魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。
『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
『注意情報・臨時』(暫定)
書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。
リンクは
>>2
いちょつ
>>1乙!!
スバル、アイス食いすぎだろww
縦に並べたら二階建てビルよりも高くなりそうなんだがww
スレ立て乙ッス
そして、米寿オメ
6 :
B・A:2008/11/03(月) 23:46:22 ID:sQXH5ZVD
>>1乙です
そしてアイスの甘さとは正反対のSSを投下に来ました。
賛否は両論でしたが、意見はできるだけ活かさせて貰おうと思います。
そして前回、タイトルに「第一話」って入れるの忘れたよ。
注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・主人公その1:エリオ
その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」 訳:負け犬
実力差があることはわかり切っていた。かつては5人がかりでも勝てなかった相手にたった1人で挑んだのだ、
負けてしまったとしても何ら恥じることはない。だが、その時ばかりは敗北は許されなかった。
理由はただ一つ、彼女がどうして戦うのかを知りたい。それだけだ。
無感情なその目は何も映しておらず、今そこにいる世界すら彼女は見ようとしていない。
極端なまでに希薄な自己。
差し伸べられる手を掴むことの恐怖。
注がれる眼差しへの嫌悪。
誰も信じられず、誰も信じようとしない頑なな態度。
敵として対峙した召喚師の少女に、エリオとキャロはかつて自らが抱いていた思いと同じものを垣間見た。
信じていた者に裏切られ、世界の全てから拒絶される孤独感。それを知っているからこそ、2人は彼女がスカリエッティに協力する訳が知りたいと思った。
どうしてそんなに寂しそうな目をしているのか。
どうして悪事に加担しているのか。
自分達で何か力になれることはあるのではないだろうか。
どれもこれも些細な思い。動機と呼ぶには余りにも小さく、拙い。それでも2人は彼女と分かち合うことを選んだ。
結局のところ、自分達は彼女のことを何も知らない。だから、理屈を捏ねるだけ意味はないのだ。
大切なのは最初にそうしたいと感じた思い。彼女のことをよく知りたいという純粋な気持ちだ。
その思いは決して間違いではないから、きっとうまくいくと思っていた。正しい行いは必ず報われるものと信じていた。
だが、待っていたのは絶望だった。
エリオはガリューに勝つことができなかった。
起死回生を狙って解き放った奥の手、師であるシグナムより盗み取った奥義紫電一閃。
その一撃が、ガリューの固い鱗を捉える前に暴発し、エリオの腕をズタズタに引き裂いた。
分相応の力の代償。どれだけの才能を秘めていようと、如何ほどの鍛錬を積み重ねようと、人間が行使できる魔力には限界がある。
その限界を無視して力を引き出した結果、エリオは目的を果たすことなく自滅してしまったのだ。
魔力のオーバーロードがどれほど危険な行いであるか、我が身を省みない無茶がどれほど恐ろしい結果を招くのか、重々承知しているはずだった。
だが、心のどこかで過信していたのだ。自分は強くなった、自分ならやれると。
意識を取り戻したエリオが瓦礫の中から這い出た時、全ては終わっていた。
ゆりかごは軌道上に到達し、管理局はスカリエッティに敗北した。
エリオが見たのはあちこちで火の手が上がる廃棄都市であり、その上に血塗れで横たわる変わり果てたキャロの姿であった。
自分達の思いは、あの召喚師に届かなかった。
絶望が心を取り巻く。だが、嘆く暇さえ彼には与えられなかった。
スカリエッティのアジトへと向かったフェイトからの通信の断絶。最悪の事態すら想定される状況で、
エリオは単身でスカリエッティのアジトへと向かった。幸いにもダメージは右腕だけであり、簡易治癒魔法で誤魔化せるレベルだった。
だから、弱い自分でもまだ戦うことができると思った。せめて恩人の命だけでも、守り抜きたいと。
しかし、二度も彼は間に合わなかった。エリオが駆けつけた時、既に戦いは終わっていたのだ。
そこでいったい何があったのか、それはエリオにはわからない。だが、戦場となった場所は辺り一面が血の海であり、
傷ついたスカリエッティは配下の戦闘機人の1体に肩を担がれて何とか立っているような状態であった。
エリオと彼らの間には、破壊された戦闘機人と手足を切断されて虫の息のフェイトが横たわっている。
その現実を認識した瞬間、エリオの中でどす黒い感情が芽生えた。
腕の痛みなど気にならなかった。ここで力尽きても良い、目の前にいる卑劣な犯罪者に渾身の紫電一閃を打ち込みたいと心から願った。
だが、意外にもスカリエッティは彼と戦おうとしなかった。それどころか、アジトの自爆装置が作動しているので急いで脱出しなければ
落盤に巻き込まれるぞとも言ってきた。それはたくさんの命を弄んできた性格破綻者とは思えぬ言動であり、
肩を貸していた戦闘機人ですら驚愕の表情を浮かべていた。
エリオは思わず、自分と戦うことを声高に要求していた。一矢報いることもできず、あまつさえ敵に情けをかけられる。
それが我慢ならなかった。しかし、スカリエッティはそんなエリオの願いを無視し、嘆息しながら答えた。『私は、君に興味はないんだ』と。
それを最後に、スカリエッティは戦闘機人とともに悠々とその場を立ち去って行いき、エリオには彼の後を追うだけの精神的な余力すら残されていなかった。
まるで自分が惨めで矮小な存在であると思い知らされたかのような気持だった。
目的も果たせず、大事なものも守れず、騎士としての誇りすら傷つけられた。
自分は、こんなにも無力な存在だったのだ。
その日の出来事を、エリオは決して忘れることはなかった。
□
(あれから・・・・・・・3年経った)
繰り出されるガリューの拳を捌きながら、エリオは過去に思いを馳せる。
この3年間、エリオは地獄の苦しみを味わい続けてきた。
変わってしまった世界、失われた仲間の命、傷ついた腕の痛み、敗北の記憶。
それらと戦いながら、エリオはもう一度彼女と相対するために鍛錬を重ねてきた。
憎むことは簡単だった。
復讐鬼となれればどれだけ救われただろうか。
しかし、エリオはその道を選ばなかった。孤独の中でフェイトから貰った温もりと、キャロがあの娘に訴え続けていた悲痛な叫びがエリオを踏み止まらせた。
復讐からは何も生まれない。誰かを殺せば今度は自分が誰かに憎まれる。だから、自分が彼女をスカリエッティから解放し、この連鎖を止める。
「そのために、僕は強くなった! もう君には負けない!」
裂帛の気合いとともに、ガリューの打撃を打ち崩す。
過信でも何でもなく、今のエリオの実力はガリューと拮抗していた。しかし、拮抗しているだけではエリオに勝つ方法はない。
3年前と違い、今のエリオは1人だ。対してガリューはルーテシアからの補助魔法と援護攻撃の恩恵を受けることができる。
その僅かな差が、ジリジリとエリオの敗色を濃くしていった。
「ルー、君の名前を・・・・」
「うるさい」
雨のように降り注ぐ紫色の短剣を薙ぎ払い、返す刀でガリューの爪と鍔迫り合う。
「死んで」
「嫌だ、君を解放するまで・・・・死ねない!」
《Explosion》
カートリッジが炸裂し、ストラーダの魔力噴射口からもの凄い勢いで熱風が迸る。
真正面に位置していたガリューは炎と熱を諸に顔面に受け、怯んだ隙を突いてエリオは彼の体を突き飛ばす。
そして、そのまま魔力噴射で一気にルーテシアへと肉薄した。その後をガリューも追うが、エリオの方が僅かに早い。
「どうして・・・・どうして私の邪魔をするの」
ルーテシアのデバイスが輝き、ブーストで速度の差を埋め合わせたガリューの腕がエリオを掴む。
そのままハンマー投げの要領で回転させ、地上に向けて投げ落す。
加速Gに骨が悲鳴を上げ、内出血で視界を赤く染めながらもエリオは態勢を立て直し、迫り来るガリューを迎え撃つ。
「何も関係のないあなたが、どうして私の邪魔を・・・・・・」
「そうさ、僕と君に接点はない! けど・・・・だから・・・・・だから僕は、僕達は・・・・・」
悲しみの記憶で胸が締め付けられる。
伝えたい思いがあるのにわかってもらえない。
その痛みを分かち合いたいのにわかってもらえない。
だから訴える。飾らない言葉で、自分自身の言葉を彼女に投げかける。
かつてあの娘がそうしたように、今度は自分が。
「僕達は、君のことが知りたいんだ。それだけじゃ駄目なの!?」
ガリューの放った衝撃弾が肩を捉える。
激痛に耐えながらも、エリオは空中で踏み止まる。
不格好でも構わない、情けなくても構わない。ただ一つ、胸に灯した誓いの炎だけは、何があっても消させはしない。
「君と・・・・友達に・・・なりたいんだ・・・・それじゃ、駄目なのかい?」
「・・・・・・・友達は、いつかいなくなる」
深い悲しみを込めて、ルーテシアは告げる。
「ゼストは死んじゃった。アギトはいなくなった。友達は・・・・・他人はいつかいなくなる。けど、母さんは・・・・家族は私を裏切らない。
ずっと側にいてくれる・・・・・・だから、私はここにいる。ドクターなら、母さんを目覚めさせてくれる。あなたなんか・・・・・・・・」
両手の輝きが増し、空間に紫紺の魔法陣が出現する。そこから現れたのは戦車ほどもある巨大な甲虫。
それは地雷王という名のルーテシアが使役する巨大召喚蟲だ。局地的な地震を起こす能力を有し、3年前にエリオとキャロは散々あれに苦しめられた。
巨体の割に動きも素早く、放電能力も有している。正に今、バチバチと大気を震わせる金切り音は地雷王の角の間に生じている巨大な雷球によるものだ。
魔力変換資質『電気』を保有するといっても、エリオの体は生身の人間。あんなものをまともに食らえば、一発で黒焦げになってしまう。
「あなたなんか、いらない!」
「・・フリード!」
放電が迸る瞬間、眼下から高速で飛翔してきた白い影が地雷王に体当たりをしかけた。
一拍遅れて、渦を巻く電撃がエリオとガリューの間を掠め、着弾した大地が振動する。
地雷王を突き飛ばしたのは深紅の瞳を有する白銀の飛竜。かつて、召喚師キャロが自ら育て、使役していたフリードリヒだ。
劣勢に陥るシグナム達のもとへ駆けつけるために先行していたエリオに、やっと追いついたのである。
「フリード、ブラストレイ!」
「地雷王、焼き殺して!」
咆哮と金切り音が大気を震わせ、火炎と電撃がぶつかり合って火花を散らす。
3年前の戦いで主を失ったフリードもまた、エリオの意思に賛同して彼とともに戦っていた。
彼にとってキャロは主であるとともに母であった。その彼女を殺したルーテシアを憎むなというエリオの言葉は、彼にとって受け入れ難い内容であった。
しかし、彼は毎夜悪夢に苦しみ、それでも自分自身の憎悪と向かい合うエリオの姿を垣間見てその考えを受け入れることにした。
拒絶することが如何に簡単であるか、そしてそれがどれほど主に悲しみを強いてきたかを、フリードは最も身近な場所で見てきたからだ。
キャロを守るために近づく全ての脅威を焼き払い、打ち砕いていたかつての自分。ルーテシアの召喚蟲達は、昔の自分と同じことをしている。
だから、エリオが彼女を救うというのなら、自分は召喚蟲達を止める。それがフリードが己に課した誓いであった。
「ルー、世界は残酷かもしれないけれど、それでも君を裏切ったりはしない! 例え側にいられなくても、心が通じあっていれば、
思いはいつだって君と一緒にある。君なら・・・・・召喚師である君なら、わかるだろう!」
ガリューの斬撃がエリオの脇腹を掠める。絶え間なく繰り出される攻撃に晒され、全身は至る所に傷を帯びていた。
まるでエリオの言葉を遮ろうとしているかのように、ガリューの攻撃は容赦がない。
それは彼女の心の具現、自分を傷つけようとする輩を怖れ、排除しようとする心の表われだ。
頑ななその心を模したかのような防御はどれだけ攻撃を打ち込んでも切り崩せず、逆に繰り出される拳を捌くので精一杯だ。
今は反応速度の差で何とか凌いでいるが、このままでは何れ押し切られる。
そして、何十合目かの打ち合いの果てに打ち込まれた一撃により、ほんの一瞬だけエリオの思考が断絶する。
その一瞬の隙を、ルーテシアは見逃さなかった。
「地雷王!」
新たに召喚された地雷王の電撃が直撃し、派手な爆発が起きる。
青空に朦々と舞い上がる白煙は、まるで墓標のようだった。いち早く安全圏に離脱したガリューは、己が主の傍らに立ちながら、
それをどこか悲しげに見下ろしていた。彼はあくまで忠実な召喚蟲であり、主の思惑に反する行為は取れない。
例えスカリエッティが忌むべき悪であろうと、ルーテシアが彼に恭順するというのなら自分に反論する道理はない。
故に、彼はエリオがルーテシアを解放しようとしていることに微かな希望を見出していた。
彼ならば、或いは彼とあの召喚師ならば主を救ってくれるのではないのかと。しかし、結果は期待外れも良いところだった。
彼らの訴えはルーテシアまで届かず、召喚師の少女は無残にも惨殺された。エリオに至っては自分に有効打を打ち込むこともできなかった。
万に一つの可能性に賭けて彼を生かしておいたのだが、これでは何のためにこの3年間を耐え忍んできたのかわからない。
だが、白煙の向こうから聞こえてきた声が、ガリューの失望を払拭した。
「離れていたって・・・・・・友達は・・・・友達だ・・・・・・」
白煙が薄れ、傷ついたエリオが姿を見せる。
バリアジャケットに施された最終防御機構であるリアクティブパージが作動したのだ。
機動六課の新人達に支給されたバリアジャケットには例外なくこのシステムが組み込まれており、防ぎ切れなかった衝撃に対してバリアジャケットの
外装部を構成している魔力を爆破してダメージを緩和することができる。しかし、外装が爆発する衝撃は自身にも及び、
アンダージャケットも破損するので発動後は実質的に無防備をなってしまう。現に、深紅のアンダーのみとなったエリオはまるで幽鬼のようであり、
消耗が激しくて覇気のようなものは感じられない。だが、それでも相手を見据えるエリオの瞳から戦意は消えていなかった。
「もう、そんな寂しそうな目を見るのは嫌だ。君の悲しみも苦しみも、僕が全部受け止める。
最初は躓くかもしれない、喧嘩するかもしれないけど、僕は君と向き合いたい。友達に・・・・なりたい・・・・」
構えを取ったエリオとガリューが同時に動く。しかし、それはお互いを狙ったものではない。
肉眼では捉えられない高速で交差した2人は、まるで合わせ鏡のように空間を一閃する。
直後、2人が切り裂いたエネルギー弾が爆ぜて爆発が起きる。地上からの流れ弾が、ルーテシアに向かって来ていたのだ。
「助けてくれた・・・・・・どうして?」
「僕は君を傷つけたい訳じゃない、笑っていて欲しいんだ」
力の入らない腕を、ルーテシアに向けて伸ばす。
すぐに飛んでくると思われた攻撃は来なかった。ルーテシアは戸惑うようにエリオを見つめ、細い体をフルフルと震わせている。
それは3年前と同じ光景だった。あの時も、キャロの必死の説得でルーテシアは戦うことに躊躇の色を見せていた。
しかし、彼女はキャロが伸ばした手を取ってはくれなかった。その手を取るということは、今までの自分との決別を意味する。
変わってしまうことを、彼女は恐れているのだ。それがどれほどの恐怖であるかは、エリオにも心当たりがあった。
「そうだね・・・・・『和平の使者は、槍を持たない』・・・・・・・だ」
「何を・・・・・」
「僕は・・・・君を傷つけない」
瞬間、エリオの体は重力に引きずられて自由落下を開始する。ストラーダを待機状態に戻したため、飛行の手段を失ったからだ。
意図の読めない行為に、ルーテシアの戸惑いは増す。これは自分を惑わせる作戦なのか、それとも本気なのか、回りくどい自殺か。
とにかく馬鹿げた行為であることに変わりはない。こんなことをして何になるのか、まるで理解できない。
そうこうしている内に、エリオはどんどん遠ざかっていく。助けるべきか否かの判断がつかない。
彼はスカリエッティに仇なす敵だ。わざわざ助けてやる理由など、自分にはない。ないはずなのに、何故か見捨ててはいけないという思いが
込み上げてきている。友達になりたいと告げた彼の言葉が何度も頭の中で反芻する。
「ダメ・・・・ガリュー!」
気づけば、ガリューに救助を命じていた。しかし、それよりも早く地雷王を蹴散らしたフリードが急降下し、
落下するエリオの体を掴んで戦域から離脱していく。それを見て我に返ったルーテシアは追撃を命じようとしたが、
それはこの場の指揮官であるグリフィスからの通信で阻まれてしまう。
『そこまでだ。レジスタンスは撤退し、施設は守られた。君が戦う必要はもうないよ』
「逃がして良いの?」
『何度だって君の前に現れるよ・・・・そう、何度でもね』
意味深な笑みとともに、グリフィスは通信を切る。眼下の戦闘機人や防衛用ガジェット達も、彼の命令で帰投し始めていた。
それを見下ろしながら、ルーテシアは物思いに耽る。どうして、自分は落下するあの少年を助けようなどと思ったのだろうか。
彼が目障りな鄭であるという認識は変わらない。自分と母親を引き離そうとする障害であるという認識は揺るがない。
にも関わらず、自分は彼を死なせてはいけないと思ってしまった。
「エリオ・モンディアル」
無感情な声で、ルーテシアは少年騎士の名前を呟く。
その言葉は彼に届かず、物言わぬ召喚蟲は何も答えない。
無意味な反芻だと思い、ルーテシアはそこで考えることを切り上げた。
□
薄暗い一室で、ジェイル・スカリエッティは無数に展開されたディスプレイに走る文字を追いかけていた。
ここは軌道衛星上を巡回している聖王のゆりかご内に設けられたスカリエッティの研究室だ。
ゆりかごはミッドチルダの2つの月から降り注ぐ魔力を受けることで高い防御性能を発揮でき、次元間跳躍攻撃すら可能となる。
事実、到達直後に試射として放った魔力砲は本局から出動した艦隊の半数を撃墜し、残る艦船の3割も航行不能に陥らせた。
これによって完全な武力優位を確立したスカリエッティは、その後要求だけを管理局に突きつけて煩わしい交渉は配下のナンバーズに任せ、
自分は研究に没頭している。
ここは誰にも邪魔をされない楽園であり、必要なものは随時地上から取り寄せることができる。
珍しい技術やロストロギアは管理局を使って集めることができる。正に楽園だ。
「ドクター、お茶の時間です」
「ああ、ウーノ。もうそんな時間か」
作業の手を休め、スカリエッティは差し出されたカップを手に取る。
仄かに香る温かい香りは彼が愛飲している銘柄だのものだ。最も、彼自身に好き嫌いはないので単に習慣によるものだ。
彼はこの世に生を受けてから、このお茶以外の葉を用いた紅茶を飲んだことがない。
「如何ですか?」
「ああ、美味しいよ。さすがは私のウーノだ、君はよくやってくれている」
「ありがとうございます。お食事の方はいつものように?」
「ああ、こちらに持ってきてくれ。それと、後で散髪を頼む。もう長らく切っていないからね」
「では、そのように」
無感動ながらもどこか満ち足りた様子で、ウーノは一礼する。
スカリエッティの身の回りの世話は全て彼女が任されている。彼女にとってスカリエッティに仕えることが幸せであり、
彼を思っている時間が最も幸福な時であった。その忠誠心を知っているからこそ、
スカリエッティもまた、彼女を自分の最も近いところまで踏み込ませることを許している。
「聖王陛下の様子はどうだい?」
「はい、ディエチの報告では、当初に見られた情緒の乱れがまた現われたようです」
「乙女心は複雑なのさ。何、彼女が良い抑制剤になってくれている。アレがこちらにある限り、あの娘も我々に逆らうことはないさ。
多少反抗的でも、彼女のやりたいようにさせておくと良い」
「では、そのように。それと、地上で反抗勢力の活動が活発化してきているようですが・・・・・・」
「そういう煩わしいのは管理局に任せておけば良い・・・・・・・ウーノ、少し眠るから、後で起こしてくれ」
「はい、ドクター」
顔を上げた時に、もうスカリエッティは椅子に腰かけたまま寝息を立てていた。
3年前から、彼はずっとこのように椅子の上で眠っている。起きている間はひたすら研究と実験に没頭し、
食事や入浴もほとんど片手間で済ませているのだ。安穏な環境が、彼の中の無限の欲望を刺激しているのである。
ここでは煩わしい争いに巻き込まれることはなく、追っ手から身を隠す必要もない。
だから欲望の赴くままに研究ができる。まるで、ジェイル・スカリエッティという存在自体が研究を続けるためのパーツでしかないかのように。
「お休みなさい、ドクター」
スカリエッティの体に毛布をかけ、ウーノは一礼して退散する。
どんなに哀れに見えても彼は彼だ。自分の創造主であり、仕えるべき主であり、愛すべき男なのだ。
だから、誰にも邪魔されずに彼を思うことができる今が、彼女にとって一番幸福な時間であった。
□
「そう・・・・あの娘に会ったんだ・・・・・」
包帯だらけの姿でベッドの上に横たえられたフェイトは、帰還したエリオの話を聞いて複雑な表情を浮かべる。
3年前に彼女が受けた傷は酷いものだった。左腕と両足を切断され、内臓破裂に胸部の骨折、首筋には頸動脈に達するほどの
大きな切り傷が走っていた。ショック死してもおかしくない状態であり、保護された後も2年間は昏睡状態のままだったのだ。
人体の代替技術が進んだ今でも彼女の治療は困難であり、生命維持装置で辛うじて生き長らえているような状態だ。
「キャロは、あの娘に殺されたんだよね」
「はい」
「エリオは、それでもあの召喚師の娘を助けたいの?」
「はい。キャロもそれを望んでいると思います。まだ、あの娘を許せるかどうかはわかりませんが、
あの寂しそうな目を見ていると、どうしても放っておけなくて」
「なら、エリオのやりたいようにやれば良いと思うよ」
辛うじて動く右手を伸ばし、フェイトはエリオの頬に触れる。
氷のように冷え切っていたが、エリオにはその奥に秘めた確かな熱を感じ取って瞼を閉じる。
「私は、何にもできないけど・・・・・エリオがあの娘と分かり合えれば良いって・・・・いのって・・い・・る・・・・」
意識を失ったフェイトの手がベッドの上に落ちる。
目覚めてからまだ数ヶ月、長時間起きていられるだけの体力はまだ回復し切っていない。
「フェイトさん」
彼女だって辛いはずだ。キャロが死に、親友達は生死不明、変わってしまった世界と、尚も戦い続ける仲間達。
本当は、自分だってみんなと一緒に戦いたいはずだ。口ではああ言っていたが、キャロを殺したあの娘のことを恨んでいるかもしれない。
けれど、そんな自分を押し殺してフェイトは自分のことを導こうとしている。
痛々しいその姿にエリオは複雑な思いに駆られながら、包帯だらけのの体に毛布をかけ直して自分のベッドへと戻る。
彼自身も今は入院患者だ。隣のベッドでは、アギトに付き添われたシグナムが静かに寝息を立てている。
(キャロ、僕はルーを・・・・・・必ず・・・・・・・・)
掲げた左手に巻かれた羽根状のアクセサリーが鈍く輝いたような気がした。
ブーストデバイス“ケリュケイオン”。キャロの形見であるデバイスは、3年前から一度として起動していない。
エリオ自身に適正がないことと、彼女がキャロ以外に使われることを拒んでいるからだ。
だから、エリオはケリュケイオンを戒めとして身につけている。彼女を見る度に、胸が締め付けられるように痛くなり、
大切な人を守れなかった弱い自分を忘れずに済むからだ。
やがて、疲労が呼び水となったのか、意識がまどろんでくる。
睡魔に引きずられる寸前、瞼の裏にあの召喚師の少女が寂しそうに佇んでいる姿が見えた。
□
ゆりかごからの次元間跳躍攻撃から、クロノ・ハラオウンは何とか生き延びることができた。
ゆりかごの調整が不完全であったため、彼が搭乗していたクラウディアに砲撃が当たらなかったのだ。
しかし、それによって艦隊は壊滅的な打撃を受け、ゆりかご破壊は不可能となってしまった。
そして、ほうほうのていで帰還したクロノを待っていたのは、かつての仲間達の訃報であった。
高町なのは、八神はやて、ヴィータ、リインフォースU、シャッハ・ヌエラ。何れも大切な仲間であり、かけがえのない友人であった。
いや、厳密に死体が確認されたのはシャッハだけであったが、ゆりかごに突入したなのは達が帰還しなかったことが全てを物語っている。
更に管理局はスカリエッティに服従し、あろうことか禁じていた質量兵器や戦闘機人の量産を開始し、遺伝子操作による肉体強化を導入し始めた。
確実に歪み始めて世界を垣間見て、クロノはその歪みを正すために信頼のおける仲間を集めて管理局から離反する道を選んだ。
そして、強奪したクラウディアで次元の海に潜みながら、レジスタンス活動を続けているのである。
「シャマル、シグナム達の様子は?」
「エリオはともかく、シグナムは重傷です。あの様子ではしばらくの間戦闘は行えないと思います」
「そうか、そいつは痛手だな」
縦長の机の一端、いわゆる議長席に座ったクロノは、列席している面々の顔を見回した。
左から順番に、シャマル、ティアナ、ユーノ。これに自分と地上で偵察を行っているヴェロッサにザフィーラ、
医務室で入院中のシグナムとエリオ、付き添いをしているアギトがレジスタンスの主要メンバーだ。
「ヴェロッサからの報告によると、管理局の融和政策は概ね成功しているらしい。既に遺伝子操作や人体の機械化は一般的な技術となり、
民間レベルにも浸透しつつある」
「管理外世界への不可侵原則もきちんと遵守している。侵略行為もあくまで管理世界が要求を突っぱねた時の最終手段となっているし、
目当てのロストロギアや技術が手に入れば強引な介入もしてこなくなる。いくら戦力が充実したからって次元世界はそれこそ無数にあるんだ、
いちいち全部の相手をしていたらキリがない。スカリエッティも管理局には原則、技術提供くらいしかしないから、ゆりかごが良い抑止力になっているね」
「つまり、次元の平和は概ね保たれている」
「けど、その裏でどれほどの人命が弄ばれているのか、彼らは知らない」
ユーノの頷きに、他の面々も表情を硬くする。スカリエッティがどれだけ非道な実験を繰り返しているのか、
それを彼らは嫌というほど見てきたからだ。
「今のところ公にはなっていないけど、年間で行方不明者が3年前の8倍にまで膨れ上がっている。
ミッドだけでもこれだ。他の世界も合わせると・・・・・・考えたくないね」
「人体実験や技術者などの人的資源の誘拐。これもスカリエッティ・・・・・というより、管理局の仕業か」
「今の管理局に倫理を問うのは無意味よ。レジアス派閥の中でも特に過激な連中が台等していて、穏健派は隅に追いやられているようだし」
苦々しげにシャマルは言う。彼女は故レジアス・ゲイズ中将と面識が合った訳ではないが、シグナムを通じて理想の士であるとともに
優秀な人間であったと聞いていた。生き急ぐ余りに道を違えてしまった哀れな男。純粋に平和を願い続けた不器用な人間、それがシャマルの見解だ。
そして、それはどこか主であるはやてに通ずるものがあった。彼女もまた、過去の闇の書の主が起こした悲劇と大罪の責を一身で受け止め、
贖罪のために生きようとしていたからだ。そんな2人の理想、充実した戦力と迅速な対応が可能な部隊が、
違法研究によって実現していることは質の悪い冗談のようであった。
「レジアス・ゲイズ・・・・・・良くも悪くも影響力の強いお人か。オーリス女史も無事でいてくれれば良いが」
レジアスの娘であり、恐らくは唯一彼の思想を正しく理解しているオーリス・ゲイズもまた、信頼できるシンパを引きつれて地下に潜っている。
今はどこにいるかわからないが、できれば合流して戦力を結集させたいというのがクロノの本音であった。
実際、今のクロノ達に管理局と本格的に事を構えるだけの戦力はない。
この3年間の地下活動で資金源や補給の目処は何とかついたが、強大な管理局とその上に君臨する聖王のゆりかごを相手にできるほどではなく、
関連施設へのサボタージュや反管理局陣営への支援が主な活動内容となっている。
「それにグリフィス・・・・・彼が向こうにいたんじゃ、こっちの手の内もある程度読まれてしまう」
「ユーノ、彼の言い分は間違っていない。彼は今でも時空管理局の局員・・・・・ただ、体制に忠誠を誓うか、誇りに忠誠を誓うかの違いでしかない」
「けど、彼はシグナムを・・・・・仲間だったんだろう」
「戦場ではそういうこともある。彼も必死なんだよ、今を・・・・日常を守ることが」
クロノ自身、自分達の行動が正しいのかどうかは判然としていない。スカリエッティを打ち破ったところで世界は変わらないだろうし、
解禁された違法な技術の発展に歯止めをかけることは難しいだろう。自分達の行為は、社会に対して無用な混乱を起こすだけなのかもしれない。
だが、それと人体実験の容認や質量兵器の使用は別だ。平和と秩序を守る法の番人が悪魔の如き非道に走ることだけは、何としても阻止しなければならない。
「そういえば、ザフィーラがスバルを見かけたそうよ」
「スバルを?」
懐かしい名前に、ティアナは見えぬ目をシャマルへと向ける。現在、彼女の右目は視力を有していない。
3年前の戦いで起きた不慮の事故により、光を失ってしまったのだ。射撃型の魔導師として戦い続けることは絶望的であり、
今は現場で管制を担当するシャマルに代わってクロノの補佐をするのが彼女の仕事だ。
「スバル、どんな様子でした?」
「小さい女の子を連れていたそうよ。見失ったから、詳しいことはわからないらしいけど」
「そうですか・・・・・あいつ、まだ戦っているのかな?」
スバル・ナカジマはここにはいない。彼女は、戦闘機人である自分がレジスタンスにいたのでは都合が悪いだろうと行方を眩ませたのだ。
だが、ティアナは彼女の真意を知っている。スバルは、スカリエッティに復讐しようとしているのだ。殺された姉、ギンガ・ナカジマの仇を討つために。
(スバル・・・・お願いだから、無茶だけはしないで)
□
着地の衝撃を足のばねで吸収し、手近な岩陰に身を潜めたスバルは周囲の気配を探る。
聞こえてくるのは野鳥の鳴き声と風の音、そして微かに響く振動音だけだ。マッハキャリバーのセンサーにも不審な反応は検知されない。
たっぷり20秒はそうして息を殺し、人がいないことを確認して警戒を解こうとした時、不意に小さな手が頬に触れた。
「スバル」
「・・・・イクス」
手の主はまだ年端もいかない幼子であった。だが、身に纏う雰囲気にはどこか高貴さが感じられ、
無機物染みた印象と合間ってまるで童話の中のお姫様のような印象だ。
彼女の名はイクスヴェリア。長い眠りから目覚めた古代ベルカの王族の1人だ。
本来ならばずっと眠っているはずだったのだが、数ヶ月前に起きたマリアージュ事件の際に偶然にも覚醒し、
その場に居合わせたスバルと成り行きで行動を共にしている。
「危ないですから隠れていてくださいと言ったでしょう」
「こんな平原の真ん中に、人なんていませんよ」
「そうかもしれませんが・・・・・・はあ、もう良いです」
イクスの言う通り、ここは平原のど真ん中だ。街からはかなり離れており、人の気配はまったくない。
その静かな大地を引き裂くかのように、一本のレールが横断している。これはこの先の工場に物資を運ぶための
連絡便が通るもので、さっきまでスバルはその列車に潜り込んで積み荷の中身を調べていたのだ。
「イクスのわがままは今に始まったことじゃないですからね」
「王様ですから」
「はいはい」
「ハイは1回です、スバル」
「わかりました・・・・・もう、ああ言えばこう言う」
嘆息しながらも、スバルはどこか楽しそうにイクスの頭を撫で回す。
誰にも頼らずに、復讐のための孤独な生活を送る中で出会った妹分であるイクス。
彼女との触れ合いは、殺伐としたスバルの心に潤いを与えてくれていた。
「それで、スバルが望むものはあそこに?」
先ほどまでと打って変わり、毅然とした眼差しでイクスは地面を走るレールを見つめる。
幼いながらもそこには王としての貫録が見え隠れしていた。
「はい、確かにありました」
コンテナに積まれていた無数の基盤、人体を模した義手や義足、人工皮膚や人工筋肉に人間では扱いきれない武装の数々。
それらが全て、このレールの先にある施設へと運ばれている。
「この向こうに、戦闘機人製造プラントがあります」
元機動六課所属、スバル・ナカジマ二等陸士。
自らの姉と師の仇を取るために、孤独な戦いを続けていた。
to be continued
17 :
B・A:2008/11/03(月) 23:58:19 ID:sQXH5ZVD
以上です。
マリアージュ事件はこちらでも起きています。
スバルがイクス覚醒の場に居合わせたのは、元災害救助隊としての性分で人命救助をしていたからです。
無論、ばれたらお縄なのでこっそりと。
これでスカ側が倒される結末ならワンパ極まれりだな
何だろう。
珍しく人が居ないのか。
>>17 乙!
聖王陛下の『抑制剤』ってやっぱママですかね。
流れが違うから他にも生きてたりしそうな。
次も期待してます。
珍しくも何も前スレ埋まってないのにみんなこっちに移ってたらそれはそれで困る
>>17 GJ!
ここのイクスは健在のようですね。
どうか氏のやりたいようになさって下さい。
>>18 ワンパて。
倒すか倒さないかの二つしかないのに。
というか、主人公が敵を倒すことをワンパといったら、古今東西ワンパだらけじゃ
>>22 結構前からこの職人さんの投下後に定期的に同じような事言ってるのがいるから
多分
>>18は職人付きのアンチ
スルーしとけ
>22
倒す倒されるの他にこれがあるぞ
スカ「世界の半分をやろう、どうかね?」
(選択肢、はいorいいえ)
エリ「わかりました!」
(はいを選択した)
(2人は仲良く世界を征服した)
某クエストの初代みたいな展開だと面白いかも
同じ人が同じ展開を書くからワンパなんだ、と言いたかったんじゃないかな?
>>18は。
かくいう俺も少しだけ、ほんの少しだけ、「ん? もしかすると、この後って…」と思ってしまった。
とはいえ、本編で『悪役』ポジションについている人物を勝たせるっていうのも難しいよな。
本編でいわゆる『セイギノミカタ』してる人たちを負かすことになるから、そこら辺で批判が出てくるのはほぼ間違いないだろうし。
かといって、『セイギノミカタ』が勝つシナリオを書くと、俺とか
>>18みたいな「ワンパ乙」とか言い出す奴が出てくる。
作者(職人だっけ?)には好きなものを書いてほしいとは思うが…読み手の好みを考慮する書き手さんだと、対応に苦しむかもしれないよな、こういうのって。
あと、何ゆえ質量兵器がタブー扱いされてるのか誰か教えてくれないか。
確たる理由付けもなしに駄目だ駄目だと言われてたと記憶してるんだが…それとも、何か明確な理由があってのことだっけ?
長期汚染が酷いとか誰でも使えるとか、そういう理由だったと思う。
ただ、批判側がいろいろ指摘してるようにツッコミどころ満載のザルな設定でもある。
設定ザルなのは質量兵器云々に限らんけどなw
まあ設定がフィーリング優先でザルなのは原作者自身も半ば認めてるからなあ。
>>26に加えて言うなら、ガンダムにおけるミノフスキー粒子とかGN粒子みたいな
作劇中の嘘を成り立たせるもので、あんまり突っ込んじゃいけないものだと思う。
魔力攻撃と実弾武装のハイブリット戦法とか考えちゃう俺リンクス
バリア剥がしてグレラン直撃とか
>>24 後、あるとしたら全滅と和解と第一部完か。
作者さんが設定にあまりこだわらない人なら
そういうものだと認めて、受け入れたらどうだろうか。
>>17 GJ!!
エリオにとってこんな過去があったとなるとますます、ルーテシアを救ってあげて欲しいと思いました
そしてスバルも生きてて本当に良かった
でも、ギン姉…そして師ってことは…
それと粘着アンチはもう放っておいた方がいいと思いますよ。
それを気にしてB・A氏らしさがなくなってしまうのは凄くいやですし…
職人様一人一人に特徴があって、それが面白いのに、否定をするというのはちょっと自分勝手すぎるのではと思います。
>>17 GJ!!です。
あまり、イクスさんについては詳しく知らないのですが、王の相手は王がするって感じが堪らないですw
過去の記憶があるのなら、順調にアルハザードや古代ベルカと同じ道を辿っているのだろうか?
製造プラント襲撃という事は……兵隊を作るのかな?w
>>31 呪文詠唱している間に、アサルトライフル連射とかして呪文発動までの時間稼ぎとかは出来そうだ。
凄く久しぶりに戻ってきたんだけど、保管庫って更新どうなってるの?
どう、というと?
スピード速くなってびっくりしてるってことか?
スレ一覧に第79スレまでしか於置いてないんだけど
>>38 あれは保管先がwiki外だから多分549氏にしか更新できない。
最近見かけないから忙しいんじゃないかな。
作品の保管は別の人が順調にしてるんだけど。
そういうことか。ありがとう
過去ログが必要なら有るぞ?うpろうか?
>>38 そういえば、スレ一覧の44スレのTEXTがずっとNot Found状態なんですけど、
だれかTEXTの過去ログ持っている人はいますでしょうか?
ちょうど44スレ内で発表された作品に関係するレスを見たかったんですが。。。
>>42 HTMLをそのまま保存したものでよければあったはず、今ちょっと確認できんけど
>>41じゃないけど明日以降でよければどっかのロダにあげるよ
>>17 GJ!!
エリオはフェイトとキャロ二人分の思いを背負いながら生きていたんだな…
どうりであそこまで心が強いわけだ
その思いさえ捨てなければきっと救えるはず!
もう一人の主人公スバルもどういう形でエリオと合流するのか楽しみだ
自分も氏には好きなよう書いてほしいけど、
>>25の言うように無茶に意見取り入れてエリオやスバル達を負けさせるとかはやめて欲しいです…
46 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/04(火) 21:58:54 ID:KgIs92Kc
>>17 GJ!!
フェイトさんが気の毒すぎる・・・
そう言えばヴァイスはどうなったんだ?
>>17 機人殺しともいえるスバルが健在ならなんとかなりそう、って思えちゃう俺だ
>>46 SSXの話?
聴いてないけど、ヴの字も出て来なかったんだろどーせ
>>48 むしろ主役を食いかねない程の美味しい立ち位置でしたよ?
ティアナから盗んだファントムブレイザー撃ちながら敵陣に突っ込んで、ティアナと背中合わせて軽口叩き合ってるシーンは鳥肌立ったw
>>51 銃使い同士の共闘は燃えるよなw 惜しむらくは映像で見たかったってことだ。
一体どこからどう突っ込めばいいのやら……
狙撃手が、突っ込んだのか。
状況が気になるぜ、狙撃での支援が不可能だったのかな?
あと、ストームレイダーをフルオート連射したのかとか、ヴァイスの魔力が持つかとか心配してしまう。
狙撃手が突っ込むって、某マクロスを思い出したじゃないかw
声は違うが、女のために特攻して果てたあの人。
>>17 GJ!!
個人的にはこれまでとは違った世界感で展開されているし、ワンパターンにはなってないかと思いますぞ
このあとエリオ達が勝ったとしてもそれは完全な勝利ではないと思うのでかなり今までとは違う作風に感じます
作者様は書きたいように書くのが、最も良いと思うし、そちらの方が良作になるかと
まあアンチが湧くのも人気があるからこそだと思います
スバルは大変な思いをしたけど、完全な孤独になっていたわけじゃなくて安心しました
イクスもいなくなったと考えるとぞっとします。それこそ復讐の殺戮機械となって・・・
フェイトさんもかわいそうすぎる・・・そしてエリオも・・・
本当は彼もスバル以上に復讐の気持ちを持っていたと痛いほど感じました
せめてキャロの願った通りエリオがルーテシアとわかりあえる結末を、そしてスバルに安息の未来を願いつつ次回を楽しみにしております
スバル一人(イクスもいるけど)で動いてたら、大怪我した時とか大変そうだな、とかふと思った。
戦闘機人の修復なんて、普通の医者にはできないし。
倒した機人からパーツを奪って修復にですね
↑左腕がやられたら「さよならギン姉…」と言うんですね、分かりますwww
>>60 「あぁ、痛いなぁ…これじゃもう使い物にならないや、だから…代わりを探さなきゃね?」
と言いながら笑顔でやられた相手からもぎ取るスバルさん
そしてこのパーツ以外は要らないんだと頭部に振動破砕ですね
62 :
板垣:2008/11/05(水) 15:45:32 ID:IFfqntSp
スバル!新しい顔だよ!
>>17 キャロにギンガ…
相手を許そうとするエリオと許さないスバル
対称した道を辿る二人がどうなるか気になる。GJ!
SSXでの一番の勝ち組はパパ
>>64 味方に対しては今までと変わらない態度で接するけど
敵に対してはまるで容赦のない殲滅ぶりとか、そんな歪み方っていいよね
>>66 エリオもキャロが何も言葉を残せずに死んでしまったり、別次元での二人みたいに互いがいるだけでおかしくなりそうなぐらい幸せで愛しあっていたら…
スバルもイクスがいなかったら…
そうなってたら、スカ側についた人間を全て皆殺しにするぐらい歪んでたかも
でも、そんな話もぞくぞくして目が話せなくなる不思議
ただ100%救いがないのが欠点
そういった意味でまだ二人には幸福になれる希望がわずかながらもある所が今回の世界の見所の一つだと思う
>>スカ側についた人間を全て皆殺しにするぐらい歪んでた
それはそれで読みたいなぁ。
殺戮マシンと化したスバル。
悪鬼羅刹のエリオ。
くそっハッピーエンド大好きな俺は負け組かorz
>>69 俺もハッピーエンドの方が大好きだぞ
ただそういう復讐鬼となったエリスバもすごく似合うという事
エリオはストラーダで敵の心臓を貫抜いても顔色一つ変えず、引き抜いた時の大量の返り血で真っ白なバリアジャケットが真っ赤にそまり、崩れ落ちた相手を虚ろな目で見つめる…
スバルは常に暴走状態の戦闘機人モードで相手の原型がなくなるまで相手を殴り続ける…
ハッピー好きでもこういう二人の姿も素敵と思ってしまうのだよ
レジなのSSのレジィとなのはさんの可愛らしさは異常
>>71 同意だぜ。
俺の中ではベストカップルだ。
上の流れでスイッチが入った。こんな感じ。二レス分だけね
1
世界が僕を苦しめるのなら、僕は世界を苦しめる。
世界が僕に背を向けるのなら、背中から貫き屠ればいい。
こんなはずじゃなかった世界を味わうのは、僕だけでなくていい。
皆が味わえばいい。
そして絶望の苦悶の中で問えばいい。
――世界はこんなはずじゃなかったのに、と。
少年の涙は、とうに枯れている。否、涙など、流す理由はない。これから流すとすれば、それは歓喜の涙なのだろう。
全てを奪い去った世界から、全てを奪い取る。そのために少年は槍を握る。
与えられ、奪われる。奪われ、与えられる。
太陽と月のように交互に訪れる希望と絶望。
命を与えられた。父がいた。母がいた。温かい、何不自由のない生活があった。
誰かが言った。お前はクローンだと。
名を奪われ、父を奪われ、母を奪われた。冷たい牢の中で辱められ、屈辱を屈辱と感じる心もすり減る日々。
家族を与えられた。母と呼べる美しい人がいた。妹のような少女がいた。
誰かが戦いを始めた。少年は、家族を守れなかった。
美しい人の生首を投げ与えられ、襤褸切れのようにすり潰された少女の亡骸を抱きしめて少年は絶叫した。
負け犬と罵られ、反逆者だと追われ、獣のように狩りたてられ、屑のような誇りとともに友人たちは散っていった。
力が欲しい。少年は願う。
力を得た。少年は、少年であることをやめた。負け犬であることをやめた。
エリオはその日、復讐者へと生まれ変わった。
ミッドチルダ南方。
晴天に雷が轟いた。
雷をまとった悪鬼羅刹が、世界に宣戦を布告する。否、死刑を宣告した。
2
これがあたしなんだ。
少女は悟った。
これがあたしの、本性なんだ。
父を失い、姉を失い、あらかじめ失われていた母の名を辱められ、少女は吼えた。
恩師を殺され、親友を殺され、帰るべき場所を奪われ、少女は叫んだ。
守ると誓った。守れなかった。
帰ると誓った。帰れなかった。
一緒にいようと誓った。いられなかった。
少女には何もできなかった。
少女は自答する。答えは存外に簡単だった。
――あたしは戦うために作られたのだから
だから、守れるはずなどなかったのだ。
帰れるはずなどなかったのだ。
一緒にいられるはずなどなかったのだ。
それはあらかじめ叶えられるはずのない希望。軸に近づく漸近線のように、無限に近づくことはあっても永遠にたどり着けない希望。
だったら、戦えばいい。
守らなくていい。壊せばいい。
帰らなくていい。進めばいい。
一緒にいなくていい。自分一人でいい。自分以外は破壊してしまえばいい。
なんて簡単なことだったんだろう。どうして、気付かなかったんだろう。
少女は笑う。
もっと早く気付いていれば良かったのに。
守るものを作らなければ、壊されることもない。
帰る場所がなければ、帰ろうとしなくてもいい。
もっともっと、簡単に、楽に、こんなに苦しまずに生きていけるのに。
ああ……だったら、もう、これでいいよね。
スバルはその日、戦闘機人モードを永久に開放した。
ミッドチルダ北方。
大地が衝撃に軋んだ。
大地を震わす殺戮機械が、世界に宣戦を布告する。否、死刑を宣告した。
以上、お粗末様でした。
って、SSにもなってないな。
>>75 なんという…最後は復讐者同士でぶつかり合って終わるんですね
77 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/05(水) 22:14:45 ID:0rNlole0
ちょっとお尋ねしますが、アギトの翼と尻尾って、直に生えているか、着脱式のファッションなのかご存知の方はいらっしゃいますか?
その、どちらかで後背位の描写が変わってくる気がするので、宜しければ教えて下さい。
ありゃ身体から生えてるだろ。
>>78 ここはやり易いように変えても良いのでは?
>>75 言い出しっぺだがここまで書いてくれて本当にサンクス
もう決して救われない二人だけど、決して報われないけど、全て終わって力尽きたあとにはあの世できっと大切な人達と再び暮らせるようになると思う…
B・A氏のストーリーでは哀しき二人の戦士に祝福のあらんことを…
>>81 「参ったなぁ…あいつらもこっちにいるんだった」
と、言いながら地獄を舞台に復讐劇の第二幕がですね
アギトでエロ書こうとすると
真っ先にリインやシグナムが出てきて百合になるのが困る…
>>83 力量次第だな
やろうと思えば鮫島さんとだってくっつく
それがパロSS
>>83 リインUの様に身体を大きくできることが前提になるけど、
普通に考えれば、第一候補はゼスト?(但し、ルーテシアをどうするか)
sts本編終了後と考えれば、ゼストと同じ槍騎士という事でエリオとか。師であるシグナムとも縁が深いので話を膨らませやすいと思う
何でも良いなら、sts開始前のゼスト達に保護される前の状況、研究所員に陵辱とかかな・・・?
百合だって別に良いんじゃね?形になるのを楽しみにしてるぜ!
しかし、鮫島はハードル高すぎ。棒高跳びのバーを走って飛び越えるのと同じくらい無理・・・飛べる奴はきっと背中に羽根がある
>>83 アギトとリィンの百合は見たいし想像も出来る
が、アギトとシグナムは想像が……
>>83 何を困る事がある?
さぁ、百合を書く作業に戻るんだ!
ふと思ったんだけど、もしもアギトとヴィータが百合った場合はキャラの書き分けできるのか?
皆様ありがとうございます、アギトのパーツは直生え路線で行ってみます。
いつぞやのパラレル時空電波妄想のリイン・エリオ・アギトで書いてます。
エロは特に下手糞なので頑張ってみます。
>>82 せめて多くの人を悪とはいえ殺したとしても天国に行って幸せになって欲しいな
あ、しかし地獄でもエリスバが再開して今度は力を合わせて悪を裁いていく、文字通りの永久の大切なパートナーエンドみたいでありかも
>>90 もしかしてアルカディア氏ですか?
期待しています
>>91 むやみに職人さんの名前を出さないほうがいい
万一間違えた場合、書いた名前の職人さんと、間違われた職人さんの両方を不快な思いにさせるから
「いつぞやの〜」とか言ってるから、誰なのか特定できるんじゃねーの?
別に間違われたとしても職人側はm9(^Д^)プギャーとしか思わないってw
リイン2とアギトのエロだけど、フルサイズでつながったまま2人が元に戻ったらスプラッタだよな。
オティンティンが圧縮されて潰されるの想像して尻の穴キュッってなった
>>95 むしろリインとアギトの方が危険なんじゃ……と思ったけど耐久度が
ユニゾンデバイス>おにんにんだと確かにそうなるのか……恐ろしい話だ
その方法を使いロリコン強姦魔を人知れず退治する必殺仕事人になれるなw
>>82 なのはたちの仇が地獄に着き、数時間に、今まで殺した奴に遭遇し襲われ、戦闘開始になると思いきや、
大音量で謎の警鐘が鳴り響く……冥王一味が来るぞぉ!!という物凄い切迫した叫び、あわてて逃げ始める復讐者たち、
何も知らない到着したばかりの奴らはそこで目にする……数十人規模の首に首輪を付けられお互いがお互いに繋がれた状態で神輿のようなものを担いでいる光景を、
そしてその上に鎮座するは、高町なのはッ!!そのBJは今だ純白、ここに着てから一度とて触れさせず、返り血も浴びない位置から圧倒的な攻撃で虐殺した事を意味する。
地獄の乱世程度、肉体という檻から開放され、常にフルドライブで戦える彼女に収められないはずがなかったッ!!
そして彼女に付き従う、機動六課改め冥王軍は今日も今日とて、地獄に着たばかりの何も知らず大物気取りの愚か者に恐怖を刻み込むのだッ!!って妄想がでた。
地獄に着いた瞬間に、なのはに出会って久しぶりだね……待ってたよって消し飛ばされるのもwww
そろそろ雑談自重してSS投下を待とうか。
tes
ハァハァ ハァハァ ・ ・ ・ ・ ・ う ・ ・ ・ ・ 鬱分が ・ ・ ・ 鬱分が欲しいで ・ ・ ・ す ・ ・ ・ ・
丁度鬱物が書きたくなってきた辺りですが、どの系統の鬱がお好みですか? 書けそうならば読みきりで書きますよー
どろどろ三角関係。
先生! 人死系の鬱を要求したくなるのはは中二病発症の兆候でしょうか!
死で感傷を誘うのはあまり好きではない
ちょうど本編放送中に、「スカリエッティが完全勝利した世界」で書いてた人がいて
登場人物だいたいみんな死んでて、浮浪者になった爺ユーノが……みたいな話があったが
そういう感じの、「直接鬱々してるんじゃなくて、本編知ってる俺たちだからこそ鬱」みたいな
まぁ人が真でも最後に芽が出ると救われたような話になるけど、欝はその反対だからな
107 :
ザ・シガー:2008/11/06(木) 23:45:52 ID:Guagt3FU
欝が望まれる中、あえてギャグを投下する俺参上。
っつう訳で短めのバカギャグ投下します〜。
機動六課の男達IN居酒屋
その日、機動六課の主要男面子四人、ヴァイス・グリフィス・エリオ・ザフィーラは居酒屋へ行った。
機動六課の数少ない男衆が親睦を深めるという理由もあったが、実際はエリオのちょっとした相談を男同士で腹を割って語らう為である。
「ふんふん、つまりお前は“キャロと仲が良いけど、ルーテシアって子に好きと言われた”と」
エリオの話を反芻しながら、ヴァイスがグラスの焼酎をあおる。
当のエリオは年齢の関係上アルコールは飲めないのでコーラの注がれたコップを手に頷いた。
「は、はい……」
「キャロが好きなら別に迷わず断っちまえば良いじゃねえか」
「でも……そうしたらルーが悲しみますし……」
「そういう優柔不断な態度が一番いけねえんだよ! 男ならバシっと行け! バシっと!!」
酔ったヴァイスはアルコール臭の混ざった息と共にエリオに一喝。
言っている事はもっともだが、酒臭い叫びにエリオは困った表情を浮かべる。
しかしそんな彼に、今度はメガネをかけた美青年が肩を掴み声をかけた。
「いやいや、エリオ君。ヴァイス陸曹の与太話に耳を傾けることは無いよ?」
「なに! グリフィスてめえ! 誰の話が与太話だ!?」
「シグナム隊長やティアナの他にアルトまでキープしているあなたに“優柔不断”がどうのと言う権利があるとでも?」
「ばっ、ばか言うんじゃねえ! お、俺はシグナム姐さん一筋……だよ」
最後の方がどうにも弱弱しくなった言葉にはあんまり説得力はなかった。
酔っ払いを黙らせると、グリフィスは手にしたワイングラスを傾けて血のように紅い雫で喉を潤す。
そしてエリオの肩を掴むとメガネ越しに魔性とも呼べるその瞳で彼を見つめた。
「エリオ君、確かに君がキャロを選べばルーテシアは泣く。これは事実だ」
「は、はい……でもキャロは裏切れないし、だからってルーも泣かしたくないし……」
「うん、そうだね。でもそれなら二人とも選んでしまえば良いんじゃないかな? キャロとの関係はそのままでルーテシアとも付き合ってしまおうじゃないか」
「ええ〜!? いや、でも……それって浮気じゃ……」
「エリオ君、“英雄色を好む”って言ってね、優れた男には多くの雌(おんな)を囲う権利があるんだよ」
「ちょ! 待てこらグリフィス! いたいけな少年に歪んだ貞操観念教えてんじゃねえ!」
「それは古い考え方ですよヴァイス陸曹。そもそもあなたが言える義理じゃあないでしょう?」
「な、なんだとっ!」
もうエリオの事を忘れて睨み合う男二人。少年はただおずおずと身を引くしかない。
浮気の是非や男談義で白熱するグリフィスとヴァイスから少し距離を置き、エリオは一人黙々とウイスキー(ストレート)を飲んでいたザフィーラに話しかけた。
「あ、あの……ザフィーラさんはどう思います?」
「ふむ、そうだな……」
盾の守護獣ザフィーラ、いつもは犬(狼)だが今はこうして屈強で精悍な二枚目の姿をしている機動六課の番犬である。
渋くてストイックな彼ならば何か良い意見をくれるのではないか? エリオは淡い希望を持って答えを待った。
「エリオよ、もしお前が真剣に相手と交際を行うのなら、まず相手を良く知らなければならない」
「は、はい……」
エリオはザフィーラに対する評価を改めた。
今まではただの子守犬程度の認識だったが、やはり最年長の男なだけはある、彼の言葉は重みが違うような気がした。
そしてザフィーラは酒を傾けつつ、少年に言葉を続けた。
「相手の表面上の顔ではなく、内面を良く知り、互いの事を理解しあった上で交際する。それが理想の形だろう。ではどうやったら相手と分かり合えるか、分かるか?」
「えっと……なんでしょうか」
「うむ、それはな……」
ザフィーラはグラスに残ったウイスキーの最後の一滴を飲み干すと、威厳を持った力強い言葉で続けた。
「まず交尾してみる事だな、そうすれば身体の相性が良く分かる」
「ぶ〜っ!」
瞬間、エリオは思い切り口の中に含んだコーラを噴いた。
っていうかアレなのか? この犬はつまりはヤリ心地で女を選んでるのか?
人としてはあるまじき事、しかし残念だが彼は人ではなく畜生だった。
そしてエリオは思った、やっぱ犬は犬だと。
こうして機動六課の男達の夜は更けていったとか。
その後エリオが誰の意見を参考にしたかは、また別の話。
終幕。
110 :
ザ・シガー:2008/11/06(木) 23:48:54 ID:Guagt3FU
うん、バカだねすっげえバカ。
思いつきで書いた、後悔はしていない、たぶん。
ザフィーラァアアアアアア!
貴様なんて選び方を! けだものめ! いや、獣だけどさ(守護獣だ!)
アルフをそんな理由でめちゃめちゃにしているのか! くそ、ウラヤマ――いや、なんて酷いことを!
グリフィスの黒さはやはりシガー氏だとデフォルトか、だがヴァイス、貴様のエロゲー主人公のような状態は許せん!
幸せ生活か! ぁぁん?(嫉妬マ○ク状態)
とりあえずエリオ、説得力はないがヴァイスのアドバイスが一番いいと思うよ。
他のは鮮血の結末がまっている可能性が高いw
面白かったです、GJ!
ゲ○ヤ「とりあえず、娘って名目で家族にしちまうって手も……」
正直すまんかった。
>>110 GJです!
ザフィーラの意見にグリフィスはきっと大賛成したに違いないですね、これは。
>優れた男には多くの雌(おんな)を囲う権利があるんだよ
いや、その理屈はおかしい。……と一人思ってるヴァイス涙目!
ク○ノ「最初に出会った笑顔の似合うあの子もいいけど、次に出会った物静かなあの子もいい
なんて思ってるうちに、もっと前から近くに居たお姉さん的な年上女性とゴールインしてしまう
人生は意外性に満ちている」
ユ○ノ「仕事が恋人ですが何か?」
ヴェ○ッサ「血の繋がらない姉に、怒ると怖い教育係、最近では新人のシスターたちが3人もいるね。
無口な娘とボーイッシュな娘と元気な娘。ああ、忘れちゃいけないのが子狸ちゃんだ。
あの娘にはもれなく4人の美女が付いてくる。え、犬? 提督さん家に婿養子かな」
・・・の割には、貴方のSSの主役率はかんなり低いッスね〜
>>101 どの系統かぁ・・・・・。恋愛、友情、は問わず人間関係が崩れ去っていくような物が個人的に読んで見たいです
>>115 義娘がよく来る職場で言われてもなあ
なのは死後、ユーノがオットーと再婚することになり複雑な心境なヴィヴィオ
彼女がとった行動とは
A:あなたになんかパパは渡さない!!ヤンデレルート
B:私のことをちゃんと見てよユーノ君。娘と再婚ルート
C:オットーは私のものなんだからね!!血は争えないルート
D:ちゃんと面倒見てよねパパ♪3Pルート
正解はワッフルの後で
>>101 ペンペン草の一本も生えないくらいに
ミッドを徹底的に破壊
そして数百年後
ある魔導師がその地に降り立って、過去の遺産を掘り起こしたら聖王ヴィヴィオ復活
そして芽生える恋
…なんじゃこりゃ
ヴォ○ツ「あれ、俺忘れられている? 職場には美人5人もいるんだが」
カ○タス「SSX知らない人もいますし」
アレ○クス「俺たちなんて」
ラ○ディ「フラグすら立たない」
ギャ○ット「ちょっぴりで良いんで、どこかに出してください」
恭○「リリなの界の悲○感か」
>>118 ちょっと待て
>義娘
ここは笑うところか?
>>121 大人の男から見たら、小さい子供なんてみんな息子や娘みたいなモンさ。
懐いてくれてればなおさらな。
>>101 Demarcation! Demarcation!
>>101 たまにはなのはさんが負けて死んでしまう話が読みたい
sts本編中でも三年後とかでもいいから
特定のカプ色とかは一切無しで
つまりレイプされてショック死するなのはさん!?
おまけでヴィヴィオとアイナさんまで…
ヴィヴィオにチンコ入らないんじゃね? 鎧的に。
鎧のためセクロスできない鋼鉄の処女ヴィヴィオなんて妄想が…
JackyさんやANIMの触手モノのコアなやつみたいに触手でイキ殺すかい?
たとえばこのスレで例えると、ダークフェイトの1話で触手責めがどんどん過激に
なっていって強烈な絶頂負荷でフェイトそんイキ死んじゃったZE、みたいな。
まあオルタみたいに死んでも生き返らせて(または死ねないようにして)
絶望するほど絶頂漬けにしてココロ壊しちゃうってのも面白いけどね。
病んだはやてが家族を虐待し始め、日々エスカレートしていく肉体的・精神的いじめで
全員レイプ目になって家庭崩壊する八神家とか最高に鬱だと思うんだが、
こんなもん読みたいと思うのは多分俺だけだろう
>>105 あああれはいい鬱だったな
も全てが過去のものになってしまっていてどうしようもない感じが特に
おっとここは鬱パロのスレですか?
いいえ、ここは凛々狩るなスレです
気を抜くと狩られます
>>41 だいぶ遅れたけど、うpお願いできますか?
不穏な事喋ると、ピンクの砲撃をプレゼントされるスレですね
>>134 そう言われるとそんな気もするが……じゃあ誰が人気なのかと聞かれると
パッと出てくるキャラがいない
野郎だとヴァイス、グリフィス辺りをよく見る印象があるな
>>105 スカ博士逮捕して、円満な感じで六課解散したけど、スバルとギンガを製造した奴らや、
ヴィヴィオを作った奴らが普通に今も非人道的な実験を行っているとか見てみたいな。
数年後に、販売された戦闘特化の完成型エリオクローンや機人の使用によるテロ組織の犯罪が起きたりするとか。
結局、解決には程遠かったので六課は道化みたいな、これだと欝にはならないか。
>>136 スマン、少ないって程じゃなかったよ
ただ、以前に比べて、スバル、ティアナ、ナカジマ家入りナンバーズ一同の出番が増えた気がしたんだ
なのはさんメインは勿論有る。けど以前に比べてちょっと減った?
フェイトさんは相変わらず。エロでも非エロでも多い
男性陣だと、鬼畜眼鏡が定着しつつあるグリフィスが異彩を放っている。というところ?
しかし出番で言えば、相変わらずエリオが一番多い。ヴァイスもちらほら
SSXの影響か、3期勢が以前に比べて比較的元気が良い。ような気がする。反面、1期2期勢が少々減速気味?
いつぞやみたいに、スレ内での各キャラの趨勢事情とか出ないかな?
相手がスカでさえなければ、簡単に取り締まれそうな気がするしなぁ。
>>138 職人さんによってジャンルやキャラに守備範囲があるように思うんだが、
更新がはやい職人陣に、野郎メインで書くのが得意な御仁が多いから相対的に見ると、少なく見えるんじゃないかと愚考。
あとは前、結構なペースで投下してた6B〜氏が休眠してんのもそう見える一因かもしれん
どうでもいいけど雑談自重
スカだから取り締まれた気もするが…
ふと、思ったんだがヴィヴィオやスバルを作った組織以外に戦闘機人って
簡単に造れなさそうな気がする。そうなるとなんかなぁーって思う。
それよりもフェイトが保護した児童がフランクイェーガーみたく変な組織に
売られるor拉致されて、フェイトと戦うことになるってのもなかなか鬱な気が。
まぁいいじゃん、以前ほどのペースじゃないし
>>110 GJ!!!
