1 :
名無しさん@ピンキー:
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。
○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。
■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。
■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/ ■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part17
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1215971239/ ■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。
>>1 これは乙じゃなくてあなたを縛るためのロープなんだから勘違いしないでよね!
>>1さんの穴という穴に私の髪の毛を挿しこんで・・・。
うふふっ! まあそんな感じです。
由花子さん乙
いちょう2
>>1さんは私だけの物ですよ?皆さん勘違いしないでください
だから
>>1乙って言って良いのも私だけなんです
嫉妬スレの住人立ち入り禁止
修羅場統合から来ました
監禁されてた廃屋から逃げてきました
VIPから来ますた
まあ夏休みももうすぐ終わりですから
ヤンデレの娘の親父やお袋視点のネタ、誰か実験作として投下してくれんものか…
言い出しっぺネタ 親父の日記
●月二日 娘が一心不乱にノートに何か書いていた。
「雌豚死ね、■愛してる」雌なんて漢字が書けるようになったのか‥何してるんだ!
●月三日 娘が男の子を連れて来た。娘の笑顔の裏に狂気を見た気がした。
男の子は心なしかおびえている。
●月十日 保護者集会が開かれた。同級生の女の子が飛び降り自殺を図ったらしい。
不謹慎だが、何かが起こっているのかもしれない。
●月十二日、妻が携帯ばかりする娘を叱った。
送信文面は…男の子の動向を問い詰める物だった。三分毎に送ってる様だ…
■年▲月十七日 娘が男の子と結婚した。馴れ初めを聞いた震えだした。
初孫が楽しみ…ん?新郎席の妹さんに何殴り掛かろうとしてるんだ!
理由は、お互い気に食わなかったかららしい…両家の未来に不安を感じた
死ね
死ね
稚拙ですな。
もっと紳士的にできないものか。
紳士的……?
し、死ぬがよい
某大往生なんてこのスレの住人が知ってるのか?
死ね
単発IDで嵐か。
胎児以下だな
ヤンデレになる女の子の特徴は
1・内気で暗い女の子(友達がおらず、いつも一人で孤独な時間を過ごしている)
2・好きになる人は自分を助けてくれた人又は自分に好きって言ってくれた人
3・恋人同士になるとだんだんと彼に依存してしまう。(そして、疑心暗鬼になってしまう)
ぐらいなもんか?
で、ヤンデレ化すると一騎当千の戦闘力で泥棒猫を撃破できる
ずっとROMしてたが今年は例年以上に夏厨がひどいな
何か住人は皆退散してるぽいし
大丈夫夏休みもあと数日
一部のやつらは宿題に追われてるだろう
このスレに限って、(美しい)女性は誰しもがヤンデレになる可能性を秘めている。
個人的には、しつけが厳しいor世話焼き女房っぽい女の子が黒化していくのが好き。
「この家の門限が7時までというのは知っていますよね。
守れないのはなぜなんです?」とか、
「せっかく夕食を作って待ってたのに……私の料理、嫌いになった?」
とか言われたいね。
夏休みが終わってから宿題を始める人種がいることをしらないようですね
>>31>>32>>34 夏だなぁ厨 【なつだなぁちゅう】
夏厨が出没すると放置ができず「夏だなぁ」と言い出し
荒れの元となりスレ住民全体に迷惑をかける存在。
【特徴】
・とにかく文中に「夏だなぁ」を入れないと気がすまない
・スレの流れや空気を読めず、反応してしまう
・普通のスレ住人は夏厨を放置しているのに自分だけが過剰に反応してしまう
・夏厨に反応している時点で夏厨と同類であることに気づいていない
一々構うんじゃありません、自重しなされ
ふと思い出したけれど最近の小中高生って土日が休みなんだろ?
その分部活につぎ込むならともかく、エロパロに出入りするような暇人なら
夏休みが始まる前に終わらせるのも楽勝じゃね?
俺は捨てないで!系が好き
んでそういう子をいじめたりたまに可愛がったりして弄びたい
個人的には捨てられたら、子犬のような目でストーカーになる展開が好きだな
>>38 子犬のような目でストーカーってものすごい矛盾だな。
たまらんのぅ。
ひとーりでーいきてーゆーくーんだとー
保存庫変わったな〜
止マナイ雨ニ病ミナガラと雰囲気を合わせたのか
いつも管理人ありがとうGJ
ヤンデレスレの女の子はキチガイばっかだな……
死んじゃえ
>>なにそれ?本スレ?
少なくともここでは無いな、うん
ヤンデレ家族石マダー?
待てない奴は何なんだ?
何も言わずに正座してろ
ちゃんと服脱いどけよ。
靴下は……趣味に任す
上だけ一枚着て後は裸で座って待ってるよ
ネクタイは忘れるなよ。紳士の嗜みだ
なんで・・・・・・なんで正座して待ってられないんですか?
ちゃんと「正座して待っててくださいね」って言ったのに・・・・・・
新の紳士の嗜みは蝶ネクタイだと何度言えば
ニュータイプか
・・・あ。
そっか、そうやって私から逃げたんだね。
でもね、私だってそこへ行けるんだよ?
今から行くからね・・・うふふふふ
そう呟いて、彼女は飛んだ。
-------
もういやだ。
あの女がずっと、ずっと、ずーっと付き纏う。
今までに何人があの女のせいで死んだだろう。
はは、両手を使っても足りないな。
これ以上生きていても周りに迷惑を掛けるだけだ。
・・・飛び降りようか。
あいつともこれでお別れだ。
あいつのせいで死んだ友達には謝りに行かなきゃな。
誤解されて死んだあの子に、なんて謝ろうかな。
飛びながら考えればいいか。
男は飛び降りた。
---次回予告
女さん(仮名)と鬼とのバトル!
余裕で勝利した女さん(仮名)は愛する男のいる天国へと向かうのであった。
続かない。
全裸で待っていたがそろそろ服を着るよ
ところで、俺のちんこの亀頭にほくろがあるんだが。知らなかった。
それも上から見た亀頭のちょうど真ん中。長年一緒のちんこにも知らないとこがあるんだな
そんな事言うとヤンデレがチンコにヤキモチ妬くぞ
俺なんてきんたまの後ろに2つだ
風呂なんて特に恥ずかしいから
イッツも隠してた
58 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 10:05:12 ID:SlN+IDyI
週刊ヤンデレ家族と傍観者はどこ行った?
妙に納得してしまった
じゃあ今週は赤丸が出てていいはず
エロパロのヤンデレ二大スレはどこも最高だな。
ここと後一個どこだ?
キモウトキモ姉スレだろうな
あれも神だな確かに
他スレは他スレです
他所の話をここに持って来ないでね
>>63 キモ姉キモウトスレに決まってるじゃん・・・。
半角二次元のほうにあるスレはエロパロじゃないし。
いいから(・∀・)デテイケ!
キモスレ住人は巣に帰ってろ
他の人はいいが>67お前だけはデテイケ!ピンポイントで
たまには妹でも良いと思うんだ
他スレの話はそのスレで語った方がお互いのためだと思うんだ
妹や姉もいいものだけどね
こじきにレスが付かずに他スレの話をレスが付くのね
同族元素の続きが気になりはじめた今日この頃
東尉が前作では男らしくていいヤツというこのスレでは割と珍しいキャラだったな
再開を気長に待ってるが
ここSSスレだし3次とかスレチすぎだろ
>【この板の趣旨】
>一般向け作品(漫画/アニメ/ゲーム/小説/ドラマ等)のエロ妄想・萌え談義、
>およびオリジナル・パロディを問わないエロ小説創作等を行う板です。
いや、確認してるんだが。
どう見てもドラマの話題だろ。
ここはヤンデレネタならなんでも愛でるスレだったぞ。
この程度でスレ違いってわけわからん
自治厨こそお帰りください
ちょうどテレビつけたら宣伝がやっていた
なんとタイムリーなんだろうか
ここはSSスレだから他のスレでやれ
住み分けもできないバカは死ね
>○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
まあテンプレぐらい読もうな
おまえら、前スレ埋めようよ
ぶっちゃけ言うとさ、無限のリヴァイアスのキャラって、全員病んでねぇ?
ぶっちゃけ言うとさ、死ねよ
知らなかったからぐぐったらずいぶん古いアニメだな。
面白いのか、これ?
テンプレ嫁
と言っても俺も知らないから
>>86の期待には答えられないんだがw
ヤンデレって意外と昔からあるんだよな、
ジャンルが確立されたのは最近だが
つーか平安時代にすでにヤンデレが物語に登場してるんだから当たり前だろjk
知ってるよw
ただそうなるとまだ知られてない過去作品とかもあるんだろうな、と思ったんだ
連レススマソ
だから
>>84とか興味湧いたんだが……そんなにマイナーなのか、これ
死ね
生きろ
リヴァイアスはヤンデレとか関係なしに見ればいい
こずえがレイプされたことよりも、タクミが実の姉と肉体関係を持っていた方がショックだわw
ちなみに夕方の6時のアニメにレイプと近親ですよ
深夜42時アニメだから仕方ない
ブラコンシスコンショタコンホモヤンデレ何でもござれだったな>リヴァイアス
その後がビーストってのが救われたw
なんど読んでもブラの後あたりが中々頭に入ってこないな
ハハン鳥頭め
今週はヤンデレ家族くるかなー
焦らしプレイでもいいけどね!
>>100 とりあえず全裸で正座をしながら待機だ・・・
>>97 ビースト最終回のダイノボットの台詞はリヴァイアスに喧嘩売ってるとしか思えなかったなw
よしじゃあ裸ネクタイに正座で待機していよう
足が痺れても涙目で待ってる
待てと言われて全裸にネクタイで待つヤンデレ淑女
こんばんは。
とっくに日付が変わって月曜日ですね。
それは置いといて、清算編その二を投下します。
***
妹の様子が少し変わっていることに気付いたのは、風邪で体調を崩した妹が久々に居間に下りてきたのを見た時だった。
妹は回復したのが嬉しいのか、朝の挨拶の声まで弾んでいた。
でも、機嫌が良い理由は風邪が治ったからなのだろうか。
妹が普段と違う。
何か、こう……表情に余裕のようなものが感じられる。
以前はぴりぴりとしていたのに、今ではすっかりそれが和らいでいる。
妹が私から積極的に目を逸らそうとしないなんて、何かが変。
そりゃまあ、今みたいな方が私は嬉しいんだけど。
弟は珍しく朝早くから出かけていて、姿を見せていない。
できれば妹に何があったのか聞きたかったけど……一緒に下校する時にでも聞けばいいかな。
妹と二人、肩を並べて学校に向かう。
実は二人っきりでこうやって歩くのは、五六年ぶりぐらいになる。いや、もっと前からだったかも。
私の記憶が曖昧だから思い出せないけど、妹は中学に上がった頃、弟と一緒に登下校するようになった。
もちろん私もついていくんだけど、どうも二人の会話に割り込めない。
弟は相手してくれるんだけど、妹が生返事しかしてくれない。
だから仕方なく、長女として身を引くことにした。
弟と妹が仲良くしている姿を見られれば私は充分満たされた気分になれた。
でも、時々つまらなくなって、弟と示し合わせて妹を置いて学校に行ったりもした。
それをすると妹が三日ぐらい家族の誰とも口を聞いてくれなくなるから、最近は自重している。
うちの妹は可愛いわ。お兄ちゃんを独占できなかったからって拗ねるなんて。
できるなら、こう…………抱きしめて、頬摺りして、体をこねくり回してやりたい。
添い寝させてくれなくなったのはいつからだったかしら。
昔は、お姉ちゃん一緒に寝よ、って枕を抱きながら言ってくれたのに。
今だって、一緒に歩いてくれても話しかけてはくれないし。
在りし日の妹はもう居ない、か。
冴子お姉ちゃん、悲しいわ。
***
「ではみなさん、明日からは土日と休みが続きますが、不摂生をしないように」
篤子女史の締めの言葉が終わり、日直の号令に従ってクラスメイト全員が起立礼をしたら、教室内は次第に騒がしくなる。
明日から休みとはいえ、実際にはこの時から休日が始まると言っても過言ではない。
かく言う俺も開放感に包まれている。
そう、この感覚こそが喜び。
黙々と授業をこなし、甘美な睡魔の誘惑と胃袋の乾きに耐え、ようやく得られた休日である。
こういう喜びは学校に通っていなければ味わえない。
何日もぶっ通しで自宅や病院に籠もっていたら、余暇の貴重さなど無に等しくなる。
明日と明後日は何をしようか――なんて考えるのが楽しい。
だが、まずはやるべきことをやってからだ。
鞄を置き去りにしたまま、クラスメイトの流れに乗り教室から出る。
しかし向かう先は校舎の出口ではない。目的地は別にある。
二階から一階へ下り、いつもなら左へ行くところで右へ曲がる。
方向転換したところで、背後から話しかけられた。
「おや、どこに行くんだ?」
振り向けば、学校指定のコートを纏った高橋が居た。
「ちょいとした野暮用。一年の教室に用があるんだ」
「ふうん? 君の弟と何か約束でもしてたのか?」
「そういうわけじゃないが……そうだな、心配事を片づけに、ってところか」
高橋は数秒間無言で居続け、唐突に沈黙をため息でぶち破った。
「……なんだわざとらしい。今のはちょっとむかつくぞ」
「いや失敬。大したことじゃないんだ。
実は昨日、僕の家の冷凍庫から冷凍食品の炒飯が無くなっていてね」
「ほう」
「どうしてかと思って首を傾げていたら、突然海外に出かけているはずの姉から着信があったんだ」
「おい、何さりげなくカミングアウトをしてる。お前に姉が居るなんて初耳だぞ」
「故意に隠していたから、当然だ」
なぜこいつは、あえてどうでもいい情報を隠しやがる。
普通、担任の女教師に恋してることを隠すだろ。
「……で、お前のお姉さんとさっきのため息がどう関係しているんだ」
「うむ。驚きつつ僕は携帯電話を手に取った。
そして覚悟を決めて――――携帯電話の電源ボタンを一回、ポチッと押したんだ」
「……なんで?」
「考えてもみろ。国際電話や電子メールで連絡してくる姉が、いきなり僕の携帯電話に電話して来たんだぞ?
僕は携帯電話の番号なんて姉には教えていない。不審に思って当然だろう」
「すまんが、同意しかねる」
「そうか。まあそれはいい。
電話を取らなかったら、今度は家の方の電話に着信があってね。
相手はなんとなく予想したとおりに姉だった。
姉弟らしく手短に挨拶を交わした後、姉はこう言ったよ。
ぷりぷりのエビが入った炒飯って美味しいわよね、って。
そう言い残して、姉は電話を切ったんだ」
「あー……、なるほど。犯人はお姉さんだったわけか」
「さっきのため息は姉の行動を笑ってのことさ。
あと二年は帰ってこないとか言っていたくせに、突然日本に帰ってきて、
気ままな一人暮らしを送る弟の部屋に勝手に上がり込み、炒飯を食べてから帰る。
そしてそれからは何の連絡もよこさない。また海外に行ったのか、この町のどこかに居るのかもわからない。
勝手気まま過ぎる姉だよ。僕が君に話したがらないのも当然だろう?」
「うん、まあ……俺ではお前のお姉さんの行動を理解できないことはわかった」
「そうか。僕の姉がちょっと変わっているということがわかってもらえたならそれでいい。
ではまた。来週会おう。怪我しているんだからあまり無茶するんじゃないぞ」
「ああ、またな……」
高橋はそのまま振り返りもせず校舎の出口へ向かっていった。
さっきの話の流れは、高橋お得意の話の焦点をずらして煙に巻く手法だ。
今まで内緒にしていた姉の存在を明らかにしたのは、奴なりに焦っていたからなのだろうか。
それとも実は姉など存在せず、逃れるために即興で話を捏造したのか。
なんだか、欠席理由におばあちゃんの三回忌だったんですって言うのに似てるな……。
だが、俺にとっては高橋に姉が居ようと居まいとどうでもいいのだ。
上手い具合に乗せられている気がするが、それもどうでもいいと納得しておく。
今重要なのは、心配事を片づけることだ。
先週の事件の唯一人の首謀者にして実行犯、澄子ちゃんの様子を確かめること。
今日あえて学校をさぼらなかった理由の一つである。
自分でもおかしいと思う。なぜ、俺を短期間とはいえ監禁した澄子ちゃんに怒りを覚えないのか。
俺が花火に怒りを向けないのは、きっと頬に傷を負わせたからだ。
熱くなっても、花火の顔を脳裏に描く度に冷めてしまう。
これは、精神的な負い目によるものだろう。
しかし、澄子ちゃんに対しても同じというのは、どういうわけだ。
彼女の性格? すぐに解放してくれたから? 監禁する理由を説明したから?
いや――どれでもない。
そもそも、監禁されても怒りを覚えていないんだ。
どうしてだ? 昔伯母に虐待されていたから、か? そういった痛みに対して鈍感なのか?
だとしたら、我ながら……嫌な鈍感っぷりだな。
天性、いや後天性のマゾなのか。
一応、否定しておくとしよう。あまりにも悲しすぎる。
一年の教室が並ぶ廊下に来ることは、二年に進級してからはなかなか無い。
自分の居場所が無い、違う言い方をすれば、すでに空気が変わっている。
そんな空間へ文化祭の準備期間に飛び込んでいった去年の俺は少々浮かれすぎていた。
こうして個人的な用件で訪ねていくと、そのことをひしひしと実感する。
いや、衣装を作りたいからって手伝いに行くのも個人的意志からだけど。
ともあれ、俺は弟のクラスの前まで辿り着いた。
何やら入り口で女子二人がお喋りしている。ううむ、入りづらい。
だがここで引き返すわけにも行かぬ。先輩に逃走は無いのだ。
話しやすい距離まで近づき、努めて明るい声で話しかける。
「ねえ、ちょっといいかな」
「はい? ……誰、この人?」
ぬう、やはり俺のことなど覚えていないか。
あからさまに邪魔者に向けるような眼差しだ。
仕方ない。できるならば顔パスでいきたかったのだが、奥の手を出すとしよう。
「実は俺、このクラスの男子の兄貴なんだけどさ」
生徒手帳の名前欄を見せつつ言ってみる。
果たして、効果は即座に現れた。
「ああ、彼のお兄さん!」
「あー、思い出した! 去年は文化祭の準備手伝ってくれてありがとうございました!」
「いえいえ、どういたしまして」
はっはっは。便利だな−、クラスの人気者の兄貴というポジションは。
こうまで警戒心が解けてくれるとは思わなんだ。
別に顔を覚えられてないのが悲しいなんて思わないぞ。こちとらとっくに慣れっこだ。
「弟は居るかな?」
「いえ、もう帰っちゃいました。隣のクラスの、あの……金髪の人と一緒に」
「そう。まあ、あいつが居ても居なくてもいいんだけど。
ちょっと聞きたいんだけど、このクラスに木之内澄子って子が居たよね。
その子は今日学校に来てた?」
「えっ……澄子ちゃんですか?」
「そう」
女の子たちはお互いの顔を見合った。
「来てないよね?」
「うん、先週からずっと。なんで休んでるか知ってる?」
「ううん、聞いてない。ずっと無断欠席」
――ふうむ。
「じゃあ、その子と仲の良かった友達は居ないかな?」
「居ますよ。でも、たぶん知らないと思いますよ」
「それでもいいんだ。何か情報が掴めればいいし、なければないで構わない」
「そうなんですか。ん、あれ? 先輩ってもしかして――――」
右手にいる女の子が、もう一人の子に耳打ちしている。
右の子は面白そうな顔。左の子は目を拡げて口を押さえている。
「どうかした?」
「いえいえ、何でもないですよ。
そうなんですかー。先輩が……まさかそうだったなんて。
心配ですよね。澄子ちゃんが学校に来ていないと」
「ん……どちらかと言えばそうかもね」
「へええええ。なるほどなるほど。
そういうことなら協力しないわけにはいきませんね。
澄子ちゃんと仲の良かった子なら、窓際の席に居ますよ。
それでは先輩、どうぞごゆっくりー」
二人してにこにこと笑顔を浮かべ、教室へと手で導いている。
やけにノリがいい子たちだ。
ちょっと不気味だが、警戒されるよりはマシと思おう。
CYEN
教室に入ると、澄子ちゃんの友達はすぐに見つかった。
校庭側の窓際の席で話している女の子が二人いる。
一人は澄子ちゃんと似たセミロング。男の庇護欲をかき立てる、大人しそうな顔つきをしてる。
もう一人は背中を向けているので顔はわからない。
乱れのない黒のロングから、しっかりした女の子だろうと推測する。
どちらか、もしくは二人ともが澄子ちゃんの友達なのだろう。
俺が接近していることに最初に気付いたのはセミロングの子だった。
「あ、の……何か……?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……って、あのさ」
「は、はい……?」
「何もしないから、そんなに逃げ腰にならなくてもいいよ?」
そんな、俺が現れた途端に顔を強張らせて椅子をずりずり引いて後退しなくても。
この子にとってはどうしようもない対人反応だったとしても、やられた方はいい気分がしない。
「は、はい。えっと、二年の先輩ですよね。私に、いったい何を……?」
「うん、君の友達の――」
突然の机を叩く轟音に台詞を遮られた。
教師が生徒を黙らせるために教卓を叩く音よりでかい。
天井から机に着地すればこんな音が出るかもしれない。
教室内には俺たち三人しか居ない。
必然、俺以外の女の子が立てた音ということになる。
おそらく音の発生源は、二人の女の子の中間地点にある机。
見ると、そこには拳が一つ乗っていた。
固く握りしめられていて、わずかに震えている。
ついでに言うと、セミロングの子の唇も震えている。というか全身が震えている。
無理もない。何せ、自分と向かい合って座っている女の子こそが、拳の主だったのだから。
「あ、あの……俺、何かしましたか?」
思わず拳を振るった女の子の背中に敬語で話しかけてしまった。
仕方あるまい。だって怖いんだから。
「いいえ、あなたは何も悪くない。ただ机の上に季節外れの蚊が止まっていたからつい、ね」
「そ、そうですか。はは、蚊なら仕方ありませんよね。刺された嫌ですもんね」
「ええ。放っておいて、大切なものを吸い取られちゃ、たまらないもの」
「ですよね。まったく蚊にも困ったもんですよ」
「そうよね。…………いっそのこと、害虫なんか全て消え去ってしまえばいいのに。
いいえ、どこか一箇所に集中させて、私自らの手で一思いに葬ってあげたい。
どうして捕まってくれないのかしら。抵抗しない限り、私は優しくしてあげるのに」
これはまずい。何やら俺は最悪のタイミングで二人の会話に割り込んでしまったようだ。
もう澄子ちゃんについて聞くなんて無理だ。
それよりも無事にここから脱出する方が重要だ。
「話の邪魔してすいません。じゃあ俺はこれで……」
「ああ、ちょっと待ってくれないかしら」
……引き止められちゃいましたか。
勘弁してください。こちとら右腕がいかれてるだけで大変なんだから。
「あなたはこの教室に来たら不幸になるわ。だからもう来ない方がいい」
「それは、何故?」
「あなたは去年の文化祭の準備期間、この教室の手伝いにやってきて、八面六臂の働きをした。
私も知っているわ。うふふ……格好良かったわよ、あなたは」
「それは、どうも、ありがとうございます」
「だから、ここにはあなたに好意を抱く人が一杯居るの。
でもそれに比例して、あなたを嫌う人も居る。
世の中はバランスで成り立っているの。分かる?」
「ヒット商品の法則ですね。分かります」
「そうよ。でもあなたは一人しかいないの。
あなたが仮に時計だったとしたら、大事にしてくれる持ち主の元へ行きたいでしょう?」
「それはもちろん」
「あなたにふさわしいのは、あなたのやりたいことを分かっていて、あなたの意志を汲んでくれる人よ。
そんな人に出会えたら素敵でしょう?」
「夢じゃなくて現実で会えたら素敵ですね」
「いいえ、もうあなたは出会っている。これは予想じゃない。すでに実現している。
私は占い師じゃないけど、あなたの未来を言い当てることができる。
――あなたは世界最高のパートナーと結ばれるわ。他の誰にも負けない、頼りになる女性と」
「あの、その人と結ばれるには、どうすれば?」
「クーリングオフ、がキーワードよ」
「えっと、それって、一定期間のうちならタダで返品できるってシステムのことですよね」
「そう。騙された消費者を救済するためのもの。
そのシステムがあるんだから、過剰に警戒するのはやめなさい。
使わない限りは、いつでもできるんだから。――――そう、一回も使わない限りは、ね。
私の話はこれで終わり。あなたに幸せが訪れることを祈っているわ。うふふふふ……」
しぇーんこねり
スリルあふれる教室から脱出し、慣れた二年D組の教室に入り、俺はようやく安堵の息を吐き出した。
「こ、怖かった……」
まさか弟のクラスにあんな怖くて不気味な子がいるとは知らなかった。
少なくとも去年は居なかったと思う。
転校生、なんだろうか。
でもあんな子がいるなら弟が話してくれているだろうし。
しかし……何だったんだ、さっきの忠告は。
クーリングオフだと? それがあるんだから女の子と気軽に付き合え、と?
それができれば苦労しない。
そもそも、訪ねてくれる女の子が居ない。
俺は弟とは違う。ニヤニヤしながら見ていられる甘いラブコメの主人公にはなれない。
「あ、まだ帰ってなかったんだ。よければ一緒に帰らない?」
「葉月さん? ……うん、いいよ。ちょっとだけ待っててね」
「ゆっくりでいいよ。怪我してるんだから」
「平気平気……っと。お待たせ、じゃあ帰ろうか」
「うん!」
こうやって声をかけてくれるのが、俺が一度ならず二度までも振ってしまったせいで、
今ではただの友達になってしまった葉月さんだけなのだから。
あの子の言うその最高のパートナーとやらが身近にいるのならぜひとも会ってみたいものだと、
腰まで伸びる葉月さんの黒髪を見ながら思った。
GJ!
また難解そーな新キャラが出てきたな
そして相変わらずまるで話が進まない
ヤンデレ家族きた!これ!
兄貴無防備っていうかポジティブっていうか
全身全霊でヤンデレフラグを立てに言ってるぜさすがだ
GJ!
教室にいたの葉月さんじゃね?
顔見えてないし髪ロングだし。
あ、でも声でバレるかorz
さすがにストーリーを把握するのはあきらめた。
兄の何の考えもない言動だけでも十分楽しめるけど。
みんな、考えずジミーになりきって読むんだ
よくわかんなかったけどGJ
若干、風呂敷を広げ過ぎてる気がするがちゃんとたためるのだろうか
>>121 一応、プログでは終らせる隙があると言ってたけど…
それより兄に好意を持ってるのは葉月さんだけじゃなくて他にも居るって事か
フツメン以上で優しいなら好意を抱く人が数人いても、おかしくはない
てか、ジミーはもてる要素たっぷりだろ
周りのスペックが異常なだけだな、タイトル通りにw
これは・・・葉月さん再フラグ、と考えていいんだな?
何を言うか。葉月さんはあんなのでは挫けないぞ。
それにしてもブログあったのか。
ニューキャラ登場かっ!!
今回もGJっすよ!
ああっ!葉月さんに付きまとわれたいっ!
クーリングオフをするには商品を持っていなければならない。
さてジミーはどこに行けば持っている物を見つけられるのだろうか。
GJ!
しかしお兄さんの場合はクーリングオフしようとしても
品物のほうにさせてもらえないだろうw
いいパンチ持ってる方は新キャラとしてもう1人の方は再登場、かな
死闘編3頁目からの
>>118 ヤンデレは不可能すら可能に出来るんだから
声色変えるくらい簡単じゃないか
あと、ジミーは超が数えきれない程の鈍感だし
葉月さんがジミーを諦めてないようで良かった
では投下致します
最終話 幽霊の日々へ
今、物凄く背筋から悪寒が走ったような気がする。藤寺さんと優雅なお昼を過ごした後、商店街辺りでショッピングを楽しんでいた。
夕方頃になると遊び疲れたので藤寺さんと俺は駅前で別れることになった。
そして、藤寺さんは当たり前のように忘れた鋸(包装して隠してる)を持って、俺は自宅の帰路に着いている途中であった。
嫌な予感がする。
すでに陽が暮れて、周囲が薄暗くなっている。頭のおかしい人が現れる暖かな季節を迎えているせいか、
変質者が大量に出現している。男の変質者など鋸があるおかげで撃退することが容易に可能だが。
女の変質者ならそうはいかない。ヤンデレ症候群の影響のせいか、一般人の男性が凶器を持っていたとしても
簡単に女の変質者に拘束されるであろう。それ程に現代の女性による変質者の戦闘能力は飛躍的に上がっているのだ。
逮捕するならば、どこかの特殊部隊が出動しなければ事件は解決しない。
だが、この予感は変質者が潜んでいるというわけでもない。そう、これは自分にとって身近な人物が
些細なことで人を殺すまで憎悪に発展してしまったそんな感じ。
アパートの前に辿り着くと、禍禍しい殺気に当てられる。
その瞬間、俺の足は震え、恐怖という感情が体全体に行き渡っていることを体感する。
一体、俺が借りているボロいアパートの一室で何が起きているんだ。
浮気した男が妻に何かもバレている中で帰宅するのはこういう心境だろうか。
俺は恐る恐るとドアを開けた。
「お帰りなさい。光一さん」
「ああ、ただいま。由姫さん」
ドアを開けると飛び出すように現れて、にこやかな笑顔で由姫さんは俺を迎えてくれた。
ただ、その笑顔の裏には隠し切れない殺気など、目が全然笑ってない状態で来るとさすがに怖い。
幽霊というのは夏の怪談に欠かせないキャラであり、本来はこの存在に畏怖するはずだったのが、
彼女の穏やかな口調と人畜無害な人格のおかげでそういうことは感じることがなかったが。
今は、由姫さんがとんでもなく怖い。
これは幽霊というか、幽霊より怖い存在に彼女が進化していた場合。俺の命はある意味
失われる寸前に追い詰められた可能性すらもある。
やばい。
「どうしたんですか?」
「あの、何か由姫さん怒っていますか?」
「お、怒ってないですよ。健気な幽霊を置いといて、他の女の子とデートしていたなんて。
全く、もう怒っていませんよ。ううん、むしろ、二人の将来を血の雨で祝福したいですよ」
「いや、待て、血の雨って……。やっぱり、怒っているだろ!!」
額に怒りマークが再現されている由姫さんが冷笑している。というか、怒りマークが再現されるって、幽霊ってなんでもありかよ。
wktk
「何度でも言いますが。怒っていません。二人の関係がどんな薄汚れた関係だったとしても
私は冷たいマフラーであなたたちの幸せを見守ってあげます」
「ありえないほどに怒っているでしょ」
「そうですね。光一さんの怯え方が1とすると、私の怒りは富士山大爆発です。
噴火したら、火砕流が下々の庶民を巻き込み大災害に発展します」
「富士山って」
「どうかしましたか?」
怒ってるじゃん!! 思い切り。
普段は穏やかで蟻も殺さないような優しい笑顔と頭にブルーベリージャムが詰まっているだろう
由姫さんがこれまでもなく怒っているのだ。
恐らく、怒りの原因は幽霊を放っておいて藤寺さんと今まで遊んでいたせいだろうか。
「あの愚かな自分に由姫さんが怒り狂っている原因を教えてくれないでしょうか?」
「光一さんの胸に聞いてみたらどうですか?
休日なのに幽霊の私を完全に放置して他の女の子とデートしていたら……殺されても文句ないですよね?」
「殺すなんて物騒な」
「私は本気です。決めたんです」
と、幽霊は俺が持って帰ってきた藤寺さんの忘れ物の鋸の包装を乱暴に破る。
銀色に輝くギザギザな刃の光が眩しく映る。柄を震えた両手で強く握ると素人丸出しの太刀筋で襲ってきた。
俺は軽く避けるが、散らばっているヤンデレコミックに足を取られ、無様に尻餅をついていた。
幽霊の最初の一撃をかわせたのは本当に運が良かったのか、彼女にその気がなかったのかわからないが、
現状は俺の命の危機に直面したことだけは事実である。
同居人である由姫さんが何の理由もなく襲ってくるとは。
全く、意味がわからない。
待て、親に生命保険をかけられているので、解約してから殺してくれ。って違う!!
「ゆ、由姫さん。血迷ったか!!」
「血迷ってません。私とあなたは違うんです」
理由になってないし、意味不明で殺されるこっちの身になってみろ。
「私はすでに他界した死者。そして、光一さんは現代を懸命に生きる生者。
私たちは一緒に居ることができないだもん。だから、殺すしか道はないじゃないですか。
光一さんは私以外の女の子と一緒に居るだけで胸が痛むもん。痛いの。とっても。痛いんだから」
と、また由姫さんが鋸で襲ってきたが、尻餅をついている俺は避けることはできなかったが。
刃が自分の体に直撃する寸前に無我夢中に両手を前に出した。
「はうわー!!」
鋸の刃は俺の顔の直前で止まっていた。
俺が必死にタイミング良く、刃を掴んでいた。俗に言う真剣白刃取りという火事場のバカ力が起こした奇跡がそこに実在していた。
まだ、安心することはできない。体勢を取り戻していない俺が鋸の刃を受け止めるよりも幽霊が押し切る力の方が優勢なのだから。
由姫さんは金切り声を上げながら、俺を殺すために鋸を引く。
「痛いのは一瞬だけです。お願いだから死んでください」
「死ねるかボケ」
「幽霊になって、ずっと、二人で一緒にいましょうよ。それが二人にとって幸せなんですよ」
「幸せだと……ふざけやがって」
自然と俺の胸の奥深くから怒りが沸いて来たようだ。理不尽な理由だけで人の命を奪う
のは許してはいけない。許すわけにはいかなかった。
「由姫さんは誰でも良かったんでしょ!! ここに引っ越した相手がアパートを借りて、
幽霊の由姫さんを拒まなかったら、それで良かったんでしょ。『俺』じゃなければ理由はなかったんだろ?」
「違います。私にとって光一さんが必要なんです」
「必要なのは一緒に死んでくれる誰かだろうか!!」
「だから、違うんです。私は光一さんだから。
こんな私に優しく接してくれた光一さんだから、死んで欲しかったんです。一緒にいるために」
「何で俺なんだよ……」
「光一さんは幽霊で誰もが恐がっていた私を恐れずに一緒に居てくれる。
あなたの一緒に居るだけで私は幸せな気持ちになれる。
生前、あれだけ求めても手に入らなかった物がここにあるんです。
だったら、好きになるしかないじゃないですか!!」
「恋もしたこともなくて……
まだまだ、たくさんやりたいことがあったのに
死んじゃって……。
この世に未練を残して幽霊の日々を送っていても
私の心を満たすこともなく、孤独な日々ばかり。
もう嫌になっていたんですよ。本当は。
光一さんと出会ってから、毎日、毎日が幸せで楽しくて。
だから、他の女に光一さんを渡したくないの。渡したくないんです。
もう、独りぼっちなのは嫌っっっ!!!!!」
由姫さんの瞼から涙が零れ落ちて、その雫が俺の頬に当たっていた。
溢れる気持ちが抑えきれずに彼女は声を抑えて泣き出してしまっていた。
殺そうとする彼女の泣き顔を呆然と俺は見上げていた。
「人の命を奪っていい理由にはならないだろ」
「わかってます。自分が傲慢で卑劣で我侭なことぐらいは。
でも、心があなたを求めているの。淀んだ心が光一さんを独占したくてたまらないんです。
この気持ちを抑えることはできません」
「俺の気持ちを考えないのか」
「考えません。だって、光一さんは死んだ女の子よりも生身の女の子の方がいいんでしょう。
そう、藤寺音梨沙みたいな女の子の方がお好みなんでしょ。幽霊の宮野由姫を好きになってくれないなら……」
「殺すのか?」
「はい」
「俺の気持ちを聞かないのか?」
「聞きたくないです。あの女に惚れていることを悠長に語る光一さんなんて見たくありませんから」
唇を尖らせて、すねるように由姫さんは言う。
そろそろ、俺の両腕が痺れてきて、だんだんと力が抜けてくる。やばいかもしんない。
「いいから、聞け。年増幽霊。俺は別に藤寺さんが好きなわけじゃあない。
ただ、お付き合いすればいいなってぐらいにしか思っていないんだ。
普通はそうだろ。
相手が運命の相手なんて考える奴はただの妄想壁だ。
出会いと別れがあり、そこに自分と相性のいい異性を選ぶんだ」
「で、肝心な私のことをどう想っているんですか?」
「嫌いじゃない。というか、年増は俺の好みじゃあない」
「うふふふ、そうですか。光一さんの気持ちはよーーーーくわかったので、キルします」
「待てっっ!!」
由姫さんの人離れした強い力がすでに痺れていた俺の両手を崩した時に、偶然にも俺の頚動脈を切り裂いた。
声にならない悲鳴を上げるが、幽霊は躊躇せずに俺の腹部を鋸で切り裂いた。
鋭い痛みが体全体を襲うはずだが、脳内に耐えられる痛覚を軽く通り越しているせいか、全く痛みを感じることはなかった。
松山光一が最後に見た姿は自分の血で汚れている幸せそうな由姫さんの笑顔だった。
ボロアパート浪人生殺人事件ファイルA
松山光一 享年××(ソフ倫指定なら18才以上は確実)
死因 メッタ刺し(かなり怨恨がありそうな殺し方だ)
犯人
最重要容疑者 藤寺 音梨沙
被害者を殺した凶器にはべったりと藤寺音梨沙の指紋が発見。
ついでに被害者の指紋も付着されているが、その件には警部的にはどうでもいい。
問題は1週間前以上にホームセンターで藤寺音梨沙が鋸を購入している。
動機はなんとなく恋愛沙汰。
被害者が通っている予備校では親密な関係だったと予備校教師や予備校生徒が証言している。
ただし、死亡推定時刻に藤寺音梨沙には駅内をうろついている所を防犯カメラで録画されているので
事実上は無罪確定というか、起訴出来ません。逮捕されることなく、事情を聞いてあっさりと釈放された。
無残な死体を見る限りでは上記の最重要容疑者以外の人物の犯人がいるとするならば、
捜査本部はヤンデレ症候群感染者の犯行以外はありえない。
だが、犯人の有力の情報は見つからずにこの事件は何の進展もなく時効を迎えることになる。
余談だが、浪人生が住んでいる部屋には幽霊が住み着いているという噂があるが、
大家は今回の事件を境に古くなったアパートを売り払い、
他の不動産会社が土地と建物の権利を持つが、その場所はすでに取り壊されたために噂を確かめることはできない。
今、そのアパートだった土地は今でも空地になっていると言う
見慣れた自分の姿を見下ろしていた。酷い表情をしている。
いかにも、恐ろしい目に遭ったかのように口から情けなく血が吐き出しており、鼻水を垂らしている。
腹部から容赦ない血液が出血しており、水平に凶器であろう鋸が勝利の証と言わんばかりに突き刺さっていた。
これが生前の松山光一の哀れな姿であった。
自分が死んだ事実が全く受け止めることが出来る人間は大人しく病院に行け。
俺は殺害した犯人を横目で睨んでいた。
「ううっ、私は悪くないもん。光一さんが女の子のタブーの年齢のことを言うから悪いんですよ。
年頃の女の子の求愛に年増だから好みじゃないなんて絶対に言ったらダメですからね。
来世の課題です。言えば、こんな風に殺されるんです」
「殺した犯人が笑顔でサラリと言うな。このボケ幽霊!!」
「ふふふ。光一さんも立派な幽霊の仲間なんですよ。
そう、私と一緒でこの世に彷徨う幽霊さん。きゃは……光一さんとずっと一緒。てれりこてれりこ」
そう、年増幽霊が言った通りに俺は死んでしまったせいか、幽霊になっていた。
幽霊になるとこの世の物理法則の枷が外れるのか、自分の体は浮遊しちゃったり、
自分が着ていた洋服が由姫さんとお揃いの白い着物を着てしまっていたり、
だんだんと幽霊になったという現実を受け入れるしかないようだ。
特に人を殺したくせに由姫さんは蔓延なる笑顔を浮かべて、何だか幸せそうであった。
ああ、幽霊同士の物理干渉が出来るんだったら、頬を引っ張ってやりたい。
「で、他に何か言いたいことは?」
「あの世で結婚式をやりましょう!! 幽霊同士でも婚姻届を提出できるんですよ」
「結婚できると思っているのか? 人を殺しておいて」
「てへっ。ごめんなさい!!」
「ごめんですむなら、警察も鑑識も名探偵も葬式もいらねぇ!!
返せ人の青春!! というか、大学に受かれば数多なる出会いの日々を!!」
と、俺は由姫さんの襟首を掴んで思い切り揺らした。彼女は声にならない悲鳴をあげるが、
そんなもんは俺の知ったことじゃあない。青春の日々、ヤンデレゲーの最新作を遊ぶ機会を永遠に失ったのだから、
これぐらいのことは当然である。
「そんなに幽霊になることは嫌なんですか?」
「嫌に決まってるだろ」
「幽霊になれば、夜は毎日墓場で運動会が出来ます。それに学校も試験も何にもありません」
「それ、妖怪の話ですから!!!!」
「むぅ、幽霊の特権は他にありますよ。え、えっと、とりあえず、死なない?」
「すでに死んでるじゃん」
「そういえば、そうですね。だったら、特権として光一さんは私の恋人になれます。それで何とか納得してください」
「納得ね……」
生きている時は結ばれるはずがなかった運命が死ぬことによって、新たな可能性を導き出した。
多くの大切な物を失ったが。失ったが。失ったが。ってか、失いすぎだ!!
「由姫さんの事は今まで家賃が安くなるための年増幽霊程度にしか思っていなかったけど、
これからは一人の異性として見るよ」
「と、と、年増ね……」
と、由姫さんは額に青筋を立てて、不機嫌そうに言った。
「でも、光一さんも見た目は少年でも、中身はおっさんのようになるんだからね」
「おっさん幽霊と呼ばれるのは物凄く嫌だな」
まだ、気分は大人になっていない浪人生気分なので年数が経つと心が中年のおっさんに老けていく運命なんだろうか。
仮に15年ぐらいの月日が経てば、、由姫さんみたくおっさん幽霊と呼ばれるんだろうな。
「これから、どうするの? 幽霊になって自縛霊としてボロいアパートに縛り付けられるのは嫌だぜ」
「大丈夫です。光一さんという恋人が出来た以上は私も自由ですし、
光一さんは特にこの世に強い未練を残して死んだわけではないので、二人揃ってあの世に行けます」
「あの世って、死んだ人間が行くとこか?」
「そうです。死者が成仏できる場所で閻魔様の審判を受けて、天国行きのパスポートを貰うんですよ。
ちなみに地獄行きになると針山地獄や浄化の炎に焼かれたりと恐ろしいらしいですよ」
「何で、そんなに詳しいんだ」
「これです。自縛霊のための天国と地獄の観光ツアーガイドブックです。
あの世に行けない人のために無料で送ってくるんです。配達してくるあの世の人に聞いてみると親切に教えてくれますよ」
「色んな意味であの世も現実とそう変わらないよな」
渡されたガイドブックの内容を見ると、天国の内容は翼を生えやした天使のような人間が楽しそうに鋸を持った女性たちに
追われている姿がある。地獄の方は鬼女どもが金棒を持って、縞々のパンツに縞々のブラだけで
露出度が多い奴らが暴れているような描写がある。
針山地獄や血の池と言った有名な観光地は人気が高く、100年程の予約がいるなど、
殆ど想像していたあの世とは当たり前だが全然違っていた。
「天国の方は鋸を持った女の人たちに追われているのは……一体」
「多分、未来永劫の愛を誓った人が他の女の人と浮気したとかで、神聖なるアイテムである
『聖剣コトノハガリバー』で穢れを払っているかもしれませんね。
とはいえ、すでに死人ですので、鋸で100等分切断しても死ぬことはありませんし、思う存分に好きな人を独占できますね」
「いや、待て。この天国というのは」
「そうです。朽ちることがない愛しい人を永遠に監禁できる場所なんですよね。
生前は100年程度ぐらいしか愛しい人と一緒に居られませんけど、
あの世に行き、天国のパスポートさえ貰えば、光一さんを永遠に独占できます。
例え、五体満足じゃなくても、顔や足や腕を胴体さえ切り裂かれたとしても一緒に無限の時を過ごすことができるんです」
「なんて、恐ろしい場所だ。天国。というわけで、地獄の方に行こう」
「地獄の方はもっと悲惨です。想いを届かずに散った女の怨念が想い人と誤認して、鬼女たちが襲ってきます。
彼女たちは生前に愛しい人の争いが敗れて、殺されたり自殺した人ばかりで構成されていますので、
その恐怖と不安のあまりに金棒で光一さんの頭を軽く砕きますよ。砕いて砕いて砕いて、砕ききった骨を飲み干します。
でも、死ぬことができませんから、無限に鬼女のトラウマによる監禁されますよ」
「恐るべし、鬼女の執念。天国と地獄……どちらも地雷だな」
「そうですか。どちらも私にとっては幸せですよ。ずっと、これからは光一さんと一緒にいられるもん」
「そうですか」
と、俺はどちらを選んだとしても幽霊になった自分のこれからの日々は暗雲の日々が待っているような気がして、嘆息する。
果たして、好きな人と無限の時を一緒にいることが幸せであろうか。
毎日毎日、コロッケを食べていると飽きてくることと同じで、最愛の人と無限に居られることが幸福なのであろうか。
男という生き物は同じ女性ばかりだと息が詰まるのだ。
ガイドブックのように鋸を持った女性に追われるのは日常的なことかもしれない。
だけど。
由姫さんの場合は天国と地獄をどちらかを選んだとしても、
俺を狭い籠に押し込めて、一生懸命に愛情たっぷりの監禁をするので、
俺が他の女の人に目を奪われることがないかもしれない。そんな気がするのだ。人の生存本能がそう訴えているのだ。
「では。そろそろ、行きましょうか?」
「ああ。どこでもいい。俺を連れて行ってくれ」
「あの世に無事に辿り着いたら、光一さんを、光一さんを、光一さんを。きゃあ、これ以上考えたら鼻血が出そうになります」
「下手な妄想しないでください。ってか、鼻血出てるー!!」
こうして、俺と由姫さんの幽霊の日々は始まったばかり。
閻魔様、どうか、理解のある審判をよろしく。
幽霊の日々 完
以上で投下終了です。
今回も短い間でしたが、お世話になりました。
また、機会があれば投稿をしたいと思います。
藤寺さんのヤンデレ化は残念ながら没になりました。いや、本来のENDのネタは
畜生道に転生した光一と由姫さんが犬として仲良く暮らしている最中に
ヤンデレ化した藤寺さんの輪廻転生の力で転生した光一の居場所を探し出して、
自分から光一を奪い取った由姫さんを絞殺して焼却するというような残虐な描写ありで
「これからは松山くんは私と一緒に暮らすんだよ」
という感じで光一を飼うENDで終わりの予定でした。
それだと後味が悪かったので無限の監禁ENDに変更。
やっぱり、最後はHAPPYENDじゃなきゃね。
それでは。
リアルタイムGJ!
やべえほのぼのしたwヤンデレなのにw
超個人的には
>>141の展開も見てみ…ゲフンゲフン
トライデント氏、超GJ!
しかし、彼がこのスレに投下するSSと、あのしょっちゅう荒れるスレに投下するSSでは
明らかにこのスレに投下してるSSの方が読みやすい気がするんだけどナゼだろうか
作風が変わってるわけじゃないと思うんだけど…
やっぱ、ついて行けないテンションと、なんか寒いギャグが少ないからかな
ついて行けないテンションと、なんか寒いギャグ
って遠回りで言うと嫌味だろそれw
嫉妬スレに帰れ
なんか荒れそうなこと言ってスマソ
保管庫にある「黒の領域」とか、かなり好きだったからトライデント氏はギャグ分を少し薄めれば
もっと万人受けするんだろうなと思ったんだ
ちょっと同意できるけど、作者が書きやすい様に書いた方が綺麗だから良いんだよ
ヤンデレを万人受けにしたいのですね、わかります。
穴掘るのつかれた。
「死ねばいいのに」連呼しながらほるのも限界
死ね
>>150の話がどういう意味かわからない。
だれか俺にわかりやすく説明してくれ。
あまりにも長すぎるチンポなので
一部尻の穴の中に収納したらなんか気持ちよくなって
そのままフィニッシュ
あまりの情けなさに
「死ねばいいのに」を連呼しながらチンポ出し入れしてるらしいよ
>>153 貴様このスレの住人じゃないな? どこの回し者だ
このスレの住人なら確実にヤンデレの娘があの人にまとわりつく薄汚い雌豚を埋めるための穴を掘ってるんだなあ、と思うはずだからな
思いません
…思わずピンクの髪のアノお嬢を思い出した俺はエース読者
何故鳥
保管庫にあるぽけもん黒ってもう投下無いのかな
うわあ…なんて露骨な催促
眠たアアアアアイ
久々に二つ投下
「WARZONE」
小高い丘に登り地に伏せスコープを除く。
スコープ越しに広がる廃墟、今は戦場となったビル群。
大通りに視線を移し、私はあるものを探す。……発見。
朽ちて色あせたコンクリを背に一人の男が立っていた。
M4カービンを手に息を殺し壁の向こうを伺う味方の兵士。
近くには誰もいないよ、まったくもう、怖がりなんだから。
その行動があんまりに可愛らしくて、つい口元が緩む。
もっと、もっとかわいい姿が見たい……!
引き金を引く。1発の銃弾がコンクリの壁に突き刺さる。
敵襲と勘違いした男は、パニックを起こし大通りへ駆け出してしまった。
……ふへへ、慌ててる慌ててる。漏らさなかったみたい、えらいえらい。
でも……その行動、バッドネイチャー……だよー。
大通りに面したビルのひとつ、その屋上に敵のスナイパーを一人確認。
銃口の先にいるのはもちろん、彼。
敵よりも、早く、引き金を、引く。
脳漿を撒き散らし、彼はその場に崩れ落ちた。
撃ったのはもちろん、わたし。
獲物が突然死んで呆然とする敵兵も、ついでに殺しておく。
弱いとこ見せちゃ死ぬの、残酷だけどそれが戦闘なの……。
とぉるるるるるる!
こんなときに電話だ誰からか想像がつく。相手はどうやら怒っているようで。
「おい……お前いま撃ったろ?」
TVモニターを見るといつの間にか彼が目の前に立っていた。
ショットガンの銃口を突きつけて。
「クラス変えたんだぁー、でもショットガン苦手でしょー?」
「質問に質問で返すな。言ったろ!味方を撃つなって!」
「撃たなきゃ殺られちゃってたよー」
「殺ったのはお前だろ!」
「クスクス、だってぇ、クスクス、あなたが他の人に殺されるなんてぇ、我慢できなかったから……」
「……」
相手が電話を切ると同時にショットガンが火を噴く……ことはなかった。
私がBボタンを押してナイフで斬り付けるほうが早かった。
これくらいで死んでしまう……ゲームはゲーム。
さあ、このラウンドは後5分。十分逆転できる。
勝てば褒めてくれるかな……?
『ふたり』
「ねぇー、呪いって信じるー?」
「なんだよ突然、んなもんねえよ、ないない」
「クスクス、ほんとにほんとに、そうい言い切れるぅ?」
「また新しいゲームでも買ったのか?」
「ニヤニヤ、違うよー、最近二人っきりになれないからー」
「最近も何も一度もんなシチェーションはねえよ、幸運にな」
「クスクス、ほんとにぃ?」
「二人っきりになりたいから皆呪えばいいと?」
「ニヤニヤ、みんな呪っちゃおうかなぁ……クスクス」
「キメェ!ったく今日はギアーズな。ああそれと教室で話しかけるなよな!」
「ばいばーい、クスクス」
翌日
「おっはー……って誰もいねぇ!?」
「いるよー、ニヤニヤ」
「うわッ! 急にニヤケ顔で話しかけんな!キメェ!」
「クスクス、おはよぉ、ニヤニヤ」
「……後5分で授業始まるってのに、何で誰もいねぇんだ?」
「私がいるよぉ、ニヤニヤ」
「隣は……いる。うちのクラスだけ居ない」
「ニヤニヤ」
「……まさか、いやそんなはずは」
「クスクス」
「まさかお前、呪ったのか!?」
「…………」
「二人っきりになりたいからって!?」
「……なに言ってるの?呪いなんてあるわけないじゃない」
「だって昨日お前……」
「のろいなんてそんなもの、あるわけないよ」
「……そ、そっか、そうだよな、当たりまえだよな、は、ははは」
「クスクス、たぶんきっと食中毒か何かだよ、ニヤニヤ」
「…………」
「今日はサボっちゃおー、誰も来ないんだし、ねぇー、ニヤニヤ」
「ああ、そうだな……」
「クスクス、じゃ、じゃあウチ来て一緒にギアーズしよっ、チェンソー楽しいよ?ね?」
「いや……帰るわ」
「……ニヤニヤ……ニヤニヤ…………」
「わかったよ!いきゃあいいんだろ!」
「クスクス、うん、いこ、すぐいこ、はやくやろ!」
「ったく、のろい、ねぇ……」
「わーい、ふたりっきりだぁ、二人っきり、クスクス」
以上
呪田さんはヤンデレに入るのだろうか超知りたい超ユンファ
ヤンデレは男のためなら、鼻から蟻を吸い込めるのか?
吸い込めるのだ
そこは
吸い込める、吸い込めるのだ
だろ
出来る
出来るのだ
男がヤンデレに鼻から蟻を吸い込ませたことがある。
蟻酸の匂いが嗅覚を衝いたが
ヤンデレは手を休めることなく、鼻に蟻を運んでいた。
マリリン・マンソン「彼女だけには敵わない」
ギアーズやんのかww
箱○ユーザーの女さもいいな
チェーンソーは楽しいwww
一つめのはCOD?
まあGJ!
