GJだ
文章力あるし内容がイイ!
やぱ黒兎様SSは良いな。
ということで続きを書きたまへ
規制解除ktkr
最高だ。
今週で確信した
富瓜アナはよせばいいのに危険域にまで首突っ込んで化物に強姦とかされる姿がきっと似合う
超嫌な役どころなのに超可愛いよ富瓜アナ
>>144 いや、違うな。
ビデオネタをヒノに押し付けて言うことを聞かなければ
このネタをばら撒くとヒノに脅しをかける姿の方が似合う。
そしてヒノをが富瓜アナに犯されるSSを誰か書いてくれるはず。
このスレの女×男需要の高さときたらwwwwwww
「ねえ、犬の刑、猫の刑、蛙の刑、牛の刑、カラスの刑・・・どれがいい?」
「え?」
雨女池はサユの言っていることがわからなかったが、
どうやら何か屈辱的な刑罰を与えてくれるらしかった。
同い年の、憧れの美少女に奴隷扱いされるわけだ。なんと屈辱的なのだろう!
雨女池は勃起した。
なるほど彼女は随分と怖い目をしている……
こんな目で蔑まれて罵られた日にはおっかなくて怖くて泣いてしまうだろう。
すでに胸が痛い。
こんな状況で勃起しているのが知られたらオレは、ああオレは、ど、どんな目に、
どんなひどい目に合わされるのだろう!?
だってこんな状況で勃起するなんていけないことだ。
いや、どんな状況であれ勃起するなんて卑猥だし、
だとしたらオレが卑猥な事で頭を埋め尽くしているどうしようもない変態だって言う事が知られてしまうし、
そんな変態がサユちゃんをストーカーしてただなんて学校中に知られたらオレは皆に石を投げられて罵られる。
道行く知らない生徒たちが口々にオレを見て叫ぶ「この変態が!」
このド変態が!
ああっ、ああああ……だって、オレは今最低なことにそんな状況を想像するだけで泣きながら、
それでも勃起が止まらないどころかもっともっともっと硬くて、ああ、ごめんなさい……
だってこんなかちんこちんだよう……根暗な高校生のフリしてこんなことで、
だって誰もいやらしいことしてないのにこんな悲惨なよりによって想像するだけで勃起しちゃって、
制服のズボンぱんぱんに膨らませて、だめ、小さくなんなきゃ、これじゃばれちゃうから、
歩いてて勃起ストーカーだってばれてオレは、
そしたら学校中の人みんなオレのこと頭のおかしいド変態色狂いの勃起病気ストーカーで
取り返しつかないから何度も何度も「ド変態が!」ああ、高校生なのにオレ何回も
大人の先生や同い年の目の前の未成年女子高校生の可愛い純粋でミニスカートと紺ソックスの
かわいいかわいい真っ白で素敵なオレと同い年なのに何もかも違って純粋で素敵な
高校生の同い年の女の子に見下されて
学校の人にオレがちんちんズボンぱんぱんに勃起ストーカーしてた変態だってバラされて、
そしたら、あっ、逮捕されちゃう、きっとこんなド変態の勃起ストーカー逮捕されて捕まっちゃう、
おまわりさんに「このド変態が!」ってオレ、高校生なのに逮捕されて捕まるっ
「あんた犬になりなさい。この変態」
ああああああっ
オレ犬になったっ、同い年なのに勃起高校生でズボンぱんぱんの変態だから
人間扱いじゃなくて動物になって、
でも悔しいけど泣きたくてもオレがそれは変態だから、
だって何もないのに勃起するなんてどうしようもない変態でクズのろくでもない変態高校生だから
そんな人間人間じゃなくて獣扱いされてもしょうがなくて
「四つんばいになりなさい。人間の言葉喋らないで。ほんと気持ち悪いわねあんた。この変態」
ひいいいいいいいっ、嫌われて、まだ会ったばかりの同い年の可愛い可愛い美少女に嫌われちゃったら
オレは気持ち悪くて、でもそんなこと言われてもオレもオレを見たらきっと気持ち悪いド変態の最低だって
思うに決まってる最低ストーカーだから最低ストーカーだって、だって勃起してるからだ!
高校生なのに何にも無いのに勃起して勃起がそれだけじゃない、
どんどんどんどん硬くなって、ああ、こんな風に同い年のミニスカート紺ソックス女子高生は
純粋できれいでオレみたいにいやらしくないのにオレを見てこいつがどうしようもないド変態の
勃起してるってズボンを見られて、
それでオレのせいで純粋で幸せな女の子の温かい夢の思い出を汚して
ごめんなさいって言いたいのにごめんなさいごめんなさいって、オレは泣いていた。
でも勃起しながら泣いていたんだ!
オレは最低だ、ド変態最低のストーカー犬だ!
犬の言葉しか使えないから
「わんわんわん……わんわんわん…」
ああああああああっ
純粋で綺麗て素敵なサユちゃんはいなくなってたっ、
オレは犬のままでのた打ち回って、
これは罰だからオレは一生犬のままのたうちまわって学校で勃起しながらっ
あああああああああああああっ、誰かっ、誰か誰かごめんなさいっ、
こんなオレがド変態のストーカーの分際でズボンぱんぱんのド変態人間のクズで
犬よりも最低の人間の獣でごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ
誰かっ
……………ふう。
まーオレ犬じゃなくて蛙なんスけどねー、でもサユちゃんの犬になら喜んでなりたいし?
ごめんね、おかあさんメケのズリネタとか誰ひとり喜びそうにないネタ持ってきてごめんね
元ネタは(dat落ちしてるけど)オカ板の「有名な怖い話をクールに反撃する話に改変しよう」9スレめに
投下された蛙の刑の改変ネタ。
サユヒノでネコガミなのに犬って呼ばれてry って流れで考えてたんだけど
ヒノスキーさんに殺されそうな気がしたのでメケにしてしまった 今は反省してる
150 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 18:27:11 ID:cCg6WUZW
とうとうおわってしまったな
普通に口きくようになった途端ヒノが天然タラシの片鱗見せて吹いた
やっぱヒノサユ良いな
>>151 こんな時でもポジティブだなw
……なんかもう……心が砕けたわマジ
西のエロい女がもっと見たかった
>>152 単行本全巻出るまでは終わらんよ……くっ
サユと黒兎様とついでに富瓜アナの(エロい)描き下ろしが少しでも多くあるよう祈るのみ…!
単行本ラフの水着サユ超エロ可愛いな。海に行く日常話とか見たかったわ
中表紙のヒノがエロいと感じました
>>155 あの目は確実に俺たちを誘ってる 西の本気を見た
下巻が出るまで希望を込めて保守
潔癖なショタアベルが年増の黒兎様に美味しく頂かれちゃうお話15レスほどいきます、
作者の脳内設定が多分に含まれます、
「黒兎様のパーフェクトせんのう教室」って感じの話なので
同じ流れが何度かループして冗長な感じです、あと白いの出ません。
阿倍さんはまだショタだからルー語の勉強はしてないみたいです、
せいぜいハニーの前で「サザンの力は認めざるをえないよね」って粋がってるとこを
大人に聞かれてめっちゃ笑われて赤っ恥とかそんなレベルだったんじゃね?
