すれたておつれす
4 :
あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:54:50 ID:FYMCzQNg
むこうが500KBになったのでこっちにきりのいいところまで落とします。
「え、あ!? か、川島さん!?」
いきなり? っていうか、もう?
ちょっと待って。この、本の壁の隙間でしかないような床の上は嫌だ。
それに電気も消して。
でも本当に気になるのは
「む、胸は……っ」
触られたら無いのがばれちゃう。
一回こっきりなんだから、せめていい思い出を残したい。
「ん?」
「あのっ。胸ってどうしても触らなきゃいけないものですか?」
触らずに済むならそうしてほしいんだけど。
がっかりされたくない。川島さんだってこんな胸触ったってきっと楽しくない。
「絶対、ってことはないと思うけど」
スウェットの下に入ってきていた川島さんの手が私の胸のあたりを覆った。
「ひゃんっ!」
背中が反る。
「痛い?」
首を振る。痛いわけじゃない。
「怖い?」
がっかりされるのが怖い。
指先に力が入った。ふつうならこれはきっと胸を揉む動作になるんだろうけど、私の場合、
そのあたりの脂肪に川島さんの指先がほんの少しめり込んだだけになった。
「ゃあ…っ」
それでも、その行為は気持ちよかった。
「いい反応だ」
川島さんは嬉しそうに顔をほころばせると、むにむにと指を動かす。
「あ、ああ…んっ、あ、や、う」
我ながら、やらしい声が出るなあ、とびっくりした。
こんな、おっぱいと呼んだらおっぱいに訴えられそうな容積の胸でも気持ちいいんだ。
ああでも川島さんはどうだろう。
楽しくないよね、こんなの。だって無いもの。肉が無いもの。
「ふ、は…っ、か、わしまさ…ん」
「なに?」
「やめ…、むね、や、ああああっ」
胸は嫌だって言おうとしたのに指の動きを早めたよ、この人!
なんだってこんなに気持ちいいんだろう。
ブラをしてなかったのが裏目に。いや、こうしたかったんだから表目?
ぺろりと首筋を舐められた。
「あああんっ!」
「なにをぼんやりしてるの? もっと激しいのが好き?」
「ひゃっ……、ち、違います」
こんなの夢の中でもあった。あったよ。舐められた。でも違う。全然違う。
舌の熱さが違う。柔らかさが違う。舐められた後の場所がひやりとする。
夢と全然違う。
「あ」
首の付け根に吸い付かれた。
びくっ、と体が動いた。
倒れないようになのか、川島さんの腕が背中を支えてくれた。もう片方の手は
まだ胸を触ったまま。
背中の方からもスウェットをまくり上げられる。
「ふあ…っ」
脱ぐんだろうか。自分で脱いだ方がいいんだろうか。
でも明るいところで自分から脱ぐのはなんかやだ。
それに、明るいところで裸になっちゃったら、薄いのもばれちゃう。
やっぱり子供だってバカにされちゃうかもしれない。そんなのいやだ。
5 :
あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:56:50 ID:FYMCzQNg
「結衣ちゃん」
優しい声で名前を呼ばれる。
「は、い」
私、だめだ。名前を呼ばれるのってだめだ。
川島さんの柔らかい低い声で名前を呼ばれると、すっごく気持ちがいい。
「脱いで」
「……はい」
なんでも言うこと聞いちゃいそう。
あかりがついたままの部屋で脱ぐなんて、すっごく恥ずかしいけど、こんなふうに言われたら
脱いじゃう。
スウェットを上下とも脱いでTシャツとパンツだけになる。
川島さんが顎でベッドを示した。
床でするのはやだな、って思ってたから私はちょっとほっとしてベッドに仰向けになった。
テキストファイルにして残り38KBです。長くて申し訳ないです。二時になるので今回はここまでということで。
GJ!
夢のエロもとても気持ちよさそうだったけど、やはり現実の肉と肉の絡みあいにはかなわない感じ
先が楽しみすぎる
>>5 アンタなんか
GJの山に埋もれちゃえばいいんだぁ!!
GJ!
現実のエロへの結衣ちゃんの恥じらいがたまらん
結末を早く読みたいが終わってしまうのも悲しくなるな
9 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:47:35 ID:Sla0XfGH
川島さんはトランクスだけになって私の上に覆い被さってきた。
またキスから始まる。
「ふ…っ」
すぐに舌が入ってくる。
絡めて、吸って、その間に手は互いの体をまさぐる。
硬い体。体重を支えてる腕の筋肉。広い背中。
夢の中でも想像して、薬のおかげで現実と思えるほど真に迫っていたけど、やっぱり本物は違った。
男の人の肌も案外すべすべしてるんだ。
背中を撫でながらそう感じた。
もっとざらざらしてたり、年齢的にちょっとぺたぺたしたりするのかな、って思ってた。
そしてすごく温かい。
川島さんの手がTシャツを胸の上までまくり上げる。
「きゃ…っ」
「かわいい声、出せるじゃない」
どういう意味だ。
「きみが思っている以上にきみは女の子なんだよ」
そう、だろうか?
「胸もずいぶん気にしてるみたいだけどね」
あああ! そうだ! ちょっ、見ないで! もう遅いような気もするけど、見ちゃだめ!
慌てて手で隠そうとしたら、その手を押さえつけられた。
「や…ぁっ」
またぞくっとした。
手を押さえつけられて抵抗できない状況ってなんか……。
「感じやすいし色も綺麗だし。こういうサイズが好きって人にはたまらないだろうね」
か、川島さんは?
私にはそういうサイズが好きな人よりも川島さんがどう思うかの方が重要なんだけど。
聞いていいものかどうかわからなくて、じいっと見つめると、川島さんは胸に顔を寄せた。
「あああっ!」
胸の上を川島さんの唇が滑る。
乾いた唇はさらさらしていて、気持ちがいい。
つうっと舌で舐められる。
「う、はぁ…んっ」
びくん、と背中が反った。互いにパンツしか身につけてない下半身が擦れあう。
「ひあっ、あああ」
体中がぞくぞくしてたまらない。
怖いのに、欲しい。
川島さんが欲しい。
ぎゅってしてほしい。
ちゅう、と音を立てて川島さんが胸を強く吸った。
「あ! あああっ! や、あ…っ」
離して、川島さんは満足げに私の胸を見た。
「僕の」
「え」
目を下にやる。
胸元に赤い円い跡があった。
そっか、キスマークってこうやって付けるんだ。
へんだな、って思ってたんだ。口紅を付けた女の人ならともかく、なんで男の人が、って
ずっと不思議だったんだ。
新しいことを知ってちょっと浮かれた顔を勘違いされたのか、
「もっと付けようか」
と川島さんは私の体の上にかがみ込んだ。
「え? え!? ああっ、あ、ああんっ! や。い、いっ」
吸い付けられ、ほんのちょっぴり痛みを感じる。
川島さんが離れる。
「ふは。あ、あ?」
場所を変えてまた吸い上げられる。
「や、やあっ! い…っ、きゃうぅ」
いやいやと首を振るけど逃げられない。
押さえつけられた手はそのままだし、川島さんの体は私よりも大きいし重たい。
10 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:48:29 ID:Sla0XfGH
下敷きになってる体を捩るけど、捩る内に太ももになんか違う感触がし始めた。
「結衣ちゃん」
「……は」
息をはいたような返事になった。
胸のあたりに赤い跡がいくつも散らばっている。なんかどす黒く見えるのまである。
「気持ちいいの?」
「え?」
「いや、腰振ってるから」
振っ……!?
「ちが、違いますっ! これは」
逃げようと。
逃げちゃだめなんじゃない? 自分から抱いてくれって言っておいて。
「そっか。でももう遅いからね」
どういう意味?
川島さんは、違う、と言った私を気にするふうでもなく、また顔を伏せてきた。
待って。待って。もうそれは――。
「ああああッ! あッ、アッ」
まだキスマークを付けられるのかと思っていたら胸の中心を咥えられて、それまでとは
比べものにならない何かが私を襲った。
「やあッ、いやあ、そ、れぇ……ひ、あ。あん、ああんっ」
口の中で柔らかな舌で転がされる。
胸の先端に一本なにか芯を突き刺されたような感じがする。その芯を川島さんが揺さぶる。
私の中はその芯でかき混ぜられたようになって、体が勝手に動いてしまう。
「あ、あー! あああ、んあっ」
怖い。
じくじくするようなこの感じが怖い。
夢の中はこんなじゃなかった。
それは私が知らなかったから。
もしも。もしも私が処女じゃなくてあの薬を使ったら、夢の中ではこれを感じたんだろうか。
そんなの、死んでしまう。
こんな夢毎晩見たら死んでしまう。
「ん、はぁんっ」
ちゅぱっ、と音を立てて川島さんは舌ではじくようにして私の乳首を離した。
「結衣ちゃん」
押さえつけられていた手を片方だけ足の方へ引き寄せようとする。
「わかる?」
「あ……」
トランクス越しに触ったそれは、硬くて熱かった。
川島さんの手に動かされるままにそれを上下にさする。先端があるあたりの布がじっとり濡れていた。
こんななんだ。
こんなふうになるんだ。
これが入ってくるんだ。
「やめておく? それとも」
初めて触るそれをとても愛おしく感じて、私は川島さんのそれをきゅっと掴んだ。
「う」
川島さんが呻く。
「やだ。川島さん、最後までしてくれるって言った」
最後まで。
夢では見られなかったその瞬間まで。
こうなっちゃった以上やめるなんて卑怯だ。
こんなものにまで、直にじゃないけど触っちゃったんだから、後はもう最後までまっしぐらでしょ。
ふ、と川島さんが息を吐いた。
「助かった。こっちにはやめる気なんてさらさら無い」
体を起こして、トランクスを脱ぐ。
うあ。
ちょっとソレは見ちゃいけない感じ。
目は瞑らない。
夢じゃないから、絶対目は開けたままでいる。
でも、やっぱり直接見るのは……。
11 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:49:26 ID:Sla0XfGH
川島さんの手が私のパンツにかかる。ずり下げられる。
あああ! 待って! ソコは見ないで!
「う、わ」
川島さんの驚いた声に、全身が煮えたように熱くなった。
だめだ。もうだめだ。っていうか、やっぱりだめだ。
「結衣ちゃん、ここ……」
「言わないで……っ」
子供みたいなのは自分でわかってる。
ふつうはもっと生えてるんだよね。ここを覆い隠して守るためなんだから、もっとしっかりあるんだよね。
こんな、ちょろちょろっと細い毛が申し訳ていどにあるようなの、ふつうじゃないよね。
涙のせいで視界が滲む。
「ひゃうっ!?」
熱い、柔らかい物を感じて目を下に向けた。
やだ! 嘘!
「や、やあっ! だめですッ、そんなとこ」
口を付けられてた。
くすりと笑うのが見えた。
舐められる。
「あ、あああっ」
「すごいね。さすがに敏感だ」
なんか……。川島さん、喜んでる?
確かにソコは敏感みたいだ。他のところとは比べものにならない感じ方をする。
何をされてるのか見えないのにわかる。
「あー、だめぇ…っ。きたないから…だ、め…ぁ、ふ」
くちゅくちゅと音をさせながら柔らかい唇と舌でそこを優しくもみくちゃにされる。
なんか、なんか……。
「っく! ああん! や、やああ」
勝手に腰が動く。
最後まで、ってお願いしたけど、これ必要なの?
股の間を中心に体がぐずぐずに溶けちゃいそうになった頃、やっと川島さんは口を離してくれた。
「諸々の責任、きっちり取るから心配しないで」
なんだか真面目な顔をして川島さんはそう言った。
「ん……っ」
川島さんの指が私のそこを弄る。
「んあ…っ! あ、あふっ」
やだ。なんかこれも気持ちいい。
濡れてたら大丈夫なんだよね。
私の体、ちゃんと女として機能してるんだよね。
これはさっきの川島さんの唾液とかじゃなく、私の、だよね。
くちゅっ、っていった。
「ああ…っん」
のけぞる。
体の中でぐじゅって音が聞こえた。
「んああ!」
なんか……っ、入ってきた……っ!
「痛い?」
ぶるぶると首を振る。
痛くない。変な感じがするけど痛くない。平気。
「少し動かすよ」
くちゅくちゅと音をさせて擦られる。
「あ、あっ? あ! あああ、んあ、あ、は…っ」
足の付け根に川島さんの手の甲が当たる。
今入ってるのって川島さんの指なんだ。
あの長くて綺麗な指が私の中に入ってる。
「ああ、ああんっ、あ、あ、はうぅ」
お尻のあたりがじんじんしてきた。
ぬるぬるして気持ちがいい。
なんか得体の知れないぬるぬるの夢も見たけど、あれはやっぱりオイルマッサージの
イメージでしかなかったんだと思う。だってあれはこんなすごい感じじゃなかった。
12 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:50:30 ID:Sla0XfGH
これはぬるぬるっていうか、にゅるにゅるだ。
「あああん! あ、う! んはぁ」
指が中で動かされる。擦られたり、く、って曲げられたりするたびにお尻から背中にかけてびくびくして、
それは初めてだけど初めてじゃなくて、怖いけどもっと欲しくて、言えないかわりに声が
どんどん高くいやらしくなっていく。
ゆっくりと指が引き抜かれた。
「ふ…はぁ」
川島さん。
川島さん、大好き。
手を伸ばす。
川島さんを迎えるように両手を広げて。
「初めてが痛いってのは知ってるね?」
その問いに頷く。
川島さんは背を丸めて、私の足の間に手を添えた。
ぬるん、と指とは違う、すべすべした熱いものがそこをかすめた。
「ん…っ」
夢じゃない。
夢じゃないから。
だから私はその瞬間も目を瞑らなかった。
ぐちゅ、と丸いもので栓をされたような感じがした。
でもそれは一瞬で、川島さんが私に覆い被さってきながら体重をかけると、そこはめりめりと
音を立てそうなくらい軋んだ。
「ア! あああ!!」
広がる。
切り開かれる。
割かれる。
熱くて硬いもので体を押される。
その感覚をどう表現したらいいのかわからない。
でもなんだか一瞬で全身に汗をかいたみたいというか、全身の毛穴が開いちゃった感じがした。
ずあっ、と音を立てて総毛立った感じ。
圧力って言葉を思い浮かべた。
それを私は自分の体で本当に感じた。夢じゃなく、現実で、本当に。
「あああああっ!」
ぐっ、とひときわ大きな部分が通り抜けていった。
そうして私と川島さんの体はぴったりくっついた。
「ふ、は…っ!」
「結衣ちゃん」
川島さんが私の目尻にキスをする。
「か、わしまさん」
川島さんの背中に回した手に力を入れる。
くっついたところから鼓動が伝わる。どくどく、ってすごくふつうの音がわずかな振動と一緒に伝わる頃には、
この世で一番素敵な音に聞こえる。
「痛いでしょう」
まだそうやって優しく聞くんだ。
首を振る。
「痛く、ないです」
違和感はある。体の中心にくさびを打ち込まれたような変な感じ。
でもそれは痛いのとは違う。
これを好きなのかどうかはわからないけど、川島さんが私の中にいるのは嬉しい。
「これで終わりじゃないのは知ってる?」
「知ってます。大丈夫」
動くんだよね。なんかよくわかんないけど、川島さんが動くんだよね。
私の『大丈夫』を、動いても大丈夫、と取ったんだろう。川島さんは上半身を少し起こして、私の足を掴んだ。
ぬるっと川島さんが中で動く。
「あ!」
こういうこと?
そう思った瞬間、川島さんが腰を引いた。
13 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:51:28 ID:Sla0XfGH
くっついていた部分が離れる。
川島さんが私から出て行く。
「うあ…」
やだ。やだやだ。行かないで。
何かがぎりぎりのところで引っかかった。
形的にそこが引っかかって止まるんだ、と気が付いたときには川島さんは私を押しつぶすように
しながらまた入ってきていた。
「あああんっ! あっ! あ、あっ」
すっごく苦しい。狭いところをムリヤリ広げられながら、擦られて、奥までごつん、って
ぶつけられる。
奥の方まで届いたら、そこでぐりぐりってされる。
「ふああっ」
それが繰り返される。
川島さんはすっかり体を起こしてしまっていて、抱きつこうにも抱きつけない。
すがるところがどこにもなくて、シーツをぎゅっと掴む。
「んっ! は、あっ」
少しずつ川島さんの動きが速くなる。
「やっ、やあ…っ! あ、あッ、あ、だめぇ…」
びくびくする。
何に例えていいのかわからない初めての感覚に体がびくびく震えてはねる。
ベッドがぎしぎし音を立てる。
「辛かったら」
「へ?」
「目を瞑っていいんだよ」
瞑るのが本当なんだろうか。
目を閉じた方がもっと感じると思う。
感じるのも大事だ。こんなこと私の人生できっと最初で最後だから、めいっぱい感じておきたい。
えっちな意味じゃなく、気持ちいいことも痛いことも感じることを全部覚えておきたい。
でもそれ以上に。
「見ておきたいんです」
川島さんがどんな顔で、どんなふうに、私に何をするのか。
覚えておきたい。
「そうなの?」
ちょっと変な顔をして川島さんは言うと、体を引いた。
股の間からずるりと抜け出ていく感触がした。
「ひゃ……」
「じゃあ、こっち」
手を引っ張られて起こされた。手を引かれたまま洗面所に連れて行かれた。
「あの……」
洗面所の鏡の前に正面を向いて立たされる。
貧相な裸だ。痩せてるわけじゃないのに、女の子っぽい感じが全然無い。柔らかそうって感じが
全くしない。
そしてその胸元にはさっき川島さんに付けられた跡があちこちに散ってる。
ふくらんでないからどれが本物だかわかりゃしないわ。って何の本物よ。
私より頭二つくらい大きい川島さんが後ろに立って、手をあばらに沿わせて動してきた。
「…ん」
ぐっと上に持ち上げられる。
でも全然肉はほとんど動かない。
だって無いんだもの。無い物を上に寄せられるわけがない。
川島さんの指は、むりやりかき集めたようなふくらみを守るように支えてむにゅむにゅと動いた。
「…っ、ん、ん は…」
なんで気持ちいいんだろう。
鏡の中で私の胸はなんにも動いてる感じがしない。ただ川島さんの指だけが私を触ってる。
それだけなのになんでこんなに気持ちがいいんだろう。
「ふあ…あ、あ」
鏡に映る私はすごく――いやらしかった。
眠いのとは違うとろんとした目をして、熱でも出したみたいに体じゅう赤くなってて、
触られてるのは胸だけなのに全身をよじって。
14 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:52:04 ID:Sla0XfGH
見てられない。
目を瞑るのは嫌だから、のけぞるようにして鏡から顔を背けた。
「ちゃんと見て」
耳元に川島さんが吹き込む。
「前を向いて」
「や、ぁ…」
だって。
だって、こんな。
「ちゃんと見ないのなら」
胸を支えていた指が少し緩んだと思った次の瞬間。
「ひッ! あ! ひゃ、う んっ! ア、やぁあ」
胸の中心を指先でぐりぐりって。
擦れて、潰されて、痛くて、なのに体が熱くなる。
変な声がいっぱい出る。
「やあ、あ、ああんっ! ん、んっ! んぁ」
勝手に体が左右にくねる。川島さんの体にお尻をこすりつけるように動いてしまう。
「ふああっ!」
ふ、と川島さんの手が片方はずれた。
「ひ…は……ぁう」
なに?
振り向くよりも正面を見た方が早い。
鏡に映った、まっすぐにこっちを見ている川島さんと目が合った。
「あ」
川島さんの手は私の足の間に伸びてきていた。
「…や」
足を閉じる暇もなく、川島さんの手が滑り込んだ。
「すごいね。ぐちょぐちょだ」
「や、だ。言わないでください……」
自分でわかってるから。
ぬるぬるとした液体をまとわりつかせて川島さんの手が動く。
「ふぁ」
びくん、と背中が反る。
反った背中に口づけられた。
「っ! は、あ」
そこを指先でかき分けられてるのが鏡に映る。
「やぁ、いやあ…ん」
「嫌なの?」
首を振る。
嫌じゃない。なのにどうして嫌って言っちゃうんだろう。
「じゃあ」
耳にかかった川島さんの息は妙に熱かった。
そこを弄る指先が、つうっと上に動いてきて。
「いッ! ア、アアアッ!」
つるりと何かを撫でられた。
全身に電気が走ったみたいにビリビリする。
「ヒ、あ あ、ア! ああ――」
涙がこぼれる。
川島さんの指がそこを掘り返すように動くたびに、体中が跳ねる。
息もできない。
前へ倒れそうになるのを、胸を触っていた腕が抱え込むように支えてくれた。
足の間に川島さんの膝が入ってくる。
膝の上に座らされるようにして持ち上げられた。
「ヤ、やぁン! な、に…? や、やぁ」
「よく見て。ここをこうするとね」
鏡の前に広げられた私のそこを隠す物は何にもない。
生まれて初めて見た、グロテスクな自分のそこを、川島さんの指はゆっくりとなぞって、
割れ目の始まるあたりでくるりと円を描くように動かした。
「ヒッ! ア!」
また電気が走る。
そこになにかある。
15 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:52:32 ID:Sla0XfGH
とろりと流れ落ちた液体が川島さんの膝に落ちる。
「見た?」
「ふ…はッ…… み、ました」
いい子だ、と膝から下ろされて頭を撫でられた。
洗面台に手をついて息を整える。
こわい。
知らないことだらけだ。
知ってるからあんな夢を見るんだと思ってた。
とんでもない。
あんな夢、子供だましだった。
現実はすごい。こんなことをするなんて思いもしなかった。
後ろから腰を掴まれた。
顔を上げる。
鏡に映った川島さんはちょっと微笑んで、私を引き寄せた。
「う、はぁ…っ!」
ぬちゃ、と音がして後ろから熱い硬い物が中に入り込んできた。
「は…っ、う、あぁ」
ずぶずぶと潜り込んでくる硬いものの感触。
うわあ……。
立ったまま後ろから……。
「あ、あ、あ…ふあ」
ベッドの上の時とまた違う。
奥までぶつかるのは一緒なんだけど、擦られ方とかが違う。背中の側を引っかけられるような
感じがする。
「あ、ゃあ ん! ん、んんぅ」
声を堪えようとしたら、くう、と喉が鳴った。
「かわいいね。いいの?」
川島さんの声が背中に落ちてくる。
「い、いい…」
気持ちいい。
相変わらず違和感ありまくりだけど気持ちいい。
川島さんが満足げな顔をするのが見えた。
腰を掴まれていた手に力が入る。
ぐっと引き寄せられ、押し戻された。
「ひ、あっ!?」
突き上げられる。
擦られる。
「あ、あっ! あ、や…あぁん!」
揺すられて、私の中を川島さんがずりゅずりゅ動く。
必死で洗面台に掴まった。
「ぃや…あ…っ! な、んか…っ! かわしまさ、んっ なんか…ッ」
足がひくひく痙攣して立っていられなくなる。
体の奥がぞくぞくする。
ああ、やだ。すごい。
「やッ、やああッ! あ、あーっ!」
ぞくぞくして震え続けていた体の奥の中心がきゅうっと縮んだ感じがした。
川島さんがまだ硬いままのを引き抜くと、ぬぷって音がした。
「ふ、は……」
「いけた?」
頭を撫でられながら聞かれた。
今のがそうだったんだろうか。
「たぶん」
そう返事をすると川島さんは苦笑した。
「よくわかんないか。初めてだしね」
そしてまた手を引っ張られた。
「あ」
膝から力が抜けて、かくん、と体が折れた。
16 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:53:14 ID:Sla0XfGH
「おっと」
川島さんがとっさに支えてくれる。
抱き上げられた。
「ひゃっ!?」
頬にキスをされた。
「ベッドに戻ろうね」
「はい」
よかった。
ベッドで横になるんだ、と思って安心した。
でもそれは甘かった。
川島さんは私を抱えたままベッドに横になると、私を、川島さんの身体をまたぐように座らせた。
「あ、れ?」
「見たいんだよね?」
にっこりと笑う川島さんがこわい。
なんか、勘違いされてないか。
「僕の上に手をついて腰を上げて」
言われたとおりにしてみると、四つんばいの変形のようなこれまた恥ずかしい姿勢になった。
「川島さん、これ」
「そのまま腰を下ろしてごらん」
川島さんの手にお尻を少し前へ押されながら少しずつ腰を下ろしていくと。
やっぱりだよ!
「や、あ、あの、これって」
足の間に川島さんのが当たった。
股の間を覗くと、川島さんは自分の手でちゃんと上向きにして支えてる。
「大丈夫。そのまま」
お尻をくっと押された。
「は……」
そっとおろす。
にゅる、とそこが滑った。
「そうそう。微調整は自分でするんだよ。大丈夫。心配ない」
微調整ってなんだ。
腰を前後に少し動かしてみる。
ああ、なるほどね。ここに入る……っ!
「はう…んッ!」
さっきまでは入れられるって感じが強かった。
私の中に入ってくる。潜り込んでくる。押し込まれる。
でもこれは。
私が。
私のそこが、川島さんを飲み込んでる。
「やあ…っ、こ、れ…っ」
すごく、いやらしい。
ぬ、ぬ、と抵抗を示しながら入ってくる。ううん。自分でそうなるように飲み込んでいく。
「やあんっ! んっ! んん…っ」
自分から、っていうのがすごく恥ずかしい。
「結衣ちゃん。ちゃんと見るんだよ」
「んんっ… え?」
「入っていくとこ。見てごらん」
もう一回股の間を覗いた。
「う、わ」
広げた足の間に川島さんのが……。
これ、一生覚えておく光景としてどうなんだろう。
いいんだろうか。
ごつん、と天井にぶつかった。
ここが限界だ。
「あれ?」
隙間が。
川島さんと私の間に隙間が。川島さんの上にぺたんって座れない。膝と腕で自分の体を
支えないとだめみたい。
17 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:53:46 ID:Sla0XfGH
えー? 予想外だ。だってさっきはぺったりくっついたのに。
くすりと川島さんが笑った。
ゆらゆらと腰を動かされる。
「あっ、や、やぁん」
奥で擦れて、そこから先がぬるんと。
「あ…っ」
がくんと下に落っこちた感じがした。川島さんの上に座れてる。
ふは、と息を吐いた。
よかった。やっと力が抜ける。自分の体を支えるのって結構大変だ。
それなのに川島さんは容赦なかった。
「動けそう?」
「動くんですか!?」
「そりゃこのままでいいならいいけど」
さっきまでは川島さんが動いてた。
この体勢だと私が動かないとだめなのか。
……どうやって?
「前後に動いてみる?」
ああ、なるほど。
言われるままに体ごと前後に揺らしてみた。
「ひゃ、っあ、ぁ」
また声が出た。
擦れる。
川島さんの位置は変わらない。だけどこうやって私が動くと、私と川島さんが繋がってる部分が
擦れる。さっき洗面所の鏡で見たアソコが、擦りあわせる内に剥き出しになって、
どろどろになってる液体にまみれた川島さんのそこと擦り合わさって、じんじんしてくる。
「ぁあ、あ…あふ んゃ…あ」
自分でコントロールできるからか、優しい刺激がすごく気持ちいい。
体がほかほかしてくる。
止められない。
どうやったらもっと気持ちよくなる? もっとぴったりくっついたらもっと擦れる?
私は上半身を少し倒して、いっそう川島さんに自分を擦りつけた。
「あ、あ…。い、イ…い。んは、あ…ん」
前後だけじゃ足りない。
ねちょねちょって音がするのも構わずに、ゆるく回転させるようになすりつけた。
「あああ…!」
また体の中心が熱くなってくる。
頭の中もどろどろに熱くなってる。
「いやらしい顔して」
川島さんの、笑いを含んだ声がした。
「ん、んっ」
私の腰を掴んでいた手が離れて、腕を掴まれた。
「あ。重い……ですよね?」
べったり体重かけて体を押しつけてることに今頃気が付いた。
「いや。そろそろ僕も動いていい?」
「は? ぅ、ああんッ!」
下から突き上げられた。
「いッ、い、た…ッ」
つっかえてるところを突き破られそうな痛みが走る。
なのに川島さんのがぬるぬると中を擦って上下するのが気持ちよくて腰を上げてしまうことが
できない。
腕を掴まれて、腰を跳ねさせる川島さんの動きに合わせて背をのけぞらせながら体を
弾ませる様子は端から見たら暴れ馬にムリヤリ乗せられてるみたいに見えるだろう。
「んッ! ん、ンッ! は、うあ…ッ ア、ア」
激しく鋭く突き上げられる。自分の意志で刺さりに行ってる。なんてエッチな……。
「ふぁ、あ、あん ン あ、ぁあん」
擦れてるところが熱い。中も外も熱い。
ああ、またくる。
「あ、ア! か、わしまさ…っ、また…っ!」
「また?」
18 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:54:55 ID:Sla0XfGH
荒い呼吸混じりに川島さんが聞いてきた。
「また…っ! あああ、きゅって…! キュってなる…っ!」
激しく動いて、暴力的な感じもするのに、体の中はなんだか切ない。
絞られているような、細かい浅い傷を付けられるような、そんな切ない痛さ。
「い…ッ くぅう ん!!」
背中をぎりぎりまで反らせて、そのきゅうってなる感じを全身で味わった。
腕を掴まれたままだったから後ろに倒れたりはしなかった。
「は… はっ…ぅ」
全力疾走した時みたいに息が上がってる。
川島さんが体を起こした。
「ぅあ…んっ!」
まだ繋がってる。川島さんはまだ私の中にがっちり食い込んでる。
向かい合って座った姿勢で、川島さんは私の体を抱きしめてくれた。
額に、こめかみに、そして唇にキスされる。
「…ん」
「もう少し平気?」
「え?」
川島さんは少し照れたような顔をしていた。
「大丈夫そうなら僕もそろそろいいかな」
――セックスってどうなったら『最後』なの?
私の返事を待たずに川島さんは私を一度持ち上げると、体を入れ替えた。
「ひゃっ!?」
ベッドに仰向けになる。最初と同じだ。違うのはすでに川島さんと繋がってるところ。
足の間は太ももまでべちょべちょだ。
にゅる、とまた擦れた。ううん。擦れるっていうのとは違う。だってもう引っかかりが無い。
ぴったりと隙間無く密着している部分が動くんだけれど、ぬるぬるした液体が間にあるから、
もぞもぞうねうねしてて……。
「ん、はぁ…んっ」
あれ? なんかもうすでに気持ちいい?
「か、わしまさ、ん… なんか…なんか… あぁ なんで?」
ゆっくりと川島さんが動く。
さっきみたいにめちゃくちゃに突き上げられてるわけじゃない。
なのに同じように体の奥が熱い。
「はうっ!? ん、あ、ああっ」
なんで!? 今、軽くだけどきゅってなった。
「あ、ン う、あ ぁあ…やぁ」
「いいよ。もっと感じて」
川島さんの動きが少しずつ速くなる。それだけじゃない。浅く突いたり、深いところまで
戻ってきたりして、全然予想できないところに痺れが走るから私の声も止まらなくなる。
「ああん、あ、あ…っ は、あんっ ゃ…あ、ふ…っあ」
高い丸い声は女の子のものだ。私のじゃない。
でも今私の口から出てる声は紛れもなく女の子のものだ。
ついっと川島さんの指が乳首に触れる。
「ひあ…っ!」
仰向けになったら私の胸はあるのかどうかほとんどわからない。でもその中心にある乳首は
小さいけど硬くふくらんでいて、川島さんのしっかりした大きな手で触れられると震える。
にちゃ、ぐちゅ、と音を立てながら浅く深く繋がりあう。
川島さんの顔が苦しそうにゆがむ。後ろへなでつけていた前髪がはらりと落ちて額にかかる。
「んんっ、んは…、あ、ふ」
動きに慣れてくる。
もっと、って欲張る気持ちが腰を揺らす。
「ゆ、い…っ」
絞り出すように川島さんが私を呼んだ。
初めて呼び捨てにされた。心が震える。
「か、わし…っ、あ、あああ! あ、や! それ、やぁああああ!」
返事をしようとして、それができないくらい川島さんの動きが激しくなる。
19 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:56:13 ID:Sla0XfGH
悠長に引き出していられないのか、奥に押しつけるような動きでごつごつ突き上げられる。
体が揺さぶられる。
「や、やっ! や! ひあ…ッ!」
股の間をべちべち叩かれるみたいに川島さんがぶつかってきて、なんだかそこが麻痺してくる。
それなのに中はぬるぬるが増えていくのがはっきり感じられる。
「あ、あアアア!」
目が眩む。
体がバラバラになりそう。
川島さんの体が倒れてくる。のけぞった背中の下に腕を入れられて、ぎゅっと抱きしめられる。
押しつぶされるみたいで苦しいのに気持ちいい。
私も川島さんの背に手を回す。
ああ、好き。
大好き。
「結衣、結衣」
繰り返し名前を呼んで、苦しいだろうに背を丸めてかがみ込んで川島さんは、届く範囲のあちこちに
キスしてくれながら私の中をかき回して突き上げて。
「ん、んっ! あ、ふあ」
唇を合わせる。
くちゅくちゅと舌を絡ませる。激しくて、口の端からよだれがたれた。
こんなに、体のあっちこっちでいろんなことが起こるんだ。すごく忙しい。体の外も中も気持ちよくて、
どこかひとつなんて追いかけていられない。
奥に押しつけられる。
出っ張った部分が私の中を擦りながら削るようにして出て行こうとする。
追いかけようとして体を動かすと、またその熱い塊はぬるぬると滑りながら私の中をいっぱいにする。
もっと。もっと。
川島さん、もっと。
わけもわからないで川島さんの体にしがみつく。手だけじゃ足りなくて、広げられた足を
川島さんの腰に巻き付けるようにしてしがみつく。私まるで木の枝にぶら下がる
ナマケモノみたいだ。
「は…ぅ、ふあ、あッ、あ」
キスをしながらじゃ、声を上げるのも呼吸をするのも苦しくて、涙がこぼれてくる。
「結衣…っ、いい?」
「ふあ、あ、あは…ぁっ! ゃ、あん、ん、ん、くっ」
何がいいんだかわからない。
でもこれは頷かなきゃいけないんだ、って思ったから、必死で何度も頷いた。
「うあ…っ、あ、あつ…っ!」
熱い。
足の間が急に。
っていうか川島さんが急に。
なんで。熱い。硬くて大きくて、すっごく熱い。
「や、やああぁぁぁっ!!!」
どくん、と川島さんのが中で跳ねた感じがした。
続けて二度三度とびくびく跳ねてる。
「あ……あ、はぁ…」
ああ、わかった。
川島さんも気持ちよくなってくれた、ってことだ。
すごくくたびれた気がしたけど、それよりもずっと、気持ちいい、って感じと、嬉しい、って感じの方が
大きかった。
汗でしっとりとした肌で抱き合うのは思ったほど嫌じゃなかった。
べたべたしてるのに、それが嬉しかった。
川島さんは私の首筋に、私は川島さんの肩口にそれぞれ顔を埋めていた。
荒くなった呼吸を整えようと深呼吸すると、川島さんのにおいがした。
背中に回していた手でそのあたりを触ってみる。
背中もぺたぺたしていて、思わず笑顔になった。適当じゃなく、ちゃんと抱いてくれたんだ、って
嬉しくなった。
「川島さん……」
「ん?」
20 :
あやしいバイト:2009/01/20(火) 20:57:22 ID:Sla0XfGH
「ありがとうございました」
夢じゃなくてよかった。
川島さんが相手でよかった。
最初で最後がこんなにすごくていいんだろうか。でも嬉しかった。
「明日は、家を探しに行こう」
「はい」
お別れだ。
新しい家を見つけて、そこまでは申し訳ないけどお世話になろう。
そしてさようならだ。
でも忘れない。
「結衣ちゃん」
また『ちゃん』付けに戻ってる。呼び捨ても最初で最後だったんだな。
「きみのことを教えて」
「私?」
「そう。どんな子供だった? お兄さんとは仲良かった? お父さんやお母さんは?」
なんでそんな事を聞きたいのかな。
もう何日もしないうちに、二度と会わない他人になる相手のことを知ってどうするのかな。
でも私は、川島さんの温かさを感じながら、さっきまでの激しさが嘘みたいな穏やかさの中でぽつりぽつりと話し始めた。
「ふつうの子でしたよ。兄ちゃんとはどうだろう。でも、兄ちゃんに連れられて兄ちゃんの友達と一緒に遊んでもらってたから多分仲は良かったんだと思う」
川島さんは私の上から退くと、すぐそばに横になって、うんうん、と頷きながら私の話を聞いてくれた。
「兄ちゃんはびっくりするくらい母に似てます。顔も性格も。私は父に似てしまった」
それを父さんはすごく気に病んでた。女の子なのにかわいそうに、って。
そうだ! 見ろ、父ちゃん! 私を、一回限りっていう条件付きとはいえ、女として扱ってくれた人はいたぞ!
「母が亡くなったのは私が十二の時で……」
抱き寄せられるように回されてる川島さんの腕の重みが気持ちよくて、川島さんの腕の中でこうやって起きて話をしているのもなんだかとても気持ちよくて、私はだんだん眠くなる。
寝たくない。
もったいない。
まだこうしていたい。
一回こっきりなのに。
眠ってしまったら終わる。
たとえさっきのことを反芻するように夢を見たとしても、それはもう嘘だ。
私は本当のことを知ってしまったから、夢は全部嘘だと気が付いてしまうだろう。
経験したことをなぞるように夢に見ても、それはきっとあんなに強烈じゃない。
思い出してるだけだ。
夢を見ていた日々は楽しかった。
でももう私はあの夢へは戻らない。
もっと大事な現実を教えてもらった。
目蓋が重くなる。
ぼんやりとした視界に川島さんの微笑んだ顔が見える。
頭が温かい。あの大きな手のひらでまた撫でてくれてるんだな。
大好きです。
やっぱり大好きです。
だからありがとうって言って笑ってお別れします。
あとはオチを残すのみ。本日ここまでです。
リアルタイム遭遇GJ!
エロいです!でも泣いてしまった…
終わりは淋しいけど続き楽しみにしてます
GJ!
心配してたけど、こんなに現実のエロが気持ちいいなら結衣ちゃんは薬に依存せずに
現実に帰ってこられるような気がする
エンディングをwktkしながら待ってます
GJ!
でも
ありがとうって言って笑ってお別れなんて切なすぎる
結衣ちゃん、可愛いすぎ
結末が楽しみでもあり不安でもあり…
まさに、夢から覚めないで状態←読者の立場
GJ!
読んでてマジで泣けてきた…
願わくは結衣ちゃんが幸せになれる結末を祈るばかりだ
それにしても結衣ちゃんは本気で可愛いな!!
GJ!
こんなにのめりこんでネット小説読んだのはひさしぶりなんだぜ…!
結衣ちゃんも川島さんもかわいいよ
エンディングをハンケチ握って待ってるからな!
超GJ!!
久々にハアハアした(;´Д`)゛
27 :
あやしいバイト:2009/01/22(木) 14:37:29 ID:qXtGfVCL
>>13 下から14行目
×動してきた。
○動かしてきた。
>>13 下から11行目
×でも全然肉はほとんど動かない。
○でも肉はほとんど動かない。
>>15 1行目
×とろりと流れ落ちた液体が川島さんの膝に落ちる。
○とろりと流れ落ちた液体が川島さんの膝に垂れる。
推敲不足が多くてすみません。
以下、ベタなオチです。
夢は見なかった。見たのかも知れないけど覚えていられなかった。
薬の効果がそんなに簡単に消えるのかどうかわからないけど、それでよかったと思う。
あれを夢で見たらたまらない。
伸びをしようとした体が動かせなかった。
「川島さん」
また抱き枕にされてる。もう私が逃げたところでどうだっていいと思うんだけど。
しかもそれまでと違って、足まで絡み合ってる。素足で。肌が。ああもう。忘れなきゃいけないのに。
「ん? ああ、おはよう」
おはよう、じゃないよ。でも朝だしなあ。
「おはようございます」
「体、平気? 腹減ったろ?」
それまでずっと優しい丁寧な口調だったから、ぞんざいな言い方にちょっと驚いた。
いえ、と言おうとしたら先にお腹が、ぐう、と返事をした。
「ほぼ二日食べてないからね」
川島さんは笑って言うと起きあがった。
「体が大丈夫なら出かける準備して。メシの後不動産屋に行くから」
「は、い」
そう。
そうだよね。
早い方がいいよね。
起きあがったけど股の間はおそろしいほどぬるついてるわ、太ももやお尻はそれが乾いてカピカピだわ
で、まずお風呂、になった。
24時間営業のファミレスで朝ご飯の後、川島さんは大学へ行った。
「ちょっとここで待ってて」
事務室へと入っていく川島さんを正面玄関で待つ。
実験って名目で川島さんは一週間近く私と一緒だった。
仕事してない、ってことになる――んだろうなあ。出社、じゃないけど、出勤してないんだもんな。
クビになったりしないかな。大丈夫かな。
私は廊下をのぞき込んでみた。事務室のドアはぴたりと閉められていて中の様子はわからない。
事務室って言ったってもともと大きな大学だ。高校の職員室なんかよりずっと広いのかも。だって
廊下には他のドアが見あたらない。
しばらくして川島さんは大学ノートよりも一回り大きい茶色の封筒を持って出てきた。
「お待たせ。さて部屋探しだ」
「はい」
ところが。
川島さんは迷いもせずに入って行った不動産屋で
「今日はどうされました?」
と聞かれ、
「手頃な物件の空きはあるかな。最低でも2DK。本が多いからしっかりした作りのところがいい。
少々古くても構わないから」
と返した。
不動産屋さんの問いも変だと思うけど、川島さんも唐突だ。でも、
「本が。ああ、では川島様のお引っ越しですね」
と不動産屋さんは言う。
28 :
あやしいバイト:2009/01/22(木) 14:38:34 ID:qXtGfVCL
川島さん、名乗ったっけ? 知り合い? でもそれ以前に私の部屋探しで来たんじゃないの?
「本ですか?」
横からそう聞くと川島さんは私の方を向いて言った。
「本だよ。きみもあの部屋は見たでしょう。世間一般ではあの量は多いって言うんだよ」
「川島さんも引っ越すんですか?」
「は?」
川島さんがきょとんとした。
「いや、だって、私の部屋探しですよね?」
ああ、と川島さんは言った。
「きみの、って言うか、僕らの」
「はい!?」
意味を聞こうとしたけど、不動産屋さんの
「大学から少し離れますが空きが出てます」
という声で遮られた。
この不動産屋さんは川島さんの職業も把握してるらしい。
「遠いのは面倒だな」
「マンションに限定しなければあるんですが」
不動産屋さんは学校の、っていうか、大学のある地名を続けて言った。
川島さんが一瞬顔を曇らせる。
「それ、アレだよね」
「……はい」
不動産屋さんのためらいがちの答えに、川島さんは眉をひそめた。
「それ、僕が借りるとなると当然親父に話が行くよね」
「はい……」
くそ、と口の中で悪態をついて川島さんは頭を掻いた。
「僕じゃなくてこの子が借りる場合はどうだろう?」
不動産屋さんはちらりと私を見た。営業用の笑顔だけど値踏みをされてるくらいのことは
私だってわかる。
「保証人様は」
「僕が」
ああ、と不動産屋さんは溜息のように困った声を漏らした。
「当方としては川島様が保証人になってくださるのなら不都合はないのですが、契約書は
お父様の元へお送りしますので」
「一緒か」
今度は、ちっ、と舌打ちをした。
初めて見る、ちょっと乱暴そうな川島さんの様子にびっくりだ。会話の内容にもびっくりだけど。
なんでここで川島さんのお父さんの話が出てくるんだろう?
この不動産屋って、馴染みどころの関係じゃなくない?
「じゃ、いい。僕の名前で契約する」
諦めたように川島さんは言った。
「親父からの干渉は諦めないとだめだな」
溜息混じりに肩を落としてる。
「今のお住まいはどうします?」
「戻る予定はないから、退去後は他の部屋と同じように借り手を捜してもらって構わない」
「はい」
「結衣ちゃん」
「はい」
完全に置いてけぼりで話が進んでると思ってたら、やっと川島さんが私に話を振った。
「一軒家って好き?」
「へ?」
「ああ、いい」
ひらひらと川島さんは手を振ると、不動産屋さんの持ってきた書類に記入しながら、
引っ越しの段取りも相談し始めた。
家に戻るなり川島さんはパソコンを置いている小さな机の上のものを少しだけ避けて、
その周辺の本も別の本の山に積み上げて
「座って」
と言った。
やろうと思えば座る場所は作れるんじゃん、と思ったけど、そこは黙って座る。
29 :
あやしいバイト:2009/01/22(木) 14:39:46 ID:qXtGfVCL
どこに何があるか持ち主本人だけは把握してる、っていうやつだわ、きっと。
川島さんは今日一日持ち歩いていた茶封筒から書類を出しながら言った。
「まず確認しておきたいことがある。きみは学校に行きたいか?」
「は?」
「うちに受かったって言ってたでしょ。確認してみたら入学手付け金までは払ってあった」
払ってある!? 誰が払ったんだ。父さんか? 兄ちゃんか? そんな金、うちにあったのか?
「まだ間に合う。入学手続きをすれば通学できる。大学に行きたいか?」
そんな確認をしてくれてたのか。さすが大学職員だ。
大学、行きたい。
みんな行くから、じゃなく、大学に行って学べることがある、って思ってたからうちが苦しいのも
わかってて受験した。父さんも、今時四大出てないと仕事も無いだろう、って応援してくれた。
そんな立派な頭はしてないけど、せっかく受かったんだし、行けるのなら行きたい。
でも。
私にお金は無い。
不動産屋での川島さんの言葉も疑問のままだけど、まさかそんな、ね。
だから今朝決心したとおり、私はどこか住むところを見つけて働かなきゃ。
大学に行く余裕なんて無い。
無いんだけど。
「行きたそうだね」
はっと顔を上げる。
うつむいてぎゅっと手を握りしめて、ぐるぐる同じ事を考えてた私の顔をのぞき込んで、川島さんは
柔らかく笑ってた。
「なら行きなさい」
無理だ。川島さんからもらったバイト料じゃ入学金で終わってしまう。バイトを探したとしても、
生活できるかどうかさえ定かじゃないのに授業料まで稼ぎだせるはずがない。
定職に就いてる大の大人がうちには二人もいたのに家計は崩壊した。ついでに家族って単位も
崩壊した。
何ができるのかもわからない私が、一人でなんとかできるわけがない。
簡単に『行きなさい』って言われても困る。
「金なら心配しなくていい。幸い僕はきみ一人養って、学校にやるくらいできる」
すげぇ!
口が悪くなった。
でも本当にそう思った。すごい、じゃなく、すげぇ。
バイト料に100万もらったときも思ったけど、この人どれだけ稼いでるんだろう。
よしんば自分とは別の人間を養いながら大学にやれたとしても、それを赤の他人に対して
本当に実行する人がどこにいるだろうか。
すげぇ。
「でも……お金を出してもらう理由はどこにも無いです」
無いはずだ。
川島さんは一瞬眉を寄せて凶悪な顔になった。それから何かに思い当たったみたいに、
深い溜息をついた。
「結衣ちゃん。きみ、昨日の夜僕になんて言ったか自分で覚えてる?」
「え? だ、抱いてって……」
「それはそうだけど! そっちじゃなくて『責任とれ』って言ったでしょう」
「ああ」
言いました。確かに。
「って、ええ!?」
いや、言ったよ。でもそれは、薬を飲んでへんな夢を見るくらい川島さんを欲しくなっちゃった
私の気持ちをなんとかして、って意味で、それもどうかと思うけど、でもその責任はもう川島さんは
取ってくれた。
一回でいいから、っていう私の願いを聞いてくれて、川島さんも『その方が楽』って言って、
私の夢は夢では終わらずにそれを上回る現実になった。
バイトは終わった。私の気持ちとしてはまだ未練があるけど、それは断ち切らなきゃいけないものだ。
責任は果たしてもらった。
後はもうお別れだけだ。
「そうだな、たとえばね」
川島さんは前髪をぐいとかきあげて後ろへ流した。
白い額が出るとそれだけでもうかっこいい。
――やだな。全然断ち切れてないじゃん。
30 :
あやしいバイト:2009/01/22(木) 14:41:09 ID:qXtGfVCL
「実験と称してきみは薬を飲みました。何をするのかよくわかってない薬です。僕には、
その薬の効果が抜けるのを見届ける責任があります」
ぎょっとして思わず叫んでしまった。
「やっぱりそういうヤバい系の薬なんですか!?」
「だからたとえばって言ったでしょう。薬の話は嘘とも言ったはずだよ」
いや、そこはどうにもまだ信じられないから。
目を細めて、うさんくさいものを見るように川島さんを見つめると、川島さんは苦笑した。
「それはともかくとしても、そういう責任が発生する可能性があるのはわかる?」
「まあ」
不承不承頷いた。
「とすると、僕はきみを近くで観察する必要があるわけ」
「はあ」
「一緒に暮らすのが一番手っ取り早いと思わない?」
「思わないですよ!」
なんだ、そのトンデモ理論は。
だって、一緒にいちゃいけない。
最初で最後、って思った。人生で一度きり、って覚悟した。
それに見合った、ううん、それ以上のものをもらった。
だからこれ以上を望んじゃいけない。
一緒にいたらどうしたって望むようになる。
「薬の効果がどのくらいで切れるのかわからないしねえ」
川島さんは妙な笑顔で言った。にやにやしてる。
「やっぱり変な薬なんじゃないですか」
「違うって。ああいや。そう、ってことにしたほうが話が早いな。そう。変な薬だったので
きみを一人にするわけにはいかない。これならどう」
「どう、って」
それでもだめだ。
観察目的、ってことで近くにいる理由にはなるかもしれないけど、一緒に暮らしたり、
お金を出してもらう理由にはならない。
川島さんの好意はありがたいけど――。
「あのな」
ぐずぐず考えてたせいか、急に川島さんは怖い声を出した。
「きみにあれこれ考える余地はないぞ」
出会ってからまだ五日? 六日? ずっと一緒にいたけど、こんな川島さんを見たのは初めてだ。
豹変、ってこういうときに使うんだ。
「入学の手続きをしなさい。面倒は見る。心配するな」
有無を言わさぬ力強さで言って、川島さんは書類を私の方へ押しやった。
こういう書類って基本的に再発行不可だよね。どうしたんだろう、これ。
「金持ちは別に偉くなんかない」
川島さんはあぐらをやめて膝を立てた。あぐらのほうが楽そうに見えるのに、この人は
こういう体操座りの方が楽なんだろうか。
「確かに金で解決できる問題は多い。だから金はあった方がいい。でもただ貯め込んでる金に
価値はない。使うべき時に使う、役に立つ、だからこそ金に価値が生まれる」
それは持ってる人の理論だ。
持ってるから『使うべき時』に出せるんじゃないか。
「僕がきみに対して金を使うことに関してきみは何も気にすることはない。
僕がそうしたいと思うからするんだ。それとも迷惑か?」
「迷惑だなんて」
ありがたすぎて、どうしたらいいのかわからない。この話を受けていいのかわからない。
ぶっちゃけると、私だけがそんな幸運に恵まれていいんだろうか、って思ってしまう。
小心者なのもあるけど、父さんは全部捨てて私たちの前から姿を消さなきゃいけなかったし、
兄ちゃんは……。兄ちゃんはいいか。あれは多分幸せだ。父さんに対してちょっと後ろめたい。
それに、こんな幸せが来た後の反動ですっごい不幸になっても困る。
いや待てよ。家族の解散がすでにすっごい不幸で、その反動で今の幸せ……?
「そんなことをしていただく関係じゃない……」
言ってる途中で羽交い締めにされた。
「くっ、くるし……! 川島さんっ!」
「とっくにそういう『カンケイ』ですよ、僕らは」
31 :
あやしいバイト:2009/01/22(木) 14:43:17 ID:qXtGfVCL
言葉は丁寧なものに戻ったけど、声が怖いままだ。
「そんなことは」
ない。ないはずだ。
一回だけの。たった一回だけの私の。
「あるんだよ。こっちが必死の思いで食い止めようとしたのに、何度も抱いてと言われて
限界突破したんだ」
「へ?」
あ。間抜けな声が出た。
「あんな姿を見て、あんな声を聞いて、それで手放せるわけないだろ」
えええ?
確かにちょっとアレな、あられもない姿をさらしたとは思うけど。
なに、これ。私、まだ夢見てるの?
「好きだのなんだのと言うのなら、ああいうときは名前を呼ぶものだ」
川島さんはそう言ってメガネを外した。
顔が近づいてくる。
「それとも僕の名前を知らないか?」
知ってる。
一回しか聞かなかったけど知ってる。
いつの間にか心の中に大事に刻み込んだ。
「これでもまだきみは、金を出してもらう理由がない、なんて言うのか?」
「う……。あ」
唇が触れそうで触れない。
なんで。
こんなこと言われたら、されたら、私の気持ちはそっちに傾いちゃうよ。
諦めたり忘れたりできなくなっちゃうよ。
「僕とおいで。夢なんか要らない、って思えるような現実を教えてやる。きみを幸せにしてやる。
だから」
川島さんは顔をずらして頬にキスをした。唇はそこから横にずれてきて、耳たぶをきゅっと
軽く噛まれた。
「んっ」
夢ではありえない感じに、びくん、と背中が反る。
「だから僕を幸せにしてくれ」
ゆっくりと川島さんが離れていく。その顔は真っ赤だ。
なんだ、この四十歳。いや違った。三十八歳。
なんだってこんなかわいらしいんだ。
後から、これも嘘でした、なんて言っても聞かないからね。知らないからね。
今わかったけど、私、すっごく諦め悪いんだからね。
「は、い」
ちゃんと返事をしようと思ったのに、喉が詰まったみたいになって、目の奥も熱くなって声が震えた。
「はい。義章さん」
ほっとしたような表情で川島さんが手をさしのべてくる。
「結衣、おいで」
その手を掴む。腕の中に抱きとめられる。
顔を上げたのと、川島さんがかがむようにして私の上に被さってきたのとが同時だった。
もう目を瞑っても怖くない。
これは消えない。夢じゃない。
合わせた唇はすぐに勢いを増して、私たちは本の壁の隙間にもつれるように倒れ込んだ。
おわり。
書いてる内に欲が出て、この二人の「この後」を書きたいがためにオチが冗長になりました。
この長さに付き合ってくださった住人の皆様に感謝。
ヒャッハー!投下が来たぜ!
これでシリーズ完結かと思うと寂しいぜ
GJ!
ひゃっほう!またリアルタイム遭遇GJ!(閑人ですまないorz)
そうなればいいなあ、でも違ったらどうし(ryだったので一安心して眠れるよ…
ラスト幸せにしてくれてありがとう
とうとう終わっちゃったか……。
最終回甘くておもしろかった。見届けられて嬉しいGJ!
結衣タンが幸せになったー!!
理想通りの結末で安心で嬉しい!
是非とも後日談を書いて欲しいです
素晴らしい作品をありがとう!GJ!!
超GJ!
今か今かと続きを待ち遠しく思いながら読んでました。
もう結衣ちゃんも川島さんも大好きだー!
続編(あります…よね?)も、何時まででも待ってます!!
GJでしたー!
川島さん、初めに結衣ちゃんを抱き枕していた頃から実は萌えてたってこと?
三十八歳で紳士的なオレ様で、実は少年のように萌え萌えだったってこと?
川島さんの正体も含めいつの日か告白させたい展開でしたw
>>31 乙&GJ!
ハッピーエンドは良いね、すっとした!
良作をありがとう
GJ! いいハッピーエンドだ
川島さん目線のこの物語も読んでみたくなった
夢見てる結衣ちゃんを見て悶々としてたのかな
お疲れ様でした。そしてありがとう
やっぱりハッピーエンドが一番温かくなれるね
GJ&お疲れ様でした。川島さんが一番デレてるww
GJ&お疲れさま
すごく良かった。二人とも幸せでいいな…ニヤニヤが止まらんw
川島さんはいつから結衣ちゃんが好きだったんだろう?
川島さん視点も読んでみたいです
42 :
あやしいバイト:2009/01/23(金) 00:00:05 ID:qXtGfVCL
書き手がでしゃばるのはいかんと言われますが最後にもう一回だけ。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
もともと1スレ目の埋め手伝いのつもりだったのに予想外に長くなって
スレをまたぎにまたいでしまい、大変ご迷惑をおかけしました。
ほかの職人様の投下の邪魔をしていたかと思います。
改めてお詫び申し上げます。
「困ってる女の子」は「金の力」で助かった(と思う)ので、二人のこの後は
別スレへの移動になるかと思いますが、ご縁があったらまたいつかどこかで。
本当にありがとうございました。
43 :
保管庫作成者:2009/01/23(金) 01:20:17 ID:wGHTocIj
別スレに移動された暁には、このスレか、
あるいは保管庫連絡先宛、お知らせください。
さりげなく告知いたしますので。
>>42 リアルタイムでは読めなかったけどGJ!
そんなこといわずにこのスレに憑いてくださいよっ(
こんばんは。
幸福姉妹物語 第6話を投下します。
ここでお詫びとご注意を。
本来、この6話で終わる予定でしたが、
プロットの半分あたりを消化した時点で容量が100KBを越えたため、
もう1話増やす事にしました。
構成を甘く見ていました… すみません。
あと注意ですが、
今回、そんなに注意する性描写は無いはずです。
むしろエロが薄いのが申し訳ないです。
それでは投下します。
終わりは一本の電話から始まった。
滅多に鳴らない三田家の電話が呼び鈴を鳴らす。
清香が家事の手を休めて電話を取ろうとすると、6コール目ぐらいで音が止んだ。恐らく、三田が部屋で子機を取ったのだろう。
7月の旅行から帰って2週間。文はまだまだ夏休みで、今日は学校の友達と遊びに行っている。清香も誘われていたが、あのA、B、Cの相手をするのは避けたかった。
(私って、そんなに老けて見えるのかしら…?)
春先の運動会を思い出して、清香は憂鬱な表情になった。どういうわけか文の友達3人(特にA)は、自分のことを『お姉さま』と呼んで慕っているのだ。
慕ってくれる事自体は嬉しいのだが、若いパワーが波状攻撃で攻めてくるとどうにも気疲れしてしまう。さらには初対面で二十歳以上と勘違いされたのも、会いたくない理由の1つだ。
(夫婦に間違われるのは良いんだけど…… あら?)
清香が1人アンニュイなため息を漏らしていると、コードレス電話の親機がカチカチと通話中のランプを付けているのに気付いた。
三田の電話は簡潔で短い。いつもなら数分で切ってしまうのに、今日はいやに長かった。
(お茶を持って行ったほうがいいかしら…?)
こういった気配りは、奴隷としても家人としても欠かす事が出来ない。
清香は思い立つと、せがんで買ってもらったカートに茶道具一式を積みこんで三田の部屋の前に立った。いつも通りノックをして返事を待たずにドアを開けると、深々とお辞儀をして挨拶をした。
「旦那さま、お茶をお持ちしました…」
「ふざけないで下さい!」
いきなりの怒声を浴びせられて、清香はびくんと身体を震わせた。最近はとんと聞いていなかった怒声だけに、過剰に身体が反応してしてしまった。
「す、すみません…!」
慌てて土下座をしたが、三田からの反応が無い。恐る恐る顔を上げてみると、三田は清香を見てはいなかった。
「…あら?」
清香は身体を起こして目をパチクリさせた。よく見ると、三田は口に当てた電話口に怒鳴っている。
「証明? ええ、あなたがそう言うのなら本物でしょう。しかし、私はじいさんから何の話も聞いていないし、遺言状にも相続書にも何も記載されていなかった!
…ええ、ええ、別に金に困ってはいませんよ。たった一人の親族? それがふざけているというんです! 遠縁を辿れば、あなただって親族でしょうが!
…6親等? それは単に法律上で…
…はぁ、この家に!? 困ります! 今はそちらに居るんでしょう? それでしたら私が出向きます。わざわざご足労頂かなくて結構です!