ザフィーはエリオに動物達の中では強い者は複数の妻をめとって子を産ませると教えるべきだった
グリフィス&ザフィーの意見、その二つをエリオが参考にすれば完璧だったのに
でも失敗するとキャロの目からハイライト消えそうなのが欠点だな
>>142 引き取られた先がミカエルの眼みたいなところでとかか?
………いや、それはさすがに…
女性の気持ちになるんだ
雑談自重
都築は書けるらしいな>女の気持ち
とらハの時に声優さんに驚かれたらしいし
原作なのはとか見事に少女漫画やってたしな
都築さんは女だし
>>110 この後フェイトさんの手によってザフィグリヴァはちょっと頭冷やそうかですね。
とりあえずエリオはザフィー案でキャロルーとも妊娠させてしまえばいいと思うよ!
Gj!
>>145 うわ、それフェイトは絶望に陥るんじゃない?
クロススレだと、フェイトが保護した子供達は全てスカ博士のところで戦闘できるように強化改造されて、
その部隊の双璧がエリオとキャロだった。隊長はエリオだったかな?
聞きたいんだが、雑談は、やっぱり控えるべきなのかな?物凄い自分勝手な考えになっていたらすまないと、先に謝罪する。
雑談というか、ちょっとした個人の脳内妄想を書き込んで、それがネタというか、少しのアイディアになったりはしないだろうか?
ただ、何事も程々だっていうのはあるけど。
>>151 というかプロなら大抵書けるんじゃね?
女主人公書いてる人なんて珍しくないしね
ってか素人でも女性主観書いてる人はいっぱいいるでしょ、百合とかも多いし
>>152 都築は日替わりで性別が変わるんだっけかそういえば
NanohaWikiには普通に男と書いてあるがw
こういう流れになるたびに、やっぱしたらば辺りに避難所いらないかなって思うんだけど。
>>140 職人さんのパラメーターが頭に浮かんだけど自重した
いらんよ>したらば
いつものこのスレなら投下で埋まるもの
たまたま雑談が目立ったからってそういう場所を安易に作ると
住人が分散するぞ
最大の理由は、プロバイダのせいでアク禁されることが多いからなんだけどね。
すまんね、個人的な理由でw
クロフェイの本番中にうっかりお邪魔しちゃってフェイトの
悪ふざけで引きずり込まれるティア、とか言ってみたりする…
いやなんか、この三人の絡みと右往左往するティアが急に読んでみたくなった
引きずりこまれたその一回でクリティカルヒット、ギスギスする上司&部下ですね
163 :
B・A:2008/11/08(土) 02:33:30 ID:Uj2OgFE8
誰もいないようなので投下します。
注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・主人公その1:エリオ(今回、出番なし)
その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」 訳:負け犬
・スバルはひたむきなわんこで悪いこと、酷いことはしないって思っている人はスルーした方が良いかも。
正く死闘であった。
洗脳された姉は手強く、打ち込まれる拳は機械のように正確だ。姉と戦うことに迷いがあったとはいえ、
敬愛する師匠に鍛えられた技と魔法は悉く打ち破られ、容赦なくこちらの命を狩ろうとしてくる。
必ず姉を救い出すと誓ったはずのスバルも、一度は絶望に屈しかけた。
だが、相棒の言葉が折れかけた心を奮い立たせた。
苦しむ誰かを救うために魔導師になった。その理由を嘘にしないでくれというマッハキャリバーの訴えが、
倒れるはずだった体に再び力を漲らせたのだ。
『いくよ、ギン姉』
完全に迷いを捨て去ったスバルは、持てる力の全てを姉へとぶつけた。基礎トレーニングで培った頑強さ、
体で覚えたコンビネーション、勝利するという意志が込められた魔力付与攻撃。今まで学んできた全てを駆使して、
姉の立つ頂へと上り詰めていく。しかし、それでも足りなかった。力も技も魔法も、一つとして彼女を上回れない。
経験値の差がそれを許してくれない。どのような奇跡を起こそうと、その差を埋めることなどできなかった。
だから、スバルは残された唯一のチャンスに賭けた。ギンガはシューティングアーツを教えてくれた師だ。
彼女の弟子である自分の目にはその動きがハッキリと焼き付いており、土壇場で姉が人体のどこを狙ってくるのかがわかる。
故に、彼女に残された最後の希望は真正面から攻撃を受け止め、紙一重のカウンターを叩き込むことだった。
『一撃・・・必倒!』
『・・・!?』
打撃力は互角、しかしバリアブレイクは僅かにギンガが早かった。
繰り出される高速の螺旋。眼前に迫る死の一刺し。
その一撃が己を捉える刹那の瞬間を見切り、皮一枚を切らせて相手の防御を突き崩す。
その先にあるのはがら空きの胴体、そしてその内で禍々しい輝きを放つ旧き結晶を、スバルは確かに垣間見た。
『ディバイン・・・・バスタアァァァァッ!!』
渾身の砲撃が撃ち込み、スバルは辛うじて勝利をもぎ取ることができた。
熾烈な戦いで体のあちこちが軋みを上げており、人工皮膚が剝がれて剥き出しとなった機械が所々でスパークしている。
お気に入りのバリアジャケットも血だらけでボロボロだ。それでも、スバルは自分が師との約束を果たせたのだと安堵した。
『ギン姉・・・・・』
『スバ・・・・ル・・・・・』
『ギン姉、意識が・・・・・・・』
『スバル・・・・っ!?』
ボロボロの体を引きずりながら、ギンガは後ろへと這っていく。そして、近づこうとしていたスバルを大声で制した。
『ダメ、来ないで!』
『ギン姉!?』
『私の中のレリックが、爆発する・・・・・スバル・・・・すぐに逃げて!』
『そんな・・・ギン姉、今助けに・・・・』
『いいえ、あなたは死んではダメ・・・・さよなら、スバル』
『ギン姉!!』
制止を無視して踏み込んだ瞬間、スバルは水色の壁にぶつかって尻餅を着く。
マッハキャリバーが自動詠唱したプロテクションにぶつかったのだ。
直後、膨大な魔力が渦を巻き、ギンガの体が内側から膨れる様に破裂して大地を震撼させるような大爆発が起きる。
大好きだった姉は、そうしてこの世から去っていった。
□
「ギン姉!?」
飛び跳ねる様に毛布を蹴飛ばし、飛び散っていく姉へと手を伸ばす。だが、手は虚しく空を切るばかりで何も掴めない。
視界に飛び込んできたのは瓦礫で埋もれた町並みではなく、半ば風化した石造りの壁と、乾いた地面で小ぢんまりと
毛布に包まっているイクスの寝顔だった。
冷静さを取り戻した思考が、ここが3年前の廃棄都市区画ではなく仮眠を取るために潜り込んだ無人の廃屋であることを理解していく。
「また、あの夢・・・・・」
3年前のあの日から何度も見ている悪夢。イクスと出会い、1人ではなくなってからは長らく見ていなかったのだが。
(何かの前触れかな、これ)
不快な汗を手で拭い、呼吸を整える。近くの川から漂う湿った空気が心地よくて、萎えた気力がいくらかマシになった。
スバルはこの3年間、単身でスカリエッティを追いかけていた。奴は基本的にゆりかごにこもりきりだが、
ごく稀に地上を訪れることがある。通信では済ますことのできない用事、例えば自分が手がけた作品の最終チェックなどを行うためだ。
故にスバルはミッドチルダのあちこちを放浪し、関係のありそうな施設に潜入して情報を集めている。
無論、非人道的な研究を行っているそれらの施設は例外なく破壊してきた。人助けを夢見て魔導師になったはずが、今では立派なテロリストだ。
《お目覚めですか、相棒》
「マッハキャリバー? うん、おはよう」
《随分とうなされていましたが、またあの夢を?》
「うん。長いこと見てなかったから、ちょっとショックが大きくて」
《お辛いようでしたら、次のミッションは延期しましょう。お体への負担も溜まっていますし、最低でも後半日の休養を推奨します》
「駄目、予定通りこれからしかける。2時間眠れただけでも十分だよ」
《相棒・・・・・》
頑なな主の言葉に、マッハキャリバーはこれ以上忠告しても意味はないと察して沈黙する。
彼女の頑固さは筋がね入りだ。今更、自分が進言したところで改めることはないだろうし、頑固じゃない彼女は彼女ではない。
「ごめんね、マッハキャリバー。こんなことに付き合わせて。お前はこんなこと、本当はしたくないよね」
《相棒、私はあなたのバディです。あなたが私のことをそう呼んでくれた時からずっと。だから、これからもずっとあなた共にいます》
「けど、マッハキャリバーが言っていたお前が造られた理由、あたしはちっとも果たせていない」
《信じています。また、あなたが誰かのために走れる日が来ることを。それまでは、代わりに私があなたの命をレスキューします》
「マッハキャリバー・・・・・うん、ありがとう」
そのためにも、必ずスカリエッティを倒さねばならない。それから先、自分がどうなるのかは、またその時に考えるしかない。
今はまだ、考えるのではなく行動する時だ。
□
廃屋での仮眠を終えて一時間後、準備を済ませたスバルは行動を開始した。
イクスは戦闘能力が皆無なため、潜入活動をする時には足手まといにならぬよういつも安全な場所で待機してもらっている。
今回の場合は、休息を取った廃屋である。あそこは街や潜入する施設から離れていて、周りには隠れられそうな岩や茂みがたくさんあった。
訳あって逃亡生活を続けていたイクスは危険を察知して隠れるのも上手いため、待機させておくには絶好の場所だ。
もちろん、保証はされていないので不安がないと言えば嘘になるが、数ヶ月も一緒にいればすっかり慣れてしまった。
連絡用に通信機も持たせてあるし、いざとなればウィングロードを使って最短距離で駆けつけることができる。
『・・・・あー・・・・あー・・・・聞こえていますか、スバル?』
「よく聞こえています。通信機の感度、バッチリですね」
『はい』
マッハキャリバーから聞こえてくるイクスの声は、鈴の音のようにハッキリと聞き取ることができた。
彼女に持たせた通信機はクロノ達と離反する際にちょろまかしてきた物で、発信機も兼ねた優れものだ。
かなりの遠距離まで電波が届く上、落としても水に漬けても壊れないようにできている。
『ではスバル、参りましょう』
「了解、ミッションを開始します」
通信を切り、スバルはゆっくりと頭上の蓋を押し空ける。
最初に見えたのは剥き出しのパイプと数字が刻まれたコンテナだ。人の姿は見えないが、足音らしきものが聞こえる。
それが遠ざかるのを待ってから、スバルはそっと潜り込んでいたコンテナから音もなく忍び出た。
物資に紛れての潜入。古典的な手だが、施設の規模自体が大きいので運び込まれる物資の量も多く、
また荷物のチェックはコンピューターによるID方式を採用しているのでコンテナの奥底に隠れれば誤魔化すことも難しくはない。
「潜入成功です」
『言う必要もないことですが、できるだけ見つからないように行動してください。そこはかなり規模が大きく、警備も厳重です。
いくらスバルでも、全部を相手にはできません。発見されればアウトです』
「わかっています。サポート、よろしくお願いしますね」
『任せてください』
イクスの頼もしい言葉に、スバルは苦笑する。まるで、機動六課にいた時のようだ。
自分が前線で戦い、状況に応じて隊舎からの情報支援が行われる。さながら、今のイクスはロングアーチだ。
実際、イクスの知識が役に立ったことは多い。古代ベルカ時代の生まれであるため、ロストロギアや質量兵器に詳しいのだ。
突っ込んだ専門的な知識までは把握していないが、機械の動かし方や銃器の扱い方は彼女に聞けば一通りのことがわかる。
余り褒められたことではないが、彼女のおかげでスバルのテロ活動は非常にやりやすくなった。
(さて、位置的にここは西側の倉庫か。外から見た時は出入り口は正面の大きな扉だけだったけど・・・・・・・・まずいな、見張りがいる)
怪物の口のように開けられた出入り口の左右に、警備用のガジェットV型が2体、鎮座している。
ここからは見えないが、奥の方でまだ誰かが物資の積み下ろしをしているようだ。
そこでスバルは索敵用の魔力球で周囲を探り、隅っこの方でコンテナに張られたラベルの確認をしている作業員を見つけると
足音を忍ばせながらそっと背後に忍び寄って首筋に手刀を叩き込んだ。そして、気絶した作業員を抱きかかえて物陰に引きずっていき、
身につけている衣類や身分証明書を頂戴する。大柄の男性だったので多少、作業着のサイズが合わなかったが、そのおかげで胸の膨らみが目立たなくて済みそうだ。
(そういうことだから、ごめんね)
下着一枚になった男の手足を拘束してコンテナの中に隠し、スバルは堂々と正面の出入り口から倉庫の外へと出ていく。
警備用ガジェットがジッとこちらを睨んできた時はさすがにヒヤッとしたが、作業着の胸のIDを認識して本物と誤認したのか、
特に何をするでなく元の位置に戻っていった。
□
結果から言うと、この施設にはスカリエッティはいなかった。
ただ、丸っきり収穫がなかったわけではない。北の研究棟で行われているある研究が上手くいっていないこと、
そしてその研究のために1騎の融合デバイスが先週からこの施設に連れて来られたということがわかった。
スバルの知る限り、管理局が保有する融合デバイスは2騎しかなく、うち1騎は元上官であるシグナムと共に
管理局を離反している。ならば、ここにいるのは担い手を失った彼女である可能性が高い。
『では、ここにあなたの元上司が?』
「ええ、いると思います。自主的になのか、無理やりなのかはわかりませんが」
恐らくは、後者だろう。彼女は八神はやてと共にゆりかごに突入し、そのまま帰って来なかった。
てっきり死んだものと思っていたが、どうやら研究用に生かされていたようだ。
「相棒、ここの端末からダウンロードしたプラントの地図を出して」
《All right》
空中に投影された仮想ディスプレイに地図が表示され、現在地に光点が灯る。
今、自分がいる兵器製造棟はプラントの東側にあり、一般作業員が立ち入り禁止となっている区画は北側に密集している。
怪しいのは大型試験場に隣接された建物だ。先週から警備が厳重になり、ロストロギア関連の研究者が頻繁に出入りしているらしい。
双眼鏡で確認したが、窓には鉄格子が嵌められていて周りには有刺鉄線が張り巡らされている。
あれは侵入を防ぐためというよりも、脱走を防ぐためのようなものに見える。
『変わりませんね、いつの世も』
「イクス?」
『管理局は、その融合デバイスの少女を使って何か善からぬ企てをしているのでしょう?』
「確証は・・・・ありませんが」
『古代ベルカでは、人体操作技術は王族の特権でした。王は国の矢面に立って国土を守り、戦場では先陣を切って敵兵を倒す。
ですが、そのために陰で多くの命が失われていきました。国のため、民のためと非道な実験を捕虜や犯罪者に重ね、
そうして培ったデータを基に王は我が身に処置を施す。平和や繁栄を求める陰には常に歪みがあることは事実です。
それは否定しません。しかし、古代ベルカと今のミッドは・・・・・・』
「同じ道筋を辿っている?」
『スバル、争いは一方通行ではありません。我々がナイフをかざせば敵は銃器を持ち出し、我々が魔法で身を守れば、
今度はAMFと戦闘機人でそれを打ち破ろうとしてきます。軍拡競争に終わりはありません』
「ミッドと・・・・・・管理局と同じことが、他の世界でも起きると?」
『わかりません』
通信機の向こうで、イクスの声が消沈する。
古代の戦争を生き抜いた彼女の言葉は重く、スバルは反論することができなかった。
彼女の言うように、戦う相手が強大になれば抗うためにより大きな力が求められる。
今、下のベルトコンベアで運ばれている兵器の数々も、直に旧式となって新しいものに取って代わられるだろう。
たった1人の男の欲望が波紋となって、世界中に広がった。その結果が、今の混沌とした繁栄だ。
その時、踵が地面を蹴る甲高い音が左右から同時に響いた。即座に音の反響から位置を割り出したマッハキャリバーが警告を発する。
《警告、何者かが近づいてきています。この反応は、戦闘機人です》
(見回り!? まずい、ここには隠れられるところがない!)
スバルが息を潜めているのは人気のない渡り廊下に通じている階段の踊場だ。一歩前に踏み出せば遮蔽物のない通路があり、
階段を降りれば大勢の作業ロボットが居並ぶ作業場に出ることができる。廊下側から見回りが来ている以上、逃げ道は下しかない。
だが、間の悪いことに複数の人間の話し声が下からも聞こえてきた。
「やれやれ、館内禁煙は辛いぜ」
「安全のためらしいが、喫煙所くらい造れってんだ。何が悲しくて隠れて吸わなきゃならないんだか」
「見つけたのは俺なんだ、みんな感謝しろよ。それと、絶対に火災報知器鳴らしたりするな」
最悪だ。警備用ガジェットなら奪った作業着のIDで切り抜けられるかもしれないが、人間の目までは誤魔化せない。
(強行突破? ううん、まだ騒ぎを起こすわけにはいかない。何か、何か考えないと)
『落ち着いて、スバル。まだ彼らが来るまで少し時間があります。何か、役立ちそうなものは周りにありませんか?』
「そんなこと言われても、こんな綺麗な・・・・・廊下・・・・・・に?」
そっと足を退けると、数本の煙草の吸殻が落ちていた。それと同時に遠くから微かに聞こえるファンの音。
跳ね上がりそうになる心臓を必死で宥めながらその音を辿ると、壁の高い位置に設けられた排気ダクトがそこにあった。
階下から聞こえた男達の会話から察するに、彼らはここでこっそり煙草を吸う気でいるようだ。
確かに、ここなら立ち上った煙は排気ダクトを通じて外部へと流れていくので火災報知機を鳴らしてしまう可能性は低い。
意を決したスバルは即座に排気ダクトに被さっている網を取り外し、持ち前の腕力で壁をよじ登ってダクトの中に潜り込む。
そして、見回りや作業員達が来る前に内側から網をもう一度取り付け、外れないように接合部を魔法で溶接しておく。
直後、3人組の男達がその真下にやって来て、気だるそうに愚痴を零しながら煙草に紫煙を立ち上らせた。
(間に合った・・・・・・)
ホッと胸を撫で下ろし、男達に気づかれる前にダクトの奥へと進んでいく。地図と照らし合わせてみたところ、
このダクトは目当ての研究棟の方まで伸びているようだ。ダクト内は狭い上に胸が邪魔をして進むのに苦労するが、
誰かに見つかることはないので自由に動くことができる。戦闘機人であるスバルは視覚の設定を少し弄るだけで暗闇にも対応可能だ。
そうして500メートルほど進んだところで、スバルは新たな排気ダクトを発見した。
位置的に研究棟の西部、大型実験施設のすぐ近くだ。外に出て見回りと鉢合わせなどという間抜けなことにはならないように、
倉庫の時と同じくサーチャーを先行させて様子を探る。そして、付近に人気がないことを確認すると、
入った時と同じように網を破壊して外の廊下へと着地する。瞬間、マッハキャリバーが通信の着信を告げた。
《相棒、通信です》
「通信? イクスから?」
《いえ、周波数が違います。彼女ではない》
「・・・・逆探知、できるね」
《お任せを・・・・・・繋ぎます》
空中に仮想ディスプレイが展開される。しかし、画面は砂嵐で何も映らない。
聞こえてきた音声もノイズだらけで非常に聞き取りにくかった。
『・・・スバル・・・・ナカジマ・・・・・・』
「・・・・そうだ」
『うまく切り抜けられたようだな。君が排気ダクトに潜り込まなかったら、俺が騒ぎを起こして引きつけるつもりだった』
(見られていた?)
『故あって、君と協力したい。彼女を助け出したいんだろう?』
「どうしてそれを!?」
『そんなことより気をつけろ。君が今いるところには、赤外線センサーが仕掛けられている。触れれば警報が鳴る仕掛けになっている。
サーモグラフィは持っているかい?』
「持っていない。視覚の設定を弄れば見えるかもしれないけれど、やり方までは知らない。明暗を調節できるくらいだ」
『なら、デバイスに赤外線視認の術式を送ろう。エリアサーチで応用できるはずだ』
「あんた、いったい・・・・・・・」
『彼女は今、実験施設にいる・・・・・・・・スバル、これからは俺が君を守る』
そこで一方的に通信が切られてしまう。逆探知の結果、通信は施設内から送られてきたようだ。
会話の内容から、さっきの兵器製造棟にいるのかもしれない。ひょっとしたら、それよりも前から見張られていた可能性もある。
《相棒、送られてきたデータは確かです。モニターに表示します》
再び開いた仮想ディスプレイには、通路を縦横無尽に走る赤外線が映し出されていた。
均等に配置されずに数本が斜めに重なるように伸びており、通り抜けるのはかなり苦労しそうだ。
赤外線に引っかからぬよう、サイズの合わない作業着を脱いで身軽なインナー姿になってからスバルは実験施設へと続く通路を進んでいく。
こういう苦労をする度に、スバルはどうしてこんなことをしているのかと自分を責めたくなってくる。
人助けをするために管理局に入ったはずだ。
誰かの力になるために、どこかで泣いている子の涙を止めるために、魔法の力を身につけたはずだ。
なのに、どうしてそれとは正反対のことを自分はしているのだろう。
そんな答えの出ない自問を繰り返しながらも、スバルは赤外線の網を潜り抜けていく。そして、最後の1本を潜ったところで、
緊張の糸が途切れてその場に座り込んだ。
『抜けましたか?』
「ええ、何とか。イクス、さっきの通信をどう思いますか?」
『こちらの周波数を知っていた、というのが気になります。と言っても、公共の電波なので傍受自体はできなくはありませんが』
「ひょっとしたら、もっとずっと前から見張られていたのかも。イクス、そっちに敵の気配は?」
『今のところは大丈夫です。スバル、とにかく今は彼女を救出するのが先決です。
実験施設はそこの角を左に曲がったところですね、出てきたところを待ち構え・・・・・・・・・・・・・』
イクスが言い終わる前に、耳をつんざく様なサイレンの音が響き渡る。警報が鳴ったのだ。
「どうして、赤外線には触れていないのに!?」
『スバル、まずいことが起きた。彼女が逃げ出したようだ。追っ手を引きつれてそっちに向かっている』
「トラブルメーカーなところは相変わらずか。わかった、こっちで確保する」
『こちらは脱出の準備をしておく。彼女を確保したら右に逃げるんだ。そこの壁を破壊すれば、すぐに外に出られる』
駆け足の音と小さな少女の悲鳴が耳に届き、スバルはバリアジャケットを展開して壁際で息を潜める。
そして、身長30cmくらいの銀髪の女の子が視界を横切ると通路に飛び出し、
彼女を追いかけていた4人の戦闘機人に飛びかかった。突然の乱入者に驚いた彼女達は、ほんの一瞬だけ反応が遅れてしまう。
その隙にスバルは左フックを一番前の戦闘機人に叩き込み、ローラーが通路を滑る勢いのまま右ストレートを2人目の顔面に打ち込む。
驚愕から覚めた残りの2人も装備しているガンナックルを向けてくるが、それよりもスバルが蹴りを叩き込む方が早かった。
まとめて2人を吹っ飛ばし、通路を跳ねたところで追撃の拳を真上から叩き込む。強烈なその一撃は易々と2人の腹部を貫通し、
迸る水色の光が内部から肉体を粉々に粉砕する。
「痛・・・・・・」
軋みを上げる右腕を押さえながら、返り血で汚れた右腕を持ち上げる。
振り返ると、不安げにこちらを見つめる少女の視線があった。
リインフォースU。かつての上司、八神はやてが所有していた融合デバイスにして彼女の大切な家族。
そして、機動六課の前線司令としてスバルを始めとする前線メンバーを統括する役目を担っていた少女だ。
「お久しぶりです、リイン曹長」
「スバル・・・・殺しちゃった・・・ですか?」
「ええ、壊しました」
淡々と告げられた言葉が、逆に恐ろしさを醸し出していた。
言うならば、青白く燃える高温の炎。もしくは痛みを通り越して熱さを感じさせるまでに冷え切った氷のようだ。
「何も、殺さなくても・・・・・・・」
「量産型は機能を停止させない限り、何度だって立ち上がってくるんです。ほら、こんな風に!」
振り向き様に拳を握り、背後からリインに飛びかかろうとしていた戦闘機人の頭部を打ち砕く。
強靭な肉体を誇る戦闘機人といえど、全身を統括しているのが脳であることに変わりはない。
頭部を失った戦闘機人は人形のように体を硬直させ、そのまま動かなくなった。
「もうこの人は人間じゃない。人間の心は全部消されて、ただ生かされているだけの死体。
壊してあげなきゃ、痛みも感じない闇に囚われたままなんです」
スバルのような生まれつきの戦闘機人と違い、後天的に肉体を機械化した人間は自分が変わってしまったことにショックを受けて精神を患うことがある。
人間にとって、自己とは生まれてから共に育ち、最も身近に感じてきた己の肉体までを指すのである。心だけでは人は生きていけない。
機械の体というアイデンティティを持たない者は大多数が機械であることに耐えられず、精神崩壊を起こす。
開発初期はそのようなことが度々起こったのだそうだ。そのため、量産型戦闘機人は薬物やサイコセラピーで自我を消去し、問題が起きるのを防いでいる。
それは同時に、彼女達が人間としての最低限の尊厳すら失ってしまったことを意味している。
「壊さなきゃ・・・・壊してあげなきゃ、この人達は解放されない」
「けど、元々は人間だったんでしょう!?」
「・・・・・・」
リインの言葉が研ぎ澄まされたナイフのようにスバルの心を抉る。
そんなことは言われなくてもわかっている。わかっているが、どうしようもないのだ。
どんなに頑張っても、救えないものはある。助けられない命はあるのだ。
「リイン曹長、話は後です。脱出を・・・・・・!」
脱出しようと言いかけた瞬間、スバルは形容し難い悪寒を感じた。
魔法や機械的なセンサーが反応したのではない。研ぎ澄まされた五感と第六感。
実戦の中で培われた経験則が、大気を引き裂きながら迫るエネルギー弾を察知したのだ。
《相棒!》
「リイン曹長、伏せて!」
跳躍と着弾はほぼ同時だった。飛来したエネルギー弾は通路に反射して弾け、夏の夜の花火のように儚く消えていく。
キュルキュルとローラーが地面を擦る音に、スバルは血管の中の血液が沸騰したかのような錯覚を覚えた。
忘れたくても忘れられない。暗闇の中から現われたのは、燃えるような赤毛と禍々しい金色の双眸。
3年前にギンガを連れ去り、蹴りを交わらせた仇の1人。
「やっと会えたな、タイプゼロ・セカンド」
「・・・・戦闘機人・・・・ナンバーズ・・・・・」
「まだ名乗ってなかったな。ナンバーズが9番、“破壊する突撃者”ノーヴェ。お前をぶっ壊す奴の名前だ!」
宣言と共に、ノーヴェの右手に装着されたガンナックルから無数の高速直射弾が連射される。
広範囲にばら撒くように撃ち出されたガンシューターは牽制だ。まず相手の動きを封じ、隙を作らせてから必殺の一撃を叩き込む。
あまりにも教本通りな攻撃。だが、それをわかっていながらもスバルは防御を選択せざる得なかった。彼女の後ろには、
度重なる実験で疲弊しているリインがいる。
「くっ・・・・・彼女は、研究材料じゃなかったのか!?」
「はっ、失敗した研究の素材なんざ必要ねぇ。ドクターから廃棄処分のお達しも貰っている」
「失敗・・・・・・」
「あいつら、戦闘機人に融合デバイスを持たせられないか研究していたです。けど、機械の部分が多い戦闘機人じゃ相性が悪くて、
成果が出なかったんです」
「そういうことだ。だからまとめてぶっ潰れろ、セカンド!」
ノーヴェの足のジェットエッジに火が灯り、高速回転から繰り出された強烈な回し蹴りがスバルの張ったプロテクションを蹴り砕く。
3年前とは比較にならない強力な一撃。パワーもスピードも、あの時より格段に向上している。だが、それは何も彼女だけではない。
必殺を賭して繰り出された蹴りは、スバルの左肘で受け止められていたのだ。高速回転するブレイクギアは触れたものを全て粉砕する
魔のうねりだ。だが、スバルはそれが自身を捉える前にノーヴェの足の甲を肘で押さえ、蹴りが命中するのを防いだのである。
「何を勘違いしているんだ・・・・・・・・」
地獄の底から響く様な低い声で、スバルは宣告する。
「破壊されるのは、お前の方だ!」
瞬時に攻防が入れ替わり、迫りくる拳を蹴りの反動を利用してノーヴェは回避する。
すかさずスバルはマッハキャリバーを走らせ、カートリッジをロード。全身に循環する魔力をリボルバーナックルの内部に集中、
軋むように火花を散らすナックルスピナーによってその威力を増幅させ、引き金の引かれた実弾デバイスの如く拳を振り上げる。
「リボルバァァァァァシュートッ!!」
ナックルスピナーの回転から撃ち出された真空の渦がノーヴェの脇腹を掠める。
破壊力こそ乏しいが、衝撃波によって広い範囲を攻撃できるリボルバーシュートは狭い通路でこそ真価を発揮する。
だが、大気を引き裂いたリボルバーシュートはスバルが意図したものよりも遙かに小さかった。
本来ならば通路の半分をカバーできるほどの衝撃波が、まるで扇風機の風のように弱々しい。
そのため、深手を負うはずだったノーヴェの体は横腹をほんの少し削られただけで済んでいる。
そこでスバルは気づいた。自分の体に重く圧し掛かる重圧感を。
(これは・・・・まさか・・・・・)
「ここがあたしらの息がかかった施設だって忘れたか? 特盛りのAMFだ、身動きすら取れないまま潰されちまえ!」
「・・・・腕が重い、それに息が・・・・・・」
魔力の結合を阻害するAMFにより、スバルのリンカーコアはごく簡単な魔法を行使するだけでも負荷がかかって魔力が削られる。
まるで重い荷物を背負わされたまま何十キロもマラソンをさせられたかのような疲労感に、全身の細胞が酸素を求めて暴れ狂う。
そんな呼吸すらままならない状態のスバルに、ノーヴェは容赦のない蹴りの連打を放った。
右から、左から、流れるような動きでスバルを狩りたて、ジェットエッジの餌食にせんと迫る。
体に鞭を打って何とか攻撃を搔い潜っていたスバルは、その動きにどこか既視感を覚えた。
まともに戦ったのは僅かに1回、それもごく短い時間だけだ。当然、彼女の戦い方はほとんど記憶に残っていない。
なのに、今の彼女の動きを自分は知っている。いや、頭ではなく体で理解している。
この動きは、シューティングアーツだ。
「どうしてシューティングアーツを!?」
「違うな、こいつはブレイクライナー。あたしのISだ!」
暗闇に黄色のレール“エアライナー”が走り、その上をノーヴェは疾走する。
咆哮を上げるジェットノズル。噴射推進によって加速したノーヴェはそのまま跳躍、ブレイクギアの回転によって
圧縮されたエネルギーをジェットエッジの先端に集め、スバルの胴体目がけて解き放つ。
「リボルバーキャノン!」
「・・・!」
紙一重で身を捩り、攻撃を回避する。ノーヴェのキックが打ち込まれた壁は杭打ち機でも打ち込まれたかのように陥没しており、
まともに食らえば機械の体を持つ自分でも一たまりもない。
「避けるなよ・・・・イラつくだろ。3年前にお前にやられた傷がさ・・・・・足が疼くんだよ・・・・・
お前を壊せって、煩いんだよ!」
「恨みならこっちにもある。お前は、ギン姉を傷つけた」
「チンク姉を傷めつけてくれたよな、お前」
「だったら・・・・・・」
「恨みっこなしだ!」
同時に駆け出した2人の拳が激突する。
唸りを上げる魔力と戦闘機人エネルギー。零距離でぶつかったリボルバーシュートとガンシューターが空間を震わせ、
それを合図に両者の拳と蹴りが苛烈な応酬を開始する。どちらもクリーンヒットすれば一発で相手を打ちのめすことができる
威力を秘めて攻撃。それがぶつかっては弾け、互いに決め手に欠けるまま2人はもつれ合うように壁に激突する。
丁度、スバルがノーヴェの上に覆い被さる形で。お互いに関節を決めているので身動きが取れず、攻撃もできない。
「・・・何で、そんなに動けるんだ」
「忘れた? あたしだって、お前と同じだ!」
スバルの青い瞳が見る見る内に金色へと染まり、腕に込められた力が増していく。
戦闘機人モード。普段は意図的に封印しているスバルの奥の手、いや真の姿と言っても良い。
悪鬼の如きその形相は、相対しているノーヴェと瓜二つであった。
「し、しまっ・・・・・・この態勢は・・・・密着していたらまずい・・・・・・・」
水色のテンプレートが展開すると共に、スバルの手から不可視のエネルギーが放出される。
それは接触しているノーヴェの腕へと流し込まれ、金属がぶつかり合うかのような軋みが腕の中で木霊する。
あろうことか、ノーヴェの腕は掴まれている場所から少しずつひびが入り始めていた。
これがスバルの保有するIS“振動破砕”。四肢の末端から振動エネルギーを流し込み、
共鳴現象を起こすことでありとあらゆるものを破壊する対機人能力だ。例え体がどれほど頑丈にできていようと、
これを前にすれば一瞬の内に破砕される。
「この・・・何て、力だ・・・・放れねぇ・・・・・」
「砕け散れ、振動破砕」
「くぅ・・・・間に合え!」
振動エネルギーが肩に到達する寸前、ノーヴェは手首を捻ってガンシューターを連射、自らの肩を撃ち抜いて左腕を吹き飛ばし、
その衝撃でスバルの攻撃から逃れる。スバルの振動破砕は強力ではあるが、接触状態で一続きのものしか効果が現れない。
このまま何もせずに殺されるくらいなら、腕を失ってでも生き延びてみせるという覚悟がノーヴェにはあった。
「お前・・・・・」
「これくらい、お前を殺れるんなら軽いもんだ!」
スバルの拳に、若干の躊躇が生まれる。
強がって見せているが、今のノーヴェは息も絶え絶えでまともに戦う力は残っていないことは明白だった。
完全に振動エネルギーを流し切れなかったとはいえ、スバルの振動破砕は命中した瞬間から効果を発揮する。
接触した場所を中心に、放射状に広がった共鳴現象は外装だけでなく体内の骨格や内臓にまで及ぶため、
見た目以上にダメージは大きい。ノーヴェの場合は腕から共鳴現象が起きたのでまだ意識はあるが、
もしも胴体に打ち込まれていれば一撃で機能不全の起こしていただろう。
そんなボロボロの状態でありながらも、ノーヴェはまだ戦おうとガンナックルを向けてくる。
だが、直射弾は発射されない。スバルの攻撃で発射機構が壊れてしまったのだ。
立ち上がることもできず、戦う術もない。彼女の完全な敗北だ。後は、自分が止めをさすだけである。
その時、傍観者に徹していたリインがノーヴェを庇うようにスバルの前に立ち塞がった。
「どいてください、リイン曹長」
「ダメです。スバルはこの娘を殺すの嫌がってます」
「あたしが?」
「この娘が自分の腕を吹き飛ばした時、攻撃する隙はいくらでもあったのにスバルは攻撃しませんでした。
だって、この娘には自我があるから。自分の意思で、スバルに怒りをぶつけてきたから、スバルはこの娘を殺すことに
躊躇したんです。自分で考える力があるなら、まだやり直せるかもしれない。そんな風に考えているからです」
「あ、あたしは・・・・・だって、こいつは・・・・ギン姉の・・・・あたしは・・・・・」
振り上げた拳が行き場を失い、やがて力なく下ろされる。
リインが言っていることもあるが、スバルには彼女を攻撃できないもう1つの理由があった。
ノーヴェは言っていた。自分が彼女の姉を傷つけたと。それは姉を失い、スカリエッティを憎んでいる自分と同じだ。
自分があいつを憎んでいるように、彼女も自分を憎んでいる。無意識に彼女と自分を重ねて見てしまったことで、
スバルの戦意は失われてしまったのだ。
「いつまで時間をかけている? 手間取り過ぎだぞ、ノーヴェ」
凛とした声が天井に響き、弛緩していた空気が再び張り詰める。
「ノーヴェをここまで追い込むとは、さすがはタイプゼロ。それともテロリストのスバル・ナカジマと呼ぶべきか」
「チンク姉!?」
「相手を過小評価するのはお前の悪い癖だ。下がっていろ、今度は姉が相手をする」
現われたのは長い銀髪を下ろした小柄な少女だった。右目を黒い眼帯で隠しており、その口調は歴戦の戦士を思わせる風格がある。
本能的にスバルは感じ取った。今の自分では彼女に勝てないと。3年前は感情の暴走もあって何とか引き分けに持ち込むことができたが、
今はノーヴェとの戦闘で疲弊している上にリインも守らねばならない。勝率は極めて低いと見て良い。
(どうする? アレを使えば隙くらいは作れそうだけど・・・・・・)
ここに来るまでに、スバルはプラントの要所に無線式の爆弾を仕掛けておいた。
生憎と探索のできた南方のみだが、それでも施設内に混乱を起こすには十分だ。
だが、これは一度きりしか使えない最終手段であり、失敗は許されない。
そう思った正にその時、プラントの北側から走った大きな衝撃が建物全体を揺さぶった。
「なっ!?」
「こ、これは!?」
《相棒!》
「・・!」
これを好機と直感したスバルは、2人が揺れに驚いている隙に自身がしかけた爆弾の起爆スイッチを入れる。
北と南の両方から襲いかかった衝撃は地震のように大地を揺るがせ、耳障りな警報が鳴り響く。
その隙にスバルはリインを連れて反転し、眼前の壁を目がけて拳を振りかぶる。
マッハキャリバーによって拳周辺に圧縮された振動エネルギーはナックルスピナーの回転によって加速し、
先ほどとは比べものにならない爆発的な破壊の渦へと昇華されていく。
「振動拳!」
轟音と共に特殊合金の壁をぶち抜き、スバルとリインは施設の外へと飛び出す。
後方からチンク達も追ってくるが、機動力ではスバルの方が上だ。だが、外に出た途端、目の前に広がる凄惨な光景に、
スバルはおろか後ろの2人までもが言葉を失った。
to be continued
175 :
B・A:2008/11/08(土) 02:46:24 ID:Uj2OgFE8
以上です。
明らかに本編のスバルがしないことをしています。
スバル好きな人には本当に申し訳ない。
お詫びに短編でエロを書こうと考えてはいるけど今のところネタはなし。
上で少ないと言われたなのはにするか、スバルで書くか、きっとそのどっちかかな。
>スバル
スカに捕まってポッド内でなす術なくエロ洗脳とか?
機械責めと触手責め。
せっかくだから氷付けとか石化とかにっちな属性で
イッた瞬間に意識覚醒させたままそれで固定する?
ごくまれに見るネタだけど。
>>175 GJ!!
スバルはかわいいわんこだけど、それは周りに家族や仲間がいるからそのままでいられるんだと思う
もしも周りから大切な者を奪われたらきっとこんな感じに他者を噛み殺すことに躊躇しなくなる
本当にイクスやリインがいて良かった
>>175 GJ!
半分は自分のせいで最愛の姉が爆死したら変わってしまうのは無理もない…
そうなったスバルと冥王陛下がどうやって心を通わせたかも読んでみたいかも
最近、なのはさんのエロを見ないね、確かに。
>182
魔法女リリカルなのは?
語呂が……
そういう下らん話題はいらん
>>175 乙です
このスバルの変貌を見たとき、何と言うルイスハレヴィとおもわず思ってしまった。
でもそんなスバルの止めるリインがいい感じですね。
これはこれで面白いなと思いました。
昔から機人は怒らせると超怖いって決まってる
ソースは今は無きボンボン
「怒る!」
「それは機人じゃなくて超人機」
>>110 GJ!!
ヴァイス案で真面目に生きるか、グリフィス案で鬼蓄に生きるか、ザフィーラ案でスケコマシに生きるかまさしくエリオの人生の境目だな
お勧めは当然グリフィス案で行こうか
>>175 GJ!!
普段は脳内お花畑のスバルだけど家族失ったら、こうなってしまうのは仕方がない事か…
本編でギンガが大怪我負った時以上の苦しみと憎しみを抱いてる以上、その負の連鎖から抜け出す事は無理にも思える
GJ!!です。
スバルの能力はやっぱり規格外w
機人を殺す為に作られた機人としか思えないwww
GJです。
・・・・・・ですが、なんでとっ捕まったリインの犯られるシーンがないんだ!?
前にキャラスレで生まれた電波を投稿してようか質問したものです。
投下しても大丈夫ですか?
さぁこい
ありがとうございます。
カプはエリオ×フェイト×オリキャラになります。
オリキャラなんか認めないという方はスルーしてください。
エロはちょっとです。
タイトルは「第三の風」になります。
時空管理世界ミッドチルダ
数年前に大規模な次元犯罪があったものの、今現在は失礼な言い方ではごく小規模の事件しか起こっておらず、
世界は表面的ではあるが平和を維持していた。
ここ港湾地区でも犯人グループと局員らしき少年が捕り物劇を行っている。
少年――歳は13前後だろうか赤髪に青の瞳、防護服であるバリアジャケットは下茶のハーフパンツ、
上は赤のインナーに白のコート。 手には身の丈と同程度の槍を持っている。
「あなた方にはデバイス不正使用による強盗容疑が掛かっています。今からでも間に合います、
自首をすれば弁護の余地も与えられるはずです。デバイスを捨てて投降してください。」
「お前1人でか?なめるなよ。」
男逹はデバイスもこちらに向けて構え、抵抗の意を示す。投降する気はさらさら無いらしい。
「わかりました。投降の意思が無いものとして実力で拘束します。……行くよライア!!」
「あぁ、 やっと出番か、さっさと片付けるぞ。」
エリオの後ろに1人の女性が現れる。髪は長い銀色で瞳は黄色、
少しつり上がった切れ目がやや攻撃的な印象を与える。
リインフォースV(ドライ)、それが彼女の名だった。
彼の為だけに生まれたユニゾン・デバイス。
「行くよライア!!」
「今日は新記録を出せよ。」
「「ユニゾン・イン!!」」
エリオの身体がまばゆい光に包まれる。光が消え去った時、そこにはユニゾンによって姿を変えた以前より逞しくなったベルカの騎士が立っていた。
瞳と髪は薄い朱色へと色を変え、バリアジャケットもコートがノースリーブになり軽量化が図られ、
よりスピード重視の攻撃的なスタイルを思わせる出で立ちだった。
「行きます!」
……戦闘は10分も経たない内に終わった。エリオのスピードに反応が追い付かない男逹は1人、
また1人とデバイスを破壊され魔力ダメージでノックアウトされていった。
今は全員の身柄を管轄元である陸士隊へ引き渡したところだった。
「お疲れ様でした、モンディアル捜査官。」
「いえ、こちらこそご協力ありがとうございます。現場の事後処理よろしくお願いします。」
現場担当の陸士と別れると、エリオは彼のユニゾンデバイスであるライアと共に報告書作成の為に、
今の所属先である隊舎へ自分にとって二人目の相棒であるライアと話ながら向かった。
「なかなか様になってきたじゃないか。隊集団戦の基礎は大丈夫みたいなだな。」
「そうかな?だったら嬉しいかな。」
「だが、現状に満足するなよ。シグナムやおまえの母親にはまだまだ遠く及ばないんだからな。」
「わかってるよ。常に精進。でしょ?」
「あぁ、それよりも次の模擬戦はいつだ?この前の相手はつまらなかったからな。」
また始まったとエリオは思った。彼女と初めてパートナーになった時からの口癖がこれだった。
話に似たとは言わない。しかしライア誕生のきっかけを作った彼女の影響を受けたのはごく当然のことなのかもしれない。
ライアが誕生したのは約1ヶ月ほど前になる。久しぶりシグナムとエリオが再会したときの模擬戦がすべての始まりだった。
エリオの成長を感じたシグナムが融合騎をパートナーを持つことを提案し、エリオ本人もさらに上を目指すためにこれに同意した。
早速シグナムが主であるはやてに相談して八神家の新しい末っ子が生まれることとなった。
今まで末っ子だったリインフォースUも「これで私もお姉ちゃんですぅ。」と凄い喜び様だったのを覚えている。
末っ子誕生について男の子にするか女の子にするかでひと悶着があった。
男性の知り合いが少ないエリオと八神家唯一の男であるザフィーラは男の子を主張、一方ヴィータとリインは妹がいいと言って譲らなかった。
論戦は白熱したが、結局一家の主であるはやてと「自称 主婦」であるシャマルが判断をくだすことになった。
結果は女の子
それについてエリオが尋ねるとシャマル曰く「少年にはお姉ちゃんが必要なの」と意味不明なことを言われ、
はやては「エリオやったらお兄ちゃんよりお姉ちゃんのほうが面白そうやん」と言われた。
複雑な気持ちのエリオだったが、今となってはライアがお姉さんで良かったと思っている。
母親であるフェイト、妹のような存在であるキャロだったが、自分には姉に当たる人はいなかった。
なのでライアが姉であることは八神家だけでなく自身にとっても家族が増えたようで嬉しかった。
シグナムはただ一言「将来の楽しみが一つ増えた。」と嬉しそうに話していた。
それを見たヴィータが
「シグナムのバトルマニアは死んでも治らねぇよ。歴史が証明してる。」
とエリオにこぼしていたが彼自身はただ苦笑するしかなかった。
真夜中の隊舎、廊下に靴の音が染み込むように静かに聞こえる。
音の主はエリオ・モンディアル捜査官補、キャロと共に転属した自然保護隊の元を離れ、今はミッドチルダ陸士隊でお世話になっている。
何故陸士隊に入ったのか?
元々エリオ本人は六課解散後、フェイトの補佐をするつもりでいた。しかし、フェイトにはキャロと一緒にいてほしいと言われてそれを受け入れた。
別にキャロのことが嫌いというわけではない。むしろキャロ本人が「私もエリオ君と一緒に行きたいな」と自分に伝えてくれたときは嬉しかった。
しかし、後で考え直してみるとキャロには周囲の環境が目まぐるしく変わる本局勤めよりも、アルザスの穏やかな環境のほうがキャロ本人には合っていると思い、
一度、フェイト・キャロ・エリオの三人で話し合いをした。結果、キャロはアルザスに戻ることに……。
ただ、「私やエリオと一緒にいたいって気持ちが強くなるみたいだったら、一緒に暮らそう。それまではもうちょっと頑張ってみようか?」と
母親であるフェイトは言ってくれた。
その時の光景は今も忘れない。
解散の時に泣きじゃくるキャロを自身も泣きそうな顔を何とかこらえてキャロを慰めているフェイト。
それを見たときに自分たちは本当の家族になれたという実感をあらためて再認識できたエリオは、体の中に何か温かいものができた感覚を覚えた。
淡く穏やかでいて温かい何か、それがすっと胸の中からじわりじわりとにじみ広がって来る。
頭まできたそれは目と鼻の奥を熱くさせて、外へと内面の感情を露わにする。
それが恥ずかしくて周りの同僚や先輩にばれないように顔をうつむかせていたが、後で少しも隠せていなかったことが分かり再び羞恥が沸き起こったりもした。
そこでもまた弄られて、ふて腐れてしまったのもいまでは良い思い出だ。
後で想い直してみると、それが世間一般で言うところの「家族に絆」、「家族の繋がり」といった類のものだったのかもしれない。
「どうした? どこか痛むのか?」
その声で感傷の世界から現実へと引き戻される。顔を上げれば、自分の相棒が心配そうにこちらを見ていた。
「え?……どうして?」
「どうしてってお前が泣いてるからだろ」
そう言われて目元に手をやると指先には水滴が付いていた。どうやら思い出の中に居た間、現実の自分も同様に泣いていたらしい。
「医務室に寄ってくぞ。まだこの時間ならやってるだろう」
「大丈夫。ただちょっと思い出してただけ」
「そうか?ならいいんだがな……」
「……」
「何だ?」
「ううん、そんな顔してくれたの久し振りだったから。あと、心配してくれてありがとう」
「別に構わんさ……ただつらい事があれば私を頼ればいい。パートナーなんだからな」
そう言って彼女はエリオの頭を優しく撫でる。顔には慈母のような笑みを浮かべて……
こんなに優しい顔も普段や戦うときには刃物のような鋭いものへと変わる。そのギャップに多少ドギマギしながらエリオは自室へと続く廊下を歩いてゆく。
時刻はもうすぐ深夜をまわろうとしていた。
そんなことをしているうちに自室へ着くと、安心したせいか疲れが一気に体に圧し掛かってきた。さっさとシャワーを済ませてベットに潜り込む……が、
疲れているにも関わらずエリオはなかなか寝付けなかった。
(フェイトさん、キャロ……会いたいよ……)
寂しくならないようにと二人のことはあまり考えないようにしてきたが、先ほどの思い出が頭から離れない。
(考えてみたら六課での一年間、それより長くフェイトと一緒にいれた時間がなかったっけ。)
幼い頃は長くても一週間、別れても引きずることはなく、次に出会える日を楽しみにしていたものだった。
ただ、つらいこと、嬉しいこと、楽しいこと、色々なことをフェイトやキャロ、六課のメンバーと関わることで経験してきた。
あれほど濃密で長い時間を過ごした後だと、ついついあの時が恋しくなり引きずってしまう。
(こんな僕じゃ駄目なんだけどな……でも中々ふっ切れないし)
自己嫌悪に陥りながらも明日にそなえて頭の中をシフトするためにも再び瞼を閉じる。
「眠れないみたいだな……一緒に寝てやろうか?」
心配していたらしく、いつもより少し小さめの声で彼女が訪ねてくる。一瞬、いいのかなと頭の片隅で考えるが、彼女の優しさに甘えることにした。
「ありがとう。甘えさせてもらおうかな」
「今日は素直だな?いつもそうならいいんだがな」
その端整な顔に笑みを浮かべて皮肉を述べながら、ドライは意識を集中させていく。
「ユニゾン……イン……」
彼女がエリオと一体になる。
「精神リンクすれば少しは和らぐだろう。明日も早いんださっさと寝ろよ」
彼女の温かさを感じてリラックスできたのかエリオは少しずつ眠りの海に落ちて行った。
エリオは目を覚ます。そこは自分のベッド、目の前には何故か全裸のフェイトがいて自分に微笑みながら何かを言った。
「おいで……エリオ……」
声は聞こえなかったが、そう言った気がした。そして自らの意思とは関係なしに体が動きフェイトの胸へと手を伸ばす。気づけば彼女の胸を揉んでいた。
「エリオ上手だよ。その調子でお願い」
まただ、声は聞こえないのにフェイトの喋っている言葉が聞こえる。聞こえるというよりは直接頭、脳に響いてくる。
そんな感じがして、今もフェイトの声が頭の中に木霊する。
「んぁ……く……ふぁ。もうつ……次に、エリオストップ!!」
「え……」
自分の口から残念な声が漏れる。我に返り彼女の胸に夢中になっていたことを振り返る。どうやら自分もおかしくなってきたらしい。
いつもなら全力で拒否するはずなのだが、今はそんな気になれなかった。むしろ早く続きがしたくてたまらない。
そんな葛藤の最中にもフェイトは太腿を広げる。そこは白い靄がかかって何も見えない。それなのにそこは強烈にエリオの視線を惹きつけて離さなかった。
「次はね、ここにエリオのそれを挿入れて欲しいんだ」
それを聞いた瞬間、エリオは己の欲望を最優先にしてフェイトの秘所に自分のモノを挿入れる。するとどうだろう、今まで体験した事のない感覚が全身を駆け巡る。
思わず目を閉じた。
夜中、ライアは目を覚ますと共に自らが感じているおかしな感覚に疑問を感じた。
「あ……くぅ……」
声が漏れ、体の奥が熱く疼いている。何事かと思い周りを見ると、主も同じ感覚らしく苦しそうに息をしていた。
「そういえば精神リンクしてたんだったな……」
ひとりごちながら考える。この感覚は何なのだろうか?確かに苦しくはあるが同時に温かく心地良いものがある。
「そんなことよりもこいつのほうが先か」
ドライは汗で濡れた主の頬をひと撫ですると、精神リンクの度合を最大に引き上げると意識を同調させて深層意識に入り込んでいく。
意識に潜り込んだ彼女の目の前には、お互いに顔を赤らめ裸で見つめあう我が主とその母親の姿が。
汗で光る身体を艶めかしく動かして行為におよぶ二人を見ていると、下腹部が熱くなるのを感じ、両手は無意識のうちに自らの胸へと当て動かし始める。
「ふぁ……ん、んぅ……」
幼き主の行為を見て自慰に浸る淫らな融合騎の姿がそこにはあった。
ドライは思考する。
自分はいったいどうしてしまったのか? 守るべき存在を対象に自らを慰めている。いけないこととわかっていながらも手はとまらず、
さっきまで胸を揉んでいたうちの左手は熱く潤った秘唇をいじり始めている。ラインに沿ってなぞり、時々中に指を少しだけいれてみる。
「ダメ……なのに……こんなこと……で、でももぅ……っと欲しい」
なぞる指を早める。自然と指の往復する距離は長くなり陰核に指が触れる。
「ひゃっ!!……ハァハァ……。すごい……こ、こんな……っ」
胸に当てていた右手も股に移す。太ももを撫でながら秘所に進み右の指で膣をかき回し、左の指は陰核をいじる。
飛びそうになる意識をこらえ、さらなる快感を求める。だが、主の肉棒が母親の中に入るのを見た瞬間、あれだけ昂っていたのに寂しさが心に渦巻き自然と手も止まる。
変わりに主と一つになった母親、フェイトのことが羨ましいと思う気持ちが滲み出てくる。どうして私はフェイト・T・ハラオウンではないのか?
「嫉妬しているのか私は?主の母親であるというのに……」
自覚したことで気持ちはさらに強くなる一方だ。エリオとフェイト、一つになった快感に打ち震えながら目をつむる主。
その表情を見た刹那、エリオを求める自らの身体は自然と動き出す。精神リンクを利用して夢の中に侵入、信号を操作してフェイトと自分の存在を置き換える。
後は主と一つになるだけだ、彼女はその想いに支配された。そして目を開いた愛しい主を見つめてこう思う、まずは宣戦布告だ。
「今からお前は私の物だ、私だけの……」
そのまま唇に口づける。今までの寂しさ、虚無感が嘘のように無くなって変わりに言葉にできない満足感が彼女を満たしていった。
199 :
YW:2008/11/08(土) 22:44:54 ID:lgIOKB8G
以上で投下終了になります。
タイトルを急に変えてすみませんでした。なんかぱっとしなかったのでつい
今のがぱっとしてるかというと微妙ですが……
初投下でオリキャラでエロという無謀をやってしまい、ちょっと不安です。
フェイトさんがいてとても助かった。やっぱ女神です。
一応確認はしましたが、誤字脱字があったらすみません。
HNはYWにしました。
アドバイス、ダメ出しがあればよろしくおねがいします。
さいごにキャロが誤変換でKY炉と出て妙に納得してしまったのは内緒
投下大丈夫ですか?
おこk
無問題
203 :
野狗:2008/11/09(日) 00:17:21 ID:+L01v5JM
魔法少女リリカルなのはIrregularS 第四話です。(全十三話予定)
捏造まみれです。要注意
SSX前提の設定があります。
あぼんはコテで
レス数16
204 :
野狗:2008/11/09(日) 00:17:59 ID:+L01v5JM
1
遊撃隊フォワードメンバーは、エリオの騎竜フリードを警戒している。
何故かというと、噛まれるからだ。怪我をするほどではないけれど、とっても痛い。
ちなみに今のところ、隊内で噛まれているトップはダントツでウェンディである。二番手にはノーヴェが続いている。
ルーテシアはまだ噛まれたことがない。
「それじゃあ意味がないのよねぇ……」
どこかでキャロが、溜息をついた。
エリオがルーテシアを隊長補佐に指名したときには、周囲に色々と言われた。その一年前にキャロと結婚していなければ、もっと言われただろうと本人は思っている。
しかし、結婚しているからこそ色々言われたのだとは全く気付いていない。実際の所はそうなのだけれど。
そこから派生したのが、今ではルーテシア本人まで自称している「隊長の現地妻」である。
それを最初に言い始めたのは誰だかわからない。ちなみにエリオ自身ははやてを疑っている。
少なくとも、キャロの耳に入ったのは称号ができてからかなり早い時期だったらしい。そこでキャロは、騎竜としてエリオに従うことにしたフリードに言い聞かせた。
「もしエリオが浮気したら、その相手を噛んでいいよ。むしろ噛みなさい。たっぷりと。丹念に。がじがじと。むしゃむしゃと。痛く痛く」
当初は、やたらスキンシップをするウェンディがほぼ毎日噛まれていた。
あれは浮気じゃないッス、とのウェンディの根気強い説得をフリードは理解した。そして次に噛まれたのはノーヴェ。
あれは格闘訓練。とノーヴェは説明する。スバルも一緒に説明したのでフリードは落ち着いた。
それなのに本命であるはずのルーテシアは、まだ一度も噛まれていない。これについては、隊員たちも不満を隠そうとしない。
噛まれていない理由としては、
一、ガリューが怖い説。
二、ルーテシアが上手く隠している説。
三、エリオが噛むなと命令している説。
四、白天王が怖い説。
五、ルーテシアがとっても怖い説。
の五つが今のところ有力である。ちなみに、浮気をしていないとは誰も思っていないらしい。
「いいから一度噛まれてください。隊長補佐」
そして全員の嘆願を、ルーテシアは無視し続けている。
魔法少女リリカルなのはIrregularS
第四話
「悔い改めよナンバーズ」
205 :
野狗:2008/11/09(日) 00:18:39 ID:+L01v5JM
2
客が待っていると言われ、キャロは自然保護局の出張事務所に顔を出す。
その客を見た瞬間、なんでこんなところに? とキャロの疑問。
「どうしたの? エリオ。休暇だっけ?」
「あ、キャロ。いや、偶然近くに部隊を展開させることになってね。空いた時間に顔を見に来たわけさ」
出会ったときに比べるとかなり精悍になった夫の雰囲気。
勝利の数だけ誇らしく、敗北の数だけ逞しくなった姿。それでも、自分に向けている微笑みは全く変わっていない。
「やっぱり、単身赴任は寂しいよ」
「ルーちゃんやスバルさんたちがいても?」
「チンクたちもいる。でも肝心のキャロがいない」
うふふ、と嬉しげに笑いながらキャロは尋ねる。
「お昼ごはんは済ませたの?」
「いや、まだだよ。隊の方には外で済ませると言ってきた」
「じゃあ、一緒に食べようか」
「ああ」
「その前に」
キャロはなにやらごそごそと、何かの作業をしている。
「どうしたんだ?」
「ちょっと、喚んでみたの」
羽ばたきの音。振り向いたエリオに見えたのは、事務所の前に着地する巨大な鳥。
「この地方に生息している巨大鳥でね。名前はサルトゥール。フリードに劣らない戦闘力だよ」
「どうして、こんなのを?」
「乗せてもらうのよ」
「なるほど。ああ、済まない。フリードは本部にいるんだが、僕が乗るわけにはいかないんだろう?」
「フリードがいないことは何となくわかってたよ」
キャロはケリュケイオンを掲げる。
「それで一つ質問。貴方、誰?」
エリオは笑った。
「エリオ・モンディアルだけど、どうしたの? キャロ」
「うん。別に、名前はどうでもいいんだ。貴方が私の夫のエリオでないことはすぐにわかるから」
「だけど、エリオなんだよ」
エリオの笑みは消えない。しかし、何かがその奥で蠢いている。今のエリオはそれを隠そうともしていない。
キャロはデバイスを動かさず、しかし視線が揺れる。
「まさか?」
「いやいや、最初のエリオは死んでるよ、それは間違いない」
エリオはさらに笑った。
「だって僕は、三番目だからねぇ」
衝撃とともに室内を烈風が襲う。
一瞬目を背け、次にキャロが見たものは……。首を撥ねられた巨鳥と、禍々しい紅に染まった槍を構えるエリオの姿。
「僕のデバイスだよ。名付けてストラーダ・ローヴェン」
206 :
野狗:2008/11/09(日) 00:19:21 ID:+L01v5JM
3
チンクはちらりとルーテシアを見た。この状況でも、一瞬の隙をついた転送魔法で逃げることはできる。未知の場所への転送は不可能だが、
ヘリの置いてある場所は当然わかっているので転送可能だ。
ところが、そのタイミングを待っていたかのようにルーテシアが言う。
「今、インゼクトたちが教えてくれた。ヘリが破壊された」
これでは、転送先がない。ヘリを最初に調達した位置、管理局の駐屯他は遠すぎる。転送でこの人数を運ぼうとすれば、発動まで時間がかかりすぎる。
しかし驚くべきはそこではない。今の情報の別の意味にチンクは気付いた。
ヘリの破壊は今。つまり、上の三人とは別働隊がいるのだ。
その三人は、一同を見下ろしていた。
その三人が見た目だけの存在だとは誰も思っていない。仮に本物の八割の力だとしても、こちらに勝ち目はないだろう。
(ディエチは砲撃準備。ガリューは合図でディエチを担いで洞窟へ戻って)
ルーテシアが密かに念話で指示を始めた。
(合図でオットーはレイストームで土塊を巻き上げ。チンクはデトネイターで地面を打つ。それを煙幕代わりに、総員洞窟まで撤退)
逃げの体勢だった。不本意だが、この状況では仕方がない。
さらに言えば、洞窟の中では閉じこめられたも同然だろう。おそらく入ってきた側からは、ヘリを破壊した別働隊がやってくるのだ。
チンクはそれを問うた。
(構わない。考えがある)
ルーテシアがそう答えたので、その策に素直に乗ることにしたチンクはオットーと自分の位置を確かめる。
「状況開始!」
合図と同時にインゼクトの大群が洞窟から姿を現した。
なのはたちを取り囲み、攻撃するでもなくまとわりついている。
その隙に洞窟へと走る一同。殿のガリューが抱えているディエチはすでにイノーメスカノンを起動させていた。
「ディエチ、広域砲撃。対魔法ジャミングを」
「バレットイメージ、アンチマギリンクチャフ」
come
208 :
野狗:2008/11/09(日) 00:19:54 ID:+L01v5JM
4
AMCはAMFに効果は劣るが、その分広範囲で、なにより発生器が必要ない。
ディエチの実弾砲撃と同時に、全員が洞窟内へ。寸前、チンクとオットーがそれぞれ地面を砕く勢いでレイストームとランブルデトネイターを起動。
相手の魔法砲撃を多少なりとも制限し、しかも地下に逃げる。ジャミング圏外からの精密砲撃が通るだけの有視界もない。これでもなお追ってくるつもりならば、
むこうも地上に降りるしかない。
「急いで奥に!」
走る一同。なのはの砲撃なら、岩盤の一枚や二枚あっさりと抜いてしまう。立ち止まっていてはいい的だ。
戦いに持ち込むのなら、接近戦しかない。チャフ散布下なら、ガリューが魔法を制限されたフェイトを止められるかもしれない。残るはやてとなのは相手では、
接近戦なら活路はある。
「ガリュー、後方を監視。ディエチ、前方を観測」
ガリューの感覚は追跡者を捉えず、ディエチはヘリのあった側から上ってくる反応を発見する。
「タイプは?」
ディエチは溜息のように息を吐いて、答える。
「……戦闘機人。ノーヴェと同じタイプのようです。数は10」
「ナカジマ特佐の資料と繋がったな」
チンクの呟きに、オットーがうなずく。
「やっぱり、量産していたね」
密閉された環境での戦いには、ノーヴェが最も適しているだろう。投入する戦力としては間違っていない。
「ノーヴェ十人か」
「間違いなく、強化されているよ。ノーヴェの出力じゃない、これは」
ディエチの観測が続いていた。
「あと、量産された疑いがあるのはセッテとあたし。飛行タイプも砲撃タイプも洞窟の中に入ってくると思えない。外で待ってるかもしれない」
「構わない。オットー。プリズナーボックスで全員を囲んで」
ルーテシアが全員を集めて中央に立つ。そして、召喚印を描く。
「地雷王!」
無茶だ。とチンクは叫びかけて、プリズナーボックスの存在に気付いて口を閉じる。
確かに有効だ。洞窟内の敵は全てつぶされるだろう。しかし、本来檻として使われる力場をシールド代わりにするとは。
轟音。崩れていく内壁。
このまま埋もれてしまっても、プリズナーボックスの中なら心配はない。もう一度ルーテシアが地雷王を呼べばいいのだ。
そしてこの状態なら、なのはの砲撃でもそう簡単に抜くことはできない。
チンクたちは、落盤の響きに安心すら覚えていた。
209 :
野狗:2008/11/09(日) 00:20:29 ID:+L01v5JM
5
「そうだな。僕自身もエリオローヴェンかもしれないな。では、ローヴェンと呼んでもらおうか」
偽エリオ……ローヴェンは言う。
「動くと刺すよ。さすがに殺しはしないが、腕、いや、足一つくらいは失っても仕方ない。その程度の覚悟はあると思ってくれ。しかし、腐っても妻だ。
できれば五体満足で連れ帰りたい」
ローヴェンはさらにそう言うと、ストラーダを構えたままキャロに近づく。
「忘れないで欲しいんだけど。私の夫は貴方じゃないわよ」
「ミッドチルダにいるのが君の夫だと?」
「そう」
「アレが君の夫。それを忘れているのは、僕だけじゃないと思うよ」
ストラーダの先端が、キャロの胸元を乱暴についた。
「例えば、ルーテシア・アルピーノとか」
ローヴェンをにらみつけるキャロ。
「もしかすると、ミッドチルダの僕も君の夫であることを忘れているかもしれない。そうだな……三日に一度くらいは」
ストラーダの先端が赤く鋭く光る。
「君も忘れたらどうだ? ミッドチルダにいる不義理者のことなど」
「三流以下のゴシップ紙でももっとマシな記事を書くと思うけど。正直に言いなさいよ」
キャロはケリュケイオンに意識を集中する。
「人質を取らなければ、僕は本物には勝てません。って」
同時に魔法弾がローヴェンを襲う。しかし、ローヴェンは微動だにせず、ただストラーダを左右に振るだけでキャロの魔法弾を相殺してしまう。
「人質は必要ない。僕はまともにやり合っても、あの偽善者には勝てるよ」
「私を人質にするくせに?」
「ああ、誤解があるね」
ローヴェンは肩をすくめた。
「君を連れ去る理由は一つしかない……飽きたんだよ、戦闘機人と元レリックウェポンには」
ニヤリ、と嫌な笑い。
「たまには普通の女が抱きたくなる。例えば、親に捨てられた召喚師とか」
「ふざけ……」
言い終える前に、キャロの身体が宙に浮いた。いや、浮かされた。
衝撃がキャロの下肢を折り曲げるように叩き、身体が横回転して地面に叩きつけられる。
210 :
野狗:2008/11/09(日) 00:21:02 ID:+L01v5JM
6
「……一つ言っておく」
ストラーダの先端が、キャロの襟を引っかけ、持ち上げる。襟を引かれ、首が絞められたようになったキャロは咳き込みながら相手を睨んだ。
……折れた?