タイプCだけ例えが具体的でなんか吹いたw
前者が言葉で後者が冬子か
ヤンデレの見本としてひぐらしを扱ってる時点でなにもわかっちゃない
>>4.雪輝とその友達が野犬に襲われたとき、友達を囮にして、雪輝と一緒に逃げる。
# ヤンデレ度 ゼロ
これはアリでしょう。正常です。
糞フイタwww
>>172 落ち着け、あくまで「猟奇的なヒロイン」の代表としてしか扱っていないはず。全体的には言葉様と由乃っちメイン。
ねーちんを出すあたり分かっている……のかも知れないが、悪く言えばヤンデレ大全から進歩してないな。
>>173 それがユノにとってはただの他人だからな
囮がユノの家族や友人としたらまた違ってくるんじゃないか?
そういえば今週からチャンピオンでヤンデレ漫画が集中連載してるな
これはヤンデレ好きには見逃せない漫画だ
チャンピオンはバキしか読まないゲソ
>>178 スクール人魚とい題名で
真夜中の学校である儀式をするとスクール水着を着た人魚が出てきて
夜が明ける前にその人魚の肉を食べると好きな人と結ばれるという
ただし、人魚にイニシャルが書かれて同じイニシャルを持った人しか効果はない
二人以上で儀式を行うと一人しかその効果はない
現在、人魚の肉をめぐって女生徒二人が金属バットと刃物で対決中
少しわかりにくいがこんな感じ
わかりにくかったら直接、チャンピオンを見た方が速い
>>179 前回の読み切りも読んだ俺としてはアレはヤンデレじゃないと思う
アレをヤンデレとして扱ったらなんでもかんでもヤンデレになっちまう
恋を成就させるための手段として人間にしか見えない人魚の肉を食べるって部分と
ライバルより先に食べなければいけないって状況なだけで、そこにヤンデレとしての『病み』は感じない
『病み』がないヤンデレってどうよ?モツの入ってないモツ鍋みたいなもんだろうが
恋を成就させるための内容と手段がスプラッターなだけで本人もライバルも病んでいないぞ
しかしヤンデレではないが内容は面白い。それとチャンピオンで連載中のマイティなんちゃらって
漫画に最近出てきた女郎蜘蛛の女怪人がちょいヤンデレ気味。俺としてはそっちのほうも勧めたい
だが先々週と先週と…っつーか最初から読んでないと意味不明だから結局お勧めはできないな
まあそんなことはどうでもいいから誰かヤンデレのおっぱいを揉ませてくれ
うむ、あれをどう見たらヤンデレと認識できたんだろう?
謎すぎる
いや、俺はあれはヤンデレと思う
病みがないと言うが
あの弱そうな女の子は強そうな女の子に普段から虐められてそうで
病み要素がある
それに凶器は刃物一つで足りるのに
大量にを隠し持って
「あんな女にわたさない」といってるので俺は十分病みポイント思うぞ
それ読んでないけどデレはあるの?
>>183 読み切りの短期連載でまだデレ描写はない。ただ好きな人がいるって描写はある
好きな人がいて両想いになりたいと言うのが人魚を食う理由
デレ描写がどうとかって内容じゃないと思う
これ以上ここで語っても読んでない人には分からないしスレも荒れそうだから止めるけど
知りたい人は立ち読みでもしてヤンデレかどうか判断してくれ。立ち読みなら10分で済むからさ
ただ俺としてはアレをヤンデレとは認められないって話だ。ひぐらしのレナがヤンデレか
ヤンデレじゃないかって話よりも全否定だね。まだ舞HiMEの静流のほうがヤンデレだとry
そんなことより誰かおっぱい揉ませてくれよ
俺の胸を貸そう
(´・ω・`)
┃ω・`)
┃ミ サッ
死ね
>>184 あれ、静留がヤンデレかは微妙なとこなのか?
系統樹の方は一途な百合っ娘って感じだけど、アニメの方は結構キテた気がする…もううろ覚えだけど
「病んでる人がデレる」じゃなくて
「病むほどデレる」だと何度言えば
190 :
◆AZUNJTAzwE :2008/09/13(土) 03:12:51 ID:TLvbeUqe
投下します。
マガジン編集部。
ここにはある特殊な使命を帯びた者達がいる。
それがマガジンミステリー調査班、通称MMRだ。
彼らは少年マガジン編集者で作られた組織であり、その活動目的は人類滅亡の可能性を調査し、
それをマガジンに載せることで読者に警告することにある。
しかし、そんな彼らの活動を良く思わない連中も居たことも事実である。
宇宙人に誘拐されたこともあった。
秘密結社の妨害にも遭い、隊員の命を狙われたこともあった。
1999年には、人類が滅亡しなかったじゃないかという、抗議の電話が来たこともあった。
裁判に掛けられ、サイバンチョに有罪にされそうになったこともあった。
しかし、そんな様々な妨害にも屈せず、今日も彼らはあきらめない。
それが唯一の戦い方なのだから。
人類滅亡の恐怖は未だに終わっていない――――。
にもかかわらずヨネムラ率いる新MMRの発足に伴い、闇に消えてしまった旧MMR。
キバヤシ達に何があったのか、今こそ真相を伝えなければならない!!
緊急報告
「MMR マガジンミステリー調査班」
『14.マガジンデイズ 〜〜ヤンデレブームの裏に潜む陰謀を暴け!!!〜〜 』
―― 2008年2月 講談社本社ビル内 マガジン編集部 ――
とある昼下がり。
ここが職場であろうと、世間がいかに忙しかろうと、今日もマガジン編集部には暇人が集う。
しかし、その中でもこの男は格別であった。
「やはり、由乃はかわいいな。僕の担当の漫画家に無理矢理ヤンデレキャラを書かせてみるか」
彼は一心不乱に漫画を読んでいる。
よほどその漫画のキャラクターに心の底まで骨抜きにされているらしい。
緩みきった顔で、漫画を読みながら独り言を呟いている。
周囲には、まるでイチャイチャしている新婚のカップルのような、
シロップより甘い空気が漂っていた。
彼の名はイケダ。
MMRの隊員の一人である。
そんなイケダの呟きを聞いた、ある眼鏡の男が居た。
彼はイケダの様子に興味を持ち、声を掛ける。
「なんだ、その漫画は?」
「ん、ああ。キバヤシさん。」
イケダに声をかけたのが、MMRのリーダー、キバヤシだ。
身長182cm、体重は77kg、血液型O型。
眼鏡を掛け聡明な印象を与える姿をしているが、それに負けないだけの知性を備えている。
IQ170の超天才であるばかりでなく、日本語・英語・フランス語の三ヶ国語を扱える。
しかし彼が何よりも得意としているのは、超常現象・ノストラダムス解釈などの知識を生かし、
人類滅亡の可能性を探ることである。
キバヤシの質問にイケダが答える。
「これ、角川書店の月刊エースに連載している、未来日記ですよ。
今はやりのヤンデレヒロインが登場する漫画なんです。」
「ヤンデレ?ああ、確かひぐらしのレナとかの刃物持って暴れるような、病んでるヒロインだったか?」
「違います!」
突然、イケダが大声で怒鳴り散らす。
その反応に、キバヤシは驚愕した。
「レナなんて全然違いますよ!何言ってるんですか!デレの部分がないじゃないですか!
いいですか!?病んだ愛情表現を行うヒロインのことです!
最近は2ちゃんのヤンデレ関係のスレでも、レナがヤンデレとか言う奴が現れてスレが荒れるし、
これだから素人は」
「病んだ愛情表現?」
キバヤシは、なんでイケダ如きに怒鳴られなきゃいけないんだと内心思いつつも、
イケダの迫力に屈して、ただ聞き返すしか出来なかった。
ここで、キバヤシに声をかけるものが現れた。
「そうだって、キバヤシ。」
敬語ではなくタメ口でキバヤシに声を掛けたのは、
同じくマガジン編集部員で、女好きのナワヤだ。
彼もまたMMRの隊員であり、MMRの副リーダー格である。
ナワヤはキバヤシに問い掛ける。
「スクールデイズって知ってるか?」
「いや、知らん。俺はヤンデレなんかに興味はないからな。」
「一応俺達は漫画編集者ってことになってるんだぞ。そんな最近の有名作品も知らないのか?
一昔前のマガジンはDQN向け漫画の掲載誌だったが、今はオタク向けの作品が増えてるし、
そういう所も勉強しとけよ。」
「俺は人類滅亡の調査で忙しいんだよ…………。」
ナワヤにも馬鹿にされたと、キバヤシが落胆していると、
ここでまたキバヤシに声をかける者が現れた。
「キバヤシさん。今、みんなヤンデレにハマッているんですよ。」
もう一人のMMR隊員、タナカだ。
「スクールデイズっていうのはですね。
まあ簡単に説明しますと、ゲロ以下のクズ、伊藤誠が
ヤンデレさせる、ヒロインの桂言葉が有名なんですよ。
18禁のゲーム版のみならずアニメ版まで容赦がない展開で、
特に最後あたりが凄かったですよ。」
「最後?」
「ええ、生首抱えて、夕陽に向かって船を進める。正気とは思えない展開でしたね。」
タナカは軽く笑いを浮かべながら話した。
しかしタナカのこの言葉を聞いた途端、何故か突然キバヤシの顔色が変わった。
先程までの興味なさそうに弛緩しきった顔が、みるみるうちに思いつめた真剣な表情に変わってゆく。
「あれ?キバヤシさん、どうかしましたか?」
「船に乗って夕陽へ…………。
なあ、そのアニメを見てみたいんだが、ここにあるか?
「ああ、キバヤシさんも見ますか?ちょっと待って下さい。」
タナカは自分の机の所まで行くと、一番下の引き出しからアニメのDVDボックスと、ゲームの箱を持ってきた。
「じゃあこのDVDを貸しますね。あと、こっちのゲーム版の方はキバヤシさんにあげますからやってみて下さい。」
―― 数日後 マガジン編集部 ――
「ああ、もう!また、2ちゃんのヤンデレ関連のスレでレナはヤンデレとか、
朝倉涼子はヤンデレとか抜かしている奴が居る!
お前らみたいな、勘違いがスレを荒らすんじゃない!」
イケダはモニターに対して罵詈雑言をがなり立てている。その横の机で、ふとナワヤが呟いた。
「ここんとこ、キバヤシが出社しねえな。何かあったのか?」
ふと漏らしたボヤキに、タナカが答える。
「そうですね。もしかしてこないだ、僕が貸したスクールデイズに嵌ったのかも。」
続いて先程からモニターに当たり散らしていたイケダも、自身の苛つきをぶつけるように口を開いた。
「そもそも、キバヤシさんはとっくの昔に講談社をやめてフリーライター…………おっと。」
イケダは悪気も無さそうに口を押さえる。
この行動につられるかのようにナワヤもキバヤシをからかう発言を始める。
「まあ、あいつなら嵌るだろ。
ほら。ひぐらしの竜騎士が、何もわかって無い記者にレナはヤンデレですかと聞かれた時、こう答えていたろ。
プライドの下がりきった男性が、自分無しでは生きていけない「恋愛依存症の女の子」
を求めた結果がヤンデレであるってさ。
キバヤシの奴、さんざん1999年に人類滅亡すると煽っといてあの有様だからな。
抗議の電話が来た時なんか『何も起こらなくて良かったですね』と堂々と答えたり、
動揺してないように見えたけど、
内心は凄く堪えてたんだろ。で、誰かに認めてもらいたいって
願望がついにヤンデレ好きという性癖になったわけだ。」
「…………い。」
「プライドの下がりきったキバヤシはヤンデレに愛されるのが嬉しくてたまらなかったってことだな。」
「……おい。」
「これで自信をつけたら、また滅茶苦茶な事を言い出すんじゃねーの、ははは。」
ん? お前らどうかしたのか?」
気が付けば、何故かイケダとタナカは気まずそうに頬を引きつらせていた。
ナワヤは少しの間彼らを見続けて、ようやく彼らが自分の後ろを見ていることに気付き、
ゆっくりと振り返った。
「………………うおっ!!!!」
「おい、ナワヤ。」
キバヤシだ。
鬼気迫る表情のキバヤシが、そこに居た。
何日も徹夜したのか、充血しきった目の下には大きな隈が出来ている。
「な、なんだ、来てたのか!?急に現れるなよ!」
ナワヤは、自分が言った事を聞かれた為にキバヤシが怒っていると思い、気が気ではない。
しかし次にキバヤシの口から出たのは、予想していた咎めの言葉ではなかった。
「ナワヤ、タナカ、イケダ。今から取材に行くぞ。既にアポは取ってある。MMR出動だ!」
「え、MMR出動って…………取材ってどこに?」
「スクールデイズの制作会社、オーバーフローだ。」
―― 数時間後 オーバーフロー本社前 ――
「全く、キバヤシさんは何でこんな所に取材する気になったんだろ?
人類滅亡にでもなんか関係があるんですかね?」
オーバーフローの社屋を見ながら、イケダが愚痴をこぼす。
するとナワヤが、手を叩いた。
「あっ、そうか。あいつもヤンデレにハマッたんだよ。
だから取材って名目で、色々聞いてみたくなったんだよ。」
少し遠くで、オーバーフロー本社を見上げているキバヤシを指差して、
ナワヤはほくそ笑む。
しかし、そんなナワヤに意義を唱える者があった。
「それは違うと思います。」
タナカだ。
「思い出して下さい。キバヤシさんはMMR出動だって言ってました。
つまり今回の取材は人類滅亡に関することでしょう。それに」
タナカがオーバーフロー本社へ向き直り、ビルを見上げた。
この新宿の高層ビル群にそびえたつ威風堂々した数十階立てのビルは、
天高くそびえ立ち、威圧するようにこちらを見下ろしている。
「以前、アニメ放送中止の危機の時にオーバーフローの建物で試写会やりましたよね?
スクールデイズの新品をまた買わせようって言うのかと、さんざん叩かれた奴です。
実はその時、僕は試写会に行ったんです。しかし」
「試写会って、お前まさか、わざわざ新品のスクールデイズ買ったのか?
って、もしかしてキバヤシにあげたのがそれか?」
ナワヤの指摘に、タナカは少し恥ずかしそうに笑った。
「ええ、実は。で、その時オーバーフローの会社に行ったんですが、
ここじゃなくてもっと普通のアダルトゲームの会社と同様で、小さい建物でしたよ。
それなのにほら。」
ビルの前の、トマルが指差した場所には看板がある。そこにはオーバーフロー本社ビルと書かれていた。
「数日前にこのビルに引っ越したらしいですが、
今じゃこの巨大なビルが、全て丸ごとオーバーフローの本社ですよ。
なにかアダルトゲーム以外の巨額な収入があるとしか思えません。」
「まあ、確かにな。」
ナワヤが呟くと、他のMMRメンバーもただ黙ってビルをじっと見上げた。
―― 数分後 オーバーフロー本社 応接室 ――
「どうもこんにちわ。メイザーズぬまきちです。」
「マガジン編集部のキバヤシです、取材にご協力頂き、ありがとうございます。」
「なんでも、ヤンデレについての話をお聞きしたいとか。」
「はい。それなら昨今のヤンデレブームの発端であるスクールデイズのシナリオを書いた、
あなたに聞くのが最善と思いまして。」
「なるほど。では何から話しましょうかね…………。」
通された部屋は、こじんまりとした応接室だった。
MMRの5人のメンバーと取材相手のぬまきちが丁度入れるぐらいの大きさである。
しかし、ここに通されるまでに見た会社の様子は想像以上だった。
引っ越し直後のためか、社内には未開封のダンボールが置いてあったりと雑多であるものの、
まるで大企業にすら思える程の数の社員が働いており、とてもアダルトゲーム会社とは思えない活気である。
普通アダルトゲームの会社など、社員がせいぜい10人居ればいい方であるのにだ。
インタビューは長い間、続いた。
ぬまきちの応対は丁寧で、好感が持てるものだった。
MMRのメンバーも取材とは名ばかりで、各自聞きたい事を質問している。
この場にいる誰もが笑みを絶やさず、和やかな雰囲気がこの場に満ちていた。
ただ一人、浮かない顔をしているキバヤシを除いては。
そのキバヤシが、ふと言葉を発した。
「あの。質問させてもらっても構いませんか?」
「ああ、キバヤシさん、でしたね。なんですか?」
キバヤシは詰問するような眼差しで、ぬまきちを見据えた。
「あなたの考えをお聞きしたいんですが、
昨今のヤンデレブームって、もしかして誰かが仕組んだものだとは思いませんか?」
「な、何を言ってるんですか。」
それまでの和やかな談笑の場に、唐突に放たれた疑念の篭ったキバヤシの声。
気圧されたのか、ぬまきちの顔に若干の焦りが浮かぶ。
「それにもう一つ聞きたいんですが、この会社の事業、本当にアダルトゲームだけなんですか?
最近になって、急にこんな大きなビルに引っ越して従業員を大量に増やしたりしてますよね。
もしかして、この会社は他に何か巨額の収入が得られる事業でも始めるんじゃないですか?」
「……っ!!」
ぬまきちは顔を暗くしたまま、沈黙する。
居たたまれなくなるような重い空気が場に満ちていく。
それがしばらく続いた後、ぬまきちは顔を背けたままポツリと呟いた。
「…………帰ってくれ。あんたらに話すことはもう無い。」
「しかし――」
「この後に用事があるんだ。これ以上話す時間は無い!!!」
ぬまきちは大声で怒鳴ると、力任せに扉を閉め、出て行った。
その場に居る誰もが沈黙し続け、しばらく経った後、ようやく各々が口を開き始めた。
「キバヤシさん。さっきの発言で怒らせちゃいましたかね。」
「キバヤシ!お前のせいだぞ!もっと聞きたいことあったのに!」
「それにしたって、急にあんなに怒ったりして…………妙ですね。
キバヤシさん。ぬまきちさんって、もしかしてなにか隠しているんですかね。」
MMRの面々は口々にキバヤシに対して言いたい事を口にする。
しかしキバヤシはそのどれも意に介さずに言った。
「確か、さっきのインタビューの最中にぬまきちはこう言っていたな。
このビルに移ってからは、開発室の自分の机の他に、自分専用の仮眠室があると。」
「ああ、さっき確かに言ってたが。どうかしたのか、キバヤシ?」
―― 十数分後 ぬまきちの仮眠室 ――
「まずくないか、キバヤシ!?
勝手に入っちゃって…………。」
怯えた声でナワヤが言った。
先程のインタビューの後キバヤシが、ぬまきちの部屋を調べてみようと言い出したのだ。
そして勝手に社内を歩き回り、ぬまきちの仮眠室を見つけ出したキバヤシ達は、
ぬまきちが居ないのを確認したのち、室内に入った。
小ざっぱりとした室内を見渡すと、そこにあるのは仮眠用らしきベッドとパソコンの置かれたデスクだけ。
タナカが言う。
「ここにあるのはパソコンくらいのようですね。キバヤシさん、ちょっと調べてみましょうか?」
「ああ。」
キバヤシの同意を聞くと、タナカは椅子に座り、パソコンの電源を入れた。
セキュリティ意識が甘いのかパスワードも設定されていなかったために、
あっけなくデスクトップの画面が映る。
「随分あっけないな。」
「外側からのハッキング等は警戒しても、こうやって直接進入されるのを警戒しない人間は多いですからね。
じゃあ、とりあえず…………メールから調べてみましょうか。」
タナカはマウスを動かすと、メールソフトを立ち上げた。
「まずは、送信済みトレイから…………お。今日送ったメールがあるな。
じゃあこれから開いて…………ん、なんだこれは?
最新のメールには件名が書かれておらず、送信者が『RS』とだけ書かれていた。
本文にはこう書かれている。
『明日、言葉の会議には出席する。5時にはそちらに着く。』
「『言葉の会議』? なんですかね、この予定。この『言葉』ってやっぱり言葉様のことですかね?
もしかして言葉様ファンの集会に招かれたとか?」
タナカの指摘にMMRの面々はその意味を考え込む。
そのため、メンバーの中に気付いた者は一人もいなかった。
彼らの後ろで、画面を食い入るように見つめながら青ざめているキバヤシの様子に。
「まあそれはそれとして、まずメールの宛先を調べてみましょう。
えーっと、宛先は……あれ? アドレスの末尾が .go.jpになってますよ。
宛先は日本の政府機関ですね。」
「政府機関?」
ナワヤが聞き返す。
「ええ。メールアドレスの末尾で属性がわかるんです。例えば .coなら通常の株式会社
.acなら学校等の教育機関。で、.goなら国の機関です。
まあ、とりあえずググってみましょう。」
イケダはマウスを握ると、グーグルを開き、メールアドレスの@マークから後ろ、
ドメインの部分を検索にかける。
一瞬の後に検索結果が表示された。
一番上のサイトをキャッシュで開く。
Webサイトの画面に切り替わり、徐々に全体が表示されていく。
病院等のWebサイトに主によくみられる、白を基調とした清潔感を感じさせるページだ。
一番上には、こう書かれていた。
国立遺伝子研究所、と。
「国立遺伝子研究所?」
タナカはマウスを動かし、画面を下の方にスクロールさせる。
検索したドメインと一致した部分が、色が変わって表示されていた。
問い合わせ用と書かれた、メールアドレスの部分だ。
「ここの問い合わせ用のメールアドレスと、ぬまきちさんのメールの宛先のアドレスは
ドメインの部分が一緒ですね……。
つまりあのメールは、この研究所の人間に向けて送ったものでしょうね。
まあ、誰に宛てて送ったのかはわかりませんがね。」
「ますます、『言葉の会議』の意味がわからねえな。
理系の研究者とかってオタが多いとはいえ、
まさかここでファンの集会なんかやるわけないよな。」
「まあ、考えても埒があきませんし、他のメールもありますから、そっちを読んでみましょうよ。」
タナカはナワヤとの会話を打ち切り、別のメールを開いてみようとする。
だが、そうされることは無かった。
彼の後ろに居るキバヤシの携帯電話が、突然鳴ったからだ。
キバヤシは誰からの電話なのか、確認もせずにすぐに電話に出た。
「イケダか?」
「キバヤシさん、ぬまきちさんが戻ってきました!」
「わかった!」
ぬまきちが戻ってくることを警戒して、エレベーターの見える所で見張りをさせていたイケダ
からの連絡だった。
キバヤシはすぐに電話の内容をメンバー全員に告げる。
「ぬまきちが来た! 気づかれる前に非常階段から逃げるぞ!」
ビルの合間の路地裏で、全員が大きく呼吸し、必死に酸素を取り込んでいる。
どこをどう走ったのかは、分からない。
気がつけば全員がオーバーフロー本社から遠く離れた場所の、この路地裏に居た。
追っ手の姿は無い。
どうやら無事に逃げ切れたようだ。
タナカが口を開く。
「はぁ……なんとか逃げられたみたいですね。
あれ、キバヤシさん?」
不審な様子のキバヤシにタナカが声を掛けたが、
地面を見つめたまま全く意に介そうともしない。
そのままの姿勢で、言った。
「そうか……そういうことだったのか。」
「え? どうしたんだ、キバヤシ?」
キバヤシは顔を上げ、メンバーの方を見据る。
そしてありったけの大声を言い放ち、断言した。
「やはり間違いない!人類滅亡の危機はまだ終わっていなかったんだ!
昨今ヤンデレという言葉が生み出されたのは、ただの偶然じゃない!
影で恐ろしい陰謀が進められていたんだよ!」
恐ろしい陰謀!?
MMRのメンバー全員の頭の中で、キバヤシの言葉がこだまする。
そんな彼らの姿を、頭上のビルの監視カメラは、ただひたすらに凝視していた。
ヤンデレブームの陰で暗躍する、恐るべき者達――――。
真相に辿り着いた我らMMRに、戦慄の結末が訪れる!
★次号(後編)に続く★
投下終了。
この作品はフィクションです。 実在の人物、団体、事件などにはいっさい関係ありません。
仮に抗議が来たら、キバヤシ隊長の如く「何も起こらなくてよかったですね」と答えます。
これを書くに当たって資料としてMMRが欲しかったんですが、
新品もどこの書店に行っても無いし、通販でも扱ってないし、
しかもどこのブックオフに行ってもやはり置いてなくて困りました。
よって自分の記憶と、後はググって書き上げました。
それでも、多分MMRのお約束は守れていると思います。
・版権モノは専用スレでお願いします。
投下するとこ間違えてますよ
噴いたwwww
続き期待して待ってます
GJ
しかしこの作品はどのスレ担当になるんだw
専用スレがないスレ辺りに続きを投下して誘導という形がいいんじゃないかなぁと
面白いからここで良いよ。前編と後編で違うとこに書くのもナンだし。
「話は聞いたわ! お姉ちゃんのおっぱいなら死ぬほど揉んでいいわよ!」
俺の部屋のドアをバーンと開け放ちながら姉ちゃんが入ってきた。その発言の異常さもさることながら、彼女の目はその発言以上に異常な熱を帯びているから困る。
理由は単純だ。俺がとある掲示板に『そんなことより誰かおっぱい揉ませてくれよ』なんて書き込んだからだろう。あれほど人のパソコンを勝手に同期するなと言っているのに。
「はいはい、分かったから帰ってね。俺忙しいから」
俺はそういいながら追い払うように手を振る。しかし姉ちゃんはまるで聞く耳を持たない。持つような人間だったら最初から苦労してないが。
「そうよね! お姉ちゃんのおっぱい揉むのに忙しくなるのよね! 好きなだけお姉ちゃんのおっぱい揉ませてあげるから、だからこの網外して!」
姉ちゃんはフローリングの床の上をじたばたとのた打ち回りながら相変わらず気の狂った台詞をはいてくる。ちなみに彼女は今ワイヤーの編みこまれた網に絡まっている。
こんなことが日常茶飯事だから、俺は自分の身を守るために常にいろんなトラップを自分の部屋から学校の自分の机の中まで張り巡らしているわけだ。
んでもって彼女はそのトラップに見事にかかってくれたわけだ。姉ちゃんの行動は俺一直線だから実に読みやすい。
ちなみにこの間までワイヤー無しのただの網だったが、「愛の力よ!」なって言いながら引きちぎられてしまったために現在はワイヤー入りになっている。どんな腕力だ。
「お姉ちゃんはか弱き乙女なの……。でも恋する乙女はか弱いだけじゃだめなのよ。愛する人を抱きしめる力強さが必要なの!」
これは姉ちゃんの弁だ。ちなみに、もし俺だったら網を引きちぎるほど力強く抱きしめられたら即別れを切り出すと思う。
でもそんなことを言ったら、
「もう、私が抱きしめるのは弟くんだけよ。焼き餅焼いちゃってー」
なんて返されるのだろう。まるで話が通じない。餅なんて焼いてない。というかお前を焼いてやろうか。
「俺、巨乳より貧乳が好みなんだよね」
俺はもがく姉ちゃんにそう言ってやった。
「もーう、弟くんったらお姉ちゃんをからかってー。お姉ちゃんは知ってるんですからねー。弟くんは大きな胸が好きだってこと。だからお姉ちゃん頑張ったんだからね。
牛乳飲んで、運動して、弟くんのことを想いながらたーくさんオナニーして……もう、恥ずかしいこと言わせないでよっ」
姉ちゃんは頬を赤く染めながらくねくねしている。言わせてねえよ馬鹿。
「でも、この胸はあなた専用なんだからね、好きなだけ揉んでいいのよ。……キャー、言っちゃったー! 恥ずかしー!!」
そう言って網に絡まったまま器用に胸を寄せてアピールする。
確かに姉ちゃんの胸は大きい。スイカ、姉の胸、スイカ、と並べられたら、姉ちゃんの胸が分裂したかと誤解するほどだ。
…………ごめん、それはさすがに嘘だ。だが、かなり大きいことは紛れも無い事実である。
「姉ちゃん、人の嗜好ってのは変わるもんなんだよ。確かに俺は昔は巨乳が好きだったさ。しかしそれは母性を求める幼児性の表れだよ。少年は男へと成長し、母性の象徴である豊かな胸よりも、若さの象徴であるちっぱいを求めるようになるんだよ」
俺のその言葉で、先ほどまでじたばたしていた姉ちゃんの動きがぱったりと止まった。うつぶせなので表情は見えないが、おそらくこの世の終わりを告げられたかのような表情をしていることだろう。いつものことだ。
「……嘘……。そんなの嘘よっ!」
姉ちゃんは感情的に大声を上げた。俺はそんな姉に止めを刺すべく、耳元でささやく。
「ちっぱいには無限の可能性が詰まっているのさ。脂肪の詰まった巨乳とは大違い。無駄な努力、ご苦労様」
姉ちゃんの体がビクンと跳ねた。
「あぁああぁあああああああぁあああああああああああああああああ!!」
おおよそ姉ちゃんの風体からは想像もつかないような絶叫が俺の部屋に木霊する。網の糸がブチブチとちぎれ、ワイヤーさえも悲鳴を上げる。
「弟くん間違ってるよちっぱいは犯罪なんだよ弟くんが犯罪者になっちゃうそんなのダメだよお姉ちゃんのおっぱいで弟くんを正気に戻してあげなくちゃそうそうだよまったく弟くんはお姉ちゃんがいなきゃホントにダメなんだから……」
姉ちゃんは肺の空気一杯叫び終えた後、深く息を吸い込むと今度は支離滅裂なことをノンストップで口走り始めた。
やりすぎた。
俺は慌てて改造スタンガンを姉に押し当てた。姉ちゃんの体がビクビクと痙攣し、あっさりと停止した。姉ちゃんは「あ……」とか「う……」とか言葉にならない言葉を漏らしている。
俺は姉ちゃんを網から出すと姉ちゃんを抱え上げた。
そして姉ちゃんの部屋に入る。姉ちゃんの部屋はぱっと見は女の子らしいとても可愛らしい感じの部屋だが、それは俺の嗜好にを意識しての工作だ。
実際には本棚から一冊本を引き抜けばそこには無数の俺の写真が挟まっているし、ぬいぐるみの背中を開けてみれば俺の髪の毛やらなんやらが入っていたりするというとても恐ろしい仕様になっている。
まあそんなことは今更なのでほうっておいて、姉ちゃんをベッドに寝かせると、姉ちゃんの机の引き出しからおそらく俺を拘束するために用意したと思われるロープを取り出して姉ちゃんの両手両足を縛っておいた。
まあ姉ちゃんは「私たちの愛はどんなものでも縛ることなんてできないのよ!」なんて言ってあっさりと抜けてしまうから意味はあまりないんだが、気休めにはなる。
「弟……くん」
俺が部屋を後にしようとすると、姉ちゃんから声をかけられた。熊でも一撃昏倒、人間だったらこれ死ぬんじゃね? クラスの電流を喰らっておいてまだ意識があるとは。今更ながら恐ろしい姉だ。
「何? 姉ちゃん」
「ちっぱいが好きだなんて……嘘だよね?」
姉ちゃんは半ばうわごとのように俺に尋ねる。よっぽどショックだったのか。
「もちろん、ただの冗談さ。俺が好きなのはあくまで巨乳だよ」
「ホントに!? よかった……」
俺のその言葉を聞くと、姉ちゃんは満面の笑みを浮かべながら気絶した。ま、数時間もしたらケロッとしてまた俺の部屋に突撃してくることだろう。
「あー、おっぱい揉みてえ……」
俺は自分の部屋で一人、そう呟いた。
上のほうの書きこみを見てついやってしまった。もう言わなくても分かると思うけど続かない
今回はいろいろとやっちゃった感があるけど、まあセーフだよね。……だよね?
>>212 姉ちゃん可愛いよ姉ちゃんw
姉スキーにはたまらないのでもっとや……続かないのかw
でもGJ
つまりあれだな、ID:x2nqVSXhがうらやまけしからんということだな
>>211 これにスパーハッカーな幼馴染もいたらいいな
┃
┃ω・`) ……
┃ω・`)
>>212ありがとうGJ!
┃ω・`) でも俺まだおっぱい揉んでなくて手が寂しいんだ……
┃ω・`) ……自分の尻でも揉んで我慢するか……
┃ω・`) ………
┃ミ サッ
弟は結局巨乳が好きなのか?
巨乳が好きとかそういう次元じゃなくおっぱいのことごとくを愛してるんだよ
大きいおっぱい、 小さいおっぱい、そんなの人の勝手。
本当におっぱい好きな男なら、どんなおっぱいでもイけるよう頑張るべき。
貴方の様な紳士になりたい
そのおっぱいへの情熱はすばらしいが
我々はヤンデレのおっぱいでしか興奮してはならない事を忘れてはいけない
だがあえて泥棒猫のおっぱいで興奮してみる
そろそろ半裸になって座って待つか
おっと私としたことが相棒のティッシュを忘れてしまった
いったい貴様はそれをなんに使うつもりだ
兄に同情して泣くんだよ
ジミーカワイソスジミー
ふぅ…
>>229 お前、まさかジミーで!?
ヤンデレではなくジミーで!?
う、裏切り者!!
ふぅ
おはようございます。
清算編第三話(累計で二十六話)を投下します。
***
「え、もう帰った?」
放課後になって、一年の妹のクラスへすぐに向かったら妹の姿は無かった。
それならばと弟のクラスへ行ったら、妹と同じく弟も居なかった。
で、クラスメイトの子に聞いたら、もう帰った、ですって。……何よそれ。
詳しく聞いたら、帰りの教師からの連絡を聞いた後、誰よりも早く教室から出て行ったらしい。
ちなみに、今日の弟は日直だったわけでも、何かの当番だったわけでもないという。
おかしいわね。それじゃあ、なんで朝食も食べずに一人で登校したのかしら。
これじゃ、まるで避けられてるみたいじゃない。
……けど、まさか。
弟が私を嫌いになるとかそんなこと…………ある訳無いわよ、ね?
「ふあぁ………………たーいくつぅ……」
はしたないぐらい大口を開けてあくびしてしまう。
こうして一人で歩いて帰るって言うのも久しぶりだわ。
いつもなら弟と妹が一緒に居るところ、もしくは弟を掴まえて一緒に帰っていたから。
ちなみに妹はあえて探さない。弟を掴まえてしまえば後で追いかけてくるんだもの。
二人が居ない時は、クラスに残っている友達と一緒に帰ってたし。
下校途中、妹はよく言ってたわね。
姉さんもそろそろ彼氏でも作ったらどう? とか。
おおかた、弟と二人きりで帰りたいからそんなこと言ったんでしょうけど。
簡単に言わないで欲しいわよ。できそうにないのよ、恋人なんて。
誤解しないでね、妹。これでも私、結構告白されたりするんだから。
ラブレター渡されたりとか、修学旅行とか文化祭の最中に呼び出されて。
いい返事をしたことは一度も無いけど。
女友達には、弟君よりもむしろあんたに彼氏ができないことの方が問題よ、ガード固すぎ、なんて言われてる。
そう言われてもね……付き合おうって気分にならないんだからしょうがないじゃないの。
深い関係になろうと思えない。遊ぶだけなら友達でもできるし。
友達のままじゃできないことをするために付き合うのかもしれないけど、そういうの、私にはまだ早い。
だって、自分の体を男の人に全て委ねるなんて考えられないわ。
キスされたりとか、おっぱい揉まれたり、お尻を撫でられたり……クラスの男の子にそんなことされたら、まず叫んで、次に殴るわね。
そういうことされても許せる男の人って、見たことがない。
顔のつくりなら弟、男らしさならお父さん、っていう基準があるから、そこを超えないと特別に見られない。
テレビに映る人ならそんな人も居るけど、身近には居ない。
それはつまり、男の人に恋したことが無いってことなんでしょうね。
ああ、これじゃあ恋人ができないのも当たり前か……。
ぼんやり考え事をしているうちに、自宅の前まで辿り着いていたらしい。
腕時計で時刻を確認すると、いつもより少しだけ早い時間に帰宅していたことがわかった。
一人で帰ると会話をする相手が居ない分、早く歩いてしまうらしい。
玄関を開ける。
まっさきに見えたのは投げ出された二つの鞄と、ひっくりかえった二足の靴。
きっかり二つずつということは、弟と妹の物ね。
あの子達、私を置いて二人きりで帰っていたわけ。
はあ……親離れならぬ姉離れ、ってやつかしら。お姉ちゃん寂しいわ。
でも、そろそろそんな時期なのかもね。
高校を卒業したら私はこの家から離れた大学に通うから、一人暮らししないといけない。
そうしたらもちろん家族とは毎日会えなくなる。
勉強を真剣にする気になれないのは、たぶんどこかで今の生活を手放したくないと思っているからなんでしょうね。
友達の言うとおり、やっぱり私はブラコンでシスコンだわ。
ま、悪いとは思ってないから、今更性格を変えるつもりなんかないけど。
二人の靴を揃えてから、鞄を二つとも抱えて二人の部屋へ向かう。
……姉離れ、か。
じゃあ部屋に入るのも自重しなきゃいけないのね。
しょうがない。こっそりドアを開けて鞄を中に置いておこう。
ノックせずにドアノブをゆっくり回して、音を立てないよう開く。
そのまま隙間から鞄を入れようとしたところで、異変を耳が捉えた。
――泣き声?
この声、妹よね。
ということは、今の妹は泣いているの?
……ここは引いて放っておく? それともあえて踏み込んで慰める?
逡巡する時間、呼吸一回分。
慰めることを決断して、ドアを開き部屋へと足を踏み入れる。
――そして、私は凍り付いた。
予想だにしなかった光景を目にして、自分が果てしなく遠い世界に立っているような感覚に囚われた。
「え? ……な、何? いきなり、何なの、これ……?」
制服のシャツ一枚の弟と、制服をはだけさせた妹が、ベッドの上で絡み合ってた。
妹はうつぶせのまま腰を上げてた。スカートをめくれ上がらせたままで、ショーツを穿かず。
ふとももとお尻をさらけだした、半裸の状態。
妹のお尻に弟の腰がくっついてる。
二人の下半身がくっついて、離れて、くっついて、離れて、くっついて、離れて……それがずっと続く。
パンパンっていう、ぶつかる音が聞こえる。
弟は妹の腰を掴んで離さない。引き寄せて、乱暴に、執拗に、妹を下半身で突き続ける。
妹は弟の名前を呼びながら、切ない声で鳴いてる。
気持ちいいとか、もっと突いてとか、卑猥な叫び。
今まで聞いたこともない、妹の――女の部分が上げる声だった。
二人とも私に背中を向けていて、私が居ることに気付いていない。
誰だか知らない人間二人が忍び込んで行為に浸っているなら、まだ良かった。その方が救いがあった。
でも、泣き声は妹のもので、荒い息づかいは弟のものだった。
何より、その背中が――ずっと見続けていた二人の背中とそっくりだった。
何をやっているの……兄妹で、家族同士で。
違うでしょう?
二人ともそんな子じゃなかったはずでしょう?
どうして、どうしてどうして、どうして、なのよっ!
「何やっているのよ、あんたたちはっ!」
叫ばずにいられなかった。
叫ばないと、痴態をとる弟と妹に何もしないまま、言いたいことも言えないまま、その場から逃げてしまいそうだった。
自分の口から吐き出された言葉は、もはや思考のフィルターを介していなかった。
振り向いた二人の顔が見えない。
黒く塗りつぶされて、ぐにゃぐにゃに歪んでいて、私には理解できない。
「兄妹で! 弟と、妹なのに! こんな、おかしい……絶対に、しちゃいけないこと!
こんなの! 嘘でしょう?! 冗談でしょう?!
嘘って言いなさい、全部が、嘘だって!
ただの、悪ふざけだって……言ってよ!
…………お願いだから、お姉ちゃんの、お願い、聞いて…………」
膝から力が抜けた。壁にしがみついて、倒れないようこらえる。
吼えても、怒鳴っても、泣いても、乱れた感情が治まらない。
涙が勝手にあふれ出てくる。併せて情けない嗚咽の声が漏れ出でる。
一体、何がいけなかったっていうの?
私はただ、仲の良い姉弟で居たかったのに。……たった、それだけなのに。
そんな単純な願いさえ、私は願うことが許されないの?
「…………たすけ、て……」
誰か、助けて。
喉がせき止められて呼吸ができない。
鼓動がどんどん早まっていく。
目眩がして、視界が歪み、霞んでいく。
体が床にぶつかった。
立ち上がる気力が無い。
何もする気が起きない。
私はもう、二人を止められない。
***
「髪が黒のロングの、後輩の女の子?」
「そう。たぶん葉月さんと同じぐらいの長さなんだけど、見たことない?」
約一週間ぶりとなるごくありふれた下校風景の中に俺は居た。
しかし同時に、あまりにも以前と変わらないこの状況に、違和感も覚えていた。
下校時間、一緒に帰る人は葉月さん、二人とも制服姿。
違うところがあるとすれば俺の腕にギプスががっちりと装着されているぐらい。
それ以外は、全く何ら変わりない。
そう――――不気味なぐらいに。
「んーー……知らないなあ。一年生って言っても全員知ってるわけじゃないし。
それ、葵紋って子が髪を黒く染めただけじゃないの?」
「まあ、あいつの髪の色は元々黒だけど。
朝にあいつを見た時は紛れもなく金髪だったから、放課後までに染め直すとは、ちょっとね」
「へー、そうなんだ……」
葉月さんはそこで唇に指を当て斜め上に視線を向けた。
これは葉月さんが何か考えている時の仕草である。
「ねえ、一つ聞いていいかな?」
「いいよ。答えられないことじゃなければ」
「どうしてその子と話をしたの?」
……どうして、と言われましても。
俺が後輩と会話しちゃまずいのか?
「後輩の女の子と話すために、放課後になったらすぐに教室を飛び出していったの?
いつからその子と知り合ってたの? どれぐらい仲を深めたの?」
質問が増えている気がするが、そんなつっこみも入れにくい。
というか、葉月さんは何か勘違いしているみたいだ。
「俺がその子と会ったのは今日が初めてだよ。
だって去年の文化祭から一度も一年の教室なんか行ってないんだから」
「……本当に?」
「本当だって。そんなことで嘘吐いて俺に何の得があるのさ?」
「得はないかもしれないけど、ごまかすことはできるじゃない。
私だってあなたのこと全部把握しているわけじゃないんだから」
まあ、そりゃそうでしょう。
というか、全部把握してもらっちゃ困る。
俺が家で何をしてるかなんて、絶対に知られたくない。
変なことしてるから、じゃない。
例えば、俺が風呂で体を洗う時どんな動きをしているかとか、改めて考えると恥ずかしくなってしまうことを知られたくないだけだ。
「だいたい、今日会ったのも偶然だし。
それに話をしたって言っても、なんだかよくわからないこと言われただけで終わったし」
「よくわからないことって? 例えば?」
「ん……俺の運命の相手とか、その人とすでに会っているとか、そういう話」
突然、左を歩いていた葉月さんの姿が消えた。
振り返る。葉月さんは右足を踏み出した姿勢のまま一時停止していた。
これは――振りか?
「…………だるまさんが転んだ」
「いえ、別にそういう遊びをしてるつもりはないんだけど。
ちょっと待ってよ…………私にその女の子のことを聞いてきたってことは、
正体も何もさっぱりわからないからなの?」
「そうだよ。じゃなきゃ、わざわざこんなこと聞いたりしないって」
「えっと、あれ、あれ?
待って待って。そこで止まってて。考え直すから」
眉間を揉みながら考える仕草をする葉月さん。
わけがわからない。
なぜ俺でなく葉月さんが考え込んでいるのだろう。
俺はそんなに難しい話や、的外れなことを言ったりしたのか?
思い返す。
…………しかし、思い返してもわからない。
「私が放課後あなたに話しかけるまで何をしていたか、知ってる?」
「さあ? 何か用事でもあったの? 図書室で担任に本の整理させられたりとか」
「いえ、そうじゃないの。実は、一年生のクラスに行ってたの。
そこで私は…………さすがにここまで言えば、わかるよね?」
「そうだったんだ。でも何してたのかはわからないよ。
弟でも探してた? 弟なら今日は花火と帰ってたみたいだよ」
「違うわよ! えっと、私、私は…………」
そんな何か言いたげな顔をしなくても、言ってしまえばいいのに。
俺が正答することを期待してもらっても、生憎葉月さんの行動などわからないのだから答えられない。
俺だって葉月さんのことを全て把握しているわけではないのだ。
「あう、あー、あああああ……………………まさかここまで鈍いだなんて思わなかった。
てっきり気付いてると、ノッてくれてるんだとばかり……」
ため息をつかれてしまった。肩までがっくりと下がっている。
どうやら俺は葉月さんの期待に応えられなかったようだ。
だからって、ここまで落ち込まなくても。
「ごめんなさい。今日はここで」
「いや、どうせだから葉月さんの家まで送っていくよ」
「ううん、いいの。予定が狂っちゃ……変わっちゃったから。
…………今日はちょうど良い日だから、別の日は駄目だし」
「ん? 何か言った?」
「ううん、なんでもない。また今度送ってね。それじゃあ、バイバイ」
俺を置き去りにして葉月さんは駆け出した。
路地を曲がり、姿が見えなくなるまで、俺の足は動かなかった。
そういえば、俺って葉月さんを傷つけてたんだっけ。
それなら、家まで送ってもらいたくなくなるのも無理はない。
下校時は送るのが習慣になってたから、すっかり忘れてしまっていた。
いかんな、こんなことじゃ。早く今の環境に溶け込まないと。
それにしても、ネタばれとはなんのことだったんだろう?
家に到着し、真っ先に向かうはマイルーム。
制服を脱ぎ、左手を使ってハンガーにかける。
ここまでは概ねいつも通り。
さて、この次は…………何をしよう?
考えてみると、今の俺は何もすることがない、いや何もできない。
だって、右腕が使えないのだ。
学校から家に帰って最初にやることと言えば、俺の場合はその日の授業の復習と課せられた宿題をこなすこと。
が、筆記用具を持てなくてはそのどちらもできない。
俺の左手ができることと言えば、せいぜい本のページをめくるぐらいのもの。
試しに左手で文字を書いてみたら、いつのまにかこの世の誰にも読めないような図形が二行にわたって記されていた。
何せアラビア数字の一が三角形になってしまうのだ。
それを消そうとして消しゴムで擦ると、上手く消せないときたもんだ。
ノートなどとらなくても勉強できる人はできるのだろう。
だが俺は違う。
自慢にならないが、むしろ隠すべきことだが、メモやノートをとらないと勉強できないのである。
ノートに書き写すのだって、自分がわかりやすいように書いているだけで黒板を丸写ししているわけではない。
家で復習する時、ああこんな内容だったなと思い出せるように書いている。
先生のコメントがページの隅っこに書かれていたり、自分なりの解釈が書かれていたり。
よって、俺のノートは俺以外の人間が見てもほぼ理解できない。高橋すら例外ではない。
そんな高橋のノートはというと、黒板丸写しだった。
しかもあの男、黒板に合わせてノートを横書きしている。
これはこれで、本人にしか理解できないノートだ。
しかし、借りてきた以上は有効活用せねば。昼休み時間にジュースを奢る約束もしているわけだし。
高橋ノートと格闘しつつ、今日受けた教科の復習を終えた頃には、外の景色は夕方を通り過ぎていた。
二月中旬の日の暮れは早い。
さて、せっかくノートを借りたのだ。お次はこいつをコピーしよう。
コピーするとなれば、我が家ではコンビニを活用せねばならない。
そのコンビニは歩いて二十分以上かかる距離にある。
とてもではないが、行く気分ではない。
ここは兄の強権を発動するとしよう。弟の出番だ。
玄関に弟の靴があったから、きっと花火とアレやコレをすることなく帰宅しているはずだ。
そういえば……あの二人、今はどういう関係なんだろう。
今朝の様子を見る限りでは、ちょっとだけ仲を深めているように見えた。
でもあの時は人目があったからお互いに遠慮していたはず。
澄子ちゃんの件を機に何らかの変化が生まれたのは間違いない。
今日二人一緒に帰ったのだって無関係ではあるまい。
弟が身の回りに警戒して花火と一緒に帰るようになった。
そして、花火は弟を守るために他の人間を近づけないようにしている。
少なくとも何の変化もないというのはありえない。
せっかくだから、付き合っているのか聞いてみようか。
弟は前々から花火のことが好きだと言っていたのだから、隠したりはしないだろう。
嬉々として交際している事実を話されたら、もしかしたらジャブをお見舞いするかもしれんが。
言葉ではなく、拳的な意味で。
決してお前が羨ましいからではない。これは俺なりの祝砲だ。
その辺を誤解するなよ、弟。
弟と妹の部屋のドアをノックしても返事は無かった。
部屋を覗いてみる。やけに内装がすっきりしていた。
忘れていた。弟を捜しに花火の奴が来て、部屋をひっくり返していったんだった。
二人分の机はそのまま。床に置きっぱなしの本はかつて本棚に収まっていたものだろう。
それ以外にはテレビの配置が変わっていたり――おや、ベッドの代わりに布団が二組ある。
さすがに二段ベッドの手配まではしていないか。
あるいはこれからは布団を敷いて寝なさいと両親が言ったか。
まあ、その辺は弟と妹の意志次第。
ベッドの方がいいと意志を通すなら、両親との交渉をするだろう。
布団派の俺は味方などしない。
むしろ布団にしろ。天井から布団が落ちてきてもせいぜい床に倒れるぐらい。安全だ。
次に向かうはリビング。
リビングのドアから漏れる光が、暗い廊下を部分的に照らしている。
おそらくは二人ともリビングでくつろぎモードに入っているはずだ。
しかし――――何かがおかしい。
静かすぎる。
弟と妹が一緒に居て、ここまで静かになることなどありえない。
とすると、今朝の一件で機嫌を損ねた妹が弟を責めている、ってのも無いな。
……ただごとではない予感がする。
先の事件で俺が物事を深刻に考えすぎているなら、それでいい。
しかし、もしも勘が的中していたら、どうする?
今の俺にできるのは説得か、通報ぐらい。
決してとっ組みあいをしてはならない。
この右腕は問題ないレベルまで回復する。ただし、無茶をしなければ。
ちくしょうめ。どうして安息の場のはずの我が家でこんな緊張感に包まれなければならんのだ。
あー、前にも似たようなことあったよな。
葉月さんが家に来て、妹が逆上して、俺が投げられた去年の出来事。
せめて、あの時よりはまともでありますように。
そんな願いを込めて、床に膝を着き、ドアに嵌っているガラスからリビングを覗き込む。
最初に見えたのは、俺の居る方――入り口へと伸ばされた弟の手だった。
息を呑む程度の反応で済んだのは、あらかじめ覚悟をしていたからだろう。
のほほんと部屋に入ろうとしていたら間違いなく駆け寄っていた。
弟の手は、ドアまであと五十センチというところまで達していた。
見た限りでは部屋が荒れている様子はない。
弟の顔色も普通だ。ただ寝ているだけにも見える。
異常な点をあげるなら、上半身に半袖シャツ一枚しか身につけていないところ。
弟は手の届く距離に居る。じゃあ――妹はどこに居る?
リビングの窓際に動きがあることに気付いた。
窓が開いたままだ。カーテンが風に煽られて、時折なびき、鎮まる。
弟も妹も、この季節に窓を開けっぱなしにしたりしない。
つまり、何者かが侵入した形跡。もしくはすでに脱出した形跡か。
座ったままではよく見えない。立ち上がって、再度覗き込む。
「い――――!」
妹が居た。ソファの上に。
さっきは死角になっていて見えなかったのだ。
弟とは違い、目隠しと猿ぐつわをされている。両手両足は細い紐で何重にも縛られている。
倒れた弟、縛られた妹。
誰かがやった。俺の家に、俺の生活の中に、土足で入り込んで荒らしていった。
左の拳が震える。右腕が熱くなる。痛みを脳に訴えてくる。
肘の痛みが、己の無力さを思い出させる。
分かってる。ここで飛び込んでいくのは間違いだ。何よりも先に通報すべきだ。
でも、冷静に行動できない。
怒りが全身の血を滾らせ、頭に上らせてくる。
歯を食いしばって壁伝いに下がる。
携帯電話は部屋に置いてある。部屋に着くまで十歩も必要ない。
落ち着け。落ち着いてこのまま警察に電話をするんだ。
自分の部屋のドアノブに手をかけた、その瞬間だった。
「あら、ここに居たの」
「……あ…………」
リビングのドアが開き、弟でも妹でもない、別の人物が現れた。
顔を何か黒いもので覆い、長い黒髪をさらけだし、群青の服を体に纏っている。
弟と妹が倒れているリビングから出てきた。加えて、怪しい格好をしている。
もう考える必要はない。
こいつは、このクズは、紛れもなく――俺の敵だ!
「ようやく見つけたわ。
私はあなたを探してた。さっきは危ないところだったのよ。あなたの妹さんが」
「……見つけたのは」
「弟さんを眠らせて、体にのし掛かって服を脱がせ……って、え?」
「見つけたのはこっちだ。この――」
右足、踏み込む。左足、跳ぶ。
右足で床を踏み締める。左足と左拳を思い切り伸ばす。
そして、叫ぶ。
「こんの腐れ外道があっ!」
拳から、肘、肩、背中に突き抜ける確かな手応え。
突如現れたそいつは、顔面のど真ん中に拳を受けて後ろに倒れた。
拳の表面に残る痛みからして、顔に防具らしきものをつけているらしい。
ぐるりと後転し、そいつが言う。
「ちょ、あなた、いきなり何を」
「黙れ阿呆!」
「なっ、阿呆ですって?!」
「人の家に勝手に上がり込んで、俺の弟妹に好き勝手して!
阿呆じゃなきゃなんだ! 大馬鹿野郎か!」
「何よ! 大馬鹿野郎はあなたじゃない!
人の気持ちは無視するわ、人並み外れて鈍いわ、弟妹の異変には気付かないわ!