…別にムキになってはいませんよ。…はい、明日伺います。…はい、詳しい時間は後ほどお伝えしますので。…はい、失礼します」
そう言うと、三田はかなり大きなため息を吐いて電話を切った。そして戸口の清香に目をやると「お茶をくれ、喉がカラカラだ…」と疲れた声で言った。
「は、はい、ただいま!」
清香は弾かれたように立ち上がり、手早くお茶を淹れるとそっと三田に差し出した。三田は一口啜るとため息を吐いた。
「ふぅ、少しは落ち着いた… ありがとう清香、気が利くな」
そう言って、三田は清香を、ちょいちょい、と手招きした。嬉しそうに駆け寄る清香を膝に乗せると、軽くキスをして頭を撫ぜてやった。
「…嬉しいです」
幸せそうな顔でうっとりとした声を出すと、清香は胸いっぱいに三田の匂いを吸い込んだ。
嗅ぎ慣れた、けれども全然飽きない男くさい匂いに、清香の中心が、じゅん、と潤む。
(あ… いけない…)
それを感じた清香は、名残惜しそうに三田の膝の上から降りた。これ以上座っていると、三田のズボンに恥ずかしいシミを付けてしまう。
「旦那さま… ご奉仕しても良いですか…?」
膝から離れる代わりに、清香は三田の股間に股間に顔を埋めて言った。
「ああ、頼む…」
相当に疲れたらしい三田が投げやりに言うと、清香は改めて「失礼します…」と言って、丁寧にペニスを取り出すと一気に口に咥えた。
男性器の生臭い臭いが鼻孔を貫くが、清香には快楽を加速させるだけだ。
「ぢゅぱ、ぢゅぱ… ぢゅぅぅ…」
尿の残滓や恥垢を丹念に舐め取ってから、清香は口唇を使ってペニスをしごき始めた。
初めに比べると、清香もずいぶんとフェラチオが上達した。流石に、文のようにおっきいおっぱいを使ってのパイズリや、喉の奥でしごいたりする大技は無理だったが、それでも手や舌を一生懸命使う事で三田に合格点を貰っていた。
「ちゅ、ちゅぅ。はぁ、どうですか、旦那さま?」
「…ああ、気持ち良い。上手くなったな」
三田が目を閉じて脱力した様に答えた。
いつもならば嬉しい反応なのだが、どうにも今日は三田の様子が違っていた。気持ち良いのは確かだろうが、処理できないストレスに思い悩んでいる風だった。
「………」
あまりに三田が元気が無いので、清香は思い切った行動にでることにした。
「旦那さま、不愉快な事があるのならば、私の身体を苛めてください。痛めつけて、嬲って、辱めてください。どんな責めも、浅ましい奴隷の私にはご褒美です。だから、元気をだしてください」
切実に訴える清香に、三田は一瞬驚いた表情をしたが、次の瞬間には笑って清香の頭を撫ぜた。
「大丈夫だ、そんなに気を使うな。今の奉仕で充分気が楽になっている。さあ、続けてくれ」
そう促されて、清香は多少不安に思いながらもフェラチオを続けた。
三田は一生懸命フェラチオを続ける清香の頭を撫ぜると「そのまま聞いてくれ」と話を始めた。
「前に、文の担任教師が家に来たとき、私が言った嘘を覚えているか?」
口はペニスで塞がっているので、清香は目線で頷いて答えた。
もちろん、自分が奥さんと間違われたときの事だから忘れては居ない。あの時、三田は姉妹の身分を詐称するために、自分には姉が居ると嘘を吐いたのだ。
「あれな、嘘から出た真と言うか、本当の事になるかもしれん」
「うぐっ!? …ぷはっ 本当ですか?」
驚いた清香は、口からペニスを離して尋ねた。三田は肉親が居ない天涯孤独の身と聞いていたから普通に驚きだった。
「本当、になるかもしれん。まだ、わからん。だから、明日確かめに行く事にした。少し遠い所だから1日では戻って来れないと思う。お前たちは留守番をしておいてくれ」
そう言って三田は、ちょいちょい、と人差し指を軽く動かした。その仕草に清香は嬉しそうに頷くと、股間のカットバンを剥がして、座っている三田の腰に跨ぐように腰掛けた。
くちゅり、と音を立ててヴァギナがあっさりとペニスを呑み込んた。まるで股間に目がついているかのような自然な動作だ。
「あ、はぁ… きもちいい…」
体奥まで深々とペニスが突き刺さるこの体位を、清香はかなり気に入っている。動かなくても清香の性感帯である子宮口が突かれるし、なによ三田と真正面で向き合えるのが嬉しいのだ。
「私のじいさんが去年死んだのは知っているな? どうもそのじいさんに隠し子が居たらしい。私の父の異母姉妹で、私にとっては叔母にあたる人物だな」
「それじゃ、その人が…?」
清香の問いに、三田はゆっくりと首を振った。
「いや、違う。この連絡をくれた人が言うには、現れたのはその叔母の娘らしい。年齢は20歳で大学生だそうだ」
「あれ? 叔母さんはどうしたんですか?」
「今年の6月に死んだらしい。それで死ぬ間際に自分の出生のことを話して『後の事は三田家に面倒を見てもらうように』と言い遺したらしい。まったく…」
またも三田は大きなため息を吐いた。清香は急に胸騒ぎがして、甘えるように三田の首筋に顔を埋めた。
「どうした?」
「い、いえ…」
「そうか… 伝えてきたのはじいさんの部下だった河合という老人で、信頼のできる人だ。真面目というか、律儀というか、とにかく筋を通したがる人でな。今はその人の所に厄介になっているそうだ」
「………」
清香は無言で腰を振り始めた。こみ上げてくる不安をどうにかして消したくて、必死に腰を動かした。
三田も清香の心の動揺を感じ取ったが、深くは追求しなかった。
「まぁ、詳しい事は明日聞いてくる。多少、じいさんの遺産を分捕られるかもしれないが、どうと言う事は無い。私たちの暮らしが無くなる事はないさ」
三田はそう言うと、清香の腰をしっかりと抱いて立ち上がると、くるりと振り返って清香を椅子の上に座らせた。
「だから、安心していい声で啼いてくれ…」
そう言って、三田は激しく腰を動かし始めた。快感に明滅する意識の中、清香はどうしても胸騒ぎを消す事が出来なかった。
翌日、朝から三田は車に乗って出かけて行った。三田は清香に家の鍵やら戸締りやらをしっかりと言伝た。
「そうそう、居ないからといって、私の部屋には勝手に入るなよ」
細々と指示を出してから、三田は姉妹を残して屋敷を出た。
特に部屋に入るなと言ったのは、出発直前に配達されたファイルが机の上に有るからだ。
それは、姉妹の母親に関する調査報告書だった。三田は旅行から帰って、直ぐに母親の調査を頼んだ。まだ中身は見ていないが、その中には姉妹と母親の離別の真相も、詳しく書かれているはずだ。
「隠している事を知ったら、あいつらは怒るだろうか…」
もちろん、怒るに決まっている、当たり前の事だ。三田はそう思い込むと、陰鬱な考えを振り払うようにアクセルを強く踏み込んだ。
その日の昼過ぎ、三田はとある地方都市に到着した。そこに河合の事務所はある。
懐かしい風景を眺めながら、三田は車を駐車場に乗り入れた。若い頃に散々通い慣れた階段を登ると『三田法務事務所』という文字が印刷されたドアを開いた。
「…こんにちは、失礼します」
慇懃に頭を下げて室内に入ると、正面のデスクに座った60絡みの老人が顔を上げた。
「やあ、敦君、久しぶりだね。よく、来てくれた。三田先生の葬式以来だから1年振りか…」
「河合さんもお元気そうで何よりです」
2人は握手をすると、河合が三田を隣室の応接室に導いた。
応接室のソファには若い女性が座っており、三田を見ると慌てて立ち上がって頭を下げた。
「…どうも」
三田もゆっくりと頭を下げると、目の前の女性を観察した。
彼女はノーフレームの眼鏡をかけており、知的な雰囲気を漂わせていた。顔は丸顔の童顔で、3歳年下の清香よりも子供っぽく見える。
かなり緊張しているのか、三田をチラリと見ると慌ててソファに座って視線を落とした。
「さて、早速だが紹介しよう。敦君、こちらが各務瞳子(かがみとうこ)さんだ。瞳子さん、こちらが三田敦君だ。さぁさぁ、敦君座ってくれ」
そう言って河合が強引に三田を瞳子の正面に座らせると、瞳子がもじもじした仕草で顔を上げた。
「各務、瞳子です…」
「はじめまして、三田敦です。この度はご愁傷さまでした」
挨拶をして三田が頭を下げると、瞳子はびっくりして手を振った。
「そ、そんな… 敦さんが気にする事では…」
「敦さん…?」
聞き慣れない単語に眉根を寄せて、三田はいぶかしむ目付きで河合を見た。河合はバツが悪そうに咳払いすると、場を取り直すように話し始めた。
「さて… 敦君には寝耳に水な話かもしれないが、この瞳子ちゃんは三田先生のお孫さんにあたる。君たちは従兄妹同士ということだ。色々と疑問や不満は有ると思うが、納得してもらいたい」
早口で言う河合の言葉に、三田は軽くため息を吐くと口を開いた。
「貴方が確認を取っているのならば間違いは無いでしょう? 正直、あのじいさんに隠し子がいたとは想像し難いですが…」
「和音さん… 瞳子ちゃんのお母さんは、間違いなく三田先生の娘だ」
河合が断言するように力説した。その言い方にかなりの胡散臭さを感じながらも、三田は表情に出さず話を続けた。
「ええ、ですから納得しています。血液鑑定などという野暮なことは言いませんよ。ええと、瞳子さん、そんなに緊張しないでください」
三田が精一杯の優しさを込めて言うと、瞳子は「はい…」と恥らうように答えた。
「それで、私は何をすればいいんですか?」
額に手を当てた三田が努めて冷静に言った。正直に言うと、とっとと決着を付けて早く屋敷に帰りたかった。
「うむ、それなんだがな。電話で話した通り、今年の6月に瞳子ちゃんのお母さんが亡くなった。父親は早くに蒸発して行方が判らんから、瞳子ちゃんは今は1人きりとなる。で、だ」
河合はそこまで言うと促すように瞳子を見た。瞳子はあからさまに意識して背筋を伸ばすと、一生懸命に話し始めた。
「は、母は保険の外交員をしていて、私たちはその会社の社宅に住んでいたのですが、母が亡くなってしまてそこを出て行かざるを得なくなりました。当座の生活費は残してくれましたが、今は住む家が無いんです…」
嫌な予感がした。横の河合をチラリと見ると、澄ました顔でそっぽを向いている。
「お願いします!」
瞳子が突然頭を下げた。
「大学を卒業するまでで良いので、私を敦さんの家に下宿させてください!」
三田は意識が遠くなるのを感じた。
屋敷では、残った姉妹が家事を終えて買い物に出かけるところだった。
「もう、奴隷ってゆーかー、なんか違うよね?」
ハローグッドへの道すがら、文がしみじみと呟いた。ちなみに今日の格好は、お気に入りのタンクトップに見せパン仕込みのミニスカート、上から薄手のパーカーだ。暑さに弱い文はだいたいラフな格好が多いが、密かに爆乳ルックと呼ばれていたりする。
「うーん、でも勘違いしちゃ旦那さまに迷惑よ。最近は本当に優しくして頂いてるけど、頼りすぎるのは厳禁、厳禁よ」
そう言って、清香――こちらは春先と同じエプロンドレスのメイドルックだ――は指を交差して、バツバツ、と文に示す。
ただ、清香には毎晩避妊薬を飲む際、このまま飲むのを止めてしまおうかと思うときがある。
(それで、万が一妊娠でもしたら…)
三田は私たちを捨てるだろうか? 屋敷に来てすぐの頃では「堕ろせ」と言われただろう。だが、今の三田なら、ひょっとしたら、本当にひょっとしたら責任を取ってくれるかもしれない。
その考えは、何度振り払っても清香の頭から消えることが無い。
(…文ちゃんはどう感じているのだろう? いい機会だから、今、聞いてみよう)
「あのね… 文ちゃんは旦那さまの子供、産みたい?」
少し躊躇いがちに聞くと、文は「ううん」とあっさり首を振った。
「産みたくない、そんな歳じゃないし」
「そ、そう…」
さっぱりして文の答えに、清香はかなり動揺した。そして、もしかして文と自分とでは、三田への愛情の質が違うのではないかと思った。
「お姉ちゃんは、産みたいの?」
「ええっ!? えーと、もし… 万が一よ! 万が一、妊娠したら、産みたい… かな?」
逆に訊かれて、清香はしどろもどろに答えた。そのせいか、あっさりと本音が出る。
「でもでも! 旦那さまに迷惑が掛かるから、やっぱり産みたくない!」
先ほどの自分の言葉を思い出して、清香は慌てて否定した。
文は「ふーん…」と呟いていたが、やがて何でも無さそうに言った。
「あのね、お姉ちゃんが旦那さまと結婚したいって言うなら、私は応援するよ?」
「えっ…」
予想外な一言に、清香は一瞬、言葉を失った。
「だ、駄目よ! だって、文も旦那さまの事が好きでしょう?」
「そりゃ、大好きだよ。でも、結婚とか子供とかは全然考えないよ。上手く言えないけど、文はもう旦那さまと普通の恋愛はできないと思うから…」
文は考え込むようにして言った。自分の中の複雑な感情を表現できなくて、困っていた。
「…どういうことなの?」
清香が悩んだ末にそう聞くと、文は唸りながら答えた。
「う〜、すごく変態さんなたとえになるけど、いい? あのね、お姉ちゃんはおまんこに旦那さまの精液が入ってないと気が済まないよね?」
ダイレクトに自分の性癖を指摘されて、清香は恥ずかしくて目を伏せた。だが、真実なので否定はしない。
「それって、子宮でモノを考えてるんだよ。だから、赤ちゃん欲しいとか願うんだと思う。
で、私は旦那さまに苛められて悦ぶマゾ犬。マゾの身体でモノを考えてるの」
「それは、でも… うーん…」
倫理的に認めがたくて清香は唸った。しかし、感覚的には理解できてしまうので、諦めて納得するしかない。
「だから、旦那さまとお姉ちゃんが結婚しても、2人が文をマゾ犬として扱ってくれるなら文句は無いよ。あ、もちろん、一生の話じゃないよ? 今はそれで良いや、って感じ」
「………」
あまりの文の台詞に、清香は絶句して黙りこんだ。
利己的に捉えれば、それは清香にとっては三田を独占する免罪符になる言葉だ。しかし、明らかに異常な妹の考えをおいそれと肯定することは出来ない。
清香は考えに考えたが、思考がまとまることは無かった。
元々奴隷の自分たちだ。人並みの思考は捨ててしまった方が良いのだろうか? 文のように、屋敷での立ち位置を明確にして、外では何食わぬ顔で普通に振舞う。それが正解なのだろうか?
清香は、延々と悩み続けた。
「敦君… 敦君…!」
河合の呼びかけに、三田は「はっ!」と我を取り戻した。
ずいぶん長い間固まっていたようで、瞳子が怪訝そうな目で三田を見ていた。
「あのぅ… やっぱりご迷惑ですよね…?」
眼鏡の奥の瞳が不安そうに潤む。もともと丸顔の童顔だから、泣いているように見える。
「それは、ですね…」
「そんな事は無いぞ」
上手く言葉を喋れない三田の代わりに、なぜか河合が強く頷く。
「三田先生の屋敷は広いから、部屋の1つや2つは楽に余っているはずだ。そうだよな、敦君。少々古い建物だが、住む分には全く不自由は無い。特に、瞳子ちゃんが通うH大のすぐ近くだから、利用しない手は無いだろう?」
河合は息つく間もなく喋った。三田はうんざりして大きなため息を吐くと、右手を上げて河合を制した。
「河合さん、しばらく、しばらく…」
そうやって河合を黙らせてから、今度は三田は深呼吸をした。
(落ち着け、落ち着け、敦。きっちり断るんだ。じじいの腹は大体読めた。要は住居を与えれば良いのだ。近くのマンションか何かを見繕ってやれば良い。そうだ、それが良い。よし…)
落ち着きを取り戻した三田は、1つ咳払いをすると真っ直ぐ瞳子を見た。見つめられて、瞳子は恥ずかしそうに目を伏せる。
「瞳子さん、率直に申してあなたのお願いは承諾できません。従兄妹として助けてやりたい気持ちはもちろん有りますが、一緒に暮らすことはできません。それは、私にも私の生活がありますし、仕事だってあるからです」
三田の言葉を、瞳子はジッと聞いていた。河合が何か言おうと口を開きかけたが、またも三田が右手を上げて制止した。
「ですが、何の援助もしないというのは流石に気が引けます。幸い、私はH市内にいくつかマンションを保有していますから、そのうちの1つをお譲りしましょう。屋敷なんかよりもよっぽど新しくて快適な住居です。
良ければ、大学卒業後も使ってもらって構いません。…どうです?」
三田は畳み掛けるように言った。瞳子は三田の言葉が良く理解できなかったのか、キョトンとした顔をしていた。
「なんなら、学費や生活費も援助しましょう。なに、遠慮することはありません。祖父の遺産には手を付けていませんから、貴女が使う分には何も問題はない。他にも…」
「まあまあまあまあまあ…」
長々と話す三田を、強引に河合が制した。
「まあ、なんだ。こんな事務所の応接室じゃ、纏まる話も纏まらんだろう。どうだ、敦君は今日は泊まって行くんだろう?」
「いいえ、このままトンボ帰りに帰るつもりです」
三田がハッキリと言うと、河合は渋い顔になって呆れた声を出す。
「あのなぁ… 大の大人にこんな事をいうのも失礼だが、もう少し老人を喜ばせたらどうだ? 家内にも会わないつもりか?」
そう言われると、今の三田にはバツが悪かった。河合婦人には、都内に進学した時にかなりお世話になっていた。
「瞳子ちゃんも今のところはウチに下宿しているし、せめて夕飯はウチで食べていけ、な」
その言葉に、三田は不承不承ながら頷いた。あとで清香に電話せねばならんな、と考えた。
「よし、そうと決まったら移動しよう。敦君、今日は歩きかね?」
「いえ、車で来ました」
「…道理で来るのが遅いと思ったぞ。まったくどこまで車が好きなんだ… それじゃ、悪いが乗せて行ってくれないか?」
ぶつぶつと呟きながら、河合は瞳子を促して立ち上がった。瞳子はおどおどと立ち上がると、理由も無く三田に頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けしてすみません…」
「いえ、そんな顔をしないでください。そんな顔をすると…」
苛めたくなる… その台詞を、三田はすんでの所で飲み込んだ。はっきり言って、瞳子の仕草や言動には三田の嗜虐心をそそるものがあった。
(いかん… これは気を付けねば…)
途中で言葉を止めた三田を瞳子が怪訝そうな目で見た。三田は笑ってごまかすと、率先して事務所のドアを開けた。
「…もしもし、私だ」
『もしもし、はい、旦那さま、清香です』
河合の家に着くと、三田は所要があると2人に告げてこっそりと清香に電話を掛けた。
「すまん、今日中に帰れなくなった。恐らく明日には戻ってこれると思うが、はっきりとは言えない。とにかく、戸締りなどはきちんとしておけよ」
『はい。…揉めてるんですか?』
「…いや、そう言うわけではない。ご機嫌伺いのようなものだから、心配するな。文に代わってくれ」
そう言うと、電話の向こうでゴソゴソと音がして、「旦那さま、文です!」と文が元気良く話した。
「うむ、清香にも言ったが、帰りが明日以降になる。お姉ちゃんの言う事を良く守って、大人しく留守番しておいてくれ」
『旦那さまが居なくて寂しいです』
「少しの辛抱だ、我慢しろ。あと、くれぐれも私の部屋に入るなよ。大事な書類があるからな」
『はい』
素直に頷いた文に満足して、三田は「それではよろしく頼む」と言い残すと、電話を切った。
「やれやれ…」
面倒そうに頭を振って、河合と瞳子が待つリビングに戻ると、すでにテーブルには店屋物らしい寿司とウィスキーの瓶が置かれていた。
「…飲んだら運転が出来なくなります」
「まだ、そんな事を言っているのか? 今日は覚悟を決めて泊まっていけ」
河合がうんざりした声で言った。三田は「分かりました」と諦めて言うと、どっかりと腰を落とした。
「さて、食事の前に結論を出したいのですが…」
「その前に一杯飲め。お前のために取っておきを出したんだぞ」
どうやら河合は既にグラスを空けているらしく、渋る三田のグラスに強引にウィスキーを注いだ。苦虫を噛み潰した表情で、三田は軽くグラスを掲げるとチビとウィスキーを口に付けた。
「…どうして、私の家に下宿しようと考えたのですか?」
河合を相手にしていては話が進まないと考え、三田は瞳子に話し掛けた。瞳子もだいぶ緊張が解けたようで、コクリと頷くと話し始めた。
「はい… 実は私と母はおじい様から援助を受けて生活していました。でも、おじい様が亡くなられて、援助が難しくなると河合のおじ様から聞きました。
それでも、母と2人で頑張っていこうと心に決めていたんですが、母があんな風になってしまって…
ほとほと困り果てていた所に河合のおじ様から連絡があって、それなら本家を頼りなさいとアドバイスを頂いたんです…」
三田は瞳子の話を聞いて深く納得した。そして、瞳子の横で素知らぬ顔で寿司を摘まんでいる河合を睨みつけた。
「ん、なんだね? 怖い顔をして?」
「……いいえ、後でお話があります。一対一で」
三田は一対一の所を強調して言った。河合は怯んだように「う、うむ…」と頷いた。
「瞳子さん、お話は良くわかりました。ですが、事務所でも言った通り一緒に住むことは出来ません。じいさんの援助は引き続き私が行いますし、住む所も手当ていたします。ですから、どうか諦めてください」
そう言って、三田は軽く頭を下げた。瞳子は何度も頷くと、慌てて言った。
「す、すみません、困らせてしまって! 敦さんを困らせるつもりは無かったんです… ただ、一緒になるなら早いうちが良いと思って…」
「今、何と…?」
聞き捨てならない台詞を聞いて、三田は思わず聞き返した。瞳子は良くわからずに「え?」と呟く。
さらに三田が口を開こうとしたら、突然河合が会話に割り込んできた。
「いやいやいやいや!! 瞳子ちゃん、すまんが氷を近くのコンビニで買って来てくれんか? やはり、ロックアイスでないと良い味が出んようだ。家内を連れて行くといい」
「はぁ…」
「さぁさ、すまんが早くしてくれ、わしも良い年齢なんで潰れるのも早くなった。ただ、道々はゆっくりでいいぞ。事故に合うといかんからな」
河合の剣幕に押されるように、瞳子は頭にハテナマークを浮かべながらリビングから出て行った。
残った河合は大きな咳払いを1つすると、三田を窺うように見た。
「…怒っておるか?」
「呆れています。さあ、全部白状してください。あの娘が突然現れたというのは嘘ですね」
三田が断定するように言うと、河合は諦めたように語り始めた。
「まあ、そうだ。なにせ、彼女への援助はわしが担当していたからな。あの娘は小さい頃からよく知っている。ほとんど孫のようなものだ」
「なぜ、私に教えなかったのです?」
「三田先生が存命だったからだ」
河合は悲しそうに言った。
「人の口には戸を立てられん。名士である三田先生に隠し子がいると知れたらマイナスにしかならんし、敦君の商売もやり難くなるだろう」
三田にはその考えは馬鹿らしく感じる。だが、ここは河合を立てて他の問いに移る事にした。
「彼女の母親が他界したことは?」
「それは本当だ。急な事でわしもびっくりした。…正直、一目でいいから君に会わせたかった…」
「早急に墓前に手を合わせますよ。では両親が居ない、というのは?」
「それも本当だ。父親もだいぶ前に蒸発してしまっている」
河合の肯定に、三田はふーっと息を吐いた。
「三田家の血は短命だな。じいさんだけが例外だったか…?」
「これ、滅多な事を言うもんじゃない」
河合は三田を嗜めると、グラスをチビリと傾けた。
「もう三田の家系は君たち2人しかおらん。わしももう長くないだろうから、少しでも安心したいのだ。なあ、あの娘を置いてやってくれんか? 母子家庭で苦労してきたから、少しでも楽をさせてやりたいんだ」
私もそうだ、という言葉を飲み込んで、三田は一番気になる質問を言った。
「まだ、有ります。『一緒になる』これはどういうことですか?」
三田がそう言うと、河合は「あー、あれか…」と惚けたように呟いた。
「まあ、境遇が可哀想な娘だったので、幼い頃から人生に希望を持たせようと色々と気に掛けていたんだが…」
「なるほど、それで…?」
「優しくて頭の良い女の子になれば、きっと白馬の王子さまがお嫁さんにしてくれると、常日頃から吹き込んでみた」
「それで…?」
「しかし、ある時白馬の王子さまは本当に居るのかと聞かれた。答えに詰まったわしは、白馬の王子さまは意外に身近に居るものだと教えてやった」
「で…?」
口数多く滑らかになる河合に対して、三田の声は短くどんどんと冷えていった。
「で、だ… すまん!」
河合が突然拝むように三田に手を合わせた。
「君を許婚と思い込むように育ててしまった!」
「クソジジイがッ!!」
…その頃の三田邸では。
「ほらほらお姉ちゃん、泡踊り〜」
「きゃっ、くすぐったい!」
「えへへ〜、乳首のコリコリが気持ち良いでしょ? あ、タオル外したら頭が濡れちゃうから、しっかり手で押さえていてね」
「…どこで覚えたのこんな技術?」
「ネットで覚えてあとは実地。意外に旦那さまも楽しんでくれるし… ほれほれ、壷洗いしたげよう。お股をぱっくり開いて」
「妹に責められる姉って…」
「それでも素直に足を開く快楽に正直なお姉ちゃんが大好きだよッ。そーれ、ぐちょぐちょぐちょぐちょ〜」
「いやぁん、乱暴にしないで!」
「でも、エッチなおつゆがだらだらです。…このままフィストやっちゃう?」
「う… でも、旦那さまが居ないから、ちょっと不安…」
「まあ、そだね。よっしゃ、次は貝合わせじゃあ! お姉ちゃんも今はパイパンだから、擦り易いね!」
「文はいつまでたっても生えてこないわね… やん! そんなに激しく動かさないで!」
「うわぁ… ピアスがクリちゃんに当たって… 気持ち良い…」
「すごい… 文のおまんこがグチャグチャ言ってる…!」
「お姉ちゃんだって… でも、う〜ん、気持ち良いけど、もどかしい…」
「…ほら、お姉ちゃんの膝の上に座って。今度はお姉ちゃんが責めてあげるから」
「う、責め受け交替? 優しくしてね…」
「…とか言いながら、ペニスバンドを手渡す素直な文が大好きよ…」
三田が居ないことを良い事に、姉妹がレズ・マットプレイの真っ最中だった。
翌日。三田はようやく屋敷への帰途につくことができた。ただし、思いも寄らないおまけを付けて。
「すみません… こんな長い距離を運転させてしまって…」
助手席に座る瞳子が、子犬のような瞳でしきりに頭を下げる。どうして帰宅する自分の車に瞳子が乗っているのか、いくら考えても河合に嵌められたとしか思えない。
さらに、トランクには瞳子の身の回りの物一式が詰まっている。押し掛け女房という文字が三田の頭に浮かんだ。
『大学の後期が始まってしまうから、瞳子ちゃんはH市に戻らなければならない。とりあえず住居の問題は棚上げにして、一時あの屋敷に下宿してはどうだ?』
『マンションは数日あれば用意できます!』
『三田先生の盆参りもある。あ、それとわし等夫婦は盆休みを利用して2週間ほど北海道旅行に出かけるから、瞳子ちゃんの面倒はみれんぞ』
『じじい… 最初からそのつもりだったな…』
『ふぉっふぉっふぉ…』
強引に瞳子を託した河合は、本当に北海道旅行に出かけてしまった。1人残された瞳子を見捨てるわけにも行かない三田は、やむなく帰宅する車に瞳子を迎え入れた。
(まあ、じじいがいなければ、この娘も説得に応じるだろう…)
三田は1人で納得すると、これからの対処に頭を使い始めた。
(さて、どうする…?)
姉妹の事を考えなければならなかった。マンションはすぐには用意できないから、数日は瞳子を屋敷に泊めなければならない。そうなると、姉妹はどこかに隠しておかなければならないが…
(そうだ、地下室だ…)
考え抜いた末に、三田は屋敷の地下室を思い出した。あそこは冷暖房完備で、シャワーもトイレもある。簡単な携帯食料を持ち込めば、数日は楽に暮らせるだろう。
色々と細部も練ると、三田は休憩で立ち寄ったサービスエリアでこっそり清香に電話を掛けた。
『はい、もしもし旦那さま』
「ああ、清香、今そちらに戻っているから、夕方過ぎには帰れると思う。何かおかしなことは無かったか?」
『はい、大丈夫です』
「よし、それでだ… おまけと言うか、イレギュラーと言うか、何の因果か例の従兄妹を連れて帰るハメになってしまった。
『はぁ、それは急な話ですね…』
「ああ、すぐに追い出すだが、その間お前たちは地下室に隠れていてくれないか?」
『地下室、ですか?』
清香は素っ頓狂な声を上げた。当然の反応だろう。
「ああ、ほんの数日の事だから安心してくれ。あと、できるだけ日中は外を連れ歩くつもりだから、1日中篭りっきりということも無い」
『はぁ、それは大変ですね… わかりました、すぐに準備をします。でも、あの…』
電話の先で、清香が逡巡する雰囲気が伝わってきた。三田は不安に思って「どうした?」と声を掛けた。
『その、怒らないでくださいね… 私たち、捨てられませんよね?』
三田は驚いて息を吸ったが、確かにそういう不安が出てもしょうがないと思い直して、優しい声で語りかけた。
「大丈夫だ、そうならないように努力している。お前たちは何も心配をする必要はない」
『はい… 旦那さま、早く旦那さまに抱いて欲しいです』
「ああ、私も早くお前たちを抱きたいよ…」
本心からそう言って三田は電話を切った。病的なほどに自分に依存する清香がたまらなく愛しい。しかし…
「私に、お前たちを幸せにする権利があるのかな…」
母親を隠してしまった暗い罪悪感は、消しても消しても三田の心の中に残り続けていた。
三田から伝えられたことをそのまま文に伝えると、文は案の定、拗ねた顔をした。
「え〜、何その忍者生活?」
「仕方ないでしょう。私たちのことを知ったら、うるさい人が居るみたいだから…」
口ではそう言いつつ、清香も不満だった。三田が帰ったら、たっぷり甘えようと思っていたから、アテが外れてしまった。
「あ〜、ゴールしたらまだ先があった、みたいな感じ。だめ、もう文は限界です。旦那さま分が足りません…」
リビングのソファに身をバタッと倒して文が呻いた。そんな大げさな… とは清香も思わない。
清香はとある決心をすると、文を促して三田の部屋に向かった。
「あれ、入っちゃ駄目でしょ?」
「旦那さまには内緒よ。まあ、お仕置きが欲しいのなら、文だけ入ったってことにしてもいいけど…?」
ううむ、それは… と真剣に悩み始めた文を置いて、清香はいつも持ち歩いている屋敷の鍵を使って開錠すると、迷わずドアを開いた。
「あ、開けちゃった。ま、いいか」
文は物珍しそうに辺りを見回した。
「勝手に物に触れちゃだめよ」
「うん。で、何をするの?」
興味津々で文が尋ねると、清香が「これ」と三田のベッドを指差した。
「…ベッド?」
「そう。本当なら昨日洗濯するはずだったけど、入るなと言われていたからそのままなのよね。でも、そのせいで一週間の旦那さまの寝汗が染み付いています」
「おお、姉上…」
文が、夢遊病者かゾンビのような足取りでふらふらとベッドに近寄った。
「く、くんかくんかして良いのかな!?」
「汚しちゃだめよ。あと、オナニーは禁止」
文はベッドにダイビングして三田の布団に顔を埋めた。そのまま思いっきり深呼吸すると、感極まったように「ああん…」と喘ぐ。
「やれやれ…」
清香が苦笑いして周りを見渡すと、視線が机の上に無造作に置かれたファイルに止まった。
「あ、あのファイル…」
昨日の朝、三田はそのファイルを自分で部屋に持って行った。通常の郵便物は清香が管理しているから、それだけ良く覚えていた。
(何のファイルなんだろう…?)
微かな好奇心に釣られて、清香はファイルを手に取った。紐閉じの封筒に入れられたそれはずっしりと重かった。
…三田の部屋に無断で入って清香も気が大きくなっていたのだろう。いつもならチラリと見るだけで済ますはずが、今日に限ってそれを手に取ってしまった。
「えーと、深沢未亜子・清香・文親子に関する報告書…」
その題字の意味を理解するのにしばらく掛かった。しかし、頭がそれを理解した途端、身体がぶるぶると震えだした。
震えながら後ろを向いくと、ベッドの文は完全にトリップしている。清香は文に気付かれないようにそっと封筒を紐解くと、中のファイルを取り出した。
「深沢、未亜子…」
震える手を何とか抑えて、清香はぱらぱらとファイルを捲った。そして、ある箇所を発見した。
『深沢未亜子、K市F医院にて第1子・清香を出産』
『2年後、同じくK市F医院にて第2子・文を出産』
それだけ読んで清香はファイル閉じると封筒に戻した。紐をかけて元通りしっかりと封をする。
清香は三田の椅子にふらふらと腰掛けると、相変わらずベッドで痴態を晒している妹を、ぼう、と見つめた。
(お母さん、生きてるんだ…)
清香は自分の感情に驚いていた。しかし、それは母が生きていたことの驚きではなく、自分が全くショックを受けていない事に対してだ。
驚いた。本当に驚きはした。だが、それだけだ。会いたい、とか、話したい、とか、そういった感情が全く浮かんでこない。
(やっぱり私は、お母さんが許せないんだ…)
自分の手を引いて施設に預けた女性。それが母親かどうかはわからない。しかし、幼い清香には、それは親に捨てられてたという強烈なトラウマでしかなかった。
(このファイルの事は忘れてしまおう…)
清香は考えた末にそう結論を出した。そして、文には黙っておこうと決めた。文が母親に対してどんな感情を抱いているか、清香は正確に把握していない。もしかしたら、里心が付いてしまうかもしれない。
(文にはおいおい話そう。今は旦那さまも居ないし、勝手なことをしちゃだめだ…)
清香はそろそろとベッドに近付くと、文と同じ様にシーツに顔を埋めた。
三田の匂いを鼻孔いっぱいに吸い込むと、早鐘を打っていた心臓が次第に静まっていく。
(旦那さまが帰ったら、思い切って聞いてみよう。そして、私の本心も聞いてもらおう…)
密かに告白を決意して、清香はゆっくりと目を閉じた。
この時、自分が人生で初めて利己的な選択をしたことを、清香は気付く事が出来なった。
「さあ、着きましたよ」
三田が運転席から降りて瞳子を玄関へと導いた。既に日はとっぷり暮れており、瞳子は危なっかしい足取りで、とことこと三田の後に着いて来た。
玄関に立って屋敷の大きさにあんぐりと大口を開けてから、瞳子はおどおどと玄関に上がった。
「…お邪魔します」
別に悪い事をしているわけでもないのに自然と頭が下がる。これは瞳子の小さい頃からの癖だった。
(広いお屋敷… 母さん、瞳子は既に挫けそうです…)
萎えそうになる気持ちを、瞳子は必死に奮い立たせた。
(ダメダメ! もう河合のおじいちゃんは居ないんだ… 私が思い切りアタックしないと、敦さんのお嫁さんにはなれないんだ…)
瞳子は「よし、よし…」と気合を入れなおした。
「………………」
そんな瞳子を胡乱な目で見ながら、三田は「リビングはこちらです」と瞳子を案内した。
(ちゃんと引っ込んでいるようだな…)
三田は姉妹の存在感が消えた屋敷にホッとした。あれから文が逐一メールで状況を伝えてくれたから、姉妹がどのタイミングで地下室に入ったのかもわかっている。機会を見て、少し顔を出してみるつもりだ。
三田は瞳子をリビングのソファに座らせると「お茶を出しましょう」とポットに手を掛けた。
「あ、私がやります!」
瞳子が慌てて立ち上がってキッチンまでやってきた。その剣幕に押されて三田が場所を譲ると、瞳子はものすごい真剣な目でお茶を淹れはじめた。
「まあ、任せます… 湯のみはそこです」
少々うんざりしながらも、三田はそう言ってソファに腰を降ろした。
(この機会に文にメールでも打つか…)
三田は携帯電話を取り出して“今帰った”と文にメールを打った。すると直ぐに文からメールが帰ってきた。
“お帰りなさいませ、旦那さま m(_ _)m 今日の夜は抱いてくれますか!? お尻を綺麗にして待ってます”
ストレートな文に苦笑しながらも三田が返信を返そうとすると、瞳子がおぼつかない足取りでお盆を持ってやってきた。
「ど、どうぞ…」
震える手で差し出されたお茶を飲むと、三田はゆっくりと話し始めた。
「さて、今日はもう遅いので寝室へと案内します。それと、明日はじいさんの墓参りに行きましょう。昼食は出先でよろしいですか?」
あくまで他人行儀に話す三田に、瞳子は再び緊張したように頷いた。
「あと、これだけは言っておきます。一緒に住むことは有り得ません。河合のじじいか何やかんやと吹き込まれているようですが、私は貴女が想像するような男ではありません。幻滅する前に諦めてください」
きっぱりとそう言って三田は立ち上がった。瞳子はやはりおろおろと立ち上がって何度か口を開きかけたが、結局何も言わず三田に従った。
あらかじめ姉妹に用意させていた客間に瞳子を案内すると、三田は「それではごゆっくり」と声を掛けて立ち去ろうとした。しかし、瞳子は慌てて三田の袖を掴むと、切羽詰った声で「あの…ッ!」と声を掛けた。
「…何か?」
うんざりした声で三田が尋ねた。本心は一刻も早く地下室に行きたかった。
「あ、敦さんは私のことが嫌いですか…?」
「嫌い…?」
ゆっくりと呟くと、三田は瞳子の正面に立った。
「昨日会ったばかりでは嫌いも好きもありませんよ。ただ、貴女の要求で私の生活が乱されるのは正直疎ましいと思う。そういった意味では嫌いです」
三田は眉根を寄せると一気に喋った。瞳子は三田の言葉を噛み締めるように俯いたが、顔を上げると思い切って言った。
「私は、私は敦さんのことが好きです… 敦さんのことは小さい頃からずっと河合のおじいちゃんから聞かされていて、どんな人なんだろうって思っていました… 実際にお会いしてみるとすごく大人で、優しくて… 私、一遍に憧れちゃいました!」
「…それで」
三田が底冷えする声で言った。しかし、瞳子は三田が相槌を打ってくれたのが嬉しくて勢い込んで話を続けた。
「私、今日は梃子でも動かない覚悟で来ました。三田さんに気に入られるまでこのお屋敷に残るつもりです!」
瞳子はハッキリと宣言し、三田は宙を仰いだ。瞳子自体には怒りは湧かないが、瞳子をこんな風に捻じ曲げて育てた河合には激しい怒りを感じた。
「…何が貴女をそうさせるんです? 私と貴女は15歳も歳が離れているんですよ?」
「と、歳は関係ないです… 私は小さい頃からずっと敦さんのお嫁さんに…」
「ふざけるな!!」
とうとう、堪忍袋の尾が切れて三田は大声で怒鳴った。
「許婚だと!? 馬鹿も休み休み言ってくれ! 憧れるのは勝手だが、それで私の人生に干渉するのは断固許さん! だいたい、何の理由で…」
ふと、三田は言葉を切って黙り込んだ。河合に幼い頃から吹き込まれていたとはいえ、見るからに小心な瞳子がここまで意固地にこだわるのは異常に思える。
(何だ… 何を考えているんだ、この女は…?)
三田はじっくりと考えたが、これという理由を見つけることが出来ない。
1度「ふん…」と不機嫌そうに鼻を鳴らすと、三田は瞳子を睨み付けた。
「瞳子さん、貴女の私への執着は異常だ。何を隠している? 正直に言え」
「か、隠す事なんて、何も…」
瞳子は怯えるようにそう言った。普通の男子であれば罪悪感を感じてしまうような声だったが、三田は完全に無視する。
「ならば、どうして私にこだわる?」
三田は歩を進めて瞳子に歩み寄った。その尋常ならざる雰囲気に、瞳子が思わず後ずさる。
「だって、私、お母さん死んで、1人になって… 頼る人いなくて… 河合のおじいちゃんは遠い所住んでるし… 住む家もないし…」
泣きそうになるのを頑張って堪えて瞳子は喋った。
三田への恐怖が、自分でも把握していない本心を曝け出す。
「敦さん、憧れの人だし… 一生懸命好きになってもらって、守ってもらいたかっただけなんです…」
瞬間、三田は全身の血液が沸騰して瞳子を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。もし、1年前の三田なら躊躇わず殴り飛ばしていただろう。
それほどの怒りを掌に握りこんで、三田は軋むような声を上げた。
「…甘えるな。貴様は二十歳にもなって自分の足で歩く事すら出来ないのか?」
「で、でも、お母さんが死んで、お父さんも…」
「両親が居ないのは私も同じだ!」
三田は再度怒鳴った。瞳子はとうとう泣き出してしまい、鼻声で「ごめんなさい、ごめんなさい…」と繰り返した。
「母親が死んだら、次は俺か!? ふざけるなッ!!」
三田はぐずり続ける瞳子を両手で、ドンッ! と押した。瞳子が悲鳴を上げて部屋の中に尻もちをつくと三田は冷たく言った。
「今日は泊めてやる。だが、明日は貴様が何と言おうがここを追い出す。泣こうが喚こうが一向に構わん。最低限の親族の務めとして、住む場所だけは用意してやる。だが、それ以外は自分でなんとかしろ」
そう言って三田は部屋のドアを、バタン、と閉めた。部屋の中から瞳子の泣き声が聞こえたがもう頓着しなかった。
廊下の柱を思い切り殴りつけると、三田はささくれ立った感情を抑えることなく地下室に向かった。
地下室のドアを開けて三田が入ってくると、姉妹はメイド服を着てそれぞれ正座をして待っていた。
「お帰りなさいませ、旦那さま」
「お帰りなさい!」
姉妹は深々と三田に挨拶した。が、三田からの返事がない。
不思議に思って清香がそーっと顔を上げると、三田は革ベッドに腰掛けて両手で顔を覆っていた。
「…あの、旦那さ」
「しばらく話しかけるな」
思わず清香が声をかけると、三田は短く遮った。姉妹はお互いに目配せをし合うと、黙って三田の反応を待った。
…かなり長い時間が過ぎてようやく三田は顔を上げると、心配そうに自分を見つめる姉妹を見た。
「そんな顔をするな…」
三田が思わず呟くほど、姉妹はその顔を曇らせている。
「お姉ちゃん…」
文が清香に囁くと、清香が頷く。
姉妹は何も言わず素早く全裸になると、清香が調教道具が揃ったキャビネットから、パドルや鞭、まち針などが詰まった道具箱を取り出して三田の足元に置いた。
「何だ?」
機嫌悪そうに三田が言うと、文が正座して言った。
「旦那さま、私たちに罰をください。気が済むまでいじめて下さい」
「罰だと?」
いぶかしむ三田に、今度は清香が告白する。
「はい、私たちはあれほど言われていたのに、無断で旦那さまの部屋に入りました。ですから、言いつけを守らなかった奴隷に罰をお与えください」
その言葉に、三田はハッキリと顔を歪めさせた。
この姉妹も勝手なことばかりして…!
暴力的な衝動を何とか抑えていた三田だが、とうとう理性が決壊してしまった。土下座する清香の髪を掴んで上を向かせると、手加減無しの平手打ちを清香の頬に放った。
パシィィン!!
「あぅ!」
派手な音と共に清香が床に転がった。身を起こした清香は「ありがとうございます、旦那さま…」とお礼を言うと再び土下座の姿勢に戻った。
三田は今度は文に向き直ると、片足を上げて思い切り文の頭を踏みつけた。文の顔面と床とがぶつかる嫌な音がした。そのまま体重を掛けて三田がぐりぐりと足を動かしたが、文は悲鳴を上げずに黙って耐えた。
「ふん…」
詰まらなさそうに三田が足を上げると、文はようやく顔を上げて「ありがとうございます…」とお礼を言うと、三田の足の指をぺろぺろと舐め始めた。
「勝手なことをするな」
三田は吐き捨てる様に言うと、文は慌てて足を離して土下座すると「申し訳ありません!」と謝った。
「お前は何だ、ええ!?」
「旦那さまの雌犬マゾ奴隷です!」
「お前はッ?」
「旦那さまの精処理便所です!」
姉妹はそれぞれに叫んだ。
三田の心がサディスティックな衝動に支配される。
道具箱から普段は使わない乗馬鞭を取り出すと、文に「ケツを向けろ」と命じる。文は素直にお尻を三田に向けると、叩きやすいように高く突き出した。
「お前たちの性根を叩き直してやる。数えろ」
三田はそう言うと文に鞭を叩きつけた。
ピシィィィッ!!
地下室に、空気と肌を切り裂く鋭い音が響く。
いくら真性マゾの文でも、痛いものは痛い。臀部を襲った凄まじい激痛に、文は歯を食いしばって耐え「い、いっかい…」と呟いた。
「声が小さい! 数えなおしだ!」
三田は怒鳴ると、さらに連続で乗馬鞭を振り下ろした。ピシィィ、ピシィィ! と打擲の音が響くたびに、文は声を張り上げて「1回です! 2回ですッ!」と叫んだ。
回数が20回を越え、文のお尻をみみず腫れに染めあげ、三田はようやく動きを止めた。
「あ、あり、ありがとうございます…」
何とかそれだけを言って文はへなへなと崩れ落ちた。
三田は文に近付くと、股間に乗馬鞭を突っ込んで激しく動かした。それから乗馬鞭を抜き取ると、それは透明な液体でぬらぬらと濡れていた。
「おい、これは何だ?」
濡れた乗馬鞭を文の目の前に差し出すと、文は目を開けて「あぁ…」と呻いた。
「それは… 文のおまんこ汁です…」
「ド変態だな、苛められて感じるのか」
「ああ、そうです。文は旦那さまに苛められると感じて濡れちゃうんです…」
「ふん、すでに家畜以下だな。おい、四つん這いになれ」
三田が命じると、文は素早く四つん這いになった。
赤く腫れ上がったお尻を、パシィィ、と1回平手打ちすると、三田はそのお尻にどっかりと腰を降ろした。
「うぅ!!」
「落とすなよ」
三田の体重が床に突いた膝や肘を圧迫する。持続する激痛を感じながらも、文は頑張って体勢を維持した。
三田は視線を清香に移すと、突然、鞭を清香の背中に叩きつけた。
「ひっ!」
突然の激痛に清香が背筋を伸ばすと、三田は「立て」と短く命じた。清香が震えながら立ち上がると、三田は「もう1度自分のことを言ってみろ」と言った。
「はい… 私は旦那さまの性処理便所です… いつでも、お好きなように使ってください」
「そうか、それなら便所として使ってやる、咥えろ」
そう言われて清香は怪訝に思った。自分も痛い思いをすると思っていたから、フェラチオをするのは意外だった。
「失礼します…」
軽い胸騒ぎを覚えながら清香は三田のペニスを取り出した。そして一気に咥え込むと、まだ萎えているそれを刺激しようと頭を振ろうとした。しかし、三田は清香の頭を押さえ、動かせないように己の股間に密着させた。
「全部飲み干せ」
ジョロロロ… と清香の口腔に生暖かい液体が流れ込んできた。その時になって、清香は自分が本当の意味での便所として使われている事を思い知った。
(お、おしっこ! 旦那さまのおしっこ…!)
むせそうになる喉を必死に宥めて、清香は溢さないように一生懸命三田の尿を飲み込んだ。
やがて尿の勢いが無くなり完全に止まる。
全部飲み干せたことに清香がホッとしていると、三田は鞭を清香のお尻に振り下ろした。
「んんー!!」
「何をやっている? しゃぶれ」
これで終わりではなかった事を理解すると、清香はペニスを口腔に収めたまま舌を使ってフェラチオを始めた。それ自体は通常の奉仕と変わらない。だが、三田は手の力を緩めようとせず、清香の顔は股間に密着したままだった。
(の、喉の奥まで、来る…!)
次第に体積を増し始めたペニスが、フェラチオを続ける清香の喉の奥までその先端を伸ばした。口を塞がれて清香が必死に鼻で呼吸をしていると、三田はおもむろに指を伸ばして清香の鼻を摘まんだ。
「…!」
呼吸を完全に塞がれて、清香は一瞬パニックになった。しかし、暴れそうになる手足をなんとか抑えると、顎の力を抜いて口を大きく空けた。
「いい心掛けだ、死ぬまで続けろ」
三田が冷酷に言って激しく腰を振り始める。喉奥をごんごんと突かれて、清香は直ぐに吐き気を催した。
清香にとって、ここまで激しいイラマチオは初めてだ。こんな事を初めての調教でされた文を、清香は改めて凄いと思った。
(息… つらい…)
呼吸が出来なくて顔が真っ赤になる。四つん這いの文が心配そうに見つめるが、清香は目線で「大丈夫…」と送った。
「…出すぞ」
清香の顔が赤から青に変わり始めるのを見ると、三田は喉奥深くまでペニスを打ち込んで射精した。清香が最後の力を振り絞ってそれを飲み込むと、三田はゆっくりとペニスを引き抜き、鼻を摘まんだ指を離した。
「ごほっ、げほっ…」
清香は激しくむせて咳を繰り返した。ようやく三田が腰を上げたので、文が心配そうに姉の背をさすった。
「あ、ありがと…」
清香は弱々しく微笑んだ。そして窺うように三田を見上げた。
三田は1つ深呼吸をすると、自分の頭を軽く、ごつごつ、と殴って革ベッドまで戻ると、どっかりと腰を降ろした。
「もう、いいぞ… 頭が冷えた…」
「え、と…」
よく訳がわからなくて、清香が立ち上がった文と目を合わせていると、三田が姉妹に向かって手招きした。
「こっちへ来い… まんまと乗せられたな…」
ため息混じりのその声に微かな苦笑を感じて、清香はホッと微笑むと文と共に三田の両端に座った。
「あ、旦那さま…」
「あったかい…」
三田は姉妹の頭をごしごしと撫ぜると、また1つため息を吐いた。
「やれやれ、奴隷に手玉を取られるようでは、旦那さま失格だな…」
珍しい事に三田の口調にくやしさが滲んでいた。奴隷の挑発にまんまと乗ってしまい、その結果、ささくれ立った感情がクールダウンした事がかなり気恥ずかしかった。
「少し鬱憤が晴れた、ありがとう。だが、こんな事はもう2度としないでくれ。私のブレーキが利かなくなったらどうなるか判らん」
真面目に語る三田に、姉妹は揃って頷いて「わかりました」と答えた。
「ふぅ…… 気が抜けたら疲れた… 私はシャワーを浴びて寝るから、お前たちももう寝ろ。明日は上のお邪魔虫が居なくなったら上がってきていいぞ」
そう言って三田は立ち上がったが、文が「待ってください!」とがっしり三田の腕を掴んだ。
「ん、なんだ?」
「お疲れでしたら、私たちがマッサージをしていきます!」
「…ああ、マッサージか…」
三田はしばらく悩んだ。あまり地下室に長く居るのも不安だったが、肩に重くのしかかる疲労は無視できない。
「なら、頼むか… あまり根を詰めなくていいぞ」
三田がそう言うと、姉妹は待ってましたと言わんばかりに一斉に三田の服を脱がし始めた。あっけに取られた三田をあっと言う間に全裸にすると、強引に手を引っ張ってシャワー室まで移動した。
「おい、何をす……… なんだ、これは?」
地下のシャワー室はバスタブが無い造りになっているが、それだけに洗い場のスペースは広く取ってあり、大人が足を伸ばして寝れるほどの広さになっている。
三田の目を引いたのは、その広い洗い場の床一面に敷かれた、厚手のエア・マットだった。ご丁寧に枕部分まで付いており、そこにはバスタオルが二重に巻かれていた。
「これじゃ、まるで… いや、いい。もう何も言うまい…」
文句を言うのも諦めて、三田はマットの上に胡坐をかいた。
「どこで買ったんだ、こんなマット?」
「ハローグッドに、普通に売ってありましたよ?」
「もう何でも有りだな、あのスーパー…」
ずっと代理人を立てている役員会に出席した方がいいかもしれん、と三田は本気で考えた。
「はーい、まずはうつ伏せで寝てくださーい。お肩とかお尻とかもみもみしますからねー!」
文が心底楽しそうな声で言った。言われた通りうつ伏せになって横を向くと、きゃー、やっちゃったー!」的に頬を染めた清香と目が合った。
「…文はともかく、お前もするのか?」
「はい! 今日一日かけてしっかりと文ちゃんに叩き込まれましたから!」
「何を?」
「マットプレイを!」
高らかに宣言する清香を見て、三田はどっと脱力した。
「…まあいい、とっとと始めてくれ」
「らじゃーですっ!」
元気良く返事をして、文はまず三田の太ももを揉み始めた。これが意外に真剣な揉みっぷりで、三田は思わず息が漏れた。
「失礼しますね…」
清香は三田の横に座ると、背中に覆いかぶさるようにして肩を揉み始めた。胸がピッタリと背中に密着しているので、慎ましい双乳の先端がコリコリと刺激してくすぐったい。
(む、これは…)
本格的なマッサージが始まると、三田は心の中で呻いた。
姉妹からマッサージをしてもらうのは無論初めてのことではないが、お互いに全裸であると妙に昂揚した気分になる。その上素肌を触れ合わせてのマッサージはとても気持ちよかった。
(これはハマりそうだ…)
本心からそう思って、三田は完全に身体を委ねた。
「…失礼します」
両足の太ももを揉み終えた文が、こんどは三田のお尻に両手を当てた。むにむにと両手で臀部を揉むと、そのまま肛門が露出するように左右に押し拡げた。
「綺麗にしますね…」
文は舌を伸ばして肛門を舐め始めた。ピチャピチャと卑猥な音がシャワー室に響く。
清香も肩を揉み終わると、さらに身体を伸ばして腰を揉み始めた。移動するときに、乳首と背中が擦れて気持ち良い。
(文ちゃんが、乳首のコリコリがたまんないって言ってたけど、本当ね…)
身体をちょこちょこ動かして乳首を擦っていると、まるで三田の身体を使ってオナニーをしているみたいで恥ずかしい。しかし、その恥ずかしさが不思議な背徳となって、より清香の身体を昂ぶらせていた。
(あ、おまんこ汁が垂れてきた… そろそろやばいな…)
むき出しのヴァギナから愛液が垂れてきたのを感じて、清香は顔を上げると「文ちゃん、そろそろ…」と文に声を掛けた。
「ん、わかった」
文が短く返事をすると、肛門舐めを止めて顔を上げた。
「…終わりか?」
姉妹が動きを止めたのを感じて三田が言った。声に若干の物足りなさが混じっている。
「いえいえ、今からが本番です!」
自信たっぷりに文が言うと、清香が膝立ちになった文のおっきいおっぱいにボディソープをべちゃべちゃと塗りつけた。
「お背中を洗いますねー」
文は声を掛けると、嬉しげに三田の背中に抱きついた。身体のサイズが全然違うから、抱きつくというよりは三田が背負うような格好になる。
さらに、文はおっきいおっぱいをぶれないように両手で固定した。
「文ちゃんオッケー? すみません旦那さま、マットの両端を握って身体を支えてくれませんか? …はい、それで大丈夫です」
いったい何が始まるのか不審に思いながらも、三田は素直にマットの端を握った。
「じゃあ、いきますよ…! よいしょ!!」
掛け声と共に清香は腕を伸ばして文の腰を掴むと、力を込めて文の身体を前後に動かし始めた。ボディソープが摩擦で泡立って三田の背中を覆う。
「…何をしているんだ?」
「文ちゃんのおっきいおっぱいを使った、おっぱいマッサージです!!」
唖然とした三田が尋ねると、結構な労働で汗だくになりつつある清香が真剣に答えた。
文はというと、おっきいおっぱいがあらぬ方向を向かないように、こちらも真剣に集中していた。
「…………」
三田は完璧に呆れ果てた。しかし、呆れ果てたが、汗だくになって一生懸命尽くす姉妹を見ると大人しくしているしかなかった。
「き、気持ち良いですか!?」
ぜえはあ息を吐きながら清香が尋ねた。訊かれた三田は苦笑して「ああ、気持ちいいよ」と答えた。
「よ、よかったです… 文ちゃんを、説得した、甲斐が、ありました…!」
「…お前が考えたのか!?」
てっきり、文が渋る姉を強引に誘ったと思っていた三田は、驚きを声に出す。
「は、はい…! 文ちゃんの、おっきいおっぱいで擦られると、とても、気持ち良いと、発見しまして…!」
そう言われて、三田は改めて背中の感覚に集中してみた。
確かに、ゴムまりのように柔らかく、しかしそれでいてどっしりとした重量がある文のおっきいおっぱいが、ぐにぐにと背中を刺激するのは気持ちよかった。
しかも文がしっかりとおっきいおっぱいを固定しているから、意外に背中全体がほどよく圧迫される。
(ある種の征服感はあるな…)
そう思って、三田が身体の位置を直そうと身動ぎすると、途端に文が「んにゃあ!」と悲鳴を上げた。
「…どうした?」
「だ、旦那さま動かないで! おっぱい擦れて… イキそうなんだからっ!」
じゃあ、とっととイけ… 三田は心の中でそう突っ込まずには居られなかった。
「ぜえはあ… ぜえはあ…」
ほんの十数分の労働だったが、三田が「もう良いぞ」という頃には清香は汗だくの青色吐息になっていた。
「はぁ、はぁ、もう、我慢できない…」
文はというと、絶頂を限界まで我慢していたから、こちらも青色吐息だった。
「まったく…」
三田は呆れてため息を吐くと、器用にマット上でひっくり返って仰向けの体勢になった。
「文、挿れて良いぞ。清香は少し休んでいろ」
「ありがとうございます…」
がっくりと崩れ落ちる清香とは対照的に、文は目をギラリと光らせて三田の上に馬乗りになった。
「おちんちん、頂きますっ!」
切羽詰った声を出して、文は三田のペニスを片手で握ると、腰を落としてズブズブとアナルに突き刺した。
「あはぁぁぁ!! 気持ち良いぃ!! イキそう、イキそう!!」
2日間のお預けを喰っていただけに、文の快感も相当なものだった。慣れた調子で豪快に腰を振ると、括約筋を上手く使ってペニスをしごき上げる。何の迷いも無いその動きに、三田の快感は急速に高まった。
「上手く、なったな…」
「はぁん、だって、文のお尻は、旦那さまのおちんちん咥えるためにあるんだもん…」
夢見心地のとろんとした目付きで文は言った。そういえばこんな時間まで文が起きているのも珍しい。自分を待って起きていたのかと気付くと、途端に三田は文が愛しくなった。
「文、私もそろそろイキそうだ。一緒にイクぞ…!」
「はいぃぃ、文、頑張ります!! 旦那さまのおちんちん、ごしごししごきますっ!」
三田の許可が出て、文はいっそう腰を激しく振った。その的確な責めに、三田も一気に上り詰める。
「…よし、イクぞ!」
「文も、文もイクゥゥゥ!!」
三田が射精すると同時に文も絶頂に達した。直腸の奥深くに熱い精液を浴びて、文は幸せそうに啼いた。
「は、ふぅ…」
絶頂の快感でそのまま意識が切れてしまったのか、文は三田の胸にコテンと頭を乗せると、すぅすぅと寝息を立て始めた。三田は苦笑すると、傍らでいつの間にかペットボトルの水を飲んでいた清香に声を掛けた。
「おい、文が寝てしまった。ベッドまで運んでやれ」
言われた清香はコクコクと頷いてバスタオルで文の身体を包むと、そのまま革ベッドまで運んでそっと置いた。全身の水気を拭いてやってタオルケットを掛けてやる。それからシャワー室に戻ると、三田は自分で全身の泡を洗い流していた。
「お体を拭きますね」
「うむ」
清香が三田の身体をバスタオルで丁寧に拭くと、三田は飲みかけのペットボトルを手にとって一気に飲み干した。
「ふぅ、まぁ、あまり褒められたな方法ではないが、確かに気分は良くなった」
三田はそう言って自分の身体を拭いている清香の頭を撫ぜてやった。清香は恥ずかしそうに微笑み、バスタオルを畳むと「色々とご苦労様でした」と頭を下げた。
「うむ… お前だから愚痴るがな、今回はよく私の忍耐が持ったと自分を褒めてやりたい気分だ…」
「どんな条件を出されたんですか?」
清香が三田に服を着せながら言った。用意の良い事に三田の寝巻きも準備してある。
(そういえば、詳しい事は何も話していないのだったな…)
清香の言葉に、三田は自分が何も説明していない事、また、何も説明せずに命令に従ってくれたことに気付いた。
(少しは説明してやらんとな…)
地下室に戻ると、三田はクーラーボックス――おそらく姉妹が持ち込んだのだろう――からペットボトルを取り出すと、文の眠る革ベッドに座った。
「まあ、適当に座れ。説明する」
濡れ髪をタオルでくるんでいた清香に声を掛けると、清香はコクリと頷いて床の上に全裸で正座した。
三田は口滑りにペットボトルを一口飲むと、昨日の出来事をかいつまんで説明し始めた。
「……というわけで、今、客間にはその自称・許婚が寝ている。…寝ているはずだ」
三田が話を締めくくると、清香はかなり複雑な表情で頷いた。
「では、その… 旦那さまはその方と結婚されるんですか?」
「どうしたらそうなる…」
三田はうんざりした声で言った。
「彼女には出て行ってもらう。泣こうが喚こうが、だ。じじいが何かとうるさいかもしれんが、口は挟ません」
きっぱりした三田の言い様に、清香はホッと胸を撫で下ろした。
「あの… よかったです。私たち、追い出されるのかと思いました」
「何を馬鹿な…」
三田がため息と共に首を振る。そして、本人も驚く言葉が、その口から飛び出た。
「お前たちはずっと私の側に居てくれ。一生、私が面倒を見る」
愚痴を吐き出して心が弛緩していたのか、三田の口からそんな言葉が飛び出した。ハッと気付いて三田は自分の口を慌てて押さえたが、清香はしっかり聞いてしまったようで、顔を真っ赤にしながら膝をもじもじと擦り合わせていた。
「……………」
「……………」
何故かお互いに気まずい。清香が上目使いに三田を見ると、珍しい事に三田は目を泳がせて「まあ、その、なんだ…」と口篭もった。
「…正座ばかりでは辛いだろう。こっちに座れ」
わざとぶっきらぼうに言って、三田は自分の隣を軽く叩いた。清香は素直に「はい」と頷いてゆっくりと三田の隣に座ると、膝の上に置いた三田の手をそっと両手で握った。
清香の意外な行動に三田は驚いたが、手から伝わる清香の体温が心地良い。心がリラックスするのを感じながら、三田は気になっていたことを清香に聞いた。
「ところで、私の部屋に入ったと言うのは本当か?」
「え、と… はい、すみません、本当です」
「何でまた?」
不思議そうに尋ねる三田に、清香は文のストレスが限界だった事を伝えた。
「それで、少しでも旦那さま分を補給しようと…」
「…お前たちの話は、たまに訳がわからん」
三田が理解を放棄するように額を揉むと、一番重要なことを聞いた。
「それで、机の上のファイルは読んだか?」
清香はかなり躊躇った。しかし、ここで嘘を言っても始まらないと感じて、勇気を出して告白した。
「…はい、読みました」
「そうか…」
三田は全身の息を吐き出すようなため息を吐いた。そして、1つ咳払いを済ませると、清香の顔を真っ直ぐに見て言った。
「書いてある通りだ。お前たちの母親は今も健在で、お前たちが望むのなら親元に帰す事だって…」
「ここにいます!」
三田の言葉を遮って清香は宣言した。そのきっぱりとした言葉に、逆に三田は動揺して「い、いいのか?」と問い返した。
「いいんです。私は施設を離れるときに親離れは済ませたつもりですから、いまさら実の母と言われても、ピンと来ないです」
「そうか…」
三田は心底ホッとしたような表情で頷いた。その表情を見て、清香は今がその時だと判断した。
「さっき、“ずっと側に”“一生”と仰いました」
「………ああ」
本心だから否定できない。三田はしっかりと頷いた。
「私も…」
清香は決心した。
「私も、その覚悟です、旦那さま…」
清香の言葉に、三田は驚いて清香を見た。清香も真っ直ぐに三田を見つめる。その表情はとても自然な物だった。
「貰ってください、私を…」
微笑む清香を、なんとも言えない表情で見つめた三田は、何か憑き物が落ちたような微笑を浮かべた。
「清香… ありがとう… ずっと、一緒だ…」
三田が呟くと清香はそっと目を閉じた。吸い込まれるようにキスをすると、2人はもつれるように革ベッドに倒れこんだ。
「はぁ、文ちゃんが起きちゃうかも…」
「その時は仲間に入れてやろう…」
熱っぽい声で三田はそう言うと、再び清香の口唇に吸い付いて全身の愛撫を始めた。
「あぁ、気持ち良い…」
三田に全身を弄られて清香は歓喜の声を漏らした。思えば、こんな風に優しく愛撫されるのは久しぶりだ。
「ん、少し胸が大きくなったか?」
「…んもう、今頃気付いたんですか?」
清香が拗ねたように口を尖らせた。
度重なる淫行が原因なのか、1年前はほとんど板でしかなかった清香の胸が、丸みが見てわかるほどに膨らんでいた。カップは相変わらずAだが、バストサイズは確実に増加していた。
「旦那さまが毎日揉んでくれたら、もっと大きくなると思いますよ…」
「こうか?」
清香がねだると、三田は両手でこねるように清香の両胸を揉みしだいた。形は小さくても感度は抜群な清香の胸は、持ち主に正直な快感を伝えた。
「ああん… ふあ、旦那さまにおっぱい揉まれると、すごい幸せです…」
「安い幸せだな、そんなので良いのか、お前?」
三田が呆れたように言うと、清香は「当然です…」と静かに答えた。
「でも、おっぱいだけじゃなくて、他のところも触ってもらえたら、もっと幸せになれます…」
「こいつ、おねだりか」
三田は軽く笑ってそう言うと、片手を清香の秘所に移した。既にぐっしょりと濡れた愛液を指に取って馴染ませると、人差し指と中指を揃えて清香のヴァギナに深々と突き刺した。
「きゃん! ああ、ぐりぐりしないでぇ… そんなにされたら、私、すぐにイッちゃいます…」
とろんとした目付きで言う清香に、三田は優しくキスをすると「いくらでもイっていいぞ…」と囁き挿入した指を散々に掻き回した。
「ひゃあん!! 駄目、それイッちゃう、イク、イクゥゥ…!!」
清香は背中を弓なりに反らせると、全身を震わせて絶頂に達した。心が満ち満ちていくのを感じる。こんなにも愛してもらえる自分は幸せだと、清香は心の底から思った。
「…そろそろ挿れるぞ」
三田は絶頂に震える清香の股を割って、身体を割り込ませた。まだ絶頂覚めやらぬ清香がぼうっとした目で三田を見ると、両腕を回して三田の首に絡みついた。
「挿れて下さい、旦那さま。いっぱいいっぱい、愛してください…」
三田はしっかりと頷くと、固くなったペニスをズブズブと挿入した。
「あ、あ、挿って、くる…! あぁ!!」
ペニスが根元まで挿入された瞬間、清香はおとがいを反らせて身体を震わせた。
「なんだ、挿れただけでイッたのか?」
「は、い… えへ、イッちゃいました…」
恥ずかしそうに微笑む清香が愛らしくて、三田は清香の首筋に吸い付くと「じゅぅぅぅ…!!」と力強く吸った。
「あん! そ、そんなに強く吸っちゃ、やだぁ…」
散々に吸いまくって三田が口唇を離すと、清香の首筋にくっきりとキスマークの痕が残った。
「ふふふ、印をつけてやったぞ。お前は私の物だ…」
「ああ、嬉しいです。もっともっと印を付けて下さい…」
三田は言われた通りに清香の全身にキスマークを残す。白い肌にポツンポツンと残る赤い痕は、卑猥さやいやらしさを感じさせない、ある種清らかな美しさを清香に与えていた。
「綺麗だな、お前は…」
普段ならば絶対に言わない言葉を口にして、三田は静かに腰を動かし始めた。
何度も挿入している清香のヴァギナだがいつまでたっても飽きる気がしない。それどころか、三田のペニスをぴったりと咥え込み、うねる膣壁が凄まじい快楽をもたらしてくれる。
「お前の膣内は最高だ…」
甘く耳元で囁くと、清香の顔が幸せに蕩ける。一言、「大好きです…」と言うと、そっと目を閉じて三田の絶頂を待つ。
「出す、ぞ… 受け止めてくれ…」
