「ふふ、二人を見てると昔を思い出すわね」
「昔、ですか?」
「ええ。あの頃はまさか、あの子の子供と一緒に温泉に入るとは思いもしなかったけど」
「あの子って、母さまの事か?」
「そう、あなたの母さんともこうしてよく温泉に入ったのよ」
ルナの顔を見ながら、エミさんはその向こうにいる相手の事を思い出しているようだった。
「結構、無茶したわよ……二人で正義の味方の基地に乗り込んだりね」
「へぇ……」
「ほんと、色々と頑張ったわ」
エミさんの言葉に、アヤ姉さんは少し驚いた様に声を上げる。
その辺りの話はアヤ姉さんも知らないようだった。
何気に昔は真面目に活動して――
「ほら、正義の味方の男ってイケメン多いでしょ? だから二人で物色に――」
「ちょっと待てー!」
エミさんがその言葉の先を言う前に、アヤ姉さんが後ろから羽交い絞めにしていた。
「頑張ったって何を頑張ったんですか!」
「え、それは勿論……ねぇ?」
「何が『ねぇ?』なんです、何が!」
「え、全部言ったほうがいい?」
「う、ぐ……」
「ほら、正義の味方の男ってイケメン多いでしょ? だから二人で襲いに――」
「言い直さなくていいです!」
前言撤回、今も昔もあまり変わらないようで。
むしろ、昔の方が酷かったような気がする。
……でも、ちょっと聞きたかったのは内緒だ。
「えー、アヤのいけずー」
「実の子供の前でいう台詞ですか!」
「まったく、真面目なんだから……誰に似たんだか」
「母上が不真面目なだけです!」
どうやらアヤ姉さんの性格は遺伝ではないらしい。
エーコお姉さんはどう考えてもエミさんゆずりだけど。
むしろ、こんな家族だからこそしっかりとした性格になったのかもしれない。
「少しは不真面目になった方が、人生楽しいわよ?」
「結構です!」
「もう……そんなんだから、いつまでたってもあなたは処女なのよ」
「なっ!」
……何か今、凄い事を聞いたような。
「は、母上っ!」
「あら? もしかしてもう致したのかしら?」
「い、致したって……」
「どうなの? どうなのよ?」
「え、あ、いや、その……」
「……」
阿久野アヤ。
27歳。
処女。←やっぱりまだココ
「ったく……一番下の妹を見習いなさいな。今頃あの子、正義の味方とイチャイチャしてるわよ?」
「そ、それとこれとは……」
「ねえ、どんな感じ? 妹に先を越されるってどんな感じ?」
「べ、別に……っ!」
「それとも何、魔法熟女にでもなるつもりなの?」
「熟女言うな!」
顔を真っ赤にして慌てふためくアヤ姉さんを尻目に、エミさんは可笑しそうにケラケラと笑う。
というか、まだ下に妹いたんだ……
「慌てる位なら早く相手見つけなさいよ。こんないい身体してるんだから、相手なんて選り取りみどりでしょ」
「は、母上! 何を!」
エミさんはアヤ姉さんの拘束から抜け出すと、お返しとばかりにアヤ姉さんの胸に手を伸ばす。
「まったく、昔からあんたは奥手なんだから。学生の頃だって何度も告白されたでしょうに」
「わ、私は組織の幹部ですから……」
「私も幹部だったけど、来るものは拒まなかったわよ?」
「拒んでください! というか、それも子供の前でいう台詞じゃないでしょう!」
アヤ姉さんのツッコミを華麗にスルーしつつ、エミさんはアヤ姉さんの胸を無遠慮に揉みまくる。
「ここか? ここがええのんか?」
「どこのエロ親父ですか!」
「昔もこうやって、洗ってあげたでしょう?」
「胸を揉まれた記憶はありません!」
「この胸はわしが育てた」
「育てられた覚えは無い!」
「揉んでくれる相手もいないしねー」
「う、く……」
傍から見ると仲よさそうにじゃれ付いている様にしか見えない二人を横目に見つつ、私とルナは頬を赤らめて、お互いに顔を見合わせる。
