて!凄いじゃないの!」
「いや、問題が良かっただけだって」
イチコ達にも言った言葉であるが、ユメミ自身もそう感じていた。
「まあ、何を言ってるのかしら。塾長先生のお陰です。ありがとうございます」
母親は笑いながら、正面の塾長に頭を下げる。塾長はそれを遮り、
「いやいや、お嬢さんの言うように、問題と噛み合った事は大きいです」
崩した威儀を正しながら、母親に説諭するように見解を述べる。
「今回は付け焼き刃のようなものです。ヒネた範囲を出す社会科以外なら、中間テストの範囲の予測は充分できますから。
それに合わせた対策を兼ねた予復習を、前回のテスト以降でお嬢さんや他の塾生にもやってもらった。
だから、お嬢さんの言うことは正しいんです。ただし、しかも、お嬢さんはしっかりとそれをわかってる。
ここでの勉強で成績が上がった、と言うでもなく、お嬢さん自身はまだ足りない部分があるとちゃんと理解してる。
もちろん、今までの成績を振り返ってみれば、本人にでも簡単に判断できる事ではあります。
しかし、お嬢さんの2年の2学期までくらいの成績の生徒さんには、その不足を素直に認めて取り組むのは、簡単じゃない。
それに、授業を受ける時のお嬢さんを見ても思いますが、向上心、と言うより、変わりたい気持ちの塊……ですな、
こちらにもそんなふうに映ってしまって、ウチの講師にもいい刺激になっているようです。
これだけの気魄を持っている中学生は、そうそういるものじゃない。お母さん、自慢していいお嬢さんだよ?」
感激して言葉を失う母親。それを尻目に、赤面して聞いていたユメミに、塾長は向き直る。
「日高、そんな具合で、お前の考え方は正しい。いや、違うな、強いと言うべきだな。
お前さんがこれからどんなふうになるか、このオッサンには想像できないが、その強さを大事にして欲しい」
「塾長先生……」
強さ――ムントに憧れて、ユメミが目指していた言葉のひとつ。
世話になり始めて時間の経っていないのにも関わらず、そんな自分を見てくれていた事に、彼女は感激に奮える自分を理解した。
とは言え、まだまだこれからである。調子に乗らないよう自制を心の中で唱えるユメミに、塾長は続ける。
「ただ、お前の考えは俺ももっともだと思うし、喜びを隠すのは悪くはないが…………お前は、もっと喜べ。
お前のいい所は、謙虚な所――ちゃんと人の事を考えたり、驕りたかぶる考えを持たないように自分をぴしっとする所。
本当にそれはいい所だ。けどな、自分の気持ちを隠してばかりいると、いざと言う時に本当の気持ちを感じなくなってしまう。
だから、お母さんやお父さん、それに、弟さんもいたな?あと友達の前でもな、素直に喜ぶ時は喜べ。
その方が、お母さんもお父さんも、みんながお前を見て安心できるからな――――日高、わかったか?」
「――はいっ!」
社会科のテスト問題の事、ムントに何かあったんじゃないかという不安にとらわれ過ぎた自分を自覚し、彼女は笑顔で返した。
「まあ、ただ――」
躊躇う塾長は手招きして、ユメミに顔を近付けさせる。それから彼女にこっそりと言う。
「ただな、日高、お母さんやお父さんに隠したい事もあるだろう?そういうのまで素直に言っちゃいかん。
隠すにしても喜ぶにしても、何事もさじ加減、さじ加減だ。日高、いいな?」
「せ、先生っ?」
聞こえていたのか、慌てながら控えめに咎める母親の奇声。ユメミはそんな母親を見ながら、
「…………はいっ」
小さな声で笑って頷いた。
「――さて、テストについてはこのくらいで、今日のもうひとつの本題に入りますか」
各教科の弱点補強を挙げて家庭での学習計画の骨子を相談しながら作った後、塾長は手元の資料を整理し始めた。
「お母さん、日高、塾に入った時は、上の方の県立に行きたいと言ってたけど、私立は全く考えてはいない?」
塾長が取り出したのは、近郊の私立高校のパンフレット。それを見た母親は制するように言う。
「うちはお金が、ねぇ…………。だから、できれば県立にと思っているんです」
ユメミも頷いた。我が家の具体的な台所事情はわからないが、小遣い交渉の絶えない両親を見れば想像はできる。
それに、チカラもまだ小さい。両親の負担をできるだけ減らしたいというのが、娘なりの、姉なりの気持ちだった。
「お金、かぁ……」
塾長は特に悩むでもなく、数冊の学校案内からひとつ選び、
「ここなら、どうです?」
ユメミと母親の前にすっと差し出す。
(こ、ここって……!?)
パンフレットの表紙、その学生の制服を、彼女はよく知っていた。
塾長が示した学校案内は、スズメの恋人――カズヤの通う、県内随一の進学校のものだった。
面談を終えてから遅れた夕飯の買い出しを済ませ、家に戻ったユメミと母親は台所に立っていた。
そこから見えるリビングでは、
「もんもんたろ〜ぼ〜くたちは〜♪」
ちいさい弟のチカラがソファーに腰掛けながら、テレビに合わせて楽しそうに歌っている。
「ユメミ、お酒取って?」
「うん」
制服から普段着に着替えていた彼女は、キッチンの下の格納棚から慣れた手つきで食用酒を細い手に取り、母親に渡す。
「はいっ」
「ありがと、そろそろお刺身切ってくれる?」
「うん、わかった」
ユメミは頷いて、面談の帰りにスーパーのタイムセールで買った鮪の切り身を、冷蔵庫から取り出す。
包装を剥がしたら、切り身をまな板の上に置き、つまと葉蘭を皿に移す。
まな板の上の包丁を手に持ち、その刃元を赤身に入れ、包丁の刃道を伝いつつ切っ先へ重さを預けながら、引く。
切るのではなく、引く感覚。包丁の自重に任せて、次々と引いていく。
均等な厚さで鮪を揃え、包丁を通し終えれば、手を添えながら包丁に持って、皿に盛り、赤く光る面の段差を指で広げる。
ユメミの手際に母親は何も言わない。その代わりに、
「ちょっと味見してみて?」
酒で味を整えながら柔らかくした煮物の人参をひとつ、汁と一緒に小皿に取ったものを彼女に渡す。
取ってから、息を吹きかけて冷ましつつ、汁を少しずつ口に含んでいくユメミ。汁の後は人参を、皿から口に転ばせ、咀嚼する。
「どう?」
咀嚼を終えて飲み込んだユメミは、尋ねる母親に笑みで応えた。
その時、玄関のドアの鍵が開く音が遠く鳴り、続けて、
「ただいまぁ」
父親がいつもと変わらぬ穏やかな声でその帰宅を告げた。
「あら、おかえり」
「お帰り!お父さん!」
台所の声はユメミの方が高い。リビングに入る父親は、彼女の声の理由を尋ねる。
「なんだか、ユメミ、嬉しそうだな。今日、この間のテストの結果、出たんだろう?どうだった?」
「うん!結構順位が上がってた!」
ユメミの満面の笑顔。それに比べ、
「けど、ねぇ……」
母親の表情はいくらか重い。
「ん?母さん、どうしたんだ?」
父親が呼びかけると、母親は一息ついてから、話題を切り上げる。
「まあ、ご飯食べてからゆっくり話しましょ。
できるまでもう少し時間がかかるから、父さん、チカラと一緒に先にお風呂に入ってくださいな」
ユメミの瞳が一瞬揺れた。
「ん?わかった、そうしようかな。チカラぁ、父さんと一緒に、お風呂に入るぞぉ?」
「だめだよ!もんたろ〜のじかんだもん!」
テレビにくぎづけの息子を大きな腕でむんずと抱え、父親は風呂場に向かう。
「だめだってばあ!はなしてよお!もんたろ〜!!」
「ははは、チカラと一緒にお風呂に入るのも久しぶりだなぁ!」
何とも気の毒な弟を見送るユメミの微笑みは、温かいようで、晴れ切っていない。
それでも彼女は気を取り直し、いくらか陰のある表情をした母親と共に夕飯の残りの仕度を急ぎ始めた。
「……そうかぁ…………。塾長先生、あそこを薦めてきたのか…………」
ユメミのテスト個票と塾で貰った学校案内が置かれたリビングのテーブル。
夕飯を食べ片付けも終えた後、ユメミは両親と一緒に卓を囲み、彼女の進路について話し合っている。
チカラの笑い声。弟はソファーに座り、我関せずとばかりに絵本を読んでいた。それでも、3人の妨げにはならない。
「うん、ここの特別選抜を目指して頑張ってみないか、って。
ここが受かるかどうかってくらいなら、どこの県立高校を受けても合格できるって言うし――」
ユメミは学校案内を開きながら、お茶をすする寝巻姿の父親に、今日の塾長との面談について説明を始める。
塾長曰く、この私立校は特別選抜クラスを設けており、毎年このクラスから多数の難関大学の合格実績を出しているという。
そのクラスに選抜される基準は、推薦・一般ともに受験時に通常合格より得点の高い一定のラインを超えた生徒に対し、
入学決定時にクラス入りの意思の有無を確認した上で、意思が有る場合にのみ正式に選抜されるもの。
科目は5科受験。絶対的なボーターを保って変動させない合否ラインは極めて高く、ミスの頻発を許さず拒む。
毎年26名とする定員は、年によってはその半数を割る事も定員を超過する事もあるが、それでも合格基準点は上下しない。
そうして選ばれた生徒に私立ならではの多時間カリキュラムを組み、面談機会も多く設け徹底した指導を行う。
このシステムが毎年の実績の背景にあり、塾長によると、このクラス以外の合格状況は、実の所あまり芳しくないらしい。
ユメミ自身は、難関大学受験といった先々まで、まだ具体的には考えられない。
けれど、彼女がこの学校に感じた4つの魅力が、嬉々とした調子で父親に説明するユメミをいつにかく饒舌にさせていた。
ひとつは、特別選抜クラスに合格し、希望して入学すれば、入学金と3年間の授業料等が免除される事。
ふたつめは、女子の制服がおしゃれな事。この学校の制服は、ユメミだけでなく近隣の女子中学生達から人気がある。
みっつめは、カズヤが入学した高校に持った親近感。ちなみに、彼も特別選抜クラスで合格、入学している。
そして最後に、高い目標に挑戦して、自分が頑張ってどれくらいできるのかを知りたいという、彼女自身の探求心――
いずれにせよ、難関の部類の県立高校を受けるなら、滑り止めでいくつかの私立校は受験する事になる。
ならばいっその事、県立を視野にしながらこのクラスの合格を目指して勉強するに越した事はなく、
仮に合格できたなら、県立に入ってもかかる授業料も無くなり、両親に負担をかけずに済む。
今、何とか成績も上向いて、折角塾通いもさせてくれているからこそ、精一杯やってみたい――――
積極的なユメミの意志に、満足そうに微笑む父親。しかし、母親の顔は未だに不安げだ。
「母さん、どうしたんだい?」
父親が尋ねると、母親は深い息を漏らしながら零す。
「うん……。反対じゃないんだけれど……もしも受かって、そのクラスから落第したってことになったら、ねぇ……」
「――そんなことない!!ちゃんと勉強するっ!!!」
突如椅子から立ち上がって叫ぶユメミに、母親は驚く。ソファーで絵本を読んでいたチカラまで振り向き、様子を窺っている。
娘の、姉の、あまり見たことがない激昂。場が凍りつき、沈黙が走る。
テストで良い成績を収め、思ってもみなかった学校の受験を薦められた事もあり、ユメミのやる気は昂っていた。
しかし、そんな彼女とは違い、買い物の時も夕飯を用意する時も、母親は不安な顔をしてばかり。
落第して普通クラスに編入されれば、違約と見なされ、高額な授業料を払わなければならない。心配するのは理解している。
しかし、それでも、自分を信じてはくれないのか――じりじりと蓄積した不満が、ユメミの口から爆発していた。
とは言え、我に返ってみれば、誰もが何も言えない空気になっている。そうさせた張本人の彼女は、言葉に困っていた。
(…………ど、どうしよう……)
そんな氷結をやわりと溶かすのは、ユメミの変化にも落ち着きを払った、温和な父親だった。
「母さん、ユメミが怒るのはもっともだよ?悪いことばかり考えてたら、何にも進まなくなる。ユメミの為にならない。
ちょっと前だったら、ユメミがこうして成績や進路のことを自分から話すことは無かったよ。
この間の冬、がんばり出したユメミを見て、いつまで続くかな…とは思ったけど、父さん、そう思ったのを今は反省してる。
あれから大分経った今日だって、良くなったテストの順位を見せてくれたし、母さんの手伝いも、ちゃんとしてる。
だから、大丈夫。ユメミを信じて、僕らは僕らで、見守ってあげようじゃないか」
「お父さん……」
父親を見る彼女の瞳が潤む。母親も頷いて、彼女に詫びた。
「そうね……ごめんね、ユメミ……あなたの気持ちも考えないで、変なことばかり言って……」
「お、お母さん…………」
母親を見つめるユメミに、父親が間を空けずに言う。
「ユメミ、母さんに、謝りなさい。今のは確かに母さんが悪いが、怒鳴っちゃいけない。わかるね?」
「……うん」
その頷きに否定は無い。
「…………お母さん、ごめんなさい……」
「ユメミ……」
見つめ合う母子。お茶の飲み干し、父親が締めた。
「ユメミ、お前のがんばりに水を注すつもりはないけどね、もう一言だけ言わせてくれ。
お前はうちの家計を考えて、県立や、こういう授業料免除のコースを目指そうと、真剣に考えてくれるのはわかる。
でも、どんな高校へ行こうと、ユメミが立派な大人になってくれれば、父さんと母さんはそれでいい、それがいいんだ。
必ずそこに入らなきゃいけないわけじゃない。けれど、ユメミがそうしたいなら、それでいい。ありがたいと思うよ。
どっちにしても、父さんも母さんも、チカラだって、ユメミを応援してる。だから、思い詰めずにがんばりなさい」
「ねえちゃん、がんばれ〜!!」
父親の話に釣られ、わけもわからず声をあげるチカラ。母親も無言で、やさしく頷いている。
「父さん……チカラ…………母さん………………ありがとう…………」
瞼があたたかくなっていくのを感じるユメミの口から、自然とそのことばが溢れ出ていた。
感謝を抱きながら、ユメミは思う。
この家族に、自分を変えたいと願い始めたきっかけ――天上界のことを話したら、信じてくれるだろうか。
こうもあたたかい眼差しや励ましをくれる家族は、彼女にとって本当に身近な存在だ。
だが、それを思うにつけ、近くありながら決定的な壁があるような気がして、ユメミの心は揺れていた。
そして、信じてくれる両親に、理由の知れない罪悪感を抱いてしまっている自分を、彼女は悲しまずにはいられないでいた。
277 :
5:2009/04/20(月) 22:53:14 ID:FYgWy59X
「ユメミは少女じゃいられない2」第2回
今回は6節うpします
尚、2話の注意事項については
>>266を参照願います
どは、でぞ
進路について両親と話し合ってから数日後の夜――パジャマ姿のユメミは、いつものように机に向かって勉強していた。
仕切りを隔てた向こうではチカラが既に寝息を立てているので、部屋の明かりはつけずに机のライトだけを灯している。
学校の中間テストは終わったが、週末には塾のテストが控えており、中学1年の数学から手をつけ直している。
基礎は一通り終わっているので、今取り組んでいるのは塾のテキストの中の、応用と発展的な内容。
おさらいの意味もあるが、私立入試では自分の中学校ではやらないような問題も出る事を知り、力試しも兼ねていた。
1問当たりにかなりの時間はかかってしまうが、それでも、問題の意味すら全くわからなかった以前からすれば進歩している。
そして、その単元の最後の問題を終え、これまで解いた問題も見直してから、答え合わせ。
答えを書き入れたノートに丸をつけ、間違えた所は斜線を入れる。解答と見ながら一定のリズムで赤ペンを走らせる彼女。
採点が終われば、間違えた箇所を解き直す。解説を少しずつ参考にしたら解答を閉じ、自分で解法の続きを考えて書く。
もう1回答えを出してから解答を再び見合わせて、解答以上に解法の続きが合っていたかを確かめていく。
そして最後に、今日やった範囲を最初から最後まで、テキストもノートも見直して、終わる。
(…………お、終わったぁ!!)
座ったまま、うんと背伸びする。弟を起こしたくないので、声は出さない。
(……それにしても…………)
テキストで目標として定められた時間の倍を費やしていた。また、誤答や全くわからなかった設問も多い。
(…………まだまだ、遠いなぁ……)
目標を決めて取り組み始めたのはいいものの、いざやってみればそれは相当困難な事だと実感する。
以前なら、諦めていた。しかし、今の彼女は努力が報われる事を知っている。工夫をして続けていれば、必ずできる。
(うん、明日もがんばろう!)
時刻は24時を回っていた。明日は1時間目から体育もあるから、そろそろ寝た方がいいだろう。
(……でも、その前に…………)
長い集中が切れて喉の渇きに気付くと、彼女は椅子を立った。
弟が気付いてしまわないよう、足音を殺して歩き、階段を降りていく。
1階へ降りると、リビングは明かりがついたままで、誰もいない。
シャワーの音、母親は風呂場のようだ。酔って帰ってきた父親の物凄い寝息も、両親の寝室から聞こえてくる。
台所に入り、食器棚からコップを取り出し、冷蔵庫を開けてりんごジュースを取って、注ぐ。
渇いた喉を1杯で潤して、コップを洗う。洗ってから水気を切って、布巾で拭き取り、棚に戻す。
(うん、寝よう……)
堪えてきた眠気が襲ってくるのがわかり、台所を出るその時、ソファーの上に広がっているものが彼女の目についた。
「……これ、お父さんが買ってきたのかな?」
手に取ったそれは新聞紙。ユメミは読んだ事はないが、夕刊誌というものである事は知っている。
(酔っ払って、置きっぱなしにしちゃったのかな?)
そう考えながらも、ソファーにインクが写るのを気にして、彼女は広がっていた新聞をまとめながら手に取る。
玄関にある新聞を入れる袋に――と思ったが、その一面は、とあるドラマで主役を演じた女優と助演の俳優の熱愛を報じる記事。
「嘘っ!?あのふたりが?」
興味をかき立てられたユメミは、眠気も忘れてソファーに座り、その一面を熟読し始めた。
(…………へえぇ……こういう新聞なんだぁ……)
二面はスポーツ欄。見開きで、昨日のプロ野球の試合で起こった大乱闘の様子が、写真と共に掲載されている。
乱闘があった事はニュースで知っていたが、朝刊以上に詳細でインパクトのある記事に、ユメミは実感を改める。
(わあ……これだけやったら、退場する人も多いはずね……)
三面以降もスポーツ欄、サッカー、ゴルフ、競馬――よくわからないが、好きな人なら読みたいものである事はわかる。
(もうちょっと、何かないかな……)
ユメミが探すのは、一面のような芸能関係の情報。年頃の女の子には、興味がある話題だ。
もう少しとめくっていくユメミ。だが――――注視する彼女の瞳は、次の紙面を開いて、一気に硬直する。
(――――こ、これっっ!!?)
見開いた右の紙面の中央、見れば裸とわかる描画。もつれた男女の肢体が描かれた官能画。
(え、ええっ?)
その周囲に詰まった縦書き。凝縮する彼女の瞳に映るそれは、ただの文字の羅列から意味を持った文章へと変わっていく。
唇、接吻、舌、唾液、乳房、乳首、尻、陰毛、膣、クリトリス。
目にするだけで恥ずかしい単語達と、括弧書きされて目立ってしまう幾つもの喘ぎ声が、勝手に彼女の頭の中で響いていく。
(ちょ、ちょっと、だめえっっ――)
目を逸らした先、左の紙面には幾つもの写真。
目だけ隠された裸の女。目すら隠さない裸の女。乳首を晒してショーツに手をかけた、裸の女。
広げた脚に男が入りのけ反る女。胸を揉まれながら男を受け容れる悦に開く唇が――
(――な…な、な……なっ!!?)
絵として、写真として、初めて見る女性の裸体。言葉もなく、ただ吃驚するばかりのユメミ。
全身が羞恥で熱くなっていくのが、自分でも悲しいくらいにひどくわかってしまう。
(お、お…お……お、おとうさんっっ!!!)
こんな記事を読んでいるのか、それ以前に、どうしてこんなものを無造作にソファーの上なんかにほっぽらかしにするのか。
心の中でユメミは父親を非難し続ける。たとえ酔っ払っての所業であっても、
「ああああっ!!」
構わず非難し続ける。
「ばかばかばかっ!!お父さんの……ばかあっ!!!」
そうでもしないとこの恥ずかしさが消えない――八つ当たりに近いユメミの激怒は誰に聞かれる事もなく巡りに巡る。
「もうっ!さ、最低っっ!!!」
新聞を閉じてその場に叩きつけるように投げ捨てる。
いつものんびりとしていて優しい父親がこんなものを読んでいるなんて情けなくて涙も出ない。
思い出さなくても恥ずかしいこんな想いにさせた父親に軽蔑の情が湧き上がり暴れて直接ぶつけてしまいたい。
「……はぁ、はあ……っ……」
激する少女の心とは違って怒りに興奮した身体は息を切らして爆ぜる。
「………はぁ…………はぁ…………っ………」
身体が呼吸を調え始めれば荒立っていた心も平らかになろうと、そのかたちが収まっていく。
だが、一度怒りが落ち着いてしまえば、
(………えっ…?)
強い激情に震えた心にできた、たった少しの隙間を突いて、
(ちょ、ちょっと……)
否定したいイメージ達がユメミの内奥から現れ始め、いくつもの鮮明な映像となって容赦なく彼女に襲いかかる。
(………ち…ちがう…!)
混乱した頭の中で浮かぶ裸体。
必死に拒絶しても浮かんでくる裸体。
彼女の意志を無視して脳裏に浮かび上がってしまう裸体。
脳裏に浮かび上がってしまう、男を受け容れて悦に浸る裸体と、快楽に酔いしれる彼女自身の表情。
――――あ、あぁんっ!だ、だめ、みないで……い、いやっ、みてぇ…わたしを、もっと……あ、はああぁんっ!!
(――――っ!?ち、ちがうっ!!!)
響くのは、彼女の記憶。あの日から押し殺してきた、どうにか今日まで押し殺してこられた、彼に曝した自分の痴態。
自分はそんな女の子じゃない。頭を抱えて拒絶しても全く出ていってくれない。
クリスマスの夜、確かに彼女は愛する男にその全てを捧げた。大好きだったから、自分のはじめてを捧げられた。
あの夜があったから、彼と想いを重ね合えた。同じ気持ちだと知って、安らぎに奮えた。
あの夜があったから、遠く離れた今も自信を持って彼を想い続けながら、自分を磨き続けられている。
それは、別れの時に強く自分に願ったもの。後悔はしていない。
けれど、時間が経って少し落ち着いた今、それ以上に激しく悔やんでいる事がある。
――――あ、あんっ!あ、ぁ、いい、いいの、ふうぅあぅ、あうぅ、ああん、あ、はん、あん!
彼に愛される気持ち良さに負けて、声を挙げ腰を振りながらおもらしなんてしてしまう、いやらしい自分を見せてしまった事。
――――んふぁ……あ、いいっ!!もう、こわれちゃううっっ!!!うれしいっ!!!た、たくさんっ、こわしてぇっ!!!
やさしい彼に抗えないだけでなく、気持ち良さを求めるあまりおねだりまでしてしまう、はしたない自分を知ってしまった事。
それに、そして――その終わりを覚えていない事。あの夜の全てを覚え切れていない事。
彼に抱かれながら愛されて、真っ白になった。真っ白になったかと思えば自室のベッド。彼の顔も、声も無いベッドの上。
最期にさよならさえ言えなかった。もう一度、愛してると言いたかった、言ってほしかった。
なのに、あの時のこの身体と情動は、刺激に悶えて快楽を漁り、おかしくされる事を、こわされる事を望んだ。
その一方、身体を重ね、心の底から嬉しいと感じた事も覚えている。しあわせだと感じた一瞬一瞬の気持ちも嘘じゃない。
ただ、繋がるしあわせだけに執着したばかりに、本当に欲しかったことばを得られず未だに願ってしまう自分も確かにいる。
不可避の羞恥と否定しようのない願望の入り組んだ自己嫌悪と後悔は、今回が初めてではない。
この5ヶ月間、自分の望まぬ姿と望みたい心の矛盾に、ユメミは何度も何度も悩み苦しんでいた。
彼が与えてくれた想いを糧に彼女は励んできた。けれども、その努力は同時に、彼がもたらした苦悩から逃げる為でもあった。
(…………最低なのは、私………)
ユメミは今日まで何度も何度も悩み苦しんでいる。しかしながら、ここまで顕著に浮き彫りにされたのは初めてのこと。
(……ムント…………ムントっ…………たすけて…………たすけて……っ!!)
救ってほしいと彼女が切に願う男は、今はもう、さよならも愛してるも届かない場所。ユメミは悲しい鳴咽に泣いていた。
一生懸命になっている時は、彼の信頼に答えられる自分でいられる。そして、醜い自分の本性も、忘れる事ができる。
が、何かに取り組んだり誰かと話している時の集中が途切れたら――幸福と苦痛が一緒に、時には交互に蘇る。
ただ、そのふたつの強さ、大きさは、必ずしも等しいとは限らない。
彼に会えない分だけ、幸福が遠い。彼が囁いてくれない分だけ、苦痛が近い。
過去のちいさな幸福だけで絶語に過ぎる苦痛に立ち向かってきた彼女の細い両肩は、ただ涙に震えていた。
(………ムント……おねがい…………たすけて…………)
しかし、青年は、答えない。
(おねがい!!ムント、わたしを……たすけてぇ………っ!!!)
