ぬらりひょんの孫でエロパロ 3鬼目

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555名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 21:59:01 ID:5k7ePjov
>>552です。
前の話より、鳥居は黒田坊が妖怪とか全部わかってるイメージで書きました。
そして現在挿入話などを制作してる途中なんですが、小話がたくさん出来るのでちょこちょこ投下したいと思います。

それとも小話を10個くらい作ってから一気に投下のほうがいいんでしょうかね…?

とりあえず後ほど小話をうpしたいと思いますー。
556黒×鳥@:2009/04/22(水) 00:39:50 ID:SFwL73Xz
黒鳥で切甘で裏なしです。そして黒の正体ばらしです。

私のベッドの上に眠る彼を、ずっと見つめる。
さっきまでの情事なんか嘘みたいに、穏やかな時間は過ぎて。
膝を抱え込んで座る私、可愛い顔して眠る黒が憎たらしくって。

こんな関係になっても私は貴方のこと何も知らない、わからない、教えてくれない。
でも、なんとなくわかる。
この人、普通のヒトじゃないと思う。
貴方には、不思議が多すぎる。
知らないことを知りたいを思う、それが好きな人なら尚更。
だから、私のことも知ってほしいの。

おにーさんだけじゃない、奴良くんや及川さんも。
清十字怪奇探偵団に関ってるからって妖怪だなんて思う私も私だけど。


ふと、涙が零れる。
こんなに好きになって、一生懸命になって馬鹿みたい。

恋人同士だけど、不透明な存在。
勘でしかないけど、とても人間と思えない彼を。


涙でぐしゃぐしゃになってるんだろうな、顔。
そんなことを思いながら考える。

黒が妖怪だって私は構わない。
だけど、嘘は作らないで。
不安でいっぱいな私を、重いと嫌わないで。

こんなに、すきになってるだなんて思わなかった。
こんなに、無条件に相手をすきになれるだなんて思わなかった。                         
557黒×鳥A:2009/04/22(水) 00:40:48 ID:SFwL73Xz


「…ふぇっ」 

声に出してしまいそうだった泣き声。
起こしてしまわなかったと彼のほうを向いたとき、

「…大丈夫か?」

彼は起きていた。

「…いつ、から、起きて…たの?」
「夏実が座り込んだときから…か?」

…つまり変な顔して悩んだり泣いたりしている私をずっと見ていたわけで。

「っ馬鹿ぁ! そういうときは見ない振りしなさいよぉ…。」

語尾から力が抜けてしまう。

すると、私の横に座った彼は

「拙僧は、愛しい女の泣いてる様子を見て見ぬ振りは出来ぬ。」

足の間に私を抱き寄せる。そして、

「いつ声をかけようか迷っていたんだが…。何があった?」

笑顔で聞いてくる。
…言ってしまっていいんだろうか、こんな黒い部分。

「拙僧には言えぬことか?」

寂しそうに聞いてくる。
それは貴方のことだと思う。

「黒こそ…、私に言えないことあるんじゃないの?

…どうして、秘密なんて作るの? 妖怪なんでしょう、貴方は…。」




(´・ω・`){シフトチェンジ!次は黒田坊のターン!!
558黒×鳥B:2009/04/22(水) 00:42:25 ID:SFwL73Xz


「黒こそ…、私に言えないことあるんじゃないの?

…どうして、秘密なんて作るの? 妖怪なんでしょう、貴方は…。」

「…っ!?」

先刻まで不安に涙を流していた彼女の姿はなく、強気な瞳で真実を求めようとする彼女がいた。

拙僧は自ら正体を晒すようなヘマはしていないはず。
なら、なぜ…?

「ねぇ…、どうして何も言ってくれないの…?」

自問自答していると、夏実のほうから声をかけてきた。
このまま黙っていると、正体がばれかねない。

「何を言うと思ったら、何故妖怪だなんぞ…。」

そう、拙僧は妖怪。
だが愛しいと思ってしまったこの人間の少女を手放したくない。
このような関係でも、夏実と接することが出来るのなら嘘をつくことは容易い事。

「…そう。

なんにも言ってくれないんだ…。」

こちらを見ながら涙を流し続ける夏実。
なんだかんだ言いつつも、不安になっているらしい。
女の勘が恐ろしいとはこのことか。

「あ…、その…。」

上手い台詞が出てこなくて、口籠っていると

「大体ね、いっつも余計なことするくせに肝心なこと話さないなんて卑怯なのよ!!
私が黒のことが妖怪だからって嫌いになると思ってるの!?
こっちはすきすぎて不安になるくらいなのよ!! 隠し事なんかしないでって…、言ってるのよ!!」

早口で捲し立てられた。
何か腹が立つようなことを言われた気がするか、熱烈に愛の告白を受けた気もする。

…参ったな、拙僧の降参だ。

とりあえず、泣きじゃくっている夏実をどうにか落ち着かせよう。
559黒×鳥C:2009/04/22(水) 00:44:30 ID:SFwL73Xz
「まぁ、泣き止め夏実。そなたの言いたいことは大方合っているから。」

全身を震わせている夏実の頭を撫でつつ話を進める。

「そなたの予想通り拙僧は妖怪だ。暗殺破戒僧、黒田坊。
まぁ、黒が愛称なのは嘘ではない。」

大分落ち着いた夏実の顔を見る。理解してくれているらしい。

「こっちに来ているのは拙僧の主人の護衛の為でな…「その主人って奴良くん?」
「ああ、リクオ様だ…って何故!?」
「気付かないほうがおかしいよ。及川さんもそうなんでしょう?」

隠してきた拙僧はなんだったのか…。

「拙僧ただの間抜けではないか…。」
「自分のこと隠し通せてるって思ってる時点で駄目だと思うよ?」

すっかり泣き止んだ彼女は追い打ちをかけてくる。

「ぴーぴー泣いておったくせに…。」
「だって、本当のことが知りたかったの。
…ごめんなさい?」

上目遣いをしてくる夏実に絆されつつ、会話を続ける。

「隠し事をしておった拙僧が悪い。
だが、激しい告白ももらったしな? 妖怪ごときで、嫌いになんぞならぬと。」
「あ、や、それは…!! いや、そうなんだけどね、うん…。」

