女格闘家(総合格闘技、ボクサー、レスラー他)や男をバカにしたり舐める女に
力の差を見せて戦って倒す話を語り合ったりSSをつくりましょう。
虐待やただのレイプだけではない格闘描写を重点におき
生意気な女たちにギャフンといわせてやるか、ということを愛好する人たちのスレです。
もちろん、エロ展開、凌辱、女だとわからせるためのセクハラ展開も自由です。
みなさん、ご協力お願いします。
2 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 20:20:37 ID:c2otgB7p
うんこ
>>3 関連スレなのか重複スレと言いたいのかわからんけど
ちょっと無理があるんじゃないか?
レイプスレのほうがよっぽど近いだろ
すいません、当該スレには
しおらし・い
(1)控えめでいじらしい。遠慮深くて奥ゆかしい。
(2)かわいらしい。かれんである。
(3)けなげである。殊勝である。
(4)上品で優雅である。
というのがあるもので、ちょっと違うかなと思って。
フツーにミックスファイトみたいな風に考えてます。
スレタイ失敗しましたね。ごめんなさい。
6 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 22:30:02 ID:+LHHXX0B
エロ格闘なのか?
面白そうだなー。やってみようかな。
7 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 00:49:22 ID:eIs7bagu
↓不知火舞が一言
1…甲 …乙にあらず。
面白そうだ。書いてみよう。
そう焦るなよ
俺も作ってるから
>9とは別に
アニメのバルログ×春麗が子供心にドキドキした
ゴールデンタイムで夜這いとかもう
腹パンチもあったっけ?
春麗が負けるはずのない雑魚にボコボコにされるのが見たい
つーか、ここは二次とかクロスはOKなんですか?
ありなんじゃねーの
とりあえずどんどん投下しない分には…だろ?
俺としては男女混合バトルでエロとか聞いたら
有名なのはギリギリぷりん、つきあってよ、五月ちゃんかな
格ゲーは男と女のガチがあるんだが、エロ系は少ねえ
ランブルローズの続編出たりしねえかな
それもそうだな。なら、何か書いてみるかな……
ただちょっと聞きたいんだけど、
戦いながらエロいことをして快楽で屈服させるのも、
倒した後でエロいことするのも、どっちもありなんだよね?
興味が出たんで簡単に調べてみたんだが、いまいち判然としなかったもので
とりあえず男と女のバトル有りで、それプラスエロなら良いんだじゃね?
力や技(競技)とかでも屈服させれそうだな
ゲームに勝つとか、スポーツとか
それでもいいかもな
問題は話の作り方次第か
ほしゅ。
ほす
次から投下。
※まだ屈伏させる所まで行ってません。
それと、狙ってガチガチの厨二設定+ポエムで書いたんで、苦手な方は酉をNGでお願いします。
22 :
『ブレイキン クラウディア』 ◆uC4PiS7dQ6 :2008/12/17(水) 15:36:54 ID:fDcuVU/j
1
掌が良い。と拳の先人達は言う。
掌底、平拳、正拳、抜手、指拳。
拳の握りは数有れど、掌底こそが相手を選ばず確実にダメージを与える術(すべ)だと。拳の先人達は言う。
その気になれば、女子供でも使いこなせる拳。
筋力では無く遠心力。強靭さでは無く柔軟さ。
外からでは無く、内から壊す掌の拳。気を纏えば浸透勁へと変わる臨機応変な八卦掌。
そこまでにメリットが有り、目立つデメリットは何も無い。なれば拳の先人達は言うだろう。「掌こそが最強の拳だ」と。
しかし、はたしてそうか?
異議を唱えるのは若き拳人。
掌が良いのならば何故、他の拳が存在するのか?
平手、正拳、抜手、指拳。それらが掌と同等に必要だから存在するのではないか?
本来は使い手の修練差だけで、五拳に差は無いのではないか?
そこで若き拳人は、「なればこそ」と思う。
掌と対極の拳、指拳を極める事こそが、新たな拳の開拓に繋がるのではないのかと。
母指(ぼし)、示指(しし)、中指(ちゅうし)、薬指(やくし)、小指(しょうし)。その中で使うのは一本。母指のみ。
「だがしかし」、
それを見た拳の先人達は嘲笑う。
相手の身体が鋼の様に固ければどうするのか?
鍛え上げられた肉体に指一本の指拳は有効なのか?
そう問われ、若き拳人は嗚呼(ああ)と哭く。
拳が衰退していった過程に心から嘆いた。
そんな考えだから拳は衰退するのだと。
だから頼らねばならない、氣に。
だから武の最強の座を渡さねばならない、魔法(ペテン)に。
だから証明せねばならない、最強の武を。
生涯の殆どを鍛練に費し、拳人は拳神と成る。
そして現代、その拳と意志を受け継ぐは一人。
受け継ぐは指拳。完成された拳の集大成。
受け継ぐは証明。引き起こす武の下克上。
「この世に仇成す邪悪を穿つは……」
伝えられし積年の願いが、代弁者を代えてここに成就する。
「拳神四分家が一つ、祁答院家現当主」
さぁ、現代の拳神よ……
「推して参るッ!!」
最強を証明せよ。
2
その早さ、天翔ける星の閃光。
四の腕と四の脚から繰り出される無呼吸連撃。
相手を畳み掛けるべくして放つ無制限弾膜。
『喰らえ』『喰らえ』と、一撃毎に祈りを付加して擲(なげう)たれる会心の一撃達。
されど見よ。
その祈りは高望みである。
そして知れ。
その願いは決して叶わぬと。
「くッ……どうなってんのよ!!?」
責め手は二人、受け手は一人の圧倒的有利な展開。
「全力で飛ばしてるのに!! どうしてっ!!?」
責め手は二人、受け手は一人の圧倒的有利な展開……だった筈。
優劣は直ぐに五分と成り、
責め手が一人、受け手が二人に。狩る側と狩られる側が事実シフト。
二人が繰り出す拳と脚は、攻撃する為では無く攻撃を防ぐ為に出されている。
「ライト、この距離で打ち合うのは!!」
拳神が放つは命奪の拳。
指拳を放てば肉を抉り、
正拳を放てば骨を砕き、
平手を放てば管を裂き、
抜手を放てば臓器を削る。
「姉さんッ!? クソッ!! ボクが押されてる? 引くっての!?」
どれもが必殺。
もし拳神の猛攻を凌ぐ手立てが有るとすれば、それは純粋な身体能力。幾年の歳月を鍛練に費やして得られる身体能力だけ。
百歳やそこらのガキではどうしようもない、まして魔法(ペテン)に頼るなど愚の骨頂。この状況では糞の役にも立たない。
だが、意識を高め、簡単な一節魔法を使うとしての詠唱、魔法の名唱、放つ動作。この四行程を僅か0.5秒で行える者が存在する。一部の才有る者と人の力を超えた者。拳神と対する二人も漏れずに該当する。これが最速。最速の発動時間。
されど悲しいかな。拳神を前にして0.5秒と言う時間は、秋日に夜を願う蛍の命よりも長い。拳神は0.01秒で相手の喉をブチ破るだろう。
他の武では追い付けない……百分の一、千分の一の世界がここに有る。
神殺しを最良の糧に、最強の武は解答されるだろう。
3
『ブレイキン クラウディア』
【白色悪夢〜LightMare Syndrome〜症候群】
12月23日。
ひらひらと初雪が降った。
街はゆっくりと白に染色され、唯一色のメイクアップを施して行く。
「すごいね、ボクを見つけるなんて」
そして一人。
降り続く雪に誘われて、白色の街に導かれて、降り続く粉雪の中、少女と出会った。
「ご褒美に、『君の願いを叶えて』あげるよ。あっ……勿論、代償は貰うけどね」
高層ビル間の細い路地奥。数メートル前後で二人は対峙し、互いに姿を確認し合う。
「さぁ、願い事の準備は出来たかな?」
少女の髪はシルバーアッシュ。根元まで同色の天然ショート。顔の幼さや身長から推測すれば、年齢は15程度だろう。
服は白地の『タンクトップ』で、胸元にアルバのロゴが入り、ホワイトゴールドのスカルネックレスを首から垂らす。
パンツとブーツも白で統一され、白の風景に現れた白の支配者。
「良い夢を……祁答院(けどういん)」
少女は真っすぐ前に左手を翳し、『背中に生えた白い双翼』を大きく広げる。
途端。
「永遠への手向けだ、ボクの名を刻んで落ちると良い」
グラリと、全身の力が抜けるのを実感。
膝から崩れ落ち、視界の中すらも白に侵される。
「ボクの名はライトメア=フィアード。白色悪夢のライトメアだ」
耐え切れず……
思考回路は闇に落ちた。
4
太陽の様に明るい笑顔を持つ貴女。その活力が僕にまで感染する。今日も頑張ろうって気にしてくれる。
LightMareDays 1日目
眩しい程の白。朝の陽光を浴びて、今日も俺は意識を呼び起こす。
「ふあぁ……っと。ううっ、寒い寒い」
一声を発し、伸びをした処で身体が震える。
「まぁ、寒い筈だよなー」
理由は即効で身に染みる。俺が寝て居たのはリビング。椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏しながら寝て居たのだ。
「12月24日って言ったら、すっかり冬だ」
テレビも点いたまま。朝のニュースでクリスマスイヴ特集が組まれているのを見て、今日で有る日付を知る。
「おはようございます、お兄ちゃん」
「んっ、おはよう紫琉」
聞き慣れた声に名を呼ばれ、腰を上げてから返事を返す。
障子を開けて部屋に入って来たのは双子の妹、紫琉(しりゅう)。
黒く長い髪に、白く柔らかな肌に、切れ長でウサギのように赤い瞳。そして女を意識付ける最高のプロポーション。
んなだから、双子なのに俺と全く似てない。
「もうっ、またリビングで寝てっ……ふふっ、こまったお兄ちゃんですねぇ♪」
ここは仙台の街外れ。俺ら家族が経営する温泉旅館。
でも今日から暫くは客も取らず、紫琉と二人きりで過ごす事になっている。
「今日ぐらい、朝から外食にしよう」
友人とも会わない。平坂とも真道とも霧……きり、キリ、きりかわ?