――あの時君の手を掴めなかったのに、今君の手を放せずにいるオレは滑稽だ。
あれからそれなりに長い時間が過ぎたはずなのに、
アベルが南区に馴染めたかというとそんなことは全然なかった。
もとより馴れ合いたくて南に来たわけではないアベルにはどうでもよかったし、
そもそも馴れ合うという概念自体がここにはなさそうだったし、
与えられた役割上どうせこちらに常駐することも無く、
今日だって案件が済めばすぐにも北に戻るつもりでいた。
だというのに、全くとんだトラブルに見舞われたものだ。
今彼がいるのはいやに埃っぽいだだっ広い空間で、
どうやら地下のようだけれど気味の悪い寒々しさがあって、
そもそも和式の小旅館に地下室らしき空間が存在しているなんておかしい気がしたが、
北の怪物園のような、人間にわからないギミックで作り出された場所である可能性もあった。
それにしても、だ。
何故アベルがここにいるかというと言葉にしてしまうとまるっきりお笑い草なのだが
腐った床板を踏み抜いて落下したからであり、つまり脱出法がわからない。
悲鳴のひとつも上げれば誰かが気付いて近寄ってきたかもしれないが
驚きすぎて声も出ぬまま真っ逆様だったため恐らく実際に通りすがる者がいない限り誰も気付くまい。
ただ、ゴミにしか見えないボロボロの畳や綿の飛び出した黴臭い布団の山があったお陰で無傷で済んだ
ということは恐らくここは廃材置き場として機能しており上との行き来も可能なのだろう。
という希望的観測に基づいてアベルはそろそろと歩き出した。
服に付いた埃を叩き落とすといやに音が響く。
かなり高い位置に並んで据え付けられた細い窓は灯り取りだろうか。
差し込む光に舞い散る埃がキラキラしていて、
いつまでもこんな場所にいたら病気になってしまいそうだ。
----------
「……!」
ゴミ捨て場に繋がっているのだろうか、と最初思った。
生臭いのだ。
がさ、とほんの僅か物音が聞こえた気もした。
今いるあたりは丁度何本もの柱が入り組んで立っていて、
更に金属の太いパイプが大人の背の高さ程度の位置を通っており、
見通しがひどく悪い上灯りも届きにくい。
壁伝いに恐る恐る進んで、不意に開けた視界の先にそれはいた。
急に足場も開けて、掴まるものを失ってよろけて下に突いた手のひらに、ぬるっとした変な感触が走る。
薄暗がりに真っ黒く広がる鉄臭いぬめり。
ひ、と喉が痙攣した。
それだけならきっとこの環境でアベルにその正体などわからなかったのに、
少しだけ視線を移した先に転がった白い棒状の物体はどう見てもヒトの腕で、
色の抜けた指先が五つ並ぶ中で小指の爪だけが剥がれて黒く――違う、
赤く沈み込んで見えるのが奇妙に非現実的だった。
口を塞ぎたかったのに手のひらはべとべとで、
仕方なしに噛みついた服の袖越しに腕の皮膚が裂けるほど強く狂おしく抗い難い嘔吐感を耐えて、
耐えて耐えてそれでも口の中はひどく苦い味でいっぱいになって、
もう袖口を濡らしているのが涎なのか胃液なのかわからなくて、
「直前に心臓を突くと良く締まるんだ」
だからあまりにも状況に不釣り合いに落ち着いて響く低い声は、最初幻聴としか思えなかった。
「ぁ……げほっ……ッ」
無理矢理に引き剥がした腕と口との間に粘っこく涎が糸を引く。
顔を上げた先、爪の剥がれた腕よりもっと向こうにやはり白く浮かび上がっているのが
人の脚(今度はきちんと二本、だ)で、膝から先だけが宙から突き出しているように見えるのは
それを自分に背を向ける形で肩に担いでいる黒服の誰かがいるからで、
不自然に揺れているのは、
「新参がこんな所に何の用だ」
――ああ、血が沢山沢山、噴き出しているから、だ。
何を言えばいいのかわからなくて、何を言えば逃げられるのかわからなくて、
俯いた拍子に再び喉が震えて、ひ、と乾いた吐息が漏れる。
それでも無理矢理に顔を上げた瞬間に、待ち構えていたように鼻先に銀色が煌めいた。
「あ……」
物音も、気配すら無く黒衣の男は半歩先まで来て、
首から上の汚れをハンカチで拭いながらアベルを見下ろしている。
突きつけられた刀の切っ先が開いた口の中に僅かに入り込んで、
震える前歯とぶつかってカタカタ音を立てた。
それなりに若そうな佇まいなのに奇妙に老成して見えるのは表情筋をどこかに忘れたように
何一つ感情を読めないほどの無表情のせいだろう。
異形の耳と不自然な紋様以外人外の要素を感じさせないその男をアベルは知っていた。
一度だけ、南に来てすぐ、老いたる幹部達への謁見の際、異様に若い男がいたのを覚えていた。
彼もまた幹部のひとりで、何かジジィ連中が色々言っていた気がするけれど正直覚えていない。
ただ――とんでもなく危険な相手だというのは判る。
「……新参がこんな所に何の用だ」
もう一度、噛んで含めるようにゆっくりと繰り返された質問に、
答えなければと焦って動かした舌先が僅かに剣先に突き当たって裂けた。
首を引いて、
「…なんにも……っ」
必死に紡いだ言葉は、酷く格好悪くて、意味不明で、だけど続く言葉なんて思い浮かばず、
あまりの息苦しさにただみっともなく喘いだ。
「……」
見下ろされている。否――見下されている?
あまりにも表情が無さすぎて、人形じみた眼差しは男が何を思っているかなど全く伝えてくれない。
それが見たままに無関心を示していると楽観的に思うには、状況が異常過ぎた。
目を反らしたら殺される、と根拠無く思ったから、
アベルは死に物狂いで、歯を食いしばって冷ややかに過ぎる顔を見返していた。
「…………ふ」
数秒か数分か、どれだけの間睨み合い(と言って良いのかアベル自身わからないのだが)を続けたか。
笑いに似た吐息をひとつ、口角の下がった唇から零して男は刀を鞘に納めた。
無駄のない実に美しい所作だった。
「言うなれば――迷子か。運の無いことだ。
いや……私が即座に斬り捨てていた可能性を思えばむしろ運が良い、か……?