心に浮かべた愛しい青年は、微笑んだままで何も答えない。応えてくれない。
あの夜は、本当にあったのか、嘘なのか、もしかしたらただの空想なのでは――衰弱する意志が、疑念を生む。
「う……嘘じゃないっ!嘘じゃないのっっ!!」
叫んで肯定しようとも、這い出たそれは彼女の中に広がって、心を濁りに染めていくばかり。
それに、押し殺したい記憶の所々が、いくつか連続せずに欠けてしまっている。朧げな自分自身が、彼女を一層追い詰める。
「違うっ……ち、ちがう…………っ!!」
彼女と彼の想いが真実だと確かめるには、恥ずべき記憶に頼るより他にない。
けれど、自ら薔薇の刺に触れるに等しい所業の上、その記憶自体も曖昧である。
その終わりが定かではなく、記憶の繋がらない所もあれば、自信を失くし自身を疑う心の制御は効かなくなるばかり。
「……ぅ…ぅっ………私、わたし……っ!」
痛みと疑いだけが容赦なくユメミの心を傷付けて、更に膿を広げてしまう。
あの記憶は、錯覚なんかじゃない。ぜったいに、うそなんかじゃない。うそなんかに、させない――
叩き捨てた新聞を拾い、虚ろな心のまま、紙面をめくるユメミ。開かれたのは、少女を苦痛に走らせたあの記事。
鮮明な記憶を取り戻すには、確かにそれ相応に喚起させるものが必要ではある。記憶の関連付け、とでも言うのだろうか。
無意識の選択、防衛する本能、自信を持てずにいる事への悔しさ、彼を失ってしまう事への恐怖。
いずれが成させるものなのか全く意に介さぬまま、悲痛の溢れる彼女の瞳は直下の新聞を映す。
鳴咽を残しながら、左の紙面、写真に写る女性の裸を見る。しかし、先程のような鮮烈なイメージは起こらない。
次は右の紙面。中央に描かれたイラストだけでなく、その周囲、俗に言う官能小説までも、一行一行を貪るように凝視する。
(ちがう……これも、ちがうっ……!!!)
彼がしてくれた事はこんなに整ったものではなかった。煽情的な文章には違いないが、それでもあの激しい記憶には足りない。
ところが、ひたすら読み進めた先の、綴られたその文に、彼女は瞳を奪われる。
『――男の一物を見つめる彼女は、引き寄せられるようにその口に含み出す。
彼女の舌技に転がされ、ビクン、ビクンと血流に動くペニス。進んで舐める彼女に男は――』
(…………こ、こんなこと……こんなことも、するの……?)
意味の知らない語は含まれていない。そのままの意味でいいなら、そういう事が男女にはあると示すものに違いない。
ただしそれは、あの一夜になかった未知の行為、経験が限られた彼女は信じられず、
(う、嘘っ……!?こんな、こと――――)
信じられ――ない、のだろうか。
未知、だっただろうか。
本当に、未知だっただろうか。
本当に、本当にそうだっただろうか。
――――…………ぇ…………………………あ、あれ…………?……………これ、なんだろう…………………………………………
未知だっただろうか。
――――………………………でも………………ふしぎなあじがする………………………………んんっ………………………………
本当に、未知だっただろうか。
彼女は、覚えている。
――――………………ちゅる、っ………ふしぎなあじの、すごくとろとろしてるよ…………この、しるみたいな、とろとろ……
その味と舌触りを、彼女は覚えている。
――――…それに、この、ぼうみたいな………ちょっとまがってるけど…………………………ちゅ………んんっ…………………
そのかたちを、彼女は覚えている。
――――……………んふう……………………………すごくぴくぴくしてて、かたくて…んっ………あつい…………………………
その硬さを、熱さを、彼女は覚えている。
――――…………………………ぷるぷるしてるし、びくびくしてるから……………いきてるのかな………?………………………
その奮えを、鼓動を、彼女は覚えている。
――――……………かんだら、いたいよね……?…………………そのかわり、ぺろぺろしてあげる………………ふふふっ………
それがあまりに可愛らしかったから、愛おしかったから、口でしてあげた。彼女は覚えている。
――――…………ちゅ………ちゅ…………くちゅ……ちゅゆっ…………ん…………ちゅぅっ……………ちゅぱ、ちゅぱ…………
その味、舌触り、かたち、硬さ、熱さ、奮え、鼓動、もっと、もっとほしかったから、口でしてあげた。
――――…………ふうぅ…………もっとつよく、すうの?…………………わかった……………じゃあ、つよくするね……………
彼にお願いされたから、もっと強く、口でしてあげた。
――――………んふぅ、ちゅぽっ………ちゅ、ぢゅ………りゅっ………くちゅ、ちぱっ………くちゅ、くちゅ……………………
強くなった音を聞きたくて、もっと強く、口でしてあげた。
――――…………ん、ちゅ、ちゅううっ……………あれ…………?…………………なんだか…………ん、んんっ、きゅちゅっ…
もっと強く、口でしてあげるうちに、彼女は気付いてしまっていた。
――――…んぱぁ…………はぁ、はぁ………………きもちよく、なってくる…………んん、んふぅ………ん、くちゅ、ちゅっ…
口でしてあげるうちに、気持ち良くなっていた自分に、彼女は気付いてしまっていた。
――――……ちゅる…っ……くちゃ、くちゅ……………んむっ、んっ、ちゅ、ちゅゆっ………んむ…ふうぅ………………………
自分もまたもっと気持ち良くなりたいと、音を立てて唾を絡めて舌と唇を動かしていた自分に、彼女は気付いてしまっていた。
――――………さっきより、かたい……………そう、あなたも……………きもちいいのね…………うれしい………んっ…………
音を立てて唾を絡めて舌と唇を動かすうちに、気持ち良く感じてくれている彼に、彼女は気付いてしまった。
(…………おもい…………だし……た…………わたし…………むんとに……むんとさまに………………)
口でしてあげたこと、彼女は覚えていた。彼女の口が、唇が、舌が覚えていた。
そして、覚えているものは、その記事が引きずり出すものは、口が覚えている記憶だけではない。
『――彼女の舌技に転がされ、ビクン、ビクンと血流に動くペニス。進んで舐める彼女に男は手も使うように促す。
彼女はくわえながらも頷き、唇と舌に手の扱きも足して、彼を射精へ導いていく。
口内に放たれたそれを、彼女は口に留め、彼に見えるように手を受け皿にして――』
意味の知らない語は含まれていない。そのままの意味でいいなら、あの時の彼女は彼にしている。
(……これ、わたしのことだ…………!)
確信した。終わりまで隅々と、彼女は思い出した。
思い出したそれを、ユメミはすぐさま心の中で反芻する。恥じらいも、躊躇いもなく――
――――…………ん、んふ、ちゅ………ちゅぽ、くちゅ、くちゅぅ……………………………………ん、んんっ……………………
気持ち良く感じてくれている彼に、唇と舌で尽くす彼女。
――――………………ん、ちゅ………………………くちゅ……………ちゅ、ぽっ…………………………ん…………………………
指でやさしく擦ってみてくれと願う彼に、尖端だけ口に残し、そこから下は右手で尽くす彼女。
――――…………ん……………………………ちゅ…………………………ぁ……………………おいし…い……………………………
絶えずその味をくれる彼に素直な気持ちを零して、唾や汁がまとわりついた右の指だけで彼に尽くす彼女。
(…………でも、たしか……)
ユメミは思い出す。小説と、彼女と彼。終わり方は、違っていた。
――――………でちゃうの?………………いいよ………んっ…………いっぱい、いっぱい………だしていいよ……ちゅ…っ……
彼の宣告に許しを与えて、口に含みながら、その指を強めた。精一杯の愛おしさも、その舌に篭めて。
――――……くちゅ、ん、んっ……りゅ…くちゅぅ……ちゅぽ…っ……ん、んふぅ、ちゅ……んんっ……ん、んふぅっ…………
硬さが、おいしさが、増していく。ずっとこのままで、その一瞬が来ないように願った。けれど、求める彼女は止まらなかった。
――――……ん、ちゅ……こぷっ、んっ、んふぅ…くちゅ…こぷっ、りゅっ…ちゅ、ちゅちゅっ、こぷ…っ……ん、んんっ!?
大きく弾けて、彼女の口に溢れて広がる。脈打つ尖端を慰める彼女の舌。流れ込む彼を受け止める。
――――…………ん、んんっ……………ん………………………ん、ふ………………………こ、くっ………こく、こくっ…………
受け止めながら、飲み込んでいく。粘りは喉から消えず、何度も飲み込む。後から溢れるものも、集めて喉に流し込む。
――――……こくんっ………ん、ん…………こく…………ん、くちゅ………ちゅる…………んふぅ…………ん、こくっ…………
それでもまだ足りなくて、彼の根本まで唇でくわえ、上から下まで丁寧に舐め取り、流し込んでいく。
――――………んふ……ちゅ、ぱぁ…………んっ………ぁ………こく……あ………はぁ………はぁ、はぁ……こくんっ…………
ちいさくなっていく彼から唇を離し、上気した呼吸を調える。口に残る味を喉に送れば、ユメミの体内は彼で満ち広がっていく。
――――………はぁ…………ぁ………あぁ…………むんとさま…………………うれしい………………すごく、うれしい…………
糸の引く唇に気付かぬまま、彼女は嬉しさに泣いていた。
彼女は思い出した。本当に眠りについた、その時を。
一緒に横たわって抱きしめ合い、やすらぎとしあわせを彼の胸の中で得て。
愛してる、確かめたくもあり求めてもいたその言葉を、大好きな彼の胸の中で得て。
ユメミたん可愛いよユメミたん
5氏、乙!
ユメミたんの「家族、特に母親への謂れのない罪悪感」は、
この年齢でセクロスしちゃった、あんなこともこんなこともして、
しかも感じまくって「本当のオンナ」になっちゃった、
ってことが原因か
286 :
5:2009/04/24(金) 00:05:15 ID:2MI0Zig3
「ユメミは少女じゃいられない2」第3回
今回は5節うp致します
注意事項は
>>266を参照
では、どぞ
全てを思い出したユメミは、今、暗い自室の、ベッドの中にいる。
眠れない。眠気はあるが、眠れずにいる。
幾つもの情がうねって昂り、横たわって頭を委ねた枕に、枕に埋めた右耳に、身体を流れる熱さがひどく大きく聴こえる。
――――とくん、とくん。
ムントとのことは嘘じゃない。絶対にあった。取り戻した根底の自信に安らぎを感じる彼女がいる。
とは言え、頭に焼き付いた自身の痴態は未だに恥ずかしく、赤らむ頬を誰に隠すでもなく顔まで布団を被せる彼女もいる。
心に浮かべたムントの表情に安息が満ち溢れていく傍ら、自分の姿をじっと見つめてくる想像の彼を消そうとする彼女もいる。
心の中で、ユメミは文字通り裸になっていた。そんな彼女の心の隣には、裸の彼がいる。
唇をくれる彼がいる。それに応えて、蕩けた瞳で唇を捧げ、唾を絡めながら彼を舌で受け容れる彼女がいる。
(………すき…………だいすき………むんとさま………)
塞がれたはずの唇で、想いを篭めて彼に囁く彼女がいる。塞がれたはずの唇で、彼女の想いにこたえてくれる彼がいる。
『…………ユメミ……愛している………』
大好きなキスを迷わずに与えてくれる彼がいる。
(………うれしい………むんとさま……)
ユメミの胸に湧き上がる、充実。
(……むんとさま………しあわせ…です………)
彼と唇を重ねるユメミの胸に満ち返る、幸福。
(…………は、はずかしいよ…………むんとさま………)
彼の手を握って指を絡めるユメミの胸を焦がす、恥じらい。
(………や、やめて…………むんとさま……………わ、わたし………ちがうの………)
彼に抱きしめられて震えるユメミの胸を強張らせる、拒絶。
(……み、みないでっ……だめ……で、でも……いい………うれしいの……や、やっぱり、だめっ………は、はずかしい……!)
ユメミの胸にひとつひとつ、或いは同時に去来する、拒絶と幸福、充実と恥じらい。
(…………いやっ……もっと…もっと…………むんとさまを…………!!)
充実に恥じらって、幸福を拒絶したくても、拒みたくはない、突き放したくない。
忘れたい、忘れたいけれど、覚えていたい。
彼がいない不安も、彼女自身が彼への想いを完全に失くしてしまう恐怖も、何もかも忘れて――
(――けど…………………ちがう……………やっぱり…………ここに、いない……………)
それでも、本当の彼じゃない。強く激しく求めた心は、いつしかその理性を取り戻し、
(…………わたし………なにやってるんだろう…………わたし……………どうしちゃったのかな…………)
空想に浸る自身を責め、勝手に熱した感情を急速に冷ましていく。
だが、一度冷えを感じてしまうと、やはりこの理性は彼の熱を願ってしまう。
(………いやっ!!…………むんとが………むんとさまが…いないなんて…………いやっ………!!)
そして、想像の彼の愛を貪る事を願い、キスを与えてくれるムントを思い浮かべ、彼女は奮える。
想いに満ち、我に返る。我に返り、想いを求める闇の中で繰り返し続ける激情は、熱くなったユメミの身体に眠りにつく事を許さない。
眠れない。眠ってしまいたい。こんな苦しい想いなんて忘れて眠って、早く明日になってほしい。
眠れない。眠りたくない。眠ってしまえば彼への想いも忘れてしまいそうで怖い。明日になんてならないでほしい。
どんなに想っても、どんなに求めても、舌は渇いたまま。心だけはしあわせでも、身体は満たされない。
そんな自分を彼女も理解しつつあるが、拒みたい。自分はそんな女の子じゃない。そんな女の子なんかじゃない、と。
けれども、自分が拒めば、想像の彼はきっと悲しむ。辛く悲しそうな彼の顔を見る事が、彼女には何より耐えられない。
だから心は拒まない。拒めない。自分を殺して、ただ彼の為に。自分を殺して彼に尽くす事に悦びを抱きながら、ただ彼の為に。
想像の彼に尽くせば、心は満たされる。されど、身体は満たされない。
彼に尽くす事のできないこの身体。満たされる事ない疼き。
唇が、開く。開いた隙間、舌が、動いていた。
想像だけでは叶えられない肉欲を、ユメミは自身の知らないうちに許してしまっていた。
「…………ん……んっ……」
舌を空に重ね、彼を感じる声とともに、口の内側で音を立てる。
「……ん、んんっ…………」
何もかもを彼に捧げたいと願い、閉じた瞼にいっぱいの気持ちを篭める。
(………すき………むんと……すきっ…………)
唇は彼に塞がれている。それでも、彼女には想いを言葉に紡いで彼に伝える事ができる。
(………もっと……きす、して…………むんとさま………)
「………ん……んん……………んっ……」
キスをすれば、おねだりもすれば、懸命な彼女に彼もちゃんとこたえてくれて、
『……ユメミ………お前を、お前だけを…愛している………』
やさしい声で答えながら舌を激しくさせて応えて、彼女の息を強く封じる。
「んっ……んんっ………!」
彼に遮られて吐けない息は体内で熱となって蓄積され、彼女は布団の中で身をよじる。
(…あ、あつい…………からだの、なかが…………!)
それでも、その熱を冷まそうとは思わない。何も思わない。彼女は何も思わない。
何も思わないその左手は、薄手のパジャマに膨らんだ胸の上。
「……んっ!ぁ、ぁあ……っ………」
左の胸をゆっくりと揉んでいく彼女の細い指。ゆっくりと揉んでいく、彼の太い指。
『……ユメミ………』
名前を呼びながら、服の上から彼女を包む、彼の大きな手。やがて、左だけでなく、右の胸も。
「…ぁ………ん……んんっ………」
彼に愛されながら、キスをする。彼女の手で自身を揉みながら、舌を動かして唇を唾で塗る。
胸の中の芯がふたつ、硬くなっていくのがわかる。彼はパジャマの上から2本の中指をそれぞれに当てて、探っていく。
「あんっ!」
指を、服の中に埋めていく。
「ぁ……ん、んっ……!」
そして、やさしく、いやらしく、揉みしだく。甘い痺れを、柔らかく癒すように、彼は、彼女は、揉みしだく。
その痴態を、それが痴態だと省みる事さえないまま、彼女は自分の指の柔らかな刺激に酔っていく。
自らを慰めた事のないユメミ。それが自慰とは知らず、気付かぬままに、身体の求めるままに、その指を動かしていく。
「……ぁ…っ……」
今、左手は左右の胸を、後ろに回した右手は尻を撫でる。
腕も肩もきつく締めた彼女は、彼に抱かれ、その唇に悶えていた。
「ん、んっ………ぁ……ぁぁ………っ…」
『………ユメミ……』
彼の声に包まれながら、胸は大きく深く、尻はちいさくやさしく、彼を感じて奮えている。
――――とくん。
彼女の鼓動は、彼の鼓動。
――――とくん、とくん。
彼の鼓動をその手に聴いて、ユメミは先を欲する。
(……むんとさま………わたしのむね………みて……)
裸になっていたユメミの心は、その想像の自分の姿に一瞬で、今彼女の肉体が身にするパジャマを着せた。
彼女は瞬間の変化をどうとも思わない。思うのは、彼にしてほしいことだけ。想うのは、彼のことだけ。
布団の中で仰向けになり、パジャマのボタンを上から4つ、ひとつずつ外していく。
心と一緒に、身体も動く。彼に見てほしい。それだけの為に。
ユメミの瞳は薄く開いていた。その映すものは天井ではなく、彼女の胸元を見つめる彼の瞳。
(は、はずかしい………!)
羞恥に顔は背けても、その手は徐々にパジャマを開き、膨らみを守りながら隠すブラジャーを彼に曝していた。
それは、最近胸の発育を感じ、母親に奨められて彼女が下着店の女性店員と相談して新しく購入したもののひとつ。
今までよりもいくらか大きいサイズのブラジャーは、綺麗なかたちを保つ為。そして、綺麗なかたちを保つのは、ムントの為。
まだ自信はないけれど、彼に見てほしい。彼の瞳を真っすぐ見つめる勇気はないけれど、それでも彼には見てほしい。
ブラジャーの上から一度だけ中身を揉みほぐすと、彼女はそれをたくし上げ、白い胸とピンクの乳首を、彼に。
恥じらいながら、惜しみなく、5ヶ月のうちに少し蓄えられた膨らみを、彼に。
「…………ムント……」
声に出ていた。彼を呼ぶのなら、彼がこたえてくれるのなら、自分の声で、はっきりと呼びたい。
甚だしい恥ずかしさに微かな勇気を起こした後、彼女の指は、彼を待った。彼女は、彼の指を待った。彼の声を待っていた。
『………………………綺麗だ、ユメミ……』
「……ムント、さま………………ぅ、あうん!」
指が、乳房に直接触れた。揉んで、乳首を激しく摘み擦る。
「んっ!ぁ、はんっ!あ、ああんっ!!」
彼の舌が、右の乳首を撫でる。ただし、それは渇いた舌。渇いた指。
ユメミは右の人差し指を口に宛て、舌に唾液を這わせ、舐める。
「……ん」
その指を胸に下ろし、乳首に触れる。
「ん、あぅ!んぅっ!!」
彼の舌、彼の指、左右の尖端を激しく舐めては撫で回し、彼女の芯を波に流していく。
「んっ!ふぁぅ……ぁ、ぁんっ……!」
蕩けた瞳を薄く開いて、彼を見ていた。彼に啄まれる胸の羞恥に身悶えても、この瞳は彼の姿だけを映し出してくれる。
『ユメミ………』
「ぁん、んっ……はんんっ!」
彼の涎が塗られていく。乳首に、胸いっぱいに。
嬉しくなったユメミは、左の人差し指にも唾を舐めつける。そして、左の乳首も、塗り撫でる。
「あんっ!!う、あうっ!!」
両方の乳首を彼が舐める。2本の舌で彼が舐める。
「ん、んっ!……ぁ、ああ………っ……」
ユメミは悶えるだけ。彼の2本の舌に、ただ悶えるだけ。
(……だ、だめ………もう、あつい………!)
身体に篭る熱気に負け、右腕で強引に布団を除ける。
閉じたカーテンから漏れた月明かりに照らされるユメミの胸。左手は乳房を舐め続け、妖しい輝きを広げていく。
欝陶しい重さが消えた。ムントが消してくれた。これでムントはたくさんこの胸を見てくれる。
これで彼の舌はどっちの乳首も遠慮なく舐めて愛してくれるはず。恥ずかしいけれど、期待している、彼女のこころ。
だが、右手はそこに還らない。
彼女を無視してひとりでに降り、パジャマの上から彼女の下をまさぐり始める。
(…だ、だめっ!!むんと、そこは……っ!)
「ぁ、んっ、ん……んああっ!」
胸を口に含みながら、服に隠れた秘所を撫でる彼。下着のクロッチと薄いパジャマに守られているのか、刺激はいくらか弱い。
それでも、羞恥に狂いつつあるユメミの心身には、彼の責めは充分過ぎていた。
「あ、んっ!だ、だめ!ぁ、んんっ…!!」
どうすれば彼女が気持ち良くなるか、全て知っているかのように撫でていく彼の指。
「はぁっ!だめ、ぁ、あぁ、ん、いやぁっ!」
拒めども拒めども、彼は確実に指を服の上から裂け目を探り、押し込んで、彼女に抗えない快楽と更なる肉欲を与えていく。
「はぅ、いい……あうっ!もっと………して?……いいよ、いいの……もっと、ぐりぐりして………?…………は、あんっ!」
パジャマと下着の中に潜り込んだ彼の指。最も弱く、強張った彼女の突起を、
「はうっ!!ぁ、あんんっ!!あ、ああぅっ!!」
包皮を剥きながら容赦なく撫で、露出した核を強く圧しては転ばせる。
「あうっ!ム、ムント……そこは、もっとやさしくっ、ぁ、だめっ…!……あ、ぁぁっ………」
彼女の制止を聞き入れてくれた彼の指。しかし、彼の表情の影を、ユメミは見てしまう。
(………こ、このままじゃ…………)
自ら膝を曲げ、脚を広げていく。選択の余地は無い。
「…………ム…ムント………おねがい………いれて……?」
ユメミは未熟なまま、それでも精一杯、彼に媚びる。更には腰を浮かせ、寝たまま両手でパジャマと下着を尻から脱ぎ下ろし、
「………いれて…ほしい……………あなたが、ほしいの…………」
恥ずかしいおねだりをしながら膝を屈め、履いていたものを脚の先から取り、脇に置いて、再び脚を広げる。
「…………あなたの……を…………ここ、ここなの…………ここに、いれて…………?」
彼に促す為に下に当てた指。濡れ。そこから何かが溢れている。
(………おもらし……してる…………!)
はしたない、彼女のおもらし。
『そうだ。ユメミ、はしたないな……はしたないユメミ………はしたない子だ…………』
彼の声。顔はわからない。けれど、視線はわかる。
(………わ、わたし………はしたない…………みられてる………むんとさまに…………)
はしたない、彼女のおもらし。はしたない、彼女。
彼に見られるうち、ユメミの恥じらいにそのまま別の感情が擦り合わされ、嫌がるかたちが変わっていく。
(…………うれしい………むんとさまに、はしたないわたしをみられて……………う、うれしい……………!)
満ち足りた。違う、まだ足りない。まだ、欲しい。もっとほしい。もっと、むんとさまが、ほしい。
「………いれて……ください…………ムントさま………あなたの…おちん、ちん……わたしの、はしたない…ここに……………」
はずかしくて、うれしい、ユメミのおねだり。彼女の右の人差し指と中指が、彼が、彼女の入口に真っすぐ侵入していく。
「ん!!はあんっ!!」
じわりと奥に入っていくそれは、彼のもの。
「ぁ、んんっ!ふ、ふとい……っ!それに……はぅっ!」
太いと唱えれば太く感じられる、彼女の細い二本の指。
「……か、かたくて………かた、いっ……ああんっ………!」
硬いと唱えれば硬く感じられる、彼女の人差し指と中指。
「ぁ……か、かたくて、ふとく、て…ぇ……ぁ……おっきくて……ん………はぁん…………!」
じわりと奥まで入って柔壁を突くそれは、太くて硬く大きくて、
「………ム……ムント、さま……ぁ、あたたかい、あつ、いっ…んぅっ……あついの……っ…ぁ、ああぁ……」
温かくて熱く、自分をおかしくさせてこわしてくれる、ユメミがあの夜に大好きになった、大好きな彼のもの。
『ユメミ、動かすぞ』
彼の声。息を零しながらも無言で、恥ずかしそうに、嬉しそうに頷くユメミ。
彼が、引く。
「んっっ!!」
彼が、圧す。
「ああぁっ!!」
引いて、
「んふうぅっ!!」
圧し込む。
「ああうぅっ!!!」
引いては圧し、圧しては引き、引きに引いては圧しに圧す。
「んっ!あ、あぁ、はんっ、ぁ、ああ……う、あんっ!ぁ、んあぁんっ!!んっ!んうっ!!」
彼女の求めたものがここにある。正確には足りないが、
「あぅ、はうっ!いい、いいの、あんっ!ふぁあ…あん、あんんっ!や、やだ、ああんっ!!!」
彼の声、彼の指、彼の瞳、彼の全てに心を染めて堕とした彼女には、足りないものなど何ひとつありはしない。
「だ、だめっ!もう、も、うぅっ!!も、もう、こ、こわれ、ちゃううっ!!」
挿送を繰り返す彼にユメミの内膣は奮えて悶え、刺激が声になって垂れ流されていく。
「あ、んぅ、んはう!あんっ!だめ、だめえっ!んあはぅぅっ!ぁ、だめ、だめぇ、だめえっっ!!!」
おかしくなりそうになる、こわれそうになる、そうなるにはまだはやいはず。
あの夜に何度も彼にこわされた事で識った予兆。早くかろうとも、事実、彼女をこわす直前にして最後の津波が押し寄せ――――
「…………んん……んにゃ…んにゃ……」
押し寄せていた津波が、彼女を飲み込もうとしていた津波が、引いていく。
(――――チ、チカラっ!?)
