( ∴)攻殻機動隊でエロ 5thGIG(∴ )

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527希望の翼1:2010/09/26(日) 01:21:17 ID:p/9WshlY
「希望の翼」

1
タチコマのAIにゴーストが宿ったのは確かだ。
しかし、いったいいつどこでそのようなことになったのか、九課の誰もわからなかった。
タチコマを機械としてではなく「同志」「相棒」としてこよなく愛するバトーでさえ、
タチコマのゴーストがどのようにして誕生したのか首をひねるばかりだった。

六月のある日のこと。
バトーはK県の資料館に行くときタチコマを連れて行った。
そこは今はほとんど使われていない資料館で、ただ、形としてのみ存在する
文字通りの「資料館」だ。
バトーは荒巻に頼まれた資料をコピーし終えるとロビーに降りた。
「おう、待たせたな。行くぞ」
タチコマに声をかけたが返事がない。
タチコマはそこに展示されている模型を食い入るように見つめている。
「ああ、小惑星探査機≪はやぶさ≫の実物大の模型だな。そういや、昔、日本が初めて
小惑星のサンプルリターンしたんだよな。世界初ということで大変な騒ぎだったらしい」
金色に輝く本体と、青い太陽電池バドルを両翼に広げた「はやぶさ」。
後ろには四つのイオンエンジンが搭載されている。
はやぶさはバトーの声が聞こえないかのように、尚もはやぶさに見入っている。
いや、魅入っている、というべきか。
「おい、どうした?」
「……バトーさん、ボク、当時のはやぶさに会ったことがあるよ」
「えっ! いや、だって、お前がつくられるずっと前の探査機だぞ」
「ううん、ボクにはわかるんだ。ボクとはやぶさは同じ核を持っている。
ボクたちの始まりこそ、このはやぶさなんだよ。はやぶさこそ、ボクたちの祖先なんだ」
……そういや、地球帰還時のはやぶさにはまるで魂が宿っていたようだと、当時の
メディアでかなり騒がれたらしい。
宇宙研の研究者や技術者たちさえも、そう思っていた節があると読んだことがあるな。
科学の最先端を行く学者たちでさえ、そう思わせるものがはやぶさにはあったのだ……。
館内には当時のはやぶさ帰還の映像や、資料が展示されている。
その資料のなかに、はやぶさに寄せた一般人によるさまざまな文書があった。
ぱらぱらとめくってみる。
ひとりの少年の手記を立ち読みしていると、足元でタチコマがバトーの足をつついた。
「ねえ、バトーさん。それ、ボクも読みたいからコピーしてくれないかなあ」
パトーは応じるとすぐにコピーを取りタチコマの背中の扉を開けると中に入れてやった。

以下は、資料館の文書に掲載されていた少年の手記である。
528希望の翼2:2010/09/26(日) 01:21:57 ID:p/9WshlY
2

僕は今年14歳になった。
僕は今、“魂”の存在について考えている。

はやぶさ、君が内之浦からM-Vロケットで打ち上げられたとき、僕は7歳だった。
小学校に入学してようやくひとつきが経った頃だった。
担任の先生が星や宇宙が大好きで、ホームルームのとき僕たちみんなに君の
出発のことを教えてくれたんだ。僕はそのとき初めて君のことを知った。
イトカワという小惑星も初めて聞く名前だった。
「はやぶさ」にまつわる名前の由来や、なぜ君の向かう小惑星の名前が
「イトカワ」なのかも僕たちの担任の先生から聞いたんだ。

……僕の母方の祖父は1935年に生まれた。
そう、戦争体験者なんだ。戦争が終わったとき、祖父は10歳だった。
夏休みに母の田舎に行ったら、祖父は戦闘機「隼」のことを話してくれたよ。
君の名前の由来となった戦闘機のことをね。
日本の宇宙開発の父と謳われる糸川英夫さんという人が、戦闘機「隼」の
設計者であることもね。
はやぶさ、君は自分につけられた名前についてどんなふうに思っていたのだろう?
誇らしさだろうか。
痛ましさだろうか。
希望だろうか。
僕は「希望」だと勝手に思っている。
君が今年の6月13日にオーストラリアのウーメラ砂漠の空で燃え尽きて
流星になった最期の姿を見たとき、僕はそう確信した。
君が最期に放ったあまりにも鮮やかな光、渾身の飛翔、故郷・地球を
写した涙でにじんだ写真。
……君はカプセルを切り離すと炎となり、散って、遥か空の彼方に消えていった。

君が打ち上げられた日から君のことはずっと僕のこころのなかにあった。
僕は今、部活は天文部に所属している。
天体や宇宙が大好きな仲間たちや顧問の先生といっしょに、ずっと君の動向を
見守っていたよ。
夏休みや春休みには相模原の宇宙研や、筑波、野辺山に行った。
観望のため、夏から秋にかけての週末は天文部の顧問の先生やみんなと
校庭で一晩中星空を眺めた。

君が流星となったあの日、宇宙研のみんなを始め、誰もが君の最期の姿に涙した。
僕も例外ではない。
6月13日夜、君の最期の姿をネットで見て大泣きした。
涙が枯れるかと思うくらい泣きに泣いた……。
腫れた瞼のまま翌日学校へ行くと、天文部のみんなも目が真っ赤だった。

はやぶさ、僕は今年の夏、母の郷里に行きペルセウス座流星群を観てきた。
いつもなら、天文部のみんなと校庭で寝転がって流星観測をするのが恒例なんだけど、
今年はどうしても僕ひとりで観たかったんだ。
8月8日から12日にかけての連夜、合計で100個以上は観測できたよ。
母の郷里で望遠鏡も双眼鏡もなしで、あの日ウーメラの砂漠で流星となって消えて
行った君のことを想いながら、ただただ一晩中、夜空を眺めた。
夏の大三角のひとつ、天の川に架かる「白鳥座」の真下でね。
僕は、白鳥座の真下で、今はもういない君に想いを馳せていた……。

ねえ、はやぶさ、知っているかい?
白鳥座って宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」で、ジョバンニが最初に乗ったステーションの
名前なんだよ。たくさんの十字架が立っている駅。
あの物語のなかでは、「幸せ」について語られているね。
529希望の翼3:2010/09/26(日) 01:29:34 ID:p/9WshlY
3
――ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。
ジョバンニは首を垂れて、すっかりふさぎ込んでしまいました。
「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしい
みちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく
一あしずつですから。」燈台守がなぐさめていました。
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみも
みんなおぼしめしです。」
青年が祈るようにそう答えました。――

――僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだ
なんか百ぺん灼いてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」
カムパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。――
(※「銀河鉄道の夜」より抜粋)