ここは…まあ、ゴミ捨て場だな。私がいること自体が珍しい、南の最底辺だ」
一見無防備とも思えるほどあっさりと視線を外し、
独り呟いて再度こちらを向いた顔にごくごく僅かばかり疑問の色を浮かべて――
男はぐい、と身を屈めて乗り出し、アベルに顔を近づけた。
「……っ」
思わず頭を庇うように持ち上げた両の手の甲に、薄い風圧。
「安心しろ、斬って捨てようなどと考えてはいない」
柔らかい、どこか艶のある――女の声、だった。
恐る恐る開けた目の先、無防備に突いた両膝、鞘に仕舞われたまま投げ捨てられる刀、
そして息がかかりそうなほど至近に、
「……!」
艶然と笑う、女の顔があった。
笑顔なのに、それは無表情よりずっとアベルの背筋を凍らせた。
「そう驚くほどのことでは無かろう? たまたま私は人型で、そしてたまたま雄だというだけだ」
淡々と語る女の昏い眼光が恐ろしい。
余程怯えた顔をしているのか、可笑しそうに喉を震わせてじっと覗き込んでくる眼差しは弱者を前にした獣のそれだ。
「何がそんなに恐ろしい。私が幹部だからか。それとも――幹部だから、
口で何と言おうとお前ごとき新参の三下など戯れに斬り捨てるとでも?」
おそらくはそれもあるのだろうが何故だろう、
アベルが今抱いている恐怖心というのはもっと根源的で、
例えばすぐそこに爪の剥がれた腕が落ちていなくても胸から血を噴く死体が転がっていなくても
きっと彼は同様に怯えていただろうというそういう種類のもので
――否。
何故かなんて本当はわかっているのだ。深いところで。
だのにアベルはそれに気付かない――ふりをしている。
そして、
「……ああ、なんだ」
相手は知っている。
気付かれてしまった。
理解されてしまった。
おまけに――素知らぬふりをしてくれるほど優しくなどなかった。
「お前はもしかして覚えていないのかもしれないが……あの時、
実に丁寧に自分の身に何が起きたかを捲し立てていたんだ」
だから、
「お前は」
この女にだけは、
「そんなに恐ろしいのか」
絶対に会ってはいけなかったのに――。
「自分の」
「…っ………黙れ、よ」
黙らなかった。
女は嗜虐心を剥き出しにした顔でアベルにのし掛かってきた。
馬乗りになられて掴まれた顎が痛い。
「黙るものか。私は知っている。
優しい世界で安穏と生きてきた甘ったれの坊ちゃんがどうしてこちら側に付いたか知っている。
お前が何を思い、何を悼み、何を憎み、何から目を背けているか知っている。
甘いな。本当に甘い。
放っておいてもいずれお前のその歪みは撓んで捻れて跳ね返ってお前を殺す、
仮初めの憎しみに突き動かされた偽りの自分を殺す、
そうはさせない、お前はもう南の――我々の物だ、我々の駒だ。
切欠など関係無い、染まるしか無い、お前はもう子供でいることは許されない、
だから私が今すぐ大人にしてやる。この私がだ。光栄に思え」
許されない、という言葉に敏感に反応したアベルの昏い瞳を更に昏い女の眼が覗き込む。
嫌だ。
見るな。
オレを視るな。
知らない。
オレは知らない。
オレは被害者だ。
あいつらが悪い。
大人は汚い。
大人になんかならない。
あいつら口先だけで、自分が一番大事で、一番必要な時にオレを裏切って、あの子を、まだ子供だったのに、
そうだあの時オレはもう混乱して錯乱して何でもかんでもお構い無しに一方的にまくし立てて
連中は妙に優しくて気持ち悪いくらいでそれでもオレはやっと救われた気がしてだけど
あの男だけは値踏みするようなそれでいて無関心な目でオレを見ていて、
どうしてこんな場所で会ってしまったんだ会わなければ言葉を交わすことがなければこんなこと
嫌だ嫌だ嫌だやめろ思い出させるな考えさせるな気付かせるなオレは
「認めてしまえ」
「い……や、だッッ!」
突き飛ばしたかったのに驚くほど力が入らなくて、
結果相手の胸を軽く押しただけの動きは抵抗と呼ぶにはあまりにもささやかだった。
その手を引いて両耳に押し当ててもう彼女の言葉なんてひとつも聞きたくなんかなかったのに
お見通しとばかりに掴まれ地べたに縫い止められて、今度こそ――
「お前は"その"時、何をしていた?」
――世界が壊れる音が聞こえた気がした。
女の昏い瞳に映った自分の顔は、バカバカしいくらいわかりやすく絶望の色に染まっていた。
――オレは何もしてない。
何もしてないことが、あの時一番罪深かった。
わかっていた。
大人とか子供とか関係なくて、あの時あの子の手を掴めなかった自分が一番悪くて、
あの時あの子を追いかけられるほどの無鉄砲さがなかった自分が一番悪くて、
全部の責任を大人に押し付けた自分が一番悪くて、一番あの子の死を冒涜していたのは自分だ。
だけどそれを認めてしまったら二度とあの子を想えなくなってあの子の手を放さなきゃならなくなって
あの子が思い出に変わってしまってオレが憎むべきは他の誰でもなくオレ自身で
だったらオレは何に縋って生きていけばいいんだ!
他に何にもないのに。
君しかいないのに。
そのために全部捨ててきたのに!
「――…………」
あの女の声が遠い。
あいつは大人で、あの子は子供で、全然違う声なのに、
あの子に糾弾された気がした。
そうだよ。
オレはオレに嘘を吐いて、可哀想な被害者のふりをして、君にもう顔向けできない。
だからオレこそが誰より弱くて狡くてみっともなくて誰にも許してもらえない自分が一番可愛い
嘘吐きの裏切り者でそんなこと本当はちゃんとわかってるんだから放っておいて、
何でもするから、いくらでも汚れるから、それがどんなに滑稽に見えたってかまわないから、
お願い、お願いします、苛めないでください、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
嫌いだあんな奴ら大嫌いだ、オレは弱いから奴らを憎む気持ちを消せない、
間違ってるってわかってたってできない、だからそんな弱いオレからあの子をとらないで、
たったひとつだけ大切に胸にしまった綺麗な思い出まで奪わないで、
オレが持ってるなんて許されないなんてわかってるけどそれでも嘘でも欺瞞でも君だけは――
----------
「……油断していた。危うくお前ごと斬るところだったじゃないか」
「……ぁ」
意識が吹っ飛んでいた。
寒いのか暑いのかわからない。
水道管だか給水管だか、なんと呼ぶのか知らないけれど、滅茶苦茶に破裂して水が溢れ出して、
でもいやにその動きが緩慢で重いのは半分がた凍り付いているかららしい。
だから寒いはずなのだ。
でもよくわからない。
女が馬乗りになっている。
握った刀を地に突き立てて体重を支えるような格好で無表情にアベルを見下ろしている。
首のすぐ横に刃があるのに、感情の鈍磨しきった状態では恐怖も何も無い。
彼女の右腕が肘近くから手首まで服も皮膚もボロボロに裂けて、生温いものがそこから滴り落ちて
自分の肩を濡らしているから寒いはずなのに暑いような気がしてしまうのかもしれない。
――ああ。オレが暴走したのか。
全く覚えていなかった。
ただ酷く混乱した思考だけが頭の中を支配していて、
今だってもしかしたらすぐにも殺されるかもしれない状況の筈なのに全く実感が湧かない。
もうどうでもよかった。
何かを考えるのは怖かった。
今までだって怖かったけどそれでも大事な部分からは目を背けていられたのに、
それで生きていけたはずだったのに、もうそんなの無理になってしまった。
だからもう、どうでもいい。
ぼんやりと見上げるアベルの顔を凝視していた女か、不意に傷ついた方の右手を伸ばして来た。
頬にぬめった感触。
一旦離れて、今度は目尻に触れて、そのまま何かを掬う動きで頬をなぞり、
口に押し込まれた細い指は鉄臭くて、しょっぱかった。
「怒るものと思っていたが……そうか、お前はこういう時――哀しむのか」
――かなしい?
