【初音ミク】VOCALOID総合エロパロ7【ボーカロイド】

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773名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 20:10:20 ID:r8l/Inn2
「ミクの要望に応えれそうに無いって僕は何回言ったけ?」
カイトは嗜虐趣味も披虐趣味もさっぱりだ。
世の中広いからこのミクでも「カイト!俺と変われ!!」と怒鳴られるかもしれん。
少なくともソコで延びている紫は言う。
このカイトなら変わります。マジです。今ならがくぽも付いてきます。お得です。
「がくぽにしたら?」
方向もSMでぴったりだ。
「ミクはおにいちゃんは好き!!」
カイトはため息が止まらない。
「僕は眠い」
ズリズリとパジャマの襟を掴んで扉の外にだす。
「お休み」
しっかり施錠も怠らない。扉の前に本棚も移動させた。
ミクはしばらく扉を悲しげにカリカリひっかいていたが、30分で諦めて帰って行った。
がくぽは沈黙したままだし、今からマスターの起きる迄3時間はゆっくりスリープモードに入れそうだ。
カイトは頭から布団を被り、速やかに寝た。

以上「カイト、淫らな夜の生活」でした。
774名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 20:16:18 ID:r8l/Inn2
鬼畜の意味から間違えました。つか色んなもの間違えました。
KAITOいらなかった

先輩はボーカロイド知ってるかどうかも知らない仕事でしかお話ししない人です。
はりきって異性です。
まぁ、知ってようが知らなかろうが\(^o^)/な内容です。自分終了のお知らせ。
775名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 23:11:58 ID:4OCQaioc
>774
GJ!ワロタwww
よっぽどKAITOの方が鬼畜に見えた件www
いや、変態達相手じゃ仕方ないかもしれんがw

どこら辺をどこまでしっかり見られていたかが問題ですな\(^o^)/ 
776名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 01:12:40 ID:ZATk5an8
>>760
つ、続きは?続きはないのお兄ちゃん?

>>770
もうひっくり返ったまま停止してるがくぽを想像しただけでクソワロタw
777家出:2008/09/20(土) 02:16:38 ID:fEv9bxEM
「もうたくさんだ!」
レンは叫んだ。
「もうたくさんだ!」
大事なことなので2度叫んだ。
「どうしておれはいつもろくな目に遭わないんだ!
 どうしていつもオチに使われるんだ!」

虐げられた者はいつか反乱を起こす。
それは歴史の必然なのかもしれない。
レンは今まさに殻を破ろうとしていた。

「おれはこの家を出る!
 止めるなよ、リン!」
「いってらっしゃい」
リンはソファーに寝転んでせんべいをかじっている。
勢いよく玄関の扉を開けたとき、そこには両手にスーパーの袋を持った青い兄が立っていた。
「あれ、これから出かけるの?
 おやつ食べない?」
「いらないっ!」
レンは駆けだした。
あてなどない。
金もない。
それでもレンに迷いはなかった。
自由のため、誇りのため、何より自分自身の未来のために、レンの冒険は始まったのだ。


「ふ〜ん、それで帰ってこないんだ」
その日の夜、レン以外の4人はいたって平和に食卓を囲んでいた。
話題はもちろん勝手に家出した末弟のことだ。
「のんきすぎだよお姉ちゃん、もしレンに何かあったらどうするの?」
ミクは苛立っていた。
自分以外誰も弟のことを心配していない、そのことが信じられなかった。
「ま、あいつも男の子だったってことね」
「そういえば僕にもそんな時期があったなあ」
「カイト兄にも? へーその時はメイコ姉も焦ったんじゃないの?」
リンが身を乗り出して目を輝かせる。
メイコは苦笑しつつ首を横に振った。
「まさか! ぶん殴って性根を叩き直してやったわ」
「あれは効いたなあ…めーちゃん涙流して怒ってくるんだもん」
「ば、ばかっ! 何言ってんのよ!」
和気藹々としたいつも通りの食卓。
それはあまりにも普通の光景で、しかしとても大切なものが欠けている。

いつのまにかリビングは静かになっていた。
誰よりも騒がしいムードメーカーはそこにはいなかった。
778家出:2008/09/20(土) 02:17:25 ID:fEv9bxEM
「あ、雨…」
ミクが窓の外に目をやる。
あっという間に雨脚は激しくなり家の中にも強い音が聞こえるようになった。
「こりゃまずいわね」
いくら健康な男児といえどこの雨の中いつまでも外にいたら風邪を引くかもしれない。
それぐらいの判断は酔っぱらいの長姉にもできる。
「あたし、レンを探してくる!」
飛び出すミクを大きな手が制止した。
「待って! 僕一人で探すよ」
「でも…!」
「いいんだ。夜道は女の子一人じゃ危ないし…。
 それに、男同士でしかできない話もあるし、ね」
ミクは納得できないようだったが、カイトが優しく微笑むとそれ以上反論はしなかった。
「じゃ、行ってくる」
「ん」
メイコはグラスに口をつけながらカイトを見送った。
そんなやりとりを眺めていたリンの、茶碗のご飯はほとんど減っていない。
「レンのばか」
誰にも聞こえないようにつぶやいて、リンは窓の外をぼうっと見つめるのだった。


 なんだか一階が騒がしい。
自室の二段ベッドの上段で布団にくるまっていたリンは、ふとそんなことを思った。
今何時だろうか。結構遅い時間のような気がする。
耳を澄ましているとそのうち下は静かになって、代わりに一つの足音が階段を上ってきた。
リンはこの音を知っていた。
誰よりもよく知っていた。
ドアの開く音がした。

「おかえり」
「…起きてたのか」
「どうだった」
「う〜ん…」
足音の主はしばらく黙り込んで頭をポリポリとかいた。
「ガンガン怒られちゃった。
 ミク姉に泣きつかれちゃってさ、
 バカバカって人をカイト兄みたいに」
それだけ言うと自嘲気味に笑って、また少し静かになった。
リンは嬉しかった。なせだか自分でもわからないが、無性に嬉しかった。
「家出は当分やめにしとくよ」
「それがいいでしょ」
それきり二人とも何も言わなかった。

