キモ姉&キモウト小説を書こう!Part14

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515名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 13:06:17 ID:aIV0f5mw
つ「良いバァちゃん」

ほら、これで十分だろ
516名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 21:01:16 ID:dVyiEpim
寒い・・・・、死ぬのか、俺は?
517名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 21:57:22 ID:3lJZmYiR
死ぬとか言うな!緒方拳が死んだばかりだぞ!結構ショックだ!いかりや長助以来だ!
518名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 22:09:46 ID:VZ6TFYoC
>>517まったく関係無いけどオズワルドそっくりだったよね
519名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 22:16:57 ID:3lJZmYiR
ん?どの辺が?ってか、そもそもオズワルドって誰?ケネディ暗殺した奴か?
520名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 23:42:50 ID:Zb00qKOZ
トランプ紳士じゃね?
521名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:26:17 ID:Faacd5wi
嫌なことぱっかりだな
522417:2008/10/08(水) 06:18:07 ID:yyKDAfrD
「お兄ちゃん、彼女が遊びに来たわよー」
「おーう、リビングまで連れてきてくれー」
「はーい」
「お邪魔……します」
「……おい」
「は、はい」
「わかってるわね」
「も、もちろんです……何度も復習しましたから」
「それくらい当たり前よ。むしろしていなかったらその小さな胸の乳首に画鋲を突き刺すところだわ。調子に乗らないで」
「……はい」
「お兄ちゃーん、連れてきたよ」
「お、ありがとう妹」
「こんにちわ」
「ああ。悪いな、いつも来てもらって」
「そんな、気にしないで」
「たまには迎えに行こうと思うんだけど……やっぱ、家に来られると嫌なのか?」
「え、ううん。むしろ来てほしいと思ってるけれど――」
「…………」
「やや、やっぱり、だめ!」
「あ、そうか。……まあ、女の子だもんな。男が来ると思うところもあるよな」
「……そんなこと、ない」
「え?」
「ほ、本当は私――」
「お兄ちゃん、画鋲知らない?」
「?!」
「え? いや、知らないけど」
「ふーん」
「あ、あの」
「ああ、ごめん。で、何だって」
「や、やっぱり、来ちゃダメ」
「そ、っか」
「うん。迷惑、だから。ごめんね」
「いや、いいんだ。……なんか湿っぽくなっちゃったな」
「ごめんね」
「いいって。それより俺の部屋に行こうか?」
「……今日は、DVD持ってきたから、ここで見ない?」
「オッケー」
「妹さんも、どうかな?」
「あら、私もいいんですか?」
「も、もちろんですよ。君もいいよね?」
「うーん、本当は二人っきりでいたいんだけど……ま、いいか」
「お兄ちゃん、二人っきりでエッチなことしようとしても、そうはいかないわよ」
「ばっ!! そんなんじゃないって!」
「どうかしら。いくらお母さんが今日いないって言っても家でそんなことされると私も迷惑なんだからね」
「わ、わかってるよ」
「あら、本当にする気だったの?」
「そんなわけないって。早くDVD見ようぜ」
「そ、そうですね」
「何持ってきてくれたの」
「……これなんですけど」
「おおー、今話題の奴じゃん」
「あら、本当。胸のおっきな子が出てるやつですよね?」
「そ、そうですね。でも、妹さんも大きいじゃないですか」
「そんなことないですよ。まだEカップですし」
「おまっ……兄のいる前でそういう話題を」
「ふふ、照れてるの、お兄ちゃん? なんだったら触ってみる?」
「は、はあ? 何言ってんだ。意味がわからん」
「かわいい」
「か、からかうなよ。まあ、胸の話はいいから、さっそく見ようぜ」
523417:2008/10/08(水) 06:19:57 ID:yyKDAfrD
「はい。……準備できましたよ」
「おし、じゃあ、再生するぞ」
「はい。……じゃあ、ここ座ってもいいですか」
「うん、もちろん。何だったら膝の上でも」
「それは……恥ずかしいので、隣にしますね」
「じゃあ、私は反対側にしようっと」
「ん、再生っと」
「……」
「……」
「……お兄ちゃん」
「……んー」
「お兄ちゃんって、胸の大きいこと小さい子、どっちがいいの?」
「はあ?!」
「大きな声出さないでよ。声が聞こえなくなっちゃうじゃない」
「あ、ああ、すまん」
「彼女さんも、気になりますよね?」
「え、ええ。そうですね」
「いや、俺は、そりゃあ……小さい子の方が」
「いっつも巨乳の子でオナニーしてるのに?」
「はあああ?!!!」
「えーっと……ええ!! そうなんですかあ!!」
「いやいやいやいや……何言ってんだ、妹。デタラメ言うんじゃない。そして空気を読め」
「うーん、でも、昨日私とセックスした時パイズリさせたでしょう? あれって、巨乳が好きってことじゃないの?」
「ちょ?!!!!! 待って、待ってくれ。……ちょっとDVD止めるぞ」
「えっと、次は……ひどい!! 君、妹さんとそんなことしてたんですかあ!?」
「いやいやいや、そんなわけないよ。妹が、今悪ふざけしてるんだ」
「あ……ごめん、内緒だったの?」
「お前、マジでそう言う冗談はやめてくれ。彼女が来てるんだから」
「あとは、……君のこと見損ないました!!」
「いや、待って。なんか展開急すぎない?」
「そんな貴方のことは、明日学校で皆に言いふらさなければなりません!!」
「はあ?!」
「というわけで、今日は帰ります!! ……で、合ってるかな?……うん、よし……でも!!私は貴方の彼女のままですから!! さよなら!!」
「ちょ、ちょっと!! 待って、誤解だって!! しかもなんか、おかしくない?! 妹! お前からも冗談でしたって言えよ!!」
「お兄ちゃん、私出掛けてくるから」
「お前!! 待てって、お前のせいでだな!!」
「じゃあね」
524417:2008/10/08(水) 06:20:29 ID:yyKDAfrD
という妄想が舞い降りた
525名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:15:49 ID:ZI8q3Ijd
規制解除きたああああああああああああ
これでレスしまくりもどかしい日々とおさらばktkr
526名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:18:01 ID:ZI8q3Ijd
誤爆です。失礼しました
527名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:42:29 ID:XgQNGiJ1
>>524
寧ろ彼女に萌える俺ガイル
528名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:51:33 ID:eAXY67MT
>>524
言わされてる感が丸出しじゃないかw
GJ!
