コン、コンゴンコン、ゴン、ゴンッ!!
「や。やぁだ。ねぇ、もう。ねぇ、ってば……あぁんっ!!」
あたしが舐められて体をよじるたび、頭ゴンゴンってなる。
彼は舐めてる。見えないけど舐めてる。それはもうすっごい勢いで舐めてる。
でも乱暴じゃない。優しい、すっごく。うわぁ。すごい。うわぁ。
どうよこれ。どうなのよ実際。こんないいお天気のお外で。車のボンネットの上に寝かされて
思いっきり脚を開かれてあそこペロペロされて、そんであんあんとか言わされちゃってる
女ってどうなのよもう。考えらんない。信じらんない。
でも。あぁでも。気持ちいい。
これ、来る。こういうの知らなかったけどすっごい来る。
それに彼、上手だし。何か優しくて「真摯」って感じで。あれ?紳士?真摯?どっちだっけ。
あぁもうわかんない。とにかくすごい。こんなのすごい。だってほら彼、あそこだけじゃなく
脚とか、膝の裏とか。そんなとこまで撫でたり舐めたり。
あぁ、脚。あたしの脚。ちょっと自信あんのよ。だからそこ、そんなふうに触られると。もう。
彼の舌が戻ってきた。脚からあそこに。うわぁ。始めた。集中攻撃はじめた。あそこ。あれ。
あぁもうやだってば。そんなふうにちゅうちゅう吸わないでって。下から上にれろれろん、なんて
舐めるのもだめだってば。そういうの弱いし。そこ弱いし。一番いいとこ。気持ちいいとこ。
もう何なのその舌。何でそんなに器用でやらしいの。あぁもう。もう、気持ちよすぎるってば。
やだ。来る。けっこう来てる。あれ?あぁ。どうしよ。ねぇ、ちょっと。あぁ。ヤバいかも。
あたしったらいくかも。こんなお外でこんなことされていくかも。
「ね。ねぇ。ねぇ……っ!そんなの、もう。い、や……です。ねぇっ!やだってば!」
とか言いながら。あたしもうほんと気持ちよくて。車の上でからだ、ジタバタ。
体、震える。彼の舌にうりうりされるたんびに、ぴくんぴくんがびくんびくんになる。
来た。あぁ来た来たきたきた。すごいの、来た。来てる。あぁ、来る。来る。
あぁ、あたしいくんだ。彼にこんな。お外でこんなことされていくんだ。うわぁ。うわぁ。
「ひゃっ、ねぇっ!ねぇってば、ねぇっ!あぁもう、もう!やだ、だめあたし、あっ。あぁっ!」
その時、彼があたしの胸に両手を伸ばしてきて、何か、何かのスイッチみたいに。
両方の乳首を、「きゅっ!」て同時につまんだ。
それがとどめ。だめ押し。なんかほんとにスイッチ入った。来た。もうほんとすごいの来た。
あたしお日様の下で思いっきり脚を開かれながら。すごい勢いで舐められながら。
いかされた。
「んぁっ!!」
って叫んで。また「ゴンッ!」って大きな音して頭がガラスにぶつかったけど。
あたしそん時はもうそれどころじゃなかった。気持ちよくって。ぜんぜん痛くなかった。
いっちゃったから。
あぁ。もう。いかされちゃった。彼に。あぁもう……あぁ……ふわぁ。
あたしがお空を見ながら、まだぼーっとしてるうちに。
何かカチャカチャって音が聞こえてきた。たぶん彼、脱いでる。ズボン脱いでる。わぁ。
やっぱりするんだ。そうよね。そりゃするわよね。うん、でも。でもでも。
「ねぇ、ねぇ、あの、ねぇ、ちょっと!」
あたしは体を起こした。そして彼を見て。見て。そんで。
うわぁって、なった。
だって彼のそこ。アレ。もうほんともう。すっごいことになってる。
「あぁ……あ、あの」
あたしゴクって唾のんじゃったけど、でも言わなきゃね。ちゃんと言いたいこと言わなきゃ。
「さっきの話の続きですけど、わたしぃ、ほんと、こういうの嫌ですから。あの、あのちょっと、
待ってよ、ねぇ。だからこういう八つ当たりみたいのは!って、ちょっとぉ!待ってって!
そんな脚、広げないでって!痛いやだちょっと痛いってば。あ、あっあっそんな!ねぇ!」
ずん、って来た。
もう、いきなり。待ってって言ってるのに!いきなり。
ずんって来てぐいって来てまたずーん!って来た。
さっきさんざん舐められていかされてとろっとろにされてたとこに、そんな。おっきくて固いの。
もう。あぁもう!もう!
「あぁんっ!!」
って叫んだあたしの声が山の中に響いて。あぁこんな大きな声で、あたし。なんてこと。
そしたら始まった。彼、動き始めた。
ずん。
ずん、ずんずん。ずんずんずんずんずずずずガガガガガッ!って感じで。
ちょっと……待って。いきなり激しすぎ!ちょっと、ちょっと!
早い。早い早い。彼の腰の動き早い。すごく早い。で、彼、すっごい目でつながってるとこ
まるで親の仇みたいに睨みつけながら、鼻息荒くしてる。
そんな目で出たり入ったりしてるとこ見てるくせに、でも彼はあたしの足首を掴んで
脚をガバッて思いっきり開いたり、閉じたり、角度を変えたりしてる。いい感じのとこ探してる。
ねぇ、ちょっとぉ。
あんた楽しんでんでしょ、ほんとは。ちょっとは楽しんでんでしょ?
もう、あたしのからだおもちゃみたいにしてぇ。もう!
彼にけっこう長い間ずんずんどこどこされてるうちに、正直、あたしも楽しんでた。
だって気持ちいいし。彼が奥までずんってするのもいいし、中を引っ掻きまわすみたいに
ぐりぐりされるのも、良かった。すごく。「ひぁっ、ひぁぅっ!」とか、叫んじゃうくらい。
それに彼、あたしが気持ちよくって悶えて車の上から落ちそうになってもちゃんと掴まえて
くれてたし。意外とそういうとこきちんとしてるし。だから安心して楽しんじゃった。
「あ、ふぁっ。ん……んっ、んっ、んんっ!!やっ、やぁっ!ああんっ!!」
なんて思いっきり声、出しちゃってた。ずっと。
そしたら彼があたしの両脚をがって抱きかかえるみたいにして、もっと早く動き始めた。
ぐいぐい来る。あ、これ。ラストスパートだ。あぁ。彼、いくんだ。いく気だ。これは判る。
だめ。だめだめだめ。それはだめ。いくら何でもだめ。言わなきゃ、あぁ言わなきゃ。
「ねぇ……っ!!」
あたしは何とか声を出せた。彼、動き止めない。うわぁ気持ちいい。でも言わなきゃ。
「な、中は……なかはだめ、ですっ!!」
そう言ったら彼はあたしのふくらはぎの隙間から顔を覗かせて、コクンって。小さく頷いた。
伝わったのかな。ちゃんと確認したいけど。彼、どこに出す気なんだろう。
服は汚さないでよ。車もね。それから中はだめって言ったけど口ならいいとか、そういう
ことじゃないんだからね。飲んであげるほどの仲じゃないしあたしたち。
って思ってる間にも。うわぁ。また早くなる。彼どんどん早くなる。すごすぎ。これすごすぎ。
やばいかも。あたしまたいくかも。って言うかいく。これはいく。いっちゃう。
彼は知らないはずだけど、あたし。こうやって足をつま先までピンって伸ばされてると、
割といきやすい。だから今、足の先っぽがお空に向いてるこの状態だと。かなり。かなり。
あぁ。すごい。すごすぎるってば。それにそこ、すごくいやらしい音してるってば。
彼のあそこの付け根があたしのお尻にパンパンっとか当たる音して。何か水っぽい音が
混ざってて。あたしのあそこがそんな音、こんなお空の下で。彼にやられて。そんな。
あぁ、あぁ。もう。
もうだめだ。もうだめだ気持ちよくてだめだ。青いお空が真っ白に見えてきてもうだめだ。
来てる来てる来てるさっきのよりもっとすごいのが来てる来る来る気持ちいいの来る。
ねぇ。ねぇねぇねぇ。あたし。ねぇ。ねぇ、ねぇ!あたし、いく。いくの?いく。ねぇっ!!
「んんっ……はっ!!……んはぁっ!!も、だめ……。い……くっ!!」
ゴンッ!!
どっか遠くの方ですっごい音がした。何の音か判る気がするけど今はそれどころじゃない。
「………んっ、あぁぁぁっ!!」
ってまた叫び声が聞こえたけどそれもたぶんあたし。
ズキューンッ!ってもうあそこから頭のてっぺんまで何かが凄い勢いで通り過ぎていった。
ガクガク震えながらもうわけわかんなくなってた時、なんかお腹の上に熱いのが来た。
あ、いったんだ。彼も。出したんだ。
彼。そこに出したんだ……おなかの上。良かった。中じゃなくて……。
って、ぼんやり思って目を開けたら。あたしの足のつま先が見えた。
青い空に向かって、ぴんって伸びたあたしのつま先の上に。
白い雲がのんびりぷかぷか、浮かんで流れていった。
あたしがまたぼーっとしながらボンネットの上で横になってる間に。
彼は自分だけさっさと服を着て、どっかから出してきたウェットティッシュで。あたしのあそこと
お腹の上に彼がこぼしたの、きれいに、丹念に拭いた。
ねぇ。終わったんなら。ちょっとくらい頭をなでなでしたりとか優しくキスとか、ないの?
って思ったけど、別にあたし達、恋人同士とかじゃないし。
そういうの、余計かもね。
だからあたしも体を起こしてゆっくり服を着た。終わっちゃうと、こんなのどかな景色の中で
おっぱいとか出してる姿って、ほんとバカみたい。
身支度を整えながら彼を睨んだら、彼はもうすっかりあたしのことはどうでもいい、みたいな
顔して、バイクにもたれながらまた暗ーい表情で空を見上げてた。
失礼しちゃうわよほんと。あたしのからだ、たっぷり楽しんだくせに。
あぁ、もう。でもいい。もうどうでもいい。もうこんなつまんないことでモメたくないし。
「とにかく!用件はきちんと伝えましたから!」
車に乗る前にあたしは彼に言った。でも彼は全然こっちを見もしない。
あー、もういいや。もう知らない。終わり終わり。さぁ休暇休暇。
って、でもまぁ。
お仕事の終わりって考えたらさっきの彼のとは確かに余計だったけど。
休暇の始まりって考えたら、けっこう幸先のいいスタートかもね。
だってさっきの。彼との。割と。
うんまぁ。気持ち、良かったし。
あたしは振り返りもせずに車を走らせた。彼もあたしを見てないって判ってるから、おあいこ。
さて、楽しまなきゃ。せっかくの休暇なんだから。さっきのよりも、もっとね。
でもとりあえずお腹すいちゃったから。
なんか食べに行こうっと。
以上終わり なむなむ
面白かったよー
乙
ナイス投げ
違ってたらゴメソ
5103×里中君?