さっきは弟さんの貞操の危機だったのよ!」
「誰がそんなこと信じるか!」
左足を踏み出し、右足で蹴りを放つ。
仮面の女の頭部を刈るつもりで放った蹴りは、いとも容易く避けられた。
勢い余って背中を向けた隙を逃さず、そいつは左足を払い、軸を折った。
尻を床に強かに打ち付けた。
あっという間に俺は右肩と左腕を押さえられ、床に押し倒された。
「くっそ、てめえ……」
「形勢逆転ね。さっきの一撃は良かったわ。でも……あれで倒せなかったのは失敗ね」
もがいても仮面の女のホールドは解けない。
むしろ動く度に四肢を床に縫い付けられている感じがする。
こいつの着ている服、道着か。
そして被っているのは……なんだこれ。ヘッドギアとか言うのか、こういうの。
顔全体が黒で覆われていて、目だけしか露出してない。
「……何の真似だよその格好。馬鹿っぽくてお似合いだけど」
「う、うるさいわね! 顔を隠すものがこれしかなかったんだからしょうがないじゃない!
これだって本当はあなたに被せるつもりで持ってきたんだから!」
「じゃあ、その格好は?」
「勝負服よ!」
……うん、たしかに勝負服だ。実戦的な意味で。
「住居不法侵入の犯罪者で、その上ファッションセンス無しか。
可哀想な女なんだな、お前」
「色々迷った末にこうなっちゃっただけよ! 他にも普通の服はあるわ!」
「いや、見栄張らなくてもいいぞ?」
なんだか、話してるうちに可哀想になってきた。
そうか。きっと実家の道場を継ぐために毎日毎日修行に明け暮れて、女らしさを磨く暇が無かったんだな。
これまでは一家で力を合わせて頑張ってきたけど、他の道場に門下生をとられてにっちもさっちもいかなくなった。
そしてとうとう門下生は自分一人になり、心労で師範の父が倒れ、道場の看板を下ろすことになった。
でもこいつはそれをよしとせず、道場再建のために活動を開始する。
お金が無いから食事は自給自足。休日は山菜採りで午前中を潰す。
時々出会う中年夫婦とは仲良しで、会う度に昼食を恵んでもらっている。
家に帰ったら、父の看病をして、山菜料理を作って、道場で一人稽古に励む。
たった一人で、涙を堪えるために空手で汗を流す。
どうしよう。こいつの目を見ていたら……そんな想像が湧いてきた。
「え? なんで涙目になってるの? そんなに痛い? 緩めようか?」
首を横に振る。
「そうじゃない……お前の、事情がわかってしまったんだ。そしたら、なんだか悲しくなった」
「嘘?! ちょっと、今ばれたら私、あわわわわ、まず、やば、どうしよ!」
「お前、今日一年の教室で俺に話しかけてきた女の子、だろ?」
「………………………………は?」
「とぼけなくてもいい。そんな綺麗な長い髪の人はお前以外には一人しか心当たりがない。
その人は間違いなく人の家に無断で上がり込んだりしない。消去法でいって、お前しかいない」
「無断で上がり込まないって…………あう、あう、あう」
「ストレス溜まってたんだろ。だから机を叩いた。俺に八つ当たりしたくなった。
気にするな。俺は怒ってない。事情を理解した今の俺は、お前の友達だ。
怖くなんかないぞ? なんならこれから一緒に晩ご飯を食べよう。
弟と妹のことは水に流してやるからさ」
「そんな目で見つめないで! やめて!
私がここに来たのは、あなたを、あなたを…………好きにしようと……して!
罪悪感が、罪悪感が…………うわあああああ!」
突然叫ぶと、仮面の女は俺から離れた。
開けっ放しのリビングへ一目散に駆け込んだ。
しかし何を思ったか、再び廊下に仮面に包まれた顔を出した。
「ごめんなさい! 今日のことは忘れて! 私のことも忘れて……忘れてください!
もう二度としません! さよなら、すいません、さようなら!」
そう言い残し、仮面の女は姿を消した。
リビングを覗き込んだら、窓もすっかり閉めきられていた。
「うっ……んん、あれ、兄さん?
お帰り、ってどうして僕、上に肌着しか着てないの?!」
「んんー! んん、んんんんんんんーー!」
あの子はこの寒さの中、無事に家まで帰り着けただろうか。
午後七時、いつもなら夕食をとるこの時間。
半袖の弟と、拘束された妹の声に気付くまで、俺は可哀想な仮面の女の子に思いを馳せた。
今回はここで終了です。
それでは、また。
一番槍GJ!
仮面の女の正体は一体誰だ!!!
面白くなってきたじゃねーかww
葉月さんカワイソス...
GJ!!
一番槍GJ!
逆レイプフラグを華麗にスルーwwwさすがジミーwww
それにしても葉月さんは一年生になったり仮面になったりと本当に忙しい女の子だなw
>>245 あえてハッキリと言わないもんだろ?やぼ天だなあ。
あにき は フラグクラッシャー の 称号 を て に いれた !
葉月「間違っているのは私じゃない!あの人(ジミー)の方よ!!!」
ジミーきてたー!
惜しみないGJをあなたに。葉月さん可愛いよ葉月さん。
……にしても仮面の女、か。一体誰なんだ……?もしかして謎の一年と関係が……?
俺とした事が兄さんの日を忘れてたぜ・・
GJ!葉月さん報われないなぁw
待っていたらガチで寝てた。ジミー可愛いよジミー。冒頭のあれは、
冴子さんじゃなくジミーの父、母世代って事かな?
ていうかジミーモテてきたなw
てか始まってからもうすぐ一年経つんだな
凄いな
兄の行動に無理がありすぎ
兄が一番病んでる存在だなw
兄が徐々にヤンデレ臭を醸し出してる・・・
デレる相手が葉月さんである事を願って止まない今日この頃
>>1 男のヤンデレ談義はめんどくさくなるのでスレチ
あぁぁぁぁ!GJ!
冴子さんもジミーもカワイソス
そしてあうあうしてる謎の人カワイイよ謎の人
つーか葉月さんに逆レとか願ったり叶ったりですわー!
>>242 GJ!
叔母の来襲かと思ったらあの黒髪の一年生の子だったか
兄貴の観察力、推理力、シスコンぶりには頭が下がる
GJ!
しかし妹はついに弟を襲おうとしたか
兄の性格が話によってブレまくりなのと弟に学習能力がないのが気になった
>>242 GJっ!
何かだんだん葉月さんが気の毒になって来たよ…
昔のトラウマのせいもあってジミーは無意識に避けてんのかな?
突然恋のライバルが二人も増えた葉月さんカワイソス
261 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 13:19:12 ID:X0see2t+
確かにジミーは話によって性格かなり違うww
だがそれこそジミークオリティ!!
次が待ちきれん
むしろ優柔不断なジミーだからこそヤンデレを生み出すのだろう
思えば鳴海の人もそうだった
前回の分を読み直してみてクーリングオフの意味が分かった気がする…まだ確証は無いが
ところで葉月さんの下の名前って出てたっけ?俺見落としてる?
よし子
違うだろwww
精神が成熟しきった紳士達には想像しずらいかもしれんが、思春期だと人格や感情が安定してないからじゃないのか?
あれ葉月さんだったんだあ
俺は本当の傍観者は弟だと思ってるよ
兄貴は鈍感だけど割と頑張ってるw
いや本当の傍観者は高橋だろ。弟は襲われすぎ。いいかげん学習しろ。
GJ!!
一年生の教室で葉月さんを目で見ても認識できない状態に
姑獲鳥の夏の主人公を思い出した。
あれも一種の精神錯乱だったんだよな。
>>269 いや、妹から襲われたのは初めてじゃないか?
やっぱ身内だから油断したんじゃね?
弟を襲ったのて花火じゃね?
花火は弟を襲いません><
274 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 20:55:25 ID:zQ18TfD0
ヤンデレで寝取られはどう考えても水と油的な組み合わせだよな
ほかのクソ男に持ってかれる時点でそのクソ女はヤンデレの条件を満たしてないんだよ
釣り乙
果たして玲子ちゃんに光はあるのやら……あのままでは終わらない気がする
もう玲子ちゃんはいいよ。十分だろ?
なんであんな暴走したか気になるところではあるが
ええと……ツッコミ待ちですか?
玲子ちゃんは病院にいた小3のおにゃのこだろうに
280 :
ヤンデレウイルスβ ◆iIldyn3TfQ :2008/09/17(水) 06:08:01 ID:RpGp5jFF
投稿します。ネタですのであしからず。
sage忘れたのはちょっとミスりました^^;
TIPS
金城康二 保菌形態β 主人公
金城さとる 保菌形態α ヤンデレ好きのキ▲ガイ科学者。
金城篝 αの感染者。
佐藤亜麻 βの感染者。
――――ヤンデレが傍にいて欲しいとは思ったのは何時だったろう?
ヤンデレとは災厄だと理解したのは何時だったろうか?―――――
「私、出張で少し都内空けちゃうでしょう?
ねぇ、康二君。お願い、お願いだから__ちょうだい?」
ちょ、スプラッタかよ。と思った。
けれども nicegayで、koolgayがこちとら売りだ。
え?koolgayは間違いだって?
ひぐらし○なくころにを見てないのか?アンタ。
まぁ、いい。
とりあえず、目の前の女をどうにかするしかないんだろう?
目の前の女・・・佐藤亜麻という人物だ。
性別は女で勝気なタイプな癖にロングヘアーを靡かせる美女だ。
美女だと明言するのは負けを認めるようで吝かだ。
べ、別にす、好きじゃないんだからねっ。いや、何を言ってる俺。
「康二の腕か、足か、頭でもいいの。ちょうだい?」
「それは、できないよ。」とすぐさま返答する。
というか出血多量で死にますがな。
やはりあれかねぇー。
交際相手にバリバリのキャリアウーマンも考え物だ。
いや、その出来る女っていうのもソソる訳だが。
「やっぱり、あの女とっ!!」
「違うよ、亜麻」
羅刹女の如く、悲哀に歪んだ表情で康二を睨みつけて。
亜麻と呼ばれた女性は、嘘だっ!!と罵倒するかの勢いで口を啓いた。
いや、だから、ひぐらしかよ、とは意地でも言えない。
選択を間違えばDEADマンセーな人生が待ってる・・・いや死ぬじゃん。
「違うよ、君の事を愛している。覆しようのない事実だ」
「ならば、ちょうだいよっ!!
愛する人のためならそれぐらい安いでしょうっ!?」
道具じゃねぇんだから腕の一本や二本おいそれと渡せるかっての。
実はでもなくこの女性、留守中不安だから四肢を渡してと言ったのだ。
康二の内心。呆れと嫌気と焦燥が織り交ざった状態だった。
貌には出せば上手に出れない。
切り返すのがかったるく思いつつ行動。
喚く彼女を、抱きしめ、深く、甘い、接吻を交わす。
形だけの緩い拒絶を抑えて、彼女の胸を拭く越しに揉みしだくと接吻をより深めに。
「んっ、んっ、」
互いの唾を呑み合った所で、唇を離す。
糸が、銀糸の糸が、引き、亜麻も口惜しそうな声。眸がとろんと、していた。押し際だ。今の内なら軽く、落とせるだろう。
「愛している、愛している。
亜麻のことを愛しているともさ」
「んっ、」
康二は秘所を服の中からなぞり、優しく胸を抱きすくめた。
官能を楽しむように、自ら育てた女を味わうように。
「だからこそ、だよ」
蕩けるような、あるいは甘く塗りたくったような快感に悶える亜麻。
ある種のマインドコントロールを行うように、康二は重く囁いた。
「五体不満足で愛するよりも、五体不満足で愛されるよりも
俺の総てで亜麻の髪の一本から、唇、耳、肩、胸、背中、
膣口から、菊座、ふともも、ひざした、爪先までを、
亜麻の全てを、亜麻を愛でたいんだ」
びくっ、と震わせて亜麻は絶頂に達した亜麻。
ふと、俺の稚拙な愛撫では早過ぎるのかと思ったが甘言ばかりだからと、納得した。
女性ってどちらかというと自慰はイメージ重視で盛り上がらせる気があるから。
すぐさまハンカチを取り出して声を抑えさせると官能に愉悦に、歪んだ声を、布の中で、叫ぶ。
「――――ッ!!」
「気持ちよかったかい?なら俺としても幸いだ」
「康二?」
蕩けるように濃厚なイキ貌を浮かべる彼女へ、出来得る最高の笑顔を貼り付けて。
「解った?これが、僕が導いた答えだよ。亜麻」
「うん、んんっ、」
情事の余韻に浸る彼女を、後戯――抱擁や愛撫で満足させる。
打算的なことは悟られぬよう優しく、包むようになぞるようなタッチ。
いつもの勝気な印象とは違ってあちらの知識に疎い処、
オーガニゼーションに包まれた表情のギャップもそそられるのも確然。
だけども例の如く「うぅ、不完全燃焼だぁーー!」
彼女の支度を手伝いながら、ぽんっと玄関へと押していく。
「亜麻? 帰ってきたら、お帰りのエッチしようね」
にこやかに微笑んで、彼女を送り出す。
「むむむ、私は満足してないっ!!」
「それでもちゃんとこなすのがキャリアウーマン・・・亜麻だろ?」
「勿論よ、私を舐めないで」
「帰ってくるまで、自慰はしないこと」
お互いに燃えるしと囁き、彼女を待つタクシーへと送り出した。
その後、自らのマンションへ帰り登校の用意をした。既に重役出勤だが。
俺・・・金城康二が複数人と性交渉を至るには込入った事情がある。
早い話が陰謀だ。話は遠い昔、二十年以上前に遡る。
ある男が時代を先取りしすぎて、昼ドラの展開を見て、
あっ嫉妬されてみたいなぁとか吼えたキチ○イ科学者による。
つまりは、我が親父・・・金城悟がヤンデレウイルスを発明しやがったことが発端だ。
無駄な処に才能と時間(5年超)を費やして、作り上げたのだ。阿呆が。
親父は幾戦もの死亡フラグを乗り越えて今のお袋と結婚し、そしてヤンデレと付き合っている。
均衡状態であるので、大きな動きはないが、水面下の策謀は行われているらしい。
もっとも、ハーレム化しつつあるので、毒殺とかじゃなくて如何に寵愛されるかにだが。
物心付く前からサスペンスや昼ドラも真っ青な状況が繰り広げられていた。
当時は今より露骨なまでの戦線があっただけに危機回避能力と異性との話の機転に関してはフルパラメータになっている。
例え、これを知ったヒソカさんが「メモリの使い過ぎ☆」なんて言おうとも無理なのだ、なんです。なのですよ、の三段活用。
自らも成人までに発症しヤンデレ量産機になると知ったからには。
ヤンデレウイルス。俗世には憚らない病原菌である。
どのような科学的要素がヤンデレに発展するかは理解しがたい。
だが、俺と親父で恐らく決定要素らしきことはこのとおりだ。
・青年〜成人男性の年齢で潜伏から保菌者[ホスト]へなる。
・第一保菌者からの男性への感染は無いこと。
・保菌者から雌への感染圏は数メートル。
・対象者は保菌者が無意識に好意を持つ女性へ。
・感染した女性の場合、母子感染しかないこと。
・保菌者→感染は一世代位までの年齢まで。
つまり現状で感染しているのは親父、と母さん+α、俺+βである。
幼少のときに之の事実を聞かされた俺は幼心に乾坤一擲で殴ったね。
前歯が折れた糞親父を見てざまぁねぇや。と笑いまくってやったよ。
次の日、再生医療だぁとか言って数日後に元に戻っていやがったが。
天才なのか、ただのキチガ●なのかは良く理解しかねるが兎も角そういうことなのである。
思わず俺は幼馴染を詰[なじ]って、罵って嫌われてやったね。
うん。とりあえず凶暴になって俺にも近づかなくなったがな。
ホント秘密の日記に幼馴染への想いを書き綴って号泣したほどさ。
夜な夜な枕を眼から出る味噌汁で濡らしたほどさ。
もっとも、彼女は気づかずに暴力女となって、違う中学に通うようになって幸いだが。
彼女の流言によって男色の気があると噂が立ったのも事実だ。
諸君、違うのだよ。康二さんとしては幼馴染に発症されて刺されてDEAD ENDを回避したかっただけなんだ。
当時は異性との付き合いが解らぬし、
どのタイミングで発症するのかが知らなかったんだ。
まさか大学生になるまで一時的な対抗剤を盛られているとは夢にも思わんだ。チクショ。
俺の嫁が二次元だった青春を帰しやがれ。
残念ながら今現在、
結局のところは思い描いた想像図になっているのは確かだ。
イコール、修羅場絶賛公開中。
つまりは三角関係なんて目じゃないね☆
まぁ、そんな昔話はともかく、いま俺は一人暮らしをしている。
否、糞親父によってさせていられるのだ。
なんでも、困難に課せられて、なおヤンデレに挑む息子を見守りたいらしい。
その癖、息子のとばっちり受けたくないとかほざいていやがった。
被害を一番蒙ったのはどこの誰だと想っているんでせうか?
あんたによる被害者はお・れ・だ。
俺が僕だったころ、ヤンデレ感染した女性に。
「息子、そうよ彼との愛の結晶なんて!!あんたさえいなければッ」
そう呟かれて、二次災害受けたのは記憶に新しい。トラウマだ。
もっとも手練手管によってヤンデレをいなしてた糞野郎の正室。
そこに収まったんのは現在のお袋である。
権謀術中を要し、それでも変わらないお淑やかは、ある種の恐怖だ。
桜・篝。それが吾が麗しの母上である。ああ、今は金城篝か。
外見、二十代後半から三十代前半の麗しい奥様ではあるが、
中身、実の肉親であるが・・・・・・思い出したくも無い。
「あらあら、康二さんどうしたの?」
なんて云われればそれは掘られた方がマシってぐらいの。
ごめん、といっても掘られたことないからわからないや。
最近、ワクチンを開発中とかキチガ_が電話越しで呟いていた。
■チガイの事だ。むしろ既に開発済みである可能性が高い。
却ってヤンデレの効果を煽るような物を呑まされかねない。
結論。
むしろ、誰か僕にギ○スを恵んでください。
ルルーシェさんみたいに命令で全拒否してみせます。
いや、オレンズィのように・・・いや、ギア○にしか効かないですね、はい
ヤンデレ化させていく体質なんて欲しくないとです。
金城康二已むに得ない状況で、遺憾なくヤンデレウイルス送信中。
投稿終了。徹夜明けのノリでやってしまったんだ。
未練は無い。だが非情に後悔している。
>>289 続きを激しく希望したい。GJです。
俺もヤンデレウイルスに感染されたいなぁ
>>289 乙&GJ
親父を育てたのはわしじゃ
最近ふと思うんだがさ
ヤンデレ家族の連載終わったらこの板どうなるんだろうな
連載中の作品は続くし新しい連載も始まる
それだけのことだが
>>291 別に何も変わらないよ。このスレはヤンデレ家族だけで成り立っているわけじゃないんだから…。
板の現状を見るとどうも…って感じがしただけだ
まぁ杞憂に終わるだろう
なんかすまない
てか初代スレを知っている身としては、まだまだ甘いといわざるを得ないなw
初代スレとは付き合い長かったからなあ
つまりそれだけ過疎だったんだが
初代スレとかすげー荒れてたなw
初めて来た時はよづり姉さんが暴れてたな
300 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 04:04:08 ID:apgDh9ev
ヤンデレと言えばスクイズ
スクイズと言えば妊娠
と言うことでヤンデレ妊婦同士が争って相手を堕ろさせる話は…
とりあえず妖しの呪縛をずっと待ってる
ヤンデレ獣耳とか俺のストライク突きすぎだろ・・・
>>300 男が白血病に冒されて、治療のために胎児の胚性幹細胞が必要になったから
妊婦を片っ端から腹を捌いて胎児を取り出して治療に使う――
>>300 不妊の女が旦那を寝取った相手の子供を奪って育てる話なら、妄想したことがある。
「あの人の子なら私の子。あの女には胎を借りてやっただけ」みたいな。
お前ら怖いわw
でも育っていくうちにだんだんと泥棒猫と重ね合わせてしまうに一票
子供を産めない某ボーカロイドが妊婦の腹を掻っ捌いて
自分のお腹のスペースに入れてるシチュの絵があったなぁ
侠気と狂気で以って凶器を用い、恋敵を討って狂喜する
誰がうまいこと言えと(ry
>>294 新参とか言われたくなかったらまず板じゃなくスレと言え
ぼちぼち色んな所に数年貼り付いてる俺だが
板って言ったら新参扱いされるなんて初めて聞いたなwwww
"スレ"と"板"を間違えてるからだろ
つーか傍観者終わったらやばいと思うならなぜ自分で書こうとしない
お前らの愛はその程度のものなのか
俺は…ヤンデレになれない…
俺はヤンデレじゃない
でもなヤンデレを守る事は出来る
ヤンデレっていうのは呪いと同じなんだ
途中で監禁された人は、いつまでも呪われたまま らしい
あなたの、愛は重い
殺し上等ー! 彼女は無敵のヤンデレ様だぜ!
20歳までにヤンデレにならない女性は愛情が足りない。
20歳を過ぎてヤンデレでいる女性は理性が足りない。
>>319 そういや、ここに昔投下された埋めネタでアカのがあったが、あれはいい出来だったなあ
続いてほしいくらいだ
さぁ、そのヤンデレを
渡しなさい。
嫌よ、だれがあんたなんかに。
そうよね、323?ねぇ?
ヤンデレとしりとりして、語尾『け』を連発したい
結束の力だ!!
ヤンデレ「け、けけけ結婚しよう!」
326「うんこ」
ヤンデレの前でストリップショーを始めたらどうなる?
それは朝の着替えのことですか
部屋から出て行かないんですねわかります
ブテナ○ックのCMがヤンデレっぽい
まあ水虫だけど
332 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 11:13:29 ID:qtjXySAC
↑ある意味ちゃんと病んでるんだなw
ヤンデレに似合う銃器はAK47かいな?
ナイフならワスプナイフだな、
銃ならミニガンかな、泥棒猫を挽肉に
月並みだがP−90だろ。知略的な感じがしていい
インパクトで言えばデザートイーグルとか意外性があっていいが、さすがにデザートイーグルぶっ放すような子はヤンデレでも怖い
ヤンデレっ娘たちは惚れた男を一途に愛する心だけを持っていれば良いのだ。
あえて他に必要なものをあげるとするなら、
彼を手に入れるための最良の策を練ることの出来る頭脳、
彼にばれないようストーキングする技術、
泥棒猫のみならずありとあらゆる女の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚など。
エロければなお良い。
言うことを聞かせるために男に暴力を振るったり、泥棒猫を抹殺しなければならなくなった時、
そのヤンデレっ娘は引き返すことのできない、破滅へ向かう道に立っているのだ。
私の考える完璧なヤンデレとは、
出会い、友達になり、恋人になるという真っ当な手段を用いて、、
自分以外の女に見向きもしないほど男を自分に惚れさせることのできた女だ。
完璧なヤンデレは己がヤンデレであると周囲に悟らせない。
我々がヤンデレと認識している時点でその娘は一流とは呼べないのだ。
まあ、そんなヤンデレっ娘はこのスレのSSのヒロイン役としては失格だが。
主人公がまともだったり相思相愛なら特に何事も無いような気がするな
さて・・・着衣をきちんとたたんで、ネクタイも着用した。
正座待ち一番乗りぃぃぃぃぃぃぃぃ
ヤンデレ家族あと3日で1周年か
>>335 いや、フェイファーツェリザカだろ
ヤンデレっ子は物理法則すら愛の力で無視出来るんだからな
>>341 大好きな人に引かれるので武器なんか振り回したりしません。
と言う訳でデリンジャーに一票
後、身長140以下に限りバレットライフル。ヤンデレっ子(ry
俺はM-14をすすめる
ガーランドの流れをくむあの形が…
うぜえ
そろそろ全裸になって待つか
某バスケアニメED曲の『あなただけ見つめてる』はヤンデレな人たちにピッタリな歌だと思う。
人格ラヂオの飼育箱をヤンデレ好きの皆に捧げたい。
ヤンデレを調教したい
350 :
もう何も信じない:2008/09/22(月) 01:52:29 ID:HdjnMexj
初めまして。投稿します。
ちなみに初SSです。至らない点があったらご指摘お願いします。
一応第3話まで溜め込んでます。
後の方からヒロインが徐々にヤンデレ化・・・って感じです。
351 :
もう何も信じない:2008/09/22(月) 01:55:00 ID:HdjnMexj
もうなにも信じない―――そう思ったのはいつだったろうか。
母親は俺たちを産んだときに死んだ。
父親は6歳まで俺たちを育ててくれたが、妹が死ぬと突然女を作って俺を捨てた。
どうやら母の面影を求めていたらしい。妹にまで。
やむなく預けられた親戚一家は、ある力をもつ俺を気味悪がり、虐げた。傷が服
にかくれるように。
唯一頼れた小学校の先生は俺がいじめに耐えかねて手を出したとき、いじめっ子
らを弁護した。
あとになって知ったが、いじめっ子の親には教育委員に知り合いがいるとかで教
師は逆らえないそうなのだ。
後日、伯父はその親に対し菓子折りを持って謝罪しに行った。その日の夜、俺は
伯父に酷く殴られた。
ああ、思えばこの時からかも知れない。何もかもを信じなくなったのは。
俺の名は佐橋 歩。今年の春、高校生になった。
別に行きたくもなかったが、世間体を気にする親戚に半ば無理矢理入れさせられ
たのだ。
高校に入るにあたり、母の残した遺産の俺の取り分とアパートの1部屋をあてがわ
れ、一人暮らしを始めた。早い話が厄介払いだが、あの家を出られるのなら実に
ありがたい話だった。
だが、高校なんぞごめんだった。さっきも言ったとおり俺は人を信じられない。
赤の他人に話しかけるなんて怖くてできやしないし、関わられるのも嫌だ。中学
時代はそうして可能な限り誰とも関わらなかった。
今日は壇上で答辞を詠んだらさっさと帰って寝るつもりだ。
そのはずだったんだ―― あいつが現れなければ。
入学式が終わり、家に帰ろうと玄関に向かったらそいつに呼び止められた。
「佐橋歩!僕を覚えているかい?」
……意味が分からん。そもそも誰だこいつは。
中学時代は友達はいなかったし、近所にもこんな知り合いはいない。…小学校か?
ああ、確かいたな。女のくせに自分のことを僕と呼ぶ変な奴が。名前は―――
「光(コウ)だよ。三神 光。3年ぶりだよね、歩。」
そう、たしかそれだ。腰まで伸ばした黒髪がよく似合う美少女なのに男口調で何
かがぶち壊しなのが残念だ。
「で、何の用だい、三神 光さん?」
あえて他人行儀で話しかけた。こんな奴に構ってられるか。俺には惰眠をむさぼ
るという大事な使命が――――
「僕は君が好きだ! 付き合ってくれ!!」
………頭が痛くなってきた。神よ、これはなんの試練ですか?
「…冗談はその変な口調だけにしろ。寝言は寝てから言え。それとも寝てんのか?」
「あははっ、やだなぁ。僕が君に嘘をついたことがあるかい?」
352 :
もう何も信じない:2008/09/22(月) 01:56:25 ID:HdjnMexj
確かに、こいつだけは俺に嘘をつかなかった。あの時から、人間不信に陥りあら
ゆる他人を拒絶していた俺にこいつは変わらず話しかけてきた。そのたびに俺は
寝たふりをし、男子トイレに逃げ込み、目の前で耳栓まで装着した。
いや、こいつは俺にひとつだけ嘘をついたな。あれはたしか小学校の卒業式の日
。教室に忘れ物を取りに行ったときだった。教室には光がいた。
「忘れ物かい?しっかり者の君がなんて、珍しいなあ。」
俺は無視した。机の中にあった本をとり、教室をあとにしようとした。すると、
「歩…。君は最後まで僕を無視するんだね。でももういいんだ。二度と会うこと
もないだろうし。」
俺はこの時なぜか振り向いてしまった。いつもの明るい声とは違う、暗く、哀し
げな声に。
「僕だっていいかげんあきれてるんだよ?いくら何を言っても君は無視を決め込む
しね。会えなくたって別に困りはしないさ。むしろせいせいするよ。」
そう言いながら光は……
泣いていた。この時思ったんだ、これは嘘だと。
気が付けば、勝手に口が動いていた。
「…すまない。俺は、もう何も信じられないんだ。」
「僕のことも、なのかい?」
「……ああ。本当に、すまない…。」
彼女はしかし、笑ってこういった。
「は…初めて僕と話をしてくれた…ね。うれ、しいよ、歩…。」
「……………。」
「歩、君が何も信じないというなら、僕が次に君に言う言葉を、絶対に信じない
でくれ。」
「………………。」
返事はしなかった。
「僕は……、君なんかだいっきらいだ。二度と会えなくても全然平気…だよ。だ
から、僕のこと…ひぐっ、なんか、忘れて…よ。」
これが、光が俺についた、唯一の嘘だ。
353 :
もう何も信じない:2008/09/22(月) 01:58:21 ID:HdjnMexj
以上で終わりです。m(--)m
>>353 こう、胸がキュンキュンした
GJ
これからも頑張ってくれ
期待しておこう
>>353 GJ
これからどうなるのかたのしみだ。
>>353 >僕が次に君に言う言葉を、絶対に信じない でくれ
いいねぇ
こういった言い回し
これは続きを期待せざるを得まい
GJ!
>>353 ウはぁァぁ!
GJだぜ! 今後が非常に楽しみだ!!
さて、全裸で正座して続きを待つか
思いのほか好感度な感じで恐縮です。
続きを投下します。
>>356 ご指摘ありがとうございます。sageのこと、忘れてました。
ぐぐってきたので、以後気をつけます。
―――ああ、変わってないな。光、お前はいつも俺のことなんかお構いなしに喋
る。
こんな風に、俺が周りの奴らから刺すように白く、また、生暖かい目で見られて
いても、だ。
「言ったはずだ。俺は何も信じられない。だからお前の言葉も信じない、と。」
「変わってないね…君は。ううん、昔よりも口数は多くなった。これは喜ぶべき
かな?」
「そういうお前はどうなんだ? 昔から口の締まりが悪いやつだとは思ってた、が3
年経ってなおこれか!」
「うれしいよ…昔から僕のことを思ってくれてたのかい。」
そう言ってこいつは顔をさらに紅潮させ、もじもじした。なんなんだ一体……。
「ああ。3年前は筋金入りの馬鹿だと思っていた。もしくは物好き。中学になって
からは存在を忘れてたくらいだが。」
これは本当だ。むしろ声をかけられてもわからなかった。仕方ないだろう、見違
えるくらい…綺麗になってんだから。
小学生のときの光は、ショートカットにシャツにジーンズといった、男みたいな
格好をしていた。さらに男口調。たしかそのせいで女にも男にも友達はできなか
ったはずだ。
だが今はどうだ。女らしい格好…まあ制服だからな。それに長い髪。3年でここま
で伸びるだろうか?と思ったのは言うまでもない。
顔立ちも整っている。そこらのアイドルなんかより全然美人だ。胸は…まあ変わ
りないな。(悪い意味でだが)
「失礼だね。これでも少しは大きくなったんだよ?」
…何で俺の考えたことがわかるんだ。
「ほー。そうか。俺には関係ないが。」
そう言い残して俺は昇降口を出ようとした。周りの奴らの視線が痛いがどうでも
いい。さっさと帰って寝よう―――――
……俺は今、街中をただ歩いている。
何でかというと…、俺の隣に光がいるからだ。こいつこのままだと俺の家までつ
いて来かねない。だから適当に撒いて帰ろうとチャンスをうかがっているのだ。
光に自宅の場所を知られでもしたら……ああ恐ろしい。考えたくもない。
「ねぇ、帰るんじゃなかったのかい?」
「ああ帰る。お前がこの手を放してくれたらな。」
「つれない事言わないでくれよ。好きな人と一緒にいたいと思うのは当たり前だ
ろう?」
「生憎だが俺はお前を好きになった覚えはない。うっとおしいから放せ。」
まったく、どうしてこんな事になったんだか…。
そう思っていると、突然頭の中に、鮮明なイメージが湧き出てきた。否、叩き込
まれた。…またか。
俺が見たイメージは、赤信号を無視してふらふらと突っ込む深緑色の車。どうや
ら居眠りしてるようだ。その矛先にはには人がいる―――俺たちだ。
「おい、ちょっといいか。」
と、俺は光の手を引き、信号を離れる。
「? どうし―――」
キキ――――ッ ガシャン!!
激しい衝突音が響いた。今俺たちの目の前には、折れ曲がった信号機の柱と、ひ
しゃげた深緑の車。そこは、ついさっきまで俺たちがいた場所だ。
――――俺は、自分に降りかかる危険を、直前になって予知できる力を持ってい
る。人々はこの力をどう思うだろうか。
便利? すごい? とんでもない。たしかに聞こえはいいが、わかるのは"俺自身"に
来る危険だ。それに、自分一人逃げるのがやっとだ。頭にイメージが来るのは、
本当に"直前"なんだ。
たしか、2分後の未来が見える男の映画があったな。あっちの方が便利だし、何よ
り人の役に立つ。
そもそもこんな力がなければ俺はこんなヒネた性格にはならなかったろう。親戚
どもはこの力を気味悪がり、伯父には「化け物!」とすら言われ虐げられた。
まあ、この力のおかげで中学時代はケンカでは負けたことがない。殴ろうとする
動きを、文字通り見切ってしまうからだ。もっとも、好き好んでケンカした訳じ
ゃない。あくまで"売られたケンカ"を"買って"ただけだ。
ちなみに不良グループを一人で全員病院にノシつけて送った次の日からは、俺に
恐れをなしてか話しかける奴は誰もいなくなった。
この力が役に立ったのは、その時くらいか。そう、俺は一人でいいんだ。誰もい
らない。そう思ってたのに―――
「…は〜びっくりした。助けてくれたんだね? ありがとう。」
どうしてこいつは俺につきまとう? 普通避けるだろう!
「…助けたつもりはない。ただ、見知ったやつに目の前で死なれちゃ寝覚めが悪
くなると思っただけだ。」
「相変わらず素直じゃないねえ。ま、僕は君のそういうところ、大好きだよ?」
何でだ。もう誰も信じない。そう固く誓った筈なのに―――――
「…勝手にしろ。」
こいつの前では、その決意が揺らぐ。
第2話終了です。続いて、第2.5話を投下します。
第1話と第2話の光視点です。
君は相変わらずだね。その冷めた口調も、人を信じないところも。
いつから君を好きになったんだろう。
小学生のとき、いじめっ子から僕をかばってくれたとき? 次の日君は痣だらけだ
ったね。
それとも、別れ際に「すまない」と僕に申し訳なさそうに謝ったときかな? 普段
無感動な君があんな風に謝るなんて意外だったけど、反面ほっとしたんだよ? ま
だ君にはココロがある、って。
だから思ったんだ。僕が、君を守ると。たとえ世界中の人間が敵になっても僕だ
けは、君の支えでありたいと。
中学では離ればなれになってしまったけど、君を想わない日は1日もなかったよ?
君がどんなにレベルの高い高校を受けても後を追えるように必死に勉強した。で
も君は首席だったね。さすがだよ。
君は女の子らしい子が好きかと思って、髪も伸ばした。
君にご飯を作ってあげるために、料理だって覚えた。
君をいつでも受け入れられるように、ひとには言えないコトだっていっぱいした
よ?
君に信じてもらいたいから、僕は君への想いを隠さないと決めた。だから言うよ
―――
「佐橋歩!僕は君が好きだ!付き合ってくれ!」
―――僕の隣には今、歩がいる。目の前には廃車寸前の深緑の車。
言うまでもないが、歩が僕を助けてくれたんだ。
歩の力については、とっくの昔に知っていたよ。
まだ幼い頃、歩の家に遊びに行ったときの事だ。
若くてきれいな女のひとが出てきてこう言ったんだ。
「ごめんなさいね。もうこの家には来ない方がいいわ。」
「どうして?」
「歩はね…あのひとに嫌われているの。だから…」
ふと気が付いた。女のひとは、体に痣があった。そのとき僕が思ったことはひと
つ。
――――虐待―――――
「私は、あのひとに逆らえなくて、見て見ぬふりをしているの。最低よね…歩は
きっと私を憎んでいるわ。でも、歩は私の姉さんの大事な忘れ形見なの。だから
、せめて歩の友達のあなたには危ない目に遭わせたくないの。でないと、またあ
の子悲しむでしょう?」
「そう…ですか…」
でも、僕にはわからなかった。なぜ歩が嫌われているのか………だから、聞いて
みたんだ。
「どうして? 歩君はそんな目に?」
その時、知ったんだ。歩が予知能力を持つことを。そのせいで虐待されていた事
を。そして、何も信じられなくなったことを……。
許せなかったよ。僕の大事な歩をそんなふうにしたなんて。
お前さえいなければ歩は傷つかなかった。
お前さえいなければ歩は僕に笑いかけてくれたはずだ。
お前さえいなければ、歩は他人に怯えなくてよかったんだ。
だから、殺そう。
でも、それはできなかった。
その前に、死んじゃったんだ。
それがわかったのは、歩と別れてすぐ。
事故ってことになってるけど、僕にはわかる。きっと、あのひとが殺したんだ。
あのひともまた、歩を愛していたんだね。僕もそう。だから…わかるんだよ。
今度は僕の番だね? 次に君を傷つける人がいたら、僕が殺してあげる。
君が望む方法でずっと苦しめてあげてもいい。だから……
僕だけを見て。
僕だけを信じて。
僕だけを愛して。
2.5話終了です。
>小学生のとき、いじめっ子から僕をかばってくれたとき?
次の日君は痣だらけだったね。
このくだりは、歩の伯父が菓子折を持って
謝りに行ったことをさしています。
GJ!
フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
皆病んでるなおい
>>368 うへァあアぁぁ
すばらしすぎるぜゴッド!
GJすぎる!!
第3話投下します。
今のところためてた分はここまでです。
「待っててね、歩♪もうすぐできるからね?」
そう言って、フライパンを振る美少女。
「あー、はいはい。」
ため息混じりで空返事をする俺。
結局俺はこいつにつきまとわれたまま家に帰る羽目になってしまった。
今光は昼飯を作ってくれている。
俺は断ったんだが、こいつが
「ちゃんと食べてないからそんなに痩せてるんだよ!?でも大丈夫。
これからは僕が作ってあげるよ。」
と言うもんだから、仕方なく折れた。反対しても退かなそうだしな。
そんなに痩せてはないと思うがな…むしろ若干無駄な肉が気になりつつあるくらいだ。
ちゃんと筋トレはしているが。
歩は痩せすぎだよ…どうせ一人だからって適当なものしか食べなかったに違いないね。
せっかくカッコいいんだから、健康的にならないと台無しだよ?
ピアスを8つもつける暇があるなら料理ぐらいちゃんとしなさい!って言いたくなるよ。
でも、これってよく考えたらチャンス。歩に手料理を食べてもらえるなんて、
僕幸せだよ。むふふ。ぐへ。あはははは。
「変な声を出すな。ったく…」
「はっ、声に出てた!?」
「ああ。あと、料理に変なもの入れんなよ。」
「僕はそんなことしないよ! もう!」
そうとも、僕はどこぞのヤンデレ娘たちと違ってそこら辺の常識はあるつもりだよ?
料理に血を入れたりとか、髪の毛混ぜ込んだりとか、
その…(ゴニョゴニョ…)なんて入れたりしないよ!? 多分!
1ヶ月がたった。光はその間ずっと昼夜と飯を作ってくれた。押し掛け女房か。
結論から言うと…光の飯はうまかった。
俺は自分以外の人が作った飯を食って安心したのは給食以来だ。
伯母さんの作る飯もうまかったが、いつ"予知"できてしまうか内心怖かった。
だから、俺は誰かが箸をつけてからそれを食べる、ということが習慣づいていたんだ。
なのに……
「はい、できたよ歩♪」
「ああ。」
「「いただきます。」」
もぐもぐ…今日はハンバーグだった。光は料理が上手だ。
なんでこんな上手なんだと尋ねたら、
「愛する君のためにがんばったからさ。はぁと」
と言われた。相変わらず訳が分からん。俺みたいなやつのどこがいいんだか………
「ねぇ、歩。」
「なんだ。」
「今日は僕が食べる前にそれを食べてくれたね? 」
――言われて気付いた。そういえば、なんで俺は警戒しなかった?
俺は光の料理を食べて…食べて…
「やっと僕を信じてくれたんだね!?ああ、歩!うれしいよ!」
そこで俺の思考は止まった。
いきなり光が抱きついてきたからだ。
「ああ、歩…歩ぅ…ずっとこうしたかったんだ。君に信頼されたかったんだ。君
を、愛…してるんだ……ひっく…うあぁぁぁん……」
俺は、戸惑っていた。
俺を愛してると泣きながら訴える光に。
誰も信じない筈なのに心を許してしまった俺に。
そしてそれを認めたくない俺に対して。
いつの間にか、俺は甘えていたんだろうか。
居心地のよさに。愛の囁きに。信じてほしいという一途な想いに。…光自身に。
もういい。認めよう。こいつなら信じられる。きっと俺を見捨てないでいてくれる。
そうして俺は………
「光。俺はまだ何も信じられない。だけど…
だけど、お前だけは信じるよ。」
「あ…あゆ…む…」
光を、信じた。
ああ…歩…やっと僕を信じてくれたんだね? これでようやく始められるよ。
これから君は僕"だけ"を信じ、僕"だけ"を愛してくれるようになるんだよ?
その為には君を騙すことになるかもしれない…。でも、最後はきっと僕を選んで
くれるはずだよ。
信じて―――待っててね、歩?
第3話終了です。
と同時に、平和な日々編、完。です
予定としては、光がいよいよヤンになります。
第4話以降の話がまだ整わないのですが、気長に待ってやって下されば
幸いですm(--)m
>>317 それ言ったのは木場さんじゃなくて海棠だろう
GJだが顔文字やめようぜぇぇぇぇぇぇぇ!
なんかそれゆとり臭がするぅぅぅぅぅぅぅぅ
>>375 乙乙
イイハナシダナー、でも光が黒くなるのが楽しみw
奇才あらわる
>>375 よしよしよぉぉぉし!
一気に3話公開とはGJ過ぎるぜ!
続き楽しみにしてます。
GJ!!!
正座キツイから散歩してくる。ノシ
もう夜だから気をつけろよ!
>>375 GJ!
短期間で3話も読めて私は幸せです
和服に日本刀ってかなり相性の良いヤンデレウエポンだよな!!
おまいらの考えるヤンデレウエポンって何?
泥棒猫と恋人(ヤンデレ視点)が一緒にいるのを見た時の何かを隠したような笑顔
ヤンデレウエポン・・・・?
そんなの彼を愛する一途な心に決まってるだろJK
武器なんて最終手段
安易に持ち出すのは無粋ですよ
目だろう
目は口ほどに物を言う、とも言うし…
眼力(と殺気)だけで十分だと思うんよ
まぁそのコアの部分に深い深ーい愛があるから為せることなんだけども
勿論、呪術です
拘束具かな
おっぱいだろ
それは貧乳ヤンデレは不完全とでも言いたいのかこの野郎
彼の家の合い鍵
>>394 乳に行く分の栄養が脳に行ったから頭がいいんだとでもいいたいのか?ああん?
ちっぱいでもおっぱいはおっぱいだこの野郎!
むしろそっちがいい!
>>395「乳に行く分の栄養が脳に行ったから頭がいいんだと言いたいのか?ああん?」
なんという貧乳ヤンデレっ子
激しく萌えた
いやこれだけではただの貧乳ツンギレだ
完成したので、投下します。
いちおう病み編突入って感じです。
4話と4.5話です。
その日俺は放課後の図書室にいた。光には前もって自宅に帰ってるよう言っておいた。
…誤解があるようだが、同棲してる訳じゃない。ただ晩飯を作ってもらい、
食ったら帰す。それだけの仲だ。それでも以前の俺ならまったく考えられない話だが。
「佐橋くん、次はこの棚にお願いね。」
「はいはい、わかりましたよ。」
俺は今、図書委員会の仕事をこなしている。やりたくてやった訳じゃない。担任が
「全員、必ず何かしらの仕事をしろ」
といったもんで、仕方なく一番楽そうな図書委員に入ったんだ。
…なぜか光には反対されたが。
で、今日は月一度の集まり。
が、来ているのは二人だけ。俺と、2年の女子だ。他は多分サボりだな。ったく…
どんなやつらだよ。
「真面目に来てくれたのは君が初めてかもね。」
「別に。仕事っすから。」
「ええ、そうね。でもうれしいわ。正直一人じゃしんどいもの。」
この先輩―――環 左京―――の話によると、他の図書委員は俺みたく仕方なく入
って来るような奴だらけだったらしい。
だから誰も来ないのか。確かに面倒ではあるが…こんな静かな空間で黙々と
仕事をする…俺にとっては理想の空間だ。
ようやく仕事が終わり、帰り支度を始めたのが7時。
腹減ったな。今日は光はいないからマックかなんかで済ますか。
と思っていると――――
「佐橋くん、こんな遅くまで付き合わせて悪いわね。」
「…いえ、問題ないですよ。」
「そう…佐橋くん、このあと空いてる?もしよければお茶でもどうかしら?」
…いきなりなにを言うんだこの人は…。
まあでも、どうせ独りだ。構わないだろう。
「いいですよ。」
環先輩との話はことのほか面白かった。
好きな音楽や、趣味や、食べ物。いろんなことで気が合った。
喫茶店で軽い食事までご馳走になった。それくらい出すと言ったのに、
「気にしなくていいの♪」
と言われれば引っ込むしかなかろうが。
今は8時半。あとは帰って寝よう。
がちゃり。
鍵を開け、部屋に入る。
「…………光。どうして―――」
俺のベッドで光が眠っていた。
実に気持ち良さそうに寝息をたてて…いや、目を覚ました。
「ん…ぁあ、歩か、お帰り。ごめんね、寝ちゃったみたい」
「帰ったんじゃなかったのか!?」
「君と話がしたかったんだよ。だから、待ってたんだ。」
よく見るとその頬には涙のあと。
「………なんだ? 」
「君はひどい奴だよ。僕というものがいながら、他の女にかまけるなんて。」
「いや、だから意味が」
「もちろん、君にも僕にとっても喜ぶべきことだよ。今まで他人を拒絶してきた
君が普通にひとと接することができるようになってきたんだから…。でも…」
はぁ、と息継ぎをし、光は続けた。
「君が僕以外の女と話するところなんて………見たくなかったよ。
ショックだったよ。僕はもう君には必要ないのかい!?」
「…違う。そうじゃないよ。」
「ならどうして!僕の気持ちは分かってるだろう!?嫌だよ!君を奪われたくなんかないよ!
僕には歩が必要なんだ。好き…なんだ……でも、君が必要としてくれないなら……ひぐっ…」
気が付いたら、光を抱き締めていた。
「すまない…光。お前、そんなにまで俺を想っててくれてたんだな…。」
「そうだよ…僕は、ずっと君を想ってた。君に会えない3年間は辛かったよ。死ん
でしまいたいくらいにね…。」
「…なあ光…、お前が嫌だというなら、もう環先輩とは会わないよ。」
「……………約束だよ?信じてるからね。もし破ったら……………」
「?」
「ううん、なんでもないよ。」
君が必要としてくれないなら、僕は生きてる意味はないんだよ……?
約束だよ、歩。もし破ったら……………
その女、殺しちゃうから。
4話終了です。続いて4.5話投下します。
今日は、歩がいない。何でも、「委員会の仕事で遅くなる」そうだ。
だから僕は反対したのに。君と一緒に帰れないなんて、残念だな。
でも歩、君はまだ立ち直ったわけじゃないからね。こうして、僕が目を光らせてないと――――
「・・・・・たのは君が初めてかもね。」
―――え。 誰あの女。まさか歩、僕に黙って女と逢ってたの・・・?
「別に。仕事っすから。」
そうだよね。仕事だよね。歩はすごい人見知りやさんなんだから、そんなはずないよ。
でも・・・なんであの女、あんなに嬉しそうなの・・?
まるで発情期の雌猫みたい。
「ええ、そうね。でもうれしいわ。正直一人じゃしんどいもの。」
・・・なんなの。あんた一体何なの?僕から歩を奪おうっていうの!?
どうして歩!? 僕というものがありながら、どうしてそんな女なんかと!!
でも歩は、ただ黙々と仕事をしていた。
そりゃそうだよ。仕事って言ってたもの。当たり前だよ。
「そういえばあの、光っていったかしら。君にべったりな娘。」
「ええ。光がどうかしました?」
「あの娘とは付き合ってるの?」
なに・・・?付き合ってなかったらあんたどうするっての!?
でもお生憎様。僕と歩は愛し合って――――――
「いや、そういうんじゃないですよ。」
「あら、そうなの?」
―――――っどうして。どうしてそんなこと言うの!?
僕はこんなにも君を愛してるっていうのに!それだけじゃ足りないの!?
「・・・佐橋くん、このあと空いてる?もしよければお茶でもどうかしら?」
・・・この雌猫め・・・歩を誘惑しようっての・・!?
ねえ、行かないよね、歩。お願い・・やだって、行かないっていってよ。
僕がいるじゃない。君が望むならなんだってしてあげるから。ね?僕と帰ろうよ・・・
「いいですよ。」
・・・・いや。
・・・イヤ。
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ
イヤだイヤイヤイヤイヤイヤ――――――
気がつけば僕は泣いていた。だめだ。気づかれちゃ。
ここで盗み聞きしてたなんてばれたら嫌われる。
「・・・・っ・・・ぅ・・・ふぇぇ・・・」
だから、懸命に声を殺した。
がちゃり。
合鍵を使って、歩の部屋に入る。
泣き疲れ、なお涙が止まらない僕は、歩のベッドに横たわる。
ああ・・・歩の匂いがするぅ・・・
僕は歩の枕に顔をうずめ、つたない動きで、下着に手を伸ばす。
「ぁぁ・・・歩・・・あゆむぅ・・・・僕はいつでも君を待ってるのに・・・
どうして何もしてくれないの・・・寂しいよ・・・もう独りはやだよぉ・・・・
ずっといっしょにいてよ・・・ぼくをあいしてるって・・・おねがいだよぉ・・・・・・」
僕は小さく絶頂を迎え――――――
「あいしてる・・・あゆむ・・・」
そのまま、眠りについた。
4.5話終了です。
>>403 タイトルを4話にしたままでした。
申し訳ありませんが、保管庫には、4話と4.5話を分けていただけると幸いです。
>>405 楽しく読ませて貰いました
何だか、お話に加速度がついてきた感じw
>>405 ウヒョー! GJ!
光かわいいよ光
続き楽しみにしてます!
GJ!!
病んできたねー
楽しみだ
>>405 GJ
これからも頑張ってくだされな
ただし無理はするなよ?
._
/77/
_/ i ムイ
/ヾ、 /
/ ソ ___
. /i___/ ./7Y二ヽ、 ←ヤンデレから逃げる俺
/./ / ( (二二ニ=}
. // { )ヽ、-イj〈
(/ .ー<ミTyヽニ//`>─┬、_
`ー-、 i L_// ./ >├ー-、二ヽ、
\ . < / > || _,、 ',
ヽ >-‐' L .」レ ', ',
', 「o Y i ', ',
i `i .| .| .}、ノ.ヽ
| | i |. ', .∧
| .| { i T }
| | || | ヽ)}'
| | || |
| | || i
| | , -‐  ̄` T}
L⊥/ i
i i __ノ
.| .| {
i .| .|
死ね
>>411 そんな厨臭い言い方してももう誰も釣られないぜ?
さ、釣りたいが為にスレの空気を汚したんだから謝ろうな
俺も一緒に謝ってやるからさ、な?
誰も居ない……。
清算編第四話を投下するなら今のうち……。
「それで? どうだった?」
「やっぱり駄目だ。まともな返事なんか一度もしてくれない」
自室から出てきた弟は、首を振ってからそう言った。
仮面の女の襲来の後、夕食もとることなく俺と弟は妹に尋問を行っている。
尋問と言うよりも簡単な問いかけだ。
――お前は寝ていた弟に何をしようとしていた。
これに妹が答えてくれればいいだけなのだが、如何せん口を噤んだままだから手に負えない。
最初に俺が妹と一対一で話してみたが、あの妹はその場に寝転がって無視しっぱなしだった。
いっそのこと、寝ている妹の上に覆い被さって真上から問い詰めてみようかと思ったりしたが、
そうなったら今度は俺が多くの人間から問い詰められそうなので実行に踏み切らなかった。
妹を強引に押さえつけながら、彼女が弟にした行為を問い詰める兄。
受け取る人間によっては兄妹の仲を疑ってしまうことだろう。
ちょっと強引だが、俺と妹がソッチの関係で、でも実は妹は弟が好きだから寝ている弟に手を出し、
その現場を偶然にも目撃して腹を立てた俺が妹を詰問している……なんてことを考える人間がいるかもしれない。
七割ぐらい嘘が含まれていて、荒唐無稽とも言い切れないのが嫌なポイントだ。
仮面の女の言葉は事実なのか。
もしも事実だったなら、仮面の女が止めていなければ最悪な事態になっていた。
兄妹の関係どころか、家庭崩壊の危機だ。
ああでも、うちの両親はそんな最悪の過程を経ているのだから、なんとかしようとすればなんとかなるのか……?
なんとかなるとしても、俺は御免だ。
兄妹でそんなことするのは間違っている。
俺は、弟と妹が男と女の関係になるなんて嫌だから。
「ねえ、兄さん。本当に……そうなの? 妹が僕になにかしたって」
「それが本当かどうか確かめようとしてるんだろ、今」
「そうだけどさ……なんで兄さんはそんなこと確かめたいの? 妹がしようとしてるところを見たの?」
「……まあそんなところだ」
嘘。本当は見ちゃいない。仮面の女がそう言っていただけだ。
上半身が肌着一枚の弟が転がっていた状況からして、信憑性はある。
ちなみに、弟には仮面の女の正体はおろか、彼女が現れたことすら教えていない。
同級生に他人の家へ不法侵入する子がいるなんて知ったら、いくらお人好しの弟でも避けるに違いない。
俺は仮面の女の味方だ。彼女の正体をばらしてはいけないのだ。
「兄さんがそう言うなら、事実なんだろうけど……けど、僕にはやっぱり信じられない」
「妹がそんなことするはずない、ってか?
