馬鹿が投下先間違えてるんで張ってやろうw
マロニー大将に呼び付けられたミーナは、期待に胸を膨らませていた。
ミーナは無理やり大将に犯されて愛人にされて以来、もう彼の剛直無しではいられない体にされているのだ。
しかしこのところ多忙を理由に密会は断られ、ずっと彼のモノとはご無沙汰であった。
「久しぶりに抱いていただける……」
そう考えるだけでミーナは浮ついた気分になり、いつもより丹念に肌を磨いたのだった。
軽い足取りで長い廊下を歩き、アッと言う間に大将の執務室の前に到着する。
自分の口が臭わないかチェックした後、裏返りそうになる声を抑えて大将に到着を申告した。
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐、参りました」
落ち着こうと気をつけたのにもかかわらず、ミーナの声は震えを帯びていた。
間をおかず中から返事があり、入室を促された。
動悸を押さえつつ部屋に入ったミーナが見たものは、想像だにしていない光景であった。
「マロニー大……将……?」
部屋の中央にマロニー大将がいた。
一糸まとわぬ全裸であり、鋼鉄を寄り合わせた様な筋肉美を惜しげもなく晒している。
そして大将の腹の下に、彼に抱え込まれるようにして喘いでいるサーニャがいた。
もちろんサーニャも全裸であり、大きく開かれた股間に大将の剛直が突き込まれている。
剛直はサーニャを深く抉りながら往復しており、動くたびに互いの体液が混じり合った汁が飛び散っている。
「……ん……んぁ……あふぅぅぅ……」
サーニャはめくるめく快感に溺れながら、必死で意識を繋ぎ止めようと歯を食いしばって喘いでいる。
そして更なる快感を貪ろうと、自ら腰を突き上げては小さなお尻をエロティックに振り乱している。
普段は大人しいサーニャからは想像もつかない姿であった。
「いや……こんなのって……いやぁぁぁっ」
ミーナは思わず絶叫を上げていた。
2人に駆け寄ろうとしたミーナを、背後から忍び寄った美緒とバルクホルンが組み敷く。
「あ、あなたたち? 放しなさい……放せぇぇぇっ」
必死で身悶えするも、バルクホルンの怪力の前にはビクともしない。
「ダーリン……トレバー。これはどう言うことなの。ちゃんと……ちゃんと説明してぇ」
ミーナは首を激しく振って嫌々をする。
「ミーナそこで見ていなさい」
愛人の悲痛な叫びを無視し、マロニー大将はダイナミックなピストン運動をリズミカルに繰り返す。
やがてクライマックスが近づき、大将の動きが激しさを増してきた。
愛しい人の精が、目の前で他の女の子宮に注がれる──それは女にとって許されざる行為であった。
「いやぁっ。こんなの、イヤァァァーッ」
ヒステリックな悲鳴が部屋中に轟いた。
223名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 18:43:44 ID:044azBMk
リーネをシャブ漬けにして輪姦すってのはどうだ?
フタナリの芳佳とイチャイチャしてる夢を見ながら、現実では男のペニスに汚されている
アヌスまで精子まみれになり、それでも幸せそうによがりまくる
219名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 18:36:13 ID:0PkG+fEX
じゃあ、こちらも譲歩するから
折衷案として使い魔とヤルのはどうだ?
「あぁ〜ん、兼定のおちんちんっておっきぃ。やぁ〜ん、子宮に当たってるぅ?」
214名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 18:15:06 ID:tVZ/l+ex
一度でいいから言ってみたいセリフ
「テメェらがっつくんじゃねぇよ。順番に犯してやるから、四つん這いになって並びやがれ」
尻を高々と上げ、期待を込めた目でこちらを見てくるウィッチたち
俺は端から順番にタップリ注いでやっていくのさ
213名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 18:03:31 ID:Y/zjyGmM
ミーナは一晩に男一人では満足できないだろ
毎晩3人ずつくらいは自室に引き込んでいそう
「おい、お前。今晩はミーナ中佐の当番だろ」
「俺もう嫌だよ、あの人の相手するの」
「何度も求めてくるから、翌日の仕事が辛くって……」
とか、整備兵もウンザリしてそうだな
212名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 17:29:22 ID:xjVYGNtF
「あなたの汚らわしいペニスで感じるなんてありえませんわ!」
とか言いながら我慢できずに腰振っちゃうペリーヌは相当可愛いな
「わっはっは!相当溜まってるようだな!どれ、私が抜いてやろうか」
と言われながらもっさんに手コキしてもらいたいな
「え〜、今日もするの?キミ最近激しいから疲れるんだよなぁ・・・」
とか言ってちょっと面倒臭そうなハルトマンを優しく押し倒したい
「あの…胸、あんまり見ないで下さい…恥ずかしいです…」
と照れて縮こまってるリーネのおっぱいを嘗め回すのもいいなぁ
211名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 17:13:16 ID:xjVYGNtF
おっぱい大好きな芳佳はきっとちんぽっぽも大好きだな
隙あれば股間に触ろうとするから芳佳だけ男との接触を厳重注意されるんだ
ノンケのミーナなんかは夜な夜な整備兵とパンパンやってるに違いないな
ルッキーニもおっぱいハンターだから将来ちゃんと性に目覚めた時には
男のチンポを漁り回るような元気な淫乱ちゃんに成長するだろう
200名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 15:59:51 ID:xjVYGNtF
シャーリーの騎乗位は迫力あるだろうな
おっぱいぶるんぶるん揺らして長い髪振り乱してさ
シャーリーみたいなタイプは男を無理に押し倒して跨るのがよく似合うw
ゲルトは逆に嫌がってるのを押し倒して無理にってのがいいな
魔力は集中力大事らしいし、突然後ろから襲っていきなり突っ込めば
自慢の怪力も出せないだろう。それか魔力が尽きてからならウィッチもただの女の子
ウィッチだった頃は男に負けるなんて経験した事がなかったから、
初めての屈辱と陵辱に絶望しながらもメスの本能で男を求めてしまうんだw
198名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 15:44:39 ID:xjVYGNtF
整備兵の男が主人公でウィッチ達と仲良くなっていくゲーム出ないかなー
二人以上とフラグを立てると主人公取り合って模擬戦で決着ですわ!とかイベントが起きたり
朝練中にもっさんとばったり会って一緒に素振りとか、夜間哨戒中のサーニャとこっそり通信したり
落ち込み気味のリーネを慰めたり、シャーリーの整備とか実験に立ち会ったりして、
501解散後は一緒に行動できるように願書を一緒に届けたりとかさw
191名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 15:27:52 ID:2XNagcvy
チンポの味を知ってしまったエイラは、その後サーニャそっちのけで整備兵にメロメロ
そして他のチンポも試してみたくなり、行く行くは整備兵の公衆便所と化すのであった
「こ、こんな気持ちのイイもの……知らずにいたら……そ、損ダロ……ひぎぃ」
187名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/09/27(日) 14:57:08 ID:xjVYGNtF
>>185 精一杯の勇気を振り絞って、ぎこちなくて不器用でたどたどしく、
それでも真摯で真剣な想いをサーニャに伝えたエイラ。
だけど
「ごめんなさい。気持ちは嬉しいの、本当に。ありがとうエイラ。
ごめんね。それでも、これからもずっと友達でいてくれる?」
と振られてしまう。
それでも諦め切れなかったエイラがもう一度話をしてみようと
深夜にサーニャの部屋のドアを控えめにノックするんだ。
返事がなかったからそうっと開けてみると、薄暗い部屋のベッドの上では
サーニャと整備兵と思しき男が全裸で下半身を繋がらせたまま熱いキスを交わしている。
エイラは勿論ショックを受けるんだけど、逆にその場から動けなくなって視線は釘付け。
そのうちにだんだん艶かしいサーニャと逞しい男の身体に興奮してしまって、
自分もサーニャとヤりたいとか自分も男に抱かれたいとか思いながらオナニーに耽ると最高。
勿論その後は二人にバレて3Pの流れ。サーニャと同じチンポで処女喪失したエイラは歓喜する。
エイラも悲願のサーニャとヤれて満足。男の味も知れて満足。めでたしめでたし
こういうのがいいな
おらよ、好きなだけオナれキチガイどもw
――――恋――――
恋は不思議だ。その人の事を想うだけで世界が変わった気にすらなる。
その人が隣にいるだけで優しい気持ちになれる。
私はその人のどこが好きなのだろう。
見た目? 性格? 声?
ううん、どれにも当てはまらない。
だって、好きなところは、多分その人のすべて。
分からないけど、恋っていうのは多分そんなものじゃないかな。
一旦好きになってしまうと、その人の周りだけが輝いて見える。
恋って多分そういうもの。
「リーネちゃーん、行くよー」
ほら、向こうであの人が私の名前を呼んでいる。
宮藤芳佳。
今はまだ、芳佳ちゃんにはこの気持ちは伝えられないけど、しばらくはこのままでいい、ううん、このままがいいのかもしれない。
いつか、いつか、私の想いを伝えられる日が来たら、怯まず、ちゃんと真っ正面から芳佳ちゃんに伝えよう。この気持ちを。
「うん、今行くねー」
私は芳佳ちゃんの声にきるだけの笑顔と声で答えた。
そして、心の中で呟いた。
「好きだよ、芳佳ちゃん」
「私は……………芳佳ちゃんのお嫁さんになりたい!!」
「!?」
リーネちゃんがこんな事を言い出したのは数分前に遡る。
訓練後にリーネちゃんと話していた時、将来の事についての話になった時だった。
「リーネちゃんって良いお嫁さんになりそうだよね」
「えっ…?」
「だって、優しいし、可愛いし」
「私は…」
「リーネちゃんってどんな人がタイプなの?」
かなり間があった後、リーネちゃんは顔を真っ赤にしながら呟いた。
「………私は…………芳佳ちゃんが…………好き……………………」
「えっ…?」
「私は……………芳佳ちゃんのお嫁さんになりたい!!」
「!?」
「タイプとかじゃなくて、私は芳佳ちゃんが好きなの!」
「ちょ…ちょっと落ち着こうよ、リーネちゃん…!」
「私は落ち着いてるよ、芳佳ちゃん!」
そう言うとリーネちゃんは私を抱き寄せて…
「可愛い…芳佳ちゃん可愛いよ…。…やっぱり芳佳ちゃんを私のモノにしたい…」
「…リッ、リーネちゃん…苦しい…胸が…///」
あれ、リーネちゃん、なんかハァハァ言ってる…?
これ、ヤバい?