そうです
人外二次、薬漬けで他者の夫を寝取ろうとする話にしたかったはずだのに迷走したのでお焚き上げ
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快晴の陽が疎らに射す、鬱蒼と茂った森林地帯。妻の好きな野草と木の実を咥え、木々の隙間を縫って、棲み処である湖へと帰路を辿っていく。
普段は空を飛ぶのだが、今日は天高くに乱暴な空気が身を裂こうと渦巻いており、俺はそれを避けるように低空を滑っていた。
木々の枝や葉っぱは、ばさ、ばさりと風に煽られ、大きな声で騒いでいる。この風が止むのは何時になるであろうか。
日が落ちて昇った頃には、何処ぞの誰かが暴れる空気の原因を報告してくれることだろう。
そんなことを思う俺自身、護り神だとか他称される割には他力本願な気もして、あまりいい気にはなれないのだが、俺よりも詳細に空気の声を聞き取れる方はなかなか多いという実情。
それに加えて、耳周りから生える俺の小さな翼は意外と強風に弱く、痛めてしまうと治るまで活動範囲が随分と狭まるため、そういった事は任せてしまいたいと思う。
せめて胴体から翼を生やす鳥さん方のようであれば、乱暴な風を聞きながらも、力任せにねじ伏せられるのだが、俺の翼ではそれができないのだし。
妻も同様なので種族的な問題なのだと言い聞かせているが、他の方々から空気の声を聞くしかない点は未だに後ろめたい心持ちがある。こんな俺が護り神だとか言われてて、果たしてそれでいいのだろうか、と。
そんな陰鬱とした思考を振り払いたく思い、ふと周囲の、茂みや木陰などに居る方々に意識を向ける。
この森に住む方々の、その視線は皆揃って俺の細長い身体を突いている。普段の俺は上空を飛ぶばかりなので、森の中を滑空する俺の姿が珍しいのかもしれない。
良くない前兆であると思われているのだろうか。中には俺の姿を見留めるなり、辺りに注意を払い始める方だって少なくはない。
俺自身、特に理由もなければそうすることも無いとはいえ、行動理念としては深く考えずただ安全な場所を通っているだけなのだし、そうやって森に棲む方々を不安にさせるのは、なんだか申し訳がない。
どうか気にしないで欲しいと思い、通り道のすぐそばに佇んでいる方々には、口から野草と木の実を咥え下げたそのままで笑顔を振り撒いてみせるものの。皆が笑い返してくれる訳ではないのが、また心苦しい。
湖でおとなしくしておけばよかった、と、吐きようのない溜め息が身体から零れていくのを感じる。
この野草と木の実は齧ってると落ち着くから、と妻が絶賛していたし俺も結構なお気に入りなのだが、態々こんな空模様に、独りで抓みに来るべきではなかっただろうか。
最も、空腹耐えかねて捕食を狙う、体じゅうの鱗が逆立つかのような冷たい視線までは差し向けられていないし、何事も起こりはしないだろう、と、そう自分に言い聞かせて。
木漏れ日の隙間をくぐりながら進み続けていると、ふと正面上方、木々の枝から一方の姿が顔を出してきた。
「ハクリューさん、ハクリューさん! こんにちは!」
草に擬態できそうな緑色の胴体と、首周りからは二本の蔦のようなものを伸ばした、手足なく細長い身体の方。
俺と姿が似ていなくもないが、俺よりは幾分か身体が太く、獲物を絞めることに長けた身体であることは一目で分かる。
彼女は地を這い木々を伝う全く別の種族であり、それと同時に、元来この森には棲んでいなかった、たった一匹の種族であり、多くの方々が避けて周りにあった視線も立ち消えとなるぐらいの強力な捕食者。
しかし俺達を狙うことはないし、俺の棲み処である湖の近くでは他の方とも争ったりしない、と約束しており、俺にとっては特に警戒するような方でもない。
「今日は御機嫌麗しく御座いますか? それともどうかなさいましたか? ジャローダさん」
俺は移動する身体を止め、長い尻尾を前に出すと、咥えていた野草と木の実をくるりと掴んで口を開けて、そうしてから言葉を放つ。
続け様には上方、木々の枝から伸びる彼女に向けて、やや上目に視線を返すと、彼女は快活そうな声とは裏腹に、顎を上げて俺を威圧しようと下目遣いに視線をくれていた。
いつものことか。
心なしか鋭く悪意を映したかのようにも見えるが、その口周りなどは緩まっているし本当に威圧しているわけでは、ないのだろう。
顎を上げて相手を下目に見留めるのは彼女の癖なのだというし、もしかすると彼女の種族は皆こうなのかもしれない。他に見たことがないので判断しようがないが。
「ええと、ハクリューさんこそ、どうなさったのですか? こんな所にいるなんて」
彼女はその本質に似合わず、不安がっているのだろうか。そんな彼女をただ安堵させたい思いで、変わらず笑顔を見せた。
彼女は、がさりがさりと、上方、木の枝をへし折りながら、背の低い草が生えるばかりの地面に降りてくると、改めて俺のほうに、顎をあげてから視線を向ける。首に付いている透き通った球が、その勢いにつられて二三、揺れた。
「はは、今日の空は、私の身では飛べないんですよ」
空に空気の棘がうねっていることは、言わずとも彼女だって理解していることだろう。俺が苦々しくも笑ってみせると、彼女の白く綺麗な喉元も、くつくつと小刻みに震える。
「それは残念ですね」
「はい、いつもの帰路が辿れないのは、とても残念ですね」
地に胴体を這わせる彼女と、宙に浮かぶ俺とで、苦々しい思いを含み笑いとして共有する。
ばさりと、上空に舞い木々を揺らす強い風さえなければ、穏やかな一場面なのだろうかな。
「奥さん……奥さんも飛べそうにない空でしょうか?」
「そうですねえ、私達の翼は鳥さん方ほど立派じゃありませんし、無理に飛んだとしても難行と言えそうです」
翼を傷めることも厭わないのなら、あるいは気合で飛べるかもしれないが、ボロボロになる後のことを考えるとやはり空を飛んでいくことはできない。
彼女と何気なく話しながらも、そのことを俺自身の中でも再確認すると、音もない溜め息を心の中に吐いてしまいたくなる。
いつもと違う光景を眺められる、と前向きに考えるしかないだろうか、はぁあ。リューちゃんまでの帰路が遠い。
――強い風に裂かれ、慌ただしく波打つ水面を後目に、喉元の水晶に祈り、やがてその顔を持て上ぐと、黒くも透き通った折角の瞳を、降らせた冷雨に濁らせ始める。
いや、リューちゃんはそこまで心弱くない、と、身動ぎせず振り払うものの、頭の中に浮かんだその姿を見てしまうと気が気ではなくなる。
「"それ"は奥さんに?」
一間開くと目前の彼女が俺の胴体へ、尻尾の先へと視線をずらしていき、続け様にはそう言葉を向けてきた。
その視線の先には、さっき俺が口から離し尻尾に持ち替えた、瑞々しい木の実と野草がある。
「はい、妻が小さな頃から好きな物なんですよ。私も好きですけどね」
どちらも味が薄く、身体によく馴染んで食べやすい物だが、ジャローダさんの口には物足りなく感じるかな、など考えながら。言葉の後には尻尾ごとそれを後方に下げる。
「まあ! 今日は大切な事でもありまして? それとも、ついにお腹にお子さんが? ああ、御芽出度う御座います!」
「いやいや、ただの私の気まぐれですよ。まだ子宝には恵まれておりません」
子宝は、欲しいね、と少し前から妻、リューちゃんと話し始めていたけど、何時になるだろう。前回まぐわった時はいい感じではなかったかな、と思ったものの、果たして授かることはできたものか。
「あら、そうなのですか? 日がいくつか落ちる前に、湖で絡み合ってるところをお見かけ致しましたのに……あれも駄目だったのですね」
そんな思考を読み取られたのだろうか、彼女は覗き込むかのように、俺の顔にその顔を寄せながら、その嫌らしい言葉を一つ一つ仕向けてくれる。
誰かしらに見られていた、ということ自体は別にいいのだが、その様子を声にされると途端に気恥ずかしくなり、目前の彼女から視線を逸らしたくなる。
顔が熱篭る感覚。下目に見つめ続ける彼女の眼光が、にやりと笑った気がして、更にそれを煽っていく。
「まだ判断するには早いですけど……それより、お恥ずかしい所を見られていたのでしょうかね」
日二つ前か、もしくは更に日二つ前のことだろうかな。それなりに楽しんでいたが、日四つ前のほうは執拗に追い回しすぎて軽く機嫌を損ねたりもしたか。
嗚呼、その事まで見られていたのだろうか、と。そう思うと項垂れるしかなかった。
「あらあら……ハクリューさん、そんなことで恥ずかしがってたら駄目ですよ? 貴方がもっと奥さんをいじめてあげなきゃ!」
「うーん、いじめたくはありませんが……有難う御座います、一考してみましょう」
今は見せる顔もなく、笑みを繕いながらも退去したい思いが溢れてくるばかり。いつまで経っても慣れやしない。
「では私は、そろそろ戻りますね。妻も心配しているかも知れませんので……」
「あ、はい、ごめんなさい、呼び止めてしまって……」
目を強く瞑り、一旦表情を潰してからそう言うと、彼女は承知の意を返してくれた。
なんだかんだ言っても彼女も不安だったのだろう。少しぐらい気が楽になってくれていることを、聞きはせずただ願うばかり。
彼女のすぐ横をすうっと通り、また木々や木漏れ日をすり抜ける帰路に挑もうと気構える。
「……もう少し、待って頂けませんか?」
その瞬間、彼女から再び声がかけられる。同時に、ばさり、ばさりと木々を叩く風が、ぴたりと止まった気がした。
「はい?」
何か大事なことを言い損ねたり。取り分け、忘れていたことを思い出そうとでもしているのだろうか。俺はそのまま、彼女の言葉に身を止められた。
視界に映る緑に妻の姿を見ながらも、次の言葉を聞き取ろうと後方に向けて首ごと顔を振り返らせると、そこにいるはずだったジャローダさんは、その身体を投げて飛びかかってきていた。
目前にあり、触り悪く、押し退かせられる。
「んえ?」
刹那、止まっていた風が、ばああ、と、何も無かったように吹き荒れ木々を揺らし、森の中まで突き抜けた。
視界ががくりと揺れ、低空を浮かんでいた俺の身体が、土の地面に落としつけられる。俺の身体より二周りかそれ以上に太い彼女の身体は、俺を押さえるには十分すぎるだけの重量があった。
随分と乱暴だな、と不服に思いながらも、いや十分加減してくれたほうなのかも知れない、と、直ぐに別の考えに至る。
「何でしょうか、重いですよ」
捕食者として生きているのが彼女の常なのだし、絞める素振りもなければ、きっとそうなのだろう、と。良心的な解釈だと自分自身で分かっていながら、他に考えられることもない。
「やっぱりもう少し……どうかわたくしのお相手をして下さりませんか?」
空のほうを向くように倒れた俺の、その目前に、陽を背負った彼女の顔が暗い影に浮かぶ。鋭い眼差しは俺を突き刺し続けるものの、いつもとは違い顎を引いて、上目に見つめられているように映る。
腑に落ちない所もありながら、無下にぶつかることもない。日常にはあまり無い雰囲気を身に纏って、一体何のつもりであろうか。
「大丈夫ですよ、私なんかで宜しければ。しかしどうなさ……」
了承の後に続けようとした尋ね言葉は、口が塞がれると共にかき消された。ただ驚き、尻尾の先で掴んでいた木の実と野草を取り落とす。
「う、んう」
本当は跳ね除けてしまいたいのだが、彼女の身体は重く力強く。首をずらし、彼女の顔を頬に当たる形にして、塞がれた口を開けられるようにするので精一杯だった。
「やめて下さい、そんな、困ります……」
俺の口を塞いだそれは、他でも無く彼女の口だった。
