6巻のラスト。
北村を主人公に。
では以下より
ある日の朝―
大橋高校の屋上。
その片隅にあるドアが、さび付いた蝶番を軋ませながらゆっくりと開き、
「ふぅ・・・」
現れたのは北村祐作だった。
『さようなら、狩野先輩』
つい数日前まで金髪だった髪は元通りに黒く染め直され、しかし顔には普段の覇気は未だ戻っていない。
「よっと」
ドア棟の上によじ登り、寝転がる。
目の前に広がる秋の空はどこまでも高い。しかし、彼の目は何も見ていない。
「どうすれば良いものか・・・」
悩みの種は、狩野すみれののことだ。
丁度1年半前に、この場所で逢坂大河に告白して玉砕した。
その後、狩野すみれに生徒会へと釣られた。
いつも完璧だった狩野すみれ。
他の人のはるか高みを歩み、しかもその歩みを止めること無く、さらなる高みへと挑む彼女に、自分は惹かれたのだ。
そして、彼女に追いつく為に努力をした。
ステップアップをした自覚は、ある。
でも、狩野すみれその人はどんどん登り続け、いつまで経っても並ぶことは出来なかった。
告白はしたものの、見事にかわされてしまった。
宇宙に行かれるのでは、もはや自分は追いつけない。
その自分の夢が考古学者であることを思い出し、思わず笑ってしまう。
宇宙を飛ぶ者と、地べたを這いずり回る者。
「ははは・・・正反対じゃないか・・・」
その笑いには、言いようの無い悲しみがこもっていた。
「狩野先輩・・・どうすれば良いんですか・・・?どうすれば・・・狩野先輩に追いつくんですか?」
返事の返ってくる事の無い言葉を、口にする。
答えが帰ってくる訳でもなく、ただ、時間だけが過ぎていく。
それでも、何かにしがみつくかのように空へと手を伸ばし、
「frontier」
かつて狩野すみれの発した言葉をつぶやいてみる。
手には何も掴めない。
指の間を、秋風が吹きぬける。
そして、指の間から見る空は一層高く見えた。
その空を、1機のジェット機が飛んでいく。
高度1000メートル程の低空だろうか。空港の近いこの地域では見慣れた光景だ。
北東へと真っ直ぐに飛んでいく、その機体に狩野すみれの姿が重なる。
普通の人の、はるか高みを行き、それでもなお上を向き続けて進み続ける狩野すみれ。
ふと、夏の思い出がよみがえる。
「frontier…誰も行ったことの無い『限界』を、超えてやる。」
狩野すみれが言ったこの言葉。
そして、最後に会った日の事も思い出す。
「じゃあな・・・頑張れよ、新生徒会長」
fontier―限界、未知の領域、新天地。
超えてやろうじゃないか、frontier。自分だけの限界を、未知の領域を見つけてやるのだ。超えてやるのだ。
狩野すみれという人間は、いつも前しか見ていなかった。
後ろを向いた事は、見たことが無い。
その彼女に追いつくには、そう、全てを振り切って前へ進もう。
だから・・・狩野すみれへの想いも封印しよう。
いつの間にか流れていた涙を拭き、立ち上がる。
「先輩・・・、俺は、自分のfrontierを超えてみせます。」
その言葉は力強く、
「さようなら・・・狩野先輩。」
迷いや、未練という要素は感じられなかった。
再び相間見える時まで。
いつになるかは分からない。もしかしたら、一生会えないのかもしれない。
それでも、決めたのだ。
ひたすら前へ進もう。
そして、再会した時には、もう一度、もう一度だけ、 自分の想いを伝えよう。
***
エンジンの轟音が鳴り響く機内。
機体中央の窓際席に、その凛とした姿はあった。
(日本とも・・・大橋ともお別れか・・・)
妙におっさんくさい感傷に浸っているのは、誰あろう狩野すみれ。
家族と、生徒会役員達と、クラスメート達に見送られ、アメリカ行きの飛行機に乗り込んでから、彼女はずっと外を見ていた。
最初の頃は、デッキで見送ってくれている仲間達を。
そう、絶対に見送りに来てくれるだろうと思っていた、北村の欠けた見送りメンバー達を。
離陸してからは眼下に広がる街を。
見覚えのある町並みは、間違いなく自分の育ってきた街、大橋だ。
(ん・・・?)