真っ赤になって可愛らしい。

「不安にさせて本当に悪かった。だがな、拙僧も不安だったのだ。所詮化け物。嫌われたら一発で終わりであろう?」
「…私、そんなに信用ないのね。」
「いや、そんなこと…!!」
「うーそー。ふふっ」

本音を話す。
もう隠すことは何もないが、これだけは言っておこう。

「拙僧は夏実を離す気なんかさらさらない。
そなたの焼きもち、拙僧に比べたら可愛いものだ。

…拙僧は、夏実と生きていこうと思っている。
それじゃ駄目か…?」

ますます潤んだ瞳で抱きついてきた夏実。
肯定と取って良いのだろう、今はこの幸せを噛みしめる。






「なんで拙僧が妖怪だとわかった?やはり勘か?」
「私と一緒にいる時、たまに頭に角出てたよ…」
560名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 13:52:29 ID:Bx8I4dyk
下半身のツノがボキボキとな
561名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 15:18:06 ID:SFwL73Xz
>>560
誰がうまいこと言えとww
562名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 20:14:32 ID:Vdd2of70
黒×鳥の切甘SS、GJ以外の言葉が見つからない…つまりGJ!
見てて攻守(?)のバランスが取れてて、とてもいい感じがしました。
そしてこのSSのお陰で黒に角が生えてることを始めて知ることが出来ました、ありがとう!

で、角を見てて思ったんですけど鳥が黒の角を舐めたら絵になるかもって思っちゃいました。
角フェラだと鳥のキャラに合わなさそうなので、言うなれば角チュパってやつですね。
563名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 00:18:20 ID:9rQamSRB
巻と島に活躍の場が欲しいぜ…と思う昨今
そうなればエロパロにも参加しやすくなるかもなーと思う昨今
でもやっぱりどうでもいいや、と思う昨今
564名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 00:35:39 ID:6E+UuSFW
カナちゃんはスパッツだけ、スカートだけ等の下残しが似合うなと思う昨今
つららは逆に制服の上だけみたいな上残しがエロいと感じる昨今
565名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 01:40:24 ID:INP738pD
すっと保守
566名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 22:13:11 ID:DXQyXuch
ゆらは、くつしただけ
567名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 07:24:18 ID:V9AVZqMY
ゆらは白の綿100%ぱんちゅだけでいいよ
そして失禁プレイ
568名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 20:21:47 ID:FEgyFUc9
ゆらは普通に服着ててもなんかエロい
569名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 23:05:48 ID:EO0GCWQw
虚弱ボディは逆にエロい。
570名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 02:48:47 ID:X+26kyJg
鳥居さんに紙オムツ
巻さんには褌を
571名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:15:00 ID:0un88Gh2
集合シーンの毛倡妓は良い身体してんなー
572名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 23:34:24 ID:X+26kyJg
あんな、胸元をガッと開いた服装じゃなかったんだけどな毛姐さん
ぬらりヒロイン争いはそこまでしなければいけないほど厳しいという事か
573名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 01:35:35 ID:tgWfaamU
>>567

深夜1時。
花開院竜二は、式神についての古文書を閉じ、寝ようとしていた。
「お兄ちゃん…。」
障子が開いて、泣きそうな顔のゆらが顔を出した。
「どうした、またか?」
「う、うん……また、してもうた……。」
ゆらのパジャマの下腹部が、ぐっしょりと濡れている。
「どうしよう…小学6年にもなっておねしょするなんて……
 こんなんじゃ、うち、陰陽師の修行で東京になんて行かれへん……。」
「気にするな、その内治るさ。」
「うん…お兄ちゃん、また注射してくれる?」
「ああ、いいぞ。注射するとしばらくは治まるんだがなあ。」
「ありがと……お兄ちゃんに迷惑かけてごめん。」
「いいって。さあ、いつも通り横になりな。」
ゆらは障子を閉め、パジャマのズボンを気持ち悪そうに脱いだ。
その下の木綿のパンツも、もちろんぐっしょりだ。
竜二の目に暗い光が宿るのにも気づかず、ゆらはパンツも脱ぎ、
下半身だけ裸になると、竜二の布団に横たわり、大きく足を広げた。
竜二はゆらのまだ幼い花弁に顔を近づけると、ペロリと舐める。
「ひゃっ!……やだ、お兄ちゃん。」
「すまんすまん。さあ、注射するぞ。」
竜二は寝巻きの前をはだけた。既に肉刀は隆々とそびえ立っている。
ゆらの花弁に当て、ずぶりと挿入した。ゆらの体がビクンと硬直した。
「あっ! お、お兄ちゃんの注射……はうっ!…気持ち…いい…!」
「しばらく我慢しろよ。今度こそ、おねしょを治してやるからな。」

腰を激しく振りながら、竜二はどす黒い笑みを浮かべていた。
ゆらは、この行為をおねしょの治療の注射と信じて疑っていない。
ましてや、そのおねしょ自体が竜二の仕組んだものとは、知る由もなかった。
水の式神”言言”の存在は、竜二はゆらにすら明かしていなかったからだ。
「はっ!…はううっ!……お兄ちゃん……っ!」
次第に紅潮していくゆらの顔を眺めながら、竜二は心の中で呟く。
(ゆら、お前は俺だけのものだ。お兄ちゃんは絶対お前を放さないぞ…!)
574名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 10:15:27 ID:DkvRmoCt
すばらしい!!
575名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 07:10:16 ID:YTvxPzfd
魔魅流に妹との関係で脅されて魔魅力が本家にはいったわけですね
そしてその夜
ゆら「魔魅流くん・・?」
576名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 07:31:05 ID:P2Byzlw+
魔魅流「チンコが収まらねぇずら」
577名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 13:02:23 ID:pW6neXRi
>>575

「ゆらちゃん、入ってもいいかな。」
「あ、どうぞ…。」
魔魅流が部屋に入ってきた。ゆらはぎこちない笑顔を浮かべて、彼を迎える。
「竜二に聞いたよ。俺も君を治療してあげたいんだ。秘密は守る。」
「あ、ありがとう、魔魅流くん…。」
昔からよく遊んでくれた相手だけに、6年生にもなっておねしょをするという、
成長した今の自分の恥ずかしい秘密を明かすのは勇気の要ることだった。
しかし兄の指示とあらば、逆らえない。
「じゃあ、ちょっと検査するから、服を全部脱いでくれないか。」
「はい……。」

