容量いっぱいになったので次レス立てました
すでに書き込めない状態なので誘導もできずにすいません
とりあえずまた最初から投下したいと思います
唯の返事を待つと、リトは入り口を広げながらゆっくりと挿入していった
「あ…うぅ…」
唯の手がシーツを握りしめる
久しぶりの感触に体が痛みとも気持ちよさとも取れる感覚を唯に伝える
「大丈夫か?」
「へ…平気!だから…このままお願い!」
少し苦しそうな唯にリトはためらいがちに腰を動かしていく
「ん…ぁ…ふ…」
本人の苦しさとは裏腹に、膣内はキューっとリトを締め付けていった
膣壁が波打ち、リトを奥へ奥へ導こうと急かす
「や…やばッ」
背中にゾクゾクと電気が走った
まだ半分しか入れていないのに、リトは早くも射精感が込み上げて来てしまう
少し不安そうに見つめる唯に愛想笑いで応えるリト
だが、込み上げる欲望と、その焦りで、リトは一気に挿入してしまった
「あっ…くぅ」
唯の腰はビクビクと浮きあがり、半開きの口からは涎がこぼれ落ちている
「わ、悪い!」
咄嗟に引き抜こうとするが、それが仇となってしまう
「ん、ン…あぁあ、あ」
カリが唯の敏感な部分を擦り上げ、竿全体が肉壁をめくり上げる
一度の出入りだけで二度絶頂してしまった唯の身体は悲鳴を上げた
「は…はぅ、は…ぁ…」
シーツには唯の爪痕が刻まれ、その身体は小刻みに震えている
亀頭だけを膣内に残したリトの竿は、唯の本気汁で白くテカっている
「だ…大丈夫か?」
身も蓋もない言葉をかけるリトに、唯は震える口でなんとか返す
「バ…バカぁ」
手を伸ばそうとするも途中でふにゃんと折れてしまう
痙攣を繰り返す体には、まったく力が入らないのか、口元からとろりと唾液が滑り落ちた
リトは唯に覆いかぶさると、舌を使ってその唾液を掬い取り、そのまま口内へ持って行く
「ん…あふ」
突然のリトの行為に、唯は最初戸惑うも次第に舌を絡ませ始める
「ん、ちゅ…ぱぁ…ンン…はふ、ン…」
いつしか手を繋ぎ、指を絡ませ合いながら互いの口を貪るリトと唯
唾液の糸を何本も引かせながら、リトは唯から離れる
「やっぱ、お前の口ってすげーうまい」
「…ヘンな事言わないの」
唯はハニカム様に頬を染めると、口元についた唾液を指で取り、それを舌の上に這わせた
小さくクスっと笑う唯
淫靡さの中にすらある唯のたまらなくかわいい笑顔にリトの理性は崩壊する
リトは自分のモノを手にすると、唯の顔を見ながらその位置を確かめる様に何度も入口に押し付ける
「ン…あっん、そこ…違う」
「ここ…?」
唯はコクンと首を振ると、リトの首に腕を回した
ヌプヌプと音を立てて熱い肉棒が膣壁を押し広げていく
「あ…ン、うぅ」
再び感じる苦痛と快楽がごちゃ混ぜになった感覚
唯はリトを抱きしめた
「今度は大丈夫だから!ちゃんとするよ!」
「…当たり…前でしょ。優しくしなきゃダメだからね!?」
息を切らせながらも普段と同じ様に振る舞おうとする唯に、リトは苦笑した
リトのモノが根元近くまで入っていく
その動きに合わせる様に、唯はリトを上に乗せながら大きく深呼吸した
首にあたるリトの荒い息
すぐにでも打ち付けたいのか、リトの腰はぶるぶると震えている
「す…げー! お前の中、ピクピク痙攣しっぱなしだぞ?」
「ゆ、結城くんが乱暴にするからでしょ!?」
そう言いながら唯は足をずらすと、リトの腰にゆっくりと回していく
お尻に感じるハイソックスの感触にリトは顔をニヤケさせた
「動くな?」
「う…うん」
唯が言い終わるより早くリトは腰を動かした
パチュン、パチュンと卑猥な音を立てながら、リトは唯の中を掻き回していく
ネットリとした愛液と肉壁が出て行こうとする肉棒に絡みつき
また入ってくる肉棒を今度は離さないように締め付ける
「あ、あ…ふっ…や…」
リトが動く度に、唯の声がどんどん高くなっていく
リトを抱きしめる腕に力がこもり、その体を離さないように締め付ける
唯の腕と膣の抱擁に、リトは唯の首筋に顔を埋もれさせながら幸せいっぱいに笑った
「すげェ……気持ちよすぎ! 全部持って行かれそうになっちまう」
リトは手を伸ばすと、唯の頭をギュッと抱きしめる
「唯…」
「ン、あふ…あっ…あっ」
唯の体がますます熱を帯び、背中に回した腕に力がこもる
「あぁっ…あぁん…いい…わよ」
「え?」
「結城くんの好き…に動いても」
リトは腕に力を入れると上体を少し起こす
「いい…のか? その、好きにしても?」
唯はしばらくリトの顔を見つめた後、ふいっと顔をそらした
「そ…そんな事、聞き返さないでよ…」
ほんのりと赤くなっている唯に苦笑すると、リトは唯のおでこにキスをする
「ん!」
離れていくリトを名残惜しげな視線で見つめる唯
唯はリトのぬくもりが残る体を服の上から指でなぞっていく
その仕草がリトにはとても艶かしく映った
唯の細い腰を両手で掴むリト
もう繋がっているだけでは満足できない
キスも抱擁も甘い言葉でも
唯を内から外から、唯の全てを貪りたいと思った
ゆっくり入口ギリギリまで引き抜くと、今度は勢いを付けて突き入れる
「うっ…くぅぅ…」
一回動くだけで唯の口から高い声が上がった
とろけきった目に、上気して赤くなった頬
握りしめた手も、たぷたぷと揺れる胸も
久しぶりの感触というより、全てが新鮮に感じる
リトは夢中になって腰を打ち付けていった
「結城…くん」
「ん?」
リトは腰の動きをゆるめると唯の顔を覗き込む
「どした?ひょっとして痛かったとか?」
「ち…違…そうじゃなくて…」
「へ?」
唯は胸に手を当てると言い難そうに頬を染めた
「ムネ…ちょっと窮屈だから服、脱ぎたいの」
「え!? あ…ああ! わ、わかった」
リトは慌てて唯から離れようとするが、ふと何かを思い付いたかの様に動きを止めた
「何なの?」
「あのさ、オレが脱がすのってダメ?」
「え!? あ…あなたが!?」
ニコニコと楽しそうに笑っているリト
そんなリトを少し訝しむも、唯は小さく首を振った
リトは再び唯の覆いかぶさる
「じゃあ、オレの背中に腕回して?」
「こ、こう?」
言われたとおりに腕を回す唯に頷くと、リトはそのまま唯を抱えて体位を変えた
「キャ…ちょ…結城くん!?」
腕の中で慌てる唯を強く抱きしめると、リトはベッドの上に座りなおす
上と下から、向き合う形の対面座位に
「もぉ、するならするでちゃんと言ってよねっ!」
「わ、わりィ」
悪戯っぽく笑うリトに唯は鼻を鳴らすと、背中に回していた手をリトの肩に乗せた
強がっている反面、唯の顔は歪んでいる
体位を変えた事により、あたる角度も感じ方も変わる
反射的に腰を浮かしているが、唯の下腹部は早くも限界なのかぶるぶると震えていた
リトは唯のくびれの部分に手を当てる
「ん…くっ」
「我慢しなくてもこのまま腰沈めろって!」
「が、我慢とかじゃないのっ」
間近でムッとリトを睨むが、いつものような怖さは微塵もない
すぐに顔が歪み、肩に置いた手が震えだす
「ゆっくりでいいから」
「…うん」
リトに後押しされる様に、唯の腰がゆっくりと沈んでいく
「あ…ふぅ」
さっき以上に奥へと入って来る熱い肉の感触に、唯はギュッと目を瞑った
ズプズプと肉壁を押し広げて入ってくる肉棒は、やがてもう一つに入口にあたる
コツっという音と共に、唯は体を仰け反らせた
「あはぁ…あた…あたって…」
「オレのちゃんとあたってる?」
コクコクと何度も首を振って応える唯
リトは笑みを深くすると、腰から背中まで唯の身体を撫で回した
ふるふると震え出す唯の体
「結…城くん、お願ぃ…だから、服脱がして! 体が熱くて…」
肩に置いた手にはすでに力が入っておらず、枝垂れかかる様に唯はリトの胸に頭を乗せていた
リトの手がするすると服の中へ入っていく
背中に感じるその手の感触に唯は息を熱くさせた
「手、バンザイして」
唯は言われたとおりに腕を上に上げた
服を脱がすと、その下からショーツとお揃いの柄をしたブラジャーが現れる
フリルとリボンの付いた可愛らしい白い色のブラ
それをジーっと見ているリトに何を思ったのか、唯は顔を真っ赤にしてリトに噛みつく
「い、いいでしょ別に!? 私だって…」
「ちょ…何も言ってねーだろっ!!」
フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向く唯
(ったく…)
リトは半眼になりながら背中に手を回すとホックに指をかける
「で、取っていいのか?」
「……好きにしたら」
まだ機嫌が直らないのか唯の声は相変わらず尖ったまま
そんな唯の顔をしばらく見つめた後、リトはホックを外した
ポロリと外れるブラの下から、少し大き目だけれど、形の良い、白くて柔らかそうな胸が現れる
瞬間、ぽぉ〜っと唯の頬が熱を帯びる
唯は恥ずかしさで顔をしかめた
リトはその横顔を見つめながら、乳房へと口を近づける
「…ムネ、舐めていい?」
「ダメ…」
短くて熱のこもったその声を無視する様に、リトは乳房へと吸い付く
「あ…ふっ…」
胸の一番敏感な部分へ吸い付くリトに、唯の肩は小刻みに震える
すでに赤く充血している乳首がリトの舌で転がされる
レロレロと舌で転がしたかと思うと、リトはいきなりむしゃぶり付いた
母乳を飲む様に乳首を吸い上げ、舌で何度も乳輪に円を描いていく
唾液でヌラヌラと濡れる乳房
リトは反対の胸に手を這わせると、思う存分揉みしだいていった
手の平の中でたぷたぷと揺らしながら、強く優しく弄ぶ
上下左右に弄られる乳房に、しゃぶり続けられる乳首
唯の口から自然と甘い声がこぼれ、太ももをもじもじとさせる
下腹部を休ませているリトを促す様に
リトの腰がそれに応える様に、少しずつ動いていった
結合部からはヌプヌプと卑猥な音が鳴り、唯の体は上下に弾む
「ンあ…く…ぅ、ああ…」
パチュン、パチュンと肉と愛液が絡み合い二人を昂らせる
リトは胸から離した手で、唯の腰を掴むと、更に奥へ深く突き入れていく
「ゆ…結城、くん! 深…あたって…あふぅ」
コツコツと子宮口に当たる度に唯の体は小刻みに震える
「お、奥…ダメっ! ダメぇ…結城くんっ!!」
「何だよ? もっと、もっと?」
「違…ンン!」
下腹部を襲う強烈な刺激に我慢できなくなった唯は、リトの首に腕を回し、その体を抱き寄せる
ムニュっと両頬に伝わる柔らかい乳房
胸の谷間を伝う汗を舌で舐め取ると、唯はますます腕に力を込めリトを抱きしめた
「あ、あのさ、これ気持ちいいんだけどさすがに苦しいってゆーかさ…」
胸に顔を埋めながら、くぐもった声を出すリト
唯はリトを抱きしめたまま、何も答えない
快感に全身を支配され、それどころではないようだ
(って全然、聞いてねー…)
それをいい事に、腰から離れたリトの手がするすると結合部へと伸ばされる
剥けた肉皮から顔を覗かせている赤く充血したクリトリス
チラリと上目遣いで確認するも、唯は気付いていない
リトは指の先で軽くクリトリスを押した
「ひゃっ…」
ビクンとリトの膝の上で、唯の体が跳ねる
リトは小さく笑うと、親指でグリグリとクリトリスを押しつぶしていった
「ああぁあ…くぅぅ…ンっ」
唯の中でいままで以上の波が全身に広がっていく
リトを抱きしめるその手がぶるぶる震え、奥歯がカチカチ鳴り出す
「ゆう…結城くん、やめ…それやめてぇ! ダメぇっ!!」
下腹部に集中する激しい刺激が唯の理性を溶かしていった
一瞬力が抜け、そのまま後ろのベッドに倒れようとする体を、なんとか後ろに手を付くことで防ぐ唯
角度の変わった体勢が、唯に新しい波を与えていく
奥へ奥へと子宮口を責めながら、リトは人差し指でクリトリスを転がしていく
ぐちゅぐちゅと肉棒が突き入れられる度に、秘所から白くなった蜜がシーツを汚していった
「す、すげーやらしい…」
ヌラヌラと輝く結合部にリトはゴクリと唾を飲み込んだ
「丸見えになってる。オレとお前のが」
「え…?」
口から涎をこぼしながら唯は、何気なくリトの見ている方へ視線を辿っていき────
とたんに火の出た様に顔を真っ赤にさせてしまう
少し唯の体が後ろに下がることで、二人の間に空間が出来き、結合部が丸見えになってしまっていた
「見える? オレのと繋がってるとこ」
「こ、こんなのハレンチすぎるわっ!!」
声を大きくさせて視線をそらす唯に、リトはぷっと吹き出す
「でもお前、腰動かすのはやめないんだな? すげー気持ちよさそうな顔してるぞ?」
「うぅ…」
唯は苦い顔をしながら、そっぽを向く
「気持ちいんだ?」
ギュッと目を瞑ってリトの言葉をやり過ごす唯
けれど体は正直だ
こんな時ですら、もっと、もっととリトを要求して止まらない
次第に、唯の口から嬌声が上がる
「すげーハレンチな声」
クスっと笑うリトに顔を耳まで赤くさせる唯
「違…違うの! これはっン…く違っ…」
シーツを握りしめる手に力が入る
快感と羞恥心が唯の体をどんどん昂らせる
ぞわぞわと膣壁が蠢き、竿を離さないように締め付けていく
腰をガクガクと震えさせる唯に、リトも額から汗を垂らしながら笑みを浮かべた
「もうイきそう?」
顔を赤くさせながら口を結ぶ唯
けれど、その目はチラチラとリトを見ては何か言いたそうだ
リトは溜め息を付くと、腕を伸ばし、唯の体を抱き寄せた
「ホラ、これでいいんだろ?」
リトにその身を抱きしめられ、その肩に額を乗せながら唯は小さく頷いた
「オレも。もうイきそう」
「う、うん」
唯はリトの首に腕を回してしがみ付くと、足を腰に回し、体をぴったりくっ付けて離れない様にする
胸板に柔らかい胸が押し付けられ、体が下から突き上げる度に、上下左右に形を変えていった
耳に直接聞こえる、唯の喘ぎ声
とろける様な甘さの中に熱がこもっていて、その声で必死にリトの名前を紡ごうとする唯
リトの中で我慢して抑えていた欲望が鎌首をもたげる
「も、もう出そう…」
「え? あ…ま、待って!」
何? と目で聞いてくるリトに唯はぽそぽそと小さな声で呟く
「キ…スし…」
「へ?」
「う…ぅぅ……キ、キスしながらじゃないとダメ」
狂いそうになる快楽の中、唯は目をギュッと瞑ると大きな声で口した
恥ずかしくて隠れたくなるほどの自分の気持ちを
今だって真っ赤になった顔をリトの首筋にうずめながら、必死にリトの返事を待っている
そんな唯にリトは屈託ない笑みを浮かべると、頭にそっと手を置いた
「オレもお前とキスしたい」
「え?」
ゆっくりと顔を上げた唯は、恥ずかしさで目がうるうるとなり、口だって小さく震えている
まるでいけない事を言ってしまった子どもが、怒られてしまうのではないかとビクビクしているかの様に
そんな唯の頭を撫でながら、リトはやさしく笑いかける
「キスしよ? 手も口もあそこも全部お前と繋がったままがいい!」
「…う……うん! うん!」
何度もコクコク首を振る唯にクスっと笑うと、リトは唇を重ねた
舌を絡め合い、唾液を交換し、口内を貪り
それらが結合部から聞こえる水音と合わさり、二人を淫靡に染め上げる
お互い口を離すと、おでことおでこをくっ付け合って、至近距離で見つめ合う
「ぷは…はぁ…んっは…ぁ…」
「…またキスする?」
とろんとなった顔のまま、唯は「うん」とだけ返事をした
顔を近づけながらリトはふと気づいた事を口にする
「思ったんだけどさ、キスはできても、手を繋ぎながら抱き合うのはムリ…だよな?」
「……なんとかしなさいよ」
「ムチャ言うなって」
苦笑いを浮かべるリトだったが、思いついた様に声を明るくさせた
「じゃあ、一回目はギュッと抱き合いながらしよ?手、繋ぐのは次って事でいいか?」
「…まだする気なの?」
「ダメ?」
バカ! っと小さく呟くと、唯はリトの体をギュッと抱き寄せた
胸に当たるやわらかい感触、火照った白い肌にしっとりと光る汗、
ほのかに香る唯の匂いに、リトの顔はほころぶ
「やっぱ最高」
「何が?」
「ん? いろいろだよ!」
「何よそれ? どうせまたおかしな事考えてるんでしょ?」
「ハハ…」
図星を付かれてつい苦笑い浮かべるリトの耳に手を伸ばすと、唯はギュッと耳を引っ張った
「い…いてぇ! ゆ、唯!?」
「おかしな事考えないでちゃんとしなさいよ! 私……もうガマンできないんだからぁ」
「そだな! オレももう…」
休めていた腰を再び動かすと、それに呼応するかの様に唯の腰を動いていく
すぐに忘れかけていた欲望が首をもたげ、リトは奥歯を噛み締めた
狭い膣の中でどんどん大きくなるリトの感触に唯の腰がガクガクと震える
「あ…ふぅ…結…城くん、結城くん…」
「唯…唯…」
互いの名を呼びながら、背中に回した腕に力をこめて抱き合う
苦しいけれどうれしくて、幸せで
ベッドをギシギシと軋らせながら、お互いを求める手は離さない
「唯…オレもう…」
「ん…うん! 私も…い、一緒に……一緒がいいのぉ…」
リトの腕にさらに力がこもると同時に、膣内がざわざわと蠢きリトをギューっと締め付けた
「結城…くん!! あ…ふ…あぁ…ぁあああ」
「で、出る!!」
ビュクビュクと勢いよく飛び出た欲望はゴムの中に溜まり
リトは腰を痙攣させながら荒い息を吐いた
「はふ…はぁ…は、は…ぁ…すごく…熱い…結城くんの…」
薄いゴム越しに伝わる熱い感触に、唯の口から涎がとろりとこぼれ落ちる
腰はビクビクと痙攣を繰り返し、体の震えは止まらない
「平気か?」
焦点が定っていないかの様にぼぉーっとなっている唯にリトは体を寄せた
断続的繰り返される荒い息遣いに、小刻みに痙攣を繰り返す下腹部
心配そうにジッと眺めるリトに、唯はゆっくりと向き直ると、本当に小さく笑った
「……結城くん、キスして。いっぱいギュってして」
一瞬、目を丸くさせたリトだったがすぐにニコッリ笑うと、薄く開いたままの小さな唇にキスをした
「ン…ん…ん」
汗で濡れる唇はいつもと違い少ししょっぱくて、抱き寄せた体はしっとりと濡れていてあたたかい
舌も愛撫もなにもない、ただ、余韻を味わうためだけのキス
顔を離した二人はどちらともなく、くすぐったそうに笑った
指で髪の毛を梳きながら、手で背中を撫でながら、ほっぺたにキスを繰り返しながら
二人は互いの顔をジッと見つめた
お互い肩で息をしながらも、恍惚な表情を浮かべている
唯はチラリと視線を下に向けた
まだリトと繋がっている結合部。そして、ビクビクと脈打っている熱い感触
「まだビクビクしてる…」
「ゴメン、久し振りだから…」
バツが悪そうな顔をするリトに、唯はクスっと笑いかける
「でも、気持ちよかったわよ。私も」
「唯…」
照れた顔を見られまいとリトを抱き寄せると、唯はその余韻を楽しむ様に、
リトの匂いで胸をいっぱいにさせた
ケータイを耳に当てながら、美柑は顔をムスっとしかめた
リトへの電話はこれで五回目
ちっとも出る気配のない兄に、美柑は電話口の向こうに愚痴を吐く
「ねェ、また出ないの?」
「…うん」
美柑はケータイを閉じると、隣を歩くララに向き直る
「ダメ。全然でない」
「む〜…何やってるのかなァ。リト…」
「ホント、何やってるんだか」
美柑は可愛い眉を寄せると、ふいにララの手を取って歩き出した
「いこ! ララさん」
「え? いいの? だって今日…」
ララのくもりがちな声に美柑は思わず表情を崩してしまう
今日は美柑の案で、久しぶりにリトの好きな夕食にしようと買い物に来ていたのだが
リトの好きなメニューが多すぎなため、本人に今日は何食べたい?
と、それとなく聞こうとさっきからケータイを鳴らし続けていたのだが……
一度止まりかけた足を再び動かすと、美柑はララを連れてさっさとデパートから出て行こうとする
「美柑…」
「い…いいの! いいの! ほっとこ!! あんなヤツ…」
「む〜…リト何してるのかな……」
ララは美柑に手をぐいぐい引かれながら、俯きぎみのその横顔を見つめた
「や、めっ…ぁ…も、もう、限界だって…」
唯のお尻を両手で揉みながら、リトは夢中で腰を突き入れる
前後に体が揺さぶられる度に、唯の胸がたぷたぷと震えた
「ゆ…結城、くんっ!! あ…ふ…ああぁあ」
リトの方を振り返るも、下腹部を襲う電流の様な波に唯はギュッと目を瞑った
もうこれで何度絶頂を迎えたかわからない
何度体位を変え、何度白濁した欲望をかけられたか
床には拭き終えたティッシュがいくつも転がり、汚れたコンドームがヌラヌラと輝いている
リトも唯も、互いの体を心を貪るように交り続ける
腕から力が抜けていき、唯の上体はくてっとベッドに沈みこんだ
下半身はリトに支えられたまま、ビクビクと痙攣を繰り返している
「は…はふ…はぁ…」
汗に濡れた前髪をおでこに張り付かせながら、全身で息をする
唯はゆっくり首を動かすと、後ろのリトに視線を向けた
自分を心配そうに見つめるリトは、それでも「動いていい?」と言わんばかりの顔をしていて
「も…もうムリよ…。これ以上はホントに…」
消える様なか細い声がリトに聞こえるはずもなく、リトはゆっくりと再び腰を動かしていった
「ん…くぅ…」
また唯の体にざわざわと波が波立ち始める
敏感になっている膣内は容易に唯を昂らせた
「結城…くんっ! まだダメ…ダメだってばっ!!」
ギュッとシーツを握りしめる唯
ぐちゅぐちゅと肉棒が膣内を掻き回していき、結合部から精液と混じり合った愛液がとろりとシーツに滴る
「結…城くん、嫌ぁ…こんなカッコでするのぉ…ン…」
リトは後ろから唯の中に突き入れながら、顔を歪ませる
「こんなカッコって犬みたいなって事?」
唯は息も絶え絶えに首をコクコクと動かす
「なんか犯されてるみたいで?」
「そんな…ン…ン…」
奥歯を噛み締めて何も応えられない唯に代わって、膣内がキューっと蠢く
「お前の膣内、あったかくって、ギュウギュウ締め付けてきて、すげー気持ちいい!!」
すでにコンドームは付けていない
生のままの感触が唯の膣をさらに刺激し、悦びの声を上げさせる
リトは夢中になって腰を動かし、唯の中を掻き回していった
汗でしっとりと濡れた唯の背中には、長い黒髪が張り付き
汗の珠が唯の頬を伝ってシーツにポトポトと落ちていった
リトは上体を屈めると、舌を出し、唯の背中を首筋から腰のラインまで一気に這わせていく
「ひゃ…あぁ…」
ビクンと大きく唯は背中を仰け反らせた
「お前の背中、汗の味がしておいしい」
「バ…バカぁ、何言って…」
震える声でなんとか返すも、すぐに来る快感の波に唯の腕はぷるぷると震える
リトは背中に何度もキスを繰り返しながら、伸ばした手で、唯の胸をたぷたぷと揉み始めた
「や…め…ン、ンン…あぁ…」
手の平全体で揉みしだき、二本の指で乳首を摘み、コリコリと弄るリト
「お前のムネ、やわらかくて気持ちいい…」
耳元でそう囁くリトに、唯はギュッと目を瞑った
「もっと揉んでいい?」
「ダ…メぇ…」
リトは背中にもう一度キスをすると、唯の胸の前に腕を回し、その体を抱き掛かると横にゴロンと寝そべった
「な…結城くん!?」
突然の事に少し不安な声を上げる唯
シーツに擦りつけた左頬を上げると、視線だけをリトに向けた
「大丈夫だって! ちょっと姿勢変えただけだからさ」
「う…うん」
背中に当たるリトの胸のぬくもりに唯は少しずつ平常を取り戻していく
「動いていい?」
「ゆ…ゆっくりね?」
リトは唯の後ろ髪を掻き上げると、赤く上気した右頬に軽くキスをした
それが合図だったかの様に、リトの腰がゆっくりと動き出す
角度の変わった挿入に、初めての体位が二人の感度を上げていく
鼻孔をくすぐる髪の匂いを胸いっぱいに吸い込むと、リトは再び胸に手を這わしていった
ムニュムニュと柔らかい肉感に、今は火照った温かさが加わり、リトは手の中で思う存分乳房を揉みしだく
「結城…くん……結城くん…ン、ンン」
息を切らせながら何度も自分の名前を呼ぶ唯に、リトはくすぐったい様な笑みを浮かべた
たまらく可愛いと思うと同時に、もうこれ以上離れたくない、離したくないと感じる
リトは両腕でギュッと唯の体を抱きしめた
その体を強く強く抱きしめながら、リトは夢中で腰を振った
痛いほど締め付けるリトの抱擁に、唯の口から苦悶の声がこぼれる
それでも唯は嫌だとは言わなかった
眉を歪め、奥歯を噛み締めながら、ただ、リトに身を任せる
ジュプジュプと繰り返す肉の出し入れに、シーツには大きな染みが広がり
触れ合う胸と背中には、汗がネットリと光っている
全身を体液で染めながら、二人は互いの体を貪り続けた
リトは腕を解くと、唯の太ももに手を伸ばし、右足を持ち上げる
「や…あ…ぁ」
とたんに唯の口から嬌声が上がる
「な…何して…」
「これでもっと奥まで届くだろ?」
頬に当たるリトの熱い息遣いに唯は顔を歪めた
リトは見せつける様に股を広げさせると、深いところまで突き入れていく
「ン…ンン…ああぁあ…」
噛み締める様に我慢していた唯の口から、どんどん卑猥な声が溢れ出す
亀頭が子宮口をノックし、戻る時のカリが唯の敏感な部分を擦っていった
堪らずリトから逃れる様に、体を捩る唯
リトは逃すまいと腕に力を込めて動けない様にする
動けない体に下腹部を襲う電流の様な波。唯はどんどん感度を上げていく
ゆっくりとした動きから、激しい動きへと変わったその変化に、体が過剰に反応する
下腹部を襲う震えは、次第に上へ上へと広がり、唯は全身を激しく痙攣させた
「か…ふぅ…ああぁあ」
一突き一突きがまるで絶頂を与えるような感覚
リトの先端が子宮口を押し広げ、更に中に入ろうとする
(ウソでしょ……結城くんのが…これ以上…)
リトの腕を掴む唯の手に力がこもる
耳に直接聞こえるリトの自分の名を呼ぶ声
(結城…くん…)
白くとろけていく意識の中、それでもその声だけははっきりと聞こえる
唯は自分の指をリトの指に絡ませていった
「唯?」
「…手、繋ぎたい。結城くんの顔、見えないから」
ぼそっとそう呟いた唯の顔は耳まで赤くなっていて、リトは小さく笑みを浮かべた
「じゃー手、繋ごっか?」
「…うん」
リトに背中から抱き締められながら、小さくなる唯
リトはそんな唯の肩に二度三度とキスを繰り返すと、唯から肉棒を引き抜いた
「え…」
離れていくその感触に唯は目を丸くさせた
「結城くん…?」
顔をぽかんとさせる唯に笑みを送ると、リトはその場で脚を伸ばしながら座った
「ほら、おいで唯」
「うん…」
唯は立ち上がるとリトの腰を跨ぎ、自分の腰をゆっくりと沈めていった
「自分でする?」
「結城くんがしなさいよ……今だってすごく恥ずかしいんだからね」
ぼそぼそと文句を言いながらも決して拒もうとしない唯に、リトは苦笑を浮かべた
手をスッと伸ばして、割れ目をゆっくりと広げていく
秘所からこぼれた愛液が唯の太ももをつーっと伝っていく様子に、リトの喉に唾が落ちていった
「じゃ、じゃあ入れるぞ?」
「うん…ン、ンぁ」
短い返事を待たずして、リトは唯の腰を深く沈めていく
すぐに亀頭を咥えこんだ入口は、そのまま残りの竿を咥えようと収縮を繰り返す
「ゆ…ゆっくり…してぇ…」
少し体を硬くさせる唯のお願いに応える様に、リトはゆっくりと唯を導いていった
相変わらず唯の中は狭く、奥へ入っていく度にギチギチと締め付ける
「入っ…たァ」
「うん。お前の中すげー気持ちいいよ」
リトのその言葉に唯はハニカム様に小さく笑った
「唯、手」
「ん…」
伸ばした手と手が触れ合い、指と指とが求め合うように絡み合う
互いを見つめ合いながら、その間を埋める様に、手を握り合う二人
「動いていい?」
「うん…」
リトは勢いをつけて奥に竿を突き入れていく
「あ…ふぅ、あぁあ…」
握りしめる手に力がこもり、唯の体は上下に跳ねた
「おくぅ…奥にあた…ンン…あぁあ」
「奥がいいんだ?」
「だって…こんな…ン…くぅ」
唯の反応に、リトはますます昂る自分のモノを突き入れていく
「ダ…メ…ダメぇ! 奥ばっかり私…ンっ」
「お前の中、ずっと痙攣しっぱなしで、すごい」
「結城くんが…何回も何回も私の事…ン…イジメるからでしょ!?」
リトは少し口を尖らせている唯の手を引っ張ると、腰をぐっと引き寄せる
ヌチャっと音が鳴り、結合部から白濁した本気汁がとろりと溢れ出す
痙攣を繰り返す唯の奥歯は、すぐにカチカチと音を立て始めている
リトは子宮口を押し広げる様に、奥へ奥へと肉棒を突き刺していった
子宮に直接響くリトの肉棒に、半開きになった唯の口から涎がこぼれ落ちる
「かぁ…やめ…ぁ…ああぁあ」
唯の下半身は痙攣を繰り返し、力が抜けた足はだらしなく伸びきっている
パチュ、パチュと水音を鳴らしながらリトは腰を打ち付ける
リトが動く度に、前後左右へたぷたぷと波打つ胸
「す…げェ、お前のムネさっきからムチャクチャ揺れてる」
口の端に笑みを浮かべながら、リトは込み上げる射精感に眉を歪ませた
「もう…出そう」
唯は視線だけをリトに向けた
「お前の中に出したい」
突然、唯の手がリトの手から離れていった
「え?」
キョトンとするリトに唯は何も言わず両手を伸ばす
「唯?」
顔を赤くさせながら、もじもじと体を揺する唯にリトはクスっと笑った
リトも同じ様に両手を伸ばすと、その細い体をギュッと抱き寄せる
「ホラ、これでいいんだろ?」
リトの背中に腕を回しながら、唯はコクンと頷いた
触れ合う頬が唯が赤くなっている事をリトに伝える
(フツーに言えばいいのにホント、こいつは…)
「動いて…」
「ああ。でも、これじゃあ中に出しちゃうけどその……いいのか?」
リトを抱きしめる腕に力がこもり、次第にリトの腰に足を絡ませていく
「え…ちょ…」
「…ちゃんとしなさいよ?」
「え?」
唯は体を少し離すと、真っ直ぐにリトの事を見つめた
「ちゃんとしなきゃダメだからね?」
「ちゃんと?」
それは結婚?責任?それとも別の────
リトを映す唯の目には強い想いが宿っている
リトはコクっと首を振ると、その背中に腕を回し、再び唯をギュッと抱きしめた
数秒で抑えていた射精感が戻ってきた
耳元に聞こえるリトの荒い息遣いに、唯もそれに重ねる様に息を荒げた
リトのモノが膣内でさらに大きくなる
「ン…く…ぅ」
首筋に回した腕に力がこもり、唯は両手をギュッと握りしめた
リトの腰の動きが速くなる。後はもう欲望を吐き出すだけ
唯と呼吸を合わせる様に、唯を促がす様に
肉と肉がパンパンと合わさり離れていく
一瞬ごとに二人の気持ちを昂らせた
「唯…オレ、もうイきそう…」
「う…うん! 私も!!」
リトは唯の奥まで腰を突き刺すと、その中へ欲望を吐き出した
「あ…ふ…ぅ…ン、ンぁああ…」
子宮の壁を叩く精液の奔流に、唯は二度三度と腰を浮き上がらせた
「あ…あ…ぁ…出て…出てる結城くんのが中で…出てる…」
ビュルビュルと勢いよく出た欲望が子宮内に入っていく
膣どころか子宮全体を熱くさせる射精に唯の体がガクガクと震えた
それは、リトの欲望が子宮内に叩きつける様に飛び出す度に続く
二度三度と連続してイかされ続ける唯
ビクビクと下半身を痙攣させながらも、リトを抱くその手は緩めない
「き…気持ち良すぎ…」
その余韻に浸る様にぐったりとしたまま、リトは唯から体を離した
ゴポリと割れ目から白濁した欲望がこぼれてくる
「あふ…は…ぁ…はぁ、すご…い。いっぱい出て…」
子宮に満ちる濃い種と、体を襲う感じたことない快楽に、唯の腕から次第に力が抜けていき
唯の体は後ろにふにゃっと倒れていく
リトは慌てて腕を伸ばすと、途中で唯を受け止めた
「大丈夫か?」
心配そうに顔を覗き込むリトに、唯はぼそっと呟いた
「さっきみたいにちゃんとギュッてしてくれないとダメでしょ?」
「へ!?」
腕の中の自分を見つめながら戸惑ったように言葉に詰まるリトに、唯はムッと口を尖らせた
「結城くん!?」
「え? あ…は、はい!!」
大きな声で返事をするとリトは、腕の中でまだ小さく痙攣を繰り返すその体をそっと胸に抱き寄せた
「こ、これでいい?」
「……」
「唯?」
「…そんな事聞かないでよ」
「だ、だよな」
リトの肩におでこをトンっと当てながら、表情を隠す様に唯は口を開いた
「それより結城くん、ちゃんとわかってるわよね?」
「へ!? な、何が?」
こんな時まで間の抜けた事言うなんて!!
唯は複雑な気持ちになりながらも、ゆっくりと顔を上げた
どうしても聞かなければならない事があるからだ
肩から顔を上げた唯は、心なしかいつもより小さくなっていて、その細い体が今は震えている
それは、緊張のためか恥ずかしさのためかあるいは────
「唯?」
俯いていた唯は、やがて上気した顔を上げるとすっとリトの顔を見つめた
もじもじと揺れる体は止まらない
「何だよ? どしたんだ?」
「言ったでしょ? ちゃんとわかってるの? って…」
「ん? まー…な」
頬を指で掻きながらリトは、バツが悪そうに笑う
(ホラ、やっぱりわかっていない!)
ふつふつと次第にある感情が湧き上がってくる中
唯はぽつりぽつりと話し始めた
「結城くんは私を一人するし」
「う…だ、だから悪かったって謝ってるだろ?」
「全然、電話もくれないし」
「だから…」
「あんなに約束したのに…」
自分の体を抱きしめる様に唯は胸の前で腕を組む
チラリとリトに視線を送りながら、小さく、だけどはっきりと告げる
「私の中にあんなに出して……。赤ちゃん出来てもしらないんだから」
「そ…それは……」
あたふたと一人テンパるリト
唯は長い睫毛を伏せながらポツリと呟いた
「……ねェ結城くん。結城くんは、私のこと幸せにしてくれるの?」
窓から吹き込む春の風が、唯の髪を撫でていく
ほのかに香る唯の髪の匂いの中で、リトはただ唯の事を見つめていた
「しあわ…せ?」
「そう。ちゃんとしてくれる?」
気持ちを確かめるために、気持ちを知るために、リトの顔を覗き込んでその答えを待つ唯
そんな唯にリトははっきりとした口調で答えを返そうと思った
「そ、そんな事は当りま……ぇ…」
けれど言葉が小さくなって消えていく
唯を幸せにする
そんな事は当たり前だし、いつもどんな時だって想ってる事だ
だけど、なぜかこの時は、その事を軽々しく口に出してはダメだとリトは思った
唯は怒ってるでも、悲しんでるでも、拗ねてるワケでもない
どこまでもいつも唯で、いつもの顔で
だけど、その目だけは今日は違った
透き通るような黒い瞳はリトだけを見ている
他の物は見ていない。ベッドも、枕も、部屋も壁も全て映っていない
リトだけをその目に映している
「結城くん?」
この時になって初めてリトは気付く
淡々とした声の中に、唯の期待と不安が混じっている事に
それは、ひょっとしたらリトにしかわからないほどの小さな事なのかもしれない
──ちゃんとしなきゃダメだ──
頭ではなく心がそう言った
今言わないときっと次はない
次に期待なんかしてたらダメだ、と
開いたり閉じたりそわそわさせていた手を一度握りしめると、唯の顔を真正面から見つめる
「…しょ、正直よくわかんねェ…。お前の事好きだし、これからも一緒にいたいって思ってるけど
、お前の事ちゃんと幸せにできるかどうか……わかんねェ…」
「……」
「オレがお前にできる事っつったら、休みの日にデートに行って、買い物して、
ケーキでも食いながらお前と話して、んで…ウチに帰っていっぱいエッチして…
誕生日とか記念日とか何か行事とかあれば二人でお祝いして…
すげー背伸びして、高いとこでメシ食ったり、お前の欲しい物とかガンバってプレゼントもするけどさ」
リトは俯いていた顔を上げると、バツが悪そうに頬を指で掻いた
「…オレ、これからもお前にこれぐらいしかしてやれないと思う…。情けねーけどさ」
「ホントね」
黙ってリトの話しを聞いていた唯は小さく笑って応えた
「ハハ…ハ…」
リトの口から力ない溜め息がこぼれた
「…それがあなたの言う幸せにするってコトなの?」
「その…」
言いよどむリトに唯は体を寄せるとその顔を覗き込む
「そうなの?」
「…ゴメン。オレにできる精一杯の事だと思う…」
「そう…」
リトは何気なく唯の顔を見た
唯はいつの間にかジト目になって自分の事を見つめていた
「え?」
「普通、こういう時ってもっと大きな事を言うものじゃないの?ウソでも冗談でも」
「ええ?」
「『毎月必ずおいしいところに連れて行く』とか『旅行は毎回私の行きたいところでいいよ』とか」
「え…あの…」
「せめて『世界で一番幸せにする!!』 ぐらいは言いなさいよ!!」
「確かに…」
ガックリ力なく項垂れるリト
そんなリトに唯はクスクスと笑みを浮かべた
(ホント…こんな時でも『いつもの結城くん』なんだから)
いつまで経っても変わらないリト
変わって欲しくないと感じるリトの好きなところ
唯は両手をすっと伸ばすと、リトの両頬をムギュっと引っ張った
「へ!?」
左右に引っ張られながら、リトの頬がどんどん赤くなっていく
「な、何だよ? いたひって!!」
痛がるリトに対し、唯はムスっと頬を膨らませながら手の力を緩めない
「唯!?」
「お返しよ! 私の事、散々イジメたんだからこれぐらい当然でしょ!」
フンっと鼻を鳴らしながら要約リトのほっぺを解放する唯
キリキリと痛む頬を手で擦りながらリトは、口を尖らせた
「ってぇ……。あのな、イジメたとか言うけど「甘えたい」とか「好きに動いて」とか言ったのお前の方だろ?」
「だから何よ?」
「全然甘えてこないお前が悪いんじゃねーのかよ?」
「ななな、何を言って…そんなのあなたが……う……うぅ…」
次第に動揺する様にふるふると揺れていた目に、やがて薄っすらと涙で滲んでいった
「あ、あれ?」
キョトンするリトの胸に唯はポスンっと握った拳を当てた
「な、何だよ?」
「そ…それならそれでちゃんとリードしなさいよね!」
「そ、それはまあ…」
リト自身テクがあるワケでもない。ましていつも緊張と興奮でいっぱいいっぱいになってしまう
唯はポカポカとリトの胸を叩き続ける
「だいたい、私を不安にさせないんじゃなかったの? 寂しい時はどうするのよ?
私を一人にしないって! 私にちゃんと好きって言うってそう約束したじゃない!!
私まだ、許したワケじゃないんだからね!?」
「わ、わかってるって! でも……あれ? お前、ちっちゃくなった時の記憶なかったんじゃ…」
「黙って!!」
顔を俯かせながら唯は一際大きな力でリトの胸を叩いた
「そんな事どうでもいいの! それよりちゃんと反省しなさい!!」
「で、でも今はこーやって一緒にいる…」
「今はでしょ!! ……過去は取り戻せないんだからね…、その時の寂しさとかは消えないんだから…」
俯く唯の頭にリトはそっと手を置いた
「…何?」
「取り戻せないし、消せないかもしれないけどさ、だからその分オレが思いっきりがんばるからさ! 責任取らなきゃ、だろ?」
「え…」
「心配すんなって! オレがゼッタイお前の中からその嫌な気持ち消してやるからさ!!」
「ま、また調子のいい事言って!! だいたい結城くんはい…つも…」
それ以上言葉が出てこなかった
目の前でニッと笑うリトの姿に息が止まりそうになってしまう
まるでイタズラを考えている少年の様な笑顔
ふんわりと心にふれるその顔が、いつも唯の気持ちをあたためてくれる
(もぉ…なんでいつもこうなのよ? それならそれで、もっと最初からちゃんと…)
ゴニョゴニョと下を向きながら小さくなる唯の頭を、リトはニコニコしながら撫でている
次第に唯の肩がぷるぷると震え始めた
「もう! いつまでそうしてるつもり!? いい加減撫でるのやめてっ。私、子どもじゃないんだからね!!」
ムッと頬を膨らませる唯にリトは不思議そうな眼を向けた
「あれ? お前、こーやって撫でられるの好きじゃなかったっけ?」
「そ…それは……と、時と場合っていうものが…」
「嫌ならやめるけど?」
「う! …うぅ……い、今だけ許してあげてもいいわ」
「そっか!」とまたニコニコ顔で頭を撫でるリトに、唯の顔は真っ赤に染まる
何だかんだと最後はいつもリトに負けている事に、唯はこの時まだ自覚していなかった
「やっぱ唯ってかわいい」
「か、かわ…いい!!?」
「そ! 食べちゃいたいぐらいかわいいって思う」
「た、食べるとか……そ、そんな事ハレンチだわっ!!」
手の下で声をキツクさせる唯にリトは慌てて言いワケを始めた
「そーいう意味じゃねーって!! オレが言いたいのは…」
「同じよ事よ! だいたい結城くん。あなたさっきから私を子ども扱いばっかりして」
「子ども扱いって…」
唯は頭の手をパシっと払いのけると、そのままビシっとリトに指を指した
「ちょっとは反省しなさいよっ!!」
指を突き付けたまま唯はぷぅっと頬を膨らませる
しばらくそんな唯を見つめた後、リトは小さく溜め息を吐くと、再び唯の頭に手をポンっと乗せた
「ちょ、ちょっと…」
「そうだよな。お前はオレの子どもじゃないもんな」
「え…そ、そうよ! わかれば…」
「だってお前は、オレの彼女で、一番大事なヤツで、一番大切な存在で、そして世界で一番大好きな人だもんな!」
照れくさそうに笑うリトから目を背けると、唯はまたポスンっとリトの胸を叩いた
「遅いわよ。言うのが…」
下を向きながらぼそっとそう呟く唯をリトは、抱き寄せた
胸にトンっと頭を当てながら、唯はリトの鼓動を感じていた
ドクン、ドクンといつもより大きく聞こえるのは緊張と興奮の表れだ
(まったく、ムリしすぎよ)
そう思うも、リトの真心がこもった言葉に唯自身、いつも以上に胸は高鳴っていた
ふっと顔を上げた唯とリトの視線が交わる
互いに頬を染めたまま見つめ合う事数秒、リトの目を見たまま唯が口を開いた
「私、甘いもの食べたい」
「へ? 甘いもの? いいよ! ってか、お前好きだもんな」
「うん。あと…行きたいところとか、見たいお店いっぱいあるんだけど」
いっぱいの部分にリトの顔が軽く引きつる
「いいんでしょ? 思いっきり甘えてもいいって言ったの結城くんなんだから」
「ま、まぁ…な」
「ん、じゃあ行くわよ! 結城くん」
そう言って離れようとする唯の腕を、ふいにリトは掴んだ
「え…なに…」
唯が言い終わるよりも早く、その体をぐっと引き寄せるリト
「コ、コラ! なに考えて…」
「キスしたい」
「え? キ…キス!? な、なに言ってるのよ? これから外に出かけるんでしょ?」
「わかってる! けどその前に…」
「ちょ…ちょっと待っ…ン、うンン」
抗議の声をその口で封じると、舌を絡めつつリトは唯の背中に腕を回した
唾液の糸を引かせながら離れていくリトに、唯はムスっと顔をしかめた
「どういうつもり?」
「ゴメン。ガマンできなくてさ」
「…それならそれで、ちゃんとしなさいよね!」
口調こそ怒っているものの、どこか表情がやわらかい唯にリトはホッと溜め息をこぼした
「じゃあ、あらためて…」
まっすぐに見つめるリトの目が唯の気持ちを捉える
「好きだよ唯」
わかってるわよ
「もう一人させないから」
信じてあげる
「オレがゼッタイお前のこと幸せにするから」
期待してるんだからね!
唯はリトの首に腕を回すと、そっと顔を寄せていく
好き
私も結城くんが大好き
誰よりも何よりも一番大切だから
私もあなたの事幸せにするから
だから
私も結城くんのこと食べちゃいたいぐらい大好き!!
決して面と向かって言えない言葉を込めながら唯はリトと体を重ねていった
それからおよそ二時間後、雨も上がり出かける準備の整った二人を出迎えたのは、帰って来た美柑とララだった
「唯! やっぱり来てたんだ♪」
「おじゃましてます」
ペコリとおじきをする唯の腕に早速ララが飛びついてくる
そんな二人の横で美柑は冷めた目でリトを見ていた
「何だよ?」
何もわかっていない様子の兄に美柑の怒りはふつふつと煮えたぎっていく
結局その後、散々美柑からシャーベットの事を含めて文句を言い聞かされたリト
そのリトと何をやっていたのかと楽しそうに聞いて来るララに真っ赤になりながらあたふたと慌てる唯
二人がデートに行くのはもう少し後になってからになった
終わり
まず、スレ誘導もできず容量いっぱいにしてしまってすいません
前回まったくエロ描写がなかったので、今回はその分エロメインにしたのですが……
自分にはこのテのパターンは向いてないなと思いましたw
萌え重視の方がいいかなと。でもエロもないとダメだし、「クリスマス回」ぐらいの割合がいいのかなあ
やっぱリトと唯の話と言えば萌えが基本であり、そこから話が始まるワケですしね
>>20 一番槍GJ!
なんというかピンク一色な後編、大変お見事なお手前で。
本当にGJでした
っていうかリト、結局避妊はしないのねwww
ちゃっかりヤることはヤっていても、初々しさ全開…これからもそんなふたりで居て欲しいと思いました
もう最高でした!
唯が可愛すぎる…GJ!!!
唯以外が読みたい
やっぱりリトと唯はいいね
エロいんだけどなんだか心温まる作品ありでした。
一番槍GJですた。
前スレ・・・リコが復活してるだと・・・っ!?
ちょっと本屋行ってくr
前回は興味なかったのに今週のリコ可愛すぎじゃね。
猿山×リコ書いていい?
書いてもかまわないが、投下の際に注意書きをつけて投下をしてほしい
>>27 期待しないわけがない。すでに全裸だ
さあ、思う存分筆を走らせてくれさい
ヤンデレ案を出した者だが聞きたいです。
○見たいヤンキャラは?
○どのくらいデレたらいい?
○ぶっちゃけ何処までやって良い?(ヤン代表あげてくれれば分かりやすい 例:スクイズ Wキャスト)
まぁあまり文はうまくないし、こんなジャンル初やからそこは了承願います。
>>28,30
あいよー
何かプロットだけでいい感じの書けたから、期待して待ってていいよ。
>>20 いつもGJ!
でもなんかいろいろ考えすぎなのでは?w
確かに萌えの方が合ってるとは思うけど、肩の力抜いて書きたいの書いてください
ところで「リトと唯」の人はコテつけないの?
職人だしつけた方がいいよな……
今いる職人さんの中で一番の古株さんだしさ
せっかく盛り上がってるところをぶった切るようだけど
間違ってたらごめんなさい。
あなたって最近FF3スレにSS投下した人ですか?
人違いだったらすみません
>>31 Q1.春菜
Q2.Q3.空鍋くらいが妥当じゃね?
「リトと唯」を書いた者です。みなさんレスありがとうございます
>>34 コテは考えていないのですが、やっぱりつけた方がいいのかな
その内にでもwあと俺は古株って感じじゃありませんよ。投下期間が長かったりもするしそのせいかと
>>35 誤爆?もし違ったら俺宛てってことですか?もしそうなら違いますよ。別の方ですね
>>31 案その1
1 唯
2 デレデレな感じで
3 殺すとかはもちろんだけど、ケガとか血とかもちょっと……って感じです
ヤンデレでも見ててどこか微笑ましい、そんな感じでお願いします(なんかヤンデレとは違う感じもしますが…)
案その2
1 美柑
2 危険な感じのデレでw
3 彼女が出来たリト。その相手への嫉妬と積もりに積もったリトに対する気持ちの爆発
無垢な心と幼い感情が次第に黒く染まっていく過程と、最後は自分でも制御できなくなった気持ちをリトに全てぶつけてしまう
なんて感じでお願いします
美柑が空鍋ですね?わかります
やっぱり空鍋はヤンデレの代表なんだなぁ…
1ルン
2自分と言う檻に閉じ込める感じの病みとエッチの時はデレデレ
3みんなにモテるリトを見て焦って拉致って逆レイプが良いかと…
39 :
むに:2008/07/02(水) 21:59:47 ID:c6e+RxYn
ヤンデレについては良くは分かりませんけど、何となく感覚的には春菜ちゃんが一番合いそうな気がします。
ボクも只今頑張って執筆中ですが、色々ありすぎて時間がかかりまくりで待たせまくっておりますが、
なるべく早めの投下を目指します。
あと質問なんですが、『空鍋』って何の事っすか?
>>39 >空鍋
アニメ版「SHUFFLE!」の別(蔑)称。
ありがとうございます。とりあえず書きやすそうな美柑か春菜で考えます。
空鍋はアニメ版SHUFFLE!の楓の行為だと思います。いわゆる何も入ってない(=空の)鍋をかきまぜてました。関係ないですが他作品では独り糸電話もなかなか良かった。
春菜=言葉様なイメージ
光を失った瞳と鋭い刃物
返り血を浴びるお姿がとっても素敵
まあヤンデレって、本来は純情でお淑やかな娘が(ry…っていう属性だしな
そうなると、しっくり当てはまるのは春菜だよな
>いわゆる何も入ってない(=空の)鍋をかきまぜてました
>独り糸電話
ヤンデレって病的に相手の事を想うって意味だと思ってたけど
それだけではヤンデレとは言わないんだね
なんか精神的な病気と紙一重のような……軽くホラーだw
今なぜか、とある店でひぐらしのなく頃にが恋愛シュミレーションのコーナーにあるのを思い出した
レナはヤンデレだしな
スレ違いだ、スマソ
とりあえず春菜に一票
ひぐらし房うぜぇ
普通の神経の人はコテ雑談の方がうぜえんですがね
むに・・ボク・・wwwwwwwwwwww
リトなんて死んじゃえバインダー
>>47 × 普通の神経の人はコテ雑談の方がうぜえんですがね
○ 俺はコテ雑談の方がうぜえんですがね
こうだろ?
あとむに氏は職人ですよ。ここでは職人は神ですよ
ボクっ子職人ハァハァ
>>46 ひぐらし厨が『ひぐらしのなく頃に』を理解出来ていない件について(スレ違
原作はあとどのくらいレモンネタを引っ張ってくれるんだろう
ひぐらしを理解出来てる
>>51はカッコイイな
痛いことを無自覚に言えるって一種の才能だよね
とりあえず流れを戻そうか
やっぱり唯はヒロイン中一番ハレンチだと思います。
あと、前スレでレスした「リトと唯」の二話の文章ダブりを修正しました。
お前らが何と言おうとリト×唯よりも唯×リトだ
唯の体形のハレンチさは異常、ヒロインの中でもずば抜けてる。
唯みたいな人間ほど男を知るとハマるタイプだったりすると思う。
でも俺はヤミタソ萌え。
美柑タソも萌え。
俺ロリコン乙。
>>55 それもらいましたw
たまにはシチュ変えてそういうのもいいですね
唯がアタッカーに回るのか。
リト干からびそうだな。
唯「結城くんが…結城くんがイケないんだからね!私を、本気にさせちゃうんだから…!責任…取ってね…?」
こうですね、わかります
最初のうちは「優しくして」とか言ってるんだけど、段々強引なのも良いなと思い始め
何とか強引にしてもらおうと画策するんだけど、相手が相手なので
何時の間にか自分がリードしてるっていうのが唯
唯責めって唯がヤンデレ化してるイメージしかない。
>>62 唯「ハレンチな事ばかりする結城君が悪いんだからね。貴方をイカせて、私もイク」
こうですか、分かりません><
とりあえず唯はヤンデレでFA?
このスレの唯人気は異常
リトと唯書いてる者ですが
>>63の様に唯に「イく」とか「オ○ンコに〜」とか「結城くんのオチ○チン早く〜」
とか言わせるの少し遠慮してるのですが、実際はどうなんでしょう?
唯がそんな淫語言ったりするイメージが最初なかったので今も言わせていないのですが
言わせたりしてもいいのかな?それとも今みたいな感じで初々しいイチャイチャな感じがいいですか?
前回は少しやりすぎたと思ってるんですが、少し悩んでます
俺は初々しい方がイメージに合うと思うなー
淫語連発なんて違うキャラだ><
でもイク位は許容の範囲内
イク は○
いっちゃう×
>>65 使いすぎるとキャラがぶっ壊れちゃいそう。
例えばリトがおねだりするように唯にそういう台詞を吹き込むとか、そんな場面ならばアリかと。
>>66-68 即レスありがとうございます
淫語の連発は俺も抵抗あるのでやっぱり「イク」など最小限に抑えた方がいいですね
リトのおねだりシチュも含めて、いつかフェラとかパイズリとかもやってみたいと思います
どうせ連呼するならいっそみさくらなんこつ同人誌並みにしてくれれば割り切る。
>唯責めって唯がヤンデレ化・・・
はわからんなぁ・・・・・唯はやはり攻めでも受けでも真面目娘(できれば受け)でないと。
こう・・・・目隠しプレイとか逆騎乗位とかけっこういけそうな気がする。特に目隠しは。
>>69 そういえばまだそういうシチュ無かったなあ。
でもそういう濡れ場での物足りなさを感じたことが無かったから気付かなかった。
日常での会話やモノローグでエネルギーが溜まってそれが一気にドーンと発散されるからかな。
攻めになれそうに無いのは春菜位だな
いつかのバレンタインデーの春菜はガンガン攻めてたぞ?
リトと唯の人、番外編で今週の回の実際にやっちゃったverを書いてk(ry
俺もそれを所望する
校長をやり過ごした時に唯がハレンチモードに入ってなけりゃ更にフラグが積まれたんだがなあ。
>>74-75 それはもちろん書きますけどw
その前に今週の回に関するSSを先に投下したいので少しだけ待っててください
なんという準備・対応の早さw
>>77流石っすね…よろしくお願いしますm(_ _)m
>>77 唯好きな俺は期待せざるをえない…楽しみにしてます
81 :
むに:2008/07/07(月) 18:46:19 ID:EGhd6n6c
その繋ぎとして…。
女体化ネタ(レモン)その19投下します。
夕崎リコ最高。
――――――
温泉旅館――。
「ハ〜イ、遅かったわねみんな。待ちくたびれちゃったわよん♪」
秋穂車が旅館に着くと、えらくスッキリした感じの御門先生が極上スマイルで待っていた。
『……』
そして、真っ白に燃え尽きた同乗者の皆様方。
何か口から白いモノが出ている様ですが、とりあえず皆さん生きておられてますのであしからず。
「あら?どうしたのみんな?旅行は始まったばかりなのにそんなに沈んじゃってさ。車酔いでもした?」
「………マァ、概ネソンナ所デスヨ…。先生ノオ陰デ…」
何でこんな事になってるのか全く自覚していない御門先生に対して、
リトは出来る限り皮肉をたっぷり含めて返事を返す。
――が。
「あらあら、困った子達ねぇ〜。みんな若いんだからもっと元気出さなきゃ駄目よ?」
《アンタの所為だよ!!頼むから少しは自覚しろ!!》
――と叫びたかった。みんな揃って声を大にして叫んでやりたかった。
だが、それすら出来ない位にリト達の精神力は極限まで搾り取られていた。
「だいじょぶ?レモン、みんな〜」
ちょっと心配そうにララがリト達の顔を覗き込む。
「ぁの……、口から魂みたいなモノが…」
(何か…、触ったら崩れちゃいそうね…)
リト(レモン)達犠牲者の現状を目の当たりにしてドン引き、哀れむ春菜と唯。
「……」(ぽんっ)
無言でリトの肩に手を置き(爪先立ちで)、目頭を押さえる美柑。
「………まぁ、とりあえずご苦労様でした。結城リ――レモン…」
そしてヤミから労いの言葉を貰った。
「………とりあえずなぁ…、オレは一つだけ理解出来た事があるわ…」(ボソッ)
「何?」
『ガバッ』
「ふぇっ!?」
小声で何か呟いたかと思ったら、小首を傾げるララをいきなりギュッて抱き締めて、そして…。
「………生きてるって素晴らしい事だよなぁ〜……(泣)」
ララの胸に顔を埋めて泣きついた。
普段のリトからは考えられない大胆な行動――。
よっぽどさっきのデス・ドライブが恐かったと見える。
「よしよし♪」
流石のララも突然のこの行動に一瞬キョトンとしたが、
すぐに元の笑顔に戻って、そんなリトの頭を優しく撫で撫でしてあげる。
やはりリトに甘えられてる事がよっぽど嬉しいのか、
端から見ても分かる位に幸せの浮かれオーラを醸し出しているのが見て取れる。
「………はっ!?ごごゴメンっ!オレ一体何をうわっぷ!!?」
「や〜ん、もーちょっとぉ♪」
ここでようやくリトは我に返って、慌ててララから離れようとした。
が、すっかり上機嫌のララにがっちりホールドされて身動きがとれず、再び胸の中へ顔を埋まされる。
「ラッ、ララ!?」
「んふ〜♪レモン〜、いいコいいコ♪♪」
赤面するリトをよそに、楽しそうに頭を撫で撫でしながら頬を寄せてすりすりするララ。
抱き寄せる力も更に込もって、しばらく離してくれそうにない気がする。
「……」
「春菜さん…、そんな羨ましそうに見なくたって…」
「えぇっ!?わっ私は別にそんな…」
その横で、美柑のツッコミに春菜は顔を赤くさせて慌てふためく。
「ララさん、そろそろ離してあげなさい。結城さん窒息しちゃうわよ?」
見かねた唯がリト(レモン)に救いの手を伸ばす。
「え〜、だめ〜?」
「ダ・メ」
「む〜…」
ハッキリ唯に告げられて、ララは渋々リトを解放した。
「ぷはぁっ!はぁ……ひぃ……ふぅ……、あ゛ー死ぬかと思った〜…」
「大丈夫?結城さん」
「あ、うん。ありがと、古手川さん♪」
「………い、良いわよ、これくらい…」
ペッカーって感じの眩しい笑顔でお礼を言うリト。
その笑顔を見て、何故か唯は頬を赤らめてぷいっと顔を逸らした。
「………えーっと…、ボク何か粗相を…?」
「ぃ…いや…、そうじゃなくって…」
『また何かやらかしてしまったのか!?』と内心焦るリト。しかし…
(な……何で!?何で結城くんの顔が浮かんでくる訳!?そりゃ確かに結城さんと結城くんって似てる所が一杯あるけど…。
いやその前に何で私こんなに結城くんの事意識してるのよっ!?)
どうやら唯は『レモン』の笑顔がリトの笑顔と重ね見えていたらしく、
その気恥ずかしさからおもわず顔を背けてしまったらしい。
………同一人物だから仕方無いと言えば仕方無いのかもしれないが…。
「さてと、ここでずっと立ち話してるのもナンだからそろそろ旅館に入りましょうか♪ねぇ、幹事さん?」
手をぽんっと合わせて話を区切り、旅館の中に入ろうと幹事こと籾岡達の方を振り向き促す御門先生。
――が。
『……』
一同(リト以外)、まだ真っ白になって固まってます…。
「む、世話が焼けるわね〜…」
そう呟いて御門先生、おもむろに籾岡に近付き…。
「ごにょごにょ――」
何かを耳打ち。
すると――。
「ナニィィィーーー!!?」
アラ不思議、籾岡さんの石化が解けました。
更に――。
「そんでもって、ごにょごにょ――」
「はいぃぃーーー!!?」
「うそぉぉーーん!!?」
立て続けに沢田とレンに何かを耳打ちして石化を解除させる御門先生。
そして――。
「さて、この子にはとっておきのヤツを…♪」
最後に残った猿山に対して怪しい笑顔を浮かべ、他の三人と同じ様に何かを耳打ちする。
すると――。
「ぶはぁっ!!?」
猿山、何故か大量の鼻血を噴射してぶっ倒れてしまった。
「あら?やっぱりこの子には刺激が強すぎたみたいね」
(い……一体何を言ったんだ…?)
