「ほら、もう一枚撮るって」
「はい、じゃあ次は――」
「正面向いて目つむってジッとしててくれるかな?」
「? こう……ですか?」
藤岡君の隣で大きく深呼吸をして目をつむり、シャッター音と同じタイミングで――
――――ちゅっ…
「!!?」
「…………」
「あっ、あの、えっと、あっ……」
右のほっぺを抑えて慌てる藤岡君を見て、私はなんとか笑みを浮かべる。
「カナちゃんだって、これくらいはしてくれるかもしれないよ?」
「そ、そうですか?」
「うん、だから頑張ってね」
私はそう言って、一目散にトイレへ駆け込んだ。
「もう、顔が熱くて頭から湯気が出ちゃいそうだよ……」
そう呟きながら、手でパタパタと顔を仰いで熱を冷ます。
「でも……今のは少しお姉さんっぽかったよね。……うん」
私が戻ると、藤岡君はすでに出来上がったプリクラをハサミで切り分け、
その半分を私に手渡してくれた。
うわぁ……ばっちり撮れちゃってるよ……
自分でしておきながら、写真を見るとまた恥ずかしくなってくる。
一方の藤岡君も、恥ずかしそうに笑いながらそのプリクラを鞄へしまった。
結局この後はボーリングをして映画をみて――と、定番のデートコースを回り私は家へ帰宅。
そして寝る前、二人で撮ったプリクラを眺めながら私はふと考えていた。
「なんだかこのプリクラ……私、すごく楽しそうに移ってる……」
それは、今まで友達と撮ったどのプリクラよりも楽しそうで――
「まるで本当にデートしてるみたいで楽しかったなぁ……」
そんな事を考えながら私はその日眠りに着いたのでした……。