ああ、オレは泣いてたのか。
それにすら指摘されて初めて気付いた。
女は押し込んでいた指を自分の口元に持って行くと、何か珍しいものを味見するようにチラリと舐めた。
「脆いな」
無表情だった顔に好奇心じみた色が差す。
「使い物になるかは怪しいが――面白い。個人的に、気に入った」
そして。
「感謝するんだな。優しくしてやる」
全然優しくなんかない顔で、嗤った。
皮一枚分程度の近距離に突き立てられていた刀が無造作に抜き取られ、
あらぬ方向に投げ捨てられる。
一瞬アベルの首筋を滑った刃が皮膚を薄く裂いたが、痛みは無かった。
「最初に言っておく。お前の言い分は多分に自分勝手ではあるが――
全部が間違っているわけでは無い。こちら側に於いては、だが」
間近に顔を寄せられると流石に条件反射的に目を瞑ってしまう。
それがいけなかったのか、はたまた何にせよ流れはもう決まってしまっていたのか――
ぐっと顎を引いて歯を軽く食いしばった状態のまま、口を塞がれていた。
口で。
「……っんん…!?」
キスをされてるんだと気付いたところで床と相手の頭とで挟まれた体勢ではろくに首を動かすことも出来ず、
最大級の至近距離で目を合わせている(なんだってこの女は目をあけたままなんだろう
普通キスの時は目を瞑るものじゃないのだろうかと妙に冷静な思いが一瞬頭をよぎった)
恐怖と戸惑いに結局アベルは一度見開いた目をまたぎゅっと閉じてされるがままになってしまう。
口と口のキスなんてしたことがなくて、息苦しさに鼻から変な声が漏れて、
なのに相手は顔の角度を少し傾けて更に深く隙間無く唇を合わせてきて、その上
「ん……ぅ……んん」
苦しくて口を開けかけたところにぬるっとした何かが押し込まれた。
反射的に力の入る顎を手で強く押さえつけられて、
口端からみっともなく涎が垂れてしまう段になってようやく舌を入れられていることを悟って体が跳ねる。
体重を思い切り乗せる形で両腿でがっちり押さえ込まれた状態ではそんな動きは全く抵抗にはならず、
そもそもどう反応すれば逃れられるかなんてわかるはずも無く、
思う様舌を吸われ唾液を流し込まれ、
口の中を他人に舐められる初めての感覚は残念ながら不快感ばかりが先立った。
ろくすっぽ顎が動かせない状態で仰向けでいるせいで唾液がうまく飲み込めない。
苦しい。
気持ち悪い。
「んぁッ…げほっ、げほっ」
耐え難い嘔吐感に涙が浮かんだところでようやっと解放される。
こっちは何度も咳込んで喘いでと息を整えるのに必死だというのに、
女の方はといえばその間ずっと可笑しそうにアベルを見下ろしているばかりだった。
「初めてか」
笑いながら再度寄せられた唇から思い切り顔を逸らしてみたけれど、
片手で顎を掴まれただけでそんな抵抗簡単に無力化されてしまった。
「そう怯えるな。言っただろう、優しくしてやるよ……正直言って最初は
お前が後生大事にしているちっぽけな、何が何でもそれだけは美しいと信じたがっている
過去の幻想なんてメチャクチャに壊して他の何も目に入らなくなるくらい
私に溺れさせてやるつもりでいたが――止めた。お前は打たれ弱い子供のままが一番面白そうだ」
アベルには彼女の言う大人だとか子供だとかの定義がわからない。
だから反論も出来ない。
でも幻想といえば、ついさっきのたった一言で簡単に突き崩されて、
だから今こうしているんじゃないのかとは思う。
いや――違うか。崩れ落ちたのなら、幻想と言われてこんなにも胸が痛んだりはきっとしないのだ。
崩れ落ちたのは、自己嫌悪から身を守る為に張り巡らした自分自身への嘘の鎧だ。
顔が近い。
吐息が唇にかかって、黒い髪が頬にかかって、どうしてかそれが妙な、くすぐったいような
むずがゆいような感覚を背筋に走らせる。
「大人になどしてやらん。思い出は子供の世界で永遠に美しくあればいい。
逆恨みという名の憎しみを永遠に奴らに向けていればいい。そして私はそんな子供のお前に
――男と女の現実を教えてやる。縋りつくものなどひとつあれば充分だろう?」
凄絶な笑みと共に、再びの口付けが降りてきた。
唇が触れ合うだけのそれは、
舌を吸われ口内を無理矢理に蹂躙されるばかりだった最初のものよりかは気持ちいいような気がした。
きっちり五秒で離れた唇と唇の間に、それでも一瞬だけ唾液が糸を引く。
「……子供に『大人は何があっても弱者を助けてくれるもの』という根拠の無い信頼を与えるような
奴らの甘ったるい方針がお前に間違いを犯させた。他者に優しくしろ苦しい時は助け合えなどと
言いながらいざという時には自分が一番大切で、平気で弱者を切り捨てて
仕方がなかったと善良ぶる――あいつらはそういう偽善者だ。
弱くて脆くて数だけは害虫みたいに多い汚らしい人間の遣り口に迎合した下衆共だ」
女は淀みなく言いながらも妙に実際より熱っぽく感じる唇で組み敷いた少年の
口端を、喉元を、うっすらと血の滲む首筋を啄む。
肌を吸われる湿った感覚にたまらず身を捩らせるアベルだったが、そうすることで更に襟元が乱れ、
その内側、薄く浮いた鎖骨の窪みに歯を立てられて小さく悲鳴じみた呻きを漏らした。
「ふふ、そんな良い声で囀るな。抑制が効かなくなったら困るのはお前だというのに」
知らない感覚のひとつひとつに敏感に反応する未成熟な体を弄ぶことがそんなに愉しいのか、
女の顔は僅かばかり上気している。
されるがままのアベルにはその表情の意味も、これから具体的に何をされてしまうのかもわからなかった。
彼女に服の前を開かれて、肉の薄い胸を細い指でまさぐられるとまたぞろ身を震わせて、
そんな風に反応するからいけないのだということはわかるのだけど我慢が出来ない。
食いしばった歯の隙間から漏れてしまう上擦った声に、
指では彼が思わずそんな声を出してしまう場所を探りながらも
一時たりとも外されることなく顔に固定されている彼女の好奇の視線に、
激しい羞恥心を覚えて赤面する。余計に悦ばせるだけと、わかっているのに。
「ほら、顔を逸らすな。不安なら私の顔を見ていればいい」
それが一番不安感を煽るのに逆らえない。
でも目を合わせるのは嫌で、
伏せた瞼の先にきっちり締められたネクタイと、
殆どそれを挟むみたいに重そうに乗る胸の膨らみがあって、
そんな場所を見るのもどうかと思うものの
あの底の知れない昏い眼を見るよりかはずっとましに感じたし、
