1 :
名無しさん@ピンキー:
>>1乙!
前スレ埋まってないけど、とりあえず即死回避のためにSS投下しておきます。
ほんとは前スレに落とせばよかったんだろうけど、容量が…orz
それでは、僭越ながら一番手いただきます。
一口に冒険者と言っても、その目的は様々だ。
強さを求める者、富を求める者、名誉を求める者、好奇心を満たすために地下道へ潜る者。
それ以外にも色々いる。中には学生生活に憧れて、などという者もいるが、それでも冒険者には違いない。
その志を共にし、学生達はパーティを組み、地下道へ行く。ある者は力をつけ、一流の冒険者となり、ある者は死んで朽ち果て、
またある者は僅かな探索で満足し、いつまで経っても二流のままであったりする。
彼の所属するパーティもまた、そんな永遠の二流を地で行くものだった。
特にこれと言って高望みするわけでもなく、決して無理をすることなく、言い換えれば冒険することのない一行。
浅場で確実に勝てる相手と戦い、そこそこの戦利品で満足し、探求心などというものとはおよそ無縁だった。
最初はそれでよかった。決して無理をせず、僅かな戦利品にも喜び、戦いが終われば仲間の無事を喜び合った。
しかし、ある程度の力をつけた今、彼はだんだん意識の違いというものを感じるようになっていた。
もっと強い敵と戦いたい。もっと良い物を手に入れたい。新しい地下道に入ってみたい。
そう思うようになった彼と、パーティの意思とは決して相容れないものだった。
だがそれも、当然といえば当然の結果。
確かに、彼は結成当初からこのパーティと共にいる。しかし、その面子は既に大半が入れ替わってた。
ロスト。それはただの死よりも、遥かに恐ろしい死。
味方を庇ったバハムーン。脆弱であるがために目を付けられたフェアリー。わが身を犠牲にして敵を道連れにしたフェルパー。
誰一人、忘れることなど出来ない。そしてパーティの大半は、その恐怖から冒険を嫌うようになっていた。
だが、彼だけは違った。結成当初のように、まだ見ぬ地下道に思いを馳せ、その先にある世界に憧れていた。
その思いを、他の仲間に打ち明けたことはない。しかし、その思いはもはや隠しきれないほどに大きくなっていた。
「敵だ。気を抜くなよ。」
彼の言葉に、全員が一斉に身構える。だが、これほど熟練した面子であれば、むしろ努力しなければ負けることなどできない相手だ。
物足りない。その一言が全て。相手の強さも、その戦利品も、そして戦いを越えた先の世界も、何もかもが物足りず、退屈だ。
その満ち足りない思いは、目の前の不幸なモンスターに向けられた。
キラーバットを一撃で切り倒し、デブガエルに鬼神切りを繰り出し、プランクトルには剣すら使わず、素手で殴り倒す。
戦闘が終わり、一息つく一行。その彼を隣で見ていたディアボロスが、スッと彼に近寄る。
「何か、不満があるのか?」
「……よくわかるね。」
彼女は、彼以外では唯一となる結成当時のメンバーだ。嫌われがちな彼女だが、ずっと一緒にいた彼とだけはさすがに仲がいい。
「付き合いは長いからな。それに、理由もわからないではない。」
「そりゃどうも。でも、無理な話かな。」
「私はもう、誰も失いたくない。あんな思いは、もうたくさんだ。」
その顔はあまり表情を出さないが、目を見れば何を考えているかぐらい、すぐにわかる。
付き合いの長い彼女の言葉は、彼にも重くのしかかる。それ故に、彼は思いを殺したままで、ただただ物足りない日々を送っていた。
だが、ある日の夜。学食で遅い夕飯を取っていると、ふと一人の生徒が彼に近づいた。
「少し、いいかな?」
そう声をかけてきたのは、小さな体のフェアリーだ。少なくともこれまでに面識はない。
「何の用?」
「君さ、今日ホルデア登山道にいなかった?」
「ああ、いたけど。それが何か?」
「やっぱり。いやね、僕も今日あそこにいたんだけどさ。君、滅茶苦茶強いよね。」
「それはありがとう。」
「いや、別にただ褒めにきたんじゃなくって。あのさ、どうしてあんなに強いのに、あんな弱い所でちまちまやってるのかな?」
その質問に、彼はすぐには答えられない。
「何かしら理由はあるんだと思うけどね。でも、こう言っちゃなんだけど、もったいないよ。」
「もったいない……か。」
「あ、いや、気を悪くしたんなら謝るよ。だけどさ、君ぐらいの強さだったら、ポストハス辺りでも通用するはずだよ。」
そこで、フェアリーは心を落ち着けるように、大きく息を吸った。
「それで、ここからが本題なんだけどね。僕達のパーティ、欠員が出ちゃってさ。」
「ロスト……か?」
「まあ、そういうこと。でも、冒険者なんだから、それぐらいは覚悟の上だし、そんなに気にしてはいないけど。」
同じ冒険者でもこうまで違うのかと、彼は内心驚いていた。
ロストの恐怖から、冒険することをやめた自分達。仲間をロストしてなお、先に進もうとする彼等。
どちらがいい悪いということはないにしろ、感覚が違いすぎる。だが、どこかでそんな考えをする彼等に惹かれてもいた。
「それでね、欠員っていうのは前衛なんだ。だけど、なかなか腕のいい前衛っていなくってさ。その点君なら、十分僕達とやっていけると
思うんだ。ヒューマンだから、苦手って人もいないだろうしさ。」
「それで、今の仲間を捨てろって、そういうわけかい?」
「う……そんな、僕が悪者みたいな言い方しないでくれよ。僕はただ、君があれほどの力持ってて埋もれてるのが、
勿体無いと思ったから…。」
「いや、確かに意地悪な言い方だった、ごめん。だけど……ちょっと、考えさせてくれないかな?こっちにも、心の準備とかあるしさ。」
そう言うと、フェアリーはホッとした笑顔を浮かべた。
「それはもちろん。僕だって、無理矢理連れて行こうとは思わないからさ。僕達、一週間は滞在する予定だから、またそれぐらいしたら
返事よろしく!いい返事、期待してるよ!」
弾んだ声で言うと、仲間と思われるグループのいるテーブルに飛び去るフェアリー。その後ろ姿を見送りながら、彼は深い溜息をついた。
彼の力を認め、仲間に誘ってくれるのは嬉しい。しかし、彼等と共に行くには、今の仲間と別れなければならない。
例え大部分の面子が変わってはいても、入学当初から共に戦ってきたパーティなのだ。そう簡単に別れられるものではない。
猶予は一週間。それまでに、答えを出さなければいけない。
最初の三日は、それを言い出すことすら出来なかった。ただ、いつものように勝つのが当然の戦いをし、物足りない収穫を得、寮に戻る
生活だった。だが、さすがにこのまま言わないということはできない。
その日の夜、彼はディアボロスの部屋を訪ねた。他に仲のいい仲間はいたが、やはり結成当初からの仲間である彼女へ
最初に知らせるべきだと思ったからだ。
「それで、話というのは?」
そう尋ねる彼女の顔は、既に何かしらの予想は出来ているといった感じだった。
「ああ。実は、この間他のパーティから勧誘受けてさ…。」
彼が事の仔細を伝えると、彼女はさして驚いた様子も見せず、ふぅ、と息をついた。
「それで、お前自身はどうしたいと思っている?」
「え?俺?」
「当たり前だ。例えここで私が止めたとして、お前がそっちに行きたいと思っているのであれば、引き止めることは無粋というものだ。
もしこのまま留まりたいと思っているなら、さっさと断りに行くべきだ。」
「むう……それはそうなんだけど…。」
「その前に、一つ聞こうか。」
ディアボロスは、ヒューマンの目を真っ直ぐに見つめた。その強い視線に、彼は視線を逸らすことも出来なくなる。
「いいか、本心で答えろ。」
「あ、ああ。」
「もう既に、お前の心は決まっているんじゃないか?」
まるで短刀で胸を抉るような、鋭い一言だった。その目、その言葉、その雰囲気が、口先だけの言葉は許さないと語っている。
改めて、自分の胸の内に問いかける。考えれば考えるほど、彼女の言葉が強く胸に突き刺さっていく。
やがて、彼は目を伏せ、重い口を開いた。
「ああ……その通りだな。」
一度深呼吸をし、目を開く。そして、彼女の目を正面から見つめ返す。
「今まで……世話になった。」
その言葉を受けても、彼女は視線を外さなかった。ただ無言で、彼の目を見つめている。
彼もまた、視線を逸らさなかった。お互い意地でも外さないというように、そのまましばらくお互いを見詰め合った。
が、やがてディアボロスがフッと笑い、視線を外した。
「やはり、な。前々から、いつかはこうなるだろうと思っていた。」
「ディア…。」
「ああ、言うな。言えば未練が湧く。未練が湧けば、いかに固い決心も鈍る。」
まるで全てわかっていたような、驚きも悲しみもないその顔。むしろ、一人の仲間が新しい道を選んだことを祝福するような、
そんな笑顔すら浮かべていた。
「明日、その話をみんなに伝えよう。お前がいなくなるとなれば、何かとしなければならないことも多い。それに、喧嘩も予想される。」
「そうか……そうだな。ごめん、俺のわがままに…。」
「いいさ。お前はこんなところで燻っているべき人間じゃない。受け入れる器が見つかったのなら、そちらに移るべきだ。」
引き止めるでもなく、ただ自分の気持ちを汲んでくれるディアボロス。その彼女に、彼は心の中で感謝した。
翌日、彼は他の仲間にも彼の決定を告げた。
反応は様々だった。怒る者もいれば泣く者もいたし、怒りこそしないものの、なじる様な言葉をかける者もいた。
が、その度にディアボロスが彼を庇ってくれた。元々嫌われ者の種族であるため、その度に怒りの矛先は彼女に向かった。
「お前、なんで知ってるんだ?知ってて言わなかったのか?」
「あなた達は付き合い長いから、言葉がなくとも通じるのでしょうけれど。わたくし達には、声なき声は聞こえませんわ。」
「これだからディアボロスは…。性格悪いんだよな、元々が。」
それらの悪態にも、彼女は何も言わずに耐えた。彼が何か言おうとすれば、目でそれを押し止めた。
それでも彼女を庇おうとすると、他の仲間に聞こえない低い声で言った。
「喧嘩別れは最悪だ。だが私が悪者である限り、お前が悪者になることはない。」
「でも…!」
「黙って任せろ。今だけは、私は自分が嫌われ者であることを嬉しく思っている。」
恐らく、彼女は彼女なりに覚悟を決めていたのだろう。その覚悟を邪魔することなど、彼には出来なかった。
結局、いつしか彼ではなく彼女が悪者にされた。彼にはとても納得できなかったが、ディアボロスは笑っていた。
「これでいい。彼等とて、いつまでもこんな調子ではない。ただ、お前はもう姿を見せるな。今日を限りに、向こうへ行くんだ。」
「お、おいおい。それは急すぎ…!」
「言っただろう?未練が残れば決心も鈍る。それはお前だけではない。彼等とて同じだ。このままズルズルと留まれば、別れ際に未練を
残す者が必ず出るぞ。」
彼にとっても辛いが、それは確かに当たっていた。
「それに、急なのはみんな同じだ。お前自身にも責任はある。それを自覚するなら、耐えろ。」
「そうだな……その通りだ。」
寂しくないわけがない。ずっと一緒だったのだから。しかし、自分が選んだ道だ。ならば、辛くとも耐えなければならない。
「君とも、これでお別れか。」
「言ってくれるな。私も寂しくなる。」
「おっと、ごめん。……いつか、また会える日も来るかな?」
「さあな。来るかもしれないし、来ないかもしれない。願わくば、来ることを神に祈るか。」
冗談めかして言っているものの、その目は寂しそうだった。その目に、彼の決心も鈍りかける。
「さ、もう部屋に戻れ。もう、お前と私は命を預ける仲間ではない。」
「そう……だっけな。わかった。それじゃあ、またいつか。」
笑顔で言うと席を立ち、部屋を出る。彼女の視線を背中に感じながら、彼はそのまま部屋を出た。
そして部屋のドアが閉まった瞬間、二人は同時に顔を伏せていた。
パーティ加入の意思を伝えると、フェアリーは実に嬉しそうだった。
ただ、周りの反応を見る限りでは、どうも彼の一存で引っ張り込まれたという気がしないでもない。
それでも、彼等は揃って新しい加入者であるヒューマンを歓迎してくれた。
そして親睦会も兼ねて向かったパルタクス地下道。そこで見た彼の力量は、全員が改めて歓迎の意を表すほどだった。
その彼等も負けず劣らず、全員が相当な実力者だった。ある意味では全員がライバルであり、それが実に心地いい刺激になる。
加入していくらも経っていないのに、彼は既に居心地のいい場所だと思い始めていた。そしてこれならば、
元パーティだった彼等のことも、すぐに忘れられそうだとも思っていた。
加入すればすぐ旅立つのかと思っていたが、彼等にとっては久々のパルタクスらしく、加入の意思を伝えたところで
出発日は変わらなかった。
そんなわけで、彼は残りの数日をダラダラと過ごしていた。とはいえ、これから長旅になるだろうし、
その準備だけは着々と進めていたが。しかし、元の仲間に会うのは気まずいので、外出はできるだけ避けていた。
一日経ち、二日経ち、そして最終日の三日目。
早めに夕食を取り、準備の最終確認を終え、あとは寝るだけというところまで準備を進めたものの、これからの期待と不安になかなか
寝付けないでいた。既に時計は日付が変わったことを告げているが、一向に眠くならない。
こんなに目が冴えてしまったのはどれぐらいぶりだろうと思いつつベッドでゴロゴロしていると、不意に部屋のドアがノックされた。
「ん?誰だい?」
尋ねても返事はない。そもそも、こんな時間に用事がある奴なんていたかと訝しみつつ、念のためにとダガーを構えて鍵を外す。
慎重にドアを開けると、そこに立っていたのは紛れもない、あのディアボロスだった。
「え…!?どうして今更…!?」
「すまない、こんな時間に。」
静かな声。つい三日前まで聞いていたはずの声なのに、なぜか懐かしく感じる。
ともかくも部屋に入れると、ディアボロスは椅子にも座らず、立ったままでヒューマンを見つめている。
「一体どうしたんだ?会わない方がいいって…。」
その質問にすぐには答えず、彼女はすっと視線を外した。
「そうだな。確かにそう言った。」
呆れたような声で言うと、再び視線を合わせる。
「だが、散々偉そうなことを言っておいて恥ずかしいが…。」
「……が?」
「すまない。未練を残していたのは、私の方だ。」
「それで……最後の挨拶に?」
「そんなところだ。」
ディアボロスは、ふぅ、と消え入りそうな溜息をついた。
「覚えているか?初めて私達が会った時、お前も含めてみんなが私を避けていた。」
「あ……ああ、まあね。」
「だが、あのバハムーンをロストし、フェアリーも消え、フェルパーも失い、エルフすらいなくなり……その度に、新しい仲間を
迎えたな。」
「……懐かしいな。あまり、思い出したくはない出来事だけど。」
「そして仲間を迎える度。」
ディアボロスはヒューマンの言葉に構わず続ける。
「私は、いつも避けられた。しかし、いつもお前が私とそいつの間に入って、その仲を取り持ってくれた。」
「………。」
「本当に、言葉にできないぐらい嬉しかった。お前となら、どんなことでも乗り越えられると思っていた。
だが、今度はそのお前がいなくなってしまう。」
寂しげに笑うと、ディアボロスはまた視線を逸らした。ヒューマンもまた、顔を合わせられなかった。
今になってそんなことを言われても、もう戻れない。もし、それを先に言ってくれれば…。
そこまで考えて、彼は気づいた。
彼女は、わざと言わなかったのだ。言ってしまえば、その言葉が彼を縛るのが目に見えていたから。
「ただ、な。その前に、一つだけ頼みがあるのだ。」
「なん……だい?」
ディアボロスは目を逸らしたまま、自分の制服に手を掛けた。
「もし、お前が私のことを少しでも想ってくれるのなら。」
「っ…!」
その手が動くたび、ゆっくりと制服が剥ぎ取られてゆく。
上着を脱ぎ、シャツを脱ぎ、ブラジャーを外し、そして一糸纏わぬ姿を晒してから、ディアボロスは顔を赤らめつつ、視線を合わせた。
「私を、抱いてくれないか。」
一瞬、彼は迷いを感じた。このまま彼女を抱いてしまえば、恐らく自分も未練を残すのではないかと。
だが、それは彼女の言葉を打ち払う理由たり得なかった。たった今聞いた、彼女の気持ち。そして覚悟。
ヒューマンはそっと、彼女の体を抱いた。
「いいのかい…?俺なんかで…?」
「お前だから、だ。」
そこまで聞くと、もはや迷いなどなかった。
自分とほとんど変わらない背丈の彼女の顔を、正面から見つめる。その顔には、強がりと恥じらいが入り混じった表情が浮かんでいる。
そっと顔を近づける。ディアボロスは目を閉じて応える。
柔らかく、暖かい唇。こんなに暖かかったのかと、今更ながらに驚く。
不慣れな感じで舌を絡める。最初はおずおずと。やがて、少しずつ大胆に。そしていつしか、お互い貪るように激しいキスとなる。
フッと、ヒューマンは後ろに体重をかけた。
「あっ…!」
倒れ際、器用に体勢を入れ替え、ディアボロスをベッドに組み敷く。彼を見上げる瞳は扇情的で、この上なく美しく感じた。
そっと、ふくよかな胸に手を触れる。
「んっ!」
ディアボロスの体が、ピクンと震えた。
「ごめん、驚かしちゃったかな。」
「だ、大丈夫だ。」
優しく、その胸を揉みしだく。声を上げるのが恥ずかしいのか、ディアボロスは顔を真っ赤にしつつ、
目をぎゅっと瞑ってそれに耐えている。時折漏れる声が、何とも愛らしい。
ふと、ディアボロスが目を開けた。
「あ、あの…。」
「ん?」
「その……私、も……お前に…。」
「あ、ああ。」
胸から手を離すと、ディアボロスはヒューマンの制服に手を掛けた。どことなくぎこちない動作で、ゆっくりとそのボタンを外していく。
やがて、ヒューマンも生まれたままの姿となり、つい気恥ずかしさから視線を落とす。
「その、あまり詳しくないのだが…。て、手ですればいいのか?」
「そ、そう……だね。いきなり口とかはいいから。」
そっと、ヒューマンのモノに手を伸ばすディアボロス。既に硬くなったそれを握ると、ピクンと跳ねた。
「あ……熱いな。」
独り言のように言うと、そっとそれを扱き始める。初めて他人から受けるその感覚に、ヒューマンは思わず呻き声を上げる。
「だ、大丈夫か?」
「ああ、いや。気持ちよかっただけだ。」
「そ、そうなのか。」
痛がったわけではないと分かり、ディアボロスはまたそれを扱き始める。彼女の手が、自分のそれを握っているというだけでも、
ヒューマンにとってはかなりの刺激だった。だが、それどころか扱かれているのだ。長く耐えるのは、さすがに無理な話だ。
「ディアボロス…、ちょっと待ってくれるかい…?」
「ん、どうした?」
「その、俺もしてもらうだけじゃ何だし、さ。」
「そ、そうか。で、その……どうすればいい?」
「俺の上に、乗るような感じで。そう……いや、違う。逆、逆。お尻、こっちに向けて。」
ベッドの上に寝転がり、いわゆるシックスナインの体勢に持ち込む。さすがに、ディアボロスは恥ずかしそうに身をよじった。
「こんな格好……恥ずかしい、ぞ…!」
「俺もだから、それでお相子だろ。」
言いながら、ディアボロスの秘所に指を這わす。
「んんっ!」
腰がピクッと跳ねる。その反応を楽しみつつ、ヒューマンはそこをそっと広げた。
浅黒い肌。しかし、その中はきれいなピンク色に染まっている。初めて見たそこに少しドギマギしつつ、そこに舌を這わせる。
「んああ!あっ!あっ!」
初めての感触に、激しく反応するディアボロス。だが、やがてその目に反抗的な光が浮かぶ。
「く…!私だって……んっ!」
「うあ!?」
負けじと、ヒューマンのそれを口に含むディアボロス。いきなりの反撃に、思わずヒューマンの動きが止まる。
だが、すぐに気を取り直し、再び舌での攻撃を再開する。
ヒューマンのそれを口に含み、舌を絡めるように舐め、また吸い上げるディアボロス。ディアボロスの秘唇を舌でなぞり、時には小さな
突起を突付くように舐めるヒューマン。
部屋の中に、お互いの秘所を舐めあう淫靡な音が響く。
しかし、お互いにそろそろ限界だった。
「お、おい。その……もう、そろそろ…。」
「ああ、俺も、もうこれ以上は無理だ。」
ベッドの上に座り、ディアボロスを正面から抱きかかえる。ディアボロスは不安そうな目をしているものの、
もうそれなりの覚悟はできているらしい。
「いいか、いくよ。」
「ああ…。」
少しずつ、ディアボロスの中に侵入していく。ディアボロスはぎゅっと目を瞑り、その痛みに耐える。
ふと、何か引っかかりを感じた。それが邪魔して、それ以上奥には入れない。
「え……お前、もしかして…!?」
「いいんだ…!頼む、そのまま…!」
さすがに躊躇いはあった。しかし、もうこの先彼女と会うことは、恐らくない。そして彼女も、それを望んでいた。
ディアボロスの体を、強く抱き締める。そして、その体をグッと沈めると同時に、腰を強く突き出した。
「ぐうぅっ!」
何かを引き裂くような感触。ディアボロスはぎゅっと閉じた目尻から涙を溢れさせる。
「くっ……大丈夫かい?」
「……ああ……大丈夫、だ…!」
「でも、血が…。」
「気にするな…!これぐらい……何でも、ない…!」
かなり辛そうな声。さすがに動く気にはなれず、少し抱く力を弱めた。そして、頭に浮かんでいた考えを口にする。
「……なあ。お前も、俺と一緒に行かないか?そうすれば…。」
「誘いを受けたのは、お前だけだ…。それに、言った……だろう?私は……もう、仲間を失いたく……ない。
その私が……仲間を失っても、歩き続ける者達と……行けると、思うか…?」
弱々しくも、固い意志を感じさせるその声。それは、続く言葉を押し止めるのに十分な迫力があった。
「例えひと時でも……お前と、同じ道を歩けたのだ…。それだけで……もう、十分だ…。」
「……そうか。」
それ以上、かける言葉はなかった。
「動いても……いいかい?」
「ああ…。もう、大丈夫だ…。」
負担にならないよう、ゆっくりと腰を動かす。初めて感じる彼女の中は熱く、下手をするとすぐにでも達してしまいそうになる。
だが、これが終われば、もう会うことはなくなる。ヒューマンの中に、思い切り動きたい気持ちと、このままでいたい気持ちが交錯する。
「はっ…くぅ…!もう、少し……強く、動いて、いいぞ…!」
「はぁ……はぁ……あ、ああ。」
少しずつ、ディアボロスの痛みも消えていく。そして、ヒューマンもだんだんと欲望に逆らえなくなり、その動きは激しくなっていく。
それでも、やはり躊躇いはある。ヒューマンは欲望のままになるのを、今一歩のところで抑えていた。
その時、不意にディアボロスが強く抱きついてきた。今まで顔を合わせるようにしていたのが、頬と頬をくっつけるようになる。
「あっ!うっ!い……いいか…!?今から言うことは……んっ!……一時の、気の迷いから出た……独り言だ…!
決して……心に、留めるな…!」
「……?」
一体何を言い出すのかと、ヒューマンは少し動きを弱めた。
ディアボロスはヒューマンの体を痛いほどに抱き締めた。
「……く…!ひっく…!離れたく……なかった…!ずっと、一緒にいたかったよぉ…!」
肩に、パタパタと熱いものが当たり、背中を伝って流れていく。
ヒューマンは唇を血が出るほどに噛み締め、その目をぎゅっと瞑った。
「うああああぁぁぁぁ!!!」
迷いを振り払うように叫び、ディアボロスを押し倒すと、欲望のままに思い切り腰を打ち付ける。
「うああ!!そ……そうだ、もっと強く!私を、壊してくれ!全部、忘れて……忘れさせてくれえ!!!」
お互いの顔をすれ違わせ、自棄になったように叫ぶ二人。何も聞きたくなかった。何も考えたくなかった。
心と裏腹に快感は高まり、やがてヒューマンは限界に達する。
「もう、出る!」
「こ……このまま、中に…!」
「でも…!」
「いいんだ!私の中に、思い切り出してくれ!お前のものを、中にぃ!」
「ほんと、もうダメだ…!うぅ!!」
最後に思い切りディアボロスの中に突き入れ、その体内に熱い精を放つ。
一時の高揚。そして、射精が終わったあとの虚脱感。疲労感。
二人は荒い息をつきながら、しばらくベッドに突っ伏していた。特に、動きの激しかったヒューマンの疲労は凄まじい。
飛びかける意識を辛うじて掴み、彼女にどう声をかけようかと考えていたが、その言葉は思いつかない。
しばらくそうしていると、ふと、彼女が身を起こした。そして、ヒューマンの頭にそっと手を触れる。
寝ていると思ったのだろう。ディアボロスはベッドから降り、静かに制服を着始めた。
声をかけようかと思ったが、やめた。もう、寝たふりをしているしかなかった。
やがて元のように制服を身に着けると、彼女は足音を忍ばせてドアに向かった。そして部屋の中ほどで振り返ると、静かな声で言った。
「……さようなら。」
静かにドアを開け、そこからするりと抜け出す。
後ろ手にドアを閉めると、ディアボロスは天井を仰いだ。やがて、その目を固く閉じ、顔を落とす。
ズルズルと、ドアに寄りかかった背中が落ちる音がする。ヒューマンの目から、堪えきれずに涙がこぼれた。
「ああ……さようなら…。」
部屋の中で一人呟く。
ドアを背に、うずくまるディアボロス。ベッドの中、枕に顔を押し付けるヒューマン。
二人はただ、声も上げずに泣いた。
翌朝。彼は新しい仲間と共にパルタクスを発った。
地下道入り口まで来ると、彼は学生寮を振り返った。
「やっぱり、名残惜しいものがあるかい?」
フェアリーが、そっと彼に近寄る。
「まあね。長い間、一緒にやってきた仲間だから。でも、いいさ。別れは済ませたから。」
「何なら、もうちょっといてもいいけど?」
「いや、いいよ。長くいれば未練が残る。そうすれば、もっと離れがたくなる。」
そう言って自嘲気味の笑顔を浮かべる。そんな彼の顔を見て、フェアリーは優しい笑顔を浮かべた。
「強いね、君は。」
「そんなことないよ。さ、行こうか。新参者の癖に、遅れてるわけにはいかないや。」
「はは、そう気負わなくていいよ。新参者だって、もう仲間なんだから。」
再び歩き出そうとして、ヒューマンは思い出したように足を止める。そして、もう一度学生寮を振り返った。
「……俺より、いい男見つけろよ。」
静かに、優しい声で呟く。そして今度こそ、彼は振り返らなかった。
恐らく、もう帰ることはない。だが、後悔はなかった。やっと、自分の進むべき道を歩き始めたのだから。
そのために失ったものは大きい。かつての仲間達。一から一緒に育ったパーティ。そして、彼女。
それでも、もう歩くのをやめることは出来ない。もう、失うことを恐れることはないと決めたから。
いつか、彼女が彼を忘れるときが来るかもしれない。彼が彼女を忘れるときが来るかもしれない。でも、それはそれでいい。
それまでは、同じ思い出を持つ二人の心が切れる事はない。
そしてその思い出をロストしたときは、恐らくその思い出より、大切なものを手に入れたときだから。
彼はきっと、彼女を忘れることはない。しかし、彼女にはその日が来ることを、彼は心の中で祈っていた。
以上、投下終了。
ところで、改めて自分の書いたSS見返してみたら、半数近くが陵辱属性だったことに気付いた。
苦手な人もいるかもしれないし、俺もコテか鳥でもつけた方がいいんだろうか?
まあとりあえず、この辺で。
[> テレポル ピッ
>>13 リアルタイムGJ
酉やコテは気分でいいんでね?
保管庫作業は作者判りやすくなって楽だとは思うが
乙
最近涙腺緩くて困る
16 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:01:32 ID:g7yo7Gph
こんな朝っぱらからだけど投下する。
本来なら前スレの埋め用に書いてたんだけど少しだけ長くなったのでこちらにします。
エロ寸止め、携帯です。
17 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:03:22 ID:g7yo7Gph
ランツレート学生寮にて…
「ン、もう朝か…」
窓から入る朝日が彼の目を刺激する。
脳を起動し、体を起こそうとするがうまく動かせない。
「?」
不思議に思い首を右へ振るとそこにクラ子が寝ていた。
「んなっ!」
思わず声を上げてしまう。口を押さえようにも体が動かせないので真一文字に口を結ぶが、クラ子が目を覚ましてしまう。
「んう?」
寝ぼけ眼のクラ子が起きあがる。
「!?」
起きあがったクラ子の姿を見てヒュム男が目を丸くする。クラ子はYシャツ(ヒュム男の)とパンツ姿だったからだ。
「えへへ…おはよ、ヒュム男」
クラ子は赤い顔を隠しながら挨拶をする。
「ん、ああ、おはよう」
とりあえずそれに答えるヒュム男。
18 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:05:14 ID:g7yo7Gph
ヒュム男は混乱していた。
クラ子とは付き合いが長く(あくまで仲間としてだが)、お互いに軽口を叩きあうほどなのだが、こんな関係ではないはずだ。
「…フフッ、どうしたの?」
クラ子が聞いてくる。
おかしい。いつものクラ子とは思えないほどの優しい目だ。
恥じらう姿を見る度に胸が苦しい。もしかして知らぬ間に一線を越えてしまったのか。
…勇気を持って聞くしかなさそうだ。
「…なあ、クラ子」
「なあに?」
「昨日、何かあったか?」
「…え」
とたんにクラ子の表情が曇る。
…ヤバい。凄くヤバい。何故忘れているのだ自分よ。
脳内出力120%稼働させるが全く思い出せない。
19 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:07:12 ID:g7yo7Gph
「ヒドいよ、昨日はあんなに優しくしてくれたのに…忘れちゃったの?」
「え、えーと」
「ヒュム男の命をちゃんとココにくれたのに」
そう言ってお腹に両手を当てるクラ子。
「エエッ!?」
ヒュム男は理解した。が、やはりその時の記憶がない。
「責任、取ってくれるんだよね?」
「ちょ、待って」
寄りかかるクラ子を押しとどめていると、バーン!と勢いよくドアが開いて数人の女性が入ってくる。
「だめーーーっ!」
あけた勢いのままにフェア子がこちらに突進して、クラ子を巻き込んだ。
「ヒュム男のお嫁さんはわたしなのぉ!」
「違う!私なの!」
二人は転がり落ちた床の上で喧嘩を始めてしまった。
20 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:08:50 ID:g7yo7Gph
現状が理解できないヒュム男の背中にフェル子が抱きつく。
「とうとう始まったね」
「…始まったって?」
「ヒュム男さん争奪戦ですわ」
右腕に抱きついて笑顔で答えるセレ子。
「…俺の争奪戦?」
「そうだよ、あたし達の戦いさ」
左腕に抱きつくバハ子。
「「ああーーーっ!」」
クラ子とフェア子がこちらを見て喧嘩をやめる。
「みんなずるいよーあたしも!」
フェア子が正面に抱きつく。
「ちょっと、私の場所は!」
目をそらす女性陣。
「むー…じゃあ私はココ!」
そう言ってヒュム男の下着に手を掛けるクラ子。
「わー!まてまてクラ子!」
下着を押さえようにも身動きがとれないので必死に叫んでやめさせようとするが聞いてくれない。
21 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:10:40 ID:g7yo7Gph
「みんな、クラ子を止めてくれ!」
ヒュム男が皆に頼むが反応がない。どころかヒュム男の下半身に視線があつまる。
すでにテントを張っていた下着がクラ子の手で剥がされる。
ブルン!とヒュム男そのものが姿を現す。「「「「「………」」」」」
女性陣の顔は真っ赤だ。その中でいち早く立ち直ったクラ子が行動にでる。
「へへ…覚悟〜」
あ〜ん。と口を開けて近づいてくる。
「だ、だめだってクラ子!だれか、たすけ、アッー!」
その日の晩飯時、満足げな五人の女に囲まれたやつれた男の姿があったとか…。
「元気が無さそうだったから特性スタミナ料理を振る舞っといたよ!」
と、後に寮母は語ったと言う…。
22 :
前スレ615:2008/09/17(水) 08:16:15 ID:g7yo7Gph
おしまい。
クラ子の寝起きドッキリは策略ですw
しかし他の皆さんとは比べるまでもなくダメだな俺orz
エロシーンは挫折しました。
修練をつまなきゃだめだな、うん。
因みにうちのパーティーがモデルです(本当はパルタクス生なんですが)。
また機会があれば投下を考えとります。
それでは。
乙です。まさに欲望一直線って感じだなw
24 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 01:17:50 ID:yAuwyXMH
GJ!
しかし男子一人女子5人のパーティーって大変だな。
ヒュム男くん、くれぐれも体力に気をつけてな。
さて、いい衝撃受けたし、俺はがんばってディア男とフェア子の続き書くか。
その前に修行だな。うん。
こんなイベントでヒュム男のスタミナが30を切ってくれるなら称号コンプも楽だったのに
26 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 06:24:44 ID:yqvYIh3C
スタミナ30きるどころかロストしそうな感じがw
27 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 19:04:21 ID:WA6cXKl6
食堂のおばちゃんが出した料理の効果でスタミナ100回復!!
次の日にはまた30ぐらいに・・・・。
人、それを拷問という。
そのうちレベルアップしてそっち関係のスキル手に入るよ。
絶論<スタミナ減少無効>
>>29 そのスキル…相手だって持つ事になるって分かってるよな?
なぁに狂走薬グレートを飲めばいい
え?ゲームが違うって?ハハハ何のことやら
>>30 しまったぁぁぁぁ!!!その可能性を忘れてた!!
あ、でも説明書でのヒューマンの特徴、<繁殖力が高い>だからきっと種族特有のスキルがあるんだよ。
そう信じないとヒュム男は……。
治療する
↓
灰になった
***おおっと!***
もいっぺんリバイバル
↓
成功!!
失敗したらロードか?
今まで名無しで投稿してた、すごいマゾパーティの者です。保管庫作業楽になるならってことで、鳥つけてみた。
結構使いやすそうなモンスターは多いけど、意外に今まで書かれてないようなので書いてみた。
ただ、今回モンスター相手ということで、陵辱属性の上に救いのない鬱エンドとなっております。
なので、それらが苦手という方は適当に流してください。
その娘はモンスターと呼ばれた。
地下道の奥深く、他の異形の者達と共に現れ、冒険者の命を奪う存在。
彼女の魔法は強力で、一体何人の冒険者がその犠牲となったのか。
彼女に名前はない。しかし、冒険者達に種族があるように、彼女にも種族があった。
その娘は、ミカヅキっ娘と呼ばれた。
ぴっちりした紫の服に身を包み、鳥のような帽子を被り、名前どおり巨大な三日月を伴って現れるその姿。
メルヘンチックなその外観。大きさはクラッズか、ヒューマンの子供といったところ。
その愛らしさは、初めて見た者であればつい攻撃の手を緩めてしまいそうなほどだった。
しかし、彼女はモンスター。冒険者とは、ただの獲物。
彼女の戦いは、遊びと同じだった。大抵6人ほどで徒党を組み、地下道を我が物顔で歩き回る異種族達。
それを相手に、暇潰しがてら襲い掛かり、殺す。魔法を数回撃てば、大抵の者は動かなくなった。それが楽しくて、彼女は戦った。
だが、その日の冒険者達は違った。
他のモンスターと共に襲い掛かったそいつらは、こちらの攻撃などほとんど受け付けなかった。
闇より生まれし獣王の攻撃をひらりひらりとかわし、直撃を受けたところで平然としているそいつら。
のみならず、彼女の放つビッグバムを受けてさえ、6人全員が立ち上がった。そしてその傷を、一瞬にして癒してしまう。
最初彼女は、変だな、としか思わなかった。
次に彼女は、強いなあ、と思った。
闇より生まれし獣王が一撃で切り倒されたとき、危ないな、と思った。
そして奴等の一人が、彼女と同じビッグバムを放ち、ミカヅキっ娘は吹っ飛ばされる。
顔を上げたとき、一緒にいたはずの獣王は灰すら残っておらず、サキュバス達はひどく傷ついていた。
その時彼女は、怖い、と思った。
殺される恐怖。それに伴う苦痛への恐怖。それら全てが、彼女に一つの命令を下していた。
彼女は、逃げた。
傷ついた仲間を見捨て、その恐ろしい相手から逃げ出した。仲間の声など耳にも届かない。
彼女は必死で逃げた。やがて奴等の声も聞こえなくなり、ホッと息をついた瞬間。目の前に、別の奴等が現れた。
さっきの奴等は、見かけは恐ろしく見えなかった。だが、こいつらは見かけからして恐ろしい相手だった。
彼女は怯え、様子を窺った。今までの相手は、こちらが先に攻撃を仕掛けなければ無視してきた。
だからこいつらも、そうしてくれると信じた。
だが、違った。この一団は、怯えるミカヅキっ娘を見て好機と判断したのか、一斉に襲い掛かってきた。
慌てふためく彼女は、再び逃げようとした。だが、遅すぎた。
大剣の一撃で三日月を切り裂かれ、地面に投げ出されるミカヅキっ娘。その周囲を、6人が取り囲んだ。
口々に何か言っている。その言葉はまったく理解できない。しかしその顔は、ひどく邪悪なものに見える。
一番体格のいい男がミカヅキっ娘の首を掴み、持ち上げた。
「ピッ…!」
息が出来ない。必死に足をばたつかせ、首を掴む手を外そうともがく。だが暴れれば暴れるほど、その手はさらに強く締め上げてきた。
苦しみがこれ以上ないほど強くなり、意識が朦朧となる。目からは自然に涙が溢れ、口からは唾液がこぼれる。
死を覚悟した瞬間、男が服に手をかけた。
静かな地下道に、布を切り裂く音が響き渡る。それと同時に、男はミカヅキっ娘を放り投げた。
「ケホッ!ケホッ!」
激しく咳き込むミカヅキっ娘。その姿を見て、笑い声を上げる異種族達。
何とか呼吸が整ってくると、次第に羞恥心が頭をもたげてくる。周りの異種族は全員雄らしく、少なくとも異性には違いない。
小ぶりな胸と毛も生えていない秘所を何とか手で隠すと、再び笑い声が響く。そして、さっきとは別の一人が近づいてきた。
今度は何をされるのかと震えていると、そいつはいきなり男性器を露出した。
「ピィ!?」
初めて見たそれに、思わず悲鳴を上げるミカヅキっ娘。それは異様に大きく見え、またグロテスクだった。
顔を背ける間もなく、そいつが頭を掴む。そして顎を押され、無理矢理口を開かせると、あろう事かそれを口の中に突っ込んできた。
気持ち悪い!
とにかくその一言に尽きる。あんなグロテスクなものを口に押し込まれて、平静でいられるわけがなかった。
それゆえ、彼女が口にそれを入れられたまま、思い切り顔を動かしてしまったのも、本来は責められるべきではないだろう。
が、男は呻いてそこを抑えると、激しい怒りを込めて彼女を睨みつけてきた。相手を怒らせてしまったと、ミカヅキっ娘が後悔した瞬間。
腹にめり込む拳。肺の空気が一瞬にして押し出され、激痛と窒息の苦しみに、ミカヅキっ娘はのた打ち回った。
だが、男は転げまわるミカヅキっ娘の髪を掴むと、再び性器を突き入れた。今度は頭が動かせないようしっかりと押さえられ、
その上さっきよりもずっと深く突き入れられる。
喉の奥にそれが当たるたび、激しくえずく。だが吐く事はできない。そして逃げることも出来ない。
何度も何度も激しい吐き気だけが襲い、ミカヅキっ娘はただただ涙を流してそれに耐えた。
頭を掴み、無理矢理前後に激しく動かす男。やがてその腰も動き出し、動きがさらに早くなったと思った瞬間。
突如、男のモノがビクンと震え、口の中に生暖かく、ひどく生臭い液体が流し込まれた。
「ウブッ…!ピ……ィィィ…!」
それの拍動にあわせ、さらに流し込まれる液体。ネバネバと口内に絡みつき、ひどい吐き気をもたらすそれは、際限なく口の中を満たす。
飲み込むことも出来ず、やがてそれは口と男のモノの僅かな隙間から溢れ出す。
ようやくそれが終わり、男がモノを引き抜いた瞬間、ミカヅキっ娘は激しく嘔吐した。口の中はまだ気持ち悪く、いくら吐いたところで
あの白い液体の感触は消えない。それを見て、また笑い声を上げる男達。
ミカヅキっ娘は屈辱と羞恥に涙を浮かべ、男達を見上げる。もうこれで許して欲しかった。もう帰りたかった。
しかし、それはまだ始まったばかりだった。やがて別の男が近づき、さっきの男と同じように口を開けさせた。
ついさっきまでの記憶が蘇り、激しく首を振るミカヅキっ娘。だが、男はお構いなしに性器をその小さな口に突きたてた。
再び襲い来る、嫌悪感と吐き気。それでも耐えねば、また痛い目に遭わされる。
泣き出したい衝動を堪え、されるがままになるミカヅキっ娘。その後ろに誰かが回りこんだことに、まだ気付かない。
突然、お尻にヒヤッとした物が垂らされ、ミカヅキっ娘は悲鳴を上げた。が、口の中に男のモノが入っていては、大した声も出ない。
一体何をされるのかはわからないが、後ろに回った男は、その液体を誰にも触らせたことのない部分に塗りつけている。
あまりの恥ずかしさに逃げようとしても、頭を抑えられていては何も出来ない。腰を引いても、大した意味はなさない。
何だかネバつくその液体は、肛門から秘所に至るまで丁寧に塗り伸ばされた。
後ろで何か喋っているのが聞こえた。すると、口の中に突っ込まれていたものが不意に抜き出され、ミカヅキっ娘はホッと息をついた。
が、次の瞬間。ミカヅキっ娘の腰が持ち上げられ、秘所に何かが押し当てられた。
「ピッ!?」
振り返ろうとした瞬間、そこに凄まじい激痛が走った。
「ピイイィィィ!!!」
体内に何かを突き刺されたような激痛。甲高い絶叫。そこから広がった激痛は全身を走り、ミカヅキっ娘の体を強張らせる。
今まで感じていた羞恥心や恐怖感すら、その痛みの前に消え失せた。
だが、そんなのは序の口だった。男は、ミカヅキっ娘の秘所に突き刺したそれを出し入れし始めたのだ。傷口を広げられ、
さらには擦られる痛みに、ミカヅキっ娘は激しく泣き喚く。
ただでさえ、限界以上に広げられた秘所の痛みは凄まじい。その上に、それはミカヅキっ娘の体内の奥深くまで到達し、
何度も何度も子宮口を突き上げてきた。体の裂けた痛みに、内臓を叩かれる痛みが加わり、ミカヅキっ娘の意識は何度も飛びそうになる。
その動きが、不意に止まった。どうしたのかと思う間もなく、男がミカヅキっ娘の体を持ち上げ、ぐるりと回す。
「ピイィッ!!!」
秘所に何かを突き刺されたまま体を回され、ミカヅキっ娘は泣き声を上げる。
今度は男と向かい合う形にされ、ミカヅキっ娘は自分の中に何が刺さっているのか、涙に濡れた目で必死に見極める。
それが男のモノだとわかった瞬間、ミカヅキっ娘はまた甲高い悲鳴を上げた。だが、それに男達が怯む様子はない。
それどころか、後ろにまた男が回り、今度はお尻にまで何かが押し当てられる。何をされるのかは、容易に見当がついた。
ミカヅキっ娘は腰を引こうとした。しかし、自分に挿入している男が腰を抑える。
その上、もう一人が挿入しやすいようにと尻を掴み、強引に広げてきた。
「ピィ!ピィ!ピイィィ!!!」
ミカヅキっ娘は泣きじゃくり、必死に許しを乞う。
だが、言語の違う男達にその意味は通じず、また通じたとしても、聞き入れられるものではなかった。
男のモノが、ゆっくりといたぶる様に押し当てられた。
ミカヅキっ娘は必死にそれを拒もうとするが、そんな抵抗が意味を成すはずもない。
気遣いなど、一切なかった。ただ、男にとっての快感を得るためだけの行為。
男はミカヅキっ娘の腸内に、思い切り突き入れた。
「ピイイイイィィィィッッ!!!!!ピイイィィィィッッ!!!!」
恐ろしいまでの激痛。圧迫感。ミカヅキっ娘は泣き喚き、絶叫し、ひたすら許しを乞う。
しかし、その声はむしろ男達にとって興奮剤でしかなく、行為はますます激しさを増す。
体格のまったく違う種族に、同時に二本もの性器を突き刺される苦しみは想像を絶するものだった。
内臓を押し上げられる圧迫感に、限界以上まで小さな穴を押し広げられる痛み。そしてそこを容赦なく擦られる激痛。
痛みのあまり気絶することすら許されず、ミカヅキっ娘はただただ泣き喚き、通じない許しを乞うしかなかった。
その泣き声と比例するように、男達の動きはさらに激しくなる。腸壁越しに何度も男達のモノがぶつかり、その度に激しい痛みと圧迫感が
ミカヅキっ娘を襲う。
やがて、最初に挿入してきた男のモノがビクビクと動き、あの白いネバネバする物をミカヅキっ娘の体内に放った。
傷にかかる熱い液体はひどく沁み、その痛みにミカヅキっ娘はまた悲鳴を上げる。
それが終わる頃、今度は後ろの男もミカヅキっ娘の腸内に精を放つ。
二人は同時に、ミカヅキっ娘からモノを引き抜いた。支えを失ったミカヅキっ娘は力尽き、そのままドサッと倒れてしまう。
石造りの地面はひんやりとして、火照りきったミカヅキっ娘の体を程よく冷やしてくれる。その感覚も相まって、ミカヅキっ娘は
ようやく終わりを告げた陵辱に、ホッと息をついていた。
が、それは間違いだった。さっきとはまた別の二人が、ミカヅキっ娘の体を持ち上げる。
「ピッ!?ピ、ピイィ!?」
まだ、終わってなどいなかった。それどころか、ミカヅキっ娘の地獄は、まだ始まったばかりだったのだ。
今度は体を持ち上げられ、男のモノの上に体を下ろされていく。
どんなにあがいても、それは自重でどんどん体内深くへと侵入してしまう。一番奥まで入っても、小さなミカヅキっ娘では足がつかず、
まるで男のモノで串刺しにされているかのようになってしまう。
「ピ……イィ…!!ピィ…!」
痛みよりも、今度は苦しさに悲鳴を上げるミカヅキっ娘。それをニヤニヤしながら見ていた二人は、やがてミカヅキっ娘の体を
乱暴に揺すり始めた。
凄まじい圧迫感と激痛の中、ミカヅキっ娘の目には他の四人の男が映っていた。そのうち二人は、恐らく順番待ち。
他の二人は、さっき自分を陵辱した相手だった。しかし、その二人もまた、順番待ちをしている。
まだまだ、この地獄は始まったばかり。ミカヅキっ娘は、嫌でもそれを悟らねばならなかった。
「ピイイイイイィィィィィィ!!!」
ミカヅキっ娘の絶叫が、再び地下道内に響き渡った。
何度も何度も陵辱され、もはやまともな反応などほとんどなくなってしまったミカヅキっ娘。
それまで男を知らなかった体は男の精液の臭いにまみれ、秘所も肛門も散々に陵辱された結果、だらしなく開いてしまっている。
そこからは、男達の放った精液がとめどなく滴り落ちている。
さすがに男達も飽きたらしく、ミカヅキっ娘をまた犯そうという者はいない。そして何やら、6人で相談をしている。
だが、もうそんなことはどうでも良かった。ただもう、この拷問が終わってくれれば。そして帰ることができれば、どうでもよかった。
話がまとまったらしく、男達の一人がミカヅキっ娘に近寄る。ミカヅキっ娘は虚ろな目でそれを見上げる。
男が何か言っている。何を言っているのかはまったくわからないが、どことなく優しい響きのような気がする。
その男は笑みを浮かべ、ミカヅキっ娘の肩を掴み、体を引き起こした。そして笑顔のまま、何か言っている。
何を言っているのかわからないし、聞き取れない。ただ一つ、最後に言った一言だけはわかった。
簡単な発音で、音も少ない。意味こそわからないが、これだけははっきり聞きとれた。
「あばよ。」
その言葉の意味を、ミカヅキっ娘は知らなかった。
そしてその意味に気づいたのは、意識を失う直前。
自分の体が、首から血を吹き上げて倒れるのを見たときだった。
以上、投下終了。
ミカヅキっ娘は初めて見た時から可愛いなーと思ってたけど、うちのフェアリーとノームを何度もぶっ飛ばしてくれたので大嫌いです。
若干やりすぎたような気もしますが、お口に合わなかったら申し訳ないです。
それでは、逃走アイテムも残り少ない気がしますが、この辺で。
[> マリオネット ピッ
ちょw最後放置じゃなくて首切りかw
GJですた
後ろから襲われても困るし、後始末はちゃんとしないとな
第一、コイツが怪我を治して他の冒険者を襲ったりしたら大変じゃあないか(ニヤニヤ)
いっそ清々しいまでのすごい外道パーティーwwww
たとえ悪の性格に設定したとしてもうしさんのイラストからはせいぜいツンデレ不良ぐらいしか妄想出来なかったが、
この外道ぶりには痺れさせられるぜ
最近過疎化していたこの板に救世主が!!
久々に小説が来ましたね。しかもなんかGJなのがw
うちのパーティーは全員善だからこうゆう発想は無かったわw
自分の小説が出来上がるまで保守!
ペンの進みが遅いけらしばらくはな。
<font size=1>保守</font>
なんとなく保守
一日一保守
なんかこのスレに駐留してる人乙
今日も一保守
偉大な先人達は元気だろうか…
なんかととモノ。ifやってからここにくるのが日課になった。きょうも一保守。
ifでなかなか百点出ない。
セレスティア♀×ディアボロス♂投下します。
携帯からだからうまくいかなかったらご愛嬌。
ディアボロスの少年は頭を抱えて泣き出したいのを必死に堪えていた。
つい先ほどまで、彼は学生寮の自室で手淫に耽っていた。それに関しては責められるべきではあるまい。年頃の少年にあっては、健全な在り方であろう。
だが問題は、旅を共にする天使の少女との淫行を夢想し、彼女の名を呼び達したところに、運悪く本人がやってきてしまったことである。
何という最悪のタイミング。穴があったら入れ……もとい、入りたいとは、まさにこのこと。
しかし彼女……己の名を呼び手淫に耽る仲間の姿を見たセレスティアは今、彼の陰茎を口にくわえている。それこそが何よりも理解不能で、いわば最大の不幸であった。
「はむっ…んっ、……あむ…ちゅ…っ」
少年のあられもない姿を目撃した少女は、部屋に入り鍵をかけ彼に近付くと、精を吐き出しだらしなく萎えていたそれを何の躊躇いもなく口に含んだ。この時点で何かがおかしい。
そして慣れたような、それこそ高級娼婦にも負けず劣らずの絶妙な舌使いで少年の粗末なものを扱うのだ。純真無垢の化身のようなセレスティアが、そんなことする訳がない。
「……そうだ、夢だ……これは、何か悪い夢なんだ…」
途方もない快感と底の見えない混乱に歯をガチガチ鳴らして耐えながら、ディアボロスがうわ言のように繰り返す。少年の着ている制服は、冷や汗とも脂汗ともつかぬ汗でぐっしょりと濡れていた。
そんな少年の態度に気を悪くしたのか、少女が顔をあげ不満そうに言う。
「まあ、何て失礼なことを仰るの」
「だ、だってこんな……おかしいですよ。お願いだから、もうやめ…」
セレスティアの白く細い指が、ディアボロスの陰嚢に触れた。それだけのことで、本能的な恐怖に体を震わせ押し黙るには十分だった。
「貴方だってこうされることを望んでいらしたのでしょう。いくらお粗末なモノとはいえ、ご自分で擦り上げるよりわたくしがやる方がずっと具合が良いのではなくて?」
あのディモレアよりも妖艶に微笑む麗しの天使。おかしいなぁ、彼女は善の僧侶だったはずなのに、その澄んだ瞳は誰よりも邪悪な色をしていた。
それとも、と少年の恥ずかしがり屋なイチモツを指で軽く弾く。些細な刺激にも限界を迎えてしまいそうになり、少年は苦しそうにうめく。
「わたくしに見られながらご自分でなさるのがお好みなのかしら」
「……なっ、何を」
彼女の言葉で先ほどの恥態を思い出し、動揺を見せる。その隙を見逃すはずもなく、獲物に喰らいつく猛禽のように少女が詰め寄った。
「ねぇ、貴方はいつもどんな妄想でシていたんですの? 何なら、その通りにして差し上げてもよろしいのよ」
セレスティアはディアボロスの汗に張り付いた制服をはだけ、薄い胸板に指を這わせる。首筋をねちっこく舐め上げて、耳元で熱く囁く。
「お願い。わたくしを貴方のお好きになさって」
「…ぅ、……っうぅ、…ごめん、なさいっ……」
羞恥と興奮と混乱に耐え兼ねたのか、とうとう少年の瞳から涙が溢れた。みっともなく涙と鼻水を垂らしながら、くぐもった声でただ謝ることしかできない。
少女は少年の濡れた頬に唇を寄せ、零れる涙を舐めとった。
「ああ、どうか泣かないで。わたくしは貴方を傷付けるつもりではなかったのに…」
「ごめん、っなさい……俺、おれ…っ」
続く言葉も見付からず、訳も分からず泣きじゃくる少年を、少女はごく自然な動きでそっと横たえる。そして普段はスカートに隠れているあぶないパンツをするりと脱ぎ捨てると、少年の上に跨がった。
ディアボロスの陰茎がセレスティアの花弁に押し当てられたところで、ようやくディアボロスは我にかえり、顔を青くして暴れ始めた。
「…だ、駄目だっ……それは、それだけは駄目ですって!」
「あら、この期に及んでどうしてそんなことを言いますの?」
「俺たちは、まだ学生だし、それに……こういうことは、軽々しくやるものじゃありませんよ!」
畏縮しきった心の奥底に僅かに残った理性と勇気とを総動員して、なんとか彼女を思い止まらせようとする。
だが少女はひどく傷付いた顔をして、まあ、と小さくもらした。
「軽々しくなんて……ありませんわ」
ふてくされたように頬を膨らませ、不満そうに唇を尖らせる。
「わたくしだってうら若き乙女ですわ。好きでもなんでもない相手に、こんなことをすると思いまして?」
「……え…」
ディアボロスが呆けた隙に、セレスティアは腰を落とし無理矢理挿入を果たした。突然の強い刺激に少年が仰け反る。
少女は破瓜の痛みに顔をしかめ、耐えるように動きを止める。
「痛っ! …うぅ、この際だからはっきり申し上げます。わたくしは貴方のことが好きですの。ずっと、こうしたいと思っていましたわ」
セレスティアは疼く痛みを誤魔化すように、腰を揺らし始める。ディアボロスは必死に射精を堪え、歯を食いしばる。
少女はそんな少年を見下ろし、柔らかく微笑んだ。それは少年が良く知る、恋い焦がれた優しい微笑だった。
「貴方がわたくしを想ってシていたの、ちょっと嬉しかったですわ。わたくしも時々……その、貴方を想ってシますので」
はにかんだように笑う少女が愛しくて、ディアボロスは限界を迎え彼女の中で精を吐き出してしまった。
「あ……あああ…ごめん…」
「ふふっ、よろしくてよ。もっとたくさん下さいな…」
少女は上下の腰の動きを止め、自身の陰核を擦り付けるように前後に揺らした。変化を見せた刺激に少年の陰茎は再びかたくなる。
次第にディアボロスも余裕が出てきたのか、セレスティアを突き上げるように腰を動かす。セレスティアは艶っぽい声をあげ、熱に溶けた瞳でディアボロスを見ていた。
「お願い……貴方の気持ちをきかせて…」
ただきつく狭かった少女の胎内は少年に馴染み、熱くほどけ絡み付くようにディアボロスを締め上げる。
少年は続けざまに三度目の限界が近いのを感じ、掠れた声で叫ぶ。
「…ずっと、ずっと好きだった……初めて見たときから、初めて話をしたときから、……っうああああぁ!」
がくがくと腰が跳ね、全身を痙攣させて、少女に大量の精を注ぐ。セレスティアはうっとりと目を細め、胎内を跳ね回るディアボロスの熱を感じていた。
体力も限界に達し、肩で荒い息を繰り返す少年の頬に、天使がキスをひとつした。くすぐったそうにはにかむ少年の耳元で、少女は悪魔のように残酷な言葉を囁く。
「……あの、はしたないとお思いにならないで下さいましね。わたくし、まだ満足していませんの…。愛しい人、どうかもう少し頑張って下さいな」
とたんに柔らかい光が少年を包み、失われた体力が回復していく。それは彼も良く知った感覚……どう見てもメタヒールです。本当にありがとうございました。
可憐な天使との拷問のような交わりは、少年が白目を剥いて気を失うまで続けられたという。
以上。お粗末さまでした。
>58ディアボロス♂が短パンのよく似合うショタっ子として脳内再生された
むむ、攻められるディアボロス♂……不覚にも萌えたぞ、GJ!!
