金の力で困ってる女の子を助けてあげたい 2話目

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1名無しさん@ピンキー
こんばんは。

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前スレより

借金で売られそうになってる少女を即金で買い取って助けてあげたい。
生活に困って野宿している姉妹に仕事場と住居を与えてあげたい。
施設や親に虐待されてる女の子を金で根回しして引き取ってあげたい。
自ら命を絶とうとしてる同級生の人生を買い取って、思い止まらせたい。


手前勝手ですが、次スレ立てさせていただきます。
2幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:36:27 ID:A57Fb6MP
こんばんは。

幸福姉妹物語の第三話を投下します。
1話、2話は前スレを参照下さい。

今回、苦痛描写がありますので、苦手な方はシーンのスルーをお願いします。

では、投下を開始します。
3幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:37:09 ID:A57Fb6MP
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ…
 卑猥な水音が響いていた。
 地下室では、革ベッドに腰掛けた三田の股間に清香が顔を埋めていた。
「そうだ… もっと奥まで飲み込め… 喉でしごくようにしろ…」
「んぐぅ… ふぁい… おごぉ…… ん〜〜!!」
 清香は喉奥までペニスを飲み込んでから、股間からの刺激に思わず動きを止めた。
 背後では、文が清香の股間に取り付いていて、アナルバイブを盛んに動かしていた。
 文と比べると、清香はまだまだ体が開いていない。今はお口とアナルの開発中だった。
 地下室は床暖房やらエアコンやらで暖かかったが、外はすでに半袖のメイド服では寒くなっていた。
 季節は冬。姉妹が屋敷に来てから、3ヶ月が過ぎていた…
4幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:37:38 ID:A57Fb6MP
「よし… 出すぞ…」
 低く響く声で宣言して、三田は精液を放出した。喉奥に当たるそれをむせないように何とか飲み干してから、三田のペニスを、ちゅう…、と吸って、尿道に残っていた精液も残らず飲み込んだ。
「…清香のお口にザーメンをいただき、ありがとうございました」
 頭を床に擦り付けてお礼を言うと、清香はそのままくるりと体を反転させた。
「旦那さま、清香のいやらしいケ、ケツ穴がこんなに広がりました。どうぞ… どうぞ、よくご覧になってください…」
 そう言って、高く上げた腰に両手を回して、良く見えるように己の尻たぶを左右に、くぱぁ、と開いた。
 このセリフとポーズは何度やっても恥ずかしかった。
「ン…」
 三田は刺さったままのアナルバイブを無造作に引き抜いて、人差し指と中指を添えて清香のアナルに差し込んだ。
「んっ!! ィタ…」
 堪えようとしたが、どうしても声が出てしまった。それを聞くと、三田はさっさと指を引き抜いた。
「まだ無理か…」
 抜いた指を文の口に突っ込んで清めさせて、三田は呟いた。
「妹と違って、体が固いな… その分名器なのは良いことだが…」
 三田にそう言われて、清香はしぶしぶ体を元に戻し「すみません…」と謝った。
「まあいい、今日もおまんこはお預けだ。とっととオモリを付けろ」
「……はい。…くすん」
 悲しそうに返事をして、清香はキャビネットに置いてあったオモリを手に取った。その数は2個。一見少ないように見えるが、実は最初のモノとは材質が異なり、重量も増加していた。
 オモリが10個を超えてからはこのオモリに代わっていた。以来、ミスをしても増えることは無いが、その重さは油断しているとクリトリスに激痛が走るほどだった。
「う、ん… あぁ…」
 ゆっくりと取り付けて、清香はため息を吐いた。もう気のせいではなく、清香のクリトリスは明らかに大きくなっていた。
(どうなっちゃうのかしら…)
 ベッドでは、フェラチオをして三田のペニスを勃起させた文が、ゆっくりと腰を落としているところだった。
「はぁぁぁ… 入りました、旦那さま…」
 三田のペニスは文のアナルに収まっていた。
「動きます…」
 そのまま腰を上下に動かして、文はアナルで三田のペニスをごしごし擦った。動きとともに、さらに大きくなった文のおっきいおっぱいがゆさゆさ揺れた。
 文のバストカップがFに達したところで、三田は薬を取り上げた。流石にこれ以上は異様だと感じたからだ。
 それでも身長140cmのFカップは圧巻だった。正直羨ましい、と清香は思った。
「あふぅ、あふぅ…」
「もっと締めて、浅く、速く動かしてみろ」
「はぃぃ…」
 言われたとおりに文は腰を小刻みに動かした。アナルの入り口をペニスのカリでごすごすと擦られるのは、目の前で星が飛ぶほど気持ちよかった。
「ああ!! これ凄いです!! イク… イキそうです!!」
「イって良いぞ、私も出す…」
 許可が下りて、文は思う存分腰を揺らした。
「あっ! イク、イク〜〜!!」
 文がおとがいを反らして絶頂に達すると、三田も低く呻いて精液を放出した。
 精液をこぼさないように、アナルを、きゅう、と締めて、文は慎重にペニス抜いた。
 そのまま跪くと、自分の腸液で汚れた三田のペニスをきれいに舐めあげた。
「文のおしりににザーメンをいただき、ありがとうございました」
 深々と頭を下げると、文はいつも入れているアナルプラグをアナルに差し込んだ。
 最近は特に言われない限り、精液はアナルに入れたままだった。おなかはごろごろ鳴るが、むしろそれが嬉しかった。
「さて、私はシャワーを浴びて寝る。片付けは任せたぞ」
 そう言うと、三田は地下室を出て行った。姉妹は頭を下げて見送ると、後片付けを始めた。
「…今日もナシかぁ…」
 片付けの最中に清香が、ぽつり、と呟いた。
「う、う〜ん…」
 文が困ったように首を傾げた。
 オモリに代わる清香の罰はオナニー禁止だった。アナルが拡がるまではヴァギナでのセックスも禁止されていたので、実を言うとここ10日ぐらい清香はイっていなかった。
「お尻って、気持ち良いの?」
「わりと、あそこより気持ち良いかも…」
 文の答えに、清香は「うーむ…」と考え込んだ。イかせてもらうためにはアナルに慣れないといけないが、正直自分は気持ち悪いだけだった。
「…文ちゃんは順応性高いわよね」
「あ、それ旦那さまにも言われた」
「ここじゃ一番必要な才能よね…」
 清香はしみじみと呟いた。
5幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:38:49 ID:A57Fb6MP
 冬になったことで、三田は姉妹の衣替えを行った。
 普段着はハローグッドで購入していたが、常着であるメイド服はそうはいかなかった。
 どうも姉妹にとって、メイド服はすでにユニホーム以上の意味を持っているらしく、ぱっとしない作業着を提示した三田に向かって、かなり控えめだがはっきりと姉妹は「メイド服がいいです」と主張した。
 これまで人形のように従順だった姉妹がやけにはっきり主張してきたのが面白くて、三田は自分が選ぶのを条件にメイド服を許可した。
 そうして選んだメイド服は、これまでの作業服専門店からではなく、わざわざ海外の専門店に発注したヴィクトリアンスタイルのロングドレスだった。
 その一分の隙も無いメイドスタイルに清香などは感動すら覚えたのだが、その値段を聞かされた時は卒倒しかけた。清香が管理している屋敷の食費の1年分はあったからだ。
「こ、こんな高級品を着てお掃除できません…!」
「どうせ他のことで汚れる。心配するな、専門のクリーニング業者も見つけてある。いくら汚そうがかまわん」
(忘れていた… 旦那さまはこういう人だったんだ…)
 世間とズレた金銭感覚を久々に思い知りながらも、清香は頬が緩むのを抑え切れなかった。清香だって年頃の女の子だ。可愛い服をわざわざ選んでプレゼントされれば、嬉しいに決まっている。
 届いたその日、姉妹は早速新しいメイド服に着替えた。厳密にサイズをオーダーしたそれは、清香の長身にも文のおっきいおっぱいにもぴったりとフィットし、姉妹は改めて三田に感謝した。
「ど、どうかな!?」
 はしゃいだ声で文が言い、まるで犬が自分の尻尾を追いかけるように、くるくる、と回った。
 その姿は、愛らしい、という表現がピッタリだった。丸顔の文にはふわりとしたロングスカートが良く似合うし、腰から胸に付いているアウタービスチェがおっきいおっぱいをより強調し、思わず揉みしだきたくなる。
「かわいー… 文ちゃん、かわいー…」
 うっとりと文を見つめる清香だったが、文からしてみれば、姉こそが一番このメイド服を着こなしているように見えた。
 元々華奢で長身の清香には、楚々としたメイド服が良く似合った。さらに長年染み付いている物憂げな表情は、黒を基調としたメイド服に非常に映えた。それは、立っているだけで、まるで映画の中から抜け出して来たかのような印象を与えた。
「ねぇねぇ、旦那さまに見せに行こっか!?」
 文が、わくわく、とした顔で言った。
「お仕事の邪魔しちゃいけないわ」
「う… でも、旦那さまだって見たいと思うし… そうだ、お礼を言わなきゃ!」
 それについては清香ももっともだと思い、姉妹は2人して三田の部屋のドアをノックした。
「…失礼します、旦那さま。新しいお洋服、ありがとうございます…」
 部屋に入って、姉妹はそろって頭を下げた。
 しばらく三田はいつものように眉根を寄せた表情でパソコンを睨んでいたが、一言「ふむ…」と呟くと、パソコンを操作してすべてのディスプレイの灯を落として姉妹に向き直った。
「ん…? 早速着たか。どうだ着心地は?」
「最高です!!」
 文が元気良く返事をした。三田は姉妹をためすつがめつ眺めると、微かに苦笑した。
「清香は良く似合っているな。文は… アンバランスだな」
「ひ、ひどーい!」
(やっぱり、旦那さまはお姉ちゃんの方がお気に入りなのかな…)
 心の片隅での暗い思いをおくびにも出さず、文は明るく言った。
「別に似合ってないわけじゃない」
 三田は文に近づくと、両手でおっきいおっぱいを鷲掴みにした。
「あん…」
「流石に手触りが違うな。生地もしっかりしているし、これならサポーターを付けなくても垂れることはないか」
「た、垂れる?」
「胸筋をしっかり鍛えておかないと、こんなにでかい胸だとすぐに垂れるぞ。薬も終わったことだし、今日からしっかり訓練を始めろ」
 三田の言に、文は神妙に頷いた。せっかく旦那さまが気に入っているおっぱいを、フイにしたくはなかった。
「さて… 冬服は揃えたが、次に必要なものはあるか?」
「はあ、必要なもの、ですか?」
「そうだ、私もこの屋敷で越冬するのは久しぶりだからな。気付いた点があれば言え」
 そう言われて、姉妹は考え込んだ。今はあまり不便に感じたことは無いが…
(そう言えば、地下室は暖房完備してるのね… 後から手を入れたって旦那さまが言ってたし…)
 そこまで考えて、清香はぴんと来るものがあった。
6幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:39:36 ID:A57Fb6MP
「あ、あの。リビングなんですが…」
「うむ」
「暖房器具が無いので、これから少し厳しいかもしれません」
 姉の言葉に、文は「あー…」と納得して、こくこく、と頷いた。
「そうか… テーブルだと足元も寒いか… しかし、床暖房を入れている暇は無いぞ」
「そ、そこまでしなくても…」
(生活レベルが合わないなあ…)
 清香は心の中で、そっとため息を吐いた。
「おこた… なんてどうでしょう?」
「こたつ?」
「はい…」
「リビングに置くのか?」
「はい…」
「そこで飯を食うのか?」
「…はい」
 そこまで会話して、三田は胡乱な目付きで清香を見た。清香は早速自分の言った事を後悔し始めた。
「メリットが見えん」
「は?」
 三田がぼそりと言って、清香は思わず聞き返していた。
「私はこれまでこたつという物を使ったことが無い。そのため、こたつを使うメリットがわからん」
「ええと…」
 そう言われると、清香にもよくわからなくなる。(こたつのメリット… 何だったかしら…?)と頭をひねった。
「みかんがおいしくなりますよ」
 文がなんでもないように言った。
「みかん?」
「はい、みかんです。あと、アイスも美味しくなります」
「なぜ、こたつで食べ物が美味しくなる?」
「さあ…」
 文があっさり首を傾げるのを見て、あからさまに三田の表情が不機嫌になった。
「え、ええと、そう! 電気代が安くつくんです! ストーブみたいに灯油がいらいないし、エアコンよりも経済的なんです!」
 清香が無理やり理由を捻り出すと、意外なことに三田は「なるほど」と素直に納得した。
「経済的か… それは確かに大きなメリットだ」
「は、はあ…」
 実のところ清香には、維持費など三田にとって一番どうでも良いことに思えたのだが、そうでも無いらしかった。
「よし、なら買いに行くか。ちょうど私も一仕事終わったところだ。2人とも支度をしろ」
 そう言って三田は顎で、くい、とクローゼットを指した。すぐに姉妹は動き出し、清香が三田の服を脱がし始め、文がクローゼットから三田の外出着を取り出した。
「その格好なら、外へ出ても変では無いだろう。ところで、どこか行きたい所はあるか?」
 着替えつつ、三田は珍しく自分から姉妹に提案した。
 ここにきて、ようやく清香は三田の機嫌が良いことに気付いたが、それは表には出さずに考えた。
「いえ、私は特に…」
「う〜ん、文も別に行きたいところは無いです」
「そうか、なら近場で済ませるか。ハローグッドにこたつは置いてあったか?」
「あ、ありました。ちょうどフェアをやっているみたいです」
「ふむ、ちょうど良いな」
 着替えを済ませた三田は、「行くぞ」と言うと車のキーを取って歩き出した。
 後に続いた清香は、(そういえば、旦那さまとハローグッド行くのは初めてじゃない?)とぼんやりと思った。
7幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:40:24 ID:A57Fb6MP
「はあ…」
 ハローグッド店長(32)は、事務所で伝票処理をしながらため息を吐いた。隣でギフト関連の書類を片付けていたサービスマネージャー(27)が嫌そうな顔をした。
「ちょっと… 辛気臭いため息吐かないでよ。それでなくとも年の瀬考えて憂鬱なんだから」
 12月に入ると、小売店一番の稼ぎ時である年末年始がやってくる。一番実入りの良い時期では有るが、従業員にとっては寒くて疲れる一番嫌な季節だった。
「やー、最近清香ちゃんミニスカメイドじゃねーしさぁ… 文ちゃんもおっぱい隠れるような服着てるし… なんか、やる気起きないよねー…」
「店長… それ十二分にセクハラなんだけど? 私にとっても、お客にとっても」
 いーじゃんよー… と店長は足をばたばたさせた。普段は企画力も実行力もある有能なリーダーなのに、なぜかあの姉妹が絡むとダメダメになるのがサービスマネージャーの悩みの種だった。
(寒くなって、メイド服やめてくれたのは良いけど、こうもやる気に影響するのは考え物ね…)
 そう思って、いまだバタバタをやめない店長に拳骨の一つでもくれてやろうかと考えていると、事務所に息を切らしたデリカ担当(24)が駆け込んできた。
「て、店長! ご注進!!」
「何事だ、騒々しい…」
「メイド再臨!!」
「案内せい!!」
 デリカ担当を従えて疾風の如く店内に消えていった店長を見て、サービスマネージャーは、深い深い、ため息を吐いた。


 久しぶりにハローグッドを来店してみて、三田は妙な違和感を感じた。
 何だ、と首を回してみると、その正体はすぐにわかった。なにやら店員(だいたいは男だが、女もいた)が自分たちを、ちらっ、と見て、慌てたように引っ込むことを繰り返していたからだ。
(注目されている? ふん、そんなにメイドが珍しいのか?)
 まさか、姉妹が日常的にメイド服で来店していたことなど知らない三田は、単純にそう思った。
 三田は目があった店員をじろりと睨んで退散させると、姉妹にカートと店案内を任せて後について歩き出した。
8幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:40:50 ID:A57Fb6MP
「…あいつ誰だ?」
「さ、さあ…」
「もしや、居ないと信じて疑わなかった『真のご主人さま』か?」
「そう、かもしれません…」
「なんということだ… 神は死んだ…」
 三田に睨まれて棚裏に逃げ込んだ店長は、デリカ担当とヤンキー座りをして語り合った。
 あのメイド姉妹は俺たちのアイドル。ゆえに皆が等しくご主人さまであり、『真のご主人さま』なんて存在しないんだよ、ばかやろー!
 というのが男性スタッフの共通認識だったため、三田の登場は多くの男性スタッフを失意のどん底に叩き落した。
「ほー、結構良い男じゃん」
 同じように、三田をちらりと覗いてサービスマネージャーが会話に加わった。
「残念だったね」
「っせー、黙れよ…」
 冷やかすサービスマネージャーに店長は弱々しく応えた。
「んなこと言っていいの? あたし、結構重要な事に気付いたんだけど」
「…なんだよ?」
 流石に興味を持って聞くと、サービスマネージャーは真剣な顔になって囁いた。
「あのメイド服、凄い高級品」
「………で?」
「たぶん、オーダーメイドの特注品。見てよ、文ちゃんのおっきいおっぱいを余す所なく魅せるあのデザイン…! あ、やっぱり見るな」
 どれどれ、と覗き込もうとする店長を制止して、サービスマネージャーは続けた。
「………それで?」
「相当な金持ちじゃないと、あんな服買えない」
「………だから?」
「で、あの姉妹はいつもは歩いて来店してる」
「わけわかんねえって」
 いい加減じれた店長が、ギブアップ、とでも言うように両手を上げた。
「つまり、何なんだよ?」
「鈍いよ、店長。あんたとあたし、開店の時に地域資料を一緒に読んだでしょう? はい、我らがハローグッドはどこ系列のスーパーですか?」
「はあ、そりゃハロー系列のスーパーにきまってんじゃん」
 ハロー系列とは、この辺りに地場を持つ、流通・企画・小売などの事業を展開する株式会社ハローの系列ということだ。
「じゃあ、資料にあったよね。ウチの店の近くにはハローの一般大株主が住んでるって」
「ああ、あったあった。遺産が孫かなんかに相続されて、その孫がやり手のトレーダーだから注意しろ、ってエリア統括から散々言われたな。でも、それからは何の話も聞かんのよね」
「ここまで言って気付かない? 近くには大金持ちが住んでいる。その人はウチの親会社の大株主。で、あのメイド姉妹は大金持ちにしか買えないような高級メイド服を着ている。はい、答え」
「……あのおっさんが三田敦だとでも言うのかよ?」
「…こんな所でだべってないで、接客、してこんかぁ!!」
9幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:41:20 ID:A57Fb6MP
「いらっしゃいませ、お客様」
 朗らかな営業スマイルと、鍛え抜かれた視線を外さないお辞儀をして、店長は三田の前に立った。
 家電売り場で展示してあるこたつを物色していた三田は、「ん?」と声を出して店長に向き直った。
「何でしょう?」
「失礼ですが、三田様でいらっしゃいますか?」
「そうですが」
 怪訝な顔で三田が首肯すると、店長は電光石火の早業で名刺を三田の前に差し出した。
「ご挨拶が遅れて申し訳有りません。わたくし店長でございます」
 名刺を受け取って中身を確認した三田は、思い出したように「そうか…」と頷いた。
「じいさんはここの株主だったな」
「ええ、おじい様には大変良くして頂きました。三田様にも、株主を続けて頂いて大変嬉しく思っております」
 この店長の言葉に対して、三田の反応は一瞬遅れた。
「…株主?」
「ええ、おじい様の持ち株は今は三田様に相続されていると聞いておりますが…」
 店長がそう言うと、三田は悔しそうに横を向いて「ジジイめ… 俺に黙ってやがったな…」と呟いた。
「いや失礼、なんでもありません。 …株主としては、あなた方の企業努力に期待していますし、今上期のハロー・グループの経常利益が、前年度下期プラスになったことも嬉しい限りです。ですが…」
 そこで三田はいったん言葉を区切った。
「ですが、今日は買い物客としてやって来ています。特に気にする必要はありませんよ」
「いえ、それでは申し訳ありません。せめて、お買い物のお手伝いをさせてください」
 三田は一瞬困った顔をしたが、(まあ、いいか。選ぶ手間が省ける)と思い直すと、鷹揚に頷いた。
「わかりました、そうまで仰るならお願いします。清香! 文! こっちへ来い」
 三田が呼ぶと、こたつ布団の柄でなにやら議論していた姉妹が、会話を打ち切ってすぐにやってきた。
「なんでしょう、だ… おじさま…」
 おじさま、とは外で三田を呼ぶときのルールだ。嫌な勘繰りをされるのが嫌だったからだ。
「店長さんがこたつを選んでくれるそうだ。すみませんが、この娘たちに説明してやってくれませんか?」
 そう言うと、三田は清香と文の肩に、ぽん、と手を置いた。
 滅多に聞けない三田の敬語と、滅多にされない温かみのある仕草に、姉妹は妙にどぎまぎした。
 説明を任せられた店長は、慣れた調子で機能やサイズの説明を始めた。しかし清香は、肩から伝わってくる三田の体温に気を取られ、なかなか店長の話に集中することができなかった。
10幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:41:59 ID:A57Fb6MP
「よし、それならばこれにしよう」
 最終的に三田が決断を下して購入するこたつが決まった。別に高級品というわけではなかったが、それは3人で座るにはかなり大きなサイズだった。
「ありがとうございます! それでは、商品は車まで運ばせていただきますので、これを持ってレジでお支払いの方をよろしくお願いします」
 バーコードが印刷された用紙を三田に渡すと、店長はスタッフを呼びに去った。
「あとは任せるぞ、私は電話を掛けてくる」
 そう言うと、三田は踵を返して去ろうとした。清香は慌てて声を掛けた。
「あ、あの! 今日はお鍋にしようと思うんですが。調理器を買っても良いですか?」
「必要と思うのならば購入しろ。…そうだ、今回の支払いは私がするから、レジに行く前に声を掛けろよ」
 そう言うと、三田は足早に去っていった。どうにも急いで電話する用事ができたらしく、歩きながらも携帯を耳に当てていた。
「…なんだろうね?」
 文が不思議そうに首を傾げた。三田が慌てるところなど、この3ヶ月でも(もしかしたら一度も)滅多に見ることはなかったように思う。
「さあね。今はお買い物しましょ。鍋は久しぶりだから、気合入れないと! 土鍋は有ったから、ガスコンロかIH調理器が必要ね… IH調理器にしましょ。どうせ、維持費が安いほうがおじさまも喜ぶだろうし」
 清香は一人、うんうん、と頷くとこたつ売り場のすぐ側に陳列してあったIH調理器をカートに乗せた。(これは選ぼうにも1種類しかなかった)
「あとは、具材。おじさまはイマイチ好みが分からないのよね…」
「おじさまって、肉も魚も野菜もたくさん食べるし…」
 なんやかんやと言いながら、姉妹はそれぞれに鍋の具材をカートに入れていった。
 好みはともかくとして、あまり安いものを買うと三田が嫌な顔をするので、そこそこ値の張る具材をカートに入れる。
「お、お姉ちゃん、高級牡蠣だって! おじさま好きかなあ…?」
「おじさま、食中りしたことは無い、て言ってたから、大丈夫でしょ」
 鮮魚、食肉、野菜と食品コーナーを回っていく。
「おじさまが大好きな高級牛サーロイン!」
「薄切り肉にしなさい。お鍋にサーロインぶち込んだら、流石におじさまは怒るわよ」
 とりあえず、姉妹共に意識はしていたのだが、誰も突っ込む人間が居ないので最後までおじさまだった。
「…いい加減、おじさま、止めない?」
「なんだか止まらないね、おじさま…」
 姉妹は、なんだかよくわけのわからない強制力で、おじさまを連呼し続けた。
11幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:43:52 ID:A57Fb6MP
「…だから、なぜ必要でもない資産を? …遺言? それなら衆目の元、あなたも立ち会って開いたでしょう。そんな文言一つもなかった! は? 口答? ふざけないでください! 
ともかく、こんな勝手はもう無しにしてください。…ええ、私のことは心配してもらわなくて結構です。一人立ちして何年だと思っているんですか… 
結婚!? 真面目に話す気がないのならもう切りますよ! それでは…!」
 声を掛けにきた清香の目の前で、三田は荒々しく電話を切った。ビクッ、と震えた清香に気付くと、焦ったように「す、すまん」と言った。
「あ、いや… 買い物は終わったのか?」
「は、はい…」
「そうか…」
 そう言って三田は歩き出した。清香は、そっ、と横から三田の顔を盗み見た。三田は怒っている様な悩んでいる様なよくわからない表情をしていた。
(誰と話していたんだろう…)
 三田があんなに感情をむき出しにして話す相手は想像できなかった。
(今日は旦那さまの色々な面が見れて、楽しかったかも…)

 三田が(清香の使っているものとは、色や輝きがまるで違う)カードで支払いを済ませると、3人は車に向かった。
 三田が運転席に座り、姉妹が後部座席に座ろうとしたが、こたつが後部座席の大部分を占領していて、1人しか座れなった。
「文、前に来い」
 それを見るなり三田はそう命じた。文はかなりドキドキしながら「し、失礼します…」と言って助手席に座った。
「少し、ドライブするか…」
 車を発進させると、三田はそう言って大きく道を外した。
「あ、あのぉ…」
「別に怒っていない」
 不安そうに声を掛けた文に、三田は即座に答えた。
「ただ… 嫌なことを思い出しただけだ。いや、嫌なことではないな。そう、昔を思い出したんだ。じいさんとの頃をな…」
「おじいさん、ですか…?」
「…そうだ」
 言葉少なに三田は答えた。ストレス発散にドライブをしたのかと思ったが、三田はそれほどスピードを出さずに走った。
 三田の運転は滑らかだった。何度も走り、慣れている道だと清香は感じた。
「…どんな、おじいさんだったんですか?」
 だいぶ迷ったのだろうか、意を決した風に文が尋ねた。
 姉妹が三田に関することを訊いたのはこれが初めてだった。これまでは、訊ける雰囲気も無かったし、余裕も無かった。
「どうでも良いことだ。 …訊いてどうする?」
「いえ… ただ、旦那さまのことを知りたくて…」
 怒られたわけではないが、文はしゅんとなって答えた。
 しばらく、無言のドライブが続いた。
 車が山道に入ると、三田は町を眺望できる高台の、小さな駐車場に車を止めた。
「…今は暗くて見えないが、ここからはじいさんの屋敷が良く見える」
「え、えと、はい…」
 突然話を始めた三田に、文は慌てて相槌をうった。
「あの屋敷に来たときに、初めてここに連れて来られた。なんて田舎だと思った。まだ何も無く、じいさんの屋敷以外はほとんど田んぼばかりだった」
「………」
 姉妹は、黙って三田の話を聞いた。三田の過去など、想像もできなかった。
12幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:44:22 ID:A57Fb6MP
「お前たち、両親は生きているのか?」
「ええと…」
「…わかりません」
 不意に発した三田の問いに、文は戸惑ったが、清香がはっきりと答えた。
「私たちが施設に入ったのは、4歳と2歳の時です。…誰かに手を引かれて連れて来られたのは覚えています。でも、それが親だったのかは覚えていません。施設長さんも、何も教えてくれませんでした。…ごめんね、文ちゃん。覚えてなくて…」
 後半、清香はすまなそうに文に謝った。多分、これまで幾度と無く繰り返したやり取りなのだろう、文は笑って首を振った。
「ううん、もう気にしないでよ、お姉ちゃん」
 文が言うと、清香は力弱く微笑んで、「うん…」と頷いた。
「そうか… 私の両親は、私が6歳の時に死んだ。死因なんかはどうでもいい。重要なのは、私がじいさんに引き取られた事だ」
 三田はハンドルに腕を預けてぼんやりと前を見た。フロントガラスの先は暗闇に覆われていたが、三田には何かの風景が見えているかのようだった。
「親が死んで、私の肉親はじいさんだけになった。そのじいさんに引き取られると分かって、当時の私はそれなりに落ち込んだ。田舎の名士でお金持ちだと聞いてはいたが、子供の私にとっては印象の薄い、陰湿で、無口な老人に見えたからだ」
 そう言って、三田は何かを思い出したように薄く笑った。
「そうだ… 思い出した。とある人物が言うには、私とじいさんの若い頃は、見た目も性格も瓜二つだそうだ。ふん、その通りだろうよ」
 三田は自嘲するように口の端を歪めた。
 姉妹は何も言えなかった。とりわけ、三田が小さいときに両親を亡くしていることが、妙にショックだった。
「じいさんは厳しかった。元々旧い時代の人間だったから、清貧であれ、がいつも合言葉だった。金は有るくせに一切の贅沢をしなかったから、当時はずいぶんと反発した。
 それでも、ウマが合う所はあった。それは、お互いに無口な所だった。不必要な会話はしない。それが心地よかった。特に…」
 三田は不意に視線を下に落とすと、姉妹から顔を隠して呟いた。
「特にここで、2人で黙って町を眺めるのは好きだった…」
 清香と文は、急に今の三田の顔を見たくなった。見れば、もっと三田の事が好きになれるような気がしたのだ。
「それだけだ… それだけ、思い出した」
 抑揚の無い声で言うと、三田は顔を上げた。その表情は、いつもの眉根を寄せた、気難しいそうな表情だった。
「あの、おじいさんは…?」
「今年の春に死んだ。都内で独立していた私は、じいさんの遺産を相続してあの屋敷に戻った」
 そう言って、三田は車を発進させようとシフトレバーに左手を当てた。すると、文が小さな手をそっと三田の左手に乗せた。
「…何だ?」
「あっ! いえ…」
 文にも、どうしてそんなことをしたのか分からなかった。ただ、三田に触れていたかった。
「欲しいのか?」
「そ、それは…」
 口ごもる文をしばらく見つめると、三田は文のシートベルトを外し、髪の毛を掴むと、ぐいっ、と文の体を自分の方に引き倒した。
 きゃっ! と悲鳴を上げて文が倒れ込むと、ちょうど目の前に三田の股間が見えた。
「するなら勝手にしろ、帰るぞ」
 そう言って、キーを捻ってエンジンを始動させると、車を発進させた。
 文は、膝を立て、三田の腰に腕を回して体を固定させると、運転の邪魔にならないように、ゆっくりと三田のペニスを取り出した。
(何でだろ… いじめられてもいないのに、すごくご奉仕したい…)
 それは、被虐への渇望や三田の強制ではなく、ただ単純に、三田に尽くしたいという文の想いだった。
 そっ、と三田のペニスを口に咥えると、ゆっくりと優しく舌を動かし始めた。
 屋敷に着くまでの短い時間。そうやって文は、舌での愛撫を続けた。
13幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:44:58 ID:A57Fb6MP
 屋敷に戻ると、三田は夕食の用意を姉妹に任せて、自分はリビングにこたつを設置していた。
 こういうことは自分でやらないと気が済まないらしく、手伝おうとする文を邪険に追い払って、テキパキとこたつを組み立てていった。その様子からは、車内での重い雰囲気は感じられなかった。
 そうして出来上がったこたつは、3人で座るにはかなり広かった。
 文がIH調理器を置いて、清香がその上に土鍋を置くと、3人はそれぞれ1辺に1人ずつ座った。しかし…
「…遠いな」
 鍋はこたつの中央に置いたのだが、やけに広いテーブルのせいで、箸を伸ばすには微妙に遠かった。
 三田が憮然として席を立とうとすると、清香があわてて言った。
「あ、あの! こうすれば良いと思います!」
 そう言って、三田の右隣に強引に体を割り込んだ。文も気付くと、「あ、文も!」とこちらは三田の左隣に割り込んだ。
 すばやく姉妹でアイコンタクトをすると、清香がぐつぐつ煮える鍋をゆっくりと持ち上げて、文がIH調理器を三田の手元まで引き寄せた。
「こ、こうすれば届きます…」
 鍋を降ろしながら清香が言った。
 三田はしばらく胡乱な目で清香を見たが、一回ため息を吐くと「まあいい」と言って座りなおした。そして、伏せられたお碗と箸に手を伸ばそうとすると、それよりも早く清香が箸を、文がお碗を手に取った。
「「まかせてください!!」」
 ハモって姉妹が言うと、まるであらかじめ打ち合わせしてたかのようにお碗に鍋の具をよそおい始めた。
 あっけに取られる三田の前で、姉妹は「お姉ちゃん、牡蠣牡蠣」「野菜、しめじ、お肉…」とあっという間に具沢山によそおうと、「「はい、どうぞ」」と三田の目の前に差し出した。
 三田はかなり胡散臭げな眼をしたが、姉妹の迫力に圧されてお碗と箸を受け取ると、ぎこちなく食べ始めた。
「お、おいしいですか?」
 固唾を飲んで見守る清香の問いに、「ああ…」と答えると、清香が「ほっ」と胸を手で押さえて、文がぐっ、と親指を立てた。
 三田がお碗の中身を食べ終わりまたも姉妹が手を伸ばそうとすると、三田が2人のお尻を、ぎゅっ、と抓った。
「「きゃん!」」
「いい加減にしろ…!」
 怒気を含ませて言うと、姉妹はしゅんとなって手を引っ込めた。
「普通に食わせろ、妙な気を使うな。あと、お前たちもとっとと食え。 …せっかくの鍋だ」
 三田がそう言うと、姉妹は行儀良く「「いただきます」」と言って鍋をつつき始めた。
(…寄り過ぎなんじゃないか?)
 鍋の具を取るためなのだろうが、妙に2人とも三田に体を密着させていた。
(知るか…)
 気にするのが面倒になった三田は、姉妹を極力無視して食事に没頭しようとした。それとなく雰囲気を察したのか、それから姉妹は何も言わずに食事を続けたが、体の位置はそのままだった。
 たまに三田が顔を横に向けると、そこにはニコニコと満面の笑みを浮かべる姉妹の顔があった。
14幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:46:08 ID:A57Fb6MP
 正直、清香と文は舞い上がっていた。
 三田が、僅かとはいえ自分の過去を話してくれたこと。そして、自分たちと同じく親を無くしていた事が、過剰な親近感と恋慕心を引き出していたのだ。
 文にいたっては、これまで漠然としか感じていなかった三田への恋心が爆発していた。
 何でもしてあげたい! 今すぐ抱きつきたい! そんな気持ちを抑えるのに必死だった。
「旦那さま、お背中流しましょうか?」
 だから少しでも側にいたくて、姉に洗い物を任せると三田にそう話しかけていた。これまで、何度か呼ばれたことはあったが、自分から言うのは初めてだった。
「…ああ?」
 なにやら、どっと疲れた様子の三田が、ソファに身を投げ出して投げやりに答えた。
「あ、疲れてるようでしたら、マッサージします!」
 そう言ってまとわり付こうとする文を、三田はうるさそうに振り払った。
「…やかましいぞ」
「ご、ごめんなさい…」
 そう謝って、それでも何かしら命令が欲しそうに自分の前で、ちょこん、と座る文を見て、三田は困惑して尋ねた。
「何なんだ。何か欲しいものでもあるのか?」
「い、いえ欲しいものは無いです…」
「じゃあ、おねだりか?」
「そ、そうじゃなくて…」
 文は口ごもると、上目使いに三田を見た。
「尽くしたいんです、旦那さまに」
「はぁ?」
 三田が、わけがわからん、とでも言いたげに首を傾げた。
「何でも言ってください。もう一度犬になれというなら、犬になります。次は散歩も嫌がりません、写真もたくさん撮ってください。文が出来ることなら、何でもします。させてください…」
 文は、顔を真っ赤にして言い切った。キッチンからは、清香がはらはらした思いで2人のやりとりを見守っていた。
「どうしてそこまで言える? そんなにいじめられて気持ちよくなりたいのか?」
「ち、違います!」
「じゃあ、何だ!?」
 荒げた三田の声に、ぎゅっ、と眼を閉じると、文は全身全霊の勇気を振り絞って叫んだ。
「だ、旦那さまが好きだからです! 大好きなんです! 本当に好きなんです。旦那さまに抱かれると、胸がどきどきするんです… もっと触れていたいんです。ずっと旦那さまの側に居たいんです…!」
 言い終わって、文は、ぎゅっ、と両手を握って三田の返事を待った。
 しかし、三田の返事はなかなか返ってこなかった。
 とうとう痺れを切らして文が眼を開けると、そこには、冷たい眼をした三田が、そのままの姿勢で座っていた。
15幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:46:40 ID:A57Fb6MP
「好き?」
「はい!」
 ポツリと呟いた三田に、文は勢い良く返事をしたが、三田の表情は変わらなかった。
「それで、なんだ?」
「…え?」
 抑揚も無く、感動も無く、ただ無機質な声で三田は尋ねた。
「お前が私を好いていたとして、私に何かして欲しいのか?」
「それは…」
 文は悩んだ。して欲しいことなど、一つしかない。しかし、それを言うのが不安だった。チラリとキッチンの姉を見ると、清香も不安そうに三田を見ていた。
(お姉ちゃんには… お姉ちゃんには、負けたくないよ…!)
 文は決心して、顔を上げた。
「旦那さま、私を愛してください!」
 三田の眼を真っ直ぐに見て言った。視線を逸らすもんかと思った。
 しかし、三田の返答は残酷だった。
「無理だ」
「…!」
 静かに、きっぱりと三田は言い切った。
「人を愛する気になれない。愛し方を知らない。そもそも、愛など無い。どんな理由でも結構だが、ともかく、私はそういう気持ちに応える気は無い」
「そ、そんな… じゃあ、どうして私たちに優しくしてくれるんですか?」
「決まっているだろう、長く使うためだ」
 三田の返答に、ガツン、と頭を殴られたような衝撃を受けて、文はふらふらと尻餅をついた。
「長く、使う…?」
「そうだ、途中で壊れたら、せっかくの高い金がフイになる。お前は何だ? 私の奴隷だろう。ならば主人にはそれを管理する義務がある。ただ、それだけだ」
「そんな… そんな…」
 文は体をガタガタを震わせ、涙を流し始めた。
「こんなに…」
 搾り出すように、文は声を出した。
「こんなに好きなのに… 大好きなのに…」
「恋心が邪魔か? ならば、そんなものは捨ててしまえ。私なんか好きにならなければ良い。第一、許可をした覚えは無い」
「誰か、を好きに、なることなんて… 自由です…」
 しゃっくりを上げながら文が言うと、三田は「いいや違う」ときっぱりと否定した。
「初日に話したな。お前の自由は誰のものだ? お前のものか、清香のものか?」
 三田の問いに、文は、ビクッ、と背筋を伸ばした。
「そうだ、私のものだ。お前に許された自由は、私が認めた自由だけだ。改めて言おう、恋心なんか捨てろ」
 それがトドメの一言だった。
「ひどいよ… あんまりだよぉ…」
 文はぼろぼろに泣いた顔を両手で押さえると、駆け出してリビングを出て行った。
16幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:47:14 ID:A57Fb6MP
「あ、文ちゃん!!」
 急いで清香が追いかけようとしたが、駆け出す前に三田が大声で「清香っ!!」と叫んだ。
「は、はい… あの…」
「こっちへ来て、壁に手を付け」
「…え!?」
「早くしろ!」
 清香は戸惑いながらリビングに入ると、ふるふると首を振った。
「だ、旦那さま、今は許してください」
「駄目だ」
 三田は取りつく島も無く清香に近づくと、強引に壁に向かせて突き飛ばした。
「きゃっ!」
 清香が慌てて手を壁に付くと、三田は背後から清香の腰を、がしっ、と掴んだ。
「旦那さまぁ!! お願いです!! 今は堪忍してください!! 文が、文がぁ!!」
 必死に抵抗するが、三田の力には適わなかった。
「…お前まで俺を苛立たせるつもりか?」
 低い、あまりにも低い声で三田が言った。その声に気圧されて清香が一瞬動きを止めると、カットバンを剥がし捨て、三田は有無を言わさずに清香を後ろから貫いた。
「あうぅぅ!!」
 前戯も無しの挿入に、清香の身体が跳ねた。しかし、三田はそんなものはお構い無しに激しく腰を動かした。
「どうだ! 久しぶりのチンポは嬉しいだろう! ええ!!」
 清香は長い髪を激しく揺らして、いやいや、と頭を振った。
(嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁ!!)
 心の中で何度も叫ぶ。ほんの数十分前までは、欲しくてたまらなかったものなのに、今この瞬間は、処女を奪われたとき以上の嫌悪感しか無かった。
 それなのに、
「ふん、もう濡れてきたか。身体は正直に嬉しいと言っているぞ!」
 清香のヴァギナからは、三田の言う通り愛液がだらだらと流れ始めていた。
(嘘ぉ… なんでぇ… 嫌なのに… 悔しいのに、感じちゃう…)
 清香は、生まれて初めて自分の身体を呪った。知らずに涙が出てきた。
「ふん、淫乱が…」
 三田が吐き捨てるように言った。淫乱、と言う単語は、清香の中に暴力となって襲い掛かった。
(いん、らん… いやなのに、感じちゃう、いんらんおんな…)
 清香は抵抗を止めて大人しくなった。これまで、三田に受けた仕打ちの数々が頭をよぎる。そして、その仕打ちのいずれでも、自分は嬉しそうに腰を振っていた。
(いんらんおんな…)
 清香の瞳が光を失った。
 しばらく無言で腰を振っていた三田は、反応をしなくなった清香を見ると、「ちっ!」と舌打ちをして清香の膣内に射精を始めた。
 射精が終わると、三田はペニスをずるりと抜き、清香の腰から手を離した。清香は、ゆっくりと床に崩れ落ちた。
「おい、後始末をしろ…」
 三田がそう言っても、清香は低く「うぅ…」と呻くだけだった。業を煮やした三田は、清香の長い髪の毛を掴むと力任せに上に引っ張った。
「きれいにしろ…!」
 清香の顔が股間にくるまで引っ張り上げて言うと、観念した清香が三田のペニスを、ぺろぺろ、と舐め始めた。
 なんとかきれいに舐め終わると、三田は清香の髪を、ぱっ、と離した。再び、清香が床に崩れ落ちると、一言「寝る」と言ってリビングを後にした。
 残された清香は、最後の力を振り絞って立ち上がると、文が居るであろう自分たちの部屋へと、よろよろと歩き出した。
17幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:47:41 ID:A57Fb6MP
 清香が自分たちの部屋に帰ると、ベッドの上にこんもりと布団が丸くなっていた。
 清香はホッと胸を撫で下ろした。正直、屋敷を出ていたらどうしようと思っていたのだ。
 ベッドに腰掛けて、そっと布団の塊に耳を寄せると、中から文のぐずる声が聞こえてきた。
「文ちゃん…」
 優しく声を掛けると、布団と布団の合わせ目が少し開いて、文が顔を覗かせた。
 なんと言って良いか分からず、とりあえずにっこり微笑んでやると、文は「おねえちゃああん…」と清香に抱きつこうとした。
 が、しかし、途中で何かに気付いたように動きを止めると、突然、ばっ!と清香から飛び退いた。
「ど、どうしたの?」
 文の変な動きに驚いて尋ねると、文が信じられないものを見たような眼で清香を見た。
「お姉ちゃんから… 旦那さまの匂いがする…」
 その言葉に、はっとなって清香は股間を押さえた。
「えっち、したの?」
 呆然と文が言う。清香は、なんと弁明して良いのか分からず、助けを求めるように文に手を伸ばした。
「触らないで!」
 それを見た文が叫んだ。
「触らないで…」
 もう一度言うと、文は悲しそうに清香を見た。
「あ、文、これはね…!」
「わかってるよ…」
 必死に説明しようとする清香を遮って、文は話し始めた。
「わかってるよ。お姉ちゃんがねだったわけじゃないってことぐらい… 抵抗したけど、旦那さまに無理やりヤられちゃったことぐらい… すぐにわかるよ… でもね、でもね…」
 そう言うと、また文はぽろぽろと涙を流し始めた。
「そうだとわかっていても悲しいの! 悔しいの! 妬ましいの! お姉ちゃんはいつもおまんこに注いでもらってるのに、私はお尻やお口ばっかり… それでも、愛してもらってると思ってたから、充分だった。けど、そうじゃなかった…」
 清香は、何も言えなかった。言えるはずもなかった。
「今は一人にして… 出てって…」
 そう言って、文は再び布団に包まって丸くなった。清香は呆然と立ち上がると、足取り重く部屋を出た。
 再びリビングに戻ると、今日買ったばかりのこたつに足を突っ込んで、がくり、とテーブルに突っ伏した。
「わかっていたことじゃない…」
 誰に聞かせるでもなく、清香はポツリと呟いた。
「私たちに、人並みの幸せなんて無いなんて、わかっていたことじゃない…」
 広いリビングの中で1人、清香はさめざめと泣き続けた。
18幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:48:15 ID:A57Fb6MP
 翌朝。一睡も出来なかった清香は、朝日がリビングに射すとのろのろと身体を起こした。
 気分も体調も最悪だった。一晩中泣いた眼は真っ赤になっていたし、同じ姿勢で過ごした身体は節々が痛かった。
 それでも、1日は始まったしまった。自分は奴隷なのだ。これ以上三田の機嫌を損ねるわけにはいかない。
「私が、がんばらないと…」
 誰に言うでもなく自分に呟くと、清香は足取り重く自分の部屋へと向かった。
 戸口からそっと覗くと、燦々と朝日が射す部屋のベッドの上は、昨日と変わらず丸まった布団が微かに動いていた。
「………」
 清香は散々躊躇った挙句、声を掛けることなくリビングに引き返した。
 文と正面向いて何を話して良いか分からなかったし、まだ三田と合わせたくないと思った。
(今日一日は好きにさせてあげよう…)
 もちろん自分が決めることではないが、とにかくそうしよう、と清香は考えた。
 朝食の用意を済ませると、勇気を奮って三田の部屋をノックした。
 失礼します… と声を掛けて入ると、カーテンを閉め切った薄暗い部屋で、三田がぼんやりとパソコンを眺めていた。
「…なんだ?」
「え? あ… 朝食です、旦那さま」
「…そうか、もう、朝か」
 眼を細めてカーテンから漏れる微かな朝日を見ると、三田は清香を手招きした。
「しゃぶれ」
 無機質な声で命令すると、清香は「はい、ご奉仕いたします…」と応じて三田の股間に跪いて、取り出したペニスを舐め始めた。
 とたんに、むっとした、今まで嗅ぎ慣れたことの無い匂いが清香の鼻を直撃した。
(あ、これ… お酒の匂い…)
 チラリと視線を走らせると、机の上にこの屋敷で滅多に見る事が無いウィスキーのボトルと、半分ほどに琥珀色の液体が注がれたグラスが眼に入った。
(旦那さま、お酒飲んでたんだ…)
 清香が記憶している限り、三田がアルコールと摂っていたことはない。少し、意外な気がした。
 しばらく、ぴちゃぴちゃ、という水音が部屋に響いた。しかし、清香がどんなに頑張って奉仕しても、三田は勃たなかった。
「…もういい」
 緩慢な動作で清香を押しのけると、三田はよろよろと立ち上がり「シャワーを浴びて飯を食う。着替えを出しておけ」と命じて部屋を出て行った。
 1人残された清香は、好奇心から三田の飲み残したグラスに鼻を近づけ、そのつんとくる刺激に思わず顔を反らした。
19名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 17:48:44 ID:A57Fb6MP
 三田はリビングに現れると、ちらりとこたつを見て、テーブルのイスにどっかりと腰を降ろした。
「……はどうした?」
「はい?」
 清香がよく聞こえなくて聞き返すと、三田は「いや、いい…」と呟いて、おもむろに朝食をつめこみ始めた。
「旦那さま…」
「……ああ」
「文ちゃんは、今日は、その… 調子が悪いみたいなので、寝かせていてもいいですか…?」
 清香が言うと、三田は食事の手を止めてチラリと清香を見た後、「勝手にしろ…」と呟いた。
 無言のままに朝食が終わると、何も言わずに三田はリビングを出て行った。
 清香も何も言わず、無言で朝食の後片付けを行った。
 そこから、孤独で、無機質な時間が始まった。
 1人で掃除をし、洗濯し、昼食を作った。三田は昼食に現れなかった。姉妹の部屋にご飯を持っていったが、文も返事をしなかった。
 久しぶりな、本当に久しぶりな1人の食事だった。1人で食べる食事は、出来立てなのにやけに冷たかった。漬物を齧る音が、やたらとリビングに響いた。
「…寂しい」
 ポツリと言葉がこぼれた。そして、ふと考えた。数十年前の、三田が子供の頃のこの屋敷は、こんな風だったのだろうか? 厳格な祖父と2人きりで、会話の無い毎日を過ごしていたのだろうか?
「私には無理だわ…」
 恐ろしくなって、清香はぶるっと震えた。無性に誰かと話したくなった。このまま1人で居るのは苦痛だった。
 しばらく考えたあと、少し早いが買い物に出かけようと思った。人で賑わう場所に行けば、少しは気が紛れると思った。
 昼食の片付けもそこそこに済ませると、清香は三田へドア越しに「買い物に行ってきます」と声を掛けると、逃げるように屋敷を出た。冬の木枯らしが冷たかった。
 清香は昨日から着替えていないメイド服の襟を立てて、足早にハローグッドに向かった。
20幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:49:08 ID:A57Fb6MP
 ドアの外から清香の声がした。三田はチラリとドアを見やったが、清香が入ってこないことを知ると、そのままグラスに視線を戻した。
 机の上のパソコンは、為替、株式、先物などの様々なデータを表示している。いつもだったら、そのデータを真剣に眺め、データが教えてくれる情報・意味を必死で解読していた。
 しかし、今日はそうしようとしても、ちっとも身が入らなかった。取引をしようという気にもならなかった。
(ふん、当たり前か。酒を飲んで取引するトレーダーなど、聞いたことが無い)
 三田は、昨日久々に飲み、今も自分の手の中にあるウィスキーを眺めた。
 酒は好きではなかった。アルコールは判断力を鈍らせ、脳を老化させると思っていた。しかし、ウィスキーは別だった。収集と愛飲が祖父の趣味だったのだ。(地下室も、元々は祖父がウィスキー保管のために作ったものだ)
 子供の頃、祖父が晩酌するウィスキーを、背伸びして一緒に飲んだ。ウィスキーを飲んだ時だけは、ほんの少し会話が弾んだ。
 だから、大人になってもウィスキーだけは飲み続けた。トレーダーになり、日常的に重大な決断が求められるようになってからは、だいぶ飲む機会が減った。そのため、地下室から運んだ祖父の遺産のウィスキーは、まだまだ量を残している。
「何にイラついている、敦…」
 三田は自問した。
 昨日、奴隷の1人の恋心を壊し、もう1人の希望を壊した。それだけだ。行くあてのないあの姉妹は、これからも自分を玩具として楽しませてくれるはずだ。
 そう結論付けたのに、不愉快な思いは消えなかった。ウィスキーに逃げても、暗鬱な思考が加速するだけだった。
「恋だと…? ふざけるな…」
 三田が恋し、愛した女性はすべて三田の元から去っていった。三田の嗜虐趣味に耐えられなかったからだ。口々に「変態!」と罵る女性の顔を、三田は代わる代わる思い出した。
 そんな自分に恋をする? ふざけた話としか思えなかった。どうせ途中で音を上げ、嫌になって逃げ出す。そうとしか思えなかった。
 文は自分の被虐心を受け止めたつもりでいるのだろう。しかし、自分の欲望はあんなものではない。もっと凄惨な、もっと激しい仕打ちをして、ああやって慕っていられるとは到底思えなかった。
「優しくは無い、逃げ出さないよう、壊れないよう、大事に使っているだけだ…」
 三田はぶつぶつと呟いた。昨日の夜から同じことばかりを言っていた。それが結論のはずだった。結論が出たからには、不愉快な思いなどしないで済むはずだった。
 なのに、自分はイラつき、滅多に飲まないウィスキーを手にしている。何かが異常だった、しかし、何が異常なのかが全く分からなかった。
「何にイラついている、敦…」
 もう何度目かわからない自問を、三田は繰り返した。
21幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:50:49 ID:A57Fb6MP
 ハローグッドは、相変わらずの賑わいを見せていた。
 カートも籠も持たずに店内を彷徨い歩いた清香は、歩き疲れて店内にあるベンチに腰を降ろした。喉が渇いていたが、クレジットカードしか持っていない清香は自販機で物を買えず、改めて店内の商品をレジに通すのも億劫だった。
「疲れたぁ…」
 ほっ、とため息を吐き、そして店内を眺めた。誰もが忙しそうに動いていた。清香は、1人ぽつんと取り残されたようで、屋敷とは違った孤独感を味わった。
「何よ… どこへ行っても一緒じゃない…」
 頬を膨らませて1人ごちる清香の目の前に、にゅ、とアルミ缶のお茶が差し出された。
「え!?」
 びっくりして振り返ると、サービスマネージャーが同じものを片手に持って立っていた。
「ほい、あげる」
「あ、ありがとうございます…」
 びっくりして受け取ると、サービスマネージャーは「よっこいしょ」と清香の隣に腰掛けた。
「飲んでみて、それ、試供品の健康茶なんだけど、評判わるくてモニターが足りないのよ」
 そう言われて、清香は恐る恐るプルトップを空けると、ちょび、と飲んだ。
「う… 渋いですね…」
 飲んだ途端に渋味が口の中を拡がった。とてもおいしい物じゃなかったが、今は水分がありがたかった。
「ありがとうございます」
 もう一度お礼を言って、清香は缶の半分ほどのんでから、「ふう…」とため息をついた。
「ユーザーに健康意識を喚起させる渋い味、らしいよ。普通においしく作りゃいいのにね、ウチの商品開発部は…」
 そう言って、サービスマネージャーはチラリと視線を清香にやった。
「…どうかしたの? 妹さんと喧嘩でもした?」
「…………」
 押し黙った清香を肯定と取ったのか、そのままサービスマネージャーは続けた。
「まあ、年が離れていると扱いが難しいかもね。私も1周り離れた弟が居るけど、クソ生意気で言うことなんざ聞きゃしないんだから」
「え? 私と文ちゃんは2歳しか変わらないですよ?」
 そう言われて、サービスマネージャーはまじまじと清香を見た。
「えっと… 清香ちゃんは年いくつなの?」
「16ですよ」
 その返答にサービスマネージャーは低く唸った。少なくとも10代後半、ひょっとしたら20歳を超えていると思っていたからだ。さらに言えば、文はもっと下、下手したら小学生かも知れないと考えていたからだ。
「色々とアンバランスなのね… あ、ごめん、そういうこと言いたいんじゃなくて、なんだか辛そうだったから」
 そう言われて、清香は視線を落とした。もちろん、全てを話すことなど出来ない。しかし、少しは吐き出したかった。
「妹に好きな人が出来て… でも、その人にとって妹の好意は迷惑で… 私も応援することが出来なくて…」
 清香は、ぽつりぽつり、と呟いた。
「その人は優しいけれど、その優しさは必要だから与えた物だって… それが、妹にはショックで…」
 そこまで聞いて、サービスマネージャーは「ううむ…」と唸った。まさか、ヘビーな色恋話が出るとは思わなかった。
 それでも、ここまでへこんでいる清香を放っておけなかった。
「じゃあ、その人は多分嘘つきなんだね…」
22幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:51:27 ID:A57Fb6MP
「嘘つき… ですか?」
 清香が驚いたように顔を上げた。
「まあね。優しい人ってさ、優しいから優しい人なんだよ。打算とか、計算とか、そういったものひっくるめても、人に優しくできない人はいるよ? だから、その人は嘘をついてるんだよ。変なプライドとか、思い込みとか、そういうものがあるんじゃないの?」
 そう言って、サービスマネージャーは自分も健康茶を飲んで、その渋さに顔をしかめた。
「適当なこと言ってるわけじゃないよ? 身近に似たようなやつが居るからね…」
「そうなんですか?」
「うん。ウチの店長。あの人、ホントは臆病でさ、良い結果が出ても信じないの。有能な自分に嘘ついて、『俺は駄目だ、俺は駄目だ』って自己暗示かけてんの。
 ま、それがアイツなりの自己鍛錬なのかもしれないけどね。でも、周りとしては思うわけよ。もう少し素直になってくれれば良いのに、って。そうすれば、もっと楽に信じて上げられるのに」
「信じる…?」
「そう」
 サービスマネージャーは大きく頷いた。
「嘘つきをみんなで信じてあげるの。信頼を通じて、自信を持たせてあげるの。私たちハローグッドのスタッフは、店長の能力を信じてる。
 だから、店長がいくら『俺は駄目だ』と嘘をついても、周りがゴーゴーとアクセル踏んであげるの。そうすれば、万事OK!」
 元気良く言って、サービスマネージャーは席を立った。
「さて、私は仕事に戻るよ。清香ちゃんも、あんまり思いつめないでね」
 そう言うと、サービスマネージャーは去っていった。残された清香は、ゆっくりと立ち上がった。
「信じる…」
 屋敷に来てからの事を、順々に思い出していった。
 ステーキ屋に連れて行ってもらった。携帯を買ってもらった。洋服を買ってもらった。部屋を与えてくれた。そして何よりも、姉妹一緒に居させてくれた。
 恥ずかしいことをたくさんされた。処女も奪われた。けれども、その思い出は嫌な思い出ではなかった。温かみがあった。
「信じるわ…」
 こたつで、3人寄り添って鍋を食べたことを思い出した。あのときの三田の体温は、いまでもしっかり覚えていた。
 清香は、きっ、と顔を上げると、大股で歩き出した。瞳には、決意の光が宿っていた。
23幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:52:07 ID:A57Fb6MP
 屋敷に戻ると、清香は三田の部屋をノックして「ただいま戻りました」と声を掛けた。
 ややあって、「入れ…」というくぐもった声が聞こえてきて、清香は三田の部屋に入った。その途端、むっとするアルコールの匂いが清香の鼻についた。
 三田は、朝と変わらぬ姿勢で居た。変わったことは、机の上のウィスキーのボトルの数が増えていることだった。
「…遅かったな、逃げ出したのかと思ったぞ」
 抑揚の無い声で三田は言った。清香は黙って三田の机に近づいて、ウィスキーの空瓶を集め、三田の手からグラスを取った。
「旦那さま、お酒の飲みすぎは身体に良くないです。今日は、もうお止めください」
「…女房面するな」
 そう言うと、三田は強引に清香からグラスを奪い取り、中身を一気に煽った。
「…んく、ぷはっ! 口答えして、お前何様のつもりだ、ええ!?」
 危険な目つきで三田は言った。アルコールのせいか、普段より乱暴な口調になっている。
「私は旦那さまの奴隷です」
 清香ははっきりと言った。三田はその言葉の強さを怪訝に思い、清香の顔をまじまじと見つめた。
「…なんだ、その眼は? 人を憐れむような眼で見やがって…」
「違います!」
「いいや違わない。子供を奴隷にしてセックス人形に仕立て上げる、イカれた男だと思ってるんだろう? ふん、その通りだ。不幸だったな、こんな男に捕まって…」
 三田は自嘲するように「くくくっ」と笑った。
「違います… 旦那さまの身体が心配なんです。それに、私たちは不幸じゃありません」
「不幸じゃない?」
 そう言うと、三田は大口を開けて「ハハハハハッ!!」と大笑した。
「嘘を言うのも大概にしろ! お前のマタには何が付いてる? お前の歳でクリトリスにオモリが付いてるヤツなんて、日本中探したって居ないぞ。
 妹も同じだ。無理やりあんなデカイおっぱいに育てられて、ケツ穴はチンポを飲み込むほどに拡張されて、これで不幸じゃないとでも言うのか!? 嘘つきがっ!!」
「…嘘つきは旦那さまです」
 体中の勇気を総動員して、清香は言った。
「…なんだと?」
「嘘つきは旦那さまです! そう言ったんです!」
 清香は三田をしっかり見て叫んだ。見る見るうちに三田の形相が怒りへと変貌した。
「…良い度胸だな。俺を嘘つき呼ばわりか… 覚悟はできてるんだろうな?」
 三田の言葉に、清香は震えながらも頷いた。
「よし、お仕置きだ。今日は手加減しないぞ…」
 三田がゆっくりと立ち上がって歩き出した。地下室に行くつもりなのだ。
 三田の後ろに付いて行きながら、清香は、ぎゅ、と両手を握った。
(文、お姉ちゃんも頑張る。昨日の文の勇気をちょうだい…)
 悲痛な覚悟を身に宿し、清香は地下室への階段を降りて行った。
24幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:53:01 ID:A57Fb6MP
 ぎりぎりぎりぎり…
 清香が身をよじるたびに、体中に掛けられた縄化粧がぎりぎりと音を立てた。
「…うぅ」
 激痛が絶え間なく股間から響く。清香は自分がまたがっているモノを、信じられないように見つめた。
 三角木馬。プレイ用ではない、明らかに拷問用の木製のソレは、鋭角に尖った先端を清香の股間に深々と埋め込み、ありえないほどの苦痛を清香に与えていた。
「うぅ… 痛い…」
 ソレを三田が地下室の倉庫から持ち出してきたとき、清香は、サーッ、と全身の血の気が引くのを感じた。
 それでも、上半身を縛られると、勇気を出して自分から進んでまたがった。そして、すぐに後悔した。
(痛い… こんな痛みが世界にあるの…?)
 気を抜けば、一瞬で失神してしまいそうだった。それくらい三角木馬の与える苦痛はすさまじいものだった。
「どうだ、撤回する気になったか? 誰が嘘つきだ?」
 傍らに立った三田が口早に言った。三田の手には、きらきら光るテグスが握られており、それは三田の手から伸びて清香のクリトリスリングに結んであった。
「うぅ… 旦那さまが、嘘つきです…」
 歯を食いしばって清香が答えた。三田は「まだ言うか…」と憎憎しげに呟き、三角木馬を、ごんっ、と叩いた。
「〜〜〜〜〜っ!!」
 振動によって倍加した痛みを、清香は歯を食いしばって耐えた。
 何とか痛みが引くのを待ってから、清香は切実に三田を見つめた。
「旦那さま… 旦那さまは優しい方です… 旦那さまに拾ってもらって、私たちは幸せです…」
「心にも無いこと言うな。お前たちは行くあてが無い。俺に気に入られようと嘘をついてるだけだ」
「嘘なんかついていません…!」
 清香は意地になって叫んだ。こうなったら、我慢比べだと思った。
「私たちは幸せなんです… 嘘じゃありません… 旦那さまの優しさに救ってもらったんです…」
 なおも言い募る清香を見て、三田はますます不愉快になった。
「口の減らないヤツだ…! いい加減認めないと、妹と一緒に屋敷から追い出すぞ!」
 吐き捨てた三田の言葉に、清香の中で、カチン、と音を立ててスイッチが入った。
「…出来もしないくせに」
「何?」
「出来もしないことを、言わないでよ!!」
 清香は、あらん限りの力をこめて叫んだ。
25幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:53:42 ID:A57Fb6MP
 初めて聞いた清香の強気な言葉に、三田は度胆を抜かれた。
「な、何だとっ!」
「追い出すなら追い出してごらんなさいよ! でも、どうせ出来ないわ! 優しいあなたには無理な話よ!」
「俺は優しくなんかない!」
「そう思い込もうとしているだけよ! どうして素直にならないんですかっ? 素直に…」
 そう言って、清香は痛みに耐えるように「くぅぅ…」と息を吐いた。
「素直に文の気持ちに応えてあげれば良いのに!」
「うるさい!」
 三田は激昂して、手に握ったテグスを力任せに引っ張った。
 清香のクリトリスに激痛が走った。清香は思わず腰を浮かせてしまい、引っ張られるままに腰が前に動いた。そして…
 ざりっ
「ぎゃあ!」
 股間から生暖かいものが垂れて、足首まで伝った。怖くて、恐ろしくて、清香は下を向いてソレを確認することが出来なかった。
「これで優しい? お前は脳にまでザーメンが回ってるんじゃないのか? このまま放っておいても良いんだぞ?」
 清香は「はーっ、はーっ」と肩で息をしながらも、きっ、と三田を見つめて首を振った。
「…いいえ、旦那さまはそんなことをしません。きっとあなたは、大急ぎで私に薬を塗って、暖かいベッドに寝かし、つきっきりで看病するわ。賭けたって良い…!」
「…何を賭けるつもりだ?」
「私の命を賭けて、信じています…」
 三田は激しく狼狽した。この、自分の半分も生きていない少女に圧倒されていた。
「どうして… どうしてそこまで信じられる? 俺はただのサディストで、お前は哀れな奴隷だぞ・・・?」
「愛しているから!」
 それは、清香の心からの叫びだった。
「あなたを愛しているから! サディストだって良い、奴隷だって良い… それでも私は旦那さまを愛しています。文だって同じです。愛しているから好きなんです! 愛しているから尽くしたいんです…!」
 叫んで、清香はまたも「はーっ、はーっ」と肩で息をした。股間の痛みが強すぎて、下半身の感覚が無くなり始めていた。
「愛だと… 愛だと…!」
 三田は混乱して叫んだ。
「そんなものがどこにある!? 俺はそんなものは知らない。お前たちだって知らないはずだ! 親の顔も覚えていない似た物同士だ! いったい誰がそんなものを持っている!?」
「けど、あなたが私たちにくれたのは、まぎれも無く愛よ!」
 叫んだ。意識が朦朧としてきた。酸欠と痛みが、確実に清香の意識を侵食していた。
「まぎれも無く愛なのよ… 旦那さま、信じてください… 私たちの愛は、あなたがくれたものなんです。あなたには愛があるんです。私たちは、それに応えているだけなんです…」
 その時、清香の身体がグラッと揺れた。
(だ、駄目だ! 気絶しちゃ駄目だ! 気絶したら、私の愛が嘘になっちゃう…)
 清香は鬼気迫る表情で三田を見た。
「お願いします… 私たちの愛を信じて… 自分の愛を信じて… 愛しています… 旦那さま…」
 それきり、清香は口を閉じた。しかし、その瞳だけは炯々とした光を宿らせ、三田を凝視していた。
(なんて… なんて女だ…)
 圧倒され、気圧されて、三田は心の中でそう呟いた。
(信じていいのか? 俺は、信じてもいいのか?)
頭の中を、自分を裏切った女たちの顔が浮かんでは消えた。そして最後に、とある老人の顔が思い浮かんだ。
(じいさん、俺は…)
 祖父は厳格で、優しさや愛など感じたことが無かった。しかし、生活の端々で心地よい瞬間は確かにあった。それが、祖父の愛だったとしたら…
 三田はそっと眼を閉じた。開いていたら、涙がこぼれそうだった。
「清香…」
 呟くように問いかけた。
「…はい、旦那さま」
「私は根っからのサディストで、女性をいたぶることでしか悦びを見出せない男だ」
「優しさの裏返しです。優しくしたいから、いたぶるんです」
「私は無口で陰気な男だ」
「旦那さまの言葉には温かみがあります。頼れる何かがあります」
「私は変態だ」
「私たちだって変態です」
 三田の問いに即答する清香に、三田は「ハハッ…」と軽く笑った。
「…負けだよ、私の負けだ。認める、私は寂しかったんだ。じいさんが死んで、愛情に飢えていたんだ」
 三田は、清香の身体を、ぐっ、と抱き上げて三角木馬から開放すると、そのまましっかりと抱き止めてお姫様だっこにした。
「信じるよ… お前たちの愛を…」
 そう言って、優しく清香にキスをした。
 清香は安心したように眼を閉じて一筋の涙を流した後、限界だったのだろう、そのまま眠るように気を失った。
26幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:54:04 ID:A57Fb6MP
「文… 文… 起きてくれ…」
 まどろみから覚めると、文の耳に一番聞きたくない声が聞こえた。
 それでも無視することが出来ず、文は布団の隙間からそっと顔を出した。
 ベッドの脇では、旦那さまが姉をだっこしていた。姉は、死んだように動かなかった。
「お、お姉ちゃん!?」
「清香を寝かせる。すまんが、どいてくれ」
 慌ててベッドを空けると、三田がゆっくりと清香をベッドに寝かせた。すでに縄は解かれて、清香は全裸になっていた。
 文は恐る恐る姉を覗き込んだが、ある一点を見ると、小さく「ひぃ!」と悲鳴を上げた。
「お、お、おねえ、お姉ちゃんのおまたが…」
「ああ、少し裂けている。すまん、私のせいだ。責任を持って治す」
 三田は消毒用アルコールと脱脂綿を取り出すと、清香のこびり付いた血を落とし、傷口をしっかり消毒した。
 軟膏も取り出し、丹念に傷口に塗りこむと、毎度おなじみのカットバンで傷口を覆った。
「とりあえずはこれで良い。起きたら抗生物質を飲ませるから、破傷風にはならんはずだ」
「ご、ごめんなさい!」
 文は突然土下座したかと思うと、額を擦り付けて三田に謝った。
「わ、私が変なこと言うから… 旦那さま、怒らないでください… 罰は私が受けますから、お姉ちゃんをいじめないでください…」
 三田はあっけに取られてそれを見ていたが、慌てて膝を付くと文の身体を抱え起こした。
「違う、文、そうじゃない。謝るのは私のほうだ。お前の好意を踏みにじるような真似をしてすまない」
 突然の三田の謝罪に、文は眼をぱちくりさせて、「え? え?」と混乱した。
「清香の怪我は私のせいだ。お前のせいじゃない。それと、私もお前のことが大好きだ。忘れないでいてくれ」
 文は、突然の三田の告白に戸惑っていたが、次第にその言葉の意味を理解すると、ぼろぼろと泣き始めた。
「うっ、うっ、うえぇぇぇぇん!!」
 感極まって号泣すると、三田の胸に飛び込んできた。三田はしっかりと受け止めると、優しく文の頭を撫ぜた。
「ばかぁ、ばかぁ… 旦那さまのばかぁ…」
「ああ、私が馬鹿だった。大馬鹿者だ…」
 泣きじゃくる文は暖かかった。自分は、どうしてこの暖かさを無視していたのだろうと、三田は激しく後悔した。
27幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:54:51 ID:A57Fb6MP
 しばらく、文は三田の胸で泣き続けていたが、次第に泣き止むと上目使いに三田を見上げた。
「旦那さま、私を愛してくれるんですか?」
「ああ、そうだ。昨日のは…嘘だ」
 三田がそう言うと、文はベッドで眠る清香をチラリと見て、「じゃあ…」と言った。
「じゃあ、私を抱いてください。おまんこに旦那さまの精液が欲しいです」
「文… もう無理してそんなことを言わなくていいんだぞ」
「違います! 欲しいんです! 私は、いつもお姉ちゃんが羨ましかったんです。恥ずかしいけど、お尻もお口も、好きです… けど、おまんこにも欲しいんです。お願いします、旦那さま」
 そう言って、文は両手を祈るように顔の前で組んで、うるうるした瞳で三田を見つめた。その愛らしさに、三田はくらくらした。
「わかった… 清香を起こさないように、静かにな…」
 三田は文を優しく床に押し倒すと、そっと口付けした。文が幸せそうに眼を閉じると、手早く文の服を脱がして全裸にした。
「ドキドキしてます… すごく…」
「私もだよ…」
 三田は文のおっきいおっぱいを口に含むと、乳首をころころと転がすように舐め始めた。一方の胸は、指が沈みこむまで握り、まさぐるように指を動かした。
「あぁん! おっぱいそんなに弄ったら駄目ですぅ…」
「気持ち良いか?」
 三田の言葉に、文は恥ずかしそうにこっくりと頷いた。
「おっきいおっぱいは好きですかぁ?」
「ああ、好きだよ」
「えへへ、よかったぁ」
 文は嬉しそうに笑うと、身体を下げて三田のズボンを降ろした。
「わ、大きい…」
 外気にさらした三田のペニスは、今までの中でもかなり大きかった。
「お口でご奉仕しますね」
「無理しなくていいんだぞ」
「ふぁいふょうふ…(大丈夫…)」
 文は大きく口を開けて、あっさりと三田のペニスを飲み込んだ。強烈なオスの匂いが、文の鼻腔に流れ込む。その匂いは、文の思考を蕩けさせた。
「ぢゅば、ぢゅば、ぢゅば… ぢゅぅぅぅぅぅ…」
「…気持ち良いぞ、文」
 褒めるように、三田は文の頭を撫ぜた。咥えさせたまま体位を入れ替えると、手を伸ばして胸とクリトリスを弄り始めた。
「んぉ〜〜〜…」
 気持ちよさそうに文が呻いた。文の股間は、すでにぐっちょりと濡れていた。
「んぐぅ… ぷはっ! ふぅ、旦那さま、もう、私…」
 文が、我慢できないと言った風に訴えた。三田は頷くと、文の身体に割って入るように押し倒した。
「ゆっくり入れるぞ、痛いなら痛いと言えよ」
 そう宣言して、正常位の体勢でゆっくり文のヴァギナに挿入した。
「うぅん… ああ…」
 普段なら途中で「痛い!」と悲鳴を上げる文だったが、今日はそんなそぶりも見せず、とうとう根元まで三田のペニスを咥え込んだ。
28幸福姉妹物語 第三話 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 17:55:26 ID:A57Fb6MP
「入ったぞ、文。痛くないか?」
「はい… 痛くないです…」
 答えてから、文は愛おしそうに自分の下腹部を撫ぜた。ここに旦那さまのおちんちんが… そう思うだけで、イキそうになった。
「旦那さまは、気持ち良いですか?」
「ああ、最高だ。文の膣内は狭くて暖かくて、とにかく気持ち良いぞ…」
 それは本心からの言葉だった。今日の文からは、何か今までとは違う『暖かさ』を感じられた。
「動くぞ…」
 優しく言って、三田はゆっくりと腰を使い出した。
 時間をかけてカリ首まで引き、また時間をかけて根元まで押し込む。いつもだったらしない腰使いだったが、今日はやけにそれが気持ちよかった。
「はぁ… 旦那さま、おかしい… 文、おかしいの…」
「ど、どうした?」
 三田が慌てて動きを止めると、文は「ここ、ここ」と下腹部をさすりながら言った。
「ここがすごくじんじんしてるの… おまんこの奥が、すごく切ないの… 旦那さまの精液が、欲しくて欲しくてたまらないの…」
 その言葉に、三田は思わずぐっときて、文の奥を力強く突いた。
「あぁん!」
「奥で出すぞ… しっかりと感じろ…!」
 そう言って、三田は我慢していた精を解き放った。熱い奔流が子宮に当たるのを感じて、文は絶頂に達した。
「ふぁぁぁ! 奥にぃ、奥に出てる… あはぁ、暖かい…」
 文は幸せそうに呟くと、腕を伸ばしてキスをせがんだ。三田はそれに応えてキスをしてやると、ペニスを抜こうとした。
「…ん?」
「やぁん、もっとぉ… もっとちょうだい…」
 一回では満足しなかったのか、文が三田の腰に足を回して、逃がすまいと捕らえた。三田は苦笑すると、萎える気配のないペニスを浅く動かした。
「わかった。何度でも注いでやる。文が満足するまでな…」
「きて、くださいぃ…」
 三田は覚悟を決めると、小刻みに腰を動かし始めた。文は嬌声を上げてそれを迎えた。
 …結局、4回文の中に出すと、文はとうとう失神した。完全にばてた三田がペニスを抜き取ると、文のヴァギナからぼこぼこと精液が大量に逆流した。
(こんなに出したのか…) 
 しばらく呆然としていたが、ふと我に返ると、タオルを持ってきて文の身体をきれいに拭いてやり、散らばった服を着せると、客間から布団を持ってきてベッドの隣に敷いた。
 布団に文をそっと寝かせると、三田は腰を上げて部屋を出ようとした。そのとき、
「旦那さま…」
 ベッドから声が掛かった。振り返ってみると、清香が眼を開けてこちらを見ていた。
「起きていたか…」
「そりゃ、隣であれだけあんあん言っていれば、嫌でも起きますよ」
 清香は苦笑しながら答えた。三田も「そりゃそうか…」と笑った。
「文を抱いてくれて、ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちのほうだよ。初めてかもしれない、愛を感じたセックスは…」
 そう言うと、三田はすまなそうな顔をした。
「すまん、一番きつい思いをしたのはお前なのにな… しばらく歩けなくて不便だと思うが、我慢してくれ」
「大丈夫ですよ」
 清香はくすりと笑った。
「旦那さまが看病してくれるんでしょう?」
 三田は、あっけに取られたような顔をして、それから呆れたように笑った。
「そういえば、そうだったな。ああ、任せておけ。食事からトイレの世話まで、全部面倒を見てやる」
 そう言うと、三田は清香に近づいて優しくキスをした。
「だから、今は休め。流石に私もくたくただ。まずは寝てから、それからだ」
 三田の言葉に、清香は「はい」と答えて眼を閉じた。
 三田が部屋を出ようとすると、またも「旦那さま」と清香が声をかけた。
「どうした?」
「あの…」
 清香は恥ずかしそうに顔を半分布団に埋めて言った。
「これからも、私たちを可愛がって、いじめてくださいね」
 その言葉に、三田は泣き笑うような表情になると、ついで照れくさそうに笑って言った。
「まかせておけ…」
29名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 17:56:06 ID:A57Fb6MP
 それから、少し月日が経った。
 世間はいよいよ年の瀬の装いを強めていき、今日は聖誕祭、クリスマスだった。
 清香の身体も順調に回復し、まだセックスは無理そうだったが、日常生活には支障がない程度には回復していた。
 姉妹の調理した七面鳥を、こたつでおいしそうに食べると、頃合を見て三田は姉妹にプレゼントを渡した。
「ほ、ほんとに貰って良いんですか?」
「わぁ、わぁ、プレゼントだー!」
 はしゃぐ姉妹が包みを開けると、清香の箱にはシックな腕時計が、文の箱にはカラフルなカチューシャが入っていた。
「ありがとうございます、大事にします!」
「旦那さまありがとう!」
 はしゃぐ姉妹を微笑ましく見ながら、三田は数枚の書類をテーブルに置いた。
「あと、これもだ。ただ、これはプレゼントじゃない。お前たちが自分で決めることだ」
 その書類の題字『未成年後見人 受諾書』を読んで、文は首を傾げた。
「みせいねん… うしろみる…」
「未成年後見人よ、文ちゃん。あの、旦那さま、これは…?」
 清香が怪訝な顔をして尋ねた。字面からある程度のことは予想できたが、まさかそうだとは思わなかった。
「この書類にサインすれば、私はお前たちの後見人、つまりは保護者になる。そうすれば、法的にお前たちを守ってやることが出来る。あと、色々と特殊な手配もしたから、監督官が来たり、お前たちの素性が調べられることもない。
 お前たちがもし良かったらだが、私にお前たちの保護… っておい!」
 三田が思わず言葉の途中で突っ込んだ。見ると、清香がさっさとペンを用意して記入欄に自分の名前を書き込み、文にも「文ちゃん、ここに名前を書くの… そうそう、それでOK」と書かせてあっさり書類を完成させると、「はい、旦那さま」と書類を三田に返した。
「お前… もう少し考えたらどうなんだ?」
「考える余地、あるんですか?」
 そう言うと、清香はごそごそと三田の隣に移動して、やおら三田に抱きついた。
「あ、文もー!」
 文も叫んで立ち上がると、三田に背後から抱きついた。
「お、おい…」
「嬉しいに決まってるじゃないですか!」
 清香は、涙を流して叫んだ。
「お金とか、色々大変だったんでしょう…?」
「まあ、そうだな。クリスマスに間に合わせたかったから、色々と無茶もした」
 清香は、三田をぎゅーっと抱きしめた。文も、よくわからなかったが、ぎゅーっと抱きしめた。
「旦那さま、大好き、愛してます…」
「私も、私も大好きですっ!」
 2人がかりでぎゅーっと抱きしめられて、三田は自分の頭がのぼせ上がるのを感じた。
(たまらんな、これは…)
 甘い匂いと温かみは、幸せな空気となって3人を包んだ。










                                                        ―第三話 完―
30幸福姉妹物語 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/23(日) 18:02:40 ID:A57Fb6MP
以上で、幸福姉妹物語第三話の終了です。

今回は投下を伸ばしたり、勝手に次スレ立てたりと、さんざんわがままして申し訳有りませんでした。

区切るとしたら、今回で第一部が完結となります。

次回からは新展開。第四話は、甘甘なエロエロエピソードです。
清香が裸エプロンになったり、文が爆乳ブルマで運動測定したり、ついでに三田がデレまくります。

一応、来週末投下を予定していますが、今回のこともあるので、かなり未定です。
あるいは、前スレに別SSを投下するかもしれません。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。それでは、本日は失礼します。
31名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 18:25:42 ID:nn6ylKGS
初GJをいえることがこんなにうれしいことはないよ
32名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 18:28:02 ID:ou9SnnOh
GJ!