ほんの僅かな間だったのに、大胆にも唾液と、それ以外にも何か別のものを一緒に流し込んできていたらしく、言葉を放つたびに慣れない甘み、辛みが口じゅうに広がり始めていく。
「少しぐらい、いいじゃないですか、減るものでもないですし。それに」
そんな彼女は悪びれる様子など微塵もなく、ただ細く濡れた舌で俺の頬を舐め始める。
「貴方の奥さん、不倫しているのですよ?」
空に漂っている暴風が、より一層強く吹き、ざざあ、と、大きな音と共に木々の頭を切り裂いていく。
俺はどう返事を返せばいいのか分からず、一時の間、戸惑うしかなかった。彼女はこんな俺を見て、不敵な笑みでも浮かべているのだろうか。
噂に聞いたことはあったし、そうなのだろうかな、と。心外ながら確証に近づき複雑な気分。
だが少しばかり冷静になれば、リューちゃんが不倫していたからといって俺やリューちゃん自信が取り分けて変わるという訳でもない、と、すぐに気付く。
「そうらしいですね、少し前に、風の噂で耳に入っております」
「あら……少しは驚いてくれると思いましたのに」
俺より魅力のある方はいくらでもいるし、最近だって、あるお方に憧れただとか言っていたのだから、お近づきになった延長線、程度でそう珍しいことでもないのかもしれない。
妻を持っていかれたからと言って――いや、妻を返してくれないのなら流石に腹立たしく、気が滅入るが。その友好関係は大事にしてやりたいものだ、と結論付ける。
「ご期待に沿えず申し訳ありません。そして、それがどうなさったのですか?」
ジャローダさんの身体が圧し掛かっている現状だと、減らず口だと思われても仕方ないかもしれないが。純粋に、不倫だのと口にして、何が言いたいのか察しが付かず。改まって尋ねるしかなかった。
「嫌じゃないですか? 他の雄に現抜かされてて」
「嫌だなんて……少しぐらいはありますけど、それこそ私の妻ですしね」
浮気性、と言うとやや聞こえが悪くなるが、様々な方に魅力を見出せる、それこそ森の護り神のような奴で。寧ろ、そんなリューちゃんの夫だということは誇ってもいいぐらいだ。
「妻にとって私は、ただ気兼ねなく会話の出来る相手なだけ、でありたい。あまり束縛したくはないのです」
しかし、かっこつけた言葉を放ってみても、こう押さえ込まれていてはまるで形無し。くく、と声を殺しながらも苦笑いするしかないか。
「一途なのですね、ハクリューさんは……」
「そんな、私なんかに勿体無いお言葉です」
一間開き、俺の苦笑いを聞いてから彼女は、褒め言葉を俺に短くよこし。やがてその顔を俺の目前まで上げて、真っ直ぐに視線を合わせると、くふふ、と静かに微笑む。
暗い影の中に、悪魔が乗り移ったかのような、妖艶な笑み。
「でも奥さんがそれなら、貴方がわたくしと不倫しても、別に咎められやしませんね?」
「はい……?」
俺の体じゅうに生える鱗が、まるで逆立っていくかのような感覚が駆けていく。しかしそれが何なのかを理解する前、一抹の不安が奥底より沸くよりも前に、彼女が動き始め、地面についている俺の胴体を浮かせて彼女自身の胴体を巻き始めていた。
ぎりり、と鱗同士が擦れ、軋むほどに力強く締め付けてくる。
「大丈夫ですよ、わたくし達の間に子は成りませんから……ねえ?」
まさか、力ずくにでも関係を持ってやろうだとか、そんなつもりなのだろうか。この場はすぐにでも逃げたほうがいいかもしれない、と、焦燥感が出てくるなり、俺の肌を、鱗を貫く。
例えどんなに頑張ったとしても、俺、というかハクリューとジャローダさんとでは子は生まれないだろう。本能がそう告げているし、まぐわう理由なんてない。
仮にできたとしても、リューちゃん以外の方を愛でるかのようなことは、するつもりもない。しかしこの、目前に迫る彼女は、それら全てを承知の上で俺を押さえている。
「どうにか私を解放しては頂けないのでしょうか……?」
「少し付き合ってくださるだけでいいのですよ? んふ」
顔の強張る感覚が実に久しい。誰であっても傷付けたくはないのだが、身に危険を覚える以上は、好き勝手にさせるわけにもいかないし、と。
そう思っている間にも、彼女は巻き付けている太い胴体を持ち上げ、それごと俺をすぐ傍の木に叩きつけて。続け様にはするり、するりと地面から草を延ばさせ、俺の身体をその木に結びつける。
「全く、痛いですよ……」
このままだと身体が持たない。そう思うが早いか、俺は息を大きく吸い、身体じゅうに力を込めて結ぶ草を千切ると、口下に冷気を構える。
すぐ目の先にある彼女の、その瞳が一瞬曇る。
殺めまではしない、冷気を強い息吹に乗せて、彼女の身体を凍えさせればいいのだ、と。そう思っていたはずなのに。
「んん……んん……!!」
「ん、んぅ……」
次の瞬間には、構えていた冷気が、傷つけるはずだった彼女と、俺の口の間で溶かされていた。離れようと考えたのが遅すぎたのかもしれない、気づいた時には、すっかり彼女の為すがままになってしまっていた。
再び飛び込み、視界の下方へと消えた彼女は、ちゅう、と、力任せに俺の口元を紡ぐと、舌で俺の口内を繕い、弄び始める。
細い舌で俺の口の中をかき回し、漂う唾液をすり替えて。離れようと首を仰け反らせても、今度ばかりはその口も執拗に追ってきて離れることがない。
その舌を噛み千切ってやろうとすれば、まだ逃れられるのかもしれないが、加減を間違えれば殺めてしまいかねないことを実行する勇気は、俺にはない。
俺自身の、他の方に対する甘さを身に染みて認識させられる。
ただ無難に突き放そうと、懸命に身をうねらせても、絡み締め付けてくる彼女の隙間から、ぱた、ぱたりと土の地面を軽く叩くばかり。
言葉にならない声、視界がぐりぐりと回る、天が落ち地が昇り、鼻先では呼吸を整える。
風の木々を叩く音ばかりは変わることなく辺りを漂うものの、この周りに棲まう方達は皆、俺を押さえるこの方に恐れをなし、気配を消している。
俺とジャローダさん以外には誰もいない。
暗く深い水底に沈んだ心持ち。諦めがついたのかと理解すると、段々と平静を取り戻していく。
「身体を委ねて下さるだけの、準備ができたんですね?」
抵抗をやめ、身体から力を抜いておとなしくすると、彼女はようやく口元を離してくれる。
「恐らくはそうでしょう……不服ですけどね」
間近より黒く、企むかのように微笑む視線が、俺をより疲弊させる。声とする気さえ殺がれ、思考に巡る言葉も空虚に裂かれて消えていくばかり。
「じきに、その気になって頂けますよ」
口内に残った言葉の残骸を、静かな吐息とするが早いか、彼女はそう言葉を続け。胴体絡んだそのまま、首を上方に擡げ、天を仰ぎ、白い喉を真っ直ぐに伸ばした。
まさか、と、俺は見上げるようにその口元へと視線を移し、既に目前へと迫っていた"それ"を確認するが早いか、咄嗟に瞼を強く瞑った。
「う……」
頭から、静かに身を垂れ落ちていく、温くも熱い、ぴりぴりと強い痺れを伴う液。恐らくは身体の奥底からひねり出したであろう消化液。
細かな鱗が、その液と共に爛れてしまいそうなぐらいに熱篭り、酸味の強いそれを嫌う。鱗の隙間から奥にまで滲みて、瞬く間に身体じゅうを刺し始めていた。
「外から膜を覆わせるだけでも、全然体調悪くなっていただけますよね? 貴方の身体は取り分け代謝がよいですし……」
「実に加虐的ですね」
機嫌のままに、嫌味ったらしく悪態をついた俺は、護り神とはさぞかけ離れた姿であろう。言葉を紡ぎながらも、そんな点が気に障り、思考が一つに纏まらない。
「あら、そんな丁重に……お褒めに授かり光栄ですわ」
彼女は、強引に押し込んできた事については白を切るつもりか、くく、と一層怪しく微笑み、言葉を続ける。
褒め言葉なんて微塵もかけていないのに、と、俺は呆れを通り越し、言葉なく彼女を見上げ続けることしかできない。
「貴方に差し上げましたのは催淫草でしてよ? 雌雄両性に効く物です。ふふ」
「催淫草ですか」
どんなに甚振られても、支配されるつもりまでは無い。適当に相手をしてあげればじきに開放してくれるさ。
そう信じながら、言葉短く、ごくりと喉を鳴らして従順なそぶりを見せてみる。
「あ、でも貴方に効くかどうかは、分かりませんね!」
笑みを絶やすことなく見つめるその瞳は、心なし棘を失い、柔らかく解れたようにも思える。寂しさを紛らわしたかったのだろうか。
彼女は草を口に含む素振りなんて全く見せていなかったのに、その口から草を移されたことは即ち、俺と出会う前から頬張っていたことになる。
何故そのような物を口にしていたのか、想像するに易い。
――森の中にただ一匹、味方もなく獲物を捕らえ続ける中、群れの営みなど、孤独感を助長する光景も多く見てきて。
今日、ただ項垂れながら静かに森を進む中、空虚でもいいから同士を夢見たくなって、草をばくりと平らげ。
『ハクリューさん! ハクリューさん! こんにちは!』
偶然通りかかった、細長い身体の護り神を、慰み者にしようと考えて、嬉々としながら声をかけた。
――だなんて妄想はさすがに、正否より先に、考えるそのこと自体が気の引ける話だ、と。俺は止め処なく連なる思考を振り払う。
「はあ……」
いくら疎ましく思っても、彼女がその身を離してくれるわけでなし。それならせめて、悪い気にはさせないよう務めるべきだろうか、と、何だか心苦しくも、そう思考を転換させる。
全身を爛れさせようとする酸味の強い液体には心一つも向けることなく、喉奥から湧く、咽上がるかのような熱気を懸命に飲み込み続けた。
俺の身体は、彼女の望むがままにねじ曲がり、押さえつけられ。抵抗の変わりとして、俺からも微かに身を押し付ける。
地上に生きる者特有の身体は、俺にとって温かく。びりりと痺れて感覚薄い今でさえ、その熱を感じられて心地良い。
「ね、あんな奥さんよりわたくしの方がいいと……思いません?」
「どう……でしょうね」
しかし、ただそれだけならいいのに、このジャローダさんが求めるのはもっと異質な物。
「残念ですよね、わたくし達が仮に愛し合っても子を授かれないなんて……」
気を抜けばそのまま捕らえ、永遠に食らってしまいそうな、ヤドリギのような視線が、閉じるでもなく開いた薄目から、俺をぐるりぐるりと取り巻く。
「残念だ、と、本当にそう思いますか?」
「ええ、とっても……」
目前には固定された、逆光の影さえ退けるほどに血色よい、緑と白の顔。
天には雲薄く、強風に紛れ、いつの間にか振り落ちて来始めた霧雨が、彼女の頬に露を浮かばせ煌めく。綺麗。
「そうですか」
相槌ばかりは変わらずも、一瞬そう思った後には、喉奥からの鼓動がどくどくと強く流れ、身を跳ねさせる。
流し込まれた草が、もう俺に浸食し始めているのだろうか。
ジャローダさんは慈しむ対象として収まってくれるかどうか――この感情を、共有できたらさぞ楽しいことだろう。
――恋……浮気? 不倫?
「ど……した……? だいじょ……、はく……ちゃん?」
ふと、ぼんやりと輪郭を持たない声が聞こえた、気がした。遠くか、近くかは分からなかった。
何かがおかしい。
辺りに強く風が吹き、さらさらと細やかな飛沫が、俺と、俺の目前に塞がる生き物に降り掛かってきている。
身体が爛れるように熱いのは、吐きつけられた酸が鱗表面を擦るだけでなく、煽られた感情そのまま、内側からも襲い掛かってくるからだ。
つんざくような感覚は何だ。心身渇くような心持ちは何だ。
身体のどこかが裂けている? そう思考した瞬間に心臓の鼓動を意識してみると、存外何も聞き取れやしない。
――どういうことだ?