というかセレスティナさん、どこでそんなテクを(; ̄Д ̄)
>>59 声は坂口大助だよなwww
「おかしいですよ!セレ子さん!」
乙でした
実にGJ。
てかセレスティア、何気に普段から危ないパンツ装備なのかw
せっかくのこの勢いを止めるわけにはいかない!ということで投下しようかと。
そういえば、前スレではドワーフが男女一緒の声の件に関して、女装した男ドワって話があったなあと思い出しまして。
せっかくだから、俺はその逆の可能性を示唆してみるぜ!という動機で仕上げてみた。
ただ、書いてるうちにだんだん暴走始めまして、重要な注意事項がいくつか。
まず、今回のは♂×♀ですが、限りなく♂×♂に近いです。
そんなわけで、『前』にはほとんど手つけてません。お尻ネタ万歳。
あとちょいと長いです。
ここまでで「こいつはくせぇー!腐の臭いがプンプンするぜぇー!」と思われた方は、読まないでおいた方が心の健康によろしいです。
では、大丈夫な方は楽しんでいただければ幸いです。
ランツレート学院の学食は、他のどこの学園よりも大盛況だ。
もちろん、名物と称されるほどの寮母マートのカレーのおかげでもあるが、何より学生数が非常に多い。
しかも、最近では他の学園の生徒までがお世話になることもあるため、昼食時ともなれば席を確保するのも一苦労だ。
なので、特に予定のない余裕のある生徒の場合、少し早めに行って席を確保するか、あるいは遅く行ってゆっくりと食事を取ることが多い。
この日も、戦争のような昼食時が終わり、学食の中にもちらほらと空席が目立ち始めるようになった。
その学食の入り口に立ち、何かを物色するように中を眺める男子生徒。
いや、するように、ではない。実際、彼は物色していた。
その目つきは異様に鋭く、どこか怪しげな光を湛えている。
初めに、友人と楽しげに会話するヒューマンの男子生徒に目を留める。
―――あの下等生物も、悪くはない……か。
バハムーンらしく、ヒューマンをそう心の中で呼ぶ彼。
―――が、学科がわからないな。下等生物を無理矢理、というのも悪くはないが、前みたいに魔法を撃たれちゃかなわん。
すっと視線を滑らせ、その近くにいるクラッズに目を留める。もちろん、こちらも男子生徒だ。
―――さすがに体格が違いすぎる。これは無理だな。
それから何人かの生徒に目をつけたが、なかなか目当ての相手が見つからない。
―――ノームじゃ面白味に欠けるし、ディアボロスのブレスは俺達より強い。セレスティアは……さすがに罪悪感があったしな。
ふと、お盆に大量の食品を載せて席に着く生徒が見えた。
薄茶色い体毛に包まれ、小柄な体に大きな耳と尻尾を持つ種族、ドワーフだ。
特に誰か友人を待つ様子もなく、席に着くなり食事を始める彼を見て、バハムーンの口元が僅かに吊り上がった。
―――今日の食い物は決まったな。
そして、彼はようやく入り口から離れ、遅い昼食を取りに向かう。
「よお、ここ空いてるか?」
「んお?」
突然の声にドワーフが顔を上げると、自分に負けないぐらい大量の料理を持ったバハムーンがいた。
「空いてるけど……他にも空いてる席はいっぱいあるだろ?」
「ははっ。そりゃそうなんだが、一人じゃ味気なくてな。」
「お前等みたいな種族でも、そういう感情あるのか。」
つい本音を漏らしてしまい、ドワーフはあっと口元を押さえた。が、彼は気にした様子もなく笑う。
「そりゃあ偏見だ。性格悪いセレスティアもいりゃ、天使みたいなディアボロスだっているだろう。」
「……で、寂しがりのバハムーンもか?」
「寂しがりじゃない。孤独が嫌いなだけだ。」
「はは、お前面白いな。」
ようやく警戒が解けてきたらしく、ドワーフは笑顔を見せる。それを受けて、バハムーンはようやく席に着く。
「ふーん……お前、新しく入った奴か。大体ここにきて二ヶ月ぐらいだろう?」
「えっ?」
食事を再開しようとしたドワーフの手が、思わず止まる。彼の言った事は、見事に的中していた。
「その筋肉のつき方から見るに、戦士じゃないな。その目つき、その目の配り方からすると、僧侶だろう?」
「……すっげー。それだけでわかっちまうのか?」
「ま、俺ぐらいになるとな!……と、言いたいところだが。」
バハムーンはニッと小ずるそうな笑みを浮かべた。
「学科に関しては、実はお前の武器が見えたからだ。」
「何だよ!一瞬本気で感心しちまったじゃねえか!」
「はっはっは!悪かった!でも、最初に言ったのはちゃんと当たってただろう?」
「ああ、そういやそうだ。やっぱすげえのか。」
「だろう?すごいだろ?俺の山勘は!」
「勘かよっ!」
声を上げて笑う二人。会ってわずか数分だというのに、もうお互いの警戒心はきれいになくなっていた。
「お前の方は?学科はやっぱ戦士?」
「いや、残念ながら外れだ。これでも、どちらかといえば優等生なもんでな。」
「んー、じゃあなんだぁ?後衛ってことはなさそうだから……侍!」
「残念、それも違う。」
「えー。んじゃ……狩人、はなさそうだし、君主でもなさそうだし……あ、わかった!修道士だろ!?」
「ようやく当たりだ。」
「へえぇ、修道士かあ。すっげーなー。修道士って、上級学科だろ?」
まだ学院に来て日も浅く、大した経験のないドワーフは純粋に感動している。その純真な瞳に、バハムーンは心の中で舌なめずりする。
「下等生物とは出来が違うんだ。」
「あ、やっぱお前バハムーンだなー。何?下等生物ってオレのこと?」
「そんな奴と、わざわざ飯を食うか。お前達は力も強く、信仰心もある。他の種族の中じゃ、まともな方だ。」
「うっわー、なんかすっげえ嬉しくねえ褒められ方。」
「これでも認めているんだ。少しは喜んでもらいたいな。」
「うっせー、この鈍足野郎。」
「動きが鈍いのは認めるが、お前に言われるのは心外だ。」
内容は憎まれ口のようでも、お互いに顔は笑顔だ。ドワーフはもうすっかり、このおかしなバハムーンに気を許していた。
それが、彼の手口だということも知らずに。
その後、意気投合した二人は一緒に地下道に入り、戦闘に探索にと汗を流した。
しかし、たった二人の上に狩場はバハムーンの強さに合わせられ、新米であるドワーフの疲労は、わずか数時間でピークに達してしまう。
無理はしないことにし、二人はそこで探索をやめてランツレートに戻った。
気がつけば、外は学食も終わりそうなほどに暗くなっており、二人は大急ぎで学食に駆け込んだ。
その甲斐あって何とか間に合い、辛うじてランツレート名物のカレーにありつくことが出来た。
「ぶっはー!ほんっっっと疲れたー!」
勢いよくカレーをかき込みつつ、元気のいい声を出すドワーフ。
「ここにきて2ヶ月程度で、あそこまで戦えれば上出来だ。将来が楽しみだな。」
「そ、そうかな?へへっ!」
褒められるとまんざらでもないらしく、ドワーフは無邪気な笑顔を浮かべる。
「オレ、あんなとこまで行ったの初めてだしさ。もうついてくのに必死でさー。」
「俺の方こそ、あそこまで行ったのは久々だ。後ろを安心して任せられる者がいるとつい、な。」
「な、何だよー。そんな言われると、背中がくすぐったくなるよ。」
そう言いつつ、尻尾は千切れんばかりにブンブン振られている。と、不意にバハムーンが声を潜めた。
「……周りには誰もいないな?」
「どうしたんだよ、いきなり?」
「なに。あそこまで行ったのは初めてなんだろう?なら、お祝いでもと思ってな。」
そう言ってバハムーンが取り出したのは、購買で売られているやさぐれ淑女だった。
「おいおいおいおい、酒かよ!」
「構いやしないだろう。どうせ誰も見ていない。」
「……ま、いっかぁ!ありがたくもらうぜ!」
バハムーンの手から瓶ごと奪い取り、栓を開けると一気に飲み干すドワーフ。些か予想外の事態に、ついバハムーンの動きが止まる。
「んお?どした?」
「お前……乾杯しようという気は…。」
「あっ……あああぁぁぁぁ!!!ごごご、ごめん!つい、そのっ…!」
「まあいい。喜んでもらえれば何よりだ。それに…。」
バハムーンは道具袋の中から、さらに新月酒を取り出した。
「酒はまだある。」
「……お前…。」
一瞬呆れたような顔を見せるドワーフだが、その顔がニッと笑う。
「いい性格してるな!」
「こいつは、めちゃくちゃ薄いがいいか。」
「でも酒だろ?あ、今度はちゃんと乾杯するぜー。……そんじゃ、ありがたく!」
水の入っていたグラスの中身を入れ替え、あまり音が響かないように、控えめにグラスを鳴らす二人。
「かんぱーい!」
「ああ、ゆっくり飲…。」
「……ぷっはぁー!やっぱ酒はいいな!」
「………。」
疲労困憊の体にアルコールを入れては、どんな酒豪であろうと酔いは早い。まして、一気に飲んでしまえばなおさらだ。
「ふ〜。頭フラフラするぜ〜。」
「だろうな。1ガロンぐらい飲み干すかと思ったぞ。」
「はっはっは〜。ちょーし良けりゃあな〜。」
やや足元の定まらないドワーフの肩を抱き、寮へと歩を進めるバハムーン。
その足はドワーフの部屋ではなく、自分の部屋へ向かっているのだが、酔いの回っているドワーフは気付かない。
やがて部屋の前に着き、バハムーンがドアを開ける。成り行きでついつい部屋に入ってから、ようやくドワーフは気付いた。
「あっと、ここお前の部屋かー。」
バハムーンが、後ろ手にそっと鍵をかける。
「つい入っちゃったけど、オレはここらで…。」
その言葉は、バハムーンの突進で遮られた。ほとんどタックルのような、凄まじい勢いでドワーフに掴みかかる。
有無を言わせず、その小さな体を持ち上げると、ベッドに叩きつけるように放り出した。
「痛ってぇー!お、おい何すんだよ!?」
「男の部屋に入って、何するもないもんだろう。」
「はぁ!?」
バハムーンの言葉に、ドワーフの酔いは一気に醒めていく。
「お……おいふざけんな!オレは男だぞ!?てめえホモかよ!?」
「それが何か?」
「えっ…。」
一瞬、二人の間の空気が凍った。今まで怒りの表情を浮かべていたドワーフの顔も、呆気に取られたようにポカンとなっている。
が、やがてその顔が嫌悪感と恐怖感に支配されていく。
「ふ……ふざけんな!さ、最初っからこのつもりでオレに近づいたのかよ!?」
「ああ、そうだ。」
「ぐっ……てめえ、最悪だ…!さ、触んじゃねえ!あっちいけ!」
「断る。お前も男なら、覚悟を決めろ。」
「嫌だぁー!!男の相手なんてごめんだぁー!!」
ドワーフは激しく暴れるが、いくらドワーフとはいえバハムーンの力には敵わない。まして、僧侶学科に所属する彼では修道士相手に
勝てるわけもなかった。
暴れる体を無理矢理押さえつけ、どんどん服を剥ぎ取るバハムーン。
やがて残りはズボンだけとなったが、そこからの抵抗はさらに激しさを増す。
「やめろぉー!!!これだけは絶対ダメだぁー!!!離せ!!あっち行け!!!やめろぉ!!!」
「まったく…!お前もいい加減諦めろ!」
「嫌だ!!お前なんかの相手なんて、絶対嫌だ!!や、やめろ!!引っ張るなぁ!!!」
「やれやれ…。」
あまりに頑強な抵抗に、バハムーンは苦笑いを浮かべて体を離した。が、別に諦めたわけではない。
「なら、こうしてやるか。」
「え?何を……わっ!?うひゃ!あはははは!!!!や、やめろー!くすぐるなぁー!!!ははっ!!や、やめ……あははは!!!」
わき腹を、首筋を、足の裏をと所構わずくすぐるバハムーン。
さすがにその攻撃は耐えられず、ドワーフはくすぐったさに笑いながら必死にそれをやめさせようとする。
くすぐりが激しさを増し、ついズボンから手を離した瞬間。
「隙あり!」
「あーっ!!!」
素早くズボンに手を掛け、サッと剥ぎ取るバハムーン。あまりに勢い良く剥ぎ取ったため、パンツまでが半分以上ずり落ちる。
「てめっ…!見るな!くそ、返せよ!」
「暴れるな。蹴るな。ようやくお楽しみの時間だっていうのに…。」
「くそー!ほんとにぶん殴るぞてめえ!!」
「おっと。仕方ないな、押さえさせてもらおうか。」
「痛っててて!くそぉ…!やめろぉ…!」
「しかし、なかなかいい体をして……ん?」
全身を舐めるように見つめていたバハムーンの目が、ふと訝しげに歪む。
もさもさした毛に全身を覆われた体。そのため、全体的なラインはかなり見難いものの、かといってわからないとまではいかない。
それなりに鍛えられた大胸筋や、恐らく割れて見えるであろう腹筋の形はおぼろげながらわかる。
なのに、一つだけ見えないものがある。
下腹部より、さらに下。男であれば、むしろ一番目立つであろうはずのものが、なぜか見つからない。
「ん〜?」
バハムーンはドワーフのパンツを片足だけ脱がせると、その足を開かせようとした。が、ドワーフはぴったりと足を閉じてしまう。
「まったく、手のかかる奴だ。」
「やめろ…!広げるな…!くそぉ…!」
「無駄だというのに。よっ!」
「痛ってー!!」
右手で両腕を、さらに膝で足を押さえ込み、ようやくその足を開かせる。だがやはり、あるべきものは見えない。
そっと、胸に手を触れる。
「うわっ!よせ!触るなぁ!!!」
ドワーフの声は完全に無視し、そのまま下へと手を滑らせる。腹部を越え、下腹部を通る。そして、問題の箇所に手を触れる。
「んあっ…!」
あるべきはずのものは、ない。
その代わり、下腹部にはないはずの膨らみがあり、何より問題の場所にはぴっちりと閉じられた亀裂が入っている。
バハムーンの顔が、はっきりと歪んだ。
「……おいおいおい!お前、女かよ!」
言うなり、掌を返したようにドワーフから離れるバハムーン。
当のドワーフは、恥ずかしさと怒りに顔を歪ませたまま、バハムーンを睨みつけている。
ドワーフは種族柄、顔を見ただけではまず性別の判別がつかない。おまけに体のラインも起伏に乏しく、声も低く、
その上男女問わずに筋肉質なのでさらにわかりにくい。
同種族なら判別可能なのかもしれないが、他種族であるバハムーンには無理な話である。
「まったく、男装とは…。あーあ、せっかくいい相手だと思ったのに。俺は女には興味な…。」
「う、うるせえ!オ、オレは男だ!」
「……は?」
ドワーフの意外な台詞に、つい気の抜けた返事をするバハムーン。
「男って……お前、それで男とか言い張るのは…。」
「うるさいうるさい!!オレは男なんだよ!女じゃねえ!!」
「………?」
一体何が言いたいのか理解できなかったが、少なくともドワーフの顔は真面目だ。冗談で言っているわけではないらしい。
やがて、バハムーンの頭にある仮説が浮かび上がる。
「なるほど。お前は、どうあっても女じゃないって言うんだな?」
「そ、そうだよ!悪りいか!?」
「体は女だが、心は男だと。そういうことだな?」
「……そうだよ!それが何か悪りいのかよっ!?」
「天地天命に誓って男だな?」
「ああそうだっつってんだよ!耳付いてねえのか!」
一度は元気をなくしたバハムーンの股間が、再び勢いを取り戻していく。
「そうか。俺もそういう相手は初めてだが……女は守備範囲外だが、男なら守備範囲だ。」
「げ…。」
そこで初めて、ドワーフは墓穴を掘りまくっていたことに気付いた。
下手なことを言わなければ無事に帰れたものを、自分でそのチャンスをふいにしてしまった。
ドワーフの脳裏に、自分の墓穴をビッグバムで豪快に掘る姿が浮かぶ。
「どうした?今更やっぱり女でしたとでも言うつもりか?」
「ぐ……そ、そんなこと、誰が言うか!」
「そうか。女だと言うのは俺に犯されるより嫌なんだな。」
「ど、どっちも同じぐらい嫌なんだよっ!!」
ドワーフが逃げ出そうとするよりも早く、バハムーンが再びのしかかる。そして強引に足を開かせると、その秘所に指を這わせる。
「うわぁ!やめろ!そこは触るんじゃねえー!!」
「ふーん、そんなに女であることを感じるのは嫌か。」
「くっ…!」
「安心しろ。俺もこっちには興味はない。だが潤滑剤が欲しいんでな。」
そう言いつつ、その中には指を入れず、そこにある小さな突起をコリコリと刺激するバハムーン。ドワーフの体がビクッと震える。
「んっ!……て、てめえ……もう、よせよ…!くそ…!」
「ここは、男のものとそう変わらないとか聞く。男だってここを触られたら、それに近い反応はするぞ。」
「だ……だからって、ぐっ!……触っていいってもんじゃねぇ…!うあっ!」
いくら女であることを否定しても、体の反応までは拒否できない。
最も敏感な部分を刺激され、ドワーフのそこはじんわりと湿り気を帯び始めた。
と、それを見るとバハムーンはそれ以上触るのをやめ、そこから滲み出る蜜を指につけた。
そしてそこよりさらに下の、小さな穴に手を伸ばす。
「う、うわわわっ!?やめろっ!変なとこ触るなぁ!」
「ええい!だったらどこを触れと言うんだ!?」
「どこも触るなぁー!」
「無理なことは言うな!」
前の方と同じく、その穴の周囲だけはあまり毛が生えていない。そのため狙いは付けやすい。
皺をなぞるように、ゆっくりと穴の周囲を撫でる。少し触れただけでも、その穴はピクンと反応する。
「う、うわあ!気持ち悪りい!」
「最初はな。我慢しろ。」
「や、やめろ!もうやめろってば!」
「やめてもいいが、最初にしっかり慣らしておかないと、苦しむのはお前だぞ。」
「だ……だから、それ自体やめろって…!うあ!?やめっ…い、入れるなあぁ!!!」
別にまだ入れる気はなかったのだが、ほんの少し指が中心部に触っただけで、ドワーフの小さな穴はきゅっと縮こまってしまう。
その初々しい反応に、バハムーンはつい笑みを浮かべる。これほどいい反応をする相手は、そうそういない。
優しく、じっくりと、周囲からマッサージするようにほぐしていく。
最初は頑強に抵抗していても、少しずつその穴の周囲は柔らかくなっていく。
慣れない刺激に、ドワーフは顔をしかめながら何とか逃れようともがく。しかし、その反応はただバハムーンを楽しませるだけだ。
「そろそろ、いいか。」
「な、何する気だ!?」
「力を抜いておけ。」
いよいよ中に入れようと指をあてがうが、ドワーフは必死にそれを閉じて抵抗する。
「やめろ!ほんとやめろてめえっ!い、いい加減にしねえと、マジでぶっ殺すぞ!!」
「元気があれば、あとでやってみるといい。ほら、あんまり締めてると本当に痛いぞ?」
ググッと、指に力を入れる。いくら抵抗しようとしても、バハムーンの指にはドワーフ自身の愛液が塗られており、
しかも既にある程度はほぐされていたため、じりじりと侵入を許してしまう。
「い……痛い!痛い!」
「だから言ってるだろう?力を抜け。」
「く……くそぉ…!あ、あとで……いっ!?……お、覚えてろぉ…!」
痛みに耐えかね、ドワーフはとうとう言われたとおりに力を抜く。確かに多少は痛みが和らいだが、
体内に感じる凄まじい異物感は如何ともしがたい。
「うぅ…!き、気持ち悪りい…!も、もう抜けよぉ…!」
「入れたばっかりだぞ?まだまだ、じっくり慣らさないとな。」
一番奥まで入れると、今度はゆっくりと指を抜きにかかるバハムーン。
「うあっ!?ま、待てっ!待てぇっ!やめろっ…!な、なんか…!よせ、ダメだ…!」
突如襲ってきた排泄に似た感覚に、ドワーフは指をぎゅっと締め付ける。
その反応もやはり、まったく経験がないのだという裏づけとなり、バハムーンの征服感を心地良くくすぐる。
ある程度引き抜いてから、また奥まで突き入れる。そして時に指を曲げ、あるいはこねるように回し、じっくりと慣らしていく。
「やめっ…!い、痛っ!指曲げるなっ…!痛てえ!」
「だいぶ解れてきたな。そろそろ次に移るか。」
「くっそぉ…!てめえ、いい加減に…!」
バハムーンが指を引き抜いた瞬間、ドワーフは素早く足を引いた。
「しろおっ!!!」
「うおっ!?」
渾身の蹴りが、バハムーンの股間を襲う。一瞬早く身を引いたため、辛うじて金的の直撃は免れたものの、油断しきっていた下腹部に
思い切りその直撃をもらってしまう。
「ぐっ…!痛っててて…!」
「ハァ、ハァ…!悪りいな!」
脱がされた制服を掴み、バハムーンの脇をするりとすり抜けるドワーフ。が、バハムーンの目に怒りの色が浮かんだ。
「待て、この下等生物が!」
ドアの鍵を開けようとしていたドワーフを追いかけ、その首根っこを掴むと、思い切り後ろに投げ捨てた。
「うわあっ!?」
片手で掴んでいたにもかかわらず、ドワーフの体は勢い良く吹っ飛び、壁に激突してベッドに落ちる。
「い……痛てぇ…!」
痛みに顔をしかめるドワーフ。前に立った気配にふと目を開けると、怒りに満ちた目で自分を見下ろすバハムーンがいた。
「う……うぅ…!」
最初、バハムーンはこのまま慣らしていない穴に無理矢理入れてやろうかと思っていた。
が、自分を見て耳を垂らし、尻尾を内股に巻き込んで震え、怯えきった目で見上げるドワーフの姿を見ると、
それだけで溜飲が下がってしまった。元々傲慢な種族だが、案外単純なところもあるため、恐れられると気分はいいのだ。
とはいえ、何かしらのお仕置きは必要だと考え、バハムーンはドワーフの体を掴み上げた。
「う、うわあぁ!!やめろ!!助けてくれ!!」
「ふん、別に殺しはしない。安心しろ。」
ドワーフを小脇に抱えたまま、椅子を引き出す。そして制服を勝手に拝借すると、ドワーフの体を椅子の上へうつ伏せに押し付けた。
そのまま動く間もなく、両手両足を制服でそれぞれの椅子の脚に括りつける。
「な、何するんだよぉ!?」
「いきなり蹴飛ばしやがって。そのお仕置きだ。」
「だ、だって、それは…!や、やめろ!そこは触るなぁ!」
「何もつけずに突っ込めば、痛いだけだぞ。」
今度は中指と人差し指でドワーフの秘所を撫で、再び愛液をつける。
そして指によく伸ばすと、二本そろえて、主人と同じように縮こまる菊門に押し当てた。
「やめろ!な、なんか増えてねえか!?」
「ああ、次は二本だ。」
「む、無理だぁーっ!!そんなの、入るわけねえよぉー!!」
ドワーフが怯えた声で叫ぶ。
「そうかもな。指二本揃えたときの太さが、大体そいつの男根の太さと同じらしいしな。まあ厚みはないが。」
「そんな無駄知識いらねえよぉ!やめろってば!うあ……あっあっ!?」
二本の指が、ずぶずぶと入り込んでいく。が、第二間接辺りまで入ったところで、ドワーフが暴れだす。
「痛い痛い痛い!!!もうよせ!!やめろ!!それ以上は無理だぁー!!!」
「俺を蹴っておいて、やめろとはよく言えたもんだな。」
「わ、わかった!!!わかったよぉ!!!やめてくれ!!頼むよぉ!!!」
「断る。」
冷たく言い放ち、さらに奥へと指を突き入れる。
「そんなっ…!い、痛いぃー!!!切れる!!裂けちまうよぉ!!!!」
どんなにもがいたところで、椅子に括りつけられた手足は動かない。まして、その椅子は自分の体重で固定されているため、
動かしようもない。
「そう言っている割には、結構奥まですんなり入ったぞ。」
「ううぅぅ…!痛いぃ…!お願いだから、やめてくれ…!オレが悪かったよぉ…!」
「だいぶ素直になってきたな。結構なことだ。」
そう言いつつも、指をグリグリと回すバハムーン。その度に、ドワーフが悲鳴を上げる。
最初は低かった声も、だんだん余裕がなくなってきたのか、地声らしい高い声になってきている。
「声だけ聞くと、クラッズ辺りを相手にしてる気分になるな。やはり女、か。」
「ふ、ふざけるなぁ…!オレは、女じゃねえ…!」
「体は、という意味だ。まあ無理することもないだろう。ただでさえ余裕がなさそうだしな。」
多少強引な感はあったが、もうドワーフの菊門はだいぶほぐれ、既に指二本は楽に動かせるようになっている。
腸壁越しに伝わるトクントクンという鼓動も、バハムーンの劣情を激しく刺激する。
「さて、そろそろ準備もできたようだし、俺も限界だ。」
「や、やめろぉ…。これ以上は無理だぁ…。」
泣きそうな声で言うドワーフ。その声もなかなかに可愛らしい。
指を引き抜くと、ドワーフの体がビクンと震える。
ズボンを下ろし、自分のモノに愛液を塗りつけてからドワーフに押し入ろうとしたところで、バハムーンはふと動きを止めた。
「……やはり、初物をもらったときの顔は見えなければ面白くないな。」
今のままだと入れるのは楽だが、せっかくの顔が見えない。それがなければ楽しみが半減どころか9割がた減ってしまうため、
バハムーンはドワーフの拘束を解くとベッドの上に寝かせた。
「や……やめろぉ!頼むからそれだけはやめてくれぇ!」
「生殺しになれというのか?お前も男なら、その辛さぐらいはわかると思うがな?」
「い、嫌なものは嫌だぁ!!オレだって男なんだぞぉ!!」
「ああ、わかっている。お前も男なら、覚悟を決めろ!」
「嫌だぁー!!!」
掴みかかるバハムーン。その手を押し返そうとするドワーフ。何とかその両手を封じるが、今度は足をぴっちりと閉じられてしまう。
無理矢理膝を割り込ませ、足の上に正座するような形で押さえ込む。が、ようやく入れられると思った瞬間、尻尾がそこをガードする。
「……面倒くさい奴だな。」
「ぜ、絶対やらせるもんか!」
「だが、残念ながら尻尾は俺にもある。」
普段は使わない尻尾を、ドワーフの尻尾に引っ掛ける。
ドワーフのそれと違い、バハムーンの尻尾はかなり強靭で、ドワーフの尻尾は簡単に押さえられてしまった。
ついに防衛の手段を全て封じられたドワーフは、怯えきった目でバハムーンを見上げる。
「や……やめてくれぇ…!頼むよぉ…!」
「安心しろ。優しくしてやる。」
「優しくしなくていいから、やめてくれってばぁ!」
そんな訴えには耳も貸さず、バハムーンはドワーフの縮こまった菊門にモノをあてがう。
「ゆっくり息を吐いていろ。」
「やめろ!やめろ!やめ……いっ!?うあぁ!!痛てぇよぉ!!」
わずかに侵入するだけで、ドワーフは激しい痛みを訴える。だが裂けるなどはしていないらしいので、バハムーンは構わず侵入していく。
「やめろ!ほんとやめてくれぇ!!痛てえってばぁ!!裂けちまうよぉ!!」
「まだ亀頭部分も入っていないぞ。」
「そ、そんなぁ…!いっ!?こ、こんな痛てえのにぃ…!」
「もうちょっとで一番太いところだ。我慢しろ。」
かなり入れられたと思っていたのに、まだ全然入っていないと言う。おまけに、さらに痛みが強くなると言われ、ドワーフは恐怖した。
「や、やだぁ!!もう入れるな!抜け!抜いてくれよぉ!!」
「息を吐いて、力を抜くか、あるいは排泄するように力を入れろ。そうすれば痛みは和らぐ。」
「痛い痛い痛いっ!!!待て!!待ってくれぇ!!!お願いだからちょっとだけ待てよぉ!!!」
あまりの痛みに涙を滲ませるドワーフ。そんな顔で言われては無視するわけにも行かず、バハムーンは腰の動きを止めた。
「ハァー…!ハァー…!うぅぅ……ち、力抜けばいいんだよな…?」
完全に痛みに屈してしまったらしく、とうとうそんなことを聞き始めるドワーフ。
「つい力が入ってしまうなら、逆に入れた方がいい。ただ、締めようとはするな。裂けるぞ。」
「そ、そんなの嫌だ…。あの……その……ほ、ほんとに裂けない……よなあ…?」
「安心しろ。なるべく努力してやる。」
「………。」
ドワーフは少し困った顔をしていたが、やがておずおずと力を入れてみる。確かに、痛みが少し和らいだ。
「さて、一つ質問がある。」
「な、何だよぉ…?」
「激しい痛みが一瞬がいいか。そこそこ強い痛みが長くがいいか。どっちだ。」
「い、嫌な質問だな……い、一瞬の方が、いい…。」
「よし。じゃあそのまま力を入れていろ。」
不安そうなドワーフの頭を撫でつつ、バハムーンはタイミングを計る。
ドワーフは時折、思い出したように締め付けてくるが、少しずつきつさがなくなっていく。ドワーフも少しは痛みがなくなってきたのか、
その表情には少しずつ余裕が見られるようになってきた。
やがて、ふっと中が緩んだ瞬間、バハムーンは思い切り腰を突き出した。
「い゛っっ!!!!?」
さすがに声を聞かれるとまずいので、ドワーフが悲鳴を上げる直前、バハムーンはその口を塞いだ。
「ん゙ん゙ーーーーっっ!!!!ん゙ううぅぅーーーーーっっ!!!!!」
バハムーンに口を塞がれたまま絶叫し、痛みにボロボロと涙をこぼすドワーフ。
その口を押さえつつ、バハムーンは今までにないほどの胸の高鳴りを感じた。
―――おかしいな。
やがて痛みが少し落ち着いてきたのか、ドワーフの絶叫は嗚咽へと変わっていった。
「い……痛てぇよぉ…。絶対裂けたぁ…。」
「大丈夫だ。血は出ていない。」
「嘘だぁ…。こんな……痛いのにぃ…。」
「嘘なんか言ってどうする。」
まるで、子供のような仕草で涙を拭うドワーフ。その姿に、再びバハムーンの胸が高鳴る。
―――こいつは、女のはずなのに。
「ひっく…!ひっく…!も……もう、痛てえの、おしまいだよな?な?」
「まだ、入れたばっかりなんだが。」
「ううぅ……もう、痛てえの嫌だよぉ…。」
「今のが一番痛いところだ。なかなかいい顔だったぞ。」
「うるせえ、ホモ野郎…!」
そんな悪態など気にも留めず、バハムーンはドワーフの頭を優しく撫でる。
「よく、頑張ったな。」
「う……うるせえ…!そんな褒められ方……嬉しくねえよっ…!」
涙に濡れた顔を振り、その手を振り落とそうとするドワーフ。こんな状況でも強がるその姿は、何とも愛らしい。
「ゆっくり動く。耐えられなかったら俺の腕を掴め。」
そう言ってわずかに腰を動かすと、いきなりドワーフが腕を掴む。
「お前、少しは耐えろ。」
「もう十分耐えただろぉ…。」
「仕方ないな。お前は嫌かもしれないが。」
再び、ドワーフの小さな突起を刺激する。途端に、ドワーフの体がピクンと跳ねる。
「や、やめろぉ…!そこは…!」
「痛いよりはマシだろう?」
「う……い、痛い方が……マシだぁ…!」
「そうか。だが、俺の気が済まん。」
―――痛がる顔を見るのが、楽しみのはずなのに。
さらに、女らしさとはほぼ無縁の胸に手を伸ばす。ドワーフの体が、さらにビクッと震えた。
「よ、よせぇ…!女扱いするなぁ…!」
「男でも、ここで感じる者はいる。あまり気にするな。」
指での刺激を強めつつ、少しずつ腰を動かしていく。多少は気が反れたらしく、ドワーフがひどい痛みを訴えることはない。
だが、体の中の凄まじい異物感。そればかりは消しようもない。
引き抜かれるときは、内臓ごと引き抜かれそうな感覚が。突き入れられると、普段は出ることしかない場所に何かが逆流する違和感、
そして疼痛。そしていずれにしろ、まだ慣れきってはいない場所を限界まで押し広げられた痛みがある。
「うぐぅ……腹の中、気持ち悪りいよ…!」
「慣れれば良くなる。あと入れるときは力抜け。」
「な、慣れるもんか…!んうぅ……うあぁ!」
そうは言いつつ、胸と秘所の突起を刺激されているドワーフの声は、既に違う響きが含まれつつある。
そのせいか、声はもう男の声など出せてはおらず、完全に女声になっている。
―――どうしてだろうな。
初々しい反応を示す腸内を蹂躙しつつ、バハムーンは頭のどこかで冷静に考える。
―――こいつだけは、今までの誰よりも、大切にしたくなる。
足での拘束を解き、ドワーフの体を抱きかかえる。さすがにもう抵抗はせず、また何かされるのかと不安な目で見てくる。
「可愛いな、お前。」
「うっ……お、お前に言われても嬉しくねえ…!つうか、そんな褒められ方……あうっ!ま、待てぇ!奥……深いぃ!」
不意に、今までより長く深いストロークで攻め始めるバハムーン。
あまり乱暴にすると裂けてしまうので、動きを速くせずに最後までもっていこうという、彼なりの気遣いだった。
「そろそろ……出すぞ!」
「え?嘘だろ!?や、やめろ!中で出すなぁ!」
「お前の場合、外で出した方が大変なことになると思うんだが。」
「体ん中に出されたくないんだよ!頼むよ、ほんとやめてくれぇ!」
「断る。」
最後に思い切り突き入れ、ドワーフの中に射精するバハムーン。急に動きが止まり、ドワーフは一瞬ホッとした顔をしたが、すぐに
その理由に気付き、ギョッとした顔になる。
「お、おい!?まさか、今出してる!?オレの中に出してるの!?」
「……ふぅ。ああ、思いっきり出させてもらった。」
「うわぁー!てめえ最悪だぁ!ホモ野郎!変態!」
本気で嫌だったらしく、涙を滲ませながら罵倒するドワーフ。その姿も、バハムーンにとっては何とも微笑ましいものに見える。
ともかくも一度は終えたので、バハムーンはドワーフの中から自分のモノを抜き始める。その瞬間、ドワーフの体が震えた。
「うあっ!?あ、あ、あ!!ま、待て!なんかっ……ダメ!オレ、こんなっ…!」
体内の奥深くから何かが抜き出される感覚。それが、密かに限界まで高まりつつあった快感に止めを刺した。
「あああぁぁぁ!!!!!」
全て抜き取られるのと同時に、甲高い叫び声を上げて弓なりになるドワーフの体。それは明らかに達してしまった時の反応だった。
「お?なんだ、初めてでイッたのか?なかなか素質あるじゃないか。」
「ハァー……ハァー…。う……うるせぇ…。」
ぼうっとした頭で、何とかそれだけ言い返す。だが、次に襲ってきた感覚に、その頭は一気に覚醒していく。
「って、てめえ何してやがるんだあ!?」
「なに。まだ収まりがつかないんでな。」
そう言って、ドワーフの秘所を広げるバハムーン。
「だ、だからって、なんでそっちなんだよぉ!?そっちには興味ねえんだろぉ!?」
「ああ、興味自体はない。だがせっかくだ、こっちの初物ももらおうかと思ってな。」
「やめろ!やめろ!やめろ!!!それだけは絶対やめろぉ!」
涙を浮かべて嫌がるドワーフ。それを見て、バハムーンがずるそうに笑う。
「そんなに嫌がるなら、やめてやってもいい。が、条件がある。」
「な、何だよ?」
「俺の彼女……いや、彼氏になれ。」
「は……はぁ!?」
予想だにしなかった条件に、ドワーフは激しく狼狽する。
「ずっととは言わん。お前に他の友人が出来るまで出構わん。」
「……こ、断ったらどうするんだよ?」
「それならしょうがない。このままここを犯す。」
「てめっ…!そんなん脅しじゃねえか!しかも最低最悪な脅し方だぞそれ!」
「で、どうする?」
ドワーフの顔が、苦虫を噛み潰したように歪む。
「くっ……そ、そもそもオレじゃ、好みじゃねえんじゃねえのかよ!?オレは男だけど、体の方は…!」
「ほう、都合のいいときだけ女であることを使うのか。」
「う…!」
「まったく、女らしい小狡さ…」
「うるせーっ!!!てめえにずるいとか言われたくねえっ!!!」
「それで、どうするんだ?返事がないならこのまま…」
バハムーンが腰を突き出し、わずかにドワーフの中に侵入する。途端に、ドワーフは叫んだ。
「あーっ!!わかった、わかった!!!彼氏にでも何でもなってやるからやめろちくしょーっ!!」
「よし、いいだろう!」
苦虫80匹ぐらい噛み潰した顔のドワーフとは対照的に、バハムーンは改心の笑みを浮かべた。
「じゃあこっちにしておいてやる。」
「って、ちょっと待てぇ!!結局やるにはやるのかよっ!?」
「だから、収まりがつかないと言っただろうが。」
「ふざけるなっ!もうやめろっ!もう痛いのも気持ち悪いのもやだよっ!」
「気持ちよくしてやればいいんだろう?」
「そういう問題じゃねええぇぇっ!!!」
一ヵ月後、バハムーンは寮の部屋に一人座っていた。
あの日以来、ドワーフはバハムーンの彼氏という立場に納まり、どちらかというとバハムーンの一方的な意思の元、
遊びや探検に連れ回された。最初はバハムーンを見るのも嫌といった感じだったが、時間が経つにつれ、それも多少は軽減された。
だが、元々が誰か友人が出来るまでという約束。その別れの日が来るのは、そう遠い話でもなかった。
はずだった。
「ただいまぁ。」
どことなく暗い声と共に、部屋に入ってくるドワーフ。今では部屋までもが相部屋にされている。もちろんバハムーンの仕業だ。
「おう、遅かったな。で、友人はできたか?」
ニヤニヤしながら尋ねると、ドワーフの顔が、憎々しげに引きつった。
「んなわけねえだろ、くそ野郎…!」
「ほーう。それは意外だな。」
「嘘つけぇ!!てめえすっげえ有名人だったんじゃねえかっ!!てめえと一緒にいるってだけで、男も女も寄ってこねえんだよっ!
しかもここのだけじゃなくて、パルタクスの奴等まで寄ってきやしねえっ!!畜生がっ!!!」
叫びながら思い切り机を叩くが、バハムーンは平然としている。むしろその様子を微笑ましげに見ており、それが余計に神経を逆なでする。
「いいじゃないか。その程度で近づくのを辞める奴なんて、最初から友人になどしない方が賢明だ。」
「ふざけんな!一瞬納得しかけたぞ!でも元凶はてめえだっ!」
「だが悪い相手じゃなかろう?この一ヶ月で、どれだけ経験を積んで、どれだけの資産を手に入れたと思ってる?」
「う……そ、そりゃそうだけど…。で、でも、だからっててめえの公認の彼氏にされるなんて最悪なんだよっ!そ、それに…!」
それまでの勢いが急になくなり、ドワーフは恥ずかしそうに声を落とした。
「て、てめえのせいで、変な体にされて…!」
「変?どう変になったと?」
「言わせる気かよっ!?」
「当たり前だ。俺に非があれば謝らねばならんしな。」
ドワーフは顔を恥ずかしさに歪めつつ、何とか声を絞り出した。
「ぐ……その……てめえのせい……で、し……尻の方で感じるようになっちまったんだよっ!」
「別に俺のせいじゃないだろう。ダメな奴はいくら慣らしても、そっちでは気持ち良くなれないものだ。」
相変わらず気にする素振りもないバハムーンに、ドワーフは怒りのあまり全身の毛を膨らませる。
「ふざけんなっ!責任逃れしてんじゃねえよっ!ああもう、ほんとどう責任取ってくれんだよっ!?この絶倫変態ホモ野郎!」
そう言われると、バハムーンは何やら不穏な笑みを浮かべてドワーフを見つめた。
「そうか。責任を取って欲しいのか。」
「あ、やべ…。い、今のなし…。」
「いいだろう、責任ならいくらでも取ってやる。本当にお前は俺のこと大好きだな。」
「ちっ、ちげーよっ!!今のは言葉の綾だっ!……くそ、ほんとに気にしてんだぞ、オレ…。」
急にシュンとしてしまうドワーフ。耳も尻尾も力なく垂らす様に、バハムーンも罪悪感を覚えたのか、そっと席を立つ。
「ドワーフ。」
優しい声で呼びかけ、そっとその肩に手を掛けるバハムーン。
「……何だよぉ…。」
「やらないか。」
「………。」
返事はないまでも、その全身の毛がゾワゾワと逆立っていく。そして、腹の底から叫んだ。
「真昼間から何考えてやがるてめえええぇぇっ!!!!!」
「時間など関係ない!やりたいからやるんだ!」
「無駄にかっこよく宣言してんじゃねえ!!ふざけるなっ!よせっ!やめろっ!やめてくださいっ!」
「いいじゃないか。お前だって最近はちゃんと気持ちよくなっているんだろう?ならどこに不都合がある!?」
「オレの意思はどうなるんだよっ!?よせっ!やめっ……あーーーーーっ!!!!」
本人達は大真面目。しかし周りから見れば、それもただのじゃれあいにしか見えない。
さらに悪いことに、そうやってじゃれあいを繰り広げる二人は非常に仲が良く見え、なおかつお似合いに見られてしまう。
そしてそれが、他者の近寄りがたい雰囲気を醸し出してしまう悪循環。
少なくともまだしばらく、二人の関係は強制的に続きそうだった。
以上、投下終了。投下し終わってから気付いたけど、若干陵辱属性でしたね。書き忘れ申し訳ないorz
ランツレートのドワーフは、顔の中身だけ見るとかなり見分けつきにくい気がします。男女共に丸っこい顔だし。
お尻ネタは結構好きなものだけど、書くとなると意外に恥ずかしさが…。
もっとじっくりねっとり書けるよう、精進したいと思います。
では、例によってこの辺で
[> マトリョーシカ ピッ
どうしてもエロがギャグに見えてしまうw
乙でした
そしてドワに合掌
ホモスレ池
修道士ってか衆道士だなw
乙です
どうしてもバハの顔が某いい男で再生されてしまうw
>>81 だれうまw
乙カレーです。
ちょwwwバハがwwwwそしてドワがwwww
保守!!
もういっちょ保守
ノーム娘陵辱物はないのか・・・
ダッチ
ドワーフって女なのか、ホモSSかとおもってたのに
考えてみるとライフゴーレム達も色々応用効くんじゃないか?
妹達を人質にとられて性奴隷になることを不良学生に強要されるトロオ姉さんとか、
半ば無理矢理襲われ最初は気丈でも徐々に堕落していくティラ姉さんとか、
姉達に返り討ちになった腹いせとして生徒の不満のはけ口にされる末っ子のマメーンたんとか、
変態男子生徒にナンパされて拒否するも言いくるめられて言いようにされるスティラたんとか。
うわ、何でもありだな……。
早くその妄想をSS化する作業に戻るんだ
見てみたいが、ライフゴーレムはあまり記憶に無い(爆裂拳
脳内放送ができないのが辛いな
ゴーレム陵辱書かれてもアロサならスルーされそうと考えたら
喜びと悔やみが混じり合った複雑な気分になった
93 :
89:2008/10/04(土) 08:48:29 ID:ya6+MmSV
>92
ライフゴーレム達の序列がもっとはっきり分かればいいのにな…。
長女:トロオ姉さん 次女:ティラ姉さん 末っ子:マメーンたん
ぐらいしか分からないのが辛い;
あと、インパクトに欠けると覚えてないのかも知れんな;
自分はマメーンとスティラがインパクトあってトロオとティラは何度となく返り討ちに遭ったから覚えてるのだが
むしろほとんど口調で覚えた
一番初めに戦ったやつは突然のことで対応しきれ無くて印象薄い
あと名前覚えてないから誰が誰やら
迷宮姉妹は例外なく2ターンもあれば陵辱出来てたので、性能的な印象が全くない…
後期タイプは合体技なしでガチで殴り合いなんぞしようものならパーティー壊滅してたからな
性能なんぞ出させるものか!って爆裂拳で瞬殺して
人形如きが人間のふりをして恥じらってみせるのか?って木原マサキばりに陵辱してたよw
序盤にはりきりすぎたせいか、中〜終盤は敵の攻撃なんてかすりもしてなかったな
ライフゴーレムも通常攻撃を1ターン浴びせればまず沈むし、
仮にかわされても呪文浴びせれば次ターンで終了してたので、合体技使うまでも無いという…
こんな我が一軍の死亡原因のトップは銅箱です
アヤツに何度辛酸なめさせられたことかッ!!
>>98 もう宝箱陵辱の話とか書いちまえよww
その小さな(鍵)穴を容赦なく弄り回して、散々視姦(サーチル)してやった後に強引におっ広げてやるんだよ!
そりゃあ色んなもんを撒き散らすだろうぜ!ヒャッハー!
しかし返り討ちですね。
101 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 05:54:40 ID:c160Y8YH
最後は、アンロックでおとすんじゃねぇ?w
前回のは、さすがに読み手を選びすぎだったようで。でも、書いてて楽しかったのでまた書くかも。
それはともかく、衆道士ちょっと笑った。衆道を修めた修道士か。
今回は、ちょっとネタを借用させてもらいました。
前スレ615氏の「ヒューマン争奪戦」って響きが素敵に聞こえたのが一つ。
それから、♀スレの方の前スレ958氏のネタが個人的にツボったので、会話とシチュの一部をお借りしました。
お二方が見ていることを祈りつつ、借用させてもらったお詫びとお礼申し上げておきます。
一体どうして、こんなパーティが組まれることになったのか。その経緯なんか、ほとんど思い出せない。
確か、うちらパルタクスとランツレートの合同パーティを組んでみようって話だったのは覚えてる。
が、どうして、よりにもよってこうなるのか。
「おい、そこのクズ。ボケッとしてると、モンスターに殺される前に私が殺すぞ。」
青い制服のバハムーン。俺がヒューマンであることが気に入らないらしく、いつもこうやって文句を言ってくる。
「やってみれば?そしたらお前だけじゃなくて、パーティ全滅だと思うけど。」
「僧侶の一人ぐらい消えたところで、大勢に影響はないと思うがな。」
「脳まで筋肉でできてんのか?お前一人で戦ってるんじゃないんだよ。」
もうこんなやり取りはいつものこと。だがまあ、これが俺だけならよかったんだが…。
言い合う俺達の後ろで、甲高い声が響く。
「ちょっとぉ!いちいち近寄らないでよっ!うざったいなあ!」
「フェアが寄ったんじゃないもん。あなたが近づいてきたんだもん。フェアのせいにしないでよぉ。」
「その喋り方もうざったいって言うの!ほんっとにイライラするなあ!」
「あなたの方が、ずっとうるさいもん。イライラするのはフェアの方だよぉ。」
後衛を務めるフェアリー二人。おっとりしてるのが、俺の同級生のフェアリー。気性の荒いのがランツレートのフェアリーだ。
フェアリー同士仲が悪いとは聞いていたけど、この二人を見てるといつか殺し合いが起きそうで怖い。というか、傷害事件ならもう
日常茶飯事だったりするんだが。
うん、まあ、それでもあとの二人がノームとかセレスティアなら、何とかやっていけたと思うんだ。
でも、今俺達の前で言い争ってるのは…。
「まったく、あなたは敵と味方の区別もつかないのかしら?」
「ああ?何が言いてえんだよ?はっきり言え。」
「これだから獣は…。あなたの振り回す、その野蛮な得物が、わたくしに当たりそうだったと言ってるのですわ!」
「じゃあ近づかなきゃいいじゃねえか!てめえから近づいといて、当たりそうで怖かっただぁ?ふざけんな!」
一見大人しそうな顔で、猛然とエルフに食って掛かるドワーフ。そのドワーフに、今にも矢を放ちそうなうちのエルフ。
何か、俺達のあずかり知らないところで、大いなる意思が働いたとしか思えない。
もうね、何と言うか……これは全員にとって、パーティを組むって言うこと自体が一つのカリキュラムだと思うんだ。
しかも、全員が同じ学校ならまだよかった。が、よりにもよって仲の悪い種族が狙ったように別の学校なので、みんな本当に容赦がない。
それでも、俺はまだマシな方だ。
「おいおい。パーティの安全を担う後衛同士なんだから、喧嘩はやめとけ。」
そうフェアリー二人に声をかけると、二人は同時にこっちを向いた。
「はーい。」
「はぁい。」
二人の仲は悪い。だが俺に対しては、二人とも気味が悪いまでに好意的だ。このおかげで、俺は何とかこのパーティでやって行こうという
気持ちが保てている。
「ふん。クズと羽虫とは、お似合いだな。」
バハムーンの言葉に、フェアリー二人がムッとした顔で睨み返す。
「ヒュムのこと、悪く言わないで!」
「私達が羽虫なら、あんたなんかトカゲだよーだっ!」
「トカゲっ…!うるさい羽虫共め、焼き殺してやろうか?」
「フェアリーもバハムーンもやめろってば!もう仲良くしろとは言わないけど、喧嘩はするなって!」
俺自身、バハムーンは好きじゃない。が、俺が仲裁しないと、本当に殺し合いに発展する。
他に仲裁を期待できそうなドワーフとエルフは、既に二人で別世界に行ってしまっているので、まったく期待できない。
「……ふんっ!せいぜい下等な生き物同士、仲良くじゃれあっているがいい!」
そう言って、プイッと後ろを向くバハムーン。その背中に、青フェアリーがべーッと舌を出している。
「ねえヒュム、あんな人の言うこと、気にしないでね?」
優しく、しかし棘のある口調で言い、うちのフェアリーが俺の腕を取る。と、ランツレートのフェアリーがキッとそれを見咎めた。
「ドサクサに紛れて何やってんのよっ!この泥棒女!」
「フェア、泥棒じゃないもん。あなたより前から、私達ずっと一緒だもん。」
「そんなの関係ないよ!ヒューマンは私のなのっ!」
そして、黒フェアリーとは逆の腕に齧りつく青フェアリー。好かれるのは悪い気がしないけど、これはこれで困る。
むしろ、俺が新たな争いの火種になっている気もするけど、それを考えるとパーティ脱退したくなるので考えないようにしている。
ともあれ、今日も何とか無事に地下道探索を終え、本当の敵である仲間と共に学園へと帰ることとなった。
地下道から戻ると、俺達のパーティは一瞬にして解散される。むしろパーティ解散というより、パーティというくびきから解放されると
言った方が近い気がする。しかし解放されたところで、大体みんなが次に向かうのは学食だ。嫌でも顔をつき合わせることは多い。
「ああ、こんな所まで獣なんかと一緒だなんて。どんなに香り高いハーブでも、その獣臭さの前には霞んでしまいますわね。」
「んだとぉ?てめえこそ、鼻がひん曲がるような気持ち悪りい臭いさせやがって!俺の方が気分悪りいぜ!」
なぜか、あの二人は学食でもよく一緒にいる。本当は仲がいいんじゃないか?という疑問もあるが、未だ真相は不明。
いや、実際聞いてみたこともあった。が、二人揃って「どうしてこんな奴と!?」と言い、二人仲良く俺を罵倒し、挙句の果ては
合体技であるところの爆裂拳をもらい、危うくロストする所だった。そんなわけで、俺はあの二人が大嫌いだ。バハムーンより嫌いだ。
で、そのバハムーンは大抵、一人でもそもそとご飯を食べている。なぜかいつも視界に入るので、気にはなる。が、実害はないので、
そういう意味ではあまり気にならない。
その意味で気になるのは、むしろこの二人だ。
「ねえねえヒュム。アイスクリーム食べよぉ。」
「そんなのよりビシソワーズにしようよ!あれ、すっごくおいしいよ!」
「ちょっとぉ、ヒュムは貧乏なんだから、そんなの食べられるわけないじゃないのぉ。」
「何よー!だから私が買ってあげようって言ってるんじゃない!お金払わせるなんて可愛そうでしょ!」
俺を間に挟み、火花を散らすフェアリー二人。おまけに、微妙に俺の心をちくちく傷つけている。
「ああ、いや。俺はこれで十分だからさ、あとは二人で…。」
「こんなのと一緒なんて嫌!」
「ヒュムとじゃなきゃやだよぉ。」
そして再び両腕を掴まれる。このおかげで、俺は最近ゆっくり食事した記憶がない。悪意がない分、強くも言えなくて余計にたちが悪い。
「わかった、わかった。それはともかく、飯のときぐらいは喧嘩やめよう。な?」
俺が言うと、二人はぶすーっとした顔でお互いを見つめていたが、やがて渋々ながらも頷いてくれた。
しかし、ま、これがほぼ毎日のことなので、もうまったく期待してはいないんだけどね。
長くパーティを組んでいれば、最初は気の合わない仲間でも仲良くなるとか聞くけれど、うちのパーティに限っては仲良くなる前に
死者が出そうな気がしてならない。いや、よく考えたら俺が死者第一号だった。
今でも思い出せる。爆裂拳もらって、保健室で目覚めたら、いきなりバハムーンが嫌味言って来たんだったっけな…。下等だから生命力が
ないとか、だから灰になる云々とか……。そんでもってフェアリーズが保健室飛び込んできて、わんわん大泣きして抱きついてきて……
そういや、エルフとドワーフから、まだ謝罪の言葉もらってないや。気がついたら余計嫌いになった。見舞いにも来なかった。大嫌いだ。
そんなことを思い出したりしたせいで、ここ最近で一番まずい夕飯も何とか食べ終わり、俺は寮に戻った。
ランツレート組は、うちの寮は居心地悪いと文句を言うが、俺はむしろあっちの方が居心地悪く感じる。確かにあっちの方が豪華だし、
マートさんの作るご飯はおいしいけど、こっちの方がなんて言えばいいのか、豪華すぎなくて落ち着けると思っている。
それをあのバハムーンに言ったら「お前らしい小物ぶりだ」と言われて喧嘩になったっけな。まあそれはどうでもいいや。
とにかく、ここだけは他の誰も干渉してくることのない、ほぼ唯一の安らぎの場だ。とはいえ、安らいだからと言って、やることなんて
寝ることぐらいなんだが。
ベッドに寝転び、目を瞑る。体がベッドに沈み込んで行き、頭の中がふわーっと宙に浮いたように感じる。今日はいい夢が見られそうだ。
と思った瞬間、俺は突然のノックに夢の国から呼び戻された。
「ふぁーい、誰?」
「私ー。入っていい?」
青フェアリーの声だ。眠い目を擦りながらドアを開けると、フェアリーは部屋の中をきょろきょろ見回しつつ入ってきた。
「どしたの?こんな時間に?」
「んー。えっとね、ちょっとヒューマンに聞きたいことがあって…。」
「聞きたいこと?」
いきなり、フェアリーはどこか追い詰められたような顔で俺を見上げてきた。
「あのさ、正直に答えてね?」
「あ、うん。」
「私とあの女……どっちが好き!?」
「ど、どの女?」
「あのイラつくフェアリーだよ!」
バリデスガンを食らった気分だった。どっちも数少ない、いい仲間だとは思っているが、どっちが上、なんて決められない。
「いや……その、別にどっちが好きとか…。」
「どっちかじゃなきゃダメなのっ!」
ダメなんだ。そうですか。下手な答え方したら、また灰にされそうな気がする。
「いや、ね?だからさあ、俺は仲間に対してどっちが好きとか…。」
「あーーーーーーっ!!!!」
いきなりの大声に、俺とフェアリーは同時にビクッとした。声のした方を見ると、鍵をかけ忘れたドアから黒フェアリーが覗いていた。
「ずるいよずるいよぉ!それ抜け駆けだよぉ!」
困った相手と、困った話をしているときに、さらに困った相手であるところのフェアリーが、より状況を困ったことにしてくれたのは
何とか理解できた。しかし、もうそれ以上、俺の頭は考えることをやめた。
「ふん!あんたがボケッとしてるのが悪いんだよーだ!」
「フェア、ボケッとなんかしてないもん!とにかく、ヒュムから離れてよぉ!」
「やーだね!ヒューマンは私のだもんっ!」
そう言うと、青フェアリーはいきなり俺の顔をグキッと曲げ、唇を重ねてきた。
「あああーーーーっ!!!」
「あはっ!これでヒューマンは私のものっ!」
首が猛烈に痛むのはともかく、場の雰囲気が困った状況から修羅場にレベルアップした気がする。
「お、おい…!」
「フェアも負けないもん!」
言うなり、黒フェアリーも俺に飛び掛り、無理矢理唇を重ねてきた。
が、それだけではなかった。フェアリーの舌が、俺の口の中に侵入し、俺の舌に絡まってくる。
「むぐ…!?」
「あああ!?舌入れたぁー!!」
「ぷはぁ。あはは〜、これでヒュムは私のぉ。」
一体どういうルールの下にこれが為されているのか、非常に興味深いものがある。特に何が興味深いって、本来最も尊重されるべきはずの
俺の意思がまるっきり無視されていることだ。
「あったま来たー、この泥棒女!あんたになんか、絶対負けない!」
「フェアだって負けないもん!」
肝心の俺を置き去りにし、どんどんヒートアップする二人。止めるタイミングを完全に逃してしまった気がする。まあ、もういいや。
この際だから、もう止めようなんて思わないことに決めた。
青フェアリーが俺のズボンを引きずり降ろすと、横から黒フェアリーが見事な連携でパンツを下ろしてくる。
露になった俺のモノを見て、二人の動きが止まった。
「わ…。」
「……大っきい…。」
フェアリーから見れば、確かに大きいだろう。そもそもの体のサイズが、まったく違ってるんだから。
先に動いたのは青フェアリーだった。
「それじゃ、いただきまーす!」
「あっ!」
小さな舌が、俺のモノをちろちろと舐め始める。こそばゆいような、それでいて一点に凝縮された強い快感が走る。
「ずるいよぉー!フェアもするぅー!」
と言っても、青フェアリーがしっかり俺のモノにしがみついているため、手出しが出来ない。黒フェアリーは困った顔をしていたが、
やがてポッと顔を赤らめた。
「じゃ……じゃあ、ヒュム。フェアだけ見てぇ。」
顔を赤く染めつつ、服を脱ぎだす黒フェアリー。どうしてもそっちに視線が行ってしまうのは、抗えない男の性だ。
やがてすっかり服を脱ぐと、黒フェアリーは俺の体に擦り寄ってきた。恥ずかしさからか、いつもよりずっと暖かい体。
小さいけど、微かに感じる柔らかさ。その先にある突起。それが、俺の体にぎゅっと押し当てられる。
「お、おい…。」
「あー!ヒューマン、私の方見てよー!」
青フェアリーが、つい俺の体にしがみついた瞬間。黒フェアリーは素早く位置を入れ替えた。
「あっ、ずるい!」
「えへへ〜。今度はフェアの番〜。」
対抗心からか、黒フェアリーは俺のモノを舐めはせず、代わりに両腕でぎゅっと抱きついた。そして、体全体を使って扱き上げてくる。
舐められるのもかなり気持ちが良かったが、これはこれでかなりいい。特に、一番敏感な部分で胸の感触が味わえるため、
下手に舐められるより気持ちいいかもしれない。
「うぅ〜…!」
青フェアリーは悔しそうな顔でそれを見ていたが、やがてこのままじゃ敵わないと見たらしく、同じように服を脱ぎ捨てた。
表情こそ強気だが、その体はすっかり紅潮し、腕はしっかりと大切な部分を隠している。
「ヒューマンになら……こんなことだって、してあげるよ。」
そう言って俺の腕を掴むと、そっと自分の体に押し当てた。俺の指を取り、それを自分の秘所へと導く。
チュク、と湿った音。同時に感じる、熱くぬめった感触。さすがに中まで導かれることはなかったが、そうやって俺の指に
秘所を押し付けたまま、ゆっくりと腰を動かし始める。
と、それを黒フェアリーが見咎めた。
「ちょっとぉ。ヒュムの体汚さないでよぉ。」
「ふーんだ!気持ちよければいいんだもんね!」
「そんなの、あなたが気持ちだけでしょぉ。」
「あんただって同じじゃないのよー!」
二人の視線が火花を散らす。こんな時でも喧嘩を忘れない二人に、俺はある意味尊敬の念を抱いた。
それにしても、いいところでお預けを食ってしまった。もうちょっとでイきそうだったんだが……二人とも、すっかり俺の存在を
忘れているらしい。二人の罵詈雑言は留まるところを知らず、ついには取っ組み合いになりそうな雰囲気になってきた。
「何よ!?やる気!?」
「許さないんだからぁ!」
「二人とも、ちょっと待てって!」
魔法の詠唱準備に入った二人に、慌てて声をかける。すると、今までの殺気が嘘のように消えた。二人とも、どこかバツの悪そうな目で
俺のことを見つめてくる。
「えー、その、なんていうか。二人とも、やるなら最後までよろしく。放置プレイは好みじゃないし。」
「ご、ごめん。」
「でもぉ、どっちがヒュムのこと、イかせてあげればいいのぉ?」
俺としてはどっちでもいいんだけど、それじゃあとで殺し合いが起きるのは目に見えている。となると、答えは必然的に一つに絞られる。
「どっちが、じゃなくてさ。二人でしてくれよ。」
「え〜。」
「二人でぇ…?」
「あからさまに嫌そうな顔するなよ!仲間なんだから、協力するときは協力しなきゃってね。」
二人はお互いを汚物でも見るかのような目で見ていたが、やがて小さく頷いた。やっぱり、俺の言うことは素直に聞いてくれるらしい。
「で、でも、どうすればいいのぉ?」
「そうだよ。こんなのと協力するとか…。」
「こんなのとか言わない。せっかくだから、みんな気持ちよくなれる方法がいいよな?」
「私より、ヒューマンが気持ちよくなれるのでいいよ。」
「ヒュムが気持ちよくなるなら、いいよぉ。」
同時に答えて、二人は同時に嫌そうな顔をした。もう、この際どうでもいいか。
「それじゃ、まず二人で抱き合ってくれるかな。」
「えええぇぇ〜。」
「うぅ〜……やらなきゃ、ダメぇ?」
「ダメ。」
フェアリー二人は、嫌そうを通り越して悲しそうな顔でお互いを見つめていた。何だか俺が二人をいじめてる気がしてきた。
やっぱりまずかったかなーと思っていると、二人はお互い顔を背けつつも、おずおずと抱き合った。
「こ……これで、いい?」
「ヒュムぅ、次はどうするのぉ?」
確かに、片腕はしっかり相手を抱えている。が、二人とももう片方の手で相手の顔を突っ張っている。
「次はその手をやめなさい。」
「うぅ……やっぱりダメ?」
「むぅ〜……でもフェア、ヒュムのためなら我慢するぅ。」
顔は相変わらず嫌そうだが、今度こそ二人はしっかりと抱き合った。フェアリー二人が抱き合う光景も、これはこれで見応えがある。
小さな体がしっかりと抱き合い、小ぶりな胸同士がぎゅっと押し付けられ、柔らかそうに形を崩している。
「それじゃ、次はベッドに寝て…。」
「どっちが上?」
その質問に、一瞬言葉が詰まる。どっちかを上にしてしまえば、格好のマウントポジションと理解されかねない。
「……横向きで。喧嘩、するなよ?」
二人が横になると、俺はその足元に座る。二人の姿を後ろから見ると、さらに見応えがある。
「ヒュムぅ。これでい〜い?」
「ん、そうだな。もうちょっと足、開いて。で、もうちょっとくっついて。そう、そんな感じ。」
「こんな格好、恥ずかしいよ…。」
二人とも、その体は真っ赤に染まっている。毛も生えていない秘所も、しっかりピンクに色づいている。いよいよ、俺の我慢も限界だ。
「それじゃ、いくよ。」
ゆっくりと、二人の体の間にモノを差し込む。フェアリー二人の体が、ビクッと震えた。
「うわ……あっつい…!」
「あうぅ……フェアのと、擦れるぅ…。」
二人の太腿に、秘所に、胸に、お腹に、俺のモノが擦れる。二人ともその肌はすべすべとしていて柔らかく、そして熱い。
できることなら、膣内に入れたいところだったけど、さすがに体格が違いすぎて無理そうだ。でも、これはこれでなかなかだ。
ゆっくりと、それを抜き差しする。その度に敏感な箇所をあちこち擦られ、フェアリー二人は可愛い声を上げる。
「あんっ!あっ!す、すごいよぉ!」
「うあぁ〜……気持ち、いいよぉ…!」
「俺も、気持ちいいよ。」
抜き差しするたび、二人の愛液が俺のモノに塗られていく。滑りがよくなり、フェアリー達の快感も、俺自身の快感も高まっていく。
昂れば昂るほど、フェアリー達はより強く抱き合う。それによって俺のモノはさらに強く締め付られ、肌の感触がよりはっきり感じられる。
既に、二人の体は自身の愛液と汗に塗れ、呼吸も荒い。部屋の淡い光に浮かぶ二人のその姿は、この上もなく妖艶に映る。
「うあぁ!もっと、擦ってぇ!」
「ヒュムの、熱いよぉ…!」
二人の可愛い声も、余計に俺を興奮させる。ただでさえ溜まってたせいで、もう耐えるのも限界だった。
「く!もう、出る!」
「い、いいよぉ!いっぱい出してぇ!」
「フェ、フェアもなんか来るぅ!飛んじゃうぅ!」
腰からぞくぞくした快感が這い上がり、二人の体に思い切り精を放つ。
「あんっ!」
「あう、熱いぃ…!」
小さな二人の体は、たちまち精液塗れになってしまう。それを全身に浴び、青フェアリーは陶然とした表情を。黒フェアリーは呆然とした
表情を浮かべる。
「わぁ……すごい臭い。」
「ヒュムの……べたべたぁ。」
その感触が気持ち悪いのか、黒フェアリーは自分の体にかかったそれを困ったように見つめていた。すると、青フェアリーが意地悪そうな
笑みを浮かべた。
「ヒューマンの、いらないんだ?じゃ、私がもらっちゃおっと。」
言うなり、黒フェアリーの体についた精液を舐め取り始める青フェアリー。
「ちょ、ちょっとぉ。これフェアのだよぉ。」
頭を抑えられても、無理矢理続ける青フェアリー。すると、黒フェアリーはついに怒ったような顔になった。
「もぉー、フェアだって負けないもん!」
そして、二人でお互いの体についた精液を舐め取り始める。白濁した液体に塗れたフェアリー二人が、お互いの体を舐めあう光景は
何ともいやらしく、ついつい股間も正直に反応してしまう。
あらかた舐め終わった二人は、ふと俺に視線を向けてくる。その視線は、最初は顔に。それが徐々に下がっていき、やがて再び大きく
なったモノに止まる。
「まだ、できるよね?」
「あ……ああ、まあ。」
「じゃあ、もう一回してぇ。フェア、もっとヒュムの欲しいよぉ。」
「こんな女より、私にちょうだいよー。ヒューマンのなら、いくらでも飲んであげるからさ!」
「フェアもぉー!」
とりあえず、今夜は眠れそうにないことはわかった。俺は二人を宥めつつ、明日徹夜明けで探検に行く覚悟を決めた。
翌日。予想通り、俺は空が白くなるまで寝かせてもらえず、地下道に入ったというのに眠くてしょうがない。
最終的には、フェアリーを両脇に侍らせて眠れたので、満足といえば満足なんだが。
そのフェアリー二人も、昨日の一件のおかげで少しは仲良くなった……ら、よかったんだけど。
「だからぁ、ヒューマンは私のなのっ!」
「フェアのだってばぁ。フェアの方が、ヒュムのこと気持ちよくさせてあげられるもん。」
相変わらず喧嘩をやめない二人。それどころか、昨日の一件で余計仲の悪さに拍車がかかったような気が…。
そして前を行くドワーフにエルフ。こいつらもいつも通り喧嘩している。おまけに、今日はいつも以上に語気が荒い。
「んだよ、てめえ!朝っぱらから辛気臭え顔見せんじゃねえよ、胸くそ悪りいなあ!」
「あなたのような野蛮な種族と、朝から一緒だなんて。雨降る朝とて、ここまで気分が落ち込んだりはしませんわ。」
「俺だって、てめえみてえな軟弱な奴と一緒だなんて、反吐が出るぜ!」
「その、怯えた犬のようによく吼える口。醜いことこの上ないですわ。」
その言葉に、ドワーフの眉が釣り上がった。
「んだとぉ?てめえこそ、いちいちクソ下手な詩みてえな言い回ししやがって、下手糞のくせに、詩人でも気取ってんのかってんだ!」
今度はエルフの眉が釣りあがり、二人の間で本格的に殺気が漂い始める。
「何をっ…!くっ……あ、あなたのような者には、湖の底のような静けさを与えたいものですわね…!」
「何が言いてえんだかわかんねえよ、詩人もどきが。もっとわかりやすく言え。」
「……OK、わかりましたわ。殺す!」
ドワーフに向かって矢を放つエルフ。それを紙一重でかわし、ドワーフが斧を振り上げる。
「おう、それならわかりやすいぜ!返り討ちにしてやる!」
「お、おいおい!二人ともいい加減にしろ!」
が、俺の声など届くはずもなく、二人の死闘はどんどんヒートアップしていく。気がつけば、俺の後ろの声までもがヒートアップしていた。
「あんたがどう言おうと、ヒューマンは私のなのっ!」
「フェアのだよぉ!フェアの方が、あなたよりずっとヒュムのこと知ってるもん!」
「でも、昨日先にキスしたの私だもんねーだっ!だからヒューマンは私のもの!あは!」
「ふーん…。」
黒フェアリーの表情が消えた。やばい、と思う間もなく、全身から凄まじい殺気を放ち始めた。
「それじゃ、あなたがいなくなればいいんだねぇ。ビッグバム!!」
「魔法壁召喚!消えるならあんたが消えなさいよ!!」
いきなり放たれた倍化魔法を、素早く防ぐ青フェアリー。そして破邪の剣を抜き、黒フェアリーに斬りかかっていく。
「おいおいおいおい!!!そっちの二人もやめろ!!シャレにならないぞ!!」
だが、今回ばかりは俺の声も届かない。力ずくで止めようとした瞬間、今まで静かだったバハムーンが口を開いた。
「ふん、たかが羽虫二匹ぐらい、死んだからと言ってどうなるもんでもないだろう。」
「馬鹿!仲間が喧嘩してるのに、止めない奴があるか!」
「仲間?ふんっ、性処理係が消えるのが惜しいだけだろう?」
さすがに、この言葉は聞き流せなかった。
「……何だと?」
「昨日は、ずいぶん楽しんでいたようだったな。羽虫二匹相手に、日頃溜まってた性欲を吐き出せて、さぞ満足だったろうよ!」
なぜか不機嫌に叫ぶバハムーン。ふざけるな、気分悪いのはこっちの方だ。
「てめえ……いい加減にしろよ。」
「はっ、お前が私をどうすると?羽虫二匹相手で疲れ果てているようなお前が、私を相手にできるのか?」
「俺には魔法があるぞ。」
「デスでも何でも撃って来るがいい。その前に私のブレスがお前を焼くぞ。」
「試してみるか?」
「試してみようか。」
もう、仲裁なんて考えもしなかった。それどころか、とうとう俺自身、仲間との死闘に身を投じてしまった。
その日、地下道では一日中、俺達の戦いの音が響き渡ることになった。
だが、この時俺は気付かなかった。
なぜ、バハムーンが俺とフェアリーのことを知っていたのか。なぜ、妙に不機嫌そうだったのか。
その理由に気付いたとき、また新たな戦いの火蓋が切って落とされることになるのだが、それはまた別のお話。
以上、投下終了。
もう一度、ネタを借用させていただいたお二方にお礼申し上げます。
>>99-100 「お前の中身は俺達に捧げるために守ってきたんだもんな」
「メデューサの瞳があれば…こんな冒険者達なんかに…!」
「よかったじゃないか モンスターのせいにできて」
「んんんんんんんっ!」
「おい、盗賊を呼べ。みんなで罠の種類を調べてやる」
(耐えなきゃ…!!今は耐えるしかない…!!)
「宝箱の生毒ガスゲ〜ット」
(いけない…!実はスタンガスなのを悟られたら…!)
「トハス地下迷宮の生金箱の生日本刀を拝見してもよろしいでしょうか?」
「こんな奴らに…くやしい…! でも…感じちゃう!」(ビクッビクッ
「おっと、解除を失敗してしまったか。やばい痺れがいつまでもとれないんだろう?」
こうですか!?わかりません!
GJ!ネ申作品投下サンクスであります!
ヒュム男……。頑張れ。
>>111 GJ!
しかしマジバトルし始めるとはwww
ドワーフとエルフって実際のところどういう本心なんだろ?そっちも興味あったり
GJ!
マジバトルかwww
バハムーン、相手が回避・防御・回復呪文使い放題だということ忘れてるな?
僧侶だから走り回れば自然とMP回復するし。
実際うちの君主と僧侶がそれやって敵が気の毒になった。
攻撃は当たらないは当たってもダメージ少ないし、すぐさま回復されるし。
いいな、ランツレートの生徒たち。
メインパーティクリアするまではセカンドパーティ作らんと決めたからには守らんと。
ところでパーティメンバー全員特待生って異常ですかね?
よくあることでござる。
116 :
615:2008/10/08(水) 00:02:55 ID:A8OGFD2E
>>◆BEO9EFkUEQ
GJ!
生き残れるのだろうか、そのメンバーは…
相性修正の悪さがひどすぎるw
ヒューマンを除く5名は-10以上て…(ドワーフに至っては-18、性格修正除く)
私のSSなんかでネタ作りの一助になるならばなによりですw
ちゃんとエロありなのがすごいです。私も精進しないと…
いいネタないかな…
もちろん性格も悪3善3だよな
マゾにもほどがあるな。
俺だったらあきらめるぞ。そのパーティ。
>>113の疑問にお答えするため、二分でわかる二人の関係を。状況は同種族のお友達と3人での会話。
ドワ編
「うちのエルフ、ほんと最悪なんだぜ!前はこんな事あったし、あの時はあんな事あったし、その前は―――こういうことも―――。」
「お前も大変だな〜。だからエルフってのは嫌なんだよな、まったく。軟弱だし、わけわからない喋りするし…」
「てめえにそこまで言われる筋合いはねええぇぇぇ!!!!」 ドグシャアアアア!
「にしてもさ、お前ずいぶんそのエルフのこと覚えてんな。もしかしたら気があるんじゃね…」
「んなわけあるかあああぁぁぁぁ!!!!」 ズッガァァン!
「くそー、てめえらに話すんじゃなかった!気分悪りい!帰る!」
「うえーん、あいつどうすりゃ満足なんだよぅ!?」
「痛ってぇ〜……もういいよあいつ、ほっとけほっとけ。」
エルフ編
「本当に、ドワーフという種族は最低ですわ!パンをスープに浸けて食べたり、制服のボタンをいい加減に留めたり、他にも―――。」
「それにしては、ずいぶんそのドワーフのこと見てますわね?もしかしたら、あなたそのドワーフのことが好…」
「ふざけたこと言わないでくださいますことっ!?」 ピシィ!
「ドワーフは皆、そのようなものですわ。所詮、獣じみた野蛮な種族で、言葉一つとっても粗野な…」
「仲間を侮辱するのは許しませんわっ!」 バシィ!
「不愉快ですわ!わたくし、帰らせてもらいます!」
「うぅ……一体、わたくし達にどうしろと…?」
「痛たた……そっとしておきましょう。大切なことに気付かないのも、また青春ですわ。」
たぶん、一生自分の気持ちに気付かないんじゃないかと。
もし気づいても必死で否定しそうだな。
人、それをツンデレと呼ぶ。
デレ分はそもそもあるのか?
デレはロストフラグ
ドワーフ「俺このダンジョン攻略したら告白しようと思うんだ・・・」
エルフ「次のダンジョンクリアするまで考えさせてください」
二重の死亡フラグですね、わかります
逆にデレずにいつもの調子で喧嘩しながら冒険に出かけて、
片方が重傷を負ってから相方が激しく心配し始めるパターンならゴールインフラグだけどな。
ただ稀にそのまま死んでしまってヤンルートや鬱ルートに分岐することもあるが。
トハスの地下迷宮にてバハの超絶戦闘力が炸裂する前にドラゴンズによってドワ男が戦死
ショックを受けたエルフはバハをなじり上げるんだな
「嘘つきっ!嘘つきぃっ!あなた自分の真二刀龍で一刀両断すればドラゴンなんてイチコロっておっしゃったじゃないっ!
あなた相手が自分のご先祖様だからといって手を抜いていたのではないですか!?」
埋められぬ悲しみが、残された者達の憎しみへと代わり、生まれなかった想いが新たな怒りの火種となる…。
戦火の炎を打ち消すべく、ラグナロクで回復と蘇生を引き当てろ!ノーム!
