23
時を同じく、『世界が一つになる』。ウィザードが発動した隔離空間は、ペールフォリンクスの死期を悟る様に消えて行った。
「ウィザードの魔力も、魔量回復アイテムも尽きたか。良いタイミングで倒せた」
自然に戻った中央広場は、外界の霧を許し始める。
霧が、侵し始める。
「なにっ!?」
この霧量は半端では無い。明らかに土地発生と違う。明らかに朱い霧。
つまり……ペールフォリンクスは、
「ゲギャアァァァァァッッ!!」
生きている!
「しまった!!」
半端な残力雷気では火力不足だったか。
グラグラと足場が揺れ、
ペールフォリンクスが、重歩で動き出す。
「ここで逃げられてはッ!!」
更に外へ。
これ以上はいかん。レヴァルを引き抜いて、もう一度切るしか……
「みつきぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」
「んっ!?」
コダマする呼び声。左下方から近付いて来る。この声は、
「シリュー!?」
シリューはペールフォリンクスの射程近くまで駆け寄って急停止をすると、
「いくよ、受け取って!!」
青い光の魔力石……五つ目のレオストーンを、俺の身体を的に投げ放った。
レオストーンが吸い込まれる様に左掌に収まる。石から漏れる淡青光は、既にシリューの魔力が込められている事を示す。
これが、ラストテイク!
右手でナイフを抜き去り、
その傷口に、手首まで左手を捻込んだ。
さぁ、終焉真言!
「勁ッ!!」
光が溢れ、音が溢れ、雷気が溢れ、
――ドゴオォォォォォォォォォン!!!
爆発する。叫びにもならない、擬水鳥の無声断末。
80 :
※厨二文注意:2009/01/09(金) 15:56:19 ID:mqO21eZr
24
焦げた音と煙も溢れ、朱い霧は、完全消失。
「はぁっ、はぁっ、はぁぁぁっ」
朱い霧を創り、この都を恐怖抱擁していた巨大魚鳥は、擬水鳥ペールフォリンクスは、今、この瞬間に……討伐された。
「大丈夫みつきぃー?」
ペールフォリンクスの足横まで来ていたシリューは、高い背に乗った俺を珍しそうに見上げている。
「ああ、大丈夫だ」
俺は直立死の背から左手を抜き、シリューに向けて小さく手を振って、簡潔な無事表現を返した。
「待っててミツキ、そこから降ろしてあげるから」
……??? 何を言ってるんだシリューは? こんな高さ、どうでも無いと言うのは解っている筈だが。まさか……高揚しているのか?
「しりゅゅゅゅゅゅゅっ……」
自らの名をなぞりながら、シリューは右腕を弓でも引くかの如く、ぐぐっと振りかぶって、
「なっこぉッ!!」
――ごちん。
ペールフォリンクスの足を殴りつけた。
そのコミカルな音と共に足場が揺れ、最初に魚鳥の身体が倒れ、
「ぎゃっ!」
俺の身体からもコミカルな音が沸き出る。
アスファルトの地面をベッドにしながら思う。
シリューよ、これは『おろす』じゃなくて『おとす』だ。
そして、痛みが無くなる。スペルナイトから二発目のリカバリーが掛かった。
何だかなぁ。洒落にしか思えん。
シリューはシリューで、
「この右ストレートはチャンプの証!!」
右腕を掲げて、『行き場の無いやる気』を叫んでいた。
何時まで高揚してる気だコイツは?
「はぁ……」
本当に、勘弁してくれ。
81 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 16:00:29 ID:mqO21eZr
25
エピローグ
――ズリズリズリ。
アイゼルヴィントを、「私が持つよ」と言い出したシリュ―に持たせて帰路の道を歩く。
「大丈夫かシリュ―?」
後ろを歩くシリュ―のスピードが明らかに遅くなって来たので、「俺が持つか?」との意味も兼ねて声を掛けるが、
「ふっ、この程度で根をあげる私では無いわ。シリュ―は強い子になります!」
汗を流しながらもビシッと親指を突き立てて見せた。
「ならば良いさ」
歩速を緩めて再び歩く。
頭が弱い子にならなければ、それで良い。
「そう言えばミツキ、モンスターはあのままで良かったの?」
「ああ、俺達は報奨金を全額得るんだ。それ以外は譲ってやらんとな」
三人組が分配を辞退して来たので、ペールフォリンクスから武具の素材になる部位を剥いだりもせず、『ソウルゲイザー』による魂集もせずに、残らず譲り与えた。俺には理解出来んが、奴らにとっては、金よりも順位が大切と言う事か。
「えーっ、だって役に立たなかったんでしょう? 譲る事ないよー」
「そう言うな。役に立ったさ」
ペールフォリンクス戦、ウィザードが結界を張る。ガンナーがウィザードの魔力常時回復。スペルナイトがその二人の護衛と、俺への随時リカバリー。
実際に戦ったのは俺だが、三人組もそれなりに役割を果たしてくれた。
「私よりも?」
「ああ……」
「かっ、ちーん!!」
シリュ―は自分の口で効果音を出すと、それになぞって頬を膨らませ、
「シリュ―はあったまにきました。解決するには、べりーすいーとなフルーツを差し出すしかありません!」
舌を満たせと要求する。
べりーすいーと? いかんいかん。シリュ―の舌は貧乏舌で良い。肥えられたら食費が嵩む。
「報奨金をギルドで受け取るまで金は無い。後五日は干し肉とパンだ」
フルーツ程度なら途中の街で買ってやっても良いが、ここは食費を切り詰め、貧乏に慣れさせた方が得策。
「うるせー! 野菜食わせろー! 草食わせろー!!」
――ズリズリズリズリズリズリ。
シリュ―はテンパった不満を叫びながら、超加速で距離を詰めて来るが、
「ぜーは、ぜー……ぎっ、ぎぶ」
5秒でピタリと止まっていた。
「体力無さ過ぎだな」
貧血を起こしそうな程、顔が青くなっている。
「そう言えるのも今の内よミツキ。ふふふ……必ずミツキより強くなって見せるわ」
その台詞が、明日まで続く事を祈ろう。
26
─── 一時間後 ───
「やっぱり重いよー」
避難の声を無視する。
一日も持たなかったな。
「おーもーいーよー!!」
俺は坂の最頂で腰掛け、未だに登り切らない人物を、昼食の準備をしながら待っていた。
「早く登って来い! 飯を全部食うぞ!」
余りに遅いので、一番効果の催促を掛ける。
「えーっ! 待ってよー!!」
――ズリズリズリズリ。
おお、早くなった早くなった。
「もう、これ邪魔!!」
不快を発する声がし、引きずっていた荷物と、それを結んでいた腕が解かれる。
――ズリ、ドスンッ!!