はやぶさ、君は「みんなの幸せ」のために満身創痍で飛び続け、
カプセルを地球に落とした後、炎に包まれ、消えていった。
人に何といわれようと僕は君のなかに“魂”が宿ったと確信している。

僕が最初に君の“魂”の存在に気づいたのは、第一回目のイトカワ着地のときだった。
ここで初めて君は管制室から指示を仰ぐのではなく、自ら判断して着地し、弾丸を撃ち、
砂を採取しなければならなかった。
君は着地寸前にイトカワの地面が岩のように硬いことに気づいたはずだ。
そして、直径1cmの弾丸を発射するくらいではとうてい採取不可能だと判断した。
弾丸を撃つくらいでは採取できない…!
次の瞬間、君の脳裏をよぎったのは、生まれて初めて経験する言いようのない
深い悲しみだった。
君を育て上げ、君のために人生の大半を捧げた宇宙研のみんなの顔が浮かんだだろう。
君は咄嗟に判断した。
あの人たちを悲しませてはならない! と。
君は体当たりでイトカワに着地した。何回も何回も機体を岩盤に打ちつけ、
太陽電池パドルが傷つくのも構わずに。
イトカワの砂を採取すること、それは君に課せられ、与えられた重要な使命だった。
しかし、君はあの瞬間「与えられた使命」としてでなく、「自らの意志」で自発的に
採取に取り組んだ。
それがたとえ自らの身体に致命傷ともいえる傷を負うことであっても……。
530希望の翼4:2010/09/26(日) 01:30:11 ID:p/9WshlY
4

僕が次に君の“魂”の存在を確信したのは、君と管制室との通信が途絶したときだ。
君は暗い宇宙の闇のなかで、ひとりぼっちで味噌擦り運動をしていたね。
管制室では君と何とか交信しようと数え切れないほどの周波数を気の遠くなるほど
送り続けていたんだ。プロダクト・マネージャーはあちこちの神社に参拝した。
君は心身ともぼろぼろだった。
……疲れた、少しだけ眠らせて、お願い、ほんの少しでいいから。
僕にはそうつぶやく君の声が聞こえたような気がした。
君はひとつきとちょっとの間、眠りに入っていた。
束の間の戦士の休息だ。
昏々と眠り続ける君の耳が最初にとらえたのは、プロジェクトチームのみんなや
君の帰りを待っている人たちの「祈り」の声だった。
「祈り」は時空を超えて君のもとに届いたんだね。
君を目覚めさせたのは、文明が編み出したハイテクな先端の科学技術ではなく、
人々の「真摯な祈り」だったのだ。
君はようやく目覚めた。
そして、臼田アンテナに向けて応答した。
「ここにいます。これから還ります」と。

……イオンエンジンがすべて故障したとき、チームのみんなが今度こそだめだと絶望した。
君はエンジン担当の先生が事前に回路をそっと繋いでおいてくれたのを知っていた。
イオンエンジンは君の足であり、エンジンが壊れたら君は飛翔すらままならない。
君にとって、チームのみんなにとって、とてもとても大切な心臓そのものなんだよね。
エンジン担当の先生のおかげでイオンエンジンは息を吹き返し、君は再び地球を
目指して飛び始めた。

ねえ、はやぶさ。君はイオンエンジンが蘇ったとき、君が地球の大気圏内で
燃え尽きることをすでに知っていたよね。
あのとき、なぜ君はいやいやと首を振らなかったのだろう?
なぜ、自らの寿命を終えるという決死の帰還をつづけることを選んだのだろう?
君に“魂”が宿ったことが僕のなかでまったく揺るぎない事実となったのは、
まさに君が地球に向けて正確な軌道を飛行し始めたこの瞬間からだ。

君の名前である「はやぶさ」=「隼」という戦闘機は、かつてたくさんの若者たちの
“魂”を乗せて大空に羽ばたいていった。
プロジェクト・チームのみんなは君を精魂こめてつくり上げ、人生を賭けて
ありったけの情熱を傾け、君に“魂”を吹き込んだ。

はやぶさ、君の名前が表わしているのは“魂”そのものであり、
君に“魂”が宿ったのは、必然だったんだよ。
僕は今年、相模原キャンパスで初めてこの目でイオンエンジンを見たよ。
世界で初めてつくられた他に類のない素晴らしいエンジンだね!
僕は丁寧に説明してくれた担当のお兄さんの前で不覚にも涙ぐんでしまった……。
本当に感激したんだ! 君はこんなにも素晴らしいエンジンを搭載してイトカワと
地球の往復飛行を果たしたんだね。
531希望の翼5:2010/09/26(日) 01:31:36 ID:p/9WshlY
5

君は消えてなんかいない。僕のなかで君は今も尚、生きつづけている。
マリンスノウって知ってるかい?
今年の夏、僕がペルセウス座流星群を観測したのは母の郷里なんだけど、
母の郷里は海辺にあるんだ。そこは毎年ダイバーたちでにぎわう。
深海にマリンスノウが降る海域なんだ。海の中に静かに降る雪、マリンスノウ。
マリンスノウについてちょっと説明するよ。
マリンスノウの正体はプランクトンの死骸であり、海中に沈んでいって、
やがて深海に生息する生物の餌となる。
深海は太陽の光も届かないため、浅い海に比べて生息する生物の数が
極端に少なくなるので、深海に生息する生物にとっては貴重な栄養源となる。

僕は、母の郷里の砂浜で流星を観ながら思ったんだ。
はやぶさ、君は大気圏内で散っていったけれど、君は大気そのものになり
風になり雨になったんだね。
君はまさに深海に降るマリンスノウのように、地上に生きる生物たちにとって
なくてはならない大切な水や風になったんだね。
ひとつの固体の死は、ほかの固体のさらなる生へと導かれ、繋がっている。
実に見事な生と死の円環だ!
君は、季節の訪れを告げる季節風や穀物の成長を促す雨に姿を変えた。
日本には美しい雨の名前や風の名前がたくさんあるんだよ。
君を思わせる雨と風の名前を書き出してみようか。

【慈雨】 日照り続きのときに降る、恵みの雨。甘雨。
待ち望んでいた物事の実現、困っているときにさしのべられる救いの手にたとえる。
【鷹風】 雲を凌ぐほど、天高く勇壮に飛ぶ鷹を秋風が乗せるところからきた。