(ナレーション三石琴乃)
生き返ったドワーフがエルフの態度に困惑するんですね、分かります。
すっげぇ大切にされて甲斐甲斐しく世話とかされるんだよな
そして記憶を取り戻してロードになって庇いながら
「俺って不可能を可能にする男だろ?」
とカッコつけるが、普通に絶対壁発動中で「はぁ?」
と言われて終わり。
バーサクヘルム(鉄仮面)が必要だな
それなら一度目はやっぱり失敗して即死してもらわないと。
エルフ「帰ってくるって……帰ってくるって言ったのに……!!」
なんかあってるようなあってないような。
ここは何故かエルフの声が桑島法子に変換されるインターネッツですね
ドワとエルフがやたら人気ですな。せっかくなんで続きでも書いてみようかと思ったけど、
どう頑張ってフラグ立てても爆裂拳でへし折られるため、諦めました。
(例 保健室のドワにりんご剥いてあげる→「皮付きの方がうまい」→戦闘開始)
そんなわけで、その後は各自妄想してください。
で、今回はモンスター相手だけど陵辱じゃないものを。お相手はデーモンズの錬金術師。平たく言えばドワ子。
ただ陵辱じゃないとはいえ、モンスター相手にハッピーエンドはありえなかったので、多少鬱です。
それと、書き終えてから気付いたのが、こいつ種族が霊…。先に気付いてれば、それなりの扱いしたものを…。
そんなわけで、種族が人である前提で書かれてますが、そこはお目こぼしを。
「嫌だ!嫌だ!嫌だよぉ!こんなの嫌だぁ!」
地下道に、一人の女の子の泣き声がこだまする。
周りには、沈痛な面持ちで彼女を見つめる仲間達。彼女の前には、灰とすら呼べない塵と化してゆく、一握りの灰。
「嫌だぁ…!どうして……どうしてこんな事にぃ…!」
耳と尻尾を力なく垂らし、その毛皮は涙に濡れていく。溢れる涙を拭おうともせず、ドワーフの少女はただ泣いた。
「彼のおかげで、助かったんだよ…。俺達がこうして、ここにいられること自体、奇跡なんだから…。」
ヒューマンがそっと、その肩に手を触れる。が、ドワーフはそれを振り払う。
「だって……だって、だからってロストなんて嫌だよぉ!みんな一緒じゃなきゃ嫌だぁ!うわぁーん!」
「冒険に出るということは、常に死と隣りあわせだ。みんな、それぐらいの覚悟はあるはずだろう?」
今度はバハムーンが話しかける。だが、ドワーフはやはり激しく首を振る。
「やだやだやだぁ!ロ……ロストなんてやだぁ…!ひっく!わた……私も死にたいよぉ…!あいつと一緒じゃなきゃぁ…!」
「おい!」
その瞬間、バハムーンはドワーフの横っ面を思い切り引っ叩いた。いきなりのことに、他の仲間は慌ててバハムーンを止めようとする。
「死にたいだと!?ふざけるなっ!お前はあいつの遺志を無駄にするつもりなのか!?」
それでも、ドワーフは涙を流し、もはや塵すらなくなったそこを見つめている。
「恋人を失ったお前が悲しいのはわかる。だが、だからといって死にたいなどと言うのは、あいつの遺志も、死も、行動も、何もかも
否定するということなんだぞ!わかっているのか!?」
そう叫ぶように言うバハムーン自身、その目には涙が滲んでいた。
「いいか、悲しいのはお前だけじゃない!私だって、他の皆だって悲しいんだ!だがな、だからといってあいつの死を無駄にするような
言葉を吐くのは、私が許さないぞ!」
仲間。確かに、仲間だった。しかし、彼女の悲しみはみんなが思う以上に重く、彼女の心はみんなが思う以上に、繊細だった。
元、仲間だった塵。そこに落ちる、彼の装備品。そして、彼女とお揃いのゴーグル。それをそっと拾うと、ドワーフはふらりと
立ち上がった。
「……どこへ行くつもりだ?」
「……みんなのね……気持ちは、嬉しいよ…。だけど……だけどぉ!」
落ち着いたように見えたドワーフの目元に、再び涙が溢れる。
「私は嫌だよぉ!どうしてあいつがロストしなきゃいけないの!?あいつがロストするぐらいなら、あんたがロストした方がずっと
よかったのに!!」
言ってはならない言葉を口に出すドワーフ。さすがに、バハムーンの顔色が変わった。
「何だと…!?貴様、今なんと言った!?」
「おい、やめろ!こんな時に喧嘩なんかするな!」
「お二人とも、落ち着いてください!」
セレスティアとヒューマンが、二人がかりでバハムーンを抑える。それをぼんやりした目で眺め、ドワーフはふらふらと歩き出した。
「ドワーフさん、どこに行くんですか!?」
「もう……いいよ、私は…。これ以上、冒険なんて、したくないよ…。」
「待て、貴様!好き放題言っておいて、挙句に勝手に抜けるというのか!?」
「うん…。ごめんね、みんな。でも、私……もう、ダメだよ…。」
必死に引き止める仲間の声など、もはや彼女の耳には届いていなかった。大切な恋人を失い、その胸にぽっかりと穴が空いたような感覚。
その穴を埋めるには、仲間の声はあまりにも小さすぎた。失った彼の存在は、あまりに大きすぎた。
「ならば、勝手にするがいい!貴様のような者など、いない方がよっぽど皆の為だ!」
ついにバハムーンも、禁句を口にしてしまう。そして、ドワーフは一人、仲間の元から去って行った。
この日、一つのパーティが消え、一つの命がロストした。
ただ一人、放浪の身となったドワーフ。錬金術師であったため、少なくとも食うには困らないぐらいの小金を集めることは出来た。
ドワーフは様々な場所を回った。そしてロストした者に関する、ありとあらゆる情報を聞いて回った。その中で、いくつか彼女の心を
惹きつけたものがある。
ロストした者すらも蘇らせることが出来るアイテム。一つは女神の涙。一つは蘇生の果実。
それらがあれば、もしかしたら彼を蘇らせることができるかもしれない。
その僅かな可能性を信じ、彼女はありとあらゆる地下道を回った。錬金術師ゆえの強運と、ドワーフゆえの体力に物を言わせ、それこそ
一日中でも地下道に篭った。
しかし、彼女の求めるものはまったく出なかった。どうでもいいアイテムばかりが手に入り、求めるものは一向に出ない。
蘇生の果実かと期待すれば、命の果実。女神の涙かと思えば天使の涙。期待すればするだけ、その落胆も大きかった。
やがて、だんだんと自暴自棄になっていき、宿屋にも戻らずに戦う日々が続くようになった。いつしか禁じられた地下道にまで入り込み、
ひたすらにそれらを求めて戦うようになっていった。しかし、それでも目的の物は手に入らない。
やがて、彼女の中に恐ろしい考えが生まれ始めた。
モンスターをいくら倒したところで、一人で出来る範囲はたかが知れている。ならば、同じ冒険者を襲えば―――。
普通なら、こんな考えは一笑に付してしまったことだろう。だが、彼女は彼を求めるあまり、道を踏み外してしまった。
最初に襲ったのは、まだこんな地下道に来るのは時期尚早と言えるような冒険者達だった。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「え?こんなところで一人?どうしたの?」
「うん、ちょっとね。仲間が死んじゃって…。」
同じ冒険者のフリをして近づき、相手が油断したところで、巨大な鎚を振りかざし、襲い掛かった。
ヒューマンを叩き伏せ、フェルパーを殴り殺す。フェアリーを潰し、ノームを砕く。
思ったとおり、冒険者である彼等は様々なアイテムを持っていた。残念ながら彼女の求めるアイテムはなかったが、食料や消耗品は
今の彼女にとって、貴重なものばかりだった。そのアイテムのおかげで、宿屋に戻らずとも戦い続けることが出来た。
最初こそ、冒険者を襲うことに抵抗もあった。しかし、その戦利品や彼女の掲げる大義名分により、それはすぐに消え失せた。
いつしか、彼女を襲うモンスターはいなくなった。
やがて、モンスターは彼女を仲間と見なすようになった。
ペットを飼うような気分で、それにもやがては慣れていった。
体毛の艶は消え、長い年月の返り血や汚れによって、その体毛はまるで彼女の心のように、黒く変貌していた。
そしてその顔つきも、もはや以前の彼女とは似ても似つかない物となっていた。元の仲間が会ったところで、彼女とはわからないだろう。
彼女は、もはや冒険者ではなかった。他の冒険者の間で、彼女は別の名で呼ばれるようになっていた。
地下道に住む、ドワーフの姿をしたモンスター。
悪魔に魂を売り渡した、忌むべき存在。冒険者の成れの果て。
デーモンズの錬金術師、と。
長い長い時間が経った。彼女は未だ目的の物を見つけることができず、地下道で冒険者を襲い続けていた。
その日も、犠牲者となるパーティが近づいてくるのが見えた。今日は仲間のモンスターもいないが、彼女が見る限りでは、どれも大した
実力を持たないパーティのようだった。それならば、彼女一人の力でも事足りる。
もはや、不意打ちなどという手段を使うことはなかった。彼女自身、長い殺戮の中で力をつけ、たった一人でもそれ相応の実力を
持つようになっていた。
射程に入ったところで鎚を構え、冒険者の前に躍り出る。
「悪いけど、アイテム置いてってもらえないかなあ?」
「……みんな、構えろ!」
既に彼女の名は知れ渡っており、冒険者達はすぐさま武器を構えた。
「無駄だよ。全部、私がもらっていく…」
その時、彼女はふと懐かしい匂いを感じた。
「……え?」
改めて、自分が襲った一行を見る。
ノーム、バハムーン、セレスティア、ヒューマン。その四人とも、どこかで見たことがある。
だが、違う。確かに懐かしい匂いだが、一番気になる匂いはこいつらではない。
その後ろに控えるクラッズ。これは見たことがない。だがその隣にいる、どこか怯えたような顔をしているドワーフ。
そいつだった。その姿は、あまりに、似ている。そしてその匂いは―――。
「う……嘘だよ…。こんなの……こんなの嘘だよ…!」
「……どうした、来ないのか?ならばこちらから!」
両手剣を振り上げ、襲い掛かるバハムーン。その攻撃をあっさりかわすと、さらにヒューマンが切りかかってくる。
それを鎚で受ける。そこに、セレスティアが剣を振りかざして襲い掛かった。
その腕を掴み、片手で放り投げる。セレスティアは壁に叩きつけられ、無防備な姿を曝け出した。
が、彼女にはもう戦意はなかった。ただ、信じられない思いだけが頭の中を満たしている。
そのドワーフから感じる匂い。それは確かに、あのロストした彼と同じ匂いだった。
ありえるはずがない。彼は確かにロストしたのだ。だが、あのドワーフからは彼と同じ匂いがしている。
そしてあの姿。装備こそ違えど、恐らく彼と同じ僧侶。それに戦闘となると、ちょっと怯えたような顔になるところ。尻尾を下に
垂らしつつ、リズムを取るように振る癖。何から何まで、彼に瓜二つだった。おまけに、額にはゴーグルがない。
「嘘だ……嘘だぁ…!」
よろよろと数歩下がると、彼女は脱兎の如く逃げ出した。
わけがわからなかった。そして、恐ろしかった。様々な思いが胸を満たし、彼女はそれを振り払うように叫びながら、地下道の奥へと
走り去っていった。
残された一行は、呆気にとられた顔でそれを見つめていた。
「な……何だぁ?」
訳がわからないという顔で、ヒューマンが呟く。
「さあな。しかし、逃げてくれて助かった。ああもあっさり避けられるとは…。」
「あっつつ……さすがに、ここの敵は手ごわいですね。気を引き締めなければ。」
「私、こんなとこまで来るの怖いです…。」
その中で、ドワーフだけが彼女の走り去った先を見つめていた。その顔には、驚きと疑念の入り混じった表情が浮かんでいる。
それに気付き、バハムーンが声をかけた。
「む、どうした?」
「……あのさ、みんな悪い。」
視線を動かさずに、ドワーフが喋る。
「今日の探索はここまでにして、先戻ってて。」
「え?何言い出すんだよ急に?」
「ほんと、ごめん。でも、ちょっと大事な用事なんだ。だから、頼むよ。」
「……いいだろう。」
バハムーンが低い声で答えると、他のメンバーは信じられないような思いで彼女を見つめた。
「だが、絶対に生きて戻れ。いいな?」
「わかってるって。それに大丈夫、やばくなったら、バックドアルで逃げるよ。」
「約束だぞ。では、私達は先に戻る。」
「ちょっと待てよ!一体何が…!」
ヒューマンが抗議しようとしたところで、バハムーンは帰還札を使ってしまった。あとに残されたドワーフは、軽く息をつく。
そして、逃げ去った彼女のあとを追い、走り出した。
心臓が張り裂けそうなほどに痛み、彼女は足を止めた。驚きと恐怖のせいで、思った以上に走れなくなっている。
実際、足はもつれるし、膝の力は抜けるしで、途中何度も転んだ。それでも、どんなに走っても彼の幻影からは逃れられる気がしない。
現に、今も彼の声が幻聴のように聞こえている。後ろから、彼の荒い息遣いが…。
そこで気付いた。これは幻聴ではなく、実際の声だ。
慌てて振り返ると、彼女と同じくらいに息を切らした彼の姿があった。
「い、嫌ああぁぁ!!!」
「ちょちょちょっ!ちょっと待って!待ってくれよ!」
彼は慌てて手を上げ、何とか彼女を宥めようとする。
「その……信じられないかもしれないけど……てーかオイラも信じられないんだけど…。」
少し言葉を探し、彼はまた口を開く。
「君さ……もしかして、オイラのいたパーティの仲間じゃなかった…?」
「……嫌……嫌だよぉ…!」
「だ、だから落ち着いて!それで、その……だとしたら、兄貴の彼女じゃない…?」
「……え…?兄貴…?」
その言葉に、彼女は呆気にとられた。
なるほど。確かに瓜二つではあるが、よく見れば顔も少し違うし、毛色も若干異なっている。第一、彼の一人称は『俺』だった。
「あ……あなた、もしかしてあいつの…?」
「やっぱり!?そっかー、やっぱりそうか!兄貴からよく聞いてたからさ、もしかしてーって思ったけど……あ、生前は兄貴がお世話に。」
律儀に頭を下げられ、彼女も釣られて頭を下げる。
「えっと……弟さん、なんだよね?」
「そそ。兄貴の一個下。」
「学校には、前から…?」
「いやいや、兄貴が死んでからだよ。もう二年半経つんだよなー、あれから。」
顔には出さなかったものの、彼女はその年月に驚いていた。最後に日の光を浴びたのは、一体いつの話だったろう。
「君のことはさ、兄貴がよく手紙に書いてたんだよ。そりゃあもう、どこが可愛くて、何がきれいでーってさ。おかげで初めて会ったのに、
初めてって気がしねえや。あはは!」
きっと、今あの彼が隣に立っていたら、躊躇いなく鎚でぶん殴っていただろう。
「それに、兄貴の持ってたもんからは、絶対に君と同じ匂いがしてたからさ。匂い覚えといてよかったよー。」
そんなことを言われても、今の彼女には苦しいだけだった。
こうして話していると、彼女自身冒険者であった頃を思い出す。そして今もそうであるかのように錯覚してしまう。
しかし、今の彼女は、彼と話すにはあまりに汚れていた。その手は冒険者の血に塗れ、その体は地下道の臭いが染み込んでいる。
それでも、今はその錯覚に縋り付いていたかった。今現実を見てしまえば、心が壊れてしまいそうだった。
「……ねえ。私、あいつのこと学校でしか知らないんだ。あいつって、家だとどんな奴だったの?」
「あいつ?そりゃあ俺のこといびるのが三度の飯より好きって野郎でさー!ひどいんだぜ、あいつー!学校じゃそんなことなかった?」
「えー、意外。学校だと全然そんなことなくってさ…。」
ロストした彼の事を中心に、色んな話をした。
学校の話。冒険の話。パーティの話。ちょっとした自慢話。その逆に失敗談。どんな食べ物が好きか。趣味は何か。
「そんでさ、あのクラッズの奴、おにぎり10個渡しといたら、『作っておきましたー!』って、豪華な弁当にしやがって。」
「あはは!それじゃ、バハムーン怒ったでしょ?」
「そりゃもう、怒った怒った!『皆の分の食料を、一個にまとめてどうするんだー!』ってさ。んでまた、そこでノームがさあ…」
「ふふふ。口真似、そっくり。そういう言い方なんだよね、バハムーンって。」
彼女自身の話以外、それこそありとあらゆる話をした。こんなに楽しいと感じたのは、彼が死んで以来初めてだった。
何より目の前にいる彼。死んだ彼と瓜二つの彼と話していると、まるで兄の方と話しているように思えてしまう。
だからこそ、彼女は色んな話をした。この時間が終わって欲しくなかった。この時間が終われば、その先にあるものは決まっていたから。
だが、時が過ぎれば、どんなに楽しい時間も終わりを告げる。楽しい時間だからこそ、一瞬にして過ぎ去ってしまう。
話題になりそうなことはほとんど出し尽くし、やがて彼の方が恐る恐る口を開いた。
「それで、その……君は、どうしてこんなこと…?」
その瞬間、彼女の笑顔は消えた。夢から醒める時間が来たのだと、はっきり悟った。
「……あいつを…。ロストした人でも、蘇らせられるアイテムがあるって…。」
「ああ……確か、女神の涙だっけ?でも、あれは…」
何か言いかける彼の顔を、彼女は正面から見つめた。
「ねえ。これ以上話す前に、あなたに二つ……お願いがあるの。」
その目は強い意志があり、断ることはできそうになかった。
「な……何?」
「勝手なお願いで、あなたにはすっごく迷惑な話かもしれない。だけど、あなたじゃなきゃダメなことなの。」
久々に嗅いだ、彼と同じ匂い。その匂いが、ほとんど忘れかけていた感情を揺り起こしてしまった。
自分の制服に手を掛け、思い切り引き裂く。
「ちょ……ちょ、ちょっ!?」
「お願い。あなたは、本当はあいつの弟だってわかってる。だけど……ああ、お願い……今だけは、あいつの代わりになって…。」
「か……代わりったって、どうすれば…!?」
ずたずたに引き裂いた服を捨て去り、スカートも破り捨てる。
「私のこと、抱いて。」
「んなっ!?」
恐らく経験などないのだろう。彼は予想以上にうろたえていた。だがその姿も、初めて彼の兄と結ばれたときのことを思い出させる。
「お願い…。こんなに汚い体だけど……お願い…。」
「あ、いや、それは気にしないけど……その、ここ……で?」
「大丈夫……私といれば、モンスターは、襲ってこないから…。」
「………。」
その一言が持つ悲しみを、彼は瞬時に察した。同時に、そこまでして兄を求める彼女に対する同情、そしてそこまで求められる兄に、
軽い嫉妬心を覚えた。
黒く染まったその体を、おずおずと抱き締める。彼女の体からは、すっかり染み付いた血の臭いと死臭が感じられた。だがその中に、
確かに兄が愛した女の子の匂いも混じっている。
「あの、ごめん…。あまり、臭いは…。」
「大丈夫だよ、ちゃんと君の匂いがする。」
「………。」
彼女が手を掛けなかったスパッツに手を掛け、そっと引き降ろす。尻尾が、驚いたようにピクンと跳ねた。
何度も躊躇いながら、そっと彼女の秘所に手を伸ばす。そして僅かにその手が触れると、彼女は可愛らしい声を上げる。
「あんっ!」
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫。続けて。」
最初は触ること自体躊躇っていたが、やがて慣れてくるに従い、執拗なまでにそこを刺激し始める。
そっと割れ目をなぞり、花唇を広げ、指を入れる。その度に、彼女の体と尻尾がピクンと跳ねる。
「んっ、あっ!じ、上手だよ…!」
「そ、そう?」
「うん…。んんっ!すごく、気持ちいい…。」
言いながら、彼女もそっと、彼の股間に手を伸ばした。
「うあ!?」
「私も、してあげるね。」
ズボンの上から、優しく撫で上げる。初めて受ける他人からの感触に、彼の手は思わず止まってしまう。
だが、彼女はそれを非難することもなく、むしろ微笑ましい思いで見ていた。兄も、まったく同じような反応をしていたのが懐かしい。
既に彼のモノは硬くなっている。ズボンを下ろし、それに直接触れる。途端に、彼の全身が跳ね上がった。
「う、うあぁ!」
「敏感だね。我慢、しなくていいから。」
優しく、それを扱き始める。既に彼のモノはビクビクと震え、今にも射精してしまいそうに見える。が、彼は歯を食いしばり、必死に
耐えている。我慢しなくていいのに、と思いつつも、必死に耐えるその姿は可愛らしい。
扱くペースをさらに上げ、親指で先端をグリグリと刺激する。その瞬間、彼は彼女の腕を思い切り強く掴んだ。
「だ、ダメっ!もう出る!」
掴んだものの、その手を止めることも出来ず、彼は勢いよく精を放った。正面にいた彼女は全身にそれを浴びてしまうが、
嫌な顔一つせず、むしろ扇情的な笑みを浮かべた。
「あは、さすがに早かったね。」
「……ごめん…。」
つい言ってしまった言葉に、彼はしょぼんとうなだれてしまう。が、彼女は気にする様子もない。
「でも、まだまだ元気。」
うつむく彼の顔にそっと手を添え、その目を正面から見つめる。
「ね?次は、私の中に…。」
その言葉を聞いた瞬間、男の意地があるのか、彼はいきなり彼女を押し倒した。危うく頭を地面に強打するところだったものの、そこは
彼がしっかりと手を添えて守った。
が、とりあえず押し倒すまではしたものの、その後どうすればいいのかわからないようだった。困りきった顔のまま、
組み敷いた彼女を見下ろしている。
ちょっとだけ呆れた笑顔を浮かべ、彼の顔を撫でて優しく微笑む。
「あなたのモノ、私の中にちょうだい。」
「う、うん…!」
言われてぎこちなく腰を突き出すが、焦ってしまって一向に入る気配がない。何度も入り口を滑り、それが余計に彼を慌てさせる。
最初は彼に任せていたものの、彼女としても焦らされるのには限界がある。やがて、そっと彼の胸に手を当てる。
「そう焦らないで、ね?もっと、ゆっくりでいいよ。」
「ご……ごめん。」
「ううん、いいよ。最初、手伝ってあげる。」
そのままスッと手を滑らせ、彼のモノを優しく握る。一度出した後にも関わらず、そこはまだ十分な硬さを保っている。
それを、そっと入れるべき場所へと導く。やがてそれが入り口に当たると、彼女は手を放した。
「そのまま、来て。」
「う、うん。じゃ……いくよ?」
グッと、彼が腰を突き出す。
「あんっ!」
先端が彼女の中に入り込む。少しずつ、それが体の奥深くに突き入れられていく。
「うあぁっ…!中、熱い…!」
自身のモノに伝わる、彼女の体温。それは思う以上に熱く、その感触は今までに感じたことがないものだった。
そして奥に突き入れるほどに、その快感は高まっていく。
やがて全てが彼女の中に納まると、二人はそのまましばらく荒い息をついていた。
「……ね、少しずつ、動いてみて。」
彼女が声をかけると、彼はおずおずと腰を動かし始めた。ゆっくりと抜き始め、そして強く突き入れる。
久しぶりに感じる、雄の感触。雌としての感覚。忘れていたはずのその感覚は、彼女に激しい快感をもたらした。
ところが、その動きを5回ほども繰り返したとき。突き入れられた彼のモノがビクンと動くのを感じ、同時にお腹の中がじわっと
温かくなるのを感じた。
「……え?もう?」
その感覚も懐かしいし、気持ちいいが、早いにも程がある。思わず素に戻って聞いてしまうと、彼は今にも泣き出しそうな表情になった。
「…………ごめんなさい…。」
耳もすっかり垂れ下がり、心底困り果てているのがよくわかる。おまけに、二度も早いと言われて、彼はすっかり落ち込んでいるらしい。
そんな彼を、彼女は慈愛に満ちた目で見つめ、その首に優しく腕を回した。
「初めてだもんね。大丈夫、気にしないで。いくらでも、気が済むまで中に出していいよ。」
「……ありがと…。」
「あ、でも一回ぐらい、私もイかせてね?」
「が、がんばる。」
気を取り直し、彼は再び動き始める。さすがに、今度は即果ててしまうこともない。
最初こそ遠慮がちだったその動きも、徐々にがっつくような激しい動きになっていく。相手への気遣いなどできる様子もなく、
自分の欲望のままに腰を打ち付けるその動き。変化には乏しいが、これはこれで彼女にもかなりの快感がある。
何より、自分の体で気持ちよくなってくれているのだとわかり、それが純粋に嬉しかった。特に、今の彼女には尚のことだ。
「ご、ごめん…!また、出ちゃうよ…!」
「んあっ!あっ!い、いいよ。思いっきり……あぅっ!中に、出してぇ…!」
彼女の体をぎゅっと抱き締め、三度目の精が放たれる。普通ならもう精も根も尽き果ててしまうところだろうが、幸いにも彼も彼女も
ドワーフであり、体力はかなりある方だ。その上、彼にとっては初めての行為であり、すっかりその快感の虜になっている。
射精が終わると、彼の尻尾にそっと尻尾を重ねてみる。少し驚いたように、尻尾がピクッと逃げかけた。
が、すぐにその必要はないと気付き、むしろ今まで以上に燃え上がる。
三度始まる、激しい動き。さすがに彼女の方もかなり昂ってきており、余計なことを考えないように、ただひたすら快感に身を委ねる。
と、不意に彼の手が彼女の胸をまさぐり始めた。
「きゃう!?ちょ、ちょっと、何を…!?」
元々の体型と、長い戦いの間に、彼女の胸は女性らしさなどすっかり消え失せている。胸囲はあるが、その大半がただの筋肉だ。
しばらくまさぐって、ようやく彼女の小さな乳首を見つけ出すと、彼は赤ん坊のように吸い付いた。
「あんっ!だ、ダメェっ!わ……私の体、汚いよぉ!」
そう言ったところで、彼は一向にやめる気配を見せない。歯を立てないように、舌先で先端を転がすように舐めつつ、強く吸い付く。
いきなり加わった新たな刺激に、彼女の快感は一気に跳ね上がった。
「んあああっ!す、すごくいいよぉ!私……私、もうっ…!」
限界が近くなり、彼の頭を強く抱き締める。同時に、膣内がぎゅっと収縮し、彼のモノを強く締め上げた。
「うあっ!?すっごいきつい…!ま、またっ…!」
「お、お願い!イって!一緒に、一緒にぃ!」
その言葉に応えるように、彼はさらに強く腰を打ち付ける。
「もう、出る!」
「出してぇ!私の中に……あ、ああぁぁぁ!!!!」
お互いの体を強く抱き合い、高まる快感に身を任せる。そして、彼が精を放った瞬間、彼女も同時に達した。
さすがに、四回も射精した彼の体力は限界だった。彼女の方も、久しぶりの感覚にそれ以上の快感を望みはしない。
やがて呼吸が整ってくると、彼は彼女の中からゆっくりと引き抜いた。それに合わせ、彼女の中から三回分の精液がどろりと垂れた。
「お腹、いっぱい…。」
そう呟き、妖艶に笑う彼女。だが、彼の方は既にすっかり治まってしまい、再び暗い気持ちに戻っていた。
「……ねえ、姉貴…。」
そう呼びかけると、彼女は心底驚いた顔をした。それを見ると、彼は慌てて弁明した。
「あ、いや、だって兄貴と付き合ってたんだよね?だから、その……姉貴かなって…。」
「……そう、呼んでくれるんだ…。」
寂しい笑顔を向けられ、彼は顔を合わせられずにうつむいた。だが、どうしてもこれだけは話さねばならない。
「あのさ……姉貴、女神の涙探してるって……言ったよね?」
「……うん。」
「あれさ……あれってさ、その……ロストした場所と、完全に同じところで使わなきゃ、効果……ないんだよ…。だから、その、地下道は
いつも、違うから……一度その地下道を離れちゃったら……もう…。」
最初、彼は彼女がどれだけ落ち込むだろうと思った。もしかしたら錯乱するのではないかとも思っていた。
が、彼女は笑った。今まで見た、どんな笑顔よりも、寂しそうな顔で。
「……知ってたよ。」
「えっ!?」
「ずっと前から……知ってたよ。もう、私はあいつがロストした場所から、ずっと離れたところにいる。
だから、もう無理なんだって……知ってたよ…。」
「じゃ、じゃあ……じゃあ、どうしてこんなこと!?」
「諦められなかったんだよ…。もし、私が諦めちゃったら、あいつはもう絶対に生き返れない。もしかしたら、奇跡とか偶然とかで
生き返らせられるかもしれないって……もしかしたらなんて、絶対にないって、わかってたのにね。」
何だか、急に疲れ切った顔になってしまった。そのために費やした、二年という月日と、踏み外してしまった道。
それらを支えてきた、僅かな希望すら手放した今、彼女には何も残ってはいなかった。
「ねえ、弟君。」
「な、何?」
「私、言ったよね?あなたに二つ、お願いがあるって。」
「……うん。」
「それじゃ、二つ目のお願い。」
深いため息をつき、彼女は疲れ切った目で彼の顔を見上げた。
「私を、殺して。」
「なっ…!?」
さすがに、その言葉は予想できなかった。彼女は兄の恋人であり、自分の初めての相手でもあり、またパーティの元仲間なのだ。
殺すことなど、できるはずもない。
「な、何言ってるんだよ!?そんなこと…!」
「ごめんね。でも、もう疲れちゃった…。」
「だからって…!そ、そうだ!みんなに話せばさ、また…!」
「ダメだよ。もう、私は戻れないよ、こんなに汚れた体でさ。それに仲間だったのに、気付かないで襲い掛かったんだよ?私…。」
さすがに、それを庇える言葉は出てこなかった。何もできない自分に、彼は唇を噛み締める。
「あなたには、辛い思いばっかりさせちゃうと思う。だけど、お願い。あなた以外になんて、殺されたくないの。」
「……どうしても、ダメ?」
あまりに悲しそうな顔に、彼女の心は激しく痛む。だが、彼女は首を振った。
「……そっか…。わかった、わかったよ。」
優しい声で言うと、彼はそっと、彼女の体を抱き締めた。
「ごめん。オイラ、何にも力になれなくて…。」
「ううん、そんなことない。あなたのおかげで、私、幸せだよ。」
こんな程度で幸せと言える彼女のことを思うと、思わず涙が溢れそうになる。だが、涙は見せまいと、必死にそれを堪える。
「パーティのみんなに……気付かれなくて、よかった。こんなのが私だなんて気付いたら、みんなショックだよね。でも……できれば、
ごめんって、伝えておいて。」
「……うん…。」
「ねえ、死後の世界って、あると思う?」
唐突な質問に、彼は少し戸惑った。が、彼女は気にせず続ける。
「もしあったとしても……きっと、あいつは天国でも、私は地獄だよね…。」
「そんなこと……ないよ。だって、姉貴がこうなったのは、兄貴のせいなんだから。姉貴が地獄行きなら、兄貴だって地獄行きさ。」
その言葉に、彼女は楽しそうに微笑んだ。
「優しいね、君は。」
「あの兄貴、だったからね。反面教師ってやつ。」
「もっと早く…。」
そこまで言いかけて、彼女は口をつぐんだ。もうこれ以上、彼に重荷を背負わすことは出来ない。
「……何でもないや。そろそろ、お願い。」
「ああ……わかったよ。」
彼女の体を抱き締めたまま、彼は詠唱を始める。その言葉は、彼女も聞いたことのあるものだった。
生命を司る僧侶の魔法の中で、生命そのものを操る魔法。それは僧侶の魔法ながら、回復ではなく、そのまったくの逆。
長い長い詠唱が終わり、ついに魔法が発動する。一瞬にして対象の命を奪う死の魔法、デス。
彼女の体が、ビクンと震えた。だが、その顔は安らかな笑顔を浮かべ、苦しみなど欠片も見えない。
最後の力を振り絞り、彼女は囁いた。
「ありがとう…。」
掠れた声で言うと、彼女の体から力が抜けた。
同時に、その体がさぁっと滑り落ちていった。彼女の体も、首輪も、鎚さえも灰となり、そして塵になっていく。
彼の腕の中から、彼女の全てが零れ落ちていった。
すべてが塵となった中、一つだけ形を残したものがあった。彼はそっと、それを拾い上げる。
忘れもしない、それは兄のつけていたゴーグルだった。彼女は片時も放さず、これを持っていたのだ。
それを強く握り締め、ぎゅっと胸に抱く。堪えていた涙が、今にも溢れそうだった。
だが、モンスターの声が近くで聞こえた。さすがに、ここでモンスターに会っては自分もロストしてしまう。
「さよなら……姉貴。」
小さく呟くと、彼はバックドアルを唱えた。彼を待つ、仲間の下へ戻るために。
宿屋に戻ると、彼はバハムーンの部屋を訪ねた。他の仲間はともかく、リーダーであるバハムーンにだけは、何があったかを
報告しておくべきだと思ったからだ。
部屋に入ると、バハムーンは窓際に椅子を置き、ぼんやりと空を眺めていた。どうも、声をかけるのが憚られる雰囲気である。
しばらくの間、ドワーフは声をかけあぐねていた。
「……あいつを。」
「え?」
いきなり、バハムーンが口を開いた。
「あそこまで追い込んだのは、私だ。仲間と言いつつ、あいつがどれほどの悲しみを抱えているか量れず、最も助けを必要としたときに、
あいつを突き放してしまった。その結果が、あれだ。」
「姐御……気付いてたの?」
「当たり前だ。私が、仲間の顔を忘れると思うか?」
空を見上げたまま、バハムーンは続ける。
「だからあの時、私がこの手で始末をつけるべきだと思った。だが、な…。私が不甲斐ないせいで、お前にまで業を背負わせてしまった。」
「……元はといえば、全部兄貴のせいだよ。だから、オイラが業を背負うぐらい、当たり前だよ。」
バハムーンは振り向かずに笑った。
「兄に似て、優しい奴だな。」
「ま、ね。ああ、そうだ。その……姉貴が……ああ、あの子のことね。みんなに、ごめんねって、言ってたよ。」
「………。」
それを聞くと、バハムーンは押し黙った。そして空を見上げる顔を、さらに上へ向けた。
「その言葉は……私があいつへ言うべき言葉だったろうに…。」
ドワーフはそっと席を立ち、部屋を出た。お互い、これ以上一緒にいない方がいいだろう。
自分の部屋に戻ると、ドワーフはベッドに倒れこんだ。もう、今日は何も考えたくなかった。何も考えず、ベッドに横たわるうちに、
いつしか彼は眠りについていた。
その日、一つの命がロストし、一つの物語が終わった。
しかし、長い時を経て、最後の最後に、パーティの絆は再び繋がれた。
翌日、一向は再び同じ地下道の探索に行くことにした。先日は中断されたが、今日こそは突破してやろうとみんな意気込んでいる。
ロビーに集合した仲間の下へ、最後にドワーフが駆けつけた。その顔は、昨日よりどこか大人びて見える。そして額には、今まで
なかったはずのゴーグルがかけられている。
「あれ?それ、どうしたんだ?」
ヒューマンが最初に気付き、声をかける。
「ん、これ?いいだろ?」
「まるで、二年半前に戻ったようですよ。さすが、兄弟。よく似ていますよ。」
「以前、彼がつけていたものと同じものだと認識します。少なくともデザイン上は、まったく同じものですね。」
普段無口なノームまでもが、会話に参加してくる。仲間の存在というものの重さを、彼は今更ながらに知った気がした。
「さあ、今日はあそこを突破するぞ。皆、気合を入れていけよ。」
バハムーンの声に、全員が声を上げて答える。ドワーフもそれに答えつつ、そっとゴーグルに触れた。
懐かしい、兄の記憶。初めから別れの運命を背負って出会った、彼女の記憶。
―――兄貴、姉貴。一緒に、行こうぜ。
心の中で、そう呼びかける。そして、彼は仲間と共に歩き出した。
一緒に戦い続けてきた、頼もしい仲間達。
それに、今も仲間に愛され、語られる兄と、義理の姉でもあり、短い間の恋人でもあった、彼女の記憶と共に。
以上、投下終了。
ドワ子好きな身としては、デーモンズだけ霊扱いなのは納得いかない。
とりあえず、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
それでは、この辺で。
[> わら人形 ピッ
これはGJすぎる
お疲れ様でした!
泣いた GJ
エピローグまでバハが男だと思ってたorrz
>>146 バハ子は大抵男っぽい口調で書かれるよなw
SSのPT編成でドワーフ、フェルパー、クラッズ、バハムーン辺りは良く出てくるよな
俺は完全に見た目の好みで選んでるからヒューマン、エルフ(♀のみ)、セレスティア(♀のみ)以外使ってないぜ
148 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/14(火) 13:27:11 ID:eECNJRAD
感動したです。GJ!!
お疲れ様でした!
149 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 18:34:11 ID:vCrnVfxa
やっぱりバハムーンは勝気な性格の姉御が多いのかね?
何はともあれGJ!
保守。
む、水曜に保守し忘れたか……
151 :
615:2008/10/19(日) 04:05:41 ID:b53+uTMT
夜中だからこそ思いつくものもあるわけで。
とりあえず投下します。
またもや寸止めです。
『甘いおやつ?』
ここは学生寮の個室。二人がテーブルを挟んで座っている。
一人は少し暗い雰囲気を持つ魔族の男。
一人は笑顔が似合う人間の女の子。
そしてテーブルにはホットケーキやハニートーストが美味しそうな香りを出している。
「さ、一緒に食べよ!」
「…ああ。頂きます」
「いっただきまーす」
二人同時にホットケーキを一口食べる。
「ん〜、どうかな?おいしい?」
「…悪くないな」
「えへへ、よかった」
微妙な評価に聞こえるが、コレは彼なりのほめ言葉である。
「うんうん、頑張って手作りしたかいがあったよ」
嬉しそうに微笑むヒュム子につられて、ディア男も口の端を少し上げる。
「…ご馳走様」
「お粗末様でした」
テーブルには皿とナイフ、フォークだけが残る。
「さ、片付けますか」
ヒュム子が皿を重ね洗い場に向かう。
「…手伝おう」
「あ、いいよ。これくらい」
「せめてもの礼だ」
「だーめ。お客様はゆっくりしてて」
顔だけをこちらに向けて留めようとしたのがいけなかったのか。
「きゃあ!」
ガシャン!
ヒュム子はそのまま洗い場にぶつかってしまった。
「おい!大丈夫か!」
食器が派手な音を立てたが、それを無視してヒュム子に駆け寄る。
「う、うん。大丈…あ」
[大丈夫]のジェスチャーをしようとした左手の小指が少し切れていた。
「えへへ、失敗しちゃった」
ぺろっ、と舌を出して照れ笑いをするヒュム子。対するディア男の顔は険しい。
「…血が出てる」
そう言って左手をそっと掴む。
「だ、大丈夫!舐めれば直るから」
ディア男の手を振り払い、顔を赤くして小指をチロリと舐める。
しかし、まだ血は滲み出ている。
「…貸せ」
もう一度ヒュム子の左手を掴み、小指を口に含む。
「キャ、ディア男君!?」
さらに顔を赤くし、払おうとするがディア男の視線に動きを止める。
「は、恥ずかしいよ…」
ディア男の舌が傷口を優しく舐める。
(…や。何だか、ゾクゾクする)
ただ指を、傷口を舐められてるだけなのに。
「あ、あの…もう大丈夫…だから」
「ん、ああ」
ディア男が小指から口を離す。
すっかり血は止まり、代わりにディア男の唾液が小指を怪しく照らす。
「…あむっ」
「!」
突然ヒュム子がその小指を口にくわえた。コレにはさすがのディア男も驚いた。
「ん…ちゅ…んふ」
一心不乱に小指をくわえ、舐める。
「お、おい…」
ヒュム子の肩を掴み止めさせようとするが、指を離さない。
「ちゅ…はぁ…ディア男君の、せいだよ」
指を離し、トロンとした表情で話しかけてくる。
「ディア男君…」
その場でディア男を押し倒し、唇を重ねた。
「!!」
ディア男の理性が警鐘を鳴らす。
「…ディア男君。…しよ?」
が、あっさり警鐘は壊れた。
上から覆い被さるヒュム子の少し乱れた制服の胸元から大きな二つの果実が覗く。
「…いいんだな?」
「…うん、好きにして」
下からヒュム子の胸を両手で掴む。
「ふあ…あ、ふっ」
ディア男の手の動きにあわせて、ふにふにと形を変える。その柔らかさはうまく表現できない。ただ、気持ちよかった。
「や、あん…ふうっ、ん」
ヒュム子も想い人に触られてる、ということが感度を高める。
「…ディア男君」
と、ヒュム子が膝立ちになり、スカートを両手で摘む。
「コッチも…触って?」
そう言ってスカートを掴み上げる。水色と白のシマシマが眩しい。
「ああ…」
ヒュム子の下半身に手が伸びる。
もう、二人を止めるものはない。
筈だった。
「ファイア」
ズドーーーン!
突然の轟音とともに扉が吹き飛んだ。
「うわぁっ!」
「きゃあっ!」
予想外のことに驚く二人。
もうもうと舞う煙の中から現れたのはノム子だった。
「何やら大きな音がしましたが、大丈夫で…す……」
ノム子の時が止まった。
何せ目に入った光景は男女が抱き合っていたのだから。
ボンッ。
そんな音が聞こえたと錯覚するほどに、ノム子の顔が真っ赤になる。
「あ…し、しししつれれいしししました」
180度回れ右をして立ち去るノム子。同じ方の手と足が前に出ている。
暫く目が点な二人だったが、我に返るとバッと離れる。
二人ともお互いをまともに見れない。
「………」
「…ディア男君」
「!な、何だ?」
ディア男の手にそっとヒュム子の手が重なる。
「ま、またおやつ作りに来るね」
「…ああ」
「それと…」
ちゅ。と、ディア男の頬にキスをする。
「今度は、…私も食べてねっ」
タタタッ…
そう言って恥ずかしそうに去っていった。
一人残されたディア男は考える。
破壊された扉の修理代と、仲間達への言い訳、そして。
ヒュム子との甘い約束を。
159 :
615:2008/10/19(日) 04:25:56 ID:b53+uTMT
投下終了。
相変わらず携帯なのは勘弁してください。
しかし今見直すと、纏めようとして見事に失敗してるなor2
私の作品は本番なし、寸止め系でいこうかな…。
それではまた、縁があれば。
160 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/19(日) 12:02:12 ID:EPTWyvLT
GJ!!
寸止め系とはここでは珍しい。
う〜ん、ディア男、ドンマイ、一人の男として。
いいね、GJ!
ノム子め、いいところで邪魔をw
前回に引き続き、今回もドワ子ネタで行ってみようと思います。
なぜなら今月はドワ子強化月間だからです。
実際のところはネタに詰まったので、久しぶりに自分のパーティネタを引っ張り出したせいです。
いつも通り、やたら長くなってしまいましたが、それでも構わないという方はごゆっくりお楽しみくださいませ。
数々のカリキュラムを終え、なし崩し的に巻き込まれた事態をも収束させ、ついにパルタクスを卒業した一行。
だが、ゼイフェアに新たな学校ができたということで、今度はそちらに入学することとなり、結局は今でも学生という立場に
落ち着くこととなっていた。とはいえ、不平を言うものはフェアリー以外おらず、そのフェアリーも口では色々言いつつ、現状には
十分満足しているようだった。
その一行は、ここ最近様々な地下道を巡り歩いていた。というのも、ディモレアとの死闘以来、各地下道に強大なモンスターが出現した
ためである。生半可な腕で立ち向かえる相手ではなく、その出現のタイミングから、どうも自分達が無関係という気がしないので、
各地のモンスターを撃破して回っているのである。
この日は、ザスキア地下道で森林の支配者と戦っていた。ランツレートに近いこの地下道は、よくそこの学生が探検に来る。こんな相手を
放っておいては、どんな被害が出るか想像もつかない。
戦いそのものは、危なげない勝利に終わった。しかし、氷に覆われたこの地下道の気温のせいで、フェルパーの動きが非常に悪い。
「フェルパー、大丈夫か?」
「ああぁぁ……ななな何とかぁぁ……なぁぁぁ…。」
「思いっきりダメそうだな、あんた…。」
「フェルパーさん辛そうですし、早めに戻りましょうか。」
フェアリーとクラッズは、倒した森林の支配者の死体を漁り、フェアリーカードを見つけてハイタッチを交わしている。
「次はハウラー地下道だよな?バックドアルだと、ランツレートに戻っちゃうからダメか。」
「すみません、僕もさっきの戦いで、魔力が尽きています。」
「歩けっていうのかぁぁ……ま、まあしょうがないぃぃ……かぁぁ…。」
「宿屋までの我慢ですから、頑張ってくださいね。」
セレスティアが優しく声をかけると、フェルパーは何とか笑顔を返した。ただ、その顔色は非常に悪い。
このままだとフェルパーが凍死しかねない雰囲気だったので、一行は寄り道することなく出口目指して歩き始めた。
地下道から出れば、あとは宿屋に歩くだけである。その道のりは地下道に比べ、ずっと楽なはずだった。
だが、今このザスキア氷河では凄まじい猛吹雪が荒れ狂い、数メートル先も見えないほどであった。これでは地下道にいた方が、よほど
暮らしやすいとすら思えるほどである。
「さーむーいー!宿屋、まだ着かないのー!?」
フェアリーはクラッズの背中に掴まり、声を張り上げる。
「まだだよ〜。ていうか、ボク達ちゃんと着けるかな〜?」
不安そうなクラッズの声。実際、今まで何度か来たことのある中継地点ではあるが、この吹雪では方向感覚すら狂ってしまい、まともに
宿屋へ歩けているか、ひどく不安なものがある。
「方向自体は、こっちで合ってるはずですが……皆さん、大丈夫ですか?」
そう声をかけるセレスティアも、翼で体を覆い、それでもがたがた震えている。隣を歩くノームが、その肩にそっと自分の制服を掛ける。
「おいノーム、服は着とけ。」
「僕は、寒くても問題ありませんので。それに、体温自体がないので、服を着る意味もあまりないのです。」
「いや、そりゃそうかもしれないけど……見てる私が寒いってば。」
ドワーフは額にかけていたゴーグルを、珍しくきちんと使っている。一行が知る限り、ゴーグルをまともに活用してるのを見るのは
初めてだった。
「いいなあ、あんたは。暖かそうで。」
「いや、私だって寒いよ。まだ冬毛になりきってないし、なってたって寒いものは寒いし…。」
「フェルパーさん、大丈夫ですか!?」
いきなりのセレスティアの声に、前を歩いていた三人は足を止めた。見ると、フェルパーは完全に参ってしまったらしく、体を抱くように
してその場にうずくまってしまっていた。
「おいおい!フェルパー、大丈夫!?」
「……ふ…………も…!」
まともに喋ることすらできないらしく、出てくる音は言葉にならない。その姿を見て、ドワーフは大きなため息をついた。
「しょうがないなあ、あんたは…。今度から、ちゃんと上着でも持って来なよ。」
「は…………わ……り…。」
すっかり固まったフェルパーを担ぎ上げ、再び歩き出すドワーフ。それを見たフェアリーは、クラッズの背中からドワーフの肩へと
飛び移った。
「おっと、何だよ!?」
「何よー。あんたなら、あたしぐらい増えたって変わんないでしょー?」
「いや、まあな。でも、だからっていきなり乗ってくるなよ!」
言い合う二人の隣にいたクラッズが、ぼさっと膝をついた。今までは、フェアリーが背中にいたおかげで体温保持できていたのが、
それがいなくなったせいで限界になったらしい。
「ちょっとクラッズ、大丈夫!?」
「ご……ごめん…。ちょっと……寒くて…。」
「……クラッズ、あんたも私の背中にいていいよ。どうせ大した変わりもないし。」
「ごめん……ね…。」
申し訳なさそうに謝りつつも、クラッズはどこか楽しそうにドワーフの背中に登った。
「ドワーフさん、重くないんですか?」
「ん?あ〜、別にこのぐらいならね。クラッズとフェアリーは軽いし、フェルパーもそんなには重くないし。」
とはいえ、フェルパーを肩に担ぎ、フェアリーを肩に乗せ、背中にクラッズをくっつけたその姿は、とても楽そうには見えない。
しばらくは、それで問題なく歩けていた。だが、やがて更なるトラブルに見舞われた。
「ドワーフさーん、ちょっと待ってくださーい!」
「あれ?セレスティア?」
見ると、だいぶ後ろの方でセレスティアが呼んでいる。その隣に、なぜかノームが立ち尽くしている。
「おい、どうしたんだよ?」
「すみません、僕のせいです。」
ノームが、ほとんど口を動かさずに言う。
「どうしたの?」
「全身の間接が凍り付いてしまいました。なので、体を動かすことができません。」
「じゃあ飛べ!」
「体がうまく動かせないので、飛ぶに飛べないのです。体を硬直させたまま飛ぶようなことは、今までなかったので。」
すっかり困り顔のセレスティア。ドワーフも、さすがに頭を抱えていた。
「どうか、僕のことは気にせず宿屋に向かってください。幸い、僕は凍死するようなことはありませんから。」
「……だって。どうする?」
肩からフェアリーが声をかける。ドワーフはうんざりしたような顔で、フェアリーを見上げた。
「放っておけると思う?」
「あんたならできるかもしれないけど、セレスティアが無理だろうね。」
「ボクだって、放っておけないよー。でも……どうしよ?」
「大丈夫です……わたくし、何とかノームさん引っ張って行きますから、皆さんは先に…。」
セレスティアの言葉を最後まで聞かず、ドワーフは大きな大きなため息をついた。
「まったく……あー、もうわかったわかった!クラッズ、肩に移れ!」
ドワーフはフェルパーを左の脇に抱え直し、クラッズが肩に移るとノームを右の脇に抱えた。
「すみません、お手数をかけます。」
「ほんとだよ、まったくー!ほら、セレスティアも来い!」
「え?いえ、わたくしは…。」
「あんただって、だいぶ参ってるだろ!?ああもう、よいしょっと!」
「きゃっ!?」
セレスティアに足払いをかけると、ドワーフはその体を横向きに抱き上げた。左右に二人抱えている都合上、どうしても体が必要以上に
密着し、その格好も相まって、セレスティアの顔は一気に真っ赤になってしまう。
「ドワーフ、すごいなあ…。重くないの?」
「重いとか言ってらんないだろ!?まったく、あんたら夕飯はおごってもらうからなー!」
5人の体と6人分の荷物を抱え、ずんずん歩き出すドワーフ。皮肉なことに、そのおかげでドワーフの体は一気に温まり、本来なら
彼女自身も参ってしまったであろう寒さの中、宿屋まで歩き通すことができたのだった。
宿屋の扉を開け、巨大な雪玉が転がり込んで来た時、モンスターの襲撃かと内部は一時騒然となった。
が、その正体が5人の仲間を抱えたドワーフだと知ると、その場にいた全員がホッと胸を撫で下ろした。とはいえ、ドワーフは疲れ切って
おり、他の仲間もそれぞれ危険な状態になりかかっていたため、今度は別の意味で騒然となっていた。
幸い、6人とも手遅れにはならず、休んでいるうちに少しずつ、それぞれ元気を取り戻していった。
聞いてみると、ザスキア氷河はここ数日こんな天気が続いているらしく、客が来ることも出ることもほとんどないということだった。
恐らく、大抵の冒険者は地下道を引き返すか、魔法球で自分の学校に戻ってしまうのだろう。
「ふ〜、死ぬかと思ったね。」
びしょ濡れになった髪を拭きながら、クラッズが声をかける。その言葉が大げさに聞こえないのが、外の吹雪の凄まじさを物語っている。
「どうもすみませんでした。まさか、凍りつくとは思いもしなかったので。」
「あんたの場合、あたし達とはまた違った悩みがあるよね。てか、あたしも羽が凍りそうで怖かったけど。」
「ドワーフさん、大丈夫ですか?」
5人を運んできたドワーフは、さすがに辛かったとみえて、椅子にぐったりとした感じで座っている。
「一応大丈夫。それにしても、あっついなあ。」
「外出てくれば?」
「それもいいかもね、あっはっは。でも、毛乾かすの面倒だから嫌。」
少し疲れた声で答えると、ドワーフはきょろきょろと辺りを見回し始めた。
「あれ?そういえば、フェルパーは?」
「フェルパーなら、あっちで溶けてたよー。」
「溶けて…?」
クラッズの指差した方を見ると、広間にあるストーブの前で寛ぐフェルパーの姿があった。
椅子に逆向きに座り、背もたれに腕と顎を乗せ、ぼへーっとした表情のフェルパー。その表情もさることながら、全身もだらしなく
緩みきっている。確かに、溶けているという表現がぴったりだった。
「まったく、あいつは……何やってるんだか。」
「幸せそうな顔してますよね。なんていうか、ああいうの見ると、フェルパーさん可愛く見えますね。」
「ふーん……ドワーフ、やばいライバルができたね。」
「ち、違いますっ!そういう意味じゃありませんっ!」
真っ赤になって否定するセレスティア。その姿を見て、ドワーフは密かに安堵の息をついた。
そんな仲間の様子など知る由もなく、フェルパーはただただストーブの暖かさという幸せを噛み締めていた。パチパチと薪の爆ぜる音も、
今の彼の耳には心地良い音楽のように聞こえている。
尻尾を気持ちよさそうにパタンパタンと動かしつつ、フェルパーは薄目を開けた。それまで気付かなかったが、近くに自分と同じように
寛ぐ同種族の男女がいるのが見えた。
女の方は、安楽椅子に深く腰掛け、まさにその椅子の名に違わぬ様子である。男の方は、その足載せを拝借し、自分の膝に肘をついて、
そこに顎を乗せている。
フェルパーの視線に気付くと、男の方がフッと笑いかけた。
「よ〜ぅ。お前さんも、地獄見てきたっぽいね。」
「あ〜、もう最悪だったよ。ここ、俺嫌いだ。」
その声に、女の方も薄く目を開けた。どうやら寝ていたわけではないらしい。
「うふふ。私達も、ここ来てひどい目にあったわ。あなた、パルタクスの生徒ね?」
「そうだよ。君達はランツレートか。」
「そ!あのカレーで有名な、ランツレートさ!」
「もっと他に言い様があるでしょ?厳格な、とか、名門の、とか。」
「いや、カレーだ。だって、マジうまいだろ?」
「あはは。俺もたまにお世話になってるから、よくわかるよ。」
まるで数年来の友人のように話し始める3人。その様子を、一行は信じられない思いで見つめていた。
「……フェルパーって、あんなに打ち解けるの早かったっけ?」
「あたし達ん時より、ずっと早いね。」
「先生にだって、なかなか慣れない奴だったのに……ようやく人見知り解消したか?」
「いえ、そういうわけではありませんよ。」
ノームが、間接を拭きながら口を開く。
「フェルパーは人見知りしやすい種族ですが、面白いことに同種族間ではほとんどそれがないのです。ですから、あのランツレートの
二人も、クラッズさんやフェアリーさん相手だとかなり人見知りするはずですよ。」
「へ〜、そうなんだ?じゃ、ボクちょっと行って来よ〜っと。」
弾んだ声で言うと、クラッズは広間に向かった。その姿を見ると、今まで楽しげに聞こえていた会話がピタッと止まる。
いくつか言葉を交わす4人。ただ、ランツレートの二人はあまりクラッズの方に顔を向けない。最後に軽く挨拶すると、クラッズは
ちょこちょこと小走りで仲間の下に戻り、楽しそうな笑顔を浮かべた。
「ノームの言ったこと、ほんとだねー。二人ともすっごく喋りにくそうだったよー。」
「へー、やっぱそうなんだ。んじゃ、次あたし行ってみよっと。」
「おいおい…。」
ドワーフが止める間もなく、フェアリーはパタパタ飛んで行ってしまった。果たして、フェアリーが近づくと、やはり二人の声は止まった。
今度は、女子の方はフェアリーにも話しかける。だが男子の方は、フェアリーが何か喋るたび、不快そうに顔をしかめている。どうやら
いちいち皮肉を言うフェアリーが気に入らないらしい。
フェアリーもやはり適当に挨拶を残し、実に楽しそうな笑顔で仲間の下に戻ってきた。
「あー、面白かった。次、誰が行く?」
「あいつらは玩具じゃないんだから、放っておいてやれよ。」
ドワーフが言うと、ノームとセレスティアも頷く。だが、フェアリーは意地の悪い笑顔を浮かべる。
「こ〜んな面白い奴、放って置けるわけないじゃん。ね、次ノーム行ってみてよ。」
「いえ、僕は…。」
「いいじゃないのー。どうせこっちだって暇なんだし、それに仲間がお世話になってるんだから、挨拶に行くのが筋ってもんじゃないの?」
物は言い様である。そう言われると、ノームとセレスティアは非常に断りにくくなってしまう。もちろん、フェアリーはそれを見越した
上で言っているのだが。
「そうですか。それも確かに、一理ありますね。」
そう言うと、いきなり別方向に向かうノーム。その背中に、フェアリーが慌てて声をかける。
「ちょ、ちょっと!?どこ行く気よ!?」
「いえ、せっかくなのでお茶でも持って行こうかと。すぐに戻ります。」
何やら宿の主人と話をし、ポットとティーカップをもらうノーム。どうやらハーブはラベンダーを選んだらしい。
それらをトレイに載せると、フェルパーの方へと歩を進めるノーム。会話が一瞬途切れたのを見計らい、すっと近寄る。
「お話中、失礼します。お茶でもいかがですか。」
「お、ノームありがとなー。」
「どうです、そちらのお二人も。」
「お、いいの?んじゃ、もらおっかな。」
「ありがとう。私もいただきますね。」
フェルパーがノームを紹介しようとすると、周りにぽつぽつといた生徒の一人が声を上げた。
「そこのノーム君〜。せっかくなら私達にもお茶くれない〜?」
「ええ、いいですよ。」
何の疑問もなくそちらに行こうとするノームの腕を、フェルパーは慌てて押さえる。
「お、おいおい!わざわざそんな手間…!」
「まだ中身は余っていますし、事のついでですから。」
さりげなくフェルパーの腕を外し、声をかけてきた生徒のカップにお茶を注ぐ。すると、それを見た生徒があちこちから声をかけ始めた。
「おーい、そいつらだけじゃなくてこっちもー。」
「私達もよろしいですか?」
「構いませんよ。少し待っててください。」
結局、フェルパー達と話をするでもなく、お茶汲みに奔走を始めるノーム。その光景を、フェルパー三人組は呆気に取られて見つめていた。
「……何しに来たんだ、あいつ…。」
「あははは、いい奴じゃん。オイラと気が合いそうだ。」
「ノームはいい方が多いと言うけれど、本当ね。」
「あいつはいい様に使われてるだけだよ…。人が良すぎるのも、ちょっと問題だよな〜。」
フェルパー達と同じく、4人もすっかり呆れてそれを見ていた。
「……あいつ、絶対人に好き放題使われるタイプだよね。」
「ノームさん、頼まれたら断れないですからねえ…。」
「いい人にも程があるぞ、あいつ。」
「あはは。でも、あれでこそノームだよねー。あそこで『嫌だ!』なんて言ったら、びっくりするよー。」
呆れ笑いを浮かべる一行。フェルパー三人組も、そのノームをネタに話を再開している。
その様子を見ながら、フェアリーがまた何かを企んでいるような笑顔を浮かべた。
「ねえ、ドワーフ。あんたも行けば?」
「え?いや、私はいいよ。やめとく。」
「ふーん?まあ別にいいけど。でもフェルパー、あの女の子と、ずいぶん仲良く喋ってると思わない〜?」
フェアリーの言葉に、ドワーフの眉がピクッと動く。
「……な、何が言いたいんだよ?」
「いやね〜、フェルパーって同族の相性いいんでしょ?だったら、あの子といい雰囲気になっても、おかしくないんじゃないかってね〜。」
「そ、そんなわけないだろ!?大体、あのランツレートの二人付き合ってるんだろうし…!」
「わかんないよ〜?ただの仲のいい仲間って可能性だって大有りだし、だとしたら、ちょっとやばいんじゃないの〜?」
「フェ、フェアリー、もうやめなってばぁ。ドワーフ、目が怖くなってるよ。」
確かに、ドワーフの目つきはだいぶ険しくなっていた。フェアリーに言われてみると、確かに自分と話している時より楽しそうだなあと
思えてしまう。ドワーフの中に、ちょっとした嫉妬心が芽生え始めた。
「……ま、挨拶だけ行っとこうかな。」
「行ってらっしゃ〜い。」
実に楽しそうに送り出すフェアリー。不安そうなクラッズとセレスティア。そして、お茶汲みに忙しくてまったく気付かないノーム。
ドワーフが近づくと、ランツレートの二人ははっきりと嫌そうな顔をした。
「フェ、フェルパー。」
「ん?おう、ドワーフか!なんか、さっきから入れ替わり立ち替わり来るなあ。」
言いながら、フェルパーはドワーフのために椅子を半分空ける。
「ま、まあいいだろ?そ、その、よろしく。」
ドワーフの挨拶にも、二人は返事を返さない。というよりは返せないのだが、ドワーフは少しムッとした。
「こいつ、俺と一緒にパーティで前衛張ってるんだ。」
「ふ、ふーん。戦士か?」
「いや、神女。」
「私と同じ……か。」
少し嫌そうな顔で呟く女子に、ドワーフはさらにムッとした。だが、フェルパーの手前怒るわけにもいかず、何とか耐える。
その様子を、後ろの3人はハラハラしながら見守っていた。
フェアリーは半分楽しんでいるようだが、それでも若干不安そうな顔をしている。
「……大丈夫かなあ、ドワーフ。」
クラッズの不安そうな呟きに、セレスティアも不安げな顔で答える。
「種族的に、気性が合いませんからねえ…。何事もなければいいんですが…。」
「いや〜、さすがにちょっと失敗だったかな〜?あはは…。」
珍しくクラッズに睨まれ、フェアリーは不貞腐れたように横を向いた。
一方の4人は、またさらに状況が悪化しつつあった。
「えっと……挨拶は済んだよな?」
「……他の奴みたいに、すぐ消えろって言うのか?」
ドワーフのイラついた声に、ランツレートの二人は険しい表情を浮かべた。
「誰も、そんなこと言ってないわ。そう悪く取らないで。」
「え、え〜とな。」
何とかその場を丸く収めようと、フェルパーはいきなりドワーフの肩を抱いた。
「こいつ、俺のいっちばん大事な奴だからさ。いても構わないだろ?」
「えっ!?」
「ええ!?」
ランツレートの二人が同時に声を上げる。それはフェルパーとドワーフという、かなり常識外れなカップルに対する驚きだったのだが、
タイミングが悪すぎた。
「何だよ……私がいるのがそんなに不満?」
ドワーフの声は、既にだいぶ低くなっている。その声に、同じく女であるランツレートのフェルパーが応える。
「誰もそんな事は言ってないわ。ただ、二人が恋人同士っていうのに驚いたのよ。あなたみたいな種族と、彼が付き合うなんてね。」
「おい、待てよ。そりゃどういう意味だ?」
二人とも、尻尾の毛が逆立ってきている。
「あなたと付き合ってるんじゃ、苦労するわねってことよ。」
「んだと?あんたこそ、ずいぶん男らしくもねえ男と付き合って、苦労が絶えなそうだよな。」
どんどん険悪な空気は広がり、つい言ってしまったその言葉でさらに拡大してしまう。
「は。そりゃ、オイラはあんま男らしくねえかもな。あんたみたいな、粗暴な種族から見りゃあよ。」
「……この野郎…。」
「その言動が粗暴っていうのよ。これだからドワーフは…。」
「ちょっと待てよ、お前等。ずいぶん好き勝手言ってくれてるじゃねえか。」
ついに、フェルパーまでもが怒りに満ちた声を出す。既に、周囲はその緊張を察知し、誰もが固唾を呑んで成り行きを見守っている。
しかも、構図でいえばパルタクスとランツレートの喧嘩である。一歩間違えば、大事件にも発展しかねない。
「確かにな、こいつはがさつなとこもあるよ。けどな、見ず知らずのお前等に、そこまで言われる筋合いはねえ。」
「はん。間違っちゃいないだろ?なら、それを言って何が悪いんだよ。」
二人が腰を浮かせる。それを見て、女子二人も相手を睨みつける。
「……やるか、てめえ?」
「喧嘩なら買うぜ?」
4人は拳を握り、立ち上がりかけた。その瞬間、誰かがその近くに歩み寄った。
「失礼します。お茶のお代わりはいかがですか。」
「え?」
「は?」
あまりに場違いな言葉に、4人は一斉にそちらを見た。そこにはノームが、ティーポットを持って立っている。
しかも、それだけではない。なぜか、ノームの頭には猫耳が燦然と輝いていた。
4人の視線に気付き、ノームは勝手にお茶を注ぎ足しつつ答える。
「これですか。さっき、お茶のお礼だということでいただきました。せっかくなので、こうして着けてみています。」
「………。」
「………。」
「似合いますか。」
「えっ…?」
その言葉に、誰も答えられない。
ノームの視線が、フェルパーとドワーフを見つめる。二人は黙って目を伏せる。
「………。」
スッと視線を滑らせ、ランツレートの二人に目を向ける。二人は黙って目を逸らす。
「………。」
「……ぷっ…!」
堪えきれず、フェルパーの女子が少し噴き出した。
「どうやら、これを着けたからといって、仲間入りはできないみたいですね。次は依代の改造も検討してみましょう。」
その言葉に、4人はさらに噴き出しかけるが、腹筋と顔の筋肉に全力を込めて、辛うじて耐えた。
ノームが行ってしまうと、4人はホッと息をついた。そして、それぞれ椅子にドサッと座り込む。
「……いや〜……お前、いい仲間持ってんなあ。」
「くく……ま、まあな。うちの影のリーダーだから。」
「なるほどね。ふふ……お腹、疲れちゃった。」
「ほんと、あいつこういうのうまいよなあ。」
ノームのおかげで、一気に毒気が抜かれてしまった。爆発寸前だった怒りも、すっかり収まってしまっている。
「あ〜、それにしても、さっきはオイラが悪かった。」
「ああ、いや……俺も悪かったよ。」
「いやいや、オイラが誤解招くようなこと言ったからなあ。オイラだって、こいつが悪く言われたら、そりゃ切れるもんな。」
そう言い、隣の彼女を抱き寄せる。
「お前も、彼女さんも、ほんっと、ごめん!オイラが悪かった!」
「や、やめろよ。私だって、つい、喧嘩腰になっちゃって…。」
「いえ、私も悪かったわ。本当に、ごめんなさいね。」
ともかくも、最悪の事態は回避できたことで、周囲の緊張も一気に解れた。少しずつ、それぞれの話に戻っていく。
一方の3人も、ホッと安堵の息をついていた。
「よかったぁ……喧嘩になったらどうしようって思ったよぉ。」
「あたしも怖かったわ〜。学校同士で問題起こしちゃ、さすがにやばいもんね。」
「フェアリーさん、あんまり問題になりそうないたずらは、しちゃダメですよ。」
「わかってるよぉ、うるさいなあ。」
そこに、一仕事終えたノームが戻ってくる。猫耳は相変わらず、頭上に燦然と輝いている。
「ノーム、お疲れ様〜。」
「猫耳、外せば?」
「いえ、せっかくもらった物ですから。」
「ちょっと待った!あれ、演技じゃなくて天然!?」
「ノ……ノームさん、さすがにそれで歩き回るのは、ちょっと…。」
「うんうん。さすがにちょっと、見た目があれだよー。いや、気に入ってるならいいと思うけどね。」
猫耳について4人が話している間に、ドワーフ達はもうすっかり仲直りしていた。ただ、少しフェルパーの様子がおかしい。
「ところで、お前さん震えてないか?」
「ああ。だって、寒いからさ〜。」
「え、寒い?この部屋十分暖かいし、こんなストーブの前なのに?」
「ちょっと、失礼するぜ……って、おいおい!お前さんすげえ熱じゃねえか!」
フェルパーの額に手を当てた瞬間、ランツレートの男子は思わずその手を引っ込めた。それぐらい、その額は熱い。
「え、マジで?」
「え!?ちょ、ちょっといい!?……うっわ、ほんとだ!フェルパー、あんた寝なきゃダメだよ!」
「あ、あ〜、道理で体暖まんないなーと…。」
「きっと、外を歩いてる間に冷え切ってしまったのね。すぐに部屋に行って、暖かくした方がいいわ。」
「そうするか〜……う、フラッて来た…。」
「ああもう、無理するなってば!」
ドワーフはふらつくフェルパーを抱き上げる。だんだん症状が本格的になってきたのか、フェルパーはぐったりと身を任せている。
すぐさま4人の元に戻り、事情を説明するドワーフ。さすがにみんな手際がよく、ノームが部屋を確認し、セレスティアが濡れタオル
を用意し、クラッズは部屋の鍵が来る前に勝手に開錠し、フェアリーは荷物の中から薬にできそうなものを探す。
素早い処置が功を奏したのか、ベッドで横になるとフェルパーの顔色は少し良くなった。
移るといけないので、フェルパーの看病はノームが受け持つこととなった。以前司祭学科にいたこともあるため、全体的に手馴れている。
「冷てっ…!にしても、結構ひどそうだな、これ…。」
「熱はかなり高いですね。40度は越えていないと思いますが、それに近いと思います。」
「そりゃ、だるいわけだ…。ふ〜〜〜……う、ごほっ!」
咳もかなり出始めているため、フェルパーはかなり苦しそうである。
「くそ〜……しかし、寒いな…。」
「室温はかなり高めました。たぶん、体は汗をかくと思うので、冷やさないように気をつけてください。」
「おう…。」
一頻りやる事は済んだので、ノームは他の仲間の元に戻る。ノームの姿を見ると、真っ先にドワーフが口を開いた。
「なあ、どう?あいつ、ひどい?」
「楽観はできませんが、あの様子ならこじらせることもないでしょう。暖かくして、二、三日休めば、治ると思います。」
「そっか〜。」
全身がしぼむようなため息をつくドワーフ。その顔はいつもの強気な顔ではなく、恋人を心配するただの女の子の顔である。
「とりあえず、今日は僕が一緒に…。」
「あ、それなんだけど、私が一緒にいたい。」
「あまりいい考えとは思えません。あなたにまで移ってしまったら、それこそ大変なことになると思います。」
「そ、それはそうだけど…!でも、今日は一緒にいてあげたいんだよ…。」
「ですが…。」
「ノームさん、きっとそこまで心配しなくても大丈夫ですよ。」
ドワーフの気持ちを汲んだセレスティアが、後ろから声をかける。
「ドワーフさんなら、体は丈夫そうですしね。」
「そうですか。では、あまり気は進みませんが。」
「悪いね。ありがと、セレスティア。」
「ドワーフなら、一緒に寝てあげればフェルパーも暖かそうだし、ちょうどいいんじゃない?あはは。」
クラッズが無邪気に笑う。言われてみると、確かに一番暖かそうな人物ではある。クラッズとフェアリーは小さすぎるし、ノームは体温が
ないし、あとはセレスティアだが、絶対一緒に寝そうにない。
「んじゃ、悪いけど私はこの辺で。あ、鑑定するなら私の道具出しとくけど…。」
「いいよー、フェルパー治ってからで。4人でやっても、あんまやり甲斐ないしね。」
「そっか。んじゃ、また明日な。」
早めに仲間と別れ、フェルパーの部屋に向かうドワーフ。中に入ると、凄まじい熱気が満ちていた。部屋自体が暖められているのも
大きいが、フェルパー自身から出る熱もかなり影響しているらしい。フェルパーはドワーフに気付くと、辛そうな笑顔を浮かべた。
「おう、お前か〜。ごほっ!……ふ〜ぃ、ノームは?」
「んー、変わってもらった。」
「あら、そうなのか?大丈夫か?移ったりしない?」
「平気だろ。私、滅多に風邪引かないしさ。」
喋りながらタオルを水に浸し、フェルパーの額にあるすっかり温まったタオルと交換する。温まったタオルを水に浸けると、ドワーフは
フェルパーのすぐ側に座った。
「……どうした?」
「んー。」
顔を伏せ、足をぶらぶら振るドワーフ。何となくいじらしい姿だった。
「あ、あのさ。」
「うん?」
「さっき……私がさ、喧嘩の原因作っただろ…?」
「ま、一因ではあったな。はは。」
「でもさ、フェルパー、同種族の方じゃなくって、私のこと庇ってくれた…。」
「そりゃ…。」
よく見ると、ドワーフは思った以上に深刻そうな顔をしている。
「どうしたんだ?」
「だってさ、初めて会ったのに、あんなに仲良く話してたでしょ?」
「まあな。同種族だし。」
「私なんて、あんたと初めて会ったときもそうだけど、絶対喧嘩しちゃうのに…。あの子の方……が、好みだったりとか……しないのか?」
そこで、ようやくフェルパーも気付いた。
「何だよ。やきもち焼いてたのか。」
「………。」
「ごぉほっ!ごほっ!……けふ!あのな、確かに可愛い子だったし、気も合う奴等だったよ。でもな、ほら、覚えてない?」
ドワーフは、どことなく不安そうな顔でフェルパーを見る。
「前に俺、言っただろ?同種族の知らない奴より、お前の方がずっと大切に思えるって。」
「……覚えてる……けど…。」
「あの気持ち、ずっと変わってないぞ。」
恥ずかしそうに言って、照れ笑いを浮かべるフェルパー。それを見てドワーフも、ようやく笑顔を浮かべる。
「ごほっ!ごぉほっ!……げほっ!がはっ!」
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
「だ、大丈夫…。けど、咳はいいけど、こう寒いのがなぁ〜…。」
「そんなに寒いんだ…。」
その時、ドワーフの頭にふと名案が浮かんだ。
体の向きを変え、フェルパーにそっと擦り寄る。気配の変化に気付いたフェルパーは、少し警戒するように身を引いた。
「お、おい?」
「寒いんでしょ?暖めてあげる。」
そっとフェルパーの服に手を掛けるドワーフ。その手を慌てて押さえるフェルパー。
「ちょっ、待てよ!お、俺は熱が…!」
「大丈夫だってば。それに移しちゃえば、早く治るんじゃないか?」
「どんな理論だ!?」
なおも抵抗するフェルパーの手を押さえ、無理矢理服を脱がせる。フェルパーは熱のせいでろくな抵抗もできず、結局すべて脱がされて
しまう。ドワーフはそっと、フェルパーの股間に手を伸ばす。
「うっ…。」
「今日は、私がしてあげる。」
フェルパーのそれを優しく握り、そっと扱き始めるドワーフ。普段と違って、少し足りないぐらいの刺激が、フェルパーには何とも
もどかしく感じてしまう。だが、ドワーフは握る強さも、扱くペースも変えない。
徐々にモノが大きくなるにつれて、もどかしい気持ちも比例して大きくなる。それでもしばらくはドワーフに任せていたが、やがて
無意識のうちに、少しずつ自分でも腰を動かしてしまう。すると、ドワーフは少しいじわるな笑みを浮かべた。
「あは、これじゃ物足りない?」
「うぐ…。」
「いいよ。もっと、強くしてあげる。」
そう言いながら、スッと手を放すドワーフ。だがフェルパーが訝る間もなく、ドワーフは少し体をずらし、フェルパーの股間に顔を埋めた。
愛おしむようにそれを一撫でし、根元から舌全体を使って舐め上げる。フェルパーの体が、ビクッと震えた。
根元から裏筋を通り、鈴口まで舐め上げると、今度はそれをかぷっと咥え込む。
全体を優しく甘噛みしつつ、敏感な部分は強く舐める。時には舌全体を使い、時には裏側で撫でるように刺激する。他種族より舌が長めで
ある分、その責めは変化に富んでいる。
「うっく…!ド、ドワーフ…!」
「んっ!んっ……はぁ、どうフェルパー?気持ちいい?」
「ああ、すげえいい…。」
「じゃ、もうちょっとしてあげる。」
嬉しそうに言うと、ドワーフはフェルパーのモノを喉の奥まで咥え込んだ。さらに、唾液をたっぷり含ませた舌をフェルパーのモノに
絡みつかせる。その口内は暖かく、気を抜けば即果ててしまいそうな刺激だった。
「ドワーフ、おい…!」
「ん……ふぅ。もう、限界?」
ドワーフは口を離すと、妖艶に微笑んだ。その目は若干潤んでおり、何とも扇情的な表情である。見ると、フェルパーのモノを舐めている
間に、尻尾で自分の秘所を刺激していたらしく、スパッツには黒い染みが広がっていた。
フェルパーを焦らすように、ドワーフはゆっくりと制服のボタンを外していく。リボンを外し、シャツを脱ぎ、スカートを下ろす。
最後に、スパッツとパンツを一緒に掴み、引き下げる。湿ったパンツは一度内股に張り付き、そして透明な糸を引きながら下げられていく。
熱のせいというのが多分にありそうだが、すっかり火照ったフェルパーの顔。その物欲しそうな目。普段あまり見ることのない表情に、
ドワーフは少しいじめてみたい気分になった。
「ここ、もうこんなになってるんだよ。」
「あ、ああ。」
「……どうしたい?」
「え…?」
元々が大の恥ずかしがりである。いつもしていることとはいえ、それを口に出すのは未だに強い抵抗がある。
「わ……わかるだろ!?」
「でも、聞きたい。」
「どうして、わざわざ…!?」
「何でも言ってくれたら、その通りにしてあげるよ?」
「く…。」
ただでさえ真っ赤な顔をさらに赤く染めつつ、フェルパーは顔を伏せた。その姿は、まるで初めて経験する少年のようだ。
フェルパーはしばらくそうしていたが、やがてぼそっと呟いた。
「……れ……たい…。」
「ん?」
「その……入……れたい…。」
「どこに?」
小悪魔的な笑みを浮かべ、さらに追い討ちをかけるドワーフ。フェルパーの尻尾はもどかしげにバタンバタンとベッドを叩き、耳も真横を
向いてしまっている。
「だ、だから……お、お前……の……なか…に…。」
「ん〜、60点ぐらい。ギリギリ合格かな。」
ドワーフはそう言うと優しい笑顔を浮かべ、フェルパーの首に腕を回した。
「よくできました。それじゃ、してあげる。」
フェルパーと向かい合うように座り、ゆっくりと腰を沈めるドワーフ。今度は焦らしたりせず、フェルパーのモノを一気に自分の中へと
導く。やはり熱のせいだろうが、フェルパーのそれはいつもよりずっと熱い。
「んあっ!すごい……あっついよぉ…。」
「そりゃそうだろ…。」
「あ、動かないでいいよ。疲れちゃうでしょ?」
「……ん…。」
肩に掛けられた手をそっとどけると、ドワーフは腰を動かし始めた。時には膣内をぎゅっと締めつけてフェルパーのモノを扱き上げ、
また時には奥深くに咥え込んだまま、腰を前後に動かして快感を得る。ドワーフが動くたびに、フェルパーは小さな呻き声を上げる。
「うっ……くっ!」
「はっ!んっ!フェルパー、どうっ…?もっと、強く……んっ!したい…?」
「はぁ……はぁ…。う、うん…。」
「ふふ、わかった。」
熱気の立ち込める室内に、ギシギシとベッドの軋む音、それに腰のぶつかり合う湿った音が響く。既に二人とも、その体は汗に塗れ、
その匂いが二人を一段と興奮させる。
「どう?暖かく……んうっ!なった…?」
「ああ……暑いぐらい…!」
「よかった。もっと、暖めてあげる。」
そう言うと、ドワーフはフェルパーにしっかりと抱きついた。汗で湿った毛が、フェルパーの体に張り付く。同時に、ドワーフの体温が
直に伝わっていく。少し動きにくいものの、より強く感じられる両者の匂いと体温のおかげで、快感が劣るということはない。
スッとフェルパーの尻尾が動き、ドワーフの腰に巻きついた。そして、自身の方へ引き寄せるように力が入れられる。
「……えへへ。」
ドワーフが笑いかけると、フェルパーは恥ずかしそうに視線を逸らした。そんな姿が少しもどかしく、ドワーフはフェルパーの顔を両手で
挟み込むと、無理矢理自分の方へ向けさせた。
フェルパーは真っ赤な顔で、少し困ったようにドワーフを見つめる。そんな彼に、ドワーフはそっと口付けをする。
「ん…。」
「ふ……ぅ…。」
ザラついた面で傷つけないように、フェルパーは器用に舌を動かし、その裏側で舐めるように舌を絡める。ドワーフも舌を絡め、時には
少し舌を引っ込め、舌先でお互いじゃれるように舐めあう。
ふと、フェルパーが体を押してきた。体勢のおかげで抵抗できず、ドワーフはそのまま押し倒されてしまう。
「んぅ……ぷは。フェ、フェルパー?」
「ごめん、我慢できねえ。」
言うなり、激しく突き上げてくるフェルパー。急に強い刺激を受け、ドワーフの体がビクンと跳ねた。
「やぁっ!フェルパー、急に強すぎだよぉ!」
ドワーフの抗議にも、フェルパーは耳を貸さない。だがドワーフの方も、既にその激しい責めを快感と受け取っている。
「ね、ねえっ!フェル……あんっ!うぁっ!……っうぅ、フェルパー!」
フェルパーの体にしがみつき、その内股を尻尾で叩く。だが、フェルパーはやはり動きを止めない。
「フェルパーってばぁ!ねえ、ちょっと待ってってば!」
思い切り体を突っ張ると、さすがにフェルパーもその動きを止める。その顔には、不満の色がありありと浮かんでいる。が、ドワーフも
少し不機嫌そうな表情を浮かべる。
「どうしたんだよ?」
「その、前からなら……尻尾、絡ませて欲しいのに…。」
「抱き寄せてるんじゃ、ダメ?」
「尻尾同士がいいの。」
「そっか、わかったよ。」
苦笑いを浮かべ、フェルパーはドワーフの腰から尻尾を外す。尻尾同士が絡まると、ドワーフは嬉しそうな笑顔を浮かべた。その顔に、
フェルパーもつい笑顔になる。
「これでいい?」
「うん。」
もう一度しっかりと抱き合い、再び激しく突き上げる。フェルパーが突き上げるたび、二人の体から汗が流れ落ち、結合部からは愛液が
滴り落ちる。呼吸も荒く、二人とももう限界に近いことを物語っている。
「ドワーフ、もう出そう…!」
「んあぁっ!私もっ、もうイきそうっ!フェルパー、ぎゅってしてぇ!」
「ドワーフ……ドワーフっ!」
「フェルパー!んううぅぅっ!!」
お互いを呼び、きつく抱き合う二人。それとほぼ同時に、フェルパーは思い切り強くドワーフの中へ突き入れた。
直後、ドワーフの体内に熱いものが流れ込む。その感覚に、ドワーフもほぼ同時に達していた。
何度か、フェルパーのモノが体内で跳ねる。その動きが止まった瞬間、フェルパーは力尽きたようにドワーフの体へ覆い被さった。
「はぁ……はぁ……ドワーフ…。」
荒い息をつきながら、うわごとのように呟くフェルパー。そして、そのまま気を失うように眠り込んでしまった。
「はっ……はっ……ふふ、フェルパー、お疲れ様…。」
優しい声で呟き、その頭を撫でるドワーフ。彼女の方も、何だか頭がポーッとしている。
彼女にとって最大の誤算だったのは、自身も仲間5人を抱えて吹雪の中を歩いたことである。まして、それ以前には地下道で強大な敵と
戦っているのである。本人はすっかり忘れていたが、その体は既にこれ以上ないほどまで疲れ切っていた。
―――布団、掛けなきゃなぁ…。
そう思ったのを最後に、ドワーフの意識もすうっと遠くなっていった。
翌日。広間では、ノームとフェアリーが軽い朝食を取っている。普段から無表情なノームではあるが、この日はいつにも増してそう見える。
「んで、あのバカ二人は今回も騒動巻き起こしてくれてるわけだけど?」
「今回ばかりは、僕も反省しています。」
「あんたが許可しちゃったからね〜。つっても、それ言ったらセレスティアも同罪か。」
「いえ、彼女は…。」
「はいはい。大切な彼女を庇うのはいいけど、しっかり現実見ようね。」
ハニートーストを頬張り、ノームの淹れたお茶を飲むフェアリー。ノームは無表情にそれを眺めている。
「にしても、あいつ……ドワーフ、何考えてんだろうね?高熱出してる病人とヤるとかさ。」
「彼女曰く、体を温めてあげようと思ったそうです。」
「それ、雪山で遭難したときとかの手段じゃないの?」
「そうですね。時と場合によっては有効な手段でもありますが、今回のような場合には病気を移される危険性や、体力を激しく消耗する
ことを考えれば、決して勧められないどころか、絶対にやってはいけないことです。」
それを聞くと、フェアリーはおかしそうに笑った。
「しっかしまあ、見事にその全部が当てはまってるんだから、笑っちゃうよね〜。」
「笑い事では済まない気がしますが。」
「いや、逆に笑うしかないでしょ。しかも暖めるのはいいけど、その後、裸で、汗だくで、布団も掛けないで寝てたんでしょ?