(気になる…。気になるけど何か知りたくない…みたいな…)
その様子を見て、リトと唯は御門先生が何をしたのか物凄く気になったが、あえて追求はしない。
何故なら――
「ま……まさかアレがアレであんなになって…」
「アレがそーなってそんな事になるなんて…」
「恐ろしい…、恐ろし過ぎる…!絵――いや、字にも書けない恐ろしさとは正にこの事!!」
――とまぁこんな感じで、やたらと怯える籾岡・沢田・レンの姿を見て、本能的に『聞いちゃダメだ』と感じ取ってしまったから。
追求『しない』と言うより『出来ない』と言った方が正しい。
「ねーねー御門センセ〜、リサミオ達に何言ったの〜?何かみんなガタガタしてるけど」
もっとも、この娘にはそんな空気など『そんなの関係ねぇ』って感じらしく、
純粋な興味本位で御門先生に尋ねるララ。
好奇心旺盛……とゆーか怖いもの知らずにも程がある。
「知りたい?」
「うん♪」
「実はね「ダーメーだぁぁぁーーー!!!」むぐっ!?」
レンが御門先生の口を慌てて塞ぐ。
「あれ?レンちゃん?」
「知らなくて良い!!ララちゃんは知らなくても良いからっ!!」
「えぇぇー、何で〜!?教えてよレンちゃ〜ん!」
両腕をぶんぶん振って、可愛く教えてと請うララ。
この行動にちょっと……いや、かなりグラッと来たレンだが、
『ここはララちゃんの為に』と心を鬼にして、流されそうな精神をグッと踏ん張る。
「ララちぃ、世の中ね、知らない方が幸せな事もあるんだよ…」
「これはララちぃが知るべき事じゃあない。むしろ知っちゃいけない事なんだよ…。分かって…」
籾岡と沢田もララの肩をガシッと掴んで、無理のある悟らせ論を説く。
普段だったら面白半分でこの状況を引っ掻き回して楽しむ二人がここまでマジになって止めにかかるとは…。
よっぽどさっき御門先生から聞かされた事が衝撃的だったらしい…。
「む〜、そんな風に言われたら余計に気になっちゃうよ〜。ね〜、ちょっとだけ――」
「「「とっとにかくっ!ダメなものはダメーっ!!」」」
「む〜…、でもやっぱり気にな「はいはい、そこまで」むぐっ!?」
しつこく疑問を投げかけるララの口をリトが無理矢理塞ぐ。
「さっ、この話はおしまいっ!皆さん旅館に入りましょー!」
無理矢理話を打ち切って、そそくさ旅館へ入っていくヒミツな三人。
後の面子も、話の内容が気になりつつもこれ以上追求せずそれに続く。
「何で止めるの?リト〜」
「ララ、あんまり気にしちゃ身体に毒だぞ?せっかく旅行に来てるのに
そんなしょーもない事で台無しにしたくはないだろ?」
「ぅ…ぅん…」
「な?三人も決してララにいじわるしてる訳じゃなくて、むしろララの事を想って言ってる訳だから、
その気持ちは分かってあげような?」
「む〜…、リトがそー言うなら分かった〜…」
本心は未だに気になりまくってるのだが、リトをこれ以上困らせたくないので渋々引き下がるララ。
(ふー、やっと引き下がってくれたよ…)
気になりまくってるのは自分も同じだったが、これは絶対知ってはいけない事だ――と、
こーゆー事に関してはニュー○イプ並みの直感を発揮し、危険を察知するリト。
ララがなんとか諦めてくれて心の中で冷や汗を拭う。
「ぁ……ぁははは…」
そしてひたすら苦笑いの春菜。
この娘はこーゆーカラミでは苦笑いしかしていない様な気がする。
「リト――じゃない、レモンお姉ちゃん達、何してんのー!早く行こー!」
「分かってるー!行こうぜ、二人とも」
「は〜い」
「うん」
美柑の呼び声で話を止め、三人は旅館へ入って行った。
………未だ出血多量で悶絶している猿山をほったらかしにして…。
87 :
むに:2008/07/07(月) 18:59:48 ID:EGhd6n6c
投下終了です。
今回は短めですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
唯の話、楽しみにしてまーす。
そーいえば、ボクもいい加減美柑の続き書かんと…。
むに氏GJです!!
むに氏の書く唯もかわいいなあ。レモンメインなのはわかってるんですがw
毎回、キャラを崩さず何人もの登場人物を絡めたりとすごいですよ
長谷見先s…げふんげふん、むに氏GJです!贅沢な繋ぎですよ…
むに氏乙です、相変わらずの神っぷりで。
雨の中、外の異変に気づいたリトはいきなり唯に抱き付いた
「古手川!!」
「キャ!? ちょっ、ダ…ダメよ結城くんっ、い…いきなりそんな……」
「しっ静かに!!」
リトは顔を寄せると、口に指を当てながら唯の声を封じた
間近に迫るリトに唯の心拍数が跳ね上がる
(そ、そんな事言われたって…こ…心の準備が…)
気持ちは迷い、心はゆらゆらと揺れ動く
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、
と、胸の高鳴りは止まらない
(私……やっぱりこの人を…)
リトと二人きりの状況に、唯はリトへの想いに改めて触れる
宙を彷徨っていた手は自然とリトの背中に回された
(結城……くん)
リトの息遣いが聞こえる
リトの匂いで胸がいっぱいになる
リトのぬくもりが伝わってくる
あったかい、一緒にいるだけでホッとなる様なやさしい居心地を与えてくれる
リトとこうしているだけでどんどん満たされていく
(結城くん…私は…)
心の中で想いを反芻させていると、ふいにリトの体が離れていった
嫌────……
触れ合っていた部分からリトのぬくもりが消えていく
結城くんが────……
まだまだリトとの距離はずっと近い
それでも嫌だと思った
離れたくない。離れていってほしくない
ギュッと、制服のシャツを掴む手に力がこもる
「ふぅ…、何とかやり過ごしたな。いや〜っ今の古手川を校長に見られたらどうなる事かとヒヤ……ヒ…ヤ…」
いつの間にか自分の事をじっと見つめていた唯にリトの声が序々に消えていく
「古手川?」
「…ゃ……」
「え?」
「…嫌ぁ、離れちゃ嫌」
リトは目を丸くした
小さい、か細い声。それでもはっきりとその声はリトに届いた
雨で濡れた制服の下に見える白い下着に、熱っぽく濡れている黒くてキレイな瞳に
ゴクリ────と、リトはつばを呑み込んだ
「結城くん…」
「な…何だよ?」
唯の一言一言に、唯の仕草一つに、リトはどんどん引き込まれていく
(古手川ってこんな…)
そう意識した瞬間、リトの胸はドクンと音を立てた
「古手…川」
「ん?」
その黒い瞳に魅力される様にゆっくりとリトは顔を近づけていく
「キス…したい……古手川と」
「……」
唯の瞳がゆらゆらと揺れる
まるで自らの気持ちを表すかの様に
「…ダ…ダメ、まだ…」
それでもリトの動きは止まらない
鼻先が触れそうな距離で二人はじっと見つめ合う
衣ずれ一つしない静寂
互いの甘い吐息がかかる度に高鳴る胸の鼓動だけがはっきりと耳に聞こえた
「古手川」
「んッ」
唯の頬に赤みが増す
緊張と恥ずかしで小さく震えるその肩にリトの手がそっと触れた
「…あ……」
あったかくてやさしいぬくもりに唯の目がとろんとなる
「キス…してもいいか?」
「ダメに決まって…」
言葉とは裏腹に、背中に回した腕はリトを掴んで離さない
そればかりか、抱き寄せるようにしてゆっくりと動かされていく
肩に置いたリトの手にも力が入る
(私…私は……結城くん…と……)
視界いっぱいに映るリトの顔を確認すると、唯はすっと目を瞑った
やわらかい感触が唇に触れると、唯は体を硬くさせた
「ん…ン」
一秒…二秒
あるいは一秒以下だったのかもしれない
永遠とも感じる短い時間の後、リトの唇がゆっくりと離れていった
「はぁ…」
小さく吐息をこぼしながら目を開けると、目の前にはバツが悪そうに頬を掻いているリトの姿があって
何も言ってこない唯にリトはぼそぼそと声と出した
「ごめん。オレ…」
「…謝らないでよ……初めてだったのに…」
その言葉にリトの顔からさっと血の気が引く
「わわ、ホントにごめん! オレお前の初めてのキスいきなり奪って…どーしたら…」
あたふたと支離滅裂な事を言い始めるリトに、だんだんと唯の頬が膨れていく
「別にいいわよ」
「へ!?」
怒られると思っていたリトは予想外の言葉に顔をキョトンとさせた
「それよりも、もっとちゃんとしなさいよね! 今の結城くんカッコわるすぎよ」
「へ…あ…ああ」
それでもまだ戸惑った様なリトに、唯の頬は膨らむばかり
「わ、わかってるって! ちゃ…ちゃんとするから! だから…」
「だから?」
リトの手が赤く膨れた唯の頬を包んでいく
「だ……だから…だからもう一回! こ、今度はちゃんとするよ」
「……」
じっとリトの目を覗き込んだ後、唯はぼそっと口を開いた
「…今度はちゃんとしなきゃダメだからね! 次も同じようなだと許さないんだから」
リトは困ったような、戸惑ったような笑みを浮かべると、唯の顎を少しだけ持ち上げ、その小さな唇にそっと自分の唇を重ねた
さっきとは違う
今度はその感触がはっきりとわかる
やわらかくて、少しあったかくて、緊張で震えているリトの口
目を開けなくたってわかる。真っ赤になっている顔
「ん…は…ぁ」
リトが離れると、止まっていた息がふっと吐き出される
(これがキス……私、結城くんと……)
それは今まで感じた事のない気持ちだった
リトを初めて意識した時とも違う
好きだと気付いた時とも
唯はぽぉっと熱くなっている胸に手を当てると、制服をギュッと握りしめた
(また結城くんとキスしたいな…)
そして、その想いはリトも同じだった
頬から手を離すと、両肩にポンと手を置いて真正面から唯を見つめる
「オレ…もっと古手川とキスしたい…もっと」
熱を帯びたその声に誘われる様に唯はゆっくりと頷く
「…ン…ぁ」
水音を含んだキスは二人を次のステップへと導く
ざらついた舌が自分の歯をなぞる感触に、戸惑いながらも唯は小さな舌を出した
すぐに熱くて大きな舌にぶつかってしまい、慌てて奥へと引っ込んでしまう唯
自分を探す様に口内を這いまわるリトに唯は眉を寄せた
(私…結城くんとこんなハレンチなキスして……)
戸惑いはやがて唯の体に余計な力を与えてしまう
カチっ! っと、歯と歯が当たってしまい、リトは慌てて唯から口を離した
「ご、ごめん! って、平気か? 口。どっか切れてるとかないか?」
謝ったり心配したりと忙しいリトに唯はふっと笑みを浮かべる
「大丈夫よ。あなたこそ平気なの?」
「オ、オレは別になんとも…」
「そっか。よかった」
微かだけれど、やわらかい唯の笑顔にリトの胸は張り裂けんばかりに高まる
(古手川ってやっぱかわいい)
けれど、次の唯の言葉はそんなリトの想いを粉々に打ち砕くものだった
「でも、何か意外だわ」
「意外ってなにが?」
「結城くんってもっとその……こういうのうまいと思ってたから」
「…………は?」
あまりにも突拍子もない唯の発言に、リトはつい素っ頓狂な声をあげてしまう
唯はふいっとリトから目をそらした
「…だって結城くんってその……ララさんと何回か…その…」
ゴニョゴニョと口ごもる唯にリトは慌てて腰を浮かすとずいっと詰め寄った
「ちょ…ちょっと待ってくれ! 何言ってんだ!?」
「え?」
「オレとララはそんなんじゃねーって!!」
目を丸くさせている唯に言い聞かせる様にリトの弁明は続く
「一緒に暮らしてるけどそんな感じじゃなくて! そ、そりゃ裸とかは見たこと……
あ、ああ、も、もちろん不可抗力っつーか、いっつもララのヤツが裸でうろついてるからって意味で
だ、だからオレとララは付き合うとかそんなじゃなくて…その…」
的を得ない説明にも、目をぱちぱちさせながらも聞いてくれている唯に、リトは最後にはっきりと告げた
「だ…だからオレはお前とするキスが初めてなんだって!」
「……初…めて? 私とするのが?」
「そうだよ」
どこかまだ釈然としない唯
リトは浮かしていた腰を下ろすと、そのまま項垂れる様にガックリと肩を落とした
(つーか……古手川の中のオレって…)
印象が悪いとは思っていたけれど、まさかここまでとは
リトは軽く泣きたい気持ちにかられた
そんなリトにトンっと唯の体が重ねられる
「え…ちょ…古手川!?」
突然の唯の行動にリトはただ唖然となる
唯は背中に回した腕に力を込めると、ギュッと強く強くリトを抱きしめた
(古手……川)
雨に混じって唯の髪の匂いがほのかに香った
唯は何も言わず、ただ、リトの胸に顔をうずめている
うれしかった
初めてのキスが自分とだなんて
気が付くと見つめていた
いつも仲良さそうな二人の姿を
いつも笑顔で交わし合う時間を
その度に胸がチクリと痛んだ
あまりにもうれしすぎて言葉にならなかった
あまりにもびっくりしすぎて声を出すこともできなかった
言葉じゃなく、声を出すでもなく、溢れる気持ちだけでリトに体を寄せた唯
「結城くん…」
胸の中から聞こえるそのくぐもった声に、リトはそっと唯の背中に腕を回した
「あ…」
ギュッと体に感じるリトの腕の力に、唯の口から吐息がこぼれた
長い長い抱擁
二人の想いが初めて重なり、そして、一つに溶け合っていく
どちらかともなく体を離すと、至近距離で見つめ合う
「キス…ほしい……」
「ああ、オレも古手川としたい」
リトの返事にうれしさで唯の頬がみるみる赤くなっていく
そして、勇気をもってもう一つお願いもしてみる
「あ…あと、もう一度抱きしめて」
不安そうにゆらゆらと揺れる唯の目にいつもの面影はない
リトはクスッと笑うと、腕に力を込めて唯の体を抱き寄せる
「オレは古手川ともっとこーしていたい。こうやって一緒にいるだけですげー幸せだって感じるんだ」
「……ぁ…う、うん…うん、私も…」
このままとけてしまうのではないかと思えるほど赤くなりながらも、唯は何度も首をコクコク振った
体がどんどんと熱くなる
身も心も全てリトに委ねたいと思ってしまう
恋をすると、誰かを好きになると、大変なんだ、と心のどこかでそんな声がした
唯はリトの腕に誘われる様に、再び唇を重ねた
ふんわりとやさしく包んでくれるリトの腕の中は自分だけの特等席
その笑顔も、その優しさも、ずっと自分だけの特別なものにして欲しいから
重ねられた唇を割って、舌が侵入してくる
「ん…ん、ん」
今度は唯は逃げなかった
必死にリトを求めては、絡ませようとがんばる
不器用で下手なキスはすぐに二人の口元を涎でいっぱいにさせた
「ぷ…はぁ…は…ぁ…」
それでもいいと思う
こうして好きな人と一緒にいられるならば
口と口とを唾液の糸で結びながら、リトはゆっくりと唯を地面に寝かせた
雨で冷えた地面が火照った体にひんやりと心地よさを与える
わずかに捲れたスカートから伸びる魅力的な脚をそっと曲げると、リトは脚と脚の間に体を入れる
スカートの影に隠れる様に見える白いフリルのついたかわいいショーツ
リトは唯の上に覆いかぶさりながら、ショーツに手を這わせていった
「古手川の気持ちいいトコってどこ?」
「し…知らないわよそんな事っ!!」
真っ赤になりながら口を尖らせる唯に苦笑しながら、リトの指がショーツの上から割れ目をなぞる
「ここ?」
「ん…ぁ…だから…」
クチュっと水音がなりショーツに染みをつくる
「ここかな?」
「…ゃ…あ…ふぅ」
ピクピクと腰を浮き上がらせる度に奥から溢れた蜜がリトの指をべったりと濡らしていく
「すご…こんな熱いんだ」
その感触を堪能する様にリトの指がクチュクチュと入口を刺激する
「あ…ふ…ン…ンン」
我慢していた口から次第に甘い声がこぼれ、体が小刻みに震えだす
初めて味わう感覚が唯から理性を奪っていった
「古手川、オレもう我慢できねーよ」
カチャカチャとベルトの留め具を外しながらリトは唯の顔を覗き込む
「古手川?」
「……」
何も言ってくれない唯にリトの中で次第に不安感が大きくなっていく
「あ…そ、そーだよな。先走ってお前の気持ちとか聞いてないのにこんな事……ごめんな古手川」
ベルトから手を離しながらゆっくりと体を起こすリトに、唯は小さく呟いた
「…嫌」
「へ?」
「嫌」
「え…えっと、わ、わかってるって! 後でお説教でも何でも…」
「そうじゃないの…」
唯は体をもじもじさせながら頬を染めた
「へ? そーじゃないって?」
「……な、名前で呼んでくれたって……いいじゃない」
どこか穴でもあったら入りたいのでは? と、思うほどに唯の顔は真っ赤だ
「な、名前って…古手川じゃダメって事?」
「そ、そんな事聞かないでよ…」
「あ…ああ。じゃ、じゃあ、何て呼べばいい?」
「もう! 結城くんが決めなさいよね」
リトは少し眉間に皺を寄せると、唯の顔を真上から覗き込んだ
「な、何よ?」
「……唯」
「え!?」
キュンと唯の中の大事なものが音を奏でる
「唯」
「ぁ…あ…」
「唯」
「う…ぅぅ」
リトが一言一言名前を呟く度に、唯の胸はどうしようもないほどに高鳴ってしまう
「唯」
「……うぅ…も、もう! いい加減にしなさい!! そんな唯唯よばないでっ」
悪戯っ子の様に屈託なく笑うリトに唯の頬がむぅっと膨らむ
「結城くん!? いい加減にしないと…」
「わ、わりぃ、わりぃ。ごめんな唯」
慌てて謝るリトに知らないとそっぽを向ける唯
その頬にリトの手が触れた
「ホントごめん。なんかうれしくてさ」
「え…」
「お前の名前呼べることが」
さっきとは違う自分の大好きな笑顔を浮かべるリト
きっと私はこの笑顔に勝てないんだな、と、心のどこかでそう思ってしまう自分がいる
「続き……してもいい?」
コクンと小さく首を動かす唯
リトはショーツの股の部分をずらすと、ズボンから取り出した肉棒をゆっくりと割れ目へと近づけていった
「み、見ちゃダメだからね!」
見ないでどーしろと? と、心の中でぼやきながら、リトの先端が割れ目に触れた
「ン…」
肉と肉の熱い口付けにも似た感触に、唯の形のいい眉が歪む
「こ…ここ?」
「違…もう少し下ぁ」
唯の言葉通りに指で竿を操るリト
触れる度にクチュクチュと音が鳴り、唯の口から吐息がもれる
「下って……この辺か?」
「あ…ん違う…もうちょっと……あ、そ、そこぉ」
入口を見つけたリトはそのままゆっくりと腰を押し付けていく
「ん…ン…ンン」
「す…げぇ、これが女のコの…」
まだ半分も入れていないというのにその独特な肉感にリトは息を呑んだ
次第に膣壁がざわざわと蠢きリトを包み込んでいく
「ちょ…もうちょっと力抜いて…」
「そ、そんな事言われても……これ以上私…」
どちらも互いを想いながらも自分の事で精一杯
それでもゆっくりと入っていく肉棒は、やがて唯の膜に当たる
その感触にどちらともなく目を合わせるリトと唯
「ホ、ホントにオレなんかでいいのか? お前の大切なモノなんだぞ?」
「バカ……こういう時はもっとカッコいいセリフとか言いなさいよね! 私、今日からあなたのものになるんだから」
自分のものに────
リトの脳裏にこれまでの唯との出来事が浮かんでは消えていく
真面目で、口うるさくて、堅くって、融通が利かなくて、厳しくて、キツくて
だけど、それでも、たった一人の大事な人だから
「オレ、お前のことが好きだ! すげー好き」
頬を真っ赤に染めながら、自分への想いを言ってくれたリトの顔を声を、唯は胸に刻もうと思った
どんな事があっても決して色あせないほどに強く、強く
唯は腕をリトの首筋に回すと、その体をギュッと抱きしめた
「お願い……きて」
その想いに応える様に、リトはいっきに貫く
「ん…んんん…」
細い腕に力がこもり、リトを痛いほど締め付ける
「ごめん。もうちょっとだけ我慢してくれ」
端整な顔を歪ませながらも唯はリトを離さなかった
痛みも、苦しみも、みんなこぼさず受け入れようと思った
たった一度きりの大事な大切な「痛み」だから
結合部からつーっと純潔だった証が流れ落ちていく
「う、動いて平気よ……大…丈夫だから」
痛みで引きつっている顔に、震える声
その痛々しい姿にリトは情けないほどに顔を歪ませた
代われるものなら代わってやりたいと強く思う
唯にこんな思いをさせたのは自分なのだから
「な、何言ってんだよ? どー見たってムリじゃねーか」
「結城くんこそ、無理しないでよね……。さっきから結城くんが私の中でビクビクさせてるの知ってるんだから」
リトは声に詰まった
情けないがこんな時ですら、本能とも呼ぶべき男の悲しい性が鎌首をもたげていたのだ
「唯…」
「平気よ……動いて結城くん。あなたの事もっと感じさせて」
────強いな、と思った
触れれば壊れそうなほどの繊細な強さ、だけれど、だからこそリトは惹かれた
守ってあげたいと、一緒にいたいと思った
リトの腰がゆっくりと打ち付けられていく
「あ…ふ…」
耳元で聞こえる熱い吐息を聞きながらリトはギュッと目を瞑った
今の自分に唯を満足させるだけの技量なんてない
出来るのは、少しでも早く痛みが和らぐ様に気持ちよさを与えていくだけ
腰の動きが激しさを増していく
「…ん…あぁ…んくぅ」
「唯…唯…唯…」
耳元で何度も名前を呼んでくれるリトに唯は顔ほころばせた
こんなにも想ってくれて、優しくて
手を伸ばせばこんなにもすぐ近くにいたのに私は何をして────
想いが波に変わり唯の下腹部を覆っていく
「唯…オレもう…」
「うん、い…いいわよ、私ももう少しで…」
強烈な締め付けが竿全体を包み、リトを逃がさない様に奥へ奥へ誘う
「何か…大きいのがのぼってくる…」
「もう……出…っ!」
リトの腰が一際大きく震えたかと思うと、そのまま勢いよく欲望を膣内に吐き出した
「あ…ああぁあ…」
子宮に熱い奔流を感じながら、唯は大きく果てた
その余韻に浸る様に二人は抱き合ったまま動かない
互いの息遣いを耳にしながら、ぬくもりを感じながら、しばらく離れたくはないと思った
このままずっとこうして繋がっていられれば────
やがてリトはゆっくりと体を起こした
少し恍惚な表情を浮かべている唯にクスっと笑いかける
「何よ?」
「ん? 唯かわいかったなァって思い返してた」
「バカな事言わないのっ」
少し頬を膨らませながら体を起こした唯の秘所から、ゴポリと白濁した欲望が溢れ出す
「ゴ、ゴ、ゴメン! オレ中に出して…」
「……謝るぐらいなら最初からしないで」
「だよな……。で、でもちゃんと責任は取るから安心しろって!」
ギコチない笑みを浮かべるリトを一瞥すると、唯はふいっと目をそらした
「責任とかいいわよ」
「へ? でも…」
「責任とかで一緒にいてほしくないの! もっと一緒にいたい理由……あるんでしょ?」
チラチラとこちらを窺いながら話す唯は何かを期待している様だ
リトは自分のバカな発言に小さく苦笑すると、唯の手をそっと握りしめた
「そうだな。オレがお前と一緒にいたのは責任とかじゃないよな」
「わ、わかればいいのよ」
顔を赤くさせる唯に、笑みを浮かべるリト
そんな二人を遊具の隙間から射しこんだ日の光がやさしく包み込む
「あ…雨上がったんだ」
リトはひょいっと外に顔を出して様子を確認すると、唯に手を差し出す
「帰ろっか」
「うん」
その手を握り返しながら唯はゆっくりと立ち上がった
外は、さきほどの雨が嘘の様に日の光が射している
まぶしさで目を細めるリトの横にピッタリと寄り添う唯
その手は繋がったまま、握りしめたまま
想いを込めて、想いを伝えたくて
迷ったり、悩んだりもすると思う
だけど、今、胸にあるこの想いだけは確かだから
積み上げてきた結城くんへの想いは、誰にも譲れないし、誰にも負けから
「結城くん大好き」
「へ? なんか言った?」
「べ、別に何も言ってなんか…」
まだまだ面と向かって想いは告げられない
それでもいいと思った
焦らないで進んでいけばいい
二人で
二人にとって初めての夏がもうじき始まる
終わり
>>74-75さんのリクに応えられたでしょうか?
なんとかなく二人は本番よりも、キスや頭ナデナデといったイチャイチャの方が合ってる思うので
シンプルな感じにまとめてみたのですが…
むに氏GJすぎです!!!
もう文の表現とか相変わらずうますぎです
多キャラ同士の会話とか俺にとったら苦手分野なので
うまくむに氏のやり方を吸収できたらなって毎回思っているのですが、難しい…
仕事HAEEEEEEEEE!
GJ!
>本番よりも、キスや頭ナデナデといったイチャイチャの方が合ってる思うので
確かにそういう所や言葉のやり取りで唯が真っ赤になったりするのも素晴らしい。
101 :
74:2008/07/09(水) 12:57:54 ID:hN5a6nqx
ニwwヤwwニwwヤwwがww止wwまwwらwwなwwいww
GJです!!!!!やはり貴方は神だ…
GJゥウウウウ!!!!!!!!!!!1111
続き待ってます
永久に
>>99 ちらっと言った一言がこんなにクオリティの高いSSで実現するとは思わなんだ。ありがとう、そしてGJ!!
また唯か…ウザ
唯最高やベイスターズなんていらんかったんや
GJだが、
>>104の味方をするわけじゃないけど、唯ばっかで流石に飽きてきたな。
>>104 >>106 いい事を教えてあげよう
唯職人しか いねぇんだよ
と言うわけで、唯以外は自分でお書きください 期待して待ってる
久々に覗いてみたが
なんだ・・・・ただの神か・・。
唯ばっかとか言う人はむに氏が見えていないんだろうか。
むに氏?なにそれ美味いの?
とっても上手いよ
誰が上手いこと言えと
「リトと唯」書いたものです
みなさんレスありがとうございます!
>>104>>106の発言を受けて思ったのですが、少し唯のSSは控えたほうがいいですか?
というか、もうちょっとで、番外編じゃないいつもの続きのが完成するんですが、
さすがにそれは間を開けた方がいいですよね……
一応、唯以外にも沙姫・ララ・美柑・御門先生メインのは書いてきたので、少しそっちの方を書いてみようかなと
スレ全体のことを考えると、唯ばかりではさすがにダメだと思いました……
長文になりましたが、唯のSSはもちろん書いていきつつ!! 沙姫・美柑あたりも書いていきたいなと思います!
というか俺は考えすぎですかね?w
>>113 考えてすぎだw
気にせず投下してくれればいい!けどあんたの書くSSで唯以外を読んでみたいって気持ちもあるんだ
沙姫や美柑を書いてくれるならさらに読みたいですよ
きにせずじゃんじゃん投下してください
>>32 全裸待機も辛くなってきたので
そろそろ投下して欲しいです
>>113 >>106の真意はわかんないけど、少なくても
>>104なんか唯のことを罵ってるからスルーでおk
俺はララヲタだけど、あなたの書くSSはいつも楽しませもらってるのでこれからも「リトと唯」お願いします
え?ララのSSですか?随時受け付けてます
>>116 全裸には丁度いい季節だろ。冬ならまだしも
むしろ厚着待機で
全裸だと蚊に刺されまくる
蚊はララの血を吸いたい放題だな。
蚊避けぐらい買えよw
蚊<ララの血なんてゲロ不味くて吸えねーよ
ララたちはリトとの子供が出来る可能性はあるんだろうか。
漫画だから大丈夫だろう
茶髪でララと同じ髪型のリコが生まれます
>>113 職人さんが悩むことは無いと思いますよ。
自分はいつも楽しみにしてます!
今日ガシャポンやってたら春菜ばっか当たった
6回やったが、ララ1、ヤミ1、春菜4(衣装全部一緒、髪型違いが一個だけ)
ヤミだってそもそも昨日初めてやった時に当ててるし
誰か春菜三個やるから、唯くんない?
グミやるからララくれ
ハルナの存在は唯に食われてるというか、リトが好きという設定だけ
ありきのキャラになりかけてると感じる最近のジャンp
扱いに困ってるんだと思うよ。元々、両想いなわけだし。
春菜本格参戦させるとそれこそ漫画が終わってしまいかねないからな。
春菜が眼鏡かけたら最強キャラになるのに
今んとこ晴子先生がその座にいるからな
>>131 一応春菜の持ってるものして
清純……これはわかる
委員長……せっかくの萌え設定がまったく生かされていない
唯の風紀委員のインパクトがすごいからかもしれないけど
妹……秋穂姉ちゃんの「妹」なんだけど、妹って感じはまるでしない(この辺は唯もだけど)
リトへの気持ち……好きなのはわかるけど、初期からほとんど進展なし。まだララの方が見せ場はある
唯と比べたらもうね(ry
部活……テニス部。ってだけで特にその設定が役に立ったことはない。初期はちょくちょくテニスウエア姿があったけど
マロン……最近ではお静と並んで一緒にいる事が多いと思う
友達……リサミオは特に役に立ったためしなしw お静はただ一人の理解者? 今度何かあったりするかな?
お父さん……海編でチラッと伏線みたいな感じで出てきたっきり。これからあるのかな?
エロ……よくもわるくもマンネリぎみか? 最近はエロ部分でも唯や美柑に(ry
ララ……一応ライバル。けど、唯の様な明確な嫉妬があるわけじゃない。もうちょっと唯同様ライバル意識あってもいいような(性格の問題かな)
妹達が来たから今後何かありそうだけど
髪形……春菜スキーの間では「春菜の髪留め外しは最終兵器」と言われてるけど、確かにそう思うw そっちの方が似合ってる
結論……いろいろ損してると思う。そして、各属性も他キャラと比べたらやっぱ薄いというか、悪く言ったら地味というか…
そういうのもひっくるめて「春菜」なんだと思うけどね
ララと親友になっちゃったことが春菜の最大のアキレス腱だよな。
ララと仲いいキャラって恋愛がらみで使いにくい感じ。ヤミとかもそう。
唯スキーの俺でも髪下ろした春菜の破壊力には驚嘆する
春菜スキーの俺でも髪をアップにした唯の破壊力に驚嘆するよ
>>136-
>>137 まとめると
唯のアップスタイル=ララの尻尾責め=髪下ろした春菜 ですか?
けど唯にはまだ見せていない「デレデレモード」があるし
ララには「忘れた頃にやってくるいい子なララ」があるし(初美柑メイン回とかクラゲの時とか)
春菜って何かある? 黒春菜とかか?
サヨナラってか死んで
初めて髪下ろした春菜みたときは勃起した
泣いている春菜にも萌えるし、怒っている春菜にも萌える。
俺がリトだったら、春菜に
「俺、実は女になりたいんだ。今からララが作った性転換の機械で女になってくる。
だから俺、お前とは付き合えない。」
と言って反応を見てみたい。
春菜中心の話題なんてこのスレ始まって以来じゃないかw
このままの勢いで誰か職人さんが春菜を書いて……くれる人はいますか?
春菜は尻属性だよ
処女だけど尻が開発されてるよ
で、職人様方、春菜はどうですか?
いろいろ書きにくいはわかってはいます。いるのですがそこを何とか!
職人に書かせるより自分で書いて燃料投下するなりしたほうがいい
>>139 >唯のアップスタイル=ララの尻尾責め=髪下ろした春菜
ポニテララも追加しといてほしい
春菜が男の子になっちゃってリコの可愛さに欲情して…
という話なら今書いてる
真面目な子が欲情してえちーになるのは萌える
149 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 00:18:12 ID:dbllLPYx
委員長を決めるとき唯に、「投票してやるから奉仕しろよ」って言うのを想像したのはオレだけ?
春菜は、俺的に癖のないキャラだから書きやすいよ
でも癖のないキャラは書いてて面白くないんだよねぇ
お前等馬鹿みたいに妄想広げていくなwww
>>151 作風にあわないというのもあるがララやヤミは人外魔境だからな。
唯や春菜はレイープしやすそうだけど名無しのキモ男にレイプされる姿はあんまり見たくない。
でもあの二人は多分レイプで初体験終わっちゃうタイプだろうな、本当に
それがキッカケでメンヘラになるところが容易に想像出来る
それは飛躍しすぎと思うが、どんなレイプSSが来ても受けてたつといいたい。
見たくない
と言う奴はなんなんだろうか
いざ投下されたらスルーすりゃいいのに
157 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 11:41:06 ID:z3ABRSSF
>>134おいおい「ムッツリ」を忘れてるぜ
あ、でもこれも唯に(ry
sage忘れごめんなさい
まぁなんだ、おまいら少し落ち着けと。
またーり職人を待とうぜ。
そういや唯はレイプされかけたよな
リトに?
世紀末な格好してた奴らとか春菜と一緒に攫われた時とかっしょ。
あの世紀末3人組は一目見て紅茶にパソコン吹いた
お前はパソコンを口から出せるのか
何故この漫画には眼鏡っ子が極端に少ないんだ
ララがかけてないのはまだしも、春菜か唯はせめてかけているべきだろう
春菜が眼鏡かけてたら、単行本全部買うのに
唯は当初、眼鏡をかけて胸はもっと小さいほうがいいと言われてたなあ
もう「今」の唯がベストと思うけど、なんか唯は目が悪そうな気はする
で、外ではコンタクト、家では眼鏡……付けてなかったな…
遥か昔に『犬に犯される静(犬嫌いの理由)』というシチュの話題があったなぁ・・・関係ないけど。
眼鏡はむしろ美柑かリトが似合う気がする。案外リト似合い過ぎて何人か惚れちまったりww
リト「君たち、僕に釣られてみる?」
こうですか
わかりません
主要キャラが眼鏡をかけてるシーンとかちょっとでもあったけ?
綾はおいといて、言われてみればぜんぜんないな。
そんな回もたまにはあってもいいかもしれん。
とりあえず俺も結城兄妹がかけてるの見てみたい。
……なぜか今「PSYREN寺春菜」という電波を受信してしまった
通常春菜ははCURE使い黒菜はメルセズドアを自由自在に操る
というのが一瞬で頭に浮かんだ
>>170 2巻のララの地球見物の回で、おっさんの服コピーしたララが1コマだけかけてた
>>170 リサミオは主要キャラには入らないのか?
違和感ないな
眼鏡つけるだけですげえ可愛くなったな
>>175全然可愛くねぇ…
…ふう…
うん、やっぱり可愛くねぇ
>>174 すまん 俺にとってその二人は舞台効果的位置づけで
あんまり意識してなかった。
籾岡里紗は、大変な逸材だと思うが。
>>185クオリティ低いんだよ
ッ!…ふう…
うん、クオリティ低いな
気づきにくいだけで、見渡せば近眼の人間はたまさかいる。
眼鏡をかけていればわかりやすいが、コンタクト装用者もいて
パッと見ただけではわからない場合も多い。
基本的に人間は、近眼には「なって当たり前」なのである。
何故かと言えば、眼球というものは無限遠から入ってきた光を
水晶体と角膜で屈折させて網膜で結像させる事でピントが合い、
光=景色を認識出来るような仕組みになっているのだが、
成長とともに眼球も大きくなっていくので、つまり眼軸が延長され、
子供の頃は網膜でピントが合っていたのに
成長するとそのピントが網膜に届かなくなるために、
放っておいても大抵誰でも勝手に近眼、つまり近視になるわけで……
長ったらしい説明はこの際不要だ。
詳しく知りたかったら眼科か眼鏡屋に聞いてくれ。
もし自分の子供の視力が落ちてショックを受けている親がいたら
どうか子供を責めないでやってほしい。
むしろ成長期にまったく度数が進まない人の方が珍しいのだ。
大人になっても眼鏡もコンタクトも使ってない人は、
実は軽度の近視or遠視なのに、本人では気付けていないだけの可能性がある。
(ゲームにハマって視力落としてる子供は自業自得なので、思う存分責めてやれ)
要は何が言いたいかと言うと。
高校生ともなれば視力が低下し、眼鏡が必要となる事も。
また或いは周囲が知らないだけで、裸眼だと思っていた人が
実はコンタクト常用者だったという事も、十分あり得るという事だ。
「へぇ。結城君、眼鏡買う事にしたんだ?」
結城リトはこのところ、黒板の文字が見えづらくなっていた。
目を細めれば見えるのだが、それでは疲れる。
第一、視力検査の時によく言われる事ではないか。
目を細めずに見て下さい。目を細めると余計に目が悪くなります。
目を細めると目が悪くなるというのは眉唾に思えていたのだが、
試みに金色の闇に聞いてみたところ、全くもってその通りだとの回答が返ってきた。
「それ、眼筋に負担かかってますから。
体のどの部分だって、酷使して状態が良好になる事なんて無いでしょう?」
恐らく図書館で読んだ書籍にでも書いてあったのだろう。
余程その手の知識を読み込んで吸収してきたのか、
或いは彼女はどんな知識でも吸収能力が異様に高いのか。
金色の闇は、まるでその道を職業にしている人のごとく、スラスラと回答してみせた。
「自分ではまだまだ眼は良いと思ってたんだけどなぁ。
いよいよ俺も眼鏡買わなきゃいけなくなっちまったか……」
一般的な認識として、眼鏡には野暮ったいイメージがつきものだ。
近年ではデザイン性に富んだお洒落眼鏡が流行しているとは言われているが、
どちらかと言えばメディアがそう吹聴しているだけで、
眼鏡などかけたくないと言い張る人間の方が、まだ多い。(特に女性)
リトにとってもまた、眼鏡というものは抵抗を感じる代物だった。
ガリ勉。或いはオタク。
眼鏡というものに対する彼の先行的なイメージは、そんなものばかりだった。
連想するものは、ラーメン大好き小池さん辺りか。
学校で眼鏡などかけて、果たして周りからどう反応されるだろうか。
猿山には間違いなく茶化されるだろう。
ララは面白がって、ワケのわからない機能を装備した眼鏡を作ってきそうだ。
(相手の戦闘力とかわかって、爆発するやつ)
不安要素を少しでも払拭するためには、誰かに話してみるというのが、一番手っ取り早い。
何とはなしに、世間話程度に、リトは春菜に眼鏡の事を話してみた。
「実は私も、そろそろ眼鏡買おうかと思ってたのよね」
「へぇ、西連寺も? 目ぇ悪かったのか?」
「実は普段はコンタクトしてるんだ。
家では外してるんだけど、最近視力が進んじゃって。
寝る前の数時間とかに、コンタクトの代わりにかける眼鏡が
そろそろ必要かなって」
ここでリトに妙案が働いたのは言うまでもない。
視力が低下して眼鏡が必要になった自分。
元々近視でコンタクトを使っていた、自分の好きな女の子。
お互いに、そろそろ眼鏡を買おうかと考えている。
どうするよ、コレどうするよ。
誘う? 誘っちゃうか? そら誘うよな。な?
「あっ、あのさ、西連寺! 良かったら、今度の日曜日に……」
無論春菜の方にも、リトと同じ案が浮かんでいた。
意中の男子とデートする口実が出来たのだ。利用しない手は無い。
「そうだね。それじゃ、二人で眼鏡屋さん見に行こっか?」
リトはこの案件を、ララには相談しない事にしていた。
それは春菜も同様だった。
デートにくっついて来そうだという不安もあるが、それだけではない。
あいつの場合、視力の回復するアイテムとか作った挙句、
それを例によって爆発させたりしそうだったからだ。
日曜日の繁華街はやはり混む。
とは言え眼鏡屋などは暇なものだろう。
眼鏡を買う人間が、この街に一日に何人も現れるとは思えない。
一週間で三人も来客があったら良い方なのではないだろうか。
ただそれだけでは利益が上がらないから、眼鏡というのは何万円もするのだろう。
……そんな風に考えていたリトにとって、
自動ドアをくぐった瞬間目に飛び込んできた、
混みあった店内の光景は、衝撃的という他無かった。
「スッゲェな。眼鏡屋って、混むもんなんだ?」
いやまぁ店の立地とか曜日にもよるだろうけどね。
「それに、思ってたより安いんだな。5000円とか7000円とか。
もっと何万円ってレベルだと思ってた」
元々眼鏡の利益率ってのは馬鹿みたいに高いのが当たり前だったが、
それにもちゃんとした理由が歴史的にはあって、ただそれを説明しだすと
無駄に長くなってしまうので、その辺は詳しい人に聞いて下さい。
「最近は眼鏡も大分安くなったよね。
お姉ちゃんが小学生くらいの頃は、まだこんな安い店は
あまり目立ってなかったらしいけど」
「高校生の小遣いには助かるなぁ。レンズも付いてこの値段かよ」
リトと春菜は、つぶさに店内を眺めてみた。
実に多彩な種類の眼鏡フレームがあって、どれが良いか迷ってしまう。
ショッピングセンターの中にある、有名な眼鏡屋の前を通りがかった時に
それとなく覗いてみたら、どれも変わり映えしないデザインばかりだったのに。
お洒落眼鏡をコンセプトにしている眼鏡屋に赴けば、
安い上にデザインも若者向けという、実に都合の良い眼鏡が売ってあるものだ。
二人は順番にコーナーを見て回り、その都度いろんなフレームをかけて
鏡で見たりお互いに褒め合ったりした。
最終的に二人がどんなフレームを選んだかは、絵のないSSなので
読者諸兄の妄想……いや夢見る力にお任せするとして、
兎も角リトと春菜は、最終的に互いに欲しいフレームを選んだ。
「ところで、眼科とかで測って来なくて良かったのか?」
「眼鏡屋でも測ってくれるよ。店員さんに頼もう」
混んでいたので検査までには待ち時間が多少あったが、
一時間もする頃には、二人とも検査を済ませ、会計を終わらせていた。
しばらくすると数十分で眼鏡が仕上がり、彼らは商品を受け取って、店を後にした。
「結城君、眼鏡かけないの?」
リトはまだ眼鏡に抵抗があるのか、受け取った眼鏡はケースに仕舞って
裸眼のままでデートを続けていた。
傍らの春菜は、買ったばかりの眼鏡をもう早速かけている。
「西連寺こそ、コンタクトはどうしたの?」
「私は検査の時に外したよ。
使い捨てタイプだったから、お店の人に処分してもらってきた」
「そっかぁ……いや、何か眼鏡かけてる西連寺って、新鮮だなぁ」
リトは顔を赤らめながらそう言ったが、春菜も同様に、頬を染めていた。
「変……かな?」
「そっ! そんな事無いよ! 凄い似合ってる、可愛い!」
「フフ。ありがとう、結城君」
喫茶店(スタバ)のテーブル席に座って照れ笑いを交互に繰り返す二人は
傍から見て初々しく、また微笑ましいものだった。
第一スタバで喜んでる辺りが既に高校生くさい。
周りで見ている大学生や休日を楽しむ家族連れは、
こっそりと二人の様子を見物しながら、自分達も
幸せな気分になるかのように、ニコニコと笑っていた。
ふと、リトに悪戯心が芽生えた。
眼鏡をかけている人間を目の前にして、誰もが思う疑問。興味。
目の前のこの相手の視力はどの程度で、
矯正器具が無ければどの程度まで見えていないのか。
「なぁ西連寺、眼鏡外してみてよ。
んで、これ何本に見える?」
リトは、誰もが一度はやってみたくなる実験を、春菜にしてみた。
近眼を矯正している者にとっては、飽き飽きする程の実験。
相手がリトでなければ、正直春菜でさえ、呆れて溜息を零していたかもしれない。
それ程までに、近視の者にとっては人生の中で何度も繰り返されてきた実験なのだ。
彼女は言われるまま眼鏡を外し、リトの差し出した指の数を数えた。
「二本。そのぐらいだったら見えるよ」
「じゃあコレは?」
「それは四本。って言うか、皆勘違いしがちだけど、
指の数と言うよりも手の形で、本数ぐらい簡単にわかるんだよ。
何メートルも離れてたら流石にわかんないだろうけど」
リトは少し悔しくなってきた。
悪戯心でこんな実験をするくらいだから、言い方は悪いが
春菜には解答を外して欲しかったのだ。
いとも容易く正解されては、いかにもつまらない。
「じゃあ文字だったら見えにくいのかな?
例えばこのメニュー表は読める?」
「それは、ちょっと……大きい文字なら、何となく読めるけど」
ようやく春菜が答えに窮するようになって、リトは満足が得られた。
「じゃあさ、今、俺の顔とかって見えてるのか?
もし眼鏡もコンタクトもつけてなくて、学校でこのぐらいの距離から
声かけられたら、俺だってわかる?」
これもまた、飽きる程繰り返される質疑応答。
スタバを出てからもずっと、リトは春菜に質問を続けていた。
初めてかける眼鏡。見える視界と、見えない視界の差。
興味は尽きず、自然と経験者に色々聞く事にもなる。
「そりゃあわかるよ。
髪型とか顔の形とか、雰囲気とかで。
それだって勿論、何メートルも離れてたら微妙だけど」
人間がお互いを見分ける時、顔の細かいパーツの差異などには
案外頼っていないものなのだ。
「でも、目は結構細めてるよな。
目細めなかったら、実は見えないんじゃないの?」
「うーん……と言うか、無意識に目細くなっちゃう。
意識的に目を大きく開けようとすると、抵抗があって疲れちゃうよ」
「じゃあさ、目を細めずに俺の顔がボヤけずに見える距離って、どのくらい?」
春菜はしばし戸惑った。
どのくらいと言われても……どのくらいなのだろう。
具体的に何cmとか、考えた事も無い。
自分の掌を見つめて、どの程度離れればボヤけるか、
どのくらいまで近づけば明瞭に見えるか、眼鏡を外したままで距離感を測ってみる。
そこで初めて、自意識以上に自分の裸眼視力が頼りない事に気づいた。
「一年くらい前なら、この程度の距離でも見えてたんだけどなぁ。
やっぱり視力の低下が進んでるんだね。結構近づかないと見えないや」
そう言って春菜は、リトの顔を見つめた。
折良く、あまり人通りのない通路。
一人だけ、少し離れた場所を歩いている人もいたが、
すぐに角の向こうに消えていった。
二人はしばし無言で見つめ合っていたが、
心臓の音だけがやかましく聞こえる気がした。
頬が赤く染まっていたのは、夕日のせいか、トキメキのせいか。
「え、えっと……西連寺……?」
春菜の左手がリトの手をそっと掴む。
右手には、外して手にとったままの眼鏡。
近づく二人の顔がレンズに反射し、と同時に透過する。
「そうだね……このぐらい近づいたら、ちゃんと見えるよ。結城君の顔」
それは十数cmにも満たない距離。
当たり前のように吐息が届き、互いに視線が交差し、釘付けになる。
「さ、いれん……っじ……」
リトの声は、重なった唇に堰き止められた。
「リト、遅いなー」
「眼鏡買いに行くって言ってたけど、もうそろそろ夕飯の時間だよね。
まったく、どこまで行ってるんだろ。あの馬鹿兄」
ララと美柑は、もうそろそろ帰ってくる筈の家族を待ちながら、
結城邸のリビングでバラエティ番組を視聴していた。
合間にCMが入る。
そこでは局のマスコットのライオンが、マフラーと眼鏡を装着してヘラ笑いしていた。
「眼鏡ねぇ……そう言えばアイツ、どんな眼鏡買ったんだろ?」
奇しくも蜜柑がリトのフレーム選びのセンスを気にしていた頃、
リトはまさに買ったばかりの眼鏡をかけて、春菜の部屋に上がり込んでいた。
まだ慣れないので、かけているとクラクラしてくる。
しかし春菜もまた、人前で眼鏡をかけた顔を見せるのには慣れていない。
「私だけかけてたら恥ずかしいから、結城君もかけてよ」
と彼女に言われ、視界が歪むのを堪えながら、リトは眼鏡を装用していた。
視界の歪曲もそうだが、思った以上に重いのもネックだ。
慣れてしまえば重くはないのだが、今まで顔に何も乗っていないのが当たり前だった。
鼻に重みを感じ、こめかみに圧迫感を覚える。
外したくて仕方が無かったが、最初に慣れておけば
後の人生が随分楽になると春菜に言われた。
「眼ぇ痛くなるんだな、眼鏡って。知らなかったよ俺。
普段こんなのかけてて、西連寺は辛くないのか?」
二人きりの気まずさを気恥ずかしさを誤魔化そうと、リトは話題をふった。
貸し付けられた座布団の上で、緊張から無意識に正座してしまう彼の姿は、滑稽だった。
「辛いのは最初だけだよ。
結城君も早く慣れると良いね」
心なしか春菜の声もぎこちない。
さっきから頻繁に眼鏡の縁に指をかけ、ズレを直す仕草をとるが、
客観的に見て別段眼鏡がズレているようにも見えない。
落ち着かない心を無理に抑え込もうとして、挙動不審になっているのだろう。
「お、俺、そろそろ帰らないと……
西連寺だってお姉さん帰ってくるだろうし、夕飯の支度を……」
「お姉ちゃんなら、帰って来ないよ」
ベッドの端に腰かけたままの春菜が、間髪をいれずにそう呟いた。
「えっ……」
リトは思わず春菜の顔を見たが、俯いていて表情が読めない。
「さ、西連寺……お姉さん、帰って来ないって……」
「今日は彼氏の家にお泊りなんだって」
お、お泊り……。
リトはその単語に反応し、思わず生唾を飲み込んでしまった。
「結城君も……お泊り、する? ……よね……?」
ハラリと脱ぎ捨てられたスカートはベッドの脇に畳んで置かれ、
シャツやブラジャーは無造作にその上に重ねられた。
今までいろんな機会があって、何度も見てきた春菜の裸。
ある意味見慣れているものだったのに、それがベッドの上に横たわっているだけで
えもいわれぬ扇情的なものを醸し出している。
年齢が年齢だから、まだ子供っぽさを残した体型だった。
それでも同じ年であるリトにとっては十分だ。
彼もまた気恥ずかしそうに着衣を脱ぐと、彼女の上に覆いかぶさるようにした。
「結城君……キス、して?」
求める少女の声は艶めかしく、年に不相応な感触さえ受ける。
『女』が『オンナ』に化けた瞬間を、少年は初めて目撃した。
そっと顔を下ろしていき、唇を重ね合わせる。
……ガチッ。
「あ、あははははは、ゴメンゴメン。
大丈夫? 痛くなかった? 結城君」
「いや、アハハ、こっちこそ……そっかぁ、そうなるもんなんだぁ」
唇を重ねようとした瞬間、互いの眼鏡のレンズがぶつかってしまった。
キス自体ほとんど経験が無く、ましてや眼鏡装用者同士でなど、生まれて初めての事だ。
ムードを大事にしたかったが、予想外のアクシデントで、雰囲気が壊れてしまった。
夕方キスした時は、お互いに眼鏡を外していたから、こうなるとは知らなかった。
「やっぱ、眼鏡かけたまんまってのは、無理があるんじゃないかな?
外してもこんだけ近かったら、よく見えるだろうし」
「結城君はまだ度数弱いからそこそこ離れてても見えるだろうけど、
私は結構近づかないと見えないんだもん。
ちゃんと結城君の顔見てしたい……」
寂しそうにそう言われては、断るわけにもいかない。
常にキスの間合いで行為が進行出来るなら良いが、そうはいかない場面もあるだろう。
リトは仕方なく春菜に合わせて、眼鏡をかけたままで彼女を抱く事にした。
「ほら西連寺。よく見えるだろ?」
「や、やだぁ……恥ずかしいよ、結城くぅん……」
春菜はマングリ返しの状態で固定され、リトが自分の秘所を
舐め続ける様を、無理やり見せつけられていた。
「眼鏡かけてて良かったな、西連寺。
裸眼だったら良く見えないだろ」
「あぁあ、見えるぅ……結城君に私のオマ○コぴちゃぴちゃされてるトコ、
はっきり見えちゃうよぉお……」
リトは春菜の眼鏡を摘まみあげ、それをヒラヒラと翳してみせた。
それからおもむろに、今一度春菜のアソコに狙いを定める。
「はぁ……んはっ……何、するのぉ……?
……んぁっ、はっ!?」
突然、春菜の膣の中に、折りたたまれた彼女の眼鏡が挿入された。
まだ先端から少しずつだが、しかし確実に、ゆっくりと中に入っていく。
「ひぎっ、ぁイッ……ヤだ……そんなの、入れちゃらめぇ……」
「西連寺は眼鏡外してるからよく見えないよな。
俺からはよく見えるぜ。西連寺の眼鏡が、西連寺のナカに埋まっていくトコ」
ヒンジや先セルが当たって、中で抵抗を感じる。
レンズに、ネジに、テンプルに、愛液が絡みついていく。
途中からかなりキツくなったので、これ以上やると眼鏡が壊れると思い、
リトは眼鏡をゆっくりと引き抜いてやった。
「はぁ……はぁ……結城君……眼鏡、返して……」
「良いよ、春菜ちゃん。今返してあげる」
そう言ってリトは、濡れたままの眼鏡を拭かずに、春菜の顔にかけてやった。
「やだ、コレぇ……自分の恥ずかしいお汁が、ベットリついて……
鼻やこめかみが、ネチョネチョするよぅ……」
粘性のある液体で濡れそぼったレンズは綺麗に拭かねば使い物にはならない。
視界にマン汁の張りついた状態で、春菜は嬉々として笑うリトの表情を恍惚と眺めていた。
一方リトの眼鏡も、春菜にクンニしていた時に
彼女の太股に触れて、レンズに皮脂がついていた。
「ちゃんと拭かなきゃな。
そうだ。確か眼鏡屋の店員さん、拭き方にもコツがいるって言ってたな」
リトはわざとらしく声に出してそう言うと、
店で眼鏡を受け取った際に一緒に渡された取扱い説明書を手にとった。
「えーと、なになに……レンズの表面に埃や細かいゴミが残ったままで
乾拭きをすると、レンズに傷がつく恐れがあります。
水や、専用の洗浄液などを使って、表面の埃を指先で軽く流してから、
ティッシュペーパーで拭いて下さい、か」
春菜の膣に指先を突っ込み、中の愛液を掻き出す。
「あふぁっ、ひっ、ぅアァあ、あ……」
春菜は、このタイミングでリトが手マンをした理由が、よくわからなかった。
だが次の瞬間にリトが行った事を見るにつけ、恥辱で胸の中がいっぱいになった。
リトはベトベトした液体を指先に掬うと、それを自分の眼鏡の
レンズ表面に塗りたくったのだった。
あたかも水や、洗浄液のごとく。
そうしてヌルヌルとレンズ上に広げ、埃を洗い流した。
「……あ。酸性やアルカリ性などの、刺激の強い洗浄液は使わないで下さい。
表面のコーティングが剥がれる原因になる可能性があります。
中性洗剤を薄めて使うのが効果的です、だって。女の子の汁って、中性かなぁ?」
「……もうっ、知らない!」
愛液まみれの眼鏡で男を見るのが恥ずかしくて、春菜はそっぽを向いた。
やがて室内には、カチャカチャと乾いた音が響くようになった。
繋がりあった二人が、キスを繰り返しながらピストン運動をすれば、
自然と眼鏡同士がぶつかり合うのだった。
レンズに傷がつきそうなものだが、もう二人にそんな事を考える冷静さは無い。
一心不乱に舌を絡ませ、唾液を迸らせるばかりだ。
動いていると、時折キスが逸れ、そのまま相手の眼鏡に唇が触れたりもした。
まるでお互いに相手の眼鏡にキスしているみたいだ。
本来勉学や仕事といった真面目な目的のために使われる眼鏡を、
こんな風に使っていると、何とも言えない背徳的な気分に襲われる。
ぶつかり合う眼鏡はやがてズレ、外れそうになる。
「あぁっ、あっ! あぁあ良い! 良いよ春菜ちゃぁん!」
リトはもはや、彼女の事を『西連寺』と呼ぶだけの理性も失っていた。
「ゆぅきくん! ゆぅきくぅんっ! もっと激ひく! あたし、イっちゃいそうだよぉっ!」
大きく開いた自らの両足をリトの両足の膝裏に絡ませ、積極的に腰を振る春菜。
その下半身の繋がりは、さながら眼鏡のようだった。
リトの足に引っかかる春菜の足と、
人間の耳に引っかかる眼鏡のテンプルが、重なって思える。
「あぁアぁァあ! イクっ! イっちゃうぅウゥううぅゥぅうぅぅゥウっぅぅんッ!!」
春菜が絶頂を迎えるとともに、リトは男根を引き抜いた。
迸った白濁は勢いよく春菜の顔面に飛び散り、
髪を、頬を、レンズを汚していった。
混濁していく意識の中で、春菜は、自分の視界が白く埋められていくのを感じた。
翌朝。
朝帰りとなったリトに、美柑が怒鳴り付けたのは言うまでもない。
「昨日はどこ行ってたのよ!
リトの分の夕飯は冷めちゃうし、ララさん寂しそうだったよ?」
まさかあの後すぐに寝てしまい、朝まで二人で裸のまま(眼鏡だけかけたまま)
一晩中抱きしめ合ってスヤスヤ眠っていたとは言えない。
リトは後頭部を掻きむしりながら、ひたすら妹に頭を下げ続けた。
「面目ない。次からはちゃんと連絡いれるから」
「当たり前でしょ!
大体、何で買ったばっかりの眼鏡が、もうそんなに曲がってんの?
どんな使い方したら一日で曲がるのよ?」
「い、いやそれは……タハハ……」
これもまさか、眼鏡かけたままセックスしてたら曲った、などとは言えまい。
今日は学校の帰りに眼鏡屋に寄って、形を調整しなおしてもらおうと思うリトであった。
寝ぐせもそのままに学校に行くと、春菜の眼鏡も歪んでいた。
「さ、西連寺のもか……?」
「……結城君が激しすぎるからだよ、もうっ」
読者諸兄も、眼鏡かけたままヤる時は、あまりヒートアップしないように気をつけて下さい。
終わり
で?どこの盗作なんだい?
え?盗作なのかこれ?
普通にGJだと思ったけど……
とりあえず盗作だと思う根拠は?
このスレで以前盗作があったからでは?
「どこの」って書いてるから書き込んだ本人は明確に盗作だと分かっていないもの
>>198を調べた限りでは盗作ではないが
>>199は何を根拠に盗作と言ったのか、理解できないのでスルー
俺は良作だと思う。
まさかのメガネ話からの職人さん降臨
>199
死ね腐れキチガイwwwww
入りが唐突過ぎて一体コイツの眼鏡に掛ける情熱は何なんだ?!と思ってしまったじゃないかw
ウンチクだと思ったらSSで笑ったぜ
よっし、みんながSS書き易い様に俺からお題を出そう
お題は「足コキ」!!さぁ!遠慮は要らないからドンドン書いてくれ!!
黒春菜×リトになりそうなネタだな
>>207 唯の足コキはちゃんとシチュ交えて書きたいから置いとくとして
時間くれるなら沙姫様でよければ書きたいなあと思う
リトのとララの尻尾を擦り合わせるというヤバそうな電波を発信したのは誰だ。
奇遇だな
俺もさっきララの尻尾で手コキ?したらどうなるかと思っていたところだ
それなら、自分の尻尾で挿入してオナニーするっていうシチュもいいよな。
ララに自分の尻尾でオナニーするなんて発想は無さそうだから誰かに開発してもらわんと
まあリト以外いないわけだが
そういうこと教えそうなのはむしろ御門先生
尻尾コキという属性持ちってネタとかじゃなく普通にいるもんなのか?
たまーに見るけどふたなりのチャンバラみたいなイメージが。
ああ、デビルーク同士ならそれっぽいな。
そういえばヤミキン氏や妖氏とかもう書かないのかなあ…
一応両氏とも続きものとして書いてたからさ
>>209 さぁ、早く構成を練る作業に戻るんだ
全裸待機でwktkしながら待ってるからな
やっぱザスティンも尻尾触られたら射精すんのかな
221 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 11:04:26 ID:AR6lF78P
眼鏡春菜可愛すぎ。
>>220 教室で足コキとかたまらないシチュだ
その後本番→責任取ってくれるとでもいうの?
の流れですね、わかります
足コキが一番似合うのは果たして唯か添乗員か
唯スキーだが足コキは沙姫様にしてもらいたい
「こんなので感じるんですの?本当に変態ですわね…」てな感じで罵られながらね
一番足コキが似合いそうなのは実は美柑じゃないのか・・・・?
腹黒のモモもしっくり来る気がする
逆に春菜なんかはそういうことにはならないだろうな。甘々なベタシチュしか使えないキャラだと思う
今週マジで眼鏡かけててフいたw
リトにはあんまり眼鏡似合わないな
長谷見か矢吹絶対にここみてるだろw
いやいくら何でもタイムスリップしない限り原稿間に合わんから
しかし言いたい事はすごくよくわかるw
タイムリープ!!
逆に考えるんだ。中の人がさりげなくスレの流れをそっちに持って行ってるのでは…!?
偶然と言う名のネタバレなのでは!?
237 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 08:32:23 ID:wDtcEJ7n
んなわけねーだろ。
>>166が書き込まれたのが先週の月曜日だから、その線は無いだろ
バレ読んだ事無いけど、ジャンプのは確か水曜日だったよね?
240 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 11:41:33 ID:GK3DDP0X
そっちか!Σ(゚□゚;)
ここはほんとうにじゅうはっさいいじょうのひとばかりなのだろうか
猿山辺りは居そうだな
幼稚園児唯のSSを全裸待機。
……最初からこうしてれば良かったんだ……
私達は兄妹だからいつか離れ離れになってしまう
だから…利用すれば…、でも誰でもってワケじゃない…
ヒトとの関わりが極端に少ない人…ふふ…
だから 友達に なったんだよ?
寂しがり屋?そんなの冗談に決まってるでしょ…?
私はリトといられればそれでいいの…、寂しがる理由なんてないもの
だってリトが好き…大好きだから…
リト…リト…リト リト…
ずっと 一緒だから
「お、おい!?」
私は寝てたリトの上に小さな体を精一杯伸ばし、覆いかぶさった
私が顔を近づけるとリトは顔を遠ざけ背ける
「ねぇ…どうして顔を背けるの?…。…そうだよね兄妹だもんね…」
嫌 ?