「な、なんか、凄いね」
「うむ……さすがキルゼムオールの幹部だ」
「そ、そうね」
感心する所が違うような気がするけれど、悪の組織的には間違っていないのかもしれない。
視線を戻すと、満足そうな笑みを浮かべたエミさんがこちらに近づいてきていた。
「まあ、アヤを弄るのはこれくらいにして……キョーコちゃんもルナちゃんも、ちゃんと相手見つけなさいよ? じゃないとアヤみたいに行き遅れちゃうからね」
「行き遅れてない!」
「黙れ、27歳」
「うう……」
「あの……アヤ姉さん、向こうで膝抱えてますけど……」
「大丈夫、大丈夫。父親に似て、打たれ強い子だから」
「そ、そうですか……」
というか、相手がエミさんだったら、どんな人でも打たれ強くなるような気がする。
勿論、口には出さないけれど。
「まあ、アヤもエーコも大概だけど……一番心配なのはジローなのよね」
「ジローが、ですか?」
「そう、あの子は何というか……常識を知らないから」
「……確かに」
母親の前で肯定するのもどうかと思ったが、エミさんは私の言葉に大きく頷いていた。
「唯一の男の子だからって、みんなちょっと甘やかしすぎたからね……だから、今回帰ってきた時はちょっと驚いたわよ」
「? 何がですか?」
「昔より大分まともになったってね」
……あれで、大分まともになった方なのか。
「ふふ、なんか納得いかないって顔してるわね、キョーコちゃん」
「そ、そんな事は……」
思っていたけれど。
「いいのよ、前のジローを見てないと分からないかもしれないしね」
エミさんは苦笑しながら、私とルナの隣へと腰掛ける。
「前にアヤがそっちに行った時も驚いてたわよ。ジローが立派になってたって……それも全部、キョーコちゃんのおかげだって」
「わ、私ですか?」
慌ててアヤ姉さんの方を見ると、アヤ姉さんは膝を抱えたまま小さく頷いていた。
「べ、別に私、何もしてないですけど……」
「何もしてなくても、側にいるだけで良い影響を与える相手ってのはいるのよ」
私とあの子みたいにね、とエミさんはルナの頭を撫でる。
「キョーコちゃんも、ルナちゃんも、そしてジローも……お互いにいい影響を与えれるような関係になって欲しいって私は思ってるわ」
優しい目で呟くエミさん。
私はその目を知っている。
知っていて、そしてしばらく忘れていた、その目。
それは――母親の目だった。
「二人とも、ジローをよろしくね」
正直な話、ジローは迷惑な奴だと今でも思っている。
思ってはいるけれど――嫌な奴では無いとも分かっている。
だから――
「はい」
「ああ、まかせておけ」
私とルナは、同じタイミングで言葉を返す。
そしてお互いに目を合わせて、笑い会う。
エミさんとルナの母さんの様に、私たちもそういう関係になれたらいいと思う。
その中にジローも入れてやるか。頼まれちゃったしね。
「ふふ、ありがと」
エミさんは満面の笑みを浮かべながら、私たちの頭を撫でてくれた。
それは、久しぶりに感じる母親の手だった。
「よし、じゃあ今日は一緒に寝よっか? ルナちゃんも一緒にね」
「わ、私もか?」
「大丈夫、母親にはもう連絡してるから」
いたずらっぽく笑うエミさん。その手際の良さに私たちは苦笑を返すしかなかった。
「なんならジローも……」
「いや、それはいいです」
「だよね、寝るなら二人きりの方がいいもんね」
「……はい?」
「なんと、二人はそこまで……」
「違うから!」
慌てふためく私を尻目に、エミさんはルナの耳元に口を寄せる。
「実はこっちに来る前に名古屋で二人っきりで一泊してるのよ」
「なんと……実家に挨拶に来る前に婚前交渉とは……」
「まてこら」
あんた分かってて誤解してるでしょ!
エミさんもわざわざ紛らわしい言い方するな!