そうさせたのは、彼女の理性を瞬時に築かせたのは、仕切りの向こうに眠る弟・チカラの荒い寝息。
「ぁ、あん――――んんっ!?んっ、んむっ!!」
彼女は思わず左の掌で口を塞ぎ覆う。
弟には、弟にだけは絶対に聞かせるわけにはいかない。
何故今までチカラが寝ている事を意識しなかったのか、戸惑い焦る彼女の左手は上の口を塞ぐ。
「ん、んっ、んんっ!んぅ、んっ!んぅんっ!んぅぅ!!
それでも、姉の右の指は、未だ下の口がくわえたまま。
くわえられたその指は中で蠢き水の喘ぎを響かせ、彼女を黙らせない。
愛を求める強欲を垂らしては弾かせ、ユメミを、ムントをくわえて離さない。
腰の奥に力を篭めて中がきつく締まるように願い、涙目の彼女は決して彼を離そうとしない。
292 :
5:2009/04/24(金) 00:23:13 ID:2MI0Zig3
>>291の通し番号を間違えましたので訂正申し上げます
× (20)
○ (21)
自慰にふけるユメミが可愛い。
なんとも官能的。
早く本物のムントに会えるといいね。
ユメミン(*´Д`*)ハァハァ
ユメミのアノ時の声を聞いて、
布団の中でひそかにアソコをオッキさせてるチカラ(ハアハア
296 :
5:2009/04/28(火) 01:26:05 ID:L9tSPunb
「ユメミは少女じゃいられない2」第4回
今回は8節うpします
注意事項は
>>266を参考に願います
尚、誠に勝手ながら、編集上の都合により1回追加した全9回に変更致します
1〜5回がユメミパート、6回以降は非エロとなります
6〜8回はムントパート、ラストは見てからということでどうか
では、どぞ
(だ……だめっ……!)
「んっ!んふ、ん、んっ、んんっ!!」
彼女の右の指が、動いている。
(……だめ、だめ……っ!)
「んん、ぁ、んんっ!!ん、んふ、ん、んむ、んぅっ!!」
細くしなやかな彼女の指は、太くて硬い彼のもの。
(……ぃ、いやだよ…だめだよ……だめぇ……!)
「んっ、ん、ふ、んっ!んう、ん、ぅんんっ!!んっっ!」
制止を叫ぶ彼女を無視し、少女の中で蠢いている。
(…や、やだ………か、かって、に………っ)
「ん…んぅ、んふ、んっ、んっ、んふぅ!んむぅ!!」
彼女を無視し、何らかの目的を持って、少女の中で上下している。
(っ!?…だ、だめ!だめぇっ!!)
「んんっ!ん、はうぅっ!!ん?んんっ!!ん、んふうぅっ!」
痺れる不定の刺激にあって、全身を襲う一瞬の電悦。口を塞ぐ左手が緩み、可憐な嬌声が響き渡る。
(……き、きこえちゃう………!)
「ん、んっ…んんっ!ん、んふ、んふぅ、んぅ!」
左の掌を唇に圧し込み、声が出てしまわないように塞ぐ。仕切りの向こうで眠る弟に聞こえてしまわないように。
(……きこえ、ちゃうのに…っ……)
「んん、ぅ、んむ、んっ、んんっ、ん!ん!」
止めればいい。そうすれば、弟にこの痴態を聞かれずに済む。
(………だ、だめっ!だめえっ!!)
「ん!んっ!!んふ、ん、ぅんんっ、んふうぅ!!」
なのに、彼女は止まらない。簡単な事のはずなのに、身体は言うことを聞いてくれない。
(きこえちゃう!やめて!きこえちゃうっ!!)
「んあぅ、ん!?んふ!んっ!んううっ!!」
彼女は止まらない。彼は止まらない。どんなに願っても、甘い責め苦を与え続ける彼は止まってくれない。
(だめっ!やめてぇ!もう、だめだよ!!)
「んう!んぅ、んぁぅ、んふ、んん、んむぅぅ!!」
首を振っても、脚を閉じても、彼女の中は止まらない。小さな動きで掻きむしり、膣壁を圧して揺らし、脈を打つ。
(む、むんと、さま!もうだめ、だめっ!きこえちゃう!だめ、だめえ!!)
「ん!んっ!ん、んん!!んふ、ん、んっっ!!んあぅっ!!!ぁ…んふぅ!?」
弟に聞かれたら、それを思えば思う程に羞恥が駆け巡る速さを増して、
(だめ、だめなの!もう、やめて!むんとさま、だめっ!!)
「んぅ、んん、んむっ!!んっ、ん、ぁ、は、んんっ!!!」
少女の声を切なく罪深く、淫靡な女の響きへとつくり変えていく。
(……もう、やだ………きこえちゃう………)
「んっ!!んむ、んふぅ!!んううっ!!!」
恥じらいと激しさに、弱りゆく彼女の儚い理性。喘ぎは塞がれながらも、次第に抑え切れずに、より強く。
(………はずかしい……むんとさま………やめてぇ………)
「んふぅ!!ん、ぁ、ん、ああん!んむ、ん!?んんぅ!!」
抵抗を願いながらも、彼女の脚は開いていく。彼女の奥から身体を貫く刺激が、はしたなく、彼女に脚を開かせる。
(ち、ちがう!わ、わ、わたし……!?)
「んふ、ぁ、ああ……ん、んっ、んむ…っ!!!」
理性は否定しながら、彼女の指は中へ、中へ入り込み、最奥の柔らかい壁へねじ込み、奥まで、もっと奥までと脚を開いていく。
(い、いやっ!ち、ちがう!!)
「んうぅん!んっ!んぁ!んむっ!?ん、ふ、んっ、んふぅ、んんっ!!」
閉じようとしても、動かせない。動かせない。脚に力が、入らない。彼が奥の奥まで入ってくる。
(だ、だめ…だめぇ………!!)
「ん、んっ、ぅ、んんんっ!んふ、ふぅうう、んふぅ!!」
動かない。脚が痺れて、動かせない。脚が彼に掴まれて、動かせない。彼が奥の奥まで圧し割ってくる。
(や、やだ!なのに、なのにっ……!)
「ん…んっ、んはぁ…ああんっ!!だ、だめ…んむうっ!!!ん、んく、んうぅっ!!」
動かない。脚が痺れて、開いていく。彼が開いていく。もう、彼女には動かせない。彼が奥の奥をやさしく圧し込んでいく。
(だめ!も、もう……もう、だめぇっ!むんとさま………むんとさまぁ…………!)
「ん、んっ、んぁ、はぅ!!ん、んんっ…ん……んふううっっ!!!」
開いていく。彼女が開いていく。もう、彼女は動かさない。挿送を繰り返す彼を受け容れていく身体に、心が従い始める。
(むんと、さまっ!むんとさまぁ!!)
「ん、んんっ!!んふうっっ!!!んううぅっ!!」
脚を開いて、開いたままで浮かせて、彼を容れた腰も浮かせて、ぶらりとだらしなく開いた脚をもっと、もっと開いていく。
(むんとさま、むんとさまっ!むんとさま!!む、むんとさまぁっ!!!)
「ん、んう!!んん、ん、んんんっ!!んふ、んむ、んふうぅっ!!!んぁ、んふんんっ!!んっ!!んっ!!んんっ!!」
先刻の絶頂寸前の波も蓄積した巨大な波濤が、彼の律動を感じたいが為に振り揺らす腰をより強烈にし、彼女の芯を破壊する。
(も、もうだめえええっ!!!!ぃ、いいっ!!いいの!!!いいのっ!!!!だ、だめっ!!だめえええっっっ!!!!)
「んんんっ!!!んっ、んむうううっっ!!んあうああうう、んんむっ!!!んふうっっ!!!んんうぅんうううっっ!!!!」
塞いでいるはずの口から漏れるいやらしい声も、下の口から跳ねる恥ずかしい飛沫も、ベッドが軋む程に責めてくる激しい彼も、
(だめぇ!!!きちゃう!!きちゃうっ!!!も、もっと!!!あっ、く、くるっ!!!だ、だめええええっっっ!!!!)
「んんううぅぅんんんっ!!!んむううぅんうううんうんんうぅっっ!!!ん、んああっ!!!!ぁ、ぁあんっっ!!!!!」
不安。弟。想い。自分。何もかもが意識の外。その意識すら、激する肢体に途切れて流される。
言葉にできない嬉悦に奮えるユメミのなかに残るのは、いつまでも続いてほしい白闇と、蠢く事を止めないでいる彼女の指。
「ん……っ!あ……んっ……はぁ、はぁ……ぁ…あぁ………っ!」
ベッドの上で独り乱れたユメミ。彼女の意識は今、深い悦楽の闇の淵。
「………ぁ、ん……はぁ………ぁ、あん…っ……んん………ぁ………んぅ………」
口を塞ぐ左の掌は力を失い、絶頂の余韻に咽んで零れる、甘い涎と熱い息。
「……ぁぁ……ぅ……はぁ……ふぅ………ぅぅ………んんっ…………」
パジャマをはだけてたくし上げたブラジャーの下、唾が塗られ灰かに輝く双丘と、整い始めた鼓動に震える可憐なピンクの先端。
「……ん………っ……ぁ、はぁぁ……ふ、ぅ…ぅ………ふぁ…ぁ………」
閉じた瞼から伸びる睫毛の黒、枕とシーツに踊り広がる栗色の髪、感じて反った白い首筋、紅に火照った愛くるしい頬。
「……ぁ……ふあぁ………はぁ………あ………ん………っ……………」
果汁の滴る尻はベッドに沈み、くびれた腰を残響によじらせ、真っすぐ伸びた脚は未だに痙攣している。
「…………ぁ、あぁ………ん………んぅ……ん……ん、んんっ……あ、あんっ……んふぅ…!」
彼女を導いた右の指、彼女の愛する彼は、強く締まる膣圧と愛液の湿りに滑って追い出されてしまっていたものの、
「…ぁ、ああんっ……ぁ、んっ、んう…んふぅ………ぁあ………んんっ!」
股と共に閉じた秘所に潜って離れず、表面の淫肉を愛して嬲り、遠のく温かな悦楽の中に熱くて近い刺激を送る。
「あんっ!…ぁ……あはぁ………ああん……ん、んっ!…………ぁ、ああ…………」
刺激に浮かび上がって張り出される胸。口を押さえていた左手が、彼女の心臓のうえにそろりと降りて、
「ぁ………んんっ!んぁ、ぁ、んうぅ!」
細い指で先端を摘み、
「ぅ、ああう!!はんんっ!!」
摘んだままねじってから、
「あ!ん、んふぅ…!」
指先で転ばせて、
「…ん……ぁ、あぅ………あぁ………あんっ………!」
手を広げて弾力ある膨らみを揉みしだく。
「……あ、はぅ……あふ、ぁ………あぁん…ん……んっ………!」
一度達した事でより敏感になってしまっている、未熟な少女の白い身体。
「…んはぁ……あうっ!ん、んん……んふぅ、んっ、んっっ…………!」
忘我のまま快楽に打ち奮え、より味わいたいとばかりに、その指で、胸を、下を、揉んでは摘んで撫でては擦る。
「あっ!あうっ!!んっ、んぁあ………はああん…っ………んっ!」
彼女は今、あたたかいしあわせの闇の淵。
「……いいの、もっと…はんっ!あ、あぁっ……すきにして……いいの……ん、んうぅ!!」
もう一度、もう何度でも、もっともっと彼が欲しくて、彼に気持ち良くされたくて、今よりもっと彼におかしくしてほしくて、
「あんっ………や、やだ……ムントさま、きもち、いぃっ………あ、んっ!んあう!あん、はんっ!!もっと、もっとして?」
正直で欲張りな身体が彼女に代わり、彼を感じ、名前を呼んで、その嬉しさを声にしては求める響きを淫らにさせる。
「あん、あ、んあっ!ふぁあ、ああう、うん、んんっ!ぁ、あぁ、はあんんっ!ん!んふうっ!!んむうぅっ!!」
脚は閉じたまま、ちいさく起き始めた絶頂を隠して、胸を感じさせていた左手が、再び彼女の唇に宛てがわれていく。
彼女の意識は今、深い悦楽の闇の淵。
ん……っ!あ……んっ……はぁ、はぁ……ぁ…あぁ………っ!
『……………ユメミ………』
彼の声だけが聞こえ、彼の姿だけが目の前に映る、深い深い闇の淵。
………ぁ、ん……はぁ………ぁ、あん…っ……んん………ぁ………んぅ………
(………むん、と……?)
確かめるように、彼を呼ぶ。声が自由に出せないのは、おかしくなってしまったからなのか。
……ぁぁ……ぅ……はぁ……ふぅ………ぅぅ………んんっ…………
『………ユメミ……』
彼の声。その向こうに微かに聞こえるのは、一体何なのだろう。身体と一緒にこの耳も、こわれてしまったのだろうか。
……ん………っ……ぁ、はぁぁ……ふ、ぅ…ぅ………ふぁ…ぁ………
(……むんと………むんとさま………)
彼さえいれば、おかしくなっても、こわれてしまっても、別に構いはしない。彼女は彼の名を呼ぶ。
……ぁ……ふあぁ………はぁ………あ………ん………っ……………
『………ユメミ……』
答えてくれる彼の声。裸のかたちをした彼女の心に触れて、下と下が繋がったままで抱きしめてくれる彼。
…………ぁ、あぁ………ん………んぅ……ん……ん、んんっ……あ、あんっ……んふぅ…!
(…………むんとさま………きもち……よかった………いまも……きもちいいの…………)
彼の瞳を見つめる彼女。
…ぁ、ああんっ……ぁ、んっ、んう…んふぅ………ぁあ………んんっ!
『………そうか、良かった………』
彼女の瞳を見つめる彼。見つめながら、彼女の心臓の上に、右手を下ろす。
あんっ!…ぁ……あはぁ………ああん……ん、んっ!…………ぁ、ああ…………
(……いいよ…?……さわって……?………………それと……いっぱいいっぱい、キス………ほしいな……)
胸に夢中になり始めた彼。嬉しいけれど、何故か悔しいとも思った。彼の唇を見つめる彼女の、許しながらもねだる声。
ぁ………んんっ!んぁ、ぁ、んうぅ!
『……ああ、ユメミ…………』
彼のその手は彼女の膨らみに遊びつつ、唇は彼女に重なっていく。
ぅ、ああう!!はんんっ!!
(……ん、んんっ………むんとさま……だいすき………ん、んぅっ……むんとさま………むんとさま…………!)
唇が熱い。彼を呼べば、心地よくて、切なくて。声も唇も舌も、彼女は惜しまず尽くしていく。
あ!ん、んふぅ…!
『………もっと、欲しいか?』
やさしい唇をくれる彼に、彼女はうっとりと微笑んで頷き、貪り続ける。
…ん……ぁ、あぅ………あぁ………あんっ………!
(……んっ………ほしい……たくさん、してください………たくさん、たくさん………こわれたいの………んんっ……)
彼の与える唇を、彼のいいようにされる身体を、今よりもたくさん感じたい。彼女は彼を見つめて祈る。
……あ、はぅ……あふ、ぁ………あぁん…ん……んっ………!
『………何でも、していいのか?』
尋ねる彼に、彼女は頷く。今の彼女につくれるだけの頬の媚びに、いっぱいの気持ちを篭めて。
…んはぁ……あうっ!ん、んん……んふぅ、んっ、んっっ…………!
(……なんでも、して?……ん、んぅ、していいよ…?……んふうぅ………むんとさまのすきなことなら、どんなことでも……)
拒まない。拒む理由が無い。どんな事でも受け容れる。気持ち良くなれるなら、どんな事でも。
あっ!あうっ!!んっ、んぁあ………はああん…っ………んっ!
『…………ユメミ………愛してる…………』
(……むんとさま…………うれしい…!…………ん、んんっ…んっっ!!)
彼女は今、あたたかいしあわせの闇の淵。
……いいの、もっと…はんっ!あ、あぁっ……すきにして……いいの……ん、んうぅ!!
『……ならばもう一度……もう一度、お前がこわれてしまうまで――――』
(――――あといっかいなんて、いやっ!!もっと、もっとっ……んんっ、んふぅ!!もっと、もっとしてぇっっ!!)
もう何度でも、もっともっと彼が欲しくて、彼に気持ち良くされたくて、今よりもっと彼におかしくしてほしくて、
あんっ………や、やだ……ムントさま、きもち、いぃっ………あ、んっ!んあう!あん、はんっ!!もっと、もっとして?
『駄目だ!あと一度だけだ!』
(やだぁっ!!いやっ!!もっとしてぇ!!もっとたくさん、たくさんしてよぉっ!!!)
正直で欲張りな彼女が身体に代わり、再びこわれる予感を悟ったまま、刺激に歪む理性を保ち、彼の言葉に食い下がる。
あん、あ、んあっ!ふぁあ、ああう、うん、んんっ!ぁ、あぁ、はあんんっ!ん!んふうっ!!んむうぅっ!!
『あと一度!これでもう、おしまいだ!!』
(だ、だめっ!!こわれちゃう!!まだだめぇっ!!!やだやだぁ!!!こわれたくないっ!!こわれないでぇっっ!!!!)
彼女の左手、彼女の唇に宛てがわれていく。ちいさく起き始めた絶頂を悟られまいと、嬌声を挙げるその口を塞いで。
「んんんっ!!!んっ………んむっ…!!ん、んっっ………!!!」
『…………これで、おしまいだ………ユメミ………』
(………………………………だめ………まだ、わたし………)
『…………我が儘を言っても、駄目だ。ユメミ………………』
「………ん……んんっ………ぁ、はぁ……ああ、ああっ………だめぇ…………まだ、まだこわれてない……………」
『…………ユメミ………?』
「………わたし………ぁあ……っ……こわれてない………まだ………こわれてないよ………んっ…あ、ぁ…ぁぁ、っ………」
『…………………』
「…………だ、だから…………ぁ、ん…………ねぇ……………もっと………んっ……もっと……して……………?」
膝を立てて曲げた彼女の脚。開いていく。
「……お、おねがい……ぁん……っ…………もっと………して…………?」
開いていく。開いて、浮かせていく。
「…ぁ、はぁ……はあぁ…………ほしいの、ほしぃ……………だから、だから………!」
脚と一緒に、尻も浮かせていく。
「………おねがい…っ!もういっかいだけでも、いいから…………いれて……?……………おねがいっ………いれてぇ………?」
脚を開いて、尻を浮かせて、はっきりと彼に見えるように、汁の滴る秘裂を掲げていくユメミに、
『………………わかった、もう一度だけだ………ユメミ……』
「…ムント……さま…………!」
許したその顔は、やさしかった。願う彼女の不安が、曇りも霧も残さず消えていく。
「ムントさま…………………んうっ!!あ、はんっっ!!!」
侵入する彼。彼女の中指と人差し指。
「………あ、ああん……んっ……んう……あんんっ!!」
最奥まで割って入り、力を篭めてゆっくりと柔壁を圧すと、
「ん……あ、あう……ん、んううっ!?あ、あんっ!あ、はぁん!!あん、あんっ、あ、あんっ!!」
今度は速く、彼女の膣を奮わせて、内肉を乱暴に辱めては愛していく。
「あ、んんっ!!ん、んぅ、はん、あんっ!あ、だめ、だめぇ!!んっ、んむっ!!ん、んふ、んんむっ!!」
左の掌で口を遮り、強く、強く、声が出てしまわないように押さえるユメミ。
「んふ、ん、んんっ!!ん、んっ、んうう!!!んっ、んっっ!!んんんっ!!んっ!!」
仕切りの向こうの弟に聞かれないようにする為。
「んう!!ん、んん、んむ、んっ!!んう、んうう、んっ、んん!!!」
違う。今の彼女は、優しい笑顔と惜しみない思いやりを与える姉などではない。
「んっ、んん、ぅ、んむぅ!!んむ、んふ、んんっ!!!んっ!んっ!」
今ここにいるのは、愛しい男との繋がりを求めてただひたすら腰を振る、快楽の欲動のままに喘ぐ女。
「ん、んん、んふ、んっ、んんんっ!!んっ!んふぅ!!んむっ!!んく、んむぅぅ!!!」
口を塞いだのは、健やかに育ってほしい弟の為ではない。彼が欲しくて気持ち良くなりたくて仕方がない彼女自身の為。
「んんう、ん!!!んう、んふ、んふぅ!!!」
ただ、彼の激しい挿送に悦び始めたあの瞬間、彼女の理性がひとつの疑問を生んでいた。その答えが彼女の口を塞がせている。
「んっ!!ん、あぁ、あんっ!!だめ、んんっ!?んむ、んんうっ!!んっ!!」
さっき、むんとさまはどうして、わたしがこわれてしまったのをわかったんだろう。
「んん、んう!!んふ、あうぅ!!あ、んむっ!!!ん、んんっ!んっ!ん、ん!!!」
彼女の聡い理性は、彼にいつまでもこわされたい一心で、ひとつの推論を弾き出す。
「んっ!ん、んぅ!ん、ああ、あはんっ!!あう、んむうう!!ん!んくっ!んっ!んうっ!!」
そうだ、もしかしたら、わたしのはしたないこえをきいて、わたしがこわれちゃうのが、わかるのかも。
「ん、んはぁ!!きもち、いぃ…んふぅう!!んむ、んんんっ!!んっ!!んくぅ!!」
ユメミはそれに従い、口を塞いでいる。根拠も論理性もない、彼女のこわれた聡い理性の言いなりになって。
「ん、んっ!!んふ、んう、んむぅっ!!!んう、ん、んうう!!」
情も理性もこわれていながら、彼女の左手は口を塞いでいる。
「ん、んんうっ!!んく、あ、はんっっ!!あ、あん、ああんっ!!いいっ!きもちいいっ!!」
時には、繋がった下から迫り巡る刺激に力が奪われ、口元も掌も緩んでしまうが、
「ぁ、あぁっ!?だ、だめっ!だめっ!んっ!んむ、んんっ!!んうう、ん、ふうう!!んむぅ、んんん!!!」
もっと彼が欲しい、ずっと彼が欲しい――そこに心が還る限り、彼女は口を塞げるだけの力を何度でも取り戻せる。
「んん!!んう!!んっ!!!んんっ!!んんうぅ、んうん、んむ、んんっ!!!」
だが、逆に言えば、彼を求める彼女の頑迷な意志を何度も覆せる程の力が、彼の与える刺激には備わっているという事。
「んっ、んはう!!あ、ああんっ!!あ、あんっ!だめっ!!んむ、んんうっ!!んあう!!あん!はああんっ!!!」
塞ぐ力の弱まる間隔が短くなっていく。快楽にこわれても尚、聡明な悟性を持つ彼女は予見していた。
「あ、あん、あんんっ!!んむむ、んうう!!!ん、んくっ、んん、んうっ!!」
あの夜に何度も味わい、今も一度だけこわされている以上、達する前ぶれは識別できる。あと少しで彼女はまた達してしまう。
「ん、んむ、んああ!あん!はんっ!ああ、あう!!あう、あ、ああん!!んむ、んうう、んふ、あ、ああんっ!!」
そして、達する刺激の波濤に口を塞ぐ力は失われ、こわれてしまう身体のはしたない声を合図にして、彼は幕を下ろすのだろう。
「ぁ、ああ、はん、んむぅっ!!ん、んふう!!んう、ん、く、んっ、んんっ!!」
それは、それだけは、どうしても――――左の掌は嬌声を抑えたままで、終わりを拒んで首を横に振るユメミ。
「んん、んむ、んぁ、ああう!!!あん!はんん!あんっ!あ、んむっっ!!!んふ、んふううう!!!」
本当ならば、自ら口を塞ぐような事はしたくない。口を開いて、彼を好きだと言いながら果ててしまえればいいのに。
「んんっ!!!ん、んっ!!んうう!!あ、あん!!ん、んむ、んくっっ!!!!」
気持ちいい。素直に気持ちいいと言いたい。もう、楽になろうか。この一度だけで、もういいか。何をむきになってたんだろう。
「ん、んんっ!!ぁ、あう、ああ、ああんっ!!はんっ!あ!あう!あん!いい!き、きもちいいっ!!あ、あんっ!!」
諦めた左手で右の肩をきつく寄せ、疲れた首を右に傾けて休ませる。
「あ、ん…?んん、あ、あん、んんっ……!?」
高い声で喘ぎ出す彼女の視界は、その脇になんでもないあるものを映していく。
(……もう、いいよね………………………………え?…………こ、これ……あ、ああっ!?もしかして、もしかしたらっ!!)
枕。彼女が頭を埋めている枕。
「ん、ああう!?あっ!ああ、はんっ!!!こ、これっ!!!あんっ!ん、んむうう!!!」
頭を浮かせてつくった隙間へ、肩にあずけた左手を差し、再び頭を埋めて手を挟みながら、掌に口を圧しやっていく。
「んん!!んう、んく、んっ!!んん!ん!んっ!!んううっ!!!」
頬と枕に指を挟むかたちで左手を固定し、掌で口を塞ぐ。これなら、絶頂に力を失ってこわれる声を聞かせてしまう事も無い。
「んっ!!!んう、んん、んむっ!!んっ!んっ!んっ!んむううう!!!んんんぅ!!!!」
こわれる声さえ聞かせなければ、彼はずっと繋がっていてくれる。もっともっと、おかしくなれる。気持ち良くなれる。
「んんう!!んうう!!んんふううんうぅ!!!んんんっ!!!んんんう!!!んんんふうんんぅんんぅっっ!!!!」
諦めていた心は見出だした希望に晴れ、ユメミはもう何も躊躇う事なく、彼のくれる絶頂を受け容れこわれていった。
うう・・鼻血が止まりまへん。
なんて色っぽいv
はたしてユメミは愛するムントに再会できるのでしょうか。
306 :
5:2009/04/30(木) 01:01:38 ID:8sy1AHgY
「ユメミは少女じゃいられない2」第5回/全9回
今回は9節うpします
注意事項は
>>266を参考
では、どぞ
「ん、んんんっ!!!んふ、ん…んふぅぅ……!!ん、ぅ……んっ………んんっ…………!!」
しあわせが消えない。彼を感じて満ちていく。熱い快感、あたたかい悦楽、全て彼が与えてくれるもの。
「ん、んっ……!ん、んんっ……ん、んく、んむぅ、んんっ……!!」
彼は絶えず、彼女の中で動いている。上の壁、下の壁、左右の壁、一生懸命に掻き回して彼女をこわそうと躍起になって。
「ん……んふ、んう…ん、んん!んっ!んっ、んう!」
余韻に奮える紅膣へ更に刺激を与えていくから、彼女も嬉しくなって、痙攣する脚を前後させて尻を揺らし、腰を振る。
「ん、んんぅ…!!んふぅ、ん、んん、んふうう!!んっ!んっ!んっっ!」
波が、引いた波が、淫らな彼女をもっと感じさせてあげたいと、興奮に汗ばむ全身を包み込む。
「んんっ、んふぅ、んっ!んむぅ、んっ……んんっ……!!ん、んふ!!んっ!!ん、んんうっ!!!」
(う、うれしいっ!!もっと、もっとおかしくなって、いいんだね………!!