奥深くにペニスを突きこんで精を解き放つ。子宮から全身に三田の精が満ちたような気がして、清香はたまらず胸の内を言葉に出して言った。
「愛しています、旦那さま…」
「さて、そろそろ上がらんといかんか…」
行為後、三田がペットボトルで喉を潤して言うと、清香が三田のペニスを舐め清めてから言った。
「あの、旦那さま。母親の件なんですが、文ちゃんには黙っていてもらえますか?」
「それはいいが… なぜだ?」
三田が当然のように訊くと、清香はぐっすりと寝ている――行為中もまったく起きるそぶりは見せなかった――文をチラリと見て言った。
「文ちゃんは、母親の事を知ったら動揺すると思います。今は旦那さまや私に依存して安定していますけど、もっと別の依存先を知ったらどうなるかわかりません。もう少し様子を見てから、私が打ち明けたいと思います」
「そうか、お前がそう言うのなら、それでいい」
三田はしっかりと頷くと、ベッドから立ち上がった。
「では、母親の件はお前に一任する。資料は残しておくから、好きなときに読め。…他には何かあるか?」
「はい、その、自称・許婚の人のことなんですか…」
清香が言い難そうに言うと、三田は渋い表情になったが、「言ってみろ」と清香に促した。
「はい。旦那さまはすぐに追い出すと仰いましたが、他の家が見付かるまではお屋敷に居て頂いていいんじゃないでしょうか?」
三田は眉根を寄せた。
「だが、それではお前たちが辛い目に合うぞ?」
「私たちは結構楽しんでますから大丈夫です。ちょっとした旅行気分ですから。勿論、文の新学期が始まる再来週までには出て行って頂きたいのですが…」
清香の言葉に、三田は瞳子の泣きじゃくった顔を思い出した。
あの時は激昂して追い出すと宣告したが、よくよく考えれば少し可愛そうな気もした。それに、マンションの手配は少なくとも数日掛かる。明日すぐに追い出すのは流石に無理そうだ。
「よし、どうせ住居の手配もある。数日はここに滞在する事を許そう。…しかし、そこまで気を使う相手でもないだろう?」
三田が苦笑して言うと、清香は少し困ったように微笑んだ。
「わかりませんけど、もしかしたら罪悪感があるのかもしれません。本当だったら、今の私の場所にはその人が居たのかもしれませんから…」
その言葉に、三田は軽い衝撃を受けて考え込んだ。
(確かに、そうか… もし瞳子が来るのが一年早ければ、もしかしたら私は一緒に暮らすことを認めたのかもしれない…)
そう思うと、少しだけ瞳子が不憫に思えてきた。自分に好意を抱いてくれる女性をあんな風に怒鳴ったのも、反省すべき点かもしれない。
「まあ、お前たちは見付からない事だけを心配していろ。…何と言っても血の繋がった従兄妹だからな、邪険にはせん」
三田はそう言うと清香に軽くキスをし、また、眠っている文にも軽くキスをした。
「明日からも苦労をかけるが、よろしく頼む」
そう言って地下室から出て行く三田を見送って、清香は深々と座礼をすると心を込めて言った。
「おやすみなさいませ。 …あなた」
かなり勇気を出したその台詞に、三田は微笑みを返すしかなかった。
翌日。瞳子の目覚めは最悪だった。
三田に愛想をつかされ、昨晩は涙が涸れるまで泣いた。そして、三田に謝ろうと屋敷中を探し回ったのだが、三田の姿はどこにも無かった。
鍵つきの部屋はいくつか見つけたのだが、どんなにノックをしても返事は返ってこなかった。
「朝、だ……」
泣きすぎてがんがんする頭を振って、瞳子はベッドから起き上がった。妙に部屋が明るい。ぼんやりとしたままで携帯電話を開くと時間を確かめる。
すると、見る見る内にその表情が強張る。
「う、そ… もうお昼近く…!?」
寝る前に、朝一で三田に謝ろうと決めていた。瞳子は慌ててベッドから降りようとし、ベッドの縁に躓くと盛大にこけた。
「ぎゃん!」
思いっきり鼻を地面にぶつけて、瞳子はまた泣きそうになった。
…泣きっ面に蜂とはこのことか、としみじみと思い、…眼鏡を掛ける前でよかった、とも思う。
何とか根性を入れて立ち上がり眼鏡を装着すると、控えめなノックのあとに部屋のドアが開いた。
「失礼。大きな音がしましたが、どうかされましたか?」
昨日いくら探しても見付からなかった三田が姿を見せた。今日はポロシャツにジーンズのラフな格好をしている。
「だだだだだ、大丈夫です! はい!」
意味も無く気を付けをして瞳子が言うと、三田は少し戸惑ったような表情を浮かべてた後、ごほん、と咳払いした。
「あー、瞳子さん、そのままで聞いて欲しいのだが…」
「は、はい!」
三田の声に瞳子の全身が硬直した。出て行け! その言葉が頭の中を縦横無尽に走り抜ける。
「昨晩は本当に失礼をしました。色々とあって私も感情的になっていたらしい。すみません」
しかし、瞳子の予想とは裏腹に三田は昨日の非礼を詫びると、深く頭を下げた。
「い、いえ、そんなこと無いです… 私の方こそ、子供じみた言い分で敦さんを困らせてしまって…」
突然の三田の謝罪に、瞳子は慌てて手を振って否定した。
「そうですか… それは良かった」
三田は安堵して顔を上げる。
その妙に落ち着いて余裕のある仕草に、瞳子は本当に昨晩と同じ三田なのかと不思議に思う。
「…ですが、私の主張を変える気は有りません。ここに貴女の居場所は無いし、作る気も無い。どうか大人しく私の提供するマンションに移ってください、お願いします」
三田は再度頭を下げた。
ここまで礼を尽くされては、流石に瞳子も受け入れるしかなかった。
「……仕方、ないです。いえ、本来だったら、これでも充分に厚かましいとわかっています。わかってますけど…」
口篭もる瞳子に、三田は落ち着いた声で言った。
「まあ、我々は会ってまだ数日です。これからいくらでも会う機会はあるでしょう。それに、マンションの用意が整うまで数日間はここに滞在してもらう予定です。その間は、屋敷の物は好きなように使ってください」
その三田の言葉に、瞳子はホッと胸を撫で下ろした。
「ああ、よかった… はい、では、よろしくお願いします、敦さん」
改めて挨拶をする瞳子に、三田は「はい」と目を合わせて答えた。
その日は予定した通り、三田と瞳子の祖父の墓参りを2人で済ませた。
何回か来たことがあるという瞳子は、色々と複雑な胸中で墓前に手を合わせた。
「…祖父とは面識があるんですか?」
帰りの車の中で三田が尋ねると、瞳子はしっかりと頷いた。
「はい、おじい様は年に4回ほど家に訪ねて来てくれました。その日は決まって外食で、幼い頃からずっと楽しみにしていた行事でした。でも…」
瞳子はいったん言葉を切ると、悲しそうに車窓から外の景色を眺める。
「去年、おじい様が亡くなられて、その行事も無くなりました。…寂しくはなったけれど、月命日には何回か母とお参りに来ていました」
瞳子の悲しげな表情を見て、三田は、そういえばこの娘は母親を無くしたばかりだったな… と改めて思う。
「…祖父は偏屈だったから、扱いに困ったでしょう?」
「え? いいえ、おじい様は無口ですけど、とても優しい人でしたよ。色々とわがままも言いましたが、無言で許してくれました」
瞳子が思い出すようにクスリと笑うと、三田は憮然とした表情になった。
「私はねだっても何も買ってもらえませんでした。やはり、孫娘は何かと可愛いのでしょうね」
「そ、そんなこと無いと思いますよ!」
瞳子が慌てて言うと、三田は薄く笑う。
「フフ、冗談です。さて、次はマンションを見に行きましょうか。3件ほど市内に有りますから、どうせなので今日の内に見て回ってしまいましょう」
三田がそう言うと、瞳子は複雑な表情で頷いた。
夕日が落ちる頃に2人は屋敷に帰って来た。とりあえずリビングに落ち着いた2人は、瞳子の淹れたお茶を飲んで一心地をついた。
「どうです、気に入った住居は有りましたか?」
三田が伺うように問うと、瞳子は「気に入るも何も…」と言葉をつぐむ。
「どれもこれも高級マンションじゃないですか! 1部屋で充分なのに、最低でも4LDKだなんて…」
瞳子は改めて三田の財力に驚いていた。河合から色々と話は聞いてはいたのだが、実際は想像以上だ。
「あんな部屋、私じゃ役不足です…」
「そうですか?」
三田は不思議そうに言った。家は広ければ広い方が良いだろう、と漠然と考えていたから、瞳子の反応は少々意外だ。
「別に全ての部屋を使わなくても良いでしょう。それに、余った部屋をルームシェアにだって使える。
瞳子さん、身の丈に合った物ばかりを選んでいたら、自然と人間が小さくなってしまいますよ? 貰う物、それの生かし方1つで人生は変わってくるものです」
三田の言葉に、瞳子は神妙に頷いた。
「よろしい、では、明日までにはどこにするか決めておいてください。書類の処理がありますので、できればお早めに。…それでは夕食にしましょうか」
そう言って三田が立ち上がろうとすると、瞳子が慌てて立ち上がって三田を止めた。
「あの、夕食は私が作ります!」
「しかし、仮にも貴女はお客さんなんだし、そんなことをさせるわけには…」
三田は渋ったが、瞳子は珍しく強気な表情で断言した。
「一宿一飯以上の恩があります! ぜひ作らせてください!!」
こうまで言われては、逆に断るのが気が引ける。三田はため息を吐くと「では、お願いします」と言って、浮きかけた腰をソファに戻した。
「任せてください!」
瞳子は元気良く答えると、キッチンに駆け込んで冷蔵庫の扉を開けた。そして、「あれ?」と不思議そうな声を出した。
「ん? どうかしましたか?」
不審に思って三田が声を掛けると、瞳子は「いえ、その…」と煮え切らない返事をした。
「実はですね、今日お墓参りに出かける前に、失礼ながら冷蔵庫の中身をチェックしたんです。お夕飯は私が作ろうと決めていましたから、足りない食材があれば買おうと思って…」
「…それで?」
何が問題かわからず三田が問い返すと、瞳子は頭を傾げて言った。
「冷蔵庫の中身が変わっているんです。ほら、このハムは半分しか残っていなかったのに、今は1つ丸々あります。牛乳もいつの間にか口が開いているし…」
瞳子の言葉に三田はドキリとなった。明らかに姉妹の仕業だ。ただ、そんな細かいところまで瞳子が見て覚えているのが驚きだ。
「さて… 瞳子さんの勘違いではないですか? 今日は来客も無かったから、泥棒以外は入ってきませんよ。それに、屋敷の防犯設備にはそれなりに金を掛けていますから、誰かが入っていたらすぐにわかります」
「そうですか… そうでしょうね…」
瞳子は不思議そうにしていたが、とりあえずは納得したようだ。三田は心の中で嘆息すると、瞳子に「仕事の用事がある」と言い残してリビングを後にした。
「鋭い人ですねぇ…」
夕食後、瞳子がお風呂に入っている間に三田は地下室を訪れた。文庫本を読んでいた清香が、瞳子が冷蔵庫の中身を指摘したことを聞いて、しみじみと呟いた。
「確かにバレるとまずいと思いましたので、そのハム以外は元の状態にしていたんですが…」
「牛乳は?」
「ごめんなさい、それは文です」
携帯ゲームをしていた文が、プレイの手を止めて謝った。三田は苦笑すると、気にしてない風に文の頭をぽんぽんと叩いた。
「天然なのか計算高いのかわからん。まあ、裏は無いようだから安心して良いが、注意するに越した事は無い。冷蔵庫の補充はしばらく止めておいてくれ。勿論、気分転換の買い物は続けて良いぞ」
そう言うと三田は立ち上がった。もう帰るのか、と文が不満そうな顔で三田を見た。
「すまんな、そろそろ仕事を真面目にやらんと滞ってしまう。今日はもう来れないと思うが、我慢できるか?」
姉妹それぞれの頭を撫ぜながら言うと、姉妹は揃ってコクンと頷いた。
「よし、我慢もあと少しだから頑張ってくれ」
そういい残して、三田は地下室を去った。
――いっぽう、浴室では、
「敦さんも無駄毛処理とかするのかしら…?」
瞳子が女性用剃刀を発見して首を傾げていた。
その日の夜。瞳子はベッドの上で眠れないでいた。
「う〜ん、なんなのかしら…?」
どうにも変な違和感がある。上手く言葉では言い表せないが、屋敷全体の歯車が合っていないような気がするのだ。
「敦さんは、この1年はずっと1人で住んでいるって仰ったけど…」
それにしては妙に屋敷の手入れが行き届いている、と瞳子は感じていた。男が1人でこんな広い屋敷に住んでいるのに、庭木も余さず手入れしているのは少しおかしい。
「この部屋もすごく綺麗だし…」
瞳子が泊まっている部屋は使っていない客間と紹介された。しかし、昨日瞳子が始めて入った時には、既にベッドメーキングから室内の掃除、更には女性用の寝具の準備まで済まされていた。
瞳子が三田に付いて行くのは土壇場で決まった事だから、これはかなりおかしかった。
「座敷童でも居るのかしら?」
そこまで想像して、瞳子は身体をブルリと震わせた。妖怪とか幽霊とかは大の苦手だ。瞳子は違和感を無理やり頭の片隅に押しやると、頭から布団を被る。
とにかくも、自分が居れるのはあと数日なのだ。その間に少しでも印象を良くしておこうと、瞳子は明日の早起きを誓った。
地下室には細い採光窓がある。
小さいながらもその隙間から入ってくる朝日は、目覚まし時計いらずの文を覚醒させるには充分な光で、あまり寝心地の良くない革ベッドの上で文は大きなあくびをした。
「ふぁあああああああ… 朝だ…」
むっくりと身体を起こすと、隣では全裸の姉がすやすやと寝息を立てている。視線を落とせば自分も全裸だ。
「そーいや昨日は軽くレズッて寝たんだっけ…」
三田が相手をしないと、どうしても姉妹は若い身体を持てあます。同じベッドでそれぞれオナニーするのもなんなので、昨日は姉を相手に、それぞれ1回ずつイカせてから就寝したのだ。
「…のど渇いたな」
いつもなら先にシャワーを浴びてから姉を起こすのだが、地下室に監禁の身では生活パターンがまるっきり違う。とりあえず、文は何か飲もうと持ち込んだクーラーボックスを開いた。
「あ、牛乳がない…」
しまったー、と文は悩んで柱時計を見た。時刻は5時。早朝というより明け方と言って良い時間だ。
「まぁ、みんな寝てるよね…」
誰ともなしに呟くと、文は姉を起こさないようにこっそりと地下室を出た。
そーっとドアから顔を出して左右を確認する。明け方の屋敷の空気は、シン、としていて、生者の気配はまるで無かった。
「よし、おっけー」
そろーりそろーりと廊下を歩く。古い屋敷の廊下はぎしぎし鳴るが、それがちょっとしたスリルだ。無事にリビングまで辿り着くと、文は鼻歌を歌いながら冷蔵庫のドアを開けた。
「えーと、牛乳… あったあった」
牛乳パックを見つけると、姉が居ないのを良い事にそのまま口を付けて飲もうとした、
その瞬間だった。
「だ、誰、あなた!?」
突然、背後から聞きなれない女性の声が掛かった。文は驚いて危うく牛乳パックを取り落としそうになって大いに慌てた。
何とか取り落とさずにテーブルに置く事が出来たが、今度は喉を直撃した牛乳が気管に入って猛烈な激痛が文を襲う。
「げ、げほげほげほッ!!!!」
「あ、だ、大丈夫!?」
誰何した女性――勿論、瞳子だ――は、急に苦しみだした文にこれまた驚いて、慌てて文の背をさすった。
「…けほっ、だ、大丈夫です…」
なんとか肺と喉を鎮めて恨めしそうに文が顔を上げると、そこで瞳子と初めて目が合った。
「あ…」
その瞬間、文の顔が「しまったーー!!」と後悔に染まる。瞳子の方は、とりあえず驚愕から脱したらしく、息を数度吸って落ち着くと、改めて文を見た。
「あなた、いったいどこから… って、あなた、なんで裸なの!?」
「あ、昨日は裸で寝てたから…」
「裸で、どうして!?」
「……………」
文は返事をせずに無言でいると、突然、ダッ! と駆け出して逃げようとした。だが、
「待ちなさい!」
瞳子は意外に俊敏な動作で文の腕を掴むと、背後からがっちりと文を拘束した。
「離してー!」
「大人しくしなさいっ! …うわ、今、ムニッて音がした。何、このおっぱい?」
「ただのおっぱいだよー!!」
2人がどたばたどたばたと騒いでいると、三田が何の騒ぎだという風に、寝ぼけ眼でキッチンに姿を現した。
「何の騒ぎ… ああ………」
そして一瞬で状況を理解すると、「はぁ……」と、長い長いため息を吐いた。
「…とりあえず、2人とも落ち着きなさい」
三田が重い声で言うと、瞳子と文はもみ合うのを止めて大人しくなった。
「文、地下室に行って清香を呼んで来い。あと、服を着ろよ。瞳子さん、説明しますのでリビングまでどうぞ…」
「は、はい、旦那さま!」
文も混乱していたのだろう、人前で「旦那さま」と呼んでしまった。三田はさらに渋い表情になったが、暗鬱な思いを振り払うように首を振ると、一目散に駆けていく文を見送った。
「…あの、どういうことなんですか? お知り合いなんですか?」
かなり不審な目をして瞳子が尋ねると、三田は「とりあえず座りましょう」とリビングに移動した。
リビングで三田と瞳子が黙って待っていると、ほどなくして清香――瞳子にとっては知らない女の子2号――と文が2人して姿を現した。
姉から平手打ちでも喰ったのか、文は頬は真っ赤に腫らして「ぐすぐす…」と鼻を啜り上げている。
「…申し訳有りません!!」
三田と瞳子を視界に認めると、清香は腰を垂直に折って謝った。
「いいから、とりあえず座れ」
三田が脱力した声で言うと、姉妹は大人しくソファに座った。
その時、三田が清香に「調子を合わせろ…」とこっそり耳打ちをした。一瞬、清香は動きを止めたが、すぐに何気ない風を装う。
「あの…」
かなり気を揉んでいるらしい瞳子が落ち着かなく声を出すと、三田は「わかっています」と頷く。
「今、説明します。この2人は知人の子で、今は私が引き取って育てています。私は彼女らの父親と懇意にしていましたが、去年、その父親が死んでしまったので、私が引き取ることになったのです」
言葉を切って、三田がチラリと清香を見ると、清香は慌てて「そ、そうなんです!」と相槌を打った。
「はぁ… ええと、お母さんは?」
「言い難いことですが、母親は彼女らが幼い頃に家を出て、今では行方もしれません」
「そう、なんですか…」
あまり納得した様子ではないが、瞳子はとりあえず頷いた。そして、多少、同情めいた視線を姉妹に送る。
三田の話しは嘘臭いが、もし本当なら、この姉妹は自分と同じ境遇ということになる。
「…今まで何処に居たんですか?」
「あー、実は地下室を改造していまして、そこに、その… 隠れていました」
上手い言い訳が思いつかず、三田は正直に言った。
「なんで隠れてたんです?」
「それはですね…」
矢継ぎ早な瞳子の質問に、三田は頭をフル回転させた。
「それは、河合さんに知られると、何かと厄介だと思ったからです」
「河合のおじい様にですか?」
瞳子が不思議そうに言うと、三田は「はい」と頷いた。
「この姉妹の事は、河合さんには知られていません。知ると、何かと小煩い老人ですからあれこれと口を出してくるでしょう。そういった煩わしさを彼女たちに与えたくなかったのです」
三田がそう言うと、瞳子は「なるほど…」とその点には納得した。
小さい頃から世話になっているだけあって、瞳子も河合の性格を良く知っている。あの老人は、とにかくお節介なのだ。
「ですから、瞳子さん。よければこの2人のことは河合さんには黙っておいて貰えませんか? いらぬ邪推をされたくないのです」
三田がそう言うと、清香が慌てて頭を下げる。
「ええと…」
瞳子は困り果てた様子で言葉を濁した。
三田がこの姉妹が居るために自分を追い出そうとしたことは、鈍い瞳子でも理解できた。だが、嘘か本当かはわからないが、自分と同じ境遇だと説明されると流石に無下にはできない。
(この娘たち私より小さいのに、私と同じ苦労を味わったのかしら…)
そう考えると共感を覚えてしまう。瞳子は少し躊躇ってから「あの…」と声を掛けた。
「私は各務瞳子と言います。貴女たちは?」
「あ、私は香田清香です」
「…香田、文です…」
清香のはきはきとした喋りには好感を覚える。文は第一印象がアレだったので複雑だが、泣いている姿は可哀想だ。
「年齢はいくつ?」
「私が17歳で、文が15歳です…」
ふむふむと頷くと、瞳子が苦笑いをして三田を見た。
自分でも少しどうかと思うが、この姉妹を見ると不思議に三田を信じたい気持ちになる。
「敦さん、最初から言ってくだされば良かったのに」
「は、ですが…」
三田が口篭もると、瞳子はくすくすと笑った。
「大丈夫です。はい、河合のおじいちゃんにはナイショにしておきます。ええと、文ちゃん? さっきはびっくりさせてごめんなさい」
突然、瞳子に話しかけられて、文がびっくりした風に背筋を伸ばす。瞳子と目が合うと、俯いて「文こそ、ごめんなさい…」とボソボソと呟いた。
「ありがとうございます!」
清香が大げさに頭を下げてお礼を言う。地下室に泣きそうな文が下りてきて、「バレちゃった!」と言った瞬間には頭が遠くなったが、ひとまずは安心だ。
「あ、その、何と言うか、貴女を誤解していました、瞳子さん。一昨日の夜はあんな事を言って申し訳ない。改めてお詫びします」
珍しく三田が頭を下げて謝罪した。
「あ、いえいえ! そんなことないです。…ちょっとお姉さんぶっているだけですから…」
謙遜して手を振る瞳子に、清香がようやく小さな笑みを漏らした。三田も場の雰囲気が和んだ事を感じて安堵すると、「では、朝食にしますか… 清香、すまないが4人分準備を頼む…」と疲れた声で言った。
和やかな朝食が終わると、三田は瞳子を自分の部屋に呼んだ。清香と文は2日ぶりの家事を片付けるようだ。
「騙していて申し訳ありません」
「いえ、私もおじいちゃんも、敦さんを騙し討ちしたようなものですから、おあいこです」
瞳子がそう言ったので、三田は安心して本題に入ることにした。
「それでは、マンションはお決めになりましたか?」
三田が内心恐る恐る尋ねると、瞳子は頷いて答えた。
「はい、あれだこれだとは決めきれないと思ったで、最初のマンションでお願いします。大学やバイト先からも近いようですし」
「そうですか… アルバイトは何を?」
「本屋さんで働いています。…もしかしたら、清香ちゃんは見たことあるかもしれません」
瞳子が思い出すように顎に手を当てる。市内の大型書店には連れて行ったことがあるから、それも充分に考えられる。
「では、援助の内容ですが、大学の学費は全てこちらで負担します。あと、生活費ですが…」
「あ、あの…!」
瞳子が慌てて手を振った。
「学費は、奨学金を頂いていますから大丈夫です。生活費もバイト代とお母さんが残してくれたお金で何とかなりますから。本当に、住居さえあれば大丈夫なんです」
瞳子はそう言うが、三田はかなり渋い顔をしている。
「しかし、それでは申し訳ない… もうわかってらっしゃるでしょうが、貴女をここから追い出すのは単なる私のわがままです。少しぐらいは援助させてください」
三田が懇願するように言うと、瞳子は最初困った顔をしていたが最後には納得して頷いた。
「わかりました。では、学費は甘えさせていただきます。でも、本当にそれだけで結構ですから」
瞳子がそう言うと、三田は頷いて「分かりました、すぐに手配します」と答えた。
「それと… 敦さんに個人的なお願いがあるんですが…」
瞳子が控えめに言う。
「この屋敷にはちょくちょく遊びに来てもいいですか?」
「はぁ、ここにですか?」
意外な申し出に三田が困惑して首をかしげた。
「はい、親戚の家はここだけですし、それに、あの娘たちがなんだか他人に思えないんです」
三田は、なるほど、と納得していた。三田も同年代の親戚が居ないことを寂しく思った事がある。瞳子と姉妹は歳も近いから、良い友達になれそうだった。
「ええ、勿論構いませんよ、清香も文も喜ぶでしょう。 …2人とは何か話されましたか?」
三田が尋ねると、瞳子はこっくりと頷いた。
「はい、清香ちゃんとは少し。文ちゃんは流石に私を避けていましたが…」
文は初対面で全裸を見せ付けてしまい、バツが悪いのかも知れない。
「清香ちゃんはとてもしっかりしていますね。『妹が迷惑をお掛けして申し訳有りません』って丁寧に頭を下げていました。とても年下とは思えないです」
「まぁ、彼女はしっかりしなければならない環境にありましたから…」
言葉を濁しながらも、三田は今日まで数日の行動が全て杞憂だった事に、かなり脱力していた。そして、同時に嘘や隠匿ばかり行ったが、実際はきわどい橋の上を歩いていたのだと気付いてぞっとした。
(よく今まで問題になっていなかったな… 学校、地域社会、どこから話が漏れてもおかしくは無い…)
たとえ瞳子がマンションに移ったとしても、これまで通りの生活は見直さなければならない、と三田は決心した。折りを見て、河合にも姉妹を紹介せねばならないとも思った。
「…それで、マンションへはいつ移ればいいんですか?」
「ええ、昨日まではすぐにでも移って頂きたかったのですが、お恥ずかしい事に全てバレてしまいましたので… 瞳子さんの良い時でかまいません」
「わかりました」
本心ではこのまま三田家に残りたかったが、ここでゴネてもいい結果にはならないと瞳子は考えた。とりあえず、出入りする口実は付けた。今はそれで充分だ。
「それでは、明日マンションに移りますね。手続きの方をよろしくお願いします」
瞳子が手を差し出し、三田が大きく頷くと、2人はしっかりと握手をした。
三田と瞳子が、これまでの騒動に一応決着を付けた頃、姉妹は2人で地下室の掃除をしていた。勿論、念のためにドアには鍵をしてある。
「…………」
「…………」
作業中は大抵無口になるが、今日はいつにも増して空気が重かった。
「……ぶって、ごめんね」
沈黙に耐え切れなくなったのか、清香が呟く様に言う。あの時は激昂に任せて平手打ちをしてしまったが、丸く収まった今では後悔の種でしかない。
「………ううん、文が悪いのはわかってるから」
文も言葉少なに答える。清香はとりあえずホッとしたが、ではなぜ妹がこうも落ち込んでいるのかがわからなかった。
「文ちゃん、どうかしたの? 元気無いみたい…」
「うん…」
力なく頷いて文は、ぽてん、と革ベッドに座ると、不安そうな顔で姉を見る。
「ねえ、お姉ちゃん… 文たち捨てられちゃうのかなぁ…?」
文の質問に清香はびっくりした。だが、ほんの少し文の不安がわかった気もした。
「そんなこと無いわよ。だって、旦那さまは私たちをここに閉じ込めてまで隠そうとしたんだから。捨てようと思うなら、そんなことしないわ」
「でも、バレちゃったし…」
革ベッドの上で、膝小僧を抱えた文の瞳に涙が滲んだ。
さっきは旦那さまも優しいかったが、今頃2人で自分たちを追い出す話し合いをしているかもしれない… そう考えると、姉に申し訳なかった。
そして、文にはもう1つ気がかりな事があった。
「あの人…」
「瞳子さん、のこと?」
清香が聞き返すと、文は「うん…」と力なく頷く。
「…旦那さまの新しい奴隷なのかなぁ?」
「ち、違うわよ!!」
あまりに想像もつかない発想に、清香は驚いて大声を出してしまった。その声に押されて、とうとう文の瞳から涙が零れ落ちた。
「ああ、ごめんなさい、大声出して」
清香は文の横に座ると、それなりに厚くなった胸に文の頭を抱き込んだ。
「あの人は旦那さまの従兄妹、ただの親戚よ」
「でも、すごく親しそうだった… 旦那さまのこと、名前で呼んでた…」
ううむ、と清香は思い悩む。妹は気持ちが沈んで、思考がダウンスパイラルに入っていると感じた。
(元気付けてあげないと…)
清香は文の顔を上に向けてまじまじと見ると、優しく微笑んで流れる涙を舐め取ってあげた。顔を愛撫されて、文がくすぐったそうに身を捩る。
「旦那さまは私たちを追い出したりしないし、あの人も新しい奴隷でもなんでもないただの親戚。不安だったら、あとで旦那さまに確かめてみましょう?」
「こ、怖いよ…」
「お姉ちゃんには自信があるわ。軽ーく尋ねて、ふーん、で終わるわよ」
清香がことさら気楽そうに言うと、文はいくらか落ち着いたようだ。
本当を言うと、清香は文に一昨日の告白とその返事を伝えたかった。だが、気恥ずかしいのと、やはりどこか文に遠慮する心がそれを阻害していた。
「そうかなぁ… そうだといいなぁ…」
「そうだ、今日は外食をおねだりしましょう。文ちゃんの好きなステーキハウス、きっと連れて行って貰えるわよ」
トドメのように清香が言うと、文はようやく弱々しい微笑みを浮かべて頷いた。
昼過ぎ、清香は文に宣言した通り、三田に質問をぶつけた。
尋ねられた三田は眉根を寄せて不快感を表すと、軽く文の頭を小突いた。
「当たり前だ、どうしてお前たちを手追い出さなきゃならん。お前たちはずっとここで暮らせ」
その答えは文をホッとさせるには充分な物で、安堵のあまり泣きそうになる文を、清香はそっと抱いてやった。
「やれやれ、そこまで不安にさせていたとは思わなかったな…」
三田は嘆息すると、助けを求めるように清香に視線をやった。清香は軽く頷くと「そうだ、お夕飯はみんなで外食しませんか?」と提案した。
「ああ、そうだな。瞳子とはこれから長い付き合いになるだろう。明日出て行くようだから、今日は少し豪勢にいこう。文、どこが良いか?」
三田の気遣いに清香は感謝した。文が喉の詰まった声で「ステーキ…」と言うと、三田は苦笑して答える。
「またか、文はあのステーキが好物だな」
「それもそうですけど、あすこは1年前に行って以来、何かと思い出深いところなんですよ」
清香が補足するように言うと、三田が「そうか…」と呟いて遠い眼をする。
「もうそろそろ、1年か…」
清香がゆっくりと頷く。
「早かったな…」
「はい…」
「うん…」
1年が過ぎた。きっと、また新しい1年がやってくる。清香はそう固く信じた。
…だが、事件は起きた。
夕食を行き付けのステーキハウスで豪勢に済ませると、三田が運転する車で4人は屋敷へと戻った。
車内では妥協の結果なのか、なぜか後部座席に女性3人が座る形となった。隣に誰も居なくて、三田としては少し寂しい。
「おいしかったわね」
端に座った瞳子が朗らかに言うと、反対側の清香が「はい、文ちゃんの大好物なんです」と笑って答えた。
歳も近いせいか、清香と瞳子はすぐに打ち解けた。傍から見ても、清香と瞳子はとても仲が良く見える。
(お互いに姉、妹を欲していたのかな…?)
三田はそんな風に当たりをつけた。瞳子はわからないが、清香は年上の同性との会話が楽しそうだった。
ただ、文は朝よりずっと元気になったのだが、口数はあまり増えていなかった。清香と瞳子双方から何かと水を向けられるのだが、曖昧に頷いたり笑ったりするだけだった。
今も、2人に挟まれて小さい身体をさらに縮こまらせていた。
(そう言えば、こいつは人見知りが激しいのだったな)
以前、清香から聞いた言葉を三田は思い出した。1度仲良くなればそうでもないが、それまでに時間が掛かることは前にもあったことだ。だから三田はあまり心配しないことにした。
屋敷に到着して三田と姉妹が自分の部屋に戻ろうとすると、瞳子が姉妹の部屋にお邪魔したいと言い出した。
「もう少しお話しましょ、ね」
それならば、居間でお茶でも淹れて話せば良い、と三田は言ったが、清香と瞳子に駄目出しされてしまった。
「駄目です、敦さんは仲間外れです」
「ごめんなさい、でも、目の前だと話せないこともありますから…」
どんな事を話すのかと三田は不安になったが、なぜか反論できない。三田は大人しく自分の部屋に引っ込む事にした。
「そうなの、もう1年になるの…」
姉妹の部屋では、女性3人がベッドの上で車座になって四方山話に興じていた。
当然、話題の中心は三田の事やこの屋敷での事だ。
「初めて会ったときは凄く怖そうな印象だったんですけど、いきなりステーキをご馳走になって、そのあとはお買い物。この人はいったい何がしたいんだろう、ってすごく悩みました」
「敦さんって、お金使いが激しいの?」
瞳子の質問に、清香は「う〜ん」と首を捻る。
「お金に糸目はつけない、です。でも、不必要な物は絶対に買ってくれません。しっかりと理由を… そうそう、メリットを証明しないと買ってくれないんです。ね、文ちゃん」
清香が気を使うように文を促すと、文は戸惑うように「う、うん」と頷いた。
「カップとかは高級品なのに、コーヒーやお茶はスーパーの安いやつだからびっくりした…」
文がぽつぽつと言うと、清香はホッと笑顔を漏らした。ようやく喋ってくれた。
「そうなんだ。じゃあ、敦さんは好き嫌いとかは無いの?」
瞳子も気を使うように文に話しかけた。文は視線を下に向けたが、ぼそぼそと返事した。
「好き嫌いは、ない、です…」
「文ちゃんは?」
瞳子がそう尋ねると、さらに文は身を縮めた。その仕草に、清香は軽く不安を抱いたが、瞳子はあまり頓着しなかった。むしろ、その小動物的な仕草が大いに保護欲をそそる。
「文は、納豆とか、ねばねばした物が嫌い、です…」
見るからに一生懸命な様子で文が答える。多少強引かとも思ったが、とりあえず返事をもらえて瞳子もホッとした。
「瞳子さんは何か食べられない物は無いんですか?」
「私は本当は苦瓜がだめなんだけど、母さんに矯正されて…」
そう言うと、瞳子は口をつぐんだ。母の死から3ヶ月と少しだが、まだ軽々しく思い出にするには近い記憶だった。
瞳子はごまかすように「あはは…」と笑うと、しんみりした声で話す。
「清香ちゃんたちも、お母さんいないんだよね…」
「え、えーと、えと…」
「うん…」
清香は真実を知っているだけに逡巡したが、文は素直に頷いた。
「お母さんがいないって、どんな感じ?」
瞳子が呟くように言う。特に疑問に思っているわけではない。ただ、なんとなく口にでたのだ。
「初めから居ないから、わからないです」
文が、また素直に答えた。
「そっか、そうかぁ…」
瞳子が呟いて、場がシンと静まる。突然訪れた沈黙を、清香は居心地悪く思った。
「私ね、ずっと片親で自分が凄く不幸だと思っていたの。けど、あなた達の事を聞いて、もっと辛い目に合っている人が居ると知る事が出来たわ」
瞳子はいったん言葉を区切ると、文に微笑んで続けた。
「…正直に言うとね、私は敦さんのお嫁さんになろうとこのお屋敷に来たの。
おじいちゃんが勝手に決めた許婚だけど、私は完全にそのつもりで育ってきたから何の疑いも無かったわ。
ふふふ、子供のころから聞かされてきた白馬の王子さまに憧れていたのよ… でもね、今は… あら、どうしたの文ちゃん?」
瞳子の話の途中で、文が突然立ち上がってベッドから降りた。そのままクルリと背を向けると、「ジュース取ってくる」と言い残して部屋から去った。
「…嫌われたのかしら?」
「い、いえ、文ちゃんは人見知りが激しいんです。慣れれば何てこと無いんですが… それで、今は、どうなんですか?」
文のことも気がかりだったが、清香に取っては瞳子の告白の方がもっと気がかりだった。
「ん? ああ、今は一時棚上げ。だって、清香ちゃんが居るじゃない?」
「え、私ですか?」
「うん。だって、敦さんのこと好きなんでしょう?」
ズバリと言われて、清香は胸が、ドキッ、と高鳴った。
「一目見てすぐに気付いたわ、だって目付きがすごいんだもの。気付いてる? 貴女、敦さんが何かするたびに、チラリチラリって視線を送ってるのよ?」
そんな恥ずかしい事をしていたのだろうか? 清香は急に恥ずかしくなって「や、やだ…」と両手を頬に当てた。
「ふふっ、だから、お邪魔虫は退散するの。でもね、諦めては居ないのよ? 1年間のビハインドは有るけど、そのうち絶対に取り戻してみせるんだから! それに、近くに居るより、少し離れていた方がお互いが良く見えるものよ」
そう言って瞳子はニコリと笑う。清香は(そうなのかなぁ…?)と思いつつも、何となく変な違和感を感じた。
(あれ、でも、私…)
「勝負よ、清香ちゃん。負けないんだから!」
(もう告白して、OKの返事を貰っているような…)
勝負どころか、すでにフライングして勝利をもぎ取っていることに気付いて、清香は引き攣る頬を何とか押さえて「あはははは…」と乾いた笑みを漏らした。
冷蔵庫のドアを開ける。前に買っておいたジュースが減っていた。多分、あの人が飲んだのだろう。
流しには知らない湯のみが洗って置いてある。あの人のものだろう。
昼ごはんの時に、いつも文が座る場所にあの人が座った。旦那さまの、真向かい。あの人は敦さんと呼んでいた。
ふらふらする。目に止まるのはいつもと同じはずなのに違う風景。
何とかしなければならない。何とかしなければならない。
旦那さまのお嫁さんはお姉ちゃんなんだ。
…何とかしなければならない。
「貴女に聞くのもなんだけど、文ちゃんは敦さんのこと、どう思っているの? やっぱり私たちのライバル?」
宣言してすっきりしたのか、瞳子がフランクに尋ねる。
「え、えーと、私を応援してくれています。多分…」
「なーんだ、そっちは応援団付きかぁ… あ、でも、私にも強力なバックが居るのよ!」
「は、はぁ…」
清香は、とりあえず、といった感じで相槌を打った。どうにも瞳子のハイテンションぶりに着いて行けない。
「私のバックにはね、敦さんが世界でたった一人頭の上がらないおじいちゃんがいるのよ」
「へぇ、そんな人が居るんですね… あ、そういえば聞いたことがあります。確か… 河合さん?」
清香が出発前の三田の台詞を思い出して言うと、瞳子が「そうそう」と頷いた。
「私に敦さんとの結婚を吹き込んだ人でね。そのうち、清香ちゃんも会う機会があると思うわ。すごく面白いおじいちゃんだから…」
「それは会ってみたいですね」
清香は心から答えた。もし、三田が清香を紹介するときは、きっと“その時”のはずだからだ。
「あ、でも貴女たちのことはおじいちゃんには秘密だったわ。んー、でもきっと敦さんが何とかしてくれるわよ」
瞳子がそう言って「あはは」と笑った瞬間だった。
部屋のドアが音を立てて開いた。2人がその音に気付いてドアの方を向くと、文が仁王立ちしている。
その手には包丁が握られていた。
「えと、文ちゃん…?」
初め、清香も瞳子もその意味がわからなかった。林檎でも剥くのかしら…? それぐらいの思いでしかなかった。
だが、文が包丁を、スーッ、と身体の中心に引き寄せると、それが安っぽいドラマの1シーンと同じであると直感的に悟った。
「文ちゃんッ!!」
清香が叫ぶと、まるでそれが引鉄のように文が動いた。前のめりになると、ベッドの上で固まっている瞳子に一直線に走った。
「…居なくなって」
言葉が文の口から漏れる。その言葉に生命の危機を感じた瞳子が、弾かれたようにベッドから転がり落ちた。
目標が無くなって文がベッドに倒れ込むと、清香が背後からのしかかって文を羽交い絞めにした。
「離してぇっ!!」
「馬鹿な真似はよしなさい!!」
清香と文とではかなりの体格差があるのに、文の力は凄まじかった。何か執念めいた力だった。
「それを、離しなさい…ッ!!」
激しく揉み合うが、文の手には包丁が握られている。
ベッド脇で目を回していた瞳子がそれに気付くと、奪い取ろうと文に近付いた。
「ッ!! だめ、瞳子さん、来ないで!!」
清香が瞳子に気を取られた一瞬を突いて、文は強引に清香を振り払うと、そのまま目の前の瞳子に包丁を振り下ろした。
パッ、と部屋に血が舞う。
「きゃああああああぁぁぁ!!」
魂消るような悲鳴があがった。
コツ、コツとリノリウムの廊下を歩く音が聞こえる。
病室前のベンチに座った三田が顔を上げると、そこには河合が立っていた。
「…早かったですね」
「…北海道は嘘だからな」
そう言って、河合は三田の隣に座った。
「あの姉妹はとりあえず三田先生の屋敷に置いてきた。こっちは?」
「だいぶショックだったようですが、今は落ち着いて眠っています。軽傷で済みましたので、明日にも退院できるそうです…」
三田の言葉に河合は「ふむ、ふむ…」と頷くと、「では、顔だけ見てくるか…」と病室に入って行った。
病室のネームプレートには、『各務瞳子』と書かれていた。
再び1人になると、三田はまた俯いて地面を見つめる。
あの時、三田が悲鳴を聞きつけて部屋に入ると、全ては終わった後だった。
文が清香に突き飛ばされて倒れており、うずくまった瞳子の二の腕からは、たらたらと血が流れ落ちていた。
「文ちゃんが、文ちゃんが…」と泣きじゃくる清香を何とか宥めると、三田はすぐに救急車を呼んだ。
現場を見た救急隊員は事件性が有るものと判断して、三田が制止する暇も無く警察官を呼び、駆けつけた警察官は姉妹を事情聴取のため警察署に連行した。
処理の限界を感じた三田が河合に連絡すると、驚いた事に河合は北海道ではなく三田と同じH市内に居た。文句を言いたいところだが、ともかく、警察署に行って姉妹を引き取ってもらい、自分は瞳子に着いて病院までやってきた。
すでに日は暮れていた。
「ん、しっかり寝ているようじゃな」
しばらくして河合が姿を見せると、再び三田の横に座った。
三田はチラリと河合を見ると、「申し訳有りません…」と呟いた。
「謝る相手が違うだろう? まあ、反省は1人になったときに目一杯やってくれ、わしは知らん。ただ、問題には目を逸らせん。そうだろ?」
「仰る通りです…」
三田が力なく言う。
「まずは警察の方だが、なんとか人傷沙汰にはならないで済みそうだ」
「そう、ですか…」
「うむ、何と言ってもここは先生のお膝元だからな。あまり気分の良い話ではないが、上を動かして揉み消してもらった。あとで署長には挨拶しておけ」
河合の言葉に三田はホッと胸を撫で下ろすと、改めて「ありがとうございます」と河合に頭を下げた。
「だが、それも瞳子ちゃんが起訴しなければの話だ。そうなれば、警察は当然傷害事件として取り扱う。…まぁ、瞳子ちゃんの性格からしたら起訴はせんだろうがな」
三田は苦い表情になったが、眠りに付く前に瞳子は「文ちゃんは大丈夫ですか…?」としきりに訴えていた。おそらくは大丈夫だろう。
「次に、あの姉妹のことだ。…どこで拾ってきた?」
「…1年前に潰れた孤児院から引き取りました」
「なるほど… それで、手は出したのか?」
河合の質問に、三田は「はい」とだけ答えた。流石に調教していたとは言えなかった。
「とりあえず言っておく事がある。愛妾を囲っていた事をわしはとやかく言わん。それが年端もいかない少女であってもだ。
今では珍しいかもしれんが、2、30年前までは普通にあったことだし、三田先生にも愛人が居た。そして、その愛人が居なければ瞳子ちゃんは生まれなかった」
三田は力なく頷いた。
「ただな、警察署で個別に話を聞く機会があったのだが…」
河合は言い難そうに口篭もった。
「姉のほうは問題ない。少し話しただけだが、しっかりした娘さんだと感じた。しきりに妹や瞳子のことを心配しとったし、何度も周囲に頭を下げていた。 …ただ、問題なのは妹の方だ」
河合の口調が憐れむ調子に変わった。
「可哀想に、あれは明らかに異常だ。君と姉に依存しきっとる。傷害の動機も聞いたが、君と姉とを結婚させるためだと言う。詳しく話を聞くと、瞳子ちゃんを殺して自分も死ぬつもりだったらしい。本当に馬鹿なことだ」
「文が、そんなことを…」
三田には、何が文を凶行に駆り立てたのかが理解できなかった。あのまま1日過ぎれば、瞳子は屋敷から出て行って、いつもの日常が戻ってくるはずだったのだ。
「なあ、敦君はどんな風にあの娘を扱ったんだ? あの目は、奴隷の眼だぞ?」
河合の言葉に、三田は頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。
奴隷の目、まさしくそれは正鵠を射ていた。自分は奴隷として文を扱い、文はその通りに奴隷になったのだから。
「…どうすれば、治りますか?」
打ちのめされた三田が縋るように尋ねた。本当は、自分がこれまで行ってきた行為を省みて泣き出しそうだ。
「あの姉妹の親はどうしている? 死んでいるのか?」
「…いえ、母親が生きています、生きていて、その…」
「なんだ、はっきりせんか!?」
散々躊躇った挙句、三田は全てを話すことにした。
「生きて、あの2人を探しています。実家も、わかっています」
その瞬間、河合が三田をぶん殴った。老人とも思えぬその膂力に三田は吹っ飛び、したたかに背を打ちつけた。
「ごほっ、ごほ…」
「君は、何という…」
怒りを噛み殺すようにぎりぎりと歯軋りをすると、河合は「座りなさい」と命じた。
三田が無言で身を起こしてベンチに座ると、河合は「はぁ…」とため息を吐いた。
「…では、話は簡単だ。あの姉妹は親元に帰しなさい。世間に染まれば普通になるだろう。君が無理なら、わしが適当な理由をでっち上げても良い」
河合の言葉に三田は口唇を噛んだ。それは、何としてでも避けたかった。あの2人の居ない生活など、いまでは考えられなかった。
「河合さん、それだけは… 私の生活や接し方はいくらでも直します。ですから、あの2人だけは取り上げないでください…」
「母親も同じ事を考えていると思うぞ」
河合の言葉に、三田はぐうの音も出ずに黙り込んだ。頭で必死に反論しようとしても、何も言葉が浮かばない。
「諦めろ、そもそも正常な繋がりではなかったのだ。このまま続けていても、必ずどこかで歪んでしまうぞ」
もう、三田は何も言えなかった。
駐車場に車が入ってくる音を聞いて、清香はうなだれた首を緩慢に持ち上げた。ベッドの上では、文が膝小僧を抱えて彫像のように動かない。
知らない老人――おそらく、この人が河合さんだろう――に警察署から連れて返ってもらってから、姉妹は一言も口を利いていない。
文を責める気持ちにはなれなかった。文が凶行に及んだ訳を、清香は何となく理解出来たからだ。
(文ちゃんは追い詰められていたんだ…)
疲弊した頭でそう考える。そして、その原因を作ったのが、他ならぬ自分であると気付いていた。
瞳子の登場で文が最も恐れたのは、自分達の居場所が無くなることだった。この屋敷を追い出され、せっかく通い始めた学校からも離れ、姉妹2人で路頭に迷うと思っていたはずだ。
…何の情報も無ければ、清香もそう思っていただろう。だが、偶然にも必然にも、文は知らず、清香だけが知っている情報があったのだ。
1つは瞳子の事。清香は初めから瞳子が許婚だということを知っていた。だから、瞳子の告白にも動揺せずに済んだ。
また、自分達の母親の事。帰る場所が有ることを知っていれば、文は不安に駆られはしなかっただろう。しかも、その情報から文を遠ざけたのは、他ならぬ清香自身なのだ。
そして、自分と三田とが結ばれていた事。三田が自分達を一生の連れ合いと考えてくれた事を知っていれば、瞳子との結婚など恐れなかっただろう。
たった1つ、そのいずれかを知っていれば、こんな事にはならなかった。そう思うと、清香はやりきれない思いで一杯だ。
(私のせいなんだ、私の…)
何とかしてこの気持ちを伝えたい。しかし、どう伝えて良いかわからなかったし、今も虚ろな目をしている文に真実を話すのが怖かった。
清香が思い悩んでいるうちに、部屋のドアがコンコンとノックされて三田が姿を現した。後ろには河合の姿も見える。
「…………」
清香は三田に抱きつきたい気持ちをぐっと堪え、かといって河合の目があるところで土下座して謝るわけにもいかず、部屋の真ん中で立ちすくんだ。
文も止まった機械が動き出すように瞳に光が戻り、視線を三田に向けた。
「…………」
三田もまた、何も言えなかった。だが、言いたくない気持ちを無理やり押さえ込むと、軋むような声で姉妹に告げた。
「……荷物をまとめなさい」
その言葉を聞いた瞬間、文がベッドから転がり落ちるように三田の足に縋りついた。
「旦那さまぁ!! お願い、捨てないで! 捨てないでぇ!!」
金切り声を上げて泣き叫ぶ。あまりの恐怖のためか、全身が瘧(おこり)にかかったかのように震えている。
「あ、文ちゃん、駄目よ…」
清香が何とか文を落ち着かせようと手を掛けるが、文はぶんぶんと首を振るばかりだった。
「…文、捨てるわけじゃない」
声を絞って三田が言う。文の動きがほんの少し止まった。
「お前達は、帰るんだ…」
「帰る…? どこへ…? 文たちは帰る場所なんて無いよう… ここを追い出されたら、帰る場所なんて…」
「違う、違うのよ!」
三田の言う意味を悟った清香が、叫ぶように文に訴えた。
「何が、違うの…?」
「あるの、帰る場所はあるのよ! 私達の… 私達のお母さんは生きているの… 帰る場所はあるのよ…」
声と共に清香の眼からも涙が溢れ出した。もはや、後悔しかない。
「おかあ、さん、いるの…?」
文が呆然と呟くと、清香が、うんうん、と激しく頷いた。
文は緩慢な動作で首を動かすと、清香を見て、三田を見て、そしてまた清香を見た。
「だまってたの…?」
「…ごめんなさい」
「ひどい、よ…」
文は全身の力が抜け落ちたように崩れ落ちると、天を仰いで号泣した。そんな文に、清香はひたすら「ごめんなさい…」と謝り続けた。
三田は、どうにもできない惨めな自分を、強く呪った。
明くる朝、暗い表情の姉妹が玄関に佇んでいた。
最早、誰も流れには逆らえなかった。
あの後、涙も涸れた姉妹は無言で荷物の整理を始めた。今日はもう遅いからと、河合の計らいで出発は次の日となった。
辛いだろうからと、姉妹を送る役は河合が買って出てくれた。今は、駐車場に車を取りに行っているはずだ。
清香が、ガラガラ、と玄関の戸を開くと、姉妹は揃って屋敷の外に出た。荷物は後で送ってもらうため身は軽い。外に出ると、夏の終わりの陽射しが姉妹を迎えた。
「…お友達には?」
「…後でメールする」
姉妹が言葉少なく会話していると、三田がゆらりと姿を現した。昨晩は一睡もしなかったのか、濃い疲労がその顔から見てとれる。
「…準備は、できたか?」
三田の問いに、清香が「はい」と答え、文が黙って頷いた。
「…恨んでいるのだろうな」
三田が文に向かって言うと、文は複雑そうな表情をした後に小さく首を振った。
「わかりません… 今だって、旦那さまから離れたくないです… でも、早く、お母さんの顔を見たいです…」
文は正直に答えた。泣き疲れ、考え疲れ、今は少しでも思考を休ませたかった。
「そうか… 私はお前達とずっと暮らしたかった… それは本当だ…」
文はこっくりと頷いた。三田は清香に向き直ると、そっと頭を撫ぜた。
「清香、あまり自分を責めるなよ。全て悪いのは私だ、私のせいだからな」
しかし、清香は何も言えない。元々克己心が強い清香には、三田に全てを擦り付けることは出来なかった。
「…うん、黙っていた事はムカつくけど、お姉ちゃんも辛いんだってわかるから、許すよ… 許すから、元気出して…」
文が沈んだままの声で言うと、清香は「ごめんね、文ちゃん…」と呟いた。
遠くからクラクションの音がした。姉妹が振り返ると、遠くに見慣れない河合の車が見えた。
「…行かなくちゃ」
文が悲しそうに言うと、三田は「少し待て」というと、姉妹それぞれに封筒を、清香にはさらに母親の調査ファイルを手渡した。
「旦那さま、これ、は…?」
文が封筒の中身を確かめると、そこには帯で束ねられた1万円札が詰まっていた。清香の方にも同じ額があるようだ。
「私はこんな形でしか酬いることが出来ない。貰ってくれ」
「駄目です、こんな大金…」
清香が思わず突き返そうとしたが、三田は強く拒んだ。
「頼む、受け取ってくれ…」
三田は頭を下げて懇願した。初めて自分たちに頭を下げた三田に、姉妹は頷くしかなかった。お互いに顔を見合わせると、文は自分の封筒を清香に手渡し、清香はしっかりと自分のバッグにそれを仕舞った。
遠くから、またクラクションが鳴った。
三田は未練を断ち切るように目を閉じると、「元気でな…」と呟いた。そのまま踵を返そうとしたが、清香が、きゅっ、と三田のシャツの袖を掴んだ。
「待ってください…」
「…なんだ?」
眼を合わせずに三田が問うと、清香はそっと手の平サイズの小箱を取り出した。
「それは、ああ…」
三田は一目見て納得するように声を上げた。
それは、三田が贈ったクリトリス・ピアスが入った箱だった。まるで婚約指輪を入れる小箱のようなそれは、大切に保管されていたらしくシミ1つ見当たらなかった。
「…………」
三田は無言で小箱を受け取ると、無造作にポケットに仕舞った。
その瞬間、姉妹が同時に三田の胸に飛び込んだ。不意を突かれつつも、三田がしっかりと2人を抱きとめると、姉妹は声を殺して咽び泣いた。
…抱擁はほんの数瞬だった。お互いに、これ以上は辛いだけだとよくわかっていた。名残惜しそうに3人は身体を離すと、最後にもう一度だけ視線を交わした。
「…さようなら、旦那さま。私は1年間幸せでした」
「…さよなら、旦那さま。文は旦那さまにされたこと、絶対に後悔しないから」
三田は何も言えなかった、姉妹の無垢な信頼が、何よりも嬉しく、痛かった。
黙ったままの三田に、姉妹はそれぞれに顔を寄せてキスをすると、深々と頭を下げてから三田に背を向けた。
清香がゆっくりと1歩を踏み出すと、それに引きずられるように文も歩を進めた。
そうやってゆっくりと遠ざかっていく姉妹の姿を、三田は張り裂けそうな気持ちを胸に見送った。
見送る事しかできなかった。
「そんな、そんなことって…」
その日の午後、退院の迎えに来た三田から姉妹が出て行ったことを知って、瞳子は驚愕して絶句した。
「何とか呼び戻せませんか? 私は何も気にしていません。昨日の事も、きっと私が知らず知らずに文ちゃんを傷つけるような事を言ってしまったんです!」
必死に訴える瞳子に、三田は力なく首を振る。
「…いいえ、瞳子さんは何も悪くありません。悪いのは全て私です」
「でも…」
なおも瞳子は言い募ろうとしが、あまりに覇気の無い三田の様子に口をつぐんだ。
無言のまま2人が屋敷に帰宅すると、三田の携帯電話が着信を告げた。
液晶画面に表示された文字を読み取ると、三田は困惑した表情になった。液晶画面に写った文字は、『文』と表示されていたからだ。
取ろうか取るまいか、かなり長く熟考したが、着信音が鳴り止む事は無かった。三田は覚悟を決めると、着信ボタンを押して恐る恐る携帯電話を耳に当てた。
「もしもし、文か…?」
『すまん、わしだ…』
電話口からは意外なことに河合の声がした。何故かといぶかしむ間もなく、そういえばこの携帯の番号を知っているのは清香と文だけだと思い直す。
してみれば、河合は絶対に連絡を取りたくて文に携帯を借りたのだろう。
「…何の用です? 瞳子さんならちゃんと迎えに行きましたよ」
『いや、そうではない… 申し訳ないことに、こちらでトラブルがあった…』
言い難そうに話す河合の声に、三田の中で急速に不安な心が肥大していった。
「それで、何があったんです…?」
努めて声を落ち着かせる。気を緩めれば、叫んでしまいそうだ。
『ああ、さっき、昼食に車を止めたんだが、そこで、な…」
「そこで…? そこでどうしたっていうんです…!」
ハッキリしない河合に、怒りを滲ませて三田は言った。
電話先から躊躇う気配が伝わった後、河合は言った。
『清香君が失踪した』
―第6話 完―
投下は以上です。
今回はいつも以上に冗長になってしまい、申し訳有りません。
7話は出来るだけ早く投下できるように頑張ります。
>>あやしい、バイトさん
完結おめでとうございます。
お話の内容が面白いのもさることながら、
綺麗にまとめるその技量が妬ましいですw
次回作や後日談も期待しています。
それでは。
おおお…。
GJ、GJなんだが…、もう終わりが近づいてるんだなあ…。
あいかわらずクォリティ半端ねぇぜ!
ハードな展開だけどめちゃくちゃおもしろいぜ!
最終的には絶対に幸せになると思ってるから鬱にはならないけどね
続きが早く読みたくて仕方ない。待ちきれるかな自分…
ハッピーエンドを期待しつつ
投下ご苦労様でした 7話期待しております
GJ!!
食い入るように読み進めたら
ぎゃああ! こんなところで!
早く続きが読みたい!
だが確実に終わりに近づいているのを思うと……
頼むみんな幸せになってくれ。
手玉に取られる三田さん萌えとか言ってへらへら読み進めてたら……
抜くに抜けなくなって愚息が困っており申す
しかし相変わらず賢者モードの三田さんは可愛いな
ただのおっぱいだよー!!
はワロタ
>91 に同意。
>少しでも旦那さま分を補給しようと
これも吹かざるをえないw
コメディーちっくからシリアスまで… ほんと作者殿には頭が下がります。
あと…一瞬「お姉(兄)ちゃんどいて そいつ殺せない!!」
ってよぎったのは、自分だけでいい…
>>84 GJ!ゲームしながら見てたはずがいつの間にかのめり込んでましたぜ。
作者様の揚げ足取るようなまねはしたくないんだが
>>68の「あんな部屋、私じゃ役不足です…」
は役者不足だと思われ。意味が180度違っちゃうのでお気をつけて。
おおう、続き楽しみにしてます!
役不足とか役者不足って言葉使うと、必ずと言っていいほどなんか言うヤツ出てくるよな。
正しく使ってても、こっちじゃなかったっけ? とか言い出すヤツいるし。
正しく使ってて安心したとかわざわざ言うヤツとか。なんなんだアレ。
力量が足りないという意味での役者不足なる熟語も存在しないんだけどな
俺は田中芳樹のせいだと思ってるんだが違うのだろうか?
作者じゃなくてキャラが間違えているでいいじゃない
まさに
>>98の言うとおりで読んでた。
月型厨な言い方ですまんが、ダメットさんっぽいと思ってたもんだから
役不足とか確信犯とかはお約束みたいなものだな
101 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 01:15:47 ID:Jg5GEDPQ
倍ホッシュだ……!
な、なんだってー
これは・・・
キャンブルで借金まみれになった女の子を
あるいは、勝てば借金を棒引きという賭け麻雀に挑む女の子を
助けてあげる話を書けっていうことか
姉妹並に瞳子さんも好きだ…いや、瞳子さんが好きです
三田さんなんかより俺と結婚してくれませんか
GJでした。続きが楽しみです。
気になった点を一つ。
>>63の青色吐息、正しくは青息吐息です。
姉妹の読み方ってサヤカとアヤ?
しまい
今幸福姉妹物語1-6話まで読んできた。おもしろかった。作者さんがんばってください。
そろそろ、らぶマネの続きが恋しいです…
111 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 02:24:03 ID:41T9ynd3
ほしゅあげ
112 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 01:33:18 ID:3yrwf8Q3
すみません、
金の力(陰陽五行説的な意味)で(妖怪などに襲われ)
困っている女の子を救う物語を投下する場所はここですか?
タイガーですね、わかります。
>>113 読む分にはすごく面白そうだが書く側は大変そうだな
力自慢の中国人、金(キム)さんに助けられる女の子の話、デスよね。
wikiとにらめっこしながら書けば、何とかなる… かも?
金の術師って誰か有名な人いたかなぁ…
聖刻1092のごっつい導師さまぐらいしか思い出せない…
金竜(ゴールド・ドラゴン)てのはどうだろう?
金色のライター(変形するやつ)の力で助けられてもOKなんだろうか?
>>120 ちょw
それはゴールドライタンw
まんま、人助けしてるじゃねーか。
…いや、有りか? 頑張れるか?
おいおい
どれを全裸正座で待てばいいんだ?
金さんの力で銀さんを助けて、
双子姉妹仲良く100数歳まで生きた物語とかどうだろうか
遠山の金さんが町娘を助ける話でいいんじゃない?
>>124 それはさすがに時代劇スレ行きだろwww
銭形平次もある意味、金の力で困ってる女の子を助けたりしてるな。
なんだかんだ言ったけど結局ラブマネと幸福姉妹が見たい、でいいや俺は
幸福姉妹の続きは読みたいが、次でラストかと思うと投下が延びて欲しいような… 複雑です。
幸福姉妹物語ってどれくらいのペースで投下されてる?
ログみろ
金色でOKなら、こういうのもいいはずだ。
時期はずれだけど季節は夏。
熱中症で女の子が倒れている
↓
コンビニ帰りの主人公が見つける
↓
とりあえず日陰に移動し、買ってきた飲み物を飲ませる。
↓
女の子復活。しかしトイレに行きたくなる。
↓
まだ動けないので茂みに連れて行き、主人公が後ろから膝をかかえてさせる。
↓
主人公が飲ませたのは金の烏龍茶だった。っておち。
命に関わるネタだから不謹慎かもしれず。
金メダル取って病気の女の子を勇気付けて助けるとか
>>131 前スレ以前のログ持ってない。
wikiの更新履歴見ても分からない。
datも入手できない。
だから聞いてる。
>>126 あんな、
「本物のお前なら腕を組むとき左腕が上になるのに、
お前は逆だからニセモノだ!」
とそんなネタで敵の正体を暴くのはイランw
ちょっと調べたらこんな感じ。
幸福姉妹物語<第1話> 2008/11/07(金)
幸福姉妹物語<第2話> 2008/11/14(金)
幸福姉妹物語<第3話> 2008/11/23(日)
幸福姉妹外伝 破瓜の思い出 2008/11/26(水)
幸福姉妹物語<第4話> 2008/12/02(火)
幸福姉妹外伝 クリトリスリング 2008/12/03(水)
幸福姉妹物語<第5話> 2008/12/22(月)-23(火)
幸福姉妹物語<第6話> 2009/01/24(土)
ほぼ毎週あの濃さが来てた頃が懐かしいな。
「年始」という予告に焦れ焦れしたのも正月のいい思い出。
男「同情したから金をやる」
オレは思うんだ…
行きつけのスレで年末以降、作者さんたちが続きをうpしてこないって、
もしかしたら幾人かは派遣切りでSSどころじゃないんじゃないかって…
ふと思った。
私は派遣ですけど、減産のせいで、むしろか執筆時間は増えたぐらいですよw
まあ、勤務中も書いているんですが…w
しかしスレタイが「助けてあげたい」だと、
助けてあげたいけど実際には助けられないスレなのかと思ってしてしまう。
「お金がなくて……」
身体を安売りしている未亡人の身の上話に、胸が痛む。
オレはおっぱいを揉み、尻を撫で、ちんぽをしゃぶらせた。
顔に似合わず使いこまれたまんこにちんぽを入れ、たっぷり楽しんで射精する。
汚れたちんぽを舐めている未亡人の頭の上にくしゃくしゃの金を落としながら、
「助けてあげたいなぁ」と思った。金が無いから無理だけど。
金の力で困ってる女の子を助けて(その後なんやかんやで付き合う事になって、
プロポーズして結婚して、Hする度にageるスレを)ageたい。
ちょwww気団かwww
ああもう最高だなこのスレ。俺のツボをガンガン突いてくる。
作者さんがたがんばって!
こないだ溺れた女助けたのよ、そしたらそいつ自殺なんだと。 笑った!溺れた事隠す為に嘘偽っちゃって、マジ最低!
食べるのに困ってる?今時そんな!ここ日本だぜ? そいつホテルに連れ込んで抱いたら涙流してやんの。
何その演技!生きててよかった?そのセリフでイクなんてどんなプレイよ? 俺そんなにテクねぇし、演技そこまでするか?普通?
で、家に送ったらなんと小学生の娘が。二人暮し? その娘も痩せててこれまた親子揃ってダイエット?
痩せれば可愛いとか思ってんの?むかついて、 高カロリーピザ3人分取ったら泣きながらばくばく食ってんの。
3日ぶりの食い物?爆笑!何そのバカ演技? 次の日苛めようとそいつのアパートに行ったら、
友達?○×商事の2人がドアの前にいんのよ。
はは〜ん、こいつらあの女の友達か、孤立させてやろう。 200万ずつやる二度とここ来るなって渡したら、
ぽかんと口あけて「へい」爆笑! 金で友達売る?馬鹿?類は友を呼ぶっ?
その母娘にいろいろ食わせてぶくぶくにしてやろうと1ヶ月食べ物与えて軟禁状態? ちょっとヤバイけど友達も電話もねぇから通報も無理。
娘の勉強みてやる振りして実はプレステで二人ゲームしてたね。 ゲームやったことねぇなんて娘まで嘘つき!東大でも行くつもり?
勉強してればいい子?ゲームぐらい誰でもやれるっての! 娘が寝た後、女を陵辱。ブランドの服着せてOL痴漢プレイしたくて服買ったら
また泣いてほんとバカ!たかが服で泣く女なんていねぇし。
で、最大の意地悪やっちゃいました昨日。 女の名前やだあきこってタレントと同姓同名。調子乗るなっやだに失礼だって!
俺の苗字わだで強引に籍入れてやってわだあきこにしてやた!爆爆爆 ざまミロ!あきこ大泣き!ここまでしてくれるなんて?悔し涙?遅い遅い俺に嘘ついた罰です
一生俺のマンションで暮らせ!脅したら娘が俺のこと涙目でパパ♪て アホか、俺日本人、勉強して英語話せるふりか?
夏休み絶叫マシンに乗せ、泣き叫ぶ母娘のビデオ撮影してやる!
>>148 あーダメwww
このコピペ大っ好きだわwww
150 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 19:06:52 ID:D57/v7O0
>>148 物凄くこのスレ向けのコピペだよなwwwwww
保管庫もこまめに通わないといけないなー、と反省してみた。
時々は、保管庫内での新着情報をお知らせした方がいいのだろうか。
以前投下されたSSの続編があります。目次ページ上部の更新情報をご覧ください。
とあるアパートの話
「あれ、大家さんどうしたんですか?」
「あら間宮さん、言いづらいんだけどね、やっぱりここの家の人には出ていってもらおうと思って」
「お隣りの…伊沢さん?」
「家賃滞納がもう半年なのよ。もうさすがに私の方もギリギリだから…」
「そうなんですか…じゃあこれで…」
見るからに滞納分以上の額の札束を手渡す間宮
「間宮さん!?こんな大金…」
「いえ、大家さんも踏み倒されると大変でしょ?」
「まあそうだけど…本当にいいの?」
「ええ、また滞納してるようなら僕に言ってください。ほら、はぐれ刑事の時間ですよ」
「ああ!大変!それじゃあー」
「あの…」
「あれ、伊沢さん、居留守だったんですか?」
「お金…出してくださったんですか?」
「迷惑でしたでしょうか…」
「いえ!でもなんで…」
「伊沢さんの家の目覚まし時計。無いと困るんですよ」
「目覚まし?」
「伊沢さん家の目覚まし時計の音、ほらこのアパート壁薄いから。」
「…それなら…」
「ん?」
「私が毎朝起こしてあげます、壁越しにじゃなくて…」
次の日夜更かしの為に二人揃って寝坊したのは言うまでもなく。
一番槍GJ!