529名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 19:02:28 ID:5vaUSLuo
Eカップの妹か・・・いいな
530名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 19:59:56 ID:3jPXUU2b
>>524
妹KOEEEEE!!!

だがそこがいい GJ
531名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 00:11:11 ID:T2sYqHiX
巨乳で鬼畜な妹にかなり萌えた
532 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:11:09 ID:SnefjSDy
初投稿します。ネットの技術的なことに疎いので不手際があるかもしれませんが、その都度教えてもらえるとありがたいです。
533『転生恋生』序幕 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:12:11 ID:SnefjSDy
 昔々あるところに、人と鬼の間に生まれた娘がいた。
 娘は人並み外れて美しく、膂力に勝っていたが、気が優しく人を傷つけるようなことは一切しなかった。
 それでも村人は人外の娘を恐れ、娘が長じると村八分にして、村から追い出してしまった。
 追い出された娘は村外れの大きな川にある中州に小屋を建てて住みついた。いつしかその中州は「鬼が島」と呼ばれ、恐れられて人が寄りつかなくなった。
 ある日、一人の若い侍が村を訪れた。侍は人語を解する猿・雉・犬を家来に連れており、自らの武勇を誇る機会を探して旅をしていた。
 村人は侍に鬼が島の鬼を退治してくれるよう頼んだ。二つ返事で引き受けた侍は意気揚揚と鬼が島へ乗り込んだが、出てきたのは恐ろしい鬼どころか、美しく気立ての優しい娘だった。
 拍子抜けした侍は娘の身の上話を聞いて同情し、退治する気をなくしてしまった。そして三匹の家来が諌めるのも聞かず、娘の小屋に住み着いて夫婦になった。
 主に裏切られたと憤慨した家来たちは村人に、「侍が鬼に誑かされて村を焼き打ちするつもりでいる」と虚言を吹き込んだ。
 そうとは知らない侍は、何とか村人に娘のことを受け入れてもらおうと考えるようになった。危ぶむ娘が止めるのも聞かず、侍は一月ぶりに村へ向かった。
 その夜、村人が大挙して鬼が島に押し寄せた。驚いた娘が小屋を出ると、足元に何かが放り投げられた。それは侍の首だった。
 半狂乱になって首を抱きしめた娘に、村人の放った矢が夥しく刺さった。そして油がかけられ、火がつけられた。
 炎に包まれながら、娘は侍に詫びていた。

 私に情けをかけたせいで命を落とすことになってごめんなさい。次に生まれてきたときは、必ず私があなたを守り、二人で幸せになりましょう。

 末期の願いが天に通じたのか、娘と侍の魂は千年の時を経て同じ国に転生した。しかしながら、二つばかり問題が生じた。
 一つは、娘は前世の記憶を持っていたのに侍の方は忘れていたこと。
 もう一つは、二人が姉弟として生まれたということだった。
534『転生恋生』第一幕1/5 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:15:28 ID:SnefjSDy
 目覚まし時計の音で目が覚めた。
 反射的にボタンを押さえて音を消すと、「あと5分……」とつぶやきながらベッドの中でまどろむ。
 まあ、これが平均的男子高校生だろうと思う。俺は凡人だから毎朝これを繰り返している。
 だが普通の人と違うのは、きっちり5分を超えると怪物が起こしに来るということだ。
 わかっていたはずなのに、昨夜ゲームで夜更かししたのが祟って、俺は5分を過ぎても布団から出られなかった。
 目覚まし時計が鳴ってからちょうど5分後、勢いよく俺の部屋のドアが開けられた。すぐに影が俺の真上におおいかぶさる。
「おっはよーっ! たろーちゃん、朝だよーっ!」
 衝撃でうめき声をあげながら、俺はもそもそとベッドから這い出る。
 寝ぼけ眼に映るのは、やや癖のある黒髪を背中まで流している若い女。
 俺の姉貴だ。身内の眼から見ても器量よしで、スタイルもいい。
 とはいえ美人は三日で飽きるという言葉があるくらいだから、かれこれ十数年も一緒に暮らしている俺は免疫ができている。なんとも思わない。
「おは…よ。……つーか、離れろ」
 一応朝の挨拶をしながらも、俺は抱きつこうとする姉貴を引き剥がそうとする。高校生にもなって、過剰なスキンシップは恥ずかしいし、うっとうしい。
「んー、たろーちゃんはあったかいなー」
 ……聞いちゃいねぇ。
