僕が夏休みをのんびり一人で過ごしていた、ある日のこと。
ただ、緑色の扇風機は僕を涼しくさせようと頑張っていたとき、
のんびり相手の出来ない予期せぬ訪問者に、僕は苦笑してしまった。
「ねー白石ぃ。」
「なんでしょう?」
「あつい。」
「知ってます、もう25回目です。」
「そんなこと数えてたの?馬鹿じゃないの?!」
…あながち間違ってはいませんけど、
思いっきり馬鹿扱いされるのは何故か腹がたちますね。
「…そんなこと言うなら、扇風機、消しますよ?」
「ダメ、それだけはダメ!」
学校の補習の帰りになんとなく立ち寄ったの、
と我が白石家にやってきたあきら様は、
すぐさまエアコンのリモコンを探した。
「ちょっと、エアコンの、ぴっ、ってやるやつは?」
「ありませんよ?というか、エアコンは家にありませんよ?」
「あぁぁぁ?!」
青筋たてて怒られた。
そんな贅沢なものは、一人暮らしのこの家には存在しませんよ。
「あんた…よくそんなんで生きて行けるわね…」
「風通し良いですからね、案外快適ですよ?」
黄色のハンカチで顔を拭うあきら様を見て、
僕は提案した。
「あきら様、これに着替えたらどうですか?」
「なんで、あんたのなんかに…」
「そんな制服着てたら暑いですよ?」
かぁっ、とあきら様の頬が赤く染まる。
表情の変化を楽しんでいたら、殴られた。
「いでっ」
「い…いつまで見てるのよっ…この変態!」
「す、すいませんすいません!」
僕はあきら様が着替えない理由をやっと把握して、
慌てて風呂場に駆け込む。
…そういえばこの紫色の入浴剤、中身はまだあったかな、と振ってみる。
あまり音はしない。買いだめしてあったかな。
「いいよー」
着替え終わったらしく、あきら様の明るい声が聞こえる。
僕の渡したぶかぶかのオレンジのTシャツは、裾をゴムで留められていて、
学校のスカートはそのままだった。
「やっぱりあきらは何色でも似合うねっ」
「そですね」
フツーな返事ですいません。
あ、睨まれた。
大きめのTシャツの下から、申し訳なさそうに灰色のスカートが覗く。
靴下は真っ白い三つ折りソックス。
…そのスカート暑くないですか?
「あつい…」
「26回mへぶっ!」
「だから、数えるな!」
「すいません!」
はー、とひとつため息。
ぱたぱたと、オレンジ色のTシャツをめくり、それで風をおくっている。
…な、なんだよ、僕が頼んだんじゃないし。
あきら様はぱたぱた、ぱたぱたと、おへそのところまでめくりあげて風をおこしている。
危ない、いろんな意味で、危ない。
「なによ。」
「い、いや、なんにもっ!」
「そっ」
あれ?怒らなかった。
ぷい、と僕から顔を背けて、僕のベッドにダイビングするあきら様。
軽いからか、ぽすん、と僕がダイビングしたときよりも軽い音がする。
「はー♪涼しくなったー」
くるり、と仰向けになる。
彼女の目が、窓の外に向けられる。
「もう、空がこんな色、してる…」
空を見上げる。
藍色の空が僕たちをみていた。
「涼しい…」
「でしょう?」
あきら様は僕のベッドでころり、と寝返りをうつ。
じっと僕を見ている。
布団の上をぽんぽん、とたたく。
ここに来い、ということらしかった。
おとなしくそこに座る。
もう一度、ぽんぽん、と布団をたたく。
ここに寝ろ、ということらしかった。
あきら様に目線を合わせてねっころがる。
だめだ、目をあわせられない。
何故だ、
あきら様の顔が、ほんのり赤くなっていく。
「みないでよっ…」
「すいません、あきら様が可愛くって…」
つい、本音が出てしまう。
この顔を見られて欲しくなくって、
その小さな体を抱き寄せる。
同じ、風が吹き抜けて行く。
同じ時間を、感じている。
それがなんとなく嬉しくて。
ついついにんまりしてしまう。
いつも表情が違って、
どれが本当のあきら様かわからなくなる。
いつもにこにこしている貴方も、
不機嫌で僕に当たり散らかす貴方も、
全部が大好きなんだ、ということを
僕は今知った。
彼女は虹の色みたいに、
いろんな彼女がいる。
僕は今、言える。
虹色の彼女が、好きなんだということを。
「ねぇ、白石?」
「なんでしょう?」
彼女の頭をそっと撫でる。
頬をぷにっとして、その感触を楽しむ。
とろん、とした眼は、すぐに閉じてしまいそうだった。
「おやすみなさい…」
「おやすみなさい、あきら様…」
つん。
彼女の鼻が、僕の鼻に当たる。
目が合ってしまうのが、恥ずかしくて。
ちょっと距離が近づく。
そっと、唇が触れる。
このままでいたい。そう思った。
あきら様もそう思ったのか、動く気配はなかった。
唇を触れ合わせたまま、僕らは眠りについた。
それが、僕たちの、
初めてのキスだった。
計算し間違えた!