ストラーダで横殴りにへし折られたのだ、とキャロは両足の激痛とともに理解する。
「別に、ダルマでもいいんだよ、僕は」
両手足を落としてでも連れて行く。それは脅しではなかった。ただの事実の宣言にすぎない。
「そう」
だから、キャロはそう答えた。
こちらも事実の確認。仮にそうなったとしても、気持ちは変わらない。と。
「それでこそ、いい女だ」
ローヴェンはより愉快そうに笑う。
「でも、ヴォルテールは呼ばない方がいい。そりゃあ、ヴォルテール相手だと、僕だって負けるかもしれない」
だけど、とローヴェンはニッコリ微笑んだ。
「ヴォルテールでは、守れないよ」
その言葉を合図としたかのような轟音。そして聞こえよがしの命令。
「クローラーズは周囲の包囲。ガンナーズは威嚇射撃を続行。ライナーズ、ナンバー4と5はキャロの上司見つけて捕獲、ここまで連れてこい」
さらに、ローヴェンは続ける。
「君にわかりやすく言ってやろうか。クローラーズはノーヴェ、ガンナーズはディエチ、ライナーズはセッテの、それぞれ強化改良型量産戦闘機人だ」
ヴォルテールは多数を短期間で沈黙させられるのか、とローヴェンは問う。否の答えを待つまでもない、簡単にわかることだった。
キャロは、ヴォルテール召喚によってローヴェンを倒せるかもしれない。しかし、多数の戦闘機人に襲撃されている人々を全て救うことはできない。
すぐにライナーズが二人を捕らえ、連れてきた。
「……ごめんなさい」
キャロの言葉に、ミラとタントは首を振る。
「謝ることはない。こんな連中…」
「人の女に軽々しく話しかけるなよ。田舎者は礼儀を知らないな」
ストラーダがタントの喉を突いた。咳き込み、血を吐くタントの姿にミラは叫ぶ。
「命は取らないよ。キャロ次第だけどね」
「キャロ……」
「ごめんなさいっ! タントさん! ミラさん!」
「そういうことだから」
キャロは力無くうなずいた。違う方向へ曲がった足のためか、おびただしい汗をかいている。
「後から捜査に来る連中に伝えろ」
嘲りを隠そうともせず、ローヴェンは言う。
「キャロ・モンディアルの身柄は、ルーテシア・アルピーノと交換だとな」
211 :
野狗:2008/11/09(日) 00:21:37 ID:+L01v5JM
7
落盤の響きは止まない。いや、明らかにそれは別のものだった。
落盤とは違う、別の破壊音。
「間違いありません。この音はイノーメスカノンによる砲撃の着弾音です」
やはり、ディエチをベースとした量産タイプもいるのだ。
しばらく、全員が着弾音に耳を済ませていた。
「向こうも、AMCを撃ち込んでいるようです」
ルーテシアの転送魔法封じだろう。
行く場所もないと言うのに念入りなことだ、とチンクは呟く。
「ガリュー、チンク、気付いた?」
ルーテシアの問いに二人はうなずく。
着弾音から考える限り、こちらの位置は特定されていない。地下洞窟全体に対して撃ち込んでいる様子なのだ。しかし、洞窟にはまだ息のあるノーヴェタイプ
だっているはずなのだ。
チンクが忌々しげに言う。
「奴ら、味方へのの誤射は気にしていないようだな」
「目的は私たちのあぶりだし。少し、我慢して」
「我慢はできる。しかし、その後はどうするのだ? 諦めて下がっていくような相手とは思えないが」
ガリューが力強く唸る。
「そう。ガリューの言うとおり。エリオは私たちを見捨てたりしない」
チンクがガリューを見上げた。
「ガリューと補佐の言うこともわかるが。助けに来るとすればスバルだろう。救助はお手の物だからな」
本物相手ならまだしも、コピー相手なら本隊と合流すれば勝てる。誰もそれを否定しない。
「でも、エリオが来るから」
「いや、スバルだ」
ディエチとオットーは二人のやりとりを呆れた目で見ている。ガリューもチンクもルーテシアも、互いのお気に入りを贔屓しているようにしか二人には見えないのだから。
「あたしは、ジュニアだと思うけど」
「……僕は、ディード」
そして互いを呆れて見る二人。
「どうしてそこでディードなの?」
「ディエチはジュニアを過大評価している…」
「オットーこそ、ディードに頼りすぎているよ」
「ディードは頼るに値する。少なくとも、ジュニアよりは」
「ドクターのいい部分を受け継いでいるよ、ジュニアは」
「何やってるんだ、お前たち」
212 :
野狗:2008/11/09(日) 00:22:11 ID:+L01v5JM
8
気がつくと、二人の言い争いを面白そうにルーテシアとガリューが、困ったようにチンクが見物していた。
「なんでもない」
五人は警戒を解かずに、それぞれの方法で周囲に気を配ることにした。連絡がないのを不審に思った本隊が捜索に来るとすれば、ここに来るのはただ一人。
「はーい」
案の定、それほどの時間を待たずに声が聞こえる。
プリズナーボックスの向こう、地面から見えるのは指が一本。もちろん、セインのものだ。
一部解除した場所から入るセイン。
「あいつら、やたらめったら撃ち込んでるよ。こっちの位置はバレてないみたいだけど。物量に物言わせて、不格好な戦い方だね」
「そっちの作戦は?」
「そのことで確認したいんだけど。こっちが見つけたのはノーヴェタイプとディエチタイプ。セッテタイプはいないみたい。何で空に逃げなかったの?」
五人は顔を見合わせた。
「私たちの確認した戦力はまだある。高町なのは、フェイト・テスタロッサ・スクライア、はやて・ナカジマのコピーだ」
「げっ。管理局三大魔女!? 嘘でしょ?」
「嘘じゃない。そもそも、ディエチやノーヴェの劣化コピーだけなら、こんな所に逃げ込んでない」
「あー。どっちにしてもジュニアの言う通りか」
頭をかいて腕を組み、セインは座り込んだ。
「ディエチとチンク姉、私に掴まって。隊長の所に行くから」
「待て、私たちだけか」
「沈むだけなら何とかなるけど、結構長い距離を潜ったまま戻ることになるから。全員一度には無理だよ」
「AMCを何とかすれば、転送魔法でヘリのあった位置までは戻れる」
ルーテシアの指摘に、わかってると言うように手を振るセイン。
「そのふりをするつもり」
「ふり?」
チンクが聞き返すと、セインが首を捻った。
「うん。AMCの無効化を狙う振りをするって。そうすれば、向こうは転送可能地域の制圧に現れるだろうから、それを叩く。そういう作戦」
213 :
野狗:2008/11/09(日) 00:22:45 ID:+L01v5JM
9
「部隊が地下に逃げたということは、敵側に空戦能力の高い者がいるはずです。さもなければわざわざ地下には逃げないでしょう。
地上戦ならまず引けを取らないメンバーのはずですよ。で、こっちはAMCを無効化すると見せかけます。多分それには抵抗してきません。
向こうはルーテシアさんの転送魔法の目的地、ヘリのあった地点を確保に来るでしょう。そこを叩いてください」
ジュニアの言葉に、エリオはうなずく。
「確保に来ない場合は、そのままAMCを無効化すればいいわけだな」
「そういうことです」
「というわけだ。セイン、伝えてくれよ。魔法、科学含めて連絡が取れないんだ。秘密のラボには絶好の場所だよ」
時々、このような場所がある。第97管理外世界では「富士の樹海」「バミューダトライアングル」と言われるような場所だ。
「了解」
しばらく待つと、ディエチとチンクを連れたセインが戻ってくる。
「あと二往復だね」
ガリューは大きいので一度に一人がせいぜいだ。ルーテシアとオットーは同時に運べる。しかし、プリズナーボックスで地下の場所を確保していることを考えれば、
当然最後に運ぶのがオットーということになる。
「急いでください。セイン姉様」
それがディードにはやや不満だった。
「わかってるって。オットーのことはお姉ちゃんに任せな」
再び潜っていくセインと入れ替わるようにジュニアが姿を見せた。
「ディエチ、これを使って」
「それは?」
「AM中和弾頭。AMCを無効化する溶液を散布するようになってるんだ」
「戦いが続けば、これでは無効化できないAMシリーズが生まれるのでしょうね」
「そのときは、さらにそれを無効化するものを作るよ」
「キリがない」
「あるよ」
「ジュニア?」
「デバイスやスペックのコピーは作れるけれど、心のコピーは作れない。だったら、心で勝てばいいさ。心だけは絶対に真似できないんだ」
ジュニアは自分自身を指さす。
「クローンで人格はコピーできない。僕とフェイトさん、隊長がそれを証明している。複製でも同じだと思うよ」
214 :
野狗:2008/11/09(日) 00:23:36 ID:+L01v5JM
10
エリオが手を叩いて全員の注目を集める。
「フェイトさんたちのコピーは予想外だったが、なんとかするしかないな。次にセインが戻ってきたら作戦開始だ」
「エリオ」
スバルが眉をひそめていた。
「気になるんだけどね」
三人のコピーが姿を消していること。スバルが言いたいことはエリオにもすぐわかった。
「人格を持つ者の完全コピーは作れない。それは俺とフェイトさん……それにノーヴェだってその証明だ」
ノーヴェはクイントではない。
「何かを企んでいる。それはわかる。だけど……」
エリオはストラーダを握りしめる。
「劣化コピーのなのはさんになら、貴方は勝てるでしょう?」
「本物に劣るフェイトさんになら、エリオは勝てるよね」
「まがい物のはやてさんなら、あとは楽勝ですよ」
スバルは力強くうなずいた。
「バレットイメージ、AMニュートライザー」
ISによる観測。ディエチは空を見た。
セッテタイプが動く。こちらに気付いた。いや、気付かせたのだ。
「総員展開」
エリオの号令で、まずウェンディが飛んだ。ライディングボードに乗り、別のライディングボードを後ろに従わせている。
「ISエリアルレイブ」
ウェンディの瞳が輝き、二台目のライディングボードの先端が開く。
「行くッスよ、ドーターズ!」
内部から現れた十一台の小型ガジェットが散開する。
ウェンディのISの深化。それは、複数の飛行物体を同時に操ること。
一台一台が、あたかも別の者に操られているように独自に作戦行動を取るのだ。本人も含めて十二台。
ドーターズに混ざるようにして飛んでいるのはガリューとディードだ。
「対空砲は気にしなくていいッス。こっちには、地対地砲撃の名手がいるッスからね。砲撃戦は任せて、ぱちもんセッテに集中ッス!」
ガリューが唸り、ディードがうなずいた。
今、地下に残っているのはルーテシアとオットー。その二人を守ろうとする限り、ガリューとディードに敗北はない。
215 :
野狗:2008/11/09(日) 00:24:19 ID:+L01v5JM
11
「竜魂召喚!」
竜騎士エリオの、ただ一つだけ使える召喚術。吼えるフリードの姿が、騎乗に相応しい白銀の竜へと変化する。
「行くぞ、フリード!」
竜騎士が地を蹴った。
威嚇弾を撃ち終えるとディエチは横へ飛んだ。さっきまでいた位置に砲撃が集中するのがわかる。空へ上がっただけではなく、地上にも残っているとようやく
気付いたのだろう。
……遅いよ。
ディエチが感じているのは敵に対する優越感と、過去の自分に対する少しの悲しみ。
ナンバーズと呼ばれていた頃の自分は、今のコピー連中ほどに愚かだったのだろうか。だとすれば、鎧袖一触で高町なのはに敗れたことにも納得がいくというものだ。
コピー連中は数を頼みに撃ち込むだけで、砲撃から自分たちの位置が割り出されることにも無頓着なようだった。だったら、この場で徹底的に教育してやればいい。
「バレットイメージ、ノーマルカノン」
予測した砲撃位置へ一撃。さらに移動して、二発。
後の二発は、相手が取るであろう回避パターンを予測して、その位置に撃ち込んでいる。当たらずとも近くに着弾していれば、向こうは回避にも神経を
とがらせることになる。
「バレットイメージ、マルチプルカノン」
弾頭を多弾頭に変え、またも移動して砲撃。一撃一撃の威力は低いが、逃げ道なしの砲撃のプレッシャーの嫌らしさは自分でもよくわかるつもりだ。
案の定、砲撃が止んだ。その隙にディエチはさらに移動する。
「イノーメスカノン、サイレンスモード」
狙撃仕様に変形するデバイス。
両目の視界内に狙撃用のスコープが現れる。そこから、体勢を立て直そうとしている量産型たちが見えた。
「……無様だ」
経験値の不足を、ディエチは嘆いた。
やはり、データの継承と蓄積が全てではないのだ。たしかにそれを使えば訓練の効率は高くなる。しかし、完全ではない。
そのとき、何かが囁いた。
おかしい。スコープ先にいるのは確かに戦闘機人だ。しかし、何かがおかしいのだ。
妙な違和感がある。
まるで、その部分だけ何枚もの絵を重ねたように。空間が膨らんでいるように見える。
216 :
野狗:2008/11/09(日) 00:24:59 ID:+L01v5JM
12
易しすぎる。スバルはウィングロードを疾走しながら、その違和感を考えていた。
弱すぎるのだ。
セッテの量産型。ノーヴェの量産型。確かに弱くはない。これらが量産されれば管理局にとっては脅威だろう。しかし、元のノーヴェ立ちと比べると明らかに弱いのだ。
これがコピーの弱さだというのなら、確かになのはたちのコピーも大したことはないのかもしれない。
しかし、それでもスバルの感じた嫌な予感は消えなかった。
「なんなんだよ、こいつら」
ウィングロードと併走するエアライナー。ノーヴェがスバルに語りかける。
「なんだよ、こいつらの弱さ。確かに数はうっとうしいけど、これじゃあ、あたしたちじゃなくてもそれなりの部隊で何とかなるぞ」
「スバル! ノーヴェ! 固まるな、散れ!」
エリオが叫んだ。
「エリオ、見つけた! 座標送るッスよ!」
ウェンディのドーターズからの直接通信を受けるエリオ。
「スバル! フォロー頼む!」
SONIC MOVE
フリードを巻き込んだ高速力場をエリオは形成する。
そして、座標に向けて急上昇。
後を追うスバル。戦闘機人モードを解放し、通常以上の速度でウィングロードを駆けている。
二人の視線が真上を向いたとき、黄金の雷が天より一直線にエリオを襲う。
「さすがに!」
正面から落ちてきたフェイトのデバイスを受け止めるエリオ。
「バルディッシュまではコピーせずか!」
「何言ってるの、エリオ? 私と戦うの? エリオが?」
「親子げんかをしたことがないんでね! 替わりに殴られてもらおうかっ!」
その横を駆け抜けるスバル。
「任せたよ、隊長!」
「当然っ!」
217 :
野狗:2008/11/09(日) 00:25:32 ID:+L01v5JM
13
ザンバーをはらいのけ、穂先を常にフェイトに向けながら、エリオは叫ぶ。
スバルは目標に向かい走る。
黒の六枚翼の魔道士へと。
DIABOLIC EMISSION
「……遠き地にて、闇に…」
「させるかーっ!」
はやての詠唱を断ち切る拳。
呪文の詠唱の時間を稼ぐ。それが三人が退いた理由、とエリオは判断し、三人の姿を探していたのだ。
そして、フェイトとはやての姿を見つけたことになる。
振動拳
スバルに容赦はない。相手はコピーとはいえ、あの、はやて・ナカジマである。
だからこそ、スバルは己が持つ最大の打撃を初撃とした。
しかし……
「え?」
スバルの拳は、あっさりとはやての身体を貫いた。
おびただしい量の血しぶき。瞬く間に赤く染まるスバルの身体。
そして同時に、ストラーダもフェイトの身体を貫いていた。
「何故……?」
防御力皆無。バリアジャケットはフェイク。防御魔力は一切使われていない。
それが、それぞれスバルとエリオの手に残った感触だった。
非殺傷設定とはいえ純粋な物理的打撃となるスバルの拳、エリオのストラーダを、単なる衣服と身体が受けきれるはずもなかったのだ。
「な……んで……?」
その瞬間、血まみれの敵が二人をそれぞれに抱きしめた。
「……相変わらず…スバルは…抜けてるな」
「エリオ……まだまだ…甘いね」
「はやてちゃん、フェイトちゃん、ありがとうね。それから、ライナーズ、ガンナーズ、クローラーズも」
なのはの声。
「……みんなの力、たくさん集束できるね」
STARLIGHT BREAKER
全ては、この集束のために。
218 :
野狗:2008/11/09(日) 00:26:09 ID:+L01v5JM
14
ルーテシアとオットーを最後に救出したセインが見たのは、すでに開始されてる戦闘だった。それはいい。わかっていたことだ。
しかし、次の瞬間セインはわが目を疑った。自分たちに向かってきたノーヴェタイプに向かい直った瞬間、それは分裂したのだ。
ISディープダイバー
不完全なディープダイバー。
使用者が潜行できる対象はただ一つ。同じISを発動させた者だけ。
ディープダイバーを発動させた者は、互いに重なることができる。一人に見えたのが一気に数人に、場合によっては十数人に増えるのだ。
一気に十数倍に増えた敵戦力。圧倒的な数が突如立ちはだかった。セインは、改めて自分のISの特殊性を思い知った。だから、絶対に敵にこの能力を与えてはならない。
自分のクローンをあれだけ犠牲にしたとおぼしき勢力が手にしたのは、この不完全なディープダイバーなのだ。これ以上のものを与える必要などない。
「オットー。セインを守って」
ルーテシアは即座に理解していた。敵が欲しているのはセインの能力である、と。
ISレイストーム
発生した力場がノーヴェタイプをはじき飛ばす。しかし、数が違いすぎた。数人がセインを取り囲む。鞭のようなものがセインの手に巻かれた。
セインは即座に悟った。鞭には、ディープダイバー無効物質が混合されている。この鞭で捕らえられては脱出はできない。
TODES DOLCH
ルーテシアの召喚する黒のダガーがノーヴェタイプを貫いた。
展開するエアライナー。ノーヴェタイプの標的がセイン一人から二人に変わる。そして、空からセッテタイプが。
一対一の勝負ならコピーは敵ではない。しかし、圧倒的な数の差がある。
セッテタイプが鞭をノーヴェタイプから受け取った。
「オットー、私はいいから、セインを追って」
言ったルーテシアが、ノーヴェタイプの蹴りを受けきれずにシールドごと飛ばされる。
オットーの視界を覆うようにエアライナーが乱舞した。
「邪魔だよ」
レイストームを全開に、オットーは空への道を開く。しかし、飛びかけた足首を誰かが掴んだ。そのまま引きずり降ろされると、目の前にブーメランブレードが
迫っていた。
しゃがみ込むことで辛うじてよけるが、逆にそれは、ノーヴェタイプの攻撃圏内に入り込んだということである。
無数の蹴りが、オットーを襲った。
219 :
野狗:2008/11/09(日) 00:26:42 ID:+L01v5JM
15
状況をチンクは見た。
地上には蹴散らしたはずのコピー部隊が無数に増殖している。二つの核を囲んだ塊が見えるが、その核はディエチ、ルーテシアとオットーだろう。
頭上には、今まさに最強の砲撃を放とうとするコピーなのは。
セインを連れ去ろうとしているセッテタイプたち。
そして自分たちもまた、増殖した無数のセッテタイプに囲まれている。
圧倒的な敗北。
「まだッスよ、チンク姉」
「あたしたちは、まだ戦える!」
ウェンディとノーヴェがチンクの横に並んでいた。
「……ああ、そうだな」
チンクは、前方斜め上、白い魔道師をにらみつける。
コピーなのははその視線を真っ向から受け止め、笑う。
「自分たちの馬鹿さ加減、悔い改めるといいの。ナンバーズ」
デバイスが、ひときわ輝いた。
220 :
野狗:2008/11/09(日) 00:27:19 ID:+L01v5JM
16
次回予告
ウェンディ「難しいことは考えないッス。楽しかったらそれでいいッスよ」
セイン「今の生活、楽しいんだ?」
ウ「楽しいッスよ、みんなでいられて嬉しいッス」
セ「うん。お姉ちゃんもそう思う。だけど、時には何かを犠牲にしなくちゃならない」
ウ「……そんな人を一人でも減らすために」
セ「え? ウェンディ、なんか言った?」
ウ「え? 別に、なんでもないッスよ」
セ「次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS第五話『セインの覚悟 ウェンディの意地』 僕たちは進む IRREGULARS ASSEMBLE!」
221 :
野狗:2008/11/09(日) 00:27:57 ID:+L01v5JM
以上、お粗末様でした
GJ!!です。
量産型とフェイトとはやては捨て駒、本命は皆が恐れる悪魔の砲撃w
良い様に、策にはまりましたね、キャロも拉致されましたし。
もう一人のエリオも出てきましたし。次回が楽しみです。
またエリオのクローンね、はいはい
>>221 GJ。
戦ってる、という雰囲気がバシバシきます。偽エリオ恐いよ。
スバルが来るの!エリオが来るの!の掛け合いは、凄く単純に「いいなぁ」と思いました。何がいいなぁと思ったのかもちょっと詳しく説明できないぐらいいいなぁと思いました。
あと不完全なディープダイバー面白いわ、これ。
なのはの二次話作る時、敵や事件を考えたらレプリカとかクローンとかが絡んでしまうのは仕方がない事。
仕方がないと言わずに脳汁ひねるけども難しいよね。
>>199 GJ!
ドライかわいいよドライ
でも嫉妬が最高に達した時の力は最高に危なそう
精神世界に永遠に閉じ込めたりと、そんなイメージが
>>221 ローヴェン怖!
キャロを誘拐した本当の目的はルーテシアを手に入れること?
それはただ惚れているのか、深いわけがあるのか
エリオには現地妻のルーテシアを奪われぬよう絶対に勝ってほしい
GJ!
>>221 Gj!
フリードがルー子噛まない理由は間違いなく3だな
エリオが第2妻が傷つかないようにちゃんと配慮しているのだよ
とそれはさておきコピー軍団どいつも恐ろしい
エリオコピーはもちろん本人より容赦なさそうな、なのはコピーも…
そろそろエリオも、司書長や黒んぼ提督みたいに禁止キャラにされるんですかね…?
>>227 んな事言ったらその内誰も使えなくなるからナイナイ。
そもそもユーノもクロノも別に禁止になった訳でもなし。
>>221GJ
ルー子が噛まれないのは
6.ルーテシアにお肉で買収されてる
を推すぜ!
エリオは投下の間隔が短い人がメインで書いているから多いんだよな。
一方のクロノは短編で義妹の後ろを元気に掘っている。
ユーノは・・・・・・・今度書こう。
書きたい人が書きたいモノを書けばよいのだ。
つか、やっぱり時系列が3期、3期の後って作品が多いからな。
出番減るのも、語弊を恐れずに言えば当然っちゃ当然の流れかもしれぬ。<クロノとかユーノとか
ユーノものはなんか覚えてんだよな、フェイト嫁にして故郷帰ったのとか
職人が書きたいモノ書くのが1番なんだけど……
それを阻害してるのは、ごく1部の読者なんだよな。
1本話出来たんだけど魔法少女の足が臭いっていうのは
果たしてそのキャラ好きな人に許されるんだろうか
俺は興奮する
興奮はせんが何となく面白そうな予感。興味あるよ
内容による。
ただし興味はある。
予想した通りなら興奮する。
悩む時間があるなら投下するのがエロパロ紳士の慣わし。
ルビか振れたら、って思われる職人さんは居ますか?
時々執筆中に漢字変換すると、違う表現で書いた筈のものが同じなってて困ったりすることがあります。
「いらった」と「まさぐった」が同じ『弄った』に変換されたりなどです。
後ろに( )で読み仮名を振ったりすると、とても格好悪い感じになりますので。
ひらがなで書けば良いじゃない
>>234 全裸だと今の季節は寒いんだ。 早く頼む。
>>239 分かる! それはよく分かる!
筆が遅いことで有名な職人ですが、それは正直なところありますね。
別なところで小説サイトを運営してるんですけど、そっちでタグ使ってルビが振れても
こっちではルビが振れなくて言葉遊びとか出来ないので残念に思うことはあります。
まあ、絶対にルビを振りたい! というなら他の場所でやるしか方法はないんですけど。
242 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/10(月) 00:40:56 ID:GcQqxdh8
ワードを起動して
『書式』のタブを選択
更にそこの一覧から『拡張書式』
するとさらに細かいリストが出てくる中に『ルビ』がある。
どうしても、
>>240の方法でイヤなら試すといい
エ ク ス カ リ バ ー
約束された勝利の剣
こんな感じで
7ヶ月前にフェイトの靴下ニー書いたものです。
1本投下させてください。
・非エロ
・足の臭いスバルなんてスバルじゃない
・フェイトが非処女
なんで嫌な方は飛ばして下さい
少年と、向かい合うように座る少女の姿がある。少年の気遣わし気な視線に気付いているのかどうか、俯いた少女の表情は窺えない。
「・・・ほ、本当にいいの?」
重苦しい雰囲気のなか、少年が口を開いた。
「・・・うん」
俯いたまま答える少女。その細い肩を見るにつけ、彼女のことを思い、胸が痛む。
「いいのかな。こんなことしても」
「いいの。これは私が望んだことだもの」
「でも・・・君に辛い思いをして欲しくないんだ」
なおも食い下がる少年に、少女は初めて笑顔をみせた。ふわりとした、少し困ったような・・・。天使の微笑み。
少年の心にまたチクリと痛みが走る。
「・・・大丈夫。だから、しよう?エリオくん」
「キャロ・・・・」
「エリオくん・・・・」
ばたばたばたばたばたばたばたばたばた!!!!
「ちょっと待てえええええええ!!」
けたたましい音を響かせて部屋の扉が開かれる。正面に、仁王立ちになっている女性の姿。
顔を真っ赤にしているのは、走ってきたせいばかりではないであろう。
「あ・・・なたたち・・・・・・!!」
「あ、フェイトさん」×2
「『あ、フェイトさん』×2 じゃないッッ! ふ、二人ともッ、何考えているの!!」
「丁度良かっですフェイトさん」
今にもエリオに掴みかからんばかりに沸騰寸前のフェイトにはお構い無しに、キャロは屈託の無い様子で歩み寄る。
「え、な、何?」
一瞬怒りを忘れたフェイトに、キャロは笑顔で問いかけた。
「フェイトさんは、シタことあるんですか?」
ーシタコトアルンデスカー?
落雷の直撃を受けたように硬直するフェイト。目は見開かれ顔面蒼白、握った拳はぶるぶると震えている。
「あ、ありますか?なのはさんや部隊長と」
あくまで呑気(に聞こえる)声を発するエリオに視線を移してにらみ据えるフェイト。
何故はやてとしたことがあると思うのだ、この子供は。
「教えてください、フェイトさん」
だが、答えを促すように覗き込んでくるキャロの視線ともろにぶつかって、フェイトはゆっくりと拳を開いた。
「わたし・・・私は・・・」
「はい!」
「私は・・・の部屋で・・・さんと・・・だった・・」
「はい?」
「・・・避妊は絶対するんだよぉぉぉッッッ!!」
心なしか語尾の震える言葉を残して、だだだだっと足音を響かせて走り去っていくフェイト。呆然と見送るエリオとキャロ。
「・・・おい、逃げたんじゃねーのか、あいつ」
実は居たヴィータ。
「フェイトちゃんは本当に気付いてなかったと思うよ?」
実は居たなのは。
「フェイトさん、本っっっ当に二人しか目に入ってなかったね」
実は居たスバル。
「こんだけの人間無視してハナシ進められるのもある意味スゴイわね」
実は・・・というか居たティアナ。
というか、エリオのベットには現在新人4人とスターズ隊長、副隊長が座っている状態なのだ。
「フェ、フェイトさん、どうしちゃったんでしょうか・・・?」
置いてけぼりを喰ったエリオとキャロが、おろおろと尋ねた。
「まぁ何想像したのかは、大体見当はつくけどね」
「早とちりしすぎだろ、アイツ」
苦笑を浮かべるなのはとやれやれ、と呆れた様子のヴィータ。
「何を想像したんですかティアさん?」
「キャロは知らなくていいことよ」
「何を考えたんですかスバルさん?」
「エリオもまだ知らなくていいから!」
フェイトの考えてる事を教えるとなると、一気に保健体育の時間に変わってしまう。
今日はその為に集まったのではないのだ。
「・・・すみません、わたしの我侭のせいで・・・」
キャロのか細い声に、ティアナとスバルはギクリと振り返った。
身長差のせいで上目遣いのキャロの目はどこまでも澄み、スターズ隊員を見つめている。
「ホントにごめんなさい・・・お忙しいなか無理云ってしまって・・・」
全員に向かってうなだれるエリオ。スバルはそんなエリオの頭を軽く撫でてやる。
「気にしなくていーんだよ。私達はチームなんだからね」
「そうそう。私とヴィータちゃんは気にしなくていいよ」
なのはとスバルからの赦しを得た事に安心し、今度はティアナの方に向き直る。
じっとティアナを見つめるキャロとエリオ。4つの純粋な瞳に見つめられ、思わずティアナは後ずさる。
「・・・早くしちゃうわよ!忙しいんだからね!ほら、エリオ早く脱ぎなさい、その靴!!!
脱いだらキャロに渡す、キャロの靴は私に渡して」
「ほ・・・本当に臭いと思いますけどいいんでしょうか」
「スバル以上に臭い匂いのする靴はないって保証したげるからから安心しなさい。」
(スバル、あんたのは渡すんじゃないわよ。エリオとキャロは気を使う子なんだから、
あんたの会でも絶対に全然臭くないですよっていうからね!)
(そこまで言われると傷つくよ、ティア・・・)
「あはは、若い子って何思いつくかわからないねえヴィータちゃん・・・私も参戦しようかな?・・っと」
(流石悪魔、普段履かないパンプス渡してスバルの悶絶姿を楽しんでやがる・・・!)
―全てのの発端は、ある日の訓練後のことである。
「こんのぉ馬鹿スバル!!あれだけ靴袋作って石鹸入れとくかファ○リーズ振っとけっていったでしょ!!
ストレッチの時から既にもうあんたの靴から悪臭がこみ上げてんのよ!!自分の足が臭いって云う自覚をしなさい自覚を!!!」
「いひゃいいひゃいごうぇんえてぃあ〜ひょうひせんはくきひいへほうとおほったたんはよー」
そんな二人から少し離れて座りながらクールダウンを行うキャロとエリオ。話には参加していない。
生活で靴の臭いを気にしたことが無かったこともあるが、まだお互いそれほど仲良くないからでもある。
「・・・キャロ、僕の靴、臭かったらごめん」
「え?ぜ、全然臭わないよエリオくんの・・・・してみたいな」
「・・・靴を交換して嗅ぎ合うことを?」
妹分のその言葉をどう受け取るべきか少しぱかり悩んでしまう、苦労性な10歳児エリオ・モンディアル。
「うん。だってお互いの靴の匂いを嗅げるなんて本当に仲良くないと出来ないことじゃない。
何でも言い合える仲じゃないと、無理だと思うの」
「ま、まあそうだろうね」
毎日毎日の特訓で汚れた練習着やジャケットは洗濯することが出来る、体も風呂さえ入れば汚れを洗い落とせる。
しかし靴は、毎日の訓練で使うものであり、ずっと履いていてやっと体になじむという特性上、なかなか洗浄するのは難しい。
「・・・みんなで靴の臭いを嗅ぎ合って臭いです、とか、言いあえるくらい仲良くなりたいな」
・・・こうして、「もっと親交を深めていこうよ〜今日はエリオの部屋でね〜(スバル命名・不評)」は、キャロの願ったとおり開催され、
スバルの悪臭に耐え切れず、暴言が飛び出したり、靴を投げ合ったり一緒に靴を洗うことをするくらいには、メンバーの距離は縮まった。
足臭いとかむしろご褒美です支援
さて、一方勘違いから飛び出していったフェイトはと云うと。
「・・・ エリオにキャロを任せるなんて・・でも年齢は関係ないし・・・・イヤでもキャロに痛い思いをさせるのは・・・
だけど好きあっているんだろうし・・・でもまだ10歳は・・・こういう時どうしたらいいと思いますかお父さん」
ベッドの縁に腰掛けて、両腕に抱いた、なんだかよくわからないヌイグルミに向かってブツブツと呟いていた。
本人はバルディッシュに語りかけているつもりなのかも知れないが、ひょっとして恋人のつもりなのかもしれず、
とにかくその双眸はどこまでも虚ろであり、
「・・・9歳でも20歳のモノは入るし・・・エリオのパオーンくらいなら・・・」
「ねえねえザッフィー、フェイトママから変なオーラでてるよー?」
「しっ、見るなヴィヴィオ。あちらの方で眠るぞ」
その日からの2、3日、仕事中以外は非常に鬱陶しい存在であった。
投下終了です。
靴下の続きが文章が思い通りに行かず、時間だけが過ぎていきました。
なのはさんの性格が悪魔なのは仕様。
スバルの足がせっかく匂うのに興奮できる様な話でなくて本当にすみません。
投下乙。
馬鹿な子達だなおいwww
しかし投下間隔が長すぎるぞ。
書きながら投下だったりしたら止めたほうが良いぜ。
なるほど、このフェイトの相手は恭也か
>>252 これくらいの投下間隔なら大して問題ないよ
どうせ投下なかったら書き込みないか下らない雑談なんだし
吹いたwwww
これはヒドイ!
(特に某保護者が)
フェイト…
つくづく日常生活ではダメなヤツだなwwww
鬱陶しい存在wwww
>>251 忍ちゃんにバレた時に色々と吸いつくされて、その結果雫ちゃんができたんですね、わかります。>恭ちゃん
でももしフェイトの相手が恭也だったら、とらハ2の耕ちゃん以上のダメ人間と化してるな。
ハッ、もしかして同時期にすずかやアリサも毒牙にかかったのd(ry
セッテやオットーがノーヴェたちより若いナンバーなのってどうしてか説明されてるっけ?
>>258 ナンバー=完成順ではなく開発を開始した順、でおkだったはず
>>199 Gj!
これはドライのヤンデレフラグONか
独占欲強くてユニゾンできると嫌な予感しかしない
でもそこがまたいい
夢の中とかで暗示をかけ続けるとか…
>>221 Gj!
エリオなのはコピーはもう完全に命の大切さとかわかってないな
それだから冷酷にあそこまで行動できるのかと思う
エリオには妻二人頑張って守って欲しいもんだ
流れぶった切って申し訳ないが、Wikiを編集できる方がいたら
編集して欲しいんですが誰かできる方いますか?
最近来た人かな?修正なら、保管庫を手伝っているひとたちが今
リアルタイムで見ていなかったとしても、書きこんでおけば対応してくれるよ
>>221 GJです
フェイトクローンとはやてクローンは自軍の勝利のために命を捨てるか
なのはクローンはそのために仲間を殺すのか…エリオクローンはルーテシアのために行動を?
4人とも何も考えてないのか、それとも何を考えて行動しているのか気になるところです。
>>250 GJです
フェイトさんアフォスw
でもその勘違いっぷりが彼女の魅力なんだ
てかエリキャロ達も何やってんだと。
悪ノリして妄想電波だった筈のものを執筆してしまったのですが、投下しても良いですか?
まったく構いませんどうぞ!!!
阻む者など誰もいない。
どうかしてくださいませ。
「どっちが大人」
注・以前受信した電波小ネタだったのですが、
ておあー氏、B・A氏の両氏が形にして下さったもの読んでいる内に自分も書いてみたくなったので、衝動的に書いてしまいました。
87スレに両氏の素晴らしい作品が御座いますので、未読の方は是非一度読まれてみては如何でしょうか?
(リイン×アギト)+エリオ の和姦エロ、ちょっぴり変態チックかも知れません。
ておあー氏、B・A氏両氏に無限の感謝と共にこのSSを捧げます。
「アギト、おはようですぅ」
とある早朝。
眠い眼を擦りながら、ふよふよと六課の隊舎を漂っていたアギトは、背後からそんな挨拶を聞いた。
「なんだ、バッテンチビか。おはよーさん……え?」
振り向いた背後には、そこに在るべき自分と同じ30pサイズの少女の姿が無かった。
そこに居たのは、機動六課の制服をサイズぴったりに着こなし、地に足をつけた等身大のリインフォースU空曹長だ。
目を点にして、ぱくぱくと口を動かすアギトに、リインは胸を張って告げた。
「ふふ〜ん。これからはやてちゃんのお使いで、ちょっと海鳴にまで行ってくるですぅ!
これで、もうバッテンチビなんて言わせないですよう!」
「けっ、ちょっと変身魔法使ってるだけだろ! あたしにその程度が出来ないと思ってんのかよ!
―――変・身・!」
アギトの体が光に包まれ、たちまち彼女も等身大の姿へと変化した。
「へへ〜ん、あたしの方がちょっぴり背が高いぜ!
変身魔法程度で大威張りなんで、やっぱりお前はガキんちょだな、バッテンチビ!」
「そんなことないでぅ! リインはもう立派な大人ですぅ!」
そんな、いつもと同じ喧々諤々をやっていると、背後から「うわっ」という驚愕の声が響いた。
「ア、アギトさん、なんて格好してるんですか―――」
ビキニ水着を連想させるアギトの格好は、等身大となった今、扇情的な小悪魔の衣装だ。
顔を真っ赤にして目を背けながら、ちらちらと横目でその姿を伺っているのは。
朝立ちを鎮めようとこっそりと男子便所へと向かおうとしていた、エリオ・モンディアル少年(10)だ。
「どうだ、バッテンチビ。あたしの方が大人の魅力に溢れてるってことだろ、これは?」
「ち、違いますぅ! アギトはただHな格好をしてるだけるだけですぅ!
リインは知ってるですよ! 本当の大人は、こんなことが出来る人のことを言うですぅ!」
リインは控えめな少年の股間の隆起に手を伸ばし、無遠慮に鷲掴みにした。
エリオが大きく背筋を仰け反らせる。
「ほ〜ら、エリオもおちんちんをこんなに大きくしちゃってるです。リインの魅力の力ですよ〜」
「おい、馬鹿チビ、元から勃ってるもんをただ掴んだだけじゃねーか!
それにそれ……エリオ、痛がってねーか……?」
「ぅぅぅ、リインさん、痛い、痛いですよぅ、お願いですから放して下さいぃぃ―――」
涙目のエリオの股間をリインが手放すと、握り撫された花のようにしおしおと萎えてしまった。
アギトは、普段の彼女からは想像もつかない程優しげに、エリオを抱きしめその頭を撫でた。
「よしよし、エリオ。乱暴されて痛かっただろう。すぐに痛くないようにしてやるからな」
そう言って、エリオのパジャマを静かに下ろし、健康そうな白いブリーフに手を掛ける。
そして、手荒く握られたエリオ自身にそっと手を添え、壊れ物を扱うように丁寧に口に含んだ。
「アギトさん何を―――」
「昔からな、痛いところは舐めてやるのが一番なんだよ」
母犬が子犬の傷口を舐めるように、慈愛を篭めてアギトはエリオの陰茎を口の中で転がした。
アギトが自分の前に跪き、自分の秘所をしゃぶるっている光景は、あまりに倒錯的過ぎてエリオは身震いした。
扇情的なアギトの姿と、股間の蕩けそうに熱い感触に、幼さを残すエリオの性器が再び固さを取り戻す。
アギトは涎の糸を垂らしながらエリオのペニスから口を放すと、リインに流し目を送り、ふふんと鼻で嗤った。
屈辱で、リインの顔が真っ赤になる。
彼女はアギトを肩で押しのけ、エリオの前に立った。
「アギト、交代ですぅ!!」
「お、……おぉ!?」
「エリオ、痛くしちゃってごめんなさいですぅ。リイン、つい手に力が入っちゃったですう。
お詫びに、エリオのここをキレイキレイして上げるですぅ!」
リインはポケットから濡れティッシュを取り出し、アギトの唾液で濡れぼそったエリオのペニスを丁寧に包み込んだ。
そのまま、まだ包皮の被った亀頭を露出させ、丁寧にしごくように拭き始めた。
「う、あぁぁぁ―――」
エリオが未知の感覚に声を体を捩って声を上げる。
「はい、キレイキレイしましょうね〜〜☆」
アルコール分を含んだ濡れティッシュの冷んやりとした感触に、エリオは身悶えする。
アギトの奉仕で既に限界まで高められていた性感が、堤を崩すように決壊した。
「駄目ですよリインさん、僕、もう、もうっ……―――つっ」
恥ずかしさに涙目になりながら、押し殺した声を上げながらエリオは射精した。
エリオの熱い白濁が、すぐ側に近づけていたリインの顔に降り注ぐ。
リインは快楽の余韻に腰を痙攣させるエリオを見つめ、白濁液で汚れた顔に勝ち誇った笑顔を浮かべた。
「どーですかアギト! しゃせーしちゃたということは、男の子が一番気持ち良くなったということですぅ。
つまり、これはリインの方がセクシーな大人の女だということですぅ!」
「馬鹿言ってんじゃねえ! あたしが全部お膳立てしてやったところを、お前が最後の旨いとこだけかっさらったんだろーが!
エリオをイかせたのは全部あたしの魅力、デザートのイチゴをつまみ食いした位でいい気になるんじゃねえ!」
二人は、隊舎の廊下で下半身を丸出しにしたままのエリオを放置したまま喧々諤々と言い争いを続けている。
エリオは誰か人が来ないかと気が気ではない。
「むぅぅ! リインもう怒ったですよ! こうなったらどっちが大人の女か勝負です!
リイン一人でもエリオをメロメロに出来ることを教えて上げるです!」
「いいぜ、バッテンチビ、その勝負受けて立ってやる! おい、エリオ、お前の部屋に案内しろよ。決着はベッドの上だ」
「は、はいい」
エリオは怒涛の展開について行けず、ただ真っ赤な顔をぶんぶんと縦に振った。
そして三人はスズメの鳴く爽やかな早朝、ドロドロの乱交へと突入した。
「さぁエリオ、リインお姉さんが気持ちよくしてあげますですからね〜」
問答無用で裸にひん剥いてベッドに転がしたエリオの側で、リインは嫣然と微笑む。
彼女は機動六課の制服を脱ぎ捨て、全裸になって這うようにしてエリオにしな垂れかかった。
「ふふ、可愛い。照れちゃってるですね、エリオは。好きなだけ見ていいですよう」
エリオは生唾を飲む。全裸になったリインの体は―――ぺったんこだった。
以前海鳴に行ったときに温泉で見たスバルやティアナ、ましてはなのはやフェイトには到底及ぶべくも無い幼児体型。
辛うじて、キャロと同じ程度だろうか?
ぺったんこだったが……美しかった。
なだらかな胸、ぺったりしたお腹からつるつるの下腹部にかけての緩やかな曲線。
肉の薄い肌に幽かに浮き出た肋骨と、天使の翼のような肩甲骨が艶めかしい。
エリオより背の高い大人の女性にあるような威圧感が彼女にはなく、どうしようも無く少年の興奮を誘った。
(ふん、一気に全部脱いじまう所がそもそも甘めぇんだよ。靴下ぐらい残しときゃいいのに)
などとアギトは考えていたりする。
リインは茹で上がったようなエリオの顔を抱きしめると、そのまま騎乗位の姿勢に跨った。
初めて見る少女の全裸と、柔肌の感触に再びエリオは痛い程勃起している。
「ぜ〜んぶ任せて下さいですよぅ〜 いっぱい気持ちよくさせてあげますですからね〜♪」
リインは、エリオ自身を握り締め、前戯も無しにいきなり己の内に導こうとした。
だが、固く閉じた未発達なリインの割れ目には、エリオの控えめなペニスをしても大きすぎた。
入れようとする度、つるり、つるり、と滑って横に逸れてしまう。
「あれ? あれれ? ……ちょっと待ってて下さいですよ、すぐ気持ちよくさせてあげますですからね」
何度も繰り返すが、エリオのペニスは一向にリインの中に収まる気配が無い。
幾度もエリオのペニスを秘所へと擦りつけていく内に、焦りでリインの鼓動は早まり、首筋を汗が伝う。
アギトが横でニヤニヤと観戦しているのを見て、羞恥で顔が赤くなる。いや、彼女の顔が赤いのは羞恥と焦燥だけでは無かった。
リインの秘所に擦り合わされるエリオのペニスの先端は、自身の先走りとは異なる粘液でぬめりを帯び始めていた。
「んっ、んふっ、何で? ……何で入ってくれないですかぁっ!? んんんんんっ―――」
涙目で、必死にエリオの上で腰を動かすリインの姿は、まるで深く交わっているようだった。
アギトが頭を掻く。
「ったく、見てられやしねぇな」
悪戦苦闘するリインを、アギトは突如背後から羽交い絞めにした。
「ふぁ……? な、何するですかアギト!? 今はリインの番ですよ!」
「ふん、このままじゃ何時まで経ってもあたしの番が回ってきそうに無いからな。特別に手伝ってやるよ」
「お手伝いなんていらないです! リインは独りでも立派に―――ふああああっ!」
アギトが指先で未発達なリインの乳首を、抓るようにして揉んだ。
もう片方の腕を絡みつかせるようにして、リインの秘所に添えて、その上端の小さな陰核を転がす。
長く紅い舌で項の生え際をゆっくり舐め上げ、耳の後ろに吸い付いた。
「あ、あ、あ、、あ、―――――――――」
「いいだろ? 人の親切は素直に受け取るもんだぜ」
「は、はひぃ―――」
リインの全身を隈なく愛撫しながら、耳に息を吹き込むようにそっと囁く。
その様は、文字通りの悪魔の囁きだ。
二人の少女が白い肉体を絡ませ合う淫靡な光景に、エリオは唾を飲む。
アギトは暗闇で足元を探るように指を弄らせる。その指の動きに呼応するように、リインの肉体が跳ねる。
リインの秘所に差し込んでいた指を僅かに動かしたとき、リインの喘ぐ声が一オクターブ上がり、短く痙攣するように腰が跳ねた。
アギトの口元が三日月のように吊り上る。
「あ、―――あぎと、ダメ、そこはダメですぅ―――」
「お前、判り易い過ぎだぜバッテンチビ。大人の女ってのはよ、もっと悠然としてるもんじゃねえのかよぅ!」
「ふあああああああああぁぁあぁっ」
リインは腰を上げ、爪先立ちになってアギトの愛撫に耐えた。
アギトの腕は、肘までもリインの愛液でべとついている。
「仕方がねえ奴だなあ、まったく。ほら、もう十分過ぎるくらい頃合いだろうよ」
アギトが中指と人差し指で、器用にリインの秘所を開いた。
ぱっくりと開いたリインの秘所はほころび始めた花のようだった。控え目なだった割れ目はその蕾を開き、しとどに潤った薄紅色を覗かせている。
リインはゆっくりと腰を下ろす。リインの秘部は、あれ程困難だったのが嘘のようにあっさりとエリオ自身を飲み込んだ。
びくりとエリオの背筋が震える。だが、リインの反応はそれ以上に顕著だった。
「あ、あああっ、しんじゃう……しんじゃいますぅ〜〜!!」
だらしなく涎を垂らし、髪を振り乱し身を捩りながら、少女はよがり狂っていた。
アギトの愛撫は尚も続いている。リインは理性の許容量を超えた快楽に、本能的な恐怖を感じて逃げようとするが、アギトは決して離さない。
絶え間なく乳首を、首筋を弄い、接合部分から顔を出した赤く腫れた陰核を転がし続けた。
次第にリインの目が虚ろになり、天を仰ぐように舌を出して喘ぎ始めた。
「―――気持ちいいか? バッテンチビ」
「は、はひ、きもちいひれす……」
「イきたいか?」
「はひ、いかへてくらさいれす……」
全身をびくびくと痙攣させながら、リインは胡乱な表情で答えた。
アギトは破顔する。
「おらっ、ならイけよ! 盛大にイきやがれっ!」
「ふあぁああぁっ! はひ、イきますぅ! イっちゃいますですぅぅぅぅっ!」
身を乗り出すようにして、激しくリインは達した。
ゆっくりとエリオとの結合部が糸を引いて離れる。エリオは未だ達していないにも関わらず、その男根は白い粘液でべっとりと汚れていた。
リインは息を荒げながら絶頂の余韻に酔いしれ、ベッドに横になった。
エリオの性器は未だ剛直を保ったままだ。
性欲は臨界まで高まってしまっているのに、それをぶつけるべき相手は自分だけ満足してベッドに転がってしまった。
不公平感と、射精できない居心地の悪さでエリオの下腹の奥がとぐろを巻くように疼く。
「あの、僕、僕……」
「解ってるって、エリオ。あたしは、我慢できずに一人でイっちまったあっちのチビとは違うぜ?
たっぷり楽しませてやるから覚悟しとけ」
赤い舌で、ちろりと唇を舐め上げる。その頬は上気し、心なしか呼吸も早まっているようだ。
アギトは四つん這いの姿勢で器用に身に纏った服を脱ぎながら、エリオを再びベッドへと押し倒す。
リインを弄いながら己も興奮したのか、彼女の秘所からは透明な蜜が内股を伝って垂れ落ちていた。
「ほら、触りたいか―――好きなように触っていいんだぞ」
黒いブラをずらしながら上目遣いで見つめるアギトの視線は蠱惑的で、その魔性に引き寄せるられるようにエリオは手を伸ばす。
恐る恐るブラをずらして触れた肌は滑らかで、それでいてぷにぷにと指が沈む心地よい柔らかさがあった。
指先をずらすと、隆起した乳首に指に引っかかる。つるりと平坦な幼い胸板だが、リインより僅かに膨らみを帯びている。
エリオは熱病に憑かれたようにアギトの体を弄った。
その指は、徐々に胸から下腹部へと滑り落ちていく。
おずおずと、少年にとって最も秘された部分へと指を伸ばす。
リインの一方的な行為は快楽こそあったが、体勢的にその部分をはっきりと見ることが出来なかったのだ。
―――口を開いたアギトのそこは、粘液でてらてらと光り、食虫花のような妖しさでエリオを誘っていた。
エリオは、抗し難い磁力に引かれてその洞に指を挿し入れる。
……熱を帯びた吐息と共にアギトの腰が跳ねた。抜き取ったエリオの指は、熱い蜜でべったりと濡れていた。
射精に到れず、押さえつけられた情動が鎌首を擡げる。
「さあ―――来いよ」
アギトは四つん這いになって、エリオに向けて腰を突き出した。獣の姿勢。
白い背筋に黒い翼と尻尾を生やしたその裸身は、正に悪魔の誘惑そのものだった。
エリオは夢中でその腰を掴み、その秘所に己の分身を突きこもうとして―――動きを止めた。
否、動きを止められていた。
「……アギト、リインにあんなイジワルして、ただで済むと思わないで下さいですよ〜」
エリオとアギトを、リインがバインドで縛って固定していた。
アギトは四つん這いで腰を突き出した姿勢のまま、エリオは今正に挿入せんとした姿勢のままである。
エリオのペニスの先端は、アギトの裡に入るか入らないかの位置で止められている。
「おいこらバッテンチビ、何しやがる、放しやがれ!!」
「んふふ〜、いい子にしてれば二人とも気持ちよくしてあげるですよ〜」
リインは邪気の無い笑顔でにっこりと微笑む。
そうして、リインは先ほど自分がされた通りにアギトをねぶり始めた。
耳元を食み、胸を弄り、陰核を弾く。
「やめろっ、んっ、やっ、あああぅぅ―――やめろよぉ―――」
制止の声から勢いが失せ、次第に嬌声へと変わっていく。
「まだまだですぅ。こんなものじゃ済ましませんですよ〜」
リインはアギトの尻尾を握って、上へと引っ張り上げた。獣のような四つん這いのアギトは、必然として腰を高く上げることになる。
その臀部からは、秘所も、尻穴も丸見えの状態だった。
「放せっ、放せようっ〜〜〜〜〜〜」
「お尻の穴まで丸出しだなんで、恥ずかしいですねアギトは。お仕置きしてあげますです」
「―――あぅぅぅっ」
リインは白魚のような指をアギトの後ろの穴に差し入れた。そのままくにくにと、芋虫が這うような緩慢な動きで中を弄り回す。
アギトは顔を真っ赤にして、羞恥と快楽に耐えた。こんな仕打ちを受けて嬌声を漏らすなんて、彼女のプライドが許さない。
「気持ちイイですか? アギト」
ふっ、と耳に息を吹き込みながらリインが囁く。
「―――っ! ―――っ!」
アギトは必死になって首を振り、それを否定した。
「ふうん、まだ足りませんかぁ。ここは洪水みたいになってるのに、アギトは天邪鬼さんですぅ」
リインは指を二本に増やし、激しく中を掻き混ぜた。
「うわぁあぁ、あふうぅ―――」
アギトは必死で体を捩じらせて快楽に抗おうとするが、全身を縛るバインドがそれを許さない。
遂には、涙目にリインに懇願した。
「やめろよっ―――頼むから、止めてくれよっ、これ以上されたら―――」
「リインも鬼じゃありません。そこまで言うなら止めて上げますです」
拍子抜けする程あっさりと、リインはアギトを愛撫する指を止めた。
エリオと繋がるか繋がらないか、という距離で、バインドに縛られたまま放置される。
「あ―――」
アギトは青ざめた。昂ぶった性感が、疼いて仕方ない。エリオの肉棒が欲しくて堪らない。
勿論、そんなことを口に出すわけにも行かず、挿入するわけでも無い浅い性器の接触に歯噛みする。
……もう少し深く繋がれないものかと、もぞりと腰を動かすも、挿入の深度は変わらない。
しかし、表面を撫でるような接触は、確実にアギトの性感を昂ぶらせる。
もぞり、もぞりと、もの欲しげに腰を動かすが、エリオの一物は一向に中に入って来てはくれない。
「うううううぅうぅぅぅぅっ―――」
アギトは涙目でリインを睨みつけるが、リインはそれを涼しい顔で受け流す。
そうこうしている間に、アギトの情欲は烈火の如く燃え上がっていく。
欲しい。今すぐにぶち込んで、滅茶苦茶に掻き混ぜて欲しい。そうでもしないと、気が狂ってしまいそうだった。
リインが不敵な笑みを浮かべる。
「あれあれ? 大丈夫ですかアギト? お顔が真っ赤になってますですよ?
まさか、エリオのおちんちんが欲しくて堪らないんですか?
アギトは大人の女なんですから、男の子のおちんちんを欲しがるなんて、有り得ないですよね?
でも、もしそうなっても、リインは優しいからアギトを責めたりしないです。誰しも、失敗はあるですから。
『おちんちんが欲しくて我慢できない、エッチな子供のわたしのおまんこに、どうかおちんちんを入れて下さい』
って言えば、許してあげるですよ?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
羞恥と屈辱で顔が真っ赤になる。だが、このままお預けを食らえば、頭がおかしくなりそうだ。
アギトは逡巡し――――――唇を噛み、もう一度リインを睨んでから、地を向いてぼそぼそと呟いた。
「……おちんち…が欲しくて……できない、…っちな…供のあたしの……んこに―――」
「声が小さくて聞こえないですぅ」
「―――下さい! チンポが欲しくて我慢出来ない、Hなあたしのおまんこに、どうかチンポをぶち込んで下さい!!」
「……良く出来ましたですぅ」
リインは華のような笑顔を浮かべて、バインドを一部だけ自由にした。
エリオのペニスが一気に秘所へと突き立てられる。
おあずけを食らっていたのはアギトだけではない、散々焦らされたのは、エリオも同じだった。
「っ、アギトさんっっっ!!!」
「っはああああああぁぁっ!!!」
獣のように激しく交わる二人をリインは愛でるように見つめた。
「ああ、んぁっ、くぅうぅぅ、深いっっ―――」
「う、ああ、で、出る……うああぁ、あっ……」
交わらずとも、二人の性感は既に限界まで高められた。射精と絶頂は迅速だった。
「イク、あたし、イッちゃ―――ふああぁぁああぁぁっ!」
ベッドの上で重なり合うように倒れた二人は―――二人ではない、ベッドの上に倒れたのはエリオ一人。
アギトの姿が無い。
「あれ、アギトどこに行っちゃったですか?」
「―――ここだよ」
リインが振り向いたのと、元のサイズに戻ったアギトがリインを縛り返したのは同時だった。
アギトは、穏やかな笑みをその顔に浮かべている。無論、その胸中では巨大な憤怒が渦を巻いているのは言うまでも無い。
「当然、今度はお前の番だよな? バッテンチビ」
「今はアギトの方がおチビさんですぅ!」
「そんな減らず口を叩いてられるのも今のうちだぜ。さっきの借りはたっぷりとさせてもらう。覚悟しとけ」
アギトはリインを大股開きの姿勢に固定すると、その花弁に己の腕を突き入れた。
互いのサイズが同じでは決して成し得なかった筈のフィストファック。
無論、腕はペニスより遥かに精密で細緻な動きが可能だ。これだけサイズ差があるなら尚更である。
先ほどリインの急所は確認済みである。片腕を膣内で激しく踊らせながら、もう片腕で陰核を弄る。
小さな手が自分の中を動き回る感触は、リインにとって全く未知の快楽だった。
「ううあああ……ああぁああ、ダメですぅ、ダメですぅ―――」
白目を剥いて腰を痙攣させるリインの挙措に、快楽以外のものが混じった。
ぶるりと腰が震えた。
「タイム、タイムですぅ―――気持ち良過ぎて、おしっこもれちゃうですぅ……」
アギトの口が三日月のように吊り上る。
「いいこと思いついた、エリオ、バッテンチビをこうして抱き上げろ」
拒否することを許さない厳しい口調の命令に、エリオはリインを抱き上げた。
その姿勢は、母親が子供におしっこをさせる際のそれだった。
リインの顔は羞恥に真っ赤になり、足をばたつかせるも、バインドは外れない。
「漏らしちゃっていいぜ。あたしは大人だからな、子供が小便もらした位じゃ怒らないからよ」
「いやですぅ! リインはお漏らししたりしないですぅ!」
「こーしちまえば問答無用だ。ほら、漏らしちまえよ」
アギトは腰を震わせて尿意に耐えているリインの尿道を激しく攻め立てた。
「ああっ、ダメダメダメですぅぅぅうぅ〜〜〜〜」
ちょろちょろと、黄金色の液体が放物線を描いて流れ出した。
「し〜〜〜〜〜、しッしッ〜〜〜〜。しぃ〜〜〜〜〜」
おしっこポーズのまま失禁するリインを、アギトはにやにやと眺める。
リインは子供のようにぐすぐすと泣き出してしまった。
「ひどいですぅ! ひどいですぅ!!」
その姿も、するすると元の原寸大に戻っていく。
エリオはリインの痴態に背徳的なエロスを感じ、再びその剛直をいきり立たせていた。
リインは涙ぐみながら、その小さな姿に対比すれば大柱程もあるエリオのペニスに抱きついた。
「こうなったら、絶対にリインの方が大人だって証明してやるですぅ!」
「ああっ、小便漏らしながらまだそんな事言いやがるか!」
アギトも、反対側からエリオのペニスに抱きついた。
そのまま、二人で競うようにエリオのペニスに腰を擦りつけ始めた。
「ほらっ、早くイけよ、リイン」
「アギトこそ、早くイくですぅ」
見れば見るだに、倒錯的な光景だった。方や妖精のようなリインと方や小悪魔のようなアギト。
二人とも、ファンタジーの世界を思わせる姿形をしているにも関わらず、現実的過ぎる肉欲の具現であるペニスに抱きついて悶えている。
エリオは、小さな少女二人にペニスに抱きつかれ、擦り上げられるという奇妙な快楽に背筋を引き攣らせて耐えた。
「もっと、もっとですぅ」
「おまえこそ、もっとだ、リイン―――」
競うようにして腰を擦り付けていた二人は、何時しかエリオのペニス越しに指を絡ませ、同じリズムで腰を動かしている。
二人の嬌声の奏でる音色と、腰を動かすリズム。重なり合い、響きあい、エリオの性感を高めていく。
「くっ、もう、うわぁあぁぁあぁ―――」
「あたしもイく―――」
「リインもイっちゃいますぅ―――」
「「「―――――――――くふぅ、ああぁぁあっぁあぁぁっ!!!」」」
三人は同時に達し、エリオの白い精液が二人の融合騎の頭から雨のように降り注いだ。
今度こそ本当に、全ての体力を使い果たし、三人はベッドに倒れ込んだ。
「……なあ、勝負は―――?」
「……今日のところは、引き分けにしといてあげるですぅ」
「……そうだな、今日の所は引き分けにしといてやるか?」
エリオはふと気に掛かることがあって、リインに尋ねてみた。
「あの、リインさん、そう言えば、今日は海鳴に行く用事があるんじゃ―――」
「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
リインは跳ねるようにして飛び上がった。
「大大大遅刻ですぅ!!! それに、この魔力じゃもう大きくなれないですぅ!