と思ったらリーネちゃん、私をお姫様だっこして…
「芳佳ちゃん、私達ね、互いをもっとよく知る事が大事だと思うの」
「…へっ…?」
戸惑う私にリーネちゃんは満面の笑みで…
「…私の部屋に行こう?」
「えっ、ちょ、ちょっとリーネちゃん…? 何するつもりなの? ちょっと…リーネちゃぁぁん!!」
「ハッハッハッ、あの二人は本当に仲良いなぁ」
「…あれは仲がいいって言うのかしら…ちょっと違うような…」
この後、私はリーネちゃんに喰べられたとさ……。
夕陽で赤く染まった室内に湿った荒い息遣いと濡れた音が響く。
ごく普通の居心地の良さそうなリビング。けど、その真ん中に据えられた
ソファーの上ではとても普通とは言えない光景か繰り広げられていた。
絡み合うのは二人の少女。一人は着衣をこれでもかと言わんばかりに乱され、
喘ぎながら咽び泣いている。
その上に全裸の少女が覆い被さり、下になった少女の全身をまさぐっている。
せつなが着ていたのは生成りのシャツワンピース。そのボタンを腹まで外され
胸元も露にはだけられ、白いブラはずり上げられ乳房を剥き出しにされている。
スカートは腰の上までたくしあげられ、片方の足をソファーの背に、もう片方は
床に落とされこれ以上は無理なくらい足を開げさせられている。
ラブはその足の間に顔を埋め、無心に舌を使う。
ピチャピチャと犬が水を舐める様な音をたて、ガクガクと腰を震わせる
せつなを押さえ付けながら攻め立てる。
「はあっ……はあっ…、ふぅっ…んん!」
ラブの舌が動く度に足首に下着が絡んだままの足がピクピクと揺れる。
せつなはラブの湿ったままの髪を力無く引っ張りながら、
ただひたすら気の狂いそうな性感に耐えていた。
ラビリンスにいた頃のせつなは、最前線で働く為の戦闘要員だった。
幼い頃から己を律し、鍛え、学び、一切の欲望を排除した生活を送っていた。
性的な知識が無いわけではないが、それは人間の体の構造を学ぶ上での
一行程であり、生殖の為のものであり、まだ年若く、しかも戦士として
いつ出撃命令が出るか分からない自分には無縁のものだった。
仮に後に遺伝子を残す為に妊娠・出産を命じられる事はあったとしても
そんな事はその時なればお膳立てが整っているはずで、自分はただ
言われた通りにするだけの事だった。
だから何も知らなかった。他人の手が、唇が触れるとどうなってしまうのか。
真摯な眼で見つめられ、抱きすくめられたら動けなくなってしまう事を。
ラブの冷えきった唇に自分の唇を塞がれた時、せつなは反射的に
相手をはね除けそうになった。
でも、ラブの眼を見てしまった。ほんの数センチ先にあるラブの瞳。
鏡の様に静かなのに、その奥に狂おしい程の思いを押し込めていた。
どんなに欲しても与えられない。身を捩る程に渇望しても
決して自分には手に入らない。
苦しくて苦しくて、だからそんな思いは最初から感じて無いんだ、そんなもの
欲しがる自分なんて存在しないんだと自分を騙し。
けど時折暴れ出す心を御し切れなくて…。
そう、かつての自分だ。
逃げちゃいけない。そう思った。ここで少しでも拒否する仕草を見せれば
ラブの心には取り返しのつかないヒビが入ってしまう。
体から一切の力が抜けた。
(ラブ…大丈夫よ…。)
貴女は私とは違う。どんな闇と向き合っても染まってしまったりしない。
それに、ちゃんと伝えなければならない。
貴女が心から望んでいるモノ。それは決して手の届かないモノではないのだ…と言う事を。
ラブは無抵抗なせつなの体を恣に貪る。まだ14歳の少女に愛撫の仕方など
分かるはずもない。
ただ同じ体を持った同性。どこをどうすればどんなふうに感じるかは分かる。
慣れないうちは敏感な部分への強い刺激は快感より苦痛の方が大きいと言う事も。
ラブわざと敏感な部分を執拗にいじくり、弄ぶ。
せつなの反応を見れば、乏しい自慰の経験しかない自分よりも遥かに
性的な経験がないように感じられる。
もしかしたら、一度も自分で触れた事すらないのかも知れないと思った。
乳首に歯を立てる度に大きく背を反らせ、陰核の柔皮を無理やり捲り
中の突起を強く吸えば、啜り泣きどころではない悲鳴に近い泣き声をあげる。
ぴったりと閉じた膣に無理やり二本の指を捻り込む。指を押し出そうとするかのように
きつくすぼまった肉が蠕動する。
「あっ…あっ…あぁっ。……いっ…つぅ……。」
指が深く埋まって行くにつれ、せつなはか細く泣き、目尻に涙が溜まっていく。
(痛いんだろうな。)
ラブはそう思いながらも指を根元まで納め、内壁を広げるようにグニグニと
動かす。
ラブ自身も自分を慰める時に、こんなに深く指を入れた事はない。
せつなにとってもこの行為が苦痛でしかない事くらいわかる。
唇を抉じ開けるように舌で口腔内を蹂躙する。柔らかな下唇に
歯を立てると、ラブの中に鉄の香りが滲む。
指で中を犯しながら、膨れた外側の突起を捏ねる。
せつなの体が跳ね、塞いだ唇の隙間からくぐもった呻き声が漏れる。
「…ぅふ……んぅっ…んくっ…」
せつなの痙攣がある程度治まると、ラブは唇を解放し、ゆっくりと指を引き抜いた。
ぬらぬらと光る指を見ると体液に薄赤い色が混じり、下敷き
になっているワンピースにも同じ色の染みが出来ている。
それが破瓜の血になるのか、それとも乱暴な挿入で粘膜が傷付けられて
出たのかはわからない。
でも、相当苦しい思いをさせただろう事は想像が付く。
(こう言うのでも処女奪っちゃった事になるのかな……)
ラブは暗い喜びを感じている自分に苦笑した。
せつなはここまでされても抵抗の片鱗すら見せない。
『イヤ。』『やめて。』と無意識に口をついて出そうな言葉すら口にしない。
ただ、涙を流しながら責め苦のようなラブの愛撫に打ち震えている。
「どうして?」
せつなは最初、自分が無意識に言ってしまったのかと思った。
でも、その言葉を発したのはラブの方。
霞む眼をそろそろと上げるとラブが見下ろしていた。
「ねぇ、どうして、せつな?嫌じゃないの?嫌でしょ?こんなの。」
確かにせつなならラブを跳ね返す事くらい訳はない。
プリキュア状態ならともかく、生身なら身体能力も体力も
せつなの方が遥かに勝っている。
(あたし、同情されてるの?可哀想って思われてる?)
もしそうなら惨め過ぎる。罵倒されても、軽蔑されても仕方がない。
でも憐れまれるのは嫌だ。どこまでも自分本位だとは分かってる。
それでも……
「それともなに?せつな、こう言うの好きなの?気持ちよくなっちゃったの?」
恐らくラブは下卑た笑いを浮かべたつもりだったんだろう。
でも、せつなには、それは泣きたいのを堪えて顔をくしゃくしゃにしてる
小さな子供にしか見えなくて…。
「だって、ラブが泣いてるから。」
いつか、どこかで聞いたような台詞だ。あなたの心が泣き叫んでる……。
辛くて、苦しくて、どうしようもない……いっそすべてを壊してしまいたい程に。
「…なに?……それ。」
やっぱり同情されてるの?ラブが本当に泣きそうになった時、
「泣かないで……。」
ラブの頭はせつなの胸に抱き込まれた。
「私…ラブが好きよ…。」
私は、上手く伝えられるだろうか……。
ラブはせつなの胸に顔を埋めたまま、動けない。
せつなの言った言葉…。
『好きよ』確かにせつなはそう言った。反射的に心が歓喜に震える。
ずっとずっと、欲しくて堪らなかったことば。
でも……、それは……。
「…違うでしょ?違うよ!!せつなが言ってるのと、あたしのは……!」
全然違うんだよ。
分かってた。今のせつなはあたしの言う事なら何でも聞きかねない。
どんな事でも、ラブが望むなら…と。
でも、そんなものは違う。欲しかったものじゃない。
ここまで酷い事をして、それなのにせつなは好きと言ってくれて。
でも、違う。どこまで自分勝手なんだと思う。
せつなの身も心もこれ以上無いほど傷付けて、それでも満足できない。
一体、どうなれば満足なんだろう。
「…そうね。違うのかも知れない。」
頭の上から柔らかい声が降ってくる。
さっきの自分の言葉への返事。違うと言ったのは自分なのに
ずきりと痛みが走る。
一瞬、体を強張らせたラブの髪をせつなは優しく撫でる。
「でも、…私、分からないんだもの。……だって、」
誰かを大切に思ったのも、誰かに大切にされたのも、誰かを好きになったのも、
ラブが初めてだから。
私には何もなかった。守りたいものも、愛しいものも。
空っぽの心。『メビウス』と言う偶像にその空白を埋める事を求め、
渇いてひび割れた水差しに、溜まるはずもない水を注ぎ続けていた。
メビウス様の為に
メビウス様の為に
メビウス様の為に
ラブと出逢い、ラブと触れ合い、いつの間にかひび割れは消えていた。
少しずつ、心に溜まっていく何か。
それが何なのか、今も表す言葉を私は持たない。
でも、これだけは分かる。こんな気持ちはラブに対してしか生まれない。
盲目的に誓っていた忠誠とは違う。
ただ依存の対象が代わっただけだと言われるかも知れない。
そうかも知れない。もしそう言われても、私には明確な反論は出来ないかも知れない。
でも私はもう決めてる。ラブしかいらない。
この先、例えどんな出会いがあってもラブ以上に大切な人は出来ない。
ラブが最初で最後の、一番大切で愛しい人。
仲間、家族、友達…。今の私には大好きな人が沢山できた。
決してラブ以外の人がどうでもいいわけじゃない。
その人達を守る為にも、私は命懸けになれる。
でも、その人達全てを合わせても、ラブ一人にはかなわない。
せつなは拙くことばを綴る。
どう言えば分かってもらえる?
どうすれば伝わるんだろう。
ラブには知られてはいけないと思ってた。友達でいなきゃ。家族にならなきゃ。
ラブがいないとダメだと思われたくない。ラブに依存しきってると思われたくない。
ラブにはラブの世界があるんだから、邪魔しちゃいけない。
自分だけ、見て欲しいなんて、絶対に、言えない……。
だって重すぎるもの。人ひとりの心を丸ごと被せられるなんて。
ラブは分かってない。どんなに私がラブを好きか。
ラブが想像するよりも、ずっと、ずっと…。
隠しちゃいけなかったのかな。鈍い私はラブが追いつめられてるのに
ちっとも気付かなかった。
いつもラブは自分の事より、人の事で怒って、泣いて。
昔からそうだったって聞いてる。
だから、ラブは多分泣いてしまうだろう。
せつなに酷い事をした。
せつなを傷付けた。
そして、それ以上に自分を傷付けてしまうかもしれない。
ごめんね、ラブ。本当にごめん。
……もどかしい……。
どんなことばでも伝えきれる気がしない。私のことばはどうしてこんなに拙いんだろう。
せつなは全身で強く強く、ラブを抱き締める。
極度の緊張と過度な刺激に晒された体はミシミシと軋み、力が入らない。
それでも強く。ラブを丸ごと体の中に包み込めるように。
「分かってないのはラブの方なんだからね!」
「……っう…うわ、うわああああーーん!!」
ラブは突然、子供のように声をあげて泣き始めた。
「…っごめ……ごめっ…なさっ…!…… ごめんっ…なさ…い!