ゆらはもじもじしながらパジャマを脱ぎ始めた。Aカップのブラをはずし、
パンツに手をかけた時は、魔魅流の視線が気になったが、思い切って脱いだ。
一糸纏わぬ姿になって、魔魅流の前に立つ。
「よし、検査するよ。」
魔魅流はゆらの全身をさすり回した。腹部のあちこちを指で押し、
膨らみかけた乳房をぎゅっと掴み、乳首をコリコリとつまむ。
「あっ……ん……。」
ゆらが小さな声を漏らす。魔魅流は下腹部に移動し、まだ毛の生えていない
幼い花弁を左右に押し広げた。淡いピンク色の秘肉が曝け出される。
「ふ…あっ……。」
兄の竜二には何度となく見せているが、他人に見られるのは初めてだ。
恥ずかしさで秘部がきゅっと収縮する。
「特に変わったところはないな。じゃあ、最後に薬を出しておこう。
膝立ちになってくれ。」
「はい…。」

言われるがままに膝立ちになったゆらの前に魔魅流は立つと、着物の前を広げた。
屹立した男根が現れる。魔魅流はそれをゆらの目前に突きつけた。
「さ、これを咥えて。薬が出るまでしっかりしゃぶるんだよ。」
「は、はい……んっ……ちゅ…はふ……ん…。」
ゆらは一心不乱に魔魅流の男根を舐め始めた。幼い頃から陰陽師の修行一筋に
生きてきた彼女には、性の知識は悲しいほど欠乏していた。
その顔を見下ろしながら、魔魅流は邪悪な笑みを浮かべていた。
(この無知な小娘を操り、いつか花開院家を乗っ取ってやる…!)
やがて絶頂に達した魔魅流は、ゆらの口の中に勢いよく放った。
「んっ!……くっ…んむぅ……!」
「こぼしちゃ駄目だぞ。一滴残さず飲み干すんだ。ちょっと苦いが我慢してくれ。」
「は……い…こく……んっ…!」
ゆらは息苦しさをこらえ、魔魅流の精液を全て飲み干した。
「あ、ありがとう、魔魅流くん。これでおねしょ治るかな…?」
「さあ、それはゆらちゃん次第だ。もし駄目でも心配するな。俺はいつでも
薬を出してあげる。ああ、いつでもね…。」
578名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 01:58:51 ID:E/ojTY4u
土下座して頼む。
誰か邪魅×品子を書いてください。
579名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 02:22:09 ID:A9vcDHTf
オレからも頼む
巻 or 鳥居 ×リクオ(昼に限る)
土下座するのでお願いします
580名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 19:27:31 ID:Yun11VUx
主君に手をあげるなどとんでもない
貧乳子ちがった品子さんに懇願されるパターンで
581名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 03:15:10 ID:QQpcztMl
もしゃ、ろぐ……
582名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 04:10:01 ID:vSOY8Ymv
ゆらネタ最高すぎる
やはり近親相○は燃えるな
583名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 13:05:56 ID:zcgZXYYl
>>581
あぁ言言のおかげだ
584灼熱氷土 前書き:2009/05/01(金) 20:03:15 ID:4vloSoxS
>>578です。自家発電してみました。
初めて書いたので文章が滅茶苦茶です。読む時は頑張って下さい。
本番ありません。呻き声と擬音を書くのが恥ずかしかったです。
未完です。続きを書く気はありません。すみません。
ドキドキしながら投下します。
では始まります。邪魅逆レイプです。
585灼熱氷土 1:2009/05/01(金) 20:04:41 ID:4vloSoxS
「明日リクオ様とこの地を発ちます。」
「そう…。長い間我が家を守ってくれて本当にありがとう、邪魅。」

騒動の後、品子達は品子の自宅へ戻って来ていた。
リクオは夜の姿に変身してしまった為、清継や島のいる部屋には行けず、品子に別室を用意してもらい
そこで夜明かしする事になった。
今頃は持って来た酒でも飲んでいるのだろう。
自分が清十字団の奴良リクオのもう一つの姿である事は、品子には口止め済みだ。

さて、品子と邪魅はと言うと、これまた別室で膝を突き合わせていた。
品子が世話になった邪魅に酒でも振舞おうと思い立ち、邪魅を誘ったのだ。
しかし邪魅は、品子が飲めないのに自分だけ飲む訳にはいかないと言ってそれを断った。
最初は遠慮するなと言った品子だったが、邪魅が頑として首を縦に振らないので茶を出す事にした。
夏なので冷蔵庫にあった冷たい麦茶だ。氷も入れた。
邪魅は額から垂れ下がっている札を手で器用によけ、口元だけを晒して音もたてずに茶を一口飲み、言った。
「斯様に冷えた茶を飲むのは初めてです。」
それに品子が答える。
「昔は冷蔵庫なんてなかったもんね。それに氷も。」
「はい、あの頃は夏の氷は大変に貴重な贅沢品でした。このぎやまんの器…ぐらすと言うのでしたか。これも。」
「ふふっ。美味しい?」
「美味しゅうございます。死んでから物を口にするのは今宵が初めてですので殊更。」
「ええっ、死んでから初めて!?」
「はい、私は物を食しません。体も汚れませんので湯浴みの必要もございません。」
「どうして?」
「さ、それは…。もしかしたら妖怪化したとは言ってもまだ幽霊の部分が多いのかもしれません。」
「そっか…。」
586灼熱氷土 2:2009/05/01(金) 20:05:48 ID:4vloSoxS
品子は邪魅の長い髪を見る。確かに汚れてはいない。それどころかしっとりと艶を放っており、女の目から見ても美しい。
邪魅の考察はきっと当たっているのだろうなと思いながら、品子は自分も茶を飲んだ。
そして想像する。邪魅が物を食べ、体も汚れるのだとしたら…。