>>152 できればしてもらえるとありがたいです。
GJを言うタイミングが欲しいので。
>>152 ご苦労様です。
ここに投下されてないものについては、告知があるとありがたいですね。
>>153 GJ!
>>153をssにしてみました
長々と、携帯になりますが楽しんで頂けると幸です
会社の同僚に競馬が趣味の女性がいる。
よく男性社員達と金曜日には予想を、月曜日には結果を話して盛り上がっている
「間宮さんも買えばいいのにー」
そう言われ普段なら買わないのだが、たまたまその日引退するという馬に賭けてみた。
みんなから一斉に「それはこない」と言われたが、デパートのキャンペーンですら当てたことがない。
その馬へのご祝儀のつもりだった
大穴、大当り
一日にして100万を手にしたが、同僚達と飲みに行った後に使い道が無いことに気付いた
一度札束を手にしたくて一気に卸してみたが、貯金でもするか、と思った
降って沸いたような金だから、といっても伊沢さんはなかなか承知しなかった
伊沢さんの話をきくと、家賃を母親の手術費に回してしまったという。
今は母親も回復して退院しているというが、見舞いの交通費等もばかにならず滞納していた、と。
目覚まし時計の話は本当だった。
毎朝6時半になると複数の目覚ましが一世に鳴り、続いてまるで誰かがベッドから落ちたみたいな音がする
その音がすると自分も気分がいいのだった。
毎朝「また落ちた」と顔がにやける
それ以来伊沢さんはよく隣の我が家に料理等を持ってくるようになった
朝目覚ましがなって起きると、薄い壁越しにゴンゴンとノックされる
ノック仕返すと次はチャイムがなってカレーなり肉じゃがなりをもってやってくるのだった
料理は家庭的でいつもおいしかった。
お金は受け取らない、と強く言っので、彼女なりの誠意のつもりなんだろうと思った
料理ならもらってもいいかな、という気がした。
男の一人暮らしが長いから、この料理は素直に嬉しかったし、うまかった
ある夕方、帰宅途中のスーパーで偶然伊沢さんに会った。
「じゃあまた何か作って持っていきますね。何がいいです?」
その日はとても寒い日だったので鍋にしようといった。
もって来るのでは面倒なので家で一緒に食べないかと誘うと、彼女は優しく笑った
「私の部屋と作りが逆なのね」
料理はよく食べていたのに、料理を用意する姿を見るのは初めてだった
その姿を眺めて、やっぱり助けてよかったと思った。
何となしに表情は和らいで、温かい湯気がうとうとするような幸せを包む
ゆっくり話をしながらビールと鍋を突いた。彼女は鍋奉行のように僕が食べようと手をだすと
「まだだぁめ」
と僕の手をピシッとたたいて笑った
食事後テレビを見ながらまどろんでいると、彼女は改めて言った
「本当に感謝してます」
僕は我に返った。彼女は罪の意識でこうしてるのではないか。それは嫌だ
それならもう来なくていい、作らなくていいから
「来ちゃいけませんか…?」
彼女の瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れる。
良心の呵責の一方でその姿は健気で愛らしいとさえ思った
「私…ごめんなさい」
席を立って帰ろうとする彼女の手を引いて抱き寄せた
ごめん…
「謝らないでください…
私が、私が家賃払えなくて可哀相だっただけですよね
お金無いから見兼ねただけですもんね」
泣かないでください
「迷惑だったですよね、もう来ませ…」
堪らなくなり彼女を壁に押し付けてキスした。ただ唇と唇とが触れ合うだけのキス
「間宮さ…」
嫌ですか?
「嫌じゃない、嫌じゃない…」
溢れる涙をそっと拭ってやる。それでも止まらない涙をぺろっと舐める
「ふ…くすぐったい」
その濡れた笑顔にまた胸を奥がじんわり揺れる。
僕の心をくすぐる、愛しい人だ
しばらくそこで抱きしめあっていた。時々首筋にキスをすると彼女が照れたように笑う
手の届く位置にあったスイッチで部屋の明かりを消す。いい?ときくと
「うん…」
か細い声で返事をした。
そっと彼女をベッドに寝かせる
くちづけると、彼女の唇が震えてるのがわかる
大丈夫?
「あ…緊張してるだけだから…」
緊張?
「その…大丈夫、好きだから、ドキドキしてるだけ…です」
そっか…かわいいな
ついばむようにキスしてこっそり舌を滑り込ませる。彼女もそれに合わせて絡めてくる
唇をつよく吸ってはねっとりした唾液を絡ませたく
肩の力抜いて
「ん…ふう」
そのまま唇を首筋へ滑らせリンパ腺にそってなぞる。その先の耳たぶを甘噛みしながら肌をあわせる
「は、ああ…」
手は彼女のワイシャツへと伸びる。ボタンを外しながらキスを運ぶ
キャミソールをまくりあげるとブラがでてきた。
付けっぱなしにしていたテレビの光がその輪郭をぼやして映す
ふっくらとしている。ブラの上からさわるとそのその膨らみは確かに柔らかく温かい
彼女を起こして背中に手を回しホックを取る。
脱ぎかけだった全てを取ると女性らしくたおやかな体が現れる
きれいだ…
手の平で胸の膨らみを包みこむ。「あっ…ん」
人差し指で突起に触れると彼女は甘い声をだした
両手で激しく揉んだり突起をつまみあげたりする
「ふっ…うぁ」
彼女が感じ始めてるのがわかる。
左手がそっと足に触れる。内股を丁寧にさすりながら胸をいじる
かわいいよ……美咲さん
初めて名前でよんだ。彼女はこっちをみて恥ずかしそうに目をそらした
「はぁ…うん…好き」
うん
「好き…」
僕も…
「あっ…ん…まみやさ、ああああ!」
思いきり乳首をつまみあげる
間宮さんじゃないよ
「あっあっ…は…直行さん…」
当たり。痛くしてごめんね
真っ赤な乳頭をペロペロとなめてスカートを脱がす
パンツに顔を近づけて鼻先で擦る
「ああ…あっ…汚い…汚いの」
汚くないよ
そこは湿っぽくて香しいにおいがした。パンツの上から唇でクリを挟む
「あううっあ〜…はぁっ」
股を広げながら執拗にふとももを撫で回し足の付け根をなぞる
パンツを下ろす、すでに美咲さんの腰は愛撫にぴくぴく揺れている
肘で足を押さえ込みながら指でその周辺をさわるとすでにぬるぬるしており指が滑るほどだった
濡れてる…すごい
美咲さんの様子を伺いながら指でその周辺を摩る
時々膨れ上がったクリをつまみあげると美咲さんの声がはねた
「あっはうぅ…やぁ…あうっ!」
嫌?やめようか?
「や、やめないで」
そう来なくっちゃ、と言わんばかりに中指をその奥へ突き刺す
「あっああ!」
そこは熱く液で溢れかえり、すんなりと長い指をしまいこんだ
中でくの字に曲げたり内壁を刺激するようにして動かしていく
あまり可愛い声で喘ぐので胸にキスマークを落とす
そんなことにも気付かずに掘り返すような膣内の刺激にもがき続ける美咲
親指でクリをいじくると更に腰は浮いてより一層の刺激を求めていた
腰、動いてるよ
「もうだめ…あたし…」
テレビの明かりにじんわり浮かぶその表情は若干涙に濡れ艶っぽくやらしさが増した。
自分自身のもそろそろ耐え切れそうにないので入れさせてもらうことにする
パンツを脱ぎテレビも消して美咲の中へ自らのを忍び込ませる
見えなくても溢れんばかりの汁がそこへペニスを導く
入口こそ少しばかりキツイ気もしたが、入れてしまえば奥まですぐに抱え込まれてしまった
「あっあああ…っ!」
入ったよ全部。
そこはまるでペニスの形状を確認するかのように収縮と弛緩を繰り返す
自分でも驚くほど自分のものは硬く膨脹して反り返っていたが、もっと驚くべきは美咲の中だった
動かずとも美咲の膣の機敏な動きはこれまでに無いくらいの快楽があった
美咲さん?
「ふぁ?」
愛してる
「…あ、あた…し…もっあっ…ふわ…」
ずっとうわ言のように切なくて甘い悲鳴をあげている美咲
美咲の声が少し落ち着いてきたところでゆっくり腰を動かしていく
「あーっあっ…うぁっ」
何の突っ掛かりもなく出入りする。次第にスピードをあげ、ストロークを大きくしていく
「はっあっあっうぁんっ…い、だめっもう…!」
自分の意志に反して腰つきは凄い勢いで加速する。
肌と肌がぶつかり合いじゅぷじゅぷと音を立てて部屋に染み渡る
奥へ奥へ入り込む度により一層締まる膣が熱く快感を増していく
も、出る、美咲…
「いっあ、あっあっ!も、ああああ!」
美咲が果てると膣内は更に強くペニスを抱きしめる
それに合わせてついに果て、二人で呼吸が落ち着くまでそのまま抱き合っていた
「あたしも競馬やってみようかな」
彼女はちょっと笑って言った
でも同僚の女性を考えるとやっぱりギャンブルはするもんじゃないよ、と言った
でもあの日あの金が無かったら今こうしてこの子を
抱きしめていることは出来ていない訳で、何か不思議な縁を感じた
柔らかい体に甘い耳の裏のにおい、穏やかな言葉、はにかんだ笑顔、あったかい料理
幸せが込み上げてくる、普段はこのボロアパートで質素に暮らして
裕福な暮らしとは似つかわしくもないけど、こんな暖かな気持ちはどこにも売ってないじゃないか。
うなじにキスするともう彼女は寝てしまっていた
布団を被ってそのまま小さなベッドに二人で寄り添って眠った
朝、壁越しに聞こえる隣の美咲さんの部屋の目覚まし時計に目を覚ますと
ドン!と聞き慣れた大きな音がして体を起こすと彼女がベッドから落ちて焦ったように取り繕っていた
愛しさが込み上げた
しかし壁が薄くて夜の一連の出来事が筒抜けだったのには正直参った
お粗末でした。スレ汚しすいません
乙ですた
おもすろい!
ぜひとも続編を!!
169 :
1/2:2009/02/14(土) 16:07:23 ID:VAUP23bC
「児島? どうしたの?」
「あ、先輩」
土曜だというのに朝から部活。うちの吹奏楽部はお世辞にもレベルが高いとは言えない。顧問もただの音楽好き、
いや一応音楽教師だが。そんな状況なので、入部してくるのも大半が『楽器を触ってみたい』って初心者。
まあオレもそうだったので悪いとは言わない。サックスが吹いてみてぇ、と思って入部したら渡されたのはクラリネットだった。
しばらく『僕の大好きなクラーリネット』と歌いながら泣いた。
初心者が「やった! 音が出た!」と喜びながらやるような部活だ。
わいわいがやがやと楽しいが、土曜に練習で出てこなきゃなんないような真剣さとは無縁だ。はっきり言って
土曜の練習なんて不要だ。
だが顧問は空気を読んだ。
「土曜が休みだとおまえら困るんじゃないのか? ん?」
土曜は学校が休みだ。二月の十四日が土曜になると、期待を持つ以前の問題になってしまう。
義理でいいんだ。チロルチョコでいいんだ。いやもうチョコバットでもいい。チョコと名が付けば!
午前中にプー、ボエー、と音を出しただけで部活は終わった。
顧問は女子全員からです、とチョコをもらい一瞬にやけ、「全員って全員か!」とそのお返しをしなければならないことに
頭を抱えていた。
ざまーみろ。
破産しやがれ。
成果ゼロのままオレは校門を出たのだが、入ったコンビニでクラリネットパート、略してクラパーの後輩、児島由美を見つけた。
児島は自作なのか、フェルトでできた小銭入れを握りしめ、レジの対面にある棚の前で困った顔をしている。
棚には、今日売り切ってしまわなければならない、ラッピングされたチョコがあれこれ。
「コンビニって、スーパーみたいに『30%引き』ってシールとか貼らないんですかね?」
「貼らねぇだろ」
期限が切れたら廃棄だろ。
「そっか」
児島は溜息をついて、棚の前を離れると菓子の通路に移動した。
「なんだ? どうした?」
「専用のチョコは高いんですよ」
「高いっておまえ、300円とかのもあったじゃねーか」
誰にあげるか知らないがそこはケチってやるなよ。
「無いんですよ、300円も」
「へ?」
「うちの小遣いは一週間に500円なんです」
珍しいな。週払いか。
「日曜に支給なんです」
今日は土曜。そりゃ財布の中は寂しいことになってるに違いない。
「でも今日じゃないと意味ないから……。ほんとは朝買っていこうと思ったんですけど起きたら遅刻確実で、
コンビニに寄る暇も無くて」
「朝? んじゃ学校のヤツか? おやじさんとかじゃなく」
「なんでお父さんにあげなきゃいけないんですか。中学生にもなって」
児島はむうと頬を膨らませた。
いいじゃんよ。あげろよ。父ちゃん喜ぶだろうよ。
「で? いくらもってるんだ」
「50円」
「おい!」
思わず突っ込んだ。児島も情け無さそうな顔をする。
「まさかこんなに持ってないとは思って無かったんですよぅ」
やれやれ。
かわいい後輩のために一肌脱いでやるかね。
「まず確認しよう。学校の誰かにやるつもりか?」
「……そうです」
「ってことはそいつの家はわかってるんだな。よし、本命か、義理か」
「えええ!? ほ、本命です」
「今日、勝負をかける気か、それとももうその……付き合ってたりとかするのか」
「か、関係あるんですか?」
あるとも。付き合ってるなら多少のシャレもきく。だが勝負をかけるなら多少の気合いが必要だ。
「告白、できればって……」
じゃ、チロルチョコ路線は無しだな。
170 :
2/2:2009/02/14(土) 16:08:34 ID:VAUP23bC
「よし、児島。こっちに来い」
オレは児島の袖を引っ張って、レジ前のチョコ棚に戻した。
「ここから選べ」
「先輩、でも私50円しか」
バカ。おまえ。本命告白チョコを50円で買おうってのがどだい間違いなんだよ。
「いいから。貸してやるから」
「え。でも」
「明日小遣いもらえるんだろ。月曜でもいいし、月末まで無利子で貸しておいてやるから」
「なんで」
「年に一度のチャンスは活用しろ、ってこったよ。いいから選べ、ほら」
ぐいと後頭部を押して棚に近づけた。
「じゃ、じゃあ……」
児島は迷わず、中段にある450円のチョコを手に取った。金さえ持っていれば最初からそれを買うつもりだったんだろう。
オレはポケットから財布を出して、500円玉を渡した。
「ほれ」
「ありがとうございます。お借りします」
「あのー、あれだ。うまくいったら返せ」
「はい?」
「告白してうまくいったら、金返せ。でももしだめだったらいい」
だってちょっとかわいそうじゃんか。踏んだり蹴ったりみたいで。
先輩という立場上、後輩におごることだって珍しくない。クラパーは人数が多いから全員におごるのは大変だ。
三年の四人で出し合って、ってこともある。それでもまあ、交際費的な支出があるわけで、だからこれもそうと言えばそうだ。
がんばれ。同じパートのよしみだ。応援してやる。
児島は真っ赤になって500円玉を受け取るとレジに行った。
さて。昼飯買って帰るかね。
温めないでもらった弁当のビニール袋を持ってコンビニを出ると、児島が立ってた。
「なにしてんだ、おまえ」
チョコ持って行けよ。金、足りただろうがよ。
今「お釣りです」とか言って返すなよ。
「あ、あの。方向、一緒なんです。途中まで一緒に行っていいですか」
なんだよ。勇気出ねぇのかよ。
っていうかおまえオレの家知ってんのか。
オレの後ろをぽてぽてと児島がついてくる。角を曲がり、信号を渡り、住宅街へ入っていく。
「おい、どこまで一緒なんだ」
大丈夫か、おまえ。なんだったら送っていってやろうか。
なんでオレ保護者みたいになってんだろうな。
「あ、あの先輩」
「おう」
「す、す、す」
「す? 素通りしたか? 戻るか?」
「好きです!」
コンビニ袋に入ったままのチョコを両手で突き出してくる。
「はあ!?」
っておい。おまえそれ、さっき買ったチョコだろうがよ。オレの貸した金で。
せめて袋から出せ。
「あの、あの。だめでもいいです」
だめでもいい、って言われても。
本命チョコってさっき言ってたよな。本命?
うそ。
「えーと。そのな。おまえのこと後輩としか思ってなかったからその」
あ、泣きそうな顔になった。涙溢れそうに盛り上がってきた。
「今からその……女の子って意識するのもこっぱずかしいんだが」
児島の手からチョコを取る。
「でもオレもおまえのことは好きだわ」
「ぜんばい〜」
あああ。そこで盛大に泣くな。顔、ぐちゃぐちゃじゃねーか。
「月曜にはお金、返しますからー」
「いいよ。あの500円はやるよ。そのかわりホワイトデーの買い物の時におまえ500円出せ」
チョコを持ってない方の手で頭をぐりぐり撫でると児島は泣いたまま笑った。
か、、、か、、、くぁわいいいいいいいい
GJ!
あんまり殺伐としてない「困ってる」状況もいいね
先輩いいやつだ
萌えたと同時に耳をすませばを見た時と同じ絶望感が…
GJ!
今回は先輩に萌えた
こいう話もいいなぁ
『せめて袋から出せ。』に吹いたw
GJ!
2レスでこんな萌え転がれるものなのか!にやにやが止まらないGJ
ぐっじょ!
>ホワイトデーの買い物の時におまえ500円出せ
っておい!ふいたww
こういう気取らない関係の方が、長続きするんだよね。
GJ!
GJ!ああいいなあ
失ってしまったものを色々と思い出した
こんな青春はもう死んでも経験できないんだと思うと死にたくなる
いつか金の力で女の子を助けて、青春を謳歌してやる。
あおはるを取り戻せ!
保守
幸福姉妹…よみたいお
>>184 同じく。
>>138を見て来週以降だろうとわかってるんだが、更新が来る度期待してしまう。
>>185 分かる
ブラウザで見てるけど、新着が10くらいあると「まさか!」と思って興奮するわ
違うと分かると、そんな自分が恥ずかしくてもじもじする
そんな日々が数週間続いてる
らぶマネを是非に
では俺は新規さん待ちで
4月期のあるドラマの情報を見て
あやしいバイトを思い出したなんて
このスレ以外ではとても言えない。
>>189 もったいぶるなよ
こう言って欲しいんだろ?
kwsk
流れ豚切りだが、風俗嬢と客っていいと思うんだ。
もともと自分も体目的で、その職業じゃなかったら出会えてないのはわかるけど、
それでも何人も関係を持っている嬢に嫉妬&自分も同じ穴の狢で自己嫌悪みたいな。
優しくしたいのに出来ないもどかしさ満点ってゆうのを受信した。
すまん。誤爆した…
>>191 娼婦スレの住人とお見受けいたす……
ここと同じで金絡みのスレだなw
>>191 そういえば、サレ夫達の同窓会ってスレで、
嫁に浮気されたから慰謝料貰って離婚した男が、憂さ晴らしに風俗に逝った。
突然嬢が泣き出したので訳を聞くと、借金(1000万?)を返さないといけないからここで働き始めたけど、
初めてのお客だから怖い、と言われた。
どうせ泡銭だと思って、慰謝料でその女性の借金を払ってあげた。
彼女が今の嫁さんです、みたいな話を読んだ事がある。
195 :
191:2009/02/26(木) 23:39:21 ID:i6qlRoEX
愛あるなんとかの誤爆だったんだが、
>>194みたいな話を引き出せたのならむしろ本望だ。
ただ、誤爆には充分気をつけるよ……
スレチだと思うけどおススメのエロゲ教えてください
今さらながら奴隷市場を買ってみたら非常によかった
もみじ、及びその続編のもみじHAPPY STORYだな。
オススメ。
借金姉妹2
200 :
道具の人:2009/03/01(日) 22:45:29 ID:qd75hha1
おひさしぶりー。
ちまちまとネタが浮かぶんだけど。
繋げる事が出来ないのは罪だと思った。
まぁ久しぶりの投下さ。要領は少ないがね。
追記。
主人公、ドSフラグがたちました。
携帯の小うるさい目覚まし音が、耳元で鳴いている。
枕もとをまさぐり、半分寝ている状態でボタンを押して目覚ましを止めた。
「……どこだ?」
まず視界に入って来たのは、見慣れぬ歪んだ天井。
歪んでいるのは天井ではなく、自分の目だと気付くのに時間はかからなかったが。
「……あー。爺さんの家か」
意識が覚醒していくにつれ、昨日何があったのか思い出してきた。
爺さんのもてなしを受けて、もうすぐ夜更けだからと泊まる事になった俺と雫。
風呂をもらった後、疲れて眠ってしまった雫を布団に移して、自分もほかの部屋に移った。
明日はいろいろ忙しくなるだろうと踏んで、目覚ましを切らずに自分も就寝。
「……5時半? 」
「正確に言うと5時32分ですね」
「そりゃどうも。早いんだな雫」
「持ち主様だって早いじゃないですか」
「そりゃ、今日はいろいろと忙しくなると踏んだからな。
それよりいくつか質問があるんだが、なんでここにいるんだ雫? 」
借りた寝間着を着たまま、雫は俺の横でただ座っていた。
……寒そうに体を軽くふるわせて。
「持ち主様がここにいると聞いたので。
道具である以上、持ち主様のそばを離れるわけにはいきません」
「それはご苦労なこって……持ち主様って何だ? 」
「私は道具、あなたが持ち主様です」
「……ご苦労なこって。さて、疑問が解けたところで」
「?……キャ! 」
布団から抜け出し、逆に雫を無理やり布団に押し込む。
「何寒そうな格好して座ってんだタコ。今日はお前の用事で色々と駆けずり回るのに、
自分から体調崩すようなマネをするんじゃねーよ」
「……私の用事…ですか? 」
「俺の道具になるにあたって、当面必要なものの買い出しだ。
下着や洋服、学校で必要な道具だのお前が仕事するための道具だのと。
自分の状況をよく考えてみろ。文字通り身一つだろうが」
爺さん曰く、雫の家は燃やされている。
本人はそのことを黙っていたが、黙っているって事は本当のことなのだろう。
さっきも言ったとおり、文字通り身一つなわけで。
今日は色々と駆けずり回る日になるだろう。
「とりあえず俺が戻ってくるまで布団の中で待機。持ち主の言うことは絶対だ。わかったな? 」
「はい……」
軽くうなだれて布団にもぐりこむ雫を背に、俺は居間へと向かった。
特にやる事もなく時間が過ぎてゆき、爺さんの家で朝食を済ませた後、
俺と雫は組員Aもとい、烏丸に送られてある大型百貨店についた。
「それじゃ、用があったら電話下さい」
「ああ、悪かったな」
「ありがとうございました」
車の窓ガラス越しに頭を下げて、烏丸はカーブの向こうに消えた。
「とりあえず社長室に向かうぞ」
「社長室…ですか?」
不思議そうに首を傾げる雫。
……そういえば言ってなかったな。
「このデパートの名前をひっくり返してみろ」
「えっと、夜星……星夜…あ」
「そうゆうことだ」
大型百貨店『夜星』。
ここが星夜流の出発点。
自分の苗字を使うのは面白くない。
でも自分が建てたという意味は残したい。
安直な考えではあるが、それくらいが丁度いい。
「首が挿げ替えられたって言うニュースはまだ聞いてないからな。たぶん俺の元秘書、現社長がいる筈だ」
「元秘書……ですか」
「なかなか有用な奴がいなかったからな。俺の仕事についてこれたのがあいつだけだから後釜に座らせただけだ。
……ああ、一つ言い忘れていたが。役立たずな道具はいらない。意味はわかるよな?」
「はい……」
「精々がんばりな。あの時素直に金を受け取らなかったこと、後悔させてやるよ」
不味いな。スイッチが入っちまった。
経営者としての星夜流になっちまった。
……あれ?どこがまずいんだっけ?
鬼が悪戯を思い付いたらこんな顔になるんだろう。
凶悪な笑みが顔面からはがれない。
「……精々、頑張らせていただきます。あの時私を拾った甲斐があると、
絶対に思わせて見せますから」
一瞬、凶悪な笑みが凍った。
次に浮かんだのは、挑戦的な笑みだった。
「ほぉ、言うねぇ……その言葉、絶対に忘れるなよ」
絶対に後悔させてやる。
……アレ?オレコンナニサドダッタッケ?
「……まぁいいか」
「?」
「ああ、独り言。今日は記念日だ。好きな物を好きなだけ買っていい。好きなだけ贅沢に溺れろ」
「いいんですか!? 」
「ああ、今日という日を楽しめ」
「ありがとうございます! 」
気楽にはしゃぐ雫を見て、ある言葉を飲み込んだ。
明日からは……地獄の方が生温い日々が続く。
そんな言葉を。
204 :
道具の人:2009/03/01(日) 22:51:54 ID:qd75hha1
(・ω・) 投下終了
(゚Д゚) 脱出!
壁|ミ☆
壁|ω;)変な風に切れちゃってゴメンネ
壁|ミ☆
GJ!
GJです。
本日wikiの編集をしていただいたことについて。
作品のかなりの部分が消えていて驚きました。これは作者ご本人様の編集ですか?
ご本人ならレスをお願いします。
管理人としましては、別の方のイタズラの可能性もあるので、少し困っています。
とりあえず、私は触っていないです。
あと、いつも編集ありがとうございます。
まとめにくい点等有りましたら、遠慮なく言ってください…
あやしいバイト、告白本命チョコ作者です。
wikiはよくわからないので触っておりません。
保管庫管理人様に編集を全部丸投げ状態です。お手数おかけしてます。
あれ? 本命告白チョコ? どっちでもいいか。
お騒がせしてすみません。いえ、昨日直された分のみについてのことです。
それで、誰でも編集可能な公開wikiとしているのは、作者様が誤字訂正等を簡単に行えるように、
あるいは私の収録が滞った場合にご協力いただくため、この方がよいのではないかと
考えたからです。
過去作品の修正も新作品の収録も、もちろんどなたでもOKです。
ただwikiはスレからの忠実な転載が基本だと思っています。それで、直しを入れられた分に
ついては、一通りこちらで見させていただいています。
今回のような大きな修正が入った場合は、もしかして作者様の意向と異なるのではないかと、
そう思った次第です。
まとめにくい点について。
これはこの掲示板の特性で、作者様の書き振りとは無関係ですが。
レスまたぎの空行の調整は、いつもちょっと思案しています。
1レス最後には自動的に1空行が開くのと、恐らくは作者様のコピペ加減で、
それ以上の空行が発生する。
作者様としては空行なしで連続して書かれたのかな、と思ったり、
いやいや読者としては、どこかで一休みを入れたほうが見やすいだろうかと思ったり。
このような訳で、空行部分については、こちらの判断で適宜詰めさせていただいていますが、
もしご意図と反する部分があるなら、修正をお願いしますね。
あと、投稿作品を、ほぼ1頁に収めているため、携帯では見にくいと思います。
けれど私の管理の都合上、このようにしています。
(もし適宜の分量で分割していただけるなら、歓迎いたします。)
213 :
道具の人:2009/03/04(水) 16:18:17 ID:rCqrdDNm
あー申し訳ないorz
旧月(月から買ったモノ)の方を勝手に削らせていただきました;・w・
次から削る時言いますねorz
>>214 了解です。
私の方も旧作の続きのつもりで保管していました。
それで、新作のタイトルのみで新ページを立てましたので、ご確認ください。
他に何か直すべきところがありましたら、修正等お願いします。
またはwiki連絡先でもスレでも、ご連絡いただければと思います。
それでは。
職人さん&管理人さんいつもお疲れ様です!
プチ集合状態でちょっと興奮した(性的な意味ではなく)
217 :
道具の人:2009/03/06(金) 03:15:58 ID:Qb2Ozq0d
携帯から失礼
管理人さんいつもお世話様です。
行間や空白は気が済むまでいじくり回して頂いて構いません。
むしろ削っtt(ry
>>208 いつも濃密なお話ごちそうさまです。
>>210 あっさりと告白本命ごちそうさまです。
四月前位には投下する予定です。
『こんな奴いたな』程度に覚えてて欲しい次第です。
長文失礼しました
「メイドくん、メイドくん!」
「なんでしょうかご主人様」
「突然だが、金の力で困っている女の子を助けたくてしかたない」
「そうですか。それは大変素晴らしいことと思います」
「しかし金に困っている助けたいと思わせる女の子を知らんのだ」
「……左様でございますか。先に心当たりがおありなのではないのですね」
「ああ。しかし助けたい。なるべく早く。自分の目で見つけ手を差し伸べたい」
「下調べをさせて候補者のリストを作らせますか?」
「うむ……。いやしかし、それではこう、運命的なものがなくて味気がないな」
「運命、ですか」
「ああ。こう、まるで前世の恋人が出逢った瞬間お互いに惹かれるような」
「……」
「いや、さすがに我侭だな。ここはむしろ発想を転換し、作為的な介入を楽しむべきかもしれん」
「と、おっしゃいますと?」
「ふむ。例えばこうだ。まず少女を見初める」
「はい」
「そして少女が裕福な場合は金に困らせる」
「えっ」
「そこを金の力で助ける。と、こういうわけだ」
「ん? どうしたメイドくん」
「まさか、まさかご主人様は私の時も……」
「!? 馬鹿な! そんなはずがあるわけないだろう!」
「ですがあの時、ご主人様はまるで計ったようなタイミングで」
「いや、あれこそが言うなれば運命的なものであってだな」
「……あのようなことをおっしゃるご主人様は信用できません」
「ああ、気の迷いだった、許してくれ。退屈なあまり些か精神が堕落したようだ」
「本当に、反省していますか?」
「勿論だ」
「私を助けてくださったのは、作為によるものではないですか?」
「ああ。当然だとも。神に誓う」
「私を助けてくださった時、運命を感じてくださいましたか?」
「ああ、ああ、感じたとも。だからこそこうして道を外れてまで再現を求めて……む」
「安心致しました、ご主人様」
「……メイドくん。キミは些か主人をだな……」
「幸運に恵まれすぎた者は、時として不安になるのです」
「……やれやれ。私は気分を害したぞ。紅茶のひとつも淹れて貰おうか」
「かしこまりました」
「それはそれとしてリストは一応作って貰おう。既に困窮している者限定でな」
「かしこまりました。新たに幸運に恵まれる者があると嬉しいです」
「助けるとは限らんぞ。所詮は刹那の道楽なんだからな」
「ご随意に」
「本当だぞ? そもそも選別している時点で純粋な善意じゃないんだ」
「ええ。知っています。手をお付けになって、自分のモノになさるのでしょう?」
「む、必ずとは限らんが、まあ概ねは全くもってその通り。……なのになぜ笑う」
「私はご主人様のモノになれて幸せですので」
「…………っ、ええい、紅茶の紅茶は甘すぎるな。ストレートに淹れかえてくれ」
「かしこまりました」
おわり。人助けって難しいよね。
ご主人様に萌えてしまったw GJ!
どうしてくれる!オレが飲んでる麦茶が甘くなってしまったじゃないか!
まったく、GJだ!
何だかんだでここも砂糖吐きそうな作品が多いなw
お前らあっちのスレの住人かw
麦茶に砂糖入れて凍らせるとオイシイヨ
麦茶に牛乳入れるとコーヒー牛乳の味になるらしい
225 :
220:2009/03/09(月) 17:16:35 ID:/Gu8lsXV
なんで麦茶の流れにw
責任取って小ネタを書いた。
「というわけで
>>224の言うミルク麦茶を作った」
へえ〜…。ところで
>>223さんの言ってた氷の方は?
「時間が無かった。許せ」
いや、まあ僕はかまわないけど。
ゴクリ…
こ、これは…、
「…水で薄めた牛乳」
…だね。麦茶が多かった?
「そもそも麦茶が薄かったか」
今回はちょっと残念だったね。でも、君はこういう少し変わった調理法を試すのが好きだね。
「お前に助けてもらうまで、ロクなモノが食べられなかった。だから、少し贅沢したい」
こういうのは贅沢って言うのかな?
…それに、もっと贅沢してもいいけど?
「貧乏性だ。それに金をかければウマいというものでもない」
そりゃそうだけど。
「何より、お前が隣にいることが一番の贅沢だ」
……あう。
以上。
なんか…、スマン。
>>225 ほんのり甘くてGJ。
俺はアメリカ出張の時、水だし麦茶の偉大さを知ったんだぜ…
ところでもう3月になったわけなんだが…
幸福さん、新作マダーー?
>>225 GJ!こういう甘いの好きだなあw
>>226 日本にいればなんてことのないものがありがたく感じるよね。
水出し麦茶、使い捨てカイロ、冷却シート、小物干し。
みんな外国にはないもの。
ヨーロッパ行ってアイスコーヒーと冷たいビールの偉大さに気がついたお
冷却シートや小物干しも日本限定だったのか
娘の手術に払う金がない?
くくく、俺様が金を出してやってもいいぞ。
ただし!そうなれば貴様等の娘は俺様の奴隷となるのだ!!
揉むも触るも俺様の好き放題よ!ふははは!さあ、どうする!!
おい、待て!これはどういう事だ!俺様は貴様らの娘が理知的で大人しく若
々しい美人だという評判を聞いて助けたのに
幼女だとは聞いてないぞ!!
……ええい!懐くな!
って電波が飛んで来た。誰だよ送信した奴。
ああ、悪いな。その電波はどうやら私のもののようだ。
どこにいったかと思ったらお前さんが受信してたのか。
大事にしてやってくれ。
日本には世界に誇るべき源氏物語という大河小説があってな
全く…なんでこんなことに…
ほら食え、プリンだぞ。
あ、こら、そんなにプリン突き刺すな。
…全く。おい、プリン持ってこっち来い。
…って膝の上座るのかよ……まあいいや。
スプーンはこうやって持ってな…そうそう…
あ〜もう口の周りベタベタじゃねえか。
ほら、拭いてやるからこっち向け。
よしよし、いい子だ。…綺麗になったぞ。
…やれやれ、全く…何してんだろな、俺…。
という電波の二次感染をしてしまったのだが。
源氏物語(というか若紫)って平安の世から続く青年×幼女萌えの伝統だと思うんだ
そういえば若紫って貴族のなかでは貧乏な家の出身でなかったっけ?
若紫の父親は先帝の直宮の兵部卿宮、祖父は按察使大納言。
貧乏とはいえないが、祖父・母・祖母と保護者が次々に物故してしまったために、
寄る辺ない身となり、源氏が誘拐してもさほど問題にならなかったということ。
父親がねぇ、、、冷たいのよねぇ。
保守
全力で困ってる女の子を助けてあげたい
落窪物語もこのスレ向きだとオモ
いかん、あぶないあぶない……
4月からのフジ火曜9時ドラマからこのスレと同じ匂いがする。
借金のあるホームレスの少女(掘北真希)が
金持ちの社長(草刈正雄)から1億円貰って、代償に結婚するとこから始まる話らしい。
このスレていうかそのあらすじだけ見た時の感想は
「ちょww何そのハーレクインwww」だったんだが私だけか。
ハーレクインには金の代わりに結婚するとかその手の話が多すぎるから困る。
243 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 18:58:50 ID:DPq23Xw+
書き手期待age
両親が亡くなって落ちぶれてしまった貴族の女の子を助けてあげたい
>>242 実を言うと、そういう話を読みたくて
ハーレクインを読み漁っていた時期があるw
中には面白いのもあったけど
「確かにあなたとは結婚したけれど操だけは渡さないわ」
っつーのが多くて辟易した。
契約は契約じゃ!
悔恨と憎しみの混じりあいが絶品なんじゃねーかよおぉぉぉ!!!
幸福姉妹5話まで読んだが1話の頃じゃ想像出来ない位の幸福っぷりだな。歪んだ幸福ではあるけど
続きはもう無いのかな…?
しかし、続き=最終回、だからなー。
来て欲しいけど複雑な気分だ。
外伝は期待できないかな?
幸福姉妹次で終わりなのか。ハッピーエンドで終わってくれること祈る
しかし、幸福姉妹で区切るといよいよSelenっぽいなw
金の力で女の子を助けてあげたいが助ける金が無い
よし、俺に任せろ
いやいや俺が
いやいやぜひ俺が
どうぞどうぞ
人助けは計画的に!
この流れ、嫌いじゃない
だが、SS投下も嫌いじゃない。
せめて保守だけでも。
「どうしたんだ。傘もささずに雨に濡れて」
「このわんちゃん……拾ってくれる人がいないの……」
「子犬か。なるほどな。ではこうしよう。おい、そこのお前」
「え? なんすか?」
「ここに1000万ある。これでこの犬を引き取って大切に育てろ」
「マジすか? 了解っす。マジ感謝っす。超育てるっす」
「うむ。解決だな。ではさらばだ」
「わーい、ありがとー!」
「ありがとっすー!」
上手く絡まないなぁ。屍を踏み越えていってくれ。
>>260 それはすてきな屍だ。とてもいい屍だ。こういう屍は大好きだ。
***
1000万で子犬を拾った男はしかし、犬の飼い方など知らなかった。
「いいや、スレ立てよう。『だれか、いぬのかいかた、たのむ』っと」
すぐにレスがつく。
>なんだよ、犬の飼い方って
「役に立たないレスだな」
>親犬は?
「お、これはなんかアドバイスしてくれそう。ええと『拾ってきたので親犬はいません。
首輪もしてません』」
>犬を飼った経験はあるのか?
「『ないっす。でもうちはペット可なんで大丈夫っす』」
>ほんとに大丈夫かよ。ええとな、動物病院に連れて行ってワクチン打ってもらったりだとか
(中略)
きゃんきゃん泣きわめく元気な子犬を連れ男は動物病院、ペットショップなどを一日かけてまわった。
男の部屋はすっかり犬の部屋と化した。
「1000万あるしな、おまえの面倒は最後まで俺が見てやるよ」
空からすっかり太陽の光が消えてしまったその瞬間、子犬はもうもうとした煙に包まれた。
「うわあっ!?」
慌てて後ろへ飛び退る。薄らいだ煙の中にはちょこんと少女が座っていた。
「こんばんは」
「え、あ……こんばんはっす」
「私は、昼の間は魔王の呪いで犬になってしまうのです。こうして夜の間だけ人間の姿に
戻れるのですが」
「白鳥の湖キタ━━━━━━('A`)━━━━━━ !!!」
「どうか私を助けてくださいませんか」
あと、よろ。
>>262 俺もてっきり演説が来ると思ってスクロールさせたら普通だったんで逆にびっくりした
10巻読んだばかりなんでごめん。
そこ(少佐演説)はスレ違いになるんでよそでやるよ。
さあ屍を越えていけ。260の屍を越えていけ。わたし(261)の屍を踏破してゆけ。
腐った屍を踏みつぶし、残った骨を砕いて、液状になった肉を地に戻し
越えていった先で、金に困っている女の子を助けろ。助けてください。おながいします。
「あやしいバイト」の後日談が今も連載中だなんて知らなかった…
まさかおな感スレ保管庫のリンクで知ることになろうとは
ほんとだ。めっちゃ続いとるw
「女の子でも感じちゃう」とか言うスレの事かな?
報告乙です。
川島さん可愛いです
サンクス
見つけた!
ちょっと読み漁ってきます
>>265 私はここのスレの保管庫からリンクでとんだ。
今はできないのかな。
個人のサイトだし、「みつけた!ハァハァ」いっちゃだめかなって
ずっと我慢して一人で(・∀・)ニヤニヤしてたんだけど
いいよねー川島さん。
はぁん(*´д`*)
273 :
265:2009/04/06(月) 12:22:55 ID:oQ9li/ER
>>272 今確認したけど確かにこのスレの保管庫の後日談から行けるね
もしかしたら今までレイアウトの違いを気にせずブラウザの戻るで戻ってたのかもしれん
だとしたらマヌケな話だw
半年以上前の話なんだけどさ
自転車で仕事に行く途中で随分とみすぼらしい女の子にあったんだよ。
気にせずに行くのもあんまりだからちょいと事情を聴いたんだ。
なんでも、親の事業が失敗してこの有様らしいんだよね。
普段なら弱者ざまあああああとか言ってそのまま仕事に行くんだけどさ。
さすがに今回は気が引けたんだよ。
ガキの頃に冷たい風を受けるのは確かにいい経験になるかもしれないけど、
火の起こし方も知らないようなガキがいきつくのはあの世ってわかってるしさ。
仕方ないから会社に遅れると電話してレ○クに行ったんだよ。
手元に金がないからさ、ちょいと100万位借りて女の子に渡したんだ。
こんな大金受け取れないと言ってきかない女の子に、
道楽だからって握りしめさせたんだ。
人の事言えないくらい貧乏だけど、
ちゃんとした企業に就職してるから金は簡単に借りられるんだよね。
返す充ては何とも言えないのが本音だけどさ。
そんなことを忘れて借金の催促の電話が結構響いていた頃の話だよ。
そもそも何で借りたのか忘れてたんだから笑えない話だろ?
突然ドアがドンドンドンドンって叩かれたんだ。
催促が早いな。もうこれで臓器売られて終了かなって思ってたらさ。
私です。開けて下さい!ってドア越しに叫ばれたんだよ。
誰だっけなー……あー大元だって思って開けたんだよ。
そしたらみすぼらしい恰好だった女の子が今回はやたら豪華な服を着てたんだよ。
さすがにびっくりしたね。どうやってわかったんだろって思ってたらさ。
いきなり小切手を渡されたんだよ。お返ししますってね。
それが3ヶ月くらい前の話かな。
ん?その女の子が今どうしてるかって?
後ろから俺のことだきしめてるのがその女の子さ。
275 :
道具の人:2009/04/06(月) 15:17:55 ID:yc1R+3aI
実験的に書いてみたもの。
規制されてたからまぁ書き込みできないだろう。
そんな冗談半分で書き込んだらできちゃったというチラシの裏
>>225の者です。
「
>>260を見て、思いついたモノを書いてみた。そのまま、というワケにはいかなかったが」
へえ〜。
ん?じゃあ、
>>261さんのネタは?
「…死して屍拾う者無し」
怒られるんじゃないかな…?
「ソイツは、しかばねーな」
ダジャレ!?ますます怒られるよ!!
>>261さん
勝手にネタにしてホントにスイマセン。
>>道具の人さん
規制乙&GJです。
がんばってください。
>>260さん
そんなワケで参考にさせて頂きました。
どうしてあの時、彼女に声をかけたのだろう?
いまだにそんなことを考えたりする。
結局のところ、それが運命だった、というだけなのかもしれないけれど。
「こんな雨なのに、どうしたの?」
「このコが…」
雨の中、傘も持たずにずぶ濡れのまま、シャッターが下りた店の軒先で泣きそうな顔をしていた女の子に声をかけると、彼女は自分の胸元を指し示した。
「子猫…?」
「うん…、かわいそうなのにウチじゃ飼っちゃいけないってママが…」
「そうなんだ…」
「………」
彼女はしゃがみこみ、黙ってうつむいてしまった。
そんな彼女を見ていると、捨てられてしまったのが猫なのか彼女自身なのか、一瞬わからなくなってしまって…、だからだろうか?
「それじゃあ…、ウチに来る?」
などと言ってしまったのは。
以上です。
ムダな前フリの割に短かすぎでスイマセン。
続きを書く際には、余計なマネはしないようにします。
では、失礼しました。
ほしゅ
金の力で保守
川島さんのダメ人間ぷりにハナヂでそうです。
>>281 私もですw
実はズブズブにダメな変態ってとこが。
>>261 リレーはスレ違いっぽいし、そろそろトドメを刺しておくか。
前回のあらすじ。
雨の中、捨て猫を拾った少女を見止めた紳士。
紳士は通りすがりの青年に声をかけ、1000万円で猫を育てるように言う。
これによって少女は金の力で救われました。(ここ大切)
快諾する青年は猫を拾って帰宅。
どうやって育てるか考えていると猫が人の姿に。
魔王の呪いで昼の間だけ犬の姿になってしまうそうです。←今ココ!
というわけではじまり。
「おk、超助けるっす!」
「魔王の呪いを解くアイテムがあるのですが、それが高価で……」
「高いってどれくらいっすか? ちなみに俺の有り金は1000万っす!」
「それが……3000gの金塊と交換なんです」
――現在の価値に換算すると、900万円強である――
「腰が抜けるほど高いっす! でも金くれた人と約束したっす! おk!」
「あ、ありがとうございます!!」
こうして一人と朝は一匹夜は一人の旅が始まった。
現金を金塊に変え、ファンタジー世界へ行き、解呪アイテムを持つ魔女の棲む森を目指す。
雑魚モンスターとの死闘、ツンデレロリエルフと夜犬少女とのラブコメ展開、湯けむり殺人事件の解決。
紆余曲折の末に、ほくほく顔の魔女から適正価格でアイテムを購入し、魔王の呪いは無事に解かれた。
アフターサービスも充実していて安心の十年保証。いろいろと怪しげなおまけもどっさり貰う。
冒険の旅が終わり、青年は呪いが解けた少女と共にアパートに帰ってきましたとさ。
「こんな御迷惑をかけてばかりの私を家に置いてくれるんですか?」
「大切に育てるって約束したっすから、当然っす!」
「あ、ありがとうございます! でも、育てるより、その、できれば、は、伴侶に……」
「? なんすか?」
「な、なんでもないですっ!! ふつつかものですが今後ともよろしくお願いします!」
「こちらこそっすー!!」
「ちょっと! 私を忘れて貰っちゃこまるわね!!」
「ああっ、あなたは向こうの世界でこのかたと一時ラブコメ展開になったロリエルフさん!」
「おひさしっす! んー、んじゃ三人で暮らすっすよ!」
こうして人の姿に戻った少女は金の力で助けてくれた青年とかと幸せに暮らしたそうです。おわっとく。
あ。一ヶ所犬じゃなくて猫になってる。失敗。
リレー部分はこれで終了って感じな感じで書いただけなので、
再構築をはじめた
>>277さんは独自路線で頑張ってください。
楽しみにしておりますです。
☆
金の力を楯にいたいけな女の子を拉致しようとしている、漫画みたいにベタな借金取りから
なぜか女の子を助け出してしまい、ヘタレな感じで彼女との同居生活を始めるヘタレ青年の話が読みたい。
【金の力で困ってる女の子】を助けてあげたい。
さて、ちょっと困ってる女の子でも探しに行くか
>>286から
逆に【お金の力】で翻弄され困っているお嬢様を助けてあげる。という電波を受信した。
保管庫の「金の力で困って」がそんな話だったような
ほす
やはり長編がないと……
姉妹の続きはまだかね
自分も待ってる
294 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 11:58:32 ID:/tVopZbh
ええい!ラブマネの続きはまだか!?
295 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:28:24 ID:SIwDKI1D
「ど、どうぞお願いします……」
湯気にぼやける浴場で、四つん這いになった沙耶の懇願が聞こえる。
少年はその光景にぎょっとした。
「これに入れろ、と?」
隣のビキニ姿のアイカに尋ねる。
「そゆこと」
しれっと答えながら、アイカは風呂桶からローションを取り出し、手のひらに馴染ませて少年のものに滑らせる。
「あう……」
「乙女の純潔はね、宝石よりも大事なんだよ」
とろけるような口調で、首筋に息を吹きかけるようにアイカは囁いた。
沙耶は股間のスク水をずらし、両手でその幼い蕾のような少女の秘所に両手を添えていた。
少年は下品な雑誌で見たことのあるポーズだと思った。
いわゆるそれは、風俗嬢などがやるスマタ<vレイのものだ。
純朴な沙耶が思いつくようなことではないから、おそらくアイカの入れ知恵だろう。
まったく、この人はなんつーことを……と、じとりと横目にアイカを見るが、相変わらず飄々としたものだ。
「あ、あの、私、えーと……別に本番までいっても」
沙耶は小動物のように、申し訳なさげな表情で少年を仰ぎ見た。
一方で少年にはそれで何となく理解できた。
アイカはとても沙耶のことを大事に思っているのだと。
296 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:28:58 ID:SIwDKI1D
「い、いいんだよ。こういうプレイもなかなか得難いものだし」
「ホントですか?」
「うん、もちろん。沙耶ちゃん、カワイイしさ」
「か、カワイイ……」
ぽっ、と頬を赤くするのは、何も風呂場の熱気だけが原因ではないだろう。
それに、少年も処女を金と引き替えに奪うほど鬼畜な性格をしているわけでもない。
アイカの措置は落としどころといえた。
「じゃ、じゃあ、いくよ」
「はっ はいっ! ふつつかものですが」
アイカの淫語とはかけ離れた色気のない会話の後、ローションで滑ったペニスを彼女の股間へ滑り込ませる。
十代の少女特有の、張りがあって弾力に富んだ指先の感触が伝わってくる。
そして、腰を入れて差し込み終わると、一見するとバックから犯しているようにも見える。
少年も日本男児である以上、スク水への羨望というものは持ち合わせており、
スク水姿の娘を背後から突き上げるという絵柄はかなりの視覚的興奮を誘った。
「沙耶ちゃん、気持ちいいよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
元気よく返事が返ってきた。
初々しく、あどけない仕草。その純粋そのものの少女を淫らな行為に及んでいるという背徳感。
内心、アイカにはない興奮要素に、かなり彼自身盛り上がっていた。
297 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:30:21 ID:SIwDKI1D
「動くよ」
「は、はい!」
彼がピストンを開始すると、彼女の小さな花弁と、包み込む両手の感触がダイレクトな刺激となって脳に届いた。
考えてみれば、いつもアイカとするときはコンドームを着用しているので、生の感触を受けることは少ない。
その新鮮さが、本番でなくとも十分な快感を彼に与えていた。
腰を勢いよく打ち付けると、パンパンと激しい音が浴場内に響く。
「あっ あっ あんっ あうっ」
沙耶はその激しさの中、必死になって彼のものを手放さないようペニスを握りしめる。
それがまるで締まりの良い膣内のように思えて、彼はいっそう激しく、沙耶の腰を掴んでペニスをうち込んだ。
「あぁんっ あぁっ! いぃ……」
感じているのは少年だけではなかった。
沙耶も、初めて経験する異性との行為と、その自分の大切な場所へこすりつけられる熱い肉の感覚に酔いしれていた。
青い世代の真っ直中の彼女だが、今時の少女たちとは違い貧困に抑圧されてきた彼女は、性的な快楽に耐性がなかった。
いつしか彼女の声には熱がこもり、ローション以外にも円滑油になる液体が加わっていた。
「ああっ! 気持ちいいです、神楽坂さぁんっ!」
「くっ、そんな締め付けたら、また!」
一見すると少年と少女が激しく睦み合っているような光景の中、少年の若い精が少女の内股にふりかかった。
298 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:30:53 ID:SIwDKI1D
「……あ」
沙耶は手の中からあふれ出る液体に、嫌悪感よりも下腹部の熱い感覚を抱いていた。
アイカは一目でそれを見破ったのか、沙耶の首筋をちろりと舐め、快感に震える少女の耳元で囁いた。
「沙耶ちゃん……いけない娘ね」
「は……い……」
少女がピクンと身体を痙攣させた。
それが少女の初めての性的絶頂であることに、まだ彼女自身気づかない。
ただ、虚ろな瞳で、うわごとのように呟いた。
「沙耶は……いけない娘です……」
少年がペニスを引き抜くと、まるで凌辱された後のような背徳的な姿を彼女が晒していた。
・
・
・
数日後
「さやねえちゃん! 似合ってる!?」
真新しい紅いランドセルを背負った摩耶が庭で飛び上がらんばかりに喜んでいた。
299 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:31:47 ID:SIwDKI1D
「うん! 摩耶、すっごくカワイイよ!」
沙耶はその笑顔だけで他に何もいらないと思えそうな気がした。
そう、次女の摩耶は、夏休み明けから最寄りの小学校へ入学することになったのだ。
その金の出所は、言うまでもなく少年のポケットマネーからである。
「良いことしたじゃない」
「いいのかなぁ……?」
「いいのよ」
アイカは複雑な表情を浮かべる少年の隣でビールを空けながらそう断言した。
「でも、あたしお勉強ついていけるかな……?」
「摩耶ちゃん、おいで」
「アイ姉?」
アイカは摩耶を手招きすると、縁側に座る自分の膝の上にのせた。
「わかんないとこがあったら、アタシかこのお兄ちゃんに聞きなさい。小学校の勉強くらいなら教えられるから」
「本当?」
「ええ」
少年はアイカの横顔を見ながら、つくづく彼女が不思議な女性だと感じた。
摩耶を慈しむその横顔は、雰囲気だけなら摩耶たちの母親のようでさえある。
快楽に奔放で、芸術家で、子供好き……
連想し難い性格を、彼女は併せ持っている。
しかし、彼女は自分に素直に生きているだけで、何も偽りや偽善で振る舞っているわけではないことくらいは理解できる。
それが、祖父の遺産という過去を隠しながら生きることを余儀なくされている少年には、どこか羨ましく思えた。
300 :
らぶマネ!:2009/04/24(金) 17:33:09 ID:SIwDKI1D
「ほれ、さきイカあげる」
「わぁい!」
摩耶とアイカが戯れていると、いつの間にか隣には沙耶が座っていた。
沙耶は心なしか頬を染め、彼からは目をそらしている。
「あ、あの、神楽坂さん」
「う、うん、何かな?」
同年代の少女ということもあって、アイカほどあの行為を割り切れないでいたため、どうにもぎこちない態度になってしまう。
「わ、私、本当に感謝しているんです……で、ですから」
「ああ」
「これからも、よろしくお願いします! 私、エッチなことでもがんばれるようになりますから!」
ビールを飲んでいたアイカが口の中身を吹き出した。
「えっちってなあに?」
摩耶がきょとんとした顔でアイカを見上げる。
すかさずアイカは立ち上がって沙耶に蹴りを一発入れて引きずっていったのだった。
<続く?>
ご無沙汰してました
とりあえず酒井姉妹編の後編をお届けしました
キ、キ、キ、キタ━━(゚∀゚)━━!!
夢じゃないよな!?
GJ!
キターー
乙すぐる
305 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 18:21:39 ID:zvvQpGyf
乙、かつ期待age
また、以前の活気が戻るといいな。
乙!そしてGJ!
毎度思うが、これほ超がつくほど正統派な
「金の力で困ってる女の子を助けて」る話だなあ
307 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 01:25:10 ID:0Fm1eg6T
金は愛以外なら何でも買えるからな。
時間は買えませんよ
>>308 他人の時間なら買えるし、
自分の時間に関しても、買い足すことはできんが、有効利用することはできる
時間で金を買うことはできるが金で時間は買えないんだ。
つまり、時間は金の上位通貨と見ることができるわけだ。
金を持ってると「金を稼ぐ」時間を省略できるとも取れる。
金で命は買えるけど、命で金を買うこともできるってばっちゃが言ってた
その「ばっちゃが言ってた」って元ネタなんなの?
ハァ。二年かぁ・・・川島さん・・・。
>>311 四輪レーサーのサイン会に行った子供が、「僕もレーサーになりたい」と言ったところ、
「君の家はお金持ちかい?」
「ううん、違うよ。でも頑張ってお金を稼ぐよ。」
「それならあきらめた方がいい。君がお金を稼いでいる間に、みんな君より速くなってしまうから。」
そう言われてレーサーの道をあきらめたそうだ。
その時は冷たいことを言われて傷ついたが、大きくなって事情がわかってくるとその通りだった。
という話を思い出した。
>>315 んだんだ!
川島さぁ〜〜〜ん!!!カムバック!
二年後の川島さんと結衣ちゃん読みたい。
川島さんのいない間に結衣ちゃんの胸も成長してたら・・・!
お前等スレを離れた作品に言い及ぶのも大概にしとけ
和樹が漢や・・・
hosyu
321 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 02:40:57 ID:N9vu9rux
書き手期待age
財布忘れたクラスメイトとか
財布落とした女上司とか
女の子を助ける金がない
助ける女の子も居ない
だからこのスレがあるんじゃないか
326 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 10:42:17 ID:edpsOPbn
age
このスレタイ見るとどうしてもなんか笑ってしまう……。
貧乏な俺を助けろ
莫大な遺産相続でトラブルがある女の子を
貧乏男が助けるとか
お金があり過ぎて困っている女の子を助けるのもありだよな
遠藤淑子の『狼には気をつけて』みたいなシチュエーションか
332 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 03:47:54 ID:WTeOAaEb
少年「給料は一億だ。それでお前らは、俺の家族として雇われろ」
「当然ドルでの話ですわよね」
「勿論だ」
「さっそくGM株とFXに全力突っこみますわー!!」
待て待て待てwww
追証が発生したでござるの巻
和風美少女スレに微妙にこのスレっぽいのが投下されていたな。
作者さんいわく私利私欲で女の子を買う話だそうだが
政略結婚モノは好きだ。
見てきた
いいね
大金が動くのにロマンを感じる俺は満足です
保管庫より
GENOウィルス蔓延中のため、一時的に閲覧を停止します。
wikiを次のとおり修正後、閲覧を再開する予定。
1.続編案内他、他サイトへのリンクのあるページは閲覧不可にする・リンクを抹消する
2.編集は保管庫作成者のみとする
その他、有効な対応が判り次第、できるだけ対処していきます。
この措置は、GENOウィルスへの対策が確立するまで続けます。
なお、保管庫本体への感染は現在はしていません。(wiki形式のサイトは今のところ大丈夫らしい)
また、リンクしていた先のサイト様が、感染しているということではありません。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これまで貼る前に、リンク先を一応チェックしていました。しかし今は、うつるのが怖くてそれすらも
できない状況です。また今日は大丈夫でも明日どうなっているかお互い判らないので。
ちょっと怖がりすぎかもしれませんが、感染した場合、強烈な被害を受け・与えるようなので、
しばらくご不便をかけますが、よろしくおねがいします。
それと、保管庫についての連絡がある時は、このスレをお借りしてお伝えする場合もあります。
お目ざわりでしょうが、ご辛抱ください。
GENOについてまとめサイト
ttp://www29.atwiki.jp/geno/ ttp://www31.atwiki.jp/doujin_vinfo/ GENOウイルスチェッカー
ttp://geno.2ch.tc/ (簡易版?)
ttp://wepawet.cs.ucsb.edu/index.php (本格的解析?)
お疲れ様です。
素早い対処、本当にありがとうございます
早く騒動が収まってくれるといいのになぁ
お疲れ様です。
ホント、頭が下がります。
とりあえずざっと確認しましたので、再度公開します。
ちょっと美しくないありさまになってしまいましたが、注意喚起になればと思います。
(携帯ではサイドバーは見えないのですが、現状携帯は感染しないらしい)
万一、まだ外部へのリンクが残っている、その他不具合がありましたら、ご連絡お願いします。
またこの機会に、
>>2の過去ログ置き場は廃止しました。
ミラーサイト様の方が閉鎖とかになれば、改めて作ろうかと思います。
それと、いつもねぎらっていただいてありがとうございます。それでは。
流れを読まずに投下します。
外は暑いが、部屋の中は涼しい。
ふと窓の外を見ると、真夏の日光に照らされた町並みが
白と黒の極端なコントラストを形成している。
時計を見るともうすぐ午後二時というところだった。
いつもならそろそろ遅めの昼飯を買いに出かける時間なのだが、
うだるような灼熱の外界を見るとついその気も失せてしまう。
――グウゥゥ……。
誰もいない部屋に腹の音が響き渡った。
何か食べるものはなかったろうか。
俺は冷蔵庫や戸棚を確認したが、発見できたものは魚の缶詰とゼリーくらいだった。
やれやれ。この地獄の中を飯食いに出ていかなきゃならんのか。
ため息をついて財布をズボンのポケットにねじ込む。
ここは郊外のマンションで、少し歩けば駅やショッピングモールがある。
交通の便はいいが、住まいとしてはそんなに高級という訳ではない。
俺としては、どうせ大学に通う間だけ住めれば良かったので
そこらのボロアパートで充分だったのだが、それは親父が許さなかった。
どうも俺の親父は、自分が息子にあまり大したことを
してやってないんじゃないかと普段から思っているらしく、
金や物でその埋め合わせをしているような節がある。
しかし俺に言わせれば、それは俺を兄貴と比べているからであって
俺自身は両親に充分なことをしてもらっていると常々思っている。
まあ兄貴のような放蕩生活を基準にすると、俺なんかは控え目で
何事も遠慮してるように見えてしまうのだろうが。
エレベーターを降りて外に出ると、もうそれだけで帰りたくなった。
天気予報を見た覚えはないが、これは三十五度くらいあってもおかしくない。
わざわざ一日で一番暑い時間を選んでしまい、俺はしばしの間
マンションの入口で立ちすくんでいたが、背に腹はかえられない。
できるだけ木陰や建物の下を通っていこうと決心し、俺は白い熱世界に足を踏み入れた。
「――ふぅ……」
汗だくになって駅前の喫茶店にたどり着き、
サンドイッチとよく冷えたアイスコーヒーで食欲を満たした俺は
特にすることもなくショッピングモールの中をうろついていた。
本音を言えば早く家に帰ってゴロゴロしたいのだが、
今この冷房の効いた空間から外に出る勇気はない。
本屋で雑誌でも立ち読みするかと思い、俺はエスカレーターに足をかけた。
ゆっくり上ってゆく俺の目が、ふとある一点に注がれた。
見えるのは長椅子に座った高校生くらいの女の子。
彼女は力なくだらりと四肢を伸ばして壁にもたれ、
起きているのか眠っているのかわからない状態だった。
(――寝てるのか?)
あんなところで寝るのはどうかと思うが、何しろこの暑さだ。
俺と同じで外に出られずボーっとしているのかもしれない。
何となくその子が気になった俺は、上ったばかりのエスカレーターの
反対側を下り、ゆっくりと女の子に近づいていった。
彼女は目を閉じ、ぐったり壁によりかかっている。
(やっぱり……寝てる、みたいだな……)
肩くらいのやや茶色がかった黒髪の、少し可愛い感じの子だ。
夏らしく緑色のプレーンのキャミソールからは腕や首筋がよく見え、
細くくびれた腰やそこそこ膨らんだ胸のラインがわかりやすい。
だがその髪もジーンズも汚れていて、足元に無造作に置かれた
ボロボロのボストンバッグは、普通の女の子の荷物にしてはちょっと大きすぎた。
その上、左腕には少し大きめのアザまでできていて、全身から
いかにも訳ありといったオーラを醸し出していた。
そんな少女がひとり、長椅子でうたた寝をしているのだった。
(これは――家出少女、ってとこか……?)
テレビで話に聞いたことはあったが、実際に見るのは初めてだった。
起こすべきか。でも厄介ごとに巻き込まれそうだな。暑いしやだな。
r ア見なかったことにするか。どうせ俺には関係ない。
そうだ、警察を呼んで保護してもらおう。たしか交番が向こうにあったはずだ。
様々な選択肢が脳裏によぎったが、夏休みでバイト以外特にすることのない俺は、
暇に任せて一番面倒くさい答えを選んでしまった。
彼女の隣に座って肩をゆする。
「――おい、君」
直接俺の手が触れたむき出しの肌は、やはり薄汚れてやや黒い。
日焼けでもないようだから、満足に風呂にも入っていないのだろう。
「起きろ、起きるんだ。おい」
「ん……んん……」
少しの間そうしているとやがて彼女は目を開けた。
しかしその目も半開きで、どこか疲れたような印象を受ける。
少女はよどんだ瞳で俺をじっと見つめてそっとつぶやいた。
「ん、あ……だ……誰、ですか……?」
俺は再びため息をついて彼女を見返したのだった。
まさか、さっき入ったばかりの喫茶店にまた行くとは思わなかった。
重そうな荷物を抱えた少女を連れ、再度店に入ると
俺は店員が置いていった熱いお絞りを彼女に渡してやった。
「――とりあえず手と顔、拭け。汚いから」
「は……はい……」
女の子はそれでごしごしと顔を拭き、開いて俺に見せつける。
「……真っ黒……」
「そりゃそうだろう……」
俺は間の抜けた会話に脱力してしまい、次にメニューを彼女に渡した。
「――で、何食う? サンドイッチでもスパゲッティでも何でもいいぞ」
「い、いえ……そんな、見ず知らずの人に奢ってもらうなんて……」
妙に遠慮する年下の少女をにらみつける俺。
「ホームレスみたいな格好の女の子に金を払わせるなんてできるか。
いいから食え。腹減ってるんだろ?」
なおも躊躇する彼女を尻目に、俺は店員を呼んだ。
「えーとアイスコーヒー二つと、そうだな、
この子にはミートソーススパゲッティ――」
「あ……あのっ!」
「ん、どうした?」
不意に俺の注文を遮った少女を見やり、問いかける。
すると彼女は恥ずかしそうにうつむいて、小さな声で
「えと、すいません……カレーライスで……」
と言った。
冷房が効いてるとはいえ、このくそ暑い中、彼女は大盛りの
カレーライスをぺろりと平らげてしまった。
聞けば、最近ろくな物を口にしてなかったらしい。
綺麗になった楕円の皿を笑って見つめ、俺は少女に話しかけた。
「――俺は和泉義之、近くに住んでる大学生だ。君は?」
「あ、すみません。私、小山ほのかって言います」
ふむ。高二だそうだから俺の三つ下か。
「それでほのかちゃん――あ、名前で呼んでいいか?