リトは目を丸くさせ、怖いものを見るような感じで私を見てくる
「何?その目?…昔のリトはそんな目した事なかったよ?」
「ぅ…だ、だって…。い、いきなりどうしたんだよ!?そんなの美柑らしくない…だろ」
「ワタシらしくない?…ふ〜ん。リトの目にはお利口で我が儘なワタシしか写ってなかったんだね?」
鈍い…。けどリトらしい。だから一層愛情がわく
でも、少しだけショックだったよ・・・?
私の気持ちがちゃんと伝わってなかったこと…
「分かった。じゃあ言うね?リト…好き。大好き」
「み、…美柑…」
まったくこのニブチン
でもいいや。ちゃんと想いは伝えたし…そろそろいいかな?
じゃあ、今これからリト補完計画を始めたいと思います
「…入って?・・・・・・ヤミさん♪・・」
「…?ヤミ…さんって!」
ーガチャー
「……どうも…」
ヤミさんは少しだけ照れながら部屋へと入ってきた
何故照れてるのか…。クスッ…。だってヤミさん…えっちぃ事嫌いなんだよ?
「な、何でヤミがここにいんだよ!?」
慌てるリト超可愛い♪
今すぐ抱きついて愛したいけど――、やっぱりそれは疎遠されるよね
だからヤミさんを呼んだんだよ? …友達だし♪
「み、美柑…。本当にするのですか…///」
「当たり前だよ!…打ち合わせしたよね?」
「する…って?するって何をだよ!?」
本当に純粋無垢な純白な男子なんだから…。でもそれがリトの良いところ
そんなリトを汚しちゃ悪いと思うけど…、するしかないんだよ
「ヤミさんの嫌いなぁ…えっちぃこぉと♪」
「はぁーーあ!?じょ、冗談だろ」
私はヤミさんを手招きして、リトのズボンのところに移動させた
「……ぬ、脱がします///」
「何ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「ダメだよ!動いちゃぁ!」
私はリトの手首を握り締め、耳たぶを甘噛みした
「うくっ!み、みかぁ」
案外リトは耳が弱いんだぁ…♪何だか秘密を握ったみたいで嬉しいな
「ちろちろぉじゅる…はむぅ」
出来るだけ厭らしく、出来るだけ優しく
私はリトの拘束よりも、リトに感じて欲しいという気持ちで嘗め回した
…でも今はそれどころじゃない…かな
「…ぅ……」
「ちょっ///!ヤミ!マジマジ見んなよ!!」
ヤミさんはリトのズボンを脱がす事に成功したらしい
あぁ…。私も早く見たい。…って…。私は毎日見てるか♪
「んっ…。これをな、嘗める…。…ア、アイスのように 」
「おおおい。ナにを嘗めるってぇえ!?」
リトも自分が何をされるのかがようやく分かってきたようで、それが自分の物に現れてくる
私はヤミさんに首と目で即すと、ヤミさんは5°程頭を縦に振った
おもむろに赤みがかった舌を少しだけ外に出し、リトの先端に近づける
つんっ
「ぅ…」
リトの物がヤミさんの舌と銀透明なネバ糸で繋がった
そしてその糸を断ち切るかのように、物は天井に向かってそそり立った
「お、大きいですね。これが男性の…」
ソワソワとしているヤミさん
まったく、しっかりしてもらわないと困るのに…
「ほらヤミさん。私が手本見せるから、真似してやってみてね?」
私はまず、物の先端部分(カリ)を指の第二関節までの所で擦った
リトから薄らと、声が漏れる
「リトぉ感じてる?気持ち良い?次、舌でペロペロしてあげるね♪」
私は指で擦りながら、唾液塗れでベトベトな舌でリトの物をチロチロ嘗め始めた
「ぅぅ…(う、上手すぎだろぉ〜小学生のくせにぃ)…くぅ…」
リトが感じていることを察した私は、一度嘗めるのを止め、放置中のヤミさんに振り向き
「ヤミさんも、…もうできるよね?」
「―――――できそう…です―――――」
男子高校生の部屋に、幼い少女が二人
その淫らな行為をするのには…早すぎるのに…
――――――もう後戻りは出来ないよね――――――――
「じゅるジュル、ちゅぱ、はむ…んんぅ…」
「チロチロチロチロずりゅ…」
小さな部屋に響く小さな変饗音
「ひもひいい(気持ち良い)?」
「脈、び、ビクビクしてます…」
いつのまにか裸な私達
「美柑ん…ヤミぃ…もう…無理、射精るぅう」
ドピュッドピュッドピュウぅ…ピュぅ…
物の近くにいた私とヤミさんに、リトのせいえきがかかり、顔が白く染まった
それを見たリトはすぐさま我に返り私達に謝罪をした
「ん〜どうしよっかな?…じゃあ…最後まで付き合ってくれる?」
「さ、最後…えええええええええええ!?」
あからさまな驚きよう
もう♪にやけちゃう♪リト…後少しだからね…
「じゃあ、ヤミさん♪準備するね?」
「じゅ、準備?…あの私は何をすれば…」
もう〜面倒くさいな〜。リトの部屋からエロ本取って見せればよかった
私はヤミさんの秘部を指で愛着し始めた
ヤミさんは目を見開き凄く驚いてたけど、リトもヤミさんに負けてなかった
「ん…ん…ハ・ァ…へ、変な感じ…です」
「それが気持ち良いって言うことだよ♪」
ベットの上で膝立ちしている私達をじっと見つめているリト
今…どんな想いなのかな?
羞恥?歓喜?失望? できれば最初のがいいな
恥ずかしがってるリトは…私の知ってる中で最高の「リト」だもん
もっと…もっと…そういうリトの顔が見たいな
「ヤミさん。何かリトが凄くいやらしい目で見てきてるよぉ?」
「!…み、みないでください…ぁあん」
「はっ!ななななな何言ってんだ!目の前でこんな事してたら嫌でも見ちまうだろ!///」
クスッ。最高の反応だよリト♪
「ね〜ヤミさん。もっと気持ち良くなりたいでしょ?…リトも暇そうだし」
リトとヤミさんは「えっ?」とそろって言い、驚愕の顔色を見せた
ふふっ 何だか楽しくなってきた
「じゅ、ジュルジュル、んん…」
「ぁぁ…ふぅん、んはぁ…ぁう…」
「チロチロっ♪ ふふっ。ヤミさん乳首凄い突起♪」
最初がリトのクンニの音
次がヤミさんの喘ぎ声
そして私の乳首攻撃!…って!…なんだろ…。何か違うような…。
私の計画って、ヤミさんを楽しませる事じゃなくて…、まぁいっか、楽しいし
「ヤミさんそろそろいいんじゃない?…もう充分濡れてるし」
ヤミさんの秘部から蕩け出した蜜がリトの顔にペイントする
私はヤミさんをリトの物の上に移動させ入るか入らないかギリギリな場所に固定させた
「み、美柑。もしかして…」
さすがヤミさん♪察しが良い!
「最初は痛いと思うケド、私がしっかりフォローしてあげるから大丈夫だよ」
不安そうな顔つきになり、入れるのを躊躇うヤミさん
ここで挫いちゃ私の計画が台無しになるのにっ!…、ここは強引にでも―――
私はヤミさんの両肩を両手で下に押し、無理やり挿入された
「ぁあああぅぅぐっ」
「うぉお!」
ヤミさんの悲痛な声とリトの歓喜の声がリンクして部屋に響いた
…ヤミさんには罪悪感だけど、うん。リトが喜んでるからおっけぇ〜!
私はすぐにヤミさんの乳首を抓り、首筋を嘗め始めた
「痛い?苦しい?大丈夫だよ。もうすぐ良くなるから…」
耳元でそう呟き、自分の持つできる限りのテクニックでヤミさんをほぐす
ヤミさんは段々と呼吸数が落ち着いてきて、痛がる様子も無くなってきた
「…ハァ…ハァ…、美柑。もう大丈夫です。ありがとうございます」
…ありがとうございます…か
なんだろ?…お礼言われたのに、気分悪いな…
ううん。気分が悪いんじゃなくて。……これ、罪悪感?
私が強引に、無理やりにしちゃったから?…それも…ある…けど…
私 いけない事 してるのかな
「…あん!んぁっふぅく…あぅ」
「ヤ、ヤミ!す、すげー締まってる…ぅ!」
今更後悔したって――――
―――私は!リトと、いつまでも一緒に居たい
だからヤミさんを利用したんだ
ヤミさんがリトとくっつけば、ララさんや西蓮寺さんや古手川さんから離せるから
ヤミさんは人と関わり少ないから、別にゴタゴタにならないし、私にとっても好都合だし
―――だから 友達に―――
あれ?何で?何で私泣いてるの私
このままいけば、リトといつでも一緒にいられるのに
ヤミさんも一緒だけど…口数少ないし…同じぐらいの歳だから…リトをこっちに向かせる事もできる
「ああん…ぅぅ…イイ…きもち、良いです!…結城…リトぉ」
「俺も、こんなの初めて…くぅ…」
…なのに…
「ぁぅ!ハァん、!!も、もう何か、でちゃいそうです…ぁああ!!」
「限界だ!ヤミ!もう―――」
なんで 涙 止まらないの
―10分後―
チク タク チク タク
静かな部屋に時計の効果音が鳴り続ける
リトとヤミさんは行為が終わると同時に寝てしまった
今は…私だけ…
「…ヤミさん。…ゴメンね。私…友達失格だよ。
リトと一緒にいたいからって…ヤミさんを巻き込んで利用して。
本当、最悪だよ…私。
こんな事に利用するために友達になったの…、本当は嘘だよ?
もう信じてもらえないかも…しれないけど」
「信じます」
え
「美柑は、私の初めての友達…。友達と言うのは、ただ単に言葉だけでは言い表せない
大切なもの。…本にそう書いてありました。
私にとって、友達である美柑は大切な存在。大切な人です…。
だから、私は…美柑を信じます」
再発する涙
さっきは声にならなかったのに、今は…
私とした事が、まさかヤミさんにすがりつき泣き喚くとは…
「それに、私は…恋愛という…かんじょぅぉ ......―――」
私は、聞き取れなかった―――
…私は泣き止み、ヤミさんもご就寝
疲れているのに、何で眠くならないんだろ
まぁ、リトの寝顔見れるからいっか♪
「あのな〜」
「リト!? お、起きてたんだ〜」
「お前らがうるさくて寝れねーんだよ!…友達っつっても限度があるだろ!」
いつもは私が説教するパターンなのに、今日はリトがお兄さんって感じだった
やっぱり、いつも通りが…一番だよね♪
数年後、私はある友達と姉妹になった
その話が語られれるのは、まだ先のお話―――――――――
ふ〜っ!
少し古い話題でいってみました「ヤンデレ?風美柑」
でも最後は元通りという事で…
走りこみっぽかったかな?
スマン、よくわからんのだが・・・
結局美柑は何がやりたかったんだ?
>>250 GJ
>>251 兄妹では結婚できない
なら、自分が信頼できる友達に兄を捧げよう
・・・・・・・・こんな感じでは?
ララや春菜や唯にリトが惹かれては困る
↓
まずはガキに興味を持たせよう
↓
次に自分にシフトさせよう
↓
ラブラブになれて完璧
って寸法じゃね?
最終的にはヤミがリトと結婚してヤミと美柑が義姉妹になった、とか?
触発されて自分でもヤンが書きたくなってきたぐらいGJ!
GJ
> 私はヤミさんの両肩を両手で下に押し、無理やり挿入された
された???
>>250 GJ!
間違ってたらごめん。以前ヤンデレのSS書くって言っていろいろ聞いてた人ですか?
>>243 それは「リトと唯」の人に期待するところだろ?
前書いてたロリ唯みたいな感じでお願いします
>>250 GJ。
>>255 唯スレで「書く」と言っていた人が居たので。
その人が「リトと唯」の人かは分かりません。
>>253 ララ春菜唯とくっついたら困るってのがようわからん
>>257 自分の好きな子が自分以外の男とくっついたら困るだろ、お前
そんなセコい考えのキャラはとらぶるにはいそうにないが
そういう事言い出したらSS書けんでしょうが(焦
>>258 いや、これは罠だ・・・・ハーレムと言う・・・
困る困らない以前に兄弟でしょ
ヤミだったらセーフという根拠がわかんねぇ
セーフなんじゃなくて、そこから年の近い自分にシフトさせるつもりなんでしょ
流し読みしててもそんくらいわかったぞ
265 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 07:42:56 ID:9HBzcg5b
っていうか、今残ってる職人少なくネ?
>>265 それは過疎スレ&職人がいないスレへの(ry
このスレは固定の職人さん達+たまにやってくる職人さんがいるんだよ?
それだけでもすごいと思うけどなあ
人気スレと過疎スレ両方の住人になって初めて分かるもんだ。
ここは比較的恵まれたスレだと思う。
268 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 18:26:45 ID:9HBzcg5b
エロパロ板には一日1レスあればいい方の真性の廃墟やら
盛り上がるのは住人が罵りあいをしてる時だけみたいな荒れ地もあるんだぜ…
ここは喧嘩も少なく人も多くて見ていて和む
書く側としたら、ここは「投下したくなるスレ」だよ
元々ToLOVEるは毎週月曜日にコンビニでパラ見する程度の興味しか無かった
このスレに投下したいがために単行本全部集めてしまった
某ラブコメスレなんか派閥争いが酷すぎて一つ投下するだけでもとんでもないことになるぜ?
272 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 20:18:19 ID:4PrfaMkH
俺はそれだけじゃ足りず、週刊の方も古本屋で大人買いしてしまった。
未だに本屋で単行本買う結城がない…
俺には絶望先生が限界だ…
誰か助けて
>>276 切り取り→PCにスキャン
これだったらかさばりもしないし、大丈夫
普通に切り取りは埃っぽくなるし、整理するのがやぐらしいよ
スキャンできる環境だったらこんなところで愚痴らないだろうw
とらとかメロンに入るのに最初は躊躇っていたのが懐かしい
とらなんか今でも入りたくねぇよ、もう24歳だけど
って言うか年に一、二回しか入らないし
昔はアンパンサーガ集めるためだけに恥を忍んで入店してたなぁ
あの店何であんなに空気が臭いの?
>>279 まずなんでそんな口調なのかと?w
とらのあなで嫌な思いでもしたのか?
確かにとらもメロンも独特な臭いはするけどw
でも、同人や書籍なんかを扱っている店はみんなあんな感じだよ(たぶん…)
とらとか中学生の時も普通に入ってたなぁ
店員は客が何の本買ったかなんていちいち意識してないけどな
リトと唯の続きマダ-?
凜マダ-?
全てがうまく収まる結末としては一夫多妻か
さもなくばララとレンが結婚(ルンとは和解)
リトと春菜が結婚
凛がザスティンとデビルーク星まで駆け落ち
ぐらいじゃねーの?
とりあえずララはリトと結婚しちゃ駄目だと思う
それでも一夫多妻でリトが春菜とも結婚するんなら妥協出来るけど
ララなら春菜も一緒にとか言ってもおかしくなさそうだしね。
何故に凛が?
一夫多妻ENDは普通にありそうだなあ。
ララってリトのことは好きだけど独占欲はあんまないし。
────チクタク チクタク チクタク…
気付くと唯は、広い広い公園の真ん中で一人ぽつんと立っていた
……ここってどこなの? 私…
キョロキョロと周りを見渡しても誰もいない。ただ、耳にずっとチクタクと時計の針の音が聞こえていた
やがてその音に混じって小さなすすり泣く様な声が聞こえ始める
その声はすぐ近く────唯のすぐそばから聞こえるものだった
いつの間にか、幼稚園ぐらいの小さな黒髪の女の子がうずくまる様にして隣で泣いていたのだ
どうしたの? 何かあったの?
クスン、クスンと泣き続ける少女。やがてゆっくりと上げたその少女の顔に唯はハッと息を呑む
────え!? ……これは…私?
そして、フラッシュバックの様にいつかの光景と聞き覚えのある声が流れる
『やめて!! どーちてこんなことするの!?』
『唯わるくないのに…唯まちがってないのに…唯…唯……』
ああ…そっか。またあの時の────……
『な…なに? 唯に用事って』
ビクビク震える手を隠す様に、唯はその小さな体でめいっぱいの強がりを見せた
『あ! きたきた』
『おせーよ! こてがわ』
『もー!! いつまでまたせるきよ!!』
小さな唯と同じぐらいの体格の男の子。唯の一回りも二回りも大きい大柄な男の子
そして、唯より少し年上な感じの女の子
どの子供も唯と同じ幼稚園の制服を身に着けている
すべり台から立ち上がった三人は唯を取り囲む様にして近づいて来た
『こ、この場所は来ちゃダメなところだから早く…』
『うるせー!!!』
大柄な男の子の一声で唯は竦み上がった様に口を止めてしまう
『あんたってホントにウザい』
長い髪の毛の手で弄いながら女の子が唯の間近に迫る
『う…う、うるさくなんかないの!! だって先生がここには来ちゃ……あぅっ!』
少し大き目の手が伸び、唯の胸元を掴むと、キリキリと締め上げていった
『く…苦ちい…』
『おまえ、またやりやがったな!?』
『な…なんの事……キャー!!』
胸元を掴んだ手でドンっと力任せに唯を地面に叩きつける
地面に尻モチを付いた唯の目に薄っすらと涙が滲んだ
『い…痛い……何するのー!?』
『こてがわ、おまえナマイキだぞ!!』
『おまえ、また、せんせいにオレたちのこと言いつけただろ!!?』
『そうよ! おかげでアタシたち、先生におこられたんだからね!!』
『え…あ…あなたたちが、唯のゆーこと全然きかないから先生にお願いちて唯は…』
小柄な男の子の手が伸び、唯の長い黒髪を無造作に掴み上げる
『それがナマイキだって言ってんだよ!』
『い、いたッ! やめ…やめなさい!! こんなコトちたらダメなんだからっ』
『コイツ…』
中々態度を改めない唯に、三人のイライラはどんどん溜まっていく
『やっぱコイツ、ナマイキすぎ!!』
『あ! 私いいコト思いついちゃった!』
『いいコト?』
唯を見下ろす少女の無垢な目が次第に細められていく
『コイツのカバン隠しちゃおーよ!』
『え…』
『いろいろと大事なモノが入ってるんでしょ? 勉強どうぐとかさ? ホラ、唯ちゃんってマジメだから』
ニッコリ笑うその笑顔はどう見ても悪意に満ちたモノへと変わっている
唯は反射的にカバンをギュッと抱きしめた
『さんせ〜い!』の声と共に、男の子二人の手が唯に伸びる
『あ…ダ、ダメ! ダメなの!!』
カバンを抱え込む唯の手から、力づくでカバンを奪い取ろうとする子供たち
土埃で次第に唯のキレイな制服が汚れていった
『こんなコトちたらダメなの! こんなコトいけないコトなの!!』
『さっさとカバンわたしなさいよ!』
『…う…ぅ…』
怖くて小さな手が震える。大きくて黒い瞳に涙がみるみると溢れる
(唯、悪くないのに…悪くないのに……うぅ…ひっく、誰か助けて…助けて)
目をギュッと瞑り必死に耐える唯
その時、聞き慣れた声が唯の耳に届いた
『お前ら、オレの妹になにやってんの?』
『え?』
ゆっくり開けた唯の目に飛び込んできたのは、兄である遊の姿だった
『おにい……ちゃん?』
その言葉に三人の顔色は一瞬で青に変わる
『コ、コイツのにいちゃんって…』
『しょ…小学生をつれてくるなんてヒキョーよ!!』
『いいからにげろって! ヤバいって!!』
三人は唯を残してその場から一目散に逃げ出してしまった
『お前なにやってんだよ』
『お…おに…おにい……ちゃん。うぅ…』
三人が去った事よりも遊が来てくれた事に安心したのか、唯の目からみるみる大粒の涙が溢れだした
『ったく、どーせ、またなんかよけいなコトやったんだろ? そんなんだからお前はいつも…』
溢れる涙と一緒に出る大きな泣き声が遊の声をかき消していく
『ひっ…う…うぅ…うぐ…あーん!!!』
一度泣き出したら中々止まらない事を知っているだけに、遊の口から溜め息がこぼれた
『ああ、もうわかった! わかった! わかったからちょっと泣くのやめて落ちつけよ』
『…うぅ…ぅ…ひっ…く……』
叱りながらも次第に収まりつつある泣き声に安心するも束の間
唯は袖で目元をゴシゴシ拭き終えると、トテトテ走って遊に抱き付いた
『お前やめろって! こんなトコで恥ずかしいだろ』
『やだ!』
『あのな…』
『イヤなの! こーしたいの! 唯、おにいちゃんとこーしてるの!』
駄々っ子の様に遊から離れようとしない唯
まるでたった一つの拠り所であるかの様にギュッと遊にしがみ付く
そんな妹が恥ずかしいのか、照れくさいのか、遊は顔を赤くしながらその頭にポンと手を置いた
『……なにやったのか知ンねーけど気をつけろよな! オレがこんなふうに来てやれない
時だってあるんだからよ』
『え!?』
唯は胸にうずめていた顔を上げると、まるで信じられないモノでも見るかの様に目をまん丸にさせた
『ウソ……や…やだ……やだ! そんなコトやだ! 唯、おにいちゃんに
これからも守ってほちいの!! だから…』
涙でクシャクシャになった顔のまま力いっぱい首を横に振る妹の頭を撫でながら、
遊はニカっと笑みを浮かべた
『そーじゃなくて! オレはこれないかもしれないけど、代わりにお前のコトちゃんと
守ってくれるヤツが出てくるかもしれねーだろ?』
『そんなのいらない! 唯、おにいちゃんがいい!! おにいちゃんでいいの!!』
『いつか出てくるって! そんなヤツが。ちゃんとお前のコト守って好きになってくれて…』
『いらないのー!! おにいちゃんだけでいいの!!』
頑なに首をふるふると横に振り続ける唯に遊は苦笑を浮かべた
ハッと目を覚ますと、そこは公園ではなく見慣れた自分の部屋だった
部屋の中はまだ薄暗く、外もまだ闇に包まれたまま
時計を見ようと頭を動かすと、つーっと目から水滴がこぼれ落ちた
「え? 私、泣いて…」
指で目を擦るとわずかに指先が濡れている事に唯は軽く驚く
「私何で……そっか、夢でも見てたのね」
どんな夢を見ていたのかは覚えてはいない
けれど、一先ず夢のせいにしてでも自分を落ち着かせたかった
どういうワケなのか胸のあたりがやけにドキドキしていた
規則正しく、だけど、いつもより大きくて、そして、どこか心地よくて
(何なのコレは…)
正体不明のドキドキに悩まされながら唯が再び眠りに入ったのは明け方近くだった
今日は日曜日
唯にとって忘れる事のできない運命の一日が始まろうとしていた────
チクタク チクタク チクタク チク…
そして、時計の針は進む
「ハレンチだわっ!!」
────バタンッ!!!
勢いよく玄関の扉を開けた唯は、外に飛び出した
その顔はどこかいつも以上に険しいものになっている
「もう…どうしてうちの家族ってあんなにだらしないのかしら」
ブツブツと呟いていると、外に出る前にした遊とのやり取りが頭に浮かぶ
相変わらずだらしのない格好に、直らない遊びグセ
幼い頃より幾度となく注意してきた事なのに、まるで改善される様子のない兄に、
唯の怒りが今日爆発してしまったのだ
(ホント、お兄ちゃんってどうしていつも……あっ!?)
商店街を一人歩いてる唯の目にふとある連中が目に入る
「あれは…」
「リトの買い物についてきてよかった〜♪」
スーパーの自動ドアの奥から買い物袋をいくつも提げたリトとその横を歩くララが現れる
「じゃ〜ん♪ マジカルキョーコの入浴剤♪ どんなおフロでも一瞬で溶岩風呂の出来上がりだって!」
「大丈夫かよそれ…」
どう見ても怪しいロゴ入りの入浴剤にリトの目にありありと不信感が宿る
「平気! 平気! だってキョーコちゃんの入浴剤なんだもん!!」
「いや…それは関係ねーと思うけど……」
と、苦笑いを浮かべるリトだったが、隣を歩く目をキラキラさせているララを
見ていると「ま、いっか…」の気持ちに変わってしまう
「ねぇ、リト!! 今日一緒におフロに入ろっか」
「は!?」
一瞬で真っ赤に染まるリトにうれしそうに抱きつくララ
そんな二人のやり取りをずっと聞いていた唯の肩がぷるぷると震えだす
「な…なな」
頭の中ではお風呂場でいかがわしい姿になっている二人の姿が鮮明に浮かび上がっている
唯はたまらず、その場で大声を出してしまった
「ハレンチだわーーッ!!」
「わっ」
「古手川!?」
その声量と突然の登場にリトもララも目を大きくさせた
「何考えてるのよ!? あなたたちは!!」
「え…な、なんか誤解して……」
ワナワナと両手を握りしめている唯にリトも咄嗟に言い返せなかった
「もう、何なのよ一体!!」
「唯!?」
ララの呼び声も置き去りにその場から走り去ってしまう唯
「どーしたんだろいきなり…」
「なんだかゴキゲンななめみたいですね」
ララとペケのやり取りを横に、リトは走り出す瞬間の唯の横顔を思い浮かべていた
(古手川…?)
リト達から少し離れると唯は息を整える様にゆっくりとした足取りで歩き始めた
(外に出てきたら出てきたでこうなんだから…)
が、その表情はさっきまで以上に険しく、イライラとしたモノになっている
しばらく歩いていると、そんな唯の癇に障るモノがまた目に入ってしまう
コンビニの前に座りこみ、通行を妨げている、見るからに不良然とした連中
(あんな所に座りこんで…!!)
その光景に唯のイライラが最高潮に達してしまった
(迷惑って言葉を知らないのかしら…)
普段の唯なら相手が相手だけに、あるいは声を少しだけ落としたり、言葉をもう少し選んだのかもしれない
ただ、この時の唯はいつもと違っていた
ずいっと三人組の不良達の前にやってくると、指でビシっと差しながら大声で怒鳴ってしまったのだ
「あなた達! そこは通行のジャマよ! 道をあけなさい」
その言葉に不良達が面倒くさそうに反応する
「あ?」
「何? オレらに言ってんの?」
「そうよ!!」
一歩も引く様子のない小柄な女子高生に、不良達はニヤニヤしながら立ち上がった
「だいたい何? そのカッコ! 親が見たら泣くわよ」
「ホホ〜〜、言ってくれじゃん」
すぐそばまで歩み寄って来た一人に、唯の顔に微妙に冷や汗が浮かぶ
自分より頭一つ大きいその背丈に心なしか圧倒されそうになってしまう
(な、何よ…これぐらいで……)
少し声を詰まらせた事をいい事に、不良達はますます下卑た笑みを浮かべ始める
「おいこのコ、ちょっとカワイくね?」
「オレもそう思ってたトコ!」
「え?」
一瞬の隙を付いて後ろに回り込んでいた一人が、唯の両腕を後ろから羽交い絞めにした
「な!! はっ離しなさいよ!!」
「んなこと言わずに遊ぼーぜ」
「ど、どうして私があなた達みたいな人たちなんかと……うっく!!」
腕を振りほどこうにもひ弱な力ではどうする事もできない
そればかりかメキメキと音を立てながらさらに力を入れようとしてくる
「…あ…く…」
唯の口からか細い息がもれた
「キレーな足〜」
「え…あ、ちょっと!」
スカートに手を掛けようとする男に、怖気にも似た感触がゾクっと背中を走る
(もう! 男ってどうしてこうなの…。誰か何とか言ってよ!!)
そんな心の叫びを余所に、通行人や事態に気付いている者は、慌てて視線をそらしたり見て見ぬフリをしたり
(明らかにこの人たち間違ってるじゃない! どうして見ないフリをするの…)
唯の中で恐怖と不安、そして、男への不信感が膨れ上がる
唯はギュッと目を瞑った
幼い日のあの時と同じように
(誰か────……)
「やめろ!!! そのコを離せ────っ!!」
それは聞き覚えのある、何度も聞いた事のある声
唯はゆっくりと目を開けた
(え……?)
唯の目に、必死な顔をしながらこっちに走って来るリトの姿が映る
(結城くん…!? どうして…)
「古手川、こっち!!」
「あっ」
慌てふためく不良達の隙を付いて、リトは唯の手を取るとそのまま走り出した
「待ちやがれ」
後ろから聞こえる罵声を無視し二人は全力で走る
人を自転車を、縫うようにして必死な面持ちで走るリトに手を引かれながら、唯の中で、
自分でも抑えきれない何かが芽吹こうとしていた
緊張と興奮でしっとりと汗を掻いているリトの手
その手に引かれながら唯の胸はどんどん高鳴っていった
「結城…くん」
「ん!」
店から出た遊は少し遠くの方を走る見慣れた顔に足を止めた
「どーしたのォ?ユウちゃん」
隣に一緒にいる彼女の声も耳には入らない
(あれ…唯じゃん)
そして、その唯と一緒にいる見知らぬ顔に遊の目が大きくなる
「男…?」
「ちくしょー! どこ行きやがった」
キョロキョロと頭を巡らせる不良の一人を建物の物陰から覗き見ながら、リトは心の中で後悔した
(くそっ…ララに荷物任せず一緒に来りゃよかったぜ…!)
背中に感じる一人不安な様子の唯
「と、とにかくもっと奥に行こう! ここにいたら見つかっちまう」
「そうね」
二人はなるべく足音を立てない様にしながら、路地裏へと走って行く
が、少し進むとすぐにその足が止まってしまった
「ここ行き止まりだわ!」
二人の前にその行く手を遮る様に、高い金網がそびえ立っていたのだ
「…コレ乗り越えるしかないみたいだな。古手川行けるか?」
「へ…平気よ! これぐらい」
リトに促され唯は金網に足を引っ掛けながらゆっくりと登って行く
「う…ん」
「がんばれ古手…あ」
下から唯の様子を見上げていたリトは声を詰まらせた
その様子に気づいた唯が何気なく下を見ると、真っ赤になったリトが自分のスカートの中を凝視していた
「こんな時まで何やってるのよ!!?」
「あ…いや…オレは」
「いいから先に登ってよ」
「わわ、ゴメン!!」
ボスっと持っていたカバンをリトに投げつけながら、ぷりぷりした顔で金網から降りる唯
「オ、オレが先行くから、古手川は後に続いてくれ」
「……」
ムスっとした顔のまま睨んでくる唯に引きつった笑みを浮かべるも、リトは難なく金網を乗り越えていった
「古手川! 早く降りてこいよ」
「ちょ…ちょっと待って!」
見上げるリトの前で、唯は金網の上で身動きが取れなくなっていた
「大丈夫か!?」
「ス…スカートがひっかかって…」
網目の出っ張りに引っかかったスカートの裾をぐいぐい引っ張って取ろうとした時、ふいに唯の体がグラリと傾く
「きゃ!!」
短い悲鳴の後、ガクンとバランスの崩れた唯の体は、そのまま地面に向かって落ちていった
「古手川っ!!」
全力で落下地点に走り寄るリト
間一髪、ドサっという音と共に唯の体はすっぽりとリトの腕の中に収まった
それは、ちょうどお姫様抱っこをしているかの様な体制
唯の頬が自然と赤く染まる
「あ…ありがと…」
「お…おう」
痛みで顔を歪ませながらも決して自分を離そうとはしないリトの横顔に、唯の胸はまたトクンと音を立てた
「ダメだいねーぞ」
「あわてんな! まだ近くにいるはずだ」
怒気を孕みながら顔を並べる不良達にゆっくりと影が歩み寄る
「誰を探してんの?」
振り返る不良達の目にスラリと背の高い男の姿が映る
「あ? 何だおまえ?」
「男には用はねー。うせろ!」
まるで相手にする様子のない三人に遊はクスっと笑みを浮かべた
「…静かになったわね…」
「ああ、なんとかやりすごしたみてーだな」
二人はあの場所から少し離れたトンネルの中で腰を休めながら息を整えていた
「そう…ね」
小さく返事をするも、その心の中は息以上に乱れっぱなしだ
息を切らせながらも油断なく回りをキョロキョロするリトの横顔に、なぜだか胸がドキドキと高鳴る
(私ったらこんな時に何ドキドキしてるの…)
目をそらそうにも中々そらしてくれない自分自身に唯は眉を寄せた
「しっかし古手川もムチャするよな。あんなヤツらに注意とかしたらそりゃこうなるよ」
呆れ気味のリトの口調に唯の目がゆっくりと細められる
「…じゃあ、見すごせっていうの?」
「いや…そうは言わないけど」
「じゃあ何なの?」
じ〜っと見つめるその視線にリトの額に次第に汗が浮かんでくる
「だってホラ…古手川女のコなんだし、あんまりムチャは…ホラ…さ」
しどろもどろになっていくリトとは逆に、唯の心は次第に落ち着きを取り戻していく
そしてだんだんと湧き上がる感情
さっき言い忘れていた事が頭に蘇る
「な、何だよ?」
ゴクリと喉を鳴らすリトに唯は静かに呟いた
「…結城くん…、さっき何げに私の胸触ったでしょ」
「え!!?」
リトの心臓が張り裂けんばかりに大きくなる
さっきとは金網から落ちた唯を抱き止めた時の事
確かに思わず胸や太ももを鷲掴んでしまったワケだが────
「あ…あれは仕方なくっつーか…その…」
大慌てで身振り手振りと言い訳を始めるリトに唯はゆっくりと立ち上がる
「ゴ、ゴメン。け、決してわざとじゃないんだ!! ホ、ホ、ホント!!」
唯は無言
俯き気味のため前髪で隠れて見えない表情が、リトの動揺に拍車を掛ける
「ふ、不可抗力っつーか助けなきゃってそれしか考えてなくて…え、えっと…」
小さく震えだす唯の肩に、もうダメだと諦めにも似た感情が生まれる
その時、吹っ飛ばされる事を覚悟したリトの耳に意外な声が届いた
「…ぷっ…あはは…」
それは鈴を鳴らした様な可愛い笑い声
(え…笑っ……あの古手川が?)
信じられない物でも見るかの様にキョトンとなるリトの前で、唯は確かに笑っていた
そして、唯はスッとリトの顔を見つめると本当に小さな笑顔を見せた
「…取り乱しすぎよ。カッコわる」
やわらかい、気持ちがホッとする様な、心にそっとやさしく触れるような笑顔
その感触にリトの目が丸くなる
(あれ? 何…だこれ)
自分でもわからない不思議な感覚にリトは眉を顰めた
唯はくるりとリトから背を向けると、いつもの淡々とした口調とは違うどこかうれしそうな声で話し始めた
「いいわ。今回だけは許してあげる」
(なんだか気分がいいからね…)
あの時────……
『やめろ!!!』
あの時、必死な様子で助けに来てくれたリトを想うと、唯の胸はぽぉっとあったかくなっていく
それは心地いい初めて味わう感触
そんな一人顔をほころばせる唯の背中にリトは遠慮がちに声をかける
「……古手川…」
「ん?」
振り返った唯の目にかなりどころか、目をまん丸にしているリトの姿があった
「どうしたのよ?」
「お前、笑ったりできるんだ…」
その言葉に今度は唯の目も大きくなる
「な! 何よ失礼ね!!」
「うう…」
駐車場で完全にノビきった三人を前に遊はペッと唾を吐きだした
「…ったく…、世話のかかる妹だねぇ」
ズボンのポケットに手を突っ込みながら呆れ気味に呟くも、その顔はどこか楽しそうだ
「さーて、唯のヤツ…少しは大人になるといーけどなァ」
「私が笑ったらおかしいっていうの!?」
「ちょ…ちょっと落ち着けって! だ、誰もそんなことは…」
「じゃあどういう意味でいったのよっ?」
顔を真っ赤にさせながら怒る唯にリトの顔は引きつりっぱなしだ
指をビシッと突き付けながら一頻りガミガミと言い続けた唯は、くるりとリトに背を向けた
(もう! 何なのよ!? せっかく結城くんの事私…)
私────……何なの?
続く言葉が中々出てこない事に唯は眉を寄せた
(何よコレは……胸のあたりがすごくモヤモヤする)
顔をくもらせる唯に後ろから心配そうなリトの声がかかる
「古手川」
「何よ?」
リトに背を向けたまま腕を組んで返事をする唯
自分の動揺を知られたくないのか、その口調はいつものそれに戻っている
「あ、あのさ、この後ってどーするんだ?」
「この後って……決まってるじゃない。家に帰るのよ」
首だけリトに向けてそう応えると、唯は再びふぃっと顔を背けてしまう
「そっか…。じゃあウチまで送るよ」
「え?」
「ホ、ホラ、さっきのヤツらがまだいるかもしれねーしさ」
リトの気遣いに唯はただ目を丸くさせた
「べ、別にそこまでしなくていいわよ。それに、あなただって用事とかあるんでしょ?
さっき、ララさんと一緒にいたじゃない」
「ララのヤツはもうウチに帰ってるよ。それより、今は古手川のほうが心配だしさ」
「し、心配ってそんな…」
背中を向けながらも唯は複雑な心境になっていた
今日はおかしな事にリトの一言一言がなぜだか胸に響く
ふとした仕草や表情に目を奪われてしまう
(何よコレ…)
自分の中にある確かなモノ
正体不明のモノに唯の心はざわざわと波立つだけで、唯にソレが何なのか教えてはくれない
「古手川?」
心配そうにすぐそばまで来ていたリトに唯の体がビクンと震える
「大丈夫か? お前」
「へ…へ…平気よ! なんでもないから心配しないで」
「そっか…」
なんて言うがどう見ても様子のおかしい唯に不安感は拭えない
「でも、やっぱ送っていくよ。心配だし」
「だ、だから…」
「…つーか…、男として責任あるし、古手川になんかあったら困るしさ」
明後日の方を見ながら話すリトに唯の心拍数が急上昇し始める
(な、何よそれ…それってどういう事なの)
責任。なにかあったら困る
(わ、私の事そこまで想ってくれてるって事なの…)
唯の頬が知らず知らずの内に熱くなっていく
「だからさ、家の近所まででもいいから送らしてくれよ、な?」
いつにも増して頑なな態度を崩さないリトに唯はツンとそっぽを向いたまま返事をした
「わ、わかったわ。そこまで言うならお願い…」
夕暮れの帰り道、二人は少し遠回りをしながら帰っていた
会話は終始、今日あった出来事について
「…だいたいおかしいのよ! どうしてみんな間違ってるってわかってるのに何も言わないのっ?」
「まぁ…な」
隣でひたすら唯の力説を聞かされているリトは小さく相づちを打った
(ホント、古手川ってマジメってゆーか…)
心の中で溜め息を吐いているリトを余所に唯の力説は続く
そして、話しの内容はいつの間にか学校の風紀の乱れへと変わっていった
「これじゃ、ますます風紀を乱す生徒が急増するわ! このままだと彩南高は腐敗の
一途をたどるばかりよ! だから…」
それまで横で黙って話しを聞いていたリトの口がゆっくり開かれる
「な…なぁ、古手川」
「ん?」
「…少し肩の力抜いた方がよくないか?」
「え…」
一旦言葉を区切るリトに、唯はチラリと視線を向けた
「古手川の言う事いつも正しいけどさ…そればっかじゃ疲れると思うんだ…」
リトの声にはあきらかにいつも以上に優しい成分が込められている
「な…何よいきなり…」
その声をダイレクトで隣で聞いてしまった唯の胸は、またまたトクンと音を立て始める
(ま、また私……この感じ)
唯はそんな自分を鼓舞する様に慌てて平常を取り繕った
「ふ…風紀を乱してばかりのあなたには、言われたくないわ…!」
「はは…」
「それに言っとくけど、わ…忘れたわけじゃないんだからね…。胸…触られたこと…………!」
触った時の感触を思い出してしまったのか、リトの顔が沸騰しそうなほどに赤く染まる
「はわっ!!! いや…だからあれは不可抗力で……」
「……」
隣で一人慌てる様子のリトにチラリと視線を送ると、唯はぽそっと呟いた
「…冗談よ。言ったでしょ? 今日は許してあげるって?」
「へ? あ…そーいえばそんな事…」
「だからって次したら許さないんだからね?」
「は…はは…」
少しトゲのあるその声にリトの頬がわずかに引きつる
「……でもありがと…」
「え…」
「…助けてくれて……」
小さいとても小さい呟きだったが、確かにリトの耳にその声は届いた
唯のうれしそうなやわらかい笑顔と共に
(古手川って…)
一人茫然としているリトの横で唯は急に足を止めた
「もう家すぐそこだから、ココでいいわ」
「え…あ…」
「ん? 何よ? 何か言いたい事でもあるワケ?」
ツンと腰に手を当てて話す唯を前に、リトは自分でもわからずについ慌ててしまう
「そーいう事じゃなくて……あれ? なんだコレ」
「…何なの? あなたさっきから変よ」
「そそ、そーだよな。オレもそう思う……はは」
ますますおかしくなるリトに唯は軽く溜め息を吐くと、少しだけ口調を厳しくさせる
「よくわからないけど、くれぐれもおかしな事とかしないようにね!!」
「わ、わかってるって!」
それでも心配なのかしばらくリトの顔を見つめた後、唯はくるりと背を向けた
「それじゃ、もう行くわ…」
「あ、ああ」
「今日はいろいろありがと結城くん」
「気にすンなって」
ニカっと子供の様に笑うリトにふっと笑みがこぼれてしまう
「また学校でな」
「うん…」
いつもとは違う唯の口調にリトは気付かない
そしてそれは唯自身も気付いていなかった
自分の中の何かが大きくなっている事に
しばらく進んだ後、唯はチラリと後ろを振り返った
後ろではリトがまだ別れた場所で立っている
立ち止まった自分に首を傾げているも、本当に最後まで見ていてくれるつもりの様だ
(ちゃんと守ってくれてるんだ)
唯の中でリトへの想いが大きく動き始めた
遠く遠く、唯の背中が見えなくなるまで見送ったリト
「なんつーか…」
今日一日でいろんな唯の表情や仕草を見た事にリトの中で軽い衝撃が起きていた
「古手川ってあんな風に笑うんだ…」
その中でも一番の衝撃にリトは想いを巡らせる
「……また見れるといいんだけどなァ」
リトは最後にもう一度、唯の帰って行った方向に目を向けると、夕暮れの中、家路に付いた
────…チクタク チクタク と、時計の針は進んでいく
日曜日の昼過ぎ
唯は一人街の中を歩いていた
とくにどこに行こうとか、なにか買いに行こうとか、そういうわけでなく
純粋にいろんなところを歩いて見て回るだけ
気に入った店のウインドウを覗いたり、かわいい小物があれば手に取ってみたり
新しい店のケーキを食べたり、そして、時にはおもちゃ屋さんに入ったりと
普段いろんなものに縛られている唯にとって、このなんでもない自由な時間は、
一種の心のリフレッシュにもなっていた
今日は日曜ということもあり、街はいつも以上の人で溢れている
人ごみを掻きわけて一人どんどん進んでいく唯の傍らを、何組ものカップルが通り過ぎて行く
ふと目をそらせば、店先やカフェで仲良く談笑している姿
腕や手を取り合いながら少し誇らしげに歩く姿
いつもなら特になんとも思わないその光景が今日は違って見える
いつもならさざ波一つ立たない鋼鉄の心に、今日は小さな波が立っていた
「…………」
普段、学校でも休みの日でも一人の時間が圧倒的に多い唯にとって、今日も「普通の日」なはずだった
けれど、一度揺れてしまった心は、容易に唯の中にある気持ちを抱かせる
それは周りと自分との違い
日曜だというのに、朝から勉強して本を読んで掃除をしてそれから────……
周りを見れば、どこに行くのか決めている友達同士の会話や、
見終わった映画の感想なんかを言っているカップルの姿が、すぐに見てとれる
遊び友達や彼氏がいるわけではない唯にとって、それは、今は届かない日常なのかもしれない
(彼氏か…)
唯だって女の子。そりゃ恋愛に興味がないといえばウソになる
小さいころからずっと夢見てきた自分だけの理想ももちろんある
時々、うらやましいとか思っちゃう事だってあったりする
でも、しかし────
(ダメよ! ダメ! 恋愛なんてハレンチだわっ)
拳を握りしめてそう強く思う唯
いつもの性格が災いして、せっかくの大切な気持ちに蓋をしてしまう
(だいたい、高校生なんだから、学生は学生らしく勉学に励むのが基本なのよ!)
人と接する時以上に、自分の気持ちに対して一番不器用になってしまう唯
手を伸ばせばすぐにでも触れられるその「想い」
唯にはまだソレが見えていなかった
そんな自分に心のどこかで囁き声が聞こえてくる
違う。本当は何度も見えていたし、何度も触れそうになった
でも見なかった……触らなかった……
いつも想ってる人がいるはずなのに
どうしてなの?
…………
………
……
…
考えれば考えるほど答えの出ない謎かけの様な問題に、胸のあたりがモヤモヤする
(もう! いい加減にしてよ! 何なのよコレは)
思わず腕を振り上げたくなる衝動をぐっと我慢する唯の目に、あるコンビニが映った
(あのコンビニって…)
思い出すよりも早く唯の胸がキュンと震えた
(やだ…何よコレっ)
唯の意思とは無関係に高鳴る胸の鼓動
ほんのりと熱くなる頬の感触
唯は心の囁きそのままにじっとそのコンビニを見続けた
「あっ、そっか。あのコンビニって…」
ソレを意識した瞬間、トクン、と何かが音を立てた
そしてまるでスイッチが入ったかのように、唯の中でちょうど一週間前の出来事が溢れ出す
『やめろ!!! そのコを離せ――――ッ!!』
トクン!
『古手川、こっち』
トクン!!
『大丈夫か!?』
トクン!!!
思い出す数だけ胸がキュンと震える
そして、自分でも知らぬ間に唯の顔は赤く染まっていった
(あの時、結城くん…すごく必死な顔してたな…)
唯の胸の奥がトクンと音を立て、顔に赤みが増す
(…それから私の手をギュッと握ってくれて、一生懸命走ってくれて、守ってくれて…)
自然とやわらかい笑みが生まれる
(結城くん…)
唯は心の中で何度もその名を反芻させる
握ってもらった手をもう片方の手で包みながら、唯はしばらくそのコンビニの前でボーっとなってしまっていた
どれだけそうしていたのか、ふいに吹いた風に巻き上げられた髪に唯はハッと我に返る
(何やってたのよ私は)
頭をブンブン振って慌てて表情を引き締めるも、胸のドキドキは一向に収まらない
(うぅ…もぉ! 私どうしちゃったのよ!? こんなのハレンチだわ)
自分の中の正体不明の感情に唯は戸惑ってしまう
髪を整えながら必死で自分を落ち着かせようと頭を巡らせる
中々落ち着いてくれない自分の気持ちにイライラしながら、唯は普段自分が一番落ち着ける場所等を思い浮かべた
「とりあえず本屋で本でも見てそれから…」
次第にいつもの毅然とした面持ちを取り戻し始めた唯の足はすでに本屋に向かって歩き始めていた
「あれ? 古手川!?」
「ゆ、結城くん!?」
本屋の真ん中でばったりと会った二人。思わぬ出会いに思わず立ち止まってしまう
「どうしてあなたがここにいるの?」
「え! どーしてって本買いに来ただけなんだけど…」
唯はリトが手に持っている数冊の本に視線を落とした
「どーせマンガとかそんなのばかりなんでしょ?」
「ち、違うって! オレは美柑に頼まれたのを…って、古手川こそ何買いにきたんだよ?」
心外だとばかりにムッとするリトに対し、唯も負けじと顔をふいっと背ける
「私はね、参考書を買いに来たのよ! 家で勉強するために必要でしょ?」
相変わらず真面目だなァと思いながら、リトは、へ〜と気のない返事を返す
「それで、その本はあったのかよ?」
「え…」
唯の表情が曇る
本屋に来てかれこれ30分以上。いろいろと探し回ったけど目当ての本は今だ見つからず
そんな唯の反応に、リトは参考書のある棚に視線を向けた
平積みになった分厚い本に、びっしりと棚に並べられた様々な科目の本
見ているだけで頭がクラクラとしてくる
「で、古手川の欲しいのってどれ? オレも一緒に探すよ」
「え?」
唯はポカンとリトの横顔を見つめた
「げ…現代法学入門って本なんだけど…で、でも、あなたには関係…」
「だってお前困ってるんだろ? え……っと、にしてもすげー本だなァ」
まるで当然の事の様に棚に向き直るリトのその横顔を唯はついつい見つめてしまう
また胸がキュンと締め付けられた
(………………っ!!? わ、私、何見とれて…)
とっさに視線をそらしてしまうが、少しするとまた横顔を見つめてしまう
(もう、私いったいどーしちゃったのよっ!?)
自分でもよくわからない感情に、唯は戸惑ってしまう
「古手川」
「へ!!?」
急に名前を呼ばれた唯は、つい素っ頓狂な声を上げてしまった
「へ、じゃなくてさ。お前も探せよな…」
「え、ええそうね…。ごめんなさい」
唯は素直にそう謝ると、リトに並んで参考書を探し始める
胸はまだドキドキと高鳴ったままだった
それから十数分あまり
「はぁ〜、見つからないわね…」
一人肩を落とす唯に、リトも隣で溜め息を吐いた
「…これだけ探しても見つからないってコトは、やっぱないんじゃねーか?
ん〜…違う本屋行くか? ちょっと離れたトコにもっと大きい店あるだろ?」
唯は少し考えると首をコクンと振った
「ん〜、そうね。そうするわ」
「じゃあ古手川、店の前で待っててくれよ。オレ、レジ済ませてくるからさ」
「え?」
唯はびっくりして目を丸くする
「え…も、もしかして結城くんも来るの?」
「ここまで来たら最後まで付き合うって! それに一人より二人の方が探しやすいだろ?」
「そ、それは…」
確かにその通りなのだが、これ以上リトに迷惑は掛けられない。そう思った唯は、
断ろうと声を出そうとするが、できなかった
──甘えてもいいの?──
と、心のどこかでそんな声がした
リトは、嫌な顔一つしていない。そればかりか返事を待っていてくれている様だ
唯は思い切ってお願いしてみる
「じゃ、じゃあ私、お店の前で待ってるから、結城くん早くきてね」
「おう」
リトはにっこり笑うとレジに向かった
「…っかしいなー…全然見つからねぇ」
リトは溜め息を吐きながら隣にいる唯に話しかける
「そっちはどーだった?」
「ダメ…見つからない」
ガックリと肩を落とすリトの横で、なぜだか唯だけは一人上機嫌だった
その顔もどこかいつもよりやわらかい
「さっき店員にも聞いたんだけどさ、ちょっとわからないとか言うんだよなァ…
そんなのどーしろって言うんだよ!?」
「ブツブツ文句言わないの! そんなコト言っても仕方ないでしょ?」
「そりゃそーだけど…」
リトは隣で本をぱらぱらと捲っている唯になにげなく視線を向ける
その視線に気付いたのか、唯は目だけリトの方に向けた
「なに?」
「いや…なんか古手川が一人で楽しそうな顔してるからさ」
とたんに唯の顔が赤く染まる
「なんかイイ事でもあったのかなって」
「そ、そんな事ないわよ!! 私はただ……そ、そうよ! 本が好きだから、本を見るのが好きだから! それでよ!」
一人慌てる唯の顔をまじまじと見つめるリト
「へ〜本が好きってなんか古手川らしいなァ。それになんか新鮮な感じがする! 古手川のうれしそうな顔って」
にっこり笑いながらそう話すリトに、唯の顔は火が噴いた様に真っ赤に染まる
「な!! な、なに変なコト言ってるのよッ」
急に怒り出す唯にリトはとっさに何度も謝った
「わわ、悪かったよ! でもそんなつもりで言ったワケじゃ…」
(もぉ、こんなところでいきなりなに言い出すのよ! バカ)
顔を真っ赤にする唯と、そんな唯にどこか納得のいかないリト
二人はその後も、いろいろ言い合いながらも本を探し続けた
「ここにもねェな…」
「そうね…」
結局、参考書は見つからず、疲労感だけが増しただけだった
棚から参考書を取り出す唯にリトはぽつりと呟く
「ここにもないってコトは、ほか探してもないんじゃねーか……?」
(え――──!?)
唯の手が止まった
「だって、この辺じゃ一番でかいトコなのにさ、ここにないってコトは…」
「そ、そんなコトないわよ!!」
思わず出てしまった大きな声に、リトばかりじゃなく周りの客達も反応する
「え、えっと……そうじゃなくて、私の探してる本は数が少ないみたいだから…だから……」
恥ずかしそうにぽそぽそと話し始める唯に、リトは笑みを浮かべる
「そーだな! じゃあ他も探してみるか」
屈託なく笑うリトの顔に唯も安心したのか、口からホっと溜め息がもれる
「ん? どーしたんだよ?」
「何が?」
リトの質問に怪訝な顔をする唯
「だって、本が見つからなかったのになんかホっとしてるみたいだからさ」
「!!?」
唯の心臓がドキリと音を立てる
「それでなんか…」
「そ、そんなわけないでしょ! なに変な勘違いしてるのよ! まったく…」
唯はツンとリトから顔を背けると、そのまま店から出て行ってしまった
「何なんだ? オレなんか悪いコト言ったっけ…?」
「もう! 早く行くわよ結城くん!!」
店の入口では唯が腰に手を当てて、リトを待っている
その姿に、リトは慌てて入口へと向かった
結局、あれから3、4軒店を回ったのだが本は見つからず
二人は今、小さなカフェでお茶をしていた
「…にしても見つからねえなァ」
紅茶を飲みながら、カップに向かって愚痴るリト
その目の前には、ケーキをおいしそうに食る、どこかウキウキと楽しそうな唯がいる
そんな唯の様子に、スプーンで紅茶を掻き混ぜつつリトは口を開いた
「なあ、ひょっとして古手川ってケーキとか好き?」
「え!?」
急に話しをフラれた唯は、びっくりしたのか顔を赤くさせた
「ど、どうしてそんなコト聞くのよ?」
「いやだって…」
リトの視線の先には、お皿にいくつも盛られたケーキやデザート
『スイーツが食べ放題』の垂れ幕に、唯の顔つきが変わった理由がわかった気がした
リトの視線に何を感じたのか、唯は言いにくそうにもごもごと小さくなる
「べ、別にキライってわけじゃなくて……。い、良いでしょ別にっ!!」
頬を膨らませながらも、白桃のタルトを口に運ぶ唯にリトは吹き出してしまう
「な!! どうして笑うのよ!! 私だって…」
「いやそーじゃなくて! 古手川がすげーおいしそうに食べるからさ。ホントに好きなんだなァって」
「う…うん」
コクンとうなずく唯にリトはにっこりと微笑む
「古手川も女の子なんだ」
「…それどういう意味?」
じと〜っと睨む唯に、リトは慌てて言い訳を始める
「そ、そーいうコトじゃなくて! えっと、古手川のそんなところ見れてうれしいって言うかその…」
「え…」
唯の胸がまたまたキュンと締め付けられる
「な、何よいきなり……。そ、そんなコト言っても誤魔化されないからね!!」
「そ、そーじゃなくて! えっと…な、なんか良いなって思ってさ! その…古手川のそーゆうトコ」
唯の顔がますます赤くなっていく
「ホラ、古手川っていつも肩に力入れてる感じがするからさ。普段は見れない古手川を見れてうれしいっていうかさ…」
唯はリトの顔を見つめたまま固まっていた
頭がぼーっとして、でもはっきりとリトの声は聞こえていて
今だって本が見つからなくて、歩いて疲れているはずなのに
リトといるだけで、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう
一緒に話しているだけで、うれしくて、楽しくて
トクン、トクンと、規則正しい鼓動は唯の心を締め付ける
けれど、不思議と苦しみはなかった
どこか、あったかいような、くすぐったいような不思議な感触
「へ、変なコトいわないのっ! もぉ…」
だから、これだけ言うのが精一杯
そんな唯の気持ちに全然気付いた様子のないリトは、一人困ったように眉を寄せる
「わ、悪かったって! だからそんなに怒んなよな」
「別に怒ってるワケじゃ…」
ブルーベリーと木苺のフランボワーズムースを口に運びながら、もごもごと話す唯
学校で見る姿とのギャップに戸惑いつつも、リトはようやく落ち着いた事態に安堵の溜め息を漏らした
「それで、この後どーする?」
「え?」
唯はスプーンでミルクプリンを掬いながらキョトンとした顔をリトに向けた
「この後だよ。ココ出た後の予定」
意味はわかる。だけど唯は応えられず、スプーンを口に入れたまま黙ってしまった
もともと今日は気分転換に外に出かけただけなのに、本屋でリトと会い、本を探すため本屋を歩き回り
そして、今、カフェでお茶をしている
(この後って…)
唯は何も考えてはいなかった
「古手川はなんかないのか?」
応えられない。そればかりかうまく考えることもできない
急に夢から覚めたような感覚に唯の思考は停止寸前になっていた
「ん〜…、古手川がなにもないなら……」
──もうこれで終わりなの――?
唯はテーブルの下で手を握り締めた
──これで終わりたくなんかない――
と、心のどこかでそう囁くもう一人の自分がいる
唯はその囁きに気持ちを委ねようと思った
理由はわからない
でもそうしなければいけない様な気がした
「あ、あのね…」
最大限の勇気を振り絞って口を開きかけた時、リトの声がそれを遮る
「あのさ、オレ行きたいトコあるんだけど、いいかな?」
「……」
「あれ? 古手川?」
怪訝な顔をするリトに、唯はムスッとした顔を向ける
「ど、どうして私の許可がいるのよ!? だいたい、行きたいところがあるなら先に言いなさいよね! おかげで私…私…」
急に言葉に詰まる唯を、リトはますます怪訝な顔をして見つめる
唯の顔は真っ赤になっていた
(な、なに考えてたのよ私はっ! これじゃまるで…)
唯は赤くなりながらもチラチラとリトの様子を窺う
「ん?」
一人意味のわからないリトに唯は顔を背けると、そのまま席を立った
「と、とにかく早く行くわよ。ここにいたってなんにもならないんだし」
いそいそと店を出て行く唯の背中を慌てて追うリト
結局、いつの間にか「今日一日一緒にいる事」前提で会話をしている事に、二人は気付いた様子はなかった
「え? ゲーム?」
「そ! 今日ほしいゲームの発売日でさ。古手川はゲーム……しないよなァ…」
当たり前でしょと顔をふいっと背ける唯
けれど、本当のところ、昔はゲームは何度もしたことがあった
遊とよく対戦ゲームをしたり、遊に負けないように練習したり
お互い負けず嫌いなため、何度も繰り返し遊んだ
今でも時々ゲームをする遊の横でぼーっと見ていたりもする
(ホント、男子ってゲームとか好きよね)
隣でワクワクと顔を輝かせているリトの横顔に唯はそう呟いた
「ありがとうございましたー!!」
店から出た二人は、どこに行くでもなく外を歩いていた
「悪いな古手川。オレの買い物に付き合わせてさ」
「別にいいわよ。それより結城くん、ゲームばっかりしないでちゃんと勉強しなきゃダメよ!
あなた最近成績下がってるんじゃないの?」
まさかこんなところで成績の話をされると思ってなかったリトは、苦い顔をする
「この前も赤点取って追試受けてたでしょ?」
小さく呻くが、図星なためなにも言い返せない
「それも数学だけじゃなくて、ほかの科目でも!」
「ま、まーそうだけどさ…よく知ってるなァ」
「風紀委員として当然よ!」
よくわからない答えを返す唯は、ふいっとリトから視線を背けた
その時、ある物に目が留まる
前編終わり
今回も少し長いです
中編は明日投下したいと思います
GJ!中編を楽しみにしてます!
>>285 ララとリトが結婚しちゃダメって理由がわからん
お前の願望じゃないのか
>>304 GJ。・・・ってこれ前編なのに長いなあw
>>304 GJ。
前編お疲れ様です この調子で中編、後編もがんばってください!
楽しみにしてます。
gj
この長さがたまらん。
がんばってくだせえ
「リトと唯」の人、最初から読んでるけど、確実にうまくなってるよね?
なんというか他の職人さんとうまく影響しあってるというかさ
とにかく中編以降にも期待!
リコ猿SSまだー?
「ん? どーしたんだ?」
「え? べ、別になにも…」
リトは唯の視線の先を目で追っていく。すると――――
「へ〜、ああいうのしたいんだ?」
今度は唯が小さく呻いた
リトの視線の先にあるのは、ゲームセンターの入口に設置されたUFOキャッチャー
「いいじゃん! やっていけば?」
「ち、違…私は別にあんな物…」
「まーいいじゃん。ちょっと行ってみよ?」
「え、え…ちょ……結城くん!?」
リトは言いよどんでいる唯を連れてUFOキャッチャーに向かった
ケースの中には、イヌやネコといった動物のぬいぐるみがいっぱい入っている
「かわいいなァ、ホラあのネコとかさ」
「う、うん。ちょっとかわいいかも…」
間近で見るかわいいネコのぬいぐるみに、唯の胸がときめく
そんな唯の横顔を見ながらリトはふっと笑みを浮かべた
「…ったく、しょうがねーなー」
「え?」
「オレが取ってやるよ。得意なんだこーゆうの! で、どれが欲しい?」
「で、でも…」
「任せとけって!」
唯は言葉に詰まってしまった
(そ、そんな……いきなりそんな事いわれても…)
目の前にはつぶらな瞳で見つめてくる動物達。この中からどれか一つなんてとても選べない
じーっとケースの中を凝視する唯の横顔に、リトは笑みをこぼす
「にしても、古手川ってぬいぐるみとか好きだったんだな」
「え!?」
びっくりした唯は慌ててケースから視線を逸らす
「ち、違うわ! わ、私は別に…あ、あなたがどれか選べなんて言うから私はっ」
「わ、わかったから! それで、どれか決まったのかよ?」
赤くなった顔を隠すようにリトから体を背けると、唯はケースの中の一体のぬいぐるみを指差した
それは、さっきリトがかわいいと言ったネコのぬいぐるみ
リトは一つ気合を入れると、ボタンに手を乗せる
「よ〜し…」
クレーンとぬいぐるみの位置を測るリトの横顔を唯はチラリと覗き見る
ボタンを慎重に操作するリトは真剣そのものだ
(そんなに真剣にならなくても…)
しばらくその横顔を見つめていると、機械の中からガタンと音が聞こえた
リトはしゃがみこんで中からぬいぐるみを取り出すと、それを唯に差し出す
「ホラ、これでよかったんだろ?」
「あ、ありがと」
少し戸惑いがちにぬいぐるみを受け取る唯に、リトは笑った
ニッと歯を見せて笑うリトは、まだあどけない少年の様な顔つきで
さっきまでのあの真剣な顔付きとのギャップに、唯は目を丸くした
「なんだよ?」
「べ、別になにもないわ…。ただ、こういうヘンに細かい事だけは得意なんだって思っただけよ」
「なんだよそれ…」
げんなりとするリトから体を背けると、唯はぬいぐるみをそっと胸に抱きしめた
(結城くんってホントにいろんな顔をする…)
それから二人は――――
サッカーショップのサッカー中継で
「おお、すげー! やっぱジェラードっていつまで経ってもカッコいいよなー! 昔はオーエンとかも好きだったけどやっぱ…」
(…サッカー? 結城くんってサッカー好きなんだ!)
