【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。3【エロパロ】

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1名無しさん@ピンキー
[剣と魔法と学園モノ。]通称[ととモノ。]でエロパロです。
喧嘩・荒らしは華麗にスルーでいきまっしょい。

【前スレ】
剣と魔法と学園モノ。でエロパロ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214711527/

剣と魔法と学園モノ。でエロパロ2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221435495/

【保管庫】
2chエロパロ板SS保管庫
「ゲームの部屋」→「アクワイア作品の部屋」
http://red.ribbon.to/~eroparo/
2名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:20:13 ID:QW6pqf0n
「うぁ……」

ぽいと投げ捨てるように手を放されて、床に転がる私。
もう、何も考えられなかった。精も魂も尽き果てたその顔を覗き込むように屈みこむ彼女。
にたりと、ひとを蔑むような不吉な笑みがその満面に浮かべられていた。

「駄目ね、あなた」
「……ぇ……」
「初めてで気をやるとかどういう神経してるのかしら。
それともバハムーンって皆こうなの?
駄目よ駄目。こんなんで男の味まで覚えたらもう手がつけられないわ。彼に迷惑よ」
「え……。……ぇ?」
「やっぱり迷宮探索に支障をきたすようなのはね、駄目よね? あなたもそう思うでしょ?」
「なんなの……それって、何……何が言いたいの……ねえ」
「……触らないでくれる? この淫乱」

彼女がさっさとカラクリ人形を回収し始めたことで自由になった手をふらふらと伸ばす私。
しかしその手は無情に叩き落とされ、したたかに冷たい床に打ち付けられた。

「今のうちに気付けて良かったわ。こんな女がいたんじゃ探索どころじゃなくなっちゃう」
「そ、それって……そんな――」
「――――あなた、うちの部隊から外れてちょうだい。今すぐ」

あ――――――――。

目の前が真っ暗になった。
使い古された表現だったが、いざ我が事となるとそんなエルフのように細かい語彙に気をやっていられない。
今の今まですっかり忘れていた迷宮深部の虚ろな風鳴りが私の背筋を凍らせ、
冷えきった空気が重い孤独の代弁者として私の裸身を押し包む。

「じゃあね」
「ま、待って! 待ってぇ! 置いてかないでッ。ねえ!」

全身の骨が半分ほども失われてしまったのかと思うほどろくすっぽ力の入らない体を懸命に起こし、
唾液や血や埃で自分がひどい姿になっていることも忘れて、
もう行ってしまおうとする彼女の背中に手を伸ばした。

「なによ?」

振り返った彼女の表情は、ぞっとするほど冷たかった。
睨みつけるようなその視線に萎縮しそうになりながらも、私はこわごわと言葉を搾り出し懇願した。

「連れてって……お願い……置いていかないで、ください……」
「いや」
「お願いします! お願いだからッ!
絶対彼に言い寄ったりしません! ぜったい、絶対皆に迷惑かけないように頑張るから!
ぐすっ……ううぅぅ……お願いだからぁぁ……!」
「ふうん……」
3名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:21:06 ID:QW6pqf0n
千切れた下着がまとわりつくばかりの、裸同然の惨めな姿で縋りつく私を、今度は彼女は振り払わなかった。

「頑張れるの……?」
「はい……、はい、頑張ります……」
「……しょうがないわね。ほら、顔を上げて」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった私の顔にそっとを手をそえて上げさせる彼女。
こわごわと目を上げる私に、彼女は優しく微笑んだ。
これまでのような底冷えのする笑みではない。温かみのある微笑だった。
このひとは、私を助けてくれる人だ。
そう信じさせる何かが、彼女の表情にはあった。

「そんなに言うなら……わかったわ。私もあなたのことは助けてあげたいの。
このことはわたしたちだけの内緒にしましょう。
一緒に戦ってきた、大事な仲間だもんね」

よかった。わかってくれた。愚鈍にも、私は素直にそう思った。
私は皆と、彼と、まだ一緒にいられるのだ。安堵でまた涙がぼろぼろと溢れた。

「ね、涙を拭いて。一緒に帰りましょ。皆心配してるわ」
「ありがとぅ……ありがとう…。ううぅ……」

埃だらけになった翼や肩をかいがいしく拭い、転がった装備を拾い上げ着せていってくれる彼女。
その手つきはもう、さっきまでの恐ろしい陵辱者のそれではなかった。
ただ己の欲求に従って他人を食い物にするような悪人には決してできない、そういう情味が滲んでいた。
そうだ、彼女は、本気で私を心配してくれていたのだ。
後衛は前衛の背中を見つめてそのコンディションに気を配るものだと、司教も常々言っていたではないか。
きっと、さっきの乱暴もおかしな意味ではなかったのだ。
私がこういう女だと見抜いて、私が今後もあの部隊でうまくやっていけるようにと、きっと。
そもそも、ここまで探しにきてくれた彼女に斬りかかったのは私だった。
しかも魔物と一緒になって彼女を襲った。彼女の腕前が凄まじかったからよかったようなものだ。
取り返しのつかない真似をしてしまうところだったのだ。思い出して震えが走った。
そんな、平に伏して謝罪すべき私を許し、あまつさえ情けまでかけてくれる――。
彼女は正しい。私は間違っていた。そういう、ことなのだ。

「大丈夫? さ、立って。ひとりで歩ける?」
「う、うん……ありがと……」
「――――駄目」
「え」
「駄目よ、それじゃ」

私の目を見据え断固とした口調で言い放つ彼女に、私はびくりと身を硬くした。

「皆のところに戻るんだから、いつものように、ね?
皆に心配かけないようにしなきゃ。そうでしょ」
「……あ、はい」
「ほら早速違う」
「あ、ああ……わかった。すまない」

それでいいわと満面の笑みで肩を叩く彼女に促され、私は、ぎこちないながら薄らと笑みを浮かべて応えた。
4名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:22:25 ID:QW6pqf0n
「……最近雰囲気変わったわよね、神女ちゃん」
「侍さんもそう思いますか」
「あ、やっぱり司教ちゃんもそう思う? 明るくなったわぁ、あの子。カドが取れたっていうか」
「ですね。でも食べながら喋らないでください。ご飯粒ついてますよ」
「あれ、くノ一ちゃんのおかげかしらね。
ここのところ、秘密の特訓とか言ってふたりで何かやってるみたいだし――君主くんは何も聞いてないの?」
「知らん」
「何それー、冷たいわね」
「仲間は仲間だが、女同士のやんごとない秘密を暴き立てるほど無粋なつもりはない。
……おい超術士の、ちょっと付き合え。俺とおまえとどっちが固いか勝負だ」
「あン? やだね、メンドくせ……」
「ほう、そうか逃げる気か」
「ああ?! テメェ今なんつったコラァッ! 表ン出ろや表ェ!」
「…………行っちゃった。……やあね男って」
「女ならよしというのも、どうかと思いますがね」
「そ? なんなら試してみるぅ? うへへへへ!」
「侍さん、歯に海苔がついてますよ」
「嘘どこッ?! 不覚……!」
5名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:22:36 ID:sTOgoBeV
6名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:25:52 ID:QW6pqf0n
「あぎッ! そッ、それ、きつぃいいい!」

カーテンを閉め切った寮室に、今夜も私のだらしのない声が響く。

「五月蠅いわねぇ、拳が入ったくらいで何よ。彼なんか今日はデーモンズにぶっとい斧叩き込まれてもけろっとしてたわよ。あなた、彼に相応しい女になりたいんでしょ?」
「あがぁああ――でも、でもぉおお! おッ、お願い優しく……優しくして下さい、お願いぃッ!」
「はいはい。んふふふふ」

かぷりと陰核が口に含まれ、舌と歯でこりこりと弄ばれる。
その間にももう一方の手は私の赤く腫れた乳房を慰め、ときにきつく乳首を捻る。
大事な場所を残酷に拡張する拳の存在はそのままだというのに私の全身はがくがくと痙攣し、痛いのか気持ちがいいのか、それすら判然としない混濁した意識の中に無数のフラッシュを弾けさせた。

「――ッぁ、か……かひ!」
「おねんねには早いわよ、神女さん」

彼女は、こうなると決まって呼吸も忘れ失神させられてしまいそうになる私の頬を叩いて逃避を防ぐ。
痛い。しかしありがたかった。こうなってしまうのは、私が駄目なのがいけないのだ。
彼女は、『私のため』にここまでやってくれているのだから。

「帰ってきたわね? じゃ、行くわよ」
「あ?! あげぁあああ! んぎッ、ぉいいいいッ?!」

ぐぼぐぼと内臓の底を突き上げてくる拳と、陰核を吸いたてる唇、そして胸。
私がいつものように激しく絶頂へと追いやられてしまうまで、そこからいくらもかからなかった。

「ィ――イぎますッ、私――おまんこ、ぅっぐうううう…ィイグぅうううッッッッ!!」

すべてが真っ白に染まる、法悦の境。
白目を剥いた私は、自分の太股の間が、ばっと熱いものに濡れるのを感じていた。
彼女は何も言わないが、きっと失禁してしまっているのに違いない。
こうして私は、毎晩のように思い知らされていた。私はだらしのない、しまりのない女なのだと。

「……ご、め…なさ…」
「いいのよ。いいの。ゆっくりやっていけばいいから、ね?」

今日もまた奉仕を勉強させてもらう余力を残せず、ぐったりと倒れてしまう私。
彼女はそれを責めることなく胸に抱き、優しく頭を撫でてくれた。
いい匂い。母に抱かれた幼少を思い出す。
彼女は私を見捨てない。彼女の優しさに応えたかった。
柔らかな乳房に顔を埋め、愛おしさに任せて、彼女の背中に腕を回してぎゅっと抱き締めた。

「ん――。なあに、今日に限って」
「お礼……」
「うん?」
「私、したいの、お礼……。でも、やり方がわからなくて――」
「そう、ありがとう……いい子ね。それじゃあ、もっと抱いて。
ぎゅって強く、私が折れるくらい――――――んふ、んふふふふ!」

それくらいなら、今の私にもできる。
全力でやれとせっつく彼女の体が心配だったが、
結局彼女はヒューマンらしからぬ強靭さで私の筋力を受けきった。
苦しいようだが心地良いようでもある彼女の乳首をちゅうちゅうと赤子のように吸いながら、
私は得難い幸福感に包まれて、安からかな眠りの中へと落ちていった。
7名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:28:48 ID:QW6pqf0n
以上です。
モノの容量を見誤ってスレをまたいでしまった…見苦しい真似をして申し訳ありませんorz

ナイスガイのヒューマンが熱い今ですが、女ヒューマンのこともたまには思い出してあげてください
8名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 22:40:14 ID:wBg7v9PK
スレ立て乙。容量は501kbの表示でいっぱいだったんだなw
なんかこう、女ヒューマンの病んだ感じがすごい。おまけにバハ子洗脳されてるし。
面白かったよ、GJ!
9名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 00:20:53 ID:oykt4THx
いやすばらしい。うん。
なんでかバハ子ってMな印象あるね
GJ!
10名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 06:19:16 ID:jz5fGk+D
投下GJ!&スレ立て乙!
117:2008/12/08(月) 01:40:21 ID:SP8qsL0I
ご感想ありがとうございます。
バハ子M説の同志を見つけて嬉しい限りw
できればいつか別の話も書きたいと思っておりますので、そのときには良かったらまた読んでやってくださいませ
12名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 21:36:52 ID:3QMkfcvC
>>11
おお、良い知らせだ。待ってるぜ
13 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:40:42 ID:sv4wIhEq
スレが活気付いて来た感じですね。ではこちらも投下を。
いつも通り、楽しんでいただければ幸いです。
14a Lost…第四章(1/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:42:28 ID:sv4wIhEq
ようやく、目的地である空への門にたどり着いた一行は、しばらくの間そこに滞在していた。足より下に見える雲や、そのために
年間通して晴れである気候などが珍しく、完全にバカンスの様相を呈している。とはいえ、決して探索も忘れたわけではなく、
宿屋にいた他の生徒からハイント地下道がいいということを聞き、そのうちそこに行ってみようという話になっていた。
だが、ここまでたどり着いたとはいえ、まだまだ実力不足である。その準備として、一行はたまにラーク地下道の浅場に潜り、戦闘の
修練を積んでいた。地下道から戻っても、エルフは暇さえあればヒューマンに弓を習っていたし、フェアリーとセレスティアは普段なら
読まないような、分厚い魔法の本をしっかりと読んでいる。バハムーンは主に剣の素振りなど、一人でできる修練に熱意を燃やしている。
その中で、リーダーであるフェルパーはいつも他の誰かの修練に付き合っていた。エルフと一緒に弓を射たり、フェアリーや
セレスティア達と魔法の勉強をしてみたり、バハムーンと即席で作った木剣で掛かり稽古をしたりと、仲間に力をつけさせるのに
余念がない。それはリーダーとしての責任感ゆえであり、彼女がリーダーになった理由の一つもそこにある。
この時も、フェルパーはヒューマンに弓を習うエルフの隣に立ち、一緒に弓を習っていた。
「ゆっくりと、息を吐いて狙うんだ。そうすれば、腕がぶれることはない。」
「息を止めては、いけませんの?」
「息を止めれば、鼓動が強くなる。鼓動が強くなれば、狙いもぶれる。」
「なかなか、弓というのも難しいものね。でも精神統一の練習には、いい武器。」
フェルパーが手を放す。放たれた矢が風を切って飛んでいき、的の中心からやや逸れたところに突き刺さる。
「なかなかいい腕だ。お嬢さんも、弓を使ったらどうだい?」
「私も、弓は学校で習ったから、ね。でも、あなた達には負けるわ。」
「それはそうですわ。ずっとこれを使い続けているのに、学校で習っただけのあなたに負けては、立つ瀬がありませんわ。」
エルフの矢が、唸りを上げて飛んでいく。一瞬後には、見事に的の中心を射抜いていた。
「さすがだな。では、俺も少し射させてもらうか。」
そう言うと、ヒューマンはゆっくりと矢を番え、スッと目を細めた。
「さて、一本だけ刺せるかどうか。」
「え?」
ヒューマンが手を放した瞬間、弦が空気を震わせ、その矢は野獣の咆哮に似た音を立てて飛んだ。四回の咆哮の後、的の中心には一本の
矢が刺さっていた。ただし、その周囲にはエルフが放った矢と、その後ヒューマンが先に放った三本の矢が真っ二つに貫かれ、落ちている。
「ダメね。彼の射的を見ると、自信なくすわ。」
フェルパーが呆れたように笑う。エルフも、困ったような笑顔を浮かべていた。
「そりゃあ、俺はそのきれいなお嬢さん以上に、弓に親しんでる。お嬢さんの弓は相棒だろうが、俺の弓は肉体の一部さ。」
「そこまでの高みに上り詰めるには、あと数十年は必要そうですわ。」
「いやぁ、そうでもないさ。俺より、お嬢さんがたの方が、弓を射るには適した体をしてる。すぐに、抜かれるわな。」
「私は諦めるわね。その代わり、刀の扱いなら負けないけど。」
「そっちは勘弁してくれ。俺は直接戦闘は苦手なんだ。」
そんな三人の姿を、バハムーンが少し離れたところで見るともなしに見ている。だが声をかけるわけでもなく、誰かと目が合えばすぐに
素振りを再開している。
「それにしても、それなりにみんな力をつけてきたようだ。どうだい、端正なお嬢さん?そろそろ、ハイントとやらに行ってみても
いいんじゃないかい?」
最近では、もはやヒューマンがパーティのリーダーとなりつつある。だが、ヒューマン自身はそれを良しとしないらしく、必ず
フェルパーの意見を聞くことにしていた。だが、フェルパーも既に、ヒューマンをリーダーと認めている。その提案を拒否する訳がない。
15a Lost…第四章(2/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:43:13 ID:sv4wIhEq
「そうね。そろそろ、ここも大体見て回ったし、潮時かもしれないわね。」
「とうとう、行くんですのね?わたくし、楽しみですわ。」
フェルパーの言葉に、エルフが顔を輝かせる。
「明日……じゃ、さすがに急すぎるわね。明後日、でいいかしら?」
「ああ、それがいいだろう。さてさて、ここともついにおさらばか。」
ヒューマンが呟くと、不意に大きな声が響いた。
「私は明日でも構わんぞー!」
見ると、バハムーンが素振りをしつつもこっちを見ている。どうやら、話も聞いていたらしい。
「……ふふ、あの子も楽しみみたいね。」
「でも、明日は急ですわね。準備もあることですしね。」
「はは、そういうわけだ、お嬢さん。腕が鳴るだろうが、もう少し我慢だな。」
「……ふんっ!」
つまらなそうに鼻を鳴らし、バハムーンはまた黙々と素振りに励んだ。

二日後、一行は空への門最後の思い出として、ハイント地下道に来ていた。さすがに敵も強く、仕掛けも手の込んだものが多いが、
一行も十分に強くなっている。強敵とも対等に渡り合い、さらに時折手に入る装備品が、一行の力をさらに引き上げる。
「ん、剣が出たな。よし、鑑定してみよう。」
「バハムーン、あなたが使えるものだといいわね。」
当のバハムーンは、期待と不安の入り混じった顔で、じっと剣を見ている。
「……これは、なかなか。魔剣オルナ、だ。」
「オルナーっ!」
思わず叫んで、バハムーンはハッと口を塞いだ。全員、笑いを堪えるのに必死である。フェアリーに至っては、もう堪えるという選択肢が
ないらしく、文字通り笑い転げている。
「……よかったな、お嬢さん。」
「う、うるさいっ!嬉しくなんかないっ!」
ヒューマンから剣を引ったくるバハムーン。だが言葉の割に、それをじっと眺めてみたり、ぶんぶんと振ったりしてご満悦である。
「よかったわね、バハムーン。」
「ああ……ん、いや……こ、これよりいい物を期待したんだがなっ!ふんっ!」
その後も、いくつかの装備品が手に入った。中央に近づくにつれ、いい装備品が手に入り、もはやヒューマンを除く全員が、来た時とは
全身の装備が変わっている。
「……闇夜の石、だな。」
「んー、精霊の石の方が、強いみたいですね。」
「じゃ、これはもらってもいいか?」
「ええ、いいですよ。でも、弓の方が強いんじゃないですか?」
「まあな。だが、金になりそうだ。」
「貴様、さっきもそう言って裁きの石をくすねていたな?」
バハムーンの言葉に、フェアリーが猛然と言い返す。
「ヒューマンは鑑定してるんだから、少しぐらいあげたっていいでしょーっ!大体、ヒューマンは全然装備もらってないんだからっ!」
言われてみればその通りなので、バハムーンも黙らざるをえなかった。
その後も快進撃を続ける一行。だが、さすがに中央付近まで来ると敵の強さは尋常ではなく、かなりの苦戦を強いられるようになっていた。
16a Lost…第四章(3/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:44:03 ID:sv4wIhEq
そんな中、フェルパーの活躍が目立つ。誰よりも早く動き、敵前列を一気に切り払う彼女は、時にそれによってパーティの危機を未然に
防いでいた。もちろん、他の前衛や後衛二人も素晴らしい活躍を見せてはいるが、この日のフェルパーは特に気合が入っていた。
鉄の剣の戦士の連撃をやすやすとかわし、一瞬の隙を逃さずに距離を詰める。相手の体勢が整う前に、フェルパーは腰を落とした。
直後、相手の顔面にハイキックが叩き込まれた。相手はよろめき、フェルパーはそのまま回転すると、その勢いを利用して一刀の元に
相手を切り捨てる。
「やるな、お嬢さん。」
「でもさー、スカートなのに、そんなに足ガバガバ上げちゃっていいの?」
フェアリーの質問に、フェルパーは笑った。
「だって、どうせ死んじゃう相手じゃない。」
「お前……結構怖いこと言うな。」
「いいの。言うなれば、あれよ。冥土の土産っていうか、死出の旅路の餞ね。」
「……フェルパーって、怖い。」
「はっはっは。だが、言う通りではあるな。」
そんなフェルパーの活躍のおかげで、これまでに本格的な危機に直面してはいない。しかし、長引く探索が徐々に一行を追い詰め始める。
一行は地図を持っておらず、もっぱらフェアリーのマプルに頼っていた。だが、予想以上に探索が長く、またアンチスペルゾーンも多数
存在していたため、その魔力は既に尽きかかっている。セレスティアの方も、回復魔法をかなり使うおかげで、消費に回復が追いつかず、
徐々に魔力が減り始めていた。
「う〜、あとマプル一回しか使えないよぉ…。」
不安そうなフェアリーの声。ここはまだハイントの中央を越えた辺りでしかなく、ようやく折り返し地点というところだ。なのに、
もう地図に頼れない状況なのだ。さすがに、一行の間に焦りが見え始める。が、フェルパーとヒューマンだけは落ち着いていた。
「大丈夫よ。とにかく、もっと浅いところまで行けば、地図なんかなくたって問題ないでしょう?」
「それは、そうだけど…。」
「それに、マプルを使わなくても、歩いた場所を覚えることはできるわ。最後の一回は、本当に迷った時のために、とっておきましょう。」
「さすがはリーダー、だな。こんな状況でも落ち着いていられるとは、大したお嬢さんだ。」
そう言うヒューマン自身、呑気に煙草を吸っている。一番落ち着いてるのはお前だ、と誰もが思ったが、声には出さなかった。
「と、分かれ道か。お嬢さん、どっちだと思う?」
「うーん……迷ったときは左って言いたいところだけど、これまで全部裏目に出てるのよね…。ヒューマン、あなたはどう?」
「そうさな。ここは、お嬢さんの言葉に従ってみるか。そろそろ、ツケを返してもらえる頃だろう?」
時々、二人はこうして分かれ道を選ぶ。だが、ヒューマンは盗賊の勘がなせる業か、彼の選んだ道は確実に出口へと向かう道だった。
それ以外でも、彼の勘は異常に冴えていた。床が危険と見れば電流が流れていたり、そろそろアンチスペルゾーンが来そうだと言えば、
数歩先にそれがあったり、もはや地図を持っているとしか思えないような正確さだった。
「ねえ、ヒューマン……もしかして、地図隠し持ってない?」
「いやぁ、地図は持っちゃいないが、俺は狩人だからな。俺ならここに配置するってところが、全部ドンピシャだったってわけさ。」
「なるほど……狩人だから、罠を仕掛けるのは得意なんですね?」
「はっはっは、外すのは苦手だがな。」
その甲斐あって、一行は何とか危険な場所を突破し、徐々に浅場へと進んでいった。ようやく出口が見えたとき、既にフェアリーも
セレスティアも魔力が尽きており、また全員が激しい戦闘によって傷ついていた。そんな状況で出口が見えたときの安堵感は、
口では言い表せないほどである。
「やったぁ!あれ、出口だよね!?」
「信じられません!わたくし達、ここ一周できたんですね!」
「さすがに、きつかった。よくもまあ、みんな無事で回れたもんだ。」
「これで……わたくし達も、一流と呼ばれる冒険者になれたと、思っていいんですのね?」
思い思いの感想を口にし、ゲートを潜る一行。途端に、赤い光が目に差した。全員が顔を手で多い、指の間からその先を眺める。
「……きれいな夕日…。」
そこには、今まさに沈もうとする夕日があった。雲の上から見下ろす夕日は美しく、一瞬誰もが言葉を忘れてそれに見入った。
17a Lost…第四章(4/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:45:05 ID:sv4wIhEq
やがて、フェルパーがスッとヒューマンの方に向き直った。
「……ありがとう。」
「ん?いきなりどうしたんだい?」
「あなたのおかげで、ここまで来られた。それに、危ない時はいつも……今日だって、あなたのおかげで助かった。だから、ありがとう。」
「ははは、やめてくれ。お嬢さんが落ち着いて対処したから、俺だって落ち着いて対処できたんだ。俺の方こそ、いいリーダーに出会えた。
だから、むしろ君にお礼が言いたい。ありがとう。」
「そういうところも、あなたのいいところ。すごい力を持ってるのに、それを見せびらかすこともなく、笠に着ることもなく、
会ったばかりの私達の仲間として、頑張ってくれた。あなたには、感謝してもしきれないわ。」
「それなら、俺の方こそ感謝してる。俺一人なら、こんなところには来られなかった。おかげさまで、なかなかいい物もらえたしな。」
「ふふ、本当にいい人。できることなら、ずっとこのままいて欲しいところだけど…。」
「それは…。」
一瞬、ヒューマンの顔が曇った。だがすぐに、いつもの柔和な笑顔を浮かべる。
「……残念だが、無理な話だな。確かに楽しかったが、俺は留まる事はできない。」
「……そう。本当に、残念。でも、仕方ないわね。」
再び、二人は夕日を見つめる。もう、夕日も完全に地平線へ消えようとしている。
「さあ、て。明日からは、パルタクスへの帰路ね。どうやって帰ろうか?」
フェルパーの言葉に、全員が振り向いた。
「魔法球で帰るんでいいんじゃない?」
「そんなの、味気ないですよ。せっかくなら、もうちょっと何かしませんか?」
「じゃ、じゃあランツレートに寄らないか?」
「カレー目当て、ですわね?ふふ、でも、それもいいかもしれませんわ。」
フェルパーは笑顔を浮かべ、チラッとヒューマンを見た。
「それで、いい?」
「もちろん。ただ、その……そのルートだと、ホルデア登山道が…。」
「じゃ、カレー食べたら魔法球で帰る?」
「はは、すまんな。何なら、帰るのは俺一人でもいいが。」
「いいよー、気にしないで。私も、そろそろ学生寮恋しいしねっ!」
その言葉には、全員同意見だった。僅か二週間ちょっと前のはずなのに、もう何年も離れているような気がする。
「それじゃ、明日からの帰路、頑張りましょう。今日はみんな、ゆっくり休んでね。」
和気藹々と宿屋に向かう一行。もはや、その中にいても違和感のないほどに馴染んだヒューマン。その姿を、フェルパーは後ろでじっと
見つめていた。
リーダーとしての自覚。責任感。それらが、今まで彼女を押し止めていた。しかし、目的を達成した今、少しぐらい羽目を外しても
いいかな、と、彼女は思っていた。
そして静かに目を瞑り、疲れてる彼には悪いけど、と、一人笑っていた。
18a Lost…第四章(5/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:45:56 ID:sv4wIhEq
その夜は特に静かだった。前に駐留していた生徒達もだいぶ数が減っており、今では一行を入れなければ宿屋の客は二桁にも達しない。
一行にしても、ハイント地下道を抜けるまでにすっかり疲れ切っており、全員夕飯を食べるとすぐに寝てしまった。
ヒューマンも例外ではなく、この日はすぐに布団に入っていた。だが早く寝すぎたのか、変な時間に目が覚めてしまい、そのまま眠れずに
ベッドでゴロゴロしていた。それでも眠れず、煙草でも吸うかとベッドから這い出した瞬間、ドアがノックされた。
「ん?誰だい?」
「私よ。入ってもいいかしら?」
「ああ、お嬢さんか。構わないよ。」
火をつけようとしていたキセルを置き、鍵を開けるヒューマン。ドアを開けると、明らかにいつもと様子の異なるフェルパーがいた。
「……どうか、したのかい?」
「ええ。そろそろ、夜が寂しいんじゃないかと思って……ね?」
流し目を送り、妖艶に笑いかけるフェルパー。
「最近は、他の子も来てないんでしょう?」
「はは、ばれてたのか。」
「そりゃ、私はリーダーだもの。仲間のことは、ちゃんと把握しておかないと。それに、後輩の面倒を見るのも、先輩の務めでしょう?」
フェルパーは自分の胸を抱くように左手を当て、右手は頬に当てつつ顔を僅かに逸らす。しかし、目はじっとヒューマンを見つめている。
「といっても、あの子達と一つしか違わないけど、ね。」
「なるほど。道理で君だけ、ずいぶん大人っぽいと思った。」
「ふふ、ありがとう。それで、どう?」
相変わらずの妖艶な笑み。それに対して、ヒューマンはいつもの笑みを返す。
「気持ちはありがたいが、わざわざ俺なんかのために、そんなことを?」
「意地悪な人。もちろん、それを出汁にして来たに、決まってるじゃない。」
「ああ、そうだったのか。いや、てっきりすごいリーダーだなと…。」
「あら、本当にそう思ってたの?うふふ、結構純粋なところ、あるのね。」
おかしそうに笑って、フェルパーは少女のような笑顔を浮かべた。
「それに、ね。あなたみたいな人、初めてなの。同種族でもない、深い付き合いがあったわけでもないのに……こんなに頼りにできて、
こんなに大胆になれて、こんなに……心ときめく人。」
「……俺のことが、好きだと?」
「ん、そうね。それは確かにそうだけど……あ、でも勘違いしないでね?」
再び妖艶な笑みに戻り、フェルパーはヒューマンの顔をすうっと撫でる。
「愛して欲しいなんて言わない。ただ、あなたに抱かれたい。私が来た理由は、それだけ。」
「つまり、遊びっていうわけかい?」
「そうね。その方が後腐れもないし、いいでしょう?」
「案外ドライなんだな。意外だったよ。」
ヒューマンが笑うと、フェルパーも釣られて笑う。笑顔のまま、フェルパーはゆっくりとヒューマンの横をすり抜ける。
「私達の種族じゃ、案外珍しくもないのよ?何ていったって、発情期があるんだもの。」
フェルパーの手がヒューマンの体を撫で、尻尾がしなやかにまとわりつく。
「でも、体を許せる男はいても、抱いて欲しいと思った雄は、初めて。だから、ね?あなたが嫌じゃなければ…。」
するりと体の向きを変え、ヒューマンの首を抱くフェルパー。普通の男ならとっくの昔に落ちているのに、この男はいつもとまったく
変わらない。その余裕に、フェルパーは密かに焦っていた。
不意に、体を撫でる尻尾を、ヒューマンがそっと撫で返した。驚いたように、尻尾がピクンと跳ねる。
「そういうことなら、俺も歓迎さ。ある意味では、君が一番抱きやすいかもしれないな。」
恥ずかしそうな笑顔を浮かべ、フェルパーはヒューマンを見つめる。ヒューマンも、正面から彼女を見つめる。
「でも、本当に意外だったよ。君がこういう子だったとは。」
「発情期が来ても、私達のパーティは女の子だけ。男が欲しくてたまらなくなっても、我慢しなきゃいけないのよ。というより、
そのために女の子だけなんだけど。だから今日ぐらい、思いっきり乱れたって……ね?」
19a Lost…第四章(6/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:46:43 ID:sv4wIhEq
自分からキスを仕掛けるフェルパー。ヒューマンもそれに応えつつ、そっとフェルパーの制服を脱がせていく。
ザラついた舌が相手を傷つけないように、フェルパーは主に舌の裏側を使って相手の舌と絡める。ヒューマンも経験があるのか、
その動きに当たり前のように対応している。
上を脱がされたところで、フェルパーはついっと唇を離した。
「……今は、発情期なのかい?」
「少し、ね。でも、もう終わり際。ここまで耐えるの、結構大変だったんだから。」
今度はフェルパーが、ヒューマンのズボンに手を掛ける。ベルトを外し、身を屈めてジッパーを口で咥えると、ゆっくりと降ろしていく。
そのまま股間に顔を近づけ、少し大きく息を吸い込む。
「男の人の匂い……いい、匂い。」
うっとりした表情で言うと、尻尾をゆらゆら動かしつつ、さらにパンツを引き下げる。そして現れたモノを愛おしそうに一撫ですると、
跪いたままそれを口に咥える。
フェルパーは手馴れていた。唾液をたっぷり含ませてそれを舐め、唇で締め付け、喉の奥まで咥え込んだかと思うと強く吸い上げる。
ザラついた舌を持っていることが嘘のように、うまい具合に舌先を駆使し、下手な他種族よりもずっと強い快感を与えてくる。
また、舌を出すときには棘が立たないことをよく知っているらしく、どちらかというと押し出すような舐め方を多用している。それがまた、
普通とは違う刺激を生み出し、ヒューマンに強い快感を与える。
「くっ……ずいぶん、うまいね…。」
「んっ……んっ……ふふ。結構自信はあるのよ。あ、お返しは結構よ。最後に、一まとめにして返してもらうから、ね。」
ヒューマンのモノを舐めながら、フェルパーは空いた手と尻尾を使って自分の秘所を刺激している。既にパンツはぐっしょりと濡れており、
いつでもヒューマンのモノを受け入れる準備ができている。
「だが、一ついいかい、お嬢さん?」
「ん、なぁに?」
扱く手は止めず、フェルパーはヒューマンの顔を見上げる。
「今、発情期なんだとしたら、俺とするのはまずくないか?その時は、妊娠しやすいんだろう?」
「あ〜、言い忘れてたわね。確かに経験はあるの。でも、私まだ処女なのよ。」
「え?」
「だって、ね?そりゃ疼きは止めてもらいたいけど、その人との子供が欲しいと思うような相手じゃないと、もらってほしくないもの。
あなたは、まあそんな相手ではあるけど……あなたの方が、それはお断りって感じだし、ね。」
「はは、すまんな。」
「だから、ね?」
フェルパーは赤く染めた頬を緩め、何とも妖艶な笑みを浮かべた。
「お尻の方、試してみない?」
「大丈夫なのかい?」
「言ったでしょ?処女ではあるけど、経験はあるの。するときは、いつもこっち。それにお尻なら、あなたも気兼ねなく、
中に出せるでしょう?」
「それは何とも夢のある話だ。」
「ちゃんと、中きれいにしてきたし、ね?あなたの、この熱いの……これで、私の中、思いっきりかき回して。」
言いながら、フェルパーは溢れる愛液を指に絡め、自分で後ろの穴をいじっている。
「そうか。ともあれ、君が辛くないのなら構わないさ。」
ヒューマンはフェルパーを立たせて体を抱くと、そっと後ろを向けさせた。フェルパーは尻尾を上げ、自分からその穴を広げる。
「遠慮しないでいいから、奥まで一気に…。」
「それじゃあ、そうさせてもらおうか。」
自分のモノをあてがうと、少し入り口を擦るヒューマン。やがて狙いを定めると、何の遠慮もなしに一気に突き入れた。
20a Lost…第四章(7/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:47:24 ID:sv4wIhEq
「うああぁっ!す、すごいぃ…!」
フェルパーの体がビクンと跳ね、腸内がぎゅうっとヒューマンの根元を締め付ける。
「大丈夫かい?」
「い、いいのぉ…。お、お願いぃ……激しくしてぇ…!」
「やれやれ、お返しはずいぶんと骨が折れそうだ。」
そう言いつつ、激しく腰を打ちつけるヒューマン。抜けそうなほどにモノを抜き出し、再び一気に腸内へ突き入れる。時には本当に
抜けてしまうこともあるが、その度にすぐさま入れ直す。閉じかけた肛門を無理矢理押し広げられる感覚は、フェルパーに強い苦痛と
快感をもたらす。
「も、もっとぉ!もっと突いてぇ!子宮に響くぐらい、もっと強くぅ!」
普段からは想像もできないような顔で、更なる刺激をねだるフェルパー。それに応え、ヒューマンはさらに深く腸内を抉る。彼女は
彼女で、自分の指で秘所を刺激し、快感を貪っている。
ヒューマンのモノが引き抜かれれば、一緒に肉が捲れ上がり、突き入れられるとそれも同時に押し込まれる。それに合わせ、フェルパーも
彼のモノをぎゅうぎゅうと締め付けている。
突然、それまで腰を抱えていたヒューマンが、フェルパーの腕を後ろ手に捻り上げる。
「にゃっ!?」
両腕を封じられ、テーブルに押さえつけられるフェルパー。さらにヒューマンは、もう片方の手で尻尾の根元をぎゅっと握りこんだ。
「うああっ!!だ、ダメっ!それはダメぇっ!」
フェルパーの声を無視し、激しく突き入れるヒューマン。動きを封じられ、無理矢理に激しく犯される感覚が、フェルパーの被虐心に
火をつける。
「や、やめてぇ!こんなの……こんなのダメぇ!!もう許してぇ!!」
そんなフェルパーをあざ笑うかのように、さらに強く突き入れるヒューマン。あまりに深く突き入れられ、フェルパーは凄まじい圧迫感と
疼痛に涙を流す。空気を求めて喘ぐ口からは、だらしなく涎が糸を引いている。
「うあっ!あぁっ!にゃぅっ!お、お願いっ!尻尾はやめてえぇぇ!!」
だんだん本気になるフェルパーの哀願も、ヒューマンが聞き入れる気配はない。それどころか、もはやお返しなどというものとは
まったく違う、ただ単に自分の快感のためだけに腰を打ちつける、乱暴極まりない動きになっている。その動きは快感よりも、
どちらかというと激しい苦痛をフェルパーにもたらす。だが、発情期という時期と被虐心が、その苦痛を快感に変えてしまう。
「あ、熱いのぉ!お尻が、お尻が焼けちゃうぅ!!お願いだから、もう許してえぇぇ!!!」
ボロボロと涙を流し、必死に哀願するフェルパー。だが、それは苦痛のためだけではなく、自身の中に膨れ上がる快感のためでもあった。
これまでは何とか耐えていたものの、あまりに荒々しいその行為に、もう限界はすぐそこまで迫っていた。
「あぁっ!も、もう限界ぃ…!あ、あなたも、出してぇ…!」
「言われなくとも……もう、俺も限界でな…!」
ヒューマンもかなり耐えていたらしく、その声はかなり切迫している。だがそれ以上に、フェルパーは限界が近かった。
「にゃあぁ…!は、早く、出してぇ!お腹いっぱいにしてえぇぇ!!お尻に、あなたの精液飲ませてえぇ!!!」
普段なら口にしない言葉を、平然と言ってのけるフェルパー。その言葉にも、ヒューマンの限界がさらに近づく。
「やれやれ、わがままなお嬢さんだ…。くっ、だがもう、限界だっ…!」
「わたっ、私もっ!!もうっ!!くっ……ああ!も、もうやめっ……許しっ……あ……あ……ああぁぁぁ!!!!!」
一際大きな声をあげ、体をのけぞらせるフェルパー。それと同時に、ヒューマンもフェルパーの腸内に思い切り精液を吐き出す。
21a Lost…第四章(8/8) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:48:21 ID:sv4wIhEq
ビクビクと震えていたフェルパーの体が、クタッとテーブルに落ちる。それを見てから、ヒューマンは押さえていた手を放した。
「はぁ……はぁ……すごかったぁ…。」
今までとは打って変わって、うっとりした声で呟くフェルパー。その顔も、例の妖艶な笑みに戻っている。
「こんなに、荒々しくて乱暴なの、初めて…。」
「ふぅ……少し、やりすぎてしまったかな?」
ヒューマンの言葉に、フェルパーは笑って首を振る。
「ううん。すごく、よかったわ…。何だか、本気で惚れてしまいそう…。」
フェルパーが体を起こそうとすると、ヒューマンはフェルパーの中から自身のモノを抜き出した。
「んっ!……いっぱい、出されちゃった。」
今にも精液が溢れ出そうな感覚に、フェルパーは必死に括約筋を緊張させる。しかし、あまりに乱暴に犯されたため、なかなか力が
入らない。それでも何とか落ち着かせると、フェルパーは大きなため息をついた。
「ほんとに……最初に、ただの遊びって言っちゃったの、後悔したくなるわ。あなたほど野性的で、強引な人、初めてよ。」
「はは、物は言い様、だな。俺はただの、乱暴者さ。」
キセルを咥え、火をつけようとして、ヒューマンは手を止めた。
「そういえば、煙草は苦手だったっけな?」
「そうね。できれば、お願い。」
初めて会った時と同じ言葉を投げかけ、フェルパーは笑った。
「あ〜あ。本当に、あなたが同種族だったらよかったのに。そうすれば、発情期の間に無理矢理、子供作ってしまえたのに。」
「はっはっは、恐ろしい事を言うお嬢さんだ。俺は今ほど、自分がヒューマンで良かったと思ったことはないぞ。」
フェルパーの体を抱き締めると、彼女はその腕にそっと手を添えた。
「愛して欲しいとは言わないけれど……今晩だけは、こうしてても、いい?」
「ああ。リーダーだって、それぐらいする権利はある。俺には、女の子にやさしくする義務がある。」
「うふふ、面白い人。でも、そんなところが、好き……なのよ。」
寂しそうな笑顔で言うと、フェルパーは目を瞑った。その体を抱き締めたまま、ヒューマンはベッドに寝転がる。
明日の朝には、こんなことがあったなどと想像もつかないぐらい、普通に振舞うのだろう。だが、それまでにはまだ時間がある。
その間だけ、フェルパーはパーティのリーダーなどではなく、ただの一人の少女でいたかった。
そして、叶わぬことではあるけれど、一夜限りだけでもいい。ただひと時、彼の恋人でいたかった。
22 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/08(月) 23:52:56 ID:sv4wIhEq
以上、投下終了。たまには書いたことないタイプでも、と思って書いたらえらいことになった。
しかしフェル子の「にゃ」は外せない。
ちなみに、次回で最終回となります。よろしければ今しばらくのお付き合いを。

それでは、この辺で。
23名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 16:58:01 ID:VH4LST8b
GJ!!
今回はフェル子か〜。「にゃ」、いいねぇいいねぇ。
次回はバハ子かな。ん、次回で最後?
それじゃあヒューマンはいったいどうなるんだ!?
癒しの果実もって待ってます!!
24名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 17:55:24 ID:r61hAukH
うおお、お尻と来ましたか。れいぽぅ風味なのもまたGJ!
しかしアナルセックスに耐えうる尻に加え、猫フェラと猫キス体得済みの
フェル子すごいなぁ。かなりの好きモノさんに違いない

あぁ、ついに次が最終回ですか…
蘇生の果実とありったけの金に超術士6人揃えてお待ちしております(・ω・`)
25名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 01:14:30 ID:wH4wYmwR
待ってましたナイスガイ。GJ!
見れば見るほど死亡フラグが乱立してるような感じですが…イキロ
26名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 14:30:43 ID:0u1BNi2s
ノームでひとつ書いてみたので投下します
いわゆる雰囲気エロで色々と描写は薄め
死姦ものにつき苦手な方はタイトル「ぬけがら」でNG推奨
27ぬけがら(1/3):2008/12/12(金) 14:33:13 ID:0u1BNi2s
 
 高等な僧術魔法によって形を取り戻した『君』の中に、君の姿は見当たらなかった。光を通すきらきらとした長い髪も、鏡のように純粋で曇りのない瞳も、陶磁器のような白く滑らかな肌も、間違いなく君の身体であるのに。
 それは君の形をした、君のぬけがら。人の形に作られた依り代の中には、しかし肝心の君が抜けていた。
「……明日にでも、ちゃんと焼いてあげるのね。だから、今夜のうちに別れを済ませておくのよ」
 君を蘇生出来なかった無能な保険医が、何事かをほざいていた。
 いや、彼は灰になった君の、外枠だけは蘇生できたのだから、医者としては優秀な方なのではないだろうか。離れてしまった君を依り代に戻したければ、遠くザスキアの更に向こうの氷の山に住むという、イタコとやらでも呼んでくるしかないのかも知れない。
 思考がぐるぐる回りながら奇妙な方向へねじれていくのが可笑しくて、気が付いたら私は喉の奥からひきつったような笑い声を溢していた。それに気付いた友人たちはぎょっとした顔で私を見たので、私は笑いながら君に手を伸ばし、血の通わない冷たい頬を撫でた。
 君のぬけがらは生ける人々と何一つ変わらない、よくできた質感の、ただの動かぬ人形だった。
「好きだったんだ」
 乾いたねじれた笑いの隙間から、干からびた告白を絞り出す。君のぬけがらに言っても君には届かないと、届いたとて今更意味はないと、知っていたけれど。
 友人たちは顔を見合わせ、私や君に何かを言って、ひとりふたりと保健室を後にした。消灯時間が来て部屋の明かりが消えたとき、保健室に残されたのは私と君のぬけがらだけだった。
 灯りを求めてカーテンを開けると、空には君が好きだと言っていた弧を描く月が浮かんでいた。青白い夜の光に照らされた君のぬけがらは、やっぱり綺麗だった。
 もう一度頬に触れてみる。柔らかく、そして冷たい。その生ける人々と何も変わらぬ君の依り代が如何なる物質で作られているのか、少しだけ知りたくなった。
 頬に触れていた手で髪の毛を撫でた。柔らかそうな唇に、私のそれを重ねてみる。どこからか香る君の甘い匂いに、頭の芯が揺さぶられた気がした。
28ぬけがら(2/3):2008/12/12(金) 14:36:53 ID:0u1BNi2s
 君を包む掛け布をはだけ、寝台に横たわる君に覆い被さる。簡素な服を丁寧に脱がせれば、一糸纏わぬ姿になった君が月明かりの下で眠っていた。
 天を仰いでなお形の良い乳房を撫で、色付いた先端に唇をつける。体温を失った冷たい肌は、それでも柔らかい。私の唇は君の身体をなぞるように、へそを辿り下腹部へと降りていった。
 薄く、丁寧に整えられた陰毛を舐めながら、揃えられた足をそっと開かせる。もはや喜悦に震えることもない肉芽を啄み、慎ましく閉じている陰唇に舌を這わせた。
 柔軟な舌でほぐしながら少しずつ蕾を割り開くと、穢れを知らぬ花弁は淑やかに綻びて私を誘う。なるべく君の身体を傷付けずに済むよう、唾液を塗りつけるように舐めていく。
 随分と長い間そうしていたが、いい加減に顎が疲れたので愛撫をやめた。一度寝台を降りて自身も服を脱ぎさると、再び君に覆い被さる。
 唇を合わせるだけの口付けを交わし、大きく反り返った私のモノを君の花弁へあてがった。ゆっくりと、君の中に私を沈める。
 舌で十分にほぐしていたので、初めはさほど抵抗もなかった。しかし奥に進むにつれ、潤滑液もなく硬直している君の胎内は私を拒むようになる。
 僅か進むたびに、ぎちぎちと締め付けるような抵抗。無理矢理押し進めると、肉の裂けるような嫌な感触が伝わり、途端に君の中にぬるぬるした液体が溢れた。
 それは愛欲による分泌液などでは決してなかったが、それに代わる役割を十分に果たし、私の進行を助けてくれた。私は穢れを知らなかった君の内部を文字通り切り開き進んでいく。
 私の先端が君の子宮口に突き当たったので、私はゆっくりと君の中を往復し始めた。所々が裂けて押し広げられた肉は、君の血液を得て、私が行き来するのに何の障害をも生まなかった。
 最深部を強く弱く叩いても、角度を変えて様々な場所を擦りあげても、君の顔が恥じらいや快楽に歪むことはない。喘ぎひとつ、悲鳴ひとつ、吐息ひとつ溢すことさえ知らずに、君は私に蹂躙されていた。
29ぬけがら(3/3):2008/12/12(金) 14:41:06 ID:0u1BNi2s
 慟哭にも似た喘ぎをだらしなく溢す私の動きだけが、三日月の嘲笑う夜を揺らしている。君のぬけがらは奇怪に踊り、頭はぐらぐらと奇妙な方へ揺らめいていた。
 君によく似た人形を使った自慰行為に、終わりの時がきた。私は例えようもない妙な声でひとつ大きく喘ぐと、めちゃくちゃに突き上げ緩みきった屍肉の奥、永遠に子を孕む可能性を失ってしまった君の子宮に一際強く私のモノを叩きつけた。

 私は君の中から血に濡れたモノを、男性器を模した張り型を引き抜いた。どろりとした精液が零れ落ちるはずもなく、ただ赤黒い血だけが滴る。
「……好きだったんだ」
 血を拭い、君に元通り服を着せてやりながら、私はいつかの言葉をうわ言のように繰り返した。
 几帳面な君の性格のように規則正しく揺れていたはずの心臓は、脈打つことを忘れた。朝露に濡れる花のような唇は、桜に色付きて私を非難することを知らない。星屑よりも美しく煌めいていた瞳は光を失い、もう私を映すこともない。
 私の依り代に似た無機質な眠りに囚われる君を見て、ようやく私は君の死を理解する。そうして、今更のように私は私のしたことを認識した。
 私は君を犯した。細部まで人に似せて作られた私の依り代で、君を屍姦したのだ。
「好きだったんだ……すまない」
 どうしようもない悲しみが私に重くのしかがるが、涙が伝うことはなかった。いくら姿形を人に似せて作られていても、ノームの依り代はそういう風には出来ていないのだから。
 血も巡らず熱もなく、悲しみに涙を流せず、たぎる情欲に精を放つことも出来ない。私は私の依り代を、或いはノームである私自身を、ひどくつまらないものに感じる。
 君は死してなお美しい。だがそれが君の持つ特別な美しさゆえになのか、ただその生を刻む肉体を美しいと羨望していたからなのか。今ではもうわからない。
「すまない」
 ぬけがらは、私の方か。
30名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 14:43:35 ID:0u1BNi2s
以上、お粗末さまでした
ノームってどうやって殖えるんだろう…
31名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 14:47:13 ID:Ry1oIvEs

口調で保険医が一瞬誰か分からなかった…
ノームの依り代は誰が作ってるのかは興味あるな
やはり錬金だろうか
32名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 15:38:48 ID:iov2gvAK
保険医といったら普通はジョルー先生の方だしな
ランツレートのセルン先生は珍しいかも

てか、火葬なのかw
33名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 15:54:18 ID:R78NcS6r
独特の雰囲気があっていい感じだなあ。屍姦ものだというのはともかくw

ノームは土の精霊が祖先らしいから、気付くと土から生まれてるんだと想像
依代はノームの錬金術師が誕生記念に作ってるとかか?
34名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 19:23:36 ID:MyH0E4Zs
Wiz系(と言っていいものかですか)でこんなしっとりした屍姦モノははじめてお目にかかった。なんという新境地w
言葉回しが洒落てて羨ましい…。
35名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 13:06:30 ID:sVl3n3eY
UMD選択時にバックにでる画像のメンバーとセーブデータ選択時のメンバーって違うよな。おまえらどっちが好き?
36名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 15:27:30 ID:8rW+i8U3
>>35
畑に生えてるノームを想像した。
収穫期には、一家総出でノームを収穫し、綺麗に箱詰めしてから
依代を作ってる職人の下に出荷。

37名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 15:33:50 ID:8rW+i8U3
ごめん。上間違えた。
>>35じゃなくて、>>33だった。
38名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 15:46:24 ID:6OBB3slr
野菜かよw
39名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 08:36:47 ID:aGdlI1NC

それなんてマンドラゴラww
40名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 18:04:37 ID:GephbzXr
霊体を掴める一家ってそれなんてシャーマン?
41 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:26:01 ID:cTKZ6sqR
いよいよこのSSもロス……ラストになりました。
期待していた方には大変申し訳ないのですが、今回エロ分が非常に少なめです。ないに等しいです。
最後の最後でこういう形になってしまいましたが、ここは譲れなかった…。
あと、設定はアルバム準拠。修正ミスという噂もありますが、あえて信じてみたw

今回は五章(7)・幕切れ(1)・終章(3)という形式になります。たぶん納まるはず…。
一まとめにしないと、エロ分なしの投下になってしまうのでこの形に。
それでは、いつにも増して長いですが、楽しんでいただければ幸いです。
42a Lost…第五章(1/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:27:01 ID:cTKZ6sqR
翌日から、一行は学園への帰路についていた。色んなことがあった旅ではあったが、その結果として一行は揺ぎ無い自信と、それに見合う
実力を手に入れた。それが誇らしくもあり、またそんな旅が終わってしまうという、一抹の寂しさを感じていた。
そして、ヒューマンもこの旅が終われば、パーティから抜けてしまうという話だった。当然、バハムーン以外の全員が引き止めたのだが、
ヒューマンは笑いながら『一人の方が性に合う』と言った。そう言われてしまっては、さすがにパーティ残留を訴えることも
できなくなってしまう。
そのためか、一行の足取りは決して軽くない。ランツレート名物のカレーを食べたら、もうそこで旅は終わりなのだ。ここから
ランツレートまでは、僅か三つの地下道を抜けるだけである。それなりに強敵のいるラーク地下道はともかく、後に控えるポスト地下道と
ドゥケット地下道程度なら、一日もあれば往復できてしまうぐらいである。そのため、一行の足取りはますます重く、気分も些か
沈みがちである。
とはいえ、既に一行の力はラーク地下道すら問題にしなくなっている。重い足取りで軽々と地下道を潜り抜け、今はもうポスト地下道に
入っている。あまり会話もなく、黙々と地下道を歩く一行の空気は、足取りと同じように重苦しい。
バハムーンはそんな中でも、いつも通り振舞っていた。ヒューマンに突っかかり、エルフやフェアリーからなじられ、セレスティアと
フェルパーに宥められ、ヒューマンが軽い口調で言い返したり、うまくかわしたりする。
だが、いつも通りに振舞っているとはいえ、バハムーンも気は重かった。
僅かな時間ではあった。しかし、このヒューマンは彼女の中にある、ヒューマンという種族に対する認識を根底から覆してしまうような
存在だった。見栄を張ることもなく、そのくせ人より格段に優れた資質を持ち、時にはバハムーンである自分を叱り、しかし普段は
誰であろうと、分け隔てなく、というよりは、うまい具合に態度を使い分けて話す男。
かなり早いうちから、その感情は彼女の中にあった。しかし、彼女はそれを否定し続けていた。下等な種族であるヒューマンに
惹かれているなどということは、彼女のプライドが許さなかった。だからこそ、常に辛く当たり、言いがかりをつけ、何とか嫌いに
なろうと努力した。だが、努力すればするほど、むしろ彼に惹かれてしまった。もう今では、隠し切れなくなりそうなほどに、
その気持ちは膨らんでしまっている。
なのに、その彼は、もうすぐパーティから抜けてしまう。彼女に猶予はなかった。このまま隠し切るか、それとも告げるか。
決断の時は、刻一刻と迫っている。いずれを選んでも、後悔するのは目に見えている。だが、どちらを選べば、より後悔が少ないのか。
勉強ならば、探索ならば、戦闘ならば、これほどまで悩むことはない。しかし、まったくの未知の感情に対する答えは、
いつまで経っても出なかった。
ただ、彼女が悩んでいたのは、決してそのことだけではない。恐らく、それに気付いているのは、彼女のみ。もしかしたら、それは
彼女の思い過ごしなのかもしれない。だが、それにしてはあまりにも、不自然なのだ。
疑念を晴らすことによって、もしかしたら彼により惹かれるかもしれない。あるいは、嫌いになるかもしれない。いずれにしろ、
この疑念は晴らしておかなければ、確実に後悔するだろう。
それに気付くと、バハムーンは心の中で笑った。
そう、まずは疑念を晴らすのだ。もう一つは、その話の中で、判断すればいい。そう決めると、バハムーンの心は軽くなった。そして、
チャンスが訪れることを、静かに待つことに決めた。
43a Lost…第五章(2/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:28:07 ID:cTKZ6sqR
ポスト地下道を抜けたとき、太陽はやや傾き始めていた。このままドゥケット地下道を抜けることも、十分可能ではあったが、
一行はここで宿を取ることにした。それは、少しでも長く、別れの時を先送りにしたいという気持ちのためである。
まだまだ夕食までは時間があるし、特にこれと言ってやることもないため、一行はそれぞれ好き勝手に過ごしていた。最初は全員揃って
話をしていたのだが、やがてバハムーンが抜け、ヒューマンが抜け、徐々に解散となっていった。
夕日が海を赤く染める頃、ヒューマンはドゥケット岬の先端に立ち、落ちる夕日を眺めていた。その目はどこか遠くを眺めているようで、
声をかけるのが憚られるような雰囲気がある。
だが、それでも構わず声をかけるのが、彼女の流儀である。
「相変わらず、気障な真似をしている。夕日がそんなに珍しいか。」
ヒューマンは振り返らずに、フッと笑った。
「いやぁ、地下道にさえ潜らなきゃ、毎日見てるもんさ。だが、今日この日の夕日は、今しか見られない。」
「ふん、それが気障だというんだ。太陽はいつも変わらずそこにある。例え今日この日は今しかなくても、夕日はいつもそこにある。」
「はっはっは。あるいは、お嬢さんの言う通りかもな。」
バハムーンはヒューマンの横に並び、一緒に夕日を眺めた。それからしばらくの間、二人は黙ってそうしていた。
夕日が、少しずつ水平線へと落ちていく。その下部が水平線に触れる頃、バハムーンが沈黙を破った。
「貴様に、聞きたいことがある。」
「何だい?」
「単刀直入に言おう。貴様、何者だ?」
ヒューマンは表情一つ変えず、ただ煙草の煙を、ふぅっと吐き出した。
「……パルタクスの生徒。学科は狩人。成績はそんなによろしくない、ヒューマンの男さ。」
「そうだな、嘘ではないだろう。だが、貴様は何かを隠している。」
「ほう。なぜ、そう思う?」
相変わらず、ヒューマンは表情を変えない。だが、その目がバハムーンを見ることもない。
「理由なら腐るほどある。まず、貴様の戦いの腕は異常だ。貴様の高みに達するには、エルフとて数十年の修行を要するだろう。」
「お褒めに預かり、光栄だ。」
そう言ってヒューマンは笑うが、バハムーンは笑いもしない。
「また、罠の解除もおかしい。以前いたクラッズから聞いたことがあるが、今学校で教えている調べ方は、あんな古臭い技術ではない。
貴様の罠の調べ方は古過ぎる。」
「………。」
「何より、昨日のハイント地下道だ。貴様、なぜ最近解放されたばかりの、あの地下道を知っていた?」
「………。」
「狩人の勘、などとは言わせんぞ。偶然にしては、あまりに出来すぎている。そもそも、貴様の足取りには、警戒感がまったくなかった。
まるで、よく知った場所だと言わんばかりにな。その上で、もう一度聞くぞ。貴様……何者だ。」
しばらく、ヒューマンは口を開かなかった。ただ、静かに煙草を吸い、煙を吐き出す。が、やがて観念したかのように、フッと笑った。
「案外……君も、人のことを見ていたようだ。そして、冷静な分析だね。」
プッと息を吹き込み、キセルの灰を飛ばすヒューマン。そして、懐から新たな刻み煙草を取り出し、キセルに詰め込む。
「だが、大したことはない。少しおかしな、どこにでもいる、ただのヒューマンさ。」
その態度に、バハムーンは少しムッとする。つい殴りたくなる衝動を抑え、何とか口を開いた。
「いいか、私は弱い者は嫌いだ。だが、強いくせに弱いふりをする奴はもっと嫌いだ。」
「え…?」
その言葉を聞いた瞬間、ヒューマンは呆気に取られたようにバハムーンを見つめた。そんなに驚くような事かとバハムーンが訝しんだ瞬間、
ヒューマンは高らかに笑い出した。
「はぁっはっはっは!!!あっはっはっはっは!!!」
「き、貴様、何がおかしいっ!?」
「はっはっは……いやあ、すまんすまん。だがな……はっははは!!まさか、そんな言葉を二度も聞くとはな。はぁっはははは!!!」
「二度……だと?い、いつ誰に聞いたのだ?」
ヒューマンは笑いすぎて咳き込みつつ、何とか笑いを収めた。そして、まだニヤつく顔でバハムーンを見つめる。
「誰か、という質問なら、君と同じバハムーンの女の子にね。いつか、という質問なら…。」
急に、ヒューマンは遠くを見つめるような顔になり、煙草に火をつけた。
44a Lost…第五章(3/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:29:01 ID:cTKZ6sqR
夕日を見つめたまま、大きく煙を吸い、フッと吐き出す。
「……さぁて、いつだったか…。ちょうど今ぐらいの時期ではあったが……もう、100年以上も前の話だから、な。」
「やはり…。」
バハムーンはそっと、剣の柄に手を掛ける。それに気付くと、ヒューマンは困った顔でバハムーンを見つめた。
「おぉっと、勘違いしないでくれ。確かに長生きはしてるが、れっきとしたヒューマンだ。化けもんじゃない。」
「だが、貴様らヒューマンの寿命なぞ、100年も行かないではないか。」
「……そうだな。」
再び、夕日を見つめるヒューマン。その顔には、一抹の寂しさが感じられた。
「よし、君にはすべて話そう。この、くだらない一人のヒューマンの、生き様をね。」
もう一度、深く煙を吸い込み、ゆっくりと時間をかけて吐き出す。そして、静かに喋りだした。
「俺はな、冒険者の一人だった。100年以降はきちんと数えてないから、正確な年月かは知らんが……大体、160年前の生まれか。」
「160年か。私達からすれば、寿命の半分も行っていないな。」
「はっはっは。君達から見れば、な。だが、俺達ヒューマンには、長すぎる時間さ。」
寂しそうな顔で言うと、ヒューマンはまた煙を吸い込む。
「当時は学校なんてものもなく、仲間を探すときは酒場ってのが相場だった。それに、今じゃ異種族との交流も珍しくはないが、当時は
色々と大変だったもんさ。バハムーンは今以上にきつく当たってきたし、エルフやドワーフなんてのはどう付き合えばいいか、まったく
わからなかった。ディアボロスなんて、言うまでもないな。」
当時を懐かしむように、ヒューマンは目を瞑った。
「酒場にいる奴だって、仲間かどうかなんてわからない。地下道の宝を独占したいがため、嘘の情報を教えられることもあったし、
時には敵として戦うこともあった。罠の解除は、仲間の見よう見まね。剣の持ち方、弓の引き方だって、完全に我流か猿真似。魔法
なんてのは、一部の限られた奴等だけの特権。そんな中で巡り会えた仲間ってのは、そりゃあもう地下道の宝なんて目じゃない、
本当の宝だったさ。」
学校が違っても、既に協力体制のできている今では考えられないことだった。その話自体も興味があったため、バハムーンはじっと
ヒューマンの言葉に耳を傾ける。
「俺はしがない狩人だった。けどな、鹿や猪相手じゃなくて、いつしかモンスター相手に弓を射るようになっていた。平和な暮らしより、
危険と一攫千金の夢に溢れた冒険者になる……それは、君達もよくわかるだろう?俺はこんな性格なんでな、仲間を取っ替え引っ替え、
決まったパーティに入らず、その場その場を凌いで暮らしてた。だが、ある日誘われたパーティに、どういうわけか居つくように
なっちまった。そこにいたのが、あのバハムーンだ。」
はるかな思い出を手繰り寄せるように、ヒューマンは目を細める。
「君と、よく似ていた。容姿もよく似ていたが、何よりその、気性の激しさ、だな。事あるごとに突っかかられ、罵倒され、貶され、
それに対して俺も本気で言い返したもんだ。だが、腕は確かだった。本当に、いい戦士だった…。」
ゆっくりと煙を吐き出し、目を瞑るヒューマン。その態度に、バハムーンも薄々感づいた。
45a Lost…第五章(4/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:29:50 ID:cTKZ6sqR
「もしや……貴様、そいつのことが…?」
「ああ。本当に、どういうわけだかな。そうやって喧嘩を続けてるうちに、俺もあいつも、お互いに惹かれちまった。お互い憎まれ口を
叩きつつ、だけど背中を預け合う、そんな存在だった。おかげで、俺達は誰よりも強くなり、ラーク地下道やハイント地下道も怖くは
なかった。それこそ、敵なしだったのさ。」
これで、彼がハイント地下道の内部を知っていた理由がわかった。彼にとって、あそこは初めてでも何でもなかったのだ。
「そんなある日な……ちょうどここでこうして、今みたいに俺ぁ夕日を見てたのさ。あれは……そう、思い出した。140年前だ。
ちょうど、さっきのは全部あの時の再現みたいだった。まあ、言葉の内容は違ったがね。後ろからあいつが来て、『貴様は強いな』
って……初めてだったんだぞ、あいつが俺のことを褒めたのは。」
本当に嬉しそうに、目を細めるヒューマン。口調も心なしか、いつもと違ってきている。
「けどな、俺は捻くれもんだから『お前には、どうあがいたって敵わねえよ』って言ったんだ。そしたら、君のあの台詞さ。」
既に、煙草の火は消えている。だが、ヒューマンは煙草を替えようともせずに喋り続ける。
「『そうか、そりゃ悪かったな』って返したら、『私が認めたんだ。それを否定することは、私を否定することだ』ってね。あれにゃ
参った。こっちゃ完全に言葉を封じられちまったんだからな。んで、調子に乗って聞いたのさ。『認められたんなら、お前と対等か?』
ってな。そうしたら、あいつ柄にもなく顔真っ赤にして『そ、そうだ』ってさ。あいつが可愛いと思ったのも、あの時が初めてだった。」
嬉しそうに語るヒューマン。だが、バハムーンはそれを聞きながら、話の中のバハムーンに激しく嫉妬していた。140年経った今も、
これほどまで思われる相手とは、一体どんな者だったのだろう。
「それからは、まあ、若かったからな。いつしか完全に恋人同士。ああ、避妊だけはしっかりしたけどな、お互い引退するつもりは
なかったから。俺ぁこんな性格だ。パーティも取っ替え引っ替えだったが、女も取っ替え引っ替えだったんで、避妊の知識は豊富でな。」
「最低な男だな。」
「おっと、勘違いしないでくれ。俺はあいつにゃ本気で惚れたんだ。だからあいつと付き合いだしてからは、他の女と寝たこたぁなかった。
本当に、最高の奴だった……けど、それも長くは続かなかった。」
急に声の調子を落とすヒューマン。そしてキセルを吸い、ようやく火が消えていることに気付いたらしく、新たな刻み煙草に火をつける。
「ご存知の通り、俺達の寿命は短い。俺はどんどん老いていく。だが、俺は老いが怖かった。あいつとずっと一緒にいたかったってのも
あるが、それよりも死が怖かったんだ。30過ぎて、いよいよ衰えが激しくなったとき……あいつと、大喧嘩した。あいつはな、
『老いは誰しも避けられない事だ。それに従うべきだ』って意見だった。だが、俺は同意できなかった。結果、散々お互いに傷つけあって、
俺はパーティを抜けた。」
目を瞑り、深く煙を吸い込むヒューマン。しばらく肺に煙を留めてから、ゆっくりと吐き出す。
「地下道は、ほんと望むもんは何でも手に入った。金も、名誉も……若さも、な。」
「若さ…?」
「知ってるだろう?太陽の石、さ。乙女の石もそうだったな。他にもいくつかあるが、とにかく、俺はそれらを狂ったように集め、
いつまでもいつまでも若くあり続けた。おかげで、160年経った今でも学生さ。」
「だが、それにしては……顔は確かにそうだが、髪なんか見ての通り真っ白だが?」
そう言われると、ヒューマンは悲しそうな表情を浮かべた。その顔に、バハムーンの胸がぎゅっと締め付けられる。
「ああ……俺は、考えが足りなかったのさ。あいつの言うとおり、俺は寿命を全うするべきだったんだ。考えてみろ。知り合いが、
親友が、仲間が……それだけじゃない。そいつらの子供、孫までもが、俺より早く年老い、死んでいくんだ。あんなの……俺には、
耐えられなかった。地獄なんてもんじゃない。ヒューマンはヒューマンらしく、短い寿命を終えるべきだったんだ。」
46a Lost…第五章(5/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:30:46 ID:cTKZ6sqR
涙こそ浮かべていなかったものの、ヒューマンの額には苦悩の皺が刻まれ、咥えるキセルは僅かに震えていた。
「俺は決心したよ。失った時を、取り戻そうと。だが、いつしか学校なんてのができて、それが地区警備なんかも兼ねるようになって、
俺みたいな奴は、なかなか地下道に入れなくなった。俺は、自分に甘くてなあ。地下道の物で手に入れた若さなら、同じく地下道の物で
取り返さなきゃいけないと思い込む事にして……そのまま年を取ることは、なかった。それまでにかき集めた物で、小賢しく生き延び
続けた。」
「なるほど、納得した。それで、あの時悪魔の呪いを受けて、あんなに気味の悪い笑顔を浮かべたのか。」
「そういうことだ。」
ゆっくりと首を振るヒューマン。だが、その口元に笑みが浮かぶ。
「ああ、わざと間違ったわけじゃないぞ。間違えたのは本気だ。」
「余計たちが悪いな。」
「まあそう言うな。それでともかく、いつしか三つ目の学校ができた。それがパルタクスだ。」
「ああ。確かにここは新設校だったな。」
「生徒募集は手広くやってたからな。これはチャンスだと思った。幸い、見た目は若い。入試試験も楽なもんだ。それでうまく入学し、
再び俺は一人で地下道を歩き続けた。そして、闇夜の石や裁きの石、悪魔の化石なんかを集めた。」
煙を吐き、どこか諦めの感じられる表情になるヒューマン。
「実はなぁ、あの端正なお嬢さんに学食で誘われたとき……あれぁ、最後の晩餐のつもりだったんだ。もう、溜めに溜めたそれらの
大部分を一気に使い、急激に年を取ったところで、せっかくだから最後にうまいもん食おうと、ね。そこに、あのお嬢さん登場だ。」
「断ればよかったじゃないか。そうすれば、今頃念願叶っていただろう?」
バハムーンが言うと、ヒューマンはニッと笑った。
「いやあ、そうも行かない。昔っから、盗賊を探す苦労は変わらないからな。だから、人生を終える前に、ちょいと手伝ってやろうと
変な気を起こしたわけだ。そしたら、あんな実力で空への門に行くとか言う。こりゃ死んでられないと思ったね。はっはっは。」
あんな実力と言われ、バハムーンはムッとした。だが、確かに言葉通りだったため、言い返すことはできなかった。
「……それに、実は石も少し足りなかったんだ。いや、もしかしたら十分なのかもしれない。だが、ちょっと足りない気はしていた。
それも、今回で必要十分な量は揃ったが……ね。」
その言葉は、バハムーンに重くのしかかった。
この男は、帰れば死ぬつもりなのだ。しかも、それを止める手段は、自分にはない。もう、彼の死は確定しているのだ。
「しかしまあ、食ってから石を使うべきだったよ。今回までは何とか持ったが、ホルデアでは君達に迷惑をかけたし、もうこれ以上は
限界だった。急激に年取ったせいで追いついていなかった筋肉の衰えが、そろそろ始まっている。」
「……どうあっても、やめる気はないんだな…?」
懸命に普段の声を出そうとしたが、どうしてもその声は震えてしまった。すると、ヒューマンは慈愛に満ちた目でバハムーンを見つめた。
「……悪いな。こればかりは、やめる気はない。」
「そう……か。」
「君達には感謝してるよ。おかげで、旅立つ前に素晴らしい思い出ができた。後半は後悔ばかりの人生だったが、この二週間、
退屈しなかった。本当に、感謝している。」
バハムーンの心は激しく揺さぶられた。このまま終わることなど、絶対にできない。すべての勇気を振り絞り、彼女は口を開いた。
47a Lost…第五章(6/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:31:45 ID:cTKZ6sqR
「なら……その前に、もう一つ……思い出を、作る気は……ないか…?」
ヒューマンの顔を、真っ直ぐ見つめるバハムーン。ヒューマンもそれを真っ向から見つめ返したが、やがて同情的な視線を向けた。
「悪い……君だけは、ダメだ…。」
「なっ…!?き、貴様!他の女達とは関係を持ったのだろう!?そんなに……いや、確かに私は嫌な奴だっただろう!だが、私は…!」
「いや、ちょっと待て。落ち着いてくれ。君は勘違いしている。」
本気で慌てたように、ヒューマンはバハムーンの肩を押さえた。
「ていうか、なんで知ってるんだ?」
「仲間のことを……知らないわけ、なかろう…。」
「案外細かいお嬢さんだな…。いや、とにかく、君の言葉は、実は躍り上がるほどに嬉しいんだ。だが、だからこそ、受けられない。」
「……?」
「言っただろう?君は、俺の惚れた子によく似てる……いや、似すぎてるんだ。だから、もし俺がこの腕に君を抱けば、俺は君ではなく、
記憶のその子を抱いてしまう。そんなの……あまりに、失礼だ。」
「言い訳など…。」
「言い訳じゃない。初めて会ったとき、俺はそれこそ心臓が止まるかと思った。会った瞬間から、俺は……君に惹かれてたんだ。」
バハムーンは、それでも疑いの篭った、悲しそうな目でヒューマンを見つめた。
「嘘じゃない。でも、だからこそ、君をこの手に抱くことができない。君に惹かれた理由すら、過去の恋人に似てるからだ。例え君が、
どんなに俺のことを好いてくれても、俺は君を好いてあげることができない。君の好意を受け取ることすら、君に対しては失礼になる。
頼む……どうか、わかってくれ…。」
ヒューマンの目は真っ直ぐで、純粋で、言葉にも嘘はなかった。だからこそ、バハムーンも胸が締め付けられるような悲しみに襲われる。
「……恨めしいな、お前の心の中の存在は…。」
「心の中に、いるからこそ……さ。あの後どうなったのかも知らないけど、あいつは今でも俺の心の中で、一番の輝きを放ってる。」
顔も知らない相手ではあるが、バハムーンはその相手を殴り倒したくなった。自分がそいつに似ていなければ、この想いも受け止めて
もらえたはずなのだ。
「だけど、勘違いはしないでくれ。俺は、君のことは大切に思ってる。そうじゃなきゃ、今すぐにでもこの手に抱きたいほどなんだ。」
「……もう、いい。お前の気持ちは、わかった。」
寂しそうに言うと、ヒューマンの手を振り払う。
「だが……そうだな。私が、このまま引き下がると思うか?」
「え?」
ヒューマンが反応するより早く、バハムーンは身を屈め、ヒューマンの頬にキスをした。
頬を赤く染め、少女らしい恥じらいの表情を浮かべるバハムーン。それに対し、呆気にとられた顔のヒューマン。
「今のは、私が勝手にやったことだ。お前が、気に病む必要はない。」
「……は……ははははは!これは参った!強いお嬢さんだ!」
楽しそうな、腹の底からの笑い声を上げると、ヒューマンの目にもいたずらな光が宿った。
「なら、俺もお返しさ。」
「え?」
身を屈めたままのバハムーンの額に、サッとキスをする。そのまま顔を優しく包み、少年のような笑顔を浮かべた。
「今のは、君に対するお礼さ。心の中の、恋人に対してじゃない。」
バハムーンの驚いた顔に、少しずつ笑顔が広がっていく。同時に、その頬もさらに赤く染まっていく。
「ば、バカなことを!そ、それが最初からできるのなら、私の気持ちにも応えればいいものをっ!」
「あ、何だよ、せっかくお返ししたのに。」
「そ、それに額にキスだと!?子供扱いもいい加減にしろ!う、うれ、嬉しくなんかないぞ、そんなのでは!」
「なぁに言ってるんだよ。お前、すんげえ嬉しそうじゃねえか。」
「それはその……む?おい、待て!貴様にお前呼ばわりされる筋合いはないぞ!」
「え?ああ、すまんすまん。つい、気持ちが若返ってしまってね…。」
恥ずかしそうに頭を掻くヒューマン。こいつにも若い時はあったのだなと、今更ながらにバハムーンは思った。
48a Lost…第五章(7/7) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:32:49 ID:cTKZ6sqR
「やれやれ。それにしても……その……も、もう一度、やり直さないか…?」
「何をだい?」
「ぐ……野暮なことを聞くなっ!そ、その……き、き、キス……に、決まっている!」
「はは、そうだな。君となら、それもまた、悪くない。」
いつしか、夕日は完全に沈もうとしていた。海は金色に染まり、空には星が瞬き始めている。
闇が二人の顔を隠す前に、お互いの顔を見つめあう。
白い髪に、少年のような顔を持つヒューマン。少女らしい恥じらいの表情を浮かべ、顔を赤く染めるバハムーン。
お互いの顔を瞼に焼付け、バハムーンはそっと目を閉じた。ヒューマンは優しく、その頭を抱き寄せて目を閉じる。
すぐ先にある別れなど、微塵も考えずに、二人はそっと唇を重ねた。
ヒューマンの舌が、バハムーンの舌を撫でる。バハムーンも、最初は怖々と、やがて少しずつ大胆に応え始める。
お互いの頭を抱き、目を閉じる二人。相手の柔らかい舌、暖かい口内。混ざる吐息が顔をくすぐり、絡まる舌が相手の存在を確認する。
互いの唾液が混じり、しかしそれすらも、今の二人には愛おしい。
何度も何度も、お互いの温もりを貪るように、深く激しいキスを交わす。吐息には二人の声が混じり、時折聞こえる湿った音も、二人の
気持ちを昂ぶらせていく。昂ぶるほどに、バハムーンのキスは激しくなり、ヒューマンがそれに応える形となっていく。
唇を吸い、口の中をなぞり、何度も何度も舌と舌を絡めた。まるで、それが相手を繋ぎ止める、唯一の手段であるかのように。
やがて、日が完全に水平線に落ち、辺りが闇に染まる。そこでようやく、二人は唇を離した。名残を惜しむように、二人の間につぅっと
唾液が白い糸を引き、やがて切れた。
「……お別れ……なのだな…。」
「……すまない。」
「……ふ、ふん!だが、その、清々する!は、初めて好きになった相手が、ヒューマンだなどと知られたら……わ、私は、一族の間の
恥さらし……だ…。だ……だが…………本当に……好きだったのだぞ…。」
バハムーンは必死に、涙を堪えている。そんなバハムーンの頭を、ヒューマンは優しく抱き締めた。
「ありがとう、お嬢さん…。いつか、俺なんぞよりいい相手を、見つけてくれ…。」
「……ヒューマン…!」
その体を抱き返そうとした瞬間だった。
「わっ、ちょっと押しちゃ…!」
「きゃー!」
突然の声に、二人は大慌てで振り返った。後ろでは、木陰にいたらしい仲間の四人が折り重なって倒れていた。
「あ、見つかりましたわ。」
「まずいわね。逃げる?」
どうやら、話の内容を把握してはいないらしい。が、だいぶ前から見ていたことは、容易に想像がつく。
「貴様ら……いつからいたー!?」
「きゃーっ!早く逃げましょう!」
「あっははー、なかなかエッチなキスだったよー!」
「貴様らぁ!そこに直れえぇぇー!!!!」
「ちょっと、フェアリーのバカ!火に油注いじゃダメよ!」
「わたくしは、一足先に逃げさせてもらいますわ!では、ごきげんよう!」
「やれやれ……女三人寄れば姦しいとはよく言うが、五人揃うと、何とも賑やかだね。」
四人を追い掛け回すバハムーン。楽しそうに逃げる四人。その姿を、ヒューマンは呆れた笑顔を浮かべて見守っていた。
「ヒューマン、五人切りおめでとー!」
「フェアリー貴様ぁ!!叩っ切ってやるー!!!」
「ああ、エルフさんがもうあんなところに!」
「逃げ足速いわねあの子!?」
「はっはっはっは。本当に、一生ものの思い出、だな。あっははははは。」
実に楽しそうに、ヒューマンは笑った。
いつまでもいつまでも、岬には六人の声が響いていた。
49a Lost…幕切れ(1/2) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:37:22 ID:cTKZ6sqR
あの旅を終えて、一週間が経った。ヒューマンは約束通りパーティから抜け、そして二度と姿を見せなかった。
この日、彼女達が地下道探索を終え、それぞれの部屋に戻った時、部屋の前に見慣れない手紙が置いてあった。
差出人の名前はない。だが、内容はすべて同じだった。彼女達は部屋に戻ると、手紙を開封して読み始めた。