「離れろってんだろ!」
 姉貴の顔を手で押しのけて離そうとするが、凄い力で俺を抱きしめていてびくともしない。姉貴は女とは思えないほど腕力が強いからだ。毎年身体測定で背筋力と握力の計測器を壊している。
「……頼む。お願いします。離して下さい」
 こうなると俺は下手に出てしまう。我ながら情けないが、しかたがない。
535『転生恋生』第一幕2/5 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:16:32 ID:SnefjSDy
 体格も容姿も成績も運動神経も、ありとあらゆる要素が平均値でできている俺の、ただ一つ特異な点がこの姉貴だ。
 同じ両親から生まれたとは思えないほど容姿端麗、文武両道な女子高生でありながら、レベルMAXに達した怪力ブラコン女なのだ。
 おまけに、前世で自分たちは恋人同士だったなどと真昼間から公言する電波女でもある。俺以外の人間に対してはその話をしないのが救いだが、対象である俺としては相当に辛い。
 実際、中学二年で俺が精通を迎えてからは、入浴中や就寝中に姉貴が乱入してきて、貞操の危機に瀕したことが一度や二度ではない。
 というより、姉貴がブルーデイである日を除いて、常に俺は性的暴行一歩手前の仕打ちを受けている。
 なにせ人間離れした怪力だから、本気で襲ってきたら洒落にならない。
 ……今もうっとりした顔で俺のトランクスの中に手を入れようとしていやがるし。
「いいかげんにしろっ! DVで警察呼ぶぞ! おふくろーっ、助けろーっ!」
 俺が母親に助けを求めようとしたので、姉貴はしぶしぶながら俺を解放した。「初めてはたろーちゃんから求めてほしい」という乙女らしい願望を捨てきれていない姉貴は、いつも最後の一線を自分から越えることはかろうじて自制している。
 これでも俺を誘惑しているつもりらしいが、俺としては本気でうざい。とりあえず姉貴を部屋から追い出して、手早く着替える。今は春休みだから、私服だ。
536『転生恋生』第一幕3/5 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:20:22 ID:SnefjSDy
 傍から見ると美人の姉にスキンシップをされるのは羨ましい境遇ということになるらしいが、俺は姉貴に全く劣情を催さない。小さいときから一緒に育ってきた慣れがあるというのも理由だが、決定的な転機があった。
 あれは自慰を覚えて最初の夏だった。俺がなけなしの勇気を出して、隣町のコンビニで、客がいない時間帯、それもわざわざ中年のオヤジがレジに立っている時を選ぶという細心の注意で人生初のエロ本を買った。
 家に帰って、部屋でじっくり堪能した後、俺はそのエロ本をベッドの下に隠して、風呂へ入って思いっきり抜いた。平均的中学生としてはちょっとした冒険を達成したという満足感と、これからはオカズが常備してあるという余裕を味わっていた。
 だが、翌朝には隠したはずのエロ本が消失していた。代わりにあったのはミニアルバムで、中には姉貴のヘアヌード写真がびっちり貼り付けてあった。自分で撮ったらしい。
 実の姉がそんなことをするのもショックだったが、初めて見る女性器は中学生にはグロ過ぎた。興奮するどころかトラウマになってしまった。
 それ以来、俺は姉貴がキモくてしかたがない。

 朝食の席で、姉貴がにこにこしながら話しかけてきた。
「ねぇ、たろーちゃん。今日はデートしてくれる約束だよね? 忘れてないよね?」
「……買物に付き合う約束はした」
 俺はきっちり訂正する。どうしても欲しいソフトを買うために、先だって姉貴から借金をした。その代償として約束させられたのだ。あくまでも「買物」であって「デート」ではないと理解しているが。
 もっとも姉貴は既に電波時空に入り込んでいる。これも一つの心神喪失状態だろうか。だとすると俺に犯罪行為をしても責任が問えないから困るな。
「映画みてー、買物してー、お食事してー、最後はホテルでお泊りしよーねー。あ、お母さん、夕食はいらないから」
「馬鹿なこと言ってんじゃないよ、この子はっ!」
 お袋がお盆で姉貴の頭を叩く。まるで容赦がないが、やたら頑丈にできているらしい姉貴はびくともしない。
 ため息をつきながら俺は朝食を終える。
537名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 02:22:21 ID:Kj2K/qlT
支援
538『転生恋生』第一幕4/5 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:26:39 ID:SnefjSDy
 結局お泊りこそ断念させたものの、俺は姉弟相姦ものの映画と、カップル向きのカフェでのラブラブランチ2人前用と、ランジェリーショップでの買物に付き合わされて春休み最後の1日を終えることになった。