アイスクリームショップで
「お前さっき食べたばっかじゃん。まだ食べるのかよ…」
「う、うるさいわね! 歩いたらお腹がすいたのよっ」
ネイルサロンのウインドウで
「あ、タミーテイラーのキューティクルオイル! 新しいの出たんだ…」
「タ、タミ…キューテ? へ?」
「キューティクルオイル! 爪のお手入れに使うのよ」
「へ〜」
そして時刻は夕方を回り、夕暮れの公園
二人はブランコに乗りながらぼーっとしていた。どちらもなにも話さない
それでも、特に居心地が悪いワケでも、雰囲気が悪いワケでもない
なにも話さないけれど、窮屈じゃない、息苦しいとは感じない
こんな時間すら楽しいと思えるそんな気分
黄昏色に染まりながら、やがて、リトがぽつりと呟く
「なあ古手川」
「ん?」
唯は俯いていた顔を上げて、リトの方を向く。リトの顔は夕日に照らされて赤くなっていた
「オレさ…今日こうやってお前と一緒にいろんなトコに行けて楽しかった」
「な、なによ…いきなり……」
ポっと赤くなる顔を隠す様に俯く唯
「古手川の新しい部分っていうかさ…。うまく言えないけど、ホントの古手川が見れたって言うかさ」
「……」
「とにかく、今日お前とこうやっていれたコトがすげーうれしかったんだ」
唯は俯いたまま黙ってリトの話を聞いている
「だからさ、もしよかったらまた…」
と、その時、話しの途中でリトのケータイが鳴り出した
「あっと、ゴメン…」
リトは後ろポケットからケータイを取り出すと耳に当てた
「はいもしも…」
『なにやってるのよ!!?』
「わっ!!」
受話口の向こうから聞こえる大声に、リトは思わずケータイを耳から離す
「み、美柑!? なんだよ?」
『なんだよ? じゃないよ!! あんたどこまで行ってるのよ? 私の本は?
買い物は? 今日の晩ゴハンどーする気なの?』
あっと言葉に詰まるリト
『なにしてるのか知らないけどさ、今すぐ帰ってこないと晩ゴハンなしだからね!!』
ブチっと電話を切った美柑の様子に、リトは慌ててブランコから飛び降りた
「ヤバっ! オレ買い物の途中だったんだ」
今度は唯がびっくりしてブランコから降りる
「ええ! 何してるのよ!? って、そっか…私のせいで…」
「別に古手川のせいじゃないって! オレが勝手にやったことだしさ! だから気にすんなって、な?」
心配ないよと笑うリトに唯は俯いていた顔を上げた
「でも、ホントに大丈夫なの?」
「まあ……ウチ帰ってご機嫌取りしないとダメかもしれないけどな」
冗談っぽく笑うリトに唯もつられてクスっと笑った
(あ…やっぱ古手川って…)
その小さな笑顔にリトは一瞬見とれてしまう
「どうしたの?」
「べ、別になにも…」
愛想笑いをしながら、リトは赤くなった顔を隠した
「じゃ、じゃあオレ帰るな。古手川はどーする?」
「私は…」
唯は何も言えなくなってしまった。当たり前とはいえ、いつかは来る別れの時
あまりにも楽しすぎて、もっと一緒にいたいと思ってしまって
けれど、これ以上わがままを言えるはずもなくて
唯はリトから顔を背けた
「わ、私も今から帰るわ。というか、別に私の心配なんてしなくても平気よ!」
「そっか」
「う、うん」
どこか歯切れの悪い唯にリトはクスっと笑いかけた
「あのさ、今日こんな感じで終わっちゃったけど、オレ、またお前と一緒に遊べたらなって思ってる」
「え?」
「えっと……と、とにかく気をつけて帰れよ! また明日な古手川」
そう言い残し、リトはその場から走り去って行った
その背中を見ながら唯はムッと頬を膨らませる
「もう……なんなのよ!? 言いたいことがあるならもっと…もっと…」
『今日こうやってお前と一緒に色んなところに行けて楽しかった』
『今日お前とこうやっていれたコトがすげーうれしかったんだ』
『また明日な古手川』
リトの言葉を思い出している内、いつの間にか赤くなっている顔に高鳴っている胸
「また明日…か」
唯はリトから貰ったぬいぐるみを胸に抱きしめると、誰にも見せたことのない笑顔を浮かべ、公園を後にした
ぬいぐるみを抱え、意気揚々と帰宅した唯を待っていたのは、玄関先でイチャつく二人の影
「ん…ユウちゃ、ンッ…あ…ぁ」
大学生ぐらいの女を抱きしめながら、その体に手を這わせる遊
「な、な、な、何をやって…」
唯は二人の淫らな姿に顔を真っ赤にして絶句する
「ん…ちゅぱ、んッん…ぷはぁ」
糸を引かせながら唇を離すと遊は、手を振ってその女を見送った
名残惜しげに遊を振り返りながら唯の横を通り過ぎていく遊の彼女
唯は肩をぷるぷる震わすと、欠伸をしながら家に入っていく遊に詰め寄る
「ちょっとお兄ちゃん!!」
「あぁー?」
めんどくさそうに振り返る遊をキッと睨みつける唯
「家の前であんなコトするのやめてよっ!!」
「…別にいいじゃねーか。玄関なんだから」
「ダメに決まってるでしょ! あんなハレンチなこと!!」
遊は溜め息を吐くと、頭を掻きながら家の中に入っていく
「ちっ。相変わらずおカタイこって。そんなんじゃいつまでたっても男なんてできねーぜ」
「なっ!? 何言ってんのよ! そんなの…そん…なの……」
いつもの様にうるさい声が飛んでくると思っていた遊は、どんどん小さくなる唯の声に振り返った
「…そんなの…」
一人赤くなった顔を俯かせている唯の姿に、遊はニヤニヤと顔を歪ませる
「へ〜、大好きな彼氏となんかいーコトでもあったのか? カワイイのもらってるじゃん?」
「ゆ、結城くんは彼氏とかそんなんじゃないわよっ!!」
遊は唯の言葉に笑みを深くした
「オレ、『ゆうきくん』なんて一言も言ってないけど?」
唯はもう声にならないのか、口をぱくぱくさせながら遊に何も言い返せないでいた
その様子に遊はお腹を抱えて笑う
「もう!! お兄ちゃんなんて知らないからっ!!」
そう言い残し、唯は家の中に入っていった
唯は部屋に戻るなりベッドの上に寝転がった。その顔は不機嫌そのものだ
「まったく何考えてるのよ! お兄ちゃんはっ!!」
遊のニヤニヤした顔や態度を思い出すだけで、イライラしてくる
おまけにあの言葉
『相変わらずおカタイこって。そんなんじゃいつまでたっても男なんてできねーぜ』
大きなお世話だと思った
「そうよ! そんなのいらないわよっ!!」
いつか学校でも言われた言葉
『あなた…恋をしたことがないんじゃなくて?』
そんなコトは不純だと思った
「恋愛なんて……ハレンチよ…」
けれど――――
今日感じたコト、最近つい意識しちゃうコト
ぼーっと今日一日の出来事を思い返していると、枕の隣に置いたネコのぬいぐるみと目が合った
唯はぬいぐるみを両手で持つと、お腹の上に乗せる
「結城くん…」
唯は小さくリトの名前を呟くと、そっとぬいぐるみを両手で抱きしめた
そうしているとなんだか落ち着く
胸の奥にある不思議な感覚に唯の表情もやわらかくなる
そっと胸に手を当てると、トクン、トクンと胸の鼓動が伝わる
心地いいような、あったかいような、そんな感覚
「結城くん……」
自然と頭に浮かぶリトの顔に赤くなる頬
もう一度名前を呼んでみる、もう一度…もう一度……
何度かリトの名前を呟いた時、一階から自分を呼ぶ遊の声に、唯はハッとなった
「何やってるのよ…私…」
急いでベッドから起き上がると、唯はさっきまでの感情を胸の奥に押し込み、一階へと下りていった
それからしばらくして
唯はお風呂からあがると、髪が乾かない内にダッカールピンで髪を留めて、いつもの様にタオルドライをしていく
唯は髪の手入れが好きだった
特に誰に褒められたワケでも、誰に勧められたワケでもないのだが
それでも、雑誌で髪の美容の勉強をし、自分でもいろいろ調べてそれを実践したり
そんな時間が好きだった
どこか気持ちが安らぎ、楽しさとうれしさに小さな想いが生まれる
それはほんの小さな小さな想い
いつか誰かに褒められたり頭を撫でられたりしたいな
そんなほのかな想いを抱いたりしていた
結城くん、今頃なにしてるのかな――――?
髪にトリートメントを馴染ませながらふと想うのはリトのコトだ
自分の髪や容姿に自信があるワケじゃない
それでも最近は特に念入りにお風呂で体を洗い、髪の手入れの時間も知らず知らずの内に長くなっている
本当にどうしちゃったんだろう? 私――――
鏡の中の自分に溜め息を吐くと、唯はドライヤーのスイッチを切りベッドに寝転がった
「明日はまたどんなコトをして私を困らせてくれるの? 結城くん…」
枕の横にあるネコのぬいぐるみの頭を撫でながらそう呟くと、唯はゆっくり目を閉じた
翌日の学校
相変わらずリトはララと休み時間一緒にいる
聞けば、二人は同棲してると言うではないか
リトの話によると、ララは宇宙人で自分の家に居候してるというコトらしいが……
頭では理解できても色々と納得できない部分がある
それに――――
仲良く話す二人を見ていると、どういうワケかチクリと胸の奥が痛む
別にハレンチはコトを、なにか問題を起こしてるワケでもないのに
面倒くさそうに、溜め息を吐きながら、それでも楽しそうに話すリトの横顔に
(なんなのよ…コレは…)
本を読むフリをしながら、唯はそんなリトの様子をチラチラと見ていた
一緒のクラスになってから数ヶ月、日に日に印象が変わっていく結城リトという存在
今でも問題児には変わらない
それでも、自分の気付かない部分で、自分の見えないところで、唯の中のリトの存在は大きくなっていた
仲良さそうに話す二人に胸がキュッと締め付けられる
ララに向けられる笑顔がうらやましいと感じてしまう
(…何考えてるのよ私は…)
唯はパタンと本を閉じると、次の授業の用意を始めた
6時間目の授業は体育
男子はサッカー、女子は走り幅跳び
時折、こっちをチラチラと盗み見てくる男子の視線を気にするクラスメイトの中で、
唯はひとりぼーっとリトのコトを見つめていた
ボールを胸でトラップして、フェイントを入れて一瞬で相手を抜き去る
(カッコイイ…かも…)
素直にそう感じてしまう。リトのいつもとは少し違う真剣な顔つき
相手を抜き去る時や、うまくクロスを上げた時に見せる笑顔
それは高校生というよりまだ少年の様なあどけない顔
(あんな顔するんだ…)
リトは小柄な体型を生かして、ドリブルで何人も抜き去っていく
と、逆サイドにパスを送ろうとした瞬間、バランスを崩して見当違いのところにボールを蹴ってしまう
(何やってるんだか…)
クラスメイトから文句を言われる姿に、唯はクスっと笑ってしまった
「――手川さん、古手川さん!」
「え!?」
自分を呼ぶ声に唯は慌てて振り返る
「次、古手川さんの出番なんだけど」
「え、ええ…」
いつの間にか自分の出番が回ってきたらしく、自分を呼びに来てくれたクラスメイトに、唯は愛想笑いで応える
(もう! しっかりしなさい)
そう呟きながら唯はスタートラインに立つと、少し深呼吸をして走り出した
少しすると後ろの方でなにやら男子生徒の騒ぐ声が聞こえてきた
気になったが、今はもう止まれない
勢いをつけて高くジャンプした唯は、着地と共に足に付いた砂を手で払い落としていく
その時、ふいに目に入った光景に唯の手が止まった
女子生徒が見つめる先、男子生徒の輪の中に地面に倒れているリトの姿があった
「え…?」
だってさっきまでボールを――――……
頭に浮かぶリトの姿と、現実の姿が重ならない
唯は急いでララのそばに駆け寄る
「何があったの?」
「リト…ボール蹴ってたらぶつかっちゃって……。すごい勢いだったから……大丈夫かな……」
いつもは見せないララの不安げな顔に、唯の顔もくもっていく
「じゃあ、私は結城くんを保健室に連れて行くから後の事は、西連寺」
「はい」
春菜は一歩前に出ると、佐清からこの後の支持を仰ぐ
ただ、その顔は心なしか不安なものになっている
「リト…」
「心配すんなってララ! 大した事ねーって…ちょっとケガしただけだからさ!」
不安いっぱいな様子なララを安心させようと、リトは無理やり笑顔を作る
「…ぁ…の…」
唯は声が出なかった
足から血を流しているリトの姿に、言いたい言葉が山ほどあるはずなのに
声をかけられないでいた
なんて声をかければいいのか一瞬迷ってしまった
(結城くん…)
佐清に付き添われて校舎の中に入っていくリトの痛そうな表情に、ただ胸が締め付けられる
(私は…)
考えるよりも先に、唯の足は自然と動き出していた
「あ! 唯!?」
ララの呼び声も、授業も置き去りにして唯は二人の後を追いかけて行った
唯が保健室に到着すると、リトは一人椅子座っていた
「あれ? 古手川? どーしたんだ?」
肩で息をしながら走ってきた唯にリトはキョトンとした表情で聞いてくる
「え!? わ、私は別にその…」
「え?」
息を整えるようにゆっくり保健室に入ってきた唯は、あさっての方向を見ながら呟く
「あ、あなたがケガをしたって言うから私は…」
「ああ、心配して来てくれたのか? ありがとな古手川!」
ニッコリ笑うリトに唯の顔はとたんに真っ赤に染まる
「か、勘違いしないでっ!! わ、私は風紀委員として来ただけで、別にそんな心配とかじゃないんだから」
突然怒り出す唯にリトは戸惑ってしまう
(なんで怒るんだ? オレなんか変な事いったのか…?)
唯はどこか憮然とした顔でリトの前に座った
「それで……先生は?」
「なんか御門センセー呼びに行ったんだけど戻ってこなくてさ…」
「そう」とだけ返す唯。いつもの様に冷静に見えてもさっきから目が泳いでいる
勢いだけで追いかけてきたため、まだ気持ちの整理ができないでいた
それでも目の前のリトを放って置くなんて事はできるはずもなく
唯は小さく溜め息を付くと、おもむろに立ち上がる
「古手川?」
黙ったまま棚を開けると、唯は中からガーゼや消毒液の入った救急箱を手に、再びリトの前に座る
「足出して」
「へ?」
「私が手当てするって言ってるの!」
リトはいまいち意味を理解できなかったのか、目をぱちぱちさせる
「早くして!」
少しムッとしている唯に、リトは慌てて言われた通りにケガをした足を見せる
ガーゼに消毒液を染み込ませると、唯は小さな声で呟いた
「沁みるからね」
「う…」
少し冷や汗を浮かべるリト。そんなリトにお構いなしに唯は傷口にガーゼを当てた
擦り傷した周りのドロや汚れを落とし、傷口のバイ菌を拭いていく
「……あれ? 痛くない…」
多少の痛みはあるが、思ってた以上どころかほとんど感じない痛みにリトは驚く
「古手川うまいんだなー」
唯が傷口から顔を上げると、そこには、感心したのか驚いているリトの顔があった
「なんか意外だな」
「……それってどういう意味なの?」
少しトゲのある唯の言い方にリトの額に冷や汗が浮かぶ
「え、えっと意外って言ったらアレだけどさ…こんなにうまいだなんて思ってなかったからさ。はは…」
「……ふ〜ん」
「ゴメン…」
シュンとなるリトに唯は俯くと、捻挫して少し腫れている足に湿布を張り、ハサミで包帯を切っていく
「……お兄ちゃ…兄がね…」
「え?」
「兄が小さい頃からよくケガとかして帰ってくるコトが多かったから、私がいつも手当てとかしてたのよ」
「へ〜兄ちゃんいるのか?」
唯はうなずくと切り取った包帯をリトの足に巻いていく
「どんなにケガしても、いくら言っても聞かないんだもの! まったくどこかの誰かと一緒よね」
いつの間にか半眼で見つめてくる唯にリトはバツが悪そうに苦笑いを浮かべた
「…で、でもお前すごいよ」
「そんなコトないわ。だってこんな事、誰にでもできるもの」
「違うって! 手当ては誰でもできるかもしれねーけどさ、それを『いつも』はできないだろ?
それって古手川のやさしさだと思うけどな」
「へ!?」
「古手川みたいにやさしいヤツなら絶対いい彼女になると思うけどな…」
頬を指で掻きながら少し赤くなっているリトに、唯は慌てて視線をそらす
「なな、何言ってるのよ!? そ、そんな事いってもなんにもないからね!」
少し身を捩る唯に何を感じ取ったのか、リトは慌てて弁明を始めた
「ご、誤解だって! オレはそんなつもりで言ったんじゃ…。
お前の話し聞いて、古手川ってすげーやさしいなって言うかえっと…」
あたふたと一人必死なリトに対し、唯はまったく視線を合わせようとしない
(もぅ…どうして結城くんっていつもいきなりドキっとさせるコト言うわけ)
(はぁ〜、また怒らせたし……。そんなつもりじゃないんだけどなァ…)
ムスッと頬を膨らませる唯と、それに溜め息を吐くリト
そんな二人の会話を隠れて聞いている者がいた
「青春ね。二人とも…」
入口横の壁にもたれながらクスっと妖しく笑うと、御門はコーヒーを口にした
教室に戻ってみると、放課後だというのに数人の女子が残って雑談をしていた
「えーマジ!?」
「春菜のお姉ちゃん二人の男に告られたんだァ!!」
「しーっ、声が大きいよ二人とも」
楽しそうに声を弾ませるリサとミオに、春菜は困った様な顔をする
「で、結局どうなったワケ?」
「それが…」
ワイワイと恋愛話しに華を咲かせる三人の横で、唯は一人帰り支度をしていた
机から教科書を取り出しカバンに入れながらも、その表情はいつもと違い、落ち着かないのかそわそわしている
(愛だの恋だの……どうして皆そういう話しが好きなんだか。勉学に励むのが学生のあるべき姿のはずよ…!)
カバンの中身を整えると、ふとリトの机が目に入る
(結城くんの…どうしよ…)
しばらく迷う様に眉を寄せると、唯はリトのカバンを手に教室を出た
保健室に戻りそのドアを開けようとすると、中から明るい声が聞こえてくる
「え? …ララ…さん?」
少し開いたドアの隙間から中を確認すると、思ったとおりそこにはララがいた
「…それでね昨日、妹たちと通信で話したんだよ」
「へぇ…」
「久しぶりだったから、すっごく喜んでねー」
リトの前で身振り手振り、楽しそうにうれしそうに話すララ
声は弾み、笑顔だって全開だ
「またみんなでゲームしたいって言ってたよ♪」
「…そ、それはマジで勘弁してくれ…」
ゲーム世界に行った時の事を思い出してか苦笑いを浮かべるリトだったが、
すぐにその顔がやわらかくなるのは唯の気のせいなのか
(また…私……)
胸の奥がズキズキと痛む
昨日よりも今日の方が、朝よりも夕方の方が、休み時間よりも今の方が、ずっとずっと痛い
「…………」
楽しそうな雰囲気の二人から目を背ける様に、唯は保健室を後にした
「あれ?」
「ん? どーしたのリト?」
「いや…気のせい……だよな?」
誰もいなくなった保健室のドアを見つめながらリトはそう呟いた
夕暮れの廊下を歩きながら唯は浮かない顔をしていた
(私どうしちゃったのよ!?)
頭の中がぐるぐる回って止まらない
そして、その中には常にリトがいて────
(……私…やっぱり結城くんの事が……)
ハッと俯いていた顔を上げると、頭をぶんぶん振りながら慌てて自分の気持ちを否定してしまう
(違う! 違うわ! そんな事あるわけない! 恋愛なんてハレンチなこと私が…)
肩に掛けたリトのカバンがズシリと重く感じる
「…っ…!?」
渡すどころか逃げる様にここまで来てしまった事を唯は悔やんだ
「……はぁ…とりあえず戻らないと。結城くん困ってると思うし…」
そう呟いた時、開放感のある渡り廊下の低い壁に腰かけている一人の女の子が目に留まった
「…!? こんにちは…えっと…ヤミちゃんでいいかな?」
「あなたは…」
読んでいた本からスッと顔を上げたヤミは、唯の顔を見ながら口に手を当てて少し思案顔になる
「コケ…コケ川唯?」
「古手川!!」
若干顔を引きつらせるも無理やり気を取り直すと唯はヤミに話しかけた
「あなたってホント、いつも本読んでるわね」
「地球の文学は面白いものが多いですから」
「そう…」
気のない返事を返す唯から再び視線を本に向けると、ヤミは唄でも歌うかのように本を読み上げていく
「────恋と言うのは突然始まる…」
「え? 何?」
「その時から運命の歯車は回り始める…二人の心は時計の針の如く離れては近づき────やがて重なる…」
「…ぁ……」
ヤミの言葉を聞きながら唯はリトの顔を思い浮かべていた
突然始まる恋
気がつけばいつも想っていて
だけど、中々、言葉にできなくて────……
「い…いきなり何!?」
ヤミはパタンと本を閉じると、表紙を唯に見せた
「『恋する乙女の唄』……今読んでる恋愛小説の一節です」
「恋愛小説…」
「古手川唯。あなたは恋をした事はありますか?」
「え!?」
思ってもいなったヤミの発言に唯はつい声を大きくさせてしまう
「きょ、きょきょ興味ないわよ! なんでそんな事きくの!!」
その漆黒の瞳で唯を見つめながらヤミは、淡々と告げた
「…恋愛という感情……いくら想像しても私にはわからないんです。できることなら知りたい。
何か…とても大切な感情のような気がするから…」
「…ヤミちゃん……」
声こそいつもと同じ淡々としたものだが、その顔には普段は見られない、
寂しさの様なものが浮かんでいる様に唯は感じた
そして────
さっきまで校庭をオレンジ色に染めていた空は、今ではすっかり雲に覆われ、
遠くゴロゴロと不吉な音を鳴らしていた
(大切な感情…か…)
保健室に戻りながら、唯はさきほどのヤミとのやり取りを思い返していた
『古手川唯。あなたは恋をした事はありますか?』
(私は…)
結局、御門は現れず、ララは見たいテレビ番組があるため帰ってしまい、保健室にはリトだけが残っていた
足の調子を確かめるため、何度も足をプラプラと伸ばしたり屈めたり
少しの痛みしか残らない唯の手当てにリトは素直に驚く
「すごいよなァ。意外って言ったらまた怒るんだろーけど…」
リトの中の唯のイメージは様々だ
真面目で勉強熱心。少し堅苦しくて融通が利きにくい
いつも怒ってばかりで、いつもお説教していて
なんだかあまり良いイメージを持っていない事に、リトは苦笑した
だけど、何だかんだと、さっきまでひた向きに手当てをしてくれた唯
リトはガーゼの上を指でなぞっていく
そこには唯のやさしさが詰まっているような気がした
「古手川ってホントはやさしいと思うんだけどなァ」
少し厳しすぎるところや、キツい態度の裏にある唯の本当の姿
リトなりにその事に少なからず気付いていた
「わざわざオレのためにここまで来てくれたんだもんな…」
息を切らせながら保健室へとやってきた唯の姿に、リトの口に笑みがこぼれる
「やっぱ古手川ってカワ…」
「私が何なの?」
いつの間にか入口に立っている唯に、リトはビクっとなる
「お、お前いつからそこにいたんだ!?」
「…ついさっき。何? 私がここにいちゃいけないの?」
「い、いや、そーゆう事じゃなくてさ…はは」
歯切れの悪いリトを無視するように中に入ってくると、唯は持っていた制服を差し出す
「へ?」
「着替え! まさかそのままの格好で帰るつもり?」
「そ、そうだよな! ありがとな古手川」
「別にいいわよこれぐらい」
唯は素っ気なく答えると、入口の方に戻っていく
「あとカバンも。なんだかすごく重いんだけど? 余計な物、持って来てるんじゃないでしょうね?
言っとくけど、マンガとか持って来てたら没収す…」
そう言いながら振り返った唯の体がカチンと固まった
リトは今、上半身裸でシャツを着ようとしている最中だったのだ
「な、な、な…」
みるみる赤くなっていく唯
「え…」
「何考えてるのよ!! ハレンチなっ!!」
リトに背を向けると、唯は真っ赤になりながら逃げるように保健室を飛び出した
「よくわかんねーけど…また怒らしたんだオレ……」
リトは制服を手に一人ガックリと肩を落とした
廊下の壁にもたれながら唯は自分を落ち着かせる
「着替えるなら着替えるって言いなさいよね! もうっ!!」
胸のあたりがやけにドキドキする
(結城くんの裸…)
プールの時や海に行った時に見ているはずなのに
あの時は感じなかった妙な高鳴りに唯は戸惑った
頭にさっき見た光景がチラついて離れない
「ハレンチだわ…私…」
着替え終わったリトが保健室を出ると、入口を出たところで唯が待っていた
「あれ? 帰ったと思ってた…」
「いたら悪いの?」
リトからふいっと顔を背ける唯は、まだ機嫌が悪いようだ
(怒ってる……よなァ)
一人溜め息を吐くリトに、唯はムッとした視線を向ける
「何よ?」
「え!? いや…別に…はは」
愛想笑いをするリトに唯は視線をそらす
「それより早く帰るわよ! 下校時間過ぎちゃうじゃない!」
「え? いいって! オレ一人で帰れるから古手川先帰れよ」
リトの素っ気ない態度に唯は少し頬を膨らませる
(……あれ? オレまた何か余計なこといったのか?)
唯は膨れた顔のままリトに向き直ると早口でまくし立てた
「だ、だって、あなたケガしてるじゃない! 帰り道何かあったらどうする気なの!?
私がいれば何かあった時でも大丈夫でしょ? 私は風紀委員だし、あなたの手当てしたの私だし、
最後までちゃんと責任もたなきゃダメだって思ってるのっ!!」
一息で話し終えた唯にリトはぽかんとした顔になる
「よ、要するに…オレの事が心配……ってこと?」
「ち、違うわ! 責任があるから仕方なく一緒に帰るっていってるでしょ!? 変な勘違いしないでっ」
「で、でもその気持ちがうれしいよ! ありがとな」
「!!?」
ニコっと笑うリトから唯は慌てて顔をそらした
(お、おお、落ち着きなさい! ちょ…ちょっと結城くんが笑っただけじゃない…こ、こんな事で…)
それ以上リトの笑顔を見ていたらどうにかなっちゃいそうなほど唯の顔は赤い
そして、そんな唯の様子を不思議そうに見ていたリトは当然の様に聞いてしまう
「どしたんだ古手川? なんかあったのか? 顔赤くなってぞ」
「な…なな、何でもないわよ!!」
慌てて否定するも、胸の動悸は収まるどころかますます大きくなる
唯は最大限の理性を振り絞ると、なんとか表情をいつもの様に戻そうと気合を入れた
「と…とと、と、ところで……その…ラ、ララさんは?」
「ララ? ララなら先帰ったよ。今日はホラ、マジカルキョーコの放送日だから」
「…ふぅん」
と、何気ない返事をするも唯はハッと気付いてしまう
(!! …って! 何でララさんがいなくてホッとしてるのよ!!)
顔を赤くしながら思い詰める唯。そんな唯の姿はリトから見ると怒っている様に見えるわけで────
(こ…古手川がまた怖い顔してる…オレ、何か怒らせるような事言ったっけ!?)
青い顔をしながら冷や汗を浮かべるリト
どうしていいのかわからない自分の気持ちに、ついジト目になってリトを睨んでしまう唯
そんな二人をよそに空はますますどんよりと黒くなっていく
────チクタク チクタク チクタク
長い針と短い針
二つの針はチクタク チクタクと進んでいく
天気の影響からか、最低限の明かりしかない廊下はいつもよりも薄暗い
いつも見慣れた風景が、今日は少し不気味に見えさえする
「……」
唯は無意識にリトへと体を寄せた
風が窓ガラスを叩く音が、真っ暗な廊下の端が
唯の心をざわつかせる
(怖くない…怖くない…怖くない…)
その時、一際大きな風の音にビクっと体が震えた
思わずリトの制服の裾を握りしめそうになって慌てて手を引っ込める唯
「あのさ…」
「!!?」
突然話しかけるリトに、唯は思わず声を上げそうになってしまう
「な、何?」
努めて冷静に振る舞おうとする唯の気持ちを余所に、リトはまっすぐ前だけを見ている
「今日はありがとな! すげーうれしかった」
「え…ぁ…べ、別に私はその…」
「古手川のおかげで痛みももうないし、ホント、ありがとな!」
リトから顔を背けると、ジッと下を見つめる唯
その顔はほんのりと赤くなっている
(私の…おかげ…)
「これで明日の体育の授業も余裕かな」
「え? …ちょ…調子に乗らないの! それにまだ治ったワケじゃないんだからね?」
「もう大丈夫だって」
下駄箱からクツを出しながら唯はリトを睨んだ
「何言ってるの!? 足の腫れも引いてないのにバカな事いわないで」
「ま、まあ…そーなんだけどさ……はは」
むぅ〜っと睨む唯にリトはたじたじになってしまう
「あ、明日も気をつけるよ」
「……ふん」
唯はリトから顔を背けると、クツを履き替えて校舎から出て行く
その後を追うリト
「うわァ…なんかもう一雨来そうな感じだな」
唯は校庭に出ると、空を見上げた。空はどんよりと雲に覆われている
(…雨、大丈夫よね)
今日の天気予報では雨の心配はないと言っていたのだが
「早く帰りましょ! あなたの家、少し遠いんでしょ?」
「いや、それなんだけどさ…」
「何?」
「先にお前の方、送っていくよ! いろいろ心配だしさ」
「べ、別にいいわよ! 言ったでしょ!? 責任があるって! それにこれぐらい一人で帰れるわ!」
ケガも気になるが、リトに何だか子供扱いされてる様な気がして、唯はムスっと頬を膨らませる
「そーじゃなくて! こんなに遅くなったのオレのせいだし」
「だから別に…」
「古手川女のコじゃん! だからその…何かあったらオレ…」
唯はキョトンとリトを見つめた
リトは頭を掻きながらなんだか言い難そうにしている
(結城くん…私の事…)
うまく言えないし、頼りなさそうだし
だけどそんなリトのやさしさに唯の心は揺れる
少し悩む様に眉を寄せると、くるりとリトに背を向け、唯は淡々と告げた
「…もう遅いし早く帰るわよ!」
「古手川…」
唯はもう歩きだしている
「何してるの? 私の事送ってくれるんじゃなかったの?」
リトは顔をほころばすと、急いで唯の隣に並んだ
帰り道
「…でさ、ララのヤツ言ったんだ…」
隣を歩くリトの会話を唯は浮かない顔で聞いていた
(もう、結城くんさっきからララさんのコトばかりじゃない! ……一緒に住んでるから仕方ないけど
……一緒に、か……)
リトはリトで、さっきから無言の唯との雰囲気を良くしようと必死に会話を続けていた
が、元々女の子とあまり話したことのないリトにとって、それはとても難しいことであり────
(ダメだ…全然話しが見つからねー…)
二人は互いを思いながら、同時に溜め息を吐いた
そして、しばらく会話が途切れた
「……」
「……」
「…足、大丈夫なの? 痛くない?」
「え? あ、ああ。全然平気! お前のおかげだよ」
「そう。ならいいんだけど。…あまりムチャしないでよね」
「へ?」
「そ、その…ほら、授業に支障があるし、他の先生にも迷惑になるし…」
リトは唯の横顔をチラリと見た
目は泳いでいるし、何だか頬も少し赤い
いつもはハキハキと話す唯にしたらめずらしいと感じた
(ひょっとして…ホントにオレのコト心配して…)
都合のいい考えかもしれないが、リトは素直にそう思ってしまう
リトの心がざわざわと揺らめいた
「と、とにかく今度から気をつけて!」
「…そ、それはわかってるけどさ。ケガしたらまた古手川が看てくれる……よな?」
唯の足がピタリと止まる
「だから、保健室で今日だけ特別っていったでしょ!? ちゃんと聞いてたの?」
「聞いたけどさ、その…」
「何よ?」
「さっきも言ったけど、その…お前に看てもらってすげーうれしかったからさ」
唯の顔が薄暗い夕暮れ時でもわかるほど赤く染まる
「そ、そんなコト言われてもなんとも思わないわよ! だ、だいたい、私は仕方なく…」
「それでもうれしかったんだ! それはホントだからさ」
ハニカミながら笑うリトから唯は顔を背けた
「だからまた頼もうと思って…ダメ?」
「……そ、そんなに言うんなら、か、考えてあげてもいいわよ」
「ホントに!?」
顔をほころばせるリトに唯は鋭い視線を送る
「だからってケガしてもいいってワケじゃないんだからね! あなたがケガしたら私はうれしくないわよ…」
どんどん声のトーンが下がる唯
リトがケガをする
どんな小さなケガでも唯にとってそれはすごく辛いこと
「そりゃまァ…」
そんな唯の気持ちにまったく気付かないリトは、頭を掻きながらバツが悪そうな顔をする
「と、とにかく、もうムチャな事も危険な事もしないで! それでももしケガしたら、
その時は……ちゃんと看てあげるから」
「ああ、わかった。ありがとな古手川!」
満面の笑みを浮かべるリトに唯の胸はドキンと音を立てる
リトのその屈託ない笑顔に唯は弱かった
(そんな顔して見ないでよね)
唯はリトから顔を背けた
そんな唯の態度はリトから見れば誤解を招くものであり
(オレ、古手川を怒らせてばかりだなァ…)
リトはガックリと肩を落とした
そしてまた無言の時間が流れる
前はこんな事なかったのに
寄れば触ればどちらも気にせず話せていた。ちゃんと自分の言葉で
だけど最近は違う
相手の事を考えてしまう
相手の事を気にしながら話してしまう
(何なの…これ…?)
(何だよ…これ…?)
お互いの気持ちに触れそうで触れられない
いつまで経っても気持ちが噛み合わない二人
そんなモヤモヤした気持ちの中で会話を探していた時
唯の頬にポトっと水滴が落ちてきた
「え?」
唯は反射的に空を見上げる
空はさっきよりも薄暗くあたりはジメっと湿っている
見上げる空から次第に、ポツリ、ポツリと雨粒が落ちてきた
「雨…か?」
リトも唯と同じように空を見上げた
雨粒は次第に数を増やしていき、みるみる地面を濡らしていく
「ヤバっ!!」
「もう! 何なのいきなり…」
「古手川こっちだ!」
「え…うん!」
雨が降りしきる中、伸ばしたリトの手を唯はとっさに握った
二人は手を繋ぎながらその場から駈け出す
雨はますます勢いを増し、周囲の音をかき消していく
まだ夏服のままの制服は、すぐに水を吸い込みベッタリと肌に張り付く
髪も、体もずぶ濡れになる二人
(もう! 今日はずっと晴れるんじゃなかったの!?)
そう雨空に向かって愚痴りながら、唯はリトの手を握りしめたまま走った
「ふーーっ、ビックリしたァ」
と、溜め息を吐きながら腰を下ろすリト
二人は今、近くの公園にある屋根付きの遊具の中で、雨が通り過ぎるのを待っていた
「夕立みたいだからすぐやむだろ」
「そ…そうね」
どこか曖昧な返事をする唯
雨が降った事よりも、体が濡れた事よりも、リトの声よりも、ずっとずっと気になっている事で頭の中はいっぱいだった
(また…手、握っちゃった…)
求められるままとっさに手を伸ばしてしまった
(あの時の同じ…)
不良達から助けてくれた時と同じ感触
(結城くんの手、あったかい…)
「あ、そーだ古手川…!?」
そう言いながら唯に振り返った時、リトの思考が停止する
(ちょ…制服が濡れて……!!)
雨で濡れたシャツの下から唯の下着が丸見えになっていた
前髪から滴る雨粒や、濡れた肌がより一層、唯を艶美に見せる
思わずボーっとなるリトに唯は顔をくもらせた
「何?」
「い、いや…オ、オレのハンカチ使えよ!!」
「あ…ありがと」
手に取ったハンカチはとてもあったかくてやさしくて、まるでリトの手と同じ感触がした
(優しい…結城くん……)
濡れた肌にハンカチのあたたかい布の感触がやさしく触れる
ハンカチを握りしめる唯の胸にヤミとの会話が蘇る
────その時から運命の歯車は回り始める
私…私は……
二人の心は時計の針の如く離れては近づきやがて────……
私……やっぱりこの人を…
唯の中でカチリと音がした
そして、あったかくて、それでいて熱い感情が胸の中で弾けて広がっていく
唯はチラリとリトの横顔を覗き見た
好きなんだと思った
好きなんだと感じた
気が付けばいつも一緒にいて、いつも想って、そして、いつも心の中にいて
ありふれた感情
だけど一番大切な感情に、唯は生まれて初めて手に触れた
それはキュンと胸を締め付けたかと思うと、とろけるような甘さで胸を包んでいく
(これが…好きになるって事……)
胸の鼓動はなぜか落ち着いていて、トクン、トクンと規則正しく鳴っている
(結城くん…)
そんな唯の心情の変化に気付くわけもなくボーっとしていたリトは、ふいに外の異変に気付くと慌てて唯に体を寄せた
「古手川!!」
「キャ!? ちょっ、ダ…ダメよ結城くんっ、い…いきなりそんな……」
「しっ静かに!!」
リトは顔を寄せると、口に指を当てながら唯の声を封じた
間近に迫るリトに唯の心拍数が跳ね上がる
(そ、そんな事言われたって…こ…心の準備が…)
気持ちは迷い、心はゆらゆらと揺れ動く
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ
と、胸の高鳴りは止まらない
(こ、こんな事いけない事なのに……)
いけないと思いながら、宙を彷徨っていた手は自然とリトの背中に回ってしまう
(結城…くん……私…私────…)
想いを込めてリトの体を抱き寄せようとした時、外から聞き慣れたヤらしい声が聞こえてきた
「るん♪ るん♪ 本屋でステキな本見つけちゃったし、雨でスケスケになった制服見ちゃったし、
雨降ってよかったよかった! さァ、帰って校長室でじっくり本読みましょ」
唯はリトの胸の隙間からチラリと外の様子を窺うと、少し遠くに校長の後ろ姿と、
雨で濡れた制服を着ている彩南高の女子生徒の姿が目に映る
(もしかして…)
胸の中から唯はリトの顔を覗き見る
顔を赤くしながら、それでも腕に力を込め必死に濡れた自分の体を隠してくれているリトの姿
(結城くん……私の体見られない様に守って…)
リトの顔を見つめる目に熱が帯び、頬がぽぉーっと熱くなっていく
(私…また…守ってもらっちゃった…)
あの時と同じ、不良達から助けてくれた時、ゲームの世界で守ってくれた時の様に
いつも助けてくれたり守ってくれた時は、決まってドキドキが止まらなくなってしまう
体は冷たくなっているのに、リトと触れ合っている部分だけは、とてもあったかくて気持ちいい
唯は無意識にリトへ体を寄せた
胸と胸がくっ付き、顔が間近になる
「え…っと、古手…川?」
伏せ眼気味の唯の長い睫毛を雨の滴が濡らしていき、そのまま滑る様に頬を伝うと、口元に入っていく
ゴクリ────と、リトは喉を鳴らした
「結城くん…私…私は……」
熱っぽい唯の声にリトの心臓が警笛を鳴らす
リトは反射的に唯の体を離してしまった
「え……」
「な、何とかやり過ごしたな」
「…あ…あの…」
「い…いや〜…今の古手川の姿を校長に見られたらどうなる事かとヒヤヒヤしたぜ!!……はは…」
まるで誤魔化す様に愛想笑いを浮かべるリトに、唯はキョトンとした顔を向ける
「結城…くん?」
じっと見つめるその視線はリトに何かを求める様な、リトの心の中に触れる様なそんな感触がした
リトはとっさに思ってもいない言葉を口に出してしまう
「え…えっと……そ、その、変な勘違いつーか…ホ、ホラ、古手川ってクラスメイトだろ? だからその…」
クラスメイトという響きに唯の胸の奥の何かがズキリと軋んだ
「そ、それにオレ達ってと、友達だしさ……ま、まったく校長も人騒がせだよなー!」
「そ…それじゃあ…私の事守ってくれたのって……」
唯はただ、茫然とした表情でリトを見つめていた
「あ、あれ……えっと、古手川?」
「………わ…私が…クラスメイトだから? 友達だから? だからなの?」
「え……っと…まあ…う、うん」
ぷるぷると小刻みに震える手をギュッと握りしめると、その想い表わすかの様に唯はキッとリトを睨みつけた
目に涙をいっぱいためて
「こ…古手川?」
「バカッ!!!」
唯は一声そう怒鳴ると、そのままの勢いで遊具の中から飛び出してしまった
中編終わり
ラストはまた明日投下します
リアルタイムで見た。
GJ。そして乙。
GJ!
原作の唯メインの話をうまく混ぜてるなぁ。
とにかく中編お疲れ様です。
ラストがんばってください。 GJ
>>328 違和感なく混ざってていいね〜。GJです!
gj!
今日が楽しみだ
「古手川!? 待っ…」
ゴチ〜ン!!!
勢いよく立ち上がりかけたリトの頭を遊具の天井が直撃する
「い……ってぇぇぇ!!?」
あまりの痛さにリトは涙ぐみながらその場にしゃがみ込んでしまった
頭を押さえた手の間から遠く唯の背中が走って行くのが見える
「……古手川…クソ」
痛む頭を無視して遊具から顔を出したリトに影が射す
ふと上を見上げると、そこにはいつもの笑顔がリトを出迎えた
「ララ」
「遅くなってゴメンねリト! 傘、持って来たんだけどいらなくなっちゃった」
「…………別に謝ることなんてねーよ」
勢いを削がれてしまったのか
ゆっくりと遊具から出てきたリトの声は心なしか元気がない
その顔も俯いた前髪に隠れてよく見えないでいた
そんなリトの様子に顔に?マークを浮かべるララ
髪から滴る雨粒が何度も地面を濡らしていくのもかまわず、リトは俯いた顔を上げようとはしなかった
(オレ何やってんだよ…)
冷たくなった手が赤くなるまでリトは拳を握りしめる
『バカッ!!!』
そう言って飛び出していった時の唯の顔が頭から離れない
「クソ────……」
リトの頬を雨粒が流れ落ちていく
その頬にやわらかくてあったかい何かが触れた
「え…」
チラリと横を見ると、不安そうな顔をしながらララがそっとハンカチを差し出していた
「ララ…」
「あ! よかった! びっくりしたんだよ? リト泣いてるのかと思っちゃったから」
「な!? そ、そんなワケねーだろ!」
手で慌てて顔を拭くリトに、ララはニコッリと笑った
「うん。じゃあもう大丈夫だね?」
「大丈夫って何が?」
ララは傘を差した腕で唯の走って行った方向をスっと指し示す
「ララ?」
「大丈夫だったらすぐに追いかけないと! 唯、待ってるよ」
「待ってるって…」
さきほどの光景が頭にチラつく。それにリトは顔をしかめた
「……あのなァ…」
「待ってるよ唯」
「……」
真っ直ぐに自分を見つめるララの目は、どこまでも透き通っていて、そして、眩しいぐら
いの明るい笑顔をリトに浮かべている
「リト」
ララの声は急かすでも乱暴なものでもない
そっと背中を押してくれる────そんな感じがした
「……ララ…オレ…」
「うん♪」
ニッコリほほ笑むララにリトはバツが悪そうに小さく笑った
「……はぁ〜ホント、何やってんだよオレは」
自分を奮い立たせる様に、気持ちを切り替える様に、リトは両手で頬をパンっと叩くとい
つもの笑顔でララに向き直った
「ありがとな! ララ。オレ、行ってくるよ」
「うん! きっと……きっと、リトならだいじょ〜ぶだよ♪」
ララは満面の笑顔を見せると、手をブンブン振ってリトを見送った
「ララ様よろしいのですか?」
頭の上のペケが心配そうに声をかける
「…うん。いいの」
「ですが…」
「いいの! だって……だって…リトが決めた人だもん。リトが好きになった人だから。
それに私、リトに幸せになってほしい! だって私、リトの笑ってる顔が大好きだもん♪」
「ララ様…」
「リトと唯、うまくいくといいね」
ペケはそれ以上なにも言わず、黙ってララと共にリトの背中を見送った
「あ…晴れてきたね?」
「そのようですね」
見上げるララの顔に日の光がまぶしいぐらいに差し込む
まぶしそうに細めるララの目からつーっと涙がこぼれ落ちた
「リトが幸せになれますようにって思ってるのに……思ってるはずなのに…なんだかちょっと寂しいな……」
(バカ、バカ、バカ、バカ、結城くんのバカーー!!)
心の中で大声でそう叫びながら、唯は走っていた
体力に自信があるわけじゃない、だけど今は無性に走りたかった
胸の動悸は治まらない
苦しいほどに締め付けてくる
それは、走っているからではないのだと唯は気付いていた
胸のあたりがどんどん熱くなっていく
唯はもう確信していた
私は結城くんの事が好きなんだ
それなのに
『ホラ、古手川ってクラスメイトだろ? それにオレ達ってと、友達だしさ……』
息を切らせながら足を止めると、唯は空を仰ぎ見た
雨雲の隙間から見える夕焼け空がこの時ばかりは憎らしく思える
「結城くん…」
空を見ながら呟いた好きな人の名が胸にずしりと重く圧し掛かる
自分の気持ちすらわからなくて、だけど、答えが知りたくて
その想いを見ようともせず、触れようともせず、ただ、迷って悩んで
もやもやしたまま時間だけが空しく過ぎて行って
そうして、やっと辿り着いた答えなのに────
「もう! いったい何のよ!?」
空に向かってぶんぶんと振り上げた腕が、空しく下ろされる
「────ホントにバカなんだから…」
さっきまではあんなに楽しくて、ドキドキして
誰かと一緒にいる事がこんなにもうれしいだなんて思わなかった
誰かを好きになる事がこんなにも幸せな事だなんて知らなかった
「結城くん。私…」
明日からどんな顔をしてリトと会えばいいのか、どんな声をかければいいのか
形のいい眉をひそめている時、後方からバシャバシャと水溜りを掛けてくる足音が聞こえてきた
「え…」
くるりと首だけを後ろ回した唯の目がみるみる大きくなる
「ウソ……結城…くん…」
全力で、そして必死な顔をして走ってくるリト
それはいつか助けてくれた時と同じような感覚を唯に伝えた
「…あっ…!?」
唯の前まで来ると、リトは肩で息をしながら立ち止まった
まだ乾き切っていない制服は、跳ねた泥水のせいで散々なものになっている
唯の口から驚きとも呆れともとれる小さな吐息がこぼれた
「……何か用なの」
それでもいつもの様に、いつも以上に冷たく接してしまう自分に、唯は心の中で「バカ」と呟いた
「あ…いや…古手川に話しがあるからさ」
「話しって? 風邪引きたくないからさっさと帰りたいんだけど?」
相変わらずの氷点下の声
ここまで必死に走って来たリトの心は早くもくじけそうになってしまう
さっきまであんなに魅力的だった唯の目でさえ、今はまるで自分を突き放す様に感じる
(………め…めげねーぞ…! これぐらいじゃ…)
「……ちょっと何なの? いい加減にして!」
リトの耳には呆れ半分、関わりたくない気持ち半分にも聞こえる唯の声に、体はビクンと震えた
「そ…その話しってゆーのは、ほかでもなくて……えっと…」
慌てて言葉を並び立てるリトだったが、空虚な言葉の羅列ばかりで肝心の言葉がまるで出てこない
ここまで必死に走って来たものの、何を言うのか、どんな言葉をかけたらいいのか、実は
まだ何も考えてはいなかったのだ
(そうだよ…この後ってどーすりゃいいんだ? 何言えばいいんだオレ…)
一方、唯はというと
一人頭を抱えてあわあわと呻いているリトを前にして、複雑な心境になっていた
(何なの……コレ)
さっきまでのドキドキさせてくれた顔も、自分の想いに気付かせてくれた態度も微塵もない
頼りなくて、カッコわるくて、まったくはっきりしないリトの姿
(私…どうしてこんな人、好きになっちゃったの)
思わず肩に持ったカバンがズリ落ちそうになってしまう
それでも腕を組みながらもずっとリトの言葉を待っていられるのは、やっぱり好きな気持ちがあるから
「……」
何も言わず唯はじっとリトを待ち続けた
「あ、あのさ、古手川」
「何?」
要約口を開いたリトを待っていたのは、さっきと変わらない氷の様な一声
「あ、いや…ホ、ホラ、体冷えてないかなっと思ってさ…」
(……何よそれは!? ずっと待っていた言葉がソレなわけ?)
何だか裏切られたかの様な期待はずれな展開に唯の頬が引きつる
「…別に。それに私の事なんてあなたには関係ないじゃない」
「そ…そりゃそーかもしれねーけど……」
(な、何よ! ちょっとは否定とかしてくれてもいいじゃない)
また唯の頬は引きつってしまう
「……それで、話しってそれだけなの?」
「え? あ、ああ…その…」
「ん?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…………はぁ〜…私、帰る」
「え?」
くるりと自分に背を向けて歩き出す唯の腕をリトは反射的に掴んだ
「ちょ…ちょっと! 何よ? 離しなさい」
「ま、まだ話し終わってないんだって」
握りしめてくる腕の力に合わせる様に、唯の感情も高まっていく
「じゃあさっさと言いなさいよ! だいたい何なの? 人をずっと待たせて、やっとしゃ
べったかと思えば『体冷えてない?』とか。いい加減にしてよね!!」
「古手川の体のこと心配しちゃダメなのかよ? おんなじクラスメイトだし友達だろ?」
間近で声を大きくさせるリトに唯はついにカチンときてしまった
「そんなの…そんなの…」
「え? 古手川?」
唯は目を鋭くさせると、キッとリトを睨みつけた
それは今まで見たことがない唯の怒りの表情
そして、悲しい顔だった
「そんな事で優しくなんかしないでよ!」
「え?」
溢れる感情は声となって止まらない
「クラスメイトだからとか…友達だからとか……あなたがそんなだから私…私…」
悲しみやガッカリ感よりも、どうしていいのかわからない気持ちと苛立ちとで、唯の中はムチャクチャになっていた
初めて誰かを好きになって、恋をして、そして、その恋に期待して
ここ数日間が頭の中でぐるぐると回り始め、唯の目に薄っすらと涙が滲む
(古手…川)
「もう私に構わないで! 放っておいてよ! これ以上、私を期待させないでよ!!」
それはきっととても我ままで、身勝手な言い草なのだろう
それでもリトは何も言えず、ただ茫然とした表情で唯の顔を見つめていた
「も…もういいでしょ! 離してっ」
腕を振りほどこうとする唯に、リトは思わず掴んだその手を離しそうになってしまった
が、咄嗟に手に力を込めると唯を自分に向けさせる
「ちょ…結城くん!?」
唯を真正面から見つめながらリトは掴んでいない反対の手をギュッと握りしめた
「ごめんな古手川。オレお前の気持ちとかそーゆーの全然考えてなくて、自分のことばっかお前に押し付けてさ」
「そ…そんなこと」
弱々しい声のまま唯は俯いてしまう
「さっきお前が怒った後も、今もオレ、色々考えたんだけど、やっぱよくわかんなくてさ
…。だけどオレのこんな態度がお前を傷つけたのは確かだし、ホントにゴメン」
「わ、私は…」
それ以上言葉が出てこなかった。ただ、結城くんも私と同じなんだなと感じた
お互い相手を想いながら、それでもちゃんとした答えが出てこない、出せないでいる
このままじゃダメだと思った。このままでいいはずがないと思った
唯はありったけの勇気をだして一歩前に踏み出してみる
「「あの…」」
「え…」
「あ…」
重なってしまったタイミングにまた微妙な雰囲気になる
「なんだよ?」
「あなたこそ…」
お互いチラチラと顔を見ては、目が合うと急いでそらす事の繰り返し
しばらくして、リトが話を切り出した
「これじゃダメだ…」
「え?」
「こんなんじゃダメなんだ! はっきりしなきゃ、ちゃんと言わなきゃ、ちゃんと伝えないとダメなんだ!!」
ふと見上げた唯を待っていたのはいつものリトの顔だった
あどけない少年の様な顔の中に、今は、真剣なものがあって
唯は吸い込まれる様にじっとリトの顔を見つめた
「オレ…オレ、好きだ! 古手川のことが」
「……」
唯はリトが何を言ったのか一瞬わからなかった
「…え…ぁ…い、今…なんて…」
「だから! 好きだって言ったんだ。お前のこと…」
「ウ…ソ……」
「ウソなんかでこんな事いうワケねーだろ!!」
リトは真っ赤になった顔でそれでも全力で唯の言葉を否定する
「で、でも私…」
唯はまだ状況が理解できないのか呆然とした目でリトを見ている
好き
結城くんが私のことを────?
次第にゆっくりとその言葉の意味が唯の胸の中で染みわたっていく
「…あ…ぁ…」
一段と大きくなった黒い瞳は次第に左右にゆらゆらと泳ぎ出し、頬は夕日よりも赤く染まっていく
「古手川の返事……聞かせてほしい」
ビクンと体が震えた
「私の……返事…」
「ああ。聞かせてほしいんだ」
結城くんへの気持ち
そんな事はもうわかっている。どれだけ想って、どれだけその想いを積み重ねてきたか
他の全てがダメでも結城くんへの想いだけは誰にも負けない、負けない自信があるから
唯は両手を握りしめると、目一杯の想いを乗せて想いを口に出そうとした
が、できなかった
(あれ? どうして……だって…)
リトへの想い
それはいっぱいいっぱいありすぎて、いっぱいいっぱい伝えたい事が多すぎて
言葉にはできないぐらいありすぎて
唯は声に出せなかった
(どうして……)
やっと辿り着いた気持ちなのに、やっとわかった答えなのに
初めての恋が唯からいつもの自分を奪っていく
(どうしたら……どうしたら…)
顔を見なくたってわかる。リトは待っている
不安そうな顔をしながら、逃げ出したくなる衝動をぐっと我慢しながら待っていてくれる
唯は奥歯を噛み締めた
(また…また私は……いつもいつも結城くんに……)
甘えて、文句を言って、助けてもらって、怒って、守ってもらって、冷たくして
くやしかった
こんな時ですら自分の気持ちを素直に言葉にできない事が
そう思った時、唯の頬に涙が伝っていった
「古手川!?」
目を丸くするリトの前で唯は生まれて初めて、誰かの前で泣いた
自然と涙が溢れ出して止まらない
「…ぅ…うぅ…」
「あ、あのさ…その…」
リトの困った様子が胸に響く
「と、とりあえずさホラ、これで涙拭けよな」
「へ…」
そう言って差し出してくれたハンカチは、さっき公園で使ったものと同じものだった
「その……お、落ち着いてからっつーかその……古手川が大丈夫になるまでオレ待ってる
から! だから気にすんな! オレなら平気だから、な?」
ニカっと笑いながらそう言ってくれるものの、完全に目は泳いでるし、冷や汗だって出ている
でも、その気持ちがうれしかった
いつもくれるその笑顔が、いつも感じるそのやさしさが
「結城……くん…」
その呼び声を後ろに残して、唯はリトの胸の中に飛び込んだ
「こ、古手川!?」
びっくりしているリトに構わず、唯は制服のシャツを握りしめたまま胸に顔をうずめた
甘えてるってわかってる
わかっているけど、今はこうしていたかった
リトの優しさを温かいぬくもりをもっと感じたかった
しばらく宙を彷徨っていたリトの両腕はゆっくりと唯の背中に回される
「……!?」
「大丈夫だって。待ってるって言ったろ? お前が大丈夫になるまでオレはずっとこうしててやるからさ」
「…うぅ…ひっく…うん…うん」
涙で濡れながら唯は何度もリトの腕の中で頷く
雨はすっかり止み、雨上がりの匂いに混じって夏の匂いがあたりにしだした頃
唯は少し体を離すと目元をゴシゴシとハンカチで拭いていく
「大丈夫か?」
「……うん」
小さくコクンと頷く唯にリトはホッと溜め息を吐いた
「にしてもびっくりした。古手川がこんなに泣くなんて」
「わ、わるかったわね」
恥ずかしそうにぽそぽそ話す唯にリトは笑みを深くした
「……それでさ…返事できる? ホントに大丈夫か?」
唯は何も言わないままリトの制服をキュッと握りしめている
「古手川?」
「……いい加減気付きなさいよね? す…好きでもない人の前でこんな恥ずかしいマネ、私しないわ」
「…………へ? そ、それって…」
たっぷり数秒使って導き出した答えにリトの顔がぱあっと輝く
「ちょっと鈍すぎよ! 結城くん」
ふいっと顔を背けるも唯はリトから離れようとはしない
そればかりか制服を掴む手の力は強くなっているほどだ
「ありがとな!! すげーうれしい」
「…そ、そう?」
なんて素っ気なく応えるも、唯の声がうれしさと恥ずかしさで小さく震えている事にリトは気付いただろうか
リトは自分の気持ちを表す様に唯の細い体をもう一度抱きしめた
「キャ!? ちょっと結城くん?」
「古手川!!!」
本当にうれしそうに幸せいっぱいに顔をほころばせるリト
(結城くん……そ、そんなにうれしいんだ…)
間近に感じるリトの匂いだけでどうにかなっちゃいそうなのに、そんなうれしそうな顔を
されたら、このままみんなとけてなくなってしまいそうになってしまう
「結城くん…」
しばらくその幸せを胸いっぱい、体いっぱいに感じているとふいに気付いてしまう
ここは外で、そして自分達はまだ……
「ダ、ダメよ!! こんな事はっ」
「へ?」
唯はリトから慌てて体を離した
「古手川? どーしたんだ」
「どうしたもこうしたも…」
唯は真っ赤になりながら、息をハァハァと乱している
「なんだよ? オレなんかおかしな事…」
「そ、そうよ! またあなたって人はっ!!」
「え?」
「わ、私たちまだ高校生なのよ? だ、抱き合うとかこんなハレンチな事…」
リトは頭を掻きながら不思議そうに眉を寄せた
「でも、オレたち付き合うんじゃ…」
「だ、誰もまだ付き合うだなんて……そ、それはまたちゃんとその…」
どんどん声が小さくなる唯にリトは首を傾げる
「う〜ん……あのさ、好き同士ならフツーは…」
「普通じゃないに決まってるでしょ! 私たちはまだ学生なのよ! もっと他にやるべき事があるでしょ!?」
「そりゃまあ…」
声を濁すリトに何を思ったのか唯は声を鋭くさせる
「……言っとくけど結城くん、付き合ったってハレンチな事は絶対しないからね!! か、
彼氏だからって甘くなんかならないんだから! 手だって繋ぐとかしないからね! ちゃんとわかってるの?」
「ええーーっ!?」
心底びっくりしたのか、リトの目はまん丸だ
「当たり前でしょ!! そんな事っ」
胸のあたりで腕を組むいつもの唯に、リトは驚きつつも、内心、苦笑をしていた
(ホント、マジメっつーか…)
だけどそんな唯が好きなのは事実
リトはもう一度想いを込めて、唯に気持ちを告げた
「それでもいいよ。古手川が一緒にいる……それだけでオレはすげーうれしからさ」
まだまだ幼い少年の様なリトの笑顔
だけどその顔が今は少し誇らしく思える
「…………そんな恥ずかしい事言わないでよね……バカ」
少し口を尖らせながらそう呟く唯だったが、リトを見つめる目はどこまでも優しくて、そ
して、リトに負けない様に幸せそうに笑っていた
雨上がりの帰り道
どちらもまだまだ互いへの気持ちを全部は言えていない
恥ずかしさとうれしさで、声に詰まったり、言葉にできなかったり
だけど、それでもいいと思う
お互いの違いで、時にはケンカして、また気持ちを知ったり、確かめ合ったり
新しい顔や仕草を見つけたりして
少しずつ進んで、少しずつ大きくなって
焦らずに進んでいけばいい
どんな事があってもきっと結城くんとなら、二人なら大丈夫だから
二人の物語がこれから始まる
終わり
付き合った経緯をまったく書いてなかったので書いた二人のなれ染め話しです
わかってる方も多々いると思いますが
前編……唯スレのネタ+とらぶる86「妹よ…」+とらぶる74「原点」のセリフ少し
中編……とらぶる107「チクタク チクタク 恋の音」の改編
になってます
すごい余談ですが
この話しは、去年の夏ぐらいから何度も書いて何度も書き直したものなんですが
唯一書き直さなかったシーンがララの泣いてしまうところです
あの後、ララの想いが溢れだしたり、家出したりと、いろいろあったのですが、あまりにも長くなり過ぎて、全部削りました……
その名残が以前書いた「ララとリト」「ララとリト その2」になるんですけど、どうでもいい設定ですねw
ありがとう!
そしておつかれ!
後編おつかれさまです。
ララすごいいい子だなぁ〜ってすごい思えました。
この作品を読んで、よりトラブルを好きになれました。
ありがとうございます。 GJ。
おもしろかったです!
本当にご苦労様でした。
gj!
いじらしさが滲み出ててたまらないなあ
「御門先生によるヤミちゃん性教育♪」とかいう電波を送っているのはどこのどいつですか?