「軽い、かるぅい♪」
支えの無くなった物は、重力に逆らえず、
――ズザアァァァァァァァッッ!!
坂道を下って行く。
……!!?
「ああああぁぁぁっッ!!」
坂道を下って行く。
次に下ったのは、追い駆ける俺自身。
まったく、勘弁してくれ。
『Little Flower』
〜朱い霧のシーティアーズ編〜
完
ラストは、厨二らしく設定。
『Little Flower』
ここまでの話しで、名前の出て来たキーワード。
街名
『帝都ヴァルキュリア』
北方に位置し、最大級の財力と兵力を持つ巨大な帝都。唯一、女性が治めている帝都としても有名。
『最南の町ホワイトエール』
最南に位置する町で、日々温暖な気候が続く町。フルーツ栽培や、練金術の研究が盛ん。
『水の都シーティアーズ』
中心より西に位置し、都中を流れる無数の滝により、観光都市として有名。常に水の加護を受けている。詳しくは本編参照。
人物
『ミツキ=エクスリッター』Age23
ある人物を探して、ギルドで生活費を稼ぎながら旅を続ける。口癖は「さて」「まったく」「勘弁してくれ」。詳しくは本編参照。
『シリュー=アイゼンロード』Age11
以前起きた事件以降、ミツキと行動を共にする。属性ツインテール。天敵はグドン。詳しくは本編参照。
武具
攻撃性能と防御性能を、それぞれA〜Gの七段階で評価。
『アイゼルヴィント』
攻撃性能? 防御性能?
未だ使われない両手用大剣。ミツキが愛用するも、振るう機会は少ない。シリューのトレーニング器具としても使われる。詳しくは本編参照。
『曲剣(きょくけん)レヴァル』
攻撃性能F 防御性能E
小振りな変曲片手剣。その軽さから、力の無い者が持つ事が多い。詳しくは本編参照。
『シリューナックル』
攻撃性能━━ 防御性能━━
シリューが放つ拳技。その時の気分で、ジャブ、フック、ボディブロー、ストレート、アッパーカットに派生する。威力は皆無。平民をケーオーするのが関の山。
『ハンティングナイフ』
攻撃性能F〜G 防御性能━━
投擲用の小型ナイフ。剣として使用すると、攻撃性能は一ランク下がる。ミツキも七本所持。詳しくは本編参照。
『避剣(ひけん)ディスタンスラヴァー』
攻撃性能E 防御性能E
極めて長い刀身を持つ片手剣。牽制や距離を取る場合に最適。詳しくは本編参照。
魔術道具
『ソウルゲイザー』
死亡したモンスターから魂を抜き取るアイテム。ギルドからの配給品で、クラスに着いている者なら誰でも所持している。
抜き取った魂の合計数でランキングが決まる。容姿は銀の球体。大きさは手に収まる程度。
『レオストーン』
雷付属の魔力が多量に混じっているマジックストーン。値段は高いが、その価値も高い。詳しくは本編参照。
魔法
『イミテーション』
無属性魔法。自身の筋力を強制的に、強化、膨張させる魔法。詳しくは本編参照。
『フェアリーライト』
光属性魔法。暗い森中等で、外灯代わりに使われる魔法。詳しくは本編参照。
『リカバリー』
無属性魔法。傷を治す魔法で、術者の魔力高低に比例して効果が変わる。リカバリーの場合は回復する程度。擦り傷しか直せない者から、離れた腕を接合出来る者まで居る。なお、病気の治療は含まれない。
クラス
『ウィザード』
攻撃魔法を主とするクラスで、自己の修練により魔法を習得使用する者。魔力は高いが、筋力が低いのがクラス特徴。
『ガンナー』
遠距離戦を生命線とするクラス。銃弾の種類により攻撃魔法と近い効果を発揮する物も在るが、銃弾は固定ダメージなので、十分な予備弾装と、それを揃える十分な資金が必要になる。
体力と魔力のどちらも低いが、視覚、聴覚、嗅覚と言った五感能力に優れるのがクラス特徴。
『クレリック』
補助魔法使いの最高峰。ウィザードとは違い、幻神や精霊、元素(マナ)を崇拝する事により、魔法を使用するクラス。
筋力はそれほど高く無く、基礎魔力もウィザード程高く無いが、その土地の精霊や元素等の恩恵効果を受けるので、戦う地によって様々な能力が著しく上下してしまうのがクラス特徴。
『スペルナイト』
軽量装備を扱い、低ランクの補助魔法も使いこなす。
接近戦を主に戦うが、先頭を切るよりは、ウィザード等の護衛に回る事が多いクラス。良くも悪くもクラス特徴は無い。
『ファイター』
防具類は殆ど身に着けず、敏捷性を活かして戦うクラス。主に小型モンスターや、中型モンスターを相手にする。
接近戦闘技術は優れているが、魔力はその逆。飛行モンスターや霊体モンスター相手だと、全く無力になる反面も有る。
モンスター
強悪さによりA〜Gの七段階で評価。
『擬水鳥(ぎすいちょう)ペールフォリンクス』
C〜Eクラス
全長7〜10メートル。フォリンクス派生の亜種で、飛ぶ事よりも泳ぐ事に突出している。
偽りの霧を創り出すのも特徴。その姿は水辺や大森林で見掛ける事が出来る。詳しくは本編参照。
『毒放鳥(どくほうちょう)ガンフォリンクス』
Bクラス
全長12〜17メートル。フォリンクス系の派生種族。毒のブレスを吐き、弱らせてから捕食する特性が有る。
山頂部を巣にし、山の周りを優雅に飛行する姿も確認されている。
『双頭のハウンドウルフ』
Fクラス
全長1〜2メートル。頭部が二つ有るモンスター。それぞれの頭部に意思が有る為、仲が悪いと互いに噛み合って死ぬ事も有る。
決まった生息地は無く、各地で見られる。群は成さない。
『雷獣(らいじゅう)レオブロード』
Fクラス。
全長1〜2メートル。体内で電気を生成する珍しい種族。その気高い遠吠えは、北地の降雪地帯で聞く事が出来る。
レオブロードやフォリンクス派生に限らず、その殆どのモンスターが、武具や道具の素材になる。
ギルド
クラスに着いた者が様々な依頼を解決し、報償金を得る場所。報償金は、依頼主からギルド経由で得る。
ギルドランキングは、倒したモンスターの数で順位を表すランキング。
表示名は個人から団体まで何でも良く、団体ならば、全員の数を加えて数える。
したがって、上位に行けば行く程、パーティー人数が増えて行く傾向に有る。
倒したモンスターの数をギルドで登録するには、『ソウルゲイザー』と言う特殊なアイテムを使う事が必要。
以上です。
五〜六年前にモンスターハンターをプレイした時に書いた話し。
ここまでで1/5ぐらいです。
良くも悪くも偉い事になっとんなw
でも、ファンタジースレとかモンハンスレとかもっと適したスレもあったんじゃね?