そりゃ冷えるよねえ。」
「まったくです。」
「ま、ドワーフはともかくとして、フェルパー大丈夫かな?」
「今夜が峠でしょうね。」
フェルパーは完全に病気をこじらせ、凄まじい高熱と咳に苦しんでいた。その傍らでは、クラッズがすっかり呆れた顔をしている。
「……バーカ。」
フェルパーの顔を見つめながら、クラッズは表情と同じく呆れた声を出す。
「ごほっ!ごほっ!……げほっ!がはぁっ!」
「バーーーカ。」
「がはっ!……う、ごほっ!……ハァ……ハァ……うるせぇ…。」
苦しそうに息をつきながら、何とかそれだけ言い返す。
「だってさあ、同情のしようもないんだもん。ノームから聞いたけどさあ、ドワーフと…」
「ごほっ!げほぉっ!……かはっ…!ごめんなさい、すみません。それ以上言うな。」
「どうせ今日も吹雪だから、外、出られないけどさあ。それにしたってひどいと思わない?」
「……お前、少しフェアリーに似てきたな…。」
「誰だってこう思うでしょ!」
「……ほんとごめんなさい…。」
確かにその通りなので、フェルパーはすっかり小さくなってしまう。
「まったくー。ちゃんと断らなきゃダメだよ、次からさ〜。」
「はい……すみませんでした…。げほっげほっ!ぐっ……がはっ!」
「あと、死なないでね。さすがに病気より面倒なことになるから。」
「……前向きに……検討するよ…。」
一方のドワーフの部屋では、クラッズと同じように呆れ顔のセレスティアがドワーフの看病をしていた。
「まったく…。ドワーフさん、何考えてるんですか…。」
「……ごめんってば…。」
ドワーフも見事にフェルパーの病気が移り、咳は出ていないものの、やはり高熱を出し、ひどい寒気を感じるという有様だった。
「暖かくしなきゃダメって、言ってたじゃないですか。それがなんです、フェルパーさんと……その…。」
「いやね……そうすれば、体温まるかなってさ…。」
「時と場合を考えてくださいっ!」
「……はい。」
珍しく強い口調で言われ、ドワーフの耳はぺたんと寝てしまう。セレスティアはドワーフの側に立つと、その鼻をそっと撫でた。
「鼻もすっかり乾いちゃって…。フェルパーさんも、症状ずっとひどくなっちゃったんですよ。」
「………。」
「自分も病気移されて、フェルパーさんの症状は悪化させて……もう、あんなことしたら、めっ!ですからね。」
「……久しぶりに聞いたな、その怒られ方…。」
高熱にうなされながら、ドワーフは弱々しく笑う。が、セレスティアは本気で怒っている。
「笑い事じゃありませんっ!」
「はい…。」
「またこんなことあったら、次はお尻叩きますよ!」
「それは勘弁して、ほんと…。ていうか、なんか私のこと子供扱いしてない…?」
「言われたこともきちんとできないなんて、子供以下ですっ!」
「……ごめんなさい……くすん…。」
普段大人しいセレスティアに怒られ、しかも痛いところを突かれ、少し涙ぐむドワーフ。その顔を見ると、セレスティアは少しだけ表情を
緩めた。そして、その目に少しいたずらな光が宿る。
「まあ、今回は初めてですから、わたくしの言うこと聞いてくれたら、許してあげます。」
「……何?」
「何しても、怒らないでくださいね?」
聞かないわけにはいかず、しかも有無を言わさぬ口調であったため、ドワーフは仕方なしに頷く。
すると、セレスティアはスッと人差し指を出し、それを第二間接で曲げる。
「ちょっと、動かないでくださいね。」
「……何する気よ…?」
「いいから、動かないでくださいね。」
その指を、そっとドワーフの口元に近づける。そして、ドワーフの上唇をふにっと持ち上げた。
「ああ……やっぱりふにふに…!」
うっとりした表情で、ふにふにと何度も繰り返すセレスティア。ドワーフは怒るに怒れず、ただ暗いため息をついた。
「お願い……ゆっくり寝かせて…。」
「初めて見たときから、ずっと触りたかったんです……ああ、それが今叶うなんて…!」
「寝かせて…。」
「あ、寝てていいですよ。ふふ、寝顔もきっと可愛いんでしょうね……ああ、想像したらたまりません!」
よくよく、迂闊なことをしてしまったと、ドワーフは心の中で激しく後悔した。フェルパーの病気をこじらせ、自分もそれを移され、
おまけにセレスティアから怒られた上に玩具にされている。
それに抵抗する元気もなく、抵抗できる道理もなく、今はひたすらこの屈辱に耐えるしかない。
諦めて目を瞑りながら、もう二度と妙なことは考えないようにしようと心に誓うドワーフだった。
以上、投下終了。
こいつら書くと長くなる癖をどうにかしたい。
今度書くときは、もうちょっとすっきりまとめて参りまする。
それでは、この辺で。
[> カラクリ人形 ピッ
風邪ひいてる時にヤると
マジで逝きそうになるよなw
GJ!
まさに王道のシチュですな。
しかし此処といいキャラスレといい、ノームのネタキャラ率高いなw
このキャラ達…もしかしてあなたは前スレ389氏?
181 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 16:52:56 ID:7dbBB/E5
GJ!
なんか懐かしいな。
む、同じ事を考えている人がいるな。
ノム男セレ子ドワ子フェル男フェア子クラ男。
前スレ389氏と同じメンバー構成。そしてネタキャラノームと悪っぽいフェアリー。
やはり389氏か?
違ったらホントごめんだけど……
gj
>>180-181 そういえば、保管庫見たら分けて表記されてましたな。れっきとした同一人物でございます。
185 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 16:55:49 ID:raBa5ENr
やはりそうでしたか
ホシュ
誰もいない…投下するならいまのうち。
セレスティア♂×エルフ♀です。多分全部で6レスくらい。
携帯からなのでうまくいかなかったらご愛嬌。
はじまりは、他愛もない会話だった。冗談混じりに交わした密約は、いつしかひとつの取り決めをもった習慣と化していた。
そもそもが不純な動機であったために、それは悪事を共有するが如く彼らに深い根を下ろす。故に彼らは、今宵も剣と踊るのだ。
銀色の月が空を走り、今日が昨日に過ぎ去る時分。セレスティアは音を立てないように寮を抜け出し、地下道への入り口がある森まで歩く。その腰には、剣と盾を携えていた。
本来の道から少し外れ、奥へ進んだ場所。用無く立ち入る者のないはずのそこには、彼を待つ人影がひとつ。
それは、彼と同じパーティーで錬金術士をつとめるエルフの娘だった。二人は軽く言葉を交わし、おもむろに武器を構える。
セレスティアが間合いをつめて剣を横に払うと、エルフが後ろに跳んでそれをかわす。追撃するように突きを繰り出したセレスティア、身を捻りそれを流しながら大きく踏み込んで矢を振るうエルフ。
大振りな矢の斬撃をセレスティアは盾で難なく弾き、更に踏み込んで押し返す。予期していなかった動きに、エルフが大きくバランスを崩した。尻餅をついたエルフにセレスティアが斬りかかる。
エルフが手を高くかざし、目映い光を放った。刹那、周囲は昼間のように明るくなり、光の直撃を受けたセレスティアは目を押さえてうめく。
暗闇に慣れた目を突き刺す痛みに仰け反ったセレスティアの喉を狙い、素早く距離をとり立ち上がったエルフが矢を射る。
見えないはずのそれに気付いたのか、セレスティアは背中の翼で大きく羽ばたき風を起こした。正面からの強風に軌道がぶれ、矢はセレスティアの肩口をかすって過ぎていく。
「……危ないなぁ。死んだらどうするのさ」
「ちゃんと蘇生してあげますから、ご心配なく」
本気とも冗談ともつかぬ軽口を叩き合い、視線を交わす。エルフの放った矢が風を切り、セレスティアを狙う。
剣を振るいそれを叩き落としたセレスティアは、不意に大きく横に飛んだ。すると、今まで彼のいた場所に、地面に転がっていた大きな石が凄まじい速さを以て飛来した。
重い音を立てて転がった凶悪なそれを見て、セレスティアが顔を青くする。
「え、ちょっと待ってよ。僕、何か君に恨まれるようなことしたっけ?」
「いえ、今日こそは貴方に勝ちたいので。それに、手加減なんかしたら、勝負にならないじゃないですか」
氷のように冷たい笑顔が月に照らされる。セレスティアは背中に冷たい汗が流れるのを感じて、剣を握る手に力を入れた。
「じゃあ、僕も手加減しないからね」
「挑むところです!」
セレスティアは剣、エルフは弓矢と魔法。近付ければセレスティアの勝ちで、近付けなければエルフの勝ちだ。
エルフは連続で矢を放ち、それを追い掛けるようにいくつもの炎を打ち出した。
セレスティアはエルフに向かって駆けながら、それらを剣や盾で弾く。セレスティアが最後の炎を剣で振り払うと、エルフは一際強く魔力を込めた雷を放った。
今までと同じようにそれを盾で受けたセレスティアが、苦悶の声を上げて盾を取り落とす。地に落ちた盾は魔力の電気を帯びて、ぱりぱりと音を立てていた。
盾を握っていた腕が思うように動かず、セレスティアが小さく舌打ちをする。
「……これ、パラライズ?」
「ええ。サンダガンだと思いました?」
「うん、騙された」
「それは何よりです」
欲を言えばこのまま終わってくれれば良かったんですけどね。言って、エルフは困ったように笑う。
幸いにも、すぐに手を離したおかげで麻痺はひどくないようだ。動かない片腕をだらりとさせたまま、セレスティアがエルフに斬りかかる。
間合いを詰められ守りに転じたエルフは、流れるような斬撃を紙一重で避けるのが精一杯だ。だがセレスティアもまた、動かざる片腕が枷となり思うようにエルフをとらえられない。
セレスティアが剣を大きくなぎ払った拍子に、エルフの体が深く沈んだ。がら空きになった腹に矢を振るわんとしたエルフを、セレスティアが強く蹴り上げる。
「うえっ……げほ、げほっ!」
「あああああ! ごめん! ごめんね、大丈夫?」
のたうつように地面を転がり、エルフはそのまま激しく咳き込んだ。無意識に力を込めて蹴りつけてしまったセレスティアが、血の気の引いた顔で謝り倒す。
エルフは荒い息をしながら立ち上がり、悔しそうに顔を歪ませた。体を支えるように木にもたれ掛かり、そして諦めたように笑う。
「……また、私の負けです。今日は惜しかったのに」
「そうだね、ちょっと危なかった」
「次は絶対に私が勝ちますからね」
「うん。出来るものなら、ね」
セレスティアはエルフの腕をとり、木に軽く押さえ付けた。
エルフの柔らかい唇を奪い、舌を絡ませる。口の中を荒々しく蹂躙し、舌を吸い上げ、或いは唇を啄む。激しい口付けに、エルフの吐息に熱がこもる。
セレスティアは空いている手でエルフの着ている制服に手をかけようとし、片腕が動かないことを思い出した。
顔を離しリパラライを唱えると、エルフもまたメタヒーラスで互いの傷を癒す。セレスティアはエルフの頭を優しく撫でて、今度は両手で彼女の服を脱がせる作業に取りかかった。
真剣勝負をして、勝った方が負けた方を好きなように出来る。
あれは確か、ジョルー先生のところからくすねてきた米のジュースで楽しくなっていたときのことだ。言い出したのがどちらだったか、もう覚えていない。
ただ、酔いに任せて体を重ねて以来、二人はこの奇妙な関係を持ち続けている。
入学当初から戦術学科で剣を握っていたセレスティアに、術士学科を転々としていたエルフが敵うはずがない。今まで何度も勝負をしてきたが、エルフが勝ったことは一度もなかった。
そもそも二人の間に恋愛感情があったのかどうかさえ、今ではもうわからない。
制服の前をはだけ、ささやかな乳房を覆う下着を取り払う。普段服の上から見えている膨らみの大半が布でできていることは、セレスティアだけが知っている。
「揉むと大きくなるっていうけど、あれは嘘だね」
「うるさい。明日の朝ごはん、巨大な手羽先の唐揚げにしますよ」
売り言葉に買い言葉で悪態をつくエルフも、胸の先の小さな突起を摘まんでやれば甘い吐息をこぼす。すくい集め、形を確かめるように揉むと、眉を寄せた。どうやら、小さい方が感度が良い、という話は信憑性がありそうだ。
汗にべたつく首筋を舐め上げ、エルフの長く尖った耳をかじる。彼女は耳への刺激に特に弱い。
「……ぁ、…うぅん…」
震える耳の先をかじり、柔らかい耳朶を吸う。わざと大袈裟に音を立てて舐めれば、切なそうに喘ぐ。少し強く乳首をつねると、びくりと大きく体が跳ねた。
エルフは無意識にセレスティアに足を絡ませ、誘うように腰を揺らしている。セレスティアもまた、込み上げてくる情欲の熱が抑えられなかった。
再び唇を重ねて、今度は優しく舌を絡める。そうして手は短いスカートに潜り込み、下着を引き下ろした。すでに濡れそぼっているそこに、揃えた指を二本差し込む。
さすがに痛かったのか、エルフが顔を歪めた。熱に潤んだ瞳で睨み、甘ったるい声でとがめる。
「んぅっ! …もうっ……乱暴にしたら…嫌ですよぉ…」
「ん、ごめん」
口先だけで謝ってはいるが、差し入れた指は容赦無く蠢きエルフを攻め立てる。親指の腹で陰核をこねると、甲高い声が響いた。
エルフは甘えるようにセレスティアの首に腕を回し、セレスティアの短く尖った耳をねぶる。吐息まじりのその感触がくすぐったくて、セレスティアは頭の羽を震わせた。
エルフの胎内から指を抜き、片足を持ち上げて下着を抜き取る。自身もズボンの前を開け、赤黒く脈打つ陰茎を引きずり出す。
赤く綻んだ花弁に先走りの滴る陰茎の先を押し付けると、エルフの体が大きく震えた。
「行くよ…」
エルフが小さく頷くのを確認すると、彼女の腰を引き寄せ、抱え込むように体を支える。下から突き上げるように挿入すると、エルフが背を反らせた。
「あ……ぁあ! …深い……あぁ、んっ!」
上に揺らすように腰を動かすと、エルフの喘ぐ声も跳ねる。捲れ上がった黒いスカートがひらひらと揺れている。
エルフは首筋を這うセレスティアの舌から逃れるように頭を振っているが、溢れる甘い喘ぎは隠せない。硬く腫れ上がった陰核を爪を立てて摘まむと、上擦った悲鳴をあげる。
「どうしたの、気持ち良い?」
「…ち……ちが……ぁ、…やめ…っ!」
爪先でくすぐるように弄んでいたセレスティアの腕を制するように掴んだ。嫌がるような素振りだが、セレスティアをくわえ込んだ陰唇からは淫靡な雫が止めどなく溢れている。
強すぎる刺激にエルフの足から力が抜け、膝ががくがくと震えはじめる。立っているのもつらそうに、きつく抱き付くようにセレスティアにすがる。
セレスティアはエルフの腰と背中を抱き、彼女を持ち上げた。突然体が浮いたエルフは小さく悲鳴をあげて、セレスティアに強くしがみつく。
「…やだぁっ……ぇ、なんですかっ」
彼女が突然手を離して後ろに倒れることがないよう、エルフの背中を木にもたれ掛ける。そこでようやく自分の取らされた格好が理解できたようで、エルフは顔を上げてセレスティアにキスをした。
セレスティアは支えた手でエルフの体を揺らし、自身もそれに合わせるように腰を突き出す。何となく不安定に見える体勢だが、セレスティアがエルフをしっかり支えているので彼女の体が大きく傾ぐことはない。
動きが激しくなるにつれ、セレスティアの息は荒く、エルフの喘ぎは高くなる。
「はぁ、はっ…っは、は…っ!」
「っあ、あっあぁ…ぅあっ、あ、あああっ!」
エルフが顔をしかめ、体をびくりと震わせた。胎内は脈打つように蠢き、緩急を以てセレスティアを締め上げる。
軽く達したエルフは全身の力が抜けてひきつったような浅い呼吸を繰り返しているが、セレスティアは腰の動きを緩めない。
「あ、あっ…まって…やだ、また……んああ!」
二度、三度、がくがくと体を痙攣させて、エルフが再び気を遣った。だがセレスティアはエルフの様子など意に介さず、ただ獣のような呻きをあげてエルフをむさぼり続ける。
セレスティアが力強くエルフを突き上げる度に、エルフはセレスティアを締め上げる。跳ねる体が落下する勢いに、セレスティアはエルフの最奥を無遠慮に叩く。
単調に見える上下運動のさなか、セレスティアは内壁を抉るように擦り上げ、エルフが最も弱い箇所を執拗に攻めていた。同時にエルフの首筋や耳に歯を立てて、白い肌に残る赤の痕に自らの興奮を煽る。
「…っい……ぁ…はっ……ぁ…あぁ…!」
終わりの見えない快楽の波に溺れ、耳を震わせ涙を流して喘ぐエルフ。自慢の長い髪を振り乱して、もはやまともに声も出せない。不規則に肌を走る鋭い痛みさえ、今の彼女には激しい快感となる。
低い唸りのように荒々しく喘いでいたセレスティアが、不意に体を震わせた。一際強く陰茎を突き入れ、大量の精をエルフの子宮に注ぐ。
「…くぁっ…、は……うあっ!」
「……ひっ、あぁぁ…!」
胎内で弾けた夥しい量の熱に、エルフがかすれた声でか細く喘いで達する。セレスティアの射精はしばらく続き、エルフの胎内はそれを吸い上げるように艶かしく脈動していた。
すべてが終わると、セレスティアはぐったりと呆けているエルフを降ろし、崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
しばらく激しい情事の余韻に耽っていると、徐々に空の端が白んできた。もう少しすると気の早い冒険者たちがやってくるのだろう。
二人はふらふらと立ち上がると、何でもなかったように乱れた着衣をなおし、放り出していた武器を拾う。互いの姿を点検して、肩を並べて学生寮の方へ歩き出した。
爽やかな早朝の空気が気だるい体に鬱陶しい。二人は決して、互いの顔を見ようとはしなかった。
いつもなら無言のはずの帰り道、エルフはおもむろに口を開く。
「あの……ひとつ、訊いても良いですか?」
「なに?」
「私たち、どんな関係なんでしょうね」
「……さあ? 爛れた関係?」
「馬鹿。……恋人、には、なれませんか。いまから」
セレスティアは彼女の言葉を噛み締めるようにひとつ瞬きをしたあと、声をあげて笑った。隣を歩くエルフの肩を抱き寄せる。
「心外だなあ。僕はもとより、そのつもりだったのに」
「……ばーか」
以上。投下終了。
うちの君主セレ男はエル子だけやたらと守ってくれません。
一方エル子は混乱すると積極的にセレ男に殴りかかります。
随分殺伐としたパーティーのようです。
GJ!
なんと素敵なルールの決闘だろうか。
米のジュースって、こいつらは酒っつったらワインとかしか知らんのかw
ともかく、週末にいい物見られた、GJ!
投下しますが、真っ先に注意事項を。
前回の衆道士バハ&男装ドワ子の続きです。なので前回同様、♂×♀だけど♂×♂に限りなく近いです。
なので脳内変換に自信がなく、なおかつ♂×♂ダメという方は読まない方が無難です。
中にはホモSSじゃないのか、とがっかりされた人もいたようですが、そういう人は、まあ、ドワの心は♂なので…。
どちらの需要からも微妙に外れている気がしますが、楽しめる方はどうぞ楽しんでください。
冒険者がパーティを組むのと同じように、モンスターも大抵は群れで現れる。普通、パーティの人数よりも多い群れと戦うときは、
どんなに熟達した冒険者とはいえ、多少なりとも死の覚悟をする。
今、二人の冒険者を囲むモンスターの群れ。その数は軽く10を超え、たった二人のパーティをすっかり包囲している。
その群れを、不敵かつ傲岸不遜な目で睥睨するバハムーンの男。腕には何の武器もなく、服装もかなりの軽装だ。
しかし、その目は自信に満ち溢れ、むしろこの状況を楽しんでいるようにすら見える。
その後ろを守る、バハムーンとは対照的に、重装備に身を固めたドワーフ。鎧兜に身を包み、フレイルと盾を構える姿は、一見すると
戦士のように見える。しかし、そのフレイルはスターダスト、盾は魔法の盾。両方とも、戦士には扱えない物だ。
モンスターが二人に襲い掛かる。バハムーンはそのすべての攻撃を鮮やかにかわし、それどころかカウンターを叩き込み、たった一撃で
敵を殴り倒していく。
一方のドワーフはシャイガンを詠唱し、後ろでバハムーンを狙う敵を葬り去る。敵からの攻撃はその重装備で弾き返し、隙を見ては
フレイルで殴り倒す。
結局、二人は手傷も負わずに、その群れを殲滅してしまった。動くものがいなくなると、バハムーンはドワーフに声をかけた。
「さすがに、お前もだいぶ息を合わせるのがうまくなったな。」
ドワーフは思い切り顔をしかめ、バハムーンを睨みつける。
「くっそー、てめえと息なんか合わせたくねえのによ!」
「はっはっは、そう照れるな。」
「照れてんじゃねえよ、ボケっ!このトカゲ野郎!くそ、てめえなんかほっとけばよかった!」
「照れ隠しとは可愛い毛玉野郎だ。あとでじっくり可愛がってやる。」
「黙れ、ホモ野郎!」
何か言い返そうとしてやめ、楽しそうに笑うバハムーン。それを忌々しげに睨み付けるドワーフ。
探索を終え、学園に戻ると学食に向かう二人。その周りは大量の食品と空席に囲まれている。が、学食が空いているわけではない。
二人は既に、ランツレートでは結構有名なカップルだった。バハムーン自身が、既に要注意人物として有名だったのだが、
それを知らないドワーフがバハムーンに『食べられて』しまい、挙句に無理矢理その彼氏とさせられてしまったのだ。
他の男子生徒の大半は、自分への被害の心配がなくなってホッとしていた。たまに本気で嫌がっているように見えるドワーフに対して、
同情を寄せる者も少なくはないが、時には非常に息の合った掛け合いを繰り広げるため、本気で同情する者はさほどでもない。
「その肉、食わないのか。もらうぞ。」
「あ〜っ!!楽しみに取っといたのにっ!!!」
「なんだ。なら早く言え。」
そう言いながら、実においしそうに肉を咀嚼し、ごくりと飲み込む。
「言う前に食ったじゃねえかっ!畜生!オレの肉返せっ!!」
「そうか。もう飲み込んでしまったが、まあ返せないことも…」
「うおおっ、やめろてめえ!!!やっぱいいっ!返さなくていいっ!!!」
「まったく、なら最初から返せなどと言うな。」
「……いつか殺す…!」
ドスの利いた声で言うと、不意に席を立つドワーフ。
「ん、どこに行くんだ?」
「トイレだよ!いちいち断らなきゃいけねえのかよっ!?」
「なるほど。今夜に備えて準備しておいてくれるというわけか。」
ドワーフはバハムーンの後ろに立つと、無言で頭頂部に頭突きを食らわせた。賑やかな学食の中に、ゴッと鈍い音が妙に鮮明に響く。
さすがに相当効いたらしく、バハムーンは頭を抑えてブルブル震えている。ドワーフは額を擦りつつ、大股でトイレに向かう。
男子トイレに入ると、ドワーフは誰もいないことを確認して個室に駆け込んだ。
パンツを下ろし、便座に腰掛ける。その股間に、本来男が持っているはずの物はない。
用を足してその部分を拭く時が、一番嫌いな瞬間だった。その時ばかりは、嫌でも自分が女であることを実感してしまうからだ。
男の格好をし、実際に心も男のものだ。しかし、体だけはどうあがいても女。それを見せ付けられるたびに、ドワーフは悲しくなる。
「まともな男だったら、オレだって…。」
思わずそう呟いて、ドワーフは暗澹たる気持ちになった。まともな男だったら女の子と何気兼ねなく付き合えるだろうが、それ以上に
あのバハムーンが狂喜乱舞しそうだ。少なくとも、男であろうと女であろうと、この現状は変わらなかっただろう。
そう考えると、何だか無性に腹が立ってくる。
「あーっ!畜生が!!」
トイレのドアを、思い切り蹴り開ける。と、さっきの頭突きにも負けないような、ゴツッと鈍い音が響いた。
「んお?」
ドアの後ろを覗く。そこには床に広がりつつある真っ赤な水溜りと、鼻を押さえてうずくまるヒューマンがいた。
「ああああぁぁぁぁっ!ご、ごめんっ!大丈夫か!?」
「うぅ……開ける時は、気を付けろ…!」
「ごめん!ほんとごめん!あ、傷見せて!オレ、僧侶だから!」
鼻が曲がっている。思った以上に重傷だった。
「ほんと、ごめん!ちゃんと治すよ!」
その鼻に手を当て、メタヒールを詠唱するドワーフ。さすがにその効果は目覚しく、出血も止まり、曲がっていた鼻も元通りになる。
「これでよし。……けど、ほんっとにごめんな。お詫びに何か買うよ。」
「ああ、いや。気にしないでいいよ。ちゃんと治してくれたし。」
「いや、それじゃオレの気が済まないからさ。じゃ、せめてこれで好きなの買ってくれよ。」
そう言って、1000Gほどを渡すドワーフ。ヒューマンは少し迷ってから、その金を受け取る。
「なんか、逆に悪いね。……ところで、君もしかして、あの例のバハムーンの…?」
「げっ…!い、言うな言うな!」
「ああ、やっぱそうなんだ。」
「ああもう畜生!なんでオレ、こんな有名人に…!」
泣きたい気分になりつつ、ドワーフは大きなため息をつく。が、ヒューマンはハハッと笑った。
「まあまあ。好かれるっていうのは、悪いことじゃないだろ?」
「相手によるだろー!お前はあいつに好かれて嬉しいかよー!?」
「そうだね、まったく嬉しくないね。」
「おいっ!」
「ははは、ごめんごめん。でも、友達が出来ないよりはマシ……じゃないか?」
「はぁ……気遣いだけ、ありがたく受け取っとくよ。」
その時、ドワーフの頭にピンと来るものがあった。
元々、バハムーンとは『ドワーフに友人が出来るまでの関係』という約束があった。もちろん、それが絶望的なのを承知で突きつけてきた
条件なのだろうが、あのバハムーンの性格上、約束を破ることはしないはずだ。
「な、なあ。怪我させた上に、こんなこと言えた義理じゃねえと思うんだけど…。」
「ん?」
「あ……あのさ、よかったらフリだけでもいいから、友達になってくんねえかな?」
「それはいいけど……どうして?」
「オレだって、あいつといたくているわけじゃねえんだよ。だから、さ。……あ、大丈夫!お前には迷惑かけないから!」
さすがにヒューマンは少し迷ったようだったが、すぐに笑顔を返した。
「わかった。なんかよくわからないけど、困ってるときはお互い様だからね。」
「マジで!?やった!」
これでようやく、あの変態野郎から離れられる。そう考えると、ドワーフの顔は自然と笑顔になった。
「たっだいまー。」
どことなく浮かれた声が聞こえ、バハムーンは顔を上げる。そこにはドワーフと、見慣れないヒューマンが一人立っていた。
「……そいつはなんだ?」
「い、いきなり失礼な事言うなよ!……で、何だと思う?」
何となく、意地悪な感じのするドワーフの笑顔。バハムーンは表情を変えない。
「友人、か?」
「そっ!初めての、まともな、ね。」
「君の事はよく聞くよ。まあ……よろしく。」
ヒューマンの言葉にも、眉一つ動かさないバハムーン。さすがに、ドワーフは少し不安になった。
「……おい、何とか言えよ。」
「……いや、特に言うこともなかろう?めでたいことじゃないか。」
予想とはだいぶ違う答えに、ドワーフは内心不思議に思った。
「えー、まあ俺はまだ飯食ってないし、そろそろ…。」
「あっ、ごめん!そういやそうだったっけ!」
「いやいや、いいんだ。それじゃ、またあとで!」
笑顔で手を振り、昼食を取りに向かうヒューマン。その姿が見えなくなると、バハムーンは不意に席を立った。
「お、おい、飯は…!?」
「もう食った。」
「食ったって……まだ残ってるぞ?」
「いい、構わん。俺は部屋に戻る。お前は適当にしてていいぞ。」
「あ……ああ。どうも。」
何だか、さっきから何もかもが予想外だった。もうちょっと疑われるかとか、もっと残念そうな顔をするとか、
あるいは逆切れでもするかと思っていたのに、これでは何だかドワーフがバハムーンをいじめたみたいに感じてしまう。
「……ま、いっか。」
とりあえずバハムーンと自分の食器を片付けると、ドワーフはヒューマンのいる席へと向かって行った。
ヒューマンは面白い相手だった。それなりに熟達した冒険者で、戦士学科を経由して、今は魔術師学科を習っているらしい。
話も面白く、一緒にいて飽きるということがない。そのため、ドワーフが寮に戻ったのはだいぶ暗くなってからだった。
「ただいまー。」
「おう。」
どことなく無愛想な返事。やはり、どうもいつものバハムーンとは違う。
「お前……どうしたんだ?なんか、変だぞ?」
「なんだ?心配か?」
「ばかっ!違う!ただ……そんな調子じゃ、オレも調子狂っちまうよ。」
「なら、いつも通りにするか?」
そう言って顔を上げるバハムーン。ドワーフはついいつもの癖で後ずさる。
「ま、待て!誰もそんな…!」
「安心しろ、冗談だ。」
「……へ?」
「お前との約束は、俺もちゃんと覚えている。」
ふぅ、と軽く息をつき、道具袋からおにぎりを取り出して頬張るバハムーン。
「お前には友人が出来た。なら、俺とお前はもう彼氏の関係ではない。」
「……そ、そう……か。」
拍子抜けだった。思っていたより遥かにあっさりしている。こんなにバハムーンの諦めがいいとは、まったく思わなかった。
やがて夜も更け、ベッドに入ろうとしたドワーフは、ハッとバハムーンの方に向き直った。
「お、おい!言っとくけど…!」
「安心しろ。夜這いなどかけん。」
「あ……そう。」
「お前は、もうただのルームメイトだ。それ以上でも、それ以下でもない。」
「なら……いいんだけどよ。」
何だか、だんだん自分が悪い事をしているような気になってくる。が、今までにされた事を考えると、これでお相子といったものだろう。
そう思い込むことにし、ドワーフは静かに目を瞑った。
その次の日から、バハムーンは実際にただのルームメイトとして振舞った。一応地下道行きのお誘いは受けたが、ドワーフは丁重に断った。
結局バハムーンは一人で出かけ、ドワーフはヒューマンとまた会い、一緒に地下道へ行った。魔術師と僧侶という編成ではあるが、
ドワーフは下手な戦士より遥かにタフであり、またヒューマンの魔法は強烈だった。
日が経つにつれ、ドワーフはバハムーンのことを忘れ始めた。バハムーン自身、最近は朝晩以外にあまり会わない。
いつしかヒューマンが相棒となり、一緒に過ごす事が多くなった。ようやく、ドワーフはまともな学生生活を取り戻した気がしていた。
そんなある日、ドワーフは相変わらずヒューマンと地下道探索を終え、学食で遅い夕飯を取った。
そして寮への帰り。ヒューマンがふと思いついたように話しかけた。
「なあ、ドワーフ。」
「んお?なんだ?」
「ちょっとこっち来てみろよ。」
そう言って、人気のない校舎裏に手招きするヒューマン。一体何だろうと思いつつ、ドワーフはそっちに向かう。
「あのさ、ちょっとお前に聞きたいことがあってさ。」
「何だよ?てか、こんなとこじゃなきゃ聞けないことか?」
「んー、まあな。いや、聞く前にこれだけやっとくか。」
「何を?」
「これを、さ。」
その瞬間、何かを詠唱するヒューマン。途端に、ドワーフの体が痺れ始める。
「うあっ…!な……何……しやが…!?」
「さーて。これで反撃の心配はないな。」
今までの表情が嘘のように、邪悪な表情を浮かべるヒューマン。
「て……てめえ…!」
「んで、聞きたいことってのは簡単なことでさ。お前、女だろ?」
「!?」
ずっと隠していたのに、なぜそれを知っているのか。ドワーフの表情からそれを察したらしく、ヒューマンは笑った。
「簡単なことだよ。俺は、ドワーフなんか見慣れてる。言っただろ?お前なんかよりずっと学園生活は長いってさ。」
「ち……違う…!オレは…!」
「違わないと思うけどな?顔も女っぽいし、声も低い声を作ってるみたいだ。ま、確認するのが一番早いよなあ?」
「や……やめろぉ…!」
そう言い、ドワーフのズボンに手を掛けるヒューマン。抵抗したくても、麻痺した体は言うことを聞かない。
ベルトを外し、中のパンツごとズボンを掴むと、それをゆっくりと引き下げるヒューマン。露になったそこは、明らかに女のものだった。
「ほーらな、やっぱり。あんなホモ野郎と一緒にいたから、しばらくは本当に男だと思ってたけどさ。ははは。」
「く……くそぉ…!オレは、女じゃ……ねえ…!」
「女じゃない?じゃ、これはどうなんだ?明らかに付いてないよな?」
ドワーフの秘裂に、乱暴に指を突っ込むヒューマン。いきなりの激痛に、ドワーフは思わず悲鳴を上げる。
「痛ってぇっ!!」
「お?何だよ?もしかしてお前、処女か?」
「痛い!痛い!や……やめろ…!そこは触るなぁ…!畜生…!」
「へぇ〜。さすがホモ野郎。こっちは手ぇつけてなかったんだな。」
意外な収穫を得たというように、ヒューマンは笑った。
「くそ…!なんで、こんなこと…!?オレ達、友達じゃ…!?」
「はぁ?お前が最初に『フリだけ』っつったんだぞ?だからしょうがねえから、言われたとおり『フリ』をしてやったんじゃねえか。」
「ち……畜生……畜生…!」
ドワーフは、ようやく手に入れたと思った友人に裏切られたショックで、涙をこぼさないようにするのが精一杯だった。
「とにかく、これは俺がいただいちまっていいってことだよな。」
その言葉に、ドワーフの全身の毛が逆立つ。
「や……やめろぉ…!!そっちだけはダメだぁ…!!」
「俺はホモ野郎とは違うんだ。ケツの方には興味ないっての。」
「やめろ…!よせ…!オレは女なんかじゃ…!ちくしょぉ…!!!」
自由にならない体を必死に動かし、ドワーフは何とか逃げようとする。だがヒューマンはドワーフの腰を持ち上げると、
ズボンを下ろしてドワーフの秘所にモノを押し当てた。そして、ドワーフを嬲るように、少しずつ腰を突き出していく。
「痛いっ…!痛いっ…!もうやめろぉ……もう入れるなぁ…!」
「さすが、処女だときっついな。……お、これは到達かな。」
ヒューマンのものが、何かに引っかかる。その瞬間、ドワーフの顔は恐怖に凍りついた。
「や……やめろ…!やめてくれ…!」
「んじゃ、初めては俺がもらうとするか。今のうちにさよなら言っとけ。」
「やだ……やだ…!そんなの嫌だぁ…!誰か……誰か、助けて…!」
「誰もいねえって。んじゃ、覚悟しろよ。」
ヒューマンが、腰にグッと力を入れる。痛みがさらに強くなり、まさに体を裂かれそうな痛みが走る。
だが、助けてくれる者はいない。そもそも、この学園に来てからほとんど友達などいないのだ。頼れるものなど、居はしなかった。
「嫌だ…!嫌だ…!嫌だ…!!!オレは……オレは女じゃねえ…!」
「そうだなあ、まだ『女』じゃないよな。今から『女』になるんだから。」
痛みと屈辱に、ついに涙が零れる。助けが来るはずはない。だがそれでも、ドワーフは一人の名前を叫んだ。
「嫌だぁ!!!バハムーン!!助けてくれぇ!!!」
ほぼそれと同時。突如、辺りに炎が吹き抜ける音が響いた。
「なっ!?あっぶね!!」
ドワーフから離れ、ズボンを引き上げつつその場を飛びのくヒューマン。直後、ドワーフのすぐ上を、凄まじい炎が通り抜けていった。
「あ……まさか…!」
「手遅れにはならなかったか?」
炎が飛んできた先を辿ると、そこには確かにあのバハムーンがいた。今まで散々嫌ってきた、あのバハムーンだ。
「けっ!何だよ。愛する彼女の危機にご登場ってかあ?くせえ演出するなあ。」
「黙れ、下等生物。」
無表情に近い声。だが、そこには凄まじいまでの怒りが込められていた。
「それに、彼女じゃない。こいつは、彼氏、だ。」
「ははっ!そいつが彼氏!?お前頭おかしいんじゃないか?そいつはどう見ても女…。」
「それ以上、口を開くな。」
その目は既に、凄まじい殺気を放っている。それを見て取ると、ヒューマンは目を細めた。
「ただでさえ、いいとこで邪魔されてイラ付いてんだ。さっさと片つけさせてもらう。」
「イラ付いてる?」
「食らえ!ダクネス!」
闇の塊が、一直線にバハムーンを襲い、飲み込む。バハムーンの姿は一瞬にして見えなくなった。
「はは、口ほどにも…!」
「これで、おしまいか?」
「……え?」
まとわり付いた闇を振り払い、バハムーンが姿を現す。効いていないわけはないのだが、バハムーンは怯む様子すらない。
「お前の魔法など、俺の尻尾の鱗一枚剥がせん。だが、お前みたいな下等生物でもできることはある。」
「へ……へぇ。そりゃなんだってんだ?」
口調は強がっているものの、その額には冷や汗が浮かび、声も少し震えている。
そのヒューマンの姿を正面から見据えつつ、バハムーンは答えた。
「逆鱗に触れることだ。」
テレポルを詠唱するより早く、バハムーンが距離を詰めた。
腹に、拳が食い込む。体を折り曲げた瞬間、わき腹を膝が襲う。倒れそうになった体を肘で突き飛ばし、その流れで顔面に裏拳を見舞う。
倒れる体を蹴りで起こし、腹に尻尾を叩きつけ、もう一度腹に肘を打ち込み、アッパーを叩き込み、素早く身を伏せると足払いをかける。
そして倒れたヒューマンの腹に、止めとばかりに全体重を乗せた拳を叩き込んだ。
「ぐはっ…!あ……ぁ…。」
「ふん、下等生物が。」
バハムーンは気絶したヒューマンの体を持ち上げ、長年の習性でズボンを下ろそうとして、後ろのドワーフの声で我に返った。
「大丈夫か?」
ヒューマンを捨てると、ドワーフに優しく声をかけ、リフレッシュを使うバハムーン。そのおかげで、麻痺が徐々に消えていく。
「な……なんで、お前…?」
「気になっていたからな。ともかく、無事でよかった。」
慈愛に満ちたその顔。例え彼氏という関係じゃなくなっても、自分を気遣ってくれていたバハムーン。その姿に、ドワーフの中で
張り詰めていたものが切れてしまった。
「う……うぅ…!うわぁーん!怖かったよぉー!!」
人目も憚らずに泣きつくドワーフ。安堵感と、罪悪感と、それ以外にも様々な感情がごちゃ混ぜになり、ドワーフはただ泣いた。
その頭を優しく撫でると、バハムーンはドワーフの体を抱き上げた。
「とにかく、帰るか。落ち着いたら、少しゆっくり話そう。」
バハムーンに抱かれて寮に戻ると、ドワーフの心も少しずつ落ち着いてきた。何を最初に言うべきか迷ったが、やはり謝ることだろう。
「あの……さ。オレ、お前に謝らなきゃいけねえんだ…。」
「何がだ?」
「あいつ……あのヒューマンさ、最初、友達のふりしてもらってたんだよ…。」
「なんだ、そんなことか。」
そう言うと、バハムーンは鷹揚に笑った。
「そんなこと、最初から知っていた。」
「えっ?……だ、だったらどうして…!?」
「それほどまでに嫌われているなら、仕方なかろう?俺自身、無理だと踏んで出した条件だ。もし、本当に友人ができたのなら
それでよし。演技だとしたら、それほどまでに嫌がっているということだ。なら、俺の元に留めておく事はお前への負担になる。」
「で……でも、お前は…!」
「好きだというのは、そういうことだ。」
バハムーンの言葉に、ドワーフは打ちのめされてしまう。確かに自分勝手なところもあり、傲岸不遜なところもある。だが、彼氏と
言い切ったドワーフのことは、真剣に想ってくれていたのだ。好きだからこそ、あえて演技だと知りつつも、それを黙認してくれたのだ。
「そりゃまあ、そんなに嫌われていると知って、ショックはあったがな。」
「……ごめん。」
「なぜ謝る?好き嫌いは人それぞれだ。お前が俺を嫌ったからといって、俺はそれを責めないし、お前も気に病む必要はない。」
「……あ、そうだ。それで、さっきはどうして、あんなすぐに…?」
「心の底から嫌われているんなら、まあ仕方のないことではある。しかし、もしまだお前の中に俺がいるなら、俺ができることも
あるだろう。……簡単に言えば、捨てられた男の未練、とでもしておくか。」
「それで……もしかして、ずっといてくれたのか?」
「ああ。ずっと付け回していた。」
「ストーカーかよ。」
「失礼な、その一歩手前だ。」
「変わんねえよ。」
いつも通りの、しょうもない会話。だが、そのいつもどおりのはずの会話に心が安らいでいる。
と、不意にバハムーンの表情が変わった。
「それはそうと、久しぶりにやるか?」
「ま、待て!今日は…!」
「冗談だ。あんな目に遭ったお前に、いきなりそんなことを迫るほど無神経ではないつもりだ。」
だが、よく見るとズボンが少し膨らんでいる。半分本気だったらしい。
「とにかく、ゆっくり休んで今日のことは忘れろ。そのうち、まともな友人もできるだろう。」
「あ……ああ。」
「それじゃ、俺は先に寝かせてもらう。最近は背中が涼しくてな、鍛錬も楽じゃないんだ。」
笑いながら言って、ベッドに寝転がるバハムーン。それを見届けてから、ドワーフも自分のベッドに入った。
が、何だか眠れない。それに、バハムーンはああ言ったものの、謝罪の気持ちもあるし、助けてくれたお礼だってしてはいない。
しばらく悩んだ末、ドワーフは声をかけた。
「バハムーン……まだ、起きてるか?」
「……ああ。」
バハムーンも眠れないらしく、その声ははっきりしている。
ドワーフは覚悟を決めてベッドから出ると、バハムーンのベッドに潜り込んだ。
「ん?おい…。」
「そ、そのっ!ほ、ほんとは嫌なんだからなっ!で……でも、今日は、その……助けてもらったし、特別…。」
「いや、だからといって…」
「お前さっき半立ちだったじゃねえかよっ!いいんだよ、今日は特別なんだよっ!今日だけだからなっ!」
「わかった、わかった。」
「ほんとは嫌なんだぞ!?」
「わかったと言っている。」
半分呆れつつ、バハムーンはドワーフの体に手を掛けた。が、ドワーフはその手を押し止める。
「あ、待て…!」
「ん?」
「今日は、その……オレが、してやるから…。お前は、そのまま……その…。」
「ふむ。そうか。」
考えてみれば、いつも強引に襲っていたので相手からしてもらったことはない。それもまた一興だと考え、その提案に従うことにする。
ドワーフはおっかなびっくりといった手つきで、バハムーンのズボンを下ろす。そこから現れたモノは、既にいきり立っている。
「で……でかいな…。」
思わず率直な感想を漏らしてしまう。いつも目にしてはいても、こんなに間近で見たことは一度もなかった。
「嬉しいことを言ってくれる。」
「う、うるせえなぁ…。」
一応、ドワーフにもそれなりの知識はある。が、いつもバハムーンにされるがままだったため、経験の割にはそんなに知識がない。
しばし、それを前にして二人の動きが止まった。ドワーフもバハムーンも意味こそ違えど『どうするんだろう』とお互いを見つめている。
そのうち、やはり舐めるのだろうと思い、ドワーフは怖々それに舌を這わせる。ピクンとそれが動き、ドワーフはビクッと身を引いた。
「見ていて飽きないな。」
「だ、黙れ…。」
もう一度、舌の先でちょろっと舐める。また動いたが、今度は予想していた動きなので驚かない。
最初は怖々と、舌の先で少しずつ。やがて少し慣れてきたのか、もう少し丁寧に舐め始める。
「なかなか、いいぞ。」
「そ……そうか?」
悪い気はしない。尻尾の先だけを無意識に振りつつ、今度は全体を丁寧に舐め上げる。時折バハムーンが漏らす呻き声も、
きちんと出来ているのだという確認になり、気分がいい。
しばらく続けると、やがてどこをどう舐めればいいのか、少しずつコツを掴み始めてきた。が、そこでバハムーンが頭を押さえる。
「んお?」
「次は、咥えてみてくれないか?」
「えっ…!咥える……のか?」
「嫌ならいいが。」
「あ、いや、やってみるけどよ…。」
咥える。その響きは、肉とかおにぎりに食いついたときのイメージが強い。
でも、そんな真似をしたらバハムーンが違う意味で悶絶するのは目に見えている。下手をしたら灰になるかもしれない。
「でっかいけど……口の中、入るかなぁ…?」
「無理はしなくていいぞ。」
「う、うるせえな!誰が無理っつったんだよ!」
無意味な強がりを言って、ドワーフはまた後悔する。実際咥えようとしてみると、かなりの大口を開けないと納まらない。
それでも、言ってしまったものは仕方がない。ドワーフは何とかそれを口の中に納める。
「うぅ……ふるひぃ…。」
「だから、無理はするなよ?」
「だえがういっへ…!」
「それから、咥えたまま喋るのはいいが、歯は極力当てないでくれ。泣きそうなぐらい痛い。」
「あ……おえん。」
歯はそんなに強く当たっていたわけではないが、場所によっては相当痛いらしい。もっとも、ドワーフの歯は獣の歯に近いため、
ヒューマンなどよりは遥かに鋭い。そのせいというものも、多分にある。
ともかくも、歯を当てないように注意しつつ、なおかつその巨大なモノを口に納めるのはかなりの苦労を要した。
下の歯は、間に舌を挟むことで何とかなったが、上の歯はそうもいかない。先端部分が敏感らしいので、そこにだけは歯を当てないよう
細心の注意を払いつつ、そんなに痛くなさそうな部分は、もう歯を当てないことなど諦めた。
何とか口の中に納まったところで、ドワーフは慎重に頭を上下させる。
喉の奥に入ると相当に苦しいが、それでも全部納めることなどできない。とんでもない凶器だなあと、ドワーフは今更ながらに思った。
時々、バハムーンの様子を見る。やはり奥に入れるときは、かなり反応がいい。する方としても反応がないとやり甲斐がないので、
ドワーフは少し無理をしつつ、何とか喉の奥まで使って全体を舐め上げる。
バハムーンの方も、この状況を存分に楽しんでいた。相手からされるのは初めての上、ドワーフの慣れていない手つきや行為が何とも
可愛らしい。たまに歯がガリッと当たって悶絶しかけてはいるが、慣れていない相手にあまり多くを要求するのは酷だ。
しかし、頑張ってくれるのは嬉しいが、そのために無理をしているのもわかる。少し迷って、バハムーンはドワーフの頭に手を置いた。
「ん?」
「そう動くだけではなく、少し舌を使ってみたり、吸ったりしてみてくれるか?」
「ぷはっ。えっと……す、吸う?のか?」
「ああ。そんなに奥の方まで咥え込まなくても構わん。」
「そ、そうか?んじゃ、やってみる。」
無理のない範囲でもう一度咥え、歯を立てないようにしながら思い切り吸い上げてみる。
途端に、バハムーンは今までよりさらに大きな反応を示す。
「うっく…!これは、なかなか…!」
「ぷはぁ!てめえ、オレが我慢して奥の方まで咥えた時より、ずっと反応いいじゃねえかよっ!」
「責められても困る。男の体はそういうもんだ。」
「ちぇっ。どうせオレにはわかんねえよ…。」
「お前にもしてやろうか?」
「いやっ、いいっ!やめろっ!」
変なことをされる前に、ドワーフは再びバハムーンのそれを口に含む。
少し強めに吸い上げ、疲れると敏感な部分を舌で刺激する。たまには頭を上下させて、それを喉の奥の方まで咥え込む。
攻めに変化がついたことで、バハムーンの快感も一気に跳ね上がる。つい頭を掴んで揺さぶりたくなる衝動を抑えつつ、
ドワーフの攻めに任せていたものの、それも限界近かった。
「おい、ドワーフ…!」
やや切羽詰った感じのする声。やばいところに歯でも当ててしまったかと、ドワーフは慌てて顔を上げる。
「ど、どうした?オレ、何かやっちゃった?」
「いや、そうではなく。そろそろやめないと、出てしまいそうだ。」
「あ……ああ、そういうことか。わかったよ。んじゃ…。」
ドワーフは体を起こし、バハムーンの腰に跨ると、そっと腰を落とそうとした。が、そこでついにバハムーンの限界が来た。
「うおおぉぉらああぁぁ!!!」
「うわぁ!?」
バハムーンはドワーフの体を掴むと、強引にうつぶせにして押さえつけた。いきなりのことに、ドワーフはまったく抵抗できない。
「ななな、何すんだよ!?」
「いや、なに。そうやって奉仕されるのも悪くないが、やはり攻められるのは性に合わん。」
言いながら、ドワーフの腰の下に枕を入れ、その背中にのしかかる。久しぶりのその感覚に、ドワーフの女の部分が疼いた。
「ま、待て待て!まだ準備もしてな…!」
「舐めて濡らしたんだから、十分だろう。いくぞ。」
言い終えるより早く、バハムーンはドワーフの体内に入り始めていた。が、すぐにドワーフが暴れ始める。
「んぅああぁぁー!!い、痛い痛い!!」
「む、大丈夫か。」
いつもならドワーフの愛液を使っているところだが、今日はそれもない。まして、ここしばらくご無沙汰だったため、一時はすっかり
馴染んでいたドワーフの菊門も、また固くなってしまっていた。
「悪いな。ゆっくり動く。」
「ああ……オレこそ、悪りぃ…。好きにさせてやれなくて…。」
再び、腰を突き出すバハムーン。しかし、今度はかなりゆっくりとした動きだ。そのおかげで痛みが少なくなった代わりに、今度は
いつまでも何かが入り続ける感覚があり、凄まじい快感が襲ってくる。
「んあぅ…!バハムーン、オレ…!」
「なんだ?今日はいつにも増してすごい濡れ方だな。お前も溜まってたのか?」
「ち……違う、バカ!」
「ちょうどいい、少し借りるぞ。」
どんどん溢れてくるそれを掬い取り、少しだけモノを抜き出すとそこに塗りつける。途端に動きが滑らかになり、ドワーフが痛みを
訴えることもなくなる。
それを受けて、バハムーンはさらに激しく動き出す。ドワーフもすぐに慣れ、突き入れられるときは力を抜き、バハムーンのモノを
優しく受け入れる。反対に抜かれるときはぎゅっと締め付け、バハムーンに大きな快感を与える。
「さすが……お前も、慣れてきたな。」
「んんっ!だ、だって……オレも、気持ちいい……からっ!」
「おかしいな、嫌だったんじゃないのか?」
「い、嫌……だけどっ…!き、気持ちよくなる……んあっ!……のは、しょうがない……あうっ!……だろぉ…!?」
「素直になりきれない奴め。」
それがまた、たまらなく可愛らしいのだが。
「嘘なんか言って……うあっ!?あっあっ!!い、いきなり、激し…!」
「あれ以来、ずっと抜いてなかったもんでな…!悪いが、もう出そうだ…!」
言い終えるのとほぼ同時に、バハムーンはドワーフの中に思い切り精を放った。普段から出る量は多い方だったが、今回はさらに多い。
「うあっ!?な……中で、動いてるよぉ…!なんか、腹の奥に当たってる…!」
「……ああ。今、出したからな。」
「で、出てるのわかったの、初めてだ…。」
一体どれだけの量が自分の中に注ぎ込まれたのかと、ドワーフは少し不安になる。が、その考えもすぐに意識の外へ飛ばされる。
再び、ドワーフの腸内を激しく突き上げるバハムーン。終わったと思った刺激が突然再開され、ドワーフの体がビクンと跳ね上がった。
「ふあっ!?ちょっ、待てっ!お前、今出したんじゃ…!?」
「ああ。だが、お前はまだイっていないだろう?それに、俺もまだ納まりがつかん。」
「お、オレはいいってばぁ!待てっ!そんな……激しくするなぁ!」
ただでさえ大量の精液を注ぎ込まれ、違和感の残る腹をさらに掻き回される感覚。
苦痛と紙一重のその快感に、ドワーフはたちまち上り詰めてしまう。
「ダメ…!オレ、イクっ…!んぅぅ…!うあああぁぁぁ!!!!」
バハムーンの腹に背中を押し付けるようにして、激しく体を震わせるドワーフ。
その痙攣が治まると、バハムーンはドワーフの中から自身のモノを引き抜いた。
「んっ!……もう、いいのか…?」
「ああ。お前に無理はさせられん。今日は疲れてるはずだしな。」
「ん……ありがと。」
だが、何だかすっきりしない。お礼と謝罪の意味を込めて始めたはずなのに、結局は自分が気持ち良くされている。
おまけに気遣いまで受けては、何のためにこれだけしたのかわからない。
ドワーフはしばらく悩んだが、やがてちょっとした覚悟を決めた。
「な……なあ、バハムーン。」
「ん?どうした?」
「その……ちょっと、どいて。んで、こっち向いて。」
「構わないが、どうした?」
ドワーフはバハムーンの下から這い出し、正面から向き合った。最初は視線を外していたが、やがて何かを決心したように視線を合わす。
一瞬後、バハムーンの唇に柔らかい物が押し当てられた。
「っ!?」
「ん…!」
ぎゅっと目を瞑り、唇を重ねるドワーフ。その口元はふにふにと柔らかく、また和毛の感触も相まって、他種族とは一線を画した肌触りだ。
しばらくそうやって唇を押し当ててから、ドワーフはサッと離れた。
「そ……その、今日のお礼っ!と、特別だからなっ!」
バハムーンはしばらく呆気に取られていたが、やがて笑顔を浮かべた。
「キスも解禁か?」
「だ、だから特別だっつうのっ!今日は、その……助けてくれたし…!」
「付き合いはそこそこだが、キスをしたのは初めてだな。」
「何だよ!?も、もうダメだからな!今日だけ!」
「そうか、それは残念だ。だが、今のはライトキスだ。ディープの方はいつ解禁だ?」
「ば、バカ野郎!それだけで満足しろよっ!」
耳を伏せ、尻尾をせわしなく動かしながら言うドワーフ。その姿を、バハムーンは一種感慨深い思いで見つめる。
今まで、キスは意図的に避けていた。最初の頃は攻撃される恐れもあったからだが、ドワーフは心は男であり、いくら性的な接触に
慣れたとしても、キスには嫌悪感を示したからだ。体を無理矢理奪われた分、ある意味ではそこが最後の砦になっていたともいえる。
それを、今このドワーフは自分から仕掛けてきた。例え言い訳があるにしろ、それが示すことは一つだ。
それだけで、もうバハムーンは十分満足だった。
「ああ、そうだな。礼を言っておくか。」
「れ……礼なんて、いらねえよ…。オレのが、お礼なんだから…。」
「そうか。それじゃ、またいつか借りを作らせるとするか。」
「だからって、毎回はしねえよ!」
また、いつものような会話を交わし、やがて二人は静かに眠りについた。
ドワーフはバハムーンの胸に顔を埋め、幸せそうな寝顔をしている。
もそりと、バハムーンが体を起こす。そしてドワーフに気付かれないようベッドから降りると、そっと部屋を抜け出した。
その頃、バハムーンに気絶させられたヒューマンはようやく意識を取り戻し、何とか歩き出したところだった。
「畜……生…!あの……バハムーンめ…!今度会ったら…!」
憎々しげに呟いたその口が、ふと止まる。
僅か数メートル先に佇む影。その巨体は見紛うはずもない。あの、バハムーンだ。
「て……てめえ…!」
「言ったはずだぞ。お前は、逆鱗に触れたとな。」
攻撃か、逃亡か。ヒューマンの一瞬の迷いを、バハムーンは見逃さなかった。
一瞬にして距離を詰め、素早く腕を捩じ上げる。意識を集中できなければ、もはや魔法は使えない。
「痛ってえ!くそ、離せ…!」
「お前と違って、パラライズは使えないのでな。」
「はぁ…!?なんのつもりだ…!?」
「決まっている。」
バハムーンはにやっと笑うと、ヒューマンの制服を引き裂いた。
「う、うわあっ!?」
「お前に、あいつと同じ目に遭ってもらおうと思ってな。」
その言葉を聞いた瞬間、ヒューマンの顔が見る間に青ざめた。
「よせ!ふざけるな!やめろ!」
「お前は、あいつのやめろという言葉に耳を貸したか?それに、こういうことをするのは、これで最後になるかも知れないのでな。」
悪魔じみた笑顔を浮かべ、ゆっくりとズボンを下ろすバハムーン。そこから現れたモノは、ヒューマンのものより遥かに大きい。
「や……やめろ…!やめろ!俺が悪かった!やめてくれ!助けてくれぇ!!!」
「残念ながら、お前には助けに来てくれる奴はいないようだな。」
無理矢理足を上げさせ、ゆっくりとモノをあてがうバハムーン。と、不意に押さえつける力を緩めた。
「そうだ、大事なことを聞き忘れていた。」
「な……何だよ?」
「あいつを強姦しようとしたとき、前戯はしてやったか?」
「ぜ……前戯…?」
慌てたように、思わず目をそらすヒューマン。それだけで、もう答えは出たも同然だった。
「下等生物が…!なら、お前もそうしてやる!」
「うわああぁぁ!!!やめろ!!!!やめろ!!!!」
「それにな、お前のおかげであいつに無茶できなかった!その分はお前に責任を取ってもらう!一ヶ月は椅子に座れると思うなよ!」
「やめろおおぉぉ!!!!助けてくれえええぇぇぇ!!!!やめ……アッーーーーーーー!!!!!!!!」
ヒューマンの絶叫が、誰もいない校舎裏に響き渡った。
翌日、ドワーフはヒューマンの部屋に向かっていた。面と向かって絶交の意思を伝えるためと、一発ぶん殴るためである。
が、せっかく意気込んで部屋の前まで来たのに、いくらノックしても出る気配がない。
もう一度ノックしようとしたとき、隣の部屋のドアがガチャッと開いた。
「何か、その方に用事でも?」
声をかけてきたのは、優しそうな顔をしたセレスティアの女子だった。可愛い子だなあと少しドギマギしつつ、ドワーフは務めて平静を装う。
「ああ、いや…。ちょっと話したいことがあったんだけど、どこにいるか知ってる?」
「そうだったんですか。でもその人、さっき退学しましたよ。」
「え……えええぇぇ!?た、退学ぅ!?なんでぇ!?」
「えっと、わたくしもよくわからないんですけど、すっごく暗い顔でしたし、なんか『お婿に行けなくなった』とか何とか、
意味わからないこと言ってましたよ。」
「お婿…?へ、へぇー、そうなんだ。……バハムーンに負けたのがショックだったのかな…?」
よくはわからないものの、少なくともこれで二度と、あのヒューマンに会うことはないだろう。
「そっか。それじゃ、しょうがないや。教えてくれてありがとな。」
「いいえ。どういたしまして。」
「あ、そうだ。もしよかったら、名前聞いても…?」
「えっと……確か、あの有名なバハムーンさんと、お付き合いしてる方ですよね?」
せっかくなのでお近づきになろうかと思った出鼻を、見事に挫かれるドワーフ。
「あ……ああ、まあ…。」
「その……大変だと思いますけど、いつか報われる日が来ますよ。」
意訳すれば『私は関わりたくないけど頑張って』といったところだろう。久しぶりに、ドワーフはバハムーンに軽い殺意を覚えた。
ともあれ、何だか気合が空回りしてしまったように感じ、ドワーフは釈然としない気持ちを抱えつつ部屋に戻った。
「おう、どうだった?」
部屋に戻ると、バハムーンが朝食のハニートーストを頬張りながら尋ねる。
「ただいまー。なんか、よくわかんねえけど退学しちまったって。」
「ほーう。それまた急だな。まあ、ああいう手合いはプライドだけ無駄に高いものだ。俺に負けたのが許せなかったのだろう。」
「やっぱそうなのかなー?」
「さあな。下等生物の考えることはわからん。」
バハムーンが次のハニートーストに手を伸ばすと、ドワーフはそれを横からサッと奪い取った。
「む、それは俺のだぞ。」
「この間の仕返しだっ!」
「まだ、あの肉を根に持っていたのか…。」
「食い物の恨みは恐ろしいんだぜー。覚えとけよな。」
もそもそとパンを食べながら、ドワーフはバハムーンの隣に座る。
「……どうした?」
「あのさ……オレって、もうお前の彼氏じゃ……ねえのかな?」
「そうだな。結果的に裏切られたとはいえ、あの下等生物とは友人関係ではあったしな。」
あまり気にする様子もなく、道具袋からフレンチトーストを取り出すバハムーン。
「そのことから鑑みるに、約束は果たされるべきだろう。」
「そっか…。でも……さ、あの時、オレが犯されそうになったとき…。」
ドワーフはもじもじしつつ、バハムーンの腕を取った。
「オレのこと、彼氏って言ってくれた…。」
「それがどうかしたのか?」
「ばっ…!言わせるなよ、恥ずかしいんだからっ!」
最近、こいつ少し女の子っぽくなったかな、と、バハムーンは思った。
「だから、その、つまり…。ま……まだ、その関係じゃ、ダメ……かな…?」
「約束は果たした。その上でまた戻ってくるというなら、俺は歓迎だ。むしろ躍り上がって喜ぶところだな。はっは。」
冗談めかして言うと、バハムーンはフレンチトーストを頬張った。
その瞬間、ドワーフが素早く唇を重ね、舌を突っ込んでそのフレンチトーストを奪った。
いきなりのことに、さすがのバハムーンも呆然としてしまう。
「お…。」
「な……何だよ!?」
「いや……お前…。」
「た、ただ飯盗っただけだよっ!ふん!べ、別に怒らないんならいいけどよ!」
知れば知るほど、よくわからない奴だなあと、バハムーンは苦笑いするしかなかった。
「あと、その……あの時さ、オレのこと『彼女』じゃなくて『彼氏』って言ってくれたの……嬉しかったぞ…。」
「そりゃ…。」
一瞬、言葉に詰まるバハムーン。だが、すぐにいつものような、どことなく人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「……当たり前だろう?お前のことを『彼女』なんて言ったら、俺自身を否定することになりかねん。」
「あ〜……って、てめえの都合かよっ!?」
「それが何か?」
「……くっそー!見直して損した!ディープキスまでしてやるんじゃなかったぜ!」
「んん?ただ飯を盗っただけじゃなかったのか?」
つい口を滑らせたドワーフは、見る間に毛を逆立てて行く。そしてその様子を、微笑ましく見つめるバハムーン。
「う、うるせえうるせえうるせえ!それぐらい空気読め!このトカゲ野郎!!!」
「何だと毛玉野郎。それはともかく、俺のフレンチトーストを返せ。」
「返せったって……て、ちょっと待て。なんで寄って来るんだよ?」
「まだ口の中にあるだろう?ならまだ取り返せるな。」
「ま……待て待て待てぇ!!!そんなの、もう飲み込んじまったよ!!それに、もうキスはダメだぞ!!!お前になんか…!」
「味ぐらい残っているだろう。それを取り返すだけだ。キスではない。」
「ちょっ……待っ…!わあぁぁーーー!!」
息を合わせざるをえなかった関係も、いつしかそれを続けるうちに、本当に息が合ってくるもの。
どんな相手であろうと、嫌でも一緒にいるうちに、知らなかった面が見えてくるもの。
そして雨が降れば、地面はぬかるみになる。しかし時が経てば、それは今までよりも、さらに硬くなるもの。
条件という名の下に築かれた関係は終わった。だが、それでも二人の関係は崩れなかった。
二人の関係は、今ようやく、本当に始まったばかりだ。
以上、投下終了。
結局、本当にドワ子強化月間になってしまったが、後悔はしていない。
最近は他の人のSSも増えてきて嬉しい限り。この調子で活性化してくれるといいな。
それでは、この辺で。
[> 純金こけし ピッ
乙
ドワを見守る立場になってるバハがいいいな
GJですた
最近ドワ子が多くて嬉しいなあ
ニヤニヤが止まらないwwww
GJでしたぜ。
とりあえずバハムーン敬礼。そしてヒューマンに黙祷。
やはりバハはナイスガイだ!