『この手紙を読む頃には、俺はもう目的を果たしているだろう。こんな形でしか、君達に別れを告げられなかった俺を、許してくれ。
俺は、本来既に死んでいるべき人間だった。俺が生まれたのは、160年も前のこと。だが、年老い、朽ち果てることを恐れ、地下道の
力で生き永らえていたんだ。だが、その結果は、半永久的な若さと命を手に入れた代わりに、幸福な死を失った。』
エルフは手紙を読み終えると、静かに顔を伏せた。
「本当に、風のような方ですわ…。突然現れ、花を揺らすだけ揺らして……勝手に、手の届かないところへ行ってしまうなんて…!」
一人呟くと、エルフは顔を両手で覆い、静かに泣き始めた。

『仲間が、親友が、その子孫達が、俺より先に死んでいく。それを見て、俺はようやく気付いた。俺は、ただのヒューマン。何かを
手に入れるには、代償が、必ず必要だということを。だが、その頃には地下道に一般人は入れなくなり、俺は地下道の力で死を
取り戻すこともできなくなった。そして、そのまま寿命を待つことも、よしとしなかった。』
手紙を丁寧に畳むと、セレスティアは窓から空を見上げた。
「そう……ようやく、手に入れたのですね。本当に、欲しかったものを。本当なら、喜んであげるべきなのでしょうけど…。
ああ、神様…!どうか、あの方を……あの方を、天国へお召しください…!」
両手を固く組み、目を固く閉じるセレスティア。空へ向かって祈りながら、彼女は、はらはらと涙を流した。

『無為に生き永らえ、やがてこの学校ができた。俺は生徒として入学し、今度こそ失った時間を取り戻そうと決めた。君達のパーティに
誘われた、あの日。俺は、最後の晩餐となるはずの食事をしていた。そこに、君達のパーティへの勧誘だ。既にかなりの年を取り戻した
俺には、きついもんがあった。だが、放っておくこともできず、俺は君達とパーティを組んだ。それには、本当に感謝している。』
手紙を放り投げ、フェアリーは枕に顔を埋めていた。既に、枕は絞れば涙が出そうなほどに濡れている。
「うえぇーーん!!こんなの……こんなの、勝手すぎるよぉー!!!ほんと……本当に、大好きだったのにぃ…!!ふえぇーん!!
ヒューマンの……ヒック……ヒューマンの、ばかぁー!!!!!」
どんな事があっても、言うことのなかった罵倒の言葉。それを吐き出しながら、フェアリーはいつまでも泣き続けた。
50a Lost…幕切れ(2/2) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:38:02 ID:cTKZ6sqR
『だいぶ遅くはなったが、君達と行動することで、俺はかつての自分に戻ったような気がしていた。未知の地下道の探索。強くなる実感。
新しい道具。君達のおかげで、俺はあの頃の感覚を取り戻すことができた。それに、君達からもそれぞれ、思い出をもらうことができた。
俺自身は、かなり君達に対して非礼があっただろう。許してくれとは言わない。しかし、本当に感謝している。』
フェルパーは手紙を持ったまま、大きなため息をついた。
「こんな事なら……あの時、本当に子供でも作っちゃえばよかった…。でも、ダメか…。それじゃまた、彼を苦しめる。でも……ねえ。
勝手だけど……そうすれば、こんなに……悲しい思い……なんてっ…!う……ううっ…!」
溢れる涙。それを拭おうともせず、フェルパーはただ一人、涙を流し続けた。

『こんな俺が、君達に対して何かお願いをするなんていうのは、おこがましいことだろう。それでも、一つだけ頼みがある。
どうか、俺が消えることを、悲しまないでくれ。俺はようやく、本当に欲しいものを手に入れるんだ。できる事なら、それを喜んでくれ。
最後になったが、君達の行く先に、幸運があることを。そして、もう一度言う。本当に、本当に、ありがとう。』
つまらなそうに手紙を読み終えると、バハムーンはベッドに寝転んだ。
「今更、だな。既に聞いたことなのに……律儀な男だ。いや……男だった……か…。」
目を閉じるバハムーン。が、すぐにその目を開けた。
「しかし、こんな手紙を出しておいて、悲しむなとはよく言えたもんだ。今頃、あいつらは泣いているだろう……な。」
窓から外を見上げる。空には、今にも落ちそうな夕日が輝いていた。
「あの日の夕日は、あの時だけのもの……か。今になって、お前の言ったことがよくわかる。だが、これではお前があまりに報われない。」
涙を堪え、バハムーンはしっかりと空を見据えた。そして目を細め、静かに口を開く。
「お前の願い……とうとう、叶ったのだな…。おめでとう…。」
そう呟き、弱々しく空に向けて笑ってみせる。
最後に聞いた、岬での笑い声。バハムーンの耳には、あの笑い声が、また聞こえたような気がした。
51a Lost…終章(1/3) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:39:38 ID:cTKZ6sqR
季節は夏になった。一行もようやく、あのショックから立ち直り、それぞれの道を歩き出していた。
「わたくしならば、あの程度の腕になるのに10年もかかりませんわ。」
そう語るエルフは、狩人学科に転科した。元々弓使いとして優れた資質を持っているため、その言葉はあながち誇張でもないかもしれない。
が、転科のためにしばらく座学が続いたため、今のところは勘を取り戻すのに躍起になっている。
フェアリーは司祭学科に転科した。
「いつか、傷ついた心も治せるような司祭になる。絶対に、死にたいなんて言わせない。」
それが、彼女の口癖である。以前はわがままで身勝手な面もあったが、今では司祭としての姿も、だいぶ板についてきた。
セレスティアはそのまま僧侶の道を歩み続けることを誓った。元々の性格からして、彼女にはこれ以外の道はないと言っても過言ではない。
「わたくしは、迷いません。いつか、あの方よりもずっと、優しい人になれるよう、頑張ります。」
彼女の笑顔は優しく、どこか達観したような感もあり、その顔を見れば誰もが毒気を抜かれてしまう。そんな天衣無縫の笑顔を身につけた
理由を、彼女が語ることはない。
誰もが彼の影を、少なからず追っていた。そんな中、フェルパーだけは比較的淡白だった。
「お前は、どうするんだ?」
「どうするって、別に何も変わらないわ。今までどおり、侍として腕を磨くし、リーダーとしても頑張る。……また、そのうち仲間を
探すわ。今度は女の子で、ずっといてくれる子を、ね。」
見ようによっては、薄情とも取れるほどあっさりとしていた。しかし、誰もそれを責めることはない。
彼女の腰に下げられた、二本の刀。一つは、鬼丸国亡。それと、今の実力では場違いに見える白刀秋水。それは紛れもなく、あの旅で
手に入れた刀である。以前、宗血左文字を拾ったこともあるのだが、彼女はそれを後輩にやってしまった。ある意味では、彼女が一番、
彼のことを引きずっているのかもしれない。
「それで、あなたこそ、戦士のまま?今のあなたなら、侍にも修道士にも、神女にだってなれそうだけど。」
「ああ。私には、これが一番合っている。それに、前衛が二人も転科しては、お前の負担になるだろう?」
「それもそうね。」
フェルパーは小さく笑う。バハムーンも笑顔を返してから、フッと遠くを見つめる。
「さて……また全員揃うのは、一月後か?」
「そうなるわね。フェアリーとエルフなんか、もう帰っちゃってるし。セレスティアも、明日発つそうよ。」
「私も、明日か明後日だな。お前はどうするんだ?」
「私は、リーダーだもの。みんなが無事、出発したのを見届けてから、発つわ。」
「細かい奴だ。だが、それでこそ、なのだろうな。」
「ふふ、あなた、変わった。」
「私だけじゃないさ。みんな、変わった。」
二人はまた、遠くを見つめた。そして、仲間とのしばしの別れに、思いを馳せるのだった。
52a Lost…終章(2/3) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:40:37 ID:cTKZ6sqR
それから数日。彼女は長期休暇を取り、ふるさとへと戻っていた。久しぶりの家はどこも変わっておらず、戻るだけで心が休まる。
「ずいぶん、逞しくなったね。見違えるわ。」
母が、声をかける。だが、逞しい、という言葉があのヒューマンを思い出させ、少し気分が暗くなった。
「はっはっは。そりゃ、あたいの孫だからねえ。まだまだ強くなってもらわないと。」
豪快に笑うのは、彼女の祖母である。祖母とはいえ、元々寿命の長いバハムーンのこと。まだまだ女としての魅力は十分に残っており、
その顔もかなりきれいな方である。ただし、他種族からすれば3メートルに近い女性に魅力を感じるかというと、また別の話ではある。
「にしても、何だか暗い顔してるねえ。なんか悩みでもあんのかい?」
「いえ……そういうわけでも、ないです。」
彼女は祖母を尊敬していた。かつて冒険家であった祖母の話は、幼少の頃の彼女には夢のような話ばかりだった。巨大なドラゴンとの
戦いや、飛竜に乗って旅をするなど、どれも幼かった彼女の心に大きな憧れを抱かせた。その祖母に倣い、家族の反対を押し切って
学校に飛び込んだ彼女を、祖母はいつも応援してくれていた。
祖母は、彼女のいい理解者だった。だからこそ、彼女は聞いてみたくてたまらなかった。
「……お婆様。」
「ん、何だい?」
「その……冒険家、だった頃……恋は、しましたか…?」
「なぁんだ。恋の悩みかい?そりゃあ、いっぱいしたよ。」
「で、では…。」
一度深呼吸をし、勇気を振り絞って言葉を押し出した。
「ヒューマンに……恋をしたことは…?」
「お前、なんて事を言うの!?」
その言葉に、母が声を荒げる。母から見れば、やはりヒューマンとは低俗で下等な生き物なのだ。だが、祖母は優しく笑った。
「あんたを、子供の興味を潰すような子に育てた覚えはないけどねえ?」
「で、ですけど…!」
「ま、落ち着きな。答えとしては、ある。……そうだな、ここじゃ話しにくい。少し外に出ようか?夫に聞かれても、面倒だしね。」
そう誘われ、彼女は祖母と連れ立って外に出た。母は相当その言葉が意外だったらしく、半ば呆然としたようにそれを見送っていた。
見晴らしのいい野原に出ると、二人は揃って腰を下ろした。
「あんた、ヒューマンに恋をしたね?」
バハムーンは、黙って頷いた。
「それで悩んだんだろ?それは、よくわかる。あんな下等な生き物に、本気で惚れちゃうんだからねえ。あたいも、最初は
認めらんなかったもんさね。」
「どんな……方だったんですか?」
「そうさねぇ。パーティの仲間だったんだけど、まあいい男……って、言えるかねえ?ちょっと軽かったけどね。気障だったし。」
また豪快に笑い、祖母はフッと遠くを見るような目つきになった。
「腕のいい狩人でねえ。つっても、罠の解除はへったくそでさ、あいつのおかげで、何度全滅しかかったことか。でも、弓の腕は
確かだった。サジタリウスの弓って、知ってるかい?あれを手に入れてからは、立て続けに四本も矢を射るんだから、凄まじかったよ。
こう、いっつも咥えてるキセルも、気障ったらしいけど、似合ってた。」
「………。」
「でもね、あたいはいっつもそいつに突っかかってた。貶したこともあった。それを、あいつは皮肉っぽく言い返してきてさ、いっつも、
あたい達は大喧嘩。他のみんなには、迷惑かけたもんさ。あっははは。」
何か、バハムーンの胸にもやもやしたものが湧き上がっている。何かが、気になる。
「でもねえ……ある時、ドゥケット岬でだった。まぁた、気障ったらしく、夕日なんか見てやがってねえ。でも、何かその姿見てたら、
魔が差したんだろうね。柄にもなく、『貴様は強いな』なんて言っちまった。」
「それは……一体、い……いつの話……ですか…?」
「あ〜、はっきり覚えてるよ。今日でちょうど、140年、2ヶ月と13日前。」
2ヶ月前といえば、あのヒューマンと旅をしていた時期である。そして彼も、同じようなことを言っていた。
「実際、強かったんだよ。あたいが安心して背中を預けられたのは、あいつだけさ。でもね……あの捻くれもんは、『お前には、どう
足掻いたって敵わねえよ』なんてさ。だから、あたいは言ったのさ。」
「……弱い者は、嫌いだ。だが、強いくせに弱いふりをする奴は、もっと嫌いだ…。」
「おや、言ったことあったっけね?そう、それだよ。それからだったなあ、あたいとあいつが、公認の付き合いになったのは。」
53a Lost…終章(3/3) ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:41:31 ID:cTKZ6sqR
信じられなかった。むしろ、信じたくなかった。
間違いない。彼が惚れていた相手というのは、事もあろうに自分の祖母だったのだ。
よくよく考えてみれば、彼女はよく『祖母の若い頃に生き写しだ』などと言われていた。そしてヒューマンも『恋人に似すぎている』と
言っていた。当たり前だ、その相手は血縁だったのだから。
「でもねえ……やっぱり、ヒューマンだからねえ…。あいつは、寿命が短い。それを恐れて、あいつは道具に頼って生き延びようとした。
でも、わかるだろう?そんなことをすれば、あいつは他のヒューマンと違う時間を生きちまう。それが目に見えてたから、人が親切で
叱ってやったのに……ま、あたいも言葉が、足りなかったんだけどね。」
もはや、ほとんど祖母の言葉など聞こえてはいなかった。だが、祖母は構わずに続ける。
「それからパーティ抜けて……どうなったやら。しばらくして、あたいは今の夫と会って、冒険家からも足を洗っちまったけど、あいつの
ことはちっとも聞かなかったねえ。どっかで野垂れ死んだ可能性も、なくはないけどね。」
「もし…。」
「ん?」
「もしも……今でも、そのヒューマンが生きていたら……お婆様は、どうしますか…?」
「生きてたら?……そうさねえ…。」
祖母は困ったように笑った。
「この手で、あの世に送ってやるよ。いい加減、生き飽きた頃だろうしね。だとしたら、それもまた、元恋人としての務めさ。」
楽しそうに笑う祖母を尻目に、彼女はひどく暗い気分になった。
「お話…。ありがとう……ございました…。」
「こんな話でよけりゃ、いつでもしてやるさ。でも、夫がいる前では、勘弁しておくれよ?」
それから少しして、二人は家に帰った。だが、ろくに挨拶もしないまま、バハムーンはすぐ自分の部屋に行くと、鍵をかけて閉じこもった。
ベッドに転がり、じっと天井を見上げる。そして、ポツリと呟いた。
「私の入り込む隙間なんか……なかったな…。」
祖母は、彼をよく知っていた。彼もまた、祖母の事を思い続けた。その間に、彼女が入り込む余地など、最初からなかったのだ。
他の仲間は、まだ種族も違い、容姿も違ったから、ひと時とはいえ、彼の愛を受けることができた。だが自分は…。
そこまで考え、バハムーンは首を振った。むしろ、愛されすぎたのだ。だからこそ、かつての恋人の影と重ねてしまうことを恐れ、
彼はバハムーンを抱くことができなかった。
「……最初から、わかってれば…。」
そう呟いたところで、結果は変わらなかったに違いない。というより、恋人の孫なんか抱けるわけがない。
「まさか、血族二代で惹かれるとはな……それもまた、血筋……か。」
いずれにしろ、彼女は戦う前から負けていた。あまりに大きな影のせいで、彼は彼女を彼女として愛することが出来なかった。
彼の愛は、きっと本物だっただろう。しかし、元々のきっかけが過去の幻影である以上、彼は彼女への愛を幻影として見ることを
余儀なくされた。だからこそ、彼はその愛ゆえに、彼女を愛せなかった。
彼女の恋のライバルは、あまりに強く、大きく、そして深く彼と繋がっていた。
「初恋は破れるためにあるなどと……一体、誰が言ったんだっけな…。」
ポツリと、一粒涙が零れた。そして、後から後から涙が流れ出す。
「今更、気付くなんてな……くそっ!勝手に逝ってしまって……卑怯者め…!」
腕を目元に押し当て、バハムーンはただ一人で泣いた。今更になって湧いた、失恋の痛み。それに、抑えていた、彼を失った悲しみ。
まるで子供のように、彼女はいつまでもいつまでも、泣き続けた。

ドゥケット岬で交わした、あの口付け。その記憶が、彼女の胸をちくりと刺す。
恐らくは、ずっとこの記憶と痛みを、持ち続けて生きていくのだろう。
100年経とうとも、まるで昨日のことのように、思い出しながら。
ただ一つ。失われることのない、恋の記憶と共に。
54 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/15(月) 23:42:45 ID:cTKZ6sqR
以上、投下終了。幕切れ部分、1レスに納まりませんでしたorz
この学校、絶対夏休みとか冬休みとか設定されてないと思う。基本放任だし。
ともあれ、約一月もの間のお付き合い、ありがとうございました。この場を借りて、読んでくれた方々に感謝。

それでは、この辺で。
55名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 10:22:03 ID:/72UC/FQ
完結乙!今までのことにここまでの伏線とは…
長編GJでした
56名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 11:14:33 ID:BNrigypy
やっぱりばはこがいちばんだー
57名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 19:38:03 ID:TdoXP2Kz
長編完結お疲れ様です。
そしてナイスガイよ安らかに。ヾ

しかし、おばあちゃんの体長が三メートルもあって激しく動揺したのは俺だけじゃないと信じたいんだが如何か
58名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:57:30 ID:fhqwziHB
安心しろ! 体長とは頭から尻尾の先までのことを言うんだ!
59名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 00:28:18 ID:HtPWLp7y
生物学的には角や尻尾も含めた大きさは全長っていうんだぜ?
60名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 08:26:52 ID:XYLZ4BQW
そもそも種族の生態とか詳しく説明されてないから、バハムーンが長寿で3m超えるのか分からんな


後バハ子ってツンデレそうでいいよな、特に赤バハ子
61名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 08:28:23 ID:BTgErooV
>>54
GJ!


最後の最後にこいつらが学生だと思い出さされるとは思わなかったw
62名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 10:22:23 ID:EDUbCoGt
あぁ、乙でした

そうか、既に延命を重ねて、自分の意思で
消えることを選んだか…それなら仕方ないよね。
どうか、安らかにと願わずには居られないぜ
63名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 19:09:06 ID:K/lwkl4B
乙です

なるほど、160歳ですか……
あの渋さのひみつがわかったきがするわ
それだけ生きてりゃ、ヒューマンには充分か……
どうか、安らかにな。癒しの果実は俺の嫁と婿のためにとっておくことにするさ
長編、GJでした
64名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 07:17:58 ID:YDLyn1jY
感動した!

‥言葉足らずですみません‥;

65名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 17:41:24 ID:irq5/qTQ
乙でした

フェル子かわいいよフェル子
66名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:09:08 ID:PAumFJ7W
過疎っとるな
67名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 11:55:01 ID:FJFGM3d4
いや、あまりにGJ過ぎる作品の後だから投降するのをためらっているのではないか?
68 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:05:21 ID:wS3Z8JDv
ドワが喜び庭駆け回り、フェルがコタツで丸くなる時期いかがお過ごしでしょうか。
そろそろクリスマス。ということで、少し早めにクリスマスネタ。お相手は今まで使ってなかったヒュム子。
今回は徹底的に台詞を省いてみてます。そんなわけで、いつもより画面が黒々としています。
ともあれ、この寒い時期に少しでも暖かくなっていただければ幸いです。
69 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:06:16 ID:wS3Z8JDv
どんな季節でも、地下道を歩く冒険者にはあまり関係のない話である。
地下道の常に気温は一定で、その地下道の場所によってちょうどいい気温だったり、身を切るような寒さだったり、焼け付くような暑さ
だったり、とかく季節と関係なしに、一年中変わらぬ姿を保っている。
だが、その冒険者は大半が学生である。学園生活を送る彼等にとっては一転、季節は大きく関係してくる。
多くの新入生が訪れる春。長期休暇を取る者が多い夏。新入生も学園生活にすっかり慣れる頃である秋。そして、無事に一年を過ごせた
ことに感謝する冬。
とはいえ、それだけが季節の持つ意味ではない。学科も年齢も出身も種族も違う彼等が一堂に会し、男女共に命を預ける仲間となれば、
少なからず恋が生まれる。時に同じ種族同士。時に異種族同士。友好的な種族同士。また時には諍い会うはずの種族同士。ごく一部の
例外的に同性同士。パーティと同じ、あるいはそれより多くの恋が、彼等の間にはあった。
そんな彼等にとっては特に、季節は大きな意味を持つ。すなわち、バレンタイン、ホワイトデー、クリスマスなどの年中行事である。
その時期になると、学園はほのかに暖かい雰囲気に包まれる。恋人同士が愛を語らい、共に過ごす喜びを分かち合う。中には、そういった
時期を呪う者もいたりするが、場合によっては明日にも永遠の別れとなる者同士。多くの者は、そんな恋人達を祝福してやる。
だが、恋とは得ることもあれば、失うこともある。
恋人自体を死によって失うことも、学園では珍しいことでもない。だが、燃え上がる薪の火が消え、やがて冷えた灰となるように、恋も
やがて燃え尽き、冷えてしまうこともある。
彼等が出会ったのは、ある寒いクリスマスイヴだった。
恥ずかしがりの代名詞と言われるような種族、フェルパー。同種族でなければ、人見知りのあまり喋ることもほとんどない種族である。
パーティを組んではいた。しかし、特に強い繋がりがあるわけでもなく、またその人見知りのせいで、未だに馴染むことができなかった。
既に入学して半年以上経つが、彼自身はパーティと常に一定の距離を置いていた。
彼は一人、学園を歩いている。仲間のうちの二人が『今日は一緒にいたいから休み』と一方的に宣言したため、今日の探索は休みである。
だからといって、何もする事などない。こうなってみると、知り合いのいない学園はひどく退屈である。が、そんなのにはもう慣れっこ
だった。彼は彼なりに、暇潰しの方法を体得している。
ぼんやりと、しかし周りに意識を配って学園を歩く。
人間観察は、飽きることがなかった。
時期が時期だけに、学園内にはカップルが目立つ。楽しそうにお喋りしているフェアリーとヒューマン。一緒に昼食をとるエルフと
クラッズ。巨体が目立つバハムーン同士のカップル。意外と言うかお似合いと言うか、ディアボロスとノーム。
皆それぞれに、楽しそうに過ごしている。殺伐とした地下道探索を本業としているのが嘘のように、彼等はただ恋愛というものを満喫
していた。誰も彼も幸せそうで、見ているこちらまで楽しくなってきそうだった。それと同時に、こんな時にも一人で校内をうろつく
自分が、少し寂しくも感じられるのだが。
校舎を通り、寮を歩く。中庭を歩くと、ここにも大勢のカップルがいる。だが、その中で、一人だけ異彩を放つ人物がいた。
70 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:06:51 ID:wS3Z8JDv
ベンチに座り、きれいなリボンをつけた包みを抱えているヒューマンの女の子。まだ待ち人が来ないらしく、どこかぼんやりしたように
座っている。見る限り、結構長い間待っているのだろう。その目はどこか切なげで、時折、中庭の時計を見上げる顔が寂しそうだった。
周りは幸せの絶頂と言わんばかりのカップル達。その中において、彼女は群れから締め出された子羊のように儚げだった。
何となく気にはなったが、だからといって話しかけられるわけではない。早く待ち人が来るといいねと、心の中で彼女に声をかけ、彼は
また歩き出した。
学食に行って昼食を取り、寮の屋上で日向ぼっこをしつつ、下を行き交う人々を眺める。それに飽きると、あちこち教室を回ってみたり、
購買に顔を出してみたり、職員室を覗いてみたりする。とりあえず、ユーノ先生は今年も一人で過ごす事になりそうだというのを確認し、
再び日の傾いた学園内をうろつく。
夕日の中を行き交う恋人達は、昼間よりも一層ロマンチックに見える。実際、彼等は昼間よりも奥ゆかしげで、じきに訪れる瞬間への
ムードを今から練り上げているようだった。夕食を取りに学食へ行き、周りの音に耳を澄ませば、あちこちから色んな会話が聞こえてくる。
エルフが甘く緻密に紡がれた言葉を囁き、ドワーフは聞いているこっちが恥ずかしくなるような愛の言葉を平然と言ってのける。
セレスティアは恥ずかしげに、遠まわしな表現でそれを伝え、フェルパーの声はほとんど聞こえないが、見れば近くのカップルは、
声はなくとも尻尾同士を絡ませ合っている。
同じフェルパーでも、こうも違う。彼は何となく興を削がれ、早めに食事を終わらせると、すっかり暗くなった学園内を歩き出した。
空は曇っている。空気が切れ味を持ちそうなほど冷え、湿った匂いが鼻をつく。早めに寮に戻った方がいいかもしれない。
最後に一周してみようと、彼はまた校内を歩き出す。職員室の前を通り、保健室を通り過ぎ、地下道入り口前を経由して中庭へと
歩を進める。
その時、彼は目を疑った。
昼に見た、あの子がまだ座っている。相変わらず、きれいなリボンをつけた包みを抱え、うつむき加減でベンチに座っていた。
あれから一体何時間経ったと思っているのか。もう、周りに人はほとんどいない。人の気配も薄れた中庭のベンチに、ただ一人座る
彼女は、何とも寂しく、寒そうだった。
そっと、注意深く彼女に近づく。目の前まで迫ったとき、彼の足が見えたのだろう。彼女はふと顔を上げた。
期待に満ちた目が、やがて失望と諦めの色を浮かべる。彼女に余計な期待をさせてしまったことを、彼は少し後悔した。
悲しい顔だった。彼を見上げる目の周りは、涙を擦った跡がはっきり残っており、その目は赤い。
声をかけようと思ったのだが、言葉は喉に張り付いて声にならない。やがて、彼女は諦めとも自嘲とも取れない笑顔を浮かべ、
またうつむいた。その姿がまた、何とも悲しげだった。
人見知りの激しいフェルパーではあるが、好き嫌いの少ないヒューマンは比較的付き合いやすい相手である。それ故、声はかけられずとも、
何か彼女のためにしてやりたかった。少し迷ってから、彼は何も言わずに、彼女の隣に腰を下ろした。彼女は少し驚いたように彼を見たが、
彼女もまた何も言わず、再びうつむいた。
71 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:07:34 ID:wS3Z8JDv
二人の前を、何人もの生徒が通り抜けた。誰一人足を止めることなく、それぞれの幸せを満喫し、暖かそうな笑顔を浮かべていた。
誰も、足を止めなかった。誰一人、ベンチの二人を気にかける者はいなかった。
そのうち、行き交う生徒もまばらになり、数分に一人来るか来ないかとなり、やがてそれも途絶えた。
それでも、二人はベンチに座っていた。来るはずのない、彼女の恋人を待ち続けて。
身を切るような寒さだった。元々寒さには強くないが、それにしても度が過ぎる。隣の彼女を見れば、彼女の手も震えている。それは
寒さのためなのだろうか。それとも、来るはずのない恋人を待つ悲しみのためだろうか。だが、彼にはどちらでも構わなかった。
少し身を寄せ、尻尾で彼女をそっと抱き寄せる。一瞬、彼女はビクッとして抗いかけたが、やがて力尽きたように、彼に体を預けてきた。
冷え切った体が、彼の体温を奪う。それでも、してやれることはこれしかないのだ。
体を預けた彼女は、しばらく悲しそうな顔で遠くを見つめていた。やがて、その目に涙が溢れ、ぽろぽろと零れ落ちた。涙が抱えた包みに
当たり、ぱたぱたと音を立てる。
ひらりと、二人の前に白い物が舞い降りてきた。同時に顔を上げると、雪が二人の上に降りかかる。
無言のまま、二人はしばらくそうしていた。一つ、二つと数えられるほどだった雪が、少しずつ数を増やす。やがて、ベンチと二人の肩に、
うっすらと白く積もり始めた。
さすがに、このままこうしていては体を壊してしまう。彼女に至っては、もうすっかり冷え切っている。
そっと、ベンチから立ち上がる。少し迷い、あくまで優しく、彼女の肩に手を掛ける。彼女は疲れた目で見上げ、そして少し嬉しそうに
微笑むと、黙って立ち上がった。
優しく彼女の肩を抱き、寮へと歩き始める。この姿を、周りが見たらどう思うだろうか。きっと知らない人が見れば、喧嘩したカップル
程度にしか見えないのだろう。
特に深い考えもなく、彼は自分の部屋に戻った。そもそも、彼女は何も話そうとしなかったし、彼の腕に抗うこともなかった。
暖かい部屋の中に入る。彼女は黙ったまま椅子に座り、彼も黙ったままお茶を淹れてやる。
しばらく、二人は無言のままぬるいお茶を飲んでいた。体が暖まってくると、冷え切った心も少しは落ち着いてくる。
さて、これからどうしたものかと彼が気を揉んでいると、彼女はポットからちゃっかりお代わりを注いでいる。目が合うと、ちょっと
いたずらっぽく微笑んだ。どうやら少しは余裕ができたらしい。
二杯目を飲み干したのを確認してから、彼は口を開こうとした。が、彼女の意味深な視線に、その言葉は止められた。
思わず立ち上がると、彼女も立ち上がる。そして固まったままの彼の体に、そっと縋りついた。
知らない人と話すのすら苦手なのに、しかも女の子に、その上抱き付かれては、彼の全身は魔法にかけられたかのように硬直してしまう。
だからといって振り払うことも出来ず、彼は言葉もなく慌てていた。
不意に、胸元にじわっとした熱さが広がる。それはすぐに冷たくなり、しかし後から後から、熱いものが服に染み込んでいく。
散々に迷ってから、その体をそっと抱き締める。腕の中で震える彼女の背中が、悲しかった。
しばらくそうしてから、彼女は顔を上げた。真っ赤になった目をしっかりと開き、彼の目を真っ直ぐに見つめる。
一瞬、二人の間に心が通った。彼女は長い睫毛を伏せ、彼の首を掻き抱く。それが何を意味するのかは、彼にもすぐわかった。
不思議なほど、迷いはなかった。恥ずかしさ故に少し躊躇いはしたが、すぐにそれも消える。
彼女の体を抱き締め、そっと唇を重ねる。恋人同士には不似合いな、唇だけのキス。しかし、二人にはそれで十分だった。
冷たい唇だった。来ない相手を何時間も待ち続け、身も心も冷え切っているのだろう。そんな彼女のためにしてやれることは、一つだけだ。
半ば同情。半ば自棄。彼女にしても、それは似たようなものだろう。本来その手にあるはずだった温もりを、別の温もりで埋めようとする
彼女を、責める気にはなれなかった。
唇を重ねたまま、二人はベッドに倒れこんだ。
そっと唇を離す。彼を見上げる目はどこか嬉しげで、それでいて深い悲しみを湛えていた。その悲しみを癒すなんて、大それた事など
出来はしない。彼に出来ることは、それを僅かなひと時、忘れさせてやること。それと、自分の温もりを分けてやることだけである。
72 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:08:15 ID:wS3Z8JDv
慣れない手つきで制服に手を掛ける。彼女は抗わず、彼の為すがままになっている。
リボンを外し、上着を脱がせ、そっとベッドの下に落とす。
一瞬、脱がせる手を止める。確認するように彼女の顔を見ると、静かに目で頷いた。
白いブラジャーのホックを外し、肩紐を滑り落とす。その下から、可愛らしい小ぶりな胸が現れる。それを気にしているのか、彼女は
少し恥ずかしそうに身をよじり、頬を赤く染めた。
そっと、その小さな胸を掌で包む。彼女はピクンと体を震わせ、小さく鼻を鳴らす。その反応が可愛らしく、また触り心地も良かったため、
彼はじっくりとその胸を刺激する。その度に、彼女は眉を寄せ、鼻を鳴らしてそれに応える。
優しく、こねるように乳房を揉みしだき、乳首を指先で弄ぶ。熱い吐息が部屋に響き、時折ベッドが僅かに軋む。
不思議な感覚だった。出会ってから、お互い一言も言葉を交わさず、こんな時ですら声を出さない。それでも、お互いが求めるものは
数年来の恋人のようにわかり、それを疑問にも思わなかった。
気付くと、彼女が彼の服に手を掛けている。優しい手つきでボタンを外し、胸元をはだけさせると、いきなり体を支えている腕を肘で
突いた。フェルパーは途端にバランスを崩し、彼女の体に覆い被さってしまう。肌と肌が触れ合い、ヒューマンの冷えた体が直に
感じられる。一瞬体を離そうとしたものの、すぐにそれはやめ、代わりに彼女の体を抱き締めてやる。
しばらく、二人はそうして抱き合った。やがて少しずつ、彼女の体に暖かみが戻り始める。二人はどちらからともなく顔を合わせ、再び
キスを交わした。今度もやはり舌は入れず、お互いの唇を啄ばむようなキスだった。
スカートに手を掛ける。彼女は優しく微笑み、軽く口付けをする。その間に、彼はスカートを脱がせた。
何の飾り気もない、白いパンツが現れる。さすがにいきなり触れようという気は起こらず、また胸に手を伸ばす。
その手を、彼女が捕らえた。そして、ゆっくりと白い布の上、それも最も熱を帯びた場所に導き、軽く押し付けるように置いた。
二人の目が合う。彼はぎこちない笑みを見せ、それに対して彼女は優しく微笑む。
ゆっくりと撫でる。途端に、彼女の頬の赤みが増し、快感の混じった吐息を漏らす。その反応に気を良くし、さらに念入りに撫で始める
フェルパー。そんな彼の愛撫を受け、彼女の体は見る間に赤く染まっていった。
突然、彼の乳首に刺激が加えられる。思わず呻いてそこを見ると、彼女がお返しとばかりに吸い付いていた。吸い付いたまま、さらに
舌で先端を転がすように舐め、時折かかる熱い吐息までもが、彼の体を刺激する。
感じたこともない刺激に、思わず手が止まってしまう。それを見ると、彼女はおかしそうにクスリと笑った。
何となく対抗心を煽られ、パンツの中に手を入れ、じんわりと湿った秘裂を直接撫でる。途端に、彼女の体はビクッと跳ね上がり、彼の
乳首を咥えていた口が離れる。吐息はさらに熱っぽくなり、その体も今ではすっかり紅潮している。
つっと手を離す。既に指にはぬるぬるとした液体がまとわりつき、穿いたままのパンツに黒く滲んでいる。そこから湧き上がる雌の匂いに、
フェルパーの劣情は激しく刺激されていた。
最後の布を、ゆっくりと引き下ろす。腰が徐々に露出し、しかし中心部は溢れる蜜に引き止められ、彼の手に抵抗する。それもやがては
力尽き、つぅっと糸を引きながら引き離される。途端に、一層強くなる雌の匂い。それまでゆっくりと、慎重に脱がせようとしていた
彼だが、そこでいい加減、限界に来たらしい。
打って変わって、性急な動きで引き下げる。形を留めていた下着が、太腿の辺りでクルクルと丸まり、最後はよくわからない、丸まった
布切れとなって放り投げられた。
自身もズボンを脱ぎ捨て、パンツも一緒に放り投げる。そのままのしかかると、彼女はまるでいたずらっ子をたしなめるように、彼の
鼻をちょんと指で突いた。そして、はだけていた上着に手を掛け、それをそっと脱がせる。
相変わらず、二人の間には言葉一つない。とはいえ、今更話しかけるのも決まりが悪く、また声を出すまでもなく、お互いの気持ちは
十分に伝わっていた。
73 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:09:19 ID:wS3Z8JDv
濡れそぼった入り口に、自身のそれを押し当てる。一瞬彼女の呼吸が乱れ、目が合うと恥ずかしそうに笑い、頷いた。
ゆっくりと、彼女の中へと押し入る。彼女は声を押し殺し、抑え切れない声は鼻に掛かった喘ぎ声となる。ぎゅうっと目を瞑り、眉を
寄せるその表情は快感のためなのか、それとも苦痛のためなのか。
彼女の中は熱く、きつい。というより、痛い。あまり経験がないのは明らかだ。
途端に、彼の脳裏に、彼女のこれまでのいきさつが、その目で見てきたかのように描かれた。ただ数回の逢瀬。それが、彼女と相手では
大きく意味の違うものだった。彼女は、愛する彼と結ばれた喜びを得ただろう。しかし相手の男は、彼女を抱くことだけが目的だった。
一度彼女を抱いてしまえば、あとはもう興味などなかったのだ。
気付けば、フェルパーは彼女の体を強く抱き締めていた。
自分達と違い、ほとんど体毛もない体。白く、艶やかで、悲しいほどにきれいな肌。尻尾もなく耳も小さく、感情の機微が読み取りにくい
種族。だが、今彼女が抱える、その小さな体を押し潰すほどの悲しみは、彼にもはっきりと感じられた。
最初、彼女は少し戸惑ったようだった。しかし、やがておずおずと彼の背中に腕を回し、そしてぎゅっと抱きついた。
慎重に腰を動かす。彼が動くたび、抱き付く腕に力が入る。同時に、彼女の荒い吐息が彼の胸をくすぐる。
きつく締め上げられ、熱い粘膜の中を擦り上げる度、フェルパーは激しい快感に襲われる。彼女の方も、だんだんと慣れてきたらしく、
浅い呼吸の中に甘い喘ぎが混じり始めていた。
自然と、腰の動きが速くなる。最初は気遣うような大人しい動きだったものが、徐々にさらなる刺激を求めての動きとなっていく。
彼女の方も、最初こそ為すがままだったものの、今では自分から腰をぐいぐいと押し付け、更なる快感を貪っているように見える。
部屋の中に、二人の激しい息遣いと、ベッドの軋む音。そして腰を打ち付ける乾いた音と、粘膜の擦れ合う湿った音が響く。
彼の腰の動きに合わせ、彼女も腰を動かす。体内深く飲み込み、扱き、その度に彼のモノを自身の蜜に塗れさせる。
もはや気遣いなどほとんどなく、動きやすいように体を離し、ほぼ自分の欲望のままに腰を打ち付けるフェルパー。彼女はそれを
受け入れ、決して動きの邪魔はしない。奥深くに突き入れる動きが、少しずつ性急な動きとなり、やがて切羽詰った吐息が漏れる。
不意に、彼は彼女の体を強く抱き寄せた。予想外の行動に、彼女は少し驚いて彼の頭を見つめる。
肩に、涙がこぼれ落ちる。彼女を思うと、あまりにも悲しかった。それは言葉にならず、ただ涙となって彼女の肩に落ちる。
その暖かさが、彼女の凍りついた心を、ようやく溶かした。
強く強く、彼の体を抱き返す。背中に爪が食い込み、僅かに血が滲む。それでも、二人は強く抱き合っていた。
お互いの汗と、涙が混じる。強く抱き合いつつも、その動きはますます激しくなっていく。そして一際強く彼が腰を打ちつけ、
一度なお深く突き入れようと腰を押し付けたところで、慌てたように引き抜いた。
直後、彼女の秘所に熱い液体がかけられた。さすがに子供を作ってしまっては、二人ともこの学園にいられなくなる可能性がある。
そのため、ギリギリのところで危うく自制心が働き、外に出したのだろう。
しばらくの間、二人とも放心しつつ抱き合っていた。ただ、そのままというわけにもいかず、フェルパーは彼女にタオルを渡し、自分も
ハンカチで軽く体を拭う。
簡単に体を拭うと、二人はまた抱き合った。
何も聞かず、何も語らず、ただただ、二人は強く抱き合い、やがて眠りへと落ちて行った。
74 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:10:17 ID:wS3Z8JDv
翌朝、彼女の姿はなかった。
だるい体を起こし、ベッドから窓の外を見る。雪はやんでいたが、まさに一面銀世界で、あまり外に出ようと言う気は起こらない。
のそりと立ち上がる。と、テーブルの上に彼女が抱えていた包みと、紙切れが一枚置いてあった。
『ありがとう』
その一言だけの、置手紙だった。少し迷ってから、今度は包みを開ける。
でこぼこで、不恰好で、暖かそうなマフラーだった。きっと、持ち帰ることもできず、渡す相手もおらず、消去法で彼に託したのだろう。
どうせ、今日も探索は休みである。となると、また一日潰さねばならない。
制服を身に着け、部屋の鍵をポケットにねじ込む。一度ドアに手を掛け、少し迷ってから引き返す。そして不恰好なマフラーを巻くと、
力を込めてドアを開けた。
ホワイトクリスマスだけあって、外は賑やかだった。ベンチに座り、隣のエルフを翼で包み込むセレスティアがれば、笑いながら
雪合戦に興じるクラッズとドワーフがいる。真面目な顔で雪だるまを作るフェアリーもいれば、一緒になってそれを手伝うのはノームだ。
もちろん、ひたすら寒そうに背中を丸めるフェルパーがいたり、背中の羽にお手製らしいカバーをかけているバハムーンなどもいる。
ともあれ、やはり全員が幸せそうに見える。こんな中、彼女は一体どうして過ごしているのだろう。
どうしても、あの寂しげなヒューマンが頭に浮かぶ。結局、一言も言葉を交わさぬまま、彼女とは別れた。本当なら、このままでいた方が
いいのかもしれない。それでも、彼女が気になって仕方なかった。
気付けば、彼は人ごみの中に彼女の姿を探していた。
中庭を、学食を、校舎を、寮を歩く。ただ一人の生徒を探して、彼は歩き続けた。しかし、数多くの生徒がいるこの学園で、名前も
知らない、学科もわからない生徒を探すのは、地下道に落としたラブレターを探すより難しいだろう。
結局、彼女の姿を見つけられないまま、太陽が赤い光を放ち始めた。
寮の屋上に上がり、柵にもたれて夕日を眺める。下では、まだまだ元気な生徒が雪遊びをしていたり、ひと時のデートを楽しんでいる。
それも、じき終わる。明日になれば、またいつも通りの日常が始まる。もっとも、今度は年末年始という行事もあるが、それは今とは
違う盛り上がりだ。この馬鹿みたいな騒ぎは、もうしばらくはないだろう。
少しずつ、太陽が沈んでいく。彼の頭に、せっかくだから、最後まで夕日を見ていようなどと、柄にもない考えが浮かんだ。
既に半分ほど、太陽は地平線に隠れている。あと数分もすれば、完全に消えるだろう。
がちゃりと、屋上のドアが開く音がする。続く足音は、体重が軽いことを示す小さな音だ。
足音は躊躇いなく、彼の方に近づいてくる。そして足音の主が、彼の隣に並ぶ。
驚きはなかった。なぜか、そこにいるのが当然というように思えてならなかった。
こちらに笑いかけるヒューマンは、確かに昨日の彼女だった。
やはり言葉は交わさず、二人並んで夕日を眺める。それでも、十分楽しかったし、幸せだった。
が、そこで彼は重要な事に気付いた。どうしても、これは言わねばならない。これは今日しか言えないのだ。
視線に気付いたのか、彼女もこちらを向いた。その彼女に笑顔を向け、口を開く。
「メリークリスマス」
彼女は一瞬呆気に取られ、そしてすぐに、とびきりの笑顔を向けてくれた。
「メリークリスマス」
彼女の腰を尻尾で抱き寄せ、肩を左手で抱き寄せる。彼女は抗わず、自ら彼に擦り寄った。そして首のマフラーを掴み、少し引っ張る。
二人で巻くには、少し短いマフラーだった。でも、それで十分。そうでなければ、こんなにはくっつけない。
沈み行く夕日を見ながら、二人は幸せそうに笑った。クリスマスにお似合いの、とても幸せそうなカップルだった。
75 ◆BEO9EFkUEQ :2008/12/22(月) 23:15:45 ID:wS3Z8JDv
以上、投下終了。
途中台詞が書きたくてしょうがなかったw
しかし、クリスマスっていいですよね。
シャンパン買って、でっかいケーキ買って、家に帰れば

シャンパンとでっかいケーキ独り占め。
それではこの辺で。
76名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:19:39 ID:9ZwMEaBA
>>75
超GJ!!

面白かったです
77名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:21:46 ID:9ZwMEaBA
忘れてた
78名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 01:19:16 ID:kEVBqW8O
>>75
ああ…サイレントでほのぼのビターってのはいかにもクリスマス向けって感じに受け取れた
GJ!
やっぱクリスマス良いよね



俺は男4人で計算センターに泊まり込みでケーキやシャンパンどころですらないけどw
79名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 08:28:42 ID:riP8dAa4
たしかにビターだなぁこれは
GJ
>>78
計算センターってことはエアコンガンガン効かして寒い訳か・・・南無
80名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 15:14:10 ID:G+qoU4gK
>>75
独り占めヒャッホウ!
いや、そんな悲しいことは言わない約束だろ、おとっつぁん…

甘渋いクリスマスが楽しめそうだ。GJ!
81名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 12:04:02 ID:xfBtbmE7
てかあらためて見たんだがあれだ
>彼女の腰を尻尾で抱き寄せ、肩を左手で抱き寄せる。彼女は抗わず、自ら彼に擦り寄った。
フェルパーならではの表現に俺が悶え死ぬ
82桐漱:2008/12/25(木) 23:56:32 ID:zO36AC5b
え〜お久しぶりです。皆様。クリスマスは一人の桐漱です。
さて、投稿する前に◆BEO9EFkUEQへメッセージを送りたいと思います。
 
私、桐漱は前スレにて調子に乗ってしまい、人様のネタを勝手に使ってしまったばかりか、その事について返事までも遅れてしまいました。言い訳はしません。申し訳ありません。以後こんな事のないよう、注意して活動します。
 
 さて、間が大きく開いてしまいましたが第三話です。前述の事もあり尚且つ良作の後というプレッシャーありで少々心痛みますが、投稿します。エロはありません。すいません。では、どうぞ。
83桐漱:2008/12/25(木) 23:58:23 ID:zO36AC5b
「よぉ、ユーリ」
「ルーザ‥‥!」
 私は入り口から声をかけてきたバハムーンに向け、若干の不機嫌さをのせて返答する。
 その後ろにはバハムーンの男二人にクラッズとディアボロスの女子がいた。雰囲気から見るにアイツのパーティーだろう。
「何だ? リーダー。知り合いか?」
「あぁ、いい女だろ? 一応言っておくが、あれは俺の女だ。手を出すんじゃねぇ」
 一体いつお前の物になったのか。その傲慢な性格にも、くっくっくっと下卑た笑いにも私は苛つかせられる。
「いやいや、それにしてもたった一人でここまで来るとはな。やはりお前は俺が睨んだとおり最高の女だ」
「お前に誉められても吐き気しかしないな」
「おぉ、怖い、怖い‥‥」
 ちっ‥‥イライラする‥‥! 折角のいい気分が奴の登場で最高潮に不機嫌だ。胸くそ悪い‥‥。
 ‥‥言っておくがいい気分になったのとアイツとは全くの無関係だ。念のためにもう一度言う。全くの無関係だからな!
「で? 私に何の用だ。用がないなら私は部屋に戻らせてもらう」
 そう言って私は立ち上がる。するとルーザはゆっくりと私に近づいて来た。
「用ならある。俺のパーティーに入れ、ユーリ」
 奴のその言葉に私は内心、またかと悪態を付き返答する。
「その話なら幾度と断ってきた筈だが?」
 無論、悩んだことなど一度もない。こんな奴と組むぐらいならまだヒューマンと組んでいた方がマシだ。実際組んではいるが。
 その答えに奴は嫌な笑みをしたまま言ってくる。
「あんなので大人しく引き下がると思うか? この俺が」
「だろうな。前二回とも不愉快になるぐらいしつこかったよ。だが私の考えは今でも変わらん」
 初めて私が奴に誘われた時も食堂から自室に戻るまでずっと私に話しかけていた。くそっ、今思い出しても苛立つ奴だ。
「まぁそう言うなって。いくらお前が強くても回復魔法や罠の解除、道具の鑑定すら出来やしない。その点、俺のパーティーには――」
「確かにお前の言うことは正論だ。お前のパーティーには盗賊や僧侶がいるのだろう。そして私一人で出来ることなどたかが知れてると、そんなの百も承知している。
 だが、どんなに素晴らしいパーティーだろうがお前がいるパーティーなど例え百万積まれても却下だ。何度でも言ってやろう。却下なのは却下だ。分かったか、この阿呆野郎っ!」
84桐漱:2008/12/25(木) 23:59:46 ID:zO36AC5b
私の言葉に阿呆面になったルーザはしばらくしてギリギリと歯軋りをしながら此方を睨んできた。
「‥‥俺がいつまでも甘い顔をしていれば調子に乗りやがって‥‥! ウノ! ドス!」
「へーい」
「あいよ」
 ウノ、ドスと呼ばれたバハムーン子分A&B。兄弟だろうか。顔も何となく似ている。つーかパーティー内にバハムーン三人ってどんだけ好きなんだよ、自分の種族。
「顔以外と死なない程度ならどこ斬ってもいい。一度アイツを調教する必要があるからな」
「了解了解」
「任せてくださいよリーダー」
背中の剣を抜くバハムーン三人。くそっ、流石に三対一じゃ‥‥。
「いくぞっ!」
「くっ!」
 ルーザの掛け声を合図に間を詰めてきた。
 腹くくるしかない! そう覚悟した瞬間。
「退けっ!」
「!?」
――ガキンッ!
 私の前に誰かが立ちふさがり、ルーザの剣を止める。一体誰かとソイツを見てすぐ分かった。忍者装備のヒューマン。そんな奴、一人しかここにはいない。
「馬鹿な‥‥!」
「お前‥‥!」
 ミスターXがそこにいた。ルーザはバハムーンでも力が強い方だ。しかも扱うは両手で持つ剣(私は剣に詳しくはないので何なのかは分からない)。
 その一撃をアイツは忍者刀一本で受け止めていた。とても信じられる光景ではなかった。
「ユーリ! 後ろっ!」
「!」
 アイツの言葉に私はとっさに振り向く。そこにはあの兄弟がいた。いつの間にっ‥‥!
「だぁあああ!」
――ギギンッ!
「ちっ!」
「何故わかった!?」
 何とか、振り向いた私に予想してなかったのか怯んだ二人を横一線に凪払う。だが足音すら聞こえなかった。
 アイツの声がなければやられていたのは明確。‥‥くそっ、借りを作ってしまった‥‥。
だが何故だろうか、不愉快だったが苛立つ事はなかったのは。寧ろ少し清々しささえも感じた。
「って、何でお前が私を助けるっ!」
「ん‥‥っとな! まぁ、そういうのは後で、な!」
言い終わると同時にもう片方の手と足を使ってルーザを投げたってぇえええええ!?
「なぁっ!?」
「うわっ!」
――ドゴシャア!
「ぐぉッ‥‥ぉッ‥‥!」
 私のすぐ近くの床に頭から叩きつけられるルーザはそのまま仰向けに倒れた。
「リーダー!?」
「大丈夫ですか!?」
 兄弟が駆けつけ、介抱する。が、ルーザはピクリともしない。

85桐漱:2008/12/26(金) 00:00:43 ID:zO36AC5b
「で? 俺とやるかい? お二人さん」
「「‥‥」」
危機を感じたのか兄弟二人はルーザを抱え上げ走っていった。
「「覚えてろー!」」
 勿論、お約束の捨て台詞も忘れずに。すると、今まで傍観していたディアボロスとクラッズは何か言いたげな目をアイツに向けた後、俯きながら小走りでとルーザ達の後を追っていった。
「‥‥何か言いたそうだったが」
「さぁな。どっちにしろ、自分から言わなきゃどうにもならない。ま、助けて下さい的な王道パターンだったら助けてやるがね」
「‥‥随分と、自信満々だな」
「おや、嫉妬かい?」
「な!? だ、誰がお前なんぞに‥‥って違う! はぐらかそうとするなっ!」
私の言葉に何が? 的な目で見てくるアイツに少し苛っとした。
「お前は‥‥何者なんだ?」
 少なくとも、ただ者じゃあないのは私にだって分かる。しかし、ここにくるまでのアイツの強さは強いどころか寧ろ私と同じ位かそれ以下だと思っていた。
 敵の攻撃はギリギリ、それこそ大きく動いてそれでも少し当たるという危なかっしい避け方で。攻撃は当たらずしかも弱い。
 そんな奴が私より重い斬撃を放つルーザの一撃を止め、私が気付かなかった死角からの攻撃を見破った。
そこまで思って私は苛っとした。何故こんなにも強いのにわざわざ弱い振りをするのか。私で遊んでいるのかとさえ思う。そう考えると余計に腹が立った。
「答えてくれ‥‥ここまで強いお前は‥‥一体‥‥」
 その言葉は自分でも弱々しい物だと分かる。私がこんな声を出すとは今まで想像すらできなかった。そして何でこんな声が出たのか私自身分からなかった。
 その言葉に一瞬躊躇ったのかアイツはゆっくりと口を開く。
「俺は‥‥俺は、ミスターXだ。それ以外の‥‥何者でもない」
 その言葉を聞いた瞬間、私は頭に血が上り何も考えられなかった。
確かなのは、アイツを私は叩いていて、私はありったけの罵詈雑言をぶつけていて、私は何故か、泣いていた。
 
 
 
 気がついたら私は宿屋の部屋のベットで寝ていた。お金は払ったのか、今何時か、色々考えたが私が不安だったのはたった一つだった。
「嫌われて‥‥ないかな‥‥」
 ポツリと自分でも分からないまま口に出していた。そこで気づいた。私が何で私が奴に怒ったのか。
 私は期待していたのだ。私はルーザの誘いを断った。
86桐漱:2008/12/26(金) 00:02:22 ID:mEdGyqOh
 だがそれ以外の誘いは無く孤独のまま一年が過ぎようとしていた中で、私を強引にとはいえ私を誘ってくれたアイツに何らかの期待をしていたのだ。
 私は惹かれていたのだ。アイツの性格に。
 アイツはどんな事を私がしようが馬鹿馬鹿しい事をしながらそれを責めなかった。
 それが当たり前だと思っていたが、思えば今まで出会ったヒューマンにそんな奴はいなかった。誰もが私に悪口を返したり、中には殴りかかろうとしたりした。
 なのにアイツはヘラヘラ笑いながらも私を無言で許してくれた。それが心の奥底で分かっていたからこそ、私はどこかでアイツに惹かれていたのだ。
 私は憧れたのだ。アイツの強さに。初めてみたアイツの実力はさっき見た強さなど微塵も見えなかった。
 なのに本当は凄く強い。私よりもルーザよりも。だからこそ、強さが第一となるバハムーンの私は本能から好きになっていった。
 そう、私はアイツに恋心を抱いてしまったのだ。
 なのにアイツは私に嘘をついていた。アイツにだって事情がある。分かるが、元来の自己中心的思考が出てしまい、勝手に自分で舞い上がって、勝手にアイツに裏切られたと思って、そして‥‥勝手にアイツを罵った。
 何て‥‥何て私は馬鹿なのだろうか。アイツを傷つけてしまった。まだ四日程しか共にしてないのに私だけが親しくなったと思い込んで‥‥。
「う‥‥うぅ‥‥」
 何で私はこんなにも馬鹿なのだろうか。何でもっとアイツの事を考えられなかったのだろうか。何でもっと――アイツに優しくしてやれなかったのか。後悔ばかりが、私の胸をよぎる。
「うわぁあああああああ! ひっく‥‥ひっく‥‥ごめん‥‥ごめん‥‥うわぁあああああああ!!」
 
――いくら泣いても、もうどうしようも無かった。童話みたいに魔法使いが出ることもなかったし、小説みたいにアイツが来る事なんて無かった。ただ懺悔の時間がだけが過ぎていった。
87桐漱:2008/12/26(金) 00:03:39 ID:mEdGyqOh
 
 
 
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 
「痛っ! ぐっ‥‥!」
「おいおい大丈夫か?」
「あぁ‥‥ユーリは?」
「あの嬢ちゃんなら部屋に閉じこもったままだぜ」

「そうか‥‥嫌われたな‥‥俺」
「んなワケないだろ? あれは思春期にはよくある事さ。ましてや嬢ちゃんはバハムーン。ちょこっと自分に素直すぎるだけさ。明日にはゴメンとか言ってくるだろうよ」
「いや‥‥ちょうどいい機会だ。ここでユーリとは‥‥別れる」
「はぁ? 何で少しギクシャクしたぐらいで‥‥」
「分かるはずだ。アンタには」
「‥‥」
「俺は人の温もりを求めてはいけない‥‥俺は――」
「ミスター。それ以上は‥‥言うな」
「‥‥このままだと、彼女を巻き込んでしまう。アイツと剣を交えた時、アイツを一瞬殺そうとした。いつか俺はアレに【成って】しまう。だから‥‥」
「‥‥分かったお前がそこまで言うなら、俺は止めん。だが、手紙ぐらいは残してやれよ」
「あぁ‥‥すまない」
88桐漱:2008/12/26(金) 00:07:57 ID:zO36AC5b
以上です。今更ながら氏にたくなってきました。
 後、◆BEO9EFkUEQさん。しつこいようですが本当に申し訳ありませんでした。
次の更新はおそらく来年です。ごめんなさい。
 では皆様また会いましょうノシ
89名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 16:46:49 ID:9/Y31dDT
子分のウノ、ドス…
三人目はトレスかw
90名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 21:00:55 ID:6RZ1bsjj
保守
91名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 03:01:24 ID:7Po7RKmm
ホシュ
92 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:41:34 ID:NIUT7P01
明けましておめでとうございました。ようやくネット環境が…。
とりあえず、新年ということで初心に帰って、初めて投下したフェアリーとクラッズの二人を。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
93 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:42:46 ID:NIUT7P01
数々の激戦を潜り抜け、地下迷宮を次々に制覇し、もはや名実共に一流の冒険者となった一行。
苦しいときも、楽しいときも、常に一緒だった6人。
また6人それぞれが恋人同士でもあり、その結束の固さは他のどんなパーティにも負けないものだった。
しかし、その中のクラッズのみ、ここ最近はあまり顔色が良くない。
その様子に他のメンバーが気付かないわけはない。が、あえて触れることもない。
その理由は、既に全員予想がついているからだ。

地下道の探索を終え、学食で遅い夕飯を取る一行。その中で、クラッズとフェルパーだけはまったく元気がない。
「クラッズ、ほんとに平気か?なんか、調子悪そうだぞ?」
「うん……まあ、疲れてはいるかな〜。でも……うん、気にしないで」
「そうそう。クラッズはこう見えても、結構丈夫だもんね」
「そうだね〜……はぁ」
「くそ〜……ちくしょぉ〜…」
フェルパーはぶつぶつ言いながら、好物の焼き魚をあまりおいしくなさそうに食べている。
「何よ〜。鑑定はしたけど、別にあたしのせいじゃないからね」
「わかってるって…。でもなあ……金の箱だぞ!?金の箱っ!なのにっ……なのに、日本刀…!金箱から日本刀…!」
相当ショックだったらしく、その目には涙が滲んでいる。悔しそうな声で呟くと、フェルパーは懐からナッツのような物を取り出して
口の中に放り込んだ。
「まあまあ。次はきっといい物出ますよ。」
「金の箱っつったら、普通一番いい物出るはずで……なのに、どうしてあんなのが…!」
机を叩き、フェルパーはまたナッツを口の中へ放る。
「まったく、そういじけるなって。男らしくないぞ」
ドワーフの言葉にも、フェルパーはどんよりした目でそちらを一瞥しただけで、再び大きな溜め息をつく。
「だぁって……やっと、宗血左文字そつぎょーだとおもったのにぃ……いつまでこれ使えばいいんだよぉ…」
「うざいなー、あんたは。今度なんか作ってやるから、いい加減愚痴やめてよ」
「これがっ!ぐちのひろつもぉ!言わずにいられれかぁ!」
「……おい、フェルパー?なんか、あんた呂律回ってないけど?」
「むっちゃ、期待しらんらぞぉ!なぁのぉにぃ…!くそぉー!」
懐から一気に三つほどのナッツを出し、口の中に放り込むフェルパー。
「ところで気になってたんですけど、フェルパーさんはさっきから何を食べてるんですか?」
セレスティアの言葉に、全員の視線が彼の食べるナッツに注がれる。そこで、今まで黙っていたノームが口を開いた。
「形から見るに、恐らく乾燥させたまたたびの実だと思います。現に、フェルパーさんもすっかり酔っているようですしね」
聞くが早いか、ドワーフはフェルパーの懐に手を突っ込み、彼の持っていたまたたびを全部取り上げた。
「にゃあぁぁん!おーれーのーまーらーらーびー!」
「にゃあんじゃねえっ!あんたらにとっては、これ酒と同じだろ!」
「もっとたぁべぇるぅー!!!」
「……はぁ〜。みんな、悪いけど私、こいつ部屋に連れてくよ。食器とか頼んでいい?」
ドワーフは完全に出来上がったフェルパーを肩に担ぎ、その両手足と尻尾をしっかりと掴む。
「ええ、大丈夫ですよ。こちらのことは心配なさらずに」
「ドワーフさん、お願いしますね」
「やぁーだぁー!まだたべるぅー!」
「黙れ、この馬鹿!……それじゃみんな、また明日な」
94 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:43:36 ID:NIUT7P01
にゃあにゃあ騒ぐフェルパーが連れて行かれると、学食の中が妙に静かに感じられる。実際、あまり生徒もいないので静かなのだが、
多少の喧騒は残っている。その中で、クラッズのつく溜め息が大きく響く。
「クラッズさんも、疲れてるんじゃないですか?元気、ないですよ?」
「……ん、大丈夫だよ〜。そんなに心配しないで……はぁ」
「僕達も、そろそろ戻りましょうか。明日も、朝から探索の予定ですからね」
「はいはいっと。んじゃ、あいつらのからさっさと片付けちゃお。クラッズー、よろしくね」
「……はーい」
ともかくも食事を終え、部屋に向かう一行。クラッズが部屋に入ろうとすると、後ろから聞き慣れた声がかかった。
「クラッズー、もう寝るつもり?」
「ああ……フェアリー。」
後ろでは、フェアリーが意味ありげな笑みを浮かべている。
「その……今日も?」
「それ以外に、わざわざあたしがこんなところ来る理由ないでしょ?」
「……だよねえ。」
「じゃ、そういうことで!あとでねー!」
どこかうきうきした口調で言い、自分の部屋へと飛んでいくフェアリー。それに対して、クラッズは深く暗い大きなため息をついた。
「……今度は、何されるんだろ…」