気が付いた時には、身体がこれでもかというぐらいに熱気を帯びていた。
目前に覆い被さり続ける生き物の左右から、降り掛かってくるその霧雨は、強風を支援として、さながら針のように突き刺さってくる。
刺された場所から、ボロボロと鱗が剥がれ落ち、肉が溶け滴って、骨をガンガンと叩く。崩壊し始めた身体には、余りあるほどの激痛。
「ジャローダさん……」
無意識に放てる声も、身体のどこから出ているのかさえ分からない。背に控えている冷たく濡れた土の地面が、やがて身に馴染み始める。
土に返るとはこういうことか。身体の何処で物事を考えているのかも分からず、ただ底知れぬ不安。
――俺の生きた証は、どこかにあるのか? 子はいない。子が欲しい。目前にて俺を押さえ付けているのは可憐な雌。彼女が欲しい。
「怯えないで下さい、わたくしは貴方の傍にいます」
変わらず遠くに聞こえる、ただ俺を助けようとするかのような声。俺が大切に思っていた生き物の声なのだろうか。
「あ、あ……あ……」
そうではなかった気がする、子は成らないなんてこと、再三に亘って確認したはずだ。
――そうだよ、俺が大切にしていた生き物とは、最初から子なんて成らなかった。
それは誰だ? ジャローダさん? 俺の大切にしていた生き物はジャローダさんだっただろうか? 分からない。
直前に口にしていたその名前以外、何もかもが爛れ落ちたかのように思い出せない。ただ、その名前の主が、幸いにも目と鼻の先にいる、そのことだけは理解できた。
愛おしく、慈しむべき相手? きっとそうだ。
目前にあるその生き物を骨身で押すと、その身体は力に沿って温かく、柔らかく窪む。そのまま力を込めると、さああ、と骨の擦れ合う音が頭に響く。
ホシイ。
ツチニカエルマエニ。
霧雨含む空気が、がたがたと戦慄の鼓動を作る。からから、と連なる骨格の擦れ合う音と共に、俺の軽い身体が宙に浮く。
俺を押さえていたはずの、重たいはずの生き物の、その長い胴にぐるりと巻きついて持ち上げると、くるりと身を翻して、俺の鱗と肉に塗れているであろう地面に叩きつける。
いたい。
そんな声が聞こえた気がした。
肉付いた顔で作り笑いしながら、透き通りながらも虚ろな瞳で俺を捉えて。それはさながら、俺を心配するかのようでもあった。
それまで冷ややかな霧雨に触れず、辛うじて残っていた背中も、その針に刺されると、鱗も肉も一緒くたになって、ぼろりぼろり落とされていく。
残るのはただ、何処から感じ取っているのかさえ分からぬ、ふわりと浮かれた触感と、焼ける程度では済まない熱さ。
傍目には化け物として映っているのだろうか。目前にいるこの彼女にも、そう映っているのだろうか。
そんなのは嫌だな、と思いに留めながら、俺はただ、軽い身を彼女の胴体に、ぴたりとくっつけた。
悲鳴のような、感覚短い震えが、漂う霧雨を通じて骨身に滲みる。目前に倒した彼女の、雌としての嬌声だろうか。
心持ちが整っているのかは露知らず、俺はただその鼓動に誘われるがままに、胴体を擦り付け始めた。
既に崩れ落ち、燃え盛るように熱い身体が、もう一度崩れてしまいそうなぐらいの斬撃。彼女の細やかな鱗が、まるで鋭利に俺の身を刻む。彼女に敵意はなくとも、身体ばかりは嫌がるものだろうか。
軽くなった俺の身は、地面より出でる蔦に支えられ、辛うじて形を留めている。俺はまだ生きている。この熱を忘れたくない。
「や、やだ、ハクリューさん、急ですね……ハクリューさぁん」
空気伝いに、彼女の声が鼓動と成りて俺の身を震わせる。
「やっと、その気になっていただ」
続けられる彼女の鼓動を、俺は穴の開いた口で塞ぎ、虚の舌をその中にただ押し込む。
身体じゅうが火として燃えているかのように熱いのに、それでも尚温かく感じる彼女の体温。ひとときの安堵。
しかしそうしている間にも身が崩れ続け、ごおお、と強い風が吹き当たると、隙間だらけの身体から、透き通った球や、心臓までが転げ落ちる。
土に返る――もう一刻さえ猶予していられない。その前に今一度彼女を俺の物にする――。
彼女はどんな表情をしているか。両目を懸命に瞑っているようにも見て取れるが、ぼんやりと霞んで詳細には伺い知れない。
血肉の殆ど残らない俺の身体に擦られるだけでも、さぞ痛いことであろうが、俺にはそんなことに構うだけの余裕さえない。
俺はどうなってもいい、ただその前に、慈しんでいたであろう彼女の温もりがもっと欲しい。そんな思いで、ぐい、ぐい、と棘のある身をよじり、その身体との距離を詰めていく。
そうして、ぐっと、めり込むような優しい感覚の後には、つん、と何か、腹のあった場所より下に、心地のいい触感を覚えた。とうに落ちて無き物となっていたはずの、性器の感覚が、都合良く残留しているのだろうか。
さああ、と重量感無くも冷ややかな雨風に少しずつ熱を引き剥がされていく空の御機嫌。折角の温もりが、消えていく。もっと温かくしたい。
なんて、複雑に考えるまでもなく、勢いのままに性器の感覚を彼女の下腹部へと突き刺して、再び軽い身をよじらせる。
「ん……ん……」
彼女は身をうねらせ微弱に抵抗するものの、体格差で簡単に退けられるであろう俺を弾こうとはせず、ただ体温を共有してくれる。
心地が良い、何も無くなったはずの身体から湧き出てくる安堵感。快楽。
「はく……ちゃん、やめ……」
遠く、風に裂かれて霞む声。近く、風に憑依し身に纏わる声。何もかもがうつしよに轟く渇望。後生聞き取れない、生き物の言葉達。
最後に思い残すこと無きよう、空っぽの身体に感情一つ一つを刻み付けていく。
シアワセ?
ワカラナイ。
目前に迫っているそれは、存外、深い感慨もなく受け入れられた気がする。
「んふ、やぁだ……有難う」
どちらともなく塞がれていた口を離すと、彼女は視線を顔ごと、俺の後方、曇り始めているであろう天へと逸らしたように見えた。
柄にもなく照れ、それを滅しよう視線を泳がせる仕草は可愛げのあるもの。できた事なら、もっと前のうちに見たかったものだ。
「でも、折角いい気分なのに、お客さんが……」
霧雨を吹き飛ばさんと、冷ややかな風が降り掛かってきた。それはひゅうう、と優しく、それでいて体温を奪うには十分すぎるほどに、骨身へと刺してくる。
お客様?
下方より伸びるジャローダさんの視線を追い、首を持て上げても、曇り始めた空にぼんやりと影が映る程度。
何者かは解せずも、化け物となったこの身を土に返しに来たのだろうか、と。感覚ない頭に、そうとだけ思考が巡るのだった――
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以上お焚き上げとなりました。ご冥福をお祈りします
今手元にある作品が仕上げるのに時間が掛かりそうなので、
これを投げてすっきりしておきます。
乙一のGOTHからです。もう何年も前の作品ですが、
ネタバレしてるので、嫌な方はスルーでお願いします。
「森野、僕が」
「他の人にあんな顔しないで!」
悪かった、と続ける前に森野の声が滑り込む。彼女ははっと息を呑むと、羞恥に顔を赤くした。
僕に言うつもりではなかったのだろうその言葉に、ちりちりと体の中から灼けつくような熱を感じた。
ぐっと唇を噛み締めたまま俯いている森野の頬に手をかけて、僕は彼女のくちびるをさらった。
「――さんのことかい」
僕が言うと、悔しげな表情のままこくりと頭を縦に振る。
否応なしに、ため息をひとつ。
「そんなことか」
「ええ、そうよ、あなたにとってはそんなことでしょうね」
いつになく鋭い眼差しでこちらを睨みつける森野が、しかし、僕は不快ではなかった。
「どうだって良いことだ。知っているだろう、森野夕。本当の僕を知っているのは君だけだ」
――そして、本当の君を知るのも僕だけだ。胸中で付け加えた。
今にも泣きそうな顔をして、森野は僕をじっと見つめた。
「……ええ、そうね、ごめんなさい。私どうかしていたみたい」
不意に、俯く森野を見て、彼女のその整った顔を歪ませてやりたい、得体の知れない欲求がじわりと忍び込んでくる。
僕は頭を殴りつけられたような衝撃を受けた。僕の中の最も冷静な部分は、そうして動揺している僕を嘲っている。
何を、良い子ぶっているんだと、それがお前の本質じゃないか。
幼い頃よくした遊びを思い出す。
捕まえてきた蝶を壁にピンで磔にして、一枚いちまい羽をもぐ。それでも蝶はパタパタと羽ばたこうとしていた。
僕はそれをいつも真剣に見ていた。
蝶がやがて力を失い、もはや存在しない羽を動かすことを止めるまで。
ぱたりと動きを止めた蝶。
命はどこへ消えるんだろうか。何匹の蝶を殺しても僕には結局分からなかった。今でも、たぶん、分かっていないんだろう。
首にあてがった手に力を込める。五指のすべてに力を込めれば、ぽきりと手折れそうなほど、森野の首は白く細い。
太陽を拒絶したように白い肌は、酸素の欠乏からだんだんと朱に染まっていく。
このまま、この手を離さずにいたらどうなるだろうか。
僕はうっとりとそう考える。
物音ひとつ立たない行為はどこか儀式めいていた。か細く漏れる声は森野の窮乏を僕に訴え、色素のない真白い指が僕の指に弱々しく重ねられている。
それなのに、その瞳だけは薄く開かれ、慈愛に満ちたといっていい様相を僕に示している。
森野の首にかけた手の力をゆっくりと抜き、彼女の体をきつく抱いた。僕は分からなくなっていた。なぜ彼女はこんなにも満ち足りた瞳で僕を見るのか。
森野の死を僕は待ち望んでいるか、それとも恐れているかさえ。彼女の最期を見たかった、それだけは確かだった筈だ。
「神山くん」
祈りを捧げているみたいだ。森野の瞳はそれくらい深い色を湛えていた。
彼女の色づいた唇が僕の名をもう一度形作る。吸い寄せられるように僕は森野に、舌を絡めてキスをした。
「ん、ふ、あ」
艶めいた彼女の吐息さえ、飲み込んでしまいたかった。
すべて飲み込んでしまえば、この底の知れない飢餓、そして不安から僕は解放されるだろうから。
傷跡の残る君の手首だけが僕の望みだったのに、欲望ばかり膨らんでしまった。君の髪、瞳、声、頭の先から足の先まですべてが欲しいと僕は思う。
おかしくなったのは君のせいだ。口の端を上げてそんな自分を嘲笑う。
「森野、森野」
彼女を呼ぶ僕の声に応えるように、彼女も僕の名を呼んだ。
華奢な肩を掴んで、森野を見下ろす。そのまま顔を近づけて、舌を口内に潜り込ませれば、蛇のように森野の舌は蠢いた。
「ん、ん、んー!」
かぶりを振って、逃れる森野に構わず僕はさらに奥へと舌を伸ばしていった。隠された秘密を暴くように、彼女がただ僕だけを見つめるように、呪いめいた思いを込めて。
ようやく唇を離した頃には、彼女の顔は赤く染まっている。透明な糸は森野の鎖骨にぱたりと落ちた。
「……い、やだって、言ったのに」
「……僕にはそう見えなかったから」