じゃあわたし、もっとおかしくなる……だから、もっときもちよくして…………きもちよくなるわたしを…………みて……?)
「んんんううっ!!!んんふぅ!!んう!んっ!んむ!んん!んく!んんううぅっっ!!!」
こわれる願いに身体は感度を高め、彼女の右指、彼の太く硬い下は速さも強さも増していく。
「んんっ!!ん、ん、んふんんっ!!!んうう、んむう、んく、く、んんっ!!!」
おもらしの跳ねる音が、彼女の代わりに嬉しいと言ってくれる。気持ちいいからもっとしてと、軋むベッドが伝えてくれる。
「んんんっっ!!!んふ!!ん!!んく!!んくんんっんんふううぅんっっ!!!!んんう、んふんんぅっっ!!!!」
だから、口は塞いだままでいい。言葉にしなくても、ちゃんと伝えられる。願いの果ては、必ず叶う。
「んんううん、んふ、んうううんんっ!!!んんっ!!!んむうっっ!!!んふううんんふうぅっっっ!!!!
絶する悦の激しさに身体を委ね、悶える。記憶が飛んでも、唇は塞がれたまま、彼に喘ぎ続ける。
「んんんう!!!ん、んんっ!!ん、ん……んう!ん、んっ!!んっっ!!」
それでも彼は彼女が達した事に気付かず、きつく締まるユメミの中で律動を繰り返す。
「んむうぅ!!んう!ん、んっ、んぅ、んうう!!んん…んっ、んふ、んふう!!」
速さ、硬さ、太さ、強さ、変わらぬ律動を続けてくれる彼に、彼女は少しだけ口を押さえる掌を浮かせて、
「んう、んっ!!ムントさま、あんっ!あ、ああん!!きもちいいっ!!!ん、んむ、んんっ!!んっ!んっ!」
そしてまた、塞ぐ。塞いで、悶えて喘ぎ、感じる身体をくねらせる。
「んううっ!!んんっ!んふ、ん、んふうっ!!んう、んくぅ!!んん、んんぅっ!!」
きもちいいは、ありがとうの意味。ずっと気持ち良くさせてくれる彼に、それだけは伝えたかった。
「んう、んふっっ!!んんうっ!!んむ、んむう!!!」
それだけ伝えた彼女は、彼の下を味わい感じ尽くすのに心を傾けて、淫らに腰を揺らし続ける。
「んんふうぅ!!んうっ!ん、んんう!!んっ!んんうっ!!んふうう!!!」
彼女の胸の膨らみは、頬と枕に挟み口を塞ぐ掌の為に曲げ、そして、秘所に指を立てて彼を感じる為に伸びた、
「んっ!ん、んっっ!!んふ、んっ!!んうう、んむっ!!!」
双方の細い上腕に圧し寄せられ、豊かに溢れる弾力を奮わせて、彼への嬉色をいっぱいに表現して見せる。
「んんう、んっ、ん、んん!!んう、んく、んぅぅ!んっ!!ん、んんんっ!!」
速く圧されて掻き回されても、奥まで強く圧し込まれても、もう何をされても嬉しい。ずっと味わっていたい激する感覚。
「んふ、んふう!!んん、んん!!んう、ん、んうんっ!!」
しかし、いつまでも彼を感じていたいユメミの脚は、快感を逃がす奮えとは違う震えを発し始めていた。
「ん、んん、んっ!!んう、んっ、ん、んん…んう!んぅ、んぅぅ、んっ、んっ……!」
疲労。彼を受け容れて浮かせ続けた脚は、筋を張ったまま蓄積した乳酸により、限界に達していた。
「ん、ん…んんっ!!んうぅ、んふんっ!!んく、ん、んく…っ!!」
このまま開いて彼を受け容れていたい。愛に満ちた彼女の気持ちは、脚を閉じる事を躊躇っていた。
「んん…んううんっ!!んん、んく、ん、んっ……!!」
はしたなく浮かせてから、気持ち良さが一層はっきりと強くなった。刺激を貪る彼女の悦欲は、尻を降ろす事を拒んでいた。
「んう、ん…んうぅ……ん、んふ!ん、んん、んっ……んんぅ……!!」
だが、決して楽な態勢でないままの彼女の自慰。疲れはやがて快感を次第に鈍らせ、抑える喘ぎも小さく長いものになっていく。
「んんっ、ん……んふぅ!ん、んう……んん、んっ……!!」
鈍る刺激が脚の疲労によるものだと、彼女自身も認識していた。熱い快楽が減衰していく。彼は変わらず強く責めてくれるのに。
「…ん、んふ、んんっ……ん、んう!んっ、んっ……!!」
今の彼女の態勢は、あの夜、彼に愛された時のかたち。仰向けになった彼女が脚を開いて、その間に彼が、今と同じ彼のものが。
「んん!!ん、んふぅ……ん、んくぅ……!ん、んっ、んんぅ……!」
彼女は思う。今と同じはずなのに、あの時はどうして疲れなかったのか。あの時と同じはずなのに、どうして疲れを感じるのか。
「ん、んんっ……ん、んん、んう、んっ!!んう、んん、んくぅ!!」
あの時も疲れはしただろう。それでも、これ程までに疲れを感じはしなかったはず。同じはずなのに、どうして。
「ん、んっ……んう、んん、んふう!んう、んん、んっ、んっ!」
無意識のまま強引に指を動かし、彼を無理矢理感じようとするユメミは気付かない。あの夜と今の、その違いを。
「んん、んふぁ……ム、ムントさまぁ!お、おねがいっ!もっと…もっと……はげしく、いれて……っ?」
業を煮やして掌から口を離し、彼にお願いを試みるユメミは気付かない。あの夜の彼と今の彼、決定的なその違いを。
「…おねがいっ…ぁ、あんっ!もっと、いっぱい…わたしの、なか、ぁんんっ!……もっと、もっと、して……は、はんっ!」
彼を信じるユメミは気付かない。忘れている。今の彼は、彼女が願って生み出した空想の彼であり、肉体を持った彼ではない。
「……ぁ、ああんっ…お、おねがいっ……ん、んっ、あ、あん…っ……おね、がいっ!……し…して?してっ?」
あの夜も脚を浮かせて開いていたが、足の指まで細く整った肢体とは言え、彼女の脚には重さというものはある。
「ん、んはぅ!ぁ、んあぁ……あん、おねがいっ……ぁ、ぁぁ………きもちよく、してぇ……!」
あの夜は彼がその重さを受け容れて、彼女の中から逃がしていた。だからこそ、今のような脚の疲労感を覚える事は無かった。
「……ん、あう…あ、あぁ……あんっ!………おねがいぃ……もっと、もっとしてよぉ………あ、んん、ぁんっ……!」
けれども、今の彼は所詮実体の無い想像。彼女の脚の重さは彼に逃げず、疲弊となって蓄積されるばかり。
「あ、ああん………ど、どうして?どうして、んっ、きもちよくしてくれないの?こわしてくれないの?ぁ、んああう!」
切ないユメミは気付かない。今の彼は、実体の無い彼だということを。彼女自身がつくり出した想像の彼だということを。
「あん、ぁ、ああんっ!ん、んああ、あうっ!!ん、んんっ!あ、はんんっ!!」
欲張りなユメミは気付かない。実体は無くとも尽くし続ける彼を。変わらず動いている指の激しさを。確かに感じている身体を。
「んう!ぁ、あんっ!ムントっ!ムントさまぁっ!!あ、あああんっ!!」
脚の疲れを全身のものと感じ、それにとらわれる余りに、今確実にある快感も忘れ、更なるものを求めて喘ぐユメミ。
「もっと、もっとちょうだいっ!?ほしい、あんっ!ぁ、うああんっっ!!」
尻はシーツの上に降りない。苦悶に咽びながらも楽な態勢を取らず、彼女は尻を浮かせて広げた秘部に、彼の愛を容れ続ける。
「ん、んあ、あう、ああう!!あ、あんっ!!ん、んはう!!う、ぁん、ん、んふぅ!あん!あんん!」
口を塞ぐのも忘れ、あと一度でおしまいと言った彼の言葉も忘れ、彼女は一途に彼の剛直を感じて嬌声を挙げていた。
「あん、ム、ムント、ぁ、あんんっ!!ムントさま、んあぅ、ぁう、ムントさまっ!あふ、あううっ!!」
刺激と疲労のもたらす苦しい悦。気持ちいい。けれど、こわれない。快楽の中で脚の疲れが引っ掛かり、彼女自身をこわせない。
「んあ、ああ、あんっっ!!!あう、あ、はあんっ!!ぁ、うあぅ、あ、あんん、ん、んんっ!!」
ちゃんとこわれたい。彼にこわされてめちゃくちゃにされたい。けれど、ずっと気持ちいいからこのままでもいい。
このままでと願う彼女に反して身体は嘘をつかず、心おきなくこわれる事ができるよう、ユメミを過剰な逸脱へ導いていく。
指を、多量の愛液を滴らせる淫泉から、抜く。
「んううっ!!」
右に寝返り脚を重ねてシーツに降ろし、燻る熱に暫し身を委ねる。
「ぁ…ぁぁ…ぁんっ…!……ん、んん………んっ……!」
上のパジャマの残りのボタンを、涎に濡れた左の指とおもらしを垂らす右の指で外し、脱いでいく。
後ろ手に回しつつ脱いだら、ブラジャーの背中のホックも外し、取り去る。
現れたのは裸の彼女。横たわるその身に両膝を曲げて、
「ん、んあぁ……あ、あぅ……あ、あんっ………」
発情した牝馬のように、身を屈めたまま膝を立て、尻を起こして彼に掲げる。
「あ、あぁ………い、いれて………?」
奮える彼女の白い桃。果実は淫欲に濡れ、甘美な輝きで彼を誘う。
「………いいの、いれて?わたしの、ここ……おかしくしてほしいの……」
秘裂から腿を伝い、或いは真っすぐ糸を引いてシーツに垂れ堕ちる、だらしない彼女の下の涎。
「……ぁぁ………ぁ、あぁっ………」
彼女の右の指が、下へ伸びる。彼がもうすぐ中に入ってくれる。期待に彼女の胸は高鳴って、
「あ、あんっ…!ぁ、んあぁ……」
上の体重を枕に埋めた額で支えながら、我慢できない心のありかを、左手でやさしく愛撫する。
――――くちゅ
彼の先は、彼女に触れる。
「ひうっ!!」
――――くちゅぅ、くちゅ、くちゅぅ
彼女の入口で、わざと大きく音を立てる。
「あ、あんっ!!だめっ、だめっ!!」
――――くちゅ、くちゃ、くちゃぁ
彼女によく聞こえるように、彼の先が、彼女の指が、嬉しい下の口の声を、ユメミの耳に届けていく。
忘れていた羞恥が、ユメミの心に燃えていた。
「やだ!はんっ!あぁ、だめ!いやっ!」
後ろから成すがままに責められる恥ずかしさ。
――――くち、くちゅ、くちゅぅ
はしたなく響く水音を聞かされる恥ずかしさ。
『……ユメミ……こんなに、鳴らして……』
彼女の痴態を知らせてくれる彼の声を聞かされる恥ずかしさ。
「あんっ!やだぁ!いわないでっ?おと、させないでっ?」
彼女がどんなに制止をしようと、
――――くちゃ、くちゅ、くちゅっ
彼女の恥ずかしいところは嬉しそうに嬌水を挙げ、
『こんな恰好で、おもらしして……いけない……いけないな……』
彼に責められていくうちに、腰をくねらせて尻も奮わせる、いけないユメミ。
「あ、あんっ!や、やだっ!」
『……可愛い、可愛いよ…………ユメミ、可愛い……』
――――くちゅっ、くちゅくちゅ、くちゃぁ
「だめっ、は、ああんっ!は、はずかしぃ!やだ、やだぁ!」
どんなに恥ずかしくても、どんなに理性が拒んでも、感じる身体は嬉しくて、
「ぁ、あんっ!んう、あぁ、ああっ!」
――――くちゃ、くちゃぁ、くちゅっくちゅっ
上の口も下の口も歓喜に咽び、彼女の心はより羞恥を求める。
「ムントさまぁ……あんっ、もっと、はずかしいこと…………ぁ、あああんっ……」
求め始めたその時、彼が中に入り込んでいく。
「ぁ、ああう……あ、はぁぁ………!」
――――ぐちゅぅぅ、ちゅぷぅっ
「あんっっ!!あ、あぁ……」
入り込んで、抜け出る。そしてまた、入り込む。
「んう、ああう!!ああ、はあぁ…っ……!」
膣壁を割り、奥まで入り込んで、
――――くちゅぅっ、くちゅぅ、ぐちゅ、くちゅ
「あうんっ!あ!あぁ!あんっ!ああぁ……!」
感じる為ではなくその音の為、その音を聞かせる為に、中に溜まった感じる女汁を掻き混ぜる彼。
『…………こんなに、感じて……こんなにおもらしして…………いけないな、いけないユメミ…………』
「……ぁ、あん…………い、いけない、わたし…………んっ、あ、ぁ……」
『…………はしたないユメミ………………可愛いユメミ…………』
「あ、あう、ん…っ………ムントっ……ムントさまっ……!あ、あんっ!だめっ!ぁぁ、はあぁん!!」
聞こえる幻に拒む嬌声を挙げながらも、中を掻き混ぜ淫肉を撫でる彼女の指。
恥じらいを踏みにじられる被虐の悦びを覚え始めたユメミの、いやらしく濡れた下の口にくわえられた細い指。
「あ、あうっ!んっ、んああ!!あっ!はんっ!!」
律動。派手な声でそのはじまりを迎えた彼女は、快感の裏で、今までとは違う身体に気付いていた。
「うぅ、んうっ!あ、はう、あんっ!んっ、あ、あぁ、ああん!!」
仰向けになってベッドに身体を預けている時とは違う。掲げた尻に力は多少入っているが、その中は力なく彼を受け容れている。
「あ、ああう!!ん、んぅ、んあ、あああぁっ!!」
宙に浮いたように安定しない姿勢で、膣の上底を擦る2本の指の腹で、後ろから突く彼で、今までよりもずっと感じてしまう。
「あ、あぁ……いぃ…きも…ち……いいのっ……!!あ、はぁぁ……あん!あ、ああんっ!!あんっ!はんぅ!!」
彼女は濡れた桃尻を揺らし、彼の動きに合わせて、その与えてくれる刺激の全てを漏らさず受け止めていく。
「んあ、あうう!いい!うしろから、あん、きもち、ぁん、いぃっ!あっ、あんっ!あんんぅ!!」
刺激は漏らさず受け止めて、繋がる秘所から愛液を漏らして弾けさせ、彼女の腿と膝の下のシーツに潤いを与えていく。
「あ、あう、んぅ、はんっ!あ、ぁ、あふっ、ふぁあんっ!!」
やがてシーツは彼女の汁を吸い付くせなくなり、おもらしでできた水溜まりとなって、
「んく、あうふ、ぁ、ああう!あふ、うう、んうっ!!あんっ!あんんっ!!!」
絶えず滴っては飛散する、彼女の感じる証を集めて、シーツを染み込ませながら広がっていく。
「ああん、あ、あぁ……え、えっ?あ、ああん!!!あっ、あふ、はあんっ!!!」
やがてそれは枕に額を埋めて股の下を覗き見るユメミの目に入り、
「ぁ、あん、お、おもらし…っ!こ、こ……こんなにっ……!?」
『そう、ユメミ、さっきからずっと、こんなにしていた』』
「あうっ!!ああああんっ!!!」
彼の声が響けば、羞恥に絶する彼女もまた嬌声を挙げる。
「あ、ああぅ!!やだ、やだぁ!!あん、んああっ!!!」
その嬌声は、拒絶するものか。
「あ、んうう!!もっと、もっとぉ!!ああんっ!!あ、ああう!!!」
その嬌声は、嬉悦するものか。
「あう、はんんっ!!だめっ!いい、いいっ!!んあぁ、あぅ、はふぅ!やだっ!!はずかしいのにっ!?あ、ぁああんっ!?」
わからないまま、泣いていた。快楽に委ねて尻を奮わせ、彼女はただ喘ぎ泣き、
「やだっ、あ、ああんっ!!もっとはげしくっ、わたしを!わたしのなかっ!あんっ!ついてぇ!?おくまでついてぇっ!!?」
愛おしい彼へのおねだりへ夢中になりながら、高く切なく、その声を響き渡らせる。
「ああう!!んふう!!んあああ!!だめっ!!!きちゃうっ!!!あんっ!!あ、ああ、はぁあっ、ああああんっっ!!!」
我慢できない熱い痺れ。後ろから愛されても、おかしくなれる。それを識った彼女の身体は、もう、果てることを拒まない。
「ムントさまぁ!!こわれちゃうっ!!いいよっ!?こわしてぇっ!!!あ、あああんっ!!!んあああうっっ!!!」
枕から浮き上がる彼女の顔。瞳は刺激に蕩け、唇は自らの声と息に奮え、こわれる事を望んで願う嬉色に満ちたユメミ。
「あああう!!んあっっ!!!んふうぅっ!!!あんっ!!ぁ、ああ!!ああああんんっ!!!」
起き上がる胸。左手が撫で回し、感じる尖ったピンクの先を摘んで、駆け巡る肢体の熱をより激しく暴れ狂わせる。
「ああんん!!んああ!!あはぁう!!!はうっ!!あうっ!!ああう!!あんっ!あ、んあんんっ!!!」
持ち上がる身体。膝だけが支える尻。中を愛する彼。止まらず辱めを与える彼女の指。
「ああう!!!だめっ!!ああ、あああんっ!!!いいのっ!!はんっ!!ムントさまのおちんちん、いいっっ!!!
わたしっ!!はしたないっ、ところっ!!きもちいいっ!!!きもちいいよっっ!!!あんっ!!んくうぅっ!!」
自らを辱める言葉を口にして、理性さえも犯していく彼女。歯止めが効かない自慰。歯止めが効かない彼。
「んあっっ!!!!は、はんっっ!!!!あ、ああううっ!!!ううあう!!!あううっっ!!!!
だめっ!!だめえっ!!!そこは……ああんっ!!!あんっ!いやっ!!ゃ、やああんっ!!!!」
挿送する秘部の上、彼の指、彼女の右の親指。中を愛しておもらしを飛び散らせながら、彼女の敏感な核に触れて、
「やめてっ!!!こわれちゃうっ!!!だめっ!!!だめぇっ!!!」
愛液に濡れたそこを、包皮を剥いて露出した中核を、ねじり撫でる。
「やだっ!!!あんっ!!!あああううあうっ!!!あんんっ!!あふうっ!!!だめぇ!!だめえぇっっ!!!!」
中から圧し突かれ、外から撫で回され、彼女の果てがはじまっていく。
『…………ユメミ……』
「ムントさまぁ!!!やめてぇっ!!!こわれちゃうぅっ!!!だめっ!!!ああんっ!!!」
彼の声を聞きながら、ユメミは果てていく。
『…………何が、こわれるんだ……?』
「あう!!!あああんっ!!!わ、わたし…こ、こわれ………ふぁあうぅっっ!!!!あううああんああんんっっ!!!!」
浮いた身体が跳ね起き、腿を開いた正座の姿勢。律動が、止まる。
『………………何が、こわれるんだ……?』
「あぁ…!……あ、ああ…っ!……わたし、の…っ……はずか、しい………ところ………っ…………ぁぁ……あんっ……」
果てた理性は虚ろなまま、彼の問いに答え、余韻に喘ぐ。
『…………恥ずかしい所……?………………何と言うんだ……?』
「や、やだっ!ぁ、はぁ……い、いえないっ………!いえないよっ!!そんなの……っ!!」
『………………何と……言うんだ…………?』
「あんっ、ぁああんっ!!!」
奥の柔壁が、突き圧される。
「あぁ!!あんっ!!んうぅ!!ああんっ!!」
胸も、後ろから、揉まれる。
『…………ユメミ、言うんだ…………ここは、何と言うんだ……?』
「いやぁっ!!だ、だめんっ!!あん、あ、あああん!!」
絶頂に疲弊し、再びはじまる律動を受け続けつつも、理性は簡単な問いの答えを出す。けれど、言えない。
『…………ユメミ…………言わないのか……?』
「やだっ!!いえないっ!!!ムントさまでも、あんっ!!いえないよぉっ!!!んっ、あう、はあんっ!!」
恥ずかしくてとても言えない。彼女は刺激に耐えながら、彼の責めを拒み続ける。しかし、
「んあ、あぁ!あんっ、あぁ…………ぇ、っ……あっっ!?だめっ!だめぇっ!やめないでぇ!!」
言わない彼女に、彼は挿送を止めた。胸を揉む手も止まる。
『…………なら、これでおしまいだな……』
彼が、彼女の中から出て行ってしまう。胸に宛てがわれた手はそのままだが、動きを止めて何かをじっと待っている。
「……や、やだぁ………やめないでぇ……!おねがい……っ………もっと、もっと………」
『………だったら、言うんだ、ユメミ…………ここは、何と言うんだ?』
「ん、んっ……!」
彼の先が、彼女の指が、秘肉に触れる。触れたら離れ、離れては触れ、問いと重ねて繰り返す。
『…………ユメミ……言ってごらん?………おもらしをしているここは、何と言う?』
「あ、んう!だ、だめ………いえないっ………わ、わたし……そんなのしらないっ!!」
『……嘘を言うなら、おしまいだ…………』
離れる。今度はもう、触らない。触ってくれない。入れてくれない。
「あ、あぁ…っ……やだ……やだ、やだっ!!いれて?いれてよぅ!!」
『……………………嘘つきは、嫌いだな…………』
嫌い――――彼女が今、最も恐れる言葉。彼の愛を信じている彼女が、最も恐れる言葉。
「あ、ぁ………ご……ご、ごめんなさい!!しってる!わたし、しってます!!だから、だから……!!」
彼に口にしてほしくない、彼女の心を最も闇に堕とし込むその言葉。
「お、おね、おねがいっ…!き、きらいだなんて………いわないでっ!!ぅ、ぅ……いわないでよぉっっ!!!」
その言葉を掻き消そうと、必死に叫ぶ彼女の虚ろな瞳から流れる涙。
『…………ならば、どうすればいいか……わかるな?……ユメミ…………』
その声は深くやさしく、彼女の涙を慰める。
「ぁ、あっ……ああう………!は、はい……っ!!」
その手は切なくゆっくり、彼女の胸を慰める。
『…………さあ、言ってごらん……ユメミ……ここは、何と言うんだ……?』
「はんっ!?あ、あんんっ!!あ、あぁ……!!」
その声も彼も非情なまでにやさしく熱く、ユメミの心に、ユメミの中に入っていく。
「……はんっ!ん、んぅ、ぁぁ、あぅ……ぁ、ぁん、ぁぁぁ………!」
求める彼女は彼のもの。身体の中、心の中に入って愛してくれる彼の望みに従い始めるユメミ。
「ぁ……ぁん……あぅ………ぅ、ぁぅ………………は、はぅぅ………!」
彼の望みは彼女の望み。身体も心も愛欲にこわれ、彼女の望みに従い始めるユメミ。
『…………ユメミ……さあ、何と言うんだ?』
「…………ぁ、ぁぁっ………ぁ……ぉ………ぉ……お………まん……こ…………っ……」
生まれてはじめて口にするその言葉。
「………んっ…ん、あああうっ!!!あん、ああんっ!!だ、だめえぇっ!!!」
激する羞恥は彼に圧し込まれ、刺激と共に身体を駆け回り、彼女をこわす。
『…………聞こえないな。もっと大きく、はっきり………さぁ、何だ……?』
彼の声。彼女は拒めない。口にすれば自らを貶めるその言葉、ユメミの心は躊躇いつつも拒まない。
「あんっ!!んう、ああぁ………お、おまんこっ!あんっ、あう!おまん…こっ……!!お…まんこ…っっ!!ああんっ!!!」
言えば言う程、彼は嬉しい刺激をくれる。
『今、気持ちいいのは、どこなんだ?』
「お……おまんこ…です……ぁ、ああんっ!それと、あんっ!むね、ちくびもっっ!!はあぁ!!」
言えば、彼の手は、彼女の左の指は、彼女の膨らみの尖端を摘み、
「あ、あふぅぅ!!あ、あんっ!!あ、あうぅ!!」
摘んでは転がして、それと同時に下を突き動かしていく。
『ユメミ、どこを、どうしてほしい?』
「あ、はぁんうっっ!!おくっ、まで、おまんこのっ、おくまでっ!んっ!!ああんっ!!ぃ、ぃれ、てっ………!!」
感じる喘ぎを漏らしながら、彼女は彼に貪り答える。しかし彼は、
『…………もっとはっきり言わないと、わからないな…………ユメミ……』
「あ、ああんっ!!ご、ごめんなさいっ!!あ、あふ、あああん!!!」
抵抗は、できない。嫌いと言われたくない。彼に見放されたくない。ユメミは刺激に耐えて、かろうじて耐えて、叫び喘ぐ。
「お、おまんこにっ、いれてぇっ!!ムントさまのおちんちん、あんっ!!わたしのおまんこに、ぅあうっ!!いれてっっ!!」
『ユメミ……もう入っているぞ?…………お前の、はしたないおまんこに……』
「ぁ、ああんっ!!わ、わたしの、おまん、こっ!!は、はした、ないっっ!!はんっ!!はしたないですっ!!!あんっ!!」
彼の言葉には何でも飛び付き、食らい付く。彼女の理性は快感を求める身体と合わさり、
『…………いやらしいユメミ……いけないユメミ…………』
「は、はいっ!!そ、そう!!わた、しっ!いけないのっ!!い、あぁ、いやらしいいっ!!は、はああうんっ!!!」
おうむ返しに彼の声を肯定し、彼の言う通りの淫らな彼女を刷り込んでいく。ユメミが、自ら、しあわせだと、望んで。
「んん!!?あ、あああううあうっ!!?」
上体が反り、胸が張る。
『ここは、何と言うんだ?ユメミ……?』
陰核。だが、強過ぎた刺激に、どこのことを聞かれているのかわからないユメミ。
「あ、ああんっ!!あ、あふ、ん、んくぅ!あ、ぁぁ、ん、んぅ、んふぅ!!」
膣の中に突き立てている彼を感じながら、敏感な場所への鋭い刺激を打ち消して、半壊の理性を取り戻そうとするユメミ。
『ここは、何だ?』
「あ、あああううっっ!!!んあううぁぅ、あああんんっ!!!」
彼の指が、剥き出しの淫核を、撫で回す。
『ここは何だ?』
「んあううんああっっ!!!」
『ユメミ、ここは!?』
「だ、だめええっっ!!!は、はううぅ、あううぅはんううっっ!!!!や、やだ、はぅうはあぁうんうっっ!!!!!」
白い裸が痙攣し、ちいさな唇が、微かに奮える。
「ああん――――んうぅ、んっ!!」
倒れる。頭から、眼下の枕へ、細い身体は力無く倒れ込む――――
彼は消えた。
彼女が生み出した彼は、跡形もなく消えていた。
「………ぁ…………ん……は、ん…っ………」
ベッドに俯せになり、息を切らし、絶頂の残響に身を奮わせるユメミの裸体。
髪は広がって乱れ、その間に見え隠れする肩は力を失い、細い背の下のベッドの上で膨らみが圧し溢れている。
「………ん………く……んん………っ…………」
くびれた腰に尻を濡らした愛液が滴り流れ、カーテンから洩れる月光に白く輝かせる。
股下を預けたベッドのシーツ、浅く小さな池をつくり、今もまだ、彼女の尻の奥から溢れ堕ちては広がっていた。
彼女の左手は、枕の上、顔の脇。右手は、濡れた秘所から滑り抜け、自分がつくった池の中。
上体は熱を残し、下は泉に冷やされていく。だが、それを介する意識は、ユメミの中には残っていない。
「…………ぁ………ん、んん………っ………」
彼女は今、深い深い闇の淵。あたたかい悦楽に満ちた、光の射さない深い闇の淵。
「……ぁ…………………と…………………す…………」
何も見えず、何も聞こえない、深く暗い、けれども決して寂しくない、全てに満たされた闇の深淵。
絶する激流に眠らされても、それでも、彼女にはまだ、しなければならない事が残っていた。
「……………く…………………………す………むん……と…………」
彼は確かに消えている。
彼女が生み出した空想の彼は、微睡にとらわれた彼女から跡形もなく消えている。
それでも、彼女にはまだ、しなければならない事が残っている。
それまで、彼は消えていない。その後も、彼は消えない。彼女の中から、消える事は無い。
「………………くり…とりす………むんと…さま…ぁ………くりとり…すも…………いじってぇ………
…………おまんこ………くりとりす……………わたし…………むんとさまの……………もの…………」
かわいそうなユメミ。
女は恋をすると狂おしいほどに相手を求めるのでしょうか。
ああ、また鼻血が・・・。(気絶)
317 :
5:2009/05/01(金) 05:35:29 ID:s6iSWHte
「ユメミは少女じゃいられない2」第6回/全9回
今回は9節うpします
注意事項は
>>266を参考に
ああ、空が明るいや
天上の夜は明るい。
たとえ地平の彼方に陽が隠れても、雲の上の大地のこと、月光も星明かりも、遮るものは何ひとつない。
それどころか、眼下に広がる雲に月星の光が跳ね返り、薄く輝いて夜闇を彩ってさえいる。天上界の初夏、独特の光景。
「うりゃああ!!」
「せいっ!!!」
澄み渡る高空の涼気に、男達の猛る怒号がこだまする。
「えいやぁ!!!」
「おおおっ!!」
その数は十や百では効かない。空中で横いっぱいに列を作った男達は、正面にかざした掌から、色とりどりの光弾を撃ちに撃つ。
「おっしゃあ!命中!!」
「ああくそっ!!当たんねえっ!!」
彼等の遥か彼方には、百機以上の人型機械。近付きも遠退きもせずただ飛翔し、速度も軌道もまばらなまま光弾をかわしていく。
今しがた被弾した中型機も何事も無かったようにゆったりと飛び、小回りの良さを感じる機動で魔導弾を着実に回避する。
「イルマ!標的の軌道と距離を意識して撃て!弾速の調整が甘い!威力があろうと当たらなければ意味が無い!