それからしばらく後、クラッズはフェアリーの部屋にいた。断ってしまえばいいのだろうが、どうもフェアリー相手では
いつも従ってしまう。そのせいで、最近はフェアリーの要求も何かとエスカレートしてきている。
「で、これは、どういうことなの……かなぁ〜?」
ベッドの上で冷や汗と苦笑いを浮かべるクラッズ。その両手足は、それぞれベッドの端に大の字になるように縛り付けられている。
服は既に全て脱がされ、フェアリーはその姿を満足げに見つめている。
「うーん、なかなかいい感じ」
「何が!?」
「まあまあ。別に悪いようにはしないからさ。」
悪いようになるのは目に見えている。クラッズの中には諦めと、この後起こる事態を避けたい気持ちが同居している。
「あのさ……君、絶対ボクのことおもちゃだと思ってるでしょ?」
「う〜ん、間違ってはいないかなー?」
「ないんだ…」
「でもね、ただのおもちゃならいらないの」
「で、ボクならいいの…?」
「だってさー、攻めるとすっごく可愛い声出すし、反応いいし、それに……まあ色々ね」
よくよく、自分はなぜこんな子と付き合ってるんだろうと、クラッズは暗澹たる気持ちになった。
95 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:44:32 ID:NIUT7P01
「ほら、この間その根元縛った時なんかさ、もう今思い出してもすっごく…!」
「わかったからーっ!その話はもうやめてーっ!」
「ほ〜ら、もう真っ赤。そういうのがいいんだよねー」
本当に、なぜ好きになったんだろうと、クラッズは暗い気持ちで考えた。
「そういうの見ると、つい、ね。もっと色々したくなっちゃう」
言いながら、フェアリーは何やら道具袋の中から取り出し始めた。
「な……何してるの?」
折れたスタッフに、切れたパンツ。それに素材少々。少し何か考えてから、それを練成するフェアリー。
「な、何作ってるのーっ!?」
「何って、見りゃわかるでしょ?ほんとは女の子同士で遊ぶためのもんだけど」
「な、な……何するつもり!?」
「そりゃ、使い道は一つだよね〜?」
作りたてのペニスバンドを穿き、ベッドに上がってくるフェアリー。クラッズは自分の手を縛る縄を外そうとするが、
がっちり縛られていて解けない。そんな姿を、フェアリーは獲物を追い詰める狩人のような目で見つめる。
「無駄無駄。あたしだって盗賊やってたんだから、外せないような縛り方は知ってるって」
「フェ……フェアリー、やめてよ!ほんとやめて!そんなの無理だってばぁ!」
「大丈夫だって。たまにいじってあげてるでしょ?」
「そういう問題じゃなーい!」
「大丈夫だってば。ちゃんと痛くないように、あたしのお汁使ってあげるから」
「やーめーてー!!!」
「そう?じゃ、何もつけないで入れてあげようか?すっごく痛いよー?」
「い……いや、それはやだ…」
ついそう答えると、フェアリーはニヤリと笑った。
「じゃあ入れていいってことね」
「ち、違っ…!」
クラッズの小さな穴に、ペニスバンドの先端が押し当てられた。
「や……やだよ!フェアリーやめてぇ!」
「怖がる顔も可愛い〜。大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてあげるからっ!」
「だ、だからそういう問題じゃ…!あ……や、やめっ……う、うああぁぁぁぁ!!!」
96 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:45:07 ID:NIUT7P01
翌日、クラッズの動きは誰が見ても鈍っていた。戦闘などの激しい動きをする場面ではもちろん、ただ歩くのでさえ妙に遅い。
「おいクラッズ、本当に大丈夫か?」
ドワーフが声をかけると、クラッズはビクッと顔を上げた。
「だ……大丈夫だよー。心配しないで」
「疲れたんなら、無理するなよ?」
「ありがと。でも、大丈夫だから。」
とは言うものの、言うほど大丈夫でもない。一歩でも歩けば激しい痛みがあるし、精神的なダメージも大きい。
そんな状況を知ってか知らずか、フェアリーがクラッズの隣に並び、囁きかける。
「なぁに?そんなに大げさに痛がって、同情でも引こうってつもり?」
その言い方にはカチンときたが、今のクラッズには怒る元気もない。
「ほんとに痛いんだってば!それより、もうちょっと声抑えてよ。みんなに聞こえちゃう」
「あたしだって、初めてあんたとヤッた後すっごく痛かったけど、まともに戦ってたんだけど?」
「君は飛べるからいいでしょー!それに……その……ボクは、あんなに激しくしなかったよぅ…」
「だってぇ〜、あんまりいい反応するんだもん。ついいじめたくなっちゃう」
「そんな…!」
「その気持ち、わからないなんて言わせないよ」
確かに覚えのあることなので、クラッズは反論できない。
「おーい、お二人さん。何話してるのか知らないけど、ちょっと中断だ」
言いながら、フェルパーが二刀を抜く。気がつけば、他のメンバーは既に戦闘態勢を取っている。
「あっ!ご、ごめん!」
「はいはい、ちゃっちゃと片付ければいいんでしょ」
クラッズはチャクラムを構え、フェアリーは愛用の弓を持ち、スッと浮かび上がる。
「なーんだ、たったの4匹じゃない」
「確かに、敵の戦力はさほど強いものではありません。しかし、油断は禁物です。」
「わぁかってるってば!フェルパー、あたしとあんたで、さっさと片付けるよ」
「そうだな。後ろの奴は頼むぜ!」
「珍しいな、フェアリー。あんたがそういうこと言うのは」
ドワーフが言うと、フェアリーは一瞬ドキッとした顔をした。が、すぐにそれも元に戻る。
「そりゃ、他が頼りないからねー。あんたなんか動き遅いし、斧振り回すしか能ないし」
「……後ろに気を付けろよ…!」
「残念、あたしは弓だもん。あんたこそ後ろに気を付けなって、前衛様」
「絶対……絶対いつか叩き潰してやる…!」
そう言うドワーフの声は、冗談とは思えない迫力があった。が、フェアリーはどこ吹く風である。
「一生かかったって無理無理。とにかく、さっさとやるよ!」
「ははは。ドワーフ、もし討ち漏らしたら頼むぜ。頼りにしてる!」
「おう、任せろ!」
97 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:45:42 ID:NIUT7P01
その日も何とか無事に探索を終え、鑑定を済ませて学食に向かう一行。クラッズはあまり食欲がなかったため、軽めに食べたものの、
若干物足りない。そんなわけでデザートでも食べようと席を立つと、フェアリーも一緒について来る。
「ん?君もデザート?」
「そうだけど、何か悪い?」
「いや、別に…」
「やっぱりアイスクリーム辺りかなー。ハニートーストでもいいんだけどね。ほんとは黄金桃がいいんだけど、ここじゃ無いしねー」
フェアリーは勝手に喋りながら隣を飛んでいる。クラッズは少しうんざりした気分だったが、不意にその声が止まった。
何だろうと思って見てみると、フェアリーはどこか別の方向を向いている。その視線の先には、ヒューマンの男子がいる。
「……どしたの?」
「ん〜?いやね、やっぱヒューマンっていいなあって思ってさ」
「………」
「かっこいいし、何でもできるしねー」
種族柄、ヒューマンに対して憧れに近い感情を持つフェアリー。そしてヒューマンも、大概フェアリーには友好的だ。
その相性は、様々な種族の中でもかなり上位に位置する。もちろん、クラッズとフェアリーという間柄などは言うに及ばない。
「あいつ自体、結構かっこいいしね。ちょっと声かけて来ちゃおっかなー」
もしかしたら、その方がいいかもしれない、とクラッズは思う。
こんなに、いつもいつも振り回されるばかりで、こっちの事などほとんど考えない。
自分勝手で、わがままで、本当にどうしようもない相手。こんな形で自然に別れられるのなら、いっそその方がずっといい気がする。
なのに。
気がつくと、クラッズは飛んで行こうとするフェアリーの腕を掴んでいた。
「ちょっと、何よ?」
「………」
何、と言われても困る。クラッズ自身、ほとんど無意識にやってしまったのだから。
「腕、掴まないでよ。ていうか、何か言ってよ」
クラッズは言うべき言葉を必死に探す。だが、考えれば考えるほどに、その思考は混乱していく。
それでも、その混乱した頭の中から、何とか言葉を拾い上げる。
「行っちゃ、やだ」
「なんでよ?別に声かけるぐらいいいでしょー?」
「……ダメ」
「あたしに指図する気?」
フェアリーの顔が険しくなる。が、クラッズは腕を掴む力を緩めない。
「絶対、ダメ」
クラッズとフェアリーは、しばらくそうして睨み合った。が、不意にフェアリーの表情が戻る。
「ま、あんたに言われたんじゃ、しょうがないか。あーあ、惜しいなあ」
そう言いながらも、どこか上機嫌のフェアリー。クラッズは何が何だかわからず、狐につままれたような気分でそれを見ている。
「ほら、早くデザート取りに行こうよ。あいつら待たせるわけにもいかないでしょー?」
「え……ああ、うん。そうだね」
結局、何が何だかわからないまま、混乱した頭で機械的にデザートを取り、事務的に食べるクラッズ。フェアリーは妙に上機嫌だが、
その理由がまったくわからない。味などほとんどわからないまま、彼は首を傾げつつデザートを食べていた。
98 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:46:18 ID:NIUT7P01
夕飯を食べ終え、寮に戻るときもフェアリーは笑顔だった。
「昨日はあれだったからさ。今日はゆっくり休んでね」
「ああ……うん。そう……するね」
「それじゃ、おやすみ!クラッズ!」
そう言い、フェアリーはいきなりキスをする。周りにまだ人がいたこともあり、クラッズは大いに慌てたが、あまりに自然な動きすぎて
ほとんど反応する人はいない。結局、フェアリーはまたもや一方的にクラッズを振り回し、さっさと部屋に戻る。いつもとはまた違う
振り回され方だが、結果はほとんど変わらない。
呆れたようなため息をつくと、不意に後ろからクスッと笑う声が聞こえた。慌てて振り向くと、そこには笑顔を浮かべた
セレスティアが立っていた。
「うわっ!?セ、セレスティア!」
「ああ、ごめんなさい。驚かせてしまいました?」
「ええっと……その……もしかして、見てた…?」
「ええ、見てましたよ」
「う〜、見られてたんだ…」
「今のもそうですけど、それと学食でも、見てましたよ」
「あはは〜……それもなんだ…」
「お二人とも、幸せそうでいいですね」
この子は一体何を見てたんだろうと、クラッズは心の底から訝しがった。しかし、セレスティアはそれすら見透かしたような
笑顔を見せる。
「ここじゃなんですし、わたくしの部屋で話しませんか?よろしければ、ですけど」
「ああ、そうだね。その方がいいかも」
ロビーを離れ、部屋に向かうセレスティアとクラッズ。彼女の部屋はきれいに片付いていて、何だか入るのが躊躇われるぐらいだった。
「それで、さっきの話だけど…」
「幸せそうって言ったことについてですか?」
「そうそう、それ。それってどうして?」
クラッズの言葉に、セレスティアはおかしそうに笑った。
「うふふ。クラッズさん、意外と鈍いところもあるんですね」
「いや〜、鈍いって言うか……フェアリーだし…」
「でも、フェアリーさんだって女の子ですよ」
「まあ…」
クラッズが答えに窮したのを見て、セレスティアはまた笑った。とはいえ、それは嘲笑ではなく、かといって可笑しさからと
いうものでもなく。言うなれば子供を見守る母親といったような、慈愛に満ちた微笑だった。
「あの、学食のとき。フェアリーさん、半分はわざと言ったんですよ」
「え?」
「ほら、クラッズさんってすごく人当たりいいじゃないですか」
セレスティアやノームほどじゃないけど、と言いそうになったが、クラッズは言葉を飲み込んだ。
「だから、フェアリーさんのすることは、結構何でも許しちゃうじゃないですか?」
「う……うん、まあね」
「だから、逆にちょっと不安だったんですよ、フェアリーさんは」
「不安?」
「もしかしたら、自分が他の男の人に惹かれても、許されちゃうんじゃないかって」
「………」
「だからこそ、あの時やきもち焼いてもらって、嬉しかったんですよ」
99 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:47:33 ID:NIUT7P01
これがなければなあ、と、クラッズは思う。
「それに、今日の戦闘のとき。フェアリーさん、クラッズさんが動かなくていいように、いっつも先手取ってたんですよ」
「あ…」
「ですから、幸せそうだなあって、そう思ったんです」
フェアリーの胸の内を知ったことで、クラッズの胸には一種暗い気持ちが芽生えていた。セレスティアと別れ、自分の部屋に戻っても、
その気持ちは消えない。
ベッドに倒れ、深いため息をついていると、不意にドアがノックされた。
「あれ?フェアリー?」
「さっすがクラッズ。そう、あたし」
ドアを開け、フェアリーを招き入れる。フェアリーはクラッズより先にパタパタと飛んで行き、ベッドに座る。
「えーっと…」
「ま、何の用かは大体わかるでしょ?」
「ゆっくりさせてくれるんじゃなかったっけ…?」
「んー、そう思ったんだけどね。やっぱりほったらかしってのも悪いじゃない?」
「いや、別にそんな事は…」
「何よー。せっかく来たんだから、好意はありがたく受け取るの!」
言うが早いか、キスをしつつクラッズを押し倒すフェアリー。いつもみたいに強引な、クラッズの舌に無理矢理小さな舌が
絡んでくる感触。何だかんだ言っても、それだけでクラッズの体はしっかり反応してしまう。
「ほーら、きたきた。あんたって、いっつもキスだけで勃つよね」
「だ、だってぇ…!」
「ま、悪い気はしないからいいけど」
クラッズのズボンとパンツを、手馴れた動作で剥ぎ取るフェアリー。普段ならそのまま、クラッズのモノに舌を這わせるところだが。
「ここ、痛かったんでしょ?」
昨日散々に痛めつけた箇所に、フッと息を吹きかけるフェアリー。
「ふわ!?ちょ、ちょっとフェアリー!?」
「ああもう、足閉じないで!頭挟まるでしょ!」
恥ずかしさに閉じようとする足を左手で押さえつけ、右手はクラッズのモノを扱き始める。
「んうっ!フェアリー、何を……んんっ!」
「えっと……その……ご、ごめ……うー、お詫びね」
右手ではクラッズのそれを扱きつつ、少し腫れた小さな窄まりに舌を這わせるフェアリー。途端に、クラッズの体が跳ね上がった。
「やぁっ!フェアリー……そ、そんなとこ、汚いっ…!だ、ダメだよぉっ!!んああっ!」
「ん……ふ……でも、気持ちいいでしょ?んっ!」
「だ……ダメだって!フェアリっ……ほんとやめ…!うああぁぁ!!!舌入れちゃダメえぇぇ!!!」
今までにないほどの反応を示すクラッズ。恥ずかしさと快感がない交ぜになり、一瞬にして昇りつめていく。
「ダメっ!もうダメっ!フェアリー、出ちゃうよぉ!!!」
「え……ちょ、早…!きゃあっ!?」
思わずフェアリーが顔を上げた瞬間、達してしまうクラッズ。おかげでその精液すべてが、フェアリーの顔にかかってしまう。
「も〜、顔射とかやめてよぉ…」
「だ、だって、君があんな…!」
「でも、そんな気持ちよかったんだ?」
「う…」
「今日はちょっと嬉しいことあったし、もう少しサービスしちゃおっかな」
フェアリーは顔にかかった精液を指で掬って舐め取ると、初めてのときのように、クラッズに馬乗りになる。
100 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:48:31 ID:NIUT7P01
いつものように、まずクラッズのモノの先端に自分の愛液を擦り付けると、それに座るように腰を落とす。
が、直前でクラッズは気付いた。
「って、フェアリーちょっと待ったあぁーーー!!!」
「なっ、何よ!?びっくりしたなあ」
「それはボクの台詞だってば!入れるとこ、違うって!」
「ん、バレちゃった」
フェアリーはなぜか残念そうな顔をする。とりあえずクラッズは体を起こすと、彼女の肩を抱いた。
「なんでそんな顔するの?」
「だって……クラッズの、あたしじゃ半分くらいしか入らないんだもん…。でもお尻だったら、奥まで入れられるって…」
「そ……そんなの誰に聞いたの?」
「秘密」
「ま、まあ誰でもいいけどさ。でもさフェアリー、いくらなんでも無茶すぎるよ」
だが、フェアリーはむくれたような顔のまま、目を合わせようとしない。
「クラッズにだって我慢できたんだから、あたしだって我慢できるもん…」
「いや、さすがに無理だってば。体の大きさ違うし、最初は普通にしたってあんなに血が出たんだよ?こっち、もっと狭いもん。
気持ちは嬉しいけどさ、だからってフェアリーばっかり我慢させるの、ボクやだよ」
「……いっつも、あたしはあんたにそうしてるのに…」
「え?」
「ううん、何でもない。……じゃ、いいよ。普通にする」
クラッズの肩に手を掛け、改めてクラッズのモノをあてがうと、ゆっくりと腰を沈めるフェアリー。
「んんっ……!っく!う……うぅ…!」
だいぶ慣れたとはいえ、体格の違いはそう簡単に埋められない。
深く入る毎に、フェアリーの体は苦しそうに震え、時折羽もピクンと動く。それでも、フェアリーは少しでも奥まで入れようとする。
だが、半分ぐらいまで埋まったところで、クラッズがその体を抱き寄せた。
「もういいってば。無理、しないでいいよ」
「いいのっ…!あたしが……好きでやってんだから…!あんたに心配される筋合いなんて……ないんだからっ…!」
クラッズの手を振り解くと、フェアリーはさらに体重をかけた。
同時に、固く閉じられた肉をグッと押し分ける感触が伝わり、今までよりさらにフェアリーの奥まで入り込む。
「うあっ!フェアリー……大丈夫…?」
激しい快感に襲われつつも、クラッズはフェアリーを気遣う。
「うっく…!かふっ…!ど……どお…?いつもより……深い……よね?」
「う、うん。すごく、気持ちいいよ…!」
「えへへ……よかったぁ…」
激しい痛みと圧迫感に涙をこぼしつつ、フェアリーは嬉しそうな笑顔を見せた。
101 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:49:35 ID:NIUT7P01
これさえなければなあ、と、クラッズは再び思う。
ただ単に、自分勝手でわがままで、人を振り回すだけだったら、どんなに楽だっただろう。
この、時折見せる可愛げがなかったら、簡単に嫌いになることが出来たのに。
振り回されるのにはうんざりする。わがままに付き合うのも疲れる。自分勝手で、他人を平気で傷つけるのは、本気で
怒りたくなるときもある。
でも、どうしようもない。嫌いになんてなれない。
一緒にいるとうんざりする。疲れる。怒りたくなる。傷つくこともある。
だけど、時に可愛くて、放っておけなくて、いじらしい子。
嫌いになんて、なれるわけがない。
「フェアリー……動いても、いい?」
「ダメ、だけど……あたし、動けない…。だから、あんた動いて…」
「痛かったら、言ってね」
そっと、気遣うように腰を動かすクラッズ。フェアリーの羽がビクンと動いたが、耐えられない痛みではないらしい。
いつもより深い膣内はきつく、クラッズが腰を動かすたびにぎゅうっと締め付けてくる。
最初は小さく、ゆっくりと。やがて少しずつ、大きく速く動き始める。突き上げられる度に、フェアリーは顔を歪め、苦しそうな
息を吐くが、その顔もまた、たまらなく可愛らしく映る。
「うっ!くっ!ふっ…くぅっ!クラッ…ズぅ!」
「ハッ……ハッ……!フェアリー……好きだよ…!」
思わず口走った言葉。その言葉を聞いた瞬間、フェアリーはクラッズの体をぎゅっと抱き締めた。
「当たり前……だぁ…!」
少し余裕ができたのか、いつもの減らず口。しかし、言葉とは裏腹に、その腕は彼の言葉に縋り付くかのように、強く強く抱き締める。
いつもより深い膣内の感触。泣きながら怒るような表情。自分を抱き締める、小さな体。その全てが、愛しかった。
クラッズが突き上げるたび、先端にコツコツとフェアリーの子宮を叩く感触が伝わる。引き抜けば愛液に塗れた襞がまとわりつき、
同時に彼のモノを強く締め付ける。その刺激に、クラッズはあっという間に追い詰められてしまう。
「フェアリー……もう、ボク…!」
「いつも……早いってば…。うあっく…!別に、いいけどさ……んっ!中に……出して、いいよ…」
さらに強く抱き締めてくるフェアリー。その体を、クラッズもしっかりと抱き返す。
「くぅっ!フェアリー!」
「んうぅ!」
フェアリーの体内深くに、クラッズは思い切り精を放つ。普段よりきつく締め上げられている分、精液が勢い良くフェアリーの子宮に
ぶつかる。やがて、入りきらない精液が、二人の結合部からどろりと溢れ出た。
「……はぁ……はぁ……いっぱい、出たね…」
「フェアリー、大丈夫?」
「うん……ありがと」
クラッズはフェアリーと一緒に体を横たえ、そっと自分のモノを抜き取る。
「んあっ…!」
体の奥深くから抜き出される感覚に、フェアリーの体が強張る。やがて全てが抜けると、力尽きたように全身からガクンと力が抜けた。
「フェアリー、疲れたでしょ?このまま、寝ていいよ。」
「ん……そうするね…。ありがとう、クラッズ…」
幸せそうに言うと、静かに目を閉じるフェアリー。
クラッズは置いてあるタオルで簡単に自分とフェアリーの全身を拭いてから、再びその隣に寝転ぶ。
普段の彼女からは想像も出来ない、無邪気な寝顔だった。その寝顔をそっと抱き寄せ、クラッズも目を瞑る。
「嫌いになれれば、本当は楽なんだろうね…」
誰にともなく、そう呟く。
一番苦手で、一番嫌いで、一番可愛くて、一番愛してる人。そんな相手を持ったクラッズは、あるいは誰よりも不幸なのかもしれない。
しかし、今自分の腕に抱かれ、安らかに眠るフェアリー。
「でも、しょうがないよね……好きになっちゃったんだから」
その顔を見る限りでは、あるいはセレスティアの言うとおり、二人とも幸せなのかもしれない。
少なくとも、今のこの瞬間。クラッズは、他の誰よりも幸せだった。
102 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:50:40 ID:NIUT7P01
翌日。一行はいつも通りに地下道探索に出かけていた。今回はフェルパーの強い要望に従い、主に宝箱漁りに励んでいる。
しかし、フェアリーは調子が悪いらしく、その動きは精彩を欠く。
「おーい、フェアリー。大丈夫?調子悪いの?」
ドワーフの声に、フェアリーはうんざりした視線を向ける。
「う、うるさいな。あたしだって、調子が悪いときぐらいあるよ」
「今のあんたなら、私の攻撃でも当たりそうだね」
「やめてよ、ほんとに。調子悪いんだから…」
「大丈夫だよ、フェアリー。今日はボクが頑張るからさ」
クラッズが言うと、フェアリーは一瞬恥ずかしそうな表情を見せた。が、すぐに怒ったような顔になる。
「あんたなんかに頼らなきゃいけないほど、あたしは落ちぶれてないよーだ」
「あ、ひどいなー。せっかくやる気出したのに」
「そんなん、いつも出して当然でしょー!?大体あんたはさぁ…!」
その様子を脇目で見つつ、四人は目配せを交わし、笑った。
「こいつら、仲いいよなあ」
「ほんとですよね。見てて羨ましいくらいです」
「たまに、クラッズさんが疲れているように見えますけどね。フェアリーさんが、もう少し素直な方なら、彼も楽なのでしょうが」
「ほーんと、クラッズも苦労が絶えないね」
「……ちょっと、そこの四人。なぁにこそこそ話してんの!?」
フェアリーの矛先が変わったことで、四人はそれとなく解散する。
「いやいや、別にー。ただ、あまり喧嘩すんなよ」
「そうそう。じゃないと、クラッズだっていつか怒るぞ」
「あんたには関係ないでしょー!?あんたにクラッズの何がわかるってのよー!?」
「変な奴に好かれて大変だなってことぐらいかな」
「うっわ、あったま来た!犬っころの癖にー!」
「何だとこいつー!?」
「やめろってば、ドワーフ」
「フェアリーもやめなってばぁ」
間違いなく、一点の曇りもない、いつもの光景。ただし、クラッズの顔には一種、諦めのような笑顔が浮かんでいる。
振り回されるのは好きじゃないし、わがままに付き合うのも嫌いではある。
だけど、それでも男女として付き合えるほどに、大切な存在。
以前に見えた未来像が、さらに鮮明にクラッズの脳裏に浮かぶ。
きっと、こうやってずっと付き合っていくのだろう。喧嘩も仲直りも、同じだけ繰り返して。
そう。この先、恐らくはずっと。例え学校を卒業しようと、続けていくのだろう。
103 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/05(月) 23:55:44 ID:NIUT7P01
以上、投下終了。フェアリーが暴走するもんで、こいつらが一番書きやすい気がするw
とりあえず、>>88にお返事。
俺自身は気にしてないので、そちらもあまり気にせずに。てか、あまり恐縮されると居心地がw

それでは、この辺で。今年もよろしくお願いします。
104名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 09:59:51 ID:GYesNgA/
GJ!素晴らしい!
105名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 10:47:46 ID:mWWNI9VV
おひさ&GJ!
男フェルパーの「にゃあん」には思わず吹いちまったぜw
106名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 09:07:23 ID:7ISqUB3u
おつですー
107名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 18:56:47 ID:17UTMYQL
にの子っていうイラストレーターが冬コミでととモノのエロ同人出してたらしい
HPのサンプル見てきたがバハ子とセレ子のレズ物で尻尾フェラとかあって割とエロそう
とらに委託するらしいんで俺はそれ待ちしてる
108名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 19:38:07 ID:+6bcTOTc
>>107
・・・もう委託してたよ。
・・・・・・再販があるといいね。
109名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 19:51:08 ID:17UTMYQL
>>108
どうして俺はちょっとの手間を惜しんでショップ巡りを怠ってたんだろう…
死にて…orz
110名無しさん@ピンキー:2009/01/10(土) 07:09:50 ID:bc7DCAfZ
>>109
俺もつい先日pixivで存在を知って絶望した。
…いつか出会えると信じてるんだぜ。


携帯ゲーキャラの方の>326の間の話投下。
寝ずに4時間ぶっ通しで書いてたらテンション上がってきてよく分からないものになってしまったけど気にしない。
1111/4:2009/01/10(土) 07:10:21 ID:bc7DCAfZ
「…好きだ、ドワ!」
「…ふぇ!?」

「え、と…それって…」
「…やっぱり私ではだめか?」
「いや、そんなことないよ。
 …でも、僕でいいの?」
バハは黙っている。やっぱりそうだよね、とがっかり…する前にバハに押し倒された。

「バハ…!?」
「ドワ…」

バハの顔が近づいてくる。
…そして、二人の唇が重なる。

「…僕、キス、初めてだったのに…」
「私もだ。…私じゃいやだったか?」
「…バハでよかったと思ってる」
「私もだ」

普段は戦士科としてモンスターをなぎ払っているバハが顔を真っ赤にして僕にまたがっている。
…露天風呂で見てしまったバハの裸体を思い出し、ズボンの中が膨らんでいくのがわかる。

「…ご、ごめん…」
「…男なら堂々と、その、ぼ…勃起させればいい」
「あ、いや、さすがにそれは恥ずかしすぎるよ…」

二人でふふふ、と笑いあう。緊張もすこし和らいだ。
「なあ、ドワ。…服、脱いでくれるか?」
「う、うん…」
そういって僕は服を脱ぎ始める。さすがに向かい合ったままは恥ずかしいので
背中を向けて服を脱ぐ。僕はモノを両手で隠してバハのほうを向いた。

「…あ、あれ?バハは…?」
「風呂で私の裸を見たんだ、今度は私が一方的に見てもいいだろう」
「う、ぅぅ…」
そんな馬鹿な、と思ったものの、露天風呂のことをだされると何も言い返せない。
僕は黙って両手を横にずらし、バハに裸を晒した。

「…へぇ。やっぱり、私たちとは違って全身毛だらけなんだな」
「う、うん…まあ、ね」
「で、これが尻尾か…」
バハが僕の尻尾を撫でる。
…僕は尻尾に対する刺激に弱い。あまりに弱すぎるから普段は防具をつけるくらいに、だ。
「あ、バハ…!しっ…ひゃうんっ!」
「へ?…そういえば、ドワは尻尾が弱かったんだな」
「そ、そうだから…あんまり触ら…ひうっ…!」
「敏感なモノが前にも後ろにもあるなんて、ドワは大変だな」
「はぅぅ…」

バハがようやく尻尾から離れる。尻尾への責めから解放された僕はベッドにうつぶせになってぐったりしていた。
1122/4:2009/01/10(土) 07:10:52 ID:bc7DCAfZ
少ししてベッドから顔を上げる。顔を上げた先には、服を脱いでいるバハがいた。

「…ドワは本当に覗きが好きだな」
「そ、そういうワケじゃ…」
「冗談だ」

服を脱ぎ終えたバハが僕の横へ来る。

「…ドワ…その…お前のを見てたら…私…ドワ、お前の…くれないか」
「で、でも…大丈夫?」
「だ…大丈夫だ。バハムーンがそれくらい耐えられなくてどうする」
「でも、僕…バハが痛がるのなんてやだよ」
「ドワ…」
「バハ、だから…」
言い終える前にバハに口をふさがれる。2回目のキス。今度は最初と違ってお互いの舌を絡めあうキス。

「…んくっ、ドワ……ありがとう。でも、本当に大丈夫だ」
「あ…うん…初めてだから、痛かったら言ってね」

僕はモノを挿れられるように体をずらす。
…バハムーンとドワーフの身長差を少し恨んだ。

「バハのココ、僕と違って毛がまったく無いね」
「そ、そんなこと、どうだっていいだろう!…やっぱり、変なのか?」
「…他の人のを見たこと無いから分からないけど…バハがこうなんだから、これでいいんだと思うよ」
「そ…そうか、そうだな」

「そういえば…バハの尻尾、脚に巻かれてないのを見るの初めてだよ」
「まあ…伸ばしてると邪魔だからな」
「ふぅん…僕の尻尾もそんな風にできれば良かったのになぁ」

バハの尻尾を撫でる。僕の尻尾とは違って、ツルツルしているし、弾力もある。
…アレに結構近いなぁ、なんて思って自分のモノと比べてみよう…としてやめた。

「…これだけ撫でても反応無しなんて、悔しいなぁ」
「ドワが弱すぎるだけだ。…それに、あんな恥ずかしい声、あげられるはずないだろう」

さっき尻尾であんなにされた仕返しに、ちょっとした悪戯を考え付いた。
バハの尻尾をバハのあそこに合わせる。
「…じゃあ、こうしてみたらどう?」
合わせた尻尾をそのままノコギリのように擦りあわせる。

「へ…っ!?あふっ…」
「僕だって男だもの、やられっぱなしじゃダメだよね?」
「あっ…ド、ドワ…しっ、尻尾…それ、だ、だめ…だっ…!」
「へへっ、ダメ、止めてあげない」
普段はあんなに強いバハが僕の責めで喘いでる。
それの快感に、僕は夢中で尻尾を擦りあわせ続けた。
1133/4:2009/01/10(土) 07:11:23 ID:bc7DCAfZ
「ドワっ…だ…だめっ…だめ、い……くっ…!」
バハの体が弓のように反る。
バハをイジめるという、普段ではありえないシチュエーションに夢中になっていた僕もさすがに正気に戻る。

「バ…バハ…?大丈夫…わっ!」
バハの顔を覗き込もうとした瞬間、バハに押され、僕は倒れた。
…バハムーンはプライドが高い種族だ。こんなことをしたら、当然怒るだろう。

「バ…バハ、ご、ごめん…」
「…たのに……」
「え…?」
「初めてイくときはドワと一緒に、って決めてたんだぞ…」
「…バハ……ごめん、僕…」
「うるさい!…ドワは黙って挿れてればいい」
「う、う…へ?」
倒れた僕の上にバハが跨る。
そしてそのまま僕のモノとバハのあそこを合わせて…一気に体を沈めた。
「っくぅ…っ!」
「バハ…!?そんな…無理しないでも!」
「うるさい…大丈夫、だ…っ!」

「バハ…さっきはごめんね、僕、バハがそんなこと考えてたなんて全然気にしてなかった」
「そんなこと……まあいい、おかげで痛みも少ないし…な」
「…バハ…」
「それより…やっぱり、動いた方がいいか?」
「無理しなくていいよ。それに…バハの中、気持ちよすぎて、僕、動いたらすぐ出ちゃいそうだよ」
「大丈夫だ…すこしずつ、動くぞ…」

バハが腰を上下に動かす。
初めは小さな動きだったが、本当に痛みがあまりなかったのか、大胆な動きになってくる。

「あふっ…ド、ドワ…どうだ?」
「バハ…あんまり動くと…僕、もう…」
「いいぞ…ドワ…私の中にっ…!」
僕も腰を動かす。バハの動きもどんどん大きくなり、快感の波もどんどん大きくなる。

「バ、バハっ…!も、もう…イくっ…!」
「ドワ…イくならっ、私の中にくれ!」
「バハ…ッ!」
ひときわ大きな快感の波がき、バハの中に大量の精液を吐き出す。
しばらくして、バハが僕のモノを抜く。バハの中からは、溢れた精液と破瓜の血が垂れてきていた。
1144/4:2009/01/10(土) 07:11:53 ID:bc7DCAfZ
「バハ…気持ちよかった…よ」
「…私もだ」

バハが立ち上がる。後始末はしないといけないよね、と考えていると、バハは
僕と反対向きに寝て…僕のモノを口に含んだ。

「…ひゃぅ…!?」
「まだ元気があるみたいだな」
「バハ…っ、イってすぐは敏感すぎるからっ…」
「ドワ…お前はさっき私が嫌がった時、止めてくれたか?」
「それはそうだけどっ…!」
「男なら、やり返されることも覚悟しておくべきだ」
「そ、そんな…はぅっ!ダメ、バハっ、本当にダメだからっ!」
「やられっぱなしでは私らしくないからな。覚悟を決めろ、ドワ」
「あふぅ…ダメ、イったばかりなのに、舐めるの、ダメぇ…」
「舐めるのがだめか…なら、こっちで我慢しておこう」

バハは僕のモノを舐めるを止める。
僕は安心した…ものの、「こっち」という言葉の意味を体で理解して絶望した。
「ひぅぅっ!…りゃ…りゃめっ!尻尾はもっと…はひっ!…だ、だ…めっ!」
「本当、こっちが可哀想に思えるくらいドワは尻尾に弱いな」
「あぁんっ!尻尾、弱いからっ!ひうっ…だめぇ…!」
「うるさい口だなぁ…そうだ、私の尻尾を咥えてるといい」
そういうなりバハの尻尾が僕の口の中へ押し込まれる。
先の方だけといえどもそれなりに太さがあり、喋ろうと思っても結局尻尾を舐めることにしかならなかった。
「んぐ…っ!…!」
「そうか、気に入ったか」
「んぅぅ!んぅっ!…」
「…尻尾を舐められてるのは、少し気持ちいいな。ドワも試してみないか?」
「んぐ…!んぅっ!」
バハがモノから口を離し、かわりに尻尾を咥え、そのまま上下に動く。
モノはバハの手が口の代わりになり扱いてくる。
「――っぅ!」
「かなりいいみたいだなドワ、腰がガクガクしてるぞ。
 …ああ、尻尾を咥えたままじゃ喋れないな」
口からバハの尻尾が抜かれる。が、もはや僕は喋る喋らないどころではなかった。

「あふぅっ…!…めっ…りゃめぇ、しっぽぉ…気持ちよすぎるから…りゃめぇっ…!」
「だめだ。さっき無理矢理イかされた私の気持ち…これですこしはわかるだろう?」
「ひゃうぅぅ…!わ…わかったからぁ…あひぃ…!あ、だ…だめ…い…いくぅ…っ!」

バハが更に激しく責めたてる。僕は全身痙攣したようにガクガクとしたまま2回目の射精を迎える。
僕は気持ちよさ、情けなさや怒りが入り混じって涙が溢れていた。

「ドワ…!?たしかに少しやりすぎたが…なにも、泣かなくても…」
「ひっく…うう…ぼ…僕だって男なんだぞ…なのに…」
「ごめんっ…あんまりドワが可愛いから…調子に乗ってしまった…」
「僕…男なのに…ひっく…口に尻尾咥えさせられて…ひぐっ…精液全身に浴びせられて…まるで女じゃないかっ…」
「ごめんってば…もうしないから…泣き止んで…」
「ほんと…?…バハ、もうしない?」
「うん、約束するから。だからもう泣かないで」
「…うん…僕の方こそ、ごめんね…」
「もう気にしてないから。それより、シャワー浴びよう?今のままだと色々まずいから」
「そうだね…うん、シャワー浴びよう」


…こうして、僕の初体験はバハに泣かされる結果に終わったのでした…
115名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 14:14:11 ID:jk7khQ8e
GJ!ショタドワかわいいな
あっちのスレのも併せて読ませてもらった。腹黒クラッズの活躍に今後も期待してますw
116名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 01:52:30 ID:XGMM5K0k
何ともいじめたくなるドワだw
二人とも不器用なのが可愛いな。GJ!
117 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/14(水) 22:19:41 ID:fXajmFov
エンパスに灰にされたフェルパーにリバイブル使ったらロストした今日この頃、いかがお過ごしでしょうか
現在救出作戦進行中…orz

最近ちょっとネタに詰まっているので、前スレで話してたサブパーティの小ネタでも。
残った野郎二人です。エロくはないはず。でもエロく見えなくもない。
まあ小ネタなので、単純にネタとしてどうぞ。
118 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/14(水) 22:20:26 ID:fXajmFov
一週間の遠征を終え、一行は久しぶりにパルタクスの寮に戻った。
消灯時間も近づく頃、セレスティアが廊下を歩いていると、不意に見覚えのある影が映った。
「おや、これはヒューマンさん。わたくしに何か、用事でも?」
「ああ……言わなくても、わかってんだろ?」
怪しげな笑みを浮かべて言うヒューマン。そして、再び口を開いた。
「やらないか?」
それに対し、セレスティアも呆れたような笑顔を返す。
「やれやれ。また、ですか?あなたも、元気な方ですね」
「まあな。今夜は、寝かせねえぞ」
「わかりましたよ。では、さっさと始めましょうか」

それから数分後、ヒューマンの部屋からは、彼の切羽詰った声が漏れ聞こえていた。
「お、おいセレスティア…!よせ、そこはやめろぉ…!」
「また、そんなことを。つまり、ここという事、でしょう?」
「違うっ!本当にやめろ!そこは触るなぁ!」
「やれやれ。いちいち聞いては、いられませんね」
セレスティアの落ち着いた声が響き、続いてパン、パンと、断続的に乾いた音が響く。
「ああっ!ダメだっ、よせ!それ以上はダメだぁ!」
「あなたから、言い出したことですよ?」
「わかった!もう降参だ!もうやめてくれぇ!」
「お断りします」
乾いた音のペースはさらに速まり、ヒューマンの切なげな声が響く。
「うああ……もうやめてくれ…!ほんともう勘弁してくれよぉ!」
「今更、何を。さあ、これで終わり、ですね」
「それだけはダメだって!それだけはやめてくれぇ!」
「ですから、言ったでしょう?これで、おしまい、です!」
一際大きく、パァンと乾いた音が響いた。
「あああぁぁぁ!!!!」
ヒューマンの悲鳴に似た声が、寮に響き渡った。

「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」
「……お姉さま?一体何をのたくっているんですの?」
エルフに言われ、バハムーンは慌てて姿勢を正した。
「あ、あ、いや、何でもない…」
「何か壁に耳をつけてると思ったら、急にのた打ち回ったり……何か、悩みでもあるんですの?」
「いやいや、そういうわけじゃないぞ。うん、本当に何でもない」
119 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/14(水) 22:21:09 ID:fXajmFov
「くそっ!また負けた!」
ヒューマンは思い切り床を叩き、ギリギリと歯を鳴らす。
「わたくしは、21組。あなたは5組。本当に、弱いですね」
セレスティアは最後に残ったカードを、パァンと乾いたいい音を立てて、床に叩きつける。
「大体、神経衰弱で、そこまで声を出しては、相手にカードの位置を、教えているようなもの、ですよ」
「だぁって、しょうがねえじゃねえか!出ちまうんだから!」
「それに、最後に残った二組を取ったところで、あなたの負けは、確定でしょうに」
「気分が違うじゃねえかよ!くっそ〜、せめてその二組は欲しかったのにっ!」
「ポーカー、7並べ、そして、これ。どれ一つとして、勝てた試しが、ありませんね」
言いながら、セレスティアは慣れた手つきでカードを切っている。
「くそー!勝てるまでやるからな!マジで寝られると思うなよ!」
「やれやれ。赤ん坊をいたぶる楽しさがあるとはいえ、夜通しでは、さすがに体力が、持ちません」
セレスティアはヒューマンの顔を見ながら、にやりと笑った。
「さっさと叩き潰して、寝かせてもらいますよ」
「この野郎…!上等だてめえ!今度こそ俺の方が…!」
そこまで言った瞬間、突然凄まじい音とともにドアが蹴り開けられ、二人は驚いて身構えた。
「貴様らぁ…!」
「バ、バハムーン!?」
そこにいたのは、全身に殺気を漲らせたバハムーンだった。おまけに、なぜかその手には抜き身のエクスカリバーが下げられている。
「あ、あ、悪かったよ!うるさかったってんだろ!?それは謝るから…!」
「貴様らよくも!この私の心を弄びやがって!」
「は…?わたくし達が、ですか?いや、あの、一体何の話を…」
彼女の後ろの影に気付き、セレスティアの声が止まった。そこにいたのは、バハムーンと同じく殺気を纏い始めたエルフであった。
「今の言葉……聞き捨てなりませんわ。わたくしのお姉さまに、一体、何をなさったのかしら?」
もう何を言っても無駄だということは、二人にもはっきりわかった。じりじりと後ずさるセレスティアとヒューマン。それを追い詰める
バハムーンとエルフ。ついに窓際まで追い詰められたとき、セレスティアはスッと足を上げた。
「ん?おいセレ……どわぁ!?」
ヒューマンの背中を、思い切り蹴り飛ばすセレスティア。よろめいたヒューマンを、バハムーンがしっかりと受け止めた。
その隙に、セレスティアは窓を開け放ち、枠に足をかけると、ヒューマンに柔らかな笑みを向けた。
「て、てめえええぇぇぇぇ!!!!!」
「これで、ゲームの負けは無しにして、差し上げますよ。では、わたくしはこれで」
「セレスティア!ちょっと待っ…!」
ひらりと夜空に身を舞わせ、素早く飛び去るセレスティア。バハムーンの手が、ヒューマンの肩を砕かんばかりに強く掴む。
「さて……覚悟は、いいな?」
「報いは、受けてもらいますわ」
「ああぁぁ……お、俺が何をしたってんだぁぁぁ!!!!!」
ヒューマンの悲鳴が、夜の寮に響き渡った。

「なんか、隣がうっせえなあ。何してんだ?」
ディアボロスがそちらに顔を向けると、下から伸びた手がその首を抱く。
「よそ見しちゃ、や」
そう言い、ノームはディアボロスの顔を、裸の胸に押し付けた。彼女の拗ねた膨れっ面に、ディアボロスはささやかな幸せを感じる。
「あ〜、悪かった悪かった。そう怒るなよノーム」
体を抱き締めて頭を撫でてやると、ノームは嬉しそうに目を細める。
「……でも、ほんと何だろうなあ?なんかヒューマンの悲鳴が…」
「よそ見、だめ」
「わかってる、わかってるって。もうしねえから、怒るなよ」
隣の地獄絵図など知る由もなく、小さな幸せを噛み締めている二人だった。
120 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/14(水) 22:22:22 ID:fXajmFov
以上、小ネタ終了。
二人はとっても仲良しです。そしてバハムーンも問題児。
ではこの辺で。
121名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 00:29:38 ID:GNdOAzsV
天国と地獄ですな。まさしく。GJww
セレの悪っぷりに吹いた。そしてバハムーンww
なんでバハムーンはこう問題児が多いんだww

フェルパーーーー!!!!カムバック!!!!早めに早めに!!!!
そういえば自分もフェルパーを失ったことがあります。
そのときは即!!リセットしましたよ。ええ、そのせいでライフゴーレム5体分の戦闘を再びやる羽目に…
ダケドウシナイタクナカッタンダ!!!
現在クラッズの財布の中に60万ある。図書館の古雑誌何冊あるんだ?そして購買部の資金力もなぞだ。
122名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 18:41:18 ID:ptnJgsTp
わたくしのお姉さまになってるw
真っ黒なセレスティアに笑わせてもらいました。GJ!
123 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:37:59 ID:r2Z0gl8P
先日ようやくフェルパーが復活。それはそれで妄想の膨らむ日々でした。
エロい神は降りなかったけど。

今回はちょっとエロ分少な目です。物足りない感じがあると思いますが、そこはご容赦を。
あと、注意としては一応百合物になります。
いつもの面子ではありますが、飽きずに楽しんでいただければ幸いです。
124 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:38:49 ID:r2Z0gl8P
「まったくお前はー!このぉ!」
「無理無理。あんたの攻撃なんか当たんないよーだ」
両手斧を振り回すドワーフ。それを避けるフェアリー。そして、それを止めに入るフェルパーとクラッズ。
「やめろって、ドワーフ」
「フェアリーもやめなよー」
もはや二人とも、半分棒読みである。それぐらい、いつもと変わりない光景だ。後ろでそれを見つめるセレスティアとノームも、
以前ほどの緊張感は見られない。
なぜか、この二人はいつも喧嘩をする。もちろん、種族的に気が合わないというものも大きいのだろうが、それにしても度が過ぎる。
大抵は、フェアリーがドワーフをからかって怒らせる。たまには、ドワーフがフェアリーに何か言って怒らせることもあるが。
「くっそー!降りて来い!」
「やーだよーだ。悔しかったら一発でも当ててみろっての」
「だからぁ〜、フェアリーやめなってばぁ」
その二人を止めるのは、それぞれの恋人であるクラッズとフェルパーだ。それもまたいつもの光景なのだが、この時は少し違った。
普段なら、呆れたような言い方をするクラッズの声。だが、この時は少しイラついた響きが含まれていた。
「いっつもいっつもドワーフ怒らせて、少しはドワーフのことも考えてあげなよー」
「何よー。あんたに指図される筋合いはないんだけど」
「……フェアリー、ほんといい加減にしなよ。指図とかじゃなくて、仲間のこと少しは考えたらって言ってるんだよ、ボクは」
さすがに、ここまで来ると全員がクラッズの変化に気付いていた。
「はぁ?いきなり何よ。だったら最初っからそういう風に言えばいいでしょ」
それでも、いつもの調子を崩さないフェアリー。それに対するクラッズの声はさらにイラついたものとなり、口調も激しくなっていく。
「お、おいクラッズ、もうよせよ」
「フェアリーさん、もうそれぐらいにした方が…」
さすがに仲裁しようとした頃には、既に手遅れだった。もはや、二人の言い合いは誰にも止めようがないほどに激化していた。
「何よ、いきなりいい子ぶって!そんなにいい奴だと思われたいわけ!?」
「いい子ぶってるんじゃないよ!仲間として当然のこと言ってるんだよボクは!それもわかんないの!?」
「はっ、何が当然のことよ!?じゃあ今までその『当然のこと』を、一度も言わなかったのはどうしてだろうね!?」
「言わなくてもわかると思ってたからね!あーあ、君がこんなこともわからないなんて、思いもしなかった!」
「へ〜、こんだけ付き合い長くて、それも知らなかった?所詮、あんたにとっての仲間なんて、そんなもんなんだろうね」
完全に、売り言葉に買い言葉の様相を呈している。もう一度、周りが止めようとしたとき、クラッズの顔が思い切り歪んだ。
「そういうこと言うんだ…。ああそう、わかったよ!フェアリーなんか、大っ嫌いだ!」
その言葉を聞いた途端、フェアリーはビクッとして言葉を止めた。突然の言葉に、周りも言葉をかけることができない。
「な……何よ…!いきなりそんなこと言われたって、わけわかんないんだけど…!?」
「……ふんっ!行こ、みんな!」
「お、おい!」
フェアリーの言葉を無視し、さっさと歩いて行ってしまうクラッズ。その後をノームとドワーフが追いかけ、フェルパーとセレスティアは
言葉もなく呆然としているフェアリーの側に留まる。
「フェアリーさん……その、クラッズさんだって、本気じゃないですよ」
だが、フェアリーは答えない。さすがに相当なショックだったようで、その顔にいつもの表情はない。
「とりあえず、行こうぜ。落ち着いたら、ちゃんと話もできるって」
「……うるさいな…。あんたらに心配されるほど、気にしてないよ…」
その言葉に、説得力はまったくない。それでも少しは気を取り直したらしく、フェアリーはノロノロとクラッズの後を追い始めた。
125 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:39:32 ID:r2Z0gl8P
地下道探索が終わってからも、クラッズはフェアリーと口をきかなかった。これほどまでクラッズが怒っているところは、他の仲間は
もちろん、フェアリーも見たことがない。
「ねえ、クラッズ。いい加減、意地張るのやめてよ。どうせもう少ししたら、また喋るようになるんでしょ」
フェアリーはクラッズに話しかけ続けた。が、自身の性格のため、ほとんど逆効果になっている節がある。
戻ったときも、食事のときも、徹底的に無視され続け、結局一言も言葉を返されないまま、夜になった。
部屋へと向かうクラッズ。その後を、フェアリーが追う。
「ねえ、ちょっと。ほんといい加減にしてよ」
クラッズがドアに手を掛けたところで、フェアリーが話しかける。だが、やはり返事はない。
「どうせ、嘘だよね?あんなのさ。今なら許してあげるから、正直に答えてよ」
「………」
クラッズは冷たい目で、フェアリーを睨んだ。
「……ねえ、答えてよ。何でもいいから、喋ってよ…!」
とうとう堪えきれなくなり、フェアリーの声が僅かに震える。それでも、クラッズはその態度を崩さなかった。
「ねえ、クラッズ…!」
「ふんっ!」
フェアリーの鼻先で、ドアがバタンと閉められた。それとほぼ同時に、鍵のかかる音が無情に響く。
「な……何よぉ!クラッズのバカ!チビ!へたれ野郎ー!」
ドアに向かって叫んでも、中からの返事はない。やがてフェアリーは力なくうなだれ、とぼとぼと廊下を戻り始めた。

眠りにつく前に、ドワーフは窓のカーテンを開け、じっと祈りを捧げていた。
静かに目を瞑り、片膝をつき、手をしっかりと組んで祈る姿は、普段の彼女からはあまり想像できない。だが、一応は神女でもあり、
また自身も信仰心は篤い。フェルパーと一緒にいるときや、疲れ切っているときは忘れることもあるが、それでも可能な限り、寝る前の
祈りは欠かさないようにしていた。
その時、不意にノックの音が響いた。一瞬フェルパーかと思ったが、それにしてはノックの音が違う。
「ん、誰だー?」
一応は大切な時間を邪魔され、ドワーフは少し不快に思いながらもドアに向かった。フェルパーではないにしろ、ノームかセレスティア
辺りだろうかと思いながらドアを開けると、その向こうにいたのは、ドワーフの予想を遥かに超えた人物だった。
「え、フェアリー!?ど、どうしたんだよ?」
「………」
何だか不機嫌そうにうつむいたまま、何も答えないフェアリー。対応に困り、ドワーフは少し固まっていた。
「え、えーと、とりあえず入るか?」
「……ん」
部屋の中に通されると、フェアリーは何も言わないままベッドに腰掛ける。その隣に、ドワーフも腰掛けた。
「……どうした?」
少し優しく声をかける。だが、やはりフェアリーは答えない。不機嫌そうな顔のまま、ただじっとうつむいている。
「ま、話したくないならいいさ。話したくなったら、いつでも聞いてやるよ」
そうして、しばらく二人とも口をきかないまま時間が過ぎていった。
126 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:40:50 ID:r2Z0gl8P
1分経ち、2分経ち、長針が4分の1ほど回ったとき、フェアリーの表情に変化が現れた。
その目に涙が溜まり、唇もわなわなと震えている。握り締めた拳は白く変わり、爪が食い込みそうなほど硬く握られている。
「……っく…!ふ……うぅ〜…!」
「……フェアリー…」
「う、うあぁーん!!」
いきなり、フェアリーは泣きながらドワーフに抱きついた。
「うわぁ〜ん!ク……クラッズがぁ…!ゆ……許して、くれないのぉ…!しゃべって……口、きいてくれないのぉ〜!ふえぇ〜ん!」
ドワーフはどうしていいのかわからず、ただその体を抱き締めてやった。
「いつもなら、許してくれるのにぃ〜…!今日は許してくれないぃ〜…!うあ〜ん、あ〜ん!」
次々にこぼれる涙が、ドワーフの毛皮に染み込んでいく。こんなに泣きじゃくるフェアリーを見るのは初めてだった。ドワーフとしては、
こういう時どうすればいいのかまったくわからず、せいぜいその体を抱き締め、頭を撫でてやることしかできない。
フェアリーはしばらく泣き続け、ドワーフの胸元をびしょ濡れにしてから、ようやく少し落ち着いた。
「ひっく……くすん…」
「少しは楽になったか?」
ドワーフが尋ねると、フェアリーは無言で頷いた。
「たまにはさ、お前の方から謝ってやれよ。じゃないと、クラッズだって意地になって、ずっとそのままかもしれないぞ?」
「わかってるよ、うるさいなあ……グスッ…」
「にしても、なんでわざわざ私のとこに来たんだ?」
「あんた以外……誰に言えってのよ…」
言われてみれば、セレスティアとノームは性格が合わない。確かにいい人ではあるのだが、それはあくまで中立的立場から見た場合だ。
あの二人に相談した場合、正論とはいえ、フェアリーが一方的に責められるのは目に見えている。フェルパーとは仲もいいのだが、
さすがに男相手は気が引けたのだろう。
「……ま、いいけどな」
「ん…」
「落ち着いたなら、そろそろ戻って寝た方がいいぞ。明日も探索…」
「嫌だ。帰らない」
「え?」
「ここで寝る」
唐突な言葉に驚いたが、一人になるのが嫌なのだろう。ドワーフもさすがに断りにくく、仕方ないというようにため息をついた。
「……わかった。んじゃ、今日はここで寝ていいけど、明日からはちゃんと自分の部屋で寝ろよ?」
「わかってるってば、うるさいなあ」
そう言いつつも、フェアリーはホッとした表情を浮かべていた。そんな顔をされると、ますます放っておけなくなる。
普段ならまずありえない組み合わせではあるが、ドワーフとてフェアリーを心底嫌っているわけではない。
布団に入ると、フェアリーはドワーフの体にぴったりと寄り添った。何だか落ち着かないものの、寂しさゆえだろうと納得し、ドワーフは
目を瞑った。目を瞑ってしまうと、隣にフェアリーがいるのも大して気になるものではなく、すぐに眠りについてしまった。
127 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:41:25 ID:r2Z0gl8P
ドワーフは不意におかしな感覚を覚え、目を開けた。フェルパーが、胸にむしゃぶりついている。
「フェ、フェルパー何だよ!?いつのまに入ったんだよ!?」
確かにそう叫んだつもりなのだが、声はさほど大きく響かない。そして、フェルパーも聞く耳を持たない。
「ちょ、ちょっと待てって……ん…!や、やめろよ…!」
フェルパーの体を押し返す。が、その手に感覚は残らない。そこで、ふと気付いた。
―――夢、か?
だが、それにしては今受けている刺激は本物だ。となると、実際に誰かがこうしているとしか考えられない。
それに思い当たると、ドワーフは全力で目を覚ました。
一瞬、真っ暗な室内が見え、ドワーフはやはり夢だったのかと、ホッと息をついた。が、急に夢と同じような刺激が加えられる。
「んっ…!?」
見ると、フェアリーが自分の上に乗り、夢で見たフェルパーのようにむしゃぶりついている。
「お、おいフェアリー…!ちょっ……やめろ…!」
小声で言うが、どうも聞こえていないらしい。というより、フェアリー自身目を瞑っているし、どうやら寝ぼけているらしい。
ちゅぱ、ちゅぱ、と音を立てながら、フェアリーはドワーフの乳首に吸い付く。その度に、ドワーフは思わず声を上げそうになるのを、
必死に堪えている。
「フェアリー、フェアリー…!おい、頼むよ起きて……んんっ!」
フェアリーが起きる気配はなく、しゃぶるのをやめる気配もない。
「参ったな〜、どうしろって……あんっ!」
つい大きな声を上げてしまい、ドワーフは慌てて口を押さえる。が、やはりフェアリーは起きそうにない。
考えてみれば、この状況で起きられても困りものである。もしかしたら余計に何かされるかもしれないし、そうでなくとも気まずい。
悩んだ挙句、ドワーフは何とか耐えることに決めた。気が済めば、フェアリーもそのうち離れるだろう。
寝てしまえば一番いいと思い、ドワーフは再び目を瞑る。だが、敏感な箇所にずっと刺激を受けたまま、眠れるわけがない。
おまけに、フェアリーは時々舌で先端を突付いて来る。その不意打ちの度に、ドワーフは声を上げないようにするので精一杯だった。
さらに言えば、静かにしているとフェアリーが立てる音がより鮮明に響く。その音が、間接的にドワーフの気分を昂ぶらせてしまう。
「くっ……う、んん…!……はぁ、はぁ、はぅっ…!?……くふ……ぅ…!」
ドワーフ自身が漏らす声と、フェアリーの立てる音。それにずっと受けている刺激。その全てが、ドワーフをどんどん昂ぶらせていく。
既に、その吐息には甘い響きが混じるようになり、秘所はじんわりと湿り気を帯び始めている。それでも、ドワーフはひたすら声を抑え、
いつ終わるとも知らない責めに耐え続けた。
やがて満足したのか、フェアリーは不意に乳首から口を離した。ようやく終わりを告げた責めに、ドワーフはホッと息をつく。
だが、かといってゆっくり眠れるかというと、そうでもない。性感帯を半端に刺激され、本格的に気持ちよくなり始めた時に終わって
しまったのだ。やり場のない情欲が燻り続け、とても寝られる精神状態ではない。
それでもドワーフは、しばらく眠ろうと頑張った。しかし、やはり無理がある。となると、何とかして鎮めなければならない。
そっと、手を動かしてみる。が、胸の上にフェアリーがいるため、どうしても手がその体に当たる。起こしてはまずいので、ドワーフは
手を戻した。少し触ってしまったが、どうやら起きる気配はないようだ。
手を使うことを諦め、そっと尻尾を動かす。仰向けなので動かしにくいが、それでもできないわけではない。
スパッツの上から、そっと秘所を撫で上げる。
「んっ…!」
刺激としては物足りないが、それでもないよりはマシである。それに場所によっては、それなりに強い刺激を得ることもできる。
「んん……ん…!んぅぅ…!」
声が漏れないよう、両手でしっかり口を塞ぎ、尻尾での自慰に耽るドワーフ。声は出せないし、刺激も物足りないものはあるが、それでも
何とか達することはできそうだった。
128 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:42:16 ID:r2Z0gl8P
手を伸ばしそうになるのを必死に我慢し、一番敏感な突起を重点的に責める。それでようやく、快感が頂点に達しようとした時。
「んっ……ぅ…!きゃう!?」
突然、フェアリーが再び乳首に吸い付いた。今度はさっきと逆の方で、ドワーフは思わず高い声を漏らしてしまう。
「ま、またか…!やだ、やめろ…!」
慌てて自慰を中断し、フェアリーを押しのけようとするドワーフ。だが、フェアリーはしっかり吸い付いて離れない。それどころか、
聞こえよがしに音を立て、さっきよりもかなり激しく吸い上げてくる。
「はぅぅ…!ほんと、やめろぉ…!」
それが聞こえているのかどうなのか、フェアリーはチュッチュッとキスでもするように乳首を吸う。おまけに、舌先で先端をチロチロと
刺激までしてくる。
「やだ……女の子になんて、イかされたくない…!」
確かに、さっきまで自分で慰めてはいた。だが、女同士での行為で達するのはどうしても抵抗がある。そのため、それまでとは逆に、
今度は達しないようにする努力をしなければならなかった。
しかし、フェアリーの責めは激しく、的確だった。今にも達してしまいそうになり、ドワーフの呼吸はさらに荒くなる。
それでも、ドワーフは辛うじて耐えていた。だが止めとばかりに、フェアリーの太腿が足の間にするりと入り込み、秘部を擦り上げてくる。
「んあぁっ!……くっ!こ、こいつぅ…!」
その時、ドワーフは確信した。フェアリーは寝ぼけているのではなく、そのフリをしているのだと。今までは、寝ぼけているのだと
思っていたので強行的な手段には出られなかったが、起きているのなら話は別である。
「フェアリーてめえ!もうやめろよっ!」
肩を掴んで揺さぶり、さらに大声で怒鳴るドワーフ。
「んふぁ…?」
が、ドワーフの予想とは違い、フェアリーはとろんとした目を開き、完全に起き抜けのような声を出した。
「え?あ、あれ?」
「……なぁにぃ?」
「あ、あ、いや……その、えっと……う、上で寝るなよ」
しどろもどろになりつつ、何とかそれらしい理由を口にする。
「……ん」
大儀そうに返事をすると、フェアリーはずるずるとずり落ち、ドワーフの隣に納まった。そして早くも、再び寝息を立て始めている。
「……何だよ、もう…」
何だか肩透かしを食らったようで、ドワーフは憮然とした声を出す。だが無意識にやっていたことであれば、それを責めるわけにも
いかない。それに、予想と違う結果だった驚きのせいで、怒りも疼きも消えてしまった。
気持ち悪いので下着とスパッツだけ変えると、ドワーフはまたベッドに戻り、目を瞑った。今度はフェアリーが何かしてくることもなく、
そのうちにドワーフも安らかな寝息を立て始めていた。
129 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:43:17 ID:r2Z0gl8P
翌朝。フェアリーはドワーフより少し遅れて目を覚ました。
「おう、おはよう。よく眠れたか?」
「あー、おはよ。おかげさまでね」
心なしか疲れた顔のフェアリー。体毛の寝癖を直すドワーフの脇をすり抜け、顔を洗いに行く。
「そうそう。あんた昨日夜中に起こしてきたじゃない?あれ、何だったの?」
洗面所からの言葉に、ドワーフはドキッとして手を止める。
「え!?あ〜、いや、ただ上に乗られてるんじゃ、よく眠れないからさ」
「へ〜え?」
とりあえずそう言い繕うが、洗面所から出てきたフェアリーは、意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「な、何だよ、その笑いは…」
「あたしはさ〜、てっきりイキそうになっちゃったから、慌てて起こしたんだと思ったんだけどな〜?」
「なっ!?あ、あんた、やっぱり起きてたのか!?」
フェアリーは一度、コホンと咳払いをする。
「こぉゆぅ声だとさぁ〜、寝起きみたいにきこえるでしょぉ?」
その声は、間違いなく夜中に聞いた声だった。
「あの寝ぼけた声まで、演技だったのかよ…!」
「あったりまえじゃん!大体、あ〜んな可愛い声聞かされて、起きないわけないでしょ。『あんっ!』とか、『んぅぅ!』とかさー」
「てめっ…!う、うるさいうるさーい!」
思い切り振り回された拳をさらりとかわし、フェアリーは天井付近まで飛び上がる。
「てめえ、卑怯だぞ!降りて来い!叩き潰してやるー!」
「そんなこと言われて、降りるバカいないでしょ?にしても、あんたってあ〜んなに可愛い声出せたんだね〜。フェルパーが惚れるのも
わかるな〜」
「うるさいっ!黙れっ!」
全身の毛を膨らませ、普段より二回りほど大きく見えるドワーフ。その姿を、フェアリーはニヤニヤしながら見つめている。
「にっひっひ!しかもさー、物足りないからってオナニーまで始めちゃうし、ほ〜んと可愛いよね、あんたって」
「くそー!言いたい放題言いやがってー!一発ぐらい殴らせろー!」
「……あ、でもさ」
急にフェアリーの表情が真面目になり、声の調子もそれまでとは違って真面目なものになる。
「あ、何だよ急に!?」
「一応ね、あれ、あたしなりのお礼のつもりだったんだけど、気に入らなかった?」
「き、気に入るわけないだろっ!?どういう神経してんだあんたはっ!?」
「んー、でも気持ちよかったでしょ?」
「……まぁ…。で、でも私にそのケはなーいっ!」
「そっかあ。あんたさ、あたしの話、何も言わないでじっと聞いてくれてさ、すごく嬉しかったんだよ」
「……お、お前なあ…」
そんなことを言われてしまうと、怒るに怒れなくなる。それを見ると、フェアリーはスッとドワーフの隣に舞い降りた。
「でも、気に入らなかったんなら、逆に悪いことしちゃったね」
「……いや、まあ…。その、つ、次からはちゃんと相手の意思を確認してくれ」
「いやー、実は最初の方はさ、あれは普通に寝ぼけて間違えちゃってさ。でも、あんまり気持ちよさそうだったから、ついね〜」
「間違えたって……誰と、何とだよ?」
そう聞かれると、フェアリーは一瞬焦ったような表情を浮かべた。
「え……んーと、クラッズ」
「え、クラッズ!?」
てっきり母親とでも言うかと思っていたドワーフは、あまりに意外な人物に目を丸くする。
130 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:43:59 ID:r2Z0gl8P
「何よ?そんなにおかしい?」
「えー、だって……あのクラッズだろ〜?」
「あんた知らないの?女の子が気持ちいいところって、男も結構気持ちいいもんよ?」
「へ、へぇ…」
「共通してる部分なんかだから、例えば耳とか、乳首とか、お尻とか」
「お、おしっ…!?」
「お?もしかして知らなかった?」
フェアリーの顔に、小悪魔じみた笑みが浮かぶ。嫌な気配を感じ、ドワーフは思わず後ずさった。
「せっかくだし〜、フェルパーにしてあげたら喜ぶと思うけど〜?」
「あ、あいつは関係ないだろっ!?な、何するつもりだよっ!?」
「いやね〜、この際だから、どれくらい気持ちいいか教えてあげようかなって思ってさ〜」
そう言って指をワキワキと動かすフェアリー。その瞬間、ドワーフは凄まじい速さで愛用の斧を掴み、部屋の隅に立て篭もった。
「……ちょっと…」
「ち、近づくな!本気で潰すぞ!」
確かに目が本気だった。恐らく捨て身も辞さない覚悟だろう。さすがに、そんな危険を冒してまですることではないので、
フェアリーは降参というように肩をすくめた。
「わかった、わかったってば。も〜、せっかく色々教えてあげようと思ったのに。フェルパーも喜ぶと思うんだけどなあ」
「いいんだよっ!あ、あんたに教えてもらうようなことじゃないっ!それに私はそのケはないっ!」
「気持ちよければ何でもいいと思うけどなー、あたしは。ま、意見が合わないならしょうがないね」
とりあえず危機は去ったようなので、ドワーフは斧を元の場所に戻した。
「そ、それより、クラッズはいいのか?もう気持ちも落ち着いただろ?」
「……ん〜、言われなくてもわかってるよ。起きてるかな、あいつ」
「行ってみればいいだろ?まだ無視されるようなら、戻って来い。私も一緒に行ってやるから」
「ん……これだから、つい甘えちゃったんだよねえ…」
「ん?何か言ったか?」
「ん〜ん、な〜にも〜」
二人は着替えを済ませると、揃って部屋を出た。だが、フェアリーはまだ少し浮かない顔をしている。
「大丈夫か?部屋の前まで、私も行ってやろうか?」
「あんたにそこまでされるほど、か弱い女じゃないよーだ。ま、な〜んとかなるでしょ」
少し空元気のように言うと、フェアリーはドワーフの顔を見つめた。
「な、何だよ」
「いや、悪かったね。色々面倒かけてさ」
「いいよ、別に。それに、原因の一端は私にあるんだし、そう気にするな」
「あんたのそういうとこ、あたし結構好きだよ」
「え?」
ドワーフが反応する暇を与えず、フェアリーはその頬に軽いキスをする。
「おおおおお、おいっ!!!!!」
「何よ、ただの挨拶のキスなんだからいいでしょー。あ、それとも口にした方がよかった?」
「誰がんなことっ!!!」
「はいはい。もう、案外純情わんこちゃんなんだから」
「……てめえ…!」
「っと、とにかく、ありがとね!おかげで気は楽になったからさっ!」
ドワーフの拳が飛ぶ直前、フェアリーは素早く飛び去った。
「ったくー!もう二度と来るなー!」
その背中に叫ぶドワーフ。すると、フェアリーも振り返る。
「あたしだって、そう何度も行く気はないよーだっ!続きはフェルパーにでもしてもらってねー!」
「てめーっ!」
「あっはは!それじゃ、またあとでねっ!」
楽しそうに笑いながら、廊下の先にある階段の上へ飛び去るフェアリー。ドワーフは顔をしかめつつも、その口元は微かに笑っていた。
131 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:45:02 ID:r2Z0gl8P
ともかく部屋に戻ろうとすると、フェアリーと逆の方向からクラッズが来るのが見えた。
「あれ?クラッズ?」
「あ、ドワーフ、おはようー」
クラッズはどこか不安そうな顔をしている。何となく、その理由は予想がついた。
「あのさ、フェアリー知らない?昨日さ、さすがに怒りすぎちゃったから、謝りに行こうと思ったんだけど……フェアリー、部屋に
いないんだよぉ。怒ってどっか行っちゃったのかなあ…?」
「フェアリーなら…」
言いかけて、ドワーフは口をつぐんだ。よくよく、フェアリーは幸せ者だなあと心の中で笑う。
「ん?どこにいるか知ってる?」
「ん、ああ、いや…。ただな、あいつも気にしてたみたいだから、もしかしたらお前の部屋にでも行ってるんじゃないか?」
「え〜、フェアリーが?」
「何だよ。あんた、自分の恋人のこと信じられないのか?」
「えっ!?い、いやそういうんじゃないんだけど……ていうか、よく知ってるからこそ信じられないというか…」
確かにその通りなので、ドワーフは心の中でうんうんと頷く。
「ま、一度戻ってみろよ。もしかしたら、入れ違いになったなんてことも、あるかもしれないしな」
「そうかなあ?……うん、わかった。一応戻ってみるね」
「それがいい。もしそうだとしたら、フェアリー無視されたと思って泣くぞ」
「あー、そっか!それじゃドワーフ、ありがとねー!」
慌てたように言うと、クラッズは階段を駆け上がって行った。あの様子なら、部屋に行くまでもなくフェアリーに会えるだろう。
「手のかかる奴等」
笑いながら言うと、ドワーフはふと真顔になった。さっき、部屋でフェアリーが言っていたことが、どうにも気になって仕方ない。
男も同じようにされると気持ちいいと言っていたが、実際のところはどうなのか。クラッズと間違えて、とは言っていたし、
それなりに説得力はある。
―――あいつ、妙にうまかったしなぁ。クラッズって、いつもあんな事されてるのかぁ。
クラッズが、フェアリーにされているところを想像する。なぜか自然に見えるのが不思議だった。次に、そのクラッズとフェアリーを、
フェルパーと自分に置き換えてみる。途端に、体毛がぶわっと逆立つ。
―――無理無理!いや、でも……今度やってみようかな……あー、いやでも変に思われたらどうしよ〜!
「ドワーフ、おはよう」
「うわぁ!!」
「うわぁ!?」
飛び上がって驚くドワーフと、そのドワーフに驚くフェルパー。二人とも尻尾をぼさぼさにしつつ、獣のような動きでサッと距離を取る。
「な、何だよいきなり!?」
「そりゃ俺の台詞だよ。なんでそんなにびっくりされなきゃいけないんだよ?」
「あ、いや……悪かったよ。ちょっと考え事してたからさ」
はぁ〜っと息を吐くドワーフ。それにあわせて、逆立った体毛がすうっと元に戻っていく。フェルパーの方は、まだ少し逆立っている。
ドワーフに近づこうとしたフェルパーが、ふと足を止めた。そして何やら、ふんふんと匂いを嗅ぎ始める。
「……お前、少しあの時期入り始めた?」
あの時期、とは発情期のことである。昨晩、中途半端に刺激されたせいで、体の方がうまく治まってくれなかったのだろう。
「いや、その……んーと、最近してないから…」
「たかが二日だろっ!?」
「いやっ!だからそのっ……も、もうちょっといっぱい……したい……かな…」
「やっぱ、時期入ったんじゃねえの?」
「違うっ!……と、思う」
苦しい言い訳をしつつ、ドワーフは心の中でフェアリーに思いつく限りの罵声を浴びせていた。
結局、フェルパーが納得いくような説明などする事はできず、彼はドワーフから少し距離をおいて行動するようになってしまった。
132 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:46:06 ID:r2Z0gl8P
それから数日。いつも通りに、地下道でドワーフとフェアリーの声が響き渡る。
「お前ー!ほんといい加減にしろー!」
「無駄だっての。あんたの動き、無駄が多すぎんのよ」
「やめろドワーフ」
「やめなってフェアリー」
仲裁する二人も、いつも通りに棒読みである。後衛の二人は、もはや微笑ましい光景としてそれを見ている。
「ったく〜!いつか刺し違えても殴ってやるからな〜!」
「その前に、あたしの矢があんたの脳天撃ち抜くからご心配なく」
周りから見れば本気の喧嘩に見えるものの、見慣れた者が見れば、二人ともじゃれあい程度なのはすぐにわかる。現に、二人の喧嘩は
毎回それ以上エスカレートすることはないし、ドワーフの攻撃も、普段の戦闘よりずっと無駄の多い動きである。
「フェアリー、その辺にしときなってば。ドワーフだって、そのうち本気で怒るよ?」
「うるさい……ん、まあ、それもそうかもね。あんたが言うなら、やめとく」
あれ以来、フェアリーは少し大人しくなっていた。おかげで、ドワーフとしては若干調子が狂ってしまうぐらいである。
ただ、それだけなら単に扱いやすくなったという程度だったのだが、同時にドワーフにとって、新たな脅威も生まれていた。
フェアリーがスッとドワーフに近寄り、その耳元に囁きかける。
「ところでさ〜、またあんたの部屋、行ってもいい?」
「な、なんでだよ?」
「だってさー、あんたってある意味、クラッズより責め甲斐あるんだもん。あの可愛い声とか、もう一回聞きたくてね〜」
「て、て、てめえ!ふざけるな!わ、私にそっちのケはないって何度言ったら…!」
「色んな責め方教えてあげようってんだから、むしろ感謝してもらいたいなー。あんただって、気持ちよかったでしょ?」
「そ、それとこれとは別問題だっ!いくら気持ちよくたって……その……お、女同士は嫌だよっ!」
「ふーん。あたしがちょっかいかけたあと、オナニーでイクのはいいのに?」
「………」
ドワーフの全身の毛がザワザワと逆立ち、斧を持つ手に力が入った。それを見逃さず、フェアリーは素早く飛び上がる。
「てめえー!今日という今日は叩き潰してやる!降りてこーい!」
「やだよ。本当に潰されそうだもん。ま、あたしもそう簡単には諦めないから、よろしく」
「何をですか?」
セレスティアが首を傾げ、純真な瞳でドワーフを見つめる。
「う……セレスティア、あんたは知らなくていいの」
「あのねー、この子この間…」
「わああぁぁーーー!!!フェアリー黙れー!」
「ドワーフさんとフェアリーさんの様子を見る限り、あまり触れてはいけない話題のようですね。そっとしておきましょう」
相変わらず、ノームは冷静な状況判断を下す。
「そうですか。まあ、喧嘩するほど仲がいいって言いますしね」
「そうそう。それぐらいあたし達仲いいから、もっと仲良くなるためにレズ…」
「うおおお!シャイン!!シャイン!!シャイン!!」
「うわっ!?ちょっ、痛い痛い!死ぬ!本気で死ぬからやめてー!」
「おいドワーフ!やめろ!それはマジでやばいって!」
「逃げてー!フェアリー逃げてー!」
「ヒール!ヒール!メタヒール!メタヒール!ああ、間に合わない!ノームさん手伝ってくださーいっ!」
「ドワーフさん、失礼します。サイレンド」

会えば憎まれ口を叩き合う関係。それでも、お互い本気で嫌っているわけではない。
喧嘩にしても、それはある種のじゃれあいのようなものである。
今回の一件で、以前より少し近づいたドワーフとフェアリー。ただ、その結果、二人の仲は良くなったのか悪くなったのか。
少なくともドワーフにとっては、頭痛の種が増えたことは間違いないようだった。
133 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/19(月) 23:50:05 ID:r2Z0gl8P
以上、投下終了。
とりあえずドワ子が書けたので満足。ドワはいい。

それではこの辺で。
134名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 18:14:19 ID:y++KgaUo
ふぅ…
さすが氏、百合とオナニーだなんて的確に俺の弱点を狙ってきやがるぜ、GJ!