デレる旦那様とな…!
33名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 18:32:30 ID:GiEWwhld
>>30
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
清香すごいな。この姉妹本当健気でかわいい
ほとんど最終回みたいな展開だけど、第一部……だと……!?
あと三話何を見せてくれるというんだ

いやー、GJです。そして次回楽しみ
旦那様デレ期突入ッスかwww
34名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 18:43:57 ID:a0NqhCmj
ぐっじょ!

ついにデレが……
35名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 19:47:23 ID:2xs9dk/r
ここ保存庫みたいなのないのか?
36名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 22:16:52 ID:RmqLu1+W
サービスマネージャーGJ
37名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 22:47:32 ID:aM65zXFl
>>24-25で泣いてしまった
38名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 23:45:27 ID:Mp59V538
GJ!!!!もの凄いボリュームだった。
39名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 00:10:08 ID:fMoQucWo
すげえ…!GJしか言えない!
スレ立てまでしてくれてありがとう>>1
デレ三田を超楽しみに待ってます!!
40名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 05:07:34 ID:3Zb46ynJ
エロパロ板で感動したの初めてかもしれないw
とにかくGJ!すごく良かったです
でも毎回こんなボリュームで来週とかあんま無理しないでくださいね
41名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 11:46:51 ID:B3xZmfg+
>>40
>エロパロ板で感動したの初めてかもしれないw

自分もー!!涙が滲んできてびっくり!!
42名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 23:15:14 ID:bBtePT6b
GJだけど地の文がほぼ全て「○○した。」になっているのと
時々視点が変になるのはなんとかしたほうがいいかもしれんね。
43名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 14:00:53 ID:nRUat7pt
あと流石にレス700台、KB450以下の次スレ移動は早いわ
長文職人さんが二人も埋め参加してくれてるが未だ埋まらないし
区切りよく投下したい気持ちはわかるがな
44名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 15:06:04 ID:E07rODgX
スレ立てはえーよ。他の職人さんたちのおかげで前スレ埋まりつつあるからいいものの。
自分で何か書いて埋めるか埋まるまで待ってからスレ立てして投下しろよ。
45幸福 作者 ◆SJ/FiOadQY :2008/11/25(火) 15:45:28 ID:Rz9xbcIw
スレ立てに関して、本当に申し訳ありませんでした。もし、次回同じような機会があったら、アドバイス通りにします。


また、前スレをに作品を投下された職人さん方も、本当にありがとうございます。
私も今夜中には投下したいと思います。

感想を下さった方々も、本当に感謝しています。とても嬉しいです。ありがとうございました。
46幸福作者さんGJ!:2008/11/25(火) 16:02:06 ID:NHQE28d3
新スレ立てて投下してくれたお蔭で読み易かったです
住人としては職人さんが活躍して頂ける事が嬉しいです
雑音等気になさらず職人さんが使い易い環境で書いて頂ければと思います。
47名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 19:41:13 ID:klwiZBUA
TEST
48名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 20:23:31 ID:XQd2jfjQ
>>46
そういう煽りはかえって職人さんに迷惑になるから気をつけて
せっかくの謝罪が台無しになる
49名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 21:57:18 ID:klwiZBUA
さてと、女の子を助けるため金稼ぎの作業に戻ろうか
50名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 01:17:34 ID:b5vzJbQ9
>>46
職人乙
51名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 10:49:27 ID:eifUNvLE
貧乏な女の子にたまたま持っていた宝くじをあげたら
実はそれが一等に当選していた
という夢を見た
52名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 10:58:10 ID:qoD/fVYx
お金持ちの俺が孤児院を経営して、女の子に囲まれてウハウハ
という夢を見ている。

保守です。
53名無しさん@ピンキー:2008/11/27(木) 17:15:59 ID:XxY5pNIq
前スレラスト、続きまってゆきゃら!
54名無しさん@ピンキー:2008/11/28(金) 12:02:04 ID:B0eeJcHG
ちょうど埋まったのか

バイトの人GJ


薬ってだけでもうなんかエロいよね
55名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 02:51:49 ID:RDf4yTSh
あやしいバイトの人
一人称の文体なのに面白くて、エロじゃなくてもいいくらい先が気になる
続きまってるぜ!
56名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 20:00:15 ID:G9HhWT7b
保守職人全員乙&GJ
しかし保守のためにこんなにすぐSS出してくれる職人いるスレってのもすげーな
57名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 06:46:33 ID:5q8MKWF4
借金姉妹
58名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 12:39:47 ID:9xEmeQOM
犠母姉妹
59名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 18:51:46 ID:j1xdqziq
今週の三田さんは無しか……
60幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/11/30(日) 20:14:57 ID:/x1HYeJ6
すみません。

先週はいきなり職場の配置換えでムチャ忙しくて、作品を仕上げられませんでした。

その代わり、今週は異常に暇なので、がすがす書いて投下したいと思います。

とりあえず、明日明後日くらいには本編を、今週内に2〜3本外伝を投下したいと思います。

お待ちくださっている方には申し訳有りませんが、もう少しお待ちください。
61名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 22:02:56 ID:4CdauvPE
明後日には読めるんだ
ハイペースな投下感謝および楽しみにしています
62あやしいバイト:2008/12/01(月) 02:26:39 ID:d4GUs2ge
前スレが埋まればそれでいい、くらいにしか思ってなかったので
新スレに投下するのもはばかられるんだけど(なにしろまだ全然エロくないからw)
埋め草とか保守とか大好きなんでご容赦。


契約書を見て手が止まる。
「住所、無いです」
「あ、そうか。いいや、ここのを書いておいて」
川島さんは胸ポケットの財布から免許証を出した。
書き写す。
ペンのキャップを閉めると、川島さんが
「じゃ、これ」
と厚みのある封筒を渡してきた。
薬? 薬ですか? もう?
中を覗く。
「うわ!?」
万札だ。
束だ。
いや、銀行で見るような、紙で巻いてある束じゃない。そんな分厚さでもない。でも私にとっては充分束だ。
「実験が終了した時点で残りを渡すので、それは前金」
「前金!?」
全部じゃないの!? こんなにたくさんあるのに!?
ちゃんと数えてないよ。でも20万はある。なのに、全部じゃない、って言う。
『川島さんったらなんてお金持ちなの』なんてことはさすがに思わなかった。
やばい。これは本当にすっごくやばい実験をさせられるんだ。
現金を見たとたんにものすごいリアルが襲ってきた。
封筒を持った手が震える。
なんでサインした、私。
臓器売るのと変わらないんじゃないのか、これ。
川島さんはパソコンの前に座った。
「僕はまだ仕事あるから。お腹すいたら冷蔵庫の中のもの適当に食べて。フロも好きなタイミングでどうぞ。眠くなったら――」
その瞬間だけ川島さんはちょっと怖いような真剣な目で私を見た。
「薬を飲んでもらいたいので教えてください」
そうして台所に突っ立ったままの私に背を向けてパソコンに向かった。
このまま逃げちゃえば?
お金あるんだよ。逃げられるかも知れないよ。
私は封筒からお金を出して、一枚ずつちゃんと数えた。
ほんとに20万入ってた。
20万あれば。
でも20万しかない。
これが無くなる前に何か稼ぐ方法なり住む場所が見つかってればいいけど、その補償はない。
なんか妙に貧しいな、と思ったことはあっても、父さんはちゃんと家に金を入れてくれた。
就職した兄ちゃんも家に金を入れてくれた。私の高校の学費も出してくれたし、
屋根があってすきま風も入らないちゃんとした家に住まわせてくれて、
食べる物も贅沢はできないにしても普通に三食食べさせてくれてた。
それはすごくありがたいことだったんだ。
解散、と言われる今日まで、父さんは――まあ兄ちゃんの力もあったけど――頑張ってたんだ。
なんと言われようと私は世間を知らない、高校を卒業したばかりの甘ちゃんで、
しっかりした屋根や壁のないところで寝た経験といえばキャンプのテントくらいのもので、
本当の意味でお金を持っていない怖さを知らなかったんだ、ってことに今やっと気が付いた。
63あやしいバイト:2008/12/01(月) 02:28:13 ID:d4GUs2ge
そろり、と本の壁の隙間を縫ってベッドの上へ移動する。
この部屋は他に居場所が無さそうだ。
お腹は空きすぎて、なんだかよくわからなくなってしまった。だから。
お金をもらう、ってことの怖さと大変さを私は覚悟した方がいい。
「川島さん」
「なに?」
「寝ます」
「眠くなった? フロは?」
川島さんは目も上げずに私と会話する。
「さっき、先にシャワーだけいただきました」
先にお湯をいただくんだから声をかけるべきだろうと思ったけど、仕事のじゃまをするのも悪いと思って黙って入った。
「僕のシャンプーや石けんで平気だった? 明日にでも結衣ちゃん用のを買いに出ようか」
「平気です」
そういうものを揃えないといけないほど長期の実験なのかな、と想像したらまた寒気がした。
布団を被る。
「わぷ」
男の人のニオイがした。
母さんが死んでから、父さんと兄ちゃんとの三人の暮らしだった。だから男のニオイなんて嗅ぎ慣れてるはずだった。
でも、父さんとも兄ちゃんとも違う。
川島さんはめがねを外して、目頭のあたりを揉んでいた。
仕事はまだ終わってないのか、その顔をパソコンのモニタの光が照らしている。
ふい、と立ち上がり、川島さんは台所で水を汲んできた。
そして、瓶に入ったカプセルをひとつ取り出す。
それ、インスタントコーヒーの空き瓶じゃないですか? そんなのに入れてて平気なんですか、その薬は。カプセル、しっけませんか?
「はい」
差し出された手のひらに乗ったカプセルに、そろりと手を伸ばす。
震える。
「あ」
摘んだ指先に力が入っていなかったのか、それとも逆に力が入りすぎて滑ってしまったのか、
カプセルはつるりと逃げて床に落ちた。
川島さんがかがんで拾う。
「3秒ルールでいい?」
緊張しているせいだろう。こんなことで笑ってしまった。
頷くとコップを渡された。
一口水を含む。
64あやしいバイト:2008/12/01(月) 02:28:46 ID:d4GUs2ge
カプセルをもらおうと手を出す。
「また落ちちゃうといけないからね」
小さく笑って川島さんは私の手からコップを取ると、自分も一口飲んだ。そしてカプセルを自分の口に入れる。
なにをしようとしてるんだ、とかそんな疑問を挟む余裕もなく、川島さんの唇が私の唇と重なった。
うそー!?
叫びそうになったのがまた悪かった。
口を開いちゃったのだ。
そのせいで、川島さんの口の中だったカプセルは水と一緒に私の口の中に流れ込んできて、
しかも一緒に川島さんの舌も入ってきて、そろっと唇の内側なんかを舐められちゃったせいでビックリして口を閉じたら――。
そのあきらかにやばそうな薬をしっかり飲み込んでしまった。
唇が離れた後で自分の唇を両手でしっかり押さえたって意味はない。意味はないけど。
「あらら。真っ赤になって。かわいいなあ」
川島さんはちょっと楽しそうに笑った後で、はっとしたような顔をした。
「まさか初めてだったりしないよね。十七って言ってたよね」
「……初めてです」
世間での十七歳がどうかは知りませんが、残念ながら私にはそういう機会はありませんでしたよ。
うなだれてしまう。
「それは……ごめん」
「いえ」
「せめて聞いてからにすれば良かった」
するのは決定事項だったんですか!?
驚いて、ベッドの横に立っている川島さんをがばと見上げた。
川島さんはなんだかすごく優しい顔で笑って頭を撫でてくれた。
「おやすみ。良い夢を。そしてお願い。夢をちゃんと覚えたままで起きてきて」
夢を覚えたまま?
そりゃ、すごく難しいお願いだと思います。
でもそれが私の仕事だ。
私は頷くとベッドの中に潜り込んだ。
知らない男の人のニオイはなんだか妙に落ち着かなくて、そのそわそわした感じが不思議と嬉しくて、
私はすぐに眠ってしまった。


普通、ってものを知らないけれど、こういう睡眠時の実験って、脳波をはかるような装置を付けるもんじゃないだろうか。
たいていの人は夢を見る。
夢の役割については諸説あって、記憶の整理だったり、脳がリラックスしている間にいろんなものを垂れ流し、だったり。
そういう話は専門家にまかせる。
とにかく私はよく知らない。でも、やっぱりこの部屋でそういう実験って無理があるんじゃないだろうか。
「そりゃ、大学にはあるにはあるよ」
あるんじゃん。脳波測定装置。今名付けたから正式名称かどうかわかんないけど。
「でもあそこできみ、眠れる?」
一度しか足を踏み入れたことはない、川島さんの研究室は、何に使うのかわからない機械が置いてあった。
寝る場所は無さそうだったし、ソファで寝るのは落ち着かない。
いやでも、この部屋もかなり似たり寄ったりじゃないですかね。
65あやしいバイト:2008/12/01(月) 02:30:39 ID:d4GUs2ge
寝ている間に夢を見た。
たいていの夢がそうだろうけど、変な夢だった。
父さんが「松下家解散」と叫ぶやいなや走って逃げた。
呆然とする私と兄ちゃんの前に背も高けりゃ肩幅もがっしりな男の人がタキシードで現れたかと思うと
兄ちゃんを小脇に抱えた。いつの間にか兄ちゃんはウェディングドレスだ。
びっくりしているとその人は「妹、オールボアール!」と巻き舌で別れの挨拶をし、
指を揃えたピースサインをこめかみのあたりからぴっととばした。
兄ちゃんも付き合いよく、「妹よ、元気でな! ダスビダーニャ!」と叫んだ。
ステキにバカな兄ちゃんだと思っていたが、一応別れの挨拶を言える人だった、と知って安心した。
一人取り残されて困っているとねずみがやって来た。
ねずみは「おむすびころりん、すっとんとん」と歌うと私に赤と白で塗り分けられたカプセルを差し出した。
「飲んでください」
でかいよ。飲めないよ。
困っていると、
「おむすびをくれた人には必ずあげなくてはいけないのです」
と言って、ねずみはずいずいと手を突きつけてくる。
「私、おむすびなんてあげてないよ」
と言うと
「いいえ、たしかにあなたがくれました」
とねずみは自分の後ろをゆびさす。そこには私のリュックから溢れんばかりのばくだんおにぎりが。
そうか。なら私があげたに違いない。
カプセルを受け取るけど、やっぱり飲めない。
「じゃあ、飲ませてあげよう」
ひょいとカプセルを取り上げた長い指に見覚えがあった。
あ、とか、え、とか驚きの声を出す間もなく、なんか柔らかいもので口を塞がれた。
塞がれて、なんか巻き付いてきて、ぎゅってされて、苦しくて……。
「うわああああ!」
飛び起きたら横に川島さんが寝ていた。
そりゃあね、部屋の主ですしね。他に寝る場所無さそうですしね。
高額のバイト料を払ってくれる雇い主ですけどね。
でも私、一応女なんですよ。
なんで抱き枕扱いなんですか。
川島さんはのんびりと
「あ、起きた? どんな夢だった?」
と聞いてきた。
「おかげさまでばっちり覚えてますよ!」
「何を怒ってんの」
川島さんはノートパソコンの前へ行き、私が話す夢の内容を記録していった。
「すごいなー。昨日の出来事を見事になぞっている」
「そういう薬なんですか?」
私はベッドから抜け出すと、本の壁を崩さないようにして台所へ行き、水を飲んだ。
66あやしいバイト:2008/12/01(月) 02:32:25 ID:d4GUs2ge
「いや」
彼は言葉少なに否定する。
「薬の効能は言えません。先入観が働いたりプラシーボ効果が起こるといけないから。
だから何もしない薬です、としか言わない」
「はあ」
何もしない薬を飲むのに、なんであんな契約書がいるんですか。
思い出したらまた怖くなった。
「寝直す?」
パソコンを見つめたまま川島さんは言った。
「その場合どうなるんですか? また薬を飲まないといけない?」
「うん」
もしかしたらあの薬は、夢を覚えたままで起きられるようにする薬なのかも知れない。
それだけじゃないだろうけど、そういう効果もあるのかも知れない。
脳天気なことを考えて、それでもやっぱりわからない薬を飲むのは怖くて、私は起きていることを選んだ。




やたら「改行が〜」って怒られたんで妙なところでぶっちぎれますが今日はここまで。
67名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 11:15:54 ID:zMB4JMRq
まさか続きが読めるとは!
68名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 11:44:01 ID:lzJz08k6
あやしいバイト、GJです。
これからも期待しています!
69名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 15:15:40 ID:G87T9nkk
結衣タンかわいい!
続き楽しみにしてます!!
70幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:32:31 ID:8YMSkO6f
こんばんは。こっそり投下します。

今回の注意点は、スカトロレズシーンがあるところでしょうか… 苦手な方はスルーをお願いします。

では、幸福姉妹物語 第4話、始まります。
71幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:33:07 ID:8YMSkO6f
「文ーっ! 隠れてないで出てらっしゃい!」
 それなりに長かった寒気が去った春の初め、四月の夜。夕食を終えた屋敷に清香の怒鳴り声が響いた。
 春夏用にと新たにあつらえて貰った新品のエプロン・ドレスを、ぱたぱた、と揺らして、清香は屋敷の中を行ったり来たりしながら文を探していた。
「どこ行ったのかしら… あ、旦那さま、文を見ませんでしたか?」
 困り果てた清香がリビングに戻ると、三田がいまだに収納されていないこたつに脚を突っ込み、ノートパソコンを置いて仕事をしていた。
 新しく導入したこの暖房器具を、三田は大層気に入ったようだった。これまでは、あまり部屋から出て来ない半引き篭もりの生活だったが、ちょくちょくリビングに顔を出しては新しく買った座椅子に座り、ノートパソコンで仕事をしていた。
「文… さあな…」
 清香の問いに、三田は言葉少なに答えた。
「あの子、またお勉強を逃げ出したんですよ。まだ初めて2週間なのに、もう3回目です!」
「地下室は? 前はあそこに隠れていただろ?」
「もう、探しました。 …旦那さま、本当に知りません?」
 清香は、顔を、ぐーっ、と三田に近づけた。
「知らない」
 三田はきっぱりと答えたが、いつも寄せている眉根が不自然に、ピクッ、と動いたのを、清香は見逃さなかった。
「…失礼します」
「あ、こっ、こら!」
 三田が制止する間もなく、清香は三田の下半身を覆うこたつ布団をめくり上げた。
 そこには、身体をすっぽりとこたつに入れて、三田のペニスをもごもごと咥え込んでいた文がいた。
 突然開けた視界の中に、怒りの形相の姉を見つけた文は、ペニスを咥えたまま「あ〜あ…」と唸った。
「文… 約束、したわよね…?」
 押し殺した声で清香は言うと、文はペニスを、ちゅぽん、と離して――それでも、名残惜しそうにペニスを両手でしごきながら――言った。
「だって… 今はご奉仕の時間だもん」
「今はお勉強の時間! 旦那さまも許可してくださったでしょう! 1日1時間、ちゃんと勉強するっ!」
 清香はまなじりをきりきりと吊り上げた。
「む〜、勉強嫌いだよぉ…」
 文が手の動きをますます早めながら言った。平静を装っていた三田が思わず呻き声を上げた。
 それを聞いた清香が、きっ! と視線を三田に向けると、底冷えのする声で言った。
「旦那さま…!」
「あ、ああ…」
 長身で彫りの深い清香が怒るとかなり怖い。三田はこの数ヶ月の間で、そのことを痛いほど思い知っていた。
 だから、ここは清香サイドに立つことにした。
「んっ… あー、文。勉強は大切だ。私も学生時代にしっかり勉強していたから今の生活ができる。興味が無いのもよくわかるが、今のうちに吸収できるものは出来るだけ吸収しておけ」
 威厳のある声でもっともらしい事を言ったが、説教相手にペニスをしごかれていては全く説得力がなかった。
「う〜… あっ、離して〜!」
 なおも渋る文に業を煮やしたのか、清香は文の襟首を掴むと強引に文をこたつから引っ張り出した。
「ちゃんと立つッ! あんまりぐずると、お仕置き…」
「してくれるの!?」
 文がきらきらした瞳で叫んだ。
「…は、しないけど、今度の買い物から文の好物のプリンが無くなるかもしれないわね。代わりに、身長が伸びるまずいプロテインジュースを買ってこようかしら? 私はもう伸びる必要は無いけれど、文はもう少し大きくならなきゃね?」
 清香の言葉に、文は「うげー…」と顔を歪めた。
「うぅ… わかったよ… 勉強するよ…」
 文がしぶしぶと言った。清香は一瞬で相好を崩すと「えらいえらい」と文の頭を撫でまくった。
「そういうわけですので、旦那さま。あと、1時間ほど待っていてくださいな」
 清香はそう言うと、足取り重い文を連れてリビングから去って行った。
 1人取り残された三田は「やれやれ…」と呟くと、居住まいを正して本格的に仕事に没頭し始めた。
72幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:33:54 ID:8YMSkO6f
 三田が姉妹の保護者になったクリスマスが過ぎ、除夜の鐘やら初詣やらの新春が過ぎた頃に、清香は三田にあることを懇願していた。
 それは、文を学校に通わせて欲しい、ということだった。
 自分はともかく、妹はまだ義務教育が終わっていない。状況が流れるままに学校という存在を無視してきたが、ひとまず落ち着いた身となっては、なんとか義務教育だけども終わらせてあげたかった。
「お願いします、旦那さま! 家事やエッチのお相手は私が2人分こなしますから!」
 一生懸命頭を下げる清香に、三田はあっさりと許可を出した。逆に、望んで保護者になったのに、そういうことに気が回らなかった自分を恥じた。
「お前も復学していいんだぞ? 地元の高校なら顔が利くところがいくつかある。無試験での編入も可能なはずだ」
 そう言って三田は清香にも復学を勧めたが、清香は寂しそうに笑って首を振った。
「それは… 本当にありがたいんですが、私には旦那さまの世話をさせてください。少し、怖いんです、学校に行くのが… それに、高校は義務ではありませんから」
 その言葉の意味を、三田は追求することが出来なかった。前の学校で何かあったのかと疑問に思った。
「でも、安心してください。しばらくしたら、通信制の高校に通うつもりです。いつになるのかは分かりませんけど、大学にも通いたいと思っています。その時は、また旦那さまに甘えてしまうかもしれませんけど…」
「…そうか、わかった。それがお前の選択ならば、それを尊重しよう。それと、学費のことなどは些細な問題だ。お前たちが気にすることではない」
 その三田の言葉に、清香は苦笑をしながらもしっかりと頷いた。

 それから、三田は仕事の合間に文の入学準備を整えた。
 クリスマスのときに、対外的にも戸籍的にも姉妹を自分の姉の子、つまりは姪として処理していたので、戸籍の問題はクリアしていた。
 ただ、文の就学過程は誤魔化しようが無く、方々に手を回して便宜を図った結果、今の学年よりも1つ下の学年での復学が決まった。
 来春から学校に通うことを聞かされた文は最初は喜んでいたが、清香は通わないことを知ると怒り、しかし最後には悲しそうに納得した。
「お姉ちゃん… 本当に文だけ良いの?」
「うん、大丈夫。お姉ちゃんもその内ちゃんと通うから」
 文が「絶対だよ!」と念を押すと、清香はしっかりと頷いた。

 そうして、時が流れて4月の初め、文はほぼ1年ぶりに学校に復学した。
 玄関の先から、真新しいセーラー服に身を包んで自分の母校に通学する文を、三田はなんとも複雑な心境で見送った。
「ふん… 妙なものだ。あの制服をこの屋敷で見ることになるとはな」
「旦那さまは、どんな学生だったんですか?」
「ふむ… 詳しくは憶えていない… ただ、」
「ただ?」
 清香が問うと、三田は薄く笑った。
「多分、今と変わらない性格をしていたんだろうよ」
 そう言うと、清香の背を押して三田は屋敷へと戻った。
73幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:34:19 ID:8YMSkO6f
「おーわった! はい、お姉ちゃん!」
 文が指定されたノルマのドリルを清香に渡すと、う〜ん、と伸びをして、ばたん、と倒れた。
「ん〜、ちょっと待ってね… …………うん、よくできてる」
 ドリルの答えあわせをして、(もちろん清香も自分の勉強をしている)清香は何度か頷いた。
「今日はもう良いわよ。お疲れ様、文」
「うん、お疲れ様! お姉ちゃんは?」
「私はもう少ししてから。…行っといで。もし、私が必要だったら呼んでね」
 姉から許可をもらうと、文は急いでリビングに取って返した。
「だんなさま〜! えっちしよっ」
 元気良く文が叫ぶと、ノートパソコンの画面を気難しげに睨んでいた三田が「うん…」と唸った。
 仕事の邪魔にならないようにと静かになった文をチラリと見ると、三田は、ちょいちょい、と文を手招きした後に、返す手で軽く膝を叩いた。
「えへへへへ…」
 文は嬉しそうに笑い、三田が座る反対側からこたつに潜って三田の脚の間から、ぴょこ、と顔を出した。そして、そのままちょこんと三田の膝の上に座った。
「ん…」
 視線はノートパソコンから離さず右手もマウスを握ったままだったが、三田は左手を文のおっきいおっぱいに当てると、こねるように揉み始めた。
「あぁん…」
 すでに文の一番の性感帯となっているおっきいおっぱいを弄られ、文は気持ちよさそうに喘いだ。
「…んぅ、お仕事、忙しいんですか?」
 話しかけても大丈夫と感じて、文は三田に訊いてみた。
「いや… 今日は安定していたな… 今しているのは小遣い稼ぎのようなものだ」
 そう言うと、三田はノートパソコンを立ち下げて、ぱたん、と閉じた。
「学校の方はどうだ…?」
 両手を使って本格的に愛撫を始めてから、三田は訊いた。
「ううん… まだ、よくわかんないです… 授業もまだ始まっていないし…」
「友達は?」
「…まだ、誰ともしゃべってないです」
 まずい事を訊いたな、と三田は思った。確かにこんな田舎の転校生では、最初は警戒されるかもしれないと思った。
「まあ、ゆっくりやることだ。最初から焦らなくてもいい。ほら、こっちを向け」
 少し落ち込んだ文を励ますように言うと、三田は文の顔を自分に向かせ、噛み付くように唇を合わせた。
「ん、ん、ん〜…」
 たっぷりと唾液を送り、散々舌で文の口腔をかき混ぜてやると、文はすぐにうっとりとした顔つきになった。
「ぷはっ! ああ、旦那さま…」
口唇を離した文は、しばらく気持ちよさそうに胸を弄られていたが、三田の手を押さえると「ご奉仕の続きします…」と言って、身体を反転させた。
「…少し、変わったことをしてみようか」
 三田が、ポツリ、と呟くと、こたつに潜ろうとする文の身体を、クルッ、と上下反転させた。
「きゃっ!」
「しっかり支えているから安心しろ。落としはしない」
「う、うん…」
 いきなり天地が逆になって混乱した文だったが、三田がそう言ったのと、両腕を回してしっかりと抱きとめてくれたので落ち着くことが出来た。
(支点が変… あ、でもおちんちんが目の前)
 あーん、と口を開けてペニスを咥え込もうとすると、亀頭が口唇に触れた瞬間、三田が両腕の力を緩めて文の身体を、ストン、と落とした。
 文の口に入りかけていたペニスが、そのまま一気に根元まで突き刺さった。
「おごっ!! お…」
 完全に不意打ちで喉奥を突かれて、文は白眼を剥いて脱力した。どうやら、衝撃で軽くイッたようだった。
「フフッ、文のおまんこが良く見えるぞ…」
 脱力して脚が開いたことで、文の無毛の割れ目が良く見えた。
 三田は首を伸ばすと、文のクリトリスに吸い付き、舌でコロコロと転がし始めた。しばらくは無反応だった文だが、次第に眼の焦点が合うと喉を鳴らしてペニスをしごき始めた。
「おご、おご、おぐ…」
(酷くされても、優しくされても、全部が全部気持ちいい… あ、またイク…)
 クリトリスを甘噛みされて、文は身体を震わしてイッた。
 文は、自分の心も身体も完全に三田に支配されているのを、圧倒的な快感の中で再確認した。
74幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:34:45 ID:8YMSkO6f
 散々文をイカせ喉奥に精液を出してやると、文は再び白眼を剥いて今度は本格的に気絶した。時計の針から言っても、もう寝る時間なのだろう。
 三田は携帯を取り出すと、内線で清香を呼び出した。
『…はい、なんでしょう?』
「文が寝た。すまんが、引取りに来てくれんか?」
 文を起こさないように小声で言うと、清香は『わかりました』と答えて内線を切り、そしてすぐにリビングにやってきた。
「お待たせしました、旦那さま」
「ああ、すまんな」
「いいえ」
 軽く笑って寝ている文をおんぶすると、清香はリビングを後にした。
 しばらく経って、濡れタオルを持った清香が再び現れた。
「綺麗にしますね」
 そう言って、いまだ精液で汚れている三田のペニスをしゃぶって清めると、濡れタオルで綺麗に自分の唾液をぬぐった。
「…んく、お相手しましょうか?」
 未だ硬度を保ったままのペニスに気付いて言うと、三田は「乗ってくれ」と答えた。
「では、失礼します…」
 清香は三田の腰に跨ると、カットバンを剥がして、前戯も無しに三田のペニスを、ズブズブ、と咥えこんだ。
 クリトリスリングのせいなのか、それとも身体がそういうように調教されてしまったのか、清香のヴァギナは常に潤うようになっていた。それは、1日に何度もカットバンを代えなければならない程の濡れ方だった。
「んんっ… はあ、入りました… 動きますか?」
「いや、いい。ゆっくりしておいてくれ」
 三田は顔を寄せて清香にキスをすると、腕を回して、ぎゅっ、と清香を抱きしめた。清香は幸せそうに「あぁ…」とため息を吐くと、自分も腕を回してしっかりと抱き合った。
「…どうかしましたか?」
 三田の動きに何かを敏感に察知して、清香は三田に訊いた。
「いや、そうだな… 文が学校に馴染めるか、少し不安になった」
 三田は素直に答えた。 
「気の早い話なんだろうが、まだ、友達も出来ないようだ。このままクラスで孤立してしまわないかと、心配でな…」
「…文ちゃんは、最初は人見知りするところが有りますから」
 清香は三田を励ますように言った。
「でも、場の雰囲気に慣れたら、すぐに人懐っこくなりますよ。ここでだってそうだったでしょう?」
 そう言われて、三田は姉妹が来た初日を思い出した。確かに、そう言われればそうだった。
「大丈夫ですよ、文ちゃんもそろそろ15歳になるんですから。ちゃんと自分のことは自分でやらないと」
「ああ、そうだな…」
「そうですよ…」
 それから、しばらく2人は繋がったまま無言の時間を過ごした。こういうセックスも悪くないと、三田は最近そう思えるようになっていた。
「私も…」
 不意に、清香が呟いた。
「私も心配だったんです、文ちゃんのこと」
 そう言って、清香は「はぅ…」と1つため息を吐いた。実は、動かなくてもヴァギナで咥えているだけで相当に気持ちが良いのだ。
「文ちゃん、歳の割りに子供っぽいところが有りますから、この屋敷ばかりにずっと居ると、どんどん駄目になっていくような気がしたんです。あ、性にだらしなくなる、ていう意味じゃないですよ。それはもう、すごく望むところなので…」
 途中で三田が顔を曇らせたのを見て、清香は慌てて言った。
「そうじゃなくて、私や旦那さまに依存して、自分では何も決められない子にはなって欲しくなかったんです。これまで文ちゃんを守ろうと過保護にしてきましたが、少しは離れて見守ることも大事だと思いました。学校に行かせたのは、そんな目的もあるんです」
 静かにしゃべる清香に、三田は頭が下がる思いだった。そこまで自分は気を回すことが出来ない、と素直に認めた。
「すまない、お前ばかりに色々と心配させて…」
「馬鹿言わないで下さい」
 清香は笑いながらそう言った。
「そこまで旦那さまにされちゃったら、私のやることが無くなっちゃいますよ。それに、旦那さまが身の保障をして下さるから、私もこんなことを考える余裕があるんです。私たちは旦那さまのご恩を一生忘れません。もっと、自信を持ってください… あっ…」
 離し終えてから、清香が驚いたように下を向いた。咥えたペニスが、一回り大きくなったように感じたからだ。
「旦那さま…」
「フフッ、そう言われるのが、こんなにも嬉しいことだったとはな…」
 そう言うと、三田は清香を抱えて立ち上がり、清香の身体を優しくこたつの上に置いた。
「今をお前を啼かせたくて仕方がない。良い声で啼いてくれ…」
 そう言うと、三田は猛然と清香に腰を打ちつけ始めた。
 幸せの衝撃を全身に受けて、清香は躊躇うことなく啼きながらイッた…
75幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:35:20 ID:8YMSkO6f
 翌朝、3人で朝食を摂っている時だった。
「あーーーーっ! 忘れてた!」
 ごはんを、はむはむ、と食べていた文が、突然大声を上げた。
「…文、食事中に大声を出すのは止めなさい」
 文が飛ばしたご飯粒を頬から取りながら、三田がやんわりと諭した。ここで先に諭しておかないと、清香の説教が始まってしまう。
「で、なんだ?」
「ごめんなさい! あのね、旦那さま。今日は身体測定と運動測定があるの」
「ああ、そういえば新年度は毎年やっていたわね。…それが?」
 清香が昔を懐かしむように頷いた。
「あの… 文はまだ体育着もってないの」
「「あ」」
 文の言葉に、三田と清香が揃って気付いた。
(そう言えば、学生服を仕立てた時に体育着のことも言っていたな…)
(お店が違うからすっかり忘れてたわ… どこで買うのだったかしら…)
 2人とも「しまった…」と言う顔をして、お互いに顔を見合わせた。
「さて、どう用意したものか…」
「あ、大丈夫です。学校の売店に売ってあるんだって」
「そうか…」
 三田は安堵した。こういう小さなミスは、好むところではなった。
「では、お金を預けるから買いなさい。いくらぐらいなんだ?」
「う〜んと、上と下で3千円だよ」
 三田は「うむ」と頷くと、財布から1万円札を取り出して文に渡した。
「落とすなよ、あと、恐喝にも注意しろ。そうだ、着替えもいるから2着買… いや、どうせだから3着買え」
 三田が途中で言い直すと、清香がジト目で見て言った。
「…邪なことを考えていませんか?」
「悪いか?」
「いいえ」
 否定して肩をすくめた清香は、文に向き直った。
「文ちゃん、サイズとかきちんと言うのよ。あ、あと学年色を間違わないようにね。それと、ゼッケンもちゃんと買ってくるのよ」
 清香が細々と言うと、文はご飯を掻き込みながら「うんうん」と頷いた。
「うん、わかった! ごちそうさま!」
 手を合わせてから元気良く食器をキッチンに運ぶと、てってってー、と文はダイニングから出て、しばらく経ってから、てってってー、とダイニングに現れた。手には学生カバンを持っている。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
「ああ」
 それぞれがそれぞれの挨拶をして、朝の団欒が終わった。
76幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:35:52 ID:8YMSkO6f
 学校に着くと、文はすぐに売店に向かった。
 売店は窓口しか廊下に面しておらず、商品は奥の小スペースに雑多に置いてあるつくりをしていた。
 新学期と言うこともあり、売店はそこそこに混んでいた。
「あ、あのー」
 窓口のおばさんに声を掛けると、50過ぎぐらいの売店のおぱちゃんが「はい、なんだい?」と愛想良く応じた。
「体育着を3着ください」
「ああ、今日は買う子が多いねぇ。身体測定の日?」
「はい」
「だろうと思ったわ。えーと、あんただったら、Sサイズでいいね」
「え、えーと、できれば大き目の方が…」
「ええ? あんた身長いくつなの?」
「140…」
 文が口ごもりながら言うと、売店のおばちゃんは「あっはっは」と笑った。
「それじゃあ、Sで十分だわ。体育着なんてのは、だぼだぼだとかえって怪我の元になるもんよ。身長が伸びたら、また買ってもらいな」
 そう言うと、文が反論する間もなく、売店のおばちゃんは倉庫へと消えて行き、すぐに体育着を3着持って来た。
「はい、3着で9千円。ゼッケンは付録で付いてるから、買わなくてもいいよ」
「あ、ありがとうございます…」
 勢いに押された文は、思わず1万円札を差し出してお釣りの千円札を受け取った。
「はい、こちらこそ! 新入生でしょ。これからご贔屓にね」
「はぁ…」
 曖昧に返事をして、文は売店を離れた。
「…新入生じゃないもん」
 年齢的には最高学年の文は、思わずそう呟いた。
77幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:36:29 ID:8YMSkO6f
 教室に入り席に着くとすぐにHRが始まり、クラス担任(♀ 数学担当)が出欠を取った後で話し始めた。
「はい、今日は午前が身体測定で午後が運動測定です。どっちも体育着だから、お昼は着替えなくてもOKよ。着替えは、男子が1組で女子がこのクラス。着替えたら9時に体育館集合。遅れないようにね」
 そう言うと、担任教師は答礼をして教室から出て行った。男子が隣のクラスに移動すると、残った女子が思い思いに着替えを始めた。
(ど、どうしよう…)
 そんな中で、文は1人困っていた。本当なら、胸のことも考えてLサイズを買おうと思っていたのに、断りきれずにSサイズを買ってしまった。どう考えてもおおきいおっぱいが収まるはずが無かった。
(でも、セーラー服で受けるわけにもいかないし、ここは仕方がないよね…)
 文が覚悟を決めて着替えようとすると、隣の席のポニーテールで長身のクラスメイト――仮にクラスメイトAとしておこう――が話しかけてきた。
「香田? 早く着替えないと、遅れちゃうよ」
「あ、うん」
 急かされて慌てた文は、セーラー服を急いで脱いだ。その瞬間、押さえられていたおっきいおっぱいが、ぼよん、と飛び出した。
 それを見たAは、思わず顔を「うげっ…」としかめた。
「香田…」
「今、着替えるから…」
「いや、それ、あんた…」
 絶句するAを尻目に、文はぽんぽーんと下着姿になると、体育着の袋を開けてすばやく身に着けた。しかし、
「うう、きつい…」
「そりゃそうでしょうよ…」
 苦しげに呻く文の隣で、Aが呆れたように呟いた。
 下のブルマはピッタリだったが、上の体育着は悲惨な状況だった。肩幅はぴったり合っているが、大きく突き出たおっきいおっぱいが布地を大きく押し上げ、いくら裾を伸ばそうとしても、ブルマに入りきらずヘソ出しルックとなっていた。
「やだ、裾が入んない…」
「あんた、サイズを合わせてなかったの?」
「セーラー服は合わせてたけど、体育着は今日買ったから…」
 情けなさそうに文が言うと、Aはため息を吐いて後ろで黙々と着替えている眼鏡姿の大人しそうな女子――仮にクラスメイトBとしておこう――に話しかけた。
「おい、B。あんたジャージ持ってきてる?」
 訊かれたBは、ふるふる、と首を振った。
「持ってきてない」
「そりゃそうか… あんたは?」
 さっきからこちらを眺めていたベリィショートの活発そうな女子――仮にクラスメイトCとしておこう――にも訊いてみた。
「あたしもナシー。香田ちゃんおっきいねえ」
「駄目か…」
 Aは周りを見渡したが、すでに他のクラスメイトは体育館へと向かって居なかった。
「しょうがない。香田、仕方ないから今日はそれで受けな。事情話せば、売店のおばちゃんも交換してくれるだろうから。あと、BとC! あたしが前に立つから、しっかり囲んでガードするよ。特に男子の目から」
 Aが仕切って言うと、BとCはそれぞれ「うん、わかった…」「おっけー、おっけー!」と返事をした。
「ごめんなさい… ありがとう…」
 文が心からの感謝をすると、Aは「ははっ」と明るく笑った。
「気にしないで、あたしクラス委員だし。転校したばっかで、香田もわかんないところあるだろ。頼ってくれて良いからさ」
 そう言ってAが急ぎ足で教室を出ると、慌てて文は後ろに続いた。BとCもAが頼んだとおりに文にくっついて歩いてくれた。
(優しい人が居てくれてよかった…)
 体育館に向かう道すがら、文はしみじみと思った。
78幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:37:06 ID:8YMSkO6f
 しかし、結局Aの気配りは徒労に終わった。
 体育館に集合にして整列すると、どうしても4人はバラバラに配置されてしまった。
 田舎の転校生ということでただでさえ注目されがちな文は、そのおっきいおっぱいのせいで余計目立ってしまった。
「おい、見てみろ…」「でけぇ…」「あれ、転校生の香田?」「揉みてぇ…」
 男子の無遠慮な視線と言葉が文に突き刺さった。
 騒ぐ男子を見て、何事かと見て回ったクラス担任が文を見ると、Aと同じ様に顔をしかめて絶句した。
「こ、香田さん…」
「…はい」
 文がすまなそうに俯いたのを見て、クラス担任は慌てて手を振った。
「だ、大丈夫! 何も変じゃないから! コラ、男子っ! ちゃんと前を向く、私語はしない!」
 男子を一喝してから、不安そうにしている文の両肩に手を置くと、クラス担任は真剣な表情で言った。
「香田さん、こんな事になって辛いとは思うけど、今日一日の我慢だから、しっかりね。どうしても無理だったら、身体測定だけで午後は見学でいいから」
 クラス担任は、イジメとかイタズラとか、そういう変な勘違いをしたようだった。よくわからなかった文が曖昧に頷くと、クラス担任は最後にもう一度「しっかりね」と言ってから去って行った。
(うう、しっかりって言われても…)
 しかし、実を言うと文は全く違うことで切羽詰っていたりした。
(見られて、恥ずかしくて… 濡れてきちゃった…)
 どこまでも正直な、文の身体だった。

 午前中の身体測定が終わって、体育着のまま給食となった。
 文は席の近いA,B、Cと机をくっつけて、4人での昼食となった。
「やー、セーラー服の上からはわかんなかったけど、香田ちゃんってばすげえ秘密兵器もってるね〜」
 食べる手を休めて、Cが感心したように言った。
「ちょっとC、デリカシー無いよ。周り見てみろ」
 AがCを注意して周囲をジロリと睨んだ。すると、こちらをチラチラと見ていた男子が一斉に顔を背けた。
「まったく…」
「あ、でも大丈夫。午前中で大分慣れたから」
 文がCをかばうように言った。最初は見られる度にぞくぞくしていた文だが、半日も経つとその視線に慣れてしまった。むしろ、怪しい気分が加速されて愉しかった。
「ま、あんたがそう言うなら…」
 Aがそう言うと、Cが文に身体を寄せて小声で訊いた。
「ね、ね。午前の測定でやったっしょ。胸、いくつだったの?」
 クラス中の男子の耳がいきなりこちらを向いた、ような気がした。
「えーとねえ、耳貸して… きゅうじゅういち」
「ほほう! そいつは一種の鈍器だな! でも、重くないか?」
「かなり肩凝っちゃう。…お姉ちゃんにはやるなって言われてるんだけど、こうすると楽なんだよね」
 そう言うと、文は「よいしょ」とおっきいおっぱいを机の上に、でん、と置いた。
 クラスのあちこちで「ブーッ!!」と飯を吹き出す音が聞こえた。
「うっわー、すっげー!」
「やめろ、はしたない…!」
 CとAが同時に声を出した。文はよくわからなくて首を傾げた。
「…触って良い?」
 それまでずっと黙っていたBが、ぼそり、と言った
「え、いいよ」
 文があっさり頷くと、Bは人指し指を伸ばして文のおっきいおっぱいにズブリと埋め込んだ。
「…みっしり」
「おお、私も私も!」
 今度はCが反対側のおっぱいに指を埋め込んだ。
「すげー! ゴムまりみてーにやわらけー! Aちゃんもやってみ」
「…お前ら、いい加減にしないとシメ落とすぞ…!」
 Aがドスの効いた声で言うと、3人は慌てて食事を再開した。
 教卓では、クラス担任が頭を抱えて突っ伏していた。
79幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:38:19 ID:8YMSkO6f
 午後になり運動測定。Aやクラス担任の願い虚しく、文は当たり前のように参加した。
 午前と違って、午後は男女混合である。当然文に男女共々視線が集中したのだが、完全に慣れてしまった文は平気な顔をしていた。
 むしろ不幸だったのはAである。B、C共々同じ組にされてしまったがゆえに、文の逆セクハラともとれる行動に終始うろたえっぱなしであった。
「香田、お願いだからセーブしてね」
「うん? わかったよ。あ、準備運動しなきゃ!」
「飛び跳ねんな!」
 そんなAの心労と共に、運動測定が始まった。


〜50m走〜
「お、Aちゃん、香田ちゃんが走るよ」
「あたしゃ見ない」
 パァン!
「お、スタートした! わぁ、揺れてる揺れてる! バランス悪そー! ほら、Aちゃんも見るのだ」
「見ないっつってんだろが!」
「…ゆっさゆさ」

〜垂直飛び〜
「よしよし、香田ちゃん。しっかり手を伸ばしてチョークを付けるのだ」
「うん! …こんな感じかな?」
「ば、馬鹿! ブラ見えるぞ!」
「え〜、でもそうしなきゃ届かないよ?」
「もう、いいから… とっとと飛んで…」
「うん、おっけー。 …えい!」
 ぴょん!
「…ぼよ〜ん」
「下から見るとド迫力だ!」
「…次、行くぞ」


〜立位体前屈〜
「両足、きちんと揃えるんだよ」
「うん、大丈夫。ほっ!」
 ぐぐぐっ…
「…あれ?」
「ど、どうした!?」
「お胸が邪魔で測定器が押せない」
「こいつはとんだ災難だ!」
「知るかぁー!」
「…とおせんぼ」
80幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:38:42 ID:8YMSkO6f
〜反復横飛び〜
「ついに来たか…」
「香田ちゃん、ふぁいとー」
「おー」
「せんでいい! …香田、その、胸を手で押さえてやらないか?」
「無理だよー、始めるね。はっ、はっ、はっ…」
 てっ、てっ、てっ
「うおぉ、グラウンド中がこっち見てないか?」
「…ちぎれそう」
「もう、許して…」


〜走り幅跳び〜
「ようやく最後か…」
「香田ちゃーん、ばっちり計測してやるからなぁ!」
「おねがーい!」
「Aちゃんは正面に立って万一に備えるのだ」
「ああ、そうね…」
「いくよー!」
 ててて、ダッ!
「やっ! と、おっとっと…!」
「危ない! Aちゃん抱きとめるのだ!」
「よし来た!」
 ばったーん。
「…うぅ、怪我はない?」
「うん! ごめんなさいAさん…」
「気にしないで… それより、顔に載せてるの、どけて…」
「あ、ごめん…」
「いやー、ボインアタックだな!」
「…役得」
「お前ら…」
 Aの心に多大な傷跡を残し、運動測定は終了した。
81幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:39:07 ID:8YMSkO6f
「…てな事があったんだ」
 屋敷での夕食の後、文は楽しそうに今日の出来事を話した。
「…良かったわね、お友達が出来て」
 清香は心の中でため息を吐きながらそう応じた。その友達のAという娘には機会があれば何かお礼をしようと思った。
「しかし、セーラー服が特注品だったとは知らなかったな」
「お店側が気を利かせてくれたみたいです。サイズを測ったときに、既製品だと無理だと思ったそうで…」
 体育着のほかにジャージが必要なことに気付いた清香が、セーラー服を注文した学校指定の服店に連絡したところ、すでに特注のジャージと体育着が出来上がっているとのことだった。
「じゃあ、あのサイズはもうおしまい?」
「ええ、明日からはしっかり補正した体育着を着なさい。というか、常にジャージを着なさい」
「うん、わかった」
 文は素直に頷いた。
「…それじゃ、今日買ったものはもう使わないな」
 三田はそう言うと立ち上がった。
「邪なことを考えていませんか?」
「悪いか?」
「いえ、全く。私も同じことを考えていました」
 姉と三田がよくわからない会話をしていると思ったら、三田が文を見て言った。
「文、今日買った体育着を着て地下室に来い。下着は脱いでおけよ」
 ある程度予想はしていたのだろう、文は頬を染めて「はい…」と頷いた。
「それと、清香」
「は?」
 さーて、お片づけ… と腰を浮かしていた清香が、突然呼ばれて動きを止めた。
「お前も同じものを着て来い。当然、下着は着けずにだ」
「え、私もですか?」
 意外な三田の言葉に、清香は思わず聞き返した。
「そうだ。お前だって、それを着ている年頃だろ。変じゃないさ」
「…わかりました」
 微妙な表情で頷いた清香は、文が準備良く「はい、お姉ちゃん」と差し出した体育着を、渋々と受け取った。
82幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:40:28 ID:8YMSkO6f
「旦那さま、卑しい奴隷の清香です。私のいやらしい身体を可愛がってください」
「旦那さま、マゾ奴隷の文です。いっぱいいっぱい苛めてください」
 姉妹は体育着を着て地下室に行くと、いつもの用に土下座して挨拶をした。
「うん… 立ってよく見せてみろ」
 三田の指示に、2人はおずおずと立ち上がった。
 文は学校と同じようなヘソだしルックに加え、ノーブラのせいで乳首が体育着を押し上げてくっきりと浮かび上がっていた。こんなものを見せられたのかと思うと、三田は同級生の男子に同情した。
 清香の格好もすごいものだった。長身にむりやりSサイズの体育着を着ているから、布地が伸びきって今にも破れそうだった。さらに下半身は布地がお尻の肉に食い込み、より扇情的な姿をしていた。
「ほう、こりゃすごいな。2人とも似合ってるぞ」
「そんな… 嘘です…」
 清香が口を尖らせて言った。三田は「嘘じゃないぞ」と言いながら、用意してあった洗面器を持って姉妹に近づいた。
「? なんですか、それ?」
 文が不思議に思って訊いた。
「お湯にローションを溶かしたものだ。ああ、動くなよ」
 先に注意をしてから、三田はお湯――ローション入り――を交互に姉妹にかけた。
「温かいけど、ぬるぬるしますね…」
「うん… あっ! お姉ちゃんエローイ」
「文ちゃん… あなたがそれを言う?」
 ローションに濡らされて、姉妹の桜色の乳首がはっきりと浮かび上がった。もともとぴっちりだった体育着がさらに皮膚に張り付いて、それは恐ろしいほどに淫靡な眺めだった。
「ふむ、これは予想以上だな。記念に写真でも撮るか…」
 三田はキャビネットからデジカメを取り出すと、おもむろに写真を撮り始めた。
「えへへー」
「綺麗に撮ってくださいよ…」
 もう慣れっこになっている2人は、思い思いのポーズで写真に納まった。
 ある程度写真を撮ると、三田は「抱き合ってみろ」と指示を出した。
「はい、文ちゃんおいで」
「うん…」
 言われるがままに、姉妹は抱き合って当然のようにキスを交わした。
 こうなると清香が止まらなくなる。キスで文が脱力したのを良いことに、乳首を抓ったり、膝を股間に擦り付けて刺激したりして文の全身をまさぐりはじめた。
「んん… ああ、お姉ちゃん、気持ちいいよ…」
「うん… ぬるぬるって気持ち良いね… あっ!」
 フラッシュの光に気が付いて清香が三田を見ると、三田は苦笑して言った。
「続けて良いぞ。今日はお前がいじめてやれ」
「ありがとうございます」
 旦那さまから許可をもらい、清香は文を抱っこするとベッドに運んで優しく降ろした。
83幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:41:18 ID:8YMSkO6f
「ふふ、今日は私が文ちゃんをいじめてあげるね…」
「お姉ちゃん… 優しくしないでね…」
「もちろん…」
 そう言うと、清香はいきなり文の乳首を体育着の上から、かりっ、と噛んだ。
「にゃあ!」
 暴れようとする文を全身を使って押さえ付けて、清香は文の全身に指を這わせた。
 ぎりぎり、と乳首を痛いほど噛んでおきながら、全身を愛撫する指使いはあくまでも優しかった。
「おねえ、ちゃん… いじわるぅ…」
 鋭い刺激と柔らかい刺激と同時に襲われ、文はたまらなくなって姉に懇願した。もっともっと責めて欲しかった。
「ふふ、文は甘えんぼね…」
 いよいよ直に刺激しようと、清香が体育着を脱がせようとした時、傍でDVDビデオレコーダーを準備していた三田が「待て」と清香を止めた。
「せっかくなんだから脱がすのは許さん」
「でも…」
 不満そうに言う清香に、三田は小振りなハサミを渡した。
「どうせ、屋敷でしか着ないものだ。穴を開けてやれ」
 清香が呆れたようにハサミを手に取って見つめると、クスッ、と笑って文の体育着を摘み上げた。
「文ちゃん動かないでよ… 動くと乳首が切れちゃうから…」
「ふええ…」
 流石にそれは怖くて、文は、ピタ、と身体を強張らせた。
 清香はそれを確認すると、文の両乳首、ヴァギナ、アナルの4箇所の布地にそれぞれの大きさの穴を開けた。ついでに、自分にも同じように穴を開けた。
「さあ、できた! フフ、乳首が凄い立ってる…」
 ツンと立った乳首を清香が抓ると、文が気持ちよさそうに「くぅん…」と啼いた。
「よし、録画を始めるぞ… あと、これを使ってやれ」
 録画機材をスタートさせた三田が、ベッドに巨大なバイブを放った。
「はい… 文ちゃん、ほら見て…」
 バイブを受け取った清香が、文の目の前にそれを差し出した。
「おっきなバイブ、どこに欲しい? おまんこ? おしり? それともお口に咥える?」
 清香がそれぞれの場所にバイブを当てながら言った。
 文は、これから訪れるであろう刺激にどきどきしながら、「お、おしり…」と呟いた。
「おしり? こんなにおっきなバイブなのに、おしりに入るの?」
 清香が悪戯っぽく言うと、文は泣きそうな顔になった。
「入るもん。文のおしりは旦那さまのお便所だから、いっぱい入るもん。イジワルしないで入れてよぉ…」
 口を尖らせる文に「ごめん、ごめん」と笑いかけて、清香は文を正面からまんぐり返しの姿勢で固定した。ブルマの穴からヴァギナとアナルがよく見えた。
「入れるわよ、力を抜いて…」
 すでにローションでグチャグチャに濡れていたアナルは、巨大なバイブを、ぬぷぬぷ…、と飲み込んだ。
「ふと、い…」
 文が眼を白黒させながら喘いだ。清香ばバイブを根元まで埋め込むと、躊躇わずにスイッチを入れた、
 ヴィィィィン…
「んああああ!!」
 バイブが腸内で振動・回転し、いぼいぼが腸壁を引っ掻く快感に文は呑まれた。
「文は全部可愛いわね… ここもこんなにひくひくしてる…」
 ひくひくと悶える文のヴァギナを見ると、清香は出し抜けに顔を寄せて文のクリトリスを、がりっ、と噛んだ。
「いぎぃ!!」
 突然の刺激に文は絶頂に達し、ヴァギナから清香の顔に愛液を噴出させた。
 顔に掛かった愛液を美味しそうに舐めて、清香は文のヴァギナ口を付けて、じゅるじゅると溢れ出る愛液を啜り上げた。
84幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:41:43 ID:8YMSkO6f
「いやぁぁ!! イッたばっかりで敏感だからぁ!」
「だーめ」
 文のお願いをあっさり蹴ると、清香はクリトリスの上にある小さな穴に舌を伸ばした。
「! そこは!」
「ここは何かなー?」
 清香が小さな穴を、ちゅうぅ、と吸い上げると、文の抵抗が一段と激しくなった。
「ダメ、ダメ、ダメェ〜! そこいじったら出ちゃう!」
「ちゅう、ん… 何が?」
「何がって…」
 恥ずかしそうに文が口をつぐむと、ここぞとばかりに清香が吸い付きを強くした。
「やぁ!! おしっこ! おしっこ出ちゃうの!」
 文がたまらず叫ぶと、清香が「…出して良いわよ」と呟いた。
「ええ!?」
 文が驚いて声を上げると、清香は三田をチラリと見た。三田は肩を竦めるようにして小さく頷いた。
「ええ、いいわ。お姉ちゃんに文がおしっこするところを見せて」
 そう言うと、清香はいっそう激しく吸い付いた。
「もう、知らないよ…」
 観念した文は、緊張をゆっくりと解いて張り詰めた身体を弛緩させた。
「あ、出ちゃう… おしっこでる…」
 ちゅるちゅると吸い続ける清香の口に、ちょろ、と生暖かい液体が飛び込んできた。それは一気に勢いを増して、清香の口腔をいっぱいに満たした。
「ん〜、こく、こく…」
 ベッドを汚すわけにはいかないから、清香は文のおしっこを残さず飲み干した。強烈な臭気が喉と鼻を貫いたが、嫌悪感は無かった。
 そうこうしているうちに、文の放尿が終わった。
「ふぅ…」
 文が気持ちよさそうにため息を吐くと、清香が「ん、ごくり」と口の中に残っていたのおしっこを全部飲み込んだ。
「ちょ、お姉ちゃん飲んだの!?」
 驚いて訊いた文に、清香はあっさり「うん」と答えた。
「変な味ねえ、これ。飲尿健康法は聞くけど、これぐらいだったら毎日イケルわね…」
「す、するの!?」
「しないわよ」
 笑いながら答えて、清香は文のアナルに刺さったバイブを抜き取った。
「そ、そうだよね…」
 身体を解放されて、ぺたり、と座り込んだ文が、何とも複雑な顔で呟いた。目線はチラチラと三田の方を見ている。
「何だ、命令して欲しいのか? 『毎朝、私のおしっこを飲め』と?」
 そう言われて、文は顔を、かぁ、と赤くして俯いた。
「旦那さまが、お望みなら、私…」
 両手の人差し指をつんつんと突き合わせて、文はもじもじと言った。
 そんな文を微笑ましく思いながら、三田は、ぽん、と文の頭に手を乗せて言った。
「今はいい、その内な… さ、身体を洗って来い、清香もだ。その後はしっかり勉強しろ。勉強が終わったら、また可愛がってやる」
 三田がそう言うと、姉妹は揃って「はぁい!」と返事をして、シャワールームに消えて行った。
85幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:43:29 ID:8YMSkO6f
その翌朝、清香は何かの物音で眼を覚ました。
「う、ん… あれ、部屋じゃない…」
 寝ぼけ眼で周りを見ると、そこは自分の部屋じゃなく地下室のままだった。
「ああ、そうか… 昨日は久々に気絶しちゃったんだ…」
 膣内に三田の精液があるのを感じて、清香は1人納得した。そしてさらに首を巡らすと、台座に拘束された文が、ばったんばったん、と身体を揺らして暴れていた。
「はいはい、今ほどいてあげますよー」
 のんびりと文に近寄ってボールギャグを外してやると、文は「ぷはっ!」と息を吐いた後に叫んだ。
「お姉ちゃん早く! 学校遅刻しちゃう!」
「え!?」
 慌てて柱時計を見ると、8時近くを指していた。
「や、やばっ!」
 急いで文の拘束を外すと、文は、ぴゅー、とシャワー室に駆け込んだ。
「シャワー浴びてくるから、お姉ちゃん朝ごはんお願い!」
「わかったわ!」
 清香は起きたままの格好で地下室を出ると、そのままキッチンに飛び込んだ。
「ええと、ご飯は昨日の残りが保温してあるから… おにぎり作って持たせよう。具は適当につめて…」
 その時になってようやく自分が全裸であることに気付いたが、とにかく時間が惜しいのでキッチンに備えてあるエプロンだけを身に着けた。
 おにぎりを3個作り終わったときに、文がセーラー服に学生カバンを下げてキッチンに現れた。
「お姉ちゃん、出来た!?」
「おにぎり作ったから、食べながら行きなさい。慌てないで、車に気をつけてね」
 おにぎりを適当なタッパーに入れて渡すと、文は「ありがとっ!」と叫んでキッチンを飛び出て行った。そのまま屋敷を出たようで、玄関が「ばたん!」としまる音が聞こえた。
「はぁ…」
 清香は深くため息を吐いた。朝からどっと疲れてしまった。
「いけない、いけない。旦那さまの朝ごはんを作らなきゃ…」
 よし、と気合を入れて料理を始めると、寝起きらしい三田が、あくびを噛み殺しながらリビングに入ってきた。
「ふぁ… 騒がしいな、どうした?」
「あ、申し訳有りません。ちょっと、2人して寝坊しちゃって…」
 清香が申し訳なさそうに言うと、三田は「そうか…」と頷いた。
「学校の前日は少し控えた方が良いか… まあ、いい。新聞を取ってくる、お茶を用意しておいてくれ」
 そう言うと、特に気にしたそぶりを見せずにリビングを出て行った。清香がお茶を淹れていると、すぐに三田は戻ってきた。
「すぐに朝ごはん用意しますから」
「ん…」
 清香が淹れたお茶をリビングまで持っていって、三田は日課の新聞を広げた。三田の読む新聞は、スポーツ紙が1、経済紙が1、地方紙が1、全国紙が3と大量だ。これを毎日読む。
「さて、今日は…」
 三田は新聞を読むのに没頭した。キッチンでは、清香がちょこちょこと動きながら朝ごはんを作っている。
86幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:44:41 ID:8YMSkO6f
 しばらく、朝の静謐な時間が流れた。三田が息を吸い込むと、キッチンから味噌汁の匂いが漂ってきた。
(いいものだな…)
 三田は、ふと、新聞を読む眼を休めてキッチンの清香を見た。そこでようやく、清香が全裸にエプロンを着たままの格好であると気付いた。
(何だ、あの格好は?)
 しばらく、ぼーっ、と眺めていたが、ふりふりと動く清香のお尻を見ているうちに、どんどんとペニスが勃起してきた。
(堪らんな、これは…)
 三田は新聞を畳むと、そっと清香の背後に近付いて、いきなりがばっと抱きついた。
「きゃっ、だ、旦那さま!?」
「その格好は反則だぞ、清香…」
 振り向かせて口唇を強引に奪うと、清香の手から包丁を奪って遠くに置き、ガスコンロの火を止めた。
「んん〜、ぷはっ、ど、どうしたんですか、旦那さま!?」
「どうしたもこうしたも…」
 三田は清香の左足をバレリーナの様に高々と上げさせると肩に担ぎ上げ、
「誘われて、乗るだけだ…!」
 ペニスで一気にヴァギナを貫いた。
「あぁん!!」
「ん、どうした? もうグチャグチャだぞ?」
「旦那さまのザーメンが残ってるんですっ!」
ぷう、と膨らませた清香の頬を愛おしそうに撫ぜてから、三田は猛然と腰を突き始めた。
「あ、いま、朝ごはん、作ってるのに…」
「そんな格好して誘惑するからだ」
「そんな、つもりじゃ… 朝ごはん、食べないと…」
 清香が何とか言うと、三田が清香の顔をぺロリと舐めた。
「その前にお前を食べるさ…」
「もう…」
 口ではそう言っていても、身体はしっかり反応していた。
(キッチンで、しかも立ったままなんて… でも、凄い… 奥まで、こんこん突かれてる…!)
 立ったままでの挿入は体重が接合部に掛かり、より深い挿入感を清香に与えた。自然と手が伸びて三田の首に回すと、舌をめいっぱい伸ばしてバードキスを繰り返した。
(ああ、子宮に当たって… もう、だめ…)
「あ、イク、イク…!」
「よし、私も出すぞ…」
 清香の天に向けられてた左足が、ビクンッ、と痙攣した。それと同時に、三田が精液を清香の膣内に放出した。
「はあ…」
87幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:45:20 ID:8YMSkO6f
 清香が満ち足りたように息を吐くと、愛おしそうに自分の下腹部を撫ぜた。
「すごい… たくさん溜まってます… ふふ、普通だったら、絶対に妊娠してますね、これ」
 幸せそうに呟く清香の言葉を聞くと、三田は驚いて清香を見た。
「知っていたか…」
「…避妊薬のことですか?」
 清香が何でもなさそうに言った。
「そりゃ、わかりますよ。この半年以上、私はずーーっと膣内出しされてたんですよ? 少しは変だと思います。夕食の後にいつも飲んでる、あれ、避妊薬なんでしょう? 栄養剤だと説明受けてましたが… 本当にばれてないと思っていたんですか?」
 清香が呆れたように言うと、三田が「まあな」と言って照れるように頭を掻いた。それを見て、清香が「フフフ…」と笑った。
「ゴム、付けるか…?」
 三田がぼそりと言った。清香は驚いて三田を見つめた。
「いくら低容量ピルだといっても、副作用はあるにはある。特に、若いお前たちならなおさらだ。健康を考えるなら、避妊薬の使用は控えた方が良い」
 そう言って、真剣な眼で清香を見つめた。清香はしばらく考え込むように眼を伏せていたが、決心したように顔を上げると、ゆっくりと身体を三田から離した。そして、キッチンの床に四つん這いになると、三田に向けて高々とお尻を上げた。
「見てください、旦那さま…」
 そう言って、清香は自ら両手でヴァギナを、くぱぁ、と割り開いた。昨日と今日とに注がれた精液が、たらたらと流れ出てきた。
「初めて旦那さまに注がれてから、このおまんこは旦那さま専用です… 旦那さまのザーメンが注がれているのが、当たり前の状態なんです…」
 それはひどく扇情的な眺めだった。三田は襲い掛かりたくなる気持ちをぐっと堪えた。
「いつも旦那さまにザーメン注いでもらわないと、私の子宮が疼くんです… 切なくて、疼くんです… 初めてそれに気付いたのは、木馬で怪我をしたときのことです。毎日毎日疼いて、ザーメンが欲しくて堪りませんでした。…私は、とっくにザーメン中毒になってるんです」
 そう言って、清香は静かに微笑んだ。そこには、哀しみや怒りなどはまったく無かった。
「学校に行かないのも、それが理由の1つです。クラスにザーメン臭い女がいたら、ぞっとするでしょう? それに、外の世界に混ざって、自分を見失うのも怖かった… もう、ザーメン無しでは生きられない身体なのに、それを忘れてしまうのが嫌でした…」
 三田は奇妙な達成感に包まれていた。普通であれば、こんな告白を受ければ、己の行為を嫌悪するのだろう。だが、ここまで自分を理解して、それに合わせてくれる者の存在が、三田は心底嬉しかった。
「私の愛しい旦那さま、卑しい奴隷のお願いです。ゴムなんか付けないで毎日私にザーメンをお恵みください。このおまんこは、あなたのためにいつでも濡らしてある、旦那さま専用の精処理便所です。いつでもどこでも、自由に使ってください…」
 言い終えて、清香は誘うようにお尻を小さく揺らした。三田はゆっくりと清香に近付くと、まだ硬いままのペニスをヴァギナに当てた。
「戻れなくなるぞ、いいのか…?」
 確認するように言うと、清香はしっかりと頷いた。
「はい… かまいません。ずっと前から、私の心と身体は旦那さまのモノです」
「そうか…」
 三田はゆっくりと清香にペニスを挿入し、止まる事無く根元まで挿入した。
「それなら、いくらでも注いでやる。いつまでもだ…!」
「嬉しい、です…」
 清香は、おとがいを反らして歓喜の涙を流した。
88幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:45:59 ID:8YMSkO6f
 結局、途中から場所をリビングに移して、昼近くまで2人は愛し合った。
 清香はヴァギナにさらに2回、それと最近開通したばかりのアナルにも1回だしてもらい、かなり満足した。
「…流石に疲れたぞ、私は一休みするから、昼食はいらない。何かあったら起こしてくれ」
 ふんふふーん、と鼻歌を歌いながらカットバンを貼っている清香に、三田はそう伝えた。
「あ、はい。わかりました」
「流石に若いとタフだな…」
 苦笑して三田は栄養ドリンクでビタミン剤を飲み干してから「ではな」と言って去って行った。
 にこやかに手を振ってから、清香は三田を見送った。
 1人になった清香は、とりあえずシャワーを浴びることにした。ヴァギナの精液は慣れたものだが、アナルに入っているのはどうにも違和感が拭えなかった。
「文ちゃん、どうやって溜めてるんだろう…」
 文はアナルに出された後、平気な顔でそのままプラグで栓をしている。おなかが緩くならないのかと清香は不思議に思った。
「まあ、いいか。掻き出そう」
 シャワーを浴びながらアナルに中指を突っ込んで、そのままぐりぐりと掻き出す。散々開発されたせいで、多少乱暴にしても痛みはほとんど感じない。その代わり、ヴァギナとは違った背徳的な快感が清香を貫いた。
「ん… ほんと、やらしい身体ね、私…」
 浴室のタイルに、ぺたん、と四つん這いになって、ぐちゅぐちゅ、とアナルを弄っているうちに、清香の性感がどんどんと高まってしまった。自然ともう片方の手がクリトリスリングに伸びて、少し乱暴に、ぐいっ、と引っ張った。
「あう! …散々イカせてもらったのに、まだ足りないの…?」
 呆れるように呟いて、清香は浴室の椅子に腰をかけた。この椅子は中央に凹凸があり、股間が弄りやすくなっている。
 清香はシャワーの熱湯をクリトリスリングに当てた。リングが緩んで外れると、浴室に常備してある消毒液にオモリごと放り込んだ。そうして、小指の先ほどに成長したクリトリスを摘まむと、こすこすこすこす、と上下にしごいた。
「んくっ! ふぅん… だめ、止まらない…」
 両手が、まるで別の生き物のように蠢いた。アナルに挿入する指はいつの間にか2本に増え、クリトリスをしごく指はさらに速度を増した。
「お尻も、お豆も、気持ちいい… 全部、旦那さまに調教されちゃった…」
 オナニーは久しぶりだった。今までは、なんとなく節制しなければならない思いが強くて控えてきたが、朝に告白をしたせいか驚くほどに自分の性欲に対して積極的になっていた。
「おまんこ… おまんこにも欲しい…」
 清香はカットバンを剥がし捨てると、アナルに入れた手の親指をずぶずぶと挿入した。輪っかを作るようにして指を曲げると、薄い肉壁ごしに指が触れ合うのを感じた。
「あん! すごい、これ、当たってる…」
 昔、文が両穴に挿入されて悶えていたのを思い出した。指でこうなのだから、ペニスではどうなるのだろうと清香は興奮した。
「今度、シテもらおう… おまんこと、お尻で、入れて、擦って… ああ、だめ、きちゃう…」
 終わりが近いと感じた清香は、クリトリスを抓り、穴に入れた手を思いっきり曲げて出し入れさせた。
「あ、イク… イッちゃう… イクーー!!」
 清香が背中をピンと伸ばして絶頂に達した。
 ずるりとヴァギナとアナルから引きずり出した指を目前に持ってくると、それは精液と愛液と腸液とでぬらぬらと光っていた。
「ド変態、いやらしい、淫乱女。 …嬉しい」
 清香はそっと瞬きをすると、指から滴る精液を逃すまいと、かぷっ、と指を咥えこんだ。
89幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:46:34 ID:8YMSkO6f
 シャワーから上がると、清香はいつもの真面目さを取り戻して家事に精を出した。
 1人なので軽い昼食をすませ、地下室の掃除を念入りに行い、洗濯と買い物を要領よく済ませると、時計の針は3時を回ろうとしていた。
(そろそろ、文が帰ってくる頃かしら… あら?)
 トゥルルル…
 3時の休憩でぱりぱりとお煎餅を齧っていると、滅多に鳴らない屋敷の電話が鳴っているのに気付いた。
(誰かしら…?)
 不思議に思いつつも慌てて口の中のお煎餅を飲み干し、清香はコードレスホンを取った。
「はい、もしもし。三田でございます。 …え!? はい、そうですが… はぁ、はぁ、わかりました」
 清香は驚いたように2、3度頷くと、コードレスホンを持って三田の部屋へと向かった。