森野は困ったように眉根を寄せて、僕を見上げた。
「もう、いいわ」
きて、とやっと聞きとれる位の声で言うと、森野はすぐに視線を背ける。
うん、と応えた僕は自身の先端を秘所に埋め込んで、入口で軽く擦り合わせた。
先から滲み出た液体と森野の中から溢れ出る蜜を融け合わせるように、ゆっくりと体を動かす。
ほんの少し触れた途端に森野の腰も僅かに揺れた。白い手が同じく白いシーツを掴む。行為の後に、森野の手にはいつも爪痕が残っている。
「森野、僕の首に腕を回して」
笑いながら言ったけれども、僕には森野の怯えが手に取るように良く解った。
森野は、快楽を恐れているのだ。あさましい自分を、僕に見られることを恐れている。
「君のの全部を僕に見せて」
理性も全部手放して、僕だけを見る君が見たい。与えられる快感に、言葉に酔って、おかしくなってしまえばいい。僕はもう、とっくに壊れている、そうしたのは君だ、森野夕。
伸ばされた腕は躊躇うように僕へと向かう。頬に細い指が触れる。触れられた場所から、甘い痺れが走り、僕の脳を揺らした。
白い指に促されたように一息で奥に突き入れる。森野の中はきつく僕を締めつけた。
「や、や、だめ、だめ!」
ひと際高く放たれる悲鳴。断続的に震える体。森野は救いを求めるように僕の頭を胸に抱えた。続く彼女の体の震えは更に近くで伝わった。
「ねえ、森野。入れただけでいったのかい?」
追い縋る腕を離して、僕は努めて冷静な声を発し、森野の顔を覗き込む。おそらく、口元には酷薄な笑みが浮かんでいることだろう。いっそ笑い出したいくらいだ。
森野は小さく首を縦に振る。今は平素の人形の様な面差しはなく、瞳は潤み、頬は赤く染まり、緩く体を揺すぶられる快感に必死で耐えている。
「あ、あ、あぁぁぁ!」
高く響く嬌声を抑えようと、彼女は口に手をやった。彼女の望みが叶う前に、僕はその手をベッドに縫い止める。深く口づけを交わし、耳元に顔を近付けて囁いた。
「君の声が聞きたいんだ。僕にきちんと聞かせてくれ」
言うと同時に森野の体の最奥を目指して、突き上げを速めていった。白い肢体を見下ろして僕は何度も森野と彼女を呼んだ。
名前を呼ぶ度に彼女は僕を締め付ける。足を腰に絡められて僕らは更に密着した。繋げられた場所から生まれる水音、器から零れ落ちる体液。
もはや意味のある言葉は彼女の開いた唇から出ていない。嬌声は甘美な刺激となり、脳に快感を直接叩きつけられたかのようだ。蠕動する内部に煽られて、奥へと自身を捩じ込んだ。
それは隠されていた獣性が露わになる瞬間だ。僕らが知能を有する生き物だという事実さえ忘れさせる、本能のままの叫び声。放たれたのは人形のようなこの女から。
脳を真っ白に灼き尽す快感に呻き声が自然と漏れた。森野の体の最奥で僕は長く吐精を続けた。
交じり合った体液は、もうどちらのものか分からない程どろどろに融け合っている。漏れ出る吐息が顔に掛かった。
射精した直後だというのに、いまだ森野の内部に留まる僕のものは硬さを保ったままだった。彼女という存在そのものに劣情していた。再び奥を突き上げる。欲望は果てる気がしなかった。
「もう、駄目! も、もうやめて、神山君。おかしくなっちゃう」
「狂えよ」
堕ちて来い、僕と同じ場所に来い。
ジャンルスレでこのカプ読みたい的な米あったんで、意気揚々と
バレンタインネタを書いたのはいいけど、時期は過ぎまくってるし
キャラ壊し酷杉。よくよく考えたら需要無いな・・・と思ったので
こちらに投げ。
2月14日。その日は誰もが色めき立つバレンタインデー。
もちろん、写真館の中も例外ではなく、夏海が懸命にチョコを作っていた。
パットに並べられた、綺麗に彩られたチョコレート。
甘いチョコに込めるのは、愛情とほんの少しの………
『SpicyChocorate & Sweet Sweet SEX』
その日、夏海は朝から落ち着きがなかった。時計を見て、窓から外を覗き込み、玄関から外の様子を眺める。士とユウスケがそんな夏海の
様子を見て、士は呆れユウスケはなんとか落ち着かせようとしていた。
それは、自室にいてもそうで、何度も窓を開けて外を見ていた。
海東の姿を確認するために。
大樹さん、最近顔を出しませんけど、今日は来ますよね……?
チョコレート、凄く上手く出来たから、早く渡したいんです。
夏海はまた、時計とドアを交互に見た。
「そんなにそわそわして、誰を待っているのかな?」
「大樹さん!」
昼を過ぎた頃だろうか、夏海が一番声が聞こえ、部屋のドアが開いた。
「やあ、夏海」
笑顔で言う海東に、笑顔で返し歩み寄る夏海。
「お帰りなさい、大樹さん」
この家の人間じゃないのに夏海はいつも『お帰り』と迎えてくれる。
「ただいま、夏海」
それが凄く嬉しい。海東は、細い肩を抱いて軽くキスをした。
「え?チョコレート?」
「はい。バレンタインデーですから」
ソファーに座り、夏海が入れてくれた珈琲を飲んでいた時、彼の隣に座り、そう言って少し恥ずかしげにリボンのついた箱を差し出す夏海
。海東はそれを受け取り、極上の笑顔を見せた。
「有難う、夏海。嬉しいな……開けても良い……?」
「はい、どうぞ」
「なんか……開けるの勿体ないな……」
なんて言いながら綺麗に包装されたそれを丁寧に開ける。
色んな形のチョコレートが、綺麗にトッピングされて並んでいた。
「これ、手作りかい?」
「はい」
「凄いね、美味しそう」
いただきます。と、一粒摘んで食べたのは、甘くて蕩けそうな生チョコ。
「どうですか……?」
「うん、美味しい。もしかして、色んな種類の作った?」
「はい」
「本当に凄いね」
また違うチョコを口に運ぶ。そのチョコはさっきのとは違い、ビターで少しスパイシー。
「これは、ブラックペッパー入り?」
「はい」
海東の問いに笑顔を見せる。
「へぇ……凄く美味しいよ」
「よかった。大樹さんがだーい好きだった士くんから貰ってた胡椒入り、ですよ」
「なつみ………」
笑顔のままなのに、棘のある言葉に海東は苦笑した。
「あのさ……士のことはもう……」
「大樹さん、士くんから胡椒貰ってた時、すっ……………ごく!嬉しそうでした」
「いや……それは……士に」
「騙された……なんて、嘘。士くんから貰ったのが嬉しかったんですよね、あれ」
「参ったな……ホントに、勘弁してくれないかな……」
ひょんなことから、以前、士に対して人には言えない想いを抱いていたことを知られてしまった。それからと言うもの、今だにこんな風に
嫌がらせ(?)を受けている。
「大樹さんはぁー、去年まではチョコあげる立場だったんですよねー……」
にっこりと、満面の笑顔を見せる夏海。
「違うから……」
「えっ?士くんから欲しかったんですか?」
「いや……そうじゃないんだけど……」
そんな言葉に頭を抱え込む。
あぁ〜〜〜……なんでこんな話ししなきゃなんないんだぁ!
……いや、でも!!
「……でもさ、いつも『気色悪い、死ね』って、突っ返されてたんだよ、僕」
「そうですか。やっぱり、士くんにあげてたんですね。いーつーも」
そんな答えに夏海は余計に口を尖らせた。
しまった、薮蛇だった。と、頭を掻いてもすでに手遅れ。
だけど、そんな可愛いヤキモチが、本当は嬉しかったりする。
ちゃんと、想われてるんだ……って実感できる。
とは言え、機嫌が悪いのはどうにかしないと………
「ね……もう士の事はいいだろ?夏海だけが好きだよ。僕のお宝なんだから」
毛先だけ巻いてある長い髪を撫でて、顔の輪郭を撫でる。しかし。
「そう言えば、私の機嫌がなおると思ったら大間違いです!」
「痛てっ!!」
ぷう、と、頬を膨らました夏海におもいっきり手を抓られてしまった。少し赤くなった手の甲を撫で摩る。
「夏海、僕の事、嫌いになったのかい……?」
海東の言葉にツーンとそっぽを向く夏海。
「本当に好きだよ?なーつーみー!」
ヤキモチだとわかっていても、帰ってきて早々こんなに邪険にされるとちょっと悲しくなる。
そんな不安げな表情をする海東をチラリと見て、夏海はくすくす笑った。
「……嫌いなら、チョコなんかあげません。義理チョコだって、誰にもあげてないんですから……」
「夏海………?」
「ごめんなさい。意地悪しちゃいました」
呆気に取られている海東に、ぺろっと舌を出して悪戯っぽく笑う夏海。安堵して微笑んだ海東は、細い身体を引き寄せて、背中から強く抱
きしめた。
「ああ、もう。びっくりしたよ……」
「でも、少し妬けちゃったのは本当です」
「ん……」
抱きしめたまま苦笑する。
「それに大樹さん、なかなか帰ってきてくれないから……意地悪したくなります」
「ごめんね、夏海。寂しかった?」
こくんと頷き海東の腕をぎゅっと握り締める夏海。そんな姿が可愛いと思った反面、いつも待たせている夏海に申し訳なくなった。
「本当にごめんね。それと、チョコ有難う。凄く嬉しかったよ」
「はい……」
「ね。チョコ、僕にしかあげてないって、本当?」
「本当ですよ」
「本当、凄く嬉しいよ………」
夏海の髪に頬を寄せるとほのかに甘い香りが鼻を擽る。
夏海から発せられる匂い、それが海東の情を大きく揺さ振った。
帰ってきていきなりだなんて、エッチな男だと思われるかもしれないけど。いいよね、久しぶりに逢ったんだから。
「あのさ……チョコ、凄く美味しかったけど……こっちの方がもっと美味しそうなんだよね……」
つぅー……っと、豊かな胸のラインを指でなぞる。
「ぁあんっ……!!」
そして耳元にキスをすると、ぴくん、と身体が震え唇から漏れる甘い声。
海東に幾度となく愛される悦びを教えられた身体は、彼に触れられただけで、いとも簡単に火が着いてしまう。
「凄く美味しそう……食べても……良い……?」
情に濡れた熱い声で囁かれると、より一層身体が熱くなる。
恋人から抱かれるのを断る理由なんか何一つない。
それに、意地悪しすぎちゃったから……
夏海は、コクンと頷いた。
「あっ……んっ……はぁ……ん………」
真っ白なシーツの上。一糸纏わずに横たわる夏海の白くしなやかな肌の上を、男の細い指と唇が滑る。甘い香りを放つ肌に唇を落とし強く
吸い付くと、赤い花が咲いた。
「夏海の身体、凄く甘いね……」
「あっ……んっ……!」
柔らかい胸を大きな手でやんわりと揉み、乳首を口に含む。それに吸い付き舌で転がすと、次第にピンと硬くなっていくのがわかる。
濡れた音を立てて唇を離すと、ぷるぷると揺れるピンク色の小さな果実。それは唾液で濡れて、とてつもなく淫靡に映った。
「甘いし……凄く熟れてる……本当に『夏メロン』だね……」
「その……呼び方……や……です」
「じゃ……『夏みかん』……?」
「それも………やです………」
「うん、僕も………」
コツン……と額を重ね、苦笑する。よりによって、士と同じ呼び方なんて。
絶っ……対に嫌だ!