本当にごめんなさい(´・ω・)
前の方が投下された「縁結びの雨」をみて
投下を決めてしまいました。
というか、「邪道なあきしら」を書いてみました。
まぁ書くもの全部邪道なあきしらなのですが。
(ツン分が少ないのと、くっつくことが前提とか邪道だなと)
長々とすみませんでした、
さて、違うSSを仕上げますかノシ
>>535 ツンの正道に続いてデレの王道が! 誰か! 誰か世界遺産に登録を!
いやあ、良い心の栄養でした。ぐっじょぶ。
>538
とても切なくて、哀しくて、それでいて、透き通るように綺麗で、荘厳ささえ漂わせるお話ですね。
かがみが慟哭し、みゆきが慈母のように慰める場面には、ひどく胸が締め付けられる思いでした。
また、雪合戦の場面ですが、かがみの千々に乱れた心が、一面の純白の雪によって
覆い隠してくれるような印象を受けました。
そして、ひとつの恋の終わりが、かがみを大人へと成長させるのでしょう。
物語を織りなしていく上で、とても丁寧な描写と、それを支える文章力にはいつもながらため息をつくばかりです。
次の季節のお話もとても楽しみにしております。
>>538 切なすぎて涙腺緩みそう。
みゆきさん超GJ、親友ってこんな感じなんだろうなー。
かがみの気持ちも痛い程分かる、好きな人との想いが叶わなかった時の翌日の描写とか
自分自身の実体験にそっくりだったから。
それでいていつもの親友に戻れるかがみとこなたは強い…というか大人になってるんだなぁ。
もちろん心の奥底では澱になってるんだろうけども。
次で最終話か…いったいどういう締めくくりになるんだろうか。
こなた側の心境の変化が訪れるのか、それともこのまま進んでいくのか…とても楽しみです。
>>538 ああ、なんて綺麗で幸せな片想い。
心から堪能させていただきました。
やはり貴方のこなかがは珠玉です。
最終章を心待ちにしつつ、心からのぐっじょぶを。
>>538 何だろう…胸が詰まるってこういうことなのかな。
もう、なんていっていいかもわからなくなっちゃった…
結末を待つことにします。
でも、最後にこれだけは。
GJです!
>>538 心が軋むような衝撃を受けましたGJ !
でも次で最終回ですか・・・ここまで来たらどんな結末でも受け入れる覚悟は出来ています !
次回最終回を楽しみにしています
>>538 SS書きとして軽く嫉妬すら覚える良作シリーズキテタ――――――――――!
こうなったらどんな結末でも受け入れるぜ俺は!!