ふえぇぇぇぇぇぇん、これじゃあ、はやてちゃんに怒られちゃうですぅ!!」
アギトはやれやれと首を竦める。
「だからお前はガキなんだよ、バッテンチビ」
「ふえぇぇぇぇぇぇん――――――」
リインの泣き声は機動六課の隊舎中に響き渡った。
機動六課の朝は、始まったばかりである。
第一回リインvsアギト「どっちが大人?」勝負対戦成績
リイン ●―◎ アギト
書いてて何度か、自分のエロのセンスの無さに絶望しました。
やっぱりエロは15禁くらいに留めとくのがいいかな、と思ったりしてます。
とか何とか言っても、興が乗れば又書くかもしれません。
あ、アギト達が原寸に戻った時に中田氏したエリオのがどうなったのか? とか、
難しいことは考えてはダメです、きっと。ファンタジーの住人ですから。
最後に、ておあー氏とB・A氏にもう一度感謝を。
十二分にエロいわ、嘘吐きwww
アルカディア氏GJ!
そして、エリオ……イキロw
相変わらずのエリオ虐めにときめきました! GGGJです!
新ジャンル『へたれエリオ』ですね? わかります!
何はともあれ、アルカディア氏GJっす!
282 :
B・A:2008/11/11(火) 01:55:06 ID:HNXFC+bH
>>279 ちびモードで素股ですと。
その手があったか。
何はともあれGJ。エリオ、本当にいじめられるのが似合うな。
そして、こちらもエロの投下を行いますが、もう大丈夫?
283 :
B・A:2008/11/11(火) 02:05:28 ID:HNXFC+bH
誰もいないようなので投下します。
注意事項
・クロノ×なのは
・エロです
・時間軸は二期の後、なのはが10歳の時
・なのはがちょっぴりおバカです
・タイトルは「バカンスですか、そうなんです」
よいかと
打ちつける波の音と遠くから聞こえるカモメの鳴き声をバックに、クロノは盛大なため息を吐いた。
眼前に広がるのはどこまでも続く青い海。周りに島らしきものはなく、さっきから船影らしきものも見えない。
無論、背後の島に自分達以外の人間がいないことはさっき空から確認している。
正真正銘、ここは無人島なのだ。
これがバカンスならばどれだけ良かっただろう。だが、残念なことにバカンスはお空の彼方ならぬ海の底へと沈んでいった。
恋人と2人っきりで南国旅行に出かけたのだが、あろうことか乗っていたセスナが墜落したのである。
そして、気がついたら自分と彼女だけがこの島に流れ着いていたのだ。パイロットの行方はわからないが、無事なことを祈るより他はない。
「携帯電話は海水で壊れているし、現在地がわからないから念話も使えない。まいったな」
陸まで空を飛んで行こうかとも考えたが、現在地がわからなければ今度は空の上で遭難した挙句に魔力切れを起こして海に落ちる可能性が高い。
そうなると、後はここで救助が来るのを待つしかなかった。それに、考えようによってはこれはチャンスでもある。
日頃、仕事でデートの時間も取れずに寂しい思いをさせているだけに、気がねなく2人だけの時間を満喫できるのは貴重な機会だ。
そう思って、クロノが顔を上げると、夏の陽光と青空を背景に眩しい肢体を惜しげもなく晒している高町なのはの姿があった。
「クロノくーん」
遭難直後こそ落ち込んでいたが、女は強と言うべきなのか、クロノよりも一足早く立ち直った彼女は既にこのバカンスを楽しむ気でいた。
海水と砂で汚れた服の代わりに新調したばかりの水着に着替え、お日さまのような笑顔で手を振っている。
「なのは、あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
「大丈夫、わたしだってもう立派な魔導師なんだ・・・・にゃぁっ!?」
言っているそばから、なのはの姿が視界から消える。
どうやら、一段深くなっている場所に足を踏み込んでしまったようだ。
なのはは体力はともかく、運動神経はお世辞にも良いとは言えない。ドッジボールではいつも真っ先に狙われると言っていたこともある。
「大丈夫かい、なのは?」
「にゃはは・・・・こ、転んじゃった・・・・・」
「ほら、手」
「ありがとう・・・・・ううぅ、海水が目に入っちゃった」
「注意力散漫だ。空戦魔導師は360度、視界を常に把握しておかないと・・・うわぁっ!」
歩きながらお説教を始めようとした途端、クロノは海底の石に足を滑らせて尻餅をつく。
それを見たなのはは、堪らず口元を手で隠して前屈みになる。塞いだ口からは、小さな笑い声が聞こえていた。
それはクロノにも伝播し、やがて2人の大きな笑い声が奏でられる。
「はは・・・あははは・・・・・・・」
「はははは・・・・クロノくん、おかしい・・・・・」
「ああ、まったく情けない」
髪をかき上げて立ち上がろうとすると、なのはがそっと手を差し出してきた。
クロノはありがたくその手を取り、立ち上った反動でなのはの体を抱き締める。
「ひゃっ!? ク、クロノくん?」
「良いだろ、誰も見ていないんだ・・・・・2人っきりだよ、なのは」
「うん、2人っきりだね」
どちらからというでなく、唇を重ねる。
こうして、2人のバカンスは始まった。
□
クタクタになるまで海を満喫し、砂浜の上で疲れた体を横たえていると空腹を知らせる音が盛大に奏でられた。
2人にとって幸いだったのは日が暮れる前に食料を調達しなければならないことに気づけたことと、
クロノがサバイバルに関してかなり詳しい知識を持っていたことだった。さすがに生態系が違うので、
地球の野草などはあまり詳しくなかったが、即席の釣り具や罠を駆使して魚を採ることはできた。
その間、なのはは飛行魔法をフル活用して木の上になっている果物などを採取し、適当な枯れ木を集めて焚き火の準備をする。
ディバインシューターの応用で火種は確保できたので、火を起こすことはそれほど難しくはなかった。
こうして、首尾よく食料を確保できた頃にはすっかり日も暮れており、2人はああでもないこうでもないと知恵を絞り合って
夕食の準備を進め、何とか食事にありつくことができた。
「けど凄いね、あんなにたくさんお魚釣っちゃうなんて」
「リーゼ達に扱かれていた頃は、もっと悲惨な場所でサバイバルさせられたからね。
デバイスなしで昆虫しかいない森で一週間過ごせとか、恐竜型の動物しかいない世界に放り出されたりとか、
惑星の95%が水没している世界に隠した宝石を探してこいとか」
「は、ははは・・・・・それはまた、何とも・・・・・・・」
「慣れているさ、こういう生活には」
「そっか・・・・・わたしも、慣れるかな?」
「なのは?」
打って変わってトーンの下がったなのはの言葉に、クロノは訝しむ。
先ほどまでの陽気さが嘘のようだ。こっちが圧倒されるくらい明るく振る舞っていたのが、今は見る影もない。
覗きこんだ表情はこの世の終わりのように虚ろで、不安に彩られている。
「このまま、助けが来なくてずっと2人だけ・・・・・なのかな?」
「なのは、そういうのは考えても仕方がないよ。信じて待つしかない」
「けど、ずっと海岸で遊んでいたけど、船も飛行機も通らなかったよ。それがどういう意味なのか、わたしにだってわかるよ」
船や飛行機の姿がないということは、正規の航路から外れていることを意味する。
狼煙を上げようと海岸にSOSの文字を描こうと、それを見つけてくれる者がいなければ用を成さない。
そして、このまま助けが来なければ、ずっとここで暮さねばならなくなる。
やがては悲しみに暮れていた家族も彼女のことを死んだものと思い、記憶の中の悲しい出来事の1つとして忘れていく。
なのはには、それが堪らなく辛かったのだ。
「ねえ、クロノくん。もしも助けが来なかったら、ずっとここで暮らすんだよね」
「なのは」
「ずっと一緒に・・・・ここで結婚して、家族を作って・・・・・みんなで暮らすんだね」
「な、なのは?」
「クロノくん、その・・・・ちょっと早いかもしれないけど、なのはのこと貰ってくれますか?」
いつの間にか、クロノは尻餅をついてなのはに押し倒されているかのような態勢になっていた。
「わたし、いっぱい赤ちゃん産むから。クロノくんとわたしの子ども、いっぱい作って家族になろう」
「なのは、ま・・・・待って・・・・・・」
「嫌なの?」
今にも股間に手が伸びそうになったところで、なのはは寂しそうに顔を俯かせる。
それを見たクロノは、自分がなのはのことを見誤っていたことに気づいた。
いつだって気丈に前を向き、事件に立ち向かう勇敢な少女。だが、そんな仮面の裏に繊細で傷つきやすい少女の素顔が隠れている。
彼女だってずっと不安を押し殺し、心配かけまいとしていたのだ。ただ、ここにきてそれが少し崩れてしまっただけだ。
「わかったよ」
「クロノくん?」
「ずるいよ、君は。そんな顔されると、断れないじゃないか」
「じゃあ・・・・・」
「こんな僕で良いのなら、お嫁に来てくれるかい、なのは」
「はい、喜んで」
パッと笑顔を零し、なのははクロノにキスをする。
10歳とは思えない濃厚で情熱的なキス。焚き火の音や虫の鳴き声よりも遙かに強く、はっきりと聞き取ることができる。
クロノにとって彼女は麻薬だ。彼女と一緒にいると冷静な思考だとか倫理感だとかは吹き飛んでしまい、
ただ純粋な欲望だけが鎌首を上げてくる。
もっと悦ばせたい、もっと感じさせたい。
アルコールでも飲んだかのように顔を赤くしながら、クロノは徐々に舌をなのはのうなじまで移動させ、その白い頂きを甘噛みする。
小さく悶えるような震えとくぐもった嬌声が嗜虐心を掻き立て、クロノは何度もうなじに唇を吸いつかせながら、
空いている手でなのはの秘部を弄った。小振りなお尻は緊張のためかふるふると震えており、悪戯心から指先で突くと時々、
ビクッと跳ねる様に持ち上がる。
「はぁ・・・はぁ・・ああ・・・・・クロノくん・・・クロノくんのも・・・・・」
熱っぽい声を漏らしながら、なのはは細くしなやかな指をクロノの股間へと伸ばす。
既に何度も体を重ねているだけに、どう弄れば彼が悦んでくれるのかを彼女は熟知している。
あっという間に臨戦態勢を整えた肉棒は水着の中でテントのように盛り上がっており、先走り液が染みを作り始めている。
「ね、ねえ・・・・・もう、良いかな?」
「うん? どうかな?」
うなじから唇を離し、クロノはゆっくりとなのはの下腹部へと降りていく。
そして、おもむろに股間の食い込みをずらすと、愛液の滲む秘唇へとしゃぶりついた。
「ひゃぁっ!? ク、クロノくん・・・・そんなところ、汚いよ・・・・・」
「なのはに汚いところはないよ」
「け、けどぉ・・・あ・あ・ぁあ・・・だ、だめぇ・・・・クロノくん、エッチぃよぉ・・・・・」
「エッチなことしているに決まっているだろ」
ジュクジュクと濡れそぼった肉ビラをかき分け、舌先を肉壺の奥へ奥へと侵入させていく。
熱を持った媚肉はまるで別の生き物のようにうねっており、包皮を捲って露になった豆を舌先で突けば電気が走ったかのように
ビクビクとなのはの体が震える。その反応を楽しみながら、クロノは尻の谷間を割って小さな菊の窄まりに指を這わす。
「ひゃっ!?」
「うん?」
「クロノくん・・・・・そっちでするの?」
「弄るだけ。なのはも好きだろ?」
「うぅ・・・・やあ・・・・あ・あ・・・・」
「うぅん?」
焦らすように指を押し込んでいくと、なのはの声が段々と震えていく。
避妊のためにアナルセックスばかりしてきたせいか、なのはの肛門はすっかり性感帯として開発されていた。
腸液で滑る直腸は女陰とは比べものにならない強さで押し入る指を深々と咥え込み、尚も貪欲に飲み込もうとしてくる。
最初こそ戸惑っていたなのはも、あっという間に頬を綻ばせてだらしなく涎を垂らすようになっていた。
「ク、クロノくん・・・・だめぇ・・・そっちは・・・・だめなの・・・頭の中、変になっちゃうの・・・・・・」
「変って、どう変なんだい?」
「頭の中が、真っ白になって・・・・・もう何にも考えられなくなるの・・・・・気持ち良いのに凄く切なくて・・・・ああ、ああぁぁ・・あ・・・」
「ほら、ここが良いの?」
「う、ううん・あ・あ・・・・・ひゃぁあ・・あ・あ・・・・・・」
まともに言葉を紡ぐこともできず、なのはは声にならない嬌声を上げて悶える。
ゆっくりと指を引き抜くと、付着した腸液がテカテカと月明かりを反射していた。クロノはそれを愛おしげに舌で舐め取ると、
先走り液の滴る肉棒を取り出し、その先端を涎と愛液で濡れそぼった秘唇へと宛がった。
「あはあぁ・・・・き、きて・・・・クロノくんので、いっぱいお腹の中掻き回してぇ・・・・・・・」
「やれやれ、エッチだね、なのはは」
「うん、なのははエッチな女の子で、クロノくんのお嫁さんなの」
舌っ足らずな言葉で甘えながら、なのはは両手を広げてクロノの挿入を迎え入れた。
グイッと肉壺を押し広げられた瞬間、なのはの腰がガクンと跳ね上がる。クロノはそれを両手で押さえつけ、
なのはの動きに合わせる様にゆっくりと腰を動かしていく。だが、それも長くは続かなかった。
誰もいない無人島で、焚き火が爆ぜる音と昆虫の鳴き声を背景に体を交わらせる。
野外で性行為を行うという背徳感と、誰にも見られていないという開放感が2人の劣情を一気に燃え上がらせたのだ。
「クロノくん、クロノくん・・・いいのぉ・・・・・気持ちい所ズコズコされるの、いいのぉ」
「くぅあ・・あ・・・なのは・・・凄い締め付け・・・ああぁ・・・・・」
「腰、止まんない・・あ・あぁぁ・・・・・」
強引に起き上がったなのはが、クロノの体を押し倒して騎乗位の態勢になる。
妖艶な腰の振りはとても10歳とは思えず、玉袋に詰まった子種を全て絞り尽くそうとしているかのように肉棒を締め上げる。
突き上げられる態勢になったことで肉棒はさっきよりも深く根元まで突き刺さり、さっきよりも強い一体感になのはの
快感のボルテージもグングンと昇り詰めていく。
「ああぁ・・・・お、奥までくるぅ・・・・クロノくんのおチ○チン、奥まできてるよぉ・・・・・」
「なのは・・あ・あ・・・こ、こっちも・・・・・」
「あああん・・・・お、お尻はだめぇ・・・・頭おかしくなるかぁ・・あ・あ・・ひゃ・・・へあ・・ううあぁ・・・」
4本の指で肛門を押し広げられ、なのはの切羽詰った嬌声が漏れる。
前と後ろを同時に責められる感覚に、限界を迎えつつあった快楽中枢が更なる脳内麻薬を分泌して頭の中を桃色に染め上げていく。
端から見ていると腰が抜けてしまうのではないのかと心配してしまうほどの激しい腰振りに、
クロノの右足がつった様な痛みを覚える。射精の前兆だ。
「なのは・・・射精すよ、なのはの子宮に中出しするよ」
「き、きてぇ・・・・・いっぱい射精して・・・・・クロノくんの赤ちゃん、妊娠させてぇ・・・・・」
「なのは、射精るよ・・・ああ・・で、射精るぅ・・・・・・・ぐうぁぁぁぁっ!!」
「あは・あ・・き、ちゃあぁぁぁぁぁ・・・あ・・・精液・・・赤ちゃんの素がぁ・・・・お腹に・・あ・あぁぁぁぁぁっ!!」
どくどくと子宮内に精液を注がれ、絶頂を迎えたなのはが四肢を痙攣させながら恋人の逞しい胸板へと頭を預ける。
下腹部に感じる熱は生命の鼓動だ。今、自分の中に注がれた子種は長い時間をかけて成長し、新しい命となって生まれてくる。
自分とクロノの子ども。
この島を賑わせることになる、第一子だ。
「クロノくん・・・・・・」
行為の余韻に浸りながら、なのはは自分の柔らかい髪を撫でていたクロノの顔を見上げる。
「わたし、いっぱい赤ちゃん産むね」
決意のこもった瞳を垣間見て、クロノは静かに頷いた。
一生この島で生活することになっても良いじゃないか。
ここには、こんなにも愛おしい彼女がいるのだから。
「うん、たくさん作ろう・・・・僕達の子ども」
「頑張ろうね、クロノくん」
□
翌日。
南国の太陽が南朝に差し掛かろうとしているお昼時、真っ白な砂浜の上で交わる2つの影があった。
「あっぁ・・あ・あ・・・ク、クロノくん・・・いっちゃう・・・いっちゃうよぉ・・・・」
「ううあぁぁ・・・射精よ、また中出しするよ!」
「ううあああ・・・射精てるぅ・・・・クロノくんの精液、お腹の中いっぱいだよぉ・・・・」
「赤ちゃん作るんだろ、いっぱい中出ししなきゃ妊娠できないよ」
「うん、妊娠する・・・・5人でも10人でも産むから、なのはを妊娠させてぇ・・・あ・あ・・・・ああんん!!」
真っ昼間から何の気兼ねもなくセックスができる現状に、2人はすっかり順応していた。
朝食もそこそこに始めて既に5回は射精しているというのに、思春期真っ只中のクロノの肉棒は萎える気配がまるでない。
黒ずんだ勃起を挿入したまま、抜かずに新たな突き入れを開始する。なのはもなのはでクロノに抱かれる度に快楽の渦に揉まれ、
終わりの見えない絶頂の頂を駆け上がっている。
そして、そんな2人を遙か上空から見下ろす2つの影があった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・降りる?」
「降りれると思う?」
フェイトの問いに、感情のこもらない声でユーノは答える。
2人が消息を絶ったと知ってすぐ、ユーノは持ち前の補助魔法を駆使して2人の居場所を見つけ出し、
フェイトと共にはるばる救助にやって来たのだが、獣のようにまぐわう2人を前にして降りるに降りられない状況なのだ。
というか、このまま放置していても2人は幸せに無人島ライフを過ごしていくのではないのだろうか。
「僕達、何で必死に2人を探していたんだろうね?」
「そうだね」
「どうしようか。また始まったよ」
「これで7回目。クロノもなのはも凄い体力だね」
海鳴では上へ下への大騒ぎだというのに、恥ずかしげもなく肉悦に耽る2人を見ていると騒いでいたのが馬鹿らしく思えてくる。
「ねえ、ユーノ。次の日曜日って空いている?」
「特に用事はないよ」
「映画にでも行かない?」
「良いね、前から見たいと思っていたのがあるんだ」
感情のこもらない棒読みのまま、2人は約束を交わす。
そんなこんなで、ここに新たなカップルが誕生した。
ちなみに、救出後の検査でなのはの妊娠は未遂で終わったことが確認された。
おわり
291 :
B・A:2008/11/11(火) 02:12:12 ID:HNXFC+bH
以上です。
あんまりなタイトルは5秒で思いつきました。
>>291 なにこのバカップルGJ!
普段マジメな人ほど性的快楽に弱いって言うよねー(棒
この二人を反面教師に、ユーノとフェイトは清く正しい男女交際を重ねることになる……のかはB・A氏のみぞ知るw
>>291 (´゚ω゚):;*.':;ブッ
余りにも甘ったるさに砂糖を思いっきり吐き出してしまったwwww
このバカップル、いろいろ終ってる!!
同日に出来上がった新カップルにも幸あらんことを……
しかしなのは10歳というのは久しぶりに見る!
さっそく実用させていただきましたε=(゚∀゚*)ムハー
二人ともGJです。
ところでアギトの「変身」の台詞で、某特撮シリーズが思い浮かんじゃうのは俺だけ?
>>279 エリオ…頑張って生きるんだ
きっとこの後負けて悔しがるリインが再戦を申し込むのですね
そして第2回で敗北した方が(ry
GJ!!
>>291バカップルGJ!!なんというかおもちゃ箱引っ張り出してきたくなったわw
それにしても・・・やっぱり後ろを狙うかエロノ!だがそれがいい!
尻か!尻なのか!
>>279 GJ!!
他のお二方同様非常にハアハアさせていただきました。
アギトとリインのSっぷりが堪りません。
機動六課の朝は始まったばかり、もちろん夜にも続くことを示唆しているのでしょう。
エリオは…まあ別世界のエリオがキャロルー相手にSっぷりを発揮して一夫多妻制を成し遂げてくれるはず!
>>291 GJ!!
もうここまで行ってしまえばなのはが妊娠しない方がおかしいです。
クロノはちゃんと責任とって嫁にするんだ!
確実に救助しなければ10人くらい子供を作りそうですこの二人。
六課解散後って、みんないったいどこら辺で寝泊まりしてるか分かってる人いるのかな?
例えば、なのヴィとか少なくとも魔法学校に通える場所に住んでる、ぐらいしか分かってないよね?
>>299 地名を聞いてるなら公式で出てないことに関してはなんとも言えん
>>299 あえて言うなら、スバルはクラナガンで親元を離れていて、
エリキャロは61管理世界で暮らしているってくらいか。
SSXから俺がわかる範囲はこんだけ。
>>299 あそこって全寮制じゃなかったっけ?
無限書庫まで気軽行き来できる距離みたいだが
>>302 クラナガンから快速レールウェイで1時間でいけるミッションスクールらしい。
それ以上はわからん。
ちなみにミッションスクールというのはキリスト教関連の組織が設立した学校法人のことだが、
あの世界では多分、聖王教会関連の学校がミッションスクールなんだろうな。
304 :
299 :2008/11/12(水) 01:35:24 ID:5MexaYMD
きっちりしてないようなので、好きにいじれるのだと都合よく解釈しときますね
どうも有難う
>>301 ん、特救隊って首都の南部港湾地区に有るんだっけか
てっきり自分はミッド全体の南の方かと思ってた
306 :
ザ・シガー:2008/11/12(水) 19:21:08 ID:XsCezwUf
>>71 >>72 ウホ! 良い感想♪
嬉しいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあとことん喜ばせてやらないとな。
という訳で、25分まで見直ししたら投下するぜ。
レジアス×なのはの「ある中将と教導官の日々」の最新話だ!!
おおおおおっ!!!!
待ってやすぜ!
ある中将と教導官の日々7
レジアスへの淡い恋心を自覚して、なのはの心に一つの波紋が生じた。
19年の人生の中で初めて異性に恋を抱き、そして彼の心は亡き妻に縛られていると知り、恋というものに未成熟な心に激しい恋慕と深い嫉妬が同時に生まれる。
そしてなのはは思う、“彼が欲しい”と。
少女は性質の異なる二つの炎を胸に燃やしながら、携帯端末で相部屋の親友にメールを入れた。
内容は“今夜は外で食事をする事”そして……
“今夜は帰らないかもしれない”という事を。
□
夜の帳が下り、暗黒が覆い始めた街には空に星が、地には街灯が明かりを灯し始める。
太陽が消えた夜の世界で二人の男女が歩いていた。
一人は長く艶やかな栗色の髪をサイドポニーに結った女性、機動六課スターズ隊長高町なのは。
そしてもう一人は恰幅の良い大柄な男、地上本部所属の中将、レジアス・ゲイズ。
二人は寄り添い、レジアスがなのはを支えるように歩いていた。
なのはの歩きはフラフラの千鳥足で、とてもじゃないが一人で歩くのは困難だった。
二人の近くに寄れば、朱に染まった頬とその吐息に混じるアルコール臭で彼女が酔っ払っている事がすぐに分かるだろう。
「大丈夫かね?」
「ええ……ぜんぜんだいじょうぶですぅ」
「足がフラフラだが?」
「だからへいきですって……」
どこが平気なのか、レジアスはもう一度問おうと思ったが、どうせ徒労に終わると思ったので止めた。
どうも彼女の様子は一緒に夕日を眺めた時からおかしかった。
なんと言えば良いのか、自分に向けられる視線に絡み付くような熱が込められている気がする。
公園で夕日を眺めた後、二人はそのまま夕食を共にしたのだが、なのはは飲めもしない酒ばかり注文しては次々にグラスを空にしていった。
たっぷりとアルコールを摂取した少女はすっかり酔っ払い、足元もおぼつかない状態に陥る。
そして今、こうしてレジアスの肩を借りてなんとか家路についている途中だった。
正直な話、少女の柔らかな肢体の感触と甘い香りに彼の中の色々なモノが暴走しそうだったが、それは鉄壁の理性が必至に制御している。
しかし、まるでレジアスの葛藤を知っているかのようになのはは時折蠢いては自分の身体を彼に摺り寄せた。
その度に中年中将の心の中では脳内アインヘリアルが極大砲撃を連発していた。
だがレジアスの努力も虚しく、状況は彼をさらなる窮地へと追い込む。
ポツンと音を立て、彼の頬に冷たい水の雫が落ちた。
「これは……雨か」
冷えた夜の大気が呼んだのか、いつのまにか曇天となった空がまるで嫌がらせのように冷たい水滴を人々に与える。
レジアスは降り注ぐ雨に顔をしかめながら周囲を見渡す。
今の時節は夜になるとかなり冷え込む、傘も差さずにいれば風邪を引くのは眼に見えて明らかだった。
どこか雨宿りできる場所を求めて彼は当たり一帯に目をやるが、そこに映るのはどれもホテルばかり。
正直、酔いの回った若い娘を連れ込めるような場所ではない。
だが悩んでいる時間がないのもまた事実。
レジアスは、さながら若い頃に大規模な暴動を鎮圧する任務に当たった時のような焦りに駆られていた。
しかし、その時少女の口からとんでもない一言が飛び出す。
「レジアス中将……」
「ん? なんだね?」
「……ホテル入りましょ」
「ナ、ナニを言っているんだっ!?」
正に驚天動地、レジアスは顔を真っ赤にしてアタフタと大慌てする。
辣腕中将の普段は決して見せない姿はそれなりに笑える光景ではあったが、本人からすれば堪ったものではない。
だが彼のそんな様など露知らず、なのははどこか憂いを帯びた切なげな瞳で彼に哀願した。
「だって寒くて……ダメですか?」
涙目&上目遣いの少女の哀願、これを断ったら男で無い、否! 漢(おとこ)ではない!!
そしてレジアス・ゲイズは男の中の漢である、これに応えぬ道理はない。
彼ができるのは、ただ彼女の要求に従ってホテルのロビーに足を進める事だけだった。
□
訪れたホテルの部屋は値段の安いビジネスホテルにしてはそれなりに良い部屋だった。
間取りも広く、床もベッドも実に綺麗に掃除が行き届いている。
従業員の質が伺える手入れに感心しつつ、レジアスはひとまずベッドに足を進めて今まで肩を貸してたなのはを横にした。
屈強な体躯を誇るレジアスからすれば軽いとは言えど、長時間人一人の体重を支え続けた老体は少しばかり悲鳴を上げていた。
なのはを寝かせた隣りのベッドに腰掛けた彼は軽く肩を回して一日の疲労を感じる。
そして、とりあえず上着を脱いでひと段落しようと……
「っと、いかん! ナニをやっているんだ私は!」
……はしなかった。
正直言って今の状況はヤバ過ぎる、危険度1000パーセントだ。
中年の政府高官が階級が下のうら若き乙女をホテルに連れ込む、客観的な見地で考えれば超ド級のセクシャルハラスメントである。
もし週刊誌にでも嗅ぎつけられたらそれだけで身の破滅は免れない、社会的な地位を全て失うは必定。
今まで積み上げてきたミッド地上の秩序の守護者と言うイメージは崩壊し、ただのエロオヤジへと成り果てるだろう。
それだけはなんとしても避けねばならない事態だった。
地上の平和の共に誓い合った親友の為に、自分を信じてくれる部下やミッド地上の市民の為に、そしてなにより最強最悪に嫉妬深い実の娘やあの世の妻の為に。
故に彼の取る行動は一つ。
今すぐ部屋を出てフロントへ行き、部屋の料金を先に支払い、何事もなかったように家に帰り、娘にお休みのキスをしてベッドに飛び込む事。
その過程を数秒で超高速シュミレーションして反芻すると、レジアスは即座に行動を開始した。
一度脱いだ上着を羽織り、ドアに向かって足を進める。
だがそんな彼の進路を阻む緊急事態が発生。
上着の袖を何者かが掴み、彼の進行を阻止したのだ。
レジアスはまるで悪魔に捕まった人間の如く焦りと恐怖駆られた表情で振り向く。
そしてそこには、サイドポニーに結われた茶色の髪を揺らす美少女教導官の姿があった。
アルコールの為か、それともレジアスと密閉した空間に二人きりという状況への興奮の為か、なのはの頬は鮮やかな朱色に染まっている。
瞳はトロンと潤んで切なそうに物欲しそうに、とても処女とは思えぬほどの蟲惑的な魅了を持って彼を見つめていた。
ボタンを肌蹴た胸元から覗く胸の谷間と相まって、今のなのはは破壊力の塊、男と言う生命体を狂わす魔毒に他ならない。
レジアスは反射的になのはから視線を反らした。とてもじゃないが、今のなのはの瞳を見つめて理性を保つ自信がなかった。
だが彼のそんな葛藤など露知らず、なのははその瑞々しい桃色の唇を蠢かし妖しく言葉を紡ぎだす。
「……どうして行っちゃうんですか?」
「い、いや……そのだな……あ、あ、明日も仕事があるし……流石にこんな状況で男女が二人きりというのは……なんだ、その、問題がだな」
汗だくでしどろもどろになりながら必至に弁明するレジアス。
その姿はとても公衆の面前で演説する時の威厳や気迫など欠片もなかった。
おそらく、彼がここまで狼狽する様を見た人間など数えるほどしかおるまい。
普段は厳格で知られる彼の意外な一面に、艶めいたなのはの雰囲気が少しだけ和らいだかに見えた。
だがそれも一瞬、少女の顔はすぐに淫蕩さを含んだ妖女へと変わる。
「その……私、今日はもうここで過ごしたいんです……酔いも酷いし……でも一人は心細くて……」
思わず庇護欲をそそるような弱弱しい表情と言葉、そしてその中に溶け込んだ妖しさは形容し難い引力を誇っていた。
昼間は可憐で天真爛漫だった少女が見せる媚態にレジアスは思わず息を飲む。
昼と夜で違う顔を見せる、それはまるで太陽と月に彩られる空のようだった。
そして、艶やかに濡れた少女の唇は続く言葉を紡ぎだした。
「……今夜は……今夜一晩は私と一緒にいてください……」
レジアスの服の袖を掴みながら、なのはは上目遣いに彼の瞳を覗き込み哀願する。
潤んだ少女の瞳がもたらすその魔性めいた力に男は頷くことしかできなかった。
□
ホテルのバスルームに入れば何も纏っていない肌にゾクリと肌寒さが走った。
季節は既に上着無しでは外に出れないような時分であるだけにしょうがない事ではある。
少女はシャワーのコックを捻り、熱い湯を己が裸身へと注いだ。
かなり温度設定を高く設定しているのかバスルームには濛々と湯気が立ち込める。
湯の熱に白く澄んだ少女の肌は徐々に桃色に変わっていった。
体内に摂取したアルコールのせいか、いつもよりも紅潮している彼女の肌はどこか艶めいていて、とても処女とは思えぬ色香を放っていた。
酒の残り香と熱湯の温度、この二つだけではなく恋しい思い人と二人だけで過ごす事への興奮がさらなる燃料となって、少女……高町なのはの身体は芯から熱く滾っていく。
だが、燃え滾るような身体とは正反対に彼女の心は氷のように冷たくなっていた。
それは全て、自分自身を軽蔑する自虐の心が故に。
「わたし……さいていだな……」
シャワーを浴びながら、水滴が床を叩く音に溶けるような小さな声でなのはは呟いた。
今日の……いや、今の自分がしている行為に少女は自身を軽蔑する。
酒の力を借りて彼を誘惑し、挙句の果てはホテルに連れ込んで一晩共に過ごすように強要。
責任感の強くて優しい彼が、今の自分の頼みを断れないと分かっていてここへ誘った。
酔いのせいにしてはいるが、半分は計算ずくの行動である。
それは、とても普段の自分からは想像もできない良識を逸脱した行いだ。
「どうして……わたし……どうしてこんなことしてるんだろ……」
なのはは湯気に曇るバスルームの中、自虐と自問を繰り返す。
レジアスへの恋心を自覚してから、彼女の心はおかしくなった。
狂おしい愛しさが胸を甘く焼き、彼の口から出た亡妻の存在が嫉妬と憎悪を煽る。
産まれてこの方恋の一つも知らなかった乙女には制御不可能なあまりに強すぎる二つの感情。
彼女の心は混乱の極みだった。
今すぐ彼に想いを伝えたい、卑しい想いを募らせる自分が恥ずかしくて顔を見るのが辛い、亡き妻の事など忘れて自分だけ見て欲しい。
数多の思いが混ざり合い、思慮は深い闇へと堕ちる。
一体どれくらいそうしていたのだろうか。
混沌とした思慮に沈む中、いつしかなのはの身体は浴び続けたシャワーで真っ赤に火照っていた。
茹るように熱くなる身体に脳髄まで溶けるような錯覚を感じ、シャワーのコックを捻ってお湯を止める。
熱くなった身体からは湯気が立ち上っており、彼女の身体がどれだけ熱を帯びたか良く分かった。
なのはは思う“考えても無駄だ”と。
そして今はただ、この混ざり合った混沌に身を任せようと少女は決意した。
濡れた身体をタオルで拭くと、置いてあったバスローブに袖を通す。
桃色に染まった肌を覆い隠す純白のヴェール、火照った身体を包む布地との温度差になのははゾクリと心地良い感覚を覚えた。
そして唇から一度息を吐き出すと、少女はドアに手をかけた。
僅かに軋む蝶番の音と共にバスルームを出れば、ベッドに腰掛けたレジアスの視線がなのはのそれと空中で絡み合う。
数瞬の沈黙、見つめあう瞳と瞳、互いの思考が空白で埋まるのが分かる。
そして、最初に口を開いたのはなのはだった。
「あの……シャワー、先に使わせてもらいました」
「あ、あ、ああ、そうか」
なのはの唇から紡ぎだされる言葉に、レジアスは顔を真っ赤にして狼狽しつつ答える。
彼女の放つ言葉の残響はいつも聞く優しげな響きと打って変わった艶を帯びており、ストレートに下ろされた濡れた髪やバスローブから覗く美しい太股のライン等と相まってレジアスの心を容易く掻き乱した。
彼の反応になのはは少し嬉しくなった。
男性へのセックスアピールに今まで一度たりとも縁のなかった自分だが、少なくとも今は彼の心を動揺させるだけの艶を持っているらしい。
胸の内に沸きあがる女としての悦びに、なのはは生娘とは思えぬ深みのある艶美なる微笑を浮かべながら口を開いた。
「中将も……どうですか?」
「い、いや! 私は結構だ! 明日も早いしもう寝る!!」
これ以上なのはの艶姿を見ているのが理性的な問題で耐えられなかったのか、レジアスはそう言い切ると彼女に背を向けてベッドに潜った。
鋭い本能と数多の経験が彼に脱衣と言う隙を許さない。
レジアスは、これ以上身体を熱くしたら本当に何か取り返しの付かない間違いを起こしてしまいそうで恐かった。
だからそうならないように、こうしてベッドに潜り込み必死に雑念を払おうとする。
彼の頭の中では昔銭湯で見た親友の屈強な肉体や部下の男の身体をイメージして煩悩に対抗、なんとかして先ほど見たなのはの美しい姿を消し去ろうと努力した。
だが皮肉にも、意識すればするほど目に焼きついた少女の肢体が鮮明に思い浮かぶ。
艶やかで長い栗色の髪、思わず美味しそうだと思ってしまう桜色の唇、どこまでも澄んだ美しい瞳、磨き抜かれた白磁の如く白い肌、女性らしい起伏に満ちた悩ましいまでのボディライン。
その全てがあまりにも美しかった、これは意識して忘れられるものではない。
思い起こせば、彼女の甘く芳しい香りが脳裏を過ぎる……いや? むしろ実際に漂ってくるような気さえする。
「んっ!?」
そう思った刹那、レジアスは背後に近づく妖しげな気配に気付いた。
自分の後方、被ったシーツの向こう側に“何者か”がいるという確かな確信がある。
そして、鼻腔が溶けるかと思えるほど艶めかしい甘やかな芳香が漂ったかと思えば、次の瞬間レジアスの眠るベッドの中にその何者かが侵入してきた。
中将の巨体にほんのりと温かい微熱を帯びた柔らかな感触が服越しに伝わる。
言い様の無い至福の柔らさを誇る二つの肉の塊が背中に押し当てられたかと思えば、聞き慣れた、されど今日初めて聞く声色の澄んだ声が響いた。
「……中将……ちょっと、お邪魔しますね」
「たたた、た、た、高町空尉!?」
「少し寒くて……ベッド……ご一緒させてください」
とても処女とは思えぬ大胆さ、あろう事かなのははバスローブのみを身に纏っただけの危険と色香極まる格好でレジアスのベッドに侵入工作を慣行したのだ。
シーツの中、少女の肢体がさながら妖しき蛇のように男に絡みつく。
太く逞しいレジアスの腕や足になのはは自身のそれを絡ませて存分に肌で味わった。
常の彼女ならば恥ずかしくて死んでしまいそうな行為だったが、冷静な思考と判断力を失った今の彼女にはどうという事は無い。
ただ彼が恋しくて、乙女の脳髄は暴走の極みだった。
対するレジアスは、突然の誘惑に狼狽しながら彼女に対して淫らな想像と欲望を抱きそうな自身の中に芽生えた滾る欲望を必死に理性で押さえつける。
そしてなんとかなのはを説得しようと、ありったけの理性を総動員して口を開いた。
「たたたた、高町空尉、いいい、い、いくらなんでも男女がみだりに床を共にするのは道徳的に見て間違っているとは思わんかね?」
なのはの髪の甘い香りと身体に絡みつく柔らかな肢体の感触を必死の耐え難い誘惑を鋼の理性で押さえ続けながら、レジアスは舌の上手く回らぬ口でなのはに語りかけた。
だが、なのははこの彼の言葉に対して、まるで生来の淫婦の如く甘えた声で返す。
「……今日の昼間……言った事覚えてます? 中将とか、そういう仕事の時みたいに呼ぶなって言いましたよね?」
「え? いや、まあ……確かにそんな事も言ったが……それがいったい」
なのはの言っている言葉の意味、伝えんとする意図が理解できずレジアスはうろたえた。
しかし彼の次の言葉を待たず、少女はぎゅっと抱きつきながら自身の口を開いた。
「だから、あなたの事を……名前で呼ばせてください……レジアスさん」
「へぇ? いや……別に構わんが……」
突然の少女の要求に、レジアスは思わず素っ頓狂な声を漏らしつつ了承の返事を返した。
むしろ彼女と一緒にいる時に堅苦しい呼び方をされないというのは、かねてからある程度望んでいた事だったが故にそれなりに嬉しくある。
だが問題はなのはが次に放った言葉だった。
「あの……だから、私の事も……名前で……“なのは”って呼んでください」
「ええぇぇっ!? い、いい、いや、それは流石に……せめて、苗字で……」
突然のなのはの要求に、レジアスは慌てふためいた。
ただでさえ危険の状況なのに、この少女を名前で呼ぶというのはどこか一線を越えるような錯覚を覚える。
相手を名前で呼ぶ事にどこか抵抗感を示すレジアスだったが、なのははトドメの追撃を慣行した。
「……嫌ですか?」
哀しそうな切なそうな、そんな声。
逆らう事などできない、一切の抵抗の叶わない、ただ頷く事しか許さない、そんな言霊の込められた言葉だった。
レジアスは少しだけ首を動かして頷くと、静かに口を開いて彼女の望むままの言の葉を紡ぎだす。
静かに、だが確かに届く声量で。
「分かったよ、その……なのは」
渋みのある低い声、だがなのはの耳には甘美なる天上の音色に等しい。
思わず下腹部の“女の器官”が甘い疼きを感じる。彼への愛しさが直接的な身体の欲求を呼び起こしていくのが分かった。
心も身体も、高町なのはというものを構成する全てがレジアス・ゲイズという男を欲していた。
頬がさらに熱く紅くなるのを感じながら、なのはは彼の背中に擦り寄る。
鼻腔に伝わる男性特有の匂いがひどく心地良く思えた。
「ありがとうございます……レジアス……さん」
彼の言葉が嬉しくて、なのはは火照る肢体でさらに力を込めて目の前の屈強な五体を抱きしめた。
その行為はレジアスの理性を魔法に例えるならスターライトブレイカーの如き怒涛の破壊力で攻撃したが、彼の鉄壁の理性はそれでもなお耐え続けた。
なのはの方としては、もしレジアスが欲望に耐えかねて自分に姦通を強要しても喜んで受け入れる気持ちではあったが、彼の精神は少女が考えるそれを遥かに上回る強靭さを宿していたが故にそうなる事はない。
互いの体温が溶け合うような中、なのはは彼の温もりに穏やかな眠りに落ち、レジアスは彼女の甘い芳香と柔らかさに眠るに眠れず、結局何事もなくその日の夜は過ぎ去った。
続く。
314 :
ザ・シガー:2008/11/12(水) 19:35:28 ID:XsCezwUf
投下終了〜。
デート編の収穫を纏めて見ると。
「手を繋いだ」「間接キスした」「下の名前で呼ぶ」「同じベッドで眠る(行為なし)」
と、まるでエロパロらしからぬピュア過ぎる事象の数々に思わず書いてる俺本人が吹いたよwww
『ヘイ! カモン!!』状態のなのはに対してオロオロしながらも耐え抜いたレジィは男の中の漢です、異論は認めぬ。
さて、ピュアなレジなの書いたし、次はなんかエロ書こう。
うん、エロエロなやつ。
………まさかこのスレで、いや、なのは二次創作で、レジアスを羨ましく思う日が来ようとは…………
ひたすらにGJ!
>>314 GJ!!
なのはさんをここまで狂わせるとは、これが恋という奴なのか……
スターライトブレイカーを耐え凌ぐレジィをイメージして笑った。
しかし、オーリスさんは未だにお休みのキスをされているのだろうか。
レジなのかあ…
同じ世界観?でゼスフェとかスカはやとかやってくれないかなw
318 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 20:09:18 ID:IYKOkVfz
>>314 GJ!
いやはや、レジアスは鋼の漢だなw
このさあ召し上がれと言わんばかりのなのはの猛攻に耐えきったかw
319 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 20:21:42 ID:7ye4oJqL
レジアスGJ!
なんたる鋼の精神w まさしく漢です!
いちゃいちゃというか恋を知らぬ乙女らしい暴走っぷりのなのはがかわええw
けど、甘いぞ! レジアスはその程度の誘惑には負けぬ武士だわ!
このままピュアな関係で言って欲しい反面、いつまでザ・シガー氏の理性が保つのか心配ですw
これからも頑張ってください〜
>>279 GJ!
エリオの受けはおとこにょこなのにどうしてここまで似合ってしまうのだろう
でも動きを制限されなければ、狼モードになってた可能性もいける
お二人と同様すごく素敵な作品をありがとうございます
>>314 GJ!
なんというピュアピュアなのレジなんだ
手を出さなかったレジアスはすごすぎる
>>314 GJ!!
ところで、この下げたズボンはどうしたら・・・
エロエロつったらあれですよ JS通販
ちょっと聞きたいんだが、過去にクトゥルフ神話を題材にした連載ものがあったって本当?
旧保管庫にあったような無かったような。読んだことはないが。
>>323 新保管庫の「魔法少女リリカルなのはACF」。
ちなみに未完。
>>314 GJ!
なのはさんが悪魔からサキュバスにクラスチェンジしたwwwww
>>325 あれ、続き読みたいんだが。
今更無理だろなぁ…
シナイダさんの御尻フェイトそんを未だに待ち続けてるんだぜ?
329 :
B・A:2008/11/13(木) 14:44:34 ID:JiyYhqDI
投下いきます。
注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・サイボーグ化して復活なんて使い古されたネタが出てきます(赤外線照射装置は搭載していない)
・主人公その1:エリオ(今度も出番なし)
その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」 訳:負け犬
建物から火の手が上がり、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
スバルと何者かが仕掛けた爆弾によってプラントは天地を引っくり返したような騒ぎになっていた。
それはスバルが望んだ結果であり、その混乱に乗じてリインと共に脱出するつもりであった。
だが、施設の外に飛び出た途端に飛び込んできた凄惨な光景に、スバルはおろか追いかけてきたノーヴェとチンクまでもが
驚愕して動けずにいた。
「こ、これは・・・・・・・・」
チンクの呟きが灰色の空に消えていく。
目の前に広がっているのは虐殺の現場だ。
爆破された装甲車、破壊されたガジェット、行動不能となった量産型戦闘機人。
屍のように折り重なるそれらの中心に立っているのは襤褸のマントを羽織った1人の男だ。
バイザーで顔を隠しているので素顔はわからないが、風になびいている髪は緑色だ。
マントの隙間から見えている左腕にはスバルが装着しているものと色違いのリボルバーナックルが装備されており、
両足には純白のローラーが見え隠れしている。
「そのデバイスは!?」
「お前、ゼロ・セカンドの仲間か!?」
スバルの驚愕と、ノーヴェの攻撃は同時であった。まとめて始末しようとしたのか、広範囲にガンシューターがばら撒かれている。
咄嗟にスバルは防御しようと身を捩るが、腕に走った激痛で思わず身をかがめる。
彼女のIS“振動破砕”は強力な分、自身へのノックバックも大きい。ロクな整備も受けられない状態で単独行動を続けてきたことで、
基礎フレームに疲労が蓄積していたのだ。
せめてリインだけでも守ろうと、スバルは彼女の小さな体を抱き締める。だが、予想していた痛みはいつまで経っても訪れなかった。
恐る恐る見上げると、襤褸マントの男がスバルに背を向けての立ち塞がっていた。
彼がノーヴェの攻撃から身を挺して自分達を守ってくれたのだ。
「大丈夫か?」
細切れになったマントが風で吹き飛び、その下から鋼の外骨格が露になる。
まるで噛み合う歯車のように唸りを上げる左腕のリボルバーナックル。砂塵に塗れてもなお輝きを失わない、
亡き姉のインテリジェントデバイス“ブリッツキャリバー”。そして、被弾してひび割れたバイザーから覗く、
色白で端正な顔立ち。見覚えのあるその顔に、スバルの驚愕は頂点に達する。
「ど、どうして・・・・あなたが・・・・・・・」
「言っただろう、これからは俺が君を守ると・・・・・・・俺が、ギンガの代わりに」
男のただならぬ気配に、相対しているチンクは戦慄のようなものを感じていた。
纏った気配が尋常ではない。燃える紅蓮の炎と底知れぬ暗闇、
地獄の釜の中で茹でられたかのようなおぞましい殺気が男から発せられている。
「直接会うのは初めてだが、ブリッツの代わりに俺が言わせてもらう・・・・・・久しぶりだな」
「そのデバイス、ゼロ・ファーストの関係者か?」
「ああ」
「見たところタイプゼロよりも更に旧式のようだが、そんな姿になってまで戦おうとするとは、目的は復讐か?
我々を破壊するために、人の身を捨てたか」
「違う、俺はお前たちを殺しにきた。そしてもう1つ・・・・・・・彼女はゼロ・ファーストじゃない、ギンガ・ナカジマだ!」
カチリと、バイザーが外れて地面に落ちる。
それを合図に2人は同時に地を蹴った。
投擲された短剣“スティンガー”を男は裏拳で薙ぎ払い、砂塵を引き裂きながらチンクの矮躯へと肉薄する。
軋むようなモーター音と共に関節が駆動し、男の打撃が繰り出される。まるで滑空するように宙を舞ったのは
彼が装着しているブリッツキャリバーのローラーだ。鋼の車輪がチンクの鼻先を掠め、すかさず身を捻って遠心力が
込められた拳の一撃が頭蓋へと叩き込まれる。だが、それを簡単に許すチンクではなかった。
彼女は迫りくる拳の関節部にスティンガーを突き刺し、自身は頭を捻ることで振り下ろされた突きを紙一重で回避したのだ。
そして、がら空きの胴体に蹴りを叩き込んで距離を取り、間髪入れずに新たなスティンガーを投擲、自らのISを発動する。
「IS“ランブルデトネイター”」
地面に着弾したスティンガーに環状のテンプレートが出現したかと思うと、それはそのまま熱量の伴うエネルギーと化して
スティンガーそのものを爆破、その衝撃で粉塵を舞い上がらせる。一定時間触れていた金属を爆発物に変える能力。
それが彼女の先天固有技能(IS)だ。
「今の攻撃、確かキャリバーショットというシューティングアーツの基本コンビネーション。
ゼロ・ファースト・・・・・ギンガ・ナカジマが使っていた技だ。どうしてお前が使える?」
「学んだのさ。俺は彼女の技と力でお前達を倒す」
「警備の連中を始末したのもお前か? なるほど、大した腕のようだ。戦士ならば名乗らねばならないな、
私はナンバーズが5番、“刃舞う爆撃手”チンク」
「ラッド・カルタスだ。名乗ってくれたことは感謝しよう、チンク」
無機質な言葉で返答し、カルタスは右腕に突き刺さったままのスティンガーを投げ捨てる。
直後、それは先ほどのものと同じように爆散して砕け散った。
「ノーヴェ、まだ動いている連中を集めて作業員の救出に回れ」
「けど、チンク姉・・・・・」
「その体では足手まといだ。こいつらは姉とガジェットだけで始末する。案ずるな、姉は敗北などせぬ」
「わかった・・・・・気をつけて、チンク姉」
後ろ髪を引かれる思いでノーヴェはローラーを走らせ、傷ついた体を庇いながらその場を立ち去る。
「カ、カルタスさん・・・・・その体・・・・・」
呆けたようなスバルの呟きが風に溶けていく。
ラッド・カルタスは彼女の姉、ギンガが所属していた陸士108部隊の上司にあたる人物だ。
満更知らない仲ではないが、JS事件後に行方不明になっていたはずだ。
「JS事件の後、俺は瀕死の重傷を負った。生き残るためには体を機械化する以外に方法はなく、
処置の時間を稼ぐためにナカジマ三佐はお亡くなりになられた。スバル、俺はギンガと三佐、
2人の無念を晴らすためにここにいる。俺は君と共にいる」
「脱出の算段か? 悪いが、ナンバーズの名に賭けて逃しはせん」
再び投擲されたスティンガーを弾き、スバルを爆発の衝撃から庇うように突き飛ばしてからカルタスは駆ける。
「カルタスさん!?」
「スバル、こっちにも来ましたよ!」
リインの言葉に、スバルは即座に立ち上がって態勢を立て直す。
既に周りはガジェットによって包囲されており、逃げ場はない。
カルタスが戦力を削ってくれていたおかげか、数はそれほど多くはない。
だが、脱出の際にこいつらに加えて戦闘機人まで相手にしなければならなかったと思うと、ゾッとしてくる。
「スバル、私が何とかして隙を作りますから、それまで耐えてください」
「了解」
『私も移動します。合流地点で会いましょう』
□
スバルとガジェットの戦いが開始される中、カルタスとチンクの戦いは熾烈を極めつつあった。
カルタスは飛び抜けて強いわけではない。魔力資質もなく、ISすら発現していない。
彼の武器は文字通りの鋼の肉体に記憶と資料だけを頼りに身につけたシューティングアーツ、
そして魔力なしでも使えるように改造した左腕のリボルバーナックルだけだ。それでも辛うじてチンクに食らいついていけているのは、
彼の執念の賜物だ。最愛の女性を失った悲しみが、カルタスの潜在能力を限界以上に引き上げているのである。
「ギンガの仇だ、ナンバーズ!」
「くっ・・・避けきれない!?」
チンクは遠心力の込められた後ろ回し蹴りを咄嗟に身に纏っていたシェルコートのバリアで受け止め、
弾いた隙にスティンガーを投擲して距離を取る。
(こいつの爆発力、侮れん)
離れて戦うスタイルがチンクの持ち味ではあるが、接近戦がこなせないわけではない。しかしカルタスの執念は凄まじく、
隙を見せれば羅刹の如き勢いに凌駕されそうになる。しかもローラーによって機動力を確保しているので、
離れてもすぐに距離を詰めてくる。自分とは相性の悪い相手だ。
「執念とは恐ろしいな。だが、例え修羅が相手であろうと私は勝利してきた!」
相手の間合いから逃れる際に地面に打ち込んでおいたスティンガーが爆発し、平らな地面に無数の亀裂が走る。
その亀裂にカルタスが足を取られた瞬間を見計らってスティンガーを投擲、即座にISを発動せんとテンプレートを展開する。
回避の時間は与えず、払い落とそうとした瞬間に爆破するためだ。たが、カルタスが次に取った行動は彼女の予想外なものだった。
「うおおおぉぉぉぉっ!」
「何、防御しない!?」
「この至近距離なら、お前も無事じゃ済まない!」
「はっ!?」
バリアが展開されるよりも早く、カルタスはチンクの矮躯を押し倒して左腕を振りかぶる。
ごつい外骨格は見た目に違わない重量を誇り、如何に戦闘機人いえど容易に逃れる術はない。
そう思った刹那、底冷えするような呟きが可憐な唇から囁かれた。
「IS、ランブルデトネイター」
「なっ!? 自分ごと爆破する気か!?」
「ナンバーズに敗北は許されない。私は戦うためだけに生み出された兵器。これがその覚悟だ!」
直後、カルタスの体に突き刺さっていたスティンガーが爆発して2人の体が吹き飛ばされる。
直にISを食らったことで外骨格に亀裂が走り、損傷した場所から火花が飛び散る。
「あ、後一瞬、こちらが早ければ・・・・・」
傷ついた体を立ち上がらせながら、カルタスは呟く。彼の左手には、爆発の瞬間にもぎ取ったチンクの眼帯が握られている。
もしもチンクが一瞬でも躊躇してくれていれば、この手は彼女の頭蓋を叩き割っていただろう。
我が身を省みない彼女の覚悟が結果的に窮地を救ったのである。
「カルタスさん、危ない!」
危険を知らせるスバルの叫びが聞こえたかと思うと、舞い上がった粉塵を引き裂いて1本のスティンガーが飛来する。
その一瞬に、カルタスは全ての注意を注いでしまう。自分と同じようにチンクも傷ついており、
これは苦し紛れに放った一撃であると思い込んでしまったのだ。彼は知らない。目の前の敵が、投擲せずとも短剣を放てることを。
「オーバーデトネイション」
飛来したスティンガーが爆発し、カルタスから視覚と聴覚を奪う。そして無防備となったその体に、
虚空から独りでに出現したスティンガーが突き刺さり、背後の壁にカルタスを貼り付けにする。
「がはぁっ!」
「カルタスさん!」
動かなくなったカルタスを見て、スバルは悲痛な叫びを上げる。
しかし、向かってくるガジェットから背後のリインを守らねばならないため、助けに向かうことができない。
「無様だな、復讐鬼」
粉塵を払いのけ、憤怒の形相を露わにしたチンクが姿を現す。
悪鬼の如きその姿は、先ほどまでの冷静な彼女と同じ人物とはとても思えない。
「この右目は戒めであり、私の誇りだ。貴様はその無粋な手で私の誇りを傷つけた。その罪は万死に値する!」
チンクの右目は、かつてゼスト・グランガイツと呼ばれるベルカの騎士との戦いで負傷し、視力を失っている。
その傷はスカリエッティの技術力ならば修復することは造作でもないことだが、チンクはそれを自らの未熟な証として
直さずに戒めとしている。それと同時に、その負傷は創造主であるスカリエッティが生み出した戦闘機人が
オーバーSランクの騎士にも負けぬ優秀さを誇ることへの誇りでもあった。
カルタスは、そんな彼女の最も触れてはならない部分に手を出してしまったのだ。
「そのままスクラップと成り果てるがいい!」
「マッハキャリバー!」
《駄目です、距離が遠すぎる》
間に合わぬと承知で、スバルはリボルバーシュートのチャージを開始、カルタスも激痛に悶えながらも四肢を貼り付けにしている
スティンガーから逃れようとする。だが、無情にもテンプレートの輝きがカルタスの死刑を宣告した。
「消し飛べ、ランブルデトネイター!」
「ぐうぅあぁぁぁっ、ギンガァァァッ!」
ぐしゃりと、何かが潰れる音と共にカルタスの体が前のめりになる。直後、彼の背後の壁に突き刺さったままのスティンガーが爆発し、
カルタスは爆風に吹き飛ばされる形でチンクへと迫る。彼は残る力を振り絞って四肢に刺さるスティンガーを貫通させ、
爆発から逃れたのだ。
「なにぃ!? 自分の手足を!?」
「これが俺の覚悟だ、ナンバーズ!」
左腕を掲げ、搭載された機構を解放する。瞬時に形を変えた左手は、火花を散らすナックルスピナーに連動するように高速で回転し、
空間ごと打ち砕かんとするかのような運動エネルギーを発生させる。
「リボルバァァァッギムレットォッ!」
(爆風で速度が増している。回避・・・・間に合わぬ)
凶暴なうねりを前にして、チンクはシェルコートのバリアを最大出力で展開する。
だが、施設規模の爆発にも耐えうる強度を誇るハードシェルは、ただ一点に全てのエネルギーを集中した螺旋運動によって揺るがされ、
削り取られるかのように消滅していく。
そして、2人を隔てる一切の壁が取り除かれた。
迫り来る螺旋の咆哮に、チンクは己の死を覚悟する。
目前に迫った仇敵の姿に、カルタスは己の勝利を確信する。
スバルもリインも、彼がチンクを打ち倒して勝利する姿を想像していた。
だから、高速で飛来した直射弾の存在に、誰一人として気づかなかった。
「なっ・・・・・・」
リボルバーギムレットがチンクの頭部を捉える寸前、斜め上から飛来した魔力弾がカルタスの左肩を撃ち抜いた。
更に立て続けに降り注ぐ魔力弾の雨。それは決して多い訳ではない。だが、恐ろしく正確な射撃が彼の関節を撃ち抜いていく。
全身に走る激痛は、機械の体でなければ確実にショック死していただろう。
「ば・・・・馬鹿な・・・・・・どうして・・・・・」
グラリと、カルタスの体が仰向けに倒れる。
その視線の先のありえない光景に絶句し、そこで彼の意識は途絶えてしまった。
一拍遅れて我に返ったチンクが、とどめを差さんとスティンガーを抜き放つ。
しかし、それよりもスバルの方が早かった。チャージの終えたリボルバーシュートで突破口を開き、
上空からの狙撃を搔い潜りながらカルタスを回収、肩にしがみ付いていたリインに合図を送る。
「リイン曹長!」
「詠唱完了です。闇に染まれ、デアボリック・エミッション!」
リインがかざした手の平に出現した黒き球体が急速に膨れ上がり、スバル達の体を包み込む。
同時に、侵食を開始した闇は周辺のものを手当たり次第に飲み込みながら拡大していく。
ロード不在のリインでは本来の出力は発揮できないが、それでも広域攻撃魔法としての効果範囲は健在であり、
派手な見た目に危機感を抱いたチンクはハードシェルを展開して足止めを余儀なくされる。
そして、拍子抜けするほどの弱々しい攻撃が治まった頃には、スバル達はどこかへと逃げ去った後であった。
「チンク姉!」
「ノーヴェ、救助は完了したか?」
「ああ、生きている奴らは全員無事だ。けど、あいつらは・・・・・・・」
「私のミスで逃がしてしまった。それに、あいつが助けてくれなければ私は敗北していた」
「そんなことねぇ。チンク姉が負けるなんてあるわけねぇ!」
「ノーヴェ、事実を事実として認識しろ。戦場での敵の過小評価は死を招く・・・・・・私は、ただそれをしてしまっただけだ」
「チンク姉・・・・・・」
「帰還するぞ。ドクターにこのことを報告しなければ」
頭上で滞空するJF704式ヘリコプターを見上げながら、チンクは自身に内蔵された通信機のスイッチを入れる。
先ほどの狙撃は、自分の危機を知った彼が揺れるヘリの上から行ったものだ。
揺れるヘリの上で、マルチタスクを駆使してヘリの安定を保ちながら遙か彼方の動く物体を正確に狙撃する。
それだけでも、彼の狙撃の腕がずば抜けていることを物語っている。もしも彼が助けに来てくれなければと思うと、
ゾッとしてくる。
「後始末が済み次第、一度ゆりかごに帰還する。お前はヘリを降ろして待機しておいてくれ」
『了解、ヘリポートに着陸後、指示があるまで待機する』
「それと、さっきは助かった・・・・ありがとう、で良いのか?」
ノーヴェと喋っていた時とは打って変わって緊張した固い声音に、通信機の向こうから苦笑のようなものが漏れる。
どこか壊れてしまったかのような乾いた笑み。空々しさすら感じられるその声に、チンクの胸が少しだけ締め付けられた。
『別に気にするな、兄妹だろ』
「そうだな、ヴァイス・・・・お兄ちゃん」
『ああ、ラグナ。お前は俺が守る・・・・・絶対に』
□
宛がわれた部屋で鏡と睨めっこすること3時間。
その行為が無意味なことであると気づいたルーテシアは、てっとり早く疑問を解決するためにゆりかごの中を歩き回っていた。
前の戦いから、彼女はずっとエリオに言われたことを気にかけていた。
何となくではあるが、彼は今まで自分が出会ってきた人間とは違うような気がするのだ。
スカリエッティ達は良くしてくれているが、自分に戦うことを強要する。母親を目覚めさせてあげるから、
こっちの仕事を手伝って欲しいと。
今はもういないゼストやアギトは、自分のことを守ろうと気にかけてくれていた。極力荒事には巻き込ませず、
戦うことを求めてくるスカリエッティにも良い感情を抱いてはいなかった。
けれど、エリオ・モンディアルはそのどちらもしてこなかった。彼はただ、自分に笑っていて欲しいと言ったのだ。
(笑えって言われたのは、初めてだ・・・・・・・・けど、笑うってなんだろう?)