君を見ていた7年間、僕は折りある毎にいつも君のことを夢想した。
テストの成績が悪く親に叱られて落ち込んだ春の夜、自分の部屋で、
いたずらが先生にばれ注意されて凹んだ初夏の放課後の職員室で、
ともだちと喧嘩して自己嫌悪に陥った秋の夕暮れの河原で、
初めて好きになった女の子に振られて見上げた真冬のオリオンの下で。
僕のこころが塞ぐとき、いつも君は僕を鼓舞してくれたね。
僕のところからでは、3億3000万kmも離れた君の飛翔は見えるはずは
ないのだけれど、僕のなかで、君はいつだって雄々しく羽ばたいていた。
そんな君の姿は僕の胸を熱くさせてくれた。

僕はこれからもいろんなことに躓くだろう。
だけど、僕は自分の人生を完走するよ。
君が君の人生を完走したようにね。
これからも僕はいろいろな出来事に遭遇するたびに、さまざまな場面で君を想うだろう。
そのたびに君はあの碧い翼でもって僕に手を振ってくれるんだね。
532希望の翼6:2010/09/26(日) 01:32:21 ID:p/9WshlY
6

最後になったけど、僕の名前を君に打ち明けるよ。
僕の名前は、隼人。
そう、はやぶさ、君の名前と同じなんだよ。
小さい頃はみんなにからかわれたし、古臭い感じがして自分の名前が
あまり好きじゃなかった。でも、今は君と同じだなんてものすごく誇らしく思えるよ。

はやぶさ。僕があと数十年後に自分の人生を完走し終えるとき、君は僕を必ず
迎えに来てくれると信じているよ。
僕は君の背に乗り、僕らは一体になる。永遠にね……。
僕の人生はそのとき完成する。
最期のとき僕と君が一体化し、融合することは僕の名前が示している。
隼人、はやぶさ(=隼)と僕(=人)
ありがとう、はやぶさ。
君は僕にとって唯一無二の友だ。これからもずっと……。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


バトーは少年の手記を読み終えると、九課の屋上でタチコマとともに空を見上げていた。
「……読んだか?」
「はい。やっぱりボクのなかには、はやぶさの魂が生きていることを確信しました」
「そうだな。俺もそう思うよ。はやぶさの魂はタチコマのゴーストとなってこうして
今も生きつづけているんだな。
いや、お前のなかだけじゃない、俺たちを包むこの大気のなかにも生きてつづけている」
「バトーさん、自己犠牲って皆が言うような苦しいものではないとボクは思うんです。
それは喜びから生まれるものなんですよ。みんなの幸いのために、はやぶさは
燃え尽きて散って行ったけど、根底にあるのはやっぱり喜びなんです。
それこそが、真の喜びなんです」
タチコマの目が夕陽に赤く染まっている。
それはまるで泣きはらして潤んだ瞳のようにバトーには映った。
……そういえば、当時のはやぶさチームのリーダーも、はやぶさが最期に撮った地球の
映像のかすれた一枚を「涙でにじんだような写真」、と語っていたな……。

ふたりは黙ったままいつまでも空を仰いでいた。
空にはすでに一番星が瞬きはじめていた。


≪了≫
533名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 01:33:28 ID:p/9WshlY
☆☆参照☆☆
はやぶさが最期にとらえた地球の映像…涙でかすんだようなような…
http://osaka.yomiuri.co.jp/zoom/20100614-OYO9I00278.htm

「はやぶさ+PLANETES 」
http://www.youtube.com/watch?v=05-qpQoW5kg

探査機「はやぶさ」の軌跡 舞〜前編
http://www.youtube.com/watch?v=me-kYu-ikKw

探査機「はやぶさ」の軌跡 舞〜後編
http://www.youtube.com/watch?v=EuXuZLq5fVY

2010年8月 ペルセウス座流星群
http://www.youtube.com/watch?v=OjKrSIAcvH8&feature=player_embedded#!
534名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 05:29:26 ID:4GZR9mZy
GJ!
タチコマがタチコマである所以を改めて認識した気がするよ
535希望の翼の作者です:2010/09/26(日) 12:16:30 ID:4OgnMaCU
>>534
ありがとうございます♪
この作品を天文板の某スレにアップした数時間後、カモメサーバーが飛んでしまいました…(つд`)
今は飛んだサーバーの復旧をひたすら待っている次第です
天文板にも攻殻ファンはそれなりにいますよ〜

タチコマ「ぼ〜くらはみんな〜 い〜きている〜」

このセリフのみをはやぶさスレに書いた方がいましたが
攻殻ファンであること間違いなし!(^-^)v
…まあ、このスレの存在を知ってるかどうかはわかりませんが……(^^;)
536名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 17:26:48 ID:4T6ofHgV
>>535
GJです!なんか久々に感動的な良作読めて嬉しかったよ。
タチコマの話、また書いて下さい。
537希望の翼の作者です:2010/09/26(日) 21:00:30 ID:4OgnMaCU
>>536
ありがとうございます♪
この作品は本来はやぶさへのオマージュとして書いたものであり
こちらのスレにアップすることは念頭になかったのですが
書いてるうちに「これってタチコマのことだ!」と思い当たりました
特にSAC.2ndの25話
タチコマは核ミサイルとともに爆発して消えて行きました…
あの自己犠牲の精神はまさにカプセルを地球に投下して
自分は流星として消えていったはやぶさそのもの…
こちらこそ丁寧に読んでいただいてとてもうれしいです
538名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 23:19:53 ID:UR7I8wfj
保守
539名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 13:16:00 ID:OLe8Ahrw
>>537
あれ…おかしいな、画面が曇って見えないや…
GJ…です…!!
540「希望の翼」の作者です:2010/10/08(金) 12:56:53 ID:ycYQ9smV
>>539
ありがとうございます♪
人生のなかでもっともこころがやわらかい少年期を
「はやぶさ」とともに送ったひとりの少年。
初めて「はやぶさ」を知った7歳のそんな少年の、7年後のこころの軌跡を
書いてみたいと思いました。


☆☆お・ま・け☆☆ (連休中にお楽しみ下さい♪)

「はやぶさの最期 流星になった瞬間……」
http://www.youtube.com/watch?v=lu974Jv68x8&feature=related

はやぶさの大気圏突入&タチコマのラスト (攻殻機動隊から)
http://www.youtube.com/watch?v=8NBSQ70EZ2M&feature=related