> とりあえずドワ子が書けたので満足。ドワはいい。
激しく同意。
135名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 14:27:09 ID:GyCGK1Mw
GJ
す、すさまじいパーティだ。
一瞬ドワとフェアリーを男に脳内変換(阿部さんのせいで!!)して自爆した俺がいる……
136 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:12:34 ID:9tg4eLWw
気の向くまま指の向くまま書いてたら、80kbオーバーとか笑えない。

最近寒いので、ちょっと暑苦しい男でも。
気がつくと相性悪い同士をよく書いてたので、今回は相性のいいドワとクラッズで。
それでは、少し長めですが、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
137 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:13:34 ID:9tg4eLWw
ランツレートに、影で名物と呼ばれる生徒がいた。
女だてらに鎧を着こなし、小さな体で前線を張る。鋭い目つきは宝ではなく、常に敵へと向けられる。
身長よりも巨大な金槌。それを一振り携えて、誰より速く敵を狩る。
種族はクラッズ。学科は戦士。会えば誰もが振り返る。
そんな、ちょっとした名物だった。

この日も、彼女は精霊の鎚を背負い、寮へと歩いていた。その異様な光景に、何人もの生徒が振り返っている。が、彼女にとっては
至って普通の光景なので、それを気にかける事はない。むしろ、そうした好奇と驚きの視線は、彼女にとって心地良くすらあった。
寮に入ると、既に仲間は全員集まっていた。彼女に気付いたフェアリーが、早く来いと手招きする。
「ごめーん、ちょっと遅れちゃったかな?」
「いや、時間ぴったり」
「お前はいっつも時間に正確だよな。遅くも来ないが、早くも来ない」
そう言って笑うバハムーン。その彼を、フェアリーがちょっと嫌そうに見つめる。
「君なんか、今日は奇跡だよね。寝坊はするわ、時間忘れるわ、挙句に時計読み間違えたとか…」
「よし、わかった。俺が悪かった、やめてくれ」
その二人のやり取りを聞いて、ヒューマンが声を抑えて笑っている。
「そろそろ、本題に入りませんか。仲間も揃ったことですし」
「もう、ノーちゃんはせっかちだなー」
「せっかちなのではなく、あくまで状況に即した発言をしたつもりですが」
「まあ間違ってはいないけどねー。だけど、もうちょっと二人のコント聞いてても…」
「そこの女子二人、喧嘩しない。あと、僕とバハムーンのはコントじゃない」
フェアリーに言われて、ヒューマンとノームは口を閉じた。
「でも、ノームの言うことも、もっともだね。それじゃ、本題に入ろうか」
話とは、現在5人であるパーティの話である。以前仲間が脱退して以来、ずっと5人でやってきたのだが、この先もずっと5人というのは
少し心許ない。そのため新しい仲間を入れたいということで、どういう仲間を入れるかという会議だった。
個人的な要望を述べるヒューマンやバハムーンを無視し、フェアリーは主にクラッズに意見を求める。サブリーダーである彼女は、
ある意味でリーダーである彼よりも尊敬されていた。
その結果、フェアリーが前線にいる現状、回復を司祭であるヒューマンに頼りきっていることなどから、僧侶魔法を使えて、なおかつ
前線でも戦える人物という話にまとまった。フェアリーは既に何人か目星をつけており、条件的にはヒューマンの僧侶かドワーフの
君主がいるということだったが、バハムーンの強硬な反対のため、ドワーフに声をかけることに決まった。
「でも、後輩なんだっけ?」
「だけど、戦士学科、僧侶学科、君主学科とやってるから、実力はあると思うよ」
「まあ、トンボ君が目をつけたんなら、間違いはないかな」
「その呼び方、やめてくれないんだね……んじゃ、とりあえず明日辺り声かけてみるよ。そういうことで、今日はここで解散かな」
「はーい。それじゃ、みんなお疲れ様ー」
「おっつかれー」
会議が終わり、それぞれ思い思いの場所へと向かう。クラッズは仲間と別れ、少し弾んだ足取りで寮の階段を駆け上がっていく。
途中で自分の部屋に寄り、装備品を放り込む。身一つになると、その足取りはさらに軽くなり、目的の部屋まであっという間に辿り着く。
「おーい、エルフくーん。私ー」
そう呼びかけると、部屋のドアが静かに開いた。
「やあ、今日は遅かったね」
「ごめんねー。パーティの話し合いがあったからさ」
「なるほど。それじゃ、しょうがないか。とりあえず、入るかい?」
「うん!」
嬉しそうに部屋の中へ入るクラッズ。地下道に入れば戦士である彼女も、学園に戻ればただの少女である。パーティこそ違うものの、
エルフとクラッズはれっきとした恋人同士であった。
他愛のない話をし、一緒に食事をし、夜になればその腕に抱かれる。彼と一緒にいるときが、クラッズにとって一番幸せな時間だった。
ずっとずっと、こんな生活が続けばいいと、クラッズはいつも思っていた。そして実際続くものだと、彼女は信じていた。
138 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:14:28 ID:9tg4eLWw
翌日、クラッズは他の仲間と共に寮のロビーにいた。例によってバハムーンは寝坊しているらしく、まだ来ていない。
「んで、トカゲ君はともかくとして、新入り君はちゃんと来るかな?」
「彼には少し遅い時間を伝えておいた。一応、こっちも迎える者の礼儀として、早めに来ておいてやろうと思ってね」
「……バハムー君には、意味なかったみたいだけど…」
ヒューマンが呟くと、ノームも静かに頷いた。と、奥の方から何やらドタドタと走る音が聞こえてきた。あの重量級の足音は、
彼以外にありえない。
「やっときたか。ギリッギリだよ、まったく」
「……あれ?足音二つない?」
言われてみると、確かに二つの足音が聞こえている。その音はだんだんと大きくなり、やがてロビーに二つの人影が飛び込んできた。
「悪りっ!寝坊した!」
「すいません!遅れました!」
一つはバハムーンだが、もう一つはドワーフだ。彼が新入りの仲間なのは、疑いようもない。
「いやー、うっかり二度寝しちまってさー、ははは」
「5分前には来るつもりでしたが、少し遅れました!申し訳ないッス!」
一行は二人の違いに、ただ呆れるしかなかった。ドワーフの方は予定より早く来ており、責められるいわれはまったくない。
が、バハムーンは責められるいわれしかない。
「いや、3分前でも十分だよ。そう硬くならずに」
「そうそう。遅れなければいいんだって。遅れなければ」
「あなたが新入りの方ですね。歓迎します」
「よろしくね、新入り君!」
バハムーンを完全に無視し、みんなそれぞれドワーフに挨拶する。
「あの……俺、無視…?」
「これからお世話になります!俺、戦士学科、僧侶学科と習って、今は君主学科を学んでいます!皆さん、よろしくお願いします!」
顔に似合わず体育会系らしいドワーフは、自己紹介を終えるとビシッと頭を下げた。面白い人だなあと、クラッズは心の中で思った。
和気藹々と話す5人を、バハムーンが悲しそうな顔で見つめる。と、ドワーフはクルっと振り返り、バハムーンに頭を下げた。
「バハムーンさんも、よろしくお願いします!」
「お……おお…!お前、いい奴だな!ほんといい奴だな!うんうん、頑張ろうな!」
ドワーフの手を握り、ぶんぶんと振るバハムーン。かなりの身長差があるため、その度にドワーフの体が揺れている。
「んじゃ、挨拶も済んだところで、軽くポストからラーク辺り抜けてみようか。後輩君、行けるかい?」
「あ、行ったことはないッスけど、頑張ります!先輩方、ご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いします!」
最後にもう一度頭を下げるドワーフ。見た目も性格も暑苦しい奴だというのが、全員の印象だった。
ともかくも、実力が無ければ話にならない。まずはポスト地下道で戦うが、ドワーフは問題なく戦えている。
「ねえ、モフモフ君。その武器、何?」
「モフモフ…?あ、えっと、ドリルブレイドッス」
「なっつかしいの使ってるね。アロンダイトとか、そういうのは使わないの?」
「あー、俺、まだ真・二刀龍使えないんで、両手剣はダメなんスよ」
「盾、そんなに必要?」
「君主ッスから」
クラッズはあまり君主という学科に対する知識が無く、その言葉に首を捻った。すると、後ろからヒューマンが囁きかける。
「君主はね、戦うだけじゃなくって庇うのも仕事の一つなんだよー。だから、盾は重要なんだと思う」
「でも……今、必要ないよね?」
「そのうち助かるかもしれないよ〜?」
139 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:15:24 ID:9tg4eLWw
とはいえ、群れで現れた敵すら一瞬で殲滅してしまうこのパーティは、庇う必要性などありはしない。ラーク地下道に入っても、それは
変わらなかった。そもそも、防御が必要なときにはノームが魔法壁を張ってしまうため、ドワーフが庇うような場面はまったくない。
それでも、ドワーフは盾を手放さなかった。どんなに勧められようと、それだけは一貫して固辞した。
クラッズから見ると、最初は単に頭の固い奴という印象だった。しかし、よくよく考えてみれば、自分だって似たようなものである。
盗賊系学科に進むという、ありふれた、なおかつ最も妥当だと思われる選択肢を放棄し、戦士として戦い続け、いくら他の学科を
勧められようと決して変えはしなかった。それに気付くと、クラッズは無理に両手武器を薦めることをやめた。
ドワーフはなかなか筋がよく、ラークですら問題なく戦えていた。なので一行は予定を変更し、いつものハイントへ行く事に決めた。
意気込むドワーフだったが、さすがに現実はそうそう甘くない。敵はそれまでとは桁違いに強く、ドワーフの攻撃はなかなか当たらない。
おまけに、明らかに見て弱そうだとわかるため、ドワーフは集中的に狙われた。それでも、持ち前の体力と重装備に物を言わせ、何とか
ついて行くことができた。仲間よりも自分の身を守るために、彼の盾は大活躍だった。
マップナンバー61番を一回りすると、一行はようやく学園へと戻った。ドワーフは文字通り精も根も尽き果てたという状態で、
見ていて心配になるぐらい疲れている。
「モフモフ君、大丈夫?」
「だ……大丈夫……ッス…」
「正直、ついて来られると思ってなかった。よく頑張ったね」
フェアリーの言葉に、ドワーフは疲れ切った顔に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「それじゃ、これからは毎日あそこに通って、力つけないとね!」
クラッズの言葉に、ドワーフの笑顔は凍りついた。

それから一ヶ月ほど、一行はほぼ毎日ハイントに通った。そのおかげでドワーフはめきめきと力をつけ、また装備も見る間に
良くなっていった。今ではバハムーンやクラッズよりも硬い重装備を身に纏い、ようやく覚えた真・二刀龍のおかげで精霊の剣も
使えるようになった。そのため防御だけではなく、今では戦力としても既に一級品である。
そんなある日。例の如くハイントから戻ると、クラッズにドワーフが話しかけた。
「クラッズさん、今日もお疲れ様っした!」
「うん、お疲れ様ー。モフモフ君、だいぶ強くなったよねー。そろそろ、ハイントも卒業かな?」
「先輩方のおかげッス!ありがとうございました!」
「またまたー、うまいんだから」
「いえ、本心ッスよ。ほんとに、先輩方には感謝してます!」
一度頭を下げてから、ドワーフはふと真面目な顔になった。
「あの……クラッズさん」
「ん?どうしたの?」
「その〜、いつでもいいんスけど、少し時間取れないッスか?」
その言葉に、クラッズは首を傾げた。
「取れなくもないけど、どうしたの?」
「いえ、ちょっと話したいことがあるんで…」
「ん〜、わかった。んじゃ、夕飯食べた後なら空いてるから、それでいい?」
「すみません、お手数かけます!じゃ、夕飯の後、寮の屋上でいいッスか?」
「いいよー。それじゃ、またあとでね」
クラッズはその足で学食に向かい、好奇の眼差しを全身に受けつつ食事を済ませる。いつもより少し早めに夕飯を食べ終えると、今度は
一直線に寮の屋上を目指す。
140 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:16:03 ID:9tg4eLWw
屋上についてみると、既にドワーフは来ていた。手すりに寄りかかり、遠くの景色を見るともなしに眺めている。
「早いね、待たせちゃったかな?」
「え!?あ、いや、俺が早く来すぎただけなんで、全然大丈夫ッス!」
声をかけると、ドワーフは慌てて振り返った。クラッズはその隣に並び、同じように手すりに寄りかかる。
「それで、話って何?」
「あ、はい。えーっと……その…」
言葉がなかなか出ないらしく、ドワーフの尻尾はもどかしげに振られている。痺れを切らしたクラッズが口を開こうとした瞬間。
「あの、クラッズさんっ!!!」
「は、はいっ!?」
突然の大声に、クラッズはビクリと身を震わせた。
「その、いきなりで失礼なんスけど……よかったら、俺と付き合ってもらえないでしょうか!?」
「え…!?あ、え〜〜〜っとね…」
さっきの大声と同じような不意打ちに、クラッズは一瞬言葉に詰まる。だが、すぐに言うべき言葉を探し出す。
「悪いけど、それは無理なんだ」
「……どうしてもッスか?」
「うん。私、このパーティじゃないけど、エルフと付き合ってるからさ。だから、君の期待には添えられないよ」
「エルフかぁ…」
相手が悪すぎるというように、ドワーフはがっくりと肩を落とした。さすがに気の毒になったものの、こういう時にかける言葉はないと
いうことを、クラッズはよく知っていた。というのも、クラッズに交際を申し込んできた相手は、もう両手に余る数だったからだ。
エルフと付き合うまでにも数人。それ以降も十数人。詰まるところ、ドワーフもそういった者の一人でしかない。
ドワーフは不意に顔を上げた。その顔は、意外にすっきりしている。
「わかりました。無理な事言って、申し訳なかったッス!」
「え?ああ、いや、そんな……こっちこそ、先に言っておかないでごめんね」
「いえ、聞いておかなかった俺が悪かったッス!でも、これですっぱり諦め……られないと思いますけど!クラッズさん、可愛いし!」
「……それは、どうも」
妙なところでも正直だなあと、クラッズは心の中で笑った。
「でも、すっきりしました!」
結局、ドワーフはその後も至って普通に振舞い続けた。パーティを脱退するわけでもなく、クラッズに対して根に持つわけでもなく、
ただ普通の生活に戻っただけだった。この一件以来、クラッズのドワーフに対する評価は、ちょっとだけ変わっていた。
141 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:17:01 ID:9tg4eLWw
それからさらに時が経ち、いよいよ一行は新しい場所を開拓してみようという話になった。既にハイント程度では役不足で、ドワーフも
十分に強くなっている。そんなわけで、一行はトハス地下迷宮を目指すことにした。
「トカゲ君、ご先祖様相手になるらしいけど、大丈夫?」
「大丈夫、俺の方が強い」
「いや、そういう意味じゃなくって、彼女は一応気を使ったんじゃないのか?」
「え?そうなのか?」
「……力はどうだか知らないけど、頭は先祖の方が強いかもね」
「おい、それはどういう意味だ!?」
いつも通りに、フェアリーとバハムーンがコントのような掛け合いを繰り広げ、後ろでヒューマンが笑う。
「聞くところによると、ここは全地下迷宮の中でも、1・2を争うほどの強さだそうです。少し、気を引き締めた方がいいでしょう」
「さすがに少し怖いッスね。なんで、今日は装備多めッス」
そう言うドワーフの背中には、いつも使う退魔の盾の他に、もう一つ同じものが括りつけられている。ホーリークロスにホーリーガード、
それにホーリーヘルムまで被ってまだ防具を強化するのかと、クラッズは内心呆れ返った。
「大丈夫だって!ノムちゃんの魔法壁もあるし、私達だって弱くないしね!」
実際、いざ戦ってみると、思ったほどの苦戦はしなかった。ドラッチやサウンドワーム程度では大した被害も受けず、ドラコンや水竜の
幼虫が群れても極端に強いとは感じられなかった。最初は念のため、ということで入り口付近で戦うことになったが、徐々に奥の方へと
進んでいく一行。しかし、今の一行にあるものは、自信ではなく、過信だった。
歩いていたドワーフが、不意に足を止めた。それを見て、他の仲間も足を止める。
「ん?どうしたの?」
「いや……何か、変な音聞こえないッスか?」
言われてみると、何か小さな音がする。
「この音……なんだ?」
「油断するな!みんな、戦闘態勢を!」
フェアリーに言われ、身構える一行。だが、音の正体はわからず、聞こえてくる方向もわからない。
音は急速に大きくなり、どうやらそれは空気を切り裂く音らしいとわかった。
「くそ、何なんだ!?どこからだ!?」
「相手の位置がわからないことには、対処のしようもありません」
その瞬間、ドワーフが叫んだ。
「みんな、逃げろぉ!!!!上、上だっ!!!!」
「え!?」
クラッズが振り返った瞬間、視界いっぱいに真っ黒い爪が広がった。
「うああぁぁーーーっ!!!」
顔が焼けるように熱くなり、何かが次々に顔を伝って落ちていくのがわかる。飛びそうな意識を何とか繋ぎ止め、ふらつく足を押さえる。
口の中に風を感じる。前歯が異常なぐらつき方をしている。鼻が折れたのもわかる。だが、クラッズはそれらを意識の外に追いやった。
激痛を堪えて何とか目を開けると、足元にノームが転がっていた。その体は無残に壊れ、目からは既に光が失せている。
「ノムちゃん……ヒュムちゃんは!?」
ノームのすぐ横に、ヒューマンは倒れている。動く気配は無く、体から異常な量の血が流れ出している。到底、生きてはいないだろう。
襲撃者はダークドラゴンだった。よりにもよって、不意打ちで急降下を食らってしまったのだ。これでは、勝てる望みは薄い。
「くっ…!大丈夫ッスか!?」
「くそぉ!油断した!」
盾で身を守ったドワーフと、誰よりも早く反応したフェアリーは無事なようだった。
「二人とも、大丈夫!?」
「俺は無事で……って、クラッズさん!?その顔!!」
「顔なんか今はどうでもいいよ!今はここをどうにかするのが先!!」
衝撃は凄まじかったが、自分もドワーフも耐えているのだ。恐らくは、バハムーンも耐えているだろう。
142 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:18:09 ID:9tg4eLWw
「トカゲ君!煙玉持ってたよね!?すぐに使って!」
ダークドラゴンから目を話さず、クラッズは叫んだ。しかし、返事はない。
「トカゲ君!聞いてな…!」
振り返ったクラッズの口は、それ以上動かなかった。すぐ近くに、バハムーンの下半身が転がっている。だが、そこから先はなかった。
「うっ…!」
あまりに無残な光景に、クラッズは思わず顔を背けた。
「ダメだ、さすがに状況がやばすぎる!とにかくここは…!」
何か言おうとしたフェアリーの後ろに、巨大な影が現れた。
「トンボ君!逃げてぇ!!」
「……え?」
振り返ろうとした瞬間、龍番長はそれこそ虫でも殺すかのように、その首をもぎ取った。体が血を噴いて地面に落ち、投げ捨てられた首が
コロコロとクラッズの足元に転がった。
「く……くっそぉ…!」
クラッズの顔が怒りに歪む。だが、それなりに冷静な判断までは失っていない。
「……モフモフ君、聞こえるよね!?私が引き付けるから、今すぐみんなを連れて逃げて!」
だが、ドワーフはクラッズに駆け寄ると、ぴったりと背中をくっつけた。
「聞いてないの!?これは先輩としての命令だよ!」
「いや……できれば、そうしたかったんスけどね…!」
言いながら、ドワーフはそっと体をずらす。どうやら後ろを見ろということらしい。お互い背中を合わせながら、そっと向きを変えてみる。
退路には、クロミミズが二匹。獲物が逃げてくるのを期待するかのように、待ち構えていた。
「モフモフ君、バックドアル使える?」
「覚えておけばよかったって、後悔してるッス」
「……退路もなし、か…」
「敵は四体、こっちは二人。きついッスね」
「地獄って、こういうこと言うのかな」
「これと比べたら、死後の地獄なんか天国じゃないッスかね」
乾いた笑いを浮かべると、ドワーフはフッと息をついた。
「……クラッズさん、申し訳ないッスけど、回復魔法を詠唱する暇はないッス。隙を見せたら、殺されますから」
「うん、わかるよ」
「それから、生き残るには、相手を倒すしかないッスね。でも、二人で掛かっても、たぶん勝てないッス」
「わかりたくないけど、わかる」
「ですから、俺、悔しいッスけど、クラッズさんに任せます」
「わか……え!?」
「俺、クラッズさんみたいには戦えないッス。でも、クラッズさんより、ずっとタフッスから」
言いながら、ドワーフは精霊の剣を鞘に戻し、退魔の盾を両手に構えた。
「クラッズさん、俺、絶対に守ります。俺ができるのは、これしかないッスから。俺が死ぬまで、クラッズさんを守りきります」
「……ずいぶん大口叩くね」
言いながら、クラッズは血が目に入らないように、バンダナを眉の辺りに巻き直した。
「でも、今はその口車に乗ってみたいかな」
「恐縮ッス」
「モフモフ君、私の背中、預けたよ!!」
絶望的な戦いが始まった。クラッズが武器となり、敵と戦う。襲い掛かる敵に対しては、ドワーフが盾となり、クラッズの身を守る。
鍛え抜かれた精霊の鎚は、確実に敵を殴り倒していく。しかし、長引けばドワーフの身が持たない。ドワーフが倒れれば、クラッズも
生きては帰れない。それでもクラッズは、相手を一匹ずつ仕留めていく。
143 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:19:13 ID:9tg4eLWw
やがて、とうとうドワーフが倒れた。龍番長の体当たりで吹っ飛ばされたのだ。が、残る敵はそれだけであり、それは最大の好機でも
あった。地面に近い今なら、龍番長を仕留めるのは容易い。
龍番長は危険を感じ、再び空中に飛び立とうとした。が、クラッズはその種族らしい速さで接近し、思い切り鎚を振り回した。
「でえぇーーーい!!!」
顔を横殴りにした瞬間、ゴキッと確かな手応えが伝わる。龍番長は急速に力を失い、地面に落下した。それを見届けると、クラッズは
ドワーフに駆け寄った。
「モフモフ君、生きてる!?返事して!」
「う……クラッズさん……敵は…?」
「大丈夫、全部倒した!しっかりして!」
「さすが……ッスね…。それじゃ、俺も……最後に、一仕事ッスね…」
ドワーフはフラフラと立ち上がると、いきなり大量の血を吐いた。見れば、鎧が爪の形に凹んでいる。それが刺さっているのだろう。
「それよりも、自分の傷治した方が…」
「いえ……みんなを生き返らせれば、あとは何とかなりますから…」
クラッズが死体を集め、ドワーフがリバイブルを唱える。幸い、誰もロストすることなく、全員を蘇生することができた。
「う……あれ、私…?」
「驚いたな……二人とも、無事だったのかい…?」
ホッとクラッズは息をついた。それと同時に、ドワーフががっくりと膝をつく。
「モフモフ君!だいじょ……ぶ……あれ…?」
駆け寄ろうとしたクラッズの視界が、ぐにゃりと歪んだ。そのままクラッズは意識を失い、倒れた。
その体を、膝をついたドワーフがしっかりと支える。だが、クラッズの体を横たえた直後、ドワーフ自身も意識を失い、倒れてしまった。

目を開けると、木造の天井が見えた。クラッズは慎重に体を起こす。
「あれ……ここ、どこ…?」
「よかった、気がついたかい?」
側では、フェアリーとバハムーンが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「ここはポストハスの宿屋。君とドワーフのおかげで、何とか生きて戻れたよ」
「そう……モフモフ君は?無事?」
「うん。相当な重傷だったけど、ヒューマンがついてるしね。ただ、まだ目は覚めてないみたい」
「そう。でも、よかった」
無意識のうちに顔に手をやり、クラッズはそこが包帯でぐるぐる巻きにされているのに気付いた。魔法で治したのなら、これは
必要ないはずだ。
「……どうして、包帯が?」
その質問に、フェアリーは答えられなかった。それを見ると、クラッズにも薄々予想はついた。
「……ねえ、鏡、ある?」
「クラッズ…!」
「大丈夫だよ。だって、いつかは見る事になるでしょ?それが早いか遅いかの違いだけだもん」
「……バハムーン、そこの鏡取ってくれ」
「おい、フェアリー…!」
さすがにバハムーンはうろたえた。だが、フェアリーは厳しい目でバハムーンを睨みつける。
「クラッズがどれだけの勇気を振り絞ったか、君にわかるか?それに、君も男だろ。女の子に恥かかすもんじゃない」
「う……わ、わかったよ。けど、知らねえぞ俺は…」
鏡を受け取ると、クラッズは自分で包帯を解いた。包帯がすべて落ちると一度目を瞑り、深呼吸してから鏡を覗いた。
凄まじい傷跡だった。顔全体の左から右にかけて3本の線が走り、傷跡が醜く隆起している。奇跡的に目を避けて通っているため、
日常生活に支障はないが、およそ女性としては致命的な傷だった。
「……ひどいね、これ」
「もう少し早く治せれば、傷跡なんか残さないで済んだ。ごめん、僕達のせいで…」
「いいよ、気にしないで。戦士に必要なのは、顔じゃないでしょ?」
144 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:20:10 ID:9tg4eLWw
明るく言いながら、クラッズは笑った。
「そうかい。とりあえず、今日はゆっくり休んでくれ。僕達も、そうするつもりだし」
「わかった。それじゃ、また明日ね」
部屋を出ると、フェアリーとバハムーンは大きなため息をついた。
「あいつ、思ったより気にしなくてよかったな」
「……なるほど。やっぱり君は鈍いな」
「え?」
フェアリーはもう一度大きなため息をつくと、悲しそうに首を振った。
「クラッズ、言ってただろ?『戦士に必要なのは顔じゃない』って」
「ん、ああ。言ってたな」
「……あのな。確かにその通りなんだよ。『戦士に』必要なのは、顔じゃない…。でもさ、女の子としてはどうなんだよ」
「ん〜……顔、大切だよな」
「つまりな、もうあいつ『女の子としては絶望的だな』って、自分でそう言ってたんだよ。まだまだ、これからが楽しい時期なのにさ、
それなのに、あんなのって……あんまり、可哀想じゃないか…」
フェアリーの目に、涙が滲む。パーティとしての付き合いは長いが、フェアリーが涙を見せたのはこれが初めてだった。
「っと、みっともないところ見せたな。まして君なんかに」
「………」
「それでもあいつ、強くあろうとしてるんだ。仲間である僕達が、支えてやらないとな」
「そう……だな。俺達も、頑張るか」
二人はぎこちない笑顔を交わすと、お互いに拳をぶつけあった。

その翌日、ドワーフも無事目を覚ましたことで、一行は学園に戻った。クラッズは一人部屋に戻り、ボーっとベッドに寝転がっていた。
と、ドアがノックされる。クラッズは気だるそうに視線を動かし、ドアを見つめる。
「誰?」
「僕だよ、開けてくれるかい?」
「ああ、エルフ君!」
ドアに向かい、手を伸ばす。だが、開ける直前で躊躇い、顔に軽く包帯を巻きつけた。その状態でドアを開けると、エルフは怪訝そうな
顔をした。
「……大丈夫かい?」
「ん、まあね」
「全滅しそうになったって聞いて、心配になってね…。で、その包帯……は?」
どう答えるべきか迷い、クラッズは顔を伏せたまま、しばらく口を開かなかった。が、やがて無表情にエルフを見上げる。
「……見たい?」
「え?……あ……ああ、そうだね…」
クラッズはそっと、包帯を外していく。とうとう包帯がすべて解かれると、エルフの表情は変わった。
「……クラッズ…!」
クラッズも鈍くはない。それが何を意味するのかすぐに悟った。同時に、微かな失望を覚えた。
「……ひどいでしょ?」
エルフは何も答えられなかった。言葉もなく、ただその変わり果てた顔を見つめるしかなかった。
145 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:21:00 ID:9tg4eLWw
それから、また元の生活が始まった。しかし、何もかもが元通りというわけにはいかなかった。
あれ以来、エルフとクラッズは明らかに距離を置くようになっていた。そしてクラッズも、以前よりずっと口数が減っていた。
表面的には、いつものように振舞っている。しかし、時折どこか遠くを見つめ、物憂げなため息をつくことが多くなった。そのせいで
余計に周りが話しかけ辛くなり、そのため余計に口数が減るという悪循環である。
そんなある日、探索から戻ったクラッズが学食に向かうと、後ろからエルフが声をかけてきた。
「エルフ君……どうしたの?」
「少し、話したいことがあって…。食事が終わったら、寮の屋上にでも来てくれないかい?」
「……わかった」
ゆっくりと食事を終え、部屋に荷物を置いてから屋上へ向かおうとすると、廊下でドワーフに出会った。
「あ、クラッズさん!お疲れ様ッス!」
「ああ、モフモフ君。相変わらず元気そうだね」
ドワーフだけは、以前とまったく態度が変わらない。いつも変わらぬ暑苦しさである。
「……クラッズさんは、元気なさそうッスね。大丈夫ッスか?」
「うん……まあね。気にされるほどじゃないよ」
「でも、そんな顔してると、可愛い顔が台無しッスよ」
その言葉に、クラッズの顔が険しくなる。
「お世辞なんていらないよ」
「お世辞だなんて……俺、そんなつもりじゃ…」
「そう?それは悪かったね」
棘のある口調で言うと、クラッズは皮肉っぽい笑顔を浮かべた。
「何しろ、そんなこと言われたの初めてだからさ」
ドワーフはすっかり困った顔で、必死に言葉を探した。だが、クラッズは既に歩き出している。
「……クラッズさん!」
後ろから声をかけられ、クラッズは立ち止まった。
「俺……大して力になれないかも知れないッスけど、何かあったら言ってください!俺、できる限り力になります!」
クラッズは何も答えず、再び歩き出した。その後ろ姿を、ドワーフはずっと見送っていた。
屋上に着くと、エルフが社交辞令的な笑顔で迎えた。クラッズも同じように、よそ行きの笑顔で応える。
「来てくれたか」
「呼ばれたからね」
「それもそうだね。それで、話だけど…」
クラッズは何も言わず、相手の言葉を待った。
「……いや、はっきり言うしかないな。僕にとって、君は今まで夜空を彩る星のような輝きを放つ存在だった。でも今は、もう君に
その輝きを感じることはできないんだ。だから……今まで付き合っては来たけれど、終わりにして欲しい」
しばらく、二人とも口を開かなかった。が、不意にクラッズが明るい声を出した。
「……やっぱり、そうかー。ま、何となくわかってたよ」
「クラッズ…?」
「そりゃ、こんな顔だもん。こんなになってまで、君と付き合っていけるなんて思ってないよ。強制する権利だってあるわけじゃないし。
エルフ君が気にする必要はないよ」
「そう……なのかい?」
「そうだってば。ま、エルフ君ならすぐに次の相手も見つかるだろうし、私のことなんかさっさと忘れちゃってよ。私は戦士だし、
恋より戦いの方があってるもん。それでも、短い間でも恋人同士になれたのは、嬉しかったよ」
「………」
「じゃ、そういうことで。幸せになってねー」
エルフは声をかけようとしたが、クラッズはさっさと部屋に帰ってしまった。エルフはなす術も無く、ただその後ろ姿を見送っていた。
146 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:21:56 ID:9tg4eLWw
その日以来、エルフとクラッズの交流は完全に途絶えた。それ以来クラッズも、何か物思いに沈むことが多くなった。そのおかげで、
パーティの仲間であっても、非常に声がかけ辛い雰囲気になってしまった。
彼女にとって、周りからの好奇の視線は、今では苦痛でしかなかった。それ故、その心と同じように、彼女は自室に篭る事が多くなった。
そんなある日、一行は久しぶりに探索を休み、それぞれ思い思いの休日を過ごしていた。たまには外に出ようとクラッズがぶらぶらして
いると、不意にドワーフが姿を見せた。
「あれ、クラッズさん。暇そうッスね」
「休みったって、する事ないしね」
そう答えるクラッズの顔には、物憂げな表情しかなかった。いつも明るい笑顔を振りまいていた彼女からすれば、考えられないことだ。
「クラッズさん。その……元気、出してください」
「……何の話よ?」
少し不愉快そうに、クラッズは聞き返した。
「あの……彼氏さんと、別れたんスよね?」
「まあねえ〜。こんな顔だし、しょうがないよね〜」
そう言ってクラッズは笑う。だが、ドワーフは真面目な顔のままだ。
「そんなこと言わないでください。クラッズさん、今でも十分可愛いッスよ」
途端に、クラッズの眉が吊り上がった。
「前にも言ったよね。見え透いたお世辞なんていらないんだけど」
「クラッズさん…!」
「君だって、本心では醜い顔だって思ってるんでしょ?当たり前だよね、私だってそう思うんだから。なのに、そんな見え透いたお世辞
なんか言って、馬鹿らしいにも程があるよ」
堰を切ったように、クラッズの口から次々に言葉があふれ出る。
「そんなすぐばれるような、馬鹿げた嘘なんかつかれて、私が喜ぶとでも…!」
「クラッズさん、申し訳ないッス!」
パンッと高い音が響き、クラッズの言葉が止まった。クラッズは頬を押さえ、驚いた顔でドワーフを見つめる。
「な…!いきなり何す…!?」
「どうしてそんな事言うんスか!?」
ドワーフが叫んだ。その剣幕に、クラッズは圧倒されてしまう。
「俺がいつ嘘なんかついたんスか!?いつお世辞なんか言ったんスか!?俺は……俺は、いつも本心から言ってたんスよ!?それが
そんな風に取られてたなんて、心外ッスよ!大体何スか、最近のクラッズさん!人の言う事にいちいち突っかかって、かと思ったら
ぼんやりして、全然クラッズさんらしくないッスよ!俺、言ったじゃないッスか!何かあったら言って下さいって!それも上っ面だけの
言葉だと思ってたんスか!?」
そこまで一気にまくし立てると、ドワーフは荒い息をついた。
「俺……悔しいッスよ。確かに、俺はクラッズさんより年下だし、経験だって浅いッスよ。でも、それでもクラッズさんの力に
なりたいって…!それとも、やっぱり俺が頼りなさすぎるんスか?どうなんスか?」
クラッズはしばらく呆然としていたが、やがて重い口を開いた。
「……ごめん…」
「謝ってくれなくていいッス。どうなんスか?結局、俺はクラッズさんの力にはなれないんスか?」
「いや、違う……違うんだよ…。ただ……これは私の問題だから…。誰かに頼るなんて、できないんだよ…」
「……クラッズさん…」
今までとは打って変わって、ドワーフは静かな声で言った。
147 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:22:37 ID:9tg4eLWw
「クラッズさんが強いのは、俺だってよく知ってますよ。でも、強がりすぎじゃないッスか?そんな怪我して、消えない痕がついて、
しかもそれで捨てられたんじゃ、誰だって凹みますよ。俺、そんなクラッズさん見てるの、辛いッスよ」
「………」
「クラッズさん。俺に、何かできることあったら言って下さい。何もできないかもしれないッスけど、できる限りのことはしますから」
クラッズはしばらくうつむいていたが、不意にドワーフの胸に顔を埋めた。
「え……クラッズさん…!?」
「……できることは、するんでしょ…?」
さすがにドワーフは慌てたが、クラッズは低い声で言った。
「先輩として、命令。しばらく、このままでいなさい」
その肩は、小刻みに震えていた。ドワーフは何も答えられなかった。
「嫌だなんて……言わせないから…」
クラッズはそのまま、声を押し殺して泣き始めた。ドワーフはその肩を抱いてやることもできず、ただただ立ち尽くした。
本当は、別れたくなんてなかった。こんな顔になっても、それでもいいと言って欲しかった。それは一つとして言葉にならず、すべて
涙となってドワーフの胸にこぼれて消えた。
「……っく…!……うぅ〜…!」
押し殺した声で泣くクラッズ。黙ってその涙を受けるドワーフ。二人は人目も憚らず、しばらくそうしていた。
やがて、泣くだけ泣いたクラッズが顔を上げた。その目は真っ赤だが、もう涙はほとんど出ていない。
「ぐす……ごめん、君の服びしょびしょ」
「いえ、いいッスよ。これぐらい、気にしません」
最後に涙を拭うと、クラッズはドワーフから離れた。
「……ねえ、モフモフ君」
「あ、何スか?」
「もう少し、私に付き合ってくれる?」
「ええ、いいッスよ」
すると、クラッズは今までとは打って変わって、いきなり怒ったような顔になった。
「よし!じゃあ部屋行くよ、部屋!」
強引に腕を掴まれ、引っ張られていくドワーフ。
「え、部屋!?ちょっ……何するつもりッスか!?」
「飲むよっ!酒っ!君だって飲めるでしょっ!?」
「いや、それはその……てか、酒はちょっとまずいんじゃ…!?」
「いいのっ!自棄酒ぐらい飲まなきゃ、やってられないってのよっ!ほら、さっさと来るっ!」
部屋に入ると、クラッズは大量の想星恋慕を取り出した。どうやら探索で手に入れた物を、こっそり保管していたらしい。
「これ、滅茶苦茶甘いとか聞いたんスけど…」
「あ〜、そりゃもう甘いよ。うんざりするぐらい甘いよ。名前が気に入らないけど、味は好きなんだよね」
そう言いながら、クラッズはドワーフと自分の前に一つずつ瓶を置く。
「……一瓶単位…?」
「それじゃ、かんぱーーーい!!!」
自棄気味に叫ぶと、クラッズは思い切り瓶を打ちつけた。
148 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:23:15 ID:9tg4eLWw
それからのペースは凄まじかった。二人の前に、瞬く間に空き瓶が積み上げられていく。時計の長針が半周するまでに、既に空き瓶は
10本を超えている。しかも、ドワーフもそれなりに強い方ではあるのだが、そのドワーフを抜く勢いでクラッズは飲み続けている。
「クラッズさん……さすがに、ちょっと控えた方が…」
「あぁ〜!?うるせぇ〜!」
クラッズの顔は、既に真っ赤に染まっている。そのおかげで傷跡もくっきりと浮かび上がり、一種異様な迫力がある。
「へっ!えるふのばかやろ〜め!ヒック!」
「……クラッズさん、もうやめた方がいいッスよ」
「うるせ〜、せんぱいにさしずすんなぁ〜!」
これには、ドワーフも閉口した。とにかく、酒癖が悪すぎる。自棄酒というのも理由の一端ではあろうが、それにしてもひどい。
「あ〜あ、どうせわたしは、みにくいかおですよ〜だ!」
「クラッズさん……またその話ッスか?」
ドワーフがうんざりしたように口を開く。
「あぁ!?だって、ほんとのことだろ〜!?」
「そりゃ……確かにひどい傷跡ッスけど、その、それでも十分可愛いッスよ」
「あはははははは!!!」
突然、けたたましく笑い出すクラッズ。
「な、何スか?」
「そーかー。じゃ、きみ、こんなかおのおんなのこと、きすできる〜?」
「な、何言い出すんスか…!?お、お、俺は、その……できますよ…!」
「へー、そう?それはすごいなー。あははは!!」
クラッズは再び笑い出す。そして、今度は意地悪な笑みが浮かんだ。
「じゃ、きみ、わたしのこと、だける〜?」
「いや、その……な、何言ってるんスか、もう…!」
さすがに、ドワーフはすっかり参ってしまう。
「どぉ〜?さすがにむりでしょ〜」
「いや……俺は…!」
「まーそーだろーねー。それとも、なぁにぃ?できるっていうのぉ?だったら、いいけどぉ?いくらでも、きみのすきにすれば…」
クラッズが言い終える前に、ドワーフは酒瓶を捨て、クラッズを押し倒した。
「……え…?」
「俺、できますよ」
「え……あの……マジ…?え?」
「俺、クラッズさんなら、抱けますよ」
その目は本気だった。クラッズの酔いが、一瞬のうちに醒めていく。
「あ、いや……冗談だよ?ほ、本気にした?」
「クラッズさん、やっぱり俺のこと信じてないんスね。だから、証拠見せますよ」
「いや、その…!あの、冗談だってば…!お酒入ってたからさ、それでつい…!」
「だからこそッス。誰でも、酒が入れば本心出ますからね」
赤かったクラッズの顔は、今では心持ち青ざめている。
ドワーフがクラッズの制服に手を掛ける。クラッズはその手を押さえようとするが、逆に押さえ込まれてしまう。
「や、やだ!やめてよ!さっきのは取り消し!やめなさい!わ、私は先輩だよ!?」
「知らないッスよ、そんなの。俺だって散々コケにされて、いい加減限界ッス」
クラッズにとって災難だったのは、ドワーフにもしっかり酒が入っていたことである。もはや先輩後輩といった立場の違いなど考慮せず、
ただ一人の男としての怒りをぶつけてきている。
腕を押さえつけられ、服を無理矢理脱がされるクラッズ。体をよじり、足をばたつかせ、必死に抵抗を試みるが、そんなものは何の
役にも立たない。
149 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:23:57 ID:9tg4eLWw
「やだよ!やめてよぉ!ひどいことしないでぇ!」
「ひどいこと?」
パンツに手を掛けながら、ドワーフが不機嫌そうな顔で聞き返す。
「俺のこと散々疑いまくって、言うこと全部嘘扱いしたクラッズさんと、どっちがひどいんスかね?」
吐き捨てるように言い、クラッズのパンツを剥ぎ取る。ついにすべての服を剥ぎ取られた恥ずかしさと、悔しさと、その言葉の重さに、
とうとうクラッズは自棄になって叫んだ。
「じゃあいいよっ!私のこと抱くなり何なり、どうとでも君の好きにすればいいよ!」
涙を浮かべた顔を見られないように、クラッズはプイッと横を向いた。しかし、ドワーフはそれ以上何もしてこない。
不思議に思い、おずおずと顔を元に戻す。すると、ドワーフはクラッズを押さえつけていた手を放し、その頭を優しく撫でた。
「ごめんなさい、クラッズさん」
「な……何が?」
「つい、ムカついてここまでしましたけど……俺、クラッズさんを傷つけるつもりなんてなかったッス」
「やる気満々だったじゃん…」
「でも、その……今更遅いッスけど、俺、クラッズさんに嫌われたくないッス」
そっとクラッズの顔を撫で、ドワーフは続けた。
「前も言いましたけど……俺、クラッズさん好きッスから」
ビクッと、クラッズの体が震えた。
「……嘘……だよね?」
「まだ、疑うんスか?」
「当たり前だよっ!だって……だって、この顔、君だって見えるでしょ!?この傷!!こんな顔……なのに、そんな事言われたって…!」
「だから何スか。俺、クラッズさんの顔が好きなんじゃなくって、クラッズさんが好きなんスよ」
「……嘘だよ。絶対……絶対嘘だぁ…!」
この顔のせいで、エルフには捨てられた。だからこそ、ドワーフのその言葉が信じられなかった。信じるのが怖かった。
そんなクラッズの体を抱き起こすと、ドワーフはそっと口付けを交わした。
「んうっ…!?」
ドワーフの舌が、クラッズの口に入り込む。最初は怯えたように縮こまっていたクラッズの舌も、やがて少しずつそれに応え始める。
すると、ドワーフはついっと口を離し、クラッズに微笑みかけた。
「ほら、キスはできたッス」
「……うん…」
いつもと変わらない笑顔で、自分を抱き締めてくれるドワーフ。クラッズの中で、何かが吹っ切れた。
「でも……さ、まだちょっと、信じられない」
「じゃあ、どうしたら信じてくれるんスか」
ドワーフが口を尖らせる。そんな彼に、クラッズはいたずらな笑顔を見せた。
「本当に、続き……できる?」
「え…」
明らかに、ドワーフはうろたえた。その様子に、今度はクラッズが口を尖らせる。
「なぁに、まさか嘘だって…!」
「あ、いや、違うんスよ。ただ、その……実は、えっと……俺、大口叩きましたけど、初めてなんで…」
なぁんだ、と、クラッズは笑った。
「ちょっとびっくりしたじゃない、もぉ〜。大丈夫、そんなに難しく考えないで、ね?」
言いながら、そっとドワーフの手を取り、自分の胸に当てる。ドワーフはビクッとして手を引っ込めかけたが、クラッズはしっかりと
押さえつける。やがてその意図を汲み、ドワーフは慣れない手つきでその平たい胸を揉み始める。
「んんっ!」
「あ、大丈夫ッスか?」
「ん、気にしないでいいの。気持ちいいんだから」
「あ、そうなんスか?申し訳ないッス…」
150 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:24:39 ID:9tg4eLWw
単調になると良くないことは知っていたので、今度は小さな乳首を軽く摘んでみる。途端に、クラッズの体がビクンと跳ねた。
「あんっ!やっ……そこは、弱いからダメぇ…!」
「申し訳……あ、でも、気持ちいいんスよね…?」
「ん……ま、そういうことだね。えへ」
明らかに年上のはずなのだが、いたずらっ子のような笑顔を浮かべる彼女は、とてもそう見えない。そこはかとなく背徳的な気分に
なるものの、ドワーフは自分に犯罪ではないと言い聞かせる。
乳首を口に含み、舌先で転がしつつ吸い上げる。クラッズはドワーフの頭を抱きかかえ、細かく荒い息をつく。既にクラッズの肌は上気し、
微かに汗の匂いと、女としての匂いが混じり始めている。
それを感じ取ると、ドワーフはクラッズの秘唇に手を伸ばした。指で触れると、微かな水音と共に熱い液体が貼り付く。
「あぅっ!も、もうそこ?」
「え、あ……ま、まずかったッスか…!?」
「ん〜、いいよ。でも入れるのは、もうちょっと濡れてからで、ね?」
「お、オス」
愛液の染み出す秘裂の周りを、じっくりと撫でる。クラッズは目を瞑り、ひたすらその快感に身を任せている。
やがてドワーフの指全体に愛液がまとわり付くと、慎重に秘裂の中へと指を入れていく。
「んんっ……う……んんん…!」
クラッズの呼吸に合わせ、中はドワーフの指を締め付ける。その感覚に、ドワーフの我慢も一気に限界を超えた。
「その……クラッズさん、俺…!」
「んっ……はぁ…。もう、入れたい?」
ドワーフはこくんと頷く。
「わかった。それじゃ、ね」
クラッズはドワーフから一度離れると、ベッドに上半身を預けて腰を突き出した。
「ああ……その、そっちから…?」
「モフモフ君だと、前からよりこっちの方がしやすいかなって思ってさ」
ひどい偏見だ、と思ったが、口には出さないでおいた。それに、入れる場所が見える分、確かにしやすいとも言える。
ズボンを下ろし、ドワーフのモノが露になった瞬間、クラッズは少し怯えたような表情になった。
「うわ、えっと……モフモフ君?」
「あ、はい、何スか?」
「え〜っとね……私、そんな太いの入れたことないから…」
ドワーフのそれは、エルフのモノより二回りほど大きかった。エルフのそれですら少しきつかったのに、あれが入れられるかと言うと
若干の不安がある。
「だから、優しく……優しく、ね?」
「わ、わかりました。えっと……それじゃ、いきますよ…?」
「うん、きて」
クラッズの腰を抱き、自身のモノをあてがうドワーフ。入り口に何度か先端を擦りつけ、自身のモノを濡らすと、グッと腰を突き出す。
だが、まだ経験のないドワーフはうまく入れることができず、なかなか入ってくれない。
「ん……あれ…?くそ…!」
「ちょ、ちょっとモフモフ君、あんまり強く押し付けな…!」
だんだん焦って乱暴になるドワーフの行為を抑えようとした瞬間、先端が僅かに入り込んだ。
その瞬間、ドワーフは思い切り腰を突き出した。
「うあああぁぁっ!!!」
「うぅっ…!」
二人が同時に叫ぶ。だが、ドワーフの声は快感によるものだが、クラッズのそれはいきなり太いモノを体内に突き入れられる、
痛みと苦しみによるものだった。
151 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:25:47 ID:9tg4eLWw
一気に奥まで突き込んでしまうと、ドワーフはしばらくクラッズの腰を抱え、じっとしていた。クラッズの方も疼痛とはまた別の、
初めて経験したときと同じような痛みと、内側から体内を押し広げられる圧迫感に荒い息をついていた。
「あっ……ぐ…!かはっ…!」
「クラッズさん……動き、ますよ?」
「ま、待って!まだ…!」
返事を聞く前に、ドワーフは既に動き始めていた。しかも、その動きは何の遠慮もない、ひどく激しいものだった。
「い、痛っ!や……待っ…!まだダメだってばぁ!」
涙声で抗議するが、ドワーフの耳には届いていないらしかった。クラッズの体内を容赦なく突き上げ、その度にクラッズは耐え難い
苦痛に涙を流す。子宮を叩かれ、僅かに裂けたらしい傷を擦られ、中全体を荒々しく押し広げられる苦しみは尋常ではない。
ついにクラッズは耐え切れなくなり、自分の腰を掴むドワーフの腕の毛を掴み、思いっきり引っ張った。
「痛って!?な、何するん…!?」
途中まで言いかけて、ドワーフは肩越しに振り返ったクラッズの目に気付いた。その目は涙に濡れ、若干怒りの色が浮かんでいる。
「はぁ……はぁ……や、優しくって言ったのにぃ!」
「あっ!も、申し訳ないッス!つい…!」
「焦っちゃ、ダメ。くすん……いい…?もう絶対ひどくしないでよ…?」
「申し訳なかったッス。大丈夫ッス」
今度こそ、ゆっくりと腰を動かすドワーフ。それでも痛いものは痛いが、その中にも幾分かの快感がある。
ふと、ドワーフが腰から手を放し、代わりにクラッズの乳首を摘んだ。新しい刺激に、クラッズの体がピクンと跳ねる。
「あっ!それ、好きぃ…!んん……もうちょっと、そこ強くぅ…!」
ようやく快感が痛みを上回り、クラッズは甘い声で更なる快感をねだる。ドワーフの手が乳首を転がすように撫で、摘んで引っ張り、
その度にクラッズは嬌声を上げる。
ぎちぎちにきつかった膣内も少しずつ慣れ、クラッズの嬌声に合わせてドワーフのモノをキュッと締め付けている。
ふと、ドワーフはクラッズの体を引き起こした。
「えっ?うわ!?」
ベッドに乗り、クラッズの体を抱き上げるドワーフ。その体をそっと横たえると、今度はクラッズの足を掴み、向きを仰向けに直す。
ドワーフの目が、真っ直ぐにクラッズの顔を見下ろす。
反射的に、クラッズは顔を手で覆った。だが、ドワーフはその手を掴み、無理矢理押さえつける。
「い、嫌だよ、放して!」
「嫌ッス」
「やだってば!やめてよ!見ないでよ!!こんな顔見ないでぇ!」
こんな時に、この傷ついた顔を見られるなんて、クラッズには耐えられなかった。しかし、それでもドワーフは手を放さない。
「お願いだから放してぇ!!もうこんな顔見ないでぇ!!」
半狂乱になり、叫ぶクラッズ。だが、それに負けない大声でドワーフが怒鳴った。
「絶対放さないッス!」
突然の大声に、クラッズはビクッと身を竦めた。しかし、声の割にドワーフの顔は優しい。
「絶対、放さないッス!何があっても、絶対!……クラッズさんが、辛いのはわかります。でも、逃げないでください!自分から、
人から、逃げないでください!俺、絶対一緒にいますから!俺は、逃げません!だから、クラッズさん……俺を、受け入れてください!」
クラッズは涙に濡れた目で、ドワーフを見上げていた。が、やがてポツリと呟く。
「……放すの意味が違うよ、ばかぁ…」
そう言いつつも、暴れていたクラッズの手から、徐々に力が抜けていった。
「クラッズさん、可愛いッスよ」
ドワーフはそっと、クラッズの傷跡を舐めた。
「……ばか…」
その体に、ぎゅっとしがみつくクラッズ。そのおかげで、またドワーフの心に火がつく。
152 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:26:19 ID:9tg4eLWw
猛然と突き上げるドワーフ。あまりの激しさに、クラッズの体はガクガクと揺さぶられている。
「うあっ!?あっく!い、いきなり……激しいよっ…!」
ドワーフの体から流れる汗が、突き上げる度にクラッズに落ちる。獣のような匂いと行為が、クラッズに今まで味わったことのない
快感を与える。激しい痛みと苦しみすら、今のクラッズには快感の一種としてしか捉えられない。
「ぐうぅぅ…!クラッズさん…!俺……俺、もうっ!」
もう限界が近いらしく、ドワーフは切羽詰った声を出す。
「ああっ!うっ!あっ!ま、まだダメぇ!!もっと突いてぇ!!」
「すんません!でも、ほんとっ…!くっ……あっ…!」
クラッズの訴えも虚しく、ドワーフはクラッズの中に精を吐き出した。腹の奥に勢いよく当たるその感覚も、クラッズに激しい快感を
もたらすが、やはり少し足りなかった。
最後の一滴までクラッズの中に注ぎ込むと、ドワーフは深く息をついてクラッズの隣に倒れた。
「もう……私ももうちょっとだったのにぃ…」
「も……申し訳ないッス…」
「いきなり痛くするし、自分だけイッちゃうし……女の子に優しくできないと、嫌われるよ?」
「……申し訳ないッス…」
本気で凹んでいるドワーフの顔を、クラッズは優しく撫でた。
「でも、こういうの初めて。私のこと守るなんて言った人、君が初めてだよ」
「はぁ…」
「それに、すっごい激しいの。ほんとに獣に犯されてるみたいで、ちょっと興奮したかな?あはは」
「お……俺は獣ッスか…」
「あ、やだな。冗談だよ。半分」
軽く息をつき、クラッズはドワーフの顔を見つめた。
「……ほんとに、こんな顔なのに抱かれちゃったね」
「今でも、十分可愛いッス」
「そう言ってくれるのなんて、たぶん君だけだよ」
愛しそうに毛を撫でつけ、クラッズはドワーフの目を見つめる。
「モフモフ君。私さ、こんな顔になったし、もうずっと戦士として、一人で生きて行こうと思った。男にも、他の種族にも負けない、
強い戦士になろうって……それ自体はずっと思ってたけど、今回は心の底からそう思ってた。でも……君のせいで、ちょっと無理に
なりそうだよ」
少し不安そうな笑顔を浮かべ、クラッズは確認するように尋ねた。
「私の背中……ずっと、守っててくれる?」
ドワーフは恥ずかしそうに笑い、クラッズの体を抱き寄せた。
「死んでも、守り抜きますよ」
153 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:26:40 ID:9tg4eLWw
「嬉し……痛っ!」
不意に顔をしかめるクラッズ。よくよく見ると、二人はまだ繋がったままである。
「あ、申し訳ないッス!すぐ…!」
「ちょっ、痛い痛い!待って、動かないで!抜かないで!……う〜、血、出ちゃってるでしょ…?」
「え?あ、ほんとだ!だ、大丈夫ッスか!?すみません、俺のせいで…」
「ほんとだよ、まったくぅ……だいじょぶだけどさ」
ちょっとすねたように言うと、クラッズはドワーフの首に手を回した。
「抜くの痛いから、小さくなってからにしてね」
「お……オス…」
「それとさ、言い損ねたけど」
「な、何スか?」
「……私の背中、君に預けるよ」
「……はい」
二人はお互いを見つめあい、恥ずかしそうに笑った。
「それじゃ、モフモフ……ううん、ドワーフ君。これから、よろしく」
ドワーフの鼻にキスをするクラッズ。そんなクラッズを、ドワーフは優しく抱き締めた。

ランツレートに、影で名物と呼ばれる生徒がいる。
巨大な鎚と小さな体。顔には大きな三本の傷。
彼女は小さな女の子。しかし、傷すら誇示するように、堂々と前を向いている。
彼女は決して振り返らない。背中は彼が守るから。
背中を守る、一人の君主。常に彼女の影となり、危険はその身で引き受ける。
その目は彼女の背中を守り、尻尾は彼女を抱き寄せる。
戦士の彼女と、君主の彼と。例えるならば、剣と盾。
彼を見て、彼女を見て、周りはみんな、こう漏らす。
「あいつには、かなわないな」と。
そんな、ちょっとした名物コンビである。
154 ◆BEO9EFkUEQ :2009/01/27(火) 00:29:48 ID:9tg4eLWw
以上、投下終了。
半分以下まで内容を削るのは、立派な苦行でしたw
それでも長めだったんで、今度はもう少しコンパクトにまとめられるよう頑張ろう。

それでは、この辺で。
155名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 01:29:21 ID:XKXxJ1q6
乙乙!

文章削るのって結構難しいですよねぇ
156名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 10:06:35 ID:6ltFf4DK
おつー
157名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 10:48:28 ID:0oWpelvu
乙!
158名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 18:24:04 ID:lhPFRQs2
GJ!!!
159名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 19:08:25 ID:Qtt9ABJZ
乙!

なに?内容を削るのが難しい?
逆に考えるんだ、「俺の作品一つでスレ一つ消費してもいいよね!」と考えるんだ。
160名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 20:38:59 ID:FWacj6uM
GJ!
かっこかわいいクラ子に萌えた。
161名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 22:54:13 ID:fwtudJzT
GJ!!
回復呪文でも傷は残るのか……。
162名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 00:04:29 ID:Fv6oA8ZE
回復呪文じゃなかったから傷が残ったんじゃないのか?
163名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 20:13:56 ID:qrlst+7H
小説内で結構滅茶苦茶に倒される生徒達だが、
蘇生呪文や回復呪文は引き千切られた腕や胴体を再生できるのか?
164名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 21:07:27 ID:s076K4Ps
部品があればくっつく
でもある程度傷跡は残る

そんなイメージだな。
流石に首だけから再生したら怖いw
165名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 21:44:58 ID:JZhiJvGU
>>164
でも骨から蘇生したりもするからなあ
166名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 00:07:03 ID:xCorlVS+
灰からも蘇生するしな。
死体を放って置くと蘇生しづらくなるのは所々欠けた部分まで再生しないといけないからだろうな。
バラバラになった身体も早くくっつければ傷も残らないのかね?
逆に足を食いちぎられそのまま相手が逃亡した場合は蘇生しても片足無しなのか?
傷の治癒と体力の回復は別物だって聞いた事があるが。
167 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:25:59 ID:hA1D/Tkq
最近、気がつくと生徒をジェデロ砂漠に駐留させている。暖かそうでいいなあ…。

前回のクラ子の傷なんですが、せっかくなので補足。実は前後にがっつり削ったシーンがありまして、
既に結構消耗→復活した面子、脱出に手間取る→休まないと回復できない→その間に自然治癒始まる
で、やっと魔力回復したから治したけど、自然に治り始めてたせいで傷跡ががっつり残った、という成り行きでした。
新たな皮膚の組成とか始まってると、その分盛り上がってしまうんじゃないかなと。勝手な解釈ですがw