お前もいい加減に危機感を覚えてくれよ。前に澄子ちゃんに捕まったことで懲りてないのか」
「そんな! ……そんなはず、ないじゃないか!」
これはびっくり。弟が吼えた。
「僕だって少しは警戒していたよ! いや、少しどころじゃなくてかなり!
前から……前から、あの子がそういう目を僕に向けていたのには気付いてた。
だけどまだ注意が足りてなかった。あんなことされるんだったら、そもそも、あの子を信用すべきじゃなかった。
呼び出しに応じるべきじゃなかったんだ」
「……悪い。無神経なこと言った」
「ううん、僕こそごめん。兄さんは何も悪くないのに」
どうやら弟は相当酷い目に遭わされたらしい。
何をされたのかは……概ね予想できるけど。
弟が怒るなんて滅多にないことだ。
花火以外の人間にそういうことされるのは、弟にとっては相当なショックだったんだろう。
「兄さんは思い出したんだっけ。小学生の頃のことと、伯母さんのこと」
「ああ。つい最近だけど」
「妹はね、先週花火が家に来てようやく思い出したらしいよ。
自分が酷い目に遭ってたこと。伯母さんからかばっていたのが兄さんだってこと。
内容は真逆だよね。間違って覚えるのも仕方ないけど。
あの日の兄さんは、僕から見ても怖かったから。…………あ、ごめん」
「いや、いいよ。自分のやったことはわかってる。
子供の頃の記憶なんて曖昧なもんだからな。妹は悪くない」
俺が暴れた日を境に、妹は怖い目に遭うことはなくなった。
最後に見た恐ろしい人間は――刃物を持った俺。
伯母と俺に対する認識が入れ替わるには十分なインパクトだ。
あの日に妹をかばっていたのは弟なんだから、妹の記憶が全て間違っているわけじゃない。
「昔のことを思い出したなら、もっと理解できないよ。妹が僕にそんなことするなんて」
「どうしてそう自信たっぷりに誤った認識を口に出来る……」
「え、兄さんは僕が間違ってるって言いたいの?」
……それ以外に何があると?
「お前な、妹に好かれてるって知ってるのか?
それも兄弟愛なんてレベルじゃなくて、もっと深い関係を望んでるんだぞ、あいつは」
「ううーん……もしかして、その辺でずれてるのかな」
「何が?」
「兄さんと、僕の考え方。前提が違うっていうか、兄さんが惚けてるっていうか。
ここまで逆の考えになってるなんて知らなかったよ」
「……さりげなく俺を馬鹿呼ばわりするとは。お前って男はつくづく……」
「いや、別に悪気があった訳じゃないんだけど。
……はあ。こうなったらもう、しょうがないや。
無理矢理にでもわからせるしかないね、兄さんと妹に」
「なぬ?」
弟は妹が待つ部屋のドアを開けた。
さりげなく手招きしてくるということは、俺にも同席しろってことか。
いいだろう。俺とお前、どっちが正しいのか。
白黒つけてやろうじゃないか。
「待たせて悪かったね、兄さんとちょっと話をしてたんだ」
「……自分だけじゃ手に負えないからって、お兄ちゃんに頼るなんて。二人がかりで聞き出そうなんて。
お兄さん、情けない。ずるい。卑怯だわ」
机に突っ伏した妹は振り返りもせずそう言った。
弟よう、やっぱり俺は間違っちゃいねえぜ。
俺の妹はお前が好きなんだよ。俺のことは嫌いなんだよ。
それでも俺が間違っているっていうなら、見せてみろ。
俺が間違っていると言える根拠ってやつを。
「いや、さっきの件についてはもういいんだ。あれは兄さんの見間違いだったんだって」
――――え? そんなこと言ってないぞ?
「ほら、やっぱりお兄さんが間違ってるんじゃない。
私がそんなことするはずないでしょ」
「うん、そうだね。するはずがないっていうか――できるわけがない、って感じだけどね」
「え……?」
妹が顔を持ち上げた。
弟は自分用の椅子に座り、妹を見る。
驚きを顔に浮かべる妹と、微笑みを浮かべる弟。
弟はたったの一言で優位に立った。
「お兄ちゃん、何を言ってるの?」
「動機がない、そもそも相手が違う、そして……覚悟もない。
やっぱりそうだったんだね、その顔は」
「や、違う。違うの。私、本当は……お兄ちゃんを……」
「僕を、何?」
「……! お兄ちゃんの、ばかあっ!」
妹は椅子を蹴飛ばすと、部屋の扉を乱暴に開いて出て行った。
玄関の開く音、続けて駆け足の音。
なんでか知らないが、妹が家を出て行ってしまった。
「おい、なんかすごい悔しそうな顔で出て行ったぞ、あいつ!
お前何言ったんだよ! 全部聞いてたけど!」
「……言い方がきつかったか。まさかあそこまで堪えてるなんて。
兄さん、今ので大体わかった? 妹が何を考えてるのか」
「できるわけがないとか、動機と覚悟がないとか、相手が違うとかか?
そんなんでわかるか。ヒントが足りん」
「……やっぱり気付かないんだ。
兄さんは頭の回転は速いのに。記憶力だってすごいのに。大事なことには気付けないんだね」
ええい、どこかで聞いたことのあるような、寒気を催す台詞を口にするんじゃない。
何となく貞操の危機を感じてしまうじゃないか。
「そうだね。兄さんはともかくとして、妹にはそろそろ――はっきり意識させた方がいい。
兄さん、妹を捜しに行こう。もう外は真っ暗だから、危ない目に遭わないとも限らない」
「言われなくてもそのつもりだ。
あてはあるか? あいつの行きそうなところなんて俺にはわからないぞ」
「行き先はきっと兄さんの探しそうな――――いや、なんでもないよ。
僕にもわからないから、手分けして探そう。
もしも万が一、まぐれで僕が見つけたら兄さんに連絡するから」
「おい、万が一とかまぐれとかってなんだ」
「そのまんまの意味だよ。
それで、これはお願いなんだけど。兄さんが妹を見つけたら、僕にはすぐに連絡を入れないで欲しい」
「お前は俺と妹の二人きりでしばらく話をしていろとでも言いたいのか」
「ご名答。その通りだよ」
「あのな、お前――――」
突然向けられた弟の手によって、俺の言葉は止められた。
止めざるを得なかった。
弟の目は真剣そのもので、ふざけている様子が一切なかった。
「兄さん、お願いがあるんだ」
「今日のお前はお願いばかりだな。……言ってみろ」
「僕抜きで、妹と話をしてほしいんだ。
今二人が話さないといけない。じゃないと、妹が壊れていってしまう」
「壊れる? それってどういう意味だ?」
「……今の妹は危ういんだ。誰かが助けないといけない」
「その役にふさわしいのはお前だろ。俺なんかが――」
「兄さん」
弟は椅子から立ち上がり、手慣れた仕草でコートを纏い、こう言った。
「妹を、兄さんと僕のふたりで助けよう」
主人公のことが大好きなヒロインが突然行方をくらました。心に何らかの感情を抱きながら。
話の展開ではクライマックス。
このイベントをクリアすればエンディングだ。
こういう場合のお約束というと、近所の河原とかどこかのベンチに一人でいるヒロインを主人公が発見し、
感情をぶつけ合い最終的にはお互いの気持ちを理解し合う、というものになる。
少なくとも俺はそんなものだと思っている。
というかそうじゃなきゃヒロインが救われない。
配役をうちの兄妹に当てはめた場合、主人公が弟、ヒロインが妹になる。
俺など、主人公に協力を要請されて探しに出かける友人の役に過ぎない。
友人は結局ヒロインを発見できず、ヒロイン発見の報すら知らされず延々捜し回るのだ。
もちろん描写などカット。友人はカメラの外。
友人は大抵良い奴で、翌日にはヒロインが見つかったことを喜び、連絡を入れなかった主人公を責めたりしない。
断じて友人はヒロインを発見してはならない。
繰り返すが、友人はヒロインを発見してはならない。
今の例は、俺が現在置かれている状況と酷似している。
妹が夜中に家を出て行った。
妹に好かれている弟は捜しに出かける。
俺は弟と手分けして妹を捜索する。
うむ。お膳立てされたような整いっぷりだ。
これで弟が妹を発見すれば、晴れてイベントクリア。
二人はハッピーエンドを迎える。もちろん兄妹的な意味で。
それが理想であり、他にあってはならない。
だというのに――――俺は何をやっているんだ。
主人公の友人はヒロインを発見してはいけないのに!
なぜ! 俺は妹を発見してしまったのだ!
妹もあっさり俺に見つかるような所にいるんじゃない。
一番近い、といっても到着するまで歩いて二十分以上かかるコンビニ。
そこに向かう途中の坂道の手前にあるバス停のベンチに妹は座っていた。
せめて俺じゃなくて弟に発見されろよ。もしくは友人の家にでも邪魔してろ。
ここから引き返すということも、無視することも、もはやできない。
なぜなら、俺が妹の姿を確認した瞬間、妹と目が合ってしまったのだ。
距離は約一メートル。
まさかここには居ないだろうなんて思って、通り過ぎざまにバス停のベンチに目を向けたらこうなった。
不覚、ここに極まれり。
こんなの、普通では考えられない。
シナリオの最後の最後がこんなんだったら、そこまでプレイしてきたユーザーから脚本を書いた人に苦情が届く。
なんだこの斬新ゲー。
「よう、こんばんは」
「……こんばんは、不審な人物のお兄さん」
「最終が出て行ったバス停のベンチに居るお前も不審だよ、十分に」
「あは、はは……じゃあ、私は不審な人物の妹さん、かな」
妹は俯き、表情を見せない。
案の定落ち込んでしまっている。
話をしてやってくれ、ねえ。
ま、どっちにしてもこのまま放っておくつもりはない。連れ帰ることに変わりない。
「隣、座るぞ」
許可をもらうことなくベンチに腰掛ける。手を着くとざらざらしていた。
ふと、妹が薄着をしていることに気付いた。やはり寒いのか、くしゃみをしている。
いきなり出て行くからそういうことになるんだ。反省しろ。
とは思いつつも、ついコートを脱ぎ、妹の肩に被せてしまう。
仕方ないことだ。風邪をひいたら反省もできないんだから。
「優しいのね、お兄さん。自分が寒くならない?」
体は寒い。だけどお前の近くにいるから心は寒くない――なんて言ったら一気に冷え込むな。やめておこう。
「ちょっとは寒いさ。けど今日は風が強くないから、気にするほどじゃない。
それにほら――お前冷え性だったろ。それでも寒いぐらいじゃないのか」
「そんなことまで知ってるんだ。お兄ちゃんも知らないはずなのに」
…………当たるもんだな、当てずっぽうって。
「じゃ、有り難く借りておくね」
「おう。ところで、まだ帰らないのか?」
「うん。だって家に帰っても、どんな顔してお兄ちゃんに会えばいいのかわからないもの。
いつもみたいにしてればいいのか、それとも……」
「いつも通りでいいじゃないか」
「無理よ。どうしても、絶対に、無理。
もし、ここに来たのがお兄ちゃんだったら、顔会わせられなくて、逃げ出してた。
たぶん、そんなことはないだろうなって、思ってたけど」
「そこまで悲観するなよ。俺が先に見つけただけだ。偶然だ。あいつだって怒ってないぞ」
「そういう意味じゃないの。お兄さんの考えてるのとは、違う。似てるようで、でも違う。
顔を合わせづらいの。あんなことをしちゃったから」
「やっぱり、やってたのか」
「やろうとしただけ。……悔しかったの。花火ちゃんにあんなこと言われて。
勘違いなんかじゃない。私だってお兄ちゃんのこと好きなんだから。
お兄ちゃんが喜ぶようなことができるってことを知らしめてやりたくて」
「でもできなかった、か」
「…………うん。悔しいけど、認めたくなかったけど、どうしても駄目だった。
たぶん、お兄ちゃんはそのことをわかってて、あんなことを言ったのよ」
こりゃ、理由を聞くのは野暮だな。
やっぱり怖いんだろう。男はともかく、下手すると女はかなり痛い思いをするというし。
とりあえずよかった。妹が完全に覚悟を決めない限り弟と肉体関係を結ぶことはなさそうだ。
「ねえ、お兄さん」
「ん?」
「雨がどんな味だったら嬉しい?」
こりゃまた、先の会話と繋がりのない話題を持ってきたもんだ。
「水道水と同じのが一番だ。苦かったり甘かったりするのは勘弁だ」
「じゃあさ、いつもはうっすら苦い味で、時々水道水だったりしたら?
天気予報で曇り時々雨、降水確率四十パーセント、おそらく苦い味がするでしょう、なんて言われたら」
「……絶対に雨に濡れたくなくなるな。傘は毎日手放せない」
「そうなるよね。そしてきっと、みんな当たり前の雨の味なんか忘れてしまって、雨そのものが嫌いになる。
苦い雨が降らなくなってしまっても、きっとそれは変わらない。
雨が降らなきゃ、世界中が干からびちゃうのにね」
「だな。でも、まずそんな世界にはならないだろう……たぶん。
話が大きく逸れている気がするんだが、戻してくれるか」
「逸れてるみたいだけど、ちゃんと繋がってるよ。
だって私はそんな世界に住んでる人たちの気持ち、ちょっとだけわかるから。
何の変哲もないものがどれだけ大事なのかってこと。
たまにとっても苦くてもそれは必要なものだっていうこと」
妹が立ち上がる。
コートの袖に腕を通し、車の一切通らない道路の手前まで進んでいく。
そこで妹は腕を広げ、踊るようにくるりと回った。
まるで、雨が降ることを望んでいるように。
月の出た夜の、冬の寒さの中で、一身に雨を浴びているようだった。
外はこんなに寒いのに、つい真似をしたい気分になってしまったのは、妹のターンが綺麗に決まっていたからだろう。
妹は夜空を見上げながら、楽しそうに、悩みから解き放たれたように踊るのだ。
「私はもう嫌いにならないよ。
普通の雨も、苦い雨も。
全部含めて潤いをくれるものだから。代わりになってくれるものなんかない。
あの日から今日まで、毎日傘を差してきて、晴れた日だけしか笑うことはできなかったけど。
本当は私、どっちかというと雨の日が好きだったの。
朝からずっと降り続いて、空を暗く覆ったりしない、さぁぁっていう音を立てる穏やかな雨が。
今になって、そのことがわかった。
……帰ろ、お兄さん。お腹減っちゃった」
「それはいいけど、もう大丈夫なのか?」
さっきはあんなに落ち込んでいたのに。
「大丈夫よ、お兄さん。むしろここに居る方が辛いわ。ここ、寒いもの」
「……結局なんだったんだよ、さっきの雨の味が云々っていうのは」
「あれはただの喩え話よ。お兄さん、知らないの?
雨っていうのはね――――」
妹は、俺が久しく見ていなかった柔らかな笑顔を向け、言った。
「もともと、味なんかしないものなのよ」
妹の気持ちも、何を雨に喩えたのかも、いまいち理解できない。
だが、俺の妹の機嫌はころころと変わるんだと、今回の件でわかった。
そう、まるでにわか雨のごとく。
支援
投下終了。
そして、このまま誰にも気付かれることなく離脱――できない!?
>>423、支援乙!
>>424 GJです
夜勤明けにリアルタイムで見れて疲れが取れたよー
続きも楽しみにしてますのでmyペースで頑張ってください!
離脱なんてさせないんだから・・
ずっとずっと一緒だよ・・・?
という電波を受信したGJ
やほーい、GJ!
寝る前にいいもの見れた
ぐっじょー
GJ!やっぱり報われない葉月さんw
そろそろエロが来ると信じてる。
これは…まさかの妹エンド?
話をぶった切って申し訳ないですが。。。投下します。
―――歩。君はなんて思うかな?
僕を軽蔑する?怒る?それとも以前みたいに、僕を無視するのかな―――
僕は今自宅にいる。深夜2時。両親は寝静まっている。
僕はこれから罪を犯す。でも、これは僕らの未来のためなんだよ?
――――だって、父さんがこう言うんだ。
「もう歩に会うな」って。
母さんだって、
「歩くんだけはだめ」って言うんだ。
二人とも何言ってるの? 僕たちは愛し合ってるんだよ。
何で会っちゃいけないなんて言うのかなあ!?
そんなの僕、耐えられないよ。母さんたちは僕が嫌いなんだね?
…もういいよ。僕の、僕たちの未来を邪魔するやつなんて、いらない。
歩の伯母さま。見ていてくれてますか? 今度は僕の番です。
歩を傷つけるやつなんか…………
僕が殺しちゃうから。
そして僕は灯油とマッチを持って庭に向かう。どこに撒けばよく燃えるかな?
――――電話が鳴った。大丈夫。ちゃんとマナーモードにしておいたから。
「光!!今すぐ家を出るんだ!」
ああ、やっぱり君には"視えて"いたか。君自身、不思議に思ってるはずだよ?
今まで自分のことしか視れなかったのに、最近は僕の未来も視えるようになってること。
でも僕にはわかる。もう君は、僕なしじゃいられないんだね?
僕を失うことが君にとって一番の"危険"なんだよ。だから、僕のことが視えるんだ。
でも僕は、君に嘘をつく。
「こんな夜遅くにいったいどうしたんだい?」
「いいか、よく聞け!家が…放火される。視えたんだ。だから早く逃げるんだ!
消防車なら俺が呼んどくから!」
ごめんね、歩。僕は嘘をついた。僕は、知らないふりをする。
「そう…ありがとう、歩。また君に助けられたね。」
そう言いながら僕は、火を灯す。
「本当に、助かったよ。」
さようなら、父さん、母さん。
歩…騙してごめんね?
でも、きっといつかわかってくれるよね?
だって君には僕が必要で……
僕には君がすべてなんだから。
―――夢を見た。
それは、赤く染まった景色。炎か?
どうやら、何かが燃え上がってるようだ。
よく目を凝らす。中には人がいた。
…光? まさか、あれは――――
目を覚ます。時計を見る。
AM 01:58
夢か… しかし、なんて夢だ。光のやつ、夢の中で笑って…?
パシッ――――――――
!?
……まさか!夢と同じ光景が視えるなんて…ってことは、光が危ない!
まだ間に合うか? 俺は光の携帯に電話をかける。
1…2…3…4…5…6…7……出た。
「光!!今すぐ家を出るんだ!」
消防車を呼びながら俺は光の家に走る。
一度も行ったことはない。だけど、道はさっきの"予知"が教えてくれた。
こんなことは初めてだ。けど、予知は外れたことはない。きっと大丈夫だ。
それが、3日前のこと。
結果だけ言うと、光は無事だった。
が、光の両親は…亡くなった。
家は全壊。幸いと言ってはなんだが、近隣の住宅への飛び火はなかった、
ただそれだけだ。
光は今、俺の部屋にいる。
火事で住まいをなくした光を、俺が連れてきたんだ。
「もう、大丈夫だよ。」
とは言ってるが、顔色が悪い。
「いいよ、寝てろ。今メシ作ってやる。お粥なら食えそうか?」
「うん…ごめんね?」
「いいって、気にするな。困ったときはお互い様、だろ?」
俺はもう一度、あの夢を思い返す。
あの炎の中の、狂気に満ちた、しかし純粋な笑顔を。
―――馬鹿な。それじゃ、まさか光が―――
いや…よそう。光がそんなことするはずがない。
俺を暗闇から救い出してくれた光が、そんなことするわけないんだから。
「歩、愛してるよ。」
そう言った光の笑顔が、心なしか夢の中と同じように見えた、なんてことある訳ない
んだ。
ああ、君は優しいね。なんだか申し訳ないよ。
もし今君に、僕が実の両親を殺したと知られたら・・・捨てられるのかな。
そうしたらどうすればいいんだろう。怖いよ。
お願いだよ、僕を・・・見捨てないでよ・・・
―――イマサラ、ナニヲイッテルノ―――
・・・え?
―――オマエハムカシオナジコトヲシタジャナイ―――
・・・・誰?
―――タイセツナヒトノタメニ、アイツヲコロシタ―――
知らない!そんなの知らないよ!あなた誰!
―――ワスレタノ?ワタシハアナタ、アナタハ―――
違う!違う!そんなことあるわけない!イヤ・・・イヤ・・・
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
第5話終了です。光がぶっ壊れてきます。
これからバイト行ってきます。ノシ(←用途合ってますかね??)
光可愛いよ光。
愛する人のために無茶をするのはいい子です
>>424 GJ。なぜ平日にと思ったら1周年に合わせたのか
>>436 GJ。落ち着いた人が病むのはいいね
うおわ!
お二方ともGJ!
ヤンデレ家族の方はなんかものすげぇことになってるぜ……ゴクリ
もう誰は、やっぱ光かわいいよ光。ブッ壊れて来ましたね!
お二方とも続き楽しみにしてます!
相談なんですが・・・・
・・・誰か光の立ち絵描いてくれませんか?
自分で挑戦したものの、絵が根本的にダメなので・・
頭の中でもイメージがコロコロ変わって
いまいち定着しないので、正直泣けてきます
自分で考えたキャラなのに・・・orz
まじで頼んます!
迷惑だったり、「なんだこいつ」と思われたら、スルーして下さい。
陽之下
棒人間なら良いぜ
二人とも乙!
俺も棒人間なら・・・
・・くだらないこといってお騒がせしてすいませんでしたorz
ほんと、反省してます。
何とか、脳内イメージを完成させたいと思います。
ストーリーの方は先ほど一応最後までのプロットは完成しました。
明日あたりには次の話が出来上がりそうです。
長編ならトリップつけた方がいいぜ!
そしてGJ!
トリップがよくわからなかったのでぐぐってきました。
ついでに、試してみます。
次はROMるぐぐってくるんだ
まぁ必要以上に作者として書き込むのはあまり褒められた行為ではない
それによってスレがあれることがよくある
あれ・・・?
この流れどこかで見たような・・・
いかん眼から汗が
リトバスかぁ
まだ買ってないなぁ
天地創造のメイリン以来の秀逸なボクっ子ですなgj
ボクっ娘というと亜沙先輩しか思い浮かばないから困る
カルタグラのキモウトを健気にした感じだな
きたああああああああああああ
男ヤンデレ×女ヤンデレは幸せになれるんだろうか
少なくとも浮気の心配はないな
変態男×ヤンデレ娘をどうか…
!ねすまみてげ上はにまた
アルテマ使え
第6話投下します。
>>450 ありがとうございます!自分の中の光のイメージと結構近かったです。
まあ光は貧乳な設定ですが。。。
あの痛ましい事件から2ヶ月が経った。
光は、人が変わったかのように何かに怯えるようになった。
以前の光を知ってるやつなら、誰でも変に思うだろう。
ただそれは、どうやら両親の死が原因じゃないようなんだ。
学校でクラスメートにその事でいたわりの言葉をかけられても、また俺がその話をしても、
「大丈夫。もう平気だから。」
とだけ言うんだ。
じゃあ、お前は一体何をそんなに恐れてるんだ?
俺はそのことを、こいつに相談したんだ。
「で・・・どう思う?」
「…そうだな。両親が死に、次は自分だ、と思ってるとか?ちなみに真面目な意見だ。」
こいつは、環 右京。左京先輩の弟だ。
俺にとって数少ない、腹を割って話ができる相手だ。
以前は、右京とは必要最低限のことしか話さない仲だった。
だが何度かそうしているうちに、「こいつは自分からは他人の領域に入り込んでこない。
だからなんとなく、こいつなら頼りになる。」と思ったんだ。
それからは、親友・・・というのとはまた違うが、悩み事を互いに話せる仲になった。
これも、光のおかげだ。俺は光のおかげで、前よりひとを疑わなくなった。
だからこそ、今こうしてまたひとつ、悩みを打ち明けられている。
「真面目に返すが、それはないだろうな。」
「そうか………まあ何にせよ、佐橋がついててやれば、安心するんだろう?しばらくはそれでいいんじゃないか?」
「時がたてば……ってか?……正直いうと、俺は光を早く恐怖から解放してやりたいんだ。
でもあいつは何も言ってくれない。………環のいうとおり、このまま待つしかないのか………?」
下校のチャイムが鳴る。
俺はいつもどおり、光と一緒に帰る。
「ねえ歩・・・右京君と何話してたの。」
そう言う光。その笑顔は・・・・いつか視た、"あの"笑顔。
「心配するな、光。お前の話をしてたのさ。」
「えっ・・・なあんだ、心配して損しちゃったよ。」
「環のやつ、うらやましがってたぞ?お前みたいな嫁がいるなんて、って。」
「嫁だなんて・・・そんなぁ♪////」
ふと見ると、もとのはにかんだ笑顔に戻ってる。よかった―――――
俺が一番悩んでるのは、以前よりさらに激しくなった、光の、俺への執着心。依存心とも言うべきか。
たとえば、俺がコンビニに行くほんの数分が耐え切れなくて・・・・
光はカッターで手首を切ろうとした。横ではなく、縦に。それも一度じゃない。
俺がそれを"予知"できなければ、今頃は命がいくつあっても足りないだろう。
そうして帰ってきた俺にすがりつき、ひたすら
「ひとりにしないで」「みすてないで」「たすけて、ひとりはこわい」
と、泣きながら懇願するのだ。
それから、以前俺が女子から手紙をもらったときは、(環曰く、こう見えて俺はもてる、らしい。訳わからん)
「約束・・・覚えてるよね・・・・?」
と、あの笑顔で言うのだ。
当然俺は手紙の主をふる。でもそれは俺のためとか、光のためだけじゃない。
そうしないと、その子はきっと殺される。何でだろうか。光がそんなことするはずないのに、
俺の"予知"でない予感が、そう告げるんだ。
でも俺は、光から離れようとは思わない。
今の光には俺が必要なんだ。
それに、光がいなければ俺はずっと孤独だった。俺にも、光が必要なんだ。
それが恋愛感情なのかはまだわからない。でも、光が望むなら・・・・・
「歩、愛してるよ。僕は絶対、君のそばを離れたりなんかしないよ?」
「・・・・ああ。俺もだよ。」
俺は、光を抱いた。
あの日、光は突然何かに取り憑かれたように怯えだし、俺に"救い"を求めた。
俺にはただ、そうすることでしか光を恐怖から救えなかったんだ。
でも構わない。俺だって光に救われた。
光が望むなら、それで癒しになるのなら、俺はいくらでも光を抱いてやるさ。
「君がいてくれるなら、何にも怖くないさ。
だから・・・・僕を見捨てないでね?」
光は、最近よく俺にこの台詞を言う。光が何を怖れてるか全部は俺にはわからない。
ただひとつ言える事は・・・・
「心配するな。俺には、お前しかいないんだから―――」
光は、俺に見放されることをとても怖れている、ということだ。
第6話終了です。
・・・トリップ付け忘れた・・・orz
次回からはつけたいと思います。
それから、スレの住人の方々へ。いろいろ一人で騒いじゃってすいません。
電車の中でにやけせうになった。あぶないあぶない
これはいい依存w
破滅に向かってる感じがするのもまた良し。
乙
うほほい壊れてきてるねぇ。
GJだぜ!
第6.5話を投下します。
時間軸は、第5話の直後です…が、第6話の別視点です。
トリップは、これで固定します。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「光!?どうした!」
――――ホラ、アナタノダイジナヒトガシンパイシテルワヨ?――――
「やめて!いや!いやぁ!!!」
助けて! こわい!こわいよ!僕の中になにか怖いものがいる!
――――モシアノヒトガ、アナタガリョウシンヲコロシタコトヲシッタラ、ドウ
ナルノカシラ?――――
「ひっ……あ、あっ…やだ……歩…たすけて………」
「光っ!?」
僕は、歩にすがるように抱きつく。
「あは……歩…僕…ぼく…」
歩…君にこうして抱かれてるだけで…僕は…
――――アナタニソンナシカクアルノカシラ?――――
……え?
――――リョウシンヲコロシ、ワタシノ××××ヲダマシテイルアナタニ―――
―
い…いや………いわないで……
――――ワタシノ××××ニアイサレルシカク、ナイワヨネ?――――
「いや―――――っ!!!」
「落ち着け!光っ!」
「―――っ」
―――なに?あったかい…あれ、ぼく、あゆむに きす されてる――――
「ぷは…あゆむ………もっと、して……?」
「光?」
「もっと、ぼくをあったかくして?それで…こわいの、わすれさせて…?」
「まてっ!光!お前―――」
「はやく…たすけて………こわいよ……あゆ…むぅ…」
「…わかった。」
ああ…僕、歩に抱かれてるんだね?
ずっと、待ってたんだよ?
もっと、ぼろぼろになるまでシテいいんだよ?
だから―――
「はぁっ…あゆむ………すき………すきぃ……」
「光… っ、光っ!」
「っあ…きもち…いい……よ………あゆむ…あゆ、むっ!あゆむっ!あぁぁぁぁっ!
」
「じゃあ、買い物行ってくる。大人しく寝てるんだぞ?」
「うん………だって、立てないし。」
「それは………その……なんていうか……すまん。」
「あははっ、大丈夫だよ。その…ちゃんと気持ちよかったから、ね?」
「っっ…そんな恥ずかしいこと、真顔で言うな。」
パタン
歩、ぼく、幸せだよ。愛する君とやっとひとつになれて……
その…ちょっと痛かったけど、いっぱいシテれば慣れるよね、うん!
―――イッパイしてレバ、ネェ――――
「――ひっ!」
――――マッタク、マルデサカッタめすねこミタイネ――――
「いやぁ!あなた誰!どうしてぼくの中にいるの!」
――――ワスレタノ?ナラ、オモイダサセテアゲル―――
「…っ!?」
―――だれ?
…歩? まだあんなにちいさいんだ、かわいいなぁ。
……あれ、あんただれ?
歩をいじめるの?
なにするの?歩、泣いてるじゃない。
…やめろ…あたしの歩をいじめるなぁぁ!
ザクッ―――――
あははっ、ざまあみろ。歩をいじめるやつは、このあたしが―――
歩、どうしたの?
なにをそんなにこわがってるの?
あたし、歩をたすけてあげたんだよ?
―――? なんていってるの?
「………さん………とおさんっ……」
とおさん? そっか、あれは、とうさんだったんだ。
―――ホラ、オモイダシタ?――――
どういう事?それじゃ、僕は………
――――ソウ、コロシタ――――
「そんな…じゃあ、ぼくはいったい……」
―――ワタシハアナタ。アナタハワタシ。ソシテワタシタチハ――――
―――っ!そんな、馬鹿なこと…それじゃあ……僕は…
………もう…何がなんだが分からないよ。苦しい…とにかく、はやく楽になり
たい………
あはっ、あそこにいいものがあるね――――
カチカチカチ……………
これで、ここを切れば………きっと楽になれる………
バタンッ!
「やめろっ!光!!」
――――ちっ、もう少しだったのに、運のいい女。
でもこの調子なら、すぐ折れるわ。
そうすれば、私は私を取り戻せる。
そう、あなたはわたし。
私は―――佐橋 晶。
473 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 23:55:00 ID:BNM9bA2V
GJ!
続きマジ気になるw
投下終了の書き込み忘れてました。
一応、6.5話は
>>472までです。
GJすぎる!
寝る前にいい物を見たぜ……
投下します
彼女が初めて彼の姿を見たのは、学校に入学してすぐだった。
新入生歓迎、とか名づけられたれた部活紹介。
全国的な強豪だとかいう演劇部はごく簡単な劇を披露した。
その主役を務めていたのが彼だった。
そして、彼女は彼に夢中になった。
演劇に関しては何も知らない。しかし彼の演技が素晴らしいというのは一目でで分かる。
一挙手一投足が、観客の五感すべてを魅了する。世の中にこんな人間がいるのかと思った。
後に、彼は若くして天才と称される人物であることを知った。
彼と同じ舞台に立ちたい。共に演技をしてみたい。
本気でそう思った。
まもなく演劇部に入部した。劇の経験は小学校の学芸会程度。
無論、親や友達からは猛反対を食らった。
しかし、入った後の彼女の努力は凄まじかった。自分の心身全てを賭け、必死に演劇に打ち込んだ。
すべては、彼と同じ舞台に立つために。
元々その素養があったのかは分からない。彼女は、1年後には彼と並んで称されるほどの役者に成長していた。
ほどなく、彼から交際を申し込まれる。返事はもちろんOK。
天才カップルなどと呼ばれ、校内中から祝福を受けた。
しかし。
何度、甘い愛の言葉を囁かれても。
何度、抱きしめあっても。
何度、濃厚なキスをしても。
何度、愛撫を受け体を重ねあっても。
彼女の心は満たされなかった。
唯一充足感を覚えるのは、彼と同じ舞台に立つ時のみ。
そんな毎日の中で、あることに気づく。
―自分は、彼が好きなんじゃない。舞台に立っている彼が好きなんだ。
思えば、彼を初めて見た時も彼は演技をしていた。ここまで来た理由も、彼と同じ舞台に立ちたいから、だった。
舞台に立つ彼は、彼女のあこがれ。
彼と舞台に立つたび、不思議な高揚感が身を包み、どんな複雑な演技もいとも簡単にこなすことができた。
事実、2人の共演は物凄い反響を呼び、もはやその名は徐々に全国にまで知れ渡るようになった。
時は流れ、やがて彼にとっては高校最後の公演を残すのみとなったある日。
彼は大事な話があると彼女に告げた。それはこの公演をもって役者を引退すること。
高校を卒業したら、大学に入って普通の青春を謳歌してみたい。それが彼の願いだった。
彼女は目の前が真っ暗になるのを感じた。
彼と共演することだけが、彼女の生きる全てだった。それを失くしたら、どう生きて行けばいいのだろう?
不安と焦燥感にかられた。しかし、今は公演に集中しなくてはならない。
台本をパラパラとめくる。
その手が、ふと、最後のあたりで止まった。
途方もない考えが、頭をかすめた。
忘れようとしても、その考えはしつこく頭の中に残り続ける。
―自分の全てを失うというのなら、いっそこの手で。
―――――この手で・・・
最終公演の当日。
天才と呼ばれた役者の突然の引退宣言。当然、観客は雲霞のごとく押し寄せた。
演目は中世、上流社会を舞台にした恋愛もの。
この日の彼の演技は、普段より遥かに研ぎ澄まされ、人々を圧倒し。
彼女の演技は、いつにない激しさと妖艶さで、人々を魅了した。
やがて、演劇はクライマックスを迎える。
嫉妬に狂った女が、主人公に迫る。
懐の短剣で、主人公を刺し殺す。
倒れる主人公。
やがて女は去っていき、幕が閉められ、観客は万雷の拍手を送る。はずだった。
「・・・っ・ぐお・・・おま・・・え・・・」
「ごめんなさい、でもね、私は舞台の上のあなたがすべてなの」
「それを失うというのなら・・・私は自分で終わらせるの・・・」
前列の観客が、異変に気付く
倒れた彼が、痙攣した後、ぴくりとも動かなくなる
胸元から、血糊ではない、真っ赤な液体が溢れ出し・・・舞台を赤く染めてゆく
『おい、事故だ!』
『剣が本物にすり替わってたんだ!』
『幕を降ろせ!早く救急車を呼べ!』
『きゃああああああっ!!!』
騒ぎが波のように広がってゆく。
「ふふっ」
不意に笑い声が響いた
全観衆の目が舞台に向く
彼女は笑っていた。返り血を、その全身に浴びて
「ふふっ、くっ・・・あはははははははははははははははははは!!!!!」
凍りついた空気の中
ステージに幻を追い続けた少女の笑い声が、いつまでも響き続けた
以上です
演劇やドラマ撮影の最中に事件が起こるのは推理小説なんかでよくあるパターンですが、
どことなくヤンデレっぽい感じがするなあと思ってこの話を思いつきました。
しかしこういう事故って実際あったりするんでしょうかね?
よくやった
GJ
>>474 真のヤンデレ登場? これはwktkするw
>>479 舞台に立っている彼が好きな彼女からすると現実の彼は邪魔者なのですね(´;ω;`)
きめえ
第7話投下します。
―――知りたくなかった。
かみさま、どうしてですか?
どうして、僕から大事なものを奪ってくんですか?
こんなのって・・・あんまりだよ。
ひどいよ。いっそ殺してよ。
なんで、歩なの?他の人じゃだめなの?
僕が両親を殺したから?歩を騙したから?
ねえ・・・なんとか言ってよ・・・
どうして、僕たちが――――
「・・・・っ! 光!大丈夫か!」
「・・・あ、あゆむ・・?どうしたの・・」
「お前、すごくうなされてたぞ。大丈夫か?ほら、水だ。」
夢・・?あれは全部夢だったの?・・いや違う。
僕は、何かを知ったんだ。そして―――
・・あれ?僕は、何を知ったんだ?思い出せない。なにか、ものすごく大事なことだったのに。
いや、きっとこれでいいんだね。そんなの、思い出す必要ない。僕には、歩がいればいいんだ。
「おかわり、いるか?」
「・・・ううん、いらない。いらない、他に何もいらないからっ・・・」
僕は、歩にすがる。
「おねがい・・・ずっと一緒にいて・・・・。」
そう、他に何もいらないから・・・
かみさま、どうか僕から大事な人を奪わないで。
それが、2か月前のこと。
僕は、もはや歩なしではいられなかった。
歩がトイレに行く数秒が我慢できなくて、一緒についていった。
歩が他の女の子と話しているのを見て、捨てられるんじゃないかと思ってびくびくしてた。
体育の授業で離れたときは、ほんとに吐きそうになった。あんなものが週3回もあるなんて・・・地獄だよ。
暇さえあれば、人目をはばからず歩の唇にむしゃぶりついた。
ひとりぼっちでいると、ものすごく怖かった。その分、歩にたくさんシテもらった。
僕は、もうだめだね。
歩がいてくれないと死んじゃいたくなる。まるで、麻薬中毒者みたい。
「心配するな。俺には、お前しかいないんだから―――」
君も、僕なしじゃいられないんだね?あは・・・・うれしいなあ。
いいんだよ?もう僕は君しかみえない。いっそ君もそうなっちゃえばいいのに。
でも、どうしてかなあ?「おまえしかいない」って言ったのに―――
「………てわけで光。終わるまでどっかで待っててくれないか?」
どうして、僕を独りにするの?
僕のことが嫌いなの?もううっとおしいの?僕の愛だけじゃ足りないの!?
………そう、じゃあ、君も僕と同じにしてあげる。
僕のことしかみえなくしてあげる。
そうすれば、ほら。二人だけの世界。すばらしいよ。
「ふ…ふふ……歩…許さないよ………明日、たっぷり"おしおき"してあげるからね…?」
第7話終了です。
6話の「2ヶ月が経った」と同じタイミングに戻り、そのまま8話に続きます。
487 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 20:25:54 ID:Qbb9W9ge
いいねいいねー。このお話好きだ。
次から投下します
俺がまだ小さいころ、母親とヒーローショーを見に行ったことをいまだに俺は鮮明に覚えている。
子供をステージ上に攫い、高笑いを上げる典型的な悪役。
そして司会のお姉さんが観客と一緒にヒーローの名を呼ぶと、我等がヒーローが威勢よく台詞を叫びながらステージに躍り出てくるんだ。
ヒーロー達は悪役と戦い、そして最後には必ず勝つ。
それが当時の俺にはとてもまぶしく、とても格好よく見えた。
『ああ、ボクもヒーローになってみんなを悪い奴らから守りたいな』
幼心にそう思った。
ヒーローショ−が終わり、興奮冷めやらぬ状態で母親にそのことを話した。
「そうね。正義がヒーローになってみんなを守ってくれたら安心ね」
「うん!ボクかならずヒーローになってみんなをまもってあげる!」
「そう。お母さん嬉しいわ」
母は微笑みながら俺の髪を優しく撫でた。
「でもどうやったらヒーローになれるのかな?へんしんベルトがあればいいのかな?」
『ヒーローなんて本当はいない』
残酷な現実を知らない幼い俺の問いに、母は俺の目をじっと見つめながら答えた。
「いい、正義?ヒーローになるために本当に必要なのは変身ベルトなんかじゃないわ。ヒーローになるために本当に必要なもの。それはね、正しい心。
だからあなたはいつも正しい行いをしなさい。そうすればきっと変身ベルトなんかなくてもあなたは本当のヒーローになれるわ」
「うんっ!わかった!」
言葉の意味の半分も理解してはいなかったが、とにかくヒーローになりたかった俺は元気よく答えた。
すると母は笑ってもう一度俺の髪を撫でた。
それが妙にくすぐったく感じて、俺はやや強引に母の腕から抜け出すと駆け出した。
「おかあさんはやくかえろ!ボクおなかすいた!」
「あらあら。それじゃあ今日は何にしようか?」
勝手に走り出した俺を母は小走りで追いかけ、温かい大きな手で俺の頼りない小さな手をぎゅっと包み込んだ。
「ボクね、ハンバーグがいいな!」
「はいはい。じゃあ帰りに買い物していきましょ」
繋いだ手をぶんぶんと振り回しながら二人寄り添って帰った。
――その日からだ。俺が「ヒーローになる」という夢を追いかけ始めたのは。
人が嫌がることも進んで行い、困っている人がいたら自分ができる範囲で力を尽くし、いじめられているやつがいたら一対多数でも特攻しにいった。
おかげで「ウザイヒーロー気取り」などと陰口を言われていそうだが、俺の行いによって少しでも救われた人がいるのならそれでいい。
それは俺にとってまた一歩憧れのヒーローに近づけたということなのだから。
『ピンポーン』
軽快なチャイム音が静かな住宅街に響く。
「すいませーん。あいつ起きてますかー?」
俺、『赤坂 正義』は今幼馴染の家に朝っぱらから来ている。
何故早朝に他人の家にお邪魔しているかというと、これが俺達の習慣だからとしか言いようがない。
俺は毎朝早くに起きて、そいつを家まで迎えに行き、それから登校するという生活を送っている。
ヒーローたる者がだらしなくしていては皆に示しがつかないからな。
逆にあいつは普段はしっかりしているのに朝に弱い。
休日は昼過ぎまで惰眠を貪っている。俺には到底考えられん。
やや心配性な彼女の両親に
「マサ君が来てくれればあの子は一発で起きるからお願いできるかしら?」
と直々に頼まれ、こうして毎朝迎えに来てやってるというわけだ。
「はーい。今着替えてるみたいだからちょっと上がっててー」
明るい声がインターフォンから響く。
許可も出されたことなので勝手にドアを開けて中に入らせていただくことにする。
「お邪魔しまーす……あ、おはようございます、橙子さん」
通されたリビングでパタパタと忙しそうに朝食の支度をしているのは母親の橙子さんだった。
彼女はいつ見ても美人だ。というか物心ついたときからあまり顔が変わっていないような気が……
一体この人何歳なんだ?前に聞こうとしたら笑顔のまま物凄い殺気を出してきたので結局聞けなかったが……
ところで何故今頃食事の支度を?
いくらあいつがねぼすけだといってももうすぐ着替え終わって二階から降りてくると思うのだが。
「おはよう、マサ君。今日は私も寝坊しちゃってね。今すっごく忙しいの」
「またですか?俺も手伝いますよ」
「ゴメンね〜。後で何かおいしいお菓子作ってあげるから」
やはり親子だ。朝から「寝坊は遺伝するのか?」とくだらないことを考えながら、やや貧相な朝食をテーブルの上に並べていく。
「朝食は一日の活力ですよ、橙子さん。ちゃんと食べなきゃダメですよ?」
「あはは、なかなか起きられないのよね〜。ちゃんと毎朝起きられるマサ君は偉いわ〜。よしよし」
橙子さんが俺の頭を笑顔で撫でてくる。
いい年した男がこうして年上の女性に頭を撫でられるというものは非常に恥ずかしいものでして。
「ちょっ、やめてくださいよ橙子さん!」
「んふふ〜。照れちゃって可愛い〜♪」
俺は抵抗を試みるが橙子さんのこうした行為から一度も逃げ切れたことがない。
だが無情にも橙子さんは調子に乗ってべたべたと俺に抱きついてくる。
うわ、ちょっと本当にやばいぞこれは。
相手がいくら子持ちの人妻とはいえ、この同年代の女子には出せない大人の色香、
優しく包み込んでくる温かさとむっちりした柔らかい体の感触に俺の理性は陥落寸前だ。
「何してるの二人とも……」
突然後ろから聞こえてきた底冷えするような低い声に俺は背筋が凍った。
沸騰寸前だった脳みそが一瞬にして冷却されていく。むしろ凍結する。
恐る恐る振り向くとそこには朝の不機嫌さもあいまってか、鬼の形相をした幼馴染が立っていた。
名前は『黒田 佳奈美』。俺と同じ高校二年生だ。
少しきつ目の印象を受けるが、やはり彼女は長年付き合ってきた俺から見ても十分美人の部類に入る少女だと思う。
しかも勉強、運動とも死角なし。まさに天は彼女に二物も三物も与えている。
彼女に想いを寄せる男子も少なからずいることだろう。
だがこのように怒りっぽくて、見た目通り性格がきついのが難点だ。
「お、おぅ。おはよう佳奈美」
俺は一瞬にして凍りついた空気を打破しようと何事もなかったかのように佳奈美に話しかけた。
「おはよう。人妻、しかも幼馴染の母親に朝から手を出してる変態ヒーロー気取り」
「待て、それは誤解だ。俺は無実だ。話し合おうじゃないか」
「黙れ変態」
泣いていいかな、俺?
っていうか橙子さん。俺に抱きついたままニヤニヤしていないでこの状況を早く説明してくださいよ。
「んふふ、佳奈美こそ朝から焼きもち焼いちゃって。ご馳走様」
「なっ……!?や、焼きもちなんか焼いてないわよ!!」
は?二人は一体何を言っているのだろうか?
朝食の中に焼いた餅なんかないぞ?
よくこの親子は俺には分からない内輪ネタを話すから困る。
「いつまでもぐずぐずしてるとお母さんがもらっちゃうわよ?んふふ、とっても美味しそう……」
そう言って俺になんだか熱っぽい視線を向けてくる橙子さん。
なんだ、風邪気味か?美味しそうってこの朝食のことか?
「い、いい加減お母さんから離れなさいよっ!!この変態!!」
佳奈美が真っ赤になって俺と橙子さんを強引に引き剥がした。お前も風邪か?
家族のうち誰かが病気になると他の家族にも感染しやすくなるからうがい、手洗いはしっかりしろよ。
しかし柔らかい感触が離れてしまったことは残念……などと俺は感じていないぞ。断じてだ。
「冗談、冗談よ。私にはお父さんがいるもんねー」
そう言ってクスクスと笑う橙子さん。
確かに佳奈美の両親は近所でも有名なおしどり夫婦だ。
年甲斐もなくいつまでも学生時代の甘い恋を引きずっているので、見ているこっちの方が恥ずかしくなるほどお互いがべったりな状態だ。
佳奈美はしょっちゅう橙子さんから父親についての愚痴、もしくはのろけ話を延々と聞かされるらしい。
そこまで来ると両親の仲が良さ過ぎるっていうのも考え物だな。
「でも早くしないと本当に誰かに食べられちゃうわよ?」
「う、うるさい!あたしはご飯を食べるからね!」
そう言ってがつがつとご飯を書き込む佳奈美。
しかし朝からヤケなのか勢い良いな。他のやつらなら確実に胃がもたれるぞ。
「マサ君。こんな娘だけどよろしくお願いね?」
不意に真剣な目で橙子さんが俺を見つめる。
分かってますよ、ちゃんと佳奈美は学校に遅刻させないよう連れて行きますから。
「はい。ちゃんと責任を持って佳奈美を連れて行きます!」
佳奈美の親に頼まれているんだ。元気よく返事をした。
「ブフッ!?!!?」
のわっ?!佳奈美のやつ突然口から勢いよく米を噴出しやがった。
汚いからレディーがそんな真似すんな。いや、まだガールか?
「あら〜、とうとうその気になってくれたのね!今のセリフ聞いたらお父さんきっと大泣きしちゃうわね」
橙子さん、そんな泣いて喜ぶほどのことじゃないと思うんですけど。
「な、な、な……あ、あんた今何言って……」
何にそんな驚いてるのか知らんが口の回り米粒だらけだぞ。ちゃんと拭きなさい。
「だから俺が責任を持ってお前を学校に遅刻しないように連れて行くって言ったんだが?」
至極普通に俺は当然のことを言っただけだ。
しかし佳奈美と橙子さんの反応は俺が予想していたものと大きく違った。
佳奈美は金魚のように口をパクパクと、橙子さんにいたっては笑顔のままで固まってしまった。
あれ?俺何かやらかしたか?
「あ、あんたってやつは……もう行くよっ!!この最低鈍感男!!」
やっと正気に戻ったかと思うと俺を思い切り罵倒する佳奈美。
何が起こったのか理解できずに呆然と立ちつくす俺。
その間に佳奈美は鞄を持って勢いよくドアを開けて家から出て行ってしまった。
「な、何だぁ?いきなり怒ったりして……」
「う〜ん……今のは流石にマサ君が悪いわね」
橙子さんが困った顔で俺を見てくる。
「あの〜、俺の発言に何か至らぬところがありましたか?」
「……それはマサ君の宿題としておくとして、早く追いかけたほうがいいんじゃないの?」
なにやら憂鬱そうな表情でどこか遠くを見ている橙子さん。
だが今は橙子さんの言うとおり、佳奈美を早く追いかけたほうがいいな。
「はぁ、わかりました。じゃあ、行って来ます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
橙子さんに挨拶をすると家を出て駆け出す。今は隣にいないあいつに追いつくため。
やれやれ、あの不機嫌様じゃかなりどやされそうだな……
「ハァハァ……しかしここはいつ来てもすごい人だかりだな」
今俺は非常に疲れている。もはや教室に辿り着くだけの体力しか残されていない。
何故なら俺はたった今購買という飢えた学生諸君が自分の好物を買い逃さないように我先に争う地獄絵図の中を突破して来たからだ。
大げさに説明していると言われそうだがこの表現はあながち間違ってないと思う。
まさか焼きそばパン一つ買うのにここまで体力を消耗するとは恐るべし購買。
さて、昼食は弁当派の俺が何故こんな目にあっているのか。
それは今朝の出来事から続いている。
あの後、訳も分からないままとりあえず佳奈美に追いつき、散々頭を下げたことによって何とか佳奈美のご機嫌メーターが半分ほど回復した。
しかし、怒りに我を忘れていた佳奈美はなんと弁当を鞄の中に入れてくるのを忘れてしまったのだ。
するとこのドジッ娘は
「あんたの弁当よこしなさい。あんたのせいで忘れたんだから」
と理不尽極まりないことを言ってきやがったのである。全く持って信じられない女だ。
「そりゃお前、自業自得だろ。何故俺のせいになる」
と俺は思ったがそんなことは口が裂けても言えなかった。
日本において円滑なコミュニケーションを行うには空気を読む能力が必要なだけだ。決して俺はチキンなわけじゃない。
というわけで少女の空腹を満たすために自作弁当を泣く泣く献上した哀れなヒーローは己の腹も満たすためにこの戦場へと飛び込んだわけだ。
「ふぅ、さっさと飯を食ってのんびりしよう」
ヒーローと言えども体力は無尽蔵にあるわけもなく、休息は必要である。
よって今日の昼休みの予定は焼きそばパンを胃に詰め込んだ後、佳奈美のお小言を聞き流しながらボーっとすることに決定だ。
そう思って教室に戻ろうとしたのだが、
「おーい、赤坂。ちょっとこっち来い」
突然後ろから声をかけられたので振り向くとそこには担任の水野ティーチャーが。
「どうしました?また娘さんの自慢なら飯食いに行かせてもらいますよ」
この先生は6歳になる娘を溺愛しているのでHR、授業中問わずに娘を絡めた話をしてくることで有名なのだ。
「違ぇよ。この前お前が出した進路調査の内容についてなんだがな……」
珍しく真剣な顔をしている先生の言葉を聞いた時、俺は昼休み中に昼飯を食うことはできなくなったと確信した……
「……んで、将来希望する職業を書く欄にふざけてるとしか思えないようなものを書いたってことで呼び出しくらった。
そして『これは何か?』と聞いてきた先生に自分がいかにヒーローになりたいかということを熱く語ってきたと?」
俺の目の前で呆れ顔をしている佳奈美は溜息をつきながら
『あなたが将来希望する職業を三つ書いてください。』
2−A 赤坂 正義
1、戦隊物のヒーロー(レッド)
2、戦隊物のヒーロー(レッド以外)
3、敵の怪人幹部
と書かれた調査用紙を俺に突きつけてきた。
「毎度毎度あんたも懲りないわねぇ。頑固者って言うか、一度言ったことは維持でも曲げないってゆーか。
あんたと同じ特撮オタクの太田君だってこんなこと書かないわよ?」
お前も毎度毎度この手の話題が上るたびに俺に説教してるだろ。
いい加減諦めたらどうだ?ってセリフはこっちが言いたい。
「ふざけてるとは何だ。俺はいたって真剣だぞ」
しかしこうは言ってみるものの、確かに高校2年生にもなってこんなことを大真面目に書くのはどうかしてると自分でもたまに思う。
だが、俺のヒーローに対する思いは半端なものではないのだ。
何せ4歳のときに「俺はヒーローになる!」と誓ってから今に至るまで一度もその志は折れていない。
しかし、佳奈美は俺の発言が気に障ったのか、不満げに眉を顰める。
「あのねぇ。流石にそれは先生に真面目に進路を考えているのかって怒られても仕方ないわよ。あたし達来年は受験生だよ?