目を全部閉じてしまうのも怖かったからアベルは実に中途半端に目を伏せて、
自分が今何をされていて何を見ているのか、
このまま体を撫でられ続けて最終的にどうなってしまうのか、
どうしてこの女がこんなことをするのかを考えの外に追いやるようにしていた。
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女は変わらぬ調子で時折アベルに話しかけ、様子を窺い、笑みを浮かべて見せるが、
基本的には何か難しいことを言いながら彼の体を手と唇で撫で続けている。
内容を理解しなければと思っても新しくどこか触れられる度に変な感覚が走って、
彼女の話なんか右から入って脳を経由しないまま左から抜けていく有り様で、
でも多分それでも確実に、それは彼の内に刷り込まれていったのだろうと
かなり後になって思うことになるのだが、
今は全然そんなことなどわからず、辛うじて意味が通じたのは――
「……人間は自分達と違っているというただそれだけで何でも差別する。
優劣を数で決める。本質を無視して自己保存に終始する。
群れなければ何も出来ないから突出した、自分達より優秀なものも認めない。
排除しようとする。弱くて脆くてそのくせ汚くて、北の連中は本当に愚かだ、
理不尽に蔑まれ忌み嫌われ記憶の彼方に追いやられておきながらあんな数だけの劣った生物と
共存したいだと? 冗談じゃない」
――反復される人間への(もしかしたら私怨混じりの)呪詛くらいだ。
女の言う、アベルの歪みというのはつまり憎しみの矛先の問題なのだろう。
アベルは別に人間というものに対してはとりたてて特別な感情は持っていない。
彼が憎いのはあくまで北区の大人で、だから敵対している南側に付いてやるというだけの動機しかなくて、
思想的にもう南区のそれを代表する幹部である彼女とは違っているのだ。
北を憎むことと人間を憎むこととはきっと、完全にイコールでは繋がらない。
でも人間が憎いなら北の思想も憎くて当然で、
だから北の思想に反発するなら自然と人間全体を悪く思うようになるのだろう。
北区の思想は人間の思想なのだから。
いつの間にかそう考えているこの時点でアベルは彼女の思惑に嵌ってしまっている。
自覚するのは、やはりずっとずっと後の事だ。
「あ……!」
脇腹をくすぐるように這い回っていた手がズボンにまで滑り込んできた。
ぼうっとしかけていた思考がはっきりする。
「…っや、め、何しっ……うわっ」
足をばたつかせても侵入は止まらない。
腰骨をなぞられ、パンツにまで手を突っ込まれてアベルは心底慌てた。
「いや、だっ、なんでそんなとこ、まで、あっ、うぁ、あ」
「やはり幼いな、直接触らないことにはどうもならんか……なんだ、何をそんなに慌てている。
パンツの中に漏らしでもしていたみたいな顔をして」
物凄く恥ずかしい場所を手で無造作に握られてしまうという辱めにろくすっぽ口も利けずに赤面して
口をぱくぱくさせるアベルを不思議そうに見下ろす女だったが、
やがて得心がいった顔で口元を弛ませた。
「ああ……そうか、そうだな、お前くらいの年頃でははっきり説明しなければわからないか。
ふふふ……言っただろう、男と女の現実を教えてやるんだ。実地で」
「じっ……? え?」
「わからないか? もっと直接的な言い方をしてやっても良いが――いや、やめておこう。
自分で気付いた時の反応が楽しみだからな」
既に面白くてたまらないという声音でそう言って、女はネクタイを解く。
続いてきちんと着込んでいたスーツのボタンをひとつだけ、
その下のシャツのボタンはみっつほど外してやや乱暴に胸を寛げる。
零れ落ちそうなほど張り出した乳房の重みで残りのボタンも今にも弾け飛びそうな
痛々しい有り様を見せているが、それ以上は外さずただズボンのホックだけは外した。
改めて、互いの胸を押し付け合うようにひたりと覆い被さってくる。
汗ばんだ皮膚と皮膚とが直接触れ合うしっとりと生温い感触と、他人の肌の匂い。
男には無い柔らかさの塊の、ふたつの重み。
それに色香を感じるほど、アベルは男として成熟していない。
ただ人肌の温もりに場違いな安心感を僅か覚えるだけの、まだ子供だ。
「固くなるな、さっきまでうまく脱力していたじゃないか」
そうは言っても一度正気に返ってしまうと茫洋としたあの感覚を取り戻すのは難しい。
冷静になるとこの状況はやっぱり怖いし、自分が何をされているのか全くわからないのは気持ち悪い。
「仕様のない奴だな、そら」
「んっ」
口と口がまた重なって、湿った音を大きく響かせて離れた。
「私の言うとおりにしておけば楽になる」
まるで脅してでもいるような発言だったがとにかく頷く。
仕切り直しとばかりにガチガチに力の入った体をもう一度撫で回され、唇を啄まれる。
アベルは気付いていないが、女は実に上手く彼が最前良い反応を示した場所ばかりを責めた。
短く切り揃えられた形の良い爪と、細くしなやかな指と、熱く濡れた舌と、
彼女が貼り付いたまま身を動かすたび形を変えて纏わりつく重たい乳房が、
それをそういう名称で呼ぶのだとも知らない少年の性感帯を確実に開発していく。
幼い脳が再び思考停止するのに、それ程の時間はかからなかった。
「……そう、歯を食いしばるな、顎の力を抜いて…声が出そうになっても我慢しようとするな、
んっ……なんだ唾が上手く飲めないのか……よし、これでいいだろう」
半ば水に浸かっている状態で仰向けにされていた体を起こされる重い感覚で、
初めてアベルは自分がいつの間にかまたぼんやりした、何も考えられない状態に陥っていたのだと気付いた。
座らされて、また口付けられて、
はだけきっていた上着が滑り、弛緩した両腕に絡み付きながらも大半抜け落ちて水に浸かる。
キスなんて、好きな女の子とするものだと思っていたはずなのに。
もう何も感じない。
「あ……」
ズボンに手を突っ込まれても、もうなんだかそれほどの違和を覚えなくなっている。
とはいえ心理的な抵抗感はやはり強く、あまり焦点の合わない目で女の手の動きを追い、
力無く伸ばした両手で手首を掴んで嫌々する形に首を振った。
「いいから大人しくしていろ……ん」
下着の中を探られながらの口付け。
「ん……ぅん……そ、れ、嫌だ、なんかぁ……んんっ…」
艶めかしいい舌が歯列を割って入ってくれば言葉を紡ごうとする努力なんて無駄に終わる。