で、今回は接点なさげなディア子とバハ男を。いつもの如く、楽しんでいただければ幸いです。
168 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:26:37 ID:hA1D/Tkq
パーティを組むとき、何を重視するかは大きく分かれる。
大抵は、ある程度の相性を考慮し、それぞれ違う学科の生徒をバランスよく組み込んで作っていく。
しかし、中には戦闘力に劣る盗賊系学科を省き、徹底的に戦闘力を求めたパーティを組んだり、逆に僧侶や司祭などの回復魔法を使える
生徒を多く入れ、極力安全なパーティを組む者達もいる。あるいは、どのパーティからもあぶれてしまい、仕方なく残った者同士で
組むこともある。いずれにしろ、そういったパーティの場合は、あまり相性を考慮しないことも多い。
彼等もまた、そんなパーティの一つだった。ヒューマン、フェアリー、クラッズ、エルフ。ここまでなら、相性は比較的いい方である。
しかし残りの二人は、よりにもよって、バハムーンにディアボロス。
彼等は余った者同士で組まれたパーティであり、組んだばかりの頃は学科も滅茶苦茶、相性も最悪という状態であった。それでも何とか
折り合いをつけ、幾人かは転科をし、辛うじてパーティとしての実力も安定してきたところである。
とはいえ、相性ばかりはなかなか溝が埋まらない。特にディアボロスとバハムーンは、仲間のほとんどに嫌われている有様である。
クラッズとエルフは特にディアボロスを嫌い、フェアリーとヒューマンはバハムーンを嫌う。バハムーン自身はヒューマンとフェアリーを
筆頭に、他の仲間を見下しているし、ディアボロスは自分から距離を取ってしまい、なかなか仲間との連携が取れない。
そんな彼等の間では、常に口喧嘩が絶えなかった。寮で、学食で、地下道で、時と場所を問わず、いつも誰かしらが口論をする。
この時も、彼等は戦闘中だというのに、口喧嘩の真っ最中だった。
「おい、チビ二人。貴様らは下がっていろ」
「うるさいな、お前は!とろいくせに、えらそうな口利くな!」
「フェアリー君、落ち着いて。あんな奴の言うことなんて、いちいち聞かなくていいよ」
クラッズも、あまりバハムーンを好きではない。そのため、どうしてもフェアリーの擁護に回ることが多い。
「ふん。ろくに攻撃を耐えられもしないくせに、口だけは一人前だな」
「バハムーン、いい加減にしろよ。少しは黙って戦えっての」
「下等生物のくせに、俺に指図するな」
「やれやれ、本当に傲慢な方だ。戦いは、一人でするものではないよ」
「傲慢、か。だがエルフ、それを貴様に言われるのは、些か心外だな」
全員、手よりも口がよく動いている。その内容からはあまり緊張感を読み取れないが、実際の戦況は決して楽観できる状況ではなかった。
敵との実力はほぼ拮抗しており、これまで戦い詰めだった一行の余力では、その戦闘はかなり厳しいものとなっている。それでも何とか
赤目の巨人を打ち倒し、今度は残る敵の殲滅である。しかし、それを易々とさせてくれるほど、生易しい地下道ではない。
エビルベビーの攻撃で、味方が吹っ飛ぶ。だが、それは味方とはいっても、既に全身腐った姿のゾンビである。そのゾンビが崩れ去り、
地下道の床に消えると、ディアボロスは軽く舌打ちをして魔法の詠唱を始めた。
「……出ておいで、骨戦士」
詠唱が終わると同時に、今度は骨ばかりの姿になったアンデッドが現れた。その禍々しい姿に、仲間全員が嫌そうな顔をする。
「……頼りにはなるけど、私あの子苦手だなぁ…。召喚するのも、アンデッド多いしさ」
クラッズが呟くと、エルフも苦々しい表情でディアボロスを見つめる。
「まったく……何だって、僕達があんな魔族なんかと…!」
「黙れ、下等種族共。俺から見れば、貴様らもあいつも、さして変わらん」
「一緒にするなっ!」
吐き捨てるように言ってから、エルフは素早くメタヒーラスを詠唱する。司祭である彼の魔力は、もう限界が近い。
169 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:27:04 ID:hA1D/Tkq
「あとはあいつらだけなんだ!一気にいくぞ!」
フェアリーは意識を集中し、ファイガンを放つ。しかし、ここまで来ると敵の抵抗力も高く、彼の魔法は相手を僅かに傷つけたに
過ぎなかった。それを見て、バハムーンが鼻で笑う。
「ふん。なんだ、その火遊びは?それで攻撃のつもりなのか?」
「くっ……うるさいな!これでもちゃんとした魔法だ!」
「まあ、貴様のようなチビには、お似合いの玩具だ。だがな、炎と言うものは……こう使うんだ!」
言うなり、バハムーンは猛烈な火炎を吐き出した。ブレスの威力は凄まじく、半数以上のエビルベビーが消し炭へと変えられた。しかし、
それでも二匹のエビルベビーが耐え抜いた。
「いい炎だ。しかし、まだ甘い」
今度はディアボロスが、薄笑いを浮かべて口を開く。
「何だと?」
「お前の炎は、まだぬるい。それでは、通用する相手も知れていると言うもの」
鞭を手元に納めると、ディアボロスは大きく息を吸った。
「見せてやる。本当の火炎というものをな」
直後、辺りに凄まじい熱気が放たれ、真っ白な炎が敵を包んだ。一瞬後、エビルベビー達は一握りの灰となって、地面に落ちていた。
「いかなドラゴンのブレスと言えど、地獄の業火には、かなうまいよ」
そう言って、ディアボロスはバハムーンに笑いかける。
「……ちっ!」
さすがに、これだけの差を見せられると言い返すことは出来ない。バハムーンは舌打ちをして、視線を外した。
「ふう、辛勝ってとこだな。なあエルフ、そろそろ戻った方がいいんじゃないか。お前の魔力だって、あまり残ってないだろ?」
ヒューマンの言葉に、フェアリーとクラッズも賛成の意を示す。
「そうだね。今日はこのぐらいにしておこうか」
「ふ……呼び出しはしたものの、骨戦士の出番は、なさそうだな」
ディアボロスはそう言って笑うが、誰も笑わない。それ以前に、ほとんどの者はあまり関わりたくないとすら思っている。
「ふん。わざわざ手下なんぞ呼ぶ奴は、何かと面倒だな。たまには、手下抜きで戦ってみたらどうなんだ」
唯一、バハムーンが声をかける。それに対し、ディアボロスは相変わらずの薄笑いで答える。
「召喚師は、使役を召喚してこそ。わざわざ自分の手を、汚すつもりはないねえ」
「そうかよ。ふん、本当に陰気な女だ、貴様は」
「褒め言葉として、受け取っておこう」
「褒めてねえ」
「そりゃ残念」
冗談なんだか本気なんだかわからない会話を交わす二人を、他の四人は少し引いた目で見ている。
「……とりあえず、バックドアル使おうか」
「お願いしまーす」
「とにかく、さっさと帰ろう。今日はもう帰って寝たいよ」
「それじゃあ帰る前に。みんな、お疲れ様」
そして、エルフがバックドアルを詠唱する。一行は光に包まれると、一瞬のうちにその姿を消していた。
170 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:27:35 ID:hA1D/Tkq
探索を終えると、バハムーンとディアボロス以外の四人は学食へ向かった。二人は特に何か話すでもなく、揃って寮へと歩き出す。
建物の中に入り、階段を上り始めたところで、おもむろにディアボロスが口を開いた。
「暇だな」
「だからなんだ」
「お前の部屋に行ってもいいか?」
「断る」
「残念」
それからまた、二人は黙って階段を上る。が、少し歩いてから、今度はバハムーンが口を開く。
「どうして、俺のところなんだ」
「お前以外、誰の部屋に行けと?」
「む……お、俺が知るか!」
「それで?結局、ダメなのか?」
「………」
バハムーンはしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。
「長居しなければ、構わん」
「少し話したいだけさ。そう長居をするつもりはないよ」
いつもと変わらない、表情の読めない声で言うと、ディアボロスは薄笑いを浮かべた。その顔も、表情をあまり読み取れない。
ともあれ、二人は揃ってバハムーンの部屋に向かった。部屋の中は、案外きちんと整理されている。
「へえ。意外と几帳面じゃないか」
「それぐらい当然だ」
「こういうのを見ると、少し散らかしてやりたくなるね」
「ふざけるな。ぶん殴るぞ」
「冗談さ。そんなことはしない」
まるで自分の部屋のように、ディアボロスは椅子にドカッと座り込んだ。バハムーンは一瞬、力尽くでどかそうかと考えたが、辛うじて
思いとどまり、仕方なくベッドに腰を下ろす。
「で、何を話すつもりだ?」
「特に、考えてたわけじゃあない。……そうだね。お前、これ外せるかい?」
「ん?」
ディアボロスが放った物を取ると、何やら複雑な形をした金属が絡み合っている。
「……?」
バハムーンは真剣な顔で、それを矯めつ眇めつ眺めている。その姿に、ディアボロスは笑いを堪えるのに必死だ。
「どうだ?外せまい?」
「……黙れ」
やがて、だんだんと額に皺が寄り、眉がじりじりと吊り上がる。そして顔が赤くなってきたと思った瞬間、彼はそれをがっしり掴んだ。
「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」
ペキッと軽い音がし、知恵の輪は見事二つに分断された。
「ちょっ……おまっ…!」
「はぁ、はぁ……どうだ、外れたぞ」
「お前……それは知恵の輪と言ってだな、少し頭を使えば、誰でも簡単に取れるものなんだぞ」
「知恵だと?そんなもの必要ない!ああ、ないとも!そんなものを必要とするのは、貴様らのような下等な種族だけだ!」
「……ふ、そうか。あ〜あ、見事に壊しやがって」
投げ返された知恵の輪を眺め、呆れたように笑うディアボロス。
171 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:28:01 ID:hA1D/Tkq
「まあ、確かにこれほどの力があれば、知恵なんぞなくたって、外せるわな」
「で、それがどうかしたのか?」
「いやぁ…」
ディアボロスはクックッと、実に楽しそうに含み笑いをする。
「何がおかしい?」
「おかしいってよりは……そうだな、嬉しい……が、妥当か」
「嬉しい?何がだ?」
「お前が、思ったとおりの奴だから、さ」
「……?よくわからんな。わかるように言え」
「ふふふ…」
また、ディアボロスは笑う。その顔は本当に楽しげで、今まで見たこともないような表情だった。
「お前は、平等だ」
「は?」
「ヒューマンもエルフもドワーフもクラッズも、そしてディアボロスも、すべて等しく……見下している。ククク…」
「……??」
バハムーンは彼女の胸の内をわかりかね、ただ首を傾げる。一体何がおかしいのか、理解できない。
「実に、傲慢。それでいて、最も平等。皮肉なものよな」
「えっと…?ん…?」
「はは、これ以上は長居になるな。続きは、また今度にしようか」
そう言い、席を立つディアボロス。よくわからないことを一方的に言われたバハムーンは、慌ててその肩を掴む。
「おい、待て!ちゃんと俺にもわかるように説明…!」
「だから、言っただろう?続きは、また今度だ。もう来るなと言うなら、もう来ないが。どうする?」
「貴様、俺を馬鹿にしているのか!?」
「まさか。だが、お前が言ったはずだがな?長居をするな、と」
「それは言ったが……な、なら今もう一つ追加する!ちゃんと、俺にもわかるように話せ!」
「男に二言は、ないものだろう?後から付け足すのは、少しみっともないんじゃないか?」
「ぐっ…!」
プライドという、最も大切で危険なものに刃を突きつけられ、バハムーンは呻いた。その手から力が抜けると同時に、ディアボロスは
するりとそこから抜け出す。
「また、近いうちに邪魔させてもらおうか?」
『答えは聞かなくてもわかっている』と言わんばかりの表情。その思い通りに動くのは実に癪ではあったが、彼の答えは必然的に一つに
絞られていた。
「……ああ!近いうちにな!くそっ!」
「ははは、楽しみにしてるよ」
実に楽しそうな表情を浮かべたまま、部屋を出ていくディアボロス。その姿を見送ってから、バハムーンは忌々しげに壁を殴りつけた。
172 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:28:26 ID:hA1D/Tkq
その日以来、ディアボロスはちょくちょくバハムーンの部屋へ行くようになった。
パーティのことを話したり、ここ最近の気候の話をしたり、話題はその日によって色々だったが、最初にした話に関してだけは、
ディアボロスはいつものらりくらりと逃げてしまい、まったく進展がなかった。何度聞いても、絶対に話さないディアボロスに対して、
最初のうちは腹立たしさが募った。何より、バハムーンにとっては自分の思い通りにならないということが、何より腹立たしかった。
この時も、ディアボロスは肝心の話をしないまま席を立った。いい加減限界に来ていたバハムーンは、その肩をしっかりと捕まえる。
「おい、貴様。いつも言ってるだろう。あの時言ったことの意味を、俺にもわかるように教えろ!」
「さぁて、ねえ?もうちょっと、自分の頭で考えたらどうだ?」
「貴様…!」
バハムーンの顔が怒りに歪み、直後、彼は彼女の胸倉を掴んでいた。
「いい加減にしろ!さっさと話せ!」
「……乱暴な男だ。でも、それも悪くはない」
「聞いているのか!?」
「お前はきっと、誰にでもこうするのだろうな。ヒューマンでも、エルフでも、ノームでも……な」
言いながら、ディアボロスはバハムーンの顔をすうっと撫でた。それに驚き、バハムーンが思わず手を放すと、彼女は笑った。
「はは。力だけで何でもできると思うな。お前の力なぞ、こうして撫でてやるだけで押さえつけられるものだ」
「ぐ……い、いや、違うぞ!今のは貴様がやったわけじゃない!俺が、自分の意思で放したんだ!」
「でも、撫でなきゃ放さなかった。違うかい?」
「うぐぐ…!」
「はっはっは。わかったろ?ちょっと工夫してやれば、相手が自ら、自分の都合のために動いてくれるもんさ。だから、お前も
そうしてみたら、どうだ?もしかしたら、自分から話したくなるかもしれないな?」
そうは言われても、元々対人関係が非常にまずいバハムーンである。そんな手段など思いつくはずもなく、彼はその日の間中、ずっと
頭を抱える羽目になってしまった。
悩み悩んで次の日、彼は部屋に来た彼女に対し、お菓子を出してみた。
「あのな……餌で釣ろうって魂胆が見え見えだ」
「べ、別に釣ろうとしたわけじゃ…!」
「でも、昨日言われて考えた結果が、これだろ?だとしたら、それは餌で釣ろうってことじゃないのか」
「そ……そうか。いや、違うっ!貴様みたいな下等種族になど、本来気を使う必要なんかないんだぞ!それをわざわざ、こうして
出してやったのに、それを…!」
「そうやって相手を貶すと、どんどん口が硬くなるってのを知らないのか?嫌いな相手に対しては、何も話したくなくなるものだ」
「……むぅ…」
根は素直な男である。生粋の武人肌とも言える気性で、傲慢ではあるが、その一方で非常に純粋な面もある。ちょっとうまいことを
言われると、すぐ丸め込まれてしまうのだが、本人はその事に気付いていない。
そんな様子がおかしくて、ディアボロスは顔にこそ出さなかったが、心の中で爆笑していた。
「さりとて、これを食わないという気にも、ならないがね。ありがたくいただくよ」
クッキーを頬張る彼女を見て、バハムーンは大きなため息をついた。
それからも、バハムーンの努力は続いた。必死に自分から話題を探したり、一緒に食事をしてみたり、思いつくことは何でも実践した。
だんだん手段が目的になってきた感はあるものの、それでもバハムーンは頑張り続けた。
気付けば、いつしかディアボロスが部屋に来るのが楽しみになっていた。今日はうまくいくだろうか、明日はうまくできるだろうかという
思案も、だんだんと心地良いものに感じられるようになった。
それに従い、バハムーンの態度も少しずつ変わっていった。今までは相手を見下していたのが、いつしか自分と同等の相手に接するように
なっている。とはいえ、元が傲慢なので基本的には自分が上という態度なのだが、今までの彼からすれば大きな変化である。
他の仲間とは、相変わらずほとんど付き合いもない。仲も悪いままである。しかし、この嫌われ者同士の二人は、いつしか友人と呼べる
間柄になっていた。
173 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:31:41 ID:hA1D/Tkq
やがて、探索後に揃ってバハムーンの部屋で過ごすのが日課となった頃。珍しくディアボロスは長居をしており、気付けば既に日は沈み、
窓の外はすっかり暗くなっていた。
「ん、ずいぶん話していたようだな。もう真っ暗だ」
「そのようだ。まあ、たまにはいいだろう?」
ディアボロスがチョコレートを齧りながら答える。彼女は甘いものが好きらしく、お菓子系統には食いつきがいい。
「ふん。たまにはな」
「お前と話していると、退屈しない。いわんや、こうして二人でいると、な」
最初は軽く聞き流したバハムーンだったが、その言葉に含まれる意味深な響きに、ふと顔を上げた。その目の前に、奇妙な形をした物が
放り投げられる。
細長いO字形の輪の中に、星のような形をした物が挟まっている、奇妙な物体だった。カタカタ振ってみても、とても外れそうには
見えない代物である。
「……また、知恵の輪とやらか」
「そうだ。中のそれを、取れるか?」
今度の知恵の輪は、ずいぶんと太い鉄製だった。さすがに引きちぎろうという気は起こらず、バハムーンはしばらく真剣な顔で知恵の輪と
向き合った。が、やはり解けるわけもなく、だんだんと表情が険しくなっていく。
「今度の物は、いかなお前とて、外せまい?」
その一言が、バハムーンの癇に障った。一瞬の間を置いて、彼は知恵の輪をしっかりと掴む。
「おおおぉぉぉうりゃあああぁぁぁ!!!!」
メリメリと輪が悲鳴をあげ、やがてガキンという音とともに、O字形だった輪はCの字にされてしまった。
「こらぁーっ!」
「ぜぇ、ぜぇ……どうだ、外してやったぞ!」
してやったりと言う顔のバハムーン。一方のディアボロスは、悲しそうな、それでいて呆れつつ、嬉しそうという複雑極まりない表情を
している。
「あ〜あ、それはお気に入りだったんだが……仕方ないな」
「俺にやらせるからそうなるんだ」
「自慢げに言うな、馬鹿者」
とはいえ、彼女も本気で怒っているわけではなさそうだった。投げ返された知恵の輪を見て、何ともいえない苦笑いを浮かべている。
「……お前は、やはり公平だ」
感慨深げに呟くディアボロス。その言葉に、バハムーンはようやく当初の目標を思い出した。しかし、それを敢えて尋ねるまでもなく、
彼女は自分から話しだした。
「どんな知恵の輪とて、破壊されてはどれも同じ。それと同じように、お前にとってはどんな種族も、自分より下等という点において、
同じものだ」
「……それがどうした」
「お前には、わかるまいよ。せっかくだ、少し恨み節を吐かせてもらおうか」
壊れた知恵の輪をしまい、ディアボロスは溜め息をついた。
「祖先が、魔族。ただそれだけで、我等は嫌われる。例え祖先は魔族であろうと、今の我等は魔族とは違うというに…」
初めて見せる、悲しそうな表情。それを、バハムーンは黙って見つめている。
「自分の生まれを、何度呪ったことか。また、他の種族を、何度恨んだことか。それがまた、他の種族を遠ざけると、わかっていてもな」
背もたれに腕を預け、ディアボロスは椅子に座り直す。その伝法な仕草も、今の言葉の後では一種の強がりにしか見えない。
「だが、お前だけは違った。見下しはしているが、お前はどんな種族にも、平等だ。お前は、魔族だからという理由で嫌いはしなかった」
「いや……少し待て」
バハムーンが慌てて口を挟む。ディアボロスは大人しく、一度言葉を切った。
「平等とは言うが、俺はフェアリーとヒューマンが特に嫌いだ。あいつらからすれば、他の種族はまだマシだ」
「ははは。それでも、見下していると言う事実には、違いあるまいよ」
「……まあ、それはな」
どうやら、ディアボロスからすれば、それは些細な違いに過ぎないらしかった。バハムーンからすると、比較的大きな違いであるのだが。
174 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:32:23 ID:hA1D/Tkq
「そうやって、我等を他の種族と同等に扱ってくれる奴は、今までいなかった。だから、嬉しかった」
今まで傲慢だとなじられたことは数多いが、それに感謝されたのは初めてである。まして、自分が当然のことと思ってしていたことが、
これほどまで彼女に大きな影響を与えていたことに、彼は驚きを隠せない。
「ふ……だが、確かに我等は魔族なのだろうな。どいつもこいつも、性格は少し悪い」
「そう、か?お前は善人にも悪人にも見えないがな?」
「そのどちらか、と言われれば、どちらとも言えないだろうよ。そうだな、性格と言うよりは、意地が悪い、か」
「どう違うんだ?」
「ふふ……例えば、わざと答えを先延ばしにして、それを聞きたがる相手の部屋に、足繁く通う、とかな」
「……ああ、なるほど。納得した」
二人は同時に笑った。その笑いは何の衒いもない、腹の底からの笑いだった。そこまで純粋に笑ったのは、二人ともこの学園に
来てからは初めてである。
一頻り笑ってから、ディアボロスはチョコレートに手を伸ばした。
「だがな、そんなことをするには、理由がある」
「理由?」
「当たり前だ。よしんば、パーティの仲間だとしても、女が男の部屋へ、気軽に行くと思うか?」
「……?……っ!」
一瞬置いて、その意味に気づくバハムーン。すると、ディアボロスはその浅黒い肌でもはっきりわかるほどに、顔を赤らめた。
「傲慢で、鼻持ちならない男だった。されど、他の種族と変わらない扱いをしてくれた男でもある。そして、お前は純粋で……気付けば、
いつもお前を見ていた。話せば話すほど、お前が強く心に居ついた……先の言葉は、必要ないな?」
そう言い、ディアボロスはチョコレートを小さく割ると、口に咥えた。そのまま立ち上がり、そっとバハムーンに近づく。
「お前次第だ……強制は、しない…」
優しく首に腕を回し、咥えたチョコレートをくっと突き出すディアボロス。それの意味するところは、鈍いバハムーンにもすぐわかった。
「……口では強制しなくとも、これは強制ではないのか?」
言いながら、バハムーンもディアボロスの首に手を回した。そして、相手の顔を引き寄せる。
やり方は強引な割に、優しく唇を重ねる。邪魔なチョコレートを半分噛み割り、それを口移しするかのように舌を入れる。
ディアボロスもそれに応え、彼の舌に付いたチョコレートを味わうかのように、じっくりと舐めるように舌を絡める。負けじと、
バハムーンもさらに彼女の首を抱き寄せ、もっと奥まで舌を入れようとする。
その舌を、ディアボロスは優しく噛んだ。痛みはないとは言え、舌を噛まれるとさすがに少し怖いものがある。ちらりと顔を見ると、
彼女はいたずらに微笑んだ。なんとなくムッとし、バハムーンは強引に喉の奥まで舌を突き入れる。さすがにその動きは予想外で、
ディアボロスは驚いて舌で押し返す。
しばしその攻防を楽しんでから、バハムーンは抱き寄せる力を緩めた。ディアボロスはすぐに唇を離し、コホンと咳払いをする。
「すぐムキになるな、お前は」
「変ないたずらをするからだ」
ディアボロスは静かに笑い、軽く舌なめずりをした。
「ふふ、甘い」
「そりゃあそうだろうよ」
「お前との口付けも、思ったよりいいものだ。癖になる味だな」
目を細め、艶かしい笑みを浮かべるディアボロス。そして今度は、バハムーンの腕を撫で、その手を取る。
「他の部分は、どうだろうな?」
そっと、指先を口に含む。そこに感じる柔らかい舌の感触に、バハムーンの胸がドキンと高鳴る。
チュプ、ジュプっと音を立て、ディアボロスは指を丹念にしゃぶる。軽く吸い、舌でこねるように舐め、意味ありげにバハムーンを見る。
「お、おい…!」
「ふふ……もっと違う部分を、ご所望か?」
何とも意味深な言葉に、バハムーンは思わず言葉に詰まる。それを見て、ディアボロスはおかしそうに笑った。
「まあ、聞くまでもない。お前の答えの如何に関わらず、勝手にするつもりだ」
175 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:33:08 ID:hA1D/Tkq
ディアボロスの手が、バハムーンのズボンに触れる。上から全体をそっと撫で回し、ジッパーに手を掛ける。
バハムーンを焦らすように、ゆっくりと引き下げ、彼のモノを優しく掴み出す。それを見て、ディアボロスは軽く目を見張った。
「おぅ……さすが、その体に見合うだけの逸物だ」
「そうか」
「他の種族と比べるな、とでも言いたげだな?ふふ、しかし悪い気はしまい?」
「まあ…」
「もっとも、こういう事をするのは初めてだからな。比べようもないが」
愛おしむようにそれを一撫ですると、ディアボロスはその前に跪く。
そっと顔を近づけ、ほうっと息を漏らす。熱い吐息がかかり、バハムーンは思わず呻いた。それを見て、ディアボロスは口元だけで
笑うと、ゆっくりと口を開けた。
先端を唇で挟み込み、亀頭をこねるように舐め回す。軽く吸い上げ、雁首を舌でなぞる。
「うっ……くっ!」
初めての刺激に、バハムーンは歯を食いしばって声を抑えている。そんな様子が気分良く、ディアボロスはさらに刺激を強める。
喉の奥まで咥えこみ、裏の筋を舌全体で舐め上げる。少し苦しくなると、先の部分を甘噛みしつつ丁寧に舐りながら手で扱く。
刺激を受けるたび、バハムーンの食いしばった歯の間から呻きが漏れ、時折体全体が震える。
彼女の柔らかな唇が、自分のモノを優しく咥え、さらに舌で愛おしげに舐める。その姿はたまらなく淫靡で、受け続ける刺激と相まって
彼を一瞬のうちに限界へと追い込んでいく。
「おいっ……ぐ、もうよせ…!」
たまらずそう言うと、ディアボロスはモノを口に含んだまま艶やかに笑い、ジュプジュプとさらに激しい音を立てて吸い始めた。
唇で扱きつつ、舌では丁寧に全体を舐め、さらには思い切り吸い上げる。
「ダメだっ、出るっ…!」
そんな刺激を受けて耐えられるはずもなく、バハムーンは切羽詰った声を上げると、彼女の口の中へ思い切り精液をぶちまけた。
口の中でドクドクと脈打ち、熱い液体が流れ込む度、例えようもない生臭い臭いが感じられる。しかし、ディアボロスはしっかりと
それを咥え、一滴残らず受け止めようとする。
だが、それは際限なく流し込まれ、どんどん彼女の口の中を満たしていく。最初は余裕のあった彼女の顔も、だんだんと苦しげな
表情になり、深く咥えていたモノも、少しずつ引き抜いていく。もう溢れる直前という頃になって、ようやくバハムーンのそれは
精液を吐き出すのを止めた。
「……おい、大丈夫か?」
最後に先端を吸い、まだ少し残っていた精液も口の中に収めると、ディアボロスは目を瞑る。そして思い切り顔をしかめつつ、
喉を鳴らしながらそれを飲み下した。
「ん……ぐ……ぷぁ、すごい量だな。ふふ、さすが、というべきか」
一度出したにも拘らず、バハムーンのモノはまだ十分な硬さと大きさを保っており、鼓動に合わせてビクンビクンと震えている。
「何とも言えん味だ。苦いと聞いていたが、苦味は感じなかったな」
「そうなのか」
「それにしても、元気だな。禁欲でもしていたのか?」
「余計な体力を使いたくなかったからな」
「ほんとにしてたんだ…。ふ、なら今日は、思いっきり楽しめばいい」
ディアボロスは、ベッドに座るバハムーンの腰を、膝で挟むように乗りかかる。そこで、ふと思いついたように口を開いた。
「だが、するだけでは少し不公平だな。お前も、してくれないか」
「む……舐めろと?」
「そこまでは望まない。どうだ、触ってみたくないか?」
そう言い、ディアボロスは自分の胸を両腕で持ち上げてみせ、上目遣いにバハムーンを見つめる。もちろん、彼としては
触りたくないわけがない。
176 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:33:39 ID:hA1D/Tkq
胸に手を伸ばし、それをグニッと握り潰す。途端に、ディアボロスは苦痛に顔をしかめた。
「い、痛い!も、もっと優しくしてくれ!」
「む……さ、最初に言え!俺は、その……そんなの知らん!」
そうは言いつつ、今度は慎重すぎるほどに優しく触れる。大きな手で全体を包み、少しずつ探るように揉みしだく。それはそれで
気持ちいいのだが、少し物足りない感じもする。
「んん……もう少し、強くてもいいぞ…!」
「そ、そうか?」
言われて、彼は刺激を強める。どうも加減というものをよく知らないらしく、今度はまたずいぶんと荒々しい揉み方になっている。
しかし、ディアボロスとしては、それもそれなりの快感として受け取れる。
「んく……あっ…!ずいぶん、激しいのが好き……あんっ……なんだな…!」
「………」
どうも胸の感触に夢中らしく、バハムーンは答えない。そんな彼が可愛らしく見え、ディアボロスは思わず笑みを漏らす。
バハムーンの手は大きく、ディアボロスの豊満な乳房をすっぽりと包み込んでいる。そうして全体を揉み解される感触は、少なくとも
彼以外の種族相手ではとても味わえない快感である。
何だかいつまでも揉んでいそうな気配を感じ、ディアボロスは彼の顔に手を触れた。突然の感触に、バハムーンはハッとして顔を上げる。
「そろそろ、次に移りたいんだが」
「あ、ああ。そうか。え、次……とは?」
「次といえば、次しかないだろう。余興が終わって、本番だ」
肩に手を掛け、ディアボロスは膝立ちで少し体を寄せる。彼のモノが下に来るようにすると、ちらりとそれを見直す。
「それにしても、大きいな」
「その、大丈夫なのか?」
珍しく心配そうな声を出すバハムーンに、ディアボロスは笑って答えた。
「ああ、処女ではないからな。多分大丈夫だろう」
そう言って腰を落とそうとすると、バハムーンがその体をがっちりと掴む。
「ちょっと待て。処女ではないだと?」
「ああ、そうだが」
「こういうのは初めてだと言っていなかったか?あれは嘘か」
「いや、初めてだ」
「じゃあなぜだ」
問い詰められると、ディアボロスは顔を赤らめ、視線を外した。
「それは、その……ひ、一人で、していた時に……つい、うっかり…」
「……お前は馬鹿だ」
「う、うるさいっ!黙っていろっ!してやらんぞっ!」
「……それは困る」
バハムーンが手を放すと、ディアボロスは膨れっ面になりつつ、再び位置を調整する。そして慎重に、ゆっくりと腰を落とし始める。
秘裂にバハムーンのモノが当たり、少し動きが止まる。やがて、花唇が少しずつ開かれ、彼のモノをゆっくりと飲み込んでいく。
「うっ……あぁ…!」
ディアボロスの顔が歪む。さすがに大きすぎるため、かなり苦しいらしい。しかし、それでも彼女は動きを止めはしない。
にち、にちゃ、と湿った音が部屋に響き、同時に二人の荒い呼吸が聞こえる。時間をかけ、ゆっくりと腰を沈めていた彼女は、
半分ほど飲み込んだところで動きを止めた。
「はぁっ……はぁっ……さすがに、大きい…!いつも使っていた玩具とは、比べ物にならんな…!」
苦しげな顔で呟くが、当のバハムーンはさらに大変そうだった。
「うぅ……くっ…!」
ただでさえ禁欲を続けていたところに、この刺激である。その手はシーツを固く握り締め、きつく食いしばった歯の隙間から
抑えきれない声が漏れている。
177 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:34:28 ID:hA1D/Tkq
「……大丈夫か?」
「お……俺の、うっ!せ……台詞……だ…!」
そんな強がりも、この状況では説得力などまるでない。ディアボロスは呆れた笑いを浮かべ、その顔を撫でる。
「では、また動くぞ。いいな」
答えを待たず、再び腰を落とし始める。体内を無理矢理押し広げられる、苦痛と紙一重の快感に、ディアボロスは顔を歪めつつも、
どこか陶然とした表情を浮かべている。彼のモノを深く飲み込めば飲み込むほどに、その感覚は強まっていく。
ついに、彼のすべてを体内に納めると、ディアボロスは彼の胸に体を預けた。
「はぁ……ぁ…!すごい、な……少し、苦しいくらい……だ…」
「ん……ぐ…!」
もはや喋る余裕すらなくなったらしく、必死に声を抑えているバハムーン。それでも、何とか体を動かし、ディアボロスの体を
抱き締めてやった。
「ふふ……どうだ?初めての女の中は?」
「……う、う…!」
喋っている間にも、彼のモノに熱い粘液が絡みつき、ディアボロスの肉壷が蠢動するように絞り上げる。そこに感じる熱さは、
それ自体が直接、快感となり、おまけに熱くぬめった粘膜が締め上げてくる。気を抜けば、いつ達してしまってもおかしくはない。
その、快感を必死に堪える姿を見て、ディアボロスはクスリと笑った。
「可愛いな、お前は」
思わず口走った一言が、彼のプライドに障った。バハムーンはキッと顔を上げ、ディアボロスの顔を睨みつける。
「お…?一体どうし……きゃああぁぁ!?」
突然、バハムーンはディアボロスの両足を抱え込むと、勢い良く立ち上がった。全体重が結合部にかかり、ディアボロスの体内に
彼のモノがより一層深く食い込んだ。
「や、やめろ!痛っ!お願いだ、やめてくれぇ!」
必死に懇願するも、バハムーンはやめる気配を見せない。それどころか、乱暴に彼女の体を揺すり始め、快感よりも強い苦痛と圧迫感が
彼女を襲う。抵抗しようにも、体を持ち上げられては何も出来ない。
「く、苦しっ…!うあぁっ!い、息があぁ…!」
とうとう耐えられなくなり、ディアボロスはバハムーンの首に手を回し、腰に足を絡めると、思い切り抱きついた。さすがにそうなると、
動かしようがなくなってしまい、バハムーンはようやく動きを止めた。
「はぁー、はぁー……こ、殺す気かぁ、馬鹿者ぉ…!」
涙を滲ませ、ディアボロスが泣き声でなじる。
「お前が馬鹿にするからだ」
「それぐらいで怒るな…!男だったら、もっと大きく構えろ…!」
「……むぅ」
とりあえず、バハムーンの怒りは収まっていた。そうなると、こうして抱きつかれているのがなかなか悪くなかった。彼女の体温が
全身に感じられ、大きな胸が押し付けられているのも気持ちいい。
「しばらくこうしててもいいか」
「いいわけあるかぁ!苦しいのだぞぉ!せめて、元通りに座ってくれ!」
「……わかった」
再びベッドに腰を下ろすと、ディアボロスがホッと息をつく。そしてクスンと鼻を鳴らし、バハムーンの顔を正面から見つめた。
「処女ではないが、初めてなのだぞ……頼むから、優しくしてくれ…」
その顔と言葉に、バハムーンの胸がドキッと高鳴る。
「……悪かったな」
「動いてやるから、お前はじっとしててくれ。でないと、お前のは大きすぎて、苦しいんだ…」
そう言われると悪い気はしない。ディアボロスを掴んでいた手を放し、代わりに体を軽く抱いてやる。
178 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:35:00 ID:hA1D/Tkq
少しずつ、ディアボロスが腰を動かし始める。上下に動くと辛いらしく、腰を押し付けたままグリグリと前後左右に動くことが多い。
それでも、バハムーンには十分すぎるほどの刺激である。じっとしていても出してしまいそうなのに、粘膜同士が擦れ合う刺激が
加わっては、長く持つわけなどない。
「おいっ…!く、もうっ…!」
「イキそうか?ふふ、いいぞ。全部受け止めてやる」
妖しい笑みを浮かべると、ディアボロスはバハムーンの上で跳ねるように腰を動かし始める。パン、パンと湿り気を帯びた音が
響き、ベッドが激しく軋む。彼女の体が跳ねるたび、熱い粘膜が彼のモノを強く締め付け、扱き上げる。
食いしばった歯がギリッと鳴り、バハムーンの手がディアボロスの体を強く抱き締めた。
「もう、限界だっ…!」
抱き締めた腕が、その体をありったけの力で引き付ける。そして自身も腰を突き出した瞬間、ディアボロスの体内に熱いものが放たれた。
「ああっぁ…!熱……すごいぃ…!」
思い切り奥まで突き入れられ、まるで子宮に直接流し込まれるように、精液が注ぎ込まれる。それはディアボロスの体内を満たしても
なお勢いが止まらず、二人の繋がる隙間から漏れ出してくる。
しばらくの間、ディアボロスは放心しつつ、体内で拍動しながら精液を吐き出すモノの感覚を楽しんでいた。が、突然バハムーンが腰を
突き上げる。
「うあっ!?な、何を…!?」
「……もっと、したい」
「そ、それは勘弁してくれ。さすがに、二度も連続でされては、身が持たない」
「減るもんじゃないし、いいだろう!?」
「話を聞け、馬鹿者!もう疲れたと言っているんだ!無理にしようとするなら、お前の頭を消し炭にするぞ!?」
そう言い、ディアボロスは小さな炎を吐いてみせる。さすがにそうも明確に脅されると、それ以上しようという気にはなれない。
「……仕方ないな…」
「……そんなに、良かったのか?」
妖艶な笑みを浮かべつつ尋ねるディアボロス。バハムーンは無言で、こくりと頷いた。
「ふふ、そうがっつくな。また明日にでも、来てやるさ」
「楽しみにしている」
口ではそう言いつつ、バハムーンは名残惜しげにディアボロスの中から自身のモノを引き抜き始める。それにつれ、彼女の体内に
残っていた精液がドロドロと零れる。
「んあっ!ああっ……は、はらわたが引きずり出されるみたいだ…!」
彼のモノが抜け出ていく感覚に、ディアボロスの膣内もそれを引き止めるかのように震え、自身の体もピクリと跳ねる。やがてすべてが
抜かれると、彼女は一際大きく、ビクンと身を震わせた。
「はぁ……はぁ……本当に、バハムーンとは大した種族だな…」
彼の胸に体を預け、ディアボロスが呟く。その体を抱き締めると、バハムーンはベッドに寝転がった。
「おう、お前の腕枕も、なかなか気持ちいいものだ」
「………」
バハムーンは無言で、ディアボロスの体を抱き寄せる。大きな胸が彼の体に当たり、くにゃっと形を崩す。
「そんなに気に入ったのか?」
「……ああ」
「ふふ、光栄だ」
ついっと顔を上げると、バハムーンは何も言わずにその頭を抱き寄せ、キスを交わす。そして小動物でも撫でるように、艶やかな髪を
ゆっくりと髪を撫で付けてやる。ディアボロスは目を細め、嬉しそうな笑みでそれに応えた。
「それにしても、疲れた……明日は、腐戦士に任せるか…」
「手下がいる奴は、楽でいいな」
「お前ほどの体力があれば、手下など必要なかろうよ」
「そうだな」
そんな話をするうちに、いつしかディアボロスは眠りに落ち、やがてバハムーンも、静かな眠りへと落ちていくのだった。
179 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:35:35 ID:hA1D/Tkq
その日以来、二人は毎日のように逢瀬を重ねた。探索から戻ると、すぐにバハムーンの部屋へ行き、場合によっては一日に二度、三度と
愛し合っていた。二人の距離は急速に縮まり、今では一度体を重ねた後に、色々と話をするのが日課となっている。
「別に、アンデッドが好きなわけじゃない。ただ、奴等は一度死んだ身だ。他の奴は、違う。そんなのが死ぬのを見るのは、忍びない」
腕枕されたディアボロスが、静かな声で答える。バハムーンは右手を彼女に貸しつつ、左手では彼女の胸をまさぐっている。
「そうだったのか。しかし、俺だけでなく全員、お前が魔族だから、アンデッドを好むものだと思っているぞ」
「お前さえ知ってくれれば、それでいい」
「その誤解が、余計仲間を遠ざけているのにか?」
「ふふ……それはそれ、さ」
完全に、バハムーンは彼女の体に溺れていた。禁欲していた反動もあるのだろうが、それにしても意外なほどあっさりと堕ちてしまった。
「まあ、いい……ディアボロス」
のそりと、バハムーンが体を起こした。
「なんだ?またしたいのか?」
「……ああ」
「ふふふ、いいぞ。どうせ明日は休みだ、今日は存分に相手をしてやる」
そんな彼を見ながら、ディアボロスは目を細めて笑った。
「……近々、他の奴等に、お前の口から、この関係を公言してもらいたいものだな」
「別に必要ないだろう、そんなことは」
バハムーンは特に気にも留めなかった。だが、彼は気付かなかった。そう呟いた時の彼女の顔は、冷たい計算を瞳の奥に忍ばせた、
まさに魔族と呼ぶにふさわしいものだった。

二人が関係を持ってから、約一月が経った。やはり、他の四人とは仲が悪いままだったが、バハムーンはまったく気にしていない。
彼にとっては、ディアボロス一人いればよかった。今では、彼女は彼にとって、色々な意味でかけがえのない存在である。
もちろん、他の四人とは探索以外で交友を持つことはない。が、この日、探索が休みであるにもかかわらず、エルフが彼の部屋を
訪ねてきた。
「バハムーン、ちょっといいかい?」
「む、エルフか?一体どうしたというんだ?」
「……大切な話がある。30分後に、下のロビーに来てくれ」
一瞬断ろうかとも思ったが、その理由も特にない。結局、バハムーンは言われたとおり、寮のロビーに向かった。
他の仲間は、既に全員揃っていた。そして、いつもはそんなものを気にしない彼にもわかるほど、場の空気というものが違っている。
「それで?一体どんな用事だというんだ?」
「パーティに関わる話さ。細かい話は、抜きにしようか」
仲間を代表して、エルフが口を開く。
「早い話が、再編成とでも言えばいいかな。これまではずっと、この面子で続けてきたけど……あまりに、気の合わない仲間が多すぎる」
「……ふん、それで?」
「あ〜……言い辛いけど、特に問題なのが、あなたと、ディアボロスだ。それで…」
「なるほど。俺に、パーティを抜けろというんだな?」
確信を持って尋ねたが、エルフは首を振った。
「違う。それは、あなたではない」
「すると……そいつか?」
エルフは静かに頷いた。当のディアボロスは、涼しげな顔で椅子に座っている。
「既に、全員話はついてる。あとはあなただけなんだ。彼女を外し、他の仲間を招く。それが、今回の話の内容だよ」
バハムーンはじっと、ディアボロスの顔を見つめる。彼女も、バハムーンを見つめている。その目は、ある種の確信に満ちた笑いを
浮かべていた。
「……一つ聞きたい。それは、パーティの総意なのだな?」
「ああ、そうだよ」
恐らく、彼女はこの事態を読んでいたのだろう。どこまでが彼女の計算なのかは知らないが、少なくともこの展開を読み、
その予防線として自分を利用したのだ。
180 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:36:10 ID:hA1D/Tkq
別に、その事に対しての怒りはなかった。しかし、彼のプライドが、微かな怒りを呼び起こしていた。
ディアボロスが、バハムーンに笑みを向ける。
――いつまでも、俺がお前の思い通りになると思うなよ。
彼女に対し、バハムーンも不敵な笑みを返した。その顔に、ディアボロスの表情が僅かに変わる。
「なら、仕方ないだろう。総意だというなら、俺が改めて意見するまでもない」
「……っ!?」
ディアボロスの顔に、はっきりと動揺の色が浮かんだ。
「……そうか。なら、決まりだね」
「ま、待て!その…!」
「何?今更意見でもあるの?」
クラッズの冷たい言葉に、ディアボロスの言葉は止められた。明らかにうろたえ、周りを見回す彼女の姿は哀れなものだった。
「さっき聞いたよね?そしたら、あなた『別に構わない』って言ったよね。なのに、今更何か未練でもあるの?」
「う……そ、その……そんな…!」
「総意だったら、仕方ないだろう。諦めるんだな」
「そんな……お、お前まで…!」
頼みの綱であったバハムーンの冷たい一言。その一言で、ディアボロスは完全に打ちのめされてしまった。だが、誰も彼女を
慰めようとはしない。
「それじゃ、ディアボロス」
エルフが、死刑宣告に等しい言葉を投げかけようとしていた。ディアボロスは絶望に打ちひしがれた顔で、それをじっと聞くしかない。
「もう、あなたと僕達は、これより仲間ではなくな…」
「おっと、少し待て」
突然、バハムーンが言葉を遮った。いきなり割り込まれたエルフは不快そうな顔をしていたが、仕方なく言葉を切る。
「俺は、いきなり招かれて、結果を聞かされただけだ。俺自身が、そいつの言葉を聞いていない」
「……なら、もう一度聞けばいいでしょう。結果は変わらないと思うし、変わるんなら、それはそれで問題だけどね」
一度仲間の顔を見回し、バハムーンは静かに口を開いた。
「ディアボロス」
完全に途絶えたと思った希望が繋がれ、ディアボロスの顔に僅かな喜びの色が広がる。
「バハムーン…!お願いだ、どうか…!」
「黙れ。お前の言うことは聞かん」
「え…!?」
一度厳しい目で睨みつけ、バハムーンは再び口を開く。
「俺が、なぜ総意なら仕方ないと言ったか、わかるか?」
「え……え…?」
「……お前は、このパーティの、何のつもりだ?」
バハムーンの口から謎かけのような言葉が発せられ、ディアボロスは言葉に詰まってしまう。
「お前自身も、パーティの仲間ではないのか?だからこそ、『総意』であるなら仕方ないと言ったのだ。総意であるということは、
その一員である、お前自身の意思でもあるのだからな」
「あ…」
「……なあ、ディアボロス」
不意に、バハムーンは声の調子を和らげた。
「いつだったか、お前は言ったな。召喚師は、自分の手を汚さず、手下にやらせてこそだと。だがな、こういう大切なときぐらい、
自分で動くべきじゃあないのか?でなきゃ、いつまで経とうと、お前の意思は誰にも伝わらん。お前自身の口から、真意を語れ」
「バ……バハムーン…!」
「おい、おい。お二人さん。いきなり青春ミニドラマ始めないでくれないかなあ」
フェアリーが、苦笑いを浮かべながら声をかける。
「それで、結局何だって言うんだ?再編成はするの?しないの?」
「さっきは、全員一致で再編成だったね。誰かが翻意でもしない限りは、ね」
181 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:36:45 ID:hA1D/Tkq
冷たく言うと、エルフはうんざりした感じで続ける。
「もう一度だけ言うけど、結論は再編成ってことで…」
「……やだ…」
小さな声が聞こえ、エルフは言葉を切った。
「……何か言ったかい、ディアボロス。あなただって、これには賛成…」
「嫌だ……嫌だ!嫌だ!このパーティを抜けるなんて嫌だ!抜けたくない!」
「さっき、『構わない』って言ったでしょ!?それがどうして今更…!」
決まりかけた話を引っくり返され、クラッズが苛立った声を上げる。
「嫌だ嫌だ!!あの時は、お前達に弱みを見せたくなかったんだぁ!でも、やっぱり嫌だ!お願いだから、追放しないでくれぇ!」
普段寡黙なディアボロスが、ここまでなりふり構わず叫ぶのを見るのは、全員初めてだった。だが、それでもクラッズは怯まない。
「弱みを見せたくなかった!?ふざけないでよ!そんなこと考えてる奴と、この先やっていけっての!?冗談じゃない!」
「嫌だ…!悪かった……謝るよぉ…!ごめんなさい……ごめんなさい……ヒック…!お願いだから……仲間でいさせて…!」
「話を聞く限り、あなたはこれまで、自分は仲間だと認識していなかったんじゃないのか?それが『仲間でいさせて』とは……何とも、
都合のいい方だね、あなたは」
「嫌だぁ……今更、どこに行けと言うんだぁ…!ヒック……グスッ……ディアボロスっていうだけで、みんな避けて……なのに、
どうしろって……ふ、ふええぇぇ…!」
とうとう、ディアボロスは泣き出してしまった。それでも、エルフはさらに言葉を続けようとしたが、急にバハムーンが立ち上がる。
「……さて、これで総意ではなくなったな?それでも追放するというなら、それはそれで仕方ない。だがな…」
バハムーンはディアボロスの隣に立つと、その頭をぐいっと抱き寄せた。
「こいつを追い出すというなら、俺も一緒に抜けるぞ」
「な、何を言い出すんだ!?あなたまで抜けたら…!」
「何か不都合でもあるのか?俺自身、ヒューマンやフェアリーは気に食わんし、そいつらも俺が気に入らんだろう。むしろ、大歓迎
じゃないのか?」
「け、けどな!」
当のヒューマンが、慌てて口を開く。
「一気に二人も減ったら、さすがに戦力が…!」
「だからどうした。俺は、こうまでして嫌がるこいつを、平気で追放するようなパーティには、一秒だっている気はない」
しばらくの間、全員が口を開かなかった。重い沈黙が辺りを満たし、時折ディアボロスがしゃくりあげる声だけが響く。
やがて、ヒューマンがぽつりと呟いた。
「……確かに、全員一致でもなくなったし、な。なあ、しょうがないだろ?」
「……バハムーンは嫌いだけど……その、女の子に泣かれると、ちょっとなぁ…」
渋々と言った感じで、フェアリーもヒューマンに同調する。
「泣いたからって、そんな…!でも……確かに、二人に抜けられても、困るよね…」
「現状維持……かな。まあ代わりを探すのも大変だし、その代わりが別のディアボロスだと、もっと困るしね」
全員が、どこか諦めの感じられる溜め息をついた。その瞬間だけ、妙に息が合っていた。
「ちぇ、しょうがないか。じゃ、この話は、なしだね。当分、この編成で頑張ろう」
4人はぞろぞろと立ち上がり、口々に愚痴を言いながら部屋へと戻って行った。それを見送ってから、バハムーンはようやく泣き止んだ
ディアボロスの顔を見つめる。
「これで、いいな?」
「うっく……くすん…。ほ……本当に、見捨てられたと思ったんだぞぉ…!」
「いや、見捨てるつもりだった。あのまま、何もしないならな。だが、まあ…」
一瞬言葉に詰まり、バハムーンは不器用な笑顔を浮かべた。
「そういう奴ではないと、信じていたがな」
「……バハムーン…!」
胸に縋り付くディアボロス。そんな彼女の頭を、バハムーンは優しく、誰よりも愛情の篭った手で、ずっと撫でてやっていた。
182 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:37:20 ID:hA1D/Tkq
パーティの再編話が出てから、また一月が経った。相変わらず、一行の仲は悪い。
「バハムーン、ガリガリうっせえよ。少しは静かにできないのか?」
「ほんとだよ。おまけにこっちまで場所とって……僕の迷惑も考えてくれ」
「黙れ、下等生物共。これでもだいぶ譲ってやってるんだ。むしろ感謝して欲しいところだな」
いつでもどこでも、喧嘩をする。それは今も、変わってはいない。
「ディアボロス。あなたに一つ言いたいんだが、腐戦士出すのはもうやめてくれないか。腐臭が染み付いて、ひどく気分が悪い」
「そうだよー、ほんと。あんなのにべちょーって庇われても嬉しくないし……今度から兎にしてよ、兎」
「兎が死ぬところなど、見たくはないねえ。それに、腐戦士は優秀な盾だ。やめる気はない」
「だからって、学食来るのがわかってるのに、出す奴があるかっ!」
しかし、今では学食に来るのも、6人揃ってである。口喧嘩は相変わらずだが、その表情は以前より柔らかい。
「兎だって、あなたが頑張って回復してあげればいいでしょー!ほんっと、性格悪いんだから!」
「面倒くさいから断る。まあ、気が向いたら、な」
喧嘩しつつの食事が終わり、一行は揃って寮へと歩き出す。そこで、バハムーンが声をかけた。
「なあ、ディアボロス」
「ん?」
「あとで、その…」
「……わかった、わかった。皆まで言うな」
顔を赤らめて答えるディアボロス。その様子を見て、四人が一斉に溜め息をつく。
「どうしてこの二人、こんなに仲いいんだ…」
「なんかムカつくよな…。くそ、いつのまにこんな関係に…」
「……エルフ君、悔しいから私達も付き合っちゃおっか?」
「とっても嬉しい言葉だけど、他の二人の視線が怖い。遠慮せざるを得ない」
「ふん。そういうところが下等生物共だというんだ。悔しいなら、真似でもしてみたらどうだ?」
その一言で、一瞬時が止まった。そして、次の瞬間には一斉に動き出す。
「うおおぉぉ!!ムカつくーーー!!」
「やっぱこいつには出て行ってもらえばよかった!!童貞じゃない奴なんか死ねばいい!!」
「ふん、童貞の下等生物共め。悔しかったら真似してみろ」
「殺してやるーーー!!!」
今にも殴り合いが始まりそうな男三人を尻目に、クラッズとエルフはディアボロスを眺める。
「……スタイルはいいんだよねえ……胸、大っきー…」
「だけど、ディアボロスだからな……僕には、一体どこがいいのか…」
「ふん、一物も細そうなエルフになど、興味はない。お前はそこの、体も胸も小さな奴とお似合いじゃないか」
たちまち、エルフとクラッズの顔が真っ赤に染まった。
「い、言ったなぁ〜!小っちゃいの、気にしてるのにぃ〜!」
「ぼ……僕だって男だ…!さすがに今の言葉はっ…!」
「ああ……すまん。本当にすまん。本当の事を言っては、いけなかったな」
「にやけ顔で言うなあぁぁ!!!殴ってやるーーー!!!」
喧嘩は絶えない。しかしその喧嘩は、いつしか全員が同じ視線の、じゃれあいともいえる喧嘩になっていた。
彼等の間にあった、深く大きい溝。その溝が完全に埋まるのも、そう遠い話ではないかもしれない。
183 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/02(月) 23:43:34 ID:hA1D/Tkq
以上、投下終了。
ディア子は大人の色香が似合うと思う。でも少し抜けてるところある方が好きだったりw

それではこの辺で。
184名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 03:20:12 ID:ZgJ/z5Uy
GJ! ディア子に再熱した!
185名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 17:45:38 ID:e38wEP4C
GJ!!
ディアは完全依存デレだと確信した!!
186名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 02:44:25 ID:rwWpVk7Q
初期からストーリークリアまでお世話になった、バハムーンの帰りを心待ちにするディア子を
ゼイフェア学園から引き戻す時が来たようだな
187名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 11:20:53 ID:wj9ytxOu
>>183
俺、文章で書けないだけで自分の中の妄想ストーリーが最強と思ってたんだが



負けた!
188名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 18:53:58 ID:CFn0lffy
保守
189名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 12:26:38 ID:i0rNLbTJ
hosilyu
190 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:15:15 ID:1WO6PJji
妖刀とかししゃもとか、300時間やっても出ないものなんですね。くそぅ。

今回はヒューマンとエルフによる、クラッズ陵辱モノ。
注意としては出血表現あり。もちろんハッピーエンドのわけがない。
それなりに容赦ないので、苦手な人はスルーでお願いします。
191 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:15:58 ID:1WO6PJji
冒険者を養成するための学校には、毎年多くの若者が入学する。
そのため、歴史の浅いパルタクス学園とて、全校生徒数はかなりの数に上る。故に、その全容を把握するのは不可能に近い。
そんな彼等の間では、しばしば恋愛の話が持ち上がる。そこに関してだけは、ここも通常の学校と何ら変わりはない。
命を預けるパーティの間で、寮や学食でのふとした出会いで、時には地下道でと、ありとあらゆる場所で出会いは訪れる。
彼等も、そんなふとした出会いによって親密になり、今では恋人と呼ばれる間柄になっていた。
「クラッズ、待たせたな」
「ヒューマン君、遅いよー」
「悪い悪い、探索が思ったより長引いちゃってさ」
むくれるクラッズに、ヒューマンは困った笑顔を向け、手を合わせる。
「まあ、いいけどさ。ちゃんと埋め合わせはしてよ?」
「わかったわかった。じゃあ今度チャクラムでも作ってやるから」
「ほんと?約束だよ?」
今までの不機嫌そうな顔が一転、喜びに満ちた笑顔に変わる。そんな彼女の顔を見るのが、ヒューマンの楽しみだった。
「それぐらいの余裕はあるしな。ただ、材料揃うまでちょっと待ってくれな」
「楽しみにしてるから、早めにお願いしまーす」
「はいはい」
それから、二人は揃って学食で食事をし、色々な話に花を咲かせる。クラッズはまだ新入生で、ろくに実戦経験もない。
そんな彼女に対し、ヒューマンの方はかなり熟練した冒険者で、今ではトハス地下道を主な探索場所にしている。なので、彼の話の
大部分は、彼女の理解を超えている。それでも、少なくとも傍目からは楽しそうに見えているし、実際二人は食事と会話を楽しんでいた。
喋りながらなので食べるペースは遅く、二人が食事を終える頃には、もう外はすっかり暗くなっていた。
「あらら、外真っ暗だね」
「あー、ほんとだ。だいぶ話してたからなあ」
ヒューマンはそこで言葉を切ると、少し声の調子を変えた。
「その……お前がよかったら、部屋で話の続きでもしないか?」
が、今度はクラッズが困った笑顔を向け、ヒューマンに手を合わせた。
「ごめんね〜、私明日早いから…」
「そうか〜……お前、いっつも予定合わないよなあ」
「ほんっと、ごめんね。私の方も、今度何か埋め合わせするから…」
「いいよいいよ、気にするな。冒険者は体が資本だしな、それなら早く寝た方がいい」
「そう?ほんと、悪いね。それじゃヒューマン君、またねー」
別れ際にキスをかわし、二人はそれぞれの部屋へと向かって歩き出す。その最中、クラッズはちらちらと後ろの様子を気にしていた。
ヒューマンが手を振ると、クラッズも手を振り返す。
やがて、ヒューマンの姿が見えなくなると、クラッズは不快そうに口元を腕で拭い、ペッと唾を吐き捨てた。
192 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:16:34 ID:1WO6PJji
翌日、クラッズは昼も過ぎてから地下道に向かった。しかし、その出で立ちはどう見ても、探索に向かうそれではない。
地下道入り口に着くと、彼女は共用の倉庫から持ち出した飛竜召喚札を使う。クラッズが背中に飛び乗ると、飛竜は空高く飛び上がり、
一瞬のうちに姿を消した。
風のような速さで飛び続け、すぐに目的地が見え始める。冒険者養成学校の中では強豪と名高い、ランツレート学院だ。
飛竜が高度を下げ、速度を落としてゆっくりと近づく。そのど真ん中に下りる気にはなれず、地下道付近に下りてもらうことにする。
彼女が背中から飛び降りると、役目を果たした飛竜はかき消すように消えてしまった。だが、この方が彼女にとっても都合がいい。
まったくもって便利な乗り物だと、クラッズはしみじみ思った。
学校の敷地内に足を踏み入れると、青い制服の中で黒い制服はひどく目立つ。そんな彼女に向かって、一人のエルフが歩み寄った。
「やあ、クラッズ。久しぶりだね」
「あ、エルフ君!嬉しいな、待っててくれたの?」
「もちろん。君がわざわざ来てくれるんだから、これぐらいは当然さ」
親しげに話す二人。その姿は誰がどう見ても、恋人同士にしか見えない。
そして実際、二人の関係はそうであった。
昨夜ヒューマンとしていたように、クラッズはまた学食で食事をしつつ、エルフとお喋りをする。このエルフも相当な実力者で、最近は
空への門を基点としているらしい。もちろん、彼女にはそれがどんなところだか想像も付かないのだが、話を聞く限りでは面白そうな
場所である。今度飛竜でこっそり行ってみようと、彼女は思っていた。
「それにしても、ここまで来るのは大変じゃないかい?」
「大丈夫だよー、いっつも強い人達に連れてきてもらってるから」
「でも、結構距離あるだろう?」
「それがそうでもないんだよー。みんなマジックキー開けてるから、ここまでは案外すぐなんだよね」
「ああ、なるほど。道理で、ここまで旅をしてる割には、いつまで経っても初々しいと思った」
「ひどーい!これでも少しは頑張ってるのに!」
「ははは、ごめんごめん」
元々クラッズという種族に対して好感を抱くエルフは、彼女を信じきっている。その言葉に疑いを抱くなどということは、夢にも思わない。
「ところで、君の方はどうだい?少しはいい武器でも拾えた?」
「相変わらずこれ〜。全っ然だよ」
そう言って、クラッズは新品同様のダガーを見せる。
「……まっさらだね。一回も使ってないんじゃないかい?」
「だってぇー!私の活躍なんて、宝箱相手にしかないんだもん!戦闘じゃいっつも後ろだし…」
「ああ、なるほど。いや、ごめんごめん」
「チャクラムとかあったら、私でも少しは貢献できるんだろうけどさぁ…」
「確かに、あれはいい武器だね。もし欲しいなら、今度作ってあげようか?」
「ほんとに!?」
期待に目を輝かせるクラッズ。彼でなくとも、クラッズにそんな目をされて断れるエルフなどいないだろう。
「ああ。幸い、材料なら大体揃ってるし、今度会うときまでには作っておけるはずだよ」
「わーい!エルフ君、大好き!」
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、気付けば外は夕焼けの色に染まっていた。
「あ、ごめん。私、そろそろ帰らなきゃ」
「ああ、もうそんな時間だったのか……なあ、クラッズ」
少し迷ってから、エルフは恥ずかしそうに口を開いた。
「もし、よかったら……今日は、泊まって行かないかい?」
「……ごめんね〜、そうしたいんだけど、他のみんなが待ってるから…」
クラッズが申し訳なさそうに言うと、エルフは少し不満げな溜め息をついた。
「付き合いだしてから、結構経つけど……君はつれないね」
「だって、学校が違うんだもん…。私だって……その…」
「……いや、悪かった。君にだって、色々事情があるだろうからね」
エルフが取り繕うような笑顔を浮かべると、クラッズは寂しそうな顔を向けた。
193 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:17:13 ID:1WO6PJji
「そのうち、ゆっくり時間が取れるようにするからさ。ね?」
「ああ。楽しみにしてるよ」
二人は席を立つと、揃って地下道に向かった。入り口のすぐ近くにある魔法球に手をかざそうとして、クラッズは手を引っ込めた。
「ん、どうしたんだい?」
「お別れの挨拶、忘れてた」
ペロッと舌を出すと、クラッズは彼の服の裾を掴み、目を瞑ってグッと背伸びする。そんな彼女に、エルフは優しく口付けをした。
「それじゃまたね、エルフ君!」
「ああ、おやすみクラッズ」
今度こそ魔法球に手をかざし、クラッズはパルタクスへと戻る。が、地下道入り口に出た彼女は、すぐにまた地下道内へと引き返す。
そして再び魔法球に手をかざすと、その日地下道に捨てられたアイテムの物色を始めた。
「んーと……あ、飛竜の鱗だ、ラッキー。と、これは錆びた鎖。売れるかな?で……おー、鬼切だっ!」
これが、彼女の日課であった。実際のところ、彼女がこれまで自分の力でアイテムを手に入れたことは、一度もない。しかも、パーティを
組んで地下道探索をしたことすらないのだ。
金目の物と自分で使う物の物色を終えると、購買でいらないアイテムを売り捌いてから、クラッズは寮の部屋へと戻る。
「ただいまー」
「お帰りー。今日は遅かったね」
帰ってきたクラッズに、ルームメイトであるヒューマンの女子が声をかけた。
「ランツレート行って来たからさー。あーあ、面倒くさい」
クラッズはいかにも大儀そうに伸びをすると、ドカッと椅子に腰掛けた。
「あっちの相手はエルフだっけ?ほんと、気をつけなよ〜?」
「大丈夫だってば。そもそも学校が違って、おまけにヒューマンとエルフだよ?接点なんか、あるわけないじゃん」
「それでも、意外な縁っていうのもあるんだから。最近じゃ、あっちとこっちの生徒がパーティ組む事だってあるんだよ」
「だから大丈夫なんだってば。あっちもこっちも、もうすっかり定着したパーティに入ってるんだから。バレるなんてないない」
そう言ってずるそうに笑うクラッズ。そんな彼女に、ヒューマンは少し呆れた声をかける。
「まあ、いいけどさ。ほんと、学校跨いだ二股なんて、よくやるわ」
「いいじゃん、この方がずっと楽に稼げるんだし。危険な目にも遭わないし、まともに地下道行くより、ずっと賢いでしょ」
「そう言われちゃうと、ちょっと傷つくなぁ」
「ヒュマちゃんもやればいいのに。どうせ男なんて、ヤることしか考えてないんだし、ちょっとそれっぽい素振り見せたら一発よ」
それを聞くと、ヒューマンはおかしそうに笑った。
「でも、二人には気の毒な話だよね。散々気を持たされた挙句、最後はポイ、でしょ?」
「同情する必要なんてないって。女は買う、男は貢ぐ。これ常識」
「ま、否定はしないけど〜」
そうヒューマンが笑うと、クラッズも笑顔を見せる。
「わかってくれるから、ヒュマちゃん好きだよ」
「私も性格は悪い方だって言われてるし〜。でも、君ほどじゃないなぁ」
「そう?」
「君、心はお金で簡単に売るけど、体は死んでも売らないってタイプでしょ。ある意味、いっちばん嫌なタイプだと思うよ、私は」
「あんなのに初めてやる気なんてないし。そう言うヒュマちゃんだって、似たようなもんでしょ?似たようなって言うか、逆だっけ?」
「ううん、逆じゃないよ」
「どんなんだっけ?」
クラッズが尋ねると、ヒューマンは楽しそうに笑い、選手宣誓でもするかのように、勢いよく手を上げた。
「私、お金になるなら心も体も売っちゃいまーす!」
「それは人としてどうなのよ」
周りからすればちっとも笑えない内容であったが、二人は実に楽しそうに笑った。このヒューマンの前でだけは、クラッズも本性を
丸出しにして会話できる。そのため、クラッズにとって、彼女は唯一の、気の置けない友人であった。
「ま、男なんてちょっと気を持たしてやれば、あとは簡単だけどさ。でも、血の気の多い奴ばっかりなんだし、バレたら危ないからね?」
「だぁ〜から大丈夫だってば。心配してくれるのは嬉しいけど、痛くもない腹を探られるのは嫌なものだよ?」
「わかったよ〜、もう言わない。何にしろ、うまくやりなね?」
「任せてよ。利用価値がなくなるまでは、思いっきり使ってやるつもりだからさ」
そう言って笑うクラッズの顔は、とても無邪気なものに見えた。こんな顔を見たら、自分が男だったら即座に騙されてしまうだろうと、
彼女はぼんやりと思っていた。
194 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:18:02 ID:1WO6PJji
それからもクラッズは、二人の男との関係を続けた。もちろん、体を許すことはなく、それでいて常に気を持たせ、うまい具合に高価な
アイテムをせしめていた。男を手玉に取ることなど、彼女にとっては造作のないことであった。
しかし、その関係をずっと続けるには、ほんの少し運がなかった。
ある日、ヒューマンは探索を終えると仲間と別れ、一人で購買を覗いていた。何かめぼしい武器でも入っていないかと見ていると、
一つのチャクラムが目に止まる。
「……?」
何だか見覚えがある。どれもこれも同じような武器の中で、これだけが異様に存在感を放っている。
考えたくはなかった。しかし、それしか考え付かなかった。どうしても確かめてみたくなり、それを手に取り、裏返してみた。
「……先生、ちょっといいですか?」
「おう、そいつが気に入ったのか?」
「ああ、いや、そうじゃなくって……その、このチャクラム売った人のこと、覚えてませんか?」
そう尋ねられると、ニャオミンは顎に手を当て、考える仕草をした。
「さぁてなあ。何しろ、色んな奴が来るから、誰が売ったかなんて、いちいち覚えてねえなあ」
「そうですか……でも、何とか思い出せませんか?」
言いながら、ヒューマンは懐に手を入れ、無造作に金の束を掴むと、そっとカウンターに差し出した。それをさりげなく受け取ると、
ニャオミンはふと何かを思い出したように言った。
「あ〜、そういやクラッズの女子の奴が、それ持ってきたような気がするな。ありゃ新入生だったんじゃねえかな」
まず、間違いないだろう。クラッズにあげたチャクラムには、意図したわけではないが、目印が付いていた。
実は、これを彼女に渡す前に、一度落として傷をつけてしまったのだ。幸い刃の側面だったので使用に差し支えはないだろうと、
そのまま渡したのだ。恐らく、ニャオミン先生も同じような判断を下し、そのまま置いてあるのだろう。
「そうでしたか、ありがとうございます」
「で、そいつは買うのかい?あるいは、他に聞きてえことでもありゃ、聞くだけ聞くぜ」
「いえ、十分です……あ、やっぱり焼きそばパン一つください」
部屋で焼きそばパンを食べながら、ヒューマンはあのチャクラムについてずっと考えていた。
彼女は、チャクラムを持っていた。自分があげたのは、あの一つだけである。となると、あれは彼女が自分で手に入れたものだろうか。
が、そう考えるにはいくつか問題がある。一つは、彼女があれの素材を手に入れるだけの力量がないこと。もちろん、武器そのものを
手に入れられる可能性も、ないに等しい。そして何よりの問題は、そのチャクラムを自分があげた物だと言っていたことである。
今この目で見た以上、それは嘘だろう。ではなぜ嘘を言う必要があるのか。
答えは決まっている。知られたくない秘密があるのだ。となると、事態はより考えたくない方向に進む。
彼女が今持っているチャクラムも、誰かにもらった物。その相手を、彼女は知られたくない。となると、恐らくは自分と同じ立場の男。
おおかた、二人から同じ物をせしめ、片方は金にし、もう片方をいかにも大事にしてるというように見せているのだろう。
だが、彼女と他の男が付き合っているという話は聞いたことがない。あまり考えたくないが、その問題も解決する方法もなくはない。
焼きそばパンを食べ終えたヒューマンは、しばらく部屋でぼんやりしていた。が、やがて部屋を飛び出し、仲間の部屋を回ってしばらく
休むということを伝えると、倉庫から飛竜召喚札を取り出し、どこかへと飛び去って行った。
195 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:18:53 ID:1WO6PJji
ヒューマンが急にどこかへ行ってしまったという話を聞き、クラッズは少し焦った。しかし、三日ほど経っても、特に何か動きが
あるわけでもなく、心配は杞憂だろうと思うことにし、いつものようにランツレートヘとお邪魔していた。
「どうかしたの?今日は何だか浮かない顔だね?」
「え?ああ……仲間の一人がさ、しばらく休むっていうから、何かあったのかなって、ちょっと不安でね…」
「そうだったのか。それじゃ、チャクラムを試す暇もなさそうだね」
一瞬焦ったクラッズだったが、逆にいい言い訳の材料ができたことに、彼女はホッとしていた。まだまだまっさらなチャクラムを
どう言い訳するか、それも彼女の懸念の一つだったのだ。
何かと世話を焼いてくれるエルフは、恰好のカモである。どちらかというと、ヒューマンよりも扱いやすい。
「今日は、ちょっと早めに帰らないといけないんだけど……ごめんね、なかなか予定合わなくって」
「いや、気にしないでいいよ。そのうち余裕ができたときに、ゆっくり遊びに来てくれ」
「エルフ君のそういうところ、大好きだよ!」
そう言ってじゃれつくクラッズに、エルフは幸せそうな笑顔で応える。少なくともエルフとしては、二人でいる時間は他のどんな時より
幸せだった。
やがて、いつも通りにクラッズが魔法球で帰り、エルフも彼女を見送ってから地下道を出た。と、その入り口に、一人のヒューマンが
佇んでいる。顔に見覚えはなく、無視して通り過ぎようとしたが、ヒューマンが口を開いた。
「今の子は、お前の彼女か?」
「……いきなり何なんだい?それに答える義理は、僕にはないよ」
彼に構わず帰ろうとしたが、ヒューマンは腕を掴んできた。
「ところが、そうでもないんだ」
「……君が何者で、どういうつもりかは知らない。だけど、これ以上しつこく付きまとうなら…」
そこまで言ったところで、ヒューマンがスッと生徒手帳を差し出してきた。それはここの物ではなく、パルタクスの生徒手帳だった。
「君はパルタクスの…?それがどうして、うちの制服を着てるんだい?」
「答えを知りたきゃ、一週間後に、パルタクスの寮の屋上に来てくれ。ただし、こっそりな。俺みたいに、絶対見つからないように」
それだけ言うと、ヒューマンは飛竜召喚札を使い、呼び出した飛竜に乗ってたちまち飛び去ってしまった。残されたエルフは、怪訝そうな
顔で、飛び去る飛竜を見つめていた。