「4seasons」のあとには「SEASONS」(日本航空国際線のエグゼクティブクラス)……というわけではないですがw
えーと、次レスも立ってないのに埋めっぽいのが難ですが、6レスお借りします。
非エロ、カップルなし、こな&かが漫才。
旅客機もの、ある意味ウンチク系。フライトシマー推奨(このスレにいるのかなぁ……)。
なお、飛行機だけに「オチ」はありませんw
-----------------------------------------------
♪ピーンポーンピーンパーーーン……
旅人たちが静かにざわめく広いホール。世界中どこの空港でも共通の、旅好きには聴き慣れたチャイムが響く。
ここは東京国際空港。空港コードRJTT。
巨大な翼を広げたような新旅客ターミナル。通称、ビッグバード。
『……陵桜航空、関西空港行き972便は、まもなく皆様をご搭乗機へご案内いたします……』
広いロビーに、搭乗案内のアナウンスが鳴り渡る。
『……なお当便は、普通のお客様はご搭乗になれません。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者のお客様は、99番搭乗口よりご搭乗ください……』
ボーディングブリッジから漏れ聞こえてくる、ネタ仕込みのアナウンス。
「……あのバカ……」
陵桜航空972便……ボーイング777−200のコパイシート(副操縦士席)で、柊かがみは頭を抱えた。
――――――――――――――――
『Lucky☆Fleet』
とんでけ!セーラーふく
――――――――――――――――
―×― ―×― ―×― ―×―
「おまたへー」
数分後。かがみの背後……キャビンの扉がガチャリと開き、のほほんとした声がした。
「やぁっと戻ってきたわね……ったく、遅いわよ、泉機長!」
チェックシートの束をパタパタやりながら、振り返りもせずにかがみが叱る。
「ごめんごめん、コパイのかがみん」
「……なんか嫌な含み感じるわね、その言い方」
R2キャビン(客室中央部)担当のCA(キャビンアテンダント)・高良みゆきの豊かな胸元を思い浮かべながら、釈然としない表情のかがみ。
夏場のパイロットは、ノージャケットである。泉機長……こなたの純白のシャツの肩で、四本の金筋が誇らしげに光っている。
とはいえ、コパイシートに座るかがみも、肩の金筋は四本。
二人ともキャプテン(機長)の資格は持っているが、レグ(乗務)が妙にかち合うこの二人。ジャンケンに負けたので、今日はかがみが女房役、というわけだ。
……割れ鍋に綴じ蓋。陵桜航空の配置担当は、なかなか人を見る目があるようだ。
「いやー、トーイング(牽引車)とマーシャラー(誘導係)の兄さんたちとモン○ン談義で盛り上がっちゃってさー」
機長のアホ毛がびよよん、と揺れる。
「あんたかっ! あっちこっちのグランドクルー(地上職員)をネトゲに引きずり込んでるのはっ!」
首のところでまとめた副操縦士の髪。その端がぴょこん、と跳ね上がった。
搭乗前のブリーフィング(打ち合わせ)を終えて機体へ向かったパイロットは、搭乗口のところで一度別れる。機長は外へ、副操縦士は操縦席へ。
機長は機体を隅々まで見回り、異常がないか目視で最終確認を行う。
副操縦士は、計器類のチェックやウェイポイント(飛行経路)の入力などをこなしていく。
プリフライトチェックのあとも、整備士から整備状況の報告を受け、CAとのブリーフィングを行い……
やるべきことは、山ほどある。それこそ、山のように。
……グランドとダベってる暇など、ないはずなのだが。
「よいせっ、と」
左側に位置するキャプテンシート(機長席)。その座面に座布団を三枚積み上げ、こなた機長がようやく着席。
足元のラダーペダルには、特注の高下駄が履かされている。
たしか、航空大学校には身長制限があったはずよね……と、かがみは思う。陵桜航空七不思議のひとつである。
「ほら、チェックリストいくわよ」
「ほいよー」
ひとつ間違えれば大惨事につながる旅客機の操縦は、膨大なチェックリストをもってその安全を確保されている。
タキシング(地上滑走)、テイクオフ(離陸)、クライム(上昇)、クルーズ(巡航)、ディセンド(降下)、ランディング(着陸)。
そしてスポットイン(駐機)後に至るまで、パイロットたちは何度も何度も、チェックリストを読み合わせるのだ。
「ふゅえるくおんてぃー」「67.4」、「ていくおふでーた」「Set and check」……
チェックリストを読み上げるこなたの声に、合いの手を入れるようにかがみが返す。こなたの発音がベッタベタなのはご愛嬌である。