いきなりスレチじゃん
モンハンスレは厨二病アレルギーの高二病患者が多いから、こんなん来たら大荒れするわw
主人公が細くて目が前髪で隠れてる
スマネ。
ここからJOJOにエロゲっぽくなってくから許してね。
※NGは酉で。厨二文注意。
人居るかどうか分かんないけど次から投下。
91 :
厨二文注意 ◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/23(金) 22:15:31 ID:SBI+vClk
1
『ギルドランキング998位・ミツキ=エクスリッター』
「ミツキさん。ギルドランキング、落ちてるわよ?」
受付嬢が心配気な声でランキング表を見せ、俺に対してのバッドニュースを伝える。
「うむ、落ちたか……」
大規模なモンスター討伐でも有ったのか、仕事を休んでいたここ一週間で大きく順位が後退していた。
と言うか、三桁ギリギリだ。
「それにしてもどうしたの? こんなに早く依頼を探しに来るなんて? ランキングに執着してる様には見えないし、報償金なら、この前の依頼解決で沢山得たわよね?」
確かに。予定なら、本来の目的に時間を割いて当然……
「だったがな。相方の使い込みが発覚して、全部パーになった」
ふぅぅっと、心の中で溜め息を吐く。俺の思考空間は、出された二酸化炭素で埋め立てられてる。
朱い霧の解決報償金。数ヶ月は何もしないで暮らせる程はあったろう。
いや、確実にあった。重々しい札束は、確実に上着のポケットに存在していた。
だが、エックスデーの昨日。僅かな小銭を残し、それは忽然と姿を消す。
初めは賊とも考えた。
目覚めると相方の姿は無く、掠(さら)われたとま考えた。宿で昼近くまで睡眠していた自分の怠慢さを呪いもした。
しかし、愚かだったのは自らの考えだと、ドアの開音で現れた人物に認識させられる。
「あらミツキさん、いつまでこんな埃臭い部屋に居るのかしらセレブ? 早くスティックキャロットをいただきに参りましょうセレブ」
――――――。
相方だった。語尾に『セレブ』、と頭が痛くなる単語を付け、無駄に宝石類を纏っていた。
「あら、お金の事なら遠慮はいらないザマスよ。私が払ってあげるセレブ」
頭には『ウイングハット』。広い鐔が特徴の麦藁帽子。通気性が良く、夏でも涼しい。
顔には『UVゴーグル』。目に届く閃光魔法を遮断し、紫外線を99.95%カットする。
そこからは……覚えてない。
相方の頭をバシバシと小突きながら、装飾品を練金所で換金していた記憶だけだ。
結局残ったのは、「これだけは!」と泣きの入ったセンスの破片も無いゴーグルのみ。
「ふふっ、で、本日はどんな仕事をお探し?」
受付嬢の言葉は俺に向けられているが、視線は俺の後方に向けられている。
「生活が潤せて、ランキングも上がるのが良いんだが……」
その視線方向に引かれ、自らの視線も振り返り流す。
「あの子任せ、ね?」
「できるだけ、な」
壁一面に貼られた依頼書を、上下左右に一つ一つ目を止めて確認する、実に視力を消費する作業。
割には合わないが、これくらいはやって貰わないとな。選ぶ基準も伝えてるし、まぁ……大丈夫だろう。
「ミツキさん、どうやら決まったみたいね?」
注目すると、背伸びをして一枚。しゃがんで一枚。合計二枚の依頼書を剥がす相方の姿が在った。
ふむ、二枚に絞ったか。それでは、相方の選択センスを見せられるかな。
「良し、見せてみろシリュー」
手招きして名を呼ぶと、疲労した両目を擦りながら、ヨレヨレとしたシリューが歩み出すのだった。
2
『凶馬アハ=イシェケの角採集 ※雄の角に限る 三十本より百本まで評価』
『飢狼ラクシャーサの群殲滅 ※ディバインライフにてラクシャーサの異常繁殖が見られる 危険と判断したので速やかに殲滅して欲しい』
シリューが選んだ依頼書は、どちらも条件を満たしていた。
「さて、どちらにするか」
カウンターに二枚を並べ、慎重に見比べる。
どちらも報償金の額は高い。危険度に関しても、『パーティーを組まない』と言う前提が有れば同程度だろう。
ならば決める甲乙の条件は、ランキングの上げ易さか。流石にランキングが四桁になると、仕事の内容に規制を掛けられるものも有るからな。
依頼を選ぶなら、モンスターを大量に狩れるのが良い。せめて、九百台前半までランキングを上げないと安心できん。
「みつきぃ、きまったぁ?」
シリューは聞き慣れたアホ声を発すると、隣でゴーグルを磨きながら、早く決めろと催促する。
俺の服で磨くな。
「ふぅ……ったく。それでは逆に問うが、暑いのと寒いの、我慢できるのはどっちだ?」
視線は依頼書に落としたまま、左横の相方に話し掛ける。
そう。残る問題は、秘密兵器の相方。アハ=イシェケを狩るならば降雪地帯に。ラクシャーサを狩るとなれば亜熱帯地域に行かねばならない。
わがままで俺を困らせるのはどっちかを、ここで知って置かなくては。
「暖かい方が良いよ。寒いと野菜が育たないし」
……
…………
……………
…………………?????