ひっく…ぅえ、せっ…、せつなっ…せつなぁ……せつな………」
「うん……、ラブ…」
「ホ…っトに……ホントに、ごめんなさい!」
「……うん……」
優しく優しく頭を撫でられ、きつく体を抱き締められ、どのくらい泣いただろう。
涙と共に凍えた塊が溶け出していく。冷えきった体をせつなが暖めてくれる。
溶け出した塊も全部は無くならないかも知れない。
一度向き合ってしまった剥き出しの欲望は、
そうそう簡単には自分を解放してくれないかも知れない。
でも、きっと大丈夫。せつながいるもの。
醜い欲望も身勝手な独占欲も全部はせつなが受け止め、洗い流してくれた。
ごめんなさい、せつな。謝っても傷付けてしまった事は取り返せない。
でも、もう傷付けたりしないから。あたしもせつなを丸ごと包み込みたいから。
身を起こしたせつなは、少し震える唇で羽根のように軽くて優しいキスをくれた。
「ラブは、言ってくれないの?」
「……?」
「私はちゃんと言ったのに。ラブは言ってくれない、どして?」
「……あ………」
いたずらっぽく微笑むせつな。言われてやっと気がついた。
あたし、一度もちゃんと言ってないや。
あたしは一つ大きく深呼吸して…
「あたしは、せつなが大好きです。世界で、一番、せつなが好き。」
今度はあたしからキスを送る。できる限り優しく、でも、
せつながくれたキスよりはちょっぴり深く。
昼休み、ハルヒは昨日置き忘れた財布を取りにいくため、部室に向かっていた。
「もう!財布がなきゃ学食が買えないじゃない!」
蝶番が可哀相なくらい勢いよく部室のドアを開けるとそこには先客がいた。
「有希じゃない」
窓際でぽつんとパイプ椅子に座っていた長門は、今まで食べていた
コンビニ弁当に向けていた無感動な目を、たった今入ってきた少女に向けた。
「いつもここでお昼食べてるの?」
「そう」
ハルヒは柔らかな光を受ける長門の顔をじろじろ見た後、
彼女の手のコンビニ弁当を見て表情を変えた。
「っ有希!あなたもしかして毎日コンビニ弁当だったりする!?」
静止していた頭がかすかに動く。
「ダメよ!育ち盛りの高校生が毎日そんなんじゃ!だからそんな細いままなのよ!!」
長門が何か反応を返す前に、ハルヒは長門の手を右手で、
長机の上に放置されていた財布を左手でわしづかみにした。
「学食行くわよ学食!今日は私がおごったげるからじゃんじゃん食べなさい!!」
長門は左手にコンビニ弁当を、箸を持った右手をハルヒにつかまれたまま、
自分の手を強引に引いて走り出す少女に抵抗することもなく、足を動かし始めた。
学食の机に向かい合わせで座る二人の間には、カレーと定食Aとサラダとデザートが
美味しそうな匂いと湯気を立ち上らせながらずらりと並んでいた。
ちなみにカレーは長門が指定したもの、定食Aはハルヒの昼食用のもの、
サラダとデザートはハルヒが長門に食べさせるために独断で注文した。
長門が代金を払おうとするのをハルヒは強引に止めて、全ての代金を自分で支払った。
「さ!食べて!遠慮はいらないわよ」
長門は目の前に置かれたスプーンを手にとると、そのスプーンをカレーライスに
ゆっくり差し込み、カレーのからむライスをすくいあげて、自らの口に運んだ。
「美味しい?」
ハルヒが長門に問いかける。
長門はスプーンを口から出し、咀嚼し飲み込むと、よく見ていないとわからない程度に頷いた。
「そう、よかった。今日は好きなだけ食べなさいよ」
ハルヒは満足そうに微笑みながら言った。
長門は、先ほどとほとんど同じ動きでカレーライスをすくいあげると、
それをハルヒの顔の前にもっていった。
「?くれるの?」
ハルヒは少し驚いた様子でスプーンを差し出す少女を見る。
首がかすかに上下するのを見てハルヒは少し不思議に思いながらも
「じゃあいただこうかしら」
と言うと、横髪を手でおさえながらスプーンを口に入れた。
長門はスプーンがハルヒの口に入っていく光景を、人形のように静止したまま見つめた。
ハルヒはスプーンから口を離すと
「ちょっと甘いわねえ…私はもっと辛いほうが好きだわ」
と口をもぐもぐさせながら言った。
「よくわからないけどありがとね有希。でも残りはあなたが食べなさいよ!」
ハルヒはそう言いながら割り箸を小気味のいい音を立てて割ると、
自分の昼食である定食を食べ始めた。
長門はハルヒが定食に集中しているのを確認するように見つめた後、
ハルヒの口にカレーライスをからめとられて、今は何ものっていないスプーンの先端を軽くなめた。
そしてすぐにカレーライスをすくうと、ハルヒと同じようにもくもくと食べ始めた。
やっとここまで辿り着いた。長かった。
アイドルアルティメイト本戦。ここで、見つけなければならない。私と、春香の答えを。
もう覚ええているファンも少ないだろうが、私と春香は昔ユニットを組んでいた。
如月千早と天海春香のデュオ「A.I.E.N」
当時のことはあまり思い出したくもない。
人気は出ず、私は春香に辛く当たって、それでも春香は優しく一生懸命だった。
思うように歌えない苛立ち、辛い営業の日々。
今思えば、春香がいてくれたからやっていけた。でも私はそれにすら気付いていなかった。
少数だけれど応援してくれたファンもいた。
でも彼らの評価は私が春香の「お荷物」だった。
絶対の自信を持っていた歌ですら、春香の魅力の前に遠く及ばなかった。
ユニットは僅か5ヶ月で解散。
春香からの申し出だった。「千早ちゃんの為にも、このユニットは解散したほうがいいよ」
悔しさ、怒り、悲しみ、そんな感情が飽和した私が答えられた言葉は「そうね」一言だった。
春香はすぐにソロとして再デビュー。一気にスターダムに駆け上がった。
順調にアイドルランクを上げ、デビュー僅か一年で10年に一人と言われるSランクアイドルに。
私は自分と向き合う暗い日々が続いた。
声が枯れるまで発声し、靴が擦り切れるまでダンスレッスンに励んだ。
そして表現を…感情を研ぎ澄ますことを。
私は春香から遅れること約半年で再デビューを果たした。
自分のスタイルを貫くこと、ぶれないことだけを念頭に置いて。
私の歌は、少しずつ評価されるようになった。
765プロでは異質な、孤独なアイドルという妙なイメージがうけたのもある。
私が、ファン感謝祭に出なかったり、合同イベントに参加しなかったのは
別に他の仲間と仲が悪いからというわけではなかったのだけれど。
大きな転機は3rdシングル「蒼い鳥」のヒットだった。
765プロでは春香に次ぐミリオンヒット。その後様々なメディアに取り上げられることにもなった。
それからは出す曲が全て売れ、いくつもの賞を貰った。
そして私も春香に遅れること約一年でSランクアイドルにまでのし上がった。
同時代に二人、しかも同じ事務所からのSランクアイドル輩出は歴史的快挙と言われて随分話題になった。
だから春香と私の関係にも注目が集まったのは必然といえる。
ソロデビューしてからお互いの名を口に出したことすら無く、5ヶ月という期間の失敗ユニットという
黒歴史を抱えている、ということで私たちの仲は最悪だ、と各メディアがこぞって噂した。
特に私以外のアイドルとは非常に仲がいいことがテレビによって知られている春香は、私を毛嫌いしている、と。
実際、春香が今私のことをどう思っているのかは分からない。
事務所で顔を合わせることがあっても挨拶程度で、お互いに近づこうとはしない。
でも、私は何となく、確信があった。春香は私を待っている。
先に高みへと上り詰めた、その場所に私が追いつくのを。
そして私は、今春香の所へ辿りつきつつある。
今年、桜の季節を前にアイドル界に激震が走った。
今年のアイドルアルティメイトに如月千早、天海春香が参加を表明したからだ。
今までに数々の賞を総なめにし、あとはIUの優勝のみと言われた春香。春香が出ればその年は実質の枠が0とまで言われていた。
これは、ありえない事態だった。
IUは優勝者以外には失うものしかない、リスクの大きすぎる大会。
それに同じ事務所から二人のアイドルが参加するというのだから、正気の沙汰ではない。
当然社長もプロデューサーも、私がそれを提唱したときには猛反対した。
そして私は久々に春香と話すことになった。
「今年のIU、私は是非春香と戦いたい」
春香は私の顔を暫し見て、それから仄かに笑って
「うん、私も千早ちゃんと一緒にIU出たいな」
そう言った。
結局、私と春香、二人のSランクアイドルの熱意に負ける形で事務所が折れることになった。
私のプロデューサーも、春香のプロデューサーも、絶対に負ける気は無いことを双方念押しした。
正真正銘の、真剣勝負であることを。
世間は一気に騒がしくなった。
私怨による潰しあい、765プロ分裂説、様々な風評が飛び交い、良くも悪くもこの話題が世間を一色に染めた。
テレビ局は異例のIU予選からの全国中継を早々に決め、逐一特番を組んだ。
でも私の心は穏やかだった。
春香が話を受けてくれた時に確信したから。やっぱり春香は私を待っていてくれた。
私を真っ直ぐに見てくれた。見ていてくれたのだ。
テレビ出演の度にIUや春香について尋ねられるようになった。
私は、二人で出場を決めたこと、事務所が認めていることの他には特には語らなかった。
後のことは、すべて私と春香以外には解りようの無いことだから。
そして春香もまたその態度を貫いた。
予選ではさすがに私も春香も危なげなく勝ち進んだ。
Sランクアイドルとして負けるわけにはいかない。
5つの予選を全て圧倒的な大差で勝ち進んだ頃には、季節は秋になっていた。
12月某日。決勝。
全国に生中継され、異様な熱気に包まれた会場に、私はとうとうやってきた。
暫くは報道陣に囲まれて身動きすら出来なかった私の前にふいに道が出来る。
直感で分かった。
春香が、来た。
予想通り、裂けた人垣の向こうに春香が立っていた。
こちらにゆっくりと近づいて来る。
道が出来た代わりに、いっせいにフラッシュが焚かれ、辺りが白く塗り替えられた。
「私、遅かったかな…。待たせちゃった? 千早ちゃん」
春香が照れたように笑う。
いつでも、どんな時でも春香は春香だ、と心が柔らかくなるのを覚える。
「それは、私の台詞よ。お待たせ、春香」
私も、彼女につられるように、自然笑顔になっていた。
辺りのざわめきもフラッシュの光も消え、私たちだけの世界がそこにある。
春香は、その表情豊かな目で、いろんなことを語りかけてくる。
私も、我ながら不器用な目で、いろんな言葉を返す。
「春香さん!千早さん!」
突然、春香でも私でも無い声が耳に響いてきた。
報道陣の波を押しのけて来た可愛らしいツインテールは…
「やよい!」
「高槻さん!」
私と春香の声が重なる。
「頑張ってください、二人とも!私、すっごく応援します!」
「ありがとー、やよい。来てくれたんだね」
「当たり前です!みんなも来てるんですよ!」
高槻さんの後ろを見れば、水瀬さんが。
「もう、やよい!一人で勝手にいかないでよっ」
「水瀬さんもわざわざ来てくれたのね。ありがとう」
「べ、べつに、わざわざ応援に来たわけじゃないんだからっ!ただ、私はやよいに無理やり…
と、とにかく、二人とも頑張んなさいよね。まあ、あんた達なら無様な戦いはしないって信じてるわ」
「ふふふ、ありがとう伊織」
後ろからは、真に萩原さん、律子に美希、あずささんと亜美と真美、765プロのみんなが来てくれている。
「はるるん、千早お姉ちゃん、どっちも頑張るのだ→」
「そうそう、そんでどっちも優勝してねっ」
「さすがにそれは無理かなぁ…あはは」
「まあ、二人とも楽しんできなよ。久しぶりだろ、一緒の場所で歌うのなんて」
「春香ちゃん、千早ちゃん、そ、その…頑張って。二人とも、応援してるから」
「千早さん、頑張ってなの!美希千早さんの決勝での歌しっかり聴いてるからね。あと春香も適当に頑張ってなの、あふぅ」
「美希、ありがとう。でもちゃんと春香の歌も聴いておきなさい。きっといい刺激になるから」
「あんたたち、本当にここまで来ちゃったわね。おかげで事務所は大わらわよ。
でも、ま、ここまで来たんならあとはしっかりやりなさいよ」
「はい、ありがとうございます、律子さん」
「まあまあ二人とも、落ち着いてていい感じね〜。その調子で、しっかりね」
「はい、あずささん。今日は実力、出し切れる気がします」