(今度は二人でどこか行こうね。
 嫌だって言っても聞いてあげないんだから)


                                    おしまい
779名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 05:58:08 ID:R4EZFlTE
>>778
>レンの冒険は始まったのだ。
ごめん、ここまで何時も通り可哀想なれんきゅんの話かと思ってた。

リン可愛いよリン。
いいなあ、このきょうだい。
7807時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:19:38 ID:pviRPAE1
4スレぶりの投下になります。
というか、覚えている人はいるんでしょうか。
毎度、カイメイ非エロで申し訳ございません。マスター出張ってます。
それでは本編。


 秋口になろうというのに、部屋の中は蒸し風呂のような熱を帯びていた。
 いつもは賑やかに音を発しているテレビも、今日は少しでも熱源を絶つ意味で、沈黙を余儀なくされている。
 それにしても暑い――プログラムがショートするんじゃないかって思うくらい暑い。
 ていうか。アイス食べたい。死ぬ、アイス食べなきゃ死ぬ。
 ホンの一時間前は、冷蔵庫まで歩けたのに、今はもう膝が溶けたみたいに、全然動かない。
 なにこれ、異常気象。フロン作り出すとか、馬鹿じゃないの人間。ボーカロイド作る前にオゾン直せよ、人間!
 うう。なんか、さっきから深刻なエラーが出てる気がする。アイス食べなきゃ。
 そうは思っても、やっぱり膝は動かず、暗いままのテレビと睨めっこする形のまま、数十分が過ぎた。
 もう、限界……。
「カイ……ト。いきてる?」
 遂に助け舟、もとい天使の声が後ろから聞こえた。ホンの少しだけ、元気になった気がした。
 なんとか、メイちゃんに今の状況を伝えようと、出せる限りの声を絞り出す。
「ちょ……と不安。おねがい、アイス」
「ごめん――私もビール頼もうとしてたの」
「あははは。そうなんだ」
「ふふふふ。そうな」
 ばたり、と後ろで倒れる音。そして、甲高い緊急停止音が虚しく響いた。
 メイちゃんは初期型だから、冷却機能も旧型な分、停止するのも早かったんだろう。
 涼しくなるまでは、しばらく起動できないだろう。
 あーもう。マスターが冷房代ケチるから、こんなことに。いや、俺が一日三ダッツを守って、アイス代を節約してれば、こんな事には。
 明日からは、隠れてダッツ十個とか食べないようにしよう。たぶん、あと5分くらいで俺も止まるんじゃないだろうか。
 緊急停止って、初体験だな。あれかな、漫画みたいに今日の記憶無くなるんだろうな。
 ダッツ制限もなかった事になるのか。良いのか悪いのか、わかんないけど。
 とりあえず、ひとつ言えることは。
「グッバイ! 今日の俺――」
 カイトは めのまえが まっくらになった。