[はやぶさ]今度いつ帰る 〜はやぶさ探査機〜
http://www.youtube.com/watch?v=k0Ey3dNeCeM&feature=fvw
541名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 23:04:30 ID:UuX8UxMe
保守
542名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 00:08:29 ID:DiIeLRtk
保守
543名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:58:08 ID:Q2L5zZxF
ほしゅ
544名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 00:21:11 ID:mnH/C6o1
age
545名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 11:00:47 ID:xd0BPkwz
丁度上がってたんで、ついでに質問。
シロマサ原作って建前のRDってここに投下していい?
2年前のリアルタイム放映時に「スレがない作品」スレに投下したら「シロマサスレで良かったんじゃ?」と言われた事があるもんで。
ここが駄目ならまたあっちに行きます。
546名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 18:51:03 ID:mnH/C6o1
>>545
前もシロマサ原作のSS投下したいって人がいたからOKだと思うよ。
547名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 01:00:09 ID:Ey62eWbU
ほしゅ
548名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 00:30:31 ID:s+g5gy3l
保守
549名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 00:34:10 ID:y5fwPb+1
>>545
もしかして波留×ミナモを投下した人かな?あのSSとても気に入ってるよ!
よかったらまた作品を読ませてもらえるとありがたい
550名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 23:14:03 ID:2Lp5m6g1
保守
551名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 00:48:40 ID:caSRAxKz
ほしゅ
552名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 02:05:38 ID://MSqXEZ
保守
553名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 23:42:43 ID:pRoozwiU
保守
554545:2010/12/24(金) 06:33:36 ID:Cf554ZXg
以前RD投下のお伺い立てた>545です。
アレから何やかんやでクリスマスネタでの波留×ミナモが書けたんで、ちょろっと投下します。

・シロマサ原作との建前のアニメ「RD 潜脳調査室」より波留×ミナモ
・最終回後の話のため、波留が若返っています
・具体的に言うと、ミナモ18歳のクリスマスです
・そうなると波留さん肉体年齢35歳かようわーい