はっ? 俺とシリューは同じ言語ど会話してると思うが、どうして噛み合わないんだ?
シリューの理解力に問題が有るのか? それとも俺の言語力に問題が有るのか?
「あー、暑い方が我慢できるんだな?」
解答で聞こえた、暖かい方が良いと言う単語を拾い、確信だけを問い直す。
「うん、そうだよ。暖かいと野菜が育つからね、いっぱい食べるんだよう!」
なるほど、シリューの頭が暖かくて、会話がずれていたのか。俺の言語に問題が無くて本当に良かった。
3
「それでは、こちらの依頼を受けるとしよう。この依頼を請け負ってる奴らがいるか調べてくれ」
一枚を受付嬢へ。貼り戻して来いと、もう一枚をシリューへ渡す。
「はいはい、ディバインライフね? ちょっと待っててください」
「はいはい、戻して来れば良いのね? お金も甲斐性も無いみつきぃ」
受付嬢は後ろに振り向いてカウンター側の壁に目を移し、シリューは先程の作業場へ駆け戻った。
シリューは責任転嫁のスキルを持つか。秘密兵器度を一つ上げて置こう。
「どうだ、ありそうか?」
シリューには目をやらず、受付嬢の後ろ姿に落ち着かせる。
「ディ、ディ、ディ……っと。あったあった」
呟きながら壁と対面すると、頭文字順に並べ貼られた契約依頼書から、既に請け負い人が居るかどうかの確認を行う。
くっ、あったか。なら、先に請け負ったパーティーが居ると言う事。
「ミツキさん? ミツキさんって、随分『いわく』に好かれてるわね」
意味深に呟く、受付嬢の顔が陰りを映す。
「んっ? また何かあるのか?」
いわくの二連続は勘弁願いたいんだが。
「ギルド側としても失念してたわ。この依頼を解決に行ったのは『エインデューンの第三部隊』なのよ。それも十日以上前。場所から言っても三日、かけても五日で解決報告が有っても良いのに」
口数こそ多いものの、表情は目に見えて悪化していく。
「ゆったりと仕事をしてるか……それとも、予定外の『何か』が起きたか」
四大都市の一つエインデューン。騎士団の数こそ他の三都市に劣るも、そこは小数精鋭。各個の実力ならば随一とされている。
それもエインデューン第三部隊と言えば、全員が卓越したアーマーナイトとスペルナイトで構成された、対陸戦の至高騎士団。
Gクラスのラクシャーサ等、幾ら群ようとも相手にならない。
「ミツキさん……確認してると思うけど、この依頼ってギルドからなのよ。だからね、少なからずギルドにも責任があるの。予定外が起こる可能性に怠惰だった私達側にもね」
ギルドからの依頼は『討伐』や『殲滅』が殆どで、最も危険度が高い依頼主。
故に、事前情報は完璧に記されてなければならない。起こり得る可能性を含め、依頼書に記載されているのが常だ。
ならば尚更、ギルドの依頼解決中に、予定外が起こってはならない。
4
「だからね、ミツキさんにお願いがあるの」
受付嬢は僅かに俯き、台詞の言い終わりと共に強く下唇を噛んだ。
「助けに行ってくれ……か? 俺一人が行っても、状況が改善されるとも思えんが?」
冷静に思考すればわかる。一部隊が潰れる程の予定外。救出に行くなら、後五十人は欲しい。
「もちろん、援軍はギルドランカーから集めて送るわ。ミツキさんは先駆けて、向こうの状況を把握していて貰いたいのよ」
戦わずに戦況を見極めろ? 難しい事を。予定外に遭遇せずに把握するなど、できる筈は無いとわかるだろうに。
自身の台詞矛盾に気付けない程、余裕を失っていると言う事か。
「お願い……できるかしら?」
俯きを解き、真っ直ぐ、ただ真っ直ぐに俺の瞳を直視。その表情から鈍りは払拭されぬまま、より一層に不安色を強めていた。
ふっ……己の技を鍛え、人々の儀に応え、真に偽の無い者になれ……か。シリューにも説いたばかりだ、師匠の教えは守らないとな。
「わかった、できる限りやってみよう。指定するマジックアイテムの手配は頼めるだろ?」
曇る視線に公定を返し、手配させるマジックアイテムを脳内に展開させる。
「えっ、あ……本当に良いの?」
「返すな。ギルドで仕事を熟す者は人助けのプロだぞ? 任せて置け。それに……」
区切り、依頼書貼りから戻らぬシリューへと視線を戻す。
そこには、
「よいしょっ、と」
股割りから始まり、入念な準備運動で身体をヒートアップさせる相方の姿が在った。
「相変わらず、うちの相方は『やる気』だしな。俺にはソレの削ぎ方はわからん」
続いて、いつものシャドー。首に描けられたゴーグルと、左右に束ねた長い髪も、ステップに釣られてユラユラと揺れる。
「何て事はない、相方の好奇心を満足させる為に行くんだ」
だから気にするなと意を込めて、そのままシリューの前へと歩む。
これも……糧になる。決して無駄にはならない。幾多の経験を積み、天多の促し、アイツの死に一歩近付く。それだけわかればやって行けるさ。
「ミツキさん。ありがとう、ございました」
数歩も進むと、受付嬢の小さく心底な謝礼が聞こえ、「しゅっ、しゅっ」と口出するシャドーの擬似効果音が増して聞こえた。
『Little Flower』
〜黒を喰らうディバインライフ編〜
5
この世に地獄が存在するならば、ここが最も近い場所だろう。
暑くて、暑くて。ただ居るだけで体力を奪われ、判断能力すらも溶解される。
太陽光は深緑に隠され、昼間でも薄暗い。にも関わらず、体水破壊と思わせる高音湿気と無数に待ち受ける底無し沼が、この場を最凶最悪と強制連想。
どこまでも続く湿地帯に、果てを見せない深緑の木々。更に『コカトライズ』、『バジリスク』、『スカルプチャーウォーム』、必殺を持つ地獄の獣達。
これなら、誰だろうと納得する。ここが……『命奪の場(ディバインライフ)』と呼ばれる事に。
「うえー、じめじめするんですけどぉっ、これはぁー、どういうことですかー?」
俺の右横で、ベチャベチャと歩行音を立てながらシリューが愚痴る。
「頭の悪い喋り方はやめろ。疲労が増える」
ギルドで依頼を受けたのが四日前。支給品を受け取り街を出たのが三日前。ディバインライフに踏み入ったのが数時間前。かなり奥まで歩いてるな。
モンスターとの遭遇が無いのは良と言えるが、これだけ歩いてもエインデューン部隊が発見できないのは否と言える。
「ぜはっ、ぜー。お水を、シリューにお水を飲ませてください」
聞き飽きた台詞に顔を落とすと、汗を流し、だらしなく舌を垂らすシリューが居た。
「またか……ここに来て三本目。トイレに行きたくなったらどうする、この辺でするのは危険だぞ?」
「うるへー! 美少女は大きいのも小さいのも出さないんだよぅ!! だから、ミツキは、私に、早く、水を出すの。たんだすたん?」
うーむ、どんどんと唯我独尊の性格になってくな。育て方を間違ったか?