先程から薄く傷を付けられた舌先ばかりを舐められていて、
それが傷口を舐めるというよりむしろこじ開けようとしているんじゃないかと不安になる程
執拗な舌技だというのになんだかぞくぞくと悪寒じみた気持ち良さを感じてしまうのだ。
あまり奥まで舌を絡めてこられると息苦しくて辛いけれど、お見通しなのだろう、
アベルが苦しくない程度に挿し入れられ、唾液を混ぜ合わるように動かされる舌に
最初の不快感が嘘のように溺れていた。
「…ふふ、勃起した。ここが、偶然に何かに擦れて好かった経験くらいはもうあるんじゃないか?」
握られて、擦られて、ひどく恥ずかしいことを指摘されて、
それが質問だったとしてもそんな恥ずかしいことを他人に言えるわけが無い。
ありがたいことに間髪入れず唇を塞がれたので、質問では無かったようだけれど。
「んぁ…あっ、嫌だ、なんか、変だ、やだ、それ、嫌だ……ぁ……っんん……っ!」
「変じゃない、男なら普通のことだ」
そこをこんな風に擦られると腰が抜けそうなほど気持ち良くなるなんてアベルは知らない。
逃げたいのに一番力を込めるべき体幹が全く役立たずな有様なせいでどうにもならない。
「う、そ、だあ、そんな、だって、こんなの絶対、おかしっ……んっ」
「嘘ならどうしてお前のこれはこんなに気持ち良さそうなんだ?」
嫌だ嫌だとにわかに暴れ出したアベルの上半身を女は楽しそうな、残酷な笑みできつく引き寄せる。
口を口で塞ぎ、舌を舌で蹂躙する。
片手は彼の未熟な性器を弄ったまま。
「ん……ん…………!」
逃げ場など無く、反論は舌で封じられ。
嫌だ。
気持ち悪い。
こんな汚い恥ずかしい場所に触られて気持ち良く感じることが気持ち悪い。
気持ち悪いのに、怖いのに、恥ずかしいのに、なんで、
「あっ、ん、うぅ……ッッ!!」
なんで、こんなに、下半身が溶けるみたい、に、
「んっ…なかなか元気じゃないか、射精していたら私の胸までくらいは飛び散っていたかもしれないな」
気持ち良すぎて、
彼女に握り締められたそれ以上に腰がガクガク痙攣して、
頭が痛い、
歯の根が合わない、
知らない、
こんな感覚、
壊れる、
怖い、
怖い、
きもちいい、
怖い、
嫌だ、
怖い、
怖い、
怖い、
オレが壊れる、
忘れる、
忘れて――
「……ぅ」
――何を、忘れる?
「ぁ――……」
――君のことだけは忘れられるわけないのに。
冷水を被ったような気分。
罪深さに涙が零れた。
こんなことであの子を忘れられるなんて思ったことが、
こんなことになってもあの子を忘れられないことが、どちらも果てしなく罪深かった。
それは、だって、自分の汚さをあの子の存在を利用して正当化しているということだ。
そうだ、どうして頭から追いやっていたんだ。
思い知らされてしまったからもう、逃れられないんだと理解したはずだったのに。
オレは一生あの子を忘れられない、
あの子を忘れようとする、あの子に自分の汚さを押し付ける最低な自分から、逃げられない。
それをオレに思い知らせたこの女から、逃げられないんだと。
たぶん、この瞬間にこそいよいよ本当に、アベルは折れた。
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「お前は本当に子供だな」
女が笑う。頬を伝った涙を唇でなぞる。
何も言っていないのに、まるで頭の中が見えているように的確に思考を読み取っている。
「……お前よりもっと、奴らの方が自分に甘いのに」
そうなのだろうか。
自分でさえこんなにも汚いのに、もっと汚いんだろうか。
「現実の汚さを教えてやる。
奴らが子供の為だと言い張って隠し立てする世界の真実を我々は隠さない」
何も考えられない。
「知らずに直面するのは、辛かっただろう?」
辛かった。だからここにいる。
「だが良かったじゃないか。お前の可愛いその娘はもういない。
死んだからお前の中で永遠に美しい。死んだから永遠に穢れない」
――え?
「男と女というのは、こんなにも汚い」
――この女は今、何と言った?
確かに聞き捨てならないことを言ったのだ、言った筈なのに、何と言ったか思い出せない、
頭が拒否している、思い出せ、思い出せ、甘い言葉の最後にこの女はあの子を――!
「んっ…!?」
唇を塞がれるのは思考を阻害されるということで、視界を塞がれるということでもある。
「――……ッ」
じいっという、何かの擦れる音。
口付けられたまま、右手をとられ、どうやら服の上から彼女の体のどこか――
ボタンの硬い感触があったのと、距離からして多分腹のあたりに押し当てられ、
軽く滑らされて今度は着崩れて露出した肌に触れて、
更にそのまま素肌を滑り降りる手先に引っ掛かりを感じて、
でもそのまま、布と肌との間に手を突っ込まされているらしい、
更に下へ下へ、これは、
「――ひゃ…っあ!?」
「んっ……ふふふ、驚いたか?」
薄く汗の湿りが籠もった茂みに分け入る感触に続いて、
ぬるりとした、明らかに皮膚とは異質な熱い何かに指が触れた。
びくりと痙攣した指先と、触れたそれとの間に粘っこい糸が引かれた感覚。
思わず仰け反って見開いた目の先には当たり前ながら女の顔のアップがあり、
自分が何に触らされたのかは見下ろそうにも押し付けられている胸が邪魔で見えない。
「ぁ……」
僅かな浮遊感。ばちゃ、と音を立てて、またしても仰向けに押し倒されていた。
「これが女だ」
ああ、これはさっきと逆なんだ。
今度はこの女のパンツにオレが手を突っ込まされてるんだ。
軽く膝を立て、これ見よがしに腰を浮かせて僅かに突き出した姿勢で女は更に強引に、
下着に差し入れさせた小さな手指をその内側、嗜虐の愉しみで薄くぬかるんだ場所に押し当てる。
「男と逆だ。ここを柔らかく濡らして、それで――どうするか、知っているか?」
知らないし、わからない。
いや、察しは付いているけれど、それが意識の表層に上ってこない。
気付くことが怖くて、逃げている。
「強情だな…そら」
「ひ……っ」
強く押された途端、中指が不自然に深くぬめりの中に埋もれた。
指先全体がぬるぬると湿った熱に包まれて、なんだか気持ち悪いのに、気持ち悪いはずなのに、
そこがどうなっているのかもっと知りたいという妙な好奇心に駆られる。
怪奇現象の、正体を確認するまで怖くて気が済まない感覚と似ている。
「根元まで突っ込んで掻き混ぜるんだ……そう、ふふ……もう一人でできるな?