「ちゃんと、名前………呼んで……?」
「ああ……」
夏海。と、呼ぶと嬉しそうに微笑むのが物凄く可愛い。
綺麗な髪を撫でて啄むようなキスを繰り返し、ふとサイドテーブルに視線を運んだ。そこには、夏海がくれたチョコレートの箱が置いてあ
る。何かを思った海東は、その箱を手に取った。
「ね、夏海。知ってるかい……?」
「………えっ………?」
「チョコってさ……媚薬なんだよ……?」
目を細めて微笑んで、チョコを一粒つまみ、「食べたら駄目だよ?」と、夏海にくわえさせた。
「だから……これで、夏海を蕩けさせてあげる」
チョコごと唇を吸い、溶かして甘い唇を舐めあげる。
すると、夏海の唇からくぐもった吐息が漏れた。
「んっ……ふっ……」
海東の温もりで、チョコが溶けて夏海の口の中に広がると、次第に頭がぽぉっとしてくる。それなのに、溶けたチョコを押し込まれて、そ
してまた、舌に絡み付いたチョコを舐め取られて……
まるで、自分も一緒に食べられているような感覚に陥ってしまい、いつも以上に感じているのが自分でもわかった。
「どう……ドキドキしてきた……?」
唇を離す時に、つたう糸まで琥珀色。
夏海は、はぁ……と、熱い息を吐き、コクンと頷いた。
唇を離す時に、つたう糸まで琥珀色。
夏海は、はぁ……と、熱い息を吐き、コクンと頷いた。
初めて味わう、チョコレート味の甘いキス。甘い香りに包まれて、なんだか脳まで蕩けてしまいそう。
「だい……き……さ………もう……わたし………」
潤んだ瞳で切なく訴える夏海。
海東は下半身までその指を滑らせて、重なった花びらを指で開く。まだ、直接的な刺激を与えていないのに、夏海のそこはもうすでに蜜が
溢れ、しとどに濡れていた。
「凄いね……もう、濡れてる……」
ぐっしょり濡れたそこに指を滑らせた後、ゆっくりとナカに挿れるとビクンと揺れる細い身体。変わらず狭いそこは、海東の指を離すまい
と強く吸い付いてきた。
「僕の指、離さないよ……欲しい……?夏海」
その指を蠢かせてナカを刺激する。
「あぁんっ……ほしい……の……指じゃ…やなの……だいきさん……」
それじゃ足らないと、海東を求める夏海。
初めて肌を重ねた頃は、まだ全然慣れなくて、恥じらい、何も言えずにされるがままだったのに。
まるで男を知らなかった夏海を自分がここまでさせたのだ。
綺麗な、真っさらな夏海を自分の色に染めさせる。かなり古臭い表現だが、これ以上の悦びはない。
夏海は、僕だけの大事なお宝。
だから、なんでも君の望み通りにしてあげたい。
でも。
今日は、まだ駄目だよ夏海。
海東はその指を抜いて、纏わり付いた蜜を舐めあげた。
「まだ、だーめ」
「やらぁ……いじわるしないで………」
涙目でふるふると首を振り、愛願する様子すら愛らしく感じる。海東は、乱れた髪を撫でて、甘さの残る唇にキスをした。
「いじわるじゃないよ。今日はもっと夏海を悦くさせたいから……代わりに、コレ……挿れてあげる」
かりっ……と半分にして、口移しで食べさせながら、後半分は夏海の中心に添える。
それは、黒胡椒入りのとはまた違う、トリュフチョコレート。
「あっ……やっ……そんなの……だめ……きゃんっ……!」
指をクッ……と押し込めば、うねったそこは、抵抗なくチョコを受け入れてしまう。
「だ……いきさ……」
それとは対照的に、首を振る夏海。
「大丈夫だよ……夏海のナカ、凄く熱いから……全部溶けて来るよ……」
「やっ……そんなぁっ………」
自分のナカにチョコを入れられるなんて凄く恥ずかしい。だけど、それが余計に夏海の情を駆り立てていた。ますます身体が淫らに熱くな
ってきている。
「ほら、溶けてきた……」
とろり……と溢れでてくる琥珀色の蜜。海東はそれを指で掬い、夏海の唇に塗り付ける。
そして、舐め上げ、吸い付き、唇と蜜を充分味わった。
「どう?夏海味のチョコレート……美味しい?」
「わかん……な……い………」
「そう……?僕はすごく甘くて美味しいよ」
夏海の足を自分の肩にかけて、濡れた花びらに口付け甘い蜜を啜りたてる。厭らしい音を立てて舐め回し、ナカにも舌を指し入れた。
「やっぱり……凄く甘い」
その上にある、一番敏感な小さい肉粒にも吸い付くと、細い身体は大きく背を反らす。
「きゃあっ!!あっ!!やん!!そこっ!!らめぇ!!」
より高くなる夏海の声を聞きながら、粒を舌で刺激する。そんな強い刺激に反応し、新たに溢れ出てくる蜜も舐め上げる。顔を上げると彼
の唇は蜜塗れになっていた。
「ヤバい……僕も……酔いそ……」
自分の唇についた蜜を舐め取り、綺麗な細い足の間に身体を割り入れる。そして、透明の汁で濡れた自分のそれを夏海にヒタリと添えた。
「挿れるよ……?」
言うなり、ぐちゅりと音を立てて硬いそれを挿入する。途端、夏海は悲鳴のような声を上げてくたりとした。
海東を包む肉壁は、奥へ奥へと誘うように強くうねっている。
「もしかして……イっちゃった……?」
尋ねると、耳まで真っ赤にして頷く夏海。
「らってぇ……だいきさんが……あんなこと……するからぁ……」
「可愛い……凄く、可愛いよ……夏海」
快楽の涙で潤んだ瞳で批難してくる夏海が物凄く愛しい。両手で頬を包みキスをして、ゆっくりと腰を動かした。
「あんっ……!!」
果てたばかりで敏感になっているナカを刺激されて、大きく背中がしなる。
「きゃ……ひぁっ……はぁん!!」
あまりに刺激が強すぎて、小さな悲鳴が上がる。
でも、止めたくない。止めて欲しくない。
「だぃ……き……さぁん……」
蕩けそうな表情で、自分の名前を呼ぶ夏海を愛おしく感じながら腰を押し付ける。
奥を突かれるたび夏海は、離れたくないとばかりにぎゅうぎゅうに締め付けた。
「あ、すごっ………も……イきそ………」
「わ……わたし……も……」
海東と一緒に、夏海も再び達しそうになっていた。海東は、とどめとばかりに更に激しく突き立てる。
「なっ……つ……み……っ!」
「あ、あんっ……!!あああっ!!」
高い嬌声が聞こえると同時に、奥まで突き立てるとそのまま動きを止めた。
どくっ……どくんっ……
夏海のナカで精を全部吐き出して、はあぁ……と、熱い息を吐く。
だけど、まだ全然足りない。もっと夏海が欲しい。
証拠に、夏海のナカで果てたのに、海東のそれはいまだ硬度を保ったままだった。
「まだ………いい……?」
「はい……」
このまま続けても良いのだけれど、海東は腰を引いてズルリと抜いた。一緒に溢れ出す白い欲。
「あんっ!!やあん……やめないで……もっとぉ……」
「違うよ、やめないから」
切ない声を出し、いやいやする夏海に宥めるようにキスをして、その身体を起こす。
今度は自分が寝そべり、夏海を腰の辺りで跨がせた。
「ほら……今度は夏海が挿れてごらん」
「はぃ…………」
いつもなら自分からなんて恥ずかしいと戸惑うのに、気持ちが高ぶっているからか、海東の言葉に素直に従う夏海。
逞しいそれを手に取り、自分の入口に添えてゆっくりと腰を落とした。
「あっ……んぁあっ……」
太いそれが夏海のナカを支配していく。白濁と愛液が潤滑油になり、難無く根本まで受け入れる事ができた。
はぁ……と、悩ましい吐息を漏らし海東を見つめる夏海。
「だいきさぁん…………これで………いぃ……ですか……?」
「うん。よく出来たね」
と、海東が優しく頭を撫でると、嬉しそうに微笑んだ。
「良いコには、御褒美」
そう言うと海東は、細い腰に手を添えて、下からズンズン突き上げた。
「きゃ……!ふぁっ……あっ……あんっ……」
突き上げと同じリズムで細い身体が跳ねて淫らに喘ぐ。その甘い声を聞きながら、夏海の痴態と膣内を堪能した。
「凄っ……いい眺め……」
上から眺めるのと下から見上げるのでは、また全然趣が違う。
夏海を犯しているそれが、興奮でますます硬度が増していく。腰を振りながら、揺れる胸から腰までのラインを撫でると、「あんっ」と、
また愛らしい声が漏れた。
すると、また新しい欲も生まれてくる。
もっと、可愛い夏海が見たい。
「ね、夏海……夏海も、自分で……気持ちよくなるように動いてみてよ」
海東の言葉にこくんと頷き、ゆっくりと動きはじめる。拙い腰の動きだが、それでも海東を駆り立てるのには充分だった。
「ぁん……ふぁ……んぅうっ……」
自分のナカにある海東を感じながら、くぐもった吐息を漏らす夏海。腰を揺らすにつれて、次第に気持ち悦さが強くなってくる。もっと快
楽を得たくて、腰の動きは次第に大胆になっていった。
「んっ……そ……じょうず……」
その動きに合わせて海東が腰を突き上げてくる。すると、奥のほうまで貫かれて背中を反らした。その反動で、ぷるんと揺れる白い胸。
「きゃあぁんっ!だぃ……き……だいきさぁん!!あっ……あんっ!すごいのっ!もっと……もっとぉ!」
そんな夏海を熱い息を吐きながら眺める海東。彼もいつも以上に高ぶっていた。
あの夏海が自分の上で、甘い声を上げ淫らに腰を揺らしているのだ。もっと欲しいと愛願しながら。
これが興奮しない訳がない。
「夏海……なつみっ……!!」
目の前で、大きく揺れる豊かな胸を揉みしだき、乳首を親指で弄りながら、下から激しく突きまくる。
「ひぁあんっ!!だいきさんっ!!あ、あぁん!」
あっ、あっ、と、突き上げるタイミングと同じく上がる甲高い声。
もっと……もっと甘い声を聞きたい。夏海をもっと乱したい。
「きゃあっ!!」
海東はいきなり繋がったまま夏海の腰に腕を回して抱え上げる。対面座位になり、夏海の奥の方まで侵入した。
「ひぁっ……あっ……あんっ……やんっ……おくにあたるぅっ!!」
海東の首に細い腕を絡め、海東の膝の上で腰をくねらせる夏海。いつもの可憐な姿からは想像できないような、快楽を追い掛けることしか
頭にないと思わせるような卑猥で浅ましい姿。それがまた、海東を夢中にさせた。
「いやらしいね、……可愛いよ、夏海。もっと、いやらしくなって」
そう言い、そばにあるチョコに手を伸ばし、また一つ摘む。そして、それをくわえて夏海の口元に運んだ。
「なつみ……あーん」
夏海は、海東の言うままに口からチョコを受け取る。そのまま噛もうとすると、海東がそれを止めた。
「あ、噛まないで……それ、僕にも食べさせて………」
「はい………」
言われた通りに海東にチョコを口移す夏海。それを受け取り、そしてまた夏海に口移す。
トロリと溶け厭らしく舌に絡まりながら、何度も互いの口を行き来する、甘いチョコレート。
その時、唇から漏れた琥珀色がポタポタと、揺れる乳房に落ちた。
「チョココーティングされた夏メロン、美味しそう」
溶けきったチョコを飲み込み、突き上げながらチョコが付いた胸を撫で回す。そして、胸を持ち上げ、背中を屈めて舐め上げしゃぶりつい
た。
「ふぁあっ……あっ……やぁん……むね……やらぁ……!」
「やっぱり美味しぃ……」
夏海の快感に媚びた甘い声。唾液とチョコが混ざったそれで、ベタベタになった胸。充満する甘くて淫靡な香り。そして、最高に淫猥な夏
海。
ヤバい、これ、堪らない!!