347 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 12:42:49 ID:MjxBgejC
348 :
むに:2008/07/27(日) 19:28:38 ID:nw8urbF9
夏です。夏といえば海かプールです。泳ぎたいです。そして泳ぐといえば…。
という訳で、初めて唯モノを書いてみました。
唯のSS多すぎるわーと言われてますが、思い付いちゃったんだからしょーがないという事で。
ただ、エロくも無ければ上の方みたいにラブラブでも無い。その上唯ちゃんのキャラがちょっと可笑しいです。
あくまでいつも通りノリだけでやりましたけど頑張ってみましたので、
それでは行ってみます。
349 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:31:00 ID:nw8urbF9
ある日の放課後――。
「ざぶーん」
――という謎の言葉を発しながら、古手川唯は誰も居ない教室で謎の行動を取っていた。
教卓の上に真っ直ぐうつ伏せに寝て、手足を規則的にバタつかせ、
時々顔を上げてぷはーっと大きく息を吐いてはすぐに吸い込んで顔を下げる…。
この一連の動作を、彼女は休む事無く延々と続けていた。
端から見てると怪しさ爆発な事この上無いのだが、本人の目はいたって真剣だ。
何か大きな…、とても大事な事を成し遂げようという決意が表れている様にも見える。
『ガラッ』
「ふー、いっけね〜。教室にノート忘れて来ちゃってたよ〜」
だがここで、突然誰かが教室に入って来た。
その人物とは言わずもがな、『都合が悪い時に限ってのエンカウント率100%』を誇る我らが主人公、結城リトである。
「………って、古手川?」
「……へ?」
『ピシッ!!』
ふと視界に入って来た異様な光景を目撃してしまったリトと、自分の恥ずかしい行動を目撃されてしまった唯。
あまりの衝撃に両者その状態のまま十秒程フリーズし、そして…。
「み……………見ぃーーたぁーーわぁーーねぇぇぇ〜〜〜!!!」
「ひ…、ひぃぃぃっ!!?」
顔を真っ赤にして凄まじい殺気を放つ唯。
リトは、そんな唯の背中に怒り狂った不動明王が確かに見えたと後に語ったとか…。
――――――
「ぁー…なるほど…。つまり今年こそ泳げる様になりたくて、
ここでこっそりイメージトレーニングしていたと…」
頭に出来たでっかいたんこぶをさすりながら、ちょっと涙目でリトが尋ねる。
350 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:33:00 ID:nw8urbF9
「わ…悪い!?私だってカナヅチだって事は一応気にしてるんだからねっ!」
いつものノリで反射的に(理不尽な)鉄拳制裁を加えてしまい、
その罪悪感からぷいっと目を逸らして言い訳めいた事情説明をする唯。
「生徒の模範となるべき存在である風紀委員が泳げないんじゃ、他の生徒に示しが付かないでしょ?
風紀委員がナメられたら益々この学校の風紀が悪くなっちゃうわ」
「ぃゃ…、それ考え過ぎだって…」
「………そうでなくったって、私自身何時までも泳げないままじゃ情けない気がして…」
そう言って唯は力無く沈んでしまった。
若干暗〜いオーラが周りを覆っている様に見える。
「……結城くんは…………泳げるのよね…」
そしてちょっと拗ねた感じでリトに質問する。
「へ?まぁ、そこそこは…」
「そう…」
『ズーーン…』
「あ、あれ?」
質問に答えただけなのに、更に唯がヘコんでしまって焦るリト。
「どうせ結城くんも心の中じゃ私が泳げない事を嘲笑ってるんでしょ…?
あーあー羨ましいわねぇ…。流石泳げる人は余裕綽々って事…?
私だって好きでカナヅチになった訳じゃ無いんだっつーの…!
そもそも人間が水に浮く事自体、非常識極まりない事なんじゃないの…!?
大体…(ぶつぶつ)」
完全にやさぐれちゃってる古手川さん。
教室の隅っこにうずくまって、床に『の』の字を書きながらリトに八つ当たりする。
本気で悩んでるからなのか、いつもと大分キャラが違う。
「…………ぅ゛ーん…」
『この状況、どーしたものか…』と、頭をポリポリ掻きながら改善策を考えるリト。
別に自分には直接的な関係は無いのだが、このままほったらかしにするのも何か不憫だ。
思考を巡らす事数秒間、ふとリトの頭にピーンと豆電球が点いた(古い)。
351 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:35:03 ID:nw8urbF9
「古手川、今度の休みヒマか?」
「………へ?」
――――――
数日後――。
燦々晴れの休日、唯はスイミングバックを片手に街の広場に居た。
その様子はどこかソワソワ落ち着きが無く、時々腕時計をちらちら見ては周りをキョロキョロ見回す…。
ここに来て約十分程経つが、さっきからずっとこの調子である。
(まだかな……、結城くん…)
実はあの時、こんなやり取りが――。
『古手川、今度の休みヒマか?』
『………へ?』
リトの質問に顔だけ振り向かせる唯。
心なしか、目尻にちょっと涙が溜まってる。
『まぁ、取り立てて用事は無いけど…、それが何か――?』
『じゃあさ、今度の休みにプールに行かないか?』
『………………は?』
一瞬リトの言葉が理解出来ず、キョトンと目が点になる。
『ぁの……、今何て…』
『だから、今度の休みの日に一緒にプールに行かないか?泳ぎ方教えるからさ』
『へっ!?』
聞き間違いじゃ無い事に気付いた途端、みるみる内に唯の顔が赤くなっていき慌てふためる。
『ぁ…あのっ…!どどどどど…どう…して…!?』
『どうしてって…、こーゆーのは一人でやっても効率が悪いだろ?
それに友達がそこまで深刻に悩んでるトコ見ちまったら何とかしてやりたくもなるってもんだし…』
『友…』
『?、どした?』
『えっ!?な…何でも…』
『友達』という言葉に、ちょっと胸の辺りがチクッと痛んだ。
が、そんな事は今はどうでも良かった。
何故なら、それよりも重要な事に気付いたからだ。
352 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:36:35 ID:nw8urbF9
『ぁの…結城くん…。それって……つまり…』
『あ…、やっぱり迷惑だったか?いきなりこんな提案しちまって…』
『う、ううん!迷惑なんてそんな事無い…!むしろ…嬉しぃ――』
『は?』
『な、何でもないっ!何でもないからっ!』
『そ…そうか…』
必要以上に焦る唯に少し唖然となったが、リトはそれほど気に止めなかった。
そして唯は、リトの提案によってある単語が頭の中を支配していた。
【結城くんと……………休日に………プール……。
それって……やっぱり――】
(デート………なのよね…?)
心の中でそう呟いた瞬間、徐々に唯の顔が赤らんで熱を帯びていく。
約束の時間までは、まだかなりの余裕がある。流石に早く来すぎたとちょっと反省。
けど、家に居たら居たで兄・遊に茶化されるだけだろうし、何より唯自身、少しでも早くリトに逢いたかった。
唯はおもむろに目を閉じる。と、すぐさま笑顔のリトが目の前に浮かんでくる。
ほんのついこの間までは訳が分からず高鳴る鼓動を無理矢理抑えて慌てて掻き消していたけど、
最近はその鼓動が心地良く感じられて、自然と笑みが零れてしまう。
心の中はリトに逢える嬉しさと幸せな気分で一杯になる…。
自分の気持ちを自覚してまだ間も無く、そういう事に関しては意識的に距離を取ってきたから良くは分からないけど、
この気持ちは理屈なんかじゃない…。
あぁ…、『人を好きになる』って、こういう事なのかなぁ…と、唯は胸に手を当ててそう思った。
(こんな事なら、早めに新しい水着買っておけば良かったなぁ…。結城くんてば、急にあんな事言い出すんだから…)
「古手川さん」
(ま、多分結城くんにしてみたら、純粋に私が泳げる様になる為に気を使ってくれただけなんだろうけど…)
「古手川さんっ」
(でもなぁ…、折角二人だけなんだから、もっとこぅ……可愛い私を見てほしい…っていうか…)
「古手川さんっ!」
「……へ?」
突然誰かに呼ばれてようやく現実に引き戻される唯。
ちょっと不快感を感じつつ、声がした方を振り返ると…。
「………西連寺さん?」
今日の天気みたいに爽やかな笑顔を浮かべた春菜が立っていた。
「どうしたの?何か嬉しそうだったけど、良い事でもあったの?」
「なっ、何でも無いわよっ!何でも――ん?」
慌てて誤魔化そうとする唯。が、ここで春菜が右手に持っている物――自分と同じスイミングバックに気付いた。
353 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:38:14 ID:nw8urbF9
「ぁの…、西連寺さん、それは…?」
「ああ、私もプールに誘われたんだ。一緒に行こうって…」
「……『も』?」
「古手川さんも…なんだよね?確か泳げる様になる為の練習とかで」
「ぃゃ…ぁの…、何でその事……」
さっきと打って変わって、途端に嫌な予感が唯の全身を駆け巡る。
――と、その時。
「春菜ー♪唯ー♪ごめーん、待った〜?」
「コ、コラ、そんなに引っ張んなってぇ!」
毎度お馴染みの元気っ子ボイスとお日様スマイルと共に、ララがリトの腕を引っ張りながらやって来た。
「えへへ…、お待たせ〜♪」
「こんにちはララさん、……結城くん…」
「よ、よお…、西連寺…」
「……」
「プール♪プール〜♪」
「ふふっ、楽しそうだねララさん」
「いつも暑いからね〜。こーゆー日はプールが一番だよ〜♪」
「だからって急に『プール行こ〜♪』なんて言い出すなってーの」
「……」
「私、いきなりだったから新しい水着用意出来なかったよ…」
「あれ?そーなんだ。えへへ、私すぐにペケに新しいのインストールしたよ〜♪」
「ったく…、こーゆー事に関しては行動が早いんだから…」
「…………結城くん」
「ん?何だよ古手が――ぅおぉっ!!?」
呼ばれて振り向くと、バックから『ゴゴゴゴゴ――』ていう重低音が聞こえてきそうな位に、
唯がこめかみをピクつかせながら有無を言わさぬ怒気を放っていた。
一体何が起こったのか、訳が分からずたじろぐリト。
「あのさ結城くん…、私、ララさんや西連寺さんも来るなんて聞いてないんだけど…」
(こっ、怖えぇぇーー!!)
唯のプレッシャーに圧倒されるリト。
何が何だか分かんないけど、ここで逆らったらきっと命が無いと本能的に感じ取り、
一言一言誠意を込めて丁寧に説明する。
「ぁ……ぁー、そーいや言ってなかったな〜…。
実はこの間、ララの奴が突拍子にプールに行きたいって言い出してさ…、
それで最初はオレと西連寺との三人で行く事になって…」
「ふーん」
「で、たまたま古手川が泳げない事に悩んでるトコ見たから、せっかくだから練習がてら一緒に行こうと思った次第で…。
ホラ、やっぱりこーゆーのは大勢で行った方が楽しいし、みんなで教え合ったりもできるしさ…」
「へー」
「……」
「……」
終始ジト目でリトを睨む古手川さん。そのおかげで冷や汗が全く止まらない。
例えるなら今のこの状況、母親に悪い点数のテストを見つけられて
必死で言い訳している子供の図と言った方が分かり易いか?
354 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:40:10 ID:nw8urbF9
「ぁの…………古手川サン…?」
「何?」
恐怖心に煽られてゴクリと生唾を飲み込むリト。
そして一言…。
「もしかして…、いや、もしかしなくても……………………………怒っていらっしゃいます?」
すると唯は…。
『(^-^)』
ニッコリと、それでいてどこか戦慄を覚えそうな位不敵に微笑んで、そして…。
「いーえ、別に怒ってなんかいないわ――よっ!!!♪」
「い゛ぃぃぃぃーーーーー!!?」
足を思いっ切り踏んづけられてしまった。
「ふんっ!!」
すっかり不機嫌モードにシフトチェンジしてしまった古手川さん。
悶え苦しむリトを一瞥もせずに、唯はそのままスタスタ歩き出して行った。
「……何で?何で?何でオレ怒られてんの??」
「唯、どーしたんだろーね〜。またぷんぷんしてる…」
「ぁの…結城くん…、また何か古手川さんを怒らせる様な事したの?」
「ぃや…、オレは多分何にもしてない……ハズ…。うん、何にもしてない…」
「ホラ、いつまでそんな所でボーっとしてるのよ!!行くんなら早く行くわよ!!でないと置いて行っちゃうから!!」
「「「はっはい、ただいまぁ!!」」」
唯の怒声と怒りオーラに圧倒された三人は、慌てて先を歩く唯を追い掛けて行った。
期待を裏切る様で悪いが、そう簡単にラブラブになれる雰囲気になるはずがない。
それもまた、一つのお約束…。
「やかましい、黙れ!!!」
………はぃ。
355 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:41:17 ID:nw8urbF9
――――――
――という事で、やって来ました市民プール。
どうやら考えている事はみんな同じらしく、休日という事も重なって家族連れやらカップルやらで溢れ返っていた。
「きゃー♪」
『ザブーン!』
そんな大盛況の中、プールの一角にある人気スポットのウォータースライダーでララの楽しそうな声が響く。
「もっかい行ってこよ〜♪」
プールから上がって嬉々としながらパタパタとスライダーの階段を登っていくララ。
もう何回(二桁は軽く超えてる)も滑っているにも関わらず全く飽きる気配が見られない。
すっかりプールのアトラクションを満喫しています。
「こらー、走んなー!コケても知らねーぞー!」
「くすっ、ララさんってホント子供みたい」
「てゆうか、子供より子供よね」
その様子を見ながら、リトは注意を飛ばし、春菜はクスクス微笑んで、唯は少し呆気に取られていた。
ハシャぐちびっ子を見守る保護者というのは大体こんな感じではないだろーか?
(ちなみに、皆さんがどんな水着を着ているのかは読者の皆さんの想像任せで)
「さてと、じゃ早速オレ達も始めるか。古手川」
「へ!?あ…う……ぅん…」
リトの呼び掛けに身体が一瞬ビクッと硬直する、なんとか機嫌を直してもらえたらしい古手川さん。
今日は泳げる様になる為にココに来たはずなのに、いざその時になるとやはり少し怖くなる。
ちなみに、リトがどーやって唯のご機嫌を直したのかは面倒臭いんで割愛。
(ただ、かなり命懸けだったらしい…)
「大丈夫だよ古手川さん。ちゃんと足も着くし私達も付いてるから」
小刻みに震えてガッチガチになってる唯に、春菜は優しく話し掛けてリラックスさせようとする。
「わ、分かってるわよ。今のは……ぇーと……………た、ただの武者震いよ」
((何もそんなに強がんなくったって…))
『ま、古手川(さん)らしいっちゃらしいけど…』と思ってしまったリトと春菜だが、
言ったらまた怒られそうなので心の中に閉まっておく。
「…………………………深呼吸していい?」
「「どうぞ♪」」
おどおどしながらの唯の申し出を二人は笑顔で許可。
356 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:42:42 ID:nw8urbF9
「すーはー、すーはー」
緊張の所為なのか、ちょっとオーバー気味な動作で深呼吸。
これで落ち着けるのかは些か疑問だが、本人はいたって大真面目である。
だから、端から見てると妙に面白いこの光景をリトと春菜は笑ったりせず見守っている。
時々顔を伏せて何かを必死に堪える動作が見えるのはきっと気のせいだ。
太腿の辺りを思いっ切りつねって何かを痛みで誤魔化そうとしてる動作が見えたのは目の錯覚だ――と思いたい。
「ょ……ょし……、それでは……」
「頑張ってね古手川さん」
「…………………あ、その前に準備体操を…」
「いいから早く入りなさい」
「はぃ…」
往生際悪く長引かせようとしてリトにツッコまれてしまった、
普段ツッコミ属性なのに何故か今日は妙にボケ倒しな古手川さん。
意を決して、片足の爪先を恐る恐る水面に。そのままゆっくりとプールの中へ入っていく。
少し震えているのはプールの水が冷たいからなのか、今から始める練習に対する緊張からなのか…。
とにもかくにも、今年こそは絶対泳げる様になってやる――!
そんな固い決意と共に、唯は正面に立っているリトを見据えて指導を仰いだ。
「結城くん、最初は何をすればいいの?」
「そーだな…。んー…………………古手川って水中で目開けれる?」
「………………ぃぇ」
「良し。んじゃまずはそっから練習するか」
「はぁああっ!!?」
「ぅおぉっ!!?」
突然、驚愕全開の声を上げる唯におもわずビクッとなるリト。
「ちょっ、待っ、あっあのっ、い、いきなりそんなハイレベルな事から始めるの!!?」
「いや…、ハイレベルも何も基本中の基本だろ…。コレ出来なきゃ泳げる訳ねーだろーが…」
「そっそんな事言われたってさ…!もし万が一溺れたりしちゃったらどうするのよ!!?」
「いやいや溺れる訳ねーだろ。ちゃんと足着いてるじゃねーか」
「だ…大丈夫だから古手川さん。何かあったら私と結城くんが必ず助けるから」
「ぬ……ぅ゛ーん…」
「泳げる様になりたいんだろ?だったら頑張ってみようぜ?な?」
「ゎ…………分かったわよ…。その代わり、何かあったらちゃんと助けてよ?」
覚悟を決めた唯。再び大きく深呼吸して気持ちを落ち着ける。
「じゃあ…………行くわね…?」
「ああ」
「……………ホントに行くわよ?」
「ああ」
「ホントのホントに行くわよ?」
「ああ」
「ホントにホントにホントに行くわよ?」
「ああ」
「ホントにホントにホントにホントにホントにホントにホントに行くから――」
「早よせい」
またしても、ツッコミがツッコミにツッコんだ極めて貴重な瞬間だった…。
357 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:44:14 ID:nw8urbF9
「リトー、一緒にすべり台滑ろ〜♪」
「え?のわぁあっ!!?」
「きゃあっ!!?」
『ドボーン!!』
「ラッララさんっ!!?」
そんなやり取りをやってる中で、いきなりララがリトに向かってダイブ。
勢い余って傍にいた唯も巻き込んで、豪快な水しぶきを上げて沈めてしまった。
プール内で人に向かって飛び込むのは大変危険です。
良い子も悪い子も絶対に真似しちゃ駄目だゾ。
「ぶはぁっ!!危ねーだろララぁ!!」
「だってリトと一緒にすべり台滑りたかったんだもん〜。一人で滑るのも飽きちゃった」
「だからって人に向かって飛び込んで来る奴がいるか!!万一の事があったらどーする気だよ!?」
「ぁ……ぁははは…………………って結城くんっ、古手川さんが――!!?」
「へ?――ぅおぉっ!?古手川ぁ!!?」
「わー、唯ー!?」
「ぶくぶくぶくぶく…」
この後、このカナヅチ少女は直ぐに救出されて事なきを得た…。
そして、何故かリトに対して泣きじゃくりながら
八つ当たりのギャラクティカマグナムをぶちかましたのは言うまでもない…。
――――――
「そうそう、その調子だよ古手川さん」
「うぅぅ…」
「ぃちちち…」
バシャバシャ規則的に水しぶきを上げながら、今度は春菜に両手を引いてもらってバタ足の練習。
まるで幼稚園児みたいな自分のこの状況に、顔を赤らめてすっかり縮こまっている。
その様子を、リトはプールサイドに座って殴られた方の頬をさすりながら見学していた。
ちなみにララは、今度は流れるプールの方へのんびりと流されに行っていたりする。(時々逆走してみたりして)
「う〜…、何かこの状況、すっごく恥ずかしいんだけど…」
「でもこの方が一人で練習するよりもずっと早く上達出来るはずだよ?
真心を込めた指導が上達への近道♪」
「それは…そうなんだろうけど……、けど…高校生にもなって…、こんな幼稚園児みたいな事…」
「古手川泳げねーんだから仕方ねーだろ。それに、上手くなりたいなら恥ずかしがってる場合じゃねーと思うけど?」
「ぐ……」(人事だと思って〜…)
ジト目でリトを睨む唯。が、リトの言ってる事も的を射ているのであまり強く出られない。
そもそも『泳げない』という恥を忍んで二人(正確にはリト一人)に指導を仰いだのは自分なのだから、
今更恥ずかしがったってしょうがないのも一理ある。
358 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:46:16 ID:nw8urbF9
(分かってはいるのよ…。私だってそれ位は分かってはいるんだけど……………流石に…)
そんな風に心の中で悶々としていたその時――。
「それじゃあ古手川さん、私手離すね?」
「……は?」
「いくよ。せーの「ちょちょちょちょちょっと待ってぇ!!?」きゃっ!?」
突然手を離そうとする春菜。
唯は慌てて春菜の手首を掴んでそれを阻止する。
「西連寺さん、いきなり何するのよぉ!!私を殺す気!!?」
「ご……ごめんなさい…。で、でも……、いつまでも手を引いてたままじゃ練習にならないし…。
あくまで自分の力で泳げる様にならなきゃ…」
「ほ、ほらアレだよ。自転車の練習でも最初は支えてしばらくしたら離したりするだろ?
アレと同じ様な感じだと思えば――」
「簡単に言わないでよぉ!!泳げない人間が水中でいきなり手を離されるのがどれだけ怖いか分かってんのぉ!!?」
「こ、古手川さん落ち着いて」
「分かる、分かるぞー古手川。その気持ちは良ーく分かるけどさ――!」
うがーっと今にも噛みつきそうな勢いで二人に猛然と抗議する唯。しかもちょっと涙目。
必死に説得するリトと春菜だが全く聞き入れてもらえない。よっぽどさっきの出来事が怖かったらしい…。
「唯〜!それだったらコレ使ってみたらどーかな〜?」
「……ぇ?」
いつの間にか戻って来てたララが、片手に何か持って唯にそう言う。
「ララ…、それって…」
「ビート板?」
「えへへ、私が作った特製ボードだよぉ♪コレ使えば唯もすぐ泳げる様になるよ♪」
「本当に!?ララさん」
「うんっ♪ささっ、早速使ってみて」
「ええ、有り難く使ってもらうわ!」
「お、おい古手川――」
リトの制止の声など耳にも入らず、嬉々として改良ビート板を受け取る唯。
唯とてララの発明品には度々ロクな目にしか遭ってないはずなのに…。
ララの発明品の危険性は充分理解しているはずなのに…。
正に藁にも縋る想いというのはこの事では無いだろうか?
(何かすっげー嫌な予感…)
特に被害履歴が多いリトはこれから起こりそうな事に不安を隠せない。
そして、その不安は的中する――。
「ララさん、コレどうやって使うの?」
「右側にスイッチがあるでしょ?それを押してみて」
「え?コレ?――きゃあっ!!?」
ララに言われた通りスイッチを押すと、突然ビート板がジェット噴射を上げながら急発進した。
あまりの猛スピードに身体が吹き飛ばされそうになりながら、唯は恐怖に染まった悲鳴を上げる。
359 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:47:49 ID:nw8urbF9
「きゃあぁぁぁーーー!!!助けてぇぇぇーーー!!!」
「こっ、古手川さぁーーん!!」
「ほら見てリト〜、唯がちゃんと泳げてるよ〜♪」
「バカ!!アレは『泳いでる』んじゃなくて『引きずられてる』って言うんだよ!!!」
「いやあぁぁぁぁ!!結城くん何とかしてぇぇぇーーー!!!」
「わわっ!!?ま、待ってろ古手川ぁ!!今助け『ドカッ!!』どわあぁぁっ!!?」
「ゆっ、結城くーーーん!!?」
唯を助けにプールに飛び込んだリトだが、
プール内を縦横無尽に走り回る唯(onビート板)に逆に吹っ飛ばされてしまった。
「ララさんっ!!どうにかして止められないの!!?」
「……………………ぇ?」
「だから、ララさん止めてあげて!!このままじゃ古手川さんと結城くんが――!!」
「ぇ……えーと〜……それがね〜…、アレ大分前に作ったヤツでね〜……」
「え?」
「…………………止め方ド忘れしちゃった」
「えぇぇぇーーーー!!?」
そしてこの後、ビート板の電池が切れるまで唯はプール内を暴走しまくり、
リトはその度に持ち前の不幸体質の所為(?)で唯に挽かれまくったという…。
――――――。
「うぅぅぅ…、やっぱり私には水泳の才能なんて有るわけが無いのよ…。私はドジでノロマな亀なのよ〜…」
「だだ、大丈夫だよ。たまたま不幸が重なっただけだから…」
プールサイドに突っ伏して、ズーンと暗い影を落とす唯。すっかり意気消沈気味になっている。
春菜も頑張って慰めようとするもまるで効果ナシ。完全に自虐モードに入ってます。
「唯〜、元気出しなよ〜」
「きっ!!」
「ひ〜〜ん(泣)」
それでも、落ち込む一方でララが話しかけると、何も言わずにしっかりと睨み付けてビビらせていた。
ツッコミ――いや、風紀委員の意地というヤツでしょーか?
360 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:49:22 ID:nw8urbF9
(う゛ーん…、どーしたもんかな〜…)
一方、リトはプールにぷかぷか浮かびながら打開案を考えていた。
――このままじゃますます古手川が泳ぐ事を嫌いになってしまう…。
――そうなったらますます唯はカナヅチから脱する事が出来なくなってしまう…。
それだけは何としても避けたいと、普段使わない頭を最大限に働かせて思考を巡らせていた。
しかし、散々唯に(正確にはララの改造ビート板に)跳ね飛ばされて
あちこちボロボロになっていたはずなのに、リトの傷はもう完治している。
頑丈だという事は前々から証明されてはいたが、まさか不死身スキルも備わっていたとは…。
流石、伊達に金色の闇の猛撃を受け続けている訳じゃ無いと言った所か。
「………………うっ!!?」
などと言ってる間に、突然リトに異変が起こった。
その場で、パッと見大袈裟と思える位に両手をバタつかせてもがき始めたのだ。
「あれ?リト?」
「ちょっと…、何か様子が変よ」
岸にいた三人も、リトのただならぬ様子に不安感がよぎった。
あれはそう………、まるで溺れてるみたいな――。
「結城くんっ!どうしたの!?」
「あ……足がつって…!こ……古手川助け――うわっ!?」
切迫した状況の中、何とか春菜からの問い掛けに答えようとしたリトだが、
とうとう力尽きて水の中に沈んでしまった。
「リトぉ!!?」
「いやぁぁーーーっ!!」
「待ってて!!今助け――!!」
「結城くんっ!!」
『ザブーン!!』
「唯!?」
春菜の悲鳴が響く中、助けに飛び込もうとしたララよりも先に唯が飛び出した。
「ぶはぁっ!はぁっ!結城くんっ!結城くんっ!!」
必死にもがきながら、少しずつリトが沈んでいる場所へ近付いていく唯。
ヘタをしたら自分まで溺れてしまいそうな、そんなイメージが一瞬頭をよぎる。
けど、今目の前で自分の好きな人が危険に晒されてる…。そして、自分に助けを求めている…。
一刻も早く助け出してあげたい…。その想いだけが唯を奮い立たせてリトの元へと導く。
それこそ、自分が『カナヅチ』だという事をすっかり忘れてしまう位に…。
そしてとうとう、唯はリトが沈んでいる地点まで辿り着いて…。
『ザパァ!!』
「やったじゃねーか古手川!!」
「……………………へ?」
その瞬間いきなりリトが浮き上がってきて、嬉々としながらそんな事を言ってきた。
しかもさっきまで溺れていた人物とは思えない位、割と平気そうに。
一体何が何だか訳が分からず、数秒間放心状態に陥る唯。そして岸で見ていたララと春菜。
361 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:51:20 ID:nw8urbF9
「古手川、お前泳げたんだよ!!自分の力だけでここまで――!!」
「ぇ……?」
リトに言われてようやく唯は気付いた。
自分がついさっき岸から飛び込んで、たった今プールの真ん中に立っている…。
無我夢中になって気付かなかったけど、ここまで自分の力だけで泳いでこれたという事に。
「私…、あそこからここまで泳いで来たの…?」
「ああ、そうだよ!やりゃ出来んじゃねーかよ古手川♪」
まるで我が身の事の様に、唯の肩に手を置いて喜ぶリト。
しかし唯は、せっかく泳げたというのに妙に釈然としない表情をしていた。
泳げた事は当然嬉しい…。嬉しいんだけど何故か素直に喜べない…。
いや、それ以前に一つ疑問が…。
「……結城くん、足は大丈夫なの?」
「…………………へ?」
「いや『へ?』じゃなくて、さっき足がつったって…」
「……ぁー、そりは……」
唯からのツッコミにさっきまでと一変、プールで身体じゃなく目を泳がせてしどろもどろになるリト。
その反応を見て唯は…。
「……………まさか結城くん」
「なな…、何………デスカ…?」
「足がつったっていうのは………………嘘?」
さっきまでの心配満面の顔はすっかり消え失せ、氷点下並みの冷たーい視線をリトに向ける。
「ぃ………ぃや〜…ホラ…、世の中にはショック療法という物があってデスネ…?
人間、極限状態になったら割と何でも出来る様になるモンだから……。
ま……まぁ良いじゃねーか、これでカナヅチ克服の糸口が見えたんだからさ。
は……はははは…」
「……」
「は……」
必死の言い訳と乾いた笑いで誤魔化そうとするリトだが、
唯の極寒のオーラに圧されて黙り込んでしまった…。
身体をプルプル震わせ握り拳に力が込もる。古い言い方をすればいわゆるMK5ってヤツですか?
362 :
この夏の目標:2008/07/27(日) 19:52:47 ID:nw8urbF9
「つまり…、あれだけ心配して死ぬ様な思いをしてまでここまで来たのに…、
結城くんは私を騙してたという訳…」
「ぃ…いや…、別に騙すつもりは…。あ、結果的にはそーなったけど…」
「結城くんっ!!!」
「ごっ、ごめんなさーーーい!!!」
「こらぁ!!待ちなさーーーい!!!」
そして、リトと唯の鬼ごっこが始まった…。
今度は本当に命の危険が伴っておりますが…。
「なんだぁ〜…。良かった…」
事実を知って、こちらは怒りよりも安心感の方が先に来て、その場にへなへな座り込む春菜。
「リト…、唯の為にあんな事したんだ〜。やっぱりリトって優しい♪」
そしてとにかくリトびいきのララは、怒るどころか益々リトに好感を持った模様。
「ほら見て春菜〜、唯ってばあんなに気持ち良さそうに泳いでるよ〜♪ちょっと泳ぎ方ヘンだけど」
「ぁ……ぁははは…」
「助けてーーー!!!」
「待てぇーーー!!!」
この後しばらく、この命懸けの鬼ごっこは続いたという。
とりあえず、唯のカナヅチは克服の兆しが見えたと言って良いのだろーか?
363 :
むに:2008/07/27(日) 19:58:06 ID:nw8urbF9
投下終了です。
夏=カナヅチ唯ちゃんってのが思い付いたんですが、実はただボケ倒しな唯ちゃんが書きたかっただけという話…。
個人的出来はアレだけど反省はしてません。ハイ。
おまけ
数日後――。
『バシャバシャ――』
「おぉ、泳げてる泳げてる」
「う…うん、確かに泳げてるけど…」
「やったね、唯♪これでカナヅチ克服だね♪」
「そ……そう?」
「いや…、コレ克服って言うのかな…?西連寺」
「ぅーん…、微妙…?」
「な……、何よ二人とも…」
「あれ〜?どっか問題あるの?」
「まぁ……確かに泳げてはいるぞ…。泳げてはいるんだけど…」
「ぅん…。ただ強いて上げるなら…」
「「犬掻きだもんな(ね)〜……」」
どうやら、古手川唯のカナヅチ完全克服はまだまだ先になりそうです…。
投下おつかれさまです。
見ながら笑ってしまいました。 唯かわいいなぁ・・。
投下の種類が偏るのは、仕方無いと思いますよ。
それぞれのキャラに性格がありますし、唯はSSが書きやすい性格ですからね。
とにかくおつかれさまです。 GJ。
>>364 終始ニヤニヤだった俺きめぇw
ボケ倒し唯可愛いな〜最初の教卓の上での行動を想像したらもうねw
GJです!
俺もニヤニヤしてたわw
やっぱり唯はかわいいなぁ
GJです
368 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 23:00:05 ID:f52jlQk7
投下おつかれさまです。
夏の風物詩ですなぁ。終始ニヤニヤしっぱなっしだった。
ボロボロな海パンとゴーグルと帽子を買い替えてプールでおもいっきり泳ぎたい気分になったよ。
GJ
上げゴメン…ニヤニヤしながらプール行っておぼれてくるわ…
カナヅチな唯もかわいいw
なんにせよGj
犬かきwww
>>365 おお、むに氏が唯メインを書いてくれるなんて。
GJです。
唯のリアクションってかなり大きいからどんなキャラに絡ませてもツッコミ役になりそうだけど、
うまく「カナヅチ」設定を活かした話作りでボケ役唯が大ハマリしてるな。
「リトと唯」書いてる者です
むに氏GJ!!!!
やっぱすげーよ!俺はこんなコミカルなSS書けないからいつも感心させられっぱなしです
すげえかわいい唯ありがとうです!俺もまだまだがんばります
犬かき唯たん(*´д`*)ハアハア
>>373 逆に考えるんだ!あんだがラブラブものを書いて、むに氏がコメディもの書いて、それでバランスがとれている
そう考えるんだ
というか「リトと唯」の人一ついってもいいか
何で過去編書いたんだ?できれば続きものが読みたいというかさ
ぶっちゃけると、何であんな書き方したのかなあって思ってるんだよ
本誌そのままとかさ、だってみんな一度は読んだものじゃん
それを丸々とか正直……な感じだ
あんだが本誌のネタを使ってるのはわかってるんだけど、やっぱオリジナルが読みたいわけじゃん?
本誌そのままとかだったら本誌読めばすむ事だろ?
少なくても俺はあんたのオリジナル話しでの過去編が読みたかったんだ
デートしてるとことかはよかったけど、今回のは期待外れでしたよ
って俺なんかすごいこと書き込んでしまった
偉そうにすいません
今週でいよいよヤミにリト以外の正カプが登場か?
全力で拒否させてもらおう
ヤミ金さん、カムバーック!
今こそあなたの力が必要な時だ!
や…闇金?
>>380 新参か
遥か昔にな、偉大なヤミ職人がいてだな(ry
お静ちゃんのスペック高杉だろ・・・
これでポニテならあと3回抜いてた
そういえばヤミ金さんずっと見てないな……
このスレ居るとメインヒロインって誰だか忘れてくるよな
ってか本当にメインヒロインが誰なのか分からなくなってしまった…
何言ってんだ!
このマンガのメインヒロインはザクッ!ザクッ!ドスッ!バスッ!ダスッ!
DI〇様「ロードローラーだッ!」
ドグシャアアアア!!!!
唯ヲタはこういうこと言うから・・・
メインヒロインもくそも
この漫画春菜と美柑以外に女なんかいたか?
全員ヒロインだよ
唯たんかわいいよ
391 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 00:39:05 ID:huCY9L6I
保守
392 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 10:09:38 ID:d+07+H8G
俺はヤミ金をいつまでも待っている
393 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 13:34:38 ID:N5i3rrlT
394 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 22:22:48 ID:HWEETvZi
保守
そろそろ神作品が来る
俺には分かる
そろそろリトと唯の続きが来る
俺の占いは当たる
397 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 01:02:58 ID:5sAMc27M
いやここはあえて新田×リトだろう。
俺の占術は天文学的な数値で当たる
むしろ栽培×新田を期待する
うぜえ流れだな
今から投下します
と、言ってもまた唯なのですが……
リクエストって事もあるんですが、どんどんアイデアが溢れて来て書きたくて仕方がありません
もう思いついちゃったら素直に書くしかないというか、もうどんどん書いていきますw
それでは唯スレ
>>116さんのリクエストもの投下します
少し長いです
金曜のホームルームの後
「う〜ん…」
クラスのみんなが帰る中、リトは腕を組みながら席を立ちことなく難しい顔をしていた
実は六時間目の授業が始まる直前、数学の先生に呼び止められたのだ
理由は今日返ってきたテストの結果について
『結城、最近たるんどるぞ! もっと勉強するよ〜に!!』
リトは自分のテストをもう一度思い返してみる
結城リト 数学U 14点
「はぁ〜〜」
重い重い溜め息が自然と出てくる
「マジでヤバいよなァ……勉強しねーと」
心なしか顔を青くさせているリト。そんなリトの様子に一人気付く者がいた
「結城くん」
「へ?」
俯いた顔を上げて目に映ったのは、同じクラスメイトでもある唯の姿
「何してるの? 用もないのに放課後残ってたら減点よ?」
「そ、それがさ…」
リトは先生に言われた事を包み隠さず唯に話した
「そんなの全部、結城くんがわるいんじゃない!!」
唯はリトから事情を聴き終えると、腰に手を当てながら捲し立てた
「いつも私、勉強しなさいって言ってるでしょ!!」
「うぅ…」
唯の一言一言にどんどん体を小さくさせるリト
「それなのにあなたはっ! だいたい、普段家に帰って何してるの? どーせゲームとか
テレビとかばっかりなんでしょ?」
全て図星なため、何も言い返せないリトはただただ、しゅんと項垂れた
「まったく! いつもいつも遊んでいるからこうゆう事に…」
と、そこまで言ってふと唯は気付く
(う…私ちょっと言い過ぎたかしら…)
視線をリトに向けると、リトは叱られた子供の様に小さくなっており
「……ッ!」
唯の胸がズキリと痛んだ
(って、どうして私がこんな気持ちになるのよ!? いけないのは結城くんなのに!!)
だけど、リトの様子が気になって気になって仕方がない
チラチラ視線を向けては、何度も胸の前で腕を組み変えて
唯は小さく溜め息を吐くと、カバンの中からゴソゴソと何やら取り出した
「……はい。コレ」
「え?」
リトの前に差し出されたのは一冊のノートだった
「使って! 私の数学のノートだから」
「使ってって……でも、お前はどーすんだよ?」
唯は再び腕を組むと、ふいっとリトに体を背けた
「私は別にいいわよ。それよりも、今はあなたの方が心配だし…」
「心配?」
その一言で唯のほっぺは夕日よりも真っ赤に染まり、大慌てで、身振り手振りと言い訳を始める
「か、勘違いしないでよね! ホ、ホラ、結城くんはクラスメイトだし、勉強で困ってる様だし
困ってるクラスメイトがいたら助けるのが当たり前でしょ?」
「そりゃまあそーだけど……でもやっぱ悪いって! 古手川が勉強できなくなるじゃん?」
そう言うと、リトはノートを唯に返す
「だ、だから、私は別にいいって…」
差し出されたノートを前に唯は目をギュッと瞑ると早口で捲し立てた
「う…うぅ…だ、だって、だって、いつもいつも私が結城くんに助けてもらったり、守ってもらったり…
私だって結城くんに何かしたいわよ! でも、私、こうゆう事しかできないし……
あなたに使ってほしいの! 私のノート! これぐらい私にさせてくれたっていいじゃない!!」
「古手川…」
赤くなった顔を隠す様に唯はふぃっとリトにそっぽを向いた
「……ありがとな! そんな風に思ってくれてるなんてオレ思ってなかったからさ」
「……」
「じゃあこれ、大事に使わしてもらうな?」
「……げ、月曜日にでも返してくれたら私は…」
ゴニョゴニョと恥ずかしそうに話す唯に新鮮さを覚えたのか、ニッコリ笑うリトに、唯の顔はとろけそうなほど赤くなる
「と、とにかく! それ見てもっと勉強がんばりなさいよ! わかった?」
「ああ。古手川のノートもあるし、もう怖いものなんかねーよ!」
「ちょ、調子に乗らないの! もぉ…」
リトに釘をさすも、いまいちいつもの調子がでない唯だった
そして帰り道
トクン、トクン……と、胸を高鳴らせながら唯は家路に着いていた
やけに顔がポォっとする
そればかりか、体までなんだか火照った様に熱くなっている
原因は言うまでもなく教室でのやり取りだ
思わず言ってしまった本音
そして、今、自分がいつも使っているノートがリトの手にある
そんな些細な出来事ですら、今の唯にとってはとても大きな事だった
「結城くん」
リトの名前を口にするだけで、教室で見たリトの笑顔が頭に浮かぶ
それだけで、顔は赤くなり、ニヤけてしまう
(ハ、ハレンチだわ!! こんな事っ)
そんないけない自分の頭をポカポカ叩いていると、家の門柱から出てくる遊の姿に唯は慌てて表情を切り替えた
「お兄ちゃん」
「ん? 何だよお前かよ」
素っ気ない遊の態度に唯は頬を膨らませた
「何だとは何よ!? って、またどこかに行くつもり?」
「あーあー、またうるさいお説教の始まりかよ」
「お兄ちゃん!! 私は…」
「あーはいはい、わかったわかった」
そう言いながらポンポン頭を撫でる遊に唯は複雑な顔をする
「それはそーと、今日、ウチお前しかいねーから、ちゃんと大人しく留守番しとけよ?」
「もぉ! またどこかに遊びに行くつもりなの?」
手を払いのけながら、口調をキツくさせる妹に遊はニッと笑みを浮かべた
「そー怒ンなって! ちゃんとお前の好きなケーキ買ってきてやるからさ」
「そ、そんなコト言ったって誤魔化されないんだからね! いい加減遊ぶのをやめてもっとマジメに…」
これ以上ここにいたら長くなりそうだと感じた遊は、もう一度唯の頭をクシャっと
撫でるとそのまま逃げる様に背中を向けた
「ホント! 帰ってきたら今度こそちゃんと話しをしないと!!」
遊に乱された髪を整えながらそう愚痴る唯だったが、遊の背中を見つめる目に寂しさの
様なものがあるのは気のせいか
唯は小さく溜め息を吐くと、誰もいなくなった家のカギをガチャリと開けた
部屋に着くなり、唯はそのままベッドに大の字になって寝転んだ
制服がクシャクシャになるのはわかっていたが今はこうしていた気分だった
家に一人きり
いつもと変わらない日常
小さい頃から繰り返される毎日
「はぁ〜……」
ボーっと天井を見ていると、頭に浮かぶのはリトの事だ
リトと出会ってからは、毎日がお祭り騒ぎの連続
いつも問題を起こされて、そして、お説教して
時にはわけのわからない世界に行ったり、わけのわからない連中に連れ去られたり
思い返すだけでドッと疲れが込み上げてくる
だけど、そんな毎日にいつもあるやさしい笑顔
唯はリトの笑顔が大好きだった
あったかくって、やさしくて、そして、いつもそばにあって
「結城くん…」
あの時、教室で最後の最後で言えなかった本音
私が勉強を教えてあげてもいいわよ
リトがどう返事をするのかはわからない
だけど、もしいい返事をくれるならそうしたら────
その時間だけ二人きりになれる。結城くんと一緒にいられる
結城くんと
そこまで考えて、唯は自分の胸がどうしようもないほどドキドキしてるのに気付くと、慌てて頭をブンブン振った
「ダ、ダメよ! ダメ!! こ、こんな事ハレンチだわっ!!」
なんて言うも頭の中はリトでいっぱいだ
「う…うぅ……もう! 私がおかしくなってるのは結城くんのせいだわっ! 結城くんが悪いんだからっ!!」
身も蓋もない事を言いながら、唯はゴロンと体を横にした
「……ホントに結城くんのせいなんだから……だから…ちゃんと責任取りなさいよね……」
机に上に飾ったクラスの集合写真
それは、毎日、穴が開くほど見続けた唯がただ一つ持っているリトの写真
その一か所を見つめながら唯はそう小さく呟いた
そして
………
……
…
ピンポ〜ン♪
その音に唯はハッと目を覚ました
どうやらいつの間にか眠っていたようだ
重い体を起こした時、玄関から再びチャイムの音が鳴る
「もう…何なの……」
眠い目を擦りながら階段を降りると、唯は玄関のドアを開けた
「どちら様…」
最後まで声が続かない、そればかりか唯の顔はポカンとなってしまう
「えっと…結城だけど……その、お邪魔だったとか?」
「……」
「古手川?」
ジッとリトの顔を見つめる事、数秒
唯はバタンとドアを閉めると、そのドアにもたれながら息を整えていく
(ど、ど、ど、どうして結城くんが家に来るのよ!?)
だけど、今は余計な詮索は後回し
逸る気持ちと、ドキドキと鳴り響く胸を無視しながら、唯は玄関の鏡の前で急いで身なりを整えていく
外れかけの胸元のボタンを正し、ズレかけのソックスをきちんと履き直し、手グシで髪を整え
もう一度鏡の前で深呼吸
「コホンっ! お待たせ結城くん。それで何の用事なの?」
軽く咳ばらいをしながら、いつもの毅然とした姿で現れた唯に、今度はリトの方がポカンとなってしまう
「い、いやその…ノート返しに来たんだけど」
「ノート?」
見ると、確かにリトの手には放課後に渡したノートが握られてある
「もう書き写したからさ。それで」
「か、書き写したって……ちょ、ちょっと待って。どれだけページ数あったと思って…」
「まーかなり大変だったけどな」
苦笑いを浮かべるリトに唯は思わず声を荒げてしまう
「ど、どうして……どうして? 言ったじゃない! 月曜日でいいって!! それなのに…
…私は本当に結城くんのためを想って…」
「うん。それはわかってる。わかってるからこそ早くしようと思ってさ」
「え?」
「オレ、普段、古手川がすげーマジメに勉強がんばってるの知ってるからさ、だからその…
…迷惑になるんじゃないかって思ってさ…」
「そんな…」
迷惑だなんて思ったことなんかない
そればかりか、普段、助けて守ってくれて、そのお礼がちょっとでもできるんじゃないかって思ってるほどで
唯はリトから受け取ったノートに視線を落とした
「とりあえずすげー助かったよ! 次はテストで赤点取らねーようにもっとがんばらねーとな!」
「……」
「…またわかんないトコあったら質問とかさせてくれよな。じゃあな古手川」
「ま、待って!」
そう言って帰ろうとするリトの服の袖を唯は反射的に掴んでしまった
「へ?」
キョトンとした顔のまま自分の方を振り返るその顔を唯はまともに見られないでいた
真っ赤になった顔で、それでもリトの服を離そうとはしない
「古手川?」
「……帰っちゃ嫌…」
「え?」
「帰っちゃ嫌! も、もう少しここにいて」
リトはただ目を丸くして唯の事を見つめた
その視線に気づいたのか、唯は慌てて服から手を離すと、身振り手振り大急ぎで口を開いた
「そ、その……ホ、ホラ、結城くんの家ってここから遠いじゃない? す、すぐに帰ったら疲れるというか……
うぅ……す、少しぐらい上がってお茶でも飲んで行ってくれてもいいじゃない…」
最後の方は声のトーンも落ち、リトの顔をチラチラと見つつぽそぽそ話す唯
「い、いいのかよ……だって家族の人に迷惑になるんじゃ…」
「し、心配ならいらないわ! だって今日ウチには誰もいな…ぁ…」
そう。今、家の中は唯一人だけ
そこにリトが来れば当然、二人っきりになるわけで……
唯の顔が知らず知らずの内に赤くなっていく
「やっぱ問題あるんじゃねーか…」
「ち、違うわ!! 問題なんてあるわけないじゃない! で、でもやっぱり問題というか…」
一人問答を始めてしまった唯に、置いてけぼりをくらってしまうリト
「あ、あのさ、やっぱオレ帰った方が…」
「そんな事ないわよ!! あ、上がって結城くん! 早くっ!!」
「え…あ、ああ。じゃあ、おジャマします」
こうしてリトは、半ば急かされる様に唯の家に入っていった
初めて男の子を家に入れた唯
初めて女の子の家に入ったリト
二人だけの時間が始まる
リビングのソファの上でリトは緊張でガチガチになっていた
女の子の、それも同い年の同級生の家
普段よく話したり(主にお説教だが)しているだけに緊張の度合いも上がったりする
唯は今、奥のキッチンでお茶の用意をしている
唯が奥へ消えて、まだ数分しか経っていないのに、今のリトにとっては数分が数時間にも及ぶ
永劫の時の様な感じすらしていた
まだかまだかと、首を伸ばしていると、奥からトレイを持った唯が現れる
「遅くなってごめんなさい」
「べ…別に気にする事ねーよ」
内心の動揺を悟られない様になんとか平常を取り繕うと姿勢を正すリト
テーブルに置いたカップから香りのいい湯気が立ち上る
可愛らしい白の陶器に淹れた紅茶と、ハートや星型をしたクッキー
さっきまでの緊張はどこにいったのか、リトのお腹がぐぅ〜っと鳴る
「あ…あははは」
頭に手をやりながら照れくさそうに笑うリトにつられて唯はクスっと小さく笑う
「もぉ、お腹空いてるなら空いてるでちゃんと言いなさいよね! そしたらもっと別の物を…」
「あ! いいっていいって! オレはこれで十分だからさ! って、コレ食べてもいいのか?」
もう辛抱たまらないと言った様子のリトに唯はますます笑みを深めると、どうぞとリトにお茶を勧める
「いっただきま〜す」
リトは早速クッキーを数枚手に取ると口の中に放り込む
「ちょ…ちょっと慌てたら…」
「うっ!」
唯の思ったとおり、クッキーを喉に詰まらせてしまうリト
「もう! 何やってるのよ!?」
ソーサーごとカップを持つと唯はリトに紅茶を手渡す
熱い紅茶を我慢しながら喉の奥へ流し込むリトの横で、唯は心配そうにその横顔を見つめながら
リトの背中を優しく撫でていく
「…ん……んん…ぷはぁ…はぁ〜〜死ぬかと思ったァ」
「まったく! 誰も取ったりしないんだからもっとゆっくり食べなさいよね!」
「ごめん…」
お母さんに叱られた子供の様に小さくなるリトをしばらくジト目で睨むと、唯は安心したのかそっとリトの背中から手を離した
(あ…)
その時、背中から離れるあったかい感触にリトの中で何かが声を上げた
「ん? どうしたの? まだノドの奥に残ってるとか?」
「いや違…えっとその……あ、ありがとなって思っただけで…」
様子のおかしいリトをしばらくキョトンと見つめた後、まあいいわと、唯は自分のカップを手に取ると紅茶に口を付ける
おいしい紅茶とクッキーを味わう事十数分
お腹が膨れたのかリトは何気なく話題を切り出した
「にしても古手川のノートすげー助かったよ!」
「え?」
「だって、すげえ見やすい上によくまとめててさ、さすがだなァって」
「そ、そんな事…」
うれしさを誤魔化す様に唯はほとんど残っていない紅茶に口を付ける
「それに古手川ってすげーキレイな字書くんだな」
「私の字?」
「うん。なんつーかすげーキレイなんだけど、その中にカワイさがあって、それが古手川らしいとゆーか…」
「……」
みるみる赤くなる頬とは裏腹に唯はリトから目を逸らす事ができなかった
「オレ、好きだよ! 古手川の字! もちろんノートの書き方とかまとめ方とかいろいろあるけどさ
今日、ノート見ながらそんな事思っちゃってさ」
まるで今日あったうれしかった事でも話しているかの様なリトに、唯の心拍数が急上昇を始める
今まで自分の字を褒められた事などない唯
人生初の出来事が想いを寄せる相手からだというダブルでうれしい出来事に、唯の顔が自然と綻んでくる
それは、学校では見せる事のない唯の本当の姿だった
リトの目が大きく見開かれる
「ん? 何よ? 私の顔に何かついてる?」
ジッと見つめるリトに何を思ったのか、ポットから茶こしを使いながら紅茶をカップに注ぐ唯の顔は赤く染まる
「いや…その……古手川ってそんな顔するんだなァって思ってさ」
「え?」
「ホ、ホラ、なんつーか、古手川っていつもオレに怒ってばっかだから、そんな風に笑ってるトコがすげー新鮮だなって思って」
「へ!?」
カップを持つ手がピタリと止まる
「今日やっぱ古手川のウチに来てよかった! だって、こんな良い顔の古手川に
会えたんだもんな! なんかすげーうれしい」
ニコっと満面の笑顔を浮かべるリトの顔と、その言葉をダイレクトに見て聞いてしまった唯の顔は一瞬で沸騰してしまう
恥ずかしさとうれしさがごちゃ混ぜになった感情にカップを持つ手がプルプルと震え、唯は思わず大声を上げてしまう
「な、ななな何おかしな事言ってんのよ!?」
その瞬間、手から離れたカップは真っ逆さまにリトのズボンへと落ちていく
あっと言う間もなく熱々の紅茶をズボンにぶちまけられたリトは思わずその場から飛び上がってしまう
「あっっっっちぃぃっっ!!!!」
「結城くん!?」
唯は慌ててタオルを手に取ると、急いでズボンの濡れた部分を拭いていく
「ごめんなさい…」
「別に気にすることないって! はは…」
「でも…」
顔をくもらせながら一生懸命タオルを動かすが、しばらくすると唯のその手がピタッと止まってしまう
間近に迫るリトの股間部分にみるみる顔が紅潮をし始める
「う…」
だけどリトをこのままにしておくなんてできるはずもない
ましてこうなったのは他ならぬ自分のせいなのだ
指先まで真っ赤にさせながら唯はゴシゴシとズボンを拭いていった
「だ、大丈夫? 結城くん…」
「ん? ああ。まー熱いの最初だけだったから平気だけど…」
リトはチラリと視線を下げる
ソファに腰掛ける自分の下腹部を、タオルを手に唯が一生懸命拭いている姿
嫌がおうにも邪まな気持ちがふつふつと湧き上がる
顔を真っ赤にさせているのはもちろん、どこか不安そうな、心配そうなその顔が、リトの気持ちに拍車をかける
ゴクリ────!!
唾を喉の奥に流し込むその音に唯は何を思ったのか、その動きをピタリと止めると、
ゆっくりと上目遣いでリトの顔を見つめた
その時、ゾワッと背中に電気が走ったのをリトは確かに感じた
その感触を無理やり押し込めると、どう見ても引きつっているとしか思えない笑顔を浮かべながら、リトは口を開いた
「そ、そのさ……も、もう大丈夫っつーかえっと…」
だけど言葉が思う様に出てこない
それは唯も同じだった
さっきから胸のドキドキが止まらない
プルプル小刻みに震える手をギュッと握りしめながらも、目線はリトの顔と下腹部を行ったり来たり
好きな相手。それもこんな形といえ急接近中
どんなに隠しても気持ちが後から後から溢れ出して止まらない
「……」
「……」
とろけそうな空気の中、おもむろに立ち上がった唯にリトの目は吸い込まれる様に引き付けられる
どっちも顔を真っ赤にさせたまま無言の時間が流れる
やがて唯が小さな声でぽそぽそと声を出した
「そ…その……シミになっちゃうから……結城くんズボン脱いで。洗濯するから」
「へ? で、でもそこまでする事ないんじゃ…」
「だ、だってこうなったのは私のせいだし……そ、それにこのまま結城くんを帰すだなんてできないわ」
「だよな…」
なんとも言えない微妙な空気の中、どちらも気持ちを押し込めるように、唯はカップや皿の後片付け
リトは奥でズボンの履き替えと、進みそうで進まない二人の話しはまだまだ続く
「それ兄のなんだけど、サイズとかどう? やっぱり大きい?」
「ん? まあ…ちょっとな。でも助かるよ! ズボン乾くまでどーしよかって思ってたからさ」
と、冗談っぽく笑うリトに唯は申し訳なさそうに顔をくもらせた
「本当にごめんなさい…」
「も、もういいって! そんな気にする事でもないしさ」
「でも…」
「ホ、ホント! シミとか取れなくても別に気にならないのだし」
いつもとは違う弱々しい感じの唯に、リトもいつもの様な調子がでない
(……古手川がオレにこんな謝るのもなんか新鮮だよなァ)
口に出したらまた唯がテンパってしまう恐れがあるため心の中だけでそう呟くリト
さっきまでのやわらかい顔はどこに消えたのか、小さくしゅんと縮こまっている唯に、リトはクスっと笑った
「ま、まあ、乾くまでもうちょい時間もあるし、その……ココで待たせてもらってもいいかな?」
「え? そ、それはもちろん! というか結城くんがいたいだけいてくれれば…私もいて欲しいというか…」
「へ?」
「そ、そのそういう意味じゃなくて! わ、私の責任でこうなったからって意味で決して
結城くんと一緒にいたからとかじゃ…」
また、もごもご口調になる唯にリトは眉を寄せた
(……やっぱ、今日の古手川って変だよな…)
不思議そうな顔をしているリトに唯はまた言い難そうにぼそぼそと呟く
「そ、それでその……結城くんお腹空いてるんじゃない? よ、よかったら一緒に夕ごはんでも…」
「え? いいのか!? だって、オレ、急に来たし、食事の都合とかいろいろあるんじゃないのか?」
「それは平気よ! だって今から作るんだし」
「作るって古手川が?」
「当たり前じゃない! ほかに誰がいるのよ?」
「だ、だよな。えっとじゃー……ホント、ご馳走になってもいいのかな? オレ」
「もちろんよ! ちょうどいい時間だし、それにズボンの事もあるしね」
どこまでもこだわり続ける唯にリトは苦笑した
(ホント、律儀っつーか、マジメっつーか)
だけど、そんなところが唯のいいところでもあるとリトは気付いていた
「じゃあお言葉に甘えて古手川の手料理ご馳走になります!」
手料理の部分に笑みを深くした唯は、いつも以上の気合いを入れて頷いた
「うん!」
美柑に今日の夕ごはんはいらないとケータイで告げたリトは、キッチンへとやってきた
キレイに整頓された調味料に、シンクの中にはすでに洗った後なのか、野菜が瑞々しく光っている
(へ〜やっぱキレイなキッチンだな。さすがは古手川ってゆーか…)
自分のウチのキッチンと見比べるリトの目にふと唯の姿が映る
その瞬間、リトは何とも言えない気持ちに陥ってしまう
エプロンを付け、髪をアップスタイルにした唯の姿
心拍数は跳ね上がり、顔に熱が帯びてくる
「……」
思わずその後ろ姿にボーっと見惚れてしまうリト
その気配に気づいたのか、くるっと後ろを振り返った唯はその形のいい眉を寄せた
「そんなところで何してるのよ? いいから、あっちで座って待ってて」
「あ…ええ……っと、オ、オレも手伝おうかと思ってさ、はは」
「え? 手伝ってくれるの?」
「あ、ああ。こーゆーのは一人より二人の方が楽だし、それに楽しいだろ?」
「そ、それは…」
今までずっと一人でやってきた唯にとって、誰かと料理をするだなんて初めての経験
まして相手はリト
(こ、これって何か新婚…)
ドキドキと高鳴る気持ちに急かされる様に、唯は野菜へと向き直る
「じゃ、じゃあお願いするわ! と、とととりあえずニンジンとかじゃがいもの皮むき任せても平気よね?」
「おう! 任せとけって!」
唯の心の中など微塵もわからないリトは唯の隣に並ぶと、ピーラーを手にせっせと皮をむいていく
「……」
その横顔に唯の鼓動はますます大きくなっていく
(ケッコンしたらこんな感じなのかな…)
毎日献立を一緒に考えて、二人並んで、味見をしながら料理をして
「あ〜ん」ってしながら結城くんに食べさせてあげて、それから、それから……
と、そこまで考がいった時、唯の頭が限界を迎えてしまう
(わ、私ったらいったい何考えて……だ、だいたい結城くんが私の…私の…)
また想像の世界に旅立とうとした時、隣から「いてっ!」と、小さく声がした
目をパチパチさせながら隣を見ると、リトが指を押えていて、その指の間からポタポタと血が落ちていて────
唯の顔が一瞬で赤から青に変わる
「結城くん!?」
「ってぇぇ…。ちょっと切っちまったみてーだな」
「切ったって……ちょ、ちょっと見せなさい」
急いでリトの指を診るとピーラーで切ったのか、薄く切れた肉の間からどんどん血が溢れていた
唯はすぐに水で傷口を洗い落としていく
「別にそんな大げさにしなくても大丈…」
「何言ってるの!? 破傷風にでもなったらどうする気よ!!?」
「それはいくらなんでも…」
リトの言葉をよそに、唯は傷口の血やバイ菌を洗い落としていく
けれども後から後から血が滲み出て止まらない
唯はリトの指を自分の口に近づけると、おもむろにパクっと指を咥えた
「!!!!!??」
声にならない声をあげるリト
そんなリトと対照的に、唯はどこまでも真剣だった
本当に心配そうに不安そうに顔をくもらせながら、それでもリトの血を止めようと必死に口を動かしていく
舌を指に這わせながら、チュパチュパと唾液を絡ませる唯
(古手川…)
相変わらず心臓はバクバクと破裂しそうになっているが、唯のそのなんとも言えない表情に
リトは次第に落ち着きを取り戻していく
しばらくして、ゆっくりと口から離れた指には、血に混じって唯の唾液が妖しい輝きを見せながら糸を引いていた
リトの喉が再びゴクリと音を立てる
「とりあえず血は止まったみたいだから、後はもう一度消毒ね! ちょっと待ってて! 今、救急箱取ってくるから」
そう言うと唯はパタパタと小走りにキッチンから出て行った
その後ろ姿をリトは半ば茫然と見つめていた
「指切っただけなのになんつーか…」
大袈裟だと思う半分、取り乱すほど心配してくれる唯の優しさがリトはうれしかった
廊下の奥からパタパタと小走りに戻ってくる足音にリトはクスっと笑みを浮かべる
「結城くん、救急箱持って来たわよ!」
「ありがと古手川」
にっこりと笑うリトに唯の胸が音を立てる
「べ、べ、別にこんな事当然というか……ふ、風紀委員として当り前の事をしているだけで私は…」
そっぽを向きながらぼそぼそ話す唯にリトは笑みを深くした
ますます顔が赤くなってしまう唯
「でも、古手川のそんなトコがオレすげーうれしいよ」
「バ! バカな事言ってないで早く指診せなさいよ!!」
急に怒り出す唯に驚きながらも、リトは唯に指を差し出した
「はい。これでもう大丈夫でしょ」
キレイに貼られた絆創膏にリトは申し訳なさそうに頭を垂れた
「ホント、ごめんな古手川。手伝うとかいいながら余計な事やっちまって…」
「…だから別にいいって言ってるでしょ? でもまァ…」
唯はチラリとボールに入っている野菜に目を向けた
形が歪で、皮もところどころ残ったままのニンジンやじゃがいも
唯はリトに向き直ると、いたずらっぽく声を尖らせた
「結城くんには別のことを手伝ってもらわないとね」
「別の事?」
「そ、野菜の皮むきも出来ない様な人にはテーブルを拭いたり、お皿を並べたりする方がいいでしょ?」
「う…うぅ…マジでごめん」
吹き出しそうになるのをグッと我慢すると、唯は立ち上がった
「それじゃあ続き始めるわよ」
「お、おう」
リトの意外な? 弱点を見つけた事に唯は意気揚揚とまな板に向かった
トントントンと包丁の軽快な音を聞きながら、リトは椅子に座ったまま黙って唯の後ろ姿を眺めていた
唯の料理をしている姿もめずらしいと感じたが、それ以上に、その手捌きにただただ感心してしまう
慣れもあるのだろうが、とにかく手際がいいのだ
包丁の扱い方、調味料の出し入れ、味を確認するその仕草一つ一つにリトはただ関心してしまう
美柑とはまた違う唯の料理の仕方
それはリトに新鮮さを与えるに十分なほどだった
(古手川ってなんか…)
後ろ姿しか見えないが、エプロン姿が妙に様になっていると感じる
髪をアップにしているため、普段隠れている白いうなじに心臓がドキドキと高鳴る
(なんか…)
長い黒髪を耳の上にそっとかけ直すその仕草が
おたまで味見をしようとふ〜ふ〜とダシに息を吹きかけるその横顔が
リトの気持ちをざわざわと揺らす
「古手川ってさ、なんつかーか良いお嫁さんになるんじゃないかな」
何気なく発したリトのその言葉に唯は肩をビクンと震えさせると、次の瞬間、小さく「いたっ」と声を上げた
「へ?」
その声に横から唯の手元を覗き込んだリトの目がみるみる大きくなっていく
包丁を握りしめる反対の手、左手の薬指から血が滲み出ていたのだ
「ちょ…大丈夫かよ!?」
「ん、平気よ。ちょっと切っただけだから」
そう言いながら先ほどと同じ様に自分の指を口に咥えながら、恥ずかしそうに唯は顔を染めた
「へ、平気ってでも…」
「大丈夫よ! 薄く切っただけだから。それより絆創膏取ってくれる?」
リトに心配かけまいといつもと同じ淡々と話す唯だったが、逆にその事がリトを苦しくさせる
「ホントごめん! オレが変な事いったからだよな?」
「……」
「はぁ〜オレ、なんか今日、古手川のジャマしてばっかだな…」
絆創膏を取りながらも、ガックリと肩を落とすリト
「…………そう思うなら、残さず全部食べなさいよね?」
「え?」
「私の作った料理! 残したりしたら許さないんだからっ!」
上目遣いに白いほっぺたをサクラ色に変えながら、ぽそぽそと話す唯にリトは力強く頷く
「そ、そんなの当たり前だろ! 古手川が作ったものならオレいつでも全部食べるって!」
「…そ…そう」
大袈裟とも取れる言葉だったが、リトの言葉というだけで唯にとっては十分すぎるほどうれしく感じる
「それより指大丈夫か? 痛みとかは?」
「うん。平気よ」
「そっか。じゃあ指出して。オレが貼ってやるよ」
「ぇ…あ…」
唯が応えるより先に傷口に絆創膏を貼っていくリト
指と指。その小さな触れ合いが唯の胸をときめかせる
「……」
「……っと、これで大丈夫だと思うけど、痛みとかあったらちゃんと言えよ? 古手川」
「……」
「ん? 古手…」
なんの返事もないことに不思議そうに顔を上げたリトの体が固まってしまう
至近距離同士。おまけに指同士とはいえ、まるで手を繋いでいるかの様なその体勢に、湯気が
でるほどリトの顔は赤くなってしまう
「こ、これはその…そーゆーんじゃなくて…えっと…」
それでも決して指を離さないリトに唯の顔も溶けてしまいそうなほど赤くなっていく
「あ…ありがと」
「お、おう」
おいしそうな湯気を立ち上がらせる鍋の横で、二人はしばらく真っ赤になりながらも束の間の繋がりを感じていた
あれからしばらくドキドキが続いて、中々調子を取り戻せなかった唯だったが、今はテーブルの上にならんだ
自信作にうんうんと頷いていた
「よし! これで完成よ! お待たせ結城くん」
唯同様、テーブルの上に並んだおしそうな匂いのする料理の数々にリトの目が輝く
今日のメニューは、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、ご飯に味噌汁、そして、お漬物
シンプルだが、男心をくすぐるメニューのチョイスにリトのお腹は早くもぐぅ〜ぐぅ〜と鳴りだす
「その、結城くんの好きなものとかわからなくて、一応、私の得意料理なんだけど…」
「全然いいって!! すげー好きだよ肉じゃが!!」
二カッと歯を見せながら笑うリトに安心したのか、唯は一先ず胸をホッと撫で下ろした
「とにかく冷めない内に早く食べましょ?」
待ってましたと急いで椅子に座るリトに自然と笑みがこぼれる
「それじゃあいただきます!」
「いただきます」
早速、肉じゃがに箸をつけるリトを前に、唯は黙ってその様子を見つめていた
はっきりいって今日は腕によりをかけて作った自信作だ
腕だけじゃない、愛という名の調味料もたっぷりといれてある
だから逆にその自慢の味が不安で不安で
結城くんの口に合うか、おいしいと言ってくれるか、ちゃんとおかわりしてくれるのか
リトの一挙手一投足を見つめる唯の目は真剣だ
勉強や風紀活動をしている時より、どんな時よりも真剣だ
もぐもぐとじゃがいも噛み締めるリトに、唯は白い喉をコクンと鳴らした
(どうなんだろ? おいしいのかな? こ、これでもしおいしくないとか言われたら…)
嫁失格なのか、はたまた彼女すら失格になってしまうのか
唯は自分のものには箸すら付けず、黙ってリトの感想を待ち続ける
口の中のものを飲み込んだリトの第一声は唯の想像の範疇を超えるものだった
「す……げーーうまいって古手川!!! こんなうまい肉じゃがオレ初めて食うよ!!!」
「え?」
唯の見つめる先、どんどん皿の中の肉じゃがは減っていく
「うまい! うまい! マジでうまいって!! 古手川すげーじゃん! オレ、ちょっと感動した」
「そ、そんな大げさな…」
「全然大げさとかじゃねーって! うわ! このほうれん草とかもすげーうまい」
あっという間に平らげてしまったリトに唯はうれしさが隠しきれなかった
「お、おかわりする?」
「うん! 頼むよ! って、今度はさっきよりも多めにいれてほしい」
「はいはい」
皿を受け取って鍋に向かう唯の足は今にも小躍りしそうなほど軽やかになっている
顔だってずっと笑顔全開だ
ルンルン気分で鍋から肉じゃがを装う唯の背中に、リトは声をかけた
「にしても肉じゃがが得意とか古手川って家庭的なんだな」
「そ、そんな事ないわよね! これぐらい誰だって…」
なんて言ってしまうが胸のドキドキは大きくなる一方
「そっかー? ん〜じゃあさ、他なんか得意なのあったりする?」
「他? ん〜そうね……ハンバーグとかシチューとかかな」
菜箸を片手に悩む後ろ姿にリトは顔を輝かせた
「マジで!? それって全部オレの好きなやつじゃん!」
「え? そうなの?」
くるっと後ろを振り返った唯を出迎えたのはニコニコ顔のリト
まるで作ってと言わんばかりのその顔に唯の胸がトクンと音を立てる
唯はぷいっと顔を背けると、黙々と肉じゃがをお皿に盛りつけていく
(ちょ…ちょっとは落ち着きなさいよっ!! こ、これじゃホントに…ホントに……)
もうドキドキは止まらない
顔だって真っ赤っかになってしまっている
(でも……でもでも、結城くんが作ってって言ってくれるなら私…)
幸せいっぱいの中、二人だけの食事タイムは進んでいく
結局、肉じゃがどころかホウレン草のおひたしも残さずキレイに食べたリト
満腹感に包まれながらも、一人洗い物をする唯の姿に立ちあがると、すっとその隣に並んだ
「結城くん!? いいわよ! 座って待っててくれれば…」
「いいからいいから! あんなおいしいの食べさせてくれたお礼もあるしな」
「そんな…」
「えっと……これが洗剤でいいのか?」
「う…うん」
ガシャガシャ、バシャバシャと音を立てながら、リトと唯、二人は並んで洗い物をする
リトが洗った食器を唯が受け取りタオルで拭いていく
初めての事なのにまるで流れる様な作業
いっぱいリトに褒めれた唯はずっと顔がほころび
いっぱいおいしい食事をご馳走になったリトは満腹感でいっぱいで
思わず鼻歌でも歌いたくなるこんな時間こそ幸せと呼ぶべきなのだろう
食器を一通り洗い終えると、どこからか時間を知らせるタイマーが鳴りだした
「あ、ズボンが乾いたんだわ」
「ホント! よかったどーなる事かと思ったぜ」
「もぉ、大げさなんだから。ちょっと待ってて。取ってくるから」
唯は乾燥機のある部屋まで来ると、蓋を開け、ちゃんと乾いているか確認する
「……うん。大丈夫ね。これで結城くんちゃんと…」
そこまで言ってふと気づいてしまう
このズボンを受け取ったらリトはもう帰ってしまうという事実に
ズボンを握りしめる唯の手に力がこもる
「結城くん…」
最初は急な事でいろいろ慌ててしまったけど、一緒にお茶をして、料理をして、そして、一緒に食事して
いつの間にかリトがこのままずっと一緒にいてくるんじゃないかという想いに唯は駆られていた
ホントはそんな事あるはずないのに……
唯はズボンに顔をうずめるとギュッと自分を抱きしめた
まるで崩れ落ちそうになる自分を堪える様に
「古手川?」
いつまで経っても戻ってこない唯を心配して、リトはひょいっとドアから顔を覗かせた
「どしたんだ? 何かあったのか?」
「え、ええ。何でもないわ…」
「そっか? ならいいんだけどさ…」
少し目の周りが赤くなっている唯に怪訝な顔をするも、リトはそれ以上聞けなかった
「で、オレのズボンは?」
「あ、ごめんなさい。はいコレ! ちゃんと乾いているわよ」
「おお! サンキュー古手川」
ズボンを広げながらうれしそうな声を出すリトに唯は苦笑した
本当は自分が悪いのに、いつの間にか感謝される立場になっている事に
(…結城くんらしいな……)
そう心の中で呟くと、何かがズキリと痛んだ
さっきまであんなに楽しくてうれしかった気持ちがどんどん消えて行っている事に、心が小さく震えていた
「古手川? どーしたんだ? やっぱお前さっきから変だぞ?」
「……何でも…ないわよ…」
「でも…」
「いいから早く着替えなさいよ! これ以上遅くなったら家の人が心配するでしょ?」
なんだよそれは!? とブチブチ文句を言いながらもリトは言われたとおりに隣の部屋に着替えに行った
ドアを閉めると、唯はそのドアに背中を預けて小さく溜め息を吐いた
「……帰っちゃうんだ…」
いつになく弱々しい心の声がつい口に出てしまう
私、どうしちゃったんだろ……?