むしろナイスゲイだw
217 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 16:43:44 ID:efYXOf8x
age
ほしゅ
hosiyu
ちょっと小ネタを投下。
久々のパルタクスに帰って、自室にて一人で寝ていたはずなんだが…
「あ、ヒュム男くん。おはよう」
隣に何故かフェア子が寝ていた。
「…フェア子。いつの間に入った?」
「えへへ…昨日一人で寝るのが寂しかったから入って来ちゃった」
あー、こいつ盗賊スキルで俺の部屋を開けやがったな。
「全く、お前と来たら…」
「えへへ、ごめんね」
まぁ、こいつの場合は大抵許しちゃうけどね。
「ねぇヒュム男くん。せっかくベッドの上にいるから、しよ♪」
「ん?ああ…」
毛だるく返事するとフェア子はスカートの中に手を入れ、
自分のパンツを脱いだ。
「おいおい、いきなり入れるのか?」
「うん…だって…」
フェア子の股下を見ると、彼処から露を垂らしていた。
「…相当我慢していたんだな」
「うん…」
もはや、我慢出来なくなった俺はアレを握りしめ、
フェア子の入り口まで持っていった。
「それじゃ、入れるぞ?」
「…きて」
そして、一気にフェア子の中に挿入を…
「うぃーす。ヒュム男起きてるか〜?」
出来なかった。
ドアの方を見ると、やさぐれ淑女を持ったフェル男が居た。
「お?フェア子と一緒に何をしてt」
「「 死 に さ ら せ ! ! 」」
とりあえず、俺とフェア子はフェル男を死なない程度までフルボッコし、
廊下に投げ捨てた。
気分がすっかり醒めてしまった俺達はベッドに戻り、
何時もの制服に着替えた。
「…ヒュム男くん」
「どうした?フェア子」
「今日はしそこなったけど…次はちゃんと最後までしようね」
そういうとフェア子は俺に近づき、
キスをした。
「えへへ…それじゃ、また後でね♪」
フェア子を無事部屋に帰ったのを確認した後、
廊下に捨ててあったフェル男を保険室前に置き、
学園入り口までいった。
「………さぁて、今日もパルタクス地下道でゴミ漁りをするぞ♪」
今日もまた、俺の一日が始まった。
以上、お目汚しをしてすいませんでした。
ゴミ漁りじゃなくて探検に行けwww
確かに楽だけどなww
てか確かに実際ならそういうのできるよな。
ところで全滅したとき、いったい誰がそれを伝えるんだろうな?
発信機でもついてんのか?
二軍の生活なんてこんなもんだろ
やる事もなく暇を持て余して一日中やりまくり
挙げ句の果ては一軍不在のがらんとした教室で声を殺しながらのご奉仕プレイ
駐留組なんか下手をすればたった一人で気が狂うまでオナニーに耽るとか
この前久しぶりに侍バハ子の様子見てみたら、すっげぇアヘ顔で壊れてた
お前、それオナニーじゃなくて通りすがりのパーティにまわされてるぞ
>>224 元ネタの時は発信機があって
ボスが沸いたよーとか報告くれてたんだけどね
>>225 アヘ顔で壊れつつ、手持ちのアスカロンを売っては買って、売っては買っての
仕事だけはきっちりこなす
投下したいと思います。
たまにはメインパーティだけじゃなくて、サブパーティネタでも。お相手はノム子。
注意としては、若干ホラー風味があったりします。遅いハロウィンとでも思ってください。
では、いつもの如く楽しんでいただければ幸いです。
先に言っておく。俺はディアボロスではあるが、性格は悪い方じゃない。いや、むしろ元々はいい方だったが、故あって催眠術で
中立的にしてもらった。
冥界の血脈を継いではいるが、実は怖いのが嫌いだ。霊タイプのモンスターなんか、できればあまり会いたくないぐらいだ。
今のパーティは悪いパーティじゃないと思う。が、居心地はいい方ではない。そんでもって悪い奴等が多い。
それでもまあ、何とかやっていける自信はあったんだ。ただ、どうしてもダメだ。
あいつだけは、俺はどうしてもダメなんだ。
錬金術師としての腕を買われて、このパーティに入ってから、はや数ヶ月。成長の遅い俺はみんなに付いていくため、貯蓄は泣きながら
募金箱にぶっ込んできたし、どうも馬の合わない奴が多いから、友好の指輪なんてのまで着けた。
俺自身は、結構パーティのために頑張ってると思う。しかしまあ、性格の悪い奴が半数だ。いちいち言わでもの事を言われる時も多い。
「おいディアボロス、お前まだスターダスト作れねえのかよ?」
ヒューマンだ。僧侶なのに性格が悪いとは、これいかに。
「だぁ〜から、もうちょっと待てってば。あと数回潜れば、たぶん作れるからよ〜。」
「たぶん、じゃ困るんだよなあ。お前錬金術師だろ?なのに物作れねえとか、どうなんだよ?」
「く……お前だって、最初は僧侶なのにヒールできなかっただろ!それと同じだ!」
「今はもう、使えない僧侶魔法なんてねえけどな。それに比べてお前は……いや、いいか。ま、とにかくさっさと作れるようになれよ。」
そうは言うがな。お前の持つアイボリーロッドを作ってやったのは誰だと思ってるんだ?おまけにそれ何回作り直したと思ってやがる。
その言葉をグッと飲み込み、代わりにため息をつく。と、後ろから大人しそうな笑い声。
「魔法と錬金術を、一緒にされても困るものです。そう、思いませんか?」
「……言葉通りの意味なら、その通りだと思うがな。どうせ裏があるんだろ?」
「いえいえ、そんな。わたくしがそんな風に見えますか?」
天使のような微笑みを浮かべるセレスティア。だが、こいつの心は俺が言うのもなんだが、悪魔そのものだ。
「まさしく、言葉通りですよ。わたくし達の使う魔法が、たかだか物を作るぐらいにしか使えない術と、一緒にされたら困る、と。
そう思いませんか?ディアボロスさん?」
「当てこすりはもういいよ。ったく、ほんとお前はどこの堕天使だよ。」
「これは、心外。あなたのような悪魔とまで、仲良くしているわたくしの、どこが堕天使だと?」
「その性格がに決まってんだろっ!」
「なるほど。あなたのような悪魔から見れば、すべての行動に裏があると思ってしまうわけですね。悲しい、性ですね。」
友好の指輪をしっかり着けてるから、こんな事を言われてもそんなに腹は立たない。つけてなかったときの事は……思い出したくもない。
それでもまだ、この男二人はいいんだ。口は悪いし性格も悪いが、俺に危害を加えてくるわけじゃない。
「仲のいいことだな、お前等。」
「……どこをどう見たら、今のがそう見えるんだ?」
「殺しあっていないからな。」
「お前、どれだけ殺伐とした心なんだよ。それともバハムーンってのは、嫌いな奴はすぐ殺すのか?」
こいつは中立的な性格だが、悪寄りの中立である気がしてならない。少なくとも、あまり性格がいいとは思えない。
「私は逆に、ディアボロスはそういう種族だと思っていたが?」
「違うわっ!」
「そうか。まあ、仲間同士で傷つけあうことはするなよ。」
すみません。既に心が散々に傷つけられてるんですが。てか体が傷つかなきゃ、何したっていいのかよ!?
ため息をつくと、エルフが俺の隣に座る。どうも、女の子が隣に来るとドキドキしてしまう。あのバハムーンだと平気なんだが…。
「……どうした?」
「いえ。」
こいつはやたら無口だ。『ええ』か『いえ』ぐらいしか口にしないし、とにかく自分から喋ることはない。
「気遣ってくれてんのか?」
「………。」
たぶん、肯定的な沈黙だ。表情と合わせて見ることで、ようやくこいつは意思疎通ができる。
「にしても、お前ほんと喋らないよな〜。もうちょっと特待生らし…。」
やばい、と思った頃には手遅れだった。
シャン、と冷たい音が響き、俺の喉元に刀が突きつけられる。
「……何でもないですよ?」
「…………二度と、わたくしの前でその言葉を口にしないことですわ。」
不機嫌そうに言うと、エルフは刀を納めた。こいつは元々特待生だったらしいんだが、それを言うと非常に怒る。バハムーン曰く、何でも
すんげえ辛い記憶があるんだとか。それに関連したものか、こいつはやたらにモンスターと知らない男を嫌う。一体何があったのか
興味があるが、聞いたら俺の首と胴体が離れてしまいそうだ。
この女達も付き合いにくいといえば付き合いにくい。が、あいつほどじゃない。
エルフが不機嫌そうに立ち去ると、不意にカタカタと音が聞こえた。そして、俺の腕に人形がよじ登ってくる。
「うわあああぁぁぁ!!!!」
慌てて振り払おうとしても、人形はしっかり俺にしがみついて離れない。発狂寸前になりながらも、俺は渾身の力を込めてそいつを
振り落とす。地面に落ちたお菊人形は、気味の悪い動きでカタカタと立ち上がり、主人の方へと戻っていった。
「はぁ……はぁ……お、おいノーム!お前毎回毎回、何なんだよ!?」
そう。俺が一番苦手な相手。それはこのノームだ。
本来なら、俺の唯一の心の拠り所になってもおかしくない種族。なのに、こいつは違う。
「ふふ。私もその子も、共に操られた人形。私とその子に、一体どういう違いがあるの。」
そう言って、微笑みを浮かべるノーム。その笑顔は、とんでもなく不気味だ。
「お……お前はまだいいだろ!?お前には、ちゃんと種族があって、人形っつったって、それを依代にしてるだけで…!」
「この子はお菊人形。私はノーム。どちらも同じ人形なのに。」
超術士である彼女は、なぜかあのお菊人形が大のお気に入りだ。他の武器を薦めても、絶対あれを放そうとしない。そして戦闘じゃない
時も、ずっとああやって好き勝手操っている。
「その違い。私は、取り憑き、操っている。この子は、その私が操っている。ふふふふ。」
ほんと、こいつは気味が悪い。言ってることもよくわからないし、行動がおかしすぎる。ノームにしては非常に表情豊かだが、
それが余計に怖さを引き立てている。
「操り人形を操る人形。性格の悪くない悪魔。どっちも傑作。そう思わない。」
「……性格の悪い天使は入らないのか?」
「彼は堕天使。あなたほどには、面白くない。」
俺と喋っている間も、お菊人形はカタカタ動き続ける。ノームの表情にあわせ、そいつの表情までもが変化しているのが怖い。
「装備の力に頼ってまでも、仲間を求めるおかしな悪魔。いつも思うの、それはなぜ。」
「あのな、俺はお前と謎かけして遊ぶ気はないんだ。用がないなら、放っておいてくれる、と、嬉しい……です。」
ノームに見つめられると、どうしても敬語になってしまう。じゃないと、あの人形で何をされるか。
ただ、こいつも性格は悪い方だが、男連中に比べれば、そこまで悪い奴でもない。
「そう。なら、放っておきましょう。」
地面から見えないぐらいに浮かび上がり、地面を滑るように動くノーム。その後ろを、お菊人形がカタカタと追いかける。慣れないうちは、
あの姿が毎晩夢に出たものだ。
立ち去り際、ノームが不意に立ち止まった。お菊人形もその隣に並び、立ち止まる。
「人ならざる身の人形遣い。人形そのものの人形遣い。」
左手を腰に当て、右手をお菊人形の上にかざす。すると、見えない糸に吊られたように、お菊人形の動きが変わった。
「人形ならば、操れる。人の心も、これほど簡単ならば、ね。」
言いながら、お菊人形を動かすノーム。人形はゆっくりと舞を踊り、天を仰ぎ、そして、唐突に糸が切れたように崩れ落ちた。
「操る者がいなければ、人形なんて動かない。この子は私が操るけれど、私を操る私はだぁれ。」
正直、何が言いたいんだかまったくわからない。ミステリアスな子は可愛いとか、エキゾチックな魅力が、とかよく言われるけど、
こいつに限っては不気味なだけだ。
「その〜……もうちょっと、はっきり言ってくれると嬉しいんだが…。」
「この子は人形。私も人形。この子は操り人形だけど、私はこの子を操る人形。人形を動かす人形遣い。それなら私の人形遣い、
私以外にどこにいる。」
やっぱりわからない。つーか余計わからない。こいつの頭ん中は一体どうなってるんだ?
おまけに、顔は表情豊かだけど、声には抑揚がなさ過ぎて、疑問系なんだか言い切りなんだかの判別すら難しい。
「……ふふ。わからないなら、宿題。またね。」
床に崩れたお菊人形がぴょんと飛び上がり、ノームの腕の中に納まる。そして、ノームはそれを大事そうに抱きかかえ、どこへともなく
滑っていった。
残された俺は、ドッと疲れが出て椅子に座り込んだ。まったく……あいつら、揃いも揃って何なんだ。
飯ぐらい、ゆっくり食わせてくれたって罰は当たらないだろうに。
数日後、俺はそんなことがあったなんてすっかり忘れ、いつも通り一人でのんびり夕飯を食っていた。
今日は俺の大好きなアイスクリームが残ってたから、実にいい日だ。
そう思っていたら、足元で聞きなれたカタカタという音。そして、俺のズボンを何かが掴む。
「やぁめぇろぉー!」
そいつが登りだす前に、もう片方の足で蹴落とす。そんな俺を、ノームは後ろで気味の悪い微笑みを浮かべながら見ていた。
「だぁから、いっつもいっつも何なんだよ!?俺に何か強い恨みでもあるのか!?」
「ふふふふ。恨みがあったら、その子があなたの喉を食い破ってる。」
「………。」
こいつの戦い方は、今の言葉通りなので非常に怖い。誰だ、こんな危険人物にこんな危険な玩具を与えたのは。
「で、何の用……ですか?」
「宿題、わかった。」
「……宿題?」
一体何のことかわからず、俺は首を捻った。すると、ノームの表情が変わった。
「え…。」
一瞬、唖然とした表情をし、やがて眉がだんだんと下がる。唇は涙を堪えるように結ばれ、やがてうつむいてしまった。
そこで、俺はようやく思い出した。数日前、わけのわからない言葉の解釈を宿題と言われてたことを。
「あ、ああ!お、思い出した!思い出したよ!」
「……でも、忘れてた。どうせ、私はその程度。私が片手間に操る、その人形と一緒。」
悲しげな声で言うと、ノームはお菊人形を抱えて走り去ってしまった。まさかあんな悲しむなんて思いもしないし……第一、あんな言葉の
解釈、覚えてたとしてもわかるもんかっ!
でも、参った。俺は女の子に泣かれるのが苦手だ。あいつ自身も苦手だけど、さすがにそんなこと言ってられない。
楽しみに取っておいたアイスクリームを二口で食べると、俺は仕方なくノームの部屋に向かった。
だが、いざ部屋の前に立ってみると、思った以上に緊張する。女の子の部屋に入るというのも、今まで片手すらいらない回数しかない。
つまりはゼロだ。文句あるか。
色んな勇気を総動員して、ドアをノックする。返事はない。もう一度ノックしようと手を上げた瞬間、ドアがゆっくりと開いた。
ノームがベッドに座っているのが見える。え、じゃあドア開けたの誰だ?
そう思う間もなく、お菊人形が俺の足を引っ張った。
「どわああぁぁ!?」
思いのほか強い力で引っ張られ、俺は部屋の中へ引きずりこまれた。そして俺の体が完全に入り込むと同時に、部屋のドアが閉められる。
「いってぇ〜…!」
「……なぁに。」
わかってて言ってるのか、それとも本当にわからないのか。どっちにしろ、俺のする事は変わらないか。立ち上がり、服をはたく。
「いや……その、悪かったよ。お前の言ったこと、忘れちまってて…。」
「わざわざ、それ言いにきたの。」
少し不機嫌なのか、喋りのリズムがいつもと違って普通だ。
「ああ…。ま、まあその……思い出したところで、答えはわからないんだけどさ…。」
よく見ると、部屋の中は人形だらけだった。武器にも使われるマリオネットやらわら人形やらもあるが、至って普通のぬいぐるみなんかも
大量に置いてある。これがただの、人形好きな女の子ってんなら可愛いけど……こいつだと怖い。
「どうしても、わからないの。」
「あ、ああ。その、考えてはみたけど……いや、今も考えてるけど、皆目見当もつかないよ。」
「ふーん。」
ノームが顔を上げた。それにあわせ、部屋中の人形が俺に顔を向けた。
「うわあああぁぁぁ!!!!」
思わず悲鳴をあげ、その場に尻餅をつく。そこに、お菊人形が覆い被さってきた。こ、殺される!
「ほんとに、わからないの。」
「わ、わからないんだって!ちょっ、それよりこいつどうにかしてくれええぇぇ!!!!」
「その子、いい子。その子を操るのは私。じゃあ私はどんな子。」
ここにきて謎かけか!?てか、なんだ?これは何かのヒントのつもりか?
「い、いい子だって言いたいのか!?」
「ふふ、正解。応用、頑張って。時間制限、今日が終わるまで。」
いい子じゃない。この子は絶対いい子じゃない。
「わかった!何とか頑張る!だからこいつどかしてええぇぇ!!!」
お菊人形が、俺の上から離れる。俺はガクガクする足を何とか押さえつけ、必死の思いで立ち上がった。
「頑張って。あと4時間。」
「あ、ああ……頑張る…。」
壁を伝い、まだ震える足を何とか動かして、俺は部屋を出た。背中には、ずっとノームの視線が突き刺さってきた。
ドアが閉まると同時に、俺は大きくため息をついた。まったく、一体何だってんだ。
ふと、横を見るとエルフがいた。無口なせいか、こいつは気配がほとんどなくて困る。
「あ、ああ。いたのか。いつからいたんだ?」
「………。」
無言ですか。そうですか。
「その、な。ちょっと、あいつに謝ることあったからさ。」
「そう。」
「いや、ほんとだぞ!?疑ってないよな!?」
「ええ。」
「ならいいけど……お前も、こいつに何か?」
「いえ。」
「そうか…。」
「………。」
特に言葉も続かず、沈黙が訪れる。気まずい。
「少し…。」
「え?」
こいつが自分から話すのは初めて見た。思わず、俺は間の抜けた声で聞き返してしまった。
「聞こえましたわ。」
「何が……ああ、俺とあいつの話?」
「ええ。」
「そっか。」
「………。」
また、沈黙。どうも苦手だな、こういう沈黙は。
「人形は。」
「人形?」
「人形遣いが糸を操り、動かしますわ。操り人形と、人の違いはどこにありまして?」
なんだ?いきなりどうしたんだ?こいつも、ノームの病気が移ったのか?
「人形を操るのが糸なら、人を操るのは何だと思いまして?わたくしが言えるのは、これだけですわ。」
「は、はぁ。」
一方的に言うと、エルフは歩き去ってしまった。うーん、あいつは謎かけの答え知ってるのか?にしても、ヒントのつもりなのかも
しれないが、やっぱりわけわからなかったな…。あと4時間ぽっちで、そんな答えわかるんだろうか?
結局、あのわけのわからない謎かけの答えなんかわかるはずもなく、無為に長針が一周した。
ノームは、人形がいい子である場合、それを操る者がいい子であると言った。だが、それがあの言葉に繋がるとは思えない。
気がつけば、長針が二周していた。
エルフは、人形と人間の違いはどこにあるのか、と言っていた。どこも何も、まったく違うとしか思えない。人形は、ただの物でしかなく、
人間は生きて動いている。まあ、人形もノームみたいな精神体が取り憑いたり、糸で動かしてやれば動くわけだが、少なくとも自分の
意思で動くわけじゃない。
そんなことを考えてるうちに、長針は三周目に入っていた。
そもそも、ノームは何を言いたかったんだろう?確か、人形を操る人形が自分で、その自分を操る自分が誰だとか…。
やばい、考えたら余計わからなくなってきた。俺だって、頭は決して悪い方じゃない。なのに、全然わからないというのが少しムカつく。
人形を操るのが糸。で、人を操るのは何だって、そう言ってたんだっけな?しかし、何って言われてもなぁ…。
わかるかっ!
その時、とうとう時計が12時を告げた。時間切れだ。
降参の旨を報告しに行こうと、ベッドから起き上がった瞬間。部屋のドアが、小さくノックされた。
「ん?ノームか?」
返事はない。俺は妙に思いながらも、部屋のドアを開けた。
「おーい、聞いてるんだから返事…。」
部屋の外には、誰もいなかった。
聞き間違い?んなわけない。確かに、ノックされるのを聞いた。隣の部屋って事もありえないし、でも誰もいないし…。
だが誰もいない以上、聞き間違いなんだろう。いや、そうじゃないと怖すぎるから、そう思い込むことにした。
ドアを閉めて、振り返る。その瞬間、全身の血が逆流した。
ベッドに、お菊人形が座っていた。その顔は、無表情に俺を見つめている。
「う、うわっ…!」
思わず声が漏れた。それと同時に、お菊人形が立ち上がった。
ベッドから飛び降り、ゆっくりと俺に向かって歩いてくる。俺は恐怖で発狂しそうになったが、必死に思考を巡らす。
あのお菊人形は、明らかにノームのものだ。あいつの超能力は、そんなに遠くまで動かせるわけじゃない。となると、あいつはすぐ近く
にいるはず。そして、これを見てるはずだ。
「おい、ノームぅ!いるんだろ!?こ、こいつやめさせてくれぇ!」
情けないことに、声が恐怖で上ずってしまう。だが、俺からすれば声が出たことだけで褒めて欲しいくらいだったりする。
フッと、俺の首に何かが触れた。
「ぎゃああああああぁぁぁぁ!!!!!」
「ふふ。怖がり。」
ノームが、いた。いつの間にか、俺の真後ろに立ち、薄気味悪い微笑みを浮かべている。
「こ……こ…………殺す気か…!?」
ともかくも、何とか人心地ついた。俺はへろへろとその場にへたり込んでしまった。
「悪魔の癖に、すごい怖がり。ふふ、変な人。」
「悪魔ってのは、お前みたいな奴の事を言うんだ……あぁ、ほんと心臓が止まるかと…。」
「それで、答えはどう。」
お菊人形を大切そうに抱き、ノームが聞いてくる。わからないって言ったら、殺されるんじゃないかという不安が頭をよぎる。
「いや、その……降参。全っ然わかんなかった。」
「むぅ。残念。」
そう言い、頬を膨らませるノーム。何だか急に女の子っぽい動きをされ、不覚にも一瞬可愛いと思ってしまった。
「じゃ、少しずつ謎解き。いいよね。」
「謎解き?」
俺が聞き返すと、ノームは笑顔を浮かべた。いつものような薄気味悪い笑顔じゃなく、まるで普通の女の子が浮かべるような笑顔だった。
「人形を操るのは、糸。その糸を操るのは、人形遣い。なら、その糸は人形遣いの、何で動く。」
「……手。」
「合ってるけど、違う。もうちょっと、違うもの。」
「手で動かすんじゃないのかよ…。んじゃ……なんだ?」
「どんな動きをさせよう。どんな風に動かそう。それは何。」
「ああ、意思?」
「正解。それじゃ、次。」
いきなり、ノームは俺の首に腕を回してきた。予想以上に柔らかい感触に、俺の鼓動は一気に速くなる。
「人を動かすのは、意思。なら、私がこうしてるのは、なぜ。」
「えっ、えっ…!お、お前がそうしたいから…!?」
「うん。それじゃ、私をこうさせるのは、誰。」
「だ、誰だ…!?って、誰でもな……あ、いや、お、俺!?」
「うん。」
わけがわからなかった。いや、わけはわかるんだが、そうなる理由がわからないというか、そもそもまともな思考ができるほど余裕がない。
「お、お、俺の何が!?」
「んー。頑張ってるとこ。かっこわるくて、可愛くて。」
無邪気な言葉なのかもしれないが、地味に俺の心に突き刺さった。
「怖い目に遭っても、いっつも頑張ってる。」
「それが見たくてやってたのかよっ!?」
「それもあるけど、全部じゃない。だって、ああしたら私のこと、強く覚えていてくれる。」
なんというか、こいつは思考回路が少しぶっ飛んでるらしい。いや、それ自体は知ってたけど、まさかここまでとは。
きっと、依代の製作者が頭のネジ一本抜いて作っちまったんだろう。
「私のこと、強く覚えて欲しかった。」
ノームの顔が、俺の目の前にある。ガラス玉の様に透き通った青い目に、俺の間の抜けた顔が映っている。
「この子は、私の操り人形。だけど、この子に意思はない。私は人形遣いの人形。私を操る、私はだぁれ。」
今、ようやくわかった。こいつの言ってる『私』ってのは、何も自分そのもののことじゃないんだ。
こいつは人形遣い。依代に取り憑いてる時点で、お菊人形とは関係なしに、生まれながらの人形遣いと言える。だから、『私』とは
『人形遣い』そのものを指してるんだ。
つまり、この言葉の真意は、ノームを操る人形遣いは誰?ということだ。
「……お前を操る、人形遣い。」
ノームは、嬉しそうに頷いた。
「それが……俺だってのか?」
「そう。やっと、わかってくれた。」
いつの間にか、お菊人形は床に落ちていた。だが、ノームはもはや、そんな物を気にはしなかった。
「どうして、わざわざこんな回りくどいことを?」
「覚えて……欲しかったから。」
初めて見せる、女の子らしい恥じらいの表情。やばい。俺は本気で、こいつを可愛いと思い始めている。
「あなたを見たときから、私の心はあなたのもの。あなたに覚えてもらいたくって、私は道化の操り人形。」
「まったく。もう少し、マシな手段だってあっただろ?そうすりゃ、俺だってこんな回り道しないで済んだものを。」
ノームの体を、グッと抱き寄せる。驚いたように、その体がビクッと震えた。
「お前のこと、今までずっと怖いと思ってた。」
「……今は、どう思う。」
一度、大きく息を吸った。これを口に出せば、俺はきっと戻れなくなる。
それでも、言わないなんてできるわけがなかった。
「……可愛いと、思ってる。」
「……嬉しい。」
本当に嬉しそうに、目を細めるノーム。もうそろそろ、俺も抑えが利かなくなりそうだ。
抱き寄せた体を、さらに強く抱き締める。不安なのか、ノームは少し抵抗する。
その姿が余計に可愛らしく、そっと顔を上げさせた。
「キス……するの。」
「……したい。」
「ん。」
一瞬不安そうな表情を浮かべ、目を瞑るノーム。その唇にそっと、顔を近づける。
が、ノームは俺の首にぎゅっと抱きつくと、自分から唇を重ねてきた。さすがにそれは予想してなかったので、お互いの歯が当たって
カチッと音を立てた。
「いって…!」
「うん、痛い。」
「お前……俺からしようとしてたのに。」
「私も、したかったから。」
そう言わてしまうと、こちらとしても何も言えない。
キスを終えると、ノームが体を離そうとする。俺はそれを許さず、その体を放さない。
少し焦った顔になり、ノームはまた離れようともがく。それでも、俺は放さない。
「え、え。あ、あの、もっと、したいの。」
「ここでお預けは、ちょっとずるいと思う。」
「……私、心の準備してない…。」
「俺だって不意打ちの連続だったんだ。お前だって、一回ぐらい食らってみろって。」
そこで、俺はふと気になった。そういえば、こいつの体は依代だから、そういうことできるのか?そもそも、そういった部分は作られて
ない可能性が…。
そんな俺の表情を読んだのか、ノームはそっと俺の耳に唇を寄せた。
「私の依代、特別。限りなく、人に近い作りになってる。」
「じゃ……じゃあ、一応できるんだ?」
「うん、たぶん。」
「たぶん?」
「したこと……ないから。」
悲しいことに、俺はそれを聞いたとき、男としてより錬金術師としての興味をそそられていた。
いや、もちろん、男としての興味も溢れんばかりだったが。秤にかけると、職業としての興味がちょっと勝ってたって感じだ。
その二つの意味で体が見たくて、俺はノームの服に手を掛けた。すると、ノームは俺の手をしっかりと押さえた。
「ダメか?」
「あなたなら、いいけど。でも、今のあなたじゃ、ダメ。」
「……どうして?」
「私、あなたが好き。でも、あなたは違う。」
何だか心の中を見透かされたようで、俺は少しうろたえた。
いきなり、ノームは俺の体にしがみつき、ふわっと浮かび上がった。そのまま俺ごとベッドに乗ると、俺の体にのしかかってくる。
「お、おい…?」
「私の言う好きと、あなたの言う好きは違う。お願い。私を、あなたの目で、見て。」
ノームの手が、俺の肩に触れる。そしてつぅっと腕をなぞる。
その手は決して暖かくはない。せいぜい室温程度の温もりだ。だが、人形とは思えないほどに柔らかかった。
二の腕をなぞり、肘を撫で、俺の手に触れる。その指が滑らかに動き、俺の指に着いている友好の指輪を摘んだ。
「おい、それは…!」
「私は、あなたの操り人形。あなたを嫌うはずなんて、ない。」
ゆっくりと、指輪が外される。途端に、セレスティアだのエルフだのとパーティを組んでいることがとんでもなく不快になってきた。
特にセレスティアには、殺意すら覚える。
だが、それと同時に、目の前のノームに対して、胸が苦しくなるほどの愛しさが芽生えてきた。
「ノ……ノーム…。」
「嫌いな気持ちも、好きな気持ちも、隠してしまう。あなたは、私の人形遣い。こんな指輪の、操り人形にはならないで。」
さっきまでの、職業病的な興味が消えたわけじゃない。だけど、今の俺には、目の前にいる彼女を抱きたいという思いが強かった。
もう一度、ノームの服に手を伸ばす。今度は、ノームも俺の手を押さえない。
いくつかボタンを外すと、ちらりとノームの胸が覗いた。って、こいつシャツの下すぐ素肌かよ。
「お前、ブラジャーしてないの?」
「だって、制服黒いから見えないし。」
それはそうだが、ちょっと楽しみが減った気がする。
気を取り直してシャツのボタンを外し、肩からそっと滑り落とす。滑り落ちたシャツの下から、形のいい胸が露になる。
と、思った瞬間。ギリギリ見たいところが見えないタイミングで、ノームが滑り落ちるシャツを抑えた。
「……おい。」
「ご、ごめん。でも、やっぱりダメ。」
「どうして!?」
「あの、あの、やっぱり恥ずかしい。ね、やめよ。お願いだから。」
可愛らしくもじもじするノーム。その姿が、余計に俺を興奮させる。
「やめない。」
「いや。」
「やめられない。」
「いじわるしないで。」
「お前こそ、焦らすのはいい加減にしてくれ。」
脱がせようとしても、ノームはしっかり服を押さえて放さない。結構強く引っ張っても、全力で抵抗される。
しょうがない。こうなったら最終手段だ。
服に手を掛け、意識を集中する。途端に、それまで服だったものはズタズタのぼろきれになり、地面に落ちた。
「あっ。ず、ずるい。」
「安心しろって。あとでちゃんと直してやるから。」
いつの間にか、俺とノームの形勢は逆転している。俺にのしかかっていたノームは体を引き、俺はその体を追い詰めるように覆い被さる。
スカートに手を掛けると見せかけ、パンツに手を伸ばす。フェイントにかかったノームは慌てて押さえようとするが、少し遅かった。
恥ずかしそうに胸を隠し、スカートをぎゅっと引き下げるノーム。
「いじわる、いや。」
その目には、既に涙が浮かんでいる。俺の胸に、やばい衝動がむくむくと湧き起こる。と同時に、その衝動が別の驚きで抑え込まれる。
「涙…!?」
そういえば、特別な依代だとか言ってたっけ。実際こういうのを目にすると、相当に特別らしいことがわかる。ここまでくると、
もはや生身と変わらないんじゃないだろうか。
頭の中で納得してしまうと、再びやばい衝動が頭をもたげる。その気配を察知したのか、ノームは少し後ずさった。
「……いや。」
「お前だって、散々俺に意地悪してきただろ。」
有無を言わせず、胸を隠す手を押さえ込む。ようやく、ノームの胸を見ることができた。
「やだ、恥ずかしいよ。見ないで。」
「どうして。きれいだぞ。」
空いている手で、その胸に触れてみる。その手触りはふわっと柔らかく、マシュマロか何かを触っているみたいだった。少なくとも、
およそ人形の体とは、とても思えない。
「んん…。」
優しく、胸を揉んでみる。俺が手を動かすたび、ノームは可愛い声をあげ、押さえている手の力も徐々に弱り始める。
すっかり抵抗する気配がなくなったところで、俺は押さえている手を放した。そして小さな乳首を、指先でクリクリと弄ぶ。
「んっ、うっ…んん…。」
相変わらずスカートは引っ張りつつ、ノームは解放された方の手を口に当て、喘ぎ声を堪えている。
「声、我慢するなよ。」
「んうぅ……だって、だって……恥ずかしい…。」
普段なら、絶対に聞けないような言葉、声。そのギャップが、よりノームを可愛らしく見せる。
「ね、もういいでしょ。もうやめよ、ね。」
「やだ。」
もうノームの意向は完全無視し、一旦手を放すと形のいい乳首を口に含んだ。
「はうっ……や、だめぇ…。」
ほとんど人肌と変わらない感触。一体どんな素材を使ったんだろうと考えてしまうのが、我ながら少し悲しい。
口を押さえる代わりに、今度は俺の頭を力なく押してくるノーム。だが無視。
強く吸いながら、先端を舌で転がすように舐める。しっかりノームも感じているようで、その声はだいぶ甘いものが混じっている。
そっと、スカートの中に手を入れてみる。途端に、ノームの体がビクンと跳ねた。
「や、待って。触っちゃだめっ。」
既に、そこはびしょびしょに濡れていた。涙が出る時点である程度は予想できたが、こっちの機能もしっかり作られてるのか。
職業的な興味から、一度手を引いて、そこについた液体をじっくりと眺める。人のものとあまり変わらないのかもしれないが、
これといって匂いはない。指を開いてみると、その間につうっと糸を引くほどの粘り気がある。
と、気がつくとノームが両手で顔を覆っている。
「どうした?」
「恥ずかしいから……見せないで…。」
「あ。」
全然意識してなかったが、そりゃノームからすれば相当恥ずかしいだろう。
「ごめんごめん。悪かったよ。」
頭を撫でてやると、ノームはおずおずと手を下ろし、俺の顔を見つめてくる。もう完全に抵抗する気もなくしたらしく、
逃げたりするような気配はない。その時、俺はふと思い出した。
「そういえば、言い忘れてたな。」
「何……を。」
「好きだ、ってさ。」
ノームは恥ずかしそうな顔のまま、俺の手をぎゅっと握った。
「ずるい、今言うの。」
「性格悪いのが、移ったのかもな。」
言いながら、ノームの頭を引き寄せる。ノームは一瞬警戒したが、すぐにその意味をわかってくれた。
目を閉じるノーム。その唇に、そっと唇を重ねる。
唇の柔らかい感触。舌を入れると、ノームもそれに応える。一体どういう作りになっているのか、ノームの口の中はほんのり甘い。
ついつい、その甘さに惹かれて執拗にキスをしていると、ノームが軽く抵抗を示した。
「ん、なんだ?」
「その……続き、は。」
「何だよ、嫌がってたんじゃねえの?」
「だ、だって、恥ずかしかったけど……その、してもらいたくない……わけ……じゃ…。」
俺も、健全かつ健康な若い男子だ。こんな言葉を聞いて、自分を抑えられるわけがない。
邪魔な服を脱ぎだすと、ノームは少し怯えたような顔になった。そんなノームの体に、そっと胸を重ねる。
「大丈夫、優しくしてやるから。」
「……うん。あ、あの。」
「ん?」
「スカート、邪魔じゃない。」
「ぜひそのまま穿いててくれ。」
スカートをまくり、すっかり濡れそぼった秘所にモノをあてがう。軽く腰を突き出すと、まるで吸い込まれるかのように入っていく。
「んん……んっ…。」
目をぎゅっと瞑り、声を堪えるノーム。その中は当然温かくはないが、全体がヌルヌルとしていて、しかもきつい。
と、何か引っかかる感触があり、俺は一度動きを止めた。
「もしかして、これ…。」
「初めて……だから。」
どこまで作りこんでやがるんだ、この依代の製作者は。ちょっと尊敬するじゃねえか。
「いいのか、俺で?」
「うん。来て。」
少し心配はあったが、ノームもそれを望んでいる。何より、俺自身の納まりもつかない。ノームの腰を抱え、グッと腰を突き出す。
明らかに、今までと異なる、無理矢理に肉をこじ開ける感触が伝わった。その瞬間、ノームが叫んだ。
「いっ、痛い痛いっ。いやぁっ、痛いよっ。」
「お、おいノーム!?大丈夫……いてっ!」
突然暴れだしたノーム。腕をめちゃくちゃに振り回すもんだから、そのうち一発が俺の顎にクリーンヒットする。
それ以上攻撃を食らう前に、俺はノームの体を腕ごと抱き締め、その動きを封じる。ノームは泣き叫びながら逃れようともがいていたが、
やがて少しずつ落ち着いてきた。
「だ、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい。あんなに痛いなんて、思わなかったから。」
俺だってびっくりだ。この前なんか、戦闘で腕を吹っ飛ばされても平然としてたのに、まさかこんなに暴れるとは。
「痛いのが、すごくいっぱいきて、びっくりして…。」
「ま、まあ最初は痛いって言うしな。そういうとこまでリアルに再現されたんだろ。」
頭を撫でてやると、ノームは嬉しそうに目を細めた。
「もう、大丈夫か?」
「うん。もう、全然痛くない。」
さすがに血は出ていない。よかった、血なんか見たら、一気に萎えてしまいそうだ。
一応、慎重に腰を動かしてみる。ピクッとノームの体が動いたが、痛いわけではないみたいだ。もう少し強く動かす。
「んぅ…。」
可愛い声を上げるノーム。同時に、中がぎゅっと締め上げられる。やばい、気持ちいい。
自分でも意識しないうちに、だんだんと腰の動きが速くなる。突き上げるたびに、ノームは抑え気味に声を上げる。
俺の体温が移るおかげで、中もだんだんと熱くなる。その熱さとぬめった感触に、快感はどんどん高まっていく。
「んっ、んっ。んうぅ…。気持ち……いいよぉ…。」
俺にしがみつくノーム。その体を抱き締め、さらに強く突き上げる。
「んっ、あっ。そ、そんなに強くしたら、私……私、もうっ…。」
「うあっ…!」
ノームの中が、ぎゅうっと締め付けてくる。少しは余裕があったんだが、その締め付けで俺は一気に追い込まれた。
「やべ、今ので、もう無理…!ノーム、出る!」
「私も、ダメ…。う、ああぁぁっ。」
俺の体を思い切り抱き締め、体を震わせるノーム。同時に、その中に思い切り精を吐き出す。俺達はしばらく、その余韻に浸っていた。
やがて、一息ついたところで俺はノームの中から引き抜いた。チュプっといやらしい音がし、ノームのそこが名残惜しげにヒクッと震える。
一回出したことで、俺の方はだいぶ余裕ができた。改めて見てみると、秘所の方だけじゃなくてお尻の方まで作られている。
「お前、こっちもちゃんとあるんだなあ。」
「ひゃあっ。」
直後、部屋の中にスパーンといい音が響き渡った。
「痛ってぇ〜…!」
「い、いきなり変なところ触るからっ…。」
「ああ、いや、それは悪かったけど。」
しかし考えてみると、依代なんだから絶対に必要ない部分のはずだ。となると、ここも絶対そっちの目的か…。
「そ、その、そっちはまだダメだから。」
「はいはい、わかって……ん?『まだ』?」
「だって……私にだって、心の準備とか、あるんだから。」
つまり心の準備できたらオーケーと。
「……あなた、女心わかってない。」
「え?」
「ん。」
ノームが、俺に向かって両手を伸ばす。
「……抱っこ、してて欲しいのに。」
「あ〜、確かに野暮だったな。悪かったよ。」
その体を抱き締めると、ノームは嬉しそうな笑顔を浮かべた。さっきから態度の一定しない奴だが、それら全部ひっくるめて可愛いと
思えてしまうんだから、もうどうしようもない。ま、今は余計なことは考えないようにしよう。
今はただ、こいつとこうしていられる幸せを、噛み締めていたい。
ついついそのまま寝てしまい、俺は朝早くにノームの部屋を出た。ノームはまだ部屋にいて欲しそうだったが、さすがにこんなところ
見つかると何言われるかわかったもんじゃない。それはノームも承知してるようで、そんなに強くは引き止めてこなかった。
部屋を一歩出た瞬間、まず目に入ったのが、向かいの部屋から出てくるエルフだった。
「うわ!」
「………。」
「え、えーっと、その……お、おはよう。」
「………。」
気まずい。ものすごく気まずい。俺は必死で思考を巡らせ、何とか話題を見つけ出した。
「あ、そのー、昨日はありがとうな。あの、言葉の解釈のこと教えてくれて…。」
「別に、あなたのためではありませんわ。」
ものすごく冷たい声で言われ、俺は続きの言葉を遮られた。
「わたくしが気にかけていたのは、ノームの方。誰が、あなたのような殿方になど…!」
やばい。何だか殺気が……顔つきが…。
「まして……ディアボロスっ…!」
怖い。本気で怖い。手は刀にかかってるし、目は三白眼どころか、もはや四白眼になってる。
「ご……ごめんなさい……すみません、許してください…。」
「……でも、仲間……でしたわね。」
フッと、殺気が消えた。そして、エルフは光のない目で笑う。
「あの子と仲良くなれたのなら、これ以上わたくしの出る幕も、ありませんわね。では、ごめんあそばせ。」
エルフが見えなくなるまで見送って、俺は思い切りため息をついた。ほんと、殺されるかと思った。何なんだあいつは、ほんとに。
もう一度、友好の指輪をしっかりとはめ直し、部屋に向かう。誰にも会わないようにと祈っていたが、部屋の前に誰かがいる。
「おう。どこに行っていた?」
「いや、ちょっとな…。」
バハムーンだ。まあセレスティアとかヒューマンよりはマシか?
「……お前、ここ。」
「ん?」
バハムーンが首筋をトントンと叩く。首に手を当ててみるが、特に何も感じない。すると、バハムーンは懐から小さな鏡を取り出した。
鏡を覗き、指された場所を見る。そこは、赤く充血していた。いわゆるキスマークという奴だ。
「マフラー、上げておけ。」
「……ご丁寧に、どうも…。」
たぶん、しがみついてきた時にやられたんだろうな。全然気付かなかった。
「ノームか。」
「なっ!?な、な、何が!?」
「いや、ごまかす必要はない。むしろ、今ので確信に変わった。」
突発的な事態に弱い自分に、ここまで絶望したのは初めてだった。
「簡単なことだ。そんな跡をつける相手は、エルフはありえない。あとは私かノームだが、私でないことは自身が一番わかっている。
……ん?あ、まさか、ヒューマンかセレスティアではあるまいな?」
「未来永劫あるまいな。」
「そうか……なぁんだ…。」
「なんで残念そうなんだ?」
「いや、気のせいだ。」
「そうか。ま、そうだよ。ノームだよ、畜生。」
ふう、と息をつくと、バハムーンは妙に同情的な目で俺を見てきた。
「な、何だよ?」
「すまんな。お前には迷惑をかけている。」
「な……何が?」
「このパーティは、問題児ばかりだからな。」
こいつ、自覚あったのか。ならなぜ、もうちょっと違う編成にしないのだろうかと疑問に思った。
「お前の考えていることは、あらかたわかる。せっかくだ、パーティのことを少し話しておくのもいいか。」
バハムーンは壁に寄りかかり、腕を組んだ。それに習い、俺も壁に寄りかかる。
「ヒューマンは比較的マシな方だが、相当に性格の悪い男だ。それはわかるだろう。」
「ああ。」
「セレスティアは、それに輪をかけて性格の悪い男だ。当然、同種族の中でも嫌われ者で、それが余計に奴をひねくれさせた。」
「………。」
「ノームは、人形に異常な執着を見せる。そのためか、依代まで特別のものだ。そのせいで、同種族の中では浮いた存在になっていた。
それが原因か、少し奴の精神はおかしい。お前ならわかるだろう?」
「存分にな。」
「その中で、お前だけは違う。私が、必要に迫られて勧誘しただけだ。だから苦労をかけるとは思う。しかし、お前の負担でなければ、
ここにいて欲しい。」
バハムーンの言葉は、俺にとってかなり意外だった。何か意図があってこういうパーティを組んだとは、思いもよらなかった。
ただ、ある意味一番聞きたい奴のことが聞けていない。
「それは構わないが……その、エルフはどうして?」
「あいつか…。あいつは以前、与えられた称号に惑わされ、大切な物を失った。女として、人として。そしてその称号の意味すら、な。
それ以上は、詮索してやるな。」
なるほど。少なくとも男を嫌う理由は、何となくわかった。
「そうしよう。んで、最後にもう一個質問だけど、どうしてわざわざ、そんな奴等を集めたんだ?」
「異端というものはどこにでもいる。それはいつも排除されるだけのものだ。だが、それを受け入れる器があっても、面白いだろう?」
脳まで筋肉でできてる奴かと思ったら、案外色々考えてたんだな。すんげえ発見だ。
「ま、そんなわけだ。ところで、お前に渡すものがあってな。」
そう言い、バハムーンは俺に袋を渡してきた。
「なんだこれ?」
「詳しいことは、中に手紙を入れてある。それを読め。」
「ふーん。でも今見れば…。」
「部屋で見ろ。ここで開けるな。」
目が怖い。ここで開けたら、俺は殺されそうだ。
「わかった、わかったよ。じゃ、部屋でゆっくり見させてもらう。」
「ああ。それでは、またな。」
バハムーンと別れ、部屋に入る。一体何なんだろう?俺は必要に迫られて勧誘されたらしいが、それと何か関係あるんだろうか?
まさかとは思うけど、あいつから好かれてるなんて事は……ないだろうな。いや、あっても困る。ノームに殺される。
あるいは、何かプレゼントとかいうことも……ないだろうなあ。ま、とにかく開けてみよう。
袋の紐を解き、中に手を突っ込む。出てきたのは、ウサギのスリッパだった。
「……?」
まだ何かある。引っ張り出してみると、カードのようだ。よく見ると、ただのカードではない。バハムーンカードだ。
「………。」
まだある。てか、手紙ってこれか。雑に畳まれたそれを取り出し、読んでみる。
『よろしく頼む。なお、この事は他言無用だ。他言したとなれば、お前の皮を削ぎ、爪を剥がし―――』
以下、筆舌に尽くしがたい内容に筆が尽くされている。なるほど、俺が必要ってのはこの事か。
いっそ分解してやろうかと本気で思ったが、筆舌に尽くしがたいことになりそうだったので思い直した。まったく、実験室でやれば
いいのに。そんなに見られるのが嫌なんだろうか…。
にしても、何だかこの僅か数分でえらく疲れた。頼まれた錬金を済ませると、俺はベッドに横になり、いつの間にか眠り込んでしまった。
翌日。俺は学食で遅い朝飯を食っている。なぜか他の奴等も一緒だ。
「おや、ウサギのスリッパ、ですか。わざわざ、作ったのですか?」
「あ……そ、そうだ。優れた防具だからな、決して見た目で選んだわけではないぞ。」
近くでは、バハムーンとセレスティアが話している。見る限りでは、どうやら室内履きにしてたのをうっかり履いてきたようだ。
疑いの目を向けるセレスティア。すると、バハムーンはその胸倉を掴み、顔を付き合わせた。
「いいな?見た目で選んだわけではないぞ!」
「わ……わかりました、わかりましたよ。そういうことに、しておきま…」
「違うと言っている!」
今度は首を絞め始めるバハムーン。やばい、セレスティアの顔が青くなってきた。
「ぐ……が…!わかり……ました…!いい……防具……ですよね…!」
ようやく解放されると、セレスティアは激しく咳き込んだ。その後ろで、ヒューマンが笑いを堪えている。
「ゲホ!ゲホ!……ところで、バハムーンさん。それとセットの、うさみみはいつ頃、作る予定で?」
「貴様ぁ!」
バハムーンが掴みかかる直前、セレスティアは空中を飛んで学食の外へと逃げていった。それを見ていたヒューマンが、たまらずプッと
噴き出す。それを見逃さず、バハムーンはヒューマンの頭を掴んだ。
「貴様……今、笑ったな…?」
「い……いや、そんな……き、気のせいだ…!」
「いいや、嘘だ。……少し付き合ってもらおうか。」
「いやっ、ちょっ、待っ…!エ、エルフー!助けてくれー!」
ずるずると引きずられて行くヒューマン。そのヒューマンに無言で手を振るエルフ。
ほんと、このパーティは最高だ。見てて涙が出てくる。
まあともかく、今日は地下道探索もないし、休日みたいなものだ。久々にのんびりと羽を伸ばせる……と、思ったんだが。
カタカタという人形の音。俺の足に、お菊人形が取り付いている。
「おい、何してるんだよ。」
「ふふ。その子、いたずらっ子だから。」
「つまりお前がいたずらっ子なんだな。」
俺の隣にいるノーム。飯を食わないから、俺が飯の間中は暇らしく、こうやって飯を食う俺にちょっかいをかけてくる。
「ううん、この子がいたずらっ子。例え人形でも、性格に違いはあるの。」
「……やめろ、なんか怖い。」
あの時の姿が嘘のように、まったくいつも通りのノーム。俺が友好の指輪をはめてるからってのも、一因かもしれないが。
それにしても、こいつは俺が、こいつの人形遣いだなんて言ってたけど…。
絶対、嘘だよなあ。むしろ、俺がこいつの、いい操り人形だ。
「どうしたの。」
「ん、いや。別に。」
「ふふ、変な人。」
たぶん、こいつは全部計算尽くだったんだ。普段の、この不気味な姿。これのおかげで、あの時みたいに急に可愛い仕草をされると、
余計にそれが際立ってしまう。まして、友好の指輪を外した俺には、それがより強く映ってしまう。そして、俺に主導権を握らせる
ように見せかけ、その実すべてはこいつが操っていたと。そう考えると、妙に態度が一定しなかったことにも合点がいく。
まったく……本当に、こいつは根っからの人形遣いだ。
だが、それでも構わない。確かに、あれはこいつの計算の上で為された事かもしれない。でも、その計算の前提ってもんがある。
周囲をサッと見回し、誰も見てないことを確認する。その上で、俺は友好の指輪を外した。
「ノーム…。」
「あ……うん…。」
人形の動きが止まり、ノームはそっと目を閉じる。その唇に、軽く唇を重ねる。唇が離れると、ノームは物足りなそうな顔で俺を見た。
「続き、したいのか?」
「……うん。」
「飯、食ったらな。」
「待ってる。」
ま、仕方ない。俺はこいつが好きなんだから。
例え操り人形だって、人形が主人を好いてれば、それはそれで幸せなもんさ。
以上、投下終了。最後の方は削ってもよかったかなあと、ちょっと反省してたり。
それでは、この辺で……と続けてきた逃亡アイテムも、本格的に品切れだ。
次からはもう逃げられないな。では最後の一品を。
[> お菊人形 ピッ
もしかと思ってたが、
ココのエル子は初陣でポカやらかしたあの娘か
すっかり人格変わっちまって…
リアルタイムGJ!
ノム子怖いw誰だってビビるわw
しかしちゃんとキャラが作られててすげーです。
私にもその力があれば…
エル子…このパーティーで幸せを掴めるといいなぁ。あんな目にあって命を絶ってなくてよかった。
…あのエル子ですよね?多分。
>>245 おいおい…
なんだよこれ…
物凄いレベルの高さじゃないか…。ちょっとこれって有り得ないくらい話作りが上手くなってね?
いやマジで何があったんだ?ってレベルだよw
ノーム可愛いし、パーティー編成話とかも絶妙で、人形遣いの糸のくだりなんか凄く味があって気に入ったよ
いや本当に良いもの読まして貰った
お疲れ様!GJ!
レベルたけー!
250 :
615:2008/11/06(木) 11:06:14 ID:WQ4C1Hjp
◆BEO9EFkUEQ氏の後での投下は気が重い…w
でも書いちゃったから投下します。
エロは…勘弁してくださいor2難しいんですよこれが。
「さあ、次にいこう!」
そう言って相手の腕にバハ子が抱きつく。「ハハ…」
相手のヒュム男が押され気味に笑う。
今日はこの二人のデートの日。ランツレート学府より幾らか離れた繁華街に来ている。
「す…少し休憩しないか?」
「何を言う、まだまだこれからだぞ」
不満そうにバハ子が答える。
「うん、まだこれからだから、さ」
ヒュム男がすまなそうに答える。
「…仕方がないな、ならそこで休もうか」
二人は公園に向かい、ベンチに腰掛ける。「飲み物、買ってくるよ」
「うん、ありがとう」
ヒュム男は店へ入っていった。
「ヤレヤレ、侍のくせに情けない奴だな」
口ではこう言ってるがバハ子の表情は優しかった。
252 :
615:2008/11/06(木) 11:11:00 ID:WQ4C1Hjp
一方その頃…ランツレート学府寮。
「デートぉ!?」
「ええ、そう聴きましたわ」
「バハ子ずるーい!」
「いつの間に…」
それぞれ種族の違う女生徒たちの叫びが轟く。
彼女達はヒュム男、バハ子と同じパーティーであり、ヒュム男を愛してやまない者達でもある。
「デートかぁ…どんなことしてるんだろ」
クラ子が椅子にもたれて呟く。
「きっと周りが羨むようなことをしているのでしょうね…」
セレ子が頬に手を当て溜め息をつく。
「いいなーいいなー」
羽と足をパタパタさせるフェア子。
「……」
耳をペタンと倒して落ち込むフェル子。
しかし次には四人の視線が合い…
「「「「邪魔しちゃおう!」」」」
そして四人は寮を飛び出していた。
253 :
615:2008/11/06(木) 11:12:39 ID:WQ4C1Hjp
場所は戻って…。
公園で一人待つバハ子に、災難が訪れていた。
「なあ、今ヒマ?」
「よかったら、俺たちとお茶しねェ?」
「退屈させないからさぁ」
三人のバハムーンの男達にナンパされているのだ。
「要らない、必要ない」
目を合わせることもせずに軽くあしらうバハ子だが、三人はしつこくつきまとう。
「いいじゃんか、お茶ぐらいさぁ」
「そのワンピース可愛いねぇ」
「(胸でけぇ、後ろから掴みてぇ)」
三人は遠慮なくバハ子の全身を嘗めるように見る。
「(コイツら…素人でなければ叩き伏せたものを)」
そう。ランツレート生の戦士なので倒すのは簡単なのだが、素人相手では力に差がありすぎる。
254 :
615:2008/11/06(木) 11:14:43 ID:WQ4C1Hjp
プライドの高いバハムーンとしては、弱者に手を出すのは避けたい。
そんな困り果ててるときだった。
「バハ子!」
「ヒュム男!」
ヒュム男が駆けつけて来た。
ほっとしたのも束の間、三人のバハ男が間に入りヒュム男を取り囲む。
「あ?なんだよあんた」
「うーわ、ヒューマンじゃねぇか」
「マジかよ、気分悪いなぁ」
元々ヒューマンとバハムーンの相性はよくない。バハムーンにとってはフェアリーと並ぶ下等種族である。
この状況に危険を察知したヒュム男は武器を取ろうとするが、その手は空を掴む。
「(しまった、私服だった…)」
そんなヒュム男の姿を見て、三人が鼻で笑う。
255 :
615:2008/11/06(木) 11:16:27 ID:WQ4C1Hjp
「お?やる気かよ下等種族」
「無駄無駄、バハムーンに勝てるかよ」
「ボッコボコにしてやんよ」
にやつく三人にバハ子が食いつく。
「…ヒュム男に手を出してみろ、私が許さんぞ」
凄むバハ子に気圧されつつも、三人は言葉を止めない。
「え?まさか付き合ってんのお二人さん」
「まさか、相手はヒューマンだぜ?」
「そーそー、繁殖しか脳がないヒューマンだぜ?」
とヒュム男を卑下た目で見る三人。
ピクッ!
バハ子の額に青筋が浮かぶ。
「しかもひ弱で」
ピクッ!
「顔も特別良くもないし」
ピクッ!
「こんなナヨナヨした奴のどこがいいんだか」
ピクピクッ!
「貴様等…」
バハ子は限界をあっさり振り切った!
「ロストする覚悟はできたな!」
256 :
615:2008/11/06(木) 11:18:33 ID:WQ4C1Hjp
バハ子はさっきまで座っていたベンチを片手で軽々と振り上げる。
コレにはさすがにバハムーン三人組も驚いた。
「ゲ!おい、冗談だろ!」
「冗談ではないっ!」
ガツンッ!
「うひゃあ!」
振り降ろされたベンチを辛うじて避ける三人。
「まずい、バハ子を止めないと」
ヒュム男が後ろに回り込んでバハ子を押さえ込もうと抱きつく。
「やめるんだバハ子!」
「いやだ!ヒュム男をここまでバカにした奴はロストが妥当だ!」
ヒュム男を振り解いて半壊したベンチを両手で振り上げる。
バハムーン三人組はその場にへたり込んでしまっている。
「覚悟っ!」
「やめてくれバハ子!」
ヒュム男が再度バハ子を抱きつき押さえこむ。
257 :
615:2008/11/06(木) 11:20:14 ID:WQ4C1Hjp
「アクアガーン!」
どこからか声がしたと思えば、二人の目の前に大量の水が流れる。
「「「ぎゃあぁぁぁ…!」」」
そう、目の前にいた三人が流されていったのだ。
何が起きたか理解できない二人。バハ子の手にあったベンチが前にゴトリと落ちた。「あぶなかったね〜」
そう言って横の茂みから出てきたフェア子。そう、ヒュム男パーティーの一員である。
「いけない方達ですわね、全く」
「ヒュム男をバカにした罰だよーだ」
「…あれくらい当然だな」
更に他の三人(セレ子、クラ子、フェル子)もぞろぞろと出てきた。
「…みんな、いつの間に?」
問うバハ子に振り向く四人の動きが止まる。
258 :
615:2008/11/06(木) 11:22:07 ID:WQ4C1Hjp
「な、なんて破廉恥なことを!」
そう叫び頬を染めるセレ子。
「ちょ、何してるのよヒュム男!」
「うわ〜やわらかそ〜」
「…ひ、昼間からなんてことを」
四人の言葉が理解できないヒュム男。突然バハ子から「キャ」と声が聞こえる。
「ひ、ヒュム男。その、り、両手…」
そう言われて未だバハ子を抱き止めている両手を動かす。
ムニュムニュ。と、柔らかい感触が心地いい。
「うあっ、ん…」
「!」
バハ子のこの反応でさすがに理解したヒュム男がバハ子から手を離す。
あろうことかバハ子の両胸を掴んでいたのだ。
「わあ、ゴ、ゴメン!」
「………」
必死で謝るも、両腕で胸を隠し真っ赤な顔を逸らすバハ子は答えてくれない。
259 :
615:2008/11/06(木) 11:23:54 ID:WQ4C1Hjp
「ヒュム男〜?」
クラ子の目が怖い。
「破廉恥です!」
人差し指をたてて注意するセレ子。
「わたしのもさわる?」
フェア子が薄い胸を突きだしてくる。
「…ヒュム男は、胸が大きいのが好きなのか?」
顔を伏せるフェル子。
「………エッチ」
真っ赤な顔で呟くバハ子。
明らかに事故なのだがそれを言っても聞いてくれそうにない。
更に周りの人達の視線も痛い。
「誰か…助けてくれ…」
この四角い状況を丸く収められる人がいるならば、手に入れたばかりの鬼徹を報酬にしてもいいと思うヒュム男だった。
…それから数日、ヒュム男はしばらくニンニク臭かった。
「どうすればあんなにやつれるんだろうねぇ」
と、寮母は話したと言う…。
260 :
615:2008/11/06(木) 11:35:43 ID:WQ4C1Hjp
投下終了。
同じようなオチになってしまったor2
某パーティーの日常(?)を書いてみたくなって書きました。
女性陣の性格付けなども意識してみました。
クラ子……ツンデレ・幼なじみ
セレ子……まじめ・お姉さん
フェア子…お子ちゃま・ひらがな
バハ子……自信家・きょぬー
フェル子…無口・恥ずかしがり
コイツら気に入ってるのでまた書くかもしれません。
これからも私共々生温かい目で見守ってやってください。
それではまた、縁があれば。
二人の作家にGJを!!!
◆BEO9EFkUEQ氏
うめぇ、うますぎる、遠くおよばねーorz
ノム子のキャラとか人形遣いとか……
エル子はやはり前スレのあの子なのかな……
エル子に幸せが訪れますように。
615氏 GJです!!
わーい、あのパーティーだー!!
相変わらず愛されているなヒュム男。嘆くな、贅沢だぞ。
そしてまたスタミナ切れでロストが心配されるヒュム男ですな…
つ<絶論> 効果;一部の行動によるスタミナ減少無効
てかキャラの性格付けイイ!よりどりみどりですな。乙です
フェル子ーー!!!!好ーきーだーーー!!
>>245 相変わらずいい腕です
エル子が立ち直れる日を願ってます
>>260 乙です
ヒュム男はいつか本当にロストしそうだなw
OHP落ちてる?
?