「はぁ……ったく、ほら」
手提げの支給鞄から、三本目のボトルウォーターを取り出して渡す。
「やふー! それではミツキはん、いただくどすえー」
シリューは受け取ると同時にボトルのキャップを回し開け、
――ぐびっ、ぐびっ、ぐびぃっ。
「はぁぁははぁぁぁぁぁっ!! 復活、フッカツ、ふっかぁぁぁぁぁぁつ!! これさえ有れば、私は何度でも蘇るんだよミツキ!!」
勢い良く一息で飲み干した。
二日は掛かると見通して、ボトルウォーターを六本手配させたのに、入って数時間で三本も消化するとはな。
チャージ間隔も短いし高燃費過ぎる。
「で、みつきぃ。まだ見付からないの?」
再び元気を回復させたシリューは、腰背二刀の叩打金属音を鳴らし、小刻みにステップを踏み始めた。
このまま放っとけば、確実にシャドーに入るだろう。
6
「ああ、戦痕や足跡すら見当たらん」
足跡はぬかるみで即座に消え、頼みの戦痕は未だに発見できない。
響くのは、蛇尾鳥コカトライズの甲高い鳴き声のみ。
二人でかれ以上進むのは危険だな。一旦引き返し、援軍の到着を待つのが良いか?
「よし、残念だがここまでだ。引き上げるぞシリュ……っッ!!?」
――――――。
聞こえた。
この場に映える筈の無い音が、微かな雑音と成って鳴き声と混じる。
「どうしたのミツキ?」
次動は既に決定。声を掛けるシリューには視線を流さず、前方の闇……深緑の闇へと視線を流す。
この先。全てはけの先だ。俺の聴覚を異端で覚醒させたのは、黒で誘(いざな)うディバインライフ。
「走るぞシリュー!!」
言葉だけをその場に残し、シリューの返事も待たずに一歩目を強跳。
「わっ!? まってよー!」
ぬかるむ地面に気を配り、異端雑音へと蹴り走る。
地を蹴り、泥を跳ね、命奪を駆け抜ける颯と化す。
足音は一つ、自分のだけだ。シリューはかなり後方まで引き離した。
間違いない、確実。確実に近付いてる。不定金属音は、確実に俺を呼んでいる。
「ちっ、しくじったか?」
ここまで来ると、武器の選択が惜しい。
ラクシャーサ相手となれば、背中の大剣アイゼルヴィントでは無く、シリューに身巻かせているレヴァルとディスタンスラヴァーを装備して来るんだったか?
いや、その考えこそ愚の骨頂。相手にするのは、ラクシャーサよりも『予定外』の可能性が高い。
前回のペールフォリンクス以上の敵なら、アイゼルヴィントを抜かねばならないだろう。
「ゆくぞっ」
音は近い。間近。この木々を越せばっ!
「なっ!!?」
開けた。
視界が拓けた。
命奪深緑の原に存在する、数十メートル四方の白紙空間。
闇の黒とは不干渉で、ぬかるみも無ければ木も生えぬ。
黒の中に在る白。虫食いにでも遇ったかの様に闇が存在しない。
そこだけが異端。発する音は凌駕して異端。
乱行する剣閃。
その白場で、
幽鬼と勇騎が殺し合う。
幽鬼の外見は、人骨の上に薄っぺらいが巡っているだけの骸で屍。予定外の『レブナントリッチ』と断定。
アーマーナイトとスペルナイでは対処不可能と確定。
救助に来た筈の俺すらも、打破の確率を見出だせに体動を止める。
7
レブナントリッチは、地に着く程の長腕を振るい、鋭爪による唯一で攻撃。
対する勇騎は漆黒で鋼。ディバインライフの闇等、比較にならない黒鎧で身体を覆う。腰のラインまで伸びた薄紫色の髪に、澄んで輝く金色の両眼。
黒鎧の騎士は初見タイプの細身剣を右手に担い、レブナントリッチの攻撃を、三度に一度は切り払う。
残りの二度は身に受けるが、鎧の傷も、身体の傷も、瞬時再生。異常のリジェネレート効果を見せる。
「生き残り……が居たんだな、僥倖ッ!」
手提げ鞄を手放し、再度加速で白の中へ進入。
「伏せろぉぉぉぉぉぉっ!!」
騎士へと届く様に叫び、脚外側のハンティングナイフを、左右手に一本づつ掴み抜く。
そしてそのまま……
「来るなっ! 『喰われる』ッ!!」
投げれない。
騎士は振り向かぬまま、引けを取らない大声で俺の行動を影縫う。
喰われる……だと!? 何に、誰が喰われると言う? この場の殺気は俺を含め三つ。まさか……レブナントリッチの『特殊能力』に掛かってるのか?
「幻覚から解放してやる、伏せろッ!!」
キーワードを入れ、もう一度叫ぶ。
「来るなっ! 囲まれてるッ!!」
だが、俺の言葉は連絡されず、無意味なやりとりを往復するに終わる。
ならば。騎士が伏せないのならば、俺が跳ぶ!