なんで君はあんなとこで眠りこけてたんだ?」
彼女はうなずいたが、目を伏せて何やら言いにくそうにしている。
ほのかちゃんの様子から察するに、もう何日も家に帰っていないのだろう。
夏休みだから学校はないだろうが、なぜ家出などしてしまったのか。
俺は優しく、しかし辛抱強く言葉を重ねて何とか聞き出そうとした。
「あの……私……」
やっと話す気になったのか、俺を見て声を震わせる少女。
「こないだ両親が……離婚しちゃったんです……」
「……そうか」
「お父さんもお母さんも仲が悪くて、どっちも私のこと嫌いなんです。
それでとうとう離婚して、私はお父さんに引き取られたんですけど……」
ほのかちゃんの父親は酒好きで、酔うとすぐに彼女を殴るらしい。
なるほど、腕についてるアザはそれか。
俺は要所要所でうなずきつつ、彼女の話を聞いていた。
父親は彼女が嫌いだし、母親も娘を助けてやろうともしない。
普段から気が弱く友達も少ない彼女は、夏休みで学校の先生に
相談することもできず、ついに荷物をまとめて家出してしまったというのだ。
「それで、もうお金もほとんど残ってないし、どこにも行く当てがなくて……」
うつむいて声を小さくするほのかちゃん。
うーむ、やはり厄介ごとに巻き込まれてしまった。
予感が的中した俺は、ストローを口にくわえて彼女を見やる。
こちらを向いてびくびくするその仕草は、まるで子猫のようだった。
「……うーん……」
「す、すいません……こんな話しちゃって……私……」
軽くうなり、俺は半泣きのほのかちゃんに尋ねてみた。
「――君、猫は好きか?」
「……え?」
思いがけない質問に戸惑う彼女だったが、大きな目で俺を見上げて答える。
「は、はい……嫌いじゃないです……」
「よし、決まった」
俺はガタンと椅子から立ち上がり、ほのかちゃんの華奢な手を取った。
「しばらくの間うちに来なよ。行くとこないんだろ?」
目をまん丸にする少女を、俺は笑顔で見つめていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間は経っても、依然として外は暑い。
「ただいま」
俺は玄関で寝転んでいた黒い毛玉に呼びかけた。
まったくこいつは、主人が帰ってきたのに出迎えもせんと。
「にゃー?」
俺の足先で背中をつつかれ、こちらを振り向く真っ黒な塊。
サンドラは……逃げたか。あいつ人見知りだからな。
「これ、アレックス」
「……こ、こんにちは」
俺が足で指した黒猫に手を振り、ほのかは家にあがった。
アレックスはなんだなんだという感じの表情で、なかなか面白い。
「もう一匹サンドラっつーのがいるんだが、臆病なやつでね。
多分、押入れか棚の上にでもいると思う」
「はあ……」
床に敷いた新聞紙の上に彼女のバッグを置く。
「まずシャワー使いなよ。着替えはある?」
持っていた衣類は全部汚してしまったと言うほのかに、
俺は自分のTシャツとズボンを渡してやった。
大きいだろうが、とりあえずはこれで我慢してもらおう。
女物の下着はもちろんない。今度買いに行かないとな。
「あ……ありがとうございます……」
おどおどと頭を下げる少女を風呂場に押し込み、それから
ちょっと臭う彼女のシャツやジーンズを片っ端から洗濯機に放り込む。
女の体臭がいいとか言うやつの気持ちは、俺にはやはりよくわからなかった。
一人暮らしの男の家から、少女がシャワーを浴びる音が聞こえてくる。
(俺、何やってんだかな……)
俺は不意に冷静になって自分を笑った。
これは誘拐だろうか。迷子になった幼女を家に連れ帰るのと変わらないんじゃないか。
――いや、違う。俺はただ捨て猫を拾っただけだ。あの二匹のような。
洗濯機がゴンゴン動くのを見つめながら、意味のない物思いにふける。
弱みにつけこんで女の子を家に引っ張りこみ、自分の意のままにする。
しかもその当事者が国会議員のドラ息子とくれば、
発覚すればワイドショーのいいネタにでもなりかねない。
「にゃー」
腹を空かせたのか、足元のアレックスがねだる声で鳴いてみせた。
猫どもにエサをやり、何ともなしにテレビを見てゴロゴロしていると
戸の開く音がして、髪を濡らしたほのかが部屋に入ってきた。
「……シャワー、いただきました。あの、後始末は……?」
「いいよ。どうせ俺も後で入るし、そのまま置いといてくれ」
「はい……」
所在なさげにちょこんと部屋の隅に座る少女。
その様子を見ていると、なぜかこっちが落ち着かなくなる。
「んー、何て言うかさ」
「――はい……?」
「もっとくつろいでくれたらいいよ? ここ、俺とこいつらしかいないから」
「はあ……」
体を綺麗に洗ったほのかは先ほどの何倍も可愛かったが、
ただ、こちらの顔色をうかがうような目が気に入らない。
「家には帰りたくないんだろ?」
「……はい……」
ぎゅっと下唇を噛み、ほのかはうなずいた。
「それなら、気の済むまでここにいたらいい。夏休みで学校はないだろうし、
俺も今大学は無いから、たまにバイトして後はゴロゴロするだけさ」
「で……でも、やっぱり……その、申し訳……ない、です……」
俺は立ち上がり、なおもこちらの神経を逆撫でするほのかの前に腰を下ろすと
力いっぱいその頭を両手でわしづかみにした。
「――まだ言うか、この口は」
「…………っ !?」
鋭い目で自分を射抜いてくる俺を、少女が息を呑んで見つめる。
互いの顔と顔の間の距離は十五センチほどか。もうちょっとで触れ合うほどだ。
「あれだけドロドロで腹ペコでくたびれた姿を見せられて、
事情を一から十まで聞かされて、今さら放っとける訳ないだろ?
いい加減にしないと、俺も本気で怒るぞ…… !?」
「あ……っ」
ぼろぼろ涙を流しながらこちらを見返してくるほのか。
ちくりと心が痛んだが、今はそうも言ってられない。
「助けてほしいならそう言え。家に帰りたいならそう言え。
俺は普通の人間だから、口に出してはっきり言ってもらわないと
お前の考えてることなんて全然わかんねーんだよ……!」
「ご……ごめんなさい……ごめんなさい……」
まただ。なぜ謝る?
じっとしてても誰も助けちゃくれないってのに……こいつは一体何なのか。
俺は呆れた顔で手を離すと、息を一つ吐いて床に座り込んだ。
話を聞いたときからそうじゃないかと思っていたが、ほのかはとても臆病だ。
前に何かの本で読んだが、親に虐げられた子供は
やがて人の顔色ばかりうかがう人間になってしまうそうだ。
俺をイライラさせる性格はほのか自身のせいじゃないとわかってはいるのだが、
あまりにムカついたのでついやってしまった。
普段子供を相手にする商売してるのにな、と俺は自分を恥じた。
「……ヒック……うっ、うぅ……」
床に手をついてすすり泣くほのかを横目で見る。
華奢な体は歳相応の少女のもので、とても頼りなく思えた。
「……悪かった」
信頼できる相手がおらず、ずっとひとりだったほのか。
家から逃げ出しても誰を頼ることもできず
不安と疲労の極致にあった彼女に、俺は小さな声で謝った。
そっとほのかの体を抱き寄せ、ぎゅっと密着して頭を撫でてやる。
しゃくりあげる少女の声が部屋に響く。
「行くとこがないなら泊めてやる。金がないならくれてやる。
家に帰りたいなら帰してやる。ほのかはどうしたい?」
「う……ひっく、私ぃ……」
「教えてくれ。ほのかはどうしたいんだ?」
「わ、私……帰りたくない……い、いじめないで……優しくしてぇ……」
居場所が欲しい。安心して生きていける場所が。
殴られず怒鳴られず、誰にも媚びずに自分が笑顔でいられる空間。
彼女の願いはただそれだけだった。
「お父さん……うぅ、お母さん……私、もうやだ……やだよぅ……」
やまない嗚咽を聞きながら、俺は少女の体を抱いていた。
弱い。人は弱い。
殴られたら殴り返せば。刺されれば刺し返せばいい。
なのに人は弱いから、すぐに泣いて逃げてしまう。ちょうどこの少女のように。
しかし、俺にほのかを罵倒する資格があるだろうか。
信じられる人間。自分が認める人間。自分を認めてくれる人間。
それは俺にとって両親なのか兄なのか、それとも友人なのだろうか。
だが俺にはそれがわからない。
俺にとって大事なものとは……なんだ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
机に向かい、俺たちは並んで椅子に座っていた。
セミの声も聞こえない静かな部屋の中、俺の説明が続く。
「sinとcosの値は丸暗記できたらまあそれはそれでいいが、イメージとしては
単位円を頭の中に思い描いてくれ。
半径1の円があって、その周上の点のx座標がcosθ、y座標がsinθだ。
だからcosθとsinθの二乗の和が1になるのはわかると思う」
こくこくとうなずくほのか。
俺は彼女にいくつか問題を解かせ、理解度をチェックした。
成績はあまり良くないと言うわりに、物覚えは悪くない。
熱心に俺の説明を聞いてるし、問題もちゃんと解けている。
ひょっとしたら、俺が見てる他の生徒たちより優秀かもしれない。
「――よし、じゃこの次は加法定理にしよう。今回はここまで」
「ふう……やっぱ数学は難しいよ、和泉さん」
ほのかは軽く息を吐いて椅子の背にもたれかかった。
「ほのかは文系だからな。でもセンター受けるならUBまでは必要だぞ?」
「うぇぇえぇん……」
俺は大学に入ってから、バイトで家庭教師をしている。
金には不自由していないが、やはり学生たるものバイトの一つくらいは
しないといけないと思ったからだ。
教える相手は小学生から高校生まで幅広いが、やはり男子が多くて
ほのかのような歳の近い女の子を教えることは今までほとんどなかった。
なのでこうして彼女を教えるのは少しだけ新鮮な気分だ。
「――きゃっ !?」
もたれかかった椅子が傾いて転びそうになり、慌てる声をあげるほのか。
前から思ってたが、結構この子、頭のネジ抜けてるよな。
あれから俺は父親のいない昼間にほのかを一旦家に帰らせ、
服や身の回りのものと、最低限の勉強道具を持ってこさせた。
そして足りない物は買い足して、何とか二人の生活に必要なものを揃えた。
そんな訳で、ほのかと暮らし始めてから二週間。
初めはこそこそ俺の顔色をうかがっていた彼女だったが
少しずつ俺との生活にも慣れて、だんだんと打ち解けていった。
夏休みの空いた時間を、二人っきりで家でゴロゴロしたり勉強したり、
料理をしたりベランダに洗濯物を干したり。
ほのかとの奇妙な共同生活は、いつしか俺にとっても楽しいものになっていた。
夜、ほのかは俺の部屋で寝る。
と言っても、俺とほのかは別にそういう仲ではない。
ただ一緒に生活して、同じ部屋で寝るだけ。ベッドを明け渡して布団で熟睡する俺には、
この気弱な少女を襲って手篭めにしようなどという考えは欠片もなかった。
――バタン。
トイレのドアだろうか。戸が閉まる音を、頭の片隅で聞いた気がする。
しかし俺はすっかり夢の世界に飲み込まれてしまっていて、
便所に行った少女のことなど認識できるはずがなかった。
そして彼女が、それからどうしたかも。
――ぺろ、ぺろ……。
……なんだ? 俺の顔、舐められてるのか?
さてはアレックスだな。ちゃんとエサはやっただろう、俺を起こすな。
夢の中で猫を叱りつけて俺は眠り続ける。
――ちゅ、ん……はむ……。
こらこらやめろ、猫畜生。やめないと台所の黒い悪魔呼ばわりするぞ。
夜行性っつってもお前にはサンドラがいるだろう。
俺の顔を踏まなきゃ構わんから、追いかけっこでも何でもしててくれ。
そんなにエサが欲しいのか? 今だって結構太いだろうにお前……。
――ん……じゅる、くちゅくちゅ……。
ああ、気持ちいいな。舌が暖かくてほんわかする……。
口の中に何か柔らかいものが入ってきてるような、とっても安らかな気分。
暖かくて気持ちよくて、俺の口の中でくちゅくちゅって――。
そして、目を開けた俺の視界をほのかが覆っていた。
「…………っ !?」
驚きに声をあげようとするが、彼女に激しく唇を吸われ、
しかも舌まで絡め取られていてうなり声しか出ない。
「ちゅ……ちゅぱ、んんっ……じゅるっ……」
俺の全てを持っていこうとする、濃厚なディープキス。
年下の少女から受けるはずがない至高の快楽に俺は喘ぎ、
なすすべもなく口内をほのかに蹂躙されていた。
呼吸が苦しくなってきた頃、ほのかが俺の顔を離す。
「――ぷはっ!」
小さな電球だけが天井に灯る暗い部屋の中、なぜか彼女の顔の赤さは
はっきりと俺の寝ぼけた瞳に映っていた。
「はあっ……ほのか……な、なんで……」
息を切らして俺がたずねると、彼女は俺の上に覆いかぶさった。
掛け布団をはがされて密着するパジャマから、ほのかの体温が伝わってくる。
「義之さん……」
うるんだ目で少女が俺を見つめた。
初めて出会った頃のおどおどした様子ではなく、
にこにこ笑って俺と飯を食うときの様子でもない。
熱っぽくて力強くて、周りが見えない一途な思い。それがほのかの瞳からは感じられた。
(ああ、こいつ……まさか、俺が好きなのか……?)
睡魔の残る頭でそう考える。出会ってたったの二週間。出会って既に二週間。
「好き……好きです……」
ほのかは俺が考えたとおりに言葉を口にした。
「駄目だ……」
触れ合うほどの至近で、俺が彼女を止める。
「ほのかはこんなことしちゃ駄目だ。しちゃいけないんだ」
「何で……? 私、義之さんが好きなんだよ……?」
「違う。それは間違ってる」
精一杯の理性で彼女の言葉を否定した。
「ほのかは俺に負い目を感じてる。でもそれは恋愛感情じゃないんだ。
心配しなくていい。俺を好きじゃなくても、俺はお前を追い出したりはしない。
だから自分に嘘をつくのはやめろ……!」
「私、嘘なんてついてません。本当に義之さんのことが好きなの……」
いつもは素直に俺の言うことを聞くほのかだが、今は首を横に振っている。
「違う。俺はほのかの保護者代わりかもしれないが、恋人にはなれない。その気もない」
「私は……好き、なの……!」
しがみついて俺を離そうとしないほのか。
興奮のせいか、彼女の顔も体も少し火照っているように思えた。
俺は辛抱強くほのかの説得を続ける。
「いい加減にしろ、ほのか。今なら忘れてやるから、俺から早く離れろ」
「いやです……!」
やむをえん。こうなったら無理やり引き剥がすしかない。
そう決意して少女の体に手を回そうとしたとき、一滴の雫が俺の顔にかかった。
「――――?」
それが涙だと理解するまでに数瞬を要した。
その間にまた小さな水滴がぽとり、ぽとりと俺に向かって垂れてくる。
「いやです……もう私、独りは……うぅ……」
「ほのか……?」
必死に嗚咽をこらえて、彼女は言葉を続けてくる。
「私には誰もいない……お父さんもお母さんも、友達も……いつも独り……。
だから、だから……ひっく……せめて義之さん、だけでも……」
俺のすぐ間近で、ほのかは泣いていた。
孤独と虐待に苛まれてきた、内気な少女の悲痛な叫び。
俺は……また彼女を泣かせてしまったのか……。
この少女にかけてやる言葉一つ思いつかず、俺はただ呆然と
ほのかの泣き顔を見上げて沈黙してしまっていた。
「うぅ……ひく……うぇぇ……」
薄い闇の中、ほのかはひとりですすり泣いている。
どれだけそうしていただろうか。
ようやく落ち着いてきた俺は、そっと手を伸ばしてほのかの顔に触れた。
「…………?」
「――悪かった、ほのか。ゴメンな……お前の気持ちに気づいてやれなくて」
そのまま少女のか細い体をギュッと抱きしめる。
「本当にお前がそう思ってるなら……兄貴にでも恋人にでもなってやる。
ほのか……お前はどうしたい?」
俺が問うと、彼女は俺の体を抱き返して涙声で答えた。
「わ、私、義之さん……のこと、好きになりますから……だから、
私のことも……す、好きになってぇぇ……!」
「――ああ、わかった……俺もほのかのこと、大好きだよ。だから泣くな……」
「うぅうぅぅぅ……義之さん、義之さぁん…… !!」
力の限り抱き合って、お互いの温かみを確かめ合う。
彼女の鬼気迫る告白を聞いても、不思議とほのかに対する嫌悪感は芽生えなかった。
ただ、どこか納得したような気分が俺の中にあった。
(そうか、俺はこいつを――)
どちらともが満足するまで、俺たちはそうやって抱擁を続けていた。
俺の手が薄いパジャマに伸び、ほのかの胸に触れる。
「あ……!」
華奢な体つきなのにそれなりの大きさの乳房を触られ、ほのかは可愛い声をあげた。
まずは撫でるだけに留め、彼女がその刺激に慣れてきた頃合で揉み始める。
思った通りほのかの乳房は柔らかく、揉み心地も抜群だった。
寝転んだ姿勢で布越しの愛撫を続けると、だんだんその声が甘くなってくる。
「ん……あ、あぁ……」
パジャマのボタンを外し、前を開くと薄いピンクのブラジャーが露になった。
外そうかと思ったが、生憎俺はブラの外し方なんて知らない。
そのまま俺はじっとほのかの胸を見つめていたが、やがて彼女がそれに気づき、
「――あ、は、外し……ますね?」
と察してくれたので助かった。
ぷるんと形のいい乳が薄明かりの中で丸見えとなり、俺の視神経を刺激する。
兄貴と違って俺に女性経験はない。子供の頃から俺は兄貴の悪行を見て育ったから、
兄貴のやることなすことにいちいち反発を覚えてしまうのかもしれない。
――俺、すっげー格好悪いな……。
そう思いながら、俺はほのかの乳房に舌を這わせた。
「あ……ん……!」
生暖かい舌の感触と、塗りたくられる唾液に少女の体がびくりと震える。
揉んでいたときにも思ったが、どうやら彼女の体は敏感なようだ。
俺が白い肌を舐めたり乳首を吸ったりするたび、ほのかは声を漏らして体をよじった。
「ほのか、気持ちいいか?」
「いや、聞かないでぇ……」
彼女の言う通り、いちいち聞かずともほのかが感じているのは明白だった。
胸の膨らみから唾のついた乳首をピンと立たせ、こちらにいやらしく見せつけてくる。
ちょっと意地悪がしたくなった俺は、軽く歯をたててそれに噛みついてみた。
「――あああぁっ !?」
たまらない様子でほのかが喘ぐ。俺に責められ荒い息を吐く少女はとても魅力的に見えた。
今度はこっちも、と言わんばかりに俺の手がパジャマの下に伸びる。
ゆっくりと布地を下ろしていくと、ブラと同じ色の下着が現れた。
電球の明かりの中、ショーツの中央には大きなシミが見えた。
少しの間俺がそれを凝視すると、ほのかは恥ずかしそうに顔を伏せた。
では、ご開帳――。
ショーツをずり下げ、パジャマと一緒に足首の辺りに追いやってしまう。
脱がせた方が彼女も動きやすいのだろうが、今の俺はほのかを責め立てたい気持ちが強く
いっそ縛りつけてしまおうかとさえ心の片隅で考えていた。さすがにやらないが。
「ほのかのここ、びっしょりだぞ……?」
クチュリと指で濡れた秘所に触れ、ついた汁を彼女に見せつける。
ほのかは嫌そうに横を向いたが、俺は構わずそこを弄び始めた。
「あ……ああっ、あぁあっ……!」
割れ目に沿うように指を走らせると可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。
ほのかの陰部はよだれを垂らして俺の指を感じていた。
秘裂の上、ねっとりした幕に包まれた敏感な豆を軽く突ついてやると
少女の体が軽く跳ね、息を詰まらせて受けた刺激の強烈さを訴えてきた。
「はぁっ……! あ、あ――!」
こんなところを他人に触られるのは恐らく初めてだろう。
小陰唇が合わさる性感帯を丁寧に撫で回し、止めどなく分泌されてくる汁を指ですくう。
できるだけ優しくしてやりたいのだが、なにぶん俺自身も経験がろくにない。
どうすれば彼女が気持ちよくなれるか思案しながら、俺の指は彼女の性器を責めたてていた。
眼前で乱れるほのかの痴態を見て、俺の方もだんだん理性が薄れていった。
「ほのか、可愛いな……マジで可愛い……」
「あぁっ! あ、ああぁ――んんっ !?」
耐え切れなかった俺は、嬌声をあげる少女の唇を自分の口で塞いでしまった。
その勢いに任せて舌をほのかの中に侵入させると、彼女は驚いた表情を浮かべた。
「ん……んんっ……」
しかし口内で跳ね回る俺の舌に触発されたのか、
やがてほのかもおずおずと舌を伸ばして、俺のそれに絡めてきた。
「ん……じゅる、はむ……」
ほのかの味がする。それはあったかくて甘くて、俺には至上の美食に思えた。
手は少女の秘所を愛撫しつつ、口を繋げてほのかと唾液を交換し合う。
優しくも激しい男女の絡みに、俺もほのかも心が高ぶっていった。
既に俺の股間では息子が今までにないほどギンギンに張りつめ、
指先から伝わってくる女陰の感触に我慢汁を漏らすほどだった。
――入れたい。ほのかと愛し合いたい。この子と一つになりたい。
舌でほのかの口を貪りながら、心の底から欲望が湧き上がってくるのが俺にはわかった。
何秒間キスしていたかはわからなかったが、ようやく俺の口が少女と離れると
二人の唇は名残惜しそうに一筋の糸の架け橋を残して別れていった。
「ん……ほのかぁ……」
「よ、義之さん……」
一組の男女が見つめ合う。俺はほのかの淫らな表情にハァハァと呼吸を荒げ、
このそそり立つ肉棒を彼女の肉壷にぶち込むときを今か今かと待ちかねていた。
「ほのか、その……入れて、いいか……?」
俺の決定的な質問にほのかはやや怯えながらも、目を閉じてかすかにうなずいた。
「――ありがとう、ほのか……」
少女の上にのしかかり、パンパンになった愚息を手に狙いを定める俺。
ほのかの陰部も我慢できずによだれの垂れた口を開けているように見えた。
肉棒の先を軽く触れさせると、ほのかの肉がプチュッと吸いついてきて俺を喘がせる。
そのあまりの快感が心のタガをはじけ飛ばせ、俺を荒々しくほのかに襲いかからせた。
もっとゆっくり入れてやるはずが、俺の性器は鋭利な槍となって彼女に突き刺さり
初物の女を残酷にも思い切り引き裂いてしまった。
「――あぐっ !? ぎぃぃぃいぃ……あ゙あ゙あ゙…… !!」
浪漫の欠片もないほど痛々しいほのかの叫びが俺の鼓膜を叩く。
俺は彼女に優しくしてやれなかった後悔の念に苛まれたが、それも一瞬のこと。
絶え間なく絡みついてくる熱い肉のスープ、自分を締めつける処女の狭さに
俺の良心はあっさりと心の奥隅に追いやられてしまった。
「ううぅ――き、きつ……!」
これなら、いつ持っていかれてもおかしくない。
耐え切れずに今すぐ俺の子種をこの肉壷の中にぶち撒けてしまっても不思議はない。
ほのかとの交わりにすっかり理性を失ってしまった俺は、膣の奥まで突いてやろうと
彼女の体をつかみ、必死に腰を打ちつけて猛りきった肉棒を突きこんだ。
「あ゙あ゙――ぐぅぅ……うぅぅぅ……」
視線の下では、涙で可愛い顔をぐちゃぐちゃにしたほのかが呻いている。
肩まで伸びた髪を振り乱し、彼女は苦悶の表情で泣き叫んでいた。
そのあまりの苦しみように、消えかけていた俺の心がわずかながら戻ってきた。
だが俺の体は持ち主の意に反して全く止まろうとしない。
すまない、許してくれ。俺にも余裕がなかったんだ。
意味のない謝罪の言葉を頭に浮かべながら、俺はほのかを犯し続ける。
俺の腰が動くたび、血と汁の溢れる結合部は音を立ててよがり狂った。
「ひぃぃ……はぁぁ、ぐうぅっ!」
歯を食いしばるほのかも変わらず声をあげ続け、俺の罪悪感を煽り立てた。
しかし雄の本能に突き動かされていた俺は、少女を気遣うこともなく
ほのかの膣を思うがままにこねくり回してやまない。
ほのかの肉も彼女自身の苦しみようとは裏腹に、襞で俺の肉棒を咀嚼し
灼熱の汁で消化しようと貪欲に蠢いていた。
――独りでいるのは辛い。私を愛して。好きだと言って。
俺の狂気が、彼女の肉襞からそんなメッセージを受け取る。
至福に震える俺の体はなおもほのかの中を味わおうと棒でスープをかき回し、
少女の申し出に答えるために、繋がった性器を通じて愛の言葉を囁いた。
「くぅぅっ……うあぁっ !!」
「はああぁぁあんっ !!」
俺の中で何かが弾け、それは怒涛の奔流となってほのかに注がれた。
普段出している分よりもっと濃厚で多量の精が少女の膣に飲み込まれていく。
――あ、いけねえ……俺……。
薄れゆく意識の中、俺は少女と繋がったまま痙攣して布団に横たわった。
彼女が絶頂に達したかはわからないが、後で聞いたところによると
痛みのあまりそれどころではなかったそうだ。本当に悪いことをしたが、
ほのかは特に怒るでも悲しむでもなく、俺を見てにっこり微笑むだけだった。
それがまた俺に気を遣っているようでやきもきさせる。
それから何度か経験を重ね、俺もだんだんとほのかを満足させられるようになった。
朝から晩まで寝床で絡み合い、疲れたら寝て腹が減れば買い置きの物を適当に食うという
猿にも劣る生活も試しにしてみたが、さすがにこれは一日でやめた。
もちろんセックスもいいが、俺はほのかが見せる笑顔や穏やかで何気ない言葉、
たまに見せる悪戯っぽい表情にすっかり心を奪われてしまっていた。
二人で過ごす、二人だけの場所、二人だけの時間。
だが夏が秋になるように、やがてそんな世界も終わりを迎えてしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕暮れの空を黒い雲が、街を雨の音が覆っていた。
俺の灰色の傘は多量の雫に叩かれ、いっこうに鳴り止もうとしない。
やっとのことでマンションにたどり着いた俺だったが、下半身はびしょ濡れで
こないだ新調した靴の中にまで容赦なく水分が浸入してしまっていた。
不快な思いを我慢してエレベーターに乗り、自分の部屋のドアを開く。
玄関には体を拭くタオルと、濡れたカバンを置くための古新聞が用意されていた。
「あ、おかえりなさーい」
茶色がかった黒い毛並みの猫がやってきて、濡れ鼠の俺を出迎える。
俺は不機嫌を隠そうともせず、その飼い猫に吐き捨てた。
「くっそ、何でこんなに降ってるんだ。俺への嫌がらせか?」
「まあまあ、とりあえずシャワー浴びて着替えたら、義之さん?」
晴れ晴れとした笑顔で彼女が俺をなだめた。やはりこいつには笑顔が似合う。
「ほのかは降られなかったのか? さっき帰ってきたばかりだろ」
「だからー、今テスト中で帰ってきたのはお昼だってば」
「ああ、そうかそうか」
そういえば高校生は中間試験の時期だったか。
適当にカバンや上着をその辺に散らかしながら、軽くにやついて猫に問う。
「で、ほのかちゃんは今日の数学どうだったのかな?」
「えっ !? ――も、もちろんバッチリよ。あははは……」
あからさまにうろたえて黒毛の猫は答えた。それにつられて俺も笑い声をあげる。
「だよなあ。今のほのかなら八十点は軽くとれてるはずだよなあ?」
「え゙……そ、それはちょっと……」
「――もし平均切ってたら、来月の小遣い半分カットな」
「あ、あの、えーと……そ、それはきついかなー、なんて……あはは」
不意につぶやいた俺の冷酷な口調に、彼女は冷や汗を浮かべて笑っていた。
さて、脅かすのはこの辺にしといて早くシャワーを浴びないと風邪をひいてしまう。
俺は怯えた少女を置いて浴室に向かった。
ちなみに本物の猫二匹は座布団の上で丸くなっていたので、後で蹴飛ばそうと思った。
最初はほのかに懐かず逃げたりひっかいたりしていたアレックスとサンドラも、
今は少し慣れたのか彼女を我が家の住人と認めているようだ。
夕食はカルボナーラスパゲティとサラダ、あとなぜかハムサンドがついてきた。
どうやら朝の残りのパンを使ってみたらしい。
テーブルに向かい合って食器の音を立てる俺に、ほのかがぽつりと言った。
「――義之さん……」
「なんだ?」
「今日……お父さんから、電話があったよ」
「そうか。なんて言ってた?」
表情をほとんど変えずに俺が尋ねた。
「ん、元気でやってるか……だって。それだけ」
「そうか」
俺は彼女の顔から感情を読み取ろうとしたが、能面のような無表情に覆い隠されている。
娘に暴力を振るうようなクズのこと、ろくに連絡してこないと思っていたのだが
ほのかの話によればたまに彼女に電話をしてくるらしい。
はっきり言って俺は顔も見たくないが、それでもほのかの実の親、
彼女が嫌がらない限りは電話で話すくらいのことは許してやってもいいだろう。
もちろん、下手なちょっかいをかけてきたらまた思い知らせてやるつもりでいるが。
ほのかのためを思えば親父に頭を下げるくらい安いものだ。
夕食に舌鼓を打ちながら、俺は笑顔を浮かべてほのかと談笑していた。
食事が終わり、俺とほのかは仲良くソファに寝転がった。
「ふにゃ〜、義之さん……」
大人しく俺に頭を撫でられるほのか。もし猫耳がついてたらピクピク動いてそうだな。
全くの無防備な姿を晒けだしているほのかを抱きしめ、俺は耳元に囁いた。
「ほのか、明日土曜だけど何か予定あるか?」
「……ん、ないよ。どうするの?」
彼女は顔だけを横に向けて俺を見つめてくる。
「いや急に出かけたくなったから、車を借りて山にでも行かないか?
ちょうど今なら紅葉が綺麗だと思う。雨かもしれんけど」
「え……行く! 行く行く!」
子供のように喜色満面で答えるほのか。俺と歳そんなに離れていないはずなんだが。
だがこんなに笑顔を見せるのは、恐らく彼女の今までの人生で初めてのことだろう。
それを考えたら俺の行動は多分間違っていなかったと思う。
真夏に拾った一匹の捨て猫。そいつは可愛くて寂しがりやで、しょっちゅう俺を困らせる。
そんなほのかを俺は大好きだし、彼女も俺を好きでいてくれている。
「せっかくだし、安い旅館を見つけて一泊しようか」
「うん、義之さん大好き!」
俺は彼女とごろごろソファで転がりながら、二人でいる幸せを噛みしめていた。
おつです!
わかりやすかったw
GJ!
GJ!
こういう王道大好きだ!
GJ!ほのかかわいい
GJ!
王道なのがいい
続き期待してます
いやいや、ここで終わりなのがいいんですよ
幸せそうな未来が想像できるじゃないですか
GJ!
GJ!ほのかと猿にも劣る生活がしたいです
369 :
保管庫メモ:2009/05/25(月) 22:30:26 ID:pxy05X99
エロ〜な小説・捜索願 スレでこのスレが紹介された(186 188 190)ためか、
今日は普段に比べ、約2倍の方が閲覧されました。
(普段は、ヒット1,500前後、ユニーク200弱
注:保管庫に表示のカウンターとは別のアクセス解析による))
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向こうのスレに誤爆しました。お恥ずかしい。
また、晒し上げみたいになってすみません。
お疲れ様です
あぁ〜〜〜〜〜
借金姉妹2買うつもりが借金姉妹1買ってもうたぁ
しかもPCソフトでなくDVDPG
書いてて思うけど王道が一番難しいよね
かもね
>>371がヲタのドジっ子女子大生で脳内再生された
371「うぅ……買うゲーム間違えてたよぉ……もうお金無いのに……」
親友(一般人女)「相変わらずドジだなー。ってか、あんた女だろ。何で男性向けの……その、えっちなやつ買ったりするの?」
371「うぅ……」
371(実は女の子にも欲情できる系の人なんです、なんて言えないよー)
親友「……ま、しょうがないか。ほら、お金貸してあげるから。バイト代入ったらちゃんと返してよ」
371「あ、ありがとー!……あれ?でも何でそこまでしてくれるの?」
親友「いや、こんなのでも一応親友だしね」
371「こ、こんなのって何ー!?」
親友(はぁ……何で私、こんなの好きになっちゃったんだろ?)
あれ、何で百合になってんだろ?
あらやだ萌える
下心のある友情って素敵
レズとホモは受け付けないなぁ
レズもホモもバッチコイだ
該当スレの方が良いだろうけど
金の力で困ってる女の子を助けてあげる……素晴らしいじゃないですか
良スレ発見!!
助けたいけど金がない
現実は1回資金援助すると味を占めたか
また金クレ金クレ援助しろしろ言ってくるので、
困っているからと手をさしのべる気になれない。
その甘ったれた根性をお金の力で叩き直してやりたい
そういうヤツには一度地獄を見せて人の優しさというのを身をもって理解させてから救ってやりたい
おまえら……
いかん今色々書いてるんですが方向があっちこっち行っちゃってます……
ハルちゃんおじいちゃん編(昭和・太平洋戦争編)
援交少女編
マッドサイエンティスト編(宇宙開発編)
の三つに加えてネット声優さんにボイスドラマやってもらおうかとかむちゃくちゃなことやったりしてます
声入りアイカさんとか需要あるかな?
らぶマネ!の続き楽しみにしてます
気楽に頑張ってください
ですが、ボイスドラマとかは、ご自分でサイト作ってやることじゃないですかね
そこで多額の借金または弁償金を肩代わりし、
大金ちらつかせてうちに住まわせ、あれやこれやしながら改心させて愛を育むんですね。
ほ
391 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 02:13:04 ID:fgf59Xzg
書き手期待age
ほしゅう
保守
同情するなら金をくれ
金をやる服がない
全裸紳士だからだろ
裸だったら何が悪い
《服を買ってきてくる方 募集》
私の服を買ってきてくれる方を募集します。
買ってきたくれた服による歩合制ですが、それなりの額をお支払いします。
年齢性別国籍経験問いません。
募集1名 連絡先○×△−○×△□
さあ! このテンプレ通りに深夜どっかの電柱にでも貼り紙をしてくるんだ!
>>401 張り紙を見てなんとなく服を差し入れをしてみたら
張り紙をしたのは女の子だった・・・
というネタが頭に浮かんだ。
病気か何かで部屋または家から出られない子に、服を買って持っていっている、というシチュを妄想した。
金の力は偉大
買ってあげたいな
札束で隠しゃいい
お札一枚あればいい
『本日未明、路上を全裸で徘徊していた少女が猥褻物陳列罪で逮捕されました。
少女は「親切な人にお金で作って貰った服を着ていたが、剥ぎ取られてしまった」などと
不可解な供述をしており、警察は詳しい事件の経緯を取り調べています』
「どうやら何でも金で解決するのは良くないようだな」
「強度の問題かと。次は五十円硬貨を繋ぎ合わせてかたびらをプレゼントしましょう」
それっておkなのか?
どうなんだろ
露出したい女の子に万札の前張りと50円玉二枚を紐で繋いだブラジャープレゼントでおk
大事なところは全部隠れてるし外出できるはず
50円玉二枚を紐で繋いだブラジャー
テスト。
大変遅くなってしまいました。
少々、時間が押し迫っていますが、幸福姉妹物語の最終話を投下します。
例によって性描写の注意ですが、
今回は長さの割りに短いですし、スカトロ描写が一箇所入る程度です。
それでは、最長となってしまいますが、よければお付き合いください。
ホテルの部屋は想像していたよりも狭かった。
屋敷で使っていた物の半分ぐらいの大きさのベッド、こじんまりとした机と椅子。細長い部屋にはそれだけの家具でさえ窮屈に見える。
清香はぼんやりとベッドに腰掛けると、そのまま、コテン、とベッドに横になった。
…自分が何をしているのかわからない。本当だったら、自分は妹と一緒に河合という老人の家に行って、そこから実母が居るという実家に帰されるはずだった。
「なんで逃げたの… 私…?」
清香は自問する。自分で自分の行動の意味がわからない。
昼食にしようと河合が車を止め、河合と文が先んじて店に入ったとき、清香の目に母親に関するファイルが飛び込んできた。そして、バッグの中には三田から貰った百枚ほどの札束…
気付いたときには、清香はファイルを掴んで走っていた。そして、そのまま目に付いたバスに飛び乗ると、たくさんの乗客に紛れて見事に逃げおおせてしまった。
「文ちゃん、心配しているかしら…?」
バスの窓からは文の姿を見ることは出来なかったが、ほどなくして自分の携帯が文からの着信で鳴りっぱなしになった。取ろうにも取れず、清香は情けない気持ちで携帯の電源を切った。
バスは終点のバス・ターミナルまで進み、そこで降りた清香は人ごみを避けるように駅前のシティホテルに飛び込んだのだった。
「これからどうしよう…」
陰鬱な声で呟いた清香は、机の上に置いたファイルを目に留めた。のろのろとした動作で身を起こして机に座ると、ファイルの中身を取り出す。思えば、このファイルをじっくり読むのは初めてだ。
「深沢、か…」
タイトルにも書かれたその苗字を言葉に出したが、清香は何の感慨も抱く事が出来ない。1ページ目から開いて読むと、そこには深沢未亜子という女性が家出をしたところからの歴史が綴ってあった。
「私たち、駆け落ちで生まれたのね…」
順々に読んでいく。駆け落ちした事、子供が2人産まれた事、夫が死んだ事、そして、実家に連れ戻された事…
「あの人は、私のお祖母さんなんだ…」
記憶の中にぼんやりとある、自分の手を引いて施設に預けた女性を清香は初めて知る事が出来た。だが、やはり何とも思わない。
不思議な気持ちだった。読めば読むほどに、そのファイルは自分の出生をこれでもかと証明してくれる。本来ならば、拝んでも手に入れたい物のはずだ。
なのに、清香にはそれが単なる情報としてしか伝わってこない。「ふ〜ん…」という酷くそっけない感想しか出てこない。
「薄情なのかしら、私…?」
ファイルを最後まで読み終わって、清香はポツリと呟いた。
このファイルはかなり最近のことまで調べ上げられていて、母親が自分たちのことを探し回っていることも記載されていたが、「見付からなくて良かった…」という感想しか出てこない。
「文が…」
清香は呟く。
「文が居たから、居てくれたから… 私は頑張れた、頑張った… 頑張っちゃったんだよ、お母さん…」
初めて口に出したその言葉に、やはり何の感慨も抱けず、清香は寂しそうにゆっくりと眼を閉じた。
「探しに行かないんですか…!?」
三田から事情を聞いた瞳子は、そのまま三田に食って掛かった。三田は困った顔をすると、ゆっくりと首を振った。
「…今さら、どんな顔であの2人に会えというんです? 私には無理だ。清香のことは河合さんに任せましょう」
「そんな! 無責任過ぎやしませんか?」
「知れたことか…」
虚脱した声で三田は呟いた。自分の手に余る事件が立て続けに起きて、彼はかなり参っていた。とにかく、今はウィスキーを飲んで何もかも忘れてしまいたい…
「清香には多少のお金を渡してあります。彼女は利発な娘だから、頭が冷えればきちんと連絡してくるでしょう… それに、母親の資料を持って行ったそうですから、個人で連絡をとるかもしれない…」
それは、三田が自分に向けた言葉だった。言葉を重ね、楽観的に考える事で、無関心を必死に正当化しようとしていた。
瞳子は敏感にそれを察した。だが、あえて三田を責めようとはしなかった。
「…敦さん、文ちゃんは直ぐに実家に帰るんですか?」
「いえ… 先方に連絡を取らなければなりませんから、しばらくは河合さんの家に滞在するはずです。ただ、そう長い間ではないでしょう」
「そうですか、わかりました」
そこまで聞くと、瞳子はすっくと立ち上がって自分のバッグを肩に掛けた。
「…何をするつもりですか?」
「文ちゃんに会ってきます、確認したい事がありますから」
瞳子のその言葉に、三田は驚いて首を振った。
「何を馬鹿な…! 文は貴女に危害を加えた本人なんですよ? それに、河合さんが許すはずが無い」
「当事者同士の話です。他人が口を挟むことではないと思います」
やけに凛々しい声でそう宣言すると、瞳子はバッグから時刻表を取り出してしげしげと眺め始めた。
「…まだバスはあるし、特急もある… うん、今日中には着けるわね」
納得するように頷いた瞳子に、三田はうんざりした声を掛けた。
「瞳子さん… これ以上引っ掻き回さないでください。貴女にその気は無いのだろうが、貴女の行動は周囲に迷惑を掛けているんです。どうか大人しくしていてください」
三田にそう言われて瞳子は気まずそうに下を向いたが、やがて、きっ、と顔を上げると力強く言った。
「わかっています… でも、何とかしなきゃ、おさまらないんです」
三田は両手を顔に当てて、軋むような唸り声を上げた。再び暴力的になりそうな自分を必死に抑えているのだ。
「……勝手にしやがれ、私は何が起ころうと知らん」
歯と歯の間から息を吐くように三田が呟く。瞳子はそんな三田の様子に一瞬戸惑うような表情を見せたが、直ぐに思い直して深々と頭を下げると、「行ってきます!」という言葉を残してリビングから出て行った。
一度も瞳子の方を向かずに、ドアの閉まる音で瞳子が出て行ったのを確認した三田は、苛立ちのあまりリビングの机を思いっきり蹴りつけた。
「クソ、もう終わった事なんだぞ… なにを頑張る、なぜ、頑張る…」
どっかりとソファに腰を降ろした三田は、千々に乱れた心を落ち着かせようと深く深呼吸をしているうちに、いつしか自分がどこの選択肢を間違えたのか、一つ一つ数え始めていた…
「お腹、すいたな…」
ベッドの上でまんじりともせずに居た清香が、ふと、そんなことを呟いた。
そういえば、昼飯前に逃げ出したから、今朝以来、何も口にしていない。冷蔵庫にあったミネラルウォーターを飲んだから喉は渇いていないが、健康的な食生活を送ってきた清香にとって一食抜くのはかなりの苦痛だ。
「でも、今、外に出るのは…」
ひょっとしたら、文や河合さんが外を走り回って自分を探しているかもしれない。そう考えると、外出するのは怖い。
チラリと時計の針を見ると午後2時。まだ、逃げ出してから2時間程度しか経っていない。
「…そういえば、ルームサービスとかあるのかしら?」
そのことに思い至って、清香が部屋の中に視線を走らせると、テレビの横にホテルの案内書が束になっているのを見付けた。
「ええと、ルームサービス、ルームサービス…」
案内書を斜め読みしていくが、あいにくこのホテルにはルームサービスは無いようだった。
しかし、案内書にはデリバリー・ピザのチラシも同封していて、どうやら部屋まで配達してくれるらしかった。
「ピザは太るんだけどな…」
そう思いながらも、空腹には耐え兼ねない。注文を決めた清香は、部屋に備え付けの電話機を取り(携帯は文からの連絡が怖くて電源を落としてある)そこで、ハタと思い付く。
「そういえば、あのファイルには電話番号も載っていたんだっけ…」
さっき読み終えたばかりのファイルには、母親の実家の電話番号も記載されていた。最近の調査なので、番号が変わっていることも無いだろう。
「掛けてみよう、かしら…」
それは純粋な好奇心だった。何かを話したいとか、伝えたい気持ちがあるとか、そんなセンチメンタルな想いは無く、ただ、ひたすらに好奇心だけだった。
持ち上げた受話器をいったん置き、ファイルを手元に手繰り寄せると、清香はそれを開いて目当ての電話番号を探し出した。丁寧な事に、勤め先、家の番号から、携帯番号まで載っている。
清香は少しだけ逡巡するそぶりを見せたが、1回軽く息を吐くと、一つ一つゆっくりと電話のボタンをプッシュし始めた。
(何してるんだろ、私…)
今さらになって胸がドキドキと鼓動を打ち始めた。それでも清香の指は自然と動き、ホテル外線含めて11桁の数字を打ち終えた。
プルルルルルル… プルルルルルル…
コールが1回、2回と回数を重ねていき、6回目を過ぎて清香が受話器を降ろそうとした時、出し抜けに、がちゃり、と音がして通信が繋がった。
「………!」
やはり緊張していたらしい清香の背が、ピンと伸びる。また、これから先はノープランであった事にようやく気付き、冷や汗がだらだらと流れ始めた。
『はい、深沢です』
電話口から意外と若い女性の声が流れ出た。ファイルには、母親は今年で36歳と書いてあった。そうすると、この電話口の女性が自分の母親なのだろうか?
『あの… どちらさまですか?』
受話器を握り締めたまま何も話さない清香に、電話先の女性は怪訝そうな口調で誰何した。
(何か話さなきゃ… でも、何を話せばいいの?)
清香の思考がぐるぐると回転する。緊張のあまり声を出す事も出来ない。
そうこうしているうちに、電話先の声が苛々したものに変わっていった。
『何なんですか、イタズラ電話なら切りますよ!』
その言葉に、清香は反射的に「あ、あの…!」と声を上げていた。
『…はい? どなたなんですか?』
「み、みあこ、さん、ですか…?」
無理やり声を絞り出すと、電話口で女性――未亜子――が軽く息を飲むのがわかった。
『……そうですが、どちら様ですか?』
あっさりと肯定したその言葉に、清香はまたも何も言えなくなってしまった。
(おかあ、さん、なんだ… この人は私のお母さんなんだ…)
お母さん。その単語がぐるぐると清香の頭を駆け巡る。望んでなどは居ない、だが、それでも清香は胸の中に暖かい何かが灯るのを感じる。
『ふぅ… もう切りますよ。どこの誰だか知りませんけど、イタズ…』
不意に電話口の声が止まった。電話先の母親の雰囲気が変わるのを感じる。
…それは、肉親の勘なのだろうか。
『ねぇ… もしかして、清香?』
「…………っ!!」
いきなりズバリと名前を呼ばれて、清香は驚いて息を飲んだ。
「あ、の…」
『清香、清香なんでしょう!?』
何がそう確信させるのか、未亜子は必死に清香の名前を連呼した。清香はもう訳がわからなくなって、「あの、あの…」とおろおろと呟くばかりだ。
『ねぇ、もっと声を聞かせて頂戴! やっぱり生きていたのね! 文は、文は居ないの? お願い、もっと声を出して! お母さんに声を聞かせて!』
切羽詰った未亜子の声に押されるように、清香はたまらず「お、お母さん…」と声に出して呟いてしまった。
『! やっぱり清香!? 今、どこに居るの? お母さん、直ぐに迎えに行くから!! ねぇ、場所を教えて!』
次第に興奮していく母親の声に、清香はどんどんと冷静さを失っていった。
(だめ… もう無理…)
これ以上母親の声を聞いていると、何かとんでもない事を口走りそうだ。
「ご、ごめんなさい!!」
『ま、待って!!』
必死に止めようとする未亜子の声を振り切って、清香は叩きつけるように受話器を電話機に戻した。
肩で荒い息を吐く。猛烈な喉の渇きを感じて、手元にあったペットボトルを一気に呷ってから、清香はようやく一心地ついた。
「…私は、なんて親不孝な娘なんだ…」
ただ、それだけの事実が重く清香にのしかかった。
「こんにちは、最近お1人なんですね」
姉妹も瞳子も屋敷から去って数日後。当たり前だが誰も食料品を補充してはくれなくなったので、三田は1年前と同じく1人でハローグッドに来店していた。
いつもはさっさと買い物を済ませて帰るのだが、今日は珍しい事にサービスマネージャーが声を掛けてきた。
「ええ、まあ…」
あまり深い事情を説明したくない三田は、言葉を濁して立ち去ろうとしたが、次の一言で身体が固まってしまった。
「あの2人、実家にでも帰っちゃったんですか?」
ビクリ、と三田の身体が震えた。
わざとらしく咳払いをすると、何でも無い風を装って三田が答える。
「失礼、勘違いをしておられるようですが、あの姉妹の実家はウチでして。姉が2人を残して…」
「ああ、そこら辺は清香ちゃんに聞きました」
「でしたら…」
「でも、嘘ですよね?」
あまりにもあっさりと断言されて、三田は返す言葉が見付からず押し黙った。すると、サービスマネージャーは何を思ったのか驚いた表情を浮かべた。
「あのぉ…」
「…は?」
「もしかして、バレてないと思ってました?」
何の事だ、と思考するよりも早く、それが三田と姉妹との関係だと三田は理解した。理解した途端、身体が硬直して眉根が寄る。
「あっ、すみません… 失礼しました、私はこれで…」
明らかに『まずい事を言った…』という風の表情でサービスマネージャーが立ち去ろうとするのを、三田は慌てて「待ってください!」と呼び止めた。
「すみません、こちらも失礼なことを言うようですが… 何かお調べになりましたか?」
姉妹の身元に関しては充分に偽装を施したはずだし、店内でも特に妖しい行動を取ったつもりの無い三田は、思わずそう尋ねてしまった。
「へ…? いえいえ! そんな失礼な事してませんよ!」
客商売ならではの敏感さで、サービスマネージャーは慌てて首を振った。表情に失言に対する後悔がありありと浮かんでいる。
「では、なぜ…?」
三田が眉根を寄せて唸るように呟く。
本当なら、強引にも会話を打ち切って業務に戻りたかったが、どうにも三田の表情からは何かのっぴきならない事情を感じる。サービスマネージャーは軽くため息を吐くと、覚悟を決めて話し始めた。
「あー、特に証拠があったわけじゃないんですけど… 今年に入ってからぐらいから、明らかに清香ちゃんの態度が変わっていましたし、それでピンと来たんです」
「態度が、変わっていた…?」
自分では特に気付いていなかった三田が尋ねた。確かに、年明けから清香の性格は大分変わったとは思うが、それが態度になって現れているとは思わない。
「はい、ぶっちゃけ言うと、恋する乙女の目、です」
「……は?」
正直、三田にはさっぱりわからない。清香が何か妙な目付きをしていたのだろうか?
「こういうのは当事者にはわからないかもしれませんが、店内での行動全てに、何と言うか、『愛』を感じるんですよ、あの娘から、三田さんに向けての」
「愛…」
「はい、それに春過ぎぐらいからは、ラブラブなオーラがダダ漏れだったので、ああ、こりゃ普通の叔父・姪の関係じゃない、と思ったんです」
「………」
もはや三田は絶句するしかない。今でも自分は冷めている方だと思っているから、彼女のセリフは信じがたかった。
「あのー、確認したいんですけど… 間違って、ませんよね…?」
恐る恐るサービスマネージャーが尋ねる。つい調子に乗って余計な事を言ったが、仮にも相手は大株主なのだから、早くも後悔の波が襲ってきたのだ。
その声にようやく硬直が解けた三田は、チラリとサービスマネージャーを見ると、大きくため息を吐き、「ええ、まあ…」と答えた。
「あ、あははは… いやー、何と言うか、昼ドラ展開と言うか… すみません…」
もういい加減退散しようと、頭を下げてサービスマネージャーが立ち去ろうとすると、再び三田が「待ってください」と彼女を呼び止めた。
「まだ、なにか…?」
泣きそうになりがら返事をする彼女に、三田は以外な質問をした。
「そんなに、幸せそうでしたか?」
「…は?」
「私たちがです。私と、清香と文が…」
その声がとてつもなく真剣だったため、サービスマネージャーも真剣に答えた。
「はい、それはもう… 私は彼女たちが始めてこのお店に来たときも覚えています。それから比べたら、人間、ここまで幸せになれるもんだと感心しました。本当に、凄いと思います」
その言葉に――彼にしては本当に珍しく――三田は柔らかい微笑みで返した。そして、サービスマネージャーに向き直ると軽く頭を下げる。
「ありがとうございます、あの2人を良く見ていて下さって。あなたの言葉で目が覚めました、どうも私は自信を失っていたようだ」
「は、はぁ…?」
いきなり理解の外の話を聞かされ、サービスマネージャーは曖昧に頷いた。
「情けない事に、私は彼女たちを守るのではなく、捨てようとしていたらしい」
なぜか三田は興奮しているらしく、声に熱っぽい響きが込められている。
「しかも、自分のエゴから始めた事に何の責任も取らずにです。何と情けない…」
三田は悟った、自分は単に責任を取らずに居たかっただけなのだと。
文の行為はきっかけに過ぎない。大事なのはその後なのだ。
「遅かれ早かれ、露見するのは目に見えていました。そう、貴女があっさり見破っていたように。しかし、状況に甘えていた私は、その事実に直面して安易な責任逃れをしてしまった。本当に情けない…」
悔恨の念を込めて三田が呟く。
「もっと信じればよかった、あの娘たちとの絆を…」
「あ、あのー、何かあったんでしょうか…?」
三田の話に全く着いて行けず、サービスマネージャーが尋ねた。どうにもヤバイ方向に話が進んでいる気がする。
「お察しの通り、あれは姪ではなく、私とは血のつながりの無い他人です」
「ま、まぁ、そうだろうとは…」
「ですが、今はその関係に感謝しなければならないようです。これまでに犯した行為に、責任を取ります」
その言葉に、今度はサービスマネージャーが固まった。
「今は色々と回り道をしていますが、きっと連れ戻します。それでは…」
妙に自信のある口調でそう言うと、三田は会釈をして立ち去った。心なしか足取りが軽い気がする。
1人取り残されたサービスマネージャーは、三田が最後に残した言葉に絶句していた。
「え゛… そんな関係だったの…?」
呆然と呟く。
「てっきり、ファザコンぎみの清い恋愛だと思ってた……」
店長やファンクラブの面々が知ったら卒倒するな… と彼女は知ってしまった事実をしっかりと胸の内に仕舞いこんだ。
夕暮れ、一軒家の玄関先に一台のタクシーが止まった。中から降りてきたのは瞳子だ。
三田の屋敷から河合の家へ。バスと電車とタクシーとを乗り継いでやって来たおかげで、辺りはもう真っ暗になっている。
「………よし!」
1つ気合を入れると、瞳子は押しなれたチャイムを思い切って押した。
ジリジリジリジリ… と今時珍しいチャイムが鳴ると、数分の後に玄関のドアが開き河合が出てきた。
「ああ、やっぱり来たのかね… まあ、お上がんなさい…」
力ない声で河合が言う。
どうも清香失踪に関して責任を感じているようで、瞳子がこれまで見たことの位の落ち込み様だ。
「お邪魔します」
勝手知ったる家だから遠慮なく上がると、ちらりと河合を見る。河合はひょいと肩を竦ませると、視線で居間を示した。瞳子は静かに頷くと、床を鳴らして居間に向かった。
瞳子が居間に入ると、そこには力なく足を投げ出して座り、微動だにしない文が居た。その片手には携帯電話が握られていて、繰り返し何度も電話を掛けていたことが窺えた。
「…文、ちゃん」
瞳子が躊躇いがちに声を掛けると、文の身体が、ビクッ、と痙攣して顔が瞳子を向いた。視界に瞳子が入ると、伏せがちだった両目が大きく開かれた。
「あ、あ、とうこ、さん…」
明らかに狼狽した表情で文が呟く。瞳子もどう答えて良いかわからず突っ立っていると、文が沈黙に耐えかねるように涙を流し始めた。
「うっ、うっ、うっ…」
「ああ、な、泣かないで…!」
瞳子は急いで文に駆け寄ると、膝を付いて文の頭を胸に抱き寄せた。
「ごめ、ヒック、ごめんな、さい…」
しゃっくりを上げながら文が謝罪の言葉を口にした。
「ひどいことして… ごめんなさい…」
元より瞳子はあまり気にしていなかったが、ちゃんと受け止めた方が文のためだと感じ、文の顔を正面に向けてしっかりと見詰めると、瞳子はゆっくりと頷いた。
「いけない事をしたって、ちゃんとわかっている?」
「…はい」
「もう2度としない?」
「…はい」
瞳子の問いに、文は1つ1つ頷きながら答えた。
瞳子はもう一度文を胸に抱くと、大きな声で「はぁぁぁぁ…」とため息を吐いた。慣れないことをしてどっと疲れてしまった。
「と、瞳子さん…?」
突然ため息を吐いた瞳子に驚いて文が言うと、瞳子は「ハハ…」と乾いた笑みを漏らした。
「なんだか、初めてまともに会話した気がするね…」
「あ… ごめんない…」
「もう! なんで謝るの?」
瞳子は笑って文の頭を、いーこいーこ、と撫ぜた。文の疲れきった身体には、その優しさが何より嬉しかった。
「あの、どうして会いにきてくれたんですか…?」
ようやく落ち着いて2人してテーブルに座りなおすと、文が躊躇いがちに訊いた。
「うん… まずは、文ちゃんと仲直りしたかったから… 嫌われてなくてホッとしたわ」
「そ、それは! …それは、私だって」
文が慌てて言う。思えば、瞳子のことはお邪魔虫としか捉えてなくて、実際に瞳子がどんな人なのかは全く頭に入っていなかった。優しく接してくれたことで、文は自然に心を開くことができたようだ。
「それと、ね…」
瞳子は話を区切るように眼を泳がせると、いったん眼鏡を取って眼鏡拭きで綺麗に拭うと、改めて掛けなおして文を見た。
「それと、あなたたち姉妹がどんな1年を送ってきたか知りたいの」
「………!」
文はびっくりして背筋を伸ばした。
それは、同級生にも誰にも話していないことだ。姉妹と三田とだけの秘密。軽々しく話せるものではない。
「それは… ごめんなさい…」
断るのを予想していたのか、瞳子は文の手を握ると「ねぇ、文ちゃん」と語りかけた。
「私ね、自分があなた達にどれだけ酷い事をしたのか、文ちゃんに襲われてようやくわかったの。だから、罪滅ぼしがしたい、清香ちゃんを探すのを手伝ってあげたいの。
でも、私はあなた達のことをほとんど知らないから… ね、お願い?」
瞳子は一生懸命言ったが、文の困った顔は崩れない。
「大丈夫。ここでの話しは全部ナイショにするから。河合さんに聞かれたって絶対に言わないわ」
河合には事前に「2人きりで話をさせて下さい」と念入りに言ってある。初めは渋った河合だが、電話口での瞳子の迫力に押し切られてしまった。
「誰にも… 話さないでくれますか…?」
ようやく、と言った風に文が口を開いた。文としても、誰かにぶちまけたい気持ちが常にあった。特に今は清香が居ないから、誰かに縋りたいという気持ちが強かった。
「うん、約束するわ」
瞳子は真剣な顔付きで頷いた。そして、油断無く辺りを見回すと、突然居間のドアを開いた。
ドアの外で、所在無さげに河合が立っていた。
河合はバツの悪そうな顔を浮かべると、手に持ったジュースの缶を瞳子に押し付けて去って行った。
「…もう大丈夫かしら? そうね、念のためにおフロに行きましょう」
真顔でそう言う瞳子がなぜか可笑しくて、文は、ようやく笑う事が出来た。
ヴゥゥゥ… ヴゥゥゥ…
パソコンの画面を真剣な表情で睨んでいた三田の耳に、携帯電話のバイブ音が響いた。柱時計をチラリと見やると、作業を開始してから4時間は経過している。
「…久しぶりに集中できたな」
1人呟くと、三田は携帯電話を手に取った。着信番号は見慣れないものだった。
「まさか…な」
ほんの少しの期待を込めて携帯電話を耳に当てると、流れ出たのは瞳子の声だった。
『もしもし、敦さんですか…? 瞳子です』
「…ああ、はい、そうです。この番号は河合さんから?」
『あ、はい…』
(ん…?)