前はこんな事思わなかったのに……
……こんなの…こんなの結城くんの…………結城くんのせいなんだからね…
ドアにもたれながら、唯は胸に手を当てながら何度も気持ちを反芻させた
「お待たせ!」
部屋から出てきたリトはこちらの気持ちなどまったく気づきもしないほどいつもと同じ調子だ
(もぉ…)
いろいろ言いたい事はあるが、面と向かって言えるはずもなく
代わりに唯は、ぷくっと頬を膨らませた
「あ、あれ? なんか怒ってる?」
「知らないわよ!」
ぷいっとそっぽを向ける唯にリトは頭を掻くしかない
(ったく、何なんだ? オレなんかやったのか?)
まったく女の子心がわからないリトは溜め息を吐くしかなかった
そして別れの時は、刻一刻と迫る
トントンと、靴を履き終えると、リトはくるりと唯に向き直った
「じゃ、オレ帰るな」
「…うん」
やっぱりどこか様子がおかしいと感じるリトは眉を寄せる
が、考えても考えても答えが出てこない
何かを言ったわけでも、何かをしたわけでもない
だけど、無性に気になってしまう
リトはこの雰囲気を変えようととりあえず唯に話題をフッた
「あ、あのさ、今日の夕ごはんホントにうまかったよ! だからその…今度また…」
「また?」
「えっと……また古手川の料理が食べたいなって」
「え?」
唯は目を丸くさせた
(結城くん私の作ったのそんなに…)
リトの顔は誰が見てもわかるほど赤くなっている
その姿に唯は思わず小さく笑ってしまう
「…仕方ないわね」
「へ?」
「作ってあげる! その代わり今度来る時はちゃんと前もって言いなさいよね! わかった?」
「あ、ああ。で、でもホントにいいのか? 迷惑とかじゃないかな?」
迷惑なわけない
それどころかうれしすぎてどうにかなっちゃいそうなほどだ
「…そう思うなら、学校で少しでも私を怒らせない様にしなさいよね!
怒った分、私だって疲れるんだから!」
腕を組みながらどこか明後日の方を見ながら話す唯にリトは申し訳なさそうに頭を掻いた
いつもの二人の戻ったような、戻ってないような
あるいは少しだけ進んだのか
モジモジとした時間だけが流れ、少しすると、ガチャリと玄関のドアが開いた
「お!」
「あ」
「へ?」
三人が三人一同に違った表情で互いの顔を確認し合う
「なんだよ……男連れこんでたのかよ! それならそーとちゃんと言えよな! オレすげーマヌケじゃねーか」
「お、男!?」
目を丸くさせるリトに構わず唯は声を荒げる
「ちょ、ちょっと! 何おかしな事言ってるのよ!? そ、そんな事より早く挨拶してよ!! すごく恥ずかしいじゃない!」
「あぁー?」
面倒くさそうに振り向く遊にリトは息を呑む
身長は確実に向こうの方が上。おまけに男の自分から見てもイケメンだ
「あ、あの…えっと」
ジッと見てくる遊にリトの額に冷や汗が浮かぶ
「へ〜! これが『あの』ゆうきくんかよ? なるほどね〜」
「お兄ちゃん!!」
「お兄ちゃん?」
いつものクセでいつもと同じ様に呼んでしまった事に唯は顔を赤らめた
「と、とにかくちゃんと結城くんに挨拶してよ」
「へいへい」
心底うっとうしそうに肩を竦めると、遊はガバッとリトの肩に腕を回し顔を近づけた
「で、唯のヤツとはもうヤッたんだろ? いつアイツの事もらってくれるんだ?」
「ヤ、ヤッた!? も、もらうって何を…」
よくわかっていないリトに遊はさらに顔を近づける
「つーかアイツかなり頑固だろ? おまけにすぐ怒るしグジグジうるせーし」
「は…はは」
「……でも、まーいいトコもあるから、よろしく頼んだぜ」
「え…」
リトはチラリと横目で遊の顔を見た
その顔は、どこか自慢の妹をうれしそうに語っている様に思えて
リトは内心、小さく笑った
「ちょっと! 二人して何話してるの!!」
慌ててリトから離れた遊は意地悪そうに顔に笑みを浮かべた
「何っておまえの話しだよ?」
「え? 私の?」
「おまえがいつも結城くん結城くんってうるさいって教えてやってたんだよ!」
「な!?」
唯の顔が火が付いた様に真っ赤になる
「な、何言って…」
「ホントの事じゃねーか! 毎日毎日、今日は結城くんとこんな事話したとか、結城くんがこんな事してたとか
聞いてもいねーのにうれしそうに話して…」
「お兄ちゃん!!?」
唯は沸騰寸前の顔のまま大声を出して遊の声を遮った
「なんだよ? そんな大声出さなくてもちゃんと聞こえるっつーの」
「うぅ…」
肩をぷるぷるさせながら声を震わす唯に何を思ったのか、リトは遠慮がちに声をかけた
「そ、そのオレそろそろ……帰ろーかなって…」
「ん? 何だよ? もー帰るのかよ! てっきり泊まると思ってたのによ!」
「そんなわけないでしょ!!」
すっかり口を尖らせてしまった唯にリトは情けない笑みを浮かべる
「そ、それじゃーな古手川。今日はありがと! また学校でな」
「え…え…ぁ……」
何かを言おうにも中々声に出ない様子の唯に背中を向けると、リトは玄関のドアを開けた
バタンと閉じたドアの音が本当にお別れを感じさせるようで
唯の胸の中にズシリと重く響いた
「……」
黙ったまま玄関で立っているだけの唯に遊は溜め息を吐くと、ポリポリと頭を掻きながら口を開いた
「何やってんだよ?」
「え?」
「いいのかよ? 送っていかなくて?」
「お…送るって……さっき送ったじゃない…」
自分でもどこが? と思ってしまうほどのバカな言い訳
遊はもう一度溜め息を吐くと、唯の頭にポンと手を乗せた
「ちょ、ちょっと!?」
「いいから送ってこいって!」
「だから…」
「ちょっとそこまででもいいじゃねーか。男はそれだけでもうれしいもんなんだぜ」
「…え…」
「早く行って来いって!」
クシャクシャと頭を撫でながらニッと笑みを浮かべる遊に頬を膨らませるも
唯は小さくありがとうと言い残し玄関を飛び出していった
「ったくいつまで経っても世話のかかる妹だねェ」
その背中に向かって、遊は楽しそうに声を投げかけた
「結城くん」
「え?」
立ち止まって後ろを振り返ると、唯が一生懸命走りながら近づいてくる姿が見える
「古手川!?」
びっくりしているリトの前で立ち止まると唯は肩で息を整えていく
「はぁ…は…ぁ…はぁ…」
「大丈夫か? ってなんかオレ忘れものでもしてたっけ?」
「そうじゃなくて」
「え?」
息を整えながらゆっくりと顔を上げた唯の頬は夜道でもわかるほど赤くなっている
「そ、そのちゃ…ちゃんと送ってあげないとって思っただけで…」
チラチラと顔を見ながら話す唯にリトはニッと笑みをこぼす
「そっか。ありがとな! なんかすげーうれしいよ」
「う、うれしいとか別に……私はそんなつもりで…」
「はは…そー…だよな」
「…ぁ」
リトの声のトーンが下がったことに胸がギュッと締め付けられる
違うのに
こんな事を言うために来たんじゃないのに
「じゃあ……オレもう行くな? 古手川も風邪引かない様にしろよ? じゃーな」
今日見たどの笑顔をよりも寂しそうだと感じたその顔に、唯は両手を握りしめる
(結城くん…!!)
唯の手は思うよりも先にリトの服の裾を握りしめていた
「え────?」
「……」
振り返ったリトの目に月の光にほのかに照らされた唯の顔が映る
真っ赤になっていて、肩なんか震えていて、唇をキュッと噛み締めていて
初めて見る唯の必死な顔とその純粋な想いにリトは固まってしまう
「古手…川」
「…………」
奥歯を噛み締めている唯は何かを一生懸命伝えようとしているみたいで、リトは唯の手を取ると体を唯に向けた
「どしたんだ?」
「…ぃ…行か……」
「え?」
唯は俯いていた顔を上げると無理やり笑みを作った
「…………またね。結城くん」
「お、おう! 古手川もな」
「うん」
遠く遠く、リトの背中が見なくなるまで見送った唯
リトの姿が小さくなるにつれて自分の中の気持ちが大きくなっていく事に唯はもう気付いていた
何気なく視線を落とすと、ふいに薬指に巻かれた絆創膏が目に入る
「……また…また来てね結城くん。今度はもっともっとおいしいの作って待ってるから」
もう見えなくなったリトの背中に向けて、唯はそう呟いた
帰り道
リトは複雑な気持ちになっていた
初めての女の子の家でずっとドキドキして、初めて食べる女の子の手料理に感激して
だけど、一つどうしても引っかかる事があったのだ
唯の手料理はすごくおいしい! それはもう美柑に匹敵するぐらいの腕前だった
「けど、アイツいつも一人で食ってんのか…」
料理のおいしさと同じぐらい感じた唯の寂しさ
その寂しさをリトはどうにかしてやりたいと思った
そして、うんうんと唸りながら考える
自分にあって今の唯にないものそれは────
そして一週間後
「ねぇねぇリト! 早く早く」
「だからそんな引っぱんなって!」
ララにぐいぐい腕を引っ張られる横で美柑が意味ありげに笑みを浮かべる
「それにしてもあんたが女のコのウチに行こう! なんて言った時はビックリしたけど、
まさかこーゆー事だったとはね! 優しいじゃんリト」
「うっせーなー」
ぶっきら棒に口を尖らせる兄に美柑は心の中で溜め息を吐く
(あ〜あ、古手川さんきっとガッカリするだろうなァ…。せっかくリトと二人きりになれるはずだったのにさ。
ホント、そーゆートコだけはいつまでたっても鈍いんだから)
そんな美柑の気持ちとは裏腹にリトは手に持った紙袋を大事そうに握りしめた
今日行くことが決まった日から、今日までの間。何軒も回って選びに選んだもの
それはノートと食事、そして、自分の純粋なありがとうの気持ちを込めた唯へのプレゼントだった
美柑の見えないところでリトだってちゃんと成長しているのだ
その頃唯は────
料理の下拵えはすでに終わり、部屋の掃除、テーブルの上の後片付け、服のチェックに髪の手入れも完璧にすませた
ソファに座りながら、頭の中で今日の一通りの予定を何度も繰り返す
まずは笑顔でお出迎え(なるべく頑張って一生懸命普通に自然に出すのがポイント!)
リビングに連れて来て、お茶でも飲みながら他愛もない会話をする
「お腹空いた?」とさりげなく聞く(さりげなくがポイント!!)
キッチンで料理の準備(結城くんまた手伝ってくれるとうれしんだけど…)
メニューは結城くんの好きなものフルコース
二人、向かい合って座って笑顔を交わすと、二人きりの食事の始まり
私は黙って結城くんの感想を待つ。すると……
『すっげーうまい!!』『さすが古手川だよな』『やっぱ古手川見たいな料理が得意なコと結婚できたらなァ』
そ、それからそっと私の両手を握りしめると────
『オレ、料理が得意なコが好きなんだ! 古手川、オレとケッコンしてくれ』
『な、何言ってるのよ!? 私なんて…』
『違う! そんな事ねーって! お前でなきゃ古手川じゃなきゃダメなんだ! 好きだ古手川』
『ダ、ダメよ結城くん! そんないきなりっ! 私たちまだ学生で…』
『古手川っ』
『ゆ…結城くんっ』
そうして私たちは……
と、そこまで考えて唯はハッと我に返る
「私、何考えてるのよ!? ハ、ハレンチだわ!!!」
なんて大声で叫んでいると玄関のチャイムが鳴った
パタパタと玄関に向かうと、備え付けてある鏡の前で最後の服装&髪のチェック
「よし」
小さく気合いを入れると、唯はドアノブに手をかけた
(笑顔…笑顔……自然に落ち着いて……大丈夫! それぐらい私にだってできるわよ!)
唯は一度深呼吸をして自分を落ち着かせると、ガチャリとドアを開けた
「いらっしゃい! 結城…く……ん…」
そのがんばった笑顔とは対照的に、目の前の光景に唯の声はどんどんしぼんでいく
「やっほ〜唯〜♪♪」
「どうも…」
弾ける笑顔全開のララと、どこか申し訳なさそうにペコリとおじぎする美柑
「ごめん。ちょっと遅れたちまった」
あははと愛想笑いを浮かべるリトに対して唯は彫像の様に動かない
「それと、急にララたち連れてきてごめんな。ビックリさせようと思ってさ。そのホラ、
みんなで食べた方が絶対うまいし、古手川だってみんなとの方がうれしいだろ?」
「え、ええ…そうね…」
引きつった笑顔の下に隠れた怒りの顔と、ぷるぷると震える唯の手を美柑は見逃さなかった
(ホラね。だから言ったのよ? ホント、バカリトなんだから)
成長しているようでまるでしていない兄に美柑は深々と溜め息を吐くしかなかった
結局、急に増えた人数分を急遽作るはめになった唯
もちろん美柑は全力で手伝いをしつつ、ダメな兄を必死にフォロー
怪しげな発明品で手伝おうとするララを必死に止めるリトだったが
まったくといっていいほど口を聞いてくれない唯に実はかなり落ち込んでいたりもしていた
そうこうしてる内に帰って来た遊がララと遭遇して目の色を変えてしまって、それを唯が怒ったりと
こうして古手川家はかつてないほどの大賑わいを見せたのであった
帰るまぎわ、やっと渡せたプレゼントを唯はそっぽを向きながら受け取った
「じゃあ…な。古手川」
「……」
唯はまだ怒っているのか無言。それにリトは寂しそうに溜め息を見せながら玄関をくぐった
「…ぁ…りがとう……また来てね」
それは美柑の耳に偶然聞こえた小さな声だった
兄の背中を寂しそうに見つめるその姿に、美柑はリトの脇腹を小突いた
「ってぇ。何だよ?」
「バカ」
「は?」
「……ま、そんなあんたが良いんだろうけどね」
ますますわからないリトは一人眉を寄せると、何気なく後ろを振り返った
すると、唯が玄関先まで見送りに来てくれていたのだ
その腕の中に大事そうにリトからもらったプレゼントを抱いて
リトは声に出さず、ブンブンと手を振って唯に挨拶をした
ビクンと肩を震えさせながら、赤くなった顔を隠す様にそっぽを向ける唯に苦笑しながらリトは古手川家を後にした
「また……今度はもっとゆっくり来るよ」
と、心の中でそう約束しながら
リト達が帰った後、家の中はまるでお祭りが終わったかの様な静けさが生まれていた
リビングの後片付けが終わると、どっと疲れが湧いたのか、唯は自分の部屋のベッドに寝転んだ
ボーっと天井を見つめていると、想うのはリトの事
「もぉ、せっかく今日は…」
口が尖ってしまうが本当はわかっていた
リトの優しさと気遣いが
唯は天井に設えた蛍光灯にそっと左手を翳してみる
外せなかった、外そうと思わなった、リトに付けてもらった絆創膏
それが今、淡い光に包まれて、まるで結婚指輪の様に輝いてるみたいで
唯はクスッとほほ笑んだ
「今度はちゃんと一人で来なきゃダメだからね! 結城くん」
その日から唯の枕元には、プレゼントのクマのぬいぐるみが置かれることになる
唯の一番の宝ものとしてずっと────
終わり
唯スレの前スレ
>>116さんのリクエストに応えたのですが、どうでしたか……?
>>116さんの書いてくれた見ているだけでニヤニヤしてしまうプロットを参考に書いたのですが、
後半、オリジナル要素がかなり多目になってしまって…そのあたりは反省です
とりあえず、次は「リトと唯」の続きです。一応考えてるのは
『夏祭り再び』 今度はツンツンデレデレの普通な?夏祭りデート
『海』 むにさんと被るのですが、夏と言えば海かプールか祭か肝試しなので
たぶんどっちかです
>>320 おおおお、一番槍GJ!
まだリトと遊は面識ないもんな。早くこういう風に弄られる唯が見てみたい。
しかし唯の反応の豊富さはリアクションならではだな。
>>420 おつかれさまです。
美柑の役がいいな。 遊がララに目の色変える所は思わず吹きました。
次のSS投下期待してます。 GJ.。
乙!!
ヒャア、行かないでがたまらねえ
>>420 唯スレでリクした物ですがグッジョブ>w<b
リトも怪我させて御揃いにするってのと後日譚で再び古手川家に訪れるのとかも面白くて良いですね
でも腕によりをかけて作る料理が肉じゃがとほうれん草のおひたしじゃ少し寂しかったかも><
いや、あの時は自分の好物をついつい書き連ねてしまったんですけどね
それにしてもリトも浮かれっぱなしだなw嬉しい嬉しいってwww
GJ!
俺も肉じゃが食べたい
ま…また新作?
そんな事言われたって…こ…心の準備が…///
俺の占いが……はじめて当たった…ガクッ
追伸:GJ
はてさて、唯大人気だけど・・・・連載終わる前に各キャラ専属職人が現れるかどうか期待。
ララとか美柑とかは時々見かけるがハルに幽霊にくしゃみが殆どいねぇ気がする。
おぉーっと待ちな
新田晴子はこの俺の専用キャラだ
専属っていうかそれしか書けないだけなんだけど、ララでがんばってみる
職人みたいに上手く書けないから妄想文になりそうだけど
>>429 専属って馬鹿なの?普通に誰がどのキャラ書いてもいいだろ
登場回数が少ないキャラやあまり人気が無いキャラが作品が少ないのは普通のこと
新作かと思ったらまた唯か。もう飽きた。そんなに唯ばっか書きたいならいっそのこと唯専用スレでも建てたらどうだ?
何を逆ギレしているんだお前は
そうやってついついレスしちゃう人も18歳以下ですね、わかります
まあ投下が多いキャラはアンチがつくのも仕方ないかと
スルーで
まあ、唯以外の作品も頑張ってほしいな
全キャラ愛でてこそのToLOVEるだろ?
好きなキャラの話書くのは皆当然の事なんだろうけど
リトの事ももう少し学ぼうぜ
殆どの話がコイツが絡むんだからリトについても学ばないとな!
唯オタテラウザス。
アンチさらにウザス。
442 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:19:35 ID:d9fY4u/N
うわわぁ〜〜何でこうなるんだーー!」
廊下を走る少年は周りの目を気にせず、ただ後ろからの容赦無い攻撃を頑張って避けていた
一方、その攻撃を行っている少女、名を「九条凛」
竹刀を四方八方に振りかざし、これもまた周りが見えていない
「くっ!逃げ足の速い…。こうなったら、っはぁ!」
俊敏な動きから、地面を蹴り高く飛ぶ凛
まるで忍者のような速さと跳躍力で、あっという間にリトの近くまで距離を縮めた
「観念しろ!結城リトっ!!」
「もうヤダぁーーーーーーー!!!…ってうごぉぉぉぉぉぉ〜!?」
ドッス〜ン!バタンっ!!
見事リトを捕らえることに成功
凛はすぐさま竹刀をリトの顔に突きつける
「さぁ…もう終わりだな」
勝ち誇ったような笑みでリトに言い放つ凛だが…
「せ、先輩…。ぱ、パンツが///」
「…パンツ?…っは!ま、またしても、貴様〜」
リトに指摘されたところを手で覆う凛
「いいい今のは違うでしょ!!?」
「問答無用!遺言は聞かない!」
凛が竹刀を高く振り上げたその時
ピーンポーンパーンポーン
ガチャっ。ええ〜。直ちに「結城リト」「九条凛」は生活指導室にきなさい
そのインフォメーションを聴き、二人はふと見つめ合い、ふと周りを見る
そして現状を把握した後、顔からたくさんの湯気を出し、顔を赤く染めあげた――――――
ー生活指導室ー
「いいか、もう今後このような事がないように。とくに九条!
お前はもう三年生なんだから、もっと行動を控えろ。進路に響くぞ」
約30分に及ぶ進路担当の先生の話が終わり、やっと開放されたリトと凛
リトはバツが悪そうな顔で凛を見た
凛はキリッとした目でリトをにらみ返し、即行主の元に戻っていった
「まったく…。結城リトには困ったものですわ〜。いつも私に恥を掻かせるだけでなく、
凛にまで…。いくらザスティン様のお膝元だからといって、許されるような事ではありませんわ!」
いつもの冷静な沙姫でも、今日の事にはご立腹な様子
それを聞いていた綾も首を縦に振り「許せません!」と同意した
「…大変ご迷惑をおかけしました。沙姫様、綾。もうこのような失態は」
「いいえ凛。貴方が謝る必要はありませんわ。
元はといえば、なぜいつも結城リトは私に突っ込んでくるんですの?
いくら私が美人だからといって、少しやり過ぎ。それにララという婚約者がいながら…」
三人は「ララ」という言葉を久しぶりに聞いたかのごとく、目を丸くさせた
443 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:20:01 ID:d9fY4u/N
そういえば最近ララを見かけませんわね?
いつもは結城リトと一緒にいるのに…」
沙姫は腕を組み思慮深い顔立ちになり、綾もメガネの片方の淵をクイッと持ち上げた
「まさか…ザスティン様と不倫でも…」
綾が禁断のワードを口にした
「#&’”#%&!!!!!」
声にならない叫びとなって沙姫の声は響いた
「…そうだとしたら、私がララを滅多打ちにして差し上げますわ!
そうと決まれば早速準備を……。ふふっ…。さぁ帰りますよ?凛、綾」
綾は恐怖で震え上がった声で返答し,ガチガチな歩き方になって沙姫に続く
一方凛は今日のテストで凛らしからぬ点を取ってしまったので補習しに教室へ向かった
「最近私は疲れているのか…。よく分からない…。まぁ、原因があるとすれば…」
ギリッ!
教室の片隅にいるその対象目掛けて、凛は精一杯のガンを飛ばした
「(ななななんで先輩が此処にぃ〜!?三年と二年は別じゃねーのかよ!?)」
縮こまって、リトは精一杯目を背ける
そして我慢できなくなったのか、少しだけ凛の方をチラミし
ギリッ! と睨まれた
リトは精一杯後悔をした――――――
長い沈黙ゆえの最悪の空気を10分体験した後に、補習担任が入ってきた
「ええ〜。では補習を〜始めます。…と言っても、二人だけだがな」
「(げっ!さっき俺等が怒られた先生じゃん)」
リトが溜息を吐いていると
「質問です。なぜ三年と二年が共に補習を受けるんですか?
それになぜ貴方?…完全に何か仕組んでますよね?…な・ん・の補習ですか?」
少し憎まれ口で先生に言い放った凛
リトは「何か、カッコいいな…」と心の中で思った
「…。まぁ、私が何を言ってもお前らは仲良くならんと思ってな…。
また問題を起こすだろ?だから同じ教室で補習をやりつつ説教をしようと…」
「なりません。とくに…絶対に!」
ギリッ!
三度目のガンつけ
リトは金縛りにあったがごとく、体を動かすことができなかった
蛇に睨まれた蛙とは正にこの事…そしてリトは思う
(何で…俺ばっか…(泣))
補習は数学
お互いそれぞれのプリントが配布され、全問正解するまで帰れない式の補習を実施した
凛は序盤スラスラ解いていたが、難しい問題に当たりストップ
リトは全10問ある内の三問目で死んだ魚のような顔になっていた
時は刻まれ―夕刻の六時―
444 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:20:44 ID:d9fY4u/N
「…結城。お前はまだ五問目解けてないのか〜」
補習担任が呆れながらリトに言う
本人はというと、もう魂が抜けて死にそうだった
一方凛は最後の問題に取り掛かり、すでに解けるといった余裕な表情に変わっていた
「…ぶつぶつ…であるから……っ。よし!終わった」
凛はペンを置き、字でビッシリになったプリントを先生の所に持っていく
リトはその間に凛の姿を流し目で見て思った
「…(先輩って頭良いのかな?…でも補習って
…やっぱり…俺の所為なの…かな…)…」
リトがそんな事を思っている内に、凛の解答付きプリントに赤で丸が付いていく
半ば適当な赤丸だが、全部合っていたらしく凛の補習は終了した
凛に安堵の表情が表れる
「よ〜し。九条、お前の補習は終了だ。お疲れさん」
「有難う御座いました。…さて、帰るとしよう」
凛が自分の荷物がある方向に振り向きざまに言うと
「ちょっと待て九条。まだ帰っても良いとは言ってないぞ?」
と先生が凛が思ってもみないことを言い始めた
「はぁ?それはどういう…」
「まだ結城の補習が終わってないだろう?」
リトが自分の第五感で危機感を覚え始める
「だからどうして…」
凛のイライラが募る=リトの危機感上昇
「私はこれから生徒の提出物を見なければならないんでな。
……代わりに九条が私の臨時補習担任をやってほしいんだが」
補習担任は立ち上がり、少しだけ立ち眩み、固まっている凛の肩をぽんっと叩いた
凛は一瞬の膠着状態を乗り越え、いつもの冷静な我に返った
「待って下さい。若い男女が二人…それも夜の教室。これは何かと問題になるのでは?」
凛の冷静沈着なごもっともな反論を聞き、リトは安心した
…かのように思われたが、次に発せられる補習担任の反論に対する反論に絶望を感じた
「九条。お前は何年生だ?三年生だろ?問題は起こせないだろ。
…それにお前は補習をやっている時点で天条院に恥をかかせていると思っているんじゃないのか?」
「うっ…。それは…その通りだが…」
「ならここで問題を起こしたら…まずいだろ?それにお前はもっと他人に
優しくするべきだな。天条院と藤崎以外で。これは自分の為になると思って…やってくれないか?」
「…………」
火が消えたかのように黙り込む凛
それを見てリトはまず、
自分は情けない
と本気で思い机にうつ伏せた――――――――――――
元補習担任の足音が遠くなる
凛はその場に立ちすくし、リトは強制的、臨時補習担任になった凛を重い目で見つめた
何でこんな事になってしまったのだろう
445 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:21:08 ID:d9fY4u/N
自分はなぜここまでトラブル体質なのか
自分はなぜここまで他人に迷惑をかけるのか
自分はなぜここまで…九条凛を悩ませてしまうのか…
元はといえば、原点はララにある
変な発明品を試されそう(試された)になって、周りの人に度々羞恥な事をさせてしまった
特に天条院先輩の時は、なぜだか知らないが胸を触ってしまう
今日もその事で凛先輩に……迷惑を……
リトは色々な自虐的、自分で自分を責めるような事を考えていた
が、気配を感じて現実に戻り、自分の近くに座っている人物がいるのに気づいた
「…凛…先輩…」
リトは不思議な感じになっていた
「お前はどこまで馬鹿なんだ?このぐらいの問題も解けないでよく彩南高に入れたな」
気持ちがフワフワするような感覚
「ここは公式を使って、それから当てはめて――…で――――して…」
前にも同じような事があった気がする
「……分かった?…おい、聞いているのか?」
あーっ…なんだが頭がぼーっと
「…ぅき…結城!!!!」
「っうわい!!!!!!!」
咄嗟に変な声を出してしまった
リトは耳元でしかも大きな声で呼ばれたので、少々ほろ酔い状態
だが凛は容赦なく手元にあった竹刀を手で叩きながら
「ちゃんと聞いていたならできるはず…。間違えたら…分かっているな?」
リトは自分の第五感が当たり、心の底から声にならない溜息を吐いた
―30分後―
「…うん。よくできた」
凛の分かり易い解説で、難なく難関九問目を突破
リトにもようやく危機感とは裏腹に、達成感が滲み出てきた
「いや〜、先輩の教え方は本当に上手いですよね。
こんな先生がいたら俺も苦労しないのにな〜」
「…こ、こんなの誰にだってできる。単に結城が飲み込みが早いだけじゃないのか?」
「…ぇ」「…ぁ」
目と目が合う
お互いに褒め合い、自分の言った事に対して照れて顔を背けた
「それに…別にタメ口でも構わないぞ?そういうのは気にしない方だから」
「じゃあ先輩も、そんな堅い口調じゃなくて、もっと柔らかな感じで話して下さいよ」
とは言いつつも、いきなり口調を変えるとなると以外と恥ずかしい
446 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:21:41 ID:d9fY4u/N
「せ、先輩は付けた方が良い…よな///」
「それは…そう…ね///。変なふうに沙姫様達に誤解されてしまうから」
二人共顔を赤く染め、下を向き俯く
リトは先程とは違った危機感を感じ、どうしようかと戸惑う
何としてでも微妙な空気は避けたいと思い、手にある資料をみた
第 10 問 目
「こ、これが終われば俺達は解放されるんだよな。…よしっ!」
「なるべく自分の力で解いて、解らなくなったら私が助ける。これで良い?」
リトは頷き、自由の為、期待に応える為に全身全霊をかけ最後の力を振り絞った
序盤は公式が当てはまり順調だったが、つまづいた
目を細め、様々な知識を使い解こうとするが…解けなかった…
「ごめん。どうしても…とけねー…」
「よく頑張ったと思うけど、まだまだね。じゃあ、私が続きを」
1分 ん〜 2分 … 3分 …? 4分 これ使えないの?
5分 …これじゃあおかしい… 6分 はぁ!?なぜ!?
「…何だこの問題は!高校生ができる問題じゃない!」
椅子からスクッと立ち上がって激怒する凛
だが、長く椅子に座っていた為、立ち眩みにあいバランスを崩した
「ぅ…頭が…」
「危ない!凛!」
(間に合え!)
――――夜の誰もいない教室
若い男女が二人――――
それも……
「……………結城…」
「…………………先輩…」
響くのは時折聞こえる、二人の呼吸
リトは凛を助けようとしたが一歩届かず
凛は仰向けになり、その上をリトが馬乗りしている
「…ハァ……何を…早く…」
「…え?…ぁあ〜ごめん!…よっと…って!?」
ふにっ
リトは手を使って起き上がろうとしたが、片方の手が凛の胸を触っていた
その柔らかい感触で力が入らなくなってしまったリト
「(先輩の胸…柔らかい…。それに大きすぎず小さすぎずで…、って何考えてんだ俺!)」
リトは怒っているだろう凛を震える目で見た
すると案の定、凛は顔を紅潮させ、目線は下だが顔は横に向けていた
447 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:22:03 ID:d9fY4u/N
「ぅぁ〜、可愛いなぁ〜」
「…は、はぁ?か、可愛い!?な、何を言い出すんだおおお前は///」
無意識に声に出して本音を言ってしまったリト
それに対してかつてない情けない自分を出してしまった凛
「(思わず声に…。で、でも本当に…可愛いしなぁ。それに…手が…居所が///)」
「(な、何を私は恥ずかしがっているんだ!。相手は、結城リト。
…だから…だから?……だから…恥ずかしいのかもしれないな…)」
二人は見つめ合った
今度はお互い瞳に相手を映し、静止した
汗ばむ凛の首筋、流れる汗
リトは思わず溜まっていた唾液を飲んだ
自然に近づく
距離は、凛の髪の匂いが届く距離
ララや美柑とは違った匂い
こういうのを大人の誘うような香りというのだろうか…
どちらにせよ…とても、甘い匂い…
「…凛…」
リトは彼女を優しく呼んだ
「…リト…」
凛は彼を呟くように言った
更に距離は縮まり、リトも凛もギュッと目を瞑る
そしてお互いの心臓の動きが分かるくらいまで…近づいた
高鳴る心拍 甘い匂い 荒い呼吸
リトの汗が凛の頬に付き、これを機にリトは覚悟を決め口付けを―――
ガラガラ〜〜 ピシャッ!
ドアの開ける音締まる音
静かだった教室に響いた
「「……え?」」
―時が止まった―
「…いやね。私は10問目が間違っているのをお前らが残っているなら訂正しようと
思ってきたのだが…。大丈夫!私は誰にも言わない!私はお前達の味方だ。信じてくれ!」
と言い、そそくさにこの部屋に最悪の空気を流したまま出て行った元補習担任
残された二人
一人は血の気が引いた顔色で乱暴にされたドアを見つめ
一人は眉間にシワを寄せ、握りこぶしを作る
「や、やばいな。どうしよう?りn」
「いつまで胸を触ってる!このケダモノがぁーーーーー!」
宙に舞うトラブル少年 結城 リト
(また、逆戻りかよ〜〜〜〜〜〜、ってか何でこんな扱い!?)
〜続く?〜
448 :
リト&凛 おまけ:2008/08/02(土) 02:22:31 ID:d9fY4u/N
―その間のララ―
ビーンビュシュージーーーー
「…ん〜〜!できたぁ〜〜〜〜〜〜〜!」
飛び跳ね喜びを露にするララ
「やりましたねララ様!」
それに相槌をいれるペケ
「お待ちなさい!」
ここで天条院沙姫がお供を連れて重装備でララの研究室に乗り込んできた
「あ!沙姫だぁ〜〜!」
「ララ。今日という今日は貴方を許しませんわ!覚悟なさい!」
「ええ〜。じゃあ、この発明品最初に使わせてあげるから許して〜」
ララは手元にあった小さなロボットを手に取った
「何ですの?その不細工なロボットは!」
「これはね〜どんどんオモイテレパシー君だよ」
何でも、このロボットを手に取り好きな人の事を思えば気持ちが伝わる…という
「え?これを私に…。ララ、私は貴方の事を誤解していたようね。
不倫しているだなんて思った私を許してくださる?…では早速♪」
沙姫はロボットを手に取り
(ザスティン様。私はあの時、勇敢な貴方に一目惚れしてしまいました。
どうか私の気持ちを、お受け留めになって…)
ウィーン……ピカー……ジジジジーーーーー
ロボットは目から光を出し、やがて動かなくなった
「ありゃぁ〜。やっぱ一回だけしか使えなかったかぁー、残念失敗」
「ごめんなさいね。でもララ、貴方には日を改めてお礼を言いに来ますわ。
そして、ザスティン様と―――キャー、これ以上は恥ずかしくて言えませんわ。帰りますわよ、綾♪」
こうして沙姫はご機嫌で帰っていった
「ん?」
「どうされました?ザスティン隊長」
「うむ。誰だが知らないが、告白された」
「「はぁ?」」
―結城家―
「ねー美柑ー、ふりんってなーにー?」
「…リトが帰ってきたら教えてくれるよ……」
―END―
449 :
リト&凛:2008/08/02(土) 02:22:56 ID:d9fY4u/N
終わり
続けられたら良いなと思ってます
リアルタイムで見た
GJ
>>449 GJです!!ぜひぜひ続けてくださいお願いします!!
>>420 新しい職人さんかと思ったら「リトと唯」の人かよw
いつもすばらし作品ありがとうです!
いつも思ってたんだけどあなたの書く美柑っていつもいいなあと思ってた
書いてみません?美柑を!美柑いいよ!おすすめだよ美柑!なんとかお願い…
>>451 押し付けイクナイ。それでは自分が読みたいから美柑を誉めたみたいだ。
>>441 荒らしは普通にスルーが常識だろうに
なんでこっちにも噛みついてくるかね
>>452 確かにそのとおりだ…
すいません「リトと唯」の人
掲載誌と今の季節を考えれば厨房が来るのはある意味当然だ罠。
まぁ華麗にスルーで。
>>451 「リトと唯」書いてる者ですが、少し書いてみました
と言っても、即興だし、ミニミニSSなんですが
それはララが結城家に来る少し前の話し
まだ肌寒い春先の朝
スヤスヤと寝息を立てる兄を起こさない様にと、美柑はそぉ〜〜っと部屋に入って来た
「リト? 起きてる?」
リトは無反応。そればかりか寝返りをうって声から遠ざかる始末
美柑のほっぺがぷくぅっと膨れる
「もう!」
腰に手を当てながら美柑はそのかわいい口を尖らせた
今日は春休みということもあり、美柑の学校は休み。リトはあと一週間足らずで高校に上がる
ので、卒業休みといったところか
お日さまの日差しが気持ちいい朝、こんな日は外に出かけるに限る
そう思った美柑はリトを誘って買い物にでも行こうかと兄の顔を窺いに来たのだ
それなのに────
「……」
ジーッとリトの寝顔を見つめる事、十数秒
一向に起きる様子のない兄に、次第に美柑の目は半眼になっていく
(なによリトのヤツ! せっかく……せっかく私が久しぶりに一緒に出かけてあげようって思ったのに!)
そう、思い返せばリトと一緒にどこかにお出かけなんて本当に久しぶりの事
小さい時はそれこそ毎日のように一緒に遊んで、どこまでもどこまでもずっとくっ付いていたのに
大きくなるにつれて次第にその距離は広がり、今では夕飯の買い物ぐらいしか一緒に出かけなくなってしまった
「…………はぁ〜…」
誰も見ていない事をいい事に美柑の口から溜め息がこぼれる
それはとても寂しそうでいて、悲しそうでいて
リトを見つめる美柑の瞳がゆらゆらと揺れ動く
と、その時
「う…んん、美……柑…」
寝返りをうちながら自分の名前を呟くリトに、美柑の小さな体がビクンと震える
(も、もしかして…起きちゃった…とか)
思わずその場で固まってしまう美柑
逃げ出すことも体を背けることもできず、ただただ、リトの顔を凝視する事しかできない
兄妹なのだがら別に緊張なんてするはずがないのだが
五秒…十秒…二十秒……
いくら待っても何も起こらない状況に美柑は眉をひそめた
「ひょっとして…」
そぉ〜っと兄の顔を覗き込むと、リトはまだ気持ちよさそうに眠っていて
美柑のコメカミがピクピクと動く
「このォ…バカリト…」
思わず手が出そうになってしまうが、ふと気づく
リトはまだ寝ていて、だけど自分の名前を呼んで……
ハッと気付いた瞬間、美柑の可愛らしいほっぺが真っ赤に染まる
「も、もしかしてリトのヤツ、私の夢を見て…」
いったいどんな夢を見ているというのか?
気になる。すごくすご〜く気になる
「うぅ…どんな夢見てるってゆーのよ」
リトは本当に気持ちよさそうに、夢の続きを見ているのか、時折、口元に笑みを浮かべ
ながらスゥスゥと寝息を立てている
そんなリトの気持ちよさそうな顔を見ていると、怒った顔もふっとやわらかくなる
美柑は両肘をベッドに乗せると、リトの顔を横からじっと見つめた
「まったく! 何勝手にひとの夢見てるのよ?」
怒っているでも困っているでもない美柑の声
どこまでもうれしそうで、そして、うれしそうに笑っていて
美柑はそっとリトに体を寄せた
「まったく……休みなのにいつまで寝てんのよ? そんなんだからカノジョの一人もできないんでしょ?」
片膝を乗せたベッドがギシっと小さく軋む
「ホント、誰かこのダメ兄をもらってくれる人いないのかなァ」
美柑は眠っているリトの唇にゆっくりと顔を近づけていく
「だけど…もし…もしそんな人がこれからもいないんだったらさ…」
唇と唇が触れそうなほどの至近距離
美柑は頬を染めながらぽそっと呟く
「…私がなってあげてもいいよ? カノジョに……ねェ? お兄ちゃん…」
少しの沈黙の後、美柑はゆっくりとリトから顔を離すと、むぅっと頬を膨らませた
「って何言ってんの? バカじゃないの私っ!!」
美柑は逃げる様にベッドから降りると、そのまま部屋を出て行ってしまった
「う…ん…」
リトが目を覚ました時、時刻はもうお昼前だった
重い体を引きずる様に布団から這い出たリトの目に、一枚の手紙が映る
「ん? 何だ…」
眠い目を擦りながら読み上げていくと
そこには見慣れた字でこう書かれていた
『リトへ
あんたいつまで寝てる気よ? せっかく買い物に付き合ってもらおうと思ってたのに全部パァじゃん!
バツとして、ここに書いてあるモノみんな買ってきて! いい? わかった?』
どう見ても怒ってる様子な妹にリトは眉を寄せた
「何だよこれ…! つーか買い物とかオレ知らねーって!!」
なんだか一人取り残された様なリトは溜め息を吐きながら、それでも渋々買い物にいく準備をするのであった
終わり
こんな感じなんですがどうですかね……?
もし美柑を書く事になればもう少しデレを抑えると思いますが
>>420 GJ!
むずかしい凛なのにすごいな
リトと凛が先生に怒られながら補修を受けるのが新鮮でおもしろかったです!
続き気になるので書いてください!お願いします
いやぁ、朝から和むものが見れた
とらぶるが好きなんだから全キャラを愛そう
>>449 >>459 どちらの作品もGJです。
まあ、荒らしについては全員でスルーして
職人さん達が投下しやすい環境をつくることが良い住人だと思いますよ。
GJ!
今夜あたり超エロエロのが投下されると思ったのだが
なんとなく小ネタ
唯「…3kgも増えてる…」
遊「そりゃあんだけケーキやけ食いすりゃ増えるだろ、常識的に考えて…」
唯「だって、学校で結城君がハレンチなことばっかりするからイライラして…」
遊「また結城君か、好きだね唯も」
唯「な、何言ってるのよ!私は別に…////」
遊「まあまあ、それより痩せたいんならいいものがあるぞ」
唯「え?本当?どんなの?」
遊「それは…これだ!!」
ジャジャーン!!『ロデ○ボー○V』
唯「…何、それ?」
遊「何だ、知らねーのか。これは」
………
……
…
唯「な、なんてハレンチな!!////」
遊「おいおい、この程度でそんなこと言ってたら結城君に乗っかるなんて一生無理だぞ?」
唯「な!?何言ってんのよーーー!?////」
遊「それに、あの杉○彩も『痩せたかったら腰振りましょ!』って通販で言ってた」
唯「そんなこと知らないわよ!!」
遊「体重計がだめになるかならないかなんだ!(重量オーバー的な意味で)
やってみる価値ありまっせ!」
唯「もういい!あっち行っててよ!ハレンチ!スケベ!変態!遊び人!」
遊「…流石に傷付いたぜ…orz」
唯「あ……その、少し言い過ぎたわ…御免…」
遊「そう思うなら今度はこれを。これは『あの杉○彩さんもご愛用』のエクササイズビデオだ。
さあ、俺と一緒に や ら な い か」
唯「絶対に嫌ーーー!!」
遊「照れちゃって、素直じゃないな。だがそこがいい!」
467 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 00:14:01 ID:cY99eK25
ふひひ GJ
>>466 深夜にダンスかなんかの通販やってるあの方か。
にしても遊ド変態だなwおもろかったぜ。
デビルーク星が一夫多妻制で近親結婚もOKだったらいいのに。
春菜って実際どんなもんリトのこと好きなのかね?
一番あっさり身を引きそうだけど
確かにかなり身を引きそうではあるが、一番長い日数泣き続けそうなのも春菜だと思う
つか一番身を引きそうなのはララかもしれん気がしてきた
ララは独占欲ないからな。リトが他の娘と正式に付き合い出したらすんなり諦めそう。
逆にしぶとそうなのはルン。
ルンの誘惑に堕落するリト・・・いいな
そしてリトは唯に刺される・・・と
メモルゼ星人とセックス中に性別変ったらどうなるのかな?
いっそのことりトはルンとくっついてレンがリコとくっつけばいいよ。
春菜ってあんまり恋に敗れて泣くって印象無いな
悶々とし続けるだろうけど
ララはあっさりしてるように見せて一人で泣いてそう
唯は酒に溺れそう
猿山は男に走る、と。
むしろ堕落するヒロイン達見たいわ。リトなしだと廃人になる勢いの。
こう気だるげに誘うヒロインとか萌えるわ。「ね〜えっちしよ〜よ〜」とかw
もしリトが死んだらララと唯は泣いた後に半廃人になりそう・・・。ララにいたっては引きこもりになるかも。
春菜もルンも美柑も泣くな。ヤミはなにか死ぬ前に付き合うとかあれば一番感情的になるかも?
ララの「好き」と春菜の「好き」は内部のいろいろな感情の比率が違う気がする
恋愛感情で一番強く「好き」なのは、現状だと唯だろうね
でもすべてひっくるめて一番感情が大きそうなのはララだから、
もし失恋しても、そこまでへこまなそうな印象がある
友達としても家族としてもリトが好きだよーみたいな
ララは破天荒だけど裏表がなく、春菜は色々ありそうだけどあんまり表に出さないからなあ
そろそろ春菜メインの話も本編に出してほしいもんだ
>>481-482 唯とララと美柑は本当にヤバいと思う
リトが事故の巻き込まれて意識が戻らず、病院に搬送されたって聞かされた時
唯→ただ茫然で頭真っ白。すぐに病院に駆けつけて、リトの手握りめてぽろぽろ泣きそう
意識が戻ったら大泣き。その後も毎日お見舞いは当たり前
ララ→研究もなにもかもほっぽり出して病院に直行。ケガをしたリトを前に発明品で
なんとかしようとするんだけど、うまくできなくて……かつてないほど泣きそう
美柑→反応は唯と似てるかな?目が覚めるまでずっとリトの手握り締めて、目が覚めたら毎日文句言いながらも
ちゃんとお見舞い&手作りの料理とかも持参で
春菜→自分も泣きたいのにぐっと我慢して、みんなを励ましてそう
みんなのいないところで一人泣くと思う
ルン→もうただただ大泣き。なにかしたいけどできないし、でもなにかしたいしの繰り返し
ルンって看護師さんに向いてたりして
ヤミ→一番クールだけど、心の中は乱れっぱなし。意識が戻らないリトに対し
「なにをしてるんですか?あなたは私が殺すと言ったはず…」とかぼそっと言いそう
沙姫→どうするかな?天条院家御用達の病院や医者に任せるかな?
リトに対し意外な反応見せそうな感じがする
この漫画で人死にが想像出来ない俺にとっては
人が死んだ時の反応を妄想出来るお前らのスキルが羨ましい
485 :
ヤミ金:2008/08/05(火) 08:47:56 ID:vrZmODIo
ようやくネットできる環境が戻ってきたので生存報告。
前に投下したのが半年前とかどんだけ…現在の住人さんがどれだけ俺のことを覚えているかは不明ですが、また頑張っていきたいと思います。
ペースは遅めになりそうですが、過去ログで復帰を待っていてくださった方には感謝を。
お疲れさん
楽しみにしてるよ
ヤミ金さんキターーーー
名前欄見たときそっちの筋の方が宣伝の書き込みに来たかと思った
こないだ教えてもらったばかりなのに…(´・ω・`)
ヤミ金さんキタ!
この瞬間を半年待ち続けた・・・
暇だね
>>482 恋愛感情でも何でも好きは好きだろ
フラれてへこまないわけがない
恋愛感情じゃなかったら振られることは無いよね?
ララの話で言ったんだが
ていうかフラれるも何もリトは結論すら出していないわけで
常々アピールしてる上に春菜のことも大好きなララにそこまでのネガティブイメージは沸かん
二人が恋人同士になれたのはいいことなのになんかもやもやした感じ…
ってなるきもしないでない。もしくは今までどおりに接するか
一夫多妻ハーレムENDが個人的には理想。
それには同意せざるを得ない。
純愛って訳じゃなくラブコメなんだから無理に誰か一人に絞ると大変なことになりそう。
言っちゃなんだがそんなにマジメな恋愛モノってわけじゃないんだから
一夫一妻に拘らなくてもいいと思う。ヒロイン同士でわりと仲いいしな。
当人達同士が納得できるなら3P、4Pオールオッケーみたいな。
アニメのイメージに毒されてるんだか知らんが、ララは恋愛には真剣なんだがな…
一夫多妻とかは同人でやってればいい
原作は曖昧でいいよ
リトの災難(トラブル)はこれからも続くENDが無難
>>500 アニメなんて別に見てないから知らんが
ララが真剣にリトに「好き」って言ってても
何かどこか空々しい気がするのは俺だけだろうか
昔見かけたデスノのコラで、ララがドラえもんポジだと言われてたが
あの解釈が一番俺的にはしっくりきたな
ララもヒロインの一人として好きだけどな
まぁ好みは人それぞれとしか言えん
>>502 決意の涙も恋愛マスターの涙も本気で好きじゃなきゃ流せないと思うが
まあどうせ興味無いから何言っても印象だけで語るんだろうけど
なんか必死な人がいるが
そういう人はキャラスレに行かれたらどうだろうか
>>504とか
パロスレに持ち込んでくるなウゼェとか思ってないですよ?
そうだねごめんねさようなら
>>502 ララの真骨頂は恋愛ではなく、あの素直さとか、やさしさかな
美柑メインの時の雪降らせるシーンや、モシャクラゲの時とか
あの混じりっけのないやさしさだと思うよ。無垢さといえばいいのかなあ
だから、ララを見る上では、恋愛よりもまずララの純粋なとこを見てあげてと思う
そしたらまた違った印象を持つかもしれないし
ララの恋愛は唯とはまた違った意味ですごく不器用な恋愛なんです
なんて事を唯一筋の俺がいってみる
ララスキーの人達から見たらふざけんなとか言われると思うけど…
『彼氏彼女の事情』という漫画で、主人公の宮沢は有馬を好きになり付き合うようになる。
だがしばらく付き合ってから、有馬が部活の全国大会に出るため一時離れ離れになる。
そして寂しさを募らせる宮沢。しばらくぶりに再会した有馬は短期間で以前より背も伸び
さらに男らしくカッコよくなっていた。
宮沢はそんな有馬を見て、1度好きになったはずの男性に再び恋をする。
それから宮沢は有馬を必要以上に意識するようになり、以前までは普通に話せていたのに
意識し出してからは恥ずかしくて顔もまともに見れず肌が触れるだけでドキドキするようになる。
ララも、今は恋というものを良く理解していない、恋に恋する女の子といった感じだが
いずれ本当の恋を理解して、純真無垢さという殻を破ってリトの顔を見ただけでドキドキして
頬を赤らめてしまうような、そんな瞬間が訪れてくれないかと願っている。
頼みますよ長谷見センセー(こんなとこで言っても仕方ないんだが)
ルンと唯ってどちらがリトの事を「異性として」好きなんだろう
前までは明らかにルンだったが最近は唯の方が度がいってそうだ…
>ルンと唯ってどちらがリトの事を「異性として」好きなんだろう
なに言ってるかわからんw
でもあえて数値化するなら、どっちも100%以上リトの事好きだろ?でもどっちも性格が違うから接し方も想い方も違う
それは唯・ルンだけじゃなくてララ・春菜にも言える事じゃん?
四人が四人とも違うだろ?
ヤミ金さん!ラコスポの続きを。。
話の結末とかここで議論することじゃないし。
読者の俺らは見守るしかないんだ、暖かく見守ろうぜ。
そろそろ「リトと唯」の新作かヤミ金さんの新作が投下される
俺の占いは当たる
515 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 08:21:22 ID:AyGpSN/2
うざったい占いだな
あの占い野郎は元々うざったかったろ
>>514 ヤミ金氏はさすがにまだ無理だろw
でも「リトと唯」の人のは見れるかもしれんね。たぶん。俺の占いは(ry
よし!全裸待機しておくか
衝撃的な出会いというのはあるものだ。
それが天条院沙姫にとっては、ザスティンが乗用車を片手でどかした事であり、
ルンにとっては、レンの不可抗力によるリトとのキスだった。
そしてファーストインプレッションが大きければ大きい程、
その相手の事が忘れられないようになる。
新田晴子は今日も自室で漫画を読みふけりながら、溜息をこぼしていた。
『英雄学園』の最新刊である。
そこには緻密に描き込まれた濃い絵と、濃密なストーリーがあった。
人は彼女を、一部のコアな流行にのっとって腐女子と呼ぶが、
そんな誤解は正して欲しいと、彼女は常々思っていた。
腐女子というのは男性キャラと男性キャラの性的な絡みを妄想する女性であって
晴子のように、ごくごくノーマルな目線で漫画に没頭する女性は、
ただの普通の漫画オタクだ。
だが今彼女が溜息をこぼしているのは、そんな理由からではなかった。
「はぁ……結城才培先生……」
彼女は今まさに読みふけっている漫画の作者であり、
自分の担任クラスの生徒、結城美柑の父親である、才培に思いを馳せていた。
生身で出会い、漫画について語り合いたいと、何度も夢見ていた。
そして実際に出会った才培は、思っていたより遥かに若い外見と、
娘に対する不器用ながらも精一杯の愛情が溢れる、誠実そうな男性だった。
『英雄学園』の濃い絵と、生半可なオタク女性は受け付けない、
手に取るのは漢だけで十分だとばかりに硬派なシナリオ。
そこから連想される結城才培の人柄は、熱血で豪快なイメージだった。
ところが実際に出会ってみると、思っていたのとは正反対。
いかにも優しそうで、緊張気味で、少しおっちょこちょいな、印象の柔らかい人だった。
晴子は単行本を傍に置くと、自らの胸に手を当てた。
心臓の音が部屋中に響き渡るようで、勿論そんな事は無いのだが、
たまらなく気持ちが昂ぶってくる。
先入観とは異なる第一印象。
娘のために一所懸命な優しさ。
そして、サインを頼まれて胸にペンを走らせるような、テンパり具合。
確かに「サイン下さい」と言って着ているシャツを差し出すファンは
テレビなどで見かけたりするが、別に晴子はそんな事は頼んでいない。
むしろちゃんと、彼の著作物を差し出していた。
にも関わらず、余程緊張していたのか、才培は晴子の服にサインをした。
才培に会えると思ってお気に入りの洋服で出向いていたから、
その服にペンでモノを書かれたのは少しショックではあったが、
逆を言えばあまり気に入ってない、どうでも良いような安物のシャツに
敬愛する才培のサインが書き込まれていたら、微妙な感想しか抱かなかったろう。
お気に入りの服にサインしてもらえた事は、逆に喜ぶべきなのだ。
だがそれにしたって、才培のおっちょこちょいは笑える。
晴子はこの時の事を思い出す度に、クスクスと思い出し笑いをしてしまう。
「この胸に……先生はペンを走らせたのよね」
乳房の上を伝っていくペンの感触が、今でもありありと思い出せる。
そして思いは募り続け、切なる願いが積み重なっていくのだ。
もう一度あの人に会いたい。会ってお話をしたい。語り合いたい。
あの時は緊張していて見せてくれなかった、あの人の笑顔が見たい。
決意してからの晴子の行動は迅速だった。
何しろ、あの結城才培の娘が、自分のクラスの児童なのだ。
面会する口実はどうとでも作れる。
家庭訪問のような、学校単位で行われる企画はさすがに持ちだせないが、
成績の良い美柑ちゃんの今後の進学について何たらかんたら、
理由はいくらでも後付け出来る。
美柑本人もその家族も、進学校へ進む事など希望した事は無いから、
それを理由に家に出向くのは不自然と言えば不自然だが、なりふり構っていられない。
とにかく今一度才培に会って、それをきっかけに、プライベートで親密になりたい。
才培が妻子持ちである事に少し心が引っ掛かりはしたが、そんな事に構っていられない。
その時になって初めて、晴子は自分の気持ちに気付いた。
あぁ、これは恋なのだ。
妻子持ちである事がネックになるという事は、それ以外に考えられない。
自分は、優しくて娘思いでおっちょこちょいな、
あの人に惚れてしまったのだと。
……まさかそれが結城才培本人ではないとは知らずに。
「今日先生が来るって……そんなのどうするんだよ!?」
「知らないよ!