クエード!当てられても威力が弱ければ沈黙はさせられん!数を増やすか、もっとアクトを練り込め!」
「は、はい!ルイ様!!」
「く、くそっ!でりゃあ!!」
青髪の指揮官に後ろから叱咤され、彼等は答えながら機械人形へ魔導弾を撃ち続ける。
「こらぁ!休まず撃たんかあ!!奴ら、ピンピンしとるぞぉ!!」
「おおし、その意気だ!!!撃って撃って撃ちまくれ!!」
光弾を撃つ青年達の列の後ろから怒鳴るのは、体躯は様々でも皺を刻んだ初老の男達。
他にも、いかにも実力や年季を感じさせる者達が、広がった列の各所に分散し、青年達に厳しく指導の檄を飛ばす。
天上の国家・魔導国の、夜間演習の一幕。
かつての危機の後も、今列を成して魔導を放ち続けている後進の育成の為、魔導国の上層部は様々な訓練を施していた。
今回は、魔導国軍に新たに加わった魔導士達の、基礎演習の総仕上げ。動く標的を相手に魔導弾を叩き込む、至って単純なもの。
標的は、アクトによって機動する兵器群を保有する諸国から提供された、旧式の中の旧式、廃棄に回すべき機械人形。
それらが攻撃を仕掛けて来ないのは、訓練の無事故の為などという人道めいた配慮によるものではない。
魔導国への技術流用を防ぐ目的で諸国が自主的に武装を外して譲渡した為であり、それは魔導国側にも異論は無かった。
幾度も修復して使い回しているが、その内外をアクトで完全に直せるので、旧式とは言え動作には何ら支障は無い。
攻撃しない旧型の標的をただ撃破するだけの単純な訓練だが、その対象は、魔導を扱い出して日の浅い新参達である。
休む間もなくアクトを練りながら魔導弾を撃ち、絶えず動き続けられる機械達に命中させる、その両立は熟達者にも難しい。
魔導の源となるアクトは無限に摂取できる。だが、それを練り込む人間の気力と体力には限界がある。
未熟な新参達であるが故に心身ともに疲弊して、脱落してしまう者も多い。しかし、それはそれで構わない。
訓練は強化の為であると同時に、評価の為にも行われる。命中させられるか、脱落するか。自他が把握する事も目的のひとつ。
強い魔導士の練成という最終目標を果たすには時間がかかる。地道な訓練に、結果は求め過ぎない。
若くして国家の最高軍事責任者となった、魔導士の教練を監修する青年、
「休むなギリアン!バート!数が撃てるなら、回避する軌道を塞ぎながら当てていけ!」
ルイの叫びは、彼の採ったおおらかな方針とは逆の厳格な響きで、他の指導者達も煽りつつ訓練の風景を苛烈なものにしていた。
「う、うっ……!」
またひとり、脱落者が出た。宙に浮いたその若者は、姿勢を保つ力を失い、ふらりと直下へ墜ちていく。
「ぬっ!?いかん!!」
それを見た大柄の壮年の魔導士が、猛烈な速度で飛び、墜ちる若者を両腕で捕まえる。
「……ぅ……パルカ、様……」
「…ここまで、よく撃ちまくっていたな。今日はもう上がれ」
先程まで他の教官達の誰よりも怒号を荒げていたパルカは、打って変わって温和な声で若者を慰撫する。
「で、ですが……まだ……!」
途中で投げる事を善しとしない若者。パルカもこの若者のこうした気概は好む所である。
「もう少し体力が要るって分かったんだ。それも立派な収穫じゃないか、なあ?」
「し、しかし……」
「他の奴の3倍近い勢いで撃ってたんだ。大丈夫だ、誰もお前を馬鹿にはしないし、俺がさせんさ」
「……パ……パルカ………様………」
気を失う若者。パルカは息をつき、微笑む。壮年のもとに飛んで寄る、更に大柄の壮士。
「シュザ、すまんが、頼む」
「……」
救護を担当するシュザは黙って頷き、パルカから若者を譲り受け、腕に抱える。
「始まってから、時間が経った。脱落する奴も、これからまだ増えるだろうが、うちの部隊の期待の星だ、宜しく頼む」
言うなりパルカは持ち場に戻り、シュザもまた彼を抱えて演習場から飛び去っていく。
パルカの言う通り、脱落する者が出るペースが段々短くなってきた。
教導官はその対処に追われながら、光弾を撃ち続ける者達への指導も怠らない。
だが、多忙な空気に指揮はどうしても粗雑になってしまい、若い魔導士達も集中を欠き始めている。
軍責を預かるルイは、自身の隊の新参を監督しながら、そうした教導者達の姿も見ていた。
教練と救護、双方に沈着に対応できるだけの視野と胆力があるか。新人の訓練に名を借りた指揮官教練でもあった。
新人魔導士達にはまだ時間が必要だ。しかし、彼等を指導し、実際の戦場で指揮する古参達にまでそう言ってはいられない。
新兵にも古参にも、指導は後からでもいくらでもできる。混乱し始めた場を鎮める方法を、ルイは心得ていた。
細い身体つきに端正な顔立ち、それらに似つかぬ大音声で、ルイは数多の両者に喝を入れる。
「聞け!!!今回の演習には、後刻、先王が激励に来る!!!
このような無様を見せれば、先王も心を安んじる事は出来ん!!!
アクトを奮わせ、目標を殲滅せよ!!!者共、気勢を挙げろ!!!!」
「先王が、いらっしゃるのか……?」
「おおっ……!!先王様……!!」
先代の魔導王が激励に名を借りた視察に来る事を、ルイは新参はおろか古参にも事前に知らせていなかった。
退位しても尚多忙な先代故、確実に来るとは限らなかった。無用な期待を持たせ力ませるような真似はしたくなかった。
だが、彼等を今一度奮い立たせるには、乗ろうが反ろうが発破をかけるのみ。
「おっしゃあ!!やるぞ!!!」
「おりゃああっ!!!」
そして、ルイの思惑通り、彼等は気合を取り戻す。魔導弾を撃つその手数も、当初の勢いが蘇り出していた。
(……多用は出来ない下策だな……)
彼等を見ながら、ルイは苦笑する。
最近兵役に就いた新参にとって、先代は英雄以上の、まさに神格に等しい。
神の如く崇拝する人間が激励に来るとあらば、彼等が奮い立って教練に集中するのも道理である。
だが、先王は必ず来れるとは限らない。約したものの、多忙の身の事、確実とは言えない。
いずれにしても、もしも来なければ、虚言を吐いたルイは新旧の魔導士達からの信頼を失う事になる。
危ういからこそ、下策。これが理由のひとつ。
加えて、先王はいずれ、この天上から去ると決めている。その人間を当てにした扇動術を使えなくなるのは、時間の問題だった。
先王にして先代軍責を兼ねたその男には、カリスマがある。王の権威以上に、その男自身のカリスマが。
ルイもそれを感じる所があるからには、先代と同じかそれに前後する器を求められていると、平素から察知している。
以前の参謀としての立場、その役割に必要とされていたものだけでは、軍責という使命は全うできない。
言わばこの訓練は、最近に最高軍事責任者となった青髪の青年自身にとっても、ひとつの試練でもあった。
若年であるからこそ、誰よりも厳しく。若年であったが為に諸国から侮られた先王とその努力を傍で見てきたルイは、自戒する。
それらを考えれば、自力に頼らず先代の名を出したあの督励は、下策以外の何物でもない。
いずれいなくなる人間に頼り、ルイ自身を前面に出す事を躊躇った、一時凌ぎの下策。
そう省みれば、未だ先代その人を信頼しながらも素直に認められないルイの事、我慢ならない。
とは言え、自分が未熟なのは事実である。だからこそ下策たるあの大音声を取った事実は、謙虚に受け止めなければならない。
先代は今、天上を去る為の大事な備えの最中である。
それが何かは、ルイは聞かされていない。アクトを扱う上での禁忌とされる古代の秘法の為、先王は口を閉ざしていた。
禁忌であるならば、無理に知ろうとはしない。それに、それを扱える莫大なアクトを持つ人間は、今の天上では先代のみと言う。
ルイは秘術の詳細を知らない。ただ、先代をその秘法に近付けたのは、外ならないルイだった。
直接的には、ルイの意を汲んだ他国の人間が先代と接触した際に授けたものだが、その接触を仕向けたのはルイであった。
先代に教えるより先にルイに秘法の存在を教えたその人間は、全貌を明かさず最低限の事項のみ自分に教えた。
その時、その人間はルイに言った。面妖な古の秘術である以上に、事の重大も踏まえた上で、その法の存在を先代に教えろ、と。
ルイが先王に教えるか否か、そして、先王がその秘法を用いるか否か。選択の末、ルイは教えた。その果てに、先王もまた――
今考えれば、その人間はルイと先王を実に巧みにその秘法へ誘導したものだ。恐らくは天上随一の知者だが、敬意は持てない。
ルイが悪意的に感じるのは、その人間を完全には信用できないからだ。かつて最も敵対した人間のひとり、何か裏があるのでは。
だが、先王は信用すると言う。意を固くした彼に、ルイは何も言えなかった。
彼は天上を去る為に動き出した。その理由は利己的に過ぎるが、長い付き合いと気軽に言える関係のルイには理解できる。
秘法を知った先王は、正式に退位する旨と、その理由を国民に公表した。
ただし、先王の退位自体は、ルイが秘法の存在を教える前に先王自身が決め、近しい者に先んじて知らせていた。
退位する理由と天上を去る理由は、別個にあった。当初彼の言った退位の理由は、天上を去る理由と何ら関わりが無い。
しかしながら、退位を決めた先王に、ルイが秘術の存在を教え、結果、彼は天上を去る事を決めた。
今、国民が王位の交代を受け容れていられるのは、先王の意を尊重し涙ながらに従う事を決めた彼等側近達の働きによるもの。
加えて、国民達も、先王の心情をわかっていた。かつての危機が払拭されてからの王の微かな異変を、国民達はわかっていた。
更に、女王となったリュエリは元より国民の信頼も厚く、「女王と先王」が日常となるにはそう時間はかからなかった。
退位した後も、先王は秘術の備えと平行し、この国のみならず、天上の為に行動している。
先王の頭脳と肉体は、天上の未来を見据えた行動に走る事を厭わない。けれども、先王の心は、ひとりの少女を決して離さない。
国家の王が取った道、そこに辿り着くまで彼は悩み、苦しんだ。その選択を非難する事など、ルイにはできなかった。
国家の乱れを最小限に抑える為という体面もある。後任の軍事最高責任者に選ばれたルイは、国主の決定に従う以外にない。
同時に、ルイ自身が先王にすら隠している望み、或いは痛みが、ひとりの男として彼の背中を押す事を決意させていた。
ルイも理解していた。納得していた。一国の軍事の長として、成長しなければ、謙虚でなければならないと。
だが、それでも、青髪の青年は苛立ちに苛立つ。
(……ええい!!ムントはまだか!!!)
約束を反故にされる不安を発散させるように、その心の荒々しさは、ルイの信じる先王に向けられていた。
篝火がふたつ、暗がりの部屋に燃えている。だが、それが嘘に感じられる程、この部屋は暗い。
篝火以外、何も無い部屋。机、椅子、絨毯、装飾も無く、窓すら無い。無骨な石部屋であった。
広くはない部屋には充分過ぎた明かりであるにも関わらず、暗い闇が生物のように宙に蠢き舞い踊り、朱の灯を飲み込んでいる。
その闇は、幾つもの帯状のかたちをしていた。帯に見えるそれは、文字や図形の羅列された不定形。
実体も質量も持たず、構造を形成しているとは到底言い難い。しかし、それは紛れも無く力場の集合体である。
力場の中心には、赤髪を逆立たせている男。細い長身に赤いマントを羽織る、若い青年。
彼の足元から生えては伸びる黒い羅列は、円を成し、舞い上がり、揺れていたりと、一様ではない。
押し黙っている男。何かを念じている。その表情には並々ならぬ集中力が見て取れた。
背の高い彼を、黒い方陣が取り巻き、螺旋をつくる。無秩序に垂れ流されていた帯陣が、彼の周囲に集まっていく。
「…………くっ……!」
端正な顔立ちはいくらか苦悶に崩れても、直立した姿勢はそのままで、集まった黒い羅列達をその身に這わせる。
全ての闇陣が男を取り巻き、燃え盛る篝火でさえも彼の姿を浮かび上がらせる事は叶わない。
闇が、取り巻き、奮える。奮えた瞬間、篝火が揺れた。闇も揺れ、炎と同じ朱に染まりながら、輝きを放ち始めた。
輝いて、燃えて、空間に満ち、消えていく。彼の姿が現れる。光へ変わる闇が、彼の中へ消えていく。
全ての闇が、光が消えた。篝火の照らす部屋の中、ただ立ち尽くし、細い長息をつく男の姿。
「…………ふぅ………………っ!?うぐっ!!!」
苦しくうめき、力なく膝をつく。それでも倒れず、石床に手をつき、息を切らす。
「…………っ、はぁ、はぁ……!!」
額から汗。幾つも滴り、渇いた床に広がる。
「………はぁ…………はぁ…………!」
朱い瞳が揺らぐ。揺らいで、意志と力を取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。
「……っ………この感覚にも……少しは、慣れたか………」
息は切れてこそいるが、苦痛の容貌は少しずつ失せ、涼しいものが表れ出す。
右の掌を開き、その中心を見る。ぐっと握る指は僅かに弱く、力の消耗を彼に感じさせた。
「…………まだまだ、だな……」
先は長い。焦ってもそれは変わらない。彼――ムントはひとり頷く。
毎夜訪れるこの部屋の少ない飾り気である扉に歩み、その取っ手を掴んで捻り、押し開いた。
「…………ムント様!」
扉を開ける彼を外で待っていたのは、背丈の低い小太りの老人。
「待たせたな、マテュ」
労いの言葉をかけるムントに、マテュは首を横に振りながら、
「いえ、滅相もない!私がさせて頂いている事ですから、どうかお気遣いなきよう」
部屋から出た彼に恐縮しつつ笑いかけたりと、その顔を忙しく変えて止まない。
ムントは笑みを零しながら部屋を出る。ただ、その瞳は笑みの他に、別の色が混じっている。
「何か変わった事は?」
尋ねるムントに、マテュは恭しく答える。
「今夜は特に無かったようですな。ただ、ルイの魔導訓練、なかなか派手にやっているようですぞ?」
静寂を守る部屋に慣れたムントの耳にも、王宮の外の男達の喧騒が入ってくる。
「そうだな。ルイからも言われている。新兵達の激励に来いとな」
「ム、ムント様!試練の後ですぞ!どうか御身を大事に――」
彼を制止するマテュからは笑みが消えていた。ムントは遮り、
「大丈夫だ、マテュ。それに、俺様の準備の為だけに、この身のアクトを使うわけにはいくまい」
石の回廊を歩き出す。マテュも彼に従いながら、尚も食らい付く。
「で、ですが、明日は大連合の会議もございます!諸国の主君が集う大事な会議ですぞ!
議長たる御身に何かがあれば、まとまるものもまとまらなくなりますし、女王が諸国から咎を受ける事になりましょう!
それに、万一、万一ですぞ?御身に何かあったなら、姫様が――――」
「――――マテュ」
論舌を張る老人の名を呼ぶ彼の、反論を拒む響き。
「………………畏まりました、ムント様……」
それ以上、マテュは言わなかった。ムントも何も言わず、回廊を歩く。
ムントの心に浮かぶのは、ひとりの少女。
彼女と別れた夜に結んだ約束を、彼は忠実に守っていた。
朝から晩まで何をする時も、時空を隔てた天上から、彼はずっと彼女を見守ってきた。
彼女は今、眠っている。その眠りの中で彼女が何を想うのか、彼には須らく理解できてしまう。
彼女の心の声を直接聞けるわけではない。その姿を見るだけで、彼女のことはわかってしまう。
それは自惚れだと彼も自戒している。けれども、彼女を見守ってきた長き昼夜は、彼にとって否定したくはない自負でもあった。
そして、あの夜に彼女がくれた想いとその証が、今の彼の自負を強く揺るぎないものにし、彼を今日まで動かしてきた。
彼女は今、泣いている。
彼女を泣かせているのは、外ならないこの自分。
今夜に限った事ではなく、彼女は時々、ひとり泣く。彼の名を呼び、涙に暮れながら眠りにつく。
普段は彼女も彼との約束を守り、成長する決意を胸に日々を送り、家族や友人達と楽しく暮らしている。
微笑ましい彼女の日常に、不意に一時の刺が刺さっては、彼女の心は悲痛の叫びを挙げてしまう。
その度に、彼の心は乱れる。急がなければならない。彼女の為に、己に必要な備えを急がなければ。
特に、今夜のような彼女の姿を見れば、尚更――
だがしかし、慎重さを失って焦りに走り、万一にひとつでも備えが漏れてしまえば、何もかもが台なしになる。
自分の努力も。備えに費やした時間も。そして、彼を許した、許してくれた、魔導国の皆の想いも――――
彼は最早、王ではない。
しかし、魔導国の先王として、国家の今後を軌道に乗せる後見としての役目が残っている。
それに、天上は今、ひとつにまとまり始めようとしている。その道筋を示す者として、最後の使命を果たさなければならない。
アクトの危機は回避された。アクトの循環は、天上の在り方を大きく変えようとしている。
真の意味でその循環を見るのは、その後の世界の安定によってのみ成される事。
それまでは、全ての備えが果たされるまでは、彼女のもとへは行けない。
ひとりの少女へ向ける男の顔から、厳格な為政者の顔へ、マントを靡かせながら、彼は回廊を歩く。
「……あ、ああっ!!」
「い、いらっしゃった!!」
「ムント様!!ムント様だぁっ!!!」
演習場、飛来する赤髪の先王の姿を認め、新兵達は魔導の手を止めて歓声を挙げ始める。
「おおっ!!ムント様!!」
「本当だ!!ムント様がいらっしゃった!!」
古参達も暫し指導を忘れ、近付く彼に歓喜の声を挙げていく。
それを見るルイ。誰にも見られないよう、安堵の息をつく。
彼等の喜びようは、決して大袈裟なものではない。王位を退いてから、ムントは公の場に姿を現す事が少なくなった。
秘法に時間を費やす為ではあるが、国民の意識を現体制へ改める為の彼自身の配慮でもあると、聡明なルイは理解していた。
招いた本人であるルイは即座に飛び寄り、数人の上級士官と共に彼を迎える。
「ムント、済まない。多忙な所、時間を結ってもらってしまって」
「いや、俺様も、新しく魔導国を守る皆の姿が見たくてな。ルイ、誘いを貰って、嬉しかった」
沈着なふたり。その表情には微笑みが零れる。
ムントは新兵達を見回し、周囲に聞かせるように言う。
「魔導弾を長く撃っているようだが、予想以上にまだ大分残っているな」
「いや、抜け過ぎだ。もう少し、基礎を詰めてからでなければ、魔導国の守りには出せんな」
言葉を選ぶルイに、ムントは満足そうに答える。
「他国が侵略する事の無いよう、天上に恒久的な平和を築くのが、大連合の議長となった俺様の使命だ。
とは言え、力無くしては、国を、民を、護り切る事は叶わない。平和の為の力だ。
他国を脅かす為の力ではない。大連合は、戦乱の火種を監視する為の機関でもあり、魔導国はそれを構成するひとつの国家。
ルイ、そして、皆もまた、その事を肝に銘じ、国を、民を、世界を守護する為の力と心を、互いに練磨し合い堅持してほしい」
「「「「はっ!!!」」」」
揃う声。新米も古参も無い。普段ムントと対等に接するルイやパルカですら、意気を強く声をひとつにする。
ムントは新旧の真剣な面持ちを、彼等が仮想敵にしていた機動兵器を見渡すと、ルイに言う。
「ルイ、アクト兵器を回収しろ」
「?どうするつもりだ?」
「新兵の次の標的は、俺様だ」
彼の提案に、その場にいた者すべてが血相を変える。
「な、何だと!!?」
「ムント様っ!!御身の為に、御自重下さいませ!!」
「アクトの練熟が甘い若葉っ子っつったって、魔導弾だぞ!?それに、まだ千以上は残ってる!!」
「ムント様!!」
冷静なルイ、忠実なテオ、陽気なパルカ、それに、滅多にものを言わないシュザまでもが、血相を変えて激しく彼を戒める。
「侮っているわけではない。魔導国の戦士の戦う姿、ひとりでも多く、この目に焼き付けておきたくてな」
彼が天上を去る事は、新兵達も知っている。近くはないにしても、そう遠くもないうちに、きっと。
それを思う上官達は、彼の言葉に反論を見出だせずにいた。
「ルイ、いいな?」
彼等の心配を介さないムントが、一際混乱しているルイの瞳をじっと見る。ルイは暫く黙り、普段彼にするのと同じ調子で怒る。
「…………か、勝手にしろ!!!怪我しても死んでも、私は知らん!!!」
軍事を統べる厳格な青年が、下の者には決して見せない子供のような素振り。
ひとつ、ふたつと声が漏れ、演習場は男達の野粗な爆笑に包まれていった。
「…………ふぅ……」
「………………全く!あんな馬鹿げた真似をしていれば、世話はない!!」
ムントの提案で行われた1対数個師団相当という無茶にして無謀な夜間演習が終わり、ルイは彼を自身の執務室に招いていた。
この部屋に入り、深夜にも勤しむ執務官達にルイが人払いを命じ、彼等が出た後、ムントは応接用のソファーに崩れた。
ただの疲労。暫く放っておけばすぐに回復する。彼のアクトの摂取能力は突出している。
もう慣れた。心配する方が馬鹿らしい。特に構ってやるでもなく、ルイは自らの椅子に座り、ソファーに背を預ける彼にごちる。
「明日は……いや、もう今日だ!大連合の酋長会議があると言うのに、お前はまた……!!」
慣れた。こうした光景は一度だけではない。それでも愚痴は絶えない。
だが、ムントはこうした姿を下々の者達には見せない。この部屋に入って執務官達が出るまでは、見事に隠して律していた。
秘術の備えの日々が始まってから疲弊する彼を見たのは、女王のリュエリを含めた限られた人間のみ。
彼の強さと言うべきか、生来の意地と言うべきか、ムントの持つそういったものに、ルイは改めて感心する。
そして、その限られた人間に、自分も入っている。
「………………馬鹿が……!」
嬉しくない。嬉しいなどと、思いたくない。ごちりながらも、ルイは机の上の書簡に苛々とペンを走らせる。
とは言え、こうなる事をある程度承知した上で、彼に新米達の激励を頼んだのも事実。怒れるルイも責任は感じている。
「…………とは言え、助かった。判断材料が多く得られた上、彼等にも良い経験になっただろう………感謝している…………」
「……………礼を言うとは、珍しいな、ルイ」
「わ、悪いか!!」
椅子から立ち上がるルイ。笑うムント。呆れたルイも笑みを零し、彼の対面のソファーに腰をかける。
「……こうして、私とお前だけで話すのは、久しぶりだな」
おもむろに切り出すルイに、ムントは感慨深そうに頷く。
「ああ……あの時から、無かったな……」
彼の声に、ルイの目は遠くを見る。視線は天井に向けられているが、その瞳はもっと高いところを見ていた。
「………あの時も、夜だった。この部屋で、こうして、お前と面と向かって話していた」
「……あの時からは、進んでいる。俺様も、お前も」
「…………そうだな。だが、お前が進んでいるのか、私にはわからん。教えてはくれんからな、お前は」
禁忌に関わる以上は、本気で知りたいとは思っていない。ルイの皮肉をよそに、ムントの表情から疲労が消える。
「……時間は、かかる。意外と長くなりそうだ。ユメミを待たせる事になるが、こればかりは丁寧にかからなければ……」
「…………そうか」
深息とともに頷くと、ルイは視線を下ろし、ふたりの挟む客卓の一点を凝視する。
知りたい。
ひとつだけ、どうしても、知りたい。
しかし、聞いていいものだろうか。
ムントに聞いてしまって、いいものだろうか。
迷いながらも、それでも知りたい欲求が勝り、ルイはその問いを口にする。
「………………ユメミ様は…………その……ご健勝であらせられるのか……?」
彼を真っすぐ見るルイの言葉には、目の前にいるかつての王にすら示した事の無い、深い畏敬が隠れず表れていた。
暫しの沈黙の後、ムントは視線を崩し、ルイの質問に答える。
「………ああ、元気にしている…………」
一瞬、ムントの瞳が揺らいだのを、ルイは見逃さなかった。だが、
「…………そうか……なら、良かった…………」
彼の答えを受け、表情は安堵をつくるルイ。その内心は異なっていた。
長い付き合いだからこそわかる。それが嘘だとわかってしまう。尋ねた自分を案じさせない為の嘘だと、ルイはわかってしまう。
彼女が地上へ戻ってから、ムントが彼女を見守り続けている事、彼女とそう誓いを交わした事を、ルイは知っていた。
あの時――ムントが退位の意志を近しい者だけに話した後、この部屋でその理由を詰問した際に、彼から聞かされた。
あの時、ムントは退位の理由を語った。それは彼女の為でなく、天上の為だと。
それを聞いたルイは、いつしか語気を強めて、彼に問い詰めていた。
『本当に、天上の為だと言うのか!?』
天上の為だと、ムントは言い切った。その細かい理由は確かな見地からのもので、ムントの臣としては充分納得できる。
しかし、ルイ自身は納得できなかった。ムントに問い詰め続けた。
『その決定に、本当に、ユメミ様の事は関わっていないのか!?ユメミ様に関係なくお前が出せた結論か!!?