間もなく、ヒューマンは何事もなかったかのように、学園に戻っていた。当然、パーティの仲間からは何をしていたのか聞かれたが、
個人的な用事だとしか答えなかった。彼が戻ったことでクラッズも、ホッと息をついていた。
それから少し経って、その日はヒューマンの方からデートに誘ってきた。クラッズは断る理由もなく、気軽にそれを受ける。
ヒューマンは機嫌がいいのか、妙に愛想がよかった。昼食もデザート付きでごちそうしてくれたし、いつもよりずっと口数が多い。
クラッズとしても、彼の機嫌がいいのは結構なことだった。ダメ元でせがんだデザートもおごってもらえたし、食事自体も高価な物を
ただで食べられた。それを餌に関係を迫ってくるかと一瞬警戒したが、それはヒューマン自身が『明日は早いから』と言ったことで、
心配する必要もなくなった。
少し日が傾き始めた頃、ヒューマンはクラッズを寮の屋上に誘った。少し疲れてはいたものの、何かと気分がよかったため、クラッズは
サービスのつもりで誘いを受けることにした。
196 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:19:35 ID:1WO6PJji
屋上に出ると、ヒューマンは大きく伸びをした。確かに、ここは開放的な気分になるし、見晴らしがよくてなかなかいいところである。
「なあ、クラッズ」
「ん、なーに?」
「俺のあげたチャクラム、使ってみたか?」
一瞬、クラッズは焦った。しかし、そんな様子はおくびにも出さずに答える。
「みたよー。でも……その、扱い慣れなくって、外してばっかり…」
「ははは、そりゃそうだろうな。少し練習が必要らしいし。んでー、その、なんだ。もう一個聞きたいんだけど…」
ヒューマンの歯切れの悪さに、クラッズは少し警戒した。が、彼の口から出た言葉は、特にその必要もない言葉だった。
「お前さ、すっごく愛想いいし、可愛いし、他の奴から告られたり、付き合ったりとかしてねえ?」
「そんなわけないでしょー!私が好きなのは、ヒューマン君だけなんだから!」
そう言って少し怒って見せると、ヒューマンはホッとしたように笑った。よくよく、ちょろい男だと、クラッズは心の中で嘲笑する。
「そっか、そう言ってくれると嬉しいよ。……でも、ほんとにそうか?俺よりいい奴なんて、いっぱいいないか?」
「そんなことないよー。ヒューマン君が一番だって…」
その瞬間、入り口の陰からズサッと音が聞こえ、二人は飛び上がった。しかし振り返っても、誰も出てくる気配はない。
「……先客、いたのかな?」
ヒューマンが、気まずそうに笑う。
「そ、そうかもね〜。あはは……降りよっか?」
「そうだな、邪魔しちゃ悪いしな、ははは…」
二人はそこから逃げるように、階段を降りて行った。何だかそれで興を殺がれてしまい、二人はそのまま別れると、それぞれの部屋に
戻った。が、ヒューマンはクラッズがいなくなったのを確認すると、足音を忍ばせつつ屋上へと戻った。
屋上に出ると、ふう、と溜め息をつく。そして、視線を上に向けたまま、声をかけた。
「……こういうわけだ。わかってもらえたか?」
「……ああ、よくわかったよ…」
入り口の陰から、声だけが返ってくる。エルフらしい、静かなよく通るその声には、抑え切れない怒りが篭っていた。
「ははは、それにしても、うまいことやられたよなあ、俺等。普通、こんなん気付かねえもんなあ」
「気付かなければ、いっそどれほどよかったか…!いや、それもないか。そうだったら、僕達は利用され、捨てられるだけだった」
二人の溜め息が重なる。同時に、二人ともその目に暗い情念を宿す。
「お互い、あいつに貸しはだいぶあるよな?」
「まとめて、払ってもらうとするか」
「道具扱いされた挙句、散々焦らされてんだ。そっちも一括払いでいいよな?」
「いいんじゃないか。君が混じるのが残念だが、僕はそのつもりだ」
「へん、そりゃ俺の台詞だ」
二人の男は笑った。その笑顔には、ひどくどす黒い怒りの炎が見え隠れしていた。
197 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:20:30 ID:1WO6PJji
翌日、クラッズはまたもヒューマンからの誘いを受けた。二日連続というのも珍しいが、何でもぜひ見せたいものがあるのだという。
そんなわけで、面倒くさく思いながらも出かける準備をしていると、同室のヒューマンが声をかけた。
「またデートのお誘い?」
「そうだよ。なんか知らないけど、見せたいのがあるんだってさ」
それを聞くと、ヒューマンは少し不安そうな表情を見せた。
「ねえ、なんかおかしいと思わない?だって、そんなの昨日のうちに済ませればいい話じゃない。なのに、二日連続で誘われて、しかも
二日目にそんなこと言うなんて…」
だが、クラッズは自信たっぷりに笑った。
「もー、ヒュマちゃんは心配性だなあ。あの馬鹿に、何がわかるって言うのよ?」
「もし何か企んでるとしたら……君、危ないよ?」
「だーいじょうぶだってば。私だって足は速いんだし、いざとなったらすぐ逃げるもん」
「……まあ、いいや。とにかく、気をつけてね」
「はいはい。どうせ大したことじゃないだろうし、さっさと済ませてきちゃうよ」
軽い足取りで部屋を出るクラッズ。その背中を、彼女は不安げな顔で見送っていた。
寮を出て、約束の地下道入り口に着くと、既にヒューマンが待っていた。手を振ると、彼の方も手を振り返す。
「何?見せたいものって地下道の中なの?」
「ああ、まあな。本当は中で待っててもよかったんだけど、一緒に行った方が安心だろ?」
「そうだね、その方が私も嬉しいよ」
いざとなれば、地下道の方が逃げやすいだろう。そう考え、クラッズは特に警戒もしなかった。
トレーン地下道に入ると、ヒューマンはフロトルを唱えた。突然体が浮かび上がり、クラッズは一瞬慌てたが、すぐにその不思議な感覚を
楽しみだす。
「うわぁ、体浮いてる〜!面白〜い!」
「お前、パーティでフロトル使ったことないのか?」
訝しむように言われ、クラッズは初めて、この魔法がかなりの初級魔法なのだということを知った。
「あ……あ、いやね、私達はほら、まだ魔力もそんなにないし…」
「あんまり使ってもらえねえってことか。ま、そうやって節約するのもありかもな」
どうでもよさそうな感じで言うと、ヒューマンは先に立って歩き出した。足が着かない感覚に少し戸惑いつつも、クラッズはすぐに
その後を追う。
道すがら、何度かモンスターとの戦闘があった。さすがにヒューマンは強く、どんな群れであろうと傷一つ受けることなく、手にした杖で
次々に打ち倒していく。クラッズもチャクラムで攻撃を仕掛けるのだが、実戦経験のない彼女の攻撃は、相手に掠りすらしなかった。
そんな彼女を見て、ヒューマンが笑う。
「確かに、そんな動きじゃあ当てようがないな。新品同様のわけがわかったぜ」
「あ、あははは…」
情けない姿を見せたものの、図らずも、昨日の嘘が立証できたようで、クラッズはなんとなくホッとしていた。
そうこうしているうちに、二人はトレーン地下道の中央までやってきた。ヒューマンは当たり前のように、その中心部へ向かっていく。
「うわ、ここの下、ディープゾーンだよ?」
「ああ。落ちたら死ぬな」
「こ、この魔法、いきなり切れたりしないよねえ?」
「アンチスペルゾーンでもなきゃ、切れやしねえって。そんなのここにはないし、安心しろ」
ディープゾーンに囲まれた中心部に着くと、ヒューマンは立ち止まった。クラッズもその隣に並ぶが、特に何かあるようには見えない。
一応周囲を見回してみるが、やはり何もない。
ヒューマンを見てみる。しかし、彼が動く気配はなく、クラッズはだんだんと不安になってくる。
「ね、ねえ。見せたいのって、ここのこと?」
「いや、そうじゃねえ」
そう答えるヒューマンの横顔は、ひどく冷たいものに感じられた。心なしか、声にも表情が感じられない。
「じゃあ……その、何なのよ?こんなとこでじっとしてたって…」
「……そうだな。そろそろいいかもな」
ピィーッと、甲高い指笛の音が響き渡る。その音は静寂に包まれた地下道の中で、異様に大きく聞こえた。
198 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:21:16 ID:1WO6PJji
やがて、こだましていた音が地下道の壁に吸い込まれていく。ヒューマンの動きはない。しかし、クラッズは不意に何かの気配を感じた。
モンスターでも来たのかと思い、慌てて振り返った彼女は、そのまま魔法でもかけられたかのように、まったく動けなくなってしまった。
「う……嘘でしょ…!?」
「……やあ、クラッズ」
いつの間にか、後ろにエルフがいた。紛れもなく、ランツレートの彼だ。慌ててヒューマンを見上げると、彼は無表情な目でクラッズを
見下ろしていた。背筋に、冷たいものが走る。
「ま、こういうこった。どうだい、びっくりしただろ?」
「あ……あ…!」
「昨日の屋上での会話、全部聞かせてもらったよ。僕にも彼にも、同じ言葉を吐くなんて……君は嘘つきだねえ」
笑いかけるエルフの顔は、ゾッとするほど冷たいものだった。
考えるより早く体が動いた。すぐさま身を翻し、その場から逃げようとする。が、いかに身軽なクラッズとはいえ、実戦で鍛え上げられた
二人にはかなわなかった。
「無駄だ、インバリル!」
「きゃあ!?」
突然、浮かんでいた体が地面に落ち、彼女は危うくディープゾーンに落ちる直前で踏みとどまった。一瞬逃げ場を探して首を巡らせた瞬間、
エルフが思いもよらぬ速さで接近し、クラッズの首を掴む。
「い、痛いっ!」
「逃がしはしないよ。もっとも、逃げ場もないけどね」
エルフの言う通り、ここはディープゾーンに囲まれた、狭い足場である。空中浮遊ができなければ、脱出は不可能だった。
「や、やめて!放してよ!」
ついいつもの調子で言って、クラッズはゾッとした。二人とも、その目はまるで狩りの獲物を見るような目だった。
「ね……ねえ、悪かったよ……あ、謝るからさ、許してよ、ね?ね?」
取り繕うように笑いかけても、二人は笑いもしなかった。それどころか、より怒りを込めた目でクラッズを睨みつける。
「どうせ、この状況でも軽く考えてるんだろうね。だけど、君みたいな子を許せるほど、僕の心は広くない」
「まあ、お前にやっちまったもんを返せとは言わねえけどよ。でもな、その分お前からは何ももらってねえよな?」
喋りながら、ヒューマンはクラッズの後ろに回りこんだ。そして彼女の制服に手をかけると、思い切り引き裂いた。
「きゃあぁぁ!?」
「本当なら、君には甘い言葉の一つでも囁いてあげたかったところだけど……もう、そんな気も失せた」
そこでようやく、クラッズはこれから何をされるのかを悟った。
「や……やだよ、やめてよ!そんなのやだ!大体っ、ふ、二人とも少しぐらい、いい思いしたでしょ!?それに、二人とも強いんだし、
使った金額だって大したことないでしょ!?だ、だからっ、そのっ……やめてよ!」
怯えきった表情でまくし立てるも、それはますます相手の神経を逆撫でしてしまう。
「違うんだよ、金額の多寡じゃねえんだよ……てめえは、俺等をただの道具としか見てなかった。そのために、騙した。それが、
許せねえんだよっ!」
ヒューマンがスカートを剥ぎ取ると同時に、エルフはクラッズの体を突き飛ばした。クラッズはよろめいて倒れ、ともかくも解放された
腕で、恥ずかしそうに胸を隠す。
「い、痛い…!」
「ふん、同情でも引きたいのかい?生憎だけど、僕はもう君に対して、そんな感情は持ち合わせていない」
「まああれだ、次のために覚えておけよ。変に焦らすと、ろくなことにならねえってな」
一瞬、二人は目配せを交わした。ヒューマンが『お先にどうぞ』とでも言うように肩をすくめ、エルフがゆっくりとクラッズに近づく。
「や……やだ、こないで!」
立ち上がろうとしたクラッズを、エルフは素早く押さえつけた。両腕を捻り上げ、後ろ手にして押さえ込むと、まだ未熟な体に
手を這わせる。恥ずかしさと恐怖から、クラッズの体がビクリと震えた。
199 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:22:08 ID:1WO6PJji
「い、痛いよっ!やめて!放してぇ!」
「この体、何度この腕に抱きたいと思ったことか。でも今は……ふん、むしろ、憎らしくてたまらないな!」
エルフの手が、クラッズの乳首を思い切り摘んだ。
「きゃああぁぁ!!!い、痛い痛い痛い!!!やめてぇ!!!千切れちゃうよぉ!!!」
「それがどうした。そんなの、僕の知ったことじゃない!」
「いっ……痛いいぃぃっ!!!!」
そのまま、エルフは力任せに乳首を引っ張った。本当に引きちぎられそうな痛みが走り、クラッズは涙を流して悲鳴を上げる。
「おいおい、いきなり飛ばすなよ。せめて俺の分は残しとけ」
笑いながらヒューマンが近づく。クラッズは助けを求めるように彼を見上げたが、ヒューマンはクラッズの髪を乱暴に掴んだ。
「い、痛っ!」
「俺はてめえの体になんて興味ねえ。ま、楽しませてもらうぜ」
ゆっくりとジッパーを下げ、ヒューマンは自身のモノを取り出した。初めて見るそれに、クラッズの顔が恐怖に引きつる。
「ひっ!?」
「嫌そうだな?いいか、歯立てんなよ」
「な、何するつも……うぐぅっ!?」
クラッズの口内に、ヒューマンは強引に突き入れた。驚きと気持ち悪さと、喉の奥に当たる感触に、クラッズはひどい吐き気を催す。
「ぅえ……お、おえぇっ!」
「おいおい、歯ぁ立てんなよ?もし噛みやがったら…」
突然、ヒューマンの手からクラッズの足元に炎が撃ち込まれる。炎は石造りの床を溶かし、ぽっかりと大きな穴を作っていた。
「う……あ、ああぁぁぁ…!」
それを見た瞬間、クラッズはガタガタと震えだし、必死に口を開けていようとする。が、エルフがその手をそっと滑らせ、彼女の
秘裂に触れた。
「んぐっ!うぅっ!」
「おいおい、あんま変なことして、噛ませようとするなよ?」
「君と同じように、やりたいようにやってるだけだ」
「はは、そうかよ。んじゃ、危なそうだし、さっさと終わらせるか」
言い終えると同時に、ヒューマンはクラッズの髪を掴み、乱暴に頭を揺さぶり始めた。
「んんっ!?んぐっ……ゲホッ!!あがっ……がはっ!や、やめ……んぐぅ!!」
腕を突っ張ろうにも、両手はエルフに封じられ、抵抗することもできない。何度も何度も喉の奥まで突き入れられ、口内を蹂躙される。
それを続けるうち、ヒューマンのモノは大きく硬くなり、息苦しさはどんどん増していく。
エルフはエルフで、クラッズの幼く見える秘裂を執拗なまでに触っている。が、それは愛撫などというものとは程遠い、ただ自分の
欲望を満たすためだけの動きであり、クラッズにとっては痛みしかない。
「うぅ……うえっ…………がふっ!」
下手に呻き声を上げ、歯を立ててしまえば殺される。そうでなくとも、男二人に体をいいように弄ばれ、口には触りたくもない物を
突っ込まれている。恐怖と不快感に、クラッズの全身はすっかり強張っており、その秘部も異物の侵入を固く拒んでいる。
「ふーん、とても濡らしたりできそうにないな、これは」
「どうせそうだと思った。ほらよ」
ヒューマンはクラッズの頭を掴んで揺さぶったまま、ポケットから小瓶を取り出してエルフに投げた。
「何だい、これは」
「食用油。それつけときゃいいだろ」
「用意がいいことだね」
「どうせ濡れねえのはわかりきってるんだ。こいつの都合になんて、合わせてらんねえ」
200 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:23:06 ID:1WO6PJji
エルフは栓を抜くと、中身をたっぷりと指に絡めた。そして再び秘裂に指を這わせると、一気に突き入れた。
「ふぐぅっ!!」
「痛って!ちっ、噛むなっつっただろっ!」
ヒューマンはクラッズの頭を掴むと、強引に自分の腰へと押し付ける。
「がっ……う……ぐふっ……ううぅぅぅっ…!」
「ああ、暖かくて気持ちいいなこれも。ははは」
ヒューマンのモノが喉を塞ぎ、クラッズは窒息の苦しみに身悶える。それでもなおヒューマンは許さず、やがてクラッズの意識が
遠のき始めた瞬間、見計らったように腕を放した。だが、ようやく許された呼吸を始める間もなく、ヒューマンは今までより乱暴に
クラッズの口内を犯し始めた。
「くっ……やべ、出る!」
その言葉の意味を理解する前に、クラッズの口の中に熱くて生臭い液体が放たれた。思わず吐き出そうとするが、直後ヒューマンは
またもクラッズの喉の奥まで突き立てる。
「んぐぁ……うぐ、げ……ぐぶぅっ!ごぼっ!」
食道に直接精液を注ぎ込まれ、ひどく喉に絡むその液体を否応なく飲まされる。えずいた瞬間に、その一部が気管に入りかけ、クラッズは
思い切りむせ返った。だが口は塞がれており、精液が出る箇所など一つしかない。
「うわ、きったねえな。こいつ鼻から出しやがった」
そう言いつつも、ひどく満足げな表情のヒューマン。最後の一滴までクラッズの口内に注ぎ込むと、ようやく押さえていた頭を放す。
途端に、クラッズは激しく咳き込み、嘔吐した。無理矢理飲まされた精液を吐き出し、鼻にまで回ったそれを腕で拭うと、涙に濡れた目で
二人を見つめる。
「うぅぅ……お願い、だから……もう許して…」
「音を上げるのが早いね。まだ僕の方は、ろくに何もしてないんだけど?」
危ないところでクラッズの吐いた物をかわしたエルフが、彼女の中に突き入れた指を激しく動かした。
「痛いっ!やだぁ!ごめんなさい、ごめんなさいっ!!お願いだから、もう許してよおぉ!!」
「今更謝ったって、それが何になる」
冷たく言い放つと、エルフもズボンを下ろした。クラッズの顔が、恐怖に引きつる。
「ご……ごめんなさい…………ごめんなさい…!」
エルフはクラッズの中から指を抜くと、自身のモノにも油を塗りたくり、それをゆっくりとクラッズの小さな割れ目に押し当てた。
「い、嫌だぁ!!お願いだからそれだけはやめてぇ!!私、初めてなのぉ!!!お願いだから許してぇ!!!」
その途端に、クラッズは今までにないほど暴れだした。エルフの腕を跳ね除け、代わりに掴まれた足をばたつかせ、地下道の床を
激しく引っ掻き、何とかしてその手から逃れようとする。
「だから、言っただろう。今更、君の言うことなど、聞くつもりはない!」
そんな彼女をいとも簡単に押さえつけると無理矢理足を開かせ、エルフは今度こそ狙いを定めた。
「やだやだやだやだ!!!お願いだからああぁぁ!!!やめっ…」
必死に哀願するその言葉が終わる前に、エルフは思い切り腰を突き出した。
「ひっ、ぎゃああぁぁぁ!!!ああああやだやだ痛い痛い痛いいいぃぃぃ!!!!」
脳天まで突き抜けるような、凄まじい激痛がクラッズを襲う。あまりの痛みに遠のく意識すら、その痛みが引き戻してしまう。
「抜いてぇっ!!!お願いだから抜いてえぇぇ!!!」
「うるさいな。まだ全部入ったわけじゃないってのに」
「もうやだやだやだぁぁ!!お願いしますやめてくださいいぃぃ!!!お願いだから許してくださいいいぃぃ!!」
顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、クラッズは必死に叫ぶ。ただでさえ処女だったのが、遥かに体格の違う男に、しかも無理矢理
突き入れられたのだ。秘裂からは、破瓜だけではない血がとめどなく滴り落ち、その激痛は想像を絶するものだった。
「痛いのぉ!!!本当に痛いのぉ!!!お願いだからもうやめてえぇぇ!!!」
クラッズの言葉も、今の二人にはただの興奮剤にしかならなかった。自分達を欺き、利用していた相手が泣き叫ぶ姿は、二人に心地良い
征服感をもたらすと同時に、えもいわれぬ暗い悦びを呼び起こす。
201 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:23:59 ID:1WO6PJji
エルフが、乱暴に腰を突き動かす。途端にクラッズの体はガクガクと揺さぶられ、泣き声も一層激しくなる。
「あ゙あ゙あ゙あ゙!!!いだいいだいいいぃぃ!!!やめてくださいいぃぃ!!!許してくださいいぃぃ!!!」
「ここまできて、途中でやめられると思ってるのかい?……君がもっと誠実な子だったら、それもできたかもしれないけど」
初めて、クラッズは自分の行いを後悔した。激しい痛みと後悔が入り混じり、クラッズはひたすら泣き叫ぶ。
エルフが突き上げる度、クラッズは内臓を潰されるような圧迫感に呼吸を止められ、引き抜けば傷を擦られる激痛に泣き喚き、何度も
何度も許しを請う。
しばらく、ヒューマンはそんな二人の姿を眺めていた。が、やがて我慢できなくなったのか、エルフに声をかける。
「なあ、おい」
「ん、何だよ。途中で代われとか言うんじゃないだろうね?」
「終わるまで待つつもりだったけど、もういいや。ケツの方空いてるだろ?」
「さすが、ヒューマンは見境ないな」
だが、そう言うエルフの顔は笑っていた。一瞬遅れて言葉の意味に気づき、今まで泣きじゃくっていたクラッズの顔が恐怖に歪む。
「やだっ、やだぁっ!!!そんなの無理だよぉ!!死んじゃう!!!本当に死んじゃうよおぉ!!!」
今更そんな言葉が聞き入れられるはずもなく、エルフは体勢を入れ替え、クラッズの体を抱き締めるように押さえつけた。ヒューマンは
残った油を自身のモノに擦り付けると、クラッズのきつく閉じられた穴に押し当てた。
「お願いだからもうやめてええぇぇ!!!助けて!!!お願い誰かぁ!!!助けて!!!助けて!!!助け…!」
ぎちぎちと穴をこじ開け、ヒューマンのモノの先端がクラッズの中に入り込んだ。
「あっ!!がっっっ!!!い、痛いいいぃぃ!!!もうやだ!!!痛いのもうやだああぁぁ!!!」
「そう言うなよ。こっちは気ぃ使って、ゆっくり入れてやってるんだぜ?」
実はそうでないことは、ヒューマンの冷酷な笑みが物語っていた。少しずつ、しかし確実にクラッズの肛門は押し広げられ、それは
彼女にひどい苦痛をもたらしていた。
「痛い!!痛い!!痛いぃぃ!!裂けちゃう!!お、お尻がああぁぁ!!もう入れないでぇ!!裂ける!!本当に裂けちゃうぅぅ!!」
「まだまだ先端しか入ってねえぞ?こんなとこで音ぇ上げてんじゃねえよ」
「うあ゙あ゙あ゙!!やめ……でぇ!!!いだいぃぃ!!!お尻がっ……あぎぃっ!!もう無理!!!もう無理ぃぃ!!!」
その瞬間、無理矢理押し広げられる痛みとは違う、鋭い痛みが走った。その痛みは瞬時に広がり、一気に苦痛が跳ね上がる。
「ひぃっ、ぎゃああぁぁ!!!!さ、裂けたぁ!!!絶対切れちゃったからあぁぁ!!!もうやめてええぇぇ!!!」
「あー、血ぃ出てるな。はは、その分滑りがよくなっただろ?それにこんだけきついと、結構気持ちいいぜ」
「痛いのもうやだあぁぁ!!!お尻壊れるからもうやめてえぇぇ!!!許してくださいお願いしますからあぁぁ!!!」
ヒューマンは構わず、さらに腰を突き出していく。やがて、すっかりクラッズの中に納まってしまうと、気の狂いそうな痛みに加え、
体を内側から突き破られるような、ひどい圧迫感が襲ってくる。
「がっ……あ、ぐっ……おなか…………がぁっ…!!」
「うっ……急に、すごくきつく…!」
「ああ、こいつの腹ん中でぶつかってるのか……よく考えると気分悪りいな、きつくて気持ちはいいけど」
クラッズはそれどころではなかった。体内を二本の肉棒で掻き回され、それが腹の中でゴリゴリと擦れているのだ。その苦痛は耐え難く、
ついには呼吸をする余裕さえも奪われていく。
「うぅ……がはっ!!お……ねが…………ぬ、抜いてぇ…!!」
しかし、二人の方もクラッズの声を聞く余裕などなくなってきていた。だんだんとその動きは性急なものとなり、呼吸もそれに比例して
荒くなっている。
「くっ……そろそろ、限界だ…!」
「やだっ、やだ……ぁ…!お願……い…!出さない、でぇ…!!中には出さないでぇ…!!」
クラッズは泣きながら、必死に首を振る。しかしその嫌がる姿がまた、二人には心地良く映る。
「ダメだ、もう出る!」
直後、エルフのモノがビクンと震え、クラッズの体内に熱い液体が流し込まれた。
「やぁっ!!熱い!!!痛い!!!嫌だ嫌だ!!お願いだからもう出さないでえぇぇ!!」
泣き喚くクラッズの中に、一滴残らず出し切ってから、エルフはモノを引き抜いた。クラッズの秘所から、出されたばかりの精液と
血とが、ドロッと溢れ出る。
202 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:24:56 ID:1WO6PJji
「お前が抜いたおかげで動きやすくなった。俺もぼちぼち、限界だ」
そう言うなり、ヒューマンはクラッズの腸内を荒々しく犯し始めた。急に激しくなった苦痛に、クラッズは再び泣き叫ぶ。
「痛い痛い痛い!!!お願いだからもう乱暴にしないでえぇぇ!!!許してくださいいぃぃ!!!」
「もう出そうだ……くっ!」
最後に一際強く腰を打ち付けると、ヒューマンはクラッズの腸内に精液をぶちまけた。さらに強く腰を押し付けつつ、精液を彼女の
体内深くに注ぎ込むと、一度根元まで彼女の体内に突き入れてから、ゆっくりと引き抜いた。
完全に引き抜かれ、ヒューマンが支えていた手を放すと、クラッズは力尽きたように倒れこんだ。
「うぅ……ぐすっ……ひっく…………う、うえぇぇん…!」
犯された。中に出された。汚された。そんな思いが頭を満たし、クラッズはまた泣き出した。まだ秘所から溢れる血と精液が、
今起こったことが全て現実なのだと、否が応でも認識させる。
そんな彼女を、ヒューマンが引き起こした。
「ったく、中に出しやがって。お前、俺も使いてえんだから汚すなよな」
「え…!?」
クラッズは耳を疑った。やっと終わったと思ったのに、この男はまだするというのだろうか。
「君だって同じことしてるじゃないか」
「へえ、つまりお前もケツでしたいって?」
「……一回じゃ足りないからね。どうせ前は君が使うんだろうし、しょうがないだろう」
「嘘でしょ!?ねえ、もう終わりだよね!?もう終わったんだよねえ!?」
二人の顔を見回したクラッズは、絶望のどん底に突き落とされた。この男達は、まだ続けるつもりなのだ。これだけ痛い思いをしたのに、
それがまた始まるというのだ。
「誰が終わったなんて言ったんだよ。まだ、足りねえっての」
「そんな……そんなぁ!!もうやだぁ!!もうやめてぇ!!お願いだからぁ!!」
「うるせえ奴だな。いい加減、諦めろ」
「やだっ!!やだっ!!やだぁっ!!もう、やめっ…!」
ヒューマンはクラッズを抱えあげると、何の遠慮もなしに一気に秘裂を貫いた。
「い゙っっっ!!!あがっ……がはっ…!!」
再び襲ってくる激痛と圧迫感。見開いた目からは涙がぼろぼろと零れ、口からは切れ切れの呼吸と共に、悲痛な悲鳴が漏れる。
後ろにエルフが回りこんだ。それに気付いた瞬間、彼はクラッズの肛門に、一気に根元まで突き入れた。
「ひぎっ!!!いっ……ああぁぁ…!!」
気が狂いそうな激痛。裂けた痛みと、体の奥深くを突き上げられる疼痛と圧迫感。クラッズの口はだらしなく開かれ、突き出された
舌から唾液が糸を引き、浅い呼吸がその苦しみを物語る。
もう、泣き喚く力も残っていなかった。クラッズはただただ涙を流し、襲い来る苦痛をひたすらに耐えるしかなかった。
「痛い……よぉ…!あそこが……お尻がぁ…………壊れちゃうよぉ…!」
か細い声で、クラッズは泣き続けた。それでも、二人はただ欲望のままにクラッズの体を味わい、何の気遣いも見せない。それどころか、
ヒューマンは明らかに物足りなそうな顔をしていた。やがて、その顔が酷薄そうに歪む。
「静かなのもいいけどな、もうちょっと泣いてくれた方が、こっちの気も晴れるんだがな!」
いきなり、ヒューマンはクラッズの小さな乳首を思い切りつねった。
「いっ、痛いいいぃぃ!!!」
たまらず、クラッズは叫んだ。そして一度叫んだことにより、半ば壊れかけていたクラッズの精神は、また現実に引き戻された。
「も、もうやだぁ!!お願いだから、二人とも許してええぇぇ!!お願いしますっ、お願いしますぅ!!!」
「そうそう、そうやって叫んでくれた方が、よっぽど楽しいぜ」
「やあぁっ、痛い!!!お尻乱暴にしないでえぇぇ!!!他の事なら何でもしますからぁ!!!謝りますから許してくださいぃぃ!!!」
「他の事なんて、僕達が今更求めると思うのか。それに、許されるなんて都合のいい話、あるわけもない」
「痛い痛い痛い!!!あっ、がっ!!!ひぐっ……がふっ!!助けて……お願い誰かぁ!!!助けてええぇぇ!!!」
203 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:25:48 ID:1WO6PJji
二人のペースが、徐々に速くなってくる。その分クラッズの苦痛も増し、必死の叫び声も少しずつ途切れ途切れになっていく。
「いっ……痛っ、あっ!!!や……もう、やめっ……おなか……がぁ!ぐちゃぐちゃにぃ……あっ、がはぁっ!!!」
体内で肉棒が激しく擦れ、また体内を掻き回し、その度にクラッズは悲鳴をあげて涙をこぼす。内臓をめちゃくちゃにされそうな激痛が、
彼女の体力を奪い去り、皮肉にもそれが苦痛を和らげる。
やがて、ヒューマンが呻き声を上げ、またクラッズの膣内に熱い液体が注ぎ込まれた。が、それに気付いた瞬間、クラッズは最後の力を
振り絞り、全力で体を揺すった。
「嫌!!嫌ぁ!!!お願い中に出さないでえぇぇ!!!赤ちゃんなんか欲しくないぃぃ!!!」
ヒューマンは繁殖力が強い。そのため、どんな種族であろうと、相手がヒューマンだと妊娠してしまう可能性があるのだ。
「うるっせえな、てめえの都合なんか知るか」
「お願い!!抜いてぇ!!!もう中に出さないでぇ!!!もう熱いのやだぁぁ!!!やだああぁぁ!!!!」
不意に、クラッズは後ろから暴れる体を押さえつけられた。何とか抜こうとしていたヒューマンのモノが、体内の一番深いところまで
入り込み、よりにもよってそこで精液を吐き出される。
「あ……ああぁぁ…!」
「くっ……僕も、出る!」
体を押さえつけていたエルフも、思い切り腰を打ちつけ、クラッズの中に精を放った。体内を同時に汚され、クラッズの頬に新たな
涙が伝う。
二人とも、最後の一滴までクラッズの体内に注ぎ込むと、ゆっくりと引き抜いた。もう、クラッズは叫ぶことも泣くこともできず、
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を覆うこともせず、放心したように転がった。
「ふ〜、さすがに、もう出ねえや。少しは気も晴れたし」
ヒューマンが、言葉通り晴れやかな顔で言った。
「んじゃ、俺はもう帰る」
「僕も、もうしようっていう気は起こらない。早く体も洗いたいし」
二人とも、まるでクラッズがその場にいたのを忘れたかのように、のんびりとした声を出している。
「ところで、この子はどうするんだ?」
「いいよいいよ、このまま捨てとけ。運がありゃ、生きて帰れるだろ」
二人の目は、それこそ捨てられた汚物でも見るような、冷たい視線だった。だが、もうクラッズには、それをなじる元気も、そしてそれに
気付く気力もない。
「君は、魔術師だろう?できれば魔法球まで送ってくれ」
「ああ、はいはい。お前はランツレートだもんな。じゃあ魔法球まで飛ぶぞ」
「よろしく」
二人の姿が消えても、クラッズは体を起こすことすらできなかった。もう、疲れ果てていた。何もかもが嘘であって欲しかった。
そう思うと、またクラッズの目から涙が溢れた。身動き一つできないまま、クラッズはぽろぽろと涙を流す。
204 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:26:40 ID:1WO6PJji
と、誰かがすぐ横に現れた。どっちかが戻ってきたのかと思ったが、すぐにそれは違うとわかった。
「やっぱり……だから、気をつけてって言ったのに」
「うぅ……ヒュマ……ちゃん…?」
そっと視線を上げると、そこには確かに、同室のヒューマンがいた。心配そうな顔で自分を覗き込む彼女の顔を見ると、クラッズの胸に
何とも言えない思いが溢れる。
「ヒュマちゃん……う、うえぇぇ…!」
「とにかく、体洗お。ひどいことになってるよ」
ヒューマンは、クラッズの体をひょいと抱き上げた。この細い腕のどこにそんな力があるのだろうと不思議になるほど、軽々と
抱き上げている。
「ちょっと冷たいけど、我慢してね。あと、痛いのも我慢して」
すぐ近くの浅瀬に来ると、ヒューマンはクラッズを下ろした。そして、体に付いた体液を洗い流し、次にクラッズを座らせると、秘裂に
指を突き入れた。
「いっ、痛っ!」
「ごめんね、でも我慢して。中の、全部出しちゃわないと」
そう言い、ヒューマンは長い時間をかけて、クラッズの中に出された精液を、指で全部掻き出した。同じように、腸内に残る精液も
すべて掻き出すと、ずたずたに破かれた服を練成して元に戻し、着せてやる。彼女が錬金術師だと知ったのは、この時が初めてだった。
さらに、どうやら様々な学科を経験したらしい彼女は、クラッズにメタヒールを唱えた。柔らかな光がクラッズを包み、同時に今まで
残っていた疲労や痛みが、嘘のように消えていく。
「ふ〜……よかった、ついてきて。じゃないと、手遅れになるところだったよ?」
優しげな顔を向けるヒューマン。その顔に、クラッズの心に張り詰めていた糸が、一気に切れた。
「うわぁぁ〜〜〜〜ん!!ヒュマちゃん……ヒュマちゃん〜〜〜!!!」
「まったく、こんな目に遭わされちゃって。でも、大丈夫。全部、元通りにしてあげたから」
「うわぁ〜〜〜ん!!!うああぁぁ〜〜〜〜ん!!!」
胸に縋り付いて泣くクラッズを、ヒューマンは優しく撫でてやった。
「ほんと、ついてきてよかった。じゃないとさ…」
ふぅ、と、ヒューマンは安堵の息をついた。
「処女の子ってことで売ったのに、嘘になっちゃうもんねえ」
「……え…?」
泣いていたクラッズは、その一言で途端に泣き止んだ。
「ヒュマ……ちゃん…?」
「治ってからじゃ、いくら魔法使ったって戻せないもんねえ。まあ経験済みにはなっちゃったけど、処女には違いないし、大丈夫でしょ」
「ヒュマちゃん……ヒュマちゃん!?ねえ、何言ってるの!?ヒュマちゃん何言ってるの!?」
怯えたように叫ぶクラッズを、ヒューマンは優しく抱き締めた。しかし、その力は異常なほど強く、クラッズの自由は完全に奪われた。
「知ってる?君みたいな子って、結構人気あるんだよ。ああ、まあ、人気って言うと語弊があるかもしれないけど」
相変わらず、ヒューマンはどこか楽しそうな口調で喋り続ける。
「男なんてただの道具。利用するだけの物。男は貢いで当たり前。そんな風に考えてる女の子ってね、やっぱり男の子は嫌いでしょ?
でねえ、男の子は、多少なりともSっ気があるからさ、そういう子を無理矢理犯せるって言ったら、そりゃもうすっごく食いつきいいの」
「うそ……だよねえ…!?ヒュマちゃん嘘だよねえ!?私達、友達だよねえ!?」
「あ〜ん、もおっ!ほんと、君ってすっごくかわい〜〜〜い!!!」
そう言い、ヒューマンはクラッズの頬といわず、額といわず、所構わずキスをする。それはまるで、愛玩動物に対する愛情表現のような、
無邪気極まりないものだった。
「だってさ、何の根拠もないくせに、『自分は特別だ、自分だけは違う』って思い込んじゃってるんでしょ?ま、こんな学校に来る子
なんて、誰しも少しぐらいそんなとこがあるんだけどさ。そんなのが、当たり前だと思っちゃってる君、すごく可愛いよぉ〜!」
「嘘だよね!?ねえ、嘘だって言って!!私達、友達…」
「そこが、可愛いんだよぉ〜!ほんと、私が男の子だったら、力づくでも自分の物にしたいぐらい!だってさ…」
ヒューマンは、にっこりと笑った。その顔は、あまりにも無邪気だった。
「私、お金のためなら、心も体も売っちゃうんだよ?そんな人間が『友達は売らない!』なんて、言うと思った?」
205 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:27:20 ID:1WO6PJji
「やだ!!!もうあんなのやだあぁぁ!!!痛いんだよぉ!!!ほんとにすっごく痛いんだよぉぉ!!!ほんとだよぉぉ!!!」
「私にとっては、君だって『ただの』友達なのに、君にとっては違ったんだよねぇ〜?ああんもお、可愛いなあ!ほ〜んと、
食べちゃいたいぐらい可愛い!君って、なんでこんなに可愛いんだろっ!」
どこからか、複数の足音が聞こえてきた。それに気付くと、ヒューマンはさっと立ち上がった。
「ま、とにかく!君、結構高値で売れたからさ、せいぜい頑張ってよ。えっと、確か一人頭十万で、それで二の四の……うん、十人までは
いかないけど、パーティ一つぐらい?」
聞くまでもなく、それは嫌でもわかった。今、クラッズを囲み始めている男達は、ざっと見てそれぐらいだ。
「おい。こいつが、お前の言ってた奴か?」
男の一人が言うと、ヒューマンが無邪気な笑顔で答える。
「そうそう、その子。好きにして構わないけど、ちゃんと部屋には届けてね」
「わかってる」
「それじゃ、頑張ってね!ああそうそう、一応君のおかげでもあるんだし、帰ってきたら売り上げの1パーセントくらいはあげるね!
そうしたら、そのお金が、君が初めて自分で稼いだお金って事になるよ!あははっ!」
「やだ……やだぁ…!」
「それじゃあね〜!」
とびきりの笑顔を残し、ヒューマンは去って行った。あとに残ったのは、見るからに凶悪そうな男達と、恐怖に震えるクラッズ一人。
「へーぇ、結構可愛いじゃん。可愛い顔して、やることはえぐいみたいだけど」
「しかもクラッズときてるからな。やべえ、たまんねえ」
口々に勝手なことを言う男達。クラッズは思わず後ずさりした。が、すぐ後ろにディープゾーンが広がっている。
一瞬、クラッズは思った。その中に飛び込んでしまえば、もうそれ以上苦しい思いはしなくて済む。あるいは、ここで舌を噛めば、
もうそれでこの悪夢は終わる。
だが、どちらも出来なかった。冒険者として死の覚悟をしたことすらない彼女には、例え唯一の逃げ道であっても、死はとてつもない、
どんな事があっても選べないほどの恐怖だった。
「いやだぁ……こ、こないでぇ…!」
クラッズは目に涙を浮かべ、哀願する。しゃあぁ、と微かな水音が響き、へたり込んだクラッズの股間から、黄色みを帯びた液体が
広がっていく。
「あーあ、お漏らししちゃったよこいつ」
「これはこれで可愛いな。二股かけてたくせに、案外度胸はないみたいだし」
「ほんと、気兼ねなく痛めつけられるし、いい奴紹介してくれたよなあ」
もう、誰も助けてくれる者はいない。あの彼女にすら、裏切られた。
後悔が、後から後から押し寄せてくる。彼女を信じなければ、あんなことをしなければ、こんなところに来なければ―――
だが、もう遅かった。誰も助けてくれる者はおらず、逃げることも出来ない。
「おね……がい、します…!助けて……くだ、さいぃ…!」
泣きながら、叶わぬとわかりきった希望を込めて、クラッズは哀願した。
「ほんと、いい奴紹介してくれたな。これはまた、いじめ甲斐がありそうだ」
男の手が、クラッズの体に向かって伸びる。
「ゆる……許してぇ…!助けてぇ…!」
「諦めろ。呪うんだったら、今までの自分の行いでも呪ってな」
何度悲鳴をあげようと、どんな泣き声をあげようと、哀願しようと、絶叫しようと。
助ける者は、いない。冒険者ですらない彼女には、仲間などいない。
どう足掻いても、もう逃げることは出来ない。助かりもしない。
これから自分を陵辱する者達を見上げ、クラッズは涙を流した。もう、認めざるを得なかった。
今、立場は逆転した。今度は自分が、彼等から奪われる側になったのだ。そして今、彼等に全てを奪われるのだ。
男の腕が、ゆっくりと、震えるクラッズの体を捕らえた。
206 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/09(月) 23:28:32 ID:1WO6PJji
以上、投下終了。
ニャオミン先生は金次第で情報も売ってくれると信じてる。
それにしても、ヒュマ子のせいで、相対的にクラッズの嫌な子加減が薄まった気が……精進します。

それではこの辺で。
207名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 00:10:44 ID:dIipeILM
第一印象・・・・・・怖っ!!!
GJなんだけど怖い!!
何が怖いってヒュマ子!!
とりあえず怖い!!
208名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 01:23:22 ID:W5Woozwf
GJ!
悪女スレ住人としてはビッチ悪女の破滅っぷりがたまらずGJだ。
209名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 14:16:05 ID:ar37E1kt
GJ!
ああ…確かに…クラ娘で…
もっともっともっともっともっと!!ムカつかせて欲しかった!!!
210名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 07:03:27 ID:Vw/SdN2S
おはようございます
このゲームは愚か、Wizすらまともに知らない者だけど
涙脆いからかグッと来た作品が多かった

おかしいよね、エロパロスレなのに…
投稿者、読者ともに良い雰囲気だし
過去ログから一気読みして本当に良かったぜ

以上、保守兼感想でした
書き手の方々、頑張って下さい!
211名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 23:08:10 ID:qqzBixaI
保守
212 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/16(月) 23:56:39 ID:wiRCMw4V
ととモノのベスト版が出るそうで。ドワ子の本当の声が聞けるならデータに互換性なくとも買う所存。野太い声も実は好きだけどね。

前回は激しめだったので、今回は軽めの物を。
以前見た「ショタドワ」という響きが忘れられなかったので書いてみた。お相手はセレ子。
注意としては、やや逆レ風味。毎度ながら、楽しんでいただければ幸いです。
213 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/16(月) 23:57:28 ID:wiRCMw4V
天使のような姿に、やはり天使のような微笑み。背中には白い翼を持ち、柔らかな声で優しく語り掛ける。
しかし、敵と見なしたものには躊躇せず刃を振るい、毅然とした振る舞いを見せる。実際には敵でなくとも、ディアボロス相手にはつい
そんな態度を取ってしまう。
優しさと強さ、柔らかさと堅苦しさの同居する種族、セレスティア。彼女は、そうしたセレスティアの一人だった。
彼女は少し変わっていた。普通、セレスティアといえば僧侶学科や司祭学科など、後衛系の学科を選ぶものが多い。しかし、彼女は神女
学科を選び、バハムーンやフェルパーといった種族と共に、常に前線で戦い続けていた。
柔らかい物腰に、戦いのときに見せる凛とした佇まい。当然、誰もが彼女と仲間になりたがり、事実、彼女は様々なパーティに所属した。
が、やはり彼女は変わっていた。そのパーティが成長し、やがて十分な実力をつけたと見ると、そのパーティを抜けてしまうのだ。
そしてまた、新たな若いパーティを見つけ、所属し、成長するとまた抜ける。
そんなことを繰り返しても、彼女はやはり人気者だった。種族柄、大抵の者から好かれると言うのもあるが、やはり彼女には華があった。
かなりの実力を持ち、しかしそれを鼻にかけず、かといって善人というわけでもなく、だからといって悪人でもない。ちょっとした冗談
などもよく口にしたし、時には仲間をからかって見せたり、逆にからかわれて怒って見せたり、独特の存在感があった。
当然、友達は多かった。元のパーティの仲間だけで、軽く二桁の後半まで届いたし、そうでなくとも知り合いは多い。
そんな中でも、特に親友と呼べる存在がいる。この時彼女の前にいたのは、その親友の中でも一番の親友と言える、ヒューマンの
女の子だった。彼女は入学が一緒で、また初めて組んだパーティの仲間でもある。そんな相手に会って、セレスティアは嬉しそうな、
それこそ満面の笑顔を浮かべた。
「ヒューマンさん!久しぶりですね!」
「ハーイ、セレちゃん。相変わらず元気そうね」
「いつ、こちらに戻ってたんですか!?噂では、ヤムハス大森林にいると聞いていましたが…」
「つい先日ね。さすがに、長く遠征してるとね、み〜んなホームシックってやつ」
軽い調子で話すヒューマンは、実際のところ相当な実力者であり、学園でも彼女を知らないものはほとんどいない。そんな二人が
話していれば、自然と人が集まってくる。
「っとと、こんなとこで立ち話もなんだし、一緒に食事でもどお?お昼ぐらいおごるけど?」
「あ、いいんですか?それじゃ、ごちそうになっちゃいます」
「あはは、そういうちゃっかりしたとこ、変わってないねえ〜」
学食に入ると、二人は色々な話をした。お互いの近況から始まり、あちこちの地下道の話やモンスターの話、ちょっとした笑い話や
悲しい話。とにかく、これまでのお互いの空白を埋めるかのように、ありとあらゆる話をした。
話は尽きることがなく、やがて昼食を食べ終わり、デザートを片付け、おやつを平らげ、そして今はそのまま夕飯にもつれこんでいる。
その夕飯も、女子二人とは思えないペースで食べ終わる頃。ヒューマンが、ふと思いついたように口を開いた。
「あ、そうだ。ねえセレちゃん、今はパーティ、組んでるの?」
すると、セレスティアは笑いながら首を振った。
「いえ。実は一昨日抜けたばかりで、今は誰とも。少しお休みということにして、羽を伸ばしています」
「ああ、だから羽根がきれいなのね……っと冗談は置いといて」
こほんと咳払いをし、ヒューマンはセレスティアの目をまっすぐに見つめながら言った。
「あのさ、私のとこのパーティ、来る気ない?」
214 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/16(月) 23:58:09 ID:wiRCMw4V
「え、ヒューマンさんの、ですか?」
「あ〜、セレちゃんが新しいパーティ渡り歩いてるのは知ってるよ。でも……その…」
言い淀むヒューマンの額には、はっきりと苦悩の皺が刻まれていた。どうやら、何か事情があるらしい。
「どうしたんですか?」
「えっと……たぶん、セレちゃんならやっていけると思うんだ。あ、いや、やっていけるはず……ううん!セレちゃんじゃないと無理!」
急に強い口調で言うと、ヒューマンはセレスティアの手を両手で握りこんだ。
「ど、どうしたって言うんですか?」
「何人もね、仲間には迎えたんだ。でも……ダメなの、誰もかれも長続きしないの!」
「え、ええと……事情を、聞かせてもらってもいいですか?」
一瞬、ヒューマンはうろたえた。しかし、すぐに仕方ないと言うように溜め息をつくと、ぽつりぽつりと話し始めた。
「え〜、まあ実情はその目で見てもらわないと、把握不能だと思うけど……簡単に言うとね、うちのパーティに男子が三人いるんだけど、
どいつもこいつもアクが強いっていうか、なんて言うか…」
セレスティアの頭の中には、わがまま言い放題の男三人の姿が浮かんでいた。
「わがまま、なんですか?」
「ああいや、そういうんじゃないんだ。その……個性的って言えばいいのかな。でも、個性的過ぎて、いたたまれないとでも言うのか…」
わがままな男三人が消え、代わりに珍妙な格好をした男三人が思い浮かぶ。
―――きっと、天女の衣とか着て、プリンセスシリーズとか着て、人によってはインナーとパンツとか…
「……ぷっ…!」
「何想像してんのよ」
「あっ、ごめんなさい。えっと、その、それで?」
「ん〜、まあ、とにかくそういうわけでさ、なかなか居つけないってことなの。もう一人、女の子もいるんだけどさ、その子は幸い
馴染んでくれてるんだけど……もう一人が、どうしてもねえ」
どうやら本気で困っているらしく、ヒューマンの顔には疲れが見て取れた。さすがに、無二の親友がそんな顔をしていては、彼女が
断れるはずもない。
「だからね、よかったら試しに一回、うちに来てもらえないかな〜って思うんだけど。できれば永住で」
「う〜ん、永住……までは了承しかねますけど、しばらくだったら行っても構いませんよ」
「ほんとー!?」
セレスティアがそう言うと、ヒューマンは文字通り飛び上がって喜んだ。セレスティアの手を握ったままだったため、彼女の体まで
跳ね上がり、テーブルの上にあった食器の数々が落ちて割れた。
「ほんと、よかったぁ〜!断られたらどうしようって…!」
「いや、あの、食器が…」
「じゃあさ、明日のお昼でいいから、寮の玄関口まで来て!その時、みんなも紹介するから!」
「落ちて割れて…」
「それにしても、セレちゃんと組むの久しぶりー!何だか新入生に戻ったみたい!」
「掃除しなきゃ…」
「それじゃ、私はみんなに伝えなきゃだし、先に戻るね!う〜ん、早く明日にならないかな〜!」
「だから掃除しなきゃって……ちょっと、ヒューマンさんっ!逃げないで……こら、待ちなさーい!!!」
215 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/16(月) 23:59:03 ID:wiRCMw4V
結局、一人で掃除を任される羽目になったものの、セレスティアも彼女とのパーティを楽しみに待っていた。もちろん、久しぶりに
彼女とパーティを組めるのは嬉しい。だがそれ以上に、個性が強すぎて馴染めない男連中とはどんな相手なのか。それに馴染む女の子は
どんな人なのか。それが楽しみでもあり、不安でもあり、要は怖いもの見たさという好奇心によるものが大きかった。
そして翌日の昼。彼女は言われたとおり、寮のロビーでヒューマンのパーティと対面した。
「ハイ、セレちゃん。これが、昨日言ってた、私の仲間達!」
彼女の横には、小柄なクラッズの女の子、そして問題の男連中、クラッズとバハムーンとドワーフが並んでいた。
「……天使様だぁ…」
―――ああ、なるほど…。
「嬢ちゃんが、こいつの言ってた?なるほど、お前さんの話はよく聞くぜ」
―――これは、まあ…。
「へ〜、僕もよく聞いてたけど、こんな子だったんだ」
―――確かに、これは…。
「あはは、みんな変わってると思うけど、よろしくね!あ、私はこれでも司祭学科、援護は任せてね!」
元気な声で言うクラッズの女の子。この子だけは普通に見えた。だが、今のセレスティアには、その挨拶に返事をするほどの余裕もない。
「おい、ぼーっとしてねえで挨拶しな。これから一緒に旅をする相手に、失礼だぜ」
「……あっ、ご、ごめんなさい!」
そう言われ、神でも見るような目つきで陶然としていたドワーフが、慌てて口を開いた。
「ぼ、ぼくは君主学科専攻です!よ、よろしくおねがいします!」
「こ……こちら……こそ…!」
「てことは、ドワーフと、君と、僕で肩を並べるのか。噂はよく聞くけど……こうして見ると、何だか頼りないなあ」
なるほど、とセレスティアは思った。口調だけ聞けば、ドワーフかクラッズと勘違いしてもおかしくないが、話す内容はやはり
バハムーンらしく、傲慢だ。
「見かけで判断するなんざ、いっぱしの冒険家がすることじゃねえぜ。っと、自己紹介がまだだったな。俺は見ての通り、盗賊だ。
お前さんと、末永い付き合いが出来るよう、努力するよ」
そう言ってくれるのはありがたいが、その彼が一番やばい。口調こそ渋い男だが、蓋を開ければ子供にしか見えない、小さなクラッズ
なのだ。どいつもこいつも、見た目と口調に隔たりがありすぎる。こういう人材が一人だったら、まだ何とでもなるのだが、まさか
三人揃って、中身がそれぞれ入れ替わったような喋りでは、噴き出さないようにするのが精一杯だ。
そこでふと、セレスティアは気付いた。同じクラッズである司祭の彼女は、その渋く語る彼をうっとりした目で眺めている。彼女が
馴染めた理由は、これだろう。
口を開けば、即座に噴き出してしまいそうだった。そのため、セレスティアは失礼と思いながらも、返事すらできずに顔を伏せていた。
「……おい、どうした嬢ちゃん?泣いてるのか?」
「…………い……い、え…!」
周りから見れば、そうとしか見えなかった。事実、彼女の目には涙が浮かんでいたし、その顔は耳まで真っ赤だった。しかし、それは
必死に笑いを堪えているせいであり、呼吸を止めて腹筋に力を入れている結果、そうなっているだけのことだ。
と、いきなりドワーフがバハムーンに食って掛かった。
「君が、天使様に変なこと言うからだぁ!」
「僕のせいだってのかよ!?言いがかりもいい加減にしろよな!」
「まあまあ二人とも。いきなり喧嘩なんかしちゃあ、嬢ちゃんの居心地が悪いだろう?それに、嬢ちゃんはまだ何も言ってねえ」
―――おかげさまで、ますます何も言えません。
つい、そう頭に思い浮かべ、セレスティアは余計に噴き出さない努力をする羽目になった。が、そこでクラッズが、少し困ったように
口を開いた。
「……で?お前さんから、まだちゃんとした挨拶を聞いてねえんだが?」
「ご……ごめん、なさ…!わ、わたくし……は……ぶふっ!」
216 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/16(月) 23:59:44 ID:wiRCMw4V
ついに、堪えきれずに噴いてしまった。セレスティアは慌てて、思い切り咳き込んだふりをする。
「ごほっ、ごほっ!!げほっ!!……こほん!す、すみません、その、わたくし、あまり調子が…」
「ああ、そうだったのかい。無理はしなさんなよ?」
「は、はい……ありがとう、ござ……い、ます…」
困ったことに、全員性格はいかにもその種族らしい性格だった。クラッズは何かと気を使ってくれ、よく話しかけてくれるのだが、
そのおかげでいよいよ言葉が詰まってしまう。それでもつっかえつっかえの自己紹介を終えると、いきなりヒューマンが肩を抱いてきた。
「んじゃ、セレちゃん連行ー」
「おい、いきなり何するんだ!?まだ僕達会ったばっかりなのに!」
「トイレ付き合ってもらうぐらい、いいでしょ?私も久しぶりなんだし〜」
「ああ、連れションか。ま、ゆっくり行ってきな」
誘われるままに歩き続けると、ヒューマンはトイレに入り、そのまま窓を開けて抜け出し、セレスティアに手招きした。その意味をすぐに
悟り、セレスティアも窓から外に出る。そうして外に出ると、ヒューマンは彼女に笑顔を向け、言った。
「じゃ、笑っていいよ」
その一言で、セレスティアは堰を切ったように笑い転げた。あんまり笑うので、釣られてヒューマンも笑い出し、二人とも目に涙を
浮かべて笑い続けた。そのうち頬も腹筋も痛くなり、呼吸も苦しくなり、本格的に酸欠を起こす直前になって、ようやく笑いが収まった。
「ああ……わたくし、もうダメです…!お、お腹が…!」
「あ〜あ、久しぶりに笑った〜。ま、こんなわけで、なかなかみんな馴染めないのよ」
「悪い人達では、ないんですよね。クラッズさんなんか、何かと気をかけてくれますし、バハムーンさんは……まあ、まだあれですけど」
そこで、セレスティアはあの異様に子供っぽいドワーフを思い出した。どうも、彼が自分を見る目は普通ではなかった気がする。
「……そういえば、あのドワーフさんは一体どんな方ですか?」
「あの子?ああ、あの子はすっごい信仰心強い子なの。セレスティアって種族は一応知ってたみたいだけど、生で見ると、やっぱり
天使にしか見えないからね」
「ああ、だから『天使様』って…」
「そうそう。何でも、いいところのお坊ちゃんって噂もあるけど、見てると確かにそんな感じね。礼儀正しくて、信心深くて、でも
ちょっとずれた節のあるところなんか、特にね〜。一番いい子なのは、私が保証するよ」
確かに、見た感じでは大人しそうだし、君主というからには性格もいいのだろう。まずはあの辺から慣れるべきかなと、セレスティアは
考えていた。
ともかくも、一頻り笑ったところで、二人はまた仲間の元へ戻った。どうやら、まだドワーフがバハムーンに突っかかっていて、それを
クラッズ二人組が宥めているらしい。
「すみません、お待たせしました」
「ああ、お帰り。できれば、君からこいつを説得してくれないかなあ。さっきからうるさくてしょうがないんだ」
バハムーンはドワーフの頭を片手で押さえており、ドワーフはその状態で腕をブンブン振り回している。どうも、行動まで子供っぽい。
「コホン。それでは、さっきはちゃんとできませんでしたが、改めて自己紹介しますね」
セレスティアが言うと、ドワーフはハッとしたように姿勢を正した。他の仲間もそれに倣い、セレスティアの顔を見つめる。
「わたくしは、神女学科を学んでいます。以前ヒューマンさんとパーティを組んだことがあり、今回その縁で、またお誘いを受けました。
皆さんと比べれば、まだ頼りない部分も多いかと思います。ですが、一日でも早く皆さんに追いつけるよう、精一杯努力しますので、
どうか皆さん、よろしくお願いしますね」
それにとびきりの笑顔を付け加えると、その場にいた全員の表情が緩んだ。このまさしく天使の笑顔が、彼女の最も大きな武器だった。
217 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:00:13 ID:wiRCMw4V
「あの、天使様…」
そう話しかけたドワーフに、セレスティアは優しい笑顔を向けた。
「その呼び方は、どうかやめてください。確かに天使の血を引いてはいますが、わたくしはそう呼ばれるほど、崇高な者では
ありませんから」
「え……で、でも、天使様の血を引いてるなら、やっぱり天使様ですよぅ」
「まあまあドワーフ。その、他ならぬ天使様がそう仰ってるんだ。まさか、天使様の言うことが聞けねえってわけじゃ、ねえだろう?」
クラッズの言葉に、ドワーフは大慌てで首を振った。
「そ、そんなわけないですっ!でも……ん〜、わかり、ました」
少し不服そうではあったが、ドワーフは頷いた。やはり、このドワーフはだいぶ扱いやすそうだった。
「それにしても、戦いの腕はどうなんだい?僕ほどとは言わなくても、ドワーフと同じくらいはあるんだろうね?」
今度はバハムーンの声だ。セレスティアは、あえてムッとした顔をして見せた。
「それは、見てみないとわかりません。もしかしたら、皆さんより弱いかもしれないし、あるいは、皆さんより強いかもしれないし、
また、もしかしたら、あなたより強いかもしれませんよ?」
「なっ…!?く……あははは」
一瞬驚いた顔をしたものの、バハムーンはすぐに笑い出した。
「ほんとに、天使様って呼ぶには、ちょっと違うね。そう呼ぶのは、天使に対しても、君に対しても、失礼みたいだ」
どうやら、こっちも思ったほど付き合いにくい相手ではなさそうだった。それにホッと息をついていると、後ろから声が聞こえた。
「なかなか頼もしい嬢ちゃんだな。期待してるぜ」
「あ……ありがとう……ご、ござ…!」
どうも、このクラッズだけは苦手だった。見た目と口調のアンバランスさが、最もひどい。
今にも噴き出しそうになり、言葉に詰まっていると、ドワーフの声が響いた。
「君が『嬢ちゃん』なんて失礼なこというから、天使様……あ、セレスティアさんが〜!」
「そうだね、僕も思ってたけど、どうも君が原因みたいだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!おいおい、俺か!?俺が原因なのか!?」
「い、いえっ!そんな……ぐっ……そんな、こと……はっ…!」
「ほら、やっぱりー!」
「おいおいおい!そ、それならそうと言ってくれ!!お、俺は別に悪気はっ……おい、嬢ちゃ…」
腹筋がブルブルと震え、噛み締めた顎も痛みを持ち始めている。呼吸も、そろそろ止めないとまずい。
「また言った。クラッズ、君それわざとだろ」
「……す……すまねえ…」
「い……え……く、く……ぶふぁっ!」
ついに堪えきれず、セレスティアは思いっきり噴き出した。
218 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:01:42 ID:wiRCMw4V
セレスティアがパーティに加入して、早一ヶ月。最初こそどうしようかと思ったパーティにもだいぶ馴染み、今では息を合わせるのも
だいぶうまくなった。が、彼女の戦い方は、他の仲間をハラハラさせることも多かった。
真っ先に攻撃を仕掛けるのはいいのだが、気安く捨て身を使うのだ。その分殲滅力は折り紙つきだが、援護に回る仲間は気が気ではない。
その代表格が、ドワーフである。君主である彼は、剣を振るうことよりも、味方の盾になる機会の方がずっと多い。おまけに、
セレスティアが当たり前のように身を捨てるため、ここ最近は一度も攻撃しないまま戦闘を終えることも多い。
しかし、ドワーフはそれに対して文句一つ言わない。むしろ、彼女を守る時はいつにも増して気合が入っており、そうやって盾に
なれることを喜んでいる節もある。そんな相方がいるからこそ、彼女はますます気軽に捨て身を使い、仲間は対応に追われるのだった。
とはいえ、それはそれで一つの形である。いいコンビになったと、ヒューマンはよく笑っている。みんなもそれに同調するが、当の
ドワーフは、そう言われるといつも必死に否定した。
「そんなこと、ないですよ!ぼくはただ、これしかできないから…!」
「いや、そんなことはねえぜ。防御を捨てて攻撃に行く神女に、攻撃を捨てて仲間を守る君主だ。実に、いいコンビじゃねえか」
「いえ……その、えっと…」
「はっは。それに、身を挺して女性を守るなんて、いかにも騎士らしくていいじゃねえか。お前にゃお似合いだ」
クラッズに言われると、ドワーフは恥ずかしそうに顔を伏せる。耳もすっかり横向きになっているのだが、いつもいつも、尻尾だけは
千切れんばかりに振られている。
セレスティアも、彼のことは憎からず思っていた。天使の血族ということもあり、自分を無邪気に慕ってくれ、戦闘ではいつも代わりに
攻撃を受け止めてくれる。もちろん、他の仲間もいい仲間だと思うし、特にヒューマンは無二の親友である。が、こと戦闘に関してだけは、
今ではドワーフの方がずっと頼りになる仲間だと思っている。
「それにしても、本当に君は変わってる。天使は天使でも、きっと祖先が能天使なんだろうね」
そう笑うのはバハムーンである。なぜ彼が天使の階級など知ってるのだろうかと疑問に思いつつ、その言葉に言い返すことは出来ない。
「セレスティアって言うと、おしとやかで優しいイメージがあったんだけど、君は戦闘の時の方が、普段より生き生きしてるもんなあ」
「そ、そうでもないですよ。わたくしだって、別に戦闘が好きってわけじゃ…」
「だが、人が変わるのは確かだな。嬢ちゃんには、狂戦士セットが似合う気がしてならねえな」
「そう……ですか」
この一ヶ月で、彼女の腹筋は割れて見えるほどに鍛えられた。もちろん、特別なトレーニングなどしてはいない。
「ああ、機嫌を損ねたんなら謝るぜ。でも、俺に他意はねえ」
相変わらず口調は渋いクラッズ。今日は、その背中に司祭の彼女がかじりついている。それをものともせず、普段どおりに喋る姿は、
結構な破壊力があった。
「お……お気に、なさらず…」
219 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:02:57 ID:8BMS61li
「しかし、お前さんのおかげで戦力は充実したし、仲間の繋がりも深まってる。本当に…」
「ぷ……ぶふっ!」
とうとう、堪えきれずに噴き出してしまった。しまったと思ったときには既に遅く、クラッズの顔には微かな怒りの色が浮かんでいる。
「……さて、嬢ちゃん。ちょっと座ろうか」
「……はい…」
どうしても、彼にだけはなかなか慣れなかった。おかげで今でも、週に一回はこんなことがある。
「あのな、お前さんが何をどう面白がるかは勝手だがな、人の話の最中に笑うってのぁ、ちっと行儀が悪いんじゃねえか?」
「はい……ほんと、ごめんなさい……反省してます…」
クラッズの前に、セレスティアがきちんと正座して説教されている姿は、傍から見るととても滑稽に映る。が、本人達は真面目である。
「まあまあ、そう怒っちゃダメだよ〜。セレスティアさんだって、頑張ってるんだよ?」
背中にかじりついたままの司祭がフォローを入れる。それに続いて、陰でこっそり笑っていたヒューマンも声をかける。
「そうそう。セレちゃんだって、それはしっかりわかってるって」
「はぁ……ま、嬢ちゃん方の言う通りなんだろうがな。どうして俺だけ、いっつも笑われるんだ…」
「君の顔が面白いんだよ、きっと」
「んだとぉ!?」
その一言で、クラッズの標的はバハムーンに変わる。そっちに突っかかっていったところで、ドワーフがそっと近寄る。
「セレスティアさん、だいじょうぶですか?」
「ああ、うん。大丈夫ですよ、心配してくれて、ありがとう」
笑いかけると、ドワーフは一瞬毛を逆立てて顔を伏せ、そして恥ずかしそうに笑顔を返した。
薄々、彼女は気付いていた。ドワーフが自分を見る目は、今では天使の血族だから、という以外の熱っぽさが篭っている。
ただ、それが恋愛感情かというと、それも微妙に違う。限りなく近いものではあるのだが、どちらかというと、憧れなどといった
要素の方が強い。その視線に気付きつつも、セレスティアはパーティのためと思い、彼とはいつもと変わらぬ接し方を続けていた。

その関係に変化が訪れたのは、数日後のことである。
セレスティアの動きが、どうにも鈍い。地下道を歩くだけなら問題ないのだが、戦闘になるとそれは大きな痛手となる。
「君、今日はどうしたんだ?ずいぶん動きが鈍いじゃないか」
「あの……それは、その…」
言い淀むセレスティアに代わり、ヒューマンが意味深な笑みを浮かべながら答えた。
「しょうがないよ。女の子には毎月、そういう時があるんだって」
「ん…?」
「はは。嬢ちゃんにそれをはっきり言わせるのぁ、酷ってもんだ。後で教えてやるから、今は大変なんだってことだけ覚えとけ」
「だったら、休めばいいじゃないか。そんな状態でついてこられたって、はっきり言って迷惑だよ」
「ごめんなさい……でも、大丈夫です。決して足手まといにはなりませんから」
セレスティアは気丈に答えるが、決して言葉通りに楽観できる気分でもなかった。
彼女だけなら、さほど問題はないのだ。だが、この時はなぜかドワーフまでおかしかった。全体的にボーっとしていて、何をするにも
上の空といった雰囲気である。しかも、いつもはべったりくっついているセレスティアに、近寄ろうともしない。
「ドワーフも、どうしたってんだ?大丈夫なのか?」
「……え!?あ、うん!だいじょうぶ……ごめんなさい」
そんな折、一行はモンスターの群れに出会った。普段なら苦戦するような相手ではなく、セレスティアはいつも通りに、先陣を切って
敵の真っ只中へ飛び込んだ。捨て身の一撃で、死霊の戦士が倒れる。その彼女に向かい、残りの敵が一斉に襲い掛かった。
その間に、彼が飛び込んでくるはずだった。しかし、代わりに怒鳴り声が響いた。
「ドワーフ!何をしてるんだ!?」
「……あっ!」
瞬時に、援護はないと悟った。目の前に、いくつもの槍が迫る。
辛うじて、そのうちの二つはかわした。しかし、元々防御を考えていなかったため、続く追撃は避けられなかった。
「きゃっ!」
勢いよく振り回された槍が、頭に直撃した。景色がぐらりと揺らぎ、平衡感覚が消える。
倒れてはダメだと、何度も自分に言い聞かせた。しかし、体はいうことを聞かず、床が迫ってくるのが見えたところで、意識は途絶えた。
220 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:04:03 ID:wiRCMw4V
目を覚ました瞬間、目に飛びこんできたのは、心配そうに覗き込むヒューマンの顔だった。
「あ、セレちゃん起きたね。心配したよ」
「う……す、すみません……戦闘、は…?」
「ちょっと焦ったけど、まあ楽勝ってやつ。起きられる?」
優しく声をかけ、手を差し伸べるヒューマン。しかしそれを掴むまでもなく、突然の怒鳴り声に、セレスティアは驚いて飛び起きた。
「ほんとに、何を考えてるんだっ!あの暴走女を庇うのは、君の役目だろっ!」
「ご、ごめんなさい……うっく……ごめんなさい…!」
ああ、自分は影でああ呼ばれてるのかと、セレスティアは何ともいえない気分で思った。
「もうよせ、バハムーン。ともかくも、全員無事だったんだ。それでいいじゃねえか」
「よくない!ただでさえあの女の調子も悪いのに、こいつまで働かないんじゃ、どうしようもないだろ!それとも何かい!?いい加減、
君もあの女を庇うのは面倒になったのか!?」
―――『も』って言った…。
セレスティアは苦笑いを浮かべながら、彼等のやりとりを聞いている。
「ち、違うよぉ……でも、その……ごめん、なさい…!」
「みんな、やめなよー。こういう時だってあるんだから、あんまり気にするのはよくないよ」
「そうだな。常に最良の状態なんて、できるわけがねえんだ。お前の言い分はもっともだが、理想と現実を混同するんじゃねえ」
「ちっ、これだから君達みたいな種族は劣ってるって言うんだ!気安く妥協する前に、反省するって事を考えないのか!?あの女だって、
調子悪くても役割はこなした!いつも通りの暴走だけどさ!それがドワーフ、君は何だ!?自分の役割すら果たしてないじゃないか!」
苦笑いしつつバハムーンを見つめていると、不意にその彼と目が合った。
「大体っ、その、な…………おはよう…」
全員が、一斉にセレスティアの方を向いた。気まずい空気の中、セレスティアは頭を下げる。
「……ご迷惑、おかけしてたんですね…」
「起きてたんなら、早く言ってくれ…」
二人の間に流れる、猛烈に気まずい空気。そんな様子を見て、クラッズ二人組は笑いを堪えている。
「とりあえずさ、今日はこの辺で戻らない?」
そんな空気をとりなすように、ヒューマンが明るい声を出す。
「セレちゃん、この先も何日か調子悪いんだし、ドワ君もあんまり調子よくないみたいだしさ。だったらいっそ、この先何日か休みに
しちゃってさ、パーっと気晴らししようよ。ねっ!」
その意見に、バハムーン以外反対する者はいなかった。そのバハムーンも、現状が現状であるため、結局は渋々従うことにする。
バックドアルで学校に戻ると、クラッズ二人は学食に向かい、バハムーンもそれについていく。
「さて、私は部屋に戻るけど、セレちゃんはどうする?」
「わたくしも、部屋に戻ります。少し、ゆっくり休んだ方がいいみたいですし」
ちらりと、ドワーフを見る。彼はまだ半べそをかいているようで、ついつい慰めてやりたくなる姿だった。
特に深く考えず、そっとドワーフに手を伸ばした。が、ドワーフはギョッとしたように顔を上げると、慌てて後ずさった。
「ドワーフさん…!」
正直、ショックだった。何となくそんな気はしていたのだが、セレスティアは明らかに避けられている。その表情に気付いたのか、
ドワーフもハッと我に返ったようだった。だが、近寄りはせず、それでいて歩み寄ろうとはするのだが、苦しげな顔でそれをやめる。
それを数回繰り返した後、ドワーフは今にも泣きそうな顔のまま、深く頭を下げた。
「ごめん……なさい…!」
「あっ、ドワーフさん、待ってください!」
セレスティアの声も聞かず、ドワーフは走り去ってしまった。後を追うことも出来ず、やがてセレスティアはがっくりと肩を落とした。
221 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:04:47 ID:8BMS61li
「……まあ、そんな事もあるって。不幸は寂しがり屋だから、大抵、団体さんでお越しになるのよ」
ポンと、ヒューマンがうなだれた肩を叩く。
「一気に片付けようとしないで、一個一個やっていけばいいんだから。とにかく、何日か休みなさい。いっくら暴走セレちゃんだって、
たまには休まないとやってけないでしょ?」
「だ、誰が暴走ですかっ…!」
ムッとして顔を上げると、ヒューマンは素早く距離を取りつつ、溌剌とした笑顔を向けた。
「そうそう、そうやって元気にしてた方が、セレちゃんには似合ってる!少し休んで、その元気が本物になったら、また探索行こうね!」
「……もう!もうちょっと違う元気付け方、できないんですかー!?」
「無いものは望んじゃダメよー!それじゃ、またね!」
相変わらず、自分のことをよく知ってる相手だと、しみじみ思う。多少おかしな方法ではあったが、だいぶ気は楽になった。
それまでよりは少し明るい顔で、セレスティアは寮に向かって歩き出した。同時に、その顔には何か別の表情が見え隠れしている。
「さて、と」
部屋に入るなり、セレスティアはしっかりと鍵をかけ、戸締りを何度も確認する。その上で服を脱ぎ、全身を念入りに洗うと、
服も着ないままベッドに倒れこんだ。
少しの間、そのままボーっとしている。やがて、右手をそっと、自分の胸に這わせた。
「んっ…!」
全体を軽く揉み、乳首を摘むと、くりくりと転がすように弄ぶ。その度に、セレスティアは抑えた嬌声を漏らし、肌を上気させる。
「んうっ……ふあぁっ…!」
左手を秘部へと持っていく。指を入れると汚れてしまうため、周りからゆっくりとほぐすように撫で、そして最も敏感な突起を摘む。
「はうぅっ!……どうして、なんだろう…?」
疑問を口にしつつも、セレスティアは行為をやめない。それどころか、行為はますます激しさを増し、自分で胸を握り潰すように強く
揉みしだき、中に入れることの出来ないもどかしさを発散するように、自身の肉芽を押し付け、時には爪を立てる。
「はぁっ、はぁっ……さ、最近してなかったから、もうっ…!ん……んううぅぅっ!!!」
ビクンと体を震わせ、セレスティアは頭が真っ白になるような快感に酔い痴れた。
快感の波が去り、その気だるい余韻が残るだけになると、セレスティアは大きな溜め息をついて寝返りを打った。
「本当に……どうしてなんだろう…?」
彼女は変わった体質を持っていた。生理の痛みは、少し違和感がある程度のものでしかない。だが、その下腹部の痛みに誘発されるのか、
その時期とその前後には異様に性欲が高まるのだ。こうして発散しておかないと、やがては抑えきれないほどに膨れ上がってしまう。
今日の探索でも、彼女は痛みではなく、この膨れ上がる性欲のおかげで、動きが鈍っていたのだ。これが続くと、そのうち重大な過失を
犯してしまいそうだったが、幸いにも数日は休みである。その間に生理も終わるだろうし、今回はそんなに心配しなくていいかと、
セレスティアは半分眠り始めた頭で思っていた。
222 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:05:47 ID:8BMS61li
それから一週間ほど、一行は探索にも行かず、それぞれ好き勝手に過ごしていた。セレスティアは、主にヒューマンと遊んでいることが
多く、たまには他の仲間とも遊んでいる。が、なぜかドワーフだけは、あれ以来姿を見ていない。
姿を見ないまま数日が経過し、そろそろ面倒な出血がなくなった頃。セレスティアが図書館に向かっていると、同じように図書館へ
向かって歩くドワーフの姿を見つけた。
「あれ、ドワーフさんじゃないですか!」
呼ばれたドワーフはビクッと体を震わせ、伏目がちにセレスティアを見つめる。
「もう、最近全然見ないから、心配したんですよ?まったく、何してたんですか?」
「あ、あの……その…」
しどろもどろになりつつ、ドワーフは逃げるように背中を向けた。が、セレスティアは素早く近づくと、後ろから覆い被さるように、
その体を抱き締めた。
「ダメですよー、逃がしません。もしかして……本当に、わたくしには愛想が尽きちゃいましたか?」
「そっ、そんなことないですっ!だ、だけど、その…」
どうにも、要領を得ない。それに、何か焦っているらしいのだが、その理由もわからない。
「もう。だったら、どうしたっていうんですか?わたくしに会うと、何かまずい事でも…」
無意識に視線を落とした瞬間、セレスティアの声は止まってしまった。
子供だとしか思っていなかったドワーフ。その股間が、元気一杯に男であることを主張していた。結構立派なテントが張られているのに、
セレスティアはついつい見入ってしまう。すると、彼女の視線に気付いたらしく、ドワーフが今にも泣きそうな声を出した。
「あ、あの、違うんですよぅ…!ぼく……何にも、みだらなことなんか考えてないんです…!」
淫らな、というストレートな響きに、ついついセレスティアの顔も赤くなる。
「でもでも、変なんですよぉ!この間から、セレスティアさんの近く行くと……匂い嗅ぐと、こうなっちゃうんですよぉ…!」
「こ、この間って、いつぐらいですか?」
「えっと……一週間くらい、前です…」
それを聞くと、彼女には何となく想像がついた。大体、生理が始まったのがその頃で、性欲が高まってきたのがその少し前である。
そのせいで、嗅覚の鋭いこの種族は、無意識に『女』の匂いを嗅ぎつけてしまい、体が正直に反応してしまうのだろう。
簡単に言えば、自分のそれは発情期に近いのだろう。それで、近くにいたドワーフが、その巻き添えを食ったというわけだ。
しばらく、セレスティアはそのままじっとしていた。が、やがて彼女の中に、どうしようもできないほどの衝動が浮かび上がる。
「ドワーフさん、ちょっと来てください!」
「えっ、えっ!?セ、セレスティアさん、どこに行くんですかぁ!?」
強引に手を引き、困惑するドワーフを引きずるようにして、セレスティアは部屋に戻った。その目は、ある種の飢えた獣のような、
爛々とした光を放っている。
ドワーフを部屋に連れ込むと、しっかりと鍵を掛け、改めて彼を見つめる。相変わらず下半身は元気だが、その目は不安に満ちており、
尻尾も内股に巻かれている。
衝動的に連れ込んでしまったが、今ならまだ引き返せる、とも考える。だが、このドワーフを見ていると、その考えは急速に萎んでいった。
少しずつ、天使らしくない、背徳的な考えがセレスティアの頭を満たしていく。
この、無垢な少年を汚してみたい。堕ちていく姿を見たい。そして何より、自分の疼きも鎮めてもらいたい。
セレスティアは、優しくドワーフの体を抱き締めた。ドワーフはビクッと震えたが、抵抗は示さない。
そのまま後ろに回りこむ。ドワーフはいよいよ不安そうに、耳をせわしなく動かしているが、やはり抵抗はしない。
厚い胸板に手を当て、それを少しずつ、腰の方へ下げていく。
「あっ、あっ……セ、セレスティアさん!?」
胸を撫で、腹を擦り、そしてズボンの上から彼のモノに触る。
「んあっ!やっ!だ、ダメです!ダメですよぅ!」
「どうしてですか?」
「あのっ……だって、え、エッチなことはダメなんですよぉ!いけないことなんですよぅ!」
「そんなことありませんよ。ほら、こうすると気持ちいいでしょう?」
223 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:06:22 ID:8BMS61li
そっと、ズボンの上からその先端を撫でる。途端に、ドワーフの体がビクリと震えた。
「や、やめてくださいぃ!ダメなんですっ、ダメですってばぁ!」
「ふふ、可愛いです。こういう事、全然したことないんですか?」
優しく撫でながら尋ねると、ドワーフは切れ切れの声で必死に答える。
「だ……だって、だって……んあっ!い、いけないこと……あぅっ!なんですからぁ…!」
「でも、気持ちいいでしょう?」
耳元で囁くと、ドワーフは耳と尻尾を力なく垂らした。たぶん、他の種族であれば、今頃は全身真っ赤になっているのだろう。
「うふふ。いいんですよ、その感覚を否定しなくても。ほら、こうやって直接触ると…」
「ふあぁ!?だ、ダメ……ですぅ…!」
ズボンの中に手を入れ、直接触れると、さすがにドワーフは抵抗してくる。しかし手荒なことはできないらしく、せいぜい力なく
押してくる程度の抵抗である。それには構わず、セレスティアは彼のモノをそっと握り締めた。
「ああ……とっても、熱いです…。わたくしのせいで、こうなったんですよね?」
「そ、それは……えっと…!」
「いいんですよ。ですから、そのお詫びです」
「でもでも、そんな……やぁ!?」
ゆっくりと、前後に扱き始める。ドワーフの腰が跳ね上がり、抵抗の力がわずかに増す。それでも力任せに暴れない辺り、彼の教育は
相当しっかりと叩き込まれているのだろう。それがまた、セレスティアに背徳的な喜びを抱かせる。
「どうですか?気持ちいいですか?」
「ダ……メぇ…!いけない……こと……ですよぅ…!」
まだ抵抗を示すドワーフに、セレスティアの目が妖しく光る。
「もう、頑固なんですね。それじゃ、これはもうおしまいにしてあげます」
その言葉に、ホッと息をつくドワーフ。が、セレスティアはドワーフの前に回りこむと、その目に意地悪な笑みを浮かべた。
「その代わり、こうしちゃいます」
「え…?あ、セ、セレスティアさっ……やっ、うああ!!」
ズボンを下ろし、元気に飛び出たモノをぱくりと咥え込む。ドワーフは腰を引こうとしたが、セレスティアはしっかりと腰に手を回し、
それをさせない。
「あうぅ……おちんちん食べちゃ、ダメですよぉ…!」
舌先で、鈴口をチロチロと刺激する。ドワーフは嬌声とも悲鳴とも付かない声を上げ、セレスティアの頭を押す。それを意に介さず、
雁首をなぞるように舌を回し、筋を伝って舐め上げる。
「う、ああ……あ…!だ……めぇ…!やだ……ぁ…!」
じわりと、先端から透明な汁が滲む。わずかにしょっぱく、粘りのある感触。
―――わたくし、本当に、男の人のものを…!
しかも、相手は自分で慰めたことすらない、それこそ無垢な少年である。セレスティアは、背筋がぞくりとするような、えもいわれぬ
快感を覚える。それに刺激され、セレスティアの行為は激しさを増す。
「や……あぁ…!セレスティア、さん…!もう、やめて、くださいぃ…!」
限界が近いのか、ドワーフはセレスティアの頭に覆い被さるようにし、必死に刺激を耐えている。その姿がまた可愛らしく、
セレスティアはわざと大きな音を立てて奉仕を続ける。
さらに、無防備な尻尾に手を伸ばす。下からその根元を撫で上げると、ドワーフはビクッとして腰を突き出した。
「ひゃうっ!?も、もうやめてぇ!!なんか……なんか、変な感じがぁ…!」
一瞬、喉の奥まで突き入れられて焦ったものの、セレスティアはあえてそのままにし、舌全体を使って丁寧に舐めあげる。
「だっ、ダメ!ダメ!もうやめて!セレスティアさん、もうやめて!!放し……やっ、ダメぇ!!!」
突然、口の中に熱い液体が流れ込んできた。ひどく生臭く、えぐい味だったが、それが何であるかを知った瞬間、セレスティアは
恍惚の表情を浮かべた。
―――ああ……これが、男の人の…!
ドワーフのモノが、口の中でピクンと跳ねる度、大量の精液が流れ込む。その度に、セレスティアはごくりと喉を鳴らし、それを
飲み込んでいった。跳ねる間隔が長くなり、一度に出る量が減り、やがてそれが出なくなると、セレスティアはゆっくりと口を離した。
笑いかけようとした顔が、困惑の表情を浮かべる。ドワーフはべそどころではなく、本当に泣いていた。
224 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:06:55 ID:8BMS61li
「あ、あの、ドワーフさん…?」
「えっく……ひっく…!ご、ごめん……なさ…!」
「えっ……と…?」
「口の中に……がまん……できなくって……ふえぇ…!」
射精というものすら知らなかったのだろう。ドワーフは彼女の口の中に、漏らしてしまったと思っているのだ。
それを理解すると、セレスティアはドワーフの頭を優しく撫でた。
「違いますよ、ドワーフさん。お漏らししたんじゃなくって、これは大人になった印ですよ」
ドワーフはまだ涙を浮かべつつも、恐る恐るセレスティアを見つめる。
「……しるし…?」
「そう、印。ああやって刺激すると、出ちゃうんですよ。汚いものでもないし、恥ずかしい事でもないんですよ」
そう言われて、ドワーフはようやくホッとした顔を見せた。が、セレスティアはまたも爛々とした目を向ける。
「それじゃ、大人の次は、いよいよ『男』にしてあげますね」
「え、ぼく男ですけど……わわっ!?」
ドワーフの体を抱き上げると、ベッドの上に仰向けに寝かせる。その体に馬乗りになると、彼は怯えきった目でセレスティアを見つめる。
「な、何するんですかぁ!」
「ですから、『男』になってもらうんです」
言いながらショーツを脱ぎ捨て、そっと彼のモノを掴む。
「や、やだぁ!セレスティアさん、もうやめてぇ!」
「ふふ、可愛い。それじゃ、いきます……んんっ!」
ちゅぷっと、先端が入り込んだ。セレスティアの全身を、悦びと興奮とがない交ぜになった快感が駆け巡る。
「ああ…!わたくし、とうとう……こんなっ…!」
「いけ……ませんよぉ…!やめ……あううっ!」
ず、ず、と、少しずつ腰を落としていく。少しずつ強くなる、体内の圧迫感。それに伴う痛みに似た快感。それを全身で味わううち、
とうとうドワーフの全てがセレスティアの体内に納まる。そこでふと、セレスティアは我に返った。
―――初めてだったのに、痛くもないし血も出ないし、おまけに気持ちいいって…。
ほんの一瞬、セレスティアは自分に呆れ返ったが、すぐにまあいいかと気を取り直す。
「あうぅ…!か……かんいん……はっ…!た……大罪……だからぁ…!やめ……てぇ…!」
そんなドワーフに、セレスティアはそっと唇を寄せる。
「んー、そうですねえ。姦淫は罪ですよねえ」
途端に、ドワーフは怯えきった目を見開き、セレスティアをじっと見つめる。が、セレスティアは優しく笑いかけた。
「でもですよ?それは、程度が過ぎた場合とか、無理矢理それをなそうとした時です。そうでなければ、これは罪ではありませんよ」
一瞬、セレスティアは墓穴を掘ったかと焦った。しかし、今のドワーフには、そこまで頭が回るほどの余裕がないらしい。
「でも……でも、父上も、母上も、言ってましたよぉ…」
「ふふ、よく考えてみてください。神様が、わたくし達をそのようにお作りになられたのですよ?それなら、この欲求は自然なこと。
それを我慢したりして、自然に逆らう方が、罪だとは思いませんか?」
今まで信じきっていた価値観をひっくり返され、ドワーフはすっかり困惑しているようだった。そんな戸惑いの表情が、セレスティアに
たまらないほどの快感をもたらす。
「でも……えっと……その…」
「それに……ほら、気持ちいいでしょう?」
「ふあっ!」
軽く腰を動かしてやると、ドワーフはビクンと体を震わせた。
「こうやって、気持ちよくなる風にも作られてるんです。快感に溺れるのは、確かに大罪ですけど、そうでなければ、むしろとても
素晴らしい事ですよ?気持ちよくって、こうして仲良くなれて……これが罪だというなら、この世に正しい事などありません」
225 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:07:40 ID:8BMS61li
それでもドワーフは震えていたが、やがておずおずと、セレスティアの顔を見上げた。
「ほ……ほんと…?」
「わたくしは、天使の血族ですよ?そのわたくしが言うんですから、間違いありませんよ」
それでもまだ不安そうなドワーフを、セレスティアは優しく撫でてやった。
「大丈夫。すべて、わたくしに任せてください。すぐに、天国まで連れて行ってあげますよ、うふふ!」
艶っぽく笑うと、セレスティアはゆっくりと腰を動かし始める。
「うっ……ああ!」
膣内を締め付け、モノを扱くように上下に動くと、ドワーフはシーツをぎゅっと握り、その快感に耐える。セレスティアとしても、
体の奥深くを突き上げられる感覚は気持ちいい。
「んあっ!あぅ、あん!どう、ですか?気持ちいい、ですか?」
「はぁっ、はぁっ……は、はいぃ…!」
「ふふ、やっと素直になりましたね。それじゃ……んん!もっと、気持ちよくしてあげます」
腰を押し付けながら、さらに前後に動かし、時には腰を捻る。気付けば、結合部はセレスティアが溢れさせる愛液に塗れ、腰を動かせば
グチュグチュといやらしい音を立てる。
無意識に、動きが速くなっていく。より強く突き上げられる感覚を、より深く突き入れられる感覚を。体の中に響く振動が、痛みを伴う
快感となり、ただひたすらその快感を貪るために、セレスティアは激しく腰を動かす。
「ああっ!はぁ!!んああ!!わ、わたくし、もうっ…!」
「セ、セレスティアさんん…!ぼく……ぼく、またぁ…!」
奇しくも同じタイミングで、二人が声を上げる。ドワーフはセレスティアを止めるかのように、腰の辺りに手を伸ばした。セレスティアは
素早くその手を捕らえ、しかし押さえる事はせず、その手に指を絡めた。
さらに動きが激しくなり、部屋の中にパチュ、パチュと断続的な音が響く。それに合わせ、限界の近づいているドワーフが、尻尾で
ベッドを叩く音も加わる。
「ダメっ!セレスティアさっ……また、ぼくっ……う、うああぁぁ!!!」
ドワーフの腰が跳ね上がり、同時に体内で彼のモノがビクンと震えた。直後、体の奥にジンとした暖かみが広がる。
「ああ、わたくしの中にっ……あっ、わ、わたくしももう……んあ、ああぁぁ!!」
思い切り体をのけぞらせ、背中の翼をいっぱいに広げ、セレスティアの体が歓喜に打ち震えるが如く、激しく痙攣する。
トクン、トクンと、ドワーフのモノが体の中で跳ねるのを感じる。その度に、セレスティアは強い快感と、えもいわれぬ幸福感を覚える。
その快感に浸っていると、急にドワーフが腰を突き上げた。
「きゃんっ!?」
「あっ…!」
驚いてドワーフを見ると、彼は今にも泣きそうな顔でセレスティアを見つめていた。
「ご、ごめんなさい…!い、痛くするつもりはなかったんですよぅ…!でも、でも……腰が、勝手にぃ…!」
そんな彼を、セレスティアは優しい笑顔で見つめた。
「いいんですよ、気にしなくて。それだけ気持ちいいってことでしょう?わたくしも、それぐらい気持ちいいんですよ」
「い……痛く、ないんですか…?」
「痛いどころか、すごく気持ちいいですよ。だから次するときは、あなたがそうやって動いてくれると、嬉しいです」
「……が、がんばります」
恥ずかしそうに答えるドワーフ。本当に素直ないい子だと、セレスティアはしみじみ思った。
226 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:08:31 ID:8BMS61li
出なくなったのを見計らい、ゆっくりと腰を上げ、モノを引き抜く。それが抜けると同時に、入りきらずに溢れた精液がドロッと垂れた。
「なんか、白いのが…?」
「ふふ。それが、あなたがさっき出したものですよ。これが、赤ちゃんの元になるんです」
「……じゃあ、赤ちゃんできちゃうんですか…?」
「種族がだいぶ違いますから、それはないと思いますよ。それとも、出来ちゃった方がよかったですか?」
いたずらに笑いかけると、ドワーフは耳と目を伏せた。そんな純粋さが、やはり可愛い。
ハンカチで零れた物を拭き取ってから、セレスティアもドワーフの隣に寝転んだ。そして、その顔にそっと手を添える。
「それじゃあ、最後の仕上げです」
「しあげ?」
セレスティアは優しく、唇を重ねた。ドワーフは少し驚いたようだったが、控えめながらも、少しずつ自分から仕掛け始める。
しばし唇同士の感触を楽しんでから、セレスティアはつい、と顔を離した。
「これが、ただのキスです。大人のキスは、こうです」
返事を待たず、再び唇を重ねる。そっと舌を入れると、ドワーフの歯に当たった。彼は驚いて首を引こうとしたが、セレスティアは
腕を回し、さらにグイッと唇を押し付ける。やがて、彼もようやくやるべき事を悟ったらしく、おずおずと口を開き、舌を絡めた。
舌と舌がねっとりと絡み、漏れる吐息が混ざる。舌を舐め、歯をなぞり、時には口内を撫でるように舌を這わせる。ドワーフは舌と舌が
絡むのが好きらしく、しつこくセレスティアの舌を追っては、必死に絡めようとする。
いつしか、ドワーフもセレスティアの体を、しっかりと抱き寄せていた。暖かく、小さくとも力強い腕の中は、何ともいえない安心感を
感じさせてくれた。
が、腰に何かが当たる。ちらりと見てみると、ドワーフのそこはまた勢いを取り戻していた。呆れたように笑うと、セレスティアは
自分から唇を離した。
「もう。またそんなにさせちゃって、元気ですね」
「え?あっ、あの、これは、その…!」
セレスティアは優しく笑いながら、ドワーフの鼻をちょんと突いた。
「溺れるのは大罪ですから、今日はここまで。いいですね?」
「は……はい」
「ふふ、いい子です」
体を抱き締めてやると、ドワーフもぎゅっと抱き返す。その暖かさを全身に感じながら、セレスティアは心地良い眠りへと落ちていった
227 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:09:10 ID:8BMS61li
翌日から、一行はまた地下道探索を再開した。もう以前のような失態はなく、セレスティアは変わらず捨て身で敵陣に突っ込み、それを
しっかりとドワーフが守る。二人のコンビ復活に、一同はホッと安堵の息をついていた。
「やっぱり、それがなくっちゃね!セレちゃんとドワ君、息ぴったりじゃない!」
敵を殲滅すると、ヒューマンが弾んだ声をかけた。
「ええ、ゆっくり休みましたから。ね、ドワーフさん?」
「は、はい。ぼくも、休みましたから」
笑いかけると、ドワーフは恥ずかしげに視線を逸らした。やはり、何かと気恥ずかしいのだろう。
と、思った瞬間。彼はセレスティアの顔をしっかりと見つめ、口を開いた。
「あの、セレスティアさん」
「あ、はい?何ですか?」
「今日の探索が終わったら、またまじわりたいです!」
「っ!?」
その瞬間、パーティの空気が凍った。誰も彼も、その一言に耳を疑っていた。
「あ、あ、あ、あの……ま、交わりって…」
「はい!昨日みたいに、セレスティアさんとまじわりたいんです!」
「そそそ、そうじゃなくって!あの、ドワーフさんっ!」
「どうしたんですかぁ?」
無邪気に、本当に不思議そうに首を傾げるドワーフを見て、セレスティアは自分の誤算を知った。無垢すぎるこの少年は、自分の言葉の
全てを、言葉通りに受け取ってしまったのだ。
「あ……の……それ、は……そう、人前で言うようなことじゃ…!」
「???……でも、恥ずかしいことじゃないって、言ってたじゃないですか?」
ボッと、セレスティアの顔が真っ赤に染まる。
「そ、それは言いましたけどっ!その、えっと、だからって、みんなの前で…!」
「ぼくのおちんちんくわえたりしても、恥ずかしくないって言ってたのに?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」
ボンッと、セレスティアの耳までが真っ赤に染まる。
「アノ……ソレハ、アノ…」
「……君達、そんな事してたんだ……くそ、ドワーフめ、羨ましいな…」
バハムーンが率直な感想を口にした瞬間、セレスティアは指先まで真っ赤になり、全身が固まってしまった。
「はっはっはっは、よしドワーフ、ちょっと来い」
「どうしたんですか?」
ドワーフの肩に腕を回し、クラッズが俗っぽい笑顔を見せる。
「具体的にどんなことされたか、ちょっとあっちで詳しく聞かせてくれや。恥ずかしくない事なんだからいいだろう?」
「あ、僕も聞きたいな。聞かせてくれ。是非に」
「いいですよー。あのですねえ…」
「ドワーフさんっ!!!」
228 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:09:52 ID:8BMS61li
慌てて後を追おうとした瞬間、ヒューマンがセレスティアの首にがっちりとヘッドロックを極めた。
「セ〜レちゃ〜ん!なかなか面白いことしてんじゃないの〜、ええ〜?」
「そうですよ!すごいです!私、セレスティアさん尊敬します!」
頭を拳でグリグリされつつ、セレスティアは急に敬語になったクラッズに目を向ける。
「痛たたた!な、何がですか!?」
「だって、あの難攻不落のドワーフ君を落としたんですよ!?すごいです!感動します!」
「ほ〜んとよね〜。にしても、天使の癖に、結構小悪魔なところあるんだねー、セレちゃんって」
「私なんか、彼と付き合い長いのに、キスすらないのに……セレスティアさん!男の人どうやって落とすのか、コツ教えてください!
私も彼と、そろそろキス……ううん、それ以上のことしたいんですっ!」
「コツって……いや、その、わ、わたくしは……て、ヒューマンさん、痛いですってば!」
何とかその腕から逃れようともがいていると、ヒューマンがそっと耳に唇を寄せた。
「あ、セレちゃ〜ん。もしパーティ抜けたら、この話、私が知ってる子全員に話しちゃうからね〜」
すうっと、セレスティアの顔から血の気が引いた。
「パーティ永住、してくれるよね〜?」
「そ、そんなっ!それはだって、あの……その…!」
「ばらしちゃうよ〜?」
「お願いです!セレスティアさん、私の先生になってください!お願いしますっ!」
どうやら、自分に拒否権はなさそうだと、セレスティアはぼんやりと理解した。
「……で、それで…………こう、この辺をこう…」
「うわぁ……わぁ…!」
「ふむふむ……で?それで……おおぉ……そ、それでその先は…?」
「って、三人とも何話してるんですかぁ〜!!!もうやめてくださ〜〜〜い!!!」
どうやら、色んな物を一度に手に入れてしまったようだと、セレスティアは思った。
面白い仲間達。気の置けない友人達。息の合う仲間達。そして、可愛い彼氏。
そこまでならよかった。だが、おまけに全員が知るところとなった恥ずかしい秘密。抜け出したいパーティ。抜けられないパーティ。
この先、自分は一体どうなるんだろうと、パーティ加入時よりさらに深刻に考えるセレスティア。
だが、それも悪くはないかという気持ちも、少なからずあった。
「あの……セレスティアさん、どうしたんですか?ぼく、なにか変なこと言いました?」
無邪気に、無垢な瞳で尋ねてくるドワーフ。その顔を見ていると、何だかどれもこれも、些細な問題に見えてしまった。
「……いえ、もういいんです。大丈夫です。全部話してあげてください」
「はーい」
彼と一緒にいられるというのなら、いい加減一所に身を置いてもいいかと、そう考えるセレスティアであった。
229 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/17(火) 00:10:55 ID:8BMS61li
以上、投下終了。たまにはこういう子も書くと楽しい。
こっちにも無理矢理バレンタイン絡めようかと思ったけど無理でした。チョコの入る余地ねえよ。
とりあえず、他の書き手の方々と読み手の方々と、お世話になってる保管庫の管理人さん、俺からのチョコをもらった気になってください。