夜な夜な家人が寝静まったのを見計らい、台所の鍋や冷蔵庫の残り物を漁って食べる邪魅。
ぬるくなり、垢の浮いた残り湯に浸かる邪魅。

「み、見たくない…!」
「は…?」
「あ、ううん!何でもないわ!そ、それより…えっと、そうだわ、昔の話してくれる?私のご先祖様ってどんな人だった?」

品子の問いかけに邪魅は応じ、定盛がいかに立派でその治世がいかに素晴らしかったかを語って聞かせた。
次第に品子は邪魅が人間だった頃の暮らしにも興味を持ち、あれこれと訊ねては色々な話を聞き出した。
邪魅が字を書けるようになった時、おもちゃの太鼓に「たいこ」と書いたら母に物凄く叱られた事。
家の障子を破いて遊んでいたら父に川へ連れて行かれ、橋の上から逆さ吊りにされて大泣きした事。
邪魅がこっそり野良犬に餌をやっていた事に怒った祖父が、犬を山に捨てに行ったが犬が先に帰って来た事。
家に泊めた客人が物を盗もうとしているのを父が見つけて番屋に引き摺って行く時に使用人が塩を捲いたと思ったら実は片栗粉だった事。
定盛の屋敷に仕えるようになったばかりの頃、新人いびりで真冬の氷の張った池に落とされた事。
池から這い上がったは良いが、びしょ濡れになった姿を別の先輩に心配され「水垢離です。」と苦しい言い訳をしてすぐバレた事。
祖父の葬式で祖母が嘘泣きしていた事。
ボケ始めた曽祖父がどうしても花見に行きたいと言うので付き添って道を歩いていた所、女が町人達から石を投げられている所に行きかい
どうして石を投げるのか町人の一人に訊くと「その女は罪人だからだ」という答えが返って来て、それを聞いた曽祖父が
「ならば続けなさい。ただし一度も罪を犯した事のない正しい者だけがそうしなさい。」と言うと町人達は戸惑い、一人また一人とその場を離れ
やがて石を投げているのは曽祖父だけになった事。

久しぶりに人と話す邪魅は見かけによらず饒舌だった。彼自身、高揚感を覚えていた。
自分の昔話に表情豊かに反応する品子が可愛いと思った。
生まれた時から陰ながら守ってきた大切な少女。
自分のせいで恐怖に脅え、土地の者達からも悪く言われて暗い影を落としていた彼女が明るさを取り戻せて本当に良かった。
587灼熱氷土 3:2009/05/01(金) 20:06:51 ID:4vloSoxS
話している内にいつの間にかとっぷりと夜が更けた。邪魅は話をやめて品子に就寝を勧めた。
「品子様、お休みのお時間です。」
「えー、まだ寝たくないわ。もっとお話しよ!」
「もうお休みにならないと明日に障ります。」
「じゃあ続きは明日…あ、明日はもういないんだっけ。だったら尚更、今日の内に…。」
「なりません。体調をお崩しになったら如何なさるのですか。さ、お休み下さいませ。」

先程酒を断った時といい、どうやら邪魅は頑固なようだ。
この様子ではこれ以上せがんでももう何も話してはくれないだろう。
それを悟って品子は渋々寝る事を了承した。
「グラスは明日片付けるわ。じゃあ…自分の部屋に戻るね。」

後ろ髪を引かれながらもそう言って腰を浮かせた品子だったが、ふとその心に一つの疑問が浮かんだ。
(邪魅ってどんな顔なんだろう…。)
彼は最初に見た時から札の貼られた姿だったので、品子は札も彼の顔の一部の様に感じて「これが邪魅なんだ」と認識していた。
しかし改めて思うとそんな訳がない。札の下には素顔があるに決まっている。

「ねえ、邪魅。寝る前に…あなたの顔を見せてくれない?」
「顔ですか…?私の顔は品子様がお気にかけるような物ではございませんが…。」
「恩人の顔を知っておきたいの。」
「…承知いたしました。」

邪魅が札を捲る。
品子は息を飲んだ。

想像していたのは、ある程度整った顔だった。
過去に衆道を疑われた位なら、不細工やいかにも侍然とした厳つく男臭い顔立ちではないだろうと。
しかし想像以上だった。現れた若い美貌を前にして言葉を失う品子に邪魅がはにかんで見せた。
「何やら…照れ臭うございます。」
その微笑みに品子は身動きまで封じられた。優しそうで少しあどけなさを残していて。
利発には見えるがとても厳しい封建社会で出世した侍とは思えない。役者をしていたと言われた方が納得がいく。
歳は二十五くらいか。定盛の片腕とまで呼ばれた程なのだから、もっと年配なのだと思っていた。
伝説では邪魅は剣の腕も立ったという。確かに神主から騙されて貰った札から出てきた化け物共を彼が切り伏せた所を品子は見ている。
彼は式神の符も一瞬で切り払って見せた。伝説に間違いはなかった。それはわかる。わかるが…。
588灼熱氷土 4:2009/05/01(金) 20:08:30 ID:4vloSoxS
どくどくと心臓が早鐘を打つ。顔が火照っているのを感じる。きっと自分の顔は真っ赤になっている事だろう。
品子が恥じらいを覚えてやっととれた行動は、うつむくという事だけだった。
「品子様…?」
様子がおかしい品子に邪魅が声をかける。品子は答えない。答えたくとも声が出ないのだ。
そんな事には気づく由もない邪魅は、自分は何かこの方のお気に障る事をしただろうかと考えた。
…何も思い当たらない。自分はただ言われるままに顔を見せただけだ。
一方、品子は邪魅が自分の名を呼んだ事に動悸をさらに早めていた。
先程から何度も呼ばれていたが、自分の名なのだからと気にも留めていなかった。だと言うのに。