電話先の瞳子の声に何か強い違和感を感じる。なぜか緊張感が伝わってくるのだ。
「どうかしましたか? 文とは会えましたか?」
『はい… 仲直りできました。その、それで、色々と話し合えたんですが…』
そこまで聞いて、三田は(ああ、なるほど…)と理解した。瞳子は事実を知ったのだ。
「つまり、色々とお聞きになったわけですね。あの姉妹がこの屋敷でどういう生活を送ってきたかを」
『…はい』
三田は「ふぅ…」とため息を吐いた。ある程度予感はしていたから驚きは無い。
「では、さぞかし軽蔑なさったことでしょう?」
『そ、それは!』
瞳子は一瞬口を濁したが、やがて諦めるように素直に答えた
『………はい、その通りです。汚らわしいと感じました。普通じゃありません…』
瞳子の声は重く沈んでいる。文から聞いた話は、それぐらい瞳子の想像・理解の範疇を超えていた。
『敦さんがあの娘にした行為の“痕”も直に見ました。幼い娘の身体を、あんなふうに作り変えてしまうなんて… ショックでした…』
三田は、恐らくこれから投げかけられるであろう罵声を予想して、心に覚悟を決めた。
しかし、聞こえてきたのは意外な言葉だった。
『でも、でもですね… あの娘、幸せそうに笑うんです…』
それは、いったいどんな感情なのだろうか。瞳子の声には、確かな敗北感が漂っていた。
『笑って、嬉しかったって言うんです… 最初は洗脳だと思いました。薬かなにかで強制的に従わせているのではないかと思いました。…でも、違いました。あの娘は本気で幸せそうでした…』
言葉の長さとは裏腹に、瞳子の声がどんどんと力を失って行く。
『だから、気付きました… あれが敦さんの愛し方なんですね…』
三田は肩の力を抜くと、「はい、そうです」と答えた。
「それに気付かせてくれたのは、清香でした。私はそれまで、単に自分の欲望を発散させているだけだと思っていました。
しかし、彼女はそれを愛だと言ってくれました。そして清香と文は、私の行為の全てを受け止めてくれたんです。正直に言って、救われました…」
三田は自分の正直な気持ちを告げた。そしてそれは、瞳子にとってトドメとなる言葉だった。
『そう、ですか… そうなんですね…』
言い終えると、瞳子は電話先で深いため息を吐いた。
『では、三田さんにはやらなければならない事があると思います』
「はい、責任を取ります。他人に押し付ける形ではなくて、自分自身の手で」
三田はきっぱりと言い切った。その言葉に安心したのか、瞳子はホッとした息を漏らした。
『河合のおじいちゃんは、明日にも文ちゃんを連れて行くつもりみたいですが、大丈夫ですか?』
「連絡先を教えたのは私です。文は母親に会いたい様子でしたから、しばらくは実家で暮らすのもいいでしょう」
『清香ちゃんは、どうします?』
「そちらはこちらで。ですが、まだ清香と会うつもりはありません」
『それは、どういう…』
三田の言葉の意味を計りかねたのか、瞳子が押し黙った。
「瞳子さん、清香のことは私に任せていただけますか? あの娘も少し1人で悩んだ方が良いのかも知れません」
『そうなんですか?』
「断言は出来ません。しかし、気持ちを整理する時間が必要なはずです」
言葉とは裏腹に、三田の声は自信に満ちていた。
『わかりました、三田さんを信じます』
「はい。…瞳子さん」
『なんでしょう?』
「全てが終わったら、また遊びに来てください。そして、来年はみんなで墓参りに行きましょう」
数瞬の後、微笑むように柔らかい声が携帯電話から響いた。
『はい、喜んで…』
「お、おお、おおおおおおおおおおっ!!」
轟音を上げて地方空港の滑走路に飛行機が着陸した。操縦者の腕があまり良くないのか、機体が2、3度バウンドするように上下する。
飛行機に乗るのがこれが初めての文は、身体全体に響く衝撃に驚きの声を上げた。
「ゆ、ゆ、ゆ、揺れるんだねっ! 飛行機って!」
内心の動揺を必死に抑えながら文が言うと、隣に座っている瞳子がクスリと笑みを漏らした。
「そりゃあ、ね。でも、今時そんなに飛行機で驚く娘も珍しいかも」
機内アナウンスに従ってシートベルトを外すと、瞳子は席から立って頭上の収納棚から荷物を取り出した。
河合宅で文と瞳子が再会してから3日が経過していた。その間に、河合は文の実家に連絡して、おおよその事情を説明していた。
予想はしていたが、突然の連絡に文の実家は大騒ぎになったらしく、なかなか信じてはもらえなかった。
だが、河合が持つ公的な身分を示したことでようやく信用してもらい、とりあえず顔を会わせようということで、文の実家のある地方都市まで行く事となった。
本当は河合が付いて行く予定だったが、本来の仕事が忙しくて予定が合わず、そのため瞳子が立候補したのだった。
「だって、飛ぶし、揺れるし、沈むし…」
文が口を尖らせて文句を言った。
仲直りから数日しか経っていないが、その間ずっと行動を共にしていたため、2人はこれまでよりずっと仲良くなっていた。
「それが普通です。さ、降りよう」
「う、うん…」
瞳子に促されて、文がぎこちなく頷いた。
母親に会いたいという気持ちは強いのだが、突然の再会にかなり緊張しているようだ。
「も、もう着いてるかな…?」
「多分ね。飛行機に乗る前に電話したときは、これから飛行場に向かうって仰ってたけど、それだとずいぶん前に着いているんじゃないかしら?」
「えと、その、おかあさん、が…?」
「うん、そう」
短く答えて瞳子は緊張をほぐすように文の頭を数度、ぽんぽん、と叩いた。
「緊張しなくても大丈夫よ。文のお母さん、ものすごく楽しみにしているみたいだから」
「そ、そうなんだ…」
実のところ、文はまだ母親とは会話を交わしていない。何度か電話で話す機会は有ったのだが、恥ずかしさが先に立ち、どうしても会話をする事ができないのだ。
「始めは不安だと思うだろうけど、私も数日はご厄介になるつもりだから、元気出していこう! ね?」
文は覚悟を決めたようにしっかりと頷いた。
手荷物受取所で荷物を受け取ってエントランスをくぐると、到着ロビーは閑散としていた。
それだけに、長時間待っていたのであろう、女性の姿はすぐに見つけることができた。
「あ、ちょっと文ちゃん…」
ロビーに出た瞬間、やはり羞恥心が先にたったのか、文は瞳子の影に隠れるように後ろに回った。
ロビーのソファに座っていた女性は、二人の姿に驚いて立ち上がったものの、文のその行動に機先を制されて立ちすくんだ。
年恰好から見ても、あの女性が文の母親なのだろう。悄然と立ち尽くす母親の姿を見て、瞳子はかなり不憫に思った。これでは文が嫌がっているように思われても仕方がない。
「もう…」
瞳子は少しだけ頬を膨らませると、文の両肩をつかんで強引に前に立たせた。
「と、瞳子おねえちゃん…」
「大丈夫だから…」
瞳子はそう声を掛けると、促すように正面に立ち尽くす女性に会釈した。だが、女性は戸惑うように動かない。
そんな様子に、文は気まずくなって視線を落とした。
「むう…!!」
これでは埒が明かないと、瞳子は文の両脇に手を差し込んで、ひょい、と持ち上げた。
「え、ちょ、ちょっと…!」
「………」
文の抗議を黙殺して、瞳子は女性の目の前まで文を運ぶと、強引に上を向かせた。
「はい!」
瞳子の行動に双方とも大いに戸惑ったようだが、やがて女性が視線を文に定めると、2、3度深呼吸して「あの…」と声をかけた。
「ひゃ、ひゃい!」
文はカチンコチンに緊張してしまい、思わず声が裏返ってしまった。
「文、ですか…?」
女性が恐る恐る言った。文が震えながら頷くと、瞳子が「ほら、ちゃんと言う」と叱った。
「は、はい… 文です…」
「香田、文さん?」
「はい、香田文です…」
「………そう」
呟くと、女性――深沢未亜子――は視線を落として顔を両手で覆った。その肩が小さく震えている。
「ええと…」
文がどうしていいかわからず焦っていると、未亜子はやおら両手を広げて文をその胸に抱き締めた。
「あ……」
驚いた文は身もだえしたが、なぜか不思議な充足感を感じて大人しくなった。
(何でだろう… 旦那さまとおんなじ感じ…)
見上げる文の頬に水滴が落ちた。見れば未亜子が涙を流している。その涙がなんだかとても嬉しくて、だのにどうしてか心が苦しくて、文も、知らず知らずのうちに涙を流してた…
「飛行機で疲れたでしょう。とりあえずあがって休んでちょうだい」
未亜子が運転する車で深沢邸に到着すると、文と瞳子は勧められた日本間に落ち着いた。
まず驚いたのは深沢邸の広さだった。三田の屋敷も大概広いが、深沢邸もそれに匹敵するほどの広さだった。
ただ、三田の屋敷と違って手入れが行き届いてないのか、部屋は小奇麗にしてあるが、庭の草木などはまったく手が入っておらず伸び放題になっており、歩いた廊下もぎしぎしと音がなった。
「ええと、お金持ち、なんだっけ…?」
文が思わず瞳子に尋ねると、瞳子は「う〜ん…」と首を捻った。
「実を言うと、私もあんまり詳しく知らないの… 河合さんや三田さんは詳しい事知っているみたいだけど…」
出発前に色々と河合から教えられはしたが、それも文たち母子が別れる経緯だけで、現在の未亜子の暮らしは何も聞いていなかった。
そうやって2人で首を捻っていると、飲み物をもった未亜子がやってきた。
「ごめんなさい、何の準備も出来てなくて、お茶しかないのだけれど…」
未亜子はカップに2つをテーブルに載せると、申し訳なさそうに笑った。
「い、いえ、お構いなく…!」
文が思わずピンと背筋を伸ばして返事をした。いつの間にか正座をしている。
「ね、ねぇ、正座なんかしないで。ここはあなたの部屋なんだから…」
未亜子が困ったように言うと、おずおずと文が足を崩した。そして、ゆっくりと部屋を見回した。
「文の、部屋…?」
不思議そうに呟くと、未亜子が力強く頷いた。
「そうよ、必要なものがあったら言ってちょうだい」
「う、うん… でも、今まで使ってたものがあるから…」
文が遠慮するように声を掛けると、未亜子は渋々といった感で頷いた。
「わかったわ。でも、これからはうちの娘なんだから、必要な物があったら遠慮なく言うのよ」
未亜子が母親らしい落ち着いた声で言った。その優しい響きに、文の顔に小さい笑顔が浮かんだ。
「う、うん… お母さん…」
意識して発した言葉だろうが、文の一言で未亜子はまたも感極まったようで、鼻をグスグス鳴らしながらしっかと文を抱きしめた。
「本当、夢じゃないのね…」
しばらく抱擁を続けて、ようやくといった感じで文を離すと、未亜子は瞳子に向き直って深々と頭を下げた。
「本当に、娘を見つけてくださってありがとうございます! 何とお礼を言ってよいものか…」
「い、いいえ!」
まさか、頭を下げられるとは思っていなかったので、瞳子は大いに慌てた。
「あ、文ちゃんを引き取ったのは私じゃありませんし… その… 恨んでらっしゃらないんですか?」
未亜子には、三田が旅行中ニアミスした姉妹を隠匿した話が伝わっているはずだ。恨み言の一言ぐらいは言われるだろうと思っていた。
「…本音を言いますと、どうしてあの時に真実を明かしてくれなかったのかと、恨みもしました。しかし、こうして文が戻ってきてくれたのですから…」
口調はしっかりとしていたが、未亜子の表情は沈んでいた。その原因に思い至って、瞳子は未亜子に頭を下げた。
「…清香ちゃんがここに居ないのは、こちらの不手際です。申し訳有りません」
深々と頭を下げる瞳子に、未亜子はゆっくり首を振って答えた。
「いいえ… 文がこの家にいるのですから、姉の清香も遠からずこの家に来てくれる。きっとそうだと信じています。それに…」
未亜子はいったん口篭もると、思い出すように言葉を連ねた。
「それにですね、数日前なんですが、清香からかもしれない電話があったんです」
その言葉に、瞳子と文は驚いて顔を見合わせた。
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、はっきりとそうだと確信したわけではありませんが、妙な無言電話があったんです」
そう言って、未亜子は「お母さん」と言葉を残して切れた電話の事を話した。
「お姉ちゃんかも…」
電話のあった日時を考えて文が呟いた。それはちょうど清香が失踪した日だ。
「まだ、電話は通じないの?」
瞳子が尋ねると、文は、ふるふる、と首を振った。
「ずっと電源切れてる」
「そっか… それじゃ、どこかの公衆電話から掛けたのかもね…」
瞳子が思い悩むように眉根を寄せた。誰かに似ている。
しばらく無言の時が流れたが、瞳子が「あ、そうだ!」と声を上げた。
「あの、未亜子さん、厚かましいのは承知の上なんですが…」
「はい、なんでしょう?」
「文ちゃんが落ち着くまで、私もこちらにご厄介になってもいいでしょうか?」
瞳子がそう言うと、未亜子はとてもとても複雑な表情になった。
「あ、やはりご迷惑でしたか…?」
「い、いえ、私は構わないんですが…」
未亜子の口調がどうにも歯切れが悪い。
「その… 母が、ですね…」
と、未亜子が言いかけた瞬間、部屋を区切る襖が勢い良く開かれて、ピシャリ、という音がした。
「え…?」
文が驚いて振り返ると、そこには見事な白髪の老婆が立っていた…
フロントからホテルの清算を求められて、清香はベッドに倒していた身体をのろのろと起こした。
この数日はほとんど外出してない。食事はルームサービスで済ましていたし、数回着替えを買いにコンビニエンスストアに行ったきりだ。
何もやる気が起きない。これまでの人生、こんな時間は一度も無かった。毎日、何かしら、やらなければならないことばかりで、何も出来ない時間などはなかった。
「お金…」
ボーっとしたまま、ハンドバッグの中の封筒を確かめる。無造作につっこまれた札束は、数えてみたら100枚ほどあった。
清香は何も考えずに部屋を出ると、エレベータに乗ってフロントに向かった。まだ若い20台前半らしいホテルマンに滞在の延長を告げると、ホテル従業員らしく柔和な笑顔で答えた。
「あ、香田さまですね。延長は大丈夫ですが、これまでの清算をお願いします。」
ホテルマンは正面に向いているパソコンを操作した。
「では、合計で2,4000円になります」
ホテルマンが受け皿を清香に向けると、清香はハンドバックから封筒を取り出しすと、無造作にそこから紙幣を3枚抜き取って受け皿に置いた。その仕草にホテルマンは目を丸くした。
「あ、あの…」
「はい?」
躊躇いがちに尋ねるホテルマンに、清香は首を傾げて返した。
「厚かましいかと思いますが、あまり大量の現金を持ち歩かないほうがよろしいですよ? よろしければフロントでお預かりしますが?」
そう言われて、清香は急に不安になって封筒を、バッ、と胸に抱いた。
「あ、いえ…」
あまりの清香の行動にホテルマンは苦笑して頭を掻いた。
「あ、すみません… そうですね、お願いします…」
耳まで真っ赤にしながら、清香は少し悩んで紙幣を10枚抜き取って財布に入れた。
「それじゃ、これをお願いします…」
おずおずと封筒を差し出すと、ホテルマンが「はい、確かに」としっかりと受け取り、セイフティボックスに入れて鍵を差し出した。
「どうぞ。鍵のスペアはありませんので、無くさないようにしてください」
鍵を受け取ると清香は神妙に頷いて大事そうに服のポケットに仕舞った。
「ご旅行か、何かですか?」
「えと、はい…」
「お1人で?」
「はい…」
違う話をされて清香は戸惑いながら頷いた。するとホテルマンが声を潜めて囁いた。
「あの、迷惑じゃなけりゃこの街を案内しましょうか? これから、俺、上がりなんですよ」
突然親しげに話しかけられて、清香はびっくりして背筋を伸ばした。
「い、いえ、結構ですよ…」
清香はようやく自分がナンパされていると気付いた。
「そう言わないで。じゃあ、せめて夕食ぐらい…」
「いえ! いいです! すいません、すいません!!」
なにやら訳がわからなくなって清香は何度も頭を下げると、ばたばたとロビーからホテルの外へ逃げ出すように飛び出した。
「び、びっくりした…」
最近では色々と声を掛けられることが多くなったといえ、ああもストレートにナンパされるのは流石に慣れていない。
「ふぅ、慌てて飛び出しちゃったけど…」
1度、2度と深呼吸をして息を整える。慌てた心臓はまだ鼓動を打っているが、そのおかげで陰鬱だった気分が少し晴れた気がした。
「どうしようかな…」
今ホテルに戻って、あのホテルマンと顔を合わせるのは気まずい。落ち着いて辺りを見渡すと、そこは駅前と言う事もあり人で溢れていた。
「折角だし、ちょっと散歩してみようかしら」
この街は旅行の時に立ち寄った程度で、あまり詳しくは知らない。純粋な好奇心から、清香は少しぶらついてみようと思った。
清香は近くのコンビニの化粧室に入ると、寝起きの顔をしっかりと整え、長い髪を綺麗に直した。
今日の格好は夏らしい白いブラウスに膝までのスカートだ。地味ではないが、派手でも無く周囲に埋没する格好だと思えた。
「パンツも… 穿いてる」
三田の庇護下ならいくらでも悪ノリできる清香だが、流石に今の状況ではノーパンで過ごす度胸はない。久々にブラジャーもしているので、違和感はバリバリだが。
「これなら、声を掛けられても大丈夫…」
まさかの事態を考えて、清香は小さく頷くとコンビニを後にした。
夏の日差しがアスファルトに照りつける街は、暑い。しばらく歩を進めた清香は、そのあまりの暑さに直ぐギブアップした。
「だ、だめだ… 暑いわ…」
少し歩いただけなのに頭がくらくらする。良く見れば道行く人の大半は帽子を被っている。
「どこかに入らないと…」
きょろきょろと辺りを見回す清香の目に、巨大な天蓋が目に付いた。この街名物のアーケードだ。
「あそこにしよう…」
ふらふらと揺れながら清香がアーケードの中に入る。内部は勿論冷房が効いているわけではないが、陽射しが遮られている分、かなり過ごしやすい。
「すごい、人…」
夏休みだからなのだろう、アーケードは若者でごった返していた。
最初は身を屈めるようにこそこそと歩いていた清香だが、やはり年頃の女の子らしく、気になるファンシーショップや洋服店を見つけて回って行くうちに、次第に足取りも軽くなっていった。
「コレなんかどうです?」
ためしに入った洋服店で洋服を勧められ、清香が試着室で着替えて出てくると、勧めた女性店員が目を丸くするのがわかった。
「すごい、何ていうか、よくお似合いですよ、お客様…」
店員が勧めたのはへプラムのシャツとハーフパンツで、スレンダーな清香の体型によくマッチしていた。
普段は身体の線があまり出ない服ばかりを着ているから(当然、文と対比されるのが嫌だからだ)、こういう服を着るのは新鮮だった。
しかし、心配な点もある。
「けど、こういうカワイイ系の服は、私はあまり…」
「何言ってるんですか! お客様すごく可愛いですよ!」
何故か興奮ぎみの女性店員が断言する。その迫力に押されながらも、清香は「そうかなぁ…」と首を傾げた。
「いえいえ、お客様美人系の顔してらっしゃいますが、カワイイ服もバッチリ似合いますよ。コレ、全然お世辞じゃないです」
店員があまりにも熱っぽく語るから、清香のほうもまんざらでも無くなってきた。特に、この数日は自己嫌悪と躁鬱の繰り返しだったから、他人から褒められる事が素直に嬉しかった。
「じゃ、じゃあ、コレ、買っちゃおうかな…」
「ありがとうございます!」
店員が深々とお辞儀してから電卓を叩き始める。いったんは服を脱ごうかと考えた清香だったが、面倒なのと服を気に入った事もあってそのまま着ていくことにした。
会計を済ませると、店員がお店のポイントカードと一緒に色んな割引券を渡してきた。
「えっと…」
「コレ、このアーケードにあるお店の割引券です。エステとかヘアサロンが一緒になった店なんで、良かったらどうぞ」
そう言われて自分の髪を摘まんでしげしげと眺めてみる。ホテルの小さな浴室では充分に手入れが出来ないせいか、心なしか乱れて見える。
「行ってみようかな…」
気が大きくなっているのを自覚しながらも、清香はそう呟いて笑った。
「ありがとうございましたー!」
担当してくれた美容師とエステシャンに見送られて、清香は上機嫌で店を後にした。
「えへ、えへへへ…」
文が見たら心底仰天しそうなくらい緩みきった笑顔だ。三田の前でもここまで蕩けた顔は晒した事は無い。それぐらいにエステは気持ちよかったし、美容師は散々清香の黒髪を褒めちぎった。
「美人さん、美人さんかー」
元々、ハローグッドでファンクラブが出来るほどの器量持ちな清香だが、自分でそれを自覚した事など一度も無い。
しかし、モデル体型の身体を見たエステシャンは何度も何度もため息をついて「お客様、女優かモデルになったらどうです?」と言うし、美容師はかなりヤバイ目付きで頼んでもいないヘアセットをサービスでしてくれた。
そこまで言われると流石に清香も悪い気はしないし、もしかしたら、自分は結構見れる顔をしているんじゃないかと(実際に美少女だ)思い始めていた。
「わあ、涼しい…」
太陽は既に落ちていたが、それでもアーケード内は人で溢れている。人の発する熱気の間を吹き抜ける夜風を感じて、清香は爽快な開放感を感じた。
現金なものだとは思うが、贅沢にお金を使ったことが充分な気分転換になったようだ。
「もうちょっと楽しもう」
せっかくのいい気分なのだから、このままホテルに帰って引き篭もるのはもったいない気がする。まだ人通りの多いアーケードを眺めると、清香は人の流れに沿って歩き始めた。
「……見られてる?」
歩き始めていくらも経たないが、いくつもの視線を感じる。ふと顔を巡らせると、ちょうど高校生ぐらいの男子と目が合った。視線が合ったのに気付くと、高校生は慌てたように目を反らした。
(えーと、えーと、おかしくはない、よね…?)
さりげなく自分の格好を見直してから軽く頷く。とすると、やはりそういうことなのだろう、と清香は恐る恐る想像した。
(い、今ナンパされたら…)
清香は三田や文には厳しく接することができるが、それは単に内弁慶なだけだ。基本的に他人には腰が低いし、押しにも弱い。前回ナンパされた時には三田が追い払ってくれたが、今は1人だ。断れる自信は無い。
(どうしよう…)
頭の中では思考がぐるぐると混乱しているが、奇妙な高揚感があるのも清香は自覚していた。それがなんだかとても懐かしい感覚で、清香はふと既視感を感じた。
「え、と…」
恥ずかしいような、けれどもとても嬉しいような、背徳感じみた感覚。ずいぶんと昔に感じていたような気がするが、どこで感じていたのだろうか…?
「これって… きゃっ!」
物思いにふけって前を良く見ていなかったせいで、清香は横断歩道で信号待ちをしていた初老の男性の背中に思いっきり顔をぶつけてしまった。
(あっ…)
ぶつかった瞬間に、ふわっ、と男性の匂いが鼻孔に飛び込む。その匂いを吸い込んだ途端、清香の心臓は、どくんどくん、と速さを増して早鐘を打ち始めた。
初老の男性が訝しげに振り向くと、清香は、ハッ、としてペコペコと何度も頭を下げた。
*上レスの続きです。
「す、すみません…」
謝る清香に興味を失ったのか、男性は「気をつけなさい」と一言残して前を向いた。清香はもう一度深々と頭を下げると、胸を押さえて顔を上げた。
(や、やだ…)
身体が妙に熱い。昂揚感はさっきから感じていたが、それが一気に弾けた感じだ。頬が、かぁ、と上気し、指の先までぞくぞくとした刺激が走る。
(そうだ、この感覚…)
閃く様に、清香はさっきから感じていた感覚を思い出した。
(初めて旦那さまにローターを入れられて、ハローグッドに行った時だ…)
それは1年前の出来事。まだ蕾だった頃の自分が覚えた、初めての快楽。自分の中に、恐ろしいまでの快楽の素があると自覚したとき。
(そうだ… 私は変態だった…)
改めて自覚した途端、周りの視線が牝の本性を刺激する。そっと下腹部を押さえると、子宮が疼くのをはっきりと感じる。
「あっ、嘘…!」
清香は、自分の足首に何か液体が垂れるのを感じた。普通なら気付くはずも無いその感覚を、清香は経験的に知っていた。
慌てて近くのコンビニに駆け込んでトイレに入ると、清香はハーフパンツをズリ下げてショーツのクロッチ部にそっと手を当てた。
「………」
無言で当てた手を見る。清香はその手に着いた液体を見て、情けないような表情を浮かべた。
「あはは… ぐちょぐちょだ…」
秘所から溢れた愛液は、ショーツだけでは吸い取ることが出来ず、数条の痕を残して足首に達していた。
清香は無言でハーフパンツとショーツを脱ぐと、洋式便座に、ペタン、と腰を降ろした。
「ごめんなさい…」
いったい誰に謝っているのかそう呟くと、清香は脱いだばかりのショーツを丸めて口に押し込んだ。愛液の生臭い匂いが頭を貫き、くらくらする。
そうして、清香は片手をそろそろと股間へと伸ばした。
震える手でクリトリスを掴むと、清香は虚ろな目で思いっきりそれを捻り上げた。
清香の瞳に、極彩色の火花が散った。
――深沢邸、客間。
重苦しい雰囲気が立ち込める中、文と瞳子は背筋をピンと伸ばした正座の体勢で白髪の老婆と相対していた。
深沢静、と自己紹介したその老婆が、深く勘繰ることも無くこの深沢邸の主だと、文と瞳子は確信した。何と言うか、雰囲気が有りすぎる。
「は、はじめまして… 各務瞳子と申します…」
本当は文が初めに言うのが良かったのだろうが、この雰囲気の中では無理があると瞳子が率先して頭を下げた。
老婆はゆっくり頷くと、「存じています」と短く答えて視線を文に移した。
不意に射竦められた文が伸ばした背筋をさらに伸ばす。ひどく緊張して喉がカラカラだ。
「あ、の…」
ようやくそれだけ絞りだすが、老婆は何も答えず、ただじっと文を見ている。
「は、は、はじめまして…」
瞳子に習ってそう言うと、文は老婆が視界から外れるように思い切り頭を下げた。畳みをジッと見詰める文の耳に、老婆の軽くため息の音が聞こえた。
「何をそんなに緊張してるのか… はじめてじゃないよ。ちっちゃなあんたをおぶって歩いたこともあるんだ。ふん、ほんの少し前のことさね」
「え、え、えぇ?」
流石に幼児の記憶は思い出せずに、頭を上げた文はさらに混乱した頭で呻いた。
「お母さん… 13年前はほんの少しじゃないですよ。それに文は2歳だったんですから、覚えているわけないですよ」
未亜子が呆れたように口を挟んだ。言われた老婆は、キッ、と未亜子を睨みつけると「そんなことはわかってるよ!」と怒鳴った。
「で、姉はどうしたんだい。姉妹そろって来るのじゃなかったの?」
どこか焦ったような早口で老婆が捲くし立てた。それを聞いて未亜子の表情が困ったように曇る。
「それも言っていたでしょう。少し手違いあって、清香は来れなくなったと…」
本当ならば、こういう物言いは未亜子こそが辛いはずだ。そう感じた瞳子は申し訳なくなった。
「来ないなら、来ないと…」
老婆な何やらぶつぶつと呟いた。
「何ですか、お母さん?」
「なんでも無いよ…」
どちらかと言うと力弱い声で老婆が呟く。瞳子は(想像していた通りなんだけど、何か違うなぁ…)と違和感を感じた。
と言うのも、瞳子は姉妹が施設に預けられたあらましを三田を通じて知っていたし、そうなれば当然この老婆は姉妹のことを嫌っているはずなのだ。
(でも、実家に引き取るのを決めたのはこのお婆さんだっていうし、本当の所はどうなんだろう?)
瞳子がジッと考え込んでいると、文がツンツンと瞳子の足を突付いた。
「ん、なに?」
「瞳子お姉ちゃん、前…」
ハッと気付いて前を向くと、老婆がしかめっ面で睨んでいる。(しまった…)と思うものの、何とかそれは顔に出さず、「な、なにか…?」と無理やり笑顔を作って尋ねた。
「あんた、いつまでおんなさるね?」
「あ、はい! お邪魔じゃなければ、文ちゃんの学校が始まるまではお付き合いしたいのですが…」
予想外に先方から話を振ってくれて、瞳子は内心安堵しながら答えた。
「ふん… そんなに信用が無いかね…」
「い、いえ、そんなことは!」
瞳子は慌てて手を振るが、老婆は「別に気にしちゃいないよ」とばっさり切り捨てると、外見に似合わぬ身軽さで立ち上がった。
「あたしゃ引っ込む。夕飯になったら呼んどくれ」
そう言うと立ち去ろうとした。慌てて瞳子が言った。
「あの! それで、滞在の方は…?」
ほとんど怒鳴るようにして言った瞳子をチラリと見ると、老婆は「未亜子が決める事だよ」とそっけなく返した。
「ええと… いいんですか?」
いぶかしむ様な未亜子の問いに、老婆は面白く無さそうに頷くと、いまだ身を小さくしている文の方を向いた。
「それと、あんた…」
「は、はいっ!」
またも文の背筋が伸びる。
「あー、いや、大したことじゃないよ… その、なんだ… よく帰ったね、おかえり」
それだけ言うと、老婆はさっさと身を返して出て行ってしまった。残った3人は、そろってポカーンとした顔でしばらく固まっていた。
434 :
幸福姉妹物語7話 ◆h1xIZ0tprA :2009/07/06(月) 17:59:02 ID:9e7VOyTj
「広いお風呂…」
はぁぁぁぁぁぁぁ… と心から緊張を解いて文が湯船に浸かった。それは一緒に入っている瞳子も同じ事で、散々に凝った肩を自分で揉み解しながら何度も、うんうん、と頷いた。
「三田さんのとこも大分広かったけど、ここはなんて言うか違うねぇ…」
三田屋敷の浴室は近代改装してあったこともあって、広々として機能的なシステムバスといった風だったが、深沢邸のお風呂は今時珍しいタイル張りの浴槽で、シャワーすら付いていない。
その代わり、浴室も浴槽もかなり大きく、ざっと5、6人は一緒に入っても不自由しない広さがある。
「でも、なんだか手が行き届いていない感じ…」
文が少しボロがきてはげそうな浴室の壁をなぞって言った。これについても瞳子は同感で、今日一日屋敷を見て回った感想は、「広いが手入れが行き届いていない」といったものだった。
「お金持ちみたいだけど… 人は雇ってないのかなぁ?」
「う〜ん、どうだろ…?」
瞳子の持つ庶民の感覚では、使用人を雇う家など想像がつかない。だが、よくよく考えると三田は女性2人を囲って生活していたのだから、あながち非現実的なものでもないと考え直した。
そんな風に2人が1日の疲れを取っていると、洗面所のガラス戸に人影が写り、ややあって浴室への戸が開いた。
「…お邪魔していいかしら?」
そこに立っていたのは未亜子だった。全裸になった未亜子の身体は、三田と同い年というだけあって、若い2人には無い成熟した女性の美しさを持っていた。
「あ、どうぞ…」
瞳子が弛緩した身体を慌てて引き締めると、「楽にしてちょうだい」と未亜子が苦笑まじりに答えた。
未亜子は浴槽の縁に座ると、掛かり湯を浴びてから、そっ、と浴槽に入った。文が無意識のうちに距離を取ろうとしたが、瞳子が文の背をそっと押して未亜子の側に寄せた。
「「あ…」」
かなりの至近距離で母子が向き合い、2人は同時に声を上げて黙り込んだ。お互いに歩み寄ろうという気持ちを痛いほど感じるのだが、どうやったらいいのかが分からない。
(う〜〜)
どうにかならないものかと、瞳子がヤキモキしていると、それまで泳ぎ回っていた未亜子の目が、ある一点で止まった。
「………立派なおっぱいねぇ」
単純に驚愕と言うか感嘆と言うか、ありがたい物を見るような目付きで未亜子が言った。
「文はまだ15よね? どこからの遺伝なのかしら…?」
興味心が緊張を解いたのか、未亜子が文のおっきいおっぱいを片手で持ち上げながら言った。その遠慮の無い行動に、文は「あはは…」と乾いた笑いを漏らした。流石にクスリで大きくしたとは言えない。
「1年くらい前から、急におっきくなり始めて…」
「急に大きくなったなら、痛かったでしょう? ハリがある内はしっかり揉んでおかなきゃだめよ」
心配になったのか、未亜子が文のおっきいおっぱいをマッサージするように揉み始めた。
「あ、うん… その、お姉ちゃんがマッサージしてくれてたから…」
「そうなの? 清香も、大きいの?」
「お姉ちゃんは… その、文が吸い取っちゃったみたいで…」
文は、何ともいえない表情でおっきいおっぱいを揉みしだく姉の顔を思い出した。
「そうなんだ… うん、ハリもない、良いおっぱいね。文はきっといいお母さんになれるわ」
妙な太鼓判の押し方だが、確かに褒められて文は「あ、ありがとう、お母さん…」と素直にお礼を言う事が出来た。
その言葉にまたも感極まったのか、未亜子はそっと文を胸に寄せるとしっかりと抱きしめた。
「ごめんね… 10年以上も放って置いてごめんね…」
母の胸にしっかりと抱かれて、文は心の中の緊張が、すぅ、と解けていくのを感じた。
やはり、頭では気にしてはいなくとも、心のどこかで自分たちを捨てた母への拒絶心があったのだと思う。
だが、1年間自分たちを探しい苦労した事や、こうやってしっかりと抱きしめてくれる優しさを感じたら、そんなわだかまりも気にはならなくなった。
(お姉ちゃんも、意地張ってないで早く帰ってくればいいのに…)
最初は姉の身を心配していた文だが、ここまで連絡が無いと流石に怒りも感じてしまう。姉がどういう気持ちなのかは分からないが、とにかく連絡だけでもほしいというのが正直な気持ちだった。
(お母さん、優しいよ…)
どうにかしてこの心地よさを伝えたい。文は真剣にそう思った。
435 :
幸福姉妹物語7話 ◆h1xIZ0tprA :2009/07/06(月) 17:59:44 ID:9e7VOyTj
「おか… ええと、お婆ちゃんね。恥ずかしいけど、いつもあんな調子なの。驚いたでしょう?」
お風呂上り。夏の夜風が涼しい縁側で、火照った肌を冷ましながら未亜子が言った。静ばあさんは夜が早いらしく、すでに就寝しているそうだ。
「うん、でも、おかえりって言ってくれたのは嬉しかった」
風呂上りのアイスクリームを美味しそうに舐めながら文が答えた。向かいには瞳子が水割りウィスキーをちびちび飲んでいる。2人とも貸してもらった浴衣を着ていて、それがとても似合っている。
「お婆ちゃんもね… 深沢の家を守るためにずーっと気を張って生きてきたの。だから、最初はつんけんしてとっつき難いとは思うけれど、上手く付き合ってあげてね」
未亜子が申し訳無さそうに言うのを、文は素直に頷いた。
「うん。 …あの、お母さん? うちは、その… お金持ちなの?」
ずっと疑問に思っていたことを、文は思い切って尋ねてみた。未亜子は一瞬あっけに取られたような表情をしたが、直ぐに苦笑すると縁側の柱を見詰めて話し始めた。
「そうねぇ。お金持ち、だった… かな? うちはね、畳とか家具なんかの卸問屋をやっているの。けっこう昔からやっていて、昔はここいらの地主も兼ねていたらしいわ。
ただ、おじいちゃん――私のおじいちゃん、文のひいおじいちゃんね――がかなり放蕩な人でね。孫の私が言うのもなんだけど、ろくでもない人だった」
そう言うと、未亜子は本当に情けないような顔をした。
「おかげで、一代で家が傾いちゃって。そのおじいちゃんが死んだあとは、今のおばあちゃんが家を仕切ってなんとか持ち直したんだけど、たくさん持ってた土地は売っちゃったし、たくさんいた職人さんも半分以下になっちゃった…」
「職人さん?」
耳慣れない言葉に、文が思わず聞き返した。
「そうよ。うちは製造もしているから、畳や家具を作る職人さんを囲ってるの。今は盆の終わりで居ないけど、ぼちぼち顔を見せに来ると思うわ。住み込んでいる子もいるし、仲良くしてね」
文はとりあえず神妙に頷いた。職人さんとか言われても、あまり良くわからない。
「そうだ… これも文、知らないんじゃないかな。お父さん、文のお父さんもうちの職人さんだったのよ」
「え、そうなの!?」
文は驚いて問い返した。駆け落ちのことは知っていたが、そこまで詳しい事情は知らなかった。
「うん、正確には職人見習いだけど。昔からうちに務めてくれている職人さんの1人息子。私とは歳も近いし、いつもうちに出入りしていたから、幼馴染のような感覚だったわ…」
その人のことを語る未亜子の表情は辛そうだ。昔の記憶が蘇るのだろう。
「文のお父さんか…」
文がポツリと呟く。父親の存在は常に霧に隠れたように曖昧だった。三田に父性を見出したこともあったが、それは直ぐに愛情に塗りつぶされていた。
「うん…」
未亜子がしんみりと頷くと、文もはにかむように軽く笑った。
そんな2人の様子を見て、瞳子は(ああ、私の心配は杞憂だったんだなぁ…)と深く感じていた。
(むしろ野暮だったかも…)
反省する事しきりだが、そうなると瞳子の中では問題は1つに絞られることになる。
(あとは、敦さんと清香ちゃんの問題ね…)
いまだ連絡の取れない清香と、何をしているのかわからない三田のことを考えて、瞳子は心の中でため息を吐いた…
「はぁはぁ… うぅん…」
夜。人ごみの途切れない繁華街で、今日も清香は目的も無く歩いていた。
あの時コンビニで絶頂を迎えた後、清香はホテルに真っ直ぐ帰り狂ったようにオナニーを繰り返した。
呆然と過ごしていた間に溜まった性欲が、一気に爆発したかのようだった。何度も迎える絶頂の中で、清香は自分の肉体に染み付いた淫蕩さを改めて思い知った。
「気持ち良いのに… ちゃんとイッたのに…」
だが、何度絶頂に達しても清香の暗鬱とした気持ちが晴れることは無かった。むしろ、絶頂のたびに1人の惨めさが襲い掛かる。
三田とのセックスではこんな事はなかった。性器に注がれる精液の生暖かさや、三田の体臭が、絶頂と共に充足感と安心感を与えてくれた。
「また、濡れてる…」
周囲の人に気付かれないように、そっと内腿を拭うと、秘所から垂れる愛液がねっとりと指に絡みついた。
あれ以来、下着も一切着けていない。屋敷に居たときと同じ様に、すぐに愛液で駄目になってしまうからだ。
「オナニーしなきゃ…」
目に付いたコンビニに入ると、店員に声も掛けずトイレに篭り、ハンドバックからローターを取り出す。
このローターは大量陳列が売りのディスカウントストアで買ったものだ。一般に売られている事に清香は驚いたが、気付いた時にはそこにある全種類のアイテムを買ってしまっていた。
慣れた調子でローターに電池を入れると、ハンカチを丸めて口の中に詰め込み、震える手でローターをクリトリスに押し当てた。クリトリスを貫通しているピアスとローターとが接触し、カチリと乾いた音を立てる。
「ふぅ、ん…」
しばらく、愛液を絡めるようにローターを動かした後、肥大したクリトリスを押しつぶすように力一杯ローターを押し付ける。
「ううん…! うぅ…」
背骨にビリビリと電流が走り、清香は軽い絶頂を迎えた。鼻で大きく深呼吸をして息を落ち着かせると、空いた片手でローターのスイッチを押し上げる。
ヴィィィィィィ…!
羽音のような音を立ててローターが振動を始める。今度は脳髄に電流が走る。混濁した意識の中で清香はハンドバックを探ると、今度は長さ10cm、太さ3cm程度のディルドウを取り出し、ぐちゃぐちゃに濡れたヴァギナにいきなり突き刺した。
「はぁぁぁぁっ…!!」
ハンカチを噛み締める事も出来ずに、清香は溜まらず声を上げた。腰がびくびくと震えて痙攣し、ヴァギナから大量の愛液が零れ落ちる。
「ふーっ、ふーっ、ふー…!」
荒い呼吸を繰り返しながら、挿入したディルドゥを掴んでぐりぐりと動かす。強烈な快感が清香を襲い、思わず手にしたローターを床に落としてしまった。リノリウムの床にローターが高い音を立てて弾む。
(ま、まずい…!)
微かに残った正気がこれ以上は危険だと告げる。清香は空いた手でクリトリスを掴むと、終わりにするために思いっきりそれを捻り上げた。
「うぅぅ………!!」
歯を食いしばって何とか声が漏れるのを防ぐ。
清香は襲い来る絶頂の中で、知らず涙を流した。
ウェットティッシュで後始末をすると、清香は出来るだけなんでもない表情を装ってトイレを出た。
店内にいたお客や店員の視線を感じるが気合を入れてそれを無視すると、清香は必要でもない生理用品を手にとってレジに向かった。
それを見た面々が、少し気まずそうに顔を背ける。こうすれば、変に声を掛けられる事も無い。
「いらっしゃいませー」
清香と同年代に見えるアルバイトが商品をスキャンして紙袋に入れる。代金を払おうと財布を開けて、清香は思わず「あ…」と声を上げた。
「何か?」
アルバイトが怪訝そうな表情を見せる。清香は「いいえ、なんでもないです…」と答えると、代金を支払いそそくさとコンビニを後にした。
「…もう、なくなっちゃった…」
店を出た清香は、暗い表情で呟く。
今朝、ホテルのセーフティボックスから出したお札は、きれいに無くなっていた。
「馬鹿だわ、私…」
暗い表情のまま呟く。
ここ数日の清香は、過去の彼女からしたらありえない程の浪費を行っていた。
服や装飾品、食事にイベント。気が紛れるならばと、少しでも気に留めたものには惜しみなく金をつぎこんだ。
勿論、お金を使えば使うほどに終わりが近付いているのは分かっている。しかし、心の中にぽっかりと空いた穴を塞ぎたくて、清香は浪費を続けた。
「…帰ろう」
お金が無くなったからには、ホテルに戻るしかない。ため息を吐いて来た道を戻ろうとすると、正面から知らない男に声を掛けられた。
「ねぇねぇ、お姉さん、何してんの?」
二十歳前後の年恰好の、いかにも軽そうな男だった。こういう風に声を掛けられるのは初めてではない。街に繰り出し始めてからは、1日に4、5回はナンパに遭遇していた。
「いえ、急いでますから…」
いつものように邪険に通り過ぎようとすると、男は「ちょっと待ってよ…」と清香の肩を掴んだ。
「や、ナンパじゃなくて。ちょっとさー、人集めてて。お姉さんに協力して貰えないかなー、なんて」
おどけた調子で語る男を、清香は怪訝そうな顔で見詰めた。
それを好機と見たのか、男は清香に顔を近づけると、口に手を当てて小声で話し掛けた。
「あのさ、お姉さんそーとーエッチでしょ?」
ぎくり、と清香は心臓が止まるような気がした。だが、動揺を口には出さず、「違います…」とだけ言って立ち去ろうとした。
「バイト、バイトなんだ。割の良いバイト。バイト紹介しようと思って」
立ち去ろうとした清香の足が、バイトという一言で止まった。脳裏に薄くなった財布が思い浮かぶ。
「お、脈アリ? もしかしてお金に困ってる? ならピッタリじゃん! 無茶苦茶稼げるよ〜」
怪しいとは充分に感じているが、1度止まってしまった足は中々動き出さない。動きを止めた清香を、いよいよ脈が有ると感じた男は、馴れ馴れしく清香の腰に手を回して耳元に囁いた。
「まぁ、立ち話も何だし、マックおごるからさ、ちょっと入ろうよ…」
近くのファストフード店を指差して促す男に、清香は躊躇いがちに頷くと、ゆっくりと歩き始めた。
時間的に学生が多いのか、店内は異常に騒がしく、座る席を探すのも一苦労だった。
注文した品を持って席に座ると、男は直ぐに携帯を取り出してどこらに電話を掛け始めた。
「あの…」
不安に思った清香が声を掛けても、男は目も合わせようとせず話を続けている。話の端々を聞くに、男は上位の人間と話をしているようだ。
「あー、ほんじゃ、来るまで捕まえときますんでー」
男は電話を切ると、おもむろにハンバーガーの包みを開けて食べ始めた。清香は途端に酷い不安に襲われて、今さらながら付いて来たことを後悔した。
「あの… すみません、私、あんまり時間が…」
「あー、すぐに人が来るから」
勇気を振り絞って声を掛けたが、男は取り合おうとせずに食事を続けた。不安と恐怖心が最高潮に達する。どうにかしてこの場を去りたいと思うが、足も頭もまともに動いてくれない。
しばらく、無言の時間が過ぎた。緊張のあまりどうにかなりそうな清香の目の前に、今までの男とは違う、スーツ姿の痩せ気味の男性が現れた。
「やぁ、どうも。お待たせしました…」
男性は柔和な笑顔を浮かべて柔らかい口調で言った。
男が口に含んだハンバーガーを急いで平らげると、慌てて立ち上がって席を譲った。
「チワス! 後、たのんます!」
「ああ、いいよ、戻んな」
短く答えて男性が手をヒラヒラさせると、男は一礼して席から立ち去った。
「さて…」
男性は椅子を引くと清香の正面に座り、ジッと清香を凝視した。
「あ、あの…」
不安そうに清香が声を出すと、男性は無表情のまま言った。
「君、ハンバーガー嫌いなの?」
「え、いえ…」
「せっかくだから食べなよ、冷めちゃう」
「は、はい…」
そう言われて、清香はハンバーガーの包みを開けて、もぐもぐ、と食べ始めた。ジャンクフードなど食べ慣れていないから、その濃い味付けにびっくりする。
「うん、じゃあ、仕事の話しようか。いつから入れる?」
突然そう聞かれて、清香はフルフルと首を振る。
「いえ、まだアルバイトの内容を…」
消え入りそうな声でそう言うと、男性が呆れたように苦笑する。
「ちょっと、ちょっと。内容も確認せずに着いて来たの? それって危機意識が無さ過ぎじゃない?」
「すみません…」
うなだれて清香が言うと、男性は軽く肩を竦めると言った。
「やれやれ、外見はイイ感じのお姉ちゃんなのに、中身は初心なガキじゃん。アイツももちっと人見ろよなぁ…」
男性は心底呆れているようだ。清香もその反応にホッとして、代わりに少しだけ好奇心が芽生えはじめた。
「あの、やっぱり、風俗、ですか…?」
「ん? そうだよ。今どき街引きなんてしないんだけど、オープン直後で女手が足りなくてね。でも、まぁ、君、処女だろ? そんなの雇うと色々面倒だから、もう帰っていいよ」
清香と違って興味を無くしたらしい男性が、席を立とうとする。
その瞬間、清香自身の驚いた事に、「待ってください!」と清香が声を掛けた。
「あん?」
「お話、続けてください。処女じゃ、ないです」
一瞬、男性の顔がニヤリと歪んだかと思うと、「それじゃあ、一応…」と気の無いそぶりで男性が席に着いた。
夜。ホテルの戻った清香は真新しい携帯を手にしてベッドに寝転がっていた。
あの後のことは、断片的にしか覚えていない。
仕事の内容がデリヘルであること。連絡用の携帯を持つこと。給料は日払いで払うこと、明日、『講習』を行うこと。
そしえ、自分がそれら全てに頷いて、『働きます』と言ったこと。
「………風俗」
堕ちるところまで堕ちた…という気分だ。もちろん、学も住所も無い自分が手っ取り早く稼ぐ方法は、コレしかないと思っている。だが、三田以外の男性に身体を許す事が、果たして自分に出来るのだろうか?
相手の男性――店長らしい――は、清香のことをかなり気に入った様子で、「君ならすぐ売れっ娘になれるよ!」と、欲しくも無い太鼓判を押してくれた。
「……旦那さま、文ちゃん…」
知らず知らずに声を出して呟く。そして暗鬱な気分になる。三田も文も顧みず逃げ出したくせに、その2人に縋りたいと願う自分が堪らなく嫌だ。
それでも、もう自分は『働く』と返事をしてしまった。ホテルの住所も言ってしまったし、今さら退くことは出来ない。
真新しい携帯を弄ぶうちに、ふとそれまで使っていた携帯のことを思い出した。文からの電話が怖くて電源を切ったまま、数週間放置している。
「壊れて、無いかしら…?」
あまり機械の知識が無いから良くわからない。
「流石に、もう電話してこないわよね…?」
恐る恐る電源ユニットをコンセントに挿し、携帯に接続した。しかし、それだけでは何も反応しない。少し悩んだ後、清香は電源ボタンを長押しして携帯を起動させた。
真っ暗な画面に明るい灯が灯り、次第に見覚えのある待ち受け画面へと変化した。
「よかった、壊れてない…」
ホッと一息付いていると、携帯からメールの着信音が鳴り響いた。
一瞬、ビクリとした清香だが、すぐに、この数週間に送られたメールを受信している事だと理解した。それならば慌てる必要は無い。
「…やっぱり」
予想していたが、文からのメールがぎっしり詰まっている。よくもまあ、これだけ打ったものだと思える量だ。
「もっと落ち着いたら、連絡できるかしら…?」
全部を読むのは流石に億劫だから、プレビュー機能を使って流し読みしていく。その内、添付ファイルがあるメールに行き着いた。
「なんだろ…?」
興味を持った清香は、ボタンを操作してそのメールを開いた。添付ファイルは画像ファイルだったらしく、ゆっくりと写真が表示される。
「これ……」
画像には、文と瞳子と、そしてもう2人知らない女性が写っていた。場所は清香の知らない古い民家の前。
ゆっくりと画面をスクロールし、件名を表示させると、そこには『お母さんとお祖母ちゃん』と書かれていた。
「お母さんとお祖母ちゃん…」
ポツリと呟く。文が居るのに、その写真はひどく遠く感じられる。
ああ、自分は帰る手段も資格も失ってしまったのだ、と思う。誰も、風俗嬢になった娘など会いたくないだろう。
「はは……」
自嘲するような笑いが漏れた。メールを辿っていくと、数日前からなぜか文からのメールがプツリと絶えている。
そこで初めて気が付いた。
「旦那さま…」
三田からは、一件たりともメールは送られていなかった…
翌日、真っ暗な気持ちを引きずったまま、清香は携帯で指定されたマンションへと向かった。
全く気は進まないのだが、生真面目な彼女には約束を反故にはする発想は出てこなかった。
「ここ… かしら?」
1階がコンビニエンスストアのありふれたビルだ。見上げると、ベランダに洗濯物が干してあって、とても風俗店が入っているとは思えない。
清香はコンビニの前で立ち止まると、新しい携帯を取り出してお店へ電話を掛けた。相手は数コールの後、すぐに出た。
「あのう、昨日お話した…」
『あー、あんた… んー、来たんだ…』
電話の相手は昨日の男性だったが、電話口の声はなにやら迷惑そうな響きがあった。
「えーと… これからどうすれば…」
『んー、もういいから、横のエレベータで上がってきて。6階の602号室ね』
それだけ言うと、電話は唐突に切れてしまった。
「どうかしたのかしら…」
不安そうに清香が呟く。昨日の印象では、妙に優しすぎるところがいかにも怪しかったが、応対は丁寧だったはずだ。
「とりあえず…」
意を決してエレベータのスイッチを押す。1階に待機していたエレベータは直ぐに扉を開き、清香は急かされるようにしてエレベータに乗り込んだ。
「6階だったわよね…」
不安からか独り言がやけに多い。6階のボタンを押してエレベータが動き出すと、清香は心臓が早鐘を打ち始めるのを感じた。
(だめだ、緊張する…)
やっぱり、無理だと言って帰ろうか? しかし、ホテルに預けているお金も5万を切っている。このままでは直ぐに追い出されてしまう。
(覚悟を決めなきゃ…)
エレベータが6階に到着し、扉が開くと、清香は勇気を奮い立たせるように「うん!」と大きく頷いた。
出来るだけ平静を装った足取りで廊下を歩き、602号室を見つける。
1度、大きな深呼吸をして、ぴんぽーん、と呼び鈴を鳴らした。
「…はい?」
しばらくして、ドアが開くと20台後半ほどの女性が顔を出した。化粧もしていない、茫洋とした顔つきをしている。
「あ、あの…」
「ああ、あんたね。早く入って」
女性は周囲に視線を走らせると、清香の腕を取って強引に室内に連れ込んだ。
「他の住民に見付かるとメンドーだからさぁ…」
女性が愚痴るように言う。清香は、とうとう緊張が頂点に達して何も言えない。
「まぁ、いいや。てんちょー、来たよ」
部屋の奥に声を掛けると、中から昨日の男性が顔を出した。拍子抜けする事に男性の格好はジャージとトレーナーで、出迎えに来た女性を併せて見ると、まるで普通の夫婦のように見える。
「どうも、お疲れさん。つか、君ってどーゆー人?」
男性が頭をガシガシと掻きながら言った。
「は、はい…?」
「ん〜、まぁいっか」
諦めたようにそう言うと、男性は清香を室内に案内した。そこはリビングのようで、ソファが1つテーブルが1つ有り、ソファには見覚えの無い強面の青年が座って漫画雑誌を読んでいる。
「…チワス」
青年は清香と一瞬だけ視線を合わせると、それだけ言って再び雑誌に目を落とした。
「じゃ、『講習』ね… てか、まぁ…」
口篭もるように黙ると、店長はまた頭をガシガシと掻いた。
「もう、いいや。その部屋入って。相手が居るから」
「え、と…?」
昨日の話では、店長自ら『講習』を行うという説明だった。店長は首を傾げる清香の背中を押すと、「早く入って…」と強引に部屋の中に押し込んだ。
「ちょ、ちょっと…!」
たたらを踏むようにして清香が室内に入る。部屋の中はかなり暗くて良く見えない。
闇に慣れるように目を細めると、部屋の隅に大きなベッドが置いてあり、人が1人腰掛けているのが見える。それを確認して、清香は緊張のあまり突飛な行動にでた。
「は、初めましてッ!! 清香です、よろしくお願いします!!」
大げさに腰を折って挨拶をする。ベッドの人物がかなり戸惑う雰囲気が伝わってきた。
「まぁ… 顔を上げろ…」
苦笑する気配と共に、ベッドの人物が言った。その声を聞いて、清香は弾かれたように顔を上げた。
「そ、んな… まさか…」
闇に目を凝らしてまじまじとその人物を見る。
「…元気そうで良かった」
「………旦那さま」
清香が凝視した先には、三田は安堵した表情で座っていた。
「色々言いたい事はあるだろうが、とりあえずここを出るぞ」
三田はベッドから立ち上がると、清香の頭にポンと手を置いて言った。
清香は衝撃のあまり思考が停止しているらしく、反応が無い。
「どうした、どこか具合でも悪いのか?」
多少、心配そうに尋ねる三田の声に、清香はあわてて、ぶんぶん、と首を振る。
2人が部屋から出ると、居間に居た3人の視線が集中した。
「話、終わったッスか?」
最初に話しかけてきたのは、ソファに座った強面の青年だった。
「いや、これからだ。とりあえず場所を変えようと思う。 …迷惑をかけたな。鮫島さんによろしく言っといてくれ」
「いえ、追加料金も頂きましたし、全然かまわないッス」
そう言うと、青年は軽く頭を下げて部屋から出て行った。三田は残る2人に向き合うと、深々と頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「あー、いや… こっちとしちゃ、違約金は倍掛けで貰ったし、穴も埋めてもらったし… むしろありがたい位で…」
店長が頭を掻きながら答える。女性は軽く方を竦めただけだ。
「では、失礼します」
顔を上げると、三田は清香の背を押して部屋を出た。いまだ声も出ない清香もノロノロと後を付いて出た。
「…さて」
ビルから出て、炎天下のアスファルトに立つと、三田は疲労の隠せぬ声で呟いた。そうして、清香をチラリと見ると、突然、清香がブルブルと震えだした。
「ど、どうした!?」
「わ、わた、わた、わたし… わたしは…」
これまでの緊張と三田が現れた衝撃で、清香は完全に錯乱していた。考えがまとまらず、自分が立っているのか座っているのかもわからない。
三田はすぐに清香の腕を掴むと、そのまま往来のど真ん中で清香を胸に抱きとめた。ふんわりと漂った三田の匂いが、清香の思考を正常に戻す。
「…あ」
「落ち着け。何も不安になる事は無い。全部丸く収まった」
清香の頭と背中をさすりながら、三田はゆっくりと、はっきりと言った。三田を見上げた清香の瞳に、困惑の色が宿る。
「何、が… 何が、ですか…?」
「ちゃんと説明する。とりあえずホテルに戻るぞ」
そう言うと、三田は清香を抱きかかえるようにして歩き始めた。清香は今更になってとんでもない事態になっていると気付いたが、どうにもできずに歩調を合わせて歩き始めた。
ホテルの部屋は冷房が効いていて、火照った身体と頭を程よく冷やしてくれた。
清香をベッドに座らせた三田は、勝手に冷蔵庫の中身を改めると、中に入っていたスポーツドリンクを取り出して清香に握らせた。
「ゆっくりでいいから飲め」
清香は言われるがままに頷くと、おっかなびっくりプルトップを空けてスポーツドリンクを飲み始めた。相当に緊張して喉が渇いていたようで、あっという間に1缶飲み干してしまう。
そうすると、再び正常な思考が戻ってきて、三田と2人同じ空間に居る事を否応無く意識してしまう。
「う、うぅ… も、も…」
「も?」
三田がオウム返しに尋ねると、清香と突然ベッドの上に正座をして思いきり額をベッドに打ち付けた。ぽふっ、と軽い音がした。
「申し訳ありません!!!!」
絶叫するように甲高い声で叫ぶ。思わず耳を押さえた三田が、苦い表情で清香を見る。
「私、私、自分勝手な事をして… 逃げたりなんかして… 親不孝もので… 皆に心配かけて… ううぅ…」
謝罪の言葉を口にする毎に感情が昂ぶっていったのか、清香は嗚咽を漏らしながら大粒の涙を流しはじめた。
三田は苦い表情をさらに眉根を寄せて苦くすると、「やれやれ…」と呟いて清香の隣に座り、優しく清香の身体を引き起こした。
「ひっく… ひっく…」
「お前は本当に良く出来た娘だなぁ…」
しみじみと三田は呟くと、泣きじゃくる清香を再び胸に抱いた。
「ちゃんと理解出来ているのなら、私からはとやかく言わん。言わんから、文に叱ってもらえ。あいつは本当にお前の事を心配していたからな」
「文ちゃんに… ひっく… 会ったんですか…?」
しゃっくり混じりに清香が尋ねる。三田はゆっくりと頷いた。
「つい、昨日まで一緒に居た。焦ったぞ。お前の行動が1日でも早かったら、説得が間に合わなかったところだ」
「説得…?」
訳がわからず清香が呟く。三田はハンカチを取り出して涙で濡れた清香の顔を綺麗に拭くと、1回咳払いをしてから清香を真正面から見つめた。
「あ、あの…」
「清香」
「は、はいっ!」
何時に無く真剣な三田の声に、清香は飛び上がって驚いた。
「私はお前を連れ戻す」
「え?」
「言っておくが、深沢さんの家にじゃない。私の家にだ」
「え、え…?」
三田の言っている意味が良くわからず、清香はただ戸惑うばかりだ。
(旦那さま、何を言ってるの? 私は実家に行くんじゃないの…?)