それではこの辺で。
230名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 08:18:46 ID:K9f/LEYl
おつですー
231名無しさん@ピンキー:2009/02/19(木) 00:22:25 ID:dXb2EabT
GJ!
セレ子は声も落ち着いてるし、なんか大人のお姉さんって感じがする

どうでも良いがゴルゴみたいな濃い顔のクラッズ想像して吹き出した
ちょっと正座して説教されてくるw
232名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 18:50:03 ID:TDGkBn7S
これはいいショタ。GJ!

バレンタイン?ああ、中止になったらしいから別に入れなくておk
233名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 14:15:37 ID:9pO1psA2
保守
234 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:39:47 ID:fXxB4DmZ
今日も今日とて、トハスで定点狩りの日々。未だ見ぬ妖刀にししゃも。出るのはいつの話やら。

例によって投下しますが、エルフとドワ子を無理矢理絡めてみたら、非常に長くなってしまいました。
なので、お暇なときにでも読んでください。
それと、今回の注意としては、名前ネタで弄ってみたかったので、全員名前付きです。
それでは、毎度の如く楽しんでいただければ幸いです。
235 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:40:43 ID:fXxB4DmZ
様々な種族が一同に会し、共同生活を送る学園。それでも、全種族が仲良く、というわけには行かない。そんな相性最悪の組み合わせで、
有名なものを三つ挙げろと言われれば、恐らく大概の者が、セレスティアとディアボロス・ヒューマンとバハムーン・エルフとドワーフ、
を挙げるだろう。極々一部の例外を除けば、実際にこれらの種族は気が合わない。
彼女も、そんな典型の一人である。小さな体に大きな声。豪胆で、大食いで、怪力。だけど実は信心深い、至って普通のドワーフだった。
好き嫌いの多いドワーフのこと。彼女の腕は確かだったが、しょっちゅう仲間との諍いを巻き起こし、なかなか一つのパーティに
居つくことができなかった。
この時も、彼女は計7回目のパーティ脱退をしたばかりで、一人寂しく夕食を食べていた。もっとも、寂しくというのは周りから見た
意見で、彼女としては、久々に気を使わなくていい夕食にご満悦だった。
前菜代わりにおにぎりを10個ほど食べ、スープ代わりにビーフシチューを飲み干し、いよいよメインディッシュのステーキに丸ごと
かぶりついた時、一人の生徒が彼女に近づいた。
「お食事中のところ、すみません」
「んん?」
肉を咥えたまま目だけを動かすと、真っ白な翼が目に入った。そのまま視線を上げると、優しい笑みを浮かべた顔が映る。
「あ、お邪魔だというなら、終わるまで待ちますが」
「ん、ほーひへ」
嫌な顔一つせず、セレスティアは彼女の正面に座る。そんな彼を気遣うこともなく、彼女は豪快に肉を食いちぎり、それを水に見せかけた
やさぐれ淑女で流し込む。それにも嫌な顔一つしない辺り、セレスティアという種族の穏やかさがよく出ている。
やがて、騒々しく豪快な夕食が終わると、ドワーフはホッと酒臭い息を吐き、口元を腕で拭った。
「はい、お待たせ。なんか用?」
「いい食べっぷりでしたね」
「そりゃありがと。用は終わり?」
「いや、そんな。意地悪なことを言わないでください」
少し困った笑顔を浮かべ、セレスティアはドワーフを見つめる。
「わざわざそんな事を言うために、声なんかかけません」
「そりゃそーだろうね。んで、何の用なの?」
「要点だけ言いますと、パーティへの勧誘、ということです」
穏やかな笑みを崩すことなく、セレスティアは続ける。
「戦士とお見受けしましたが、間違ってはいませんよね?」
「転科したばっかだけどな。前は僧侶だったけど、あんなん性に合わねえや」
「ええ、それでも構いません。あなたさえよろしければ、ぜひとも仲間になっていただきたいのですが…」
そこまで言うと、セレスティアは少し困ったような顔になった。
「なんか問題でもあんの?」
「ええ、その、わたくしの仲間には、あなたと気の合わない方もいます」
「あんま気ぃ進まねえな、そりゃ。まさか、エルフとか言わねーよな?」
「……残念ながら、当たりです」
「うっげ、マジかよ。あたいはちょっと無理そうだ。他当たってくれ」
「実はもう、かなりの人数に声をかけたのです。ですが、なかなかいい方に巡り会えず、また断られることも多く……お願いです!
どうか、何とか考えていただけませんか!?」
「んなこと言われたってさー、エルフだろぉ?」
「実はフェルパーの方もいます!ですけど…!」
「うわぁ、最悪。マジ無理。諦めろ」
「そこを何とかっ!」
それからしばらく押し問答が続き、長針が二周するほどまで長引いた。結局、追加のステーキ三枚とアイスクリームと、加入特典である
豪華な弁当一週間分に釣られ、とりあえずの加入が決まった。
236 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:41:19 ID:fXxB4DmZ
「んでも、たぶんすぐ抜けるかんね」
「ええ。とりあえず一週間、様子を見ていただいて、その後の判断はお任せしますよ」
「はいはいっと。んま、飯のために頑張るかねー」
何とか話がまとまり、セレスティアはホッとしたように息をついた。そして、今気がついたように表情を改める。
「おっと、そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。わたくしは、アドルフォと言います。あなたの、お名前は?」
「すぐ脱退すっかもしんねーのに、名前なんか知らなくてもいーんじゃねえの?」
「とはいえ、少しの間でも、仲間には変わりありませんから」
何の衒いもない笑顔に、彼女の表情も少し柔らかくなった。
「ま、それもそっか。あたいはシナック。少しの間だと思うけど、よろしく」
「ええ。こちらこそ、よろしくお願いしますよ、シナックさん」
その笑顔を見ながら、彼女は心の中で、少しは長くいてやろうかと考えていた。

翌日、彼女は寮の入り口でパーティに顔見せすることとなった。起きてすぐ出たのだが、既にアドルフォは来ており、その周りに彼の仲間
と思われる者がいる。
「おはようございます、シナックさん」
「おー、おはよ。こいつらが、あんたの仲間?」
無表情なエルフ。ヒューマンの陰に隠れるフェルパー。人懐っこい笑顔のクラッズ。ヒューマンもあまり好きではないんだけどな、と、
彼女は心の中で文句を言っていた。
「わたくしは、昨日名乗ったからいいですよね?学科は、司祭です」
「次俺でいいかな?俺は超術士のハルトマン。君と肩並べる事になると思う。よろしくな」
「ヒューマンとかよ……あんま気が進まねーな」
「あはは。こう見えて結構強いんだぜ。君の戦いぶり、楽しみにしてるよ」
棘のある言い方をしたにもかかわらず、彼は気にする素振りもない。思ったより悪い奴じゃないかもしれないな、と、彼女は思った。
「次ボクねー。ボクは見ての通り、盗賊のティティアナ。呼び方はティティでいいよ」
「ティティか。はは、あんま女っぽくない喋りだな」
「ボクはそうでもないでしょ〜?シナちゃんの方がずっと男っぽいよー。……ほら、二人も」
そう促され、フェルパーがおずおずと顔を出す。その仕草に苛立ちが募るが、豪華な弁当のためと自分に言い聞かせ、必死に殴りたい
衝動を抑え込む。
「……わ、私の……あ、いや……私、は、トゥスカ。戦士学科所属。まだあんまり強く……そん……えっと、弱いけど、よろしくね」
何だか妙に引っかかる喋り方である。単に『強くない』とでも言えば済むことなのに、三度も言い直している。
と、ティティアナがニヤニヤと笑いを浮かべつつ口を開いた。
「トゥスカちゃーん。今日も鉤尻尾が可愛いねー」
言われてみると、確かに尻尾の先が曲がっている。が、彼女は非常に不快そうな顔で言い返した。
「尻尾のことは言わにゃいでっ……あ…」
途端に、トゥスカは顔を真っ赤にしてハルトマンの後ろに隠れる。
「こら、ティティ。からかうのはやめろって」
「だってね〜?可愛いんだもんね〜」
「か、可愛いって言うにゃっ!」
「その『にゃ』っていうのが可愛いんだよ〜」
「うるさいにゃあ!ティティちゃんにゃんか嫌い!」
どうやら、彼女は『な』が発音できないらしかった。それで、いつもからかわれているのだろう。
「おい、ティティ。いきなりであれだけど、尻尾のことはあんま言うな。あたいだって、体のこと言われたらムカつく」
「あ、そういうもんなの?んー、んじゃやめとこ。……で、最後の一人、どうぞー」
エルフはずっと無表情のままシナックを見ていたが、やがてため息混じりに口を開いた。
237 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:41:56 ID:fXxB4DmZ
「やれやれ。これは僕に対する、あてつけかな?」
いきなりの言葉に、シナックの全身の毛が逆立った。が、素早くアドルフォが間に入る。
「わたくしがリーダーである以上、わたくしの判断で仲間を誘うということは、あなたも了承しているはず。あなたの言いたいことは
わかりますが、わたくしに他意はありません」
「どうだか。ま、しょうがないね。僧侶学科所属。名前は……カルネアデスとでも呼んでくれ」
「『とでも呼んでくれ』って、どういうこった?あたいには名前も言いたくねーってのか?」
「シナックさん、彼の本名はわたくし達も知らないのです。」
意外な言葉に、シナックは疑いの目でアドルフォを見つめる。
「以前は、別の名を名乗っていましたが…」
「アドルフォ、やめてくれないか」
カルネアデスが言うと、彼はすぐに口をつぐんでしまった。その態度に、彼女は首を傾げる。
「おかしいな。あんたがリーダーだろ?」
「それは、そうですが……色々、あるのですよ」
「はっきりしねーなあ。色々って何だよ?もうちょっとはっきり…」
「これだから、ドワーフは…。姿形が獣なら、心の中も獣のように、慎みも、遠慮もない」
「んだと…?」
詰め寄ろうとするシナックをアドルフォとハルトマンが押さえ、カルネアデスはティティアナとトゥスカが止める。
「カル、やめなよ!シナちゃんは何も悪くないんだから!」
「シナック、ここは抑えてくれ。あいつも悪い奴じゃない」
「んなの知らねーよ。気に食わねえ、ぶっ殺してやる」
「お願いです、待ってください!どうしてもと言うなら、まずはわたくしを手にかけてください!あなたを誘ったのはわたくしですから!」
そう言って立ちはだかるアドルフォには、一種独特の迫力があった。仕方なく、シナックは斧を納める。
「お前等の気が合わないのはわかるけど、喧嘩はやめてくれ。少なくとも、命を預ける仲間になるんだから」
「けっ!こんなのに命預けたんじゃ、いくらあっても足りねーぜ!」
「僕としても、君みたいに粗暴な命を、預かりたくなんかない。勝手にやってくれ」
「……この野郎。殺していいよな」
「ダメに決まってますっ!」
延々、二人の喧嘩は長引いた。それでも何とか残りの四人で二人を抑え、苦労の末に昼過ぎ頃、ようやく地下道探索へと出かけた。
道すがら、シナックはティティアナとよく話していた。やはりドワーフだけに、クラッズとは気が合うのだ。
前の方では、ぶちぶちと文句を言い続けるカルネアデスを、アドルフォが宥めており、後ろではハルトマンとトゥスカが歩いている。
何やらトゥスカはシナックの方をちらちらと見ており、それに対して彼が何か言う。その度にトゥスカはシナックをじっと見つめるのだが、
どうにも話しかけ辛いようだった。その態度が気になり、しまいにはシナックの方から彼女に近づく。
「おい、お前」
「は、はいっ!?」
「さっきから何だよ?あたいのこと、ちらちら見てさ。用があるなら、さっさと言えよ」
すると、ハルトマンは笑いながらトゥスカの肩を叩き、ティティアナの方に歩いて行った。
「あの……あのね…。朝ね、私の尻尾のこと、庇ってくれて……あ、ありがとう…」
「んだよ、そんなことか。あたいに礼なんか言ってねーで、自分で言えるようになれよな」
「が、頑張る…。ありがとね、シニャックちゃん…」
「シナック、だ」
「シ……シニャ…………シ、シ……ン、ニャ……シニャッ…」
大きなため息をつき、シナックは首を振った。
「もういい。好きに呼べ」
「……シーちゃん」
「ふざけんな!殺すぞ!」
「ごめんにゃさいーっ!」
「あはは。シナちゃん、すんごい理不尽」
ともあれ、懸念の一つであった二人の関係も思ったよりは悪くなく、シナックとしてはそれなりの居心地のよさを感じていた。
238 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:42:33 ID:fXxB4DmZ
が、それでもやはり、たった一人の存在が、居心地を致命的に悪くしてしまう。
アーミーナイトともちゃもちゃの群れに出会った一行。大して苦戦する相手でもなく、それぞれが思う存分に力を振るう。当然、
シナックも例外ではない。どうしても動きの早さは後れを取るが、小さな体が振り回す大斧は、それを補って余りある威力を見せ付ける。
「せぇいっ!!」
全身から放たれた気合と共に振り下ろした一撃は、まさに力技と呼ぶに相応しいものだった。真っ向から振り下ろした斧は、
アーミーナイトが防御のためにかざした槍と、兜と、鎧と、そして肉体はおろか、その下の床までもを真っ二つに叩き割ってしまった。
「ひゅー、すっげえなおい」
「かっこいい。私もああにゃりたいにゃあ」
敵の残りは、アーミーナイト二体。そのうちの一体は、いつの間にか背後に回ったティティアナが、一瞬の隙を突いて倒してしまう。
最後の一体が、シナックに襲い掛かる。それを斧で受けようとした瞬間、突然アーミーナイトは倒れた。
「……ん?」
後ろを見ると、前衛の二人もきょとんとした顔でそれを見ている。が、その後ろに目をやった瞬間、彼女の表情は一気に曇った。
「けっ、余計な真似しやがって」
「余計な?僧侶の役割は、危険を排除すること。『消えて欲しい』と『死んでいい』は、違うからね」
カルネアデスだった。彼女が攻撃を受ける前に、彼がデスを唱えたのだ。
「あんな野郎の攻撃で、あたいが死ぬかってんだよ」
「あんな無防備な姿を晒して。狼の前に震える子犬がいれば、誰だって危険だと思うだろう」
「てめえ、本気で喧嘩売ってんだろ。次はてめえを叩っ切ってやろうか」
「はーいはいはい。二人ともそこまでー」
突然、ティティアナがどこからともなく現れた。その手には、ちゃっかり奪った金貨の袋が下げられている。
「ボクはごめんだよ?本当の敵は仲間なんてさー。カルも、あまり嫌味な言い方しない。シナちゃんも、いちいち突っかからないの」
二人とも、クラッズである彼女には素直である。その後少し睨み合いが続いたものの、二人がそれ以上言い合うことはなかった。
だが、その先の戦闘でも似たような事は多々あった。大概、さしたる危険が迫ったわけでもないのに、カルネアデスが一方的にシナックを
助け、一言皮肉を言う。ただでさえ嫌いなエルフである上に、こうも馬鹿にされては腹が立つのも当然である。すぐにでも、この鼻持ち
ならないエルフを挽肉のトマトピューレ和えにした上で、ディープゾーンにでも放り込んでやりたい気分だったが、ティティアナと
アドルフォの懸命な、というより必死の説得と機嫌取りにより、何とか持ちこたえていた。が、彼女の中では、一週間経ったらすぐに
パーティを抜けてやろうという決心が、固く結ばれていた。

印象最悪の一日目が終わり、彼女は体験パーティ二日目を迎えた。前日ティティアナが何か言ったのか、その日のカルネアデスは
おとなしかった。おかげで不快な気分にはならなかったが、かといって心象がよくなるわけでもない。極力、この不快なエルフのことは
考えないようにしようと、彼女は心に決めていた。
ラーク地下道中央辺りに来た頃、タロットルの群れに出会った。精霊であるこの敵は、物理攻撃が効きにくい。
「シナックさん。あなたの大斧では、この敵には太刀打ちできません。ここは、わたくし達にお任せを」
アドルフォが言うと、シナックは実に不快そうに顔をしかめた。
「お前、あたいの話まともに聞いてなかったな?」
「え?いえ、そんなことは…」
「あるんだよ!ったく、なめんじゃねーよ」
先に攻撃を仕掛けたトゥスカとハルトマンが、不思議そうに首を傾げる。だが、シナックはそれに構わず、軽く額に手を当てると、何かを
呟きだした。周りが、それが何であるのか気付いた瞬間、彼女は叫んだ。
「くたばれ!シャイガン!」
同時に、目も眩むような閃光が走り、タロットルは次々にその光の中へ消えていく。
「これは……そうか、そうでしたね。以前は、僧侶学科だった、と」
「他人を癒すってのが、性に合わなかっただけで、攻撃魔法は結構気に入ってんだぜ」
「いいにゃあ。私も転科しようかにゃあ」
「それなら超術士お勧めだぞ。戦闘もこなせるし、色々役立つ魔法があるしな」
239 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:43:10 ID:fXxB4DmZ
彼女の意外な一面に皆が感心している中、カルネアデスだけは違った。その顔はひどく険しい表情になり、実に不快そうに彼女を
見つめている。そんな彼に、ティティアナがそっと近づく。
「カル、ダメだよ?ちゃんと抑えてよ?」
「……くっ!」
その、僅かな声。普通なら聞き漏らしてしまうような、数々の騒音の中の一つ。不幸なことに、ドワーフである彼女の鋭敏な耳は、その
小さな音を拾ってしまった。
「てめえ、何か言いてえことありそうだな?んな態度でわからせようなんて、小賢しい真似してねーで、はっきり言やどうなんだよ」
彼女の言葉に、カルネアデスは鋭い視線を向けた。二人の間に、慌ててティティアナとアドルフォが割り込む。
「カル、ダメだからね!どうしてもって言うなら、ボクをどけてから……あうっ!」
「シナックさん!お願いですから、抑えてください!ここはわたくしの……うわっ!」
二人とも、あっさりと突き飛ばされた。エルフの尊大な眼差しが獣を睨み、ドワーフの直情的な視線が傲慢な妖精を見据える。
「不快だねえ」
「あたいが、魔法を使うことがか?」
「そうだよ。しかも、僧侶魔法。そんなものを見るぐらいなら、苔生す石碑に書かれた呪詛の言葉を読む方が、どれだけ気が楽か」
「んーじゃあ、さっさと地下道から出て、その辺の遺跡でも漁ってろってんだ」
「やれやれ。ドワーフは、例えすらそのままとして受け取るから困る」
「エルフってなぁ、人が真面目に話してるってのに、言葉遊びするほど無礼で考えなしの種族なんだな」
シナックの目は、本気で殺気を帯びていた。
「君の態度ほどに、無礼とは思わない」
「てめえが思ってるだけだ」
斧を持つ右手の筋肉が盛り上がった瞬間、その腕に何かがしがみついた。
「トゥスカ、何しやがる!?」
「シーちゃん、やめてよぉ!カルネ殺しちゃダメだよぉ!」
「知ったことか!売られた喧嘩を買うだけだ!」
「ダメだってばぁ!」
それまで腕を押さえていたトゥスカが、突然掴む部分をスカートに変更した。下にスパッツを穿いているとはいえ、さすがに年頃の女の子
であるシナックには効いた。
「ちょっ、ちょっ…!?て、てめえどこ掴んでやがるっ!?放せ、馬鹿っ!うわわわっ、やめろってば!」
「だって、こうしにゃいとシーちゃん暴れるもん!」
「二人とも、もうやめろ。トゥスカ、あとは俺が」
そこに、ハルトマンが険しい顔をして間に入る。スカートの攻防を繰り広げていたトゥスカはサッと身を引き、シナックは半分
ずり落ちていたスカートを素早く引き上げる。
「シナック。元々君がエルフを嫌いなのはわかる。だけど、頼む。堪えてくれ」
「向こうから喧嘩売ってんだ。それをてめえらに止める権利なんて、あんのかよ」
「権利はない。が、義務がある。仲間同士で殺し合いなんて、させるもんか」
「ふんっ、善人面しやがって」
「悪人だって、仲間は大切だろ」
「……それもそっか」
妙なところで素直な彼女は、その言葉に納得してしまう。片方が片付いたと見ると、ハルトマンはカルネアデスの方へ向き直る。
「お前も、いい加減にしろ。まだお前…」
「それ以上は、いらないよ」
たった、その一言。それだけで、ハルトマンは力なくうなだれ、言葉を止めてしまった。昨日のアドルフォの様子が頭に浮かび、
シナックは訝しげに口を開いた。
「お前もかよ。そんなに、そのエルフは大切な野郎なのか?」
「いや、その……悪い。古い仲間内の、事情があるんだ」
240 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:43:48 ID:fXxB4DmZ
「へーえ。つまり、古い仲間内でだけ知ってりゃいいことで、新しい仲間であるあたいには関係ねーってことか」
「いや、そんなわけじゃっ…!」
「そういうことだよ。わかったら、なるべく早めに脱退願いたいものだね」
その一言は、彼女の決心を固めるのに十分すぎるほどの威力を持っていた。全体で見れば、居心地は悪くないし、なかなかいい仲間達に
出会えたと言える。しかし、たった一人の存在が、それらすべてを消してしまうほどに不快過ぎる。
少しの間、シナックとカルネアデス、そしてその他の仲間の間で言い合いが続いた。が、カルネアデスは相変わらず嫌味しか言わず、
シナックの決心も固い。間に昼食を挟んだことで、食いしん坊な彼女の気分はいくらか和らいでいたが、それでも決心を変えるまでには
至らなかった。
昼食を終えると、一行は再び地下道を歩き出す。しかし、カルネアデスは何か気に入らなかったのか、またもシナックに過剰な
援護をするようになっていた。彼女は何度も挽肉とトマトピューレを作ろうと思ったが、その度に全員から必死に止められた。
ただ、二回目ともなると、少しはおかしい事に気付く。彼が援護するのは、シナックのみである。もちろん、ただの嫌味である
可能性の方がずっと高いのだが、彼の援護は的確といえば、それに過ぎるほどである。よっぽどのことがない限り、彼女は掠り傷一つ
負う事はなかったし、例え傷ついてもすぐに癒された。それも、本当にちょっとした傷をメタヒールで癒すのである。
僧侶としての使命感か、それとも別の何かがあるのか。シナックは粗暴ではあるが、動物的な勘はよく働く。
彼の異常な行動には、嫌味だけじゃない何かがあるのかもしれないな、と、心の中でぼんやりと思っていた。

そんな調子で三日経ち、四日経ち、五日目の夜。夕食を終えて部屋に戻ろうとすると、ハルトマンとティティアナに呼び止められた。
「シナック、ちょっといいか?」
「何だよ?話でもあんのか?」
「うん。ちょっとね、あんまり大きな声じゃ話せないことだから」
「ふーん。まー重要なことってんなら、少しゃあ付き合ってもいいかな」
三人はハルトマンの部屋に向かった。部屋に着いてみると、中ではトゥスカがベッドに座っている。
「あ、シーちゃん」
「トゥスカまでいんのかよ。にしても、大切な話にしちゃあ、リーダーがいねーじゃねえか」
「あ〜……アドルフォはいいの。ボク達だけの方が、都合いいからさ」
「あと、トゥスカは俺の彼女だ。そう嫌そうな顔してくれるな」
「え、マジで?全然気付かなかった」
「シナちゃん、鈍いにも程があるよ」
少し笑ってから、ティティアナは表情を改めた。
「あの、さ。カルって嫌な奴だけど、嫌わないでやってくれないかな?」
途端に、シナックの表情が不快そうに歪む。
「ただでさえエルフだってのに、あんな胸くそ悪りい野郎を嫌うなってか?はっ、仲間ってのは、大した結束だなあ!」
「いや、確かに今は嫌な奴だ。でも、前はあんなんじゃなかった」
「あん?」
ハルトマンの言葉に、シナックの表情が訝しげに変わる。
「あのな、信じられないかもしれねえけど、あいつめちゃくちゃ気さくで、すっげえノリの軽い変態だったんだぞ」
「もっと嫌な奴じゃねえか…」
「うちの生徒会長、いるだろ?何か猫耳好きとか噂があるけど、あいつ……カルネアデスはもっとひどかった」
「最悪じゃねえか…」
「いや、まったくもってその通り。けどな、いい奴だったんだよ」
当時を懐かしむように、ハルトマンは目を瞑った。
241 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:44:24 ID:fXxB4DmZ
「そうそう。ボクもトゥスカちゃんも、いきなりあいつにナンパされたもんねえ」
「うん。でも、あんまり好きじゃにゃかったよ。『可愛い鉤尻尾』とか言うんだもん…」
「トゥスカちゃんはまだいいじゃん。ボクなんか目の前で『ボクっ子か、たまらないな!』とか言われて呼吸が荒くなって……ああいうの、
貞操の危機っていうんだろうなーって思ったよ」
何だか頭が痛くなってくる話だった。そして今までとは質の違う、言うなれば義憤という名の殺意が、彼女の中に芽生える。
「あ〜……あの野郎がどれだけ最低かは、もういいよ。それで、あたいにどうしろって?」
「いや、何気に重要な話なんだぞ、これ。そんでな、守備範囲の滅法広い奴だったけど、さすがにディアボロスは嫌いだったみたいだ。
あいつが女相手に呼吸を荒くしなかったのは、あいつらだけだったな」
「そりゃーそうだろうよ。さすがにディアボロスは…」
そこまで言って、彼女はおぞましい事に気付いた。
「……待て、ディアボロス『だけ』?じゃああの野郎、まさか、その…!」
「その、まさか。それどころか、一番好きなのがそれ」
その一言に、彼を知る一同は笑い混じりのため息をついた。
「エルフにしちゃあ異常だよなあ。ドワーフの素晴らしさを語るエルフとか、どうなんだよと」
「ボクもよく聞かされたなー。『あのモフモフ感のよさ、わかるだろっ!?』とかさ、すっごい気合入ってて怖かった」
「私は、『にゃがい尻尾もいいけど、短い尻尾もまた素晴らしい』とかにゃんとか」
「俺なんか、もっとひどいぜ。男同士だし、常日頃からそういうの言われまくってたんだ。『あのもっさり感の良さがわからないなんて、
君は人生の十割いやそれ以上の損をしているっっっ!!!!』とか、人生否定されたことまであるんだぜ。さすがに殴ったけど」
「待て、お前ら……マジで気分が悪くなってきた…」
例えや冗談ではなく、本当に気分が悪かった。できる事なら今すぐにでも部屋を出て、夜風に当たりながら酒で今の話を洗い流したかった。
「ああ、悪い悪い。免疫ない奴にあいつの話はきつかったよな。んで、まあ、その。あいつな、少し前まで彼女がいたんだよ」
シナックは疲れ果てた目を向け、言葉の続きを待った。
「大体察しがついたと思うけど、ドワーフの子。それで、その子は俺達の仲間だった」
「そんで、嫌気が差してそいつが出てって、そのショックであーなったとでも言うのか?」
「いや、それなんだけど…」
突然、部屋にノックの音が飛び込んできた。トゥスカは驚いて布団に包まり、他三人は思わず身構える。
「だ、誰だー?」
「僕だ。少し、いいかい」
よりにもよって、カルネアデスである。ティティアナとハルトマンは素早く目と目で会話し、何とかシナックを隠そうとするが、
カルネアデスが続けた。
「それから、君の部屋に四人いるのは知ってる。今更、妙な真似はしないように」
無駄な努力をしていた二人は大きなため息をつき、ハルトマンは観念したようにドアを開けた。
「で、何の用だ?」
「いや、一言言いたいだけだよ。余計な話はしないでもらいたいってね」
「けど、それは…!」
「何かしらの理由で、パーティに残ろうとか考えられても困る。それだけだ」
シナックは思い切り顔を歪め、カルネアデスを睨みつけた。
「おい、変態野郎。言われるまでもなく、お前なんかと一緒にいるなんて、あたいの方から願い下げだ!」
「……そうかい、それは助かるよ」
表情の掴めない笑みを浮かべると、カルネアデスはゆっくりと踵を返し、自分の部屋へと戻って行った。
残された四人の間に、沈黙が広がる。が、やがてシナックが不機嫌そうに立ち上がった。
「お、おいシナック…!」
「話は終わりだろ。お前らとも、あと二日だな」
「シナちゃん、ちょっと待っ…!」
二人の止める声も聞かず、シナックは部屋から出ると乱暴にドアを閉めた。あんなエルフがいる限り、絶対にこのパーティに
留まることはない。彼女の決心は、もう覆ることがないほどに、固く結ばれてしまっていた。
242 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:45:09 ID:fXxB4DmZ
結局、彼女の意思を変える事ができないままに、二日が過ぎた。パーティ脱退の意思は固く、もう四人がかりで説得しようとも聞く耳を
持たなかった。そうまでなっては、さすがに残留を訴えることはできない。せめてものお別れの挨拶として、最後に一行は揃って夕食を
取ることにした。が、カルネアデスだけは来ず、部屋へと戻ってしまった。もっとも、彼女にとってはその方が嬉しかったが。
「それにしても、すみませんでした。あなたには、ずいぶんと迷惑をかけてしまったようです」
アドルフォは相当責任を感じているらしく、朝からあまり元気がない。
「ん、もういいって、んな話は。あ、これうめえ」
ガツガツと料理を頬張り、煽るように酒を飲むシナック。かなりの量を飲んでいるため、その息はだいぶ酒臭い。
「あーあ。シナちゃん、強いし気が合う子だったのになあ」
「お前は……んっく……ぷは〜、結構好きなんだけどな。あのくそ野郎さえいなきゃあよー」
「あいつにも困ったもんだよ……ほんと」
ハルトマンの言葉に、アドルフォは大きなため息をついた。
「仕方ありませんよ。彼は彼で、辛いのですから」
「……はぁ?そりゃどういうこった?」
シナックが低い声で言うと、アドルフォは一瞬たじろいだ。しかし、すぐに同情的な笑顔を浮かべる。
「そうですね……今更とは思いますが、彼がなぜああなったのか、お話しましょう」
「いらねー。要点だけ話せ」
「まあ、そう言わずに。わたくしとしては、仲間が嫌われ、誤解されたままになってしまうのは、耐え難いことですから」
他の面子ならまだしも、彼にそう言われると反論もしにくい。シナックは仕方なく、続きを聞いてやるというように口を閉じた。
「その前に……シナックさんに、質問です」
「あん?」
アドルフォはフッと息を吐き、疲れたような目を向けた。
「あなたが船に乗っていたとします。途中、嵐に遭ってその船が難破しました。あなたは必死に泳ぎ、疲れ果てて溺れてしまうという
時になって、一枚の板切れを見つけ、掴まりました。ところが、近くに同じような方がいて、その方も板に掴まろうとしています。
二人が掴まれば、板は沈むでしょう。もう、泳ぎ続ける体力はありません。さあ、あなたはどうしますか?」
「そいつを沈めてから、のんびり助けを待つ」
即答だった。彼女らしい答えに、全員苦笑いを隠せない。
「知らない人であれば、そうでしょうね。では、その方があなたの大切な友人であったら、どうしますか?」
「え……えっと、そりゃ……う〜ん……首の骨へし折ってやってから、助け待つかな…」
「シナちゃん、すんごいアグレッシブ」
「やはり、迷ったでしょう?こういう事例のことを、カルネアデスの板、と呼ぶのです」
「え、カルネアデス?それってあいつの名前じゃ…?」
「いえ、彼はそこから名前を取ったのです。言ったでしょう?彼の本当の名前は、わたくし達も知らないのです」
再び、シナック以外の面子の表情が曇る。
「どうして、わざわざ、んな悪趣味な名前…」
「なぜ、彼がそう名乗るようになったのか。それは彼自身が、カルネアデスの板を掴むこととなったからですよ」
心を落ち着けるように水を飲むと、アドルフォはゆっくりと話し出した。
「以前は、彼はフェイルと名乗っていました。そして、彼の恋人……彼女は神女で、フラウドといいました。もちろん、最初は彼の
ことを、あなたのように嫌っていたものです。ですが、やがてあまりに熱烈な求愛に彼女が折れる形で、彼等は付き合い始めました」
シナックはつまらなそうな顔で、じっと話を聞いている。
「付き合ってみれば、なかなかお似合いの二人でしたよ。あなたほどではありませんでしたが、彼女も気が強く、口もあまりよくなく、
ですが真っ直ぐで、見ていて気持ちのいい方でした。違いといえば、以前戯れに、先程の例え話をしたところ、彼女はいかにも
神女らしく、『友人に板を譲ってやる』と、そう言ったことぐらいでしょうか」
「わっかんねえな、あたいには」
「神女になるぐらいですからね。自己を犠牲としてでも、何かを為すことができるのなら、身を捨てることを厭わない。そんな方だったの
ですよ。ですが……まさか、本当にそんな時が来てしまうとは、思いませんでした…」
243 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:45:59 ID:fXxB4DmZ
その時の様子を思い出したのか、アドルフォの表情は悲痛なものになっていく。
「あなたも、見たことはあるでしょう?地下道中央を徘徊する、飛びぬけて強い怪物。ある時、わたくし達はトハス地下道で、
ヴォルディアスと戦ったのです。普通なら、多少てこずるものの、倒せる相手でした。ですが、あの時の奴は強かった…」
「………」
シナックは既に無表情となり、無言で耳を傾ける。
「奴の一撃で、わたくし達全員が傷つきました。中でも、防御を捨てた彼女の傷は重かった。その時、彼は……決断を迫られたのです。
彼女にメタヒールを唱えれば、彼女は助かります。しかし、わたくし達の命はわからない。逆にわたくし達のためにメタヒーラスを
唱えれば、彼女の命がわからない。一瞬でしたが、彼は悩んだでしょうね。わたくしは既に僧侶魔法の魔力など尽きており、回復が
できたのは、彼とフラウドのみ。しかし、フラウドが攻撃を止めれば、たちまち奴は回復する。実質、彼だけが回復魔法を使える状態
でした。そして……彼は、決断したのです」
全員の顔に、暗い影が差した。恐らく、全員がこの影を背負って生きてきたのだろう。
「再び、奴の炎がわたくし達を襲いました。わたくし達は辛うじて耐えましたが、彼女は…」
「……あんにゃに簡単に死んじゃうにゃんて、思わにゃかった…。あんにゃに、元気な子だったのに…!」
トゥスカの目に涙が浮かぶ。だが、シナックは相変わらずの無表情を貫いた。
「その後、わたくし達は総力をあげて奴を倒しました。そして、彼女の灰に向けて、彼はリバイブルを唱えました」
その結果は、言うまでもなくわかっていた。でなければ、シナックがここにいる理由がない。
「神は、時に大きな試練をお与えになります。彼女を失った彼は、それは嘆き悲しみました。自分の判断の結果、最愛の人を失ったの
ですから。例えやむなき理由があったにしろ、それは彼の心を慰めるものとはなりえませんでした。彼の心に残ったものは、自らの手で、
最愛の者の命を突き放したという、拭いがたい悪夢のみ」
「………」
僅かに、シナックの持つグラスが軋んだ。
「あの日から、彼は変わりました。それまでの彼の姿など、どこにもありません。名前もカルネアデスと変え、二度と死者を出すことが
ないよう、ずっと努力を続けてきました。同時に、彼の性格は少し歪みました。ですが、どうしてわたくしに、それを責める権利が
ありましょう?わたくしの軽率な判断の結果、彼女を失うこととなったのです。言ってみれば、彼女を失った理由の一つは、わたくしに
あるのです。そんなわたくしが、彼を諌めることなど……できはしません」
ミシリと、シナックの手の中ではっきりとグラスが軋んだ。
「でもな、シナック。あいつ、普段はあそこまで嫌な奴じゃねえんだ。お前にやたら突っかかったのは、お前がフラウドに似てるからだ」
「そうだよねえ……シナちゃん、僧侶魔法使えるし、戦士だから前衛だし、似てるんだよねえ…。だから、カルも余計辛くなっちゃって、
つい辛く当たったんだと思う。ていうより、怖がってるんだろうね」
「たぶん、そうだよ。またフーちゃんみたいに、死にゃせちゃうかもしれにゃいって……またおにゃじことしちゃうのが、怖いんだよね」
「恐らく、そうなのでしょうね。ですから……と、シナック……さん…?」
ビシリと、シナックの持つグラスにヒビが走った。
「言いてえことはそれだけか、てめえら」
凄まじくドスの利いた声に、その場にいた四人はおろか、周囲の生徒までビクリとして振り返った。
「大した仲間だと思ってりゃあ、あたいの見込み違いかよ、くそ野郎どもが。てめえらよくも、そんな面ぁ下げて今まで生きてこられた
もんだ。逆に感心するぜ」
「ど……どうしたんだよ!?今の話の何が…!?」
「黙れ、この馬鹿野郎がぁ!!!!」
獣の咆哮に似た叫び。シナックの手の中でグラスは粉々に砕け、零れた酒がテーブルを汚した。学食中の生徒がビクッと身を震わせ、
辺りは静寂に包まれた。
「おう、アドルフォ。てめえ、本当にリーダーか。自覚あんのか」
「シ、シナックさん…!」
「黙れ!てめえが情けねえ面ぁしてっから、そういうガキみてえな振る舞い許しちまうんだろうが!それもわかんねえのか、このボケ!」
「シナック、よせ!」
「ハルトマン!てめえも玉ついてねえのか!?リーダーが頼りにならねえなら、てめえが何とかするべきだろうが!それとも何か!?
てめえは厄介事にゃあ関わりたくねえってのか!?ああ!?」
244 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:46:43 ID:fXxB4DmZ
「誰がそんなこと…!」
「じゃあどうして、カルネアデスの言葉で黙った!!!」
言い返すことはできなかった。ハルトマンは何か言い返そうと口を開くのだが、出てくる言葉はない。やがて、力尽きたようにうなだれた。
「ちょ、ちょっとシナちゃん、やめなよ!みんなこっち見てる…!」
「やかましいんだよ!てめえにとってパーティってのは、周りの目よりくだらねえことかよ!?」
「そ……そんなこと言ってないよぉ…!ヒック……シ、シナちゃんにはわかんないんだよぉ…!」
「泣きゃあ問題解決すんのか!?ガキがっ!!」
トゥスカは既に大声に怯えてしまい、テーブルの下でガタガタ震えている。
「てめえら揃いも揃って……悲劇の主人公ごっこしてる野郎を止めるどころか、喜んでその脇役になりやがって…!てめえの判断で
死なせたぁ!?その結果辛い思いしたぁ!?ざっけんじゃねえ!てめえが下した判断の結果だろうが!しかも、結果がわかってて下した
判断のなぁ!!そういう思いすることも踏まえた上で、下した判断じゃねえのかよ!?」
「ですが、シナックさん!そうは言っても…!」
「アドルフォ!てめえもいけると思ったから戦ったんだろうが!そんでみんないけると思ったから従ったんだろうが!それがなんだ、この
ざまぁよぉ!?てめえ一人の責任だとでも思ってんなら、さっさとリーダー降りろ、このクズが!」
粗暴で、口も悪い彼女の言葉は、しかし全員の胸に鋭く突き刺さった。
「てめえらがそうやってあいつを甘やかすから、あいつはますます図に乗るんだろうが!それもわかんねえか!?」
「だけどっ……フラちゃんは、死にたくて死んだわけじゃっ…!」
「だから何だってんだ?それによぉ、死にてえなんて思っちゃぁいねえとしても、死んでもいいとは思ってたはずだぜ」
「シナちゃんに、フラちゃんの何がっ…!」
「はっ!てめえの背の高さじゃあ、でかすぎてそいつは見えなかったってか?じゃあ逆に聞くけどよ、そいつはどうして神女になった?
どうして死の危険を冒してまで、捨て身で戦い続けたんだ?ああ?」
「そ、それは…!」
「気付かなかったか?はっ、上っ面しか見てねえ、いい証拠だ!」
一頻り気炎をあげてから、シナックは一同を見回した。誰も彼も、完全に打ちのめされたようにうつむいてしまっている。
「あ〜あ、お話が聞けてよかったぜ。おかげで、あたいも気持ちよく脱退できるってもんだ。てめえらの仲間になんか、こっちから
願い下げだ!」
「………」
「けどな、都合上、もう少し仲間でいるぜ。この場にも来やがらねえ、あの腐った野郎の根性叩き直してやる!」
言うが早いか、シナックは学食を飛び出した。慌ててハルトマンが追おうとするが、アドルフォが素早くその腕を捕まえた。
「おい、何するんだよ!?早く行かないと…!」
「大丈夫。悪いようには、なりません」
叱られたあとの、どこかすっきりした子供の表情で、アドルフォは続ける。
「あれほど、パーティのことを考える方です。そんな彼女が、悪いようにするわけはありません」
「そ、そうは言ってもよ…!」
「彼女は、淀んでいたわたくし達の空気を吹き飛ばしてしまうような、そんな方ですよ。仲間でなかったからこそ、わたくし達が、よく
見えている。そんな彼女が、『もう少し仲間でいる』と言ったのです。ここは、彼女に、任せてみましょう」
それでもハルトマンは不安げな視線を送っていたが、やがてノロノロと席に戻った。それに伴い、トゥスカもテーブルの下から顔を出す。
「……きっついこと、言われたねえ…」
「ティティアナさんは、特にきつかったですね。ですが、知っていますか?相手に対して優しくなれる方法は、無関心でいることです」
「え…?」
「どうせこの程度、と諦めていれば、どんな失敗も許せてしまうのですよ。ですが、彼女は許さなかった。それだけ、あなたが好きだと
いうことでしょう。好きだからこそ、許せないのですよ」
「そんなもん……かなぁ?」
「そんなもん、です。さて、この判断がどう出るか。あとは神と彼等に、任せましょう」
そう言って、穏やかに笑うアドルフォ。この空気を和やかに変えてしまう彼は、やはり優れたリーダーだと、誰もが思った。
同時に、あれだけ言われて怒りもしない彼は、ひょっとして全てを諦めているのではないか。そんな疑問が、一行の頭をよぎるのだった。
245 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:47:24 ID:fXxB4DmZ
一方のシナックは、全身から湯気でも立ち上らせそうなほどに怒っていた。大股でドスドスと歩き、カルネアデスの部屋を探し出すと、
ノック代わりにそのドアを蹴り飛ばす。
「うぉらぁ!カルネアデス!返事しやがれ、このくそ野郎!」
しばらく、返事はなかった。やがて、うんざりしたような声が響く。
「何しに来たんだい?」
「あいつらに話聞いた!てめえ、さっさと開けろ!」
「何を聞いたのか知らないけど、帰ってくれ。僕は、君と話すことなんかない」
「てめえにゃなくても、あたいにはあるってんだよ!さっさと開けねえと、勝手に開けるぞ!」
はぁ、と小さなため息が聞こえた。
「盗賊でもない、超術士でもない君が、どうやって開けるって言うんだ」
「よーし、勝手に開けていいんだな!?んーじゃあ遠慮なくやらせてもらうぜぇ!」
シナックは体を捻り、腕を引きつけ、固く拳を握った。
「おぅりゃああぁぁ!!!」
ドゴッ!と凄まじい音がし、拳がドアを突き破った。
「ちょっ……おいっ…!」
突き破ったその手で内側から鍵を開けると、シナックはずかずかと部屋の中へ踏み込んだ。
「てめえ、どんだけ見下げ果てた野郎かと思ったら、ほんっとの下衆野郎だったとはなぁ!」
「ドアの修理、してくれるんだろうね?」
「うるっせぇ!泥でも詰めとけ、馬鹿野郎!それよりてめえカルネアデス!いや、フェイルって呼んでやろうか!?あ!?」
途端に、彼の表情は歪んだ。思い出したくない過去を思い出したという、苦痛を伴った表情だった。
「……何を、聞いたんだ…!?」
「おーおー、全部聞いたよ!ほんっと、このクソガキが!!!」
「ガキだって…!?君に、何がわかる!?」
「てめえが見下げ果てたくそ野郎だってことぐらい、あたいにだってわかる!」
「……ああ、そうだろうとも!この命に代えても守りたいと思った恋人を、この手で突き放した僕は最低の男さ!言われなくとも、
それぐらいわかってる!」
「それがガキだっつってんだよっ!なぁに悲劇のヒーロー気取ってやがる!」
「何だと…!?」
「はっ!それ以外どう言えってんだ!?その言い方、その口ぶり、全部が全部、悲劇のヒーロー気取りじゃねえかよ!」
カルネアデスの表情は、今までにないほどはっきりと歪んでいた。それはもはや苦痛などではなく、純粋な怒りのためである。
「この手で、愛する者の命を絶たねばならなかった僕の苦しみが、君にわかるかっ!?」
「まぁた始まった。そ・れ・がっ!悲劇のヒーロー気取りだってんだっ!なーにが、この手で愛する者の命を絶った、だ!そいつを
殺したのはヴォルディアス!てめえは僧侶として最善の選択をしただけだろうが!」
「その最善の選択が……愛する者を、見捨てることだったんだぞ!」
「だったら!んなのは、てめえの胸の中だけにしまっとけってんだ!それがなんだ!?アドルフォだハルトマンだって仲間にまで責任
押し付けやがって!んーなくだらねえ、クソみてえな真似してやがるから、てめえは下衆だってんだよっ!」
「いつ、僕が責任を押し付けた!?」
「いつだってだろうが!あの馬鹿共が責任の奪い合いしてるのを、これ幸いと押し付けてきたんじゃねえか!てめえは、死んだ奴が
てめえの恋人だってことを盾に、そうやって他人に責任を押し付けて、てめえ自身は悲劇の主人公気分に浸りきってきたんだよっ!」
凄まじい言い合いである。ドワーフは浮かぶ言葉を次々相手に叩きつけ、エルフは言葉一つ一つに力を込めて相手にぶつける。
「そもそも、てめえが責任押し付けてねえってんなら、どうしてカルネアデスなんて悪趣味な名前に変えたんだ!?それこそ、
てめえが悲劇の主人公気分に浸りきってる証拠だ!」
「それは…!あの出来事を、ずっと自分の胸に刻むために…!」
「だから、そんなのはてめえの胸の中にだけ刻んどけってんだよっ!その名前が、てめえの仲間を苦しめたことすらわかんねえか!?
それとも何か!?そうやって苦しむ仲間を見て、『あー僕ちゃんに同情してくれてるー』って、ガキみてえに喜んでたのか!?」
246 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:48:16 ID:fXxB4DmZ
いよいよ、カルネアデスの顔は怒りのために真っ赤に染まり、長い耳まで怒りに染まっている。
「ふざ……けるなぁ!どうして僕が、そんなこと…!」
「けっ!これだからエルフってのは傲慢だってんだよ!てめえの間違いなんぞ、認めやしねえ!」
「間違い!?逆に聞くけど、君は君の言葉が全部正しいとでも言うつもりかい!?その場にいもしなかった君に、何がわかる!」
「ちっ、うざってえ男だ!てめえら風に言やぁ、闇を払うたいまつの根元にこそ、闇の集う場所があるってことだよ!!」
「う…!?」
まさかシナックの口からそんな台詞が出るとは夢にも思わず、カルネアデスは言葉に詰まってしまった。それを見ると、彼女は鼻で笑った。
「ふん、ドワーフはそんな表現と無縁だとでも思ってたか?なめんじゃねえ。言葉遊びをしねえってだけで、そういう表現はいくらでも
できる。けどな、そんなクソくだらねえ言葉遊びなんかしてると、いっちばん伝えてえ事が伝わらねえんだよ。覚えとけ」
だが、少し様子がおかしかった。真っ赤だった彼の顔は、今では青くすら見える。表情は、すっかり悲しみの色に染まっていた。
「……どうしてなんだ…」
「あん?」
「君は……フラウドのことを、知らないはずなのに……どうして、そこまで似てるんだ…!」
「知らねえよ、あたいに聞くな」
「彼女も怒ると、そうやって僕達の口ぶりを真似た。それだけじゃない、その姿、その声、その毛色、毛艶…」
「もうやめろ。気分悪くなる」
「君に責められると、僕はフラウドに責められてる気分になるんだ!あの時、彼女を見捨てた僕を、彼女が責めてるように…!」
「あたいとそいつは違うぞ」
「頭ではわかってる…!けど、どうしてもダメなんだ!君に援護をすれば、あの時彼女にそれを出来なかったことを思い出す!
それに、また同じことがあれば、僕は君を助けられる自信がない!」
「あたいはそいつの代わりじゃねえ。けどな、同じドワーフってんなら、そいつはお前のことを恨んだりしてるはずがねえ」
シナックの口調は、幾分か和らいでいた。そんな彼女の顔を、カルネアデスは疲れ切った顔で見上げた。
「それは確かなはずだ。絶対、そいつはお前を恨んでない。だって、神女だったんだろ?自分を犠牲にして、誰かを助ける奴
だったんだろ?なら、パーティの仲間のみんなを……それに、何よりお前を、そいつは一番助けたかったはずだ」
「……くっ……うぅ…!」
突然、カルネアデスは涙をこぼした。いきなりの事に、シナックも驚いてしまう。
「おい、どうした。そんなに怒られたのがショックかよ」
「違う…!彼女の、最後の言葉が……今やっと、ちゃんと届いた…!」
「なんか、言ってたのか。」
「ああ…!彼女は、炎に焼かれる直前、僕を見て……『幸せに、なってね』って……うぅ…!」
ポロポロと涙をこぼすカルネアデス。その別れの様子を想像すると、シナックも目頭が熱くなってしまった。
「今まで、僕はその言葉が……呪いの言葉にしか、聞こえなかった…!」
「……あたい達ドワーフは、言葉は飾らない。そいつがそう言ったなら、お前は言葉通り、受け取ればいいんだよ」
「だけどっ……だけど、僕は怖かったんだぁ…!僕一人が幸せになって……僕は、彼女を死なせたのに…!」
「違う。そいつはそんなこと望んでない。お前が苦しむ姿を見て、一番苦しむのはそいつだぞ。どうしてわからない」
「でも……僕は、やっぱりダメだ…!僕のわがままで、仲間を……みんなを、苦しめた…!君にだって、僕はひどいことをした…!」
「悔やむ心があるなら、十分だろ?お前は生きてるんだから、やり直せるんだよ」
「こんな、僕でも……やり直せるのか…?」
「なんだよ。男の癖に、自信ないのかあ?」
シナックの中に、普通ならありえない、むしろおぞましいと思うような心が湧き上がった。
彼を愛した同族がいて、その同族は彼の幸せを願った。それを知っているのは自分だけで、ならば自分が彼女の代わりになればいい。
普段なら、思うことすら恐ろしい考えである。だが、今の彼女にとって、それは名案だった。
「男だって……うわっ!?」
247 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:48:51 ID:fXxB4DmZ
突然、カルネアデスはベッドに押し倒された。そんな彼を見下ろし、シナックは妖艶に笑う。
「んじゃ、あたいが手伝ってやるよ」
「シ、シナック!ちょっと待っ…!」
「はは、やっと名前呼んでくれたなー」
「え、いや、その…!」
「あのな、お前が立ち直らねえと、そいつだって浮かばれねえんだぞ。そいつのためにも、お前は抱かれるべきだ」
「ちょっと待て!どうしてそうなる!?どういう思考回路してるんだ君は!?」
聞くまでもなかった。彼女の口から吐き出される息は、強い酒の臭いがしていた。
「あーもう、うっせえなあ!」
「でも……むぐ…!」
強引に唇を重ねるシナック。舌と舌が絡み、固まりっぱなしの彼の唇を強く吸う。
キスで相手を黙らせたまま、彼女は制服を脱ぎ始めた。いくら性格が変わったといえ、その性質までは変わらない。彼女の姿に、彼の
股間は正直に反応してしまう。
同時に、彼の中に忘れかけていた感覚が蘇って来る。かつて、フラウドと共に過ごしたひと時。言い換えれば、ふかふかの体毛を持った
ドワーフとの逢瀬。好きで好きでたまらず、それをようやく手に入れた喜び。
ごく一瞬、流されまいという考えが頭を掠めた。しかし、それは目前にある現実の前に、たちまち消え失せる。
開き直ったカルネアデスは、積極的に舌を絡め始めた。驚いたシナックは身を引こうとするが、彼は素早く首に腕を回す。
そのまま、半分脱ぎかけた彼女の服に手を掛ける。シナックは一瞬抵抗しようとしたが、すぐに観念したように手を下ろした。
慣れた手つきで服を脱がせると、意外に大きな胸が零れた。平たい、ごつい胸に見慣れていたカルネアデスは、唇を離すと、少し驚いた
ようにそれを見つめる。
「な、何だよ?」
「いや……胸、大きいね」
「悪りいかよ?」
「いや、なかなか新鮮でいいよ」
「意味わかんね……んうっ!」
唇の代わりに、今度はその乳首に吸い付く。シナックは恥ずかしそうに身をよじるが、彼は意外なほど強い力でそれをさせない。
少し汗の臭いがする。よくよく考えれば、探索から戻って体も洗っていないのだ。臭わない方がおかしい。
「うっく、んっ……ふ、ふん!エルフってのは、気持ち悪りい臭いさせやがるんだな……あっ!」
シナックも臭いの事を考えていたらしく、そんなことを言う。
「ほのかに香る香水をつけるぐらい、当然のたしなみだと思うけどね。君は、いかにも野性的な臭いだね」
「それが普通……うぁっ!んんっ!い、嫌なら顔近づけるな…!」
「ご安心を。この匂い、嫌いじゃない。むしろ、これがあってこそだ」
「へ、変態!」
そうは言うものの、彼女の顔はさほど嫌そうではない。
「そ、それより、てめえだけってのずるいぞ!あたいだって、してやるのに…!」
言いながら、ズボンのジッパーに手を掛けると、それを引き下げる。そこから手を突っ込み、慣れない手つきで股間を探ると、おずおずと
全体を撫で始める。その不慣れな様子に、つい笑みがこぼれると同時に、さらに強く股間が反応する。
248 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:49:34 ID:fXxB4DmZ
「う、動いてる……気持ち悪りいな…」
「傷つくよそれ」
片手では彼女の体を抱きかかえ、もう片方の手で胸を揉む。シナックはシナックで、いまいち勝手がわからないといった感じで、
たどたどしく彼のモノを撫でている。カルネアデスは胸から手を離すと、そっとスパッツに手を突っ込み、彼女の秘所に触れた。
「んあっ!」
汗ばんでいるかのように、じっとりと湿った感触。触れば熱く、じわりと染み出るように蜜が指に絡みつくが、まだ少し足りない気もする。
形をなぞるように、その秘裂をすぅっと撫でる。最後に小さな突起を弾くように撫でると、シナックの体がビクンと跳ねた。
「んん!ふあっ!お、おい……いい加減、脱がせろよ…!じゃないと、汚れる……やんっ!」
「この薄布越しに見える体も、なかなか捨て難いんだけどな。むしろこう、見た目は隠されつつもラインがくっきり出てるってことが…」
「いいから脱がせろよ、この変態!」
ともかくも、何とか彼の手から逃れると、シナックは自分から身に着けているものを脱ぎ捨てた。その間にカルネアデスは体を起こし、
彼女の一挙一動を食い入るように見つめている。最後に下着を脱ぎ捨てると、シナックは尻尾で股間を隠しつつ、再び体に乗ってくる。
見詰め合ったまま、カルネアデスは彼女を抱き寄せる。その腰の辺りに座るように体を動かすと、シナックは彼のモノを掴み出した。
「痛いよ」
「うるせえな、少しぐらい我慢しろ」
どことなく緊張したような、それでいて何かを期待するような顔で、彼女は何度かそれを自分の秘所に擦り付ける。そしてハッハッと
呼吸を整えると、一気に腰を落とした。
「くぅっ!」
「うあぁっ!!!痛ぃってええぇぇ!!」」
思いの外大きな声、というよりは悲鳴。何事かと彼女を見ると、シナックは体を震わせ、目をぎゅっと瞑りながら痛みに耐えている。
つっと、結合部に一筋の血が伝った。それを見た瞬間、カルネアデスは驚きに目を見開いた。
「ちょっ、君、まさか初めてだったのか!?」
「てててて……へっ、何だよ。男は、その方が好きなんじゃねえのか?」
「いや、その…。」
「だ、大体なぁ、てめえ、あたいみてえな、ドワーフ好きなんだろ?だったら、遠慮なんかしねえで、好きにすりゃいいじゃねえかっ…!」
その言葉に、彼女の中に入った彼自身がさらに大きくなる。
「痛てっててて…!あ、あんまでかくすんな、馬鹿!」
「しょうがないだろ、勝手になるんだから」
ともかくも、初めての彼女に乱暴するわけにはいかない。カルネアデスはそっと、彼女の尻尾を撫でる。
「んっ、あっ!そ、そんなとこ触んじゃ……うあっ!」
耳を甘く噛み、そのままうなじにキスをする。さすがに、ドワーフが好きというだけあり、彼は彼女の弱いところをうまく突いてきた。
シナックが恥ずかしそうな顔を浮かべ、浅い呼吸をするようになると、少しずつ腰を動かす。最初はビクリと体を震わせたが、痛みは
だいぶ和らいだらしい。
249 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:50:10 ID:fXxB4DmZ
トンッと、鼻と鼻を付き合わせる。シナックの鼻は湿っており、触るとひんやりする。が、彼女からすれば、別に気持ちよくも何ともない。
「な、何だよ…?」
「いや、この感触好きなんだ」
「そうかよ、よかったな。あうっ!」
胸を揉み、耳を噛み、少しずつ動きを強くしていく。元々が向かい合って座っているので動きにくいが、そうでなくとも彼女の中は
痛いほどにきつく、しかもなお強く締め付けてくる。大した動きはできなくとも、彼には十分強い刺激だった。
「はぁっ……はぁっ…!なあ、おいっ……あんま、変なことすんなっ…!」
「どうして?」
「だってっ……あたい、なんか……変な感じがっ…!」
「気持ちいいだろう?大丈夫。落ち着いて、身を委ねてくれればいい」
そう言われると、シナックは不安そうな顔で彼を見つめる。しかし、やがて緊張していた体から力が抜けていく。
「可愛いよ、シナック」
「う、うるせぇ…」
喋っている間も、彼は手を休めない。その絶え間なく続く刺激に、彼女は確実に昂ぶっていく。
既に痛みは消えていた。そうなると、負けず嫌いな彼女の顔に挑戦的な光が浮かぶ。
「この……てめえばっかり、するんじゃねぇっ…!」
「うあっ!?」
膣内がぎゅうっときつくなり、カルネアデスの動きが止まる。勝ち誇った笑みを浮かべると、彼女は自分から腰を動かし始めた。
その動きは、とても初めてとは思えないほど激しい。言うなれば、獣の交尾に等しいような、自身の欲望のままという動きである。
パチュッパチュッと湿った音が部屋に響き、二人を乗せたベッドが激しく軋む。
「シ、シナック、もうまずい…!待ってくれ…!」
「あ、あたいもっ……んっ!ふっあぁ!なんか、頭がぁっ……すご、気持ちいい…!」
不意に互いの目が合う。
愛してはいない。だが、彼女からすれば、彼を立ち直らせたかった。彼からすれば、彼女を抱きたかった。
愛はない。しかし、お互い奇妙な愛しさを感じていた。
どちらからともなく、強く抱き合う。お互いの温もりが、たまらないほどに愛おしく、それが心の中にじわりと広がる。
「シナック……もうっ…!」
「あたいもダメっ!もう、なんかっ……うあ、ああぁぁ!」
彼女の中で、彼のモノがビクビクと脈打ち、体内に暖かい感触が広がっていく。既に思考は奪われ、彼女にはただその感覚しかなかった。
何度も、何度も、体の一番奥に熱いものがぶつかり、その度に、えもいわれぬ激しい快感が彼女を包む。
その熱さと、凄まじい快感の中、二人の意識は急速に薄れていく。そして、強くお互いの体を抱き締めたままに、二人は気を失うように
眠りに付いた。
250 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:50:53 ID:fXxB4DmZ
翌朝。二人は服も着ず、お互いベッドの左右に座り、黙って背中を向けている。この重苦しい沈黙は、二人が目を覚ましてから既に
30分続いていた。二人とも、表情はひどく暗い。事情を知らない者が見れば、葬式の後にしか見えないほどだろう。
気まずい沈黙の中、シナックがグスッと鼻を啜り上げる音が響いた。
「……あたい、どうしててめえなんかと…」
目を覚まして、最初の一言がそれだった。カルネアデスも、小さくため息をついた。
「……君の方から、仕掛けてきたんだ。僕に言われても…」
再び、重苦しい沈黙が訪れた。が、今度の沈黙は、そう長くは続かない。
「畜生!どう考えてもおかしいのにっ!どうしてあたい、あん時はあんなのが名案だって…!」
「だいぶ、飲んでたみたいだからねえ……流された僕も、今になってどうかと思うけど…」
「あーもー!てめえなんかに初めてやっちまったなんて、最悪だぁ!」
本気の泣き声で、シナックが叫ぶ。
「あたいずっと、初めては憧れの先輩と部屋で一緒に酒飲んでキスしてからって決めてたのに…!」
「ぶっ…!」
思わず、カルネアデスは噴き出した。途端に、シナックは怒りに満ちた顔で体ごと彼の方に向き直る。
「てめえ、何がおかしいんだよっ!?」
「いや、だって、見た目より案外子供っぽいなってさあ。僕を叱ったときなんか、猛々しくてすごく大きく見えたのに、今の君は恋に
恋する小さな女の子だ」
まだ残る笑いを顔に張り付かせたまま、カルネアデスも振り返った。目が覚めてから、二人が顔を合わせたのはこれが初めてである。
「大体、君に憧れの先輩なんているのかい?」
「いや……まだ、いねえけど…」
「だろうね。あ、ちなみに君の入学はいつだい?」
「一年半前」
「ああ、じゃあ僕が二年前だから、一応先輩だ。大筋は叶ってるじゃないか、よかったね」
「そうなのか?あーよかった……って言うと思ったかバカ野郎おおぉぉ!!!てめえなんぞ、憧れでも何でもねえぇぇ!!!
しかもエルフじゃねえかっ!!!どこにいい要素があるんだよっ!!!」
何事にも本気な彼女を、彼は微笑ましい思いで見つめていた。以前付き合っていたフラウドも、彼女に似ていた。しかし、同じではない。
「でも、おかげで僕は色々吹っ切れた。君には、本当に、どんなに感謝してもしきれない」
「あ……当たり前だろっ!あたいがこんなにしたんだからっ!くそっ、ほんとなんであんな事しちまったんだ…!」
どこか気恥ずかしそうに、シナックは顔を逸らした。そんな彼女の顔を見ながら、彼は最後の鎖を解こうとしていた。
あの時、フラウドは幸せになってくれと願った。となれば、今この身に湧き上がる思いを告げることは、フラウドへの背信とは
なりえないだろう。
逸らした顔を優しく両手で包むと、そっと自分の方へ向けさせる。不機嫌そうな顔のシナックに、カルネアデスは優しい笑顔を向けた。
「あれほどまで、僕を叱りつけてくれた人なんて、今までいない。僕は、嬉しかった」
「そ、そうかよ…」
そのまま、二人は見詰め合う。だが、シナックの方が先に気恥ずかしくなり、視線だけを逸らした。
「そ、それよりカルネアデス…!」
「ああ、その名前は、もうやめてくれ。君に言われて目が覚めた。昔の名前で……フェイルと、呼んでくれないか?」
「ん……ま、まあその方がいいよな、うん。んで、カル……あ、いや、フェイル。あたいは、もう、その…」
「それから、名前に関して、もう一つ言いたいことがある」
言葉を遮られて少し腹が立ったが、意外なほど真面目な顔を向けられ、シナックはドキッとした。
251 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:51:36 ID:fXxB4DmZ
「あ、ああ。何だよ」
「他のエルフは知らないけど、僕達の故郷では、名前とは大切なものなんだ。この世に、魂と肉体を授かると共に、僕達は名前を授かる。
そして、一生その名を背負って生きていく。だから、僕達はそう簡単に、真の名を口にしない」
「そ、そうなのか。へー」
「その名を口にするのは、この世に生まれ出でた時。この生を終える時」
「どうして、死ぬときに?」
「風にもたらされ、水と共にこの身に染み込んだ名。この身が朽ち、土に還るならば、それは風に乗せ、返さねばならない」
言葉こそ飾られているが、その顔は真面目である。それを冷やかす気には、今の彼女にはなれなかった。
「だが、もう一つ。僕達が真の名を告げるときがある」
「どんな時だよ?」
「体と魂、そして名前と同じように、この先、ずっと共に歩き続ける者が現れたときだ」
言うなり、彼はシナックの体を強く抱き寄せた。吐息が感じられるほどの距離に、お互いの顔がある。
「かつて、フラウドにも同じ言葉を言った。それでも、僕は恥を忍んでもう一度言おう」
強い覚悟のこもった顔。そして、彼は口を開いた。
「僕の本当の名を、聞いてくれないか?」
一瞬、シナックは返答に困った。彼女としては、こんな恥ずかしい思いのあるパーティからはすぐに抜けたかった。しかし、彼の強い
思いは本物で、そしてそうさせたのは自分である。おまけに、初めてまで彼にあげてしまった。毒を食らわば皿まで、という言葉が、
一瞬脳裏によぎる。
「ん、んなこと言ったって…!その、お、落ち着いて考えろよ!そんなの…!」
「君の純潔を奪ってしまった責任もある。それに、今では君は、僕にとって水に映える月よりも美しい存在……いや、それは言い訳だな。
それに、言葉を飾れば、伝えたいことが伝わらない。そうだったね?」
一度深呼吸し、彼は強い口調で、はっきりと言った。
「僕は、君を愛してしまった。どうか、この先ずっと、一緒にいて欲しい」
その、短くとも重い言葉は、彼女の胸を強く打った。
好きではない。愛してもいない。だが、以前彼を愛したドワーフがいる。であれば、自分は絶対にそうならないという自信も、なかった。
「……あたいは、てめえなんか好きじゃねえぞ」
「それでも、構わない」
「好きになる保障もねえぞ」
「等価を求めなどしない。まあ……好きになってくれるなら、嬉しいけど」
「………」
しばらく、シナックは彼の顔を不機嫌そうに見つめていた。が、やがて自嘲のような笑みを浮かべ、軽く息をついた。
「やぁれやれ。この先ずっと、てめえの口から蜜のように甘い言葉を聞かされて、春の雪のように白い腕に抱かれろってのか?」
二人は同時に笑った。そして、シナックは言った。
「聞いてやるよ、てめえの名前」
フェイルは、シナックの小さな体を抱き締めた。暖かく、小さく、しかし大きな彼女の体。
その耳に、そっと唇を寄せる。そして彼は、彼女だけに聞こえる小さな声で、その名を囁くのだった。
252 ◆BEO9EFkUEQ :2009/02/23(月) 23:58:05 ID:fXxB4DmZ
以上、投下終了。
正攻法ではどうやってもエルフとドワーフをくっつけられなかった。フラグを折る息だけはぴったりだった。
酒ってつくづく偉大ですね。