親しい者達は、召喚師としての力を求めるかか弱き少女として守ろうとするかのどちらかしかしてこない。
しかし、彼はそのどちらもせずに笑うことを求めてきた。ただ笑っていて欲しいと、それだけを望んでいた。
けれど、ルーテシアには笑うということが何なのか理解できていなかった。それがどんなものかはわかっていても、
どうすれば笑うことがでいるのか知らないのだ。だから、誰かに聞いてみることにしたのだ。
クアットロやウェンディはいつも笑っているので、聞けばきっと何かわかるはずである。
そうして、小一時間ほど広いゆりかご内を歩き回った末に、ルーテシアは聖王の寝室の前で困り果てている
ディエチとクアットロの姿を発見した。
「あら、お嬢様。どうしたんですか、こんなところで?」
「クアットロを探していたの」
「あら、私をですか?」
「うん・・・・けど、忙しいのなら後で良いよ」
「ああ、別に忙しいわけではありませんよ。ちょっと陛下が駄々を捏ねているだけですから」
傍らに立つディエチが額をかきながら寝室の扉へと視線を送る。
ルーテシアは一度も入ったことはないが、その部屋で聖王は自分の母親と一緒に生活しているらしい。
母親。今の自分にはないものだ。
「3日も閉じこもりっ放しですからね。たまには運動でもしてもらわないと、健康を損ねるかもしれません」
「だからディエチちゃん、陛下が風邪なんか引くわけないじゃない。とっくの昔に遺伝子レベルで病気なんて克服してるのよ」
「精神的衛生にも悪いだろ、クアットロ。あたしは陛下のお世話係だからね、陛下の健康管理は万全でないといけないんだ」
(何がお世話係よ。聞き分けの悪いガキなんて放っておけば良いのに。ドクターもどうして感情なんて残しちゃったのかしら。
中途半端な洗脳なんてするから、あいつだって生かしたまま囲われているのに)
心の中で不平を洩らしながらも、クアットロは「さすがディエチちゃん、偉いわね」とディエチを褒め称える。
次元世界の安寧と自らの利さえ守られれば大人しくしている管理局と違い、古代ベルカの聖王を神と崇める聖王教会は
聖遺物であるゆりかごを利用しているスカリエッティを快く思っていない。もしも聖王が復活しなければ、
聖遺物の保護を理由に抵抗を続けていたかもしれない。信仰心とは時に利害すら超えた理解不能な行動を起こすものなのだ。
聖王は聖王教会を押さえるための切り札でもあるため、その扱いについて彼女もスカリエッティに強く言うことができないでいるのだ。
「それでルーお嬢様、私に用って何ですか?」
内心の不満を悟られてはいけないと、クアットロは話題の転換を試みる。
しかし、ルーテシアの口から出た言葉は彼女の好ましいものではなかった。
「どうすれば笑えるのか、教えて欲しいの。クアットロ、いつも笑っているでしょ」
(あら、何かと思えばくだらない悩みだこと。兵器は兵器らしく黙って言うことを聞いておけば良いのに)
兵器に余計な感情を持たせる必要はない。それがクアットロの考え方であり、今はもういない最後発組のナンバーズが
ロールアウトする際、意図的に感情を抑制することをスカリエッティに進言したのも彼女だ。ルーテシアも彼女にとっては
スカリエッティが生み出した兵器の1つであることに変わりはなく、そんな彼女が人並みに笑い方を知りたいと言っているのは
どうしてりんごは赤いのかと問うているくらい意味のない行為なのだ。
もちろん、そんなことは億尾にも出さずに懇切丁寧に顔の筋肉の動かし方を教えてやるのだが。
「お嬢様、これが笑顔です」
「こ、こう?」
「うーん、ちょっと頬が引きつっていますねぇ」
「もっと唇を小さくして、目尻は下げ気味の方が良いんじゃない?」
「それだと、普段と変わらないわ。それよりも・・・・・」
「ああ、ダメっスよ。無理に笑ったってそれは笑顔とは言わないっス」
「ウェンディ?」
この陽気で独特な口調は彼女以外にありえない。振り返ると、予想通り愛用のライディングボードを肩に担いだ赤毛の少女が立っていた。
「ただいまっス」
「おかえり。いつ戻ってきたんだい?」
「ついさっきっス。いやぁ、新人の相手は辛かったっス」
そう言って、ウェンディは空いている手で肩を叩く。彼女は量産型戦闘機人で構成されたライディングボード部隊の教導のために、
長らく管理局に出向していたのだ。こうしてゆりかごに顔を出すのは実に一年振りである。
「ねぇ、ウェンディ。ウェンディはどうすれば笑顔になれるのか、わかるの?」
「お嬢様、笑顔は誰かに教えてもらうものじゃないっス。楽しいことがあると、人は自然に笑うものっスよ」
「楽しいこと?」
「美味しいものを食べたり、訓練で良い結果が残せたり、誰かに褒めてもらったり
・・・・・・とにかく、自分が楽しいって思えることっスよ」
「楽しいこと・・・・・・」
ウェンディに言われた言葉を、ルーテシアは静かに反芻する。疑問は深まるばかりだった。
何故なら、ルーテシアは生まれてから一度も、何かを楽しいと感じたことはなかったからだ。
□
壁を叩く雨音が、時を追うごとに激しくなっていく。狭い室内は湿気が充満し、閉塞するような息苦しさを感じてしまう。
だが、今は疲れ果てた体を休ませることができるだけでもありがたかった。
「カルタスさんの様子、どうですか?」
「まだ眠っています。命に別状はありませんが、関節の駆動部を撃ち抜かれているので今は立つこともできません」
「治せそうですか?」
「応急処置くらいならできますけど、ダメージが基礎フレームまで及んでいるのでちゃんとした設備のあるところに連れて行かないと」
「私も、こういったものは専門外でして」
スバルと共にカルタスを診ていたイクスが、すまなそうに頭を下げる。いざという時に力になれないことが悔しいのだろう。
「イクスは悪くないですよ。悪いのはこんなことをした狙撃手です」
「そ、そうですね・・・・スバル?」
「はい?」
「どうしたのですか、ボーっとして」
「あ、いえ・・・・・何でもないです」
覇気の感じられない返答に、2人は訝しげな視線を向けてくる。だが、疲れているだけなのだろうと思ったのか、
それ以上は追求してこなかった。ひょっとしたらリインは気づいているかもしれないと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
それに、まだ確信があるわけではない。自分は彼が実際に狙撃をする姿を見たことがないのだから。
ただ、JS事件後に彼が行方不明となったことが発覚した際、ティアナから彼の過去を聞かされていたので、もしやと思っただけだ。
ならば、このことはまだ自分の胸の内に仕舞っておくべきだ。
「とりあえず、今後の行動について検討しましょう。この男の人も含めて、3人と消耗しています。
どこか専門の機関で診てもらうことをお勧めしますが」
「それは無理です。私達はお尋ね者なんですよ」
「この場合、スバルが単独で動いている方が問題です。みんなと一緒にいれば協力もできて、もっと大きな活動もできるのに」
「みんなか・・・・・・提督達のところに行ければ、カルタスさんを治せるかもしれないなぁ」
あそこならばデバイスマイスターもいるはずだから、リインの検査もできるはずだ。
だが、自分から飛び出した揚句に連絡も取り合っていなかったので、どうすればコンタクトが取れるのかわからない。
そんな行き詰りの沈黙を破ったのは、擦れた電子音声であった。
「・・・・き・・・た・・へ・・」
「カルタスさん!?」
「北に・・・・・北の街に、レジスタンスの工作員がいる。確か、六課にいた狼・・・・・」
「ザフィーラだ」
「そいつが・・・・・北の街で諜報活動を行っている。スバル、提督達と合流しろ。
1人では・・・・・・個人ではできることなど、知れている・・・・・復讐は・・・・仇は、俺が・・・・」
「喋らないで、体に障ります」
「スバル・・・・・俺が、君を・・・・・・・」
そこでカルタスは力尽き、再び意識を失った。
チンクのISはまともに浴びればスバルでも無事では済まないのだ。
こんな旧式の改造でそれを食らい、まだ生きていることが奇跡に等しい。
「おい、喋るのは良いけど壁が薄いからもう少し静かにしてくれよ」
背後の扉を開けて部屋に入って来た少年が、額をかきながら言う。
この家の主で、スバル達に雨宿りのための屋根を貸してくれた人物だ。とても心の優しい少年ではあるが、
見ず知らずのスバル達にも物怖じせずに辛辣な言葉を投げかけてくる口の悪さも併せ持っている。
ちなみに彼の両親は不在であり、現在は1人で暮らしているらしい。
「ああ、ごめんなさい」
「まあ良いさ。それよか、シャワー使うだろ。いつまでも汚れたままじゃ落ち着かないだろうし」
「良いよ、雨宿りさせてもらえるだけでもありがたいんだから」
「そうか? そっちの彼女は使いたがっているようだけどな」
「え!?」
図星を突かれたイクスとリインが頬を真っ赤に染めて恐縮する。
実は2人とも、ここ最近はロクに風呂に入っていない。イクスはスバルと野宿ばかりしていたからで、
リインはプラントで実験体扱いを受けていたからだ。
「ついでに飯も用意したからさ、食ってけよ」
「良いのかな、そんなに良くしてもらって」
「困った時はお互いさまって、学校で習わなかったか?」
「そうだね。それじゃ、お言葉に甘えようかな。けど、もう少し言葉遣いはどうにかした方が良いよ」
「地なんだよ、これ! とにかく、浴びるならとっとと浴びてくれ」
「わーい、久しぶりのバスタイムですぅ。イクス、一緒に入りましょう」
「はい、喜んで」
2人は少年の案内で、嬉々として階下のバスルームへと降りていく。
1人残ったスバルは、もう一度カルタスの体をチェックしようと彼の方に向き直る。
その時、激しい地鳴りと共に家が縦揺れを起こした。
「地震!?」
《かなり大きいです。二次災害の可能性もありますね》
程なくして、俄かに外が騒がしくなる。
窓を開けて外を見てみると、スコップやらツルハシやらを担いだ男達が山の方角へと走っていく姿があった。
男達の怒鳴り声は大きく、離れている自分の場所にまでその内容が伝わってくる。
「麓で土砂崩れだって!?」
「子どもが生き埋めになっているらしい。急がないと死んじまう!」
弾かれたように、スバルは駆けだそうとする。だが、すぐに考えを改めて足を止めた。
自分はお尋ね者のテロリスト。それもほんの数時間前に管理局とひと悶着を起こしてきたばかりなのだ。
目立つ行動は避け、できるだけ大人しくしていた方が良い。もしも見つかった時、戦うことができるのは自分だけなのだから。
しかし、放っておけば土砂に埋もれた子どもが死んでしまうかもしれない。
自分にはその子を救える力がある。かつての自分のように災害で泣いている人を助けたい、。
その思いを胸に、魔導師を志したのではなかったのか。
そんな出口の見えないジレンマを吹き飛ばしたのは他でもない、彼女の相棒であるマッハキャリバーだった。
《迷うことはありません。あなたはあなたの信念を貫けば良いのです》
「けど、私達は・・・・・・・」
《相棒、あなたはそこまで非情ではない。私はあなたを信頼しています。何もせずに後悔するくらいなら、
できることを全てした後に泣いてください》
「マッハキャリバー・・・・・・」
《さあ》
「うん」
力強く頷き、部屋を飛び出して階段を駆け降りる。途中、小瓶を手にしていた少年とぶつかりそうになり、
何事かと呼び止められる。
「どこ行くんだよ!?」
「山で土砂崩れがあった。救助を手伝ってくる!」
「・・・本気で言っているのか?」
「こんな時に冗談なんか言わないよ」
「お前・・・けど・・・・・なんでそんなことするんだよ。自分とは無関係な奴だろ!?」
語気を荒げながら、少年は怒鳴るように問い質す。するとスバルは、酷く神妙な顔つきになって少年に向き直った。
「助けたいから助けるんだ。だって私は・・・・・レスキューだから」
少年の異変に気づかぬまま、スバルは雨の降りしきる夜の世界へと飛び出していく。
その背中を見つめる少年の瞳は仄暗い憎悪に彩られ、『睡眠薬』と書かれたラベルが張られた小瓶を握る手がふるふると震える。
「何だよ、それ・・・・・あんたら、悪者じゃないのかよ・・・・悪いテロリストの癖に、何で人助けなんてするんだよ・・・・・・」
□
「私とスバルが出会ったのは、数ヶ月前のことです」
リインの銀色の髪にリンスを馴染ませながら、イクスはスバルとの出会いを語っていた。
2人が出会ったのは数ヶ月前に起きたマリアージュ事件の最中だ。古代ベルカに関連する研究者を襲った連続殺人事件。
その最後にして最大の被害者を出すこととなった海上アミューズメント施設“マリンパーク”で起きた火災。
その時、スバルは既にお尋ね者として追われる身であったが、燃え盛る炎と崩れていく施設に幼少時の記憶が呼び覚まされ、
逮捕されるかもしれないという危険を承知で救助活動を行っていた。そこで、長い眠りから覚めたばかりのイクスと出会ったのだ。
「私は戦乱を治めるための兵器として生み出されました。自国の勝利によって戦いを終わらせ、争いを止める。
けれど、どれだけ戦っても争いはなくならない。戦っても戦っても敵は次々とやってくる。
もう戦うのは嫌だと思っても、味方がそれを許してくれない。私には死ぬことすら許されなかった。
私という存在そのものが、争いを生む火種となってしまったのです。だから、1000年の眠りから覚めたあの炎の中で、
私は自分が消えることを望んでいた。古代の争いはもう過去の出来事、今の世に私と言う存在は必要ないと」
「けど、スバルがそれを止めた」
「あの人は言ってくれました。私は兵器ではないと。自分も同じように人によって造られた体だけど、
心は人間として生きていると。ボロボロになりながらも微笑みかけてくれているその姿に、私はとても救われました。
スバルは私を、初めて人間として扱ってくれた人なのです。だから、私は彼女に着いていくことにしました。
兵器として力を貸すのではなく、人間として、古代の王としてこの世界の行く末を見届けたいと」
「変わっていないですね、スバルは」
きっと、炎の中で一人ぼっちだったイクスに過去の自分を重ねたのだ。
だから、放っておくことができなかったに違いない。
「あのお方はとても強い人。けれど、その心はとても繊細で傷つきやすい。本当は誰も傷つけたくないのに、
復讐のために誰かを傷つけなくてはいけない。せめて、私が生きていられる間に、あのお方が安らげる日が来ると良いのですが」
「イクス・・・・・ひょっとして・・・・・・」
「はい。私は、もうあまり長くありません」
□
草木すら寝静まった深夜、スバル達に宛がわれた部屋の扉が音もなく開いた。
足音を忍ばせて忍び込んできたのは彼女達を招き入れた少年だ。
その手には鈍く光る包丁が握られており、殺意に彩られた瞳は毛布に包まっているスバルに向けられている。
よく眠っている。食事に混ぜておいた薬は利いているようだ。
ここまで来たら、もう後には引けない。少年は覚悟を決めて包丁を握り直し、ゆっくりと振り上げる。
その時、数時間前のスバルの言葉が脳裏に蘇った。
『助けたいから助けるんだ。だって私は・・・・・レスキューだから』
「・・・・・・・・・!」
包丁を振り下ろそうとした手に迷いが生じる。直後、足元で横たわっていた男が目を開いた。
「止めておけ。そいつは人を傷つけるものじゃない」
「あんた・・・・起きていたのか?」
「少し前からな。お前、最初から彼女を殺すつもりで家に入れたのか?」
「・・・ああ。あんたら、テロリストなんだろ。俺の父さんは、テロリストに殺されたんだ」
彼の父親は管理局の局員だった。魔力資質を持たない一般局員だったが、誰よりも平和のことを考える局員の鑑であった。
そんな彼のもとに、新設される戦闘機人部隊に転属しないかという話が舞い込んできた。
魔力に頼らず、科学によって肉体を機械化した兵士達で構成された戦闘部隊。
危険度は高かったが、その分だけ手当ても増える。早くに母親が亡くなり、男手一つで少年を育てなければならず、
生活が困窮していたのだ。何より、少年の父親には適正があった。改造手術に耐えうるだけの強靭な肉体が。
「父さんは、手術を受けて戦闘機人になった。けど、最初の任務で・・・・・テロリストから工場を守るために死んだんだ。
俺の父さんは、テロリストに殺されたんだ!」
「その相手が、彼女だって言うのか?」
「わかんねぇよ。けど、テロリストは悪い奴らなんだろ。だったら、また殺すんだろ。
俺みたいなのが増えるんだろ!? だったら、だったら・・・・・・・・」
「殺すのか? そしたら俺はお前を恨むぞ。お前が殺されたら、今度はお前の友達が俺を恨むだろうな。
憎しみは終わらない。誰かを傷つければ誰かに傷つけられる。その覚悟があるか?」
「・・・・・・・・・」
「覚悟もないなら馬鹿なこと考えるな。お前、彼女を殺すかどうか迷っているだろ」
本当に少年がスバルを殺す気ならば、カルタスは何が何でも少年を止めていた。
身動きは取れないかもしれないが、這いずって噛み付いてでも彼を制止しただろう。
それをしなかったのは、彼の中の迷いを見抜いていたからだ。
「なんで・・・・・悪者なのに、どうして人助けなんてするんだよ。なんで俺らが、
悪者に感謝しなくちゃ・・・・なんで・・・・・なんでこいつ、こんなに良い奴なんだ・・・・・・・」
「彼女はただ、自分の思うままに行動しただけだ。後は自分で考えろ」
冷たく突き放され、少年は力なくうな垂れて振り上げた腕を下げる。
そして、無言のまま部屋を後にすると、眠っていたと思われていたスバルがごそごそと身動ぎした。
「起きていたのか?」
「薬の味くらい、わたしにもわかるよ」
「そうか」
「わたし・・・・・だったのかな?」
「深く考えるな。俺も君もお尋ね者で、悪党であることに変わりはないんだ」
「けど、わたしは復讐には無関係な人達をたくさん傷つけてきた。手当たり次第に施設を爆破して、
戦闘機人を壊して・・・・殺して・・・・・・・こんなんじゃ、なのはさんに申し訳が立たないよ」
「『汚れた手でも、抱きしめることはできる』」
「え?」
「三佐の言葉だ。君の母親、クイント・ナカジマ准陸尉は首都防衛隊の所属だった。それも、故レジアス中将が
地上本部の実権を握り、本格的に組織改革を行う前からだ。海からの流入犯罪者、テロリズム、組織犯罪。
その当時のミッドは3年前よりも遥かに混沌としていて、地上本部の戦力も脆弱だった。犯人を取り逃がすこともあれば、
殺してしまうことも日常茶飯事だった」
「犯人を・・・・・・殺す・・・・」
「逮捕が不可能な凶悪犯、ロストロギアに取り込まれて救出不可能と判断された被害者。
止むおえない処分、恐怖に駆られた過剰防衛。君の母親も、染めたくない手を血で染めねばならないことがあったらしい。
酷いノイローゼに悩まされていたそうだ。自分は法の守護者なのに、人殺しをしていると」
人助けがしたいのに、やっていることはそれとは正反対の行為。
何かを守るために何かを傷つけ、その痛みが治まる前にまた新しい痛みを覚える。
そんな矛盾に、スバルの母も悩んでいたのだ。
「三佐がプロポーズした時も、それを理由に断ったそうだ。自分は人殺しだから、あなたの子どもを抱く資格はないと。
それに対する返答が、さっきの言葉だ。子どもにとっては、抱きしめてくれる温もりこそが真実。
どんなに血で汚れていても、優しく抱きしめてくれる母親を求めるものだって。
君達を引き取ったのも、多分それが理由だ」
誰とも知れない人のエゴによって生み出され、人ではない別のものへと造り返られた肉体。
人工的に生み出されたが故に家族もおらず、保護されても待ち受けているのは技術解明のための実験体としての日々。
だから彼女は自分達に手を差し伸べたのだ。もう二度と、辛い思いをさせないように。
「スバル、誰かを傷つけることを嫌だと思える心を忘れないでくれ。誰かのために涙を流せる優しさを失わないでくれ。
何を憎んでも良い、何を壊しても良い。けれど、その思いを・・・・・君の若さを見失わないで欲しい」
カルタスの言葉に、スバルは無言で頷いた。
まだ気持ちの整理がついたわけではない。けれど、ほんの少しだけ楽になったのは事実だ。
母も同じように苦しみ、答えを出せたのならば自分もまだ頑張れるかもしれない。
自分はまだ、夢を諦めなくても良いのかもしれない。
□
翌日、日の出を前にしてスバル達は少年の家を後にした。
世話になったお礼を言うことはできず、簡単な書置きと手持ちから幾ばくかのお金を残すことしかできなかった。
もぬけの空になった部屋を見て、少年が何を思ったのかを彼女達が知る術はない。
その少し後にスバル達の行方を捜索している陸士隊がやって来たが、
少年は「何も知らない」とだけ告げてそれ以上は何も語ろうとしなかった。
to be continued
345 :
B・A:2008/11/13(木) 14:59:04 ID:JiyYhqDI
以上です。
2話分を圧縮してこの容量。
次回で2人がやっと合流できる。
カルタスに関しては・・・・うん、やり過ぎない程度に気をつける。
改造人間カルタスGJ!
まさかここで登場するのがカルタスとは思わなかったwww
>>345 本編みたいにルールーには笑顔が似合うのに母親が目覚めないからいまだに笑えないのか
果たしてエリオと亡きキャロの思いは届くのだろうか
そして二人の再開はスバルに救いをもたらすのかとかもう、色々気になりすぎる
Gj!!
GJ、なにこの昭和なノリのライダー
ここで雷電と思ってしまった自分はきっとゆとりだwww
たった一つの命を捨てて 生まれ変わった不死身の身体
戦闘機人を叩いて砕け カルタスがやらねば誰がやる
>>350 おっさん乙
352 :
ザ・シガー:2008/11/13(木) 22:21:40 ID:/dZvzq5Q
うし、25分までチェックしたらちょっくら投下すっぜ。
ゼスト×アギトのエロだす。
烈火の剣精と槍騎士
どこまでも広がる真っ暗な空間、視覚も聴覚も効かない感覚。
不思議と、今自分が眠りに付いているという自覚だけはある。
こういう事はたまにある、眠りと覚醒の間隔が曖昧で思考は過去の記憶に飛んでいく。
これは人にもある事なのか、それともあたしが大昔に作られた融合機だからなのかは分からない。
そして徐々に視覚は光を、聴覚は音を取り戻していく。
月と星の光が彩る夜の空、虫の鳴く自然の音色、いつしか嗅覚は土と草の香りも認識し始めた。
懐かしいなぁ……あたしとルールーとあの人と、三人で色んな世界をたくさん回って旅したあの時の思い出だ。
おぼろげな過去の記憶、最悪だった研究所での記憶、そのどれもを上回る一番幸せだった時の記憶。
思えば、この時があたしの生の全てだったと思う。
愛しかったあの人、この世で一番大好きなあの人と一緒に過ごせた時間だから……
蘇る記憶の中、あたしが視線を上に向けるとそこにはあの人の……ゼスト・グランガイツの顔があった。
そうか、今のあたしは“夜の奉仕”をしてる時間だったんだ。
口の中になんとも言えない青臭い臭いと妙な味が広がっている、過去のあたし口淫の真っ最中だった。
視線を下に戻すと、そこには硬く大きくなった旦那の陰茎がある。
普段は人間よりもかなり小さい身体のあたしだけど、今は奉仕の為に普通の人間の子供くらいの大きさになっていた。
そして、夢の中のあたしは過去の記憶通りに目の前の大きな肉の塊に舌を這わせる。
ペロリと舐め上げれば、懐かしい青臭さが口の中に満ち溢れた。
「くっ! ぅああ……」
あたしが舌を動かすたびにゼストの旦那は苦悶に似た表情をして声を漏らした。
でもソレは決して嫌だからじゃなくて、快楽に耐えてる声だってすぐに分かる。
あたしは手で扱いて刺激を続けながら口を離すと、顔を上げて旦那に視線を移した。
「旦那、我慢しなくても良いよ? 好きな時に出して」
あたしはしっかりと覚えこんだ絶妙な力加減で旦那のモノを扱きながらそう促した。
旦那はいつもそうだった、少し離れたところで寝ているルールーを気にして快楽に深くのめり込まない。
あたしがどんなに頑張ってもそうだった。
そりゃあ、旦那の性欲処理を買って出たのはあたしの方だけど、もう少し気持ち良さに身を任せて欲しいと思う。
最初は偶然旦那の自慰に遭遇した時だった、旦那が色々と男の欲求を持て余しているのを知ったあたしは自分から進んで旦那の性欲処理を引き受けたんだ。
おぼろげな霞の向こうにある大昔の記憶、そして研究所の科学者共が戯れに強制した行為であたしはそれなりに性技に精通してた。
熟練の技で攻め立てれば、旦那のペニスの先端からはまるで射精したかのようにカウパーがあふれ出す。
あたしはそれを、まるで最高のご馳走にでもするかのように舐め上げる。
とても美味しいなんて言える味じゃないが、旦那の身体から出た快楽の証を零すのがもったいなく感じて舌で掬った。
青臭くて苦くて、舌の上に旦那の味が溶けるたびにあたしも身体が疼いていく。
下腹部の子宮が熱を持って暴れだす、あたしの身体が快楽を欲している証拠だ。
人間を模して作られた融合機は、モノにもよるけど人と同じ欲求を持つ事が多い。
食欲・睡眠欲、そして性欲、形は子供でもあたしもれっきとした女だって事だ。
旦那のモノを口にすればそれだけで欲情してしまう。
でもあまり自分から執拗にねだる事はしなかった、そうした時に旦那に軽蔑されるのが恐かったからだ……
あたしは自分が最低の融合機だと思う。
旦那の為と言って、結局は自分自身の火照りを慰めているのかもしれない。
なんて浅ましいガラクタなんだろう……きっと、こんな事を知ったら旦那はあたしを捨ててしまう。
だからあたしは必死にいやらしい部分に蓋をして隠して、ただ旦那が気持ち良くなる事だけ考えて奉仕した。
あたしが舌を這わせる度に、旦那のモノから溢れ出す先走りの汁がどんどん濃くなっていく。
それこそ射精した時にでる精液のような粘性と味になったそれを、あたしは一心不乱に全て飲み干した。
もうすぐだ、もうすぐ旦那が我慢の限界を迎えて欲望の白濁を吐き出すって事が分かる。
何度も身体を重ねる内に完全に把握した射精のタイミングに合わせて、あたしはさらに舌先に力を込めてしゃぶった。
尿道をほじくり返すように舌先で抉り、エラの張ったカリを執拗に唇で引っ掛け、頬をすぼめてペニス全体を吸い上げる。
その技巧を続けて丹念に刺激を与えながら、何度も何度も頭を上下に動かしていく。
そうして何度目かの律動が行われた時、あたしの身体が覚えた間隔とキッチリ同じ周期で咥えた男根は精を爆発させた。
「んぶっ! ふぐぅぅ!」
凄まじい勢いで吐き出されたあまりに大量の精液に、あたしは一瞬驚いてむせ返る。
でも吐き出すなんて絶対にできない、口の中に溢れかえる青臭い精をあたしはできるだけ零すまいと必死に飲み込んだ。
ゴクゴクと喉を鳴らして青臭い液体を飲む込む、ドロドロした凄い粘性が喉に引っかかり少し苦しかった。
でもこれが旦那の気持ち良かった証だと思えば全然嫌じゃなかった、むしろもっと飲みたいとさえ思う。
そうしてしばらく喉を鳴らしていたけど、いつしか射精は終わりを告げて溢れる精も底をついた。
あたしがそっと口を離せば、唾液と精液の混ざった液体が唇と陰茎との間に糸を引く。
少しだけお口の奉仕が終わったのが名残惜しいけど、いつまでも口だけじゃ旦那が満足できない。
あたしはその場で横になると纏っていた下の服、股を覆う部分をずらして自分の膣口を曝け出した。
既に愛液でビショビショになるまで濡れてたのが恥ずかしい、顔が真っ赤になってるのが自分でも分かるくらい頬が熱くなってた。
でも恥ずかしがってるだけじゃ旦那に満足して楽しんでもらえないから、あたしは自分で入り口に指をかけると左右に軽く広げた。
「旦那……まだ満足してないよね? 今度はこっち使って良いからさ……」
その時のあたしは一体どんな表情をしてたんだろう? きっと凄くだらしなくていやらしい顔だったんだと思う。
後から後から溢れ出す愛液で地面には小さな水溜りができているくらいにあたしの身体は甘く疼いてた。
本当に恥ずかしい……旦那の為にしてる事なのに、あたしの身体は自分自身も快楽を楽しもうと期待に燃えている。
あたしは浅ましい自分の身体を呪いながら旦那を促す、旦那は少しだけ悲しそうな表情を見せるとまだ硬さを失っていない自分の陰茎をあたしの入り口に押し当てた。
溢れ出た愛液を少し馴染ませると、旦那は腰を少しずつ沈めて行く。
いくら人間大になっても容姿は子供、大人のそれも大男の旦那のモノはキツくてちょっと苦しい。
でもそれは最初だけ、すぐに圧迫感と苦しさは快感で塗り潰されていった。
「んぅ……ふぅああぁぁ……」
あたしの口からは思わず恥ずかしい甘えた声が漏れる。
少し離れたところで寝ていたルールーを起こしちゃったら大変だから、あたしはすぐに自分の口を手でふさいで声を我慢した。
旦那もそれを察したのか、挿入しても動かずあたしの準備が整うのを待っててくれた。
あたしは口を押さえたまま頷いて旦那に動いて良いって旨を伝える。
旦那は一度頷くと、そのままゆっくり腰を前後させだした。
あたしの濡れた入り口を旦那の鉄みたいに硬いモノが動いて抉る度に凄くいやらしい音が出て耳を犯す。
これが全部あたしの出した愛液の音で、旦那にも聞かれてると思うと恥ずかしくて死んじゃいそうだった。
でもそんな事を気にする余裕はなかった、旦那との交合の快感で漏れる嬌声を我慢するだけであたしは気が狂いそうになる。
「んぅぅううっ! ……んぅっ!!」
口元をいくら手で押さえつけても、溢れ出る声は全ては消えてくれない。
くぐもったいやらしい声が零れて、とてもあたしの出した声とは思えなかった。
お腹の中を旦那のモノが凄い抉る勢いはドンドン強く早くなっていって、内臓まで貫通されそうな錯覚すら覚えた。
膣の中を削り取られそうな快感の衝撃に頭の中が真っ白に染まっていく。
「んっ! んぅっ!!……ふんぅぅううっ!!」
切なくて甘くて、おかしくなりそうなくらい気持ち良い電気が頭の中でたくさん弾ける。
あたしの中のまともな意識と思考がピンク色の靄の中に確かに溶けてくのを感じた。
膣を抉りこむ旦那のモノから背筋を快感の炎が駆け上って、あたしはまるで奈落の底に堕ちるような錯覚を感じる。
その瞬間、あたしは全身をしならせて盛大に絶頂した。
「ふぅんぅぅっ!! ふぅはぁぁあっ!!」
頭の中身が全部蕩けるような快楽、あたしは我慢しきれずに声を漏らしてしまう。
でもそんな事を気にする余裕なんてあたしにも旦那にもなかった。
あたしはイった反動で全身をしならせて震えて、旦那も我慢の限界を超えて二度目の射精を迎える。
「くぅっ! アギト……出すぞっ!」
言葉と共に、あたしはお腹の中で何かが爆発するような感覚を感じた。
ねばねばしてて火傷しそうなくらい熱い精液が身体の中で弾ける。
気持ち良過ぎて本当に自分が壊れてしまったかと思った、涙が溢れて視界が霞む、身体はフワフワとした浮遊感すら覚えた。
痙攣させながら全ての精液を吐き出すと、旦那はあたしの身体からペニスを抜き出す。
旦那のモノはまだ少し硬さを残していたけど、これ以上する気がないのか旦那は早々にあたしの身体を手元のタオルで拭き始めた。
「すまんなアギト……俺の勝手でこんな事に付き合わせてしまって……本当にすまん」
ゼストの旦那は心底すまなそうにそう言ってあたしの身体を丁寧に拭いてくれた。
謝る事なんてないのに……あたしも旦那の事を求めてて、旦那とこうして身体を重ねることが嬉しいのに、愛してるのに。
でもそんな事言えなかった、あたしの気持ちを伝えたって旦那には迷惑だから。
「気にしなくて良いよ旦那、こんな事で良かったらいつでも手伝うからさ」
あたしは精一杯笑ってそう言った。
本当は自分の気持ちが伝えられなくて泣き出しそうだったけど、旦那の重荷になんてなりたくないから。
だからあたしは、自分の心を押し殺して自分の顔に乾いた笑顔を張り付けた……
そこであたしの意識はまた闇の中に飲まれ始める。
闇と無音が世界を侵食していく。
懐かしくて切なくて大好きな夢が終わりを告げる、あたしの心は果てのない黒と同化していった。
夢が終わり、今度こそ本当に光が目に映る、耳は現実世界の確かな音を捉え始めた。
『ギト……起きろ……アギト』
ああ、これは今のロード(主)の声。そうだ起きないと、もう仕事の時間だ。
あたしは目を開いて意識を現実世界に覚醒させた。
目の前の明るさに眩暈を覚えそうだ、でもそれは一瞬、すぐに身体も頭も正常な状態に稼動する。
眼を覚ましたあたしの顔を、今のロード、烈火の将シグナムが不思議そうな顔で覗き込んでいた。
「起きたか」
「ああ、おはようシグナム」
あたしはそう返事を返すとゆっくりと身体を起こす。
今あたしとシグナムは勤務中の休み時間の最中だった、僅かに記憶の糸を手繰れば自分が仮眠を取った事にすぐ気付いた。
時計を見ると、そろそろ休憩も終わる頃合だ。
うん、と小さく伸びをすると軽く羽根とシッポを振って身体をほぐす。
懐かしい夢を見たお陰か、心も身体も随分と気持ちの良さを感じている。
そんなあたしに、シグナムが一つ質問を投げかけた。
「随分と嬉しそうな寝顔だったが、何か良い夢でも見たのか?」
夢の内容を聞かれて、さっきまで見ていた過去の思い出が一瞬で脳裏を駆け巡った。
旦那のとの思い出に胸が甘くて切ないモノで満ちる。
少しの間、それこそ一度呼吸する間だけ夢と過去のまどろみに酔うと、あたしはシグナムの顔を見上げて返事を返した。
「……うん、まあな」
あたしはちょっとだけ悲しいのを我慢して、今度は本物の笑顔を見せた。
哀しいことも辛いことも含めて、ゼストの旦那との思い出は全部宝物だったから。
「大好きな人との夢……見てたからさ」
終幕。
357 :
ザ・シガー:2008/11/13(木) 22:37:26 ID:/dZvzq5Q
最近アギトのエロSSが立て続けに投下された。
実に良い3Pモノだった。 だが……
その流れに反逆する!! 全力で反逆するううぅぅ!!!
アギトのエロ少ない上に、ゼストの相手と言えばメガーヌ母さんやらチンク姉ばかりじゃないっすか?
悪くないよ? 全然悪くないよ? むしろ大好きだよ?
でもさ……STS本編であんだけ「旦那旦那」言って甲斐甲斐しく尽くしてたアギトが報われないってのは耐えられないのよ。
需要のあるなしに関係なく、ただ純粋にアギトを可愛く書きたかった、ただそれだけ。
後悔はない。
ただ全部アギトの一人称だったのは冒険すぐる。
GJでしたー。切ない、これは切ないッッ!!
というかゼストはいっそ種族の差を超えて孕ませるべきだったと(ry
くそう、生き急いだゼストがこれほど憎たらしいとは・・・
・・・責任取って、最期まで生きていてやれよ・・・などと思うのでした。
>>357 GJです!
>>345 そういえば、人間がサイバーグ化するのってARMSであったな。
あれって、意識とかどうしてたんだろか?
>>359 よくわからんが、人間の身体を機械で代用するのが「サイボーグ化」なので、意識は関係ないぞ。
(幻肢痛とかの話題かな?)
>>345GJ!!
結局イクスもスバルの元を離れてしまうのか
一人になったらもうスバルはダメかと思っていたが、カルタスの言葉でわずかでも六課で過ごした幸せな時の気持ちを思い出せたらと思う
次回はとうとうスバエリの再会か?
エリオはスバルとルーテシアに平穏と笑顔をもたらせるのか…いや絶対にもたらして欲しい!
やばい、カルタスがドラッケン部隊の隊長に見えてきたw
死した仲間のパーツを使い共食い整備でなんとか戦えるレベルで、
敵の最新鋭の奴らに旧式とか馬鹿にされるのに、戦うと敵を瞬殺とかするw
スバルにやられたノーヴェが挑んだら、こんな感じでやられちゃいそうだ。
>>345 GJです
スバルはまだかわいらしいわんこに戻れると俺は信じてる
イクスやカルタスの気持ちを無駄にはしてほしくはない
ついでにルー子はエリオの忠実なわんこになれると俺は信(ry
>>357 GJ
ゼストは生き残って、アギトとくっついてメガーヌと再開を喜んでシグナムと好敵手になってエリオを弟子にして、
こんな未来もありだったな…
誰か高町家の方々にもスポットライトを……
>>365 高町家にスポットあてると、とらハ要素混じる場合は基本別スレとかになるんじゃなかったっけ
とらハ板ってあったのか?
>>366 リリなののキャラと絡むのは構わないんじゃないか?
とらハのみのネタで突っ走る場合はわからないが。
ところで、クライド×リンディは見たことあるけど士郎×桃子は見かけないな。
凄まじいエロのオーラを感じるなw
アルトとユーノのSSの続きが読みたいなぁ。それか、リンディとユーノのハードエロ系w
>>369 いいなぁ、ユーノはともかくリンディさんのハードエロは見たいw
未来編でのルー子によるエリオ寝取り+既成事実作成の成功編もあると、ずっと信じております
あれだけ純粋なんだから、いざという時は重婚するぐらいの気持ちでエロオには頑張って欲しい
上司であるユーノとの職場恋愛を望む俺は異端?
ごめん、‘ユーノとルーテシアの職場恋愛’の書き間違えだ。
>>374 きっと無人世界が暇すぎて本ばっかり読んでるうちに司書の仕事に興味が
出てきたりしたんだろうぜ、いや暇なのかはわからんが
>>345 GJです、メカルタスかっこいいよメカルタス、中の人的にどうしても
グレンラガンが頭に浮かぶけど
そしてヴァイス……何があったんだ……
>>345 遅くなりましたがGJ!果たして今のスバルとエリオが再開して再び共闘できるかといえば難しいように思います。
復讐しようとする者と助けようとする者。
どうしても相容れない気がしてしまいます。
>>357 GJ!
ゼスト…お前ってやつはと思わず思ってしまいました。
あと五分ほどで投下します。
378 :
野狗:2008/11/14(金) 22:20:44 ID:ofw5S6Nr
冬のおつとめが近づいて、そろそろカキコ速度が鈍る頃。
魔法少女リリカルなのはIrregularS 第五話です。(全十三話予定)
捏造まみれです。
SSX前提です。
あぼんはコテで
レス数14
379 :
野狗:2008/11/14(金) 22:21:52 ID:ofw5S6Nr
1
某管理世界の空。
レヴァンティンの一振りで、セッテタイプは次々と燃え尽きていく。
戦果を確認すると、シグナムはアギトとユニゾンアウトする。
「さっすがシグナム。パチモンナンバーズなんか敵じゃねえっ!」
「……劣化コピーとはいえ、脆いものだな。質より量とは、つまらんことを考えるものだ」
軽くうなずきながら、フェイトはシグナムに並ぶ。
「アギトとユニゾンしたシグナムとは、私も戦いたくないけれど」
「へっへー、そりゃそうだろ」
アギトが胸を張るのを見て、フェイトは微笑む。
「模擬戦でも、シグナム単体で手一杯です」
「謙遜だな、テスタロッサ。それを言うなら、私はまだお前の真ソニックフォームを間近に見たことはないぞ? あれならどうなんだ?」
シグナムの言葉に応えるように、二つの影が近づく。
「来たよ。これでシグナムの期待には応えられるのかな?」
「だといいが」
シグナムはフェイトと合流。フェイクマザーの設置されている拠点を潰して回っていた。
どの拠点にも、決まってセッテ、ノーヴェ、ディエチの量産型が配備されている。そこで出た結論は、この三タイプは新たに製造されたものではなく、
フェイクマザーによるコピーだというものだった。
「ここには、ボスがいるみたいだね」
「……二対二か。どうする?」
シグナムが聞いたのは対応策ではない。もっと単純に、戦う相手を尋ねているのだ。
「シグナムは?」
「私としては、主の偽者は見過ごせんな」
「それじゃあ、決まりだね」
フェイトは前方に佇む二人を見た。
六枚翼の一人。そして、白いバリアジャケットの一人。
アギトが笑った。
「お、テスタロッサの旦那さんの昔の恋人じゃん! よおしっ、やっちまえ!」
がくん、と体勢を崩すフェイト。
「あ、あ、アギト?」
「あれ? 違ったの?」
「えっとね、ユーノとなのははそういう関係じゃなくて……、そもそも、あれはなのはじゃないし……」
「来たぞ」
シグナムはアギトを連れてその場から回避する。同時にフェイトも、砲撃を回避する。
ディバインバスターを回避した二人。フェイトはそのまま、コピーなのはへと向き直る。
「そうやって、良くも悪くも人の話を聞かないところだけは、なのはにそっくりだね」
SONIC MOVE
高速移動で飛んでいく姿をシグナムは見送った。
「では、私たちも行くぞ、アギト。主を詐称する痴れ者など、放っておく訳にはいかん」
380 :
野狗:2008/11/14(金) 22:22:30 ID:ofw5S6Nr
2
魔法少女リリカルなのはIrregularS
第五話
「セインの覚悟 ウェンディの意地」
集束された魔力は、禍々しい輝きとともに大きく膨れあがっていく。
「誰から? 空? 地面? それくらいは選ばせてあげる」
コピーなのはの瞳はギラギラと光っていた。獲物を弄ぶ獣の瞳の色が、魔力の輝きを照らし返している。
その輝きに照らされながら、ジュニアは立ちつくしていた。
「…………嘘だ、こんな……こんな集束が可能なんて」
ディエチにスターライトブレイカーを撃たせるために研究は重ねた。戦闘機人テンプレートからの集束手段も発見した。
しかし今目の前で行われているシークエンスは、ジュニアの考え出した手順を遙かに凌駕している。
携帯用分析機――トリコーダのディスプレイに映し出される数値は、間違いのない事実をジュニアに突きつけている。
コピーなのはが収集しているのは戦場に散った魔力の残滓だけではない。明らかにそれ以上の魔力を収集している。
その収集先は、コピーフェイトとコピーはやて、そして倒された量産戦闘機人。
おそらくは、瀕死の者の魔力を直接収集している。。
ジュニアは理屈を理解した。過去、ヴォルケンリッターによって行われたリンカーコア収集では、シャマルの旅の扉による強奪を除けば、持ち主を倒す必要があった。
持ち主を一旦弱体化させなければならないのだ。
弱体化すれば、リンカーコアは抜けるのである。それを利用したのが、コピーなのはによるSLB魔力集束だった。リンカーコア自体は抜かずに、魔力のみを利用。
そして、不完全とはいえディープダイバーの解析。これも、今のジュニアには不可能と言っていい。
「…………欲しい」
無意識に、呟いていた。
欲しい。あの力が、否、あの知識が欲しい。
心のどこかが痛切に叫んでいる。
欲しいなあ!
あの知識が欲しいなぁ!
あのコピーが欲しいなぁ!
「ジュニアッ!」
ノーヴェの声がジュニアを現実に戻す。その瞬間、ジュニアは己の思いに怖気を覚えた。
同じだ、と感じたのだ。父である、スカリエッティと同じだと。
「しっかり掴まってろ!」
全速で走るノーヴェがすれ違いざまにジュニアを担ぎ上げる。
「あの砲撃馬鹿の圏内から一歩でも遠くに逃げる!」
「でも、皆が!」
「あんたがいりゃあ、死なない限り直せるだろっ!」
「でもっ!」
「うるせえっ! 妹が命懸けて意地張ってんだっ! 応えてやんなきゃ、なんねえだろっ!!」
ノーヴェは叫び、泣いていた。
ジュニアは見た。
限界まで加速したライディングボード。そして、戦場を自在に駆けるドーターズの姿を。
魔力塊に突撃する二人の姿を。
「ウェンディ……? ガリュー……?」
381 :
野狗:2008/11/14(金) 22:23:17 ID:ofw5S6Nr
3
ドーターズが突然操作できなくなったことにチンクは気付いた。
ウェンディが直接操作しているのだ。
「まだ、戦えるッスよね」
「ウェンディ、お前」
「あたしがいなくなっても、他の皆がいれば、まだ戦えるッスよね」
「何考えてんだ」
「ノーヴェはジュニアを頼むッス。あたしは、あれを止めてみせるッス」
返事を待たず、ライディングボードが加速する。
逆方向へ、なのはから逃げる方向へと飛び始めるドーターズ。
「ノーヴェ、ウェンデイを止めてくれ」
「チンク姉、逆の立場なら、あたしは止めてほしくない。チンク姉だって、一緒だろ」
「ウェンディ!」
叫ぶことしかできない。空を飛べない自分の性能を、チンクは初めて恨んだ。
ドーターズは戦場を駆け、姉妹を離脱させようとしていた。
ディエチを乗せ、オットーとディード、ルーテシアの囲みを数体を犠牲にして破り、別の数体がセインへと向かう。
圧倒的多数に囲まれて傷を負った双子とルーテシアはほとんど動けず、ディエチもそれは同じだった。動けるのはノーヴェとチンクのみ。
しかし、ノーヴェはジュニアを脱出させるために走っている。
スバルとエリオはそれぞれ、コピーはやてとコピーフェイトの呪縛から離れることができないでいる。
せめて、セインを。
チンクはスティンガーを構えた。
一瞬、わずか一瞬動きが収まれば、セインを捕らえているセッテタイプを破壊できる。ただし、この場で止まれば終わりだ。
「チンク姉! 構わないからやってくれっ! 手の一本や二本、吹き飛ばしてくれていいからっ!」
逡巡の時間はない。チンクはスティンガーを投擲する。
ISランブルデトネイター
爆発の中から、セインを捕まえたドーターズが飛び去っていく。そのセインの姿にはあるべき四肢の一部がないことを、チンクの目は捉えていた。
「すまんっ……セイン」
382 :
野狗:2008/11/14(金) 22:24:07 ID:ofw5S6Nr
4
ガリューは飛んだ。高速直線移動に限れば今のガリューはフェイトよりも早い。
そして、ほとんど同時にウェンディのボードが同じ位置に到達する。
コピーなのはの目前。SLBによって集束した魔力塊に振りかざされるデバイスの間近。
ガリューの腕がデバイスを止めた。
「こざかしい虫けらっ!」
シークエンスに入ったために膨大な魔力が術者であるコピーなのはをアシストしている。それはガリュー単独では止められない。
ウェンディが身体ごと、デバイスと魔力塊の間に入った。
「撃たせないッ! 絶対に!」
ガリューが吼え、デバイスに触れていない左手を高々と上げる。
ウェンディはその行為を理解した。
「やるッス!」
ライディングボードを盾に、魔力塊を地面へと押しやるように身体を伸ばす。ガリューの手がそこに重なり、二人かがりで魔力塊を押しやろうとする。
もう、間違えない。
ウェンディは誓っていた。
自分は馬鹿だった。あの日、クアットロがモニターの中で断じたように。でも、今は違う。
もう、間違えない。二度と、為すべき事を間違えない。
ティアナに敗れた理由も、今ならわかる。単純なことだ。自分たちが間違っていたから。ティアナは間違っていなかったから。
だから、もう間違えない。だから、もう負けない。
たとえ個人としての自分が負けても、自分たちはもう負けない。
魔力塊の波動がウェンディの全身を貫くように蝕む。
「くぁああ……」
ガリューも同じように苦しんでいるのが見える。
「ガリューも、もう間違えないッスね。ルーお嬢様に間違えさせないんスよね」
「虫けら! ジャンク! 負け犬が! どうして、邪魔するのっ!!」
コピーなのはの叫び。狂気にも似た眼差しに、ウェンディは笑った。
「あんたが……間違ってるからッスよ」
デバイスと魔力塊を繋ぐプラズマ状の力場が伸び始める。
魔力塊は、ゆっくりと降下を始めていた。同時に、凄まじい衝撃が、内に籠もる衝撃がウェンディとガリューの身体の中をかき回す。
「間違っているから……それを正したいから……戦うんスよ」
383 :
野狗:2008/11/14(金) 22:24:58 ID:ofw5S6Nr
5
痛みを痛みとも感じなくなった自分の身体を、ウェンディは不思議に思った。
もう、口が動かない。それでも、身体は動く。
目が見えなくても、身体は動く。
ドーターズから送られてくる映像はまだ見えていた。
どうして、皆は泣いているんだろう。SLBを防いだのだから、喜べばいいのに。
……みんな、根が暗いッスよ。もっと明るくするッス……
……ここまでやってもまだ動ける。さすが、ドクターッスね……
……チンク姉、ノーヴェ、ディエチ、オットー、ディード……スバル、エリオ、ルーお嬢様……勝つッスよ……
……ジュニア、もうあたしを作ろうなんて、思わなくていいっすよ……
……クア姉や騎士ゼストに、会えるのかなあ……
……ドゥーエ姉様に会うのは楽しみッスねえ……
……あ、ボード壊しちゃった……ティアに譲っ……
最後に聞こえたのは、ガリューの吼える声。ウェンディにはそれが、勝ち鬨に聞こえていた。
地上に落とされた魔力塊は、小規模な爆発とともに消え去る。
「うぉああああああああああああああっ!!!」
「あああああああああああああああああっ!!!」
呪縛の解けたストラーダとリボルバーナックルの前に、魔力を使い切ったコピーはひとたまりもなかった。
「コピー一組でこの成果。弱いね、エリオ、スバル」
笑うコピーなのは。
次の瞬間、その身体は文字通り溶けていた。
それが、不完全なコピーの断末魔の姿だった。
384 :
野狗:2008/11/14(金) 22:25:40 ID:ofw5S6Nr
6
遊撃隊本部、隊長室――
エリオはデスクの前に座り込んでいた。
「隊長、被害報告ができました」
「……ああ、そこにおいてくれ」
左手を吊ったルーテシアが、書類をエリオの机に置いた。その後ろには、チンクが付き従っている。
「キャロのことですけれど」
「……気にしなくていい」
「しかし」
「気にしなくていいと言ったんだっ!」
「わかりました」
ルーテシアは静かに答える。そして、左手を吊っていた包帯を外した。
「ルーテシア?」
「私は、隊長補佐だから」
エリオは、訳がわからないと言った顔になる。
「隊長が指揮を執れない状態になったとき、指揮を執るのは私」
「どういう意味だ」
ルーテシアは書類の最後に記されたパラグラフを示す。
「仮に隊長が行方不明になれば、私が指揮を執ります」
「行方不明……?」
エリオの表情が奇妙に歪む。
「隊を捨てて妻を救えとでも言うつもりか」
「では、妻を捨てますか?」
「……考えさせてくれ」
チンクが二人の間に入った。
「隊とキャロ、両方を救うつもりはないのですか?」
「……そんな力はないよ、僕には」
チンクの表情がやや険しくなる。
「私の知っている中で最も偉大な騎士にも、そんな力はありませんでした」
ルーテシアの厳しい視線を、チンクは甘んじて受けた。
「貴方なら、彼を超えられるかも知れない。そうも思っていたのですが」
「僕は、そんなに強くない」
「失望させられた……というより、私の期待が大きすぎたのでしょうね」
二人は、座り込んだままのエリオを置いて部屋を出ていった。
「……僕は……僕は……」
385 :
野狗:2008/11/14(金) 22:26:25 ID:ofw5S6Nr
7
部屋を出たルーテシアは、通路の反対側に見えた影に気づき、その正体がわかると頭を下げた。まるで、お願いしますというように。
それに対して、わかったと言うようにうなずく影。
あえてそのやりとりには触れず、歩き出したルーテシアにチンクは告げる。
「できるなら、補佐の昇進を見たくはありませんが」
「同意するわ。だけど、とりあえずやれることはやりましょう。チンク、すぐに資材課を突っついて、デバイスの修理機材を。必要なら、押し込んで奪ってきなさい」
「了解。それから」
「なに?」
「しばらくは状態復帰が主目的です。正直に言って、補佐が表立って行動する必要はありません」
「それで?」
「手続きなどは私がやります。ガリューの所へ行ってください」
「……でも」
「ルーテシアお嬢様」
チンクは、久しぶりにその呼びかけを使った。
「姉の言うことは、素直に聞くものです」
「姉? チンクが、私の?」
「僭越ながら、それに似た感情を抱いていました。いえ、今でもそうかもしれません。ご迷惑でしたか?」
「ううん」
ルーテシアはしゃがみ込むと、チンクの胸元に頭を置いた。
「ありがとう、チンク姉」
「あの時は、そこにチンク姉がいて、あんたと私はここでチンク姉を見てたんだよね」
セインは物言わぬ妹に語りかける。
「だけど、あの時はチンク姉は意識があって……時間はかかるけれど必ず直るって……」
「セイン姉様、それ以上は……」
セインの乗った車椅子を、ディードが押している。
二つ並べられた生体ポッドの一つには、辛うじて回収できたウェンディの残骸が納められている。奇跡的に頭部が残っていたことが、一同に微かな望みを生んでいた。
「帰ってくるよね……ウェンディ。あんたのことだから、普通の顔して能天気に帰ってくるよね」
セインは、生体ポッドの横に横たえられたドーターズの頭を、唯一残った右手で撫でる。
「この子たちだって待ってるよ」
「セイン姉様、そろそろ出ましょう」
ゆっくりと、セインは振り向いた。
「そうだね。私がここにいてもウェンディに何もできない」
「セイン姉様。そういう意味では……」
ディードは、何かを噛みしめるように唇を強く結んだ。
「ジュニアの所に行こうよ。それからディード、お願いがあるんだ」
386 :
野狗:2008/11/14(金) 22:27:04 ID:ofw5S6Nr
8
ルーテシアと入れ替わりに入ってきた姿に、エリオは反射的に立ち上がった。
「シャマル先生」
「いいわよ、隊長は座っていて」
「連絡なんてなかったのに…」
「受付には口止めしたのよ。ナカジマ特佐の特命だって言えば、あっさり了承してくれたわよ。はやてちゃんが特佐になってから、こういう役得が増えて少し楽しいかな」
「それは…」
「言っておくけど、はやてちゃんの特命は本当。頼まれて、医者としてここに来たのよ」
「しかし、僕やジュニアは無傷に近い。怪我をしたのは戦闘機人とガリューだけですよ」
「……」
「どうかしましたか?」
「また、“僕”に戻ったの?」
エリオは、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「僕は……僕です」
「隊長職はそんなに重荷?」
「……負けたんです」
「報告は聞いたわ」
「僕たちには調査は期待されていない。戦うためだけの部隊です。それなのに、その戦いに負けたんです。あっさりと、何もできずに」
「まだ、隊長になるには早かった?」
「……きっと、そうなんですよ」
「貴方が選んだ道ではなかったの?」
「僕は、はやてさんにはなれなかった。僕には、部隊を率いるなんて無理だったんだ! 僕のせいで、ガリューとウェンディとセインが……!」
突然、シャマルの手が上がる。エリオが反応するより早く、その手がエリオの頬を打つ。
「落ち着いて、エリオ。貴方がはやてちゃんになれなかった? 当たり前でしょう? 貴方、九歳の時何してた? 六課にもまだいなかったわね?
はやてちゃんはね、九歳の時、すでに私たちヴォルケンリッターの主、夜天の王だったの。しかも、望みもしてなかったのにね。今の貴方と一緒にしないで」
平手を張られ、痛みよりも呆気にとられた顔のエリオに、シャマルは指を突きつけた。
「貴方は、九歳の八神はやての足元にも及んでいないの。わかる? 隊長職なんてできなくて当然。なんのためにルーテシアがいるの? スバルがいるの?