でも今日はお父さんが仕事休みだって言ったら、
突然『今日お邪魔します』って言われちゃったんだもん!」
放課後の結城家では、リトと美柑が騒然としていた。
せめて前日から決まっていれば、対策の立てようもあったものを。
よりによって本物の才培が休みで、本当に家にいるのだ。
連載を三本も抱える彼が休日を得られるのは滅多にない事だ。
日頃の激務で疲れた体を回復させるのに、わざわざ外出したがる者も少ない。
聞けば才培は、今日はもう一日中家でビールを飲んで過ごすつもりらしかった。
「まずいな、マジで……本物の親父に会わせるわけにゃいかねぇ」
「って事は、またアンタが変装して対応するの?
でもどの道家じゃまずいよ、外でないと」
リトと美柑は慌てながらも、とにかく家で会うのだけは避けねばならないと、策を練った。
ひとまずリトが変装して玄関で待ち、本物の才培に気取られる前に、
訪問してきた晴子を連れて、さっさと近くの公園に行った。
途中で近所の人に見つからなかったのは幸いだったが、
公園に来れば嫌でも近所の子供たちが遊んでいる。
保護者もそれについて来ているのが多く、言うまでもなく危機的状況だ。
いつ「あらぁ結城さん家の息子さん、こんなトコで何でそんな恰好してんの?」
と大声で聞かれるか、わかったものではない。
そこでリトは、この公園の隅にある休憩スペースを利用する事にした。
そこには水道があり、ベンチがあり、かつ周囲を植木で囲まれているため、外からは見えない。
遊ぶ子供達からは距離が離れており、ここは昼間ゲートボールをする老人達が
腰を下ろすのに使っているくらいの場所だったので、夕方に誰かがここに来る可能性は低かった。
児童の進路相談を出先で話すというのも既におかしな話なのに、
その上こんな、人から離れ、隠れた場所でというのは、女性に対して少しエチケットに欠ける。
その事はリトも気にしてはいたが、そんな事はこの際度外視せねばならない。
それに晴子自身、本当は進路相談ではなく、才培と会う事そのものが目的だったのだ。
それが家であろうが公園であろうが、全く気にしなかった。
難しい話になるので、まずは保護者と担任で、大人だけで話し合うべき……
と晴子が主張したのは、言うまでもなく才培と二人きりになりたかったからだが、
その為に美柑はリトのフォローのために随行していく事が出来ず、
仕方なしにリトは一人で晴子の相手をせねばならなくなった。
少し離れたところから、野球に興じる少年たちの元気な声が聞こえてくる。
「そ、それでですね、お父さん。今日はあの、今後連絡を取りやすくするためにですね、
出来ればお父さんのケータイの番号とかメアドとか教えて頂けたら……」
「ケっ、え、何、ケータイ? いや、そんな事言われましても……」
直球勝負。
晴子は回りくどい手を使える程小器用な女ではない。
相手の携帯電話の番号を聞き出すのに、直接聞く以外の方法を思いつかなかった。
たとえば合コンなら、事前にウケの良い待ち受けにしておいて
「その待ち受け良いね」「でしょ? じゃあそっちに送ってあげるからアド教えて」
などといった作戦も出来ただろうが、進路相談ではそういうワケにはいかない。
慌てふためくリトと、番号を教えてもらいたくて焦る晴子。
その内に晴子は、目の前の『結城才培』の、眉毛がズレてきている事に気づいた。
「あのぅ、お父さん? 何か眉毛が変……」
「えっ、うぇえ!? ありゃ、こりゃ、しまっ……あ、いや、待っ……」
あとはもう、このテのコメディのお約束。
勝手に焦って勝手に暴れたリトの反動で、カツラと眉毛が勝手に落ちる。
そこでリトが変装していた事が露呈してしまった。
「あっ、あなた一体誰なんですか!?」
「ひぃぃぃごめんなさいぃっ!!」
せめて美柑がいれば、リトが慌てる前にさり気なくフォローを入れるとか、
一度トイレに立たせて変装を整え直してから戻るとか、機転もきいただろう。
だがリト一人ではどうしようもなかった。
シュンと項垂れながら、リトはこうなったいきさつを、全て話した。
父が忙しすぎて家庭訪問に対応出来ない事、そのために自分が代役を務めた事。
「それじゃあ、先日お会いしたのも?」
「はい……あん時はいろいろ失礼な事しちゃって、ごめんなさい」
胸にペンを押し付け、服を汚し、シャツすらも無理矢理脱がせ、下着姿を暴露した。
酔っていたのとパニクっていたので、殆どリト本人は覚えていなかったが、
次の日に美柑にこっぴどく怒られた事だけが強烈に記憶に残っていた。
そして何より、父親の振りをして担任と接するのは、明らかに悪い事だ。
法律の事は知らないが、多分何かの犯罪にはなるだろう。
仮に警察沙汰にも裁判沙汰にもならなかったとしても、家族沙汰にはなる。
晴子は今度こそ確実に才培と面会を望むだろうし、そこで美柑の学業の事について話し合うし、
その際には今回の、リトと美柑に騙されていた話もしなければならないだろう。
「うぅ……終わった……ごめんよ、美柑」
だが晴子は黙したままで、リトを責めるような言葉は投げかけなかった。
彼女からしてみればリトも高校生の子供なので、怒鳴りつけるような大人げない事は出来ないのだろう。
仮に叱りつけるのであっても、それは親や保護者の責任の範囲であり、
リトの担任ですらない晴子が叱るような話ではない。
晴子の立場からすれば、それなりの注意は言って聞かせた上で、
その後のお叱りは保護者に任せるべきなのだ。それ以上の事は越権行為になる。
だが晴子が怒りださなかったのは、それ以上の理由があった。
相手が結城才培ではないというのなら、むしろそっちの方が都合が良いのだ。
晴子が惚れたのは漫画家・結城才培ではない。
美柑の事を大切にし、美柑のために一所懸命振る舞う、誠実な男。
かつてはただの結城才培のファンでしかなかった晴子だが、
今、目の前の男を見る彼女の意識は、以前までとは大きく異なる。
相変わらず結城才培のファンであり、才培の著作物も好きだが、それとはまた別問題だ。
そして相手が才培とは違う人間だと言うのならば、障害が一つ取り除かれた事になるのだ。
才培は妻子持ちだが、リトは妻子持ちではない。
ならば彼と愛し合っても、法的に何の問題も無い。
「事情はよくわかりました、リト君。
今回の事は、お父さんにも学校側にも黙っておきます」
「え、えぇっ!? 良いんですか、晴子先生!」
「その代り……」
晴子が交換条件を提示するのは、当たり前の事だった。
そして都合の良い事に、今まさに彼らは二人きり。
万が一の事でもない限り、遊んでいる子供たちがこっちに来る事は無い。
屋外ではあるものの、周囲から隔絶された、二人だけの空間。
多少大きめの声を出したとしても、絶叫でない限りは、誰にも聞きとれまい。
この場所で面会出来た事は、晴子にとって実に好都合だった。
やはり子供だから、大人の男性程のボリュームも、膨張率も無い。
その事は少しガッカリだったものの、相手に対する愛情があれば関係無い。
晴子は草の壁に覆われたこの『開放的な密室』の中で、リトのモノを咥えていた。
ベンチに座ったリトの両足に挟まれるような形で、晴子が膝立ちしている。
そのリトの表情はピク、ピクンと小刻みに反応しており、
それを見上げて晴子は一層彼が可愛らしく、愛しく見えるのだった。
「うっ、ア……せ、はるこせんせぇ……俺、こんなの初めてっ……」
リトが慣れない経験に焦燥し、強張っているのがわかる。
だが晴子だって経験人数は多くない。
顔立ちは良かったから、野暮ったい眼鏡を外せば、素材は悪くない。
学生時代、その事に気づいていた少数の男は彼女の周囲にもいたし、
中には正式に付き合っていた者だっていた。
だがどこか抜けていて、不思議ちゃん系の空気の漂う彼女の事だ。
器用に男をなじるテクなど身についていなかった。
「ごめんなさいね、先生もあまり慣れてないから……
こんな下手な舌使いで、お兄さんに満足してもらえるかしら」
「いや、って言うか……やっぱまずいって、先生。
場所も場所だし、それに妹の担任となんて、世間的に、その……」
教師と、受け持ちの生徒の家族は、私生活で深く関わってはいけない。
それは公私混同の原因となるし、節度の範疇を越えている。
だからこそ情欲も燃え上がるのだが、しかしそれは晴子だけの話だ。
まだ子供で、背徳を楽しむ余裕の無い今の年齢のリトには、
好きな子と普通にえっちするぐらいが関の山だろう。
そんな彼をかどわかして、しかもこんな、
いつ誰が来るかわからない場所でフェラをする。
いつから自分はそんな淫乱になったのかと晴子は自分を侮蔑したが、
勢いと度胸で何でもやってもしまうのは、恋する女のパゥワーだ。
細い指先で余っている皮を引っ張り剥いていく。
この年頃の男子は、もうズル剥けなのもいれば、まだ剥けかけの者もいる。
リトは発育の早い方ではなかったから、後者に属していた。
皮と棒の境目の辺りに舌を突っ込むと、リトの肩は一際大きく跳ねた。
「っぅあぁっ!? いぎっ、イ……それ、先生、刺激強過ぎ……」
普段そこは皮に隠れていて、外気に触れ慣れていない。
ただでさえ空気がひんやりと感じられるのに、更にそこを、細い舌が舐めてくるのだ。
唾液が敏感なカリを虐める感覚が、まだセックスも未体験な男子を責め立てる。
「んは、じゅるっ……はぁ、んむ、はふ……んむぉ、んじゅっ、じゅぷっ……」
不器用な攻め方だったが、リトには随分効果的だった。
女性の舌と唇が触れているだけでも、彼にはたまらない威力となる。
更には淫靡な音、漏れ出る声、生温い吐息、頬の裏側の肉の感触。
先走り汁が染み出るそばから、晴子は間をおかずそれを吸い取ろうとする。
舌先で尿道を広げるように舐め、片手で鷲掴みにした睾丸を揉み転がす。
裏筋をつーっと下から上に舌でくすぐり、それから思い切ったように口の中に全体を含む。
一つ一つの技術は中途半端で、微妙に力加減が合っていなかったのだが、
そこはそれ、他に女を知らないリトにとっては、これで十分なテクに感じられる。
少なくとも自室で一人で発電しているのとは、全くレベルが違う。
「先生、俺……気持ち良すぎるよ。
何か先生にお礼がしたい」
リトは、自分にも何か、晴子に対して出来る事は無いかと思った。
「ぷはっ……うーん、それじゃあ……頭。
頭ナデナデしてもらえたら、それで先生、すっごく嬉しいです」
「へ、頭?」
「はい。先生が美柑ちゃんのお兄さんのを舐めてる間、
ずっと優しく頭を触ってくれてたら、それで私は幸せな気分になれますよ」
そんなんで良いのかなぁと、やや釈然としないまでも、リトは言う通りにした。
心なしか確かに、頭を撫でている間中ずっと、晴子の瞳がぽわーっと幸せそうになっていた。
案外知られていない事だが、頭は性感帯の一つだ。
そこを撫でられれば気分が良いのは当たり前だったのだ。
「はぁー、先生、すっごく幸せです。
美柑ちゃんのお兄さんのお陰で、とっても気分がふわふわしてます。
無理言ってごめんなさいね、ありがとう」
フェラしながら頭を撫でられただけで、晴子はもう満足しきった顔をしていた。
もう少し続ければ、程なくしてリトの方も射精出来るだろう。
だがそれでもリトは、まだお礼をし足りないと感じていた。
このままでは、自分が一方的に下半身を世話してもらっているだけでしかない。
その返礼が頭を撫でるだけというのでは、男としてどうなのだろう。
そして正直な話、本番をしたいという思春期男子の本音が、彼の中にもあった。
むしろ本番無しではもう帰りたくない。
誰かに見られるとか見られないとか、そんな危機感すらもう吹き飛んでいた。
「俺、やっぱり頭触ったぐらいじゃ、先生にお返し出来てないと思う。
こんなに良くしてもらったんだから、もっとサービスしてあげたい」
晴子にとって頭を触ってもらう事は何よりの至福だったのだが、
リトがここまで言うのなら、お言葉に甘えさせてもらおうという気にもなる。
晴子は今更キョロキョロと辺りを見回して、誰にも覗かれていない事を再確認した。
その上で安全を確認し終えると、上着のボタンを外し始めた。
「それじゃ、あのぅ……先生のおっぱいを、弄んで頂けますか?
あの時あなたが押し付けてきたペンの感触が、忘れられないんです……」
晴子はブラジャーまでも取り払うと、大きなその乳房をさらけ出した。
リトはペンの代わりに指で、その豊かな膨らみを押した。
「んっ……」
果たして、晴子はすぐに反応した。
プニプニとした感触。柔らかく、押す指が埋没してしまいそうになる。
そのままペンのように指を走らせると、その度に晴子はゾクゾクと身を震わせた。
「アぁッ、良い……おっぱい感じるゥん……」
晴子はたまらず、両手でリトの頭を抱え込んだ。
「ぅわっぷ! せ、先生っ!?」
「お願い、もっと……ペンだけじゃ足りないの……
おっぱい全体、美柑ちゃんのお兄さんの手と口で、弄んでぇ」
まるで赤子のように、リトは晴子の乳首を吸い続けた。
女子高生には無い、大人の女性の包容力。
本当に母乳が出てきそうな温かみさえ感じられた。
乳首はピンピンに硬くなり、片方は唇に、もう片方は指に弄り倒されていた。
「ちゅぱっ、じゅぷ……ぷは……先生のおっぱい、美味しいよ」
「あハぁありがとぅございますぅ……美柑ちゃんのお兄さぁん……」
縦に横に転がされ、倒され、或いは乳輪の中に押し込まれる乳首。
またある時は、軽く引っ張られもした。
その全てが晴子の脳に電気ショックを与え、倫理感をより剥奪していく。
乳房はリトの手には余るくらいの大きさで、掌に乗せてみると、タプンとこぼれそうになった。
晴子は、自分の乳首を吸い続けるリトの後頭部を抱きかかえ、頭を撫でた。
「ふぇっ、先生?」
「ねぇどう? 頭撫でられると、ホラ。気持ち良くなってくるでしょ?」
「た、確かに……なんかぽわーってして、甘えさせてもらってる気分です」
「ウフフ。どんどん甘えて良いですからねー」
乳児に母乳を与える母親のような気分で、或いは弟と遊んでやる姉のような気分で。
晴子はリトを愛し、可愛がった。もうこのまま離れたくないとさえ思った。
一生リトを抱いていたかった。
だが互いの下半身が、それを許さない。
もっと激しい行為を。もっと深い行為をしろと、せっついてくる。
遠くで子供たちの声が聞こえてくる。
「バッターびびってるー♪」とか、「まわれまわれー!」とかいった声。
危機感と背徳感が激しさを増し、心臓の音だけで数十M離れた子供達にバレそうに思える。
リトはやや臆したが、晴子は引き返させる気は毛頭無かった。
「ねぇ、美柑ちゃんのお兄さん。早く先生のナカにちょうだい。
お兄さんのぶっといペンを刺して、白インクをたっぷりブチ撒けて欲しいの」
甘い顔でおねだりされては、リトには断る事は出来なかった。
女性器の入口は、普段ララが全裸で部屋の中をうろついたり、
事故で春菜の裸体を見てしまったりといった事があったから、
割と見慣れているつもりではあった。
しかし見ているだけと、実際に挿入するのとでは、大きく異なる。
まず陰毛の濃さからして違う。
成長の遅い春菜の体は全体に未発達だったので、乳房もララよりは控え目だし、
それに伴ってアソコも産毛が覆っている程度だった。
だが晴子の股間は、さすが大人の女性だけあって、モノが違う。
幼い顔立ちとは正反対な仕上がりで、余計に興奮する。
胸の大きさといい、腰のくびれといい、下半身の完成度といい。
首から上だけロリで、首から下がアダルトとは、贅沢な肉体だ。
晴子はその肉体に、リトのペンを差し込んだ。
「すっごぉい……最初は丸ペンみたいだったのが、
舐め始めたらGペンくらいに膨らんで、
今はベタ用のマーカーみたぁい。
先生のナカでどんどん大きくなってて、はち切れそぉっ……」
「お、俺もだよ先生……自分じゃ抑えられないくらい大きくなってる。
破裂しそうなくらい痛くて、でも先生のアソコの中の肉が
柔らかくって、温かくって、まるで痛みを癒してくれてるみたいだよ。
しかも柔らかいくせに、きゅうきゅう締まってきて、抜けらんないし……
腰振るのも大変そうだよ、こんなの」
「良いのよ。せんせぇが動いてあげりゅからぁ」
ベンチの上で腰掛けるリト。
の、上に跨って挿入する晴子。
既に晴子は服も下着も全て脱いで畳んで傍に置いており、
外していないのは眼鏡と髪留めくらいだ。
今誰かに見つかったら、全く言い訳がきかない。
ばかりか、誰かが近づく足音が聞こえたとしても、服を着るのは間に合わない。
この緊張感がたまらないのだ。
リトもまた服と下着を脱ぎ棄て、晴子とは逆に、無造作に地面の上に放り出していた。
高さ的には晴子の両の乳房が、リトの顔面をずっぽりとうずめるくらいだ。
更に深く埋没するように、晴子は両腕でリトの頭を抱え込んだ。
足はM字に開いて爪先で立ち、、より大幅に腰を上下させられるようにする。
背中に添えられたリトの両手の感触が、晴子は嬉しかった。
リトもまた、乳房の海に顔を突っ込んだような感覚で、すこぶる気持ち良い。
動く度に彼女の乳首が、頬や瞼や額を擦る。
谷間から香ってくるオンナの匂いは芳しく、汗の気配と入り混じって、鼻孔を刺激する。
「はぁっ、はぁっんっ、アン、アっ、あァア……す……ごぉい……
ナカ擦れっ、てっ……腰、止まらなっ……」
「あぁ先生ぇ、俺もう我慢出来ないよぉ……先生、先生、先生……」
誰かが近くを通れば、タン、タン、と肉のぶつかる音が聞こえるだろう。
だがそんな危機意識すら、もう保っていられない。
イキたいという事だけを脳が考え、他の思考はシャットアウトされる。
「アァアもうイクっ! イっちゃぅぅゥうぅぅぅぅウうぅぅぅっ!!」
「あぁっ、先生俺もっ! せんせぇっ!」
晴子が果てると同時に、リトは急いで彼女の体を自分から引き剥がした。
そうして可能な限りそっと、しかし急いで彼女の体をベンチの上に寝かせると、
抑えられなくなった精子が、勢い良く白い肌の上にぶち撒けられた。
ペン先から迸った白濁インクは、晴子の顔や眼鏡にまで飛び散った。
「……んもうっ。眼鏡のお手入れって案外大変なんですよ?」
「……スミマセン」
「今後は気を付けて下さいね?」
「え、今後……って……あの、その……」
帰りの道々、夕暮れを背にして並んで歩くリトと晴子。
眼鏡にかかった精液は拭いてもしつこくレンズに広がるだけで、
傍に水道が無ければ、中々綺麗に出来なかっただろう。
晴子はまだ少しイカ臭さの残る眼鏡をかけて、
その異臭を嗅ぎながら、文句を垂れていた。
というか精液だと刺激が強過ぎてレンズ表面のコーティングがはげそうだが、どうなんだろう。
「今後は今後です。……他にどんな意味があるって言うんですか、リト君?」
どうやら晴子は、リトとずっと関係を持つ気でいるつもりのようだった。
本気でリトを好いているらしい。妹の担任なのに、良いのだろうか。
それと、もう一つ。リトには気にかかった事があった。
「さっきまで『美柑ちゃんのお兄さん』って呼んでたのになぁ……」
「ハイ?
何か言いましたか、リト君」
照れながらボヤいたリトの言葉が聞こえていたのか聞こえていなかったのか、
晴子はトボケながら彼の方を振り向いた。
レンズに夕日が反射しており、頬は染まったようにほんのり赤くなっていた。
終始厳しい口調だったが、晴子はずっと幸せそうに微笑んでいた。
終わり
どうだ、このマイナー路線の突っ走り様
まさか晴子先生のエロを見れるとは・・・GJ
個人的には栽培×晴子を読みたかったけど
話運びの巧さに感激した
乙
俺の占いが……初めて(ry
まさか晴子先生が読めるとは…
GJ!
乙!晴子先生とはノーガードだった・・・
この人一回しか出てないよな?
このカップリングは予想外。マジで驚いた。GJ!!
535 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:36:55 ID:M37SKp2c
乙だ
唯が痴漢に合うのお願い
処女設定で
538 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 12:03:22 ID:5Lb3fALn
あ、もちろん電車で
ララと春奈の百合(もしくはレズ)物って無いの?
百合とレズってどう違うの?
百合はあんまりエロくない感じ。神聖なもの。
レズは妖艶にくねくねしながら絡み合ってそうなイメージ。
じゃあララのアナル物ヨロ
543 :
ヤミ金:2008/08/09(土) 00:03:21 ID:D9+aXcFd
一年以上ほったらかしにしていたラコスポの逆襲の続き、触手編の連載を開始したいと思います、三話くらいでしょうけど。
…しかし純愛モノばっかりになったこのスレで陵辱に分類されるこの作品を今更投下するのは微妙かも(w
とりあえず続きものですので保管庫で前作を見てから読むのが吉かと。
えーそんなの面倒くさいという方は下のあらすじをどうぞ、投下は十五分からです。
あらすじ:ヤミは復讐を企むラコスポに捕えられて裸にされてえっちぃ目にあいました。
「ん…」
倦怠感の中、金色の髪の少女は目を覚ます。
うっすらとぼやける視界の中、ゆっくりと意識を取り戻していく。
「…ッ!!」
ガバリ、とヤミは上半身を起こして覚醒した。
きょろきょろと周囲を見回す。
部屋はどうやら気絶する前と同じようで、移動させられたということはないようだった。
だが、先ほどまで自分を拘束していたベッドは撤去され、身体は無造作に床に放置されている。
周囲は天井へと伸びている透明な壁が円筒状になって周囲を包んでいた。
壁の囲んでいる範囲は自分を中心にして直径一メートル半といったところだろうか。
「きゃ…っ!」
そして少女は思い出した。
そう、自分が今どういう格好だったのかということを。
手足の枷こそ外されてはいたが、その身を守る布は見当たらない。
先程のラコスポの悪趣味で服は溶かされ、一糸纏わぬ姿のまま。
慌ててヤミは両手を交差させて胸を隠し、しゃがみこんで足を硬く閉じ下半身を守る。
「わ、私は…」
ふるふると身体を震わせながら顔を真っ赤に染めて自分の身に起きたことを思い出す。
ラコスポに無様にも捕まったこと。
身動き取れない状態で服を溶かされたこと。
全身を余すところなく鑑賞され、その上匂いを嗅がれてしまったこと。
そして身体を触られて……
ヤミはそこまで思い出し、はっと自分の股間へと手を伸ばす。
(濡れていない…)
ほっと息をつく。
自分の醜態の象徴ともいうべき恥ずかしい液体が残っていなかったことは僥倖だった。
だが、記憶はしっかりと残っていた。
しかも、身体が綺麗な状態ということは自分の身体が拭かれたことを意味する。
意識がなかったとはいえ、股間を――おそらくはラコスポに掃除されてしまったのだ。
その想像は誇り高き金色の闇という少女の心を屈辱と恥辱のどん底に突き落とすには十分なものだった。
「…こうしては、いられませんね」
ヤミはゆっくりと立ち上がり状況を調べるべく透明な壁に近づいた。
ショックは抜けていないが、いつまでも落ち込んではいられない。
ラコスポの予想通り、少女の心はまだ折れてはいなかったのだ。
油断なく五感を頼りに周囲の状況を確かめる。
しかし、監視カメラがあるかもしれないことを考えると、恥ずかしさから胸と股間から手は離せない。
ならば、とトランス能力を使用するべく集中し――
「…やはり」
数秒後、僅かな期待を裏切られたことにヤミは憂鬱の溜息をついた。
拘束がとかれても依然トランス能力は封印されたまま。
おそらくは唯一身につけさせられている右手の腕輪が能力封じをおこなっているのだろう。
勿論、腕輪は能力の使えない女の子の力程度で取れるようにはできていない。
「なんとかしてこの腕輪を外さないと…」
腕輪さえ外せばトランス能力が復活する。
能力さえ発動させることができれば脱出は容易だ。
そう考えたヤミはどうにか腕輪を外すべく腕輪に手をかけ――
同時に、部屋のドアが開いた。
ヤミは短い悲鳴を上げると反射的に身を縮め、身体を隠す。
ドアの向こうから現れた小さい影は、少女の処刑候補ランキング一位の人物だった。
「ラコスポ…!」
「おや、目が覚めたんだもん?」
「私を、どうするつもりですか」
「もっちろん、お前をボクたん好みのメス奴隷に調教するんだもん!」
「戯言を…! どれだけ、私を辱めても…私は屈しません!」
「ぷぷっ! さっきまであんあんいいながらえっちなおつゆを垂れ流してたくせに、口だけは一丁前だもん?」
「そっ、それは…!」
ラコスポの指摘にヤミはカァッと頬を染めて俯く。
どう言い訳しようが、自分の身体が感じ、絶頂に達してしまったのは事実。
金色の闇という存在の心はまだ折れてはいない。
だが、性的な行為に慣れていない少女の心にはしっかりと恥辱への恐怖というヒビが刻み込まれていた。
「まあ、いいもん。こっちの準備もできたことだし、第二ラウンドを開始するもん」
「…第二、ラウンド?」
うぜえ
ラコスポの言葉に身構える。
だが、チビ男はそんな少女の威嚇を意に介さずパチンと指を鳴らす。
すると、ヤミの頭上の天井がガコンという音を立てて開いた。
「な…っ!?」
うにゅるうにゅる…
生理的嫌悪を呼び起こす音を立てながら『ソレ』は天井から姿を現す。
『ソレ』はタコの足に似ている触手の群れだった。
タコと違うのはその本数と見た目。
天井から降りてくる数はゆうに二十をこえている。
見た目に関しては、タコと違い吸盤はなく、体表からはぬるぬるとした液体が分泌されている。
ぴくっぴくっと脈動するその姿にはお世辞にも可愛らしさは感じられない。
本体は天井裏の闇にまぎれて見えないが、逆にそれが恐怖を感じさせる。
「……っ」
喉までせりあがった悲鳴をヤミはどうにか押し殺す。
触手を好きな女の子など普通はいない。
そして、ヤミは不幸にも人並み以上にこういった生物が苦手だった。
奇怪な生物の接近に、小柄な身体が本能的な恐怖から無意識に一歩後ずさる。
ぬるり…
「ぁぅ…ッ!?」
唐突に肌に触れたその感触に、短い悲鳴が喉を突破した。
背後からの不意打ちに、悪寒が震えとなって全身を駆け巡る。
頬に感じたその感触は間違いなく天井から降りてきた触手の一本によるものだった。
ヤミはぞわぞわっとわきあがる悪寒を強引に押さえ込みながら触手から距離をとるべく動こうとし――
「そ、そんな…」
そして立ち上がりかけた体勢のまま身をすくめた。
僅かな動揺の隙に、包囲網は完成されていたのだ。
元々ヤミが閉じ込められている透明な監獄は大した空きスペースがない。
それはつまり、数十の触手でスペースを容易に埋め尽くせるということなのだ。
「こ…この…っ!」
無駄とは確信しつつもトランスを発動させようとあがく。
しかし、少女の髪や手はやはり意に反して反応しない。
焦りと恐怖にヤミは蒼白になる。
しゅるる…
能力発動のための集中という僅かな隙を見逃さなかった触手たちが獲物を捕縛するべく動く。
控えめにふくらんだ胸を隠す右手。
無毛ゆえに見られることに人一倍の羞恥を感じる股間を覆う左手。
その細い両手にうねうねと不気味に脈動する触手たちがまとわりついていく。
「は、離してくだ……あ!」
強気な声は最後まで続かない。
両腕を持ち上げようとする触手の動きにヤミは顔を真っ赤にして抵抗する。
少女の全力を示すかのように、一筋の汗が頬を流れた。
だが、女の子の細腕が複数の触手の力に敵うはずがない。
しかもぬるぬるとした触手の感触に、嫌悪感から力が抜けていくのを感じる。
あっという間に両手は手首の部分で束ねられ、囚われの少女は原寸大の標本として監獄という試験管の中に吊り下げられてしまう。
「ぅ……くっ…」
足はかろうじてつま先が地に付く程度のつり下げなので身体への負担は少ない。
だが、両手にくまなく絡みつく触手の感触が。
今にもそれ以外の部分にも触れんとする残りの触手の気配が。
そして何よりも、そんな自分の無様な姿を愉悦の表情で見物するラコスポの顔がヤミには不快でならなかった。
「ぷぷぷ…エロい格好だもん?」
「……」
返事をすれば相手を調子に乗せるだけ。
それを理解していたが故に、少女はキッとラコスポを睨みつけ、気丈さを見せ付ける。
が、ラコスポの視線が自分の裸に釘付けになっていると意識してしまっている以上
女の子の羞恥心を持ち合わせているヤミは気がそぞろになってしまう。
そしてラコスポはそんなヤミの心情を的確に把握していた。
それゆえに彼は少女の視線になんの怯えも見せない。
もはや殺し屋金色の闇は彼にとってはか弱い獲物に過ぎないのだ。
「くっ…」
ラコスポの視姦から逃れるべくヤミは腰を捻り、右足を持ち上げて股間を隠す。
そうすることによって辛うじて最も恥ずかしい部分は視姦から逃れることができた。
しかし、それは所詮気休め程度の抵抗に過ぎない。
確かに足を上げている間はそれなりに股間を隠すことはできる。
だが、あくまでそれは悪あがきの範囲だった。
片足だけで全てを隠すことは当然無理であり、股間以外の部分。
つまり胸や脇、太ももといった部分は惜しげもなく全開で晒されているのだ。
また、ヤミは気がついていないが、彼女の動きは傍目には非常に扇情的だった。
身をよじるたびにかすかにふるんっと揺れる胸が。
激しい抵抗によって上気した肌が。
見えそうで見えない下半身が。
そして、嫌悪と羞恥に焼かれた一人の少女としての表情が。
その全てが一体となって男の性欲を掻き立てる。
「ほらほら、頑張らないと。足が震えてるもん?」
「黙り、なさい…っ」
ラコスポの忠告にヤミは気丈な声音で返事をする。
いくらもう片方の足が床についているからといっても、人間は長時間足を上げ続けることはできない。
それは、普通の女の子よりも身体を鍛えているであろう金色の闇にとっても例外ではなかった。
両腕を吊り下げられて一分が経過した頃、少女の持ち上げられていた右足はぷるぷると痙攣を始めてしまったのだ。
「くぅっ…」
「ほーらほーら。頑張らないとまた全部見えちゃうよお?」
憎い存在からの嘲りに、少女の気力がみなぎる。
だが、精神力だけでは身体はついていかなかった。
徐々に徐々に、だが確実に、持ち上げられていたヤミの右足がゆるゆると垂れ下がっていく。
(いや…っ)
このままではまた一番恥ずかしい部分を見られてしまう。
その避けられない恥辱の瞬間が近づいてくる感覚に、少女の羞恥心が身体を燃やせとばかりに燃え上がる。
腹筋に力を込め、懸命に足を下げまいと力むも限界は間近だった。
そしてついに、右足から力が抜け。
少女は思わず恥ずかしさから目をそらした。
しゅるるっ!
「え…?」
だが、少女の恥処が晒されようとしていたその時。
一本の触手が右足を支えるように絡みついた。
続いて二本目、三本目の触手が膝や足首といった部分に絡みつき、降りようとする少女の右足を支える。
なぜ、触手が自分を助けるような真似をしたのか。
疑問に思いつつもヤミは股間を晒されなかった安心に気を緩ませる。
しかし、その視線がこちらを見るラコスポを捉えた瞬間。
少女は言いようのない嫌な予感を感じた。
(まさか――!)
「いっせーの……」
「やっ…」
「せっ!!」
ぐぃんっ!
ラコスポの掛け声と共に右足に絡み付いていた三本の触手が一斉に足に絡みついたままでその身を本体へと引き戻した。
当然、ヤミの右足は抵抗する間もなく持ち上がり、大きく足を縦に開脚することとなってしまう。
「ああっ…!」
少女の哀切の声が響き渡る。
持ち上げられた足は地についている左足とは対称的に上へとほぼ百八十度の角度で開かされていた。
いわゆる、I字開脚といったところだろうか。
柔軟性のある身体でないととてもできないポーズだが、ヤミの小柄な身体は見事にI字を作り出していた。
「も、戻して…! 足を元に戻しなさい…っ!」
「うはっ、あそこが丸見えだもん! さっきみたばっかりだけど、ポーズが違うとまた趣が違ってエロいもん!」
「い…いやっ…」
懸命に足を降ろそうともがくも、既に力の抜けきった右足は触手と綱引きすら行うことができない。
それでもヤミは顔を首筋まで赤らめてなんとか股間を隠そうと力む。
両手が、右足が、つるりとしたお腹が力みにブルブルと震える。
だが、それはむしろラコスポを楽しませるだけの結果に終わっていた。
(く、屈辱です…! こんな格好なんて…ッ!)
顔よりも上に来ている右足の存在にこれ以上ない屈辱を覚えながら、ヤミは羞恥に身を焦がした。
551 :
ヤミ金:2008/08/09(土) 00:41:49 ID:DwpKnFhx
投下終了。
次は多分Yami Loveるの第三話になると思います。
しかし、来週はラコスポとランジュラの活躍を期待せずにはいられない、えっちぃ的な意味で。
待ってました!
春菜がアナル付かれるのかいて
まずは春菜という名前をローマ字表記に直す
すると「 H A R U N A 」となる
これは単純なアナグラム
文字と文字の順番を入れ替えてみると「A N A R U H」となる
すなわち「アナルH」
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!
>>551 ヤミ金さんGJです!!
久し振りだというのにあいかわらず素晴らしい
一度、凌辱じゃない純愛なヤミちゃんも見てみたいです
557 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 19:46:11 ID:ZaooK4Q4
保守
558 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 22:24:12 ID:X5/y1j0d
リトが冷たくなったときの皆の反応が見たい
リトが冷たくなるなんて有り得るのか
みんな優しいところに惚れてるんだから普通にハブられるだけな気がする
>>550 こういう痛いことしないけどじわじわなぶるのが一番興奮する
くすぐり責めなんかも好き
うぅ…今までSSなんざ書いた事無かったが、職人さん達のを見てリト唯を無性に書きたくなってきた
ただ問題なのが、エロシーンに至るまでの流れのネタは数多くあるんだがエロシーン自体を上手く表現出来そうにないという…(´・ω・`)
>>561 まずは一回SEX経験しないとな(`・ω・´)
>>561 アドバイスになるかわかりませんが……
書くSSの系統にもよるんですが、どっちを受け責めにするのか? それとも二人とも初々しい感じにするのか?
等で、全体の流れも変わってくるので、これだけはきっちりと決めておいた方がいいかと
フェラやパイズリとかは確かに魅力的です。けど、深く追求すると、それこそ収集がつかなくなってしまいます
なので、「コレだけは!」っていう見せたいシーンやセリフ回しだけを念頭に、後は基本を押さえればいいかと(まあこれが難しいんですが…)
あとエロシーンは体の絡み・セクロス中の二人の会話・心情等いろいろ大切な部分があるんですが、一番大切な部分はセクロス前と後だと思うんです
どういう流れで始まって、どういう流れで終わって
一番盛り上がって余韻が残るシーンだと思うので、エロが終わった後も大切に
頭で思い描いた事を文にするってすごくむずかしいです。特にエロシーンは動きが基本なので余計に大変です…
まああまり深く考えずシンプルなものでいいかと!
いつもまるで出来ていない俺が言うのもなんですがw長々と長文になってすいません
ぶっちゃけエロ漫画みたいにペチャクチャ喋りながらヤる奴なんていないからな
でも字で表現するSSじゃ、どうしてもセリフが必要になる
そのため「こくまろチンポミルク出る!」とか不自然なくらい喋らなきゃいけない
「はぁはぁウッ」じゃ駄目な辺りが難しい
地の文で何をしているかをきっちり描写できるのが全てにおいていいと思います。
566 :
rmy:2008/08/12(火) 11:48:04 ID:O6KwHPHA
お久しぶりです
職人様方、お疲れ様&GJです
最近は忙しくてすっかり読み専でしたがそろそろ投下できるように頑張ります
唯の話の続きか、春菜+秋穂ものか、おそらく唯の方を先に書きあがると思いますが
こうでも書いておかないといつまでたっても上げられないのでw
では近いうちにまたきっときます
>>564 俺の書くリトと唯はエロ中でもよくしゃべるからなあw
そろそろ地の文で表現したいけど、いつもあれもしたいこれもしたいで風呂敷広げ過ぎて…
エロシーンは難しいです。本当に
>>566 すごく待ってました!前に言っていたクリスマスですか?
俺も今週中にはなんとか投下できるようがんばらないと
568 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 16:31:23 ID:akOx3Y2v
唯小説書いている人GJです。
2828するような作品ばかりで最高です!
>>558 仲間発見。俺も見たいと思ってた。
こう・・・追うより追わせろっていうのを見たい(別に追ってはいないけど)。要するにツンなリトを見たいのだ。
>>561 俺の場合だがそこいらのSSとか本で研究すればいい。特にこれは!ってのをよく研究する。
自分の好みにもよるが、やはり地の文とか台詞の大体の比率を目安にするのもいいと思う。
盗作はいけないが結局人間最初は誰かの手本が必要だ。参考までにするのがこういったアドバイスより役に立つ。
後は字の使い分けかな。「あ〜!」と「アー!」では微妙に情景が違ってくる。そういったところかな。
俺も自分で書いてみるかな・・・・(←エロシーンの『・・・』も結構重要だったりする。数とか)
とりあえず本気で書いて投下してみればいいと思う
よっぽどキャラの性格ぶっこわしたりあんまりな展開だったりしない限り、非難されることなんて無い
書きながら慣れてくしかないよ
沙姫先輩とはどこに行ったら会えますか?
甲子園
573 :
561:2008/08/12(火) 20:19:00 ID:nVZ+V6+t
アドバイスありがとう
ちょっくら色々勉強してくる
>>563初々しい感じにする事は決めてます
ちょっと俺お静ちゃんに会ってくるわ
俺もそろそろ行くとするか・・・
「リトと唯の」人、今週の夏祭りでリトと唯が二人きりでデートしたって話し書いてくれ!
せっかくがんばって浴衣着てきたのにデートさせてあげたいよ
リト唯ばっかでこれからもどんどん続編が投下されるってのにまだリクしますか
579 :
rmy:2008/08/13(水) 13:22:50 ID:Y/6C1Wg0
>>567 時期的にはクリスマスですよ。まあクリスマスって言うのは話のアクセントみたいなものですけど
「リトと唯」さん、いつも楽しませていただいてます
自分の作品が刺激になってもらえると良いのですが
で、唯の話が99%完成したわけですが・・・
時期がクリスマスなので読み手の方に脳内変換していただかないといけないのです
ただでさえ暑くて雰囲気出ないから、せめて真昼間じゃなく夜に投下したいと思います
今回も長いですw
では、また後ほど〜
>>577 ちゃんと書いてますよw
今週中か遅くても来週月曜までには投下するのでもう少しだけ待っていてください
>>579 これは激しく期待できる!!!!!真夏のクリスマスっていいと思います
刺激どころか、毎回勉強させてもらってる身です。これからも勉強させてもらいます!
美柑とヤミの百合も捨てがたい
l三`ー 、_;:;:;:;:;:;:j;:;:;:;:;:;:_;:;:;_;:-三三三三三l
l三 r=ミ''‐--‐';二,_ ̄ ,三三三彡彡l_ この感じ・・・・
lミ′  ̄ ー-'" '=ミニ彡彡/‐、ヽ
l;l ,_-‐ 、 __,,.. - 、 彡彡彳、.// 新作か・・・・
_______∧,、_‖ `之ヽ、, i l´ _,ィ辷ァ-、、 彡彡'r ノ/_ ______
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583 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 19:50:32 ID:vsRtIlub
今週号でヤミがリトに挿入されるような格好にされてたが
あのままほんとに挿入される話お願い
584 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 22:08:07 ID:QWm7Fqmg
>>559 戸惑いこそすれハブはないだろ、特にルン・ララ・春菜辺りは
585 :
rmy:2008/08/13(水) 22:29:48 ID:Y/6C1Wg0
そろそろ投下します
一応簡単な注意書きを
・この話は前々スレに投下させてもらったリト唯話の続編です
なので原作だけでは訳が分からないような設定もあることをご承知ください
長いですが一気に行こうかと思います
街がイルミネーションの輝きに満ちる、一年で最も煌びやかな季節。
12月23日。
今日は「恋人達の日」の前日だ。
カラーン♪
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「えーと、待ち合わせなんですけど・・・」
愛想よく微笑みかけてくれた女性店員に答えつつリトは店内を見回す。
来ていないはずがない。
想い人はすぐに見つかった。
窓際の角席。
本を読んでいるのか、やや俯き加減に、しかし背筋はしっかりと伸びている。
リトを魅了してやまない長く美しい黒髪を湛えた少女が、そこにいた。
「遅いっ。3分遅刻!」
大きな瞳を微かに細めて見せる不機嫌な表情は、不満を顕わにする猫のようだ。
「ごめん、思ったより身だしなみに時間がかかっちゃって・・・」
そんなことより今日も可愛いね、なんて軽口を叩けるほどリトは器用じゃない。
そもそもごく一部の時間を除けば完全に尻に敷かれているわけで。
下手なことを言うと説教モードに入られてしまい、お茶どころではなくなってしまう。
それは照れ隠しなのかな?なんて思ったりもするけれど、確かめたことはないし確かめる気もない。
だって彼女のお小言は、ごく一部の時間において極上のスパイスになるから。
「まったくもう・・・。何度言ったら分かってくれるのかしら」
この言葉が出てくれると、それはお怒りが鎮まる合図。
「ホントにごめんな・・・」
心から申し訳なさそうに謝るのがポイントだ。
いや、リトが悪いと思っているのは本当のことなのだが。
「・・・もういいわ。次から気をつけてよね」
ほら、お許しが出た。
こうしてみるとリトも大分唯の扱い方が分かってきているのかもしれない。
まあ、情けないことに変わりはないのだが・・・。
二人が待ち合わせたのは駅前の噴水がある公園から歩いて10分程の喫茶店。
ステンドガラスの照明でオレンジ色に染められている店内には、絞ったボリュームでジャズが流れている。
ちょっと背伸びして大人の雰囲気の喫茶店。
選んだのは唯だ。
時刻は午後5時。
しかし今日はこれからデートってわけじゃない。
目的はクリスマス会だ。
終業式も既に終えた彩南高は冬休みに入っていた。
あれは一週間くらい前だったか、知らないうちにクリスマス会の開催(+リトと唯の参加)が決定されていた。
年末は帰省やら旅行やらで予定が合わないから、ということらしい。
発案者は例によって籾岡と沢田、それに猿山だ。
あの日―――
想いを確かめ合い、初めて結ばれてから、約3週間。
二人はところどころにぎこちなさを残しながらも、順調に仲を深めている・・・はずだ。
あれから、リトは唯を「古手川」と呼ばなくなった。
二人きりじゃなくても、学校でもどこでも。
リトにとって自慢の恋人だし、誰にも隠す必要なんてない。
もちろんリトにも照れくささが全くない訳ではないが、大分慣れてきた感じがする。
唯もはじめこそ特に学校では抗議をしたけれど、恥ずかしそうにしながらも今ではそれを受け入れている。
それから、二人が何よりも嬉しかったこと。
それは仲間たちが、少しも変わらぬ態度で接してくれたことだった。
あの日以降で最初の登校日、ララや春菜が精一杯普通に振舞った、
しかし曇りのない笑顔で祝福してくれたその日、リトと唯は朝から涙を堪えるのに必死だった。
放課後、誰もいなくなった教室で、二人で顔をくしゃくしゃにして泣いた。
絡めた指先から互いの体温を、そして彼女たちの想いを、受け止め、通じ合わせながら。
そして自分たちも今まで以上に彼女たちを大切にしようと、そう誓った。
そんなわけで、二人は大切な仲間との変わらぬ友情のため、クリスマス会に参加するべく待ち合わせたということである。
「・・・」
「・・・」
二人してそれぞれの前にあるカップに手を伸ばす。
リトはダージリンティー、唯はアッサムティーを注文した。
リトが到着するまで律儀にも自分の分の注文も待ってもらっていたみたいだった。
そういうところ、やっぱりすごく好きだなとリトは思う。
これで華のある会話でもあったら、幸せってやつが溢れてくるんだろうけど・・・。
テーブルを挟んだ向かいの座席、彼女の脇には読み終えたのだろうファッション雑誌が可愛らしい手袋とともに置かれていた。
落ちる沈黙。
別に険悪なムードってわけじゃない。
かといって、言葉がなくても安心できるというわけでもない。
いつも感じているぎこちなさとも、どこか違う。
唯は少しだけ怒ったような、あるいはバツが悪いような、そんな顔をしていた。
そしてきっと自分もそんな顔をしていたことに、リトは気がつかなかった。
気づかないフリをしていた。
沈黙の中でも、ジャズの音など耳に入っていない(どっちにしろリトには分かりやしないが)。
ダージリンティーがやけに熱く感じ、喉を焦がす。
「あ、あのさ・・・」
妙に痰が絡まったような声が出てしまった。
誰よりも大切な人が視線を向けてくれる。
(怒っている・・・?本当にそうか・・・?)
咳払いを一つして、迷いとためらいを振り払う。
目を閉じて唯のことだけを考える。
それが、唯優先主義発動の条件。
「今、何考えてる?」
唯が一瞬キョトンとした表情になってから、軽く睨んできた。
「どうしてそんなこと聞くのよ・・・?」
実はみんなより早く二人きりで待ち合わせしようというのは、唯の発案だった。
付き合いだしてからはそれまでの反省の意味もあり、リトの方から積極的に唯を誘っていた。
だから唯の方から逢いたいと言ってくれたことが、リトは凄く嬉しかった。
それで身だしなみに気合を入れていたら遅れてしまったわけだが。
(今はそれで怒ってるわけじゃないよな・・・?)
彼女は自分がもういいと言ったことにいつまでも腹を立てているようなコじゃない。
唯の表情の理由が、本当に分からない。
「俺はバカで鈍いから、唯の考えてることが分からないときがあるんだ」
分からないから、リトは分からないなりの対処をする。
「だから、何考えてるか教えて欲しい。唯にはできるだけ、笑っていて欲しいからさ」
咲き誇る、という表現が似合う、凛とした普段の唯。
そんな彼女が心を許したものにだけ見せてくれる微笑みは、誰もが見惚れてしまうほどに、可憐で優しい。
たまにしか見れないなんてもったいないと、リトは思う。
「・・・そんなの、言えるわけないじゃない・・・」
胸のうちを必死に搾り出すような唯の声。
「ダメか?」
「ダメじゃないけど・・・。思ってること全部を言葉になんてできない」
指先をテーブルの上でもじもじと滑らせながら、湯上り時のようにほんのりと上気した顔を伏し目がちにして。
時々視線が合うその瞳はどこまでも透き通っていて、微かに潤んでいるように見える。
(可愛い。なんて可愛いんだ)
少しの息苦しさと共に、胸がときめく。
でも今は惚けてる場合じゃない。
リトの唯優先主義は、そんなにやわじゃないのだ。
彼女の望みを満たすためとなれば、自制だって自然にできてしまう。
「じゃさ、ヒントだけでもいいから」
唯が上目遣いにキッと睨んでくる。
でも怯んだ顔なんて見せちゃいけない。
目をそらしちゃいけない。
それは唯を悲しませるから。
「・・・そんなのは自分で考えなさいっ」
揺れた彼女の髪から、微かに甘い香りがする。
そっぽを"向かれてしまう"のは全然OK。
その証拠に、唯の声の響きが今日一番明るくなっている。
(良かった。機嫌直ったみたいだ)
リトは唯とのこういうやりとりが大好きだ。
唯の気持ちが少しだけ見えた気がして、お互いの繋がりが強く固くなっていくような気がして、顔が綻ぶ。
今そっぽを向いている最愛の人も、同じように価値を感じてくれていたら嬉しいなと、強く思う。
それから数十分は、なかなか実りのある会話ができた。
「そろそろ行こっか」
伝票を手にして立ち上がると、唯がすっと財布を取り出した。
二人はいつも割り勘だ。
理由は・・・彼女の性格で分かりますよね?
しかし今日のリトはそんな唯をスッと手で制す。
「今日はいいよ」
「でも」
「あー、ほら。俺遅刻したし、そのお詫び」
まだ納得がいかないといった顔の唯に微笑みかけて、素早く会計を済ませ店を出る。
「さむいなー」
気温は5度あるかどうかだろう。
吐き出した自分の白い息を、消えるか消えないかくらいのところで追い越しながら歩く。
この調子じゃホワイトクリスマスになるかもしれない。
手袋を取り出そうとポケットに手を突っ込んだら、彼女にコートの袖を掴まれた。
「ん?」
立ち止まったリトはそのまま引っ張られる。
(一体なんなんだ?)
わけがわからずに十メートルほど付いていくと、彼女が急に立ち止まり振り返った。
「早く!」
「何をそんなに急いでるんだ?」
まだ待ち合わせに遅れるような時間じゃないのに。
だが唯の意思に反する大きな理由もないからとりあえず急ぐことにした。
彼女に追いつき、今度は前に出る。
「っと?」
今度は後ろに引っ張られた。
というか唯が動こうとしていない。
彼女はじっとリトを見つめている。
喉元まで出掛かっているそれを、口に出したいけど出せない。そんな表情で。
リトは必死になって考える。
唯の表情、言葉、現在の状況に至るまでの流れ。
(・・・もしかして)
そっと、コートの袖を掴む彼女の小さな手に触れてみる。
その表情は変わらない。
それはきっと、肯定の意思。
だからリトは彼女の小さな、冷たくなってもどこか温もりのある手を包み込んで握る。
「正解、かな?」
答えはもう分かっている。
唯が手袋を持ってきていることも分かっているのだから。
それでも聞いてしまうのは、自信のなさ故か・・・。
そして彼女の答えは手厳しかった。
「遅すぎよっ!」
それからみんなが来るまで唯は口を開かなかった。
だけど、二人の間にはいつもの空気が戻ってきていた。
不器用な二人が不思議と調和し、生み出す優しい空気が。
しかしそれはすぐに霧散してしまうことになる。
「かんぱーい!!」
これで何度目の乾杯だろうか。
既にクリスマスパーティは佳境に入っていた。
リトたちがいるのは、普段は高校生にはやや近寄りがたい雰囲気のスポーツバーだ。
普段は、というのは今日は様相が違うためで、なんと貸切なのだ。
何でも籾岡の元恋人が以前この店でバイトしていて、付き合っている間に何度も来店して店長と仲良くなったとか。
尽きることのない会話、そこかしこで開花する笑顔、悪ノリした挙句ヤミにちょっかいを出して一人ノビている猿山。
みんな楽しそうだった。
でもリトは全然楽しくなんかなかった。
会話の中心にいるのは、リトの愛しい人。
パーティーの開始直後こそ唯は隣にいたものの、30分もしないうちに
恒例のだか何だか知らない席替えタイムとやらで引き離されてしまった。
そして唯を取り囲んでの質問攻めが始まったのだった。
いつものように。
そう、いつものようにだ。
この3週間で、唯はグッとクラスに溶け込んだ。
何か雰囲気変わった、表情が優しくなった、古手川さんってそんな風に笑うんだ―――。
無理に気持ちを抑える必要がなくなり、自然体になった唯は当たり前のように周囲を惹きつけた。
もちろん風紀を乱すものがいれば注意をするのは変わらないが、いきなり厳しい口調で言葉をぶつけることはなくなった。
「こらっ、廊下でサッカーしないでっていつも言ってるでしょ」
「やべっ。バレちった」
「ごめんごめん、古手川」
「今度こそやめっからさ」
素直に、しかしあまり申し訳なさそうでもなく謝って、笑顔すら見せながら去っていく男たち。
「まったくもう・・・」
ぶつぶつ言いながらも素直に受け入れられたからか、唯の表情はどこか満足げだ。
こんな出来事が、最近はちょくちょくある。
そして何より、彼女はよく笑うようになった。
常に集中した表情で一心不乱にノートを取る姿から、クラスの問題児にコピーマシーンと
揶揄されていたかつてでは考えられないことだが、授業中ですら笑顔を零すこともある。
最近では休み時間の女子の輪に入ることもあり、楽しそうに談笑するのが2年A組では違和感のない風景となりつつある。
しかしリトは、どこかもやもやした想いを抱えていた。
彼女をクラスに溶け込ませた最大の要因は、"結城リトと付き合っている"という事実だった。
俺と付き合ってると親しみやすいってか?
それって男として喜んでいいのか・・・?
なんか違う気がする。
・・・話を戻そう。
女子連中と仲良くなるということは、無条件で籾岡と沢田がついてくる。
そして彼女らに恋の話を聞かれようものなら、それは「おしゃべり時限爆弾」がセットされたも同じ。
リトと唯が付き合いだしたことはあっという間にクラス中は愚か学年中に広まってしまった。
そして噂を聞きつけた女子生徒たちがさらに唯のまわりに集まってきて、学校ではリトはほとんど話せないくらいなのだ。
たまに話せても、唯にとって学校は誇りを持つべき職場のようなものだ。
素直じゃないリトの恋人は、学校では付き合う前と変わらず、あるいはそれ以上にリトに厳しい。
甘い会話やスキンシップなど、望むべくもなかった。
そんな唯も唯で根は純粋だし、恋愛ごとの駆け引きの弱さは並どころか下もいいところだから、
恥ずかしくて言えないこと以外はぽろっと言っちゃったりなんかする。
それが女子連中の黄色い歓声(死語か?)へと繋がり、古手川さんカワイイ!普段とのギャップがたまらないわ!
なんていう危険な奴まで現れて、唯は一躍クラスの(特に女子の)人気者になってしまった。
まあリトも隠す気なんてサラサラなかったのだけれど、こんなことになるとは予想外だった。
いや、予想外だったのは、こんな気持ちを抱いたことか。
そう、リトは妬んでいた。
誰を?
そう聞かれるとリトは答えられない。
もちろんリトは唯の事を信じている。
自分が唯を、そして唯が自分を、想う気持ちの強さを確信している。
まして唯を囲んでいるのは女の子たちだ。
今の状態は度が過ぎているとしても、休み時間に女の子同士でおしゃべりに花を咲かせることなど普通のことだ。
男子とだって、多少打ち解けて話すようになっただけ。
放課後になれば一緒に帰るし、毎日じゃないけれどキスもするし、エッチだって・・・。
これ以上ないほどに幸福なはずの今、こんな気持ちを抱えるなんてどうかしている。
リトは自分でもそう思う。
今まで優柔不断だったから、唯にも他の女の子にも、もっともっと強い"それ"を味あわせてきただろうに、恋人という立場になった途端に・・・。
本当に身勝手だと自分に腹が立つ。
「にしてもさ、何で結城なの?」
「リサ、その質問何回目よー?」
リサミオコンビがもう何度もした質問をまた浴びせている。
わ る か っ た な、俺が彼氏で。
リトは苛立ち、周囲の音を意識的に遮断してしまった。
やけになってグラスに手を伸ばし、ゴクゴクと音を立てて一気に飲む。
といっても、中身は烏龍茶だが。
乱暴に元の位置に戻されたグラスの中で、音を立てて大きめの氷が踊る。
ささくれ立っているリトを、嘲るかのように。
「結城君」
パーティーの中で一人、明らかに浮いている・・・いや沈んでいるリトに、春菜が声を掛けた。
「・・・さ、ささ西連寺!?」
気が付くと初恋の人の顔が目の前にあってリトは動揺した。
尤もリトがすぐに反応を返していれば顔を覗き込まれることもなかったわけで、自業自得なのだが。
「最近、元気ないよね。どうかしたの・・・?」
穏やかな表情と自然な思いやりの言葉。
それはまさに癒しという形容が相応しい。
「・・・い、いや、何でもないよ」
結果的には彼女をフッたということもあり、リトの態度はどうしてもぎこちなくなってしまう。
「結城君の嘘つき。そんなことないよね?」
逆に春菜は優しい微笑みを浮かべている。
心なしか、以前よりも堂々と話をしている気がする。
「私でよかったら相談に乗るよ?」
そして唯優先主義の効果が苛立ちにより切れてしまっていたリトは、春菜の優しさに甘えてしまった。
その場でそうすることが、彼女らにどんな影響を与えるかということを考える余裕などなかった。
「俺、唯に妬いてるんだ・・・」
そう口に出して、初めて気づいた。
俺は唯に嫉妬している―――
唯と、ずっと一緒にいたい。
守りたい。
大切にしたい。
喜ばせたい。
だけど、俺に何ができる・・・?
唯はきっと、未来の自分をもう描いているんだろう。
そして彼女は歩みを止めないから、確実にそこへ近づいていくはずだ。
輝きを増しながら。
俺は、どうすればいい・・・?
これからも唯とずっと歩いていきたい。
その気持ちは揺るぎ無いものだ。
だけど、唯の隣にいる未来の俺は、何をしているんだろう。
夢なんてものは、漠然としている。
卒業した後、進学するのかどうかすら考えたことがなかった。
俺はただ、生まれて初めての恋人ができたことに浮かれていた。
そして例の事情で彼女と話ができないときにぼんやりと思い至った現実に、突き落とされた。
何かを変えたいという焦り。
唯が遠くに行ってしまうのではないかという不安。
男として唯の半歩前を歩きたいというちっぽけなプライド。
これらが、何もない俺が、今持つものの全て。
苛立ちの対象、それは何よりも自分自身だった。
唯に妬いている。
その言葉の後、リトは一言も発さなかった。
時間だけが、ゆっくりと過ぎていく。
「落ち込んでるときって、卑屈になっちゃうよね」
それでも春菜にはよく分かる。
彼女はいつも、誰かのために自分を抑えてきたから。
「でも結城君は、大切なものや素敵なものをたくさん持ってるよ」
必死に励ます、という口調ではない。
いじけた弟をあやすような、導くような、心地よいそれ。
「俺が、持ってる?」
「うんっ」
春菜はふんわりと微笑んで見せた。
「結城君は気づいていなくても、たくさんのものを与えてるんだよ?」
(俺が与えてるもの・・・?)
考えても、リトにはさっぱりわからない。
「だから、引け目なんて感じる必要無いと思うな・・・」
穏やかな口調なのに妙に説得力があるその言葉が、リトを奮い立たせた。
「・・・そっかな?」
「そうよ」
素直なリトは、誰かに励まされるとすぐに立ち直れる。
それが信頼できる相手なら、なおさらだ。
「そっか」
リトの顔に、笑顔と力強さが戻る。
その瞳に映るのは、ただ一人。
女性陣に囲まれながら、不安に揺れた瞳でこちらを見つめる、黒髪ロングの少女。
セミショートの少女はそんなリトに、ダメ押しの一言を放った。
揺れる自らの心のうちを、必死に隠して。
「私が好きだった結城君は、大切な人を不安なままになんかしておかないよ?」
溢れる想いそのままに席を立つ。
そして本当に唯しか見えなくなる前に、春菜に感謝の気持ちを伝える。
「ありがとう、西連寺。このお礼は必ずするから!」
春菜の胸のうちを、今のリトは慮れない。
しかしその言葉は照れも誤魔化しも一切存在しない、誠実の塊。
春菜が微笑むのを確認するとリトも小さく微笑んで、踵を返す。
そしてリトは唯の元へと向かっていった。
「どうしようもないなぁ・・・」
その背中を見つめながら、春菜は自分に向けた呟きを零した。
唯、唯、唯。
俺は君に、何かを与えられているのかな?
君は俺の、どこを好きになってくれたんだろう?