リクオから邪魅がずっと自分を…菅沼家を守っていてくれた事を知らされた時には有難さと誤解をしていた申し訳なさが溢れた。
それでもやはり彼が自分達人間とは異なる妖怪という存在である事を考えると近づき難さを拭い去れなかった。
だが帰って来て邪魅と話をしている内に、品子はあれだけ恐れていた彼にすっかり親しみを持つようになっていた。
のみならず、心にはこの人ともっと一緒にいたい、話したいという渇望のような欲求が湧いていた。
それは家族や友達に寄せるものとは違う初めての思いだった。
その事に品子は気づいていたが、明日には別れてしまうのだから惜別の念が現れたのだと思っていた。
本当にそうなのかもしれない。しかし…そうじゃないかもしれない。
祖先に無実の罪で投獄された事が元で人としての命を失ったにも関わらず、何百年もその子孫を守り続けた一途さはどうか。
穏やかで優しげで耳当たりが良く、その持つ髪のように艶やかな声と言ったら。
顔を見てしまう前から、自分は目の前の男に魅かれていたのかもしれない…。

品子は恋に落ちていた。
589灼熱氷土 5:2009/05/01(金) 20:09:46 ID:4vloSoxS
嫌でも自覚できた。今までにも恋をした事はある。だがそれとは比にならぬ遥かに別格の激しい恋情が、この夜品子を支配した。
灼熱。そんな言葉が脳裏をよぎる。体が震え、知らず涙が零れる。
「品子様…何故お泣きになるのですか…?呼吸も荒くていらっしゃいます。どこかお加減がお悪くなられたのでしょうか…?」
心配して問う邪魅に、品子は逆に問いかけた。
「邪魅は…人間だった頃…結婚していたの…?」
「は…?いいえ、私は独り身のまま死にましたが…。」
「女の人と付き合った事は…?」
「ございません。」
「じゃあ…男の人とは…?」
「お、男!?」
「邪魅が人間だった頃は…衆道っていうのが流行っていたんでしょ…?私のご先祖様とはそういう仲だったかもしれないって伝説が…。」
「そのような伝説は今すぐゴミ捨て場に叩き込んで下さい!ご先祖様と申されますのは定盛様の事でいらっしゃいますか!?
あの方はそのような方ではございませんでした!無論私もです!確かにあの時代にはそうした風習があり、私も何人もの男から恋文を送られたり
宿直の折に夜這いをされた事がございます。しかし全て断りました!無理矢理手篭めにされかけた時にはこれ以上ない程焦りましたが、
渾身の力で抵抗し切り抜けました!」

定盛との衆道を疑われた邪魅は激しく狼狽し、語気も荒く言わなくて良い事まで告白した。その衝撃の過去に品子が冷や汗を垂らす。
「も、もてたのね…。」
「嬉しゅうございません!戸惑うばかりでした!」
「恋文は…全部で何回もらったの…?」
「七回目からは数えるのをやめました。」
「夜這いは…?」
「四…いえ、五回です。」
「どうしてそんな事になったんだと思う…?」
「そういう…時代だったからなのでしょう。そうとしか…。」

彼は自分が女のように見目麗しい男である事を自覚していないようだ。誰からも指摘されなかったのだろうか。
例え指摘されずとも、それだけ他の男達を引き付けていたのなら普通は自ずと気づくものではないのか。
(鈍感なんだわ…。)
可笑しくなって品子はくすりと笑った。そして涙を拭う。
邪魅が男色を全力で回避する真っ当な男であった事に安堵しながら、もう一度質問を投げかける。
「女の人に興味は…?」
「興味…と申しますか…私は長男で家を継ぐ子を儲けなくてはなりませんでしたので、いずれ見合いをするつもりではおりました。」
590灼熱氷土 6:2009/05/01(金) 20:12:14 ID:4vloSoxS
子を儲ける。

邪魅は何気なく言ったが、その言葉の意味する所は…。
品子の中で、邪魅が大人の男性である事実が急に浮き彫りになった。
「邪魅は…子供の作り方を知っているのね…。」
「そ、それは存じております。私は子供ではございません。品子様も大人におなり遊ばせば知識が身につきますので、
今この場で私にその説明をお求めになるのはお止め下さいませ。例えお訊ねされましてもお教えいたしかねます。」
「どうして…?」
「それは…。」
「私がまだ子供だから…?」
「…はい…恐れながら…。」
思春期の少女を子供呼ばわりする事は気が引けた。この年頃になれば子の作り方を知っても良い頃だ。
自分もこの位の頃に教わった。初めは信じられなかった。既に精通を迎えていたから男の仕組みについては体で理解していたが、
それでもいやらしい、汚いと思った。しばらくは両親の顔がまともに見られなかった。そんな事を、どうして異性に教授できよう。
相手が同じ男であったとしても言葉に詰まるだろう。頼むから訊かないでくれ。それが邪魅の本音だった。
しかし品子は彼の願いを粉砕した。

「私、子供じゃないわ…。」

その呟きを耳にした瞬間、血の気が引くのが分かった。これはまずい。最悪の展開だ。
次に来るであろう恐るべき質問を何と言ってかわそう。逃げたい。
邪魅はいっそ姿を消してしまおうかとも考えたが、品子が突然震えたり泣いたりしていたのを思い出し、踏み止まった。
とっくに下げられた札の向こうでその目は完全に泳いでいる。
彼は気づいていない。先程品子と「夜這い」という単語を使った会話をした事に。
品子がもう繁殖の奥義を知っている事に。

私から見ればまだ子供でいらっしゃいます。さ、もうお休み下さいませ。私はこれで失礼いたします。ご馳走になりました。
…と言って、返事を待たずにすかさず退場。これだ。幽霊交じりだからか何なのか、自分は消える事ができる。
邪魅が高速で頭の中に台本をしたため、台詞を声に出そうとした時だった。
卓を挟んだ向かい側に座っていた品子が立ち上がり、彼の元へ歩み寄って来た。
そして邪魅の傍らに腰を下ろし、言った。
「邪魅…キスして…。」
591灼熱氷土 7:2009/05/01(金) 20:13:09 ID:4vloSoxS
お休みくださいませ。私はこれで失礼いたします。ご馳走になりました。…と言って、返事を待たずにすかさず退場。
…していれば良かったのだと、後になって思う。だが、昔人の彼は品子の発した言葉の意味がわからず、つい訊いてしまった。
「きす…とは?」
「口付けの事よ…。」
「ああ、口付けですか。承知いたし…ええっ!?」
膝の上に乗せていた手に、品子のそれが重なった。
「し、品子様…!」
今度は邪魅が固まる番だった。
「邪魅…。好きよ。私…あなたが好き…。」