報道陣が目を丸くしているのは私のせいだろうか。
まあ、私が事務所のみんなとこんなに喋っているところを見るのは初めてだろうけれど。
至って普段通りだ。
さて
「それじゃあ、春香、行きましょう」
「うん、千早ちゃん。みんな、また後で」
最高の舞台で、春香との戦いが始まる。
私にとって勝敗は重要じゃ無い。
勿論勝てれば言うことは無い。だけど、こうして春香の隣を、同じ資格を持ったライバルとして歩く
今の、この時が何より大切なのだ。
あのとき、デュオを解散してから嵌りこんだ長いトンネル。
何故失敗したのか。何故思うように歌えなかったのか。何故春香に及ばなかったのか。
その答えもやはり春香だった。
私がそれまでに培ってきた自信、歌への揺ぎ無い思い。
それが、春香と出会って、春香の歌を聴いて、無意識のうちに揺らいでいた。
それが私の苛立ちの原因であり、そしてそんな私をなお受け止めてくれようとしていた春香への想いが私の歌への思いをぶれさせた。
歌が好きで、大好きで、歌だけが全てだった私の中に、いつの間にか歌以上の存在が出来ていた。
それはもう、随分と早い時期から。
自覚できなくて、認めたくもなくて、押し殺し続けた私の心が磨耗し、表現を鈍らせ歌を曇らせた。
それは云わば必然だった。
春香は抜けているようで聡い子だから、私の状態が春香に起因していることを察していたんだろう。
それで解散を申し出た。
当時の私に気付けなかったことも、今ならよく分かる。
自惚れでもいい。結果として独り相撲だったとしてもかまわない。
再デビューを果たしてから、私がいつも心に掲げた思い、それは歌と春香に対する想いだ。
765プロで最初に出来た友達。
そして私の人生で初めて出来た親友。初めて出来た、それ以上に大切に思える人。
どんな結果が待っていようと、私はもうぶれない。
このIUの決勝が終わったら、春香に伝えよう。私のありったけの想いを。
控え室に参加者が集まる。
審査員が様子を見に来ている。
私は落ち着いている。春香も、落ち着いている。
「それでは、皆さんの健闘を祈っていますよ」
審査員の言葉を受けて参加者の緊張感も高まる。いよいよ、最後の戦いだ。
「千早」
舞台裏でプロデューサーが声をかけてきた。
「その、なんていうか…正直どういう言葉をかけて送り出せばいいかわからないんだが…
千早がどんな想いでこの場に臨んでいるのかよく分からないダメプロデューサーだけど
とにかく、千早の努力と揺ぎ無い意思はしっかり俺が見届けてる。悔いの無いよう
せいいっぱい楽しんで来て欲しい」
「はい、あいがとうございます。いろいろ、心配とご迷惑をおかけしました。
大丈夫です。負けません」
「そうか…。今の千早はいい顔をしてる。きっと春香も最高のステージを見せるだろう。
俺はもう一ファンとして、二人を応援することにするよ。頑張ってな…千早」
プロデューサーの言葉に頷いて、ステージへ。
私の位置からは見えないけれど、春香も近くにいるはずだ。
これはあくまでオーディションのはずなのだけれど
異様な雰囲気だ。
全国中継されている上に報道陣の数も凄い。さすがに演技中にフラッシュを焚かれることは無いだろうが…
「それでは6番さん、お願いします」
「はい」
ステージに立つ。
私の、最高のステージを。すぐに届けることは出来ないだろうけれど、春香に空間を越えて歌が響くくらい
最高のステージを。
「曲は、蒼い鳥…」
・
・
・
審査が終わる。
静まりかえっていた会場が、一瞬の沈黙の後、盛大な拍手に包まれる。
オーディションだというのに。
私は一礼して、舞台裏へと戻った。
私の持てる全てを出し切った。
これで負けたのなら悔いはない。
「千早!お疲れ様!!」
プロデューサーがタオルを掲げて駆け寄ってきた。
それを受け取り、私も笑顔を浮かべる。
「最高だった!もう、何も言うことは無いくらい、最高だったよ!!」
「春香は、どうでした?」
「ああ…春香も、完璧だった、な…。だけど千早も完璧だった。本当に、よくやったよ」
「ありがとうございます。結果を…待ちましょう」
普段なら控え室にて審査員が結果発表に来るのが通例なのだが
テレビ的な意図だろう、出演者はステージに集められ、結果はスクリーン映し出されることになっていた。
私は少し汗を拭ってから、再びステージに戻った。
そこには、他の出演者もいて、春香の姿もあった。
春香が笑顔で私を手招きしている。
私は春香の隣に。会場からはどよめきが起こる。
スクリーンが光り、アナウンサーが結果発表のコールをすると会場は異様な熱に包まれた。
まず、第一次審査の結果。
「ドキドキするね」
春香が私に小声で話しかけてくる。
私は正直、そんな春香の表情にドキドキしていたり。
「第一次審査の結果は、以下の通りです!!!」
如月 千早 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
天海 春香 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
会場がどよめきとも歓声ともつかない大音響に包まれる。
私自身も嘗て見たことがないような点数。それだけじゃなく、私と春香が全くの同点だった。
「続いて、第二次審査の結果です!!」
如月 千早 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
天海 春香 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
またしても同点。
「最後に第三次審査の結果です!!」
如月 千早 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
天海 春香 Vo:2304 Da:1728 Vi:1728 10点
発表されたころにはもはや何が何だか分からない混乱した音が会場内を埋め尽くしていた。
春香が隣で口を開けてぽかんとしている。
かくいう私も、結局どうなったのか、いまいち理解できずにいる。
「総合の結果です!!」
如月 千早 Vo:6912 Da:5184 Vi:5184 30点
天海 春香 Vo:6912 Da:5184 Vi:5184 30点
もはやわかりきっていた結果にはだれも驚かなかったが、それよりも勝負の行方が気になっていた。
IUの優勝者は原則として一人のはずで、過去にも一度も例外は無かった。
しかし、私と春香は全くの同点だ。
「以上のような結果になりました。ご覧の通り、天海さんと如月さんが全くの同点となっております。
しかし、IUに二人が優勝ということはありえません。したがって、どちらかが優勝ということになります」
司会者が興奮気味にまくし立てる。
「優勝の行方について、審査委員長の歌田音さんより、発表していただきたいと思います」
司会者に代わって馴染みのヴォーカル審査員がマイクを握る。
会場が一転、歌田さんの言葉を一言も聞き漏らすまいと静まり返った。
「まず、先に言わせて下さい。天海さん、如月さんが記録した数字は、勿論過去最高の値であり
今後も出ることは無いであろう数です。これは、審査点の限界、つまり最高の値であり、
お二人のパフォーマンスは我々審査員から見てパーフェクトなものでした。
私はこの場で審査できたことを誇りに思います。また、最高のパフォーマンスを見せてくれたお二人には
心から感謝の意を表します」
春香は隣で、緩んだ顔で一礼している。そんな春香のおかげだろう、私も緊張が抜け
素直に賛辞を喜べる。
会場からは暖かい拍手が鳴り響いた。
「しかしやはり、これは伝統あるIUである以上、優勝者を一人、決めなければなりません」
歌田さんの声のトーンの変化に再び会場が静まり返り、息を呑む音だけが木霊する。
「IUの規約に、審査において全くの同点で優勝者が一人に決まらない場合、『よりフレッシュなアイドル』を
勝者とする、とあります」
意味がよく分からず、会場が再びざわめく。
「いいかえれば、審査の公平性の観点から、よりキャリアの短いものを優位にみる、ということです」
「したがって…」
会場のボルテージが、一気にあがる。
「優勝は、如月千早さん、あなたです!!おめでとう!!!」
暫くは、報道陣、関係者、765プロのみんなにもみくちゃにされて身動きも出来なかったけれど、ようやっと開放された。
表彰式は後日、というのも助かる話だった。
今、私はそんなことよりもしなければならないことがあったから。
春香を探す。
もう帰ってしまったのだろうか、と焦ったのだが春香のプロデューサーが「春香が待っている」と教えてくれた。
私は裏口を使って外へ出た。
12月の夜の外気は高まった体温を心地よく冷ましてくれる。
それでも私の鼓動は高まって、足は否応無く早く動いて、春香を探す。
会場の裏手にある歩道橋の上に春香はいた。
「あ、千早ちゃん…」
「春香…」
こちらを向いた春香は月明かりに照らされて静に笑っていた。
「来てくれたんだ。ごめんね、いろいろ大変なのに」
「そんなこと…」
「優勝、おめでとう。やっぱり、千早ちゃんは凄い」
「そんな…差なんて無かったじゃない…」
「でも、勝ちは勝ちだよ。もっと胸、張りなよ」
何だか、春香の様子がおかしい、そう感じた。
さっきまでは、そんなことは無かったはずなのに、突然春香が小さく思える。
まるで夜の闇に溶けてしまうんじゃないか、そんな風に思えて不安が擡げる。
「春香、私は…」
「あのね、千早ちゃん。私、千早ちゃんにずっと憧れてた」
私の言葉を遮って、春香が言葉を紡ぐ。
時折眼下を通る車の嘶きに消されてしまいそうな声。
私は聞き漏らすまいと、一歩春香に近づいた。
「千早ちゃんの歌が好きだった。千早ちゃんの真っ直ぐな眼が好きだった。凛とした背中が好きだった。
時々見せてくれた笑顔が好きだった。大好きだった…でも、私のせいで、千早ちゃんの歌を汚したんだよね」
「違うわ!!」
思わず叫んだ。春香が、何か大きな思い違いをしている。
「ううん、違わない。分かってたんだ。私が隣にいると、千早ちゃんは自分の歌が歌えない。
私の歌が、千早ちゃんの歌を狂わして、私のノーテンキな振る舞いで千早ちゃんがペースを乱して…
プロデューサーさんにもね、言われたんだ。『A.I.E.N』続けたかったけど…
『このままじゃ、二人にとってよくない』って。その通りだった…」
それは…私がきちんと自分に向き合うことが出来なかったから…春香の隣に立つのに相応しい存在でなかったからだ…
決して、春香のせいなんかじゃない…。
「私が再デビューして、そこそこ売れ出したときにファンの人に言われたんだ。
『天海春香は、如月千早を踏み台にした』って。思い返してみたら、本当にその通りだったんだよね」
転載乙
「そんな訳…」
「それでも、私はどうしたらいいのか分からなくて、気がついたらSランクになってて…
だから、ずっと待ってたんだ。千早ちゃんが、同じところに来てくれるのを。ううん、祈ってた。
ちゃんと、『私』というハンディキャップを払い除けてトップに立てる、私の憧れた千早ちゃんであって欲しいって…」
「だから、今日千早ちゃんが勝ってくれて、本当に嬉しかった。いままで、本当にごめんね。
これで、私も心置きなく引退できるかなって…」
「春香!!!」
私は叫んだ。
「どうして春香はいつもそう、変に意固地なの!?私には話す機会すら与えないつもり!?」
「う…恨み言聴く覚悟くらいは…その、してきたけど…」
「それなら、聞いて貰うわ。春香は自分のせいで私が歌えなくなったって、そう言ったけれどそれはその通りよ」
「うん…」
「でも、それは春香の言ったような理由じゃないわ。強いて言うなら、その…わ、私が…春香をす、好きになったからよ!」
春香が、やっとこちらをきちんと向いた。眼を見開いて。
「春香が私に憧れてくれたというなら、私もそう。私も春香に憧れていたわ。いいえ、今でも憧れている。
そして、あの頃、私が歌えなくなった理由は、春香に向かう私の気持ちを私自身が持て余したから。
だから原因だとしても春香には何の責任もないし、全て私の弱さから出たこと。
それに、春香がトップアイドルになれたのは春香自信が努力してきたからでしょう?