 特に最後のはきつかった。他の女性客にじろじろ見られて、羞恥プレイもいいところだった。
 その帰り道、俺と姉貴はチンピラ3人にからまれた。俺は平均的男子高校生としてケンカ慣れしていない上に姉の買物の荷物持ちで手が塞がっていたが、まるで慌てる必要はなかった。
 むしろ、相手のことを心配しなければならなかった。「見せつけてくれるじゃねーか」「金を貸せ」「ちょっと付き合え」といった定番の台詞を口にする連中に、俺は紳士的に忠告した。
「俺たちは姉弟で、あんたらに貸す金は持っていなくて、もう家に帰らないといけないんだ。構わないでくれないかな、怪我してほしくないから」
 俺の言葉はチンピラ3人組に届かなかった。連中はゲラゲラと下品に笑い、そのうちの1人が殴りかかってきた。……はい、入院確定。
 姉貴の手が脇から伸びて、俺の顔面に到達するはずだった拳を掴み取った。俺を殴ろうとした男は予想外のことに驚いたが、すぐに顔色が変わる。
「うふふ、正当防衛成立ね」
 位置的に俺からは見えなかったが、姉貴は酷薄な笑いを浮かべていたに違いないと思う。チンピラたちの表情が恐怖に歪んだ。
 まず、姉貴は1人目の拳を握り潰した。皮膚から細い骨が飛び出して血まみれになっているのが見える。俺を殴ろうとした男は聴くに堪えない悲鳴をあげてのたうち回る。
「てっ、てめぇぇっっ!」
 よせばいいのに、2人目が姉貴に掴みかかろうとした。が、それより早く姉貴のボディブローが炸裂し、相手の男は5メートルほど後方に吹っ飛んだ。
 体を「く」の字に曲げて倒れ、泡を吹いて痙攣を起こしている。肋骨が砕けて、内臓も破裂していると見た。
「ひっ……」
 3人目は戦意を喪失しているのが明らかだったが、走って逃げればいいものを立ちすくんで動けないようだ。
「キミはこれで勘弁してあげる」
 姉貴はその男の鼻先にデコピンを食らわした。男は両手で鼻を押さえてもんどりうった。おそらく鼻骨骨折だろう。
539『転生恋生』第一幕5/5 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:30:56 ID:SnefjSDy
 俺にはこの結果が見えていた。 
 過去にも、俺がチンピラや野良犬に遭遇する度に、どこからともなく姉貴が駆けつけて、相手を武力鎮圧した。俺に危害を加える者は、姉貴にとって存在自体を許すべからざる大罪人だ。
 まして二人でいるときなら尚更だ。俺と一緒に過ごす時間を邪魔する罪は常に倍して重い。
 全員を一撃で倒した姉貴は、満足そうに振り返る。
「それじゃあ、帰ろっか」
 さわやかに言う姉貴を俺は止めた。
「駄目だろ、救急車呼ばないと。正当防衛ったって、瀕死の怪我人放っておいたら、何かの罪になるんじゃないのか?」
「えー? これは害獣駆除だよぅ」
 可愛らしく拗ねて見せるのがかえって怖い。
「俺は姉貴に逮捕歴がつくのが心配なんだ」
「……そっか。たろーちゃんは私のことを心配してくれるんだね。愛されてるなぁ、私。
やっぱり私たちは前世から変わらぬ愛を誓って結ばれている運命的恋人だから、きっとたろーちゃんも普段は素直じゃないけど本当は私とラブラブファックしたいのよね。
それなのにあえて嫌がるそぶりをするなんて、それなんて焦らしプレイ? 
でもやっぱり最初は男の人から求めてほしいと思うのが可憐な女心ってものだし、そんなこと考えて我慢する私ったら、なんていじらしい……」
「いいから、電話しろ」

 救急車と一緒に警察も来た。1人につき1回しか手を出していないということで正当防衛は認められたが、俺は買物に加えて警察への説明で、心身ともに疲れた。
 明日から新学期だ。平和に過ごせますように。姉貴が学校で恥ずかしいことをしませんように。とりあえず今晩はぐっすり安眠したいので、姉貴が夜這いをかけてきませんように。
 
 そんなことを思いながら眠りに落ちた。

   
540 ◆U4keKIluqE :2008/10/09(木) 02:34:17 ID:SnefjSDy
今回はこれで終了です。姉と弟の名前はちゃんと考えていますがフルネームは次回で。
あと第二幕からお邪魔キャラが登場します。
といっても、次回投稿がいつになるかわかりませんが。
541名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 02:35:38 ID:B0mWilNj
>>540
お疲れ様GJっす。
wktkしながら待ってますよ〜
542名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 03:02:07 ID:oCHKxOi4
>>540
GJ!