人差し指も使って、んッ……良い子だ、ふふ、ふふふ……」
わけがわからないまま、言われたとおりに手を動かす。
最初ただなんだかぬるぬるしているとしか感じなかったそこが、実際は少しざらついていて、
ほんの少しだけ、そう、濡れているのとか、ちょっと吸い付いてくるのとか、
舌…いや、口の中の感触に似ていることに気付く。
「私も触ってやろう」
またしてもパンツに手を突っ込まれた。
自分も今や同じ事をしているとはいえ抵抗感は変わらない。
さっき何かおかしなことになってしまったからむしろそれは増しているくらいだ。
「んん…ッ、そこ、は、いやだ……ってぇ……!」
「本当に強情だな。これは怖い事でも何でも無い」
「ち、が…っそんな、汚いとこ、なのに」
今度は見えないまま手を突っ込まれて弄られていた前回とは違った。
ズボンと一緒くたにパンツがずり下ろされて、
ウエストゴムにそれが乗っている様だとか、他人の手がそれを摘まんで撫でさすっている様だとか、
そうされることでそれがどうしてか硬くいきり立ってしまう様だとか、
全部見えてしまうせいで何倍も、もう死んでしまいたいほどに恥ずかしい。
「いいんだよ。弱くて汚くて恥ずかしい場所を晒し合って擦り付け合って、
そんな汚い行為に快感を覚えるのが男と女だ。
そんな事をしなければ子孫も残せないのが生物なんだ」
しそん?
「さあ、お前のこれはこんなに硬くなっている。そして私のここはこんなに柔らかくなっている。
お互いの一番弱くて汚くて恥ずかしい場所をこうして晒し合った。
では次はどうするか。今までの説明から――答えは導き出せるんじゃないか?」
そんな、こんなわけがわからなくなっている頭でそんな難しいこと、わかるわけが、
「私の今し方の台詞を思い出せ、もう答えは私の方から説明しているんだ」
男と女は、弱くて汚くて恥ずかしい場所を、晒し合って
「こすり、つけ、え? え……!?」
――擦り付け合う? これと、あれを?
「っふふ……やっと辿り着いたな」
今自分の指が入っている場所は――なるほど、口に似ているわけだ。
脱力した右手を再びとられ、少し力を込められると下着ごと手が引き下ろされて、
熱いぬるつきから抜けた指はすっかりふやけていた。
角度の都合で肝心な場所こそ視覚的には把握できないものの、そこがどうなっているかは触覚で確かめた。
女だけが持っているもうひとつの口。
性に目覚める前の少年には、熱く煮え立つ底無しの沼のような恐ろしさを感じさせた。
「最初に鼻っ柱をへし折って犯してやれば男なんて子供だろうと大概私に与するものなんだがな。
お前は随分頑張った。誉めてやる、この私をこんなに手こずらせたんだ――
お前の縋り付きたがっているものは、それだけの価値がある」
「な、にを」
「さあ――これが現実だ。
お前が美しいままに心のよすがとした思い出という名の幻想との落差に、絶望しろ」
あと少しでも猶予があれば、アベルは無駄でもまたしても全力で抵抗を試みていたことだろう。
自分が何をされるのか分かりはしたが解るには至らない僅かの隙を突いて、
女は器用に互いの着衣をずらしてぐっと体重を乗せてきた。
事が成し遂げられるまでなんて、ものの数秒だ。
「ひッ、あ、ああぁッッ!?」
アベルの喉が仰け反る。
狂いそうなほど大量の情報が、下半身から、脳に、
「呆気ないだろう。たったこれだけだ。たったこれだけで、私とお前はこんなに深く繋がってしまったぞ」
いやだ、おれの、からだ、こんな――。
「抜い、て、それ、こん、な、あッ、嫌だ、動く、の、変、うわ…あッ……――〜〜ッッ!!」
情報が多すぎて、処理仕切れない。
繋がったところが激しく痙攣して、勝手に女の体を掻き混ぜているのに、恐怖だけが頭を満たしている。
「んぁ……ッ、ふふふ、挿れただけでイッたか。中でこんなに暴れて……。
ほら落ち着け、お前の体はな、物凄く気持ち良くなっているんだ」
「嘘、うそだ、きもちよくなんか、こんな、こわい、こわい、こわい…」
下半身を食べられた。それのどこが気持ちいいと言うのか。
「落ち着けと言っているだろうが」
「んんッ!」
両手で顔を掴まれて口付けられ、舌を舐られる。上と下、両方で喰われる。
「ん……はぁ、ほら、深呼吸しろ」
「は……ッ、むり……はぁ、はぁ……」
胸をさすられてもうまく呼吸が出来ない。
頑張って深く吐き出そうとするのに、それより先に吸い込んでしまう。
混乱でアベルは過呼吸を起こしかけており、それがまた更なる混乱をもたらす悪循環に陥っていた。
「まったく、ここまで来ても世話の焼ける」
唇を吸われるたび、舌をなぶられるたび、繋がった場所が擦れておかしな、
何かぐちゃぐちゃとした気持ち悪い音が響いて、同時にぞわぞわと背中が粟立つ感覚が登ってくる。
苦しいのに口を塞がれているから息が吸えない。
「……一度に全部受け入れようとするな、今は私の舌だけ感じるんだ」
「ん……」
壊れかけていたアベルはその指示に全力で縋った。
目を閉じ、口の中の感覚だけに集中しようとする。絡み付いてくる舌に自分から、懸命に舌を伸ばす。
「んっ……んぅ…ッ、ぁ……」
息を継ぐにも必死なアベルとは対照的に、涼しい顔で女は彼の感じる場所を舐め、
不器用に差し出した舌を絡め取る。
相変わらず、口付けの最中だろうと目は閉じない。
固く伏せられた色素の薄い睫が、だんだんと舌の動きに合わせるように震え、綻んでいくのを
じっと観察していた。
「……最初は気持ち悪かったのに、今はだいぶ好いだろう?」
「……んぁ? え、と…」
唇が離れた拍子に糸を引いて垂れ落ちた唾液を伸ばした舌先で受け、飲み込んで
アベルは霞みがかった目を薄く開いた。
「っふふ…! なかなか上手くなったじゃないか、と言っているんだ――さあもう落ち着いたな」
未発達の男根は少し動いただけで抜けてしまいそうになる。
ほんの僅か呻くような声を出して女は自然と逃げかける獲物を膣で強く締め上げて捕らえ、
強引に再度根元まで挿入した。
「あッ……くぅぅ……!」
喉を震わせて涙声を絞り出すアベルだったが先程のような恐慌状態に陥ることは無く、
ただ目をぎゅっと瞑って強すぎる刺激に耐える。
抜けないように恥骨を密着させたままで女がそっと腰を揺する。
「ほら、ゆっくりしてやるからもう大丈夫だろう?」
底無しの熱い熱い、煮えたような沼に、ずるずると引っ張り込まれていく。
さっきまであんなに気持ち悪かったのに、何度もキスしているうちに、なんだか、なんだか、
「〜ッ……ぁあ、おれ、おれの、うぅ……」
このぬるぬるが、底無しに軟らかいものがどうしてかきつくきつく纏わり付いてくる感触が、
ひどく甘くて、でも、
「どうした? 言いたいことがあるなら聞いてやるぞ?」
「ああぁ……お、おれ、の……おれの」
「俺の、何だ」
「お、お…れの、その……っ、ぁ……ちんちん、とけて、ない…?」
…でもその融けて混じり合っているような甘美な感覚は同時にとても恐ろしくて、
恥ずかしくて言えなかったことをアベルはとうとう口にしてしまった。
「ッ……く、ふふふ……ふふ、なんだお前、そんな心配をしていたのか! ふふ、ふふふふふ」
「だっ、て、あッ、ああ、んんん!」
女が腹を抱えて笑う。
腹筋の痙攣に合わせてアベルを咥え込んだ場所も収縮して、不規則な締め付けを与える。
「……っはは、ほら体を起こしてみろ……さあ、喰われている所がよく見えるだろう」
腕を引かれて上体を起こされると相手の胸が頭に乗るみたいになって、
でも無理矢理後頭部を押されて目線を下にやられると、
「はあ、はあ…ぅぁ……」
ずり下ろされたズボンからのびる白い腿とその先、
半ばシャツに隠れつつも確かに自分の体が咥え込まれている現場がよく見えた。
「こんな、根元まで深く繋がっても――
そら、……この皮一枚…二枚分の、こんな頼りない薄さで、一つになんか融け合えない」
女の腰が薄く持ち上げられ、粘つく感触と共に繋がりが離れかけて
「ん、あああぁッ!!」
生々しい音を立てて深く咥え直される。
「こんなに擦り付けても、せいぜい血が流れる程度、で――」
下半身は既に腿で挟まれ、体重をかけられてぎっちり固められている。
加えて上半身まで両腕で抱き寄せられて、ついでに頭も重たい乳房で動きを封じられて、
せめて身を捩って耐えたいのにそれすら出来ず、
アベルはいいようにそれとまだ理解しきれていない快楽を擦り込まれるしか無かった。
「う、んっ、はぁ、う、うぅっ、――〜〜ッッ!!」
「――都合良く融け合うことなんて無い、さ……ッ、ああ、またこんなに暴れて…っ、
ふふふ、いいな、いいよお前、まだ来ていないんだものな、快感に終わりが無いだろう?