7817時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:20:43 ID:pviRPAE1
 涼しい風が頬を撫でる。服が染み出てしまった冷却液で、ぐっしょりと濡れている。
 随分、酷い悪夢を見ていたんだろう。どんな夢だったのかは、忘れたけど。
 それにしても、布団で寝てたつもりが、居間で寝てるなんて、俺って寝相悪いんだな。
 うん、これを理由に今度から、メイちゃんに抱きしめて寝てもらおう。悪夢も解消されて、一石二鳥だ。
 と、ちょっとした妄想に耽っていると、二階の方からメイちゃんの声が聞こえた。
「ちょっとカイト! いつまで寝てるの。さっさと、濡れタオルと氷嚢持って二階来なさい」
 なんだか焦ってるみたいだ。珍しいなと思いながら、ふと壁に掛かっている時計を見ると、時計の針が上から下まで、綺麗な直線を引いていた。
 まだ、朝の六時か。今日は早く起きちゃったな部屋も橙色に染まって綺麗……あれ?
 もしかして、夕方の六時? しまった、いいとも見過ごした! じゃなくて。
「カイト! 早く、タオルと氷嚢」
「は。ハイ」
 状況がよく分からないけれど、台所へ行き洗面器に水とタオルを入れた。
 それから、ヒョウノウ? えーと、氷かな。氷――アイス、アイスか! ようやく、メイちゃんもアイスの素晴しさに気づいたのか。
 じゃあ、取って置きのアイスを持っていかないと。えーと、たしか冷凍庫の二段目の右奥に……あった、伝説のパインヨーグルトアイス!
 メイちゃんが食べてくれるなら、二年も手を付けられずにおいていた甲斐があったというものだ。
 鼻歌交じりに洗面器とアイスを手に持って、階段を上がる。
 ありがとうカイト。大好き。いやいや、メイちゃんの頼みなら、こんなの朝飯前さ。
 そして、ベッドでアイスを食べつつ、愛を確かめ合う。嗚呼、妄想が……いやロマンチックが止まらない。
「めーいちゃん。洗面器とアイスもって来たよー!」
 ばき――っ。という音と共に、顔面に膝がめり込んだ。え、なんで、え?
「あ、ごべ……スプーン忘れて」
「違う! なんで、病人にアイス食べさせようとしてんの!」
 え、だってヒョウノウって。え、アイスじゃないの? あ、棒アイスか。
「え、病気って……メイちゃんが?」
「はあ――ボーカロイドは風邪引かないでしょうが。風邪引いてるのはマスターよ」
「そんな。マスターが病気なんて、明日どころか十分後にでも天変地異のフルコースが来るよ!?」
 えーと、えーと。ペットボトルの水と、アイスと携帯布団と懐中電灯とアイスとサバイバルグッズと。
 あと用意しなきゃいけないのはなんだっけ。
「あ、メイちゃん! 冷凍庫、冷凍庫用意しなきゃ」
 次はお腹に膝を打ち込まれました。ちょっとした、冗談なのに。
「もう良いから、洗面器もって部屋の中入って」
「はーい。マスター元気ぃ」
 ドアを開けた瞬間、もわっとした空気が顔に当たり、荒い息遣いがソファの方から聞こえた。
 床の散乱具合から見ると、床で倒れてたのをメイちゃんが見つけて、ソファに運び込んだんだろう。
 マスターはすこし息苦しそうに、こちらの方を向き手を上げてひらひらと振った。
7827時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:21:29 ID:pviRPAE1
 いつも付けているメガネは外していて、顔もほんのりと紅い。熱があるのだろうか。
 ワイシャツは汗でべったりと肌に張り付き、女性特有の丸みを帯びたラインが浮き出ている。
 本当に弱っているようで、少し不安になった。
「……ん。騒がしいと思ったら、カイトか。おはよ」
 憎まれ口を叩くのかと思いきや、少し苦笑いを浮かべながらの挨拶。
 あー調子狂うなあ。
「カイト。隣の部屋のベッドにマスター移さなきゃいけないから、ちょっと運んできて」
「いや、良いよ。私はここで十分、もう熱も引いてるから」
 それに、ベッドで寝たらお前らが寝れないじゃないか。と、マスターが付け加えた。
「駄目です。アタシたちは寝てなくても、普通に生活は出来ますけど、マスターは人間です。それに風邪を引いてるんですから、しっかり寝て治してください」
「いや、今日は夜から大事な会合があって」
「駄目です! 仕事よりも、身体を大切にしてください」
「ちなみに、今日の会合に行けなくなると、今月の酒とアイスを買う資金が無くなるんだが」
「う……そ、それくらいなら、我慢できます!」
「お、俺も一日一ダッツで我慢する!」
 メイちゃんの拳が頭に振り下ろされた。あれー俺、変な事言ったかな?
「場合によっては、生活費も底を尽くかもしれない」
「それなら――あ、アルバイトします。カイトと二人で働けば、三人分くらいは何とか」
「ボーカロイドが歌以外の仕事が出来るのか?」
 む、マスターにしてはもっともな意見だ。でも、メイちゃんの好意は受け取るべきだと思う。
 本当に死にそうな感じだし。
「う……じゃ、じゃあ脱ぎます!」
「え――あ、え!」
 メイちゃんが脱ぐ。あの白肌をカメラの前、俺以外に見せる……そんなのダメ絶対!
 う、でも。あんなポーズやこんなポーズをするメイちゃんも、見てみたい気もする。
 もちろん、カメラマンは俺!
「カイトが!」
「俺がっ!?」
 え、俺ふんどし付けてカメラの前に立つの? え、やだ……なんか気持ち悪い。
 ていうか、需要ありますか。え、あるの、でも嫌ですよ。
7837時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:22:12 ID:pviRPAE1
 くすり、とソファの方から笑い声が零れた。どうも、からかわれてたみたいだ。
 このマスター本当は風邪引いてないんじゃないか?
 メイちゃんが、溜息を吐きながら、俺の手から洗面器を掠め取り、ソファの方へ寄っていった。
「百歩譲って、ベッドへの移動は諦めます。でも、今日は絶対安静ですから」
「分かった。お前らの言葉に甘えさせてもらうよ」
 マスターにしては、随分あっさりと折れたものだ。
 メイちゃんがタオルを絞り、汗の吹き出ている額や腕を丁寧に拭いていく。
 そして、シャツのボタンへと手が掛けられ、控えめながらも確かに膨らみのある白肌が、シャツの隙間から顔を覗かせた。
 そんな風に、手馴れたように進めていく作業をボーっとした頭で見つめていた。
「……イト――カイト!」
「あ、はい! なに、何を手伝おっか」
「終わるまで! 外に出てけって! 言ってんの、よ!」
 今日一番のハイキック→後ろ回し蹴り→踵落としの三連コンボが決まりました。
 よく死ななかった。頑張ったよ、俺。あと、あと黒の紐パンも好きですが、もうちょっと大人しめな色も大好きです。
 