これは期待
543名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 03:03:30 ID:VhJZ2x7h
猿・雉・犬がお邪魔キャラなんですね。わかります。
ディ・モールトGJです。
544名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 09:40:01 ID:1yE/uVw9
犬っ娘はどんな娘か大体想像出来るし、勿論大好物なんだが
猿っ娘と雉っ娘か・・・楽しみだ。
GJ!!
545名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 11:27:18 ID:c2xEfUbM
主が誑かされてると思った家来達が主を捜して転生するんですか・・・
546名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 12:51:52 ID:abC3qI+K
>>540 GJ!!
家来たちもヤンデレなのですね?わかります。
547名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 14:52:03 ID:SOf0GIuZ
>>540
設定が素晴らしいな。GJ
548名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 19:02:53 ID:WxT30C7n
素晴らしいの一言。
GJに尽きる
549名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 23:29:29 ID:MHY4TTv7
>>540
GJ!

俺が服を着る日その日まで全裸待機
550名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 00:05:51 ID:a0WGCgz0
>>540

クオリティ−高いね
読みやすいし
次の投下期待してるよ
551名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 00:07:49 ID:wr4QM4ku
>>540
GJ!
おもしろいよ!すごくwktk
552姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:21:56 ID:2Dwk/jD3
覚えている人がいることを願って、四話を投下
553姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:30:19 ID:2Dwk/jD3
 宗佑が春香を連れて家に戻ると、丁度母親がどこかに出かけようとしているところだった。
 何か言われるだろうなと身構えていたが、母親はそれどころではないとばかりに足早に出て、家には明日まで戻らないと書置きを残していった。
 とりあえず宗佑は、春香を応接間へと通してソファーに腰掛けさせた。使用人を呼びつけて、紅茶を持ってくるように頼む。
その時後ろから大きな声でダージリンがいいと言ってきたので反射的に睨んだ。
 園子にどう説明しよう。
 まさかかつての体の関係をもった友人だなどというわけにはいかないし、女の友達が訪ねてきたというのも、
本当のことではあるが春香がひとりということもあって変に誤解されそうだ。
 それに仮に何かうまい嘘をつけたとしても、春香という破天荒な少女は、簡単にそんなものを壊してしまうような気がしてならないのだ。
 そんな宗佑を見越したのか、春香が足をパタパタとさせながらやたらと嬉しそうに言ってきた。
「よければ、家出少女でも演じましょうか」
 またこいつは何を、と思って言い返すが、案外それは天啓な閃きかもしれない。
 春香との関係に嘘をつくのではなく、春香という少女そのものを嘘にしてしまうということだ。
 当然、過去も語らなくていいだろう。
「よし、それでいくぞ」
 宗佑は賛成し、胸をなでおろして無意識に指をこする。
 けれども、円型のガラステーブルに肘をついた春香は、まだにやにやしながら目を細めて彼を解放しようとしなかった。
「でもそのかわり、ひとつだけお願い聞いてもらいますよ」
「何?」
「ほら、姿見の天秤でも言ってたでしょう。願いを叶えたいなら代わりのものを差し出せって」
「何言ってる。元はと言えば、お前が勝手に来たのがいけないんだぞ」
「でも私たちの関係を言われたくないんでしょう? だから私がここにいる。一度、同じことをしたんだから、二度も三度も同じですよ」
「……何をしたらいいんだ」
「それは後のお楽しみってことで」
 そう言うと、ソファーにどっかりと腰を下ろし、丁度使用人が持ってきた紅茶をひったくって飲み始めた。
 宗佑は何か言ってやろうかと思ったが、ここで彼女の機嫌を損ねては色々とまずいと思い、そのままにした。
 対面する位置に、宗佑も座る。
 すると、ここにきてくださいと、自分の隣の位置をバンバンと叩いて春香が呼ぶので、躊躇いながらも彼女の横まで移動した。
「おい、家出少女になるんじゃなかったのか」
「なってますよ。なってるから、こうしてお兄さんに縋っているんじゃないですか」
 春香は宗佑の腕をとって絡める。猫のように甘えてくるそれは、むしろ嘲笑しているように思えた。
554姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:32:33 ID:2Dwk/jD3
「……今はやめろ」
「今? 今じゃなければもっとしてもいいですか」
「何を言ってる、ふざけるな」
「――奥さん……妹さんに見られるのは嫌ですか?」
 唇の端を曲げたまま、春香は確認するように話した。目は笑っていないのが、宗佑の淡い怒りを動揺へと変えていく。
 宗佑と園子が兄妹だということを、春香は知っていた。
 話したのは宗佑だったが、妹が妻になる、ということまで聞き出したのは春香だった。
 初めに聞いた時、春香は笑い転げた。
 ホテルのベッドでいつものように宗佑と情事に耽っている時も、そのことを思い出しては吹き出したし、
はてた時もこういう風に妹ともするのだろうかと考えては声を出して笑った。
 しかし、宗佑が姿見村に帰ると言い出した時、彼女はこれが漫画のような作り話ではないのだとわかった。漫画なら終幕の続きなど、あるはずない。
 それから春香は、宗佑になぜ結婚するのか、と聞いてみた。園子のことが、妹のことがそんなに好きなのかと。
 けれど、彼はただそう言う風に決まっているからそうすると答えただけだった。
 園子というのはどんな人だ、と質問を変えても、それ以上は話さなかった。
 ある日、しつこいぐらいに聞いていたので宗佑もさすがに嫌になったのかぽつりと漏らした言葉がある。
「園子は普通の子だ。ちょっと不思議な感じがする、でも普通の子」
 自嘲するような笑みがそれだけ親近感を感じさせた。
 それを聞いて、春香は思った。
 けれど、貴方は姿見村という普通ではない村から来たのでしょう、と。
 それから春香は変わった。
 宗佑の口から妹という言葉が出るだけで頭にもやもやとした嫉妬が広がり、腹が立つようになった。
 宗佑が園子のことを言うことは少なかったが、妹、という俗称としては偶に口にすることがあったから、春香はそれにいつも白い目を向けた。
 まるでそれは、宗佑自身が園子であるとでもいうような視線だった。
 しばらくすると、園子がスリッパをはいているくせに物音をたてずに応接間へやってきた。
「帰ってたの」
「ああ、今帰ったばかりだが。あいつはどこにいったんだ」
「あいつ?」
「母親だよ」
「もう、またそんな言い方して。お母さんなら村長さんの所にいったわ」
「……またか」
 宗佑が憎々しげにつぶやく。
555姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:33:09 ID:2Dwk/jD3
 園子は春香を視界に収めると、あら、とよくわからないような声をあげる。
 それから、使用人に私が買ったケーキがあるからそれを持ってきてもらえないかしら、と頼んだ。
 彼女は部屋着のため、簡単なシャツとジーンズしか来ていなかったが、それでも彼女の美しさに春香は目を奪われた。
 暴力的な美しさだと、園子を見たものは口をそろえて言う。
 それはスタイルがいいとか、芸能人顔負けのルックスとか、そういったことではない。
 例えるならば、台風の周囲は暴風雨なのに目の中だけは澄んだ天気だというような、俗世を離れたような魅了。
そこにいるだけでこの空間に園子は確かに存在していると感じさせる。
 片腕がだらりと垂れているというのに、なぜそれすらも一部のように見えるのか。
 春香はばつが悪そうに視線をそらした。
 宗佑は園子に、この女の子が散歩の途中で地面に蹲ったままだったので、どうしたのかと尋ねると事情があって家を離れたというのを聞いた、と話した。
 すると朝の電話の人じゃないかと園子が聞いてきたので、一瞬春香に視線をやったが、彼女は下を向いていて疎通を図ることはできない。
「電話のこと、知ってたのか」
 そのためか的外れなことを今度は逆に聞いてしまう。
 園子はその様子を見て何かしらの感情を浮かべたようだったが、僅かに笑った以外は何も言ってこなかった。
 どうしようか。宗佑が考えていると横から、
「そう言えば、電話したんだった」
 と急に顔をあげた春香がそういった。
「私、五十嵐春香って言います。たまたまこの辺りに旅行に来たので、お兄さんの顔でも見ておこうかと思いまして」
 園子が怪訝な顔をして重ねる。
「旅行……この辺りに?」
「ええ、田舎巡りが趣味なんです。おかしいですか?」
「そう言うわけではないけれど……」
 明らかにおかしいことに気づいている園子にはかまわず春香は続ける。まるで園子にはあまりしゃべらせたくはないとでも言うように。
 園子は一度、宗佑を見た。
 この機関銃のようにしゃべっている少女を止めていいのか、それともあえてしゃべらせておいてほしいのか判断がつかなかったからだ。
 しかし宗佑は、顔を見ることで感情を悟られたくないとでも思ったのか、わざとらしく紅茶を飲むフリをした。
飲んだ紅茶が春香の飲んだものだったことにも気づいていない。
「あなたのお友達ってことでいいのかしら」
 だから、何となくこうした方がいいような気がして園子はそういった。
「ああ」
 宗佑も慌てて了承する。が、春香はまだ、園子さんは何歳なんですか、とかどうして今日は家にいたんですか、とか狂ったように園子に問いかけている。
 園子は勿論、多すぎる質問に答えきれてはおらず、どうしたものかしらと困ったように首を傾げるだけだったが、
この異常ともいえる春香の言及に宗佑は何かしようとはしなかった。
「かわいいこね。歓迎するわ」