「つあッ!!」
加速疾走から垂直跳躍。
アンデットと言えど、魔力を通せば物理攻撃もヒットした筈。
制止を振り切って両手のナイフに魔力を流し、刹那も空けずモンスター標的で擲(なげう)つ。
投擲されたナイフは直線の残像軌道を造り、
「キシィィィィッ!?」
レブナントリッチの両肩上部に突き刺さる。
驚愕と憤怒に浸る幽鬼の目は、着地せんとする俺に向けられ、騎士から戦闘相手を切り替えた事を示す。
「やはり、こちらを狙うか……」
右足で着地バランスを取り、
続く左足で左前半身の対戦構えを取り、
更に続く左右手で再びナイフを一振りづつ取り、
両逆手に持ち直し、左は胸前、右は腹前で短剣二刀を備える。
「ギイィィィィィィッッ!!」
幽鬼は死霊の瞳を俺に向け、壊れた咆哮を上げて歩む。
「来るか? だが、俺に『腐敗幻視(デリュージョンアイズ)』は効かんぞ」
腐敗幻視……その名の通り、最悪の被害妄想を見せるレブナントリッチの特殊眼。
能力も然る事ながら、発動条件も凶悪。『眼を見せる』では無く、『眼で見るだけ』で良い。
だからこそ強力で、だからこそ惰弱。相手の体内魔力量に応じて比例効果し、『魔力が低ければ低い程掛かり難い』。
即ち、俺のようなファイターに対しては、全くの無駄能力。
8
「くっ、ラクシャーサ共がぁぁぁっ!!」
騎士はレブナントリッチの攻撃射程から外れるも、飢狼の名を呼び、空を相手に剣を打つ。
もろに食らってるか。腐敗幻視の支配範囲から外すには、かなり引き離さんといかんな。
「ふぅぅっ……はあぁぁぁっ!!」
閉目して深い呼吸をし、刮目して集気を高める。
「ギギッ、ギギギギギギギギギッッ!!」
シルエットは人。現す姿は骸。腕のみが異様に長く、地面に引きずられて動く。ダラダラと涎を垂れ流し、だらしなく口を開けて。
この白紙空間。俺の制空圏まで、五歩……四歩。三歩、二、一ッ!
「ギイィィィィィィアッ!!」
制空圏ギリギリで振るわれる両の手爪を、
「南無三ッ!」
右爪には左刃、左爪には右刃で対応し、内側からのパリーで両腕を外側へと弾く。
これで無防備。後は、どこまでやれるか。
繋げて、体重移動からの左足を軸に踏み込み、
「疾ッ!!」
右手ナイフで袈裟斬り。そこから左手ナイフで左腰から右肩まで、右刃の剣痕をそのままなぞり返す様に切り上げる。
「ギギャッ!?」
ここは引かん。俺の残魔力、全て叩き込む!
距離を取ろうと後方に体を反らせるレブナントリッチを、僅かも逃さず密着追尾。
「沈めッ!!」
そして遠心の力と円弧の軌跡を築き、
必殺の踏み込みと剣速で、
急所を走る身体正中線を、頭上を起点とする幹竹割りの一刀で決める。
「ギィギャッ!!? ギギ……ギギギギギギギギッ!!!」
レブナントリッチは衝撃で数歩も後退するが、気にした様子も無く、ブリキ細工の音を立てて小刻みに上下振動するだけ。
くっ、あれだけ叩き斬ったのにまだ動けるとは、与えたダメージが低過ぎるのか?
これでは追い払う処か、俺自身が戦闘不能になる。
「ふぅぅっ……はあぁぁぁぁッ!!」
それではいかん。
こんな場所で死ぬのは否だ。
人を見捨てて逃げるのも否だ。
戦う敵が怨恨ならば、上回る怨恨節操で叩き伏せれば良い。
短剣二刀の両方を順手に持ち替え、左右下段に置いて投擲の構えを取る。
「俺の残魔力は、保っても三撃分か……いや、三撃有ればじゅうぶん!!」
ファイターに腐敗幻視は効かない。だが、魔法や魔力を攻撃しか受け付けない幽鬼には、ファイターでは魔力不足。持久戦になれば勝算は無い。
9
「なれば抜かん。我が……」
「目を閉じてミツキッ!!」
んっ……ふっ、なんだ、やっと、追い付いたのか?
突然にして俺の台詞を掻き消したのは、聞き慣れた相方の声。
即座にバックステップで下がり、
「シリューは『アレ』を使う気か?」
眼を閉じろ。の声に沿って閉眼し、拇指球で耳孔を塞ぐ。
解る。この空間でなら、いかな大気の乱れも感じ取れる。後方から飛来し、俺の上空を通過し、レブナントリッチとの中間点に投げ放たれた異物、『閃光音爆弾(スタングレネード)』の存在をッ!!
――ドゴオォォォォォォォォォッッ!!!