違うな、きりかわじゃない……んっ!? 待て待て。何で名前を間違えるんだ? もう一度、ちゃんと、思い出せ! いや、『思い出せ』ってこと自体がオカシイ。オカシイ。何かが、オカシイ。
「お兄ちゃんどうしたんです? 固まってますよ?」
紫琉の問いすら答えれない。それまでに不可解。それまでに不理解。刹那で陥った最高級品の疑心暗鬼。
「ふぅぅっ、はぁぁぁっ……」
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
即座に深呼吸で気を落ち着かせ、再度その名前を羅列させる。
落ち着けよ、ゆっくりで良いんだ。ゆっくり、ゆっくり、名称しろ。
ひらさ×、しん××、き××……あれっ? さっきと違う気がする。最初から、もう一度。
な×、も××、×××、××××××××××××××××。
数少ない友人の名が、親の名が出て来ない。例え名すら出て来ない。
「ッ!?」
一筋垂れて、頬に汗さえ伝う。この寒い冬に汗……どんな意味か自分でも分かっている。
だから俺は、思い出せない不安を拭いたくて、
「紫琉、今日ってみんな何してるんだっけ?」
その解答を紫琉に求めていた。
「えっ……と、お兄ちゃん?」
表情で分かる。これも駄目。これもオカシイ。紫琉はオカシイ台詞を紡ごうとしている。
「『みんな』って、誰の事を言っているんですか?」
畜生。やっぱり言った。紫琉も忘れているのか?
「ほらっ、父さんとか母さんとかさ……」
まだ諦めれない。紫琉が別の意味で解釈した可能性も有る。
頼む、答えてくれ紫琉。俺の不安を払拭してくれ!
「あらっ……お兄ちゃん『何を』言ってるの? 私達は、ずっと二人だけで生活して来たじゃない」
本当に分からないと言った顔で返してくれた問いの答えは、本当に分からない問いの答え。
ずっと、二人で?
ずっと、二人で。
ずっと、二人で……
「そう……だったね。ゴメン紫琉。何だか寝ぼけてたみたいだ」
そうだ。俺と紫琉は、ずっと二人だけで暮らしていたんだった。『みんな』何て最初から居ない。
「もうっ、今日ぐらいはしっかりしてくださいね」
「ああ、わかってるよ紫琉。今日は特別な……日だから」
一年で一度の聖夜。こんな神聖な夜になら神様も目をつむっていてくれる。例え兄妹でも……愛し合う二人が育む、禁忌とされる行為を。
5
月の様に優しい微笑みを持つ貴女。その気丈な言葉は、僕の身体を落ち着かせ、暑くする。
明日になれば、また太陽の様な笑顔を見せてくれると信じて、今日も僕は眠りに着く。
そんな紫琉に、これ以上何を求めたら良いのだろう?
「寒くないか紫琉?」
サラサラと冬なる冷気の風が、頬と肩を撫でて吹きすさぶ。
「私は暖かいですよ。お兄ちゃんは、寒いですか?」
舞い落ちるパウダースノーは、それだけで冷たさを連想させて体温を低く誘導する。
そんな街中。紫琉はジーンズにブーツ。ダウンジャケットを羽織り、親もお揃いのダウンジャケット。
「いや、俺も暖かいよ」
街を歩く俺達は、きっと兄妹に見られていない。
紫琉は俺の左腕に身を寄せて、微かな隙間も空けない様に両腕でしっかりと抱いて歩む。
俺の鼓動は紫琉に聞こえて、紫琉の鼓動は俺に聞こえて。相乗効果で心拍数は更に上昇。顔は紅潮し、身も心も暖かく。
「これから、どうするんですか?」
紫琉は俺の上腕に頭を預けながら、ショッピングビルの液晶モニターで『2時30分』と言う時刻を確認して、信号待ちの次行動選択を促す。
「ん……紫琉は行きたい所とか有る?」
二人で同色の黒いダウンジャケットを羽織り、温泉旅館を二人で出て、二人一緒にファーストフードで遅めの朝食を取ったのが11時。
そこからクリスマスイルミネーションの施されたセンター街でウインドウショッピングをして、長い信号待ちの今に至る。
「私は……お兄ちゃんと一緒なら、本当にどこでも良いんです」
俺の顔を上目で見つめ、離れたくないと願う妹の顔は、焦がれる程に愛しく思えて……
「紫琉と離れるなんて、考えもしなかったよ」
甘ったるい台詞を囁き、微笑んで紫琉の瞳を見つめ返す。
「おにい、ちゃん……」
紫琉は潤んだ瞳を静かに閉じて背伸びをし、
「紫琉……」
俺も僅かに顔を下げ、妹の頬に右手を添える。
「ずっと、好きだった」
それに今まで言えなかった告白を加えて、
「「んっ……」」
唇を重ね合った。
温もった声さえも重なる、とても神聖で、禁忌とされる行為。
横を通り過ぎて行く視線を気にせず、気にならず、時間さえも止めて、二人だけの世界で愛を唄う。
「んちゅっ、はぁっ……信号、また赤になりましたね」
惜しむ様に唇の重ねを解き、俺達は揃って目立つ赤を見る。
「ああ、ゆっくり行こうよ。まだまだ今日は長いから」
言い終わる直前に赤は消え、人波を動かす緑に移り変わった。
そして俺は、幸せな時を進む――
二人で恋愛映画を見た。人気が無いのか、客入りの少ない作品だったけど、俺達は充分に楽しんだ。
愛し合う義理の兄妹が、周りの祝福を受けて一緒になる話し。
どんなに幸せなんだろうと、画中の二人に嫉妬しながら、決定済みのハッピーエンドを見守ってた。
兄と妹の結婚式。現実の俺達には決して許されない背徳の儀式。
紫琉は俺の左手に自らの右手を乗せたまま、声を殺して涙を流す。
遠い日の紫琉と交した約束。『大きくなったら結婚しよう』。そんな幼い子供の盟約すらも無に返す、くだらない法律が存在する現実。
ああ……
ああ……神様どうか。
ああ、神様どうか教えてください。いったい俺達は、どこに行けば許されるのですか?
哀れな小羊達は、どこに行けば愛し合えるのですか?
小羊達の愛し方を、どうか教えて下さい……
6
LightMareDays 2日目
眩しい程の白。朝の陽光を浴びて、今日も俺は意識を呼び起こす。
「ふあぁ……っと。ううっ、寒い寒い」
一声を発し、伸びをした処で身体が震える。
「まぁ、寒い筈だよなー」
理由は即効で身に染みる。俺が寝て居たのはリビング。椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏しながら寝て居たのだ。
「12月24日って言ったら、すっかり冬だ」
テレビも点いたまま。朝のニュースでクリスマスイヴ特集が組まれているのを見て、今日で有る日付を知る。
確か昨日は紫琉とデートしたんだ。ウインドウショッピング、映画、高級レストランで食事、その後はラブホテルで紫琉と……ん?
何か記憶が抜けてる。可奈子と一緒に寝た筈なのに、どうして俺は温泉旅館で目覚めているのか? そもそも昨日は何でデートしたんだ? デートするなら、『イヴで有る今日』だろうに。
「状況を把握する必要が有るな」
椅子を引いて起立し、パジャマから着替える為に自室へと向かう。
オカシイ。嫌な……予感がする。
「紫琉、まずは紫琉を探さないと」
行動を起こすなら今だ。
思考能力が『正常』な今だ。
動いて、考えて、結論を出せ。
何を考え、どう動くべきなのかを……
7
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
深い呼吸で溜め込まれた脳内酸素までが、小休止の無い運動で尽き朽ちる。
「はぁっ、はぁっ、っ……ぐはぁっ!!」
短いインターバルも取らずに走り続ければ、言わずとも出て来る当然の結果。
もう何分走った? 覚えていない。
何時から走った? 考えたくもない。
視線をズラし、液晶モニターで映される時刻が、11時45分。旅館を出たのが11時。
簡単な算数。やっぱり疲れる筈だ、こんなに走ってるんだから。
雪が降り止み、夜の冷感温度でアイスバーンに変化した歩道。
そこを俺は、
「どこ……っはあっ、に居るんだよ紫琉!」
12時間45分も走り続けたのだから。
「しりゅ、うっ……」
終に両足は動かなくなり、激痛を上げて中断を申告。
日付の変わる空を仰ぎ、異常な呼吸を正常に整える。
街には俺が一人だけ。他には誰も居ない。後は何処かに居る紫琉。
そう。この世界は、俺達二人で出来ている。
後は存在しないし、『後』なんて無い。
記憶回路で覚えてる人名は、自分の名前と妹の名前だけ。たったそれだけなのに、それだけで満足してる。
誰にも咎められない。
誰にも非難されない。
この世界には二人しかいないから。
二人しかいないからオカシイ。
俺が立ち止まった先、横断歩道の向こう側。ソイツは佇む。
全身を白で纏め、視界に現れて異端を晒す。
俺と白との距離は、目測で二桁メートル弱。
読唇術を会得してる訳じゃないし、声が聞こえて来る訳でもない。でも分かる。白は口角を一字一字はっきりと動かし、俺に意味を理解させる。
「う、た……」
言葉は5文字。
「が」
視力は余り良くないし、読み違えてる可能性だって有る。でも解る。
「う、な」
意識下に直接で刷り込むかの如く、白の言葉が頭に響く。
8
「うた、が、うな?」
奴の言った台詞は、白の放った初言は、
「疑うな!?」
その存在以上にオカシイ内容だった。
「どう言う……事だよ畜生」
分かれ、分かれ、解れ。
この状況を、この現状を!!