あれ以来ずっと、お前がユメミ様の事を考えているのは、私にもわかる!!嘘は言わせん!!答えろ!!!ムント!!!!』
やがて、答えを、彼女への想いを、見守る誓いを、その苦悩を、ムントは語り始めた。
聞き終えたルイは、何かが切れた。平素から彼に怒りをぶつけてばかりのルイではあったが、それ以上に、頂点も限界も超えた。
ムントを、殴った。殴りながら、心に蓄積させていた全てを叫んだ。その果てに、彼に古代の秘法の存在を教えた。
彼は即座には飛び付かなかった。だが、答えを出した。迷い苦しみ、はっきりと、答えを出した。
それを受けて、後日、手を回してムントにあの男を引き合わせ、彼に秘法を伝える事に成功した。
あの時、ルイは彼の葛藤を知った。隠し通そうとしていた苦悩の細かい部分を、それに、彼が彼女と秘事を持った事も。
彼の参謀である以前に、ひとりの男として、彼の真の望みを叶えようと、前に増してその決意を固めた。
そして、ムントにだけは固く隠し通そうと決めていた秘心も、彼に知られる所となった。
今、ムントはそれを慮り、嘘をついた。彼女は元気だと、至ってわかりやすい嘘をついた。
それをどんな想いで口にするのか、ルイにはわかってしまう。かつての主であり、今も近しい人間だからこそ。
「――ムント、言え」
「……ルイ…………?」
訝しがる彼に、ルイは言葉を止めない。
「隠す必要は無い。私は、お前の参謀だ。お前の悩みを聞くのも、私の役割だ」
「だが――――」
「――お前の悩みが晴れて、成すべき事にお前が専心できるのなら、それがユメミ様の為にもなると、私は信じている」
「……………ルイ………」
驚く彼に、ルイは座したまま、頭を下げる。
「頼む、ムント」
生まれて初めて、この男に頭を下げる。
自らの想いの為に固執を取り払う。ムントに見えないその貌には、ルイが他者には滅多に見せない穏やかな心象があった。
初めて見た。
この男が自分に頭を下げるのを、初めて見た。
驚きの余り、ムントはルイに繋げる言葉を見つけられないでいた。
この男の想いは知っていた。あの時、今と同じ夜、同じこの部屋で、聞かされた。
聞かされて、様々な色をした情が複雑に入り組み、彼の心は激痛という言葉でも足りないものを抱いたものだ。
そのひとつは、怒り。自分の大切に想う彼女にこの男が恋慕していると知り、理由の無い嫉妬を覚える醜い自身に怒る。
そのひとつは、迷い。躊躇いもなく口に出したこの男の勇気をあの夜の自分に照らし、彼女を愛する資格の有無に迷う。
そのひとつは、狂い。彼女が忘れらない本心に苦しみ、傍にいたい、隣にいてほしいと想いながらも、叶わない現実に狂う。
そのひとつは、嘆き。彼女への想いをどうすればいいか、考えながらも結局は答えを導き出せないでいる、非力な自分に嘆く。
そのひとつは、恐れ。そうして日々を費やすうちに、いつか彼女の事を忘れてしまうのではないかと恐れる。
ルイに詰られ反論しながら、それを契機にして自身の内奥に改めて向き合えば、不思議とそれらの苦しみは翻っていく。
ルイもまた、彼女に惹かれた。そんな彼女を嬉しく感じる。彼に近しいルイが彼女に惹かれた事も、素直に共感を抱ける。
自分には、彼女のような、或いはルイのような勇気は無い。だが、彼女を想うこの心は、勇気の有無だけで屈したりはしない。
彼女が忘れられない。傍にいたい。隣にいてほしい。だから、絶対に諦めない。その意志を持つ大切さは、彼女が教えてくれた。
絶対に叶える、そう決めたこの心は、非力なままで嘆く事を善しとはできず、何でも可能にできる活力に満ち溢れていく。
彼女を忘れてしまうのではないか――愚問だ。彼女との記憶も、彼女への想いも、叶える術を探す日々の中で強くなり続ける。
怒りは尊敬に、迷いは確信に、狂いは決意に、嘆きは力に、恐れは希望に、彼女を思い浮かべれば、何もかもが変えられる。
変わり始めた自分にルイは、彼女の世界へ渡りそこで共にあり続ける事ができる方法があると示し、決断を促してきた。
彼女との未来は、彼も心から望んでいる。しかし、その方法は、彼に多くのものを捨てさせる。
彼は即答はしなかった。悩み抜いた末、その数日後、答えを出した――
意志は固く、決心も希望も漲っているが、それでも今夜の彼女の姿を見れば、彼の心は乱れて苦しむ。
ユメミが苦しんでいる。助けたい。だが、まだ備えは万全ではない。ただ見守る事しかできないのか。何かできないのか。
その悩みを、ルイは見抜いていた。自分の参謀だから、同じ女に惹かれた男だからこそ、言わずとも通じていた。
思えば、この男には助けられてばかりだ。ムントは最近、実感する事が多い。
頭を下げているルイを見ながら、この男のしてくれた事、自分が取った選択を、彼は思い出す。
ユメミとの夜から後のこと、王位を退くと決めた時、秘法の詳細を知ってから、今までのことを――――
ルイ…!(´;ω;`)
な、泣けてきたぜ・・・!!
王の座を退位するとは、愛を貫くムント様が素敵。
頑張れ!!
( ;∀;)イイハナシダナー
ルイスキーにはたまらん
続きwktk
早くユメミに会いに行ってあげて。
作者生きてますかー?
心配・・・・。(汗)
期待してます。
333 :
5:2009/05/15(金) 01:33:19 ID:M1a1mnRa
お久しぶりです
「ユメミは少女じゃいられない2」第7回/全9回
今回は14節うpします
注意事項は
>>266を参照願います
では、どぞ
アクト危機が回避された次の朝、ユメミは天上を去った。
彼女との一夜を重ね、ムントは満ち足りていた。彼女の与えてくれた想いに、彼はかつてない充実を抱いていた。
しかし、ひとつが満たされてしまえば、求める情は強くなり、渇きに似た寂しさを知って彼の心は迷う。
彼女と離れたくなかった。それでも、彼は彼女を引き留められなかった。引き留めるべきではないと、ムントは考えた。
彼女には、帰るべき場所がある。アクトの循環を取り戻す中で自己を確立した彼女の生きる道は、天上にはない。
彼女を産み、育んだ世界――彼女がそこでいつかっきりとした夢を見つけ、生き生きとした日々を送ってくれる事。
この心の繋がりの為だけに人生を費やす彼女になって欲しくはない。言葉を交わす以前より彼女を見守ってきた彼は願う。
しかし、それでも、ユメミの世界に自分が行くという選択肢は、彼の前には無い。
彼女を望み悩んで想う本心は別にして、ムントには安易にその選択を取れないふたつの理由があった。
そのひとつは、魔導国の王たる彼の立場にある。
国主の責を全うする事を捨て愛する女のもとに走るなどという所業は、使命感の強いムントには肯定しにくいものだった。
また、彼自身が許しても、周囲が、国民が許しはしない。彼が側近や国民の立場ならば間違いなくそう考える。
それに、アクトの循環を得たこの天上界が、どのような道を辿っていく事になるか、見届けなければならない。
天上人が無限の力を以て戦乱に及べば、世界がアクトに満ち返ったとしても、何ら意味も変化も無い。
根本的に、ムントがアクトの循環を目指したのは、アクト枯渇で乱れた天上人の調和を取り戻す事にある。
かつて、父王は幼い彼に全てを託してアクトの海に還り、その後を継いだ彼を見て連合諸国は離反、長きに渡る戦乱が勃発した。
グリドリのような野心の王がいた以上、ムントに責任は無い。天上を鑑みて離反を叩き付けた酋長達も、肚の内は定かではない。
ただし、いかに口実とは言えど、彼を原因として戦乱が始まったのは事実。これを収める事は、ムント自身の意志であった。
自らに課され自らが課した使命を投げ棄てて彼女を選ぶ――彼女の存在は大きいが、到底比べられるものではない。
もうひとつの理由は、彼女の世界へ行く為の必要条件となる、時空を超える事自体にあった。
アクトの循環によって、力だけは無限に供給される。時空の壁を破る時、その点だけは何ら問題は無い。
だが、その際に何よりも必要なのは、アクトの量の大小よりも集中力。超える最中に半端に乱れれば、彼の存在が危うくなる。
これまで成否を問わず数度試みた彼は、それに要求される集中が生半可なものではない事を理解している。
過去に成功した時は、何も考えていなかったと言っていい。少なくとも、彼女を望む意志が不安を凌駕していた。
理屈の上では、その時と同程度の集中が得られれば可能なのだが、その同程度を再現するのが難しい。
また、ユメミの世界はこの天上とは違い、大気中のアクトの性質は、エネルギーに直接変換できるものではない。
たとえあちらの世界に行ったところでアクトを練られなければ、彼女を見守る事はおろか各種代謝も失い生きる事すら叶わない。
また、過去の成功は時空に干渉できる局外者の助けが大きく、単独で成し得られるかも微妙な所であった。
どちらかが時々、もう片方の世界へ行く――理想的なのはこのかたちなのだが、この選択もまたムントには肯定できない。
一時的にユメミのもとを訪れるにせよ、時空の壁を破る時点で膨大なアクトを消費し、力が練られなければ戻っては来られない。
その逆に、ユメミをこちらにその都度呼び寄せるにしても、時空の壁を超える行為は安定性を欠き、事故の危険性が高い。
呼び寄せる側のムント、実際に超えるユメミ、どちらかの集中力が欠ければ、彼女の存在は双方の世界から消失される為だ。
そこまで整理すれば、ユメミの事に当たってムントが取れる選択肢は、思い浮かぶだけで4つ存在していた。
ユメミと再会する事を諦め、たとえ彼女が他の男と情を通じる事になろうとも、ただ見守り続ける存在と成り果てるか。
魔導国や天上のこれからを無視し、短い間だけであっても時空を超えて彼女のもとに飛び、その目前で命を散らすか。
或いは、報われない苦悩の日々を送るならいっそ、再会だけではなくユメミ自身のことを忘れ、世界の為に生涯を捧げ続けるか。
最後に、決断を果てなく先送りにし、煩悶にとらわれ続ける人生を送る、又は、時間が解決するのを待つか――
ムントは迷っていた。迷う事になるのは、あの一夜の中でもわかっていた。それでも彼女を忘れられずにいた。
しかし、王たる国責は、彼に迷い苦しむ事を許さない。
ムントは周囲に気取られないよう、戦後の復興に尽力し始めた。その矢先、連合から講和の使者が来た。
使者曰く、天上の危機が解決し、アクト消費を抑える為に眠っていた連合諸国の王達が目覚める事となり、
諸王は今後の天上の在り方について、危機を払ったムントと協議の場を持ちたいと希望していると言う。
天上の調和を重んじる彼にとって、避けられない話。ムントはその意に応じ、諸王と会談の席を持った。
会談の中でムントを含めた王達の共通の認識として挙がったのが、無限大のアクトを用いて世界が暴走する事への恐れであった。
かつての天上人は、他の世界からアクトを収奪して築いた退廃的な理想郷に酔い、天上を含めたあらゆる世界を悲惨に陥れた。
そして先日、一時的に回復したアクトに任せ、古代天上人と似た狂気に憑かれ戦乱を広げたホルグウズ王グリドリの例もある。
これは過ちであり禁忌である――連合に復帰したエンダ国の女王・ラルコの発した見解は各王も認める所であった。
とは言え、その自浄統御の為に、天上はどうあるべきか。答えを模索するには、一度の議論、数国の判断では限界があった。
また、連合諸国以外にも紛争を抱える国家や部族は依然残っており、天上の調和にはそれらの共同体も無視はできない。
会談の回数を重ね、そこに加わる国家も次第に増えて増やしていく中で、天上の元首達は結論を出した。
一部大国のみによる旧連合を解体し、天上の大小全国家を巻き込んだ、『大連合』の設立。その目的は、紛争調停と、相互監視。
各国の統治には関与せず、その時々に疑惑の挙がった国家が軍事行動を起こさぬよう中立的に抑制する役割を持つ機関であった。
国家の垣根を取り払ってひとつにまとまれば古代と同じ末路を辿るのが予想でき、また、天上に国と国とが分かたれて幾久しく、
同じ天上人であっても慣習等をそれぞれ違える為、かつての天上のような一国家として再統一するのは不可能であった。
それでも、各国が全く連結を持たないまま野放図で居続ければ、野心を持った者はいずれ天上の調和を破壊する事になる。
必ずしも調和の完成を保証できない機構ではあるが、当時の状況のままで良いと思っていなかった王達はこれに乗った。
アクトを用いた兵器群や各種の術によって軍事力が拮抗した大国や、弱小の共同体、永世中立の賛同を掲げた国。
大連合結成が齟齬なく進んだのには、そのいずれも、本心では戦乱に国情を掻き乱される事に倦んでいたという所も大きい。
かくして、アクト危機の真の回避から程なくして、大連合構想は各国から称賛され、加盟の意を積極的に表す元首が出始めた。
だが、大連合の本格的な結成にあたり、問題が4つ生じていた。
1点目は、大連合を取りまとめる役割を、どの国の元首が担うのか。
大連合はあくまで支配が目的ではなく、天上を総括する中立的な立場に拠った機構である。
一国が盟主であり続ければ、古代の天上と同じ事。それでは本末転倒である為、その選出や任期は協議を重ねる必要がある。
2点目は、各国の軍縮。真の調和を目指すのならば、各国の軍事力格差を埋めなければならないという方向で話は進んでいる。
ただ、兵器や術といった、質の異なる戦力と相対的な物量をどう評価し、いかなる監視体制を作っていくかが焦点となる。
それらよりも懸念されている3点目は、目下最大の軍事力を誇るホルグウズの参加が得られていない事。
先代の王・グリドリは各国と戦端を開き、魔導国との戦役において局外者により時空の歪みに幽閉される事となったが、
その後を継いだ反グリドリ派の現王は、旧連合の再三の要請にも関わらず会談に参加する意志を見せていなかった。
最後の4点目は、ホルグウズの参加の意志に関わらず、その現王に確認を取らなければならない事がひとつだけあるという点。
それはアクト危機の後始末にして、現在最大の脅威。王の回答如何では、大連合はホルグウズと敵対する事になりかねない。
ホルグウズ現王・カリシカ、天上の国際社会で認知されて間もないが、ムントはその人となりを伝え聞いていた。
聡明先見の才も聞こえの高い若者であり、ホルグウズが連合に参加していた際に彼国の長老の施策に異論を唱えていた。
野心に駆られた先代のグリドリの暴走を諌めようとしたが、その怒りを買って拘束され、前戦役にカリシカは参加しなかった。
その後、ホルグウズはグリドリの幽閉とアクトの循環による戦乱の終結により、混迷を極めて内紛状態に陥っていくが、
その状況下、反グリドリ派の非戦論者達に担ぎ出される形で王となり、先王由来の武闘色に苦戦しつつ内政を固めているようだ。
それ程の人間が他国に干渉を持たず沈黙を保っていれば、その裏に野心ありと各国の元首が懐疑的になるのはやむを得ない。
とは言え、真意は話してみなければわからない。ムントは協議の席でカリシカ説得に名乗りを上げた。
説得は得意ではないが、疑心が前提の旧連合諸国や、武力に欠ける他の小国の代表が赴くよりは、客観的で対等に話ができる。
各国の承認を受け、ムントはカリシカに二国間会談の場を求めると、カリシカは二つ返事でこれに応じた。
実際に会ってみれば、確かに若い。自分と変わらない年代の王に、ムントは親近感を抱いた。
それはカリシカも同様で、ムントの勧めるように大連合にも参加したいとも思っていたらしい。
だが、決断を渋る彼国の王は、ムントに論陣を張る。
「ムント王、私が牢から解き放たれて今日ここにあるのは貴方のお陰だ。その恩を返す意味で、幾つかご忠告致しましょう。
大連合構想は確かに素晴らしいが、その実現の為には検案すべき事項が山積みになっているでしょう。
まずひとつは、大連合による調和が永続的に守られるかどうか。代を重ねれば、いかな精神も失われていく恐れがある。
これはどのような組織であっても生じる話です。ホルグウズとて、あのグリドリを王に頂かざるを得なかったのだから。
ただし、魔導国は代々高潔な王を守ってきた。貴方は連合を敵に回しながらも、断固たる意志でアクト危機から天上を救った。
魔導国とホルグウズ、この二国違いは何だったか――詰まる所は風土ですが、その風土を培わせたのは教育です。
天上全ての共同体が画一化すべきではないと考えますが、統治に携わる者に邪心を芽生えさせてもならない。
この一点において、子々孫々、天上は弛まぬ治世に勤めなければならないでしょう。各国の監視よりも重く見るべき課題です。
続けて2点目ですが、大連合の盟主にいずれかの酋長を据えれば、それだけで中立性は失われてしまう事。
ただ、共同体の元首以外で政治に優れた者を選ぶにしても、その者も何処かの共同体に属している以上、中立ではなくなる。
これに関しては、論議は平行線を辿る事になるでしょう。割り切って、公正公平な人物を選ぶように進めなければならない。
最後に、私が最も案じている事ですが、軍縮は性急に推し進めない方がよろしい。大連合発足直後は、特に。
戦力を並び立てれば、善きにつけ悪しきにつけ、確かに拮抗はします。ただ、戦力を減じられる強国の不安は増長される。
かく申し上げるのは、何を隠そうこのホルグウズがそうだからなのです。我が国が参加を決め切れないのはそこにある。
非力な身の恥を曝す次第で恐縮ですが、先代から私に遷位する前後、この国はふたつに割れてしまいました。そして、今も。
ひとつは、先代・グリドリに同調し、力を以て天上を支配せんとする武断派の人間。大連合の軍縮案に揃って反対している。
もうひとつは、私を擁し、各国との協調を重んじようとする講和派の人間。参加には賛成ですが、細かい論拠は異なります。
武断派の中には大連合参加を唱える者はおりますが、講和派にも軍縮には反対と訴える者も数多く、意志統一は困難です。
かく申し上げる我が国は特異例ですが、軍縮に関しては国の中でも大なり小なり分かれてしまう。慎重に進めるべきです。
願わくば、それらの議論の推移を見て、参加の是非を決めさせて頂きたい。下の者を説き伏せる材料を集める為にも」
その忠告はムントの懸案事項でもある。噂に違えぬ知性を見れば、グリドリとは互いに相容れなかった事は想像に難くない。
ただ、正論を取り繕いながらホルグウズの軍縮抑制を織り交ぜている以上は、その全てを鵜呑みにするわけにもいかない。
大連合に参加するにしても、より有益な条件が出て来るを待っている――実に巧みな外渉力だと、ムントは素直に感じ入る。
今ここでこの王と独断で話を進めれば、ムントは大連合の他国の信を失いかねない。
カリシカはそれも計算して、忠告と銘打った要求を試みている。そして、ムントが返答を保留する事も、また。
自国の武力を背景に、慎重姿勢を取る大連合の足元を見られる余裕がある。その有効性も認識し、待ちの一手を張ってきている。
しかし、ただで引き下がるわけにはいかない。彼にはまだ、確かめたい事がひとつ、残っている。
最後にムントがカリシカに尋ねたのは、時空の歪みに封じられた先代ホルグウズ王・グリドリの事だった。
歪みの口は徐々に広がっている。グリドリが亜空間から天上に舞い戻る為に取っている行動だと、各国首脳は認識していた。
時空の歪みが開いて天上に帰ったグリドリは、果たしてどう動くのか。恐らく、天上の支配を再び画策しようとするだろう。
圧倒的な力を持ったホルグウズ先王・グリドリ。天上が一丸とならなければ到底敵する事も叶わない程の狂神。
大連合側では、グリドリが復活して天上に仇なすようであれば、これを協力して排除する方向で話が進んでいる。
現ホルグウズ政権はその先代をどう見なしているのか。カリシカの参加よりも大連合が案じているのは、まさにその点にある。
グリドリの帰還が、そう遠くない時期、最短で次の冬と予測が立っている事は、カリシカも察知しているはずである。
かつて縛したカリシカが現在の王となっていれば、グリドリの性格上、カリシカもホルグウズもただでは済まない。
それを見越してホルグウズがグリドリを黙殺し、いずれ来る大連合とグリドリとの戦いに不干渉の立場を取れば及第。
或いは、ホルグウズが大連合に協力し、共にグリドリ討伐の為に戦う道を選ぶのならば善しと言える。
問題なのは、ホルグウズがグリドリに従い直し、逆に天上世界を脅かそうとする場合である。
グリドリがカリシカに跪かせようが、グリドリを崇拝する武闘派がカリシカを廃して旧主を迎えようが、
とにかくホルグウズの大戦力が再びグリドリの手に渡って天上の被害をやたら拡大させようとする事態こそ最悪なのだ。
カリシカの肚を見定めなければならない。ムントがホルグウズへ来たのは、大連合への参加催促よりも、その為であった。
カリシカが悪夢の如きグリドリの畏怖に屈するか克てるか、同様の恐れを抱く配下達を御する指導者であるかどうか。
「カリシカ、グリドリが天上に戻れば、ホルグウズはどうする?」
ムントが尋ねると、カリシカは即答して見せた。
「大連合がグリドリを弑するつもりである事は理解しておりますし、私個人はそれを望んでいます。
あの王には統治など不可能です。武力に基づいたカリスマで他者を心酔させる事はできるのでしょうが、
天上が彼の手に落ちた時、その絶大な武力は向かう矛先を失い、純粋な欲望と恐怖による治世が始まります。
ホルグウズには今もグリドリを求める声がありますが、私が抑える。そこについては安心して下さい。
しかしながら、グリドリ討伐の為の軍は出せません。
かつての敵と共に、かつての王と戦う。いかなる大義があろうと、我が軍の兵達が納得し切る事は難しい。
そうなれば、たとえ強兵であろうとも、全体の統率を害して妨げになるばかり。どうかこの心中をお察し下さい」
理路整然とした返答。これはホルグウズのひとつの現状なのだろうが、その先を見据えた戦略の表れに外ならない。
詰まる所は、グリドリとの決戦で疲弊するであろう大連合より優位に立てるよう、戦力を温存したいという事でもあるのだ。
次の合議において、ムントがカリシカとの会談の仔細を諸王に伝えると、様々な問題でぶつかり合っていた彼等は決断を早めた。
足並みを揃えないホルグウズを抜きにして、あらゆる自体に備える為の、大連合の正式な発足。
そして、その盟主たる議長に、彼等は満場一致でムントを指名してきたのだ。
理由は、天上のアクト危機回避における随一の立役者であり、そこに至るまでの行動力と決断力を評価するというもの。
任期については意見が分かれたが、任期自体を持たず、議長としてのムントを見てその都度動議に掛ける方向に落ち着いた。
ただし、彼は即答せず、思案する為に次回まで留保するように求めた。諸王もこれに応じ、その場は散会となった。
分不相応だとムントは思う。だが、誰かが天上の道筋を束ねなければならないのも事実。
ただし、カリシカの言う通り、一国家の王を議長とする事には、彼も抵抗があった。それが彼自身ならば、尚更の話。
そして、カリシカの話は、王が議長となれば参加しない意向をも示唆している。
グリドリへの対処が残っている現段階で、ホルグウズをむやみに刺激して敵に回してしまうのはよろしくない。
ならば、彼以外の人間、王以外の人間が議長となり、諸国の信を得られるのか。
彼もまた指名候補を絞れずにいた以上、全会から指名された自分が引けば、他に誰もが一致して名指しできる候補はいない。
そうして議長選出が長引けば、大連合構想は瓦解する。果てに、最悪の場合、天上はまたも戦乱に塗れる事となるだろう。
肚を決めたムントは、リュエリやルイ以下、魔導国の主立った者を集め、大連合議長就任の為に王位を退く事を表明した。
これまでのあらましを話しながら懇々と説諭するうちに、聞いていた者達の中からは涙を流す者も出始めた。
国民に発表するのは、大連合の正式な発足と彼の議長就任が承認された後。混乱を避ける為、事実が定まってからの発表となる。
ムントは次王に国民の信頼も厚いリュエリを指名し、リュエリもまたこれに応じた。
彼が保持していた最高軍事責任者としての権限はルイに付託、ただ、対外軍事決定権はリュエリが監督する評議会に委ねられる。
先王となるムントの立場は、名目上は魔導国の最高顧問ということになり、魔導国の国政には直接参与しない。
また、議長を罷免された場合も王位には還らず、評議会の一員となり、国政を監査・指導する側に立つ方向で決まった。
父から継いだ王位を退く――いかに冷静を心掛ける彼とは言え、去就の情が湧かないわけがない。
だが、天上に満ちたアクトを邪の道理に転用させない為、天上に調和と安定をもたらす為。
同じ状況にあれば、恐らくは父王もこの選択を取ったはず。そう思えば、彼に後悔は無い――
協議を解散し、心を鎮めるムント。
「ムント」
そんな彼を呼び止めた、ひとりの男。
「少し話がある。私の執務室へ来てくれないか?」
ルイ。常に真剣を保つ彼の参謀の微妙な顔色を、この時のムントは読み切れないでいた。
ルイの執務室。人払いをした部屋には、ふたりだけ。
夜も遅い刻、空間を照らすのは石壁の篝火。ムントは応接用のソファーに腰掛け、ルイと対面する。
「…………話とは、何だ?」
尋ねる彼に、ルイはなかなか言わないでいたが、意を決したように瞳を厳しくさせ、答えながら問い返す。
「……ムント、王位を退いた理由を言え」
それは先の協議でも話している。だが、ルイの表情から真意を掴みかね、ムントは同様の説明を繰り返そうとする。
「…………天上の調和の為だ。大連合を束ねるには――」
「――違う。私が聞きたいのは、お前が隠しているであろう、本当の理由だ」
「本当の理由?」
その理由に本当も嘘も無い。ムントは訝しがりながら、ルイに答える。
「……退位を決めたのは、それ以外に理由は無い」
「本当に、天上の為だと言うのか!?」
「……何度も言わせるな。天上の為だ」
神経質な参謀の、常軌を逸した執拗さ。ただ、何かを疑っているのは彼にもわかる。
疑念を重ねるルイ。その理由を窺いつつも、言葉を選ぶまでもなく率直に答えるムント。
平素より、このふたりのは会話には緊張がある。それは王と参謀という立場以上に、それぞれの気質がそうさせている。
だが今回、ふたりの間に流れる空気は、質が異なっている。互いを否定し阻み、先へ進ませまいとするかのように。
長い長い、時の膠着――睨み合いの果てに、先に緊張を破ったのは、ルイの方だった。
「その決定に、本当に、ユメミ様の事は関わっていないのか!?」
「――――な、何だと!?」
何故そこで彼女の名が出て来るのか。反射で尋ねたムントは、驚きと怒気を意識せぬままで口調に孕ませていた。
「何度でも聞く!!ユメミ様に関係なくお前が出せた結論か!!?」
再び聞き返すルイもまた、彼に負けじと声を荒げ、彼女の名を突き付け続ける。
「あれ以来ずっと、お前がユメミ様の事を考えているのは、私にもわかる!!嘘は言わせん!!答えろ!!!ムント!!!!」