「ぁ……あっ……んっ……だい……き……さん……らめ……らめっ……!また……イくっ……イっちゃうのっ!!」
チョコに塗れた胸を海東に擦り付けながら、限界を訴える夏海。
「だい……き、さんの……ほしいの……!!はやく……あついのっ……あ、あんっ……」
「ああ、一緒にイこう!!」
強く夏海を抱きしめて、絶頂に向かい夏海を貫く。
「きゃっ!」
激しくガクガク揺さ振られて、夏海は小さく悲鳴を上げて、縋るようにしがみついた。
「あっ!あぁん!らめ!!らめぇ!!ひぁっ………きゃぁぁあっ!!」
夏海は悲鳴を上げて絶頂を迎える。そのきつい締め付けに、海東も再び夏海のナカで熱い欲を吐き出した。
「だい……き……さ……」
ドクドクと波打ち、注がれる白濁を受け止めながら、快楽のあまり繋がったまま意識を失った夏海。海東は力をなくした身体を優しく抱き
留めた。
そろそろ薄暗くなった頃、夏海の部屋のベッドの中、上半身を起こした海東の傍で夏海が眠っている。
チョコレートのおかげで夏海と甘いけど激しい一時を過ごすことができた。だけど、あれだけじゃまだ足らなくて、意識を取り戻した夏海
を幾度となく求めてしまった。
「流石に、やり過ぎたな……」
快楽と疲労に襲われて、深い眠りについてしまった夏海。激しい行為に乱れてしまった髪を手で梳いて掬い上げる。
すると、さらさらと海東の手から落ちていく黒い絹糸。
「可愛いな……本当に……」
何度も髪を弄びながら呟いて、ベッドの隅に置いていた箱を取り、まだ残っていた最後の一粒を口に運ぶ。
「ん……美味し……」
残っていたのは黒胡椒のアクセントが効いた、ビターチョコレート。色んな種類のチョコがあったが、これが一番美味しかった。
「本当に有難う、夏海」
そっと、額に口付ける。
その肌にいまだに残るチョコの甘い香り。それが鼻について、先までの行為を思い出した。
今日味わった夏海はいつもよりずっと甘くて美味しかった。まるで、口に入れると溶けてしまいそうな生チョコみたいに。
そうだな……チョコと違って夏海は、甘いほうが良い。
ほろ苦くてスパイシーなチョコレートと、蕩けそうなほど甘い夏海。そして、甘くて激しいセックス。
それはまるで本当の媚薬のようで、一度嵌まったら逃げられそうにない。
だけど、「それもいいかな……」なんて、海東は一人呟いた。
最初のセックスが終わった頃の、夏海の部屋の外では。
「あいつ……やったら甘ったらしいセックスしてんのな」
「夏海ちゃん……スゲー色っぽいのな………」
半ば呆れている士と、半ばにやけているユウスケ。
「でもさ、×××にチョコとか…………」
「マニアックだな」
「な!」
「あーいう、セックスに興味なさ気な顔してる奴ほどマニアックだったりするんだよな。だいたいわかる」
「そんなもんか?ま、士は間違いなくドSだよな?絶対」
「俺の話しはどうでも良いんだよ!」
ユウスケと士がそんな話しをしている時に、いきなりドアが開いた。
「なーにーを、話しているのかな?君達は」
「か…かかかっ……海東!!」
「よぉ」
当の海東が現れ慌てふためくユウスケと、ヌケヌケと手を挙げてみせる士。さっきから正反対で可笑しい。
「覗き見なんて、かなり悪趣味だね?寂しいねえ……チョコも貰えない奴は」
冷ややかな目で二人を見る海東。
「夏みかんのすっげー声が聞こえてきたから、ナニやってんのか気になっただけだ」
「ふーん………」
「てか、夏みかんの×××にチョコ挿れるとかマニアックだなお前」
「余計なお世話だよ」
「美味かったみたいだな、夏みかん味チョコレート」
にやにやしながらそう言う士。
「それは勿論。すっごく美味しかったよ。チョコも夏海もね」
海東はにっこりと、満面の笑みで答えると、チッ……と、士が舌打ちした。
その程度の冷やかしで、慌てたりなんかしないよ。僕は。
「あぁ、君達。僕達のセックスをおかずにするくらいなら許してあげるけど」
笑顔が消えて、二人を冷たく見据える。
「夏海に手をだしたら命はないからね」
低い声でそう言うと、バタンとドアを閉じた。
「怖っ……」
「馬鹿か、男付きの女なんか興味ねぇんだよ」
小さく呟くユウスケと、ふんっ……と、鼻で笑い言う士。やはり正反対。
そういえば……と、ユウスケが手を叩いた。
「海東って、あれだよな。前は士に纏わり付いてたよな……?」
「あぁ……ったく、鬱陶しかった」
「あ!もしかして士、海東から構ってもらえなくて寂しいんじゃないのか?」
「んなワケあるか!!気持ち悪い事言ってんじゃねーよ!!」
げしっ!!とユウスケの尻をおもいっきり蹴った。
「痛てっ!!痛ぇって!!」
何故かムキになって何度もユウスケを蹴る士。
一体何にムキになっているのやら……?
459 :
怪盗×夏蜜柑:2011/02/18(金) 22:22:02 ID:+597GoQx
これでお終い。カウント間違えてすみません。
しかし、チョコレート渡してえちーするだけの話がどうしてこんなに長くなったのやら・・・
よし、おまいら成仏しろよ!なむなむ
ナイス投げ!
投げ乙
462 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 01:15:31 ID:rGrv5xF3
投げ乙
ナイス投げ!エロかった!
これは、士達がいくつもの世界を渡り戦いを終わらせてから、一年が経った頃の話。
あの戦いが終わってからしばらくして、士と夏海は結婚した。
違う世界で生きていた二人は入籍こそ出来なかったが、そんなことは関係なかった。戦いが終わり、生活が落ち着いた頃、小さな教会で結婚式を挙げた。綺麗なドレスも何もない、祝福してくれる人も、たった三人だけの結婚式。
しかし、それでも二人は幸せだった。神様の前で永遠の愛を誓い、涙を流した夏海をその場にいる誰もが美しいと思った。
今は、光写真館で祖父とともに夫婦仲睦まじく暮らしている。
そして、これは最近わかったのだが、夏海の胎内に新しい命が芽生えたらしい。
ユウスケは、士と夏海が結婚する前に自分の世界に戻った。きっと、二人に気を使ったのだろう。
久しぶりに戻った自分の世界を見たユウスケは心の中で強く願った。
今までいろんな世界を見て、いろんなものを守ってきた。今度は、いや、今度こそは、この世界を守るのだ、と。
今は世界の平和を守るべく、密かに町を守る日々を過ごしている。
そして、八代の月命日には欠かさず彼女の墓前に立っている。良いのか悪いのか、いまだ忘れられないと言うことなのだろう。
そんな生活をしながらも、たまに思い出したように手土産を持って、三人が暮らしている写真館に遊びに行っている。
結婚して、幸せそうな二人の姿を見ていると嬉しくなり自然と笑みが零れる。やはり、皆が集まるその場所が、一番安らぐ場所なのだろう。
栄次郎は………まぁ、相変わらずだ。
そして、海東は―――
「懐かしいな……あまり変わってないみたいだけど……」
高層ビルの屋上に佇み、眼下に広がる町並みを眺めている。そこは、いつも眺めている町と変わらないはずなのに、どこか、寂しげに映る。
ここは、一年前はダークライダーが支配していた世界。
そう、ネガの世界だ。
「さぁて……ここにはどんなお宝が……?」
そんな、見覚えがある町並みを眺めて呟いた。
彼は、相変わらずトレジャーハントを続けていた。
かと言って、士達と別れてまた一人で旅をしている訳ではなく、何故か事あるごとに写真館に顔を出していた。
思えば当たり前かもしれない。そこに行けば美味しいコーヒーが飲めて、食べるものにも困らない。その上、寝泊まりまで出来る。海東にとってあの家は、便利この上ないだろう。
しかし、それだけではなかった。
写真館に行けば、単独でハントをする時とは比べものにならないくらい穏やかに過ごせる。そんな中で、たまにはわざと夏海にちょっかいを出し、嫉妬剥き出しにしてくる士をからかいユウスケと一緒にその様子を見て笑う。
そんな生活が実は気に入っていたようで、以前は我が家のように写真館に入り浸っていた。
だが、彼も次第に写真館に顔を出す回数が減っていった。
士と夏海の仲を知らない訳ではなかったから(特に夜は、迷惑をかけられたと言っても良いほどだ)、ユウスケと同じく彼なりに気を使ったのだろう。
そんな海東もやはりユウスケと同じで、突然ふらりと写真館に現れる。
不思議と彼が顔を出す時は必ずと言って良いほどユウスケが訪れて、「二人で示し合わせているんじゃないか?」と、皆で笑っていた。
落ち葉が舞い落ちる並木道。カサカサと、寂しげな音を立てて歩きながら、海東は町の様子を伺っていた。
それにしても、寂し過ぎる町だ。あれから一年経ったのに、町に活気もないし、それどころかまるで人の気配がしない。
いまだ町が復旧できていないのか、もしくはまだダークライダーが……?
まぁ、もし、そうだとしても自分には関係ない。
世界を生まれ変わらせるのは、この世界に生きる人間がするべきだ。
だけど……
と、海東は足を止める。
どうして、この世界なのだろう?
以前この世界に訪れた時は、この世界のお宝、ケータッチは士の物となり、結局は何も手に入れる事は出来なかった。
だから、もうここには何もないはずだ。
しかし。
トレジャーハンターの勘が働くのか、ここには自分の人生を左右する、そんなお宝が密かに眠っている。
そういう、予感がしていた。
「待てー!!!」
「そっちだ!!捕まえろ!!」
そんな時、遠巻きに男の声が聞こえてきた。
「………?」
何事かと、声のするほうへ駆け寄ってみる。すると、女が一人、数人の男に追い掛けられていた。
女はボロボロの布きれで隠すように全身を包み、必死になって逃げている。それを追い掛けている男達は、明らかに目の色が違う。見るからに異常な状況だ。
「待てっ!!」
男の一人がそのボロ布を掴む。その時、女の姿を包み隠していた布が振り払われて、その顔が見えた。ショートカットの女だったが、その顔は良く見知った顔だった。
「……夏メロン……?」
眉を潜めていつも呼ぶ名を口にする。そう、確かに夏海だった。
いや、正確に言うと、この世界の夏海……ナツミだった。
ナツミは足をもつらせ、よろけながらも必死に逃げる。しかし、その前方の脇道から別の男が出てきて道をふさいだ。立ち止まるナツミ。
「あっ……!」
後ろからは数人の男達。そして、眼前には手を広げ待ち構ている男がニヤニヤ笑って立っている。そして、他に逃げられるような脇道はない。
「残念だったなぁ」
まさに八方塞がりになり、立ち止まるナツミを男達は囲み込んだ。
男の一人が背後からナツミの両腕を掴む。
「ほーら、捕まえた!」
「嫌だ!!離せっ!!やめろっ!!」
ナツミは必死にその手を離そうとするが、男の力が強くて離せない。
「ったく、手こずらせやがって……」
前方に立ち塞がっていた男がジリジリとにじり寄り、ナツミを上から下まで舐めるように見つめる。その粘着質な視線に嫌悪感をあらわにするナツミ。そんな彼女に構わずに、男は二つの膨らみをがっしりと掴んだ。ゾワリと背中に悪寒が走る。
「いやぁっ!!」
「へぇ……見た目よりあるんだな。こいつは中々……」
豊満な胸を乱暴に揉みしだきながら、男は好色じみた目でナツミを見て舌なめずりをする。
「おい!!お前だけ触ってないで、はやくこいつ寝かせろ!!」
「そんな急かすなよ」
呆れたように男はそう言い、ナツミを足払いしてバランスを崩させる。そのまま倒れたナツミの腕を、背後にいた男が掴んだ。ナツミは身体をよじらせ必死に足をバタつかせて抵抗した。
「大人しくしろ!!」
「いやっ!!やめろ!!いやぁあっ!!!」
男達は、嫌がり暴れる身体を押さえ付け、一人の男が馬乗りになり服を脱がし……いや、ビリビリと引き千切っている。豊満な胸が晒され大きく揺れた。
「嫌ぁっ!!いやっ!!やめてぇ!!!!」
「そんなに叫んでも誰も助けねぇよ!!決まりなんだからよ!」
「そうだ!少しでも人間を増やすためだ」
「わかってんだろ!諦めろ」
必死に叫ぶナツミを押さえ付け、理解しがたいことを言いながらレイプしようとしている男達。こんな明るい街中で、あんなに女性が悲鳴をあげているのに、誰も助けに来ないなんておかしすぎる。
「どうなってるんだ……この世界は……」
そうは思うが、この世界の人間を助けても、自分には何の得にもならない。しかし、知り合いにそっくりな女が襲われているのを見過ごしたとなれば流石に後味が悪い。
「……ったく、仕方ないなぁ……」
海東は頭を掻いて、男の側に当たるように、狙いを定めてディエンドライバーの引き金を引いた。
ズキュー…ン!!