私がここまで来れたのは、そんな春香を追い続けてきたからなのよ。憧れた…その、大好きな、春香の背中を」
「ふ、ふぇ????」
「どうして、ここまで来れたのか、今の私にはよくわかるわ…
それは、もう一度、春香の隣で、パートナーとして一緒に歌いたかったから…」
「ち…ちはや…ちゃん…?」
春香が未だ、目を白黒させている。私の一世一代の告白、まだ伝わっていないのだろうか。
「もう一度言うわ。私は、もう一度春香と一緒に歌いたい。今度は決して春香の足を引っ張ったりしない。
私も、ぶれたりしない。だから…」
「で、でも…」
「でも、は無し。春香の気持ち、聞かせて?」
「わ、わだしも…もういぢど…ぢは、ぢはやちゃんと…」
春香の顔が、崩れていく。これは、都合のいい方にとって、いいのだろうか。
泣き声の春香が何を言おうとしているのかよく聞き取れない。だけど
「大好きな春香の隣で、大好きな歌を一緒に歌いたい。これが、私の今一番望むことよ…」
「ぢはやぢゃん…!!!」
春香が私の胸に飛び込んできた。
よかった…。これは、さすがに受け入れてくれた、のだろう。
春香の体温に触れて、今更ステージ衣装に上衣を羽織っただけの格好であることを思い出した。
そしてその体が芯から冷え切っていたことも。
でも、じわじわと体が温まっていく。心地よい速度で、鼓動とともに。
「ぢばやぢゃん…でも、でもわたし…」
私の腕の下から春香の涙声が聞こえてくる。
「でも、は無しよ」
「うん…千早ちゃん…嬉しい…私も、私も千早ちゃんが大好きだから…一緒に、また一緒に歌いたい…!!」
それから、私はたくさん春香と話した。
今まで出来なかった分を埋めるように、殆どが下らない世間話だったけれど、楽しかった。
これからのことも話した。さすがに、今回は我侭が過ぎたけれど、またさらに無茶な提案を社長やプロデューサーに
することになりそうだ。
春香は今回のIU敗退を機に、『SランクでありながらIUで敗れたアイドル』という汚名を着て引退する気でいた。
でも、そんなことは私が許さない。春香が歌わなくなる、そんなことは絶対に認めない。
だから、今回の結果も、今までの成功も、全てリセットして
「天海春香」と「如月千早」の「新人ユニット」として再デビューしよう。それが私の望むことで
春香も望んでくれた答えだ。
今から、どうやって事務所の皆を説得しようか、考えどころだけれど。
とにかく、私と春香にとっては、やっと第一歩から、二歩目に踏み出せた、といったところ。
まだまだ、迷うことも、衝突することもあるだろう。
それでも、春香が隣に居てくれるなら、私はいつまでも歌い続けるだろう。
それが私の幸せなのだから。
「ねぇ、ちかちゃん。ボクとケッコンしよう」
その言葉を聞いたのは・・・そう、私も君もとても幼かった頃。
君の親族の結婚式に招待されて、私と君は君の両親に連れられて大きな教会に行った。
雲ひとつない青空の下、新郎新婦が皆に祝福されながらバージンロードを歩いているのを見ている時だった。
あの時、私は驚いたよ。でも幼かった私は不思議そうに首を傾げただけだった。
「どうして、まもちゃん?」
そう問いかけた私に無邪気に料理が並べられているテーブルを指差した。
「だって、ケッコンしたら、あーんな大きなケーキ2人で食べられるんだよ。すごいと思わない?」
料理の中央に存在感をこれでもかと誇示する大きなウェディングケーキ。
それを心の底から羨ましそうに眺める君を見て、今の私だったら苦笑したであろうが。
しかし、当時の私もまだ幼き存在だったから君の言葉に心底同調したね。
「うん!ちかもまもちゃんと二人であんな大きなケーキ食べたいなぁ」
私達は手を繋いでケーキの近くまでよって、その大きさに改めて驚きながら見上げたね。
「大きいなぁ、大人の人はこんな大きなのを二人で食べるんだぁ」
「ちかとまもちゃんだけじゃ、すぐお腹いっぱいになっちゃうね」
私達はしばらくそんな他愛もない事を繰り返し言いながらケーキを見上げていた。
「・・・・ねぇ、ちかちゃん」
しばらくして、突然君は私の方に向き直った。
「なぁに、まもちゃん?」
「いまからさ、お父さんとお母さんにちかちゃんとケッコンしてきていいかなってお願いしてこない?」
あの頃の君はとても積極的でとても大胆だったよ。
もし、私が今の私だったら即答で承諾してただろう。
しかし、幼い私は今の君みたいなはずかしがりやだったワケで、顔を紅くして大きく首を振ったものだ。
「ダ、ダメだよぅ!ケッコンって大人にならなきゃしちゃいけないって誰かがゆってたよ」
「えーー、でも、ケッコンって好きな人同士が一緒に暮らすんでしょう?まもはねぇ、ちかちゃんのこと大好きだよ」
「・・・・・ちかも、まもちゃんのこと・・大好きだよ」
私がそう言うと君は嬉しそうに私の両手を握って大きく振り回したね。
「わーい♪そしたら、まもとちかちゃんはケッコンできるよぉ!」
私は君よりも年上の筈なのに、あの時の私は羞恥に顔を染めて君の無邪気さにタジタジだったね。
「でも・・・・ケッコンって男の人と女の人がするモノって、父上が言ってたよ。ちかとまもちゃんは女の子同士だからケッコンできないかも・・・・
・」
「えっ、ケッコンできないの!?」
君はとても驚きそして、目に涙がみるみる溜まっていったね。
「そんなぁ、まもとちかちゃんはこんなに好き同士なのにケッコンできないの?」
涙目で私を上目遣いで見る君の姿に私は己の浅慮を悔やんだよ。
私はどうしよう、どうしようと考えた。君の泣き顔なんて見たくないから、君がどうすれば笑ってくれるのか、そしてある考えを思いついた。
「あのね、まもちゃんこっち来て」
私はそう言って君を教会の裏にある森の中に引っ張っていった。
君は驚いた顔をして私に引っ張られていったね。
「ちかちゃん、ここでなにするの?」
「えっとね、ここでケッコンシキやろうよ。大きいケーキも何もないけどね、ちかとまもちゃんがこんなにも好き同士なんだって証
をねここで創ろうよ」
私がそう言うと、君はちょっと恥ずかしさを感じたのか頬を紅く染めて小さく頷いた。
「・・・いつかは、あんな大きなケーキを一緒に食べようね」
そう言って君は私の手を強く握って静かに顔を上げた。
「それじゃあ、今からちかとまもちゃんのケッコンシキを始めます」
祝福する人々もいない、豪華な料理も、華麗な装飾を施した教会も、綺麗な服もない。
この荒らしって百合板の保管庫管理人らしいね
とうとう切れちゃったみたいだよw
ただ、二人の思いだけが純粋で深くて本物であるというのを確かめあう小さな儀式。
「まもはちかちゃんのお嫁さんになることを誓います」
「ちかはまもちゃんのお嫁さんになることを誓います」
今思い起こせば、私も君もあの教会でのやりとりなんて断片的にしか覚えてなかったし、何分幼かったのでそれ以上何をすればいいのか
二人で困った顔をしたものだ。
「えっと、このあとは・・・・確か唇と唇をくっつけるんだったよね?」
「うん、それじゃぁ・・やってみようか」
君は少し背伸びをして私に顔を近づけた。
私も少し前のめりになって君の唇に自分の唇を重ねるよう近づけた。
「んっ・・・」
そして、二人の唇は重なった。あくまで重なっただけ。
まだ「キス」もロクに知らなかったから当然といえば当然だが・・・
君の唇に自分の唇が重なったとき心の奥がものすごく切なくなって、ものすごく熱くなった。
この想いは今なら解るけど、幼い私はその心の乱れに少し戸惑ったものだ。
「んっ・・・ぷはぁ!」
どれ程たっただろうか。私達は息を止めて唇を重なりあってたから物凄く息苦しくなり同時に唇を離した。
「これで、まもとちかちゃんはずーっと一緒だね」
少し顔を紅くした君は私にそう言って微笑んだ。
遠くから私達を呼ぶ声がした。どうやら突然いなくなった私達を探しているらしい。
「お父さんの声だ。行こうちかちゃん」
「うん」
私達は手を繋いで歩き出した。君の笑顔を見て私はポツリと呟いた。
「まもちゃん・・・・大好きだよ」
「・・・・・と言うのが・・・私と衛君の・・・・・記念すべき・・・・・ファーストキス・・・ということだ」
「・・・・・・・」
アルバムをめくりながら私は目の前にいる衛君を見た。
案の定、衛君は顔を真っ赤にして口をパクパクしていた。
「ち、千影ちゃん」
「・・・・なんだい・・・・・衛君」
「ボク・・ただ、アルバム見せて欲しいって言ったのに、なんで突然そんな子供の頃の話をするのさ」
私はその言葉に溜息をついた。
「なんで?・・・・・愚問だね・・・」
アルバムを閉じた私は椅子から立ち上がり、衛君を抱きしめた。
「今日は・・・・ちょうど・・・・・その日なんだよ・・・」
「へっ!?」
「だから・・・今日は・・・・・「千影」じゃなく・・・・「ちか」と呼んで欲しいな・・・・・・・私も・・・衛君のことを・・・
「まも」と呼んであげるから・・・」