「旦那さま、起きてください…」
 寝ている三田をそっと起こすと、三田はすぐに覚醒し「…どうした?」と訊いた。
「あの、お電話です。その、文の学校から」
「…なに?」
 三田は驚いて清香からコードレスホンを受け取った。
「はい、三田です。…ああ、ウチの文がお世話になっております。は? 今日ですか? いえ、こちらはかまいませんが… 何か、文が学校で問題でも…? はぁ、問題ではないと… あまり電話口では話せない事。
なるほど、そういう事でしたらお会いしましょう。ええ、今から来てくださって結構ですよ。場所はお分かりに… はい。それでは、お待ちしています…」
そう言って、三田は電話切って清香に手渡すと、ベッドから立ち上がった。
「今から、文の担任教師が来るらしい。どうにも微妙な相談のようだ。まあ、変なことにはならないと思うが、先生が着いたら応接室にお通ししなさい。私はシャワーを浴びてくるから、服を出しておいてくれ」
 そう言うと、三田は部屋を後にした。
 清香はいきなり担任教師が来るのが不安で仕方がなかったが、三田が落ち着いているので、とりあえず安心した。

 ぴんぽ〜ん。
 三田がシャワーから上がって髪を乾かした頃、滅多に鳴らないインターホンが鳴って来客を告げた。
「はーい、ただいま!」
 清香が、ぱたぱた、と駆けて玄関を開けると、そこには20台後半ほどの女教師が立っていた。
「こんにちは、香田さんのクラス担任でございます。今日はいきなり押しかけて申し訳ありません…」
 ぺこり、と頭を下げるクラス担任に、慌てて頭を下げ返して、清香は応接室に案内した。
「しばらく、ここでお待ちください」
 一礼して応接室を出ると、ちょうど三田と鉢合わせした。
「ん、いらっしゃったか?」
「はい、中にいらっしゃいます」
「うん。お茶を運んでくれ」
 そう言うと、清香は「はい」と返事をしてリビングに消えて行った。
(さて、ヘマをしないように気をつけなければ…)
 1つ気合を入れてから、三田は応接質の扉を開いた。
90幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:47:23 ID:8YMSkO6f
「お待たせいたしました。保護者の三田です」
 応接室に入って三田が挨拶をすると、クラス担任は立ち上がって答礼をした。
「ああ、すみません、突然押しかけてしまって…」
「いえ、かまいません。どうぞ、お座りになってください」
 三田は着席を勧め、自分もクラス担任の真向かいの椅子に座った。
「それで、ご用件はなんでしょう?」
「はぁ、実は香田さんのことなんですが…」
 椅子に座りながら、クラス担任は言いにくそうに口を開いた。
「あの… 香田さんは非常に明るくていい子なんですが、その、とても、ですね…」
「はい?」
「いえ、とても…」
「とても…?」
 三田が問い返すと、クラス担任は思い切ったように言った。
「とても、胸が発達していらっしゃいますね…」
「………あぁ」
 クラス担任が言いたいことはわからなかったが、とりあえず三田は納得した。
「まあ、確かに同年代の娘と比べると大きい方でしょうな。それが?」
「いえ、クラスで…」
 クラス担任が言いかけると、ノックの音が響いて清香がお盆を持って入室した。
「…失礼します、お茶をお持ちしました」
「ああ、ありがとう」
 清香がしずしずとお茶を配り茶菓子を置くと、クラス担任は笑顔でお礼を言った。
「ありがとうございます。…奥様でいらっしゃいますか?」
「ぶっ!」
 三田は思わずむせてお茶を噴いた。清香はびっくりしつつも、「やだ…」と染めた頬を手で覆った。
「ごほ、ごほっ… こ、これは文の姉です! 姪です! それに歳は17で、結婚できる歳――ではあるか…――とにかく、家内ではありません!」
 あまりに必死な三田の様子に「そうですか… とんだ勘違いを…」とクラス担任は慌てて謝った。
「まぁ、でしたら同席していただいていいですか? お姉さまにも注意していただきたいので…」
「は、はい… うふ」
 にやける顔を抑えきれずに、清香は三田の隣の椅子に座った。心なしか身体が三田側に寄っている。
91幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:48:38 ID:8YMSkO6f
「話を続けますね。香田さんは、その、大きい胸をあまり頓着なさってないようで…」
「そうかもしれませんね…」
 昨日、散々いじくり回したおっぱいを思い出しながら、清香は相槌を打った。
「それで、今日の給食のとき、女子同士でふざけあっていて、その、挟んだり、潰したり、と、その…」
「胸を玩具にしていたと?」
 三田がストレートに訊くと、クラス担任が申し訳なさそうに頷いた。
「はい… その時は近くにいた女子の一喝で納まったのですが、こういうことが続くと、風紀に…」
「ああ、すみません…」
 清香は心の底から謝った。恐らく、近くにいた女子とはAのことなのだろう。
「男子からも、『あれは逆セクハラだ!』と訴えられて… 本来なら、本人に注意するところなのですが、何分デリケートな問題ですので… 情けないことを承知で、保護者の方から注意していただこうと、伺った次第です…」
 そう言って、クラス担任は情けなさそうに頭を下げた。
 三田は、頭痛を堪えるように頭に手をやっていたが、クラス担任が頭を下げるのを見ると、慌てて言った。
「先生、頭を上げてください。確かに、これは家庭で処理すべき問題です。情操教育が足りなかったようです。帰ってきたら、きつく叱ることにしましょう… ところで、文はまだ学校ですかな?」
「ええ、今日は部活動紹介と見学がありますから… 私は副担任に任せて早めに抜けて参りました」
「いや、そこまでしていただいて… 本当に申し訳ない…」
 そう言って、3人は何度も頭を下げ合った。クラス担任としても、話がわかる保護者で安堵していた。緊張もだいぶ緩んでいた。
「しかし、姪御さんでいらっしゃるんですね… 失礼ですが、お姉さまか何かの…?」
 クラス担任としては世間話のつもりで聞いたことだったが、清香は、はっ、として三田の顔を見た。
「…ええ、姉の子です。苗字が違うのもそのせいです。姉と義兄は去年この世を去りましたので、身寄りの無い2人を私が引き取ることになりました。ご覧の通り、男やもめな生活ですので、2人にはだいぶ助けてもらっています」
 三田はすらすらと答えた。これはあらかじめ作っておいた話で、きちんとウラも捏造してある。
「そうなんですか… ご苦労なさったんですね… しかも、あんなに遠いところから転校されたのなら、色々と不都合もあったのでしょう」
 その言葉に、今度は、ぎくり、と清香の背が伸びた。
「はい。…あまり大声で話す事ではないのですが、文の担任でいらっしゃる先生には、お話しておいた方がいいでしょう。
 実は、姉は私が幼い頃に駆け落ちをしまして、清香と文はその時に出来た子供なのです。
 私はご覧の通り少し余裕のある生活をしていますが、姉はそうでもなかったようで… 貧しい生活をしていたようです。
 しかし、そんなことは、私は全く知りませんでした。祖父が黙っていたのです。愚かなことに、一族の恥だと考えていたようなのです。
 …祖父は死ぬ間際に姉のことを私に伝えました。私は必死になって姉を探しましたが、時遅く、姉はすでに鬼籍に入っおり、この2人は施設に預けられていました。
 そこで私は2人を引き取ることにしたのです…」

92幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:49:11 ID:8YMSkO6f
 もし… 本当にもし、運命の女神がこの場に居て三田の話を聞いていたら、初めは微笑んで見守って、次に口を押さえて笑って、さらには腹を抱えて笑い転げただろう。
 しかし、次の瞬間には不安な表情になり、狼狽を始め、最後には顔に手を当てて卒倒したのかもしれない。
しかし、3人にはそんなことはわからない。三田はよく動いてくれた舌に満足し、清香はすらすらと嘘を言う三田を尊敬し、クラス担任はドラマチックな話に感動していた。
「そうですか… いい叔父さんに巡り合えましたね。清香さん、学校は?」
「はい、落ち着きましたら、通信制の学校に通いたいと思っています」
「そう… 道は1つじゃないから、頑張ってね」
 クラス担任はよほど感動したのか、目の端に涙すら浮かべて清香の手をしっかりと握った。
「保護者の方が、大変すばらしいお方で安心しました。今日は貴重なお時間を割いて頂き、ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ。なにかあれば、すぐにご連絡ください。出来る限りのお手伝いはさせていただきます」
 三田もクラス担任と握手をすると、玄関までクラス担任を見送った。そうして、クラス担任が何度も頭を下げて去ると、三田はポツリとつぶやいた。
「情操教育、か…」
「まあ、出来ていないどころか、マイナスですね。性奴隷ですもん」
 あけすけに物を言う清香を、三田は嫌そうな顔で見つめた。
「じゃあ、どうするんだ?」
「文ちゃんには、我慢を覚えてもらいましょう。多分、物足りなくなって、無意識にやってるんだと思います」
「我慢、か。ふむ…」
 三田は納得するように2、3度頷いた。
「そうしよう。明日からは土日で学校は休みか?」
「はい」
「丁度良い。この際、文には徹底的に忍耐を叩き込むとしよう」
 楽しそうに語る三田を眺めて、(文ちゃん可哀想に…)と清香はまだ帰り来ぬ妹を想った。
93幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:49:37 ID:8YMSkO6f
「ただーいまー!」
 5時過ぎごろに文が帰宅した。
「お帰りなさい、文ちゃん。さ、これを着けて」
 そう言って清香が取り出したのは、去年の晩夏に着けた首輪と犬セットだった。
「あれ、お犬さん?」
「そう、もう暖かいから、半裸でも平気でしょ」
「いや、まだまだ寒いけど… いきなりなんで?」
「さあさ、服脱ぎましょ」
 ハテナマークの文を強引にリビングに引っ張ると、清香はテキパキと服を脱がせ始めた。
「ちょ、ちょっと… あ、ケージ出来てる…」
「はい、耳着けて、足着けて、手袋して… 可愛いわよ、文」
「ありがとう… いや、だから…」
 いい加減不安になってきた文が姉に向き直ると、清香は布製のごついサポーターを準備していた。
「なに、それ?」
「大胸筋矯正サポーター」
「だいきょ… なに?」
「大胸筋矯正サポーター」
「はやくちことば…?」
 唖然とする文に、清香は手にもったそれを強引に装着させた。
「うわっ! これ、おっぱいがきついんだけど!」
「矯正サポーターだもの。文ちゃんは最近おっぱい体操サボってたでしょ。垂れないように矯正してるの」
「じゃ、お姉ちゃんには必要ないね」
「…言うわね」
 清香はジト眼で文句を言い始めた文を睨みつけたが、次の瞬間にはにこやかに首輪を手に取った。
「はーい、首輪締めますよ〜。ちゃんと南京錠もかけるからね。あと、今回は鍵式だから、鍵が無いと開かないわよ」
 もう覚悟を決めたのか、文が「ん」と首を出すと、清香が首輪を、きゅきゅ、と締めて南京錠で封をした。
「はい、おっけー」
「あれ、尻尾は?」
 文がお尻を不思議そうな眼で見ると、清香はまた新しい器具を取り出した。
「お尻にはこれ」
「ほ? てつのふんどし?」
 実際にはステンレスだが、文にはそう見えた。
「ちゃーんと、文ちゃんのサイズに合わせてあるんですって。旦那さまって凄いわ。先見の明があるというか…」
 話しながらも、清香は一つ一つ手順を確認して、ステンレス製のそれを文の下半身に装着していった。
「お、おまんことかお尻とか塞がれちゃうんだけど!」
「それが目的だもん。はい、出来た。おしっこはここの穴から、うんちはここの穴からするのよ。そうそう、穴も鍵式だから、したくなったら旦那さまか私に言いなさい」
 そう言うと、全てが完了したかのように清香は文から離れた。
「さーて、晩御飯の用意をしなくちゃ…」
「ちょ、ちょと待ってよ説明してよ!」
 思わず立ち上がろうとする文を清香は人指し指を、ピッ、と指して止めた。そして、リビングのケージを指差して、
「ハウス!」
 と言った。文がぽかーんとしていると、清香はさっさとキッチンへと引っ込んだ。
「…なんなの、あのノリ…」
 文はしばらく呆然としていたが、無理やり「まあ、いいか…」と納得すると、去年と同じようにケージの中で丸くなった。
「犬になるってことは、可愛がられていじめられるってことだもんね」
 文はそう思ったが、もちろん、そんな生やさしいものではなかった。
94幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:50:37 ID:8YMSkO6f
「はい、文ちゃんごはんよ」
 夕食時に、清香はドライカレーが盛られたペット食器をケージ内に置いた。
「わんわーん」
 投げやりに文は答えると、黙ってドライカレーを食べ始めた。もちろん犬食いだ。
「がつがつがつ… ごちそうさま」
 すぐに食べ終わると、それだけはちゃんとしたいのか、手を合わせてお辞儀した。
 ふとテーブルの方を見ると、三田と清香が楽しげに夕食を食べていた。
(なんか、やたらと楽しそうに聞こえるのは、なぜ?)
 自然と耳が傾くと、2人の会話が聞こえてきた。
「奥様ですって、旦那さま」
「まあ、お前は歳より上に見られるからな」
「うふふ、夫婦に見えたんですねぇ」
「ちょっとちょっと! 何の話してるの?」
 清香の言葉に聞き捨てならぬものを感じ、思わず文は叫んだが、2人はそれを無視して会話を続けた。
「あ、旦那さま、ほっぺたにご飯粒が…」
「そうか、すまんが取ってくれ」
「もう、甘えん坊ですね…」
 清香は三田の方に身を乗り出すと、舌を伸ばして頬のご飯粒を舐め取ってから、
「はい、どうぞ…」
 とそのまま舌を伸ばして三田に差し出した。
「ああ、ありがとう…」
 三田もしゃぶるように清香の舌からご飯粒を奪い取り、そのままディープキスに移行すると、散々清香の口腔を蹂躙してから口を離した。
「ぷはっ、もう、旦那さまったら…」
「お前の方が美味そうだったから、ついな」
「恥ずかしい…」
「何ッ! なんなの、そのラブラブな会話は」
 耐え切れずに、文がケージをがっしゃんがっしゃん揺らしながら叫んだ。
「犬が騒がしいな…」
「嫉妬してるんですよ、私たちに」
「するよそりゃ! 旦那さま、文にもラブラブなキス!」
 なおもがっしゃんがっしゃんとケージを揺らす文に、清香はため息を吐いて近付いた。
「文ちゃん、暴れちゃダメでしょ」
「暴れるよ、そりゃ!」
 なおも叫ぶ文に、ため息をもう一度吐いて、清香は真剣な表情で言った。
「いい、文ちゃん。これは忍耐力のテストなの。これから3日、犬になって忍耐力を養いなさい。日曜の昼まで耐えられたら、旦那さまがご褒美を下さるそうよ。
 それまで、我慢、我慢よ」
 清香が指を立てて念を押すと、文はそれでも不満そうに「う〜」と唸った。
「それに、お姉ちゃんも文は我慢が足りないと思うの。特にエッチに関しては歯止めが効かないでしょ? この屋敷では良くても、外ではダメなこともあるのよ」
「お姉ちゃん人のこと言えないと思う」
「シャラップ!」
 痛いところを突いてきた文を強引に黙らせ、清香は両手を文の肩に乗せて言った。
「いい、文。文はこの春から学生なの。学校では色んな人と交わるわ。そこで文が変な行動をして、いじめられたり、無視されたりするのは、お姉ちゃんとても辛いわ。
 旦那さまだってそうよ(ここで三田が大きく頷いた)。文に幸せになって欲しいの。だから、あえて心を鬼にしてこんなことをしているの。ね、一緒に頑張りましょう?」
 そう言われると、文も「うん…」と頷くしかなかった。しかし、釈然としないものも、当然あった。
「ありがとう! 文ならきっと頑張れるわ! 日曜の夜はうんとご馳走つくるから!」
 そう言って清香はさっさとテーブルに戻ると、また楽しげに三田と夕食を始めた。今度は「はい、あーん」と姉が箸を三田に差し出すのを見て、
「楽しんでる、絶対おねえちゃん楽しんでるよ…」
 と、文はぶつぶつと言葉を漏らしていた…
95幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:51:05 ID:8YMSkO6f
 翌日の朝食後、不貞腐れた文がケージで丸くなっていると、洗い物を済ませた清香がやって来た。
「文ちゃん、運動の時間よ。寝てばっかりだと太っちゃうわ」
「…そんなことだろうと思ってたよ」
 半日でだいぶやさぐれた文が、投げやりに答えた。
「それで、お散歩? それとも芸でも仕込む?」
「ううん、恥ずかしい真似はさせないわ。はいこれ」
 そうやって清香が持たせたのは、数枚の雑巾だった。
「今日の文のノルマは、屋敷の廊下全部に雑巾がけすること。最近家事はやってなかったし、ちょうど良いリハビリでしょ」
「ええ!? お屋敷の廊下は、3日かけて少しずつやってたじゃん! 1人でしかも1日なんて無理だよ!」
「文句言わない。お姉ちゃんは、これから毎日文の分まで家事をするのよ。休日ぐらいは手伝ってもいいんじゃない?」
「う〜」
 そう言われては、文には反論しようが無い。しかし、流石にかわいそうに思ったのか、清香は表情を緩めると文の頭を撫でて言った。
「お昼にはご褒美のプリンをあげるから。今日のプリンは凄いわよ。わざわざ旦那さまが取り寄せてくださった高級プリンよ。食べたい?」
「う、うん、食べたい!」
「じゃ、頑張れるわね」
「うん、頑張る!」
 そう言うと、文はとことこと四つん這いのままリビングを出て行った。それを見送ってから、清香はふと思い悩んだ。
「…素直すぎるのも考え物かしら? 騙されやすい性格にならなければ良いけど…」
 不安は尽きなかった。

 文は元気良く廊下の掃除を進めた。元々掃除は嫌いではない、むしろ好きな方だ。だだだだだー、と屋敷中の廊下を雑巾がけしていると、ばったり三田と会った。
「あ、旦那さま!」
「ん、掃除中か、偉いな…」
 そう言うと、三田は清香の頭を撫ぜた。久しぶりの旦那さまとのスキンシップに、文はニコニコと笑った。
「ねー、旦那さまご褒美は?」
 文が潤んだ目で言うと、三田は眉根を寄せて手を放した。
「ご褒美は日曜までお預けだ。文はそれくらいのお預けも出来ないのか?」
 冷たく言うと、文は慌てて「で、出来ます! 待ちます!」と言った。三田の機嫌は損ねたくなかった。
「うむ、頑張れ。辛くてもへこたれるなよ」
「はい、頑張ります!」
 ご褒美はもらえなかったが、思いもかけず激励の言葉を貰って、文は俄然やる気を出した。
96幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:51:27 ID:8YMSkO6f
 しかし、どうしても我慢できないものがあった。
「うう、おまんこがせつない…」
 昨日は学校から帰ってからすぐに犬になったし、今日は朝から犬だ。丸一日以上刺激から遠ざかっていて、行き場の無い文の性欲が爆発しそうだった。
(ちょっと、ちょっとだったらいいよね…)
 今はお昼の3時前。清香は買い物に出かけたばかりだし、三田は自室で仕事をしている。リビングには文だけだった。
「ほんのちょっと、ほんのちょっと…」
 そう言って、文は股間に手を伸ばしたが、そこには冷たい金属の感触しかなかった。
「あ」
 ソレの存在をすっかり忘れていて、文は呆然とした。これでは、弄るどころの話ではない。
「うわー、だから鍵付きなんだ… オナニー防止? よくこんなの考えるな…」
 しかし、感心していても始まらない。ヴァギナは完全に封してあるので触れないが、アナルは穴を開けてもらえれば弄ることが出来る。
「うんこって言えば、開けてもらえるよね…」
 そう思い至って、文は三田の部屋にやって来た。こんこん、とノックをして、「わんわん!」と吠えたら、しばらくして三田がドアから顔を出した。
「ん、どうした?」
「あの、旦那さま、うんち、したいの」
 文がもじもじして言うと、三田は「そうか」と言って、ひょいと文をお姫様だっこした。
(あれ?)
 すぐに外してもらえると思った文は、アテが外れて混乱した。
「あの、お尻の鍵を…」
「まずは場所を移動だ」
 そう言うと、三田は屋敷の庭に移動して、文を太い木の根元に降ろした。
「さあ、開けてやるから全部出してしまえ」
 三田が小さな鍵を差し込んで回すと、ぱかっ、とアナルの穴が開いた。
(読まれて、た?)
 文が呆然としてると、三田が「出ないのか?」と声を掛けた。
「あ、なんだか、緊張しちゃってるみたいで… お外だし…」
 文がそう言うと、三田は「そうか」と言って、あっさりアナルの穴を閉じた。
「あ…」
「さて、戻るか」
 またしても三田は文を抱っこすると、リビングまで運んでケージに入れた。
「もうすぐ清香が帰ってくる。頑張れ」
 そう言い残すと、三田は去って行った。
 文はアテが外れて、思わず「いけずぅ」と呟いた。

97幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:52:18 ID:8YMSkO6f
「ただいま。あら、どうしたの文?」
 清香が買い物から帰ると、ぶーたれた文が身体を揺らしていた。
「…オナニーしたい」
 かなり苛々してるのか、文はストレートに言った。清香はため息を吐くと、一言「我慢」と言った。それを聞いた文が、ムキになって清香に食って掛かった。
「我慢我慢って、お姉ちゃんはどうなの!? 我慢が必要なのはお姉ちゃんの方じゃん! 昨日だって旦那さまに可愛がってもらったんでしょ!」
 いきなりの剣幕に、びっくりした清香だったが、気を取り直すと優しく言った。
「まあ、とりあえずおやつにしよっか。食べながら話しましょ」
 そう言うと、清香は冷蔵庫から約束のプリンを取り出して文のペット食器に出してやった。自分もスプーンとプリンを持ってケージの前に座った。
「食べましょ」
「…ふんだ」
 清香が声を掛けると、文は拗ねたようにちびちびとプリンを食べ始めた。
「あのね、文ちゃん。昨日は旦那さまも私も1人で寝たのよ。とうぜん、エッチも無し。確かめてみる? おまんこには何も入っていませんよ?」
 そう言って清香がスカートをめくると、そこに有る物を見て文はびっくりした。
「お、お姉ちゃん、ぱんつ…」
「うん、今日はパンツ穿いてるの。久しぶりだから、違和感ばっかりで困ったわ。クリトリスのリングも外しているの」
 そう言って、ちら、とパンツをずらしてみせると、いつものリングも見えなかった。
「いつ以来…?」
「うーん、軽く半年ぶりかなぁ。逆にパンツが見えるのが恥ずかしくって、ハローグッドではずっとスカートを押さえていたわ」
「そうなんだ…」
 文が納得したように頷いた。
「旦那さまもそうよ。私とは夕食のキスだけで、他は指一本触れてないわ。今日だって、何もせずに過ごしているはずよ。明日のお昼までは、みんなで我慢、我慢」
 それは、クラス担任を見送った後に、三田が提案したことだった。「文が我慢するのなら、周りの大人も我慢しよう」ということだった。
「だから、明日の夕方まではみんなで我慢。その代わり、明日の夜は凄いエッチをしようね。お口も、お尻も、おまんこも、たくさん注いでもらいましょう。ね」
「…うん」
 清香が言うと、文は神妙な顔で頷いた。その瞳には、決意の炎がメラメラと燃えていた。
98幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 01:53:55 ID:8YMSkO6f
 翌日の夕方、溜まっていたレポートと情報のアナライズを終えた三田が大きく伸びをした。
「ふう… ようやく遅れを取り戻せたか… 最近は、仕事以外の雑事が多かったからな…」
 それでも三田はそれが嫌な事だとは思わなかった。むしろ、仕事にハリを出す原動力と捉えていた。
「だが、毎日は流石に身が持たんからなぁ…」
 実はそれが三田の本音だった。
 最近の姉妹は特に可愛くしかも淫乱で、気を抜くとすぐに搾り取られている自分があった。
 清香と文はそれでエネルギーを得ているようだったが、もう若くは無い三田にとっては甘い拷問だった。
「これで少しは自重してくれると助かるんだが…」
 そう思って三田は自室を出た。もう昼は過ぎているから、文は普通の格好に戻っているだろう。三田は、とりあえず姉妹がいるであろうリビングに足を運んだ。
「ん、こたつはもう収納したのか…」
 朝までそこにあったものがなくなっているのを見て、三田は残念そうに呟いた。しかし、姉妹の姿が見えない。
「居ないな、買い物にでも行ったのか…?」
 姉妹の部屋に行っても誰も居なかった。思い悩んだ三田は、ふとしたことに気付いて2日間行っていない場所、地下室に足を進めた。
「まさかな…」
 ドアを開けて中に入ると、そこには、いつかの体育着を着て正座した姉妹が待っていた。
 まずは文が口火を切った。
「旦那さま、マゾ犬の文は、たくさんたくさん我慢をしました。うんとご褒美が欲しいです。とりあえず、お尻にザーメン欲しいです。おっぱいもたくさん弄ってください。
 その後は、鞭でも針でも蝋燭でも、好きなもので文をいじめてください。あ、おしっこも飲みたいです。お願いします」
 そう言って文がお辞儀をすると、続けて清香が言った。
「旦那さま、いやらしい奴隷の清香は、罰当たりなことに旦那さまから頂いたリングを外してしていました。あまつさえ、禁止されているパンツも身に着けてしまいました。
 ぜひ、お仕置きをください。あと、我慢しすぎておまんこが乾いてしまったのですが、大丈夫、旦那さまを見たら濡れてきました。準備はオッケーです」
 そう言って、清香もお辞儀した。
 くらくらと混乱する三田の頭に、『やぶへび』という言葉が浮かび上がった。しかし、ねっとりと自分を見上げる姉妹を見ていると、せこせこと考えていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
(ま、文は我慢を覚えたみたいだから、まあ、いいか…)
 心の中でため息を吐くと、三田は眉根を寄せて姉妹に言った。
「奴隷のくせに、旦那さまにおねだりか? ご褒美が欲しければ、もっといやらしいポーズをしてみろ」
 三田がそう言うと、しばらくごにょごにょと相談した姉妹は、おもむろに清香が仰向けに床に寝て、文がそれに覆いかぶさった。
 そして、脚を限界まで開くと、互い違いにそれぞれのヴァギナに両手を伸ばし、くぱぁ、と割り開いた。
「「どちらでも、どの穴でも、好きなところに注いでください、だんなさま!」」



                                              ――第4話 完――


99幸福姉妹物語 第4話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 02:00:29 ID:8YMSkO6f
以上で第四話が終了です。

少しはエロかったでしょうか? あと、こんな微妙な時間に投下してすみません。
明日がどうにも投下できる時間が無かったので、今日中に仕上げました。

あと、前回文法をご指摘いただいたのですが、直そうと思っても直りませんでした…
どうやったら結びが変わるんでしょう? まだまだ未熟です…



幸福姉妹物語もだいぶ佳境に近付いてまいりました。
次の第五話は、起承転結でいうと転に当たります。
幸せ絶頂の3人ですが、さて、どうなることでしょう?



最後に、貴重なご意見やご感想を頂いた皆さん。本当にありがとうございます。
また、前スレを埋めてくださった職人さんには、感謝の言葉もありません。
それと… 3話で泣いて下さった方、そのレスを読んで私も泣きました。ものすごく嬉しかったです。



それでは、今日は失礼します。
100名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 02:04:41 ID:fgblnxqC
今日も寝る前にえーもんみさしてもらいました!
101名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 02:40:31 ID:Dtz5k10A
わんわーん!
えがったやー!!
102名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 03:27:18 ID:R/9ZntpH
三田さんデレ過ぎwww
清香かわいいよ清香。お姉さんというよりお母さんて感じ
文はなんつーか本当に犬みたいだ。かわいい子犬
生徒の名前がアルファベットということは今回限りなのかしら

GJでした。次回は転か……期待
103名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 07:07:38 ID:NCI7FF7J
キモ自演擁護
104名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 09:30:04 ID:uaET1fT1
幸福姉妹物語の人GJ!

ところで保管庫の件だけど、もし異存がないならこのスレ

【求む】各種SS保管情報1【保管庫】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156913306/l50

に作成依頼しようと思うんだが大丈夫?
105名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 11:15:52 ID:FXTCkTOf
>幸福姉妹物語
GJです!ニヤニヤが止まらんw


>保管庫
それで良いんじゃ?
お願いします。
106幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/02(火) 22:46:23 ID:8YMSkO6f
>>保管庫

依頼していただけるのならばよろしくお願いします。

あと、誤植発見。
4話の時点では清香は16歳です。
エピソードの順番を間違った…
107名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 23:17:09 ID:qdD+UCRB
GJGJ!!
次回も期待
108104:2008/12/03(水) 00:04:44 ID:uaET1fT1
保管庫の件依頼してきました。
ただ、必ずしも良い返事が貰えるとは限りません。
それと依頼先が過疎なのもあり(一応ageましたが)返事自体返ってこない可能性もあります。
その場合、保管庫についてはこのスレ内で対処をお願いすることになってしまいます。
申し訳ありませんがその点については了承願います。

もし何か返事をもらえたらまた報告します。では失礼します。
109幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 01:35:30 ID:E/vd7Y0O
保管庫依頼ありがとうございました。

確かに、凄い過疎ッぷりですねw
110幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 01:37:02 ID:E/vd7Y0O
と思ったら返事来てたー!

ぜひ、よろしくお願いします!
111名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 01:39:05 ID:HBl14kPo
一気に読んだ
禿げ上がるほどGJ
112名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 06:51:28 ID:VvBXsHzf
>>111を見て、
薄毛が気になってきた旦那様
無意識に旦那様の傷を抉る文
旦那様を必死に慰める清香
という三人を幻視した。
113名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 17:58:30 ID:tV75D4aB
金の力を使うとは違うけど
コブラコラとかテッカマンコラとか好きなんじゃねお前ら?
114幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:40:50 ID:E/vd7Y0O
こんばんは。
予告していたショートエピソードを投下します。
今回は清香のクリトリスリングのお話です。


それでもって、以下醜い言い訳…
形状記憶合金が冷温で変化するなんて知らなかったんだよ! 普通は高温で変形するって思うだろ!

…ですので、4話で清香がリングを外す表現が有りますが、あれは誤りです。
無知を晒してしまった…
115幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:41:42 ID:E/vd7Y0O
「…以上が腸内洗浄機の使い方だ。何か質問は?」
 旦那さまが説明に使ったメモ用紙を束ねながら言った。私と言えば、知りたくも無い知識を無理やり頭に押し込んだせいで、ひどく気分が悪かった。
 これから私は、妹である文に酷い仕打ちをしなければならない。それを想像すると、目の前の機械など蹴り飛ばしてしまいたいが、そんなことは出来るはずも無い。
 なぜならば、私―香田清香―は、妹共々この三田という旦那さまの性奴隷だからだ。
 
「あの… 本当に浣腸しないとだめなんでしょうか?」
 無理だとはわかっていても、私はそう聞かずにはいられなかった。
「内容物が直腸に残ったまま栓をすると、万が一プラグの挿入時に裂傷を作った場合、大腸菌が入って化膿する可能性がある。むろん、浣腸したからと言ってばい菌は無くならないが、やらないよりはずっとましだ。
 だったら栓も止めればいいのに… と思うけれど口には出せない。あまり反発していたら、私に矛先が回ってくるからだ。
 しかし、口には出さずとも顔には出ていたようで、旦那さまは眉根をぎゅっと寄せると、少し怒ったように口を開いた。
「何だ? 不満そうだな。文が犬になるのがそんなに怖いか?」
「それは、そうです… お尻に栓までして… それに…」
 そこまで言って、私は口篭もった。これから先はあまり言いたくないことだったが、旦那さまが「それに、何だ?」と訊いたので、仕方なく口を開いた。
「それに、私の失言で文が犬になるのは、文に申し訳ないです。今は首輪をもらえることで凄く嬉しそうですが、帰ってきて本当のことを知ったら、どんな顔をするか…」
 それが、私の一番の心配事だった。はっきりと言えば、文に責められるのが怖かった。
「そうか? 意外と喜んで犬になるかも知れんぞ。なんせお前の妹は真性のマゾだ。昨日も鞭や蝋燭を初めて使ったのに、いい声で啼いてくれた。アナル栓ぐらい、楽勝で呑み込むさ」
 その言葉に、私はいっそう顔を曇らせた。昨日の朝、浴室で嬉しそうに黄色い液体―たぶん、旦那さまのおしっこだ―を舐めていた妹を見て、文はもう戻って来れない所に行ってしまったと確信していた。
 だから、今回ももしかしたらあっさり耐えて、愉悦の声で啼くかも知れない。しかし、それは責められるより辛かった。
「…まだ、納得していないようだな。ふむ、ならば私がお前に罰を与えよう。お前は妹を辱めるのを嫌がった。だが、私の罰が怖くて嫌々行った。そういう屁理屈をつければ、手も自然に動きやすいだろう?」
 いきなり提案されて、私はびっくりして困惑した。
「私が、旦那さまから罰を受ける…?」
「そうだ。まあ、もう決めてしまったからな。嫌だと言っても許さんぞ」
 そう言って、旦那ままは薄く笑った。私は顔を俯かせて「わかりました…」と言うしかなかった。
「準備をする。お前はここで待っていろ」
 ショックを受ける私を置いて、旦那さまは地下室から続く3つのドアの内1つを開けて出て行った。
 …多分、旦那さまは私が罰にショックを受けていると思っているのだろう。だが、実際は違った。それは、旦那さまから『罰を与える』と言われた瞬間、じゅん、と潤んでしまった私のおまんこが物語っていた。
(ああ、なんて事なの… 私は嫉妬してたんだ… 昨日から構って貰えている文に嫉妬していたんだ…)
 文は真性のマゾなのかもしれない。だが、私は真性の淫乱女だ。
 剥き出しのおまんこから、たらたら、と愛液を流しながら。私は自分の性を呪った。
116幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:43:56 ID:E/vd7Y0O
「ほら、乗ってみろ」
 隣室からなにやら液体の入ったビーカー等々を持ってきた旦那さまは、先ほど地下室の中央に設置した分娩台に私を乗せた。
 サイズを文に合わせてあったのか、分娩台はひどく狭かったけれど、なんとか身体を押し込むことが出来た。
「拘束はせんが、動くなよ。…なんだ? もう濡らしているのか、淫乱女め」
 吐き捨てるようにそう言うと、旦那さまは不意に中指を私のおまんこに根元まで差し込んだ。
「あうっ!」
「あっさり咥え込んだぞ。どうなってるんだ、お前のおまんこは?」
 旦那さまは乱暴に中指を、ぐちゃぐちゃ、と動かすと、何かを掻き出すように中指を曲げて引き抜き、それを私の目前に持ってきて私に見せた。
「見てみろ、本気汁かどうかはわからんが、白いものが混じっているぞ?」
 指を凝視して、私は「あっ」と声を上げた。旦那さまの指に付いた白いもの。それは、昨日注いでもらった旦那さまのザーメンだ。
「それは、旦那さまの、ザーメンです…」
 恥ずかしそうに言うと、旦那さまは「子宮で溜めていたのか? けっこうな事だ」と言って笑った。
「…そうだ、良い物をやろう」
 旦那さまはそう言うと、また地下室から出て行き、今度はすぐに戻ってきた。手には医療品のようなものを握っている。
「漏れないように、ちゃんと塞いでおいてやろう。数をやるから、剥がれて来たら新しいのに張り替えろ」
 そう言って旦那さまは、私のおまんこにカットバンを貼り付けた。それは、まるで計ったかのように私のおまんこを覆い隠した。
「ええと…」
「前バリ代わりだ。ズボンやスカートが汚れるのは嫌だろう? それと、コレを着けるからどうせ濡れっぱなしになる」
 そう言うと、旦那さまはビーカーの中からピンセットで何か小さな指輪のようなものを摘まみあげた。
 それは、直径1センチほどのリングで、心なしかぐにゃりと変形しているように見えた。また、片面には平長い凹凸があり、紐を通すような穴が開いている。
「さあ、これから長い付き合いになるものだ。しっかり感じろよ」
 旦那さまはそう言うと、さっきから勃起しっ放しの私のクリトリスを掴んで、ツルリ、と包皮を剥いた。
「やぁん!」
「動くなよ…」
 ぼそりと呟いてから、旦那さまは慎重にそのリングを剥いたクリトリスに嵌めた。
「つ、冷たいっ!」
 そのリングは金属性と言う事を差し引いても、かなり冷たかった。
「つ、冷たいです、旦那さま…」
「我慢しろ、たかだか3℃前後だ。…よし、縮んできたな」
 旦那さまがそう呟くど同時に、私はクリトリスに妙な違和感を感じた。だんだんと、しかしはっきりと、クリトリスがリングに締め付けられているような感覚を感じた。
「な、何がどうなってるんですか?」
 私が混乱して叫んでいるうちに、そのリングははっきりとその大きさを縮小させていき、ついにはクリトリスが痛みを感じるまで挟みこんでしまった!
「痛い! 痛いです! クリトリスがっ! 私のクリトリスがぁ!!」
「うるさい、黙れ。千切れる事は無い。…ふむ、元に戻ったようだな。見てみろよ、良い形になったぞ」
 そう言って旦那さまは私から離れた。私は、痛みと恐怖で直視できなかったが、見ないのも不安なので恐る恐る視線を降ろした。
「ヒィィ!!」
 私は思わず悲鳴を上げた。私の… 私のクリトリスが…!
 リングは剥かれたクリトリスをぎりぎりと締めており、絞りだされた先端は真っ赤に充血していた。
「は、外してください!」
「無理だな。それは一生そのままだ。長い付き合いになると言っただろう?」
「そんな…」
 私は痛みと絶望とで、気が遠くなるのを感じた。恐怖で歯ががちがちと鳴った震えた。
117幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:44:36 ID:E/vd7Y0O
「フッ、冗談だ。冷水で冷やせば取れるさ。それは形状記憶合金で出来ている。つまり、冷温で変形し、高温で元の形に戻る。変態点は15℃前後だから、体温で暖めている限り取れる事はない。それより…」
 そう言うと、旦那さまはリングを掴むとかなり乱暴に引っ張った。
「痛い! やめてください!」
「おい、奴隷としての心構えが出来てないんじゃないのか? せっかく私がプレゼントを与えてやったんだぞ?」
 旦那さまが怒気を含んだ声で言った。その言葉を聞いて、私は、はらはら、と涙を流しながら一生懸命口を開いた。
「き、清香の… いやらしいクリトリスに… リングを、嵌めていただき… ありがとうございます…!」
「ようし、台から降りて立ってみろ」
 旦那さまにそう命じられて、私は、がくがく、と震える足に活を入れてなんとか床に立った。
「うぅ… 痛い…」
「今からそんなんじゃ、続かないぞ。慣れろ」
 旦那さまは冷たく言い放つと、「スカートをたくし上げろ」と命じた。
 言われた通りにスカートをたくし上げると、旦那さまは身を屈めてまじまじと私のおまんこを凝視すると、つんつん、とカットバンをつついた。
「ハハハッ、身体は正直だな。もうカットバンが湿ってるぞ」
 そう言われて、私の顔は真っ赤になった。痛いのは痛いとしても、それは確かな刺激となって私のクリトリスを苛んでいるのだ。
(もう、お嫁に行けないわ、私…)
 私が絶望を感じていると、旦那さまがごそごそと何かを取り出した。
「さて、今から罰を与える。お礼をわすれるなよ」
「えっ! 今から!?」
 私が混乱して叫ぶと、小さなオモリ(フックと穴が付いていて、連なるように出来ている)をクリトリス・リングに取り付けた!
「いぎぃ!!」
 だいぶ痛みにも慣れていたが、オモリにリングが引っ張られる事によって倍加した痛みが私を襲った。
「お礼!」
 何も言わない私にイラついたのか、旦那さまはそう言ってオモリを、ピン、と指で弾いた。激痛が私を襲う。
「うぅ… リングに、オモリをつけていただき、ありがとうございます…」
 私は何とか声を絞り出し、何度も深呼吸して身体を落ち着かせた。
「これから、お前が何かミスをするたびにオモリを増やしていく。どうだ、嬉しいだろう?」
「…はい」
 哀しみと激痛の中で私は答えた。私は性奴隷、そのことを改めて思い知った。
118幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:45:20 ID:E/vd7Y0O
 その日の夜、旦那さまの膝の上で文が眠り、ケージに運んで寝かしつけると旦那さまがソファから立ち上がった。
「文はよく寝ているな。さて、お前に教えておかなきゃならんことがある」
 犬になった文は、悪魔的な可愛さだった。しかし、ついうっかりそれに我を忘れてしまい、私のオモリは早速2個に増えていた。
「リングの外し方を教えてやる。浴室に来い」
 そう言うと、旦那さまはさっさとリビングから出て行った。私はしばらく、きょとん、としていたが、『リングの外し方』という旦那さまの言葉をようやく理解すると、慌てて後を追った。
 脱衣所に着くと、すでに旦那さまは服を脱いでおり、私も慌てて着ているメイド服を脱いだ。
「まあ、まずは風呂だな」
 そう言うと旦那さまは浴室に入り、掛かり湯をした後湯船に身体を沈めた。
 私もタオルを、きゅきゅ、と頭に巻いて―しばらく考えたが、オモリやカットバンは付けたままだ―浴室に入ると、旦那さまに掛からないように掛かり湯をしてから湯船に入った。
「失礼します…」
 旦那さまに背中を預けるようにして肩まで浸かると、思わずため息が「ふぅ…」と漏れた。
「なんだ、親父臭いやつだな」
「だって… 気持ちよかったんですもん…」
 私は脱力して頭を旦那さまの胸に倒した。お風呂の中では、なぜか旦那さまは優しくて、散々甘えても決して邪険にはしない。――ただ、あとでエッチな悪戯をされるのだが。
 今回もそうで、旦那さまは両手で私の身体を抱きしめると、うなじに舌を這わせて、ちろちろ、と舐め始めた。
「はぁん…」
「どうした、変な声を出して?」
「だってぇ…」
 旦那さまが耳元で囁いた。あぁ、旦那さまの息が耳にかかる… 私の背筋に、ぞくぞくっ、とした快感が走った。
 噛み付いたり、ちゅう、と吸ってキスマークを付けたりしながらうなじを散々嬲ると、旦那さまはおもむろに手をクリトリスに伸ばした。
 引っ張られる! そう思って私は身体を固くしたが、意外な事に旦那さまはオモリを外すと、湯船のヘリにコトリと置いた。
「あ、ありがとうございます…」
「寝る前はリング共々外せ。寝相が悪くて妙な事になったら困るからな」
 そう言って、旦那さまは充血したクリトリスをぐりぐりとこね回し始めた。そんな事されたら…!
「あっ、あっ、あっ! イッちゃいます、旦那さま!」
「…好きなだけイっていいぞ」
 そう言うと、旦那さまはねっとりと私の耳を舐め上げた。再び、ぞくぞくした快感が背筋を走る。それはクリトリスからの快感と結びつき、私はあっけなく絶頂に達した。
「イ、イクぅ…」
 おとがいを反らして身体を痙攣させると、私は「はーっ、はーっ」と荒く息を吐いた。
「さて、イって早々だが、身体を洗ってくれ。洗い方はまかせる」
 そう言うと、旦那さまは湯船から出て浴椅子に腰掛けた。(後で聞いたが、これはスケベ椅子という特殊な椅子らしい)
「喜んで、ご奉仕します…」
 …優しくされると、奴隷の本音が出てしまう。私は密かに顔を赤らめながら、ボディソープを手にとって泡立てた。
119幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:46:13 ID:E/vd7Y0O
 旦那さまの身体を、れこそお尻の穴まで丹念に洗い、もしくは舐め清めて、私は浴室に正座した。
「終わりました、旦那さま」
「うん…」
 旦那さまは短く答えると、浴椅子から立ち上がって「座れ」と命じた。私が命じられるままに浴椅子に腰掛けると、旦那さまは、がばっ、と私の脚を大股開きにした。
「きゃっ!」
「剥がすぞ」
 短く言って、旦那さまはおまんこに貼ってあるカットバンを、ペリペリ、と剥がした。おまんこから、お昼に注いでもらったザーメンがとろとろと流れ出てきた。
「なんだ、洗ってなかったのか」
「せっかく旦那さまに注いでもらったものですから…」
 何だか… 今の私は奴隷根性全開だ。多分、変なスイッチが入っている。
 旦那さまは、若干嬉しそうに「ふん、そうか…」というと、シャワーヘッドを取って私の股間に向けた。
「冷たいぞ」
 ほんの少しだが、私に気遣った声を出して、旦那さまはコックを捻ってシャワーヘッドから冷水を出した。
「きゃん…」
 冷水の冷たさに一瞬ビクッとなったが、火照った身体には丁度よく、気持ちよかった。
 すると、冷水を浴びて形を変えたのか、クリトリスリングがずるりと抜け落ちて浴室の床に、ちゃりーん、と落ちた。
 旦那さまはそれを摘まんで拾うと、浴室のキャビネットを開けて小さなビーカーと消毒液を取り出した。
「リングは毎日殺菌すること。このビーカーに消毒液を満たして入れておけ。オモリは洗って拭く程度で良い。あと、明日からは自分で着けろよ。さっきみたいに冷水で冷やした後に着ければ、問題ないはずだ。ちゃんとチェックするからな。では、私は上がる」
 細々と指示を出して、旦那さまは浴室を出た。私もお世話をするべく出ようとしたのだが、旦那さまが手を上げて止めた。
「いや、いい。お前はしっかり風呂に入れ。…それに」
 言い掛けて、旦那さまは意地悪そうに笑った。
「それに、オナニーしたくてたまらんだろう? 顔に書いてあるぞ」
「や、やだっ」
 私は思わず顔を両手で覆った。恥ずかしながら、図星だった。リングが外れた途端、クリトリスに血流が戻り、恐ろしいほどに敏感になっていたからだ。
「ノルマは5回、終わったら報告に来い」
 旦那さまがそう言って浴室のドアを閉めると、私は狂ったようにクリトリスを弄り始めた。
「あん… 5回で、満足、出来るかしら…?」
 …結局、私は7回という中途半端な絶頂数で動きを止めた。なぜ半端なのかというと、達しすぎてそのまま失禁して気絶してしまったのだ。
 おかけで旦那さまには報告できず、私はまた新たなオモリを増やす事になった…
120幸福姉妹外伝 クリトリスリング ◆h1xIZ0tprA :2008/12/03(水) 18:47:34 ID:E/vd7Y0O
以上です。

お目汚し失礼しました。
121名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 19:04:54 ID:zlVlT5P+
(*´д`)萌えた……

ぐっじょ!
122名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 22:17:30 ID:BBzFvnki
調教モノ好きだからいいんだけどさ
段々スレの趣旨とはずれてきてない?
123名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 22:23:16 ID:mIQ1WjR3
これは長いエピローグなんだと自分を騙して菩薩のような表情で生暖かく見守るべし。
124保管庫作成者 ◆HQa5BnLxJ. :2008/12/03(水) 23:03:28 ID:K7wmrGpR
昨日、保管庫スレで手を上げたものです。
ID変わる前にレスしておきます。

現在原型を試行中。
おおよその形はこちらで作らせてもらいます。

仮案ができたら、またレスします。
125名無しさん@ピンキー:2008/12/04(木) 06:59:09 ID:f7ey3Xi1
>保管庫作成者さま
ご苦労様です。
126幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/04(木) 14:09:17 ID:dSZCpERV
>>保管庫作成者様

こんにちは。
面倒な事を引き受けていただきありがとうございます。
よろしくお願いします。
127保管庫作成者 ◆HQa5BnLxJ. :2008/12/05(金) 01:19:55 ID:0yMpEomr
ひとまず、「金の力で困ってる女の子を助けてあげたい」スレの過去ログ置き場 を作りました。
http://helpgirlbymoney.x.fc2.com/index.html

保管庫へのリンクはつけていません。
また、現在ロックしており、検索されても閲覧できません。ご了承ください。
128名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 02:34:21 ID:5NRq7rwB
>>127 乙です。
129 ◆HQa5BnLxJ. :2008/12/06(土) 00:31:39 ID:F6+YkZxl
T 保管庫を作りました
ご意見等があれば、当面、このスレにて受け付けたいと思います。
(保管庫へのレスが増えた場合等は、保管庫に専用ページを設ける等思案中。)

作者様が修正しやすいように、wikiにしました。トップページ以外は、どなたでも編集可能です。
目次等を見易くされるなどの工夫がありましたら、どんどん直してやってください。

タイトルは、整理の都合上、こちらで適宜つけさせていただきました。
誤字・改行については、スレにあった分(作者了解のもの)と、こちらで気付いた明らかなミスのみ、
直しておきました。

作品へのコメントは、こちらのスレにされた方がよいと思うので、コメント欄は設けていません。

U 保管庫新設のお知らせを、次のスレ等にしたいと思います
特にご異議なければ、来週中に各スレにレス予定です。
1.【求む】各種SS保管情報1【保管庫】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156913306/

2.エロパロ&文章創作板ガイドhttp://www9.atwiki.jp/eroparo/pages/1.html の、
シチュエーション別索引http://www9.atwiki.jp/eroparo/pages/507.html の、
「性格・趣味・嗜好」「人間関係」「職業・階級・身分」のどれか。
 ※ここはご意見をいただきたいです。

3.風林火山スレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179061935/
(3にお知らせする理由。
以前風林火山スレで、このスレに言及されていたことがあること、
また、風林火山スレに保管庫関係でレスしたことがあることから、
私の勝手なお願いですが、是非ともご紹介させていただきたく思います。)

他に、掲載したいサイトがあれば、お知らせください。
130名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 00:32:21 ID:F6+YkZxl
幸福姉妹 作者様
>>106の意図が判りませんでしたので、直していません。
直接お直しになるか、あるいはもしwiki編集できる環境にないのならば、意図を伺って
こちらで直します。wiki内連絡先へお願いします。
131名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 00:33:56 ID:F6+YkZxl
金の力で困ってる女の子を助けてあげたい エロパロスレ保管庫
http://wiki.livedoor.jp/helpgirlbymoney/

アドレス書き忘れていました。失礼しました。
132幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/06(土) 01:17:21 ID:j/7xXSp4
>>保管庫管理者様

大変なお仕事をありがとうございます。
まとまりの無い作品をまとめていただき、非常に嬉しいです。
誤植の件は気にしないでください。単なる私の自己満足にすぎませんからw
133104:2008/12/06(土) 04:37:16 ID:likA0kcF
保管庫スレにて依頼をした者です。

>>保管庫管理者様
お手数をおかけしました。
大変有難うございます。助かりました。
134名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 12:38:03 ID:zeBBXO6w
保守
135名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 20:28:47 ID:yJgUuT4I
「旦那さま、株が暴落しているみたいですが大丈夫ですか?」
136あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:27:59 ID:gIZUEAwI
>保管庫作成者様
乙です。
保管していただけるとは思っていなかったので嬉しいです。
ありがとうございます。

エロがなかなか入ってこないので保守と言うもおこがましい、って感じですが続きです。

「結衣ちゃん! 寝ない!」
「うあっ!?」
寝ないことを選んだくせにうとうとしてしまったらしい。怒られた。
川島さんは、もう、と眉間にしわを寄せて、ティッシュを箱ごとくれた。
「よだれ」
「うわあ!?」
は、恥ずかしい。
「花も恥じらう乙女なんだから、そういう寝姿を無防備に晒すのはどうかと思うよ」
川島さんは渋い顔で言った。
乙女……。賛より否の方が多そうですが、確かに十七の女がよだれ垂れて寝てるのはだめですね。
「もう一度確認しておくけど、きみが寝るのは実験のためだけです。寝る前には必ず薬服用のこと。
それ以外はうたたねも禁止」
厳しいな。
でもお金を受け取った以上は頑張らないと。
何を頑張るんだろう、私。
「それはそれとしてもう朝だ。着替えて。買い物に行くから」
「買い物?」
「きみの生活用品がいるでしょう」
昨日言ってた石けんやシャンプーのことか。
「それ以外にも歯ブラシだのタオル類だの。女の子なんだからいろいろいるものがあるでしょうが。
全部あの荷物に入ってる、って言うならそれでもいいけど」
確かに全部を持ち出したりはしてない。
気配りできすぎじゃないかな、この人。
「人間、三十年を越えて生きてるとそのくらいのことは」
「三十!? 川島さん、三十歳!?」
「いや、だから越えてるって」
兄ちゃんより上だとは思ったけど、せいぜい二十七、八だと思ってた。
「もうすぐ不惑だよ、不惑」
「不惑……」
ってなんだっけ。
「四十。論語だよ」
ああ、道理で何かで聞いたことがあるような気がしたと思った。
137あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:29:02 ID:gIZUEAwI
って四十!? さっき三十って言った!
「もうね、その辺の十年ってきみくらいの年ほどの変化がないわけよ」
川島さんはちらりと後ろを振り返って、それから床に手をついた。多分、本がないのを確認したんだ。
「周囲の顔ぶれもあんまり変わらない。大学に残ってると毎年毎年新しい顔が来るよ。
でもその分出て行くのもいるわけでさ。毎年同じ時期に同じ事を教えてるわけ。
似たようなことやって、誰とでも同じように付き合って、うすっぺらくて。そうするとね、
年を取るのも忘れるわけよ」
「はあ」
よく、わかんない。
だって誕生日は毎年巡ってくるし、誰と誰が友達だの喧嘩しただの、付き合いだしたらしいとか、
テストの結果とか、遊びの予定とか、やることも考えることもいっぱいある。
大人から見たらくだらないことかもしれないけど、おろそかにすればクラスで浮くし、
一人でいることに耐えられるほど強くはない。
きゃあきゃあ言っておもしろおかしいことを探してる内に毎日が過ぎていくけど、毎日が同じなんて言い方は
できない。毎日違う。いつも、昨日とは違う何かが起こることを期待しながら怯えてる。
「おもしろいねえ」
川島さんは、あんまり面白くない、って顔で言った。
「きみらくらいの年齢はおもしろいよ。世界中が全部自分の方を向いてるような気がするでしょ。
そうでないなら、自分の方を見てくれなきゃ嘘だ、って思ってる。自分が主役だ」
むっとした気持ちが顔に出ていたんだろう。
「僕もそうだったからね」
川島さんは体を起こすと頬杖を付いた。
「だからってわけでもないけど、まあそれは誰にでもある通過点だよ」
「はあ」
誰にでも。
そうかな。そうなのかな。
「朝飯と買い物。実験継続中は僕の同伴無しに外出できないからそのつもりで、暇つぶし用のものも買ってね」
さらっと恐ろしいことを言われた。
同伴無しに外出できない?
「逃げられると困るし」
川島さんは口だけでにやっと笑った。
目が笑ってない。
いい人だと思ったのは間違いだったんだろうか。
「逃げませんっ!」
ちらっと昨日そんな事も考えたけど。
「ああ、そんなはした金じゃ逃げられないか」
川島さんは鼻で笑った。
138あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:29:23 ID:gIZUEAwI
はした金!? この人にとって20万円ははした金?
確かにそれもちらっと思ったよ。20万円じゃ当座をしのぐことはできても、早晩金に困る。だって20万じゃ
新しい家も探せない。家自体は探せても入居できない。
それこそネカフェ難民にでもなる?
じょうだん。ネカフェを住所にして仕事が探せるとはさすがに思えない。
突然手にするには大金だけれど、これは実際のところ何も出来ないお金なんだ。
実験が終了すれば残りのお金をもらえる。
同じだけもらえると仮定して、合計40万円。
父さんが家に入れてくれていた一ヶ月の生活費よりずっと多いけど、まだだめだ。
生きていくだけでお金ってどうしてこんなにたくさん必要なんだろう。
でも20万円ははした金なんかじゃない。絶対に。
これは大金だ。
「それはじょうだんとしてもね、結衣ちゃんには無認可の薬を飲んでもらってるわけで、たとえば
一人で外出中に倒れたりしたら大変でしょう」
こっちを向いた川島さんは、昨日私を掲示板の前から引きはがして研究室へ連れて行ったときと
同じような目をしていた。
「未成年のお嬢さんに無体なことをしてるわけだからね。責任の所在は明らかにしておかないといけない。
責任は僕にある」
真剣な目でそんなセリフを言う姿にまたドキドキしてくる。
何を考えてるの。
私はただの実験の観察対象で、この人はきっと私のことをそうとしか見てない。
そうだ。薬。
あの薬、きっと不必要に胸がドキドキするような成分が入ってるんだ。
それ、普通に考えて心臓にヤバいよね。
あああ、だめだ。だめだよ。
そうとは見えないにしても、四十近い、なんて言ってる人を、しかも金で助けられただけの人を
好きになったりしちゃだめだ。
今の私は他に頼れる物や頼れる人がいないから、気持ちがものっすごく川島さんに傾いてるだけだ。
きっとそうだ。
好きじゃない。
恋じゃない。
この人と私を繋いでるのは、実験とお金だけだ。
「食事は保証する、って言ったからね。メシ食いに出よう」
川島さんはそう言って立ち上がった。
「はい」
返事をしたものの着替えていなかったことに気が付いて、私は慌てて洗面所に立てこもった。


139あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:29:44 ID:gIZUEAwI
食事保証は三食確実に食べさせてくれる、という意味でもあったし、その食事代は全部川島さんが出す、ということでもあった。
しかもファミレスでの食事の後に向かった大型のホームセンターでの買い物も、その代金を川島さんが払った。
私があそこにいるために必要なものである以上、川島さんの実験の必要経費になるらしい。
昨日渡された20万円はそっくりそのまま私のものでいいんだそうだ。
部屋があんな状態だからスリッパも要らないし、あれ以上本を増やすのもどうかと思うから
雑誌の類も買わないけど、川島さんは
「暇つぶしになるならゲーム機くらい買ってもいいよ」
と言った。
ただし小型の。
そりゃそうだ。あの本で占領された部屋でリモコンを振り回すタイプのゲームができるとは私も思えない。
でも、携帯を持つのはだめだと言われた。
もともと携帯は学校が自由登校になった頃に解約した。お小遣いが厳しくなったからだ。
これで友達がなくなるな、とは思ったけど、大学に入ったらバイトでもすればいいやと思った。
高校でバイトをしなかったのは校則で禁止されてたのもあったけど、父さんと兄ちゃんが口を揃えて、
学生の本分は勉強だ、受験生なんだから勉強しろ、と言ったからだ。二人しかいない家族に逆らってまで
バイトをして携帯を持ってなきゃいけない、とは私には思えなかったから、何もしなかった。
父さんも兄ちゃんもせっせと働いて稼いで――。
「川島さん」
「なに?」
食事に生活必需品、それに嗜好品までほいほいと買ってくれるこの人はいったい何者なんだろう。
「大学職員、っておっしゃいましたよね」
「うん」
「それって……そんなに儲かるんですか?」
ドラマでしか見たこと無いけど、教授とかならお金持ちそうなイメージはある。
でも職員ってどうなの。
というか職員って言いながら、研究室の責任者、とも言ってた。この人は何をしている人なの。
「儲かるわけじゃないです」
川島さんは考えた末にやっと口を開いた。
「ただまあ……。大人の世界にはいろいろあるんだよ」
結局それでごまかされた。
くしゃくしゃと頭を撫でられる。
「なに? 大学に就職したくなった?」
「お給料がいいなら」
「頭もいるよ」
笑いながら言われて、かちんときた。
頭を撫でてくる手を振り払う。
「どうせバカです!」
まぐれ合格だったし、それだってもう取り消されてるだろう。
「僕の場合は親もそうだから」
ああー。家族全員頭いいんだ。遺伝だ。ふーん。
「他の選択肢ってのが無かった。というか僕が思いつかなかった」
いいじゃん。それでいい生活できるなら。
「今頃になっていろいろ考えるけど、考えてもどうにもならないから今の生活を続けてる」
「もしかして、何か後悔してるんですか?」
満足していなさそうな口ぶりだったのでつい聞いてしまった。
「してないよ」
川島さんは笑顔をむけてきた。
嘘だとわかる、悲しそうな笑顔だ。
「後悔したって現実は変わらないからね」
まあね。
後から、ああすればよかった、こうすればよかった、あの時あっちを選んでいれば、って思ったって、
やり直しはきかない。
「だからいいんだよ」
大人はすぐこういう曖昧な言葉でごまかすんだな。
140あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:30:05 ID:gIZUEAwI
夜が更ける。仕事の時間だ。
シャワーだけのお風呂を済ませ、ベッドへ移動する。
「川島さん」
「あ、寝る?」
頷くと川島さんは昨夜と同じに、水と薬を準備した。
昨夜のアレを思い出して、思わず壁にべたりと貼り付いた。
「何してるの?」
「あ、あの、いえ……」
まさか今日はしないよね。普通に薬を飲んでいいんだよね。
手渡されたコップから水を飲む。
「コップ」
返して、と手を出された。
川島さんが水を飲まなければ大丈夫だと思って両手で掴んでいたのに。
仕方なく返すと。
やっぱりだよ、この人!
水を一口含んで、ぽい、と薬を自分の口に放り込んだ。
抗議したくてもこっちも口の中に水が入ってる。
飲み込めば良さそうなものだけど、そうすると川島さんも薬を飲み込まないとしゃべれない。
いや、飲み込まなくてもいいんじゃないの?
吐き捨てるって手もあるよ。
でも、薬を無駄にするような方法を私の立場で言っていいのか。
川島さんはいかにも当然、といったふうに顔を近づけてきた。
こんなの聞いてないよ。バイトの条件に入ってないはずだよ。
泣きそうになりながら唇を合わせた。
目を瞑る。よくわからないけど、キスをするなら目を瞑らなきゃいけないような気がした。
キスじゃないよ。
うろたえてるんだろう。自分でも支離滅裂だ。
薬さえ飲んでしまえばいいんだ。
唇を舌でつつかれる。
慌てて口を開いた。
ぬるくなった水が一筋流れ込んできて、それから川島さんの舌でカプセルが押し出されてきた。
――これさー。意味、無くないですか?
カプセルって、胃に入ってからの溶ける時間とかなんとか、そういうのを考えて
わざわざカプセルに粉の薬を詰めるんでしょう?
口移しなんかして無駄にカプセル溶かしたりしちゃいけないんじゃないだろうか。
「ふ…っ、ん」
カプセルを押し込んだ後の川島さんは、その舌を私の口の中で遊ばせる。
ちょっと……っ、くすり、飲めない、ってば……。
こわばっていた腕をどうにか動かして、川島さんの肩を押した。
ようやく川島さんが離れる。
柔らかくなりかけているカプセルをむりやり飲み下して、コップに手を伸ばした。
残っている水をごくごくと飲む。
喉にへばりつくような感じがなくなっただけいいや。
はあ、と息を吐いたら、ぐりぐりと頭を撫でられた。
「まったくもう」
苦笑混じりの声に顔を上げる。
ほんとに苦笑している川島さんの顔があった。
「こんな様子を見せてくれるとは想定外だよ」
こんな様子って?
首をかしげてみたけど川島さんはとりあってくれず、
「おやすみ」
と、額にキスをされた。
141あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:30:26 ID:gIZUEAwI
声がする。
私を呼ぶ声だ。
「結衣ちゃん」
誰。
私を「ちゃん」付けで呼ぶのはお母さんだけだ。
でもお母さんは死んでしまった。もういない。
それにこの声は男の人の声だ。
兄ちゃんじゃない。
もっと深い柔らかい声。
「僕の家においで」
姿は見えないのに、手だけが見えた。
こっちに手のひらをむけて差し出されている手に見覚えがある。
節のあまり目立たない長い指。兄ちゃんの硬そうな手と違って、あんまり日に焼けて無くて柔らかそうな肌。
でもちょっと年いってる。
知ってる手だ。
私はその手を取った。
ぐい、と引っ張られる。
抱きとめられた腕の中はがっちりとしていて温かくて、私はその人の胸板に頬を寄せて、そっと息を吐いた。
胸板……?
って、裸?
ぎょっとして離れようとするけど、しっかりと抱き込まれていて動けない。
どうにか首だけを動かす。
「川島さん!」
「まったくもう」
どこか嬉しそうな顔で微笑んでる。
「今日日の子はもっとすれてると思ってたよ」
どういう意味だ、と聞く間もなく川島さんのアップが迫る。
いやああああ! うそー!
なんでこの人、こんなにキスするの!
っていうか、人の初めてをなんだと思ってるんだ!
「ん…っ、んぅ」
舌が……。
目の前が熱くなる。くらくらする。抱きしめられてなかったら、絶対倒れてる。
「結衣ちゃん」
キスをしてるのに、その相手がしゃべる声がした。
「お金なんか要らない、って思えるようないい夢を見せてあげるからね」
ああ夢だ。これ夢なんだ。
そうわかってもちっとも安心できない状況だ。
私はなんでこんなえっちな夢を見てるんですかー!
142あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:31:11 ID:gIZUEAwI


起きあがろうとして、起きあがれないのに気が付いた。
またこの人、私を抱き枕にしてるよ。
「川島さん」
こんなにくっつかれてたらゆすって起こすこともできない。
「……ん?」
名前を呼んだだけで起きてくれて助かった。
「あの……」
なんでこんな状態で寝てるんですか。
やっぱりここで実験、って不自然じゃないですか。
っていうか、それだったら私廊下でも台所でもどこででも寝ますから、一緒のベッドで寝るのはやめましょうよ。
そのどれも言えなくて、
「おはようございます」
って挨拶してしまった。
「おはよう」
川島さんは欠伸混じりに返して、起きあがった。
「内容を聞こうか」
忘れていることなど疑いもしていないような態度だ。
「はい」
返事して、見た夢を思い出して、固まった。
「結衣ちゃん?」
あれを? あれを話せ、と?
マンガだったらここはだらだら汗が流れてるシーンになるはずだよ。
「あ、あ、あ、あの、あの……」
「落ち着いて」
「たとえどんな夢だったとしても、その、報告を……」
「してもらいます」
厳しい口調のくせににっこり笑ってる。
なんか見破られてる?
――見破られてるのかもよ。私がこんな夢を見る、ってだいたいの予想ができてるのかもよ。
だって、私、ただ寝てるだけじゃないもの。ただ寝て夢を見てるだけじゃないもの。
起きたときにやたらはっきり夢を覚えてるのも、あんな、今まで見たことないような
夢を見るのも、予定通りなのかもよ。
だってこれ、実験なんだもの。
あの薬に何ができるのかよくわかんないけど、聞いても教えてもらえないだろうけど、
あれって見た夢を覚えていられたり、へんな夢を見せることができたりするのかも。
……。
へんな夢を見せるっておかしくなーい?
どうやってあんなちょっとの薬で……。
143あやしいバイト:2008/12/10(水) 02:32:19 ID:gIZUEAwI
寝る前のアレか!
アレがきっかけになって、そのまんまの夢を見るのか?
そうだよ。
考えてみれば最初の日の夢だって、その日に起こった出来事を比較的そのまま夢に見た。
多少夢っぽくばかばかしいところがあったけど、ほぼそのままだった。
川島さんだって、なぞってる、ってビックリしてた。
じゃあ、そういう薬なのかも。
それなら、私があんな夢を見てもそれは私のせいじゃない。
「結衣ちゃん。どんな夢だった?」
はっと顔を上げた。
パソコンの前で川島さんが辛抱強く待ってた。
「か、川島さん。その前にお願いがあるんですけど」
「なに?」
「薬、普通に飲ませてください」
口移し、とかやめてください。
「なんで? あ、やっぱり好きでもない男にキスされるのは嫌か」
ん? 好きでもない?
好き、なんだろうか。
キスされるのは嫌じゃない、と思う。少なくとも嫌じゃない。
好きかって聞かれると困る。
川島さんには感謝してるし、キス自体が好きか嫌いかはまだよくわからない。
薬を普通に飲みたい理由はそこじゃない、ってことだ。
「あの。あんなふうにされちゃうとそのまま夢に見ちゃうので……」
言いながら恥ずかしくなってきた。
それ、私のせいじゃないよ。絶対私のせいじゃない。
なのにどうして私が恥ずかしいの。
川島さんはちょっと驚いたような顔をした。
「そうなの? そういう――。あ、いやなんでもない。じゃあそういう夢を見たんだね」
何を言いかけた!?
「それはそれで構わない。大丈夫。結衣ちゃんが絶対にキスは嫌だ、って言うならやめるけど
そうじゃないなら僕としては経過を見たい」
疑惑はあっさり消える。
経過。やっぱり薬の影響なんだ。
じゃあいいんだ。
いや、よくない。
私がすごく欲求不満な人みたいだからいやだ。
「じゃあなに? 今日の夢は僕と結衣ちゃんがキスしてた?」
ううう。なぜそうはっきり――。
そういや不惑って言ってましたね。惑わないんですね。十七の小娘のファーストキスの重要さなんて
どうということはないんですね。
ちきしょう。
「してました」
ああもうやだ。
「舌まで入れてきました! 川島さんが!」
私じゃない! 私じゃないから!
川島さんはくすりと笑って、
「また真っ赤だ」
と、小さな声で言うとパソコンに向き直った。



本日ここまでです。
144名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 03:10:55 ID:KQDUaGwl
GJ!!待ってました!
川島さんそんなに歳くってたとは…
145名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 16:26:06 ID:ZkvoG4hx
GJ!GJ!
この話好きすぎる…
結衣タン可愛い!
146名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 21:18:51 ID:AUNCSqZY
GJ!
この話どこに着地するんだ?!
先が気になる!
147名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 22:00:01 ID:YSAOdFw/
GJ!
うはー。
結衣ちゃん可愛いよ!
先が楽しみだよー。
148名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 23:12:05 ID:Z8xpOyP3
結衣ちゃんカワユス
149保管庫の件 ◆HQa5BnLxJ. :2008/12/11(木) 23:55:31 ID:rW3I7YNX
設置から1週間弱がたち、一通りお目通しいただいたかと思います。
特にご意見もないようなので、このようなスタイルで進めさせていただきます。

>>129 Uの告知について、来週火曜日ぐらいに、1と3のスレにレスしたいと思います。
2のサイトについては、「人間関係」http://www9.atwiki.jp/eroparo/pages/512.htmlに
追加させていただくことにしたいと思います。

保管作業については、なるべくすみやかに収録していきますが、
滞った場合は、作者様や読者の皆さんで行っていただければありがたいです。

今後何かありましたら、その時はまた相談させてください。
150幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/12(金) 08:10:24 ID:n02YCRp6
〉〉保管庫管理者さま

丁寧にありがとうございます。
また、告知の件、よろしくお願いします。
151オヤジと俺と彩の話 01:2008/12/14(日) 10:01:37 ID:1H2GQq+x

今、俺は土下座をしている。
ガキの頃から大ッ嫌いだった、こいつの前で。

お袋の人生をメチャメチャにして、全くそのことに罪悪感すら無く、
誰もが知ってるでっかい会社の社長を平気な顔をしてやってるこいつに、
俺は一度も会いたいなんて思ったことなかった。

そう、つい昨日までは。

「ほう、どういう風の吹き回しかな? その変わりようは」
「だから…… お前の会社に入れてくれって…そう言ってるんだよ!」

「ふむ。発言の趣旨はわかるが、言い方がちょっと、おかしくはないか?」

「………」
「そんなことすら分からん年齢でもあるまい?」

「くっ…… お願いします。お父さんの会社で雇ってください」
覚悟を決めた俺はヒザをつき頭を下げた。

「わかった。喜んでおまえを雇おう。
 契約金がちょっと高すぎる気もするが、まぁいいだろ。
 約束の1000万円は明日お前の口座に振り込む。
 金の前ではさすがに宗旨替えをせざるを得なかったようだな」

「そ、それは」
屈辱の思いが一瞬わきあがる。ちがう! と叫びたかった。

「ん? 違うのか? それならやめておくか? 私はどっちでもいいんだぞ?」
「い、いえ。よろしくお願いします」
「そうか。じゃ、契約成立だな」

俺は立ち上がり、雇い主に頭を下げたあと、部屋から出て行こうと背を向けた。
その時だった。

「確か……吉岡彩……だったかな? 手術が必要な娘の名は」
「!?」
突然のオヤジの言葉に俺は思わず振り向く。

「驚かなくてもいい。私は知っているんだよ、全部、おまえの事は」

「いや、契約金をどのように使うかはおまえの勝手で、
 私があれこれ言うような問題じゃない。
 ただ、5日後にはチュニジアに行って貰うから、
 その前にすべてのプライベート部分をクリアしておいて欲しいんでね。
 おそらく3年ぐらいになると思う」

「わかっ……わかりました」
「じゃ、そういうことで」
152オヤジと俺と彩の話 02:2008/12/14(日) 10:04:07 ID:1H2GQq+x

吉岡彩。彼女はゼミの1年後輩。
今年の春までは同じ研究室で、毎日のようにそばにいた存在。
おそらく彼女にとって、俺は単なる親切な先輩の一人だったはず。

俺は彼女と一緒にいた一年間、ずっと彼女への思いを隠し続けていた。

始まりは彼女があの研究室に足を踏み入れた瞬間だった。
気付けば俺は一目ぼれをしていた。
その後も、明るく快活な彼女の仕草や言葉に、ボーッとしてしまうことも度々。
だがチキンな俺は告白する勇気すらなかった。

そして、ついこの間。
ゼミで一緒だった奴と飲む機会があって、彼女の病気のことを聞かされた。
難病であり、公費対象認定もなく、USAの特定病院でしか治療ができないこと。

発症の第一段階としての分泌異常が発見されただけで、今はなんの症状もないが、
このまま何もしなければ、2〜3年で100%に近い確率で死に至ること。

……そして治療には膨大な金がかかること。

その晩、俺は必死で考えた。
どんな手を使っても俺にはそんな巨額の金を手に入れることは不可能だった。
非合法なことでもしない限り……

少なくとも、金だけはいやって言うほど持ってるヤツの顔が頭に浮かんだ。
俺ができること。ただひとつ可能性があること。
そのために失われる俺のプライドなんて、ちっぽけなものだ。

彼女の命が救えるのなら。

俺はオヤジに電話を掛けた。
153オヤジと俺と彩の話 03:2008/12/14(日) 10:05:34 ID:1H2GQq+x

彼女は入院しているわけではなかった。
ゼミを休み、自宅で体調の変化がないか様子を見ているところだった。

突然会いに行くと電話を入れたときに彼女は驚いていた。
ただ、電話で話す用件でもなかったので、会ってから話すと伝えて電話を切る。


「で、お話……って?」

質素な応接間には俺と彼女しか居ない。
目の前のダージリンは、うっすらと白い湯気を薄茶色の表面に漂わせていた。

「彩ちゃんの病気のこと、聞いた」
「……そうですか」

うつむく彼女を見て、俺はいたたまれない気持ちになる。
……俺が知っては……いけないことだったのか?

いや、たとえ彼女が俺を嫌おうがどうしようか関係ない。
ともかく治療が先だ。それが俺の意思なんだから。
彼女が救えるかどうかが全てなんだ。話を続けろ! しっかりしろ、俺!

「治療のための金1000万を用意した。振込先を教えてくれ」
予想外の言葉に、彼女は目を見開き俺を見つめる。

「でも、なんで先輩がそこまで?」
「いや、そばに居る人が困ってたらやっぱり助けたいし」
「そ、それだけで…… それにそんな金額」

「心配要らない。これはオヤジに頭を下げて借りた金だ。
 素性のよくない金じゃあない」
「で、でも先輩、お父さんはいないって」
「あぁ、ちょっと複雑な家族関係でね。
 正直、あいつに頭は下げたくなかったんだけど、
 君の命が助かるなら安いもんだと思って、拝み倒して、で、なんとかね」

「でも、やっぱり」
「いいんだよ、俺のきまぐれ。そんだけだから」

押し問答が続いた。思いついて、彼女の母親を呼んでもらう。
おっかなびっくりの母親に事情を話す。俺の思い以外をすべて。

「今夜、ご両親でよく話し合ってください。
 どうせオヤジには前から会社に入るように言われていたので、
 こうなる運命だったのかもしれませんし。
 金だって、オヤジにとっては別になんともない額ですしね。
 ……あるいはオフクロと俺に対する罪滅ぼしかもしれませんが」

恐縮しまくる母親とうつむいたままの彼女を残し、俺は外に出た。
大丈夫。親ってのは子供が可愛いもんだ。
154オヤジと俺と彩の話 04:2008/12/14(日) 10:06:50 ID:1H2GQq+x

彼女の両親は、娘の命を救うことを選んだ。

その夜、俺の家に来て二人は土下座をした。
俺は二人の手をつかみ、起こす。そんなことしてもらってもこっちが困る。
俺はプライドを捨てたがそれは個人的な問題。

車で二人を送る。家に着くと玄関先には彼女が立っていた。
頭を深々と下げられた。

別に悔しそうな顔をしていたわけではないが、
しばらくの間……あるいはもしかしたらずっと……今日が最後で……
そう思うと、見慣れた可愛い笑顔をもう一度見たいと思ったが、
今は決してそんな場面ではないと気付く。あきらめるしかなかった。

バックミラー。頭を下げたままの三人の姿が小さくなる。
いいんだこれで。俺の出来ることをちゃんとやった。これでいいんだ。

結局、あいかわらず俺はチキンのままだった。
155オヤジと俺と彩の話 05:2008/12/14(日) 10:07:37 ID:1H2GQq+x

今日の昼、アパートの後始末も無事に終えた。今は空港に近いホテルに居る。
そういや、昨夜、荷物を詰め込んだ所で俺は思わず笑ってしまった。
つめこんだサムソナイトにかなりの隙間が出来てて。ありえない。

一週間前には予想もしなかったこと。
明日の朝のチュニジア行きの便に乗ったら、おそらく3年は戻ってこない。

手帳の後ろに入れた彼女の写真を取り出す。
ゼミの飲み会、デジカメで撮った写真。笑顔の彼女。
間違いなくしばらくは会えない。
一緒にいた時間の全てが、走馬灯のように脳裏をかけめぐる……

部屋のドアにノックの音がした。

「誰?」
「わたしです」

彼女の声だった……

ドアを開けると、花柄のワンピースの彼女がコートを手に持って立っていた。

絶句する俺を無視するように彼女は言う。
「部屋に入っていいですか?」
「あ、あぁ」

「結構広いんですね」
ベッドに腰掛けた彼女はそう言う。

……でもどうして?

「来週、アメリカに行きます。入院の予約もとれたから。
 それが報告したくて連絡取ろうとしたら繋がらなくて。
 大家さんとこに行って、やっとここがわかって」

「でも」

「あの、お、お礼、ちゃんと言ってなかったし」
「そ、そうか」
なるほどそういうことか。律儀な話だ。彼女らしいけど。

「ありがとうございました」
「あ、いや。うん」

目の前の彼女は、生きる希望を得たためなのだろう、光り輝いている。
その時、俺は自分のしたことが決して間違いでなかったことを確信した。
156オヤジと俺と彩の話 06:2008/12/14(日) 10:09:16 ID:1H2GQq+x

「あと……もしかしたら先輩に二度と会えないかもしれないから」
「そ、そんなことはない。あの病院はその病気の治療では世界一の」
「でも、患者が100%治癒してるわけではない……ですよね」

「もしダメだったら、借金もお返しできなくなっちゃいますから、
 だから……今、私に出来ること、しておかなきゃと思って」

その言葉と共に、彼女は立ち上がる。
そして、背中に手を回したあと、部屋にファスナーの音がした。
片腕ずつ袖から抜かれ、支えのなくなったワンピースが床に落ちる。
白い肌に薄いピンクのキャミ。その下のインナーも見えていて。

「今の私にできることは、これくらいしかないんです。
 だから、私を受け取って欲しいんです。お願いです」

恥ずかしさからか、頬を赤く染めながら彼女はそう言った。

「あ、でも、誤解しないでください。
 こんなこと、男の人とこんなことするの、わたし初めてです。
 先輩が最初の人なんです。だ、だから」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってくれ。
 俺はそんなことを望んじゃいないし、それに」

勢いよく抱きついてきた彼女のせいで、俺の言葉は中断した。
痩せてはいるがそれなりにある彼女の胸が柔らかくあたる。

「こんなやせっぽちで悪いとはおもうんですが」
「いや、そんなことは全然」
ちがうだろ、そんな正直な感想言ってる場合じゃないだろ、オレ!

というか、一気にズボンの中が俺の意思と関係なく盛り上がって、
なんか痛いくらいになってて。
空気読めよ、なにやってんだよ、静まれ!

そんな思いとは裏腹にそれはさらに硬くなり、彼女のおなかにもろに当たる。
やばい。

「えっ?!」
妙な感触に不思議な顔をした彼女は、ちょっと考えて事態に思い至ったのだろう。
上向きとなったその顔は、さっきよりさらに赤くなっていた。

「先輩、あの、これって……」
こっちが恥ずかしくなってきた。言わなくていいから。

「ちょっと、やってみますね」
157オヤジと俺と彩の話 07:2008/12/14(日) 10:10:30 ID:1H2GQq+x

ひざまずいた彼女は、おもむろにジッパーに手を掛けると一気に降ろした。
「ちょっ」
「大丈夫ですから。あ、痛かったら言ってください」

止める間もなく、ズボンもトランクスも降ろされ、彼女の目の前にそれが晒される。
自分に向かって突き出されたそれに、さすがに一瞬ぎょっとしたのが肩の動きでわかった。

「もう、いいから。気持ちはわかったから」

しかし俺は説得を続けることができなかった。彼女がその口で俺のものをくわえたからだ。

「アヒッ」
あまりの快感に悲鳴をあげた俺。

そのままの姿で、そう、俺のものを唇でくわえたまま、彼女は俺を見上げた。
不思議そうに首を横にかしげる。痛いのか…と?

「いや、痛くない。正直気持ちがよくて」
動転してありのままを告げる俺の答えに、彼女は満面の笑みをうかべた。
そして更に奥へとおれのものを飲み込み始める。


今、彼女の頭は激しく前後に動き、それと共に強烈な快感が俺にもたらされている。
もう……多分、もうちょっとで……

やばい、このままじゃ、口の中に出ちまうじゃないか!
あわてて彼女の頭をおさえる。

「で、出ちゃうから」
見上げた彼女にそう言う。
それを聞いた彼女はかすかにタテに首を振った。

えっ?

俺の手は取り払われ体の横に持っていかれた。
そして再び彼女の唇によるグラインドが始まる、情け容赦なく、もっと激しく。
舌先は尿道の辺りを刺激するという、同時攻撃!

あっという間だった。俺の快感は頂点を迎え、一気に射精が始まる。

「出る」
それだけ言うのがやっとだった。

動きを止めた彼女の唇の中で、俺のものが幾度も痙攣し、
激しく精液を噴出する。
158オヤジと俺と彩の話 08:2008/12/14(日) 10:13:07 ID:1H2GQq+x

出るものが出きった瞬間、俺は激しく後悔した。
なんで彼女にこんなことをさせたんだと……

急に俺のものを包んでいた温もりが消えた。見れば彼女が口を離していた。
あわててそばのティッシュ箱をとり、数枚とって彼女に渡す。

「ここに」

しかし返事は無く、部屋に響いたのは彼女がなにかを飲み込む音。
えっ?!

「飲んじゃいました。あんまり味はないんですね。
 このティッシュ借りますね」
そう言うと、彼女は俺のものを丁寧に拭き始めた。

なんか、後悔とか、してる場合じゃなくなってる……

「あれ〜 なんか、先輩のこれ、まだ元気あるんですけど〜」
彼女がそんなセリフを笑顔で言いながら、指先で左右につついて遊び始めた瞬間、
俺の中で何かがぶちきれた。

もういい! 渡した金の分、やりまくってやる!
だいたいこいつ、その気でここに来たんだから、問題あるわけないし。
俺は、けだものモードに突入した。

彼女を抱き上げ、ベッドに放り投げる。
突然の俺の変わりように、呆然としている。
おまえが言い出したんだ、俺は責任持てないからな!

スリップを脱がし、ブラをむしりとると、俺は乳首を口に含んだ。
フハッ。彼女の口からため息のような吐息が漏れる。
片手でもうひとつの乳房をつかむ。不定形に形を変える柔らかい塊。

肩、首筋と唇で愛撫して、たどりついたとこで彼女の顔を見つめる。
唇を彼女の唇にゆっくりと寄せても、目が開いたままだった。

「目を閉じてくれるかな」
「あっ、ハイ!」
気付いてなかったようだった。

ようやく唇を重ねると、彼女の腕が俺の背中に回された。
そして彼女は顔を左右に振るようにしながら、俺の唇をむさぼる。
当然のように俺のものは激しく勃起して、さっきから彼女のおなかを叩いてる。

唇を離し、下半身へと移動した。あわてて彼女が両手で股間を隠す。
ゆっくりと手をはがし、小さな布の両サイドに手をかける。
彼女はさりげなく腰を浮かした。
159オヤジと俺と彩の話 09:2008/12/14(日) 10:13:51 ID:1H2GQq+x

すべてを取り去ったとき、正直俺は感動していた。
女の裸って、こんなに綺麗なものなんだと。

「あの、恥ずかしいんですけど」
彼女がこちらを見ていた。
あわててベッドカバーをはぐって中に入れてやる。

気付くと、下半身は何も着けてないくせにワイシャツだけ着てる俺がいた。
急いで脱ぎ捨てると、開けっ放しのサムソナイトからコンドームを取り出す。

「あっちじゃ極薄は手に入りにくいから持ってけ」
と悪友から押し付けられた奴だ。余計な荷物とは思ったが、ここで役に立った。
ベッドに入る前にヘッドボードに置く。

素っ裸で抱き合う。触れ合うことがそれだけで気持ちいい。
流れのままに唇を重ねる。そして俺の手は彼女の下半身へと。

無理やり割り込んだ指先、極端に柔らかいものをかきわけると、
ヌルッとした感触に出会う。
彼女の口から「アッ!」と声が漏れた。

繰り返し上下に動かすと、腿と全身を強張らせながら喘ぎ声をもらし続ける。
その声を聞いているうちに俺の我慢は限界点を超えてしまう。

ベッドから半分乗り出し、ヘッドボードのコンドームを着け、再びベッドに。

「どうしたんですか?」
半開きの目のまま、こちらを向いて彼女が問いかける。エロい。
「コンドーム。妊娠したら君の治療が困難になる。だから」

答えはなかった。そのかわりに下から強く俺を抱きしめてきた。
肩が震えてる。そして俺の胸が濡れた。泣いているのか?
引き剥がしてみると、顔は涙でボロボロになっていた。

「わたし、先輩が初めてで、よかったと思ってます、心から」
いや、いかに据え膳とはいえ、結局金の力で君を買ったようなこの状態で、
そんな風に言われても……

「遠慮、いりませんから。気にせずに」
……どっちにしろ、俺にも自分が止められるわけがなかった。
160オヤジと俺と彩の話 10:2008/12/14(日) 10:16:10 ID:1H2GQq+x

彼女の両足の間に割り込む。片手で探りながら自分のを押し当てる。
力を入れると彼女の顔が苦痛でゆがんだ。かまわず奥にすすめる。
俺の胸に彼女の手が当てられ押し戻そうとする。多分無意識なんだろう。

なにかを無理やり押し切った感じと共に、俺の全てが受け入れられたのが分かった。
彼女が荒い息をくりかえす。相当に我慢をしていたようだった。

早く終わらせたほうがいいだろうと思い、腰を動かしてみた。
三往復したところであっけなく射精してしまう。予想外だ。

リスクを負うわけにはいかないので、
余韻のことは無視して、彼女の中から俺を抜いた。
始末をしてから彼女を腕枕しながら抱きしめる。

腕の中に温かさを感じながら俺は思っていた。
彼女には絶対に生きていて欲しい。
たとえこんな風に彼女を抱きしめる役が俺でなかったとしても、
それでも彼女には……

見れば、彼女は穏やかな寝息をたてていた。
彼女の髪をかきあげ額にキスをする。

必ず元気になって日本に帰って来るんだぞ!
いいか! 約束だぞ!

俺は寝たままの彼女にそう語りかけた。
161オヤジと俺と彩の話 11:2008/12/14(日) 10:19:41 ID:1H2GQq+x

チュニジアってとこは、アフリカにしてはやたら治安がいい。
日本からのODAも結構入ってて、かなりの親日的な雰囲気だ。
ある意味ヨーロッパの飛び地的な場所と言えるのかもしれない。
結構、観光が重要な産業だったりする、そんな変わった国。

とはいえ、ちょっと国境を越えると危険地帯。
顔なじみの駐在員は、隣国で誘拐寸前の経験があるって言ってた。


あの日、俺が夜中に目覚めたとき、俺の腕の中に彼女はいなかった。
そして書置きがテーブルの上にあった。

『必ず病気治します。絶対ですから』


こっちにきて俺は必死に働いた。
とりあえずフランス語ができたのがラッキーだった。
植民地時代の名残で、この国の人間は学校でフランス語を学んでるからだ。

考えてみれば、俺の雇い主はそのこともわかってて、
俺をここに寄越したのだとは思う。

様々な経験を重ね、気付けば3年が過ぎていた。
とりあえず足手まといじゃないくらいに仕事は出来るようになっていた。
162オヤジと俺と彩の話 12:2008/12/14(日) 10:20:56 ID:1H2GQq+x

彼女とはあの夜以降全く連絡をとっていない。

そりゃそうだろう。
金の力で彼女を助け、そして彼女はその金と引き換えに俺に抱かれた。
そんな成り行きの中、どのツラ下げて彼女の心配をすればいいんだろう。

ただ、なにかまずいことがあれば、オヤジは俺に言って来るだろう。
便りが無いのが良い便り。そう思って俺は毎日を過ごしてきた

そんな俺に日本に一週間ほど来るようにとの命令が飛んできた。
直々に社長からだ。
おかしい。上司に聞いたところでは、異動なら次はヨーロッパのはずだというし、
そもそも今回のは出張扱いだし。
微妙な胸騒ぎを抱えたまま、俺はチュニスを飛び立った。

トランジット込みで16時間。日付としては24時間にもなる長旅だった。
成田に着いた俺は正直ヘトヘトだった。

アライバルには社長が来てるはずだった。
会うのが恐かった。
そりゃそうだ。平社員の出迎えに社長が来る会社なんて無い。
歩きながらも悪い方向に妄想がふくらみ続ける。

「残念だったが、彼女はアメリカで……」
んなことはない! 絶対無い! 彼女に限って!

ゲートを抜けたところで、オヤジを見つけた。

「ただいま帰りました」
「ご苦労様」
その表情からは何も読み取れない。不安がさらに募る。

「で、いったい何の用で」
「いや、私は特におまえに用事はないんだが」
「どういうことですか! わざわざ16時間掛けて来て、そんな」
「待て! おまえに用があるのは、私ではなくこの人だ」

オヤジの影に隠れるように立っていた人物が前に出てきた。
163オヤジと俺と彩の話 13:2008/12/14(日) 10:22:02 ID:1H2GQq+x

彩。
目の前に彼女が立っていた。足もあるし。

「おかえりなさい」
あれほど聞きたかった声が今、耳にやさしく響く。

俺は呆然としたままオヤジを見た。

「治療は成功した。彼女はもう大丈夫だ、心配ない」
力の抜けた俺はその場に、ヘナヘナと座り込んでしまった。

「だらしがないな、最近の若いもんは。困ったもんだ」
そう言いながらオヤジは俺の手をつかんで立ち上がらせてくれた。

「積もる話もあるだろ。まぁ、こっちも忙しい身なんでこれで消えるが」

「あ、そうだ。来月になったら辞令出すから。
 おまえにはブリュッセルに行ってもらう。多分5年ぐらいだ。
 契約金の分は働いてもらわないとな」

「それからここでの一週間は休暇扱いだから、出社には及ばん。
 じゃ、そういうことで」

そう言ってオヤジは俺たちに背中を向けて歩み去っていく。

くやしかった。俺はオヤジに負けた。完敗だ。
でも、ちゃんと言っておかなきゃいけないことがある。今ここで。

「オヤジぃ〜」
俺の叫び声にオヤジの足が止まる。

「ありがとな〜」
むこう向きのまま右手をあげて人差し指を左右に振るオヤジ。
そしてそのまま人ごみの中に消えていった。

かっこつけすぎだろと俺がつぶやいてると背後から声がした。

「先輩。ここで抱きついてもいいですか?」
「え?」
「あぁ、もう、我慢できません!」

言葉と同時に俺の背中に衝撃が来た。
「会いたかった……ずっと…会いたかった……」

彼女の言葉は嬉しかったが、同時に周囲の視線もかなり痛かった。
164オヤジと俺と彩の話 14:2008/12/14(日) 10:23:21 ID:1H2GQq+x

平静を装い、しばらく好きなようにさせてから引き剥がし、こちらを向かせる。

「だってお前、あんとき」
「もう、先輩、全然わかってなかったんですね」
「お、お礼だって、そういうふうに」
「嘘に決まってるじゃないですか」

なにそれ……

「正直、治療が成功するかどうかわからない状態で、
 もしかしてそのまま死んじゃうかも知れないって思ったら、
 大好きな人に抱かれてからじゃなきゃイヤだって、わたし、そう思って」

えっ?! その大好きな人って、もしかして……

「もしかしなくても先輩です。やっぱりわかってなかったんだ。
 そうじゃなきゃあんなことまで……しませんよ」

最後のほうは、あの夜のことを思い出したのか、小さな声になっていた。

「あの夜、先輩に本心を言うのは出来なかったんです。
 死んじゃうかもしれないのに告白したって、
 結果として先輩を苦しめてしまうことになるって、わかってましたから」

彼女の瞳から涙が一筋こぼれた。
しかしすぐにその表情に笑顔が戻る。

「でも、もう、我慢しなくてもいいんですよね」
「あ、あぁ」

「先輩、大好きです」

「へへ、やっと言えた。すっきりしました」

泣き笑いのその顔を見て、俺が大事なものを失わずに済んだことに関し、
柄にもなく神に感謝したのは内緒だ。
165オヤジと俺と彩の話 15:2008/12/14(日) 10:29:59 ID:1H2GQq+x

イヤ待て。重要な問題が残っていた。

俺は一週間後にはチュニジアに戻り、そしてベルギーに行く。
当分帰って来られそうにもなくて、いったいこれからどうしたら……

「あ、そうだ。社長言ってませんでしたね、大事なこと。
 わたし、雇っていただいてるんです半年前から。
 で、来月ブリュッセル事務所に転勤になる予定です」

……やりやがったな、あいつ。
でも、なんか、会社を私物化してないか?

「なんか他には?」
まだありそうな気がして聞いてみた。

「あと……」
「あと?」
俺の問いかけに彩の顔が赤くなった。

「二人の社員を送り出したはずなのに、
 帰りの飛行機は三人分用意しなくちゃいけない事態もありうる。
 でもこれって、会社もちになるんだろうか……とか」

ろくでもないことを考える社長だ。

「でも、すごく楽しそうでしたよ、そう言ったときのおとうさん」

オヤジ……

「あと、ひとつ残ってた」
「え?」

「俺と一緒のベルギー駐在に関して、
 君のご両親にもちゃんと事情を説明しないといけないと思うんだ。
 いや、今後のことも含めてきちんと筋を通さないと」

「それは先週、社長がわざわざ家に来て両親と会ってくれて、OK貰ってます」
「そっか。え? でも……それって、俺のOKが……」
「……あ、そう言えばそうですね。あれ〜 誰もそのこと話題にもしてませんでしたね」

これだよ…… いや別に何の不満もないんだけどね。いいんだけどね。

気付けば目の前の彼女は、天使のような微笑を浮かべ俺を見上げていた。
俺のとるべき行動はたったひとつで、迷うはずもなかった。

彼女を抱きしめてキスをする。
人がいっぱい通る、成田の到着ロビーではあったけど……

  Fin
166名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 11:57:12 ID:h1T823Ee
GJ!

こういう健気な話は大好きだ
167名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 11:57:25 ID:1S37ZcyE
1番槍GJ
168名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 12:46:47 ID:Ghu7xbR8
GJ!
シンプルだけどそこがイイ!
169名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 13:18:08 ID:xujStwgu
GJ!
良くまとまっていて読みやすい!
やっぱこれぐらいの長さが良いな。
170名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 14:25:23 ID:hrHcE7eo
親父かっこよす
171名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 17:20:41 ID:82u/PUmQ
親父の声が若本ボイスで脳内再生された
172名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 18:09:33 ID:7mwjZ6rw
すげー!超ハッピーエンド!!!
楽しく読めたぜ!GJ!
173名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 20:52:37 ID:4HFaAB0c
GJ!

アレ……?目から汗が……
174名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 23:25:59 ID:aQGZBNOs
GJ!!
見事に女の子助けて、読んでるこっちがにやにやするような
ハッピーエンド! GJ!!
175名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 01:45:58 ID:7fPC2LVG
保守
176名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 20:38:03 ID:aD3H+/9a
良スレage
177名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:18:45 ID:3WElXsU8
幸福の更新が止まったな。
ようやくスレが静かになったか…
178名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 01:05:11 ID:Ifw/m3CM
遺産の続きこないかな〜あのあとどうなるのか気になる。
179名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 02:34:11 ID:l+TaNwQt
あやしいバイトの続きが気になって
毎日来てしまう
180名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 02:43:49 ID:S5rnFGU9
保管庫見たがらぶマネ面白いな。
181名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 18:45:04 ID:5zD2/IKB
俺は幸福姉妹の続き待っているがな
だが、できれば他スレに移ってもらいたい。正直、あのハード・プレイは引く
182名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 20:54:21 ID:MGUswLOp
>>181
荒れる様なこと言わないでくれ。
あと無茶苦茶なこと言ってるのにも気付け。
183名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 23:18:53 ID:RFeh3yf/
クリスマス・イブの奇跡を金の力で起こしたい。無理やり雪を降らせるとか
184名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 23:57:17 ID:0OfqqmeZ
「嘘……星が見えるのに何で雪が?」
「スノーマシンを借りた。現代の科学技術をなめるなよっと」
「……おいくらしたんですか?」
「お前が一生働いても払えない額だ」
「……」

軽くうつむいてしまった。
そんなことは知らないがね。
そっと、俺の奴隷である彼女にマフラーを巻いて抱きしめる。

「あ…」
「金の心配をする前にこの状況を楽しめ。
 そんな心配をしている暇があるなら、
 俺が風邪をひいた後のことでも考えてるんだな」
「……風邪をひかないでください。私のことはどうでもいいですから」
「奴隷であるお前が風邪をひくなんて許さん。
 お前が許されるのは、風邪をひいた俺の看病だけだ。
 わかったな?」
「……はい、ご主人さま」

こんなかんじかね?
185名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:15:05 ID:Z+5txx/7
プロローグっぽいモノ出来たから張ってみるべ

なんか言われる前に逃げるZE☆

注:このSSにはエロが含まれて『おりません』
  エロが含まれる予定が○ございません
  ご都合主義満載。
  道具表現あり。
  タイトルがございません

……だれか考えてくれないかなーっと
それではどうぞー
186名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:16:09 ID:Z+5txx/7
月が奇麗な夜は、必ず散歩することにしている。
いいものが拾えたり、楽しそうな事があったり。
月に誘われてって言ったほうがわかりやすいか。

近くの公園でたばこを吸うのが日課。
月を見ながら煙草を吸って、気が向いたらコーヒーを飲む。
そんなちっぽけなことに幸せを感じるのは、
俺が『小さい』人間だからだろう。

そんなことを考えていると、公園の敷地内で言い争いが聞こえてきた。
そんなに大きくない公園だ。
ひそひそ話でもしていない限り、すぐ聞こえてしまうくらいの。

「期日まで後三日もあるじゃないですか!」
「その三日で三千万耳そろえて持ってこれるのかい譲ちゃん?」
「それは……」

ちょうど明りの下で言い争っている二人の男女。
よく表情が見えること見えること。

悔しそうな顔をする少女と、
下衆な笑顔を見せているヤク……にいちゃん。
やっぱり月が奇麗な夜に出かけるのはいいな。
こうゆう面白そうな事があるからやめられない。

「何話してるんだい?」

野次馬根性全開で二人に近づく俺。
何回かこうゆうことは経験済みなので怖くない。

「あぁ!?てめぇには関係のない話だ。向こうに行きやがれ! 」

割り込まれたのがずいぶんと腹立たしい様子のにいちゃん。
いくらそうゆう仕事だからって、
もうちょっと気長にやらないと人生短いと思うのは俺だけだろうか。
「まぁ固いこと言うなよ。ちょいとこの娘とお話しをさせてもらいたいのさ」

諭吉を一枚握らせて黙らせた後、少女に向きなおる。

ずいぶんと金のない生活を送ってきたらしい。
何も塗られていない爪、ほっそりとした体。
色あせた服、ぼさぼさの髪。
まだ十代にしか見えないのに随分と苦労してきたのが伺える。
三千万の借金ってのは本当らしい。

不謹慎な言い方だが、これは面白くなりそうだ。

「さて、君に一つだけ選択肢を増やしてあげようと思うんだ
 今現在の選択肢として、借金の形として連れて行かれること。
 まぁ、どう考えても体を売ることになるのはま逃れそうにないな」

また下衆な笑い方をする兄ちゃん……彼女できないぞ?


「もう一つは、俺に借金を肩代わりしてもらって、
 ウチで使用人……まぁメイドとして働くか」

たばこを吸いながらこうのたまってやった。
187名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:16:44 ID:Z+5txx/7

「……え? 」

まだ理解できていないらしい。
突拍子なのは知ってるけど、順応性がないとついていけないのに。

「ほら、ごー…よん…さん…」

待つのは得意ではないので5秒読み。

「ちょっと待てやコラ」

反応したのは少女のほうではなく、兄ちゃんのほうだった。

「勝手に話を進めやがって何様のつもりだテメェ。
 三千万だ。今すぐ耳揃えて持ってこれるのか? あぁ!? 」
「出来なかったらこんな相談するつもりはねーよ」

財布から小切手を、ポケットからペンを取り出す。

「まぁ、現金じゃなくて小切手だけど。」

3を一つ0を七つ書いてヒラヒラと見せびらかす。
……口をあんぐりと開けて呆けるなよ。
気持ちは解らなくはないけどさぁ。

「で、だ。どうするよ? 」

気を取り直し、少女に声をかける。

「えっと……その……」

少女は考えあぐねているようだった。
俺が信用に足る人物なのか。
本当に俺について行って大丈夫なのか。

何度も言うようだが、
考えるのは構わない。
だが、あんまり待つのは得意じゃない。

「あー……面倒だ。とりあえず家に来い。
 まだ期日まで三日あるんだろ、兄ちゃん? 」
「あ……あぁ」

ようやくどこぞの幻想世界から戻ってきたらしい兄ちゃん。
まだ半分くらい潜ってそうな気もするが、ちゃんと返事をした。

「俺は我道流。で、あんたの名前は? 」
「……愛染聡美…です」



こんな形で愛染聡美を拾ったわけだが、
今になって思う。
俺は『掘り出し物』を見つけたのだと。
188名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 19:17:34 ID:gCnwZXbP
いいぞもっとやれ
good money!
189名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 20:02:52 ID:v3KgUIJV
アナル
190名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:57:29 ID:iFE156vn
壁|ω・) 誰もいない……

壁|ω・) >>187の続きを投下するなら今のうち

壁|三(=゚ω゚)つ
191名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:58:30 ID:iFE156vn
「うわぁ……」
「どうした?」
「いえ……大きいなーって」

広大な敷地を見回す愛染。
まぁ、大きいだろうなぁ。

国会議事堂の約二倍の敷地といえばわかりやすいだろうか。
適当にあいてる敷地を丸ごと買い取った結果がこれだ。

「ほら、行くぞ。そんなに見たければ明日まわれ」
「はい……」

んな残念そうな顔をするな。
自分の敷地なのに、屋敷まで歩いて10分はかかる。
……大きすぎるのも考え物だな。

そんなことを考えながら、ポケットから携帯を取り出し、
屋敷へ電話をかけた。

『はい、我道邸でございます』
「咲夜か。流だ、入口にいるから風呂を二つ沸かしておいてくれ。」
『……誰かお連れになったのですか?』
「ああ。連れの方はボロボロだから服も用意しておいてくれ。」
『かしこまりました。
 それから、森近様から電話がかかっております』
「珍しいな。要件は?」
『流様にしか話したくないとのことで、
 伺っておりません』
「わかった」

電話を切る。
愛染の方を見ると、申し訳なさそうな顔をしていた。

「どうした?」
「いえ……色々とごめんなさい」
「ん?……ああ」

風呂だの洋服だのが申し訳ないらしい。

「気にするな、気に障ったら申し訳ないが、いわば道楽だ」
「道楽、ですか……」
「そう、道楽。知ってるか?
 世界なんて、俺みたいな金持ちの道楽と気まぐれで廻ってるもんだ」

皮肉だけど、どうしようもない真実。
事実、その道楽と気まぐれのおかげで愛染はここにいる。

「……さて、とっとと行くぞ」
「……はい」

そんな事実に気がついたのだろう。
愛染の顔は暗かった。
そんな愛染の様子に気づかぬふりをしながら、
屋敷へ向かった。
192名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:59:31 ID:iFE156vn

屋敷にたどり着き、ドアを開けると、
メイドが一人立っていた。

「お帰りなさいませ持ち主様。そちらの方は?」
「電話で話した連れの愛染聡美。三日間滞在予定だ。
 とりあえず風呂に入れてやってくれ」
「かしこまりました。持ち主様は?」
「森近に電話を入れた後入る。バルコニーにタバコを用意しておいてくれ」
「かしこまりました」

「あの……」
「ん?ああ、紹介が遅れたな。
 こいつは咲夜。ここの侍従長で、俺の『道具』だ」
「ご紹介にあずかりました、咲夜と申します。以後お見知り置きを」

スカートの裾をもって軽くお辞儀をする咲夜。
咲夜に苗字はない。
愛染と同じく、困ってるところを拾ったんだが、
道具に苗字はいらない。

「…様…………ですか」
「…ん?」
「何様……もり……か」
「あー……もうちょっと大きい声で言ってくれると助かるんだが」
「何様のつもりですか!」

突然の叫び声に驚く俺と咲夜。
そんな様子に気づかずに叫び続ける愛染。

「道具?冗談じゃないです!
 あなたは人を何だと思っているんですか!?」
「あー……なんだとって言われても人は人でしかないつもりだが」
「じゃあ咲夜さんはどうなんですか!
 道具ってどうゆう意味ですか!?」
「道具は道具だ。それ以上でもそれ以上でもない」
「〜〜〜っ!」

平然と咲夜のことを道具といったのが癪に障ったのだろう。
確かに免疫ないだろうなぁ。
それより道具扱いってのがまずないのか。

そんなことを頭の片隅で考えながら。

「咲夜。森近に電話かけてくる。
 これ以上油を注ぐわけにもいかなそうだからな。
 嫌じゃないなら由来でも話してやれ」
「かしこまりました」
「ちょっと待って下さい!まだ話は終わってません!」

しつこく食ってかかる愛染。
面倒だな。
193名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 02:02:19 ID:iFE156vn
「お怒りのところ悪いが、お前の話なんか知らない。
 そんなに話したいなら咲夜に話してくれ。
 お前の疑問の答えはそこにある」

まだ何か喚き散らしているようだが、
そんなことは知らない。
そんなことには興味がない。

そんなことを考えながら、
俺は森近に電話をかけるべく、自室へ向かった。


数十回のコールで、ようやく森近は電話に出た。

『遅くなってスマン』
「またサイレントマナーにしてやがったな」
『仕事に支障をきたすからな』
「仕事っていう仕事やってねーだろ」
『……そうゆう日もある』

ほんとずぼらな性格をしている。
そんな性格に救われるところもあるんだが。
それは置いておいて。

「で、何の用だったんだ?わざわざ携帯じゃなくて家に掛けるとか」
『ん?ああ。あれだ』
「なんだ」
『……なんだっけ』

……救われるところもあるんだが。

「電話切っていいか?」
『まて、思い出した。急ぎの用じゃないから家に掛けたんだ』
「で、なんだ」
『……なんだっけ?』

………救われるところも確かにあるんだが。

「切っていいか?」
『まて、思い出した。お前のところの孤児院。
 今回はあの量ででいいのか聞きたかったんだ』

金を稼いだは稼いだで、使い道が無くなってしまった。
金庫の中で埃をかぶらせておくのも嫌だから、
咲夜に相談したところ
『孤児院などはどうでしょう?』
との答えを得たので、早速敷地を削って孤児院を立てた。
で、食料だの何だのをそろえるのに森近の会社を頼っているわけだが。

「どの量だ?資料届いてないぞ?」
『……どれくらいだっけ?』

……なぜこんなやつに救われたのか未だに謎だ。
194名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 02:03:21 ID:iFE156vn
「切るぞ」
「まて、今ファックスで送る」
「メールで送れ」
「…急ぎの用じゃないとはいえ、今時郵便で送るのか」
「……電子メールとかそうゆうのは思いつかないのか?」
「真っ先に思いついたけど何か?」

……なぜ救われたのか本当に謎だ。

「切る」
『まて、食い付きがいいが、何かあったのか?』
「……拾った」
『ああ、なるほど。
 でも、それだけじゃないよな?』

勘が鋭い。
長年の付き合いだからかもしれないが。

「咲夜の道具扱いについて」
『あー…。まぁ、普通は受け入れられないよな。
 でも、理由を知れば納得するんじゃないか?』
「……」
『そんなに糾弾されるのがいやなら、
 道具扱いのをやめればいい。
 違うか?違わないな。
 独占欲が服着て歩いたようなお前だ。
 まぁ、独占欲が激しくなるような境遇があるから、
 何とも言えないが』
「……」
『ただ、これだけは忘れるなよ。
 何があっても、どれだけ変わっても、
 お前はお前である限りお前なんだ。それに、
 その独占欲のおかげで救われているものもいる』
「……らしくないな。森近に励まされるなんて」
『風邪でもひいてるんじゃないか?』
「……かもな」

こんなやつだからこそ、救われるところもある。

「今から家にくるか?酒とつまみくらいなら用意するが」
『それは嬉しい相談だが、残念ながら今から寝る。
 それに庭から家まで10分もかかる家に行きたくない』
「……ほんとお前らしいな」
『褒めの言葉として受け取っておく』

……あえて何も思わん。

『んじゃ、Eメールで送るから。
 それでいいなら携帯に、
 だめなら訂正個所をパソコンに送ってくれ』
「わかった。いい夢を」
『はは、今夜は悪夢だな』
「ああ、ちょっと待て」
『どうした?』
「何で咲夜に話さなかったんだ?」
『何を?』
「孤児院の件」
『ああ、強いて言うなら気分』

電話を切った。
195名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 02:05:18 ID:iFE156vn
壁| (・ω・) 投下終了。

壁|  (゚Д゚) 脱出!

壁|ミ☆
196名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 11:27:36 ID:gWHSEax6
待て!
せめて、これを持っていけ。

つ【GJ!】
197名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 17:02:37 ID:SDpgK1U8
壁|ω・)  【GJ!】

壁|`ω・)つ【GJ!】

壁|ミ☆

壁|ω・)

壁|三(=゚Д゚)つ
198名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 17:03:23 ID:SDpgK1U8
風呂からあがって自室に向かい、着替えた後上着を持ってバルコニーへ向かう。
途中、愛染が激昂した事を思い出しながら。

なぜ、あんなに怒ったのだろうか。
咲夜のことを道具扱いしたから。
でも、それだけでは何かが足りない気がする。
身内か、あるいは自身が―――

「道具ないし奴隷扱いだった……か?」

答えは得ない。
推測はできるが推測である以上、その域を抜け出すことが出来ない。
その疑問を解決するには―――

「身内ないし本人に聞くしかない…か」

パズルは完成しないが、ピースが足りないならしょうがない。
ピースを集めるのは面倒だ。
自然に集まるか、パズルそのものが無くなるか。
どちらにせよ、そのピースは愛染が握っていることだろう。

バルコニーにつくと、冷たい風が肌をなでる。
風呂上がりには少々厳しい。
そんな中で、咲夜は立っていた。

「……道具が風邪をひかれるのは非常に困るんだが」
「故障したら、修理してくれるのでしょう?
 なら、私は困りません」
「俺が困るんだが。お前がないとこの屋敷が廻らない」
「万能な道具は、あるだけで周囲の成長を止めるものです」
「わかった。お前はサボりたいだけだろう」
「それもございますが」

そう言うと咲夜は、俺の背後にまわり、抱きついてきた。
背中にエプロンドレスの冷たい感触、この分では体も相当冷えているだろう。

「持ち主様に温めてもらおうという魂胆でして」
「ずいぶんと体が冷えているな。いつからいたんだ?」
「だいたい30分くらい前でしょうか」

なるほど、どうりで鼻が赤かったわけだ。
バルコニーとはいえ、この屋敷ではベランダの二倍の面積を持つ。
雨でも使えるように屋根を付けて、暗くても見えるようにライトが付いている。

椅子が二つ、テーブルが一つ。その上にはたばこと灰皿とライター。
小さなガスコンロに、ポットとカップが二つ。

199名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 17:03:54 ID:SDpgK1U8
「紅茶なんて持ってきてるなら、勝手に飲めばよかっただろう」
「持ち主様より先に飲むことはできません。それに、
 持ち主様と一緒に飲みたいので。上達したのですよ?」

そういうと咲夜は、手早く紅茶の準備を始める。
俺はそんな咲夜に近寄り、上着を着せた。

「あ……」
「いつも言っているだろう。道具が風邪をひくなんて許さん。
 道具のお前が許されるのは、風邪をひいた俺の看病だけだと」
「……ふふ、そうでした」

小さくおかしそうに笑う咲夜。
そんな様子を穏やかに見つめながら、俺は椅子にすわり煙草に火をつける。
上着がなくてもいいように、多少厚着をしてきたのは正解だった。

「こうしていると、あの日を思い出します」
「……ああ。忘れられない思い出だ。あの紅茶のまずさ」
「……それは言わないお約束です」

困った表情を見せる昨夜。
だが仕方がないだろう、緑茶に紅生姜は……。

「あれは持ち主様が『赤いお茶を飲みたい』といったからです」
「あの頃のお前は紅茶なんて知らなかっただろう」
「いえ、知っていましたよ?お茶って言われて私は緑茶だと判断しただけです」
「紅生姜は?」
「緑茶を赤くする方法を知りませんので、単に思いついたことをしたまでです」

そういってころころと笑う咲夜。
対して俺は、苦虫をかみつぶしたような表情。

「……あとどれくらいでできるんだ?」
「もうすぐ沸騰しますので、あと3、4分です」
「ん、わかった。少し埋没していようか」
「かしこまりました」

そう言って俺はたばこの火を消して、二本目に火をつける。
自己に埋没して、思い出すのはあの日のこと。
咲夜という道具を手に入れた、あの日の夜のこと。
200間章 自己埋没1:2008/12/21(日) 17:05:04 ID:SDpgK1U8
天涯孤独だと思っていた俺に、祖父の死が知らされたのは18の時。
15まで俺の家だった孤児院から連絡が来た。

なんでも、俺には10兆円が相続されること。
祖父がすまないと謝っていたこと。
今住んでいる屋敷に来て欲しいとのことだった。

それからだった。周りの目が変わったのは。

妬み、妬み、妬み。

残念なことに、俺と普通に接してくれるやつが誰もいなかったこと。
その時に気づいてしまった。
絶対に裏切らないのは道具のみだと。

皮肉だけど、どうしようもない事実。

教師やクラスメイトはおろか、孤児院の連中でさえ妬みの声しか聞こえなかった。
表では俺にゴマをすり、裏では俺に妬み、恨む。
そんな状況に、俺は耐えられるほどの強さがなかった。

孤児院に1億ほど寄付して。
俺はその孤児院と縁を切った。

その孤児院は今はないと聞く。
院長がその1億を持って逃げたそうだ。

金の魔力が人を変える。
俺は金が怖くなった。

事業に失敗すれば一文無しになるだろうか。
そんな浅はかな考えで始めた小さな事業。
だが、その事業すら浅はかだった。

患ってしまった不眠症のために。
睡眠薬を使うのが嫌だったおれは、眠くなるまで仕事を続けた。
気付けば世界的な企業だった。
手元に残ったのは、大嫌いな金の束。

その会社を抜け出すと、途端に会社はつぶれた。
その時に知った。
恐ろしいほどの仕事量。
寝る間を惜しんだ覚えはない。
眠れないから仕事をした。

それが皮肉にも、一般人の数十倍の仕事量をしていたのだと。
201間章 自己埋没1:2008/12/21(日) 17:05:41 ID:SDpgK1U8

戻ってきてほしい。
何回もその電話があった。
そのたびに断った。
俺がいなくても大丈夫だと。
俺も人間だと。
俺が出来たことをほかの人間が出来ないわけがないと。

だが、現実は違った。
文字通り、俺は病原菌そのものだった。
左目で会社の予算に目を通し、
右手でキーボードをたたく。
左腕で電話を取り、左耳で内容を聞く。
右耳で社員の意見を聴き、一つしかない口で、いくつもの指示を行った。

聖君太子も真っ青だった。

ある人は聞いた。
そこまで金を稼いで何に使うのだと
俺は答えた。
稼ぎたかったんじゃない。やることがなかったから仕事に手をつけたらあったのだと。
ある人は責めた。
なぜ困っている人たちのために使わないのかと。
俺は答えた。
そういう自分は困っている人のために何かしているのかと。
ある人は俺を嘲笑った。
病気ではないのかと。
俺は答えた。
病気ではない。俺がウィルスそのものだと。

あるひとは呆け、ある人は口をつぐみ、ある人は俺を妬んだ。

そんな事もあり、人間不信と、道具に対する執着が激しくなるのは、
火を見るより明らかだった。

咲夜を拾ったのは、そんな時だった。
新しく建てた会社を降りて、近くの公園でたばこを吸っていた時のこと。

どなり声と叫び声が聞こえた。

ここらを仕切るヤクザが、臓器を売るなどと言っていた。
連れて行かれそうな少女が、いやだ助けてと叫んでいた。

ヤクザに金を握らせて事情を聴くと、
親が残した借金五億の肩に持って行くとのこと。

大嫌いな金を減らす意味で俺がその場で五億を支払った。

何かお礼をしたいという少女に、人間は信用しないと言った。
俺が唯一信用できるのは道具のみだと。
それが引き金だったのだろう。

少女―――咲夜はこう言った。
「なら、私を五億で買って下さい。
 咲夜という道具を五億で買って下さい」と。
202間章 自己埋没1:2008/12/21(日) 17:06:13 ID:SDpgK1U8

俺は聞いた。
お前は五億に値する道具なのかと。
咲夜は答えた。
5億の価値になるか、1円の価値になるかはあなたの使い方次第だと。
俺は責めた。
お前はなぜ簡単に道具になれるのかと。
咲夜は答えた。
なら何故道具という選択肢を私に与えたのか。
俺は嘲笑った。
病気ではないのかと。
咲夜は笑って答えた。
あなたが望むのなら道具にでも病気にでもなりましょうと。
203名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 17:06:45 ID:SDpgK1U8
壁| (・ω・) 投下終了。

壁|  (゚Д゚) 脱出!

壁|ミ☆
204名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 20:59:24 ID:G+PLP7Ux
 GJ

 ギンズバーグの詩を思い出した。
205名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 22:18:16 ID:kTnPnjLJ
GJ

ちょっと近くの公園でタバコ吸ってくる!
206名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 22:53:00 ID:8t3N7Krt
「……ただいま」
「お帰りなさいませ、持ち主様」

どれくらい埋没していたのだろうか。
バルコニーには時計を持ってこない。
流れる時間を気にしないようにするためのものだが、

「どれくらい潜っていた?」
「5分くらいでしょうか。ちょうど紅茶が出来ましたよ」

カップに紅茶を注ぐ咲夜。
あの頃のようにオドオドした様子もない。
手慣れたものだ。

「咲夜はここにきて何年になる?」
「そうですねぇ。大体、3ないし4年くらいでしょうか」
「…もうそれくらいになるのか」
「感慨深いですか?」
「……何とも言えないな」

紅茶が注がれたカップを手に取り、香りを楽しんで一口。
……やっぱり苦いな。

「砂糖は?」
「ここに」

小さな砂糖瓶を取り出す咲夜。
なんというか……

「咲夜」
「何でしょうか?」
「これは俺に対するいやがらせか?」
「いえ、持ち主様のためでございます」
「……」

小さな砂糖瓶。およそ小さじ5杯分。
……足りない。

「これをカップ一杯分に使うつもりなんだが」
「糖尿病になりますのでお控えください」
「……」

まぁ、仕方ないか。

「今回はどこまで埋没されたのですか?」
「ちょうどお前を拾ったところだ」
「ああ……懐かしいです」

そっと目をつぶる咲夜。
きっと、あの日に思いを馳せているのだろう。
207名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 22:53:43 ID:8t3N7Krt

「……なら、私を5億で買って下さい。
 咲夜という道具を5億で買って下さい」
「!……お前は5億に値する道具なのか?」
「5億の価値になるか、1円の価値になるかはあなたの使い方次第です」
「お前はなぜ簡単に道具になれる?」
「なら何故道具という選択肢を私に与えてくれたのですか」

あの日の反芻。
咲夜という道具を手にしたあの日を。
俺は嘲笑う。

「病気なんじゃないか?」

咲夜は笑って答える。

「あなたが望むのなら道具にでも病気にでもなりましょう」
「……病気は俺だけで十分だ」

そっと煙草をつけて。

「わかった。お前を5億で買い取る。咲夜。たった今からお前は俺のモノだ」
「わかりました……持ち主様」

あの日の誓いを、口にした。

「……咲夜」
「はい、何でしょう?」
「お前は……道具になって後悔したことはあるか?」
「……知っていますか?私って結構大胆なんですよ?
 道具になって後悔しているのなら、きっとその日に自殺しています」
「……」
「心配なさらないでください。私は持ち主様の道具になって後悔したことは一度しかないです」
「……」
「覚えていらっしゃいますか?紅生姜で持ち主様が最初に仰った言葉を」
「……『こんなに使えない道具がこの世にあるとは思わなかった』だったか?」

軽い皮肉のつもりで言ったわけだが。
俺の道具としてでしか生きる術がなかった咲夜にとって、
それは『自殺しろ』と同義だったのだろう。

いきなり駆けだしてキッチンへ向かった咲夜は、自分の胸にナイフを構えてこう言った。

『知っていますか?使えない道具は捨てるしかないんです』

その言葉に俺は激高した。

『調子に乗るなよ道具風情が。使えない道具は捨てるしかない?
 使えない道具は使えるようにするのが人間だろう。
 それに、自分の意志で壊れるなんて俺が許さん。
 答えろ咲夜、お前の持ち主は誰だ!?』

「起こった時の持ち主様の言葉、すごかったです」
「……忘れろ。あんなのは若気の至りだ」
「いえ、申し訳ありませんが、忘れることは出来そうにありません」

驚いて咲夜の顔を見つめる。
端正のとれたその顔はただ、穏やかに微笑んでいた。

「あの言葉は、私の宝物ですから」
208名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 22:54:39 ID:8t3N7Krt
壁| (・ω・) 投下終了。

壁|  (゚Д゚) 脱出!

壁|ミ☆

壁|ω・) 誰かタイトル考えてくれないかな

壁|ミ☆
209名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 23:24:02 ID:wElE42G2
じーじぇい!俺も公園に行ってみた……








煙草吸いながら気付いた。借金があるのは俺だorz
210名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 23:58:09 ID:4GbiUgvf
GJ!!
211名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:11:00 ID:11UYXi9n
壁| (・ω・) >>209>>205

壁| (・ω・) 月が奇麗な夜に

壁| (・ω・) コーヒ-飲みながらが

壁| (・ω・) 前提だよ

壁|ミ☆
212名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:23:29 ID:MkwhvipO
>>211
その条件満たしたら、借金取りのヤク…おにいさんに絡まれて、クールなお姉様に買ってもらえるのかー!
213名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:35:51 ID:11UYXi9n
月のきれいな夜には、散歩をするのが私の日課。
誘われるのかどうかは知らないけど、きっと面白いことがある。
そんな気がするから。

「だから期日まで後三日あるだろ!」
「その三日のうちにあんたは返せるのか?えぇ!?」
「それは」

ほら、面白いことを発見した予感。

「少しいいかしら」
「あぁ!?なんだテメーは?さっさと向こうへ行きな!」
「そう固いこと言わないの。少しだけこの人とお話しをしたいのよ」

諭吉さんを一枚握らせて黙らせる。

「さて、私はあなたに選択肢を一つ増やしてあげようと思うの。
 今現在の選択肢として、借金の肩として連れて行かれること。
 まぁ、フィリピン辺りで臓器を売られるのは確定しそうね」

下卑た笑いを浮かべるヤク……お兄さん。彼女できないわよ?

「私が増やせる選択肢は、私に借金を肩代わりしてもらって、
 私の家で使用人として働くか…ね」

「……は?」

理解できていないらしい。
突拍子なのはわかるけど、順応性がないとついていけないのに。

「ほら、ご―・・・よん…さん…」

女に待たせるのは失礼に値する。
なので5秒読み。

「ちょっと待てやコラ」

反応したのはヤク…お兄さんの方だった。

「勝手に話を進めやがって、
 テメーはこれだけの金を今すぐ用意できるのか?あぁ!?」
「出来なかったらこんな話を持ちかける気はないんだけどね」

財布から小切手を、ポケットからペンを取り出す。

「まぁ、現金じゃなくて小切手なんだけどね」

借用書に書かれた金額の2倍の金額を小切手に書き込んでみせびらかす。
……口をあんぐりと開けて呆けないでよ。
気持ちはわからなくはないけどね。

「……で?どうするの?」

気を取り直し、男の方に声をかける。
214名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:40:23 ID:11UYXi9n

「……」

考えあぐねている様子だった。
私が信用に足る人物なのか。
本当に私についていっても大丈夫なのか。

何度も言うようだけど。
女を待たせるのは失礼に値するわ。

「もう、面倒ね。とりあえず家に来なさい。
 まだ期日まで三日あるのでしょう、お兄さん?」
「あ……あぁ」

ようやくどこぞの幻想世界から戻ってきたらしいお兄さん。
まだ半分潜ってそうな気もするけど、そんなことは知らないわ。

「私の名前は―――で、あなたの名前は?」
「……>>212です……」

こんな形で>>212を拾ったわけだけど。
今になって思うわ。
私は『掘り出し物』を見つけたのだと。



まて、>>212
自分で書いておいて何だが、
この状況を俺によこせ

壁|ω・) ヨコセー

壁|ω・) ヨコセー

壁|ω・) ヨコセー
215名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:46:32 ID:0SElSvED
「私の名前は―――で、あなたの名前は?」
「……>>212です……」

http://plaza.rakuten.co.jp/araigumamemorys2/diary/200806100000/
216名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 01:09:46 ID:MkwhvipO
>>214
だが断る!


本編続きwktkして待ってますん!!
217名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 03:21:30 ID:30p9Wgl9
「感情のある道具」
「LivingTool」
「なんか嫌になったんで道具買ったんですよ、5億で」

とにかくGJ!!!
218名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 07:00:13 ID:wQ5Vpqg1
GJ!