こうするだけでまた」
ずるずると蠢く快楽の毒沼に捕らえられて、逃げられない。
沸騰しそうな頭を必死で左右に振って耐える。女が器用に腰を揺すり、刺激を与えてくる度に、
体の中心から大切なものが根こそぎ持っていかれそうな圧倒的な、これは、
「お前の体が大人になるのが楽しみだよ、ふふふ、ふふ……、っああ、また……」
これ、が、
「はぁ、はぁ、だめ、おれ、おかしい、おかし、ひあッ、ああぁ…」
――狂いそうなほどの、快感。
「ほらまだ頑張れよ、男だろう?」
気を失いかけるアベルを繋がったまま押し倒して女が笑う。嗤いながら腰を揺する。
衝撃で意識を手放し損ねたアベルの虚ろな瞳に、
濡れてますます白く色の抜けた、知らない誰かの腕が映る。
「は……っ」
ああ――
「あ、うぁ……ああ、」
――死体なんかより、今の自分達の方がよっぽどおぞましい。
「あ……ッ!!」
深く昏く汚らわしい、快楽という名の地獄の門に触れてしまった。
「〜〜――……ッッ!」
救いなんか本当にもう、胸に今も浮かぶあの子の笑顔だけだ。
あとは引きずり込まれる未来しか、残されていない。
----------
「――黒兎ちゃんにしては回りくどいことするのね」
「貴様らが甘やかしていたから私が躾けてやったんだ。悪趣味は相変わらずだな、銀針」
結局失神してしまった少年の着衣を(乱暴に)正してやりながら、
黒兎は視界の届かない暗がりに声をやる。
「ウフフ、黒兎ちゃん遅いんだもの、後片付けが大変になるようなスゴいことしてるのかしらって」
「それに関してはハズレだった。やはり女はつまらん」
話題の死骸にも一瞥もくれずただ黙々と、
脱力した少年の体を器用に動かして服を着せる黒兎のつれない態度にもめげずに
声の主は勝手に話を続ける。
「でも結果としてやっぱり後片付けが大変な有り様だわ、今夜はお風呂使えなさそうよぉ」
「几帳面な貴様のことだ、もう修理の目処までつけているのだろう? 一晩くらい我慢しろ」
「冷たいわぁ黒兎ちゃん、自分だけ楽しんでおいてこんなお婆ちゃまに我慢を強いるだなんて。
私も若作りしようかしらっ」
「今からでは遅いな」
性根がもうババァじゃないか、と皮肉めいた声音で黒兎は言い捨てた。
涙やら何やらでぐちゃぐちゃの少年の顔をサービスで拭いてやる。
「もうっ…まあいいわ。難婆ちゃんが今作ってるお薬の実験台に若い男の子が欲しくて、
アベルちゃんどうかしらって思ってたんだけど――黒兎ちゃんのお気に入りなら他を当たった方が良さそうね」
「アベル…? ああそうか、阿倍翔といったか。別に特別気に入っている訳でもないさ。
だが……まあ、勧められないな。意外に自我が強いし、
この歳でそれなりに能力を使いこなせるガキは使い潰すには勿体ないだろう」
「そうねぇ、御しやすそうに見えたけど、あの黒兎ちゃんを手こずらせたくらいだものね」
「……」
「やあだ、怖い顔しないでよぉ。
ウフフ、どうせお薬がモノになるのなんてまだ先ですもの、もっといい逸材が転がり込んでくるわきっと。
そもそも私が斡旋しなくたって、難婆が自分で拾ってくるかも♪」
「あの変態のことだ、どうせ肉体改造か能力開発の下品な代物だろう。
どうしても必要ならその辺の人間のガキでも攫ってあてがえば良い」
「まっ、酷いこと考えるのね」
「酷いだなんてちっとも思っていやしないくせに」
「フフフ……」
昏い笑いを残して声の主は気配を消した。
黒兎は未だ意識を取り戻す気配の無い少年の濡れた髪を梳き、膝に抱きかかえる。
「命拾いしたな」
ん、と小さく呻いて抱きつくように身を寄せてくる動きをあえて邪魔せず、ただ耳元に囁く。
「私がいなければ危なかったんだ……せいぜい今後も私を楽しませることだな、純情少年」
幼く、柔らかな耳朶を甘く噛む。
唇が、嗤う形に歪んでいた。
長々失礼しました。
最終回にめげずに黒兎様のビッチ…じゃなかったエッチな話を書いてくれる職人さんが
現れますように、
単行本で気に入った人がヒノサユとか落としに来てくれますように…!
>174
超GJ
黒兎様エロいな!!
まだ落としてくれる神がいたとは…
この想像力はすごい。GJです
黒兎惜しいなー人気出ただろうに
こんなにエロいのに
心の底から踏んでほしいと思わせてくれたキャラは自分史上黒兎様が初めてさ
サユのおっぱい揉みたい保守
サユの太ももひっつかみたい保守
没ネームのサユがエロすぎると思ったから保守
182 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 02:18:54 ID:vmFv2HCY
あげてみる
あったのか!
184 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 15:03:16 ID:V2EqdWsJ
あげ
ムヒョロジスレは落ちたけど、ここは残ったのか
千と千尋の神隠しに似てる
そう?
188 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 11:39:15 ID:HoWZNMvU
残ってる!
サユなんであんなナイスバディなんだ
ありゃ作者はド変態だな
勃起さん