「畜生、畜生……」
分かる、分かる、解る。
俺は何をするべきなのかを。
「俺は、俺は……」
今はただ、この溢れる感情のままに。
「俺はぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
東京の闇を降り払う為の咆哮。それまでに俺の叫びは大きく、
「ダメよ、お兄ちゃん」
俺の驚きは大きかった。
「ッッ!? しっ……りゅう?」
背後から探し求めた声が届き、身体中に小規模な衝撃が伝達。
「この世界が全て。私とお兄ちゃんだけの叶えられた世界」
紫琉の右手が腹部に見える。
「それを『疑う』なんて、絶対に駄目!!」
きっと、紫琉に背中から抱き締められてる。
「し、りゅ……がはッ!!?」
それなのに俺は、最愛の名を呼ぶ事さえも許されない。代わりに口から溢れるのは、ハイペースで流れ落ちる鮮かな血液。
「もう一度やり直しましょう。直ぐに『元通り』になるから」
確かに紫琉の右手は腹部に見える。
「なに、をいって……」
右手は腹部に見える。
右手は腹部から『生えて』見える。
俺の背面から貫き、『腹部に穴を空け』て血塗れの五指を見せた。
「次は私だけを考えてくださいね、オニイ、チャン♪」
後ろを振り向く事は出来ない。
下を向けば血溜まりが造られ、
前を向けば、
「なっ、ん、で……」
白と紫琉が戦っていた。
白は双翼を広げ、紫琉は長い刀を振るう。
白と戦うのは、『もう一人の紫琉』。
オカシイ。そう思いながら、俺の意識は消えて行く。
痛みなんて全く感じてないのに、死ぬんだなって理解出来た。
ゾプリと腕が引き抜かれ、腹にでっかい風穴が空く。
「お兄ちゃん!!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
駆け寄って来る紫琉の絶叫を聞きながら、俺は雪面の白夢に倒れた。
9
LightMareDays 3日目
眩しい程の白。朝の陽光を浴びて、今日も俺は意識を呼び起こす。
「ふあぁ……っと。ううっ、寒い寒い」
一声を発し、伸びをした処で身体が震える。
「まぁ、寒い筈だよなー」
理由は即効で身に染みる。俺が寝て居たのはリビング。椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏しながら寝て居たのだ。
「12月24日って言ったら、すっかり冬だ」
テレビも点いたまま。朝のニュースでクリスマスイヴ特集が組まれているのを見て、今日で有る日付を知る。
そして、視線を廊下に向ければ赤。
リビングの入口、
血沼に浮かんで、
仰向けに倒れ、
紫琉が死んでた。
続く。
Next LightMareDays
今回は以上です。
ちゃんと最後はスレタイ通りになって、エロるも入ります。
10
貴方の笑顔が見たくて、貴方の幸せを考えて、貴方を困らせたくない。
何も変らぬ様にと、貴方が幸せに成れば良いと、震える唇で強がる。
でも本当は、私のココロが欲しいのは、私のカラダが欲しいのは、私を求める貴方の声。
OtherSide 3日目
眩しい程の白。朝の陽光を浴びて、今日も『私』は意識を呼び起こす。
「うぅっ……はぁっ、全く」
高層ビルの屋上。貯水タンクに寄り掛かかり、身体を冷え切らせて起床する。
「昨日の『二択』は失敗したわ」
探すべきは兄。ライトメアじゃない。昨日はそこを間違えた。
だから、また繰り返す……こんな有り得ない現状の日々を。
この世界は偽りに満ちているって言うのに、この世界は疑う事を決して許さず、この世界の真ん中で私の兄は、この世界を繁栄させる為に哀を唱う。
「お兄ちゃん、待っててくださいね」
そう決意を込めて呟き、フェンスの上に飛び乗って仁王立つ。
「そしてライトメア……貴方は殺すわ」
冷風を受けて両腕を広げ、左手には『祁答院の化身』を握る。
「さぁ、It's‐a‐Showtime!!」
私は5秒間の自由を求めて、仙台の大空へと跳躍した。
11
「本当に変ってない。旅館が、まだ在るなんて」
旅館の入り口に佇み、懐かしい全貌を垣間見る。今の旅館からは想像も出来ない、古風で暖かな我が家の姿。
「この頃は良かったのに……」
玄関を開け、変らぬ内装を覗き、リビングを覗く『私を見る』。
「ッ!? 昨日も見たけど、確かに……ソックリね」
容姿だけじゃない。行動まで酷似して。
だから解る。
ソックリだから解る。
私が現れた事にも気付けず、幸せそうに魅入ってる。
リビングに見える大切な人の寝顔を、微笑みながら見詰めてる。
「ああ……」
きっと私は嫉妬深い。
「ダメだ……」
だってもう我慢出来ない。
「これ以上は……」
この世界に来てまで、お兄ちゃんを取られたくない。
「私の思いは……」
眼前の偽りを斬り殺せと、獣の心身が吠え捲る。
「こちらに向き直れ、フェイクドールッ!!」
お兄ちゃんは昼近くになるまで起きない。この世界は『そう言う風』になっているのだ。
だから、多少の咆哮等、問う処じゃ無い。
「女の嫉妬は哀れなだけよ。負け犬の紫琉ちゃん♪」
もう一人の私が勝者の駄弁を語り、ゆっくりとこちらに向き直る。
「へぇ……この世界でしか生きられない貴女が、私の何に勝ったと言うの?」
むかつく、ムカツク。ムカツク!!
私を見下す余裕の表情。コイツは絶対にアレを言おうとしてる。真意はどう有れ、精神的優位に立とうと思えば、ハッタリの一つもカマすだろう。私の最も傷付く最悪の言葉をコイツは……
「だって私、おにいちゃんに抱かれてるし」
笑顔で言いやがった。
「そんな嘘、私に付いてどうなるの?」
私は至って平静……を装う。
どうせバレてるのに。
「嘘だと思うなら、指をしゃぶって眺めてればいい。おにいちゃんは今日も私を抱いてくれるわ♪ おもいっきりナカを掻き回してぇっ、子宮がパンパンになるまで膣内射精するのっ♪♪」
「黙れ……」
私は、こんな人外にすら負けてしまうの?