吠えて、ルイは黙った。黙り込み、答えを待っていた。
待たれる彼は、ルイが何を聞こうとしているのか、何が知りたいのか、何を言いたいのか、その意を暫し考える。
今回の件に、ユメミの事は一切関係無い。その点については、ルイの勝手な誤解であろう。
しかし、ルイが言うように、彼女を巡る葛藤が、自身の日頃の振る舞いに表れていたのかも知れない。
それが誤解の一端であれば、ユメミへの心象も明かした上で解かなければならない。王を退く大事、ルイにも知る権利はある。
この厳しい参謀の事である。いつまでも彼女にとらわれ過ぎるなと、自分に詰めるのが目的なのだろう。
ただ、ユメミについて迷っているのがわかっているなら、こうして詰めるのはもっと前でも良かったはず。
なのに何故、もっと早くこうした話をしてこなかったのか。迷える王への忠告が意図なら、尚更のはずであろう。
その一点のみ、釈然としないまま。けれども、厳しく睨むルイに何も答えないわけにもいかず、
ムントはこれまで誰にも口外せずに伏せていた内心を、全てさらけ出して語ってみる事にした。
「…………確かに……お前の言う通り、あいつの事を考えない日は、あの日以来一度たりとも無かった。
アクト危機が解決されたあの日の夜、俺様はユメミに約束した。いつもあいつを見守っていると。
あいつの心に触れ、俺様は……嬉しかった。あいつも、俺様と同じ想いでいると、わかった。そして――――」
ルイの表情が一瞬歪む。
「――――それが、俺様を未だに迷わせているのだろう。たとえ、この心情は邪ではないと否定したとしても。
ユメミに傍にいて欲しいとは、今でも思う。しかし、あいつには、自分の世界がある。
それを奪ってこの世界に留めるような真似は……俺様には出来ん。どんなにあいつを求めようとも、俺様には出来んのだ。
それに、俺様は魔導国の王だ。いや、王だった。国を、天上の安寧を守る責任がある。ユメミの世界に渡る事は選べない。
加えて、この世界と向こうの世界は違い過ぎる。向こうに飛べば、俺様は生きられない。それでは話にならない。
俺様のこの内は、いつか決着をつけなければならない。いずれ、何らかの形で。
だが、それにかかずらって、王としての責を怠り、逃げるわけにはいかない。国民の為、お前達の為にも。
退位すると決めたのは、大連合の折衝において必要があると判断しての事。連合の協議が終わった直後の事だ。
ルイ、お前とリュエリならば、この国の統治を安心して任せられる。俺様よりもより良く、皆を導いてくれると期待している。
だからこそ、今一度言う。この退位に、ユメミは関わりない。猜疑は、無用だ」
落ち着かせるように語るムントに、ルイもいくらか自身の猛りを整え始めていく。
「………………ユメミ様を、常に見守っていると、言ったな…………?」
「…………ああ……」
「……それは、今、お前と話しているこの瞬間も、そう解釈して、いいんだな……?」
対面する人間の話を無視して他所見に興じていると、ルイの気分を害したやも知れない。ムントは答えを躊躇う。
「………………どうなんだ……?」
業を煮やしたルイ。謗りを受けるのを覚悟し、彼は答える。
「…………そうだ」
硬く握られるルイの右手。
「………………そうか…………」
その口調は震える拳とは正反対に、落ち着きを保ったままで躊躇いながら、繋げる。
「…………確認したい。お前は、ユメミ様と………………一夜を共にして………………男女の仲になった。そうだな?」
「っ!?」
あからさまに尋ねられるとは思わなかった。答えにくい。だがしかし、答えなければ先へ進まない。強いられている。
ここまで、何を企図した問いなのか、問われる彼は理解に苦しんでいた。それでも、この腹心が本気である事は理解している。
余人ならば言いにくいが、この男にここまで迫られては、致し方無い。ルイの拳を見ながら、ムントは意を決した。
「………………ああ…………そうだ…………」
ルイ。震えが止まった。
「……………………そうか………………」
長い長い、一息。参謀の沈黙は、ふたりのいる一室を、耳鳴りさえ響かせる程の静寂へ満たし変えていく。
安堵かどうかわからない、ムントがルイに倣い息を吐いた一瞬――
「――――ふざ…けるなぁっっ!!!!」
青髪の男は挟み合う卓を乗り越えてかつての王に飛び掛かり、その右手で、力を篭めた右の拳で、彼の頬にその怒りを見舞った。
「――ぐうぅっ!?」
ルイは殴る。
「……ムント、貴様は!!貴様という男はっ!!!」
「っ!!」
伸し掛かるルイは殴る。
「ユメミ様に会えなくなると知っていながら、ユメミ様と……ユメミ様を……!き、貴様っ!!!」
「くっ……!!ルイ……!」
伸し掛かるルイはムントを殴る。
「それ程までにユメミ様を慕っていながら、何故だ!?何故帰した!!?」
「っ!……あいつにはあいつのいるべき場所がある!それがわからんお前ではなかろうが!!」
伸し掛かるルイは腕を盾にするムントを殴る。
「ならば貴様は本当に納得しているのか!!何かと理由を託つけて、貴様自身が諦めようとしているのではないか!?」
「納得せざるを得ないではないか!!」
伸し掛かるルイは叫びながら、腕を盾にするムントを殴る。
「貴様が王だからか!!王だから姫様を捨てるのか!!!」
「っ!?誰が捨てると言った!!!」
「貴様は今も迷っている!!貴様、それだけで半分は、ユメミ様を既に捨てている!!」
伸し掛かるルイは叫びながら、腕を盾にするムントの顔面を殴る。
「ぐっ!!」
「『いつか決着を』だと!?ああ、着くだろうな!!貴様はユメミ様を捨てる!!!」
「っ………お前の知った事ではないっ!!」
「知らんさ!!だが、貴様はユメミ様の為にこの日まで、一体何をして差し上げられたと言うんだ!!?」
伸し掛かるルイは叫びながら、腕を盾にするムントの顔面を力を篭めて殴る。
「……な、何だと……!?」
「ただ見守るだけか!?貴様、貴様はっ!!ユメミ様の寵愛を受けていながら、お傍でお守り差し上げようと思わんのか!!!」
「お……俺様はこの国の王だ!!!この国を、治める責任がある!!!」
「それでもっっ!!!!」
伸し掛かるルイは叫びながら、腕を盾にするムントの顔面を拳に力を篭めて殴る。
「貴様はユメミ様をお守りしたいとは思えないのか!!!!」
伸し掛かるルイは叫びながら、腕を盾にするムントの顔面を血の滲む拳に力を篭めて殴る。
「国も何もかも捨ててでもいい!!!ユメミ様を守りたいとは思わんのか!!!!」
ルイは殴る。
「貴様の迷いを見続けている人間の気を考えた事があるか!!?彼等の、私達の心中を、考えた事が一度でもあるか!!?」
ルイは殴る。
「ユメミ様を見守っているなら、貴様なら、ユメミ様がどのようなお気持ちであらせられるか、察しているはずだ!!!」
「!?ぐっ……!!」
ルイは殴る。
「時間を共にさせて頂いたのは僅かだが、ユメミ様のような方の御心は、この私の分際にも……理解できてしまう!!」
ルイは殴る。
「私にも!!貴様程の力が…………貴様程の力が、私にもあれば…………!!
もしも、もしも……ユメミ様のお気持ちを頂いたのが私であれば……っ!!!
どれだけ時を費やそうとも、いかような手段を尽くしてでも、ユメミ様と再びお会いすると言い張るものを!!!!」
殴る手が止まる。
「……っ!………ル、ルイ…………」
ムントは見た。彼の参謀が、常に涼やかに構えるはずのルイが、大粒の涙を流して咽ぶ姿を。
「………っ…!!」
「…………ルイ……!?」
男の涙。その意味するものを、ムントは敢えて確かめてみる。
「………お前……ユメミを…………?」
問われて我に返ったルイは、自らの涙に気付いて袖で拭いつつ立ち上がり、彼に背を向ける。
「……………ああ………お慕い申し上げている」
瞬間、ムントの中に何かが湧き上がる。
「………そうか……」
それが何なのかはわからない。だが、快く受け入れがたい情動だという事は確かで、相槌と共に外へ出そうと試みる。
切れた唇の血を拭う彼を見ず、ルイは呟く。
「…………すまない、ムント……」
向けた背中が震えている。ムントは気を鎮め、参謀を安んじるように返す。
「……これくらいは、何ともない」
「違う!そうではない……そうではないんだ………私は……!」
ルイの後ろ姿を見るムントの眼。否定に篭められた意を解しあぐね、視線は戸惑い焦点がぶれる。
「……ムント………お前のユメミ様への想いを知りながら、私もまたユメミ様に……ユメミ様に惹かれた。
お前がユメミ様を忘れられないのには及ばないだろう。だが、私もまたお前と同じだ。お前の心中は理解していた。
お前には、いや、天上全ての人間に隠し通そうとは思っていたが、このような形でお前にぶつけてしまうとは…………」
「…………」
「………許せ……ムント…………臣下でありながら、私は………!」
立ち尽くすルイ。座するムントは考える。
先程から感じている悪意的な何か、今のルイの謝罪を機に、その正体をはっきり掴めていた。
(………これは、嫉妬か……)
自分の愛する者を、この男も密かに思っていた事に。そして、秘めた感情を曝す事のできる、この男の勇気に。
彼女への恋心を口に出して誰かに表す――ムントは、自分にはできないと思う。王の立場が、自由な発言を許さない。
しかし、仮にそのような制約が無かったとして、自分もルイと同じように誰かに言えるだろうか。その勇気が自分にもあるのか。
(……俺様には、無理かも知れん)
自信は無い。自他共に自信家を認める彼だが、こればかりは自信が無い。要される自信の質が、明らかに違い過ぎる。
そう思うと、彼の心はかつてない程に揺れ惑う。
本当にユメミと再び会う事など叶うのか。
叶えられないのならいっそのこと、この苦しみごと彼女の事は忘れてしまった方が良いのではないか。
とは言え――本当に忘れられるのか。忘れてしまっていいのだろうか。
俺様が真に望むのは、忘れてしまう事なのか――――
このルイという男は、王の腹心として様々な建策を立て、ムントの歩みを補佐してくれている。
国王の彼が掲げる国家理念に基づき、目的を逸脱しない柔軟な方策を提案しながら厳しく監督する、優秀過ぎる参謀。
しばしば、互いの肚に収めた長期的な見通しや戦術自体の是非によって意見を戦わせる時もある、万事に徹底した軍略家。
そのようなルイだが、王の在り方や彼自身の生き方についてムントに苦言を呈するような事は、これまで一度たりとも無かった。
王に対して恐れ多いが為に言上を控える――などという概念はこの男には皆無である。それはムントがよく知っている。
また、ムント自身も、これまで自らの情の内をルイに明かした記憶は全く無い。王たるが故、意識して秘匿していた。
なのに、参謀も自分も、今回は違った。生の感情を口述して曝し合ったのは、長い付き合いの中でも恐らく初めてだろう。
自分の苦悩を、この男ならばどう向き合うのか。苦悩の理由と痛みを最も近く共有するこの男ならば――
「――――ルイ」
参謀の名を呼ぶ。振り向かぬまま黙って頷くルイを認め、ムントは繋げる。
「人に初めてこうした質問をする。お前が俺様の立場なら、ユメミを諦められるか……?」
「ムント!?」
振り向くルイに、ムントは尚も尋ね続ける。
「正直な所……ユメミの事を諦めるべきか、迷っている。だが、決して……決して、忘れたくはない。
お前の言う通り、見守り続けるだけでは、考え続けるだけでは、俺様は満足できん。
それでも、ユメミの世界で俺様は存在を保てず、ユメミをこちらに留めるわけにもいかず、現実には…………。
どう考えるべきか、どうするべきか……情けない事に詰まってしまっている。ルイ、お前が俺様ならば、どう考える?」
言いながら、神妙に構えるムント。聞き終えたルイは噛み付く素振りも見せず、ただ考え込む。
笑いもせず邪険にせず真剣に思案する参謀を、これ程有り難いと思った時は無い。彼は心からそう感じる。
ただ、思索を重ねて放つルイの見解がどのようなものであれ、果たして自分は受け容れられるのか。それだけが不安でならない。
諦めてしまいそうになっている自分。諦めの悪い自分。そのどちらも、ルイの一考を素直に聞けるのか。
(………いや、違う)
意見を求めた以上、聞かなければならない。結果をどうするかはともかく、過程だけは変えられると信じなければならない。
同じ少女に想い焦がれた男。常にこの自分を助けてきた男。その男の言、信じられなければどうすると言うのか。
信じる。信じられる。迷うムントがそこだけ定めた時、ルイがおもむろに口を開く。
「私がお前なら…………ユメミ様を絶対に諦めない」
「ルイ……?」
「ユメミ様をこの世界にお招きするのが能わぬならば、私があちらの世界に行く。
たとえどれだけ時間がかかったとしても、この世界の後顧を断ち、あちらで存在を保つ方法を見つけ出して、な……」
そこでルイは黙った。
「どれだけ時間がかかろうと、か…………」
反芻するムントに、ルイが尋ねる。
「どのくらいかかるか定かでない間、お前がユメミ様を諦めずにいられるか、ユメミ様がお前を忘れずにいて下さるか、か?」
それは外ならないムントの不安。当たっているが、ひとつ足りない。彼は自ら付け加える。
「……それと、その間、俺様がお前達とどうあるべきか、だ。
天上を去るならば、黙っているわけにはいかない。いずれは、皆に話さなければならん。それに、今更だが……」
ムントは躊躇いつつも、言い切る。
「………俺様が天上を去ると知れば、皆はどう思うのだろうな…………」
決して自意識過剰などではない。それは、一国の主として責任も期待も背負うからこそ、考えなければならないもの。
突然の事由、或いは理不尽な理由で主を失う国は、須らく混乱する。グリドリからカリシカに代わったホルグウズがその例だ。
一時的なものにせよ、自らの勝手でそのような事態に陥るのは避けたい。そこに抱くのは恐怖。
(………そうではない、だろうな…………)
気付いた。それより自身が恐れるのは、これまで慕ってくれた民が一転して自分に絶望し批難する事。
いつも見てきた笑顔達が怒りに変わってしまう――それを思えば、辛く痛い。ユメミへの苦悩に苛まれるのと同じくらいに。
「……皆は、俺様を外道だと、裏切り者だと罵るだろうな……………」
口にすれば沈んでしまう。だが、言わずに耐える事はできない。
「……かも知れん」
答えるルイは、俯くムントを見ながら、問い返す。
「しかし、ユメミ様への心を失い諦める事もまた、あの方への裏切りではないのか?」
「――そ、それは…………」
意外な言説に、またもやムントは答えに詰まってしまう。
「お前は実の所、自分の行為で誰かを傷付けてしまうのが耐えられなかったから、今まで悩んできたのだろうな。
何せ戦闘にあっても、味方の被害を出すまいと、単身で敵に切り込んでしまう危険極まりない男だ。
そのような王だったからこそ皆も慕ってきた。どれだけ高慢で強引であろうと、そんなお前が見えていたから。だが――」
慰撫する語調が途切れ、ルイの眉間に再び険しさが戻っていく。
「――ユメミ様のもとに馳せるにせよ、天上の為に諦めてしまうにせよ、どちらかを捨てる。
これが、お前に突き付けられた現実であり、選択しなければならないお前自身の道だ」
「……っ!」
選択。ユメミが去った後にリュエリから呈された予見を思い出すムント。
『近いうちに、貴方は、選択を迫られます』
『重要な選択を、幾つも求められる事になるでしょう』
『その選択を何を以て選ぶのか――選択それ自体よりも、その所以が、貴方にとって大切なものとなるでしょう』
これはその、幾つあるか定かではない選択のひとつ。そして、選ぶ所以は、自分自身で決める。
「どちらが重い、などと、量りにかけられるものではない。それでも、量りにかけなければならん。
それに責任を負うのは、誰でもない、ムント、お前自身なんだ。誰が傷付く事になったとしても、選ばなければならない」
理解していた。あの夜からずっと、最良の選択などあり得ないと。
だからと言って、どちらか選ばないのか。選べないままで良いのか。
「…………そうだな、ルイ」
「ムント…?」
訝しがる参謀を尻目にムントが考えるのは、愛してやまない彼女の事。
彼女は天上から去った。それは彼との別れを望んだからではない。絶えず見守り続けてきた彼にはわかる。
いつかまた、再び会える時を期待している。来るか来ないかわからないその時を良いものにしたいと願い、日々を励んでいる。
天上を去るにあたり、彼女は何も言わなかった。何も言わず、去る事を選んだ。
(………そうか……)
あの夜、最良の選択云々と思っていながら、自分は何も選んでいなかった。ただ、ユメミの選択に従っただけだ。
ならば何故、彼女はその選択を選んだか。何故その選択の理由を語る事さえ無かったのか。
それは恐らく、今の自分と同じで、誰かを傷付けてしまう事を恐れたから。ここに来て、ムントの脳裏に確信が過ぎった。
離れたくない。しかし、そうすれば離れ離れになってしまう家族や友人達を彼女は傷付けてしまう事になる。
逆に、彼が彼女の世界へ行けば、王を慕う国民を傷付ける。それ以前に、アクトの性質上不可能だと察していたのかも知れない。
ユメミはその選択で誰がを傷付けてしまうとわかっていたから、敢えて何も言わずに去った。離れたくない、その本心を隠して。
つまりは、ユメミは自分の望みを押し殺し、誰も傷付かない選択肢を取った。そして、今は彼方の地から、密かに願うだけ。
今からすれば、彼女らしいと思う。誰より優しく、求めてばかりの自分を受け容れてくれた彼女だから、確信は納得がいく。
そんな彼女だから、本当の願いを殺せるだけの勇気も決断力も備えていた彼女だからこそ、自分は惹かれた。
ムントは思う。これまで悩んでいたなどという事は無い。自分はただ、彼女に甘えて時間をいたずらに過ごしていたのだ、と――
「――ルイ」
参謀の名。呼ぶムントの瞳から、惑いは消えていた。ルイも察して無言で頷き、促す。
「俺様は、ユメミのもとへ行く。ユメミの世界で生きる方法を、どれだけ時間がかかろうと、いや、急いで見つける」
「ムント……」
ルイの驚きに批難の色は無い。構わず、ムントは続ける。
「だが、天上には成さねばならん事、やり残している事も多い。それらを全て果たしてから、ユメミの世界へ渡る。
これは、退位を明らかにする際に、魔導国の皆にも、それから、天上の各王にも話す」
「……同意は、得られるのか?」
問う反面、参謀の顔からは疑問の色を全く感じない。知りながら、聞いている。
「ああ、得る。俺様が天上を去るには、避けられない」
「………そうか…………」
黙り込むルイに、ムントは尚も言い、尋ねる。
「俺様が天上を去った後は、お前達に任せるしかない。ルイ、頼んで、いいか?」
尋ねられたルイ。ふっと笑みを微かに零せば、
「いいだろう。お前はお前のすべき事に、心して取り組めばいい」
彼が知ったいつも通りの参謀の姿がそこにある。
「…………すまない。だが――」
彼女への確信に猛り、認めるルイにいくらか安堵しつつも、根本的な問題が残っている以上、ムントの心は休まらない。
「――だが?」
「ユメミの世界で生きる方法、それが見つからない事には……な…………」
「………またいつか、決意が鈍ってしまいそうか?」
「いや……絶対に諦めない、これだけは確かだ。ただ………いつ見つけられるか……正直、焦らずにはいられん」
「………そうか……」
虚心なきムント。参謀は暫く考える素振りを見せていたが、何やら頷き、
「ムント」
「……何だ?」
一瞬躊躇いつつも、ルイは言い放つ。
それは、天上の運命を決める言葉。
それは、彼女の運命を変える言葉。
それは、彼の運命を決定的に変革させる言葉。
「………………方法なら、ある」
「……な、何だと?」
ルイの言に我が耳を疑ったムントは、動揺しながら、尋ね直す。
「お前がユメミ様の世界へ渡り、且つ、そこで生き続ける方法だ」
ルイの答えは変わらない。時間を割いてそれとなく探していたムントが見つけられなかったもの。何故この男は知っているのか。
「ルイ、お前、どうしてそんなものを知っている!?いいや、それよりも、どうして俺様に黙って――」
はっと言い留まって、ムントはルイの意を悟った。
この参謀の事、これまで言わなかったのには、必ず理由がある。そして恐らく、それはこの自分にあるのだろう。
迷ったままの自分にその方法があると言った所で、ユメミのもとへ行く事を選ぶとは限らない。むしろ、選べなかったと思う。
この男はそれを見越した上で、自分がはっきりと意志決定をするまで伏せていたのだ。
「――細かい詮索はどうでもいい。ルイ、その方法とやらを教えてくれ」
尋ねるムントにルイが平然と答える。
「具体的にどうすればいいかはわからん。古代天上人の秘法らしい。だが、確かに存在する方法だという」
この男がその手に持つ情報ではない。情報を握り、ルイにもたらした人間は、別にいる。
「…………魔導国外の人間か?」
頷くルイ。魔導国で管理する古代天上人の遺物に、そのような秘法は無い。管理者である王、ムントは全て把握している。
ならばそれは、魔導国以外の国家が管理する遺物。しかも、ルイの口ぶりからすれば、その存在を教えた人間が誰か別にいる。
「存在する、というだけで、他には何も聞いていないか?」
「その秘法の概略だけ、だな。詳しい部分までは、流石に教えてはもらえなかった」
古代の技術等は各国に散逸したまま、それぞれで厳重に管理されている。その目的は保護などではなく、封印と呼べるだろうか。
現代の天上世界の文明のバランスを著しく破壊してしまう、極めて危険な代物である。
漏洩防止の為に下手に破棄する事はできず、厳重に管理せざるを得ない。国内外を問わず固く守る事が暗黙の了解とされている。
だからこそ、国外の人間がルイにそのような秘法を教えた理由、経緯に一抹の疑念はあるが――聞き得る限りは聞いてみたい。
「どのような話だった?」
「かつて、天上が様々な世界を支配し腐敗堕落を極めた折り、その天上から逃げようとした天上人達が研究していたものらしい。
概念的には、時空の壁を超えた瞬間に、逃げ込む先の、天上人が手を出せない世界――
即ち、アクトを力に変換できない世界で暮らす者達と同じ形質を持つ人間へと自らを作り替える……というものだそうだ。
もっとも、その準備に要する時間は、超える人間、超えた先の世界によって左右されるということで、
仮にお前がユメミ様の世界へ行く為にどのくらいの時間がかかるかは、お前でなければわからないという。
誰にでも可能というわけではなく、やはり莫大なアクトと、それを使いこなす許容量を持った人間でなければ不可能らしい。
私にその秘法を教えた人間が言うには、今の天上でそれが成せるのは、実際に時空の壁を破った、ムント、お前だけだ、と。
ただ、その者もその秘法を分析する上で憶測に任せている部分もあるようで、実際には行使してみなければわからんのだろう」
考証するムント。その秘術の概念、開発されたいきさつ、とりあえずの筋は通っているように思える。
古代の天上人は、他世界から収奪したアクトを用いて絶頂を極めたが、反面、その欲は留まる事はなく、精神を廃れさせた。
全ての古代天上人がそのような状況を享受していたわけではない。故に、逃避を考える天上人が出るのも道理だ。
そして、時空を超えた人間を天上から観測し続ける事で、研究成果を短期長期的に取得し、精度を高めた――という案配だろう。
観測に必要なアクト許容量は、時空の壁を破れる分の量があれば問題は無い。彼が今、ユメミを見守るのと同様のやり方でいい。
ルイの話は信用できる。この男は迷える自分を見て、その動ける範囲内でユメミの世界で生きる方法を探そうとしたのだろう。
だが、ルイに秘法の存在を教えた人間は、現時点では信用できない。
その人間が、何を意図してルイに教えたか。
その人間が、秘法を巧みにでっちあげてルイに話したのではないか。
また、仮にそれらが信に値するとして、その秘法の完成度は確かなものか。研究途中で放棄されたものではないか。
「………やはり、信じるには難しいか…?」
尋ねるルイに、ムントが答える。
「……期待は、したいな………。しかし、それとは別に、あらゆる可能性からの警戒も考えねばならんだろう」
「そうだな………それについては、私も同意見だ」
ルイはムントの対面に座り直し、見解を繋げる。
「秘法の根拠となる現物を見たわけではないから、信用はし切れない。秘法を私に紹介した、その者も、また………。
だが、現状で――いや、後にも先にも、お前の望みを果たし、ユメミ様にお前を届ける術は、これしかないかも知れない」
確かに、ムントが今まで調べても出て来なかったもの。自力で探すには限界がある。
もし、ムントが他国に協力を仰いだとしても、秘匿すべき古代物である以上、各国が快く応じるとは思えない。
そんな事情もありながら、ルイはここまでこぎつけた。常に慎重を期する男の事、並大抵の苦労ではないはずだ。
「いずれにせよ、ユメミ様のもとへお前が行ける確率は、あるか無いか、だ。ムント……私を信じてはくれまいか?」
信じる、信じない――これもひとつの選択。
「――勿論、信じる、ルイ。だが、今しばらく考えさせてほしい。迷う事はもう、無いのだが、な………」
選択自体は決まっている。しかし、意志を固めてからこれ程早く、ユメミの世界へ渡る事が現実味を帯びるとは思わなかった。
大事な返答になる。だからこそ、勢いで言いたくはない。心を少し整理させてから、ルイに答えたくなった。
「………………そうか……………わかった………」
肩を下ろし、長い息をつくルイ。安んじて脱力する表情に、険しさは全く見られない。
「……ルイ、いつまでに、答えればいい?」
「3日後、次回の大連合の会議までに。それ以降でも構わないが、お前がその人間に接触する名分を作るのが難しくなる」
次回の会議の開催地は、旧連合の一国。接触すべきはその国の人間で、名分と言うからには、王ではない一臣下なのだろう。
古代の秘法が絡む接触であるからには、おおっぴらに動く事は確かに難しい。最上の提案をするルイの懸念は恐らくそこにある。
「わかった、それまでに、考えよう」
答えつつ、ムントはふと考える。
自分が王でなくなれば、ルイの建策を受けるのは、きっとこれで最期なのだろう。
当たり前のように思ってきたが、今振り返れば、どれだけ助けになったか。そして今も、道を切り開いてくれている。
最愛の少女と再会できるかも知れない喜びと同時に、いずれ来る別れの予感を抱かずにはいられない、赤髪の青年がここにいた。
ルイ・・男だねぇ。
かっこいいー、泣ける。
5氏・・・絶対ルイ好きだなww
350 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 03:22:11 ID:cdtqath+
GJ!!