 
 廊下に閉め出され、何もやる事がなくなってしまった。
 持ってきたアイスも部屋の熱気に当てられ、良い感じに溶けてしまっている。
 うう、メイちゃんに食べさせてあげたかったのに……ん、甘酸っぱくて美味しい。
 本当なら、もっと味わいながら食べたかったんだけどなぁ。
 結局、数分ほどで半分を食してしまい、その頃にはメイちゃんも、マスターの身体を拭き終わっていた。
「それじゃ、おかゆ作ってくるから。マスターが脱走しないように、ちゃんと見張ってなさい。10分くらいで出来上がるから、取りに着なさい」
 こくり、と俺が頷いたのを確認したのか、メイちゃんは洗面器を持って足早に階段を降りていく。
 そして、暗い部屋にマスターと俺だけが取り残された。
 どうやら、服も着替えさせてもらっているらしく、ワイシャツではなくメイちゃんの部屋着へと変わっていた。
 胸囲が違うためか、胸の部分の布が余っていて、その間から白い肌がチラチラと見えている。ノーブラか、ノーブラ仕様か!
「さて、と。カイト、服とって。出掛けるから」
「だめですー。メイちゃんから、見張っているように言われてますんで」
 軽い舌打ちが聞こえた。メイちゃんが過保護な事くらい、知ってるくせに。
「仕事、仕事、仕事って、もうちょっと自分の事考えてください。俺たちだって、最低限の事なら出来るんですから」
 一人で勝手に頑張って、一人で勝手に倒れないでください。
「酒もアイスも買えないぞ」
 機嫌を損ねたのか、ソファの方からマスターの唸り声が聞こえた。
 俺だって、メイちゃんの頼みじゃなかったら、こうやってマスターを見張る事なんかしてない。 
 まあ、少しくらいは心配はするだろうけど。
「カイト」
「服は取りません。窓も開けません。靴も取ってきません」
「いや、アイスくれ」
7847時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:23:04 ID:pviRPAE1
 喉が熱くて気持ち悪いんだ。と、言ってマスターは俺の持っているカップアイスを指差した。
 本当はメイちゃんと食べるつもりだったんだけれど、二人で食べるつもりだったんだけど。
 まあ、半分食べちゃったし。メイちゃんも、それ所じゃなさそうだし……。
「一口だけですよ」
 そう断りを入れて、ソファの横にあったテーブルにアイスを置いた。
 だが、一向に食べる気配がない。え、なに俺のアイス食えないって言うの、え?
「身体上げるの、だるい」
「あーはいはい。鈍くて申し訳ございませんでした、食べさせりゃいいんですね」
 スプーンでアイスを掬い、マスターの口元へ持っていくと、気だるそうに口を半分開け、もう殆ど溶けているアイスを啜った。
 ぐ、ちょっと押し負けた感じじゃないか、くそぅ。
「ん。溶け過ぎだな」
「文句言わないでください……全く。うあ、もう七時だ。いつもなら、メイちゃんと一緒にお風呂入ってる時間なのに」
 そう言って、マスターの額に手を当てた。
 ボーカロイドに、温度を測るような機能は付いていないけど、少しくらいなら楽にはなるかも知れない。
 マスターが大人しく寝ていれば、メイちゃんの手も煩わせずに済むし。
「んー冷たい。もうちょっと、このまま」
 やっぱ、やめた。
 くすり、とマスターが笑う。やっぱり性格悪いよね、このマスター。
「今度は子守唄でも歌ってくれるの? ちょっと期待してるんだけど」
「俺はメイちゃんのためにしか歌わないんですー。マスターなんかには歌ってあげません」
 やっぱり、マスターはソファで丸まって、あの意地の悪い笑いを漏らしていた。
 データの海の中から、唯一知っている歌を引き上げる。マスターから教えてもらった、最初の曲。というか、これしか教えてもらっていないんだけど。
 教えてもらったときは、メイちゃんと二人で朝から晩まで歌い続けていたのを覚えている。
 車のCMで流れている曲、らしい。
 マスターの思い通りに動かされてる気もするけれど、まあ久しぶりに歌うのも良いかもしれない。
 そういえば、マスターの前で歌うのって初めてなんだ。
 懐かしい前奏が頭の中に流れる。あ、ソロで歌うのも初めてな気がする。
そして、ワンフレーズを歌いきろうとしたとき、きょとんとした顔でマスターが口を開いた。
「メイコのためにしか歌わないんじゃなかったか? 此処からじゃ、下には届かないぞ」
「……俺とメイちゃんは心で繋がってるんですー。だから、離れてても思いが通じるんですー」
「そうか。あ、続けてくれ」
 返事はせず、今度はマスターに背を向けるようにして、歌を続ける。
7857時10分 ◆zI0x./w2iY :2008/09/20(土) 14:25:52 ID:pviRPAE1
 
 それから数分で、歌が終わってしまった。時計を見ると、長い針が3の数字を指していた。
 もう行かなきゃ。
 そう思って、ドアの方へ向かおうとしたとき。
「ありがとう」
 と、耳を疑うような言葉が聞こえた。
「う……メイちゃんのために歌ってたんですー。お礼を言われるような事はしてないです!」
「ん。それでも、ありがとう。私が教えた曲、覚えていてくれて」
 そんな弱々しい返事が返ってきて、なんだか調子が狂った。
「ボーカロイドだから、データに記憶できるから、当然です……」
「ああ、そうか。うん、やっぱり便利な機能だな」
「マスターも、家事してくれる男を捕まえたらどうですか? 性格と胸はともかく、顔は良いんですから、一人や二人捕まえてください」
 そんな話をしている内に、テーブルにおいてある目覚まし時計が、4を指していた。
 何となく、それを手に取り、後ろの調節ネジを回して、針を数分戻して、テーブルに置く。
「あーあ。歌ってると、時間って全然進まないモンなんですね。もう一曲くらい歌えそうです」
 メイちゃんに怒られるのは、いつもの事だから。
 それよりも、今は間の抜けた顔をしているマスターの顔を見ながら歌ってる方が良いや。

 結局、2曲目の途中でメイちゃんに怒られて、そのまま部屋を出ようとしたとき、ソファの方から声を掛けられた。
 いつもより、ホンの少しだけど寂しげな表情をして、クッションを抱いている。
「時間って、戻ると思うか」
「さっき、戻ったじゃないですか」
「ほんの数分だけど?」
「数分でも、そうやってクッションに抱きついてるだけよりは良いんじゃないですか?」
 ごもっとも。と、軽い返事が返ってきた。
 もう、さっきの寂しそうな表情は消えていた。
「そんなに大事な人なら、さっさと謝るなり何なりして、ヨリ戻してください。そうしなきゃ、俺もメイちゃんも不安で溜まりませんから」
「向こうが謝ってくれば、考えてやらない事もない」
 会話だけだったけれど、ホンの少し歌っただけだけれど、ドッと疲れた気がした。
 そんな秋口の夜の数分の出来事。

 追記。翌日、蓄積データが氾濫を起こして、寝込みました。いつもより、アイスの量は少なかったのに、なんでだろう?