以下レスより投下。しばし適当にお付き合い下さい。
555若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:35:14 ID:Cf554ZXg
 ――ミナモさんは、クリスマスは御家族と御一緒ですよね?
 質問系ではあるのだが、まるで当然のようにそう言ってきた相手に対し、問われた側は一瞬口篭もった。
 蒼井ミナモが波留真理と付き合い始めてから、早いもので今年で3年目になる。
 それも当初の4月には彼は81歳の白髪の老人で、ミナモは彼の介助担当として出会っていた。そして8月を迎える頃に彼は先着していた親友に会うために深海に消え――戻ってきたら何故か32歳の黒髪の青年へと若返っていた。
 だから、今となっては青年の姿との付き合いが長い。それに容貌が変化しても、性格は穏和で紳士的で礼儀正しいままなのだから、15歳の少女にはあまり違和感はなかった。
 そんな彼女も今年には18歳を迎えた。
 介助士を志したまま高校へ進学し、専門知識と技量とを蓄えて行っている。これからは、大学へ進学し更に専門を突き詰めるか、それとも専門学校へ進学して現場へと先んじるか――彼女はその岐路に立っていた。
 ミナモの進路を決定したその老人は、今は介助など全く必要とはしていない肉体である。しかし何だかんだで付き合いを続け、その少女の成長を暖かく見守っていた。
 そこで、先の問いである。
 ミナモはこれまでの3年間、波留にそんな事を訊かれた事はなかった。
 彼女の家族は電理研勤務だったり世界を飛び回る海洋学者だったりで、なかなか家に寄りつかない。年中そうなのだからクリスマスが特別と言う訳でもなく、ミナモはいつも通り独りで過ごすか、或いは親友達と騒ぐ日となっていた。
 波留は波留で、この常夏の島でダイビングのインストラクターをやっている。クリスマスと言う特別な日を彩る思い出作りに貢献する年もあっただろう。或いは副業の電理研委託メタルダイバーとして、年末進行に付き合う事もあったに違いない。
 そうでなければ、あんなに格好いいんだから――と、ミナモはちょっと厭な考えに至る事もある。そしてそれを「厭」と認識した自分に、更に嫌悪するのが常だった。
 今まではそうだったのだが、今年に限っては事情が異なった。
 今年に限って波留がそんな事を訊いてきたのもそうなのだが、そもそもの前提条件が異なっている。
 それを思い出すと、ミナモとしてはこんな事を訊かれても当然なのかと思う。だからと言う訳でもないのだが、彼女は正直に答えていた。
 ――お父さんもソウタも電理研に詰めてるから、24日も25日も私独りです。
 ――なら、サヤカさんやユキノさんとは?
 ――ユキノちゃんは一足先に新年旅行に行っちゃいました。サヤカは、今の彼氏と予定があるそうです。
 嘘はついていない。中学生時代ならいざ知らず、成長した今、親友達もそれぞれの生活を過ごしているのだから。しかし、余計な横槍が入らない今年の状況に、ミナモはほっとしてもいた。
 ともかくミナモからそれを訊いた波留は、いつものように朗らかで安心感溢れた顔で微笑む。そして、18歳の少女に告げた。
 ――なら24日、僕の家でクリスマスの夕食会でもしませんか?色々料理を揃えるとなると夜遅くなると思いますから、泊まり掛けで。
556若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:36:34 ID:Cf554ZXg
 結局ミナモは、24日の夕方には波留の自宅を訪れていた。
 誘いを断る理由は何もなかったからである。彼女には他に差し当たっての予定は何もなく、心情的にも誘われて嬉しいのは確かだったからだ。
 ミナモが訪問前にチキンやピザと言ったクリスマスの定番総菜を買い持ち込めば、出迎えた波留は単純なイチゴのケーキを焼いてデコレートしていた。ミナモはそれに笑い、キッチンを借りて揃えてきた材料で付け合わせのサラダを作る。
 そうやっているうちに、夕方は夜へと至っている。
「――波留さん、お酒飲まないんですか?」
 リビングのソファーに並んで座りながら、ミナモは怪訝そうにそう訊いていた。お互いのコップには100%天然もののオレンジジュースが注がれている。
 波留はミナモの方を向き、微笑む。リラックスした風に、答えた。
「ミナモさん、まだ未成年じゃないですか」
「私はそうでも、波留さんは大人です」
「いえいえ…独りだけ飲む訳にはいきません」
 波留は左手を横に振りつつそう応じていた。それを訊き、ミナモは両手でコップを支えて持つ。抱えていると、掌に冷たく結露した水滴が付着してきた。その冷たさを感じつつ、思い返す。
「――この前、うちでソウタと一緒にワイン開けてたでしょ?」
「ええ。彼も色々と悩む事がおありのようでしたから」
 その言葉に、波留もその晩の様子を脳裏に再生したらしい。微笑みが一段と深くなった。
 楽しげな彼の顔を見やり、ミナモはコップを両手で持ち上げた。唇を縁につける。子供のように唇を尖らせると、甘酸っぱい液体が口に及ぶ。
 それを僅かに口にした後に、彼女は縁から唇を剥がす。至近距離にオレンジの匂いを嗅いだまま、呟いた。
「私も早く波留さんと一緒にお酒飲めるようになりたいなあ…」
「ミナモさんは後2年お待ち頂ければと」
 微笑んだ波留の顔が、ミナモの隣にあった。彼女はそれを横目にするのみで、またオレンジの液体を口にした。
 たまに帰宅したソウタが、これまたたまにやってくる波留と酒を酌み交わす日がある。
 最初の方はいいのだが、深酒が進むと彼女の兄は波留に愚痴混じりに絡み始め、波留はそれを優しく受け流すのが常であり、正直妹としては見ていて面白味も何もなく、醜態を晒す兄をみっともないと思ってしまう。
 しかし、そんな兄が、何処か羨ましいと思ってしまうのも、事実だった。
 とは言え常識的な事については波留は厳格で、こんな風に未成年の飲酒を認めようとはしない。優しく諭して交わしてしまう。それは大人の態度として全く正しいのだから、後2年待つしかないのだろう――。
557若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:36:59 ID:Cf554ZXg
「――私、波留さんにしてみたら、まだまだ子供ですもんね」
 そんな思考に至ると、多少いじけた風な言葉がミナモの口から漏れる。
 自分としては、兄のソウタも同様に子供であって欲しいのかもしれないと思う。そうすれば波留さんはソウタにも同じ一面しか見せていない事になるのだから。しかし、現実は違ってきている。
「そうですねえ…」
 微笑み波留はコップをテーブルに置く。それぞれの取り皿にはサラダが残っているし、1ホールのイチゴのケーキもまだ半分カットされずに残されていた。互いにパーティを中座している格好である。
 波留は穏やかな笑みを浮かべ、右手を自らの右頬に沿わせた。指でその中央を指し示す。
「ミナモさん…クリーム、ついてますよ」
「え」
 その指摘に、少女の口から短い声が漏れる。それは予想外だった。そんな事をするような、汚い食べ方をしていたのだろうか――反射的に右手が頬に伸びる。それこそ子供っぽいにも程があると恥ずかしい想いがした。
 しかし、その手をやんわりと波留が押さえた。柔らかな態度で制止する。
 そのままの表情で、波留の顔がミナモに近付いてくる。状況が良く飲み込めないまま、ミナモは思わず首を竦めた。
 波留はミナモの右手を押さえたまま、左手で彼女の顎に触れた。僅かに力を込め、彼女の顔を横に傾かせる。そうやって自らに少女の右頬を晒させた後、更に顔を近付けた。
 ミナモの右頬に、僅かにざらついたような、湿っぽい感触がした。それは頬の1ヵ所を通り過ぎた後、もう一度やってくる。
 横目では至近距離にある波留の顔が判る。しかし何をされたのかは、視界に捉えきれない。頬の一部が冷たく濡れたような感触を覚えると、ミナモは右手が強ばった。左手に持ったままのコップの冷たさに、そちらの手は悴むような感じがする。
 そのうちに、波留の顔が剥がされた。彼はミナモに迫ったままで覗き込む体勢のままだった。
 彼はミナモの手を離すと、すぐに少女はその右手を持ち上げた。恐る恐る、右頬に触れてみる。すると、そこには濡れた感触が確かにあった。
「…波留さん、あの」
「クリームが勿体ないので、舐めて頂いてしまいました」
 悪びれもせず、波留はミナモに告げる。その表情は相変わらず穏和なままだった。
 その態度に、ミナモは僅かに口を開く。何かを反駁しようとした。そこに、波留は穏やかかつ冷静に示唆した。
「ジュース、零しますよ」
「…あ、はい」
 気勢を制され、ミナモは思わず反射的に頷いてしまう。俯いて左手のコップの存在に気付き、慌ててそれをテーブルに戻した。かつんと音を立て、強ばった冷たい手からそれを解放する。
 それを見守っていた波留は、唇に更に深く笑みを閃かせた。ミナモを見下ろし、見つめる彼だったが、困ったように笑い、眉を寄せる。
「――ああ…ここにもクリームが」
「え」
「また舐め取らせて頂きますね」
 ミナモの声を遮り、波留はそう告げた。そして間髪入れず、彼の顔がミナモの首筋に潜り込む。
 唇が首筋に吸い付く心地がした。そうやって音を立てた後に、そこを舐め上げる感触がする。
 ミナモは思わず首を竦めた。口元からは反論よりもまず、吐息が漏れた。
 身体が強ばる。両手を握り締め、彼女は視線を下に向けた。そこにはひとつに結んだ黒髪がある。室内灯を頭上から受けて綺麗な輪を作り出している髪が、さらりと流れるのを見た。
「――波留、さん」
 執拗と言っていいレベルで、丹念に首筋を舐められている。それを感じ取りつつも、ミナモは彼の名を呼んだ。呼びつつも、その合間に妙な吐息が漏れる。
「波留さん」