あとの小ネタも本人なのかwww
219幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 07:11:01 ID:hRI2kLGv
お久しぶりです。

幸福姉妹物語の5話が上がりました。
今回も無闇やたらに長いので、他の作者さんのお邪魔にならないように時間を指定して投下したいと思います。

まだ、はっきりと時間は決めきれませんが、今日の17時ごろに投下しようと思います。
ではでは。
220間章 いつか見た憧憬-イツカミタユメ-1:2008/12/22(月) 13:33:08 ID:uQJ9padG
夢を見る。
人を信じることをやめた、あの日の夢。

『流、どんなに辛いことがあっても人を信じ続けなさい』
『人は時として人を裏切る。それは心が弱いからだ。
 でもな―――』

両親との最後の記憶、
このあと両親は、信じた詐欺師の手によって闇に沈んだ。

『時として』等と言うのなら何故詐欺などという言葉があるのか。
裏切りなど、日常茶飯事なのに。

人を疑うということを知らなかった両親。
知らなかった結果が今に繋がっている。

俺は人を信じない。
遺産を相続したあの日から、俺は人を信じるのをやめた。
道具に対する異常な執着。
人を信じなくなった以上、俺には道具しかない。
―――どんなに歪であろうとも、
道具は人を裏切れないから。

そんな自らが異常だと理解していても。
俺が人を信じるのは、これまでの人生を否定するのと同義だ。
もう何があっても、人を信じられるはずはないのだ。

『―――、相手を信じていればきっとそれはプラスになって返ってくる。
 それだけは忘れないでくれ』
『大丈夫。流は強い子だから』

信じられるわけが……ないのだ。
221名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:35:39 ID:uQJ9padG
壁|ω・) そろそろタイトルが欲しいのさ

壁|ω・) >>235に任せた

壁|ミ☆
222名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:59:25 ID:8ko+Ze/k
道具は人を裏切れないか・・・

>>235だとタイトルが「幸福姉妹物語 第五話」になるよ
223名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 14:15:05 ID:n4yKWUG3
>>222
このタイミングだし、わざとじゃないか?
224名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 14:29:02 ID:uQJ9padG
壁|Д゚;) やっちまった

壁|ω・`) タイトルは当分先だね

壁|ミ☆
225幸福姉妹物語 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 14:54:47 ID:hRI2kLGv
こんにちは。

ええと、なにやらキラーパスが出ているようですね。
ここで私が踏んでしまうとかなり興醒めですので、5話は細かく分けて投下したいと思います。(容量も1話並にでかい事ですし…)

それで、投下時間は前倒しして15時から始めます。
消費レスは8レスを予定。レスがもったいないので、尻切れで終わります。

それでは…
226幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:01:24 ID:hRI2kLGv
 陽射しが強くなった。初夏を通り過ぎた空はどこまでも青かった。
 ああ、夏の本番が来たんだなあ… と、空色のワンピースと麦藁帽子を着た清香が眩しそうに目を細めた。
「お姉ちゃん! 車が来たよー!」
 駐車場でタンクトップにホットパンツ姿の文が、ぶんぶんと手を振っていた。視線を移すと、普段は車庫から滅多に出さないRV車が駐車場に進入してきた。このRV車は

三田がたまに乗るもので、リア・ウインドウと荷台の窓が真っ黒なフィルムで覆われている。
「うん、すぐ行くから!」
 玄関の施錠をもう一度確認して、清香は大きなスポーツバッグを手に取った。思えば、これを使うのはこの屋敷に来て以来だ。微かな既視感を感じながら、清香は足取り軽

く歩き出した…

 その話が出たのは6月の終わりだった。
「はぁ、旅行ですか…?」
 いつもの夕食が終わった後、ソファでお茶を飲んでいた三田が「旅行に行かないか?」と姉妹に提案したのだ。
「今から準備するし文は学校があるから、出発は7月の下旬を予定している」
「はい! はい! 文は海に行きたいです!」
 食後のお菓子を、ごくっ、と飲み込んで、文が元気良く手を上げて叫んだ。
「海はなぁ… また水着で揉めるのはごめんだ」
 三田がうんざりした顔で言った。
 体育着でも騒動を起こした文だが。スクール水着の時はもっと酷かった。特注すれば良いとタカを括っていた三田と清香だが、事態は思うように転んではくれず、結局、文

だけセパレートの私服水着を着て授業を受けるハメになったのだ。
「私は山の方が好きだ。暑い季節に、わざわざ暑い場所に行かんでも良かろう?」
「まあ、確かに…」
 清香が、そっ、と三田の湯のみにお茶を足してから頷いた。
「でも、いきなりどうしたんです?」
「別にいきなりという事ではない」
 お茶を飲んで三田は答えた。
「言ってなかったが、私は旅行が好きだ。お前たちが来るまでは、年に2、3回は旅行に出かけていた。…意外か?」
「意外ですね」「うん」
 姉妹にあっさりと肯定され、三田は少々へこんだ。
「…まあいい。お前たちが嫌なら、私1人で行くが?」
「行きます! 行きます!」
「私も行きたいです」
 文が元気良く、清香が静かに答えた。
「わかった。日程や場所は私が決めるから、お前たちは追々準備をしておいてくれ」
 三田がそう言うと、姉妹は揃って「「はい」」と答えた。

 食事が終わると、文は真面目に勉強をしに自室へ戻った。清香も洗い物をすませたら文に続くだろう。
 三田は今のうちに心配に思っている事を訊いておくことにした。
「ピアスの調子はどうだ?」
 湯飲みやらお茶菓子やらを片付けている清香に、三田が肩を叩いて尋ねた。
 振り返った清香は一瞬考え込む表情をした後で、そっとスカートの上から股間を押さえた。
「痛みは元から有りませんし、傷も塞がったようです。もう動かしても平気なので、あと1週間もすれば安定すると思いますよ。…見ます?」
「ああ」
 清香がスカートをたくし上げると、相変わらずノーパンのヴァギナが顕わになった。しかし、その様相は春からだいぶ変わっていた。
 まず、陰毛が全て剃られていた。毎日丁寧に処理しているのか、青々とした痕もなくつるんとした肌が見える。そして、カットバンは相変わらずだったが、いつも装着して

いたクリトリスリングとオモリは見当たらず、代わりに銀色のピアスがクリトリスを貫通していた。
「うん… 引き攣った感触とかはしないか?」
 三田がピアスをそっと触りながら聞いた。
「はい、リングよりも全然違和感が無いです。油断していると、着けているのを忘れるくらいです」
 清香が微笑んで答えた。その返事に、三田はホッと胸を撫で下ろした。
227幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:03:09 ID:hRI2kLGv
 話の発端は、文の誕生日に三田が携帯用ゲーム機をプレゼントした事だった。
「おー、でーえすだー!!」
 飛び上がって喜ぶ文を見て、三田はプレゼントの選択が正しかった事にホッとしていたが、反面、清香は冷ややかな目で見つめていた。
「勉強が疎かにならなければいいんですけど…」
「お前が管理すればいいだろう?」
 三田が、さも当然のように言うと、清香はジト目で三田を見た。
「欲しがる物を好きなだけ買い与えて、管理は全部妻に任せる夫って最悪ですよね…?」
「………」
 本心としては「誰が妻だ!」と言いたかったが、言うとさらに清香の機嫌が悪くなりそうだったので、三田は別の話題で機嫌を取ることにした。
「あー、お前も来月が誕生日だったな。何か欲しいものでもあるか?」
 三田がそう言うと、待ってましたとばかりに、清香は両手を胸の前で組んでお願いのポーズを取った。
「頂けるんですか!?」
「そりゃ、妹にやって姉にやらんわけにはいかんだろう… なんだ、もう決めてあるのか?」
 嫌な予感がしたが、この流れでは認めないわけにもいかない。三田は恐る恐る清香の答えを促した。
「あの… リングもすごく嬉しいんですけど、やっぱり大きくなっちゃうのがはしたなくて…」
「何の話だ?」
「クリトリスの話です」
「…ああ」
 最近は弄らないのですっかり忘れていたが、この時点で清香のクリトリスは中指の爪ほどに成長していた。
「じゃあ、リングを外せばいいじゃないか?」
「それは、それだけは堪忍してください…」
 以前にも同じ言葉を聞いた気がして、三田は頭が痛くなった。
「…どうしたいんだ?」
 いい加減うんざりして三田が訊くと、清香はもじもじしながら答えた。
「あの、インターネットをしていたら、偶然ボディピアスのホームページを見付けまして…」
「…それで」
 三田はある程度清香が言いたい事はわかったが、とりあえず先を促した。
「はい、クリトリスにピアスをプレゼントして欲しいです」
 清香がきらきらした瞳でお願いをした。滅多に見ない清香のその仕草に、三田は少々どぎまぎした。
「…無茶を言うな。ああいうのは手入れや事後の処理が大変なんだぞ」
「手入れは自分でちゃんとします!」
「痕が一生残るかもしれんぞ?」
「むしろ望むところです!」
 強気な清香に押し切られ、三田は深くため息を吐いて言った。
「…わかった。お前がそれで良いのならな」
「はい!」
 結局、誕生日には間に合わなかったが、三田の手によって清香のクリトリスにピアスが通った。
 旅行の話が出る、1週間前のことだった。

「旅行中は外した方が良いんでしょうか?」
「そんな事をしたら、せっかく開いた穴が塞がってしまうぞ。洗浄用のビデと石鹸を常に携帯しておく事だな。まあ、一月以上も時間が経つんだから、温泉も平気だろう」
「温泉?」
 三田の言葉に意外な単語を聞いて、清香は不思議に思って聞き返した。
「ああ、実は行き先はある程度決めてある。温泉に行くぞ」
 そう言って、三田はリビングを出た。心なしか、足取りが軽いように感じる。
「温泉ねぇ…」
 ピアス剥き出しのままで、清香は感慨深げに呟いた。
228幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:04:54 ID:hRI2kLGv
 旅行を企画してから1ヶ月。その間も色々な事があったが、ようやく旅行の日となった。
「てっきり、飛行機とか使うものと思っていました」
 荷物をRV車に載せながら清香が言った。
「こいつもたまには動かしてやらんと腐る。それに、私はドライブも運転も好きだ」
「………」
 姉妹は、あえて何も言わなかった。
「…それで、どこに行くんですか? いい加減、文たちにも教えてよ!」
 後部座席に乗った文が、じれたように言った。
 三田は日程は教えていたが、目的地は以前として内緒のままだった。三田としては黙っておきたいところなのだが、姉妹には若干不満だった。
「ん… 温泉だ」
 清香が助手席に乗り込むのを確認すると、三田はRV車を発進させた。チラリと後ろを見ると、文は「むー」とまだ不満そうだったが、それ以上は文句も言わなかった。
 …しばらくはいつも通りの景色が流れて言った。いつものセダンとは車高が違うから、同じ風景でも変わって見える。清香ぼんやりと助手席の窓から景色を眺めていたが、

とある標識を見てポツリと呟いた。
「ここって、O県だったんですね…」
「お前、いまさら何を言っているんだ?」
 三田が呆れたように言った。
「最初は全然わからなかったんですよ。施設から移動するときは、ずーっと目隠しで車の中でしたから」
 清香が昔を思い出すように言うと、文が「そうそう」と相槌を打った。
「ずーーっと真っ暗で、何にもわかんなかったもんね。おトイレの時も目隠ししたまんまだっだし」
「徹底していたな…」
 三田は苦笑して言った。奴隷を売る側の配慮なのだろうが、自分があっさりとその努力を無駄にしていると気付いて、少々申し訳ない気持ちになった。
「…あの、訊いてもいいですか?」
 清香が少し躊躇いながら言った。
「ん、何をだ?」
「私たち、どういう風にして売られてきたんですか?」
「………」
 本来なら他言厳禁の事由ではある。しかし、姉妹は当事者なのだし、煙に巻くのも可愛そうに思えて、三田はある程度差し障りの無い範囲で教える事にした。
「私の知人にそういう市場に詳しい人間がいた。もっとも、詳しいのは知人のさらに知り合いだがな。その知人から奴隷を買わないかと申し出があった。…お前たちの事だ。

じいさんの屋敷を相続して丁度ハウスキーパーも欲しかったし、あの地下室も作っただけで活用してなかったからな。破格の値段ということで買う事にした」
 そこまで言って、三田はチラリと姉妹を見た。2人とも、神妙な顔で聞いていた。
「破格… だったんですか?」
 清香がおずおずと訊いた。やはり、自分たちの身体にどんな値段が付けられたか気になるようだった。
「さあな… 奴隷の定価など知らん。…そうだな、お前たちには知る権利があるだろう。3千万だ」
「さんぜん…!!」
 後部座席で、文が絶句して指を折って数え始めた。清香もびっくりした顔をしている。
「高いですよ、それ! 私たちなんかに3千万だなんて…!!」
「そうか?」
 三田は面白そうに笑うと、ワンピースの上から清香の乳首をぴんと弾いた。
「きゃん!」
「少なくとも、損をしたとは思っていないぞ。こんな感度の良い女が2人も一緒に居てくれるんだからな」
 そう言って、綺麗に乳首を弾けたことを三田は不思議に思った。 
「お前、ブラジャーは?」
「ニプレスしか着けてないです…」
 清香が恥ずかしそうに言った。どうせパンツも穿いていないのだろうから、今日の清香は全裸にワンピースを羽織っただけの格好である。
「文もニプレスだよ〜」
 文がタンクトップをまくり上げると、おっきいおっぱいが弾かれるように揺れて現れた。そこには、文の言う通り肌色のニプレスが両乳首に貼ってあった。
「こ、こら! こんな所で見せない! …あん!」
 慌てて清香が叱ろうとしたが、胸を弄られながらだと、あまり説得力が無かった。
「あん… もう、旦那さま…」
 清香が拗ねたような表情を見せて胸を両腕で押さえた。三田は軽く笑うと手をハンドルに戻した。
「さて、そろそろ高速に入る。シートベルトをしっかり締めろ。文、お前もだ、いい加減服を戻せ」
「は〜い」
 文は素直に頷いてシートベルトを締めた。
 RV車はすぐに高速料金所に進入した。ETCで自動改札を抜けると、RV車はスムーズに車の流れに加わった。
229幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:05:46 ID:hRI2kLGv
「…高速道路の周りって、良い景色が多いですね」
 しばらく無言でハンドルを操っていた三田に、清香が話しかけた。
「ん、そうか? 田園風景ばかりだぞ。屋敷の周りとあまり変わらないんじゃないのか?」
 三田が意外そうに言った。三田はドライブ中はあまり周りの風景を楽しまないのかもしれない。
「ええと… 同じような景色でも、やっぱり場所が変わると違いますよ。それに私は施設の周りと屋敷の周り以外は知りませんから…」
 何気なく清香は呟いたが、それを聞いて三田は少し暗い気分になった。
「…すまんな、あんな古い屋敷に閉じ込めてしまって」
 三田が低い声で言うと、清香はびっくりして手をブンブンと振った。
「ち、違います! そういう意味で言ったんじゃないです!」
 清香が大声を出したので、後部座席で携帯を弄っていた文が、「何事か?」と顔を出してきた。
「…何?」
「な、何でもないのよ。ただ、景色が綺麗ね、って」
 清香が誤魔化すように言うと、文は「ふーん」と呟いて車窓から外を見回した。
「…田んぼとか、畑とかはどこも一緒だね。施設の周りも、田んぼ多かったし」
 文が懐かしむように言った。
「帰りたいか?」
 三田が、何でもなさそうに訊いた。清香は一瞬、どきっ、としたが、文は即座に首を振った。
「帰りたくないです。園長のお婆ちゃん先生は優しかったけど、やっぱり貧乏だったし、いじめっ子もいたし、それに、そもそも残ってないし。今が凄く幸せだから、帰りた

くないです」
 それは、文の本心だった。良い思い出も勿論あったが、できれば思い出したくない思い出も多かった。
「私もそうです… でも、そうですね… お婆ちゃん先生には会いたいですね」
 清香も懐かしむように言った。
「お婆ちゃん先生っていうのは、園長先生の事なんですけど、施設を運営してくれているおばあさんでした。よくは知らないんですが、どこかの企業の社長婦人だったそうで

、子供の面倒を見るのが好きだからという理由で施設を作ってくださったんです」
 三田は黙って姉妹の話を聞いた。だが、実はその辺りの事情は姉妹よりも詳しいのだ。
(今、言うのはタイミングが悪いな…)
 三田は自分だけが知る真実を飲み込んだ。いずれ、話すタイミングはあると思った。
「失敗してもイタズラしても、優しい顔で文を叱ってくれた… 『ダメでしょ』っていうのが、お婆ちゃん先生の口癖だったんです、旦那さま」
「そうか…」
 楽しげに話す姉妹を見て、三田は自分だけが知っている事由を思い、暗い気持ちになった。
「私なんかよりも、全然出来た大人の人だったんだな」
 だからそれを感じさせまいと、柄にも無くおどけて言った。すると、姉妹は2人してケラケラと笑った。
「そりゃそうですよ」
「旦那さま、意外と子供っぽいですよ」
 姉妹にそう言われて、三田はむっとなって眉根を寄せた。
「ふん、悪かったな! どうせ私は不良中年だ」
 三田が拗ねると、姉妹は「あ、ウソウソ、ウソですよ! 旦那さまが一番です! お詫びに飴玉剥きますね、(飴玉を咥えながら)ひゃい、たへてくらはい」「あ、文はお肩お揉みいたしますね! もみもみ…」と一見甲斐甲斐しく、しかし、半分は遊びながら三田に尽くした。
 運転の邪魔だと感じつつも、そんなことで機嫌が治ってしまう自分が、三田はかなり意外だった。
230幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:06:37 ID:hRI2kLGv
 RV車は快調に走った。
 ハンドルを握る三田は、適度な緊張感でドライブを楽しんでいたのだが、長時間車に乗りなれていない姉妹はけっこう暇だった。
 特に文は景色を見るのにもすぐに飽きてしまい、(携帯ゲームは酔うからとすぐやめてしまった)広い後部座席で横になり脚をバタバタと動かしていた。
「まだ着かないんですかぁ?」
 今日何度目かわからない質問を文がすると、いい加減うんざりしてきた清香が渋い顔で文を注意した。
「文… ちゃんと座りなさい」
「だってぇ…」
 なおもぶつぶつと文句を言うと、三田が「ふむ…」と呟いて言った。
「少し早いが、昼飯にするか?」
 三田の言葉を聞いて、文が、がばっ! と身を起こして目をキラキラさせた。
「おいしいものが良いっ!!」
 途端にアクティブになった妹を苦々しく思いながら、清香はそっと三田の様子を窺った。
「ん、なんだ?」
「いえ… どこで食べるんですか?」
「実はあまり考えていない。ただ、ちょうどH市のインターが近いから、たまには繁華街でも歩いてみるか。店を見て、気に入ったところがあれば入ろう」
 三田にしては無計画な答えに、清香は少々意外に思った。それと、繁華街と言う言葉に少しドキドキしている自分がいた。
 基本的に姉妹は田舎育ちだ。繁華街を歩いた経験などほとんど無い。
「ちょっと、不安ですね…」
「何がだ?」
 ハンドルを切ってインターを降りながら、三田は尋ねた。
「人ごみに慣れてないので…」
「ああ…」
 ETCのゲートを潜りながら三田は納得したように頷いた。
「人ごみは私も苦手だがな。堂々としていればいいんだ。ただ…」
 三田は視線を後ろにチラリとやった。後部座席では、文がニコニコと笑顔でいる。
「お前は少しこそこそしていろ」
「へ? 何でですか?」
「変な虫が寄ってきたらたまらん。清香、胸はしっかり隠れるようにしておけよ」
「はい、勿論です」
 文のおっぱいがもたらすトラブルは、十二分に理解している2人だった。
231 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:08:19 ID:hRI2kLGv
 コイン駐車場にRV車を停め、3人は真夏の繁華街へと足を進めた。夏休みの街は人で溢れていた。
「人が、いっぱい、たくさんですね…」
 滅多に見ない人の数に表現しがたい圧迫感を感じて、清香はそっと三田の後ろに隠れた。
「う〜、ここまでしなきゃだめ?」
 文はタンクトップの上から三田のTシャツを着ていた。完璧にオーバーサイズのそれは、いい具合に文のおっきいおっぱいを隠してくれていた。
「目立つのはごめんだ」
 三田はそう言って歩き始め、姉妹は慌てて三田の後を追った。
「さて、どこの店に入ったものか… ん?」
 歩き始めてすぐに、三田は奇妙な違和感を感じた。それは、いつかのハローグッドの時と同じく、周囲の人間がチラチラと自分たちを見ているからだった。
(何だ…? 文はしっかり隠しているぞ…?)
 視線の合った人間を順々に睨みながら、三田は注目される原因を考えた。しかし、何も見当が付かない。
 姉妹も視線を感じたのか、両側から三田の袖を、ぎゅ、と握った。苦笑してそれぞれの頭をぽん、と叩くと、三田は突然ある事に気付いた。
(清香を、見ているのか…)
 道行く人たちは自分たちを眺め眺め歩いているが、厳密に視線を追っていくと、どうやら清香が注目されているようだった。
 清香も薄々自分が注目されている事に気付いているらしく、腕に縋るようにして抱きついていた。
(変な格好はさせちゃいないんだが…)
 確かにノーパン・ノーブラの清香だが、空色のワンピースはしっかりした色合いで全身を隠している。そうそう、ばれる事は無いと思う。
 という事は、清香自身に何か注目される要因があるのだろうか?
 三田は少しだけ考え込むと、腕にしがみついている清香をゆっくりと剥ぎ取って、「何も心配いらないが、とりあえず離れて歩け」と命じた。
「え、でも…」
 清香は不安そうに見たが、逆らうわけにもいかないので2人から少し距離を取って歩き始めた。
「さて…」
 清香を気にしながらも正面を向いて歩くと、三田は視線が一気に無くなっていくのを感じた。
 こっそり後ろを振り返ると、不安げに歩く清香にグサグサと周囲の視線が突き刺さっていた。
「…なんであんなに注目を集めるんだ?」
 思わず三田が文に向いて訊くと、文は「う〜ん」と首を傾げて答えた。
「お姉ちゃんが美人さんだからじゃないですか?」
「そんな馬鹿な…」
 呆れて首を数回振ると、三田は再び後ろを向いた。そして、その表情が驚愕に変わった。
 いつの間にか自分たちから離れていた清香が、見ず知らずの若い男に手を掴まれて、必死に抵抗していたのだ。
 三田は大股で清香に近付くと、若い男の肩に手を置いて「…姪のお知り合いですか?」と凄みを利かせて言った。
「ちぇ、なんだよ、保護者連れかよ…」
 若い男はそう吐き捨てると、三田の手を払って人ごみに紛れて消えて行った。解放された清香が、安堵感から大きなため息を吐いた。
「すみません、旦那さま… 全然知らない人なんですが、いきなり私の手を取って『俺の事覚えている?』って…」
「つまりはナンパか…」
 三田は得心して、うなだれている清香をじっくりと見た。そして、三田も大きなため息を吐いた。
(うかつだった…)
 最近の清香の顔を知る人間は、三田と文を除いては、ハローグッドの社員だけだ。そして、文からの情報によれば、ハローグッドでは清香のファンクラブまで出来ているらしい。
 いつもは屋敷で毎日顔を合わせ、時には激しく陵辱する相手だから感覚が麻痺していたが、なるほど、良く見てみれば、清香は誰もが振り向く美少女だった。
 空色のワンピースは清楚な印象を、麦藁帽子は素朴な印象をそれぞれ与えた。また、長身でスリムなボディライン、恥ずかしさを伴った儚げな表情、さらには不安そうに身をよじるその仕草は、思わず駆け寄って抱きしめてやりたい衝動を三田に与えた。
(まいった… 隠すのはこちらの方だったか…)
 いくらおっぱいが大きいとはいっても、文はどう見ても幼児体型のお子様だから、好奇の視線はあってもお邪魔虫が出る事など無かっただろう。だが、清香は見方によってはハイティーン、二十歳前後に見えなくも無い。ナンパをするにしても格好の獲物なのだろう。
「あの… おじさま…」
 いい加減、離れて見つめられるのが不安に思ったのだろう。清香が小走りに近寄って腕に抱きついた。
 三田は軽くため息を吐いて、文共々両手で姉妹を抱き寄せると、「面倒だ。あの店に入るぞ」と、目に付いたお好み焼屋を示した。姉妹は、こくこく、と頷いてお好み焼屋に歩き出した。
232幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:09:20 ID:hRI2kLGv
「広島風お好み焼って、なんだか不思議な感じですね…」
 再び乗った高速道路での車内で、清香はしみじみと言った。
「初めて食べたのか?」
 三田の問いに、清香はこくりと頷いた。
「施設があった地方は一般的な関西風でしたし、あまり食べる機会も無かったですから…」
 地元の位置的に、たまに広島風を食べていた三田には少々意外だった。相変わらずのくどいソースも慣れたものだった。
 と、そこで三田は1つ悪戯を思いついた。準備はしてきたが、ちょうどタイミングがいいのでやってしまおうと思った。
「相変わらずのくどいソースだったが、喉は渇いてないか?」
「あ、文も喉が渇きましたー。お姉ちゃんは?」
 訊かれて、清香は少し困った顔をした。
「うん… 乾いているけど…」
 既に高速道路に乗っているため、水分を補充できるのはSAしかない。
「すみません、旦那さま。飲み物を用意していなかったので、次のSAで…」
「心配はいらん」
 申し訳なさそうに言う清香に、三田は頼もしそうに言った。
「旅行は慣れていると言っただろう? 文、そこの黒いバッグを開けて、ペットボトルを取ってくれ」
 三田がそう指示し、文が言われた通りバッグを開けると、そこには350mlのペットボトルが数本入っていた。
「わー、旦那さま偉い! 大好き!」
 きゃっきゃと喜ぶ文に、「私には黒い烏龍茶をくれ、他は適当に飲め」と言って、三田は文から黒いペットボトルを受け取った。姉妹も、それぞれ思い思いのペットボトルを手に取ると蓋を開けて飲み始めた。
「…あれ?」
 飲むときに、清香が何か不思議な違和感を感じたが、特に気にする事も無く飲み続けた。文はよっぽど喉が渇いていたのか、350mlを一気に飲み干すと、もう1本開けてからちびちびと飲み始めた。
「はー、おいしいです。ありがとうございます、旦那さま」
「すみません、気を使って頂いて…」
 姉妹はそれぞれにお礼を言った。三田はとしては少々気が咎めるところだったが、鷹揚に頷いた。
(さて、即効性だからすぐに効くな… SAの位置は… うむ、いい位置だ)
 三田がカーナビでRV車の位置を確認していると、文が「あ…」と声を漏らした。
「どうした、文?」
 三田が空々しく訊くと、文は「いえ…」と口篭もって座席深く座りなおした。
(ふふ、効いてきたか…)
 三田は内心ほくそ笑んだ。
 実は、先ほど姉妹に飲ませたペットボトルには、即効性の利尿剤が入っていたのだ。2本も飲んだ文には効き目が早く訪れたのだろう。
「文、どうかした… あっ!」
 清香も言葉の途中で、ぶるり、と腰を震わせて思わずおなかを押さえた。そして、窺うように三田を見つめた。
「ん、なんだ?」
「いえ、その…」
 清香が上手く言えずに口篭もっていると、文が窓の外を見て「あー!」と声を上げた。
「ど、どうしたの?」
「SA過ぎちゃった…」
 呆然と呟く文の言葉に清香は思わず後ろを振り返った。見ると、遥か後方にSAへの進入路が消えていった。
 思わず目を見合わせてお互いの状況を把握した姉妹は、揃って三田に向かって「「あのぉ」」と声を掛けた。
「なんだ?」
「す、すみません、おトイレに…」
 全て承知の上で、しかし三田は気のない振りをしてカーナビを見た。
「トイレか… しかし、たった今SAを通り過ぎたからな。しばらくは無いぞ、我慢しろ」
 にべも無くそう言われ、姉妹は大人しく座っているしかなかった。
 しかし、尿意は急速に高まっている。しかも、それは尋常の高まり方ではなかった。
(嘘… なんでこんなにおしっこしたいの…? 我慢できない…)
 清香が目を閉じて必死に尿意に耐えていると、突然自分の太ももに三田が手を乗せた。
「きゃっ! だ、旦那さま、駄目です!」
「………」
 清香の抗議を黙殺して、三田は強引に清香の股間に指を潜り込ませた。清香は股を閉じて三田の侵入を防ごうとしたが、ほぼ1年かけて刻み込まれた奴隷根性がそれを許さなかった。三田の行為は全て受け止めるように、身体が調教され尽くしているのだ。
233幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/22(月) 15:10:12 ID:hRI2kLGv
「うぅ… 漏らしちゃいます…」
 そう言いながらも、清香は三田が弄りやすいように股を開いた。三田がクリトリスピアスを、クイクイ、と軽く引っ張ると、清香が「あうっ!」と叫んで大きく背を反らした。刺激で軽くイッたのだ。
「おい、文」
 三田は後部座席でぶるぶると震えている文に声を掛けた。
「な、なんですか、旦那さま…?」
「ズボンとパンツを脱げ」
 三田がそう言うと、文はぼんやりとした声で「はい…」と答え、躊躇う事無くホットパンツを脱ぎ捨てた。そして、言われてもいないのに後部座席で限界までM字開脚して、無毛の割れ目を指で割り開いた。
「いい格好だな、自分で弄れ」
 命令を出すと、文は人差し指を立ててゆっくりとクリトリスを弄り始めた。尿道口がひくひくと痙攣していて、頑張ってお漏らしを我慢しているのがわかる。
「うぅ、おしっこ、おしっこ…」
 泣きそうな顔でオナニーを続ける。しかし、根っからのマゾである文はこんな状況でもしっかり感じているらしく、ヴァギナからはまるでお漏らしのように愛液を盛大に吹き出していた。
 それは清香も同じ事で、小指を噛んで必死に耐えているが、直に触れているシートがシミになるくらい、だらだらと愛液を流していた。
「旦那さま…! もう、無理です… 出ちゃう、出ちゃう…!」
 清香の声がいよいよ切羽詰まったものになって、三田はクリトリスを弄るのを止めた。そしてカーナビを操作すると、満足げに軽く頷いた。
「あと、2分ほど我慢しろ。文も我慢できるか?」
「…はい」
 文は苦しげに頷いた。もう限界だったが、三田の言葉を信じて何とか耐えようと思った。
 数分後、三田は高速道路のとある区画を見つけて車を寄せた。そこは、高速バスの停留所だった。上手い具合に停留所は無人で、三田は長くとってある乗降所の先にRV車を停めた。
「ほら、外でしてこい」
 三田が目で外を示して姉妹に促した。当然、姉妹は一瞬躊躇ったが、このまま車内でお漏らしするのは絶対に避けたい。清香が文に向かって軽く頷くと、姉妹は2人して外に出た。
「く、車の陰に隠れましょ…」
 背後の本道では自動車が何台も通行している。しかも、通常有り得ない場所に車が停まっているのだから、注目を集めないわけが無かった。
 姉妹は車体に身体が隠れるように向き合ってしゃがみ込むと、清香はワンピースの裾を、文はTシャツの裾を捲り上げて下半身を露出させた。
「あ、出る…」
「はぁ…」
 チョロロロ…
 脱力したため息と共に、姉妹はおしっこを漏らし始めた。熱せられたアスファルトに尿が跳ね返り、軽く蒸発したアンモニア臭が辺りに漂った。
 三田は姉妹が放尿し始めたのを確認すると、意地悪な笑みを漏らしてRV車のシフトレバーをRに入れた。
「さて、お披露目だ…」
 そのままフットブレーキを解除すると、RV車がゆっくりとバックして放尿中の姉妹の姿が本道に晒された。
「そ、そんな、旦那さま…!」
「見られちゃうよぉ…」
 姉妹は身をよじったが、放尿を止めることは出来ない。泣きそうになりながら放尿が終わるのをジッと我慢するしかなかった。
(早く、早く終わって…)
(見られてる、絶対文たち見られてるよ…)
 時間にしてはほんの数十秒だったのだろうが、姉妹にはもっと永い時間に感じられた放尿が終わると、姉妹は慌ててRV車に乗り込んだ。ドアが閉まるのを確認して三田はRV車を発進させ、タイミングよく本道に合流した。
「旦那さま! 他人に見せるなんてひど…」
「始めから言ってくれてたら、道の方を向いてしたのに…」
 清香は文句を付けようとしたが、文が的外れな事を言ったので、途中で言いかけて微妙な表情で文を見た。しかし、文はあまり気にせずにティッシュで尿道口を拭うと「はい、お姉ちゃん」と清香にもティッシュを差し出した。
「…ありがと」
 なんだか毒気を抜かれてしまって、清香は素直にティッシュで股間を拭った。
「うわ…」
 拭ったティッシュが愛液でぐずぐずになったのを見て、清香は改めて自分が興奮しているのを気付いた。
(ま、いまさら恥ずかしがることも無いか…)
 今日はノーパン・ノーブラで繁華街を闊歩したのを思い出して、うん、私たちは露出好きの変態だよね、と諦めたように納得した。
「で、何だ?」
 三田が楽しそうに訊くと、清香はワンピースの裾を胸元まで捲り上げて股間を露出させると、剥き出しになったクリトリスピアスを、ピンッ、と指で弾いた。
「運転が退屈になったら、これを引っ張って遊んでください。良い声で啼きますから…」
 悪戯っぽく笑う清香のおでこを、三田は苦笑して突っついた。
234名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 16:12:10 ID:uQJ9padG
壁|ω・)b 幸福姉妹GJ!

壁|ω・) これからバイト

壁|ω・) 9時頃投下予定

壁|ミ☆


                        _____
                , ==    ̄ ヽ ̄ ̄ 7| |
                  /        .',   / .| |      いってきまーす
              /l\         ', /  | |三}
    r厄――――r―/y /\   r‐ァ __V___|_| ̄|
    ====、‐‐'=ヘ'´ r―‐ァ'´ ̄, ― 、  _|_ |
  _n ,l ―‐ 、 `、 { ニl `ニニニ´ェ /, ―‐ 、ヽo├r'′
 に7 , ニ 、 ャ ヽニニニ、ニニl[|l| / , ニ 、ヽ ー1 !
   { l (※) } }  ̄ ̄ ̄ ̄` ̄ ̄´ { l (※) l } ̄´
   ヽ ` ニ ´ ノ            ヽ ` ニ ´ ノ
     `  ̄ ´                `  ̄ ´
235名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 16:39:15 ID:wQ5Vpqg1
>幸福姉妹作者さま
GJ!
相変わらずボリュームあるなあ…。





…一応、タイトル考えてみたよ。

「月から買ったモノ」

…うん、ゴメン、悪かった。
236名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 16:54:39 ID:iSQ6ZyR0
いてらさいませ

しかしなんて生殺し
237月から買ったモノ:2008/12/22(月) 21:54:52 ID:8d5YdXbQ
目が覚める。
どれくらい寝ていたのだろうか。
それ以前に……

「……俺はいつ寝た?」
「だいたい三時間くらい前かしら」
「……ほう、そんなに寝たか」
「最後にはお酒が入っていたからね。大変だったのよ?
 おちょこ一杯で寝ちゃうにぃをここまで連れてくるの」
「悪いな。それで幾つか質問があるんだが」
「何かしら?」
「人の部屋で何してんだ、アリス?」

体を起して、声の主を確認する。
まず目に入るのは、金細工を惜しげもなく使ったかのような髪。
その髪の毛を留める赤いリボン。
琥珀色のきれいな瞳は手元に向けられていて、
その手には刺繍針と人形が握られている。
チクチクとよどみなく縫われていく人形。
相変わらずうまいものだと感心する。

「自室に戻るのも面倒だから、ここで完成させようと思って」
「サクッとしているな。酒を飲む前後の記憶が無いんだが、アリスはいつからいた?」
「酒を飲んだ直後ね。あっさり潰れそうになってるから、
 咲夜と一緒に肩を貸してここまで連れて行ったの」
「助かるな。今何時だ?」
「5時過ぎ。そろそろ時間でしょ?」
「違いない。アリスは寝たのか?」
「……寝たわよ」
「嘘をつくなタコ。手元が揺れてるぞ」

我道邸の道具『アリス』
元は有名な人形師の娘だったそうだが、
いつもどおり、多大な借金を抱えて俺の道具になったモノ。

人形師の技術を継いでいるらしく、
人形に関する事ならこの屋敷で右に出る者はいない。
その技術を今、孤児院のために使っている。
本領は操り人形を使った小さな劇。
実際、孤児院の様子を見に行ったときに見せてもらったことがあるが、
アリスの劇は、人を引き付ける魅力があった。

そんなアリスは自身の事に関してよく嘘をつく。
俺を心配させたくない一心でつくらしいが、
嘘をつくときは大抵手が震える。
かわいいし、嬉しいと思うが、自信を滅ぼしかねない嘘は頂けない。

「早く寝ろ。一時間でも休めるときは休んでおくのが基本だ」
「人形を完成させたいし、自室まで戻るのは面倒だわ」
「起きたら完成させろ。
 自室に戻るのが面倒ならここで寝てもかまわないから」
「……はーい」
「拗ねんなタコ」

子供扱いされている。
そう思っているのだろう……実際まだ16に満たないが。
ベッドから抜け出て、アリスに近づきそっと、右手で頭を撫でる。
238名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:55:44 ID:8d5YdXbQ
「……そんなことされたって、何にも出ないんだからね」
「撫でられるだけで十分だ。それともやめた方がいいか?」
「……頬」
「ん?……あぁ」

通しの良い綺麗な髪の毛から、すべすべな肌へ右手を移す。

遺伝だろう、雪のような白い肌。
ゆっくりと撫でてやると、
拗ねた表情は、途端に穏やかなものへとなった。

「ちゃんと休めよ。使いたいときに使えない道具は
 道具じゃない。わかったか?」
「……ん」

左手で針と人形を受け取り、テーブルに乗せて。
右腕をうなじに、左腕をひざ裏に掛ける。

「えいしゃら」
「……変なの」
「落とすぞお前」
「ベッドの上でなら好きなだけ」
「面倒だからやめておく」

いつものやりとり。
道具一つ一つに対する接し方は違うかもしれないが、
道具への『愛着』は変わらないはずだ。

ベッドの上にそっと下ろし、頭のリボンを外す。

「ここに置いておくからな」
「ん……」

もう一度ほほを撫でて、掛け布団をかける。

「おやすみアリス、いい夢を……」
「おやすみさない持ち主様。どうかいい一日を……」

電気を消して、自室を抜けた。
239名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:57:18 ID:8d5YdXbQ
壁| (・ω・) 投下終了。

壁|  (゚Д゚) 脱出!

壁|ミ☆

壁|ω・) >>235

壁|ω・) タイトルごちそうさまです

壁|ミ☆
240名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:12:35 ID:g0psImbf
だめだ・・・どうしても、東方のキャラを連想してしまう!
きっと、偶然だろう。

239>>つ【GJ】=3
241名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:15:43 ID:8d5YdXbQ
壁|ω・) このスレで

壁|ω・) ダメか聞きたい

壁|ω・) 東方が

壁|ミ☆
242名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:34:23 ID:g0psImbf
いや、何となく聞いてみただけです、はい。
いいぞ、もっとやr(ry
243名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:52:06 ID:I0oeUsEy
誰の頭がサザエさんみたいだってー!?
244名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:46:26 ID:Rpwz7gTB
東方、Fate、ひぐらし、ハルヒ
それしか言えないのか
245名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 00:37:29 ID:UWS6Y8+8
壁|ω・) 流れぶった切って買いモノ投下

壁|三(=゚Д゚)つ
246名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 00:39:03 ID:FXq68nD7
波平ですな
247間章 いつかの記憶:2008/12/23(火) 00:39:13 ID:UWS6Y8+8
知り合いの娘を助けてやってくれないか。
アリスを拾うきっかけは、森近の頼みだった。

度々雑誌やテレビなどで騒がれていた有名な人形師。
その知名度は世界レベルだったという。

だが、有名であったがための悲劇。
有名でありすぎたがための悲劇。
有名であるというのは、必ずしもプラスに働くわけではない。
むしろ、マイナスに働くことの方が多い。

それを証明したのが、人形邸強盗未遂事件。
犯人は人形師を殺害、金庫ごと金を強奪。
人形師を恨んでいたという文面を残し、闇の中に消えた。

幸福なのか不幸なのか、その事件は未遂で終わった。
人形師には一人の娘がいた。
その娘を殺さなかったがための未遂。
その娘を残してしまったが故の未遂。

それだけなら、まだ救いようはきっとあった。
何もないけど、まだ『何もない』だけだったから。

不幸はドミノのように立て続けに起こるモノ。
どんな状況であれ、真理であり事実である以上それは当てはまる。
奪われた金は、全財産。
そして、その金は借金返済のためモノだった。

人の目を人一倍気にしたがために、
最初から闇の金に手を染めたのだと、
件の後、森近から聞かされた。
それが後に、このような事態になるとは娘はおろか、
人形師本人も思わなかっただろう。

少女に降りかかるヤクザ共の怒声と嗤い声を、俺は今も鮮明に覚えている。
泣き叫ぶ少女、下衆な笑みを浮かべる男共。
だが、そんな中で最低のクズだったのは、
そんな状況を、思考の片隅で『楽しんでいる』俺自身だった。

借用書に書いてあった金額の2倍の金でヤクザ共を追い払い、
『人間』として少女―――アリスを迎え入れた。

一般サラリーマンの生涯所得は約2億だと言われている。
アリスの借金は3億。
『道具』として生きていく覚悟を決めるのに、アリスは時間をかけなかった。
248間章 いつかの記憶:2008/12/23(火) 00:40:47 ID:UWS6Y8+8


以前聞いたことがある。
楽しんでいたことを話した上で、
お前は俺の道具としてやっていけるのかと。

『正直にいえば悲しいわ。
 でも、それを恨んではいません。
 私があの日から、泣いて、笑って、怒れるのは、
 そんなあなたが私を助けてくれたから。
 でも、願うことを許されるなら、
 あなたが次に私みたいな人を見つけたとき、
 楽しむのではなく、ただ手を差し伸べてあげて欲しいです』

それが彼女の答え。
そして、残念ながらその祈りはまだ、俺のもとには届いていない。
悲しいけど、その祈りは一生届かないだろう。

それが、俺だから。
それが、我道流だから。
それが、お前たちを道具にした我道流という人間だから。
249道具の人:2008/12/23(火) 00:43:15 ID:UWS6Y8+8
壁| (・ω・) ずいぶん重い話になったな

壁| (・ω・) けどしらね

壁| (・ω・) それが道具の中身だから

壁| (゚Д゚) 脱出!

壁|ミ☆
250名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 01:02:21 ID:MJyjV0wR
名前、設定まで同じなのは流石にやり過ぎだと思う。
投下はGJだけど、東方キャラ使いたいなら、専用スレに行くべき。
あと、小出しにするのはなんで? もっと纏めた方が筋が通って面白くなると思うんだけど…
251名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 03:23:33 ID:dCuwR0gA
幸せなまんまで終わらしてくれ
252幸福姉妹 作者 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 05:15:51 ID:MJyjV0wR
ただいま夜勤中。
帰ったら続きを投下します。
253幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:20:48 ID:5/JWpYGG
帰りました。
それでは投下を再開します。

再開にあたっていつもの注意点を。
今回はスカトロ・極太挿入などと、盛り沢山に変態です。お嫌いな方はスルーをお願いします。
…ダークではないですが、こんなの書く自分が気持ち悪いです。

254幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:21:43 ID:5/JWpYGG
 RV車が初日の目的地に到着したのは、日も暮れかかった夕食時だった。
 海峡を越え、山を越え、到着したのは全国的に有名な温泉地で、降りた瞬間3人の鼻にムッとした硫黄の香りが香った。
「わぁ、いかにもな温泉宿ですね〜」
 荷物を降ろしながら、清香が感心した口調で言った。こういうところに泊まるのは初めてだった。
 文は硫黄の匂いが苦手なのか、鼻を摘まんで「臭い、臭い〜」と鼻声で文句を言っていた。
「さあ、とっとと入るぞ。時間的にすぐに夕食になるだろう」
 三田が促して3人が温泉宿に入ると、愛想の良い仲居がすぐに部屋へと案内し、三田の言う通りすぐに夕食となった。
「豪勢ですね!」
 テーブルに並べられたご馳走を見て、清香がニコニコと笑った。
「外で和食を食べる機会なんてそう無いからな。しっかり食っておけ」
 三田がどっかりと腰を降ろすと、姉妹は両脇にちょこんと座って甲斐甲斐しく世話を始めた。三田もある程度予想はしていたようで、苦笑いをしながらも2人がしたいように任せた。
「旦那さま、お刺身ですよ、あーん」
「…なんで山の中なのにお魚が出るの?」
「まあ、今は陸運が発達しているからな」
「ふうん… あ、銀杏は文が食べるー!」
 そんな風に賑やかに夕食が済むと、文が「温泉!」と騒ぎ始めた。
「よし、温泉だー!」
 文が1人で盛り上がっていると、三田と清香は丹念にクリトリスのピアスをチェックしていた。
「外傷は無いが、どこそこに引っ掛けないように注意しろよ」
「はい」
「うん、消毒液は?」
「ここに有ります」
「よし、洗うときには石鹸が残らないように注意しろよ」
 そうやって2人が立ち上がると、待ちかねたように文が「早く、早く!」と清香の腕を引っ張った。
「もう、落ち着いて! それじゃあ、旦那さま。お風呂に行ってきます」
「ああ、私もすぐに行く」
 そうして、姉妹を部屋から送り出して、三田は携帯を取り出してどこかに電話を掛け始めた。
「……もしもし、はい、以前お電話した三田です。はい、予定通り、明日お伺いします。はい、2人も一緒です…」

「はぁ〜、い〜い湯だった〜」
 たっぷり長湯をして頬を上気させた姉妹が部屋に戻ると、後から入った三田は既に上がっていて浴衣着でくつろいでいた。部屋には既に布団が計3つ敷いてある。
「お待たせしました…」
 上気した顔で清香は布団の上にそっと正座した。ちなみに姉妹とも浴衣のみだ。
「あのぉ、旦那さまぁ…」
 精一杯艶のある声を出して、清香は、もじもじすりすり、と膝を擦って三田に近付いた。
「隅々まで、綺麗にしてきました… よろしければ味見してください…」
 そう言って、清香は少しだけ肩をはだけると、三田に向かって流し目を送った。
(何、それ…?)
 姉の奇矯な振る舞いに呆然とする文を他所に、清香は精一杯誘惑を続けた。
 しかし、三田は苦笑して清香のおでこをツンと突付いて言った。
「そんな仕草さどこで覚えたんだ? 努力しているところをすまんが、今日は無しだ」
「えぇー…」
 2人して不満の声を上げるが、三田は再度「無しだ」と念を押した。
「一気に移動して少々疲れた。それに、旅館の壁という物は案外薄いものだ。お前たちがいつものように喘いでいたら隣に聞こえちまうぞ」
 そう言われれば、姉妹としては納得するしかない。
「明日は離れの一軒家を借りているから、そこまで我慢しろ」
 三田がそう言うと、姉妹は不承不承頷いた。
「でも、それだったらせめて一緒のお布団で寝ても良いですか?」
 文が考えた末に言うと、清香もうんうんと頷いた。
 三田は「やれやれ」と苦笑すると、敷き布団を寄せてスペースを広く取り、姉妹を手招きした。姉妹が喜んで三田の両脇に収まると、三田が手を伸ばして部屋の明かりを消した。
「おやすみなさいませ、旦那さま…」
「おやすみなさい…」
 それぞれに言うと、やはり疲れていたのだろう、姉妹はすぐに寝息を立てて眠りに就いた。
 2人の体温を感じながら、大きなあくびをして三田も眠りに就いた…
255幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:22:15 ID:5/JWpYGG
 翌朝。
 旅館をチェックアウトした3人は、再びRV車に乗って移動を始めた。三田曰く、少し寄っていくところがあるそうで、RV車は観光地から少し離れて、郊外の住宅地へと向かった。
 今日の清香の格好は空色のワンピースに麦藁帽。文はタンクトップは変わらずだが、キュロットスカートを穿いていた。
「あ、K県…」
 目ざとく標識を見た清香が、ポツリとつぶやいた。それを聞いた文が「えっ!」と姉の方を向いた。
「ここ、K県なの?」
「うん、標識にそう書いてあったから…」
 口篭もりながらそう言うと、清香はチラリと三田を見た。
「知っている」
 視線を感じた三田は、それだけを言った。
「…もう、いいか。黙っていて悪かったが、今回の旅行には一応目的がある。とある人の墓参りだ。そして、ここがお前たちの育った施設の近くである事は知っている。参るのは…」
 そこまで言ってから、三田は口篭もった。
「…もしかして、お母さんですか…?」
 清香が、かなりの覚悟を持って言った。しかし、三田はそれには首を振った。
「いや、お前たちの母親のことは知らない。私が知っているのは、施設の事までだ。昨日は知らない振りをしてすまない。お前たちの言っていた、園長先生な… 去年、お亡くなりになったそうだ」
 三田がそう言うと、文が「えっ!」と声を上げて口を覆った。清香もショックを受けたようで、固まっている。
「昨日、話が出たときに言っておくべきだったのだろうが、どうにも言い出せなくてな…」
 三田は謝ろうとしたが、清香が「いえ、旦那さまのせいじゃありませんから…」と遮った。
 清香はショックは受けたが、取り乱す様子も無く「そうですか…」と呟いた。後部座席の文もぽろぽろと涙を流していたが、泣き喚く事も無く、ただ哀しみを噛み締めている。
「おばあちゃん先生が身体悪かったのは知ってたし…」
 泣きながらも、それでもしっかりと文は言った。
「でも、私たちが施設を離れるときは、まだまだ元気そうだった。でも… うん… 最後に抱きしめてくれた時、なんだかおばあちゃん、小さくなった気がした。あのときから調子が悪かったのかなぁ」
 文が清香の肩に、かくん、と頭を乗せると、清香が「よしよし」と文の頭を撫ぜてやった。
「…今から行くのは、園長先生のご実家だ。あいにくお墓は遠いそうで参れないが、仏前に線香だけでも上げに行こう」
 三田がそう言うと、姉妹はそっと頷いた。
256幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:23:16 ID:5/JWpYGG
 それから、10分も走らないうちにRV車は一軒の民家に止まった。三田が先に車から降りると、姉妹がおずおずとそれに続いた。
「…ごめんください」
 三田が声を掛けて引き戸を開けると、しばらくして「はーい」と中年女性の声が響き、ぎしぎしという床の音と共に中年の女性が現れた。
「はい、ただいま… まあ、清香ちゃんに文ちゃん!」
 女性は玄関に立った姉妹を見つけると、顔に満面の笑みを浮かべて姉妹に抱きついた。
「あ、芦屋のおばちゃん…!」
「おばちゃんだー!」
 姉妹も顔見知りなのか、笑顔で女性に抱きついた。しばらくしっかりと抱擁して、女性は2人を離した。
「まぁまぁ、すっかり大きく… 本当、大きくなったねえ… ま、とりあえず上がんなっせ」
 途中、2人の体格を見て驚いた声になりながらも、おばちゃんは3人を招きいれた。三田は丁寧に「お邪魔します」と断って上り框を踏んだ。
「本当に立派になって、良くしてもらっとるとねぇ… ありがとうございます」
 3人を仏間に通して、お茶菓子を出して座らせると、おばちゃんは見比べるように姉妹を見ると、何度も何度も三田に頭を下げた。
 こうまで感謝されるには自分の行為が後ろめたくて、三田はバツが悪くなって「いえ、私は別に何も…」と口篭もった。
「おばちゃん、この家に住んでるの? 施設の近くの家は?」
 文が不思議そうに尋ねた。
 芦屋のおばちゃんとは、施設の近くに住んでいた主婦だった。息子が早くに独立したので、暇を持て余して施設の手伝いをしてているうちに、すっかり子供たちに懐かれてしまったのだ。
「ううん、今もあそこに住んどるよ。ここは園長先生のご実家。何の縁があってかね、今は私が管理しとるとよ。今日は清香ちゃんたちが来るっていうから、しっかりお掃除して待ってたの」
「あ、園長先生…」
 清香がちらっと仏壇を見やると、そこに園長先生の写真が立てられているのを見て沈んだ声で言った。
 おばちゃんはチラリと視線の先を見ると、こちらも悲しそうに言った。
「みんなが出て行ったすぐ後の事だったの… 元々、色々とお病気はあったけれど、やっぱり張り合いが無くなったのかねぇ。一気に悪くなっちゃって…」
「…クリスマスの翌日だったそうだ」
 三田が補足するように言うと、清香は「そうですか…」と呟いた。
「あの… お線香を上げて良いですか?」
 文が言うと、おばちゃんは「勿論」と嬉しそうに言った。
 清香と文が並んで座り、三田は姉妹の後ろに正座した。3人で線香を上げ、文が代表してリンを鳴らした。
 ちーん、という澄んだ音が響く中、姉妹は思い思いに手を合わせた。
(おばあちゃん先生。最後まで心配かけてすみませんでした。行く先も告げずに去って言った私たち姉妹を、どうか許してください。でも、今はとてもいい人と巡り合えて、すごく幸せです。どうか安心してください…)
(文です。おばあちゃん先生が死んで悲しいです。文はもう一度、おばあちゃん先生に会いたかったです。おばあちゃん先生が最後に買ってくれたスポーツバッグは、絶対に捨てません。天国でも、文たちを見守っていてください…)
 姉妹はほぼ同時に目を開けると、お互いに微笑み合って後ろを向き、そしてびっくりした。
 三田は、姉妹が手を解いた後も、ひたすらに合掌を続けていた。
 いつもの眉根を寄せた気難しそうな顔。しかし、そこには常に見えない必死さが感じられた。必死に祈る、そんな形容がピッタリの形相だった。
「あ、あの… おじさま…?」
 おばちゃんを気にして清香がそう声を掛けたが、三田はなかなか合掌を解かなかった。解くことが出来なった…
257幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:24:26 ID:5/JWpYGG
「長々とお邪魔をして申し訳有りません」
 昼食をご馳走になった後、3人は出発する事にした。おばちゃんは少し寂しそうだったが、笑って3人を送り出した。
「おばちゃん、また来るね!」
「園長先生の家をよろしくお願いします!」
 それぞれに元気良く挨拶をして、2人はRV車に乗り込んだ。最後に三田が深々と頭を下げると、おばちゃんも合わせて頭を下げた。
「もういいか? では行くぞ」
 三田は運転席に乗り込むとRV車を発進させた。
 姉妹はずっと窓越しに手を振り続けていたが、おばちゃんが見えなくなると手を振るのをやめた。
 清香は三田の方を向くと、笑顔で頭を下げた。
「旦那さま、本当にありがとうございます。おばちゃんに会えたのも、おばあちゃん先生に報告できたのも、すごく嬉しいです」
「うん、旦那さまありがとうございます! 最初は悲しかったけど、今はすごく嬉しいよ!」
 姉妹は口々に三田にお礼を言った。三田は「ふむ、そうか…」と噛み締めるように呟くと、「さて!」と彼にしては珍しく力強い声で言った。
「今からは旅行の続きだ。これからは山間の景色が綺麗になるから、文、写真をしっかり撮れよ。ああ、そうだ。美味い菓子屋や珍しい雑貨屋なんかも有るそうだから寄って行こう」
 三田の言葉に、姉妹はそれぞれ歓声を上げて喜んだ。そして、それからは楽しい旅行の時間だった。

 菓子屋にて…
「このクッキーおいしい! どうやって作っているのかしら…?」
「あ、試供品全部食べちゃった… もっと無いのかな?」
「…すみません、全種類購入しますので、大目に見て下さい…」

 雑貨屋では、
「この人形、可愛い…」
「文は趣味じゃないなぁ。なんだか気持ち悪くない?」
「なんて事を…! このアンティークドールの美しさがわからないの…! ねぇ、旦那さま、インテリアに良いんじゃないですか?」
「どれどれ。 …買えんでもないが、確かに夜中に目が合うと不気味そうだな…」
「うぅ、いけず…」