正義は成績いいんだし、先生としては良い大学に行って、真っ当な職について欲しいんじゃないの?」
普通に考えたら誰もがそう考えるであろうことを言われたので俺も負けじと反論する。
「もちろんそれは分かってる。しかし、夢を諦めてもいいと思えるようなものに今まで遇ったことがないし、これから先もないと思うんだ」
だが佳奈美はさも頭が痛い、と言いたげに手を額に当て、冷たく言葉を投げかける。
「夢、夢って言うけどねぇ。あんた夢だけで食っていけると思ってるの?」
「む……」
この手の質問は卑怯だと思う。
確かに一体どれだけの人間が自分の夢を追い続け、それで生活していくことができるというのか。
大半の人間が夢を諦め、夢を追い続けたものも貧窮にあえぐのが現実だ。
俺は皆に言わせれば夢ばかり追い続け、現実を見ていない大馬鹿野郎だろうけど、夢を追い続けている俺だからこそ、そのことを一番分かっているんだ。
でも夢を諦めてしまったらそこで終わりじゃないか。
自分がやりたいことを諦めて、無難な道を選び、一生を過ごしていくのかと思うとぞっとする。
俺は「あの時ああしていればよかった」なんて後悔はしたくないんだ。
もしも夢を諦め、現実に従うことが大人になると言うのならば、俺は一生大人になんかなりたくない。
なのにどいつもこいつも言うことはみんな同じだ……!!
だから俺は先ほど教師にも言ってやった言葉を、苛立ちを隠せない口調で幼馴染に吐いてしまった。
「とにかくこれは俺の問題だ。いくら佳奈美が俺の幼馴染だからといっても関係ないだろ。……俺は帰る」
「あ、ち、ちょっと!!」
自分の鞄を乱暴に掴み、足早に教室から出て行く俺に佳奈美は慌てて袖を掴む。
しかし、頭に血が上っている俺にその行動はむしろ理不尽な怒りを大きくするだけだった。
思い切り彼女の手を振り払うと、彼女の方を一度も振り向かずにわざと音を立てて戸を閉める。
「ま、正義……」
ドアの向こうから漏れてきた彼女の悲痛な叫びに耳をふさぎ、廊下を思い切り駆け抜け俺は学校を飛び出した。
……俺って最低なやつだな。
一人きりの帰り道は冷たく、いつも隣にある温もりがいないことを嫌でも感じさせる。
佳奈美はいつものように俺のことを心配して言ってくれただけだろ。
なのに、俺は正論を突かれたことに勝手に逆上し、これ以上その話は聞きたくないと逃げ出した。
ヒーローならこんなときに逃げ出したりするだろうか。いや、しないね。
まったく何が「俺はヒーローになりたい!」だ。口から自嘲的な笑みがこぼれる。
昔から佳奈美は優しいやつだった。
口調こそ少しきついけれど、何だかんだで俺を見捨てることなく、傍にいてくれた。
皆が戦隊物を卒業する年になっても、「恋人するならピンク!」と堂々と言っている俺に対して少し釘を刺すだけで変わらずに接してくれたことはとても嬉しかった。
加えて佳奈美は皆から人望もあるし、面倒見がよく、容姿も整っている。
勉強に関してもちゃんと努力して上位を常にキープしているし、運動だって人並み以上にできる。
これだけのモテ要素が揃っているにもかかわらず、彼女に恋人ができたと言う話を聞いたことがない。
告白してくる男子はいるものの、全て断ってしまったらしい。
中には学校きっての外見、内面ともにイケメンで知られている輩もいたというのにだ。
普段あれだけ彼氏ができたらどこに行きたい、一緒に何を食べたいとかそんな話ばかりしてくるくせに。彼氏が欲しいのか欲しくないのかはっきりしろ。
しかしなんともったいないことを。俺に告白してくる女子なんて一人もいないのに。
まぁ、俺の心はピンクさんという永遠の女神に捧げているから平気だがな。……本当だぞ?
こうは言ってみたものの、男女交際など付き合うも断るも自由なのだから、本来は彼女の恋愛事情に首を突っ込むべきではないのだろう。
だが自意識過剰だと思われそうだが俺が恐れていることが一つある。
佳奈美が一向に男と付き合う気配を見せないのは俺のことが心配で、男と付き合っている余裕などないと思っているせいなんじゃないかということだ。
かといって夢を諦めるのは嫌だ。勝手かもしれないがこれだけは譲れない。
だから俺は一緒にいる佳奈美まで馬鹿にされないように周りに認められるよう努力してきた。
幸いにも彼女にたいした被害は出ていないようだが、よくクラスの連中に
「お前たち付き合ってんだろ?」「今日も元気に夫婦で登校かよ。お熱いこった」
などと言われてしまうのは仕方がないことなのかもしれない。
幼稚園の頃から一緒にいたもんだから、今じゃどちらかがいない方がおかしいような状態になってしまった。
少しは考え直した方がいいのかもな、この関係……
お互いいい年だ。そろそろ互いに自立すべきだと思う。
だがきっかけがない。何かきっかけさえあれば……
とにかく今俺がやるべきことは戻って佳奈美に謝ることだ。考えるのはそれが終わってからでいい。
俺は立ち止まり、振り返ると学校に向かって駆け出した。
……なんだか正義の様子がおかしい。
昼休みが終わってからずっとだ。何をしてても上の空って感じ。
午後の授業だっていつもは先生に当てられたら無駄に元気良く答えるのに、今日はボーっとしててもう一度呼ばれるまで全く気づかなった。
あたしと話してる時だってそう。
正義と話してるときはあたしの心が洗われる楽しい時間なのに、返ってくる答えは
「ああ」「うん」「すまん、聞いてなかった」
どういうことよ!!あたしと話すのはそんなにつまんないってこと?!
いつもだったら頓珍漢な答えでもちゃんと彼なりに考えて相槌を打ってくれるのに。
最初はお昼を抜いたからボーっとしているのかなと思ったけど明らかにおかしい。
無性に気になって問い出したらやっぱり将来の夢について先生と揉めていたと白状した。
だからあたしは言ってやった。いつまでそんなことを言ってるのって。
そう、あたしは何も間違ってない。世間一般的に考えたらそれが当然だろう。
なのに――
「とにかくこれは俺の問題だ。いくら佳奈美が俺の幼馴染だからといっても関係ないだろ。……俺は帰る」
正義は苛立った口調でそう言うと自分の鞄を掴み、あたしの手を振り解いて足早に帰ってしまった。
――どうして?どうしてそんなこと言うの?
関係なくなんかないよ。
だってあたしと正義の将来に関わることなんだよ?
こういう大切なことはちゃんと二人で決めなきゃいけないのに。
やっぱ男としては夢の一つや二つくらい持っていてほしいけど、それがあたしと正義の仲を邪魔するようなものなら諦めてよ。
いつまでも子供っぽいこと言ってあたしを困らせないで。
そんなことしなくてもあたしはちゃんと正義のことを想っているから。
そう、正義はあたしだけのヒーローでいればいいの。
なのに何故彼は分かってくれないのだろう?
こんなにもあたしの心は正義への想いで溢れているのに。
はっきり言ってあたしは正義のことが好きだ。どうしようもなく愛してる。
ずっと昔から正義のことだけを想い続けてきた。
小さい頃からあたしと正義はいつも一緒だった。
お互いの両親も
「二人は本当に仲がいいな。将来は結婚でもするのか?」
って言っていたっけ。
あたしも
「うん!あたしまーくんのおよめさんになるー!」
なんて言ってたなぁ。
今でもそのことを思い出すと胸が熱くなるんだよ?
正義が空気を読まずに
「えー?ボクのおよめさんはピンクがいいなぁ」
と言って、みんなをがっかりさせたことは除いて。
男の子にからかわれて泣いていたあたしを慰めて、男の子達に一人で殴りかかっていったこともあった。
傷だらけになって帰ってきた時に見せた「仇は取ってきたぞ」と言わんばかりの誇らしげな笑顔。
正義があたしのためにしてくれたんだと思うと、とても嬉しくてまた泣き出して彼を困らせちゃったな。
年を重ねるに連れて要領良く周りと付き合い、本当の気持ちをなかなか表に出せなくなった不器用なあたし。
そんなあたしと違って、何事にも真剣に取り組み、自分が信じるものを貫くその姿により一層惹かれていった。
要するにあたしはそんな彼がたまらなく好きなのだけど、最近はだんだん彼に対する想いを抑えることができなくなってきた。
だっていつまでも誰構わずそんな態度を取り続けてたら、悪い女まで寄ってきちゃうかもしれないんだよ?
正義は昔から良く言えば優しい、悪く言えばお人よしだった。
ちょっとというか、かなり生真面目なところはあるけど、曲がったことは大嫌いで、困っている人がいれば全力で助ける。
いじめられている子がいれば、たった一人でもいじめっ子達に立ち向かっていった。
ボコボコにされても、いじめられていた子が泣きながらたった一言、
「ありがとう」
と言ってくれれば何事もなかったかのように元気に笑っていられるような奴なのだ。
助けられた子が彼に対して好意を抱かないわけがない。
一体何度正義に想いを打ち明けようとする女の子が現れただろう。
その度にあたしの心はギシギシと音を立てて、痛んだ。
目の前が真っ暗になって、体の中身全てを吐き出してしまいそうになった。
だから彼に思いを打ち明けようとする女が現れるたびに、あたしは最低な行動をとった。
想いを打ち明けるチャンスを狙っている女の子の前でわざと正義と一緒に行動したり、過剰なスキンシップをとってあたし達が付き合っているという誤解をさせた。
正義の下駄箱に想いをしたためたラブレターが入っていたら彼が読む前にこっそり回収し、これでもかというほど破った後トイレに流した。
あたしに正義との仲を取り持って欲しいと言ってきた女の子の頼みは何だかんだ言っても絶対に聞かなかった。
それでも告白を決行しようとする女には
「実はあたしと正義付き合ってるの。でもみんなには内緒にしてね?」
と嘘を吐いた。
普段から正義と一緒にいるあたしが言うことだ。
みんな疑いもせずに涙に濡れた微笑と「お幸せにね」という言葉だけを残して去っていった。
だけど彼女達の想いを踏み躙る度にあたしの心は罪悪感に押し潰されそうになった。
自分から告白する勇気もないくせに他人の告白は何食わぬ顔で妨害なんて許されることじゃない。
それでも正義だけは取られたくない。
その一心であたしは行動を繰り返した。
だってそうじゃない?
あなた達はたまたま正義が優しくしてくれたから好きになっただけ。
助けてくれるなら誰でもよかったんでしょ?
あなた達はきっと彼の優しさを全て搾り尽くして、あとはボロ雑巾のように捨ててしまうだけ。
本当の彼を見ようともせずに優しいという一面だけで評価しているのがいい証拠だ。
そんな女達に正義を渡すわけにはいかない。あたしが正義を悪い女たちから守らなきゃいけないんだ。
あたしはあんな奴等とは違う。もし正義が夢を失って変わってしまったとしても全てを受け入れて愛せる。
あたしには彼を支え、彼と共に歩いていける自信がある。ずっと昔から一緒にいたし、今もまるで仲睦まじい夫婦みたいに寄り添って生きている。
だから正義に一番ふさわしいのはあたし。あたしに一番ふさわしいのも正義。
そう、他人なんかどうでもいい。あたしと正義。それだけでいい。
なのに正義はいつも他の人のことばかり気にする。
いつもこんなに近くにいるのにあたしだけを見てくれない。
クラスの気持ち悪い特撮オタク達と話している時は話すのに夢中になるあまり、あたしがどんなに呼びかけても無視さえする。
もしかしてあたしが悪いのかな。あたしが正義の好きな戦隊物とかの話ができないから……
で、でも仕方ないじゃない!普通いい年した、しかも女が日曜の朝早くに起きてわざわざ戦隊物なんか見たりしないでしょ!
あたしだって正義と共通の話題で楽しく話したいから、朝弱いけど頑張って休日なのに早く起きようと努力してるのよ?
たいてい寝過ごしちゃったり、親が起きてたら恥ずかしくて違う番組にしちゃうけど……
だから代わりにあたしは普通の恋人達が興味を惹かれるような話をたくさんしている。
可愛い服が売ってるお店、おいしそうなデザートが食べられるレストラン、今話題の映画や遊園地、夜景が綺麗な場所とか恋人同士が和気藹々と話すような話。
実際あたしは一日中正義とこの話をしていても飽きない自信がある。
なのに正義はそういう方面にはとんと疎くてあたしをよくがっかりさせる。
もう!いい加減そんな恥ずかしい趣味は卒業してもっとあたしと青春して欲しい。
でもいいの。好きな人を自分色に染めるっていうのも恋愛の楽しみの一つだ。
幸いにも正義は誰にも汚されずに綺麗なまま真っ白に育ってくれた。元が真っ白に近ければ近いほどより色濃く自分色に染め上げられる。
あたしだけに染め上げられた、あたしだけに溢れんばかりの愛をくれる、あたしだけの正義。
ああ……想像するだけで体が、特に下半身が、熱くなって疼いてくる。
正義があたしを突然押し倒して、「やめて」って叫ぶあたしの体を強引に貫き、初めてを散らされた痛みに涙するあたしに意地悪く微笑むの。
なのに口では「愛してる」って言いながらたくさんキスしてきて、どんなに拒否しても情け容赦なくドロドロした濃い精液をたっぷりと中に出される。
そんな妄想ならいくらしたことか分からない。その度に延々と終わらないくらい自分を慰めてきた。
いけない。はしたない女だって正義にばれたらきっと軽蔑される。でもね、正義が思ってるよりもずっとあたしは淫らで汚れた女なの。
ああっ、正義!!お願いだから早くあたしを奪って!!正義にだったらいつでも守り通してきたこの操を捧げる覚悟はできてる。
だからあたしも正義のこと好きにしてもいいよね?あたしも正義をあたしだけの物にして閉じ込めちゃうから。
誰も目に映らないように、誰の目にも映らないように。
だからもう正義のヒーローごっこなんかしなくていいんだよ。正義はいつまでもあたしの中だけで輝き続ける永遠のヒーローなんだから。
その代わりこれからはあたしを、あたしだけを見て。
うまく感情を表に表せないあたしの心に染み入る正義の優しさ。いつも危なっかしいことばかりしている正義を支えるあたしの愛ゆえの献身。
そう、あたしと正義は二人一緒で初めて完全になれるの。二人だけで完璧に完成して完結している世界に他の存在なんていらない。
あたしと正義の仲を引き裂くような奴が現れたらあたしはそれを力尽くで排除するだろう。
たとえそれが法に触れるようなことになろうとも、だ。
でもそんなことしなくても平気だよね?
だってあたし達はお互いのことを誰よりも理解し合っているんだから。
何があろうともちゃんと最後には互いの愛を確認しあえるの。
ほら、その証拠に……
「佳奈美ぃーーーっ!!!」
バタバタと大きな足音を立てながら乱暴に戸を開けて、正義が教室に駆け込んできた。
息を切らせて、膝に手をつきながらもその目はこちらに向けられている。
やっぱり正義は戻ってきてくれた!!
他ならぬ『あたし』の元へ!!
何だかんだ言ってもあたし達は固く結ばれてるんだよね?
「佳奈美すまんっ!!今日は先生にも説教されてたからついイライラしてしまったんだ。佳奈美は何も悪くないのに八つ当たりしてしまって本当にすまない。
このとおりだ。許してくれ」
正義が勢いよくあたしに頭を下げた。
こちらに許しを請う上目遣いのその目はずるいと思う。
だってそんな目をされたら何だって許してしまう。
「……しょうがないわね。特別に許してあげる」
「佳奈美……!」
「ただしこんなことはもう二度としないでね?あたし結構傷ついたんだから!」
「ああ。肝に命じておくよ」
そう、あたしは正義がいなくなるだけでダメになっちゃうの。
支えるモノがなくなったらあとはどんどん傾いて倒れるだけ。
正義がいなくなることを考えただけで目の前が真っ暗になる。
「さぁ、帰りましょ。お詫びとして何か甘いものでもおごってもらおうかしら?」
「ちょっと待ってくれ!今月はヤンデレンジャーのレッドのフィギュアを買う予定が……」
「あら、そんなことを言える立場かしら?」
「ぐ……わかったよ。けどあまり高い物はよせよ?」
「さぁ〜て、どうしよっかなぁ〜?」
そう言ってあたしは正義の手を引いて走り出す。
彼が「廊下は走るな!」とか言ってるけどそんなのは耳に入らない。
だってあなたといるこの一瞬がどうしようもなく嬉しくて、楽しくて、愛しいのだから。
正義といるだけであたしはこんなにも幸せになれる。
逆に正義がいないだけであたしはこの世で一番不幸な少女になっちゃうんだよ?
だからもうこんなことはしないでね、正義?
あなたを一番理解できて、一番愛せて、一番幸せにできるのはあたしだけなんだから。
投下終了です
>>499 乙GJ。小さなすれ違いから生まれる大きな溝イイヨイイヨー
>>499GJ。ツンヤンデレ幼なじみイイヨイイヨー。
>>499 GJだよ
ツンデレ系のヤンデレもいいよーいいよー
テンション上がったからヤンデレンジャーのSSを
書いてみた
レッド「出たな怪人アンパン●ン」
アン「ぐははっ!顔が濡れて力が出ない!!」
イエロー「ブルー!レッドの隣変わりなさいよ!」
ブルー「嫌・・・」
ピンク(ふふっこの隙に私がレッド君の右隣に行っちゃうもんね〜)
ブラック「そこは私の定位置だ遠慮してくれないかピンク」
ピンク「たまにはいいじゃないですか〜」
ブラック「駄目だ」
ピンク「むぅ〜(こいつ近い内に始末してやる)」
イエロー「ブルー!いいからかわりなさいよ!!」
ブルー「嫌・・」
イエロー「なら力ずくでどかせてあげるわ!!」
ブラック(レッドカッコイイよ・・ハァハァ)
ピンク(こいつ私のレッド君見て興奮してる!絶対許せない・・・)
アン「羨ましくなんかないんだからね><」
レッド(はぁ〜そろそろ仮●ライダー辺りに転職するか・・)
これヤンじゃないな
しかし勢いで書いてみた凄い後悔してる
>>499さん
すみませんでした
つまんね。スレを汚すな
また、主人公の思考が一番病んでるパターンか……
このパターンじゃないとヤンデレものって書きにくいのか?
>>498 乙〜
正義が戻って来て、心底嬉しそうな佳奈美に激しく萌えたw
>>499 いいよいいよー
GJだよー
しかしヒーローきどりって見て某主人公が浮かんだのは俺だけじゃないはず
最近投下数増えてしかも良作ばかりときた。
依存といいツンヤン幼馴染みといい好みばかりでにやけてしまう。
GJです。
>>498 gj
正義の父親は小山力也ボイスですね、わかります
GJ!!!
第8話投下します。
病み要素少ないですが、嵐の前の静けさとでも思ってくださいorz
「相談があるんだ。」
そう、右京に言われた。
思えば、これが全ての元凶だったんだ。
「なんだ?」
「ここじゃちょっと…放課後、図書室に来てくれ。あそこならその時間人はいな
い。」
「構わないが…光も一緒でいいか?」
そう、光を独りにするわけにはいかない。あんなことがあったんだし。
「それは…まずい。お前にだけ話したいそうな…いや、なんでもない。」
「?気になるだろうが。」
「気にしないでくれ。」
まあ…仕方ないか。右京は以前俺の悩み相談にも乗ってくれたんだし………
光は…どうしようか?
「てわけで光。終わるまでどっかで待っててくれないか?」
「……なに、僕がいちゃまずいの?」
頼むからそんな風に笑わないでくれ。怖い。
「右京がそう言ってるんだ。男同士でしか話せないこととかあるんだろ。」
「…………よくわかんないよ。」
放課後―――――
ガラッ
「おい右京。話って―――あれ?」
おかしい。なんで右京がいない。そして―――
「こんにちは。佐橋くん。」
なんで左京先輩が??
「ごめんなさいね。右京の友達の貴方と、どうしてもお話がしたかったの。」
「は、はあ。」
―――まずい。非常にまずい。光には「右京と会う」って言ってあるんだ。
しかも、「左京先輩とは会わない」って約束もある。
とにかく、早く終わらせよう。
「で、用ってなんです。」
「実は、私ね…………」
がちゃり
「ふう。ただいま〜。」
「ただいま。」
俺は、なんとか自宅にたどり着いた。はっきり言って今の俺の精神はかなりすり減ってる。
光のこともさることながら…
左京先輩のお悩み相談もかなりぶっ飛んだものだった。
まさか、「実の弟を愛してる」なんて言われるとは思わなかった。
今世紀最大のびっくりだな。まだ100分の9世紀?しか経ってないが。
つまり俺は、右京の情報を聞き出すために呼び出されたんだ。
あのバカ野郎……明日会ったらただじゃおかねえ…
「はあ。なんか今日は疲れた。もう寝ないか?」
「そうだね、寝よっか♪」
飯は二人で外で済ませてしまった。風呂も明日の朝でいいだろう。
「ふぁ…おやすみ…光。」
「……おやすみ、歩…。」
なぜ俺はこのとき気付かなかったんだろう。この時の光の表情に。
「ふ…ふふ……歩…許さないよ………明日、たっぷり"おしおき"してあげるからね…?」
ほんと、後悔してるよ。
「……ん、朝か。おはよう、こ……う……?」
なんだ?手が上がらない。あれ、なにかが手首についてる。
あれは…極限まで実用性を重視した、無骨だがシンプルな美しさをも醸し出す、銀の……………
「おはよう、歩。ごはんできたよ?」
――人はそれを、手錠と呼ぶ――
じゃなくて!なんだこの状況!なぜ俺は四肢を手錠で固定されている!?
「おい光!なんのつもりだ!」
「それは僕の台詞だよ…?言ったよね、歩。右京くんと会うって。」
「あ…ああ…」
「じゃあなんで、他の女の匂いが歩からするのかなぁ!?」
「違うんだ光!左京先輩は「ふ―――ん。あの女と会ってたんだ。…嘘つき。」
「俺の話を聞いてくれ!昨日は――」
「歩……君はわかってないね。僕は、悲しいんだよ……。言ったよね………嘘ついたら、許さないって………。」
「……光っ!」
「ふ……ふふ………。たっぷり"お仕置き"してあげる………」
お仕置き!?お仕置きってなんだよ?俺死ぬのか!?
―――いやそれはない。それなら、回避可能なギリのタイミングで"視える"はず――
って冷静に分析してる場合じゃない!誰か、なんとかしてくれぇぇぇぇぇ!!
「はい歩。あ―んして。あ―――ん。」
歩は今、僕の愛情たっぷりの手料理を食べている。
「ほら、こぼしちゃだめだよ。」
「…っ光、もうやめろよ…」
「なにいってるの?これはお仕置きなんだよ?歩は今日1日、このままで過ごすんだ
よ?」
「そんな…。」
か、かわいぃぃぃ
ちょっと涙目な歩って、こんなにかわいいんだぁぁぁ
そんな目されたら僕…もっと虐めたくなっちゃう。
―――こほん。危ない危ない。本来の目的を忘れるところだったよ。
「さあ歩?ちゃんと残さず食べようね?ああ大丈夫。ちゃんと全部口移しであげる
から。あははっ…」
くちゃ………もぐ………ごくん……
――――情けない。こんな目に逢うなんて。泣きたくなる。
俺は今朝の食事をすべて光に"食べさせて"もらった。あいつは、
「おいしい?」
なんて聞いてくるが、正直、味なんか分かるか。おいしいけど。
それより、体が熱い。どうやら、食事に一服盛られたようだ。まさか光にそれをやられるなんてな…。
まあ、命には関わらなそうだ。今回は多目に見よう。
数時間後――――
前言撤回。俺死ぬかも。
くそぅ、一体何盛ったんだ!?なんで俺の―――
その―――
………頼む。どうか察してくれ。このままだと、幼稚園児すらお菓子金ないんだよ。
だめだ、思考が働かない――――
ふふ…おくすりはよく効いてるみたいだね。
シテほしいんだよね?苦しそうだもん。
でも、まだだめだよ。まだお昼ご飯があるんだから。もちろん晩ごはんもあるよ?
「さあ…お昼の時間だよ?」
「っあ…こう…もうやめてくれ……おれ…もう…」
「ふふ。どうしちゃったのかな歩。そんなに僕の裸えぷろんが気に入ったのかな?
」
「こ…ぉっ…!」
ぬちゃ…ちゅ…ちゅぱっ…
「ぷはぁ…そんなに舌絡ませちゃって…そんなに僕のおくちおいしいのかい?」
「…あ……ぅ……こぉ…」
「…仕方ないなあ。晩ごはん食べたら、ご褒美あげるから、ね?」
「うっ…あぁぁっ…まっ……まってくれぇぇ…もぉっ…がまん……」
―――最悪だ。
どのくらい最悪かって?
例えば、とあるエロゲでヒロインを換金…じゃなくて監禁して媚薬を与えたあと
何時間も放置してじらされた表情におっきしたことないか?ない?それはすまん。
だがまさにそれだ。おれは今、薬でじらされ放置されてる。だが不思議だ。頭は
こうクリアなままなのに、あいつの事を思うと……うあぁぁぁぁぁぁぁ!!
…はぁはぁ。もう…我慢できない…。
光とシタイ。おれの頭の中はそれだけだ。
こうなったら………
「歩?晩ごはんだよ?」
最後は、おくすりをたっぷり使ったごはん。ふふ…いっぱいじらしてじらして…何度も寸止めして……
涙目で屈服させて………僕の事以外考えられなくしてあげるよ…?
そうしたら、二度と僕から離れなくなるよね?ふふ……あははははははははははははっ!!
「ほぉら、おくち開けて?」
「光…光っ!」
どったんっ
「そんな!なんで手錠から抜け出て……」
「こお…もうがまん…できないっ……」
「ちょっ、あゆ、あぁぁっ!」
おれは今光と…その…シテる。
もう何回だろうか?部屋中、光の匂いでいっぱいだ。
だめだ。この匂いをかいでると、もう何も考えられなくなる―――
「はあ……はあ…こ…う……す…きだ…」
「あゆむっ!もお、むりだよお!はやく、いってよおっ!あたま、やけちゃうよおぉ!
っああぁ!また、いくっ!」
光のからだか小刻みに震える。手は頭を必死に抱えて、よだれと涙を流し、嬌声
をあげている。もう3回も…その…ご粗相…してる。
さっきから「もうやめて」と懇願している。それでも、止められない。
おれだって、頭が焼き切れそうだ。でも体が勝手に光を求めている。
「…っ!まだっ…いっ…たばかりなの、にっ!ああっ!あたまが!おかしくなっちゃ
うぅぅ!!あゆむぅ!ぼく……しんじゃうよぉぉ……!」
「こぉっ!すきだ…っ!!おれ、もっ!」
俺は、光のなかで、ようやく果てることができた。
―――やっと、やっと解放された―――
「歩ってば…ひどいよ…こんなになるまでするなんて…ぼく、腰抜けちゃって、立てないんだよ!?」
「すまん。」
「それに…僕が何十回もいったってのに、歩ったら、まったくいく気配なかったよね!?
いったいどういう体の構造してるんだい!!?」
「…それは、その…たまたま、だ。でも、よかったろ?」
「よかったけど…本当に頭おかしくなりそうだったんだよ!?
もし僕がぷっつんしたらどうする気だったんだい!?」
「そしたら、光が俺にしたことを、そのままやってやるさ。」
「僕を殺す気!!?それと……どうやって手錠から抜けたんだい?」
「それは、だな…」
「(ごくり…)」
「企業秘密、だ。」
「むき―――――っ!!」
言えるわけない。まさか、光とシタくて……手首の間接はずしたなんて。
ああ。俺も、相当の馬鹿だ。
でも、光といつまでもこうしていられたら…きっと幸せなんだろうな。もちろん薬抜きでだが。
だからこそ…俺は光を守らなくちゃいけない。
もう怖い思いなんかさせないさ。だから―――
ずっと俺のそばで、笑っていてくれ。
もう…歩ったら信じられない。本気でお花畑が見えたんだからね!?しゃれにならないよ!
でも…ああして歩に愛されるのって…好き。
だって、そうしてれば怖い思いしないもの。
あのひとときだけは、歩の愛をはっきりと感じられるんだから。
お願い、歩…もっと僕を愛して…歩にだったらどんなに狂わされてもいいから…
ううん、君のためならいくらでも狂ってあげるから。
もういっそ、一生…君のもとで縛りつけてほしいくらいだよ…
第8話終了です。
エロい描写って難しいなorz
お互い素晴らしく狂っててイイ!
>病み要素少ないですが、嵐の前の静けさとでも思ってくださいorz
これで少ないってこの先どうなるんだw
それはもう風林火山の火のごとく、だろ
GJ…って全然少なくねえよwww
しかし、ヤンデレヒロインて主人公側から攻勢に出れば意外と脆いっぽいな
それはそれで向こうの思惑通りな気もするが
524 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 22:55:20 ID:bKGltezu
お菓子金ないんだよくそ吹いたww
ヤンデレというのは
内気で暗くて引っ込み思案で疑心暗鬼になりやすいけど
根っこは純粋で好きな人だけは一途なヒロインのことを言うんだろうか
ひぐらしのレナみたいなヤンデレよりも、
純粋な想いが届かずにどんどんとヤンデレ化するような女の子のSSを書きたいが
ヤンデレ度が薄い作品になりそうだw
>>525の解釈でいいと思うな
ってかレナはヤンデレか否か評価が別れるキャラだから
まーた定義の話か
だからあるぇは妄想だt(ry
まぁこのスレ的にはレナは非ヤンデレで決まってるから蒸し返さなくていいだろ
530 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 05:36:39 ID:ToXuBOEp
決まった事にしたがる定義厨ウザい。
いちいちあげるバカもな
おまいら不毛な争い事は早く止めて、FF5のレナがヤンデレになる展開を今すぐ妄想するんだ
FF5かよwww
あさっぱからか笑っちまったじゃねーかww
ここのスレ住民は昔からひぐらし(ryはヤンデレじゃないヤンデレじゃない言ってきてるんだよ
荒れる元になるからひぐらしを出すのは控えて欲しい
ヤンデレの定義なんて人それぞれだとは思うけどさ
FF5だけではなく初代辺りの名前決めでもレナはいた希ガス
最近、裸が寒い時期になってきたけど投下待ってるときの防寒対策どうしてる?
俺のネクタイマフラーになってるから大丈夫
毛布は服にカウントされないから大丈夫
妹の人肌で温まっている
>>525 そうなるとスクールデイズの桂言葉みたいなヒロインになってしまうから
そういう定義になるとスクールデイズの二番煎じみたいになるから
俺はいろんなヤンデレがあった方がいいと思うな
主人公を病的に愛している。
それだけでいいだろ
でも主人公傷つけるのは自己満だとおもうんだな
>>541 だな。それぐらいがそんなに肝も冷えなくて良い
主人公が大好き→主人公君に近寄る人間は皆八つ裂きだよ☆までいくと、
ヤンデレの思考が進化し過ぎて逆に接触しづらい
ヤンデレって一方的な愛の完成系みたいで好きだ、双方がヤンデレってのも面白そうだけど
ハッピーエンドのヤンデレも大好きだ
ハッピーエンドといっても色々あるぜ
・主人公とヤンデレにも世間一般的にもハッピーエンド
・主人公とヤンデレ的にはハッピーエンド
・ヤンデレ的にはハッピーエンド
・泥棒猫的にハッピーエンド
投下します。
一応、最終章に入ります
それは、青天の霹靂だった―――――
ピンポ―――ン
「ふぁぁ…ん?誰だよ。」
「ぁゆむぅ?だれぇ?」
――っかわいい………この舌足らずな感じが…じゃなくて…
ピンポ―――――ン
「はいはい、今行きますよっと。」
俺はシャツを羽織り、ズボンを履き、玄関に行く。その…昨夜いたしてしまったわけで…
まあ、なんだ。気にするな。
「誰に喋ってるんだい?」
「―っ な、なんでもない。」
がちゃり
ばたん
ドンドンドンドンドンドン
「あゆ君!開けなさい!」
「ったく…なんてタイミングで…おい光!急いで服着ろ!」
「誰なんだい?」
「俺の…伯母さんだ!」
「……って、ええ!?待ってよ!」
がちゃん
「うわあぁぁ!?」
どったん
「まったく…失礼しちゃうわね。人の顔見ていきなり締め出すなんて…あら…?」
くそぅ…なんて怪力だ。ん?
―――あ。
「……っ…た…立てないよぉ……(涙目)」
しまった。ヤりすぎた―――――
「あ―ゆ―く―ん―?彼女さんができたら教えなさいって言ったでしょう?」
「ひぃっ!?ご、ごめんなさぁい!」
「伯母さん!光は――――」
「 あ ゆ く ん ?その呼び方やめてって言ったでしょう?」
「…ハイ…スマセン……礼ねぇさん」
「相変わらず若いですねぇおば「ん?(般若オーラ)」…お、お姉さま!」
「そんな…もう30よ?」
「全然見えないですよ!?」
「で、何しに来たんだ?」
「あらいやだ、愛する義息子に会いに来て何がいけないの?」
「何が"愛する義息子"だ。よくもぬけぬけとそんなことが言えたな。」
「歩!そんな言い方は―――」
「いいのよ…あゆ君はいつもこんな感じだから。いえ、以前なら口なんか聞いてくれなかったわ。」
「歩!君はこんな美人さんにそんなひどいことを!?」
「光の方がかわいい。」
「えっ…もう…歩ったら////じゃなくて!!」
ったく――どうして俺がこんな目に…
そもそも俺は礼ねぇさんには会いたくないんだ。そりゃ、伯父さんが死んでからも、礼ねぇさんは俺を養ってくれた。
でも3年間で俺がねえさんに放った単語は
「オハヨウゴザイマス」「イッテキマス」「イタダキマスゴチソウサマ」「タダイマ」「オヤスミナサイ」だけだ。
はっきり言って、信じられなかったんだ。必死に俺に取り入ろうと顔色ばかり伺う礼ねえさんを、
俺は好きになれなかった。
「ああでも、あゆ君って、私のお姉ちゃんの若い頃そっくりよ?」
「ほんとですか!?」
「ええ、女の子の服を着せれば、もっとそっくりになるんじゃないかしら?」
「僕の服ならありますよ!!?」
「なっ――――落ち着け二人とも!なんでそんな目が血走って――――」
「ハァハァ……歩きゅんの女装姿…………」
「ふふ…おねえちゃあん♪」
「ひぃっ――――!?」
「ちょっとこれは…シャレにならないわね……。」
「ええ………これはやばいですよ…じゅる」
最悪だ。もうお婿にイケナイ。
鏡の中の俺は………完璧女だった。認めたくないが、だれがどう見ても美少女だ。
男の娘ってレベルじゃない。ちなみにこのロン毛はカツラだ。つうか、だれお前。
俺? あ、そう。
ちくしょぉぉぉっ
「ほんとにおねえちゃんそっくり………ううん、もっときれい……っ…」
「礼ねぇさん?」
「…っく…なんでもないわ。ちょっと目にゴミが………」
光が肘でこづき、目配せしてくる。
――――わぁったよ。ったく―――
覚悟を決め、俺は礼ねぇさんを抱きしめる。
「ほら…泣くな。」
「あ…っ。お姉ちゃん!おねぇちゃあぁぁん!わあぁぁぁぁっ!!!」
意外だった。こんな弱々しい礼ねぇさんは始めて見た。
きっとねえさんは、俺に母さんの面影を見ていたんだな。
でも、何でだろう。以前より少しだけ………
「ねえさん、いや………礼。ほら、笑って。」
「ぁ……っ…ふぁぁぁぁん………おねえ…ちゃん……」
少しだけ、このひとを好きになれそうだ。
数時間後――――
さすがにあのままでは色々まずいので女装は解いた。そして………
「…で、本当に何しに来たんだ?」
「だから言ったじゃない。愛する義息子の顔を見に来たって♪」
「嘘つけ。もっとましな理由を考えろ。」
「あゆ君…その、人を疑う癖、良くないわよ?」
「誰のせいでこうなったと思ってる!」
っ―――――地雷踏んだ。
「あのひとのせい、よね…。今でも、申し訳なく思ってるわ。」
「………悪い。つまらないことを思い出させた。」
「いいえ。あゆ君が気にする必要はないわ。わたしも、あのままだったらどうなってたか…。
それよりあゆ君。おとうさんのお墓参りは行かなくていいの?」
―――?
あのクソ親父、死んでたのか?
「女つくって逃げたやつがどうなろうと知るか。」
「…え? まさか…覚えてないの…?」
「何を。」
「あなたの父さん、浮気なんかしてないわ。その前に亡くなったじゃない。」
――――今度こそ意味が分からなかった。
「その前って…いつだよ。」
「あゆ君がまだ小さいころ、小学校に上がったばかりのときよ?」
馬鹿な。だって親父は、女がいるっていって……
まて。
確かに親父はそういったのか?
なんだか、頭にもやがかかったみたいだ……。
「その話、詳しく聞かせてくれないか。」
「…あゆ君、覚えてないならその方がいいかもしれないわよ?」
「頼む。俺は…知らなきゃならない。そんな気がするんだ。」
信じられなかった。
親父は逃げたんじゃない。殺されたんだ。そして妹も。
俺はそれを目の前で見ていたらしい。
そして俺は今まで、いや、今でも忘れている。
「歩……リラックスしなよ。なんだか、思い詰めた顔してるよ?」
ぎゅっ、と俺に抱きつく光。
「大丈夫。大丈夫だ。」
いったいなぜだ?
なぜ親父は殺された?
それから、誰に?
そして、なぜ今まで忘れてた?
まさか、――――?
「まさ、か…な。」
「…あゆ君?」
「なんでもないよ。それより、腹減ったろ。今飯作ってやるから、食ってけよ。」
「あゆ君の手料理なんて………食べたいに決まってるじゃないっ♪」
今日のメニューは、礼ねぇさんの好物のぶり大根にした。
ったく………まさかご飯5杯もおかわりするなんて………どこに行くんだ、その栄養は。
「じゃ、またくるわねー。」
「突然来るのはやめろよな。」
今は夜8時。……まだ起きてるな。
プルルルル…ピッ
「どうした、佐橋?」
「右京か。頼みたいことがあるんだ。」
「なんだ?」
「それは――――」
「ねえ…歩。」
「どうした?」
「もし思い出したとしても…歩は変わらないよね……?」
「?」
「歩は歩のままだよね?僕を愛してくれるよね!?」
「光…なにそんなに震えてるんだ…。」
「だって僕…歩しかいないんだ……。もし…歩に見放されたら……ぁ…」
ちゅ…くちゅ………
「……っぷは。安心しろ。お前には俺。俺には光がいる。それで充分だろ?」
「うん…でも………」
「心配するな………光。」
そう言って俺は、光を愛撫する。
「…ふぁ!あっ!あゆむぅ………」
なあ光…不安なのはお前だけじゃないんだ。
知らなくちゃいけない。なぜかそんな気がする。
でも、知って。その先に何があるのか、不安なんだよ。
何でだろうな…こうしてお前を抱いていても、真実を知るのが怖いんだ。
でも、今だけはお前とこうしていたい。お前といる幸せに、溺れていたい。
愛してる、光。
「そういえば、亡くなった妹さん。なんて名前なんだい?」
「…急にどうした?まあいいか。妹の名前は……
あきら。 佐橋 晶っていうんだ。」
第9話終了です。
またトリップ忘れてました・・・。すいません
GJなんだぜ!
過去が段々暴かれてきたねぇ……
続きが楽しみすぎてちょっと小躍りしちゃったよwww
乙
ぽけもん9月号マダー?
559 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 05:44:30 ID:v6eRf8bE
ヤンデレ家族は?いつもの時間に全裸ネクタイで待ってたのに。
今日はちょっと彼女の監視から抜け出せなかったんだろ
だからいつも日曜の深夜帯という微妙な時間に投下してたんだろ
>>560 あれって実体験だったのか
事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもんだね
毎週毎週ヤンデレ家族は?って言う奴死ね。氏ねじゃなくて死ね。
他スレにも言って一週間やらないだけで毎回レスつくし、邪魔。
「ねえお兄ちゃん、あったかい?」
背後から甘い匂いとともに、甘い口調で問いかけられる。
しかし俺はそれを無視する。今俺はただ彼女達の甘い記録を待つだけの生物となっているからだ。
「お兄ちゃん……投下が来るまででいいから、あたしを見てよ……」
妹は寂しげにそう漏らす。だがそれでも俺はただ全裸に靴下、それにネクタイのみで物言わず待機しなくてはならない。なぜならそれが紳士としての礼節だからだ。
この状況を客観的に見るもの――便宜的に彼と呼ぶことにする――がいるとしたらどう思うだろうか。
六畳のいまいち片づけが行き届いていない、ゴミゴミした部屋。正座してノートパソコンを凝視しているほぼ全裸に等しい格好の男と、彼を後ろから抱くようにして寄り添っている完全に全裸の少女。しかもその男はその少女の兄で、その少女はその男の妹である。
そんなものを見てしまった彼がとることの出来る行動はたった一つだけ、つまり、通報することだけだ。
では、なぜ彼らがその通報物の状況に身を置いているのか。そのすべての原因は妹の狂気にあった。
兄はある一時期までは極々まっとうな人間であった。
学校は始業の三十分には着いているという遅刻知らず、部活は運動部に所属していて、学業にもよく励み成績は優秀、品行も方正。
だがしかし、女にもてなかった。それはもうもてなかった。吃驚するほどもてなかった。
何がいけないのか分からない。だが、何か、がいけなかったのだろう。
それが男を狂気へと走らせた。
ただ普通に道を歩いていただけなのに、前を歩いていた女性がこちらを振り向き、ギョッとした表情をして逃げていった日。それが男の死んだ日であり、今の男が生まれた日である。
尤も、男の死亡と誕生について気づいたものは極僅かであった。彼の妹と彼の最も親しい親友の二人だけだ。
親友がいつものように教室に入ると、そこに男の姿はなかった。
風邪でもひいたか、と思っていると、始業寸前に男は入ってきた。
親友はその男の普段とはかけ離れた行動を訝しんで、こんな時間に登校してきた理由を聞くと、男はただ一言「楽園を見つけた」とだけ返してきた。
男の奇行はそれだけではなかった。
昼休み、親友は男が好きだったタレントの話をしたが、男はそれに対してなんの反応も示さない。ためしに、とエロ本も見せてみたが、いつものような青少年が示してしかるべき反応をまるで示さない。
ただ、うつろな表情でそれを見るのみである。
また、放課後、部活で女子マネージャーから汗を拭くタオルを受け取るとき、男はいつもなら普通の人間に対する反応を示していたが、今はそのマネージャーに失礼だというくらい何の反応も示さない。まるでマネキンか何かを相手にしているようだ。
そして男は人間関係を失調していった。
ある日、部長からその態度について諌められると、彼はあっさりと部活をやめた。もともと、全国を目指せるほど才能のある選手ではなかったが、それでも男は熱心に部活に励んでいた。それが信じられないくらいあっさりと、である。
程なくして、学校にも来なくなった。あれほど勤勉であった男が、信じられないくらいあっさりと。
親友は、いよいよもって危機感を覚えた。そして、原因を突き止める必要がある、とも。
そうして、彼は男の家に乗り込んだ。
そして話は冒頭に戻る。
「ねえお兄ちゃん、あったかい?」
男の背後から、少女が甘い口調で問いかける。
しかし男はそれを無視する。今、男はただパソコンのディスプレイを眺めるだけの生物となっているかのようだ。
「お兄ちゃん……投下が来るまででいいから、あたしを見てよ……」
少女は寂しげにそう漏らす。だがそれでも男はただ全裸に靴下、それにネクタイのみで物言わず待機している。それが一体何の意味を持つのかは、彼にはわからなかった。
親友――彼は思案を巡らせた。男には妹が一人いることは知っている。会ったこともある。だがそれが目の前で妖艶に男に絡み付いているモノと同一だとは信じたくはなかった。
そして、あの奇妙な格好をしてディスプレイの前に正座しているモノが、あの勤勉で品行方正だった男だと同一とも信じたくはなかった。
彼はポケットに入れられた携帯電話をすばやく取り出すと、すぐにダイヤルを押した。一を二回に零を一回。すなわち警察である。
警察に通報したからといって、この事態に対して何の解決になろうか。彼はそれを考える力すらも失っていた。
しかし彼が電波を発信する前に、それは電波を発信する機能を失った。同時に彼は携帯電話を喪った。
「あなたは誰? 何をしているの?」
携帯電話を片手で握りつぶした少女が、彼にそう問いかける。
彼は少女と、そして万力でつぶされたかのように原型を留めていない彼の携帯電話を交互に眺めた。
少女の白い肢体が、薄暗い部屋によく映える。彼女の顔はとても端整で、体も優美であった。だが、彼はそれを美しいとは思わなかった。それどころか、それを恐ろしいとすら思った。
「お……お前こそ誰だ? お前はアイツの妹だろ? お前らは一体何をしているんだ!?」
「そうよ、あたしはお兄ちゃんの妹。たった一人の妹。お兄ちゃんに一番近い人間。お兄ちゃんと結ばれる資格のある唯一の人間」
少女は詠うように滑らかに答えた。だが、それによって彼は一層錯乱することになる。
「お兄ちゃんは投下を待っているの」
「“トウカ”? 何だそれは? お前は一体何を言っているんだ?」
彼の混乱は深まるのみである。少女の言っていることを何一つ理解することができない。
「おい! 一体何してんだよ! お前も!」
彼は男に呼びかける。すると先ほどまで虚ろな表情でディスプレイを眺めていた男の口が不気味に歪み、何も見ていなかった双眸に光を宿して叫んだ。
「キターーーーーーーーーーー!!」
彼は男の様子に恐怖し、数歩後ずさる。
「お、おい……」
「投下キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
男は歓声のような、絶叫のような雄たけびを上げ、顔をディスプレイに向けたまま一心不乱に視線を左右に泳がせる。先ほどまで死人のようだった彼の顔は、みずみずしい精気にあふれている。
彼は後ずさろうとし、壁にその進行を阻まれた。
“トウカ”、“全裸にネクタイと靴下”、“絡みつく妹”。
彼の頭の中で、それらがグルグルと渦巻く。
しかしそれらは渦巻けども渦巻けども、何の形にも結実せず、彼の頭を埋めるのみである。
「よかったね、お兄ちゃん」
妹はそういいながらそっと男に寄り添った。まるで種を包む綿花のように。慈しむように、愛しむように。しかし男はただ破顔してディスプレイを眺めているのみである。
彼は恐怖した。心のそこから。
彼らは違う。俺の見ているものは、俺とは違う。人とは違う。
彼はそう思った。そして逃げ出した。
壁にぶつかり、ドアにぶつかり、地面にぶつかり。
彼は何かの追跡を恐れるように視線を左右に振りながら走った。
彼が正気を取り戻したとき、彼は駅前の通りにいた。
ショーウィンドウに映る自分の姿を見て始めて自分の顔が涙と鼻水と涎にまみれ、さらに自分が失禁していることを知った。
それから彼は男に会っていない。
上のほうを見てつい(ry
そして続かない
電車の中でニヤニヤしちまったじゃねーかw
GJ
GJ!
投下キターーーーーーーーーーーーーーー!!
これはくだらなく素晴らしいw
なにこの才能の無駄使いは
GJ!
奇才現るだなwwww
投下キターwwwww
すごく楽しくなりました、ありがとう
ヤンデレの行動のまとめとか
どこかにない?
参考にしたいんだけど
>>565 GJッ!
何か涙が出て来たじゃねぇか!www
投下します。
友人の環 右京視点です
珍しく、あいつから電話があった。
なんでも、調べてほしいことがあるそうだ。
あいつは…佐橋は何か思い詰めたような声色をしていた。
でも、なんでだ?
佐橋は、自分の父親と、妹のことを知りたいだけだろう?何をそんなに恐れる?
俺は、環 右京。
実家は資産家で、しかし俺たちはそれを隠して暮らしている。
"俺たち"というのは、俺と、姉さんのことだ。
佐橋は、俺の初めての友人だった。中学でも、実家のことを隠していたが、
あることがきっかけでそれを知られて以降、まわりのやつらの俺を見る目が変わった。
そのせいで、俺は誰にも気を許せなかった。ただ唯一、姉さんだけが俺をかばってくれた。
実家を出て、必要最低限の仕送りを受け、二人だけで暮らそうと言ってくれた。
姉さんは、俺のためならなんでも捨てる覚悟だった。
せめて、大好きなバイクだけは持っていこう、と言うのが精一杯だったよ。
俺の身の上話はここらへんでやめにしよう。
要するになにが言いたいかっていうと、俺は唯一の友人のためなら何も惜しまないということ。
かつて忌み嫌った環家の財力を以てしても、調べてやろうじゃないか、我が友よ。
プルルルルル………ピッ
「……父さん?お願いがあるんだ。」
朝になった―――
俺はあらゆる手段をもって、可能な限り調べ尽くした。
環家御用達の情報屋も当たったし、警察内部のデータもその筋のやつに調べさせた。
たかだか一般人のデータだ。そこまで調べるのは難しくはなかったらしい。
急ぎでやってもらったため、割り増し料金は取られたが構いはしない。
結果、俺は知ることができた。とんでもない事実を。
………これを、佐橋に告げていいんだろうか?
もし知れば、あいつは間違いなく終わる。いや、全てを終わらせてしまいかねない。
だが、いずれ知ってしまうかもしれない。
―――だめだ、言えない…。俺には、無理だ。あの二人の幸せをぶち壊す権利は俺にはない。
どうすればいい?
――――電話だ。
……っ、三神……?
「……頼みたいことがあるんだ。会ってくれないかい?」
察しはつく。きっと三神も、佐橋と同じことを俺に頼むつもりだろう。
でも、俺はどうすればいい? 誰か、教えてくれよ…。
言えるわけない……"三神 光"は死んでいた、なんて…。
第9.5話終了です。
何かとんでもないことになって……きたのか?
先を知りたいw
580 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 23:52:09 ID:i0QoQxXQ
これは・・・?
ともかくGJ!
GJ!!!
しかし…これはまさか…
GJ!
これは……やべぇw おら、わくわくしてきたぞ!
投下きたーーーーーーーーーーー!!
自演乙
第10話投下します。
今家のpc使えないので近所のセンターのpcからです
佐橋 晶。
そう、それが君の妹さんの名前なんだね。
――――あれ?おかしいな。なんで僕、こんなに震えてるの?
わからない。わからないけど……
こわい。
どうして?僕は何に怯えてるの?
……怖いよ。
早朝―――
僕は、結局一晩中眠れなかった。隣には歩がいるけど、きっと寝たふりだ。
僕を心配してくれたんだね?……ありがとう。
「おはよう、歩。」
「……ああ。飯にしようか。」
「うん。」
僕は、歩に僕の不安が気取られないよう、努めていつもどおりの態度をとる。
―――歩が頭を撫でてきた。
「……どうしたの?」
「………おまじない、かな。」
だめだ。きっとばれてる。……歩に隠し事はできないんだよね。
朝食を終え、僕は歩に切り出す。
「今日、調べたいことがあるんだ。出かけていいかな?」
「…構わないが……1人で平気なのか?」
本当は、怖い。できるなら、歩と一分一秒も離れたくない。
でも、いつまでも逃げるわけには行かないんだよね?
「大丈夫だよ。」
僕は、右京君と喫茶店で待ち合わせた。頼みたいことがあったんだ。
「……で、三神は佐橋の死んだ妹、晶について知りたいわけだな?」
「うん……歩は、妹さんのことは覚えていないから……」
「そのことなんだが……実は、佐橋にも同じことを頼まれてたんだ。」
「…え?」
「なんでも、『自分の過去に何があったかを知りたい。』って。」
「……で、調べられたのかい?」
「ああ。俺の知り合いには、そういうのを得意とする奴が何人かいるからな。」
「……君が何者なのか、はあえて聞かないでおくよ…。」
そういうのをって……ほんと、何者なんだろう?
「さて、本題に入る前に一つ確認したい。……三神、今回俺が知りえた情報は、
間違いなくお前たち2人の幸せを脅かすものだ。今なら、俺1人の胸の中にしまっておくことができる。
……お前は、佐橋との幸せと引き換えにしても、知りたいか?」
「……どういうこと?意味がわからないよ。歩の過去と、僕たちは関係ないはずだよ?」
「関係なくはないさ。お前だって、それがわかるから今こうして俺のところに来てるんだろう?
……実際は、おそらくお前が考えてるよりずっと深刻だけどな。」
――いったい、過去に何があったの?僕たちと関係があるって……わからないよ。
でも、僕は……
「……ごめん。やっぱり、いいよ。」
「……そうか、お前ならそう言うと思ってた。」
「僕は……ずるいのかな。」
「そんなことはないさ。大事なのは過去より今。いつだってそれは変わらない。」
「そう……だね。ありがとう。」
右京君と別れた僕は、歩の家へと向かった。
僕は、いつだって歩との未来を選ぶ。その思いは変わらないはずだよ。
「ただいま。」
「おかえり。用事は済んだか?」
「うん。もう平気だよ。」
「そうか。」
そして僕は眠りにつく。歩のぬくもりを隣に感じながら。
―――逃げるなんて、許さない。光、あなたは知らなくちゃいけないのよ。―――
―――自分が、どんなに罪深いのかを。今、教えてあげる―――
僕は、夢を見た。
夢の中で、僕は人を殺してた。
血塗られた手に、握られたナイフ。
眼前には、横たわる死体が二つ。大人と―――女の子。
そして、いつか見た、子供のころの歩。何かを言っている。
「―――して!どうして父さんと光を殺した!どうしてだ!」
……? 光は僕だよ? 何を言ってるの、歩?
「答えろよ!晶!」
あきら………僕が……晶?
―――思い出した?―――
そうだ……思い出した。僕は……
僕が、晶だったんだ。
第10話終了です。
GJ!
真実が明らかになってきたぜぇぇぇ!