……「あいえいえすせれくた」「Set」、「へでぃんぐせれくた」「Set」、「でぱーちゃーぶりーふぃん」「Accomplished……ああそうだ、機長」
「こなたでいいってばー」
「けじめよ、けじめ。……それはともかく」
「んー、何?」
「いいかげん、搭乗アナウンスにネタ仕込ませるのはやめないか?」
「ツカミのネタ、あこんぷりっしゅ」
「そんなもんチェックリストに入れんなっ!」
―×― ―×― ―×― ―×―
「とーきょーぐらんど、りょうおうえあー972。 りくえすとたくしーふぉーていくおふ」
こなたがグランドへ、タキシングを申請する。
ここで言うグランドとは、空港内での地上誘導・管制を行うセクションの事である。
前方以外にはまともな視界のない巨大な旅客機がひしめき、無数の作業用車両が走り回る空港内では、交通整理も重要な業務のひとつだ。
『Ryouoh Air 972, taxi to and hold short approve. Runway 34L, using taxiway India, Whisky 5, Oskar, Alpha 1. Contact tower on 124.35 when ready.』
グランドより指示。I→W5→O→A1誘導路を経由して、滑走路34Lへの誘導指示。離陸準備ができたら124.35メガヘルツで管制塔と交信せよ。
「たくしーとぅーあんどほーるどしょーと、らんうぇい・すりー・ふぉー・れふと……」
ベタベタながら、こなたは英語での復唱をこなす。
たとえ日本の国内線であっても、航空機の無線交信は英語が基本だ。
まず英語が話せなければ、パイロットの仕事など夢のまた夢である。……発音はともかく。
「……たくしうぇい、いんでぃあ、うぃすきー・ふぁいぶ、おすかー、あるふぁ・わん、りょうおうえあー972。……んじゃいこっか、かがみん」
「あんたさー、英語は苦手だったんじゃなかったっけ?」
「ん、ぼく管(ぼくは航空管制官)で覚えた」
「……ああ、そうでしたね。そういうお方でしたね」
トーイングカーが機体から離れる。タクシーアウト。
スロットルをじわりと開け、機体が動き出したのを確認して少し戻す。
巨大な鉄の鳥が駐機場を離れ、自力で誘導路へと進み始める。
操縦桿を握るのは、今日はかがみ。
旅客機の運行において、機長と副操縦士には固定された分担はない。一方が操縦を、もう一方が交信やモニタリングを行うのである。
純白をベースに、紺色と黄色、そして白い二本のラインがあしらわれた陵桜航空の777は、誘導路Oを抜けてA1へと向かう。
ちなみに陵桜航空には、紺と黄色の代わりに臙脂色とピンクが配された機体も存在する。
何がモチーフなのかは、もはや言を待つまでもないだろう。
『Ryouoh Air 972, hold short. Japan Air 1178 is landing.』
滑走路を目の前にして、グランドから待機指示が出た。
「ちぇー、待てってさ」
シートバックに背中を預け、こなたが口をとんがらせる。
ラッシュアワーの羽田は、まさに超過密スケジュールだ。
離着陸は五分に一機。われらが陵桜航空972便も、滑走路の手前で順番待ちを食らっていた。
方位16……160度、つまり南南東からファイナルアプローチ(最終着陸態勢)に入る、日本航空のB737−800。
その後ろで、ゴーアラウンド(着陸復行)を食らった全日空のエアバスA320が、再上昇に転じていく。
決められたルートに沿って旋回し、もう一度着陸のやりなおし、ということだ。
「はー……羽田は相変わらず混んでるわねぇ」
「その先にワクワクドキドキのない行列は嫌だなぁ」
「バカ言ってないで、パッセンジャー(乗客)にご挨拶でもしときなさいよ」
「そだネ」
受話器を取り上げ、コールすること数回。
「はい、R1柊、聞いてるよ〜」
R1(客室前方)担当のCA、柊つかさが受話器を取った。二、三言交わした後、マイクが客室内に繋がった。
『……えー皆様、本日は陵桜航空にご搭乗いただき、ありがとじゅーす。私は当便の機長を務めさせていただきます、泉こなたです』
「おぉおおおおおおおっ!!」
沸き起こる歓声。客室内のテンションが一気に高まる。
乗客総立ち……といいたいところだが、座席の背、肘掛け、テーブル、足置きを元の位置に戻し、シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めいただいているのでそうもいかない。
「な、なんなのよこのテンション……」