 やっと、そう言えたのは春香がしゃべり出してから二時間も後のことだった。

556姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:34:02 ID:2Dwk/jD3
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 同じ日の夜、八時を回った後に園子が寝室で本を読んでいると、宗佑がのっそりと熊のように不格好ながらも音を立てずにやってきた。
「何読んでるんだ」
 園子は背表紙だけを示すことで、宗佑にタイトルを教える。
 が、宗佑はその動きに歯噛みして、顔をゆがめた。
「どうしたの」
「いや、別に」
「何をおどおどしているのよ。ここは貴方の寝室でもあるでしょう?」
「ああ。まあ」
 話しながら、園子は本を読むのをやめる。
 宗佑はそうしてほしいのだろうと感じたからだったが、当の本人は園子の小さな動きすら見ておらず、ベッドの脇にある窓に直進するように歩いた。
 宗佑はただ闇に染まりつつあるような外の風景を見つめている。言わずも、風景など頭には入っていないことは明白だった。
 園子は左腕を抱えるようにしながら、宗佑の背中を眺める。
 きっとあの中には私に対する何かで埋まっているのだろう。
「園子、怒ってるか」
 そう宗佑が口にしたとき、すでに園子は再び本を読み始めていた。
 しかし、夫が話し始めたのを認めるとゆっくりと本を閉じて脇のサイドテーブルに置いた。
「怒る?」
 よく意味が分からず問い返す。
「いや……女の子をいきなり連れてきたこととか、嘘ついたこととか」
 それを聞いて、やっと何を言いたいのか察知した彼女は、宗佑とは対照的に虚空を見つめるようにしながら、けれどその虚空をはっきりと意識しながら答えた。
「何も思わないかって言われれば、うんとは言えないけど……でも、どちらも、私に変に思われないためでしょう?」
「よく、わかるな」
 園子はそれには答えずに続ける。
「春香さんは客室でよかったの」
「それ以外にどこがいいって言うんだ。まさか俺たちと一緒ってわけにはいかないだろ」
「そういうことじゃなくて」
 言いよどんだ園子に宗佑は近づいて隣に腰をおろしたが、苦笑いをしている彼女が何を考えているかわからなくて、さっきまで園子が読んでいた本を見た。
 オレンジ調で、二十代三十代が好みそうな女性作家が書いたものだ。
 宗佑はこの手の文芸書はあまり読まないが――どの本も同じような内容にしか見えないから――今日ばかりは手にとってパラパラとページをめくった。
 唯川か。相変わらず、同じ作家の本ばかり読んでいる。
 園子はあまり多種多様なジャンルの本を読むことはなく、同じような女性作家が書いたものばかり読んでいるのだが、
宗佑からしたらそこが園子のイメージがはっきりしない原因の一つだ。
「春香さん、何日ぐらいご滞在するの? 旅行って言っていたからにはすぐに帰るというわけではないんでしょう?」
「いや、すぐに帰す」
「どうして?」
「……園子だって、嫌だろう? 年頃の女が家に泊まりに来るというのは」
「そうかしら」
 園子が首をかしげて言う。
 気がつくと手に持っていた本が取られ、本棚に戻されようとしていた。
 宗佑はもう寝るのかと、と聞く。
 しかし園子は首だけ振って、部屋の扉に手をかけた。
 不格好な腕を抱えた姿は、それでもよほど様になっていて、宗佑に何も言わないことを許さないほどだった。
「どこへいくんだ」
 それでやはり後悔する。言ってから、自分は、何を別れを告げられた男のようなことを言っているのだと思ったからだ。
「やだ。お手洗いよ」
 園子が部屋からいなくなる。
 ただそれだけなのにどうしてこんなにも申し訳なく思うのか。
 宗佑にはわからないのだった。
557姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:34:52 ID:2Dwk/jD3
 園子がトイレから戻ると、待っていたかのように応接間の前で佇む春香がいた。
 暗闇のせいで幽鬼みたいに見える。
 事実、扉にもたれかかって腕をだらりと垂らす姿は子供っぽいとか大人っぽいとかいう前に、なんだか人間らしさがなく、不安感を誘った。
 園子は、声をかけるべきかどうか迷う。
 それはつまり、そのまま通り過ぎることも視野に入れた、というのではない。
 声をかけてくるまで待っていてあげる方がよいか、それとも私から何か気遣ってあげた方がよいか、という意味だ。
「園子さんもお兄さんと寝たことがあるんですか」
 奇妙にゆっくりとした言葉が園子に向って投げられた。
 下を向いたままそう言われたので一瞬誰に話しかけているのかどうかわからなくて、沈黙が漂った。
 春香はどうも、幼いくせにそのイメージが遅れてくる。
 そのせいで、どう対処していいか園子にはわかりづらいのだ。
 ただ、そこに園子がいないはずはないという確信したしゃべり方は一層この子も姿見村に来るべくしてきたように思わせる。
 も、というのは、春香自身がすでに兄と寝ているとでも牽制、いや先制したつもりだろう。
 園子は言葉に逆らわないように言ってあげた。
「春香さんは、宗佑と寝たことがあるの」
「ええ、ありますよ」
 即答してくる声は、園子に私を責めているのだなと感じさせる。
 不思議と、宗佑に対する怒りはなかった。皆無と言ってもいい。