ぽけもん 黒 九月分投下します
ちなみに第七話です
太陽が昇って暫くした頃。僕達はポケモンセンターを出発した。
元々表面だけの浅い怪我だったのか、それとも昨日のデロデロが副作用を上回る素晴らしい効能を発揮したのかは分からないが、怪我は包帯を巻けば歩いても痛みを感じなくなったので、早々に出発することにしたからだ。
このおつかいの期限は一ヶ月なので時間的余裕はあるのだが、じっとしているということはそれだけ他のトレーナーから出遅れるということになるので、休んではいられない。
それに今日は町外れの家まで行って、荷物を受け取って戻ってくるだけなので、そこまで長距離を歩くことにもならないだろうし。
……しっかし、かなりの人数のトレーナーが旅に参加しているから、運ぶ荷物の量もかなりの量になるはずだ。もしかしてこのおつかいは長い旅の前のウォーミングアップとかじゃなくて、単なる運送費の節約なんじゃないだろうか。
そんな邪まな思いを抱きそうになる。
香草さんとポポは普通に接しているように見るが、やはりギクシャクしてしまっている。
しかし幸いにも僕と香草さん、僕とポポとの仲は悪化はしていないようなので、今までどおり旅を続けることは出来そうだ。
でも、なんで香草さんは昨日あんなことをしたのだろうか。性格からして僕を逆さ吊りにするのなら何の疑問もないけど――こんな思考をしてしまう時点でいろいろと問題あるな――、ポポに対してやった上、僕をベッドに運んで介抱までした。
彼女の意図がまったく分からない。でも、とりあえず目先のことじゃないことを考えてもしょうがない。そういう考えても分からないことはもっと余裕が出来てから考えてもいいんじゃないか。
「ゴールド、遅いわよ。やっぱり足、痛むの?」
そんなことを考えていたせいで、歩みが遅くなっていたらしい。香草さんから心配そうに声をかけられた。
「ごめん、ちょっとぼーっとしてた。足は大丈夫だって」
僕は笑いながら答える。いらぬ心配をかけるのも心苦しいし。
「ならいいけど……無理しないでよ。旅は長いんだから」
……おかしい。やっぱり香草さんの対応おかしいよ。数日前とは大違いだ。数日前なら、「遅い! これだから人間はダメなのよ!」なんてどやしつけられそうなもんなのに、なんだかいやに優しい。
昨日の僕の行いを考慮すると、いくら正気じゃなかったとはいえ、本部に通告して僕のパートナーの権利を失効させようとしてもおかしくないようなものなのに、むしろ以前より優しくなるなんて。
……もしかして僕は香草さんの心に人間に対する恐怖を植え付けてしまったりしたんじゃないだろうか。優しく見えるのは、単に僕に怯えているから……とか。
…………香草さんの性格からいって、それはないよね。
……そうでも思わないと気が重くなる。
僕がそんな悶々とした感情を抱えていても、香草さんとポポのペアは相変わらず優秀で、トレーナーも全て回避し、野生のポケモンとまともに戦うこともなく、日が天頂に上りきる前にはその町外れの家につくことが出来た。
ちなみに、トレーナーを回避するのは余計なロスを食いたくないからだ。お互いまだ出発してからいくらもたってない者同士だ、戦っても得るものは少ないだろうし、それなのに怪我でもしてしまったら割に合わない。これは純然たる合理的思考だ。
僕が臆病だとかそういうんじゃないぞ、うん。
程なくして、一軒の家が見えてきた。家の脇には丁寧に『ポケモン爺さんの家』なんていう看板が立てられている。家のドアは既に開けられていた。かなりの数のトレーナーが来るからいちいち扉を開閉するのも億劫なのだろうか。
「失礼しまーす」
そう言いながら家に入ると、奥のほうに一人の老人が椅子に座っていた。他には誰もいないようだ。ポケモン爺さんの家、とありながらいるのは老人一人だけ、ポケモンは一人もいないとは。これは皮肉とかそういう類のものだろうか。
「ポケギアをそこの装置にかざして、そっちの山から荷物を一つ持っていってね。はい、それと木の実。昼食にでもしてね」
老人は手際よく手順を説明すると、数個の木の実を差し出してきた。半ば流れ作業のようだ。わざわざ老人をここに据える意味はあるのだろうか。
僕は老人から木の実を受け取ると、ポケギアを中央部がくぼんだ箱のような機械にかざし、茶色の粗悪な紙で包装された荷物の山から、そのうちの一つを取り、足早にその家を後にした。
そして吉野町に向かう途中の草むらが開けたところで皆で受け取った木の実を食べると、まだ日が高いうちに吉野町のポケモンセンターまで戻った。
若葉町に戻るためにそのまま出発してもよかったけど、もう時間的に日が暮れるまでに大した距離を稼げないと思ったのと、香草さんが僕の足の具合を心配したのとで、今日はポケモンセンターに泊まることにした。
当然、以前のようにポポと一緒に寝ることはない。僕は一緒に寝てもかまわないんだけど、そんなことをしようとするだけでも香草さんの防御力どころか体力そのものが削られそうな『にらみつける』を喰らうからだ。
そりゃ、あんな形とはいえ、香草さんに手を出しそうになったんだから、ポポに対しても何か間違いが起きないと証明することはできない。僕自身は絶対にそんなことをするはずはないんだけど、一応前科がある僕の言葉に信憑性はない。
その晩は表面上は何もなく、普通に翌日を迎えた。
朝食を終えた僕たちは、当然若葉町目指して出発する。
ここからは一度通った道だ、大した障害はない。
ロケット団のせいで相変わらず遠回りとなる別ルートを使え、となっているが、途中にチェックポイントのようなものが設置できてるわけでもないし、その別ルートを監視している警察の人間もトレーナーとポケモン全員を把握できているはずもないから、
そのルートを使わなくてもどうせ分かりはしない。それに、行きであっさりロケット団を撃退してしまった僕達としてはそんなことは馬鹿馬鹿しくてする気にならない。
……実を言うと、あんな下っ端じゃなくてちゃんとした幹部クラスに出くわす可能性もゼロではないんだから、僕はできれば遠回りしたいんだけど、
香草さんの「遠回りなんてアンタの足によくないわ! それにロケット団なんて相手にもならないじゃない!」という言葉と気迫に簡単に押し負けてしまった。僕の気、というか意思が弱いんだか、彼女の押しが強いんだか。
行進自体は順調そのものだ。野生のポケモン相手でも、まともな戦闘にすらならない。おそらく半径十m以内に入れたポケモンすら皆無だろう。
ただ、それでも夜間は火を使わないことと皆で固まって寝ることだけは徹底した。ポポが僕の右側に寝、香草さんが僕の左側に寝る形で落ち着いた。
第三者が見れば両手に花だとか羨ましいだとか言って茶化すかもしれないが、実際には、気まずい空気が流れている二人に挟まれているというのはなんともいたたまれないものである。
香草さんもポポも昼行性ということが唯一の救いか。
でも、香草さんはともかく、ポポはそんな一つのことを引きずるような性格だっただろうか。また香草さんがあのような行動に出るかもしれない、と警戒してるのかもしれないが、一応僕がいるから身の安全は保障されているんだし。
……そういえば、ポケモンは野生よりも人間と行動をともにしていたほうがより早く成長する傾向がある、という現在主流となっている学説があるっけ。
この説があるから、知能の高い大人のポケモンはバトルの危険性を知っていながらも自分の子を積極的に旅に参加させるのだとか。
そうすると、ポポも僕とすごしたこの数日で成長し、知能も、疑うことを知らない純粋な子供から、人を疑い、利用する大人に成長しつつある、ということだろうか。
……香草さんというかなり性格に難のある存在をすでに抱えている僕としては、ポポにはいつまでも純粋な子供のままでいてほしいと思わなくも無い。
こういう思想抱いてしまう僕はもしかして危ない人間なのだろうか。
日が昇る頃になると、早々に出発することにした。浅い眠りしか取れなかったので正直眠り足りないが、彼女らの活動時間に合わせなくてはならないし、これ以上この空気の中にいるのがいたたまれなくなってきたからしょうがない。
木の実で適当に朝食を取り、昨日のようにさくさくと進む。
すると日が傾き始めた頃には若葉町に着くことが出来た。
行きにかかった時間が確か三日ぐらいだったから、およそ倍のペースで進んでいたということになる。一度通った道とはいえ、少し驚きだ。
行きだって決してのんびりしていたわけではなく、今僕自身は歩行に問題はないものの、一応怪我をしているというのに。これは二人が戦闘の経験をつみ、成長したということか。
そんなことをぼんやりと考えながら、若葉町の手前の最後の草むらを越えようとしたそのとき、異変は起こった。
空中を飛ぶポポの体が突然光り輝き始めたのだ。
ポポは発光体となり、そのままふらふらと地上に軟着陸した。
「ポポ!?」
僕は驚き、慌ててポポに駆け寄る。
光はすぐに収まり、僕が駆け寄ったときには光はもう消えていた。
光の落ちた場所には、ポポによく似たポケモンが倒れていた。
ポポは髪が茶だったのに対してこのポケモンは赤。翼の面積がかなり大きくなり、羽毛は減ったが羽根は増え、羽根自体もポポに比べてしっかりしている。
それ以外の見た目の差は無いといっていいだろう。もしかすると、これがうわさに聞く、“進化”という奴だろうか。
ポケモンは年齢に関係なく、ある一定の経験を積むと、劇的な変化を起こすことがあり、それを“進化”と呼ぶことになっている。
話としては知っていたが、実際に目の当たりにするのは初めてである。
「ポポ?」
ポポの服を着ているからほぼ間違いなくポポだろうが、一応、確認のために声をかけてみる。
僕の声に反応して、閉じられていたそのポケモンの目が開かれた。
「……ゴールド?」
ポポは自身の体を見て、目をぱちぱちさせている。
「あ、あのさ、ポポはどうやら進化したみたいなんだ」
「ポポ、進化するのは初めてだけど、なんとなく分かるです。前から、こうなることが分かっていたような気がするです」
そう答えるポポの口調はとても落ち着いたものだった。以前のポポなら平常時でももっと弾んだ声を出していたような気がする。進化すると能力が飛躍的に向上するという。その能力の向上が、ポポに落ち着きをもたらしたのだろうか。
前から分かっていた、か。本能とか、そういうものだろうか。
「ポポ、おめでとう」
僕はそういいながらポポの翼をとった。
「ありがとうです」
ポポは僕の手をとり、ニッコリと笑いながら立ち上がった。
そのまま、二人で向かい合う。
うーん、なんというか、どういう風に対応していいか困るな。以前のような対応でいいのだろうか。とりあえずおめでとうは言えたから、これからどうすればいいのだろうか。
「ゴールド、進化してもポポはポポです」
かけるべき言葉を捜しあぐねていた僕の気持ちを見透かすように、ポポはそう言った。はは、そこまで筒抜けとはね。恥ずかしい。「そうだね、ポポはポポだ」
そう言って、僕達はどちらともなくクスクスと笑いあった。何がおかしいのかも分からなかったけど。
「もういいかしら」
背後からかけられたその声で、僕は香草さんの存在を思い出した。このアクシデントですっかり脳の中から消えていた。僕の脳の並列処理能力の低さに呆れる。
「もういいかしら、って香草さん、ポポが進化したんだよ? おめでとうの一言くらいあってもいいんじゃないかな」
僕はたしなめるようにそう言った。香草さんの存在を忘れていたのだって、ポポの進化にまったく触れもせず、背後でじっと僕達を見ていたからじゃないか。いくら自分自身のことではないとはいえ、その対応はあんまりだ。
「……どうせ私はまだ進化してないわよっ!」
香草さんは感情的にそう怒鳴り、足早に一人で町に入っていってしまった。
僕の言葉を嫌味と思ってしまったのだろうか。まったくそんな気持ちは無かったのに。僕はそんなに嫌味ったらしいのかな。
ポポのほうに向き直ると、ポポも呆然といった顔をしていた。つまり僕は嫌味ったらしくないということだ。
嫌味ったらしいのなら香草さんがこういう行動を起こすのは当然なんだから、呆然となんてしないはずだ。……いや、単純にポポがそういうことを分からないだけかもな。
「行こうポポ、香草さんを追いかけないと」
「はいです!」
ポポは以前のように元気よく返事をした。
草むらを抜け、町に入ったが、香草さんの姿はどこにも見えない。ポポに飛んでもらって空中から見てもらったが、香草さんらしき人影は見えなかったらしい。このわずかな間にそこまで遠くに移動するなんて。
僕達の前から去るときは早足程度だったが、草むらを抜けたらそのまま全力疾走でもしたのだろうか。
僕達には当ても無いので、とりあえずおつかいを済ませるために宇津木博士の研究所に行くことにした。おつかいの報告には僕とパートナーである香草さんのポケギアが必要だったが、幸いにも荷物管理はパートナーの仕事なので僕が香草さんのポケギアも持っている。
……そのせいで香草さんと連絡を取るすべがないんだけどさ。
所内の案内にしたがって進むと、出発のときに集められた会場についた。場内には僕と同年代の人間とポケモンが数人、職員と思われる大人の男が二人いた。
男に荷物を渡しに男のところまで行くと、「パートナーは?」と尋ねられた。状況的にはポポを僕の最初のパートナーだと誤解しても何もおかしくない。つまり職員は一応すべてのトレーナーとポケモンを把握している、ということか。まいったな。
「ええっと、久々に帰ってきたんだから町を周りたいとか言ってどこかへ行きました。勝手に手続きを進めてもいいそうなので、ポケギアは預かってます」
この施設、多分夜間はやってないだろうから、下手するとここで抑留されてしまう。僕はポケモンマスターを目指す旅を楽しみにするあまり気がはやり、つい嘘を吐いてしまった。
「たとえ任されていたとしても、本人がいないのでは認められません。お引取りください」
僕の嘘も空しく、あっさりと追い返されてしまった。当然といえば当然なんだけどさ。
「どうするですか、ゴールド」
研究所の前で、ポポに不安げに尋ねられた。
どうするも……ねえ。
「香草さんを探すしかないよね。ポポ、空中から探してもらうの、頼める?」
「分かったです」
ポポは僕に向かって微笑むと、空へ飛翔した。
高度十メートルに達しようとしたときだろうか、ポポは上昇を止め、降りてきてしまった。
僕はどうしたのだろうと訝しんでいると、ポポが大声で、
「香草さんいたです!」
と言ってきた。
随分早い発見に僕は驚かされる。
どこに、と僕がポポに尋ねる前に、僕は視界に香草さんを捉えた。
ちょうど角を曲がってこちらに向かってきているところだった。香草さんもここを目指してきていたのか。そりゃ、合流するための手がかりなんてここか町の出入り口くらいしかないからね。
僕は香草さんに早足で歩み寄る。
「香草さん、一体どこ行ってたのさ」
「別に……どこだっていいでしょ」
彼女はぞんざいに返事をした。なんだろう、怒っているというよりは、駄々をこねる子供、というほうが近い気がする。でもどうしてそんな感じがするのだろうか。
「よくないよ。パートナーなんだから」
「パートナーだからって何よ! 私が何をしようと、私の勝手でしょ!」
この言葉にはさすがにカチンと来た。何だよ、この言い草は。僕は確かに未熟かもしれないけど、至らない点は香草さんにもあるのに。協力とか妥協とかそういうのは一切なく、ただ自分の我が侭だけだ。思えばこの旅の最中、香草さんはずっと不快を露にしてきたくせに。
「そんなに僕と一緒にいるのが嫌かよ!」
つい語気が荒くなってしまう。言いながら、僕は同時に後悔もしていた。香草さんの性格からして、こんなことを言ったら火に油を注ぐも同然だ。
不毛な口喧嘩が始まるのは目に見えてる。思えば、今までやってこれたのだって、僕が折れてきていたからなのに。彼女が自分から折れるとは思えない。
ところが、それに対する彼女の反応は、僕の思いもよらないものだった。
「ご、ごめんなさい……そういうつもりで言ったんじゃないの……」
香草さんはうつむいて、本当に申し訳なさそうに言ってきた。
これには驚かされた。先ほどまでの苛立ちが一遍に吹っ飛んでしまっただけでなく、僕はそのまま思考まで停止してしまった。
あの横柄だった彼女が、この短期間でここまで性格が変わるとは考えにくい。
つまり……やはり僕は彼女に人間に対するトラウマを植え付けてしまったのか。
何てことだろう。目の前が真っ暗になるようだ。
こうなってしまえば旅の続行は不可能だろう。香草さんが旅を諦めるだけならポポをメインのパートナーに設定しなおせば旅は続けられる。しかし香草さんが本部に詳しいことを話せば、僕は間違いなくトレーナーとしての資格を剥奪されるだろう。
あのポケモンセンターのせいで、僕は夢を諦めなければならなくなるなんて。糞、どうして僕が……いや、なんにせよ、僕がやったことだ。責任は僕にある。ならば相応の罰を受けよう。でなければ、僕はあのシルバーと変わらないことになってしまう。
「どうしたのゴールド? ……もしかして、怒ってる? 私が勝手なことばかり言ってるから……」
僕がぼーっとしていたことを不審に思ってか、香草さんが僕の顔を覗き込みながら尋ねてきた。まだ日没前だというのに、彼女にいつもの威勢はない。ああ、やっぱりか。
でも、ここで旅を止めることが、彼女にとっても、僕にとっても本当にベストな選択なのだろうか。彼女だって、ポケモンリーグを制覇して、草ポケモンの強さを証明するという夢を諦めることになってしまう。
それに、彼女にトラウマを与えておいて、後は知らない、じゃあんまりじゃないだろうか。僕が今後正気を失うようなことはまず無いだろう。アレを食べなきゃいいだけなんだから。
それならば、彼女の人間に対するトラウマを取り除いてあげることだってできるんじゃないだろうか。
ああ、でもこれは僕の勝手な考えだ。結局、僕は旅をリタイアしないための言い訳に彼女を利用しているだけに過ぎない。そうだ、罪は……認めなくちゃならないんだ。旅は……ここでおしまいだ。
「香草さん」
「な、何!?」
先ほどまで何のリアクションも返さなかった人間が突然反応したからだろうか、それとも僕におびえてだろうか、彼女は驚いた様子で僕の顔を見る。
「あ、あのさ……」
「うん」
「ここで……」
「ここで?」
何を言いよどんでいるんだ僕は。ええい、女々しいやつめ。そんなに自分が可愛いか。お前はシルバーと同類なのか! 言わなきゃ。言うんだ!
「ここで……旅を終わりにしよう」
言った。言えた。言ってしまった。これで、何もかも終わりだ。
静止した空間で、風だけが二人の間をさあっと駆け抜けた。
このときの香草さんの驚愕の表情は生涯忘れられないだろう。
思えばこれがすべての始まりの原因となる、人生最大であろう判断ミスだったことを、このときの僕はまだ知る由もなかった。
投下終了です
それと、今になってタイトル付け忘れていることに気がつきました……orzナニヤッテンダオレ
タイトルは「ぽけもん 黒 変化と誤解」です
保管庫の編集者さん、申し訳ないのですがよろしくお願いします
リアルタイムGJ
いつもお疲れ様です。
>>589 光人格カワイソスだけど晶人格の方が病みっぷりは凄そうなんだよなあ
>>598 これは盛大に地雷踏んじゃった悪寒がw
でもこれで香草さんがどう病んじゃうのかwktkが止まらないw
>>598 GJ!
しかしポポも確実に死亡フラグの数増やしているな、一体何本あるんだ
ポポをパートナーにするとか言った日には……
ぽけもんキター
GJ!
ポポが進化したか・・・ しかし核地雷踏んだな〜
らめえええええええ!
ヤンデレに
「僕たち、もう終わりにしよう」
は死亡フラグー!
ちゃんと1ヶ月に1回更新してくれるとか・・・
何というGJ
香草さんのヤンデレ進化も心待ちにしてますw
ポポは純粋なまま最後まで行くんだろうか
それともポポも途中から病むとか・・・まさか・・・
ヤンデレの彼女がレジバイトしているのに
エロ本を買うようなものくらいに地雷だな・・・・
GJ!
それじゃ温いだろぉ〜。ヤンデレの彼女がレジバイトしている目の前で、別の女とSEXするようなもんだな!
ヤンデレに熱々おでんあーんしたい
ダチョウ倶楽部ヤンデレときいて
ヤンデレ「押すなよ!!絶対に押すなよッ!!」
クソワロタw
>>598 すげーw
ここまで盛大に核地雷踏んだ奴初めて見たww
これはもはやヤンデレの前で「俺、実はゲイなんだ」ていうようなもんだw
そしてポポ病めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
俺としては3匹目の加入も待ち遠しいところだ
病んだ香草さんとの対比が見たいので
ポポにはこのままでいて欲しいかな
俺は死人がなければいいやw
うぜえ
618 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 20:41:18 ID:9kXiYaYw
ヤンデレSSって、一歩間違えばただのサイコホラーになっちゃうし難しいですね。
皆殺しの美学
ヤンデレの美学は皆殺しなんかじゃない、主人公への純粋な愛なんだよ
愛って素晴らしい
その通りだ
まだ殺しなんかがヤンデレだと思ってる初心者がいるのか
ぽけもん 黒 十月分投下します
ちなみに第八話です
「え……?」
香草さんは僕の言ったことがよほど意外だったのだろう、信じられないという表情で、両手を胸の前で組み合わせたまま静止している。
「ゴールド、それってどういうことですか?」
ポポが後ろから、僕の言ったことの意味が分からない、というように尋ねてきた。
「そのままの意味さ。ここで解散ってことだよ。ポポは新しいパートナーを探すなり、野生に帰るなり、吉野町に住むなり好きにすればいいよ」
少し無責任な気もするが、僕が変にかかわっても、彼女にとってよくないだろう。結局、すべてを決めるのは彼女の意志なんだし。
「ゴールドはどうするですか?」
「僕? どうするって……考えてなかったなあ。受験までは時間があるし……まあどうだっていいじゃないか」
どうせ僕の夢は潰えるんだ。もう、どうでもいい。
「ポポも一緒にいるです! ゴールドと一緒にいれないなんていやです!」
「そうよ、どうして旅を終わりにしようなんてそんなこと」
二人して、僕の決定に反対してくる。
やめてくれ。そんなことをされたら、決定を曲げたくなるじゃないか。
「もう、限界だよ。これ以上旅を続けるのは無理だ」
「限界って……そんな……どうして……もしかして私のせいなの?」
「違う、そんなつもりで言ったんじゃない。香草さんは何も悪くないよ。悪いのは……全部僕だ」
そうだ、これは僕の責任なのに、香草さんに負い目なんて負わせてはいけない。
すると、突然香草さんはニッコリと笑って言った。
「そう、全部あなたが悪いのなら……いいわよね?」
同時に、両の袖から数本の蔓が伸びだしてきた。
一体何を。そう考えるより前に、僕は両手両足を縛られ、宙吊りにされていた。
「な、何するんだ!」
「だって、私は悪くないんでしょ? なら、いいわよね?」
「い、意味が分からないよ香草さん!」
僕は大声で香草さんに呼びかけるが、香草さんの表情は笑顔で固定されたままだ。
そして、世界が逆さに――違う、逆さになったのは僕か――なったかと思うと、次の瞬間には、意識を失っていた。
そして、目を覚ますと、僕は闇の中にいた。
咄嗟に飛び起きようとして、体にガサガサと当たる感触で気づいた。ここは闇の中じゃない、草むらの中だ。
よく目を凝らすと、確かに草の輪郭が見えてくる。
となると、僕は香草さんに草むらに放り投げられたのか? でも、だったらどうしてこんなに暗いんだ?
とりあえず起き上がり座ってみたが、頭頂部が酷く痛む。一体何があったんだ?
痛む頭を左手で押さえ、右手を地面について立ち上がろうとしたら、地面がやたらやわらかく、暖かかった。まるで人間みたいに。
まさか、と思いつつも、ゆっくりと右を見ると、そこには横たわる人影があった。
……痛みとは違う意味で頭を抱えたくなった。
とりあえず明かりだ、と思いポケットに手を入れたが、そこにポケギアは無い。
おかしいな、ポケギアはいつもポケットに入れっぱなしなのに。
「はい」
ポケギアを手渡された。
「あ、ありがとう」
僕はそれを受け取り、電源を……って。
「だ、誰だ!?」
一体僕は誰にポケギアを手渡されたんだ!?
慌てて後ずさりながら僕にポケギアを渡してきたと思われる“誰か”に尋ねる。
「私よ」
そう答えたその声は、とても聞き覚えのあるものだった。
ポケギアの電源をいれ、ライト機能で照らすと、そこには僕と同い年くらいの少女が、上体だけを起こして座っていた。
とてもよく見覚えのある少女だが、頭にから生えている一枚の葉の大きさが以前の倍くらいになっているのと、首を飾るように葉が生えているところがその少女とは違う。
これはつまり。
「もしかして、香草さん?」
「そうよ。ひょっとして、見違えちゃった?」
香草さんはクスクスと笑いながら嬉しそうに答えた。
進化したのか。でも一体いつ?
「ゴールドを頭から地面に叩き落したら、体が急に光りだして。気がついたら進化してたの」
僕の頭が痛むのはそのせいか! なんてことするんだよ! しかも僕を倒して進化って……なんだかすごく複雑な気分だ。
「それで、ここはどこなんだ? 後、なんでそんなことしたんだ?」
「ここは草むらよ。見れば分かるでしょ。なんでそんなことをしたかって、だってゴールドが全部悪いんでしょ?」
「草むらってことは言われなくても分かってるよ。そんなことを聞いてるんじゃない、ここは地理的にどこなのか、って聞いてるんだ。それに、確かに僕が全部悪いって言ったけど、そういう意味じゃなくて……」
「ここは二十九番道路よ。つまり若葉町と吉野町の間」
……若葉町と吉野町の間だって?
「どうしてそんな場所にいるんだよ?」
「だって、全国を巡る旅なんだから、この道を通るのは当然でしょ?」
ええと…………意味が分からない。意味が分からないぞ。話がさっぱり伝わってこない。
「僕は旅は終わりにしようって言ったはずだろ?」
あれ? これってもしかして夢だったりするのかな? ポケモンマスターの夢を諦めきれない未練がましい僕の夢? いやいや、こんなリアルな夢が存在するはずがない
「だって、あなたが全部悪いんでしょ?」
……うん、いまいち会話がかみ合わないぞ。これは僕が頭を打った衝撃でおかしくなったわけじゃないよね? おかしいのは香草さんの方だよね?
多分このままそんなことを言い続けても埒が明かないだろうし、とりあえずそこは置いておいて、違うことを聞くことにした。
「ええと、全国を巡る旅にでるためにはおつかいを済ませないといけないはずなんだけど、僕が気絶してたんなら済んでないよね? だから旅には出れないよ」
「済んだわよ」
香草さんは平然とそう言った。
僕は、へっ? と情けない声が出そうになるのを既のところで堪えた。何だって? 一体何を言っているんだ?
「ザルよあんなの、所詮お役所仕事だから。気を失ったあなたをそのまま研究所の中に引っ張っていって、あなたを一番後ろの席に座らせて、所員にポケギアと荷物渡して、
書類もらって、筆跡変えて二人分書いて、提出して、またあなたを引っ張っていってここまで来たってわけよ」
香草さんはニコニコしながらそう答えた。その所業に反して悪意というものがまるで感じられない。まるで善悪の区別がついていない子供のようだ。
「来たってわけよ、じゃないよ! 職員も何やってんだよ! ぐったりしていて、しかもずるずると引きずられて移動しているんだから少しくらい不審に思えよ!」
「ポポが怪しまれないように隠れてゴールドを動かしたです」
背後からの声に驚いて振り向けば、いつの間にかそこにポポが立っていた。というか、共犯かお前ら!
「ポポまで一緒になって何やってんだよ! なんで止めなかったのさ!」
「だって、止める理由がないもの。私も旅を続けられるし、ポポはあなたと一緒にいられるし、あなただって旅を続けられるじゃない。それに、引きずったりなんてしてないわよ。ちゃんと地面につかないように浮かせたわ」
「論点はそこじゃないよ! 引きずったか浮かせたかなんてどうでもいいよ!」
「どうでもよくなんてないわ! もしあなたが怪我なんかしたらどうするのよ!」
ああもう、どうしてこう話が通じないんだ。だんだん逃げ出したくなってきたぞ。状況的には願ったり叶ったりなのに、どうしてこんなに逃げ出したく思うのだろうか。
「ポポも、何か言うことないの? こんな……僕の意思に反して、誘拐みたいな真似までしてさ」
香草さんとの対話を諦めた僕は、脱出口をポポに求めた。
ポポを説得すれば二対一、しかもポポは鳥タイプ。いくら香草さんが強くても、力で押し負けることはないだろう。押し負けたとしても、僕の逃走術をもってすれば、逃げられないはずがない。
「ゴールドと一緒にいれて嬉しいです!」
ポポは喜色満面といった様子でそう答えた。
「そうじゃないだろ!」
僕はつっこまざるをえない。
「じゃあ……分かんないです」
ポポは本当に困惑している様子だ。ダメだこりゃ。香草さんとは違った意味で話にならない。
「ええとさ、僕は旅はもう終わりにするって言ったよね?」
「嫌です!」
「いや、そうじゃなくてさ」
僕はあくまで事実の確認がしたいだけなんだけど。
「ポポはゴールドと一緒にいたいです! 離れたくないです!」
ポポはそのまま両翼を広げて僕に抱きつこうとしてきた。僕は咄嗟のことだったので退避行動も取れなかったが、ポポに抱きつかれることはなかった。
ポポが驚いた顔をして静止したからだ。僕も首筋に突き刺さりそのまま突き破られそうな強い視線を感じたので振り向くと、案の定、香草さんがこちらをまるで目からレーザーでも出てるんじゃないかと思いたくなるような強さで睨んでいた。
あれえ? 香草さんってチコリータだったから、一回進化した今はベイリーフのはずだよね? ベイリーフって黒い眼差し覚えたっけ?
あ、黒い眼差しは逃げられなくなるけど、僕は今一秒でも早く逃げたしたいからこれは黒い眼差しじゃないね。それなら納得だ。
恐怖からか、動転からか、やたらどうでもいいことに頭が回る。
とにかく、もう香草さんと目を合わせていたくなくて、視線をそらすためにポケギアを見た。ただ視線をそらすと、蔓でグルグル巻きにされて視線を逸らせなくさせられそうな気がしたからだ。
ポケギアの待ちうけに表示された時間は零時を回って少しした頃だった。ここで僕は一つ不思議に思った。
「そういえば二人とも、こんな時間なのに眠くないの?」
以前なら今よりはるかに早い時間に寝入っていたはずだ。それなのに、二人は以前では考えられないほど元気である。
「眠いわよ。でも進化したせいか、前より大分平気になったの」
「ポポもです」
へえ、進化にはそんな効能も。
というか、つまりこれは僕が夜間逃げ出すことも不可能になったということではないだろうか。
どうしよう。
ポポ懐柔作戦は本題に入ることすらなく失敗してしまった。僕一人で二人の目を盗んで逃げ出すのはかなり難しいだろう。
いろいろと思案を巡らせていた僕は、そこでピーンとひらめいた。
「ほ、ほら、僕親に何も言ってないし! 心配するだろうから、一度戻って伝えないと!」
「だめよ。そんなの時間の無駄だわ」
時間の無駄って。
確かにここから引き返すことも考えると事実だけど、そんな言い方はあんまりじゃないだろうか。
「でも、親が心配するだろうし」
「電話があるじゃない」
う、確かに、電話で事足りなくもないかもしれない。
というか、この路線で香草さんを説き伏せるのは無理か。
これで打つ手なしである。
……いや、そもそも手なんて打たなくてもいいんじゃないか?
確かに香草さんに恐怖を感じないこともないが、どうせ逃げられないのならもうおとなしく腹をくくって旅をすることにしたほうがいいじゃないか。
なんで香草さんがこんな凶行に出たのかは分からないが、旅を続けられるというのは彼女の言うとおり、僕にとっても喜ばしいことだし。
何より、彼女自身がいいと言っているのだから。根本の問題はクリアされている。
それに、僕に対して行ったことは人間に対するトラウマの裏返しと取れなくもないが、それならば今彼女にまったく怯えがないことの説明がつかない。つまり人間に対するトラウマなんてものは初めからなく、単なる僕の誤解だった可能性が大きい。
でもそうするとなんで彼女は急激に態度を軟化させたのか、ということの説明がつかなくなってしまうんだけど。
……まあいいじゃないか。僕は人の心を読めるわけじゃないんだし、分からなくても仕方がない。
家に帰って母に出発の報告を出来なかったことは残念だが、問題はそれくらいだし、別にいいじゃないか。
今は時間も遅いし、明日――正確には今日か――電話しよう。
……半ば無理やり自分を納得させている気がしなくもない。
「分かった。旅を続けることにするよ」
僕は二人に向かってそう言った。
ポポは「やったです!」といいながら飛び跳ね、嬉しさをあらわにしているが、香草さんはキョトンとしている。
「どうしたのさ香草さん?」
僕は腑に落ちず、香草さんに尋ねる。
「だって、旅を続けるなんて当然のことなのに、どうしてわざわざそんなこというのかなって」
どうやら彼女にとって旅を続けるというのはすでに決定事項だったようだ。
僕の意思は無視ですか。無いも同じですか。
このことに関してはもう話が通じないので僕は香草さんに何か言うことを諦めた。
代わりに僕のリュックはどこと香草さんに尋ねると、香草さんは体をひねって後ろを向き、「はい、あなた」と言いながら差し出してきた。なぜだろう、ただ自分のリュックを返してもらっただけなのに、やたら照れくさいのは。
なぜといいつつも理由は明白である。リュックを差し出す香草さんの所作がやたら可愛かったからだ。頬を軽く染め、微笑みながら差し出してくるなんて完璧な動作を見せられたら、誰だって可愛いと思わざるを得ない。
そもそも香草さんは見た目だけなら可愛いんだし。
……見た目だけ、なんて実際に香草さん言ったらどんな目に合わされるか分からないな。
僕はリュックを置くと、リュックのほうに頭を向けて横になった。
するとガサガサという音とともに僕の右に香草さんが、左にポポが移動してきた。二人とも、やけに僕に近いような。
「固まって寝ろって言ったのはゴールドでしょ?」
香草さんは非難するように言う。
確かにそうなんだけど、なんというか……。
なんだか緊張してしまう。
さっきまで気絶していて、しかもこの頭痛で寝れるのかと思ったが、香草さんの頭の葉っぱから漂ってくる甘い香りを嗅いでいるとすぐに眠りに落ちた。
翌朝。
僕が目を覚まし、左右を見ると二人ともすでに目を覚ましていた。ならどうして横になったまま動かないのだろう。二人とも横になったまま僕の顔を眺めている。
体を起こして大きく伸びをすると、ポケギアで時間を確認する。 時刻はまだ五時半だ。
ポポに木の実を取ってきてもらうように頼むと、僕は出発の準備を整えた。
ポポは今までよりかなり短時間で木の実を持って帰ってきた。進化したお陰で飛ぶのが速くなったのか、それともたまたま近くに木の実のなる木があったのか。何かやたら香草さんのほうを見ていた気がするが、気のせいだろうか。
木の実は特に体調に異常のでない、普通の木の実だった。
これも進化することで木の実を見分ける能力が上がったのだろうか。……いや、これはさすがに関係ないな。
木の実を食べ終えると、僕たちはすぐに出発した。
道中、香草さんがやけにちらちらこちらを見てきたが、香草さんの性格からいって、何か言いたい事があったら言ってくるだろうから、彼女は何がしたいのだろうかと気になった。
昨日自分が僕の頭を地面に叩き付けた後遺症を心配してくれているのならありがたい。幸い、もう触らなければ痛みもないがこれが彼女が自分の言行を反省する機会になってくれるとありがたい。
それと、道中でポケモンと遭遇する頻度が上がった気がする。香草さんの甘い香りにポケモンが惹かれてくるのだろうか。
相変わらず余裕なので多少の遭遇数の増加は経験を積むのにも好都合だからちょうどいい。
十一時頃に昼の休憩という形で休みを取ることにした。
僕が母に電話し、もう全国の旅に出発していることを告げると「一度家に帰ってくればよかったのに」と予想通り小言を言われた。それに対し僕は「パートナーがすごく急いでいてさ」と誤魔化した。あながち間違いでもない。
電話が終わると、僕は「香草さんは親に電話しなくてもいいの?」と尋ねた。何せ香草さんは女の子だ。親の心配は男の比じゃないだろう。
すると彼女は「私はもう済ませた」と答えた。
意外な答えだ。でも草むらから走り去った後や、僕を気絶させた後など時間は十分にあっただろうからおかしくはないか。
昼食をとった後も僕たちは進み続けた。同じ道を三度も通れば、さすがに今自分がどの辺にいるのか大体把握できるようになる。僕はこのペースで進めば今日中に吉野町に着けると踏んで急いでいた。以前の彼女らの活動時間では無理だったが、今の活動時間ならばいけるはずだ。
正直、野宿はあまりいいものではない。今は温暖な時期のため防寒の心配をしなくていいから大分マシとはいえ、敵に襲われる恐怖もあるし、なにより環境的に快適とは言いがたい。
本当は若葉町で一泊する予定だったのに、それが台無しになってしまったからここ数日野宿続きだ。出来れば早く暖かいご飯を食べて暖かい風呂に入ってやわらかいベッドの上で眠りたかった。
と、僕の思惑通り、日が暮れてから一時間もせずに若葉町着くことが出来た。今回はロケット団に会うこともなかった。
真っ先に向かったポケモンセンターの受付でさっさと手続きを済ませた僕は、割り当てられた部屋に一目散に向かった。
「はあー、やっと柔らかい布団で寝れるよー」
僕の口からため息が漏れる。かなり急いだからもうクタクタだ。もう風呂に入るどころか食事する気力すらない。一刻も早くベッドで横になりたかった。
「ごめんね、無理させちゃった?」
香草さんが心配気に言ってきた。思わぬ誤解をさせてしまったようだ。彼女も疲れているであろうに。
「とんでもない! むしろ僕が無理させちゃったんだから、僕が謝らなくちゃいけないくらいだよ。二人とも、お疲れ様」
と、僕は単純に二人にお礼を言いたかっただけだ。
それが何かが――多分二人ともというところだろう――まずかったのだろう、思わぬ問題に発展した。
「私のほうが役に立ったわよね!?」
「ポポのほうがゴールドのために頑張ったです!」
……どうしてそうなるかな君達は。
昨日僕を町から拉致したチームワークをずっと保てないものか。「ぼ、僕疲れたからもうねるね」
そういってリュックをベッドの脇に下ろすと、ベッドにダイブした。
この状況だとどちらを褒めても角が立つ。これが最善の対応だ……と思いたい。
しかしこの対応も、また思わぬ方向に発展した。……別に僕の想像力が貧困なわけじゃないぞ。
二人してベッドを覗き込んできたかと思うと、二人とも僕の両脇に滑り込んできたのだ。シングルベッドだから三人も寝るとかなり狭い。そのため、図らずも体が触れてしまう。
「な、何やってるのさ二人とも!」
「いや……ですか?」
「いや……なの?」
二人とも、甘い声でささやいてくる。
どちらを向いても対応に困る。何で二人ともこんなこと……ポポは親に対して甘えるようなものだろうから分からなくもないけど、香草さんまで。最近密着して寝てたから、それが癖になってしまったのか?
「ほ、ほら、僕かなり汗臭いし!」
僕がかろうじて見出した弁明がこれである。我ながら、他に何かなかったものかと思う。
「ポポはそんなの気にしないです!」
「私のほうこそ汗臭いよね……。やっぱり嫌かな……?」
いいえ香草さん、あなたからはとても甘くていい匂いが、なんて口が裂けてもいえない。口が裂けそうになったけど。
僕が余計な弁明なんてするから、なおさら甘い雰囲気になってしまった。どうする? どうしよう? まったく、僕は眠いってのに、どうしてこんなに頭を使わなくちゃいけないんだ。というかこんな至近距離で香草さんの甘い香りを嗅いでいたらどんどん意識が落ちて……。
「ねえゴールド、柔らかい布団で寝れること喜んでたわよね? なら今度から……その……私を抱きながら寝ても…………ってゴールド? ……もう! 寝るのが早いのよバカ!」
香草さんはそう言って僕の脇腹を軽く殴った。
しかし僕はこの香草さんの葛藤も、僕が脇腹を殴られたとき、ぐえ、と声を漏らしたことも知る由がなかった。
投下終了です
今月中にまた投下がないとは言い切れませんが、期待はしないでください
それと、保管庫の管理人さん、タイトルを補足しての補完、ありがとうございました
GJ!まだ1日目だというのに何という10月分www
期待はするなとは言うけども、2回目の10月分も勿論待ってます。
しかしツタパイルドライバーで進化とはw
GJ
これで今月は頑張れる
GJ!
人間倒しても経験値もらえるのか
しかし、2匹でこれなら6匹揃ったらどうなるのやら
GJ!
2日続けての投下にテンションが上がったわwww
GJ!
もうそのまま11月分も先に投下しちゃいなYO!
香草さん超デレだな、予想外w
>「はい、あなた」
さりげなく嫁宣言ですか、そうですかw
ポケ黒おもしろすwwww
12月分も投下しちゃいなYO!
セラブルって無理ゲー?
ポポは体の形状からして逆レイプに不利だな、その点香草さんは蔓があるからもってこい!
アナルも行っとく?
640 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 00:13:36 ID:Dw68/vur
ポケ黒やっぱ最高だな
このまま1年分投下しちゃいなYO!
641 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 00:18:45 ID:V0oXywpG
ヤンデレに甘えるとどうなるの?
ただのバカップルになります。でもヤンデレがさらに悪化します
で、連レスで悪いんだが他の住人が言う前に俺が言っておく
>>640と
>>641 sageろやダボ。あんまチョーシこいてんじゃねーぞボケが
優しく言ってやりたいがそれだとわかんねーだろーからな。何度も言わせんなや
>>643 お前さんの荒い口調のレスのほうがこのスレに悪影響を与えそうだ
>>640も別に本気で言ってるわけじゃなかろう
そんなに目くじらを立てるほどのことでもない
きっと
>>643は全裸で待機しすぎて少しイライラしていたんだよ。
>>644 不快に感じたら申し訳ない。
>>1に書いてある内容も読まないで散々言われてることを
繰り返す馬鹿にはハッキリ言っておかないと駄目だと思ってな
だがこの程度の荒々しさで悪影響が出るスレでもあるまい。そしてsageるsageないに
本気も糞もないだろう。俺が怒ったのは書き込みの内容ではないんだよ
はっきり言ってageる奴よりお前みたいな奴の方が百万倍迷惑
キモい正義感を振りかざして癇癪起こすのは勝手だけれどわざわざそれを書き込まないでほしい
まあ言ったところで繰り返す馬鹿には無駄だろうけど
>>647 お前よく周りからキモイとかウザイとか言われてるだろ?
周りの迷惑だから早く死んだほうがいいよ?
>>648 何でそう売り言葉に買い言葉で返すかなあ・・・
こういう言い合いはageることよりスレに悪影響与えるから自重してくれ
マッタリとヤンデレっ子を愛でようじゃないか
争いのない平和な世界が訪れますように(-人-)
荒らしに反応するのも荒らし
まあ簡単にまとめるとsageないのはいけないことだけど、乱暴な言葉遣いはスレの住人を不快にさせることもあるから自重しようねって事だな
注意するのは良いことだけど言い方があるだろう、そんな物言いをされても素直に受け取る気にはなれないだろうと
=終了=
一人お子様がいたって事ですな
これ以上文句あるなら荒らしと同じ自分が大人だと思うなら消えてねあえて安価つけないけどね
=おしまい=
そんな事より真冬の全裸待機対策を語ろうぜ。
こないだ貼るホッカイロをどことは言わないけど貼ったら低温火傷した。まじでお勧め出来ない。
てかsage位常識だろ
そりゃ2回連続でageられてたら
>>643みたいな言い方になってもおかしくない
ageると荒らしの標的になる可能性もあるわけだし
というわけで皆ageないように気をつけような?
サー!イェッサー!
あーどこかにロリdで巨乳でヤンデレの娘はいないかねぇ
そして俺を愛してくれないかねぇ?
香草さんとシルバー(ホモor実は女)のヤンデレバトルが楽しみだ
そうか、そういうことなら…
少し応援したくなった
実はランが黒幕、シルバーはランに操られている。
婚約者がいてゴールドと結婚できないから両親を殺しシルバーに連れ去られたように見せかけ逃亡
本当はもう少し待ってからゴールドの前に姿を現すつもりだったが
パートナーを殺害すべくシルバーに操られているかのように見せかけて(ry
>>661 予想はうざいからチラ裏にしとけよ・・・
すまんこ
暇潰しにage
喜多方ラーメン
風邪に全裸は辛いぜ・・・
冷えてきたし皆も体調管理には注意しような
ヤンデレなねえさまに思いっきり甘えたい
そしてらぶらぶ共依存へ
あぁ、
>>667がこんなに僕に甘えてくれるなんて!!
いいよ
>>667!もっと、もっとお姉ちゃんに甘えてっ!ぐちゃぐちゃにしてぇぇええええ!!!
はぁ、はぁ、ふふふふ。ゆ、夢みたいだ。だってありえないもん。いつもはキモイとか言って顔すら見てくれないのに・・・・・。
そうか・・・・、これは夢なんだ。あまりにも弟が好き過ぎて僕の頭が作り出した幻想なんだ。
チクショウ・・・。いいよ、夢なら、どうせ夢なら。せめて夢の中の
>>667だけでも!
僕だけのモノにしてやるぅぅぅうううう!!!!
サクッ
何てことになりかねんぞ
>>667?
監禁やったらあかんのですかー?
つねに否定から入る日本人的気質・農民的発想
ヤンデレの神よ
プロットの作り方とか教えてください
ヤンデレとは
1%の行動力と99%の愛である
という此処で見た言葉が今も俺を動かす
>>668 ずっとねえさまのものになれるなら何を惜しもうか
なんか創作意欲が沸いてきたりこなかったり
ヤンデレ二人に自分をめぐって取り合いされたい
最終的に胴体ぶった切られて”こっちは私が貰うね♪””じゃあ私はこっちを貰おうかしら”
ってなるかも知れんぞ?
それはヤンデレじゃなくてサイコじゃね?
そもそも半分けなんてしないと思うんだが
未だにキチガイとヤンデレを勘違いしてる奴がいたとは
嘆かわしい・・!
ヤンデレは献身
ヤンデレ陵辱→ヤンデレがデレる
これこそがヤンデレを攻略する方法だ
うぜえ流れ
大岡「主人公の両手を引っ張り合って勝った方の物とする」
両肩を脱臼して気絶する男を見て自分の大岡裁きが間違いであったと震える大岡越前であった
ちょwww名奉行www
大岡「娘よ…そちの助言通りにしたら、男の肩が外れてしまったぞ」
娘「あらまぁ…」
大岡「幸いにもそれで騒ぎが収まったから、善しとするか」
娘『うふふ…これであの泥棒猫どもは男様から嫌われるわ。でも、念には念を…』
娘「行って参ります」
大岡「おや?何処へ」
娘「うふふ…」
ヤンデレ時代劇ってあるのかね?
ここで言うのもなんだけど、お茶会の人何かあったのかな……。
一月以上更新されてなくて心配だ
>>688 サイトとかあるの?あるなら教えてほしいんだが
最終更新日8月29日か・・・
いろいろとリアルで忙しいのかもね
>>689 終わらないお茶会でググればすぐ出てくるよ
>>691 くだらない決めつけは自分の日記帳にでも書いてくださいね
695 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:16:40 ID:M8rQHOII
<`´>
ヤンデレxの献身 なんて電波が!
持てる技術をつぎ込み泥棒猫を消して、愛する教授に尽くす研究者が見えた。
「モンロー効果とノイマン効果を使って、メタルジェットを生成したら…」
「あの…陰茎しごきながら何言ってるの…」
「大佐、今……彼は父さんと言いましたか?」
「ああ、前の妻とは死別……」
「そんなことは聞いていません!」
ソーマはセルゲイの襟を掴み家の中へ放り投げると、ドアの鍵を閉めた。
その鬼気迫る表情に、歴戦の勇士であるセルゲイが気押されていた。
「……どうした?」
「大佐、いえセルゲイ。 私はあなたの養子になることを拒否します。」
「そうか、仕方ない。 だが、アロウズに参加する事は承伏しかねる。 ……どうもキナ臭い。」
ソーマはセルゲイの上に馬乗りになり、2回、3回と頬を叩いた。
(プレッシャー!? 私が押されている?)
「私はセルゲイを夫とし、あの男も殺す。」
「何故だ?」
「セルゲイは私だけのもの。 あなたの遺伝子も私だけのもの。」
セルゲイは上着を脱ぐソーマから、目を離すことが出来なかった。
おわり
スレ間違えた……すみません。
才能は買った
さあ早くヤンデレを書く作業に戻るんだ
早く00スレに行って続きを書く作業に戻るんだ
702 :
sage:2008/10/05(日) 23:37:36 ID:qYKAm+J2
アレルヤ涙目だね。
>>702 そのsageはわざとなのか?釣りなのか?
704 :
sage:2008/10/05(日) 23:45:13 ID:qYKAm+J2
酔っぱらいの不注意です。ごめんなさい。
釣られないクマAA略
706 :
sage:2008/10/05(日) 23:57:43 ID:qYKAm+J2
個人的にヤレルヤ・ハプティズムとソーマ・ピーリス(ヤンデレ)の掛け合いが見たいです。
たとえヤンデレだとしても二次創作モノは該当スレへGOだ、そうだろう?
708 :
sage:2008/10/06(月) 00:11:45 ID:j5zJnISE
失礼しました。ただ、今日はこのまま正座して裸ネクタイで待機させていただきます。
投下します。
第二十八話、まだ清算編です。
支援
支援
***
弟と妹が家を出て行って、三日が過ぎた。
それは、私の願った理想の家族のかたちが、現実で崩壊した証拠。
両親と私の追求と説得にも応じず、その日の夜に二人は姿を消した。
行き先は聞かされていない。
昨日も一昨日も電話の前で待っていたのに、二人からの連絡はない。
警察に捜索願を出したけど、まだ連絡はない。
ないない尽くし。
でも一番堪えるのは、二度と二人に会えないかも知れないという恐怖。
乱れた感情に任せて今まで口にしたことのない汚い言葉で罵った。
私だけ。家族の中で私だけが取り乱した。
だからもう、弟と妹は私には会ってくれないんじゃないか。声も聞かせてくれないんじゃないか。
それが怖くて、不安で、眠れない。
ごめんって謝って、冷静になってもう一度話をしたい。
でも私は、どうしたらいいの?
弟と妹がセックスしてしまった。二人は兄妹。私の弟と妹なのに。
二人の関係を認めるなんて、絶対にしたくない。
じゃあ、別れさせる?
それができたら一番だけど、そんなの、どうやればいいっていうのよ?
ふと、遠くで音が鳴った。
電話機の呼び出し音だ。
机の上に置いてずっと向かい合っていたのに、何メートルも離れたところで鳴っているようだった。
腕を持ち上げるのが面倒なぐらい疲れてる。
精一杯の元気な声で電話に出る。電話の相手はお父さんだった。
傘を持って迎えに来てくれ、と言ってた。
場所は近所の居酒屋。今日は一人で飲んでいたらしく、一緒に帰る人がいないらしい。
窓の向こう側は闇に包まれていた。空全体が暗幕で隠されているみたいに黒かった。
雨雲だ。分厚い雨雲が天を覆い隠し、無数の雨を地上に落としている。
また今日も夜になった。今日という日が終わる。明日がやって来る。
弟と妹から何の連絡もないまま、一日が過ぎてゆく。
無駄な一日。無いも同然の一日。
お願いだから帰ってきて、二人とも。
こんな、立ち上がるだけでふらふらしてるなんて、本当の私じゃない。
私は、あなたたちの頼れるお姉ちゃんだから、もっと強いんだから。
夜の闇の中でも迷わずたどり着ける、お父さんの行き付けの居酒屋。
今日みたいにお母さんが仕事で遅れる日なんかは、私がよく迎えに行っている。
でも、今日はいつもと違ってた。
お父さんがお店の外で待っていない。
いつもなら、未成年の私に気を遣ってお店の外で待っている。
迎えに来いと言っておいて待ちきれずに先に帰ることはないだろう。
とすると、お父さんはまだお店の中にいる。
居酒屋の扉を少し開けて、店内を覗き見る。
カウンター席に座り、突っ伏しているお父さんが見えた。
他のお客さんの姿は見えない。
居酒屋特有の雑多な声が聞こえない。雨の音の方がうるさいぐらい。
店内に足を踏み入れると、お客さんはお父さん以外居なかった。
その理由は、とっくにお店が閉店時間を迎えていたから。
今の時刻は十時を過ぎている。
それだったら、お父さんもお店をでなきゃいけないのに。
そう思ってお父さんに近づくと、目眩のしそうなお酒の匂いがした。寝息も聞こえてきた。
お父さんは私に電話した後で眠ってしまったらしい。
お勘定は済ませてもらったから連れて帰ってくれ、と店員さんに言われた。
お父さんの肩を強く揺り動かすと、とりあえず顔を上げてくれた。
手を握って強引に店の外へ連れて行く。
傘は二本持ってきているけど、この状態のお父さんじゃ傘を持つのは無理。まっすぐ歩くけるかも疑わしい。
仕方ない。肩を貸してお父さんを引っ張っていこう。
右手で傘を差し、お父さんを支えながら歩きだそうとしたところで、呟く声が聞こえた。
――冴子はいい子だなあ。
――頭もいいし、器量もいいし。子作りして本当に良かった。
――でも、下の二人はダメだ。
――俺の言うことを聞かないだけだったらまだしも、兄妹であんなことして。
そっか。お父さんがこんなになるまで飲んでたのは、二人のことで落ち込んでたからなんだ。
私と気持ちは同じね。現実逃避したくなるもの。
でも、二人のことを悪く言うのはやめてほしい。
体を重ねてるところを私が見るまで、二人とも何の問題もないいい子たちだったんだから。
――作らなきゃよかった。
……え? お父さん今、なんて?