「えっ、ちょっ、千影ちゃん!?」
なおも何か言おうとする衛君に私はもう何十回目かのキスをした。
「んんっ、ち、千影ちゃ・・・ん」
「ちかだよ・・・・まもちゃん」
衛君を優しく抱きしめながら私は静かに囁きつづけた。
ワタシハキミヲ”アイシテル”ヨ
今日は何時ともは違う特別な日。
だから、彼女が落ち着かない理由が私には分かる…
お昼休み、何時ものように私は待つ。
私にとって聖地となった薔薇の園で、彼女との夢の時間が始まるのを、何時もと違う時間の始まるのを。
ガサガサ
薔薇の園を取り囲む生垣が揺れる、彼女との時間の始まる合図だ。
子猫のように生垣を抜けてきた少女が私に微笑みを向ける。
「千歌音ちゃん、お待たせ」
彼女が私の名を奏でる、彼女の声が私を奏でる。
「ごきげんよう、姫子」
何時もと同じ、けれど何時もと違う時間が始まる。
何時ものように、二人だけの昼食の時間が静に流れる。
でも、今日の姫子は何時もと違う、私の方へ視線を向けてはそわそわ、視線を逸らしてはそわそわ…
私には理由が分かる、だから少し意地悪をしてみる。
「姫子、どうしたの?」
私の言葉に姫子はぴくんと身体を振るわせる。
「…うんん、なんでもないの」
「そう…」
でも、落ち着かないのは私も同じ、もしかしたらそれ以上…私も、その時を待っているから。
「千歌音ちゃん…」
姫子が私の名を呼ぶ、雨にぬれた子猫のような声で。
だから、私は少し微笑みを混ぜて返事を返す。
「なにかしら、姫子?」
「あ、あのね…」
姫子は少しもじもじとした後、私に向き直る。
「千歌音ちゃんは、甘い物好き…?」
私は、少し考える素振りをする、すがるような姫子の視線が愛らしい。
「そうね…比較的好きな方かしら?」
私のその一言で姫子は太陽のような笑顔を浮かべる。
「丁度、食事も終わったし…これ」
姫子は隠すように持っていた、愛らしくラッピングされた箱を私に差し出す。
最初からは箱は見えていた、それでも差し出された瞬間私の胸は高鳴る。
「姫子…これは?」
「えっとね…今日はバレンタインデーでしょう?だから…」
姫子は顔を少し赤らめ、もじもじと言葉を紡ぐ。
「開けていい?」
「うん、デザートに…あ、でもお腹が一杯だったら帰ってからでも…」
確かに、家へ持ち帰って楽しむの魅力的かもしれない、でも…
「大丈夫よ…ううん、むしろ今食べたいわ」
私はそう言いながらラッピングを解く。
薔薇が開花するように開かれた包みから、甘い香りと共にチョコレートのケーキが姿を現す。
「真琴ちゃんに手伝ってもらったりしたけど、私…不器用だから」
「そんな事ないわ、とても美味しそうだわ」
これは正直な感想。
「本当?」
「ええ…」
そう言って、私は添えられていた兎のフォークでケーキを口に運ぶ、その間姫子は私の事を見つめ続ける。
甘い香りとチョコの苦味が口の中で溶け広がる、その味が舌に心地よい。
「どう? 千歌音ちゃん?」
私を見つめていた姫子がすがるような声で尋ねる。
私は、紅茶を一口飲むとと、一呼吸置いて微笑みながら言葉を返す。
「とても美味しいわ、それに紅茶にも良く合う」
「本当?」
「本当よ、姫子に嘘はつかないわ」
再び、姫子は太陽の様な笑顔浮かべる。
私は、姫子に見つめられながら二口目を口に運び姫子に微笑みを返す…
ケーキが食べ終わるまで、それは儀式の様に続いた。
室内に美しい音色が満たされていく。
彼女の指が舞う度に、美しい音色が紡がれ舞踊る…
ここには私と彼女しかいない。
奏者は彼女、観客は私…
私の為の私だけの演奏会…
ここが、学校の音楽室だと言う事を忘れるほどに、私は音色の彼女の虜になっていた…
「千歌音ちゃん綺麗…」
二人だけの昼食の後、千歌音ちゃんは私にケーキのお礼をしたいと言ってくれた。
私は、千歌音ちゃんが喜んでくれればそれで良かった…
だけど、千歌音ちゃんは。
「今日は特別な日から」
そう言って、去り際に一枚のカードをくれた。
『放課後の音楽室で待っています 千歌音』
放課後、誰も居ない廊下を抜け音楽室の扉を開くと、すでに千歌音ちゃんは来ていた。
「いらっしゃい、姫子。 私の演奏会へようこそ」
そう言うと千歌音ちゃんは私を椅子に座らせ、軽く会釈をするとピアノに向かう。
この位置だと、千歌音ちゃんの横顔がはっきり見える…
私が、千歌音ちゃんを見つめているとスッと表情が変わった、私の心臓はドキリと高鳴る。
そして、千歌音ちゃんの指が舞い始める…
紡がれる音色、舞う音色、それを全て千歌音ちゃんの指が生み出しているんだ…
それらは私の心に何かを語りかけてくるよう…
例えるなら愛の言葉、告白…
私、なにを考えているんだろう…
顔が赤くなるのが分かる、千歌音ちゃんは気が付いていないみたい…
そして、静に曲が終了する…
千歌音ちゃんは一呼吸置くと、立ち上がり私の方へ向き直り会釈をして微笑む。
曲の余韻が抜けなかった私は、我に帰ると立ち上がり拍手を贈る。
「千歌音ちゃん素敵、やっぱり千歌音ちゃん凄い」
「ありがとう、姫子」
千歌音ちゃんが笑顔で言葉を返してくれる。
「あんな綺麗な曲、初めて聴いた、なんていう曲なの?」
そう私が訪ねると、少し考える様な表情をする…
「…曲名は無いわ…即興曲だもの」
「即興曲…」
つまり、その場のアドリブで曲を考え作っていく事…千歌音ちゃんはやっぱり凄い…
「でも…あえて言うなら…『姫子に奉げる曲』でどうかしら?」
「えっ…」
再びドキリと心臓が高鳴る…
だって、私があの曲に感じたのって…
「遅くなってしまったわね…」
私がドギマギしていると、千歌音ちゃんが私の手を取る…
「千歌音ちゃん?」
三度目の心臓の高鳴り…
「寮までとは言え、暗い中は危険だわ…途中までだけど送って行くわ」。
そう言って、私に微笑みかける。
「う、うん…」
何時もの私なら遠慮したかもしれない…でも、今は千歌音ちゃんともっと一緒に居たかった…
だって今日は『特別な日』だから…
そう、今日は『特別な日』だから…
254 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 20:59:33 ID:65Ho07vh
こんなこと続けても無駄だよ
頑張ってみても
ストライクウィッチーズでエロパロ3
が立つだけなんだけどw
もちろん、例の誤爆スレでの暴言は2か3くらいにコピペしておくからねw
255 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:01:09 ID:roNu1Md8
のこり200切りw
256 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:03:47 ID:roNu1Md8
>>254 好きなだけは張れよ
エロパロ各所でお前らの悪行の報復と称してSS張って居場所なくしてやる
257 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:04:26 ID:jyq5YMHM
まあ百合スレ住民のメンタリティなんぞ、こんなもんでしょ
ひと皮めくればキティちゃんと同じだから
258 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:06:48 ID:nf3YUm4a
居場所がなくなるのはどっちかな?
痛くも痒くもないから早くやりなよ
ついでに保管庫氏の悪行も明らかになるから
こんなに嬉しいことはないw
最近シェリルさんの様子がおかしい。
シェリルはランカには気取られないようにしているようであるが、時折漏れるため息がそれを如実に物語っている。
(シェリルさん、どうしたんだろう……。はっ、もしや本当は美味しくない?)
今日もランカが作った食事を食べつつ
「今日も美味しいわ」
とにこやかに笑いかけてくれるがどこか陰りがある。それはランカが不安に思っているが故の思い込みだろうか。
でもシェリルに問いかけてもきっと答えは返ってこないだろう。
「はぁ〜っ」
一方シェリル・ノームも1人悩んでいた。
「これは…! やはりどうにかしなくてはならないわね」
ぶつぶつと独り言を唱えつつ、シェリルはお風呂場で何かを決意する。ランカがぐるぐるシェリルのことを考えていることに気付くことが出来る余裕も失っていた。
翌朝。まだ陽も当たらないような時間。
ランカはまどろみながらも隣からごそごそ音がしているのを耳にしたような感覚にとらわれた。しかし疑問符を浮かべつつも寝ぼけた頭ではあまり深く考えられず、再びそのまま眠りに落ちた。
「んーーっ! シェリルさんおはようございます!」
隣でまだ寝ているはずの人を起こして挨拶をしようと、伸びをしつつ振り返ったランカはそこで固まってしまった。そこには誰かがいた形跡はあるものの既にもぬけの殻だった。
(シェリルさんの寝顔を見ようとしたのに〜って違う!)