「確かに私はライトメア様に造られた存在だけど、この気持ちは嘘じゃない。おにいちゃんの事、本気で好きなの」
「黙りなさいよ……」
私は負けたんだ。それが悔しい。どうせ無駄だと、告白すらしなかった自分に腹が立つ。
ズルズルと後悔ばかり引きずって、兄は結婚した身だと諦めて、私は何もしなかった。
「Your Looser……さっさと『この世界』から消えて。お兄ちゃんと私の生活を邪魔しないで」
ライトメアの人形は私を左手示指で差し、早く出て行けと罵る。
「黙れってぇ……」
お兄ちゃんを解放する為には、私の偽者も殺さなくてはいけない。
でもそこに感情なんか無かった。
「言ってるでしょッ!!」
でも、でも、でも。コイツを殺したいと全身から殺意が溢れて来る今は、純粋な嫉妬で動いてる。
「だいたい、ガラクタの分際で愛を語るなんて生意気過ぎ……ふっ、くっ、ははっ……は」
あーあ、自笑してしまう。
結局、全然吹っ切れてないんだ。
もう結婚しているのに。自分の姿に嫉妬する程、双子の兄をいつまでも愛しているんだ。
「この愛も本物になるわ。本物の貴女を殺し、お兄ちゃんと二人で生きていく」
私は誰にも……そう、婚約者にだっておにいちゃんを渡したくなかった。
聞き分けの良い妹だと思われたくて、お兄ちゃんの為だと思って、あの場は偽善的に「結婚オメデトウ」って言っただけ。「おにいちゃんを殺して私も死ぬ」って言えなかっただけ。
「なれば、その淡い恋心を抱いたまま……」
左手で祁答院の化身、名刀『童子切安綱』の鞘を持ち、右手を柄に添えてガラクタを睨む。
「死に逝け」
12
右半身前で脚を開き、重心と上体を極限まで低く。
「今日から私が本物になる。貴女には、消えて貰うんだからっ!!」
ガラクタも階段に置いて在った抜き身の刀を右手で掴み取り、正眼の構えで私に対峙する。
「人に仇成す悪を滅すは……」
私は気付けた、私の本当の思いに。だから私は、ちょっぴりだけどハイになってるらしい。
こんな饒舌に成り、ガラクタに同情さえ覚えて。
「祁答院家が断罪剣、祁答院 紫琉ッ!!」
さあ、さっさとガラクタを壊し、ライトメアを殺し、お兄ちゃんを救うんだ。振られても良い。もう一度キチンと、納得の行く様に、告白する。
「参ります!!」
言い終わりと同時、空気は冷気に、冷気は殺気に、油断は墓標に、周りの摂理が瞬間可変。
「負け犬の貴女とは違う。私は本物になって、この愛を叶えて見せるッ!!」
ガラクタから迸る黒い殺気は、痛い程に私の身体を射抜いている。
「私は……本物に成るんだぁぁぁぁぁぁッッ!!」
叶わぬ恋と知りながら、造られた愛と知りながら、二人で生きると夢を見るの? それでも、と。もしかしたら、と。
「無理よ貴女には。だって……」
「五月蠅い!!」
ガラクタは続く台詞を遮る様に巨声で廊下を蹴り飛ばし、
「死んでよッ!!」
次瞬にして私の寸前で刀を振り落とす。
「だって無理よ……」
ガラクタの初動も、向かって来る剣速も、私と同等に早い。
「死ぬのは、ガラクタの貴女だし」
でもそれだけ。確かに強いだろうが怖くは無い。何故なら、記憶からライトメアが造り出した物は全て……
「えっ?」
無惨成る『機械』だから。
「胴体を斬り飛ばしたつもりだったけど、流石は私ね」
勝ったのは、居合い抜刀で切り上げた私の剣。
ガラクタの剣は私に届かない。握った右手ごと廊下に転がっている。
「どうしてよッ!? スピードもパワーも同じなら、先手を取った私の剣が勝つ筈でしょうに!?」
血液に似せたナニカを垂れ流し、手首の切断面を押えてガラクタが叫ぶ。
「やっぱり……ソコまではコピーされてないのね」
所詮はライトメアの造り出した模造品。上辺だけの三流品だ。
「ふざけるなッ! 硬度や強度は私が上なんだ、人間の貴女より劣ってるモノなんてない!!」
ふっ、硬度? 強度? とうとう化けの皮が剥れて来たわね。そんな人間離れした事を言い出すなんて。
「そうね、夢の島行きの前に教えて上げるわ」
「ちっ!」
ガラクタはバックステップで間合いを取り直し、階段から二本目の刀を左手で掴む。
「普通は、始めに殺そうとする意志が在って、その後に剣が動く」
右腕を肩の位置まで水平に上げ、童子切の切っ先をガラクタへ。
「でもね、祁答院の剣は違う。意志よりも先に剣が動くの」
呼吸を整え、最上級の殺意を込めてガラクタを睨む。
「どう、言う意味?」
兄の平穏を奪う怨敵を倒す為……
「貴女の剣は私に届かない。そう言う事」
我が眼は険しく流移する。
「はっ、ははっ……そうか。私は上っ面だけの粗悪品なのね?」
ガラクタは呆れた声で含み笑い、
「お兄ちゃんに愛される資格すら無いのね?」
先の無い右肩に自らの刀を当て、
「ふふっ、はぁぁははぁぁぁぁぁッッ!!!」
そのまま右腕を切り落とした。
「っ!? バカね。まぁ、威勢と覚悟は買って上げるけど」
斬と音鳴り、断と音鳴って落地で離れ死ぬ。
「いたっ……ははっははははっ。どうせ、今日が終われば私にはリセットが掛かる。本物に成る為だったら、こんな重り! 喜んで捨ててやるわ!!」
私と対する形で残った左腕を上げ、互いに同刀の剣先を向け合う。
同じ構えを取り、同じ刀を持ち、コピーされた愛を信じ、兄が全てと思い込む。
13
「おにいちゃんへの愛を、その思いだけ私が連れて行く。だから……安心して壊れなさい」
この時点で決着は付いてる。語り合う間も無く斬り伏せられた。ここまで長引いたのは、ガラクタに対する、私に対する、単なる『情け』が在っただけ。
楽に、楽に。
「「ふぅぅぅっ……」」
互いに一つの深呼吸。取った行為は同じでも、その意味合いは全く違う。
落ち着かせるだけの呼吸では、戦闘者としての低域を抜け出せてない。
「このままだと、今日の私は出血多量で死んじゃうから……先に、仕掛けるわよ?」
目認できるガラクタの体重移動。半身で後ろの右脚に体重を乗せ、前脚の爪先を僅かに上げる。
「うだうだ言わずに、さっさと来なさい!!」
その体勢から繰り出されるのは打突のみ。剣技中最速で有る突きの構え。
「疾ッ!!」
人形が血溜まる廊下を跳ね飛び、二度目の攻防。二度目の後手。私の身体は木偶と成り、微動もせずに待ち受ける。
「ンッ!?」
やはり次瞬は眼前、相当に早い。体動のスピードだけで言うなら、私を超えるか? ただ、
「お粗末ね……」
私の剣は別だけど。
「お粗末過ぎるわガラクタァッ!!」
迫る刀と待ち惚ける刀が交錯する刹那、初聴する金属音が鳴り、私の静はガラクタの動を内側からのパリイで弾く。
「蹴ッ!!」
しかしガラクタは止まらない。弾かれた左腕の反動を利用し、先に着地した右脚を軸とする胴回し後ろ回転蹴り、『龍迅尾』へと繋げて来る。
狙いは左腹部でしょうが。変化に乏しい、セオリー通りね。
「フッ!」
重心を膝位置まで下げて身を屈め、左逆手の『鞘』を振り上げて龍迅尾を迎撃。
「「ハァァッ!!」」
内脚筋へ決まり、ビタリと完璧に左脚は止まる。一瞬で終始する静止空間。横に働く力は、上へと働く力に殺されたのだ。
「まだまだぁッ!!」
それでもガラクタは止まらない。三撃目は必殺。頭部を狙った打ち落とし気味の右爪先蹴り、『落燕蹴』へと連絡。
この一連の流れこそ、祁答院が得意とする連環討路の一つ。
「単純で」
それ故に読み易い。自技の死角を最も知るのは、それを使う私自身。
だがこれは、それ以前の問題なのだ。
「容易いわ……」
瞬間に、
「ねッ!?」
頭が高速シェイクされる感覚。ベストタイミングで落燕蹴を食らったんだ。左耳前部から打ち抜かれ、頬に一筋血が垂れる。
だけどね、
「貧弱ぅぅぅぅぅッッ!!」
結果はそれだけ。必殺の技が見せたのは、ほんの微かな掠り傷。
「なんでッ!?」
落燕蹴と同方向に首を逸して受け流しもせず、微塵も動かず受け切った。
「私の極技……」
鞘を手放して『硬気功』を解き、全身の集気を左掌に集約。
右脚で地を踏み締めて上体を上げ、ガラクタの晒す背面部に『その掌』を当てる。
「地獄の底まで持って行けッ!!」
後は流し込むだけ。内家から派生した、祁答院式の浸透勁を!
「雷光ッ短勁ッッ!!!」
これがキーワード。
これが断罪言。
これが、ガラクタを無に返す祁答院式の純気功、雷光短勁(らいこうたんけい)。
14
「うがあァァァァァァァッ!!!」
バチバチと雷気が駆け抜け、ガラクタが悲鳴し、爆発音を発して階段へと吹き飛ぶ。何度も横回転し、腹部を柱に強打して俯せに落ちた。
終わった、わね。例え時間で身体がリセットするとしても、今回に限って言えば終前の一撃。空腸を、回腸を、胃を、肝臓を、完璧の手応えで完全に壊した。残る作業は、トドメを刺して上げだけ。
「ぁぁ……うっ、ぐぅッ……」
声に成らない声しか出せず、こちらに背を向けて上半身のみを起こすガラクタ。
「やっと、諦めたのね?」
私はゆったりと歩き、再び左掌に気を集める。
ガラクタは……死を認めたのだ。この世界の明日は決して来ない。今日で終わる。即ち、これがガラクタで産まれて祁答院紫琉として迎える最後の死。
「何か言い残す事は?」
真後ろで片膝を着き、左掌をガラクタの後頭部に当てる。
「わ……しいわ」
思えば、
「えっ、小さくて聞き取れなかったわ。もう一度お願い出来る?」
勝ちを確信したこの行為こそが、慢心から出た油断だったのだ。
「私一人じゃ寂しいわ」
だから、
「ッッ……いい加減、おにい、ちゃんをっ……任せ、なさいよ!」
僅かな可能性にも気付かなかった。
ドスッ、と。ガラクタは刀を自らの胸に貫通させ、私の腹部に突き刺していた。
「痛ッ、たたた、っと」
身体を後ろに引いて刃を引き抜く。
痛みは有るが大丈夫。血は出てるが大丈夫。肉は切れてるが大丈夫。どれも外見だけだ、深くない。臓器は何一つ傷付いてない。全然と、支障ない。
「あっ、その声……生きてる、のね? ちく……しょう」
ガラクタは断末を吐いて横に倒れ、事を切らせて息を止める。眠る様に、眠る様に。命の鼓動は永久凍結。
私を極限までトレースした機械は、誕生して数日で呆気なく死んだ。
「お兄ちゃんとの思い出を糧にして、やすらかに逝きなさい。もう二度と会う事は無いでしょうけど、一生分の幸せ……貰ったでしょう?」
直立して童子切を鞘に納め、右手で小さく十字を切る。
どれ程に長く生き続けても、後悔しながら過ごす位なら、
「羨まし過ぎるわよ、貴女」
兄に抱かれて死に逝く方が、どれ程に幸せだろうか。
「ふぅぅっ、と。お兄ちゃんもそろそろ起きるし、最後の仕上げを……しなきゃね」
童子切を『もう一人の私』の横に放り投げ、閉目して刮目。お兄ちゃんの寝顔を一瞥し、最重要の覚悟を決める。
15
「お兄ちゃん……私、行って来ますね」
消え気味に呟き、血塗れの廊下を歩いて玄関を出て、存在しない我が家に最後の別離。
「さぁ、ライトメア。クダラナイ私達の関係、そろそろ断ちましょう」
冬の空を仰ぎ、冷感の酸素を吸い込み、
「命乞いしながら待ってろ! ライトメアッ!!」
最大テンションで跳躍。一足で数十メートルを飛び越え、ビルの側面を駆け、仙台を走る風と成る。
嗚呼……
唯々。
唯々、獣為れ。
他に何も考えず。
何よりも早く。
何よりも遠く。
何よりも高く。
それだけを展開。
それだけが展開。
思考はいらない。
唯々。
ひたすらに。
跳べ!!