それではこの辺で。
253名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 00:35:39 ID:vVJkYBQd
GJ!!!
エル子×ドワ男は見た事あったけどその逆とは珍しい。
エルフの壊れ具合?も素敵ですね。生徒会長以上とはww

>酒ってつくづく偉大ですね。
万能の道具ですもんねぇ。

◆BEO9EFkUEQ氏って描くスピード速いですねぇ(いまさら
なのに内容はいい物ばかりですし
不思議です。
254名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 00:38:01 ID:vVJkYBQd
GJ!!!
エル子×ドワ男は見た事あったけどその逆とは珍しい。
エルフの壊れ具合?も素敵ですね。生徒会長以上とはww

>酒ってつくづく偉大ですね。
万能の道具ですもんねぇ。

◆BEO9EFkUEQ氏って描くスピード速いですねぇ(いまさら
なのに内容はいい物ばかりですし
不思議です。
255名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 00:40:07 ID:vVJkYBQd
↑すいませんミスりました。
256名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 11:38:20 ID:kiSnfNYr
おつー
257名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 22:12:55 ID:oHVsH2rm
GJ!

セレスティアとディアボロス・ヒューマンとバハムーン・エルフとドワーフ
あれ?俺の一軍のパーティとまったく同じだぞ…
258名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 00:11:05 ID:4F1HSEzQ
保守
259 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:13:51 ID:+5P7bjZC
妖刀が二本出た。という夢を見た。
ちなみに、一週間に一本ずつ書いてるわけじゃなく、書ける時に書いた物をストックしてちまちま投下してます
最近はネタ切れの恐怖との戦いw

ここしばらく長いのが続いたんで、短めのものでも。お相手はヒュマ子で。
楽しんでいただければ幸いです。
260 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:14:50 ID:+5P7bjZC
目を覚ませばそこにいる。手を伸ばせばそこにある。使い古された言葉だけど、それが幸せ。
ヒューマンは、心の底からそう思っていた。
暖かい腕の中。見上げれば彼の顔があり、優しく微笑みかけてくれる。
「ヒューマン、どうしたんだい?」
「ううん、何でもない」
そっと手を伸ばし、エルフの顔に触れる。その手に伝わる温もりが、嬉しかった。
「ぼくのこと、からかってるのかい?」
「ううん、そうじゃないってば。ただ、こうしてるのが、幸せなの」
エルフは優しい微笑みを浮かべながら、ヒューマンの頭を撫でた。
「ぼくも、同じだよ」
ヒューマンの手が、彼の長い耳に触れると、ピクンと動く。それが面白くて、つい何度も触ると、エルフが優しく手を押さえた。
「くすぐったいよ」
「ふふ、ごめんね」
毎日が、幸せだった。地下道を探索する冒険者である以上、いつか別れが来るかもしれない。そうでなくても、学生なのだから、ここを
卒業すれば、きっと離れ離れになる。だけど、それはずっと先の話。
そう自分に言い聞かせ、極力そんな不幸を考えないようにして、二人は幸せに浸っていた。

失敗と、油断と、不幸。重なって欲しくないものに限って、いっつも重なって起きてしまう。
「くそぉ!セレスティア、ヒールを!!!」
「ダメ!もう息してないよ!」
「殲滅するしか、道はありません。皆さん、諦めないでください」
「もう……ダメ…!みんな……ごめん…!」
地下道に響く怒号、悲鳴、撃剣の音。そして、死に逝く者の断末魔。
ダークゾーンを抜けた瞬間、解き放られた破壊神に出会ってしまった。強烈な攻撃をもらいつつ、死力を尽くして倒したまではよかった。
が、その瞬間、別の敵の群れが現れ、おまけに不意打ちを受けた。もう残された力などほとんどなく、逃げることも出来ず、彼等は
絶望的な戦いを強いられる羽目になった。
「クラッズ!ダークレーザーを頼む!」
「これが最後……お願い、終わって!!」
「うわぁー!!!げぼっ……ご……め…」
「く、エルフさン、ヒューマンさん、残りハ僕達だケデす」
傷ついたノームが、少しおかしくなった口調で喋る。
「こコで、死ぬワけにハいきマセん。諦めナいでクださイ」
「わかってる!ぼくだって死ぬ気はない!!ヒューマン、いけるか!?」
「私は……きゃあぁ!!!」
後列からの鎌の攻撃。それを見切れず、ヒューマンは直撃を受けてしまった。腹から血が溢れるのを感じ、景色がぐらりと揺らいだ。
「ヒューマン!!しっかりするんだ!!!」
エルフの声が遠い。目が霞む。それでも、ヒューマンは最後の力を振り絞り、立ち上がった。
「ぐ……ごぼ…!死なせ……ない…!でえぇぇい!!!!」
残った気力を振り絞り、刀で敵の群れを一閃する。しかし、もはやまともな力はなく、ほとんどの敵が耐え抜いてしまった。
ダークサイズの一匹が、ヒューマンに狙いを定めた。エルフが狂ったように叫んで矢を乱射している。ノームも魔法を詠唱しているが、
到底間に合わないだろう。
自分に振り下ろされる鎌の一撃。体を切り裂かれても、もはや痛みすらなく、ヒューマンはゆっくりと地に伏した。
「死な……ない…………で…」
その一言を最後に、ヒューマンは全ての動きを止めた。
261 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:15:20 ID:+5P7bjZC
目を開けた瞬間、飛び込んできたのは白い天井と、ジョルー先生の顔。次いで、つんと酒の匂いが鼻を突き、ここがパルタクスの
保健室だということを知る。
「う……私…?」
「気がついたのね。チミ達は、ラークで全滅しかけたのね」
そう言われると、ようやく頭に、それまでの出来事が蘇って来る。破壊神を倒して、不意打ちを受けて、みんな死んで―――
その瞬間、ヒューマンはジョルーに掴みかからんばかりの勢いで詰め寄った。
「先生っ!他の人は!?みんなは無事ですか!?どうなったかわかりませんか!?」
「……どうしても、聞きたいのね?」
「先……生…!」
その一言で、ヒューマンは全てを察した。もう、戻らない仲間がいるのだ。
「まあ、口で言うより、見る方が早いと思うのね。こっちなのね」
半ば呆然としつつ、ヒューマンは誘われるままにジョルーの後をついていく。
そこにあったものは、仲間の遺品だった。クラッズの武器、セレスティアの服、フェルパーの靴。それと、ノームの体の一部。
「みんな、残念だったのね。チミは幸運だったのね」
その言葉も、ほとんど耳には入らなかった。あんなに、ずっと一緒だった仲間達が、もういない。その事実は、ヒューマンにひどい
ショックを与えていた。
足が震えだし、今にも膝が抜けそうになる。それでも必死に体を支え、遺品を見つめるうち、ヒューマンははたと気付いた。
「エルフ……エルフは!?先生、彼はどうなったんですか!?」
ジョルーは目元だけで、同情的に笑った。
「彼は無事なのね。もっとも、ひどい怪我で、少しボーっとしてるのね」
「どこですか!?彼に会わせて下さい!お願いします!お願いします!」
「彼はもう、寮に戻ってるはずなのね。だから会いたいなら、寮に行くのね」
取るものもとりあえず、ヒューマンはすぐさま寮へと向かった。周りの目も気にせず、校内を全力で走り抜け、寮の中へと飛び込む。
階段を躓きながら駆け上がり、彼の部屋の前に着くと、必死にドアを叩いた。
「エルフ!いるの!?ねえ、お願い!開けて!顔を見せて!お願い!」
もう、彼だけが最後の希望だった。仲間がみんな死んでしまって、その上で彼まで死んでしまっては、もう生きていける自信がない。
ドアが、かちゃりと音を立てた。そして、まるで何かに怯えるかのように、ゆっくりと開かれていく。
「……ヒュー、マン…?」
「エルフ!よかったぁ!」
胸に飛び込んだヒューマンを、エルフは少したどたどしく抱き止めた。
「よかった……君、だけは……蘇生……成功、したんだね」
「うん……うん…!みんな、死んじゃって……でも、よかった…!君だけでも、生きててくれて…!」
涙が溢れて止まらなかった。最愛の人が生きていた。せめてそれだけが、救いだった。
「ごめん……本当に、ごめん」
急に、エルフはヒューマンを強く強く抱き締めた。
「どうして、エルフが謝るの?私だって……みんな、死なせちゃった…」
「僕も、それは同じさ…。ごめん、君に、辛い思いをさせて…」
ジョルー先生の言った通り、少し後遺症が残っているらしく、言葉がつっかえるようだった。しかし、この優しさは前とまったく
変わらない、エルフの優しさだった。
「さあ、少し休んだ方がいい。まだ、調子は、悪いだろう?」
「……えへへ、それは君だって、同じじゃない」
泣きながら笑うと、エルフも恥ずかしそうに微笑んだ。
「そうだね。その……ぼくと、一緒にいてくれるかい?」
「うん、お願い。今日はずっと、一緒にいて」
優しい腕に抱かれながら、ヒューマンはまた泣いた。そんな彼女を、エルフはただただ優しく、抱き締めていた。
262 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:16:06 ID:+5P7bjZC
大切な仲間を失った日から、丸一ヶ月が経過した。さすがにまだ悲しみは癒えないが、少なくとも以前よりはだいぶマシになった。
エルフの方も、徐々に回復してきたようで、今ではすっかり以前のように喋れるまでに回復している。
「ぼくと、君と、こうやって二人でいると、時が経つのが早いよ」
のんびりした調子で、エルフが口を開く。
「ぼくの隣に、君がいる。それだけで、ぼくは幸せだよ」
「もう、エルフったら」
エルフの腕に抱かれ、ヒューマンは笑う。あれ以来、体の関係は途切れていたものの、エルフはこうして、ヒューマンの体を抱いてくれる
ことが増えた。少し物足りなく感じるときはあるものの、これはこれで幸せだった。
「ねえ、今日も一緒にご飯食べよ」
「今日もかい?それはいいけど……まだ、地下道探索に行く気は、起こらないかな?」
「それは…」
正直なところ、まだ辛かった。地下道に行けば、あの時のことをありありと思い出してしまう。
そんな様子を察したのか、エルフは優しく微笑んだ。
「まあ、無理はしない方がいいさ。ごめんよ、変なことを言ってしまって」
「ううん、いいの。私だって、そろそろ克服しなきゃ、いけないのにね」
「ぼくだって、まだ完全に吹っ切れたわけじゃない。他の生徒だってわかってるのに、ついみんなに似たような生徒を見つけて、
声をかけてしまいそうになるし…」
「やっぱり、エルフもそうなんだね」
寂しそうに笑うと、エルフは少し慌てて言った。
「あ、いや、ま、まあこの話はこれでいいじゃないか。その、僕もお腹空いて来たし、学食行こうか?」
「うん、そうだね」
大体、毎日がこんな感じである。今までは地下道探索と、それに付随する戦闘ばかりで、毎日が慌しく過ぎていた。それが、今では
こうして探索にも行かず、毎日をのんびりと過ごしている。これはこれで幸せだと、ヒューマンは思っていた。
一緒に食事をして、色んな話をして、夜は、性的な意味で抱かれることは最近ないけれど、優しく抱き締めてもらえる。何だか、初めて
普通の恋人同士の生活を手に入れられたようで、それが嬉しくもあった。
「でも……エルフ、ごめんね。私のせいで、探索行けなくって……私達、冒険者なのに…」
「いいんだよ。ぼくは、君に強制なんかしない」
優しい笑顔で、エルフは続ける。
「いつか、君の心の傷が癒えた頃に、また頑張ろう。それまで、ぼくはいつまでも待つよ」
「……ありがとう」
エルフの胸に体を預け、ヒューマンは静かに目を瞑った。
「……ねえ、エルフ」
「ん、何だい?」
「いつか、みんなのお墓、作ってあげたいね」
ピクリと、エルフの体が動いた。やはり、エルフも完全に立ち直ったわけではないのだろう。
「そう、だね。クラッズ、セレスティア……フェルパー……そして、ノーム…」
「みんな……いい人だったのにね…」
つい口に出してしまうと、また涙が溢れてきた。その涙を、エルフがそっと拭う。
「泣かないで。君が泣くと、僕も辛い」
「うん……うん…。ありがとう、エルフ」
優しくて、暖かい腕。その中にいると、全てがどうでもよくなってしまう。
そう、本当に、全てが。
仲間を失った辛さも、生還した悦びも、この胸に、澱のように溜まる疑念も、何も、かも。
263 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:16:48 ID:+5P7bjZC
さらに数週間が経過した。日が経つにつれ、悲しみは少しずつその刃を鈍らせ、涙を堪えることも難しくはなくなってきた。
もちろん、それはエルフがいてくれたことも大きい。常に側にいてくれて、悲しみを共有できる存在がいたことは、ヒューマンにとって
何よりの支えだった。
とはいえ、少しだけ不満がないわけでもなかった。
あの日以来、彼とはすっかりご無沙汰である。抱き締めてくれるのも嬉しいし、それはそれで満足なのだが、こうもさっぱりだと、
やはり物足りない。
最初は、以前のように彼が求めるのを待っていた。しかし、いつまで経ってもその気配がないため、ヒューマンは強硬手段に
出ることにした。こうなったら、恥ずかしいだの何だのとは言っていられない。
いつものように、同じベッドに入るエルフとヒューマン。エルフは優しく抱き締めていてくれるが、その彼を見上げ、優しく微笑む。
そんな彼女を見て、エルフは少し困ったように微笑んだ。
「ん……どうしたんだい?」
「こうやって見つめてるのに、何にも感じない?」
「えっと、いや、それは…」
顔を赤く染め、視線を外すエルフ。その姿は、初めて彼と結ばれる直前の姿によく似ていた。
「……したいのかい?」
「それは、女の子に言わせちゃダメでしょ」
「はは、ごめんごめん」
「このところ、ずっとしてなかったしさ。お願い、また前みたいに、私のこと抱いて」
しどけなく首に抱きつき、ヒューマンは目を閉じた。それに応え、エルフはその顎をクッと上げさせる。
唇が僅かに触れ合う。エルフは焦らすように、そうして触れるか触れないかの感触を楽しんでいた。ヒューマンが抗議の意味も込めて、
首に回した腕に力を入れると、ようやく口付けといったものから、お互いの唇を貪るような激しいものに変わる。
唇を吸い、互いの唾液を交わらせ、ねっとりと舌を絡める。彼には珍しく、情熱的なキスだった。
キスをしながら、エルフはヒューマンの服を脱がせにかかる。ヒューマン自身も、それを受けて自らボタンを外し、彼を手伝う。
上着を捨て、胸を包む下着を剥ぎ取る。エルフの手が、そっと胸に触れる。
「んっ……いつもみたいに、ね?」
「……ああ」
捏ねるように、回すように優しく揉み解しつつ、指先で桃色の突起を摘む。ヒューマンの体がピクンと跳ね、口からは溜め息のような
吐息が漏れる。
「そう、それぇ…!もっと、強くしてぇ…!」
そう言いながら、ヒューマンはエルフの股間に手を伸ばした。手が触れた瞬間、エルフの体がビクリと震える。それに構わず、
ヒューマンはズボンの中に手を入れ、彼のモノを優しく握る。
ゆっくりと、撫でるように扱く。途端に、胸を揉む力が急に強くなったり、その手が止まったりと、エルフはその刺激に翻弄されている。
そんな様子を見て、ヒューマンはおかしそうに笑った。
「わ、笑うなよ。久しぶりなんだから」
「うふふ、そうだね。ほんと、久しぶり」
互いに愛撫をしつつ、二人はまたキスを交わす。少しずつエルフの手が下がり、腹を撫で、腰をなぞり、ヒューマンの秘部に触れる。
「んんっ……そこぉ、してぇ…!」
とろんとした目を開き、ヒューマンは鼻に掛かった甘い声でねだる。それに応え、エルフはそこをじっくりと刺激する。
264 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:17:38 ID:+5P7bjZC
割れ目をさすり、指を割り込ませる。軽く指を曲げると、くちゅっと小さな音とともに、指が中へ入り込んだ。
「んあっ!いいよぉ……もっと、強くぅ…!」
「ああ、わかってるよ」
耳元で優しく囁くと、エルフはさらに刺激を強める。さらに深く指を突き入れ、ヒューマンの体内を激しく掻き回す。
「ひあっ!?ちょ、ちょっと強すぎるよぉ!も、もう少し……うあっ!もう少し優しくぅ!」
「でも、気持ちよさそうだよ?」
意地悪そうに笑うと、エルフはさらにもう一本指を突き入れた。体の中で指が動き、体内を擦られ、内側から広げられ、ヒューマンの体が
何度も跳ねる。
「やだっ…!ま、待って!わた、私だけイッちゃうからぁ!待ってってばぁ!」
エルフの手を強引に押さえつけると、ヒューマンは少しむくれて見せる。
「やめてって言ってるのに」
「ごめんごめん。あんまり可愛かったからさ」
「もー、すぐごまかすんだから」
呆れたように笑うと、ヒューマンは目を細めた。
「それじゃ、次は私の番だからね」
答えを待たず、エルフのズボンを剥ぎ取ると、ヒューマンはそこに顔を埋めた。そして、既に硬く屹立しているモノに、そっと舌を
這わせる。
「うっく…!」
「ふふ、さっきの仕返し」
たっぷりと唾液を絡め、エルフのモノを丁寧に舐め上げる。根元から先端へと舌を這わせ、亀頭部分を口に含み、そのまま雁首を
なぞるように舐める。
「くっ……ヒューマン、もうそれぐらいで…!」
「んっ……んく……ぷはぁ!うふふ、言ったでしょ?さっきの仕返しっ!」
楽しそうに言うと、ヒューマンはエルフのモノを喉の奥まで咥え込んだ。さらにその状態で強く吸い上げ、唇を窄めながら上下させる。
ちゅぷちゅぷと湿った音が響き、それに時折エルフの呻き声が混じる。ヒューマンは時折口を離し、かと思うと先端部分にいたずらっぽく
キスをし、鈴口をほじるように舌で突付き、そしてまた喉の奥まで咥え込む。
口内の暖かさと、今までよりさらに強い刺激に、エルフはたまらず呻き声を上げ、ヒューマンの頭を押さえた。
「も、もうやめてくれ。出ちゃいそうだ」
「ん……ふぅ!私も顎疲れちゃったから、ちょうどよかったかな。うふふ」
「まったく、逆にぼくだけ果てちゃったら、どうするつもりだったんだ」
「その時はその時。たぶんもう一回頑張ってもらうかな〜?」
「ひどい話だね」
言いながら、エルフはヒューマンの体を軽く押し、その体にのしかかる。ヒューマンは期待に満ちた目で、彼を見つめている
はやる心を抑えるように、一つ大きく息をつくと、エルフは自身のモノを押し当てた。
「いくよ」
「うん」
ゆっくりと、エルフが腰を突き出していく。秘裂を割って、少しずつ中に入ってくる感覚に、ヒューマンは抑えた喘ぎを漏らす。
「ふっ……んんん…!」
「大丈夫かい?」
265 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:18:18 ID:+5P7bjZC
エルフが優しく声をかけると、ヒューマンは陶然とした目をしつつも、挑発的な笑みを浮かべた。
「もっと、好きなように動いていいよ。いっぱい、激しく……めちゃくちゃにして」
「……ああ」
返事をするが早いか、エルフは一気に一番奥まで突き入れた。さすがに若干の痛みがあり、ヒューマンは思わず全身を強張らせた。
「んあぁっ!!い、いきなりすぎるってばぁ…!」
「ごめん、その……久しぶりだからさ、その…」
しどろもどろになるエルフに、ヒューマンは呆れた笑いを浮かべた。
「ふふ、もう……いいの、気にしないで。エルフの、好きに動いて」
「あ、ああ」
エルフはゆっくりと、しかし大きく動き始める。引き抜くときはゆっくりと、突き入れるときは力強く。体の奥を叩かれる感覚が
何度も襲い掛かり、その度に脳が痺れるような快感がヒューマンを襲う。
「あうっ!あっ!あっ!もっと……んうっ、あっ!もっと強くぅ!」
自身もエルフにしがみつき、さらなる快感を得ようと腰を押し付けるヒューマン。それに応えるように、エルフの行為は激しさを増す。
パン、パンと腰を打ち付ける音が響き、ベッドが激しく軋む。結合部からはとめどなく蜜が滴り落ち、シーツに黒い染みを作っている。
激しく腰を打ち据えながら、エルフは荒い呼吸を漏らしている。ヒューマンも全身に汗を浮かべ、上気した体からは汗と石鹸の匂いが
している。
「くっ、うっ……ヒューマン、もう、僕は…!」
エルフが、相当に切羽詰った声を出す。そんな彼に、ヒューマンは荒い息を吐きつつ優しく微笑んだ。
「い、いいよ!んあぅ!中に、中に出してぇ!!」
ヒューマンの足が、がっちりとエルフの腰を捕らえた。そして、中に出されるのをせがむように、ぐいぐいと腰を押し付ける。
「うぅっ……うあっ!もう、限界だ!」
追い詰められた声とともに、エルフは一際強く腰を打ちつけた。同時に、ヒューマンの体内に熱いものが流れ込む。
「あっああ!出てる!中に、中にいっぱい出てるぅ!」
悲鳴とも嬌声ともつかない声をあげ、ヒューマンは体をのけぞらせた。同時に、膣内がビクビクと収縮し、さらに精液を搾り取るかの
ように、エルフのモノを締め付ける。
「うあっ!?すごく、締まる…!」
「出てるよぉ…!私の、中にぃ……出されちゃってるぅ…!」
ヒューマンの痙攣が収まると同時に、エルフもヒューマンの体内に精液を注ぎ終える。それでも、二人は放心したように、そのまま
抜くこともせず、繋がったままだった。
「はぁ……はぁ……ねえ、エルフ…」
「はっ……はっ……何だい…?」
「今日は、このままでいて……お願い…」
ヒューマンが、潤んだ瞳でエルフを見上げる。そんな彼女の頭を、エルフは優しく撫でてやった。
「ああ、いいよ。ぼくも、こうしていたかった」
優しく体を抱くエルフに、ヒューマンは縋り付いた。そして、彼に気付かれないよう、ヒューマンはぽろぽろと涙を流していた。
266 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:19:06 ID:+5P7bjZC
ヒューマンがラーク地下道に行こうと言ったのは、その翌日である。今まで地下道行きを拒んでいた彼女が、よりにもよってラークに
行こうと言い出したため、最初エルフは心配した。しかし、死んだ彼等に花を供えたいという言葉で納得し、二人でそこに向かう。
相変わらず、エルフは極限まで強化したショートボウに破魔の矢。ヒューマンは白刀秋水を携え、その辺で摘んだ一束の花を抱えている。
ホルデア登山道を越え、フレイク地下道を突破し、いよいよラーク地下道に入る。その中央までたどり着くと、あの時のことがより
鮮明に頭の中に蘇って来る。
その、死闘を演じた場所に、二人は立っていた。二人とも言葉はなく、ただじっと地面を見つめている。
やがて、ヒューマンが動いた。
「みんな、安らかにね…」
静かな声で言うと、手に持った花束を放る。エルフは黙って手を合わせたが、ふとヒューマンの手に視線を移す。
「……その花は、どうしたんだい?」
ヒューマンの手の中には、まだ一本だけ花が残っていた。投げ損ねたわけではなく、どうやらわざわざ残したらしい。
ゆっくりと、ヒューマンが振り返る。その顔に表情はなく、しかし目には深く暗い情念を宿していた。
「だって、必要じゃない。死に逝く者の、手向けに」
「ヒューマン…?ヒューマン、一体何を…!?」
エルフの言葉を遮り、ヒューマンは目を見開き、口を開いた。
「それ以上、その声、その体で、喋るなぁっ!!!!」
ヒューマンの怒号が地下道にこだまし、それが消えると、辺りに静寂が訪れる。
エルフが何も答えないのを見ると、ヒューマンはゆっくりと喋りだした。
「変だとは、思ったんだ。でもね、昨日抱かれて、はっきりわかった」
「………」
「キスは、そっくりだったよ。でもね、エルフはあんなに下手じゃないし、あんなに情熱的じゃない。ああ見えて焦らすタイプだし、
私がやり返したって、平気で続けられるしね。何より、エルフは私が大丈夫な日だって言ったって、絶対中には出さなかった」
エルフは何も言わず、黙ってヒューマンの言葉を聞いている。
「それにね、エルフはいっつも『ぼく』ってね、『く』にアクセントつけて言うんだよね。どんな時も。イきそうな時だろうと、
焦った時だろうと、戦闘中だろうとね。それがどうして、今では『僕』って、頭にアクセントつけて言う時があるのかなあ」
エルフは答えない。ただその顔に困惑の表情を浮かべているだけである。
「……一人しかいないよね。私と記憶が共有できて、エルフの真似も出来てさ」
ヒューマンはゆっくりと、懐に手を入れた。
「ねえ……そうでしょう?」
その手が、懐に隠し持っていたダガーを掴んだ。
「ノームっ!!!!!!」
腕が一閃し、小さな刃が一直線にエルフへ襲い掛かる。その瞬間、エルフは跳んだ。
足元を、ダガーが通過していく。しかし、その体は落ちることなく、空中に留まっていた。翼も持たないエルフが、空中に浮遊し、
ヒューマンを見下ろす。その顔には、表情はなかった。まるで、作られた人形であるかのように。
「私が死んでから……何があった!?答えろ!!」
「……それを知って、何になると言うんだい」
今までとまったく違う、抑揚のない声で、エルフの体が答えた。
「僕は、確かにエルフじゃない。だけど、この通り、僕は今までずっと、エルフとしてやってきたじゃないか」
「黙れ…!あんたは、一体何をした!?」
ふぅ、と息をつき、ノームは目を瞑った。
「……どうしても、聞きたいのかい」
答えは聞かなくてもわかっている。一つ、深い溜め息をつき、ノームは口を開いた。
「魔が、差したんだ。僕は、ずっと……君が、好きだった。愛してたんだ。だからあの時、戦闘が終わって……僕と……エルフが残った。
エルフは傷ついていた。あと一撃でも受ければ、命が危ないぐらいにね……魔が、差したんだよ」
「あんたが……あんたが、エルフをっ…!!!」
怒りに顔を歪めながら、ヒューマンは花を捨て、刀を抜いた。それを見ると、ノームは笑った。
「殺すのかい、僕を。エルフの体を持つ僕を。殺したところで、エルフは戻らないのに」
「黙れ黙れ黙れぇ!!!」
全身から凄まじい殺気を放ち、刀を構えるヒューマン。そんな彼女に、ノームは冷たい笑みを浮かべながら言う。
267 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:20:11 ID:+5P7bjZC
「君が望むなら、僕はずっとエルフになってあげる。ずっとエルフとして生きてあげる。それを、君はみすみす逃すと言うのかい」
「お前は、エルフじゃない!エルフを殺したお前を、生かしておく気はない!!!」
「そうか……残念だよ。僕も、もう戻る体はない。君が僕を殺すと言うなら…」
ノームは、ゆっくりと矢を番えた。
「僕は、君を殺す」
直後、ヒューマンが地を蹴り、空中のノームに切りかかった。さすがに反応は遅く、ノームは一瞬遅れて地面に降りる。
反撃の隙を与えず、ヒューマンは横に薙いだ。ノームは素早く身を伏せるが、返す刀で足を狙う。ふわりとノームは体を浮かせ、空中に
寝転がるようにそれをかわす。さらに切り上げると、ノームは体を上下反転させ、頭を下にしたまま弓を引き絞った。
ヒューマンが跳んだ瞬間、今までいた場所に矢が突き刺さる。続けて放たれた矢を、ヒューマンは刀で叩き折り、すぐに刀を振りかぶる。
直後、ノームは体勢を立て直し、サンダーを詠唱した。
エルフが使えるはずのない魔術。エルフが放ったものではありえないほど不正確な矢。その全てが、相手がエルフの姿を模した
偽者であることを語っていた。
サンダーを食らってよろめいた瞬間、エルフの顔にふと表情が戻った。
「ヒューマン、落ち着いてくれ!ぼくは君と争いたくない!」
「エ……エルフ…?」
が、その顔はすぐに消え、代わりに嘲笑めいた笑いが浮かんだ。
「どうだい、だいぶ板についただろう。さすがに二ヶ月以上も、真似を続けるとね」
ヒューマンの中に燃える怒りが、さらに激しく燃え上がる。
「ふざけるな…!」
「ヒューマン、どうしたんだい?そんな怖い顔はやめてくれ!」
「黙れぇぇぇ!!!!」
遊んでいる。死者を弄び、心を弄んでいる。ヒューマンの怒りは純然たる殺意となり、殺意はより鋭さを増した攻撃となって表れる。
連撃を避け切れず、ノームはいくつもの傷を負い、徐々に追い込まれていく。しかし、隙を見せれば即座に魔法が襲い掛かり、それは
確実にヒューマンを追い詰める。
だが、強烈な殺意が彼女を突き動かす。ノームが矢を放ち、地上に降りた瞬間、ヒューマンは思い切り刀を振りかぶった。
「食らえええぇぇーーー!!!」
白刀秋水を、全力で投擲する。それは回転しながら、一直線にノーム目掛けて襲い掛かった。
「くっ!」
矢を番えようとしていたノームは、慌てて弓でそれを弾く。だが、その隙にヒューマンは、自分の間合いまで距離を詰めていた。
ソックスに挟んでいた小刀を逆手に掴む。
ノームが矢を番える。体を反転させ、狙いを逸らす。
弓が軋む。その瞬間、腕を伸ばし、思い切り振り抜いた。
ドッ、と、鈍い音が響いた。
「うっ……がっ…!」
ノームの体が折れ、矢があらぬ方向に飛ぶ。見下ろした先では、小刀がヒューマンによって左胸に突き立てられ、赤い血がドクドクと
溢れ出していた。
一瞬、目が合った。ヒューマンの目を見つめ、ノームが弱々しく口を開いた。
「僕は……ただ…」
小刀を引き抜くと、支えを失ったノームはゆっくりと倒れた。開いた口から、血が溢れている。その口が、かすかに動いた。
「本当に……ごめん…………ヒューマン…」
消え入りそうな声で呟くと、その目から光が消えた。そして、全ての動きが止まる。
血を流すエルフの体。もうノームはいない。ノームも、エルフも、死んでしまった。それを見届けると、ヒューマンはその場に
へたり込んだ。
「……は……あはは…。本当に、これで終わりだぁ」
寂しそうに笑うヒューマン。小刀を握る手からは、まだ力は失せていない。
「でも、心配しないで、みんな」
ヒューマンの手が、ゆっくりと、小刀を振り上げた。
「ちょっと遅れちゃったけど……私も、すぐ……逝くから」
小刀が、自分の胸を目掛け、振り下ろされた。
268 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:20:59 ID:+5P7bjZC
「本当に、それでいいんだね?」
「はい。もう、決めましたから」
三ヵ月後。職員室の中で、ヒューマンはユーノと話していた。
「そうか。それじゃ、もう私が言えることはないけど、頑張るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「それにしても、担任としては寂しいね。教え子が減るってのはさ」
寂しそうな笑顔を浮かべるユーノに対し、ヒューマンも少し寂しげな笑顔を返す。
「でも、死ぬわけじゃありません。いつか、また会いに来ますよ」
「はは、そりゃ楽しみだ。でも……ほんと、頑張るんだよ。あんたの選んだ道は、やさしくなんかないかんね」
「はい。先生……今まで、ありがとうございました」
頭を下げると、ヒューマンは懐から生徒手帳を出し、ユーノに手渡した。
職員室を出ると、住み慣れた寮に向かい、一つにまとめられた荷物を持つ。部屋を出るとき、ちょっとだけ振り返り、寂しそうに笑った。
階段を下り、寮を出ると、そのまま校門に向かう。
校門の前に立つ。ここから一歩踏み出せば、そこはもう学校ではない。
後ろを振り返ると、今まで過ごしてきた学園があった。
結局、死に損ねてしまった。あの後、血糊で滑った小刀は彼女の心臓を突いてくれず、出血で気絶してる間に、たまたま通りかかった
パーティに救助されたのだ。もちろん、エルフの死体も回収されたが、当然の如くロストした。
軽く、溜め息をつく。そして、あの時のことを振り返る。
―――ノームは、本当にああするしか、なかったのかな。
改めて考えてみると、ノームはエルフを殺したと言うような事を言っていたが、あれは嘘だったのではないか。パーティの仲間を誰よりも
大切に思うノームが、そんな事をしたとは、とても思えないのだ。結果的に、エルフはロストすることとなったのだから、あながち
彼の言葉が間違っていたともいえないが。
全てが真実でもないが、全てが嘘と言うわけでもない。恐らく、真相はこうだったのだろう。あの時、ヒューマンが死んだ後、エルフも
戦いに耐え切れず、死んだ。最後に生き残ったノームは、つい魔が差してしまい、魂の抜けたエルフの体に入り込んだ。理由は、
きっと彼の言葉通り。
直後から、後悔はしていただろう。だからこそ、彼はエルフになりきるしかなかった。好かれているのは自分ではなく、自分の演じる
エルフであっても、ノームはそれを続けた。恐らくは、ヒューマンのためでもあり、エルフを死なせた罪滅ぼしのためでもあるだろう。
また、そうすることでしか、自分は愛されない。自分が愛する者の幸せのために、彼は自分を捨てた。相当複雑な思いだっただろう。
いずれにしろ許されないことではあるが、ノームもそれはわかっていたのだろう。考えてみれば、彼がノームとして喋ったとき、それは
ほとんどが、ヒューマンへの謝罪や気遣いの言葉だった。一時の気の迷いで仲間を死なせ、好きな人の恋人を奪ったという事実は、
ノームの心に重くのしかかった。
だからこそ、正体がばれたとき、彼は彼女に殺されることを望んだ。せめてもの罪滅ぼしとして、また彼女への最後のお詫びとして。
そうでなければ、あんな挑発は何の意味もなさない、むしろ自分に不利に働くことぐらい、彼もわかっていたはずだ。
しかし、自ら死を望んでいることを悟られれば、恐らくヒューマンは彼を殺せなかった。だからこそ、形だけの抵抗をして見せたのだ。
第一、本当に負けたくないのなら、ビッグバムやパラライズなど、もっと違う魔法を使えば簡単に勝てたはずだ。なのに、サンダーなど
比較的初級の魔法しか使わなかった辺り、元々勝つ気などなかったのだろう。
269 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:21:41 ID:+5P7bjZC
誤算だったのは、ヒューマン自身も死ぬつもりだったことだ。目が合った時、それを知って最後の言葉が出たのだろう。
『僕はただ――』その続きは推測するしかないが、彼の性格を考えれば、『君に詫びたかったんだ』辺りだろうか。
―――本当に、不器用なんだから。
せめて素直に詫びていれば、ここまでこじれることもなかったかもしれない。あるいは、彼が気の迷いを起こさなければ、エルフが
ここにいたかもしれない。しかし、全ては終わったこと。今更どうこう言っても始まらない。
もう、仲間はいない。恋人もいない。それこそ、彼女は全てを失った気分だった。しかし、今はそれもない。
―――でもノーム。あなたに一つだけ、お礼言うよ。
そっと、お腹に手を当てる。まだ何の感覚もないが、確かにそこに息づく命を感じる。
あの後、何度も死のうとした。だけど、死に切れなかった。そうこうするうち、妊娠が発覚した。それ以来、死のうという気は失せた。
たった一度の交わり。あの時の種が、根付いたのだ。魂の中身こそノームではあったが、これは紛れもない、エルフとの子供である。
彼はもういない。しかし、彼の血が受け継がれている。ならば、それを消すことは出来ない。
そして、彼女は退学を決意した。それなりにお金はあるし、体力には自信があるから、何とかなるだろう。
ユーノの言ったとおり、楽な道ではない。故郷を飛び出し、冒険家というやくざなものになった挙句、年端も行かない小娘が、
親もわからない子供を孕んで帰ってくるのだ。楽なわけがない。
それでも、彼女に迷いはなかった。どう足掻いてでも生きようという意志があった。この地を離れた瞬間から、その冒険は始まるのだ。
「入学するときより、緊張するな。でも、一人じゃ、ないもんね」
お腹に手を当て、そう話しかける。心なしか、少し気が軽くなった。
校舎に向かい、頭を下げる。それで、決意は固まった。
「いっきまーす!」
鼓舞するように言うと、ヒューマンは足を踏み出した。これから、始まるのだ。今までの冒険にも負けない、長い冒険が。
地下道よりも、学校よりも、もっともっと壮大な、彼女だけの冒険が。
270 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/02(月) 23:25:03 ID:+5P7bjZC
以上、投下終了。
最近、ヒュマ子の出番が急激に増えた気がする。
ところで、気付けば容量あとちょっと。次スレ立てといた方がいいのかな?

それではこの辺で。
271名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 00:08:08 ID:0CMQyICO
おつー

やはりノームは漢らしい
272名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 01:16:26 ID:HGp1BgiE
GJ

今月はヒュム子強化月間?

次スレの季節ですか、速いもんですね。まだ300行ってないのに。
なるほど、書ける時に書いたものをちまちま……
いや、すさまじいストックの量ですね。
273名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 11:19:36 ID:Mgqh13FR
うーむ、乙!
紐解いていけば誰かが悪いわけでもないんだよなぁ。

当方、仲間の死亡、消滅が大の苦手なため(消滅なんて聞いただけでも恐ろしい)
術を一通り覚えさせてから目的の学科に転科。転科転生直後は金で
2千万ほど与えてレベル上げる。エンパス戦は犠牲者でたらリセットといったチキンプレイにつき
全滅させた事は一度も無いが、彼らの日常はそういうものと隣り合わせなんだなぁと実感。

でもそういう彼、彼女らだからこそより光るものがあるってことですかね
274名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 11:21:33 ID:Mgqh13FR
ひゃあ、しまった
275615:2009/03/05(木) 06:59:30 ID:yJ6GCd/z
GJ!

久しぶりに来たけどホントすごいや、かなわねぇよ。
いくつか書いておいてから投下…何でそんな当たり前なことに気づかなかったかなぁ自分は。
とりあえず一つ出来たけどまだいくつか作品作るか…
容量無いから次スレからかな?
276名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 00:44:58 ID:HH6PvJwa
277 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:54:42 ID:cz3HgIN3
埋めがてら投下。埋めにはちょっと足りないかもですが。
ヒューマンとフェアリーは、体格差があるから何もできない→体格差があるから何でもできる
という事に気付いた。そんなわけで、今回はヒュマ子とフェア子。

今回の注意としては百合モノで、体格差ゆえのかなりマニアックなプレイが多いので、ダメな人はご注意を。
それでは、いつも通り楽しんでいただければ幸いです。
278 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:55:17 ID:cz3HgIN3
人はみんな、私達を変わってると言う。
私も、それは否定しない。変わってる。ずいぶん変わってる。おかしいと言われても、否定はしない。
私には付き合ってる子がいる。私は女で、付き合ってる相手も女の子。この時点で、おかしいなんてことは最初からわかってる。
「ヒュマちゃーん!元気ー!?」
「うん、元気」
「そっかぁ、それならいいんだ!ねえねえ、今日は何しよっか!?」
「フェアリーのしたいことでいいよ」
いっつも元気な、フェアリーの女の子。馴れ初めなんて、覚えてない。まあ、パーティ組んでるんだから、それが縁だったはず。
好きだって言われた。私も嫌いじゃなかった。取り立てて好きってわけでもないけど、いい子だとは思ってた。だから、付き合って
欲しいって言われたとき、私は二つ返事で承諾した。
「じゃあさじゃあさ!まず学食行こうよ!それでおいしい物食べてさ!図書館で本でも読んで…!」
「前、うるさいって叩き出されたでしょ」
「あ、そっか!それじゃ図書館はやめてさ!軽く地下道探索なんていうのどうかな!浅場だけだったらさ、私達だけでもいけるし!」
「うん、そうだね。それもいいね」
暗いって、よく言われる。別に暗いんじゃなくて、必要ないときに笑いたくないだけなんだけどね。必要最低限のことしか喋らないし、
だからみんな、私にはあまり近寄らない。
フェアリーだから、なんだとは思う。彼女にしてみれば、ヒューマンだったら何でもよかったんだと思う。それでも、私は好きだって
言われたとき……ちょっと、嬉しかった。
彼女は、私と全然違う。いっつも元気で、うるさくて、騒がしくて、やかましくて、だけど笑顔を振りまいてて、周りのみんなも笑顔に
するような、そんな存在。それが、私なんかと付き合ってるのは、やっぱり誰が見ても変わってる。でも、彼女はそれを疑問に思わない。
頼りになる子でもある。魔術師で、かなり熟練してて、戦士の私なんかが動き出す前に、敵が全滅してることも少なくない。おまけに、
以前は超術士学科も習ってて、僧侶学科もちょっとだけかじっている。だから、彼女一人いれば、ほぼ全部のことができてしまう。
だけど、彼女は言う。
「えへへー!勝てたよ!ヒュマちゃんのおかげだねっ!」
「私、何もしてないよ」
「そんなことないよー!」
「剣抜いただけだし」
「でも、見ててくれたでしょ!?」
「うん、すごいなーって思ってた」
「えへへ〜、そうやって褒めてくれるから、私、頑張れるんだよっ!」
と、いうことらしい。正直言って、私には理解できない感覚。別に他人が褒めてくれるからって、何かいい事があるわけでもないのに。
それに、私は褒めてるわけじゃなくって、率直な感想を述べただけ。でも、褒められたって本人が思えば、きっとそうなんだろうと思う。
学食に行って、ご飯を食べて、地下道を歩いて、アイテムを拾って、強くなって、また学食に行って、寮に戻る。それが、私達の毎日。
ああ、でもそれだけとは言えない。もう一つ、日常とは少し言いにくいけど、私達に欠かせないものがある。
「ねえねえ、ヒュマちゃん!これ食べたらさ、部屋行っていい!?」
「うん、いいよ」
「やったぁ!えへへ、またヒュマちゃんとぉ〜…!」
「ご飯こぼしてるよ」
「あ、ごめんごめん!でもさ、やっぱりさ……えへ〜…!」
「涎垂れてるよ」
付き合ってる以上、当然肉体関係も持ってる。女同士だけど、恋人同士って考えれば、普通なことだけどね。
279 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:55:53 ID:cz3HgIN3
二人で部屋に入って、鍵をかけると、すぐにフェアリーが飛びついてくる。
「えへへ〜、またできるねっ!」
「うん」
「ん〜、むにむに。触ってる私も気持ちい〜」
「ん……もう、いつもいきなりすぎ」
「あはっ、ごめんごめん!それじゃ、チューから初めよっか!」
全然サイズがあってないけど、とにもかくにも、私達はキスから始める。ただし、舌なんか入れようとしたらフェアリーを窒息させて
しまうので、恋人らしくない、軽いキスしか出来ないけど。
フェアリーは積極的。キスの合間にも、いつの間にか私の胸をまさぐり、弱いところを徹底的に責めてくる。
「んっ……うっ…!」
「んふふ〜、どうヒュマちゃん?気持ちいい?」
「ん……うん…」
「今日も、いっぱい、い〜っぱい気持ちよくさせてあげるね!」
体が小さいからなのか、彼女はとても器用だ。彼女に胸を弄られると、自分でするときの数倍は気持ちいい。乳首を手全体で包み込み、
捏ねるように揉まれると、指でするのとは全然違う感覚が襲ってくる。
「んあぅっ……あっ…!」
「ふふー、ヒュマちゃんって胸弱いよねー!ほ〜ら、もう腰砕け!」
私はわからないけど、たぶんそうなんだろう。実際、そうやって胸を弄られただけで、私は立っていられないほどになってしまう。
そんな私をベッドに押し倒してから、フェアリーはいつもの笑顔で私を見つめる。
「もうちょっと、してあげるね!」
「う、うん」
小さな手が、私の胸をまさぐる。指先でくすぐられ、時にはちゅうっと吸い付かれ、舌でちろちろと転がすように舐められる。その度、
私は押さえきれない声を上げ、フェアリーを喜ばせる。
「ん……ん、う……痛っ!」
たまに、フェアリーは私の乳首に噛みつく。でも、その痛みがまた、刺激の単調さを壊し、ちょうどいいスパイスになってくる。
「あは、立ってきた立ってきた!」
嬉しそうなフェアリー。こうなってくると、彼女の手は本当によく動く。その立ってきた乳首を押し潰してみたり、揉んでみたり、
時には男の人のを扱くように撫でられることもある。爪を立てられることもあるけど、それはやはり苦痛ではなく、快感の一つの形として
受け入れてしまう。
そうやって胸を刺激されるうち、ごく自然に濡れてきてしまう。前は、このパンツが肌に張り付く感じが、気持ち悪くてたまらなかった
けど、今はその感覚が、これから味わう刺激の予兆みたいになってしまって、この感覚があると胸が高鳴る。
フェアリーは胸を触るのが大好きだった。サイズが違うのをいい事に、舐めたり揉んだりするのはもちろん、体全体で私の胸を
揉んでくる。というより、フェアリー自身が、私の胸に埋もれるのが好きらしい。
「うう〜ん……むにむにぃ……気持ちいい〜…!」
「……私も」
なんか『気持ちいい』の意味が違う気がするけど、気持ちいいって部分は同じだから、あまり深く考えない。
「ん、ヒュマちゃん濡れてきたね〜。それじゃ、責める場所変更〜!」
胸とそこを一緒に責めてもらえないのだけが、ちょっとした不満でもある。でも、フェアリーにしてもらうとすごく気持ちいいから、
あまり大した問題でもない。
280 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:56:28 ID:cz3HgIN3
もう、私のそこはとめどなく透明な液を溢れさせ、スカートにまで黒い染みを作っていた。
「わぁ、もうびっしょびしょ!早く言ってくれれば良かったのにー!」
「……ごめん…」
「そうじゃなくって、気持ち悪くなかった?言ってくれたら、脱がせてあげたのに」
「……胸が、気持ち……よかったから。やめて……ほしく、なくて…」
「そう?そう?えへへへ〜!」
満面のにやけ顔を浮かべながら、彼女は私のスカートとパンツを脱がしてくれる。いつもいつも、この瞬間が一番ドキドキする。
「お、クリちゃんもこ〜んなに大っきくなっちゃって!ほんと、ヒュマちゃんのって大っきいよね〜!」
そう言われても、他の子のなんて見たことないからわからない。
「フェアリーは……見たこと、あるの?」
「あるよー、何人か!ヒュマちゃんも、お風呂なんかで見ない〜?」
「私……は…」
「普通は見ないか、えへへ!でもね、ほんとにヒュマちゃんの大っきいんだよ!だから、すっごく責め甲斐あって、大好き!」
少し、悲しくなった。やっぱり、フェアリーにとっては、私は数いるヒューマンのうちの一人。きっとこうして、何人もの子と
付き合ってきたんだろうと思う。
「あ、なんか暗くなっちゃった?でもね、すぐまた気持ちよくさせてあげるからねっ!」
小さな手が、私の大事なところに触れる。
「んっ…!」
「んふふ〜、今日も可愛い声、聞かせてね!」
小さな口が、その人より大きいと評された突起を吸う。途端に、痺れるような快感が体中を走り抜けた。
「うああぁっ!あっ!」
「ほらほら!まだ序の口だよ!」
言いながら、フェアリーは全体を撫で、襞を引っ張り、口ではずっと突起を責めてくる。先端を舐められ、吸われ、その度に私の意識と
関係なく、体が弾かれたように跳ね上がる。
「ああっ……うっ、あっ!」
にやりと、フェアリーが笑った。同時に、その敏感な部分にちくりと痛みが走る。
「やっ……噛んじゃ、ダメ…!」
「ほぉ〜ら、ここも好きだよね〜!?」
「だ、ダメぇ!そこは…!」
フェアリーの指が、普通なら絶対に入らない穴に入り込んだ。突き抜けるような痛みが走り、同時にそれが快感に変わる。
「いやっ!そ……そこは、おしっこのぉ…!」
「ほらほら、もっと激しくしちゃうよー!」
「い、痛ぁっ!ダメ、激しくしないでぇ!」
痛い。本当に痛い。指を出し入れされるたび、鋭い痛みが走る。おまけに、フェアリーは敏感な部分に歯を立て、襞に爪を立て、
徹底的に痛みを与えてくる。
だけど、きっとフェアリーのせいだけど、私にはそれが快感としか受け取れなくなっている。体をよじるのも、シーツを握り締めるのも、
痛いからじゃなくって、気持ちよさに耐えるため。
「もっ……やめっ…!い、痛いのは、もうやだっ…!」
「え〜、気持ちよさそうなのになあ。でも、いいよ!それじゃ、もっと好きなのやってあげるね!」
一度、フェアリーは私から離れた。可愛い笑顔を浮かべ、手をぎゅっと握る。それを見ると、私の体の奥がジンと疼く。
281 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:57:05 ID:cz3HgIN3
「それじゃ、いっくよぉ〜!力、抜いててね!」
拳が、少しずつ私の中に入ってくる。その圧迫感に、全身から嫌な汗が噴き出す。
「あぐっ……き、きつ、いっ…!」
「ああ……ヒュマちゃんの中、温かいよぉ〜…!」
どんどん、拳が体の奥に入ってくる。体の中を無理矢理押し広げられ、肺の空気を押し出されるような感覚。でも、それがたまらなく、
気持ちいい。苦しいのに、その苦しささえも気持ちいい。
拳自体は、そんなに大きくない。たぶん、男の人のあれと大差ないぐらいの太さ。だけど、私の中に、肩まで腕を突っ込むフェアリーを
見ると、その異常な光景に恥ずかしくなって、胸がどうしようもないほど騒いで、そして、体が熱くなる。
「あはは、こんなに濡れてるから、もう肩まで入っちゃったよ!ほらほら、ここが一番奥かな〜?」
「あくっ!だ、ダメ…!お腹の中、叩かないでっ…!」
「そんなこと言っちゃって〜!ほんとは大好きなんでしょ〜!?」
お腹の中を殴りつけるように、フェアリーは何度も何度も拳を突き入れてくる。その度に、体の奥にずしんと鈍い衝撃があって、
疼くような痛みがあって、どうしようもないほど気持ちよくなる。
グチャッ、グチャッとすごい音を立てて、何回もお腹の奥を殴られる。突き入れるときは、押し出された液が飛び散り、引き抜くときは
一緒に引き出された液がどろりと零れる。フェアリーは、そうして私の体液に塗れて、すごくいやらしい笑顔を見せる。
「うあっ……かはぁっ!ダメっ……手ぇ広げないでぇっ…!」
「どう?もうイッちゃいそう?」
「く、苦しっ……あんまり……激しいのはぁっ…!」
「まだ余裕あるかな〜?それじゃ、もっと強く行くよ〜!」
体の奥を殴りつけられる。透明な液が飛び散る。敏感な突起を舐められ、跳ね上がった体を体内から押さえつけられる。周りの音が
一瞬にして聞こえなくなり、叫びだしたいほどの快感がまとめて襲い掛かってくる。頭の中が一気に白くなり、体が浮くような感覚が
襲ってきたところで、不意にフェアリーは腕を止めた。
「はぁっ……はぁっ……はぁ…」
急に音が戻ってくる。自分の呼吸と、トクトク鳴ってる心臓の音がうるさい。
「ふー、危なかったぁ!ヒュマちゃん、イッちゃいそうだったでしょ!?」
「……うん…」
「うふふ、イク時は一緒!それじゃ、いよいよヒュマちゃんとぉ〜…」
ズルズルと、体の中から腕が抜け出ていく。その感覚に、私はまた跳ね上がる。
「うああぁっ!!も、もっとゆっくりぃっ!!」
「この方が気持ちいいでしょ!?でも、イかせてはあげないからね〜、うひひ!」
言葉通り、すごく気持ちいい。なのに、絶妙なところで刺激が足りない。もうちょっとでイけそうだったのに、その頃にはもう、
腕が抜け切ってしまった。
「うふふ、か〜わいい!そういう、放心したようなポーッとした表情、すっごくかわいいよ!」
そうなんだろうか。私はだらしないだけだと思うんだけど、きっとフェアリーが言うから、そうなんだろう。
彼女は、今まで私の中に入っていた腕を、愛しそうに舐めている。私の液でドロドロになった腕を、丁寧に、陶然とした顔で舐めている。
「ヒュマちゃんの、おいしい…!ふふ、もっともっと、気持ちよくさせてあげちゃうんだから!」
視界の端で、フェアリーが服を脱ぐのが見える。小っちゃくて、可愛い体。これから、一つになる体。
仰向けに転がる私の上に、フェアリーが馬乗りになる。その顔は、これからの行為の期待に紅潮し、呼吸もすごく荒くなっている。
きっと、今の私も、彼女と同じ顔をしてるんだろう。
「ヒュマちゃん……一緒に、気持ちよくなろっ!」
282 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:57:41 ID:cz3HgIN3
フェアリーは私の敏感な突起に手を沿え、そこに自分の大事な部分を押し当てる。既にとろとろと透明な液を滴らせるそこは、
早く入れて欲しいといわんばかりに、ヒクヒクと蠢いている。
「あっ…!」
「それじゃ、いくよ?」
彼女の中に、頭の部分が入り込む。それにつれて、全体を包んでいた皮が剥かれ、敏感な部分がむき出しになっていく。
「うああ!!うあああぁぁっ!!!」
「やっ!ヒュマちゃん、ダメぇっ!!あんまり、腰跳ねさせないでぇっ!!」
「だ、だって、無理ぃっ!!き、気持ちよすぎてっ!!あ、頭、おかしくなるぅっ!!!」
皮を剥かれ、敏感になったそこが、フェアリーの粘膜に包まれていく。本当に、例えなんかじゃない、気が狂いそうなほどの快感に、
私は叫ぶことしか出来ない。
「もうっ……せめて、クリちゃん全部入れるまで、待ってぇっ…!」
「は、早くしてぇぇ!!おかしくなっちゃうよぉぉ!!!」
柔らかくて、暖かい粘膜がくちくちと擦れ、ねっとりした感じが全体を包み込んでくる。その上、中はとろとろなのに、すごくきつく
締め付けられて、無意識のうちに腰が跳ね上がる。
「も、もうちょっと……んぁ……あっ……入っ……たぁっ!!」
フェアリーが、可愛く顔をしかめながら、私の腰に座っている。女の子同士なのに、今、私はフェアリーを犯している。
そう考えるだけで、もう我慢できない。たまらない快感が全身を駆け抜け、もう抑えは利かない。
「フェ、フェアリー!動くよ!動かすよぉ!」
「あっ、ま、まだ待ってぇ!きゃんっ!!あっ、あっ!!は、激しすぎいぃぃっ!!!」
私の敏感な部分が、フェアリーの体内で擦られる。今度はフェアリーの溢れさせる液が、私の体を汚していく。突き上げるごとに、
フェアリーの体が揺れて、涙と唾液が零れる。しまりのなくなった彼女の顔は、すごく可愛い。
彼女のお腹の中を、ぐちゃぐちゃに掻き回して、私は欲望のためだけに腰を突き上げる。フェアリーはフェアリーで、その乱暴な動きを
楽しんで、私のをぎゅうっと締め付けてくる。
「ああっ!!ヒュマちゃ……あうぅっ!!ふああっ!!!」
「フェアリー!!フェアリー!!!もっと、もっと気持ちよくしてぇ!!!」
もっと締め付けて欲しい。もっと擦られたい。もっとぐちゃぐちゃにしてあげたい。もっと可愛い顔を見たい。
何度も何度も突き上げて、私自身も昂ぶっていく。女の子同士なのに、フェアリーを犯して、気持ちよくなっている。
気持ちよさがどんどん強くなってきて、わけのわからない、叫びたいような衝動が来て、すごくすごく、体が浮くような感覚になって、
頭が白くなって、もうわけがわかんなくなる。
「フェアリー!!!イこう!!一緒にイこ!!!フェアリー!!フェアリィーーー!!!」
「あああぁぁ!!ヒュマちゃん!!もっと突いてぇ!!いっぱい突いてぇ!!お腹突き破ってもいいからぁ!!ヒュマちゃんんん!!!」
繋がってる部分から気持ちいいのが広がって、全身それしかなくなって、頭の中までふわっとなって、私達は滅茶苦茶に叫ぶ。
「イグゥ!!!イッちゃううぅぅ!!!ああああああ!!!フェアリーイクううぅぅぅ!!!!」
「気持ちいいのおぉ!!!ヒュマちゃんの、すごいのおぉぉ!!!ダメ!!!もうダメ!!!私もうダメえええぇぇ!!!」
ガクンと腰が跳ね上がって、フェアリーの体の一番奥まで突き入れて、私もフェアリーも、同時に叫んで、動けなくなった。
私もそうだけど、フェアリーも体が思いっきりのけぞっちゃってて、一瞬死んじゃったかと思うぐらい動かなかった。
だんだん、気持ちいいのが薄れてきて、頭も少しだけ動くようになって、体にすごい倦怠感が出てきて、私もフェアリーも、ぐったりと
全身の力が抜けた。私はそのまま仰向けに寝て、フェアリーは私の上でうつぶせになる。
「……ヒュマちゃん、大丈夫?」
ちょっと間延びした、優しい声。いつも彼女は、こうして私に声をかけてくれる。それが、いつもちょっと嬉しい。
「……うん…」
「すごく、気持ちよかったよ。ヒュマちゃん、今日も可愛かったぁ」
くちゅっと小さな音を立てて、フェアリーが私のを引き抜く。それもすごく気持ちよかったけど、もうしばらく気持ちいいのはいらない。
私の胸元まで来ると、彼女は優しいキスをしてくれた。
283 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 20:58:18 ID:cz3HgIN3
「ねね、そのうちお尻の方も試してみる?」
「そ、そこまでは、ちょっと……その…」
「そっかぁ。うん、確かに今でも結構ハードだもんね!あはは!」
ちょっと笑ってから、フェアリーは私の顔をじっと見つめてきた。
「ヒュマちゃん、大好きだよ」
「……私も、だよ。フェアリー」
フェアリーは、嬉しそうに笑った。でも、こんな時になんだけど、やっぱり聞いてみたい。
「でも、さ」
「うん?」
「フェアリーは……私じゃなくても、他にもいい人、いっぱいいるでしょ?」
すると、フェアリーは丸い目をしばたかせ、不思議そうに首を傾げた。
「いきなりどうしたの?……あ、わかった。他の子のクリちゃん見たことあるって言ったから、やきもちやいてるんでしょ?」
合ってるような、合ってないような。
「ん〜、確かにさ。他の子と付き合ったことはあるんだ。まあ、最初の子は長続きしなかったし、次の子は結構続いたけど、やっぱ男に
走っちゃったし、その次の子は…」
わかってはいたことだけど、フェアリーのそういう恋愛遍歴を聞いていると、何だか悲しくなってしまった。やっぱり、私はその中の
一人でしかないんだ。
「それで、その次の子は…」
「もう、やめてよ。そんなの、聞きたくない」
「え、あっ、ごめんね!そうだよね、無神経だったよね!」
目を逸らした私に、フェアリーは本当に申し訳なさそうな顔をした。……この顔も、結構可愛い。
「あの、それで、私が言いたかったのはね、確かにそうやって色んな子と付き合ったけど、ヒュマちゃんだけは違うの!」
「……どうせ、みんなにそう言ってたんでしょ…?」
「違うの!これだけは違うの!ほんとだよ!私、女の子には嘘つかないもん!」
「……男の子には?」
「つきまくり」
何だか、逆に信じられるような気がしてきた。
「あのね、信じてくれないかもしれないけど、私、初めてヒュマちゃん見た時にピーンときたの!『ああ、この子だ!』って!」
「一目惚れ?」
「ん〜、たぶんそれ。でね、ヒュマちゃんとこうしてるとさ、ほんとに、今までのことなんか全部忘れちゃうぐらい、幸せなんだよ!
その……ヒュマちゃんには、なんか色々、申し訳ないことしちゃってる気がするけど、その……とにかく!ヒュマちゃんはヒュマちゃん
じゃないと、ダメなの!他の子じゃ、代わりになんてなれないのっ!」
私をしっかりと見据える、小さい目。でも、その目には力強い光があって、嘘には見えなかった。
「……嘘でも、信じるね」
「もぉ〜、嘘じゃないってばぁ!でも、そこまで信じてくれるのは嬉しいなっ!」
嬉しそうに言って、私の体にしがみつくフェアリー。私も、その体を片手で抱き締める。
変わってたっていい。おかしくたっていい。他の人から何と言われようと構わない。いっそ、フェアリーの言葉が、全部嘘だって構わない。
私はずっと、この子と恋人でいよう。
そう、しっかり心に刻んで、目を瞑る。体に感じる、小さな恋人の暖かみを感じながら、私は幸せな眠りへと落ちていった。
284 ◆BEO9EFkUEQ :2009/03/09(月) 21:01:32 ID:cz3HgIN3
以上、投下終了。やっぱりちょっと容量少なかったか…。
たまには勢い重視の書くのも楽しい。最初はテンションが極端に違う二人で貫こうと思ってたんだけどな…
勢いに流されてしまった。まあいいやw

それでは、この辺で。
285名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 07:21:50 ID:WM5UZV8j
いや、埋めにこんないい物投下されても・・・
GJ
286名無しさん@ピンキー
これぞまさにナイスワーク……
これが埋めがてらとは眼福眼福