265 :
221:2008/11/10(月) 01:30:17 ID:ArCq9cjb
またまた小ネタを投下。
つい先月、行き倒れてたセレスティアを拾った。
蘇生した当初はセレスティアらしく礼儀正しい上に、
穏やかだったので即興でパーティーに入れた。
もちろん、この頃は何事もなく良かったのだが、
パルタクスに帰ってからは地獄が始まった・・・
「こんばんは、ヒューマンさん」
「・・・また来たのかよ」
この女、まさか超が付くほどのド淫乱だったとは・・・
最初の夜、何気なく訪れたセレスティアを迎え入れ、
ベッドに座ろうとした瞬間、
いきなり押し倒され、身動きが取れなくなった。
何事かと思って彼女の顔を見ると息使いを荒くしながら顔を赤くさせ、
俺のズボンを一気下げて来やがった。
下げられた反動で俺の大事な息子が剥き身状態になると、
彼女は俺の息子全身を全力でしゃぶり、吸いつき始めた。
当時、童貞だった俺はこの攻めには耐えきれず、10秒で果ててしまったが、
彼女は俺の放った精液を一滴残らず飲み干してしまった。
一度果てた俺の息子は萎むかと思いきや、
彼女のテクのせいで再び元気になり、勃起した所で一気に彼女の秘所の中に入ってしまった。
266 :
221:2008/11/10(月) 02:02:45 ID:ArCq9cjb
その後の記憶は曖昧で、彼女が眠りに就くまで腰を振り続けられ、
強制的に何度も精を放させられていた。
だが、この序の口の方であって、
次にやられたのは地下道の密室で野外プレイをさせられ、
アナルを含めて30発を出されてしまった。
その後はナーガやサキュバスといった女性モンスターの前で公然セックスしたり、
誰も居ない時間帯にて実験室や校長室の机の上での69プレイをするなどと、
もういつ退学されてもおかしくない状況であった・・・
「・・・今度は何をするんだ?」
「そうねぇ・・・就寝時間の女子部屋の前でフェラとセックスなんかはどうかな?」
「・・・勘弁してくれ」
ちなみに、女子からの間では変態男女として有名人扱いにされ、
世ほどの事がない限り、近寄ろうとはしなかった。
今後、この悩みは消えそうにはないが・・・
「ねぇ、ヒューマンさん」
「・・・なんだよ」
「私、あなたに関してはとても感謝していますわ」
今のこの状況には、満更でもないとほんの少しだけ感じることがある。
以上。
ただ淫乱なセレ子が書きたかった。反省はしている。
それほんとに行き倒れのセレスティアかー?wwww
精気切れのサキュバスとかじゃないのかー?wwww
なんか、何で行き倒れてたか分かる気がするwww
ヤりすぎたのか、はたまたモンスター相手に
Hardなプレイして力尽きたのか……
触手の三穴責めか。
前回の話の反響が思いの外大きくてびっくり。でも一日後にミス見つけてもっとびっくり。
ディア男、そのまま寝たっつってんのに、起きたらノム子の部屋から出てる…。
ディア男寝る→ノム子、瞬間移動で部屋に戻って寝る→ディア男起きたら人形だらけでギャー と各自脳内補正お願いしますorz
しかしまあ、エルフを気にかけてくれる人の多いこと、この善人共が。というわけで、今回のお相手はそのエルフ。
注意としては、百合物。あと長いです。
では、いつも通り楽しんでいただければ幸いです。
暗い寮の一室。既に消灯時間は過ぎ、辺りは静寂に包まれている。外には虫の声もなく、微かな寝息だけが室内に人がいることを示す。
昼間は地下道の探索に費やし、幾度もの戦闘を潜り抜けた生徒達は、夜になるとその疲れのため、それこそ死んだように眠り込んでしまう。
寝息が、微かに崩れた。それまで規則正しく聞こえていた寝息が、不規則に変わる。
やがて、不規則に変わった寝息に、苦しげな呻き声が混じり始める。
バハムーンが、むくりと体を起こした。そして、隣で眠るエルフを見つめる。
苦しげに呻き、全身にびっしりと汗を浮かべ、もがき始めるエルフ。バハムーンはその姿をやりきれない表情で見つめると、
そっとエルフの手に触れた。
その瞬間、エルフは悲鳴を上げて飛び起きた。
「嫌だぁ!!やだやだやだぁ!!!助けてぇ!!!誰かぁ!!!お願いやめてええぇぇ!!!」
「エルフ、落ち着け。大丈夫、大丈夫だ。」
すぐさまその体を抱き締め、静かな声で宥めるバハムーン。しかし、エルフは抱き締められた途端に、ますます激しく暴れだす。
「やだ!!もうやだぁ!!死なせて!!!お願い死なせてええぇぇ!!!」
「大丈夫……大丈夫だ。落ち着け……大丈夫だから。」
金色の髪を優しく撫でながら、何度もそう呼びかける。やがて、狂ったように叫んでいたエルフの声が、少しずつ小さくなっていく。
「そうだ、それは過去のことだ。今ここには、お前を傷つける者はいない。」
「はぁ……はぁ…!うぅ……あんなの、もういやぁ…!」
「大丈夫だ。もう、そんな事は二度とさせはしない。安心しろ。」
優しく声をかけ、抱き締めた体を少し離す。目の前に、涙に濡れたエルフの顔がある。
「お願い……わたくしを、見捨てないで…!」
「安心しろ。絶対にそんなことはしない。」
「う……うぅ……うわあ〜ん!」
バハムーンの胸にしがみつき、泣きじゃくるエルフ。その頭を優しく抱き締め、バハムーンは深いため息をついた。
翌朝、エルフは何事もなかったかのように、いつも通りの姿を見せていた。
「おう、エルフ。おはよう。」
「……ええ。」
「相変わらず、無口な方ですね。そんなに、男性が嫌い、ですか。」
「……ええ。」
「これは、手厳しい。ならば、パーティから抜けては、どうです?その上で、女性だけの…」
「セレスティア、いい加減にしろ。それ以上続けるなら、お前をパーティから追放するぞ。」
そう言われると、セレスティアは肩をすくめ、軽く舌打ちをした。
「バハムーンさんは、ずいぶんとこのエルフに、ご執心ですね。」
「私の集めた仲間だ。全員、大切な者に変わりはない。」
「その、『全員』に、わたくしは入って、いるのでしょうかね?」
「今のところはな。」
その一言に、セレスティアは苦笑いを浮かべて退散した。そのやりとりを、ヒューマンがニヤニヤしながら見つめている。
「何がおかしい。」
「いやぁ、何も。ただ、全員大切っつう割には、少し贔屓があるんじゃねえかなってな。」
「そうだな。お前と比べては、他の誰であろうと贔屓をしたくなる。」
「いい性格してるよ、あんた。だったら、どうして俺を追放しない?」
「ヒューマンは気に入らない。が、仲間が大切であることに変わりはない。」
「ありがてえお言葉で。すっげえ励みになるよ、まったくよぉ。」
バハムーンが話している間中、エルフは黙っていた。しかし、その手は刀に掛けられ、それどころか鯉口を切ってあった。その殺気は
凄まじく、セレスティアとヒューマンが話を早めに切り上げたのは、それによるものが大きい。
ヒューマンも立ち去ると、バハムーンはエルフの肩に手を置いた。
「エルフ、さっきも言ったが、全員が大切な仲間だ。傷つけようとするのは、やめろ。」
「……ええ。」
パチンと刀を納め、静かに息を吐くエルフ。そこに、ディアボロスとノームがやってきた。
「おう、バハムーンとエルフか。おはよう。」
「仲の良いことだな。いっそ相部屋にすればどうなんだ?」
「ふふふ、それはダメ。彼と私は、世界が違う。同じ世界には、いられない。」
「………。」
エルフの手に、グッと力が入る。その目はディアボロスを睨みつけ、今にも斬りかかりそうな殺気を放っている。
「ふふ…。すごい、殺気。」
「あの……マジで、俺何かしたのか…?ほんと……何か不満があるなら、言ってくれ…。」
ディアボロスはすっかり腰が引けている。が、ノームはいつも通りに怪しい笑みを浮かべる。
「ふふふ。殺したいなら、殺せばいい。」
「おいっ!?」
「だけど、彼を殺したら、あなたの悪夢が蘇る。それでもいいなら、さあどうぞ。」
ノームの言葉を聞いた瞬間、エルフの顔が恐怖に歪んだ。
チン、と鍔鳴りがした。だが完全に抜刀される前に、バハムーンがその腕を押さえ込んだ。
「ノーム、いたずらが過ぎるぞ。」
怒りを込めた目でノームを睨むバハムーン。しかし、ノームはスッと目を細め、その顔を睨み返す。
「彼は私の恋人で、人形遣いで、仲間なの。彼を傷つけようとする、その子は私、許せない。」
「……ごめんなさい…。つい…。」
エルフが、ぼそっと呟いた。すると、ノームは表情を一変させ、慈愛に満ちた目でエルフを見つめる。
「あなたの気持ちは、よくわかる。だけど、悪夢に縛られないで。例え種族はディアボロスでも、彼はあなたの悪魔じゃない。」
「わかってますわ…。だけど、どうしても……どうしてもっ…!」
「ま、まあいいって。とりあえず、俺だってお前に危害加えようとは思ってないし、だからお前も、俺には危害加えないでくれれば…。」
バハムーンが、そっとエルフの手を放す。エルフは何も言わず、刀を鞘に収めた。
「まあ、その……ゆっくりでいいから、俺にも慣れてくれ。な?」
「……ええ。」
「ふふふふ。これで、仲直り。相手がいないと、喧嘩はできない。喧嘩をできるということは、仲間がいるのと、同じこと。」
「……花の傍らに草があれば、その根は水を奪い合いますわね…。」
「そう。例え隣のその草が、花を虫から守るとしても。」
二人の会話を、ディアボロスとバハムーンは首を傾げながら聞いていた。抽象的すぎて、具体的に何を言っているのか理解できていない。
だが、エルフは同じような言い回しをしてくれたノームに対して、珍しく親愛に満ちた笑顔を送った。ノームも、それに笑顔で答える。
「食事、済んだの。」
「これから……ですわ。」
「それなら、一緒に行きましょう。私達も、これからご飯。」
「ノーム、お前は何も食べないだろう?」
バハムーンが言うと、ノームは何やら怪しげな笑顔でディアボロスを見上げた。
「私は何も食べないけれど、食べてるところを見るの、好き。」
「それはいいけど、お前ちょっかいかけるのやめろよなー。」
「むう。面白いのに。」
「飯ぐらいゆっくり食わせろっ!」
性格の悪い面子が多く、日常ではほぼ毎日喧嘩しているように見えても、パーティとしての実力は一流である。一度地下道に入れば、
普段の様子など微塵もなく、非常に息の合った戦いを見せる。
ただ、その中でエルフだけは少し勝手が違う。確かに強いのだが、仲間と息を合わせようという努力がまったく見られない。前衛なので
敵を倒すのが仕事ではあるが、その行動理念は純然たる殺意である。パーティとしての動きなど、望むべくもない。
この時も、エルフは目の前にいる闇より生まれし獣王に斬りかかった。その後ろに、より危険な闇のしらべがいるにも関わらず、である。
辛うじて勝利したものの、一歩間違えれば全滅の危険があったため、ヒューマンがエルフに詰め寄った。
「おいお前、いい加減にしろよ。あんな奴より、闇のしらべの方がずっと危ねえってわかってんだろ?おかげで、余計な手間が
増えたじゃねえか。」
「……そう。」
「真面目に聞けよ、てめえ。」
ヒューマンがエルフの胸倉を掴む。その瞬間、エルフの顔に恐怖の色が浮かんだ。
反射的に、エルフはヒューマンの体を蹴り飛ばし、刀を構えた。それに対し、ヒューマンもスターダストを振り上げる。
だが、二人ともその武器を振るうことはなかった。
振ろうとはしていた。だが、ヒューマンの喉元にはエクスカリバーが、エルフの胸元にはアダーガが突きつけられていた。
「二人とも、そこまでだ。それ以上やるつもりなら、まず私が相手になるぞ。」
「……ちっ!俺が間違ったこと言ってるかよってんだ!」
「お前が正しいことは認める。だが、私に免じて、許してやってくれ。」
「けっ!だったらちゃんと躾しとけよ!そいつの尻拭いすんの誰だと思ってやがる!」
「エルフ、お前もやめろ。モンスターを前にすると激昂するのは、お前の悪い癖だ。」
「………。」
エルフは何も答えず、刀を納めた。その態度が余計にヒューマンの神経を逆撫でするが、首に突きつけられたエクスカリバーがそれ以上の
行動を許さない。忌々しげに唾を吐き、ヒューマンも武器を納めた。
「バハムーン、とりあえず中央までは来られたんだ。一旦引き上げねえか?」
ディアボロスが言うと、セレスティアが皮肉じみた笑いを浮かべる。
「臆病風に、吹かれましたか?」
「違うわっ!ただ、二人があんなんじゃ、これ以上はきついだろってことだよ!」
「なるほど。良い、言い訳の材料が、ありましたね。」
「あーもう、ほんとにもう。何とでも言え。で、どうだバハムーン?」
バハムーンとしては、もう少し探索を続けたいところだったが、確かにこれ以上は危険な臭いがした。それに後衛の魔力も、些か心許ない。
「そうだな。しかし、あと一度戦ってからだ。」
「大丈夫かぁ?」
「次で魔力を使い切るぐらいの心構えで挑めば、そう苦戦もするまい。」
「ふふ。舞台で踊る人形は、人形遣いに逆らえない。最後の一幕、頑張ろう。」
「リーダーには、逆らえないと、言うことですか。仕方、ありませんね。」
皆、口では色々言いつつも、その決定に逆らおうという者はいない。バハムーンはエルフの側に近寄り、そっと肩に触れた。
「エルフ、次は倒す順番を考えろよ。それも、前衛の務めだ。」
「……わかりましたわ。」
「いい返事だ。期待している。」
最後ということで、一行は進めるだけ進もうとどんどん奥へと歩いていく。そして次のゲートが見えたところで、モンスターが飛び出した。
フラワーソウルが、一匹だけだった。
「………。」
「……順番なんて、ありませんわね。」
「ふ…。」
学園に戻ると、一行はそれぞれ学食に向かう者、購買に向かう者、寮に戻る者に分かれた。バハムーンは学食に向かい、種族の割には
少なめの食事を取る。その隣には、セレスティアとヒューマンが一緒にいる。
その二人は仲良く色々と話しているが、バハムーンはその会話に混ざらない。二人の方も、特にそれを気に留める様子はない。
が、内容がだんだんと仲間の話に移っていき、エルフの話が出ると、セレスティアがバハムーンに話しかけた。
「ところで、あのエルフは、過去に何が、あったんです?あれでは、いつか仲間を、切り殺しかねませんが。」
「……あえて知る必要はない。」
「これは、つれない。まあ、それもいいでしょう。お互いを、深く知らない仲間というのも、面白いですから……ね。」
その皮肉にも、バハムーンは答えない。当てが外れたセレスティアは、少し不満そうにため息をついた。
「けどよ、俺なんか今日、刀抜かれたんだ。何があったかぐらい、聞いたっていいだろ?」
「非常に辛い出来事があった。これで十分だろう。」
「ちっ、まあいいさ。今度ノームにでも聞くか。」
「あいつにも、話してはいない。何があったか、大体予想はついているようだがな。」
「それにしても、これだけ長くいる仲間にも、心を開かないほどの傷とは。」
ふと、セレスティアはいつもの皮肉に満ちた笑顔と違い、いかにもセレスティアらしい慈愛に満ちた顔になった。
「よほど、深く大きい傷と、見えますね。」
「……ああ。」
「体の傷なら、傷跡は残ろうとも、やがては癒えます。しかし、心の傷は、そうもいきません。」
「………。」
「ですが、時に体の傷より、心の傷の方が早く、治ることもあります。それを、為しえるだけの、方がいれば、ですがね。」
バハムーンは食事の手を止め、セレスティアの言葉にじっと耳を傾けている。
「どうしても癒えない傷なら、無理矢理にでも、それを塞がねば、なりません。ですが、傷に触れるのを恐れるあまり、誰もそれを、
為そうとしない。ねえ、バハムーンさん?」
再び、その顔が普段の皮肉に満ちた笑顔に戻る。だが、その内容はバハムーンの心に重くのしかかった。
「ま、何があったのか知らねえけど、いつまでもあんな調子じゃ、この先やってく自信なんかなくすぜ。」
フライドチキンの骨をしゃぶりながら、ヒューマンがつまらなそうな声を出す。
「けどよ、例えば俺、このフライドチキンって苦手だったんだよな。」
「いきなり何を言い出す?」
「そりゃ最初にセレスティアに言え。んで、昔これの骨齧ってて、喉に刺したからなんだけどよ。けどな〜。」
言いながら、バリバリと骨を噛み砕くヒューマン。ずいぶん強靭な顎だと、バハムーンは心の中で呆れた。
「お前に拾われる前、一人で地下道行ったら迷子になってよ〜。二日ぐらい彷徨ってさ、もう死ぬほど腹減って腹減って。」
しゃぶっている骨がどんどん短くなり、少しずつヒューマンの口の中へと消えていく。
「したら、誰かが捨てたのか、これが転がっててさ。もうあん時は何も考えないで食ったね。ほんと、あん時ほどうまいフライドチキンは、
この先食うことねえんじゃねえかってぐらい。」
ついに、ヒューマンは全ての骨を噛み砕き、飲み込んでしまった。
「それ以来さ、フライドチキンが大好物になってな〜。」
「……結局、何が言いたい?」
「だからさあ、何か嫌なことがあったって、その〜、なんつうんだ?ほら、記憶ってのはさ、上書きできるんだよ。塗り潰せるんだよ。
だから、あいつのも、何とかそうできねえかなってさ。」
「塗り潰す……か。」
「いや、別に無理にとは言わねえけどよ。まあ、あんたみてえな高等種族様には、余計なお喋りだったかもしれねえがな。」
最後に必ず皮肉を言われるが、バハムーンは心の中で二人に感謝した。
言われてみれば、バハムーンはエルフの心に深く立ち入ろうとはしなかった。そっとしておく、という言葉を建前に、いつも遠くから
見ているだけだった。エルフが自分をどれだけ信頼し、また頼りきっているか知りつつも、自分は彼女と距離を置いて接していたのだ。
それに気付いた瞬間、バハムーンは全身が萎むような、深いため息をついた。
「お……おい、どうした?なんか、暗いぞ?」
「高等種族様にだって、後悔する時ぐらいは、あるということ、ですよ。手遅れで、なければいいのですが、ね。」
セレスティアの悪意に満ちた皮肉にも、この時ばかりは怒る気がしなかった。密かに逃げる準備をしていたセレスティアは、
少しつまらなそうに息をついた。
「わたくしは、あなたのことを、信頼していますよ。仲間の期待を、裏切るようなリーダーではないと、信じています。」
どこか含みのある口調で言うと、セレスティアは食器を片付けに行ってしまった。その後に続き、ヒューマンも席を立つ。
「ま、何とかできなくたって、あんたのせいじゃねえさ。なあ、リーダー?」
言い訳を用意してやった、と言わんばかりのヒューマン。しかし、今のバハムーンには、それに対して怒る気力もない。
二人の後ろ姿を見送りながら、バハムーンはまた溜め息をついた。いつしか、外では雨が降り始めていた。
雨の中、寮へと戻るバハムーン。部屋に戻ると、エルフはもうベッドで寝息を立てていた。何か話でもしようと思っていたのだが、
寝ているのでは仕方がない。荷物を降ろし、部屋着に着替える。最後にウサギのスリッパを履くと、ようやく一日が終わった気になる。
着替えもせず、制服のまま眠るエルフ。その傍らに座ると、静かに寝息を立てる寝顔を見つめる。
きれいな寝顔だった。種族柄、エルフは美しい容姿であるが、その中でも飛びぬけてきれいに見える。その手も、自分のような無骨な
腕ではなく、まるで作り物のように美しい。肌も白く張りがあり、艶かしさなどではなく、一種神々しさすら感じさせるほどだ。
深い意味はなかった。ただ、その体を見ているうちに、何となくそれに触れたくなっただけだった。
手と手が、僅かに触れた瞬間。エルフは凄まじい速さで飛び起き、同時に白い閃光が走った。
「ぐあっ!」
「あ…!」
バハムーンの首筋に、赤い線が現れる。一瞬早く身を引いたおかげで助かったが、そうでなければ首が落ちていただろう。
「あ……あ、あぁ…!」
エルフの顔に、驚きと恐怖の入り混じった表情が浮かぶ。刀を取り落とし、頭を抱えてよろよろと下がった。
「エルフ…。」
「あああぁぁっ!!!」
バハムーンが声をかけた瞬間、エルフは叫び声を上げて部屋から飛び出した。バハムーンは一瞬呆気に取られたが、すぐに気を取り直す。
とりあえず、首に包帯を巻くと、バハムーンも部屋の外に出る。廊下には、既にエルフの姿はない。
「仕方ないな…。」
静かな声で呟くと、バハムーンは静かに歩き出した。
寮の各階を探し、屋上に顔を出し、購買や保健室なども回る。いくつかの校舎も回り、まさかとは思いつつ地下道入り口にも顔を出す。
が、あのエルフが一人で地下道に行くことはありえない。
雨が、より強くなってきた。既にバハムーンは全身ずぶ濡れになっているが、それでもエルフを探し続ける。日も既に傾き、やがて辺りを
闇が包む。月明かりもないこの日は、いつもよりも闇が濃い。
たっぷり一時間も歩き回っただろうか。人気のない校舎裏に、誰かがうずくまっているのが見えた。
足音が目の前まで迫っても、エルフは顔を上げなかった。その頭上に、バハムーンはそっと翼をかざしてやる。
「……風邪を、ひくぞ。」
エルフが、真っ赤な目を上げる。ずっとここで泣いていたのだろう。
「戻りたくないというなら、構わないがな。」
濡れるのも構わず、バハムーンはエルフの隣に座った。変わらず、翼ではエルフを雨から守っている。
お互い、しばらく何も喋らなかった。
やがて、エルフが恐る恐る口を開いた。
「……わたくしは……どうすれば良いのでしょう…。」
「ん?」
「あんなこと……あんなこと、するつもりではありませんでしたわ…。でも……でも、ああ……ごめんなさい…!」
バハムーンはそれには答えず、エルフの肩を抱き寄せた。
「……あの…!?」
「……私はお前達と違って口下手でな。これが答えだ。」
強張っていたエルフの体から、少しずつ力が抜けていく。やがて、エルフはバハムーンに強くしがみついた。
「さあ、戻ろう。いつまでもこんな所にいては、本当に風邪をひいてしまう。」
「……はい…。」
部屋に戻ったバハムーンは、ずぶ濡れになったお気に入りの部屋着を脱ぎ始めた。エルフの方は既にだいぶ体が冷えており、
放っておいては風邪をひくどころではすまない可能性がある。
「ほら、お前も脱げ。」
「いえ……その…。」
「恥ずかしがることはないだろう。私もお前も女だ。」
「……こんなに、汚れた体を……穢れなき方に、晒せませんわ…。」
「ふむ。」
バハムーンは軽くため息をつくと、エルフの服に手を掛けた。
「な、何をなさるんですの!?」
「お前がそう思うのなら、お前の体は汚れているのかもしれないな。だが、私から見れば、きれいな体だ。羨ましいぐらいだぞ。」
「い……いえ、わたくしが言っているのはそういう…!や、やめてください!」
「なに。そんなに汚れていると思うなら、私が洗ってやるさ。裸の付き合いも悪くはないだろう?」
エルフの抵抗にも構わず、どんどん服を脱がせるバハムーン。自身も既に上は全て脱いでおり、大きな胸を惜しげもなく晒している。
「いえっ、そんなっ、あのっ!」
「まあいいだろう?たまには、腹を割った話もしてみたいものだ。……よし、これで全部だな。」
下着までも剥ぎ取ると、バハムーンはそれらを丁寧にハンガーで吊るす。最後に自分も下を脱ごうとしたが、ふとその手が止まった。
「……どうしたんですの?」
「あ、いや……すまん、先に行っててくれ。」
なぜか恥ずかしそうなバハムーン。その姿に、エルフは興味半分怒り半分の声を出す。
「わたくしの言葉は聞いてくださらなかったのに、いざ自分の番となれば恥らうんですの?」
「いや……その、な…。ちょっと事情が…。」
「それとも、わたくしのような小娘の声は、小さすぎてあなたには届きませんでしたの?」
「いや、だから…。」
「お返しですわっ!」
「あっ!?」
エルフは素早く後ろに回り、バハムーンのズボンを引き下げた。と、目の前にウサギの柄のパンツが現れる。
「………。」
「う……そ、その……これは、あの…。」
「……ふふふ。」
「わ、笑うなっ!いいか、誰にも言うなよ!?絶対にっ!!」
「ええ、わかってますわ。それにしても……ふふ、祖先の影響とするなら、さしずめ、わたくしがキノコの柄の下着を穿いているような
ものでして?」
「いや、違……う、うるさいっ!だまっ、黙れっ!くそ、さっさと行くぞ!」
顔を真っ赤にしつつ、その子供じみたパンツを脱ぎ捨てると、バハムーンはエルフの肩に腕を回し、浴室に連行した。
狭い浴槽に無理矢理二人で入り、熱いシャワーを浴びる。冷えた体が徐々に温まっていき、エルフの体にも薄っすらと赤みが差している。
「さすがに、二人だと狭いな。」
「当たり前ですわ。そもそも、あなたでは一人ですら、ここは手狭ではありませんこと?」
「違いない。」
向かい合って座る二人。しかし、バハムーン一人でも足を伸ばせない広さなので、エルフは都合上バハムーンの太腿に座っている。
「それにしても、お前は軽いな。そうでなければ、あのような動きはできない、か。」
「それは……日々の修練の賜物ですわ。身が軽いからと言って、誰でもわたくしのような動きをできるわけでは、ありませんわ。」
「ははは、そうか。それはすまなかった。」
今日は、エルフはいつにも増してよく喋る。二人でいると少しは口数が増えてはいたが、これほどよく喋るのは珍しい。
「日々の修練と……お前自身の、才能か。」
あえて、バハムーンはそう口にした。途端に、エルフの顔に暗い影が差す。
「……それは…。」
やはり、と、バハムーンは思った。その才能に溺れた結果、彼女は深い傷を負った。それをどこまで癒してやれるのか、自分には
わからない。しかし、やれるだけのことはやってみようと、覚悟を決める。
セレスティアとヒューマンの言葉が、脳裏に浮かぶ。もしかしたら、自分は間違いを犯してしまうかもしれない。しかし、今の彼女に
考えられる方法は、それ以外にない。ならば、それを信じるしかないだろう。
「否定することはない。お前は私達の中でも、飛びぬけた資質を持っている。そもそもが、お前は特待生…。」
「やめて!それ以上言わないで!」
怯えた表情で耳を塞ぎ、激しく首を振るエルフ。バハムーンはその手を掴み、無理矢理自分の方へ引き寄せた。
「否定しても無駄だ。お前は特待生としてこの学校に来た。その事実が変わることはない。」
「いやだ!やめて!もうそれ以上思い出させないでぇ!」
ついに涙を流し始めるエルフ。その体を、バハムーンは強く抱き締めた。突然のことに、エルフも思わず泣き止んでしまう。
「……お前にとって、それが辛い記憶を呼び起こすものだというのは、よく知っている。」
バハムーンの胸に顔を挟まれ、エルフは非常に居心地の悪い気分になりながらも、じっと耳を傾ける。
「その記憶から逃げるなということは、お前にとっては酷なことかも知れないな。だが、逃げていたのはお前だけではない。」
「……?」
「毎晩悪夢にうなされ、男と話すこともできないお前に、私は何もしてやれなかった。いや、何もしなかった。」
「でも……でも、それはあなたの優しさ…。」
「私自身、そう思っていた。だが、苦しむ仲間をただ見ているだけというのは、本当に優しさか?お前が悪夢に飛び起きるたび、
私はお前を抱き締め、言葉を投げかけた。だが、それ以上踏み込むことはせず、お前をただ一人、辛い記憶と戦わせていた。」
バハムーンは静かに息をつくと、タオルでエルフの肩を擦り始めた。
「……お前は、この体が汚れていると言ったな。確かに、貞操を純潔とみるなら、その通りだろう。だがな、私から見れば、きれいな
ものだ。羨ましいぐらいだ。」
「……あの……だから、それは…。」
「だがな、他人に汚されたものであれば、芯までは汚れない。お前はきっと、その体についた汚れは落ちないと思っているのだろうが、
周りから見れば、既にきれいに落ちていたりするものだ。」
「……ならば……落ちない汚れとは、どんなものを言うんですの…?」
そう尋ねると、バハムーンの手がふと止まった。
「……血だ。」
「え?」
「それも、仲間のな。」
再び、バハムーンはエルフの体を洗い始める。
「それは……一体、どういう…?」
本当は、それを聞くことは憚られた。だが、本当に仲間を大切にする彼女がそんなことを言うなんて、信じられなかった。
「……お前を見つけた、あの時。この手で、何人斬ったか。」
「………。」
「その中に、当時私がいたパーティの、仲間も……な。」
淡々とした口調で言うバハムーン。だが、その短い言葉が持つ重みを、エルフはひしひしと感じていた。例えどんな言葉を尽くしたと
しても、その短い言葉を超えるだけの重みは言い表せないだろう。
だが、当のバハムーンは笑った。いつも通りの、快活な笑顔で。
「そんなに暗い顔をするな。私はその事について、後悔はしていない。例えその場での判断にしろ、決して一時の激情に駆られての、
軽はずみな愚行ではないからな。」
背中全体を洗い終えると、バハムーンはちらっとタオルを見た。
「ふむ。あれだけ暴れた割には、意外と汚れていないのだな。」
「……普段から、しっかり洗ってるから……ですわ。」
「それもそうか。お前は一時間でも二時間でも洗っているからな。」
言いながら、今度は自分の腕をグッと擦る。タオルは一発で黒く染まった。
「……うわ…。」
「私達のような種族はな、特殊代謝のおかげで傷の治りなどは早い。見ての通り、さっきの傷ももう治ってきている。が、同時に老廃物も
多く出るんだ。一度しっかり洗えば、しばらくはこんなにならないんだが…。」
「祖先が竜だけに、脱皮でもするんですの?」
「いやそれは……ああ、ある意味では近いかもな。とにかく、今日はきっちり洗うつもりだ。一緒にいると、お前の体が汚れてしまう。
先に出ていてくれないか。」
現にどれだけのものか見ていると、さすがに一緒にいたいとは思えない。エルフは大人しく風呂から上がると、窓際で髪を乾かし始めた。
浴室では、バハムーンが全身を擦る音と、楽しげな鼻歌が聞こえている。ただ、その鼻歌は多少調子が外れている。
その鼻歌を正しい音程で口ずさみつつ、エルフはバハムーンの言葉を頭の中で繰り返していた。
こんなに汚れきった体を、彼女はきれいだという。汚されたものであれば、その芯は汚れていないと言う。
だが、やはりそうは思えない。どんなに忘れようとしても、あの時の記憶は鮮明にまとわりつき、あの出来事がまるで昨日の事の様に
感じてしまう。
外の雨はいよいよ強くなり、遠くでは雷鳴も聞こえ始めている。
ふと鼻歌が止まった。代わりに浴室のドアが開く音が鳴り、全身から湯気を立ち上らせたバハムーンが姿を見せる。バスタオルを肩に掛け、
うまい具合に胸を隠し、下の方は尻尾を内股から前に回している。
「ずいぶんひどい雨になってきたな。」
「……ええ。」
「こうも空気が湿っていては、髪も乾きにくい。ほら、新しいタオルだ。」
「……ありがとう。
二人はしばらく、特に喋ることもなく髪を拭いていた。やがて、あらかた乾いたところでエルフはカチューシャを着けた。バハムーンも
大体は乾いたらしく、再び髪を後ろで束ね始める。
その手が、不意に止まった。それに気付いたエルフは、怪訝そうな顔でバハムーンを見つめる。
「……どうしましたの?」
「いや…。」
だが、バハムーンの顔には、迷いがありありと見て取れる。それが一体何なのか、エルフが尋ねようとした時。
「あっ…!?」
突然、バハムーンはエルフの体を抱き寄せた。吐息が感じられるほどに顔が近づき、その目が真っ直ぐにエルフの目を見据える。
強引に抱き寄せられる、その感覚。それは、かつて受けた陵辱の記憶を思い起こさせる。記憶が恐怖を呼び起こし、エルフはバハムーンの
腕から逃れようともがいた。だが、バハムーンはその体をしっかりと抱き締め、放さない。
「エルフ、すまない。」
「な、何ですの!?何をなさるんですの!?」
「正直、迷った。これが正しい方法なのか、私にはわからない。だが、私にはこれしか思いつかなかった。」
「何をするつもりですの!?嫌!やめて!」
「私を憎んでも構わない。それで少しでも、お前が楽になるのなら。」
バハムーンの手が、すうっとエルフの背筋を撫でる。その感触とかつての記憶に、エルフはぞくりと身を震わせる。
「あぁ……ぁ…!」
「ただ、一つだけわかってくれ。私は、お前を傷つけたくてこうしているのではない。頼む、今だけ私を受け入れてくれ。」
そうは言われても、その身に染み付いた恐怖はそう簡単に拭えるものではない。バハムーンの手が背中を撫で、腰の辺りまで来た時、
恐怖は頂点に達した。
「いやぁ!やめてぇ!」
エルフは思い切りバハムーンの体を突き飛ばした。バハムーンは素早く手を放し、エルフの顔を見つめた。一方のエルフは、
涙に濡れた目でバハムーンを見つめる。
「ど、どうして……どうして、こんなこと…!?」
「体に触れることですら、あいつらが思い浮かぶのだろう?なら、せめて思い浮かぶ相手を、変えてやりたくてな。」
再び、バハムーンが手を伸ばす。だが、今度はさっきのように強引なものではなく、腫れ物にでも触るような、静かな動きだった。
手が、僅かにエルフの体に触れる。エルフはビクッと身を震わせたが、それを振り払うことはなかった。今度は優しく、体を抱き寄せる。
エルフは逃げようとはしない。しかし、その体はぶるぶると震え、呼吸も荒い。
「大丈夫だ。お前の記憶にある者達は、既にいない。」
体と体が、ぴったりとくっつく。お互いの胸がぶつかり、二人の間で形を崩す。そこから伝わる暖かい鼓動が、エルフの心を少しだけ
静めてくれる。
「こうしてみると、お前は結構着痩せするんだな。」
急に、バハムーンは雰囲気にそぐわない言葉をかける。
「胸も意外と大きいし、柔らかくて抱き心地はいい。」
「……ふ……太っ……て、いる……と、言い、たいん……です……の…?」
「いや、率直な感想を述べたまでだ。他意はないぞ。」
声をかけつつ、バハムーンはそっとエルフの背中を撫でる。エルフの脳裏に一瞬、かつて受けた陵辱の記憶が蘇る。だが、バハムーンの
暖かさがその記憶を抑え込む。
肉付きのいい尻を軽く撫で、バハムーンの手がそっと前の方へ動く。その感覚に、かつての記憶がさらに強く蘇った。
「ま、待って!」
エルフが叫ぶと、バハムーンはすぐに手を止めた。そして、心配そうな顔でエルフの顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「え……ええ…。」
優しく声をかけられ、再び記憶が薄れていく。バハムーンは一度体を離し、今度は胸に手を伸ばした。
大きな手が、慣れない手つきでエルフの胸を触る。本当に慣れていないらしく、その揉み方はかなり強い。その強さが、またエルフの
記憶を蘇らせてしまう。
「や、やめて!嫌!」
やはり、バハムーンはすぐに手を放す。申し訳なさそうな顔をし、エルフの頭を優しく撫でる。
「すまなかった、少し乱暴だったか?」
「そ……その……触るなら、もう少し……その……ぶどう酒のグラスを持つように、優しく…。」
「ふむ……繊細なものだな。」
いまいちイメージが湧かないものの、とにかく優しくしろというのは理解できた。今度はかなり控えめに、ゆっくりと揉みしだく。
エルフが嫌がらないのを見ると、少しだけ揉む力を強める。エルフの体がピクンと跳ねたが、恐怖によるものではないらしい。
少し躊躇ってから、今度はその胸を口に含む。
「んく…!」
エルフの手がバハムーンの頭を押さえるが、その力は弱い。嫌がっているというよりは、恥じらいでつい手が出てしまったという感じだ。
さっきの一件があるため、バハムーンはあまり強く吸ったりはせず、乳首を舌先で撫でるように刺激する。最初は震えていたエルフも、
その刺激に少しずつ違う反応が生まれ始める。
「んふ……ぅ……あっ…!」
恐怖とはまた違う、熱っぽい呼吸。口元に当てた親指を噛み、声を抑えるその仕草。体もそれまでより赤みを増し、薄っすらと
汗ばんでいる。ようやく快感の気配が見え、バハムーンは心の中でホッと息をついた。
胸を吸いつつ、そっとエルフの秘所に手を伸ばす。そこに触れた瞬間、エルフの体がビクンと震える。
「あ、ダメ!やめて!」
すぐに手を離し、エルフの様子を窺う。エルフは再び襲ってきた記憶に震えながら、しばらく荒い息をついていた。
「……大丈夫か?」
「……ええ……大丈夫……ですわ…。」
もう一度、優しく触れてみる。やはりエルフは体を震わせるが、今度は声を出すことはない。だが、若干無理をしているようにも見える。
触れるか触れないかの強さで、その周りを撫でる。エルフはぎゅっと目を瞑り、蘇ってくる記憶と戦っていた。
だが、バハムーンが僅かに指を入れた瞬間、かつてそこに強引に突き入れられた記憶が蘇った。
あの激痛。鮮血。突き入れられる圧迫感。肛門にも無理矢理突き入れられ、死んでもなお蘇生させられ、陵辱された苦しみ。
その記憶は抑えようもないほどに膨れ上がり、恐怖がエルフの体を突き動かした。
「いやぁ!やっぱりダメぇ!やめてぇ!!」
思わずバハムーンを突き飛ばし、はっと我に返るエルフ。バハムーンは変わらず、心配そうな顔で見てくれている。
だが、もうこれ以上は辛かった。尊敬し、唯一心を許せる相手に触られるのですら、かつての記憶が蘇ってしまう。何をしたところで、
この悪夢からは逃れられないという思いが頭を満たしていく。
「ご……ごめんなさい…。でも……でも、わたくし、やっぱり…。」
目を伏せるエルフ。だが、バハムーンは優しくその頭を撫で、そっと顔を上げさせた。
「エルフ。もう、お前を苦しめる者はいない。例えいたとしても、私が何度でも葬ってやる。」
エルフの返事を待たず、バハムーンはその唇を奪った。突然のことに、エルフは固まってしまう。
多少強引ではあった。しかし、それだけは彼女の記憶にない行為だった。
バハムーンの舌が、そっとエルフの舌に触れる。最初、エルフはビクッとして舌を引っ込めたが、やがておずおずと絡めてきた。
初めてのキスの感覚。温かく柔らかい舌の感触。積極的に舌を絡めてくるバハムーンに、エルフは慣れないながらも必死で応えようとする。
そうして舌と舌を絡めつつ、バハムーンは再びエルフの秘所に手を伸ばす。エルフの体がピクンと跳ねたが、彼女がその手を
拒否することはなかった。キスから繋がるその感覚は、かつての記憶を呼び起こしはしなかった。
「んっ……ん、う…。」
割れ目を擦るように撫で、そっと指を入れる。少し辛そうに、エルフが身を震わせる。
「んん……はぁ…。大丈夫か?」
唇を離し、エルフに声をかけるバハムーン。それに対し、エルフは呆けたような顔を向ける。
「ん…。」
とろんとした目のまま、恥ずかしそうに微笑むエルフ。やっと自分を受け入れてくれたことに気付き、バハムーンはつい笑顔になる。
「……もう少し、いいか?」
「……ええ。」
それに気付いたことで、バハムーンは少し大胆になる。右手ではエルフの秘所を刺激しつつ、再びキスを交わす。さらに左手で
エルフの体を抱き寄せ、お互いの胸をつき合わせる。体を動かすたびに乳房が揺れ、つき合わされた乳首が互いに擦れあう。
「んっ!うあっ!」
「あぅ…!こ、こんなの、恥ずかしい……ですわ…!」
「あ……すまんな、やめるか?」
そう聞くと、エルフは真っ赤な顔を伏せた。それと一緒に、長い耳もやや下向きに垂れる。
「そ……そんな野暮なこと…。」
「あ、すまん。その……あの……私も、こういうことは初めてで、その…。」
バハムーンがしどろもどろになっていると、エルフは顔を伏せたまま抱きついた。
「あなたの、したいようになさって…。」
「む…。わ、わかった。」
真っ赤に染まった耳を、つぅっと舐め上げる。エルフの体と耳が、ピクンと動いた。
「あっ……そんなの…。」
その反応が面白く、つい耳を重点的に責めるバハムーン。さらに、エルフの中に入れた指を、掻き混ぜるように激しく動かす。
「うあぁう!そっ、そんなっ…!いきなり、激しっ……すぎ、ますわっ…!」
既に、中は熱く、十分に濡れている。バハムーンは少しいたずらっぽい笑顔を浮かべると、不意に指を引き抜いた。
「んっ!……あの、どうしまし……きゃっ!?」
いきなりエルフの腰を抱え上げるバハムーン。エルフは慌てて秘所を手で隠そうとするが、その前にバハムーンの舌がそこを舐めた。
「あっ!だ、ダメですわっ!そんなのっ…!うあぁっ!?」
エルフの言葉には耳を貸さず、バハムーンはそこにかぶりつくように口を当て、舌を突き入れた。感じたこともない刺激に、エルフの体が
ビクンと跳ねる。
「こ、こんな格好っ…!ああっ!は、恥ずかしいっ…!いや!舌が……舌がぁ!」
激しい快感に体をくねらせ、何とかバハムーンの腕から逃れようとするエルフ。その姿がたまらなく可愛らしく、バハムーンはさらに
刺激を強める。体内で舌が暴れ回る感覚に、エルフの体がビクビクと痙攣する。
「あっ、あっ、あっ!!も、もう……わたくしっ……あのっ…!」
「ん……ん…。ふう。ふふ、もう限界か?」
バハムーンはニッと笑い、最も敏感な突起を舐め上げる。
「あああっ!!も、もうそれ以上はっ…!」
「っと、どうせなら、一緒に気持ちよくなりたいな。」
口を離し、エルフの体を解放すると、エルフはそのままぐったりと横たわった。その足を上げさせ、バハムーンはお互いの秘所が
擦れ合うように体を入れる。
「あぁ……バハムーン……さん…。」
「ふふ。一緒に、イこうか。」
バハムーンが腰を動し始める。
「あっ!あっ!うっ、こ、こんなにいいなんて…!」
「ああっ!そ、そんなに激しく……なさらないでっ…!」
二人の激しい吐息と喘ぎ声がこだまする。
腰を動かすたび、秘所同士が擦れ、もどかしい快感が。同時に、敏感な突起が相手の太腿に擦れ、激しい快感が伝わる。
部屋の中にクチュクチュといやらしい音が響き、次第にその音は大きくなっていく。
「ううぅぅっ!エ、エルフ!も、もう……私は…!くっ!」
「わ、わたくしもっ!もうっ!!あ、あたまが、しろくっ!」
無意識のうちに、お互い手を取り合い、しっかりと握り合う。そしてそれを引き合い、さらに強く腰を押し付けあう。
「も、もうダメっ!エルフ、もうっ…!!!う、うあぁっ!!」
「あぁ!なんか、もうっ!わからなくっ…!あ……あああぁぁぁ!!!」
一際甲高い嬌声が響き、二人は同時に身を震わせた。
やがて、少しずつ体から力が抜けていき、二人はぐったりとベッドに横たわった。
「はぁ……はぁ……はぁ…。頭が、ボーっとする…。」
バハムーンが、どこか呆けたように呟く。足元のエルフは、まだ荒い息をついている。
「大丈夫……か?」
「はぁ……はぁ…。うぅ、純潔はモンスターに散らされ、殿方に体を汚され、初めて気をやってしまったのが、女同士だなんて…!」
その言葉に、バハムーンはギョッとして飛び起きる。
「え!?そ、その、いや、えっと、い、嫌だったか!?あの、私はそんなつもりで…!」
「……こんな体のわたくしに、さらにこんな事をするなんて…。」
エルフはのそりと体を起こすと、いたずらな笑みを浮かべた。
「責任、取ってくださいますわよね?」
「え…?」
「それとも、その覚悟もなしに、ただわたくしを弄んだんですの?」
「あ、いや……うん、そうだな。その……任せろ。」
半ば自棄気味に言うと、バハムーンはエルフの体を抱き起こした。腕の中で自分を見上げる彼女の顔は、今までにないほど魅力的だった。
「それにしても、手段としてはあまりに強引、ですわ。陵辱された記憶を取り去るために、あえてわたくしを抱くなんて…。」
「あ〜、その……毒を以って毒を制すというか…。」
「あら、わたくしは毒ですの?」
「いやっ、そうじゃなくて…!うぅ、私はエルフと違って口下手だと…。」
「うふふ。わかってますわ。ちゃんと、あなたの言いたいことは。」
そう言って、エルフは笑った。その笑顔は、今まで見たことがないような、純粋な笑顔だった。
「……すまなかった、辛い記憶を思い出させて。」
エルフをぎゅっと抱き締めると、エルフもその腕をそっと胸に抱いた。
「傷を縫い止められるのは、苦痛を伴うものですわ…。」
「……そうか。」
その時、外で稲光と共に雷鳴が轟いた。途端に、バハムーンはビクンと体を震わせる。
「ど、どうしたんですの?」
「……イヤ、ナンデモナイゾ。」
「……なら、なぜ片言になってますの?」
「う……いや、私はその…。」
再び、雷鳴が轟く。バハムーンがビクンと震える。
「……雷、苦手ですの?」
「……うん…。」
エルフの体を抱き締め、ガタガタ震えるバハムーン。その姿に、エルフは心底呆れたため息をついた。
「もう、雰囲気台無しですわ。」
「ご、ごめん…。でも……雷、怖いよ……きゃあっ!」
すっかり小さくなって震えるバハムーン。おまけに、雷鳴が轟くたびに尻尾がビィンと立ち上がっている。
「もう……わたくしがついてますから、そう怖がらなくても…。」
「そ、そう…?でもでも、ここに落ちたりしたら……きゃあーーーーっ!!!」
半泣きになって布団に包まるバハムーン。いつの間にか、そのバハムーンをエルフが抱き締めている。
「わぁーん、もうやだぁ!雷止めてきてぇ!」
「それはさすがに無理ですわ…。まったく、雰囲気台無しの上に、立場も逆転ですわね…。」
余韻に浸る間もなく、延々バハムーンを宥める羽目になったエルフ。だが、その顔はすっかり呆れつつも、嫌そうではなかった。
最も信頼でき、尊敬すべき友人で、心の傷を無理矢理にでも塞いでくれた恩人であり、可愛いものが好きで、雷の大嫌いな少女。
何とも掴み所のない人物ではあるが、一つだけ確実なことがあった。
エルフにとって、今では彼女は誰よりも大切な、恋人だった。
翌朝、エルフは寝不足の目を擦りつつ学食に向かった。バハムーンは雷にいじめられたおかげで泣き疲れたらしく、まだ眠っている。
学食に着くと、セレスティアとヒューマンの姿が見えた。思わず身を引きかけたが、ヒューマンがエルフに気付く。
「おう、エルフじゃねえか。一人でお出かけして平気なのかい。」
嘲笑を浮かべ、開口一番皮肉を言うヒューマン。昨日までなら、無視するか一言程度の返事で済ませただろう。
「……朝の挨拶にしては、風情がありませんわね。普通なら、おはよう、などと声をかけるものではなくって?」
「お?珍しいな?そんな長文で言い返されるとは思わなかったぞ。」
「おや。ようやく、人見知り解消、ですか。」
セレスティアも、エルフの方に首を向ける。
「それとも、ようやく、男嫌い解消、ですかね。」
「男嫌いでなくとも、あなた方のような殿方は好きになれませんわ。」
「これはこれは、手厳しい。ですが、気は合うようですね。」
「そう、それは喜ばしいことですわ。お互い、無理に合わせなくていいということですものね。」
「はっはっは、いきなり言うようになったな、お前。」
ヒューマンが楽しそうに笑う。セレスティアも、ポリポリと頭を掻いている。エルフはそのまま朝食を取りに行こうとしたが、その背中に
セレスティアが声をかける。
「その態度は、今日限りの特別、ということは、ないですよね?」
「……そのつもりでしてよ。」
「なら、ようやく本当の仲間に、なれそうですね。」
そう言って笑いかけるセレスティア。いつもの意地の悪い笑顔ではなく、純粋な笑顔だ。
「そうそう。隣、空いてるからよ。飯取ったらここ来たらどうだ?」
「あなたが見えない席が空いてなければ、その時考えますわ。」
「ひっでー。」
三人は同時に笑った。ようやく、名実共に仲間として認め合った瞬間だった。
一方のバハムーンも、ようやくベッドから這い出し、購買で朝食を買っていた。食事は部屋でする方が落ち着くので、それを持って寮の
廊下を歩いていると、向こうからディアボロスが来るのが見えた。
「おーう、おはよう。」
「ああ、おはよう。」
「昨日すっげえ雷だったけど、大丈夫だったか〜?」
「兄みたいな事を言う奴だな。大丈夫に決まっている。」
バハムーンは平然と嘘をつく。
「お、お前兄弟いたのか?」
「ああ。兄と姉がいる。」
「え、末っ子?」
「そうだが、そんなに意外か?」
「へ〜、そうなのか。いや、リーダーやってるし、性格的に一番上か一人っ子だと思ってたよ。」
「末は甘えっ子ばかりとでも思っていたのか?兄弟の上下などという程度のものでは、相手の器を推し量ることはできんぞ。」
雷に怯える姿を見ていないディアボロスだから説得力があるものの、エルフが聞けば噴き出したであろう。
「それにしても…。」
「ん?」
「元々、薔薇は好きだったのだがな。」
「いきなりどうした?薔薇?」
「いや、百合の方にも興味はあったのだが。」
「百合?てかお前、花好きだったの?」
「しかし何というか、実際に経験してみると、あれはあれでなかなか…。」
「経験て?何?ガーデニングでも始めたのか?」
「……うん、なかなかいいものだな。」
「つーかお前、俺のこと完全無視してねえか?」
「ん?何を言っているのかわからないと?」
「え、花……じゃねえの?」
それを聞くと、バハムーンは意味ありげにニマーッと笑い、ディアボロスの肩をポンポンと叩いた。
「うん、これだからお前は必要なんだ。」
「いや、わかんねえよ。なんだ?もしかして何か別の意味あんの?っておい、教えてくれってば!」
ディアボロスの言葉を完全に無視し、再び部屋へと歩き出すバハムーン。が、後ろの声にその足が止まる。
「お、ノーム。わざわざ来てくれたのか?」
「ふふ。待ちきれなくて、つい、ね。」
「あ、ちょうどいいや。あのさー、薔薇とか百合って、何か別の意味…」
バハムーンは凄まじい速さでディアボロスに飛び掛った。そのまま有無を言わせず腕を掴み、その体を床に叩きつける。
「どへぅ!?」
恐らくは一本背負いのつもりだったのだろう。しかし、それには勢いが余りすぎており、実質ディアボロスがかけられたものは、
バハムーンの頭上に弧を描く、痛烈なボディスラムだった。
不意打ちでそんな大技を食らってはひとたまりもなく、ディアボロスは泡を吹いて失神している。
「……いくらあなたでも、彼を傷つけるならっ…。」
ノームが怒りに満ちた声を出した瞬間、バハムーンは顔を上げて彼女を睨んだ。その目は追い詰められたドラゴンのような迫力があり、
彼女を竦ませるのに十分な迫力があった。
「許さ……ない……つもり…。」
「……すまんな、こうせざるを得ない事情があった。リーダーとして、仕方のない行動だった。」
「横暴。」
「横暴ではない。」
「職権乱用。」
「それも違う。正当な行為だった。」
「どっちにしろ、ひどい。」
「だからすまなかったと言っている。こいつにもお詫びとしてこれをやるから、よろしく言っておいてくれ。」
バハムーンはそっと、ディアボロスの胸に焼きそばパンを置いた。
「………。」
「うまいぞ?」
「うん、それはわかるけど。」
「……今日の楽しみの一つだったんだが…。」
「ふーん、そうなんだ。」
「何か不満か?」
「ううん、もういいや。」
「そうか。なら、よろしく頼む。」
何だか呆れたような感じのノームと、失神したディアボロスを廊下に残し、バハムーンは部屋へと戻った。
部屋で朝食を食べていると、先に出ていたエルフが帰ってきた。その顔は、昨日までと違い、年相応の明るさが戻ってきている。
「おう、帰ってきたか。」
「あら、いつのまに起きてらしたの?わたくしが部屋を出るときは、泣き疲れた赤ん坊のように寝ていましたのに。」
「たぶん、その直後だろうな。」
エルフはバハムーンと向かい合って座ると、可愛らしい笑顔を向けた。
「ど……どうした?」
「昨日のこと、すべてがまるで、夢のようですわ。どれ一つとして、本当にあったとは思えないような事ばかり。でも、
夢ではないんですのね。」
「まあ、な。いくつか、夢として忘れてもらいたいこともあるが。」
「嫌ですわ。そのすべてが、わたくしにとって、大切な記憶ですもの。」
エルフはそっと、バハムーンの手に触れる。
「この手……この温もり…。これが、わたくしを抱いてくださったのね。」
「まあ……な。」
「ふふ。今までは、人肌の温もりと言えば、この身を汚された不快な思い出しか、ありませんでしたわ。でも……あなたのおかげで…。」
エルフは相変わらず、可愛らしい笑顔を浮かべている。が、なぜかバハムーンは嫌な予感がした。
「……わたくし、いけないものに目覚めてしまいそうですわ。」
「……え?」
エルフの手が、バハムーンの手を捕らえる。その手がつつっと肌をなぞり、肩から胸へと移動していく。
「お、おいっ!」
「ふふ。言ったでしょう?わたくし、昨日のことはすべて、覚えてますのよ。それまで攻め手だったあなたが、ほんの少しの刺激で、
たちまち気をやってしまったことも……ね。うふふ。」
「ま、待て!よせ!やめろ!」
エルフは立ち上がり、バハムーンの後ろに移動する。さりげなく体を押さえつけられ、バハムーンは立ち上がることができない。
「あなたの腕、とても温かかったですわ。ですからわたくし、お返しがしたいんですの。」
エルフの手が制服の中に入り込み、バハムーンの胸を直接触った。途端に、バハムーンの体がビクンと跳ねる。
「ま……待て、エルフ…!あんっ!やっ……やめて…!」
「ああ、その声……可愛いですわ。どうか、もっと聞かせてくださいな。」
「ま、待って待って!エルフ…!うあっ、んっ!や、やめてってばぁ!」
「そう。追い込まれると、そうやって飾らないあなたが出るのも……可愛いですわぁ…。」
「っく!こ、この!よせ!やめろと言って……うあっ!ひゃぅ!……っふあぁっ!?」
「うふふ。気をやってしまいそうですの?いいですわよ、ほらっ、ほらぁ!」
「や、やめろ!本気で怒……あ、あ、あ、あっ!!!ダメ!ほんとにイッちゃうっ……からあっ!!やめてよぉ!ダメダメダメぇぇ!!」
リーダーとしては、行動に後悔はなかった。むしろ、強引にでも心に踏み込み、明るさを取り戻せたことは、誇らしくすらある。
しかし、その結果として得たものは、今まで見たことのない笑顔と、大切な仲間と、記憶に覆い隠されていた彼女の本性。
辛い記憶を取り除けたことは、喜ばしいことだった。だが、余計なものまで目覚めさせてしまったと後悔しても、もはや手遅れだった。
結局、バハムーンにとってエルフは、いつまで経っても問題児であり続けるのだった。
以上、投下終了。なんかうちのバハムーンはこういう役回り多いな…。
最近は読み手に回る機会も多くて嬉しいところ。読める幸せ、プライスレス。
それでは、この辺で。
>>286 相変わらず良いキャラ描写するな〜GJ!
それにしてもパーティー内バトルに割って入るユパ様な格好イイバハムーンがあんなにエロくなるなんてw
>>286 相変わらずGJ!です。
エルフが明るくなってくれて何よりです。
にしても、すごい解決法だ。しかも目覚めさせちゃったとはw
貴方の書くバハムーンは可愛すぎです。
たぶんこれからはエルフに攻められ続けるんだろうなw
頑張れ、バハムーン。
頑張れリーダー…お前が(苦労人)ナンバーワンだ…!
GJ!
百合モノって大体バハムーンが出るよな。
ん、薔薇にも興味がある?兄がいる?
兄もバハムーン……
いや、なんでもない。」
ホシュ
このパーティの他のメンバーの話を見てみたい…
しかしすでに男しか残っていないだと…
セレス君とヒューマン君か…
禁断の道に走ったらそれはそれで
今まで出たバハ、確かに男一人女二人だけど、残念ながら血の繋がりはありませぬ。
てーかあったら、兄=ホモ・姉=ロリ百合・末っ子=バイ腐女子という最悪の兄妹にw
残った野郎二人は、そのうち小ネタにでもして書きますかね。
さて、どっかで「ヒュム男分が足りない」という声が聞こえたので、大活躍してもらうことにしました。
都合上、長編になったので数回に分けて投下になります。まあ長編と言っても、短編詰め合わせな感じになりますが。
では、多少長い付き合いになるとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
男女混合のパーティがいいのか、それとも男女のみのパーティがいいのか。
それは、単に好みの問題なのだが、その好みが大きく士気を左右してしまう以上、無視もできない厄介な問題である。
下手に色恋沙汰が起きてしまえば、あぶれた面子はいい思いはしないし、三角関係ともなれば目も当てられない。
とはいえ、男女どちらかでも問題は起こる。変化がない分、また別の問題も起きやすいとも言われる。
彼女達の場合、男女混合での問題点を重視し、女性のみのパーティを組んでいた。だが、些細な意見の衝突から一部が不仲になり、
結果としてそのうちの一人が脱退してしまった。後悔したものの、時既に遅く、彼女はもう別のパーティに所属してしまっていた。
「それで、抜けたクラッズの穴埋めをしなきゃいけないということだけど。」
フェルパーの少女が、暗い顔の面子を見回す。
「選考は私に一任させてもらっていいのね?」
「いいよー、それで。」
「異議はありませんわ。」
「ええ。わたくしもそれでいいと思います。」
「……バハムーン、あなたもそれでいいのね?」
バハムーンは不機嫌そうな顔でチラッと一瞥すると、面白くなさそうに頷いた。
「あなたのせいでこうなったのに、その態度はないんじゃないのー?」
フェアリーが、ムッとした顔で食って掛かる。が、すぐにセレスティアがその間に入った。
「もう、その話はいいじゃないですか。もうやめましょう、ね?」
「まったく。フェアリーも、いつまでも根に持っているのは感心しませんわ。」
「うるさいなー。エルフだって…。」
「もうやめてくださいってば。これ以上、仲間同士で喧嘩するのなんて、見たくないです…。」
セレスティアが泣きそうな顔になると、さすがにフェアリーも口を閉じた。
「……で、完全に私の独断で選ぶと思うけど、本当に異存ないのね?」
フェルパーがもう一度確認すると、全員が頷いた。
「それじゃ、今日は仲間探すから、みんなは自由にしてて。できれば今日中に探すから。」
それから、フェルパーは一日中学食や寮の入り口を廻り、仲間にできそうな人材を探した。しかし、探索に必須とも言えるような盗賊系
学科の人気は高く、見つけたとしても他のパーティに所属していたり、あるいはまだまだ経験不足で、ろくについて来られないような
生徒ばかりだった。朝から始まった仲間探しは昼を回り、やがて夕焼けが辺りを赤く染める頃になっても続いた。
そろそろ仲間探しにも疲れ、休憩も兼ねて、フェルパーは学食へ向かった。どちらかというと肉派の彼女はステーキを取り、それに
いくつか単品の料理を加え、席を探す。だが、こんな時に限って学食は混んでおり、なかなか席が見つからない。そのついでによさそうな
生徒も探しているのだが、こちらもまた見つからない。
いい加減諦めて、外で立ち食いでもしようかと思い始めた時。学食の隅の窓際に、妙な生徒を見つけた。
その周りだけ、人がいないのもともかく、少なめの料理を一つずつじっくりと味わうように、ゆっくりと食べている。その動作も
さることながら、時折コーヒーを飲むさまが、異様に絵になっている。
しかも、である。彼は時折、窓の外に顔を出す。何をしているのかと思えば、ゴエモンのキセルを使って本当に煙草を吸っているのだ。
呆れ半分興味半分で、フェルパーは彼に近づいた。それにゴエモンのキセルを持っているのなら、盗賊系学科である可能性が高い。
「ここ、いいかしら?」
「ん?」
近くで見ると、さらに彼の異様さが際立つ。種族はヒューマンであるらしいが、その髪は真っ白だ。元々そういう色にしては、妙に
艶がない。顔は確かに若いのだが、彼の纏う雰囲気には若々しさが微塵も感じられない。
「……俺の顔が、何か?」
「……あっ、いえ!ごめんなさい。えっと……席、空いてないので、ご一緒しても?」
「ああ、もちろん。俺としても、君みたいなお嬢さんとご一緒できるのは嬉しいね。」
軽い性格らしく、そんなことを言ってのけるヒューマン。ただ、なぜか『お嬢さん』と呼ばれたのに、不思議と違和感がない。
フェルパーは席に着くと、まじまじと男を見つめた。
やはり、どこか異様である。若いはずなのに若さが感じられず、その仕草はいちいち落ち着いている。煙草を吸う仕草すら、彼がやると
違和感がない。
「煙草は、校則で禁止のはずよ?」
「なぁに。気にしなさんな。……っと、食事の邪魔になるってんなら、すぐ消すが?」
「あ、そうね。できれば、お願い。」
「悪かったな、気がつかなくて。」
カン!とキセルを窓枠に叩きつけ、灰を落とすヒューマン。あまり行儀がいいようには見えないが、やはりなぜか怒る気になれない。
「ところで、キセルを持ってるって事は、あなた、盗賊系学科?」
「ん?ああ、狩人さ。」
そう言って、ヒューマンは弓を見せた。妙に使い込まれている、年季の入った弓だった。
「失礼だけど、腕の方に自信はある?」
「それなりに、な。そうさな、ここらの駆け出しには負けない自信ぐらいはある。罠の解除には、期待しないでもらいたいがね。」
いまいち、解釈に困る物言いだった。しかし、この使い込まれた弓を見る限りでは、少なくとも戦闘の実力はありそうだ。
「いきなりで失礼だけど……あ、食べながらでいいわ。」
「いやぁ。食べながら話を聞くなんざ、失礼にも程があるさ。」
父親みたいな事を言う奴だな、と、フェルパーは心の中で苦笑いした。そもそもが、喋り方が爺臭い。
「そう、それじゃ手短に話すけど、あなたパーティに所属してる?」
「いいや。一人だ。」
「そう。それで相談なんだけど、あなた私達のパーティに入る気はない?」
「ほう。俺が、君のねえ。」
呟くように言うと、ヒューマンはコーヒーを一口飲んだ。コトッと小さな音を立て、カップが置かれる。
「もちろん、無理にとは言わないけれど。」
「本当かぁ?」
ヒューマンは意味ありげに笑った。
「ど、どういう意味よ。」
「いや、気を悪くしたんなら、謝るよ。だがね、俺はてっきり、こんな時間まで仲間を探しても見つからないから、俺なんぞに声を
かけてきたんだと、そう、思ったがね。」
図星だったので、フェルパーは返答に困ってしまう。その気配を察したのか、ヒューマンは穏やかに笑った。
「まあ、理由なんざぁ、どうでもいいわな。俺が必要ってんなら、喜んで入らせてもらうよ。」
「本当に!?よかった。実は、あなたの言うこと、図星だったのよ。」
「はっはっは、そうだろうと思った。それじゃ、よろしくな、お嬢さん。」
パチッとウィンクしてみせるヒューマン。その仕草すら、あまり気障な感じがしないことを、フェルパーは不思議に思っていた。
翌日、フェルパーは仲間を集め、昨日の彼を紹介することにした。既に簡単な情報は伝えてあり、その反応はそれぞれである。
「お前に一任するとは言ったが……どうして、よりにもよってヒューマンなんかを…。」
バハムーンはずっと不機嫌で、ぶちぶちと文句を言い続けている。
「しかも、殿方だそうね?殿方は入れない方がいいと言ってらしたのに、どういう心境の変化でして?」
エルフは男が入るということに不満があるらしく、こうして皮肉を言ってくる。
「お二人とも、選任は任せるって言ったじゃないですか。それにフェルパーさんが選んだ人ですから、きっといい方ですよ。」
セレスティアはずっと、こうして二人を宥めている。その中で唯一、フェアリーだけはテンションが違う。
「フェルパー!新しいの、ヒューマンだって!?ナイス勧誘!!」
もうずっと、彼女ははしゃぎ続けている。いつもよりさらに細かく飛び回り、鬱陶しいことこの上ない。
「ともかくも、もう決めてしまったから。もちろん、もし実力がなければ、丁重にお帰りいただくつもりだけど。」
フェアリーと気のないハイタッチを交わしつつ、フェルパーは静かに言う。
「ふん。まあ、人見知りのお前が勧誘したんだ。どんな結果であろうと、我慢するべきだろうな。」
「バハムーンさん!」
セレスティアが強い口調で咎め、バハムーンの顔を睨みつける。
「次そんな言い方したら、許しませんよ!」
「……わかったよ。」
さすがに、バハムーンもセレスティアには素直である。まだ何か言いたそうではあったが、そのまま引き下がる。
と、そこに昨日のヒューマンが現れた。
明るい日差しの下で見ると、彼の異様さはさらに際立つ。艶のない白い髪もそうだが、全体的に覇気がない。だが、なぜかどっしりと
落ち着いた、それこそファインマン校長のような大人の余裕が感じられる。咥えているキセルも、妙に合っている。
その姿に、最初は誰も声が出なかった。が、フェアリーが沈黙を破った。
「しっぶい…!」
確かに、その一言がぴったりである。その声にそれぞれ我に返り、フェルパーがヒューマンに歩み寄る。
「よく来てくれたわ。」
「こちらのお嬢さん方が、君の?」
「ええ。」
フェルパーが頷くと、ヒューマンはどこか鷹揚な笑顔を浮かべた。
「これはこれは。どんな殺伐としたところに連れて行かれるかと思ったら、こんな花園に連れてこられるとはね。」
その言葉に、バハムーンは顔をしかめ、エルフはちょっと眉をひそめ、セレスティアはほんのりと顔を赤らめ、フェアリーはうっとりした
表情を崩さない。
「こんなむさ苦しい男は似合わないかもしれんが、お手柔らかに頼むよ。」
「そんなことないよっ!私は大歓迎だよっ!」
フェアリーが真っ先に近づき、ヒューマンと視線を合わせるように滞空する。
「そうかい?そう言われると、俺も嬉しいよ。小さなお嬢さん。」
「ふふ。わたくしも、歓迎しますよ。」
セレスティアも柔らかい笑みを浮かべ、ヒューマンに歩み寄る。
「これまた美しいお嬢さんだ。握手をしたいところだが、触るのが躊躇われるね。」
「まあ。お上手ですね。」
まったくもってお上手ですね。と、バハムーンとエルフは心の中で思った。
「わたくしも、一応は歓迎しますわ。」
エルフが、少し不機嫌そうに話しかける。
「ですけれど、わたくし達の足を引っ張るようなことがあれば、その時はすぐに出て行ってもらいますわ。」
「はは、そちらのきれいなお嬢さんには、少し棘があるようだ。」
「ちゃんと聞いてまして!?」
「聞いてるさ。そんな鳥のさえずりの如き声を、聞きたくない男なんていない。」
「っ…!ふ、ふん!本当に調子のいい方ですわね!」
何だか、話していて調子が狂ってしまう。おまけに言い回しも、普通のヒューマンとは少し違う。
そこで、最大の問題であるバハムーンが口を開いた。
「はっ。口先だけはずいぶん達者な男だ。」
その棘のある言い方に、場の空気が凍りついた。
「だが、どうせ下等なヒューマン。貴様の力など、私は期待していない。」
「バハムーン!あんた…!」
激昂するフェアリーの肩を、ヒューマンは優しく押さえた。
「もちろん、俺だって君に勝てるとは思っていないさ、逞しいお嬢さん。だが、力を見せる前からそうやって決め付けられてしまっては、
少し悲しいな。」
あくまで柔らかい物腰で、ヒューマンは続ける。
「君のお眼鏡に適うかはわからない。だが、それなりには自信もあるつもりだ。どうか君自身の目で、俺の実力を見極めてくれないか?」
バハムーンも、そのような返事が来るとは予想もつかず、やはり調子を狂わされてしまう。
「……ふん!」
ぷいっとそっぽを向くバハムーン。なぜだか、お嬢さん呼ばわりにも怒る気になれなかった。
「と、とにかくそういうわけで、これから一緒に来てもらうことになったから。徐々にでいいから、みんな慣れてね。」
それから少し話をし、一行は早速地下道探索に出かけた。前々から空への門に行きたいと言っていたのだが、ちょうどその頃に始まった
パーティの不仲とクラッズ脱退のおかげで、結局今まで行った事がないのだ。そんなわけで、今回の目的地はそこである。
最初のホルデア登山道では、ヒューマンは悪い面ばかりが目立った。
「みんな〜、ちょっと待ってよ〜。」
フェアリーの声が響き、一行は足を止める。
「またか!ちっ、とんだ足手まといだ!」
バハムーンが苛ついたように言うが、それに対する擁護の声はない。セレスティアやフェルパーとしては庇いたいのだが、この状況では
さすがに無理がある。
「いや、すまんな。何しろ、ここに来るのは久しぶりでな…。」
登山道を歩くだけで参っているヒューマン。どれだけ体力がないんだと、フェアリーを除く一行は心の中で呆れていた。
が、不意にヒューマンの目つきが変わった。
「おっと、お客さんが来たようだぞ。」
素早く戦闘態勢を取る一行。ヒューマンも弓を取り出すが、サッとフェルパーが走った。
敵の群れに飛び込み、刀を一閃するフェルパー。それだけで、もう群れは壊滅していた。
「……はっはっは。強いな、お嬢さん。これじゃ、俺の出る幕はないな。」
実に楽しそうなヒューマン。フェルパーは褒められたのでまんざらでもなさそうだが、エルフとバハムーンは心の底から不快そうな
顔をしていた。
その後もヒューマンの活躍がないまま、途中何度か休憩を挟みつつ登山道を越えた。もっと早く抜けられるかと思っていたが、
ヒューマンのせいで思ったより時間を食っている。どうするか悩んだものの、一行は続いてフレイク地下道に向かった。
登山道ではない分、ヒューマンが遅れるようなことはない。しかし、それまでに見せた姿のせいで、一行の中ではもうほとんど、ただの
お荷物だという認識が出来上がってしまっていた。
戦闘でも相変わらずである。フェルパーが切り払ってしまうため、ほとんど活躍らしい活躍もなく、群れであっても同じ弓使いである
エルフが後衛を撃ち抜いてしまう。たまに順番が回ってきたと思えば、みょーんと気の抜けた矢を放ち、倒せるギリギリのダメージを
与える程度である。真面目に戦っていないのは一目瞭然で、それがさらに不興を買う。
だが、そんなイメージを払拭してしまうような出来事が起こった。
中央までたどり着いた時、一行はサーベルタイガーとムスペルの群れに囲まれた。しかも不意打ちを食らい、一行は一気に浮き足立った。
「ど、どうするの!?これじゃ危ないよ!?」
フェアリーが焦った声を出すが、どうにもできる状態ではない。そもそも、一行は冒険者としてようやく二流の仲間入りを果たした
ところである。こういう状況には、決して慣れていない。
「くっ……なら、私が隙を作るから、その間に…!」
「いや、それなら私の方が適任だろう?お前らは引けばいい。」
「そんなことできません!何とか……何とか、全員が助かる方法が…!」
そんな中、相変わらずのんびりした雰囲気のヒューマン。しばらく敵の群れを眺めていたが、やがて口を開いた。
「お嬢さん方、そう焦りなさんな。まともに戦えば、こいつら相手には負けない。そうだろう?」
その、落ち着き払った口調。心を静めるまでには至らないが、少なくとも意識を向けさせるだけの力はあった。
「状況がまともでないのだから、まともであれば、という仮定は役に立たんと思うがな!」
「まあそうイライラしなさんな。なら、まともな状況に持っていけばいいだけの話。」
キセルに火をつけ、ふぅっと煙を吐き出す。そして、ゆっくりと矢を番えた。
「逞しいお嬢さん、端正なお嬢さん。お二人には、そこの一角を担当してもらう。
そう言い、ヒューマンは包囲の薄い場所を指差した。
「そこが突破出来次第、みんなでそっちに向かい、改めて体勢を整える。」
「でも……それまでに後ろから襲われたら…!」
「そこは、俺と、このきれいなお嬢さんで何とかするさ。」
エルフは一瞬『えーっ!?』とでも言いたげな顔をしたが、否定するわけにもいかず、仕方なしに頷く。
「そこの小さいお嬢さんと、美しいお嬢さん。お二方は、包囲の突破を手伝ってくれ。余裕があれば、俺達の援護もよろしく。」
「は、はい!」
「でも、二人だけになんて任せられないよー!危ないよー!」
フェアリーが泣きそうな声で叫ぶと、ヒューマンは優しく笑った。
「そう心配しなさんな。一人ならできないことも、仲間と一緒なら、何とかなるさ。」
そう言って、ヒューマンはウィンクを送る。その時、敵が動いた。
「さあ、話はここまでだ。お嬢さん方、行くぞ!」
その言葉を合図に、全員が一斉に動いた。
フェルパーが囲みの中に突っ込み、刀を振るう。その背中を、バハムーンが両手剣を振り回して援護し、傷を負えばセレスティアが
回復する。その二人を狙うモンスターがいれば、フェアリーがパラライズを詠唱して二人を守った。
エルフは矢を番え、迫り来るムスペルに矢を放つ。だが、敵は次々に襲いかかり、また一撃程度では怯まない敵が多い。
だんだんと押され始めるエルフ。だが、サーベルタイガーが目の前まで迫ったとき、そのサーベルタイガーは突然悲鳴を上げて倒れた。
慌てて隣を見ると、ヒューマンがフッと笑いかける。何だか不快になり、サッと目を逸らして戦闘を再開する。しかし、妙に余裕が
あるのが気になり、横目でチラッとヒューマンの戦いぶりを見てみた。
エルフは目を疑った。弓を使い続けてきた自分ですら、二発の矢を立て続けに放つのが精一杯なのに、ヒューマンは四本の矢を持っている。
その連射速度が、また異常に速い。1秒も掛からないうちに、その4本を撃ち終えてしまい、しかもその射撃は正確無比である。
その上さらに、ヒューマンは時々後ろを向き、フェルパーとバハムーンの援護までこなしているのだ。本当に同じ生徒かと、エルフは
本気で疑った。
「みんな、囲みは解けた!こっちへ!」
フェルパーの声が聞こえた。すると、ヒューマンはエルフの前に進み出る。
「お嬢さん、先に下がってくれ。」
「な、何を…!?」
「これでも、男なんでね。女性を後回しにしたとあっちゃぁ、男の風上にも置けないだろう?」
「っ…!わ、わかりましたわ。でも、あなたも無理はなさらないで。」
「わかってるさ。女性に心配かけないのも、男としての務めさ。」
エルフが引くと、ヒューマンは追ってくるモンスターに矢を放ちつつ後退した。その時点で、もう敵の残りは3匹程度である。
「さぁて。止めは任せるが……撃ちにくそうだな。」
とにかく下がることだけに専念したため、エルフの射線はバハムーンとフェルパーの背中に遮られている。これでは撃ちようがない。
が、ヒューマンはフッと笑うと、大きくキセルを吸い、フッとスモークリングを作り出した。
「お嬢さん、その輪を通して撃ってくれ。」
「ど、どうしてそんなことを!?」
「いやぁ、なに。協力して、倒してみたくなってね。」
ギリッと、ヒューマンの弓がしなる。
「わかり……ましたわ。」
いざ構えてみると、その輪を通すと射線はフェルパーとバハムーンの間を通るが、敵に当たることはない。それでも、なぜかエルフは
この提案に従ってみようと思った。
「前のお二人さん、弓の音が合図だ。それで終わらせよう。」
「わかったわ!」
「ちっ、いちいちうるさい奴め…!」
エルフが弓を引き絞る。目を細め、そして弦を離した。
矢が唸りを上げ、煙の輪はぐしゃりと形を崩した。それとほぼ同時に、ヒューマンも矢を放った。
ヒューマンの矢が、エルフの矢にぶつかる。軌道を変えられたエルフの矢は、見事にサーベルタイガーを撃ち抜いた。
「こ、こんな事が!?」
「す……すごい…。」
「いやぁ。お嬢さんの腕がいいからさ。さて、あとは……と、さすがに援護もいらないか。」
矢を番えようとしていたヒューマンは、バハムーンとフェルパーが敵を倒したのを見届け、弓を下ろした。そして、実にうまそうに煙を
吐き出す。
「……助かったわ。あなた、相当な実力者なんじゃない。」
そう言い、フェルパーが笑いかける。
「そうだよー!あんな状況だったのにすっごい冷静だったし、かっこよかったよー!」
「いやいや。俺だって焦ったさ。お礼を言うなら、こっちのきれいなお嬢さんに言ってくれ。」
「え!?」
当のエルフは、その言葉に目を丸くしている。
「お嬢さんが隣にいたから、俺も安心して自分の事に集中できたんだ。あんな状況でも、ダガーのように神経を研ぎ澄ませて狙えるのは、
大した実力だよ。」
「い、いえっ!それ……は…!」
実際はそんな事ないというのは、エルフ自身がよく知っていた。確かに命中はしたが、なかなか急所は捉えられず、それどころか
ヒューマンに何度も助けられた。それでも、ヒューマンはこうして自分を持ち上げてくれている。
「ああ。もちろん全員、やるべき事を果たしたから、あの状況も切り抜けられたんだ。前衛のお二人さんも大変だったろうし、後衛の
お二人さんも神経使ったろう。ま、おかげで俺は楽できたがね。」
愉快そうに笑うヒューマン。だが、そこにバハムーンが食って掛かる。
「みんなが必死に戦っている中、貴様はサボっていたと。そういうことだな?」
「バハムーン!」
フェアリーが止めようとしたが、その前にエルフがキッと睨みつけた。
「あなた、あの混乱の中、ちゃんとわたくし達を見られたんですの?」
「エ、エルフ…!?」
「あなた方も、素晴らしい活躍をしたのは認めますわ。だけど…。」
「まあまあ。そう、喧嘩しなさんな。」
ヒューマンが穏やかな笑顔で、二人の間に割って入る。
「実際、楽させてもらったわけだし、あながちそっちのお嬢さんが言うことも、間違いじゃない。」
「そんな事はっ…!」
「いやいや。気を使いなさんな。それより、そろそろ先へ進まないかい?ここで話していると、また俺のせいで遅れた気分になって、
どうにも居心地が悪い。」
それぞれ言いたいことは山のようにあったが、そう言われると中断せざるを得ない。一行は再び、フレイク地下道を歩き出した。
その後はモンスターから不意打ちを食らうような失態もなく、ヒューマンは相変わらず気のない攻撃をするようになっていた。しかし、
今の一行はそれを責める気にはならない。よくよく考えれば、気の抜けた攻撃ではあっても、倒してはいるのだ。そう考えると、なおさら
責める気にはならない。
さらに、同じ弓使いであるエルフは、他の仲間よりも彼の実力をよくわかっていた。ヒューマンの攻撃は確かにやる気がない。だが、
必ず敵の急所を射抜いているのだ。あれだけ気の抜けた攻撃では、急所に当てるのは至難の業である。それを、この男は易々とやって
のけている。エルフは、自分の中に積み上げられた自信が崩れていくのを感じた。同時に、ヒューマンに対する尊敬の念が浮かび上がる。
何より、ヒューマンは喋る相手によって、微妙に喋り方を変えているのだ。セレスティアには紳士的に、フェルパーには仲間として、
フェアリーには友人のように、バハムーンにはやや相手を持ち上げつつ、比較的平易な物言いをする。
そして、自分に対しては。
「きれいなお嬢さん。少し顔色が優れないようだが、どうかしたかい?」
「え!?あ、いえ、別にどうということは…。」
「そうかい?野にある花の色が突然変われば、誰だって不思議に思うものだが。」
「それは、その……同じ花とて、いつまでも同じ色を誇り続けることは、ありませんわ。」
「それもそうか。悪かったな、余計な事を言って。」
あまりうまくはないものの、わざわざエルフのような言い回しをしている。普通なら不快に思うところなのだろうが、このヒューマンに
限っては、わざわざそうした努力をしてくれることを好ましく思った。
最初こそ、彼に対する印象はいいものではなかった。だがそれゆえに、ひとたび惹かれ始めると、余計に強く惹きつけられた。
フレイク地下道を抜けるまでの、僅かな時間。それまでに、エルフの心は決まっていた。
ヤムハス大森林の宿屋に入り、それぞれに部屋を取る一行。この日は激しい戦闘もあったため、皆疲労が激しく、特に何をするでもなく
早々に眠りにつく者が多かった。ヒューマンも当然、早々に横になっていたのだが、かといって眠ってはいなかった。
不意に、部屋のドアがノックされた。ヒューマンは特に驚くでもなく、どことなく疲れた目を向ける。
「誰だい?」
「わたくしですわ。よろしくて?」
鍵を開けてやると、エルフはいつも通りやや尊大な態度で部屋に入る。が、纏う雰囲気はいつもと違う。
「こんな夜中に、どうしたんだい?」
「……あら、それを言わせるつもりですの?」
そう言い、妖艶な笑みを浮かべるエルフ。
「そりゃあね。夜中に突然美しい花が咲けば、驚かない者はいない。」
「夜の帳に身を隠し、咲き誇る花も、あるということですわ。」
流し目で見つめるエルフ。ヒューマンはその目を真っ向から見つめ返す。
「そのわけは、殿方ならわかりますわね?」
「わからないほど野暮ではないつもりだ。……だがね。」
ヒューマンは、ふうっと息をついた。
「残念ながら、俺は君の期待には添えないだろう。」
「あら、なぜですの?」
「……心に残るものは、いつだって最も美しいものさ。時が経てば経つほど、その輝きは増していく。」
エルフは少し意外な思いでヒューマンを見つめた。同時に、エルフとしてのプライドが、さらに彼女の心を煽る。
「そう。けれど、少しひどいですわ。」
「何がだい?」
「見るだけでは、花の本当の価値は、わかりませんわ。」
言いながら、そっと制服を脱ぐエルフ。ヒューマンはその姿を、目を離さず見つめていた。やがて、エルフが一糸纏わぬ姿を晒すと、
フッと呆れたように笑った。
「女性に恥をかかせるわけには、いかないね。やれやれ……強引なものだ。」
「こうでもしなければ、あなたは試そうともしてくれませんわ。」
「君の期待には添えないかもしれない。それでも、いいんだね?」
「望むところですわ。試しもせずに、価値を決めるなと言ったのは、あなたじゃなくって?」
「それもそうだ。なら、その香り……この手に抱くとしようか。」
ヒューマンもそっと、制服を脱いでいく。そしてエルフと同じように裸体を晒すと、エルフは一歩近づいた。
「飾らぬ花も、いいものでしょう?」
「いや、服はなくとも、月の光を纏っている。だが、それもまた美しい。」
「ふふ。本当に、ヒューマンとは思えませんわ。」
エルフの体をそっと抱き締め、長い耳に唇を寄せる。
「だが、言葉も体も同じ。飾れば飾るほど、その姿を隠してしまう。だから、今は飾らぬ言葉で言おう。」
僅かに体を離し、二人は正面から見詰め合った。
「きれいだ。」
「あっ…。」
エルフが答える前に、ヒューマンはエルフをベッドに組み敷いた。月の光が、エルフの体を白く照らす。
ヒューマンがそっと唇を寄せ、エルフは目を閉じて応える。唇を吸い、舌を絡め、吐息が混ざる。
やがて二人の間に白い糸を引き、ヒューマンが離れる。
「最後に、もう一度聞こう。本当に、いいんだね?」
「怖気づいたんですの?わたくしも生娘ではありませんわ。それなりの覚悟はありましてよ。」
「だろうね。これで生娘だったら、君の将来が楽しみでたまらない。」
「ひどい言い草ですわ。」
なじるように口を尖らせるエルフ。しかし、眉は寄っているものの、顔には笑みが浮かんでいる。
もう一度、二人はキスを交わす。ヒューマンの手が胸に伸び、エルフはピクンと体を震わす。声を漏らそうにも、口はヒューマンの唇に
塞がれている。
声を出させないまま、ヒューマンはエルフの胸を揉みしだく。時に優しく、時に強く、全体をこねるように揉むかと思えば、乳首を
摘み上げ、軽い痛みと共に快感を与える。
ヒューマンの手は、常にエルフが求めるところを的確に責めてきた。しかも、単純な快感一辺倒ではなく、時には痛みがあったり、
焦らされたり、まるで女のすべてを知り尽くしているかのような、的確すぎるほどの責めだった。
「ああ……お願い、ですわ。もっと……もっと、強く…!」
「おやおや。これじゃ、お嬢さんには物足りないかい?」
「そんな……意地悪なこと、仰らないで…!」
「ふふ、悪いね。君は普段から素敵な声をしてるが、今の君の声は一層美しい。だからこそ、意地悪をしてでも聞きたくなってしまう。」
体を弄び、心をくすぐり、ヒューマンは確実にエルフを高みへと導いていく。秘唇を撫で、優しく開き、指を入れる。既にエルフの中は
熱く震え、中からはヒューマンを受け入れる蜜が溢れている。
と、その手が止まった。不意に快感が途切れ、エルフはヒューマンに戸惑いの視線を向ける。その顔を、ヒューマンは正面から見据える。
「花が愛でられるのは、その美しさだけではあるまい?君が野に咲くカスミソウというなら、話は別だがね。」
その言葉の意味を、エルフは瞬時に察した。同時に、顔が真っ赤に染まる。
「わ、わかってますわ!ただ、その……ええと……あ、あなたがずっと、続けていたからですわ!」
「そうかい。なら、よろしく頼むよ。」
改めてヒューマンのモノを見てみれば、全然反応していない。それを見た途端、エルフは少しムッとすると同時に、エルフとしての
プライドが頭をもたげてくる。
ヒューマンを座らせ、その前に跪くエルフ。そして全然反応していないモノをそっと撫でると、優しく口に含む。
口に含んだまま先端部分を舌でこね、鈴口を舌先で突付く。その状態で軽く手で扱き、次に全体を口の中に収め、キュッと吸い上げる。
その奉仕に、少しずつヒューマンのモノも硬くなり始め、時折気持ちよさそうな吐息も漏れる。
「くっ、なかなか、うまいね。」
「あなただから、ここまでするんですわ。」
褒められれば悪い気はしない。エルフはさらに丁寧に、じっくりと舐め始める。男のモノを愛おしむように、恍惚とした表情で舌を
這わせるエルフの顔は、この上もなく妖艶な魅力があった。
やがて、ヒューマンがエルフの頭に手を当てる。
「もう、十分だ。それ以上されたら、俺が参ってしまう。」
「ふふ。満足できまして?」
「ああ。十分にね。」
エルフの体を優しく抱き締め、再び押し倒す。エルフの目は期待に満ち、男の心をくすぐるような光を湛えている。
そっと、エルフの秘唇に押し当てる。エルフはピクッと体を震わせ、そして続きをねだるように、ヒューマンの首へ腕を回した。
「あっ!あぁ!」
ゆっくりと、ヒューマンのものがエルフの中に沈んでいく。今までよりもさらに大きな快感に、エルフは激しく身を震わせる。
亀頭を飲み込み、それをさらに深く咥え込み、やがて腰と腰がぶつかる。エルフは上気した顔でヒューマンを見つめ、嬉しそうに笑った。
ヒューマンが動き始める。だが、その動きは単純な抜き差しではなく、奥深くに入れたまま押し付けるように動かしたり、あるいは
入り口付近を何度も亀頭が出入りするという、エルフからすればかなり変則的な動きだった。しかし単調ではない分、快感は大きい。
「あっ、んっ!も、もっと!あっ!強くっ!」
ヒューマンの首に腕を回したまま、ぎゅっと腰を押し付けるエルフ。その行為自体が快感を呼び、エルフの膣内が強く収斂する。
それに合わせ、ヒューマンの動きが徐々に激しくなっていく。体内を激しく突き上げ、それこそ子宮を叩くような動きとなり、
エルフの体は激しく揺すられる。そんな荒々しい動きも、今のエルフには興奮剤でしかない。
「も、もうわたくしっ…!もうっ……もうっ!」
「くっ……俺ももう、出そうだ…!」
切羽詰った声を上げ、なお一層激しく突き上げるヒューマン。その刺激に、エルフも一気に上り詰めた。
「うあっ……ああぁぁ!!!」
「くぅっ……はあっ!」
達する直前、ヒューマンは強く息を吐くと、エルフの中から自身のモノを引き抜いた。快感に体をのけぞらせ、激しく震えるエルフの腹に、
白濁した液体が降りかかっていく。
しばらくの間、二人は快感の余韻に浸っていた。やがて、エルフがふぅっと息を吐き、少し間延びした声で話しかけた。
「……悔しいですわ。」
「………。」
「直前で抜かれるなんて……わたくしでは、あなたの冷静さを奪うまでには、至りませんでしたのね…。」
「それだけ、俺の記憶にあるものが強いってことだ。それに、ヒューマンの身としては、おいそれと中に出すわけにも行かないだろう?」
鷹揚な笑みを浮かべ、ヒューマンはキセルに火をつける。
「俺達は、繁殖力だけは強いからな。相手が誰であろうと、妊娠させちまうのぁ、厄介なもんさ。」
笑いながら言い、フーッと煙を吐き出す。そんなヒューマンの横顔を見つめ、エルフはその背中にそっともたれかかった。
「本当に……悔しいですわ…。あなたとなら、それでもわたくしは、構いませんでしたのに…。」
「俺よりいい男なんざぁ、ゴロゴロしてるさ。今はそんなのがいなくたって、そのうち相手の方が放っておかなくなる。」
正面を見たまま、ヒューマンは笑う。その顔をそっと自分の方に向けさせ、エルフは煙の残る唇に唇を重ねた。
「……この味、覚えておきますわ…。」
その目には、涙が溜まっていた。そんなエルフに、ヒューマンは優しく微笑みかける。
「そうだな……いつか、その味を忘れさせる相手が、出てくるまで……な。」
そう言い、エルフの肩を抱く。その腕に抱かれ、エルフは声もなく泣き続けた。
以上、今回はここまでとなります。
あ、ちなみにこれのせいでSS投下減ると俺が泣くので、書く方いればガンガン投下してください。
とりあえず、今回はこの辺で。
ヒューマンかっこよすぎる・・・
GJ!