「ま、ダテにコスプレ喫茶でバイトはしてなかったってことだヨ」
「意味がわからん」
ちなみにこの会話、まるっぽ客室に筒抜けである。
『まあいいわ。マイク貸して、私がやるから……
……あっ、失礼しました。……えー、副操縦士の柊かがみです。当機は定刻出発、到着予定時刻は現在のところ、定刻の予定です。到着地の気温は三十度、天候は晴れ……』
「ハレ、と申したか!!」
そのキーワードに、乗客たちがすばやく食いついた。
「ハーレハレ! ハーレハレ! ハーレハレ! ハーレハレ!」
客席から湧き上がる『ハレハレ』コール。
さもありなん。この便の乗客の大半は、オタクの祭典・コミックマーケット帰りのご一行様なのである。
「……うずうず……うずうず」
ふと横を見ると、そこには武者震いを抑えきれない泉機長の姿。
「? 何よ、こな……機長?」
「……ちょっと客室行って、ハレハレ踊ってくる!」
「まともに飛ばしなさいよっ!!」
―×― ―×― ―×― ―×―
……クリアード・フォー・テイクオフ、ようやくの離陸許可。972便は34L、北北西向きの滑走路へと進入する。
昔はここで一度停止し、離陸許可を申請したものだが、今は進入前に離陸許可を受け、そのまま止まらずに離陸滑走を始めるのが一般的である。
機体をセンターラインに合わせ、スロットルレバーを滑らせる。
主翼下のエンジン……二基のプラット&ホイットニー社製PW4077が、その低い唸りを甲高い咆哮へと変える。
「…………えいてぃーのっつ……」
速度、80ノット。鼓膜を震わせる轟音の中、速度を読み上げるこなたのゆるい声が混じる。
操縦桿を握る、かがみの手に力がこもる。
「………………ぶい・わん」
V1、離陸を中止できる最高速度に到達。もう何が何でも上がるしかない。……間髪をいれず、
「ぶいあーる」
Vr、ローテーション(機首上げ)速度に到達。操縦桿を静かに引き寄せる。
二人の操るボーイング777が、ゆっくりと機首を上げる。
主翼いっぱいに風を受け、フラップによって揚力を増した機体が、見えない何かに引かれるように地上を離れる。
ジュラルミン製の軽くしなやかな主翼をしならせて、972便は重力の束縛を振り払い、一番星が瞬く夕暮れの空へと駆け上っていく。
「ぶいとぅー。……ぽじてぃぶ」
V2、安全離陸上昇速度に到達。ポジティブ・クライム、機体の安定上昇を確認。
機首上げ10度弱を保ちながらスロットルを少し絞り、速度を抑える。
あとはこのままの速度と上昇率を保ち、ランディングギアアップ、フラップアップ……
「……ぶい・すりゃーっ!!」
やおら、宮内洋が乗り移ったかのようにこなたが叫んだ。
「そんなコールアウト(宣言)ないわよ。つーか、あんた一体いくつだ」
ツッコミに特化した副操縦士が、おとぼけ機長に暖かいジト目を送っていた。
―×― ―×― ―×― ―×―
「とーきょーでぱーちゃー、りょうおうえあー972、えあぼーん、なうりびんぐわんさうざん。くらいみんぐとぅーえいとさうざん」
東京デパーチャー(出発管制セクション)へ、陵桜航空972便より。航空輸送、現在高度1000フィート。8000フィートへ上昇中。
『Ryouoh Air 972, Left turn, heading270. Crimb and maintain FL120.』
デパーチャーの指示は、方位270度(真西)へ左旋回、上昇して高度12000フィートを維持。
ATC(航空交通管制)に従ったフライト。航空機は各管制区から指示を受け、決められた高度や方位を守って飛行する。
広大に見える空には、MDBやVORといった航空灯台によって形作られた、見えない交通路が存在する。どこでも勝手気ままに飛んでよいわけではないのだ。
「らじゃ。れふったーん、へでぃんぐつーせぶんぜろ。くらいむあんどめいんていん・ふらいとれべるわんつーぜろ、りょうおうえあー972」
オートパイロットとオートスロットルのマスタースイッチをオン。ダイヤルを回して高度、速度、飛行方位を設定し、各機能のスイッチを入れる。
スロットルがひとりでに動き、777は自動的に上昇・旋回を始めた。
オートパイロットとはいっても、旅客機のそれは完全なフルオートではない。設定した高度や速度、飛行方位を維持するように、スロットルや各動翼を自動制御する。
トラブルでも発生しない限り、パイロットはATCの指示に合わせ、それらを調整して巡航していく。
離着陸のわずかな時間を除けば、現代の旅客機は操縦桿やスロットルではなく、ダイヤルとボタンで飛んでいるのだ。
「ベルト着用サイン消すわよー」