変なこと言わないでよ。
もし二人が居なかったら、私はお姉ちゃんじゃなくなっちゃう。
――子供は冴子だけでよかった。あの二人を作ったのは失敗だ。
やめて。聞きたくない。
それ以上言わないで。あの二人を見捨てないで。
お父さんとお母さん、私、弟と妹。五人揃って家族なのよ。
否定しないで。私の拠り所を壊さないで。
――帰りたくないなら帰らなきゃいい。
――二人とも、勝手にしろ。
「――――馬鹿っ!」
我慢の限界だった。
傘を二本とも放す。お父さんの手を放す。一際大きな水音が立った。
私は一人で雨の中を進む。お父さんを放ったまま。
どうして、お父さんがそんなこと言うの?
お父さんは家族が大事じゃないの?
もしも私が悪いことしたら、そうやって見捨てるの?
お父さんは――――そんな人じゃない。
雨に降られて反省すればいいんだわ。
自分が悪いって気付くまで、家に帰ってこないでよね。
その時の私はそう思ってた。心の底から、混じりっけなしに。
お父さん、私はいい子なんかじゃないんです。
あなたが帰ってこなければいいと考えました。
全てはそれが原因です。
あなたが、その日を境に家に帰ってこなくなってしまったのは、私のせいなんです。
***
「あ……もしかして、ジミー?」
「……人違いです」
「嘘つくな! その腕は間違いなくジミーだよ!」
「人違い…………だったら、嬉しいのに」
現実は厳しい。あまり出会いたくない人間に限って、思いがけない出会いを果たしてしまう。
場所は自宅から最も近い、行きつけのおもちゃ屋のプラモデルコーナー。
小学生ぐらいの子たちの姿はほとんど見られないここで、珍しく小さい女の子がいるなと思って見ていたら、
俺の視線に反応したのかその子が振り向いた。
で、数秒の間を置いてから言われたのが先ほどの台詞だ。
地味な容姿をしているからジミーなどという短絡的な名前で俺を呼ぶのは一人しかいない。
俺の…………血縁にあたる少女、玲子ちゃん(九つ)だ。
ここのつってひらがなで書くとココナッツみたいだ――が、それはどうでもいい。
俺と玲子ちゃんは異母兄妹だ。
しかし父の妻になった人間は今のところ母一人だ。後にも先にも誰も居ない。
よって玲子ちゃんは父の不義の結果生まれた子供ということになる――のだが、
父と母は兄妹なのだから、俺だって不義の子にあたる。人のことは言えない。
またしてもとんでもない話であるが、玲子ちゃんを産んだ母親は父の姉だ。
身内で姉妹丼。しまいどんまん。
真相を知ってから何度も思ったが……なんてことをしでかしてんだあの男は。
「ほら、やっぱりジミーじゃん。ごまかそうたってそうはいかないよ。
そのあふれ出るしょーげききょーがく、しょーが……しょ、しょしょ、しょーがく的な地味地味オーラでバレバレだよ!」
「小学的か。だったらしょうがないな」
「そう。ジミーがいくらごまかそうったって無駄なんだよ」
噛み噛み玲子ちゃん。小学的ってなにさ。
話が展開しないからあえて受け流すけどさ。
「玲子ちゃんは何をやってるの、こんなところに一人で。
伯母……お母さんは一緒じゃないのか?」
「んー、最近お母さん調子がよくないから病院に来ちゃいけないって言うの。
ボクが来ても窓の外ばっかり見てて、あんまり話してくれないし。なんだかつまんない」
「ふうん。そういうことは前からあった?」
「んーん。最近の、ちょうどジミーに会った日からあんな感じ。
どうしちゃったんだろ、お母さん」
俺に会った日から、ね。
伯母の顔を確認した途端に俺は逃げるように立ち去ってしまったから、逆に印象づけてしまったのかもしれん。
伯母には過去のことを忘れたままでいてもらいたいのに。
思い出してもらいたくない。良いことなんか一つもない。
今更謝られても困るし、また昔みたいに絡まれたくもない。
十年ぐらい前――たぶん今の玲子ちゃんよりも幼い頃の俺と、今の俺。
一番の違いが見られるのはまず目つきだろう。
昔は目がでかかったがあの頃より少し細くなった。はっきり言えば目つきが悪くなった。
眼鏡をかけるほどじゃないが、視力が下がっているからな。
それ以外にも細々と変化しているから、おそらく俺だとは気付くまい。
本当は伯母と玲子ちゃんの親子とは二度と会うつもりはなかった。
そうすれば過去のことをなげっぱなしにしていられるから。
ここで玲子ちゃんに会ったのは、知り合いと偶然街で顔を合わせた程度のことだ。
これ以上一緒に居たらずるずると話し込んでしまう。
この子、反応がいちいち俺好みだったりするから困る。
「じゃあ玲子ちゃん、俺はこのへんで」
「もしかして、ジミーがボクのお父さんになっちゃったりするのかな」
「……………………わけがわからない」
この気分は、えーと、あれだ。
かなり前の話になるが、弟と折半して買った、キャラが喋りまくるのが面白い新作アクションRPGを交互にやっていたら、
なんでか知らないが、いつのまにかヒロインが無口な女の子になっていたときの気分だ。
真相は、単に弟が俺のセーブデータを自分のものと勘違いしてプレイしていった結果だったりする。
それぐらい置いてきぼりにされた気分。
弟には仕返しとして間違った数学の知識を仕込んでやったが、このケースではどうするべきだろう。
ふうむ。とりあえず玲子ちゃんの口にガムテープでも貼って無口な少女にしてやるか。
「いや、場所を考えるならむしろマスキングテープか? あっちの方がいろいろ自由が効くし……」
「なにぶつぶつ言ってんの? ただのジョークなのに取り乱して。
そんなにうれしいの? ボクのお母さんと結婚するのが。
もしかしてジミー……年下より年上が好きだった?」
「ツッコミどころが三つある。
まず俺は年下が好きなわけじゃない。そして、年上が好きなわけでもない。
それに何より、俺が君のお母さんと結婚するわけがないだろ!」
「あれ、そうなの? ボクのクマさんパンツはじっくり見たくせに」
「ふん、白とグレーのストライプだっただろうが。嘘を吐くな、嘘を」
「あれ? ジミーと初めて会った日ってアレはいてた?
よく覚えてるね。や、やっぱりジミーはボクぐらいの子が、す……好きなんだ」
「! …………ファッキン俺!」
小学生のパンツごときに不覚をとるとは!
違う、俺は小学生の下着が好きな訳じゃない。
たとえばほら、葉月さんのだって思い出せ…………あれ、思い出せない?
いや、人命救助が目的とはいえマウストゥマウスされたこともある。
マッサージされたことも、押し倒されたこともある。
一度ぐらい葉月さんの下着を拝んだことがあるはず。
――――ちくしょう、弟の洗濯物に混じった妹の下着しか思い出せん。
見たことねえよ、葉月さんのは。
「ジミーのロリコン」
「違う!」
「もしくは女の子のパンツを思い出すことに必死なヘンタイさん」
「変態じゃない!」
「……仮にヘンタイだとしても」
「変態という名の――――変態じゃない! 断固たる否定の意志!」
玲子ちゃんが舌打ちをした。隠そうともしていない。
危なかった。乗ってしまうところだった。
どうなってるんだ最近の小学生は。
テレビか、DVDか、それともネットか?
インフラが整いすぎてる。世代の格差を感じるぞ。
「じゃ、ジミーは年上好きかあ。
でもさ、十七才のジミーとボクのお母さんとじゃ差があり過ぎじゃない?」
「その通りだ。玲子ちゃんだってそう思うだろう。だから俺は違うんだって。
というか、いつのまに俺が君のお母さんを好きだっていう設定ができたんだ」
「年下が好きなわけじゃないっていうから年上好きなのかな、って」
「なんでその二者択一になる。俺は相手の年齢で好きになったり嫌いになったりしないよ」
「じゃあ、どんな人が好きなの?」
「……嫌いなタイプならいる。
相手のことを好きでもないのに好きと言う人。そういう人とは絶対にダメだ。受け付けない」
中学時代に俺を浮かれさせた後にどん底まで落ち込ませた女のことだ。
たぶん、あの経験があったから、中途半端な気持ちで葉月さんと付き合えないと思ったのだ。
「じゃあ、ジミーは相手が嘘つきじゃなければ付き合えるの?」
「まあ、そういうことかな……」
「じゃあ、ボクのお母さんでもいいんだ」
「いいや、それは無い」
さすがにまずいだろう。さすがっていうか……絶対。
だって、玲子ちゃんの母親は俺の母の姉だぜ?
相手が自分の母親より年上。俺から見たら伯母。小学三年生の子持ち。ちなみに子供は腹違いの妹。
どれをとってもありえない。
そんな相手と付き合う胆力は俺には無い。
……それに、昔の件だってある。
俺にとって、伯母は最も会いたくない類の人間だ。
「そもそも、なんで俺が玲子ちゃんのお父さんになるのか説明してくれない?」
「だって、お母さんジミーと会った日から窓の外ばっかり見てるんだよ?
他にも、ときどき屋上に行ってため息ついたりしてる。病院のご飯も全部食べないし。
学校の先生に聞いたら教えてくれたもん。それはきっと恋をしているのよ、って」
「……いい先生だね。きっと先生は本気でそう思ってるよ」
相手が高校二年生と知れば違う答えを返すだろうけど。
真実はどうなんだろう。
伯母は何を考えている?
もしかして昔のことを思い出したとか? もしくは、思い出しつつある?
これが俺の杞憂だったらいいんだが。
ジミーに支援
「ジミーはこのお店、よく来るの?」
「時々ね。趣味でプラモデル作るから。ここは家から一番近いしね」
「そうなんだ。へー……一日にいくつぐらい作れるの?」
「んー……中身確認して、中性洗剤で洗って乾かして、メッキパーツはメッキ落として、
仮組み、それからサフ吹いて……」
「カリグミ? サフってなあに?」
「あ」
そうか。玲子ちゃんぐらいの年だとそんなことしないのか。
接着剤不要のやつなら仮組みしない。
ランナーから切り取って組み立てるだけでサマになる。
つや消しスプレー吹くだけで終わらした方がいいキットとかあるもんな。
うーん、スケールモデルじゃまず味わえない楽ちんさだ。
俺みたいなやつは、あえて部品精度の悪いキットを買って、いかに自分流に作り上げるかにこだわったりする。
小学生っていったら組み上げたロボットを早く見たいから、ちゃっちゃと作る。
俺も昔はそうだった。
「ジミー?」
「あ、ごめん。えーとね、俺がよく作るのは……そう、とにかくでっかいんだ」
「でっかいの? どれぐらい?」
「バラバラなのに部屋がごちゃごちゃになるぐらい」
これは嘘じゃない。とにかくでっかいは嘘だが。
パーツの自作しつつ片手間に筆塗りしてエアブラシも使えば寝るスペースすら無くなる。
部屋が広くないのも原因の一つ。加えて色々物が多いんだ、俺の部屋は。
だがこう言えば、玲子ちゃんぐらいの子供なら。
「すっごーい! ジミーそんなおっきいの作るの?! もしかして高校生じゃなくて仕事人?」
「仕事人……? ああ、仕事じゃないよ。ただの趣味。
そんなわけだから、一つ作るのには……早くて一ヶ月ってところかな」
「……すごいや。どんな人にでもとりえはあるって先生が言ってたけど、本当だったんだ。
まさかボクがジミーに感心する日がくるなんて」
なんだか、玲子ちゃんが今初めて俺を年上として見てくれた気がする。
おかしい。これまでも年上の世界を見せてきたはずなのに。
なぜ俺の言葉には感心せず、脚色したプラモデル作りの話に感心するんだ。
やっぱり、子供は自分でも理解できるものに興味を引かれるのか。
「玲子ちゃんはここに一人で来たの? 家が近所なのか?」
「ううん。友達のお姉ちゃんといっしょ。
ドライブに誘ってくれたから、ついていったの。
今はちょっときゅうけい中。ボクの住んでる家、ちょっと離れてるんだ。
ジミーも来る? ボクの家」
「それは丁重にお断りする」
「むう。なんでさ。ジミー付き合い悪い」
それはもちろん、玲子ちゃんとこれ以上絡みたくないからだ。
傷つくから言わないけど。
このままずるずると話していたら、玲子ちゃんの家に遊びに行くことになってしまう。
早めにこちらの意志を示しておくのが正解だ。
「ちぇ。お姉ちゃんとジミー話し合いそうなのに」
「そりゃまた、なんで?」
「だってこのお店、お姉ちゃんも使ってるって言ってたもん。
ちょうどペーパーとえめらるどのよーざい? が切れてるから寄っていくとかなんとか」
「……それは、耐水ペーパーとエナメルの溶剤じゃないのか」
「あー、そうだったかも。時々お姉ちゃんよくわかんないこと言うんだ。
ジミーぐらいの仕事人ならやっぱりわかるんだね」
「まあ、ね……」
なんだ、この高揚感は。
初めて趣味の合いそうな人間に会えるからか?
……なんか、すっごく語り合いたい気分になってきた。
「どうする? お姉ちゃん呼んでこよっか?」
「あ、うん。いや、やっぱり女の人だから……でもやっぱり会いたいかも……」
「わかった。じゃあすぐに連れてくるからここで待ってて!」
「え、ちょっと! まだ心の準備が!」
玲子ちゃんが俺の静止を聞くはずもない。
小走りで外へと向かっていった。
いったい玲子ちゃんの友達のお姉ちゃんとはどんな人だろう。
どんな人というか、どれぐらいのレベルの人なんだろう。
耐水ペーパーを使うってことは、下地づくりや鏡面塗装をやってそう。
エナメルの溶剤は筆洗いや色を薄める時使う。エナメルで塗りをしてる証拠だ。
「何派だろう。カーモデルか、ミリタリーか、艦船か」
「私の好みはスーパーロボットだ」
「ちなみに俺はどれでもイケる」
「ただし、原作を知っているものに限る」
「ああ、知ってるのと知らないのとじゃ完成イメージが違うもんな……」
…………ん?
いつのまにか、右側に知らない女の人が立っていた。一歩分距離をとっている。
プラモデルの箱の詰め込まれた棚の最上段にある、パッケージイラストが人型兵器の馬鹿でかい箱を仰ぎ見ている。
話しかけてきたのはこの人か。
俺にとってのオアシスであるここに現れる女性はこの人が初めてだ。
……ふうむ。なるほど。
なら、試してみるか。
「あれって、子供にはまだ早いってことを暗に示してるんだと思う?」
「いや、特別なものだという認識を与えるためにあの位置に置いているんじゃないか。
私が玲子ぐらいの背丈しかなかった頃は棚の上にある箱に憧れた。
親に頼み続けて、クリスマスになってようやく買ってもらえたよ」
「俺も。張り切ってラッカー塗料買って部屋で塗りたくってたら母親がヒステリー起こした」
「私はでかくて高いからって、物の出来が良いわけじゃないということを思い知らされたよ。
光の翼は再現できないわ、上半身と下半身のバランスが微妙だわ。分離機構はまあまあだったけど」
「だけど、今ならパテられる。あの時とは違う」
「まだ私は盛りつけなんだ……それに、いつまで経っても怖くて」
「誰だってそうだよ。俺がスクラッチして傷つけて、ダメにした奴らはたくさんいる。
型取りしても上手くいかなくて、つい積んでしまう」
「そうか。じゃあ、私と君は似たもの同士だな。
君と一緒なら複製できそうだ。今度一緒に取らないか?」
「いいのか、そんなこと言って。
俺はファーストの太腿でもバリをつくっちまうんだぜ」
「それでもいい。まだ私には二つしか得意なものがない……ヒートプレスとバキュームだ」
「あれができるのか。俺なんかまだ絞れない」
「なら私がコツを教えよう。ただし、冬ならいいが、夏はダメだぞ。
熱く、なりすぎてしまうからな……ふふふ。それもまたよし、かな」
そう言って彼女は手を伸ばす。四箇所しか可動しない白い奴のキットに。
俺は彼女の求める、四百から千番の耐水ペーパーセットとエナメルの溶剤を手に取る。
そして俺たちは視線を交わす。
ただそれだけで、俺たちの思いは一つになった。
「……あなたはどちら様?」
「……君は誰だ?」
まあ、お互いに相手の素性に見当が付いているのだが、確認はせねばなるまい。
「あなたが、玲子ちゃんのお姉さん?」
「そうだ。実の姉じゃないぞ。マンションの同じ階に住んでいるだけだ。
で、君は? 玲子の知り合いみたいだが」
「あー、俺は……あなたと似たようなもんです。
この間右腕をやってしまって入院した時にたまたま知り合ったんです」
「ということは、君が例のジミー君か」
「いえ、俺の本名はジミーじゃなくって」
「君と玲子が話しているところをこっそり聞いていた。
玲子が君のことをジミーと呼んでいるのなら、私もそう呼ばざるを得ない」
「……そうですか、じゃあそれでいいです」
どいつもこいつも俺を本名で呼んでくれない。
兄さんとかお兄さんとか兄貴とか先輩とかジミーとか、代名詞ばっかりだ。
名前だってちゃんとあるんだぞ。呼ばれないだけだ。
でも代名詞だけで会話が成り立ってる以上、現状は変わらないんだろうなあ。
「ところで、ジミー君はどうして敬語で話しかけている?」
「え、なんとなくですけど」
「君は十七だったな。私の方が年上になるが……敬語はやめてくれ。
せっかく趣味の合う人間に会えたんだ。敬語は抜きで頼む」
「ああ、わかった。そうする。
それで、俺はあんたのことをなんて呼べばいい?」
「…………まあ、ジミー君は害が無さそうだから教えてもいいか。
藍川京子だ。好きなように呼んでくれ。オススメは京子ちゃんだ」
「じゃ、藍川で」
「京子ちゃんは駄目か?」
「いや、なんか知っている人と混同しそうだからやめとく」
「なら仕方ないな。だが、いつでも呼び方を変えたかったら変えてくれて構わないぞ」
「そうするよ、藍川」
年上にちゃん付けはどうしても違和感がある。
なにより、澄子ちゃんと名前が似てる。
澄子ちゃんと目の前の藍川とじゃ、容姿は似ても似つかないが。
澄子ちゃんが赤ずきんを被った少女だとすれば、藍川は魔法使いに会う前のシンデレラ、もしくはマッチ売りの少女。
背丈は俺と同じぐらいなのに体が細い。そのせいで、幸薄そうに見える。
でも、澄子ちゃんは見た目が愛らしくても中身は狼だった。
というか、俺の周りの女はみんな何かしら変なところがある。
藍川も見た目通りの女とは限らないから注意が必要かもしれない。
藍川が買い物を済ませた後で店を出る。
出た途端、入り口近くの壁にもたれながらジュースを飲む玲子ちゃんと会った。
「探す手間が省けた。二人ともここで待っててくれ。すぐに車を回す」
そう言って立ち去る藍川。
藍川が居なくなると、玲子ちゃんは俺の顔を見て笑った。
小学生は何か企んでいそうな笑顔を浮かべても似合うからいい。
これが中学二年、早ければ中学に上がった途端に変貌する。
余計な知恵をつけているから要らないことまで考えるようになるのだ。
小学生の考えることは楽に読める。素晴らしきかな純真な心。
「楽しかった? ジミー」
「楽しいか楽しくないかで言えば、楽しかったよ」
「うそばっかり。すっごい楽しそうだったよ。
言ってることは全然わからなかったけど」
「そう? あれぐらい普通……じゃないか」
普通の人は安物のプラモの関節を十個増やしたりなんかしないもんな。
「お姉ちゃん、今は恋人いないんだって。男の人と話すのが苦手って言ってた」
「そうなの? そんな風には見えなかったけど」
「うん、きっとあれだね。お姉ちゃんはジミーにほれちゃったんだよ。間違いない!」
「ふ、若いな。玲子ちゃん」
「む。その言い方何? たしかにボクはジミーより小さいけど、せいしんねんれいは同じぐらいなんだからね」
ああ、この子の頭の中は順調に成長しているなあ。
児童だけに許される無自覚の痛々しさがある。
自分より年上の人間と対等に渡り合えると本気で思っている。
父親が不在、母親が入院中という家庭環境に置かれながらよくぞここまで育ってくれた。
きっと、良識のある大人やいい友達に恵まれているんだろう。
「男と女の間にも友情は成立するんだよ。
それが趣味を通じてのものだったら、なおさら繋がりは強くなる」
「ふうん、そういうものなんだ」
「初めて出会えた、俺が専門用語をわかりやすく言い換えなくても会話できる相手に。
右腕が動かないのが惜しくてならないよ」
「そんなこと言って、お姉ちゃんのことを好きになっちゃっても知らないよ。
ラブストーリーは突然に始まるんだからね」
「……玲子ちゃんがどこから古い知識を仕入れているのか、時々俺は疑問に思う。
でも、その通りだろうね。
他人や何かを好きになるきっかけなんて、ちょっとした思いつきや何気ない言動によるものがほとんどだから」
「じゃあ、ジミーはきっかけさえあればお姉ちゃんやボクやお母さんのことを好きになるんだ」
「何気なくありえない選択肢を混ぜてくるところが憎いなこんちくしょう。
……でも、否定はしないよ。これから先のことは俺にも読めないからね」
玲子ちゃんや伯母を恋愛の対象として見ることは絶対にないけど。
他の女性陣だったらどうか。
妹という選択肢は無い。今朝はどこに出かけるのか細かく聞かれたけど、それ以外はいつも通りだった。
あんな素っ気ない女は、仮に妹じゃなかったとしても好きにならない。
澄子ちゃんは、無い。あの子は弟に惚れてるから。
俺と弟と澄子ちゃんで三角関係? あまりにも俺が惨め過ぎる。
同じ理由で花火も無い。あいつ自身は嫌いじゃない。
だけどあいつには負い目があるから、そもそも好きになれないだろう。
篤子女史、却下。理由は高橋も絡んでくるから。
残るは一人。葉月さん。
でも彼女を振った俺が、今更好きと言うなんて。
だから、俺は彼女に――――
唐突に、思考を遮る携帯電話の着信音が鳴った。
「鳴ってるよ、ジミー」
「わかってるよ」
着信音の特撮ヒーローのオープニングテーマに反応してくれないことに一抹の寂しさを覚えつつ、
携帯電話のディスプレイを見る。
噂をすれば影が差す。噂ではなく黙考だが。
葉月さんが電話をかけてきた。
このタイミングでかけてきたことも驚きだが、葉月さんが電話してくることも驚きだ。
連絡は専らメールで取り合っていたからだ。
一応、何を言われても受け入れられるよう覚悟して、通話ボタンを押す。
「もしもし、葉月さん?」
「うん。私」
「何かあった? 電話してくるなんて」
「……どうして? 私が電話しちゃダメなの?」
「そういう意味じゃないよ。ただ珍しいなって思って」
「そう、かな? じゃあ……そう思わないように、今日からしょっちゅう電話かけようか?」
「ごめんなさい。勘弁してください」
着信履歴が葉月さんだらけ。軽く話しかけてくるぐらいの頻度でかかってきている。
さすがにそれはやめていただきたい。
とはいえ、現状で着信履歴とメールの送り主は葉月さんがほとんどだからちょっとしか変わってない。
俺の友人は顔を合わせた時しかコミュニケーションしてこないのだ。
「ねえ、あなたは今どこにいるの?」
「家から出てるよ。一人で買い物してる途中」
「……嘘、一つ。
じゃあ、今誰かと一緒にいる?」
「ああ、たまたま知り合いに会ったから」
「知り合い? 友達じゃなくって?」
「あー、友達って言っていいのかな、一応」
「……どう見たって友達以上じゃない。嘘、二つ」
さっきから葉月さんがぼそぼそ言ってるみたいだが、聞き取れない。
何か数えてるのか?
「あなた、私の名前知ってるよね? 忘れてないよね?」
「そりゃもちろん。忘れるはずがない」
携帯電話に『葉月さん』で登録しているのはなんとなくだ。
俺は相手をフルネームでなく呼び名で登録するタイプなのだ。
「じゃあ、好きなように私を呼んで? オススメは……葉月ちゃんだよ」
どっかで聞いた台詞だな。ちょうど数分ぐらい前に。
しかし『葉月ちゃん』は、どうだろう。
年下ならともかく、葉月さんにちゃん付けはできない。
葉月さんは同級生の女子と比べたら年上に見えるぐらいだ。
「……うん、やっぱり葉月さんのままがいいな。そっちの方がイメージに合ってる」
他意は無い。俺は本当にそう思ったのだ。
「何よそれ! どういう意味なの!」
だから、鼓膜を突き破らんばかりの怒鳴り声が聞こえてきたときは、訳が分からなかった。
キンキンする。耳の穴から針を差し込まれたみたいだった。
電話機の声と肉声がステレオで聞こえてきた錯覚までする。
混乱と鼓膜の痛みで頭が回らない。
「いや、どういう意味って、そのまんまの意味なのに」
「嘘三つ! どうして嘘ばっかり! 仏の顔も三度までよ!」
「なんでそんなに怒ってるのか俺にはわからないよ。俺、何か悪いことした?」
「無自覚!? ど、どどど、どこまで鈍いのよあなたはあああっ!」
もはや葉月さんはヒステリック。
耳を塞ぎたいぐらいの声量で叫んでくる。
「そこはオススメとは別で呼ぶところでしょう?
なんでいつも通りなのよ! 変えて欲しいって言ってるのがわからないの!?」
「……葉月さん、好きなように呼んでって言ったじゃないか」
「私のせいにするの?! ちょっとは気を利かせてくれてもいいでしょ!
忘れてるみたいだから教えてあげる! たった今から私をこう呼んで!
いいえ、呼びなさい! 呼ばないと実力行使に出るわよ!
私の名前は、葉づ――――」
そこで唐突に音声が途切れた。
ディスプレイは表示されている。ツーツー、と音も出ている。
ということは、葉月さんが電話を切った? あのタイミングで?
弾みで電話を切ってしまうとは、葉月さんの興奮状態恐るべし。
「ジミー、今のだれ? 話全部聞こえてたよ」
「ああ、同じクラスの友達。今はね」
「女の人だよね。どうしてあんなに怒ってたの?
ジミーが何か悪いことしたんじゃない? たとえばパンツ見たとか」
「そういうのだったら納得いくんだけどね」
そういうのじゃなく、名前で呼んでくれないのが嫌で怒っているらしい。
ううむ。なぜあそこまで冷静さを失うのかがわからない。
「女心はフクザツだからね。ジミーには気配りが足りてないよ。女の子にはやさしくしなきゃ」
「簡単に言ってくれるね、まったく」
だから優しさって何なんだ。もうちょっと直接的に、わかりやすく言い換えてほしい。
何かして欲しいとか、こう言う時はこうするようにって前もって言っておくとか。
以前、妹が中学に上がった頃に口論になったことがある。
俺が妹より先に風呂に入った件について。
そんなこと考えなくてもわかるでしょ、と妹は言った。
対する俺の言い分はこう。今までそんなこと言わなかったくせに、だ。
その時は妹のすね蹴りで決着が着いたが、妹との関係にはしこりが残ってしまった。
こんな感じで女は突然心変わりするものだという認識がある。
以来、女に対して一歩引いて接するようになった俺を誰が責められようか。
俺は葉月さん以外の同じクラスの女子としばらく口を利いていないのだ。
sienn
「あ、お姉ちゃんの車。ジミーもお姉ちゃんに送ってもらうんでしょ。ほら、行くよ」
「ああ、はいはい」
対して、よく話す女性陣は一歩引いて接するとあっさり飲み込まれてしまうので油断ならない。
思いやりの心が介入する余地なし。そこまで頭が回らない。
しかし――いつか葉月さんは名前で呼んだ方がいいな。
またヒステリーを起こされても困る。実力行使に出る、って脅されたし。
やっぱり、ちゃん付けしないと怒られてしまうんだろうか。
それとも呼び捨てがいいのか?
……難易度高いなあ、もう。
投下終了です。
途中で専門用語が出てくるのは仕様です。
このスレの住人が「Nice Boat.」を書き込みに使うのと同じようなものだと思ってください。
乙!!しかし、弟と花火が空気になってきたな
素晴らしいGJ
GJ!
葉月さんいいよ葉月さん
そしてジミーは畜生道(ロリコン)に堕ちたか
GJ!
ここでまさかの玲子ちゃんと京子ちゃん登場ですか
GJ!
ジミーはいつもながら綱渡りだな。何回か落ちてる気もする。良く生きてるな。
GJ!
相変わらず面白い、そしてアニキに新たなフラグが!……何フラグなんだろう
735 :
sage:2008/10/06(月) 02:05:20 ID:j5zJnISE
GJ作者!!!
アニキ、フラグが立ったか?
ねえ
皆さん、ヤンデレ×ヤンデレってどう思う?
ジミー、遂に葉月さんを怒らせてしまったか…
それにしても葉月さんの病み具合かなり加速してきたな
>735
お互いにヤンデレだったら、という話題はもう何度も何度も何度も何度も何度も出ているので「またか」としか。
名前乱にsageって流行ってんの?
とりあえず葉月さんが抱えてるあの誤解をさっさと解くべきなんだがいつになるんだろうねぇ
例えば、急に身動きが取れなくなることがあるとする。
それを金縛りと呼ぶのは別段不動尊を信心せぬ私にも許されたことではあろうが、
その明白な原因があったならば、見えない明王の索などに思いを巡らすこともあるまい。
そしてその原因はと言えば横目にちらと見えるナイトテーブルの上の薔薇の一輪挿しや部屋の奥の金細工が麗麗しい大鏡でも、
背なに感じるシーツの柔らかさや天蓋から垂れる真紅の琥珀織の帳でも、ましてや仄かに漂う近東風の香水でもなく、
寝台の縁に腰掛けて紅玉の瞳で私を見つめる方にほかならない。
「お目覚めはいかがかしらぁ?愛しいひと」
薄い唇からの、甘い声が耳朶をくすぐる。
「どうしたの?まさかこうなってる理由が分からないのぉ?」
姉様が寝台に上がる。夜衣の裾が乱れ、あえかなふくらはぎが目に入った。目が会う。顔が近付き、姉様の銀髪が頬をくすぐる。呼気の薔薇の香りに軽い恍惚を覚える。
「そんなに情けない顔をして、ひょっとして分からないのかしら?お馬鹿さんは相変わらずねぇ」
切れ長の目が細められる。普段は月の光のように青白い姉様の肌には少し朱が差していた。言葉はなお続く。
「しょうがないから教えてあげるわぁ。あなたは私がいない間48回も他の女と口を利いて、6回も私以外のことを考えて自分を慰めたでしょう?
とっても悲しかったのよぉ」悔やんでいることを、引け目を感じる当人に責められるほど辛いことはない。
姉様の目にはうっすら涙さえ浮かんでいる。謝りたくても喋れすらしない状況が歯痒く、酷く自分を惨めに感じた。
「だから、今からその分のお仕置きと、二度とそんなことをしないようなちゃんとしたしつけをしてあげるわぁ。
これからは私と少し見つめあっただけで、身も心も切なくてたまらなくなって、可愛くおねだりしちゃうようにしてあげるぅ」
変な電波を受信して書いた。続くかもしれないがたぶん続かない
G・J!!
京子ちゃんかわいいよ京子ちゃん
所で葉月さんのフルネームってなんだっけ?
>>741 兄貴の通称がジミーの様に、葉月も葉月なんだよ
GJなんだぜ
ジミーはジミーだからな、変えようのない事実だなw
まったく……いろいろとフラグ立てが上手いなジミーはwww
京子ちゃんっていつ出てきたっけ?
葉月さんヤベェwまじヤベェww
第11話投下します。
あの日、私は父さんを殺した。だって、お兄ちゃんを傷つけようとしたんだもの。当然の報いよ。
そして、お兄ちゃんを奪おうとした雌猫……三神 光も。
見られちゃったのもあったけど、もともと始末するつもりだったし、手間が省けたわ。
でも、お兄ちゃんに見られたのは失敗だったかな?ううん、かえって好都合だったかもしれない。
だって、実の妹じゃ愛してくれないでしょう?
私はずっと、もしかしたら一緒に生まれたときから好きになってたのに、お兄ちゃんにとって私は、ただの妹に過ぎなかった。
だったら、私が光に……他人になれば愛してくれる。だから、私は"三神 光"になった。
お兄ちゃんには「晶は死んだ」とふきこんだ。
親戚も、ずっと会ってなかったから、私たちの顔なんか分かりやしない。私は、三神光だと言い張った。
結果、私はショックで記憶が混乱しているんだと思われた。でも晶だとはばれなかった。お兄ちゃんが否定したからだ。
それからは、本物の三神夫妻に引き取られ、三神 光として育った。
今思い返してみればよくうまくいったものだと思う。三神夫妻は、私が晶だと気づいていたみたいだけど、私が殺したとは思っていなかったみたい。
お兄ちゃんは、事件のことはきれいに忘れていた。妹は死に、父親は女と逃げたと都合よく思い込んでいたみたいね。
でも、ひとつだけ誤算があった。まさか光が…私の作ったキャラクターが一人歩きするなんて。
おかげで私は心の奥底で眠りにつかざるを得なかった。
それでも、光はよくやってくれた。お兄ちゃんと、私の体を使って愛し合ってくれた。
もうお兄ちゃんは私なしではいられない。だから、もう用済み。
綺麗さっぱり、今度こそ消してあげるわ、光。
「…ぁ……歩…僕は……僕が……」
そうよ、あなたがお兄ちゃんの大事なものを奪ったの。
「もう……僕は……君のそばには…いられない……」
ええ、そうね。あなたはもう要らないの。
だから、心置きなく、消えちゃってね?今までご苦労様。ふふ……あははははははははっ!
目が覚めると、光の姿がなかった。家中探してみたが、どこにも見当たらない。
「お客様のお掛けになった電話は、電波が…………」
携帯にも出ない。
おかしい。今までこんなことはなかった。近場に出かけるなら、電源を切る必要なんてない。何があったんだ?
俺はコートを羽織り、光を探すべく外に向かう。と同時に、電話で右京にも協力を仰ぐ。
「右京か!?光が…光がいなくなったんだ!」
「落ち着け佐橋!…とにかく、俺も探すから、一旦どこかで落ち合おう。」
「すまない!」
俺たちは、近所の喫茶店の前で落ち合った。こんな朝早くにすまないな、右京。
「佐橋!三神はいったい!?」
「……わからない。こんなこと、初めてなんだ。いつもは俺に声をかけてから出かけてた…。最近に至っては、ずっと俺から離れなかったくらいなのに………!」
「とにかく、探そう……!」
学校、礼ねぇさんの家、駅、コンビニ……とにかく心当たりがあるところはすべて回ったが、結局光は見つからなかった。
もう日が沈む。こんなに長い間離れてるなんて……嫌な予感がする。まさか、何かの事件に巻き込まれでもしたのか…?
いやだ、光…頼むから無事でいてくれ。
自分でもここまで取り乱すとは思わなかった。
今まで、光には俺が必要で、俺がいなきゃだめだと思ってた。だがそうじゃなかった。
本当は、俺の方だったんだ。あまりに光といる時間が幸せすぎて。
今まで生きてきた中で一番幸せで、気付かなかったんだ。
お前を失ってしまったら、俺はもう生きていけない。そこまで溺れていたんだ。
依存していたのは、むしろ俺だったんだ。
「頼む……光。帰ってきてくれ……」
そのとき、俺の脳裏にあるひとつの光景が浮かび上がる。
そこは、海岸だった。人気のない砂浜、その真ん中に光はいた。その手にはナイフが握られている。
それだけで充分だった。俺は、光の元へ向けて全力で走り出す。
「おい佐橋!どうしたってんだ!」
「わかったんだ!光の居所が!」
「――まさか、視えたのか?だとしたら…三神が危ない!」
「ああ!急ぐぞ!」
「待て、佐橋!」
「?」
すると、佐橋は携帯を取りだし、電話をかけた。
「姉さん?実は……そうか、ありがとう。…佐橋!そこの大通りまで!」
大通りに着いてから3分が経った。右京…一体何を?
「ここでどうするんだ!?」
「いいから!そろそろ来るはずだ。」
すると、一台のバイクが轟音をたてて近づいてきた。何やら、見覚えのあるシルエットだな……
「右京、お待たせ!」
……左京先輩?
「ありがとう、姉さん。佐橋、後ろに乗っていけ!」
「どういうことだ!?これは……」
「あとで話す!今はとにかく三神の所へ!」
確かに、今はそれどころじゃない。
「…すまない、恩にきる!」
「行きましょう、佐橋くん!光ちゃんはどこに!?」
「海にいます!たぶん、隣町の。」
「……少し遠いわね。飛ばすわよ。」
―――あっという間に右京が見えなくなった。メーターは………見ないでおこう。
先輩の話によると、バイクは趣味のひとつで、18になったらすぐ大型二輪の免許を取得するつもりだとか。
相変わらずぶっとんだ人だ。
そもそもそんな短期間で免許とれるっけ、とかは言わないことにした。
だって、左京先輩のおかげでこうして大分早く目的の場所に着くことができたんだから。
「行って、佐橋くん!」
「先輩、ありがとう!」
俺はバイクから降り、そして光のもとへ駆け出す。
この時はまだ気づかなかったんだ。いや、この期に及んでなお気づかないふりをしていたのかもしれない。
これが、全ての終わりの、破滅の始まりだということに。
第11話終了です。
続けて第12話投下します。
「光っ!!」
俺は光のもとに走る。が、返事はない。
今にも、ナイフで首を掻っ切ろうとしていた。
「やめろぉ!!」
間一髪、俺は光の手からナイフをはたき落とし、思いきり光を抱きしめる。
「このばかやろう!どうしてこんなことを!なんで…なんでだよ……お前まで俺を裏切るのかよ!
一生離れないんじゃなかったのかよ!俺は、もうお前なしじゃいられないんだよ……!
好きだ…お前が好きなんだ…!だから、いなくならないでくれよ………」
俺は、光への思いを隠さずぶちまけた。でも、光の反応は……
「あ……お兄ちゃん…?」
――――えっ?
「光、お前…何をいってるんだ?」
「ずっと、会いたかったんだよ…お兄ちゃん……」
「まて、光!なんの事だ!?俺はお前の兄なんかじゃ…」
「お兄ちゃん、あたしの事忘れたの?あたしは―――――あきらだよ?」
―――どういうことだ!?訳がわからない!どうしてここで晶の名が!?
晶は死んだんだ。それに、今しゃべっているのはどう見ても光だ。
……でも、光はこんな目をしない。いったいなんなんだ?
「――っ!この雌猫、また邪魔をして―――」
「…?」
「―――歩…?どうしてここに…?」
「光!光なのか!?」
いつもの光だ。間違いない。じゃあ、さっきのは……?
「……っ!だめだ、僕は……もう君とは一緒にいられない…。」
「どうして!?なんでそんなことを言うんだ!…俺が嫌いになったのか?」
「違う、君を嫌いになったりしないよ…。でもだめなんだ。全て思い出したんだ。歩…僕は……」
「何を…思い出したってんだ?」
「僕は…晶だったんだ。君の妹だったんだよ。」
―――なんの冗談だ?そんなばかなこと、あるわけが……まさか、さっきのは本当に……
「光…晶は死んでるんだぞ…そんなこと……」
「さっき見たよね……僕のなかに晶がいるんだ。いや…晶が僕を、三神 光という人格をつくったんだ。
そして、今まで眠ってた。だから、今まで知らなかったんだよ。」
「僕が…晶が自分の父親を殺し、そして、本物の三神 光を殺したことを……。」
…わからない。どういうことなんだ!?本物の光を殺したって…それに、父さんも……
本当なのか?本当に、光は…晶なのか?いや、そんなこと有り得ない!
だって、もしそうなら俺たちは……兄妹で………
「僕は…君を愛する資格なんてないんだ。ずっと君を騙してたんだ…。
きょうだいで愛し合うなんて、いけないことなんだよ……それに、僕は人を殺した…。だから、君とはいられない…………あっ…」
「……お兄ちゃん、だいすきだよ?」
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソダウソダウソダウソダウソダウソダ――――
「嘘だぁぁぁぁ!!ちがう!お前は光だ!晶なんかじゃない!…うそだっ…!うそだって…いってくれよぉ……!」
「…ごめんね……お兄ちゃん。これは真実なの。あたしは、晶。光は、もう一人のあたし。」
「なら、なんで…そんなことをした?俺は光じゃなきゃだめなんだ!俺が憎いのか!?だったら、最初から殺せよ!父さんみたいに俺を殺せばよかったじゃないか!」
「そんなことしないよ…。あたし、お兄ちゃんの事、愛してるから…。そしてお兄ちゃんはあたしを愛してくれた。」
「違うっ…!俺が愛したのは……光だ…!」
「同じだよ。光は、もう一人のあたし。光を愛するということは…あたしを愛するってことなの。
……もうあんな雌猫のことなんか、忘れなよ。そして、あたしと一緒に――――っ…」
「―――だめだ…歩。」
「――光?」
「僕は……」
そういって、光はナイフを拾う。
「え…………?」
そして、こう言った。
「あゆむ…さようなら。
ずっと、愛してるよ。」
「光!やめろぉ――――――!!」
第12話終了です。
>>751-752 タイトルを11話のままにしっぱなしでした。すみません。
GJ!!!
投下ラッシュktkrwww
GJ!
ジミーの人はほんと鈍感を書かせたらうまいなぁ・・・
このままジミー君には鈍感勘違い道を走る抜けてほしい!
「志村!うしろぉ――――――!!」
Gj
>>728 あの二人は空気でいいよ、もう。話の進行が遅れる。
>>744 死闘編にちょっと出てきたな。澄子ちゃんの友達だ。
昔、澄子ちゃんと同じ男に暴行を受けていたらしい。弟が自殺している。
>>758こらそこ!一々的確に答えるんじゃない!
そして12話投下乙です。かなり終盤にきたな…
葉月さんもジミーを名前で呼んでない件について。
>>759 勝手に終盤にしないでください
そういうの迷惑です
>>763 いや、あそこまでいくともう終わってしまうのかと思って…
>>761 書かれている部分がすべてではない
きっとかかれてない部分では一秒間に十回くらい言っているに違いない
何らかの拍子で光の人格が晶の中に入ってきたと予想してたが外れたぜ
主人公からして未来予知が使えるからそういった選択肢も有りだと…
カチカチ山ってもう投下ないのかなぁ。
続き気になってずっと待ってるんだが…。
第13話投下します。
いくつかあった最終話の構想の一つです。
ザクッ――――
「うそ…だろ…?おいっ、光!しっかりしろ!光っ!!」
「あ…あゆむ…ごめん……ね…?」
「光っ!待ってろ、今救急車を呼ぶから!」
「ごめん、ね……お兄ちゃん。」
「……晶?あきらっ!やめろ!光を…殺さないでくれ……!!」
―――救急車が通ります。道を開けてください。救急車が――――
「患者の血液型は!?」
血液型……光が晶なら、俺と同じはずだ。
「RHマイナスのA型です!俺と同じはずです!」
「よし…採血だ!すぐに確認を!」
血液型は、一致した。RHマイナスなんてそうそうある血液型じゃない。
これでほぼ証明されたわけだ。
光は、晶だった。
でもそんなことは今はいい。とにかく……助かってくれ。
病院に着いてすぐ、光は手術室に運ばれた。
「佐橋……きっと、三神は大丈夫だ。信じるんだ。」
「……すまない、右京。」
「ほら、飲め。」
右京は、コーヒーの缶を差し出した。でも…
「…悪い。吐き気がするんだ。今は飲めない。」
「そうか…。無理はするなよ。」
限界の、さらに限界まで血を抜いた俺の顔色は、きっと最悪だ。
看護師からもらったスポーツドリンクも、とうに吐いてしまった。
光が助かるなら、俺はなんでも差し出す。だから神様、どうか光を…つれていかないでくれ。
ガシャン!ウィィィ………ン
手術室の扉が開く。
「せんせいっ!!光は!」
頼む…頼むから…!
「手術は成功です。ただ、意識が戻るまでは、まだしばらく………」
そこまでで充分だった。
俺は安堵し……意識を手放した。
12時間後――――
目を覚ました俺は、光の病室に来ていた。
まだ光は、眠っていたが。
「光…どうしてだ…?何で死のうとした……?俺たちが兄妹だからか?俺は…それでも構わなかったんだ……
なあ…目を覚ませよ…いつもみたいに笑ってくれよ……」
俺は、光に優しくキスをし、部屋をあとにした。
それから4日間、俺は光の病室に通い続けていた。。
しかし、ただ眠り続ける光ともはや何も言う気力すらない俺しかいない部屋には、いつも外の雨音だけが響いていた。
一週間後、それは訪れた。
「………っ?」
「…光?目が覚めたのか!?」
「ん…おはよう。
お 兄 ち ゃ ん ? 」
―――背筋が凍りついた。
「……?おい光?なんの冗談だ…よせよ……。」
「ごめんね、お兄ちゃん。光は、もういないよ?」
「……うそだろ?」
「本当だよ。あんな雌猫、もう要らないもの。だから消しちゃった。」
「………!」
そんな…光が…消え…た……?
「だいじょうぶ。これからは私がいっぱい愛してあげるから…ね?あはははっ……」
バンッ!
たまらず、俺は病室を飛び出した。どこでもいい。どこか独りになれるところへ行きたかった。
だから俺は、その足で屋上に向かった。
それから、泣いた。ただひたすら、泣いた。胸から込み上げてくる悔しさと、喪失感と。
ありったけの殺意を抱いて。
………ふざけるな。その体は光のものだ。
その顔で微笑むな。
その声で喋りかけるな。
その手で触れるな。
それは、光のものだ。お前のものじゃない。お前が光のなかにいるなんて、絶対許さない。
だから―――
「光…待っててくれ。やることができたんだ…。終わったら、すぐに迎えに行くよ……」
俺は……晶を殺す。
ガラッ―――
「おかえり、お兄ちゃん。」
「…………あきら。」
「ふふっ…お兄ちゃん、大好きよ…。」
「………。」
「お兄ちゃんに抱かれたことを思い出すと…今でもどきどきするの……
私の大事なとこも、もうこんなにぐっしょりだよ?あ…退院までなんて待てないよ…はやくぅ…はやく抱いてよ…お兄ちゃん…」
「……ああ。」
俺は、丁寧に晶の服を脱がす。
唇からはじまり、徐々に全身を愛撫していく。
「あ、はっ…お兄ちゃん…きもちいいよ……はやく…きて……」
俺は、ただ黙って晶を貫く。
「あ…んっ!お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!もっとぉ!すき…!すきぃ…!だいすきぃぃ!」
「………っ!」
俺は、つい口からこぼれそうになった言葉をこらえた。
「あぁぁぁっ!もう、だめ!いくっ!いっちゃうぅっ!お兄ちゃあんっ!」
―――今だ。
「愛してるよ、光。」
そして俺は、光を死に追いやった銀色のナイフで、晶の心臓を貫く。
「っ…ふぁっ……私は…あき、らだよ……?」
俺は、止めを刺す。
「好きだ…光。」
ナイフを回し、肉をえぐる。ぐりゅっ、と生々しい音がした。
「…ふふっ……お兄ちゃんった、らぁ……仕方ない…んだから……あはっ………ああははははははははっ………くはっ……」
「…もう邪魔はさせない……晶、お前は独りで逝け。」
ドサッ―――
晶は、事切れた。
そして俺は、"光"の骸に口づけを落とす。
「今度こそ…永遠に愛し合おう……だいじょうぶ、もう独りになんかさせないさ。
俺が…ずーっとそばにいるよ。たとえ…地獄だろうと……。」
そして俺は、自らの体にナイフを突き刺す。刹那、視界が赤に染まった――――
俺は、死にゆくなかで一筋の光をみた。暖かく、優しいひかりを。
もう俺にはその光しかみえない。
でも、それだけで充分だ。
光―――愛してるよ。ずっと一緒だ。
―――True end―――
第13話A終了です。
いままでお付き合いくださってありがとうございます。
13話Bも完成したらいずれ投下したいと思います。
では、また。
>>763がうz
GJです。次はハッピーエンドか。また良作が終わっていくなぁ。
気が少々早いですが、できれば次回作も楽しみにしています。
>774
二人が可哀想です(´;ω;`)
でも一番病んでいた晶にも萌えてしまったw
初SSでしたっけ、乙でした
別ルートや次の作品も楽しみに待ってます
>>774 GJすぐる……
ちょっと涙でた
ハッピーエンドが来てくれる事をネガウゼ!
778 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:14:21 ID:eKypKMFZ
>>773 GJです
予知能力を以ってしても惨劇回避は出来なかったんだな・・・
ヤンデレと出会わず 血を見なくてメシがウマい
+ ____ +
+ /⌒ ⌒\ +
キタ━━━//・\ ./・\\━━━!!!!
+ /::::::⌒(__人__)⌒:::::\ +
| ┬ トェェェイ |
+ \│ `ー'´ / +
_|\∧∧∧MMMM∧∧∧/|_
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/ ─ / /_ ──┐ヽ| |ヽ ム ヒ | |
Χ ─ / / ̄ / / | ̄| ̄ 月 ヒ | |
ノ __ノ _ノ \ / | ノ \ ノ L_い o o
782 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 02:02:27 ID:qOdTjRqp
ヤンデレ家族と〜の作品の登場人物が混乱してきた
俺の6ビットの脳じゃ処理できない…誰かまとめてくれ…
他力本願でスマソ
暗記する位
毎日ぶっ通しで読むんだ
ジミー←両想い→葉月さん
これで完璧
13話B投下します。
歩、僕は君に愛される資格なんかないんだよ……。
でもね、君とひとときでもつながりあえて、幸せだった。
……できれば、知りたくなかったよ。でももう遅い。僕は三神 光じゃない。
晶なんだ。君の妹なんだよ。
だけど、約束して? 今度生まれ変わったら…ううん、何度生まれ変わっても、僕をみつけてくれるって。
何度生まれ変わっても僕を愛してくれるって。
約束だよ……?
ザクッ―――――――
「………どうして?」
「光……」
刃は、僕ではなく歩に突き刺さっていた。
「どうして!?僕は君とは愛し合えないんだよ!?だったら…もう生きてい
たくないんだよ…!?」
「…ばかやろう。そんなの、俺だって同じだ。……お前がいなきゃ、だめなんだ。
好きだ、光…。誰より……愛して…る…」
ドサッ
「あ……歩?………お兄ちゃん……?お兄ちゃんっ!いや、いやぁ―――――!!」
「光ちゃんっ!いったい…歩くん!?」
「あ…せんぱい…?歩が…あゆむがぁっ……おにいちゃんがぁ…」
「光ちゃん!気をしっかり!」
―――ここは…どこだ?
…とうさん?
そこにいるのは……光か?
『…っ……!!』
なんで母さんの名前を呼ぶんだ?俺は歩だ。
『く…はっ……』
―――お兄ちゃん、大丈夫?―――
光…?お前、いったい何を…
―――お兄ちゃんをいじめるやつも、お兄ちゃんをゆーわくするやつも、
みーんなころしたよ?だから、もうだいじょうぶ―――
ちがう…。お前は……晶…。
―――お兄ちゃん、聞こえる?
晶?どうしたんだ?
―――あたし、嬉しかったよ。光を通してだけど、お兄ちゃんに愛されて。
だから、もういいの。光を、もう一人の私を…いっぱい愛してあげてね?
まてっ…晶、あきらっ…
「――――っ!」
目を開けると、まず白い天井が視界に入った。そして………
「あゆ…む…?あゆむっ!気が付いたんだねっ!?」
「…光?俺は…」
「っ…よかった…よかったぁぁ…あぁぁぁぁん……」
光が、泣きながら俺を抱きしめる。俺は、そっと抱きかえす。
どうやら、助かったみたいだな、俺は。
「光…俺、全部思い出したんだ。」
「えっ…?」
俺は、思い出したことを全て話した。
あの日父さんが俺のなかに母さんを見て、俺を求めてきたこと。
それを見た晶が父さんを止めようとしたこと。
俺にいつか愛されるために、兄妹でなくなるために、晶が"本物の三神 光"を殺し、すり変わったことを。
そして、晶はもう"いない"ことを。
「うん…そうだね。もう僕のなかに晶はいない。でもいいのかな…。僕はしょせん偽物なのに……。」
「…そんなことは関係ない。光、お前はお前でしかない。
晶も、"本物の三神 光"も、お前にはなれないんだ。…俺は、そんなお前を愛してるよ。」
「………っ!だめだよ!僕は、君の妹なんだよ!?そんなの、だめだよ……!」
「…大丈夫だよ。お前は、俺がただひとり愛した女。三神 光だ。…それで、いいじゃないか。」
「…いいの!?本当に、それでいいの?」
「ああ、誰になんと言われようと構わない。俺は………
もうお前しか愛さない。」
1ヶ月後、俺はなんとか退院できるまでに回復していた。そして、今日がその日。
「…本当に、これでいいんだな?佐橋。」
「当たり前だ。……右京、感謝してるよ。」
「気にするな。これくらい、友人のためならなんてことない。」
「いや…なんてことあると思うが…」
右京は、今回の事件をうまく揉み消してくれた。
病院にも金を渡し、俺と光は"たまたま"同じ血液型だってことにしてくれたらしい。
ほんと、ミステリアスなやつだよ。ただの高校生じゃないだろ、お前。あえて言わないが。
「それに……お前の気持ちもよく分かるよ。俺も…いや、俺の方がひどいかな。知ってて好きになったんだから……。」
最初、右京に打ち明けられたときは本当に驚いた。いや、ぶっとんだ。
右京は、実の姉の左京先輩に惚れてたんだそうだ。ちなみに、まだ本人には打ち明けてないとか。
―――まあ、そう遠くない未来、二人は結ばれるだろうな。
「それを言うなら俺だってそうさ。……俺は、実の妹を捨てたんだから…。」
「でも、後悔してないんだよな?」
「ああ。後悔なんかしてたら、あっち逝ったときに晶にぶっ飛ばされるよ。」
ふと見ると、出入り口に見慣れた人影が一つ。
「お―――い!あ―ゆ―む―!」
「噂をすれば、だ。じゃあ、俺はこれで……。」
「ありがとう、右京。」
「ああ、退院、おめでとう。」
ガチャ キィィ……
「「ただいま。」」
ああ、懐かしの我が家。生きててよかった―――
「えいっ!!」
「ぐわっ!?」
ドサッ
「光!?いきなりなんだ!?」
「…はぁはぁ。歩…あゆむぅ…もう、がまん…できないよ……。
1ヶ月なんて…長すぎるよ……せつないよ……はや、くぅ…んっ…」
「――――っ!」
こいつ、すでにヤル気満々か!?