 展望台では、
「わぁ… 夕日が綺麗ですね…」
「茜色の空に佇む、空色ワンピースの美少女… やばいぐらいに映えるよお姉ちゃん… 激写、激写!」
「あら、ポーズ取っちゃおうかしら?」
「あ、あの… 僕も一枚撮って良いですか?」
「…だれだ貴様とっとと失せろ」
「「速攻だ…」」
 姉妹は相当にはしゃぎまくった。三田も2人に振り回されつつも、彼にしては本当に珍しく、終始笑みが消える事は無かった。
258幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:24:48 ID:5/JWpYGG
 散々観光を楽しんでから今日の宿に到着して、開口一番に清香が言った。
「これ、本当に離れなんですか…?」
 老舗旅館が最近建てたという離れは、それくらいの規模だった。
「広いねぇ…」
 文も感心したように言った。
 三田が案内した旅館の離れは、ほぼ一軒家ほどの敷地を持っていた。建屋もかなり大きい。
「まあ、これぐらい広く無ければ旅の垢は落とせん。さあ、とっとと入るぞ」
 三田がそう言って、3人は離れに入った。離れは外の暑さが嘘のようにひんやりしていて、清潔感に満ちていた。耳を澄ませると、遠くから掛け流しの内湯が湯船からこぼれる音が聞こえた。
「ふぅ…」
 とりあえず、居間らしき畳みの間に荷物を置くと、三田は大きく息を吐いて腰を降ろした。流石に2日間ハンドルを握りっぱなしで、そこそこに疲労が溜まっていた。
「ご苦労様です、旦那さま」
 清香が労うようにお礼を言うと、備え付けのポットでお茶を入れて差し出した。
「ああ、ありがとう」
「旦那さま、お疲れ様! ねぇ、お肩をお揉みしましょうか?」
 文がそう言って三田の後ろに回ると、三田は「ん… 頼む」と言って畳の上に長くなった。文が「失礼しまっす!」と背中にちょこんと座ると、一生懸命肩を揉み始めた。
「あ、文ちゃん、もう少し前に行って… そうそう…」
 文に腰をずらしてもらうと、清香が器用に三田の腰を揉み始めた。2人の按摩が思いのほか気持ちよくて、三田は危うく眠りこけてしまいそうになった。
(いかんな、癖になりそうだ…)
 ある程度揉んで貰うと、三田は礼を言って2人をどかした。姉妹はニコニコして、文が「これくらい何でもないです!」と言った。
 夕食は来る途中で済ませていたので、(さて、どうするか…)と三田が首を回すと、姉妹がやけにキラキラした瞳で見つめているのに気付いた。何か嫌な予感がして三田は僅かに身を引いた。
「おい、何を期待している…」
 三田が声を掛けると、姉妹はおもむろに服を脱ぎだした。
「なぜ脱ぐ…」
 もう予想は付いていたが、三田はとりあえず聞いてみた。
「あの〜」
 昨日と同じ様に、しかし今度は2人で、すりすりすりと膝を擦って三田に近付くと、姉妹は上目遣いに三田を見た。文はご丁寧におっきいおっぱいを寄せて上げている。
「夕ご飯は済みましたから… お風呂とエッチ、どっちにします?」
「します?」
 姉妹仲良く、きゅっと首を傾げて言った。
 あまりにも可愛いが、あまりにも馬鹿らしい。三田は頭を押さえて「本当に… どこでそんな言葉を覚えてくるんだ…」と呟いた。
「お嫌いですか、こういうの?」
「嫌いというか…」
 私の趣味ではない、と三田は思ったが、流石にそれは口に出さなかった。
「いや、可愛いさ。それは確かだ」
 そう言うと、それぞれに優しくキスをしてやった。
 頬を染めて笑う姉妹に、三田は「とりあえず風呂だ」と言った。姉妹は嬉しそうに頷くと、一斉に三田の服を脱がしにかかった。
259幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:25:15 ID:5/JWpYGG
 離れの内湯は豪勢な作りだった。3人が入ってもまだ余る湯船に、広い洗い場、横のガラス戸を開けば外に露天風呂さえもあった。
 うわー、と一通り驚いてから、姉妹は三田を強引に椅子に座らせた。
「お身体を洗いますね!」
「ああ、頼む」
 三田が鷹揚に頷くと、清香が前に文が後ろに回って、それぞれにボディソープを手に取って三田の身体を洗い出した。
 意外に最初は真面目に丁寧に洗っていたが、だんだん我慢が効かなくなったのか次第に姉妹の息が荒くなっていった。
「あ、あの… おちんちん舐めても良いですか?」
 伺うような清香に、三田が「いいぞ」と許可を出すと、清香が手招きして文を呼んで、2人でペニスをペロペロと舐め始めた。
「はぁ、ちゅぷ、ぺろ…」
「ちろ、ちろ…」
 しばらく2人で譲り合うように舐めていたが、1回お互いに確認するように頷き合うと、文が勃起したペニスを喉奥まで、ズズズッ、と咥え込んだ。
 舐める場所が無くなった清香は、玉袋をねっとりと舐め上げて刺激した後、顔をずらして三田のアナルに舌を差し込んだ。
「もご、おご、むぐ…」
「ちゅぱ、じゅる… こくん… はぁはぁ、ちゅぱ…」
 姉妹は一生懸命だった。普段からのご奉仕でもここまではしない。それくらいに今日の出来事が嬉しかった。
「ぢゅうぅぅ… っぷはぁ!! はぁ、旦那さま、気持ち良いですか…?」
 亀頭を思いっきり吸ってから、文が訊いた。手は休む事無くペニスをしごいている。
「ああ、とても良いぞ」
 文の頭を撫でると、文は嬉しそうにペニスに頬を擦り付け、なおも咥えようとしたが、三田がそれを止めた。
「ありがたいが、このまま座っていると風邪を引きそうだ。一緒に入るぞ」
 そう言うと、三田は洗面器で湯船のお湯を取ると、肩から一気に浴びた。お湯は勢いよく流れ、夢中で三田のアナルを舐めていた清香の顔にモロに掛かってしまった。
「わっ、ぷ…」
「あ、すまん」
 笑いながら三田は言うと、膨れる清香の頬を突っついて湯船に浸かった。
「悪かったな、ほら、来い」
 手招きすると、清香は頬を膨らましたままそっと三田に背を向けて湯につかった。すぐにうっとりとした顔で三田の背に身体を預けると、「文ちゃんおいで」と両手を差し出した。
「えへへ…」
 嬉しそうに笑って文は清香と同じ姿勢でお湯に浸かった。そうすると、3人がバランス良く湯船に納まった。
「はぁ、気持ち良い… すごくいいお湯ですね…」
 清香がしみじみと呟くと、文も顔までお湯に浸かりながら「おっぱいが浮くから楽だー」と変わった温泉の楽しみ方をしていた。
「ふぅ… あぅん!!」
 ため息を吐いていた清香が、突然変な声を上げた。
 不意打ちぎみに、三田がヴァギナにペニスを突き刺したのだ。
「もう、いきなり… あん!」
 文句を言おうとしたら、腰を、ずんっ、と突き上げられて、清香は思わず文のおっきいおっぱいを、むにゅ、と両手で掴んだ。
「にゃ! なにぃ?」
 びっくりして文が振り返ると、そこには、コツコツと小刻みに子宮を突き上げられて悶絶する姉の姿があった。
「あ、ずるーい!」
 文が口を尖らせて文句を言うと、清香は「ご、ごめんね…」と泣き笑いの顔で謝った。
「ぶー、まあいいけど…」
 やれやら、とため息を吐いて正面を向くと、文は自分のアナルに指を三本突き刺してぐりぐりと動かした。
(う… やっぱり綺麗にしないと駄目かも…)
 いつもとは違う感触を感じて、文はそう思った。
260幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:25:58 ID:5/JWpYGG
「あのね、文、ちょっとお尻洗ってくるね」
 お尻を洗うとは、浣腸などをして直腸の中まで綺麗にすることだ。屋敷では毎日の様に洗っているが、流石に旅先では機会が無いから、昨日は久しぶりに便を出さなかった。
 文が清香の手を振りほどいて湯船から出ようとすると、清香が「あ、待って」と再び、がしり、と文の腰を掴んだ。
「わあっ!」
 動き始めを強引に止められて、危うく文はバランスを崩し床に頭を打ちそうになった。
「何すんのっ!」
「ご、ごめんなさい! でも、大丈夫! お姉ちゃんが綺麗にするから!」
 怒る文に清香はそう言うと、丁度目の前に来た文のお尻をぎゅっと掴むと、アナルが拡がるように思いっきり左右に割り開いた。
「ん、れろ、れろ…」
 清香はめいっぱい口を文のアナルに近づけると、先ほど三田にやったように舌を突き刺して文のアナルを舐め始めた。三田も面白く思って、腰の動きを止めて清香が舐め易いように身体を動かした。
「…あのね、嬉しいし気持ちいいけど、浣腸しないと無理だよ?」
 お尻を突き出したまま文が呆れた口調で言うと、清香は「うん、わかってる、大丈夫」と返事をした。
「じゅ、じゅ… はぁ、指、入れるね」
 お湯と唾液でアナルがふやけたのを確認すると、清香は右手の人差し指に中指を添えて、ゆっくりと文のアナルにねじ込んだ。
「痛くない?」
「らくしょー」
 散々開発された文のアナルは、締めれば固く締まるし緩めればゴムのように緩む。2本ぐらいは全然平気だった。
 しかし、次の清香の行動は流石に予想外だった。
「じゃ、あと2本いくわよー」
「えっ?」
 驚く文を尻目に、清香は左手の人指し指と中指も、2本沿えてアナルの隙間にねじ込んだ。
「わぁ、はいっちゃった…」
「え、はいっちゃったの? 文のおしりの穴拡がったなー」
 他人事のように文が呟くと、清香が「じゃあ、拡げるね」と言った。
「あはは、だろうと思った、よ、ぉお…!」
 文の言葉の途中から、清香は4本の指をゆっくりと外に拡げた。文のアナルがぽっかりと口を開け、ピンク色の腸壁が露わになった。
「わぁ、久しぶりに見たけど、やっぱりピンク色で凄く綺麗… 今から、お掃除するね」
 そう言うと、清香は拡げたアナルに口をピッタリと付けると、思いっきり舌を伸ばして文の腸壁を舐め回した。
 舌先に僅かな渋みを感じたが、構わず力強く舐め回すと、文の腰が大きく震えた。
「そ、そ、そんなとこ舐めたらぁ… 気持ちよすぎて… ああ、そこダメェ!! あっ! あっ! イッちゃうぅ!!」
 腸壁を舐められるという有り得ない感覚が、津波のような快感となって文を襲った。しかも、清香が知らず知らずの内に文のアナル性感帯である入り口近くの子宮側をごすごす擦ったため、文は一気に上りつめて絶頂を迎えた。
「うん?」
 急にびくびくと腰が震えて文がぐったりとなったので、清香は舌を離して文を見た。
「あ、イッちゃった?」
「うん… イッちゃった…」
 脱力した声で文が答えると、清香は「う〜む…」とアナルの奥を覗き込んだ。
「…やっぱり奥は届かないか」
「とりあえず言っておくね、お姉ちゃん。当たり前だから…」
 ゆらゆらと身体を起こして文が言った。口調が呆れを通り越して淡々としたものになっている。
「やっぱり浣腸するしか…」
「だーからー」
 最初からそうゆってんじゃん、と文が文句を言おうとしたとき、腸内に暖かい、いやむしろ熱い液体が流れ込んできた。
261幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:27:29 ID:5/JWpYGG
「お、お、お? 何入れてんの!?」
 驚いた文が首をねじって後ろを向くと、温泉を口いっぱいに含んだ清香と眼が合った。
「ん?」
「あー、なる、ねー…」
 深い納得と諦めを言葉に出して。文は全ての抵抗を諦めた。いつの間にか姉のスイッチが入っていたようだ。
(まあ、とりあえず1回イかせてもらったし… 飲めるぐらいだから浣腸しても大丈夫だよね… ってどれだけ入れる気なの!)
 目盛りも何もあったものではないので、とりあえず清香は文のおなかを横目でチラチラ見ながら温泉を口移しで注入していった。結局、天を向いたアナルから温泉水が零れ出るまで注入すると、清香は口の動きを止めてようやく指を離した。
「どう、足りる?」
「十分すぎ…」
 たぷたぷになったおなかのせいで、どうにも文の思考がまとまらない。ぼんやりと姉を見つめると、清香は何かのボトルを手に持った。
「浣腸液の代わりにシャンプーを入れるわよ。よっと…」
 清香はそう言って、文の反応を待たずにシャンプーボトルのスクリューキャップを取ると、ボトルを逆さまにして文のアナルに突き刺した。
「痛くない? 入ってる?」
「痛くないし、入ってる、と思うけど…」
 不安そうな声で文は答えた。シャンプーを浣腸されるのは初めてだ。三田が止めないから大丈夫なのだろうが、不安が尽きなかった。
「も、もういいから抜いて…」 文が懇願すると、清香は素直にボトルを引き抜いた。
「わかったわ。…あ、結構入ってる」
 100mlのボトルが半分ほどが空になったのを見て、清香は充分だと感じた。
「じゃあ、最後に混ぜるわよ。指、入れるから」
 清香は中指をアナルに根元まで挿入すると、中のシャンプーをかき混ぜるようにぐるぐると回し始めた。文は、最初は指の刺激に蕩けた表情をしていたが、数瞬後、表情が激変した。
「あ、れ…? いっ、いだぁぁ!!」
 目が大きく開かれて、文の顔が苦悶に満ちた。姉に変調を伝えたくても、強烈な痛みがアナルから伝わってきて、上手くしゃべる事が出来ない。
「…ん? どうしたの…?」
 清香が文の変化に気付いて顔を覗きこみ、「あ、文っ!」と驚いて大声を上げた。
「ど、どうしたの!?」
「いたい… いたい…」
 文はそう言うのが精一杯だった。今までに感じたことの無い焼けるような激痛が、アナルから脳髄に直撃していた。
「ど、どうしよう…」
 清香は完全にパニックを起こしてしまい、おろおろと左右を見回した。
「さて、と…」
 それまで無言だった三田がようやく動いた。清香の身体をどけると、文をすくい上げるように抱っこして立ち上がった。
「文、もう少し我慢してトイレで出せ。大丈夫だ、痛いのはすぐに良くなる。清香、すぐに戻る。待ってろ」
 そう言って、三田は文を抱えたまま内湯を出て行った。残された清香は、何をどうしていいかわからず、ひたすらおろおろとしていた。
262幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:28:35 ID:5/JWpYGG
 数分後、三田はすぐに戻ってきた。手には大きな耐水性の黒いディバッグを持っている。
「あ、文、は…?」
 泣きそうな顔で聞く清香の頭を軽くはたくと、それだけで清香はへなへなと内湯の床に崩れ落ちた。
「ごめんなさい… ごめんなさい…」
 堰を切ったように涙を流して、清香は延々と謝り続けた。三田は深いため息を1つ吐くと、流し場に胡坐をかいて座った。
「シャンプー浣腸なんて、どこで知ったんだ?」
「…あの、インターネットで… 奴隷さんたちが集まるサイトがあって… そこで凄いから試してみろって書いてあって…」
 あまりに予想外の答えに、三田はくらくらして頭を抱えた。現代人には必需と思って与えたネット環境だったが、まさかこんな使い方をしているとは思わなかった。
「そのサイトへは2度と入るな、書き込みなんぞしてないだろうな?」
「…はい、それは、絶対に」
「ならば、とりあえずは良い。あとは帰ってからだ」
 そう言ってから、三田は清香を厳しく睨むと、「ちょっとそこに正座しろ」と言った。清香は慌てて正座をすると、改めて深々と頭を下げた。
「申し訳有りませんでした…」
「謝る相手が違うぞ。いいか、シャンプーは医薬品でも食物でもない。そんなものを入れたら、当然身体は拒否反応を示す。
 しかも、安物のシャンプーの中には石油化合物などが含まれていて、酷いときには腸内が激しい炎症を起こす。そうなったら、もう医者でしか治せんし、酷い時には命に関わる」
 三田の言葉を聞いていくうちに、清香の表情は見る見るうちに青褪めていった。
「わたし、そんな、なんて事を…」
 あまりにものショックに涙すら止まり、清香はがたがたと震えだした。その様子は今にも卒倒しそうだ。
 三田は再び「ふぅ…」とため息を吐くと、「ほら」と言って清香が使ったシャンプーのボトルを差し出した。
「よく見てみろ、このシャンプーは初めて使うか?」
「…いいえ、いつもお屋敷で使っているものです」
 清香の答えに、三田は大きく頷いた。
「そうだ、このシャンプーは完全無添加商品だ。一応、成分も調べてある。粘膜に触れれば刺激は強いが、爛れるほどではない」
 すぐには三田の言葉を理解できず、清香はポカンとしていた。
 なかなか反応を示さない清香に三田がじれて「だから、文は大丈夫だ。少し腹が渋るだろうが、すぐに治る」と付け加えた。
 ようやく清香の瞳に光が戻った。正常な思考が蘇ると、そう言えば三田が浣腸の瞬間も黙って見ていた事にようやく気付いた。
「し、知っていたんだったら、どうして止めてくれなかったんですか!」
「躾だ」
 激昂する清香には合わせず、三田は淡々と言った。
「え、躾?」
「そうだ。SMプレイに慣れるのは結構だが、半端な知識で無茶をしていると、後で痛いしっぺ返しを食らう事になる」
 三田の言葉に、清香はガツンと殴られたような衝撃を味わった。
「良い勉強になっただろう? 私が見ている範囲ではいくらでもフォローするが、これで生半可な知識で行動すると危険だとわかっただろう?」
 三田の言葉に、清香は何度も何度も頷いた。そして、「勝手な事をして申し訳有りませんでした… 反省しました…」と頭を下げた。
「ふむ、まあ、わかったのなら、良し。ただし、文に辛い思いをさせた罰は受けてもらうぞ」
 あっさりと許しつつも、三田は冷酷に宣言した。清香は強い不安を感じつつも、それを受け入れるしかなかった。
263 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:29:56 ID:5/JWpYGG
(う〜、全部出したのにまだおなかが痛い…)
 温水のウォシュレットをアナルに当てつつ、文はいまだ渋るおなかをさすっていた。
 全部出し切ってそれなりに痛みは引いたものの、いつもの浣腸の爽快感は全くなかった。
「…もどろ」
 全裸でトイレに座っていると、なにやら無性に物悲しい。文は痛むおなかをさすりながら内湯に戻った。
「出しましたー、…って、何してるの…?」
 洗い場への引き戸をガラガラと開けてみると、姉が四つん這いになってお尻を高々と突き上げていた。
「ああ、戻ったか。今から清香に罰を与える。ほら、お前が入れてやれ」
 戻った文を認めると、三田が洗面器に浸したエネマシリンジを文に差し出した。洗面器の中は白濁した液体で満ちている。すんすんと匂って、それがシャンプーを溶かしたお湯だとわかると、文はびっくりして叫んだ。
「だ、ダメだよ! これ、すっごく辛いから、お姉ちゃんじゃ絶対ムリだよ!」
 ぶんぶんと両手を振る文に、清香は顔を向けて語りだした。
「…文ちゃん、痛い思いさせてごめんなさい。これは、馬鹿な事をした私への罰なの… だから、文ちゃんがお浣腸して、酷い事したお姉ちゃんに罰を与えて…」
 そう言われて、文は迷いながらもエネマシリンジを手に取った。
(な、なんだか話が見えないけど、断れない…)
 自分はそんなに気にしてないのだが、真剣な姉の様子を見ると断れる雰囲気ではなさそうだった。
 三田に顔を向けると「とっとと入れてやれ」と言われてしまった。しょうがなく覚悟を決めた文は、エネマシリンジの注水口を清香のアナルに埋め込んだ。
「じゃ、じゃあ、入れるよー? 痛かったらすぐに言ってね!」
 ぎゅむ、ぎゅむ、とポンプを握ると、最初に空気が、次いでシャンプー液が清香の直腸に入り始めた。
「…うぅ」
 液が直腸に触れた途端、刺す様な痛みが清香を貫いた。文と違って清香は痛みにも浣腸にも全く慣れていないし、好きでもない。だから、ぐっと歯を噛み締めて痛みに耐えたが、身体が無意識に震えるのは我慢できなかった。
「い、痛いよね?」
「…大丈夫、大丈夫だから、全部入れて」
 どう見ても大丈夫ではないが、全部入れないと終われそうにない。少しでも早く終わらせようと、文はポンプを握る動きを速めて浣腸を続けた。
 ゴロゴロゴロゴロ…
 洗面器の中身が半分減った所で、清香の腹が不快な音を立てた。
 同時に、高く上げた腰がぶるぶると震えると、清香は四つん這いを維持できなくなってゆっくりと腰を落としてうつ伏せになった。
(うわぁ、ホントに大丈夫なの!?)
 油汗を流して痙攣する姉を見て、文は不安になって三田を見た。しかし、三田は冷酷な顔で清香に近付くと、清香の身体に足をかけて、ごろん、と仰向けにひっくり返した。
「何を勝手に動いてる。四つん這いで受けろと言ったはずだぞ?」
「うあぁ… ご、ごめんなさい…」
 潰れた蛙のような姿勢で清香は必死に謝った。大量の浣腸をされて、まるで妊娠したかのように腹が膨れている。
(ひ、酷い… けど、こんな格好でもお姉ちゃん綺麗だな…)
 夢中でポンプを握りながら、文は苦痛に震える姉の姿に釘付けになった。
 苦痛に苛まれ、虚ろな目で荒い息を吐く姉は美しかった。三田が苛めたくなる気持ちもわかる気がした。
「も、もう少しで終わりだから、頑張ってね…」
 文の言葉に、清香は弱々しく頷いた。おなかの痛みが強すぎて、もう何がなんだかわからなくなっていた。
「もう少し、もう少し… 終わったよ! 全部入れました、旦那さま!」
 空になった洗面器を見せて文が言った。三田は「ああ」と頷くと、エネマシリンジを掴んで先端を清香のアナルから引き抜いた。急にアナルの栓が無くなって、清香は漏れないようにぎゅっとアナルを締めた。
「ト、トイレ、トイレ行ってきなよ! とっとと出そう!」
 文が清香の身体を助け起こそうとしたが、清香が「待って!」と慌てて止めた。
「動くと… 出ちゃう…」
 清香はぶるぶると震えておなかを押さえた。もう、我慢できなかった。
「ごめんなさい、旦那さま… 文ちゃん… もう、我慢できない…」
 清香は縋るように三田を見詰めた。三田は僅かに頷くと、ぽっこり膨らんだ清香のおなかに片足を乗せた。
「よく頑張ったな。出して良いぞ」
 そう言うと、三田はゆっくりと体重をかけて清香のおなかを踏み潰した。
「…ヒッ!」
 短い悲鳴を上げると、清香のアナルからバチャバチャと勢い良く排泄物が飛び出てきた。
「あ、はぁ… 出てる…」
 恍惚とした表情で清香は排泄を続けた。ああ、お姉ちゃん、浣腸に目覚めたかも… と文が排泄物をシャワーで流しながらしみじみと感じた。
264幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:30:53 ID:5/JWpYGG
 シャンプーの匂いのせいか、あまり排泄物の臭いは強くはなかった。それでもこのままだと臭いが篭ってしまうので、文は露天に続くガラス戸を開けて空気を換気させた。
「はぁ、はぁ、ありがとう、文ちゃん…」
 ようやく落ち着いた清香が文にお礼を言った。身を起こそうとするが、脱力しきった身体が言う事を聞いてくれない。
「だめ、力が抜けて…」
「そのままで良い、いまから中を綺麗にしてやる」
 三田が起き上がろうとする清香を制止して言うと、黒いディバッグからごついアナル栓と一抱えほどの機械を取り出した。
「文、お前もまだおなかが痛いだろ? 綺麗にしてやるから清香の上に寝ろ」
 まだテキパキと動いている文をひょいと抱えると、三田は仰向けに寝ている清香の上に、対面する形で文を乗せた。
「え、えっとぉ、重くない、お姉ちゃん?」
「う、うん、重くない、けど…」
 これから何をされるのだろうと姉妹は不安に思ったが、さらに三田がディバックから拘束具を取り出したのを見て、とりあえず抵抗は無駄だと悟った。
 三田は手枷で姉妹の手を拘束すると、アナルプラグをそれぞれのアナルに強引にねじ込んだ。
「お、大きい…!」
「…そうかな?」
 清香は辛そうだったが、文はこれくらいの大きさは平気だった。しかし、三田がエアポンプを繋いでプラグが抜けないように大きく膨らませると、流石の文も「おお…」と呻いた。
「さて、文は経験あるんだったな。これから温泉で洗腸するから、思う存分楽しんでくれ」
 何を? と姉妹はハテナマークだったが、三田はそれ以上の説明をせずに、それぞれのプラグにチューブを繋ぎこんだ。それは、以前文が経験した洗腸機のチューブよりずっと太く、直径2センチはあった。
「ああ、洗腸ってあのときの…」
 以前、犬になったときに洗腸されたのを文は思い出した。そうしてみると、あの機械はポンプなのだろう。
「わ、私初めてだから…」
 清香が不安そうに言った。なにより、チューブの太さが恐怖の元だった。
 三田はポンプにそれぞれのチューブを接続する、さらに2本同じチューブを取り付けた。これでポンプに接続されたチューブは合計4本になった。
「そ、それ、どうするん… ああ、なるほど…」
 疑問に思った清香が声を掛け、途中で自己解決した。三田がチューブの端を浴槽に放り込んだからだ。してみると、1本が給水用で、もう1本が排水用、残る2本が自分たちへの浣腸用だろう。
「え、でも、私たちが2本だから…」
 清香が首を傾げていると、全ての準備を終えた三田がポンプに手をかけた。
「さて、始めるぞ。こいつは結構頭の良いやつでな。電磁弁の切り替えが複数個付いている… まぁ、言ってもわからんか。お互いに頑張ってくれ」
 意味深な言葉を言うと、三田はポンプを始動させた。ポンプは清香の予想通り浴槽から温泉水を吸い取ると、活発に温泉水を送り出し始めた。
265幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:31:21 ID:5/JWpYGG
「あ、来る… あれ?」
「あ、来たよ… 温かいのが入ってきた…」
 清香は不思議そうに文を見た。文の様子からして、どうやら温泉水を浣腸されているみたいだが、自分には全く入ってこない。
「あの、旦那さま、私には入ってこないんですが…」
 何かのトラブルなのだろうかと、清香は三田に訊いたが、三田は黙ったままだった。
 そうこうしている内に浣腸が終わったのか、ポンプの駆動が終わり、同時にカチッ、という音がしてポンプの電磁弁が閉まった。密着した文のおなかが膨らんでいるのが良くわかる。
「あれ、お姉ちゃんは入ってないの?」
「うん、そうみたい…」
 なにやら嫌な予感がして清香は口篭もった。一方の文は、どうせ排泄できないのだから、心ゆくまで浣腸の刺激を楽しんでいた。
「ふあぁ… 温かくて気持ち良い… 普通のお湯よりなんだか優しい感じがするよ… あれ、もう出していいのかな?」
 いつもならもっと我慢して出すのだが、ポンプが低い音を立てて動いて、腸内の温泉水を吸い出し始めた。
「んー、こんなもんですか、旦那さま?」
 多少物足りない思いで文が排泄していると、下になった清香の表情がサッと変わった。
「!! や、やっぱり…!」
「…え?」
 突然表情が険しくなった姉を不思議そうに見つめると、ようやく文は何が起こっているのかを理解した。
「も、もしかして、入ってる?」
 文が訊くと、うんうん、と清香が頷いた。電磁弁を切り替えたポンプは、文の腸内の温泉水をそのまま清香に浣腸しているのだ。
「文ちゃんのうんちが、私の中に…」
 事前に浣腸をしているから排泄物は少ないだろうが、それでも妹の腸内から直接注がれる感触に清香は呆然となった。
「ご、ごめんね! 止まらない、止まられないの…」
 思わず文が謝ったが、清香はゆっくり首を振ると、笑って「大丈夫」と答えた。
「全然、平気。確かに温かくて気持ち良いね…」
 清香が優しい顔で微笑んだ。排泄物を浣腸されていても、それが文の物だと不思議に汚いとは思わなかった。
「それに、どうせ次は文ちゃんの番よ」
「あ、だよねー…」
 文が半笑いで答えると、電磁弁が再び切り替わりポンプが逆動を始めた。
「あ、きた…」
 清香が初めての強制排泄を味わうのと同時に、文の直腸に2人分の排泄物が混じった温泉水が流れ込んできた。妙に生暖かい感触を味わいながらも、文もあまり嫌だとは思わなかった。
 姉妹は顔を見合わせると、急に可笑しくなってクスクスと笑い合い、どちらともなく口唇を重ねあった。
「ん… ちゅぷ… ちゅぷ…」
 異常に変態的な行為をしているにも関わらず、姉妹は全てを受け入れてしまった。
 三田は装置がちゃんと動いているのを確認すると、「うむ…」と満足げに頷いた。
「ちゃんと動いているな。2往復したら排水して、あとは同じ動作の繰り返しだ」
 そう言って、三田は内湯から露天へのガラス戸を越えた。
「露天風呂に入ってくる。まぁ、楽しんでおけ」
 姉妹は「はぁい」と返事をしてキスを再開した。お互いの体温が混ざり合う感触に、姉妹はとろとろと溶けていった…
266幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:32:06 ID:5/JWpYGG
 たっぷり露天風呂を堪能して三田が内湯に戻ると、姉妹は同じ格好で情熱的なキスを続けていた。また、ポンプも休む事無く稼動を続けている。
 いい加減飽きているだろうと思っていた三田は呆れたが、まあ、この姉妹らしいかと納得してポンプの排水スイッチを押した。
「あ…」
 今までとは違った動きを敏感に察して、清香が三田を見た。
「終わりですか…?」
 残念そうに呟く清香の頭を軽く小突いて、三田は「馬鹿者。お前たちばかり楽しんでどうする」と呆れ声で叱った。
 三田が姉妹の手枷を外すと、慣れた手付きで清香は特殊な器具でアナルプラグを萎ませると、文と自分のアナルプラグを引き抜いた。
「きゃん!」
 急にぽっかりとアナルが空っぽになって、文が短い悲鳴を上げた。
「あー、うー… 終わりなんだぁ… かなり残念…」
 寂しくなったアナルに指を突っ込むと、文はぐちゅぐちゅとかき回し始めた。
 普段だったら、勝手にオナニーしてると三田か清香が注意するのだが、今回はなぜか2人とも注意しなかった。不思議に思いながらも文は欲望のままに指を動かし続けた。
「ふぅ、はぁ… あん…」
(あれー… なんか無視されてるのかなー?)
 いい加減不安に思って文がチラリと目を開けると、ちょうど湯船のヘリに座った三田に、清香が後ろ向きで腰を降ろしている所だった。角度から見て、どうやらアナルに挿入しようとしているらしかった。
「あーー! ずるい!」
「勝手に、ん、1人でしてたじゃない… お姉ちゃんはおしり、久しぶりなんだし…」
 洗腸したのも初めな清香は、どうせだから直腸で三田の精を受けたかった。片手で三田のペニスを掴んで腰を降ろすと、驚くほどあっさりと清香のアナルはペニスを咥え込んだ。
「あ、すごい… 痛くない…」
 普段は快感より痛さが先に立つのだが、今日は子宮を裏側から疲れる感触を存分に味わう事が出来た。
「これは、癖になる、かも…」
 おしりを激しく動かして、アナルでペニスをごしごしとしごきながら、清香はうっとりと声を出した。
 当然、文は面白くなかった。姉に勝る数少ない長所を奪われた気がした。
「ぶ〜、いつもは痛くてヒーヒー言ってるくせに…」
「こら、そんなに拗ねるな」
 三田が笑いながら言うと、ディバッグをごそごそと漁って、文にペニスバンドとローションを放り投げた。
「ほら、お姉ちゃんの前が寂しそうだ。上手くイかせたら、今度はお前の番だ」
 そう言われて、文は急いで片方のディルドゥにローションを付けると、思い切って自分のヴァギナに挿入した。ベルトでしっかりとペニスバンドを固定すると、ニコニコ笑いながら清香の前に立った。
「ふふふ… だらだらといやらしいおつゆをながしやがって、このいんらんおんなめ」
「誰のマネしてるの…?」
 呆れる清香に構わず、文は「よいしょ!」と清香の両足を抱えると、狙いを定めて一気にディルドゥを挿入した。
「んぁ! もう少し優しくして…」
「きこえなーい」
 悪戯っぽく笑って、文は激しく腰を突きあげた。薄い肉壁越しに、三田のペニスにがんがんとディルドゥがぶつかった。
「ぶ、ぶつかってる! 膣内でぶつかってる!」
 両側から子宮を責められて、清香は思わず声を上げた。しかし、文はあまり実感が無く、「う〜む…」と唸って腰の動きを止めた。
「ど、どうしてやめちゃうの?」
「…なんだか責めてる気がしない」
 そう言って文は清香のヴァギナからディルドゥを抜き取った。
267幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:35:24 ID:5/JWpYGG
 さて、どうしようかと文は考え込むと、ふと思いついて自分の右手とディルドゥとを見比べた。
「太さは… あんまり変わらないのかな…?」
「な、何…?」
 清香が不安げに呟くと、背後の三田がニヤリと笑い、清香の脚を掬い上げてがっちりと拘束した。
「文、はいるんじゃないか?」
「い、入れちゃって良いかな…?」
 文が興奮した口調で清香に問いかけた。清香は訳がわからず「え、え…?」とおろおろしていた。
「…やっちゃいます」
 厳かに文は宣言すると、右手をすぼめる様に握って、清香のヴァギナにピタリと当てた。
「う、嘘!?」
 ようやく文が何をしようとしているのかに気付いて、清香は驚きの声を上げた。
「む、無理に決まってるでしょ!」
「ちからぬいてー」
 清香の抗議を聞き流して、文は右手を前に進めた。中指を筆頭にずぶずぶと指が埋まっていく。文の指が小さいのもあるのだろうが、清香のヴァギナはあっさりと指を咥え込んだ。
 とりあえず、親指以外の4本が収まったのを確認して、文は挿入の動きを止めた。
「どう、痛い?」
「痛くは、ないけど… ねぇ、もうやめない?」
 不安に震える清香が懇願したが、文が答えるより先に背後の三田がアドバイスを送った。
「文、ゆっくりと腕を回すように入れろ。親指は無理に指先に付けようとしないで、手の平にピッタリとくっつけるんだ。ローションもしっかり使え」
「了解しました!」
「……くすん」
 清香は抵抗を諦めると、「はぁ…」と深呼吸して全身を脱力させた。
 姉の準備が出来たのを確認して、文はローションを盛大に垂らすと、言われた通り手全体を回すようにして挿入を再開した。
「うわ… ぬるぬる入っていくよ…」
 一番大きな手首の直前で、文は再び動きを止めた。窺うように清香を見ると、清香は「大丈夫、入れて…」と呟いた。
「うん、いくよ…」
 姉の覚悟が伝わって、文は一気に右手を挿入した。手首がぬるんと滑って、驚くほどあっさりと文の右手が清香の膣内に納まった。
「すご… あったかい…」
「は、入ってる、文ちゃんの手が…」
 姉妹が、それぞれに驚きと感想を漏らすと、三田がゆっくりとペニスを動かし始めた。
「どうだ、文。動いているのがわかるか?」
「わ、わかります! すごい! うねうね動いてる!」
 文は感動して叫んだ。変な感じだが、姉はすごいと思った。
「う、動いて良いかな?」
「ゆっくり… ゆっくりお願いね…」
 清香は呟くように言った。文が慎重に右手を回すと、ペニスより凹凸がある手が性感帯を激しく刺激して、すさまじい快感を清香に与えた。
「こ、これ凄い! 凄いよ、文ちゃん!」
「そんなに気持ち良いんだ… あ、旦那さまのおちんちんだ…」
 膣壁ごしに三田のペニスがあるのを文は感じた。それは、ちょうど手の平に納まるような位置にあった。
268幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:35:55 ID:5/JWpYGG
「あは、ごめん、先に謝っとくね…」
「え、なに…?」
 思わず聞き返した清香を無視して、文は膣内の手をぎゅっと握った。
「…む」
 膣壁ごしにペニスを握られたのを感じて、三田は呻き声を出した。さらに文が右手を小刻みに上下させて動かすと、膣壁ごしにしごかれる感触に、思わず「おお…」と快楽の声を出した。
 しかし、ヴァギナの中でそんなことをされて、清香は堪ったものではなかった。
「やめて、やめて! お姉ちゃんの膣内をおもちゃにしないで!」
「痛いの?」
「違うの! 感じすぎて… あっ、イク!!」
 言葉の途中で、清香はおとがいを反らせて絶頂に達した。妖しい興奮を得た文は、さらに激しく手を動かした。
「だめだめだめだめっ!! こんなの無理っ!! おまんこ壊れる! ああっ! またイクーっ!!」
 今まで聞いた事も無い嬌声を上げて、清香は連続してイッた。しかし、文は何かに取り付かれた様に手を動かし続けた。いつもは責められる自分が、逆に姉を責めているのに、恐ろしいまでの興奮を得ていた。
「おねがいぃ… ゆるしてぇ… それほんとにだめなのぉ…」
 とうとう清香はホロホロと涙を流し始めた。ビクン、と腰を震わせると、しゃあああ…と清香は失禁を始めた。あまりの快楽に、下半身が弛緩して麻痺してしまっていた。
「そろそろ出すぞ…」
 清香の限界を感じた三田が、我慢に我慢を重ねていた精を解き放った。大量の精液を腸内に注ぎ込まれて、清香は再び絶頂に達した。
「ザーメン… 腸内に出されて… イっちゃった… もう、だめ…」
 三田が射精したのを知って、文はようやく手の動きを止めた。恐る恐る姉を見上げると、清香は涎を垂らして白眼を剥いていた。
「うわ… やりすぎたかな…?」
「大丈夫だ、抜く時に注意しろ。骨盤に引っかかると厄介だからな、入れるとき以上にゆっくり抜くんだ」
 三田にそう言われて、文はかなり慎重に右手を清香のヴァギナから引き抜いた。ぬるんと引き抜かれた右手は白い体液にまみれていて、清香が感じた快感のすさまじさを物語っていた。
「今日はもう無理だな。文、湯冷めせんように清香の身体をしっかり拭いてやれ。あとはベッドに寝かしておけば、この季節だから風邪はひかんだろう」
 三田の言葉に「わかりました」と文は答えて、苦労して清香の身体を拭き上げた。あとは三田が抱き上げてベッドまで運び、毛布でしっかりと清香の身体を包んだ。
「さて、今日はもう寝るか」
「えぇー…」
 まだ射精を貰ってない文がぶーぶー文句を言ったが、三田は文の乳首を、ぎゅっ、と捻じって文の抗議を止めた。
「いた、あん…」
「そう拗ねるな。お前は明日1日かけてたっぷり可愛がってやる。今日中に覚悟をしておくんだな」
 三田の言葉に、じゅん、と股間を濡らしながら、文は期待を込めて頷いた。
269幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:36:44 ID:5/JWpYGG
 翌朝、清香は久しぶりに自力で目を覚ました。
(あ、自分で起きたってことは、文ちゃん…)
 これまでの経験上、自力で起きる時は、たいてい文が起こせない状況の時だった。
「何されてるのかしら…」
 若干、不安に思いつつ、清香は裸のままベッドから降りた。誰かが(おそらく文が)気を利かせて壁に掛けておいてくれた空色のワンピースを頭から被ると、それだけの格好で清香は寝室を出た。
「む、起きたか。そこに朝食が用意してあるから、食べたら出発する準備をしろ」
 リビングには既に三田が旅支度を整えて待っていた。文の姿は見当たらない。
「おはようございます、旦那さま。…あの、文ちゃんは?」
 無駄と知りつつ清香は訊いてみたが、案の定、三田は「すぐに会える。それよりとっとと食べて準備しろ」と取り付く島も無かった。
(まあ、酷い事されているのは確かなんだろうな…)
 もはやこういう状況に慣れっこになってしまっているので、清香は言われた通りに朝食を食べると、顔を洗って準備を整えた。
「用意、できました」
「うむ、忘れ物は無いな。では、車に行こうか」
 そう言って三田は荷物を持って離れを出た。そこで清香は、昨日色々な責め具が入っていた黒いディバッグが無くなっていることに気付いた。
(嫌な予感しかしない…)
 ひくつく頬を何とかなだめてRV車の助手席に乗ろうとすると、三田が「今日は後ろに乗れ」と指示を出してきた。
 不思議に思いつつ後部座席に乗ると、後部座席と荷台との間が、黒いカーテンで仕切られているのがわかった。
「…あー」
 深い納得と倦怠感を覚えて、清香は運転席に乗り込んだ三田に「カーテン開けても良いですか?」と尋ねた。
「ん、いいぞ。ただし、走り出したら閉めろ」
 三田の許可が降りて清香がカーテンをゆっくり開けると、想像通り文はそこに居た。いや、居たという表現はふさわしくなく、そこに在るという表現こそが相応しかった。
 荷台には、昨日までは存在しなかったステンレスの台座が出来ていた。それは、以前に清香が乗った三角木馬に形は似ていて、違うところは頂点も平らになった台形の形を取っていることだった。
 高さ50センチぐらいのその台に、文は強制的に脚を折り曲げられて腰掛けていた。どうやら、拘束台からはバイブが生えているらしく、文のヴァギナからヴゥゥン…と低い振動音が響くのが聞こえた。
 上半身はロープで見事なまでに拘束されていた。そうして絞りだされたおっぱいをテグス付きの強力クリップが挟んでおり、クリップから伸びたテグスは天井のフックに掛けられて、乳首は強制的に上を向いている。
 口にはいつものボールギャグではなく、開口具が嵌められていて、開きっぱなしの口からだらだらと涎が垂れている。
「あぁ、今日はまた一段と…」
 これで本人は悦んでいるのを経験的に知っているので、清香はため息を漏らして「おはよう、文」と声を掛けた。
「オアォ〜」
「ああ、いい、いい。喋れないのはわかっているから…」
 清香は軽く手を振ると、正面を向いて座りなおした。
「もういいか? 出発するぞ」
 声をかけて、三田はエンジンを始動させた。車の振動が文を揺らして、文は思わず「ふぅぅん…」と呻き声を漏らした。
「…気持ちよさそうね」
 清香が思わず感想を漏らすと、文がコクコクと頷いた。
「…まぁ、楽しんで」
 清香は、そう言ってカーテンを閉めるのが精一杯だった。
270幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:37:16 ID:5/JWpYGG
 RV車が走行を始めて、文は未知の快感に打ち震えていた。
 サスペンションで吸収しきれなかった振動が伝わるたびに、股間を突き上げられ、乳首は捻じれて刺激を与えた。
(これ、やばい… 朝から何度もイッてるし…)
 拘束されるかも… とは思っていたが、まさかこんな刺激を受けるとは思っていなかった。身体はしっかりと固定されているから、台座から振り落とされる事は無い。文は心ゆくまで快感を貪ればよかった。
 特に、カーテンを閉められて、薄暗い中に放置されるのが堪らなかった。左右後方は黒いフィルムに覆われているし、正面のカーテンからは一条の光も無い。今は走っているから他人の存在を感じられるが、停まっているときは急に一人ぼっちになったような孤独感が文を襲った。
(それがぞくぞくするんだからなぁ… ごめんなさい、おばあちゃん。文はとんでもない変態さんになっちゃいました…)
 しみじみとそう思っていると、一際大きく車内が弾んだ。恐ろしい勢いでバイブがヴァギナに突き刺さり、文は「オァァ!!」と悲鳴を上げた。
(あー、イッちゃった… えーと、4回目…)
 数えるように命令されているので、文は律儀に心の中で指を折ってイッた回数を数えた。
(…壊れるかな?)
 まあ、それならそれで旦那さまが直してくれるだろう、と文はかなり突飛な信頼感で甘んじてこの責めを楽しんでいた…

「いつまであのままなんです…?」
 さっきの悲鳴が気になって、ほんの少しカーテンを開けた荷台を見た清香が三田に尋ねた。
「ちょくちょく様子を見て、無理そうだったらすぐにやめる。長くてもフェリーに乗るまでだな」
 三田の答えに意外なものがあって、清香は問い返した。
「フェリー? 行きとは違うルートなんですね」
「ああ、本当なら、行きもフェリーを使いたかったのだがな。休航なのはやむおえん」
「それで、今日はどこに泊まるんです? 明日はもう帰るんですよね」
 清香の質問に、三田は「そうだ」と答えると大きくハンドルを切った。荷台から、またもや大きな悲鳴が上がった。
「…掃除が大変そうですね」
「私がするわけじゃない」
「あはは…」
 清香は乾いた笑いを返すと、とりあえず荷台の事は頭から除外することにした。
 どうせあっちはあっちで楽しんでいるのだ。自分も風情ある風景を楽しまないと損というものだ。
 うんうん、と頷いて、清香は外を眺めて風景を楽しもうとした。その瞬間、またも車内は大きく弾んだ。
「ンァーー!!」
「………」
 どうにも無理そうだった。

 お昼過ぎ、三田と2人だけの昼食を終えると、清香は食堂のおばさんに握ってもらった名物入りのお握りを持って荷台のカーテンを開けた。
「おーい、お昼だよー」
 半分寝ていたのか、文は2、3度瞬きをすると「オ〜」と声をだした。
「ちょっと待って、お口を取るから…」
 清香はそう声をかけて文の開口具を取り去った。文が「ぷは〜」と声を出してだらだらと垂れた涎を、清香は丁寧に拭ってやった。
「さ、お姉ちゃんが口に入れるから、しっかり噛んで飲み込むのよ」
 そう言ってお握りを少しちぎって文の口に放り込もうとすると、文が「まっへ…」と呂律の回らない声で呟いた。
「あごがつかれてかめない…」
「あー…」
 清香はどうしたものかと頭を悩ませたが、思い切ってお握りを齧ると、もぐもぐと咀嚼を始めた。
 目線で「良い?」と問いかけると、文も目線で「おっけー」と答えた。
 清香は文の顎に手を当ててゆっくりと文の口を閉じると、充分に咀嚼を終えたお握りを口に含んだまま文にキスをした。
 そして、押し出すように咀嚼物を文の口腔に流し込むと、文はコクリコクリとゆっくりとそれを嚥下していった。
「ぷはっ… ちゃんと食べれた?」
「うん…」
「手間の掛かる娘ねえ…」
 呆れたように苦笑すると、またも清香はお握りを齧った。
271幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:37:43 ID:5/JWpYGG
 さらに時間は過ぎておやつ時、三田はRV車を車通りの少ない峠の展望台に駐車した。
「さて、この峠を越えればフェリー場だ。清香、元に戻してやれ」
「はい、旦那さま」
 清香はしっかり頷くと、カーテンを開けて荷台に移った。
 荷台の文はかなり酷い有様になっていた。どうもお握りを食べさせたのは間違いだったようで、振動に酔った文は全部戻してしまっていた。失禁も何度かしたらしく、荷台に敷いたトイレシートが黒く変色していた。
「何と言うか、何と言えば良いか…」
 とりあえず開口具を外すと、吐瀉物のツンとした匂いが鼻についた。ウェットティッシュで綺麗に口と胸を拭ってやると、文はようやく「ありがと、おねえちゃん…」と声を出した。
「どう、動けそう?」
「…むり」
 だよねー、と清香は思って、身体を支えている拘束具を全部外してテグスも天井のフックから外すと、「よいしょお!」と文の身体を台座から引っこ抜いた。
「ひゃあ!」
 一気にバイブを抜かれて文が嬌声を上げると、ヴァギナからは堰き止められていた愛液がだらだらと流れ落ちた。
 持ち上げた文を、あらかじめ毛布を敷いておいた後部座席にそっと置くと、鋏を使って全身を拘束するロープを解いた。
「はい、脚を伸ばして、曲げて… うん、むくみも無いわね。どこか辛いところは?」
「ないけど、すごく脚が痺れてる…」
「急に血行が戻ったからね。今はとりあえず身体を拭いて服を着るわよ」
 用意していた濡れタオルで丹念に身体中を拭き上げると、清香は文のおっきいおっぱいを無理やりスポーツブラに押し込むと、苦労してタンクトップとホットパンツを穿かせた。
「…よし、おっけ。変なところがあったら、すぐに言うのよ」
 そう言うと、清香は車外で油断なく警戒していた三田に「終わりました」と声をかけた。
「ああ」
 三田は運転席に乗り込むと、後部座席で大の字でになってノビている文をチラリと見た。
「体調は…?」
「きもちいいれす… うれしいれす…」
 文がうっとりと答えると、三田と清香は何とも言えず顔を見合わせた。
「…大丈夫、なんでしょう」
「もう、責める意味はないのかもしれんな…」
 三田は文の底なしの順応力に、完全に白旗を揚げることにした。とりあえず、帰ったら再び我慢を中心に調教しなおそうと密かに決心した。
「まあいい。これからフェリーだ。軽食でも食べて、酔い止めをしっかり飲んでおけよ」
 そう言って、三田はRV車を発進させた。先ほど言った通り、この峠を越えればフェリー場に到着する。フェリーを降りたら、屋敷に程近い温泉地に宿泊して、後は帰るだけだ。旅は終盤と言って良かった。
 しかし、3人の運命は、この時しっかりと回り始めていたのだった。
272幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:38:13 ID:5/JWpYGG
 3人が乗り込んだフェリーは極一般的なもので、個室の客室は無く、乗客全てが1、2階に分散して搭乗するシステムになっていた。
 三田と清香は景色の良い甲板に立って、真っ青な空と海を並んで眺めていた。ちなみに文は乗船してからずっと、キャビンに大の字になってぐーすか寝ている。流石に体力を消耗したようだ。
「フェリーは初めてか?」
 ワンピースを風になびかせて海面を見ている清香に、三田はそう問いかけた。
 風で麦藁帽子が落ちない様にしっかりと押さえながら、清香は振り返りにっこりと笑った。
「ええ、初めてです。大きな船に乗るのも、多分初めてです。風が凄く気持ち良いんですね…」
 そう言うと、清香は本当に気持ち良さそう大きく深呼吸をした。三田も真似して深呼吸してみると、強い潮の香りが鼻孔いっぱいに広がった。
「…海は久しぶりだ。山ばかり行っていたからな」
「ふふ、海もまんざら捨てたものじゃないでしょう?」
「そうだな…」
 三田は船縁から眼下の海原を覗き込んでそう言った。
 日本の景色は、春夏秋冬、山が一番だと思っていたが、どこまでも続く青い景色は、ずっと見ていても飽きない不思議な魅力があった。
「文が言った通り、せっかくの夏だったのだから、海に行った方が良かったのかもしれん」
「あら、まだ夏は始まったばかりですよ? まだまだ機会はあると思いますけど?」
 清香の言葉に、三田は思わず苦笑を漏らした。
「勘弁しろ。月に何度もこんな旅行していたら、流石に仕事が滞るし、第一私の体力が持たん」
 実感を込めて三田が言うと、清香は顔を押さえて、くすくす、と笑みを溢した。
「…なんだ?」
「だって…」
 清香は一生懸命笑いを堪えると、三田に向いて言った。
「だって、奴隷の私たちがこんなに楽しんで、主人の旦那さまが一番疲れてるんですもの。本当は逆でしょう?」
 そう言われて、三田はあっけに取られた顔になった。
「私は自由きままに弄んだつもりだったのだが… そうか、楽しかったか…」
 三田は深く納得するように呟いて、もう一度「そうか、楽しかったか…」と言った。
「旦那さま…?」
 少し三田の様子が変に思えて、清香は窺うように三田の顔を見た。そして、驚いて目を丸くした。
 三田は笑っていた。何か、憑き物が落ちたように晴れやかな笑みだった。この一年弱、こんな三田の表情は見たことが無かった。
「どうしたんですか…?」
 少し不安になって訊くと、三田は照れ臭そうに「いや…」と首を振った。
「半年前のお前の『告白』を思い出した。あの時は、こんな子供に説教されている自分が情けなくて、そして、その説教に説得された事がもっと情けなかった。
 あの時、お前の言葉を信じてはいたが、心のどこかでは途中でお前たちが音を上げて、また陰鬱な主従関係が復活するのを予想していた。だが、お前たちは本当に強かった。壊れなかった」
 三田は淡々と語った。しかし、その語調はとても優しく、喜びに満ちていた。
「私は、私の性欲を満たすためだけに行動しているのに、お前たちはそれが楽しいと言う、嬉しいという。完全に、私の負けだ」
「負けだなんて…」
 清香は困ってしまって口篭もった。姉妹としては、大好きな旦那さまに心からの奉仕をしているだけなのだ。そんな風に言われても、困る。
「ありがとう」
 三田は、不意にそう言った。清香は初め何と言われたのかわからず、思わず「え…?」と聞き返した。
「ありがとう。信じて良かった。信じて、救われた。感謝している」
 今度は、はっきりと清香の顔を見て言った。
 何を言われたのかを、三田が何を伝えたいのかをようやく理解すると、清香の瞳から大粒の涙がぽろぽろと流れ落ちた。
「そんな… そんな言葉… 嬉しすぎですよ…」
 三田は泣きじゃくる清香を胸に抱くと、ぽんぽんと背中を叩いてやった。その仕草は、確かな父性愛を感じさせるものだった。
 幸せだった。1年前までは不幸に果ては無いと思っていた。しかし今、幸せにも果てが無い事を知った。
「…あとで、文ちゃんにも言ってあげてください。きっと喜びます」
「キャビンで泣かれるのは恥ずかしいな…」
「今も充分に恥ずかしいですよ」
 清香にそう言われて、三田はようやく甲板中の乗船客の視線を集めていることに気付いた。バツが悪そうに咳払いをしながらも、清香の気が済むまで抱擁するのを止めなかった。
273幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:39:11 ID:5/JWpYGG
 三田と清香が甲板から降りると、なにやらキャビンに気まずい雰囲気が流れていた。なぜかくつろいでいるはずの乗船客がよそよそしく行動している。
 2人が自然と文の姿を探して見つけると、清香が、だっ、とダッシュして文が寝ているスペースに滑り込んだ。
「この娘は…!」
 文は乗船した時と変わらない姿勢でぐーすか寝ていたが、あろうことかタンクトップを脱ぎ捨てて、上半身スポーツブラのみの格好で大の字になって寝ていたのだ。
「…暑かったのだろうな」
 清香が掛けてやったタオルケットも蹴飛ばしているのを見て、三田がしみじみと呟いた。
 清香が必死に「文ちゃん、起きて…!」と声を掛けたが、1度寝入ってしまった文は滅多な事では起きない。しょうがなく清香はタオルケットで文のおっきいおっぱいを隠すと、文を後ろからしっかりと抱いてタオルケットが外れないように押さえつけた。
「文ちゃんはしっかり見張ってますから」
「頼む… これ以上の騒ぎにはしないでくれ」
 三田は心からそう言うと、周囲に軽く頭を下げた。周囲の乗船客は妙に暖かな目で「ご苦労様です」と頷き返した。
 完全に脱力した三田は、無性に喉が渇いた。清香に「コーヒーを飲んでくる」と伝えると、自販機コーナーに立ち寄って缶コーヒーを購入した。
 そのまま、清香たちのスペースに戻ってもよかったのだが、どうにも気まずい雰囲気が残っていて、三田は自販機コーナーの横に設置されたカウンターのスツールに腰掛けた。
 プルタブを開いてコーヒーを喉に流し込む。半分ほど一気に飲んでようやく一息吐くと、先にカウンターに座っていた三田と同年代の女性と目が合った。
「あ、どうも…」
 三田が目礼をすると、女性は「いえいえ…」と目礼を返した。
「可愛いお子さんですね」
 突然女性がそう言ったので、三田は危うくコーヒーを噴き出すところだった。
「ごほん! あ、失礼。いえ、あの子たちは私の姪です。ですが… そうですね、子供の様なものです」
 最初にお決まりの否定をしながらも、三田は途中で言い直した。自然と出た言葉だった。
「ああ、姪っ子さんでいらっしゃるの。それにしては良く懐いてらっしゃるのね」
 女性は、やけに熱っぽい目で文を抱く清香を見つめた。その視線に何か不可解なものを感じて、三田は失礼だとは思いつつも訊いた。
「失礼ですが、うちの娘が何か…?」
 三田にそう言われて、女性は慌てて視線を外した。
「あ、すみません! いえ、大した事じゃないんです。私の娘もあれくらいで…」
「ああ、そうでしたか」
 ようやく三田は得心して緊張を解いた。どうも私は慌てている、としっかりと平静を取り戻すことにした。
「ご旅行ですか?」
 半分、気を静めるために三田は女性に話しかけた。他人と他愛も無い世間話をすれば落ち着くだろうと思った。
「ええと、旅行のようなものなんですけど…」
「そう言えば、お子さんは甲板にでもいらっしゃるんですか?」
 口が喋るのに任せて三田は話したが、女性はゆっくりと首を振った。
「いいえ。娘は今、居ないんです。ごめんなさい、さっき言った事は少し嘘で…」
「は…?」
 ようやく三田の頭が会話に集中し始めた。三田は世間話をしているつもりだったが、女性の表情は暗かった。
「娘は、幼い頃に生き別れたんです。ですから、生きていれば、ちょうどあの娘たちぐらいの年齢だと思います…」
「それは…」
 三田は言葉に詰まって視線を外した。どうやら私は立ち入ってはいけない話題を振ったらしいと思った。
「知らず、本当に失礼しました。お辛い記憶でしょうに」
「いえ、いいんです。いいんですが… あの…」
 女性は言い難そうに口篭もったあと、三田をチラリと見て続けた。
「もし、よろしければ聞いていただけませんか? 少し、誰かに話したい気分なんです」
 三田はその言葉にかなり面食らったが、断るわけにもいかなかった。
 清香と文に視線を向けると、文の寝息に釣られたのか、清香もすぅすぅと寝息を立てて寝ていた。ならば、放って置いてもいいだろうと考えた。
「ええ、私でよければお聞きしましょう。もちろん、他言はいたしません」
「ありがとうございます」
 そう言って、女性は寂しげに微笑んだ。三田はその笑みに、なぜか強烈な既視感を抱いた。
274幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:47:54 ID:5/JWpYGG
「私は深沢と申します。生まれは東の方で… 今日ここに居るのは、子供を迎えに行った帰りなんです」
「迎えにですか?」
 三田の問いに、深沢は「はい」と答えた。
「…本当に恥ずかしい話なのですが、私は1度自分の子供を捨てているんです。
 自慢ではないんですが、私の家は非常に由緒ある家柄で、若い時はそれが非常に窮屈に感じました。
 そのせいでしょうか、高校を卒業した私は屋敷の使用人と一緒に駆け落ちをしてしまったんです。
 遠く実家から離れて、籍を入れないままにその人の子供を産んで… その時は、その暮らしが幸せだと感じました。
 でも、やはり私たちは世間知らずだったんです。2人目の子供が出来た頃には、私たちの生活は困窮していました。
 夫は寝る間も惜しんで働いてくれましたが、それが元で身体を壊してしまい、あっさりと死んでしまいました」
 三田は黙って深沢の話を聞きながら、嫌な予感を感じずには居られなかった。知らず、ごくりと生唾を飲み込むと、彼女の話の続きを待った。
「夫が死ぬと、突然実家の母がやってきました。何てことは無いんです。私たちのおままごとの様な暮らしは、ずっと監視されていたんです。
 それでも、幸せな家庭を築けるのなら、そのまま放って置くはずだったそうです。
 でも、無理だった… 長女と生まれたばかりの次女は母に連れられて施設に預けられ、私は実家に連れ戻されてお見合いをさせられました。未婚であることが災いしました。
 当然、私は娘たちを実家に呼ぼうと考えました。しかし、母が泣いて「やめてくれ…」と私に懇願しました。
 お見合いは婿入りが条件でしたが、私に娘が居る事が知れたら、全てご破算になる結婚でした。当時は既に父も亡くなっており、母は少しでも早く楽になりたかったのだと思います。
 …私は、いつか迎えに行くことを心に決めて、母のお見合いを受け入れるしかありませんでした。
 でも、2人目の夫との間に子供が出来れば、跡継ぎの子供さえ出来れば、きっと母は許してくれると信じていました。ですが、私と2人目の夫との間には、1人の子も出来ませんでした」
 深沢はそこまで言うと、ぼぅ、とした目付きで清香と文を見た。自然と三田も姉妹を見つめ、またも不思議な既視感を味わった。
「そうこうしている内に、5年経ち、10年経ち、私はもうほとんど諦めていました…」
 深沢は、苦悩するかのように両手を組んで額に当てた。
「ところが、突然状況が変わりました。…2人目の夫が今年の春に交通事故で亡くなったのです。
 結局、跡継ぎは作れず、深沢家はそのまま潰れるはずでした。ところが、今の今になって、母が態度を変えたのです。施設に預けた娘たちを養子として引き取って、血を繋いでいこうと考えたのです。
 ふざけた話でしょう? 実の娘を養子にしなければならないのです。けれども、私は嬉しくてたまりませんでした。これで、大手を振ってあの娘たちを迎えに行ける。そう思いました」
 深沢が、また清香と文をチラリと見た。
「あの娘たちみたいに成長した娘に会えると、私は喜び勇んで母に教えられた施設に飛んで行きました。実の母親と明かさなくても良い。ただの里親としてでも、あの娘たちに会って、みんなで暮らしたいと願いました。
 …けれで、現実は非情でした。預けたはずの施設は、去年の夏に閉鎖されていていました。それでも、引き取られたのか分かれば、どんな所にでも迎えに行くつもりでした。それなのに…!」
 三田はこの瞬間に、不思議な既視感の正体にようやく気付いた。
 似ているのだ。この深沢という女性は、清香と文の姉妹に!
「それなのに! 私の娘たちだけが、どこに引き取られたのか分からないんです… 
 それだけじゃありません。生まれたときにはちゃんと出生届も住民票も取得していたはずなのに、該当地の役所に確認すると、それすらも残っていなかったんです…」
 三田はそれ以上聞きたくはなかった。それは、自分が一番良く知っている事だった。自分が、やったことだった。
「私の娘たちは、いつの間にかこの日本に居ないことになっていたんです… 役所の職員に問い詰めても、「わからない」の一点張りでした。
 そんなことあるんでしょうか? 顔は覚えて無くても、あの娘たちを抱いた記憶はしっかり残っているというのに…」
 三田はすぐにでもこの場を去りたかった。しかし、確認をしなければならない。もし、これが自分の思い過ごしであればいいのだ。それならば、同情するだけで済む。
「失礼、深沢さん… その… 娘さんは何と言うお名前なんですか?」
 三田は神に祈るような気持ちで訊いた。深沢は少し驚いたように瞬きをすると、しっかりとした発音で告げた。
「長女を清香、次女を文と名付けました」
275幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:48:54 ID:5/JWpYGG
 さっきコーヒーで喉を潤したはずなのに、三田はまた喉がカラカラに乾くのを感じた。
「長女を清香、次女を文…」
 口の中で深沢の言葉を反芻すると、言葉を飲み込むように生唾を無理やり飲み込んだ。
「あの、どうかされましたか? お顔が真っ青ですが…」
 三田の変調に気付いた深沢が気遣うように言った。
「あ、いえ… 少々船に酔ったのかもしれませんね… 大丈夫ですので、続けてください」
「そうですか… でも、もう話すことはないんです。諦めてしまいましたから。今回で探しに行くのは5回目ですけれど、何の手がかりも見付けることが出来ませんでした」
 目を伏せる深沢に、三田は焦る気持ちを抑えて質問した。
「何度も失礼ですが、施設を管理されている方とはお会いになりましたか?」
「それが、その方も去年亡くなっておられて… 他の職員の方々も全くお会いする事ができませんでした」
 深沢さんは芦屋のおばちゃんに辿り着くことができなかったのだ。
 恐らく、私立探偵でも雇えばあっさりと辿り着く線であろう。しかし、そんな者を使えば、姉妹の販売元や鮫島が動いてしまう。それは誰にとっても危険だった。
 顔を上げて三田を見ると、深沢さんは少し元気を取り戻した風の声で言った。
「ごめんなさい、見ず知らずの人間からこんな話をされて。少し、参っていたんです」
「いえ、とんでもない…」
 深沢さんの声に受け答えながら、三田の内心に激しい葛藤が渦舞いた。
(何をしている、三田敦! すぐにあの娘たちの名前を明かし、本当の母親に会わせてやるんだ! それがあの娘たちの幸せだ!)
 だが、どんなに強く意識しても、言葉は口に出せなかった。どこか暗く、黒ずんだ思考が、それを強固に押し留めていた。
 ふと、縋るように姉妹に視線を向けると、三田は愕然とした事実を思い出した。
(母親に会わせて、どうなる…?)
 思い出したのは、昨日見たばかりの姉妹の裸体だった。あの身体を、本当の母親に見せるのか?
(そうだ、あの娘たちの身体は、もう普通の身体ではない)
 清香のクリトリスには何が付いている? 文の胸はなぜあそこまで大きい?
 全て自分がやったことだ。ほぼ丸一年かけて、自分があの姉妹を性奴隷として徹底的に調教したのだ。
 三田はこれまでの人生で覚えが無いほどの後悔を味わった。
(なぜ、普通に育てなかった? たった1年。まだ調教には早いと普通に育てていれば、こうも思い悩む事は…)
 いや、違う、と三田はその考えを強く否定した。
(失いたくない…)
 それが本音だと確信した。
(あの姉妹を失いたくない…)
 つまるところ、そうなのだ。自分はダイアモンドよりも貴重なあの姉妹を独占したいのだ。
 盲目的なまでに自分を慕い、恐ろしいほどに身体が敏感で、そして、異常者の自分を包んでくれるほどの優しさと強さを持ったあの姉妹を、自分は手放したくないのだ。
 そこまで思いつめてしまうと、三田の口は勝手に動き始めてしまった。
276幸福姉妹物語 第5話 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:49:28 ID:5/JWpYGG
「深沢さん、大変な人生を送ってこられたのですね」
「いえ、私なんか、馬鹿で弱い女ですよ…」
「そう卑下することはありません。娘さんを探しに、何度も脚を運ばれるなんて立派ですよ。きっと、その努力は報われるはずです」
「…そうだといいんですけど」
 目は伏していたが、深沢さんはホッとしたように笑った。
「さて、もっとお話しておきたいところですが、そろそろ下船も近いようです。姪たちを起こさないといけませんので、失礼してよろしいでしょうか?」
「あ、こちらこそ、長々と不愉快な話に付き合って頂いてありがとうございます。おかげでだいぶ楽になれました」
「それは良かった」
 スツールから立ち上がると、三田は深沢さんに手を差し出した。
「また、縁があればお会いしましょう」
「ええ、お元気で」
 にこやかに答え、深沢さんは三田の手を握った。三田も精一杯の笑顔を作って手を離すと「それでは失礼します…」と断って深沢さんに背を向けた。
「…あの」
 その三田の背に、深沢さんは声を掛けた。
「…なんでしょう?」
「その、変な事を聞くんですが、姪っ子さんのお名前は…?」
 三田は全身からドッと汗が噴きでるのを感じた。
(当然だ。自ら腹を痛めて産んだ子だ。なにも感じていないはずなどない…!)
 三田が硬直して固まっていると、しかし、深沢さんは慌てたように手を振った。
「いえ、いいんです! 変な事を聞いてしまいました、忘れてください。それでは…」
 深沢さんはそう答えると、深々と頭を下げてカウンターから去って行った。
 去っていく深沢さんの姿を見送った後、三田は拙い足取りで姉妹が寝るスペースに戻ると、がっくりと腰を降ろした。
「すまん、清香… すまん、文…」
 それだけ言うのが、精一杯だった。
 三田は下船のアナウンスに清香が目覚めるまで、何度も何度も「すまん…」と言葉を繰り返した。


                                        ―第5話 完―
277幸福姉妹物語 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/23(火) 10:52:10 ID:5/JWpYGG
これで第5話はおしまいです。
次がラストになります。
年内は無理でしょうが、年始には投下できる様に頑張ります。

それでは。
278名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 11:57:19 ID:y/SQ4d0d
ぐっじょ!
ラストまってます!!
279名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 12:50:01 ID:Flwac6N6
GJ!

次で終わりか…。
280名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 15:38:33 ID:Wxogz2Bq
GJ!
ほんとに「転」だ。どう転がるのか次が楽しみ。
281名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 18:30:51 ID:s1A1iTz3
GJ!!
年始が楽しみだ
282名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 19:03:05 ID:Fo4B/WtX
GJ!
ひょっとして母親来るのかなーとか思ってたけど、まさか本当に出てくるとはw
さて、どんな結末を迎えるのか、年始の楽しみが増えました
283名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 00:22:58 ID:clxm50Xq
GJGJ!!
何という神シナリオ。
俺的にはそのまま、三田と暮らしてほしい
284名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 01:43:26 ID:bADat12/

.   ∧__,,∧   【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
   ( ´・ω・)  【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
.   /ヽ○==○【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
  /  ||_ | 【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【妬み】
  し' ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_))
285名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 04:12:13 ID:WinoQzXx
ここはひとつ、母も肉奴隷に(ry
286名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 04:22:50 ID:tBN7u7Vu
サンタさんへ。
今年のクリスマスプレゼントは是非「遺産」の続きでお願いします。
287名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 09:21:10 ID:bxg2AZBp
思うんだが、アレは『らぶマネ!』がタイトルなんじゃないか?
288らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:43:42 ID:yvopPJjI

「あっはっは、沙耶ちゃんにはちょいと刺激が強すぎたかな?」

翌日、露店を開いた公園で、アイカの笑い声が響いた。
目の前には仕事の合間に寄った沙耶の姿がある。
沙耶が思いきってラブホ前でのことを打ち明けたのである。

「神楽坂さんと、恋人同士なんですか?」

予想外にあっけらかんとしたアイカに、おずおずと沙耶が尋ねる。
アイカは苦笑いを浮かべ、次いで少し恥ずかしげな表情になった。
少年同様、アイカも完全に割り切れているというわけではないようだ。

「んーどうなんだろ、嫌いじゃあないんだけど。アタシもよくわかんないや」
「お金とか、もらってるんですよね?」
「まーね」

沙耶が押し黙った。
沈黙が場を支配する。
ややあって、少し寂しげな目でアイカが尋ねた。

「軽蔑する?」
「いっいえっ!?」

沙耶があわてて首を横に振る。
289らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:44:26 ID:yvopPJjI

顔を真っ赤にして、沙耶はそう叫んでいた。
沙耶は貧しいながらも真面目に生きてきた少女だった。
貞操観念もしっかりしている、純朴な娘である。
アイカのような『いい人』が、自分にとってのふしだらな行為を、それも金銭のやりとりをもって行っていることが理解できないでいるのかもしれない。

「人には色んな種類の価値観があるの」

アイカは訥々と語り始める。
自分の軽率さでいたいけな少女を悩ませていることに決まりの悪さを感じたのだろう。
そんなアイカを、沙耶はじっと見つめた。

う、やりにくいわね、といった感じでアイカが言葉を選ぶ。

「沙耶ちゃんの心って、本当に綺麗で、言ってることもとってもカワイイんだよ? でもまあ、アタシみたいな人間も世の中には少なからずいるわけで、それでもそういう生き方するのは楽しいなり好んでるなりしてるからなわけ。それが一番自分らしいから、とかね」

アイカはそこまで話して笑みを浮かべた。
そっと沙耶の頬に手を添える。
沙耶はアイカの蒼い瞳に魅入られたようにそれを受け入れていた。
290らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:45:14 ID:yvopPJjI
アイカは内心で悪い男にひっかかりそうな性格ねえ……と思う。
だが逆に、なんとしても守ってやらねばという保護欲のようなものを与える少女でもあった。

「アタシは嫌でハルちゃんと身体の関係もってるわけじゃないんだ。だから、ちょっと大目にみてくれるとうれしいな」

自分でも整理しきれていない感情に必死にこじつけた理由を与えながら、アイカは真剣な表情でそれを聞く少女へ説得じみた話を続けた。
アイカの誤算は、沙耶がそれを額面通りに受け取る純真無垢な貧乏娘だったことである。
沙耶は話が終わる頃には、あることを決意してしまっていたのだが、まだアイカにはその驚異的な素直さを知る術はなかった。





その日の夜、アイカに風呂場に招かれた少年は、目の前の光景に速攻でツッコミを入れた。

「これはどういうことなんですか……?」
「ん、みての通りだよ」

紫のビキニ姿のアイカの横には、『酒井』と白ゼッケンの縫われたスクール水着を着た沙耶がぺたんと座っている。
291らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:46:09 ID:yvopPJjI
風呂場に水着というなかなか得難い光景を目の当たりにしている時点でどこから手をつければいいかわからなかった。
少年の視線に耐えかねたように、沙耶がもじもじと身を縮こまらせながら口を開いた。

「わ、私、その……」

湯気の立ちこめる風呂場の中で、頬を赤くしているのは熱気だけが原因ではないだろう。

「ア、アイカさんの気持ち、もっとよくわかりたくて!」

そう説明する沙耶に、少年がアイカに目配せをする。

「酒井さんに何吹き込んだんですか?」
「いやぁ、アタシもまさかこんなことになるなんて思ってなかったけどね」

しれっとそう答えるアイカは、それ以上のことを語らなかった。
少年にはある程度事前に事の顛末を知らされてはいたが、まさか沙耶が進んでこういった行為に荷担するとは予想だにしなかった。

「い、いいのかな?」
「それはハルちゃん次第だよ?」

にっと白い歯を見せる。
ああ、なんだか悪い人になっていってるみたいな気分だ。
少年はそう思いながら返答に窮す。

292らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:47:25 ID:yvopPJjI

「ほ、ホントにいいの?」
「はっ、はい! もちろんです! アタシ今まで生きてきて嘘ついたこと一回しかないんです!」

むしろその一回が知りたいよ、と少年は感じた。

「だってそれに、神楽坂さん悪い人じゃないし、きっと大丈夫だと思うから……」

頬を赤くして沙耶は上目遣いに少年を見上げた。
う、カワイイ……と思わず感じてしまう。
アイカという前例もあるし、もう金の使い方はそこまで気にしなくてもいいんじゃないだろうか、と思えてくる。
それに、沙耶が何かトラブルを持ち込むような存在には思えない。
困っている人を助けていたらいつの間にか大企業になっていた、と祖父が言っていたのを思い出す。
少年は心を決めた。

「じゃ、じゃあ酒井さん」
「はっ はい!」
「妹さんたちの学費とか出す代わり、ということでどうだろう?」
「ほ、本当ですかっ!?」

沙耶の表情がぱっと輝いた。
自分のことより、妹たちのことが大切な彼女らしい反応だ。
アイカに毒されてしまったのか、もう肉体の関係で糧を得ることに抵抗は薄らいでいるようだった。
状況とは恐ろしいもので、このアパートでの人間関係という閉鎖世界しか知らない沙耶にとっては、アイカの言うことは絶対といった節があるようだ。
293らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:48:07 ID:yvopPJjI
はぁ、と少年はため息をつく。
目の前の少女を、このままこのアパートに縛りつけていてはあまり彼女自身の将来によくないような気がしたからだ。

「それと……」
「はい」
「沙耶ちゃんの学費も出すから、ちゃんと高校にも行くこと」

沙耶が驚いた顔で少年を凝視する。
そして、まるで自分が図々しい行いをしているとばかりに首を振る。

「そ、そんなっ!? だ、ダメですよ! わ、私の分なんかいらなくて、その……」
「それこそダメだよ。沙耶ちゃんも学校に行かないと、僕、してあげないよ」
「あうぅ……」

後ろでアイカがニヤニヤとしている。
彼女はある程度少年の性格を知っているものだから、やりとりがおもしろくて仕方がないのだろう。

「で、どーすんの?」

アイカがもじもじとしている沙耶に抱きついた。
はむ、と耳を甘噛みすると、沙耶の身体が素直に反応する。

294らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:49:01 ID:yvopPJjI

「ひゃうっ!?」
「今なら止められるけど……」
「うぅ……」
「摩耶ちゃんも亜矢ちゃんも、お姉ちゃんに学校行って欲しいはずだよ?」

じわじわとアイカが外堀を埋めていく。
沙耶は為されるがままに虚ろな目でアイカの愛撫を受け入れていた。
やがて、上気した顔で小さく頷く。

「は……い」





「んっ んっ んっ ちゅっ ちゅる……」

浴槽の縁に座ると、沙耶が跪いてその蕾のような唇をそっと少年のものに重ねた。
きっとアイカにやり方を教わったのだろうが、遠慮がちの、つたない舌技だった。
それでも、未熟な少女らしい初々しさで、必死になって奉仕してくれている。
少年はその貧相な体つきも、これはこれで十分魅力的だと思う。
すると、今度はアイカが沙耶の隣に座った。

「ハルちゃん……アタシも」

少年の奉仕に二人が加わった。
295らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:50:11 ID:yvopPJjI
花に集う蝶のように、アイカが先端を口に含み、沙耶が茎にチロチロと舌を這わせる。
二点で責められる分、少年には新鮮な快感が約束されていた。
沙耶の黒髪を撫で、アイカの片乳をまさぐる。

「あっ……アイカさん」

射精感の高まりに、深くまでくわえ込んでいるアイカに警告する。
だがアイカは刺激を早めて少年を射精に導いていった。
沙耶もなんとなく、何が起こるのか理解したのか、必死になってあちこちを舐め回した。

「あっ!」
「ん……」

ビクンと軽く腰を浮かせ、精が放たれた。
ゴムを着けていなかったので、口内に出すのはよくないかと思ったが、アイカは注ぎ込まれる精液を舌で受け止めてくれた。

「ふー……ふー……」

射精が終わるまで先端から口を離さずにいたが、波が終わると粘着質な音を立ててペニスを口から引き抜く。
296らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:50:57 ID:yvopPJjI

「えふ……」

褐色の胸元に、白い液体がこぼれ落ちる。
沙耶は先端に残った残滓を口づけ、丁寧に吸い取っていった。
そうされる内に、少年のものは再び固さを取り戻していく。

「沙耶ちゃん……」

アイカが沙耶に何かを促した。
沙耶はペニスからそっと口を離すと、アイカに言われる通りに四つんばいになる。
少年がそれを呆然と見ていると、アイカがとろけるような笑みを浮かべた。

「さ、ハルちゃん、準備できたよ」


<続く?>

297らぶマネ!:2008/12/24(水) 16:55:35 ID:yvopPJjI
サンタさんから依頼の電話がきたのでなんとか沙耶ちゃんH前編まで書いてみました。
ちなみに「らぶマネ!」は題名のつもりでした。
まああんまりタイトルと内容のつながりはないんでいいんですけどねw
三女の亜矢だけ名前のパターンが違う、と前スレで言っていた人のエスパーぶりにびっくり。
まあそれについては後ほど分かってくるでしょう。
それではみなさんよいクリスマスを!
298名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 17:03:36 ID:ZbSyyKI/
.   ∧__,,∧   【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
   ( ´・ω・)  【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
.   /ヽ○==○【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】
  /  ||_ | 【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【GJ!】【妬み】
  し' ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_))

サンタさんからのお礼だそうです。

299名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 17:56:58 ID:tdeY8VFF
らぶマネキタコレ!

これは、ハーレムの予感!
300名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 18:10:12 ID:xUbwzI6V
サンタありがとう!
らぶマネありがとう!
サンタっているんだな。自分の汚れた心が恥ずかしいぜ。
301名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 18:41:32 ID:bxg2AZBp
すばらしい!すばらしい!すばらしい!

作者様にも良いクリスマスと良いお年でありますように。
302名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 23:04:47 ID:JoMvzOWx
「で、もうすぐクリスマスなわけだが」
「そうですねぇ。特に感慨深いわけでもないですが」
「俺もそうだな。一緒に祝うような人間もいなかったし」
「借金に追われてクリスマスなんか楽しむ余裕もなかったですし」

事実、クリスマスを楽しむ者などほんの一握りしかいない。

「で、だ。そんなお前のために、こんな物を用意してみた」
「……なんですかコレ?」

渡したのは小さなスイッチ。
ボタンを押せば、ちょっとした仕掛けが屋敷全体に及ぶわけだが。

「とりあえず厚着して外に出ろ。スイッチを押すのはそのあとだ」
「はい」

壁に掛けてあったコートを羽織り、屋敷の屋上へ向かう。
途中、ワインとグラスを持って行くのを忘れずに。


「外はやっぱり寒いですね」
「暖冬だと言われていてもそんなもんだ。
 まぁ、それはそれで仕掛けが映えるんだが」
「……?」
「とりあえず押してみ。話はそれからだ」
「はい」

何のためらいもなく、彼女はポチっとボタンを押す。
1…2…3…

ヒュー……
屋敷の庭から、そんな音が響き。
ドーン!
はるか上空で、爆発音が響いた。

「花…火?」
「冬の方が大気澄んでいてな。夏より見やすいらしい。
 花火なんてそう見ないから違いはわからんがな」

滝のぼりをする鯉の如く。
花火は何発も上がっていく。

そんな光景を、彼女は穏やかな表情で見つめている。

「綺麗……です」
「気に入ってもらえたなら僥倖だ。10分くらい続く予定だから、ゆっくり酒でも飲んで観賞しようか」
「はい……ご主人さま」

二つのグラスに注がれていく赤ワイン。
その間にも、花火は止むことなく屋敷を……いや、町を照らしている

「ご主人さま、何に乾杯いたしますか?」
「んー……もうすぐだし、深く考えなくていいと思うしな。恒例で行こうか」
「ふふ、ご主人さまらしいです」

俺と彼女は、グラスを軽くあげてこう言ったんだ。


「「メリークリスマス」」
303名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 23:31:12 ID:yiAo9EoW
>>302
すばらしい
クリスマス万歳!
304名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 12:48:47 ID:fIZlmIMq
>>297>>302
GJ!!