うーむ、良い男。GJです!
そんな彼を仲間に迎えた彼女達の明日はどっちだ
…エルフがクラッズだったら俺のPTと全く同じ構成だw
GJ!エロフ最高!
けどみんな学生!学生ですよ!?
すでにピロートークが学生じゃねぇwwwwww
どこのモーテルの会話だwwwww
いいぞもっとやれw
GJ!!
いやヒューマン確実に30超えてるwww
スタミナで言うと78ぐらいか?www
とにかくGJ!!
30代じゃまだまだ青い、あの渋さは40代以上w
すばらしい、もっとやれ
GJ
ホルデアでバテてたところを見ると50代行ってそうな気がしなくもない
冷静に煙草のせいだろと言ってみる
だっておじさんだと妄想しにくいんだもの!!
>>311 「おじさん」と「おじさま」の間にある大きな違いを感じるんだ
>>311 「おじさん」は男なら歳を取れば誰でもなれる
「おじさま」は努力しなければなれない、その差だ
手から国旗を出せるのが「おじさま」で、そうじゃないのが「おじさん」だ
心を盗めるのが「おじさま」で、そうじゃないのが「おじさん」だ
age
ホシュ
デイアボロス×………?
ノームの成長と歳についてはよく分からないので一般的な種族と同様に考えてください
彼は友達が居なかった。
いや、正確には作らなかった。
通常新入生は入学後に食堂などでパーティを作るところから始める。
彼は魔術師という需要が高い学科だった。当然色々なものから誘われたが、それらに対して一言も返事をしないで無視した。
彼はそのまま地下通路へと向かい一人で戦った。
一人だと当然戦うのは大変だ。最初のうちは一戦戦っては帰り、一線戦っては帰りの繰り返しだった。
しかしそのうちレベルが上がってくるとすこし遠くまでいけるようになった。その間もパーティに誘われたりもしたが彼はその全てを無視した。
そのせいで、いまだに彼がしゃべっているのを見かけたものは居ない。
そしてついに彼は最初の通路を制覇した。しかし同時期に入学したものは既に2,3の通路を制覇していて、地下迷宮に行ったものまで居た。
周りは彼を見下して中傷したりもしたが、彼はやはりその全てを無視し続けていた。
しかしある時彼が転科したことで、周りのものは逆に彼を畏怖するようになった。
僧侶に転科したので、ダンジョンに居続けられるようになったからだ。
レベルの上昇率は急勾配へとなり、彼を見下していたものまでを抜き去った。
いつしか彼は、たった一人で学園双頭の一角という地位を手にしていた。
彼女は人気者だった。
もともと友好的な種族であったし、性格は善だった。そして同種族の中でも一際綺麗だった。
だがしかし、本人の人当たりのよさのせいか、他の女子からねたまれる事も無く、善悪種族男女関係なく皆彼女の虜だった。
僧侶だった彼女はパーティへの需要も高かったので、色々な人から誘われた。
しかし親友であるエルフと、元々組む予定だったので彼女の作ったパーティへと入ることになった。
皆仲が良く、連携率も高いパーティだった。他のパーティよりも速くレベルが上がり遠くまでいけた。
初めて迷宮へと潜ったのも彼女たちのパーティだった。依頼も数多くこなして、学園内での人気も高いパーティとなった。
後輩の子達に昼食を誘われたりもしたが、彼女はパーティの皆と食べるのが好きだったのでそれを断った。
彼女たちは学園の発展に最も貢献し、先生たちからの信頼も高かった。
いつしか彼女たちは、名実共に学園双頭の一角という地位を手にしていた。
この話は、とある日の夕食の食堂から始まる。
その日の探索を終えて一旦みんなと別れたセレスティアは待ち合わせの食堂へと急いでいた。
回りの皆が声をかけてきたりするのに対し、柔らかい口調で丁寧に対応していたので少し遅れてしまっていたのだ。
そして食堂に付き入り口付近できょろきょろと辺りを見回すと既に皆が集まっているのが見えた。
「ごめんなさい、遅れました」
ぺこりと頭を下げて謝った。
「おそいっ!!けどかわいいから許す」
エルフにそういわれてホッとした。まずありえないことだがこんなことでエルフの機嫌を悪くしたくないのだ。
トレーに食事を載せて、今日の反省などを話しながら席を探した。
6人で座れるような席は一つしか空いていなかった。そこだけやけに空間が広く感じる。
周りの者は明らかにその一角を避けている。
なぜだろう、と思ったその疑問はすぐに答えが見つかった。
一度学園を出たら一月ほどは帰ってこない彼が、そこに座っていたからだ。
周りの席は全て空席だった。それどころか彼の傍を誰も通らない。まさにそれは、彼が孤独の王である事を表している。
とりあえずそこしか座れなかったのでそこへと向かう事にした。エルフを促しその一角へと足を向ける。
だんだんと大きくなっていくその背中は、一般的なディアボロスよりも少し小さく見えた。
「ここに座ってもよろしいでしょうか?」
そう尋ねたが、彼はこちらに一瞥もくれずに淡々と食事を続けた。
少し困って仲間のほうを向くと肩をすくめたり、首を横に振ったりしていた。
その中でエルフはその態度が気に入らなかったらしくトレーをテーブルに荒っぽく置くと、彼の肩に手をかけ顔をこちらへ強引に向けた。
長めの髪の毛が左目を隠しており、唯一見える右目は深い青色をしていた。しかしその目からは何の感情も覗けない。
「あんた返事もできないの!?」
おそらく彼に対して怒鳴り飛ばせるのはこの学園で彼女だけだろう。げんに他のメンバーや周りの生徒は少しおびえた目をしていた。
実際自分も若干の恐怖を感じている。彼は学園内で売られた喧嘩に対し再起不能まで追い込むのが常だと知っていたからだ。
しかし彼は何の言葉も返さずに、自分のトレーを持ち上げると返却口へと向かっていった。
さながらモーゼの海のように彼の前の生徒たちが端によけた。
エルフはまだ言いたいことがあるようだったがメンバーのフェアリーに抑えられて仕方なく席へと座った。
少し雰囲気が悪かったが、エルフは気持ちをすっぱりと切り替えたらしく何時もの明るい姿へと戻っていた。
しかしメンバーの一人、ヒューマンの少年はさっきのディアボロスの態度が気になるらしい。
基本は無視の彼でも、掴み掛かったりすればそいつを半殺しにしてしまうのだと言う。
ふと周りの生徒の会話を聞くと皆もその話しをしているようだった。
学園トップの戦いを避けたのではないか?単に調子が悪いだけなのでは?
色々な憶測で話が飛びかっている。
しまいにはエルフの事が好きだから手が出せなかったと言うものまで居る。
パーティメンバーも同じ事を考えていたらしく皆表情が変だ。
「あんなのに好かれていると思うとゾッとするね」
エルフの言葉におもわず笑ってしまう。冗談めかして言っているが、本当に不快だといった表情だ。
「私は好かれる事を嫌だとは思いませんけど」
「物好きだねー。私はあんなのお断りだよ」
「どんな獣も愛を知れば飼いならせる」
そう言って割り込んできたのはパーティの司祭を勤めるノームの少女だ。
普段は無口だがその知識は幅広く、彼女が居なければ私たちがここまで強くなる事も不可能だっただろう。
「ノーム、あんたまであいつの肩を持つのか?」
「私たちが唯一彼らを理解できる種族。それに私と彼は昔からの知り合いだった」
「へぇ、じゃああいつが何で私に手を出さなかったが分かるのかい?」
その質問に対しノームが首を縦に振ったところで気がついた。食堂中の生徒が自分たちの会話に注目している。
ノームの前から知っていた宣言もびっくりしたが、それよりも彼の心が分かると言うほうが驚きだ。
「あなたがエルフであり女だから」
「え?」
「彼は本当はやさしい存在。普段の姿は偽りの存在」
その回答に対して食堂中の生徒は一瞬ぽかんとなった。
悪魔、鬼神、修羅……彼に付いた二つ名は数知れなかったがその中にやさしいと結びつく言葉は無かった。
それはつまり普段の行動にやさしさに含まれる行動が無いということを表している。
「これから先の話は大々的には話せない、付いてきて」
ノームはいまだに頭が混乱している生徒たちを残して自室へと帰っていった。
とりあえず話を聞いてみようと思いエルフと共にもう見えない背中を追っかける。
部屋の位置は知っているのでそんなに急ぐことは無いが好奇心が強かったので足は自然と速くなった。
「入って」
ノックの後に声をかけると扉が開いて彼女が出てきた。
一人部屋だったのでイスが一つしかなかったがベッドに据わるよう言われたので私はふちに腰掛けた。
エルフは下の部屋の住人の事を考えずにベッドにダイブした。注意しておこう。
「それでさっきの続き聞かせてくれるかな?」
ノームは一度首を立てに振り昔の話を始めた。
その内容は小さいころに一緒に遊んだ話だとか、二人で作ったケーキがおいしかったとか、
その全てがほほえましい内容のもので、とてもじゃないけど今の彼からは想像できないようなものだ。
「だけど……彼はある時から変わった」
急に真剣な表情になり、少し楽しそうだったノームの声も引き締まったものへと変わった。
「ある日私の家に着た彼はぼーぜんとした顔で言った」
『おれ、とんでもない事をしてしまった』
「彼には兄が居る。あるとき彼はその兄に連れられとある地下通路へと行った、
そこでは一人のエルフの少女が犯されていた。」
ちっ、と小さく舌打ちをしたのはエルフだった。元々容姿が美しい種族であるのでそうゆう目でしょっちゅう見られるからだ。
彼女も何度か危ない目にあっているがうちのパーティのレベルに追いつけるものは居なかったので大事には至っていない。
「彼は兄に男になれと言われてその少女を犯した。でも彼はそれを後悔している」
『泣いて…たのに……嫌だって……叫んでたのに……俺は…なんで……あんな事を……』
「自殺しようともした。私はそれを止めて罪滅ぼしのために生きれば良いと進言した」
『そう……だな…俺も…もっと力を…そして何かできる事を』
「彼が皆と距離を置くのは自分の暴走が怖いから」
『お前も、俺なんかとは関わらないほうが良い。もう過ちを犯したくない』
「そして不良に対して容赦が無いのは悪を憎んでいるから」
『俺が死ぬのは世界の悪が全て無くなった時だよ』
「それでいて自分が絶対の悪だと思い込んでいる」
『もし、次になんか起こしたら……お前が俺を殺してくれ』
「だから彼はいまだに苦しんでいる」
部屋が沈黙に包まれた。
彼の人格形成の根元はたった一つの事件。被害者ではなく加害者だからこそ罪悪感という苦しみに襲われる。
自殺まで考えたというのだからかなり思いつめているのだろう。
「だから、二人に彼を救って欲しい」
沈黙を破ったのはノームだった。
「誰かが彼を許してあげないと、一生苦しんだまま。今でもたまに……」
最後まで言う前にドンドンッと強く扉が叩かれた。ノームは扉をじっと見つめた後、私たち二人を立たせてクローゼットの中へと押し込めた。
少し狭かったが、小柄な二人なので何とか収まった。ノームはそれを確認すると部屋の扉を開けて誰かを招き入れた。
ノームに連れられ、フラフラと入ってきたのは彼だった。ベッドに腰掛けた彼は頭を抱えて震えだした。
「今日……お前のパーティのエルフに睨まれた時、死にたくなった」
初めて聞いた彼の声は普段の姿からは想像できないほどに弱弱しかった。
「今まで…罪滅ぼし…の為に生きてたけど……さっきので……心が、折れて…ぐちゃぐちゃに」
そして後は聞き取れないぐらい小さく、殺してくれと呟いた。
続く
さて、続きどうしようか
×エルフ?×セレス?×ノーム?
予定ではセレスだった(視点がセレスなのはそれが理由)けど他のでも行けるんじゃね?と気がついたよ
4Pは書けませんけどね
セレ視点で始めたならセレ視点で終わらせんと
ディア男、結構支離滅裂なヤツだなw
自分の事ぐらい責任持てよw
すげー鬱キャラwwww
女の子に睨まれて、昔縁切りした幼なじみんとこに泣きつきにいくとかちょっとフォローがキツいわ
4Pがダメなら、あと一人加えて5Pでどうだ。
あるいは一人減らして3P(ry
セレ子以外だと、今までの視点は何だったんだということになるぞw
セレ子視点でノーム×ディアというのはどうだい?
ディア男結構芯が弱いな。てか女性恐怖症の疑いがある。
ここまできてまだあのエル子は影響力を持っているのか。
作者的に考えて別人じゃね
普通に別人じゃろ
333 :
桐漱:2008/11/24(月) 22:48:46 ID:eqEPHeQA
お久しぶりです。知らない方が多いでしょうがまぁお久しぶりと言っておきます。
さて、エル娘が大人気ですね。しかし、忘れないでください。フェア男にエル男。無視されまくって可哀想です。草場の陰で泣いてますよ、きっと。
まぁそれは置いといて、私の話は【黒】ヒューマン男×【青】バハムーン女のノーマルです。エロは後半でご勘弁。では、どうぞ。
334 :
桐漱:2008/11/24(月) 22:50:50 ID:eqEPHeQA
「君、何で地下道行かないの?」
ある日、春の暖かい日差しが窓から差す中、図書館で読者をしているとヒューマンが話しかけてきた。
「何でヒューマンにそれを言わなくてはいけない?」
私は質問する。
「お、質問に質問で返すとテストでは0点だぞ? まぁどうでもいいか。言いたくないなら答えなくていいよ。いつ見てもここにいるから気になっただけだし」
ヒューマンはそう言うと向かい側の椅子に座った。
「‥‥パーティーに入ってない」
私は最初の質問に答える。ヒューマンが望むであろう答えで。
「おや、それは珍しい。頼りになるから無条件で人気者になれる種族のバハムーンが誰の誘いも受けなかったとは」
ヒューマンはわざとらしい程に驚いて言う。
「‥‥」
私は応えず本へと視線を戻す。私だってここ――ランツレートへ入ったからには冒険者として地下道に行きたい。でも私は運がなかった。特待生ということもあり、バハムーンにありがちなこのやや傲慢な性格が上級生の反感を買い、イジメの標的となったのだ。
そして私とパーティーを組んでくれる人など無く、一人ザスキアなど近いとこまで行っては戻り、趣味の読者をしている毎日。最近では誰かと会話することすらなくなった。
「用はそれだけ?」
私はキツく当たる。
「あぁそれだけだ」
「え‥‥?」
私はその返答に何故か泣きたくなった。キツく当たったはずなのにどこかで私はヒューマンに何らかの期待を抱いていたのかもしれない。下等種族だとして見下していたヒューマンに。
「すまないな、読書の邪魔をして。では」
ヒューマンはそう言って立ち上がる。
「あ‥‥ま、待て!」
「え? ちょっ、危なっ! ぐはっ!」
気が付いたら私はヒューマンを押し倒していた。
「いててて‥‥何だ? 俺が何かしたか?」
「え? あ、あぁ‥‥あの、その‥‥」
私はヒューマンの質問に何も答えられなかった。当然だ。反射的にやってしまったのだから。口からでるのはいつもの素っ気ない返答ではなく、えぇとか、あのとかいう曖昧な言葉しか言えない。何とかして切り抜けなくては‥‥。
「‥‥お前さ」
「な! な、何だ?」
あれこれ考え事をしていると急にヒューマンに呼ばれ、ビックリしてしまう。ヒューマンのクセに私を驚かすとは‥‥。少しイラッとする。
「暇か?」
「は?」
暇か? って何だ? 私を馬鹿にしているのだろうか。この男は。
335 :
桐漱:2008/11/24(月) 22:52:29 ID:eqEPHeQA
「は、じゃなくて暇なのか暇じゃないのかどっちだ?」
「それは‥‥暇、だがお前には関係無――」
「よし、冒険に行こう」
「は?」
何だ? 一体何がどうなってそうなった!?
「よい、しょ!」
「え!? あ、ちょっ、ちょっと!?」
「何だ? 肩で担ぐのが嫌か? それならそうと‥‥」
「違う! 何で私がヒューマンと一緒に行かなくてはいけない!」
「いやさ〜実はメンバー探しをするために遠くバルタスクから来たんだけど、み〜んな忙しそうで暇そうな人を探していたんだ。
いやはや、諦めていた所に良い人材に巡り会えるとは‥‥八百万の神々に感謝感激、っと」
「少しは私の話を聞けっ!」
「いやだって君、暇なんだろ?」
「そりゃあ‥‥暇だが‥‥ってそれとこれとは違う!」
「暇なら行こう! 目指せ全地下道制覇! さぁ、出発だ!」
「ちょ、離せ! 離せぇええ!」
こうして、孤独なバハムーンの最初の仲間は相性最悪のヒューマンとなった。
彼女は後悔した。こんなのに期待を抱いてしまった事に。そして彼女は少し嬉しかった。初めての仲間が出来たことに。
【序言・終/続く】
336 :
桐漱:2008/11/24(月) 22:55:29 ID:eqEPHeQA
とまぁ、序言ですので短いです。ここから徐々に話が展開していきますので繋ぎ程度に書いていきます。では、また会いましょうノシ
最後の二行だけ、一人称が三人称になってる。
空行を入れたり、ダッシュ(――)を文頭に入れたりで空気変えるといいよ。
出来れば、全部一人称で統一した方がいいと思うけど。
懐かしい人が帰ってきたな
懐かしい人が帰ってきたな。
これで昔のようにこのスレも活気付くかな?
そのためにも早く今書いているSSを終わらせねば。
スレが活気付いてきたようで何よりです。では、前回の続き投下します。
ヤムハス大森林の宿屋を出た一行は、再び空への門を目指した。そのために、今度はトハス地下道に入ることとなったが、ここはかなり
敵が強い。フレイク地下道でも、下手をすれば危機に陥る一行である。そのため、後衛であるセレスティアとフェアリーは、一度戻って
ランツレートから迂回するべきだという意見を出したが、その道のりが非常に長いことと、ヒューマンの実力が飛びぬけていること、
そして、またヒューマンにホルデア登山道を歩かせたら、彼が死んでしまいそうだという理由により、その意見は採用されなかった。
さすがに、ここまで来ると敵の強さはかなりのものとなっている。フェルパーの白刃一閃では倒しきれず、またバハムーンの一撃ですら、
耐える敵が出始めている。魔法を使う敵も極端に増え、後衛は特に負担が激しい。
そんな状況においては、エルフとヒューマンの活躍が目覚しい。危険な敵を次々に射抜き、パーティへの被害を減らす役割を担った二人は、
それこそ水を得た魚とでも言うべき活躍を見せる。それに負けず、フェアリーも無理のない範囲で魔法を使い、二人を助けている。
しかし、最も忙しかったのはセレスティアであろう。回復に回ることもあれば、シャイガンで闇属性の敵を葬り、あるいはスリングを
使って戦闘補助まで行う。歩いていれば魔力が回復するとはいえ、残りの魔力に気を配り、常に最善の選択を取り続けねばならない
彼女の負担は著しい。
だが、悲しいかな、一行の中で、それに気付いている者は少ない。元が目立たないタイプなので余計なのだが、すべてを
そつなくこなしてしまうが故に、その苦労は誰にも知られる事がないのだ。真に素晴らしい動きは、当たり前の動きに見えてしまうという、
いい見本である。
それでも、彼女は文句一つ言わずに頑張っていた。しかし、無理をすれば、いつかは綻びというものが出てしまう。
激しい戦闘を潜り抜け、ようやく中央にたどり着いた一行。そこで、ヒューマンが口を開いた。
「悪いが、少し休ませてくれないか?さすがに、体がきつい。」
「ふん!弓を撃つだけの貴様が、よくもそんな口を利けたものだ!」
相変わらず、バハムーンはヒューマンに食って掛かる。が、何かにイラついているのか、見事なまでの失言であった。
「それは聞き捨てなりませんわ!あなたはただ剣を振り回せばいいのでしょうけど、こちらは一本の矢を放つのにすら気を使うんですのよ!
それをよくも、矢を撃つだけなどと…!」
「うっ……わ、私は別に、お前を責めたわけでは…!」
「弓を撃つだけ、と言えば、わたくしも含まれますわよね!?」
「まあ、まあ。そう、喧嘩腰になりなさんな。剣を振り回すにも、苦労はある。弓を撃つにも、苦労はある。だが、それでも俺達は
楽な方さ。」
ヒューマンが言うと、エルフは少し不服そうな顔をした。
「で、ですけれど…!」
「本当に辛いのは、パーティを引っ張るリーダーに、後衛さ。その中でも特に辛いのは……なあ、美しいお嬢さん?」
「えっ?」
突然話を振られ、セレスティアは目を丸くした。
「まずリーダーは、パーティの力を把握し、それに見合った進み方を心がけなきゃならない。その上で、自分の役割を果たす。そうだな?」
フェルパーは少し恥ずかしそうに微笑み、頷いた。
「魔術師は、自分の魔力と相談しつつ、敵の習性を見極め、なおかつ属性までも見極めて魔法を使う。時には、パーティの補助魔法も
使わなきゃならない。きついのに、よく頑張っている。」
フェアリーはヒューマンの話題にのぼる事自体嬉しいらしく、もう満面の笑みである。
「ところが、僧侶となると、話はさらに複雑だ。補助魔法をかけ、回復をこなし、直接攻撃をこなすこともあれば、攻撃魔法まで
使わなきゃならない。しかも、すべて魔力に気を使いつつ、だ。それでも、文句一つ言わないお嬢さんは、本当によくやっている。」
「いえ、そんなっ…!わ、わたくしは別に…!」
褒められるのに慣れていないセレスティアは、真っ赤になってうつむいてしまう。
「それに比べ、俺達は手にした武器で敵を倒すこと、それだけだ。まあ、攻撃を受け止めるとか、そういう用事もあるがな。はっは。」
本来なら、そこでこの話も終わったのだろう。だが、自分の相棒ともいえる弓を軽く言われたエルフの怒りは、そう簡単に鎮まらなかった。
「そうですわ。わたくしもヒューマンも、常に敵を倒していますわ。ですけど、あなたは、敵を倒しそびれたことが、何度ありまして?」
ヒューマンが『しまった』という顔をしたときには、もう手遅れだった。バハムーンは途端に色をなし、エルフに掴みかからんばかりの
雰囲気になる。しかし、危ういところで自制心が働き、掴みかかることはなかった。
「……ちっ!」
舌打ちし、地面に唾を吐き捨てるバハムーン。ヒューマンはため息をつき、エルフに困った笑顔を向けた。
「お嬢さん……気持ちはわかるがね、火に油を注いでどうするんだ…。」
「……そ……それは、悪かったですわ…。で、でも!ただ弓を撃つだけなんて言葉…!」
「……どこが間違っていると言うのだ…!」
地の底から響くような、低い声が聞こえた。
「私は敵の真っ只中に飛び込まねば戦えないが、貴様らは遠くから矢を撃つだけだ!フェアリーにしてもそうだ!自分は安全なところから、
ただ魔法を撃つだけなのだからな!楽なもんだろう!?」
とうとう、バハムーンは本格的に頭に血が上り、誰彼構わず八つ当たりをし始めた。
「何をー!?」
「バハムーン、もうやめて!これ以上喧嘩してどうするのよ!?」
フェルパーが止めに入るが、もう止められなかった。そしてついに、バハムーンの怒りは無実のセレスティアにまで向けられた。
「セレスティアに至っては、敵を倒せもしない攻撃に、攻撃魔法は出し惜しみだ!回復だけしていればいいものを…!」
「お嬢さん……いい加減にしな。」
突如低い声が響き、バハムーンはビクッとして言葉を止めた。そして、改めて一行を見回す。
フェアリーも、エルフも、ヒューマンも、セレスティアすらもが、自分を睨んでいた。ヒューマンとフェアリーはまだしも、エルフや
セレスティアのその視線には耐えられなかった。
「……くっ!貴様らと私を……同等に見るなっ…!」
精一杯の減らず口を叩き、バハムーンはさっさと先頭に立って歩き出した。都合上、休憩はそこで終わりだった。
エルフとフェアリーは、軽くバハムーンの悪口を言って歩き出したが、セレスティアは悔しそうに唇を歪め、拳を握って立ち尽くしている。
その肩に、ヒューマンは優しく手を置いた。
「本気にしなさんな。あのお嬢さんとて、本気であんなことを思ってはいないさ。」
「……っ!」
「むしろ、俺のせいで、あのお嬢さんにも、他のお嬢さん方にも、そして君にまで迷惑をかけてしまった。どうか、許してくれ。」
そう言い頭を下げるヒューマン。セレスティアは返事をしようとしたのだが、声を出せば余計なことを言ってしまいそうで、
口を開くことができなかった。
結局、セレスティアは何も答えないまま、一行の後を追って飛び始めた。何だか、非常に後味の悪い休憩になってしまった。
それからも、一行の空気は最悪だった。誰もほとんど喋らず、全体の空気がギスギスしている。バハムーンは怒りをモンスターに
ぶつけているのか、いつも以上に勇ましく戦っている。
そんな折、一行はエビルウルフの群れに出会った。5匹ぐらいの群れは珍しくもないが、この時は10匹を超える大軍であった。
魔法を使いこなし、戦闘能力も低くないこのモンスター相手では、さすがに慎重に戦わざるを得ない。
「バハムーン、ここは防御に徹して。私とあなたで敵を引き付けて、その間にみんなに減らしてもらう。」
だが、バハムーンは返事をしなかった。
「バハムーン、聞こえてる!?」
「……お断りだ…!」
「え?」
唇を噛み締め、バハムーンは敵の群れを睨んだ。
「どうして私が、奴等の力など借りなければならんのだ!?あんな奴等など私一人の力でも事足りるっ!」
「あっ!?バハムーン、待って!ダメ!」
止める暇もなかった。バハムーンは剣を抜き放ち、一人で突っ込んで行ってしまった。
確かに、言葉通りの凄まじい戦いぶりであった。迫り来る敵を次々切り伏せ、敵の攻撃など当たりもしない。
だが、バハムーンは見逃していた。敵は、エビルウルフだけではないということを。
突如、空中から何者かが襲い掛かる。それに驚き、バランスを崩すバハムーン。そこにエビルウルフが切りかかる。何とかそれは防げた
ものの、空中からの攻撃はさらに続く。それに合わせ、エビルウルフの攻撃も激しさを増す。
「ねこうもりか!あいつら、上空で機会を窺ってたんだな…!」
既に、バハムーンは完全包囲されている。おまけに、バハムーンも敵も激しく動き回るため、下手に遠距離から攻撃できない。
「どうしますの!?このままでは、バハムーンが…!」
エルフの言葉に、フェルパーは答えられない。ああなっては、助け出すことが到底不可能なのだ。それでも、見捨てたくないと言う
気持ちが、彼女の口を封じてしまう。
「……見捨てましょう。」
「えっ!?」
「セ、セレスティア…!?」
最も意外な人物から、最も意外な言葉が放たれ、一行は耳を疑った。だが、セレスティアはきっぱりした口調で続ける。
「彼女のために魔力を割けば、この先の探索は難しくなります。それに、蘇生もできます。彼女のために、みんなを危険に晒すなんて
ことは、僧侶としての立場から、できません。」
「……バハムーン…!」
フェルパーは唇を噛み、バハムーンを見つめる。が、そこで当のバハムーンが叫んだ。
「お前ら、私のことなど見捨てろ!構うな!」
「だけど…!」
「本人も、ああ言っているんです。ここは、彼女のためにも、そして私達のためにも、見捨てるのが最良だと思います。」
反論のしようはなかった。そもそもが、バハムーンは勝手な行動をした結果、危機に陥っているのだ。わざわざ危険を冒してまで助ける
必要など、ないに等しい。
それでも、フェルパーは悩んだ。だが、ついに決断し、口を開こうとしたとき。
ヒューマンが、スッと前に歩み出た。
「な、何をするつもり!?」
「見捨てるのは、性に合わなくてねえ。」
「で、ですけど!」
言いかけたセレスティアの目を、ヒューマンは正面から見つめた。
「美しいお嬢さん。君の意見は、まあ正しい。判断も間違ってはいないだろう。だが、それは本当にパーティとしての意見かい?」
自分を見つめる、純粋な瞳。それに耐え切れず、セレスティアは目を逸らした。
「……君は、さっきの彼女の言葉が、許せないだけだ。」
セレスティアの体が、ビクンと震えた。だが、ヒューマンは口ぶりとは違い、優しい笑みを浮かべた。
「君を責めるつもりはない。気持ちはよくわかるからね。だが、自分で間違いだったと思うなら、彼女を助けてやってくれ。」
「………。」
「どうしてもできなければ、それはそれで構わない。だが、その代わりに俺を助けてくれ。」
「何を……するつもりですか?」
「間違いを、そのままにする気はないさ。」
「ヒューマン、ダメだよー!いくらヒューマンでも無理だよー!」
フェアリーが叫ぶが、ヒューマンはやはり優しい笑顔を向ける。
「俺に対する優しさは嬉しいよ、小さなお嬢さん。だがね、今はそれを、あの逞しいお嬢さんに向けてやってくれ。」
「でもぉ…!」
「間違いを間違いのまま、放っておくわけにはいかんさ。あのお嬢さんのも、そして、君のも、ね。」
セレスティアは何も答えられず、ただじっとうつむいていた。
その時、敵の中の数匹がこちらに狙いをつけてきた。ヒューマンは矢を番えつつ、振り返らずに言う。
「大丈夫、死ぬ気はない。あの中に飛び込めりゃ、お嬢さんと一緒に戦えるからね。」
言い終えると同時に、ヒューマンは走った。その前を、エビルウルフが塞ぐ。
と、黒い影が横からヒューマンを追い抜き、エビルウルフに白刃一閃を見舞った。
「お嬢さん…!」
「お願い……あの子を、助けて!」
「ああ、任せてくれ。」
立て続けに4本の矢を放ち、バハムーンを囲む群れの中に飛び込む。突然の襲撃者に一瞬、囲いが崩れた。その隙を突き、ヒューマンは
群れの中心に飛び込むと、傷だらけになったバハムーンと背中を合わせた。
「よう、お嬢さん。無事だったかい。」
「き……貴様、何をしに来た!?」
「なぁに。少し苦戦してるようだから、助太刀に、ね。」
「ふ、ふざけるな!助けは不要だと言ったはず!私に恥をかかせる気か!?」
「死んで守られる名誉なら、最初からない方がいいさ。」
吐き捨てるように呟くと、ヒューマンはキセルを咥えたまま煙を吐き出した。
「な、何だと!?」
「ま、それは俺の考えだがね。そんなわけで、俺は俺の考えに従い、お嬢さんを助けに来た。意見が合わないのは、諦めてくれ。」
楽しそうに笑うと、ヒューマンは弓を肩に引っ掛け、腰から黒曜石の剣とバックラーを取り出した。
「なあ、お嬢さん。」
「な……なんだ!?」
「どうしてそう、自分の価値を認めさせようと、急くんだい?」
「なっ……何をっ…!?」
「お嬢さんが強いのは、み〜んな知ってる。なのに、どうして今更こんな無茶を?」
そこまで言ったとき、囲みが一気に小さくなった。二人は一度話を中断し、戦闘を開始する。
バハムーンが両手剣を振り回し、ヒューマンはバックラーで敵の攻撃を捌きつつ、片手剣で切り返す。たまに、二人の周りにねこうもりの
死体が降ってくる。フェアリーとエルフの援護だろう。
一通りの攻撃を捌ききり、二人はまた背中合わせになった。
「貴様なんぞに……貴様なんぞに、私の気持ちがわかるものかっ!」
「ああ、わからない。仲間を危険な目に遭わせてまで、そうも力を誇示したいなんて気持ちはね。」
「誇示だと…!?私は、そんなつもりではない!」
「ほう。なら、どんなつもりだい?」
「くっ……私は……敵を切り伏せるのが、私の役目だ!それが……それが、新入りである貴様や、エルフなんぞに負けるとは…!」
「………。」
ヒューマンはつまらなそうに、紫煙をくゆらせる。
「お嬢さん。強さってのぁ、色々ある。正確に敵を射抜く力だったり、仲間をまとめる力だったり、あるいはじっと状況を見極め、
自身は目立つことなく、裏方に回ることのできる力だったり、な。」
「何が……言いたい…!?」
「それぞれ、強さの基準なんてのは、違うんだ。言い換えれば、この中に強くない奴なんてのは、いない。なのに、どうしてそう自分の
強さに、こだわる?」
「……敵を倒せない戦士が……どれほど滑稽なものか…!」
「やれやれ、頑固なお嬢さんだ。」
ヒューマンは実に面白そうに笑った。
「この戦いの中で、生き残っている。それでもう、十分に強さの証明には、ならないのかい?」
「っ…!」
「戦いが終わったら、俺もお嬢さんの強さを、見極めさせてもらおうか。」
「何の……ことだ…!?」
「すぐに、わかるさ。」
不意にエビルウルフが動いた。一瞬、そっちに気を取られた瞬間、逆方向から槍が伸びた。
「ぐおっ!」
ヒューマンのわき腹に、槍が食い込んだ。バハムーンは素早くその槍を叩き切るが、ヒューマンの傷は重い。
「くっ……不覚を取ったか…。まずい……な…。」
二人が死を覚悟した瞬間、柔らかな光が二人を包み、傷が見る間に塞がっていった。
「……待っていたぞ、お嬢さん。」
見上げると、セレスティアがメタヒーラスを詠唱していた。その顔には、もう影はない。
「さあ、回復は任せてください。もう、敵はそれだけです。」
「よし。じゃあ、終わりにしようか!」
もはや、数匹程度のエビルウルフでは、二人の敵ではなかった。そして、その二人を仲間がしっかりと援護する。
動く敵がいなくなると、ヒューマンは大きく息をついた。
「ふ〜っ。やっぱり、肉弾戦は向いてないな。」
「ヒューマン、すごいね!弓だけじゃなくて、剣も使えるのかっこいい!」
「はいはい、ありがとうな、小さなお嬢さん。」
まとわりつくフェアリーを適当に流しつつ、ヒューマンはバハムーンにそっと近づく。
「お嬢さん。」
「……なんだ…?」
「背伸びすることを、悪いとは言わない。背伸びは若い頃の特権だからね。」
そう笑うヒューマンの顔を、バハムーンはじっと見つめている。
「だがな、自分を大きく見せるために、周りを押さえ付けるのは感心できない。言いたいことは、わかるね?」
「う、うるさい!貴様に言われずとも…!」
「そうしなくとも、お嬢さんは十分大きいんだ。ほら、俺より頭二つ分も大きい。」
笑いながら言うと、ヒューマンは自分の頭とバハムーンの頭を手で示す。真面目な話をはぐらかされ、バハムーンの顔がムッと歪む。
「ふざけるなっ!」
「はっはっは。真面目な話は苦手でねえ。殴られる前に、退散するとしようか。」
去り際に、セレスティアと目が合った。ヒューマンは何も言わず、ただウィンクを送ってみせる。セレスティアは顔を赤くして目を逸らす。
だが、そうしてばかりもいられない。セレスティアはバハムーンに歩み寄ると、静かに頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「っ!?な、何がだ!?」
「わたくし……さっき、あなたを見殺しにしようとしました。あなたに言われたことが……どうしても、許せなくて…。」
セレスティアの目に、涙が浮かぶ。バハムーンはサッと後ろを向き、低い声で言う。
「……謝るのは、私の方だ。先に、お前を傷つけたのは、私だからな。」
「バハムーンさん…。」
「お前だけじゃない。他の奴等まで、私は傷つけた。お前に見捨てられたところで……それは、当然の報いだ。」
それだけ言うと、バハムーンはさっさと歩き出してしまった。セレスティアとしては、もっとしっかり謝りたかったのだが、バハムーンが
それをさせない。少し物足りない気はしたが、少なくとも胸のわだかまりは消えていた。
同時に、セレスティアの胸には別の思いが生まれ始めていた。後衛としての努力を認め、自分の間違いを正させてくれ、そしてそれを
あえて責めなかったヒューマン。
気障なところもあるし、軽い人物であるとは思う。しかし、それだけの人間ではない。見るところは見ているし、かなりの気遣いができる
人間である。それを誇示することもなく、ただ当然のこととしてそれらを為す彼。そんな彼の優しさに、彼女は確実に惹かれ始めていた。
色々あったものの、何とか一行はトハス地下道を抜け、ポストハスまでたどり着いた。地下道自体が長いこともあるが、何より辛い戦闘が
非常に多かったため、地下道から出た頃には、辺りはすっかり闇に包まれていた。
全員、口は開かずとも心は同じである。全員揃って宿屋に向かい、それぞれ部屋を取って疲れを癒す。ヒューマンもすぐに部屋へ行き、
のんびりと旅の疲れを癒していた。特に何があるわけでもなく、疲れもあったため、かなり早いうちからベッドで横になっている。
夜も更け、日付が変わる頃。遠慮がちなノックの音に、ヒューマンは目を覚ました。一瞬、聞き間違いかと首を捻る。だが、再び横に
なろうとしたとき、また控えめなノックが響いた。
「どちら様だい?」
「あの……わたくし、です。えっと……入っても、いいですか?」
「ああ、構わない。」
ヒューマンはベッドから出ると、すぐに鍵を開けた。セレスティアは申し訳なさそうな顔で、ヒューマンに軽く頭を下げる。
「すみません、こんな時間に…。」
「いやあ、お構いなく。君みたいなお嬢さんの訪問とあっちゃ、いつ何時であろうと大歓迎さ。」
「ふふ。やっぱりお上手ですね。」
そう言いながら笑うセレスティアの顔には、僅かに恥じらいの色が浮かんでいた。
「しかし、どうしてまた、こんな時間に?こんなところを見られちゃあ、あらぬ誤解をされたりするんじゃないかい?」
その言葉に、セレスティアの表情が曇る。そして、顔に薄っすらと赤みが差す。
「それでも……いいんです…。」
「………。」
「それに……あなたにとっては誤解でも……わたくしは、その…。」
「……わかった、お嬢さん。それ以上は言いなさんな。」
ヒューマンは珍しく、少し困ったようなため息をついた。
「だがね、お嬢さん。俺は、残念ながらその想いに応えることはできない。」
「知って……います…。」
「ほう?それまたなぜ?」
「エルフさんに……聞きましたから…。」
「……あのお嬢さんめ…。」
ヒューマンはいたずらを見つかった子供のような表情を浮かべ、頭をポリポリと掻いた。その無邪気な顔に、セレスティアの胸がきゅんと
締め付けられる。話し振りや態度から、どうしてもかなり年長のように思えるのだが、こういう顔をされると同年代にしか見えない。
「だが、待てよ。それでも、君はここに来たわけだね?」
「はい…。」
「聞くのが怖いが、理由を聞いてもいいかい?」
「その……わたくし、あなたを好きになってしまいました…。だから、その……それに、今日あんなに色々してくれて……お礼も、
したくて……それで、わたくし…。」
言いながら、セレスティアは震える手で制服を脱いでいく。
「好きになってくださいとは、言いません…。でも、どうか今だけ、わたくしの気持ちを……受け取って……ください…。」
「……あの、お嬢さん?つまり、君自身の体で、お礼がしたいと?」
セレスティアは真っ赤になってうつむき、注意しないとわからないぐらいに頷いた。
「経験は、あるのかい?」
ますます顔の赤みを増しつつ、セレスティアはぷるぷると首を振る。
「……誰の入れ知恵だい?」
「エルフ……さんが……男の方は、こういうのが……一番、喜ぶって…。」
「あのお嬢さんめ…。」
ヒューマンはもはや苦笑いすら消し、本気で頭を抱えた。
「あのっ……あのっ!わ、わたくしでは、ダメでしょうか!?そ、それともやっぱり、こんなことする女の人は、嫌いですか!?」
「いや……あの、お嬢さん。君は、純粋すぎるにも程があるよ…。」
全身が萎むような、大きな大きなため息をつくと、ヒューマンは地下道に潜ってきたかのような、疲れた目を上げた。
「あのな、そういうのは本当に好きな人相手に……ああ、俺か…。」
「……はい…。」
「いや、だがね?さっきも言ったように、俺は君の想いには、まともに応えてあげることはできない。そんな俺が初めての相手なんて、
君にとっては不幸以外の何者でもないぞ?」
「ですけど……わたくし…!」
ヒューマンは困りきった顔で、もう一度大きなため息をついた。そして、何か覚悟を決めた顔つきになり、セレスティアの体を抱いた。
「あっ!?」
「だが、お嬢さんにここまでさせて、このまま帰らせるなんていうのも失礼だね。それに、お礼も兼ねているなら、なおさらだ。」
セレスティアは初めて異性に体を抱かれたことで、すっかり身を硬くしている。
「だから、君からのお礼の分は、ありがたくいただくよ。それでいいかい?」
ガチガチに固まった体を何とか動かし、セレスティアはヒューマンの体にしがみつき、顔を見上げた。
「……はい…。」
その頭を抱きつつ、優しく撫でる。少し子供扱いされているような気になったが、ヒューマンの手は大きく、暖かく、そうされていると
心が少しずつ落ち着いていく。
ヒューマンはセレスティアを驚かせないように、少しずつ撫でる手をずらしていく。それでも、触られること自体慣れないセレスティアは
体を強張らせ、吐息は震えている。その様子を見て取ると、ヒューマンは一度手を止め、そっと顔を上げさせた。
「そう緊張しなさんな。別にやましいことじゃない。」
「は……はい…。ですが……その…。」
「恥ずかしがることもないさ。こんなにきれいな肌と羽だ。」
翼を褒められ、セレスティアは顔を赤らめながらも、嬉しそうに微笑んだ。緊張が多少解れたのを見ると、ヒューマンは愛撫を再開する。
背中を撫で、翼を撫で、そして胸を撫でる。いきなり揉んだりはせずに、ヒューマンはセレスティアがその感覚に慣れるまで、優しく
撫で続けた。異性に触れられたことすらないセレスティアは、今こうして男であるヒューマンに撫でられているという、それだけで
気持ちが昂ぶっていく。また、彼の方はともかく、好きな相手に抱かれ、撫でられているという事が、それに拍車をかける。
少しずつ熱を帯びる吐息。時折漏れる声。そろそろ頃合と見ると、ヒューマンは慎重にセレスティアの胸を指で包んだ。
「んんっ…!」
目を瞑ったまま眉を寄せ、体を震わせるセレスティア。恥ずかしさと気持ちよさが同時に押し寄せ、その顔は耳まで真っ赤に染まる。
左手ではセレスティアの頭を撫でつつ、右手では乳房を揉みしだくヒューマン。その手はあくまで優しく、彼女に負担をかけないように
気遣っている。
セレスティアの呼吸が、徐々に変化していく。荒く、切れ切れになり、吐息自体に声が混じり始める。それを見て取ると、ヒューマンは
両手で彼女の胸を愛撫する。
「はぅっ……ヒューマン……さん…!」
「楽に、な?声を出すのは、恥ずかしいことじゃないさ。」
「で、でも……んぅっ…!」
じっくりと、慌てずに少しずつセレスティアを高みに導くヒューマン。既に、セレスティアの秘所は僅かながら湿り気を帯び、
ヒューマンを受け入れる準備が整いつつある。
そっと、ヒューマンは体を入れ替え、セレスティアをベッドに押し倒した。
「あっ…!」
いよいよ本格的になり始めた気配を感じ、セレスティアは不安そうな顔でヒューマンを見上げる。ヒューマンは優しく笑い、
セレスティアの頭を撫でてやる。
「怖いかい?」
「……す……少し…。」
「大丈夫。痛い思いはさせないさ。」
言うなり、ヒューマンはすっと身をかがめた。何をするのかと訝る間もなく、秘所の辺りに柔らかく温かい物が触れた。
「ひゃん!?な、何してるんですかぁ!?そんなとこ、きたな……ああっ!」
ヒューマンの舌が、セレスティアの秘所を舐め上げる。時に襞をなぞるように、時に敏感な突起を突付くように。その度に、
セレスティアは小さく悲鳴をあげ、体をピクンと震わせる。
「だ、ダメです!ダメですよぅ!そんなところ……あぁっ!」
ヒューマンの頭を両手で押し、背中の翼でぺちぺちと叩く。それでも、ヒューマンはそれをやめない。それこそ、顔から火が出そうな程の
恥ずかしさがセレスティアを襲う。しかし、ヒューマンの的確な責めは、その羞恥心すらをも快感にしてしまう。
愛しい人に恥ずかしいことをされ、それによって自分が興奮しているという事実。それがセレスティアの被虐心に火をつけ、たちまち
限界へと上り詰めていく。
「お、お願いっ…!もうダメ!ああっ!お願いですからっ……もう、やめ…!ふあぁっ!!」
セレスティアの体は真っ赤に染まり、ガクガクと震えている。止めとばかりに、ヒューマンは舌での刺激を強め、さらに最も敏感な突起を
摘み上げた。
「っっ!!あぅっ!!!ああぁぁっ!!!」
一際大きな嬌声。セレスティアは全身を弓なりに反らし、大きく広げられた翼が震える。
やがて、大きな吐息と共に体が落ちる。目を瞑り、浅い呼吸をするセレスティアの体を、ヒューマンは優しく抱き締めた。
「大丈夫かい?」
「……あ……はい…。」
暖かい体。その感覚に、セレスティアはこの上ない安らぎを覚える。
「少し、辛かったかな?」
「……いえ…………大丈夫……です…。」
ぼうっとした頭を無理矢理働かせ、性に関する乏しい知識を集めるセレスティア。この後いよいよ痛い思いをするのかと思ったが、
ヒューマンがそれ以上求める気配はない。
「あの…?」
「ん、何だい?」
「その……えと……これだけで、いいんですか…?」
「気を使ってくれるのかい?」
ヒューマンはセレスティアの頭を撫で、笑った。
「君みたいに純粋な子を、俺なんかが汚すわけには行かないさ。」
「そんな、汚すなんて…。」
「それに、まだ経験はないんだろう?君を好きになってやれない俺が、初めてをもらうわけにもいかないさ。」
何だかホッとしたような、残念なような、複雑な気分だった。
「でも……あなたは、その…。」
「ああ、お礼としてはもう十分だよ。前に言っただろう?触るのが、躊躇われるぐらいきれいだってな。」
体を起こし、キセルに火をつけるヒューマン。心を落ち着けるように煙を吐き出すと、静かな声で続ける。
「そんな君の体を、こんなに楽しめたんだ。それで十分さ。」
「そう……ですか?」
改めて言われると気恥ずかしく、セレスティアの体はまた赤く染まる。すると、ヒューマンが笑った。
「だが、やはり見ている方がいいな。君の純粋さは見ていて飽きないし、その美しさは、手が届かないぐらいでちょうどいい。」
セレスティアは、恥ずかしそうに笑った。
「それでも……わたくしは、あなたの元に舞い降りたかったです。」
「……すまんな、お嬢さん。」
ヒューマンの腕に抱かれ、セレスティアは静かに目を瞑った。叶わぬ思いと知りつつも、この暖かさがずっと続けばいいのにと、
セレスティアは心の底から、そう願っていた。
以上、今回分の投下終了。
前書きに本番なしって書き忘れましたね。期待した人、申し訳なかったです。
ちなみに、パーティ編成がよく似た方がいるようですが、決してパクッたりしたわけじゃないのであしからずw
それでは、この辺で。
GJ!
ヒューマンがどんどん格好良くなってるw
これはいいハーレムw
このヒューマンにならケツをささげてもいいぜ
ヒューマンの声が野沢那智か森久保正太郎で脳内再生される
GJ!!
やっぱりこのヒューマンは立派な「おじさま」だ!!
というかかっこよすぎだろ!!
この板で今まで見たこと無いぞこんな漢
これは・・・くさいwwww
ヒューマン既に結婚してたりしてw
で嫁さんには工場に行ってくるって日夜冒険で生活費を稼いでるんだよ
そして若手の冒険者に笑い飛ばされるヒューマン…。
若手「おっさんアンタ幾つだよ?まさか現役とかじゃないッスよねぇww?」
ヒューマン「…そのまさかだ」
で嫁さんの家族が「冒険者は辞めると言ったじゃないか!君には離婚してもらうからな!」
って殴り込まれたり
2行目から3行目の流れがわからんのだが…
考えるな感じるんだ!
359 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:33:50 ID:jSkx87U7
こんばんは。最近は忙しいです。大変です。だがあえて無茶するのがサイクロプス隊です。
さて、大人気ですね、おじさまヒューマン。私も好きです。ちなみに私は塩沢兼人さんで‥‥。塩沢さーん! 大好きだー!
では、投下します。あ、エロはありません。ごめんなさい。
360 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:35:03 ID:jSkx87U7
「‥‥ねぇ」
「何だ? 出来れば百文字以内で頼む」
「じゃあ簡単に言う。寒いぞこの馬鹿ぁああ!」
時は三日流れ、ここはザスキア地下道中央。私は忍者服に日本刀と忍者刀を装備している完全忍者の珍妙な奴といる。
私の名はユーリ。つい三日前までは一人快適に過ごしていたのだが、変人ヒューマンによって唐突かつ強制的に彼のパーティーへと加入した。というかされた。
自己紹介も私だけがして、ヒューマンはただ『俺の名はミスターX! 以上!』とだけ。もうツッコむ気すらない。
「駄目だなぁ、ユーリ。百文字以内ならせめて百文字に近くするのが鉄則だ。そんなんじゃテストでは0点しかとれない。分かったか?」
「五月蝿い! 何か羽織る物よこせ! 凍え死ぬ!」
私はスカートをなるべく下げて何とか寒さを凌ごうとする。この際格好が少しばかり変になっても構わない。
「おいおい天下のバハムーン族がこれぐらいの寒さでへばるな。たったの三度だぞ? ザスキア地下道では暖かい方だ。中央だと更に寒い。つーか寒いなら防寒具持って来いよ。準備悪いなぁ」
「準備する前に無理矢理連れてきたんでしょうが! むしろお前が平気そうな面をしているのが私には理解できない」
「そりゃあ鍛え方が違うからな。一応先輩だぞ」 そう言ってヒューマンはチッチッと指を振る。何でだろう? スゴイイラッとする。
「風邪ひいたら恨んでやる‥‥」
「おっと、恐や恐や。まぁ待て、今道具袋漁ってみるから」
「早くしろ、この馬鹿っ!」
私の罵倒を背に彼は袋の中を漁る。多分今の私は少し涙ぐんでいる。程なくして、彼は一つ取り出し私の前に何か置いた。
「何だこれは‥‥」
「ぬいぐるみ。さらに詳しく言えばマフモフしているぬいぐるみ」
それは分かる。分かるがコイツは一体何が言いたいのだろうか?
「これをどうしろと?」
「服の中にでも入れたら? マフモフしてるから暖かいかもよ?」
「する、かぁ!」
「あぁ、クマのぬいぐるみー!」
勢いよく投げたクマのぬいぐるみを空中でキャッチするヒューマン。なかなかシュールな光景だ。
「全く‥‥ユーリ、贅沢言うな。寒いんだろ? 俺しか見てないからやっても大丈夫だ」
361 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:36:13 ID:jSkx87U7
「むしろお前に一番見られたくないんだ! うぅ‥‥しょうがない」
私はヒューマンからぬいぐるみを受け取ると制服とシャツの間に入れてギュッと抱き締めた。まぁ‥‥暖かいのは認めよう。
「ふぅ‥‥少しはマトモってとこだな。って、どうした?」
「‥‥なぁ知ってるか? アンバランスは時には素晴らしい萌えを醸し出す事に」
「燃え‥‥? 意味が分からん」
「そうか、ならいいんだ」
「あ、こら! 私の質問に答えろ!」
「断るっ!」
「却下だ! おい、待て! 置いていくなぁ!」
「地下道から出ても寒い‥‥」
「ん? 何だ。こっち来たこと無いのか」
二人とは言えさほど強いモンスターと出くわさずにザスキア氷河に無事着いた。
「いつも中央で引き返していたからな。ところで何か行く当てがあるのか?」
「あぁ、バルタスクに俺が集めた装備の予備があるはずだからそれを取りに行こうかと」
「? 何でだ? それで万全じゃないのか?」
「いや万全だが‥‥お前のぶんだよ」
それを聞いて私はまたイラッとする。何でほんの三日前までは赤の他人にそんな心配されなきゃいけないのか。こう見えても今まで一人で戦ってきた身だ。自分の腕に少しは自信がある。
それとも私では頼りにならないのか。そう思うと少し残念――ハッ! 残念なわけない! これはガッカリ、じゃなくてそう、イライラする、だ。うん、そう思ってきたら余計にコイツが苛つく思えてきた。全く、ヒューマンのクセに私を惑わすなど、不愉快だ!
「私のはいい。お前にそこまで恩を借りるなど私自身が許せない」
「そうは言ってもなぁ‥‥」
「い・い・か・ら・!」
私は詰め寄り強く言い聞かせるように告げる。私とてバハムーンだ。臆病なヒューマンなんて、睨むだけで十分びびらせられる。ふん、どうだ。
「分かった分かった。ただ――」
「ただ?」
「ただぬいぐるみを抱きしめたまま言っても迫力は無いからな」
「え? あ‥‥」
私はずっとぬいぐるみを抱きしめていたのに気付き、恥ずかしさが込み上げてきた。顔が真っ赤になるのが分かる。
「み、見るなぁああ! この馬鹿ヒューマンっ!」
「うわ! ちょっ、理不尽反対ぐふぁあ!」
結局、私達は暫くランツレート付近の地下道探索として、今日のところはザスキア氷河の宿に泊まることにした。
「うぃーす、久しぶりー」
「お、久しぶり。ミスター」
362 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:37:52 ID:jSkx87U7
ヒューマンの挨拶に反応したのはこの宿屋の主だろうか。背中に大きな羽があるからフェアリーだろう。普通サイズだが。
「ん? ミスター、その娘は? 彼女?」
「イエス」
「ノーだ!」
何を馬鹿げたことを言っているんだこの馬鹿はっ! もしかしていつもこんな感じなのだろうか。‥‥何でだろう。殺意が芽生えてきた。
「何だ違うのか‥‥で、ミスター。ヤッたの?」
「イエス、アイ、ドゥー」
そう言ってアイツは肩を掴み抱き寄せてきたって何してんだぁあああ!
「なななななななっ‥‥!」
私は顔一面真っ赤になり、手は空を掴んでは離しを繰り返す。
「おや、バハムーンにしては初な反応」
「な? かわいいだろ? こいつ」
その間、男二人は言いたい放題。って今かわいいって! かわいいって言った!?
「あ、な、かわ、う、にゃ、」
かわいい‥‥私が‥‥かわいい‥‥かわいいって‥‥。
「んな分けないでしょこの馬鹿ぁああああ!」
「ぐはぁ!」
「おーいいアッパー」
私がかわいいって何だ! かわいいわけないだろ! くそっ、私をからかいやがって‥‥!