 寝た、というのは宗佑が姿見村を一度出た時のことだろうから、そのくらいのことはしていてもおかしくはないし、
それに性欲のはけ口として何もしていなかった、と嘘を言われるよりははるかにましだ。
 加えて言うならば、園子は春香よりももっと幼いころから兄と性交をしてきた。
 その兄が、他の女で自慰をしたとして、何を思うことがあろう。
 別に回数の多さを盾にするつもりはないが、そういうこともあって、春香の言っていることには何の感慨も園子には浮かばないのだ。
「そう」
「たぶん、あなたよりも多く」
 しかし春香はできるだけ園子に不快感を与えるようにと口を開く。
 踏ん張ってくる春香。
558姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:37:56 ID:2Dwk/jD3
 園子には可愛らしいとすら思えた。
 必死で宗佑との性交の回数を自慢してくる彼女は、なんだかとても女らしくて、なんだか私にはない感情を芽生えさせる。
 新しい玩具のようだ。
 ここで、私、小学生のころから兄とセックスしてるわよ、といってあげると彼女はどんな顔をするのだろう。
「……」
 それが園子にとって稀にみる嫉妬という感情だった。
 ただ少し、女という性別が生んだものとは違う気がする。例えるならば、高い買い物をした他人に自慢されたような感情だ。
「ねえ、園子さん。お兄さんを私に下さいよ」
 だから、ここで自分が腹を立てるのは何もおかしいことではない。
 春香は応接間の扉から離れ、ぺたりぺたりと歩いてくる。そして園子の前まで来て、にやりと笑った。
「何言ってるの」
「お兄さんは私の大事な人なんです。あの人がいたから私は生きてるんです」
「どういうことかわからないわ」
「わかりませんか? あなたなんかに宗佑さんは渡さないって言ってるんですよ」
 それは春香の挑戦と言っても差支えなかった。
 が、やはり園子には彼女がかわいそうに思えてならない。
 宗佑を信じている彼女。可愛らしく、盲目に、これ以上ないほど。
 結果が分かっている恋など、この子はするべきではないのに。
 園子はそう思って春香に応えた。
「……でも、貴方は他人だわ」
「他人?」
「家族じゃないでしょう?」
 そこで園子は気づいた。今や、初めに見た、狂ったような感情は春香から消え失せている。
 園子は気味が悪いと思うほどに自分というものが高揚しているのに気づいた。変化があったというのならば、まさに今訪れているこれはそうだろう。
 周囲から誰かが自分をうかがっているような気にさえなる。うかがっている誰かは、間違いなく園子自身だ。
「兄妹で結婚するのがおかしくないっていうんですか」
 春香が震えている。
「そうじゃなくって」
 そうじゃなくて。
559姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:38:44 ID:2Dwk/jD3
 本当にそうではないのだ。
 仮に宗佑が兄ではないとしても、何も変わりはしない。
 園子は、微笑むようにして見返した。
「私はあの人の妻だもの」
 いつの間にか、春香は今すぐにこの場から逃げ出したい気分になっている。
 すべてを放り出して、宗佑を連れて逃げ、昔よくいったホテルにいってセックスをする。
 それをしたいのに、今の目の前の女は叶えてさえくれない。
 いや、叶ったとしてもそれ自体に意味はなく、結局は園子の傍に宗佑は帰ってしまうに決まっているのだ。
 園子は、それもすべて承知のようにまだ笑っている。
「まだ結婚していないんだから、あなたは妹よ」
 春香の口からかろうじて出たのは、彼女自身の希望だったが、効き目はちぎれそうな輪ゴムのように脆かった。
 園子は感想だけを率直に言う。
「面白い人ね。春香さんって」
「……なんですって」
「ごめんなさい。馬鹿にしているわけじゃないの。でも、こんな感情初めてで……これでお母さんの期待にも答えられるかしら」
「意味分かんない」
「こう言えばいいのかしら」
 春香はそこで初めて、園子をおかしいと感じる。
「私が、あの人の妻だもの」
 嫉妬と感情がないわけではなく。
 つまり、園子は確信しているのだった。
 あの兄が私から離れるはずがない。私以外の女の所に行きつくわけがない、と。
 自分の持ち物だとわかっているものに、どうして嫉妬という感情が湧くだろう。

560姿見村 ◆DS40EWmSfc :2008/10/10(金) 01:40:02 ID:2Dwk/jD3
投下終了
561名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 01:40:39 ID:IC+ORSxw
期待してる
プレッシャーかけてるわけじゃないから
562名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 02:05:05 ID:KWPKsbim
クオリティ高いな。ハードカバーの小説みたいだGJ
それにしても、なぜか妹が言葉様のように感じてしまう・・・
563名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 07:39:40 ID:m/UHRph0
>>560よしきた。久しぶりだけどやっぱり読みごたえあるよねこれ。次も楽しみにしてます
564名無しさん@ピンキー
>>560
世界観に引きずり込まれるぜ…
GJです!
この重い文体が好き