 もう一度呼ぶ。少し首を横に振ってみた。背筋にはぞわりと来る感触があるのだが、彼女はどうにかそれを無視する事に成功した。
 すると、隣の男が顔を剥がした。舌先をゆっくりと引き剥がし、最後にもそこを舐め上げる。そして彼女に向き直り、相変わらずの無害そうな微笑みを浮かべた。
「――何でしょう?」
558若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:37:32 ID:Cf554ZXg
「波留さん…」
 笑顔で相対されると、ミナモは段々と腹立たしくなってきた。目元に涙が滲んできている自覚もある。幾分涼しさを覚える首筋を部屋の空気に晒しつつ、両手に拳を作り、声を荒げた。
「私…絶対、頬にも首にもクリームつけてなかったですよね!?」
「どうしてそんな事を仰るのです?」
 困ったように笑う波留は、どう考えても抗議を交わそうとしている。そう思い、ミナモはますます顔を真っ赤にした。怒りたいやら恥ずかしいやら、色々な感情が彼女の中に渦巻く。
「波留さん!」
 その感情の勢いのままに、ミナモは両手を伸ばした。隣に座って覗き込んできている男の顔を掴んだ。両手で挟み込み引き寄せ、今度は彼女から覗き込む。微笑む口許をじっと見つめた。
 何かを見定めるような突き刺すような視線をミナモは波留に注ぐ。それに波留は微笑みを絶やさないまでも、少し不思議そうな光を瞳に浮かべていた。
 1分弱の間の後、ミナモは納得したように大きく頷く。口から大きな声が漏れた。
「――ほら、やっぱり!」
「…何がです?」
「波留さん、口にクリームとかつけてないし!」
 両手で波留の顔を掴んだまま、ミナモはそう断じてきた。――私から舐め取ったのなら、口許にクリームつけてなきゃおかしい。彼女の中ではそう言う思考があった。
「…ああ――」
 彼女の弁に、波留も納得したように頷いた。口許を指さし、微かに唇を開いてみる。
「なら、ミナモさんも確かめてみてはいかがですか?」
「え?」
 唐突な言い分に、ミナモは怪訝そうな声を漏らす。目を瞬かせた。そんな彼女に、波留は笑いかける。
「僕と同じように、ここを舐めてみたらいいんですよ」
 波留はあくまでも穏やかに告げてくる。しかしミナモは、その台詞を自らの思考で咀嚼してゆくと、目に見えて顔を赤くしていった。その動揺は、言葉にも現れてゆく。
「…波留さん…それって…――キスって言いません…?」
「ええ」
 当然のような顔で、波留は笑い、頷いた。
559若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:38:01 ID:Cf554ZXg
「つまりは、舐めた箇所に本当にクリームがついているかどうかを問題になさってらっしゃるのですね」
 波留は笑ったまま、鷹揚に納得してみせた。
 そのまま右手がテーブルに伸びる。広げた手が中央を掠めると、伸びた3本程度の指が半ホール残っていたケーキの上部に至っていた。
 彼の手がクリームでデコレーションされていた箇所に触れ、指にべっとりと付着する。彼はその甘い香りを漂わせる手を自らに戻しつつ、爽やかに笑って言う。
「では、これをミナモさんにつけさせて頂いて、そこを僕が舐めれば丸く収まると言う事で」
「波留さん!」
 その行動に、ミナモは慌てた。しかし、彼女の感情は、今までとは別の方向に動かされている。反射的に、台詞が口から突いて出た。
「いくらクリスマスだからって、食べ物を粗末にするのはどうかと思います!」
 蒼井ミナモと言う少女は確かに家族と共に居る日は少ない。しかし注がれる愛情は嘘ではなく、また幼少期には祖母に面倒を見られていた。躾もしっかりとしたもので、道徳観念に乏しい事もなかった。だからこの波留の行動には、速攻で制止の弁が出ていたのだろう。
 その態度に波留は首を傾げた。未成年の飲酒を制止するように、彼の道徳観も低くはない。しかし、他者からこの状況でそれを振りかざされると、不思議な気分に陥った。
 ――咎める事が、明らかに違うような気がした。確かに彼女は昔から不思議言語センスを持っているが…。
 しかし、やがて彼は再び微笑んだ。その感情に、悪戯気分が打ち勝っていた。
 怒っているミナモの前に、波留はそのクリームに汚れた手を持ってくる。まるで宣誓でもするかのように広げたその手を、彼女に見せつけた。
「勿体ないと仰るのならば、ミナモさんが舐めたらいいんですよ」
560若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:38:24 ID:Cf554ZXg
「え…」
 ミナモはその台詞に戸惑った。怒りが一気に冷めた。
 良く考えたら、外堀を着実に埋められている。私の態度を逆手に取って、こんな悪戯してくるなんて――。
 少女の視界には波留の大きな右手が広がっている。その向こうに垣間見える波留の顔は楽しげに笑っていた。
「さあ…どうぞ」
 瞳にいたずらっぽい印象を煌めかせ、波留は首を傾げる。軽く指を動かし、ミナモへと示した。
 それを眺めていると、ミナモの心臓が徐々に早鐘のように鳴り始めていた。顔が赤くなってきているのは、今度は怒りのせいではないはずだった。
 ミナモは、おそらくは無意識に唇を舐めた。そして意を決したように、ぎゅっと瞼を伏せる。右手を波留へと伸ばす。勘で彼の右手首を掴み、自らへと引き寄せた。
 瞼を伏せたまま、震える舌先で、人差し指の先端辺りを舐めてみる。すると、クリームの甘ったるい味が口の中に広がった。それを口に含みつつ、ミナモはその指を大きく舐め上げる。指の付け根から爪先までを感じた。
 クリームの味と共に、男性の大きな指の感触が舌先に敏感に伝わってくる。瞼を伏せているとそんな感覚が倍増して感じられた。と言って目を開けると、波留の顔を見てしまう。どんな顔をして見ているのか――それを確認するのが怖い気がした。
 ミナモはとりあえず、クリームを舐め取る事に専念する事にした。それを終えてしまえば「勿体ない」事はないのだから。波留の手首を掴んだまま、自分が舐め易いようにその手の角度を変えたり、自らの顔を傾けたりした。
 眼を閉じて視界を隔絶したままのため、クリームが付着した場所を的確に舐めているかどうかは判然とはしない。味を頼りにしようにも、既に口の中に甘い味が広がってしまっていた。
 舐めて自分が立てるぴちゃりと言う水音や漏れる吐息が、自分の中に篭って聴こえる。それを感じていると、明らかに妙な気分になってきた。
 不意に、開いた口に、何かが差し込まれた。
 波留が自ら右手を動かし、指を彼女の口に突っ込んできた。
 瞬間、彼女は喉に詰まる感触を覚える。手首を強く掴み、引き抜こうとした。口内では舌が逃げようとする。しかしそれに構う事なく、波留は指で彼女の舌を挟み込んだ。やんわりと絡め取る。
 口を塞がれて息苦しい。何も言えなくなったミナモは、波留の手を掴んで抵抗しようとした。
 すると、すぐにその蹂躙してくる指が引き抜かれた。息苦しさに涙目になったミナモは大きく息を付く。ソファーに背中を大きく預けた。口許に唾液とクリームが絡みついている。
 そこに、波留が覆い被さってきた。
 彼は両手でミナモの両肩を掴んだ。荒々しく圧し掛かり、息付き半開きになったままのミナモの口を、自らのそれで塞いだ。
 歯列を割り、侵入してきた舌に自らを絡め取られてゆく。ミナモは苦しい息の中、それを感じた。目を見開いた後、細める。
 涙に濡れた視界には天井が広がっている。そこを掠めるように黒髪が流れてきて、彼女の首筋をくすぐった。自らの褐色の髪とは違う、美しい長い髪が近くにある。そして自分の上には広く逞しい背中があった。
 ――この前もそうだったっけと、ミナモはぼんやりと思った。
 しかしその傍観者めいた感情もすぐに流される。口を吸われ、舌を絡め取られ、角度を変えて何度も口付けされると、背筋がぞくりとする。意識が飛びそうになった。
561若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:39:48 ID:Cf554ZXg
「――…ああ、確かにミナモさんの口からはクリームの味がしますね。御馳走様です」
 長いキスがようやく終わる。圧し掛かったまま上体を引き剥がした波留は微笑み、言った。右手の甲で口許を拭う。その手は濡れていた。
「…波留さん。酷いです」
 ミナモは唇を尖らせて抗議している。すっかり濡れてしまった口許を右手で押さえた。
 波留は楽しげに笑い、そのまま彼女の右頬に唇を落とす。ちゅ、と軽い音が立った。
 その感触にミナモは首を竦めた。そして、拒絶するように勢い良く首を横に振る。
「波留さんにとっては結局、私は子供なんでしょ?」
 言いながら涙が溢れてくる。衝動的な感情が、彼女の心を支配した。それはここ2ヶ月程度、彼女の心に突き刺さった楔だった。
「ミナモさん?」
 その態度に、波留は怪訝そうな声を上げる。良く判っていない顔をしているとミナモは思い、それが更に腹立たしかった。
「この前、私達はあんな事になったけど――また、こうやって、私をからかってそんなに楽しいんですか!?」
 涙を浮かべてミナモはそう訴えていた。そのまま顔を両手で覆う。天を仰ぐ視界を遮りつつ、声を殺して泣いた。
 ――私は何でこんな事を言っているのだろう。彼女自身、良く判らないまま。
 あの時、何を考えていたのかは、自分の事ながら良く覚えていない。只必死で大変で――良く判らない感覚に意識が吹き飛ばされた事だけは確かだった。そしてその直後の奇妙な浮遊感と心地良さも。
 ともかく3年目にして初めて波留と関係を持った。それは彼女にとって特別な事だった。
 しかしその後、波留の態度は特に何も変わる事はない。今まで通りに優しいままだった。決してそれが悪い訳ではないのだが、少女にとってはもっと何かが違ってくるのかと思った。