続きは次スレ?
ageてしまった
ごめんなさい
保守待機
GJ!!
ムントスレで見つけて一気に読んでしまった。
エロもシリアスも両方いけるとは...この文章力ただものじゃないな
ルイ好きとは5氏とは話が合いそうだ
そして続編におおいに期待
355 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 20:31:18 ID:JrgKUgUz
保守age
356 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 09:28:59 ID:Vb/6WjNj
近日中に次スレ立てます。
保管庫の方もやらなきゃですね。
気付くの遅れて申し訳ない。
>>5氏、保管庫に収録申請してもよろしいでしょうか?
保守age
360 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 06:58:39 ID:7M+aR83R
今度こそ保守age
361 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 22:08:07 ID:+7WykMB2
ageついでに思ったこと。カプ表記について。
ムント×ユメミっていいにくい
↓
とはいえムンユメってのも語呂悪いしな…
↓
そうだ!ムントの「ム」とユメミの「ユメ」で「夢」ってのはどうだろう?
眠かっただけです。とりあえず
>>5氏、あなたは神だ
362 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:22:05 ID:NkYjJSBX
>>361 いやー、さすがにそれは…ヘンだとオモw
あうー、続きが気になるー。
ハッピーエンドなら何でもいいから早く終わらせてくれー。
お願いー。
h
365 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 08:09:35 ID:nBYLXv4x
ほしゅー
366 :
357:2009/06/05(金) 14:59:09 ID:UvuJUMAr
5氏から反応がありましたら次スレ立てることにします。
スレ落ちは勘弁。続きまだー?
368 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 11:29:38 ID:Quu7bGUO
飽きちゃったのか?続きが浮かばないのか?
ほ
370 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 11:30:41 ID:0GluzpvW
あーあ、もう終わりかな
あと3日書き込みがなければ、おいらが書こうかな。
いーい?
>>371 書いていただけるのなら是非お願いしたいです。
次スレ立てた方がいいでしょうか?
それにしても5氏はいったいどこに…。
暗闇の中でユメミは目覚めた。
「ここどこ・・・?」
体を起こし、瞳には見渡す限り闇が広がる。恐怖が心を支配し始める。
「誰か・・ここはどこなの・・・!!」
叫びは虚空を掴み、辺りに響き渡る。
いや!こんなの・・誰か・・・・!!!
ユメミは地面に突っ伏してしまった。すると闇に光が灯った。
「ユメミ・・・。」
懐かしい声、優しい響き。忘れもしない愛しい人の声音。
「ムント様!!」
顔を上げ、涙に濡れた目を声のする方に向ける。
「ユメミ!」
今度は、はっきりと聞こえた。目の前にムントの姿が。
「ムント!!」
ユメミは彼に抱きついた。しっかりと、もう離さないというかのように。
「ムント、ムント様・・・!!」
彼の匂いがする。あの夜と同じ。ユメミは顔をすり寄せた。
「会いたかった!ずっと・・もう会えないかと思ってた。ああ・・・。」
「すまない、ユメミ。お前にこんな思いをさせてしまった。許してくれ・・・・!!」
「いいの、ムント。あなたを好きになって良かった。だってこんなにも幸せな
気持ちになれるんだもの。私、こんなの初めてよ・・・。」
「俺様も・・こんな苦しい想いをした事はなかった。胸が張り裂けそうだ!
それなのに何故こんなにも幸せなんだ・・・・・!!」
磁石が引き寄せられるように唇を重ね合う二人。やがてゆっくりと倒れて
いった。
「ムント様・・・。」
ユメミの閉じられた瞼に水晶のような涙が一筋流れた。
たとえ夢でもいい。今この時を感じていたかった。
彼の存在を。
「あ・・・・。」
闇の中に浮かび上がる男女の裸体。男に抱かれ、少女は震えていた。
それは未知なる世界への怯えではない。与えられ、満たされていく愛の悦び。
彼の冷たい唇が、妖しい舌が肌を這う度に、少女は何度も細い声を上げた。
ユメミの胸の頂にムントの唇が触れ、淡い薄桃色の実を含んだ。
「ああ・・・!!」
反り返り、形の良い胸を天に突き出すユメミ。
舌で転がし、甘噛みする。時には強く吸う。母性本能を擽るような行為。
彼女の性感帯の一つ。
「んっ・・やっ・・・そんなにしたら・・・・!!」
「どうなる?見せてみろ。」
微かに乳首に唇を触れさせながら言葉を漏らし、再び実を弄ぶ。
右手は乳房を揉みながら、時々人差し指で乳首に触れる。
電流とも、くすぐったさともいえぬ甘い刺激にユメミは酔いしれた。
「あんっ・・いや・・・あぁん・・んぅ・・・・!」
ユメミの声が何とも甘い響きになる。その声が男を狂わせる。
ちゅうっ・・ちゅぱ・・ぴちゃ・・・。
「んっ・・・はっ・・う!んん・・・。」
ようやく唇が離れ、その濡れた唇から蜘蛛の糸のような筋が引く。
そう、今のユメミはまさに蜘蛛の巣に囚われた美しい蝶のようだった。
ムントの微かに照らつく赤い舌がユメミの白い胸からゆっくりと腹に
這い、小さな臍の中を優しく舌先で愛撫する。
「ん・・ふっ・・・あ・・・・。」
そんな事をされたのは初めてで。滑りのある生き物にお腹を掻き回されて
いるようだった。
彼の右手はユメミの白く細い足に触れ、太股から爪先まで掌で辿っていく。
背筋がゾクゾクするような感覚。
ムントの唇はユメミの足に移動し、微かに触れさせながらキスをし、爪先を
啄ばむ。そして足の指の間に舌を這わせた。
「だめ!そんなところ汚い・・・!!」
「お前に汚いところなんてない・・・・。」
濡れた生温かい感触。その生き物は次の指へと移動する。
くち・・くつ・・・。
跳ねるように指の裏、爪、足の裏へと移っていく。好き勝手に暴れる生き物。
異様な滑ったくすぐったさと、悪寒のような快感に苛まれる。
「ああ!やだ!!ムントぉっ、ああんん!!」
少女の喘ぎに満足したのかムントの舌が離れ、しなやかに獲物に近づく獣
のようにユメミの耳に唇を寄せ、その可憐な耳に舌を這わせた。
「まだまだこれからだよ、ユメミ・・・。」
耳元で囁くムントの声。それは更なる攻めの幕開け。
くちっ・・くち・・・・。
耳の穴、耳たぶを舐り、頬を舐める。彼の息が掛かる。
その息すらも春の風のように思える。心地良い感覚。
だがそれは、ほんの一瞬の事。
舌がそのまま右の首筋に引かれ、冷やりとした感覚を残し、そこにムントは
そっと口付けた。
「あん!ん・・・。」
ユメミはここも感じる。強く唇が押し付けられ、貪るように強く吸った。
噛み付くように。食らうように。
「あふんっ・・・ふっぅ・・う・・・・。」
甘えるような声。誘われるように次は左の首筋を攻め、痛みすら感じるほどに
きつく吸い上げた。
「んっくっ・・あう!あ・・ああ・・・!!」
少女の頭が反り返る。荒々しい男の攻めに応えるように。
「はあ・・はっ・・・!」
彼の荒い息。
ムントはユメミの胸に顔を埋め、両頬を強くすり寄せる
「好きだ!ユメミ!!愛してる・・・!!!」
愛している。
それはとても待ち望んでいた言葉。一番聞きたい確かなもの。
目をうっすらと開け、夢見ごこちで響いた彼の想い。
「私もよ、あなたが大好き。」
ムントの頬に手を添え、顔を上げる彼と目を合わせる。
愛しさと切なさを秘めた彼の瞳。
「愛しているわ・・・。」
嗚咽を含んだような誠実なユメミの声。
少女の瞳から涙が零れる。
二人は激しく唇を重ねた。お互いの存在を確かめ合うように。
やがて入り込む柔らかいムントの舌。流れ込んでくる唾液をユメミは飲み下した。
目を閉じた少女の口の端から透明な雫が一筋流れ落ちる。
大好き・・・ムント。
口腔に広がるムントの舌が暴れ回る。それに応えて、少女の可愛らしい舌も
彼の舌に絡む。
彼の舌が歯列をなぞり、歯肉を舐める。
少女は激流のような男の熱い口付けに、ただただ、酔いしれていた。
「ん・・・あ・・・・。」
既にユメミの秘所は濡れ、蜜を滴らせていた。
痛みすら感じるほどに、熱く疼いている。
ムントの頭が徐徐に下がっていく。
彼の唇が一番触れてほしいところに触れた。少女の体が強張る。
薄い草むらにキスをし、ユメミの足を大きく広げた。
「あっ・・!やっ・・・!!ムントぉ!!!」
愛撫によって濡れたそこは、光る泉が湧き出て、男を誘っている。
憑かれるように見つめ、それに引かれるようにムントは唇を寄せた。
「やだ!やめてムント・・・!!」
「もう遅い・・・!」
「あああ・・・・・・!!!」
制止も利かず、彼の舌が肉芽に触れた。
電流のような刺激が少女を襲う。
ぴちゃ・・くちゅ・・・。
舌が敏感な赤く熟れた部分を舐め、舌先でつつく。
「あっ、んっ、はぁ・・・!」
芽の上から舌をゆっくりとずらしていき・・・。
口に含まれた。
「やっ!いやぁ!!そんな・・あん!!」
アメ玉をしゃぶるような舌の動きに少女はただ翻弄され、喘ぎ、涙を流すしかなかった。
ちゅぷっ・・・・・。
可愛い芽から唇を離し、舌を矢じりのように尖らせて秘所の奥を抉る。
かつて自分が愛し、貫いたそこを。舌で少女の花園を犯していく。
それは強い刺激となり、愛液の分泌を促す。
湧き出る泉をきつく吸い上げ、人差し指を突き入れた。
「あう!ああうっ!あ・・ん、あはぁぁ・・・!!!」
次第に慣れていき、腰が浮いていく。
彼に捧げるように。もっと愛してほしいと。
指を2本に増やし、舌を更に奥へとねじ込み、抉っていく。
愛液がムントの顎を伝い、地面に滴り落ちる。
貪欲に、獣のように。
ちゅぴっ、ちゃぽっ、くちゅうぅ、ちゅるっ、ぐちゅううう!!!
「あん!ああ!!ああうっああああああああああ!!!!」
快楽の証を噴き出たせ、少女は絶頂を迎えた。
「はあ、は・・ぁ・・・。」
愛らしい果実のような唇から漏れる息。
何とも妖艶なその姿が、ムントの下腹の熱を煽る。
ユメミ・・・もう、容赦しない・・・・。
ユメミが欲しい。
もうムントの自身は限界に達していた。
彼の自身は熱く尖端から流れる液で濡れそぼち、猛々しい鎌首を擡げていた。
ムントはユメミの両脇に手を添え、近づく。
少女は意識を取り戻し、うっすらと目を開けた。
彼女の美しい瞳。彼だけを見つめている。
卑しくもそんな彼女に欲情してしまう自分がいる。
灼熱の棒で早くユメミの中に入りたいと。
そんなムントの荒ぶる心を察したのか少女は心得、自分からゆっくりと足
を広げていく。
少し恥じらいを込めて。
「いいよ・・ムント。来て・・・。」
秘裂を指でなぞり、その細い指で花弁を広げていく。蜜に濡れたそこを。
大胆な少女の行動に少年は戸惑う。
「ユ、ユメミ!」
「お願いムント。」
「俺様はお前を壊してしまうかもしれない。それでも・・・!!」
「いいの、私を壊して。あなたの好きにして。めちゃくちゃにして・・・・!!」
この体に刻み込んでほしい。
あなたの全てを。
「ユメミ・・・!!」
少女の足の間に体を滑り込ませ、熱く滾った尖端を潤みきった秘所に宛がう。
そのまま一気に貫いた。
ずッ!!
「ああ!!」
少女は歓喜とも悲鳴ともつかぬ声を上げた。
愛しさを込めて。
「はっ・・くっ・・・!」
ムントは自身から伝わる痛みにも似た刺激に耐えた。
あまりにも強い快感。すぐに達してしまいそうだ。
一旦身を引き、再び穿つ。根元まで埋めて。
ずぶ・・ぐちゅぅ・・・・。
「あ・・はあ・・・んん・・・。」
少女は快感に身を捩じらせ、胸が悩ましく揺れた。
ずずっ、ずぶっ、ずぶちゅぅ、ずぷ、ずりゅう・・・。
「ユメミ・・ユメミ・・・!!」
「ああ・・、は、ムン・・ト、ムントぉ!!」
お互いの名を呼びながら快楽に身を委ねる。
ユメミの中は熱い。彼を締めつけ、からみつく。
ムントの自身は硬く、猛獣のようにユメミの中で暴れた。
「あ、熱いよムント!ムント・・の、とても熱い・・・!!」
「俺様も・・だ!お前が俺様にからみつい、て、う、ああ・・・・・!!!」
少女の両足を抱え上げ、更に深く、深く貫いた。
「あ・・恥ずか・・し、い、こんな、ああ!!」
「綺麗だユメミ!こんなに乱れて・・、もっと、もっと声を聞かせてくれ!!」
妖しい笑みを漏らし、ユメミを攻めたてるムント。もう止まらない。
「あん、ああん!う・・あっあ・・・、ああ、んん、はっあっ・・・!!」
動きはまだ止まない。彼が満足するまで。猛った赤黒い剣は、衰えを見せようとは
しなかった。
そんなにも私を求めてくれるの?
激しく腰を突き動かすムント。
嬉しい・・ムント様・・・。
気も狂わんばかりの快感に、少女は涙を流す。
彼の首に抱きつきながら。
ああ、どんなにこの日を待ち焦がれた事か。
これは夢・・・?それとも・・・。
「あああ!うう・・ああん!!あふぅ!!!」
ムントは捉えた唇を貪る。サクランボのような唇を吸う。
「あっ・・・!」
唇を離し、彼は体勢を変えた。ユメミを四つん這いにさせ、背後から貫く。
ずちゅっ、ざっぷ、ずぐちゅうっ、ずずっ、じゅょぶっ、!!
「あはあっ!ふっう・・ん、ああ!あふ!あああ!あん!!」
後ろからは初めてだが、すぐに慣れていく。愛液が滑りを良くし、少女
を悶えさせた。
ムントは右手で自分の体を支え、左手でユメミの胸に触れた。
「ユメミ・・こんなに乳首を硬くして・・・いけない娘、だな!感じて
いるの・・か!?」
「あ・・、いや!言わないで!!やだぁ!!」
「そんな娘、は、こうしてくれる!!!」
貫きながらユメミの敏感な実を摘み、捏ねくり回す。
「あう!あん!!」
ムントの汗がユメミの背中に滴る。
先ほどと変わらぬ妖笑と、魔性を秘めた微笑で。
白い肌を羞恥に染め、少女は色めきたつ。
残酷なまでに少女の中に眠る女を引きずり出す男の手によって。
「あう!あ・・」
ムントはユメミの体を起こし、後ろから貫いたまま互いに座るような格好
をとらせた。
ムントの顔が見えない。少し寂しい気がする。
彼の右手は少女の胸に、そして左手は繋がっている秘所へと伸ばす。
「こちらのも・・硬くなっている。可愛いよユメミ。この下もこんなに
濡れて・・・しっかり俺様を銜えて・・・・。」
「ああ、ムント・・・そんな事、口にしないで・・やだよぉ・・・・。」
嫌と言いながらも、少女はどこか背徳的な危険な気分に陥りそうになっていた。
再びムントが動き始めた。
「あ!はっ、ああん!!」
「ユメミ、どこを突いてほしいか言ってみろ!!」
「え・・あ・・、そ、そんな・・・!あああん!!!」
彼の手が、指が、少女の胸の可愛い実を摘み、擦る。
秘所に潜む芽を探りあて、摘み、引っ張り、押しつぶす。
「さあ、言うんだユメミ!!」
「わ、わかんない!言えないよぉっ、ムントぉ!!」
男によって少女の花が開く。女という花が。
ユメミはまだそれを知らない。
ムントの自身は確実に少女の気持ち良くなるところを突いていた。
ユメミはそれに気づき始める。
「どうだ・・ユメミ。俺様の・・・。いいだろう?」
熱い息を吐きながら、少女の耳元で甘く囁く。
「あ・・ム・・ント。」
蕩けるような目をし、音楽が響くような心地で彼の言葉を聴く。
「どこがいい?言ってごらん。」
荒い吐息と汗にまみれたムントの整った顔。赤い髪に汗の雫が滴って、男ながら
妖艶に見せた。
魔性の微笑みを湛えて。
「そ・・こ・・、右のほ・・う。」
「ん・・・?そこを?どうしてほしい?」
「うごい・・て・・・」
「聞こえないぞ。もっとはっきり・・・。」
「もっと・・・動いて!そこを強く突いてぇ!!」
少女の中の彼のものは、そこを目がけて動き出す。
熱く激しく、壊れるまで。
「ああ!いい、いいの!!そこよ・・ムントぉ!!」
「・・ぅ・・ここがいいのか、んっ・・・!」
愛しき人の締めつけに、ムントもまた快感を感じていた。
「そこ・・そこなの。ああ!!ムント様ぁ!!!」
「ユメミ、ユメミ!!俺様の・・可愛いユメミ!!!!」
二人を切り離せない部分から愛液が飛び散る。
ユメミは叫んだ。心から。光る涙を流して。
「ムント様・・愛して、愛しています!!あなたを、あなただけを・・・!!」
その言葉にムントの化身が硬さを増した。張り裂けんばかりに。
「ああ、ユメミ・・お前は・・・!!」
何故こんなにも愛おしい。
彼を愛の淵に落とし、狂わせ、虜にする。
どこまでも。
気持ちいい・・・。こんなの初めて・・・・・。
最初に彼に抱かれた時とは違うエクスタシーを感じていた。
犯されるような抱かれ方をされているのに、嫌じゃない。
寧ろ、もっとしてほしい。
ムントあなたの・・・。
「あっあっ!あああ!!」
意識が現実に引き戻される。
彼の激しい躍動によって。
「ユメミ・・出すぞ!俺様の想いをお前の中に・・・!!」
「ああ、ムント!ムント・・・!!」
彼の頭に左手を添える。
一際強く穿つ。
「あ!・・あああああ!!!」
「う、ううっ・・・・・・!!!!!」
ドクン。
ビクンと少女の美しい肢体が震えた。
繋がった場所から白い液と半透明の液が混ざり合って流れ出す。
二人の想いを一つにして。
「あ・・はあ、はあ・・・ん・・・。」
息を整え、ユメミは後ろのムントの方を振り向く。
ムントもまた荒い息を吐いていた。
「ムント・・・。」
ユメミへの愛しみと情欲に濡れたその面。
少女は艶かしい瞳で男を見つめる。濡れた葡萄のような唇をして。
彼は堪らず、少女の唇を奪っていた。
少女は男の頭にやった左手に少し力を入れて、自分に押し付けた。
この瞬間を逃すまいと。
ムントによって女になったユメミの、確かな成長であった。