三田は反応の薄い清香を困ったように見つめると、気恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをした。
「分からんか… いや、分かって欲しい。つまり、その、なんだ…」
三田は一瞬だけ目を泳がせると、真剣な眼差しで清香を見つめた。
「2度目だ、3度目は言わんぞ。ずっと私のそばに居てくれ。一生、私が面倒を見る」
三田は一息で言った。あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうだ。
だが、清香は大粒の涙を流すと、フルフル、と首を振った。
「だめです… だめですよ…」
「どうしてだ? そんなに、私と一緒になるのがいやか?」
「違います!」
清香は叫んだ。ひどく、悲しい気分だ。三田の言葉は小躍りしたくなるくらい嬉しいのに、それを受け入れられない自分が悔しくて、悲しくて、嫌になる。
「私にそんな資格ありません… 一緒に居ると、旦那さまに迷惑が掛かります… きっと… きっと、噂になります。姪って言ってたのに、いつの間にか奥さんなるなんて… そんなの無いです…」
「そのことなら、すでに手遅れだから気にするな」
「…は?」
あっけにとられた顔で、清香が呟く。
「ほとんどの人にばれていた様だ。皆、察した上で付き会ってくれていたらしい。頭が上がらんな…」
自嘲するように三田が肩をすくめる。
「だから、周りの目は気にするな。むしろ、正々堂々と見せ付けたって良い」
「でも、でも…!」
なおも言い募る清香が必死で頭を働かせる。
「あ、文ちゃんはどうです!? 私だけ、そんな…」
「それに付いては、本人からきちんと許可を貰った」
「え…?」
「ついでに言えば、お前の母親と祖母からも暫定だが許可を貰った」
「はい!?」
顔しか知らない母と祖母の事を言われて、さらに清香はパニックを起こす。
「どういうことですか!?」
「娘を嫁に貰うんだ。親には挨拶に行くのは常識だ。それに、お前はまだ未成年だから親の許可も要るしな」
「…実家に、行ったんですか?」
混乱した頭で必死になって言葉を探す。
「文と会ったのはお前の実家だ。そこで結婚の許可も、お前を屋敷に連れて帰ることも了承してもらった」
いつの間にか外堀が埋まっていることに清香は呆然となった。連日連夜、自分の身の振り方に悩み続けていたのが馬鹿らしくなる。
「私の…」
「うん?」
急に底冷えするような声で清香が呟いた。
「私の気持ちはどうなるんです…? 心変わりをしているかもしれません…」
「ふむ、そうだな…」
三田は考え込むように黙り込んだが、おもむろに手を伸ばすと清香のスカートの中に手を潜り込ませた。
「きゃ!」
「うん、心変わりはしていないようだ」
何かを確かめた三田が、すっ、と手を抜いた。清香は顔を真っ赤にしている。
三田は軽く微笑むと、懐から手の平サイズの小箱を取り出した。
「あ…」
「ひょんなことで中身を見て、勇気が出た」
そう言って、三田は小箱を開いて見せた。
中には、何も入っていなかった。
「入れ忘れたわけではないだろう?」
三田が尋ねると、清香は小さく頷いた。
「外せるわけ、ないです… 旦那さまから貰った大切なプレゼントなのに…」
想いをかみしめるように清香が呟く。その表情からは、ようやく動揺が消えつつある。
「とある人に言われた。私とお前とが幸せそう、だと」
「クス… それ、ハローグッドのサービスマネージャーさんじゃないですか?」
軽く笑って清香が尋ねると、三田は驚いた顔になった。
「よく、わかったな」
「私も経験ありますから」
清香の答えに、三田は「そうか…」と答えて、空の小箱を見つめた。
「だが、それだけでは安心出来なかった。そんな時に、この小箱を開けた」
「どうして開けたんですか?」
清香が尋ねると、三田は恥ずかしそうに笑った。
「笑うなよ… お前の匂いが欲しかった」
三田がそう言うと、たまらず清香は「ぷっ!」と噴き出してしまった。
「おい…」
「だって… 旦那さまがそんな事するなんて…」
だいぶツボに入ったらしく、清香は肩を震わせて笑い続けた。三田は「やれやれ…」とため息を吐くと、パコ、と小箱を閉じた。
「中身が空だと知って確信を持つことが出来た。お前は心変わりなどしていないし、早く迎えに行かなければならないと思った」
「その割には、遅かったですね」
軽く拗ねるように清香が言う。
「色々と準備も有ったし、説得も一筋縄ではいかなかった」
「それは、実家での事ですか…?」
清香が心配そうに尋ねると、三田は軽く笑って首を振った。
「まぁ、その話は後だ。今はもっと大事な話が有る」
そう言うと、三田は懐から新しい小箱を取り出した。
「受け取ってくれ」
清香の手に強引にその小箱を乗せる。清香が恐る恐る小箱を開けると、そこには、クリトリスのピアスに良く似た、しかし、明らかに形も大きさも違うリングが入っていた。
「こ、これ…」
「言っておくが、ピアスじゃないぞ」
銀色に光るその指輪は、清香の薬指にぴったりのサイズだった。
「嵌めて見せてくれ」
三田がそう言うと、清香は震える手をなんとか操って、左手の薬指に指輪を嵌めた。
「あは…」
意識しなくても笑みがこぼれる。形容の出来ない多幸感が清香を包み、何度目かわからない涙がこぼれる。
「…旦那さま」
「なんだ?」
「私は、幸せになってもいいんでしょうか?」
泣き笑いのその問いに、三田は眉根を寄せて答えた。
「奴隷の意思など関係ない」
断固たる口調で告げる。
「私が、問答無用で幸せにしてやる」
その瞬間、清香は三田に抱き付いて叫んだ。
「幸せにしてくださいっ!」
ベッドの上に、清香が三田を押し倒す様にして倒れこむ。
そのまま清香は三田にキスをすると、強引に舌を突っ込んで貪るように三田の咥内をねぶった。
「…ぷはっ、おい」
やりすぎな位の清香の行為に驚いた三田が、口を離した後に困ったように言った。
「少しは丁寧にだな…」
「我慢出来ません!」
三田の文句を一刀の元に切って捨てると、清香は三田の上に馬乗りになって後ろを向いた。そして三田の股間に顔を近づけると、焦る手つきでベルトを外して、ズボンとパンツを一気に下ろした。
「はぁ… 夢に見ました… 旦那さまのおちんちん…」
「好きにしてくれ…」
大分、疲労もたまっている三田は好きにさせることにした。
任された清香は「はい!」と頷くと、舌を伸ばして三田のペニスをペロペロと舐めはじめた。
「ぺろ、ぺろ… ちゅぱ…」
顔を近づけると、三田のペニスの匂いが、ムワッ、と清香の鼻腔を直撃して、頭がくらくらする。
「ぢゅ… ああ、欲しかったんです…」
完全に奴隷の目になってペニスを舐め上げる。三田のペニスが十分に勃起してきたのを確認すると、清香は大きく口を開けてペニスを咥内に咥えこんだ。
「ん… んぐ…」
フェラチオは文が得意にしていたから、清香は喉奥まで咥える事に慣れてはいない。いつもなら、えずく喉を必死に抑えてのご奉仕だが、今日は苦しく無い。
(喉の奥… 当たってる…)
喉奥の口蓋にペニスが入り込む。鼻の中に三田の陰毛が入ってきてチクチクするが、そういった刺激の全てが、清香の被征服欲をいっそうかきたてた。
(確か、こうやって…)
文がやっていたのを見よう見まねで、猫のように喉を鳴らす。喉奥が細かな蠕動運動を始め、強烈な刺激をペニスに受けた三田が、おもわず「うっ…」と呻き声を上げた。
「…上手くなったな」
ポツリと呟く三田を見上げてニコリと笑うと、清香は噛まないように十分注意してからディープスロートを始めた。
「じゅぶ、じゅぷ… じゅぱっ」
一心不乱に頭を振ると、だんだんと頭がぼーっとしてくる。口の中を蹂躙するペニスが愛しくてたまらない。清香はどうしても手放す事の出来ない感情を思い知った。
「清香…」
三田が清香の髪を撫ぜながら呟く。その意味を理解した清香は、ゆっくりとペニスを口から吐き出すと三田の上に馬乗りの体勢になった。
引き千切るようにスカートを取ると、三田が久々に目にするショーツのクロッチ部を横にずらす。それまでショーツに堰き止められていた愛液が、重力に従ってたらたらとペニスに落ちる。
「淫乱な女だ…」
「はい… 私は淫乱で、おまんこでおちんちんを咥えることしか能の無い雌奴隷です… 卑しい奴隷に、旦那さまのおちんちんをお恵み下さい…」
口調とは裏腹に幸せな表情をして清香が言うと、三田は了解するように、そっ、と清香の腰に両手を回した。
「ああ、いいぞ…」
「失礼します…」
キスをするように、腰を屈めて亀頭とヴァギナを触れさせる。「ふう…」と軽く息を吐くと、清香は手を使わずにヴァギナと腰の動きだけでペニスを呑み込み始めた。それは、まるで蛇が獲物を丸呑みしている様だった。
「…ああっ!」
ペニスを根元まで呑み込むと、軽い絶頂に達したらしい清香がおとがいを反らす。痛いほど勃起している胸の先端が細かく震える。三田が悪戯心でそれを指先で、ピンッ、と弾くと、それが呼び水となって清香の全身が震えだした。
「あぁぁぁ… はぁ…」
かみしめる様に、長く、強い絶頂を味わうと、清香は、カクン、と身体を折って三田の胸元に倒れこんだ。
「旦那さま… イッちゃった…」
「どれだけイッても不感症にならんのは流石だな」
少し微妙な三田の感想に「あは…」と軽く笑うと、清香は改めて身体を起こしてヴァギナに力を込めた。
「うっ…」
「今度はちゃんとご奉仕します… フェラチオじゃ文ちゃんに勝てないけど、ココなら誰にも負ける気は有りません…!」
静かに宣言すると、清香はゆっくりと、大きく腰をグラインドさせ始めた。挿入が甘いと抜けそうなくらい大きな動きだが、清香が隙間無くぴっちりとヴァギナがペニスを咥え込んでるせいで、抜けるどころかすさまじい刺激が三田のペニスを襲った。
「おお…!」
思わず漏らした声に気を良くしたのか、清香は少し腰を上げてペニスの根元を手で掴むと、「いきます…!」という声と共に腰を前後に激しく動かし始めた。
「うおっ!」
まるでペニスを柔らかいヤスリで削られているようだ。ざらざらとした感触が敏感な亀頭を行き来し、一気に射精感が高まる。
「清香… そろそろ出すぞ…」
三田が堪えるように声を出すと、清香は「はい!」と頷いて再び奥までペニスを銜えこんだ。
しかし、腰を動かそうとした矢先、清香は口に両手を当てて「ああっ!」と声を上げた。
「ん、どうした?」
「あのあの…」
動揺してちらちらと視線を外すと、清香は「お薬…」と呟く。
「最近、お薬、飲んでませんから… 膣内に出したら…」
申し訳なさそうに言う清香に、三田は心底残念そうな声で答えた。
「なんだ… 私の子供を産んではくれないのか?」
「…………………!!」
その瞬間、清香の目の色が変わった。無言で三田の腰を強く掴むと、それまでの動きがそよ風に思える激しさで腰を動かし始めた。
「お、おい…」
「出して! 旦那さま私の膣内に出してくださいッ! 当てて下さいッ!!」
暴風のような勢いに抗しきれず、三田は「やれやれ…」と呟くと、耐えてきた精を解き放った。
「あっ… 出てる…」
少しでも奥で射精されたいのか、腰をぴったりと密着させて固定する。そして、愛しそうに下腹部を撫ぜると、清香は再び腰を前後に動かし始めた。
「おい…」
「今日は孕むまで離しません…!」
完全に目の色を変えた清香を見て、三田は自分の失言を心の底から後悔した。
「…夜か」
気だるい疲労感と共に目を覚まして窓を見ると、外はすでにどっぷりと色を落としている。
枕元の電子時計を見ると、時刻は午後7時。身を起こそうとすると、未だ結合を解かない清香が倒れこんでいて、なかなか思うように行かない。
「子供が出来る前に赤玉が出そうだな…」
苦笑して清香を揺り動かすと、寝起きに弱いだけに、清香は数瞬ボーッとした表情で三田を見つめると、繋がったままの腰を再度振り始めた。
「こら、いい加減にしろ。セックスばかりして生きるつもりか?」
少々乱暴に上から振り落とすと、清香が「きゃっ!」と悲鳴を上げてベッドに弾む。
「うぅ〜、酷いです、旦那さま…」
「お前のほうがよっぽど酷いぞ… 疲れているのに何度も相手をさせやがって…」
ぶつくさ文句を言うと、落ち着くように「ふぅ!」とため息を吐き、三田は「シャワーと、そしてメシだ」と宣言した。
ゆったりとシャワーを浴び、ホテル近くの飲食店で食欲を満たして部屋に戻ると、三田は「さて…」と呟いて話を切り出した。
「何から話そうか…?」
「そうですね…」
落ち着いて、いつもの調子を取り戻した清香が顎に手を当てて考え込む。
「…わからないことだらけで、何を聞いていいのやら… よろしければ、旦那さまが好きなように話して頂けませんか?」
逸ろうとする気持ちを努めて抑えて清香が尋ねると、三田は大きく頷いた。
「まず、お前だが、朝に話した通り私が貰った。依存は?」
「ありません!」
きっぱりと清香は断言した、がすぐに不安そうな表情をする。
「…でも、色々と問題があるんじゃないですか? 実家とか、文ちゃんの傷害とか… それと、私が逃げた事とか…」
いっぺんに落ち込んだ清香の髪を優しく撫ぜると、三田は優しい声で語りかけた。
「その辺の問題は解決したから心配するな。まず、文の傷害だが、瞳子さんは届け出を出さないそうだ。むしろ出さないでくれと頼まれたほどでな」
傷害罪は親告罪ではない。本当は裏で色々と手を回したのだが、それは言わないでおいた。
「次にお前が逃げて皆に心配させた件だが… まぁ、それはお前が自分で頭を下げろ。心配した人全員にだ。できるな?」
三田の言葉に、清香は神妙な顔で頷く。
「よし、では明日、お前の実家に行くぞ」
予想はしていたが、この言葉に清香はかなり緊張した。写真でしか知らない母親や、顔も知らない祖母に会うのは、かなり勇気が居る。
そんな様子を見た三田は、苦笑すると励ますように言った。
「まぁ、そんなに緊張するな。私も最初は物を投げられたが、とりあえずは納得してもらった。悪い人たちではない」
その言葉で、清香は三田がすでに実家に行ったことを思い出した。
「あのぉ…」
「何だ?」
「私の実家って… どんなところでした?」
「ふむ…」
三田は考え込むように頷くと、スッと清香と視線を合わせた。
「では、そこから話そう……」
田舎道の国道を延々と走り続けて、三田はようやく目的の地名を標識に見ることが出来た。
「流石に車は無茶だったか…?」
すでにハンドルを握ってから10時間以上経過している。途中で何回かは仮眠を取ったが、それでも抜けきれない疲労が三田の全身を覆っていた。
移動に車しか使わないのは三田の悪癖の一つだ。別に飛行機や列車が嫌いと言うわけではないのだが、どうにも自分で運転していないと気が済まないのだ。
「いや、あと少しだ。がんばれ、三田敦…」
呟くように活を入れると、三田は眠気を振り払ってアクセルを踏み込んだ。
それから、峠を2つほど越えて、三田は事前に約束していた国道沿いのコンビニエンスストアに到着した。
三田が車から降りると、店内で待っていた瞳子がすぐに三田に駆け寄った。
「お久しぶりです!」
「ええ、お元気でしたか?」
「はい、そりゃもう…」
軽く挨拶を交わすと、三田に促されて、瞳子はすぐに車に乗り込んだ。
「では、案内します」
「よろしくお願いします」
そう言いながら、瞳子が助手席からチラチラと三田の横顔を覗き見る。三田と顔を会わせるのは屋敷で別れて以来数週間ぶりだが、その時と比べると大分印象が変わったように思える。
「ん、どうかしましたか?」
「あ、いえ… 少しお痩せになったなぁ、と…」
正直に見たままの感想を言うと、三田は軽く笑って答えた。
「食生活が悲惨なものになりましたからね。以前は一人で何でもこなしていたんですが、人間、楽を覚えてしまうと、なかなか元には戻れませんね」
三田の言葉に頷きながら、瞳子は(三田さん、少し変わったかしら…?)と心の中で首を傾げていた。以前は慇懃さのあまり、少し冷たい印象を感じ話辛かったが、今は自然と会話をすることが出来る。
「良い環境のようですね」
電話では何回か瞳子と話して近況は把握していたが、実際に元気そうな瞳子を見て、文にも問題がないことが類推できた。
「電話で聞くとおり、いいご家庭なんですね。元気な瞳子さんの声を聞いて安心しました」
しかし、ホッとした口調で話す三田とは裏腹に、瞳子の声は多少沈んだものだった。
「あの〜… ご安心なさっているところに水を差すようですが…」
「はい?」
「もう少し覚悟を決めて行かれたほうがいいと思います…」
その一言で、途端に三田の眉根がぎゅっと寄った。どうやら、ホッとした態度は空元気だったようだ。
「…やはり、歓迎されていませんか?」
「当たり前だと思います。私は文ちゃんを連れて行った絡みで親しくして頂いていますが、三田さんは、そのぅ…」
言いにくそう瞳子は口篭ったが、三田に視線を投げられ、一気に言った。
「娘を強奪しに来るようなものですから…」
三田は返事をしなかったが、態度で示すかのようにアクセルを踏み込んだ。
「遠いところをわざわざお越し頂き、ありがとうございます。ところで、いつお帰りでしょうか?」
最初に受けた言葉がこれだった。
玄関に迎えに出てくれた文との再会もそこそこに、三田は和室の応接間へと通され、そこで深沢邸の女主人と向き合っていた。
応接間には、文も居なければ瞳子も居ない。三田は馴れない正座の姿勢で、正面に女性二人を見据えることになった。
「コホン、失礼… えー、先ずは私に謝罪をさせて下さい。その… 1月半ほど前の話になりますが、フェリー上で深沢さんとお会いした時に…」
「未亜子、この人とお知り合いかい?」
「いいえ、お母様。知りませんわ」
なんとか言葉を繋ごうとした三田を、母子がばっさりと切り捨てた。三田の顔に脂汗が滲む。
「お怒りはごもっともです。私は人道にもとる行為をしてしまいました。それを否定することもいたしません。ですから、過ちを正すためにも、謝罪を受け入れて頂きたいのです。お願いします」
言葉と共に三田は精一杯頭を下げた。
しばらく、そのままで時間が過ぎた。そう簡単に許してはもらえないと覚悟をしてはいたが、それでもこの間は辛い。
(仕方がない、か… そりゃそうだ…)
ようやく、正面の2人が溜め息を吐く雰囲気が感じられると、若い声で「顔を上げてください」と声が掛かった。
三田が顔を上げると、2人がバツが悪そうに顔を横に向けている。根は善人なのだと、三田は感じた。
「…フェリーで黙っていられたのには、正直怒りしかありません。ですが、結果的には娘たちを返して頂いたのですから、当方としても文句はありません。
それに、施設がなくなって、姉妹がばらばらになるところを引き取って頂いたのには感謝しています」
感情を抑えているのか、未亜子が淡々と言った。
「その話は…?」
「文から聞きました。文は大変そのことに恩を感じているようで、10回は聞かされました」
「そうですか…」
三田は自分の頬が緩むのを感じた。おそらく、文は自分が来ることを知って必死にアピールしてくれていたのだろう。それが単純に嬉しい。
「随分と…」
どこか羨むような口調で未亜子が呟く。
「随分とあの子に慕われていらっしゃるんですね…」
それは、はっきりと嫉妬だとわかる言葉だった。当然だ、と三田は思う。1年間濃密な時間を過ごしたとはいえ、自分は赤の他人だ。実母からしてみれば、娘が赤の他人を良く言うのは複雑な気分なのだろう。
「文がこの家に来てから、あなたの話が出ない日はありませんでした。こんな言い方はしたくありませんが、あの娘にとってはあなたは父親のような存在だったようですね」
未亜子の声は氷点下の冷たさだが、逆に三田はその言葉でどんどんと気持ちが浮ついてくるのを感じた。
「大したことはしていませんし、出来てもいません」
「謙遜はよしてください」
「いえ、本当にそうです。もし、深沢さんの目に文さんが立派に映るのならば、それは施設に居たときの教育が良かったからでしょう。面識は有りませんが、指導された方は立派な人物だったと聞いています」
「そうですか…」
それきり、未亜子は黙った。三田は一つ深呼吸をすると、切り出す良いタイミングと口を開きかけた。
しかし、三田が話すよりも先に、それまで黙っていた静ばあさんが口を開いた。
「頭を下げるのがあんたの目的かい? それならもう終わったろう。とっとと帰ってくれんかね?」
機先を制されて三田は思わず鼻白んだ。やはり年の功は違う、と思わず河合の顔が浮かぶ。
「いえ、それは目的の一つです。まだ、あります」
「聞く気は無いね。これ以上、あんたに何の用がある? 引き取っている間の生活費でも要求する気かい?」
「そのつもりもありません」
三田はここが勝負どころだと覚悟を決め、じっと2人を見つめた。
「今日は、お嬢さんを頂きに参りました」
「どうかなぁ…?」
「どうだろうねぇ…」
三田を応接間へと通した後、文と瞳子は文の私室でまんじりと時間を過ごしていた。
「文のことは、もう旦那さまに話してるんだよね?」
「うん、そこは納得していたわ」
「じゃ、あとはお姉ちゃんか…」
呟いてから少し頬を膨らませる。その仕草が可愛くて、瞳子は思わず文のほっぺたを突っついた。
「なによう!」
「妬けちゃう?」
悪戯っぽい瞳子の問いに、文は「しょーがないもん」と答える。
「私は、あの時逃げる勇気無かったから…」
清香が河合の車から居なくなった時のことを思い出す。あの時の姉は、まるで前々から決めていたかのように姿を消した。
「じゃ、あとは三田さん次第ね」
「驚くお母さんの顔がはっきり浮かぶよ…」
ポツリと呟くと、文と瞳子は顔を合わせて「あはは…」と苦笑した。
宣言した後、明らかに空気が変わった。
未亜子の目が釣りあがり、嫌悪から怒りへと表情が変わった。
「…今、なんと?」
「お嬢さんを頂きたい、と申しました。有り体に言えば、結婚の許可を下さい」
確実に一生の中で一番緊張している、と三田は感じた。背中に冷や汗が流れ落ち、じっとりと脂汗が浮かぶ。清香の顔が見たい。
「…確認しますが、それは清香の事で間違いありませんか?」
「はい、その通りです。清香さんを私に下さい」
言いながら、再度頭を下げる。が、すぐに「頭なんか下げないで下さい!」と未亜子が怒鳴った。
「は…」
「あなた… あなた、何を…!」
あまりの衝撃なためか、未亜子の口が回らない。
「何のつもりなんですか!? いえ、何がしたいんですか? 今は確かにこちらには居ませんが、清香もこちらに帰す約束だったでしょう?
私は今でもあの娘が帰ってくるのを、今か今かと待っているんです。文も居るし、捜索はそちらでやるからと自重していますが、本当は今すぐにでも探しに行きたい気分なんですよ!!」
「はい、理解しております」
「理解? 理解ですって!?」
未亜子は信じられない、と言う風に首を振る。
「理解してらっしゃるのなら、今すぐ出て行ってください! そして、一刻も早く清香を連れてきて下さい!」
「それはできません」
三田はキッパリと断った。が、口の中がカラカラだ。清香の淹れたお茶が飲みたい。
「清香を連れてくるにしても、深沢さんの許可を頂いてからです」
「許可なんか出すもんですか!」
未亜子もキッパリと言った。
「だいたい、常識で考えてください! 歳だって、あの娘は今年で、今年で…」
「今年17になりました」
「そう! 17歳です! 結婚とかどうこう言う歳では…」
未亜子の声が急に沈んで小さくなった。自分が18で清香を産んだ事を思い出したのだ。
「ふん、まぁ、法律的には問題ないわな。ただ、ちーとばかり歳が離れているが…」
それまで黙っていた静ばあさんが口を開いた。それに未亜子が慌てて同意する。
「そ、そうです! 三田さん、あなた今年でお幾つになるの!?」
「未亜子さんと同い年です」
「それじゃ、本当に親子ほども離れているじゃない! よくもまあ、そんな破廉恥な…」
そこで、未亜子はハッと口をつぐんだ。とある可能性を思い立ったからだ。
「あなた… もしかして清香と、その…」
未亜子の言わんとする事は、すぐに理解出来た。三田は聞かれたら正直に話そうと考えていた。
「はい、清香とは性交渉をもっていました」
「そん、な… はっ、まさか、文は、文は!」
「同じく、です」
その瞬間、未亜子は床の間に飾ってあった花瓶を引っ掴んで、思いっきり力を込めて三田に放り投げた。花瓶は三田を外れて壁に当たったものの、中の水が掛かり三田はびしょ濡れになった。
「けだもの!」
「…仰る通りです」
流石に動揺を隠せずに、震える声で三田が答える。
仁王立ちして息を荒く吐く未亜子に、静ばあさんが「未亜子、座んなさい」とたしなめた。
未亜子は言う通りに座ると、今度はさめざめと泣き出した。場の空気が嫌なものになった。
静ばあさんが「はぁ…」とため息を吐くと、改めて三田の方を向いた。
「な、何の音かな…?」
応接間の方で派手な音がした。未亜子の怒鳴り声も聞こえる。
「見に、行く…?」
文と瞳子がお互いに顔を見合わせる。三田にも未亜子にも来ないで欲しいと言われていたが、流石に気になってしょうがない。
「ちょっとだけ…」
文が人差し指と親指の隙間を、ちょこっとだけ開けながら言った。
「もう、お分かりでしょうが、あんたに孫はやれません。そりゃ、私も未亜子も孫の顔もわからないくらい極道な親です。でもね、だからこそ今からしっかり育てて行きたいという気持ちも強いんですよ」
横で未亜子がうんうんと頷く。
「私も未亜子も、孫たちを捨てた事を散々後悔してきた。その罪滅ぼしも、させてくれんのですか?」
静ばあさんの声には真摯な響きが伴っていた。なるほど、この老婆は極端な愛情を持っているのだな、と三田は考えた。
(私と同じか…)
そう考えると、少し可笑しくて、これからの自分の行動にいくらかの余裕が出てきた。
「…そういった事情もひっくるめてお願いしております。深沢さん方にも清香は必要な存在でしょうが、それ以上に私にとってもあの娘は必要な存在なのです」
「おもちゃとしてかい?」
「いえ、人生のパートナーとしてです」
そう言うと、三田は懐に手をやった。幸いな事に濡れていないようだ。
「もちろん、タダでとは申しません」
スッ、と懐から分厚い封筒を取り出すと、三田はそれを2人の中央に置いた。
「結納金代わりです。お納め下さい」
静ばあさんが訝しげに封筒の中身を確認して、ぎょっとした顔つきになった。
「これ、あんた…」
てっきり札束かと思ったら、それは50枚綴りの小切手帳2冊だった。どの小切手にも深沢が取引する銀行の名前と、そして10,000,000の数字が刻印されている。
しめて10億円。個人が持つにはとんでもない額の数字がそこには記載されていた。
「あんた、あんた…」
静ばあさんは、ワナワナ、と震えて声を出せない。隣の未亜子も同様だ。
「お納め下さい」
もう一度、三田が静かに言った。
「あんた! 金で孫を買おうって言うのかい!!」
「その通りです」
静ばあさんは何か投げるものは無いかと、きょろきょろと辺りを探したが、すでに未亜子が花瓶を投げつけているので、歯軋りして三田を睨んだ。
「…あんた、けだものの上に人でなしだね。どうせ、ウチの事情も知った上での事なんだろう?」
「はい、存じております」
「はン! 存じてます、か!」
顔も見たくないと、静ばあさんがそっぽを向く。
三田の胃がキリキリと痛む。顔では平静を装っている三田だが、内心は逃げ出したいくらいに動揺している。
「決まりだ。あんたにゃ孫はやれない。金勘定だけで渡世しようなんて人間に、孫をやれるもんか!」
最後通牒とばかりに静ばあさんが言い放った。
(ここが正念場だ…!)
三田は、ぐっ、と腹に力を込めた。
「…しかし、私にはそれしかないのです」
三田が力強く言った。
「元々、金儲けにしか能の無い人間です。あれこれと釈明の言葉を重ねても、清香への愛を説いても、それは私の本気を表すものではりません」
清香の存在が欲しい、今こそ切実に三田はそう感じる。
「私の本気を表すのは、お金しかないんです。その10億は、私が10年以上かけて、こつこつと積み上げてきた物です。もちろん、その全てではありませんが…」
そこで三田は一つ息を入れた。2人は黙って話を聞いている。
「ですが、私の半身といっても過言ではありません。願うるならば、単なるお金として見ないで下さい。私が、これほど清香を必要としているのだと、どうかご理解ください」
ここで、三田は深々と頭を下げた。
「お願いします、どうか清香さんを私に下さい! 必ず、幸せにしてみせます!」
いつも冷静でいる三田の、心からの懇願だった。
…規制喰らった上にタイムアップ
本当にすみませんが、明日の10時に再開します… 本当に、すいませんm(__)m
とりあえず…お疲れ様でした!
>>454 投下お疲れ様です
続き楽しみにお待ちしております
三田さんかっけぇ 惚れる
続き楽しみにしてます!
ついに来たか…!
GJ!
ついにキタ!!
待ってた! 待ってたよ!
そして続きを待ってる!
おはようございます。
最後にミソをつけて申し訳ありません。
7話の続きを投下します。
「………」
襖を隔ててすぐ隣室で、文は三田の言葉を聞いていた。その顔が大きく歪んでいる。
「大丈夫?」
小声で瞳子が尋ねる。文は歯を食いしばって「うんうん」と頷いた。
「あはは、お姉ちゃんの一人勝ちだね…」
力なく笑う文を、瞳子がソッと文を抱き寄せた。
「こっちで、良い男見つけなさい」
「うん、ありがと…」
瞳子も失恋が決定的となったのに、自分を慰めてくれるのが嬉しかった。
「さて、覗くのはこれぐらいにして、戻りましょうか」
「…そだね」
2人は頷き合うと、ソッとその場を後にした。
「顔を上げてください」
今度は早い時間で静ばあさんが言った。三田が顔を上げると、静ばあさんは小切手の詰まった封筒を三田に滑らせた。
「あんたの本気は良くわかった。しかし、こちらも『はい、そうですか』とは受け取れない。そうだね、未亜子?」
「…はい、清香の本心も聞きたいです」
十分に落ち着いたのか、未亜子がしっかりとした声で言った。
「三田さん。あなたの気持ちは理解出来ました。清香を手放したくないという想いも。だから、私もあの娘の母親として考えたいと思います。
そのために、一度あの娘を連れて帰っていただけませんか? そうして、あの娘の気持ちを聞いた上で、判断したいと思います」
その言葉に、三田は大きく頷いた。
「はい、当然のご判断だと思います。清香はH市に居ますので、今日中に連れて帰るのは難しいですが、明日の夜には連れて参ります」
その言葉に、静ばあさんが慌てて言った。
「ちょっと待った。あんた、もしかして今から行くつもりなのかい?」
「はい、このままトンボ帰りして、清香を連れて来ます」
「…まぁ、帰れといったのはうちらだが、今晩ぐらいはゆっくりしていきなさい。見たところ、だいぶ疲れているんだろう?」
指摘されて、三田は情けなさそうに眉根を寄せた。確かに、このまま、またハンドルを握るのは億劫だ。
「それに、文が拗ねてしまいます。三田さんが来るのをとても楽しみにしていたんですから。…まぁ、本音を言えば、多少不安がありますが」
その言葉はチクリと胸に刺さったが、三田は申し出に甘える事にした。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
三田がそう言うと、静ばあさんが大声で「文!」と呼んだ。
程なくして、バタバタと音を立てて文が現れた。
「おばあちゃん、呼んだ?」
「この人の部屋の用意。あたしゃ疲れたから引っ込む」
そう言うと、静ばあさんは億劫そうに立ち上がって応接間から出て行った。緊張が解けたように未亜子が「はぁーー…」とため息を吐く。
「お母さん…」
「文、おばあちゃんの言う通りにして。三田さん泊まっていかれるから。部屋はわかるわね」
「う、うん…」
そう答えて、文は三田に「えへへ…」と笑いかけた。三田は思わず頭を撫ぜたい衝動に駆られたが、流石に実母を前にしてそれをする勇気は無い。
「こっち、です…」
文も遠慮しているようで、はにかみながら、とてとて、と歩き始めた。
「あ、おい… では、一旦、失礼いたします」
少々焦りながら、三田は未亜子に一礼すると、文の後を追って応接間を出て行った。
「……はぁ」
残された未亜子が、盛大にため息を吐いた。
「ちょっと、ほんのちょっとだけど…」
小さな声で呟く。
「ちょっとだけ… 羨ましいわ…」
「旦那さまっ!」
三田を客間に通した途端、文は三田に抱き付いた。
飛んできた文を軽々と受け止めて、三田は思う存分文を抱き締めた。
「元気にしていたか?」
「はい… お母さんもおばあちゃんも、とても優しいです」
「そうか…」
面と向かってその言葉を聞いて、三田は心底ホッとした。杞憂だとは思っていたが、やはりちゃんと扱われているのか心配だったのだ。
「それと、瞳子さんにごめんなさいって言って、仲直りしました」
「うん、瞳子さんから聞いた。偉いぞ」
さらに頭を撫ぜられて、文は嬉しそうに「えへへ…」と笑った。
「………」
文は名残惜しそうに身体を離すと、散々躊躇ってから携帯電話を取り出した。
「ちょっと、ごめんなさい…」
ペタン、と座って、パカリ、と携帯電話を開くと、猛然と打ち始める。なんとなく居心地が悪い三田は、先ほど濡れてしまった上着を脱ぐと、念のため持ってきたシャツに着替えた。
(誰とメールしているんだ?)
メールは1回では済んでないらしく、文の指は止まる気配がない。
ほどなくして、ようやく指を止めて携帯電話を仕舞うと、文は座っている三田と膝が突付き合う距離まで近付いて正座した。
「ん、どうした…?」
見詰め合った文の目が、ひどく思いつめた風に感じる。三田の心が微かに粟立つ。
「…旦那さま、お願いがあります」
深々と頭を下げる。
「私とお姉ちゃんと一緒に、逃げて下さい」
(何だ!? 何を… いや、当然なのか… 確かに、責任はある…)
数瞬の間に三田の思考が稲妻のように駆け巡る。
文の真意がわからない。事件前に清香から聞いた話や、最近の瞳子との電話で、文はこの家で暮らす事に前向きであると思っていた。
(しかし、そうだ… 文本人に確認したわけではない…)
三田は己の浅はかさと身勝手さを悔いた。自分たちの事ばかり考えて、ある意味一番の被害者である文を蔑ろにしていた。
(逃げる… 出来ない事ではない…)
自分の懐には10億の小切手がある。それに、自分の商売はパソコンとインターネットさえあればどこででも再開出来る自信はある。
(だが、それでは、また不義理を果たすことになる…!)
あまりの葛藤に泣き出しそうだ。それも全て身から出た錆と考えれば、納得するしかない。
「あ、や…」
絞りだすように声を出す。身を切るどころか、全身がすり潰される思いで三田は口を開いた。
「すま…」
「はい! 嘘です!!」
三田が答えるより先に、文が勢い良く顔を上げて言った。そのあまりの元気な声に、三田は一瞬あっけに取られて、そして、かぁ、と頭に血がのぼった。
「お前! 何の、つもり、だ…」
怒鳴りつけようとした三田の声が萎む。満面の笑みを浮かべる文の瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。
「文…」
「えへへ、これくらい、いいでしょ。ね?」
涙がこぼれるのを必死に堪えて文が言う。
「旦那さま、お姉ちゃんを幸せにして下さい。文は大丈夫です。お母さんと、おばあちゃんと、この家でしっかり生きて行きます」
涙をごしごしと拭って、文はしっかりと言った。釣られて三田が頷くくらい、力強い言葉だった。
「ああ、わかった。約束する」
「はい… で、でもですね、あのぅ…」
途中、突然声色を変えて文が呟く。
「ん、何だ?」
「最後、最後なんです。もう、最後の機会なんです…」
「何だ、何の話だ?」
「最後に、今からデートしてくれませんか?」
文のお願いに、三田は低く唸った。
文の想いを考えれば、デートの1つや2つはしてやりたかった。だが、流石に今すぐは深沢家に対して体裁が悪い。
「文、会うのがこれで最後ではないんだし、また日を置いてから…」
「ううん、今日じゃないと… お姉ちゃんが来てからじゃ、遅いんです…」
ここで、三田はようやく気が付いた。文は“おねだり”をしているのだ。
「だが、皆の目がある…」
「お母さんやおばあちゃんなら大丈夫。瞳子さんにアリバイ頼みました。上手くやってくれるそうです」
手際の良さに三田は唸った。
文は再び頭を下げると、既視感を感じさせる口調で言った。
「ケジメにします。旦那さま、マゾ犬の文に、最後の調教をしてください…」
小さく丸まる可愛い奴隷に、三田は覚悟を決めるしかなかった。
「わ、わっ! 地下室とそっくりな部屋ですね!」
深沢邸からこっそりと抜け出すと、文は前々から目星を漬けていたというファッションホテルに三田を案内した。
「…なんでこんな田舎にこういうホテルがあるんだ?」
県道から少し外れたところにあったその建物は、外装からして金の掛かった作りをしており、文が当たり前のように選んだSMルームも、マニアの三田から見ても相当手の込んだ作りをしている。
「ここらへん、ドライブなんかのデートコースなんですよっ!」
はっきりと舞い上がっているのを隠そうともせず、文は陽気に言った。カラ元気というわけでもなく、純粋に今からのプレイが楽しみなようだ。
「ま、あるものは使わせてもらうか…」
室内の設備や道具をざっと点検した三田が、区切りをつけるようにベッドに腰掛けた。
「挨拶」
「はいっ!」
対照的な声を交わした後、文は腰掛けた三田の足元に這いつくばって頭を垂れた。
「旦那さま… 卑しいマゾ犬の文です…」
一度、口をつぐむ。
「文は、旦那さまに苛められるのが本当に好きでした。けつまんこも、おっきいおっぱいも、旦那さまが開発してくださった身体の全てが、文の宝です。でも、明日からは普通の女の子に戻ります。マゾ犬は、たまに思い出すかもしれないけど、今日でひとまずはお別れです」
スッ、と視線を上げると、文はにっこりと自然な笑顔を見せた。
「旦那さま、最後の調教をお願いします」
その愛らしさに、三田は思わず頭を撫ぜたくなった。だが、その衝動はぐっと堪えた。今は邪魔なだけだ。
「…挨拶の仕方を忘れたのか? 奴隷が挨拶の最中に顔を上げるな」
「す、すみません!」
慌てて文が顔を下げて床に額を擦り付ける。
三田は足を上げると、思い切り勢いをつけて文の頭を踏み潰した。
「がっ!」
顔面を思い切り床に打ちつけ、鼻の奥にツンとした血の匂いが広がる。文の頭の中が一瞬真っ白になった。
「…お礼はどうした?」
わずかにもがく文の頭を、さらにグリグリと踏みにじって三田が言う。口も押さえられた文が、苦労しながら「あ、ありがとう、ございます…」と呻くと、三田はようやく足をどけて文に立つように命じた。
「は、はい…」
流石に踏みつけは強烈だったのか、一気に大人しくなった文が震えながら立ち上がる。2人の目が合うと、三田は間髪いれずに文の頬を張った。
パシィィ! と鋭い音が室内に響く。
「はぅ! あ、ありがとうございます…」
「マゾ犬が服を着るな」
その一言で、文は慌てて着ている服を脱いだ。身長、年齢に相応しくないおっきいおっぱいが、荒い息と共に揺れる。
「少し、躾をしなおす必要があるようだな。そこの壁に手を付いて尻を出せ」
そう言われて、文はすぐに示された壁に手をついて、思いっきりお尻を突き出した。
この体制では振り返ることを許されていない。三田が宣言でもしないかぎり、どんな責めがくるのかは文にはわからない。
(お尻、叩かれる… パドルかな、鞭かな… 旦那さまの平手がいいな…)
恐怖と期待とがない交ぜになった頭で文が想像していると、背後から、ヒュン! と風きり音が鳴った。
(鞭かぁ… 実はあんまり痛くないんだよね、あれ…)
半ば落胆していると、「いくぞ」と三田の声が掛かった。「お願いします…」と答えて、叩かれ易いようにさらにお尻を高々と上げると、ヒュン! という風きり音が鳴り、
文の全身に激痛が走った。
「ぎゃあああ!!」
打たれたのは尻なのか背中なのか。それすらも分からないほどの激痛が文を襲った。一瞬で頭が真っ白になり、身体を支える足がガクガクと震えだす。
「数を数えるのも忘れたか?」
「あ、い、いっかい…」
条件反射のように文が答える。
その答えに、不満そうに頷いた三田が、思い出したように言った。
「この部屋の道具を揃えた人間は、SMの素人だな。あるいは競馬のファンかもしれんが。まさか本物の乗馬鞭が置いてあるとは思わなかったよ」
そう言って、三田が手にしたものを文に見せる。それを見て、文の血の気が引いた。
それは馬用の乗馬鞭だった。
以前、三田に教わった事がある。プレイ用の鞭は殺傷力を抑えられていて安全だが、本物の乗馬鞭は基本的に馬用だから、人体には衝撃が強すぎる、と。
(え… 馬用…? 馬用の鞭で文は叩かれたの…?)
意識が混乱して良く分からない。だが、三田はそんな文をお構いなしに再び乗馬鞭を振るった。
ビシィィ!!
「ぎゃああああ!!」
今度ははっきりとお尻だと分かる。打擲の後、真っ白な文のお尻にはっきりとした赤い線が浮かぶ。
「数はどうした!」
「いや!、 いやぁぁ!!」
頭をぶんぶんと振って文が叫ぶ。ここ最近はまったく感じることが無かった明確な『恐怖』が、文の心を支配していた。
「5回だ! 数えろ!」
「うぅ… に、にかい…」
「ようし、次だ!」
再び、三田が乗馬鞭を振りかぶる。
ビシィィ!!
「ひぃぃ!! さんかい、です… ああ、許してください…」
文が涙ながらに懇願するが、三田は完全にそれを無視すると、機械的な動きで残り2発の打擲を打ち込んだ。
ビシィィ!! ビシィィ!!
「あぅ! よんかい、ごかい、です…」
息も絶え絶えに文は言うと、そのままがっくりと床に崩れ落ちた。そのお尻は、痛々しいほどに腫れ上がっている。
「よし、よく耐えたな、偉いぞ」
三田が文の顔を上に向けて、強引にキスをする。痛みの中の優しい刺激を受けて、文は夢中になって三田の唇を吸った。
「ふぅん… ちゅぱ…」
三田はキスをしたまま文をお姫様抱きすると、そのままベッドまで連れて行って、ゆっくりと降ろした。
「流石に効いただろう?」
「…痛かったです」
拗ねた用に文が言う。三田は軽く笑うと、文にお尻を突き出すように命じた。
「どら、見せてみろ… なんだ、濡れてるじゃないか。お前、本当は嬉しかったんじゃないのか?」
三田が文のヴァギナを指で掬うと、手にはヌラヌラと光る愛液が纏わり付いてきた。
「ホントに痛かったです! …でも、ちょっとだけ新鮮で良かったです…」
ぷう、と文が頬を膨らませる。だが、三田が濡れた手で文のアナルを弄りだすと、途端に蕩けた表情に早変わりした。
「んぅ、はぁん…」
「締まりと感度は相変わらずだな… ん?」
弄っている最中に何かに気付いた三田が、弄っていた手を引き抜いて文の鼻先に突き付けた。
「おい、準備が足りないみたいだぞ」
そう言われて、文は恥ずかしそうに顔を伏せた。
「だ、だってぇ… お金は瞳子さんに預けちゃったから、浣腸なんて買えないし… そんなに上手い具合には出せないです…」
屋敷では定期的に浣腸と洗腸を行い、常にアナルセックスに備えていた文だが、流石に深沢邸ではそういうわけには行かず、実を言うと軽い便秘に悩まされていた。
「浣腸は… 置いてないか。役に立たんSMルームだ。格好ばかり付けるからこうなる…」
なにやら不満げにぶつぶつと呟く三田を見て、文は申し訳なさそうに言った。
「あの… 今からトイレに行って来て良いですか?」
「それできちんと出るならいいがな…」
そう言うと、三田はふと思い付いたように顔を上げると、出し抜けに文のアナルに指を3本突っ込んだ。
「にゃん!」
「どうだ?」
3本の指をぐりぐりと動かされて、じくじくと走る快楽に耐えながら、文が「な、何がですか?」と尋ねた。
「痛くないか?」
「だ、大丈夫ですけど… ひゃん!」
文の答えを聞いて、入れた時のように指を引き抜くと、枕元のティッシュで指を拭きながら三田が言った。
「掴み出せ」
「え、えぇ?」
よく意図が分からず、文が妙な声を上げる。
「便はかなり下まで降りているようだ。とりあえず、入り口で固まっているのを取れば自然と中身も出るだろう」
「あの、えと、というと…」
だんだんと三田の言わんとしてる事を理解して、文の表情がこわばり始めた。
「私の手じゃ太すぎるからな。自分で手を突っ込んで掴み出せ。幸い、ローションは大量にあるようだ」
そりゃーないぜー。と、文は心の中でツッコミを入れた。
「じゃ、始め、ます…」
明らかに緊張した声で文が言う。
ベッドの上に左病臥になった文は、大量のローションでヌラヌラと光る右手を肛門に押し当てた。
「まずは4本の指が入る事を確認しろ。本番はそれからだ」
(旦那さま、簡単に言うけどぉ…)
屋敷で散々に拡張されてきたから、それ位は楽勝で入るとは分かっているが、その後を考えると流石に動きが鈍ってしまう。
「どうした? 私が掻き出してやろうか?」
「や、やります!」
慌てて答えると、文は覚悟を決めて、先ずは3本の指を肛門に沈め始めた。
「はぁぁぁぁぁ……」
大きく息を吐きながら3本指を根元まで突き刺す。普段、アナルオナニーをする時は指3本だから、これ位は余裕で入る。だが、今回はそれだけではない。
「………うし」
3本指で十分にほぐしてから、文は一旦指を引き抜くと、今度は4本の指をまとめて団子状にして肛門に押し当てた。
「い、いきます…!」
「ああ」
三田の短い返事を合図に、文は4本の指をゆっくりと肛門に沈め始めた。
「く、くぅ…」
すぼめた指の先端は楽に入るが、根元に行くに従ってどんどん指は大きくなる。文は何度も深呼吸を繰り返して指を進めていった。
「うぅ… ど、どうですか?」
いい加減、進むのが辛くなってから三田に声を掛ける。三田は挿入部を矯めつ眇めつ眺めると、短く「よし」と呟いた。
「十分だ。ゆっくりと親指をもぐり込ませて、後は呼吸に合わせて手首まで入れろ」
すでに息荒く、脂汗を流し始めた文がコックリと頷く。苦労して親指を折り曲げると、捻じ込むようにして肛門に突っ込む。
「うぅ…」
4本の指を入れているせいか、親指は難なく入った。
(…あぁ、あっさり…)
悲しいような嬉しいような、よく形容出来ない感情で文は「はぁぁぁ…」と大きな溜め息を吐いた。後は押し進めるだけだ。
「じゃ、じゃあ、入れます」
震える声で宣言して、肛門の力を緩めながら手首に力を込めると、ぬぽぉ、と間抜けな音がして文の手が肛門にもぐり込んだ。
「あ、はいった…」
手首まで入って逆に余裕が出来たのか、以外に冷静な声で文が呟く。探るように三田を見上げると、三田は文の肛門をじっと見詰めてから頷いた。
「案外、楽に入ったな。普通、摘便というものは指2本で行うものだが、まぁ、いいだろ」
「えぇー…」
口では文句を言いながらも、文は挿入が上手く行った達成感と、アナルの性感帯を直に触れる事で得られる怪しい快感を感じ始めていた。
(あ… すごい… お尻の中、あったかくて、ぐちゃぐちゃで、ざらざらで…」
一度動き始めた手は止まらない。文が思い切って指をぐちゃぐちゃに動かすと、これまで感じた事の無い快感が文の脳髄を貫く。
「あったか?」
三田が短く尋ねると、文は恥ずかしそうな表情をした後、コクンと頷いた。突っ込んだ手の先に、確かに固い感触があった。
「恥ずかしいです…」
羞恥に顔を真っ赤に染めて呟くと、文は人差し指と中指で“モノ”を掻き取ると、そのまま掌に握り込んでゆっくりと手を引き始めた。
「子宮を圧迫しないように注意しろよ」
「はいぃ…」
真剣に返事をして深呼吸を繰り返す。経験的に、入れるときよりも抜くときの方が危険だと分かっている。文は括約筋が緊張しないよう、全身を脱力させて右手を抜き取った。
「はぁ!」
手を抜いた瞬間、どっと冷や汗が噴き出して荒く息を吐く。ぼんやりとした意識で右手を眼前に持っていると、それには茶褐色の排泄物がべっとりと付着している。
「あはははは… やっとでたぁ…」
満足そうに笑った文だが、次の瞬間「はぅ!」と呻いて左手をお腹に当てた。
「だ、旦那さま…」
「塞いでいたのが無くなったんだ。そりゃ、催すだろう。行って来い。ついでに綺麗にもしてこい」
「は、はい…!」
文は、コクコク、と頷くと妖しい足取りで化粧室に駆け込んだ。ほどなく、個室からは嬌声があがった。
「では、改めまして…」
全部出して綺麗にした文が、ベッドに腰掛ける三田の足元で座礼した。
「ご奉仕してもよろしいでしょうか?」
顔を上げずに文が尋ねると、三田は「ああ、いいぞ」と頷いた。その声に、文は勢いよく顔を上げて、ニコッ、と満面の笑みを浮かべた。
「はい! 失礼します…」
丁寧な手付きで三田のズボンを降ろし、まだ力のない三田のペニスを取り出すと、直ぐには咥えずチロチロと舌先で舐め始めた。
「チロ、チロ、レロ…」
顔を近づけると強烈なオスの匂いが飛び込んでくる。文は三田の匂いしか知らないが、この匂いは初めから好きだった。
(むわっとして、ツンとして、舐めると苦くて、しょっぱくて…)
ああ、だから私は変態なんだなー、と身体で理解する。同時に、これでこの匂いともお別れだと思うと、抑えていた感情が溢れそうになる。
「うぅ… あぁむ、んぐ、んぐ… すん…」
三田に覚られないように、大きくなり始めたペニスを咥え込んで鼻を啜る。
(だめだめ… 最後までちゃんと奴隷でいなきゃ…! 気持ちよくお別れするんだ…」
そう覚悟を決めなおして、文はあらん限りの舌技を駆使して三田のペニスをしごき上げた。奉仕に熱中して、胸のもやもやを吹き飛ばそうとした。
だが、それなのに、涙が止まらなくなった。
「ふぐぅ… ぐぅ、うぅ…」
えずいた拍子に出たと言い訳できないぐらい、ぼたぼた、と涙が零れ落ちる。
あれほど覚悟は決めていたはずなのに、未練を断つためにこんな事をしているのに、それでもこんな風に奉仕をすると、あの屋敷での想い出を思い出してしまう。
(馬鹿だ、私… こんな事すれば思い出すって分かっていたはずなのに…)
情けなくて逃げ出したくなる。奉仕の口が止まり、文は口からペニスを吐き出そうとした。
「あ…」
しかし、その前に三田が文の頭に優しく手を置いて文の動きを止めた。
「ふぐぅ〜…」
涙を一杯貯めて目で、上目遣いに三田を見る。三田は滅多に見せない優しい表情をしていた。
「未練なんて、そうそう簡単に断てるものではない。どうしたって断てずに、時の自浄に任せなければならないこともある。
文。お前との関係がまさにそうだ。私はお前の身体をそう簡単に忘れる事は出来ないだろう。それは、清香でも代わる事ができないものだ」
文の表情が驚いたものに変わる。こんな話を三田がするとは思わなかった。
「お前の身体が欲しくて欲しくて、夜中に目を覚ますかもしれない。ひょっとしたら、清香を抱いている最中でもそう思うかもしれない。それ位、お前への執着は強いんだ。
…だから、お前も割り切って開き直れ。考えてもどうしようもない事を無理に考えるな。今、この、瞬間をしっかり感じ合おう」
三田が語り終えても、文はしばらく動かなかった。しかし、微かに微笑むその顔が、落ち着いた事を示していた。
「……んぐ、んぐぅ… じゅぱっ」
文は再度喉奥までペニスを咥え込むと、口腔全体を使っての奉仕を再開した。
そうして、完全にペニスが勃起すると「じゅぼ…」といやらしい音を立てて口から吐き出し、にっこりと微笑んだ。
「はい、旦那さま… 今日も、いっぱい文を可愛がってください…」
その言葉に三田は頷き、文を軽々と抱えるとベッドの上にそっと降ろした。
「どっちに欲しい?」
ベッドに降ろした文に三田がそう声を掛けると、文は四つん這いになってお尻を突き出した。
そうして、両手を後ろに廻すと、器用に前と後ろの穴に指を突っ込んで、ぐぱぁ、と割りひらいた。
「けつまんこでも、おまんこでも… この穴は旦那さま専用の便所穴ですから、お好きな方に排泄なさってください」
その回答に三田は軽く苦笑すると、「じゃあ、こっちからだ…」と躊躇無くヴァギナにペニスを突き入れた。
「はぁん… おまんこ、久しぶりですぅ…」
屋敷に居たころからも、前穴は清香、後穴は文となんと無く決まっていたから、文が普通に挿入されるのは久しぶりだった。
「よく締まる… 食わず嫌いだったな、お前のここは…」
膣の締まりを楽しむように三田が動きを止める。文は楽しんでもらえるよう、下半身に力を入れてペニスを締め上げた。だが、違う場所も動いたようだった。
「ククッ… 文の肛門がもの欲しそうにパクパク動いているぞ? そんなにこっちにも突っ込んで欲しいのか? ド変態が…」
そう言って、三田は文のお尻に、ピシャリ! と平手打ちを打った。良い音がして、文のお尻が赤く染まる。
「やぁん… う〜、だって、おまんこ締めるとけつまんこも動いちゃうんです… あ〜あ、旦那さまにおちんぽ2つあったら、どっちもしごいてあげられるのに…」
「無茶を言うな…」
呆れ声で三田は言うと、一旦ヴァギナからペニスを抜いて、アナルに再挿入した。
さっきまで腕まで咥え込んでいた文のアナルは、まるで調整装置が付いているかのように三田のペニスにアジャストして締まり始めた。
「ああ… 旦那さま、緩くないですか? その、さっき拡げちゃったから…」
「大丈夫だ。しっかりと締めてくれて気持ちいいよ」
三田がそう言うと、文は「よかったぁ…」と安心して、お尻を左右に振り始めた。
「じゃあ、いっぱい気持ちよくなってください。そして、気持ちよくなったら、文のけつまんこにザーメン注いでください…」
文の言葉が言い終わらないうちに、三田は文の腰を両手で掴むと、猛然と腰を降り始めた。
「あぁ! はぁん!! すごい… すごいです…! 文のけつまんこが、ごりごり擦られてますっ!!」
パン、パン、パン… と、三田の下腹部と文のお尻がぶつかる度に、拍手をするような音が鳴り、文のお尻が、ぷるぷる、と揺れる。
さらに前を見てみると、おっきいおっぱいが千切れんばかりの勢いで前後に、ぶるんぶるん、と揺れていた。
「相変わらず、見事な乳だ…!」
興奮してきた三田は、ペニスを挿入したまま文の身体を180度回転させ、正常位の体勢に移った。
仰向けに向いているにもかかわらず、文のおっきいおっぱいは型崩れずにツンと天を向いている。普通なら左右に垂れるはずだ。
*上レスの続きです。
「胸筋のトレーニングは続けているようだな?」
「は、はい… 裏技で大きくなっちゃったし、維持する努力をしないとお姉ちゃんに悪いし…」
文がそう言うと、三田は少し悩むそぶりを見せてからちょっとした事実を告白した。
「あー、文。今更言うのもどうかと思うが、あの豊胸剤はフェイクだ。実際に胸を大きくする効果なんかは無いんだ」
文の目がぱちくりと瞬きして、次の瞬間、「えぇ〜〜!!」と文は大声を上げた。
「だ、だ、だ、だって、こんなに大きくなりましたよ!?」
「ああ、私もその結果には驚いた。プラシーボ効果というのは凄いものだな。まぁ、あれから清香や私に散々揉まれまくっていたから、大きくなったんだと思うぞ」
三田がそう言って、文の乳首を、きゅっ、と摘んだ。「あぁん!」と文は反応して、少し困ったような顔をする。
「…このこと、お姉ちゃんには内緒ですよ? お姉ちゃん、隠れてこっそりとお薬塗ってたみたいですから」
「だろうな… 安心しろ、清香には言わない…!」
そう言うと、三田は文の乳首を同時に口に含んだ。そうして、歯で両乳首をコリコリと甘噛みすると、文の嬌声が一段と大きくなる。
「あぁん!! 2ついっぺんに噛むなんて、卑怯です… そんなされたら、文、すぐにイッちゃいますぅ…!」
三田はその訴えを無視すると、開いた両手で文の身体を折り曲げ、深く深くペニスをアナルに打ちつけた…!
「あっ、が…」
直腸の最奥を突かれて、文はとうとう絶頂に達した。ベッドに投げたした両手がぎゅっとシーツを握り、三田のペニスが痛いほど食い締められる。
「うぅ、あぁ…」
「続けるぞ…!」
文の状態などお構い無しに、三田は猛然と腰を振り始めた。第2の性器として開発されたアナルが思う様に蹂躙される。
「…ッ! …ッ!!」
イッたばかりの文は、満足に息も吸うことが出来ず、さらに絶頂を重ねる。助けを求めるように両手をバタつかせるが、折り曲げられた状態では動きようが無い。
「ダ、メ… イキ、すぎて…!」
縁日の金魚のように、文がパクパクと口を開いたり閉じたりする。それを見た三田が一旦動きを止めると、文ははっきりと見て分かる位にお腹を痙攣させて、低く長い唸り声を上げた。
「おぉぁぁぁあああああああ…………」
まだイキ続けていると分かる、低い断末魔だった。
「こっちも、出すぞ…!」
三田が我慢していた精を解き放つ。直腸の最奥に精液を流し込まれ、文はその暖かさに歓喜した。
「…満足したか?」
備え付け冷蔵庫のミネラルウォーターで喉を潤して、三田は文に声を掛けた。
最初の射精から数えて3回。最後には小便も肛門にくれてやって、ようやく文はギブアップした。
「…ひゃい」
ごぽごぽと肛門から小便と精液と腸液とが混じった液体を吐き出しながら、文は力無く片手を上げた。
「はぁ」
万感込めた風な溜め息を付くと、文は苦労して上体を起こした。そして、ベッドの上で正座をする。
「旦那さま、最後まで可愛がってくれてありがとうございました」
ちょこんとお辞儀する。三田は改めて文を手放すのが惜しくなったが、かるく首を振ると文に応えた。
「ああ、お前も最後までよく奉仕してくれた。文は今までで最高の奴隷だ」
「…そうですか」
なんだか複雑そうではあるが、それでも嬉しいらしく文は微笑んだ。
「さて、シャワーを浴びて帰るか… 瞳子さんにも連絡を入れた方がいいかな…?」
そう言って、三田はジャケットから携帯電話を取り出した。しかし、開いた液晶画面を覗き込んで、妙な顔つきになる。
「…なんだ、至急連絡?」
三田はすぐにとある番号に掛けて携帯を耳に当てた。ほどなくして出た相手と、2言、3言会話を交わして、「本当ですか…!?」と声を荒げた。
「なるほど、予想はしていましたが、意外と早かったようです… ええ、お金は倍掛けで積みます。速やかに収集をお願いします…
はい、今から向かいます。明日の朝には到着出来ると思います… はい、では現地で」
パタン、と携帯を折り畳むと、三田は「ふぅ」と溜め息を吐いた。
「どう、したんですか?」
文が恐る恐る尋ねると、三田が困った顔をして言った。
「清香がな、どうも金に困ったみたいで、風俗に走ったらしい」
「…へえ」
三田の言葉がよく呑み込めず、気の無い返事をした文だが、しだいに理解が追いつくと、「え、えぇぇ!!」と声を上げた。
「お、お姉ちゃん、風俗って…!?」
「デリヘルだそうだ。やれやれ、いつかはそうなると思ったが、こんなに早いとは思わなかったぞ」
そうぼやくと、三田は文を促してテキパキとシャワーを浴びて居住まいを正した。
「深沢さんへの説明はお前に任せるぞ。私はこれから清香を迎えに行く」
「い、今からですか!?」
三田の言葉に、文が驚いて尋ね返した。三田は数時間前まで長時間の運転をして来たばかりだ。とても体力が持つとは思えない。
「今からだ。私が行かないと処理できないし、私は車でしか移動しない。だから、今からでないと間に合わない。安心しろ、無事故無違反は私の美徳の一つだ」
「公序良俗には思いっきり違反していると思うけど…」
ぶつぶつと呟く文を急かすと、三田は深呼吸をして車のキーを取った。
「…その後、文を実家に降ろして、その足でここまで来た。着いたのは今朝だ。なかなかに疲れたが、それなりの成果はあった。あとはお前を実家に連れて帰って… ん、どうした?」
話を締めくくろうとして、三田は清香の目が据わっていることに気付いた。
「…全部、ばらしちゃったんですか?」
一瞬、何の事かと考えてから、三田は姉妹との肉体関係のことだと気がついた。
「ん? ああ、そうだ。実家にも関係は知れたし、ついでに言えば瞳子さんにもだ。まぁ、具体的に何をした、などとは言っていないが」
「当然です!」
突然清香が大声を上げて、三田は胡乱な顔つきになった。
「私はいくら既成事実が出来てもかまいませんが、文はこれからあの家で生活するんですよ? 変な風に意識されたら…」
言うほどに心配になって来たらしく、清香の表情が段々と暗いものになっていく。
(いつまでも過保護なやつだな…)
そう思うが、そんな風に文を心配する清香を嬉しくも思う。三田は真剣に考えて言った。
「私が言うのも何だが、こういう事は、隠すといらぬ邪推を招くものだ。一つ屋根の下で一緒に暮らすのなら、秘密は少ないほうが良い。そういった秘密も共有して呑み込むのが、家族というものなのだろう」
その言葉に、清香は驚いた表情を浮かべる。
「あなたも、だいぶ変わりましたね…」
「お前たちのおかげだよ」
そう言って、三田は立ち上がった。
「さて、とんぼ帰りになるが、実家に向かうぞ。向こうは首を長くして待っているからな」
しかし、そんな三田の袖を掴むと、清香は強引に三田をベッドに座らせた。
「お、おい…」
「とりあえずは納得しましたが、まだまだ聞きたいことはたくさんあります。…その、風俗の事とか」
「ああ、それは…」
実は三田が探す前に、姉妹の“卸元”である組織が清香を監視していた。
元締めの鮫島に直接会って真意を確かめたのだが、あの奇怪な老人は「サービスじゃ、ぐふふ…」と怪しく笑うだけだった。
また、清香は忘れているようだが、彼女を監視していたのは、1年前に姉妹を屋敷に連れてきた青年なのだ。
「…ま、正直に言えば聞かないで貰いたい。どうにも説明し難いし、お前もあまり良い思いはしないはずだ」
三田の言葉に頷くと、清香ははっきりとした口調で言った。
「わかりました。では、実家に行くのは明日にしましょう」
「…首を長くしている、と言っただろう? 早く帰るぞ」
「いえ、あなたはかなり疲れています。仮眠したとはいえ、長時間の運転を続けてさせるわけにはいきません」
「私は大丈夫だ」
多少、むっとした口調で三田が言う。だが、清香は頑として引こうとしない。
「駄目です! 私はこれからあなたの面倒を1から10まで見るんです。そう、決めたんです!」
鼻息荒く清香が宣言する。その勢いに、三田は思わず頷いてしまった。
「それにですね…」
「…なんだ?」
あきらめてベッドに座った三田が億劫に尋ねる。
「どーりで薄いはずです。文ちゃんに3回も出してたなんて…! 最後だから大目に見ますが、あなたが入れて注ぐ穴はココです!」
ベッドの上でM字開脚のポーズを取って、清香は真剣そのものの表情で言った。
三田はかなりの疲労感を覚えて深い深い溜め息を吐いたが、なぜか嫌な感じはしない。
ただ、この可愛い嫁との生活は、きっと停滞や倦怠などとは無縁の生活を送るのだろうと、半ば確信することができた。
それからはあっという間だった。
実家に戻った清香は、文と仲直りし(元々ケンカはしていないが)、母親と祖母との面会も済ませた。だが清香は、以前に言っていた通り親離れを済ませていたせいか、最後まで未亜子と静に対して敬語を崩さなかった。
「…清香ちゃん、お風呂空いたけど」
「はい、頂きます」
終始こんな調子で、流石に周囲は心配したが、文が上手くフォローをしてくれた。
「お母さん、お姉ちゃん遠慮してないだけだから、お母さんも遠慮しないでいいよ」
「そう、なの…? 嫌われてないかしら…?」
「うん、大丈夫。…でも、そろそろ帰さないと、本当に嫌われちゃうよ?」
未亜子は、もっともっと親交を深めて清香の翻心を期待していたのだが、ここまで徹底されては清香の想いを認めるしかない。
すでに文が新しい学校にも慣れた10月の終わり。ようやく、清香が屋敷に戻る日になった。
「やっぱり車なんですね…」
深夜、高速を飛ばして迎えに来た三田の車を見て、清香は諦め混じりの溜め息を吐いた。
「性分だ、慣れてくれ」
「はいはい…」
軽く返事をすると、清香は少し覚悟を決めて振り返った。振り返った先の戸口には、未亜子が所在無さげに立っている。
「お母さん、我が儘を聞いてくれてありがとうございます。お嫁に行って参ります」
「そう、そうね…」
何度諦めても諦めきれないのだろう、未亜子は複雑そうな顔で頷いた。
「………」
そんな母親を見て何を思ったのか、清香は未亜子に近づくと、そっと未亜子を抱擁した。
「お母さん、辛い思いをさせてごめんなさい。でも…」
「いいわ、清香…」
未亜子も清香を抱き締め、言った。
「多分、お祖母ちゃんもこんな気持ちだったんだわ。逃げ出した私とは違って、あなたは立派よ… むこうで元気で、幸せな家庭を作ってね…」
母子は、そうやってしばらく抱き合ってから、自然と離れた。
「さて、と…」
咳払いをするように声をかけて、文が前に出た。何も言わず清香に抱きついて、ぎゅーっと抱きしめ合う。
「悪い男に引っかかっちゃ駄目よ。文ちゃんいやらしい身体してるんだから…」
「きちんとと選ぶし、卒業までは封印するから大丈夫だよ…」
ぼそぼそと、他人に聞かれないように話し合う。清香が長く実家に居たのは、文が開発され尽くした身体をどう持て余すのか監視する意味もあったが、どうやら心配は無さそうだった。
「…じゃ、ね。“身体”には気をつけて」
「うん、お姉ちゃんも」
あっさりと姉妹は離れると、手をひらひらさせて別れを済ませた。
「では、娘さんはお預かり…」
「返品されるんですか、私?」
頭を下げて挨拶しかけた三田に、清香のツッコミが入った。三田はわざとらしく咳払いをすると、「幸せにします、返す気はありません」と顔を真っ赤にして答えた。
「それでは、また年末にでも2人でお伺いします…」
2人で頭を下げて車に乗り込もうとした時、何かを思い出したらしい清香が「あ、そうだった…」と、文に駆け寄って耳打ちした。
「……だから」
「え、えぇぇーー!!」
よほど驚くことなのか、聞いた瞬間、文が目を丸くして叫んだ。
「それじゃ、そういうことだから。さようなら、お嫁に行ってきます」
にこやかな笑顔を残して清香は車に乗りこんだ、程なくしてエンジンが始動し、挨拶のクラクションと共に車がゆっくりと離れて行った。
「…行っちゃったわ、この歳で娘を送るなんてねぇ…」
溜め息をついて母屋に引っ込もうとする未亜子の袖を、文が引いた。
「何、文ちゃん?」
「お母さん、その歳でおばあちゃん」
「……え?」
「文も、中学生でおばさん…」
「……え、えぇ?」
「作っちゃったんだって、子供…」
未亜子はどんな顔をしていいか分からず、とりあえず「ふぅ…」と溜め息を吐いた。
以上になります。
途中エタった上に、長く読みづらい文章で申し訳ありませんでした。
段落のわかりにくい文章をまとめてくださった保管庫の管理人さんや、
ここまで読んで頂いている読者の皆さんには、感謝の言葉もありません。
一応、物語はここでおしまいですが、どこかに外伝は投下するかと思います。
もし、お見つけになったら、読んで頂けると幸いです。
それでは、長きに渡りお付き合い頂き、本当にありがとうございました!
………最後の最後でエンドマーク付けそこねた Σ(゚д゚lll)ガーン
保管庫の管理人さん、これ↓使ってください…
締まらんなぁ、俺…
−幸福姉妹物語 完−
リアルタイムで遭遇してしまった
朝からこの昂ぶりをどうすればいいんだ
GJ
長編乙!
すげー面白かった。完結しないんじゃないか、とも思ってたからほんと良かった。
GODJOB!
完結乙!
こちらこそ毎回楽しく読ませてもらっていました。
感謝の言葉もありません。
神作GJ!本当にありがとう!!
昨日から待機していて、ようやくGJできるぜ!
本当に長かった……。このまま未完のままかもと心配してたけど
綺麗に完結したことが嬉しい。そして淋しい。
何千回GJしても足りないくらいだ。
お疲れ様でした。外伝も楽しみです。
481 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 12:03:03 ID:pP3imEpA
これだけ長い作品を完結させるだけでも素晴らしいのに…。
ひたすらGJ!GJ!
しかし清香、完全に旦那様を尻にしいてるなwww
強くなったよ。
ageちゃった。
スイマセン。
なによりも、ちゃんとエンドマークを打つまで書き上げたことが
すごいと思います。
面白かった。
完結お疲れ様でした
そしてGJ!
感動しました
お疲れ様!
GJ!!
お疲れさま!!
最初から最後まで楽しませてもらいました!!
完結させてくれて、姉妹が幸せになるまで読ませてくれてありがとう!
七夕の日に第7話で完結とは、粋だねぇ。
大作投下&完結お疲れ様!
読んでるこっちが幸せになれました
心の底からGJ!!!
外伝も楽しみにしてます
その無駄な改行なんなんすか
完成 おめでとうございます。
お疲れ様でした。
正直な感想、姉妹が幸せになってよかったよぉ…(涙
その後のストーリーは各自の脳内で補完ですね わかります(?
・とうこさんその後 とか
・ふみちゃんのコイバナ とか
・孫つれてきた後日談 とかとか…?
とりあえず サーヴィスマネージャ には天晴れ!を送りたい。
キミがいなきゃ幸せ街道に乗ることはできなかったっ!!
文に恋するもマニアックさにドン引きする男子中学生
金の力で(作られた年不相応の体と性的欲求、生まれた愛情を持て余して)困ってる文を助けてあげたいんですね、わかります
ゴールデンパワー!でGJ乙
お疲れ様です。
乙でした!
こんなに楽しませてくれて、本当にありがとうございました
GJ!!!
GJ
投下ありがとうございました
いいもの読ませて貰ったぜ
貧乳責めが読みた
貧乏で貧相な身体をしてる子の
幸福氏、感動をありがとう!