「そうなると、やはりここは二人一緒の部屋にするべきだな」
「そうよね……勿論、布団は一つで」
「枕は二つと」
「ひ、避妊具は用意しておいた方がいいかと」
さっきまでの良い雰囲気はどこへやら。
私を置いて無駄に盛り上がる三人……って、アヤさんもいつの間にか加わってるし。
「……もうやだ、この悪の組織」
呆れたように呟いて、私は湯船にざぶんと身体を沈める。
綺麗な星空の下、私の呟きに答えてくれたのは迷子の蛍の明滅だけだった。
「ところで母上、私が弄られた意味はあったのですか?」
「んー、別に」
「別にって……」
「でも、行き遅れてるのは本当だしねー」
「う……」
「あんたといい、エーコといい、早く身を固めて欲しいのだけど」
「……精進します」
*****
「くそー、私も一緒にお風呂入りたいのにー! ジロー手伝ってよー!」
「いや、母上から手伝うなと言われているので……」
「ちくしょー! 私の出番これだけかよー!」
――おしまい。
>>271のSSと微妙にリンクしたりしてるので、まだ読んでない人は先にそちらを読んでいただけるともっと楽しめるかと
長々と読んでいただきありがとうございました
ではまた ノシ
ナイス低能!
エミさん、はっちゃけすぎだw
いままさにキョーコ乙型が俺の中で最高に萌えている。
でも、原作を超える萌エロは書けそうにない。
乙型可愛いけどはじあくてきには今週重かったなぁ
國生さんに見えた
松雪氏GJ!
そして乙型期待age
AI萌えでメイド萌えな俺にはキョーコ乙型はクリティカルヒットすぎる
最近、ジロー×キョーコを保ったままジローと乙型でエロい展開に持っていくにはどうすべきか
悶々と考え続けている
おれはジローがどうやったらキョーコに変態的なプレイを強要できるのかを考え続けて
熱が出た
とりあえずジローが不思議な機械か薬でキョーコの体の自由を奪うとこまではいいのだが
キョーコが猛烈に暴れまくる上に腕力・体力・気の強さが半端ないものを無力化しているので
どう考えてもレイプです。本当にありがとうございました。
逆に考えるんだ
ジローを襲えばいいのだと!
性転換薬でジロー女性化とか考えたけど、それだと相手は男性化したキョーコか・・・
と、考えて、頭に浮かんだのはどう見ても百舌鳥さんです、本当に(ry
>>361 レイプだっていいじゃないか、ここはエロパロだ
>>360 先週号のネタだと、
(ヒューズを取り替えたのはいいが……AIも一応見ておくか。
しかし、父上は『おんなはしきゅうでかんがえる』といっていたが、
腰周りにAIの機能を詰め込むとはまた不可思議な……)
(どうもこの三角形の布カバーをはずすというのが恥ずかしいが、
これも乙型のためだ。ええい、一気に)
これがスイッチか、とか、制御棒とかは自制。
「全身を防水加工するのは手間だから、とりあえず間に合わせで作ってみた
防水ジェルだ。これを全身に塗布すれば雨に降られようが川に落ちようが
支障はない。ただし効果は3日ほどしか続かん」
という感じでジローが乙型の全身にジェルを塗って乙型初めての感覚にアンアン、
ジローも乙型の予想外の反応にゴクリ、というのを思いついたが
いかんせん俺は乙型初登場の回を見逃したので、設定に矛盾が出そうで不安だ
乙型のボディはジローが作ったの?親父が製作に関与してるの?
父親の作ったAIをジローが作ったボディに組み込んだって言ってたはず
>>362 ジローを襲うキョーコが変態プレイとな。ゴクリ。
だがおれは無理やり押さえつけられたキョーコが始めは嫌がっていたのに
ジローの手によってだんだん気持ちよくなっていく身体に抗えない
羞恥心と快感でわけが分からなくなっちゃうつるぺたキョーコたんが好きなんだよおぉぉぉ
だがそもそもジローにキョーコを押し倒すほどの性欲があるのかが謎
>>366 d
じゃあ乙型の体はジロー好みのサイズって考えていいのか
しかしジローがどこまで性的な知識があるのかが不安だ
1話じゃ「男を縛るのはつまらん」とか言ってたが、女を縛るのがなぜつまらなくないのかとか
わかってんのかなコイツ
女体の実物を見た事がなかった則巻博士のつくったあの子はアレがなかったそうな
>>367 浴衣キョーコの回を思い出せ!