嗚呼……
だから見落とした。
一途な私は気付かない。
私の命を狙う、鬼の爪が在った事に。
続く。
Next LightMareDays
今回は以上です。
次辺りからスレタイに沿って来ます。
なかなか良いじゃんすげーじゃん
GJ!
屈伏描写まで待つぜ
16
LightMareDays 3日目
朝 起きたら 紫琉が 死んでた。何て悪夢。
赤くて(あかくて)、
紅くて(あかくて)、
朱くて(あかくて)、
錆の香を漂わせ(とても)、
狂気を駆り立てる(あかい)。
俺を絶望に叩き落とし、より一層に色付く廊下に横たわる。何て残虐。
死んでる紫琉を見下ろして、嗚呼。と哭く。
部屋に戻り、服を着替えて、リビングに戻り、死体を再見する。
嗚呼、嗚呼。
これは夢だ。と目を閉じて、夢で有ります様にと目を開く。
「はっ……何だよコレ?」
変わらない。
何等カワラナイ。
赤く冷たく色付いて。
廊下の上、血沼に浮かんで、紫琉が、死んでた。
嗚呼、嗚呼。嗚呼……
「ああぁぁああぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!! 紫琉、しりゅ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
なんで? なんで? なんでっ!!? どうして可奈子が死んでるんだッ!!?
どうして? どうして!? どうしてっ!!?
「ァァァ……ぁっ、終わっ、た。なにも、かも……」
終わった。この世界も終わりだ。俺の望んだ世界は、紫琉の死を以て幕を下ろす。
幕を? 何でそんな事を思うんだ? まぁ、どうでも良いや。こんな世界。紫琉の居ない世界に意味なんて無いし。
ここに在るのは、静に変わって生を失った最愛の身体だけ。
「し、りゅ……」
ガクリと両膝を着き、両手を着き、わんわんと子供みたいに泣いた。
紫琉の赤い血液で、俺の身体も汚れて染まる。
「しっりゅ……」
涙を指で拭った。
顔も滑り(ぬめり)と汚れた。
「死のう」
決断を。
紫琉の居ない世界で生きて行けるか?
無理だ。
なら、どうする?
このまま生きていても、生きているだけ。身体が動いているだけだ。心は紫琉と共に死んだ。
なら?
共に墮ちるさ。二人で落ちる地獄なら、きっと恐くない。
「待っててくれよ紫琉……今度こそ守るから」
そうと決まれば早かった。
血乾く廊下で正座し、膝の上に紫琉の頭部を乗せる。
「膝枕、で良いだろ紫琉? 抱き合って、とかさ。ガラじゃないって言うか……悲劇の主人公っぽくてさ。だからこれで、なっ?」
後悔無い筈は無い。どうしてこんな事になったのか、真相を確かめたい。ただ、そんな気力が無いだけ。
「みんな、本当にゴメン」
みんな……みんな? みんなって、誰だ?
「みん、な?」
数間で考えてみるが、そんな奴等は分からない。
「どうでも……」
そして、死に際の俺には関係無い事だなぁと思いながら、転がる凶器の柄に右手を伸ばした。
17
OtherSide 3日目
冷たい風が突き抜けて、ひらひらと雪が舞い落ちる。そんな世界。
そんな世界でも、ライトメアの姿は、確かに肉眼で見えていた。
街の中央。有料公園の中央。白きエンペラーが悠然と佇む。
もう、繰り返させない。何もかもを、今日で終わらせる!
意気込みは十分。気合いも十分。ハイなテンションモアベター。
イケる、イケる、イケる!!
腹部の負傷を差し引いても普段よりずっと調子が良い。交換神経が最大まで活性化し、冷風を切る頬の感触だけでイケる位にアドレナリンが出てる。
血管は収縮して血液の流出を押さえ、瞳孔は拡大して敵を捕捉。
「カッ、やってやる!! 殺ってやるわライトメアッ!!」
公園の入口過ぎに着地。次の一歩でライトメアの数歩前まで飛べるだろう。
だが叶わない。
瞬間、着地した瞬間。
「ぐぎっ!?」
情けない苦声が漏れ、左腹部で激痛が爆ぜる。
地に足を着けた僅かな瞬間。その僅かな瞬間に、黒き鬼の爪は、私の身体へと届いていた。
「ふぅッ……」
即座に身体を右へ飛ばす。
「つうッ!!」
このままではマズイと、この不意打ちを受け切れば死ぬと、力の抜ける方向に跳べと、身体が頭脳に呼び掛けて反応する。
同方向に駆けるスピードで競り勝ち、鬼爪が鮮血を散らせて抜け出、空中で身体を捻って鬼に向き変え、
「コレを外す!?」
鬼の苦汁表情を覗く。
繋げる動作で後方滑走へと持って行き、黒き鬼爪の女を睨み捕らえる。
「流石ね祁答院のお嬢ちゃん。不意を討とうなんて考えなかったけど、お返しよ」
戯言で姿を見せたのは、白と番(つがい)に成ろう黒き異端女。
「何匹も何匹も悪って奴は、倒しても倒しても限りが無い……」
有りっ丈の皮肉を込めて、台詞と血唾を吐き捨てる。
「まぁ、その悪を斬り捨てる事が祁答院の神髄なれば」
女は腰位置まで来る程の長髪ブルーブラックで、全身を黒のライダースーツで包む。
「あら、悪だなんて酷い。まぁ、フフッ……それこそ悪の神髄なれば」
そして『巨腕』。身体の中、右腕だけが倍近くまで膨張し、肘の延長線に螺旋角を生やす。
「死んだ筈の貴女が、私の前に現れるなんて、どんな因果か理解出来ないんだけど? まぁ、蘇ったとしても怨恨は消えず……故。祁答院を継ぎて、怨恨節操のツルギと成りて、貴様と因縁を再び斬り捨てる!!」
二桁メートルの地面滑走からピタリと止まり、右手示指で女鬼を指し、そのまま指を空に向け滑らせ、天に帰れ、と意志を告げる。
続けて体変。両足を肩幅まで広げ、両手は身体正中線上で右手を眼前、左手を股前で五指を開いて牙の容姿を真似。これこそカウンターに重点を置く拳神四型(せんしんしけい)の一つ、森羅万象の構え。
「お嬢……相も変わらずのビッグマウスね」
倒すべきは白と黒。各個撃破は上等手段。と考えるのが普通だが、むしろ戦いの定石は危険。一人づつ潰そうと考えるのは危険だ。この死合いで狙うのは、僅かな隙に叩き込む一撃必殺。二匹同時に沈める術(すべ)。
18
「敗者が敗北を認めず勝者を追い、勝者で在る私は再び返り討ちにする。あの時は油断したなんて、言い訳にもならない」
私の挑発台詞に、鬼が分り易い苛立ちの表情。
「へぇっ……言うわね?」
これも布石。饒舌で語り、心理戦を仕掛ける。
はっきり言って苦手な分野だけど、有効な相手には使う。その先に初めて『勝率』が見えて来るから。勝率は3%……有れば良いか? って違う! そうじゃないのよ!!