頭を振り妄想を振り払う。
暖かい。
ランカがベッドを確認するとまだ微かにシェリルが先程までいたであろう温もりが残っていた。
(どこに行っちゃったんだろう……)
急に不安にかられ胸が押し潰されそうになる。
ランカが泣きそうになっていると、計ったかのような絶妙のタイミングで玄関の扉が開きシェリルが戻ってきた。
「ふぅー、ただいま」
まだランカが寝ていると思っているのか静かに告げる。
「シェリルさん! 置いて行かないでくださいっ!」
「ええっ、ど、どうしたの? ランカちゃん。私はどこにも行かないわよ」
ランカに急に飛び付かれ泣かれてしまい訳が分からずとまどうシェリルだったが、ランカを胸に抱きしめ泣き止むまで頭を撫で続けた。
「落ち着いた? でも急にどうしたの?」
「うぅ……シ、シェリルさんがっ私を置いていなくなっちゃうと思ってっ」
何故そんなことを思ったのだろう。逆はあっても私がランカちゃんから離れることなんてありえないのに。でもランカを不安にさせてしまったことは確かなようだ。
「そんなことないわよ。ずっとランカちゃんの傍にいるわ」
「ほ、ほんとですかー」
まだ落ち着かないのか舌足らずになっているランカを宥めつつ疑問に思っていたことを尋ねる。
「でもどうしてそんなことを?」
「シェリルさんが最近何か悩んでいるようだったから。私に不満があるのかな、って思って…それで今朝起きたらシェリルさんがいなくなってたし」
気付かせないように注意をしていたつもりだったが、この娘はしっかり気付いていたようだ。ランカの観察力に感心すると共に、自分のことをしっかり見ていてくれたことにシェリルはじんわりと胸の奥が芯から温かくなるのを感じた。
「心配かけてしまってごめんなさい。でもなんでもないのよ」
詫びつつも肝心の理由を告げず曖昧にごまかそうとするシェリルに対しランカは追及の手を緩めない。
「じゃあ今どこに行ってたんですか!」
また少し涙目になりつつもランカが尋ねると、ランカの泣き顔に弱いシェリルは顔を赤らめつつも渋々白状した。
「……ランカちゃんの食事が美味し過ぎてちょっと太っちゃったから。ダイエットしようと思ってジョギングに行ってたのよ」
ランカは気が動転していて気付かなかったが、言われてシェリルがジャージでタオルを肩にかけた姿だったことにようやく気付いた。
「なんだ……」
気が抜けて崩れ落ちそうになるランカをシェリルが慌てて腰から支える。
「ちょっ、ランカちゃん大丈夫? しっかりして!」
しばらくしてようやく立ち直ったランカはシェリルに尋ねた。
「でもシェリルさん全然見た目変わってないじゃないですか。いつも通りきれいで私の憧れの人ですよ」
「駄目よ! 私達は人に見られる職業なのよ。歌手であっても常に外見も磨かなくてはならないのよ」
素直に感情をぶつけてくれるランカに照れながらもシェリルは強く言い切る。
そして意識しなければ聞き逃してしまうような小声でつけ足した。
「……それにランカちゃんにいつもきれいだと思っていてもらいたいから」
「えっ、シェリルさん今何か言いました?」
「な、なんでもないわっ!」
そう慌てるシェリルをニコニコ眺めながらランカはいたずらっぽくこう言った。
「じゃあ明日からは私も一緒に走らせてください。私もシェリルさんにきれいだと思っていてもらえるよう外見を磨きます!」
「な、本当はランカちゃん。さっきの聞こえてたんでしょ?」
ランカにからかわれたと気付いたシェリルは赤面しつつ、この娘には一生かなわないなぁと思うのだった。『銀河の妖精』も形無しである。
――翌朝――
2人仲良くジョギングをして帰ってきたのはいいのだが……
「こ、これは一体…」
食卓に大量に並んでいる黄色の物体。まさか……?
「ランカちゃん。これは?」
恐る恐る尋ねるシェリルに対し、満面の笑みを浮かべつつ答えるランカ。
「え、シェリルさん知らないんですか? バナ○ダイ○ットですよ! とある大物歌手の方がやって効果があったそうなんです」
(大物歌手って誰!?)
と思いつつ笑顔でランカにバナナを差し出されると断れないシェリルであった。
結局それからどこで聞き付けたのか皆からも楽屋にまでバナナが届けられてしまいシェリルは約1ヶ月バナナ漬けの生活を余儀なくされたのだった。
でも日頃バナナ尽くしだった為に、ランカの料理が一層美味しく感じられたのも事実だったり。
260 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:10:50 ID:roNu1Md8
>>258 別にエロパロにいずらくなっても平気だしw
お前らが愚痴スレさらすキチガイってしれわたるしw
痛くも痒くもない
大体荒らしたい以上の理屈ねえダロw
266 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:22:50 ID:xjVYGNtF
>>260 やっぱブチ切れてたんだね
ストパンの百合が大好きで大好きでしかたないんだね
>>194でスルーするって宣言してるのにやっぱり出来ないくらい切れてるんだね
とりあえずアンタが無断転載したアイマスとプリキュアとハルヒとシスプリのスレに報告しとくからな
ウチの馬鹿がご迷惑をおかけしましたすみませんって
267 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:23:09 ID:aSHA/LVs
管理人が出てきて釈明してりゃ、こんな騒ぎにもならなかったんだろ
どう思ってるのか、今の心境を知りたくなってきたよ
269 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:25:56 ID:roNu1Md8
>>266 んにゃ、組織だって暴ればれるお前らアンチ百合連中がむかつくからw
いろんなとこで暴れやがっていいかげん鶏冠きてんだ
271 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:28:23 ID:0ji1REdZ
>>266 ウチの馬鹿ってID:roNu1Md8のことか?
こんな奴、ウチの住民じゃないぞ
身内扱いしたら住民が迷惑する
272 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:31:04 ID:roNu1Md8
とりあえず400までは埋めてあげよう
スレ伸びてよかったなw
273 :名無しさん@秘密の花園:2009/09/27(日) 21:32:30 ID:9T/k8IVt
>>266 謝って済むような小さな問題でもないだろ
事態はもうスレ間や板間の問題じゃなく、もっと深刻なレベルにまで進行しているのだから
機動六課のオフィス。
午後の訓練を終えたなのはは、オフィスの自席でデータの整理を行っていた。
コンソールを幾つか表示させて、個々のデータと各自の所有するデバイスの
能力を照らし合わせる。
改善と改良点を分析しながら教導のメニューの修正箇所を絞り込む。
そんな地道な作業を繰り返していると、名前を呼ばれた。
「高町教導官」
「はい?」
手を止めて、なのはは顔を上げる。
見ると、機動六課の事務隊員が傍に立っていた。
「お忙しいところ申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ」
「先ほど、総務の隊員にこちらを渡して欲しいと頼まれまして」
言って、胸ポケットから取り出した紙面を隊員はなのはに渡す。
紙面には『高町なのは一等空尉 武装隊制服1着』と記載されていた。
その下には、日付と検印が押されている。
隊員が渡してくれたそれは、局のクリーニングに出した制服の引換書
だった。
「仕上がっているそうですので、近いうちに総務の方へ取りに来て頂き
たいとの事です」
「了解しました。伝言ありがとうございます」
「いえ。私は頼まれただけですから」
礼を言うなのはに、謙虚な微笑みが返される。
「ところで、ハラオウン執務官はどちらにいらっしゃるか存じませんか?」
「フェ……ハラオウン執務官は八神部隊長と本局に行ってますけど、何か?」
「実はハラオウン執務官の分も一緒にお願いされまして」
隊員はなのはに渡した引換書と同じような紙面を見せた。
なのはとの違いは、名前と制服の名称。
フェイトのそれには、執務官制服1着、と記載されていた。
そういえば、となのはは思い出す。
自分の制服を局のクリーニングに出す時にフェイトの制服もついでだ
からと、一緒に持って行った。
出す時が一緒なら仕上がりも同じらしい。
「これは私が預かってもいいですか?」
「え?しかし……」
「ハラオウン執務官は同室ですし。彼女は忙しいので私の分と一緒に貰っ
ておきます」
「そうですか?それじゃあ、お願いします」
「はい。了解しました」
フェイトの分の引換券も受け取って微笑むと、なのはに一礼して、隊員は
自席に戻っていった。
仕事へと戻る姿を見届けてから、なのはは引換券に視線を戻す。
「今日の帰りにでも取りにいこうかな」
予備の制服はクローゼットにまだあるが、教導や緊急の出動で何時汚すか
解らない。
フェイトも通常は六課の制服を着ているが、執務官の制服は用意しておいた
方が良いだろう。
今日はデスクワークがメインだ。
大きな事件がなければ、そんなに遅くなる事もない。
帰りの予定を立てて、引換書二枚を重ねて、なのははポケットに仕舞う。
そして、中断していた仕事を再開した。
- ? - ? - ? - ? - ? - ? - -
仕事は無事に終わり、緊急の出動も無かったなのはは、予定通り総務
に制服を取りに行った。
「高町なのは一等空尉です」
引換書と一緒にIDカードを見せて、名前と階級をなのはは告げる。
「はい。今お持ちしますので、少々お待ち下さい」
「あ、あとハラオウン執務官の制服も一緒に頂きたいのですが……」
フェイトの引換書を提出しながら、失念していた事になのはは気づいた。
局の制服は、身分証明に等しい効力がある。
犯罪に使われないように通常より保管は厳重にと通達されており、ク
リーニングも局経由でなければ出す事が出来ない。
その為、クリーニングから返ってきた制服を貰うにもIDの提示が義務
付けられている。
しかし、なのはは今、フェイトの引換書はあるがIDカードは持って
いない。
ついでにと、軽い気持ちでフェイトの制服も貰っていこうと思ったが、
局の規定に則れば不可だ。
「あの、IDカードが無いと…駄目、ですよね…?」
窺うように、総務の隊員に問うと、にこりと微笑まれむ。
「大丈夫ですよ」
「え?」
「本当は駄目なんですが。高町一等空尉にでしたらハラオウン執務官の
制服もお渡しできます」
「え、あ…そうですか……」
「少々お待ち下さい」
「あ、はい」
言って、奧に制服を取りに行く隊員を見送りながら、なのはは頬を掻いた。
一体、どんな認識をされているのだろう。
単純に隊長同士として信頼されているのであれば問題はないけれど。
ニュアンスがそれとは違う気がする。
不思議そうに首を傾げていると、隊員が戻ってきた。
手にはビニルで包まれた教導隊の制服と執務官の制服を持っている。
「お待たせしました」
「いえ」
「こちらでお間違いないですか?」
「はい。大丈夫です」
簡単に制服をチェックして、なのはは自分の制服とフェイトの制服を
受け取った。
局の制服は、身分証明に等しい効力がある。
犯罪に使われないように通常より保管は厳重にと通達されており、ク
リーニングも局経由でなければ出す事が出来ない。
その為、クリーニングから返ってきた制服を貰うにもIDの提示が義務
付けられている。
しかし、なのはは今、フェイトの引換書はあるがIDカードは持って
いない。
ついでにと、軽い気持ちでフェイトの制服も貰っていこうと思ったが、
局の規定に則れば不可だ。
「あの、IDカードが無いと…駄目、ですよね…?」
窺うように、総務の隊員に問うと、にこりと微笑まれむ。
「大丈夫ですよ」