「ふーい。……いや〜、やっぱ緊張するねえ、魔の十一分は」
「とてもそうは見えなかったけどね」
「ぶー。失礼だなー、かがみは」
離陸滑走から三分、着陸前八分、合わせて『魔の十一分間』。機体が不安定となり、もっとも事故が起こる確率が高い、緊張の時間である。
逆に言えば、ここさえ凌げば、旅客機の運行は比較的安定している。
まずは前半戦を終えた、陵桜航空972便。コクピットに安堵の空気が流れる。
「……さてと」
こなたがベルトを外し、席を立った。
「どこ行くのよ、機長?」
「……いや、今度こそハレハレ踊ってこようと思って」
「やらんでいいっ!!」
――そんなこんなで。
陵桜航空は、今日も定刻どおりの安全運航……
「はわわっ、なんじゃこりゃーー! からまっちゃったよ〜」
「つ、つかささんっ!! フライト中にドアをディスアームド・ポジション(ロック解除)にしちゃだめですっ!」
……客室のほうは、見なかったことにしよう。
― Good luck. ―
-----------------------------------------------
以上です。……なんなんでしょうコレ。
数年前、JALに「STAR JET」というシリーズものの塗装機があったんですが、そこからの着想と「何か予想外の職業をやらせてみたい」という妄想から発展。
歌って踊れるパイロット。
参考文献:『Microsoft Flight Simurator X』、『JETでGO!2』の攻略本、リアルフライトドキュメント(動画)、WikiPediaほか。
いろいろと取材はしましたが、見る人が見たらツッコミどころ満載かと……orz
(おまけ)
副題の由来はコレ。
・夏服バージョン
http://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0145.jpg ・冬服バージョン
http://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0146.jpg Microsoft Flight Simurator(2004またはX)対応のテクスチャデータ(機体塗色)として作成しました。
シマーズスカイレーベル(Overland社)のボーイング777-200ER(「日本のエアライン」または「世界のエアライン」に収録)をお持ちであれば、実際にこの機体を飛ばすことができます。
お入り用であれば、テクスチャデータもうpします。
……とはいえ、あまりにもターゲットの狭いおまけな気がする……orz
GJです
では、ちょっくら次スレ立てチャレンジしてきます
>>552 はたらく少女! はたらく少女!
乗員から乗客に至るまで妙に親近感をそそる陵桜航空、機会があれば是非乗ってみたいものです。
セントレア発の便、就航しないかなあ。ぐっじょぶでした。
これはもう着陸編をねだるよりあるまい。
「……んなぁーっ!!?」
「どったのひよりん」
「しまったぁーっ!原稿が進んでないのにもう480kになっちゃったぁーっ!!」
「原稿って、スレ投下用の?」
「……って、泉先輩いたんスか。いや、ほら。スレの最初の方に投下したSSの続きみたいな物を書いてたんですが、なかなかオチがまとまらなくて……」
「別に新スレに投下したっていいじゃん」
「そうなんスけど……保管時の編集作業がめんどくさくって」
「怠け者だね、ひよりんは……。まあ、確かに続き物だったらまとめる事が出来た方がいいかもだけど……」
>>551 GJ!!
ただし、「らじゃ」は”テネリフェの悲劇“以降使用禁止の言葉ですよ。
>>544-551 一昨日に出先から東京へ戻ってきたときがANAの777-200(ERではない)だけどこれなら面白かったろうに
窓際取れなかったからずっと全日空寄席で落語聞いてた
チラシ裏のためsage
>>553乙
>>551@妄想屋氏
貴公・・・・・直ちに月刊エアラインとその関連本も買いに逝くべきでつ(w
個人的に気になるのは陵桜航空のカスタマーコードですな。
(日航グループは日航本体が46で旧エアシステムが89、全日空は81)
もしかしたら余剰機材のリースを受けてるのかも知れませんがw
ってその機体は日航旧塗装のリペイントか─────ッッ!!!(吐血)
(´-`).。oO(ってもう少しで新作上がりそうだからその時点で俺も酉コテ装備しようかな・・・・・)
>>561 処女作は「STAR JET」の架空機だったなー、とか言ってみる。
そしてあと10KB〜
>>559 お前は投稿ルールも守れない知障なのか?