女の子拾いたい。「ダブルキャスト」みたいの。
遅ればせながら、幸福姉妹物語完結おめでとうございます。
姉妹丼と、調教と、ヤンデレと、グッドエンドを織り込んだ、
素晴らしい作でした。GJです。
外伝、続編、新作その他をこれからも期待しております。
>>502 依存とかの類ではないがあれは名作だったな
>>504 仲良くすると「私の志穂ちゃんに近づくな!」
反対に離れると「男なんて直ぐに女を捨てる!」
好きなら責任持て。
ということを刻まれた。
保守
乗り遅れたぁぁぁぁぁぁぁっ!?
gjです。すごくgjです。
外伝は文ちゃん関連が読みたい(
>>492 いいなそれ。
金の力が欲しいぃ
今さっきこのスレ見つけて、今さらながら保管庫で幸福姉妹物語1話から読んで来た。
正直エロパロで泣くとは思わなかったです。
本当に素晴らしい作品でした。
是非、続編や外伝を期待してます。
完全に出遅れたけど、この感動を伝えたかったのですみません。
本当に完結おめでとうございます。
おめでとうございます。
こんばんは、以前SSを投下したものです。
また短編を書いたので置いておきます。
一応前の続きになっていますが、今回も読み切りです。
前回分はこちら
夏の捨て猫
>>345-361
重苦しい静寂の中、壁の掛け時計がカチカチと時を刻んでいる。
時刻はもうすぐ午後の七時になるだろうか。いつもは晩飯を食っている頃だ。
俺は床の上に寝転がってカーテンの隙間から暗い外を見上げていた。
冬至は過ぎていたが相変わらず日は短く、明るい天然の光は貴重だった。
――グウゥゥ……。
静かなこの場にその音はかなり大きく響いた。
つられて隣のリビングを見やると、一人の少女がテーブルに突っ伏して泣いていた。
しゃくりあげるのではなく呻くようなその声は、まるで幼い子供のようにも聞こえる。
「うう……お腹空いたよぉ……」
「言うな。こっちまで腹が減る」
ぐったりした娘に冷たく言い放つ。
卓に頬をつけて涙ながらにこちらを見つめてくる顔はとても可愛らしかったが、
今は空腹の悲壮感に彩られて見る者の悲哀を誘う。
肩まで伸びた茶色っぽい黒髪もしなだれて元気がなく、だらしなくテーブルの上に広がっていた。
少女はまだ言い足りないのか、俺に向かってねちねちと後を続ける。
「なんで――なんでご飯が食べられないの……? うちってそんなに貧乏だっけ、義之さぁん……」
「少なくとも、今は果てしなく貧乏だな」
俺は寝転がったままポケットから薄い財布を取り出し、中身を手に広げてみせた。
数枚の十円玉と一円玉がチャリチャリと安っぽい音を鳴らす。札は一枚もなかった。
それを見た少女から漏れる、本日何度目かのため息。
「はあぁぁ……。貧乏やだよ、お金欲しいよぉ……白いご飯が食べたいよぉ……」
「うちはあんま米食わないからな。これからはちゃんと買っておくことにするか」
「これからの話じゃなくて、今食べたいんだよぉ……うぅ……」
また少女の目から雫が垂れてテーブルを濡らした。
水分の無駄遣いだと言おうとしたが、まあ水だけはいくらでもあるしどうでもいいか。
俺は半ば彼女に語りかけるように、もう半分は独り言のように言った。
「とにかく補給を欠かしたのは大失敗だった。いい教訓になったよ」
「教訓とかどうでもいいから、早く食べ物持ってきてよ。今日何にも食べてないんだよ?」
「家の中で寒さを凌げるだけマシだろ。それともやっぱ外行くか?」
外は凄まじい風が吹き荒れ、ガタガタと窓を叩いている。
今年一番の大寒波ということで、この地方には珍しいほどの猛吹雪だった。
ちょっと見下ろせば凍てついた道路や車が街灯に照らされているのが確認できる。
それも近くのことだけで、少し離れた建物になるともう見えない。視界不良もいいところだ。
この郊外のマンションから駅前まで行くだけでも遭難を覚悟しなくてはならないだろう。
実は既に二回挑戦しているのだが、いずれも失敗して泣いて帰る羽目になっている。
少女は軽く首を上げて窓の外の嵐を眺め、諦めたように息を吐いた。
「うぅ……お腹空いたよ、ひもじいよぉ……。
可愛い彼女にご飯を食べさせてやることもできないなんて、義之さんは甲斐性無しだぁ……」
「俺だけのせいにするなよ。ほのかもこの一週間ヒキコモリNEETだったくせに」
「ひょっとして天罰かな? 神様っているもんだねえ……」
俺の名は和泉義之。近くの大学に通う平凡な学生だが、親が金持ちで少しばかり気前がいいため
一人暮らしには余裕がありまくるこの広い部屋を用意してもらっていた。
それで現在この年下の女の子、小山ほのかと同棲している。
ほのかは高校生だがちょっとした事情があって親元を離れ、今は彼氏の俺のとこで居候だ。
彼女の生活費や学費その他、諸々の金は全部うちの親父が出している。
最初ほのかを親父に引き合わせたときはやや緊張したものだったが、親父は
この大人しい少女を大層気に入ったようで、翌月から俺への仕送りを倍にしてくれた。
俺は兄貴と違って彼女どころか、身の回りに女の影一つなかったから心配していたらしい。
俺もほのかもお互いぞっこん惚れこみ合い、この半年ですっかりラブラブになっていた。
そんな訳で俺とほのかは二人きりの甘ったるい共同生活の真っ最中だったのだが……。
「せめて千円でもあれば下のコンビニで何か買えるんだけどな」
「ていうか、なんでここのコンビニはATMがないの? おかしいよ……」
「この辺結構不便だぞ。ATMなんて駅前に行かんと置いてないって」
「田舎も貧乏も嫌い、大っ嫌い……!」
そもそもの発端は俺たちの自堕落なラブラブライフにあった。
お互い暇な夏休みや年末年始、俺とほのかは家に引きこもって勉強したりエッチしまくったりして
一歩も外に出ない不健康極まりない生活を繰り返していたのだが、いつの間にか
どちらもそれが癖になっていたようで、時々二人一緒に学校をサボってゴロゴロする日があった。
一応、出席日数や単位には気をつけていたが、今回のはちょっと長かった。
二人揃って買い物にも行かず、外出は下にあるコンビニと定食屋のみ。あとの食事は自炊と出前。
そんな生活を一週間ほど続けた結果、気がつけばうちにある現金が底をついていた。
もちろん口座には生活費どころかほのかと豪華披露宴を挙げるくらいの金があったので
俺も彼女も全く心配していなかったのだが、予想外だったのがこの寒波。
郊外のこの辺りには銀行もATMもなく、金を引き出すにはわざわざ駅前まで出向かないといけない。
しかし平年はあまり雪の降らないこの地方、俺もほのかも吹雪の中を冒険する勇気はなかった。
だが引き出せなければ金がなく、家の食料も既に残らず食い尽くしたこの困った状況。
ひとことで言えばあれだ。陸の孤島で物資が尽きた状態。
かくして俺たちはグーグーうるさい腹をかかえ、天候が回復するのをじっと待っているのだった。
――グウゥゥ……。
またしてもほのかの腹の音が響く。
さすが健康な女子高生、逆に聞こえたこっちが恥ずかしくなる。
そんな元気な消化器とは対照的に、彼女の声は弱々しくて悲しげな響きを帯びていた。
「お、な、か、空いたよぉ……うぅ……」
「ほのかは金持ってないのか? 結構もらってると思ってたんだが」
はじめは俺のポケットマネーを彼女に渡していたが、この間、うちの親父が彼女の口座を用意して
それなりの額を振り込んでくれたらしい。とても赤の他人とは思えない行動だが、
既に親父の頭の中ではほのかは可愛い義理の娘になってしまっているようだった。
たまに会うたびに“女の子はもっとオシャレしなさい”と言って小遣いをくれるくらいである。
そうしたことを念頭に置いた俺の問いに、ほのかは頬を卓にこすりつけて首を振った。
「私も全部銀行に預けてるから……だって、余分な現金持ってたら無駄遣いしそうなんだもん」
「いや、親父は無駄遣いしろってわざわざ言ってた気がするんだが……」
ほのかはこれまであまり幸せな生活を送ってこなかったせいか妙に遠慮が多く、
それが俺には少々不満なところだった。
少し前までよく見せていた、こちらの顔色を窺う態度もあまり好きじゃない。
ほのかのせいじゃなくて彼女の家庭環境のせいだとわかってはいるんだけどな。
とにかく俺もほのかも今ほとんど現金を持ち合わせていないという訳だ。
金がなければ飢えるしかない。非情な現実に俺たちはただ嘆くことしかできなかった。
動き回る気力もなく寝そべっていた俺のところに黒い毛玉がやってきた。
媚びるように俺を見つめ、暖かそうなふさふさの体を擦りつけてくる。
やや調子の外れた毛玉の声が俺とほのかの耳をくすぐった。
「にゃあ」
「ああ飯か……よしよし、ちょっと待て」
力の入らない体を立ち上がらせ、俺は戸棚から大きなキャットフードの袋を取り出した。
丸いプラスチックの皿にカリカリをたっぷりと注いでやると、その心地よい音に反応して
もう一匹の小さな猛獣が隣の部屋から急ぎ足でやってきた。
アレックスとサンドラ。元は捨て猫だったのを俺が拾い、今は安楽な飼い猫ライフを送っている。
魚味のカリカリを美味そうに食べる猫を見つめ、ほのかが小さく呻いた。
「ねえ、なんで猫のエサだけはあるの? 人間様のご飯はないってのに」
「これは安いときに買いだめしてるからな。わりと長持ちするし」
「いいなぁ、私も猫になりたい……」
親元から逃げ出したところを俺に拾われたんだから、ほのかもこいつらと同じはずなんだが、
まあ余計なことを言って彼女の機嫌を損ねても意味がない。
しかし飼い主が飢えているのに猫どもが食べ放題ってのも確かに腹が立つ。
俺は気をまぎらわせようと軽い口調で冗談を言ってみせた。
「じゃあほのかもこれ食ってみるか? キャットフードは人間も食えるっていうぞ」
「そうだね――ちょっとだけ、ちょっとだけならいいかも……」
「……おいおい」
こっちはジョークのつもりだったが、ほのかは真剣に考え込んでいるようだった。
しかしカリカリなんて食えるもんかね? 猫缶はまだ食えるって聞くけどさ。
このままだと本気で猫のエサに手を出しかねないと思い、キャットフードの袋を戸棚にしまう。
再び寝転がった俺と、テーブルに突っ伏したほのか。
「うう……お腹空いたよぉ……」
「言うな。こっちまで腹が減る」
こうして話はふり出しに戻り、俺とほのかの不毛なやり取りが繰り返されるのだった。
やがて涙も枯れ果てたのか、ほのかは立ち上がって水道の水をコップに注いだ。
風呂上りのように腰に手を当て、いかにも美味そうに一気飲み。
「んぐっ……ごく、ぷはぁっ!」
そしてコップをテーブルに勢いよく叩きつけ、また椅子に座って顔を伏せる。
「うう、お腹空いたよ……ひもじいよぉ……」
「やかましいわっ!」
さすがに鬱陶しくなって、俺はほのかを怒鳴りつけた。
ただでさえ空腹なんだから余計なエネルギーを使わせるなと言いたいところだ。
だがほのかは気が済まないのか、俺に愚痴をこぼし続ける。
「ねえ、どうしてうちにはお金がないの? お兄ちゃんお金出してよ……」
「誰がお兄ちゃんだ。あとお金は勝手に湧いてきません。吹雪止むまで待ちなさい」
「義之さんちお金持ちなんでしょ? 議員センセーなんだからいくらでも湧いてくるんじゃないの?」
「最近はそうでもないみたいだな。兄貴が後を継ぐ頃にはどうなってるやら……」
まあ俺は気楽な次男坊で政治家になどなるつもりはない。自立するまで金は出してもらうが
あとはほのかと二人で慎ましく生きていくさ。下手に目立つのは真っ平ご免だ。
将来の人生設計を何となく思い浮かべる俺に、その恋人の死にそうな声が聞こえてきた。
「お、お兄ちゃあん……お金ぇ……お金ちょうだぁい……」
「……なんか意外と楽しそうだな。お前」
「そんな訳ないでしょっ !? お腹ペコペコで仕方ないってのにぃっ!」
確かに愛しい彼女を飢えさせるのは忍びない。だが外の吹雪はしばらく止みそうになかった。
このマンションの下にコンビニと飯屋はあるが、あいにく現金もATMもない。
ついでに言うと俺は今どきクレジットカードも持っていない男だ。まさに万事休す。
どうしようもなくなった俺は風呂に入る気にもなれず、このまま不貞寝しようと思っていた。
「――ん?」
そのとき、ふと俺の頭の中に電球の灯る古典的なイメージが思い浮かんだ。
金、金、現金……そういえば、たしか……。
俺はのそのそと部屋の中を這いずり、ボロっちい大学のカバンに手をかけた。
参考書やルーズリーフの入っているところではなく、横についたファスナーを乱暴に開ける。
中から出てきたのは汚れた文庫本やら破れたレシートやら見苦しいものばかり。
にわかに小物を引っかき回し始めた俺を、ほのかは冷めた眼差しで観察していた。
「どしたの義之さん、そんなに慌てて。ガムでも入れてるの?」
「いや、たしかここに――あ、あった」
底の方に埋もれていたそれをもったいぶって取り出し、少女に見せつける。
汚く変色して紙くずのついたそれを、ほのかは最初何かわからなかったが、
じっと目を細めて見つめるうちに辛うじて判別できたようだった。
「……お守り?」
「ああ。俺が大学に入った頃のやつだな。」
ビニールのカバーに入った、わずか数センチの大きさしかない交通安全の四角いお守り。
彼女は視線をさらに冷ややかにして冷たい声で言った。
「で、それが何なの?」
「うむ、実はこの中にだな――」
カバーを開いて中から一枚の紙切れを取り出す。
小さく折れ曲がったそれを広げるうちに、ほのかの顔に驚きが満ちていった。
「いち――まんえん……?」
「俺自身も忘れてたんだけどな。まあ非常時のヘソクリってやつさ」
しわと折り目だらけの紙幣を広げ、俺は得意げに胸を張った。
かなり汚らしいが、まあ破れていないし普通に使えるだろう。
少なくとも今日一日を過ごすには充分な額だった。
俺は立ち上がり、壁にかかった上着を手に取ってほのかに笑いかける。
「喜べ、これで大手を振って飯食いに行けるぞ」
「やったぁ! 義之さん大好き! 愛してるっ!」
俺の魅力は金だけかよと突っ込みたくなったが、この状況では無理もない。
いきなり元気になった少女を連れ、俺は部屋を出てエレベーターで一階へと下りていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
下の飯屋のカレーライスとツナサラダで腹を満たしたほのかは上機嫌だった。
ついでにコンビニで明日の分と念入りに明後日の分の食料を確保して俺たちは帰宅した。
あまり贅沢はできなかったが、まあこれで一日や二日なら充分もつだろう。
俺も満腹になっていい気分だったからやっぱり風呂に入ることにした。下りただけで体が冷えたしな。
そんな俺にほのかが飛びついてくる。
「義之さん、一緒にお風呂入ろっ!」
「……腹が膨れた途端にベタベタしてくるとは、現金なやつだな」
「いいからいいから、ほら体洗ってあげるよ!」
まあいいか。俺は苦笑しつつも少女の厚意をありがたく受けることにした。
冬の寒さがかすかに侵入してくる風呂場には一面に湯気が立ち込めている。
惜しげもなくさらけ出されたほのかの裸体は相変わらず魅力的だった。
半年前、初めて会ったときよりも多少肉づきが良くなったのは、今の生活が幸せだからだろう。
だが決して太ったという印象は受けない。むしろ胸や尻の辺りのボリュームが増して、
より俺好みのスタイルになったと言える。やはり俺が揉んで育ててるからだろうか。
「やだ、義之さん……」
じっと見つめていたのが嫌だったらしく、ほのかがこちらに背を向ける。
なめらかな白い背中もいい感じに丸みを描いた臀部も最高だった。
「どうした、ほのか?」
「義之さんの眼、エッチなんだもん」
「それは仕方ないな。ほのかが可愛いから」
腕を伸ばしてほのかをぐっと抱き寄せる。
少しその脚がもつれたが、可憐な少女は大人しく俺の両腕の中に納まった。
俺もほのかも素っ裸、股間を隠すイチジクの葉の一枚もない。
すっかり見慣れた互いの体ではあるが、やはりこうして見ると興奮がかき立てられる。
ほのかの体にお湯をかけた俺は、両の手にボディソープをかけて直に恋人を洗ってやることにした。
泡まみれの男の手が少女の肌に這わされ、腕や背中をじっくりこする。
「ん、気持ちいい……」
こうして俺に洗われることもしばしばあるので慣れたもの。
ほのかは大人しくこちらに背を向けて椅子に座っていた。
うなじの辺りや乳房のつけ根、太ももの裏側といった場所を無防備に揉まれ、
少女は俺の目の前で甘い声をあげ始めている。
「んっ……そこくすぐったい――あぁっ……!」
大体の部分にボディソープを塗りこみ残るは二箇所。もちろん胸と股間だ。
俺はボディソープを再度手に取り、後ろからほのかの双丘をわしづかみにした。
豊かな乳に泡をたっぷり塗りたくって丹念に揉みしだく。
両手にちょっと余るくらいの肉の塊が俺の掌中でグニャグニャと形を変えた。
「あ……あんっ、あぁんっ……」
若く健康なほのかの乳房は弾力があり、俺の愛撫に乳首を硬く立たせていた。
もちろんそれを洗ってやるのも忘れず、親指と人差し指でギュッと挟み込む。
少女の白い胸は汗をかいて俺がつけた泡を少しだけ垂れ流した。
「こら暴れるな。洗いにくいだろ」
「やあんっ……だって……!」
コリコリした乳首の感触がたまらない。むしろ俺の方がイッてしまいそうだ。
左右十本の指と掌を駆使して俺は愛撫を続けてやる。
ほのかの甘い声と荒い息とが俺の性欲を刺激し、俺の手つきがほのかを鳴かせる。
だんだんと増幅されていく愛欲の循環を断ち切るため、俺は右手を下に入れることにした。
――クチョ……。
ほのかの秘所はすっかりでき上がり淫靡な汁を垂らしている。
指先についた女の汁を太ももや腹に塗りたくると、ほのかは小さな悲鳴をあげて身をよじった。
「ひゃっ!」
再び指を股間に突っ込み、今度は割れ目をなぞり上げる。
ボディソープはもう流れ落ちていたが滑りは充分だ。
俺は丁寧に、しかし大胆に恋人の大事な部分をこすり続けた。
その間、左手はずっと乳を確保しており、俺の欲望通りに肉を揉みしだいている。
ほのかは抵抗せずされるがままで、ただ喘ぎ声を漏らすだけ。
その叫びの質が変わったのは、俺が彼女の陰核に手を伸ばしたときだった。
「ああっ――はあぁっ……ふあっ !? あひぃぃ……!」
性感帯そのものの部分をいいようにいじられ、少女が唾を飛ばして喘ぐ。
剥ける包皮に二人して興味津々だったのも今では懐かしい思い出だ。
俺の指が淫靡に蠢き、勃起したほのかの豆を慎重に刺激していく。
露になった突起に触れるたび少女は鳴いて、俺の嗜虐心を大いにそそるのだった。
「ふあ、ふあああぁっ……あふっ、あふぅっ !!」
ほのかは両手で口を覆っていたが快楽の声は絶えることがない。
いつの間にか俺の左手も彼女の女陰を責めたて、膣に侵入してかき回したりクリをつまんだり、
右手の指と一緒になって悪逆非道の限りを尽くした。
「ひあぁぁっ……!」
とうとうほのかの体が大きく跳ねると、グッタリして俺にもたれかかってくる。
よだれの垂れるその口から漏れるのは色っぽい満足の吐息。少し羨ましい。
「ほのか、大丈夫か?」
「う……う、うん……」
触れる肌から伝わってくる少女の体温が心地よかった。
それから改めてほのかの肌を手洗いしてやり攻守交替。
猛りきった俺の息子を綺麗にしてくれたのはほのかの舌と乳房だった。
問題は飛び散った俺の汁が彼女の胸と顔を汚してしまったこと。あーあ、洗い直しだよ。
でもほのかが最近パイズリをマスターしたのは素晴らしい進歩だ。主に俺にとって。
しかしいつまでもこんな風に洗いっこしてたら終わらないので、しまいにはお互いの肌に
ボディソープを塗りたくって体をこすり合った。なんていうか人間スポンジ。
毎度毎度馬鹿なことをやってるのはわかっている上だが、
彼女の温かい笑顔を見ていると、やっぱりこの子をうちで引き取ってよかったと思えてくる。
ほのかと狭い湯船に浸かりつつ、俺はこのささやかな幸福に埋没していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて風呂から上がった訳だが、俺もほのかもいい感じに体が火照ってしまい
どちらも一発やらんことにはとても治まりそうになかった。
とまあここまでならいつものパターン。普段と違うのはベッドの脇に立った俺が
思わず間抜けな声をあげてしまったことだ。
「あれ? 困ったな……」
「どしたの義之さん、またヘソクリが出てきたとか?」
「いや、それなら嬉しいが……」
どうしたものかと思い、俺はぽりぽりと頬をかいて言葉を続けた。
「ゴムが切れてる。そういや昨日使ったのが最後のだった」
「え、全部使っちゃったの?」
「さすがに下のコンビニじゃ売ってないだろうし、どうするかな。今日は本番無しにしとくか?」
「えー……それもちょっと……」
物足りない顔でこちらを見つめる黒髪の少女。風呂上りで薄いピンクに染まった肌が瑞々しい。
このままやるつもりだったのでお互い素っ裸のまま、熱っぽい体を思い切り見せ合っている。
仕方ないから俺は手と口だけで我慢するつもりだったが、ほのかは違うことを提案した。
「じゃあ今日はそのまましちゃう? 私はいいよ、生理もうすぐだし」
「それでも生はまずくないか? もしできちゃったらどうするんだよ」
俺は大学を出たらほのかと結婚する気でいるが、まだ今は学生の身分、パパになるのはためらわれる。
ほのかにも円満に高校を卒業してもらわないと俺が困る。てか受験勉強教えてる訳だし。
しかしほのかは大丈夫の一点張りで、裸で俺に抱きついて誘ってきた。
「いいもん、できたら義之さんに責任とってもらうから」
「責任はとるけどちゃんと学校出てくれよ。大学に通ってもらわんと俺の指導が無駄になる」
「産んだら赤ちゃんは義之さんちに預けて、高認受けるって手もあるよ」
「ああ、大検って今そう呼ぶんだっけか。でも高校は出といた方がいいぞ」
「わかってるよ。もしできちゃったときの話!」
小悪魔のように笑って俺の胸に頬をすりつける。やれやれ、今日はお言葉に甘えるか。
そして俺は彼女をベッドに押し倒し、熱い秘所に指を差し入れた。
さっきから執拗に愛撫された陰唇はぬめり、すぐにまた淫らな汁を溢れさせる。
戻した右手の指が糸を引いていることを確認し、俺はほのかの下の口に己のものをあてがった。
ゴム無しに抵抗があると言ったのも口先だけで、正直な俺の肉棒は痛いほど張りつめている。
「んじゃいくぞ、ほのか」
「うん……」
俺はほのかの上になり、ゆっくりと少女の中をかきわけていった。
優しく亀頭を包む熟れた襞も、竿をギュウギュウ締めつける膣の壁も、彼女の全てが俺を喜ばせた。
ゴム越しではない生のほのかの感触は俺にとってやはり至上のものだった。
中ほどまで挿し込み一旦止め、耳をすませて彼女の吐息にじっと聞き入る。
「よ、義之さん……? どうしたの……」
「いや、ほのかの中を味わってただけ。じゃ動くぞ」
「あ――あぁんっ、はあぁっ……」
たしか入ってやや上がGスポットと呼ばれる場所だったはず。
こいつもやっぱりその辺りを俺のチンポにこすられるのが大好きで、
優しい俺はほのかとやるたび、こうやって彼女を喜ばせる技術を磨いていくのだった。
「はあぁぁっ……あんっ、あふっ、あぁんっ!」
だんだんと腰の往復を激しくしていき、喘ぐほのかを責めたてる。
俺もほのかもこの半年でかなり相手のことを理解しており、共に気持ち良くなりたいと思っていた。
肉壷をかき回すのも、肉棒を襞と汁でしごき上げるのも、嬌声をあげる口を唇で塞いでやるのも
全て自分のためであり、同時に相手のためでもある。求めるものは同じもの。
しかし久しぶりのゴム無しの快感に俺の余裕も無くなってきていた。
――パン! パンッ、パァン!
ほのかの腰をがっしりつかみ、肉が鳴るほど打ちつける。
俺の先端は何度も何度も少女の子宮口をノックし、ほのかの呼吸を引きつらせた。
失われていく理性と、こみ上げてくる心地よい征服感。やはり俺もただの雄に過ぎなかったのか、
ほのかの中を力任せに蹂躙する俺の心は果てしなく高ぶっていく。
俺の腕に持ち上げられた少女の腰は柔らかくて、結合部は熱く煮えたぎっていた。
そこに根元まで突き込まれた俺のモノが灼熱のスープを注入してやる。
――ブビュッ、ビュルルルッ !! ドクドクッ……!
注ぎ込まれる子種の汁が女子高生の子宮を犯す。
たっぷりと射精した俺の肉棒は依然硬いまま、少女の中に深々と突き刺さっていた。
見下ろすと大口を開けて舌を伸ばしたほのかの無残な表情が隅々まで見て取れる。
「ひぃ……ひぃ、ひぃぃ……♪」
白目を剥いて息も絶え絶えになったほのかのアヘ顔にもまたそそられる。
俺は壊れた楽器をかき鳴らすように少女の上で腰を振り続け、存分にその音色を楽しんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日は雲の隙間から太陽が顔を覗かせる良い天気になった。
早速俺はほのかと二人で凍りついた地面を歩き、駅前のATMから金を引き出した。
「これ何万までいけたっけ? その辺に書いてないか」
「いいから上限! 上限までお金引き出してっ!」
はしゃぐほのかに苦笑しつつも厚みのある万札をゲットする。
ほのかの口座からも同様に引き出し、合わせると束になるほどの金が手に入った。
それにスリスリ頬擦りするこいつのテンションはもう尋常ではなくて。
「あっはっはっはっ! お金、お金よっ! お金サイコー! もう離さない……」
「あのー、ほのかさん。とりあえず裸じゃまずいから、分けて片付けません?」
財布に入れるにはちょっと分厚いので、残りを入れる封筒もちゃんと用意している。
俺はすっかり金の亡者になったほのかを鎮め、いくつかに分けて金をしまい込んだ。
やっぱり先立つものは大事だよな。当たり前のことだけど。
「義之さん、今日はパーッと奮発しよ! お寿司とか焼肉とか!」
「うーむ……その発想が貧しいというかさもしいというか……」
「何 !? 何か言った !?」
「いや何も言ってないぞ。だから気にするな」
その日の昼食が少しだけ豪華になったのはささやかな贅沢と言えよう。
夜、俺とほのかは簡単にそれぞれの荷物の整理をしていた。
さすがにいつまでも学校をサボる訳にはいかず、明日はどっちも早起きだ。
――休講はなかったよなたしか。このテキスト重いから置いてくかな。
そんな風に汚いカバンの中をガサゴソ引っかき回していたときのこと、
同様のことをしていたほのかが突然、何かを思い出したような声をあげた。
「あ、義之さん。ちょっと」
「どした?」
「あのお守り、貸してくれない?」
欲しけりゃやるぞ、と言って俺が手渡した四角いお守りをほのかが握りしめる。
その口を開けて狭い中に彼女が押し込んだのは、分厚い紙の塊だった。
色と文字から察するにどうやら福沢諭吉の集団らしい。
悪戦苦闘の末に何とか入りきったのだが、パンパンに膨れたお守りは見苦しいのひとこと。
俺は返してもらった肥満体の長方形を呆れた視線で眺め、ぽつりとつぶやいた。
「おいおい、何してんだお前は……」
それに答えるほのかはにっこり笑って、とても楽しそうで。
「だって昨日はそれに助けてもらったもの。御利益ありってことでしょ?
こうやってお金詰めとけば、またいつか役に立ってくれるよ」
「これは交通安全のお守りであって、金運は保障してくれないと思うんだが……」
「いーのいーの! たっぷり詰め込んどいたから大丈夫だって!」
そしてまた俺に飛びかかってきて楽しそうにじゃれつく。
明るくて可愛くて、悪戯好きだがどこか憎めない黒毛の子猫。
――やれやれ、すっかり俺に懐いちまったな。この飼い猫は。
ずっと一生飼ってやろうと思いはしたが、あえて言う必要もなかった。
以上となります。
続きなどは特に考えていませんが、
ネタを思いついたらまた何か書いてみたいところです。
それではこれで失礼します。皆様ありがとうございました。
>>520 GJ! エロくかつ面白かったぜ! あわぬるプレイは最高だ。
しかし焼肉や寿司以上の贅沢がこの世に存在するのかあわわ想像もつかねえ。
あれか。ドンペリか。ドンペリなのか。
>>520 GJ!夏に比べて随分とエロくなったもんだ。やっぱ金は偉大やなぁ
>>522 あれだ、フォアグラの上にフォアグラ乗っけてキャビアぶっかけたなんかだよ
>>523 GJ!
ほのかかわいいなあw
>>523 >フォアグラの上にフォアグラ乗っけてキャビアぶっかけた
うえー、脂っこくってしょっぱそう。豪華だろうけど不味そうだわw
最高の贅沢はあれだろ?
たきたてご飯にいれたての濃い茶を氷で冷やしたうえ
焼いたたらこと刻み海苔を乗せて、
さっきのお茶をぶっかける
エコに反する贅沢さだ!
GJ!こんなにかわいい金の亡者も珍しいなw
猿にも劣る生活は一日でやめたんじゃなかったのかよw
エロくてかわいくて幸せで、いや本当たまらない
焼き肉にも寿司にも勝る食事が女体盛り以外思いつかない…
いいなそれ
女体に最高級品をのせたら、最高×最高で最上級じゃないの?
パーン!
多くの人々が行き交う昼のオフィス街に、突然、乾いた破裂音が響く。
突然の事に誰もが足を止め、刹那の静寂が一帯を覆う。
直後、再びの破裂音。群衆が銃声だと気付いた。
即座に街はパニックへ陥る。怯え、叫び、人々が逃げ惑う。その中――
ただ一人の男が、音の発信源たる銀行へと歩みを向けた。
時同じくして、銀行のロビー。
硝煙が漂う中、それぞれが銃で武装した覆面に黒ずくめの四人組が、銀行を占拠していた。
「いいか、この鞄に入るだけ詰めろ!」
叫びながら、リーダー格と思しき男が銀行員の女性の背に拳銃を突き付ける。
「10分後に、見せしめに何人か殺す!それが嫌なら、早く用意するんだ!」
SMGを持った男が、隅の方へ押しやった客に睨みをきかせながら、肩越しに脅す。
ロビーには他に、ショットガンを持った男が二人。
無力な銀行員は、通報のスイッチに手を伸ばす事もできず、拳銃の男に奥の金庫へと連れ去られる。
「さて、と。アイツが戻るまで――おい、そこの嬢ちゃんども。脱ぎな。まずは下からだ」
ちょうど、多くの学校が願書受付を始める時期。中三や高三と思しき数名の少女に、SMGの強盗は命令した。
絶句し、凍り付く少女たち。だが、隣にいるオバちゃんが立ち上がる!
「アンタ達!?こんな若い子らに」
パーン!
「……オホホホホ……お好きなようにひん剥いてくださいませ……」
座り直すオバちゃん。救いの手は、無かったようだ。
改めて脅威に晒される哀れな少女たちは、蒼白になりながらも、各々のズボンやスカートの止め具を外した――
「ぐぉっ!」
「げぶっ!」
「がはっ!」
瞬間、ガチャッと金属の擦れる音と共に、突如現われた重量を持った何かが、背後から強盗を薙ぎ倒す!
ハッとして顔を上げると、そこには吹き飛ばされ、起き上がらんとする三人の強盗と――
ゴージャスに輝く黄金スパンコールのタキシードとシルクハット、更に金糸銀糸の刺繍が入ったマントに身を包み、道化師の仮面で素顔を隠した男。
その男の片手には、真鍮のような、黄色がかった輝きを放つ鞭。否――五円玉を連ねたものがあった。
鞭を振るった姿勢から一転、怪人は左手で帽子を押さえ、ポーズを決める。
「我が名はマネーマスク!人呼んで……」
マントを一払いすると、風もないのに布地がはためき、まくれ上がり、ぶわっと面積を広げる!
「金色の死神」
名乗り終わると同時、鞭状だった五円玉が瞬間の内に真直ぐな棒状となる。いわゆる蛇腹剣のような機構らしい。
余りにも異常な光景に、一人の少女はスカートの止め具を外した事を忘れてしまった。
手の力が抜け、ストンと落ちるスカート。
空色と白の横縞が、銀行のロビーに花開く。
少女が、もう少年誌でもその程度じゃ誰も喜ばねーよと言われそうなエロハプニングに叫び声をあげる。
だが、そんな事は誰も気にせず、起き上がった強盗の一人が、黄金の怪人に向けてSMGをぶっ放す。
だが、マネーマスクは、五円玉の剣を一振りすると、とぐろを巻くようになったコインを盾に、銃弾を弾く。
ゆるやかな錘形を描く盾は弾丸を左右に受け流し、無人の人の消えた街路へと受け流す。
「畜生が!」
「食らいやがれ!」
だが、SMGを凌いだ盾も、あまり大きくはなく、全身を覆う事は適わない。
同時に放たれた二つ散弾は、嵐の如くマネーマスクを襲う!
音速にも達する弾丸に、数メートルの距離を吹き飛ばされるマネーマスク。誰もが、即死だと思った。
「っぐ!?"御縁玉(タイズ・ウェポン)"では、散弾までは防ぎきれないか!?」
だが、彼は生きていた。
いったいどんな素材なのか、黄金のスパンコールは幾つかが吹き飛んだものの、弾丸の貫通を一切許さず、どこからも血は滲まない。
しかし、激烈な衝撃は、確実にマネーマスクに大きなダメージを与えていた。
強盗の二人が、ショットガンの次弾を装填する。
「できれば、この技は――使いたくなかったんだがな」
ふらつきながら立ち上がるマネーマスク。
ゆらり。彼の姿が歪む。
「!?う、撃て!」
「お、おう!」
重い銃撃音が鳴り、ショットガンが火を噴いた!
「残念だが」
声と同時、突然巨大な何かが出現し、マネーマスクの姿を遮る。
そこに現われた威容――古代人が転がしていそうな、巨大な石の輪によって。
「これこそが私の最終武器、"超古代の円環(エンシェント・ホイール)"」
誰もが言葉を失った。バカバカしすぎる。そして、一瞬の隙が生まれた。
「必殺!」
力強い一声がロビーに響き、漸く我に返る強盗たち。だが、その時には、もう遅かった。
横ざまに石貨を振りかぶったマネーマスクに、ショットガンの装弾も、SMGのトリガーを引く事すら間に合わない。
「"金は天下の回り物(ゴールデン・スパイラル)"!!!」
ジャイアント・スイングのように振り回された直径2メートル近い石環は、強盗たちの意識を、深い闇へと誘った。
回転を終えたマネーマスクは、残る一人の強盗を追い、銀行の奥へ駆ける。
すると、パンパンに札束の詰まった鞄を両手で提げた強盗がやって来る。
想定外の奇人に、目を丸くする強盗。
「成敗!!」
強盗の股間に、激痛が走る!
無言の内に、撃沈する強盗。それを武装解除し、担ぎあげたマネーマスクは、高笑いと共に言い放った。
「これぞ金の力!」
下ネタ失礼。
気絶した強盗を?
気絶した強盗を銀行のロビーに積み上げると、マネーマスクはどこへともなく姿を消した。
《了》
遊びすぎてごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
空気読まないでごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
いや確かに金の力で困ってる女の子が助かったw
スレタイの意味を180度ひねって活用するとは
とりあえず笑えたw
何も言わないのも笑えた事に対して失礼だから乙しておくぜ
これは……アリだな
五円玉と五十円玉で二刀流とか考えたアホな自分が居る
アホすぎるw
だが嫌いじゃない。
これは愛すべき阿保だw
助けてー
最近暑いからな、沸いちゃったんだろ……どこがとは言わんが。
自己紹介はいいです
前にもあったなマネーマスク。同一人物か?
とりあえず吹いた
そういや十傑集で昔のお金で攻撃する人がいたな
剣らしきものも作ってた
うむ。たまにはこんなのもアリだと思うw
GJ!
金ぴか怪人と5円玉ウエポンまでは感心した。デカい穴空き石で吹っ飛んだwwもっとやれw
よいではないかよいではないか
マッチ売りの少女の切なさはハンパないな
最後に意識を失った後で気が付いたら大豪邸のソファーだった
とか妄想しないととてもじゃないがやりきれない
言われてみれば
長靴をはいた猫の
猫を主人公に
三男を幼女にすればいいSSが出来ると思ったけど
よく考えたら別に金の力はつかってなかった
ではこれでSSを頼む
つ@
ほら、お金使ったでしょ
幼女か
幼女拾いたい。
コインロッカーならあるいは…
それは幼女を通り越して胎児かも(ry
胎児はダメだよwせめて嬰児だろww
お金の力でおもちゃを大量に買って幼女を大喜びさせたい。
大人のおもちゃですね分かります。
なら悦の字のほうが良いかと
身なりの良い青年が道を歩いていると、公園で力なく佇む幼女に気がついた。
やや錆び付いたブランコに腰掛け、漕ぐこともせずにただただ俯いている。
そのもの悲しい様子に、青年は声をかけずにいられなかった。
「どうしたの? お嬢さん。俯いたりして」
英字の書かれた白のタンクトップにピンクのミニスカート。
子供らしい色の服装の幼女は、声を耳にしてのろのろと顔を上げた。
青年の影に覆われた姿の中、大粒の瞳だけが濡れたように輝いている。
十数年後が楽しみと思わせる幼貌は、しかし今は翳りを見せていた。
「ん……」
「突然話しかけてゴメン。びっくりしちゃったよね。キミが悲しそうにしているから
放っておけなかったんだ。もし悩みがあるのなら、僕に話してみないかい?」
戸惑う幼女の前に膝を折って屈み、ブランコに腰掛けた相手と目線を合わせる。
紅葉のような小さな手を取って「力になりたいんだ」と言うと、小さな唇が開かれた。
「……欲しいオモチャが買えないの。とっても欲しいのに……」
「そうだったんだ。辛かったね。……どんなオモチャが欲しかったんだい?」
言葉にすることで、感情の箍が外れかけたのか、泣き出しそうな表情になる幼女。
彼女を励ますように手を握る力をより強め、青年が励ましながら続きを促す。
幼女はぽろぽろと涙を流しながら、嗚咽混じりの言葉を続けた。
「ろ、ろーたーって、おも、ちゃっ。うぐっ、ほしかったの、でも、お金、たりなくってっ
おまた、に、あてるとっ、きもちいーって、だからっ、ほしかったのにっ、うう〜っ」
我慢できなくなって泣き出してしまった幼女を、青年は優しく抱きしめた。
その幼く柔らかな身体の感触を愛しく思いながら、何度も何度も背中をさする。
やがて幼女が泣き止むと、青年は頭を撫でてやりながら口を開いた。
「明日の同じ時間、またここに来れるかい?」
「……? うん……」
「じゃあ、明日またここで会おう。その時に、僕がローターをプレゼントしてあげる」
青年の言葉に、幼女がきょとんとする。
幼い美貌は一瞬笑顔になりかけたが、戸惑うように途中で歪んだ。
「……でも……」
「いいから、ね? それじゃ、また明日」
パッと立ち上がって手を振って去っていく青年に、幼女は何も言えなかった。
そして次の日の同じ時間、幼女は戸惑いながらもブランコに座っていた。
そこに当然のように現れる青年。手にはラッピングされた小さな包み。
微笑みと共に幼女の前に跪いた青年は、幼女の手にその包みを置いた。
「はい、プレゼント」
可愛らしいラッピングのそれを渡されて、幼女の心は高鳴った。
戸惑いもなにも霧散させるほどの威力が、可愛いものには存在する。
その一瞬を逃さないように、青年は笑顔で幼女の頭を優しく撫でた。
「喜んで貰えて嬉しいよ。良かったら開けてみて」
「う、うん………………わぁ、ぴんくだ……」
「似合うかなって思って。気に入ってくれた?」
「うん! ありがとーおにーちゃん!」
「今度、感想聞かせてね」
青年は笑顔でわかれ、幼女は ねんがんの ろーたーを 手に入れた! おしまい。
良い話だ
通報…せずにGJとだけ言っておくw
好きな女の為に一生懸命になる男ってかっこいいよな
どこに突っこんでいいのかそれともGJと言うべきかわからないからとりあえず
このど変態が!(超笑顔で)
567 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 00:31:22 ID:J+MH+1oU
処刑される予定の娘を買い取るていうのをどっかで見たんだがどこだっけ
568 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 01:52:49 ID:UxmCeuUi
処刑ってwwwwwwハードルが高すぎてワロタwww
富士見ファンタジア文庫の武官弁護士辺りと何かが混ざったんだと思いますよ。
あの作品は時間を惜しんだのが助けた理由だからスレ違いですな
生きるか死ぬかの
切羽詰まった女の子を救うってのもいいね
>>570 ブラックラグーンのロベルタを思い出した。
当時のガルシア当主に救われてテロリストから足を洗った娘……
572 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 12:38:02 ID:s0lFzAM8
フローレンシアの猟犬
窮地を金で救うのはわかりやすくていいね〜。
案を出すなら、市場で泥棒して捕まったコソドロ少女が衆人環視の中
腕をぶった切られそうになったところを大金握らせて引き取るとかかな。
>>573 その光景を視察中たまたま見かけた北の将軍様がそのあまりの美貌に…
無さそうだがありえそうで怖いな
>>574 大丈夫、北に誰か連れて行くだけでそれはもはや拉致≠セからw
北の将軍様から金の力で拉致された少女を引き取る・・・
さらに怖いな
577 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 15:27:32 ID:xTsRcKNh
じゃあ鎌倉時代あたりでは
時代物か!
口減らしって事で、簡単に手に入りそう。
店員と顔馴染みの店で食い逃げ少女が捕まった時に颯爽と現れて
「この子の分も払うから俺に免じて許してやってよ」
と言える男に私はなりたい
で、いざ払おうとしたら足りなくて
店員さんにあきられながら見逃して貰いたい
そして真の紳士が払っていくんですねわかります
保管庫のトップの「ウィルスまんえん」に
ちょっとビビった
ククク………オレが積もう……!ヒジの高さまで
>>584 確かに金で困ってる女の子を助けたね。
昨日ちょうどその辺読んだ。
金と勝負運の強さで、困ってる女の子を助けたってかんじか
明らかにこのスレに該当するシチュなのに
まるでイメージが結び付かなかったのは福本作品だからだろうかw
ボンボンから搾り取る取っ掛かりに過ぎなかったからかもね
金は絡まなかったが後の看護婦の方が助けた感はやや強かったし
あの頃の福本作品にはまだ女っ気があったなぁ
590 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 21:47:00 ID:+8oZrMB4
捕まった盗賊少女を買い取る
RUDEだろ
作品見る限り現代ものばかりだけど
ファンタジーな世界で奴隷制度で売られてる子を買い取るって話は好きだ
それがエルフだったらなお好き
でもそこまでいくと微妙にスレ違いだよね
別にそうでもないんじゃない?
現代ものに限るとは書いてないし……
昔日本史の授業で士官学生時代に売られた農民娘を買い取って正妻にした海軍軍人がいたとか聞いたけど誰だっけな
エルフスレあるよ?
そそそそんな萌える軍人がいるのか!
山本権兵衛なら思い浮かぶんだけど、あれは遊女だったはずだしな…。
残念ながら権兵衛さんで間違いないですね。島根か鳥取の農民の娘に身の上話を聞かされて脱走させた上で海軍仲間のカンパで身請けしたとか。教師が陸軍嫌い海軍好きだったのが原因でこの人の逸話よく聞いたわ。
>>596 いや分かってるけどね
エルフじゃなくて売られてるエルフってのが好きなの
自分でもよくわかんねwww
娼婦・遊郭スレに、戦争中満州で女郎屋にいたおばあちゃんを整備兵だった
おじいちゃんが軍から横領した金で見受けしてくれたって話があって萌えた
戦国時代にも、落城した城の奥方を金の力で自分の側室にして、後世に流行り歌が
残るほどラブラブだったとかいう話があるし、時代物もいいですよねー
601 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 04:34:16 ID:Jpoj+TQ5
権兵衛夫人登喜子は16歳で売られたばっかだったらしいからこのスレの条件に該当するかも。
この人政治家としては有能無能以前に不運としかいえないが家庭的にはかなりほめられる方だ。
戦国の話は誰?
>>600 確か武田家臣の誰かじゃなかったか・・・と調べて見たら、小山田信有っぽいね。
エルフ売りの少女
エルフ〜〜エルフ、エルフはいかがですか〜〜?ピッチピチですよ〜。
金髪のハイエルフから〜〜銀髪のダークエルフまで〜〜色々取り揃えておりますよ〜。
エルフ〜〜エルフ、エルフはいかがですか〜〜?
精神抵抗力+4される方で頼む
おいし〜おいし〜エルフっだよ!
ロリっ娘エルフだよ〜
大きくならないよ〜
人間の寿命のがくるまで〜
そういえば初代スレにいた借金のカタに結婚させられた女性と結婚した男ってどうなったの?
男(の父親)が女(の父の会社)に借金しててその借金肩代わりしてるから返済する迄くっつけないのに萌えた
それまでは超ドSに男を虐めてイビってた女の子が気持が通じてからずっとオロオロするんだよ・・・スレ向きだよな?
借金肩代わりしてもらう代わりに、いいようにされるってのが好き。
>>611 結局祖母が納得しないので俺が貯金してた額とそれでも足りない残り額を払うことを祖母と約束して無事離婚しました
え、フラグ?そんなのありませんよ
勘当された上にもうすぐ魔法使いですあばばばばば
もうやめて!
民主当選の悲観論だと、これから凄まじい負担増という意見が多いな。このスレ的にはどうだろうか?
現実の政治ネタは持ち込むのやめようぜ
民政党伊沢さんの出番だな
お金大好き
銀と金ほど金が絡む作品はそうそう無いとはいえw
確か福本スレあったな
そうそう
しかし福本キャラに困ってる女の子
助けそうな金持ちって居ないよな
少なくとも美心が金に困っててもだれも助けなさそうだ。
>>626 兵藤とか在全は助けそうだけどな。
助けた後は監禁しそうだけど。
果たしてそれは助かっているのか
美心、スタイルはいいんだけどな
631 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 15:39:22 ID:a12xYz64
サブマリン
美心のドジンがあることに驚いた
書き手さんこねぇかな…
将来の夢はあしながおじさんです
このスレは銭形の親分さんが活躍するスレですか?
ヒロインを襲おうとした奴を金の延べ棒でフルボッコ
それなんてサンタクロース
むぇって?
なぇって?
俺が可愛らしい少女だったら皆助けてくれるのかな…
もちろんですとも
なに? 子供が欲しいとな?
それなら俺の金に詰まってるモノを沢山注いであげよう
ご安心くださいお嬢さん、
>>643なる不届き者は、私の雇ったSPが捕らえましたよ
SP=スペルマ
ヘッドホンの音質の悪さに困っている女の子のために端子をコーティングをして上げるスレですか?
647 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 22:59:32 ID:kONGGD+K
目の前にお腹を空かした少女が倒れている!
しかし今月は自分もピンチ!
あなたはどうする?
どっかのカード会社のCM宜しく手札は3枚!、ですね。わかりま(ry
とりあえず犯す
餌付け
お持ち帰り
どうすんのよ?!俺!
お持ち帰りして餌付けした後に犯せばいいんだよ
>>650 自分で言っておいてあれだが、凄いカードを3枚引いたなwww
ネコがカリカリを買いたくて「金を出せ」というコピペが好きで書いた。
反省はしない。
9レスくらい。NGはお手数ですがIDでお願いします。
何かが突っ込んできた、と感じたと同時に身体が勝手に動いていた。半歩退きつつ、
走り込んできたそいつの首に手刀を入れる。
やけに骨張った細い感触に驚く暇もない。
ぎゃっと叫んだそいつは、頭から地面に突っ込みそうになり、両手で庇ったものの
纏っていたマントで足がもつれ、結局路地の隅にあるゴミ置き場に転がりながら激突した。
金を出せ、とかなんとか言っていたから正当防衛だと思うが、他に職がなかったから
仕方なくとはいえ軍属で食っている。一般市民に暴行を加えたとなると問題になる。
「おい、大丈夫か?」
転んだままこれっぽっちも動かないそれに声をかけた。
「う、う……」
ゴミの中からずぼっと出てきた顔は薄汚れていた。涙の筋が何本もついている。
すでに乾いた物もあるところを見ると、しばらく顔も洗っていないに違いない。
「か、金をだせぇ!」
泣きながらそいつはまだ、両手でしっかりと細いカッターナイフを握った。
力が入りすぎてぶるぶる震えている。
「金? 金が要るのか?」
「要る」
「いくら」
そいつは目をまん丸にして俺を見た。
「おい。いくら要るんだ、と聞いてるんだ」
「そんなこと、聞かれたこと無かった」
なんだよ。何度も重ねた犯行かよ。
「たいていこうやって転ばされたり殴られたりして、その後はさっさといなくなっちゃうから
誰も聞いてくれたことなんか……っ、ふ、うっく……」
そいつはぼろぼろ涙をこぼした。
古ぼけたマントの端で顔を擦って涙を拭く。
「できるだけたくさん」
たくさんっつってもなあ。食うに困らないていどには持っているが、こいつの言う
『できるだけたくさん』がどのていどかわからない。
「何に使うんだ」
「ご飯、買う」
「メシぃ!? んなもん別に」
「合成じゃない豆を買いたいんだ」
近頃じゃなんでも遺伝子組み換えや合成で、天然物は少ない。
特にタンパク質の類は合成が容易なのか手ごろな価格で品物も豊富に出回っているが、
そのおかげで天然物は庶民の口には入らなくなった。
「豆を買ってどうする」
「母さんに食べさせる」
「母親、どうした」
「病気でずっと寝てるんだ」
そいつは、ずるっ、と鼻を啜った。
「どんどんやせ細っちゃって。スープしか飲めなくなって。ちょっと前までは
家の外で作ってたキャベツを入れてたんだけど」
「キャベツなんか作れんのか!?」
野菜類もそのほとんどが工場で生産される。植物なんだからどうにかして育てているんだろう
と思うが、店先に並ぶのは色つやも形も双子や三つ子のように瓜二つで空恐ろしくもある。
「だけど、こないだの一斉摘発で全部掘り返されちゃって」
ぐすっ、と音がした。また啜り上げたらしい。鼻をかむ紙さえ持ってないのか。
「いまはもう、水みたいに薄いスープに、残ってるキャベツの繊維が浮いてるだけで。
これじゃ母さんはどんどん弱っていく」
いや、それすでに弱ってるだろう。
とはっきり言うのも憚られて俺は代わりに溜息をひとつついた。
「豆を買うのはいいが、戻して煮込んでたら時間がかかるだろうが」
「でも」
でも、じゃねえよ。
まだゴミの中に突っ立っているそいつの腕を取って引っ張った。
656 :
2/9:2009/10/08(木) 03:58:47 ID:vHce0lf1
手首が驚くほど細い。まるで鶏ガラを握ってるみたいだ。
「おまえは?」
「え?」
「おまえは食ってんのか?」
ためらいがちにこくりと頷く。
「スープ、飲んでる」
「その水みたいな薄いスープか」
今度は比較的しっかり頷いた。
それ、食ってる内に入らない。
「ちょっと来い」
ぽきりと折れてしまいそうな細い手首を掴んで路地を抜ける。
「ちょ、ちょ! どこ行くんだよ。お、俺帰らないと母さんが」
「母さんにメシ食わさないとダメなんだろうが。来い」
そのかわり天然物は諦めろ。
にぎやかな通りを抜け、食欲をそそる香りで立ちこめる屋台街へと入っていく。
十数種類の粥を常に置いている屋台を覗いた。
「豆入りってある?」
「あるよ。塩味のと甘いのと」
「甘い? 気持ち悪い粥だな」
「気持ち悪くないよ。小豆と栗と。おいしいよ」
逃げようとして俺の手を振りほどこうと頑張っているチビに声をかけた。
「おい。おまえの母ちゃんは甘い物は好きか?」
「知らない」
知らないっておまえ。
「甘い物なんてもう何年も食べてない」
屋台の親父に向き直る。
「その甘い粥、一番でかいパックでくれ」
テイクアウト用のパックは最大で六人前くらい入ったはずだ。
投げたコインを器用に片手で受けて、親父は、あいよ、と笑った。
「母さん、ただいま! お粥だよ! 食べられる!?」
チビは、いまにも崩れていきそうな斜めに倒れている家の中に入っていった。
俺、ここに入って大丈夫だろうか。
おそるおそるドアを開けて中を覗き込む。
病人のいる、特有の甘く饐えたにおいがする。動物の腐敗するにおいに近いのかも
しれない。だとすればそれは死臭だ。
チビの母親はおそらくもう長くない。
「母さん、寝てるの?」
勢い込んで粥の入ったパックを持って入っていったチビの声が小さくなる。
「母さん……?」
やばい。
チビが、ベッドに寝る母親に手を伸ばしかけたのをとめた。
「なんで? ねえ、なんで母さん……」
限界まで見開いた目がおろおろと泳ぐ。
熱々の粥が入ったパックを落としかねない、と先にそれを手から抜き取った。
「わかってんだろ? おまえの母ちゃんは寝てるんじゃない」
長くない、どころじゃなかった。
遅かった。
「うそ……。だって、私が家を出るときはまだ……」
私?
「母さん! 母さん母さん母さん!」
「よせ」
ベッドに駆け寄ろうとするチビの身体は細くて硬い。だけど腰回りの骨格が明らかに違った。
「おまえ……」
うわあ、と堰を切ったように泣き出したチビに、女だったのか、と確認のために問いかけたが
返事は来なかった。
657 :
3/9:2009/10/08(木) 03:59:03 ID:vHce0lf1
母親の遺体は公共墓地に入れてもらうことになった。
チビ――ネコがそれでいい、と言ったからだ。俺はネコの母親を簡素に弔い、
ネコを拾って、穴蔵のような古いアパートに帰った。
食糧事情も住宅事情も悪化の一途を辿っていたが、それでもまだ内地のこのあたりは
平和なものだった。政府と軍部とが結託し情報統制を行っていたから、
街には景気の良さそうなニュースしか流れていなかった。やれどこそこで戦端が開いたのを
迎え撃ち敗退させただの、敵艦隊に単身突っ込んでいったエースが敵を壊滅させた上に
無傷で帰ってきただの、子供も騙せないようなお粗末なものばかりだった。
半年経ったら俺もそこに戻らなきゃいけない。
「ネコ、メシ!」
湯気の上がる大皿をテーブルにどんと載せると、ネコがすっ飛んできた。
「今日、なに?」
拾ってきたネコを、嫌がるのも構わず風呂に入れた。一人で入らせたら
じっと突っ立ったままなので、どうした、と聞いたら風呂の入り方も知らなかった。
あの崩れかけた家ならさもありなん、と一緒に入り頭のてっぺんから足のつま先まで
ごしごしと洗ってやった結果、真っ黒に見えた肌は輝くばかりに白くなり、
パサパサしていた髪の毛も近頃は少し艶が出てきた。
そしてなにより、やっぱり女だった。
ガリガリに痩せて、あばらが浮き出て、胸にも尻にも肉なんかありはしなかったが女の身体だった。
年を聞くと十六だと言うから肝が冷えた。せいぜい十二、三だと思っていたのだ。
隊に戻るまでの半年。俺はネコを太らせて、一人で生きていけるようにしてやらなきゃいけない。
「俺様特製ピリ辛豆腐あんかけ焼きめし」
ぴたり、とネコの動きが止まる。
ゆるゆるとこちらを向く。
「辛い?」
「そんなに辛くしてない」
「でも、熱そう」
「できたてだから熱い」
ネコは猫舌だ。俺には丁度良く感じる温度のものを必死で吹いて冷まして、やっと口に入れる。
それでも舌をぺろりと出して、ヒリヒリする、と泣きそうな顔になる。
その顔が見たくて、つい熱い物ばかりを作る。
「やっぱ、お金ちょうだい」
ネコが口を尖らせて言う。
「何に使うんだ」
「ご飯、買う。ふーふーしなくても食べられるもの」
「バカ言え。おまえそんなにガリガリなんだから、少しでもぬくい物食わないと
体温が上がらないだろうが。却下だ」
むう、とネコはおかしな声を出す。
「牛乳かけたシリアルとかをカリカリ食べてみたい」
「そんな一回食っただけで飽きるようなものに憧れなくていい」
いつものやりとりだ。
金を出せ、バカを言うな、と言い合った挙げ句、ネコはようやく
自分に合う温度まで冷めたメシを食い、小さな声で、おいし、と言う。
夜、ベッドに入るネコの頭を撫でてやりながら本を読む。ネコは十六にもなって
字が読めなかった。小さな子供向けの絵本を数冊調達してきて、それを繰り返し読んでやった。
一ヶ月もしないうちに字を覚えたのか話を覚えたのかわからなかったが、生意気にも、
今日はそっちじゃなくこっちを読んでくれ、とリクエストするようになった。
「ネコ、腕出せ」
「ん」
絵本を読んでやるのが寝る前の儀式その一ならば、これはその二だ。
手首を掴む。肘の近くも掴んでみる。
「まだ細いな」
ネコがくくくと喉を鳴らして笑う。
「そっくり」
「何に?」
「これ。これの魔女」
ネコはベッドの傍らからお気に入りの絵本を持ち上げて見せた。
658 :
4/9:2009/10/08(木) 03:59:20 ID:vHce0lf1
お菓子の家に誘われた兄と妹は魔女に捕まってしまう。妹はまだ小さいから下働きに、
とこきつかわれ、兄の方は太ったら食べよう、と檻に入れられ毎日ごちそうを
食べさせられる。ところが年老いた魔女は目が悪く、檻の中の兄の姿がよくわからない。
そこで妹に兄の様子を聞く。
「なんのかわりもありません。ちっとも太ってきていません」
ウソを吐いているのじゃあるまいな、と魔女は兄に腕を出すように言う。
腕の肉付きを触って確かめようと言うのだ。そして太っていない、と怒り狂う。
兄は鳥の骨を差し出して魔女に握らせていた。
とんがり帽子に、身体をすっぽりと覆ってしまうマント。
顔の中心を占める大きな鷲鼻は先端が長く垂れ、
いかにも年老いた意地悪な魔女が描かれているその絵本を、ネコはことのほか気に入っていた。
「最初はここのことだ、って思った」
「なにが」
「お菓子の家。私にとってこの家はお菓子の家だった。訳もわからないうちに母さんは
お墓に入れられちゃうし、文句をいう間もなく連れてこられて閉じ込められちゃうし、
毎日毎日朝昼晩ってご飯が出てくるし」
よかれと思ってしてやったことがえらい言われ様だ。
「ついでに毎日、こうやって太ったかどうかチェックされちゃうし」
うくく、とネコは笑う。
「でもお菓子の家にいたのは魔女じゃなかった」
「ネコ?」
「だから『おはなし』にはならないね。お休み」
説明もなく打ち切られ、仕方なく『お休み』と返して明かりを消した。
配属先の通知が来た。
時期は変わらない。だが場所が悪い。
ネコに、一ヶ月後に仕事に戻ることを告げた。
「仕事? なにをしてるの?」
毎日俺が家にいることを不思議にも思わなかったらしい。
「人殺し」
ネコの顔色が変わる。
「半年の休暇をもらってた。戻らなきゃならん。そこで聞きたいんだがおまえ、
ここを出た後行くあてはあるか?」
青ざめたままネコは首を振った。
「そんなとこ……あったら行ってる」
「だよな」
縁もゆかりもない男のところにほぼ軟禁状態で暮らす必要なんか無い。
「おまえにここを残していく。そのほかにも残してやれる物があるにはあるんだが、
ちっとばかりこっちは手続きが面倒くさい。手続きを簡単にするためにおまえ結婚しないか?」
かくん、と音を立ててネコの顎が落ちた。
「い、意味わかんない」
さっき青ざめたと思ったネコはもう真っ赤になっている。
「なんで結婚なんか」
「この家は俺の名義になってる。俺と結婚したらおまえは堂々とここに住める。
あとな、恩給が出る」
「恩給?」
「そう。結婚してたら、俺が死んだ場合おまえには毎月軍から金が支給される。
俺の死後三十年間毎月。けっこうな額だ。それがあればぜいたくさえしなきゃ暮らしていけるだろ」
「要らない! そんなの要らない!」
ネコは俺のシャツの胸ぐらを掴んだ。
もう泣いてる。特技なんじゃないかと思うくらいネコは涙を出すのが早い。
「お金なんか要らない! だから行かないで!」
「そんなわけにはいかない。俺はそれでいままで食ってきたんだから」
ここに住んでいられるのも、合成物とはいえメシの材料を買ってこられてたのも全部、
軍から給料が出ているからだ。
659 :
5/9:2009/10/08(木) 03:59:42 ID:vHce0lf1
「手続きだけしに行こうぜ。どうせ俺は他に身よりもない。おまえに残せるなら本望だ」
ネコの顔は涙でぐしゃぐしゃになった。
「いやだ! すぐにいなくなるのになんで」
「そうしないと残せないからだ。子供がぐだぐだ文句を言うんじゃない。来い」
手首を掴む。ネコが痛がって悲鳴を上げて身体をくねらせる。
「おまえ……」
掴んだ手首はほんの少しだけふっくらと柔らかかった。
「ちょっとは肉ついた?」
ネコは真っ赤になって頷いた。
「ちゃんと……胸もある」
「それはウソだろ」
笑い飛ばすとネコはむきになって言い返してきた。
「ウソだと思うなら確かめてみろ!」
「おい。それは」
「けっ、結婚とか! するって言うんだったら! た、た、確かめろ!」
涙で濡れた顔で、真っ赤になって、とんでもないことを叫ぶ子供を扱いあぐねる。
「寧々子」
ネコの本当の名前を呼ぶと、ネコ――寧々子は空気の抜けきった風船のように勢いを無くした。
「でも。だって」
「でももだっても要らない。俺は十中八九死ぬ。だからそれまで我慢しろ。
そしたら後は好きに生きていいから」
確かめてみろなんて言うな。
「いやだ!」
「ネコ」
「私に残す、って言うんだったらちゃんと残して。家やお金だけじゃなく、
ちゃんとここにいたんだって、一緒に暮らしてたんだ、って証拠を残して」
泣き濡れた瞳で見上げてくるネコの決心は変わらず、俺は先に手続きだけはしよう、
とネコを促して外に出た。
公的証書を作る出張所は軍の出先機関の中にある。
ネコに住民ナンバーが無いことがわかって手間取ったが、どうにかネコを
俺の配偶者として登録できた。
「メシ、何か買って帰るか」
「いい」
言葉少なにネコは首を振った。
「ご飯食べたい」
「あ?」
「あんたの作ってくれるご飯が食べたい」
歩きながら手がぶつかってくる。掴んだら、はっとしたように顔を上げ、だが手を繋いできた。
「家に帰ろう」
帰ったら気まずいから、遠回りをしようとしているのに、ネコは他へ寄ることは許さない、
という強い意志を滲ませた声で言った。
ベッドに膝立ちになるネコの肩からストラップを滑り落とす。
やっぱりまだあばらがわかる。それでもブラの必要なていどには胸も育っていた。
ふくらみを覆い隠すように手を乗せると、あ、と声を出して目を瞑る。
「いやなら……」
「いやなんて言ってない!」
ネコはこちらをきっと睨みつけ、噛みつかんばかりに言うと、はあ、と息をはいて
また目を瞑った。
背中に手を回す。肩胛骨が見事にわかるし、背骨もごつごつと手に触れる。
どう考えたって抱き心地の良さそうな身体とは思えない。
若い肌だけは滑らかでいいにおいもしているが、それだけでできるとも思えない。
「ネコ」
ふるふると身体が細かく震えている。
「おい。ネコ」
「なに」
「初めてだろ?」
「な、なに」
その反応でわかる。初めてだ。
660 :
6/9:2009/10/08(木) 03:59:57 ID:vHce0lf1
拾ったときは小汚いガキだと思ったんだ。女だなんて思わなかった。
初めてに決まってる。
「やめとこうぜ。わざわざ痛い思いをすることも無いだろ」
「やる」
低い声でネコは俺を睨め付けた。
「やれ。じゃなきゃ離婚の手続きしに行ってくるぞ」
「脅しになってねー」
予想外のことを言われて、げらげら笑った。
「だって! だって、私に残すために結婚しなきゃいけない、って言った!」
「言ったけどよ」
離婚したって、おまえが損するだけじゃないか。
「ネコ」
「ん」
「寧々子」
「ん……」
肌に唇を滑らせていく。
身体を支えていられないのか、ネコの上体が大きく傾いでベッドに倒れた。
のしかかっていきながらスカートをまくり上げる。
「ふ、っぇ あぁう… ぅあん」
妙に猫っぽい声を上げながら、足をもぞもぞと擦り寄せている。
内股をさすり上げて、ショーツの真ん中を触った。
「ひぅんっ!」
喉を思い切りのけぞらせて高い声を上げる。
ネコのその部分はかすかに蒸れていた。
まったく濡れ方が足りない。
耳たぶを唇で食み、こめかみにも鼻の頭にもキスを落とし、唇を合わせる。
ちゅっと音をさせて離れると、その唇が
「初めてキスした……」
と言葉を紡ぐ。
「もっといいの、教えてやる」
うっすら開いていた唇に、もう一度自分の唇を重ねた。隙間から舌を入れると、
ネコの身体がびくりと跳ねた。
俺の肩にしがみついて、どうしたらいいのかわからないみたいに硬直してる。
舌を誘い出そうとしても、口腔内をぬるぬると舐め回してみても、微動だにしない。
「気持ちよくないか?」
すごく上手いわけでもないが、下手でもないと思っていたんだが。
「あぅ……」
ネコは困ったように目を泳がせた。
「なんで舌を入れるの?」
「そういうもんだから」
なんでだろ。考えたこともなかった。
ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて肌を吸い付けていく。胸の近くできつく吸い上げた。
「あ、あ! あぁう! んんんっ」
ばっちり残したキスマークに満足して、さらに下へとさがっていく。
臍の周りも舐め回した。くすぐったがって身を捩って大変だった。
脇腹は本当にくすぐったさしか感じないみたいで、これは開発の余地がある、
と渋い顔で告げるとネコはいつ開発する気だ、と挑発してきた。
ショーツを引き剥がす。
やはり濡れ方は少ない。
だからそこにも舌を這わせた。
「ひゃあああっ!」
素っ頓狂な、それでいて尖った悲鳴を上げて、ネコが尻でずり上がっていこうとする。
「こら待て。どこへ行く」
「そっ、そんなとこ舐めるな!」
「舐めてない」
どちらかというと唾液を垂らして濡らしてる。
「でも! やだ! 口でされるのやだ!」
「口じゃないならなにがいいんだよ? 初めてのくせにぐだぐだ抜かすな」
こっちはできるだけ痛くないように、って気を遣ってるんだから。
661 :
7/9:
「そっちこそ変な事しなくていいから、さっさとやれ!」
「変な事?」
「な、舐めたりとか……っ」
変じゃねーよ。舐めたり舐められたりは基本だろうが。
ああ、そんなこと教える暇も無いのか。
「わかった。じゃあもういい。やる」
「やれ」
情緒もへったくれもありゃしない。自分の先端から零れている液体を秘裂になすりつけた。
枯れ木も山の賑わいと言うが、こんなちょっぴりじゃ、焼け石に水のほうだろう。
抵抗のきついそこへ腰を落とし込みながら突き入れた。
ネコは、ぎにゃー、とか、うぎゃー、とかなんだかこっちの気分が萎えるような
バカバカしい悲鳴を上げて、大粒の涙を流しながらしがみついている俺の肩に
指先を食い込ませた。立てられるほどツメを伸ばしてなかったからだ。
「い…ッ」
「だから言ってやったのに」
「やかましいっ! 偉そうに!」
偉そうに、って。年の差を考えても俺が偉そうにしたって問題無いだろうが。
ひいひいと泣くネコを突いて突いて突き上げて、これでもかと揺さぶった。
やめろ、だったネコの声が、やめて、に変わる頃にやっと繋がりあってる部分が
ぐちゃぐちゃと音を立て始め、もう許して、と可愛い声が懇願する頃には
外はうっすら明るいし、白く濁ったぬめりのある液体まみれだし、時折尻が揺れ始めていた。
「ネコ」
「んぅ…」
中に出す、というのがどういうことかはわかっていた。
わかっていて――残したくてわざとやった。
泣き腫らした真っ赤な目をしたネコに見送られ家を出た。
さようならだ、ネコ。
便宜上の結婚だったとはいえ、この一ヶ月ネコはわりとそれらしい新妻ぶりを見せた。
ネコの母親のことは遺体になった後からしか知らないが、ネコの記憶では妻とは
こういう物だったのだろう。それまでの奔放ぶりはどこへやら、
かいがいしく俺の世話を焼こうとした。
経験もなく練習もしたことがないので失敗ばかりやっていたが、
めげもせずにメシの作り方も洗濯機の使い方も覚えていった。
読み書きも出来るようになってきている。
大丈夫だろう。
絶対大丈夫とは言わないが、大丈夫だろう。
未練はたっぷりあったが、概ね満足して俺は死地へ向かった。
最後までネコは俺のことを好きだなんて言わなかったし、俺も言わなかった。
そのほうがいい。
俺の残していく物がネコに必要なくなるときが来たら切り捨てることができるように。
そのためには、気持ちなんて伝えるべきじゃない。
手紙も出さなかった。
ネコからも来なかった。多分、ネコは俺がどこにいるのか知らない。
だからそれでいい。
既婚者のくせに写真も持っていないのか、とからかわれ、
そういうものに感傷を呼び起こされるやつはどんな映画でもたいてい
次のシーンで死んでる、と笑うネタにした。
そうして。
俺は死に損なった。