「その腐った性根を叩き潰――!」「されとるよ、もう」
「へ?」
そこには宿屋の主人と何故か頭から血を流して倒れているヒューマンがいた。
「大丈夫か? ミスター」
「ふふふ‥‥いい、セン、ス‥‥グハッ!」
「あちゃーまた気を失っちゃった」
宿屋の主――バーナードさんがアイツを介抱している間、私は不機嫌な顔でそれを見ていた。
「お嬢ちゃんも手伝ってくれよ」
「馬鹿にはいい薬だ」
そう言って私はそっぽを向く。バーナードさんは溜め息をつき、やれやれと呟きながら椅子に腰掛ける。
「馬鹿ねぇ‥‥確かにコイツは馬鹿だわ。一年前と殆ど変わらん」
その言葉に私は反応する。
「おじさん‥‥コイツを知っているのか?」
「ん? 知っているとも。って何だい、自己紹介しなかったのか」
「いや、したにはしたがミスターXとしか‥‥」
「ミスターX? ぷっ、ぷっはっはっはっは! ミスターX? はっはっはっはっ!」
363 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:38:59 ID:jSkx87U7
それを聞いて突然バカ笑いをするバーナードさん。当然、私は放っておけるはずがない。いきなり馬鹿にされればいかに温厚な私とて怒る。
「わ、笑うな!」
「はっはっはっはっ‥‥いやはや、コイツが自分をミスターX何て呼ぶなんてな。それで納得する嬢ちゃんも最高だ」
「うっ‥‥別に納得なんかしてない‥‥」
「まぁいい。で、何から教えて欲しい?」
そう言われて私は少し考えて呟く。
「名前‥‥」
自然と私はそれを口に出していた。でも今考えれば当然。私だけ自己紹介してこれじゃあ不公平だ。
「名前を知りたい。アイツの本名は‥‥?」
「‥‥嬢ちゃん。それだけはダメだ」
バーナードさんは真剣な顔をしながら顔を横に振る。
「え‥‥? 何で?」
「人には知られたくないモノがある。過去、出生、親族‥‥。そういった内に入るんだよ。アイツの名前は」
「そんな‥‥」
――あんないつもヘラヘラしているアイツが‥‥。
私は驚きを隠せなかった。
「その代わりにと言っちゃあ何だが、アイツの学校生活を教えてやろう」
「え?」
「こう見えてもつい一年程前までバルタスクに居たんでな。アイツの恥ずかしい話の一つや二つ知っているとも」
「‥‥へぇ」
私は少し広角をつり上げ笑う。その顔はさながらお代官か越後屋の笑いのようだろう。
「じゃあおじさん、教えて」
「いいぜ。だが!」
「?」
「俺は『おじさん』じゃなく『おじさま』、だ」
「人の心を盗んだことは?」
「俺の妻の心なら」
「じゃあ手から旗は?」
「子供にやってあげた」
「渋い刑事に追われたことは?」
「それは‥‥ない」
「そ、じゃあおじさん。教えて」
「俺の肉っ!」
「おはようさん。ミスター」
時間にして一時間ぐらいしてアイツは起きた。
「あれっ? 肉は?」
「ないよ。寝ぼけてんなら顔を洗ってきな」
「おはよう」
アイツとバーナードさんのやり取りを見ながら遅れて私は挨拶する。
「よぉユーリ。おはよう」
「うん、良い目覚めみたいだね」
私はニコニコしながらアイツに近付いく。その笑みに何か危険を感じたのかアイツはゆっくりと後ずさる。ふふふ、本当に分かりやすい奴だ。
「ん〜? どうしたのかな〜?」
「い、いやぁ〜何かいやーな予感がしてねぇ‥‥」
そう言うアイツの顔は笑顔こそすれひきつっており、対して私の笑顔はどこか黒い影がちらちらと見えただろうに。
364 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:40:42 ID:jSkx87U7
「別に何もしないわよ。それは置いといて、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何かな?」
「アナタを襲ったバハムーンは今も元気?」
「ふんもぉ!?」
聞いて体を凄まじい勢いで硬直するアイツはなかなか滑稽だった。その顔には嫌な汗がびっしりと浮かんでいて、私は笑いをこらえるので精一杯だった。
「ばばばばばばばバーナードぉ!」
「ははは、いやー良かったな。あの時たまたま誰か来て」
「黙れっ! 俺はあの日以来トイレはトラウマでいつもビクビクしてんだぞ!?」
「ふふふ、面白いそうねぇ」
「だから笑うなぁ!」
本当、面白い。いつ以来だろうか。こうして笑ったの‥‥。そういう点ではコイツに感謝しなきゃ‥‥。癪だけど。
「えっと‥‥ミスターX?」
私はなるべく自然に言う。
「俺の嫌いなのはホモと男の――え? 何か言った?」
アイツは呼ぶ声に応じた。
「いい? 一回しか言わないからよーく聞いてなさい」
「お、おう」
うぅ‥‥ありがとうって言うだけで何でこんなに緊張するんだろ。よし、何か変なこと言ったら一発殴らせてもらおう。「あの、あ――」
「お、ユーリじゃねぇか」
絶好の悪いタイミングで割り込んできたのは、私の人生で出会った人物中、最悪の奴だった。
続く。
365 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:47:27 ID:jSkx87U7
はい、短いけどこれで今日の分は終わり。続きは結構先になるのかな。まぁ、我慢してください。
ところで、シリアスシーンにパロディネタやら何やら持ってくんのはこのスレ的には有りなのかな? 結構使うので駄目だったら言ってくれると嬉しい。
‥‥まぁ、もうナイスガイバハネタは使ってしまったけど。作者さん、後からですが使ってしまいました。大丈夫でしたら言って下さるとホッとします。
では、またどこかで会いましょうノシ
いや…人様のネタを使うのは大丈夫じゃないだろ…
367 :
桐漱:2008/11/27(木) 23:54:43 ID:jSkx87U7
>337さんへ
ぐはっ! 本当だ。いやそこは空白入れようとしたのですがすっかり忘れてました。反省してます。
以後、気をつけますのでぬるま湯ぐらいの生暖かい眼とたまに八十℃ぐらいの熱湯をかけて下さい。多分それで私は目が覚めますので。
P.S:脳内訂正を頼みます。
×:三度→○:三℃
です。すいません。
>>365 先に結論から言っておくと、俺はそんなに気にしない。が、老婆心ながら多少の苦言を呈しておこうかと。
人によっては、自分の作品を他人に使われることに、強い嫌悪感を抱く人もいる。そうでなくても、勝手に解釈を変えられて
使われたりしようものなら、大抵の人は嫌悪感を覚えるかと。一応言っておくと、、今回のことではないです。
悪く取ることはいくらでもできる。今回のケースなら『今更ダメと言ったところで、もう使ってるじゃねえか』と言える。
あるいは『今ダメと言ったら作品自体を潰してしまうから、ダメといえない』という状況に追い込もうとしてるようにも取れる。
そういった無用のトラブルを避けるためにも、他の人のキャラ使いたい場合は先に了解取っておいた方がよろしいかと。
少しきつい事書いたんで、雰囲気悪くなったらごめんよ…。
まあ、あれだ。うちの衆道士はケツの穴が小さいことは言わないからご自由にw
例によって、続き投下しようと思います。
ちなみに今回も本番がありません。二週連続でややエロ薄ですが、楽しんでいただければ幸いです。
フェアリーは焦っていた。
元々、ヒューマンという種族に対しては強い憧れを抱いていた。今回加入した仲間は、その憧れの的であるヒューマン。しかも男。
その上、彼は非常に渋く、弓を放てば狙いを外さず、剣と盾でも戦士に劣らない活躍を見せ、罠の解除や扉の開錠までもこなし、
口を開けばウィットに富んだ言葉が溢れ出す。
かなり美化された主観が入っているにしろ、フェアリーは本気でそう思っている。そう思っていれば、ただでさえ憧れ補正のかかる彼女が、
本気で彼に惚れるのも無理はない。
だが、あまりに完璧すぎる相手であるが故、軽々しく恋だの愛だのという言葉を言えなかった。フェアリーは平凡な魔術師でしかなく、
これといって特別なこともできない。そんな自分が、彼に釣り合うとはとても思えず、せいぜい自分にできる精一杯の援護をする
ことでしか、その感情を表現できなかった。
ところが、である。まず、エルフの様子がおかしくなった。ヒューマンに対して意味ありげな視線を送り、目が合うと意味ありげな
微笑みを返す。その仕草は、明らかに秘密を共有する者の態度だ。何かあったのは間違いない。
次に、セレスティアもおかしくなった。ヒューマンとあまり目を合わそうとせず、しかし彼が見ていなければずっと彼を見つめ、もしも
目が合えば慌てて目を伏せ、顔を赤く染める。そして時に、恥ずかしそうな微笑みを返す。やはり、何かあったのは間違いない。
その何か、というものも、大方の予想がついている。自分の知らないところで何かあったとなれば、それは宿屋でに違いないのだ。
しかも、宿屋に行くのはいつも夜。全員それに気付かなかったとなれば、それは全員が寝静まった真夜中。真夜中に起こる男女間の
出来事など、どう考えても一つしかない。
フェアリーは焦っていた。既に二人が抜け駆けをしているのだ。それだけでなく、彼を好きなのが自分だけではなかったのだ。
好きになってもらおうなどと、おこがましいことは思わない。しかし、何とか彼の心の中に、自分も入り込みたかった。その手段となると、
やはり体を許すことしか思いつかない。だがしかし、あのヒューマンに、そんなことで自分を覚えてもらおうなどというのは、大変失礼な
気もする。どう考えても堂々巡りになってしまい、それがまたフェアリーを焦らせるのだった。
そんなこととは露知らず、一行はラーク地下道をいつも通りに進んでいる。だが、ただでさえ実力不足の一行では、この地下道の強さは
手に余るものだった。それでも、主にヒューマンの功績で何とか進むことはでき、また手に入るアイテムもそれなりに高価な物が多く、
セレスティアは太陽の石を、フェルパーは白刀秋水を手に入れ、二人とも上機嫌である。
「さすが、白刀秋水ね。よく切れるわ。」
「わたくしも、いい物いただきました。これで、少しは戦闘に貢献できますね。」
「羨ましいな。私にも、いい物が出るといいんだが。」
「それじゃあ、今回は逞しいお嬢さんの武器が出るよう、祈っておくか。」
そう言い、銀の宝箱を調べるヒューマン。以前いたクラッズよりも手つきは慣れているが、さすがに本業ではないからか、どことなく
危なげに見える。しばらく調べてから、ヒューマンはふーっと紫煙を吐き出した。
「うん……スタンガスの可能性があるな。悪いが、みんな少し離れててくれ。」
こんなところで麻痺しては、たまったものではない。ヒューマンの言葉に、全員が一斉に距離を取る。
「気をつけてくださいね?」
「なぁに。俺が麻痺したところで、お嬢さんに回復してもらえば……うおっ!?」
「きゃあ!?」
シューッという凄まじい音と共に、宝箱から煙が巻き起こった。それを見た瞬間、全員一斉に体を伏せる。が、煙はそれ以上広がる
ことなく、やがて薄れ、消えていった。
恐る恐る顔を上げると、尻餅をついたヒューマンが恥ずかしそうに頭を掻いた。
「いやぁ、参った。悪魔の呪いだったようだな。はっはっは……ゴホッ!」
「ヒューマン、大丈夫!?」
誰よりも早く、フェアリーが一目散に駆け寄る。その速さは、戦闘での攻撃や逃走のときよりずっと速い。
「ああ、別に…。」
「ダメだよぉ!だって、あれ危ないんだよ!?僧侶魔法でも、私の魔法でも回復できないし、それにそれに……あ、セレスティア、太陽の
石持ってたよねぇ!?あれ使って…。」
「いや、お嬢さん。少し落ち着こうか?」
苦笑いを浮かべながら、ヒューマンはフェアリーの頭を優しく撫でる。
「悪魔の呪いなぞ、致命的なもんじゃあない。それに、あの美しいお嬢さんの武器を奪っては、俺の心が痛む。」
太陽の石を握り締め、ものすごく複雑な顔をしていたセレスティアは、申し訳なさそうに安堵の息をついた。
「それより、被害が俺だけであったことを、喜んでくれ。」
言いながら、ヒューマンは笑みを浮かべた。やはり少しは気になるのか、どことなく暗い感じのする笑みだった。
「さて、それで中身は……っと。」
ヒューマンは宝箱の中に手を突っ込む。その姿に、やはりフェアリーは感動していた。被害にあった自分のことより、パーティに被害が
なかったことを喜ぶヒューマン。そして何事もなかったかのように、こうして宝箱を漁り始めている。素晴らしい人間だと、フェアリーは
うっとりとした目でそれを眺める。
「……うん?これは素材、こっちは剣、か。」
「む、剣だと?それは聞き捨てならない。早く鑑定しろ。」
「『鑑定しろ』とは、ずいぶん偉そうな言い方ですわね。魔力を使ってまで鑑定してくださるんだから、少しは感謝の気持ちを持っては
どうなんですの?」
エルフに食って掛かられ、バハムーンは気まずそうに目を逸らした。それでも謝罪の言葉がない辺り、頑固さがよく表われている。
「まあまあ、喧嘩はしなさんな。司祭や錬金術師がいない以上、鑑定も俺の仕事さ。」
剣を手に取り、意識を集中するヒューマン。やがて目を開けると、バハムーンに同情的な視線を送った。
「……残念、タルワールだな。」
「ちっ、もっとまともな武器にしろというんだ。」
そのヒューマンを責めるような口ぶりに、フェアリーの眉がグッと吊り上がる。
「ヒューマンのせいじゃないでしょー!?ヒューマンはただ鑑定しただけなんだからー!」
「そうですわ。恨むのなら、それを持っていたモンスターを恨むべきですわ。」
「ヒューマンの方が嫌いなのはわかりますけど、今のはダメですよ。」
「そうね。今のはさすがに、ただの言いがかりよ。」
ヒューマン以外の四人から一気に責められ、バハムーンは困惑しきった顔で一行を見回す。ヒューマンは呆れたように笑うと、
バハムーンに対してさらに同情的な視線を送る。
「心中、お察しするよ。」
「う、うるさいっ!貴様なんぞに同情なんか、されたくないっ!」
こういうところも、フェアリーの目には非常に好意的に映っている。自分に対して言いがかりをつけてきた相手に対しても、
気を使うことができる人間。まさしく理想的な男性だと、フェアリーはうっとりしてしまう。
結局のところ、フェアリーはヒューマンが何をしようとうっとりしているのだが。
「ま、次はきっといい物が出るさ。」
「慰めなんか結構だっ!ふんっ、いい物なんか出なくたって、今の剣でも十分やっていけるっ!」
そう言って肩に担ぐのは、ツヴァイハンダーである。力不足なのは、一見して明らかだ。
「何なら、お嬢さん。俺の黒曜石の剣でも使うかい?」
「む……い、いや、ふざけるな!誰が、貴様のようなヒューマンが使っていた剣など!」
「そうか……だが、一瞬迷わなかったか?」
「うるさい黙れ!やかましい!」
「バハムーンさん、無理しちゃダメですよ。」
「そうよ。あなただって、もっと強くなりたいでしょう?」
「う、う〜ん……いや、いい!ヒューマンなんかのお下がりなぞ、使いたくもない!」
「はっはっは。なら、気が変わったらいつでも言ってくれ。」
楽しそうに笑うヒューマン。バハムーンは強がりつつも、たまにヒューマンが腰に下げる鞘を名残惜しそうに見ている。とはいえ、
今回は頑固さが勝ったらしく、結局バハムーンがヒューマンの剣を使うことはなかった。
その後も順調に進行を続け、ほとんどヒューマンに頼りきりではあったものの、数々の戦闘を潜り抜けるうち、他の面々も急激に力を
つけていた。それに加え、ぽつぽつと手に入る装備により、さらに戦力を増していく。
やがて、地下道中央を抜け、さらにいくつかのエリアを通り抜ける。強くなっていた敵がだんだんと弱くなり、そしてついに
ゲートではなく、地下道出入り口が見え始めた。
「見て、あれ!とうとう出口よ!」
「うわぁ……私達、やったんだね!」
フェルパーとフェアリーが弾んだ声を出し、エルフとセレスティアも手を取り合って喜んでいる。
「だが待て、気を抜くな。最後の一歩まで気を抜かないことが、探索の基本だろう?」
「さすがだな、逞しいお嬢さん。君はいい冒険家になる。」
一瞬、褒められて気を良くしたものの、相手がヒューマンだと知るや否や、途端に不機嫌そうな顔になった。
「うるさいな!貴様なぞに褒められても、嬉しくもない!」
「はっはっは、それはすまなかった。だがまあ、特に他意があるわけでもなし。つまらん野郎の言葉ではあるが、受け取っておいてくれ。」
「……ふん!」
「まあまあ。せっかく、憧れの空への門に行けるんだから、喧嘩しないの。ね?」
フェルパーが優しい声で言うと、バハムーンは不機嫌そうな顔をしながらも頷いた。ヒューマンは相変わらず、楽しそうに笑いながら、
それを眺めている。
地下道から出ると、辺りは真っ暗だった。朝早くに出たのだが、予想以上の苦戦のため、結局夜になってしまったらしい。が、それでも
空への門には違いない。最初に、そこの違いに気付いたのはフェアリーだった。
「うわ、何かすごく飛びにくいよー。」
いつもよりかなり多く羽ばたかないと、体を浮かせることができない。セレスティアも翼を広げ、一度羽ばたいてみる。
「……あ、本当ですね。空気薄いんでしょうか。」
「わぁ……空は満点の星空、ですわ。まさに、宝石を散りばめたよう。詩の一つでも、作りたくなりますわ。」
エルフはいかにもエルフらしく、空を見上げていた。確かに、空には雲一つなく、いくつもの星が瞬いている。月は既に沈み、そのため
普段は見えないような星すら、瞬いて見える。
「しかし、寒いな。尻尾と羽が固まってしまいそうだ。」
そう言うバハムーンは、動かしにくそうに尻尾を揺らめかせている。やはり、気温が低いと影響があるらしい。
フェルパーのみ、きょろきょろと辺りを見回している。やがて、ほうっと息をつき、静かな声を出した。
「すごいわ、ここ…。あたり一面、雲ばっかり。」
「え、蜘蛛!?」
「違う違う。雲よ、雲。空にある雲。」
そうは言われても、辺りは真っ暗なので見えるわけがない。どうやらフェルパーには見えているらしいが、他の面子ではエルフが辛うじて
それを確認できる程度である。
「確かに……雲が、足より下にありますわね。」
「えー、いいなあ二人とも。私も見たーい。」
フェアリーは地面に降り、トコトコと端の方へ歩いていく。その体が、急にひょいっと持ち上げられた。
「危ないぞ、小さなお嬢さん。」
「あ、ヒューマン…。」
当たり前のように肩に乗せられ、フェアリーは顔を真っ赤にした。まさか、こんなところでこんな嬉しい状況になるとは、予想だに
しなかった。
「お嬢さん方。とりあえず、ここの散策は明日にしないかい?ここまでたどり着けば、あとはいつでも見られる景色さ。」
「それもそうね。それじゃ、明日みんなで見ましょうか。」
「そうですね。……わたくし、明日がこんなに楽しみなの、初めてです。」
そう言って笑うセレスティア。だが、そんな彼女を笑う者はいない。それはみんな、同じ気持ちだった。唯一違う気持ちだったのは、
ヒューマンの肩で満面の笑みを浮かべる、フェアリーのみである。空への門に来られたことも、明日になればここをじっくり見られるのも、
今のフェアリーにはどうでもよかった。彼女はただ、ヒューマンの肩にいられる幸せを噛み締めていた。
同時に、フェアリーの心も少しずつ固まってきた。自分を抱き上げた、大きな手。優しい笑顔。
この際、自分が覚えてもらえるかどうかはどうでもいい。ただ、それらをひと時だけでもいいから、独り占めにしたかった。
ヒューマンの首に掴まりながら、人知れず、フェアリーの決心は固く結ばれていた。
初めての場所故に、宿屋を探すのには少し手間取ったものの、特に問題なく宿泊手続きを済ませる一行。さすがにここまで来ると、他の
生徒の姿もほとんどなく、一行を抜かせば、辛うじて二桁に届く人数が泊まっているだけである。
ヒューマンは例によって、一人でのんびりと寝ている。ただ、眠っているというわけではなく、単に寝転がっているだけである。
宿屋の柱時計が、一回鐘を打った。それからしばらくして、部屋のドアがノックされる。
「……二度ある事は三度ある、か。」
呆れ笑いを浮かべながら呟くと、ヒューマンは体を起こした。
「誰だい?」
「私ー。入ってもいーい?」
「ああ、どうぞ。」
鍵を開けてやると、フェアリーは微妙に視線を逸らしつつ、部屋に入ってきた。
「どうしたんだい、こんな夜中に?」
「ん〜……エルフとかセレスティアと、同じかな〜。」
「ふ〜、やっぱりね。」
バツが悪そうに頭を掻きつつ、ヒューマンはベッドに座った。フェアリーは至って自然な動作で、その隣に座る。
「だがね、お嬢さん。俺は、君が思うほどにいい男ではないし…。」
「そんな事ないよ!他のヒューマンと比べても、すっごくいい人だよ!」
「はは、それはありがとうな。だが、買い被り過ぎさ。本当にいい奴なら、好きでもない女の子を抱いたりはしない。」
「それはだって、あれじゃない。えーと、向こうが言ってきたんだし。」
「お気遣い、感謝するよ。」
言いながら軽いウィンクを送るヒューマン。それだけでも、フェアリーは躍り上がりたいほど嬉しい気分になる。
「だがねぇ……わかるだろう?俺は、君が俺を思う気持ちに応えてやれるほどに、君を好きになってはやれない。」
「それでも……いいの。私は、ヒューマンが好きなの。この際ね、ヒューマンが私をどう思ってるかなんて、どうでもいいから…。」
「はっきり言ったね、お嬢さん…。」
「だから、お願い!私のこと、抱いて!エルフとかセレスティアにしたみたいに、私のこと抱いてほしいの!」
その目は、一種思いつめたような強い思いが宿っていた。さすがにそんな目をされては、断るわけにもいかない。
「……本当に、君はそれでいいのかい?」
「いいの。片思いでも何でも、それでも私はヒューマンが好き。ヒューマンが私のこと、好きになってくれなくたって……私は、好き。」
「ある意味、君はあの美しいお嬢さんより純粋だねぇ…。」
仕方ない、というように、ヒューマンはフェアリーを抱き寄せる。一瞬驚いた顔をしたものの、フェアリーは嬉しそうに微笑んだ。
「後悔、しないね?」
「ここで帰っちゃう方が、ずっと後悔するもん。」
返答としては十分だった。ヒューマンはフェアリーの制服に手を掛ける。と同時に、フェアリーもヒューマンのズボンに手を掛けていた。
フェアリーの上着が脱がされる。フェアリーは袖から腕を抜くと、ヒューマンのベルトを外し、ズボンをグッと引き下げる。
「私、頑張るから。ヒューマンのこと、いっぱい気持ちよくしてあげるから。」
「そうか。それじゃ、俺も負けられないな。」
「負けていいのー!」
やがて、フェアリーは一糸纏わぬ姿となり、ヒューマンも下半身を露出させる。フェアリーは初めて見たそれに、驚きを隠しきれない。
「わぁ……こんな大きいんだ…。」
「いや、お嬢さんが小さいんだ。」
「ん〜、これじゃ入れられないよぉ…。」
実際、フェアリーは同種族の中でもかなり小柄である。その身長は、30センチを僅かに上回る程度だ。
「でも、頑張るね。」
「無理はしないようにな。」
ヒューマンの足の間に入り込むと、フェアリーは彼のモノを両手で抱きかかえるように掴む。そして全身を使い、ゆっくりと扱き始める。
「んっしょ…!ね、ねえ、気持ちいい?」
「ああ、悪くない。」
「よかったー。えへへ、頑張るね。」
嬉しそうな笑顔を浮かべ、小さな体をいっぱいに使って頑張るフェアリー。その健気な姿が、ヒューマンにはとても微笑ましく、また
魅力的に映る。
徐々に大きく、硬くなるそれに、フェアリーは目を見張った。
「すごい……熱いし、硬い…。」
うっとりした声で呟くと、フェアリーはさらに力を入れて扱き上げる。さらに、ちょうど先端が口元に来るようになったため、舌も使って
刺激し始める。亀頭全体を丁寧に舐め、時々鈴口を突付くように刺激し、裏筋をなぞる。全体的に小さいため、刺激としては些か
物足りないものがあるのだが、逆にそれが程よく欲求を刺激する。
「なかなか、いいよ。」
「ほんと!?嬉しいな、もっとしてあげたいけど…。」
フェアリーはちょっと体を離し、自分の平坦な胸を見つめた。そして、もう一度ヒューマンのモノに抱きつくと、その薄い胸を必死に
寄せ、ヒューマンのそれを挟もうとしてみる。元々のサイズが違いすぎる上、胸の大きさも絶望的に足りないため、どうあがいても
無理な話なのだが、フェアリー自身は必死である。その気持ちはよくわかるため、ヒューマンは苦笑いしつつも、声はかけなかった。
実質、今までとほとんど変わらない奉仕を再開するフェアリー。が、不意にヒューマンの手がフェアリーの股間に伸びる。
「あっ!?」
「君ばかりにさせていては悪いからね。俺からもお返しだ。」
優しく、そこを撫で始めるヒューマン。憧れの彼から愛撫を受けているという事実が、フェアリーの快感を一気に高める。
「うあっ、んっ!わ、私が気持ちよくさせてあげるのぉ…!」
「まあ、そう言いなさんな。こういうのはお互い様さ。」
もう既に、フェアリーのそこはすっかり濡れている。その足はガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうに見えるが、それでもフェアリーは
足を踏ん張り、ヒューマンへの奉仕を続ける。そのいじらしい姿が、とても可愛らしい。
突然、フェアリーの腰が持ち上げられた。驚く間もなく、ヒューマンの舌がフェアリーの中に入り込む。
「きゃあっ!やっ、あぁ!こんな……こんな、すごいぃ…!」
今までよりはるかに強い快感に、フェアリーの体がガクガクと震える。だが、それでもフェアリーは何とか身をよじり、ヒューマンの
モノにしがみつき、再び舌を這わせる。
フェアリーの秘所が既に濡れているように、ヒューマンのモノからもじわじわと透明な液体が染み出している。自分の奉仕で気持ち良く
なってくれているのだと、はっきりわかり、フェアリーはさらに丁寧に舐め始める。が、ヒューマンから受け続ける刺激に、先に自身が
限界になってしまいそうだった。
「んうぅ……ね、ねえ、ヒューマン……ちょっと、待ってぇ…!」
「ん、どうしたお嬢さん?」
体を解放すると、フェアリーは一度深い息をつき、ぐったりと横たわった。が、すぐに体を起こし、ヒューマンの顔を潤んだ目で見つめる。
「あの……ね?お願いが、あるの。」
「何だい?」
「えっと…。」
その言葉を言う前に、フェアリーは二度、大きな深呼吸をした。そして、強い決意の宿る目で、ヒューマンの顔を正面から見据えて言った。
「私の初めて……お願い、もらって。」
「これはまた……ずいぶん困ったお願いが来たね。」
本気で困っているらしく、ヒューマンは満面の苦笑いを浮かべている。だが、どうせ拒否はできないのだろうと、すぐに諦めの笑顔になる。
「俺は、君を好きになってやることはできない。それでも、構わないんだね?」
「うん。だって、私が決めたんだもん。好きな人にあげられるんなら、私、後悔しないもん。」
「そうか。なら、君のその気持ち、もらうとしよう。」
ヒューマンの言葉に、フェアリーは笑顔を浮かべ、その体にしがみつく。
そっと、フェアリーの秘所に指を這わせ、指にしっかりと愛液を絡めていく。
「まともにもらってやることもできないが、それでもいいかい?」
「うん……それでも、ヒューマンにあげられることには、変わりないもん。」
「わかった。ゆっくり、リラックスしててくれ。」
指をそっと、フェアリーの秘所に押し当てる。フェアリーはピクッと羽を動かしたが、体は動かさない。むしろ、自分から足を開き、
ヒューマンが挿入するのを助けている。
指先が僅かに、フェアリーの中に入り込む。羽がビクンと動き、フェアリーの顔が歪む。
「大丈夫かい?」
「う……うん、平気。」
「あんまり痛いようなら、言ってくれ。痛い思いは、してもらいたくないからな。」
「うん。でも、大丈夫だから。」
やはり自分を気遣ってくれるヒューマンに、フェアリーは改めてうっとりする。そして、そんな相手に初めてを捧げられることに、
大きな幸せを感じていた。
さらに深く、指が入り込む。フェアリーは唇を噛み、痛みを堪えている。その様子を見て取ると、ヒューマンはもう片方の手で
フェアリーの胸を触った。
「きゃっ!?い、いきなりそんなっ!あんっ!やぁ……イッちゃうから、あんまりしちゃダメぇ…!」
「でも、まだ痛いだろう?」
「だ、大丈夫だからぁ…!う、嬉しいけど…。」
再び強い快感が押し寄せ、フェアリーの痛みが薄れる。いよいよ、ヒューマンの指が中で引っかかる。
「いいかい?」
「……うん。」
「力を抜いて……そう、俺に体を預けるように。よし、いくぞ。」
グッと、ヒューマンが力を入れた。引っかかっていた部分が強引に開かれ、指がさらに深くフェアリーの中にめり込んだ。
「いっ!!!……っく…!」
一瞬叫びそうになったものの、フェアリーは破瓜の痛みにも気丈に耐えている。つぅっと、ヒューマンの指に僅かな血が流れ出る。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「……ん……えへへ、思ったより、痛くなかったよ…。」
僅かに涙が滲んでいるものの、実際血はそんなに出ていないし、思っていたよりはずっと楽に入っている。
「そんなに痛くないし、それに……ヒューマンに、初めてあげられた方が、嬉しくって…。」
「そうか……いい子だ。」
そう言い、頭を撫でてやるヒューマン。フェアリーは嬉しそうに目を細める。
「ね?私も、ヒューマン気持ちよくしてあげる。」
「ん?いや、無理はしなくても…。」
「こういうのはお互い様、なんでしょ?私も、その……初めてなのに、気持ちいいから、さ…。」
恥ずかしそうに言うと、顔を伏せるフェアリー。どうやら嬉しさが苦痛をはるかに上回っているらしく、その苦痛すら、今の彼女には
快感となっているらしい。
「そうか。なら、頼むよ。」
「うんっ!」
ヒューマンに指を入れられたまま、再びモノを全身で扱き始めるフェアリー。ヒューマンもあまり苦痛を与えないよう、ゆっくりと
指を動かし始める。
「くぅっ、あっ!き、気持ち……いいよぉ…!」
「俺も、気持ちいいよ。」
自身の昂ぶりからか、徐々に強く激しくなるフェアリーの奉仕。そのフェアリーも、それまでに幾度となく刺激を受けていたため、既に
限界が近かった。
「うぅ〜…!わ、私、もうイッちゃうよぉ…!」
「そうか……実は、俺もそろそろまずい。」
少年のような笑みを浮かべるヒューマン。こんな顔することもあるんだなあと、フェアリーはやはりうっとりする。それが、止めになった。
「ご、ごめん!私、先にっ……イッちゃっ……ああぁぁっ!!!」
ヒューマンのモノにしっかりと抱きつき、体を震わせるフェアリー。その刺激が、今度はヒューマンを追い込んでしまう。
「ぐっ……すまん、もう限界だ…!」
「え……きゃっ!?」
突然、顔に熱くてヌルヌルした液体がかけられた。それが何なのかはすぐにわかり、何とか飲んであげようとするのだが、その勢いと量は
フェアリーの手に負えるものではない。そもそも、その味は到底飲めるようなものでもなかった。
「ん……んぐ…!ぶはっ!」
すぐに限界になり、フェアリーはヒューマンのモノに覆い被さるようにし、それを胸で受ける。フェアリーの胸はたちまち白く染まり、
なおも溢れる精液はその体を伝い、フェアリーの全身を汚していく。
やがて、精液が出なくなってから、フェアリーは体を離した。それと同時に、ヒューマンもフェアリーから指を引き抜く。
「んっ!……うぅ〜、今になってちょっと痛いよぉ…。」
「大丈夫かい、お嬢さん?」
心配そうに声をかけつつ、ハンカチを差し出すヒューマン。それを受け取って全身を拭い、口の中に残っていた精液を吐き出すと、
フェアリーはヒューマンの顔を見上げた。
「大丈夫だよ…。それに、痛いけど、幸せ…。」
「そうか。それならいいんだ。」
フェアリーは嬉しそうに微笑むと、制服を着ようとした。が、その体をヒューマンが押さえる。
「ん?なぁに?」
「いや、部屋に帰るつもりかい?」
「んー、だって、部屋から出るの見られたら、色々言われそうだし…。」
「そうか……いや、好きになってやることはできない。しかし、俺は君の初めてを奪ってしまったんだ。だから、せめて今晩くらい、
一緒にいようかと思ったんだが…。」
それを聞いた瞬間、フェアリーの目が今までにないほど輝いた。
「まあ、無理にとは…。」
「予定変更っ!このまま寝るねっ!」
持っていた制服を放り投げ、ヒューマンに抱きつくフェアリー。その体を、ヒューマンは優しく抱き締める。
「すまないね、こんな事しかしてやれなくて。」
「ううんっ!そんなことないよっ!だって、好きになれないのに、こんな事してくれるんだよ!?やっぱり、ヒューマンってすっごく
いい人だよ!」
「……あばたも笑窪、とは言うものの、それもここまで来れば立派なもんだ。」
呆れきった笑いを浮かべながら、ヒューマンはフェアリーを抱き締めたまま横になる。フェアリーは満面の笑みを湛え、その体に
ぎゅっとしがみつく。彼の腕の温かさが、痛みを消し去ってくれる。
疲れのせいか、いつもよりずっと早く、意識がベッドに落ちていく。だが、今日は一人ではなく、ヒューマンと一緒である。
彼の暖かさを全身に感じ、眠るフェアリー。今この時の彼女は、世界で一番、幸せだった。
以上、今回の投下終了。
てか、よく見たら容量が限界に迫ってたんですな…。そろそろ次スレの時期ですかね。
それでは、この辺で。
379 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 03:50:09 ID:RJcPGRxC
ヒューマンの人格者ぶりがうなぎ上りな件
しかし、はなからスタミナが低そうなのにまたトラップでスタミナ減少とか大丈夫か…
今更ながらタイトルの不吉さが心配になってきた。
サイコリバスが使える方はいらっしゃいませんかー
381 :
変態プレイ:2008/12/02(火) 15:06:12 ID:iWRduK+D
「はぁ、はぁ・・・!た、たまらーーーーん!!!ふん、ふぅぅーん!!」
☆
一人の男がいた。彼はバルタクスに在籍する冒険者だった
それもとんでもないの実力者の、である
ありとあらゆる魔法を操り、どんなトラップをも解除し、剣をたった一薙ぎするだけで魔物殲滅する力を持っていた
まさの俺TUEEEE!!!の体現者。Mrチートであった
そんな彼はいつも一人だった
何故そうなのかと言えば当然ながら、下手にパーティを組めば足手まといが増えるから・・・
というわけではなかった
その理由は・・・
単に彼が皆に嫌われていたからだった
彼がエロ過ぎて
彼の視線はいつも女性の胸と尻。時々男のケツ
頭の中は真ッピンク。脳内妄想で犯された女性は星の数
セクハラ件数無限大。だけどだーれも捕まえられない
だって彼は強いから☆
まあ、そんなんなので彼はパーティを組めないのである
・・・話は彼がいつも通り一人で迷宮に潜ったところから始まる
それは冒頭のむさい叫びの一時間ほど前から
☆
「なんだよなんだよ〜!けち臭いこと言いやがってよー!」
この日彼は不機嫌だった。まるで憂さを晴らすかのごとく逃げ惑うモンスターをなぎ払う
その不機嫌の理由は・・・
「ちぇっ、余って邪魔になったこのニケ槍と君のパンティを交換しませんか?って言ったら殴りかかってきやがって、セレ子め!」
という訳だった
彼はぶつぶつと「いつか犯す」だとか「髪こきサイコー!」とか言いながらやすやすと迷宮を進んでいく
「あーあ、冒険者になればモテモテになって毎晩ヤリまくれると思っててのになー。
今じゃ警戒されたせいか迷宮連れ込んでレイプもできそうにないし。俺好みの男
も近寄らなくなっちまた・・・。あー!!欲求不満で死ぬー!右手は飽きたー!」
変態の叫びが迷宮内で虚しく響いていた
続く
初めてのエロパロだから緊張するなぁ・・・
382 :
変態プレイ2:2008/12/02(火) 15:52:39 ID:iWRduK+D
続きでつ
☆
変態がぶーぶーと文句を垂れて数十分。いつのまにか迷宮の最深部へと差し掛かっていた
「あー、なんだ?もう終わりか。つまんねーなー。あぁ、女の子がパーティにいればパンチラとか拝めるんだろーなー。
いーなー、楽しそうだ、な・・・ん?」
男が何かに気づく。それは些細な違和感だった
つい最近ここで誰かが激しい戦闘を行ったような跡。それも複数人と一人、という組み合わせでだ
男の目がさっきと打って変わって真剣になる
「これは・・・。セレ子、ノム子、バハ子、エル子、フェア子、ヒュム男、のパーティの戦闘跡か?
セレ子は上から88・56・83で照れ屋で奥手のお姉さんタイプ。ノム子は7(ry・・・ってな訳か。畜生!羨ましいぞヒュム男!」
まさに能力の無駄使い
「しかし分からん。いったい誰がこんなとこでこんなパーティと戦闘を?・・・ふむ、跡はこっちに続いて・・・!!?」
男の目が驚きに開かれる
彼の視線の先には一人の女の子が倒れていたのだ
彼は急いでその女性に駆け寄る
「大丈夫ですか!今助けてあげますからね!!(よっしゃー!ここから始まる俺の恋!)」
急いで蘇生魔法をかけようとした彼は、しかしその手を止めた
「あれ?この子・・・、人間じゃ、ない?」
?
それはよくできた魔法人形だった。彼の眼でも見抜けないほどほとんど人間と区別がつかないくらいの
「そういえば・・・。たしか最近地下迷宮にこんなのがでるって噂があったけ。なんだよつまんねえ
ここから始まる俺のメイクラブストーリーが台無しじゃん。いくら可愛い女の子でも動かない人形じゃ
何も出来・・・ハッ!!」
ピコーン☆!
変態、閃く
「動かない可愛い女の子の人形=何してもされるがままの女の子!!と脳内変換すれば!!
おおおぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!111111!!!!!やばい!興奮してきた!
つまり寝てる女の子にI・TA・ZU・RA−−−−−−し放題!!!!」
変態、覚醒
彼は早速その魔法人形の体を触りいろいろと確認していく
「や、やーらかい!!ふむふむ、これが女の子の体!最高だ!妄想とかとは次元が違う!
、って当たり前か!!これは三次元!妄想は・・・何次元だ!」
変態、暴走
続く
」
まさかリアルタイムで書いてる訳じゃないよな…?
たのむ。続かないでくれ。
妄想は11次元さ〜〜。
てか種族なんだこいつ?
エルフやノームだったらある意味新境地。
386 :
作者:2008/12/03(水) 01:50:52 ID:jc8SnWI7
>>384 何やら不快にさせてしまいすみません。続きは自粛させてもらいます
>>386 書きながらの投下はどのスレでも嫌われるよ
個人的にはこういうノリは好きなので、きっちり書き終わってから続きを投下してくれるのを楽しみにしてる
続きまだぁ?
いよいよ不吉な予感が増してきました。ヒューマンはどうなるのか…
誰かレベル低めの超術士一人連れてきて〜!
ふふ、癒しの果実なら4つあるぜ。
>>390 「……食え」って照れくさそうに顔真っ赤にしたバハ子が癒やしの果実で作った
すげー不恰好な黒ずんだ料理の皿を突き出してくるんだな
俺なら喜んで食える
俺なら喜んで料理もバハ子も食べる
吐血しながら笑顔でおいしいというのが漢だと思う。
20歳未満のお子さまは例え書き手でも来なくて良いよ
20歳になるまでに経験できないのもどうかと思う
↑の方で次スレの話題も出てるわけで…今モノを投下するのは見送るべきでしょうか。
容量が心配だ。
いま471KBか。511になると容量限界だがまだ40あるし…。
480越えたら次スレ立てるってことでよいのでは?
>>398 511kbが最大でしたか。きりよく500kbくらいだと勝手に思い込んでた俺の目から鱗のごとくSSが。
残り40ならいける筈
彼に好意を持っていたとか、そういうわけでは断じてなかった。
ただ戦術的な能率性を重視した結果というだけだ。
私は神女。
その私が自分の能力を存分に発揮するため君主の彼にべったりはりつく形になるのは、ごく自然な話の筈。
仕方がないではないか――。
だが、あの女はそうは思ってくれなかったらしい。
探索の途中で小休止するとき、
学園に帰還し食堂で皆と暖かい食事にありつくとき、
果ては、迷宮で魔物と戦闘している真っ最中――
つまりは、今まさにこの瞬間にも、背後からじっとりと不快な視線を感じるのだ。
殺気とすら思える粘着質な気配。
「気を抜くな、神女の。今日のおまえはキレが悪い」
「わかっている。君主らしく黙って壁役を果たせ」
「は、達者な口だ」
部隊のリーダーらしく幾分か小言臭くも、しっかりと自分を守ってくれる彼と軽口を叩き合いながら、
呵責ない捨て身攻撃で敵を斬り伏せていく。
もともとパルタクス出身のこの部隊にあって、ただひとりのランツレート生である私は、
バハムーンという種族柄もあって他のメンバーとは折り合いが悪かった。
だが、もうそれも過ぎた話だ。
君主の彼は勿論、ともに前線を組む侍や後衛方の面々とも、
今は互いの力量を認め合い、共に戦う仲間として結束を固めている。
――あの女以外とは。
がしり、と痛いほどの力を込めて私の肩に腕が回された。
「どうしたの? 余所見は駄目よ、神女さん」
「あ、ああ。すまない」
「いいのよ、んふふ……」
彼女はヒューマンのくノ一。私が参入するまでは、彼女が彼の隣のポジションについて戦っていたらしい。
それゆえか、初対面の時点からずっと彼女の視線がちくちくと痛い。
特注強化した代物だという、ノームと見まがうような実物大のカラクリ人形を操り、
私たち前衛の頭越しに並み居るダークレーザーや闇のしらべをくびり殺していくあの手練もあいまって、
私は彼女の目に寒気を感じずにはいられなかった。
無論、私達は皆の前では普通にしている。
寡黙というか口下手な部類に入る私とは違い、闊達な彼女はよく笑顔を振り撒き、皆にも好かれている。
その彼女が一見して皆と分け隔てなく、
寧ろ馴れ馴れしいほどのスキンシップ込みで私にも接してくれているのだから、
誰もが私達の確執に気づけずにいるのは致し方ないことだろう。
我慢するしかない。
私は謝るようなことをしていない。そのことを、いずれ彼女も分かってくれる筈。
……でも。
本当は、助けて欲しかった。
最近は、寮室で休んでいるときにまで彼女の気配を感じるようになっていた。
つい先日、ひとりでいるのが怖くて食堂で時間を潰してから部屋に戻ったとき、
自分のものでない臭いが薄らと漂っているような気がして思わず逃げ出してしまった。
さすがに彼の部屋に転がりこむわけにもいかず同性の侍のところへ適当な言い訳をして泊めて貰ったのだが、
あれは我ながら英断だったと思う。
先夜は暗くてわからなかったのだが、翌朝明るい中で見てみると机やベッドが乱されていたのだ。
違いとしてはほんの少しだけ。だがそこに住んでいる者の目には明らかに、確かな違和感が残されていた。
彼女が、ここにいたのだ。
私にはどこにも心安らぐ場所がない。
ノイローゼになりそうだ。
彼女が怖い。
助けて欲しい。
しかし、折角うまくいっているこの部隊の雰囲気を壊すのも嫌だった。
魔物の大群を見つけるたび喜び勇んで突っ込んでいくような、
絵に描いたような戦闘狂揃いの悪パーティの私達だが、こと戦いを離れた場所では皆気のいい連中だ。
腹を割って話せばきっと救いの手を差し伸べてくれる。
だが、その結果がどうなるにせよ、禍根が残るのは避けられまい。
それどころか、皆との仲が決定的に壊れてしまうかもしれない。
私には、それが何より恐ろしかった。
やがて、彼が小休止を告げた。
私はほとんど無意識に彼女から離れ、冷たい迷宮の壁に背中を預けて座りこむ。
今は大丈夫、皆が一緒にいる、と膝を抱え、
飛ぶには適さない退化した翼で身を抱いて膝に顔を埋めた途端、
日頃の寝不足が祟ったか、くらりと強烈な眠気が襲った。
あ、と思ったが目蓋が落ちるのを止められない。
それほどまでに、私は憔悴していたのだ。
重い石に包まれているような疲労感を自覚し、もうどうにでもなれと睡魔に意識を明け渡す瞬間、
私の目尻から、ぽろりと熱いものが頬を伝った。
私が何をしたというのか。彼の隣にいるのが、そんなにいけないことなのか。
仕方がないではないか。
すべては彼女の勘違いだ。
それに、あのふたりが付き合っているということもない。
横恋慕ですらない、言いがかりだ。
私に非は無い。なのに。
魔物たちの凶暴な牙からいつも私を守ってくれる彼は、これに限っては気付いてもくれない。
所詮はあの女と同じ、下等なヒューマン野郎なのだ。
だが、それでもなお、
目を閉じ耳を塞いで己の内に閉じ篭り、
恐ろしい彼女の幻影から逃れる私の心の防波堤は、彼だった。
竜の爪を食らっても平然としていられる頑強さを自慢にしているような無骨な彼の、
広く大きな背中に守られて思うさま安眠を貪る自分を幻視する。
夢なのだからと、つい調子に乗って彼の手を握り締めた。
暖かかった。
彼が振り向き、いつもの不敵な笑みを浮かべる。
じんわりと言いようのない安心感が胸に広がる。
またひとつ、頬に熱いものが伝うのを感じた。
そうして、ああそうか、と私は気付いた。
私は、どっぷりと首まで彼に依存していたらしいと。
うん、そうだ。
どう考えても間違いない。
本当に後ろ暗いところがないなら、どうして私はこうまで彼女を恐れているのか。
つまるところ――どうやら私は、彼のことが好きらしい。
己の素直な感情を自覚したが最後、
ひとたび拠り所に気付いてしまえば、私はいとも脆弱にそこによりかかってしまう。
妄想の彼に肩を抱かれ、私の体はだらしなく弛緩した。
彼ならば。
きっと私を助けてくれる。すべてをうまく収めてくれる。
そうだ、彼にみんな打ち明けてしまおう。彼は、いつもの顔のまま私の言葉を待ってくれている。
肩を抱く手を握り締め、私は息せき切って口を開いた。
……そして、そのまま凍りついた。
「寝苦しそうね、神女さん」
「――――!」
私が握り締めていた手は、あのくノ一のものだった。
現実とない交ぜになった生温い夢から覚めた私を捕まえて、あの怖い微笑で見下ろしている。
ぎらり、と彼女の手にある何かが光った。
顔の横にあるそれにぎりぎりと目を向けて、私は声を出すことも出来なくなった。
ナイフだ。
私の中で色々な何かが、まとめて吹っ飛んだ。
殺される。
「ぁ、ぁ……!」
体だけが勝手に動く。
気付いたとき、私は突き飛ばすように乱暴に彼女の手を振り払い、あらぬ方向へと駆け出していた。
「おい、くノ一の。神女の奴、いきなりどうした」
「ええ、ちょっと向こうに用があるって」
「? 飯のあとにすればいいものを。連れ戻すぞ」
「あら駄目よ。オンナノコには、そういうときもあるの。ね? 侍さん」
「んぐ? どういうとき?」
「侍の、食いながら喋るな。そもそも話を聞いていたのか」
「まあまあ。私が見てくるから大丈夫よ。だから、ちょっと待っててね」
「そうか……? なら頼んだ。あまり遠くへは行かないように言ってやれ。
あと、その食事用のナイフを返せ。俺のだぞ」
「はいはい。じゃあ行ってくるわ、君主さん。だから、ね、皆も……『絶対に、ここを動かないでね』?」
ぜいぜいと息をついてへたり込む。
ようやく我に返った時には既に遅く、どこをどう走ったのか、私はまったくわからなくなっていた。
完全にはぐれた。
茫然自失とはこのことだ。メタライトルの光すら及ばないほど目の前が真っ暗になる。
いや違った、本当にメタライトルの効果が消えている。
疲労回復に唱えようとしたヒールも発動しない。
血の気が引いた。
アンチスペルゾーンだ。
ちょっと周囲を動き回っただけではアンチスペルゾーンを抜け出せなかった。
最後の手段のバックドアルも使えない。その上私は、魔法をアテにして帰還札の類も携帯していなかった。
なんと迂闊なことをしてしまったのか。
このあたりの敵は、まだ私ひとりでは荷が重い。
こうなっては皆に見つけてもらうのを待つしかなかった。
それに下手に動いて強力な魔物に出遭うよりはと適当なコーナーに身を寄せようとした、ちょうどそのとき。
「見つけた」
「!!」
薄闇の向こうに、ふたつの人影が現れた。
聞き間違える筈もない、くノ一の声。連れているのは、愛用の巨大カラクリ人形か。
あの女、ついに私を殺しにきたのだ。
「馬鹿ね。わざわざ自分でひとりになってくれるなんて」
「く、来るな!」
「いやよ。もう分かってるわよね、わたしのことは」
がりがり、と耳障りな関節の音を伴い、どちらがどちらとも知れないくノ一と人形が一歩近づいた。
「…………!」
「物騒ね」
いざこの期に及んでは、荒事で鍛えられた私の体は思いもがけない滑らかさで動いた。
幸い、掌中には得物があった。
いつかこんな事になるのではないかと、呪われるのをいっそ自ら望んで装備していた精霊の剣。
それを握り締め、突きつける。
やるしかない。
彼女が手練であることは知っていた。
それも、こと敵を殺すことにかけては部隊の中でも頭ひとつ抜きん出た精兵だった。
だが、所詮は人間。バハムーンの膂力で一撃当てれば確実に落ちる。
「当たると思う?」
憫笑すら混じる声で揶揄される。
無理からぬ。
武器をなくそうと五体を凶器と成し得るくノ一。その驚異的身体能力を、そしてその打たれ強さを思えば。
たかが一撃、されど一撃。彼女に対して有効な一撃とは、全身全霊の捨て身以外にありえない。
それを仕損じれば即ち、自分の命運が尽き果てる。
あまりにも分が悪い、大穴博打だった。
向こうもそれをわかっている。
彼我の戦力を吟味し、せせら笑いすら漏らして、一方的な勝利を確信している。
しかし、だからこそ生まれる隙もあるのだ――。
突然、そして絶妙のタイミングで、横合いの物陰からけたたましい雄叫びを上げて闇より生まれし獣王が飛び掛った。
無論、私にではない。
「ん――?」
調子に乗って人形を騒がせ過ぎるから、魔物を呼び寄せたのだ。
彼女の意識がそちらにそれた隙に地を蹴り、大上段に剣を構えて突進する。
はなから防御は考えなかった。先に一撃した方が勝つ。
不明瞭な人影のうち、左がふわりと指を蠢かせたのと同時、右が機敏に魔物の爪を叩き落とした。
本体は、左か。
「食らえッ!」
そちらに駆け寄りざま、全力で袈裟切りにする。
だが、返ってきた手ごたえは、がぃん、という生身にはあるまじきもの。
「馬鹿ね。そこが可愛いんだけど」
私が切り込んだ人影の背後から、ひょいと彼女が顔を出した。
瞠目した。よく見れば、私が切りかかったそれは、あのカラクリ人形ではないか。
「二体目ッ?! おまえ、一体どこにそんなものを……いや、いつの間にそれほどの技を?!」
「女には秘密があるものよ」
んふふ、と彼女は私がこれまで見たこともないような不気味な笑みを浮かべた。
「わたしは、あなたの秘密をみんな知っているけどね……?」
彼女が猛々しくも卑猥に中指を突き立てるとともに、一瞬、空中に無数のはりつめた傀儡糸が光る。
直後、闇より生まれし獣王が向こうのカラクリ人形に頭部をかち割られて即死した。
無残に飛び散る脳漿。断末魔が途切れ、物言わぬ糞袋に変わる巨躯。
次は、私がそうなる番だ。
「くそ……!」
「無駄よ無駄」
「ぐッ、ぅう――」
「ほらこっちも」
「あ、がは……ッ?!」
恐怖にかられて遮二無二振るう剣が運良くかすろう筈もなく、二体のカラクリ人形によって私は袋叩きに叩きのめされた。
鳩尾に入った拳が衝撃で全身を麻痺させ、首を握り潰さんばかりに両手で掴んで声を封じる。
恥も外聞も忘れて泣き叫び皆に助けを求めようとするのさえ許されない。
負けた。何の抵抗もできず、一方的に。立ち上がれない。
怖い。
あのいやらしい笑みが。その笑みのままこんな凶行に及べる彼女が、たまらなく恐ろしかった。
「ぁッ、い、ひ……っ」
「あ、それ、もの凄い可愛い顔よ神女さん。もっと遊んであげたら良かったかしらね。んふふ、
んふふふふ!」
カラクリ人形たちに両手足を広げておさえこまれた私は、俎板の上の鯉も同然だった。
どんな惨たらしい殺され方もお望み次第。
剣は奪われ、横隔膜が震えてブレスすらも満足に吐けはしない。
そんなボロ雑巾同然の私の腹に馬乗りになって、彼女は獲物を食い漁る獣のように顔を近づけ、
埃と涙に汚れた私の頬をぞろりと舐め上げた。
そのとき、頭突きくらいはかましてやれたかもしれない。
だがこの瞬間にはもう、私はその程度のささやかな抵抗の気力すらも奪われていたのだ。
痛い。怖い。私の胸には、もうそれだけしかなかった。
「ご……ごめん、なさ……」
「なに? はっきり喋りなさいよ神女さん。ほらぁ」
「ひぃッ、痛い! ごめんなさい! ごめんなさいぃぃい!」
「あらあら。何を今頃、ね!」
最後の矜持すら折れ、涙声で哀願を始める私の襟首をがっとつかんで引き起こし、黙らせる彼女。
もはやカラクリを使うまでもないと思われたのか、傀儡糸を外した手がわきわきと掲げられる段になって、私はとうとう鼻水すら垂らして幼児のように泣きじゃくった。
「えっ、ひ、ひぐううぅ、うわあぁあん! あああああん!」
くノ一の手は凶器だ。ともすれば、カラクリ人形など及びもつかないほどの。その手が、べたべたと私の顔中を撫で回す。
頬肉を歪め、目蓋をしごくように無理やり開かせてはくぐもった笑い声を漏らす。
情け容赦は望めないとすぐにわかった。急所に刃物を押し当てられているも同然の恐怖。
「素晴らしい。新境地だわ」
甘ったるい囁きが耳元でしたかと思ったが早いか、耳朶に激痛が走った。
ふうふうと熱い呼吸音が聞こえる。ぬめるような熱い吐息が首にかかる。噛み付かれたのだ。
そして、今度は胸に激痛。声すら殺された私の両の乳房を、彼女の手が鷲掴みにしている。握り潰すように揉みしだかれる。
「筋肉かと思ったら柔らかいじゃない。ふふ、このおっきいのを、君主さんに触ってもらいたかったのね?」
彼のことを口に出されて、私ははっとした。
目の底に灯った光を悟られたのか、彼女は片方の乳房を解放し、かわりに顎をがしりと捕まえて私を見据えた。
「そうよね? 神女さん」
「あ、ぎ……っ」
「答えなさいよ」
「〜〜〜〜!」
「んふふ! そこは言えないのね! ホントどれだけ馬鹿で可愛いのかしら、このトカゲ神女さんは。
喧嘩中毒の彼にも教えてあげたいわ。魔物をドつき回すだけじゃなく、この四六時中滅茶苦茶にしてもらいたがってる色ボケ娘とも遊んでやれってね」
「やめてッ……そんなの、違う……」
「……ああそう、まだそんな口が利けたの。でも、それでこそ、よ」
手刀一閃。私の身につけた装備がばらばらと外れ、地面に転がる。見る間に下着を残すのみになる私。
冷えた外気に晒された肌が粟立つが、いまだにカラクリ人形の糸が手足を拘束しており隠すこともできない。
そして、次の瞬間には下着すらも。引き千切るように一息にむしり取られた。
「彼のことは忘れなさい。今は私と遊んでちょうだい。ね?」
「あ――やめてやめてぇ! 触らな……あああ、そこだけは嫌ァ!」
「なに、ここは駄目なの?」
「そうよ駄目ッ! 駄目駄目駄目ぇえ!」
するりと鮮やかなポジショニングで私の両腿を割って侵入する彼女の半身。
ひやりとした手が毛を撫でおろし、割れ目に触れる。というより、ぐりぐりと弄り回す。
新しいオシメを強請る赤ん坊よろしく無様に脚をバタつかせて、私は暴れた。
自分でもまともに見たことの無い部位を他人に覗かれる羞恥と、そこに乱暴を働かれるという恐怖が、
満身創痍の私をして必死の最後の抵抗へと駆り立てていた。
「ふうん。じゃあ……」
食い入るように私の急所を見つめる彼女の目に、底冷えのする光が灯った。
三日月の笑み。
ひたりと突きつけられる指。
「――『やらいでか』ね」
慣らされてもいない敏感な秘洞に、みしりと凶器が押し入った。
「は――――」
息の根を掴まれたかのように、私の全身が硬直した。
圧迫感。浅く突き立てられた冷たく硬い感覚が、体の中にはいりこんでいる。
「トカゲさんも中身はあったかいのねぇ。
……あら、何かあるわ。……なあに、もしかしてはじめて?」
声も出せず、ぶんぶんと首を振って肯定し『だから許して』と懇願する私。
「なんで? とっておきたい好きな相手でもいるの?
さっきはそんなのにいないみたいなこと言ってなかったかしら」
「う、うぅ……!」
「いるの?」
ろくに力も入っていないような掌で、いたぶるように頬を叩かれる。
痛みは無い。だが、このいかにも憎々しげな手つきで頭を左右に揺さぶられるだけでも、
私を限界に押しやるのは容易だった。
「………………います……。好きな人、いますぅ……ぅぅ……」
「まあ。それは大変。誰よ」
「……君主……」
「ああ彼ね。で、彼がなんだって? 大好きな彼にどんなことをしてもらうために助けて欲しいの?」
この瞬間の為だけに今まで見逃されていたのではないかと思うほどの的確さで、
硬く縮こまった乳首をつねり上げられる。
「あ、あああぁぁ……」
「きりきり答えなさいよ。メストカゲ」
「?! ぎいッ!」
中を引っ掻かれた。蚊に刺された場所をそうするような気安さで、ぽりぽりと。
「ひ、ひぎぃいいい!」
「うるさいわね。指が足りないのかしら」
「ち、違ぁ――ッ」
「なら答えなさいよ。ブレス吐くだけの口じゃないでしょう。舌がいらないならもらうわよ」
「あ、がっ! あぇえええッ!」
乳首が解放するなり、彼女の指は悲鳴に開いた私の口に飛び込んで舌を引っ張り出していた。
唾液に塗れた柔らかい肉を滑ることもなくがっちりととらえ、
少しでも引っ込めようとすれば指ですり潰さんばかりに完全に掌握する。
咽喉の奥の筋肉が激しく突っ張る痛みに耐え切れず、私はたまらずその手に従う他なかった。
「でも、そしたらきっと彼も悲しむわ。一気に出来ることのバリエーションが減っちゃうしねぇ」
「――ゆ、ゆるひ……」
「ふん? ならヒントをあげましょうか」
顔を近づけるのではなく、凶暴な腕力で舌を引っ張って私の上体を持ち上げ、私の耳元に口を寄せる彼女。
上気した吐息がそのまま意味をもったような卑猥なフレーズが、
よくぞそこまでという滑らかさで次々紡がれていく。
耳を塞いでしまいたくなるようなそれをひとしきり吹き込んだところで、彼女は私の舌をぱっと放した。
「――わかった?」
「あいぃぃぃ……」
「ちゃんと言うのよ? ちゃんと言ったら、もうやめにしてあげるわ」
「ほ、ほんとに……?」
「もちろんよ」
「…………」
「ほら」
あとから思えば、だが。
これを唯々諾々と聞いてしまった私もまた、どうかしていたのかもしれない。
「……わ、わらひは……」
「声が小さい」
「ひぎい――ッ?!」
乳首をもぎとるような勢いで引っ張られたのが、最後だった。
「わたッ、私はァッ!
彼に犯して頂きたいですッ、まだ誰にも触れられたことのない新品のまんこに彼の逞しいものを頂いて――彼の気持ちのいいように、好きなように使って頂いてぇッ、
ああああぁ……初物であることのほかに何もない、何も知らない未熟な私の大事なところに、彼に気に入って頂けるようなことのすべてを……、ぉ、お勉強させて欲しいんですぅぅぅ、う、ぅわぁあん! もう嫌ァアア!!」
咽喉も破れん絶叫調の猥弁が、迷宮の闇にわんわんと木霊した。
何度も何度も反響し、どこまでも響き渡っていく自分の妄言を聞きながら、
私は仰向けに倒れ込んでびいびい泣き崩れた。
言ってしまった、と思う。
でも、これで助かる。これで、もう終わりにしてもらえるのだ――――
だが。
「駄目よ」
「え……」
「わたしが教えたことの三分の一も言ってないじゃない。
続けましょうか」
「ぁ、ああ――――――」
秘所に当てられている指の数が、倍に増やされた。もはや手刀だ。
殺される――
誰か助けて――
そう言おうとした私の意識は、残念ながら肉体を律しきれてはいなかったらしい。
未だ心頭滅却ならぬ未熟な神女の私の口から飛び出したのは、ただの悲鳴だった。
ぐぶり。そういう音を、確かに聞いた。
「あっ――――、ぎゃああああああああああ!!」
不思議と、どこか聞き覚えのある声だった。
そういえば、さっき死んだ闇より生まれし獣王も、こんな声をあげて殺されたのではなかったか。
くノ一の手が、私の中に指の付け根まで埋まっていた。その光景もすぐに滲んで見えなくなる。
ただ痛みと呼ぶにはあまりに語弊のある激しい衝撃と熱が下腹部を内側から押し広げ、どんなに深々と魔物の牙を突き立てられても涙一滴零さなかった私の視野を塗り潰していた。
だが、これはこれで――自分がどんな醜態を晒しているのか自覚する労だけは避けられる。
そんな、不謹慎なほどに冷えた心の片隅と、その落ち着きにまったく整合性を示さない私の体。
「はッ、が、ぁああ! いだ、痛いぃぃ!」
「だいぶ楽な筈よ? だってほら、こんなにぐちょぐちょにしちゃってまったくこの子は」
「ひぃぃぃ――嘘、嘘ぉぉぉ……」
だが実際、この気色の悪い往復運動に彼女が特別な骨折りをしている気配は無かった。
実に楽しげに、食事中の肉食獣の唸りを思わせる喜色をたぎらせて笑っている。
「濡らしたんじゃないの? じゃあ、お漏らし?」
「違うぅ!!」
「そうよね。神女さんは才能家なのよね。苛められてるうちに準備万端だなんて、最初はなかなか出来ることじゃないわよ」
「やめて! 変なこと言わないでぇえ!」
「今更やめても遅いんじゃない? どうせなら『予習』させてあげるわよ。彼に気に入って欲しいんでしょ? このきっつい穴で」
「――ッ」
また、彼の話――!
「そう、その目よ。
でもね、ちゃんと答えろって、さっき言わなかったっけ?」
「あぐぅぅッ――――――く! な、なんでだ……ッ」
「あら何?」
「そんなに私が憎いなら! 殺したいならさっさと殺せばいい! おまえなら簡単な筈だろう! なのになんで、なんでこんなッ……酷い…うぅううう!!」
「なんでって……」
恨み節としては、我ながらなんとも情けなく、そして弱々しい。しかし言わずにはおられなかった。そのあとどうなるかは、もう知ったことではない。
どうせ飽きるまで踏みにじられ、辱められて殺されるのだ。
今の言葉が彼女の機嫌を損ね、後に待つ惨死への過程が幾つか複雑になったとしても、どうせ大した違いではない。
探索の道中力尽き、無残にも魔物や通りすがりの探索者の慰み者になった女子生徒らの話を聞くには事欠かない立場だったが、とうとうこの私にもそのお鉢が回ってきたというわけだ。
彼女の言うとおり、私は馬鹿だった。
こんなことになるなら、もっと早く自分の気持ちに気付いていればよかった。
戦線を組む仲間としての関係に甘んじ、もっと深いところにある本音に目を向けもしなかった、その結果が、これだというのだから。
「なんでって、あなた……決まってるじゃない」
彼女がその手を秘所から引き抜き、真っ赤に染まったそれで私の頬を包んだ。
恥ずかしい体液で希釈されながらなお特有の粘性を保った血液が、ゆっくりと剣呑な手つきで私の顔に塗り広げられていく。
手つきそのものは愛撫のそれだ。しかしその実、頬骨の上を往復する親指は、眼球を押し潰すタイミングを計っているのかもしれない。
いやきっとそうだ。
彼女は、私がみっともない悲鳴を堪えることのできない、意識の途切れ目を蛇のように探しているのだ。
ぐ、と奥歯を噛みしめ、目に力をこめてその時を待つ。どんな憎悪を叩き付けられるのか想像もつかない。
きっと、私は耐えられないだろう。
だが決めた。もう絶対に、ごめんなさいなどと言ってやるものか――。
なのに。
「それはね、あなたのことが好きだからよ」
――――は?
決意から数呼吸もしないうちに、私はいとも簡単に気を途切れさせてしまっていた。
「わからないの? ああ主語が抜けてたわね。私は、あなたを、好き。それが理由」
「な、何を……ッ」
「わかりなさいよ」
頭が割れるかと思うほど頭蓋を両側から鷲掴みにされ、無理やり彼女に正対させられる。
――慈悲深い笑顔だった。より美しい枝振りを目指し、盆栽の余分な枝に鋏を入れて間伐する風流人のような笑み。何か貴重なコレクションを、おまえはこうあれと黙々磨き上げるような、そんな笑みだった。
「わたしは、あなたが、大好きよ?」
「ふざけ――」
「ふざけてないわ。だってあなた、とってもきれいじゃない」
彼女は血と涙できっと酷いことになっているに違いない私の顔をべろりと舐め上げ、鼻の頭にちょんと口付けして、咽喉を鳴らして笑った。
「体が倍もある魔物に真正面から打ち込んで伐殺するあなたの後姿、すごく魅力的だわ。
剣を振るのに邪魔だからって無造作に切り揃えちゃった髪の下の後れ毛も、戦いを忘れて寮室のベッドですうすう眠る無防備で柔らかそうな頬っぺたも、迷宮の中、いつ魔物に襲われるかってがつがつ弁当をかき込むお行儀の悪さもね。
……見ててわかる。きっと、あなたはいい戦士になるんでしょうね」
「――――」
「最初、戦士学科だったのよね私。でも向いてなかった。真っ直ぐな太刀筋っていうのが出来ないの。
夜討ち朝駆け闇討ち辻斬り。わざわざ非効率に素手を鍛えて、いい得物持ってる相手を余裕綽々殺してみせたり。そんなやり方の方が、なんだか体がよく動いちゃって。…………ああ、たぶん私、あなたが羨ましいのね」
戯言だ。聞くに堪えないと最後の力を振り絞って彼女の手を振り払う。
「――でもね?」
児戯のようなビンタが飛び、いとも簡単に私を張り倒した。地を這う私を当然のように捕まえなおし、親が子供にするように両脇に手を入れて持ち上げる。
「私があなたを好きなのは本当よ。だから、あなたを手伝うの」
「何を、言ってる……」
「あなた、彼が好きよね?」
「……」
「でもあなたは、それを自分で分かってなかった。自分を知らないのは辛いわ。じゃあ助けてあげないと」
「だからって……だからって!」
「――――うるさいわね。黙って助けられなさいよ、メストカゲ」
「ッ、ひぎ……!」
長い指を生かして片手で私のこめかみを捕まえ、吊り下げて、逆の手で乳房を乱暴にこね回す彼女。
「んふふイイ声! ……ね? 気付かせてあげたでしょ? 私、あなたを助けてあげたわよね? だからぁ……ちょっとぐらいいいじゃない。ご褒美、もらっちゃっても」
ぐっと頭を地面に押し付けられ、私の横合いに体を移した彼女に秘所周りを撫で回された。
脚を閉じようにも、強靭なカラクリ人形の糸を膝に巻きつけられては彼女にいいようにされるしかなかった。
「ッ、やめ……ッ」
「やめないわ。まだお勉強の途中なのよ? 男はね、生娘の相手ってかえって気を遣うものなの。あなたはガサツだから、きっと初めては上手く出来ないわ。だったらちゃんと『予習』していかなきゃ。彼を喜ばせたいんでしょ?」
「ふざけるな! そんな、そんな事――、あ!」
「私ひとりくらい喜ばせられないようじゃ彼に気に入ってもらえないわよ? 気分出しなさいよ、ほらぁ」
「ぃ! 痛い痛いぃいい!」
陰核をつままれ、目の前に火花が散ったと思うが早いかまた中を犯されていた。
今度は指を四本もねじ込まれるようなことはないが、か弱いのは見た目だけの刃物同然の指で上といわず下といわず肉壁を擦りまわされるのはやはり苦痛以外の何ものでもない。
「しょうがないわね……」
「あッぐ……!」
ぼそりと呟いた直後、彼女は勢いよく指を引き抜き、私に見えない角度でごそごそと何かしたあと、また挿入した。
また、あの痛みがくる。そう思って身を硬くしていた私を襲ったのは、なぜか拍子抜けするような僅かな痒みだけ。
最も細い小指一本だけを差しこみ、ゆっくりと前後。
自分でもわかるほど顕著な勢いで、硬く強張っていた膣がほぐされていく。おかしい。明らかに異常な反応だった。
「お、おまえ、私に何をした……?!」
「みわくの粉」
身近すぎる名前に、一瞬何のことかわからなかった。彼女が口にしたのは、石化状態を回復する粉薬の名だ。
「馬鹿な、そんなものでどうして――」
「用法容量なんて言わないわよね? 『がちがち』になってるところには、よく効くのよ。これ」
「う……?!」
「んふふ。ほらね」
強張りがとれるに連れ、苦痛も急速に収まっていった。
さらさらと薬方から注がれる粉末が、体液まみれで前後する彼女の指にまとわりついては、私の中へと送り込まれ肉襞の間に塗りこまれていく。
最初は、ただ出し入れの感覚があるだけだった。
だが、次第にそれ以外の何かが――ぞわぞわとした名状し難い感覚が、下腹部に広がっていく。
駄目だ、と直感した。よくわからないが、絶対に駄目だ、これは。
「や、やめろ! やめてッ、お願いだから!」
「――変わったわね。声の調子が」
にたりと笑った彼女の顔が、ふいに私の足の間にもぐりこんだ。
「つまり、『もっとしてください』と」
「ち、違ッ……ぁひッ?!」
生暖かい吐息を股間に感じたと思った直後、私の背筋を電流が駆け抜けた。
陰核を舐められている。そう認識するまでに、一拍の時間が必要だった。不慣れな場所に加えられる強過ぎる刺激に、頭の中が真っ白になる。
きもちいい? と、くぐもった声で彼女が聞いた。
――わからない。私はそんなことは知らない。
猫が皿からミルクを飲むような騒がしい水音をたてて割れ目にまで舌を伸ばし、ついには尿道口すら犯そうとする彼女。
抜き差しする指と比べれば決して激しいとはいえような、むしろ遠慮がちなほどの動きではあった。だが、それでも充分すぎる。舌先が其処彼処をつつき回すたび腰が跳ね、或いは、べろりと舌の腹で舐め上げられるたびぴんと背中が反り返る。
「あっ、あっ、あっ! そこ、強いぃぃぃ!」
「あなたが弱いのよ。だってほら、こんなちょんってするだけで」
「?! んぁあッ!」
自分が信じられない。私は、なんという声を出してしまっているのか。
手を使えず、せめて必死で口をつぐもうとする試みすらも、腹の底から湧き上がって来る奇声の勢いの前には無力だった。
怖い。自分の体が自分の意のままにならない不安感と、いずれも唐突に与えられる強烈な刺激。
外側の刺激だけでも、このザマだというのに――
「ひぅ、ひぐうう……くぅぅうん……」
知らないうちに、中に入れられた指の生み出す動きからも、同じような反応を搾り出されてしまっている。
そのうち彼女は私の胸にまで手を伸ばし、乳首をつまんで弄り回しはじめた。
女同士だというのに……否、女同士だからこそというべきか、彼女の攻めは的確極まる。
或いはあらゆる敵の急所を熟知し、知らずとも戦いの中で探し出し正確に叩くくノ一のなせる技なのか。
その彼女の手で強引に送り込まれ続けているこれら種々雑多な感覚を遅まきながら性感と認めはじめていた私にとって、この第三の干渉点の出現は決定的だった。
挿入する指を増やされたことで、痛みこそ消えたものの私をしつこく責め苛んでいた強い圧迫感が一気に薄れ
失神のそれに似た浮遊感が全身を満たす。
そうして。
かり、と私にだけ聞こえる音をたてて、これまたいきなりの暴挙。あまりのことに呼吸すら停止する。
見えずともわかった。陰核を、前歯で――――
「ひぃ、ひいいいいいいいッ! こ、れッ、これぇええええ!」
「それはね、イクって言うのよ」
行くってどこに? と問う思考は、もう残されてはいなかった。
眼球がぐるんと裏返り、白目を剥く。
「イッ、ぐッ……! イ、ィィイッ、イクぅぅうううううううんッッ!」
引き攣れを起こしたようにびくんびくんと跳ね回り、
ぐったりと崩れ落ちた私から指を抜いた彼女が、ふんと鼻を鳴らした。
「簡単な女」
「…………ぁ……、も…やめ……」
脱力し、ぜいぜいと息をつく私に軽蔑の声色で言い捨て、またも覆いかぶさってくる。
顎をつかんで無理やり開かされ、頬肉の内側を削りとるかのように荒々しく嘗め回された。
暴力的なディープキス。息ができない。
抗おうにも力が入らない。噛み付いてやる気力も、もうありはしない。
顔中がかっと熱くなり、目の奥にちかちかと火花が散るころになって、私はようやく解放された。