がちゃっ☆
「お前っ…また手錠…」
「ふふ…にがさないよ……あゆむ…」
「…逃げやしないよ。ほら、おいで…。」
がばっ
「あゆむっ!だ―――いすきっ!!」
ああ――――俺は、幸せ者だな。
もう、こいつにに病みつきだ。
愛してるよ、光。
―――Happy end――――
第13話B終了です。
次回作を作るとしたら2人を脇役に使おうとか思ってます。
今までありがとうございました。
リアルタイムだよ。乙です。完結しちゃったな遂に。
YOU次回作書いちゃいなYO
>>790 完結乙。読みやすくて良かったよ。
…ところで、次回作の予定はあるかい?
自演乙
自演だなんてそんなことじぇんじぇんないですよー
796 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 17:54:35 ID:C37XgdHT
擬音多すぎw
ほす
>>796 自分が知ってるたった一つの書き方をただ一つの正解だと思ってるから、いつまでたっても三流なんだ ってばっちゃが言ってた
こんな場所にいるにしては三流とは随分上等じゃないか
いわれたことしかできない人間を三流。
いわれたことを上手にできる人間で、ようやく二流。
>>790はいつになったら一流になるんだ?
自分の過去を誇りに思えるようになったら、さ。
>>790 GJ!
お幸せに!おしあわせにぃぃぃ!!
すばらしい作品をありがとう!
誤爆
あながち誤爆でもない
ってなりそうだなw
凄い誤爆だ
たぶん長編『ワイヤード』
投下します。
第一話『コントラクター・再会』
ある意味では予知夢というものだろうか。
鷹野 千歳(たかの ちとせ)は、何の超能力も持たない普通の高校生だったが、この夜、確実に彼の夢は過去と現在を、そして未来を繋いでいた。
「ねぇちーちゃん、ちーちゃんのゆめはなに?」
「おれのゆめか……まだ、ないなぁ。そういういっちゃんはどうなのさ」
「え〜。おしえてほしい?」
「いや、いいたくないならいい」
「ま、まってよぅ! いうからおいてかないで!」
「べつにおいていこうとしてるわけじゃない。いっちゃんがもったいぶるから、きかないほうがいいかとおもった」
「ぅ……ううん……。いいたくないわけじゃないよ。でも、ちーちゃんのこたえがこわかったの」
「おれがか? おれにかんけいすることなのか?」
「うん……。あたしね、あたしのゆめはね――」
――ちーちゃんの……に。ちーちゃんと一生……に。
それは、過去の記憶。幼い日々の記憶。夢になってよみがえっても、起きたらもう、消えているだろう。
そして、夢の情景は不定形になり、また別の過去を映し出した。
「うぐっ……ひっく……ちーちゃん……ちーちゃん……やだよあたし……」
「なくなよ、いっちゃん」
「だっでぇ……ちーちゃんとの……やぐそく……まもれな……」
「なにいってんだよ、いっちゃんらしくないぞ。ひっこしくらいなんだよ。そんなもんでやくそくはきえない」
「でも……ぐすっ……でも……りょうってところにいれられて……きびしくて……それに……とおすぎて……ちーちゃんにあえないよぅ……」
「とうきょうからきょうとにいくくらいでおおげさだよ。いつでもあえるよ、おなじせかいにいるんだから。おなじにほんだから、なおさらだ」
「ほんと……? また、あえるかな……」
「ああ、またあえる。やくそくってのはことばじゃない。こころがうみだすんだ。おれたちがわすれなければ、みらいのおれたちがきっと……」
「きっと……あえるんだよね……」
「ああ、しんじろよ。おれをしんじろ、おれはおまえをしんじる。だから……」
「あたしも、あたしをしんじるちーちゃんをしんじるよ!」
「お、おい! いきなりだきつくな!」
「やだね〜、ちーちゃんはぜったいはなさないってちかうよ! こうやってあたしがつかまえる! はなれても、きっとこころがつながる! だから!」
「だから……?」
「だから……そのときは、やくそくまもってね」
「……ああ。……やっと、えがおになったな。いっちゃんはそれがいいよ」
「うん……いままでありがとう、ちーちゃん……それと、さきにいっとくね。みらいのちーちゃんに……よろしくね」
そうして約束を交わした二人は別離した。十年以上たった今もまだ再会は一度も無い。
もはや、幼稚園の頃の記憶など千歳には遠い遠い、外国の事のように思われた。
時折、夢魔のように床に顔を出し、約束を歌う。それだけの虚構と化した。
それが、今まで。
そして、これからは……。
また、よろしくね。
ああ、よろしく。
……お兄ちゃん。
……お兄ちゃん?
目が覚めた。
「お兄ちゃん、ねぇ起きてよお兄ちゃん!」
「百歌(ももか)……なんで」
「なんでって、もう朝だよ。学校だよ?」
「ああ……そりゃあ、そうだな。すまん、すぐ起きる」
妹に起こされるなんて情けない兄だ。千歳は起きて早くも自己嫌悪した。まあ、そうはいっても朝弱いのはどうしようもない。諦めよう。
そう思って掛け布団を押しのけ、上体を起こした。
「お……お兄ちゃん……」
百歌が顔を赤くして後ずさる。顔を手で覆い隠しているが、指の間からある一点をバッチリ凝視している。
千歳も視線を追って見た。
「……」
そこには、『男の生理現象』が猛々しくそびえ立っていた。
「も……百歌。これはな……」
「お兄ちゃん……」
「なんだよ」
「『いっちゃん』って、誰?」
「いきなり何を……」
「いいから答えて!」
百歌は今までに無い剣幕で千歳を睨みつけ、怒鳴った。
兄である千歳も知らない。こんなことは初めてだった。
「いや、まてよ。なんのことやらさっぱり」
「そう……お兄ちゃん寝言で『いっちゃん』って言ってたんだよ。覚えてないの?」
「寝言……?」
千歳には、寝言の自覚は勿論、夢の内容の記憶すらない。答えようがない。
が、妹の激しい追求は続いた。
「いっちゃんって、誰?」
「だから、わからないって……がっ!?」
激痛が走る。
「百歌……! やめっ……」
千歳が兄の股間を掴み、凄まじい力で圧迫していた。
「じゃあなんでこんなにおっきくしてるの……? いっちゃんって人のこと考えてたんじゃないの……?」
「う……が……」
「ねぇ、べつにその女が誰だっていいけど、隠し事はいやだよ、お兄ちゃん! お兄ちゃん! 私たち兄妹だもん、嘘ついたらだめでしょ、お兄ちゃん!!」
「やめっ……ろぉ!!」
痛みが限界に近くなったところで、やっと身体が動いた。百歌の軽い身体は簡単に吹っ飛ぶ。
「はぁ……はぁ……百歌、お前一体……」
「ごめんね、お兄ちゃん……いたかった?」
急に普段通りの大人しい態度に戻った百歌は、優しい手つきでさっきまで握りつぶすつもりだっただろう股間のモノを、優しく撫でた。
千歳の身体が若干震えた。
「(妹にさわられてこんな……やばい)」
できるだけ乱暴にしないように気を付けながら、百歌の手を掴み、やめさせた。
これ以上触られたらいけない、そんな予感がした。
「お兄ちゃん、いいの……? いたくない?」
「いや、いたいけど」
「手はだめ……? じゃあ舌で、舌で舐めたら痛くなくなるかな……」
「いや、それはもっとだめだ。ってか、痛かっただけで傷なんてないんだからそんな心配しなくていい」
「うん……ごめんね……」
「ああ、わかったら、さっさと下に行っててくれ。着替えるから」
「うん。あさご飯用意するね」
百歌が出て行ったのを見送ったあと、千歳は服を抜いた。
股間のフレンドも確認する。傷付いてはいなかったが、締め上げられて赤くなっていた。
「いてぇ……こんな状態でなんかにぶつけたら……いや、考えないほうがいいな」
それにしても……。千歳は考える。
それにしても、妹のあんなに起こった姿は珍しい。いや、始めてかも知れない。温厚で従順で優しいあの百歌が。
寝言で女の名前をいっただけで。
「いやまて。女なのか、そもそも『いっちゃん』って……」
なんだか、こころあたりがあるような、ないような。そんな微妙な状態。
「ま、いいか」
百歌ももう元通りなんだし、夢は夢ででたらめってこともある。そう千歳は見切りをつけ、制服に着替えた。
「お兄ちゃん、はいお弁当」
「ああ。ありがとな」
「お兄ちゃん、さっきは……」
「もういいって。怒ってないし、もういたくなくなった」
「うん、ごめんね……男のひとが朝ああなるって、しってたのに……ちょっと混乱しちゃって」
弁当を受け取り、妹とともに家をでた。まだ七時過ぎ。学校の近さとそぐわない早さだ。
「今日も、ナギちゃんの所にいくの?」
「ああ、お前は?」
「……今日は、いいや」
そういうと、百歌は自分の中学の方向に走っていった。
千歳は方向を変える。高校へではない。幼なじみの、ナギの家にである。
「あら、千歳くん。今日はちょっと遅かったのね」
ナギの母、頼(より)さんが出迎えてくれた。あいも変わらずの爽やか美人である。
「今日はちょっと……妹と一悶着ありまして」
「あら大変。百歌ちゃんとケンカしちゃったの? いつも仲が良いのに」
「いえ、もう大丈夫なんで」
「そう……なら、いいのだけど」
「で、今日はナギ、起きてます?」
「いつもどおりよ」
「ああ、いつもどおりですか」
「頼むわね」
「おまかせください」
二回のナギの部屋に向かう。
「おい起きろー」
どんどんと扉を叩く。まれに。ごくまれに起きているときは、開くはずだ。そんなに都合の良いことは一年に一回くらいだが。
もちろん、今日も反応は無かった。
無言で蹴破る。
「……」
いつもどおり、見慣れた地獄絵図。
「今日はどこだ? 本棚か? それとも天井裏か?」
物の山。パソコン、本、ガラクタ、倒れたタンス、ベッドのようなものの残骸、各種ゴミ。それらが部屋の中で自由奔放に山積みされていた。
この中のどこかにナギは埋まっている。いつものパターンだ。
「今日は……そうだな、ここだ!」
本の山におもむろに手を突っ込む。
「捉えた!」
そして、引いた。
ゴミの海から全裸の女が釣れた。
「よう、ナギ。おはよーさん」
全裸の女こと、ナギ半分目を開け、うつろなまま答えた。
「誰だ……」
「千歳だっての」
「ああ……そんなやつもいたな。なんのようだ……」
ナギの朝のボケかたは半端ではない。わりと朝に弱いほうである千歳ですら比較対象にもならない。
「学校だろうが。ってか、服きろよ」
「……全裸じゃないと寝れんのだ。察しろ……」
そんなことまで察することができるほど千歳は大人ではなかった。いや、ナギとの付き合いはもう何年にもなるのだが、それでもだ。
というより、ガラクタの中で全裸睡眠する女を起こす風景を普通だと認識しろと言っているのだろうか。できるわけがない。
「おい千歳……服をよこせ。タンスの中にパンツがあるだろう」
ぐったりと床に倒れながらナギが千歳に命令した。依然全裸。もはや色気のカケラすらない全裸。
しかし慣れっこだ。千歳は素直にナギの言うとおりにパンツをゴミ山のなかのタンスから引きずり出し、ナギに渡した。
「穿かせろ」
「はいはい……」
「(しかしこれ……まるみえなんだよなぁ……毎回見すぎて、興奮すらしねぇ)」
ナギはもはや、妹である百歌よりもディープに妹っぽい。それほどに世話をした覚えがある。
そのまま手際よく制服を着せた。ブラは必要なかった。ナギの胸の大きさ的に考えて全く必要がないし、それに……。
「(傷、まだ治ってねえんだな)」
背中の傷を締め付けて痛いだろう。
「どうした、千歳。なにを考えている」
「俺、ボーっとしてたか?」
「ああ、ひどいマヌケ面だった」
傷のことを考えると、しかたがないのかもしれない。この傷は……。
「おい、千歳。お前まさかまだ……」
「い、いや、大丈夫だ。大丈夫」
「そうか? 私にはそうは見えんがな」
「大丈夫だっての。さっさと朝飯食え。下で頼さんが待ってんぞ」
「母さんが……ああ、そうか。まだ生きてるんだな」
「おいおい……母親を勝手に殺すな」
「……何を言っているんだお前。昨日生きていたやつが、今日まで生きているという保証があるのか? 現在と過去と未来の世界が、同じだと思っているのか? 自分の手の中にあると思っているのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……信じろよ。大切なもんだろ。家族なんだから」
「それもそうか……。なら、母の存在くらいは信じるとしよう」
「俺はどうなんだ?」
「お前もだよ、千歳」
ナギはやっとはっきり目が覚めたようで、千歳の顔を見上げ、イジワルそうな笑みを浮かべた。
「いってらっしゃい。千歳くん、今日もナギをよろしく頼むわね」
「はい、確かに」
頼さんが笑顔で送り出してくれた。俺も釣られて笑顔になる。
「……さっさと行くぞ、千歳」
「お、おいおいいきなりっ」
すると、ナギが急に千歳をにらみつけ、肩を掴んで歩き始めた。
「……ふふっ、仲が良いのね」
頼さんは、そんな二人を見て微笑む。――娘と同じ、意地の悪い笑みで。
「よー! 千歳にナギちゃん!」
「彦馬(ひこま)か。今日は遅刻しないんだな」
教室に入ると、珍しく早く登校していた彦馬が二人を出迎えた。
「いや、今日は張り切っちゃってさあ」
「張り切るって、何をだ」
「いや、それがさ……って、ナギちゃんは聞かないの?」
ナギは彦馬を華麗にスルーし、自分の席に座ってだらりとしていた。
「興味ない」
「そ、そっか……まあ話半分に聞いてよ。そこからでいいから」
「BGM程度にはな……」
ナギは手入れのされていないぼさぼさの真っ赤な長髪をくしゃくしゃと掻いた。ゴミ山の埃がぱらぱらと落ちる。不潔だ。
「で、なんなんだよお前の張り切りの原因ってのは」
「それがさ……このクラスに転校生が来るんだ」
「へぇ。こんな時期に珍しいな。……で、それがどうしたんだ? っていうか、なんで知ってんだよ」
「僕、転校の手続きをしに来たその人を案内したんだよ。そのとき事情とかいろいろ聞いちまって」
「ふーん」
「でさ! その転校生って、すげー美少女なんだよ! まさに天使! 案内した俺に女神のように微笑んでくれたんだぜぇ〜! どうよ、うらやましいか!?」
「いや、見たこと無いし、どんなもんかわかんないから」
「さめてんなぁ……三次元の女に絶望して二次元に走った僕が言うんだから間違いない、あれは2,5次元の存在!」
興奮した彦馬はいろいろとその転校生の魅力を語りだす。うざったいので、千歳は右から左へ受け流した。
「田村ゆかりですら2,5次元だろうが……」
ナギは、あまりテンションの上がらない様子で彦馬にツッコミを入れた。
あんまゆかりんをバカにしないほうがいい。と、作者は怒りを覚えた。
「おーし、お前ら席につけやー」
柄の悪い女性教師が入ってきて、皆を席につかせた。
「おでましだな」
ナギは口ではああいっていても、なんだか興味を持ったようだ。小声で千歳に語りかけてきた。
彦馬はというと、目を輝かせて椅子の上で正座していた。
「今日は転校生を紹介する……君、入って」
女性教師の呼び声に、扉を開ける人影。それを目の当たりにして。
全員が、息を呑んだ。
言葉を失う。
「転校生の西又 囲炉裏(にしまた イロリ)さんだ、お前ら仲良くしろよー」
「よろしくお願いします。西又イロリです」
教卓の隣に立った転校生。その姿は、女神と語るのももはや仕方が無い。おそらく熱心な宗教家でさえ、女神と認めるかもしれない。
艶のある黒髪ロングヘア。制服の上からでも分かるバランスの良いスタイル。目が大きくくりくりと丸い瞳は、黒曜石のように黒光りしている。
安い電灯で照らされた教室のなか、唯一ひだまりの中にいるように輝いていた。おそらく、その背中に翼の幻覚を見たものもいただろう。
西又イロリは、第一印象だけで教室全員の心を奪った。いや、二人を除き。
「(あんな感じのフィギュア持ってたな……どこになおしたっけか)」
ナギは、真面目に見てもいなかったし、他人の容姿にも、そもそも自分の容姿にも無関心だった。
目に見えるものなんて大体まやかしだったと知っているからだ。
そして、二人目は千歳。
「いっ……ちゃん……」
小声で呟く。すると――
「うん、久しぶり」
――声は出していない。ただ、目が合った。イロリがこちらをむいた。
それだけで、分かってしまった。
「えっと、みなさん、簡単に自己紹介をさせてもらいますと……」
イロリは少し恥ずかしそうに、しかし幸福そうに頬を赤く染め、顔を上げて宣言した。
「私、西又イロリは、このクラスの鷹野千歳のお嫁さんです!」
――ちーちゃんのお嫁さんに。ちーちゃんと一生幸せに。
一話終了です。もうちょっとしたら二話も投下します。
第二話『ナイトメア・侵食』
授業が終わった瞬間、イロリは千歳の席までダッシュし、腕を掴んで千歳を連れて教室を出た。
されるがままに、男子更衣室に連れ込まれる。体育の時は男子は大体教室で着替えるため、部活の時間に使用されていない。
なぜその事情をイロリが知っていたかは不明だが、とにかく邪魔者はいない。
あのまま教室に残れば、二人はクラス全員の好奇心の的として質問攻めに会っていただろう。
「イロリ……」
「どうしたの、ちーちゃん?」
「お前なんで……」
「そんなことより、他に言うべきことがあるでしょ?」
「あ、ああ……おかえり」
「ただいま、ちーちゃん。会いたかったよ。もう十三年になるね……」
「そうか、お前が京都の学校にいってから、もう十三年か……長かったな」
「でも、その分はこれから取り戻せるよ。だって私は……ちーちゃんの」
――およめさんだから。
声には出さなかったが、やはり千歳には伝わる。
無言のままイロリは千歳の両頬に手を添え、顔を近づける。唇と唇が触れ合う――
「おまえ達、何をやっているんだ」
――声。イロリが静止した。
「誰?」
イロリが聞くと、声の主は物陰から姿をあらわした。ナギだった。ただでさえ赤い髪の色が、いつもより深い、血のように染まっている。
これは、ナギが怒っていると気の特徴だ。千歳だけはそれを見分けることができる。
「……野々村ナギ。お前と同じクラスだぞ、一応な」
「そう……よろしくね、野々村さん」
「ナギでいい」
「ナギさん、ね、よろしく」
イロリは千歳から手を離し、ナギに近づく。手を出し、にっこりと微笑んだ。
「なんだ、この手は」
「何って、握手よ?」
「なぜ、お前と握手するんだ」
「え、仲良くして欲しいから……せっかく同じクラスになった人なんだから、仲良くしないと損でしょう?」
「……お前、それは本気で言っているのか?」
ナギはイロリをにらみつける。普段の力のない半目とは違う。視線だけで大型動物ですら殺せそうな眼光。
イロリはそれに対し全く表情を変える事無く、ナギに微笑み返した。
「そうだけど……気に障ったらごめんなさいね」
「ふん、まあいいだろう。それで、最初の質問に答えろよ西又イロリ」
「なにかしら?」
「何をしているんだ、ここで、千歳と」
「何って、久々に夫にあったのよ? することがあるでしょう」
「まどろっこしいぞお前。私は『質問』をしている。私自身を考えさせようなんて言う妙なクイズ精神はいらないんだよ」
「そう……なら、答えるわ。さっきも言ったように、私はちーちゃんのお嫁さんだから、キスしようとしてたんだよ。ただいまのキス」
「キス……だと?」
「そうだけど、なにか問題があるかしら?」
「お前、自分を客観的に見れないらしいな」
「どういうことかしら」
「お前の『質問』に答える義理はない。それより、だ。千歳、お前、なに固まっているんだ」
ナギはイロリを無視して千歳に歩み寄り、すねを蹴った。
「いてっ……なんだよ」
「なんだよじゃない。お前、唐突に現れた電波女に何いいようにされているんだ」
「(そうだ、なんで俺は……イロリのされるがままに……)」
千歳は、完全にイロリを受け入れようとしていた自分に戸惑っていた。
しかし何故か、イロリに迫られると断れなかった。まるで、何らかの『拘束力』があるみたいに、身体が動かなかった。
「まあ、事情は後でじっくりと聞こう。とにかく、千歳に無闇に手を出すなよ、西又イロリ」
「なぜかしら」
「お前、自己紹介で千歳と幼稚園の時結婚の約束をしたと言っていたな……」
「そうよ。その約束が、私たちを結んでいるのよ。あなたには分からないわ、私たちの約束なのよ」
「お前の知っている千歳はもういないんだ。人間は変わる。過去なんで、存在しないんだよ、それを理解しろ」
「な……なにを……」
ナギはイロリの質問には答えず、千歳のを引っ張って更衣室を出た。
チャイムが鳴る。次の授業が始まるのだ。イロリも引き下がらざるを得なかった。
しかし、ナギは授業には戻らなかった。身体に力の入っていない千歳を保健室にぶちこむためだ。
「おい、来たぞ」
「あら、ナギちゃん、どうしたの?」
保険医は慣れた口調で対応する。ナギの乱暴な口調にももはやなんの意見も無いようだ。
「今日は私じゃない。こいつだ」
ナギは乱暴に力のない千歳の身体を保健室に放り込んだ。
「あら大変、ベッドに寝かせるから手伝って」
ナギはコクリと頷き、千歳の足を持った。保険医は千歳の上半身を抱え、ベッドに運ぶ。
「ナギちゃん、鷹野くん、どうしたの?」
「知らん。軟弱だからこうなったのだろう」
「そっか、原因不明か……なら、これは真面目な話だから、聞いてね」
「なんだ」
「コントラクターって、知ってる?」
「なんだ、それ」
「知らないなら、いいけど……もし、その言葉があなたと鷹野くんの間に立ちはだかったら、私に相談してね」
「ああ」
「まあ、一応身体自体に重大なダメージとかはなさそうね。疲労みらいなものだから、昼休みまで寝かせていれば大丈夫だと思うわ」
「……」
ナギは、保険医の目をじっと見詰めている。
「わかった、あなたも付き添いしてていいわよ。担任には私が言っておくから。大野先生ね」
「……感謝する」
「別に良いわよ。そういうの、応援したくなるじゃない」
「おい、千歳。いつまでくたばっているつもりだ、この軟弱者」
「すまん、意識ははっきりしているんだが……体が重い」
「保険医は心配ないと言っていた。さっさと治れ。気合いで治れ」
「無茶言うなっつーの。ってか、先生はどこいったんだ?」
「しばらく職員室に行くらしい。鍵をかけていった。だから保健室はしばらくお前の貸しきりだ」
「そうか。お前は、授業サボっていいのかよ」
「……」
「どうした?」
「イロリという女、お前の何だ」
「あいつは、俺の最初の友達だよ。幼稚園の頃、兄妹みたいに仲良くて、いつも一緒にいた。で、幼稚園の終わりごろにわかれちまった。それだけ」
「本当に、それだけか? 結婚の約束とやらは、本当なのか?」
「ああ……子供ごころながらに、結婚の約束までしたな。それを、あいつは律儀に覚えていたみたいだ。俺は今日まで忘れてたよ」
「それが自然だ。人は変わる。それが子供ならなおさらだ。それを……あいつは執着で動いている」
ナギの言葉には、表情には、髪には、怒りが明らかににじみ出ていた。
「お前、なんで怒ってんだよ。イロリはいいやつだぞ。最初からケンカ腰になるなよ」
「お前も過去の情報からそう言っているだろう。……私は昔の西又イロリは知らないが、少なくとも客観的にアイツを見ていると、吐き気がするな」
「なに言ってんだよ。そんなこと全然」
「お前は目に頼りすぎなんだよ。千歳」
「どういう意味だよ」
「お前、あの更衣室のなかでレイプされるところだったぞ」
「は……?」
「分からないのか? あの更衣室、放課後まで誰もこない。それに、鍵がかかっていたぞ。お前が拒んだ場合、お前が逃げないようにだ。約束だのなんだの言っていたが、アイツの拘束力は執着から生まれている」
つまり、ナギは鍵を破ってイロリの手から千歳を救出したと言うことになる。
「お前の嫁であることは、あいつにとってはさっさと肉体関係を結ぶと言うことなんだよ。短絡的だな、全く」
「お、おいおい。でも、それはお前の推測だろ。だいたいレイプなんて犯罪だ。誰も好き好んで……」
「それは男の場合だろう。女なら、レイプだって有利に運べる。例えばお前の携帯電話を奪い、ハメ撮りでもするとする。どうなるかわかるか?」
もし人を呼んだり、抵抗したりしたら、この画像を出して「レイプされた」と言う、と、脅迫する。そんなビジョンが千歳の頭に浮かんだ。
「アイツほど男受けする見た目なら、レイプされても不思議じゃない。誰もお前の言い分なんか聞かんぞ」
「でも、そんな無茶苦茶な」
「まあそうだな。確証などどこにもない」
「なら、信じろよ。イロリを」
「あいにく、私はお前のようにお人よしじゃないんでね。私が信じるのは、母さんと、お前だけだ」
「お前……」
「とにかく、お前は今日はそこで寝てろ。昼休みくらいまで休めば大丈夫だと保険医も言っていた」
そう言うと、ナギは千歳の頭を撫でた。不器用でぎこちない手つきだったが、優しさがこもっていた。
「(気持ちいいな……)」
今は亡き母に頭を撫でられた時のことを思い出す。こんな時は、母は……。
「(こもり……うた……ナギが……?)」
母の歌っていた子守唄が聞こえる。そしてそれは、他でもないナギの声だった。
誰よりも優しい声。いつも粗暴な言葉遣いをするナギのイメージとは違っていた。
しかし、千歳は知っていた。
これがナギの本当の姿なのだと。
夢を見ていた。
「千歳。お前は未来を信じているのか?」
「なんで、そんなことを聞くんだ?」
「幸せは、未来にしかないんだよ。それを知って、絶望したんだ。未来には、永遠にたどり着かないんだ」
「ナギ、それは違うんじゃないのか?」
「何がだ」
「希望とか、確かにこの現実では信じにくいし、怖いもんだ。未来もそう。だけどな、それでも幸せになるために、俺らは『信じる』ってことをするんだろ」
「……そうだな、私は、それを言って欲しかっただけかもしれないな。感謝するよ、千歳」
夢を見ていた。
「……なんで、あんな夢を」
最近、過去のことを夢に見ることが多い。イロリに会ってやっと思い出したが、朝見ていたのはイロリとの約束と別れ。
今見ていたのは……。
「ナギ……」
「呼んだか?」
「おわっ!」
「結局、放課後まで寝ていたんだな」
「まじでか……なんか、最近寝起き悪いんだよな。お前のがうつったか?」
「知らん」
「だよなぁ……あーあ。なんか一日中ねてると、損した気分だよな」
「昼飯のことなら、私がお前の分も食ってやったから安心しろ」
「そういう話じゃねぇよ」
「じゃあどういうことだ」
「俺も『今の時間』が大切なんだって思い始めたんだよ……お前が言っていたようにな」
「何を言っているのやら、さっぱりだな」
ナギは特徴的な意地の悪い笑みを浮かべた。
「ってか、ナギお前、放課後までずっとここで……?」
「別に、授業をサボる口実ができたから盛大にサボっていただけだ。お前が心配だったとかじゃない」
「そうかい」
千歳はなんとなく嬉しくなる。長い付き合いだから、分かるのだ。口は悪いが、ナギは心優しい。たぶん心配してくれたのだろう。
「なあ、ナギ……おれさ、やっぱり」
「ちーちゃん!!」
凄まじい勢いで進入者が現れた。鍵は、昼休み以降は開く寸法だったようだ。
「またお前か」
ナギは鋭い目付きでにらみつける。強烈な威圧。先ほどよりもかなり力を増している。
千歳の過労の原因を、イロリに押し付けようとしているように見える。
「イロリ……さっきは……」
「ごめんなさい!」
「え……?」
言葉を遮られ、あっけに取られる。ナギも少し動揺しているようだ。
「やっぱりさっき、強引すぎたというか、焦りすぎだったって言うか……。私、ちーちゃんに会えて、その……興奮しちゃって、わけわからなくなって……
。やっぱり、いきなり結婚とかそういうのは、ダメだよね」
イロリはもじもじと顔を赤くさせながら、しどろもどろになりつつもしっかりと謝罪をしていた。
「(やっぱり、イロリは悪い奴じゃないよな。さっきのナギとの衝突も、いろいろ急いじゃった結果なんだ)」
千歳は『最初の親友』の変わらなさに安心した。それに、結婚とか妻うんぬんについても、考え直してくれると言うのだ。
大丈夫、もうトラブルは起こらない。
「ちーちゃんとは十年以上会ってなかったし、戸惑いとか、ギャップとか、行き違いもあると思うの……。だから、ちょっと距離を置いて、ゆっくりね……」
「ああ、そうだn――」
「だから、結婚を前提に、まずはお付き合いからにしよう! いいよね、ちーちゃん!」
「は……?」
驚きのあまり、言葉を出せない。単純な声しか絞り出せなかった。
隣にいるナギも同様のようだ。目を見開いて口をぽっかりとあけていた。
「ちーちゃん、私頑張るから……ちーちゃんにちゃんと愛されるように、がんばるから。だから、恋人から始めよう」
「な……」
「大丈夫、昔と同じに戻るだけだから。簡単でしょう?」
「(いつ、俺はイロリの恋人になってたんだ……?)」
どうしようもない理不尽と戸惑いが千歳を襲う。もはや、イロリの思い込みは抑制不可能ではないのか?
そんな諦めすら頭に浮かぶ。
「ふっ……ふはっ、ははははははははははははははははははは!!!!」
ナギが、唐突に笑い始めた。
「な、なによぅ、ナギさん、また私の邪魔を……」
「いや、失礼。お前は面白いやつなんだな。気に入った。第一印象を改めないとな」
千歳すら、ナギがこれほどに楽しそうな所を見るのは珍しい。いや、そもそもナギが母以外を褒めることなど、完全に初めてかもしれない。
「おい、イロリ。いろいろと邪推してすまなんだな。お前は本物みたいだ。逆に、応援してみたくなったよ」
「あ……ありがと、う?」
今度はイロリが戸惑う番だった。今まで敵対心丸出しだったナギが、いきなり友好的になったのだ。
「だが、千歳はそうは思っていないらしい。千歳、お前はイロリと付き合うのがいやか?」
「俺……?」
千歳はやっと気付く。周りに引っ張られっぱなしでなんだかついていけていないが、これはもともと自分の問題だと。
「俺は……」
「ちーちゃん……」
「俺は、友達からくらいがちょうどいいと思う。イロリがキライになったとかじゃなくて、やっぱり、人間関係とかさ。いろいろ急ぎすぎると、擦り切れることがあったり、壊れることがあったりするだろ? だから、ちょっとずつ、な」
「それは、結婚を前提に友達になるってこと?」
「いやいやいや、そんなのねーよ。どこの世界の友達だっての」
わざとやっているのかと疑わざるを得ない。
が、思い出してみると昔のイロリもこんな感じだった気がする。思い込みが激しく、天然ボケの自覚もなく間違った認識を押し通す。
そんなタイプ。決して頭自体は悪くないのだが、性格の問題かもしれない。
「でも……ちーちゃんがいいと思う関係で、いいよ。今はそれで我慢する」
「(よかった……一時はどうなることかと)」
「でも……」
「?」
「さっきも言ったけど、いつかちーちゃんから『愛してる』って言わせるよ。それは『約束』。私たちの二つ目の約束。ね?」
イロリはにっこりと笑った。ナギとは違う。なんの含みもない。思い込んだこと、決意したこと、すなわち『未来』に真っ直ぐ向いた、純粋な希望。
「――っ」
ドキリ。一瞬、心臓が跳ねた。不覚にも、こんな簡単にイロリを女として認識しなおすことになるとは。思いも寄らなかった。
「まあ、そんなもんだろうな。今は。だが……」
ナギは、イロリに近づき、肩をぽんぽんと叩いた。
「悪かったな。分かっていなかったのは私のほうだ。お前は、いい女らしい」
ナギはそう言うと、保健室を出ていった。珍しく、軽快な歩調だった。
「……ナギさんって、ぱっと見よりいい子だね、ちーちゃん」
「ああ、そうだな」
「ねえちーちゃん。ナギさんって、ちーちゃんとどういう関係なの?」
「どういうって……お前と同じだな」
「え……浮気?」
「ちがうっつーの。っていうか俺らは『友達』だからな。浮気とかそういう人聞きの悪い単語を出すな」
「あはっ、ごめんごめん。つい、ね」
「お前と同じ、昔からの友達だよ。小学校の……二年くらいかな」
「そっか……ねえ、聞かせて、私が引っ越した後の、ちーちゃんのこと。私の知らないちーちゃん……。知れば、今よりもっと近くにいられると思うから」
「近くに……か。悪かったな」
「なにが?」
「俺も、ちょっとお前を避けてるみたいに動いちまった。なんか、久しぶりだし……お前が昔のお前か自信なくて、その……遠慮した」
「ううん。悪いのは私。ちーちゃんの気持ちも考えずにお嫁さん宣言して、そのままキスしようとしちゃった……今考えると、あんまりいい子のすぐことじゃないね」
「でも、そういうのがお前だったって、なんか安心したかもしれない。案外、そう遠くないかもしれないな」
「え、なにが?」
――約束を果たす日。
そんなこと、言える分けないか。恥ずい。
「それより、昔の話だったな……」
「うん」
「あの……」
急に声がして、見ると大人しそうな少女が保健室の扉を開けた向こうに立っていた。
「もう下校時間ですから……鍵、閉めます」
いかにも内気そうな、長い前髪のショートヘアと眼鏡の少女は、消え入りそうな声で二人に呼びかけた。
「あなたは確か……私たちのクラスの委員長さんだよね? えっと……井上 深紅(いのうえ ミク)さんだっけ?」
イロリは早くもクラスメイトの名前と顔を一致させたようだ。
「はい……気軽に、ミクと呼んで下さい」
「なら、私もイロリって呼んでいいよ。よろしくねっ」
「はい……こちらこそ、よろしくおねがいしますね。イロリさん」
イロリとの対話を終え、ミクは千歳の方をむいた。
「鷹野君、先生が用事があるから来てって……」
「あ、ああ。わかった」
「あの……イロリさんは、先に帰っておいたほうがいいと思います。……長くなるそうですし、本来なら下校時間ですから」
「そっか……じゃあちーちゃん、また明日ね」
「ああ、また明日」
そうしてイロリは保健室を出た。
残されたのは、ミクと千歳のみ。――と、突然ミクが保健室の鍵を閉めた。
「……? どうしたんだよ、委員長。職員室に行くんじゃ……」
「鷹野君……見せたいものがあるんです」
「……なんだ?」
「これ……」
ミクは千歳に封筒を差し出す。中身は……写真のようだった。
「これは……!?」
「どうですか? よく取れていると思いません?」
「お前……何故……これは、ナギ、だと……」
写真は……全てにナギが写っていた。とは言ってもスナップ写真などという域ではない。
トイレ、着替え……そして、自慰行為に至るまで、あらゆるナギの痴態が克明に写されていた。
「これは……一体だれが」
「さあ、誰でしょうね」
「……お前じゃ、ないよな? お前、盗撮事件があったのを発見して、先生とか俺だけに知らせてるとか、そういうのだよな……?」
「……」
「なあ、なんとかいえよ委員長!」
「あはっ、鷹野君おもしろい顔してる♪」
「なんだよお前……こんな時にのんきな……盗撮があったんだろ!? 犯人はどうなってんだ。掴まったのか!?」
「必死に現実逃避して……かわいいですねぇ」
「な……」
「私ですよ。鷹野くん。この私が全て撮ったものです」
「……なにが。なにが望みだ」
委員長は、ナギと同じく小学校時代から同じクラス。そしてずっと委員長の女。
ナギの写真を持ち出したということは、ナギか妹の百歌を人質にとられるとなにも抵抗できないという千歳の性質を知っているということなのだ。
「同じですよ」
「なにがだ!?」
「イロリさんと同じ……あなたが、欲しいです」
がしゃんと盛大な音を上げて、皿が割れた。
「……お兄ちゃん?」
百歌は、なんらかの違和感を覚え、料理の手を止めた。
「……今日は、なんだか、おかしいよ……お兄ちゃん、早く帰ってきて……」
二話終了です。
三話は今夜にでも
イイヨイイヨー
構わん
もっとやれ
すみません調子に乗りました
もっともっとやって下さい
GJ!!
>>832 お仕置きが必要みたいね・・・フフフフフフ。
>>830 GJ!!登場人物(女子)がみんなヤンデレなんですね。これは、主人公に死亡フラグが……。
次話も楽しみに待っています。
何かセリフに兄貴がいてふいたw
GJ!続きまってます。
wktk wktk
全裸で待機するとしよう
ゆっくりめにですが、第三話投下していきます
第三話『深紅・猛攻』
「とりあえず、ここじゃなんなのでトイレにでも」
「何をするつもりだ……」
「すぐわかりますよ」
ミクは千歳を連れて保健室を出た。ミクは下校時間の生徒の追い出しと、施錠を役割としている。
これは本来教師や用務員の仕事なのだが、ミクは自らその役がしたいと買って出た。
学級委員長、風紀委員、生徒会などなど、他人の上位に立つのが好きな人間である。
「(最初からおかしいと思うべきだった……)」
わざわざそんな役を買って出るなど、常人のすることではない。真面目な委員長と言う印象でごまかしていて分からなかったが、今なら分かる。
井上ミクは……。
「お前ここ、女子トイレ」
「つべこべ言わずに、入ってくださいよ。拒否権はありません」
――そもそも、女子トイレじゃなかったら、私が男子トイレに入らないといけないじゃないですか。私は変態じゃないんでそんなのしませんよ。
くすくすと笑いながらミクは小声で言った。
千歳は、盗撮をしている人間がなにをほざくのかと不快に思うが、今は言わないことにした。
「……わかった」
ナギの写真をばら撒かれるくらいなら、と、千歳は素直に従う。
「その個室にしましょうか」
一番奥の個室。ぐずぐずとしていたら、ミクが強引に押し込んできた。鍵をかけ、そのまま千歳を壁まで押し付ける。
「おいっ! お前一体……うぐっ」
口がふさがれる。ミクの唇によってだった。
「んっ……ふぅぁ……」
ミクは興奮したように口の端から吐息を漏らす。千歳には振り払えなかった。ミクの腕力が異常に高い。
ミクの身長は、ほとんど小学生のナギと比べると大きいほうだが、150センチと少しくらいで大きいとは少なくともいえない。
それが、男としては標準的な体格と運動能力を持つ千歳を完全に封じ込めている。信じがたいことだった。
「ぷはぁ……。鷹野君、『どう』ですか?」
ミクは唇を離すと、依然千歳を押さえ込み、したから覗きこむ視線で聞いた。それはもはや真面目な委員長の姿ではない。
――雌。ただの発情気の雌。
しかしこの雌は、人間なんかよりずっと性質が悪い。知恵をつけた野獣。
「黙りこくって……。この状況、わかりませんか?」
千歳はもはや状況に脳がついていっていなかった。話すことも、動くこともできない。
「簡単なお話です。鷹野君の大切な幼なじみであるナギさんがですね、ある日の放課後、教室でオナニーしてたんです」
「オナ……ナギが?」
なんとか搾り出した言葉も、ただの反射。内容は無かった。
「そうですよ。はしたないですよね。教室でオナニーだなんて……。いつも巡回している私に見つかる可能性を考えなかったのでしょうか。それとも、誰かに見つかるかもしれないという状況に興奮したのか……」
楽しそうにミクは語り続ける。
「誰かさんの机に必死でおまたをこすりつけて、その人の名前を呼ぶんです。汚いなぁって、ちょっと私も人事ながら怒りを覚えました。本人にはもっと苦痛でしょうかね。あんな臭そうなおまんこ汁をぐちゃぐちゃにして、よだれたらして、馬鹿みたいな顔して」
「な……一体、ナギはなんで……」
「さあ。その人のことが好きなのか、それともただ性欲が強いのか。――おそらくは後者ですがね。とにかく、それを気に私はナギさんという人間に興味を持ちまして、いろいろと調べてみたんですよ」
千歳の手の中にある、ナギの盗撮写真。いたるところから撮影されている。
ミクはそれを奪い返し、ぱらぱらと中身を確認する。
「簡単でした。だって、私はほとんどこの学校の部屋の支配権全てを握っているみたいなものですから。いわば、放課後の王様。カメラを仕掛ける時間なんて腐るほどありますし、回収する時間もあります。鍵を締めれば自由に作業できるんですから」
「そんな、めちゃくちゃな……」
「そうですよね。確かにこの作戦には不備があります。発見もされやすいし、不確定要素も多いですが……。なんにでも、用意周到な人間は切り札を隠し持つものです」
ミクの特徴的なくすくす笑いは加速する。
「まあ、説明はこんなところでしょう。ナギさんの写真、私が持っていたら不安じゃないですか?」
そりゃあ、そうだ。
千歳は一瞬その物言いに。当たり前のことをわざわざぬけぬけと言ってくるミクに対し怒りをあらわにしかけたが、直前で押さえた。
「千歳君、この写真は、合計で20枚あります。ネガや元データも既に処分しました」
――そんなわけありませんけど。
「これ、全部千歳君にあげようと思っています」
「ほ、ほんとうか……!」
手を出す。ミクはさっと手を引いてかわした。
「もちろん、ただじゃありません」
「どうすればいい……?」
「これ一枚につき一回、私の言うことを聞いてください」
「わかった」
千歳は全く迷わずに答えた。その速さは若干以外だったが、ミクは動揺を表に出さない。
迷ったら負ける。犯罪を犯しているのは、こちらのほうなのだ。そんな覚悟と自覚がミクにはあった。
――それに、これで切り札をとっておいたまま計画が進行しますしね……。
どんなものにでも切り札は必要。当たり前の話だ。この『脅し』だって、千歳の冷静さとナギへの思い次第。正直不確定。
だから、必要な情報はもっとたくさんそろえた。
例えば。あくまで例だが。
――ナギが昔殺人を犯していたり、とか。
――千歳が昔、親に暴行を働いた、だとか。
そんな、過去の傷をえぐるような、そんな『甘い知識のリンゴ』。すばらしいじゃないか。
「じゃあ、今日は報酬は一枚です。よろしくお願いしますね」
「……何時までかかる?」
「そうですね、今が六時半くらいですから……。だいたい一時間くらいいただきます。七時半まで、この写真で買いますね、いいですか?」
「……交渉できるたちばじゃないみたいだな。それでいい……」
「さすが、ものわかりが良いですね」
がちゃり。ミクはどこからともなく手錠を取り出すと、千歳の両手後ろに拘束した。
「おまっ、なにを……」
「さっきから思ってたんですけど、鷹野君って鈍いんですか? それとも、これから起こるであろう未来のことも予測できないほどに馬鹿なんですか? おそらくは前者でしょうけど」
「鈍い……だと?」
「歴然としているでしょう。男女逆の立場だとわかりやすいですかね。そう、強姦ですよ。わかりますか?」
ミクはくすくすと笑い、手錠をされ無抵抗の千歳を押し倒した。この女子トイレ、個室がわりと広い。十分に千歳が座り込み、その上にミクが覆い被さることができるほどのスペースがあった。
「くっ……」
「あはっ、やっとくやしそうな顔になりましたね。今ごろになって状況が完全に飲み込めたようですけど、ご感想は?」
「この……」
「この、何です? 怒らないから言ってみてくださいよ」
「(……だめだ、不利になることは避けないと)」
ナギのため、ここは個人的感情は押さえる。千歳は抵抗も何もしないと、内面的に超然主義を取り入れることにした。
「だんまりですか。まあいいでしょう。こういう素直じゃない子を調教するのが、強姦の醍醐味ですから」
「――っ!」
「だから、ちょっとずつ、声ださせてあげますね」
ミクの小さく華奢な手が千歳の股間を掴んでいた。
「あれ……? 鷹野君、なんでこんなにおっきくしてるんですかぁ〜?」
「……」
「答えないでいいですけど、これはちょっと面白いことだってこと、わかりますよね。さっきキスしたとき、鷹野君も興奮したんですね」
そう言うと、ミクはスカートを穿いたまま下着だけに手をかけ、脱ぎ去った。飾り気のない、真面目っぽいものだ。
そう、ミクは家族にも完全に本来の凶暴性を隠して生きてきたのだ。やましい要素など、よほどの粗探しをしないと見つかりはしない。
「ほら、鷹野君、みてください」
座り込む千歳の眼前に立ち、スカートを上げる。
「……!」
「こんなに、濡れちゃったんですよ。鷹野君とキスしたとき……。私、処女なのに。こんな……」
千歳の目の前に現れたミクのそこは既に洪水状態で、脚を伝って液が流れていた。毛が薄く、割れ目が見えている。
なんとも、艶やかな光景だった。
びくん。
「ふふっ、鷹野君が興奮してる。……じゃあ、鷹野君、舐めてください」
「うぶっ!?」
ミクがおもむろに千歳を床に叩きつけ、その顔にまたがった。千歳の鼻に甘い匂いが飛び込む。あまり良い匂いではないという印象があったのだが、ミクのものはそうでもないようだ。
むしろ、確実に千歳の性欲を刺激していた。
「舐めてください」
最初はためらっていた千歳だが、よく考えると、屈辱的ではあるがたいした被害はない。この程度でナギが救えるならと、従うことにした。
ぺろりとミクの秘所を舐め上げる。処女らしく、まったくと言って良いほどに清潔なピンク色をしているその場所は、千歳がひとなめした瞬間にびくりと跳ねた。
「んぁ!」
ミクの体全体もびくりと跳ねる。秘所からはさらに液体が流れ出、千歳の顔にだらだらとかかった。
千歳はさらに舐め上げる。ちろちろと、牛乳の皿に慣れない子犬のように、ゆっくりと優しくだ。
「んふっ……あ……あぁ……ん、いい……いいです、よぉ……」
ミクの感度は非常に高いらしい。なら、このままさっさと終わらせることができるかもしれない。
一気にスピードを上げる。刺激しまくって疲労させれば、早いうちに消耗して今日は見逃してくれるかもしれない。
くちゃくちゃと、激しく舐め上げる。割れ目を舌でこじ開けて舌を挿入する。
「ふぁ……あぁん……んんぁあ!」
ミクが身体を逸らし、痙攣した。
「(まさか……イッたのか? こんなに早く?)」
そう考えていると、頬を赤く染めたミクが息を整え、声を絞り出した。
「……はぁ……はぁ……お上手ですね、鷹野君。私、実は自慰行為というものを実行したことがなくて……今初めて、軽くイッてしまうという経験をしました」
「(ならさっさと解放してくれ。満足だろ……)」
そうは思えど、独裁者は下僕の要求や感情など受け入れない。「支配されている気持ちの側が気持ちが分かってない」と、弱者はいつも主張する。
しかし、違う。狡猾なまでの『弱者の感情への理解』こそが、支配者を支配者たらしめる。
労働者は、支配される側は常に冷静さを奪われ、感情に生かされる。ミクも千歳の冷静さを奪いコントロールするため、あえて強引さを保っていた。
深紅は他人の気持ちを誰よりも深く理解できる頭脳を持つ。それゆえに、千歳の要求など、聞かないのだ。
「でも、まだ軽いです。もっと……もっと気持ちよく……!」
ミクの口調が荒くなる。興奮が加速している。
ミクは乱暴に千歳の頭を掴み、自らの秘所に押し付ける。
「うぐっ……」
「鷹野君……もっと、舌……ください……」
何がなんだかわからないほどに乱暴に顔に擦り付けられている。混乱状態のまま、千歳も要求通りに舌を出すしかなかった。
「はあぁん! ……いい、いいよぉ……舌、あったかい……ぬるぬるしてて……」
大洪水どころか、もうダム決壊レベルか。わけのわからない汁やら液やらが千歳の顔をどろどろにぬらしていく。
なめあげるたびにミクの股から溢れ出す。
「奥に……舌、奥に……これ、命令……です」
言われた通り、再び差し込んだ。こんどはミクが千歳の頭に押し付けてくるため、さっきより深くまで舌が入る。
「ひぁ……」
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。リズミカルに水音を立たせ、ミクの膣内を舌でかき混ぜる。
「あっ、あああっん……んんぁ……ふぅっ、ふあ……これ! ……いいですぅ!!」
再び加速させる。これだけ感じやすければ、簡単に終わらせることが出来るだろう。
「くはっ、うん……は、ぁあああ!!! きちゃいます!!! なんか……なんかでちゃうぅう!!!!」
「っ!?」
ミクのひときわ大きな叫びと共に、秘部から液体が勢いよく噴出され、千歳の顔にかかった。
それだけではない、第二波。
「ふあぁああ……鷹野くぅん……すみません、全部……」
「……?」
「全部、飲んでくださいぃ……これ、命令……ですぅ!!!」
言葉と共に、ミクの尿道から暖かい液体が流出する。独特なアンモニア臭に、千歳は明らかな嫌悪感を覚えた。
が、飲み干さなければ。千歳はあくまで冷静だった。これもミクが千歳を屈服させるための示威行為だが、千歳は図らずも無効化していた。
「うぷっ……ごくっ、こくっ……」
のどを鳴らし飲み込む。その献身的な姿は、その献身の対象が例えナギであれ、ミクを喜ばせた。
「鷹野君、かわいい……♪ 必死に私のおしっこ飲んじゃって。そんなにおいしかったんですか?」
「うぐっ……」
言葉に詰まる。興奮してなど居ない、ミクに対して好意を抱くなどありえない。そう千歳は自分に言い聞かせた。
だが――
「ここ、おっきくなってますよ?」
――身体は嘘をつかない。どうしようもなく自己主張して、ズボンの上からでもはっきりと形状が分かるほどである。
さっきからすでにそうだったのだが、もはや言い逃れはできないレベルにまで成長していた。
「このままじゃ苦しいでしょうから、脱がしますね」
「や、やめっ……!」
「あ、そうですか。じゃあやめます」
「……!?」
正直、苦しい。脱がして欲しいという本音があったことを千歳は自覚した。
どうしようもなくくやしい。ミクはことごとく千歳を上回っていた。
「上から、ちょっとだけ触りますね」
ミクは下着を履いて立ち上がると、今度は靴下を脱ぎ始めた。
「おま、何を……」
「そんなこと言っちゃって、びくびくさせて、本当は期待しているんですよね。素直じゃないんですから」
くすくすと笑い、ミクは足を千歳の股間に乗せた。
そして、自己主張しているモノを足の指で挟み、上下に扱き始める。
「うくっ! ……委員長、おまっ……」
「ミクって呼んでくださいね。これも命令です♪」
「そんなの今関係な……う、うああ!!!」
「関係ないことなんてありません。それを決めるのは私であって、鷹野くんじゃないんですから……いや、千歳君って呼びますね。これから。これでおあいこじゃないですか?」
ミクの足は器用だった。自分の手で慰めるよりはるかに大きな快感を与えてくる。
それは千歳の心を少しずつ削っていった。蝕んでいった。
「くぁ……が……」
「声をだすほど気持ちいいんですか……。足でされてこんなに喜んじゃって、千歳君、とんだ変態さんです」
「(だめだ……もう……)」
限界が近い。
「……ふふっ」
ミクが足を止めた。
「今日はここまでにしましょうか」
「な……」
「あれぇ〜? 千歳君、やっぱり名残おしいんですかぁ?」
「そんなこと……!」
「大丈夫ですよ。明日もありますから」
さらりと明日も同じことをするのだと告げ、ミクは千歳を起こし、手錠を鮮やかにはずして見せた。
「『おあずけ』というやつです。明日までに自分で慰めてきたら……わかってますよ、ね?」
「……!」
下方から覗き込むミクの形相はすさまじかった。ナギにも劣らない威圧感。
しかも、ナギのように純粋な敵意などではない。その感情はあらゆる悪意――善意までもが入り混じった複雑で、不可解なものだ。
それに底知れぬ恐怖を覚え、千歳の足が硬直した。直立不動して動けない。
それを見たミクはふっと優しく微笑んで、千歳の手をつかんでトイレを出た。
「あと十九回、短い付き合いですが、よろしくお願いしますね。千歳君」
そんなミクの声も、まともに脳に入らないほどに千歳は放心していた。
第三話終了です。第四話は未定です。
早ければ明日(今日)にでも。
いいんだけど
スカ系が入ってくるときは、いやがる人もいるだろうから、事前に通知ヨロ
>>847 普通に忘れてました。すみません。
というか、自分の基準って言うのは客観的には見れないものなんですね……orz
反省します。
イロリィィー!!
愛してるーー!!
>>846 GJ
果たして1000行くだろうか
行かないだろこれは次スレの季節だしな
854 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/11(土) 07:18:11 ID:FbXNmGBJ
行くんじゃない?
というか次スレにはまだ早いだろ