銃声が響き、男の足元に弾丸が当たる。
「誰だ!!」
男達は海東の方を一斉に見た。
「その娘から離れろ!!」
ディエンドライバーを構えたまま「次は撃つ」と言うと、その男達は敵わないと思ったのか、チッ……と舌打ちをして走り去っていく。それを見送って、クルクルっといつものようにディエンドライバーを回した後、海東はナツミの側まで歩み寄った。
「…………!」
ナツミは遠目で見たよりも酷い状態だった。身体のあちこちは傷だらけ。身につけている服はもうボロボロの布きれに成り果てていて、ほとんど裸に近い状態だった。
「だいじょ………」
海東がそう言い終わる前に、ナツミは側で割れた硝子瓶の破片を握りしめ、無茶苦茶に振り回した。
「……っと!!」
海東は咄嗟に後退り、身をかわす。
まさか、助けた女から攻撃されるなど思ってもいなかった。
「こっちに来るなっ!!」
「ちょっ…!待ちたまえ!僕は助けてあげたんだよ」
「うるさい!!男なんか皆同じだ!!お前も助けたフリしてどうせ!!」
「……っ!!」
その言葉を聞いて、海東は険しく眉を寄せた。
何があったのか知らないけど、助けたのにそんなふうに言われるなんて屈辱だ!!
今まで避けていたナツミの腕を、強く掴んで動きを塞ぐ。
「……!!」
そして、反対の手で破片を強く握り締めた。
「なに……を……!!離せっ!!」
ナツミが手を引こうとしてもビクともしないどころか、ますます力は強くなっていく。硝子を握り締めたその手からは、血が流れていた。鮮血がポタポタと自分の手を伝い落ちていくのを見て、ナツミはうろたえた。
「僕を見くびらないでくれ!そんな真似は絶対にしない!!」
語気を強めて叫ぶ海東。
それに夏海は、ビクン……!と身体を震わせて、怯えた顔を見せた。
「僕を信じられないなら、このままここに突き刺せばいい」
夏海の腕を掴んだまま、ほら!と、鋭い破片を自分の心臓に突き立てる。
「…………」
自分を真っ直ぐに見る海東をしばらく見つめた後、身体の力を抜いたナツミ。ようやく落ち着き大人しくなったナツミに、海東は小さくため息をついて、自分のシャツを破き傷口をきつく縛ると、血で汚さないようにジャケットを脱いだ。
「……っ!!」
ナツミはそれを見て危険を感じたのか表情を強張らせ、腰を抜かしたようにペタンと座り込んでしまった。そして、必死に後退りカタカタと震え出して首を振る。さっきの男達から逃れられて安心したせいもあるだろうが、もう立ち向かう気力も逃げる体力も残っていないのだ。
当の海東は、そんな痛々しい姿を見てナツミになにかしようだなんて、そんな気持ちは到底起こらなかった。
「そんなに警戒しなくても良い。そんな恰好じゃ歩けないだろう?これでも着ると良い」
と、海東は脱いだジャケットを差し出す。
完全には信じられていない事に少し落胆した海東だが、今のナツミの状態を見れば仕方ないとも思った。
本来なら美しかったであろうその白い肌には、最近ついたものではない痣や、古い傷も残っている。今まで余程酷い目に合ってきたのだ。
「あ………あの………その………ありが…と………」
ナツミはそれを受け取り、呟くように礼を言った。
「いいから、早くそれを着たまえ。目のやり場に困る」
ナツミから視線を反らし、そう言う海東。
ナツミは小さく頷いて、海東のジャケットを羽織った。
かなりマイナーなカプで需要なさそうなのと、かなりの長編になりそうでエロがいつ入るのか謎になったんで投げました。
まだ続きがあるけど、携帯からの投げってかなりめんどいんだな………
では、成仏しておくれ。
474 :
名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 01:20:03.50 ID:GbgVUSU4
ナイス投げ!!
ナイス投げ!
ナイス投げ!
本スレから追って来たかいがあったw
ナイス投げ!
478 :
473:2011/03/07(月) 12:22:25.21 ID:Ld6+J5VE
残り、投げてもおkかな?
なんか、連載みたいな感じになるから躊躇ってる
廃棄にするつもりなら投げればいい
>>472のつづき
有り得ないトンデモ設定が出てくるが、スルーでよろ
ナツミが落ち着いたあと海東は、自分がこの世界の人間ではない事とライダーである事。そして、この世界に来た目的を告げ、彼女からこの世界の事を聞いていた。
どうしてこんなふうになってしまったのか。
「…………それで、君はそんな目にあっていた………と?」
「……………」
「そう……か……」
海東の問いに、ナツミはジャケットをぎゅうっと握り締めて頷く。彼は壁に背もたれ、複雑な表情をしたままディエンドライバーを弄っていた。
一年前、この世界に来た赤い悪魔がダークライダーを倒したおかげで、奴らは残り数少なくなっていた。
その後は、生き残っている人間達が立ち上がり、策を練ってダークライダーをやっとの思いで倒した。
これでやっと、この世界も平和になる。そう思った矢先だった。
今まで支配されていた恐怖が強すぎたのか、平和を手に入れた途端、男達がおかしくなっていった。権力を翳し、暴力を振るい好き勝手するようになる。よくある話しだ。
揚句の果てに男達は、あるきまりを作った。
「子孫繁栄のため、どんな女とも性交してもよい。女も、それに従うべき」と。
つまり、女を見たらレイプをしても構わない。そして、女は拒否してはいけない。と、そう言うことだ。
真っ当な人間なら考えることはない、目茶苦茶で狂った掟。普通なら受け入れられるはずがない。
しかし。
支配欲に酔った男達は、ダークライダーのせいで極端に減った人口を、増やすための最善の案だ。と、これに異を唱える者はいなかった。
それから、女性にとって地獄のような日々が始まった。
声を上げて泣き、許しを請う女を有無を言わさずレイプしていく男達。中には気に入った女を何度も犯す男もいた。
そして、魅力的な肢体を持つナツミも、もう何度も男達の餌食になっていた。彼女は何も言わなかったが、時には助けるふりをして油断させ、逃げ場を無くしてから犯すような、そんな卑劣な男もいたのだろう。先にナツミが発した言葉がそれを物語っている。
やはり、体中の痣や傷はその時に残されたものだった。
「そのせいで……私達は……」
ダークライダーが支配していた時のように、今度は女だけでひっそりと暮らすようになった。
しかし、その中でも男達から受けたショックが強いあまりに、食べる事を拒否するようになった女、誰とも口を聞かなくなった女、最悪、自ら命を絶つ女もいた。
そうなっては子孫繁栄も何もない。それでも男達は、その愚か過ぎる行為を止めることはなかった。
「子孫を残すためだ……なんて……ただの口実……あいつらは……ただ……女を……自分達よ……り……弱い女を………!」
震えた声が詰まり、その瞳からは涙がポロポロとこぼれ落ちる。
女を犯したいだけ………か……随分酷い話だ……
クルクル……カシャン!!クルクル……カシャン!!
いつものようにディエンドライバーを回し、睫毛を伏せる。
正直、自分が良い人間だとは思わない。だが、それでも、反吐が出る思いだった。
「もういい、わかった。辛いことを聞いて悪かったね」
何気なく頭にポンと触れようと、海東が手を差し出すが、やはりビクッと震える身体。
海東を信じられないのではない。ナツミの感情に関わらず、身体が男を拒否しているのだ。
「………………」
その手を引いて、握り締める。言いようのないやるせなさ、切なさが込み上げた。顔見知った女だから尚更だ。
夏海はあんなに幸せそうに暮らしているのに………
「……とにかく、君をその隠れ家まで送ろう」
「えっ……?」
「乗りかかった船だ。君を無事に帰さないと落ち着かない」
ナツミを一人、こんなところに残して行ったら男達の格好の餌食だ。それでは、助けた意味がない。
「安心したまえ。君を送り届けたら、僕は消えるから」
これからは捕まらないように気をつけたまえ?
いつもの、指鉄砲で狙いを定める仕種を見せる。
「…………」
ナツミはそう言う海東の、怪我を負った方の手を見た。シャツの切れ端は真っ赤に染まり、まだ血が流れている。
「て……あて……」
「…………?」
「ケガ……手当しないと………」
「怪我……?」
あぁ……と海東は自分の手を見つめる。
「このくらい、どうってことないよ」
「駄目っ!!」
海東の言葉に声を上げるナツミ。その勢いに目を見開いた海東だったが、ナツミ自身も驚いたようだった。
「あ………え……と………あの……助けてもらったのに……それに、泊まるとこだって……ない……でしょ……?」
「そこまで君が気にすることではないよ」
「でも…………」
ナツミは、放っておけないのか、納得いかないふうに俯いた。
「僕は大丈夫だから」
そう言うが、彼女はフルフルと首を振る。
「じゃあ……せめて……手当だけでも……させて……?」
どうしてもそう言うナツミ。
「……………………」
しかし、海東にそんな気はないが、また騙されているとしたら、どうするつもりなのだろうか。反対に心配になる。
まあ、自分から怪我をしてみせて啖呵をきった手前、そう思うのもおかしいのだが。
それに、違う世界から来た見知らぬ男が勝手にやったことだから放っておけばいいのに。
「いいから」
「駄目っ!!」
なんて頑固な娘だ。
やはり夏海なだけはある。
海東は諦めたように、小さく溜息をついた。
「わかった。じゃあ……手当だけ、頼もうかな……?」
ナツミが顔を上げて僅かに微笑む。初めて海東に見せた笑顔だった。
そしてナツミは、少しよろけながら立ち上がる。
「じゃあ、ついて来て……?あ……えと………」
戸惑いの表情を浮かべ言葉を詰まらせる。海東の名をまだ聞いてないから何と呼んで良いのかわからないのだ。
「あぁ、まだ自己紹介してなかったね。僕は海東大樹」
「かいとう……だいき……?」
「そう。よろしく」
「私……は……」
「光夏海……だろ?一年前に逢ってる」
「え……?」
海東の言葉に不思議そうな顔を見せるナツミ。
「覚えていないかい……?一年前、もう一人の君と逢ったことは覚えてる?その時、僕もいたんだ」
「……あ……!あの時の……!!」
「思いだした?じゃ……取り敢えず、ナツミ……で良い?」
こくんと頷く。
「じゃあ、行こうか。ナツミの隠れ家、教えてくれるかい?」
「ん……」
頷いて、ナツミはゆっくり歩きだす。一定の距離を取り、海東も歩きだした。