女から言い寄られるのは初めてではない。人間だった頃に幾度かあった。
恋文は男からだけではなく、女からも送られた。直接思いを打ち明けられる事もあった。どちらも嬉しかった。
しかしそれ以上に気恥ずかしかった。
だから彼は、こんなのはふしだらなのだと、男女は然るべき人の紹介で出会うべきなのだと思うようにし、応える事はなかった。
自分から恋をし、誰かに相談して仲介人を立ててもらおうと真剣に考えた時期もあったが、厳格な家で育った影響か結局行動は起こさず終いだった。
早い話が奥手だったのだ。

「あの…私達が口をきくのは今日が初めてですが…。」
体だけではなく口まで硬直しそうだったが、必死に言葉を紡いだ。
「そんなの…関係ないわ…。」
「わ、私は妖怪…しかも恐らく半分は幽霊です…。」
「関係…ない…。」
「品子様にはいずれ良き御仁が…。」
「あなたがいいの!」
伏せていた目を見開いて、顔ごと邪魅を見上げながら品子は強く言い放った。
熱を孕んだその双眸には、また涙が浮かんでいた。

一体何がどうなってこうなってしまったのか。どうすれば良いのか。
落ち着け、落ち着け私…。この状況を打開する策を練るのだ。そ…そうだ、実は男にしか興味がないというのはどうだ?
いや、それはさっき自分で思いっきり否定した。今さらそのような事を申し上げてもすぐ嘘だと見抜かれるだろう。
よしんば成功したとしても、惚れた相手が同性専門だったという傷は一生残る。大切なこの方にそのような人生を歩ませたくはない…。
どうすれば…どうすれば…。ああ、リクオ様はまだ起きていらっしゃるだろうか。直ちにこの場に現れて話を中断させていただけないものか。
と言うか一生のお願いですから是非ともいらして下さい。滂沱の涙を流し、諸手を上げて歓迎いたします。
592灼熱氷土 8:2009/05/01(金) 20:14:48 ID:4vloSoxS
「し、品子様は…その…そう!私を誤解なさっておいでです!」
「誤解って?」
「私は…私は…。」
駄目だ、続かない。
「私は何?」
口を突いて出たのは先程没にした筈の案だった。
「リクオ様と深い仲なのです。」
申し訳ございません、リクオ様。
「嘘!そんな暇どこにあったって言うの?信じる訳ないじゃない!」
当然だ。阿呆か私は。せめて定盛様と申し上げていれば…いや、嘘でも言った時点で奥方が怨霊と化し私を攻め滅ぼしに参られるだろう。
「実は私はもう手篭めにされているのです。穢れた身で品子様に触れる訳には…。」
どうしても男関係の嘘しか思い浮かばない。私の頭はどうなっている。
「それも嘘!邪魅強いもの!」
「それは物凄い荒武者に襲撃されまして。いきなり刀を突きつけられ、体を差し出さねば殺すと脅され…。」
「嘘!嘘!嘘!もうやめて!」

やめて欲しいのはこちらですと言いかけてしまった…。こうなれば卑怯に徹して逃げるか。
だがそれでは空前絶後の後味の悪さを残す事になる。品子様のその後も気にかかる。

邪魅が卓の木目を見つめながら途方に暮れていると、突然ガシャンと音がした。それが聞こえて来た場所に視線を向ける。
麦茶の入っていたグラスが割れていた。独りでに割れる訳がない。品子が卓の角を使って割ったのだ。
品子はグラスの破片の中から一番持ちやすく鋭い物を瞬時に選び取り、その細く白い首筋に当てた。
「何を…!?」
「切るわ!キスしてくれないなら切って死ぬ!」
「死!?」
「本気よ!」
破片を皮膚に押し当てる。首筋を赤い血が伝った。
「お止め下さい!ご家族が悲しまれます!ご友人も!」
「家族?友達?それが何だって言うの?あなたは悲しまないの!?」
「勿論私も悲しみます!いいえ!悲しいどころではございません!品子様は私の大切なお方!
あなたがお亡くなりになれば私も生きてはおりません!」
「だったら…だったら私の言う事をきいて!」
「…承知…いたしました…。傷口のお手当てを…。」
「そんなのいいから!」
「ですが…!」
「邪魅!」
「……。終りましたらすぐ様お手当てを…。」
「ええ。」
593灼熱氷土 9:2009/05/01(金) 20:16:16 ID:4vloSoxS
邪魅が札を捲る。口元が露わになった。
「顔も見せて!」
「は…。」
「私の背中に空いてる方の腕を回して。」
「こう…ですか…?」
「そうよ。じゃあ…して頂戴…。」
「は…ですがその前に…。」
「何?」
「そのぎやまんの破片をお渡し下さい。」
「嫌よ!渡したらそのまま消えちゃうんでしょう!」
「滅相もない!」
「邪魅は嘘つきだもの。信じないわ。キスしてくれたら渡すから…早く…。」

品子がグラスの破片を持っていない方の手を邪魅の広い胸に当て、目を閉じる。
「では…失礼…いたします…。」
自分が望んだ事ではないのに一言断ってから、背の高い邪魅は上半身を丸め、品子に触れるか触れないかの口付けを与えた。
途端、品子が目を見開き怒声を上げる。
「駄目よこんなの!ちゃんとして!」
「も、申し訳…」
「謝らなくていいから!」
「で、ではもう一度…。」

今度は確かに触れた。これなら口付けと呼べるだろう。しかし品子はまた怒った。
「もっと長く!舌も入れるのよ!」
「し、舌!?そ、そんなものを入れるのですか!?」
「そうよ、大人のくせに知らないの?」
「私は…勉学と武芸と仕事に明け暮れ…男女の睦み合う作法などついぞ知る機会がございませんでしたので…。」
「じゃあ私が教えてあげるわ。して…。」
「は…。」