目を閉じても伝わる白閃光。この白場を一瞬で呑み込み、それ以上の白で侵し染める。
「ぐっ!!」
耳を塞いでも通聴する爆発音。鼓膜を攻めて蹂躙し、命奪を連環にして解放。
音と光だけの、瞬間抱擁。
スタングレネードは一つしか手配させてない。これで、引いてくれれば良いが。
「ふぅぅぅっ……」
光が止み、音が止み、塞聴閉眼を止めて五感を馴らす。
「幽鬼は……どうやら、引いたようだな」
映る視界に殺意は無く、黒鎧の騎士だけが小さく震えて立ち竦む。
「ミツキ、あの人が探してた人?」
定位置の右横に付いた相方に一時だけ目をやり、
「だと、良いんだが」
目を覆うゴーグルを額に上げ移してから、再び騎士へと視線を戻した。
成る程、コレも役に立つんだな。必要経費で良とすれか。足りない分は……まぁ、シリューの間食代を削る事で勘弁してやるか。
「さて、と」
区切りを付け、騎士へと歩みを寄せる。
麗髪が揺れるのを眺めながら、振り向く麗顔を見据えながら、相方と肩を並べて騎士へと歩む。
騎士は動かず、俺とシリューの到着を待つ。
そして二十歩も進み、
「エインデューン部隊……と解釈して良いんだな?」
直の真後ろから、振り返り様の騎士へと問い掛ける。
「ええ、部隊と言っても、私一人だけになってしまったけど」
答えの中身は悲壮感。精神的な満身創痍を漂わせ、金の両目をうっすらと開く。
「なまじ魔力が有る分、レブナントリッチが相手となれば仕方ない結果だったさ。お前が生き残っただけでも良しと思って置かねば」
現状把握は悲しみに繋がる。
「そう。途中から雰囲気が変わったって感じたけど、レブナントリッチの幻視に苛まれていたのね? はっ……一人だけ生き残るなんて、本当にブザマ」
悲壮を重ね、悲息を重ね、死者への弔いを呼吸に乗せて吐き出す。
100 :
◆uC4PiS7dQ6 :2009/01/23(金) 22:25:18 ID:SBI+vClk
10
「浸るな、詳しい話しは後だ。取り敢えずここから脱出するぞ」
レブナントリッチがいつ再見するかわからない。
それにラクシャーサ。今こそ姿を見せないが、ラクシャーサと他騎士の『死体消失』。奴らの生態系を理解していれば、まだ生息していると仮定できる。
「私の名はレヴィー、レヴィー=エルレシア。貴公の名を教えて欲しい」
女騎士は空を仰いで左手で十字を切り、俺の提案を名乗る事で返す。
逃げる気は無い、と言う事か? それとも、違う何か、か? 何にしても、名乗られたら名乗り返さんとな。
「ふぅっ……」
短く溜め息を付き、調度良い位置に有るシリューの頭頂部を、右手の甲で三度も小突く。
――ポン、ポン、ポン。
「わぎゃ、わぎゃ、わぎゃっ」
うーむ、アホ声だ。
「こいつがシリュー。で、俺が……」
「みつきぃ、よっ!!」
遮って俺の正面に向き合い立ち、
――ドフッドフッドフッ。
カウンターコンビネーションブローを鳩尾に打ち込む。
うぐっ、人体急所を確実に乱れ打つとは、腕を上げたなシリュー。
「ふむ、シリューと……みつきぃ殿か」
レヴィーと名乗った女騎士は、脳内咀嚼で勝手に納得してしまうと、頷いて首を縦に振った。
まっ、訂正するのも面倒だし、長い付き合いになる訳でも無いしな。それで良い。
「うん。よろしくねレビー」
シリューはレヴィーへと向きを変えて名を呼び、
「ええっと、レビーじゃなくてレヴィーよ。う、にてんてんのヴィー」
当の本人に発音の指導を受ける。
「びーびーびー」
レヴィーは腰を落としてシリューと目線の高さを合わせ、ゆっくりとした口の動きを付け加えと教えるが、
「びーびーびー」
全く直らなかった。
「すまんな、上手く発音できんらしい」
なんら変わらないシリューに、諦めろとの意志伝達を兼ねて、レヴィーへと詫びを入れる。
「かっちーん。バカにすんなぁっ! いいにくい武器ばっか持ちやがって、ちゃんと言えるっつーの!!」
言い難い? どれ、復唱してみるか。アイゼルヴィント、レヴァル、ディスタンスラヴァー。ふむ、確かに言い難いかもな。
「ぶぁさし、ぶぁにく、こんぶぃーふ。ワタシ、お肉タベラレナイアルヨー」
…………!!???
なんだ、発音練習か? 驚いて心臓が止まるかと思ったぞ。とうとうシリューが『あっち側』に行ったと、本気で危機を感じた。
レヴィーも俺と同じ考えなのか、同じ表情をし、「何を言ってるんだコイツは?」って目でシリューを見る。
11
「ぷっ、くっふふっ。良いわね、気に入ったわシリューちゃん。私、シリューちゃんみたいな妹が欲しかったわ」
だが、次瞬には破顔一笑し、シリューの頭をくしゃくしゃと撫でた。
むっ、油断し過ぎか?
「和み過ぎた、会話を戻すぞ。レヴィー、俺達とディバインライフを脱出する気は有るか?」
強制を促す選択を、あえて選ばせる。
「無理……ね。部隊が壊滅したのに、私だけが帰還するなんて選択外。仇を討つまで動く気は無いわ」
レヴィーは厳格を取り戻し、シリューから離れて白場の中心へ歩く。
やはり、な。重んじる義が、未来行動を狭めていたか。
「それこそ無理だ。現装備では、ラクシャーサは殺せても、レブナントリッチは殺れん。死した者よりも、生きている己を大切にしろ」
俺の言葉にも、首を横に振って否定するだけ。 「それは、他の奴ならって前提があってでしょ? 私なら殺れる。それだけの武器と力がある。レブナントリッチが居るって分かれば、銑鉄は絶対に踏まない!」
どんな言葉も伝わらないと、強固なまでの義が、身体を命奪に封殺するのだ。
「考えろ。お前まで死んだらどうする? ここは体制を立て直し、改めて来れば良いだろ?」
「ふっ、大丈夫よ。睡眠を取らなくても、食事をしなくても、傷を負っても、闇の元素(マナ)が溢れてる『ここ』では『死なない』。
排便行為も必要とせず、老廃物質も造られず、人体の不必要は、人体の必要に変化する。私は真の意味で不死になれるのよ。
そう言う術式処置を受けたから、そう言う武装を身につけているから、だから私だけが死なずに生き続けた。
闇の元素に闇元素の術式処置を施した私。そして闇の術式武装ヨルムンガンド。これが私を生かせる絶対唯一の定義よ」
レヴィーは長い自己説明を終えると、話しを断ち切る様に細身剣を正眼に構え、俺と対になる外周へと身体を向けた。
術式処置か。人工的に元素吸収のスキルを身に付かせる施術だったな。辺りに存在する処置に対応した元素を体内に取り込み、自己の魔力と還元する法。
実際に見るのは初めてだが、なるほど……こう言う事か。ここが白場と成った理由がやっと分かった。
何て事は無い、闇を形成してる元素を喰らっただけ。だからここに黒は無く、喰らった黒を己の活動制限に当てている。
「どうしても、帰還する気は無いか?」
「一緒に帰ろうよレビー」
シリューも心配の目で見詰め、祈る様に両手を握り合わせるが、
「ごめんねシリューちゃん。私はいいから、みつきぃと帰ってね」
レヴィーはこちらを振り向かず、どちらの誘いにも一貫して乗らない。
「ふぅっ、しょうがな……」
――――――。
消えた筈、
「ッ!?」
消えた筈の殺意が、一呼吸の間に再臨する。
12
きっ、選択分岐は消えたか。時間の食い過ぎだ! 後は……成るようにしか成らん!!