TSならTSつって書けよ。
気持ち悪いもの見ちゃったじゃないか。
TS扱う奴らはルールも守れない餓鬼ばっかりなのか?だから嫌われるんだよボケ。
直接投下じゃないから許されるとでも思ってるのか?
テネリフェの悲劇
旅客機2機が管制ミスなどで衝突、航空事故史上最悪の死者を出した。
(日航ジャンボ墜落は単独での史上最悪の死者数である)
保守
いろいろと勉強になるなあ・・・
>>551 テラGJ!!
空飛ぶらきすた、とっても新鮮でした。
>まずは前半戦を終えた、陵桜航空972便。
続編、期待しちゃっていいんでしょうか?
>>553 スレ建て乙です。
>>563 失礼いたしました。
投稿を急ぐあまり注意書きを忘れてしまいました。
スレの最後で荒れる原因を作ってしまってすいません。
>>568 確かに注意書きは必要だったと思うけど
>>563はいつものTSアンチだろうからそこまで深く気にしないでいいと思うよ
作品や作品に対するレスになにかと理由つけてウザいウザい言ってくるかもしれなかったし
>>569 ああ?ここではルールを守れって言う方が荒らしなのか(藁)?
なぁ、俺は間違えた事を言ったか?
俺は、馬鹿な勘違い職人が注意書きを書かなかったがために、読みたくもないTSを読まされた人の為に警告してやっただけなのにな。
ルールを守れって言っただけの俺の何処が間違ってるのか言ってみろよこの知障!
これだからTS信者は自分勝手でウザイんだよな。あー、キモイキモイ。
失礼ながら、
「丸い卵も切りようで四角
ものも言いようで角が立つ」
という都々逸がありますね。
>>571 >>1 >※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
荒らしをスルーできないあなたも荒らしです
>>570 なんか勘違いされてるみたいだからひとつ言っとくと俺はTSが好きな訳じゃないから作者様には悪いがいつもスルーするか軽く読み流す程度
今回は注意書きが無かったという不備を注意することが正しいにしてももっと別な注意の仕方があったと思う
それにいつものあなたの行動は自分勝手でウザい物じゃないんですか
ルールを持ち出すならいつも「気に入らない人・作品はスルー」というルールを守れていないあなたはどうなのかと
まぁ俺も今まで極力あなたに構わないようにして守ってきたルールを今日は守れなかった訳だけど
まあ暑くてイライラするのはわかるけど、みんなもうチョイ落ち着いて行こうや
新スレには持ち込まないように頼むよ♪
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_}::::::/:::::/:::;::::::/::::::::::::::::::::、:::::::ヽ:::{`
}:::::::::::/イ/{ f´ Yf Yf `ヾ:f YY:::::::{`
ム:::::r' |! { ハ } } ハリ:::::f
{ハ、{ -==x、 _,r==‐ }:f「}
V{Y\,r‐tァーォ、 ,r‐tァーォ、/jf
{__|! L_  ̄`_ノ⌒廴_ ̄´_」 |∨
ハ  ̄ / ヽ ̄ j,ノ
i 人-、__,.-人 /
∧ (、____,ノ /
_,.イ | ヽ ヾニニ '´ , ′
_/ ̄ f | \ /ト、
_,. ´ __| ヘ ` ー一'´ | |i丶.
__,. -‐'´ :| ヽ.______ j 八 \
________|___(_正_解_)___ヽ__\____
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| ら き ☆ す た |
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| ( 美 水 か が み の 描 く 4 コ マ 漫 画 ) |
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夏休み早くおーわれ
なんか、結局向こう側にこっちの荒れた状態を持ち込んでる気がしますが……
>>569 気にしちゃいませんよ。
本音を言うと、今回は『アーウゼ、でも注意書き忘れた俺も俺だし一応謝っとくか』といった感じで。
>>568はあきら様の「すんませんしたゴットゥーザ様」みたいな感じの音声で読んでください。