口付ける。邪魅はしばらく戸惑っていたが、やがて意を決して舌の先をおずおずと品子の唇の間に差し入れた。
入れただけで動かさない。動かすなどという知識は彼にない。増して互いの舌を絡ませ合うなど。
品子の舌が邪魅の舌に触れ、ちろちろと動いた。
「んっ…!」
何事が起きたのかと驚いた邪魅が、呻いて品子から顔を離す。品子は今度は怒らなかった。
唇と舌が触れ合った事で気を良くしたのか、優しく諭すように言った。目つきも柔らかくなっている。
「舐め合うのよ、邪魅。舌は唇に挟むんじゃなくて口の中まで入れるの。そうしながら唇も吸って。
さあ、もう一度…長く…ね?」
「は…い…。」
また口付ける。言われた通り舌を口内まで侵入させてみると、品子の舌が絡み付いてきた。
(う…気色…悪い…!)
ただでさえ初めての事。加えて望まぬ口付けと来た日には快楽は一切伴わない。自然と眉根が寄った。
もうやめたいと彼は思った。だが品子の気が済むまで好きにさせてやらなくては、彼女はあの破片で本当に首を切るだろう。
594灼熱氷土 10:2009/05/01(金) 20:17:39 ID:4vloSoxS
品子に唇を吸われる。吸いながらも彼女の舌は依然動いたままだ。
(そうか…吸うのだったな…。こ、こうか…?)
吸ってみる。ちゅうと音が鳴る。舌を動かす。吸う。それを繰り返す。品子のように二つを同時にはできない。
品子の所作と合わさり、淫猥な音が耳に入るようになった。
ぴちゃ。くちゅ。

荒い息づかいで深く口付けて来る品子の腕は、いつの間にか邪魅の首に回されていた。
グラスの破片ももう持っていない。両腕が彼に絡まっている。掌が、指が、男の長く美しい髪を撫で、時に掴む。
(な…長い…まだ終らんのか…。)
口付けというものは、唇を一時重ねて終わりなのではないのか?
その後見詰め合い、照れ笑いなどをするのが普通なのだと思っていたが。
自分はこの行為が終った後に笑える自信は皆無だ。笑おうとする気力すらない。
もしかすると今させられているのはこの方が独自に考え出した新しい口付けなのかもしれない。

「んっ…ん…。」
「うぅん…。」
くちゃ。ちゅぷ。
呻きながら、音を立てながら思ってしまう。思ってはいけないのはわかりきっている。だが思ってしまうのだ。
私はまるで犯されているようだ。

いつ終えるとも知れなかった長い時から、おもむろに開放された。
閉じていた瞼を持ち上げる。重さなどほとんどない筈なのに、半分も開かない。眉根も寄ったまま、動かない。笑えない。
あれが終った証としてのように、また自分を防御するかのように札を下ろす。
いつの間についた札なのかは記憶にないが、これがあって良かったように思う。こんなものは何の役にも立たないとも思う。
息を整えよう。いや、それより傷の手当を…居間に行けば救急箱がある。あれには消毒液と、がーぜという物が入っている。
女である品子にはあまりそういう事はなかったが、品子の父は子供の頃やんちゃをしてはよく怪我をしていた。
大きな怪我は知られぬようにできる限り防いできたが、ふとした拍子に転んだり、何かに肌をひっかけてしまった時の傷を
大人達が手当てする様子はいつも心配して見ていたので、簡単な事位ならわかる。
「居間へ行き救急箱を取って参ります。しばしお待ちを。」
品子は邪魅の首に腕を回したまま、離れない。
「品子様…終ったのならお離し下さい。」
言って、はっとなった。
595灼熱氷土 11:2009/05/01(金) 20:19:03 ID:4vloSoxS
自分は何を。今、何という物の言い方を。
謝らなくては。謝罪の言葉を…。お詫び申し上げますと一言。

…出て来ない。何故だ。
「邪魅。」
笑っているような放心しているような、如何とも形容し難い表情の品子が、声だけは普段通りに囁いた。
「しましょう。」
「また…ですか…?」
「キスじゃないわ。セックスよ。あなたにわかるように言うなら、共寝。」
「と…も…ね…。」
意味はわかる。だが…だが…。
「そう、契るの。言ったでしょ?私、子供じゃないわ。」
「なりません!」

高く裏返った声で叫ぶと同時に、ここは何処だと不可解な疑問を抱いた。
長く見知った菅沼邸である事は知っている。だが、ならば何故斯様に凍えるのか。
これは寒気などというものではない。前にてれびで見た遠い北の果て、永久氷土とやらを思い起こさせる凍気だ。
「大声出さないで。みんなが起きちゃう。」
起きてくれ。
「どっちから脱ぐ?脱がせっこしましょうか。ふふっ。」
逃げなくては。
「あなたの子を産むわ。」
一刻も早くここから逃げなくては!
「お目を…覚まされませ…。」
定盛様!
「くすくす。さっきは寝ろって言ったのに。もう、何なの?邪魅面白い。」
リクオ様!

「私はあなたを抱けません。」
「どうして?」
「あなたは私の妻ではございません。」
御名で呼べなくなっている。
「気にしないわ。」
「私が気にいたします。」
「今はそんな時代じゃないのよ。あなたこれからも生きるなら時代に適応しなくちゃ。」
「そのような適応、できずとも構いません。」
「やっぱり頑固ね。そこが好きよ。」
「私もあなたをお慕い申し上げております。」
「それも嘘なのね。」

犯されているようだったのではない。犯されていたのだ。
凍えるのは血が凍ったからだ。

<灼熱氷土・未完>
596灼熱氷土 後書き:2009/05/01(金) 20:20:38 ID:4vloSoxS
訳わからん。しかもキモい。
でもせっかく書いたし、こういうの好きな人ももしかしたらいるんじゃないかと思って投下しました。

邪魅涙目。脅えすぎ。どんだけ潔癖なんだ。他力本願だし。
誰か続き書いてください。というかラブラブで幸せな邪魅×品子を書いてください。
エロなくてもいいから。

最後に恐ろしくて逃げたくて仕方ないのに、でもやっぱり品子が大切で、狂わせてしまった事に罪悪感もあって
本格的に犯され(フェラと騎乗位)リクオに明鏡止水"桜"的な意味で「寒うございます。私を燃やして下さいませ。」と言って
「俺に男色の趣味はねえ。」と一蹴されて、凍えたままこだまに無賃乗車で上京。(←本スレネタ)
「女って怖いんだな。びーえるに走ろう…。」というオチを用意していました。このオチは板違いなんで書かなくて正解ですね。