そういえばヤングチャンピオン烈で新連載の漫画が
借金のカタに、主人公が住むアパートに売られた女の子が
ヒロインという話だったんだが。
読んだ時、らぶマネを思い出した。
305名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 14:19:06 ID:4WQl4JGi
らぶマネきたあああああああ!!!!!!!!!!!
306286:2008/12/26(金) 01:05:17 ID:eHxbngoR
まさか本当にプレゼントが来るとは!ほんとーにありがとうございます。心からじーじぇい!
307あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:22:05 ID:GKT2NpT5
現在797スレッド。圧縮近いという噂もあるので保守にしゃしゃり出てきました。


キスをしていた。
ちゅう、と音を立て、互いに唇を吸いあってはわずかに離し、また重ねる。
それだけで夢だとわかった。これは夢だ。
なんかやらしいキスだ。
触れあっているのは唇の表面の薄い皮だけだと思うのに、互いの体に回した腕に力が入る。
手が服の上からぬくもりをまさぐる。
服?
今日は服を着てるらしい。
ほっとした。
夢とはいえ裸はやっぱり恥ずかしい。
恥ずかしいどころか、いたたまれない。
自分の体を見るのは苦痛だ。
出るべきところが出ていない。胸は無いに等しい。お尻だってふっくらとかむっちりとかの形容詞とは無縁だ。
十七にもなってこれだと、もう未来は期待できない。

兄ちゃんは時々ふざけて私を「うちのお姫様」って呼んだ。
髪も短い、スカートも制服以外はかない、かわいい物が絶望的に似合わない私のどこが「姫」だというんだろう。
まあ、態度は大きかったかも。
父さんや兄ちゃんがしてくれることの全てを、表面上感謝しているように見せて、心のどこかでは当たり前だと思っていた。
自分でお金を稼ぐまで、そのことに気が付きもしなかった。
今の状況を『稼いでる』とはとても言い難いけど。
最初は兄ちゃんがいやみを言ってるんだと思った。
ちっとも女らしくない私をからかってるんだと思ったから、泣いて抗議した。
でも兄ちゃんは本気だったらしい。
胸が無かろうが、全体的に丸みの少ない体だろうが、髪の毛が短かろうが、リボンやレースが似合わなかろうが、
そんなの全く関係なくおまえは俺の妹で、うちのお姫様でいいんだ、って言った。
思えば――兄ちゃんはズレてたんだろう。

キスが続く。
せわしなく動く手が腰のあたりの布を手繰る。
「ふ…、んんっ」
身じろぎした。
夢のくせに吐息の熱さまで感じる気がする。
足がすーすーする。
と。
太ももに熱を感じた。
「んっ! く、ぅ… ん」
手? 川島さんの手? なんで手が直接肌に触れるの?
キスでぼうっとする頭で考える。
ああ? スカートだ。私、スカートはいてる。
考える間にも、川島さんの手はするりと腿を撫で上げてショーツに指をかけてくる。
やだ! そこはだめ!
そこは胸なんかよりももっとだめな部分だ。
薄いのは眉毛だけじゃないんだ。
川島さんの手が撫でていった場所が疼きながら熱を持った軌跡を残す。
308あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:23:12 ID:GKT2NpT5
「ふ、あ…」
酸欠で死にそう。
キスから逃れるように喉を反らした。空気を求めてあえぐ。
川島さんが胸に顔を埋めてきた。
下半身から離れてくれたことにほっとしつつも、やっぱり安心できない。
無いから!
顔を埋めるほど、そしてそんなことして気持ちいいと思えるほど、そこに肉無いから!
でも私の手は川島さんの頭をかきいだいた。
「や。あ…、ああん」
薬が見せてる夢だ、ってわかってる。
あんな薬を飲んでるから私はこんな夢を見る。
川島さんにえっちなことをされてる夢を、優しくされてる夢を見る。
夢の中だから、と大胆になる。
「ふぅぅ…んっ!」
胸に痺れが走る。
多分――咥えられた。
怖い。
気持ちいいのが怖い。
実験なんだから、薬のせいなんだから、と頭の中で何度唱えても止まらなくなる。
川島さんをこんなふうに好きになりたくない。
目を覚ます。
身動き取れない状況を確認する気にもなれない。
今日も抱き枕になっていた。
目だけを動かして、眠っている川島さんの顔を見る。
もうすぐ四十、って言ってたのは嘘じゃないのかも知れない。
疑ってたわけじゃないけど、話し方や仕草で、もっと若いような気がしてた。
こうして見ると目尻や口元のシワは年齢を感じる刻まれ方をしているし、肌にもハリやツヤが無い。
兄ちゃんよりは父さんに近い質感だ。
いや、川島さんは父さんよりずっと若いと思うけど。
抱え込まれた上に、足まで乗っけられている、完璧な抱き枕状態になんだかがっくりきた。
川島さんにこうされるのは嫌じゃないんだけど、なんで寝ている間とはいえこんな事をされて私は
気が付きもせずに朝まで寝続けるんだろう。
普通気が付くだろう。
全然女らしくない、と自他共に認めるとはいえ、私は一応十七歳の女子のはずだ。
男の人にこんなことをされたら気が付くだろう。
気が付こうよ。
危機感が無さ過ぎるよ。
それとも、これも薬のせいなんだろうか。
都合の悪いことは全部薬のせいにしてるような気がしなくもないけど、つじつまが合うんだから仕方ない。
私が飲んでる薬は、きっと何をされても朝まで一度も起きずにぐっすり眠れる何かが入っているに違いない。
「起こしてくれてよかったのに」
不意に声がして、うわあ、と叫びそうになった。
起きたんだったらまずその腕とか足とかをなんとかしてください。
「どんな夢だった?」
寝起きのくせにこの人はなんて笑顔をするんだろう。
見てるこっちが蕩けそうだ。
そう感じて、違う違う、と内心で首を振る。
あんな夢を見ちゃうから現実でもおかしくなってる。
あれは夢だ。実際にこの人とそんなことをしたわけじゃない。
でも……。
今くっついてる体とそのぬくもりは現実だ。
おかしくなりそう。
309あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:25:26 ID:GKT2NpT5
「またキスしてましたよ」
他にどう言えばいいのかわからない。
繰り返し、繰り返しキスをした。
で、川島さんに体を触られて――。
うわあああ!?
また叫びそうになった。
む、胸のさきっちょ咥えられたのとかも言うの? 言うんだよね。覚えていることは全部教えて、って言われてるんだもんね。
言えるかー!
今気が付いた。
これはとんでもない『羞恥プレイ』ってやつだ。
「ころころとよく表情がかわるなあ」
感心したような川島さんの声がする。
やだ。川島さんの顔を見ることができない。
「どんなキスしてた?」
そこまで言わなきゃいけないんですか。
「覚えてるならぜひ」
これはわかっていて言ってるんだ。私が覚えてる、ってわかってて言ってる。
「それも実験の内なんですか?」
「もちろん」
川島さんはよっこらせと起きあがって、メガネをかけながらパソコンの前へ移動した。
「きみにお願いするときにマウスでの実験は済ませている、という話はしたよね」
頷く。それは聞いた。
「そこから僕はあるていどの仮説は立ててます。だからそれが仮説ではなく真実であるかどうかを実証するために
きみの協力が必要なの。そこまではいいかな?」
「はい」
川島さんは寝ている間に落ちてしまった前髪を手でぐいと押し上げるようにかき上げた。額が出ると余計にかっこよく見えちゃうんだ。
「で」
こっちを向くその目にどきんとした。
四十って言ったよね、この人。昨日確かにそう聞いた。
うわー。心臓が……。
「実験中僕はきみとずっと一緒にいることになります。当然それはきみに影響を与える。そして薬の影響も出る。
それがどんな影響だったかを僕が知る方法はたったひとつ。きみからの報告です」
「はあ」
「僕は、きみが見た夢の内容を知り得ない。夢を見たかどうかを知ることは脳波の測定や何かで可能だよ。でも夢の内容を
知るのはどんな機械を用いたって無理な話。だからきみに聞くしかない。きみは薬を飲むことについての承諾をした。そして前金を受け取った」
う。
あれね。全部自分の物にしていいよ、っていうあれね。
川島さんが、ふふ、とちょっとやな感じに笑った。
「今のところ使い道も無いのに、って顔だね。そうだよね。僕と一緒じゃないと外出できないし、
きみはお金を必要としてはいたけど、ここにいる限りとりあえずの生活には困らないし」
そのとおりです。
310あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:26:10 ID:GKT2NpT5
「そんな神妙な顔して頷いちゃだめだよ」
やな感じの笑顔が一転して心配そうな顔になる。
「あのね、僕はきみの外堀を埋めちゃってるんだよ。きみの逃げ場を無くしてるの。そういうことわかってる?」
「へ?」
逃げ場って?
「何のためにそんなことをするんですか?」
逃げてきてここに転がり込んだと思ってた。
川島さんは、あちゃー、と言いながら頭痛を堪えるように額に手を当てた。
そういう仕草をすると本当に四十には見えない。
「きみを逃がさないために決まってるでしょ。あやしいバイトって説明したでしょ。学生を使うつもりだったけど春休み前に逃げられてるわけよ」
「はあ」
人望無いのか。
川島さんは私を見て、苦笑しながら溜息をひとつつくと
「まあいいや、その話は」
と言った。
「はあ」
いいんならいいけどさ。別に。
そんな私を見て川島さんはまだ苦笑いをする。
「僕は拾い物をしたんだな」
「へ? あ、まあ、拾ってもらって助かったなーとは思ってますけど」
「そうじゃないよ」
川島さんはそう言って『苦い』が取れた笑顔を見せてくれた。


薬をふつうに飲みたい、って言ったからだろうけど、川島さんは口移しをやめてくれた。
でも私が勝手に薬に触るわけにはいかないから、寝る前には川島さんに声をかけないといけない。
これは変わらない。
水の入ったコップをベッドの上で待つ私のところまで持ってきてくれて、インスタントコーヒーの空き瓶に入れたカプセルを
ひとつ振り出す。
私は水を口に含んで、上を向いて、小さく口を開ける。
川島さんはそこへカプセルを落としてくる。
キスはしてない。してないけど、これもえっちな感じがするという意味ではあんまり変わらないと思う。
だって川島さんの指が唇にあたるんだもの!
ここでびくっ、ってなっちゃうと口の中の水が零れるか、カプセルがまた落っこちて3秒ルール適用になるか、だと思う。だから
「うう」
って声を出すしかできなかった。
一応抗議のつもりだったんだけど川島さんには伝わらなかったみたいで
「おやすみ。良い夢を」
なんてきざなセリフと共に頭を撫でられた。子供じゃあるまいし。
むっとした声で
「おやすみなさい」
と返して横になったら、それまでさほど眠気は感じていなかったのに、あっという間に眠りに落ちてしまった。
311あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:26:33 ID:GKT2NpT5

「まさか初めてってことはないよね。十七って言ってたよね」
笑っちゃうことに、夢は最初に薬を飲まされたときの、つまりキスをされたときのセリフから始まった。
「初めてです」
夢の中の私はか細い声で答える。
真っ赤になって、川島さんを見ていられなくて顔を背ける。
私の状況が私に見える、ってのも不思議な感じだ。なんか幽体離脱っぽい。こっちで状況を把握してるのも私で、川島さんに何かをされるたびにドキドキするのも私だ。
川島さんは私の頬にキスをする。
「かわいいねえ。大丈夫。優しくするよ」
首筋に唇の感触。
勝手に体がびくんとはねた。
夢だとわかっていても落ち着かない。
心臓が飛び出しそうだ。
「や、あ…」
お腹のあたりから胸へとはい上がってくる何かに、声が出た。
自分の声とは思えない、高いような掠れたような――女の声だ。
「いや?」
優しくて低い、男の人の声が聞いてくる。
あの長い指がやわやわと胸を揉んでくる。
「ふあ…っ、あ、あの…っ」
「痛いかな」
違うんです。
胸の、あまりにもささやかなふくらみの始まるあたりを優しく触るだけの手は痛くない。気持ちいいと思う。
でもあまりにもその揉める部分が少ないのが恥ずかしい。
どうなの、これ。女としてどうなの。
こんなにちょっぴりしかないのに、なのに気持ちいいってどういうことなの。
「すべすべして、きれいだよ」
反対側の胸に川島さんは口づけてきた。
「やあぁんっ、あ、あ…っ」
指とは比べものにならない、柔らかくて優しくて熱い感触に、触られた胸じゃなく腰から下がびくびくした。
なんでこんなとこが。何かされた部分とは関係ない場所が反応する。
眠るまであんなに夢を見るのが怖かったのに、いざ夢を見始めると何が起こっても怖くない。
だってこれは現実じゃないから。
優しくされるのが嬉しい。
女として扱ってもらえるのが嬉しい。
「はぅ…う、んんっ、あ、ああ」
触られるのが嬉しい。
気持ちいいのが嬉しい。
夢の中で私は、諦めてしまった、でも本当はそうなりたくて仕方なかった女の子になっていて、川島さんはそんな私を大事に扱ってくれる。
現実にはありえないことだ。
だって、現実には川島さんは私のことをそんな風には見ていない。
ただの被験者だ。
優しくしてくれるのも、家に置いてくれるのも、一文無しで路頭に迷い掛けてたのを拾ってバイトという名目でお金をくれたのも、全部それは私が川島さんの実験に必要だからしてくれただけのことで、私じゃなくても誰でも良かったんだ。
「川島さ…んっ」
上に乗っかっている川島さんの体に手を伸ばす。
知らない、見たことのない、想像だけで形作った川島さんの背中に手を伸ばす。
抱きしめるように腕を回す。
どんな形なのか、どんな色なのか、どんな肌触りなのか知らない体。
勝手に作ってしまった嘘の川島さん。
その嘘の塊を抱きしめる。
どうしよう。
好きです。
現実にはありえない、って頭の中では理解してるけど、でも現実になったらいいのに、って思う。
思いながら強く強く夢を抱きしめる。
312あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:27:22 ID:GKT2NpT5
バイトの話をしたときに川島さんは期限を切らなかった。
いつまで続ける、とか、どういう状況になったらやめる、とか。
私もうかつだったと思うけど、目の前のお金に目がくらんでいたし、助かったという思いで他のことを考えられなくなっていたんだと思う。
一線を越えちゃった夢を見た、実験開始から四日目の朝、どうしても口を開けない私を見て、川島さんは溜息をついた。
「どうしても話せない?」
うつむいたまま頷いたので、頭の動きはちょっぴりだった。
でも川島さんはそれを見て、また溜息をつく。
「どうして? その理由は話せる?」
夢の内容に触れずに理由だけ話すなんて器用なマネが私にできるだろうか。
「僕が関係してる?」
頷く。
まさにそこです。
「じゃあ、僕じゃない人、たとえば全く関係ない第三者にだったら話せる?」
な、なんてことを言うんだ!
ぶんぶんと音がしそうなくらい首を振った。
あなたに抱かれて悦びました、なんて言えるわけがない。具体的に何がどうなったのかはよくわからなかったけど、
そんな、成人指定の小説を朗読するようなことをできるわけがない。
むちゃ言わないで。
そんなこと、誰にも言えない。
あんな夢を見てしまうのは薬のせいだってわかってる。
川島さんは薬についてなんにも言わないけど、きっとそうだ。あの薬はそういう薬なんだ。
飲んだらあっさりと眠りに落ちて、現実で印象に残っていたことをそのまま、もしくは、より過激にした夢を見せて、
しかも起きたときに忘れていない、そんな効果を持った薬。
――無いよ。SFでも無いよ。
おもしろすぎるよ。しかも意味不明だし。
何に使うの、こんな薬。
ほんとになんなの、あの薬。
「なるほどねえ」
私がいろいろ考えてる間に、川島さんも考えていたのだろう。
にやりと笑って言った。
「夢の中で僕はきみを抱いちゃったわけだね」
ぎゃあ!
サトラレ!? 私、いつからサトラレになった!?
「ああ、図星か」
顔を上げてられなくなってベッドに突っ伏したら、その上から声が降ってきた。
カマかけられたのか。
「いやあ、実に。なんというか」
川島さんのくすくす笑う声が聞こえる。
ぐりぐりと後頭部を撫でられた。
「触らないでください!」
そうやって触られると、手の感触を覚えてしまう。そうしたらまた夢に見てしまうかも知れない。だからやめてください。
なんかもう泣きそう。
313あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:29:03 ID:GKT2NpT5
いつまでこの実験は続くんだろう。実験を理由に二人で家に籠もりっきりになってるから、そろそろ川島さんの仕事も心配だ。
私が心配することでも無いんだろうけど、そして大学はいま春休みだろうけど、川島さんは仕事に行かなくていいんだろうか。
研究室の責任者って言ってたけど、そっちを放り出してこっちにかかりきりでいいんだろうか。
それほどこっちが重要な研究なんだろうか。
「口頭が無理なら結衣ちゃんが書くんでもいいけど」
「いやです」
おんなじだよ。結局川島さんが読むんでしょ。
「でもね」
優しげで、そのくせこっちが怖くなるような声。
「どっちにしろこちらが見極めができる結果が出ないことには終わらないから」
はい?
「答えられないなら被験者を変えないといけない」
お役ご免ってことですか?
あ、でも、期待された結果を出せないって場合、バイト料はどうなるの。
そして私今度こそ本当に路頭に迷うの?
「結衣ちゃんは適任だと思ったんだけどな」
どういう意味ですか。
そろっと顔を上げてみる。
「影響を受けやすいだろうから。前にちょっと話したでしょう。きみくらいの年代は、毎日の些細な出来事が大問題な世界に住んでる、って。
五分経ってもメールの返事がないともう友達じゃないとか、『おはよう』のメールに絵文字がないと冷たいだとか。
女の子だとトイレに一緒に行かないのも友達じゃない証拠かな。とにかく自分が世界の中心で、
誰もが自分に便宜を図ってくれて当然だと思っている。肥大した自意識を持っていて、そのくせちょっとしたことに傷つく柔らかい部分がある。
被験者として実に理想的だ、と僕は考えた」
それ、理想的なの?
というか、私はそういう子だと思われてるんだな。
川島さんの手が肩にかかる。
何を。
指先が首筋を撫でる。
あああ、やめてぇ。ぞくぞくする。
こういうとこを触るのって普通?
「でも世界の中心って実際どこにあるのかな?」
「え?」
「きみの中?」
そんなの、考えたこと無い。
世界は私の思い通りには動いていない。
女の子に生まれたのに少しも女らしくなれない。
幸せに暮らしたいのに、母さんは死んじゃったし、父さんはいなくなっちゃった。
兄ちゃんに至っては男の恋人と行ってしまった。本当に恋人なのかどうかは今もって不明だけど。
でも。
誰も私を大事には思ってくれてなかった。
誰も私のことを愛してなんかない。
私は、捨てられた。
そして川島さんに拾ってもらった。
「もしもきみの中に世界の中心があるのなら、世界はきみの思う姿になってもいいと思わない? きみの望む世界。きみの願いが叶えられている世界。そこは幸せだと思わない?」
314あやしいバイト:2008/12/29(月) 00:29:59 ID:GKT2NpT5
私の願い。
女の子らしい私。かわいい物をかわいいと思って身の回りに置ける世界。誰かにかわいがられている私。
父さんと母さんと兄ちゃんのいる暮らし。春からは大学生になって、ちょっと自由も増えたりなんかして
楽しい毎日が待ってて、私の触れる世界はもっと広がって、そして誰かに愛されて。
幸せだと思う。
きっとそれは幸せだと思う。
悩みもない、苦しみもない、楽しいことだけが起こる、夢のような世界。
――夢?
「自分は大切にされてる、自分は大切な存在だ、と感じること。今は自尊感情なんて言い方で
幼い頃からそれを育むように、という教育もなされている」
首筋から頬を撫でる手の感触に慣れてしまった。
優しく触れられるのは気持ちがいい。
「ただしそれは一歩間違うととてつもなく嫌な人間を生む場合もあるんだけどね。
自分が大切なように他の誰かもまた大切な存在、と思えずに、自分だけが大切な存在、とはき違えるんだ」
川島さんは口を歪めるだけで笑った。
「自分だけが大切な存在だと思いこむ年代というのがある。自意識過剰で、他人の目に過敏に反応している。
思春期の子ってのはたいていそうだね。だから僕は学生を、とりわけティーンを実験対象にしたかった」
頬を撫でていた手が首の後ろに回される。
頭を固定される。
「あの日、掲示板の前で途方に暮れたような顔をしてるきみを見たとき、僕はこれを天の配剤だと思った」
川島さんが体ごと近づいてくる。体の持つ熱を肌で感じる。
いやだ。怖い。
メガネの奥から鋭くこっちを見る、その目が怖い。
これは夢じゃなく現実だ。
だから怖い。
「不安定で、感受性豊かで、健全に幸せになりたいという願望を持っている」
怖い。怖い。助けて。
お金なら全部返すから。いろいろ買ってもらったりした分も、いつになるかわからないけど、あても無いけど、
働いてきっと返すから。
言うな、っていうのなら川島さんの実験の事も誰にも言わないから。
だから誰か助けて。
「それが」
川島さんは耳元で囁いた。
「夢の中ででも叶ったら嬉しいと思わない?」



本日ここまでです。
315名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 05:30:00 ID:zIn0LROx
グッジョブです!
どうでもいいけど配剤じゃなくて(ry
316名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:46:05 ID:YFK2NBb8
GJ!
続きが非常に気になる!



>>315
配剤じゃなくて…何?
317名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 18:24:18 ID:NsdMo2tV
配剤(はいざい)じゃなくて天の采配(さいはい)だね。
次で鬼畜モード来るか!?
318名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 18:51:26 ID:pdDyXdY9
天の配剤(はいざい)
天は人それぞれに資質や能力、機会などをほどよく配するものであるということ。

goo辞書から抜粋。
たぶん、これで意味もあってる。
間違いじゃない。

319名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 18:52:01 ID:pdDyXdY9
ごめん、あげちゃった。
320名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 15:34:03 ID:OOruIaPR
回避保守
321 ◆h1xIZ0tprA :2008/12/31(水) 01:40:17 ID:v2C9U07w
規制来たみたいですね〜。
保守保守。
322名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 03:42:20 ID:m9SHmj31
規制試しsage

規制かかってないことを祈って。

>>250に言われたことを反省して、
いろいろと書きたいことを見つけて、
現在新しく『月から買ったモノ』を執筆中。
323 ◆h1xIZ0tprA :2009/01/01(木) 02:41:55 ID:3hDJ93Aw
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
324名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 22:25:49 ID:hD0cnjbS
最近の不景気で正月さえまともに楽しめない女の子もいるんだよな……
あけおめ
325名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 23:19:45 ID:7GhQnf06
わたしのおうちのクリスマスは、とってもこわいいちにちでした。
おしごとがなくなったおとうさんが、おかあさんとケンカしてたからです。
わたしはテーブルのしたにかくれてずっとふるえていました。
ケーキをたべられませんでした。サンタさんもきませんでした。

おじょうがつも、とってもこわかったです。
せけんてい、というのがわるくて、おばあちゃんちにいけませんでした。
おとうさんもおかあさんもだまっていて、いえがカチコチにこおってるみたいでした。
おそばをたべませんでした。おせちもおぞうにも。おとしだまもありませんでした。

そとであそんでこいといわれて、こうえんにいきました。
でも、ブランコにのるきもちにもジャングルジムにのぼるきもちにもなれません。
ぼーっとしていると、おとこのおにーさんがやってきました。

「おとーさんとおかーさんがケンカしてて、おとしだまもらえなかったの」

わたしがいうと、おにーさんは「そうか」と、すこしかなしそうにいいました。
そして、「じゃあ、これをあげる」といって、わたしの手に小さななにかをにぎらせました。

それはヴェルタース オリジナルで、わたしは6さいでした。
とってもあまくてくりーみぃで、とてもしあわせなきもちになることができました。


「ふぁりあとーほしゃいまふ」というと、おにーさんは手をふってさよならしました。
みずいろのおそらをみながらアメをころがしてると、おにーさんがまたきました。
「はい、あけましておめでとう」そういいながら、おとしだまぶくろをくれました。

なかにはおっきくておもたいおかね、500えんだまがはいっていました。
びっくりしておにーさんをみあげると、あたまをくしゃくしゃとなでられました。
あったかいてと、やさしいえがおに、ちょっとだけどきどきしました。

そのおかねでかったのは、もちろんヴェルタースオリジナル。
なぜならそのアメはわたしにとってとくべつなアメになったからです。

ちなみにおにーさんといっしょにひとつのアメをなめるのがさいきんのまいぶーむです。
あまくなったつばをこうかんしあいながらなめると、とってもしあわせなきもちになります。
でもちょっとおまたがむずむずしてヘンなかんじです。こんどおにーさんにきこうかな。おしまい。
326あやしいバイト:2009/01/03(土) 00:21:09 ID:9ay83qWd
>>325
バロス!! GJ!
327名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 00:41:31 ID:AzfW+rLi
>>325
GJ!


>>326
おいwww名前wwwww
328あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:03:02 ID:dnRa4Lcl
いろいろ済みません。続きを置いていきます。



午後中ずっと考えていた。

川島さんは恐ろしいことを囁いた後、あっさりと手も体も離して、
「なんてね」
と、言った。
「え?」
「そんな都合のいい話があると思う?」
力が抜けている。
「え? え?」
今までの川島さんはなに?
「実験については言ったとおり。僕はきみくらいの年齢の子を使いたかった。
そしてきみは適任だと感じた。それは今でも変わっていない。
でも、そんなあやしい薬があると思う? 僕を見て、そんなものを作れる人間だ、って思う?」
思――う、ような、思わないような。
でも。
ええ?
どう返事をしたらいいのかわからない私を見て川島さんは笑った。
さっきまでの不吉な感じが嘘みたいな優しい笑顔。いつもの笑顔だ。
「でも本当にそうだったらいいな」
「そんな薬を作れたら、ってことですか?」
それはある意味、見たい夢を見ることができる薬だ。
何の役に立つのかよくわからないけど、ちょっと面白そうだとは思う。
「ううん」
川島さんは首を振った。前髪が揺れる。
そしてそれ以上は何も言わなかった。

川島さんは何を「そうだったらいいな」と思ったんだろう。
見たい夢を見ることができる薬、っていうのはばかげてる。都合良すぎる。まるでマンガだ。
だからそれはありえない、と思う。
同時に、あったらいいな、とも思う。
川島さんは私の夢について何も言わない。
私がどんな夢を見ても――って言ったって主に川島さんとヘンなコトをしてる夢なんだけどそれを
嫌がらない。面白そうに聞く。
私は川島さんの実験の役に立ってるんだろうか。
バイト料をもらえるだけの働きをしてるんだろうか。
でなきゃ、理由もなくあんな大金もらえない。
役に立ちたい。
多分それはお金のこともあるけど、川島さんを好きになってしまったからだと思う。
うんと年上で、名前と生活パターンくらいしか知らない人のことを。
役に立ちたい。喜んでもらいたい。
「川島さん」
だったら私ができることはひとつだ。
「なに?」
「ちょっと昼寝します。薬をください」
薬を飲んで寝て、夢を見る。


329あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:03:25 ID:dnRa4Lcl

薬と水の入ったコップを持って川島さんはベッドの側まで来た。
「あの……」
なんで? コップを渡してくれない。
「結衣ちゃん」
「はい」
川島さんはコップを本棚の隙間に載せた。本だらけのこの部屋で液体の入ったものを置ける場所は少ない。
「昼寝というのは本当?」
疑われてる。
そりゃ、あれだけぐうぐう寝てれば昼に寝たいなんて言うのは不自然だものね。
実際、眠くない。
でもこの薬はそんなの関係ない。夜に飲んだときだってそう。飲んだらいつの間にか寝てしまう。
だからきっと私はすぐに寝るはず。
もしもこれがあたっていたら、起きてから川島さんに教えてあげよう。
でも目的はそこじゃない。
見たい夢が見られると言うのなら。
今までは薬の飲まされ方や川島さんの笑顔に影響されまくった。
キスをされれば夢の中でもキスをした。
肌に触れられれば夢の中でも触れられ、そこから想像のままにエスカレートした。
キスをやめても夢は淫らなままだ。
じゃあ、私がそんな夢を望まなかったらどうなるんだろう。
試したい。
望んでいない方の望んだ夢――なんかややこしい。
ええと、とにかく、気を確かに持って、えっちな夢を見ないようにしたら、えっちじゃない夢を
見られるんだろうか。
「本当です。いやあ、春はあけぼのも爆睡ってのは本当ですね。眠くて眠くて」
「それを言うなら『春眠暁を覚えず』だ。どうやったらそんな間違いを」
すごく呆れられた。
ほっといて。
意味は通じたんだからいいじゃないですか。
薬ください。薬。
私の体で証明するから。
ふいに、川島さんに手を掴まれた。
「ひゃっ!?」
「何を考えてるの?」
じいっとこっちを見る、めがねの奥の目がすわってる。
「な、なにも! だってほら寝るときは薬を飲めって川島さんが……」
言ったじゃないですか、まで言わせてもらえなかった。
ぐっと手を引かれる。
体がころりと川島さんの方へ倒れる。
だから! そういうことしちゃだめだってば!
そういう夢を見る予定じゃないんだってば!
自由な方の手を慌てて川島さんの胸に突っ張る。
胸って!
フリースの手触りの下に感じる硬い感触。
私、常々胸がないって思ってたけど、男の人ほどじゃなかったわ。
そうじゃなくて。
どくどくと血が流れていく音が耳の中でうるさいくらい聞こえてる。
「結衣ちゃん」
そんな声で名前を呼ばないで。
「本当にいいの?」
いいですよ。契約書だって書いたじゃないですか。薬飲んで寝ますよ。そう言ったじゃないですか。
お願い。
もうこの空気に耐えられない。
こくこくと頷くと、ぎゅっと抱きしめられた。
330あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:03:52 ID:dnRa4Lcl
「あああ!」
「――もうちょっと色っぽい声でお願いしたい」
不意打ちをしておいて何を言うんだ、この人は。
だめですってば。ほんとに。
見たくないんだから。
絶対現実にはならない夢なんか見たくない。
川島さんは面白がってこんなことをするんだろうけど、私を女としては絶対に抱かない。
きっとそんなことしない。
私がそうしたいと思ったら?
したいのにできなくて、でも毎晩夢で見ていたら、そのうち夢なんて見たくなくなる。
眠るのが嫌になる。
きっとそうなると思う。
川島さんの手が背中を撫でるようにして降りていく。
腰骨。
平べったいお尻。
「う…」
こんな、柔らかさの足りない体を、触ってる方は楽しいんだろうか?
「色っぽい声出して、って」
むりだ。歯を食いしばって首を振る。
夢の中でならいくらでも出せそう。
夢の中での私は、持ってる知識を総動員して、考え得る限りのえっちなことをしていた。
私の知らないことを夢で見せる方法は無いんだと思う。だから本当に本当の最後の部分はよくわからないし、
アレをどんなふうに感じるのかもわからない。
ただ、えっちな方向に展開してしまう夢を見るだけ。
そんな変な夢を見せる薬なんか、世の中の役に立たない。
それを私は証明しなくちゃ。
川島さんに言わなくちゃ。
そのために私は夢を――なんの夢を?
首筋に温かいものが触れた。
「…やっ」
わからなくなる。
いろんなことが、こんなふうにされるとわからなくなる。
「そうそう。そういうの」
ぞくんとして、思わず背筋が伸びた。
なに、今の。
なんでそんなところにキスするの。
つうっ、とその温かいものが首筋から耳へと――川島さんの唇だ。
「やぁ…っ」
声が。
出ない。やめて、って言いたいのにその声が出ない。
柔らかくて、温かくて、ちょっと冷たい不思議な感触が私の肌を撫でていく。
ふう、と耳に息がかかった。
「…っ!」
ぎゅっと体が縮こまった感じがした。
逃げなきゃ。
川島さんの腕の中から逃げて、そして寝なくちゃ。
夢に川島さんが出てきてもいいから、こんなことしてない夢を見なきゃ。
なのに体はちっとも動いてくれない。
「結衣ちゃん」
耳元で囁かれる自分の名前が、なんだかすごく特別な呪文のように聞こえた。
「夢の中で僕はどうしてた?」
「…ひ、あ」
お尻の上をなで回す手が少しずつ足の間へと入ってくる。
「こんなふう? それとももっと優しくしてた?」
きゅっと耳たぶを噛まれた。
「やあぁっ」
「こんな無粋なことは聞かなかった?」
331あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:04:12 ID:dnRa4Lcl
やだ。
もう、やだ。
「か、わしまさ…んっ」
抱きしめられていて逃げることが叶わない。逆にしがみついてしまう形になる。
「なに?」
「も、やめ……っ、ひゃうっ」
指が…っ。足の間に。
スウェットを着た上から割れ目を撫でるように川島さんの指が動く。
あの長くて綺麗な指が脳裏に浮かぶ。あの指が今私のアソコを撫でてる……。
「や、やぁ…っ。や、です…」
あなたはこんなことしても平気かも知れないけど、私は無理です。
こんなことを誰とも経験しないまま一生が終わっても不思議じゃない、って思ってました。
そりゃもう、ふつう娘をひいき目で見るはずの父だってそう思ってたんです。
教えないで。
私に、好きな人に触られる気持ちよさを教えないで。
お金をもらったから、って割り切れるほど私はまだ強くない。
「じっ…け、ん! するんでしょう!?」
皮膚からぞわぞわと伝わってくるような気持ちよさをはねとばす勢いで叫んだ。
ぴたりと川島さんの手が止まる。
ほら。
実験、したいんでしょう?
結果を見たいんでしょう?
「結衣ちゃ……」
「薬をください」
息が上がっていて、ちっともかっこよく言えなかったけど、髪も乱れてばさばさだったけど、私はそう言って
手を出した。


ぐるぐると景色が渦を巻く。
気持ち悪い。
油の浮いた水たまりをかき混ぜたみたいに、虹色の模様が動いてる。
見えているものはとても気持ち悪いけど、川島さんがいないことにほっとした。
ほらね。
見ないでおこうと固く思えばあんな夢は見ないで済むんだ。
ってことは、それまでは見たいって思って見てた、って事なんだろうか。それって私がすっごくえっちって事なんじゃ……。
あんまり深く考えないでおこう。
それよりもこのぐにゃぐにゃした夢だ。
起きるまで続くのは嫌だけど、変な夢を見ない、とそれだけを考えて寝たから他の夢が思いつかない。
見たい夢を見られる薬なら、もっと素敵な夢を見せてくれてもいいんじゃないだろうか。
決して川島さんとの夢が素敵ではないという意味ではなくて、罪悪感を覚えずに済む夢。
「結衣ちゃん」
うわあああ!?
なんで声がする!?
きょろきょろと辺りを見回した。
大丈夫。川島さんはいない。
でも。
あしもとに虹色の渦が移動してきていた。
ぐるぐると回っていたそれが、いきなり穴を開ける。
「わあ!?」
渦に飲み込まれる。
何かが体中にまとわりついてくる。
虹色の膜が全身を覆っていた。
ぺたぺたと、肌という肌を触られる油っぽい感触。
332あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:04:31 ID:dnRa4Lcl
「や! いやぁ!」
液体だからどこへでも入り込んでくる。スウェットの中にも下着の中にも。
にゅるにゅると動くのが気持ち悪い。
「ひ…っ! あ、あ…」
ぬるん、と胸の上を滑っていった。
やだ。
どっちにしたってこんなえっちな夢になっちゃうなら、まだ川島さんとなにかしてるほうがいい。
足の間がぬるぬるしてくる。
汗とは違う。子供みたいにトイレの失敗をしたのとも違う。
熱くてぬるぬるで体の奥がぞくぞくする感じ。
「ぃや……ぁ、あ」
自分の体なのに、まったくそう意識もせずに腰がくねるように動いた。
妙な感触から逃げたいのか、もっと欲しいのか、よくわからない。
思わず足を捩ったけど、それがまた太ももや膝あたりでぬるぬるを感じることになってしまった。
「結衣ちゃん」
だから! なんで声がする!?
「もっとうんと気持ちよくなるよ」
な、な、なにが!?
体の表面を覆い尽くした虹色のマーブル模様は、本当に油のようにぬるぬるとしながら肌の上を
動いていく。オイルマッサージなんかされたらこんな感じなんだろうか。
肌がざわめく。
なんの刺激も受けてない場所が疼く。
切なくなる。
「や…だ、こんな……」
見るものか、と思って寝たのにやっぱりえっちな夢を見るのか。
じゃあ、あの薬はやっぱりそういう薬なのか。
それとも私?
足の指の間にもぬるぬるが入り込んでくる。
「んんんっ!」
びくん、と体がのけぞった。
いやだと思うのに止められない。
なんで。
これ、夢でしょ?
現実じゃないのに。この感触は実際には無い物なのに、どうして私、こんな声を上げて、こんな反応をするの。
胸の先端が擦れる。
ちっぽけな、ささやかなふくらみでも、一応私だってブラジャーが必要なくらいの体はしてるわけで、
作りもふくらみの上にちょこんと豆粒のようなものが載ってるわけで、その先端がぬるぬるしながら
擦れたりするとそれは非常によくない。
「やっ、やあああ!」
びくびくと腰が揺れる。
未成年なのに。
あ、でも夢だからいいの?
「最後までしてもいい?」
だめだ。いくら夢でも。
「ひぁ…っ! あ、やっ、だめッ! だめですッ」
手足をじたばたと動かす。抵抗できてるんだろうか。相手は、川島さんの声がしているとはいえ、
ただのぬるぬるだ。
「どうして? 気持ちいいよ?」
「こんな…っ! こんな…ッ、液体に犯されるようなの、いやですッ!」
いくら夢でも生物じゃないものに何かをされるのはいやだ。
それだったら開き直って川島さんに何かされる夢を見る方がずっといい。
多分それは私の本音だ。
川島さんにされたい。川島さんとしたい。
333あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:04:46 ID:dnRa4Lcl
一緒にご飯を食べて、一緒のベッドで寝た。実験のために一緒にいるだけだった。でも私は
川島さんを好きになってしまった。
こんな夢を見るほど。
「そうなの?」
ぬるぬるとした液体はまだそのまま肌の上を蠢いているのに、いつの間にか川島さんが目の前にいた。
「あ……」
抱きしめられると川島さんの肌と私の肌の間の液体がぬるりと動いた。
「…く、はぁ」
「いいの?」
頷いて、川島さんの肩に頭をもたせかけた。
「いいです」
川島さんにだったらいいです。
川島さんじゃなきゃいやです。
たとえ川島さんが、私を見てくれなくても、私を女として扱ってくれるんだったら。それが実験の一端だとしても
構いません。
だって好きだから。
現実だったらもっといいのに。
背中をどこかに押しつけられた。
夢って便利だ。床に倒されるような味気ない状況にならないし、ベッドを探す必要もない。
足を少しだけ開く。
なんの準備もなく川島さんがその隙間に体を入れてくる。
夢だからなにも必要ない。
抵抗もなく受け入れる。
「あ、あああ…っ ふ、は…ぁ」
股の間一帯がじんわりと熱い。
本当のところ、どうなるのか知らないから、こんな想像でしか補えない。
でも気持ちいい。
温かくてぬるぬるしていて、川島さんは優しい顔をしている。
気持ちよくて、嬉しい。
「動いても平気かな」
私はどこでこんな知識を仕入れてきたのかな。
おもしろ半分に友達と回し読みしたレディースコミックあたりの記憶だろうか。
「はい」
私は川島さんの背中に手を回した。
「いっぱいきてください」
それならいっそ目一杯えっちにしたっていい。どうせ夢だし。夢のくせにこんなに気持ちいいんだし。
川島さんの体が揺れる。
動く、ってことがどういうことになるのかわからないから、その感覚はどうしてもはっきりしない。
それでも繋がっている部分を揺すり上げられている内に私はなんだか小舟に乗せられたような気になって
ゆらゆらと波に漂っているような、うっとりする気持ちになってきた。
「結衣ちゃん、気持ちいい?」
「いいです。すごく気持ちいいです」
多分それはかなり間違っているんだろうけれど。
夢の中で私は間違ったまま、川島さんとのえっちで、幸せな気分で泣いちゃうくらい気持ちよくなった。


目が覚めていく。
こんな感覚は、この薬を飲むようになってから初めてだ。いつもはもっとすぱっと目が覚めてた。
頭が覚醒していく。
その中でぼんやりと思った。
夢だから。これは夢だから。現実の川島さんには、私をどうこうしようなんて気持ちはこれっぽっちも無いはず。
川島さんを好きな私は、夢の中でしか報われない。
気が付いてしまった。
この薬は本物だ。


334あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:05:09 ID:dnRa4Lcl


ぼんやりと目を開ける。
川島さんは横にいなかった。
昼寝だったからだろう。でも抱き枕になってなかったからちょっとほっとした。
川島さんはパソコンの前に座って、こっちをじっと見てた。
昼寝から覚めて「おはようございます」も変だな、と思ったけど、無言のまま私を見る川島さんに
なんて言えばいいのか判断つかない。川島さんから何か言ってくれればいいのに、と思いながら体を起こして、
股の間のひやりとした感触にびっくりした。
ベッドから飛び降りる。
「結衣ちゃん!?」
私の行動は予想外だったんだろう。不機嫌そうにむっつりしていた川島さんはいつもの調子に戻って、驚いて私を呼ぶ。
「すみません! トイレ!」
まさか。いや。そんな。
夢が夢だけに信用できない。
ドアを閉め鍵をかけるのもそこそこに、下着ごとスウェットを引き下ろす。
「あ、れ?」
パンツだった。いや、パンツはふつうのを穿いてるからパンツがあるのはいいんだけど、綿100%のそれは
きれいなものだった。
よかった。
子供じゃないんだからそんな失敗するはず無いよね。
安心して、ついでだから用を足して、ペーパーで拭いて……。
「ひゃあぁっ!?」
ぬるんっ、と手が滑った。
「結衣ちゃん!?」
ドアの向こう、すぐそこで川島さんが呼ぶ。なんでそんなとこにいるの。
「どうした?」
「な、なんでもないですッ! なんでもないから、あっちに行ってて!」
こんな状況、言えない。
「でもきみの体に異変があった場合……!」
ああ、それを心配してるのか。
「違います! 大丈夫です! だからあっちで待ってて!」
トイレのドア越しに会話なんていやだ。
薬のせいで体に異変が起きたわけじゃない。
いや、厳密にはそうじゃないとは言い切れない? どっちでもいいけど、これは心配しなきゃいけないような体の異変じゃない。
淫夢を見て濡れちゃっただけだ。
かあっ、と頬が熱くなる。
端的に言ってしまえばそうなんだけど、自分でそうと認識するとインパクトあるなあ……。
カラカラとペーパーを多めに引っ張り出して、ぬるつきが無くなるまで拭いた。
体ってすごい、と思った。
私は男の人との事を何も経験したことがない。
実験、と言ってここで暮らすようになってキスは何度かしたけど、それ以上のことは知識でしか知らない。
夢に見たって肝心な部分はぼんやりしていてうやむやのままに終わる。
感じ方にいたってはもう、幸せとか、胸の内側からふくらんでいくみたいとか、アバウトにも
ほどがあるってくらい曖昧だ。
それでも体は反応するんだ。
こうやって濡れたりするんだ。
335あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:05:25 ID:dnRa4Lcl
さっきの夢はすごく気持ちよかった。
夢の中でなきゃ川島さんはあんな笑顔で私を見てくれないだろう。
私は女の子になれないだろう。
川島さんは『そんな薬、作れると思う?』って言ったけど、実際にそういう効果が出てる。少なくとも私には
そんなふうに効いてる。
ずっと夢の中にいられたらいいのに。
夢が現実になるなんてことは思わない。
いくらなんでもそこまでバカじゃない。
でもあの薬を飲んで眠り続けたら。
ずっとずっとあんな夢を見続けられたら。
私、すごく幸せな気がする。
欲しい。
あの薬が欲しい。もっとたくさん飲んで、寝たい。


トイレから出てくると川島さんが心配そうな顔をしていた。
「何でもないです。大丈夫」
私はベッドの上に戻った。
川島さんの側に座りたいけど、夢の中ならともかく現実の世界じゃそんなマネはできない。
なによりこの部屋はそういう空間的余裕が無い。
「本当に?」
川島さんは指先でめがねをくいと押し上げながら聞いた。
意味は無いんだろうけど、ちょっと冷たく見える。
「はい。夢のせいでちょっと勘違いして」
ああ、と川島さんは言って、マウスを動かした。メガネに反射する画面の色がちかちかと変わる。
「夢の内容を教えてくれる?」
「はい」
ベッドの上で楽な格好に座り直す。
そうして、水たまりに浮かんだ油の膜のような、ぎらぎらした虹色の渦に引き込まれたところから話を始めた。
ぬるぬるした油が体中にまとわりついたくだりでは、川島さんはなんの反応も見せずにパソコンに記録を
続けていた。それでも私から望んで川島さんに身を任せたところになると、ぴくん、と眉が動いた。
「で、そのまま……最後までしました」
川島さんは話の途中では絶対に口を挟まない。
私が何も言えないでいたときは、話し出しやすいようにあれこれと聞いてくれていたけど、それでも話し出すと
黙って記録をしていた。それは多分、事務的な態度の方が私も話しやすい、と判断していたんだと思う。
そこまで言って黙ると川島さんが顔を上げた。
「それで?」
「あ、それで終わりです。川島さん、その薬ね」
私は本棚の上の方に置いてある、元はインスタントコーヒーの瓶を指さした。
「飲むとすぐに眠ってしまうみたいです。少なくとも私は。だから夜たくさん寝てても、昼寝もできちゃう」
「そうか」
川島さんは、ふうん、とも、ふん、ともつかない声を鼻から出して、顎に手を当てて、じっとパソコンの画面を
睨んだ。
川島さんがそのまま黙ってしまったので、私はごろりとベッドに横になった。
ああ、楽ちん。
ごろごろして、だらだらしてるの、楽ちん。
これでまた夢を見たら気持ちいいんだろうなあ。
今度は、今の川島さんの顔――鋭い目つきで真面目な顔をしてる――であんな夢になるといいなあ。
336あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:05:44 ID:dnRa4Lcl
そしたらなんか、真剣に求められてる、みたいですてきだ。
うふふ。
うふふふふ。
「結衣ちゃん? どうした?」
「え?」
ごろごろしている私に気が付いた川島さんが聞いてきた。
「どこか体の調子がおかしかったりするの?」
「違いますよ。ただ、こうしてると気持ちいいから」
うん。気持ちいい。
開き直るっていうか、腹をくくるっていうか、そういう気分って大事なんだなー。
あれもこれも話したら、なんか気が楽になってしまった。
私、この実験楽しい。
ずっとこの実験をしてたいな。そしたら川島さんの側にずっといられる。
それ以上の、現実には絶対叶わないことは夢の中で体験できる。
すごくいい。これ、すごくいい。私の夢だから私が傷付くようなことは起きないもの。
「結衣ちゃん?」
いつもと違う不安そうな声で川島さんが私を呼んだ。
「はい?」
「ちょっと早いけど、夕飯食べに行こうか」
「んー」
ちょっと考える。
お腹空いてる気がしない。
ご飯食べたい、って気がしない。
それよりここにいたい。
あの薬を飲んで寝たい。
「今日は私いいです。ずっと寝てたからかな。お腹空いてない」
「え……」
川島さんは表情を曇らせた。きっと憂い顔ってこういうのを言うんだ。
かっこいいな。
「本当に体はどこもへんじゃない?」
失礼だなー。
誰からもそんな扱いを受けたこと無いから大きな声では言えないけど、一応十七歳の女子ですよ。
夕食抜いてダイエットとかふつうですよ。
「どこもなんともないです」
「ほんとうに?」
一音一音を区切るように発音して、やけに川島さんは念を押す。
「本当です」
私はごろごろしたままで言った。
「それより寝たいです」
体がベッドに沈んでいきそう。
腕を上げるのも面倒なくらい、寝たい。
「ええ?」
「というか、もう寝そう……」
布団もかけられない。もういい。このまま寝る。
寝るけど、夢、見たい。
「川島さん……。寝るから、薬」
もうまぶたを開けてられない。でも、薬をもらわないと夢が見られない。
「薬、ちょうだい」
あの夢が見たいの。
だから欲しいの。
とろんとした眠たい目で見上げると、川島さんは慌てて薬と水を用意しに立ち上がった。
ベッドの上で仰向けになったまま待つ。
戻ってきた川島さんに、眠くて不明瞭な言葉でお願いした。
「薬、ください。飲ませて……」
目を瞑る。ちょっとだけ口を開く。
ほんの少しのまがあった。
それからカプセルが押し込まれた。
337あやしいバイト:2009/01/04(日) 01:07:11 ID:dnRa4Lcl
さすがに水がないとカプセルを飲むのは無理だなあ、なんて思った瞬間、川島さんの唇が落ちてきた。
鼻先がちょっと触れあった。
「ん…ふ」
すぐに水が流れ込んでくる。カプセルを飲み下して、それでも足りなくて私は自分から川島さんの唇を吸いに行った。
「んん…ぅ」
ちゅく、と水気の多い音がした。
唇が強く押しつけられた。川島さんの大きな手が私の頭を包むように固定する。
「ゃあ…ん」
こんなことされたらまたすごい夢見ちゃうよ。
嬉しいな。もっと気持ちいい夢見られるんだ。
ふは、と熱い息がかかった。
川島さんの唇が離れる。
「結衣ちゃ……」
切なそうな、苦しそうな小さな声で名前を呼ばれた。
ぞくぞくする。耳の中が震えるみたい。
ああ。なんてもったいない。
もっとしてくれたら、もっとすごい夢になる。私にはそれがわかってる。
なのに、もう眠くて眠くて、川島さんがしてくれることが受け取れない。
眠ってしまおう。
そして続きを見よう。
ずっと眠っていられたらいい。



本日ここまでです。
書き手が口を開くのは歓迎されることではないですが
あれとかあれとかいろいろすごく楽しみにしているので
これは気にせず投下してください。
338名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 01:13:46 ID:1FzDa2J5
依存症になってるー!
これはもうダメかもしれんね……


GJ
339名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 11:50:38 ID:uuotXEPV
GJGJ!
結衣タンは今年も可愛いな!
続き楽しみにしてます
340名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 23:35:36 ID:7TUQ76cJ
GJ
そろそろクライマックスな予感
あとリアル川島さんの格好いいところが見られそうな予感
ここからどう切り返してくるのかが非常に楽しみ




しかし前スレは落ちるまで9ヶ月近くかかったのに
このスレは1ヶ月半で400KB超とは凄い勢いだな
341名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 06:57:53 ID:bFWD56/g
>>337
GJ!
結衣ちゃん、完璧に堕ちてるなあw


>>340
濃い長編が投下されるようになりましたからねえ。
ありがたいことです。
342名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 18:05:16 ID:re/xBuWo
まとめサイトから来ました
gjすぎだから
343名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 22:48:46 ID:60voc6sA
ファンタジー系で奴隷として売られてる女の子を買って
陵辱するんでなくらぶいちゃする感じの小説があるサイトないでしょうか
344名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 00:48:53 ID:W0rUK6wE
↓少し金の力とは違うけれど、いわゆる権限≠ナ奴隷の女の子を救おうとする主人公の話なら
ttp://www.asahi-net.or.jp/~sk5t-kwd/seera01.htm
345名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 12:00:58 ID:gAuny7ba
色んな続きが気になって通ってます…
投下までの繋ぎに失礼します
どちらかと言えばしょぼい話だと思うのでパーッとしたのがお好きな方々はごめんなさい
346僕らを繋ぐもの 1/12:2009/01/09(金) 12:02:16 ID:gAuny7ba
 ボロアパートの前で佇みながら、ポケットの中身を再度確認する。
 乾いた感触とその重みに多少の別れを惜しみながら、呆れるほどに爽快な気持ちが湧く、その感情に戸惑う。
「なにやってんだかな、俺」
 寒さに首をすくめながら建物へ向かった。

* * *

「悪いが、そんな金はねえ」
 目の前で頭を下げる女に冷たく言い放つと、タバコに火を点けそっぽを向いた。
「そっか、そうだよね、ごめんなさい。忘れて……下さい」
 立科はそう言ってまた頭を下げると工場の中へ消えていった。
「お前もかよ……」
 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、自分もタバコを灰皿に捨てて持ち場へ戻った。


 俺の家は会社を経営していたためそこそこ裕福だった。いわゆるいいとこの子だった俺は何不自由なく
育っていた。

 だが大学に入ってすぐ経営が悪化し、あっという間に会社は倒産、両親はその直後事故死した。

 それからは周囲もがらりと変わってしまった。
 ちやほやしていた連中はそれまで面白い様に寄ってきた女達をはじめ、皆潮が引いたように消えていった。
 僅かに残った友人と呼べる者たちさえ、荒んでいく俺を見るのがしのびなかったのか、1人、また1人と
居なくなった。

 一文無しになってしまった俺は入ったばかりの大学を辞めざるを得なくなり、それからは町工場になんとか
職を見つけて働き出した。
 すっかり他人が信じられなくなっていた俺は、誰とも関わりを持たないような人間になっていた。
 誰かと付き合えば嫌でも金も気も遣う。

 ――裏切らないのは金だけだ。

 そう悟った俺はひたすら働いた。働いて働いて――ただ金を貯める、それだけを目的に生きている。
 ただ、アテも無く。

347僕らを繋ぐもの 2/12:2009/01/09(金) 12:03:35 ID:gAuny7ba
 恋人と呼べる女などいない。
 会社でもほとんど口を聞かない俺には、男は勿論女など寄ってくる筈もなく、アパートと職場の往復
のみの生活では知り合う機会も無い。
 唯1人物好きな奴がいるにはいた。高校を中退して来たばかりのまだ17の女。そいつに俺が少しばかり
仕事を教えたのがきっかけで、たまに茶位は飲むことはあった。
 苦労しているらしく今時の若い女らしくなく地味ななりで、とにかくいつも疲れた顔をしていた。
自活していると聞いてはいたが、それにしてもショボすぎる。
 以前の俺なら間違いなく見向きもしなかったタイプだろう。だから逆に気兼ねなく付き合えて楽だった。
 久々に人と付き合い始めて、しばらくは慣れてきていた1人の世界から踏み出し、それも悪くないと
思い始めた矢先、そいつは言った。
『お願いします。お金、貸して下さい』
 ……失望した。
 断ると、悲痛な面持ちで俯きながら彼女――立科冬香は
『わかった。変な事言ってごめんなさい』
と頭を下げた。


 俺が彼女を抱いたのはそれから数日後の事だった。


「何考えてるんだ、お前」
 仕事の後頼みがある、と彼女にしては強引に部屋まで付いて来たかと思うと、いきなり切り出したのだ。
「あたしと寝て下さい」
 耳を疑った。若いとはいえすっぴんにおよそ色気の無いジーンズに地味なグレーのパーカーという格好。
はっきり言ってこいつはガキだし、女だと意識した事などない。まして周りは面白がって色々言っている
ようだが、恋愛感情など微塵もない。
 その立科が自分を抱けと言う。明らかに震えて思い詰めたような固まった表情にひとつの考えが浮かんだ。

「お前――それで俺が金を寄越すと思ってんじゃねえだろうな?」
 飲みにもいかず誰とも付き合わない俺が金に汚く、相当ケチケチ貯め込んでやがる、と噂されている
のは知っている。まあ、ほぼ間違いではないが。こいつもそれはわかっている筈だ。
「違う!」
 立科はそう強く否定する。

348僕らを繋ぐもの 3/12:2009/01/09(金) 12:04:46 ID:gAuny7ba
「お金なら、もういいんです。何とかなりましたから。だからもういいの」
「……百万の金、18のお前がどうやって作った?」
 俺の問いに一瞬ビクッと肩を震わせたに見えたが、すぐに向き直り
「えっと、他にアテがあって」
と無理矢理にも見える笑顔を見せた。
「……なら、なんで俺を誘った?」
 何の得もないだろうに、俺に躰を開こうとする意味がよくわからなかった。
「あたしがそうしたいから。……いけない?」
「別に」
 だがそうやすやすと誘いに乗るつもりはなかった。そんなうまい話があるか。
 俺がなかなか動きを見せないのに痺れを切らしたのか、やがて静かに大きな溜め息をつくと立ち上がった。
「……もういい!」

 さようなら。

 微かにだが耳に届いた言葉に体が勝手に動いた。気がついた時にはドアノブに掛かっていた彼女の
手を掴み、部屋の真ん中に敷きっぱなしの冷たい布団の上にその躰を押し倒していた。
「……やってやるよ」
 突然の事に右へ左へと泳ぐ瞳の戸惑いを眺めながら、パーカーのファスナーを下ろした。
「嫌ならいまのうちだぞ?逃げるか、ん?」
 金がいるどんな理由があるのかは知らない。だが何の得もないと知った上で、恋人でもない男にヤられて
平気なもんか。しかもガチガチのこの様子じゃあ。
「……初めてなんだろ、お前」
 思った通りだ。頷いて逸らした瞳に僅かに何かが滲んだが、見ないことにした。
「やってやるよ」
 やってやる。
 パーカーを脱がせ中のシャツを捲り上げると背中を探る。
 セックスするのは久しぶりだった。しかもある程度慣れた奴しか相手した事はないが、まあいい。
何とかなるだろう、と思いながらちょっとばかりホックを外すのに手間取った。
「あ、あの、電気……っ!!」
 知るか。
 答えずいきなり剥き出しにした胸を鷲掴みにすると、その中心に吸い付いた。
「……っ!?」
 寒いのか鳥肌が立った白い肌はいつしか汗ばみ、舌を絡みつかせて頂を攻める度に小さく震える。
これだけで感じるのか?――簡単な女だ。
 ぎゅっと瞑ったままの瞳と染まっていく頬が俺を駆り立て始めた。
349僕らを繋ぐもの 4/12:2009/01/09(金) 12:05:46 ID:gAuny7ba
 体を起こすとジーンズに手を掛け下着もろとも引き下げ、一気に脱がせ足元に投げ捨てた。
「えっ、や、まっ……」
「黙れよ」
 灯りの下にそれを曝されるのがそんなに恥ずかしいものなのか。体を起こして隠そうとする手を掴むと
その唇を自らの口で塞いだ。
 強引な、ただ黙らせるためのキス。
 甘い疼きや、優しさなどはきっと微塵も無いに違いない。
 それを黙って受けているこの女に更に次の手を仕掛けようと躊躇わずにそこへ指を差し込めば、僅かに残る
抵抗感を閉じようとする脚に感じ、そこへ自らの体を割り込ませそれを諦めさせる。
「んっ……んんんっ!?」
 濡れたのを確認して僅かに滑らせるだけで塞いだ唇から漏れる。暫くそのぬめりを楽しんだ後、唇を離し
先にある突起を摘んだ。
「えっ!?……いやっ……んっ!!」
 自分のあげた声に驚いたのか慌てて唇を噛む。思った通りの反応に笑みがこぼれた。
 止める事のない指の悪戯に合わせて、押し当てて耐えている手の甲からの声が苦しげに漏れている。
 そろそろいいか。
 自らのジーンズに手を掛けた所に、慌てた声が掛かる。
「まっ……あの、するんですか?」
「そのつもりだろ?」
 誘っておいて怖じ気づいたのか?まあ今更こっちにやめるつもりは毛頭無いが。
「あれ、つけて下さい」
 あれ?――ああ。
「あるかよ、んなもん」
 暫く必要の無かった物だ。そんなのに遣う無駄金などは無い。
 すると毛布で体を隠しながら隅にあったバッグを探り、中から出した小さな箱を手渡された。マジカよ?
「……よく買えたな、こんなもん」
「ドラッグストアとか行けば、普通に……。残りはあげますから」
 とは言え、若い女が自分で買うのは普通抵抗があるもんじゃないんだろうか。……まあ知ったこっちゃ
無いが。一応、本気だったのか。
 黙って受け取ると少々手間取りながら着け、押し倒した躰を貫いた。

350僕らを繋ぐもの 5/12:2009/01/09(金) 12:06:42 ID:gAuny7ba
* * *

 それから3日後、一通の借用書を間に俺と立科は彼女の部屋で向かい合っている。
 外観に見合ったその古い部屋は最低限の古めかしい家具しかなく、若い年頃の女の部屋にはそぐわない
程粗末で殺伐としていた。
「何で言わなかった」
 先程までポケットにあった紙の束はこの紙切れに変わった。
「そんな面倒な事に巻き込むわけにいかないじゃないですか。それに……職場にバレたら……」
 確かに、あまりいい事ではないだろう。だが、それは彼女のせいじゃない。
「あなたこそ、松岡さんこそどうしたんですか?」

 今朝出社すると立科が休んでいた。それだけなら何のことは無いはずなのに、何故か胸騒ぎがした。
 汚したシーツの染みを気にして申し訳なさそうに俯いた横顔や、そのまま翌日が土曜なのを理由に
引き留め(何故そんな事したのか自分でもわからない)、眠ってしまったあとの首筋に汗ではり付いた
黒い髪や、朝には消えてしまっていた温もり。
 それらが頭を掠め、いやな予感に襲われ早退を申し出、事務で見舞いを理由に強引に住所を聞き出した。
 このご時世によくそんな事してくれたもんだと思うが、彼女が日頃珍しく俺と付き合いがあることや、
少しばかり週末具合が悪そうだった事を告げてみたからかもしれない。事務所の人間もあまり追求は
して来なかった。まあ、今頃は何だかんだと勝手な詮索がなされているのかもしれないが――まあいい。
「後味が悪いからな。俺のせいみたいじゃねえか」
「そんな事は……」
 うちといい勝負のボロアパートの部屋で、明らかにタチの悪そうな男らに話をつけ銀行に走り、金を渡して
帰らせたのは俺だ。
 父親は女と逃げ、母親が死んで高校へ行けなくなった。中退して働き出した所へ蒸発した父親が死んだ
知らせ。借金があったのを知らされたのはそれから大分後だったそうだ。
 返しても返しても減らない金。百万の金は18の少女には重すぎた。

 ――諦めて、奴らの世話するそういう仕事に就くしかないと、あやうく首を縦に振る所だったのだ。
 結局俺は、気がつけば増やし続けてきただけの数字が減るさまを目にするハメになった。
 何やってんだ、俺。
351僕らを繋ぐもの 6/12:2009/01/09(金) 12:07:40 ID:gAuny7ba
「ありがとうございます……」
 立科は俺に頭を下げた。
「本当に助かりました」
 気丈に振る舞っていたようだったが無理していたんだろうか、声が震えてる。今更気が抜けたのか、
ほうっと息を吐いて肩を落としていた。
 いい気になってしまっていた俺だったが、それが何故かいきなり居心地が悪くなった。
 違う。俺は――そんな奴じゃねえ。
「やめろ」
「え?」
 そんな瞳で俺を見るな。俺はいい奴じゃない。他人なんか信じない。
「でもあたし、松岡さんが居なかったら……」
「黙れよ!」
 金以外何も信じない。金だけが頼りだ。現にお前だって。
「金のために、俺と寝たようなもんじゃないか……?」
 男に躰を売ろうとしたくせに。
「違……」
「何がだ?」
 体を乗り出すと肩を掴み、怯む背中を壁に押し付け自分の重さを押し付け逃げ場を無くす。
 膝の下で踏み付けられた借用書がぐしゃぐしゃになる音がした。
「……今出した分、やらせろって言ったらどうする。一回じゃ足りないがな」
「あたしに、そんな価値ありません……」
「それは俺が決める」
 気取るんじゃない。それとももう用無しか。
「お金ならちゃんと働いて返します。だから、引き換えにするつもりは無いです!」
「ほう」
「……だから、それでいいならして下さい」
 胸元を隠すように置いていた手を離して、彼女は俺の背に回してくる。
「……やられてない方が高く売れたんじゃないのか」
「そんなのどうせ初めだけだから。だったら最初くらい自分で決めたかった。お金が無くて諦めた事、
 いっぱいあったから。だから叶う事なら自分の好きにしたかったから」
「……」
 ポケットから財布を出して、この前置いていった残りのコンドームを見せた。
「だったら遠慮なく使わせて貰おうか」
「……どうぞ」
 何故、とか何を、とか、考えて突き詰めれば問いたい事は多分溢れる程あった筈だった。
 なのに――。
 俺は耳を塞いだ。目を瞑った。
 逃げた。

 一番知りたかった筈の何かから逃れるために、無言で欲望に溺れた。
352僕らを繋ぐもの 7/12:2009/01/09(金) 12:08:35 ID:gAuny7ba
* * *

 それからは毎月給料日には必ず幾らか支払われるようになった。それ以外にもこっそり内職でもしているのか
少しずつ、ボーナス時には多分ほとんどの額を寄越しているに違いない。
 返す、と言ったのは見栄や意地や虚勢ではなく本意だったようだ。おそらくそういう性格なのかも
しれないが、きっちりと滞らず返してきた。

「お金が無いのは嫌。でもそれに縛られるのはもっと嫌」
 ある時ぽつりと零した言葉に、思わず情事を終えたばかりの躰をもう一度組み敷いて乱暴に抱き締めた。
「何?やっ……苦し……」
「黙れ!」
 息が出来なくなる程抱き締め、体重を掛けた躰はそれでも負けずに俺にしがみついてくる。

 当然のようにあれからも彼女を抱いた。黙って抱かれた。
 毎月金は返される。
 そして躰を重ねる。
 その繰り返し。
 それ以外には何もない、何も残らない。
 毎月確実に増えてゆく一万円札。
 その紙の束を引き出しから取り出して眺めては、刻一刻と近付いてくる終わりが見えてくる事実から
目を背けた。

 誰も信じちゃいなかった。
 離れていくのが当たり前だと思っていた。
 なのに逃げずにそこに留まり、真っ直ぐに向き合ってくる。
 それを逃すまいと搾り取り、捕獲し、食らいついて突き放す、それを延々繰り返す日々。

 ――捕まっているのはどっちなのだろうか――?

 息をするのも億劫なほど疼く苦しみに、俺は翻弄されていた。
 互いの部屋に寝泊まりする事も、なんとなく一緒にいる日も多くなり、それが当たり前になると周りも
大して面白がらなくなり、静かになっていった。だが、それでも俺達の間にそのようなものは何もない。
 静かに寝息を立てる白い肌を眺めながら、差し伸べることのない手のひらを持て余していた。
353僕らを繋ぐもの 8/12:2009/01/09(金) 12:09:26 ID:gAuny7ba
* * *

「はい。これで……おしまい!」
 最後の数枚を俺に手渡すと、あの日と同じように頭を下げた。
「ありがとうございました!」
 返し終えた金はもう用を成さない。あれだけ執着したものが色褪せた紙切れに思えた。
 ガキだった女は大人と呼べる歳に達し、あの時よりは成長した。
「せいせいしたか?」
「まあ、それは。……縛られてるのは嫌だから」
 つき物が落ちたようにすっきりした顔で返された言葉に、何故か俺は不快感が止まらなくなった。
「えっ?もう帰るの」
 立ち上がって玄関に向かう俺を不思議に思ったのか、慌てて問いかけ追ってくるが無視して靴を履く。
一刻も早く立ち去りたかった。1秒たりともここに居たくはない。
「松岡さん!」
「……うるさい」
 戸惑いを隠せない瞳で俺を見上げる立科の視線が突き刺さって、その場から逃れるためにドアを開けかけた。
その手を彼女の手が掴んで止める。
 カサカサに荒れた、およそ女らしくない手。爪なんて多分一度も手入れなんかした事ないのだろう。
化粧すら最近になってやっと始めた位だ。
「……お金さえ返したら、もう用無しですか」
 震えながら呟く言葉に目を向けると、その顔にはうっすらと涙が見えた。
「それはお前も同じだろ?」
 逃がさない為に金を押し付け、それをタテに躰を奪った。それだけの事だ。
 それが、終わっただけだ。
「違います」
「……何がだよ。何が違うんだよ!!」
 違うもんか。
「だって、あなたはあたしを助けてくれたでしょう?だから、あたしは……」
 だから何だ。
「俺はお前の弱みに付け込んだだけだ。勘違いすんな。終われば用はない。……言わば金にモノを
 言わせたのと同じだ」
354僕らを繋ぐもの 9/12:2009/01/09(金) 12:10:40 ID:gAuny7ba
「……お金は返しました」
 静かに、だが鋭く睨みつけるような目をして掴んだ腕に力を込めてくる。
「買われるのは嫌だから。だからちゃんと返しました。あたしは一度だってそのために抱かれたなんて
 思った事ない!」
「そんなわけ」
「何でわかってくれないの?……」
 泣きながら俺の背中にもたれ、しばらくその重さを押し付け、離れた。
「……じゃあ、なんで拒まなかった?」
「いちいち説明しなきゃいけない理由がいりますか?」
 俺は黙り込んだ。言葉が、答えが見つからない。
「あなたは可哀想だと思う。でも同情はしない。そしたら、もっと傷つくだけだから」
「傷つく?」
「そう。お金しか信じない可哀想な人。あたしはお金なんか嫌い。あんなものさえなかったらって、
 何度思ったかわからない。そのために苦労して、同情ばっかされて、だけど誰も助けてくれなかった。
 ……あなた以外は」
 握られた手の力が少しずつ抜けてゆく。
「元々何もなかったあたしと、ある物をなくしてしまったあなたじゃ違うのかもしれない。でも、夢くらい
 見たって許されてもいいと思う」
 何も持てず、夢を見ることしか出来なかった者と、全てをなくして夢さえも見る気を失ってしまった者。
「目に見える形でしか、信じて貰う術はないんですか?」
 金で縛り、体で繋いだ。
「気持ちに、理由がいりますか?」
 俺自身が何を求めているのか知りたかった。
「あたしは、あなたにもあたしにも負い目が無くなるのを待ってました。だから必死でお金、返しました。
 ……あなたと切れたいからじゃありません。はな、離れたくなかっ……」
 握っていた手が離れ、ずるずると足下に泣き崩れてゆく体を振り返りながら眺めて、ノブから自らの
手を外すと靴を脱ぎ捨て、その体を力一杯抱き締めた。
「……っ」
 絞り出そうとした声は、吐き出した息に紛れて形にならず届ける事が叶わなかった。
355僕らを繋ぐもの 10/12:2009/01/09(金) 12:11:59 ID:gAuny7ba
 どれくらいそうしていたのだろう。ただ黙って泣くだけの彼女の背中を撫で、髪を梳いた。
 不思議と悪くなかった。なにもいらないと思った。言葉も、物も、……ポケットの中の自分達を縛り付けて
いた紙さえも。
「……さん」
「うん?」
 やがてゆっくり体を離すと、俯いたままで彼女が言った。
「……名前、呼んでいいですか?」
「あ?別に」
「……聡介さん」
「何だ」
「……き。すき、です。……聡介さんが、好きです。だから、何されても良かったし、ちゃんとお金も
 返して、対等な立場でいたかった。だから……信じて欲しかった」
 何もかも無くした。人としての温かみを拒んできた俺は、また失う怖さに手に入れまいとしてきた
それを欲することを望んでも許されるのだろうか?
 きっと楽になる。わかっているのにそれを吐くことが出来ず、そのまま再び抱き締めた温もりを抱えて
畳の上に横たえた。
 暫くの間黙って俺を見上げていた瞳はやがて静かに閉じられ、その唇を重ねると胸に置かれていた手は
俺の背中に回った。
 上下する膨らみを撫でる手は小刻みに震え、これまではひん剥くように脱がせてきた衣服に掛けた指が
うまく動かせない。
 なにを今更ビビってんのかと戸惑い苦笑しながらも、見下ろすものを壊してはいけないと知らず知らずに
恐々と扱っている自分に驚く。
「……あ」
 ゆっくり確かめるように撫でた肩、這わせた唇に震える首筋におされるように漏れた声に、喉元から
熱い何かが込み上げる。

 ――愛おしい。

 初めてはっきりとそう思った。

 いつもは多少粗く扱っていた気がする胸を丹念に揉み、既に立ち上がっている先端部をじらす様に
その周辺を指先で撫で回してみると、我慢出来ないのか背中を反らして強請るように突き出してくる。
「して欲しいのか?」
 真っ赤な顔で首を振る。
 強情な奴だ、といきなり舌を当ててやると
「やあっ!!」
と声を出し、慌ててその口を押さえた。
356僕らを繋ぐもの 11/12:2009/01/09(金) 12:12:51 ID:gAuny7ba
 これまで自分本位にコトを進めていたが、その反応を見て「素直に」苛めてやりたいという気持ちになった。
 先程の反応に気を良くして同じ様にまた舌で転がしながら反対側を指でいじり倒し、ふるふると震えながら
涙を浮かべて声を押し殺す様を楽しんだ。
「……て」
「ん?」
 名残惜しく思いつつ唇を離し涙でくしゃくしゃになったのであろう顔を覗き込むと、迷いの残る表情で
俺を見上げている。
「何だ」
「えっ……と、あの」
 言いよどんでいる事は何となくわかっていた。だが、それは彼女の方から言わせたかった。言って欲しかった。
「黙ってるなら、このままにしとくが」
 開き掛けた唇を何度も閉じる。それを繰り返しているのを眺めながらこっちは次の手に移る。
「なっ、やあっ!?……んっ、んあっ!」
 素早く下着の上から忍ばせた指を動かし擦りあげた敏感なモノの刺激に耐えられず嬌声をあげる、それに
俺自身がもう持つかどうか我慢ならなくなってきた。
「……て」
 動きを止める。
「して、下さい。聡介さんが、欲し……」
 素早く下着を引き抜くと、既に高ぶりきったモノをあてがい一気に押し込んだ。
「はあ、あっ!……や、だめ、このまま、じゃ……」
 わかっていた。
 持ってはいたが、着けなかった、ワザと。
「俺は構わない」
「えっ?」
「お前の一生、俺が買ってやる。……多分、相当働く事になるだろうがな」
 突きながら見下ろす顔には、直に貫かれる感覚と俺の言葉とに戸惑う気持ちが読み取れた。だが、柔らかく
まとわりつくような快楽に流され掛け、それに耐えながら俺は続けた。
「不満があるか?……お前にはその価値があるんだ」
「そ……すけさ」
 ぎゅうと抱き締め、再度唇を塞いで深く深く腰を沈めれば、向こうもそれを離すまいと締め付けて
躰ごとしがみついてくる。
 少しずつ揺さぶりながら唇を離し、虚ろに漂う顔を見つめた。
357僕らを繋ぐもの 12/12:2009/01/09(金) 12:15:13 ID:gAuny7ba
「呼んで……」
「何を?」
「あたしの名前」
 肌寒い季節に汗ばんだ首筋に手を添え哀願するように俺を見上げる彼女の願い。
 その手を撫で、見つめ返しながら呻くように囁いた。
「……ゆか」
「はい」
 伝えておきたい。こんな時でなければきっと俺は口にする事はできないであろう言葉を……。そう思い、
再度その名を呼んだ。
「冬香――愛してる。お前の心が欲しい」
「……はい」

 気持ちと体が一つになって喜びに震えた。こみ上げる想いを精一杯噛みしめながら、高ぶる感覚と共に
熱い全てのものを彼女の中へ押し出し、果てた。


「聡介さん」
「ん?」
「呼んでみただけ……」
「何だよ」
 たわいのない会話をし、大して寝心地の良くない布団にくっついて寝転がっていた。
 それはいいが、やたらと意味もなく喋りかけたりあちこちさわって抱きついて来やがる。なんだこいつ。
「あたしの人生買うんでしょう?」
「……お前買われんの嫌なんじゃなかったか?」
「じゃあやめちゃうの?」
 胸元に頬を寄せて目を閉じる、その顔がふと不安げに見えて、何となく頭を撫でた。
「拒否るか?」
 返品する気はないが。そんなつまらん買い物はしねえ。
「それを決めるのはあたしでしょう?」
 言いやがる、と思わず苦笑する。それにしても。
「うっとうしいな、この部屋」
 見上げると至る所に何がしか洗濯物が干してある。
「乾かないから。陽当たり悪くて」
「だろうな」
 昼間なのに少々薄暗い部屋の天井を眺めて思う。
 俺は一生ぶんの稼ぎで買い物したようなもんなんだろうか。
「良かった」
「何が」
「……今度ばかりは、欲しいもの諦めなくて良くなったもの」
「……」

 ――さて、とりあえずあの百万持って陽当たりのいいボロアパートでも探すとするか。



「終」




お目汚し失礼しました
皆様の作品お待ちしてます
358名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 13:24:06 ID:szcgvtV7
GJです。
ひたむきな女の子はかわいいですね。

しかし、いくらエロパロ板といっても、レス数より容量の方が多いのはすごいな…
359名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 14:20:40 ID:q7cAg3S4
力作GJ!
金の力で救われた女の子
女の子の力で心を救われた主人公
理想的です
360名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 18:09:04 ID:cT8zQnKa
GJ
いい話だぁ
361名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 18:52:51 ID:mepsHCsQ
GJ!
しょぼいなんてコト無いです。



>>358
幸福姉妹物語とか、凄いボリュームだったりするからねえ。
362名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 20:58:16 ID:mPcl1t+/
あれ?目から汗が…
GJです
363名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 22:14:13 ID:izpvJidD
GJ


>>344
ありがとう
だが予想以上に重かったw
364名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 23:18:14 ID:55D7+Iqo
いいね!GJ!
365名無しさん@ピンキー:2009/01/10(土) 10:24:19 ID:+ICPHE+8
GJ!
主人公の孤独感がひりひり伝わってきて泣けた。
366名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 23:40:01 ID:Gu6EcAvz
ほしゅあげ
367名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 22:59:39 ID:sUkuOe1Z
保守
368道具の人:2009/01/15(木) 23:35:17 ID:NhyS2PA5
お久しぶり。
某赤い石を探すやつとかキノコやカタツムリを殲滅するMMOにはまっていたもんで。
軽く書いてみたよっと。

まぁ、いつも通り張り逃げするからよろしく。
369moon buy:2009/01/15(木) 23:39:18 ID:NhyS2PA5
クリスマスも終わり、正月までもうすぐの頃。
そろそろ夜が訪れるかの時間で、俺は書類の山を片付けていた。

「ったく。人様が辞める前だってのに、なんでこんなに仕事を押し付けたのか」
「『辞める前のひと仕事をするから必要なら机の上に全部置いておけ』。
 そうおっしゃったのは社長本人ですよ?」
「だからってこの山は何だこの山は。いつもの三倍はあるぞ」
「それでももうすぐ終わるんですから社長は異常です」

机の上に積み重なった書類の山。山。山。
机越しにドアが見えないほどの書類ってどうよ。
まぁ、秘書の言うとおり、もうすぐ終わるんだけどさ。

「そもそも何でデータにしないんだ」
「社長のサインが必要な書類ばかりですので」
「……茶」
「かしこまりました」

秘書がドアの向こうに行ったのを確認して、休憩……出来る筈もなく。

「腱鞘炎確定か。もう、そんな事もなくなるが……」

何の感慨もなしに、そうつぶやく。

一つの目的があって建てたいくつもの会社。
紆余曲折があったにせよ、どの会社も大企業と肩を並べるまでに成長した。
この会社もその一つで、このまま順調にいけばほかの大企業と同様に肩を並べられるだろう。

「金が欲しくて建てたわけじゃないんだけどな……」
「なら社長はどういった理由でこの会社を創設なさったのですか?」
「ただの好奇心だよ。この会社ならどこまでいけるのか」

いつの間にか戻っていた秘書に驚くことなく、左手でトレイから緑茶を奪ってひとくち。
その間にも、目は活字を追って右手はペンを走らせる。

「……この茶ももうすぐ飲めなくなるな」
「ならやめなければいいじゃないですか」
「もうこの会社に対しての興味は失せた。会社にとってもそんな俺は害になるだけだ」
「社長らしいですね……」

諦めたように秘書はため息をひとつ。
そんなことは知らずに、俺は最後の一枚にサインを走らせた。

「さて、ようやく終わった。屋上でたばこを吸って帰るから。
 見送りはいらんと重役共に言っておいてくれ」
「かしこまりました。……どうかお元気で」
「何今生の挨拶かましてんだ。気が向いたらタバコでも吸いに来るから」

軽く苦笑をして、壁に掛けてあった上着を羽織り、社長室を出た。
気が向いても来ないであろう、屋上に向かって。
370moon buy:2009/01/15(木) 23:43:48 ID:NhyS2PA5
階段を昇るにつれ、だんだんと気温が下がってくる。

「コーヒーでも買ってくればよかった」

一人ごちりながらも、一歩一歩上を目指す。
もうすぐ屋上へのドアが見えるところで違和感が走る。

「いつもより寒い……開いてるのか?」

果たして、予感的中。
暖房代がもったいないと、会社を辞めたのにそう思った。

さらに違和感。
叫び声とどなり声がドアの向こうから聞こえる。

「ゆっくり煙草吸いたいんだがな……」

まぁ、辞めた身だ。
大人しく端の方で煙草でも吸いましょうかというところで。

「まだ期日まで時間があるじゃないですか!」
「その期日までに払えるのか!あぁ!?」
「それは……」

そんな会話が聞こえた。

「人様のビルで何やってんだか……」

そんなことを思いながらも、きっと知り合いの所だろうと踏みながらドアを抜ける。

「何してんだ?」
「あぁ!?テメェには関け……って旦那!?」
「旦那はやめろとあれ程。それより人のビルで何してんだ」

的中。
知り合いの組の人でしたよっと。
そんなことを片隅に思いながら話を進める。

「いえ、この女が借金を返すアテがないもんで。それより、ここのビルは旦那が?」
「ああ、たった今辞めたばかりだけどな。最後に煙草吸って帰ろうとした時にコレだ」
「それは……すいやせん。すぐ引っ込みますから」
「いや、それよりコーヒー買ってきてくれ。その間に話つけるから」
「……わかりやした」

そう言ってドアの向こうに消える……誰だっけ?