そうじゃない。『3%は高い』。今が最高値。ここでしくじれば、仮に私が生き残ったとしても、生涯3%越えは無い。勝率はどんどん低下する。だから大切なのは今、この時、この瞬間。3%を狙い叩ける実力と運が、この私に有るかと言う事。
女鬼の手爪は指の長さを越え、右肘部のライダースーツは破れ、身長程の角が肘から伸びて存在を示す。
「お嬢……死ぬ、わよ?」
言い争いは無意味と悟り、深い溜め息を吐いて人外の右腕を正面に構える。
「祁答院は不退転ッ!」
閉目。
刮目。
そんな事は、計るまでもなく分かっていた。
「悪には悪の正義が有るんでしょ? なら、力尽くで推し通れ!!」
数日前の悪夢。この女鬼一人に、祁答院の家系は潰され捲る。家族も従兄弟も親戚も、母を守ろうとして父も殺された。
母だって半死で半壊。右目を失い、左腕を失い、伴侶を失った。活力を失い、表情を失い、言葉を失い、髪の色素は薄くなり、いずれ訪れる確かな死を、ベットの上で毎日待ち。最前線で戦い続けた勇騎は、日々を幽鬼と変わり果てて過ごす。
その戦いで生き残ったのは、母と私。お兄ちゃんも新婚旅行に行ってて助かった……されど三人。祁答院で生き残ったのは、たった三人だけ。
「実力は白昼の筈よ祁答院嬢? 今度は油断しない。足の腱を裂き……ふははははははははっ♪♪ 死ぬまで愛玩として飼ったげる!!」
でも、それでも!
この女は、私が、確実に斬り殺した筈だ!!
刹那の虚を突き、背後から斬った。
あの時はそうするしか無かったから。
蟻と鼠、鼠と猫、猫と虎、虎とティラノザウルス、ティラノザウルスと核ミサイル。
それ位に『力』では天地程の差が有ったから。
卑劣と知りながら、刹那の不意を討った。
「それは無理な話ですねナイトメア。そっちのライトメア共々、私の刃で斬り伏せる!!」
あれから数日。実力は縮まっただろうか?
「武器も無しで、どう斬り伏せると言うのよ?」
刃なら、在る。
「我が刃は信念……」
呼吸法で丹田に大気を集め、練気として全身に渡らせ流す。
「如何な邪悪も打ち砕く、唯一無二の剣(つるぎ)也!!」
敗北を喫する時は刃折れる時。私の心が負ける時だ。
されど鋼。刃は鋼。そう易々と折れたりはしない!
「だってさ、姉さん……ボクは昨日遊んだけど、人間にしたらけっこうできるよ?」
ダラダラと歩いて来たライトメアはダラダラと語り、ナイトメアの左に立ってダラダラと構える。
「遊んでた、んでしょ?」
19
「当然。でもまっ、この世界のカラクリを解かす訳にもいかないからね、ここで殺しちゃおう」
白が黒と左右対象を取り、風雷の構えを成す。
はっ……遊び、か? 言ってくれるわね。こっちは一撃捌く度に腕が痺れてたんですけど。
「折角だし、久々に全力を出して見ましょうかライト?」
目線だけをスライドさせて黒が問い、
「そう、だね。祁答院紫琉……お前の家族はボクの期待を裏切った。ボクは満足してないんだから、しっかり……あがけよ?」
白が応える。
引き継ぐ、因縁。
発端なんて分らない。
分るのは、ナイトメアとライトメアが私の家族を殺したって事実だけ。
そして今、私が仇を討つって真実だけ。
この黒と白の姉妹に、お兄ちゃんと私以外の祁答院は皆殺されたのだ。
「我は、光と機物の神ライトメア。最後の勤め、見事果たせ……はぁぁッ!!」
――――――――ッッ!!!
大気の流変を肌で感じる。
豪々(ごうごう)と白黒を中心に激しく渦を巻く。
「我は、闇と万物の神ナイトメア。我等が二神は、貴女を敵と認め、死力を尽す事を誓いましょう……はぁぁッ!!」
――――――――ッッ!!!
真昼の月を頭上に背負い、キャパシティーを越える暴力が公園を震わせる。
挑発は効果無し……みたいね? 打てる手は打ちたいけど、もう遅い、か?
「機神ッ!」「鬼神ッ!」
同発音の言葉を重ね、
「「降ッ臨ッッ!!!」」
渦巻く大気を喰らい掻き消す。
一瞬にして白黒の光が視界を包み、世界の全てをセピアに幻視させる。
「くぅッ!?」
違う。幻視じゃない。世界を見せる光の三原色が、白と黒に拒絶されデリート。
色彩は死に、色相は鎖を断ち切られる様に息衝く。
「命を賭せ、祁答院紫琉。一分一秒でも多く、ボクの惰性を解消しろっ!!」
されど烈の瞬き。セピアは吹き飛び、ゆっくりと光と色の三原色が復元される。
「お嬢……お祈りは済ませなて置きなさい。目の前に折角、二人も神が居るんだから」
ならば再び。白と黒は世界を纏う。
「そう、ね」
感じる、感じる、感じる。元素(マナ)の鼓動を、元素の胎動を!
辺りの元素が喜び狂い、マスターの現界に歓喜してる。
「Go To Hell。とでも、言えば良いかしら?」
口から出るのはセメテもの強言。虚しさが込み上げるだけ。
嗚呼。こんな神(ペテン師)じゃなくて、本当の神様(救世神)。
嗚呼、ああ神様どうか、愚かで我儘な私を救って下さい。
「I wish……」
そして願わくば、残された私達兄妹に祝福を。儚くても素晴らしき未来を!!
20
「祁答院の末裔、祈りは済んだ?」
運命を切り開け、開拓しろ! 奴等は『力』有るが故に無防備。必ず倒せる。
自信を持て祁答院紫琉。
「ええ……1ラウンド3分以内で、そこの二人を軽くKO出来ます様に、ってね。きっと叶うわ」
呼吸を整えろ、初動の時は近い。恐怖を払う為の強がりも、やはり必要だ。得意じゃないけど、自分のペースに持って行ける。
「だってさ姉さん。どうする?」
同タイミングで攻めて来れば、二人に纏めてカウンターを合わせ、一手目で落とす。
私が生き残り、白と黒が死ぬ。それがベスト。
刺し違えるのが次。
最悪でも白、私が死ぬとしても白は殺す。
お兄ちゃんだけはこの世界から出さないと駄目だ。
「無論……」
黒の口元が吊り上り、殺気は尚も膨れ上がる。
白と黒、来るか!?
「却下よッ!!」
その台詞が合図。殺気を暴力に変換する代言句。
風雷の型が崩れ、黒が先行して迫る。アスファルトを蹴り飛ばし、自らを超速の弾丸と化す。
「ちッ!!」
惚ける私は舌を打つ。
戦神四型の構えは、最初から裏目が決まっていた。
森羅万象は一撃のカウンターを放つ為の構え。一撃のカウンターを放つ為の森羅万象。敵の攻撃に合わせ、必殺を叩き込む型、そこに終始する。
何からも連携は取れず、何にも繋げられない。必殺なのだから次は必要無いのだ。幾ら隙が出来ようが関係ない。不測なんて起こり得ないんだから。
「こおぉぉぉぉぉッ!!」
瞬時に構えを解き、両掌へと気を集めて胸前に置く。
「お嬢ッ! 初手詰みよッ!!」
コンマ単位の重なる間で、『羽を生やしたナイトメア』が人間の左腕を突き振るう。
「ヌルいわナイトメアッ!!」
単純で直線的な左ストレート。私の顔を標的に放たれたフェイント一手。
これを受け切れば死ぬし、捌いても本命の右腕が飛んで来る。
なら、私が現状で取るべきベストセレクトは……
「反応も出来ない木偶が何をッ!!」
黒の左拳を包む様に両掌で受け、そして接触の瞬時。その瞬間に、
「疾ッ!」
自身の身体を後ろに飛ばす、一連で行うダメージ吸収。接触は許可するが、インパクトは許可しない。
「ッッ!? っ……やるぅ」
不意打たれた時と同じ。僅かな距離の追撃はさせるも、女鬼が先に足を着き、そこから二桁メートルも多く私は下がる。
「疾ィィッ!!」
だが終わらない。
体は止まるが間髪置かず、三度目の跳躍、三度目の後方地面滑走。
「ぐっ……白と黒。なるほど、そう言う事?」
自販機に背部を強打して止まり、白と黒を視界に入れて立ち構える。
「随分と面倒な戦術で来るわね、と」
理解。
理解ね。
理解したわ。
つまり……
捉えろ! 常に二匹を同時に!!
白が迫れば黒を注意し、黒が迫れば白を警戒する。しなければならない。それを怠るはタブー。死を意味する。
「流石は祁答院。勘が良いね……」
三度目の跳躍をした場所。そこにライトメアが立居。
巨大な剣を左手だけで振り下ろし、その風圧でアスファルトの地面を削る。
避け切れてない。背中に打ち身を作る覚悟で跳んで無ければ、完全にアウトだった。
そしてあの武器、なんて禍々しい。
「よしよし、気を抜くなよ祁答院紫琉。どんどん加速して行くぞ」
45 :
『ブレイキン クラウディア』 ◆uC4PiS7dQ6 :2008/12/18(木) 12:13:33 ID:vQ62azz8
21
白の世界で白の支配者が持つ白の剣。いや、白と呼ぶには余りにもメタリックでシルバー。
幾分の柄と、自らの身長を越そうかと言う両刃長剣。刀身が機械的に輝き、払拭する異様がそれを凌ぐ。
「暴虐と残虐の機光皇子(ハイヒドゥン・リィバスター)。祁答院の血筋を葬る剣だ、覚えといて」
言い退け、重々しさが伝わる切っ先を私へと向ける。
「あらライト。もう見せちゃうの? なら私も、魅せちゃおうかしら?」
完結してない。異様は感染する。白の更に遠く、『蝙蝠(こうもり)に似せた羽を生やした』女鬼にも。
「はっ……まだ?」
確率はまだ下降途中。
まだ分が悪くなると言うの?