最初考えてた案ではセクロスする事で両想いになって、でももう決めた事だからと明日邪魅がリクオに従って上京しちゃう事を受け入れた品子が
邪魅の人間だった頃の名前を訊いて邪魅がそれに答えて終わり、だったんですが、どこでこうなっちゃったのか。
彼のオナニストな少年時代も盛り込む予定だったのにな。

邪魅の家族の話は、犬、片栗粉、投石が2chのコピペ改変です。それにしても曽祖父ヒドス。邪魅止めろよ。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
597名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 22:13:21 ID:f8Dx0S9L
>>596
乙でした。初めてなのに大作ご苦労様。
せっかくだから最後まで書けばよかったのに。
「未完です。続きを書く気はありません。」って最初に言っちゃうのは
あまりよくないと思うよ。
598名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 22:58:46 ID:3CYzAs3e
>>596
GJ!
続きが見たいです。
599名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 02:26:20 ID:vodXvs95
>>596
卑下するなあああああああ!!
これだけの神作品を書いた者にそんな書き方されたら
俺みたいな三流はどうすればいいんだああああ!

何がいいたいかというとようは神GJ。続きカモーン。
600名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 18:02:45 ID:XU0Bsa4J
>>586
曽祖父ひでぇw
601名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 17:18:37 ID:T1xB/kd0
天下のリクオ様の目玉をとろうなんて恐れ多いことを
罰として三つ目たんは、夫の見てる前で性的におしおきされるべき
602名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 20:32:48 ID:+3TgKQPP
灼熱氷土作者です。

>>597
ねぎらいありがとうございます。読んでもらえて嬉しいです。
邪魅×品子なんて読み手がいないと思っていたので。好きなカプなんですけどね。
あと忠告もありがとうございました。今度から気をつけます。

>>598
2chでGJと言われるのはこれが初めてです。書いて良かったです。
読んでくれた事とお褒めの言葉をありがとうございました。
11話を書いた時点ではどうしても続きが思い浮かばなかったのですが、ご期待にお応えしようと頑張ってみました。
さっき書き上がったので、前書きと後書きを書き終えたら投下しますね。

>>599
神って言う人が神なんです。
読んで下さった上、そんな風に絶賛して下さって本当にありがとうございます。
>>599さんも職人さんなんですね。そちらこそ卑下されずにまた作品を投下して下さい。
楽しみにしています。

>>600
そのツッコミを今か今かと待っていましたw
これは一番お気に入りのコピペの改変です。笑っていただけたなら幸いです。
読んで下さってありがとうございました。
603灼熱氷土 前書き2:2009/05/04(月) 23:36:17 ID:+3TgKQPP
灼熱氷土の続きが書き上がりました。前回読んで下さった方々、ありがとうございました。
最初どうしても続きが思い浮かばなかったのですが、書こうと思えば書けるものですね。皆さんのお陰です。
書いてる途中でPCがフリーズしてしまう災難にも見舞われましたが、頑張って仕上げました。
邪魅のオナニストな過去が今、暴かれる。…どうでもいいですけど「ふんどし」という言葉がどうしても書けませんでした。
人に小説を晒すのはこの作品が本当に初めてで、物凄くドキドキしています。
また想像以上に長くなりましたが、読んでみようという気になった方、よろしくおつきあい下さい。
よくわからん言葉が出てくるかも知れませんが、後書きに説明をつけておきました。

それでは始まります。邪魅逆レイプ、今回は拙いながらも本番ありです。
604灼熱氷土 12
妻に会いたい。私に妻はいない。だが会いたい。
照れ臭いから一緒に外を歩く時は少し離れて歩いてくれ。周りに人がいなければ手を繋ごう。
私は甘いものは好まぬが、時々流行りの菓子など食べに連れて行ってやる。
そのかわり晩酌の時には酌をしろ。恥ずかしいが口移しで飲ませる悪戯をするのも悪くない。
飲んだ後は褥で優しくしてやろう。終われば頬を撫で、可愛いと言ってやるから。
子はどちらか一方ではなく、二人ともに似ているのが良い。共に歳をとろう。

「明日お父さんにお揃いの指輪を買ってもらいましょう。」
「指輪…を…?」
「ええ。私達結婚するのよ。知ってる?結婚指輪は薬指に嵌めるの。」
品子が邪魅の手をとる。
「指、長いのね。綺麗…。」
うっとりと撫で、頬ずりをし、唇を当てる。
痺れるような不快感。
「結婚するって言ったら、お父さんもお母さんもきっとまだ早いと言って反対するわ。結婚は女は十六歳からだもの。
でもさせてくれなきゃ自殺するって言うの。そうすれば許してくれる。それでもお父さんはあなたを殴ろうとするでしょうね。
でも大丈夫。こうしていてあげるから。」
そう言って邪魅を抱き締める。
「私は明日にはリクオ様と…。」
「そんなの許さないわ。…結婚式に着るのは絶対ウェディングドレスだと思っていたけど、白無垢もいいわね。
あなたはタキシードも似合うでしょうけど、やっぱり着物が一番だわ。高砂やを聞きながら三々九度をするの。」
「結婚…など…致しません…。」
「するのよ。」
「そんな気は…毛頭ございません…。」
「照れているのね。可愛いわ。」
何を言っても通じない。

「さあ、しましょう。初めてだから優しくね。」
「致しません…。」
「そう。じゃあ…さようなら。」
また首を切られた。先程よりも深く。流れ出る鮮血に目を奪われ、反応が遅れた。
「お止め下さい!」
首に食い込むグラスの破片を持った品子の腕を掴む。品子は抵抗したが、男の力には叶わない。
奪った破片と卓の上や床に散らばっていた破片を集めて羽織の裾にくるむ。最初からこうしていれば良かった。
「これで失礼いたします…。お休みなさいませ…。」
「刃物なんていくらでもあるわ。台所には包丁が。私の部屋には鋏もカッターもある。窓を割るという手だって。
それをあなたが全部始末しても、買って来ればいいだけよ。」