ジュニアがいるの? チンクだって、貴方よりは経験を積んでいるのよ?」
「それは…」
「三人の被害がそれほどひどいことなの? 無傷で作戦を完遂することが貴方にとっての隊長の資格なの?」
「でも、これだけの損害を」
「いい加減にしなさい! もう忘れたの? 私たちのいた六課は一度壊滅的打撃を受けた。そのとき貴方は、部隊長は部隊長に値しないと思ったの?」
「そんなことはありません」
即答だった。
遊撃隊の隊長となってから、あの頃の部隊長と自分を比べなかった日などなかったと言っていいだろう。六課こそが、自分の目指す部隊のあり方なのだ。
「じゃあ、あの時貴方は何を考えていたの? 負けたことを悔やんでいたの?」
「強くなりたい、そう思ってた……。ルーテシアを救いたい、フェイトさんを、キャロを守りたい。みんなを守りたいって」
「だったら、今、貴方の部下は何を考えてるの? 貴方への不満? ガリューとウェンディが、セインが、貴方を恨んでいるとでも?」
口を開きかけて、エリオは俯いた。
猛烈な羞恥に襲われたのだ。
自分は、隊員の何を見ている? 何も見ていない。ただ、負けたことを恥じて、自らの力量の未熟を悔やんで、隊長としての資質の不足に歯がみしていただけだった。
後悔は、隊長の責務ではない。
何故、隊員の考えを知ろうとしないのか。
シャマルの言外の問いかけを、エリオは恥じた。
387 :
野狗:2008/11/14(金) 22:27:38 ID:ofw5S6Nr
9
道化。
改名すべきかも知れない。
アンリミテッド・アナライザー? お笑いだ。
スカリエッティの後裔? 不遜以外のなにものでもない。
きっと、何かの間違いだったのだ。どこかに欠陥があったのだ。クローニングの過程にミスがあったのだ。さもなければこんな低脳は生まれない。
敵は、スカリエッティの持っていた戦闘機人データをどこからか入手している。この点に関しては自分も同じ立場だ。しかし、敵はジュニアのさらに上を行っている。
そしてなのは、はやて、フェイトのデータを入手している。おそらくは、フェイクマザーでコピーを作れるほどに揃ったデータを。
ディープダイバーを不完全ながらも解析、コピーに仕込んでいる。
そして、次が重要だった。
コピーなのはのSLBである。
ジュニアがディエチにSLBを撃たせるために改良したのは、テンプレートからの集束である。
しかし敵は、死亡した者のリンカーコアやテンプレートからの集束を可能としているのだ。
それはジュニアの力量を超えていた。
「僕は、自分で思っていた半分も優れてなどいなかったんだ」
「ジュニア、元気を出して」
ディエチが傍についている。
「ごめん。ディエチさんのデバイスを修理しないとね」
「そんなことは後でもいいの。貴方が元に戻らないと」
「……元に?」
ジュニアは笑った。
「これが、元々の僕だよ。父さんに遙かに及ばないのはわかってた。でも、ナンバー2ですらなかったんだ、僕は」
「やっぱりここか」
部屋のドアが開き、ディードの押す車椅子に乗ったセインが姿を見せる。横に立っているのはヴィヴィオだ。
「ラボにも自分の部屋にもいないと思ったら、ディエチの部屋とはね」
「セインさん……」
ジュニアの言葉を無視して、セインはディエチをにらみつける。
「甘やかしすぎだよ、ディエチ」
「セイン、そんな」
「ジュニアは甘えてる。どうせ、自分はドクターに及ばないとか、コピーを作ったやつに及ばないとか、考えてるんだろ」
「事実じゃないですか。僕が及ばないのは、事実じゃないですか」
「そうだよ」
セインはジュニアに残った手を伸ばす。
「悔しいんだろ。自分が負けたのが。ディープダイバーを先に解析されたのが悔しいんだろ」
ジュニアはセインをにらみつけていた。
ディエチは、ジュニアを守るように二人の間に入る。
388 :
野狗:2008/11/14(金) 22:28:20 ID:ofw5S6Nr
10
「どうしたの、セイン」
「ディエチ、引っ込んでて」
「だけど」
「引っ込んでなさい!」
「セイン!」
「ディエチ、引きなさい」
ヴィヴィオが冷たく言った。まるで、ゆりかごの中にいたときのように。
思わずディエチは一歩下がり、無意識に恭順の姿勢を取っていた。
ジュニアは同じく姿勢を変えそうになったが思いとどまる。
しかし、わかった。今のヴィヴィオは見習い隊員ではない。聖王の血を引く者として言葉を発しているのだ。
「ジュニア、提案があります」
「陛下……」
ジュニアは自然にそう言っていた。
「貴方の父親が私に行った処置。同じ事が貴方にはできますね」
「陛下!?」
「聖王の力が必要なのです」
聖王ヴィヴィオならばコピーなのはと拮抗、いや、圧倒することができる。
「加えて、ジュニアにはもう一つの力が必要だね」
セインは首筋を見せつけるように顎を上げた。
「ディード、お願い」
ISツインブレイズ
ディードが双剣をセインの首筋に当てる。
「ジュニア、私の命をあげる。私の身体を好きに解析して。ジュニアなら、ディープダイバーを完全再現できるはず」
「セイン!」
ディエチの悲鳴のような声。
「わからないかな? 何者かは知らないけれど、ディープダイバーを不完全ながら解析再現した者は、私のクローンをあれだけ殺しているんだよ。
あれだけ殺して、ようやくあんな不完全な再現しかできないんだよ」
「……それは、セインさんの能力は偶然の産物みたいなものだから、クローンしたからって能力までコピーできる訳じゃない」
「問題はそこじゃない。それに、私は完全にディープダイバーの能力を持っているよ。私を解剖すれば、解析して再現できるかも知れないんだよ」
389 :
野狗:2008/11/14(金) 22:28:56 ID:ofw5S6Nr
11
ヴィヴィオが言葉を続ける。
「私の聖王の力、そしてセインのディープダイバーの再現。これならジュニアは確実に勝てるよ」
「嫌だ」
「何が嫌なの」
「嫌に決まってるじゃないか! なんで、セインさんを解剖しなきゃならないんだ。どうして、ヴィヴィオをまた苦しめなきゃならないんだ」
「勝つためだよ」
「だけど、それは違う!」
「だったら!」
セインが声を張り上げる。全員の注目が集まった。
「負けたことを悔しがる必要なんてないだろっ! あいつらの戦い方を見ればわかるだろっ、命なんて何とも思ってない。味方であろうと敵であろうと、
殺すことを何とも思ってない。殺して有利になると思えばあっさりと殺す」
ディードが双剣を退いた。
「だけど、ジュニアは殺しません。ジュニアが選んだのはそういう道なのでしょう? それなら、最後まで進むべき」
セインは車椅子の背もたれに全身を預け、天井を見上げた。
「それに、信じてる。ジュニアなら、あいつらより上だって」
「買いかぶりすぎです」
「そんなこと、ないよ」
ディエチがジュニアを背後から抱きしめていた。
「あたしは、ジュニアを信じてる。あたしたちも、信じてる」
「私もね」
ヴィヴィオが力強くうなずく。
「エリオお兄ちゃんがいて、ルーちゃんがいて、スバルさんがいて、ジュニアがいて、皆がいて。管理局一の部隊なんだからね。ママたちには劣るけど」
「私は、必要なかったかしら?」
突然の声に、五人の視線が集まる。
「はやてちゃんに言われて、駆けつけたんだけど?」
白衣の姿が戸口に立っていた。
「メンタルケアが必要ならお手伝いに、と思ったんだけれど。もう、必要ないみたいね」
シャマルはそう言って、微笑む。
390 :
野狗:2008/11/14(金) 22:29:37 ID:ofw5S6Nr
12
「それじゃあ、いつも通りにしましょうか?」
ヴィヴィオがうなずいて、しかしすぐに首を傾げる。
「いつも通りって何?」
「旅の鏡の解析よ」
しばらく前から、シャマルに対してジュニアが依頼していたのが、旅の鏡の解析調査協力依頼であった。数度の調査はすでに済ませている。
「一応、今日の約束だったのだけれどね」
さすがに、今日という日の調査はキャンセルだろう、とシャマルは言った。
しかし、ジュニアは否と言う。
「せっかく来てもらったのだから、調査はします。予定よりは短くしますれど」
「今すぐ?」
「勿論。時間は無駄にはできませんから」
ルーテシアは生体ポッドの中のガリューを見上げていた。
身体の左半分を失ってはいるが、生体反応は消えていない。 この程度でガリューは死んだりしない、とルーテシアは信じている。
いや、この程度どころが、ルーテシアにとってのガリューとは絶対に死ぬことのない、いつだって頼りになる戦士なのだ。
「ガリューは、少しお休みしているだけだよね」
ガリューには聞こえている、とルーテシアは信じていた。
いつだって、ガリューは傍にいた。呼べばどこにでも駆けつけてくれた。
守ってくれた。守り抜いてくれた。
ゼストよりも、きっとエリオよりも。
ガリューのいない自分なんて、想像もつかない。いつだって自分の隣にはガリューがいると思っていた。
「私はまだ、ガリューがいないと何もできないんだよ。ガリューがいないと駄目なんだよ。だから、お休みした後はまた帰ってくれなきゃ駄目なの」
答えはない。静かな空間に、生体ポッドの稼働音だけが響いている。
ルーテシアはガリューをもう一度見上げ、隣のウェンディを見た。
あのとき、ウェンディはガリューと心が通じていたように見えた。ガリューの意思表示なんて、ウェンディには何一つわからなかったはずなのに。
どこか、心がうずくのがわかった。
「…また、来る」
振り向いたルーテシアは、開いたドアから入ってくる光に目を細める。
391 :
野狗:2008/11/14(金) 22:30:24 ID:ofw5S6Nr
13
「隊長補佐?」
「スバル?」
スバルはルーテシアの眩しそうな顔を見て、慌ててドアを閉める。
「あ、ごめんなさい」
「どうしたの? スバル?」
「ガリューさんと、ウェンディの様子を見に来たんです」
放心状態だったスバルをルーテシアは見ている。
事実上の生身だったコピーはやてを、戦闘機人の力で文字通り貫き砕いたこと。さらに、それが罠だったこと。
そして、そのためにウェンディとガリュー、セインがこのような状態になってしまったこと。
ある意味では、スバルはエリオ以上に自分の身を責めていたのだ。
「落ち着いたのね」
スバルはやや寂しげに微笑んだ。
「教会まで行って来ました」
ルーテシアはうなずく。
スバルは、イクスに会いに行ったのだろう。そして、語ったのだろう。
「もう、大丈夫。あたしのやるべき事は、あの子が思い出させてくれた」
スバルには、スバルの想いがある。守るべきものがある。
ガリューにも、ウェンディにも、セインにも。
そして、ルーテシアにも。
それは、命より重いのかも知れない。
392 :
野狗:2008/11/14(金) 22:31:16 ID:ofw5S6Nr
14
次回予告
エリオ「守りたいと思った。弱い自分を打ち消したいと思った。全てを作り替えたいと思った。強くなりたいと思った。生まれ変わりたいと思った。
意志を貫きたいと思った」
ルーテシア「そんな貴方を追いかけたいと思った。一緒に歩けなくてもいい。後からついていくだけでいい。ずっと、そう思ってた。貴方と、貴方の隣を歩くあの人。
二人を後ろから見ていればいい、そう思ってた。こんな風に見守ることは、あの人にはできない。そう信じてた」
エ「次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS第六話 『エリオの偽善 ルーテシアの高慢』 僕……俺たちは進む。IRREGULARS ASSEMBLE!」
中書き
SLBの砲撃シークエンスを間違えていたことに気付いて大あわてで書き直して、ストーリーも少し予定より変えました。
おかげで、終盤まで活躍させる予定だったウェンディがこんな事に………。なんか、勝手に動いたよ。
セインとガリューに関しては予定通り。
393 :
野狗:2008/11/14(金) 22:31:59 ID:ofw5S6Nr
以上、お粗末様でした。
>393
GJ!!!
ウェンディ、ガリュー…。 。゜。゜(ノД`)゜。゜。 。
そして!すさまじく!燃えてきた!
ジュニアは自分の父親の血と狂喜と戦い勝利する
スバルもルーテシアも行うべきことをはっきりとさせた
エリオはキャロも隊も、そしてルーテシアも救うために戦う
これで燃えずに何とする!
>>393 GJ!
予告を見る限り、ルーテシアはエリオのためにエリオクローンの元へ行くのでしょうか。
エリオにはルーテシアも含めて全て何が何でも守って欲しいです。
ウェンディは本当に大丈夫か凄く心配です
ガリューは再生能力高いだろうから大丈夫だろうけど、もうウェンディはダメのような
そして報復のための戦いになるのもまたすごいことになりそう
というか機人って結構各部が吹き飛んだあと修理?している描写があるけど、
破損→修理をくり返すとそのうち完全なロボットになってしまわないか?
それとも生態部分自体が生態パーツ扱いなのか?
>>397 UCガンダムは、1機が稼動するには最低でも3機分の補給パーツがいるという。
まぁ元々兵器なんだから動かす=戦闘。で、どっか壊れるのは当り前。
機人の場合生身の部分が残ってるなら、ある意味では機人の方が稼動難しいのかも
どこまで生身かにもよるしな。
スバル曰く骨格や筋肉は人工物らしいが、機人って脳以外はほとんど造り物なのかも。
ロボコップや仮面ライダーZXも顔(後者は脳)だけ生身だし。
人造でも生体なら回復や補助が利くのかとか考えだすと設定スキーの血が騒ぐぜ。
現実でもクローン創る目的の一つに、拒否反応がなく取り換えられる臓器の作成があるし、10年程度未来であれ魔法文明なリリカルワールドの天才ドクタースカトロなら脳みそ以外とっかえひっかえ楽勝なんだろう
ディエチにジュニアは手を出したのかな?
このウェンディはライスピのタイガーロイドばりに
パーフェクトなサイボーグとして復活を…しないか
ウェ「楽しい命のやり取りの後に立っているのは『死』という地獄をかい潜って来た真の『鬼』のこの私だ!」
次のウェンディは肩にキャノンつくわライディングボードの代わりにライドアーマーがつくわバーボンが泥水だわでえらい事ですね
>>402 あんな悲壮感漂うウェンディはなんか嫌だw
>>402 それだと、ポジション的にセインがZXじゃないか(ウェンディとコンビ組んでいたらしいし)w
>>393 GJ!!
実に燃える展開だ
エリオはルーテシアもキャロも全て守ると大口叩くぐらい自信持てばいい!
それが漢だ!
>>408 チンクのことをさすのなら、あれは確かわざと治していなかったんじゃなかったっけ?
業務連絡です。
87スレ保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。
418 :
554:2008/11/15(土) 22:55:29 ID:gr9Ly5eY
尻叩く意味でも0:00までにクリニックF更新するっ! と宣言しておく。
というわけで、少々のお待ちを。
>554氏
きゃほ〜い! 投下待ってます〜♪
来たッ!!!
421 :
7の1:2008/11/15(土) 23:47:52 ID:gbKB4Z19
この流れの中で初の投稿になります。
注意事項
・一部エロありです
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
422 :
7の1:2008/11/15(土) 23:49:18 ID:gbKB4Z19
管理局の制服の上によれよれの薄茶色のレインコートを羽織ったさえない中年男が、時空管理局の廊下を
所在なさげにふらふらと歩いていく。
前から歩いてくる男性局員は、その男を気にする風もなく無視して通り過ぎる。廊下の角でぶつかりそうになった
女性局員をひょいと避けながら失礼と頭を下げる男の挨拶は見事に無視される。
足早に通り過ぎていった女性局員を見て肩をすくめた男は、無限書庫の入り口に着くとセキュリティチェッカーに
無造作に手をかざした。
「ID確認 幹部評議会議員マテウス・バウアー卿、入室を許可します」
「ご苦労さん」
バウアー卿と呼ばれた男は、習慣なのか単なる機械にすぎないセキュリティチェッカーに声を掛けると無限書庫
の扉が開いた。
無限書庫の無重力空間を縦横に走る通路代わりの梁に腰掛け、目の前にモニターを展開しながら口述筆記を続ける
ユーノは、二本下の右に走る梁の上を危なっかしく歩く男を認めると作業を中断して声を掛けた。
「マテウスさん、ここですよ」
「やあ、ユーノ先生、そこでしたか。ちょ、ちょっと待ってください」
「無理することないですよ。今、行きますから」
無情力空間に不慣れなのか、上手く飛び上がれずじたばたするのを見かねたユーノは、梁を器用に蹴ると無重力空間
を優雅に飛翔して男の前に降り立った。
「相変わらず見事ですな。さすが大空のエースオブエースの師匠だけのことはある」
「お世辞は結構です。それよりご用件は?」
423 :
7の1:2008/11/15(土) 23:52:48 ID:gbKB4Z19
自分の思い人のことにふれられたユーノは、素っ気ない口調で答えると胸ポケットから取り出した布で、はずした眼
鏡を拭きだした。
「相変わらず見事ですな。さすが大空のエースオブエースの師匠だけのことはある」
「お世辞は結構です。それよりご用件は?」
自分の思い人のことにふれられたユーノは、素っ気ない口調で答えると胸ポケットから取り出した布で、はずした眼鏡を拭きだした。
「二つありましてね。一つは野暮用で、もう一つはご要望のありました例の件についての資料で・・・」
レインコートのポケットからディスクの入ったケースを出して手のひらで弄ぶマテウスにユーノは鋭い視線を向けた。
「わかったんですか!」
懸念していた件についての答えを得たユーノの声は、不安と希望がないまぜになったせいか、若干震えていた。
「ええ、聖王陵の書庫にある埃を被った本に載ってましたよ。ケースは全部で8件、完治率は4件ですから50%、
まあそれほど分の悪い賭ではありませんね。それにしても、こんな資料、無限書庫にありそうなもんですがね?」
「第3管理世界始原ベルカの収集資料は、無限書庫にほとんどありません。いにしえの時空管理局ですら手を出せなかった世界ですよ
現在の時空管理局が収集できた資料も、聖王陵の許可を得て収集できた歴史書や口碑、伝承、詩歌 の類だけなんです」
その資料があれば、ここまで悪化することもなかったんだとユーノは心の内で続けた。
「へぇぇ私が管理局に奉職して30年近くになりますが、資料請求の要請なんて一度もされませんでしたがね?
まあ、 私じゃ当てにならないと思われてたんでしょう」
苦笑するマテウスの手のひらの上でくるくると回りだしたディスクを眼鏡を拭くのも忘れて食い入るように見つめていたユーノは、
にやにや笑いをうかべるマテウスに気づくと、あわてて眼鏡を掛けなおした。
424 :
7の1:2008/11/15(土) 23:55:41 ID:gbKB4Z19
「で、野暮用とはなんですか?バウアー卿」
「なに、たいしたことじゃありません。かねて要請していた評議員就任の件ですよ。お受けいただけますかね。
いや、 誤解なさらないでください。このディスクはお渡ししますよ。なにせエースオブエースの命がかかってますからね」
手のひらで回していたディスクを一瞬でユーノの胸ポケットに転送させるとマテウスはこれだから、私は駄目なんですがね
とつぶやき、櫛の通ってない髪を右手でがりがりと引っかき回しはじめた。
「評議会入りですか?無限書庫の人員的にも僕が抜けると資料請求作業の遅滞率が30%を超えるんですよ。本局評議会
は無限書庫の機能不全を望んでるんですか」
「正確には32%強ですな。評議会の意としては、個人頼りの無限書庫という体制を改革したい。それには無限書庫の代表者が、
評議会入りして人員の要求や予算の増額に関して発言してくれたたほうが良いというわけです」
「で、無限書庫は評議会の飼い犬になれと・・・」
「聖王教会ーハラオウン閥と見なされるている現状よりはましでしょう」
JS事件解決の裏の立役者と識者の評価が高いのに3人ほどの人員増なんて常識じゃ考えられませんがねと続けた
マテウスは、髪の毛を引っかき回していた右手でポケットから吸いかけのちびた葉巻を取り出すと指先に浮かべた炎
で火をつけた。
「ここは禁煙ですよ。やめてください」
「煙は次元の狭間行きです。ご心配なく」
葉巻から吹き出した煙を転送魔法で次元の狭間にはき出すマテウスを睨み返したユーノは、部下の職員たちの顔を
思い浮かべながら考え続けた。どの部下も寝食の時間を削り、過酷を通り越して拷問としか思えない無限書庫への資料
請求に答えている。それでも請求者たちから、資料に間違いがある、不足がある、要求した項目を満たしていないなど不満や
苦情が絶えない。 そのストレスが原因で管理局を退職したり、鬱を発症して長期療養を要する羽目になった職員たち。
人員さえいれば避けられた事例が何件あったことか
「しかし、ぼくが評議員になったら実務から遠ざかることになりますよ。それでもいいんですか。資料請求の遅滞率は」
「その点は、ご心配なく。かねてご要望のスタッフを当方で用意しておりますから」
「評議会推薦の?忠誠心だけじゃ無限書庫のスタッフは勤まりませんよ。能力と資質がいるんです。その点を理解できている
とは、今までの経緯からして思えませんがね」
425 :
7の1:2008/11/15(土) 23:58:28 ID:gbKB4Z19
ハラオウン閥と見られているユーノが司書長を勤めている無限書庫の統制を目的として評議会より回された50名の人員が、
わずか1ヶ月後には、過労による病気やストレスによる鬱自殺(ユーノや他のスタッフの関与が疑われたが、
最終的には無実が証明されたが)などで2人しか残らなかった事実を思い返しながら言い返すユーノの口調は苦かった。
「ああ、評議会推薦スタッフの件ですか。ありゃ最高評議会の三無脳が文字通り無能だったことの証明ですな。いまじ ゃ文字通り
”脳なし”ですがね」
後始末させられたものの身にもなってほしいもんですよと愚痴をこぼすマテウスの口調は皮肉げだった。
「今回のスタッフは、私の推薦ですよ。実力は折り紙付き、なにせ遺跡泥棒のプロフェッショナルで探索魔法にかけては、無限書庫
のスタッフも裸足で逃げ出す連中ですから」
「遺跡泥棒!?」
いやな汗がユーノの背を伝って落ちる。
「ええ、聖王陵内の墳墓にあるロストロギア発掘を請け負った連中で、その道のプロですからね。捕獲するまで
ずいぶん手間が掛かりましたが、全員、無傷で収監していますよ」
二本目の葉巻を取り出して火をつけながらマテウスは続けた。
「まだ本局には未通告でしてね。連中もあなたの元なら、喜んで働きたいと言ってるんです。いかがですか?まあ必要ないなら
本局に引き渡しますが、死刑は免れないでしょうねなにせ第一級ロストロギアに手を出したんですからね」
「・・・で、どんな人たちなんですか?こんな過酷な場所で働こうって奇特な人たちは」
平静を装うユーノだったが語尾がかすかにかすれていた。
426 :
7の1:2008/11/16(日) 00:00:14 ID:gbKB4Z19
「ご自分で面接されたらどうですかな。連中のプロフィールは、こちらのディスクに入ってます。面接日時が決まったら、ご連絡ください」
「今すぐできますか?こういうのは早いほうが良いでしょう。情報リークの件もありますし・・・」
「スカリエッティのNo2の件ですね。確かドゥーエっていう機械人形でしたっけ?」
「戦闘機人です!彼女たちは人間だ」
海上施設での社会復帰プログラムの一環としてミッドチルダ史の講義を行ったユーノは戦闘機人と恐れられる彼女たちが、無知にして
無垢の人間であることを知っている数少ない一人だった。それだけにマテウスの皮肉な口調に我慢がならなかったのだ。
激した口調で反駁するユーノをまじまじと見返しすと
「それは失礼。なにせ戦闘機械みたいな連中しか知らないもんでしてね」
と言い訳したマテウスは、では4時間後に如何ですかと提案した。
「結構です。午後の予定はキャンセルします。場所は、どこです?」
「本局の第7ドックに入港している時空航行艦デートリッヒに収容してます。デートリッヒが積んできた口碑を見学したいとユーノ博士が
申請してくだされば、堂々と彼らに会えますよ。なにせ口碑を発掘した連中ですから」
じゃあ、これでと手を挙げたマテウスは、ユーノに背を向けると危なっかしい足取りで梁の上を歩きながら闇の中に消えていった。
第一章終了です。 続きは明日上げます。
427 :
554:2008/11/16(日) 00:02:25 ID:gr9Ly5eY
おうっ、先を越された!
一応ルールに則って1:00に延期しますです。
GJGJ
待ってまっせwユーノが主役のSSは久しぶりな気がする
1時ぽーーー(ry
こんばんは。 なんつーか、遅くなって申し訳ないorz
さて、残り3話ですよクリニックF。
んで今回の話がプロットを立てたときに一番書きたかったお話です。 どうも私は相当のドSであるようでして。
なんか、スカさんとウーノさんが書いていて悲しいです。 自分で書いているのですが本当に幸せなれるのかと不安になります。
そんなこんなで注意書き行きます。
・カップリングはジェイル(あえてこう表記)×ウーノ
・スカの性格がかなり変化してます。それについては保管庫にある話を参照して下さい。
・なのはキャラはスカとウーノ以外はフェイトくらいしか出ません。よってほぼオリジナルストーリー。
・現在までの話はほのぼのでしたが、今回から作風が百八十度変わります。
・イメージBGMは水樹奈々さんの”through the night”です。 知らなくても楽しめますが、知っているとより楽しめます。
・NGワードは「Clinic F 'through the night' V」です。
それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下したいと思います。
今では何も出来ないのは 動けない冷たい氷の中
どうにか一人温める人 後ろ姿は悲しい
何か企んでいるのかと思案しながら歩いていたフェイトだったが、ジェイルに教えられた通り丘を降りてすぐの所に温泉旅館らしき暖簾を見つける。
周りの建物とは少し違う、木造ではあるがその立派な作りにフェイトはしばし圧倒される。佇まいというか、その歴史の重みというものを肌でひしひしと感じることが出来る。
例えるならば、見るからに樹齢数百年と思えるような大木に宿っているその雰囲気に似ている。そうだ、力のある者は背中で語るという言葉を前にテレビで聞いたことがある。
と、遠くで誰かが叫んでいるような声がフェイトの耳を微かに揺らした。その声は徐々にフェイトの方へと近づいてくる。
――――さーい!! 待ってくださーい!!」
自身が降りてきた丘の方を振り返ると、先程まで一緒にいた青年と女性が一目散にこちらへ駆けてくるのが見えた。
はあ、はあ、と荒い息をしながら、しかしその目には決意という名の光が宿っているように、まだ執務官としては新米である彼女の眼にはそう写った。
「――ぁ、はあ……。えと……」
「フェイトです。フェイト・ハラオウン」
「フ、フェイトさんは、一体何をしにこの町へ? ジェイル先生とはどんな関係で?」
もっともな疑問だった。低崎の売店のおばちゃんには旅行と称していたが、フェイトとジェイル・スカリエッティの会話を聞いてしまった今となっては旅行という言い訳が通用するとは思えない。
ましてや、外見は完全に外人のフェイトである。いくら日本語が上手いとは言えど、失礼ではあるがこんな辺鄙な街に外国人の旅行客などそうは訪ねて来まい。
そして、フェイトは彼らをこの町でジェイル・スカリエッティに最も近しい人物達であると先程の会話から判断した。そうならば、ジェイル・スカリエッティの人となりを多少なりとも知っているはずである。例え優しい人間へ心変わりしたのだとしても。
嘘を付いてもおそらく感づかれる。フェイトの執務官としての本能がそう告げていた。
「私は警察みたいな仕事をしていまして、その仕事の課程でちょっとジェイル博士に聞かなければならないことがあって、それで来たんです」
「……ジェイル先生を、連行するつもりですか」
青年が少しくぐもった後に、唸るような低い声を発する。妙に勘の鋭い人たちだな。フェイトは本心からそう思った。
これだけの情報から自分がジェイル・スカリエッティを捕縛するつもりであることを、よくも感じ取れたものだ。
フェイトはより一層、洞を吹いても立場を悪くするだけだと、もう一度気を引き締める。
「なんでですか! ジェイル先生、あんないい人なのに」
女性が声を張り上げる。まばらではあるが、歩いていた通行人が何の騒ぎかと三人の方を振り返る。
彼と彼女がこうも必死にジェイル・スカリエッティを擁護する理由。それはおそらく、今まで彼は優しい人間を演じ続けていたか、あるいは何かしらの皮を被っていたのだろう。
一方的ではあるが、追い始めてからもうすぐ十年になるかという付き合いだ。そう簡単に性格まで変化するとは思えない。
しかし、だからといって彼らの主張を足蹴にすることは、フェイトには出来なかった。かつて、自分を母親の呪縛から助けてくれたときの彼女の笑顔が、ふと頭をよぎった。
私が変われたように、彼らだって変われているかも知れないのだ。
自分は犯罪者をコケにして興奮を憶えるような特殊な性癖など持ち合わせていない。むしろ、この世から犯罪者など無くなればいいと思っている。自分の食が無くなろうが、構うものか。世界が平和であるならば、その方がよっぽど良い。
だから、フェイトは彼らの更正をほんのちょっとでも期待し、そしてこのままそっとしてあげたいと思ってしまうのだった。それは執務官にとってあるまじき感情であり、管理局に楯突いていることにもなる。
だが、フェイトはそんな希望的観測を捨てきれないのだ。彼女がかつてそうであったように、ジェイル・スカリエッティにも今という時間を夢を持って生きようとしていることに。
それでも、彼女は時空管理局の執務官である。常に法の下に平等で無ければならない立場だ。それを、目の前に立ちふさがる彼らに理解して貰わねばならなかった。
「……彼が、ジェイル博士が何をしてきたのか。それをお聞きになれば理解してもらえるでしょう」
それはある意味で禁忌だった。管理外世界で魔法が絡む様々なことを伝導するのだ。一歩間違えば大事になるのは避けられない。
それでも、フェイトはそうすることで彼らを納得させようとした。フェイトは科白を言い終わった後、義兄に似て堅物になってしまったと自嘲的な溜息を吐いた。
フェイトが話す内容。それはフェイトの捜査ファイルをそのまま朗読しているようなものだった。無論、魔法関連の事象は暈かしているが、それでも自分が掴んでいる事実ほぼ全てをその話の中に盛り込んでいた。彼らを絶望という形で納得させるには、これしかないのだ。
ゼスト隊のこと―――実験体にされた二人の同志、そしてその子供の悲しき戦いの記録。
戦闘機人のこと―――戦うためだけに生み出された儚き戦乙女たちの惨状。
聖王のこと―――戦力としてなら幼い子供さえも戦いに利用し、苦しめていく。
彼も、ジェイル・スカリエッティも被害者であるのだ。管理局上層部の思惑によって、結果的にこんな状況まで追い込まれてしまった。しかし、だからといって彼を許すわけにはいかない。
親友を、部下を、ミッドチルダの全市民を、ここまで苦しめた彼を野放しにしておくわけにはいかない。これは管理局の思いでもあり、彼女の思いでもあった。
しかしそう思おうとしても、フェイトには彼が他人には思えなかった。自分と同じような境遇を背負い、あるいは発狂してしまったのではないだろうか。もしも、あの時手を差し伸べてくれた人が居なかったら、自分も同じか、あるいは惨めな末路が待っていたことだろう。
―――。彼は、人の命など微塵にも思っていない人間なんです」
フェイトは長い話を終えた。その間、ずっと聞き続けていた青年と女性であったが、フェイトの予想とは裏腹に先程まで持っていた光を未だ失っていない。
やがて、青年が重い口を開くかのように顔をフェイトの方へ真っ直ぐ向け、ゆっくりと口を開く。
「……だから、どうしたって言うんですか」
「……え?」
「ジェイル先生はジェイル先生です。医療用の機会を作ったり、専門外の牛を助けたり、子供の面倒を見たり、遭難した女の子を助けたり、子供と一緒に親の所へ謝りに行ったり、風邪を引いた母親の変わりに運動会に行ったり、熱中症で倒れた子供を無償で助けたり」
青年の紡ぐ言葉に女性が拳を握りしめてうんうんと頷く。
「今日だってそうです。あのケガ、難しいものだったんでしょう? なのにジェイル先生は惜しげもなく最先端の医療を使って治してしまった。そんな人が犯罪者だなんて、人の心を微塵にも思っていないだって? そんな言葉、俺には信じられません」
「私も、今までジェイル先生をずっと見てきました。私は、ずっと助けられてばかりで、それに、すごく頼りになって。私がここで先生を否定してしまったら、私が今まで糧にしてきたことは無駄だったなんて、そんなのあり得ません。だから、私は信じられません」
フェイトは呆気にとられていた。しかし、表面上は何事もないように取り繕う。動揺した方が負けなのだ、このような駆け引きは。
しかし、誰が何と言おうとフェイトはあくまで時空管理局の執務官である。情で罪人を許すほど、彼女の就いている職は甘くない。
「……言いたいことはそれだけですか」
「ッ……!」
「何と言われようと、私は私の仕事を果たさねばなりません。ああ、そうそう。明日の夕方は絶対に診療所には近づかないでください。もし来られた場合は武力行使も持さないことを覚えておいて下さい。それでは」
フェイトはくるりと踵を返して旅館の暖簾をくぐっていく。
その場には、ただ呆然とした表情で彼女の背中を見つめていた青年と女性がポツリと残されていた。
既に夕陽は山裾に沈み、満月が夜の到来を知らせていた。
□ □ □ □ □
「私は秘書として、そして部下として優秀であったから君を連れてきたんだ。私は君を、愛してなどいない」
血の滲み出た手をそのままに、ジェイルはウーノを真っ直ぐ見て言った。
ウーノは唯一の支えであった支柱を失ったのだ。それなのに、そのはずなのに、彼女は依然としてその光を失わず、それどころか微笑みさえ浮かべている。
その笑みは全ての者に安らぎを与えるかのような、まるで聖母のような笑みであった。
「嘘、ですよね?」
「そんなわけがないだろう。第一―――
「耳」
「何だって?」
唐突にそう呟いたウーノに言っていることがよく分からずジェイルが聞き返す。
「貴方が嘘を付くときはいつも耳が動きます」
「なっ……!」
不意を突かれたのか、普段の彼からは想像も付かないほど驚愕に染められた顔がウーノの瞳に映る。ジェイルの手は、彼の耳に添えられている。
そしてそれを見届けたウーノは満足そうに微笑むと、ウーノは態とらしく舌をちょこんと出してみせた。
「嘘です」
「…………」
ウーノは相変わらず微笑のままだ。
しかし、その瞳は悲しみの炎が宿り、彼女の影の部分をいっそう濃くしているようだった。
「貴方は言いましたよね? 優しい嘘は付くけれど、悲しい嘘は付かないと」
「……ああ、言った」
「貴方にとって、これは優しい嘘なのですか?」
目頭に雫を浮かべながら自分を問いただすウーノに折れ、ばれてしまっては仕方がない、と嘲笑を浮かべてウーノの問いに答えようと、重い口をゆっくりと開く。
「……君には私のことなど気にせずに、檻の外で生きていて欲しい。だから嘘を付いた。本音を言うならば、今もその気持ちは変わらない」
はあ、と一瞬の溜息。
「君を愛している。それこそ、どうしようもないほどに」
「ふふふ……」
「何がおかしいんだい?」
「いいえ、何でも。ただ、嬉しいだけです」
二人でお互いの目を見つめ合い、どちらが切欠だったかも分からずに唇を重ね合う。
以前のように、異常なまでに顔を赤くしたり、妙に冷静であったり、そんなことは一切ない。ただ、目の前に存在する相手を、ただ見つめ続け、そして深く深く口づけを交わし続ける。
綺麗に整えられていたはずのシーツは既に皺で所々が段々を形作り、ベッドの上では男と女が互いの唇を貪り合う。
紳士とおしとやかという表現がよく似合う二人であったが、彼らはそんな体裁じみたことなど気にはしなかった。
お互いを愛し合い、お互いを感じ合う。それこそ、獣のごとく。
彼らに残された時間は後僅かしかないのだ。それを、誰が止める権利があるのか。いや、誰が何と言おうと彼らは止まらないだろう。彼らに、自らの瞳に映し出された人間以外のもの全て映ることはないのだから。
「……ドクター」
「ああ、分かった」
女が悩ましげな声で男の名を呼ぶと、それに応えるかのように彼女の豊かな乳房を揉みしだき始める。
ジェイルは先程のキスと今の声で既に達してしまいそうだった。彼女の感じ方は彼女のことを知り尽くしたジェイルであっても予想し得ないものであった。
そして、そんなジェイルの手は既に汗で湿っており、温度は人の温もりを感じさせるような温かさだ。その温もりがウーノの胸を心地よく刺激し、それが心地よさとなってウーノの感覚全てを蝕んでいく。
証拠に、細く開いた口の隙間から絶え間ない嬌声が小さく漏れだしていた。
「っあ……ぁっ……」
「根を上げるにはまだ早いぞ、ウーノ」
ジェイルは自らの舌をウーノの胸に這わせ、更にはさくらんぼを啄むように彼女の乳頭を口に含んで舌で転がす。
ウーノの体もジェイルと同じく汗で湿り、ジェイルの攻めと同じタイミングで体を上下左右に捻り出す。頬は先刻にも増して朱に染まり、瞳はまるで子猫のように蕩けた表情へと変わっている。
やがて乳房を口に含みながら、ジェイルは手をウーノの股座へと伸ばし、少しの力でちょこんと触れてみる。
「ふぅあっ……!」
「何だ、胸を弄っただけで準備万端じゃないか」
「い、言わな、っああっ! ……いで……っあっ」
彼女の秘部は少し触れただけで雷で打たれたように体の感覚全てが快感によって押しつぶされ、意識が快楽によって強制的に淫らな方へと変えられていく。
そんな彼女のうねうねと蠢くそこへジェイルが指を差し入れると、それを待ち望んでいたかのように彼の指を吸い尽くそうと潤滑油がしみ出し、膣内部での呼応によって次第に奥へと導いていく。
それに応えてジェイルが中指を上下し始めと、それだけでウーノは腰を反らせて大きく喘ぐ。それはジェイルの知っている彼女の姿ではなかった
何と淫らで、なんと扇情的なのであろうか。ジェイルの目の前で展開される愛欲の宴はそれだけで一種の芸出と言っても言い過ぎではなかった。
「いくぅぅぅぅっっ!! イっちゃいますうぅぅぅっっぅぅぅ!!」
ジェイルの中指が次第にスピードを上げ、ウーノの中から溢れだしてくる愛液も次第に量を増してくる。
それは、彼女が徐々に絶頂へと向かっている事への確かな証であった。証拠に、上ずっている声は徐々に途切れ途切れになり、口からはヒューヒューという空気の漏れる音だけが目立っていた。
それから数秒の後にウーノの腰がくの字に曲がり、惚けた顔で絶頂を迎えたのも多少早かったにしろその前の乱れ方からして別段おかしいことではなかった。
「ひ、ひゃぃぃ……」
「……少しやりすぎたか」
絶頂によって湿り、そして火照っている彼女の秘部にジェイルは自らの男根を宛う。それだけで絶頂を迎えて間もないウーノの躰を揺さぶるのには充分すぎる攻撃だった。
しかし、ウーノの躰へは一向にそれ以上の波紋は訪れない。ジェイルの動きそのものが止まってしまっているのだ。
「……ど、ドクター、い、いれてください……」
「いいのか?」
何故か執拗に同意を求めてくるジェイル。その瞳には迷いが浮かんでいた。
それを見抜いたウーノが言う。
「どうしたんですか? いつもならこのまま…………なのに」
「いや、これが最後になるだろうから、キミに優しくしようと思ってだな……」
最後。その言葉がウーノの脳裏で弾けた。
「……ドクターは私のことを愛していますか?」
「む、無論だ」
「でしたら簡単です」
ウーノが見せた聖母のような笑み、そしてジェイルにとっての懐かしい笑み。思わず彼は息を呑んだ。
「私は愛された証が欲しい。貴方の、貴方だけのモノだという証が。それこそ、狂うくらいに」
ジェイルは呆気にとられた表情から真剣な眼差しに変え、頷く。いつのまにかウーノは彼に押し倒されていた。
「本当に良いのか? 私は止まらないぞ」
「いいんです。最後なんですから」
覚悟を決めたかのように目を閉じたが、彼女の顔が苦悶の表情に彩られることはない。
彼とこうして触れあえるのも、これが最後なのだ。そう思うと、彼と過ごした今までの時間の証拠が欲しかった。無かったことにされないような、より強い何かが。
それが、躰が傷つくことだって良い。機能停止に結びつくことだったとしても良い。とにかく、彼女は彼との時間を否定されることそのものを嫌ったのである。
やがてその言葉に応えるように、襞を捉えてそのままになっていたジェイルの男根がゆっくりとウーノの膣へと侵入していく。
「っぅ……ふぅ、ん……」
「……いくぞ」
その言葉の最中もジェイルのモノは進むことを止めず、そして上気し荒く甘い息を吐くウーノの口から「っつぅぅぅっ……!」という一際大きな声が吐かれた。ジェイルの挿入は止まっている。即ち、ウーノの最奥までジェイルの男根が貫いたことになる。
ウーノはコンコンとドアを叩くようにノックするその存在を己の一番奥で直接感じていたが、止まらないと言った彼の一挙一動は未だにぎこちないままだ。
ならば、と押し倒されていた体を無理矢理に起こし、その勢いで押し倒していたジェイル自身をも押し倒して、ウーノが彼の上に完全に馬乗りになった。
その一挙一動にジェイルはただ唖然とすることしか出来ず、押し倒されている状況を把握するのが精一杯であった。
「ウーノ、これは……」
「貴方が積極的になってくださらないから。私はもっと、激しくして欲しいんです」
そう言うと、ウーノはジェイルの腰に手を置いて、ジェイルの男根を支柱にして自らの体を上下させ始めた。
その度にじゅぶじゅぶと卑猥な音が彼らの股間から奏でられ、お互いの顔を深紅に染め上げていく。
「っつぅ……ウーノ……!」
「はあっ……! ドクターぁぁぁっっ!!」
ウーノが上下する速度は彼らの体の熱さに比例して速くなり、空いていたウーノの胸にはジェイルの手が添えられて形の良い乳房がジェイルの思うがままに変えられている。
抜けるたび、挿さるたび、だらしなく涎を垂らすウーノの口からは躊躇のない喘ぎ声が大きく漏れだし、自分を襲う快感に顔をしかめるジェイルの口からも荒い息が絶え間なく吐き出される。
お互いの情欲がお互いを直接染め上げていく。まるで、誰とも知れない誰かにこれは自分のモノだと分からせているかのように。
「っふぅ……! ウーノ……!!」
「っぁああああ……!! ドクタぁぁああっっ!!」
野獣のごとく交じり合う二人には、もはや誰の声も、どんな音も、耳にはいることはないだろう。
彼らを縛り付けているのはもうこれで最後だという覚悟。そして、思い出。
一緒にご飯を食べることも、一緒に研究するのも、一緒に野菜を採るのも、一緒に作戦を練るのも、一緒にこんなことをするのも―――一緒に笑い合うことさえも。
彼らに残された時間は僅かだった。お互いが愛し合い、それを確かめ合う。残された時間で彼らが本能的に選んだ道はそれだった。ただ、お互いを感じ合う。お互いを愛し合う。これからの自分たちの、生きていく糧とするために。
ウーノが腰を振り続ける中、体を起こしたジェイルはウーノを優しく抱きしめる。それこそ壊れ物を扱うかのようにゆっくりと。
ジェイルが体を起こすとウーノの体は自然と彼の体へ寄りかかることになる。彼女もまた、なんの戸惑いもなく彼に抱かれ、そして自らの腕も彼の背中へと導いていく。
まだ、股間から発せられる卑猥な音は止まらない。しかし、暗い寝室の中にうっすらと映し出される影は興奮を指すようなものではなく、一種の芸術であると言った方が正しいほどの美しさであった。
人間は生まれたままが一番美しいというのは美術家の話であるが、彼らがまさしくそれだった。彼らは、本当の意味で人間だったのだ。
作られた存在であっても、望まれて生まれてきたわけではなくとも、今彼らは人間だった。その辺にいる人間よりも、よっぽど人間らしかった。
「っあっ! ふぁあっ! うぅあっ!」
「ウーノ……! ウーノ……っ!!」
これは自分のモノだと言わんばかりに、ジェイルは白く美しいウーノの首筋に吸い付いて赤い痕を付けていく。
それを挿入と同時のタイミングでやってくるのだから、ウーノは常に絶頂と隣り合わせの所に置かれることになってしまった。
彼のモノだという証を付けられるというこの行為をいつもなら気持ちいいと感じるだけだが、今日は何故だか嬉しく思う自分が居ることに今更ながら気づくウーノ。
自分は彼のモノ。それがこれからずっと変わらない。そう思うと涙まで出てきた。
ああ、これはこれから離別することになる運命を呪った涙だろうか。こうして彼と繋がっていられることでの安心感からだろうか。それとも、彼のモノだと直接教え込まれた躰が歓喜のあまり流した涙なのだろうか。
答えは分からない。だが、ウーノは寂しさよりも、嬉しさを感じていた。彼と一つになれたこと。ただ、それだけを。
「……っ!……ウーノ、そろそろ限界だ……!」
「わたしもぉぉっ!! いっちゃいまっぁあああっっ……!! い、いきますすぅぅっっ!!」
白濁とした液体が自分の中に注ぎ込まれるのを感じながら、ウーノの意識は白く飛んだ。
その顔は倦怠感がもたらす疲労した顔ではなく、ただ満足そうな笑みが印象的な顔であった。
↑はミス。 すまんorz
これは自分のモノだと言わんばかりに、ジェイルは白く美しいウーノの首筋に吸い付いて赤い痕を付けていく。
それを挿入と同時のタイミングでやってくるのだから、ウーノは常に絶頂と隣り合わせの所に置かれることになってしまった。
彼のモノだという証を付けられるというこの行為をいつもなら気持ちいいと感じるだけだが、今日は何故だか嬉しく思う自分が居ることに今更ながら気づくウーノ。
自分は彼のモノ。それがこれからずっと変わらない。そう思うと涙まで出てきた。
ああ、これはこれから離別することになる運命を呪った涙だろうか。こうして彼と繋がっていられることでの安心感からだろうか。それとも、彼のモノだと直接教え込まれた躰が歓喜のあまり流した涙なのだろうか。
答えは分からない。だが、ウーノは寂しさよりも、嬉しさを感じていた。彼と一つになれたこと。ただ、それだけを。
「……っ!……ウーノ、そろそろ限界だ……!」
「わたしもぉぉっ!! いっちゃいまっぁあああっっ……!! い、いきますすぅぅっっ!!」
白濁とした液体が自分の中に注ぎ込まれるのを感じながら、ウーノの意識は白く飛んだ。
その顔は倦怠感がもたらす疲労した顔ではなく、ただ満足そうな笑みが印象的な顔であった。
□ □ □ □ □
ウーノがやんわりと瞼を開けると、そこにはあの頃のドス黒い笑みを浮かべていた人物とは思えないほどに優しく微笑むジェイルの顔があった。
躰を見ると彼に付けられたのであろう、虫さされのような赤い痕がある。それを見て満足そうに微笑むウーノの笑顔とても優しいものであった。
優しく微笑み合う男と女はまさしく夫婦だった。
ふと、ウーノが呟くように口を開ける。
「また、こんな日が来ますよ。いえ、絶対来ます」
「……理由は?」
「『夜明けのない世界なんて無いから』 誰かがそんなことを言っていました」
「フッ……フハハハハハハ!! そうだ、それでこそ我が助手、そして我が妻!」
「ありがとうございます」
あの時のような人を小馬鹿にしたような笑みではなく、純粋な、ただ自分の娘を褒めるかのようで。
あの時のようなただ機械的な笑みではなく、純粋な、ただ飼い主に頭を撫でられた子犬のようで。
正式な書類を出したわけでもない。結婚式を挙げたわけでもない。そうではなく真の意味で、彼と彼女は夫婦だった。お互いを尊重し、お互いを想い合う。形ではなく、二人で一人というその存在が、雰囲気が。
それも明日の夕刻には終わりを告げようとしている。全ては明日の夕暮れまで。そう思うと悲しかった。
「ありがと……ござ、い……っ」
「……泣くな、ウーノ」
「すみませ……う、うわぁぁぁぁぁん!!」
決して広くはない診療所の中で、ジェイルの胸に抱かれたウーノの泣き声だけが木霊している。とても悲しい泣き声が診療所を包み込む。
哀愁と悲壮しか感じさせないその泣き声はジェイルの心をも悲しくさせ、ウーノの胸に一粒の水滴が落とさせた。
そしてその声は診療所を飛び越え、丘の下へも届いていた。
□ □ □ □ □
「泣き声……」
フェイトは宿の自慢だという露天風呂に月光に照らされながら浸かっていた。その姿は月より舞い降りた天女のごとく、しなやかな体のラインに豊満な胸、それに長い髪の毛がより一層彼女の神秘さを引き立てている。
本来ならば心休まるはずであるこの時も、嫌でも耳に入ってくるこの声を聞きながらでは落ち着くものも落ち着かない。
「どうしたらいいのかなぁ……」
フェイトは迷っていた。あれだけ彼らの無実を訴えられて動じない執務官がいるとしたら教えて欲しいくらいだ。
平静では装っているものの、本来冷静沈着とは対極にいる人間である。悪く言えば仕事が出来ない。良く言えば人情捜査官。彼女は他人を詮索するという仕事にはあまり向かない性格をしていた。
自分はどうしたらいい。先程から頭の中のクロノに話しかけてみるも、反応は無し。どうにもならなかった。
しかし、彼女は執務官だ。最後には自分で判断せねばならない。ふと、教えを請うかのように闇に美しく光る月を眺める。
「……よしっ」
何かを決意したかのように目線を鋭くさせると、勢いよく湯船から上がる。
女神のごとく肢体が月夜の中に浮かび上がる。周りには湯気が立ちこめ、その湯気も相まって彼女を人外なものと勘違いさせるほどの美しさを印象づける。
彼女の眼にもう、迷いはなかった。
その夜は泣き声とも喘ぎ声とも取れないよく分からない声が、しかし聞いた者の涙を自然と誘うような、そんな声が町のいたる所から聞こえたことが報告されている。
ひらひらと舞い上がる 想いを受け止めて
約束してよ.....
あの日の場所に連れ戻して 広くても触れあう二人の世界
もちろん一つ この夢だけ掻き乱さないでいて
今では何も出来ないのは 動けない冷たい氷の中
どうにか一人温める人 後ろ姿は悲しい
to be continued.....
448 :
554:2008/11/16(日) 01:23:46 ID:K9WM35jb
さて、これで残り2話と相成りました。
もう何も言わないよ。 二人のファンの方、申し訳ない。謹んでお詫びします。
だけどハッピーエンドにはするよっ。これから何とか頑張るよっ!
まだまだ先が見えませんが、頑張ろうと思います。
それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下を終わります。
>>448 GJ!!
寝る前に見て良かったんだぜ
あと2話頑張ってください!
450 :
B・A:2008/11/16(日) 02:12:31 ID:Rdbz/Po+
>>448 GJ。
ウーノが可愛すぎる。
もう切なくて2人の幸せを祈らずにはいられない。
残る2話でどう決着させるのか気になります。
さて、5分後くらいから投下いきます。
451 :
B・A:2008/11/16(日) 02:24:22 ID:Rdbz/Po+
推敲完了、ではいきます。
注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・主人公その1:エリオ
その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」 訳:負け犬
自身に注がれる複数の視線に耐えられず、スバルは顔を俯かせる。
苦労しながらも追っ手の目を搔い潜り、野良犬に扮していたザフィーラを見つけたスバル達は、
カルタスの治療のために彼らが拠点としているクラウディアへと招かれた。
懐かしい面々と再会したのに、あまり喜ばしい気持ちにはなれなかった。迷惑をかけまいと自分から出て行ったのだ、
気まずくて当然である。
「たった1人で局の関連施設への破壊工作。よくも生き残れたものだ」
この3年間の足取りを手短に説明されたクロノは、呆れたように顔をしかめる。
ロクな支援も得られないまま、現地調達の部品でメンテナンスを繰り返しつつ重要施設に潜入、情報を集めた後に破壊する。
言葉にするのは簡単だが、凄腕の武装局員でも難しいことだ。人よりも無茶の利く機械の体に高い生存能力、
そして彼女のISがあったからこそ今日まで生き残ってこれたのだ。最も、そのおかげでスバルの体は目に見えてボロボロになっていたが。
「あの、カルタスさんのことですが・・・・・・・」
「ああ、それに関しては少々問題があってね」
「問題ですか?」
「簡単なメンテナンスくらいならこちらでもできるわ。協力者のおかげで、私達も戦闘機人の取り扱い方がわかってきたから」
シャマルの言葉が終るか終らないかの内に、会議室の扉が開いて茶髪の少女が姿を現す。
見覚えのあるその姿に、スバルはイクスを庇うように彼女から距離を取る。
「お前、ナンバーズの・・・・・」
「スバル、彼女は味方よ」
「初めまして、ゼロ・セカンド。直に話をするのは初めてですね」
恭しく一礼した彼女の名はディード。かつてはスカリエッティの手先として機動六課の前に立ち塞がり、
最終決戦においてティアナと対峙した戦闘機人だ。
「何で、お前が・・・・・・・」
「彼女もメンバーの1人だ。3年前に機動六課が保護したナンバーズは、治療中の1人を含めて3人ともクラウディアに乗船している」
「お見知りおきを、ゼロ・セカンド。それとも、スバル姉様とお呼びした方がよろしいですか?」
問いかけるディードに、スバルは無言で返答する。大切な家族をスカリエッティによって奪われたスバルに、
その配下であった者に良い感情は抱けという方が難しい。だが、少なくともクロノ達は彼女を信頼しているようだ。
スバル・ナカジマという異物が現れたことによる張り詰めた空気が、彼女の登場でほんの少しだけ和らいだ気がする。
「ディード、検査の結果を」
「はい。結論から述べますと、修復は不可能です。幾つかのパーツはストックがありますし、私やオットーでも修理可能ですが、
基礎フレームの修復まではできません。人工臓器も幾つか取り換えねばなりませんし、ちゃんとした知識のある人間でなければ施術は困難でしょう」
「やはりか。なら、多少の危険を覚悟してでも奪ってくるしかないか」
何やら考え込むようにクロノは瞼を閉じ、数秒置いてからスバルに向き直る。
「彼の治療は全面的にこちらで引き受けよう。ただし、今後は君が我々に協力してくれることが条件だ」
「良いんですか、わたしみたいなのがいても」
「ナカジマ二等陸士、私達は何も戦闘機人を排斥したいわけじゃない。あくまで敵はスカリエッティ、そして公然と人道に反している管理局だ。
現にディードのように戦闘機人がメンバーに加わっているし、実弾デバイスを使用している者もいる。それに敵は強大だ。
情けない話だが、今のままでは勝ち目は薄い。だから君のように優秀な者の力が必要だ」
「戦闘機人の力をですか?」
「スバル!」
あまりにも辛辣な言葉に、今まで黙っていたティアナが声を荒げて立ち上がる。
だが、彼女がスバルに掴みかかるよりも早く、彼女の傍らにいた少女の平手がスバルの頬に飛んでいた。
「・・・!?」
「すみません。ですが、そのような言葉はあなたらしくありません」
鋭い目つきでスバルを睨んでいるのはイクスだ。さっきまで怯える様に縮こまっていたのに、今はその面影は微塵も感じられない。
ただの傍観者でしかなかった彼女が、一転してこの場を支配する主役へと変化していた。
「スバル、この方々はあなたの仲間なのでしょう。ならば、卑屈になるのは止めてください」
「けど・・・・・・・」
反論しようとするスバルの額に、イクスは容赦なく自分の指を叩きつける。俗にいうでこピンという奴だ。
「・・・!?」
「おバカな子にはでこピンです」
「・・・・そう、でしたね」
「もう少し信じてあげては如何ですか? 少なくとも、スカリエッティを憎む気持ちはみんな同じなのでしょう」
「すみません。けど・・・・・・いえ、そうですね、こんなのはわたしらしくないや」
頭を振り、スバルはクロノに向き直る。彼女の脳裏に蘇ったのは、前にカルタスが言ってくれた言葉だ。
『汚れた手でも、抱きしめることはできる』
復讐が目的だからといって、孤独でいる必要はないのだ。
自分の戦いは正義のためではない。そんな風に決めつけて、安っぽい正義感に押し潰されるのを避けていただけだ。
けど、どんなに誤魔化しても自分の本心は曲げられない。スカリエッティは許せないし、できることなら人殺しはしたくない。
それは偽善かもしれないし、自分の甘さなのかもしれない。けれど、どっちか捨てることなんてできないのだ。
どっちも自分の中から生まれた気持ちに違いはない。なら、とことん貫いてみるのも良いかもしれない。
「正直に言います。わたしはスカリエッティが許せない。もしもチャンスがあるのなら、この手であいつを殺したい。
それでも・・・・・・・構いませんか?」
「良いだろう。歓迎しよう、スバル・ナカジマ二等陸士。ようこそ、我らが家、クラウディアへ」
クロノは立ち上がり、握手を求めて右手を差し出す。だが、スバルはその手を掴もうとして一歩踏み出した瞬間、
バランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。咄嗟にティアナが駆け寄って支えなければ、テーブルに頭をぶつけていたかもしれない。
「スバル!?」
「大丈夫・・・・・・少し、よろめいただけだから・・・・・・」
「今日までの疲労が一気に出たんです。本当は、あなただって診てもらわないといけないのに」
「提督、スバルを医務室まで連れて行きます」
「ああ、頼むよ」
ティアナの肩を借り、スバルは会議室を後にする。1人残されたイクスは、どうしたものかと困惑気味に周囲を見回した後、
無言で一礼して彼女達の後を追った。何と言うか、不思議な少女だ。毅然とした態度を取ったかと思えば、
年相応の少女のような反応も見せる。子どもの頃のなのはやフェイトを見ているようだと、クロノは思った。
「とりあえず、協力はこぎつけられたか」
「ご苦労さまです、提督」
「こういうのは僕の性分じゃない。彼女がいなかったら、どうなっていたものか」
「不思議な娘ですね、あの娘。けど、どこかで会ったことあるような・・・・・・・・」
「知り合いかい?」
「いえ、多分人違いです。私が彼女と会ったのは大昔の戦場ですから、他人の空似でしょう」
「そうか。それじゃ、大至急エリオとギャレットを呼んでくれ。襲撃計画を立てなきゃいけない。
場合によっては、君やザフィーラにも動いてもらうかもしれない」
「了解。マリエル技師官奪還大作戦ですね」
「いいや、悪党らしく誘拐させてもらうのさ」
□
クラウディアの内部は見た目に違わず非常に広く、通路も数人が横に列を成しても歩けるように造られている。
天井に至っては空戦魔導師が空中戦を行えるくらい高く造られており、艦内に敵が侵入された場合の白兵戦も考慮されて設計されているのだろう。
だが、艦内の広さに反してすれ違う人間は疎らだった。ほとんどの乗員が何かしらの仕事をしているのもあるのだろうが、
それ以前に乗り込んでいる人間自体が少ないのだ。3年前と比較して、明らかに人員は減っている。
「相手は戦闘機人に人造魔導師、無傷で生還する方が難しいわ。非戦闘員は残りたいって人以外降ろしちゃったし、
今じゃ食事を作るのも当番制なのよ」
「ははっ、シャマル先生の料理だけは食べたくないなぁ」
「艦長命令で禁止されているわ」
乾いた笑みが高い天井に響いて反響する。
3年前の決戦の時以上に、ここでは死というものが身近にある。隣で肩を貸してくれているかつてのパートナーも、
ひょっとしたら明日にはいなくなっているかもしれない。或いは、肩を借りている自分自身が。
「ティア・・・・・ヴァイス陸曹と会ったよ」
「・・・!」
「ううん、顔は見ていない。けど、空の上から狙撃してきた人がいるんだ。あのヘリの形、ストームレイダーに似ていた。
ティアの言っていたことが本当なら、きっとカルタスさんを狙撃したのは・・・・・・・・・」
「止めて」
感情を押し殺したような声で、ティアナはスバルの言葉を遮る。
ヴァイス・グランセニックは機動六課でヘリのパイロットをしていた男性だ。陽気だがどこか陰のある男で、
危なっかしい新人であった自分達をいつも見守ってくれていた。また、武装隊出身で狙撃に関してはエース級の実力を持ち、
その経歴を知ったティアナは同じガンナーとして尊敬のような思いを抱いていた。だが、彼は自分達の前から姿を消した。
あの決戦の時、ティアナはディードを始めとする3人の戦闘機人と対峙し、後一歩というところまで追い詰めていた。
だが、長時間の戦闘の疲労によって不意を突かれ、背後に回り込まれてしまった。その時、ヘリに乗って上空を飛んでいた
ヴァイスはティアナを守ろうと長距離狙撃を行ったのだが、撃ち出された魔力弾はディードではなくティアナの右目を誤射してしまった。
それでもティアナは辛うじてディードの攻撃から身を守り、他の2人を取り逃がしたものの戦闘に勝利することはできた。
だが、ティアナの右目を誤射してしまったヴァイスが乗っていたヘリは墜落してしまい、ヴァイス自身はそのまま消息不明になっていたのだ。
「きっと、何か事情があるのよ・・・・・・・でなきゃ、ヴァイス陸曹がスバル達を傷つけようとするはずない」
「ティア・・・・・・・」
かける言葉が見つからず、スバルは押し黙る。
その時、通路の角からエリオが現れ、スバルと鉢合わせの格好となった。
「・・・・・スバルさん」
「久し振り・・・・・・エリオ」
気まずい沈黙が場を支配する。
3年前ならスバルの方から話しかけていた。他愛のない冗談にうぶなエリオが頬を赤らめ、照れながら抗議する。
そんな2人をキャロが楽しそうに見つめていて、ティアナが辛辣なツッコミで調停役に回る。
それが彼女達の日常だった。
だが、それは3年前に崩壊した。
そして、スバルとエリオの間には、埋めようもない齟齬が生じているのだ。
「失礼します」
一礼し、エリオは早足でその場を立ち去ろうとする。だが、スバルは苦しげに呻きながらもそれを制した。
「まだ、救おうとしているの?」
「・・・・・・ダメですか?」
感情のこもらない凍えるよう返答。
エリオが命を賭けて成そうとしていることのはずなのに、そこには熱意が感じられない。
まるで天井に反響する声のように空虚な響きがそこにあった。
「本当に、それがしたいこと?」
「それがキャロの願いです」
「エリオはどうしたいの?」
「キャロの願いを叶えます」
「・・・キャロのため?」
「はい」
迷うことなく、エリオは答えた。しかし、その表情は目に見えて辛そうだった。
握り締めた拳はふるふると震えており、視線も定まっていない。まるで自分に言い聞かせているみたいだ。
「エリオは、憎くないの?」
「憎む? 誰をですか? 何のために? それが何になるって言うんですか?」
「楽になれるよ、今よりは」
「憎しみは何も生みません。恨んじゃいけないんです」
「それでエリオは救われるの? 自分を押さえつけて、強い思いで羽交い絞めにして!?」
「復讐したって、スバルさんは救われないじゃないですか!?」
拳を壁に叩きつけ、エリオはスバルを睨みつける。
鈍い痛みが走ったが、気にはならなかった。それよりも、スバルの問いかけの方が遙かに堪える。
彼女の言葉を許容してはいけないと、エリオの中の誰かが告げている。
「誰かを傷つけても、虚しいだけです。自分から手を伸ばさなきゃ、何にも変わらないんです。
一人ぼっちのままなんですよ、ずっと!」
「それでもわたしは、自分に嘘だけはつきたくない。ううん、ついちゃいけないって、最近やっとわかってきた」
エリオの視線を、スバルは真っ向から迎え撃つ。
一触即発の気配が漂い始め、傍らのティアナは口を挟むこともできずにうろたえるしかなかった。
幼少の頃に兄を犯罪者に殺された彼女には、2人の言い分のどちらも理解できたからだ。
スバルが言うように相手を憎めば、少なくとも気持ちは楽になる。
エリオが言うように憎しみからは何も生まれない。仇を討っても死んだ人は蘇らないし楽しかった日々は戻ってこない。
お互いに大事な人を失いながらも、2人は正反対の答えに辿り着いていた。
「あの・・・・・・・」
そんな張り詰めた空気を破ったのは他でもない、イクスであった。
「無関係な私が口を挟むのはおこがましいことかもしれませんが、一言言わせてください」
「イクス?」
少しだけ緊張した面持ちで、イクスはエリオに向き直った。
透き通った緑色の瞳には、険しい表情を浮かべてエリオの顔が映っている。
「子どもは、泣いても良いのですよ」
「・・・・・・・・・・」
「辛いのなら泣いて良いし、苦しいのなら叫べば良い。違いませんか?」
「泣いても何も解決しないし、叫んだって何も変わりません」
「けど、後悔し続けるよりは良いと思います。一歩踏み出す勇気があなたにあるのなら、認めてください」
意味深な言葉で締めくくり、イクスは医務室へ向かうようにスバル達を促す。
向けるべき怒りの矛先を失ったエリオは、戸惑いながらもイクスを呼び止める。
最後の言葉は、エリオの心に深々と突き刺さっていた。自分でも見ようとしていなかった本心を、
無関係な赤の他人である彼女は意図も容易く見抜いていたのだ。
「君は、いったい・・・・・・」
「私はイクスヴェリア。スバルの友達です」
作り物めいた美しさと高貴な佇まいに、エリオは思わず息を飲んだ。
彼女の儚げな微笑みは、重傷を負って今も苦しんでいるフェイトとよく似ている気がしたからだ。
□
扉の前に立ち、チンクは自分の格好に不備がないかを確認する。
袖を通しているのはいつもの戦闘服ではなく、大人っぽさと可愛らしさが同居した子ども用の外出着だ。
片手には利便性も何もない小さなハンドバック、念入りにシャンプーした銀髪からは仄かにフローラルな香りが漂ってきている。
問題ない。全て、彼の記憶の通りだ。
緊張を解すかのように頬を叩き、チンクはインターホンに指を伸ばす。
『今、開ける』
スピーカー越しに聞こえた男の声に、チンクの鼓動は一瞬だけ高鳴った。
情けない話だが、百戦錬磨の戦闘機人である自分がたった1人の男と会話を交えようとしているだけで緊張しているのだ。
程なくして、ジャージ姿の茶髪の青年が姿を現す。その男はチンクの顔を見ると、何故か安心したかのようにホッと胸を撫で下ろし、
彼女を部屋へと招き入れた。
「悪いな、前もって言ってくれていればこっちから迎えに行ったんだが」
「いや、別に気にするな・・・いや、しないで良いよ」
いつもの尊大な口調が出てしまい、慌てて言い直す。
男は特に気にしていないようで、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップに注ぎ、椅子に座ったチンクの前に差し出した。
「・・・ありがとう」
「今日はどうしたんだ、俺に何か用か?」
「別に用はないが・・・・・ないけど、会いに来ちゃダメだった?」
「物好きだな。出来の悪い兄なんて放っておいて友達と遊びに行けば良いのによ」
そう言って、男は最近の職場での扱いがどうのだとか、薄着が流行っているがみっともないからお前はするなといった
どうでも良いようなことを話し出す。チンクはそれらに逐一相槌を打ったり、簡単な質問をするなどして男の話に耳を傾ける。
だが、すぐに虚しくなって黙り込んでしまった。男の話はどこかズレテいる。
例えば今の季節は秋なのに春であるかのように喋っていたり、少し前の出来事を話していたかと思うといきなり十何年も前のことを話し出す。
視線も虚ろで定まっておらず、質問への答えもどこかピントがずれたものになっていた。
何より、彼は自分のことをチンクとしては見ていない。かつて自分が誤って目を撃ち抜いてしまった妹であると思い込んでいるのだ。
男の名はヴァイス・グランセニック。ウーノの調べでは、あの機動六課のヘリパイロットであり、かつては武装隊で並ぶ者がいないほどの
狙撃のエースであったらしい。実際その腕前は確かなもので、先日もチンクは危ういところを彼に命を救われた。
しかし、今の彼を見ているとそれが夢だったのではないのかと思えてくる。
彼を見ていて込み上げてくるのは憐れみしかなかった。敵対していた自分がそう思えてしまうくらい、彼の心は壊れていたのだ。
チンクがヴァイスと出会ったのは、3年前の戦いの少し後だった。タイプゼロ・セカンドによる負傷を修復し終え、
ドクターと管理局との仲介役として飛び回っていた時のことだ。ヴァイスは襤褸切れのような服を身に纏い、
うわ言のように「俺のせいだ・・・・俺のせいだ・・・・」と繰り返しながら泥に汚れた体を引きずって歩いていた。
それだけならば、チンクもただの浮浪者として見過ごしていただろう。だが、彼はチンクの存在を認めると
疲れ果てた足を躓かせながらも這い寄って来て、手を伸ばしてきたのだ。これにはチンクも驚き、その顔に平手を打ち込んでやろうかとも考えた。
しかし、それをしなかったのは彼の呟きを聞いたからだ。
『ラグナ・・・・・・ティアナ・・・・』
ティアナ。
それはかつて敵対していた者の名前だ。
あまり詳しくは知らないが、自分達のアーキタイプとなったタイプゼロ・セカンドとコンビを組んで活動していたとは聞いている。
最後の戦いではノーヴェ、ウェンディ、ディードと交戦し、片目を失うもののディードを撃破、ノーヴェとウェンディを撤退にまで
追い込んだらしい。彼がそいつとどのような関係にあるのかまではわからないが、どこか安心したかのように縋りつくその姿を見ていると、
何故だか振り払うことができなかったのだ。雨の中を孤独に歩いている野良犬を思わず見てしまった時のような憐れみの心が、
チンクの胸を過ぎったのである。そして、そのまま気を失ってしまったヴァイスをチンクは病院に運び、治療を施させた。
だが、目覚めたヴァイスはどういう訳かチンクを自らの妹である「ラグナ」と思い込んでおり、何度言い聞かせても認識を改めようとはしなかった。
それだけでなく、彼は9年前からの記憶を全て失っており、自分がどうしてあんな恰好でうろついていたのかも覚えていなかった。
医者は精神的なショックが原因で記憶の錯乱が起きているのだろうと言っていた。そして、日常生活そのものは問題ないと診断されたので退院したのだが、
行く宛てもなかったのでそのまま「ラグナ」の兄としてチンクに着いて回っているのだ。そして、今ではゆりかごの中に一室を設けられて
そこで寝泊まりしているのだ。
もちろん、これには反対の意見もあった。特に上3人の姉は彼を住まわせることに最後まで難色を示していたが、
チンクの説得とドクターの「重要区画に入らせなければ構わない」という言葉のおかげで許しを得ることができた。
それにヴァイスは用がなければ一歩も外に出ようとせず、部屋の中に閉じこもっているので有害になることはなかった。
最初の頃に見られた不安定な情緒も、「ラグナ」を演じたチンクと接している内に安定を見せ始め、
今では彼女の相棒的なポジションに収まっている。
「なあ、ラグナ。管理局の仕事、まだ続けるのか?」
不意を突くその言葉に、チンクは我に返った。
まただ。このところ、事あるごとに彼は危険な仕事は止めろと言ってくる。
戦闘機人として前線で戦っている理由を、管理局の局員になったからと誤魔化したのだが、
彼はそれを快く思っていないようなのだ。任務でゆりかごを離れる度に着いてきているのも、
パートナーだからというよりは単に心配なだけなのだ。もちろん、彼に黙って出て行くこともできるのだが、
長時間自分と会わないと情緒が乱れた錯乱状態に陥るので、同行させてやるしかないのだ。
「俺がもっと働くからさ、お前は普通に女の子らしい生活を送ったらどうだ?」
「ヴァ・・・・お兄ちゃん、私だってもう・・・社会人? なんだから、したいようにしても良いだ・・・でしょ?」
「そうだな。いくら兄貴でも個人の生き方にまで口出しはできないか。我が妹はいつからこんなに口達者になったのかね」
「・・・・・・・・・」
「まあ、お前の自由にやれよ。けど、辛かったら止めて良いんだぜ。兄貴は妹を守るもんだ。
お前1人を養うくらいはできるからな」
「・・・・・ありがとう・・・・お兄ちゃん。あの、もう時間だから・・・・・行くね」
「ああ・・・・それじゃ、また・・・・・・」
寂しそうに手を振るヴァイスに見送られ、チンクは彼の部屋を後にする。
言葉にできないもやもやが胸の中にわだかまっていた。
彼と話していると、自分達と一般人との間に大きな価値観の差があることを思い知らされる。
今まで当然のように信じてきたことが、大きく音を立てて崩れてしまう。
「チンク姉?」
ハッと前を向くと、大きなトレイを持ったディエチが心配そうにこちらを見つめていた。
「ディエチ・・・・・」
「その格好、ヴァイスのところに行って来たんだね」
「あ、ああ・・・・・お前は陛下のところに?」
「食事を届けに行ったんだけど、部屋に入れてもらえなかった。ママとの時間を邪魔するな、だってさ」
トレイの上に置かれた蓋を取ると、まったく手がつけられていない料理が芳しい香りを発していた。
見ているだけで食欲がそそられ、チンクも思わず自分の腹に手を当てた。そう言えば、今日はまだ昼食を取っていない。
ヴァイスのところで食べるつもりだったのだが、居づらくなって出てきたのは失敗だった。今更戻っても不審がられるだけだ。
「チンク姉?」
「あ、いや・・・・・何でもない。そう言えば、私も長らく陛下と会っていないな」
「最近は、誰とも会っていないよ。ずっと部屋に閉じこもっている」
「そうか・・・・・・なあ、ディエチ。自由に生きるとは、何だと思う?」
「どうしたの、突然?」
チンクらしくない質問に、ディエチは首を傾げる。
チンクもどうしてこんなことを聞いたのか、自分でも不思議でならなかったが、口にしてしまった以上は後には退けなかった。
「率直な意見を聞かせてくれ」
「そうだな・・・・・・確か強制や妨害を受けないって意味だったはずだから、今のあたし達みたいなことを指すんじゃないかな。
ゆりかごと陛下のおかげで管理局も聖王教会も手が出せないし、ドクターは自分のやりたい研究に没頭している。
けど、こんな質問に何か意味があるの?」
「いや、何でもない。気紛れだ・・・・・忘れてくれ」
そう言って、チンクはディエチがやって来た方向へと目をやった。その視線の先には、聖王であることを定められた少女が、
血の繋がらない母親と共に過ごしている部屋がある。
(それはきっと、ヴァイスの言っている自由とは違う。自由とはいったい何だ? 法に縛られぬこと? 誰にも強制されないこと?