 ――波留さんは大人なんだから、あれは大した事じゃないのかもしれない。そう自分を納得させてはみた。
 あんな事があった後に、今までで初めてクリスマスに誘って来たが、結局は今まで通りと態度は変わらないようでいて――こんな風にからかって来るのだから、性質が悪いと思う。
 ミナモを見下ろす波留の顔からは、笑みが掻き消えていた。それは今晩初めての事である。
 手を解いてその顔を見上げるミナモは、その彼の顔が怖いと思う。真剣な整った面持ちがそこにある。
562若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:53:33 ID:Cf554ZXg
「…そんな事ありませんよ。ミナモさん」
「波留さん」
 やがて顔を近付けて囁いて来た波留に、厭がるようにミナモは身体を捩らせる。そんな彼女を制止せず、波留は自らの胸に右手を置いた。伏し目がちに、言い募る。
「僕はこの時代に独り目覚め、ミナモさんに出会いました。そしてあなたの成長をずっと見てきました。親友を省みずに拗ねていた僕が立ち直れたのも、あなたのおかげなんです」
 穏やかな低い声がミナモの耳をくすぐる。少女は傾けた顔のまま、横目で男を見た。
「好きなんですよ、あなたの事が――おそらくはあの4月から、ずっと」
 すっと、爽やかに波留は笑う。そこには何処か照れたような印象をも含ませていた。
「でもまあ――…ああもう、男ってどうしてもそう言う方向に行きがちで、全く厭だな」
 そして波留は何かを言い掛けたが、それを中断して独りごちた。どうやら考えが纏まらなかったらしい。顔を歪め、右手で前髪を大きく掻き上げる。そのまま荒っぽくがしがしと擦り上げた。
 やがて、溜息混じりにその前髪を解放する。元々癖のついた髪形をしていたが、更に乱れてしまっていた。彼はそのまま、自嘲気味の言葉を続けた。
「いくらメタルが発達しても、気持ちを表すって難しいものですね。人間同士の関係とは、繋がろうにもなかなか上手く繋がれない。そりゃまあ…仕事なら乱暴にクラックしてでも情報を頂くんですが」
 ミナモは彼をぼんやりと見上げていた。もう泣き止んでいたが、目許は涙に濡れたままである。そんな彼女を見下ろし、波留は苦笑した。
「…いや、僕はこんなおじさんですけどね。お若いあなたは今後もっと釣り合う男と出会うのでしょう」
「そんな事言わないで下さい!」
 瞬間、ミナモは声を荒げた。波留の言葉を遮る。
「え?」
「波留さんはとっても素敵な人です!逆に、私なんかでいいのかなって位に」
 自分は一介の女子高校生なのに対し、相手は世界クラスのメタルダイバーで同様レベルのリアルの海のダイバーである。そして相手は既に世界基準を残しているのに対し、自分が同じ歳になった頃にそんな事が出来ているだろうか?
 ――歳の差以前に、人間のレベルとして、全くもって釣り合う気がしない。ミナモが抱く感覚とは、そう言うものだった。
 その態度に、波留はぽかんとした。唖然とした表情を浮かべる。そして、頬を指で掻いた。明らかに照れ笑いを浮かべる。
「…何と言うか…男冥利に尽きるんですが。凄い殺し文句ですよね、それは」
 帰ってきたその反応に、ミナモは赤くなる。ようやく自分が凄い事を言ってしまったのだと察した。
 しかし、悪い気はしない。何故ならそれは、彼女が感じたそのままなのだから。
 互いに照れ笑いを浮かべる。
563若返り波留×ミナモ18歳:2010/12/24(金) 06:54:26 ID:Cf554ZXg
「――何だか、お互い汚れて来ちゃいましたね」
「はい…」
 ひとしきり落ち着いた後、ふたりはそんな事を会話している。確かに舐めたりクリームをつけたり、果てにはそのクリームを舐めたりとしているのだから、肌がべとついてきていた。
 更にはミナモは自分の状態を自覚すると、頬が赤く染まるのを感じる。そう言う意味でも汚れてきてしまいそうで――。
「じゃあ、これからバスタブにお湯を張りますので、一緒に入りましょうか」
「――ええ!?」
 何気ない口調でさらりと述べられた波留の提案に、頓狂な叫びがミナモの全身から発せられた。
 そんな彼女を物ともせず、一瞬波留が沈黙した。そしてすぐに笑いかけて来る。どうやら自宅メタルに接続して、バスルームの給湯設備に指示を出したようだった。メタルへの常時無線接続を社会基幹と成す人工島のシステムとは、こういう時にも役立つらしい。
 それから波留は何処かにやりと笑った。目を細め、ミナモに身体を預けてくる。ゆっくりと圧し掛かってきた。
「まあ、お湯を張るにも時間が掛かりますし…それまでに多少汚れるような真似を重ねててもいいですかね?」
「波留さん…そんな事してちゃ、お湯溢れちゃいますよ!?」
「大丈夫です。状況に応じて注水量を調節しますから」
 ミナモの首筋に唇を寄せつつ、波留は笑う。世界的なメタルダイバーならでわの言葉とも言えるかもしれない。その位のコントロールは楽勝なのだろう――ミナモにしてみたら、とんだ技量の無駄遣いだと叫びたい心境だった。
「――ああ…ここはクリームを付けなくても、とても美味しそうです…」
 上着を捲り上げ、そこにあった下着はずり下げ、波留はミナモの右胸を露わにしている。張りのある大きな乳房を手で揉みしだいた末に、その先端を口に含んだ。音を立てて吸い付き、舐める。
「…波留さん」
 その最中にミナモは熱い吐息を漏らしつつ、呼びかけた。波留は手を止めず、顔を上げないまま続きを促す。
「はい?」
「――私、波留さんの事、ずっとずっと大好きです」
 息つきつつ、引っくり返りそうになる声を懸命に制御しつつ、ミナモはそう言った。今更ではあるのだが、今までに言いたかった事を吐露してみせた。
 波留は顔を上げた。ミナモの顔を覗き込む。そして、微笑む。
「…それは良かった」
 彼はそう漏らした後、ミナモと唇を重ねた。軽く吸い、舌を絡める。少しだけ音を立てた後、互いに舌を差し伸べたまま口を離す。優しいキスにミナモは震えを覚えた。目を細め、波留を見上げて言う。
「私達、ずっと両想いだったって事でいいんですね」
「ええ」
 波留の単純な答えに、ミナモは満面の笑みを浮かべた。その答えで、とても楽になれた気がした。
 そのまま彼の背中に腕を回し、そっと抱き締める。
 18歳を迎えて熟れた少女の、柔らかな身体の感触が波留に伝わってくる。――これは没頭し過ぎて給湯システムのコントロールを忘れないようにしなければならないなと、彼は一抹の不安を覚えた。
564545:2010/12/24(金) 06:58:16 ID:Cf554ZXg
以上で終了。じゃ、撤収!
これ発覚したら電脳自殺に走りそうなソウタはともかく、
久島は案外泣いて喜んで仲人やりたがるだろうなと思わないでもない。
何が何でも波留一番の男だから。
565名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 10:21:21 ID:O2ozaugB
乙!
波留に翻弄されるミナモカワユス!
久々にRDを1話から見直したくなるなぁ
566名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 02:39:10 ID:v3Q+76Lc
あけましておめでとう、少佐
567名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 19:43:42 ID:pxZRqUDh
田所コレクションのセクサロイドに責められる少佐
実は人間相手には攻めだがフェラーリより高価なお人形さん相手には受けだったのだ!
568名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 00:22:01 ID:v623CFlR
保守
569名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:01:54 ID:0lduIvKN
なんか良く分からんの書いた、投稿するぜ
570名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:04:55 ID:0lduIvKN
「ちょっと待てトグサ、一体どういう事だこれは」
「こういう事ですよ」
全身を駆け抜けるような電気的な悪寒の後、身体に出力されるはずのパワーが唐突に減少した。何とか立っていられるものの、身体を支え切れない。
力が入らない、とでも言うのだろうか。
生理的ではない、プログラム的な負荷に、素子はトグサの思惑が捉え切れず、その端正な顔を歪めた。
犯人が目の前でへらっと笑うこの男である事は明確だった。仲間だからと思って気を許した、流石に裏切られる事はないだろうと。
しかし機密度の高い情報だからと有線すれば、この様である。
「何を企んでいる」
相手の顔を睨みつけると同時に、義体の出力設定を舐めるようにチェックしていく。その内の3つのプログラムが、別のプログラムに乗っ取られていた。
幸いな事に元のプログラムが破壊された訳ではないようだ。不正プログラムをクラックした後に、不具合が残る事はなく手早く元の状態に戻せるだろう。
571名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:06:48 ID:0lduIvKN
しかしそのプログラムは前回のメンテナンスの時には見当たらなかったはずの不正プログラム。
やはりこいつが。
でも何の為に。
「一緒に、遊びたいなと思って」
不正プログラムをクラックするのにかかる推定時間は、600秒弱。
だがその間、自分は何をされる羽目になるのだろう。
そう思い、素子は舌打ちした。
572名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:09:07 ID:xPHF3j3Z