女鬼は体の前面を左前にセットし、空に掲げた左掌に黒の異様を召槍する。
「我が手中で啼き震えるは、焦がれを喰らう盲目龍!!」
この空の青も、
この吐息の白も、
この血液の赤も、
狂おしい程の黒』凌駕する。
堕海の闇(あお)も、
無明の薄(しろ)も、
命奪の朱(あか)も、
全愛を喰らう凶(くろ)が支配する。
「我が名より出よ、闇夜を愛する色滅龍(デスベェル・ガンツァート)!!!」
ナイトメアの呼び掛けに応じ、
原子構築(サラサラと)、
分子構築(形作り)、
粒子構築(この物質界に)、
槍に成る(顕界する)。
鬼の左掌に現れ、真一文字に黒を見せ、
私を喰らう為に、
命を喰らう為に、
二本目の角と成りて一槍に昇華。
白の剣を余裕で超す全長黒槍。
「絶望的、って……思わないかなぁ……ねぇ、お嬢?」
解るわよそれくらい。お前等が込み上げる笑いを必死で噛み殺してるのも解る。
童子切さえ有れば女鬼の方は殺れたかも知れないのに、あの判断は早計過ぎた?
「……カッ」
否、よ。過ぎたるを悔やむな。お兄ちゃんを助けるのが優先目的だった筈。
なら、全力で飛ばせ祁答院紫琉!!
変わるかも知れない未来を、両手で掴み取れ!!
「はんっ……ぶった切れろぉぉぉッッ!!」
白の咆哮。
手も届きそうな至近距離に現れ、私の胴を分断せんとする白の薙払い。
「チィィィィッッ!!」
それを『引く』では無く、『低く』踏み込んで躱す。
剣の軌道が頭上を通過し、鈍い金属音を鳴らしながら代理の自販機を分断して行く。
「なッ!? この動きッ!!?」
取った。完璧。
反撃不能の零距離、完全密着。左掌にハイテンションな気を集め、ここから繰り出す私の攻撃は、ライトメアを殺れるだろう私が保持する唯一の術。そしてこの上無く……
「天に帰れライトメアッ!!」
一方的!!
22
……だった筈の過程。
既に身体は満身創痍。
「えっ? えっ?」
私は間抜けな声を漏らし、この結果を理解出来ない。
「お嬢ごめんなさいね。『魔法』……使っちゃったわ」
ナイトメアの声に反応して見上げる。
見上げる?
「助かったよ姉さん。何かヤバ気な攻撃だったし」
私は地面にお尻を着き、巨木を背に当て、黒と白の姉弟を見上げる。
必殺を放つ筈だった左手は、動かない。
「いたっ、いよぉっ……」
私の頭より上の位置で、黒の槍に巨木ごと貫かれていた。
左掌に開けられた穴。
ヌルヌルと血液が腕を、幹を伝い、私の顔を汚して流れる。
あ、早く抜かなきゃ……
「う、ううっ」
痛い。このままじゃ死んじゃう!
槍の柄に右手で掴み、引き抜こうと力を込めるが、
「だーめーよっ♪♪」
グチャグチャと音を立てて槍を捩じられ、激痛で力が入らない。
「ひぎぃっ!?」
口は閉じれず、魚の様に酸素を求める。ガラクタ以下の無様な私。
こんな傷だらけの身体じゃ、生き残っても愛して貰えない。
「悪いね祁答院紫琉……ボク達も一応は神だからさ。魔法なら使えるんだよ。それを使わないで戦う事が楽しみだったんだけど、あなたが『こう』なっちゃったら、もう無意味か」
私はコイツ等の能力を見誤っていた。
自然に、気になどせずにいたが。火花をバンバン散らせるだけが魔法じゃないんだ。武器をどこからか取り出したのだって、魔法と呼べないだろうか?
「一瞬で楽にしてあげるよ祁答院紫琉。これが祁答院と言う血筋の……」
ライトメアは私の正面に立ち、私の運命を終わらせる白機剣を振り上げる。
それを境に世界が二つに分かれ、ガキンと風切る音が響く。
「幕だ!!」
続く風音で剣が打ち落とされ、
私は眼を瞑(つむ)り、視界を黒く染める。
だれに乞いても叶えられない、兄の無事を祈りながら。
続く。
Next LightMareDays
23
何の前触れ無く思い出されるのは、中学へと入学した時の記憶。
その時……
私は自分が怖かった。
たかが十二歳の思考回路には、一線を危する思いばかりが詰まっていたから。
「私は、最低だ……」
何度も続く自己嫌悪。
兄のシャワーシーンを覗いた事も有る。
四度目ぐらいになると、脱衣所で兄の衣服の匂いを嗅いだりしてた。口に咥えて声を殺し、バレないかとドキドキしてた。とても……興奮してた。
トイレの音を聞いた事も有るし、外泊で居ない時は兄のベッドで寝た事も有る。
お兄ちゃんの私物を使い、私の身体はドロドロに溶けて行く。
その度に甘い吐息を吐き出し、その度に「最低だ」と吐き出し、その度に自己を嫌悪して呪う。
「私は、最低だ……」
発端は六歳の時。親の部屋で裏ビデオを偶然見つけて再生した時に、私の普通は無くなった。
「ばか……簡単に見つかる所に置いとくから」
七歳で自慰を覚え、九歳で『したい』と考え始める。
ませたガキから、変態へと悪質進化した時期。
対象は自身の兄で、気付いた時には好きだった憧れの人物。
どこが好きだ? と問われれば『全て』と答え、
いつから好きだ? と問われれば『産まれた時から』と答える。
そんな愛しい兄とデキたなら、どんなに幸せだろうと。幼い頃からずっと妄想を膨らませてた。
この禁忌とされる思いを抱く事が、こんなにも辛いとは微塵も知らず。
ほんの一時は、彼女に見える様に、それっぽい言動や振る舞いをしようとしてた。しかし一時。すぐにボロは出る。
兄が成長する度、知り合いが増え、友達が増え、私達の関係が露見した。
お兄ちゃんに悪い女が付かない様に。お兄ちゃんの為だ……何て、自分には言い聞かせてたけど。
「自分の為でしかないよ」
この考えも、
兄を守る為か? と問われれば『YES』と答え、
自分の為か? と問われても『YES』と答える。
結局は兄を独占したいだけ。
私は、兄の祁答院 秀光(けどういん ひでみつ)とエッチしたいだけ。
算高で、利己的な……Egoistic Virgin。
24
懺悔は済んだ。走馬燈はもう良いわ神様。
眼を開けば天国に居る? それとも地獄?
なぁんてね。お兄ちゃんのいない世界なんて、どこも地獄よ。
だから来世は、
次に生まれて来る時は、
いえ、次に生まれて来る時も。
お兄ちゃんの妹になりたい。
今度は、頑張れる気がするから……
LightMareDays 4日目−1
兄の存在しない地獄を直視する為に、瞼を……ゆっくりと、開く。
白の光が溢れ、
「あ、れっ?」
初見で両の眼に写るのは驚愕。
驚愕の白と黒。
驚愕の表情を浮かべる、白と黒。
「イタっ……」
新たな傷を感じ、右肩を左手で押える。
「たっ」
ダメージ把握。何て事はない。服は裂けてるけど、単なる掠り傷。敢えて言うなら、押えてる左手のが重傷。
「と」
問題が有るとすれば、空手で腕を振り下ろしたライトメアに、空手で腕を突き出しているナイトメア。
ぶっちゃけ、勘弁して欲しい。
地獄に来てまでコイツラの顔を見たくないよ。
それとも、これが地獄の刑なの? 私は地獄に居るんだ?
だとしたら悔しい。何年待ったって、お兄ちゃんはやって来ないから。お兄ちゃんは、天国に行くだろうから……
でも、でも。
地獄の炎に身体を焼かれても、この想いは消えない。
何度生まれ変わっても、何度死んでも、いつか必ず巡り逢う。
母親だったとしても、
子供だったとしても、
男だったとしても、
猫だったとしても、
花だったとしても。
これは誓いだ。立場は違えど必ず。お兄ちゃんの側に居る存在で在りたい。きっとそうなる。
「いつ、生まれ変われるのかしら……」
願いが言葉へと出る程に私の想いは強く、
「何をしたんだ祁答院紫琉ッ!!?」
映る驚愕は大きかった。
25
「ライト、お嬢のマインドは抜け殻よ。落ち着きなさ……」
「落ち着けないよッ!! 消えた処か再召も出来ないんだよ!!?」
白が両手で自らの頭部を押えて震え、黒は白の肩を抱いて宥めようとする。
「このボクは準神とは言え神。それも、ボクが造り出した世界で、何の影響を受けるの? 何で魔法が解除されるのっ? キャンセルされるの!? 答えてよ姉さんッ!!」
白は信じられないんだ。
怖がっているんだ。
恐怖とは即ち知らぬ事。
考え及ばないから恐怖する。
「可哀相なライト……お嬢を殺して、私達の世界に帰りましょう?」
未だ存在する鬼の右腕、鬼の角。
「ふぅっ……と言う訳なのよ、バイバイお嬢。貴女の恨みは果たせないけど……それを見てる分には、まぁまぁ楽しめたわ」
怠惰で吐かれた溜め息と台詞が終わり、無造作に鬼の爪が私の首を掴む。
「あっ……」
ツプリと鬼爪が首に食い込み、私は短い悲鳴を上げる。
死ぬのかなぁ……
もう地獄に居るのに、また死ぬんだ私?