その目が、何かを捕らえる。
(大橋高校・・・)
彼女が、2年半在籍した高校。
一瞬のうちに、入学式から、夏の合宿、つい数日前の手乗りタイガーとの乱闘、そして―北村祐作。
全ての思い出がよみがえり、何故だろう、涙が滲んだ。
いかんいかん。そう言うように涙を拭いた目に、何かが飛び込んできた気がした。
「北村・・・?」
見えるわけがない。
でも、見える気がする。
母校、大橋高校の屋上に、1つの白い点が動いたように見えた。
その動きには、北村祐作らしき特徴が見えた。
「まさかな・・・。この高さから見えるわけ無いもんな」
でも―
「見える訳・・・・ない・・・もんな・・・」
確かにその姿は―
「・・・・っ!」
急に溢れ出してきた涙を隠すようにしながら、トイレへと走る。
乗客たちがすみれを驚いたように見つめる。
そして、個室のカギを閉めた途端にすみれの両目から涙がこぼれ出した。
「・・・・っ・・・・っ」
狭い個室に、押し殺された嗚咽が響く。
涙は、いつまでも止まらなかった。
罪悪感が消えないのだ。
(ごめんな・・・、北村・・・。ごめんな・・・・)
そうやって、いつまでもひたすら北村に謝り続けていた。
その姿は、まだ、たった18歳のガキでしかなかった。
***
バタン―
大きな音を響かせ、閉ざされた屋上のドア。
再び無人の空間となった屋上。その上空に残された光景は、誰も見ていなかった。
その飛行機が、雲1つ無い秋晴れの空に、一筋の飛行機雲を引いていくのを。
その飛行機雲が、いつまで経っても消えずに大橋の上空に残されていたのを。
END
957 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 01:02:32 ID:W2rsb/4m
完成後投下でFA
終了です。
>>958 GJです。
>>949から
>>950にかけて一節抜けている所がありました。
無くても特に問題は無いので、面倒くさい方はスルーして下さいです。
*
「今朝はお楽しみでしたね…
聞いたぜ〜風の噂に聞いたぜ〜
ずりーよ、ずりーよ、大河ばっかずりーよ!!
あたしも頭ナデナデとかして欲し〜よ。
さあっ高須!!やるんだッ
んん?この櫛枝の頭は撫でれねぇってか?」
「…櫛枝…どうしたんだ?お前、今朝から何か様子がおかしいぞ?
………熱はねぇみたいだけど…」
「###。た、たきゃすきゅんが…たきゃすきゅんがぁ…
あたしのおでこピタッてしたぁ〜〜
うぉぉ〜〜ちきしょ〜〜」
「………行っちまった………
なぁ、大河?どうしたんだ?櫛枝の奴は」
「…さぁ?」
誰か。次スレを立ててくれませんか?
そろそろ、頃合いでしょ?
じゃあ、俺が立ててくるよ。
>>958 あれ〜?投下しないって言わなかったっけ
964 :
961:2009/01/17(土) 01:27:59 ID:bSKAAFwf
すいません、無理でした。ほかの方、お願いします。
>>956 GJ!会長も18の子供ってシーンはやばかったです ネタが思い付いたらまた北村会長ものを
>>959 GJ!相変わらず面白い みのりん好きにはたまりません 日常を混ぜる事で長編が可能に?面白いもの程長く見たいものですね
>>968 おkです。
抜けた節は二限前の休み時間で、
>>950は三限前、四限前となっています。
内容的には省いても良い内容だったのですが、
会話だけの文体を取っているので、省くと状況が把握し辛いと思い、補足させていただきました。
>>956 GJ!兄貴も北村も好きなのにそうなれないってのが悲しいねぇ
>>969 せっかくのみのりんセリフなのに省くなんてMOTTAINAI!
その事も含めGJ!
大河「え!竜児って童貞じゃないの!?」
んん…
>>972 あれは良かったなw
エロパロに全然エロが投下されないから超楽しめた
新スレが勢いづく前に後20ちょっと埋めちゃおうぜ。
と言うことで埋め。
うみぇ
埋めを手伝おうか
う、埋めてなんかあげないんだからねっ
産め
梅
ume
モルグにうめ
umee
センター死にました梅。2流国公立から4流私立へ・・・・・竜ちゃんその頭分けてぇ〜!
988 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 00:18:21 ID:f+7ud/MZ
はいはい、うめうめ
1000ならセンター二日目無双
それ以外なら寝坊
今日センターだった
誰かセンター試験者が頑張れる埋めss頼む
「ふーん明日センターなんだ。
それで、それを亜美ちゃんに言ってどうするの?
そっかそっか、励ましてほしいんだ?
んー、そうだなあ、良い点取れたらご褒美あ・げ・るカモ。
まあせいぜい頑張ってよねー。」
センター受けないけどご褒美欲しいです
ググれ
大河がビッチ埋め
あとちょいだぞ大河
意外と1000行く方が早い?
これからもよいスレでありますように>arl
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。