「・・・とまぁ、こんな感じ?」
「珍しいな、トグ素?」
「おお。図らずも原作のトグサっぽいだろ?」
「確かにGISの俺もSACの俺も少佐にどうこう出来るとは思えないけどさ」
「自分で言っちまうか、それ」
「まぁな。でも少佐がSACの少佐っぽい」
「そこなんだよなぁ。物語的に有り得ん」
「まぁ俺と旦那がずっこんばっこんやるよりは、有り得るんじゃね?」
「同感」
「何?楽しそうね二人とも」
「「しょ、少佐・・・」」
「ふーん。この後私、何されちゃうのかしら」
「さ、さぁ?マッサージとか?」
「そ、そうそう」
「でもまぁ、仮に10分弱体の自由を奪われてしまったとしても、トグサに何か出来るとは思えないし?」
「で、ですよねー?」
「何か複雑だなトグサ」
「それに゛ソレ゛の私はその後どうするつもりかしら」
「え?」「あ?」
「きっと、どこかで見物してるバトーと合わせて、二人を懲らしめるんでしょうね」
「ひ、ひぃ」「ぐ、具体的に何を?」




「貴方達にずっこんばっこんさせるのよ」
573名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:12:29 ID:xPHF3j3Z

おわり
全体像ー



攻殻同人読む二人

バトグサは有り得ん

バト素ヨシ!←

あれトグ素なくね?
(素トグ、スルー)

俺(バトー)が書いちゃる

書いたー!

見つかったー!!

なんていうメタ具合
ていうかまさかのオチなしエロなし
ホントは前半だけで書きたかったんだ、
エロ繰り広げたかったんだ、
無理だったんだorz
誰か書きたかったら書いてノ
574名無しさん@ピンキー:2011/02/18(金) 16:40:45 ID:Pb2Pfe78
プロトってバイオロイドなんだよね。
ってことはアンドロイドと違って生殖可能なんだろうか・・・?
と考えてしまった。

そして、やり方がよくわからないプロトに実技プログラムを提供する素子姉さん。
という妄想をした。
575名無しさん@ピンキー:2011/02/19(土) 03:09:10 ID:Qn9Cfvz8
>>573
乙!
576名無しさん@ピンキー
>>574
確か前スレかこのスレにそんなのあった気がする。