「貴女を殺したら、元の世界に戻るわ。ここには二度と来ない。本当に、サ、ヨ、ウ、ナ、ラッ! お嬢ぉぉぉぉぉッッ!!!」
黒の表情が険しく変化。鬼の右腕が更に膨張する。
「がっ、ぁぁっ……」
気道が急激に締め付けられ、呼吸を止められ、私の意識は崩壊。無意識で出す醜い呻き声は誰に宛てた物か?
「ははっ、祁答院紫琉……死ねよ。お前が死ねば、きっと謎は解ける。安心して世界に帰れるんだ!!」
嘲笑う、狂気に塗れたライトメアの喜々顔。
最初は白に斬り殺され、次は黒に締め殺される。
二度も訪れる、これが最後の光景?
これが罰ですか神様? 自らの兄を愛した罰ですか? それなら、お兄ちゃんは私を愛していませんように。
この苦しみをお兄ちゃんにも与えてしまうなら、私を嫌っててくれたって良い。
スケベでバカな妹だ、ってケナしてくれても良い。
私が一方的に愛してただけですから。どうか、どうか神様、お兄ちゃんには罰を与えないで下さい。
どうか神様、どうか……
そして私は眼を瞑る。
愛した兄の無事を祈りながら。
――ザッ。
「そう急(せ)くな。ゆっくりしていけよ、ライトメア」
そして私は幻聴する。悲しく成る程に愛し過ぎた、この世でたった一人の愛しき声を。
26
おにい、ちゃん?
「あぁ!? 何でオマエがボクの名を思い出せる?」
「ッッ!? ライト、一度距離を……」
言葉の結末。私の首は開放され、白黒の気配が近くから失せる。
執り代わり存在する気配は、寄り掛かる巨木の後方。
「すまない紫琉……随分と遅れた」
眼を瞑っても感じられる愛する足音。愛する声。
「こんな傷だらけになってまで、俺を守ってくれてたのか?」
「あっ、ぁぁっ……ぅぅ」
そのセリフで眼を開ける。お兄ちゃん見ないで! そう言いたいのに、出て来る音は擦り切れ声。
「喉も潰されてるのか!?」
「あぁ、ぃで。あぁうぃ……」
兄の顔は正面。片膝を着いて視線の高さを合わせ、悲しみを多重に浮かべた瞳で、私の頬に左手を添える。
「あぁ、ぃで。あぁうぃッ!!」
私は、泣いてた。
涙を流して、伝わらない言葉を続けて、私を見ないで、と頬を濡らす。
違う。
違うよ神様。
こんな形で逢いたかったんじゃない。
こんな哀れみを貰いたかったんじゃない。
自慢だった髪は痛み、
顔は擦り傷と血で汚れ、
喉を半分潰され、
右肩を斬られ、
左掌には穴が開き、
腹部には二ヵ所の刺し傷。
こんな姿、死んでも見せたくない!! 見せたくない、のに。
「声を出すな紫琉」
そう言って頬に添えていた手を喉へと滑らせ移し、暖かい体温で私の喉を癒す。
「やっぱり、夢ね……」
お兄ちゃんが気功を使える筈も無いし、
「お前の受けた傷、俺が百倍にして返してやるから……」
こんな私想いの言葉を掛けてくれる筈も無い。
「もう、休め」
それじゃあ、次に眼を覚ました時には、何処に居るのかしら?
疲れ切り、私は、眼を、閉じた。
27
END OF LIGHTMAREDAYS
眠れる紫琉の身体を横たえ、その脇に童子切を置く。
「久し振り、久し振りだよ、マジでさ……」
大地に苛つきをブチまけ、強踏してムーンサルト。空中で身体を半回転捻り、可奈子から数メートルも離れて白黒の雌と対峙する。
「こんなにも誰かを殺したいと思ったのはなぁ、ライトメアッ!!」
殺せ、殺せ、殺せ。
白を、黒を。自らが造り出した棺桶から決して逃がすな。
「はぁ? 何を言ってる!? 初級呪術にも簡単に引っ掛かる奴が、えぇ!? 何処のカスが、誰を殺すってぇッ!!? 」
白い翼を生やした蛾。
害虫だ、殺してしまおう。
「なーる、タネは理解したわ。そう言うわけね? だから魔法がキャンセルされた」
黒い羽を生やした蝙蝠。五月蠅いな、さっさと殺してしまおう。
「この世に仇成す邪悪を穿つは……」
両脚で地面を踏み直し、ガッチリと足場を固定。眼前で両腕をクロスさせ、祁答院が怨敵を見据えて睨む。
「拳神四分家が一つ、祁答院家現当主、祁答院 秀光ッ!!」
さぁ、殺すぞ神様。
「推して参るッ!!」
続く。
Next LightMareDays
今回は以上です。
えぇっ!?
これ…もしかして妹ちゃんが屈伏させられる話じゃないん?
型月系オサレ過ぎて話は面白いんだが展開が読めないwwww
おお、超大作だな
ワクテカしてるよ
後で楽しく読ませてもらうね
最初だけ見させてもらったけど
引き込まれる文章だ
55 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 02:26:49 ID:Pq5XcQK9
呼び込みage
キモオタ新入社員が同世代の出世の早いエリート上司を奴隷化したり
クラスに一人は居そうな男勝り女をいじめられっ子が屈服させるスレってここですか?
>>56 よく分かってるじゃないか
さて、君のSSはどこだね?(*´Д`)
>>57 調子が良いと全体の流れをざっと書いたやつが浮かぶんだけど
文章が全然書けない・・・、これは真面目に勉強してみるべきかもしれんね
だから来年から本気出す By富樫
>>56 『弱っちー男は強い女、強そうな女に惹かれ、強い男は性格がえばりんぼうなので強い女を生意気と嫌い弱そうな女を好む。』
http://www.sunmarie.com/msn_renka/index22.html ↑(一部抜粋)男性ホルモンが多い男性は攻撃的で、闘争心が強いから「エストロゲン」が豊富な女性との相性は◎。
でも男性ホルモン少なめの男性は中性的なので、同じく中性的か少し男性的な女性との相性が◎よ。
中性的でシャイな男
シャイな男というのは、自ら果敢に攻めるということがないため、気が強くてちょっとわがままな女性や、しっかり者でリーダーシップのとれる年上の女性と付き合うことが多いようです。
俺様系の強引男
男としてのプライドが高く、どちらかと言えば女性を卑下する傾向も強いのが特徴です。
女に対しては綺麗でか弱いという幻想を抱いていることも少なくありませんですので、自分より有能そうなバリキャリの女性や、男勝りで女らしさに欠ける女性などは敬遠しがち。
似ていないひとに惹かれる=自分に無い魅力に惹かれる。自分とは違う遺伝子が欲しい。
強いもの同士・弱いもの同士は引かれ合わない
ヤフー知恵袋にあった書き込み↓
自分の職場に、見るからにとても気が強い女性がいます。
そんな女性の彼氏として務まるのは、やっぱり女性慣れしていてリードできる男性だろうな、と思っていたのですが、何と誰が見ても物静かな雰囲気の男性でした。
正直、「これだけ気が強い女の子の彼氏って、どんな人なんだろう・・・」と思っていたのですが、とてもビックリです。
http://www.chatran.net/dispfw.php3?_movie/_jean ↑
なぜだか、ずっと、強い女性が好きでした。
それも単純に、アクション系の見た目強い女性、戦う女性が好きで、見ていてスカッとして憧れてしまうのでした。
自分自身は運動神経が鈍くて精神的にも弱く、すぐ落ち込んだりイジイジしやすい大人しめのダメダメタイプだったから、
よけいにそういう女性に憧れたのかもしれません。
http://www.yomiuri.co.jp/junior/articles_2003/030303.htm ↑
――主人公に元気のいい女の子が多いですね。
自分から一番遠い存在で、書いていて楽しいからでしょうか。
ぼくは気が弱いので、引っ張っていってくれる強い女の子が好きです。
それに、家に閉じこもってばかりいる子では、物語が進展しない(笑)。
ぼくが運動音痴(おんち)だったので、運動神経バツグンの主人公を書くなど、自分にできない夢を登場人物に実現してもらっています。
http://www.so-net.ne.jp/mc/columns/yohito/040325/index.html 気の強い女性が好きで、自分がリードするのは苦手。寺岡呼人によれば、そんな町田直隆の恋愛関係はミュージシャンの本道らしいんです。
60 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 20:13:07 ID:K3vmahCF
デカルチャー!
二次で、原作にヒロインに勝てそうな男キャラがいないので、
オリジナルの強い男キャラ作って陵辱とかOKなんですか?
保守
保守
64 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 15:05:49 ID:3rc84HI9
age
保守
保守
保守