「……まぁいいか。で、あんたの借金はおいくら?」
「……あなたに話す必要はありますか?」
「救いかどうかは知らないが、差しのべられた手をはたくなら必要ないな。ただ、その手を握らないと闇に沈むのは目に見えている」
「……あなたは何者ですか?」
「話の下りでわかってくれるとありがたいんだが。この会社の元社長だよ」

煙草を取り出して、火を点ける。
371moon buy:2009/01/15(木) 23:44:36 ID:NhyS2PA5
「まぁ、手をはたくつもりならどっかに失せてもらえるとありがたい。この場所で吸う最後の機会なんでね。ゆっくり吸いたいのさ」
「……」

考えあぐねている様子。
薄い上着にぼさぼさの髪、ボロボロの手と痩せた体。
ずいぶんと苦労しているらしい。
年端もいかない娘だろうにと思いながら、紫煙を肺に入れる。

「……5億」
「ん?」
「5億……です」
「ふーん、5億ねぇ……まぁいいか」

胸のポケットから小切手とペンを取り出し、5をひとつ、0を8つ書いて渡す。

「ほれ、アイツに渡してとっとと消えろ」
「……受け取れません」
「アンタの事情なんか知らない。人様の事情になんか興味がない。物思いに浸るのに邪魔だ」
「……そんな理由で受け取れません」
「金持ちの道楽。理由はこれで十分だ。存在が邪魔だからとっとと失せろ」

吸い終わったたばこを携帯灰皿に入れて、小切手を強引に握らせる。
小さい、冷たい手だと思いながら。

「受け取れません!そんな理由で受け取れるほどの金額じゃないです!」

そう叫んだ少女は、小切手をビリビリに破いて捨てた。
小切手の欠片が、風に流されてゆくのを見ながら、
舐めたことをしてくれる、そう思った。

「調子に乗るなクソガキ。そんな事を言うなら、なぜ消えなかった?
 最初に言ったはずだ。差し出された手を握るかその手をはたいて闇に沈むかだと。
 そんな理由?ならアンタが納得のいく理由を言ってみろ。
 誰もが感動するような理由が欲しいなら小説でも読んでろ。
 この世界は、そんなくだらない道楽で廻っている。
 搾り取られるだけの弱者が、奇麗事を言ってる暇なんて無い程の速さでな」

もう一度小切手に同様の金額を書いて渡す。
煙草が吸いたいと、くだらないことを頭の片隅で思いながら。

「もう一度言う。アイツに渡してとっとと消えろ」
「……」

それでも、力なく首を振る少女。
そろそろ飽きてきたところで、組の……もう組員Aでいいや。
組員Aがやって来た。

「旦那。お待たせしてすいやせん」
「いや……丁度いいかね。悪いんだけど今から爺さんの所に行きたいんだ。車出してくれないか?」
「……どうしたんすか?」
「存外強情でさ。久しぶりだし爺さんに直接渡す」
「わかりやした。この女はどういたしやすか?」
「本人次第。アンタはどうするんだ。爺さん……組の会長の所に行くかい?」

俺が借金を払うことに対して、諦めたのだろう。
おずおずと、それでもしっかりと彼女はうなずいた。
372名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:48:24 ID:NhyS2PA5
シミ一つない畳。
金のかかってそうな掛け軸。
その下にはこれまた高価な壺。
真新しい障子の向こうには、何匹もの鯉が悠然と泳ぐ池。
年代物の座卓の上には茶が三つに小切手。
そんな金のかけすぎた部屋に、俺と爺さんと少女はいた。

服を着た悪鬼。
そんな二つ名をもつ爺さんに小切手を渡す。

「んじゃ、これで足りるよな?」
「ああ、借金分確かに受け取った。おめでとう譲ちゃん。これであんたは晴れて自由の身だ」
「ありがとう……ございます」

ぺこりと、頭を下げる少女。
そんな様子に、爺さんは笑う。
『服を着た悪鬼』なんて二つ名も仕事上での話だ。
内心、心苦しかったのだろう。
冷酷な笑みではなく、朗らかな明るい笑い方だった。

「しっかし……明日は槍が降るのぅ」
「いやいや、核の間違いだろう」
「違いない。病原菌とまで言われたお主がまさか、どこの馬の骨かもわからぬ女の借金を払うとはのぅ」
「固いこと言うなよ爺さん。鬼の目にも涙って言うだろうに」
「この場合、病原菌の情けじゃがな」
「だな。煙草吸うぞ」
「ああ、灰皿はそこにある」

煙草に火をつける。
紫煙が肺を犯す感覚が体に満ちると同時に爺さんが話しかけてきた。

「で、どうするんだ?」
「なにを?」
「この娘。このまま家に帰すのも悪くないが、家はもうないぞ?」
「……は?」

驚いて少女の方を見る。
相も変わらず、彼女は自分の足元を見つめていた。
改めて爺さんの方に向きなおる。

「爺さんが?」
「いや、儂とは違う組の奴らじゃ。新参の若造どもが儂の領地を荒らしおった」
「……彼の悪鬼、老いて力を、衰わす。か」
「誰が老いた誰が」
「まずは鏡を見ろ。話はそれからだ」

所々禿げた白髪の頭。
皺がよりきって真っ直ぐなところがない肌。
儂口調。
さて、齢70以上のどこが老いていないというのか。
小一時間ほど問い詰めたいが、時間がないので割愛。
373名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:49:05 ID:NhyS2PA5
「で、どうするよ?それなりの家と真っ当な職、当面の生活費は保証してやれるけど?」
「偉くなったもんだのぅ坊主」
「偉くなったつもりはないが、これでも色々な企業を成功させたもんでね。……当初とは打って変ってだが」

遠い憧憬に思いをはせながら、煙草の火を消す。
……最近煙草を吸う本数が多くなってきたな。

「それより、坊主の家で侍従させるのはどうじゃ?」
「おいおい、冗談が厳しいんだが?」
「至極真っ当な意見のつもりじゃが?」

いけしゃあしゃあと、こんなことをのたまうジジイ。
俺のトラウマを知っているくせしやがって。
そんなことはつゆ知らず。
爺さんはつえを使って立ち上がる。

「どうした爺さん?」
「久しぶりに知人が来たんじゃ。それなりのもてなしはせにゃならん。
 準備にそれなりの時間がかかるから、その間に決めればいい」
「……へーよ」

ため息をひとつ……どうしろと。

障子の向こうに消える爺さんを尻目に、
俺は爺さんがいたところに移動する。

「で、どうするんだ?さっきも言ったとおり、それなりの家に真っ当な職、当面の生活費は保証してやれる。
 何か必要なものがあれば、その都度言ってくれれば用意できるしな」
「……」

少女は何も答えない。
ただただ、うつむいているだけだった。

「何か言ってくれないと始まらないんだが」
「……働かせて下さい」
「ん?ああ。どこで働くんだ?いろんなコネを持ってるからそれなりに選択肢は―――」
「―――あなたの所で、です」

……今何て言った?

「……ああ。さっきの会社か。辞めたばっかりだけどまぁ大―――」
「―――あなたの下で働かせて下さい」

顔をあげて力強く、少女はのたまった。

「……すまんが無理だ」
「何故、ですか」
「……精神的な問題。これの一言に尽きる。大体、もうちょっとマトモな選択肢があるだろう。
 OLとか、経営者とか、実力があるなら女子アナにもなれる。本音を言えば、これ以上アンタとかかわるつもりはないんだ」

二本目の煙草に火をつける。
もうすぐ無くなるな……後で買いに行くか。

「さっさと決めてくれ。そろそろ面倒になってきた」
「……働かせて下さい」
「あのなぁ……」
374名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:49:53 ID:NhyS2PA5

会社を降りて、久しぶりにゆっくりできると思ったのに……
こんなところで疲れるとは思わなかった。

「……ひとつ、昔話をしようか」




それはある日の憧憬。
いつか見た行動原理。
そして、俺というパズルを構成する一つのピース。



 ……ある所に、幸せな夫婦がおりました。
 そんな夫婦に、子供ができました。
 ですが、子供が出来たところで、夫婦はけんかになり、やがて離婚しました。
 子供は母にの下ですくすくと育ちました。
 ですが、子供が5歳になったとき、母は詐欺に引っ掛かりました。
 簡単に返せるような額ではなく、母は闇に沈み、
 子供は孤児院に引き取られました。
 その孤児院はひどい所でした。
 ぎりぎり餓死しない程度の食事を子供たちに与え、
 子供たちに重労働を背負わせました。


 その子供はそこで、人を信用することをやめて、
 道具に執着するようになり、不眠症を患いました。
 子供は15の少年になり、ようやく孤児院を出ようとしたところで、
 母方のおじいさんの遺言が見つかりました。
 100億を相続させること、お屋敷に住んでほしいとのことでした。
 孤児院の院長に5千万ほど渡し、少年はお屋敷に移りました。
 お屋敷に移って半年ほど過ぎたころ、
 院長は5000万を逃げて闇に消えたと、風の噂で聞きました。
 それから少年はお金が嫌いになりました。
 さらに周りは敵だらけ。少年は人間を敵だと思い込むようになりました。


 そして、ふと疑問に思いました。
 なぜ母は闇に沈んだのかと。
 それから彼はいくつもの会社を立ち上げます。
 到底上手くいくとは思えないような会社ばかりを。
 どうすれば母のように闇に沈む事が出来るのか。
 それが彼の行動原理でした。
 ですが、その会社は期待を裏切ります。
 到底上手くいくとは思えなかったその会社は、
 いまでは最大手の企業でした。
 子供のころに患った、不眠症と重労働の経験がこんな所で活きてしまいました。

375moon buy:2009/01/15(木) 23:50:25 ID:NhyS2PA5
 ある人は言いました。
 「そこまでお金を稼いで何に使うのか」と。
 彼は答えました
 「稼ぎたかったわけじゃない、むしろ闇に沈みたかった結果がこれだ」と
 ある人は責めました。
 「なぜ困っている人たちのために使わないのか」と。
 彼は答えました。
 「そんな貴方は困っている人たちのために何かしているのか」と
 ある人は嘲笑いました。
 「病気ではないのか」と
 彼は笑いました。
 「何を今さら、それに病気ではなく病原菌そのものだ」と。

ある人は呆け、ある人は口をつぐみ、ある人は彼を妬みました。
そんな事もあり、彼の人間不信と道具に対する執着は、一段と激しくなりましたとさ。
それでも彼は止まりません。
自身が闇に沈む、その日まで。


煙草はいつの間にか燃え尽きていた。
ずいぶん長くしゃべったようだった。
注がれていた茶を飲む。
温かった。ただただ……ぬるかった。

「俺はもう、人を…人間を信用しない。俺が信用できるのは……道具だけだ。
 それに、闇に沈みたがっている俺についてきたところで、明るい未来は望めない」
「……」

俺の心情の吐露に、少女は答えない。

「…最後だ、働きたい所を言ってくれ」
「……私は―――」

ようやく、まともな職を言うのかと思ったら違かった。

「―――あなたの道具になります。
 …私を、3千万で買って下さい。
 立花雫という『道具』を、3千万で買って下さい」

少女―――立花雫はこうのたまった。

「……勘弁してくれ。大体、アンタに三千万の価値があるのか?」
「三千万の価値か、1円にも満たぬ価値になるかは、あなたの使い方次第です」
「……何故、そんな簡単に道具になれる?こんな得体の知れない男の道具になるなんて、まずあり得ない選択肢のはずだ」
「ならなぜ貴方は、道具という選択肢をくださったのですか?」
「……病気じゃないか?最低でも、正気の沙汰じゃない」
「あなたが望むなら、私は道具にでも病気にでもなります」

俺は言い、責め、嘲笑う。
少女は、ただ笑って答えるのみ。

俺は呆け、口をつぐみ、そして―――

「……病気は俺だけで十分だ。
 俺の名前は星夜流。お前を三千万で買い取る。
 雫。今日からお前は俺の『モノ』だ」
「……よろしくお願いします」

―――笑って答えることのできる彼女を少しだけ……羨ましく思った。
376道具の人:2009/01/15(木) 23:52:09 ID:NhyS2PA5
 (・ω・) 投下終了につき
 (゚Д゚)  脱出!

壁|ミ☆
377名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 00:09:10 ID:ohLtlXBR
GJ。
ところでエロはいつ頃になりますかな?
全裸待機するタイミングがございまして…
378道具の人:2009/01/16(金) 00:16:50 ID:Dp2xraYk
待機するのは構わないけどさ

震えて眠れ
379名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 00:39:46 ID:yRQA5ROs
GJ。

えーと、咲夜=雫、でいいのかな?
380名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 00:02:39 ID:WvZZk4oV
GJ

何かいい気分になったよ
381名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 01:20:49 ID:juM8GCIB
>>378
犯人に告ぐw
382あやしいバイト:2009/01/18(日) 02:25:45 ID:R5ST5pUi
残り:今までに投下したのと同じくらい。長い。ばかみたいに長い。
アップローダー利用とかのほうがいいですか?


眠りに落ちる直前の続きだったから、すぐには夢だってわからなかった。
「結衣ちゃん」
耳のすぐ側で声を出されると吐息がかかる。首筋の産毛が動いたのがわかるくらい私は敏感に
なってる。
「んんっ……。はい」
名前を呼ばれたらちゃんと返事をする。それはうちでは絶対だった。いくら解散したからって
そんなに簡単に癖は抜けない。
でもそれ以前に、川島さんに呼ばれたら返事をしたい。
呼んで。
他の誰かじゃない、一被験者じゃない、私を呼んで。
もう胸に触れられても怖くない。
ペッタンコだけど川島さんはそれに対して何も言わない。
だって私の夢だもの。
こんなメリハリのない、女らしくない体、誰だって抱くのは嫌に決まってる。
だけどこれは私の夢だから。夢の中に出てくる人は私に対して誰も文句を言わない。
みんな私を大事にしてくれる。
どんなに似合ってなくたって、髪を伸ばしてリボンを結んでスカートを穿いていられる。
好きな人に抱いてもらえる。
しかも自分はまったく傷付かないで。
川島さんの手が肌の上を滑っていく。
たくさん泡立てたスポンジで体を洗っているみたい。
優しくて柔らかくて、触れられたところから気持ちよくなっていく。
「結衣ちゃん、好きだよ」
「わ、私も…っ、あ、はぅ…っ、好き、です」
全部嘘。全部夢。
全部私の望むこと。
男の人とこんなことをして、こんなふうに感じるとは思ってない。
自分の体も相手の体も生きてる。呼吸をしてる。汗をかく。
だからきっともっと生々しい。気持ち悪いこともあるはずだし、痛いこともあると思う。
でもいいの。
知らなくていい。
ずっと夢の中にいればいいから。
「川島さんで私をいっぱいにして……」
どこがなにでいっぱいになるのかくらいは知ってる。
現実だったら絶対に言えない。
川島さんは嬉しそうに微笑んで軽く頷いてくれる。
頭を撫でられる。
片方の足を抱えられ、広げられる。
そこは現実にはぜったい見られたくない場所だ。
自分の体は貧相だと思うけど、そこは貧相である上に幼い。私のその部分の体毛はすごく薄くて
少ない。まるで子供のように。
だから見られたくない。触れられたくない。
でも夢だから。
川島さんの手が、指が、そこに触れてくる。
「あああ…ん!」
ぐちゅ、と熟れた果実を握りつぶしたような音がした。
「結衣ちゃんのここはかわいいね」
「やッ…」
恥ずかしくなって目をそらす。
「待ちきれない、って言ってるみたいだ」
「やぁ……ん。言わ、ないで」
もっと言って。
欲しい。
夢の中くらい、欲しいと思ったものを全部欲しい。誰も私を傷つけない、幸せが欲しい。
「いくよ」
「はい。――っ! あ、ああっ、あはぁ…っ!」
383あやしいバイト:2009/01/18(日) 02:28:41 ID:R5ST5pUi
熱い塊で股の間がいっぱいになる。なんか塞がれたような感じ。
よくわからないまま私は声を上げてのけぞる。
体の中心に感じているのは川島さんの重みとぬくもり。
気持ちいい。
気持ちいいよお……。
もう、夢から覚めたくない。


それでも眠り続けるなんて事はできなくて、前の日の夕方から寝始めた私はその翌日の午後遅く
には目が覚めてしまった。
昼寝と合わせたらほぼ丸一日寝た計算になる。
でも薬を飲み始めてから私の体や感覚は、そういうあたりが麻痺してしまったみたいだ。
もっと眠っていたかったし、もっと夢を見ていたかった。
ううん、と伸びをする。
「おはよう」
突然薄暗い中で声がした。
びくっ、と体が動いてしまった。こ、怖かった。
私が寝ているせいで、川島さんは部屋のカーテンも開けられなかったんだろう。
それにしたって電気くらいつければいいのに。
「お、はようございます」
夕方近くにおはようってどうなんだろう。
パソコンの前の定位置で川島さんは、何もせずにただ座っているだけに見えた。
だって、パソコンのモニタのライトが川島さんの顔を照らしてない。
「どんな夢を見てたの?」
パソコンも起動させずに聞くの?
ちょっと不思議に思った。
でも聞かれること自体はこの生活を始めてからは当たり前のことだったから、私は深く考えずに
話し始めた。
「また、川島さんに抱かれる夢でした」
事細かに話すのはさすがに恥ずかしい。だから、何をどうしたなんて細かいことは言わない。
夢の中の川島さんは優しかった、ってことと、私はそれで嬉しかった、気持ちよかったってことを
言えばそれで終わりだ。その間川島さんは黙って聞いてる。昨日だってそうだった。
でも今回は違った。
「それがきみの望みなの?」
突然聞かれて、それは『はい』としか返事ができない問いで、でもそんな返事をしたが最後、
私はきっとここにはいられなくなるのが明かで、私はたっぷり一分は何も言えなかったと思う。
「な、なんでですか?」
やっと口にしたのはそんな時間稼ぎ。
それに答えず川島さんは
「お腹は?」
と聞いてきた。
「え? いえ」
それだけ言って首を振った。
起き抜けだ。まだお腹が空いたなんて感覚、無い。
「昨夜も食べてないのに?」
そういえばそうだった。
「昨日はお昼も食べてない。そして今日はもう夕方だ。ほぼ一日食べてないことになる。それなのに?」
そう……だったっけ?
でも本当にお腹は空いてない。お腹が空きすぎたときの胃の痛みも感じない。
ただ寝たいと思う。
あんなに寝たのにまだ眠い?
違う。眠くない。ただ寝たい。あの薬を飲んで夢を見たい。
「結衣ちゃん。きみは今、何をしたいと望んでいるの?」
「え?」
心の中を見られちゃったみたいな気がして聞き返した。
「今。まさにこの瞬間。お腹は空いてないって言う。ご飯を食べに外に出るのはおっくう? 
じゃ、出前を取れば食べる? 昨日からお風呂にも入ってないけどそれは? 遊びに行くのは
どう? 何かしたいと思うことが今きみの中にある?」
外に出るのはおっくう。お風呂も遊びに行くのもめんどくさい。ご飯を食べることもどうでもいい。
384あやしいバイト:2009/01/18(日) 02:31:33 ID:R5ST5pUi
ただ夢を見ていたい。
寝て、また川島さんとの夢を見たい。
「マウスは喋らないから」
川島さんは独り言のように言ってお尻ごとずらして、ベッドとは関係のない方を向いてしまった。
本当に独り言なんだろうか。そんなふうに背中を向けられると相づちを打っていいのかも
わからない。
「薬を投与し始めて三日もすると全てのマウスの動きが鈍くなった。見た目にはどこにも
異常を認められなかった。ただ、エサ入れの前にうずくまってじっとしている。
薬入りのエサを入れるとそのときだけ活発になる。エサを食べてしまったらまた
うずくまって眠ってしまう。一週間もしたら全てのマウスが一日中眠り続けるようになった。
まるで冬眠しているように」
「冬眠……しますか?」
ほ乳類で冬眠するのって、熊とかそんなのしか思い浮かばない。マウスって、ねずみって
そんなに寝る?
「ふつうはしないよ。だから僕はてっきり冬眠できる薬を作ってしまったんだと思った」
目の前のマウスがばたばた眠ってしまったんなら、そう思っても不思議はないかもしれない。
「簡単に言うと、寒くなるとまず体温を維持するために大変なエネルギーが必要になるわけだよ。
でも冬場はエサになるものも少ない。エネルギーの元にできるものが無い。
だから冬眠をする動物ってのは、まだエサが豊富な内に体や巣穴に蓄えておいて、
外気温が下がったら自分の代謝活動も低下させて活動をやめてしまう。
でもね。マウスはそんな寒い場所に置いていたわけでもないし、
エサも体に脂肪を蓄えられるほどには与えていなかった」
えーと?
マウスはふつう冬眠しない。で、川島さんが実験に使ったマウスは、冬眠しなきゃいけないような
状況、たとえばすっごく寒いところだとかに置かれてたわけじゃなかったし、
エサも薬混じりってだけで高カロリーなものをたっぷりってわけでもなかった。
なのに日が経つにつれマウスたちは活動が鈍ってきて、しまいには冬眠に似た状態になった……?
「そういうこと。僕はそんな薬を作ったつもりはなかった」
ふう、と細く息を吐いて川島さんはメガネを外した。そして眉間をあの長い指で揉んだ。
疲れてるんだろうか。
「僕は夢を見る薬を作ろうとしてた」
寝る薬じゃないんだ。やっぱり夢なんだ。
「現実の世界に影響される夢を見る薬、ってすごいと思わない?」
眉間を揉む指の隙間から、底光りするような川島さんの目が見えた。
怖い。なんで?
「夢を見ることで脳は影響を受けるか否か。その影響は現実の世界を変えるかどうか」
意味がよくわからない。
川島さんはいったい何の研究をしてるの?
「人は、生き物は、眠らずにはいられない。どんな野生動物だって眠る。寝ている状態
というのはとても無防備だ。それでも睡眠をとらないことには生きていけない」
川島さんの話はちゃんと聞いていないとわからなくなる。
いったい何に関係してるんだろう。
私?
私はたくさん寝てた。
夢をたくさん見て、すっきり目が覚めて、また寝たいって思った。
「眠りにはいるとまずノンレム睡眠が始まる。眠りは少しずつ深さを増して、
もっとも深い眠りの状態に入る。脳の活動はほぼ限界まで低下する。
これを徐波睡眠と呼んでいる。この段階で起こそうとしてもなかなか起きられないし、
夢は見ていないことが多い。脳の電圧変化を測るととてもゆっくりとした大きな波形を描く。
しばらくすると体は眠ったままなのに脳電図は覚醒状態と同じ波形を描き始める。
レム睡眠と呼ばれる眠りだ。この段階で起こすと脳は活動しているときと同じ状態に
近いからだろうが、さっぱりと目を覚ますし、約80%の人が『夢を見ていた』と答える」
「ふ……ぁ」
「眠い?」
あくびを見とがめられてしまった。
「あ、いえ。ごめんなさい。なんだか急に。あのっ、決してお話がわからないとかそういうことでは」
それじゃすごいバカみたいだから、そこは必死に否定を試みる。
あ、信じてない感じの顔だ。
「いいよ。退屈な話だね。けど、きみにも関係する話だからもうちょっと聞いて」
385あやしいバイト:2009/01/18(日) 02:33:40 ID:R5ST5pUi
「はい」
ベッドの上だから眠ってしまいそうになるんじゃないだろうか。
私は体を起こすとベッドの縁に座った。
ああ、でも体がふわふわする。寝たいな。やっぱ眠い。
困ったな。
知らない言葉が多すぎて意味を考えられない。
「ほぼ90分の周期でノンレム睡眠から徐波睡眠を経てレム睡眠というサイクルを
3回から6回繰り返すのが一晩の典型的な睡眠のパターンだ。その周期を繰り返すごとに
徐々に眠りは浅くなり覚醒する。ではもし繰り返しのない睡眠を取ったとしたら?」
「……は?」
繰り返しに何か意味があるのかな。
あるんだろうな。意味があるからそういう眠り方をするんだろう。
「眠っているあいだじゅう夢を見続け、目が覚めても覚えていられるようにレム睡眠に入ったら
それを覚醒するまで持続させる。そんな薬があったらどうだろう。そしてそれは、
その日もっとも強く印象に残った出来事を必ず夢に見せるという特性も持っている。
たとえば生まれて初めてキスをした。するとそれを夢に見る」
うわあ!?
「頬に触れる。抱きしめる。そうするとそれを必ず夢に見る」
見た。見ました。だからもうやめて。それは恥ずかしくて聞いてられない。
「もう少し強く影響するような薬を作れないだろうか。キスをしただけで抱かれてしまうような夢を
見る。優しくされただけで、自分はこの人に愛されている、と実感するような夢を見る。
それも強烈なリアリティを持った夢。現実と夢と、どちらが本当なのかわからなくなるような夢」
「ひえっ!?」
変な声が出た。
それは、すごく今の私の状況じゃないですか?
「そうしたらね、その薬はとても『使える』薬になる、と思ったんだよ」
「使える……?」
えっちな夢を見る薬のどこに利用価値が?
今の私はなんか幸せ。好きだけど絶対振り向いてくれないってわかってる人と、
現実なんじゃないかって勘違いするくらいすごい夢が見られる。
もしもこの薬が買えたりするんだったら買いたいと思う。
でも逆はどうだろう。好きでもない人をむりやり好きにさせる、くらいのことはできる
かも知れないけど、それで誰が得をするの? ストーカーしてる人が思いを遂げられるくらいの
ことしか考えつかない。
「たとえば――そうだな。もしも選挙運動真っ最中に、自分が思ってもいなかった候補者に
投票する夢を見たらどう思う?」
投票権、まだ無いんでぴんときません。
「街の中で声を張り上げてる車を見て『ああ、そろそろ選挙か』なんて軽く思う。そんな認識
しかない人たちが誰かに、はっきりと決まった誰かに投票する夢を毎晩見るようになったら、
どうすると思う?」
「き、気持ち悪い……かな」
投票所の夢ってなんかあんまり楽しくなさそうだし、自分が思っていた人に投票するならまだしも、
そうじゃない人に投票する、ってなると、なんか嫌だ。
「まあね。でも続く内に『なぜこんなに夢に見るんだろう。もしかして自分は本当は
この候補者の方がいい、と無意識に思ってるんだろうか』と思い始めたら?」
もう全然意味がわかんない。
思い始めたらどうだって言うの?
「夢によって『この人に投票すべきなんだ』と思わせる。当日実際に投票させる。これは
立候補者にとってはおいしい話だよ」
「そう、ですね」
一応肯定してみたけど、実はよくわからない。
だって、投票する『かも』なんでしょ? そもそもそんな夢をどうやって見させるの、って話だし。
「そんな暗示をかけるくらいなんなくやってのける人たちはいる。でもこの薬は今はまだ
直接関わらないと夢に見るほどの影響は与えられないみたいだ」
「え?」
川島さんはやっと眉間を揉むのをやめて、メガネをかけた。
「僕がきみにしてたこと」
ああ。
薬がカプセルなのに不必要に口移しで飲ませたり、一緒のベッドで寝て起きたら抱き枕状態だったりのあれか。
あれが!?
386あやしいバイト:2009/01/18(日) 02:35:07 ID:R5ST5pUi
あれは全部実験に必要だからやってたこと、っていう意味!?
座っているのに全身から力が抜けそうになる。
うそ。
そんなの嘘だ。
だって川島さんは。
私に好きって言ってくれたのは現実じゃない。夢の中だ。
私にかわいいって言ってくれたのも現実じゃない。それも夢の中でのことだった。
じゃあ、私が川島さんを好きだと思ってるのも、これは夢の中の川島さんを好きなだけで、
ここにいる現実の川島さんを好きになったわけじゃない、ってこと?
でも、じゃあ、どうして夢の中で私が好きになる相手が川島さんの姿をしてなきゃいけないの?
だってほんの数日前に知り合っただけの人だ。
そうだ。
好きになる方がおかしい。
困ってるところを助けてくれた。
お金がない、って言ったのに、それを助けるように、お金をくれた。
行くところも頼れるあても無い私は本当に助かったんだ。
だけどそれだけだ。
この人との関係はそれだけだ。
好きになるような出来事は何一つ起こってない。
夢を見る前にされたことに影響された夢を見て、川島さんはすてき、だの、川島さんは優しい、
だのってイメージが私の中で出来上がって、私は偽物の川島さんの前でなら自分を偽らずに
『女の子』でいられるって思い始めて、その川島さんを偽物だと気付かずに好きだと思ってしまった。
「ゃ……で、も……」
喉が潰れたみたいに声が出せない。
そんなのって。
そんなのってない。
「実験は成功したように見えたよ。三日目の夜にはもう僕に抱かれる夢を見た、なんてね」
口の中がカラカラなのに、目の前が水っぽくぼやけてくる。
やだ。
言わないで。
そんな夢を見る自分にびっくりした。でも嫌じゃない、と思い始めてた。
それが見せられてた夢なんて。
つう、と最初の雫が頬を伝い始めたら、涙が止まらなくなってきた。
「きみはキスの経験もない、って言ってた。その子がたったこれだけのことでそんな夢を見るまでになった。
それもたった三日で。これはいける、と思ったよ」
いける、って何ですか。
その薬を悪用するんですか。
何に使えるのか、私の頭じゃまだピンと来ないけど、なんか悪いことに使えるんでしょう、それ。
偉い人が使ったら多分世の中のいろんな事がぐるんとひっくり返っちゃうようなことができちゃうかも
知れないんでしょう。
川島さんはそういう悪いことに関わってる人なんだろうか。
「ところが」
川島さんは、小さな声で「よっこらせ」と言って座り直した。
私の方を向いてあぐらをかく。
「マウスだ。思い出して」
「え?」
涙がだらだら流れてる顔を上げてしまった。
川島さんは驚いた顔をして、ティッシュの箱を取ってくれた。
「マウスが冬眠状態になった、と言ったでしょう」
「ああ、はい」
なんかすごく悲しい気持ちなのに、つい返事をしてしまった。
だって、なんかもう、この目の前のことがどうでもいいんだもの。
目の前にいる川島さんは私が好きになった川島さんじゃない。私が見る夢の中の川島さんが、
私の好きな川島さんなんだ。だったらもう夢なら夢でいいから、私、夢を見たい。
眠ってしまって、幸せな夢を見たい。
話が早く終わってくれるんだったら返事くらいいくらでもするわ。


書き上がってますが残り容量が怖いので本日ここまでです。
387名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 04:43:44 ID:qs0/nyUw
GJ!これは、きついな……なんというか……きついな
どう決着つけるのかまるで読めない。続きが待ち遠しいぜ
388名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 05:53:28 ID:tWxgnXkJ
GJ
いよいよクライマックスに向けて盛り上がってきたな…!


>>残り
投下してもいいんじゃない? 他にえらく長い作品もある事だしw
ただ、スレの残り容量は気にした方がいいかも?
389名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 05:56:51 ID:tWxgnXkJ
すまん、容量についてはちゃんと言及してあったな。
よく読んでなかった。重ねてすまん。
あと、30KB超か…
390名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 09:17:09 ID:4kJlon1w
アプロダって携帯の人とかも落とせるのかな?
読めない人がいるようなら、普通に投下がいいと思う
個人的には、別に長いぶんには気にならないよ
391名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 12:49:55 ID:ymAMioyM
は、早く続きください。
392名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 00:21:22 ID:n/umplZ1
gj!
続きの投下楽しみにしてんぜ。

…もう月曜か
393名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 00:30:03 ID:ZsfO3Rj9
あと残り30KBだから、投下には容量足りないんじゃね?

よしんば、ちょうど投下できても次スレへの誘導とか感想が限定されるし…

…次スレ、建てるか?
394名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 00:38:54 ID:TAIhjo6M
ああああとうとうまとめに入ってしまうのか…
毎回すごく楽しみにしてたから、終わってしまうのはさびしいが
続き楽しみにしてます
395名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:25:12 ID:gZ+ZZ4bt
次スレ……次スレがあれば続き読めるのかな?
建ててみる
396名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:31:09 ID:gZ+ZZ4bt
金の力で困ってる女の子を助けてあげたい 3話目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232296111/

建てました。ちょっと早漏だったかな……
続き期待してます
397あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:38:19 ID:FYMCzQNg
わがまま言ってるのに申し訳ない&ありがとう。
>>395 スレ立て乙です。
続き置いていきます。


「その原因は何だろう。投与期間に、あるいは量に限界があるのか。でもマウスは喋らない。
マウスはどんな夢を見ていたかも教えてくれない。だから人体実験に踏み切った」
それで私なんですね。
多分、私がどこにも行けない状況だったのも「うってつけ」だったんですよね。わかってます。
「多感な時期の女の子であること、身寄りが極端に少ないこと。これはとても都合が良かった。
命に関わるようなものは作ってないけど、それでも万が一って事もある。でもきみなら
――その点の心配は必要ない、と考えた」
川島さんの声が右から入って左に抜けていくような感じがした。
壁にもたれかかって座る。
この人にとって私、本当に20万で買われた実験動物だったんだ。
手足から力が抜けていく。
かっこいい、と思った川島さんの顔を見る気にもなれない。
ただ寝たい。
眠くて、寝たくて、朦朧としてきた。
薬が欲しい。
「でもこの薬はだめだ」
わさわさと布が擦れるような音がした。
ベッドの縁が沈む。
川島さんがこっちに動いてきたんだ。
はなし、まだ続きますか?
眠っちゃだめですか?
「まず第一に、命に関わる。無気力どころじゃない。きみは食事をしなくなってる」
だって、お腹空かない。
それに一食や二食抜いたくらい、どうってことない。三日くらい食べなかったら大変だろうけど。
「マウスたちがエサだけを食べていたのは、それ以外の幸せを知らなかったからだろう、
と推測する。彼らがもし夢を見るとすれば、きっとエサをたらふく食べる夢を見ていたと思う。
だからこそエサ入れのすぐ側で眠り、エサが入れられればそれをすぐに食べ、
また眠っていたんだ。夢と現実の境が曖昧になりながら、彼らは常に『満腹』という幸せを
得ていたはずだ」
わけわかんない話が子守歌になる、って本当だったんだ。
ねずみたちはきっとやさしいおじいさんが穴の上からおむすびを落としてくれた夢を見ただろう。
おむすびころりん、すっとんとん。もひとつおまけに、すっとんとん。
そうしてお腹いっぱいおむすびを食べるんだ。
おむすびの後に穴に落ちたおじいさんはきっと、川島さんの顔をしているだろう。
ねずみたちは川島さんを、お餅をついてもてなしたんだ。楽しかっただろうなあ。
だって夢の中は楽しい。そう決まってる。
「次に副作用がある。副作用、と断じていいかわからないが、夢から覚めた後もまだ
夢うつつなのは僕の意図していたところだ。だが、睡眠を充分にとっても
まだ寝てしまうのならこれは使えない。レム睡眠を連続させる不自然さに
体がついていかないのかもしれない。僕の使ったマウスは常に眠ろうとした。
眠っている間に見る夢の世界に生きていたからなのか、眠っているはずなのに
眠っていない状態に陥っていたのかそれはわからない。けど、この薬に必要なのは、
夢を現実と取り違えることと、取り違えたまま行動できることの二点だ。眠っているばかりで
動けないのならこれは失敗作だ」
失敗か。
「だから実験はここで打ち切る」
「え!?」
半分くらい眠りかけていたけど、一気に目が覚めた。
打ち切る?
終わり?
「じゃ、私は?」
ここを出て行かなくちゃいけないの?
もう薬は飲めないの?
あの夢は見られないの?
398あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:39:38 ID:FYMCzQNg
「残りのバイト代を払うよ。もう薬は飲ませるわけにはいかない」
川島さんは立ち上がると、台所へ行った。食器棚の引き出しを開けて、封筒を手に戻ってくる。
「80万入ってる。前金と合わせて100万」
差し出された封筒を受け取れない。
合わせて100万!?
なんで?
「そんなにもらえません」
実験が最後までできなかったのに、そんな大金もらえない。
「きみには必要なはずだ。これでも足りないくらいだと思う。家を探すというのなら
手伝ってあげる。保証人が必要だというならなろう」
「なんでですか」
私のことなんかどうでもいいはずだ。
だって『実験に都合がいい人間』ってだけだもの。
他に助けを求めるあてもない、身寄りだってどこに行ったかわからない父さんと
兄ちゃんだけだもの。兄ちゃんは最悪会社に問い合わせれば連絡は付くだろうけど、
せっぱ詰まらない限り頼れなさそうな雰囲気を、兄ちゃんからではなく兄ちゃんの恋人から感じた。
だから。
私は多分『私』として、つまり『松下結衣』として必要とされてる場所をどこにも持ってない人間なんだ。
「きみに対してはそうしたいと思ったから。それじゃ理由にならない?」
「なりません」
だって。
だって、あなたは私のことを。
泣きたいのに、目がぴりぴりするだけで涙が出ない。
瞬きをして、気が付いた。
これが、川島さんが言っていた『肥大した自意識』なんだ。
笑えてくる。
私を見て。私だけを見て。私だけを大事だって言って。
そんな気持ちがふくれ上がって、でも実際には川島さんは私を『私』じゃなく
『被験者』としか思ってなくて私はその現実を受け入れられない。
私が『私』だった、しかも『そうなりたかった私』だった夢の世界に帰りたくて仕方ない。
川島さん。あなたは天才かもしれない。あなたの薬は、私の夢と現実の世界の境界を
めちゃくちゃにしてしまった。
私はもう『こっち側』にいたいと思えない。
好きだなんて思わなければ良かった。
もう涙は流れていないのに、私はもう一度ティッシュで目を拭いた。
「お願いがあります」
「なに?」
「前金の20万と今いただいた80万で、あの薬を売ってください」
こんなお金使い切ってしまえばいい。
そしてありったけの薬を飲んで寝てしまおう。
どのくらい眠れるかわからないけど、きっとかなり長い時間眠っていられるはずだ。
長い間、幸せな夢だけを見て眠って、そしてそのまま。
川島さんは一瞬目を見張ったけど、すぐに
「だめだ」
と言った。
「なぜ……」
「無認可の薬なんか、売れるはずがないだろう。それにこの薬が失敗作である理由は
言ったはずだ。命に関わる、と。そんなものを渡すわけにはいかない」
つい、くすっと笑ってしまった。
そんなものを飲ませたくせに。
私、契約書まで書いたのに。
今更だ。なにもかも。
「なるほどね」
私が笑ったせいで、考えるような表情になっていた川島さんが口を開いた。
「つまりきみはそこがどうしても克服できないんだな」
「え?」
「克服でないなら納得と言い換えてもいい。きみは別に僕に抱かれたかったわけじゃない。
女の子になりたかっただけだよ。違うかい?」
399あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:41:21 ID:FYMCzQNg
違う、と思います。
「ふつうはね、『僕の家に来る?』って聞かれて、会って10分も経たないような男に
ついて行かない。どんなに困った状況にいたって、警戒するものだよ。なのにきみは
あっさりついてきた。聞けばお兄さんがいると言う。警戒心の無さはそれかとも思ったけど、
僕ときみのお兄さんじゃ年齢からして合わない。きみが警戒心を抱かない理由にはならない。
じゃあ、なぜきみはついてきたか」
そりゃ他に行くあてが無かったから。
「きみは心のどこかで自分を女じゃないと思い込もうとしている部分があるんだよ。
相手が誰であってもあまり態度が変わらないから、男女関係なく誰とでも仲良くできそうでいて、
深く付き合える相手がいない。自分で一歩引いてしまうし、相手もどこまで
きみに踏み込んでいいのか掴めない」
そんなの知らない。
だってずっと女の子になりたかった。
みんなと同じように髪を伸ばしたり、休みの日に目的もなくぶらぶらしたり、かわいい服を着たり
好きな人の話をしてみたりしたかった。
「したいのにできない。抑圧されたその感情は逆に向かう。できないのではなくしないのだ、
と行動を正当化する」
そんなことしてない。
「男の家に転がり込んでも何も起こらないと思っている。自分は女じゃないから。
他人に女だと認めてもらえないから。女に見られないんだったら綺麗に着飾ることもない。
服装だってユニセックスな物になっていく。行動も仕草も、どうせ何をやっても女だと
見てもらえないなら、と変化していく」
そんなことない。
そりゃ、ここに来てからはスウェット上下とかの格好が多かったけど、
それは仕事が寝ることだったから、寝やすい格好を選んだだけで、それ以上の意味は……。
「ついこの間まで高校生だったのに、好きな子もいなかった?」
それは。
好きだって思えるような人がたまたまいなかっただけで。
そんなの私のせいじゃない。
現に私は川島さんを好きになった。薬や夢が大きく影響してるかも知れないけど、
本当に好きだと思った。
男の人を好きだって思う私はちゃんと女だと思う。
「自分で作った枷が僕の薬のせいで外れちゃったんだよ」
川島さんの手が伸びてきて頭を撫でられた。前髪をかき上げるように髪の中に指を入れてくる。
「僕に抱かれるような夢を見たのは、誰でもいいから誰かに女性として扱われたい願望の表れだ。
それ以上の意味は無い。だからきみは安心してその気持ちもあの夢も忘れていい」
「川島さん……」
「キスは、ごめん。こんなおじさんが最初で、本当に悪いことをしたと思ってる」
なんで。
忘れなきゃいけないの?
嫌じゃなかった。
川島さんとキスしたのは嫌じゃなかった。
何をどう言えばいいのかわからなくてただ首を振る。
でも川島さんは困ったように微笑んだ。
「そう簡単に忘れられるわけないか」
忘れたくないです。
実験は終わってしまった。でも私は川島さんを好きでいたいです。
たとえそれが夢のせいで植え付けられた恋心だとしても。
「薬を売ってもらえないのなら、こっちならきいてくれますか?」
せめてひとつだけ。
「なにかな」
「私を抱いてもらえませんか?」
夢の中でなく、現実で、女だと実感させてください。一度でいいから、それきり終わりで、
その後はさようならで二度と会えなくてもいいから。
川島さんは痛みを堪えるように顔をしかめた。
ぎし、と音がしてベッドのマットが揺れる。縁に座っていた川島さんが立ったんだろう。
ぎゅっと抱きしめられた。
背の高い川島さんの腕と胸の中に閉じこめられたようで、体中から力が抜けていく。
あたたかい。
川島さんはもちろん、こうして抱きしめられていると体の内側からじわっと温かくなる。
400あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:42:39 ID:FYMCzQNg
なんて安心できる場所なんだろう。
夢と一緒だ。ううん。それ以上だ。自分の内側から満たされていく。
川島さんが喉が絞られたような変な声を出した。
「ごめん」
たった一言。
それで充分だった。
温かいもので満ちかけていた私の体が凍り付く。
頬がこわばる。
そんなに、私は、だめ?
川島さんは四十って言った。女の人との関係は当然あるだろう。
こんな子供に口移しで薬を飲ませちゃうくらいだ。きっとそういう事に慣れてる。
そういう人が、戯れにでも抱けないって言う。
そのくらい私はこの人にとって女じゃないってことなんだ。
腕が離れていく。
「いえ。すみませんでした」
頭を下げるふりをして川島さんから目をそらす。
無理を言ったのは私。
これで決心が付いた。
「実験終了なら、もう薬は飲まなくていいんですね?」
「ああ。もう飲んじゃだめだ」
じゃあ、と私は布団をめくった。
「ふつうに寝ます。明日から家を探そうと思いますが、見つかるまではここに置いてください」
「もちろん。家探しも手伝うし、手伝えることがあったら言ってく」
「ありがとうございます。それじゃ、おやすみなさい」
川島さんの言葉を遮ってお礼を言った。
話のさいちゅうはあんなに眠かったけど、もう眠気はすっかり消えていた。
でも私は目も合わさずに挨拶をして、布団を被って、壁の方を向いて目を瞑る。
眠くて仕方ないふりをする。
「結衣ちゃん。食事やお風呂は」
「なんだか疲れてるので明日にします。私のことは気にせずにどうぞ」
薬を飲むのをやめたんだから、もう私を監視する必要はないはず。
私が食べてないんだから、と外食はしないかもしれない。
でも、食べる物を買いにコンビニに行くくらいのことはするかもしれないし、
お風呂にだって行くだろう。
川島さんは私が薬を飲んで眠ってしまってからお風呂に入っていたようだ。
監視をしなくてはならないのは私が起きている間だけ。
薬を飲んだら私はぐうぐう寝ているんだからその隙に自分のことをしていたに違いない。
そこまで考えて、あの抱き枕状態の理由にも気が付いた。
あれは、万が一私が先に起きた場合の保険だ。
寝ている川島さんが私が起きたことに気が付くためには、
私の体を押さえているのが一番わかりやすい。
そんな理由だったんだ。決して特別な意味があったわけじゃない。
どんどん心が冷えていく。
ともかく、川島さんは私が寝たと思ったら絶対にお風呂に行く。
何時間後になるかわからないけど、きっとお風呂に入る。
その時がチャンスだ。
401あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:43:57 ID:FYMCzQNg


息を殺して寝たふりをするのは苦しい。
すぐに耐えられなくなって、はふ、と大きく息を吐いた。
本当に寝ているときってどんな息の仕方をしてるんだろう。
知ってるはずがない。寝てるんだもの。
でも多分こんなふうに力が抜けてるはず。
だから私はゆっくりと呼吸を繰り返した。深呼吸のように長々と吐いて、ゆっくりと細く吸い込む。
あとどのくらい待つことになるのかわからないんだから、力は抜けてる方がいい。
ふいに肩に温かい物が触れた。
動かないようにするのが精一杯だった。
川島さんの手だ。
なに? ひっくり返されるの? 寝たふりってばれた?
力を入れちゃいけない。
でも心臓がドキドキする。
川島さんの手はしばらくすると離れた。
そして溜息がひとつ。
足音が遠ざかる。
洗面所のドアの開く音。電気のスイッチの音。それからちょっとして、
お風呂のドアが開いて閉まる音。
もう少し。
もう少しだ。
かすかにシャワーの水音が聞こえてきた。
それでもまだ安心できなくて、そこから百数えた。
もういいだろう。
咄嗟にこっちに戻ってこられないくらいには川島さんの体は濡れたはずだ。
ベッドから起き出す。
常夜灯の薄暗いあかりの中でもその場所へは迷わずに行けた。
本棚の上から二段目。私にだって手が届く高さに置いてあるインスタントコーヒーの瓶。
その中に入っているのはつい数時間前まで私が飲んでいた薬だ。
瓶を手に取る。
フタを捻り、受け皿代わりにしてそこへカプセルをざらざらと出した。
あんまりたくさん出すと、私が取った、ってすぐにばれちゃうだろう。
でもばれたっていい。もう構わない。
このカプセルだけ持って、川島さんがお風呂から出てくる前に私はここからいなくなるんだから。
荷物もなにもかも置いて出て行けばいいんだから。
「なるほどねえ」
声と同時に部屋の灯りがついた。
ぎょっとした拍子に瓶を取り落とした。
「あっ!」
慌てて手を伸ばすけど掴めるわけがない。
瓶は床に落ちて、カプセルがざあっとこぼれた。
「依存症というのはものがなんであれ深刻だ」
川島さんが部屋の入り口の壁に寄りかかって腕組みをしてこっちを見てた。
「な、なんで……」
「なんで?」
だってお風呂に行ったじゃないですか。
川島さんはなんだか意地の悪い微笑みを浮かべて言った。
「そりゃ警戒してるからに決まってるでしょう。寝息らしきものは立て始めてたけど、
体を触っても入眠したと思えるような弛緩は起こって無さそうどころか緊張してるように見えたし。
それに『薬を売ってくれ』なんて言われてるんだ。疑わない方がどうかしてる」
ああ、つまりこうやって薬を盗むだろう、って思われてたんだ。
もう私はどこまでこの人に嫌われればいいんだろう。
ただの被験者でさえなくなってしまった。未遂とはいえ泥棒で、失敗作とはいっても
これを元にまだ何かするんだろう貴重な薬を床にぶちまけて無駄にした。
今更拾ったって多分3秒ルールってわけにはいかない。
うなだれる私に川島さんは
「心配しなくていい。それは全部偽薬だから」
と言った。
402あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:46:16 ID:FYMCzQNg
「ギヤク?」
「そう。偽物の薬。中身はブドウ糖やビタミン剤とかそんなもの。薬を飲んだ、と思いこませるために
使う物で、体に害は無い。いくらなんでもそんなところに本物を放置しないよ。作ったときのデータがあるから薬はすでに処分してある」
どこまで用意周到なんだろう。
そうだよね。私みたいな不心得者がいるものね。
こんな危ない薬、誰でも手が届くようなところに置いてるはず無いよね。
「そうまでして薬がいるの?」
その問いに答えろって言うんですか?
他ならぬあなたが。
「夢はどうしたって現実じゃないよ」
「わかってます」
そんなことはわかってる。現実にはこんな幸せなことは起こらない。
だから夢の中に逃げ込むしかない。
「そんなにきみの見た夢は幸せだった? そんなに叶えたい夢を見たの?」
あなたが好きでした。
薬のせいだったのかどうかなんて、どうでもいいです。関係ないです。
ただ好きなんです。夢で見たようなことをしたい、されたいと思うほど好きなんです。
でもそれは叶わない。
絶対に現実には起こらない。
ごめん、っていうたった一言で私は拒絶されてしまった。
私は確かに自分中心で物を考えているし、そうだったらいいなあ、だけで生きてきたんだと思う。
うちにお金が無いってだけで一家離散したし、お金をもらえるって思って
得体の知れない薬を飲んだ。
人生ってすごく簡単に狂う。
思ってもみなかった状況に自分がいる。
それでも。
それでも今私はここにいて、感じることがあったり、考えることがあったりするんです。
あなたから見たらそれはとてもバカバカしいことだろうし、ガキのたわごとだと思います。
でも私は今これが精一杯なんです。
誰かに迷惑をかけることしかできない。
迷惑をかけて生きていくしかできないなら、迷惑をかけないためには――。
この薬をいっぱい飲んで、眠ったままでいればいい。それがきっと一番いい。
「薬の効果が抜ければきみはきっとその気持ちを忘れる」
川島さんはふいと壁の方へ顔を向けた。
「薬のせいでこんな気持ちになってただけだ。だからあれ以上のことをしなくて良かった。そう思う日が
すぐに来る。なんといってもきみはまだ若いんだから。未来はきみの前でまだ何の形も取っていないんだから」
説得、されてるんだろうか。
でもそれにしては川島さんの声はやけっぱちな感じに聞こえた。
「二、三日ふつうに生活してごらん。体に蓄積された成分も排出されてしまうだろう。
そうしたらきみは新しい生活に踏み出す。こんな実験のことも、僕のことも忘れて、新しい家を見つけて、
仕事を見つけて、きみの人生を見つける。僕とは関わっていない未来がある」
川島さんはそう言いながら自分の腕をぎゅっと握りしめていた。
服のしわがきつく寄る。握りしめてる拳が震えてる……?
「眠れるならなにもせずに眠りなさい。そうでないなら、風呂に入るなり食事をするなり、
とにかく薬を飲んでいる間はしなかったことをしなさい」
そんなことを言われても。
何も言えなくて、私はしゃがむと落としたカプセルを拾い集める。
たとえ偽物のカプセルでも片付けないと。
「そのままでいいから」
「いえ。落としたのは私なので」
それに、他に何をしたらいいのかわからない。
川島さんは大きな溜息をつくと、どこかへ消えた。
水音が止まる。出しっぱなしになってたシャワーを止めてきたんだ。そしてゴミ箱を持って
私の側にしゃがんだ。
拾いながらどんどん捨てる。偽物の薬とはいえもったいない。中身がビタミン剤なら
サプリ代わりに使えるんじゃないだろうか。でもカプセルの表面はちょっとぺたぺた
し始めている。床の埃もくっついている。
捨てるしかないんだ。
403あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:47:24 ID:FYMCzQNg
「結衣ちゃん」
「……はい」
「僕は今日はよそへ行くから」
「はい?」
「別の場所で寝るから」
もう一緒のベッドで寝ることさえ無いんだ。
胸の真ん中を砲丸が通り抜けていったような感じがした。
痛い。大きな穴が開いて、風が抜けていく。寒い。
「は……」
『はい』以外の返事をしちゃいけない。
いけないんだけど。
「い……やです」
「は? 結衣ちゃ……」
「嫌です!」
川島さんの袖を掴んだ。
「どこにも行かないで! 行っちゃやだ! 私がだめならだめでいいです。でも側にいるのもだめだ
なんて、そんなのやだ!」
「結衣ちゃん、待って」
川島さんはぺたりと尻を落として、詰め寄る私の体重を支えようとした。
周りには積み上げただけの本の壁もある。
でももう崩したって知らない。
もう片方の手で胸ぐらを掴んでのしかかった。
「結衣ちゃん!」
「初めてのわけ無いよね、って言ったのは川島さんじゃないですか! 経験があっても
おかしくない年なんでしょう? だったら」
困っているのか慌てているのかはっきりしなかった川島さんの表情が急に引き締まる。
「だめだ、結衣ちゃん。言うな」
「抱いてください」
「聞かない。僕は聞いてない」
「初めては川島さんがいいです。抱いてください」
苦しそうな顔をして川島さんは横を向いた。
「聞いてない。だめだ」
「何度でも言います。好きです。私に未来があると言うのなら」
ぽた、と涙が落ちた。
やだ。興奮して涙出てきた。
「その未来に踏み出すための勇気をください。一度でいいから抱いてください」
忘れないから。
生涯忘れないから。
お金では絶対買えない大事な何かを私に教えてください。
「ゆ……」
言いかけた唇をぎゅっと引き結んで、川島さんはぐっと私を抱き込んだ。
「ひゃっ……」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。腕と胸とに挟まれて苦しい。
「かわし、まさ……ん、くるし」
息ができない。
ゆっくりと川島さんの腕から力が抜けた。
やっと呼吸が楽になる。
「どこまで信じたの?」
「…………え?」
初めて聞く低い低い声と、唐突な話の方向転換について行けなくて、十秒くらい呆けた。
「僕の話を。どこまで信じたの?」
信じるもなにも。
だって本当のことでしょう?
私、夢見てたよ。ぐっすり眠って、目覚ましも何にもないのにすぱっと目が覚めて、夢の内容を
これでもかってくらい覚えてたよ。
それはさっき川島さんが言ってた――なんだっけ?
夢を見るときの。レム睡眠か。たっぷりその状態になって、眠りが浅くなるとかなしに
突然目が覚めてたんじゃないの?
「本気でそんな薬があると思ってる?」
404あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:49:23 ID:FYMCzQNg
「そう言ったじゃないですか!」
「そんなもの一人で作れるわけないだろ!」
え?
えええ?
はあ、と溜息をついて川島さんはメガネに触れないように手で額を抑えた。
まぶしくてひさしを作ってるわけじゃないよね。これ、頭抱えてるんだよね。
「そんなとんでもないもの作れるわけがないじゃない」
もう一度自嘲気味に言うと、川島さんは私を抱えてくれていた手をすっかり離した。
「夢を見るっていうのはレム睡眠の特徴だ。そしてレム睡眠のさいちゅうに目が覚めた被験者は
たいていすっきりしている。ということは」
「ということは?」
「眠りのサイクルを無視してレム睡眠ばかりを取ることができたら人間は睡眠時間を削ることが
できないだろうか」
「……川島さんはいったい何の研究をして、何の実験をしようと思ってたんですか?」
よくよく考えてみたら、バイトを始めるときにこの人は『夢を見てそれを覚えておいてね』って言った。
それは内容がだんだん過激になる内容をしっかり覚えておけ、ってことじゃなく、レム睡眠の状態で
いてね、って意味に取れないこともない――かもしれない――ような気も――。
なんかこんがらがってきた。
「睡眠不足ってとても怖いことなんだよ。知ってる?」
川島さんは膝を抱えるように座ると話し始めた。
現代人は睡眠を削ることを社会から要求されている。睡眠を削ればその分仕事に充てられる。
仕事量が増えれば生産性が上がる。生産性が上がれば社会全体が潤う。
寝るな。働け。
それが正しい社会人というものだ。
朝早くから長時間満員電車に揺られ通勤し、仕事は時間内に終わらずサービス残業を強いられ、
へとへとになってまた電車に揺られて帰宅してもすぐに寝床へはいけない。
眠らずに生きていくことは不可能なのに、生活をするために睡眠時間を削らなければならなくなる。
慢性的な睡眠不足を抱えた人々は、日中も頭の働きがぼんやりするし、積極性も見られない。
仕事量も生産性もがた落ちだ。ストレスも溜まる。ミスを起こしやすくなる。抵抗力が落ちる。
せめて人間が必要としている八時間の睡眠が取れれば。
本来なら成人であっても十時間は正しい睡眠を取りたいところなのだ。
「でも社会はそれを許さない」
決められた労働時間。時間内には終わらないオーバーワーク。
「どこで取り返す? 休日に寝だめをする? それでも週の半ばにはまた睡眠不足を感じて
体には疲労が蓄積される。社会のサイクルを変えるのがムリならいっそ睡眠のサイクルを
変えてしまったらどうだろう」
十時間眠りたいところを短縮する方法はないだろうか。
浅いノンレム睡眠から始まり徐波睡眠、そしてレム睡眠へ移行し、深い眠りは徐々に浅くなり、
だがそこではまだ覚醒せず再び深い眠りへと落ちていくこの周期を変えることはできないだろうか。
体はぐっすり眠って疲れを癒し、脳も一日をリセットして明日の活動をスムーズに行える
睡眠の仕組みはないだろうか。
「もちろん、レム睡眠を連続させる危険性は考えた」
「危険があったんですか?」
あるよ、と川島さんは答えた。
「科学が進歩して、他の動物とはまったく違う生き物になっちゃった人類が大昔から変えてない、
変えられなかったものだよ。それを弄るんだから危険に決まってる」
そんな危険がある薬を飲んでたの!?
あれ? でもそんなもの作れないって言った?
「僕はそういう研究をしてました。学生たちは当然それを知ってた。だから学生たちに
実験に協力してもらうわけにはいかなかった」
「学生を使おうと思ってた、って言ってませんでしたか?」
「うん。それも嘘」
川島さんはあっさりと言った。
「彼らに偽薬は効かないから、僕の研究を知らない人に実験に参加してもらわないとだめなんだよ」
「偽薬ってさっき言ってた……」
ちらりとゴミ箱を振り返る。
全部捨てられてしまった、中身はブドウ糖やビタミン剤っていうカプセル。
「うん。きみにとっては本物になっちゃったみたいだけどね」
「は? え?」
405あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:50:12 ID:FYMCzQNg
川島さんはくすっと笑った。笑ったんだけれどそれはとても疲れた笑いに見えた。
「寝る前に飲んでたでしょ」
「やっぱりあれを飲んでたんですね? 実験終了って言った後ですり替えたとかじゃ
なかったんですね?」
本物を処分して偽薬を、なんてそんな暇無いと思ったもの。
川島さんは頷いた。
「ずっときみはブドウ糖だの整腸剤だのビタミン剤だのを飲んで、僕の暗示にかかって寝てただけ」
すい、と川島さんの手が伸びてきた。頭を撫でられる。
「ありがとうね。素直な子で助かったよ」
なんかバカにされてる気がする。
「そんなわけだから」
川島さんは私の頭に手を乗せたまま、ふい、と目をそらした。
「一時の気の迷いは忘れてしまいなさい」
なんか、変よ。
なんかうまいこと煙に巻かれてない?
この、はっきり形にならないもやもやした疑問を確かめる方法は無いだろうか。
「じゃあ忘れます」
「うん。そうしなさい」
川島さんはほっとしたような声を出した。
それだけでも状況証拠に思えるんだけど。
私は立ち上がると、まだ中身がほんの少し残っているコーヒーの瓶を手に取った。
本物を偽物にすり替える暇はなかった。じゃあこの中身は最初から偽物だったのか、
それとも本物だったのか、どっち?
「体に害は無いんですよね。ブドウ糖って『脳の栄養』ってCMで言ってましたっけ」
「結衣ちゃん!?」
「整腸剤ってあれですか? 『生きて腸に届く乳酸菌』的な。確かにどれを飲んでも
問題無さそうですね」
手のひらにひとつ出す。
ブドウ糖かな。整腸剤かな。ビタミン剤かな。
スリルのないロシアン・ルーレットだわ。
「飲むな!」
立ち上がるやいなや川島さんは手をはたいてきた。カプセルが飛んでいく。
「やっぱり、本物なんですね?」
振り返りながら聞く。
「違うと言ったはずだ」
川島さんはコーヒーの瓶を取り上げると中身を全部ゴミ箱にあけてしまった。
「ならどうして全部捨てるんですか」
「偽薬といえども薬品を軽々しく扱うな」
「体に影響は無いって言ったじゃないですか」
抱き合う寸前くらいまで近づいてにらみ合う。
「川島さんは、私に責任があるって言いましたよね」
薬を飲んで私に万が一のことがあった場合の責任は川島さんが、って言った。
「結衣ちゃん、話を聞いて」
「聞きましたよ。どれが本当でどれが嘘ですか?」
あの長い長い話のどこまでが本当でどこからが嘘だったのか。
私が飲んだ薬は、本当は何ができる薬なのか。
川島さんは何をどうしたかったのか。
詰め寄るようにつま先立った。
川島さんと私の身長差はそれでもちっとも埋まらない。
「なんでだ。納得できる話を作ったつもりだぞ」
どれがそうなのかわからないけど、やっぱり嘘だったんだな。
「納得できないですから」
「どうしたいの? 何が望み?」
つま先でバランスが取れなくて川島さんの胸に倒れ込みそうだったのを支えてくれて、
川島さんは諦めたのか、ひどく冷たい声を出した。
「薬は渡せないよ。もっと金が要る?」
「両方とも要りません」
夢に逃げ込むなって言ったのは川島さんだ。
406あやしいバイト:2009/01/19(月) 01:50:53 ID:FYMCzQNg
「じゃあなに?」
「抱い……」
「それは絶対に駄目だ」
川島さんは私を遠ざけるように腕を突っ張った。
「絶対に後悔する」
「しません」
きっぱり言って、じっと川島さんの目を見上げる。でも目を合わせてくれない。
「僕は今年で三十八だぞ」
「四十って言ってたじゃないですか」
なんで急に年齢の話なんか。
「あれはもうすぐ四十、って言ったの。だいたいきみね、僕がどんな気持ちで……」
私は川島さんの腕を振りほどいてぶつかるように抱きついた。
うわって声を上げる川島さんは、私ごときでは倒れなかった。
「二十二歳も違ったら親子だわ、って思ってたけど、二十歳違いなら平気ですよ」
言った後で、平気かな、と思った。
あんまり変わらないような気もする。
いや、でも、二十歳って成人したばっかりよ。それで子持ちって――いるか。
親子か。
「充分親子だよ」
川島さんにも言われてしまった。
「でも本当の親子じゃないです」
「当たり前だ!」
こんな大きな子供、いてたまるか、と川島さんは言った。
私も困る。こんな、もうすぐ四十のくせにこんなかわいらしいお父さんなんて困る。
っていうかお父さんだったらこんなことできないから困る。
「事実がどうあれ、私にとってあの薬は本物でした。もし川島さんが、あの薬のせいで
私がこうなってると思うなら、責任を取って抱いてください」
「それは責任を取った内に入らない」
川島さんは厳しい口調で言った。
けち!
すごく頑張って言ったのに!
「いや。そうだな」
川島さんは軽く二、三度頭を振って言った。
「そういう責任の取り方をさせてもらおうか。僕もその方が楽な気がしてきた」
『そういう』の意味を聞く前に抱きしめられた。
407あやしいバイト


キスをすることを目的にしてキスをするのは初めてだ。
後ろへ倒れかけている川島さんに覆い被さるようにしてそっと唇を乗せる。
「ん……」
急に恥ずかしくなってきた。目や頬が熱い。
互いの唇をちゅうと吸うのがこんなに恥ずかしい気持ちになる行為だなんて思わなかった。
だ、大丈夫だろうか、私。
まだこれから先があるのに、なんかもう逃げ出したくなってきた。
だってこれは夢じゃない。
唇を舐める舌に、混じり合う唾液に、温度も味もある。
夢の中でもそれは感じていたような気がするんだけれど、今実際に感じているもののほうが
強烈すぎて、夢でどうだったかなんて思い出せない。
そろっと頭を後ろに引いた。
やっぱり自分からなんてできない。
川島さんの手ががっしりと逃げる私の頭を掴んだ。それ以上後ろに行かしてくれない。
綺麗な手だと思った。父さんや兄ちゃんと比べて、だけれど、白くて長い指をしている滑らかな手だと思った。
でも実際にこうして触られるとわかる。
これは男の人の手だ。
髪の毛をかき分けるようにして指先が入ってくる。
地肌に触れられてぞくぞくする。
「あ……」
唇が離れる瞬間に盗むように息をした。
でないと窒息してしまう。
角度を変え、深さを変えて、川島さんと口づけを交わす。
唇が濡れる。
舌が絡まる。
吐息が混じる。
それは夢では知ることのできない現実だ。匂いも味も温度も、夢の中で想像はしたんだろうけど
結局感じることはできなかったものだ。
「…て、る」
「なに?」
川島さんが聞いてきた。
声に出ちゃってたんだ。
「わ、たし……、川島さんと、キスしてる」
目の前の顔がくしゃっと笑った。
「そうだよ。何をしてると思ってたの」
「ん……」
ぶつかりそうなくらい近くに川島さんの顔があるせいでうつむくこともできない。
「夢でも、いっぱいしました」
「そうらしいね」
頬を撫でられる。その手が首を撫で、肩を撫でて、下へと降りていく。
「でもそれ、僕は知らないから」
「知らないって……」
ちゃんと報告したのに。かなり恥ずかしい思いをしながら。
川島さんはまたちょっと笑った。
「そうだね。それ以上のことも聞いた」
うわあああ! やめて。いや、えっと、今からそういうことをするのはわかってるんだけど、
言っちゃだめだあ!
「でも詳細を知らない」
言わないでしょ! そこはふつう言わないでしょ!
「夢の中の僕の方が上手かったら嫌だなあ」
くくく、と川島さんは笑った。
嫌そうに見えない。
脇腹に川島さんの手が添えられた。
「ひゃっ」
「くすぐったい?」
「少し」
それよりも驚いた。いつの間にそんなところに手が。
スウェットをめくり上げて手が中に入ってくる。