男装少女萌え【10】

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12小ネタのつもりが長くなったよ
 私は故あって男装して生活をしている。
 生まれてから五年は、ごく普通の少女として生活してきた。
 だが、六歳の誕生日を迎えたある日……とある事件が置き、それ以来、私は
ずっと男として生活をしてきた。
 よって、少女らしい格好というものをした事が、十八になるこの歳まで、一切ない。
「むぅ……」
 このままでは、私の女としての感性が磨耗し、消滅してしまうのではないか。
……などという事を私自身は思いもしない。私は私だ。例えこの胸を
さらしで押さえつけ、ズボンを履き、学ランを着こんで生活していようとも、
私自身、私が女である事を疑ったりしたことは無い。
 あくまで男として生活してはいるが、自分自身が女であるという自覚はあるし、
性格も、多少男っぽくなってるかもしれないが、別に許容範囲だと思っている。
 だが、余計なお世話というのを焼きたがる人というのは、世の中どこにでも
存在しているわけで……。
「……どうしろというのだ、これを」
 フリル付きのロリータ趣味の下着。上下セット。
 デフォルメされたクマのワンポイントが入った下着。上下セット。
 黒のレースで、身体を覆う布地が極端に少ない下着。上下セット。
 紐。
「……最後のは何かの冗談、か?」
 いや、恐らくは違うだろう。あの人はいつだって本気だ。本気と書いてマジと読む。
そういう人だ。……そんな事を思いながら、私は紐を下着代わりに身につけた
自分を一瞬想像してしまい、私は思わず顔を赤らめた。
「付けろ、という事なのだろうな……」
 あの人……伯母の凄みのある笑顔が脳裏に浮かぶ。つけなければ、
無理やりにでも付けさせられるだろう。そして、その姿を写真に撮られるだろう。
そして撮られた写真は彼女のコレクションに……ああ、想像するだに恐ろしい!
「……どれか一つでもつければ、勘弁してもらえるだろうか?」
 だといいのだが……。
 流石に、紐だけは無理だ。人としての理性がそれを拒む。
 となると、残るは三つ。
「フリル付き……」
 これは、流石に自分には合わない気がする。
 胸の無さはともかく……ともかくっ! それなりに背が高い自分には、
こういった全体的に可愛い感じの物は似合わないだろう。
 可愛いものはそれなりに……結構……いや、大がつく程に好きだが、
自分自身がそういった可愛さを持っているかどうかくらいは理解している。
「黒のレース……」
 着れば、それなりに様にはなるだろう。だが、だがっ……! 胸にあててみると、
明らかに隙間が空いている。隙間風が吹き抜ける事が可能なくらいに。
 伯母よ、何故このサイズなのだっ! しかもこれだけっ!
「あ」
 ……一緒にパットが入ってる。
 ………………。
 ………………………………。
 却下。……負けない……私は、負けないっ!
「クマのワンポイント……」
 となると……残るはコレしかない。
 というか、実を言うと、もう最初からコレに決めていた。何故かというと……
「……かわいい」
 可愛かったからだ。
 ……悪いか。
 フリル程、全体が可愛さを強調しているわけではない。それでいて、私の女としての
感性に訴えかける程度の可愛さを持ち合わせている。まさに調和の取れたデザイン……!
 下着の形そのものが、簡素なスポーツタイプなのも、気に入ったポイントの一つだ。
「よし、これに決めた!」
 私は今、さらしを解くと、クマさんパンツを手に取りいそいそと履き始めた。
 その時だった。
「おーい、返事ないけどいないの」
 ガラリと扉を開け、奴が入ってきたのは。
13小ネタのつもりが長くなったよ:2008/09/04(木) 00:46:59 ID:gTzkV30l
「………………」
「………………」
 不幸中の幸い、私は既に下は履き終えていた。
 不幸中の不幸、私は上をつけていなかった。
 そんな状況の中、奴は妙に冷静に口を開いた。
「……なあ」
「な、なんだ?」
「お前にクマさんパンツはどうかと思うんだが」
 次の瞬間、私の頭には一瞬で血が上り、上半身裸である事を忘れ、
「死ねぇぇぇぇええええぇぇえええぇえぇぇええ!!!!」
「ぐげぇぇぇつ!?」
 乾坤一擲の一撃を、奴のテンプルに叩き込んでいた。

「……しかし、いきなり殴るか、ふつー」
「お前がいきなり入ってくるからだ!」
 奴の右即頭部にアイスノンをあてながら、私は顔を赤くした。
 ちなみに、服は既に着ている。普段の学ラン姿だ。……下は例のクマさんのままだったが。
 こいつには、色々あって、既に私が女であるという事はばれている。
 ……というか、寮で同室になって、丸一年それに気づかなかったという
稀有な存在だったりするのだが。二年の頭に、私が女である事を知り、
それでもこいつは変わらず接してくれる。それが私にはありがたくもあり、
複雑でもあった。……一応、女としての自覚はあるからな。
 だが、こいつとの三年弱の付き合いの中で、先ほどのように肌を晒した事は、
今まで一度たりとてなかった……ああ、思い出すだけで恥ずかしいっ!
「ちゃんと声はかけたんだがなぁ……何かに夢中になってて気づかなかった、とか?」
「ぐっ……」
 ……なるほど、そういう事か。私がどの下着を身につけようか思案し、
集中していた時に声をかけていた、という事か。
「……なんか、それっぽいな?」
「た……確かに、少しばかり集中して考え事をしていた……それは認める」
「じゃあ、責任はお前に有りって事で、OK?」
「……そういう事になる、な」
 ニヤリ、と奴の顔が歪む。
 ……こういう顔をした時のこいつは、必ずよからぬ事を考えているのだ。
「じゃあ、責任とってくれるよな?」
「……どうすれば、いい?」
 一体、何を要求されるのか……よっぽどの要求で無い限り、私は飲むつもりだった。
 奴は、ニヤリと笑ったまま、言った。
「膝枕、してくれ」
「……へ?」
「膝枕。駄目か?」
 ……何かしら、おかしな事をさせられるだろうとは思っていたが、まさか膝枕とは……。
「……そのくらいなら」
「よっしゃー」
 何がそんなに嬉しいのか、奴は寝転がったままガッツポーズなどしている。
「じゃ、こっち来て。かもーん」
「ああ、わかった」
 奴の手招きに応じ、奴の転がっているベッドへと近づいていった、その瞬間
「えっ?」
 奴に手を引かれ、私は一瞬のうちにベッドの上へ仰向けに寝転がされていた。
 そして、私の上には奴がいる。
 これは……この状況は……えっと、その……色々、不味くないか……?
「ひ、膝枕……できないぞ、これじゃ」
「ああ、あれ嘘」
「嘘……って……」
「もう我慢できん」
 ……えっと……それって?
「……嫌だったら……本気で抵抗してくれ。やめるから……っても、
 やめれるかどうかわかんねーけど」