「え?」
「本当は駄目なんですが。高町一等空尉にでしたらハラオウン執務官の
制服もお渡しできます」
「え、あ…そうですか……」
「少々お待ち下さい」
「あ、はい」
言って、奧に制服を取りに行く隊員を見送りながら、なのはは頬を掻いた。
一体、どんな認識をされているのだろう。
単純に隊長同士として信頼されているのであれば問題はないけれど。
ニュアンスがそれとは違う気がする。
不思議そうに首を傾げていると、隊員が戻ってきた。
手にはビニルで包まれた教導隊の制服と執務官の制服を持っている。
「お待たせしました」
「いえ」
「こちらでお間違いないですか?」
「はい。大丈夫です」
「はい。大丈夫です」
簡単に制服をチェックして、なのはは自分の制服とフェイトの制服を
受け取った。
「では、こちらにサインをお願い致します」
「はい」
受け取り証明書になのはは、名前を記入する。
「あの……」
「何でしょう?」
「…いえ。何でもないです」
先刻の言葉の意味を聞こうと思ったなのはだが、何となく嫌な予感が
して止める。
軽く礼を述べて、なのはは総務を後にした。
そのまま宿舎への転送ポートへと向かう。
ポートの設定をしながら、フェイトの制服を見つめる。
「何だったんだろう」
本人のIDカード不所持のまま手に入れた執務官の制服。
一般的には本人以外には入手できない筈なのに、なのはというだけで
簡単に渡されてしまった。
「フェイトちゃんなら理由を知っているかな?」
帰って来たら聞いてみようと思いながら、なのははポートを起動させる。
一瞬の浮遊感。
世界が光に飲まれ、次に現れた時は先刻とは異なる景色。
見慣れた宿舎内に移動していた。
その足で部屋へと帰り、寝室のハンガー掛けに制服を並べて掛ける。
白い武装隊の制服と黒い執務官の制服。
同じ局の制服なのに真逆の色合いをベッドに座ってなのはは眺めた。
それはまるで空と海の境界線のようで。
交わらない色が少し寂しく思う。
けれど、この差はお互いの夢を叶えた結果でもある。
後悔はしていない。
「それに、似合ってるもんね」
執務官の制服を着るフェイトは格好良いと、なのはは思う。
漆黒に金色の髪が映え、すらりと伸びた背筋は凛々しさが増す。
そして、魔導士ランク、執務官という上位の役職、それに相応しい仕
事の速さと正確さ。
フェイトに憧れる人が多い理由が解る気がする。
「憧れ、かぁ」
呟いて、なのはは仰向けに倒れた。
ベッドのスプリングが一瞬、軋む。
教導官は自らが望んだ夢。
その制服を着られる事は誇りに思っている。
けれど。
執務官の制服が羨ましい、と思う。
それは、フェイトが着る制服だからという単純な理由からだけれど。
少しだけ、着てみたいと考えてしまう。
「………あ、そっか」
ぼんやり天井を見上げていたなのはは、気づいたように言った。
そして、笑う。
「フェイトちゃん早く帰ってこないかなー」
その笑顔は悪戯を思いついた子供と同じで。
わくわくする気持ちを抑えられ切れないようにゴロゴロとなのはは転
がった。
- ? - ? - ? - -
夜の帳が完全に降りて、更に月が天井に差し掛かる頃。
ようやくフェイトは帰って来た。
「ただいま。なのは」
「お帰りなさい。フェイトちゃん」
部屋に戻って来たフェイトはブラウンの制服を着用している。
職種上、なのははあまり着用する事がないが、機動六課の制服だ。
「ねぇ、フェイトちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「ん?何かな」
「ちょっと寝室まで連いて来て」
首を傾げるフェイトの腕を引っ張って、なのはは寝室へ向かった。
そして、ハンガーに掛けた制服をフェイトに見せる。
「あ。私の制服、貰ってきてくれたんだ。ありがとう」
「ううん。私の制服もあったから」
気にしないで、と言って、なのはは受け取った時の事を思いだした。
「そういえば、フェイトちゃんの制服なんだけど」
「うん」
「フェイトちゃんのIDカード無しでも私になら、って渡されちゃったん
だけど。理由知ってる?」
「あー、それは多分」
ブラウンのジャケットを脱ぎながらフェイトは言う。
心なしかフェイトの頬が赤く染まる。
「はやてのせいだと思うよ」
その名に嫌な予感をなのはは覚えた。
「その、六課全体に、私の物=なのはの物。みたいな事を通達してある
とか。前に言ってたから……」
「………はやてちゃん」
意気揚々と尾ひれを付けて話している親友がありありと想像できてしまい。
なのはは頭を抱える。
「もぅ。本局でも同じ様な事してないよね」
「流石にそれはないと思うよ。………多分」
言い切れないのが、八神はやてという人物の性。
顔を見合わせて、なのはとフェイトは苦笑いを浮かべる。
「それより、なのは」
本人を問い詰める以外はどうにもならない問題は一先ず置いて。
「お願いって何かな?」
フェイトはなのはに聞いた。
「あ、そうそう」
当初の目的を思い出したなのはがぽんと両手を叩く。
「あのね。フェイトちゃんの制服を貸して欲しいなと思って」
「私の制服って、執務官の?」
「うん」
「でも、服務規定で制服を貸すのは禁止だよね」
「あ、フェイトちゃんの制服を着てどこかに行こうって言うんじゃないの」
宿舎内とはいえ、そんな事をすれば皆を吃驚させてしまう。
下手すれば一騒動になりかねない。
「ここでちょっと袖を通すだけでいいんだけど」
フェイトの迷いを晴らすようになのはは言う。
「駄目、かな?」
「そういう事なら」
微笑んで、ハンガーから制服をフェイトは取る。
薄いビニルを丁寧に破るフェイトの隣で、なのはもまた自分の制服を
ハンガーから外した。
「フェイトちゃんはこっちね」
「私もなのはの制服を着るの?」
「うん。折角だから交換しよ」
無邪気な笑顔でなのはは頷く。
その笑顔は悪戯を思いついた時と同じで。
「しょうがないなぁ」
幼い頃にした洋服の取っ替えっこを思い出しながら、フェイトは制服
をなのはと交換した。
「なんかどきどきするなー」
渡された執務官の制服を一頻り眺めて、ゆっくりとなのはは袖を通す。
型くずれし難い厚手の生地で仕立てられたジャケットは生地が良いの
か、着心地が良かった。
残念なのは、身長差で余る肩幅と袖丈。
袖先からは指先しかでない。
姿見に全身を映して襟を正しても、着崩れしているように肩の線がず
れてしまう。
「やっぱりフェイトちゃんのだと、私には大きいね」
「そればっかりは、ね」
それでも、こうして着られた事が嬉しくて。
なのはの頬が緩む。
「フェイトちゃんはどう?」
「うーん。ちょっと、きついかな」
なのはの教導服を着たフェイトの姿勢は正しかった。
正確には、姿勢を正すしかなかった。
着る事は出来たものの、肩の辺りは窮屈そうに張り付いている。
袖は足らなくて、手首が見えていた。
武装隊の制服だけあって弾力性もあり丈夫な仕立てではあるが、無理
な動きをすれば生地が傷んでしまう。
なのはの借り物という事もあって、フェイトは動くに動けない。
「あー…。前も留められないかな?」
「うん。厳しいと思う」
「どれどれ」
試しにと、動けないフェイトの代わりに、なのははジャケットの前を
合わせようとする。
「……………ん?」
釦を留めようとする。
「………あれ?」
前を合わせようとする。
「……フェイトちゃん」
「な、何、かな」
「留められないの……サイズが合わないだけじゃないよね?」
「え、えと……」
なのはが言わんとする事が解っているのだろう。
明らかにフェイトの頬は引き攣っている。
「なにコレ」
ジャケットの襟を鷲掴みして、フェイトをなのはは睨む。
「胸が引っ掛かって釦が留まらないって何!?」
「そ、それは……」
「大きいのは知ってたけど、何時の間にこんなに育ってたの!?」
「ちょ、なのは落ち着いて」
「落ち着けないって!!」
フェイトの着るジャケットの前を合わせようとすると、腰回りは釦が
留まらないにしても合わす事は出来る。
なのに、胸元になると合わせる所か中心にすら寄らない。
「むぅー…」
フェイトの襟元から手を離し、なのはは自分の両胸をぺたりと触る。
「…やっぱり大きくなってる…」
以前は、ワンカップしか違わなかった筈なのに。
今は確実にそれ以上の差がついている。
「え、えと。なのはも十分大きいと思うけど」
「でもフェイトちゃんはまだ成長してるもん!」
「そんな事言われても………」
「どうしてそんなに大きくなるの!?」
「どうしてって……」
詰め寄るなのはにフェイトは困惑した。
「フェイトちゃんだけずるいよ!」
「ずるいって……なのは」
不意に、フェイトがなのはの腕を掴む。
正面から見つめられて、今度はなのはが窮した。
「フェ、フェイトちゃん。ごめ……」
言い過ぎたかと思い、慌てて謝ろうとすると、フェイトがぽつりと言った。
「大きくなったの……多分、なのはのせいだよ」
「ふぇ?」
責任を問われたなのはの瞳が丸くなる。
フェイトの胸の成長に何故自身が関わってくるのか、理由が解らない。
「どうして私のせいなの?」
「だ、だって。なのは、私の胸……好きだよね?」
「好きじゃない、とは言わないけど。はやてちゃんみたいな事はしてないよ」
「普段はしないけど……」
やや躊躇って。
頬を染めながら、か細い声でフェイトは言う。
「その、する時……ずっと、触ってるよ、ね?」
「あ」
心当たりが多々とあるのだろう。
一瞬で、なのはの顔が真っ赤に熟れる。
「そ、そっか」
「………うん」
そして、なのはは余計な事まで思い出した。
それはフェイトも同様らしくて。
頬の赤味は首元まで広がっている。
羞恥からなのはとフェイトはお互いに顔が見れない。
ちょっとした好奇心で制服の交換を思いついただけなのに、思いがけ
ない方向に話が進んで、妙な雰囲気で落ち着いてしまった。
気まずい沈黙が流れる。
その原因の大半が自分にあるのをなのはは解っているけれど。
この状況を打開する方法が思いつかない。
どうしようかと逡巡する、なのはの視線にフェイトの胸が映る。
やっぱり大きい、と思う。
そのサイズの一端に自分が関わっていると思うと恥ずかしさが増す。
しかし、納得してしまった以上、意外性十分な責任をなのはは認める
しかなかった。
静かに息を吐いて、なのはは気持ちを切り替える。
悔しさはあるけれど。
自分が成長させたと思えば嬉しさもない事もない。
それでも、悔しいけれど。
自分の特権だと考えれば腑に落ちる気がしなくもない。
マインドコントロールするように、なのはは自身を落ち着ける。
少しづつ戻って来る冷静さに、なのはは長い息を吐いた。
顔に集中した熱が冷めていく。
落ち着きを取り戻した思考が、ふと、特権の付加価値に思い当たった。
「フェイトちゃん」
「ん?何?」
顔を覗き込むフェイトに、にこりと笑って、なのはは足払いを掛けた。
「わっ!」
完全に隙を突かれたフェイトがバランスを崩し、ベッドに仰向けで転がる。
「なのは!?」
「フェイトちゃんの胸が大きくなったのは私のせいなんだよね?」
驚いて抗議の声を上げるフェイトに覆い被さりながらなのはは聞いた。
「そ、それは詭弁だったかも」
嫌な予感がしたらしく。
フェイトが前言撤回をしようとする。
「それってつまり、私が育てたって事だから」
しかし、なのははそれを聞かなかった。
逃げられないように肩を押さえつけて言う。
「私の物なんだよね?」
嬉しそうな微笑みにフェイトは目を見開いた。
「何でそうなるの!?」
「私の中でそうなったから」
反論は認めないと言わないばかりに、フェイトの唇を自分のそれでなのは
は塞ぐ。
「ちょ……っ!」
暫く抵抗を重ねていたフェイトだが。
幾度か唇の角度を変えると大人しくなる。
「ん……は、ぁ……」
熱を帯び始めたフェイトの瞳には、もう抵抗の意志は見えなくて。
更に成長させるべく、ゆっくりとフェイトの体になのはに触れた。
後日。
総務部に2着の制服がクリーニングに出された。
武装隊の制服と執務官の制服。どちらの制服も皺だらけだったが、その理由を知る者は誰もいなかった。
約2名を除いて……。