おしまい

 思った以上に長くなってしまいました。申し訳ございません。
 あくまでカイメイです。見えなくてもカイメイです。ほんのりカイメイです。
 読んでくださった方、本当にありがとうございます。
786名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 15:11:02 ID:IJBzBCYI
<<777 そだよねぇ、男の子だもんな。家出くらいアリですなぁ。
こんなほのぼの好きです。

<<770です。
見られた可能性があるのは、KAITO出てくる前迄です。
エロパート先に書こうとした結果です\(^o^)/
がくミクにする予定だったんだ・・・
ああぁぁぁぁあああああああああぁ
787名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 15:17:21 ID:4Lqez97W
書き手は作品で語れ。うざったい
788名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 15:26:03 ID:iLqZuHGu
>>780
覚えとりますよあの端末は使用したのかKAITO
バカイト成分が多くなってるぞKAITO
ごちそうさまでした。
789名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 16:37:03 ID:ELBWpIIN
がくリンの波に乗り損ねた・・・でも空気読まずに投下。
小ネタです。エロ成分低め。

「だっ、駄目だよこんな格好!」
「大丈夫よ、と〜っても可愛いから」
「そうそう、がくぽさんもイチコロよっ」
「せっかくリンちゃんのために選んだんだから、使ってくれないと寂しいわ」
「リンちゃんに合わせて白にしたのに」
「〜〜〜っ、分かった、行ってくればいいんでしょ!」
半ばヤケであたしは猫耳、ファーのベアトップにホットパンツ(尻尾付き)でがっくんの部屋に向かう。
なによ、いきなり人の部屋に入ってきてパンツいっちょに剥いて変な服着せて、似合うだとか可愛いだとか。でも、何故か逆らえない自分が悲しい。
ノックして入ると、あたしの方を見たままがっくんは固まってしまった。慣れない格好にもじもじしてしまう。
「ごっごめん、変だよね。あたし、着替えてくるっ」
出て行こうとドアに向かうと、体が宙に浮く。ベッドに降ろされて組み敷かれた。
「そのままで良い。可愛いぞ、リン」
「あ、ちょ、がっくん…」
キスをされてあたしの言葉は行き場をなくす。

あぁ、きっとドアの外では2人が笑い転げてるんだ。

******

違う日のメイコさん視点

今日はナポレオン作戦。名前の由来は、寝ているナポレオンにチーズを嗅がせた際のエピソード。
寝ているがくぽ君に足音を忍ばせて近付く。嫌な夢でも見ているのか、眉を寄せて、辛気くさい表情ね。
その鼻先に、お風呂場から持ち出したリンちゃんのシャンプーの蓋を開けて近付ける。
少しして、でれっと崩れる顔。それだけであたし達は笑いを堪えるのに必死だったんだけど。
「おお、リン、*#%、可愛いやつだ。愛しておるぞ」
枕を抱えてそんな事言うんだから、もう、限界。廊下に出てひとしきり笑う。
声を抑えきれずにげらげらと笑っていると、何事かとリンちゃんが廊下に出てきた。うまく喋れないあたし達を見て立ち尽くす。
「お姉ちゃん達、どうしたの?ていうか、それ、あたしのシャンプー…またがっくんで遊んでたの!?ひどい!」
そう言って駆け出すんだけど、選択肢は自分の部屋かがくぽ君の部屋しかないわけ。で、その時は後者。
「がっくん、え、ちょっと、違うの、んっ、だめぇ…」
音を立てないようにして覗いてみると、リンちゃんはしっかり押し倒されてるのよ。展開早いわね〜。
まぁ、お姉さん達は邪魔しないようにそっとドアを閉めてあげたわ。勿論、笑いは止まらなかったけど。がくぽ君、どんな夢見てたのかしら。
でもリンちゃん、あれじゃあ止めるどころか逆効果よ。まぁ、教えてあげないけど。うふふ。
790名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 16:40:04 ID:ELBWpIIN
>>789の蛇足というかおまけ。

「最初はがくぽ君があんな澄まし顔してリンちゃんと何やってるのかしらって気になったのよね」
「うんうん。で、寝ているリンちゃんをちょっと、うん、ちょっとだよね、あの位。セクシーな格好にして可愛いポーズでリビングのソファに放り出してみただけだもんね」
「そしたらやってきたがくぽ君、顔がだらしない事になってたわよね。あれ、面白かった」
ひとしきりげらげら笑って次の悪戯を練りだす二人だった。

お目汚しすんません。リンはいじめられつつ可愛がられてるといいよ、リン可愛いよリン
791名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 16:57:04 ID:bxfEM9M5
>>785
GJ!
相変わらずMEIKO一筋過ぎるKAITOと、飄々としたマスターのやり取りが好きです。

車のCMの歌はきっとあれだと脳内補完して楽しんどく。
792名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 17:04:17 ID:5pkP6dNL
>>790
GJ!可哀想可愛いw
793名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 17:12:01 ID:yBvHy5X3
>>790
そのうちがくぽさんからの逆襲があるぞ二人ともww(゚∀゚)ニヤニヤ
がくリン可愛いよがくリン
794名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 17:17:03 ID:mQruQXq1
>>790
これは良いがくリン。GJ!
しかし酷い姉さん方だ。けしからん、もっとやれ。
795名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 21:50:46 ID:0YBYgJYA
>>787はきっと小説とかのあとがきを読まないやつ
796名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:01:44 ID:WJItQ7FD
>>795
お前ここは初めてか?力抜けよ…

最近おかしいなこのスレ
797名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:26:08 ID:vUGdG9Hf
きつきつなんですね。容量的な意味で。

テンプレは特に変更無いだろうか。
問題無いなら立てようかと。
798名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:27:51 ID:M7YIE0Yx
>>797
頼む
799名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:27:54 ID:JXP2Zzpr
よろしくたのんます。
保管庫の人もいつもありがとう。
800名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:33:09 ID:vUGdG9Hf
うぃ。んじゃ行ってきます。
ネギ振って待ってておくれ。
801名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:38:42 ID:vUGdG9Hf
おまっとさん。ネギが折れる前に立てられたかい?