蚊が出なかったバージョンを妄想するんだ!
もしくはマントの中に2人で入ってしまうバージョン
それだ!ぬぬぬ
>>370どの、さぞ名のあるモノノフとお見受けするっ!
だがしかしジローはバスタオル一枚のキョーコに接触すると気絶しちまーほど純情だぜ!?
ジローに変態プレイを妄想はできても実行する胆力などっ!
後一押し!後一押しを誰か!
つ おねーちゃんがお酒を飲ませた結果暴走
保
酒
藤木も同人誌だす時代になったんだねぇ
二年以上前の本だけどな
懐かしいな……わざわざ買いに行ったもんだ
保守
シズカ参戦は黒髪ロングスキーとして素直に嬉しいがかませにしかならなさそうなのがなー
でもジローは悪の組織なんだからハーレムだってあってもいいよね
某ライトノベルのように法律を変える
ジローヘタレだからな
ハーレムどころか恋人すら作れるか……
キョーコには頑張っていただきたい
382 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 04:27:43 ID:PhcX+Oo0
保守を兼ねて、今さらですが我聞×陽菜の小ネタ。エロ無し。
9巻真芝に乗り込む前の場面。
第一研壊滅を誓い、ゆびきりする我聞と陽菜。
「…ふふ」
微笑む陽菜。
「む?どうした?」
「いえ…そういえば、よく私の父ともゆびきりをしたな、と思って。父は約束事に特に厳しい人でしたから。」
準備のために事務所に向かう我聞を見送る陽菜。
ただし、彼女が微笑んだのは父との約束を思い出したからだけではない。
彼女はもう一つの、彼女もとっくに忘れてしまっていたゆびきりを思い出していた。
それは陽菜がまだ小学生に上がる前の話。
「おとーさーん!」
「む?どうした陽菜?」
「ガモンくんがねー、私のことお嫁さんにしてくれるってー!今指切りしたんだよー!」
私でさえ忘れていた昔のことだ、社長もとっくに忘れているだろう。
そして、何よりこれから真芝第一研の壊滅作戦が控えている、甘い思い出に浸っている場合ではない。
でも、全てが終わり、父と先代が無事戻った時には…彼は「社長」でなくなるし、私も「秘書」でなくなるはずだ。
「その時には我聞くんって呼んでいいのかな…」
陽菜はゆびきりした右手をじっと見つめながら、現実に戻るかのように、
「がんばろうね、我聞くん…みんなを悲しませないために」
383 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 19:06:44 ID:Ad8JKjL1
うひゃひゃひゃひゃ
384 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 11:25:57 ID:h+0bsd43
いよおおおし
385 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 23:12:51 ID:z+FHI7Hx
あげ
386 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 18:45:08 ID:uxu9QZgz
あけましておめでとうございます
ほしゅあげ
ほんわか大阪弁キャラ、イイ!
388 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/16(土) 23:23:46 ID:N1iuyExR
ほしゅしとくぜ
>>43-53 超亀だが今見てきたらおとっつぁんの勇姿が拝めるだけなんだな
あの時の噂の大中小とかまだ持ってる人いる?
ほしゅ
ほし
はじめてのあく4巻で登場した乙型が陽菜さんにしか見えなかった。
そんなの陽菜さんじゃない!
いや、そうでもないか?
「はじめてのあく」と「ギガグリーン」は同じ世界みたいだけど、「こわしや我聞」とは別世界ってことになってる?
なんかクロスオーバーできたら面白いなぁってボンヤリ考えてた。
原作設定がどうかはわからんが
二次創作でクロスオーバーする分には構わんだろ
同じ作者の作品なんだし