違う・・・・・・自由とは、いったい・・・・・・・・・)
自問するが、答えは出てこない。
こんな考えを抱く自分は、ナンバーズ失格なのだろうか。
悩みは深まるばかりで、求める答えはどこにも見当たらなかった。
□
照明の消えた暗闇の中で、少女は愛しい母の体をその腕に抱いていた。
少女は聖王と呼ばれていた。古の時代に世界の混乱を鎮めたベルカの王。この聖王のゆりかごの所有者にしてベルカの民を導き、守る者。
少女はレリックウェポンと呼ばれていた。ロストロギア“レリック”をその身に宿し、無限の魔力と鉄壁の防御“聖王の鎧”によって
立ち塞がる者を悉く焼き払う無敵の兵器。
だが、誰も彼女の本当の名前を呼んではくれない。そして、彼女自身も本当の名を呼ばれることを拒んでいた。
ただ1人、目の前にいる母だけを除いて。
「ママ・・・・大好きな私のママ・・・・・ママだけなの・・・・ヴィヴィオの名前を呼んでくれるのはママだけで良いの」
少女は孤独だった。
訳もわからずこの世界に放り出され、頼れる者もおらずに恐怖に震えていた。そんな彼女に優しく手を差し伸べてくれたのが、
腕の中で沈黙している母だった。彼女は行く宛てのなかった少女を自分の手許に置き、温かいベッドと学習の場を与えてくれた。
少女にとって、彼女との生活はとても穏やかで温もりに満ちたものだった。
母が作ってくれたキャラメルミルクを飲み、母の腕に抱かれて眠る。目覚めたら朝の仕事を終えた母を迎えに行き、共に朝食を取る。
そんな平和な時間は、突然の来訪者の手で奪われてしまった。
少女は連れ去られ、その身にレリックと呼ばれる結晶を埋め込まれた。彼女は聖王のゆりかごを起動させるための鍵であり、
そのためだけに造り出された古代ベルカの聖王のクローンだったのだ。少女はその運命に逆らえるだけの強さは持ち合わせていなかった。
そして、手にした力で少女は母を自らのものとした。
今の母は何も応えてくれない。呼びかけても、抱き締めても、虚ろな瞳に自分の姿が映ることはない。
高町なのはは、もう二度と自分のことを見てはくれない。
「ねえ、ママ・・・・・なのはママ・・・・・・私の名前を呼んで・・・・・ヴィヴィオって呼んで・・・・・呼んでよ・・・ママ・・・・・・」
少女は静かにむせび泣く。
返事は返ってこない。
それでも呼びかける。
返ってくるのは沈黙だけ。
それでも呼びかける。
枯れたはずの涙がまた溢れてくる。
ここは彼女を捕らえる牢獄。
孤独の中で、ヴィヴィオは懸命に母に呼びかけ続けた。
□
何か手土産を持ってくるべきだったかと後悔しながら、ザフィーラは医務室を訪れた。
途端に、耳に突き刺さるような言葉の応酬が聞こえてきた。
「やーい、このバッテンチビ!」
「チビじゃありません、この中古デバイス! どうしてあなたがシグナムのパートナーなんですか!?」
「あたしの方が優秀だからに決まってんじゃねぇか。バッテンチビはベッドで大人しく寝ていて良いぜ、
あたしがシグナムをばっちりサポートしてやるから」
「リインの方が優秀です。最新鋭の技術で生み出されたミッド式とベルカ式の混合デバイスなんですよ!」
「雑種じゃねぇか! あたしは正真正銘の純血だぜ!」
「うるさいぞ、お前達!」
ここが医務室だということも忘れて言い合いを続ける2人に耐え切れず、ザフィーラは一喝する。
たちまち、2人は互いの手を取り合って竦み上がり、シグナムの陰に隠れた。
「ああ、ザフィーラか。元気そうだな」
「そちらも無事で何よりだ。しかし、これは何の騒ぎだ?」
「嫁と小姑の争いだ」
「そうか」
「そこ、サラリと納得しないでください!」
「そうだそうだ、あたしにそっちの気はねぇぞ!」
リインとアギトは声を揃えて抗議するが、ザフィーラがひと睨みするとすぐに怖がって隠れてしまう。
どうやら、何だかんだで融合騎同士、気は合うようだ。3年前と違って、どちらも実験体として扱われたという経験があるからかもしれない。
「とにかく、他の患者に迷惑をかけぬようにな。わかったな!?」
「は、はいです」
「わ、わかったよ」
「なら良い」
そう言って、ザフィーラは奥の方のフェイトが眠っているベッドへと向かう。
その足元には子犬用の小さなベッドが置かれていて、赤毛の可愛らしい子犬が丸まっていた。
フェイトの使い魔であるアルフだ。フェイトが負傷して魔力の供給が減ったことで、今の彼女は主に負担をかけぬように
最も燃費の良い子犬フォームのまま1日を眠って過ごす日々を送っている。
ザフィーラの気配に気づいたのか、アルフは閉じていた瞼を開けて気だるそうに口を開く。
「ザフィーラかい?」
「ああ、私だ」
「久し振り。元気そうで何よりだ」
「お前もな。生憎、土産も何もない、許してくれ」
「気にしていないさ。あんたの甲斐性なしは今に始まったことじゃないしね」
苦笑するアルフの表情は辛そうだった。肉体的にではなく、精神的にだ。
主人思いの彼女は、主の負担となることを極端に嫌う。きっと、できることならば契約を破棄してでもフェイトの負担を軽減したかったはずだ。
だが、目覚めた後もフェイトは彼女を側に置くことを望んでいる。自分のためにかけがえのない家族が犠牲になることを、
フェイトは是としていないのだ。その気持ちを知っているからこそ、アルフは何も言わずにフェイトに付き添っているのだ。
「2時間後にはまた地上に降りなければならない。それまで、ここに居ても構わぬか?」
「こんなところで良ければ、何時間でも居て良いさ。ほら、隣が空いているよ」
「良いのか?」
「あんた以外に譲るつもりはないよ」
「そうか」
静かに頷き、ザフィーラは子犬形態に変身してアルフの隣にうずくまる。
2匹以上で使用することは想定されていないのか、ベッドは少しばかり窮屈だったが、気にはならなかった。
ごく自然に体を横たわらせ、アルフは当然のように彼の横腹に首を乗せて枕にする。
どちらも無言のまま、ただ時だけが過ぎていく。あれほど騒がしかったリインとアギトも、いつの間にか沈黙していた。
□
偉くなるほど仕事は楽になる、とある官僚は言っていた。
その官僚は3日後に贈収賄疑惑で査察の対象となり、ほどなくして逮捕された。
あんな台詞を口にできるとは、いったいその男はどれだけ仕事に手を抜いていたのかとグリフィスは問いただしてみたくなった。
確かに楽かもしれない。エアコンの効いた部屋で出された書類に判子を押し、会議という名目で美人のコンパニオンを侍らせて
酒を飲み交わしているだけならば気が楽だろう。だが、実際にはそんなに甘くはない。
些細なミスが大きな失敗に繋がる。書類に記された数字の間違い、関係各所に出す指示の間違い、スケジュール管理の間違い。
どれか1つでも起こせば大惨事が起き、多くの部下を路頭に迷わせるかもしれない。
偉くなったからこそ、人間は責任を持たねばならないのだ。
「准将も楽じゃないな」
望んで得た地位とはいえ、目の回るような忙しさはさすがに苦痛だった。
睡眠時間なんて3時間あれば良いところだ。最初の内は取り寄せてでも食べていた高級レストランのフルコースも
久しく食べていないし、ルキノにも長い間寂しい思いをさせている。
それでも仕事を止める訳にはいかなかった。
次から次に起きる事件への対処、各部隊に割り振られる予算のチェック、関連施設への視察、あわよくば足下を掬おうとする
ライバルを蹴散らすための情報戦、そして戦争。
そう、管理局は現在、異世界と戦争状態にあった。今の管理局は悪く言えば暴君だ。そんな彼らを快く思わない世界も多い。
第56管理世界などその筆頭だ。今は戦闘機人や人造魔導師のおかげで勝利できているが、粘り強い抵抗を続けられるようならば
質量兵器の使用も考えねばならない。
「使いたくないんだがな、こういう心のない武力は」
それが欺瞞だとわかっているから、グリフィスは苦笑を禁じ得なかった。
どうやら、人並みの良心はまだ持ち合わせていたらしい。だが、そんなものは出世に不要だ。
まだ自分は准将。実動部隊の全権を握るには程遠い。
その時、ルキノからの緊急の通信が入った。
「私だ」
『准将、南部方面のアテンザ研究所が、レジスタンスの襲撃を受けています。敵の目的は、恐らく所長のマリエル・アテンザと
その助手であるシャリオ・フィニーノだと思われます』
「あの2人を・・・・・・・このタイミングで彼らが動くのは、少々予定外だな」
『現在、アルピーノ一等陸尉が防衛にあたっていますが、援軍を送りますか?』
「そうだな。では、今からゆっくりと部隊を編成しよう。さて、間に合うと良いけれど」
眼鏡のズレを直し、グリフィスは不敵な笑みを浮かべる。
彼が何を望み、何をしようとしているのか。それを知る者は、まだ誰もいない。
to be continued
464 :
B・A:2008/11/16(日) 02:37:05 ID:Rdbz/Po+
以上です。
何だかもの凄い勢いで色んな連中に死亡フラグが乱立した気がしなくもない。
どうして前々回、医務室でのエリオとフェイトのシーンでアルフが出なかったのか、
それは眠っていたからです(決して忘れていたわけではない、決して)。
>>464 GJです。
どいつもこいつも枯れ果てた漢(性別♀も含む)ばかりで、大好物です。
そして
>3年前の決戦の時以上に、ここでは死というものが身近にある。
シャマルさんどんだけ貴女の料理は深化してるんですか!
と、一瞬思ってしまいました。
466 :
7の1:2008/11/16(日) 10:37:48 ID:mpEKBUMv
ハードすぎる世界が凄いですね。
では第2章を掲載します。
注意事項
・一部エロありです
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
467 :
7の1:2008/11/16(日) 10:38:40 ID:mpEKBUMv
第二章 本局食堂
午後の予定をキャンセルしたユーノは、マテウスから渡された二枚のディスクのデータにざっと目を通すと、
久しぶりに暗い穴蔵である無限書庫の司書長室を出て本局の食堂で食事をとることにした。
食堂に続く廊下を颯爽と歩くユーノと行き会った女性局員たちが、あこがれの視線を送るが、2枚のディスク
の内容を頭の中で反芻し続けるユーノは、女性局員たちの熱い視線に気づくことなく足早に通り過ぎていった。
「あのクールさが良いのよね」
「それでいて、優しいのよ。この間なんか、うちの部署から請求した資料を取りに行った娘が、別の部署の資料
も持ってきちゃって、あわや資料紛失って騒ぎになったの。課長がその娘と一緒に謝罪に行ったのよ」
「うん、うん、それでどうなったの?」
「それでね。土下座しようとした課長とその娘にバインドをかけて椅子に座らせてから、翠屋製のケーキと紅茶
を振る舞ってくれたのよ。課長とその娘、涙流して喜んでたわ。普通なら二人とも怒鳴りつけられて減給処分が
当たり前だけど、ユーノさん、間違えは誰にでもあるからって不問にしてくれたそうよ」
「優しすぎるよ。特に翠屋のケーキのところ」
ユーノの後ろ姿を目で追う二人の女性局員の熱い会話は、いつ果てるともなく続いていた。
「それ間違ってるよヴィータちゃん!そんなんじゃ皆、私の二の舞になっちゃうよ。もっと厳しく教導しないと
駄目だと思うんだ」
「でもよ。なのはのやり方じゃ、怪我人だらけになるぞ。現に午前中の教導でBランクの武装局員が3人もシャ
マルの世話になってるんだぜ」
「だから〜なに?私の言うこと間違ってるかな」
食堂の入り口から昼のランチもそこそこに逃げ出す職員たちに苦笑しながらユーノは、修羅場と化しつつある
食堂に足を踏み入れた。
468 :
7の1:2008/11/16(日) 10:39:19 ID:mpEKBUMv
食堂の中央にある円卓型のテーブルで対峙している白い魔王と深紅の鉄槌鬼が繰り広げる論争が醸し出す殺気
が、周囲の空気を絶対零度のレベルに引き下げテーブルの周囲20mには人っ子一人いない状況が現出していた。
ユーノが本日のおすすめと書かれているスタミナ定食A`sとホットチョコレートのカップ三つをトレイに載
せて、二人の方に軽い足取りで歩いていった
「なのは、話に夢中でランチに手を付けてないようだね」
「ふぇぇ、ユ、ユーノくん」
「ユーノ、どうしたんだ。無限書庫で火事でもあったのか」
ユーノを見たとたん白い魔王から白い教導官殿にもどったなのはを見て、ほっと一息ついたヴィータは、1年
近く本局の食堂で食事をしたことがなく、出前を無限書庫の司書長室に届けさせているという都市伝説の持ち主
が、救世主として現れた事態に面食らっていた。
「火事はひどいなヴィータ。僕だってたまには明るいところで食事をしたいときもあるさ。なのは、ホットチョ
コレート飲むかい」
「う、うん」
「ユーノ・・・」
「ヴィータの分もあるよ。どうぞ」
「ありがと、お、おい・・・なのは、ちょっ」
ユーノからホットチョコレートの入ったカップを受け取ったヴィータは、再び白い魔王化したなのはを見て
震え上がった。
(だいたいプログラム生命体のあたしがユーノに手を出すはずがないだろうに。シャマルか、シャマルなのか?
あいつ昼ドラマニアだから、治療を受けに来たなのはにいろいろ吹き込んでじゃねーだろーな)
469 :
7の1:2008/11/16(日) 10:40:46 ID:mpEKBUMv
深紅の鉄槌鬼の面目なんぞ、かなぐり捨て席を立って逃げだそうとしたヴィータを救ったのは、ユーノの一言だった。
「なのは、手がお留守だよ。ちゃんと食べないと午後の仕事に差し支えるよ」
「そ、そーだね。ちゃんと食べないと教導ができないね。よしちゃんと食べるぞ。ユーノ君、そのソーセージくれない」
「どうぞ、その代わりにトマトをくれないかな。無限書庫で暮らしてると太陽の恵みが、無性にほしくなるときがあるんだよ」
「それじゃ、どーぞ」
「ありがとう」
トマトを器用にフォークに載せてユーノに渡すなのはとソーセージをなのはの皿に移すユーノの間に、糖度
200%を超えるスイーツな雰囲気が漂い、桃色のオーラが先ほどの殺気と違った意味で、テーブルの周囲から
人影を遠ざけていた。
「お前ら仲良いな」
ぼそっとつぶやいたヴィータは、周囲のテーブルはおろか食堂内に人がほとんどいないことに気がつき愕然とした。
(長い春が終わったと思ったら、今度は暑い夏かよ。)
今でこそ周囲に桃色の結界魔法を張り巡らせる二人だが、長い春とか友達以上恋人未満とかクロノ提督に至っては、
フェレットもどきに心底同情すると言わしめた、二人の関係が進展したのは、JS事件終結に伴う六課解散後からだった
なと、なのはから惚気話を聞かされていたヴィータは思い返していた。
470 :
7の1:2008/11/16(日) 10:41:51 ID:mpEKBUMv
六課解散以降、執務官であるフェイトは多忙を極め、ヴィヴィオの保護者と言っても名ばかりだけのため、
ヴィヴィオの育児に関するなのはの負担は、教導官の重責もあいまってかなりのものになっていた。
ちょっとしたヴィヴィオのわがままを許せず、手をあげてしまった自分に恐怖を覚えたなのはは、このままで
はヴィヴィオも自分も駄目になると感じ、ある日無限書庫にユーノを尋ねにきた。
たまたま暇だったユーノは、なのはを快く迎えたが、司書長室に入るやいなや涙を流して抱きついてきたなの
はに思わず面食らってしまった。
「ユーノくん助けて、このままじゃ私もヴィヴィオも駄目になっちゃうよぉ」
今までこらえてきた感情が堰を切ってあふれでて、子供のように泣きじゃくるなのはを落ち着かせるために
背中に回した腕に力を込めたユーノは、涙にぬれるなのはの顔を正面から見つめると
「僕が君の杖になるよ。ヴィヴィオの保護者には僕がなろう。ヴィヴィオに一度合わせてくれないかな」
「ユ、ユーノくん、それってプ、プロポーズみたい」
「みたいじゃなくてプロポーズだ。僕は君が好きだ。友達としてじゃない。一人の異性としてだ。なのは」
「・・・・・」
「でね 突線の告白に驚いて黙っちゃった私の沈黙に耐えきれなくなったユーノくんは、今のは忘れてくれと
言い出しそうになるのを必死に抑えたんだって後で告白されたの」
緩みきった顔で惚気る白い魔王の顔を思い出したヴィータは、なのはと笑顔で話し合うユーノを見ながら、
勇気を出して長い春を乗り越えた男の笑顔は爽やかもんだなと感じていた。
「今日の午後、学校が休みなんでヴィヴィオがユーノパパに逢いたいって言うんだけど良いかな?」
「そうだね。今日の午後、珍しい口碑を積み込んだ船が入港してるんで鑑定してくれって話があるんだけど
ヴィヴィオを連れて行って良いなら引き受けるよ。どうかな?」
471 :
7の1:2008/11/16(日) 10:46:18 ID:mpEKBUMv
「その船、大丈夫なの?」
船という言葉で、ゆりかごの中でヴィヴィオと戦った記憶を呼び起こしたのか、なのはの眉がひそめられた。
「デートリッヒっていう時空管理局の船だよ。第三管理世界の遺跡で見つかった口碑の鑑定を依頼されてね。
ヴィヴィオも無限書庫で本を読むばかりじゃ退屈するよ。たまには実物教育も必要だと思うんだがどうかな?」
「うーん・・・・」
考え込むなのはの表情を見て困惑するユーノを見かねたヴィータは思わず口を挟んだ。
「なのは、午後の教導代わってやろうか」
「そ、それは駄目だよ。教導を休むなんて、訓練生に悪いよ」
「なのは、たまには休むことも必要じゃないかな。ここ半月ばかり土日も休みなしで働いてるんだろう。
ヴィヴィオも心配してたよ。なのはママ、お家に帰ってきてからもずっと仕事してるって」
ヴィータに助け船をだしたユーノの一言が効いたのか、なのはは、ヴィータに手を合わすとヴィヴィオを
迎えに行くと言って席を立った。
「ユーノ君、ヴィヴィオを連れて2時に無限書庫に行くから待っててね」
「ヴィヴィオ向けの絵本も無限書庫で見つけたから、コピーしておくよ。この間みたいに無限書庫で
迷子になられたら大騒ぎになるからね」
空になったトレーを手にしたなのはを見送ったユーノは、ヴィータの方を向かずに尋ねた。
「いつから、ひどくなった」
「5ヶ月ほど前からかな。妙にテンションが高くなったと思うと、翌日には落ち込むって繰り返しで、行き詰
まると教導で切れまくって訓練生を壊しまくるって繰り返しだ。あたしが補助に付くようになったのも、それが原因だよ」
472 :
7の1:2008/11/16(日) 10:47:20 ID:mpEKBUMv
5ヶ月前、自分がなのはに告白した時期と前後していることを確かめたユーノは、マテウスのディスクに記録
されている症例を思い浮かべた。
「レベル3か」
「なんか言ったか」
「このホットチョコレートも飲まないかって聞いたんだが」
「ありがとな。これで午後の教導、がんばれるぜ」
ホットチョコレートを受け取ったヴィータは、午後の教導が楽しみだぜと不適な笑顔を浮かべた。
(午前の魔王に、午後の鬼か、どっちにしても訓練生には地獄だな)
定食のミニハンバーグを食べながら、以前、見学したヴィータの教導で訓練生があげていた悲鳴を脳内再生
したユーノは、訓練生に同情の念を覚えた。
司書長室のモニターに、夢中でチリコンカーンを食べているマテウスが出た瞬間、ユーノは顔をしかめた。
「すみません。食事中だったみたいですね。後でかけ直します」
「いやぁぁ、お気になさらず。時は金なりですから」
あわてて、食事を片付けたマテウスだが、唇の端にソースが残ったままだったことに本人は気づいていない
らしい。
ユーノの話を聞いたマテウスは、額に手をやって俯くと1分間ほど考えていたが、ユーノの視線に気がつい
たのか、ひょいと顔を上げた。
「まあ良いでしょう。ヴィヴィオ様に口碑を見せても問題ないと思います。封印は3重にかけてますし、口碑
の周囲にAMFも展開しておきます。問題は・・」
「なのはですか、彼女がなにか?」
「あなたの診断ではレベル3ですか、感情の起伏が激しいんですね。発掘隊との会談は別の日にしませんか?」
473 :
7の1:2008/11/16(日) 10:49:39 ID:mpEKBUMv
盗聴されることを考慮しているのかマテウスは、盗掘者たちを発掘隊と面接を会談と慎重に言い換えながら
提案した。
「理由は?別に彼女を連れて行っても問題ないと思いますが」
「発掘隊の中にラーナって女性がいましてね。どうしました? 顔色が悪いようですが、やはり別の日にしますか?」
「いや、やりましょう。この際、はっきりさせた方が良いこともありますし、なのはにとっても良い効果を生むかもしれません」
「ふむ、勇気がありますな。では、デートリッヒでお待ちしております」
通話が切れたモニターを閉じながらユーノは、長年、置き去りにしてきた問題に決着を付ける時が来たのを
感じ、ため息をついた。
第2章 終了です。 第3章は、今日の夜に上げます。
>>464 GJ!!
皆のひどい変わりようにびっくり。でも各々仕方ないといえば仕方がない…
ヴァイスもああいう事情があったのか、グリフィスは…もうぶっちゃけスバル達に殺されてもかまいませんw
ヴィヴィオも可哀そうだ。
ルーテシアと同じようにエリオやスバルが連れ出さなければ永遠になのはを助けることもできず、束縛されたままか
次回はVSルーテシアの再戦でしょうか?
エリオはスバルとイクスの言葉を受けてどういう行動をとるのか。
楽しみにしております。
475 :
B・A:2008/11/16(日) 13:36:22 ID:Rdbz/Po+
すみません、読み返していたら間違いがありました。
>>452 >「彼女もメンバーの1人だ。3年前に機動六課が保護したナンバーズは、治療中の1人を含めて3人ともクラウディアに乗船している」 ×
>「彼女もメンバーの1人だ。3年前に保護されたナンバーズは、 治療中の1人を除く3人が我々に賛同してくれている」 ○
レジスタンス側のナンバーズはディード、○○○○、○○○、それと治療中の○○○の4人だったことを思い出しました。
お手数ですが、保管の際は訂正をお願いします。
ディードってキャラが空気すぎるよね…
そもそもナンバーズは顔と名前が一致するのが四人くらいしかいない俺
初代からナンバーズスレにいて本編終了前から顔と名前とISと固有装備の名前を覚えてる俺は小数派か
確かにお前だなそれは・・・
ああ、確かにお前だわ
>>479 小数派は数学板へ行って分数派と争えばいいと思うよ。
484 :
7の1:2008/11/16(日) 17:58:09 ID:mpEKBUMv
大相撲が終わりましたので第3章を掲載します。
注意事項
・一部エロありです
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
485 :
7の1:2008/11/16(日) 18:03:31 ID:mpEKBUMv
第3章 デートリッヒ
「わぁぁ、大きいな。ユーノパパ、アースラより大きいよ、この船。」
JS事件の後、六課の宿舎が再建されるまでアースラで暮らした経験のあるヴィヴィオは、目の前にある船の巨大さに目を丸くしていた。
三人を迎えるために大きく開かれた荷受け用ハッチの高さだけでもアースラの2倍近くあるのだから、ヴィヴィオが驚くのも無理はない。
「そうだね。クロノおじさんのクラウディアより大きいんだよ。ZX級時空航行艦だからね。なのは、どうしたの?」
「ねぇユーノ君、なんでAMFが展開されてるの? 本局内での使用は禁止されてるはずだよ。ヴィヴィオ ママの側から離れちゃ駄目」
ヴィヴィオを引き寄せたなのはは、バリアジャケットを形成すると愛杖のレイジングハートを起動して周囲に注意を払った。
「いやぁ、お待たせしてすみません。・・・高町一尉、何かあったんですか?そんな大仰な格好で、本局内でのバリアジャケット着用は
第一種制限解除が必要なはずですが」
武装したなのはの姿を部下から知らされたマテウスが、よれよれのレインコートを翻しながら、荷受けハッチの奥から出てくるや、
なのはの武装を見て眉をしかめた。
「緊急事態の際には、尉官権限で解除できます。それよりお聞きしたいのですが、本局内でのAMFの使用は 禁止されています。
AMF使用は許可を得ているんですか?バウアー卿、ご返答次第では、あなたを逮捕します」
なのはを抑えようとしたユーノを目で制するとマテウスは、人の良さそうな笑顔を浮かべた。
「ああ、AMFの件ですね。本局管理部に照会していただければわかりますが今回の積み荷の口碑はロストロギ アの疑いがあるので
結界魔法のほかにAMFも展開しているんです。使用許可のディスクは、ここにあります。どうかご確認ください」
レインコートから取り出したディスクを一瞬で、自分の目の前に転送したマテウスの魔術になのはは、内心舌を巻いていた。
発動の気配さえ感じさせず魔法を発動できる魔導師が、三提督以外に本局内に何人いるか
(間違いなくSS+、いえSSSクラスだわ。はやてちゃんでも、この手の魔法を使う際にかすかな気配を感じるもの。三提督級の人だわ)
486 :
7の1:2008/11/16(日) 18:08:08 ID:mpEKBUMv
「すみません。誤解していたみたいです」
ディスクの内容を素早く確認したなのはは、バリアッジャケットを解除すると頭を下げた。つられてヴィヴィオもごめんなさいと謝った。
「こ、これは、どうか頭をお上げください。ヴィヴィオさ・・さん」
ヴィヴィオさまと言いかけるのをさん付けに戻したマテウスの額にうっすらと汗が浮かんでいた。
ベルカ文明出身者特有の癖なのか聖王の生まれ変わりであるヴィヴィオに対して、必要以上にへりくだるマテウスの態度を見て、
なのははヴィヴィオの将来を危惧した。
聖王様、聖王様と言われているうちに気づいたら、時空管理局の敵対者に祭り上げられるかもしれない。
(魔法学院なら問題ないと思うけど、他の世界のことも知っておいた方がよいわ。そうだ、今度の休暇、ユーノくんとヴィヴィオ連れて
翠屋に帰ろう。アリサやすずかにも逢わせて、もっと普通の女の子として育てなきゃ)
まだ本格的にユーノとの交際を家族や親友に紹介していないのを思い出したなのはは、ユーノとヴィヴィオをみんなに紹介する覚悟を固めた。
「話が付いたようですね。バウアー卿、口碑を発掘した人たちと話したいんですが、なのは、話がすんだらヴィヴィオと君を呼ぶから、
それまで待っていてくれないかな?」
「えぇぇユーノくん。同行しちゃ駄目なの?」
「ロストロギアの疑いがあるからね。もしもの時は、ヴィヴィオを連れて逃げるんだよ。転送魔法の使用許可は取ってあるから、
バウアー卿、ご案内願います」
「口碑の説明は発掘隊の責任者にさせましょう。レミオ一等航海士、ユーノ博士をご案内するように。高町一等空尉、ヴィヴィオさんのご同意が
あれば、艦内食堂で、第三管理世界自慢のフルーツとスイーツを振る舞いたいんですが如何でしょう?」
「ヴィヴィオ、食べたいな。ねぇ、なのはママ駄目?」
「ヴィヴィオ!」
(なのは、バウアー卿は、幹部評議会の評議員だ。素直に従ったほうが良い)
いつにないユーノの強い念話に、なのはは思わず左のこめかみに手をやった。
487 :
7の1:2008/11/16(日) 18:11:11 ID:mpEKBUMv
「マ、ママぁぁ」
「ヴィヴィオごめん。バウアー卿、ご案内いただけますか」
「どうぞ、こちらの方のエレベーターへ、直行で食堂にご案内しましょう」
マテウスは、揉み手せんばかりの愛想を振りまきながら、なのはたちに先だってエレベーターの扉を開けると乗り込んだ。
目の前を歩くレミオという士官が、伸ばした黒髪を三つ編みにし白いリボンで結んでいるのに気づいたユーノは、一見、
ひょろりとした優男にしか見えない彼が、聖王陵騎士団の精鋭であることに気がついた。
「ユーノ博士は、結界魔導師だそうですね」
「ええ一応は、本局登録では空戦Aですが」
「高町なのは一等空尉のディバインバスターを素手で防がれたとのことですが、事実ですか?」
「昔のことです。今の彼女の敵じゃないでしょう」
「しかし、今でも一等空尉が模擬戦をやる際には、訓練室の結界を担当されてるそうですね」
「本局には、結界魔導師が不足気味ですから、僕みたいな専門外の者でも起用せざるえないんです」
「本局最強の盾と称されるかたの言にしては、謙遜がすぎますよ。噂では対AMF用の新技ディバインバスター
クラスターのお相手をしたとか、如何でした?」
強者への尊敬の念が込められたレミオの問いかけにユーノは苦笑を浮かべた。
「実体弾に魔力を込められて撃たれました。AMFで防げると思ったんですが、実体弾でAMF装備のガジェッ
トドローンを打ち抜かれた上に、内部からバスターを爆散させるんですから、死にかけましたよ」
対AMFに、ある種の封時結界が有効だということを無限書庫の古文献から発見したユーノは、自己責任という言葉を
思い出して苦笑を浮かべた。
元々、不足気味だった結界魔導師を、前線の武装隊に引き抜かれた責任を取らされる羽目になったユーノは、なのはが模擬戦
をする際の専用結界魔導師を勤めているというか勤めさせられている。
局内では、”魔王の使い魔”とか”悪魔の下僕”とか、隠れなのはファンから妬まれ、ある意味、悪評が高いユーノだが、部外者の
評価が意外に高いことを知らされ、警戒の念を抱いた。
(バウアー卿の言うとおり、僕がハラオウン閥と見なされているとしたら、他の評議員が無限書庫を警戒するのも無理はないか)
488 :
7の1:2008/11/16(日) 18:15:25 ID:mpEKBUMv
「こちらです。彼らはこの中にいます」
レミオに発掘隊と称されている盗掘者の一団が収容されている格納庫の前に案内されたユーノは、部屋の前に
立っていた歩哨からレミオが着ているのと同じ深紅のベストを手渡された。
「対AMF用ベストです。卿のご命令でユーノ様が中に入る際は、絶対着用していただくようにとのことです。
着用されない場合は、入室を命に駆けて阻止せよとのことで」
必死の面持ちで、ベストを差し出す歩哨の肩を叩きながらユーノは笑顔で答えた。
「このごろ、運動不足でね、僕のサイズに合うかな」
「卿は、三種類のサイズをご用意されてますので大丈夫です」
ユーノがベストを着用したのを確認したレミオは、歩哨に扉を開けさせると先に入って、中にいる兵士に何かを
確認するとユーノを差し招いた。
「ユーノ博士、入っても大丈夫だそうです」
室内は、強力なAMFが展開されているらしく、手のひらにむず痒い感覚が走り、背中を蟻が這い回り、靴底を通して、
芋虫が蠢く感覚がおぞましい。
女の嬌声や子供のはしゃぐ声、中年男の酒枯れただみ声、若者の意味をなさない叫び声が耳元を直撃し、魔法の
詠唱を不可能にする。
(スカリエッティのAMFより強力だ。精神攪乱効果まで備えているとは、かっての時空管理局が手も足も出なかったのも無理はない)
「ユーノ博士、どうされました?もしAMFが強すぎるのでしたら、ジャケットの襟にあるボタンを押して調整してください」
レミオが真剣な顔で声を掛けた。
(僕が気持ち悪くなって倒れでもしたらと懸念しているようだ。)
「ありがとう。もう大丈夫なようです」
襟のボタンを数秒押し続けると、先ほどまでのおぞましい感覚が、嘘のように消えていった。
改めて、部屋を見渡すとどうやら調査艇を収納する格納庫らしいことに気づいた。薄暗い間接照明の部屋の中央に発掘された口碑が、
三重の結界魔法で厳重に囲まれているのが見えた。
「あそこです。アル、代表者を呼んでくれ」
歩哨の一人が、部屋の隅に敷かれた絨毯に寝転がっている人々に近寄ると声を掛けた。しばらくして、小柄な人影が立ち上がるとユーノ
たちの方へ足を引きずりながらやってきた。
目が悪いのかサングラスをかけているが、長い栗色の髪と体つきからして女性らしい。
「レミオ、レナードに何かあったの? ま、まさか・・・ユーノどうして?」
「ラーナ、何があったんだ? 族長は何処にいる?」
かっての許嫁の変わり果てた姿に声もないユーノにラーナが詰め寄った。
「族長は死んだわ」
支援
490 :
7の1:2008/11/16(日) 18:20:39 ID:mpEKBUMv
族長が死んだ・・・・孤児の自分を拾い上げ、育ててくれた人物の死を告げられ絶句したユーノにラーナは怒りをぶつけた。
「ユーノのおかげで、まともな遺跡発掘の仕事が増えたわ。でも収入には結びつかなかったの。時空管理局の 身内を持つ
発掘屋に、うま味のある裏仕事を回す馬鹿はいないもの」
「だからって盗掘に手を出すことはないだろう。僕に連絡してくれれば、ロストロギア絡みの仕事を回せたよ。何故、連絡をしなかったんだ」
「連絡なんかできるもんですか!割が良いって引き受けた辺境世界の遺跡発掘で事故にあったの。3人死んだしすぐに手術する必要な
怪我人が4人もいたわ。でもお金が足りなくて、2人しか助からなかった。それで族長は、盗掘を決意したの」
族長は依頼を受けたロストロギアの発掘に成功はしたが、依頼者が時空犯罪者だったのが運の尽きだった。
報酬を受け取りに行った族長と長老たちは、殺され宿営地も襲撃を受け、一族は散り散りになって逃げざるをえなかった。
「レナード兄さんと私が、10日後に再会したときには、父さんも母さんも襲撃されたときの傷が悪化して死ん でいたわ。生き残った一族は、
発掘前の3分の1以下、それからは墜ちるばかり、そのあげくがこのざまよ」
サングラスをはずして、潰れた目をさらしたラーナは話し続ける。
「新しい族長には、レナード兄さんが選ばれたわ。年長者は、フリック爺さんしか生き残ってなかったから選択肢はなかったの」
生き残った一族の総意で新族長に選ばれたレナードは、盗掘屋として生きていくためにはスクライアとういう姓を捨て、一族名をライヤー
と改めるしかないと宣言したのよとラーナは自嘲の笑みを浮かべた。
「ライアーと名乗ってからは、しばらくは順調だったわ。族長と長老たちが仕事を取り仕切っていたから、レナード兄さんがスクライアだって
知ってる人はいないし、レナード兄さんの優秀さは知ってるでしょ」
「ああ、義兄さんの探索魔法は、僕より凄いからね」
人が良すぎるのも僕以上だったねという言葉を呑み込んだユーノは、ラーナに話を続けるよう促した。
「年寄りと若い子ばかりだから、遺跡発掘のような大きな仕事は出来なかったけれど、ロストロギアの無い陵墓の盗掘や封印されたB級ロスト
ロギアの回収のような仕事は、いくらでもあったから、生活はスクライアのころより楽になったわ。今思えば、あのころが一番、楽しかったな」
「しかし、陵墓の盗掘は、第一級遺跡破壊犯罪だ。捕まれば死刑は免れないんだぞ。生活のためとは言うなら、何故、僕に」
「どの面下げて行けると思うの? スクライアが時空犯罪者に協力したなんてこと、ユーノに言えるはず無いでしょ。それにレナード兄さんが、
迷惑を掛けたくないって言ったの、だから」
「ラーナ、薬の時間だ。後は僕がユーノ博士に話そう。君は本調子じゃないんだから休みたまえ。」
「レミオ邪魔しないでちょ・・う・・だい」
言いつのるラーナの後頭部に左手をかざしたレミオの掌から、ユーノの膨大な魔法知識の中にも覚えのない魔法の波動が発せられた。
491 :
7の1:2008/11/16(日) 18:22:48 ID:mpEKBUMv
「ラーナ!」
「発作です。病室に連れて行きますので、しばらくお待ちください」
意識を失ったラーナを抱え上げたレミオは、ユーノに一礼すると背を向けた。
「ユーノすまんかった。お前を頼っていれば、皆、死なずにすんだんじゃ」
半ば呆けたのか、何回も謝罪を繰り返すフリック爺さんにかける言葉もないユーノに、生き残った一族の若者
たちは、頭を下げてひたすら謝罪し続けた。
「レミオ三尉のところに、ご案内申し上げます」
歩哨がユーノを案内した部屋には、手書きで医務室とミッドチルダ語で書かれた木の札が掛かっていた。
「昏睡状態ですが、命に別状はありません。意識も、あと2,3日もすれば戻るでしょう」
部屋の中央に置かれている高酸素カプセルの中に寝かされているレナードを指さすレミオの声は、ラーナの発作を抑えた時
とは対照的に、いたって平静だった。
「犯罪者の彼に、正規の医務室を使うわけにいかないので、この部屋を臨時の医務室にしています。設備に問題ないので、ご安心ください」
「ラーナは、ここにいないようですが?」
「彼女は、保護された状況が状況ですから犯罪者扱いになりません。発作の問題もありますので、正規の医務室で寝てもらっています」
「ラーナやレナードを助けてくれたそうですね。皆、感謝していましたよ」
「・・・彼らの今後は、あなた次第でしょう。私は、卿の命に従うだけです」
一瞬、口ごもったレミオの顔を見たユーノは、一族の運命が自分の手に委ねられているのを自覚せざるえなかった。
ラーナの告白したことが事実なら、スクライア一族の破滅は避けがたい。
そして、それを阻止できるの自分しかいないのだ。
492 :
7の1:2008/11/16(日) 18:24:14 ID:mpEKBUMv
すみません。491で第3章終了です。
明日の夜に第4章を上げます。
>>464 GJ!
実に素晴らしいほどの死亡フラグ乱立
でも誰も死なずに終わるとは思えない
グリフィスならくたばってOKだがw
スバルとエリオの主人公二人は生き残って欲しいもんだ
>>493 ]U「偽りの任務、失礼しました…あなた方には、ここで果てて頂きます 理由はお分かりですね」
カルタス「まぁ、そういうことだ どうせ、確信犯なんだろ? 話しても仕方ない」
X「所詮は獣だ、人の言葉も解さんだろう」
スバル「偉そうに…選んで殺すのが、そんなに上等かな」
クロノ「殺しすぎる、お前たちは」
スバルとエリオのオチはこうですね
つまり、エリオは性的な意味でフェイトそんの首輪付きかw
社長=なのは
ウィン・D=トーレ
ババア=フェイトそん
トーラス社員=スカ博士
ですね、わかります。
FAかよwww
ということは
『燃え尽きるがいいの、何も残りはしないんだから…』
とか
『そんな装甲でこのNANOHAに挑むの?笑わせないで…』
とか
『正面から行くの、それしか能が無いの…全てを焼き尽くすだけなの』
とか
『陰険メガネが…吹き飛ぶの』
ぶっちゃけ全く違和感無いんですけどwww
後フェイトそんがオペ子だと、ピンチになるたびに通信機越しにオロオロしてるのが目に浮かびます、はい。
497 :
ザ・シガー:2008/11/16(日) 22:39:39 ID:c6om57DN
うし、45分くらいまでチェックしたら投下する。
ヴァイス×シグナムで、一応“まだ”非エロ(微エロ?)。
一応今まで書いたヴァイシグSSとは関係のない短編です。
待ってるぜ!
狙撃手と彼の灯火
息を吐く、何度も何度も息を吐く。
呼吸を整え、心臓の鼓動の周期を理解し、五体に響き渡るリズムを完全に熟知する。
三脚(トライポッド)の上に鎮座する愛銃、その銃口に起こる振幅に全神経を集中。
手元で起こる一ミリのズレは数百メートル先では致命的な着弾の誤差を生み出す、決して意識を途切れさせてはならない。
スコープの先に映る敵影、ターゲット、獲物、様々な呼び名で呼ばれる哀れな標的に瞳を釘付けにする。
こうして銃で狙い続けていると銃と自分とが一体化するような錯覚すら覚えた。
そうだ、今の俺は人じゃない。
命令された対象をただただ正確に射抜くだけの一丁の銃、狙撃を成功する為に存在する一個の装置。
人間性という名の情緒が死んでいき代わりに冷たいものが精神を鋼にした。
そしていつしか下される指令に応じて機械と化した身体は忠実に駆動する。
全ての感情を殺し、肉体と精神を精密機械に転じ、耳に取り付けたインカムから来た狙撃許可の言葉に従い、狙撃装置と化した俺は引き金を引いた。
羽毛が触れただけでも落ちるような極限の軽さに調整された引き金が俺の意思で引き落とされる。
眩い閃光が煌めき、カートリッジの魔力を得た高出力の直射弾が空気を切り裂きながら目標目掛けて駆け抜けた。
世界はその刹那で塗り替えられる。
スコープの先では愛銃の放った弾丸に倒された男が哀れにも地に伏していた。
決着は一瞬で完了、狙撃機械と化していた俺は再び元の脆弱な人間に戻る。
課され続けたプレッシャーから解放されて吐き気にも似た感覚が去来した。
今日はあの日のように狙いを外す事はなかった、その事に安堵する。
そして俺は今日も自分の一部となって共に戦ってくれた愛銃に一言囁きかけた。
「ありがとよ、ストームレイダー……」
そう言った刹那、俺の意識は闇に消えた。
□
ヴァイス・グランセニックはその日電車で家路に着いた。
狙撃任務のあった日はいつもそうだ、出勤するときに使ったバイクはそのまま部隊の駐車場に置いて電車に乗る。
特に今日のように、過度な緊張を強いられた狙撃を行った日は必ずそうしていた。
長時間銃を構え続けた反動、いやむしろ精神的なストレスでハンドルすら握れないのだ。
二輪を繰り、夜風を切る爽快感は好きだが、だからといって事故を起こしては敵わない。
正直、満員電車に揺られる不快感も堪らないが、事故で命を落とすのはごめんだ。
十数分ほど電車に揺られ、ヴァイスはやっと目的の駅に到着した。
駅を降りて歩くことさらに数分、愛しの我が家へと辿り着く。
マンションのエレベーターに乗り、三階のボタンを押せばあとはもう二分も待たずにドアを潜り、ベッドに身体を預けられる。
ヴァイスは柔らかいシーツの感触が待ち遠しくてしょうがなかった。
エレベーターを降りて足早に自分の部屋に向かう、途中で鍵を取り出すのも忘れない。
そしてドアの前に辿り着いた瞬間、彼は妙な違和感を覚えた。
「ん? この匂い……俺の部屋から?」
なにか美味しそうな料理の匂い、それが自分の部屋から漂っていた。
だがおかしい、今自分の部屋には誰もいない筈だ。
胸に生じる僅かな疑問、ヴァイスは首を傾げながらドアノブに手を伸ばす。
すると鍵を掛けられて回らぬ筈のドアノブは、なんの抵抗も示さず即座に開いた。
盗人か? いや、それならばこの香ばしい香りの意味が分からない。
大方、妹のラグナあたりが来ているのかと想像しつつヴァイスはドアを開ける。
しかし玄関に鎮座する靴を見て、その想像は一瞬で破られた。
それは、見慣れたかつての上司の愛用していたものだった。
「おお、ヴァイスか。おかえり、勝手に上がらせてもらったぞ」
玄関を開けたヴァイスの下に、鮮やかな緋色の髪をポニーテールに結った素晴らしいプロポーションの美女がエプロン姿で迎えに現れた。
それはヴォルケンリッター剣の騎士にして烈火の将シグナム、ヴァイスのかつての上司にして今の恋人。
「ええ、ただいま姐さん」
JS事件終結後から一年、久しぶりに会えた愛しい人に、ヴァイスは最高の笑みを見せた。
□
ヴァイスの部屋の合鍵を持っている人間は二人だけ、妹のラグナに恋人のシグナム。
特にラグナはお兄ちゃんっ子という事もありちょくちょく彼の部屋に来ては掃除やら食事やら、色々と家事をしてくれる。
そしてシグナムもまた仕事の合間に時間を作っては彼の家に訪れて、不精者な彼のために色々と家事を手伝ってくれていた。
局の仕事の関係で二人の時間が重なることは難しいが、今日はどうやら運良くそれが重なったらしい。
ヴァイスは上着を脱いで居間のテーブルに着くと、目の前に並べられた料理の数々に視線を向ける。
そこには焼き魚、ホウレン草のお浸し、味噌汁、肉じゃが、ほかほかのご飯、そして納豆、完璧な和食のメニューが並んでいた。
元々はそれほど和食が好きでなかったヴァイスだが、彼女と日々を過ごすようになってそれはすっかり変わった。
今では白いご飯と納豆を見るだけで思わず涎が垂れそうになるくらいだ。
「それじゃあ、いただきます」
ヴァイスは手を合わせてそう言うと、早速箸を手に料理を突きだす。
魚は脂が良く乗っており、味噌汁は良いダシが出ている、他の料理も申し分なく実に美味だった。
蓄積された肉体的・精神的疲労から生まれる食欲に従い、ヴァイスは次々と料理を胃に収めていく。
それほど時間をかけぬ内に、彼は用意された夕食を食べ終えた。
〆に熱い緑茶を啜り、独特の渋い味わいを楽しんで至福の一時を感じる。
湯飲みの中に満ちたお茶を飲み終えると、ヴァイスは“ふう”と一息ついた。
「ごちそうさんです姐さん」
「お粗末様、お茶のお代わりはいるか?」
「ああ、それじゃあもらいます」
ヴァイスがお茶を飲み終えると、シグナムはすかさず急須を手にまたお茶を注ぐ。
まるで長年連れ添った夫婦のような時間、身も心もひどく落ち着くそんな穏やかな空気が満ちる。
「それにしても、姐さんの料理凄く美味しくなりましたね」
「おい、その言い方では昔は酷い味だったみたいじゃないか」
ヴァイスの言葉にシグナムは少しヘソを曲げたように眉を歪めてその美貌に怒りを浮かべる。
彼女の様子にヴァイスは思わずすいませんと頭を下げたが、実際彼女の昔の料理は結構ヒドかったので彼の言葉はあながち間違ってはいなかった。
「まあ、アレだ……私もそれなりに勉強したんだ……その……お前には美味しいものを食べて欲しいし……」
自分も緑茶を啜りながら、シグナムは少し朱に染まった頬を隠すように俯いてそう零した。
恥じらいに頬を染めるその様は、普段の凛然とした雰囲気からは想像もできないほど愛らしく、ヴァイスの胸の鼓動は自然と高鳴る。
シグナムがときおり見せるこのような可憐な仕草はほとんど反則だった。
烈火の将が見せたその愛くるしい様はさながら糖蜜で出来た刃の如く彼の胸に突き刺さり、なんとも言えない恋慕の甘い陶酔をもたらす。
彼女への恋しさが自然と身体を火照らせ、芯から生まれる熱に汗が出てきた。
そして流れるのはなんとも言えない沈黙、シグナムは自分の言った言葉が恥ずかしくて、ヴァイスはそんな彼女の言葉が嬉しくて、双方口を紡ぐ。
そして、最初にこの沈黙を破ったのは将だった。
「と、とりあえず風呂にでも入ったらどうだ? 丁度沸いている」
「ああ……そうっすね」
シグナムに促されるまま、ヴァイスは一つ頷いて席を立った。
そういえば、自分が今日の狙撃任務に当たって身体中から吹き出た汗で結構匂っている事にも気付く。
これは早急に清めねば彼女にも失礼になるだろう。
「それじゃあちょっと風呂行ってきます」
「ああ、ゆっくりな」
台所で食器を洗いだしたシグナムを残し、ヴァイスは一人風呂場に向かった。
洗面所に入れば即座に纏っていた服を全て脱ぎ去り、彼は裸身になる。
そうすれば、鍛えられたしかし決して無駄に筋肉を付けすぎてはいないしなやかな男の裸体が現われた。
ヴァイスの肌には無数に傷跡、総魔力量の低い彼が今までどれだけの実戦を潜り抜けてきたかの証が刻まれていた。
だが別に自身の姿に感慨を抱く筈もなく、彼はそのまま風呂場へと足を進める。
ドアを開ければ視界を薄い湯気が漂い、湯船に満ちた熱湯から熱気が伝わる。
ヴァイスは足を踏み入れると、ひとまず風呂イスに腰掛けてシャワーのコックを捻った。
シャワーは最初一瞬だけ冷たかったが、即座に熱湯に変わって気持ちの良い爽快感を与えてくれる。
一日の疲れ、特に多大な緊張感を強いられた狙撃任務で全身にかいた汗が洗い流され、素晴らしい爽快感をもたらす。
しばらくの間、ヴァイスは身体を伝う熱湯の心地良さに浸る。
そんな時、ふと背後で物音がしたのを感じた。
誰かが洗面所にいる、そう思った刹那、ドアが開きその誰かが風呂場に侵入してきた。
無論だが、今この家には二人しかいないのだから相手が誰かなんて考えるまでもない。
「邪魔するぞ」
素っ気無いほどの簡素な言葉と共に、烈火の将は風呂場に足を踏み入れる。
思わずヴァイスが振り向けば、タオルで身体の前面を隠しただけのシグナムが立っていた。
一応タオルで隠してはいるが、その凄まじいボディラインは小さなタオル程度では到底隠しきれず白く美しい肌をあちこちから晒している。
普段はポニーテールに結っている長い髪はバスターバンで纏められてなんとも新鮮。
いつもと違うその姿に青年の胸の鼓動は否応なく高鳴った。
ドクドクと心臓が脈打つ音が聞こえくる、狙撃の時とはまったく違う緊張に、ヴァイスは思わず彼女から眼をそらした。
これ以上見ていたら理性が一気に崩壊してしまいそうだったから。
しかし、ヴァイスのそんな意識などお構い無しにシグナムは彼へと近づく。
そして直ぐ後ろに腰を下ろすと、そのしなやかな指をヴァイスの背中に這わせた。
ゆっくりと指を動かし、まるで彼の身体に刻まれた傷を慈しむようになぞる。
指先に愛しい人の肌を感じながら、シグナム静かに口を開いた。
「それでは背中を流してやろう、今日は疲れただろう?」
「え、ええ……それじゃあ、お願いします」
ヴァイスの口から了承の意を受け取ると、シグナムは分かったと一つ返事をして奉仕を始めた。
スポンジを手に取り、ボディソープを泡立てて彼の背中を洗い出す。
強すぎず弱すぎず、丁度気持ちの良い具合の力加減でヴァイスの大きな背中が洗い流されていった。
柔らかな手で行われるその奉仕に、ヴァイスは正直気が引けた。
これほどの美女を恋人にしているだけでも自分にはもったいないのに、さらにこんな事までしてもらっては“自分如きに”とつい卑屈な感情を抱いてしまう。
どれだけパイロットとしての腕を持とうと、どれだけ狙撃手として有能であろうと、どうしてもこの劣等感は消えてくれなかった。
そうして少しだけ憂鬱な思考が脳裏を駆ける中、ヴァイスはふとある事に気付く。
先ほどシグナムの言った言葉、その意味に。
「あの、姐さん……」
「なんだ? もう少し強くするか?」
「いや、違いますよ。その……さっきの言葉、“今日は疲れただろう”って」
「それがどうかしたか?」
「知ってたんっすか……今日の仕事の事……」
その言葉で、二人の間に沈黙が流れた。
ヴァイスの背中を流していたスポンジの動きまで止まり、風呂場に静寂が満ちる。
一秒か、それとも数分か、形容し難い沈黙が流れた。
そして、唐突に生まれた沈黙はまた唐突に破られる。
「ああ、知っていたよ。アルトに聞いた」
「……そうっすか……じゃあ、今日来てくれたのもそれが理由っすね」
「まあな」
その日、ヴァイスは部隊の任務で武装強盗の鎮圧に当たった。
もちろん彼の仕事は、その持ち前の狙撃技術を用いての犯人の無力化する事である。
圧倒的遠距離より、防御不可の貫通力を誇る魔弾を、神技の粋に到達した狙撃術で叩き込む。
彼の狙撃は一片の滞りもなく寸分のミスもなく、即座に完了した。
だが、任務を終えた直後にヴァイスは意識を失って倒れた。
局の医療施設に送られたが、外傷も疾病もなく原因は不明。
彼の経歴を知る医師は、過度のストレスによる精神的なものではないか、と漏らしていた。
「心配……かけちゃいましたね」
「気にするな」
JS事件が解決し、地上本部の陸士部隊に所属する事となったヴァイスはその持ち前の狙撃技術により再び武装隊員として前線に出るようになった。
しかしかつてのトラウマ、妹への誤射事件の影響なのか、重度のストレスを感じる狙撃の際に身体的不調を度々引き起こしていた。
ある時は嘔吐し、ある時は気絶し、様々な不調がヴァイスを襲った、だがそれでも彼は決して任務を仕損じる事はない。
全ては狙撃を終えてから絶え続けたプレッシャーの末に起こる。
どんな苦痛があったとしても、ヴァイスは任務を放棄する事はなかった。
まるでかつて自分が犯した罪への贖罪のように、ただ苦痛を耐え殺して引き金を引き続けていた。
そして、同じ部隊に所属する後輩のアルトが彼のこの現状を案じぬ訳がない。
今日こうしてシグナムに連絡し、彼女をヴァイスの家に向かわせたというのが突然の訪問の理由である。
シグナムはヴァイスの背中を丹念に洗いながら、まるで囁きかけるような声量で彼に言葉をかけた。
「身体の調子はどうだ? もう苦しくはないか?」
「ええ、まあなんとか」
「……そうか」
その言葉に込められた感情に、背中越しでもシグナムが安堵したのが分かった。
彼女にそれだけ思われているという事を自覚させられ、ヴァイスは思わず胸が熱くなるのを感じた。
本当にこの女性は自分には過ぎた恋人だと、改めて自覚させられる。
「すいませんね、心配ばっかりかけちまって」
「さっきも言ったろ、気にするな」
そう言うと、シグナムは風呂桶に掬ったお湯でヴァイスの背中を流す。
ボディソープの泡が流されて、彼の身体はすっかり綺麗になった。
「ほら、綺麗になったぞ。早く風呂に入れ」
「はい、それじゃお先に」
彼女に促されるまま、ヴァイスは立ち上がって湯船に身体を沈めた。
少しお湯の量が少ないと思ったが、それでも十分に熱い湯の温度が心地良い。
ジワジワと身体の芯まで伝わる温かさに、まるで身体の内側から汗と共に疲労が溶け出すような錯覚すら感じた。
思わずヴァイスの口から心地良さげに息が漏れる。
「ふぅ〜」
一日の疲れを癒す湯船と言う名の極楽、言葉にならない気持ちの良さに青年は最上の至福を感じた。
オマケに目を開ければ、視界には極上の美女がいるのだからこの上ない。
シグナムは先ほどヴァイス腰掛けていた風呂イスにその素晴らしく肉付きの良い美尻を乗せて座っていた。
そして、数多の男を虜にして止まない壮絶・凄絶としか形容できない爆発的な肢体に満遍なくボディソープを這わせて洗っている。
彼女の裸体はその須らくが凶器と読んで差し支えない威力を誇るが、中でも特に“魔人”の二つ名を持つ乳房と来たら……
何度も何度も、それこそ飽き果てる程に見ているのに、ヴァイスはその豊かに実った二つの果実から目が離せなかった。
美女・美少女ばかりで構成されていた機動六課でも最強・最大・最美乳と称えられたその乳房、見るたびに圧巻である。
ヴァイスはその麗しい乳肉を一切合財脳髄に保存すべく、まるで狙撃時にスコープを覗くような集中力で観察した。
絡み付くようなその熱視線がシグナムの敏感な柔肌を舐める。
白く透き通る肌に降り注ぐ視線の愛撫、長く艶やかな髪を洗い始めた将はシャンプーの泡を少し手でどけるとちらりと顔を彼に向けた。
そこには案の定自分を凝視するヴァイスの瞳、彼の熱い眼差しに思わず鼓動が一つ高鳴る。
思えば彼と最後に身体を重ねたのは随分前だった気がする、欲情の溶けた視線も仕方のない事だろう。
それを自覚すると、シャワーの熱とは違う肉の火照りがシグナムの下腹部に生まれた。
彼との睦事に想いを馳せれば、自然と彼女の中の雌(おんな)の部分が甘い期待に疼きだす。
シグナムは羞恥心により赤みを増した顔を上げて、ヴァイスのその瞳に己が視線を向けた。
突如視線を重ねられて彼はギョッとする。そして将は恥ずかしそうに口を開いた。
「ヴァイス……そ、その……今するか?」
「はい?」
「いや、だから……セ、セックスとか……」
最後の方はそれこそ蚊の鳴くような程に、かなり語気が弱くなっていたが良く音の響く風呂場ではしっかりと知覚できた。
その言葉の意味に、ヴァイスはしばし思案する。
確かに自分は彼女が欲しい、願わくば即座に組み伏せて欲望の限りにその甘美な女体を貪り尽くしたかった。
既に肉棒も怒張し、鋼の如く硬度を増して熱く滾っている。
だが今ここで彼女を犯すのは正直嫌だった。
欲望ウンヌンではなく、感情的な問題として許せない。
自分にここまで甲斐甲斐しく尽くしてくれる彼女を、こんな場所で犯すのはあまりにも勝手が過ぎると思う。
故に、ヴァイスは股間で雌を欲している己が分身を強靭な意志で抑え付けた。
「いや、別にしなくても良いっすよ」
「なっ! そ、それはもう私の身体は飽きたという意味か!?」
ヴァイスの言葉にナニを勘違いしたのか、シグナムはこの世の全てに絶望したかのような表情で嘆いた。
そうそう拝めない彼女の慌てふためく様子に思わず苦笑しつつ、ヴァイスはできるだけ優しく答える。
「違いますよ、俺が姐さんに飽きる訳ないじゃないっすか」
「うぅ……本当か?」
「ええ」
そもそもからして、彼女の身体に飽きるというのは無理な話だった。
シグナムのその艶めかしさ極まる女体は、一度味わえば決してその悦楽が忘れられなくなるほどに甘美。
さらに、身体を重ねれば重ねる程にどんどん奈落の底に堕ち、深みにはまるような麻薬めいた中毒性を持っていた。
これに“飽く”など不可能も良いところだ。
そしてヴァイスは、少し鼻の頭を掻きながらやや恥ずかしそうに言葉を続けた。
「まあ、その……そういうのは、後でちゃんとベッドの上でしましょう」
自分にこれだけ尽くしてくれる彼女を愛すなら、柔らかく温かいベッドの中でしたかった。
それに、今ここで始めたらとてもじゃないが抑制なんて効きそうにない。それこそ狂った獣のようにシグナムの身体を徹底的に貪るだろう。
だからヴァイスは理性を鋼にして耐えた。
そして、彼の言葉を聞いたシグナムは頬をうっすらと朱に染めて頷く。
「ああ……分かった……あ、後でな」
彼女の頬を染めるのはシャワーの熱だけでなく、脳裏を過ぎった彼との睦み合いへの羞恥、そして肉欲への期待。
入浴の時間は、ただ互いの身体を火照らせるだけに終わる。
愛と欲望を交わす甘い情交は、少しの間だけお預けされた。
続く。
506 :
ザ・シガー:2008/11/16(日) 23:06:22 ID:c6om57DN
投下終了。
シグナム分が足りねえ! って事で自給自足で補う事にしました。
オッパイ最高です、ポニテで剣士ならさらに良いです。
んで俺思うのね、シグナム姐さんっていつも凛々しいけど嫁になったらきっと凄く旦那に尽くす良い嫁になるって。
次回は後半、エロエロ甘甘で行くぜベイベー!