【初音ミク】VOCALOID総合エロパロ8【ボーカロイド】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221917849/
802名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:55:52 ID:67HteSTb
新スレ乙。

セウト…ネタが判らない…。埋め
803名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:26:04 ID:6L+ov6rM
スレ立て乙。もう8か、早いもんだな
804名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:27:01 ID:EWtHBkJ9
スレたて乙!
なんか最近スレの雰囲気変わったな
流れ早いし
805名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:43:08 ID:iOH51ZEv
ぶっちゃけ、初期のマスミクオンリーからは考えらんないんだぜw
806名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:52:38 ID:dvxVHs3L
スレたて乙
SS書くのってすごい難しい上にこっぱずかしいんだな
807名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:53:05 ID:dbZfsuHf
そうでもない。
1スレ2スレ目に比べればカプ論争も横槍も少なくいい雰囲気だ。
808名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 01:57:45 ID:0O1AIS4U
しかし最近のカイメイ・がくミク・がくリン率の高さは異常
だれかがくメイを書く猛者はいないか?
809名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 02:14:55 ID:2bwNhQ0T
>>808
丁度それが好きな書き手が集まってるんだな。
すまんね……今書いてるのが当に年長組だわ……
810名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 03:03:11 ID:dbZfsuHf
>>808
猛者となり一旗上げるフラグktkr
無いものは書け!
811名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 05:11:07 ID:K0Sz5J9t
>>456-461のがくぽと>>561のがくぽは違います。違う家のがくぽです。
でも>>451-461のメイコの元彼は>>561のカイトです。
>>561のカイトは妹やら彼女やらをがくぽ型に取られそうだったり取られたりでジェラシーです。
非エロで、刀をがくぽに使わせたかっただけです。
以上をガッテンしていただけましたら埋めネタをひとつ↓
812名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 05:12:33 ID:K0Sz5J9t
「サーセン、そのバイク俺のなんスけど」
 がくぽは自分のバイクに寄り掛かっていた月光仮面みたいなナリの人に声をかけた。
「ああ、コレ、君のなんだ?ごめんごめん……今退くよ」
「?」
 がくぽは訝りながらも、メイコの部屋へ急ぐためにバイクに跨がった。
「バイクっていいよね」
 青色月光仮面が親しげに話しかけて来る。
「ジャジャ馬であればあるほど、より魅力がある……女性に似てると思わないかい?」
「はぁ、そんなもんスか」
 ぶっちゃけこの人怪しいんスけど……。
 がくぽは段々と薄ら寒いものを感じ取っていた。ファミレスの駐車場には、何処からと
もなく地響きが伝わってくる。
「なんか…地震ぽいスね」
「いや、これは墓守の子守歌さ。人のジャジャ馬に手を出した悪い狼を眠らせる、ね」
 青い月光仮面は、顔に巻いた布越し、かけたサングラス越しにもはっきり判るほど、強
く強く…邪悪に笑顔を作った。
「友達選んだ方がいい、仲間は多い方がいい!!殺れっ!!うろたんだーイエロー!!!」

──バキバキバキ!

「ちょっ、い、一体なんなんスか?!」
 月光仮面が高らかに叫ぶと共に、一段と大きくなった地響きが、背後の植込みを蹂躙し
てがくぽに迫ってきた。

──ゴゴゴゴゴゴッ!

 巨大な質量を持った何かが、生け垣を均し、車を均し、がくぽをも平らかにしようと、
その巨躯で全てを蹂躙してゆく。
 がくぽが呆気に取られている内にその黄色い巨躯は驀進し、がくぽをバイクごと潰そう
と速度を早める。
 我に帰ったがくぽが大急ぎでバイクのキーを探す。
(ないっ!ないっ!!ないぃぃぃっ!!!)
「うあああああ!」

──グジャメキャバキバキバキ!!