「ほらっ、早く帰らないから、すっかり『囲まれた』わよ」
白場ど殺意が膨れ、全方位で死線が増す。姿は隠してるつもりだろうが、、殺意は一部も隠れてない。
ったく、勘弁してくれ。これだけの数から熱視線を送られるとは、たまったモノではない。
「左を向けシリュー」
「はいはいよー」
互いに正対した状態からシリューに身体ごと左を向かせ、両手のナイフを上空に放り上げる。
「一意……」
連携動作でシリューの担う背剣を左逆手で引き抜き、
「専心ッ!!」
腰剣を右順手で引き抜く。
どうせ殺り合うなら、ゴングはこっちで鳴らしてやるさ!
「発ッ!」
落下するナイフの一本を、シリューの頭上でミート。
左剣の側面で左方へと全力で弾き飛ばし、もう一本のナイフ柄を、同じ要領で右方へと弾き飛ばす。
即座で反響する僅かな刺音。潜めるモンスターを射貫いた証拠。
「シリュー、常に俺とレヴィーの間に居ろ。できる限り敵は通さんが、もしもの時はアイテムと魔法で稼げ」
レヴィーと逆方を向いて外周を見渡し、右剣で「前に出るな」の意を込めてシリューを征する。
「ふっふっふぅっ、私が今までの私だと思ったら大間違いよ。ビシッと隠し玉を買い備えてるんだから」
そうか、ちゃんと買い備えてるか。良かった良かっ……何ッ!? まだ無駄金を使ってたのか?
「ああもう、いいから下がれ」
どこまでも、俺の予想を越える奴だ。
一呼吸。左の曲剣レヴァル腹前で構え、右の避剣ディスタンスラヴァーを胸前で構える。
「レヴィー、こうなったら最後まで付き合う。生きて脱出するぞ」
殺意はビリビリと張り詰め、感覚神経を限界まで高めて行く。
「あら、私一人でも十分だけど?」
視界に映るのは深緑の命奪。聴覚に入るのは飢狼の微鳴。その数は多く、二十は居るだろう。
「その自信は、レブナントリッチを倒す事で証明してくれ」
レヴィーの武器は剣だったか? 柄の尺が通常の倍以上は有ったな。アレを主要武器としているのだから、扱い難いだけで無く、盲目龍(ヨルムンガンド)と名打たれるだけの何かが有るのだろう。
「ええっ、ちゃんとシリューちゃんも守ってあげるわ」
「すまない、さあ……来るぞ!!」
長いんで、一旦ここで区切り。
今回のエロは次に入ります。
んー…何故かミツキとシリューの会話を聞いてると
山田貴敏の描く凸凹コンビって感じの絵が思い浮かぶ…
スレの方向性が全く分からん
少なくともエロゲ゙のストーリーみたくはないわな
ho
109 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 10:22:50 ID:m1Ts1BCM
ほし
ほ
ho
112 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 01:12:11 ID:TZbZb7iz
ほ
小ネタ・それとない雰囲気のみ・エロ皆無・6レス消費
1
チュン‥チチチ‥
朝日がベランダから差し込む。その眩しさに眼を開ける。
「ん?もう朝か‥」
とりあえずベットから起き、俺は洗面所へ向かった。爆発した髪を直すべく、頭を洗面台に突っ込み、その上から直に水道水を被る。
バシャバシャ‥
「くっはぁ〜気持ち良ぃ〜」
ゴシゴシ‥
バスタオルで軽く水気を拭き取り、スウェットから予め置いておいたTシャツとジーパンに着替えると
ゴォー‥
ドライヤーの熱風で髪を乾かし、ワックスで毛先を軽くいじる。
2
「よし!オッケー!」
‥後は上着を羽織って、財布と携帯を持てば完璧だな
「美咲ちゃんはどんな格好で来るのかな‥」
美咲ちゃんとは、俺=本堂拓海のクラスメイトにして、学園のマドンナ的存在の女の子だ。
そんなマドンナから、どういう訳だか…凡人の俺に、今日デートのお誘いをもらった。
3
ちらりと部屋の置時計を確認すると、約束の9時まで後15分だ。
待ち合わせの公園までここから、徒歩12・3分といったところだ。
「さぁてと、そろそろ出るか‥」
上着を羽織り、テーブルの携帯を‥ありゃ?
無い!!
慌てて室内を探しまくる。
4
「‥おかしいな。どこやったっけ?」
再び時計を見ると、9時まで5分前だった。
「‥まずい」
遅れるにしても最低限礼儀として、美咲ちゃんに連絡の一つでも入れないと‥
しかし、あいにく俺は固定電話は持ってないし、ここから近くの公衆電話まで全力で走ったって、5分以上はかかってしまう。
5
ヴヴ‥ヴヴ‥
「!」
聞き慣れたバイブ音が聞こえてきた。恐らく、美咲ちゃんからの電話だろう。
‥何処だ?!!
音が聞こえる方へ行くと、俺が先程までいたベットの中から聞こえてくる。
「‥ここかよ」
自分の記憶力の無さに呆れつつ、俺は掛け布団と毛布を一気に捲り上げた。
6
「きゃあああ!」
「え?…って、うわあああ?!!」
‥何とそこには、見知らぬ下着姿の可愛い女の子がいたのだった。
果たして、俺は美咲ちゃんと無事にデートにこぎつけるのか?
この可愛い女の子の正体は?!
俺=君の青春が今幕を開ける!!
→→START
(続きませんW)
‥書き終えて気付いたが、これじゃエロゲじゃなくギャルゲだなWスマソ
119 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 20:52:55 ID:EF2D07j3
120 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 03:26:51 ID:jEs5Qcc5
ho
121 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 21:55:02 ID:Gd0+5QXI
ほ
ほ
123 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 02:36:12 ID:pGOuF6iR
あfげ
続きはー?
保守
女護ヶ島に漂着
127 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 22:26:53 ID:NsQyckFB
ほ
ほ