ヴァイス貴様!!
俺の姐さんになんて真似させてるんだゆるさ〜ん!!!
シガー様たっぷりとシグナム分を堪能させて頂きました。
ポニテにロケットおぱ〜いは正義ですwww
>>
同意!
リリカル世界の女性たちは旦那とか彼氏にはすごく甘えそうだw
そいえば、シグナムがヴァイスが自分に手を出してくれないことをアルトに相談してる作品って完結してる?
>>492 上がってる話全部読ましてもらいました
GJ
スクライアを筆頭に、存在するけどもスポットを当てるとどうしてもオリジナルにならざるを得ない人々を愛しているので応援しますよ
レイジングハートが出来た時とか、アリシアの父親とか、アレックスやランディとか
そんな中、スクライアを取り上げたのは目を開かされました
あと3話で行間空けてくれたのはありがたかったです
あんまり反応なくても、読む人いますから
>>464 ここでまさかのエリオ復讐者フラグの成立か
でも本当は幾度となく、復讐しようと考えたことだろう
しかしやってしまうとキャロが何のために死んだのか解らなくなる
13歳としてはあまりに重い選択だ…
GJ。
今のエリオはまるで大人だ
長生き出来るタイプじゃないな
>>506 GJ!
シガー氏のシグナム姐さんは可愛くてエロいな〜と心から思います。
514 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/17(月) 13:14:14 ID:yRcYZszS
515 :
7の1:2008/11/17(月) 19:32:03 ID:RIy3MV2V
注意事項
・一部エロありです(この章はエロというか虐待です)
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
それでは第4章を始めます。
516 :
7の1:2008/11/17(月) 19:38:07 ID:RIy3MV2V
第4章 聖王の碑
扉が開くと、艦内食堂とは思えない世界が広がっていた。
柔らかい光に満ちた天井は、その高さがわからないほどで、その中を青い羽根をした鳥が飛んでいる。
聖王樹の森に囲まれた芝生の中央には木製の丸いテーブルと四脚椅子が置かれており、テーブルの上に置かれた
ガラス製の鉢には見たこともない果物が盛られていた。
「こちらが、本船自慢の食堂です。ユーノ博士からお二方を同伴されるとのことでしたので、聖王陵特産の果物を用意
しておきました。どうぞ、お座りくださいヴィヴィオさん、高町一尉」
テーブルを挟んでヴィヴィオとなのはの前に座ったマテウスが、人差し指を立てるとガラス鉢の果物の一つが二人の
前に置かれた白磁の皿に現れた。
「こちらが、聖王陵特産のスレビアとい果物で、別名”聖王玉”と言って97管理外世界のリンゴに味が似てい ます。
皮は手で向いて食べてください」
「なのはママ。これ、おいしいよ」
皮をむいてスレビアを食べ始めたヴィヴィオは、まだ手を付けていないなのはに声を掛けたが、なのはは、あえて無視した。
「おいしいですか、それは良かった。ヴィヴィオさん、後でご自宅にお届けしましょう。スレビアも良いですがこのモレス”聖王の星”は、
もっとおいしいですよ。いかがですか?」
「わあ、きれい」
ヴィヴィオの皿にあったスレビアの皮が消えると、代わりに深紅の色をした星形のモレスが現れた。モレスを手に取るや躊躇すること
なくかぶりつき、夢中で食べるヴィヴィオの周囲にモレスの濃厚な香りが広がる。
「高町一尉、先ほどから手をお付けになっていませんが、スレビアやモレスは、なじみがないのでお気に召しませんかな?
それでは、これは如何?白いナザンなら高級将校のパーティーでよく出されるものですからご存じでしょう」
「いい加減にしてくださいバウアー卿!」
「はあぁ?」
「何が目的です。ヴィヴィオに聖王の洗礼果を食べさせるなんて・・・・」
「なのはママ怖い」
血相を変えて抗議するなのはに怯えたヴィヴィオが、食べかけのモレスを皿に落とした。
517 :
7の1:2008/11/17(月) 19:40:32 ID:RIy3MV2V
「ごめんね、ヴィヴィオ。これ食べる?」
「なのはママが食べないなら、ヴィヴィオも我慢する」
差し出されたスレビアに手を出そうとしないヴィヴィオに根負けしたなのはは、スレビアの皮をむくと二つに分けて、
一方をヴィヴィオに差し出した。
「ママも食べるから、ヴィヴィオも食べるのよ」
「うん」
なのはの抗議の意味がわからないのか、しきりに首をかしげていたマテウスだが、二人のやりとりを見て
「これも、おいしいんですがね。ヴィヴィオさん食べないんですか?」
とナザンを勧めるが、ヴィヴィオはマテウスの前に置かれたナザンから顔を背けた。
「それ、ママは嫌いみたいだから、ヴィヴィオ食べない」
ナザンの皮をむき、自分の皿に盛っていたマテウスは、ヴィヴィオの言葉を聞くとがっくりと首を垂れた。
「美味いんですよ、これ〜 。残念です、実に残念です」
ナザンのやけ食いを始めたマテウスの愚痴は、なのはとヴィヴィオから完全に無視された。
「失礼します。マテウス様、ユーノ博士が碑の解読で話があるそうです」
いつの間にか芝生の上に出現した黒髪を肩の高さに切りそろえた女性士官にマテウスは、軽くうなずくと椅子から立ち上がった。
「ヴィヴィオさん、高町一尉、お聞きの通りです。ちょっと席を外します。リアン三尉、お二方の接待を頼む」
「了解、全力を尽くします」
「頼んだよ。リアン」
リアンと呼ばれた女性士官が胸に左手を当て頭を下げ、マテウスを見送った
「ヴィヴィオ様、高町一尉、翠屋製のアップルパイは如何でしょうか?先日、注文していたものが、転送便で先ほど届きました」
「翠屋のアップルパイが食べられるなんて、リアンさんありがとう」
ニコニコしながらアップルパイの入ったボックスをテーブルの上に出現させたリアンになのはは微笑んだ。
(バウアー卿と違って魔法の気配を感じるわ。どんな系統の魔術かしら、波動は、レイジングハートが記録したから、
後でユーノくんに聞いてみよう。ユーノくんならわかるかも)
518 :
7の1:2008/11/17(月) 19:43:40 ID:RIy3MV2V
手書き文字で医務室と書かれた木札が掛かった部屋の中で、ユーノとマテウスは、レナードの寝かされている
高酸素カプセルを挟んで対峙していた。
「何をお聞きになりたいので?」
「陵墓盗掘の真実です」
ユーノの鋭い視線が、眼鏡越しに、ちびた葉巻を吹かすマテウスのさえない顔を射抜く。
「はて?真実とは難しいものですな。真実は必ずしも美しくなく、かつ正しいとも言えないという俚言がありま
す。事実は遺跡盗掘をしていたスクライア、いやライアー一族を我々が捕縛したとういうだけのことです」
「嘘だ!バウアー卿、あなた方は真実を隠している。彼らに、ラーナやレナードに何があったんです?」
「知らない方が良いこともありますよ。私としては、貴方を評議会入りさせる切り札に、これを持ち出すつもりはないんですから」
「僕は真実が知りたいんです」
「言い出したのは貴方です。若さ故の代償を払うことになるかもしれませんよ」
マテウスが、左手の人差し指をユーノの眼前に突きつけるとモニター画面が出現した。
密林の向こうに見える、いかなる樹木の侵攻をも許していない赤茶けた土肌をむき出した墳墓の一角に直径10mほどの大きな
穴が穿たれ、そこからバインドで縛り上げられ、泣き叫ぶラーナを担いだ3人の男が出てくるシーンが映し出された。
3人の首には黒い首輪がはめられており、その足取りはラーナの抵抗を考慮してものろのろしていた。
「サック、ビルス、それにバック・・・」
生き残った一族の中にいなかった長老3人の蛮行を見て、ユーノは言葉を失った。彼らは、こちらに背を向けている褐色の装甲服
を着た10数人の男たちの前に泣き叫ぶラーナを置くと、うずくまって深々と頭を垂れた。
「言われたとおりにしました。どうか命ばかりは」
卑屈な笑みを浮かべ命乞いするサックの首輪が爆発した。首を失った身体は、そのまま後ろに跳ね上がって地面にたたきつけられる。
あたりに漂う血臭の中をビルスとバックが狂ったように駆けだし、こちらの方に走ってくるが、無造作に振り返った装甲服の一人が、
はなったクナイが背中に刺さった瞬間、ビルスの身体が内部から弾け四散した。
(チンクと同系統のIS、いや人体を内部から破壊している。遺失技術の波動系ISだ!)
次元連合の総攻撃にあって完膚無きまでに殲滅された、いにしえの時空管理局の武装機兵が標準装備していたISの威力を眼の前で
見せつけられたユーノは戦慄した。
記録映像が写真でしか残っていない為、実感がなかったが、この技術が現在も生きているなら管理局の武装局員にとって最大の脅威
になるのは明らかだった。
519 :
7の1:2008/11/17(月) 19:47:57 ID:RIy3MV2V
「た、助けてくれ。あんたたちに言われたとおり女を、ラーナを連れてきたじゃないか?頼む、頼みます」
ビルスの悲惨すぎる最後に気力が尽きたのか、地面にしゃがみ込んだバックは、ゆっくりと近づいてきた男の
一人に弱々しく訴える。
「男はどうした?探索にはやつが必要だ。レナードは何処だ?」
「・・・・・」
「何処だと聞いている。答えんか」
男の一人が、無造作にバックを蹴り上げた。骨の折れるいやな音と共にバックが血反吐をはいて跳ね上がる。
「ふ、墳墓の中だ。ラ、ラーナの件で抵抗したんで痛めつけ・・・ぐぎゃあぁ」
バックの言葉が終わらないうちに、男の一人がバックの首を左手に仕込んでいた刀で切り落とした。
「奴を連れてこい。怪我をしていたら、手当をして、すぐに働かせろ」
「女はどうします」
「殺さない程度に楽しめ。お前たちは、レナードの確保と一族の身柄を押さえろ。行け!」
「はっ、ただちに取りかかります」
バックの首を切り落としたリーダとおぼしき男の命令で、待機していた装甲服の男たちが、空に飛び上がると
穴の中に突入する。しばらくして穴の中から、悲鳴が聞こえてきた。
「墳墓の監視カメラの送ってきたデータを確認したのがこの辺からですな。見ての通りの状況ですから、ただち
にレミオ指揮下の武装隊を派遣することになったわけです」
続けますかと尋ねるマテウスにユーノは苦い顔でうなずいた。
しばらくして血のにじみ出ている白い布を額に巻かれたレナードとユーノが再会できた一族の若者たちが、鎖
付きの首輪をはめられた状態で男たちに引っ立てられてきた。
「バックたちはどこだ?」
レナードの前に血にまみれたバックの首が投げ出された。それが男たちのリーダーの返答だった。
「お前の妹は預かった。すぐに封印を解除しろ」
「封印?」
「とぼけるな。お前たちが掘り出している石碑がロストロギアだってことは、割れてるんだ。我々に残された時間は残り少ない。
早急に聖王の猟犬を浮上させ同志スカリエッティに合流しなければならない。お前の役割は石碑の封印を解除して、聖王の
猟犬の動力源を解放することだ」
聖王の猟犬という言葉を聞いた瞬間、ユーノの顔色が変わった。
いにしえの時空管理局と戦った聖王軍の主力戦艦にして、ゆりかごを上回る殺戮を管理世界で行った殺戮兵器が生き残っ
ていて、スカリエッティと共闘する連中の手に渡っていたのだ。
「・・・・命は、俺の命はどうでも良い。妹と他の一族の命を保証してくれ」
「早くしないとラーナだったかな。お前の妹の命も保証できんぞ。17号、見せてやれ」
17号と呼ばれた装甲服の男が、ラーナを抱えてレナードたちの前に降り立った。
「に、兄さん助けて・・・痛い、痛いよぉぉぉ、や、やめて、やめてよぉぉぉ」
固定カメラの映像は、悲鳴を上げるラーナを抱きかかえている17号と呼ばれる男の背中しか捉えていないが、
その足下にぽたぽたと血が垂れて血だまりが広がっていくのが見える。
「やめろ、やめてくれ。封印は解除する。だから妹を助けてくれ」
できもしない事を口にするレナードの必死さを思ってユーノの心中に苦い思いが広がる。
ユーノの探索魔法の師であったレナードだが、封印の解除に必要な検索魔法や魔道書などの速読魔法については、
ユーノに遠く及ばないのだ。
520 :
7の1:2008/11/17(月) 19:50:50 ID:RIy3MV2V
「同志が石碑を運んできたようだ。早くしないと妹の身体が持たんぞ」
墳墓に穿たれた穴からデートリッヒに積み込まれているものに酷似している石碑が装甲服の男たちによって
運ばれてきた。
レナードの背後に石碑が置かれると石碑の隣に17号が着地した。
「お兄ちゃんを応援しないのか?いけない妹だ。これはお仕置きが必要だね」
軽口を叩く17号に抱かれているラーナの股間に突き刺さった金属製の肉棒が、上下するたびに耳を覆いたく
なる悲鳴と血が地面に流れ落ちる。
「ひぎゃぁぁぁぁ、いやぁぁぁぁ、いやぁぁぁぁ」
「よい妹だ。お兄ちゃんのために、精一杯、応援するんだよ」
「やります。封印解除でもなんでもやります。だから妹に、これ以上ひどいことはしないでください」
「では、やってもらおうか な、何奴!」
狼狽したリーダーが石碑へ顔を向けた瞬間、17号の頭がまっぷたつに割れ、血のシャワーをまき散らして
倒れた。
聖王陵の騎士甲冑を纏ったレミオを先頭にした魔導騎士の奇襲を受けた戦闘機人たちが、反撃する間も許さ
れず、呆気なく倒されていく。
ISを作動させ高速起動で上空に逃れたリーダーが、腹部に根本まで刺し仕込ま
れた狩猟ナイフと狩猟ナイフを握っているレナードを見て信じられないと言った表情を浮かべた瞬間、腹部が爆発し、
リーダーの身体が四散した。
同時に右肘から先を失ったレナードも血の花を咲かせながら地上に墜ちていく。
「戦闘機人は全滅。後に残ったのは陵墓盗掘の実行犯たちだけ。情状酌量の余地はありますが、如何せん戦闘機人
たちの目的が目的ですからねぇ。まあ戦闘機人の生存者がゼロってことが救いですかね」
JS事件の裏側で進行していた恐るべき事件に、スクライア一族が関わっていた事実に衝撃を受けたユーノの顔色は
死人のようだった。
「・・・・」
「そろそろ石碑をお披露目と行きますか、ユーノ博士」
第4章はここで終わります。
明日、第5章を上げます。
GJ。ただこの話のなのはさんの口調、ちと違和感が
「だわ」とか「かしら」とか「〜のよ」とか‥‥
なのはさんなら
「〜だね」「〜かな」「〜だよ」
蛇足的には
「〜なの」
といった感じだからな
余談だが、語尾を文字だけで表すと、フェイトとなのはの区別はちょっと難しい。
耳で聞くと、イントネーションの違いですぐわかるのにね。
「断定口調」→なのは
「疑問口調」→フェイト
フェイトは戦闘時は途端に断定口調になるけどなw
「〜だ」、「〜ない」って。
なのはの「〜なの」はニュアンスで断定or疑問だから文字にするとちょいややこしいな。
まあ、そこが良いんだがw
>>464 GJ!!
うわあああああヴィヴィオもなのはもヴァイスも皆…
何人かはもうすでに変えられない運命になってしまっているのですね。
ヴィヴィオとなのははまだやり直せるけど、大切なものを失って支えがないスバルとヴァイスは取り戻せない。
エリオも下手をすればそうなる。
逃れられるならば、全員辛い運命なら脱して欲しい。そう思ってなりません。
>>506 GJ!!
シグナムはこんな感じで嫁にいけば気立てのよい優しい妻になると私も思います。
注意事項
・一部エロありです
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
それでは第5章を始めます。
第5章 口碑
森に囲まれた芝生の上にあるテーブルに座って談笑しているなのはとヴィヴィオとリアンの頭上には、艦内
食堂とは思えない光景が広がっていた。
のどかな日の光が天井から降り注ぐ。見上げれば、太陽は見えないが柔らかい光が降り注いでいる。その中
を青い鳥が、雁行陣を組んで飛んでいる。
「リアンさんが、海鳴市の人だとは思わなかったよ」
リアンの話を聞いたなのはは、マテウスの前で演じていた良き母の口調を忘れる程、興奮していた。
「曾祖母が出身者ってだけですわ。まだ曾祖母の兄の家系が続いているので、親戚づきあいの関係で地球に行き
ますが、まさか親戚の住んでいる都市が、なのはさんの出身地の海鳴市とは思いませんでした」
「翠屋のケーキっておいしいでしょ。リアンお姉ちゃん」
「ヴィヴィオちゃんは、何が好きかな?」
「翠屋のガトーショコラ」
「あ、それも良いかも。でも私はブランデーケーキ、でもヴィヴィオちゃんには、まだ早いかな。なのはさん
は、何が好きです?」
「子供の頃、翠屋を継ぐつもりだったからシフォンケーキをよく作ってたからシフォンケーキが好きかな」
「今度、シフォンケーキの作り方教えてくださいよ。私が作ると型を抜いた後で必ず萎んじゃうんですよ」
「それじゃ、作ってるところをメールで送るからメールアドレスを」
「後で、戦技教導隊のなのはさんのアドレスにメールを送りますので、都合の良い時に返信していただければあ
りがたいです」
「ママ、ブランデーケーキってリアンお姉ちゃんにしか食べれないの?ヴィヴィオ食べれないの?」
「ヴィヴィヴォが、これぐらい大きくなったら、翠屋でブランデーケーキ食べられるんだよ。それまではだーめ」
「ええ〜、そんなに大きくなれないよ〜」
「ママは、ヴィヴィオより小さかったから、ぜったい大きくなれるんだよ」
他愛ない会話を交わすなのはとヴィヴィオを見ながら、微笑んでいたリアンの表情が、急に引き締まった。
「は、了解しました」
「リアンさん?」
「ユーノ博士が、石碑の解読を終えたようです。お二方に見せたいので、ご案内するようにとのことです。こち
らにおいでください」
武官らしいきびきびした口調に戻ったリアンは、立ち上がったなのはとヴィヴィオを芝生の上に姿を現した
転送ポートに誘った。
AMFを解除した格納庫に案内されたなのはは、自分とヴィヴィオを迎えたユーノに走りよると、にっこり微笑んだ。
「ユーノくん、がんばったね。ヴィヴィオもパパのお仕事、見たいって言ってたし、グッドタイミングだよ」
(顔色が悪いよ。なにか嫌なことでもあったのかな?)
「なのは、皆が見てるよ。ほら、ヴィヴィオもこっち来たがってる。ヴィヴィオ、こっちおいで」
(なんでもないよ。口碑の解読に手間取っただけさ)
「ユーノパパ、ママがね。ブランデーケーキ、まだ食べちゃ駄目だって言うの。もっと大きくならないと駄目なんだって
ヴィヴィオ食べたい。ヴィヴィオの言うこと、そんなに間違ってる」
なのはの魔王モードの口癖を真似てせがむヴィヴィオを見て、ユーノの緊張感が緩むのを見たなのはの微笑み
が深くなる。
「そうだね。ほんのちょっとならヴィヴィオでも食べられるかな。でもブランデーケーキって少し苦いんだよ、
ヴィヴィオ、苦いもの嫌いだよね」
「うーん、苦いのは嫌だな。でもユーノパパが食べさせてくれるならヴィヴィオは平気だよ」
ヴィヴィオの笑顔につられるようにユーノも笑顔を浮かべる。
(子供の笑顔ってのは救いだな。助かるよ)
(あら、私の笑顔は救いにならないのユーノくん何か隠してるんだね。恋人にも隠し事するなんて間違ってない?
私の言うことそんなに間違ってるかな)
その言葉に驚いたユーノは、目から笑いが消えているなのはの笑顔を見てぎょっとした。
(なのは・・・・後で話がある。君の助けが必要だ)(うん)
「じゃあユーノくん、今度の休暇にヴィヴィオと翠屋に行こうよ」
「そうだね。行こう」
糖度200%のバカップルの雰囲気を振りまく二人のやりとりに辟易したのか、ユーノと一緒にいたレミオ
やなのはたちを案内したリアンの姿は、いつのまにか格納庫から消えていた。
「ユーノ博士、高町一尉、ヴィヴィオさん、お邪魔でしたかな?」
「うん、マテウスのおじちゃん、邪魔だよ〜」
間髪入れずに答えるヴィヴィオを見たマテウスは、途方に暮れた表情を浮かべると頭をかきだした。
「後にしましょうか?晩餐を用意しますので・・・」
(ユーノくん!)
「いや、すぐに始めましょう」
「聖王陵自慢の食材をご賞味いただけないとは残念の極みです。ではご案内しますのでおいでください」
格納庫の中央に一同を案内するよれよれのレインコートを着たマテウスの背中を見ながら、なのははヴィヴ
ィオの手を引いているユーノに話しかけた。
(バウアー卿ってどんな人なの? 教導隊の総隊長から名前だけは聞いた覚えがあるけど、総隊長も面識がない
って話だったよ)
(第三管理世界始原ベルカ聖王陵出身。新暦47年若干11歳で入局、武装局員を経て戦技教導官に昇格。ここ
までは、なのはとほぼ同じだね。一等空尉昇任直後、監察部へ異動、以後、監察部でキャリアを重ね、現在、
監察部S級監察官、幹部評議会評議員、戦技教導隊最高名誉顧問、聖王陵伯爵)
(聖王陵伯爵って・・・本物の貴族なの!? )
(あんな格好してても伯爵だ。あのレインコートは、戦技教導官時代の愛用品って話だ)
(魔法ランクは、総合?それとも空戦か陸戦?)
(監察部異動時に情報保護のため記録を抹消してる。入局時 総合A+って記録しか残っていない。一等空尉だ
から空戦S+以上は確実だね)
目の前を歩くさえない中年男が、ベテラン執務官ですら恐れるS級監察官で、自分の大先輩でもあるという事
実に衝撃を受けたのか、なのはは押し黙ったまま、ユーノの腕を強くつかんだ。
「痛っ なのは、顔が怖いよ」
「ふぇぇユーノくん見てたの?」
「なのはママ・・・怖い」
よほど厳しい顔をしていたのか、自分を見ているヴィヴィオの目が怯えているのに気づいたなのはは、小声で
ごめんと謝った。
そんな3人のやりとりを聞いているのかいないのか、3人の前を歩くマテウスが振り返った。
「みなさん、着きましたよ。ユーノ博士、解説をお願いします」
マテウスが指を鳴らすと直径2m高さ10mほどの石碑が足下に配置された照明によってライトアップされた。
石の材質は不明だが、光沢のある材質で照明の当たり具合によって碧色や紅色、黄色などめまぐるしく色が変
わり、石碑の正面に刻まれた碑文を読み取ることができない。
「あれなんて読むのかな?ヴィヴィオ読めないや」
「古代ベルカ文字の方言だよ。ヴィヴィオ」
自分には見られない文字を見ることが出来るユーノとヴィヴィオに、なのはは漠然とした不安を感じた。
第5章 終わり
第6章は、明日、上げます。
贅沢を言って済まない。
この長さなら、数日分まとめてアップした方が読みやすくないかな?
章ごとなんだし別にいんじゃね
何も投下ないのも寂しいし
ゆのふぇ
サイヒ氏のクロノ×フェイト×カリム3Pの投下をずっと待ってる。
じゃあ俺は、ユーノに囲われたティアナの話をずっと待ってる
じゃあ俺はターンA氏のエリオのごとくをずっと待ってる
もうそろそろおとなしく待機するなり感想を投下していこうぜ
自治もそろそろほどほどに
539 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 23:29:39 ID:+AS2JSP6
続きが気になる
>>535 エリオの如くか…ネタを言い出した手前、何となく責任を感じてしまうwww
ターンA氏(屮゚Д゚)屮カモーン
>>540 クラナガンの龍の異名を持つギャングになったエリオを想像してしまった。
幼児プレイが好きな組長?は誰だろか?
…レジアス?
ハラオウンの龍じゃない?w
ヒートアクションが凄そうだwww
待て、そうなるとフェイトは自分が殺した人間の子どもを引き取っていることになる。
その設定は実際、ありそうだから困るw
執務官時代に色々とあってだな・・・
546 :
540:2008/11/19(水) 18:28:27 ID:k4c3c5Nx
ちょっとした一字違いのミスで執事でなくヤクザを連想するのか…
そんなおまいらが大好きだwww
如くだと読切版になるんじゃないのか
>>545 流石はフェイトさん、トラウマの百貨店だな
549 :
7の1:2008/11/19(水) 21:09:16 ID:FHyS07q6
第6章 交感
「なのはは、そこの赤い輪の中に立って、ヴィヴィオは、僕とここの青い輪に」
「そして、私はあそこですな」
ユーノの指示を待つことなく、マテウスは黄色い輪の中に立った。
「この碑文は、一種の結界魔法によって光を分光、ヴィヴィオ、プリズムって知ってるよね?分光させることで
赤や黄、青などの色に分け、それを多層構造にして石碑の周囲に展開しているから、普通の状態では見えない。
僕とヴィヴィオが見えたのは、結界魔法の中に一瞬だけど入れたからだ。最初の解読の際マテウスさんに手伝
ってもらってわかったんだが、完全な解読には3人の魔導師が必要なんだ。なのは手伝ってくれるね」
「うん、ユーノくん、ここだね」
なのはは、赤い輪の中に立つとユーノとヴィヴィオを見た。
「詠唱が始まったら、障壁が輪に沿って生じるので、絶対に輪の中から出ないこと。なのは、リンカーコアに傷
害が生じるから絶対に出ちゃ駄目だよ」
真剣なユーノの口調になのはは黙ってうなずいた。
「さて始めますかな」
新しい葉巻を取り出して火を付けたマテウスが声をかけるとユーノはうなずいた。
「いにしえに生ぜし縁により、我、汝を喚起す。光ありて闇あり、人は闇より出でて光を視たり・・・」
低い声で詠唱を続けるユーノの声を聞いていたなのはの姿が、空気に溶けるように消えると桃色の魔力光を
放つリンカーコアが赤い輪の中に浮かぶ。
詠唱を続けるユーノとその脇に立っているヴィヴィオの姿も、桃色のリンカーコアだけになったなのはと同じ
様に姿が薄くなりはじめ、やがて緑色の魔力光を放つリンカーコアと紫色の魔力光に輝くリンカーコアが青い輪
の中に出現する。
「ユーノ博士が緑色、ヴィヴィオ様は、やはり聖王の虹色でしたか。で、高町一尉は・・・・桃色ですか?」
少し口ごもったマテウスは、葉巻を吹かしながら、なのはのリンカーコアを興味深げに見ていたが、しだいに
姿が薄くなり消えていった。そして黄色の輪の中には、リンカーコアの影も形もなかった。
(光ありて我あり、闇ありて我あり 我は混沌の君、我は秩序の王 我ら交わりて万物を生ぜり 故に万物は光
と影を宿せり・・・)
ユーノの詠唱で目を覚ましたなのはは、闇の中に浮かび上がる石碑とそれを見上げるヴィヴィオの姿を認める
とともに一緒にいたはずのユーノの姿が見えないことに気づいた。
「ユーノくん、どこにいるの?」
(・・・かくて聖王、天より降りたまいて、地に法を敷き、人々を導けり・・)
「そこに・・・・いるの?」
550 :
7の1:2008/11/19(水) 21:12:29 ID:FHyS07q6
すみません。これを最初に書くべきでした。
それと残りの長さから見て第6章、第7章をあげて完結します。
注意事項
・一部エロありです(この章はエロというか虐待です)
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」
それでは第6章および第7章を始めます。
551 :
7の1:2008/11/19(水) 21:14:41 ID:FHyS07q6
第6章 交感
「なのはは、そこの赤い輪の中に立って、ヴィヴィオは、僕とここの青い輪に」
「そして、私はあそこですな」
ユーノの指示を待つことなく、マテウスは黄色い輪の中に立った。
「この碑文は、一種の結界魔法によって光を分光、ヴィヴィオ、プリズムって知ってるよね?分光させることで
赤や黄、青などの色に分け、それを多層構造にして石碑の周囲に展開しているから、普通の状態では見えない。
僕とヴィヴィオが見えたのは、結界魔法の中に一瞬だけど入れたからだ。最初の解読の際マテウスさんに手伝
ってもらってわかったんだが、完全な解読には3人の魔導師が必要なんだ。なのは手伝ってくれるね」
「うん、ユーノくん、ここだね」
なのはは、赤い輪の中に立つとユーノとヴィヴィオを見た。
「詠唱が始まったら、障壁が輪に沿って生じるので、絶対に輪の中から出ないこと。なのは、リンカーコアに傷
害が生じるから絶対に出ちゃ駄目だよ」
真剣なユーノの口調になのはは黙ってうなずいた。
「さて始めますかな」
新しい葉巻を取り出して火を付けたマテウスが声をかけるとユーノはうなずいた。
「いにしえに生ぜし縁により、我、汝を喚起す。光ありて闇あり、人は闇より出でて光を視たり・・・」
低い声で詠唱を続けるユーノの声を聞いていたなのはの姿が、空気に溶けるように消えると桃色の魔力光を
放つリンカーコアが赤い輪の中に浮かぶ。
詠唱を続けるユーノとその脇に立っているヴィヴィオの姿も、桃色のリンカーコアだけになったなのはと同じ
様に姿が薄くなりはじめ、やがて緑色の魔力光を放つリンカーコアと紫色の魔力光に輝くリンカーコアが青い輪
の中に出現する。
「ユーノ博士が緑色、ヴィヴィオ様は、やはり聖王の虹色でしたか。で、高町一尉は・・・・桃色ですか?」
少し口ごもったマテウスは、葉巻を吹かしながら、なのはのリンカーコアを興味深げに見ていたが、しだいに
姿が薄くなり消えていった。そして黄色の輪の中には、リンカーコアの影も形もなかった。
(光ありて我あり、闇ありて我あり 我は混沌の君、我は秩序の王 我ら交わりて万物を生ぜり 故に万物は光
と影を宿せり・・・)
ユーノの詠唱で目を覚ましたなのはは、闇の中に浮かび上がる石碑とそれを見上げるヴィヴィオの姿を認める
とともに一緒にいたはずのユーノの姿が見えないことに気づいた。
「ユーノくん、どこにいるの?」
552 :
7の1:2008/11/19(水) 21:17:43 ID:FHyS07q6
(・・・かくて聖王、天より降りたまいて、地に法を敷き、人々を導けり・・)
「そこに・・・・いるの?」
石碑から聞こえる声が、ユーノであることに気づいたなのはが、石碑に目を向けるとヴィヴィオに連なる聖王
の圧倒的なイメージが、なのはの中に流れ込んできた。
聖王陵最後の聖王の死後、新たな聖王がゆりかごで天を渡って去り、やがて今は無きベルカの地に降り立つ。
混沌の君と呼ばれる聖王の出現により戦乱の地と化す古代ベルカの地、質量兵器による戦争が人々の生命をい
とも簡単に奪うことに嘆く人々。
荒廃する世界で魔法を見いだした聖王。
質量兵器と古代ベルカ式魔法を併用して戦乱を終息に導いた聖王の中の聖王。
次元世界に進出する覇王と呼ばれた聖王。
やがてミッドチルダとの接触を平和理に果たした聖王教会の最初の聖遺物となる聖王。
時空管理世界に聖王教が広がっていく時代に各管理世界を巡礼する聖王。
ミッドチルダに誕生した”いにしえの時空管理局”と対立し、和平を説く聖王教会を弾圧する聖王。
やがて天を覆う時空管理局の戦艦群”地獄の番犬たち”に襲来され炎上する王都、反撃の為、出撃する聖王の
ゆりかごと随伴戦艦群。
激しい戦闘の果てに撃墜されるゆりかごと随伴戦艦群。
ゆりかごの玉座に座り、最後の時を静かに迎えるヴィヴィオにうりふたつの女性の聖王と勝利の美酒に酔いし
れ、ベルカの支配する管理世界を蹂躙する地獄の番犬たち。
撃墜されたゆりかごから時空管理局の目を掠めて聖王の遺体を持ち出す聖王教会の聖職者たち。次元世界の覇
者となった時空管理局の圧政に苦しむ人々の希望の星となる聖王教会。
突如、聖王陵の上空に出現する時空管理局の戦艦群。
その戦艦群の前にユーノそっくりの黄砂色の髪を風になびかせた若者が立ちはだかる。
聖王陵に向けられた質量兵器と魔導砲の集中砲撃を複数のラウンドシールドで防ぐと同時に巨大なチェーンバインドが、戦艦に巻き付き一挙に握りつぶす。
十数隻の戦艦を失った時点でミッドチルダの戦艦部隊は散開すると若者を無視して聖王陵へ殺到する。
若者はチェーンバインドで戦艦を阻止しようとするが、白光の砲撃が緑の鎖を砕き四散させる。
紅い4枚の羽を背中に持った純白のバリアジャケットに、レイジングハートを思わせる魔導杖を持ち、栗色の
髪をサイドテールに結った美女が放った砲撃によるものだった。
空中で対峙する二人が、恋人でありながら、互いの信念のために生死を賭けて戦わざるをえないことが、膨大
な聖王の意識の海に呑み込まれてもがくなのはの心を戦かせた。
553 :
7の1:2008/11/19(水) 21:20:13 ID:FHyS07q6
ディバインバスターを思わせる白光の砲撃をラウンドシールドで防ぐ若者の顔が痛みに歪む。
その眼下の聖王陵に対して戦艦群の質量兵器と魔導砲の集中砲撃が実施されようとしている。
砲撃の衝撃に耐えきれずラウンドシールドが砕け散るのと同時に魔導杖を長槍の形に変じ、神速の刺突で迫る
恋人を憂いを含んだ目で見つめる若者の周囲から、密度を最高度に高めた為に針金のようになったチェーンバイ
ンドが24本射出される。
突き出された槍が、死を前にしながらも微笑む若者の胸を貫くのと同時に24本のチェーンバインドが、涙に
顔を濡らす美女の背中から胸を貫き若者と美女を縛り付ける。
次の瞬間、聖王陵に墜ちる二人に合わせるかのように戦艦群の集中砲撃が、聖王陵を陵辱した。
死によって一つとなった二人が、大砲撃の閃光に包まれる聖王陵に墜ちていくのを見ながら、なのはの意識は、
悲しみの闇の中に溶けていった。
砲撃の閃光が収まった無傷の聖王陵の上で目覚めたユーノは、古代の映像記録でしか見たことのない、いにし
えのミッドチルダ時空管理局の誇った戦艦群”地獄の番犬たち”の砲門が、自分と自分の脇に横たわるなのはに
向けられていることに愕然とした。
「なのは・・」
自らの死を覚悟し、意識を失って横たわる恋人を救えなかった無力さを噛みしめるユーノの目が大きく見開かれた。
再び砲撃の準備に入った戦艦群の射線上に、突然、薄茶色のレインコートを羽織った壮年の男が出現したのだ。
554 :
7の1:2008/11/19(水) 21:21:46 ID:FHyS07q6
ユーノの目に映る男の背中からは、自分に向けられた戦艦群の砲門を睥睨し嘲笑っている雰囲気が漂っていた。
戦艦群の砲門が一斉に火を噴き、男の姿を一瞬にして消滅させるが、砲撃は聖王陵に届くことなく、戦艦群の
上方や下方、後方から降り注ぎ、戦艦を次々と打ち抜いていく。
自らの砲撃によって数を4分の1以下に減らし、算を乱して離脱を計る戦艦群の前に消滅したはずの男が再び
姿を現す。
男が心底くだらないといった仕草で指を鳴らすたびに、戦艦が不可視の手によって粘土細工のように捻り潰さ
れるという非現実的な光景がユーノの眼前で展開される。
最後の一隻が捻り潰されるのを見ながら、ユーノの意識は、安息の風に抱かれる。
ヴィヴィオは、自らの始まりとなった碑と対峙していた。何故、自分が古代ベルカの聖王の系譜に連なるのか
碑に浮かび上がった文字が語りかける。
「聖王、正義を望みし故、政は大いに乱れ、かくて世は混沌の海に沈む 光は闇を討たんとして、闇に墜ち、
燃え尽きん 陵墓、大いに嘆きて 正義を望みし聖王を空に放逐せり かくて聖王の世は、途絶えたり」
幼いヴィヴィオには全く理解できない言葉が、深層意識に眠っていた聖王の後悔と悲しみの記憶を蘇らせる。
自らの正義と信念に固執するあまり、故郷より追放され、ミッドチルダとの対立の果てに多くのベルカの民を
死に追いやりベルカ王国を滅亡させた自らの過ちに圧倒されたヴィヴィオは、忘却の海に放り出された。
「なのは、なのは!」「なのはママ〜」
ユーノとヴィヴィヴォの声に導かれ、闇空をひたすら上昇し続けるなのはを柔らかな緑色に包まれるリンカー
コアと虹色の光輝を放つリンカーコアが、さらなる高みにと導いていく。やがて闇の帳が開け、光の海になのは
は、浮かび上がった。
「ユーノくん・・・ヴィヴィオ」
「なのは、良かった」「ママァァァ」
「にゃははは、気絶しちゃった」
安堵の色を浮かべるユーノとわんわん泣くヴィヴィオに囲まれたなのはは、照れ笑いして、立ち上がろうとし
たが、全身の力が抜けてしまったらしく起きあがることができなかった。
「ユーノくん、腰が抜けちゃったみたい」
「なのは、僕につかまって」
真っ赤になってうつむくなのはをお姫様抱っこしたユーノは、黄色い輪の中で、ちびた葉巻をふかしている
マテウスを振り向いた。
「なのはを送りますので、これで失礼します」「マテウスおじさん、バイバイ」
「今日はありがとうございました。ユーノ博士、高町一尉、ヴィヴィオさん」
葉巻を口から放したマテウスは、珍しく真摯な口調で礼を言うと去っていく三人に深々と頭を下げた。
555 :
7の1:2008/11/19(水) 21:23:53 ID:FHyS07q6
第7章 無限書庫U
モニターに映ったリンデイの顔を見ながらユーノは、歯を食いしばった。
「無限書庫の人員増員の件は予算的に難しいわ。あなたも知ってるとおりJS事件で崩壊した地上本部の再建や
時空犯罪組織のAMFや戦闘機人に対処する武装局員の練度向上と増員に、管理局の予算を重点的に回さざるえ
ないのよ。わかってちょうだい」
同様のやりとりを今まで、何度繰り返しただろう。相手はJS事件を口実にしているが、それ以前を思い返せ
ば、大空港火災の復興事業や廃棄都市の治安対策などが人員増拒否の名目だった。
「しかし、無限書庫には、日々、各管理世界から収集された膨大な文献や資料が運び込まれて来ます。せめて収
集文献のおおまかな分類、保管を行う補助要員の採用をお願いします。民間協力者の採用と言うことであれば、
本局採用より低予算で採用できますし、僕にも当てがあります」
ユーノの必死の訴えに心底困ったといった顔つきで同情するリンディの目が、一瞬、細められたのをユーノは
見逃さなかった。
(やはり、真実だったか)
苦い思いが胸をよぎる。
自分も変わったかもしれないが、目の前にいるフェイトの義母の変容が、無性に悲しかった。
(あのころのままの心を持っているのは、なのはだけかもしれないな)
「そうね・・・・前から提案のあった補助要員の採用を次の評議会で提案する予定なんだけど、採用のための
特別予算を捻出するためには、評議会での採決が必要だわ、あまり期待しないでちょうだい」
そう言うとリンディは用事があるといって通信を一方的に打ち切った。
マテウスから送られたディスクのデーターを再生したユーノの眉間に深いしわが刻まれた。
(次の評議会とはよく言ったものですね。リンディさん)
目の前のモニターに映し出された次期評議会でリンディが提案する議題案件のリストの中に無限書庫に関するも
のが一つもなかったのだ。
もちろんマテウスから提供されたデーターが嘘の可能性はある。
しかしマテウスは、自分が嘘を言ってるかどうかわかる機会を提供すると申し出ているのだ。
「評議会にお出でになれば真実がわかります」
盗聴対策を施した特別回線のモニターに出たマテウスは、ユーノの出席がすべてを動かす鍵になると強調した。
「僕がいることがわかれば、提案すると思いませんか?そうなれば真実は藪の中でしょう。無限書庫の件は提案
しても通るとは思えない案件ですし、言うだけなら簡単なことです」
「藪を突いて蛇って伝承が、高町一尉の故郷にありましたね?」
「伝承と言うより教訓でしょう。なのはの故郷では、ことわざというそうです」
その蛇が出るんですよと言ったマテウスはレインコートのポケットを探って葉巻を取り出した。
556 :
7の1:2008/11/19(水) 21:26:31 ID:FHyS07q6
「仮にリンディ統括官が無限書庫の件を提案されれば、問題なく承認されます。そうなればユーノ博士にとって
も願ったりかなったりでしょう。如何です?」
苦い顔でうなずくユーノの脳裏に、今もデートリッヒの艦内に滞在という名で拘束されているレナードやラー
ナたちの顔がよぎる。
「ところで高町一尉はお変わりありませんかな?」
「相変わらずです。今日も武装隊の教導でしょう」
急に話題を変えた相手の意図をつかみかねるユーノの眼の前に、銀色のディスクが浮かんだ。
「例の症例に関する治療方法を記録したディスクです。エースオブエースの命を取引材料にしたって知られたら
なのはさんのファンのうちのかみさんに殺されますんでね」
いやぁ惜しいことです。ユーノ博士の首根っこを押さえられる絶対の切り札だったのにと葉巻に火を付けなが
らマテウスが愚痴る。
「診断の結果は?」
聖王陵サナトリウム院長にして、次元世界屈指の名医であるオリガ・バウアーの答えを切望する自分を抑え、
冷静な口調での問いかけたユーノに事務的な答えが返される。
「リンカーコアバースト症候群レベル3末期。早急にオペとリハビリをする必要があるそうです。現在の病状の
進行を食い止めるには休養あるのみ。あくまで進行を抑えるだけですがね」
「それは・・・」
不可能だという言葉を呑み込んだユーノの目は暗かった。
(なのはの翼を折る・・・それしかないのか?)
「鉄は熱いうちに打てってことわざがありますな」
「それを言うなら、時は金なりでしょうね」
思わず言い返したユーノだったが、語尾がかすかに震えていた。
「それでは、これで。かみさんと食事の約束がありますんで失礼します」
モニターの向こうで、懐中時計を取り出して時刻を確認したマテウスは、あわてて席を立った。
(時間はないのか、僕にもなのはにも・・・)
彼女が空から墜ちた日にリンカーコアバーストの危険性に気づいていればと、過ぎた日の過ちを悔いても、
しかたないとは思いつつユーノは、マテウスの姿が消えたモニターを長い間睨んでいた。
557 :
7の1:2008/11/19(水) 21:30:19 ID:FHyS07q6
「ユーノくん、明日だよ。明日、ヴィヴィオの6歳の誕生日」
モニターの中の恋人の笑顔は、その内部で進行する破滅を感じさせないほど輝いている。
「なのは、フェレットモードは良いけど、女装モードは勘弁してほしいな。アリサたちとの写真、ヴィヴィオに見せたね」
「ふぇぇぇぇ、ヴィヴィオ、あのアルバム見てたんだ」
「ユーノパパの絵って見せてくれたんだけど、結構ショックだったよ。って、なのは、あのアルバム、海鳴市に
置いてたんじゃないのかい?」
「にゃはははは、フェイトちゃんとはやてちゃんが、昔の写真を見たいって言うんで持って来ちゃったの。あれ
ヴィヴィオ見たんだ。ご、ごめんね ユーノくん、」
手を合わせて謝るなのはの肩は、笑いを必死で堪えているのか小刻みに震えていた。
「なのは、明日はフェレットモードオンリーだよ。ヴィヴィオにもフェレットのユーノパパが、やってくるんだよって言っておいて」
「うん、じゃあユーノくん、明日の午後3時だよ。忘れたら、頭冷やすから」
仕事の性質上、無限書庫で働く人間の時間感覚が狂いやすいのを知っているなのはは、ユーノに魔王の脅しを
かけた。
モニターの右隅に表示された時刻は午前2時を回わっている。
モニターに写し出されていくオペの手順と術後の予防措置、病変部を除去した後のリンカーコアの再生のため
のリハビリ、そのいずれもが聖王陵サナトリウムの協力なしには不可能だった。
ミッドチルダにおいては不治の病というより死刑宣告に等しいリンカーコアバースト症候群、発症者は、有無
を言わせず軌道ホスピスという名の牢獄に収容され死を待つしかないのだ。
無限書庫にある資料も不治の病としての記録しかない。
「レナードたちの件もなのはの病気もバウアー卿次第か」
評議員になりませんか?
無限書庫は聖王教会(八神)ハラオウン閥と見なされています。
レベル3末期ですな。早急なオペとリハビリが ・・・・
脳裏に繰り返される簡潔にして明瞭なマテウスの宣告
「なのはを救うんだ。悪魔にでも魂を売ってやるさ」
閉じたモニターに向かってつぶやくユーノの横顔は、歴戦の魔導師を思わせる闘志に満ちていた。
「再び鎖を手に」
終
次作 「翼を折る日」 現在制作中です。
558 :
ザ・シガー:2008/11/19(水) 22:40:21 ID:9krqs/l6
559 :
ザ・シガー:2008/11/19(水) 22:46:03 ID:9krqs/l6
ああ、書き忘れました。
投下乙でした!
スレ立て、投下共に乙です。
そして今夜は全裸待機させていただきますwww
つまり、ここは埋めろと。
ザ・シガー氏スレ立て乙です。
丁度私も出来上がりそうなので、ザ・シガー兄貴の後ろに席を取っておきます。
563 :
B・A:2008/11/19(水) 23:08:45 ID:p5sdHtnT
ならば、殿は僕が。
そしてザ・シガー氏スレ立て乙です。
564 :
ザ・シガー:2008/11/19(水) 23:12:40 ID:9krqs/l6
>>アルカディア氏
いやいや! お気になさらず投下なさってください!
まだ〆の部分を一箇所書き上げていないので、氏が投下できる状態でしたらどうか先に投下なさってください。
もう少し煮詰めた方が良いかもしれませんし、僅かな時間でも自分一人がスレを占有するのは良くないと思いますので。
あと、ぶっちゃけ俺は氏のSSが早く読みたいのでwww
>>ザ・シガー氏
済みません、私もラストの部分と見直しに、まだ少しだけ時間が掛かる状態です。
氏が投下されて+30分ほどあれば丁度かな、と思っていたのですが、生意気に席取り宣言などして失礼しました。
という訳で、私もB・A氏にパスを。投下可能なら、どうか切り込み隊長をお願いします!
566 :
ザ・シガー:2008/11/19(水) 23:24:09 ID:9krqs/l6
ウホ! 良い投下ラッシュ♪
よし、お前ら一番早く書けたやつが最初に投下しろ。
きっと良い気持ちだぜ?
567 :
B・A:2008/11/19(水) 23:24:16 ID:p5sdHtnT
>>アルカディア氏
実はラスト部分がまだ書きあがっていないんです。
お2人が投下中に完成すると踏んで書きこんだんです。
書きあがってもいないのに席取りなんて本当申し訳ありません。
後、僕のは容量オーバーなんで次スレになります。
なんだこの流れはw
………そして大穴になるために必死で仕上げている俺w
今夜は何のシンクロニシティですかww
完成したので、一番槍の栄誉を預かっても良いでしょうか?
投下は、折角なので次スレで良いですか?
ティーダがオセロットみたいだったら、という電波を受信したよ
テ「俺が…ランスター一尉だ」バッ(ポーズ)
クイント「ひとつのデバイスで、沢山のことをやろうとしすぎている。ツインデバイス向きね」
「でも、判断力と射撃は良かった…いいセンスね」
テ「いい…センス」
クロス向けかな?
571 :
ザ・シガー:2008/11/20(木) 00:03:04 ID:9krqs/l6
>アルカディア氏
ツナギを全て脱いで待ってる。
空気を読まずに投下しても大丈夫でしょうか?
カリムは恋愛とかいけるんだろうかとふと思った。
574 :
7の1:2008/11/20(木) 00:45:29 ID:iciKkvxZ
>>572 次スレでアルカディア氏が投下されておりますので、
このスレでの投下をお待ちしております。
ありがとうございます
エリオ+ルーテシア
・エリオがキャロと微妙な関係なのにルーに告白
なんで二股?が赦せない方はスルーして下さい
珍しくエリオが一人で遊びに来た。
突然の来訪に驚きはしたけど、他愛のない話をしながら、一緒に夕食を作り、
3人で食事をした。
無人世界を探索したいとエリオが言うから、湖まで案内した。
月明かりがきらきら湖に反射して、とても綺麗で、私のお気に入りの場所。
そんな時だった。
1つ年上のエリオ・モンディアルに「好きだ」と言われたのは。
正直に言えば、エリオが何を言っているのかさっぱり判らなかった。
なに?
友人として?
・・・この雰囲気で?
それは本当に「好き」だという感情?エリオが判らない。
君が好きなんだ、とあっけなく伝えられた言葉は一言だった。
エリオの感情が判らない。告げた後も、いつものように笑っているだけで、
赤面症で無いせいで顔色一つ変える事も出来ず、いや、どういう顔をしたらいいのか良く判らない。
エリオは何も言わない。私も言わない。
どうしたらいいんだろう?
・・・・そもそも、「好き」に対する答えを望まれているのか?それすら分からない。
この場所には2人しか居なくて、つまり誰のフォローは入らない。
いつもならキャロやヴィヴィオが居て、行き詰った会話には
なんらかのアクションを起こしてまとめてくれるけど、
あいにくと今は2人しかいないし、この現状を生み出したのはエリオ。
つまり何も起こらない。困った。これは本当にどうしたらいいんだろう。
そういえば、カリムって何歳なんだ?
何かを言えば、この現状は打開できるかも。
なにを伝えらればいいか。
考える。頭の中で羅列した。
何を言ってるの
気の迷い?
疲れているの?
キャロはどうするの?
冗談は程々にして
キャロと何かあった?
本気?
嬉しい
私も
本当はエリオなんか大嫌い!
・・・どれを言えばいいのだろう。
考えて、どれも自分の感情に当てはまっていると気付く。
そうなのだ、エリオ・モンディアル。この人は嫌いじゃない。
時折嫌いになる事もあるし、だけどありがたいと思う事も、好きだなと思う時もある。
こんなぐちゃぐちゃの気持ち、なんて言ったらいいのかわからない。
時間は刻々と過ぎてゆく。
デジタル式の腕時計がコチコチと音を立てているような気がした。
時間。・・・・そうだ、時間。エリオがこの世界に居る事が出来るのは、
あともう少しだけ。
こんな事に、時間を消費していていいのか?良い訳がない。
じゃあ、この時間は無駄なんだろうか?
目の前にエリオが居て、よくも穴が開くほどと思える程に、こちらを見ている。
・・・・その瞳は何が言いたいのか。判らない。
何を考えているのかなんて判らない。
こぶしに、じっとりと嫌な汗が伝った。
何故たった一言にこんなに考えこまなければいけないの。
この場から立ち去ればいい。何も言わずに立ち去れば無かった事にしたらいい。
エリオが好きだといってきた、それは夢として考えておけばいい。
あれはまぼろし、冗談だったと。
振り返ってそろそろ帰ろう、そう言えばいい。そうしたらうやむやですむ。
・・・でも、そういった場合、好きだと言ったエリオはどう思うのだろう。
「好き」という気持ちは本当なのか。嘘なのか。冗談なのかもしれない。
だって、エリオにはキャロが居る。
・・・もうなんでもいい。とりあえず、この現状をなんとかしたい。
何でここにヴィヴィオはいないの。キャロでもフリードでもいい。
ガリューでもいいから何かを言ってくれたら時間は動くのに。
・・・汗が背中にまで伝ってきて気持ち悪い。
でも、その汗の滴り方が、人の指先の動きに似ていて、びくりと身体が動いた。
「好き」というのは、私を『オンナ』として見ているから好きだというのだろうか。
・・・・もしかしたら、セックスの相手を望んでいるだけなのかも?
今までの経験を思い返す。
・・・・・・大人の相手をするよりはずっとずっと、エリオの方がマシなはずだ。
この気持ち悪いほどの静寂の中で、黙りこくったまま時間を浪費するよりも、
『ケガサレルオジョウサマ』になってしまった方がよっぽど楽のような気がしてきた。
相手はエリオ。
ここには2人しかいない。1人で来たということは、そういうことなんだろう。
エリオの目はまっすぐで、逸らされず、どうしたらいいのか判らないが、
だんだん慣れてきたのも事実。
色んなことをエリオとしてみたい。
ふと、そう思った。
めぐりめぐった頭の中で答えが導き出されたとき、驚く程からだから力が抜けた。
エリオの目を見据えて、手を伸ばして顔に触れる。
エリオがびくりとしたのが指先に伝わったが、かまわず触れた。
そうだ。答えはこれ以外に見つからない
「ル・・ルー・・・」
「わかった、セックスしよう」
「・・・ええええええええええええええええええええ??!!!」
ルーテシアの可憐なくちびるから放たれた爆弾発言は、
思春期真っ只中の少年の心に強く深く苦しく悲しく突き刺さった。
あーしまった。
カリムで作るとしても相手がいない…どうしよう……
投下終了です
ルー視点で見たらエリオとキャロは付き合っているけど、
実際に付き合ってない、という勘違い話です。
SSX聴いてないのでルーの居る世界に関しておかしい部分があれば本当にすみません
おっと、割り込んだみたいだすまん。
乙でした。
ルーテシアの爆弾発言が…w
>>580 他はベルカ騎士見習いのエリオかロッサとはやての繋がりでユーノとかか?
ザフィは…どうだろうなぁ
ゼストも古代ベルカだが地上本部の人だったのでその辺が難しいかも
>>581 GJ。
ルーの勘違いっぷりが実に良い。
>>580 クロノかロッサか。オリキャラありなら教会の司祭や司教とか教会騎士団のメンバーとか。
凌辱ありなら騎士団に輪姦とか街角で性的ボランティアとか。
いかん、思考がそっちよりにw
清楚な方だから輪姦に一票。
6課設立の為に体を売る…ってのは?<カリム
はやてを守るために体を売るも結局ははやても巻き込まれてまとめて輪姦とか。
>>581 ルーが暴走www
笑えたぜ! GJでした〜。
アリサとかすずかと言った面々と六課陣の絡みってどんな感じになると思います?
アリサ「どいつもこいつもツンデレ、ツンデレ…釘宮だからって安直に…」
ティア「分かります…良く分かります、その気持ち。テレながらちょっとそっぽ向くとすぐツンデレ、ツンデレ…」
士郎「どうだい、一緒にお風呂でも」
エリオ「わ、凄い…傷痕だらけ…」
>>580 俺は大穴でなのカリがみたい
はやてではなくあえてなのはさん
>>570 つまり、
スバル「待たせたね」
ギンガ「まだよ、まだ終わっていない」
ノーヴェ「今日は何日だ」
ユーノ「君も、オタクかい?」
なのは「え!?」(砲撃→狙い撃ち→狙撃→わたし、最後は死んじゃう)
ヴィヴィオ「サニーだよね、ヴィヴィオ、サニーだよね?」(最終回のユーノは何だか保護者みたいだった→義理の○○な関係→最後に死んじゃう)
シャマル「ほ、他に該当する人が・・・・・」(医務官→白衣→ナオミ・ハンター→やっぱり最後は(以下略))
>>581 GJ!
もちろん続編はありますよね?
ここで終わるのはキツすぎますぞ。
エリルーの二人がどうなるかもう気になって仕方ないです。
>>593 士郎とエリオがどうみても
興<やらないか
カリムが三十路で、今だ経験なしならとんでもねぇエロが出来そうだw
成人してからの慣らし無しの強い快楽は麻薬に似るって感じw
以前六課設立の為にヴォルケンが偉い人に体を売ってるって設定で
カリム×ザフィのネタを考えたことがあったけど、カリムが
サイヒ氏の不倫時空純情ビッチカリムの劣化版にしかならなくて頓挫したな
ビッチキャラ難しい……
カリム×ヴェロッサでいいなら書いてみるけど。
>>581 GJ!!!
エロありの続編を望んでいるのは自分だけじゃないと信じたい
ルーの勘違いだと言い出せずに魅力に負けてHしてしまうエリオ
その上キャロよりもルーの方が素敵だと思ってしまって、その後も隠れたもう一つの恋愛を…
みたいなストーリーをすごく期待
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ = 完 =
,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
从 iヽ_)// ∠ 再 開 !!!!
.(:():)ノ::// \____
、_):::::://( (ひ
)::::/∠Λ てノし)' ,.-―-、 _
______人/ :/´Д`):: ( _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::( .n,.-っ⌒ ( ノlll゚∀゚) .(゚Д゚llソ |
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r' ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
||__| (::()ノ∴:・/|::| ./:/ /  ̄/__ヽ__/
|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/ ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/ .( ヽ ::|
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_ /⌒二L_ |
──────── ー' >ー--'
巛ノi
ノ ノ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノ')/ノ_ら ∧_∧ | いきなり出てくんな!!
、)/:./、 ( ´Д`) | ビックリしたぞゴラァ!!!
)/:./.:.(,. ノ) `';~"`'~,. \ ________
\\:..Y:.( ・ '' :, ,. -―- 、|/
_____ 从\、,. ,; .,、∴';. ・ ( _ノ~ヾ、ヽ
|__|_ _(_:..)ヽ:∴:@) ノ(゚Д゚ #) )
|_|__|_人):|:・:::∵ヽノ) (_(⌒ヽ''" `ー'
||__| (::()ノ∴:・/|::|( \ \ \) ) _
|_|_| 从.从从:/ |__|::|ノ \ ミ`;^ヾ,)∃ < へヽ\
|__|| 从人人从 ..| /:/ _,,,... -‐'''"~ /ー`⌒ヽ、 (( (゚Д゚llソ |
|_|_|///ヽヾ\ ./:/ _ \ / /T;) /~  ̄__ イ
─────── ノ (, \/__/__,ノ|__`つ ヽ__/
´⌒ソノ`
______/ \____
|__|__|__/ / ヽヽ,|__|
|_|__|___い 、 , ,ソ_|_|
|__|___/ ̄`^⌒´ ̄\_.| .l´~ ̄ ̄ ̄`.lヽ
|_|_| | |_| / ⌒ ⌒ ⌒ .| !
||__| 从ヽ-i´ ,_ ,_ 'i-'"_| / ___ _ _ ___/,イ
|_|_|从イ/´:::::::::::::::::::::::`i、_| / ̄ /i.|
|__||从/:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,._| ~||~~~~~~~~~~~~ ´||
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ヽ、
, :<´ ̄ ̄> 、}}ノ
ー=≠": : : : : : : : : : : : :\
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i.: ::{ 斗-ハ: : :}十ト:i :}: :}: :}
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v|八:代り ソ辷リ }/: :i /
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Yヽ. ヽノ /: /ヘ
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/⌒ヽ /i>く´ }ヘ\}
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/^こヽ{ : : : / :| ,ハ ∧: : }: : : : : : : : :`ヽ
ノ ヽノノ: : : : >:|/ || /: :`<: : : : : : :/: : : :}
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