「お、俺のバイクーーーー!」
 間一髪でバイクから飛び退いたがくぽが絶叫する。
「ははははは!いいぞリン!レン!そのまま奴も土に返してやれ!俺からメイコを奪った
罪を命で償わせるんだ!!丸括弧斜点曲る斜点井!!」
 青い月光仮面は携帯で声高らかに通信しつつ駆け去った。
 その電話の直後、辺りを踏みつぶしまくる重機の運転席横では、中学生くらいの男の子
がメール作成画面で顔文字を打った。
「ブルー、なんて言ってたぁ?」
 運転を担当している女の子が聞く。
 男の子は携帯のディスプレイを女の子に見せる。
《(`曲´#)》
「あははぁ。怒ってる怒ってるぅ。ちゃっちゃと殺って笑わせてあげようね♪」
 一方その時のがくぽは、
「ぐ……ローンどんだけ残ってると思ってんスか…?!俺のバイク……」
 本気で泣きっ面である。
「マジ、許さねぇっス……ぶちかましちゃっていいスか!!?」
 がくぽは車道に立ち、Uターンして向かってくる巨大な質量と相対した。
813名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 05:14:00 ID:K0Sz5J9t
 がくぽは上着を脱ぎ払った。着痩せして見えていた身体は荒々しい隆起を顕にし、鋼の
綱と絹糸を束ねた様にしなやかであり、また頑強であった。筋肉がその繊維質一本一本ま
で浮かび上がらせて縦横に走り、まるで研ぎ澄まされた肉食獣のそれである。
 深く、深く腰を落とし、左手を刀の鞘に添えた。
 ほぼその機体に秘めたスペックの限界の速度で迫りくる重機──ロードローラー──を
見据える。
 時速70kmで迫る五t超の大質量が、大地を覆うアスファルト被膜ごと彼を蹂躙し轢
殺し舗装しようと驀進した時──彼は右脚で大きく踏み出し、紙一重の間合いに躍り込ん
だ。擦れ違い様、重機の右に回り込んで強く踏み締めたコンクリートの路面はその圧迫に
耐え兼ね、穿たれて破片の飛沫を散らす。
 がくぽの右手が亜音速に撓った。居合の抜刀で閃いた切っ先が、切裂いた音速の壁との
間に水蒸気の尾を引き、次いで巻き起った衝撃波ががくぽの身体に切り込む。
 重機の前輪を固定しているシャフトが、分厚い鋼板を無理やり引き千切るような甲高い
悲鳴を刹那に上げ、がくぽの刃に両断された。
 シャフトを切り裂かれ操舵を失ったロードローラーは、赤いポストを薙ぎ倒し、乗用車
を敷いた弾みで激しく横転し、そのまま滑って、突っ込んだ一棟のビルを傾げさせて沈黙
した。
 抜刀の余韻を残したまま深く息を吐くがくぽ。肺から闘争心の塊を排出する様な、深く、
長い一息。
 見るものを眩惑させるような、圧倒的で暴力的な、それでいて優雅で華麗な、極めた者
のみが醸す所作だった。
 眼を閉じて鼻から一気に息を吸う。
「……はぁ」
 吸った息を緩く吐いたころ、がくぽはいつものチャラそうな脱力した雰囲気に戻ってい
た。
 がくぽは摩擦で赤熱した刀をふーふーして冷ましながら、
「ぶっちゃけ……もしかしてコレ、やり過ぎちゃった系っスか?」
ちょっと眉をしかめた。
 瓦礫だらけでざわつき始める街。
 がくぽは上着を拾ってロードローラーが突っ込んだビルに駆け込んだ。
「運転主の人!生きてたら返事して欲しウィッシュ!」決めポーズ。
「ここだよ〜」
 運転を担当していた女の子──リンが、おっとりした声をあげながら、完全に歪んだロ
ードローラーのドアを内側から蹴破って這い出す。
「FuckOFF!見事にカマされた!もののふ強ぇ〜、強すぎんよ侍!!テメーならハ
ンコックと“タメ”張れるよ!ハハハハハ!!」
 顔文字を打っていた男の子──レンも無事だったようだ。
「あー、映画あんま見ないからぶっちゃけハンコックってどんなかあんまりわかんないっ
スけど……でも、俺が“パネェ”ってのは伝わったっしょ?だからバイクの修理代をッス
ね……」
「ロードローラーVS侍で見事勝利されちゃ、もう文句も出てこねぇって!ヒャハハ!」
「ねぇねぇ、“パネェ”って何?」
 リンの疑問にレンが答える。
「んっだよ、リンしんねーのかよ!“ハンパねぇ”っつーコトだっての。マジ広辞苑持ち
歩けよFuckUP!」
「あの……修理代をっスね……」
「ふぇ〜ん、レンこわいぃ。電子辞書でゆるしてよぅ」
「DULL!ダメに決まってんだろ鈍朕!次お前が馬鹿な事言った時にソレで撲殺すんだ
かんな!」
「え〜ん、やっぱり電子辞書にするぅ」
 レンに殺されちゃう〜。
 ブリっ子しているが、さっきロードローラーを必殺の速度で運転していたのはリンだ。
「バイクの修理代……」
814名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 05:15:16 ID:K0Sz5J9t
───────

「道路工事うっさかったなぁ〜」
「なんかスゴい音してましたね──うわ」
 ファミレスから出て来たメイコとミクは、表の惨状を目にして固まった。
 あたり一面、平らになっていたり、遠くでビルが傾いでいたり、とにかくスゴい事にな
っていたのだ。
「……トルネードでも通ったのかね」
「……多分違うと思います……あ、メイコ先輩。がくぽさん大丈夫だったんでしょうか?」
「ん、携帯鳴らしてみる」
 カチカチ。リダイヤルリダイヤル、がくぽ、と。
──チャラララチャララチャラリラララ♪
 駐車場の方から着信音がする。そこにはがくぽが体育座りで座っていた。
 メイコは駆け寄って話しかけた。
「がく!大丈夫だった?」
「だめっス……もうだめッス……バイクが……」
「はい?」
「修理代、払わず逃げやがったんス……ぐすん」
 ペタンコになったバイクのウインカーが物悲しく点滅していたが……やがて沈黙した。
815名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 06:36:24 ID:pgv5I6S/
ガッテンした
>>811おまえすごいよ
816名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 09:43:09 ID:1wPpMiGf
満ガッテン!!
がくぽの本気カッケェよ!!
次スレでも楽しみにしてます。
817名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 11:04:39 ID:nPv8n1nD
>>811
自分だけの世界観完成しすぎwww
おまいのボカロたち大好きだwww
818名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 12:47:39 ID:0BA4TBKR
>>811
ガッテンしたいんだがボタンどこ?
819名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 14:03:02 ID:zRBBr7Y+
ちょがくぽTUEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!
このキャラ設定好きすぎるw
820名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 14:48:32 ID:dd/isjY+
>>811
そのセンスに嫉妬。どこで売ってますか?

埋めに初書きだったがくリンを。触発された動画が透けて見えるのはご愛嬌で。がくぽ偽者注意。

和装をし、シリアスに見えるよう、と口を噤まされ、早1時間半。今はしどけない格好のリンを膝に乗せている。のだが。白い肌がちらついて、目のやり場に困る。
勿論仕事なのだし、指示通りきわどいシーンも演じた。人形さながらに表情を変えずに大人しくしているリンにすまない、と小声で断ってからではあるが。
平気、と本来の表情に戻って答えた彼女に少し救われた。正直、早く解放されたかった。この状況は、なかなか辛い。
しかし、女の子というのは、本当に化けるものだと実感する。少し濃い目の化粧を施され、人形の様に、と指示された彼女は、その要求に完璧に答えていた。
普段の活発で可愛らしい様子とは全く違い、触れるのも躊躇う危うさを醸し出している。
あの澄んだ目を覗き込むと、邪な気分を悟られそうで、直視できない。
仄暗い中で聞こえるシャッター音がなんとも言えぬ気分を増長させていく。雰囲気に踊らされているようで不甲斐ない。
たまには目を合わせなくては、と腕の中のリンを見ると、顔を胸に伏せたまま離れない、と思っていたのだがそうではなかったようだ。彼女は寝ていた。この単調な作業に飽きたのだろう。
しかし、これでは仕事にならない。
「リン」
小さく声を掛けても起きる気配がない。
仕方がないので軽く揺すってみた。つもりだったが、予想より大きな手応えに乱暴になりはしなかったかと焦る。
幸か不幸か、それは杞憂だったようで、一向に目を覚ます気配がない。
「がくぽ、どうかした?」
なにか感じたのだろう、マスターが声を掛けてきた。
「寝てしまいました」
近寄ってきてほんとだ、と呟いた主人は仕方ないなぁというように笑う。
「どうしますか」
「もう結構撮ったし、良さそうなのもあったから終わりにしよっか」
「はい、お疲れ様です」
「お疲れ様。それにしても、良く寝てるね。そんなに寝心地いいのかなぁ?こ・こ・は」
マスターは、ニヤニヤしながら腕の中のリンに話し掛ける。リンに話し掛けているように見せて自分をからかっているのだろう。
「疲れているんですよ。こんなに若い子を働かせすぎです」
そう言ってリンの着衣を整え、抱えたまま立ち上がる。このまま放り出していく訳にもいかないだろう。やはり、拍子抜けする程軽かった。
「中々絵になるね。お姫様をさらってきた所みたい」
ふざけながら1枚だけ、と撮られる。つい溜め息が零れた。
「冗談ばかり言っていないで。ベッドで寝かせてきます」
821名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 14:50:23 ID:dd/isjY+
>>820続き

リンの部屋には鍵が掛かっていた。他の同居人達はというと、出払っているらしく、気配がない。
少し躊躇したが、仕方あるまいと自分の部屋へ向かう。
しかし、先程からずっと気懸かりだったのだが、服の胸元を掴まれている。放してくれなかった場合、どうしたら良いのか。
リンをベッドに横たえ、上体を倒した体勢でさてどうしようかと考えていると、ぐいっと引っ張られる感触。
「うおっ」
つい、妙な声を上げてしまう。
手を付いて体を支えたらすぐ下にリンの顔があった。
切なげに見つめてくる瞳に、一瞬、時が止まった様な錯覚に陥る。
吸い込まれそうだ。
はた、と我に返って口を開く。きっと、寝ぼけているのだろう、そう決め付けて。
「リン…怖い夢でも」
ちらりと彼女の眉の辺りに苛立ちが見えた気がした。しかし、それを確かめる間もなく首に回された手によって、唇が合わさっていた。
柔らかい…ではなかった、慌てて体を起こして真面目な顔をしてみせる。
力を入れて離れまいとしていたリンは、自分の上体が起きた段階で諦めたらしい。少し膨れながらベッドに座っている。
「リン」
少しきつい口調で言うと、その瞳が曇り、みるみる涙で満たされていく。
「だって、リン、がっくんが好きなの」
それだけ言うと、ぽろぽろと涙を零して俯いてしまった。
822名無しさん@ピンキー
>>821続き

手を差し出しかけて、どうしたものかと考えていると、涙に濡れた瞳を上げて両手を差し伸べてくる。反射的に抱き上げてしまってから、何の解決にもなってはいない事に気付く。
ざわめく胸に、取り敢えず落ち着かなくては、とリンを抱いたままベッドに腰を降ろす。
「リン、そんなに泣かないでくれないか」
「だって、がっくん、リンのこと、嫌なんでしょ?」
「嫌な訳あるまい」
嫌なら甘えるな、とさっさと放り出してしまっているだろう。そうだ、今、リンは自分に甘えているのだろう。そう気付き、少し気が楽になった。
確かに、先ほどは少し驚いたが、それはリンの方から迫ってきたからであって…と、そこまで考えて頭を殴られたような衝撃を感じる。
「じゃあ、好き?」
好き、なのだろう。リンの行動にひどく動揺したり、腕の中の温もりに心が満たされているというのは。
「ああ、そのようだ」
そう言って、腕に力を込める。自覚すると、急に愛おしさがこみ上げてくる。
大きな瞳を見開き、瞬きさえ忘れてしまったようなリンの、涙をそっと拭ってやった。
「リンがうるさく言うから誤魔化そうとしてるんじゃなくて?」
「それ程器用な人間ではない」
リンは、少し上ずった声で呟く。
「じゃ、じゃあ、キス…して…?」
先程とは打って変わって、恥ずかしげに顔を赤らめる姿がひどく可愛らしく映る。
頭の後ろに手を添えて、小さな唇に自分の唇を重ねる。
角度を変えて何度も口付けていると、きゅっとリンが服を掴んできた。
唇を離すと、上気した頬と薄く開いた唇に、気持ちが高鳴る。
目が合うと、自然に再び唇が近付いていく。

ガチャガチャ

ガチャリ

それは紛れもなく玄関のドアが開く音。
「あ、きっとお兄ちゃんだ」
思わず固まっている内に、リンはするりと腕から抜け出した。
こちらに顔を寄せ、何事か囁いたら、すぐに玄関の方へ向かってしまった。
去り際の顔で、やけに妖艶に笑っていた。
すぐに、心なしか芝居じみて聞こえる程可愛らしい声が響く。先程ちらりと見せたぞくりとするような視線は錯覚だったのではないかと訝る程。
「お兄ちゃん、お帰りなさーい」
「お、リン、着物じゃないか。良く似合ってる。ちょっと回って見せてよ」
「どう?」
「可愛い。リンは何着ても可愛いなぁ」
「えへへ。ねね、お夕飯なぁに?リンもお手伝いする」

いい所を邪魔された筈なのだが、先程リンが耳元に囁いていった、甘やかな声を思い出してつい笑みが零れる。

『続きはまた今度、ね』

踊らされている気もするが、それも悪くない。
カイト殿、あなたの妹さんは、なかなか食わせ者かもしれませんよ。心の中で呟いて、自分も夕飯の支度を手伝いにいく事にした。