確かめたいよ。
君が、俺のものだって。
「唯」
リトが呼びかけると、唯を囲んでいた少女たちが囃し立てた。
「おっ、色男登場!」
「唯っちがいなくて寂しかった?」
しかしそんな戯言は今のリトの耳には入らない。
一方唯は友人たちに囲まれていたのに、まるで誤認逮捕でもされたかのように自失していた。
「唯」
その細い手首を掴んでも、まだ唯は反応しない。
「わり、唯貰っていくな」
リトは唯の両腕を掴んで注意深く立ち上がらせると、明らかに異質な二人のやりとりに唖然としている周囲に告げる。
そしてそのままパーティー会場を後にした。
雪こそ降っていなかったものの、外はすっかり冷え切っていた。
声を発さないどころか、抜け殻のように意思を表出させない唯の手を引いてリトは歩き続けた。
本当は走り出したいくらいだったが、唯に負担をかけないためにも意識して歩く。
大通りから路地に入って1つ曲がると、夜の闇が一気に度合いを増した。
二人の吐息が、街灯の光の中で小さく揺れた。
リトだって、唯の様子がおかしいことにすぐに気づいていた。
そして同時に、その原因にも。
自分のバカさ加減が、いくら謝ってもすまないところまで達していることも理解していた。
それでも、信じていた。
一方唯はリトにされるがままになっていたが、頭の中は決して空っぽなどではなかった。
むしろ聞きたいことだらけである。
1カ月前、付き合い始める前なら、間違いなくあの場から逃げ出していただろう。
そして追いかけてきたリトに当り散らし、自分の想いの、それも汚い部分だけを曝け出して泣いていただろう。
しかし、今の唯は違う。
唯はもう知っている。
リトが彼の意思で唯を見つめるとき、ほんの少しだけ強引に唯に触れるとき。
そんなときはいつだって、真っ直ぐに自分の想いをぶつけてくれた。
そしてそれはいつも、唯の心を満たしてくれた。
この上ない幸福感と安心感と、蕩けるような熱で。
だからきっと、今回だって。
そう信じて、唯はただリトを待っていた。
「唯・・・」
リトが口を開いたのは、結城家の庭に辿り着いてからだった。
唯の名を呼ぶ声は少し震えていた。
唯はじっとリトを見つめる。
どこまでも澄みきった瞳で。
リトはそれに1カ月ほど前の痛みを思い起こさせられる。
しかしリトは決して怯まない。
もう、彼女の眩しさから目を背けない。
そう心に決めた。
「俺、唯に嫉妬してたんだ・・・」
「!?」
唯からしたら、思いもよらない告白。
(結城君が・・・嫉妬?)
嫉妬と縁があるのは、自分のほうだと思っていた。
「唯は将来の目標ってある?」
「へっ?」
いきなり話が飛んで唯の混乱に拍車がかかる。
それでも唯は誠実に、正直な答えを返した。
リトの言葉の調子には荒々しさなど欠片もなかったが、決して軽くもなかったから。
「目標は、ある・・・」
「そっか」
それだけ聞ければ充分だった。
「俺は、怖かったんだ。
何にもない俺から、唯が離れて行ってしまうような気がして・・・」
リトは目線が下がりそうになるのを何度も堪えて、両手を握り締めて唯を見つめながら話をする。
「唯は・・・すごく綺麗だ」
いつもなら無意識に頬が染まり、心臓が跳ねる言葉にも、唯は声を発するどころか反応することもできない。
「いつも一生懸命で、輝いてる」
こんな風に自分を褒められたことがないからではない。
「だから唯にみんなが惹かれるのは、当然のことで・・・」
今、唯の心を切なくするのはリトの泣きそうなほど必死な表情と、静かなのに熱い声。
「唯を繋ぎとめるためには、俺が変わるしかないと思った。
必死になれるものを見つけて、もっと強くなれるように。胸を張っていられるように」
"唯にふさわしい男になるから"
初めて愛された日の、リトの声がよみがえる。
「だけど俺、どうしたらいいか分からなかった・・・。
思い描いている場所は見えるのに、そこにいる俺自身が何をしてるのか全然見えなくて・・・」
リトを支配していた感情。
その正体を、唯はよく知っていた。
なぜなら唯は、リトよりも強いそれに支配されたことがあるから。
思い描いている場所に自分がいることを"想像すらできなかった"ことがあるから。
「頭の中が霧に覆われてて、イライラして、あろうことか唯に嫉妬して・・・。
何やってんだ俺って、ますますイライラして・・・」
「うん・・・」
「俺は・・・俺はホントに、全然ダメで・・・」
もう顔を上げていることはできなかった。
悔しくて情けなくて、涙が出そうになるのを必死に堪える。
沈黙が落ちる結城家の庭。
すやすやと眠るセリーヌの吐息が聞こえてきそうだった。
唯はリトの告白で胸がはち切れんばかりにいっぱいになった。
リトが見せた弱さが、たまらなく愛おしかった。
リトの想いが、この上なく嬉しかった。
涙が出てしまいそうなほどに。
でも、まだ泣いちゃいけない。
かつての自分と同じようになっているリトを、救ってあげなくちゃいけない。
「本当に、全然ダメね」
声が震えそうになるのを、唇を噛み締めるようにして抑える。
その震えは嬉しさから来たものか。
それも、ある。
しかし、、
「結城君は、何も分かってない・・・」
そう、何も分かっていない。
唯がどんな気持ちを抱えているのかを、自分しか見えなくなっているリトは分からない。
「ずっと、不安だったんだから・・・」
「・・・えっ!?」
唯の口から出た思わぬ言葉に、リトは頭を上げた。
その瞬間、息が詰まった。
唯の瞳。
夜目でもキラキラと輝いて見える、つまりは潤んだそれに、魅入られた。
「結城君この頃怒ってるみたいだったから、嫌われちゃったんじゃないかって・・・」
リトは唯と二人でいる時間だけはいつもどおりでいられたと思っていた。
しかしそんなことはなかった。
リトの唯への嫉妬はぎこちなさを生み出していた。
いつもの二人の間にあるものとは違う、ぎこちなさを。
優しい空気が存在しない空間を。
そして、ついさっきのこと。
唯という恋人がいながら、春菜に甘えてしまったこと。
「ショックだった・・・」
唯はそう言ったきり口を噤んでしまった。
長く美しい黒髪が、リトだけが愛でることを許されたヴェールが、唯を覆うかのようにその表情を隠してしまった。
唯はリトを責めている訳ではない。
自分の感情を一言で表しただけ。
しかしそれがリトを息苦しく、切なく、そして・・・寂しくさせた。
「ごめん・・・」
その謝罪に価値などないことは分かっていた。
彼女が求めるのはいつもこれからのことだから。
それでも募るばかりの自責の念によって、言わずにはいられなかった。
限月の冷たい風が、唯の前髪をそっと揺らした。
「どうしてわたしが二人で待ち合わせようって言ったかわかる?」
唯の謎掛けにその場で答えられた例などない。
しかしリトは頭をフル回転して考える。
(待ち合わせ・・・?・・・ふたり?)
質問に答えを求めていなかった唯は一瞬リトに視線を向けただけで淡々と話を続けた。
「それは、「ララと一緒に来て欲しくなかったから・・・?」
(!)
図星だった。
二人が付き合い始めても、登校するときはリトはララと一緒だった。
同じ家に住んでいるのだから、そうしないように意識しなければ必然的にそうなるだろう。
ララはリトと唯が付き合いだしてからはそれまでのようにくっついてくることはかなり少なくなった。
しかし二人に妙な気を遣わせまいと、極端に距離をとることもしない。
努めて自然体でいるように心がけているかのようだった。
そんなララに、「朝だけは、一緒でいいよね?」などと言われてしまったら、
リトとしては断ることなどできなかったし、唯も咎めるつもりなどなかった。
ララに対して、もちろん春菜に対しても、ずるいことをしたという気持ちは、唯にもあった。
彼女たちが今抱えているのだろう気持ち、もうきっとどうにもならないのにそれでも求めてしまう気持ちは、痛いほどわかる。
彼女たちのその気持ちが・・・爆発したら・・・。
怖い。
リトを奪われてしまいそうで。
自分の言葉を遮られ図星を言い当てられたことで、唯の感情が、弾けた。
「わたしには目標があるとか結城君より先を歩いてるとか、そんなことじゃない!
結城君に追いつきたいのはわたしのほうなの!!」
きつく閉じられた瞳、握り締められた小さな手。
唯の激情が、奔流となってリトを呑み込んでいく。
身動ぎ一つ、瞬き一つもできない。
激流はリトを内部に収めると、今度は一転してせせらぎのようにしとやかな音色を奏でた。
「あなたは物凄く、ううん、そんな形容じゃ表せないくらいたくさんの素敵なものをわたしにくれたの・・・。
だからわたしも、あなたに何かをしてあげたい」
リトを奪われてしまうかもしれない。
そんな不安の中、なぜそんなに優しい表情ができるのだろう。
薄っすらと、しかし儚げという表現とは無縁な唯の微笑み。
木漏れ日を反射する泉のような、唯の瞳。
その輝く双眸に吸い込まれそうになる。
しかしじっと見つめても、その奥は見えなかった。
彼女の泉は、リトが思うよりもずっとずっと深かった。
「あなたはどうして全部一人で抱え込むの?
自分は甘えろなんて言うくせに、わたしには頼ってくれないの?」
木漏れ日が閉ざされ、その対の瞳は雲に覆われ、揺れる。
「そ、れは・・・」
カッコ悪いから。
好きな女の子に、カッコつけたかったから。
もっと強くて、頼りになる男になりたくて、気ばかりが焦って嫉妬に拍車をかけたから。
そんなこととても言えなかった。
そんなことを考えていた自分が何よりもカッコ悪かったことに、ようやく気づいたから。
唯には見栄や虚勢は通用しないと、必要ないと、分かっていたはずなのに。
「もっと聞かせて。
あなたの不安を。悩みを。痛みを。
わたしも結城君を受け入れたいの・・・」
今度は唯が、リトの焦る気持ちを包み、狭まった視界を解放する。
唯がそっと、リトの手を包む。
そのもみじのように小さな手が寒さでかじかみ、赤みを増していた。
大きなその瞳も、スッと整ったその鼻も、いつもは恥じらいで染まる頬も、12月の寒風に晒され微かに赤い。
しかしその表情は聖母のような穏やかさを取り戻していた。
間近に感じる唯の温度、花のような香り・・・唯の想い。
「唯・・・」
リトの中は、唯への愛しさで煮え返っていた。
幼すぎる嫉妬で自分しか見えなくなり、またしても傷つけた。
それなのに唯は、そんなリトを受け止めたいといってくれた。
手を取り合って、並んで歩きたいと。
「嫉妬するなんて・・・バカね」
「バカって言うなよ・・・。本気で悩んでたんだから・・・」
それは、もはや過去形となった。
「わたしが変われたのは、結城君のおかげなのよ?」
唯の眩しさは、リトが源になっている。
それに未だに気づいていない太陽に、分からせるために・・・。
「わたし、あなたがいないとダメなの・・・。
結城君が、わたしを照らしてくれてるのよ?」
唯が他人に笑顔を見せるときの、あの苛立ちの正体にリトはやっと気づいた。
(俺しか知らない唯を、他の奴に知られるのが嫌で・・・)
でも、もう大丈夫だった。
唯がそっと、リトの枷を外してくれたから。
身を寄せてきた唯。コート越しでもその存在を素肌を重ねているかのように感じられた。
ちょうどそのとき、腕時計の長針と短針が、真上を向いて重なった。
「12月24日の唯を、独り占めしたい・・・」
唯はその重ねた左手で、応えてみせた。
「んむ・・・あ・・・」
「んっ・・・ちゅ、ちゅる・・・」
真っ暗な部屋の中に、くぐもった水音が静かに響く。
リトのベッドで、二人は熱い熱い口付けを交わす。
飽きることなどない。
何度も、何度も。
結城家に入ると二人は真っ直ぐリトの部屋へ向かった。
といっても、リトの性欲が限界に達したからではない。
パーティに誘われずに不貞腐れてしまった美柑は、帰国中の林檎とともに
旅行に出かけているから別にリビングでも構わなかった。
しかし、自室こそが恋人である二人に一番ふさわしい場所だとリトは思ったのだった。
パタンと扉が閉まる音を聞くやいなや、リトは唯に口付けた。
それは、この上なくさりげないのに、どこまでも優しい口付けだった。
謝罪と誓いの、キス。
そしていつものように主導権を獲るためのキスでもあった。
唇を離して、リトがそっと微笑む。
暗くて唯の表情はよく見えなかったが、きっと同じ顔をしてくれているだろう。
二人の時間が、愛しい人を独占する時間が、たっぷりある。
そう考えると幸せに叫びだしそうになる。
ちなみにリトの中でララが帰宅するという可能性は排除されている。
というよりも唯以外のあらゆることが、脳内から消え去っている。
リトはまったくもって自分が不思議でならなかった。
つい数分前まで唯が欲しくて、抱きたくて堪らなかったのに、その唇に触れても、暴走せずにいられることが。
「お茶、入れてくるな」
リトはそう言い残し部屋を出て行こうとする。
男として余裕を見せたいなどという感情は、既に捨てている。
リトはただ、唯だけがくれる温かくて穏やかな時間を欲していただけだった。
はずなのに。
「ん・・・ゆい・・・ちゅ」
「・・・ゆうきく、んんっ・・・あむ」
時々互いを呼びあうのを息継ぎにするかのようにして、二人は唇と舌で繋がり続ける。
今この瞬間を、閉じ込めてしまえれば良いのに・・・。
蕩けそうな意識の中、二人してそんなことを想う。
リトは結局、部屋から出て行けなかった。
唯によって、引っ張られたから。
今度は袖じゃなく、繋いだ手を。
「すぐに、してよ・・・」
この瞬間のリトは、頭を鈍器で殴られたって何も感じなかったに違いない。
たった一言、しかし強烈なキック。
切実で、熱っぽくて、幻想的なその声はリトにとって麻薬のようなものだ。
唯の望むことだけに集中し、自分の全てを尽くす。
何度目の口付けからか、示し合わせていたかのように二人は唇を離すと衣服を一枚ずつ脱いだ。
たっぷりと時間はあるのに、一秒すらも惜しむように。
そしてすぐに、再び重なる唇。
脱ぎ捨てられたまま床に転がるコートが、お互いしか見えなくなっていることを表していた。
「はむっ、ん・・・んむぅ・・・んんっ、んあ・・・」
リトはたっぷりと唯の口内を味わってからその唇を開放してやる。
そして衣服に手を掛けた。
自分のではなく、唯のものに。
「・・・結城くん?」
厚着だった状態からゆっくりと時間をかけてここまできたうえ、溢れかえる胸のうちが表出して体温は高まるばかりだった。
すっかり上気した表情、とろんとした瞳になってしまった唯の声にはいつもの凛々しさがない。
「こっから先は、俺が脱がしてあげる」
リトとしては、顔を真っ赤にして"抗議でない抗議"をして欲しかったのだが、
「・・・ふふっ。結城君のハレンチ」
リトを受け止めたいと彼女は言ってきた。
さあ甘えなさいと、許容とからかいをこめて。
滅多に見ることのない、得意げで意地悪な笑顔で。
非難でも照れ隠しでもないハレンチ呼ばわりは、愛しさと悔しさを同時に生じさせた。
ベッドの上だけは、"ごく一部の時間"の主導権だけは、譲れない。
リトは唯を優しく起こすと、何とも複雑な顔となった自分を隠すように座ったまま背後に回る。
ブラウスのボタンを外すと、その理想的な胸を下着の上から揉みしだいた。
「・・・ぁ」
唯が微かに、吐息との区別も付かないほど小さな声を漏らす。
そしてリトは、反撃を開始した。
「おっぱい、ちょっと大きくなった?」
「―――!」
耳元で囁かれて、瞬き一つの間に唯の顔が朱に染まる。
「ば、ばかっ!変わらないわよ・・・」
「そっか。じゃあもっと大きくしてあげる」
リトはブラの下部から侵入し唯の胸を虐める。
両側から中央へ膨らみを寄せてみたり、掌で先端の突起を転がしてみたり、少しだけ強めに捏ねてみたり。
「結城くん・・・ダ、メ」
唯の声は熱っぽい吐息に侵食され、リトの指先は乳首の硬化を感じ取っていた。
「も、う・・・おっぱい、ばっかり・・・」
リトはそっと微笑むとリクエストに応える。
唯の上の衣服を剥ぎ取るとそのしなやかな身体に指を滑らせていく。
その指は唯のスカートで止まり、意を察した唯が自らそれを脱いでいく。
何事もテキパキとこなす彼女らしくない、もじもじとした仕草がまた可愛らしい。
リトは口元が弛むのを自覚しながら、大好きな唯の黒髪に顔を埋める。
太陽の光をいっぱいに浴びた向日葵のような、唯の香り。
心が微かに甘く震え、その後ゆっくりと安らいでいく。
唯は少しだけ自信がある自分の髪にリトからの愛情を感じて、ほうっと満足げな吐息を漏らす。
そして今度は濃紺のオーバーニーソックスをその美脚を抜いた。
「それはそのままでも良かったのにな・・・」
「っ!・・・結城君って本当にハレ、あっ・・・」
リトの手が腰からお尻へと降りてくる。
熱くて、柔らかくて、瑞々しい唯の艶肌を、文字通り滑っていく。
「ぁっ・・・んくっ」
唯の呼吸を間近に感じながら、その抜群の肌触り愉しむ。
絹ごし豆腐だってこうはいかない。
「唯のカラダ、すべすべだ」
耳元で囁くと小さく震える。
「可愛いよ・・・」
素直すぎる反応が嬉しい。
「そんなこと・・・言わなくて、いいの!」
精一杯甘さ成分を抑えた声で抗議する唯。
「・・・ホントに?」
太ももをなぞりながら続ける。
「ごめん。もう言わないから」
十二分に自覚した、悪趣味な謝罪を返してリトは苦笑する。
でも、しょうがない。
そうすれば、もっともっと可愛い唯が見れることは目に見えているのだから。
「っ・・・」
一方唯は何か言おうとしたが、それは口腔内で溶けた。
後ろから抱きしめられているという体勢も、唯には味方しなかった。
結局無言のまま横たえられてしまう。
「あっ!・・・そんな、とこに付けちゃダメ、よ・・・」
リトは唯に覆いかぶさり、首筋に強めに吸い付いた。
そこにリトだけの所有印を付ける。
そして観察するかのような無機質な視線を唯に向けたまま、秘部に触れる。
声を出さないようにきゅっと唇をかみしめて、真っ赤な顔で抗議の意を訴えてくる唯。
それを心を鬼にして無視し、ゆっくりと指を挿入する。
「ん、ぁ・・・ゆうきくんの、イジワル・・・」
瞬間的に大量の空気を吸い込み、心臓が止まる。
何という破壊力だろう。
その言葉が聞きたくて誘導してきた。
いつ来てもいいように心の準備もしていたつもりだった。
それでも唯の涙を浮かべた瞳が、シーツを強く握り、身体を捩る仕草が、か細い声が、リトを貫いた。
たまらなくなって唯の内股に吸い付く。
「あっ!ダメぇ・・・!」
途端弾んだ唯の身体、ゴチンと膝で側頭部を挟まれても、しかしリトは止まらない。
少しだけ強引に膝を押し返すと、唯の腰を掴んで潤いの谷に舌を伸ばす。
「ぁ・・・やんっ!!んはぁ!そこはぁ・・・」
「ん・・・これが唯の味・・・」
自らの舌をあっという間に濡らした愛液を味わう。
「そ、んなとこ・・・な、めちゃ・・・。ハレンチすぎるわ・・・」
恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
しかし下腹部の甘い痺れは、容赦なく唯の肢体を反応させる。
「唯、ピクピクしてるよ?」
「ああっ!・・・そんなの、ウソよ」
リトの頭の位置は動いていない。
でも唯にはまるで耳元で囁かれたかのように感じられた。
もう何がなんだか分からない。
自分の身体のいたるところが性感帯になってしまいそうだった。
「そんなとこ・・・汚いからぁ」
唯が昂ぶれば昂ぶるほど、リトも狂わされていく。
普段は絶対に口に出せないようなことさえ、思考とは無関係に零れる。
「唯の身体に汚いところなんかないって。それに、すごくうまいよ・・・?」
あるのはただ、唯に幸せを感じさせる、その意思だけ。
「結城くん・・・。お願い」
唯の秘湯から溢れた蜜をわずかたりとも逃すまいと、脚の付け根に吸い付いていたリトの動きがゆっくりと、しかし確実に止まる。
借りの返済の機会を逃すわけには行かない。
「イジワルしないで・・・?」
唯のいとおしすぎるその言葉は逆効果以外の何者でもなかったが、リトの理性は首の皮一枚繋がった。
「もっと、やさしくして・・・?」
なぜそこで止まってしまえるのか、我ながらよく分からない。
唯の姿は男を獣にするのに充分すぎるほど可愛らしく、その身体は女の匂いを発しているというのに。
本気で愛した人だと大切に思うあまり勃たない、なんて話はリトも聞いたことがあるが、それと似たようなことなのかもしれない。
リトにとって唯は、何よりも大切な、本当は誰にも見せたくないくらいの宝物なのだ。
深呼吸を大きく一つ。
そうしないと声を発することができない。
「意地悪な俺は嫌い?」
ついさっきまでの態度と打って変わって優しさを全面に押し出してリトが問う。
「意地悪な結城君は・・・キライ」
頭がクラクラする。
それはもちろん、キライといわれたことがショックだからなどではない。
「でも、結城君は・・・好き」
必死に甘えを抑えようとするのが、逆にリトをもだえさせていることに唯は気づかない。
そしてそれでこそ唯なのだ。
「わたし・・・結城君が、好き・・・」
密事にだけ聞くことができる、大切な大切な言葉。
好きという言葉の魔力は唯の中で熟成され、高まり、リトを撃つ。
眩暈がするほどの幸福。
「ねぇ・・・結城くんは・・・?」
リトはこれまで何度も唯に好きだと伝えているし、態度でも示しているつもりだ。
今日だってそうである。
しかし唯の様子は、リトが唯に"答えた時"となんら変わることがない。
震えている小さな身体、涙を溜めて揺れる大きな瞳。
しかしリトからは一向に反応が戻ってこない。
立て続けに唯の無意識の「攻撃」を受けたリトの脳内は外部からコンタクトが取れる状態ではなかった。
そうとは知らない唯は、それを当然ながら不満に思う。
「イジワルする結城くんは―――」「好きだ」
リトから問いに対する答えではない、しかし唯の望んでいた言葉が返る。
「俺はどんな唯も、全部好きだ」
唯の「攻撃」はリトの内部を唯への愛しさで溢れかえらせた。
それは3週間前と同じであり、異なってもいる。
想いはもっと強く、より深くなっている。
「わたし、意地っ張りなの・・・」
「うん、そうだな・・・」
さらりと認められても、唯は文句を言えない。
自分を受け止め、包んでくれるリトを強く感じていた。
「口うるさいし、独占欲だって強いし・・・」
「何を今更・・・。つか、そうじゃなきゃ唯じゃないもんな」
「でも、そんなこと分かってて・・・好き、なんでしょ・・・?」
また唯に甘えてしまった。
リトを導くときだけは、唯は駆け引き上手になる。
「うん・・・」
素直にそう言うと、唯は満足げに微笑んだ。
ふわり、と形容するには重々しく、しかし優しさに満ちた抱擁を二人は交わす。
ピッタリとくっつけた肌から互いの温かさを感じる。
しかしもう、それだけでは満足できない。
「もっと唯を感じたい。具体的には・・・」
「具体的に言わなくてもいいの!
・・・早く、ヒトリジメしてくれればいいの・・・」
もう、何も考えられない。
伝えたいことはいくらでもあったが、長ったらしい言葉は後回しだ。
一刻も早く一つになりたい。
「いくよ」
唯の首がコクコクと動いたのを確認し、はちきれんばかりにそそり立った分身をゆっくりと潜らせていく。
「ぁ・・・んああっ!」
至近距離からの唯の嬌声には、やっぱり慣れることはない。
ごめんな・・・。ありがとう・・・。
気持ちを込めてリトは口付けを落とす。
ゆっくりと時間をかけて髪の毛に、それから額に。
そして唯の呼吸が落ち着くのを待ってから、唇に。
「んっ・・・あむっ、ゆーきふん・・・もっとぉ」
おねだりに応えて、慈しむように、捧げるようにキスをする。
唯の満ち足りた表情がリトをも満たしていく。
できる限りの微笑みを与えて、静かに訊いてみる。
「動いてもいいか・・・?」
「・・・いい、けど」
「?」
「もっといっぱい・・・キスしてくれなきゃ、イヤ・・・」
リトに対しては厳しい彼女が、しかしリトに向かって滅多に口にすることのない「イヤ」。
それは拒絶ではない「イヤ」。
「ダメ」は唯に受け入れられる感じがするのに対して、唯の意思を、わがままを感じさせてくれるその言葉。
リトの中で嬉しさが、愛しさが、溶け合っていく。
「ゆい・・・んむ、かわいい、よ・・・」
「はふぅ・・・んちゅ、ん・・・ゆうきくん」
リトがSならば唯はM・・・もといNだ。
互いに強く強く惹かれあい、求め合う。
ほんの僅かの隙間も開かないよう、きつくきつく抱きしめあう。
「んぁ・・・ちゅ、ふ・・・いぃよ・・・」
お許しが出たので唇はそのままにゆっくりと腰をスライドさせる。
「はぁむ・・・んっあ・・・ぅん・・・ぁ」
舌から手から一物から、身体全体で唯を味わう。
熱い。掌が溶かされてしまいそうだ。
「ぅあ・・・。すごいよ、唯・・・。熱くてきつくて・・・」
「ゆうきくんのも・・・すごく、固い・・・ぁぅ」
どこまでも吸い込まれそうな感覚に、リトは溺れていく。
まるで何度も愛し合い、リトの全てを理解しているかのように柔らかく絡みつく唯の膣内。
腰の動きはすぐに激しさを増し、奥へ奥へと進んでいく。
「はああ!お、く・・ダメぇ!」
コツコツとリトの分身が子宮口を叩く。
最奥を攻められ、恥らう間もなく唯は一気に高まる。
「そ、こ弱いからぁ・・・あんっ!ゆうきくん、ダメ!わ、たしだけ変になっちゃう!」
リトの背中にも早くも甘い痺れが襲う。
一度放出するのも悪くなかったが、至福の時間をもう少し楽しみたい。
腰のスピードを弱め、今度は浅いところを労わるように擦る。
「んん・・・ぁ。なにか・・・優しいよ、結城くん・・・」
唯の微笑み。甘い甘い囁き。
間段なく与えられる痺れるような刺激。
自らの攻めに応じて変化する、唯の奏でる喘ぎ。
頭の中が真っ白になる。
「唯・・・」
うわ言にしてははっきりと、語りかけるかのような響きでリトが大切な少女の名を呼ぶ。
快感の波にさらわれていても、それを察知した唯は優しい表情だけで続きを促す。
"愛している"
リトの口を付いて出そうになった言葉。
つい一月前までは、自分が発するなど気恥ずかしくてとても無理だと思っていた言葉。
でも、いつかは誰かに言ってみたかった言葉。
それが出かかって、しかしリトは意思を持ってストップした。
背伸びした愛してるなどいらないから。
拙くても、ありのままの自分の言葉で構わなかった。
「俺、頑張るよ。先が見えなくても、今自分にできることを」
焦らなくてもいい。
ゆっくりでも歩く意思を失わなければいい。
それさえあれば、手を引いてくれる、背中を押してくれる、最愛の人が俺にはいるから。
「俺はもう、自分を隠したりはしないから・・・。
カッコ悪いかもしれないけど、これからもよろしくな・・・?」
もう背伸びしないと宣言する。
しかし唯は、より明確な宣言を求めた。
「・・・じゃあ、約束して・・・」
「ん?」
「これからは、我慢しないって。
結城君のしたいときに・・・わたしを好きにしていいから・・・」
こんな台詞を、まったく媚びることなく口にできるものなのか。
どこまでも真剣で、無条件にリトに甘い。
自分に全くメリットがない(少なくともリトにはそう思える)要求を口にする彼女は、本当に素直じゃない。
そしてだからこそ、愛おしい。
「それじゃあダメだって」
だから今度は、リトが導いてやる。
「唯もしたいときに俺を好きにしないと、等価交換にならないぞ?」
「わたしは、別に、良いもん・・・」
いつものように顔を横に背けるが、その様にも言葉にもまるで鋭さがない。
リトは小さく笑みを漏らすと、素直じゃない天使に伝えてやった。
「俺がそうして欲しいんだ。だから唯も好きなときに俺を独占しろ。文句あるか?」
こうしてやれば、唯も心を開ける。
だって唯がリトに甘えるのは"仕方がなく"なのだから。
それは"取立て"のためなのだから。
「そこまで言うなら・・・しょうがないわ・・・」
嬉しくてたまらないのに、こんな言い方しかできない自分が唯はたまらなくもどかしい。
でも、もうそんな自分も嫌いではなかった。
そんな自分を理解し、受け入れ、守ってくれる、信じられる人が目の前にいる。
「ありがとう」
感謝するのは自分の方なのに。
その人は本当に嬉しそうに言葉を紡ぐ。
その優しい響きに、リトの想いを感じるたびに、動きが止まっていてもどんどん潤滑油が溢れてしまう。
「・・・そろそろ、いいか?」
リトからの再開の合図。
幸せに身体も脳内も打ち震えていて、首を縦に振ることで精一杯だった。
「ぁ・・・あんっ、わたし・・・もう。ダ、メ・・・ゆうきくん」
何がダメなのか、リトはもちろんもう唯にも分からない。
互いに意思とは無関係に身体が動き、結合は激しさを増す。
じゅく、じゅぷっ・・・
結合部からは卑猥な音が絶え間なく漏れ、溢れかえった唯の愛液がシーツを、リトの内腿を湿らせていく。
唯の目尻に溜まっていた涙が、窓から僅かに差し込む街灯の光に照らされながら頬を滑る。
それはキラキラと輝いていて、本当に宝石のようだ。
黒髪が煌き揺れ、美しい胸が上下に躍り、二人の熱い吐息が周囲を満たしていく。
「あっ、あっ・・・あふっ、ひゃうぅ!!」
甲高く裏返った唯の喘ぎが、視界をぼやけさせる。
後頭部を急に掴まれ、ぼやけた視界に唯の瞳が映る。
強引に重なられる唇、差し込まれる唯の舌。
「好きぃ・・・んっ、ちゅ・・・は、ゆうきくん・・・ずっと・・・」
「うん・・・ん、俺も。んむ・・・おかしくなっちまいそうなくらい・・・唯が好きだ」
「結城くん・・・嬉しい。こんな幸せ・・・わたし知らない・・・」
行為の一つ一つに恥らうくせに、一度火がつくと急激に大胆になる唯にどうしようもなく惹かれていく。
もう完全にリトは虜だ。
激しく、貪るように唯を求める。
「んぅ、あっ・・・すごいぃ・・・あうん、気持ちいいよぉ!」
恍惚に染まった唯の表情に、欲望を掻き立てられ、抑え切れなくなる。
「お、れも気持ちいいよ。俺たち、くっ・・・きっと相性がいいんだよ」
「そ、うなの・・・?はあ・・・ゃ、何か・・・痺れて・・・」
一斉に蠢き、ざわつきはじめた唯の中が、リトに射精を促す。
腕の中で悶える唯の扇情的な表情が、独占欲を呼び起こす。
「唯・・・唯は俺だけのものだ、そうだろ?」
「うん!あっ、・・・わたしは、結城くんだけよ・・・はぁん、だから、お・・・お願い」
乱暴に膣内を掻き回され、快楽だけでなく痛みも伴っているかもしれない。
身体全体が熱の塊になってしまったかのように熱く、自慢の髪の毛もかなり乱れている。
そんな状況でも、唯は必死に目を開けて、リトを見つめた。
真剣さに、ほんの少し甘えを混ぜた瞳で。
「結城くんも、わたしだけを見て・・・わ、たしから離れないで!」
言葉と共に唯の膣粘膜がリト自身に絡みつき、抱きしめる。
「ぅ、あ・・・唯、俺・・・もうダメだ、うわあぁ」
「きてっ・・・結城くん!ああっ、ふぁあ!」
唯の身体が浮き、背中が弓なりに撓る。
彼女が達するのを感じた瞬間、リトは体力と微かに残った理性をフル動員して自身を引き抜いた。
そうはさせまいとするかのように脈動し、絡みついてくる唯を感じた直後に、リトは射精した。
一度二度三度。
枕を、シーツを握り締め、キュッと目を閉じて快感に身を震わせる美しい少女を白く染め上げていく。
(うわ・・・まだ出る)
リトは頭がぼーっとしていたが、そこは勝手知ったる自室。
ティッシュ箱に手を伸ばし手早く自身を収束させる。
「唯、ごめん。いっぱい汚しちゃったな」
唯は未だ目を閉じたまま、荒い呼吸を繰り返している。
お腹どころか胸、さらには首筋にまで飛んでしまった精液を拭ってやる。
赤ん坊のようにされるがままの唯に、愛しさが溢れる。
指先でそっと前髪に触れると、唯の瞳がゆっくりと開いた。
ゆい
唇の動きだけで、大切なその名を確かめるようになぞってみる。
すると唯は無言のまま擦り寄ってきた。
(猫みたいで可愛いな・・・)
顔が綻ぶのを自覚しつつ、今度は頭頂部を撫でてやる。
唯は満足げな吐息を漏らし、その鼻先が微かにリトの胸元に触れ、それから・・・
ちゅ、ぺロ・・・
(!!)
しっとりとした唇が、ぬるりとした舌が、触れた。
後日Rさんはこう語っている。
確かにあれは普段の彼女からは考えられない行為でした。
しかし今思えば、そこで小さくない声を挙げてしまったのが間違いでした。
あれがなければもう少し熱にうかされた猫風味彼女を愉しめたんですが・・・。
「おわっ!!ちょ、ゆい!?」
リトの裏返った声の響きに、唯は正気に戻った。
「ふぇ?・・・ぁ」
数秒の後
「あ、の・・・その・・・今のは、違うんだから・・・」
何がどう違うのか分かりやしない。
しかしリトはそんな唯をからかうでもなく、疑問を口にするでもない。
要するに惚けていたわけで。
そんなリトを、確信犯でないが故の唯の理不尽な怒りが撃つ。
「ゆ、結城君が悪いんだから!
あなたが変なこと・・・じゃなくて、それは嬉しいことなんだけど・・・」
一気にまくし立てる唯の早口は止まらない。
「とにかくあなたが悪いの!
あなたのせいで、わたし・・・おかしくなってたんだから・・・」
「おかしくなった唯、もっと見てみたいな・・・」
リトはあっさりと本心を吐露する。
しかし唯は唯でまだ余韻が残っている。
恥ずかしいと思っているのに、リトから離れようとしないのがその証拠。
「・・・ホント?変な女だって、ハレンチだって、思うでしょ・・・?」
「思わないよ。それに・・・」
潤んだ双眸と朱に染まった頬、唯の体温を感じる。
リトの心拍数が唯のそれに追いつく。
自らのそれを落ち着かせるように、唯を追い越さないように、リトは微笑む。
それが唯を安心させ、彼女の心拍数を下げることになるのに。
そうとは知らずにリトは続ける。
「唯が見せてくれる表情はみんな好きだからさ。
おかしくなってるときの唯の顔・・・見てるだけで出そうになるよ」
「っ!!ば、ばかっ!!」
「やっぱり結城君のせいよ・・・」
口ではリトを糾弾しつつも、今は"おかしくなっていない"はずの唯は離れようとはしない。
どころか両手を背中に回し、さらに密着してきた。
もちろん二人は、まだ裸のままだ。
「クス」
リトは嬉しくなってつい笑ってしまう。
唯がそれに文句を言う前に布団を被せる。
「ごめん、寒かったよな」
「・・・ううん。平気」
言いながら胸に顔を埋めてくる。
このために借りを作っているんだなぁ、とリトはしみじみと感じる。
唯が自分に甘えてくれる。
自分に頼ってくれる、その幸せを思う。
「唯は甘えん坊だね」
すぐに耳が紅く染まる。
「甘えてくれって、あなたがうるさいから、よ・・・」
拗ねた口調。
きっと唇を尖らせているはずだ。
「ちょっとは返済できてるのかな?」
なくなる必要の無い、なくなって欲しくない負債について問い合わせる。
「減ってないわよ」
にべもない答え。
心地よい答え。
「ダメって言ってるのに、結城くん全然やめないんだもの・・・。
減るわけないじゃない」
「・・・そか」
負債をなくさない方法は実に簡単だ、ということが分かった。
素直じゃないから「して」とは言えない。
だから、嫌じゃないことはだいたいが「ダメ」になる。
リトはそれを、聞かなければいいのだ。
唯はリトの望みを満たそうとしてそうしている訳ではない。
ただ恋愛に対して不器用で、愛情に対して慣れていないのだ。
そんなところにも強く強く惹かれてしまう。
「唯って本当に・・・」
素直じゃないな。
しかしその言葉はため息に変わった。
呆れが5%で、満足感が95%のため息に。
「結城くんのばか・・・。キライ」
リトは微笑みながら唯の髪にキスをした。
満ち足りた気持ちで瞳を閉じると、緩やかな眠気に襲われる。
しかしふと思い至ることがあった。
「そうだ、風呂入る・・・?」
いっぱい汚しちゃったし、という言葉は呑み込む。
またデリカシーがないと怒られるから。
綺麗好きな唯のことだから、きっとお風呂に入りたいだろう。
しかし意外なことに彼女はこのまま眠るという。
「・・・いいのか?」
「・・・いい」
(でも・・・)
いくら拭ったといっても、精液が付いた身体で眠るのは嫌なんじゃないか・・・?
そんな思案をしている間、唯からは何の返答もない。
「唯、やっぱりさ・・・」
一瞬唯が身体を震わせ、それに驚いてリトも一緒になってビクッとする。
「な、なに!?」
至近距離から不必要なほ音量を出す唯。
「あ、だから風呂・・・」
「い、いいって言ってるでしょ!!しつこいわよ、結城くん!」
腕の中でなにやら慌てふためいた様子の唯。
さっぱり訳が分からなかったが、何となく嬉しくてリトは唯を強く抱きしめた。
「・・・痛いわ、結城くん」
唯の安らかな声に癒されながら、リトは瞳を閉じた。
まだまだ唯の気持ちは分からないことがほとんどだ。
でもそれが、少しずつ埋まっていくような気がする。
パズルのピースのように。
「起きたら一緒に風呂入ろう。で、いっぱい飯食って、いっぱい話して、それから・・・」
リトが口ごもる。
背中に回している腕に更に力が篭る。
「そ、れから?」
痛いけど気持ちいい、リトの抱擁。
「ちょっとでいいから・・・エッチなことしたいなぁ、なんて・・・」
力強い腕に相反して、弱弱しい言葉。
「いいかな・・・?」
全く、この人は。
今度は唯の口から優しいため息が漏れる。
ついさっきの約束、もう忘れてる。
あなたはわたしを、いつでも好きにして良いのに・・・。
そんな弱気なこといわないでよ。
クリスマスイヴなんだよ?
わたし、生まれて初めて好きな人と、恋人と過ごすんだよ?
愛されたいに決まってるじゃない。
だから、そんな弱気な結城くんを簡単に認めたりしないんだから。
「ダメ、よ」
今日一番の、会心の唯の「許容」。
「・・・ありがと。優しくするから」
それに、世界一優しい響きでリトが告げる。
「ばか・・・。でも、ありがとう・・・」
「好きだよ・・・。ずっとずっと、唯のこと離さない」
「聞いたわよ・・・?離したら絶対に許さないんだからね・・・」
二人きりの夜はそっと更けていく。
窓の外では雪が降り始めていた。
ヒトリジメの時間は、まだこれから―――
612 :
rmy:2008/08/13(水) 22:56:48 ID:Y/6C1Wg0
と、こんな感じです
今はごちゃごちゃ書くことはないので、読んでくれた方が楽しんでいただけていたら嬉しく思います
>>612 投下お疲れ様です。
春菜が成長しててよかったな。 終始ニヤニヤして見てました。
ていうか久しぶりにSSでエロシーン見た気がするけど
とても良い感じでした。 楽しかったです GJ。
614 :
パスカル:2008/08/14(木) 00:05:36 ID:2MLrss/H
>>612 季節なんて関係なし、唯大好きな自分には最高の小説で今年のクリスマスはこんな風にしたいなぁと思いました。
唯レベルの彼女じゃないのがあれですけどね↓↓
もはや何も語るまい・・・・・
G J
さて、神がご光臨なされた所で申し訳ないですけど
いつかのリト事故ネタですけど、あれ自分がSSにしてみたいと思います って宣言遅すぎっすよね・・・・・
せめてヤミ金さんか唯リトの人の時間稼ぎになればと思います。
初投稿ですのでお手柔らかに・・・・・
というわけで現在執筆中です・・・・・
唯リトの人凄すぎです!
こうしてどんどん二人の愛が深まっていくんだなぁぁ。
乙
猫風味彼女・・・・・・なんて良い響きなんだ
>>612 GJ
>>614 50の男に100の女はつかないってことだ。
彼女と2次元の女を比べるとか(笑)
>>612 表現や文法の引き出しの数がすごすぎですよ。あまりのうまさに嫉妬しましたw
GJ!ホントにGJです!!
少しずつ愛を育んでいく二人の様子が鮮明に浮かびます
支え支えられ────二人のまだ幼いけれど精一杯の背伸びをしながらの恋に、こっちまで胸がいっぱいになりました
唯とリト。二人の心情の変化やバランスのとり方も素晴らしい
俺もがんばって書かないと
>>612 乙! ケータイ小説好きなんでうれしいです。でもちょっとキャラが別人かな?(笑)また書いてください。
デビルーク星の王女の婚約者候補というだけで、
俺は腐る程大量の宇宙人から命を狙われる羽目になってしまった。
連載初期の頃はまだこの漫画の路線も定まってはいなかったようで
ちょっとバトルモノっぽくなりかけていた時期もあったし
その頃はしょっちゅういろんな宇宙人が俺を狙ってきたものだ。
この金色の闇という少女もその一人。
いつの間にか俺を殺そうとする事を止め、周囲と馴染みきって、
ヤミ、ヤミと呼ばれて親しまれるようにはなったが
未だにこの少女が俺を殺す事を止めた理由はよくわからない。
本人はまだ俺を狙っている風に話すが、その割には全く手を出してこない。
(俺の方からアクシデントで彼女に不快な思いをさせた時は別)
そんな彼女は、いつしか俺を殺さないばかりか、
俺を守ったり、俺を庇って戦うようになっていた。
ついこないだ現れた、糸を使う刺客と戦った時もそうだ。
この人は私の得物……じゃない、獲物とか何とか言って、俺を守って戦ってくれた。
こいつの考えている事は俺には全く理解出来ない。
美柑は「そんなんだからモテないんだよ」「気付いてもらえなくてヤミさんカワイソー」
などと言ってせせら笑うが、こいつには何か察する事が出来ているんだろうか。
俺にはさっぱりだ。
そんな彼女に、タイヤキを買ってあげる約束をしてしまった。
しかも50個。
命を守ってくれたのだから、まぁタイヤキ50個くらいは安いものだ。
一個100円と見積もってもわずか5000円で済むのだ。
小遣いはピンチになってしまうが、5000円で命が買えるんだから儲けモノ。
そこで俺はヤミを連れて、タイヤキを買いに行った。
一日目。
今日から俺の、金色の闇・観察記録が始まる。
何故なら俺はこの金色の闇という少女と、半ば同棲する羽目になってしまったからだ。
いきさつを話そう。
タイヤキ屋さんに連れて行ってやると持ちかけた時の彼女は、少し嬉しそうだった。
表情の変化には乏しいが、これで案外気持ちが顔に出やすい奴だ。ただ目立たないだけで。
しかし一人で行くのも怖いので、ララを連れて行く事にした。
ララも来ると知った時にヤミが心なしか不機嫌そうな顔をしたが、きっと気のせいだろう。
こいつはララを敬愛しているので、ララが一緒にいて不機嫌になる理由が見当たらない。
本当は美柑を誘って行くつもりだったのだが「二人きりで行った方が良いと思うけどなぁ」
などと言い張られ、断られてしまった。
そう言えばこの事と、ララがいる事をヤミが不機嫌がる事と、何か関係でもあるんだろうか?
うーん、俺にはわからない。
そしてタイヤキ屋さんについて、タイヤキを50個買いたいとおっちゃんに申し出る。
するとそこでまた、ヤミが不機嫌そうな顔をした。
「一日に50個も食べられるワケないでしょう、途中で全部冷めます」だと。
50個買えっつったのはお前だろうが。しかしおっちゃんも「50個は無理」と苦笑いしていた。
仕方がないので考え込んだ挙句、割賦で支払う事に決まった。
これから一日に一個ずつ、彼女にタイヤキを買ってやるのだ。
毎日ヤミに会わねばならないとなると俺は少々怖くなったが、ヤミは何だか嬉しそうだった。
勿論、殆ど表情には出そうとしないのだが。
とりあえずこの日は一個だけ買ってやって、それで満足してくれた。
これを後49日も続けねばならないと考えると、何とも、まぁ……。
二日目。
授業が終わると、校門前でヤミが待っていた。
俺がタイヤキをオゴる事を忘れていないか、確認と念押しのために来たのだとか。
案外現金でケチでセコい奴だと思ったが、ペケには
「これだからリト殿は女心がわからないと言うのです」などと呆れられてしまった。
俺何か悪い事したか?
猿山や友人たちには会い引きだと思われたらしく、やたら羨ましがられた。
ったく、俺とこいつとの関係はそんなんじゃないんだけどなぁ、ホントに。
一緒に帰りながら、またタイヤキを買ってやった。
これがあと48日続くのか。いつ襲われるかと冷や冷やものだ。
三日目。
午後から雨が降っていた。
さすがに今日は校門前で待ってはいないだろうと思っていたら、
校長に許可を貰ったらしく、昼頃からずっと図書室で待っていたらしい。
ヤミから伝言を頼まれたという図書委員の言葉を「まさか」と思いつつ
図書室に行ってみると、実際に静かに着席して本を読んでいたのでビビった。
部外者を図書室に居座らせた挙句伝言まで承るとか、この学校何でもアリか。
しかし校門前にしろ図書室にしろ、いれば注目されてしまい、
無用に(主に男子から)声をかけられて面倒くさいのだとか。
だったらタイヤキの事を諦めてくれれば良いものを、それだけは出来ないらしい。
美柑曰く「諦められないのはタイヤキじゃないくて……」とため息をつかれた。
しかし相変わらず何の事だかさっぱりわからない。
ララの提案で、何とヤミまで俺の家に居候する事になった。
どうせ待つのなら校門だとか図書室とかより、俺の自宅の方が手っ取り早いし
誰にも注目されないで済むだろう、との事だ。……近所の人からは注目されそうなもんだが。
勿論俺は焦ったのだが、美柑は逆に乗り気だった。
部屋は幸い、ララのために空けておいた部屋が、ララがラボを作ったために余っているので
そこに寝泊まりしてもらう事になった。
これから毎日殺し屋と一つ屋根の下だ。
放課後家に帰ったら毎日彼女を連れてタイヤキを買いに行かねばならない。
期限はタイヤキ50個制覇するまで、つまりあと47日。
一ヶ月半もこいつと暮らすのか。俺生きていられるんだろうか。
四日目。
授業が終わったので、家に帰る。
先に帰っていた美柑の計らいらしく、ヤミは俺の部屋で待っていた。
冗談じゃない、何で殺し屋に部屋に上がり込まれなきゃならんのだ。
しかし刺激しなければ無害なので、まぁ良しとしよう。
ヤミを伴って外出し、タイヤキを買ってやる。
毎日二個ずつ買ってやれば、ヤミも一個よりは二個の方が嬉しいだろうし、
何より俺との同棲期間を大幅に短縮出来る。
ヤミにとっても好都合な提案だろうと思ったのだが、何故かまた不機嫌な顔をされた。
仕方がないので、結局一日一個ずつのままで妥協した。
一体こいつは、俺とそんなに長く一緒にいたいってのか? ハハ、まさかな。
五日目。
この日は学校が休みだったので、朝からタイヤキを買いに出かけた。
こいつの主食はタイヤキだそうなので、朝昼晩と三食分オゴってやって、
ついでにその分同棲期日を短縮しようと試みた。
しかしその提案は無駄に終わった。
どうしてだか知らないが、こいつは頑なに、一日一個で良いと言い張るのだ。
まぁ朝と晩の飯は美柑が用意するし、その分の食費は
暗殺稼業で稼いだ金で、ちゃんと支払ってもらっている。
別に一日一個でも問題は何も無いのだが、苦痛の期間が長くなるのはちょっと……。
途中、彼女の格好が珍しかったようで、そこかしこでヒソヒソ話が聞こえてきた。
あまりあの格好で街をうろつくのは得策ではないかもしれない。
ララの格好よりは大分マシだが、足にベルトってのは少なくとも変だろう。
一度沢田達が服を選んで買ってやってるにも関わらず、何であれを着ないんだろう。
あ、そっか。ケンカして破れたんだっけ。
と言うわけで、明日から街を出歩いても不審がられないよう、お洒落な私服を買う事になった。
何故か服選びに俺まで付き合わされたが、ヤミの機嫌は悪くなさそうだった。
六日目。
今日も学校は休みだ。
また二人で街に繰り出す。相変わらずタイヤキを美味しそうに頬張るヤミ。
服はもう普通なのに、顔立ちが可愛いからか、一緒にいると俺まで注目される。
何であんな並フェイスの男があんな可愛いのを連れてるんだ、といった感じだ。
俺だって好きでこんな危ない子を連れてるわけじゃないんだけど、
周りの男達相手にちょっとした差をつけたようで、悪い気はしない。
七日目。
今日はヤミに怒られた。
朝学校に行く時、ヤミがぐっすり寝ていたので、起こさなかったのだ。
その事が不愉快だったらしい。
ま、起きたら誰もいなかったってのは、確かに辛いかもしれない。
美柑が書き置きは残して行ってたんだけどな。
と言うわけで今日から毎朝ヤミを起こしてやるのが俺の役目になった。
八日目。
今日もまたヤミに怒られた。
昨日起こせと言ったから起こしに行ったのに、今度は
「寝顔を見られた」とか「起きぬけの無防備な顔を見られた」とか
一体お前はどっちにして欲しいんだと思ったが、それを指摘すると彼女はシュンと項垂れた。
どうにもこいつの扱いは難しい。
タイヤキを一個余分に買ってやって機嫌を取る。
これによる同棲期間の短縮はしないから安心しろと言ってやると、
無表情のままご満悦の様子だった。
九日目。
昨夜からこいつは俺の部屋に寝泊まりするようになった。
それも恐ろしい事に、俺と同じベッドでだ。
そうしておけば、彼女は殺し屋だ。
あらゆる音に俺より敏感だから、目覚ましが鳴ればまず間違いなく俺より先に起きるだろう。
その上で彼女が俺を起こせば、彼女が俺に寝顔を見られる心配は無くなる。
しかしそれだと、別に自分の部屋で目覚まし設定してりゃ良いんじゃないのか、という疑問と
夜中俺がふいに目を覚ました時に、しっかり寝顔を見られる可能性が残っているのだが
そこをツッコむとヤミは押し黙り、
美柑は「野暮なツッコミしないで受け入れてあげなよ」と言ってきた。
まぁヤミの場合はララと違って裸で寝ないのと、背格好が小学生くらいなので
俺もそんなに恥じらわなくて済むから、比較的一緒に寝る事を許容しやすいけど。
これから先、今日を含めてあと41日、こいつと一緒に添い寝するのか。
命が危ないような気が……。
十二日目。
朝からヤミが顔を真っ赤にしている。
起きた時に俺の朝勃ち部分に足が当たってしまったらしい。
そんなの俺の責任じゃないし、つーかそもそも俺のベッドで寝なきゃ良いのに。
「地球人男性にとって回避不可能な生理現象の一つだと本に書いてありましたから」
と、本人は納得している様子だが、ちょっとでもその話に触れるとすぐに髪をナイフにする。
仕方ないので、またタイヤキを一個サービスして機嫌をとる。
十五日目。
また朝からヤミが顔を真っ赤にしている。
今度は本当に理由がわからない。
今日は珍しく俺が目覚ましが鳴る前に起きたので、彼女の寝顔を見てしまったのだが、
その事で怒っているのだろうか?
「寝顔可愛かったよ」と冷や汗かきながら言ってやったら、余計に顔を赤くした。
しかし機嫌は悪くないみたいだ。一安心。
二十日目。
今日は俺まで顔が真っ赤だ。ヤミも勿論真っ赤だ。
何故かと言うと、朝起きた時、俺がヤミに腕枕する格好で寝ていたからだ。
どちらが悪いわけでもない。寝てる内に、寝返り打ったりして、お互いたまたまそうなったのだ。
超至近距離で顔を見合わせた俺達は、しかしその後は一日中、顔を見合わせられなかった。
ただこの日から、ヤミが俺と出かける時は、こっそり俺の服の袖を摘まんで歩くようになった。
二十三日目。
とうとうヤミと、本格的に手を繋いで歩くようになった。
タイヤキも一個丸々オゴってあげるのではなく、
二人で一個を半分に分けて食べる方が、喜んでくれるようになった。何故だろう。
そう言えば最近部屋が綺麗な気がするので、試みに聞いてみたら、
どうやら昼間俺とララと美柑が学校に行っている間、彼女が掃除してくれていたらしい。
見様見真似だからまだピッカピカには出来ないと言って顔を背けたけれど、
とても嬉しい事なので、俺は素直に喜んで褒めた。
心なしか、ヤミが手を握ってくる力が、少しだけ強くなった気がした。
その日の夜からヤミは、必ず俺の腕枕で寝るようになった。
二十五日目。
今日で同棲生活の折り返し地点だ。半分まで済んだ。
ヤミとキスした。
ベッドの中でだ。
灯りは消していた。
ヤミは少し驚いて身を捩ったけど、抵抗も反抗もしなかった。
殺されるかと思っていたのだけれど、彼女は黙ったままだった。
何で突然こんな事しちまったのか、自分でもわからない。
その日はお互いに無言で、しかし寝付く事も出来ず、一晩中黙ったまま起きていた。
あと半分しかヤミと一緒にいられないのが、そろそろ寂しくなってきた。
二十六日目。
昨夜眠れなかった分、授業中に居眠りしてしまっていた。
ヤミはずっと家で一人で寝ていたらしい。
ヤミを抱き締めた。
ベッドの中でだ。
灯りは消しいてた。
ヤミは驚いて身を捩った後、順序が逆です、と呟いた。
何の事かと思ったが、昨日のキスの事らしい。
ハグが先で、キスはその後、の方が彼女の理想だったらしい。
今夜も眠れなかったけれど、昨日とは違う理由からだった。
二人とも抱きしめ合ったまま、一晩中キスを続けていた。
俺の背中に回る彼女の腕が細くて、その細さが何だか切なくて、
俺は翌朝彼女から離れて学校に行くのが、たまらなく寂しかった。
あと24日しか無い。
二十七日目。
ヤミと寝た。
ヤミと抱き合った。
ただ寝たのではない。ただ抱いたのではない。もっと暗喩的な意味でだ。
ただ寝るだけなら、ただ抱くだけなら、とうに済ませている。
この夜の行為は、そんな浅い意味合いの行為ではない。
ヤミの体は小さく細く、まるで美柑のようだった。
小さな唇が何度も俺の名前を読んだ。
その度に俺は「ここにいるよ」と呟き、安心させてやるように、自身の唇を重ねた。
胸は小さくて揉み応えはなかったが、そんな些細な事はどうでも良かった。
舌を絡ませ、唾液を絡ませ、視線を絡ませる。
こんな小さな美少女が、普段誰にも見せないような扇情的な表情を返してきた。
瞳は切なそうに潤んでいる。
タイヤキを食べている時も幸せそうな(無表情だが)顔をしていたけれど、
彼女が今宵見せた表情は、それよりも遥かに幸せそうだった。
乳首を甘噛みすると、指先でシーツの端を軽く握りしめ、ピクンと肩を跳ねさせた。
もう一度、彼女が俺の名を読んだ。
「……夜だけ、俺の事『結城リト』ってフルネームで呼ばなくなるんだな」と俺は言った。
「……夜だけ、あなたは私にわざと意地悪を言うんですね」とヤミが言い返した。
指くらいしか入らなさそうに見える控え目な唇。
玩具みたいに小さな舌。
水が溜まりそうな程くっきりと彫り込まれた鎖骨。
揉むよりも撫でる方が似合いそうな乳房。
背格好に反して大人のように硬く尖った乳首。
綺麗で使いこまれていない桃色の乳輪。
腋から下乳へのなだらかなライン。
その全てを俺は舐めつくし、触り尽くし、俺の唾液と彼女の汗で汚した。
金色の髪が俺の体にまとわりつき、俺を離すまいとする。
上半身はもうそろそろ十分汚した。
次はいよいよ……。
そこは背格好相応に、毛の一本も生えていなかった。
或いはヤミの星の一族は、元からここに体毛が生えないのかもしれない。
スジが一本、縦に通っているだけだ。
小さい頃美柑と一緒に風呂に入った時も、確か蜜柑のアソコはこんな風だった。
溝にそって指先を這わせると、ヤミが一際大きく体を跳ねさせた。
彼女がもう一度俺を呼ぶ声が聞こえる。
スジに指を当てて左右に押し広げてやると、何とか中身が出てきた。
だが敏感らしく、まだ外気に晒されただけなのに、ヤミの顔は放心しかけている。
恐る恐る指を突き立ててみると、ヤミの口から「ひぅっ」と、珍しい声が聞こえてきた。
ピンク色で、プニプニしてて、けれどその柔らかさとは裏腹に、
指が一本も通らないくらい狭い。
何とか人差し指を第一関節くらいまで突っ込んでみると、もう指の方が痛くなってくる。
それでもヤミはその百倍は痛いようで、拷問でも受けているかのような顔で苦痛に耐えている。
俺はそこをもっと柔らかくしてあげたいと思ったので、優しく舐めてあげた。
唾液がある分、乾いた指で触られるよりはマシだろうと思ったのだ。
やがてヤミの股間は俺の唾液以外の液体で湿り始めてきた。
痛みもいくらか和らいできたようで、いつしか表情から苦しみが消えていた。
彼女は太股で俺の首をがっちりとロックし、両手で俺の頭を押さえた。
もっとずっと舐め続けていて欲しいのだと思った。
可愛らしい高音域の吐息が微かに聞こえてくる。
しょっぱくなってきたソコにまた指を入れてみると、思った通り柔らかくなっていたみたいで、
今度は指が一本だけなら何とか奥まで入るようになっていた。
それでもまだムスコを入れるのは無理だろうと思ったのだが、ヤミは首を横に軽く振った。
何を言っていたのかは声が小さすぎて聞き取れなかったが、何となく言いたい事はわかった。
頑張るから、お願い。
そう言っているに違いなかった。それを無下にには出来なかった。
小学生みたいに小さな体。
ナカはぎゅうぎゅうとキツく、俺のモノが千切れてしまいそうだった。
こんなにキツいんじゃ、ヤミのナカは大丈夫なのだろうか?
よくわからないけど、裂傷とかしないんだろうか?
そんな不安もよぎったけれど、ヤミの恍惚とした表情を見る限り、大丈夫そうだった。
無表情の彼女が見せた、いつもの彼女とは全く違う表情に、俺は心を奪われた。
可愛い。
何でこんなに可愛いんだ。
反則だろ。
ヤミは元々顔立ちは可愛い方だったけど、今はそれ以上だ。
俺は腰を振りながら、彼女にキスをし続けた。
硬く尖った小さな乳首が俺の胸板に当たる。
細い腕が俺の首に絡みつき、細い脚が俺の腰に絡みつき、金色の髪が俺の体全体に絡みつく。
これじゃ外に出したくても離れられない。
もっともその時の俺には、外に出すなんて理性的な思考は残っていなかったけれど。
ヤミの背骨が折れてしまうのではと危惧してしまうくらい強い力で、俺は彼女を抱き締めた。
あれだけ怖かった彼女の髪が、今では愛しくてたまらない。
もっと俺に絡みついてくれと切に願う。
何で俺は彼女との同棲を怖がっていたのだろう。
何で俺は彼女がタイヤキを50日間奢れと言ってきた時、それをラッキーだと思わなかったのだろう。
50日も彼女と一緒にいられるのだ。その事を喜ぶべきだった。
50日しか彼女と一緒にいる口実が得られないのだ。その事を惜しむべきだった。
「あっ、あぁあ、あぅあぁ、わたっ、わたひぃっ、もうぉ……イキそうですぅっ」
どこでそんな言葉を習ったのかと聞いたら、地球で読んだ本にそういう言い回しがあったのだとか。
こいつ普段どんな本読んでんだ?
「アッ、ンンっ、いぐっ……イク時は一緒に……お願いンアぁっ」
「はぁ……当たりっ……前、だろっ……はっ……はぁっ……」
隣の部屋で寝ている美柑に、パンパンとぶつかる尻の音が聞こえていはしまいか、少し不安になった。
だがもうその時はそれどころではなかった。俺の頭の中に、そんな些細な危機感など無かった。
「アァッ……あァぁぁぁアァぁぁアぁぁぁっッ!!」
その夜俺は、ヤミの中に大量のザーメンをぶちまけた。
三十日目。
今日から試験一週間前だ。
期末試験が終わると、そのまま二学期が終わる。
本当なら試験勉強のために半ドンになっているのだが、俺にとってはもう関係無かった。
せっかく美柑が帰るより先に帰れるのだ。チャンスとしか言いようがない。
俺は昼間からヤミと愛し合った。
ここ三日間、夜は毎晩愛し合っていたけれど、昼からというのは初めてだったし、
ヤミもあんな無表情で無反応だったけど、機嫌は良さそうだった。多分嬉しいのだろう。
でも終わった後で、ヤミに注意された。
このままだと試験の成績がうんたらかんたら。
うーむ、確かにそっちも捨て置けない大問題だ。落第とかはいくら何でも嫌過ぎる。
ちょっとは本気で勉強を始めるか。
三十七日目。
期末試験初日だ。
ララは勿論の事、たくさん本を読んでいて学習能力の高いヤミも、俺の勉強をサポートしてくれた。
お陰で試験勉強は随分はかどり、試験初日の感触も悪くない。
自己採点では学年の上の下くらいには入っていると思う。
お礼にヤミにタイヤキを三つ奢ってやろうとしたら、本人に止められた。
試験はあと二日ある。残り二日間もタイヤキを三つずつ奢るつもりなのかと言われたのだ。
俺はそれでも良かったんだけれど、ヤミ自身が少し呆れているようだった。
四十日目。
とうとう冬休みに入った。
試験は昨日で全て終了している。いずれの教科もまず落第はしないと言い切れるレベルだった。
俺はお礼のために、ララとヤミの二人それぞれにタイヤキを奢ってやった。
ヤミが俺の家からいなくなるまで、あと十日。
せっかく休みなのだから、一日中彼女とセックスしていたかったけれど、
休みなのはララと美柑も同様で、なかなか二人きりになれない。
まぁ良い、夜寝る時はどうせ二人きりなんだ。
晩飯にやたらとマムシやら栄養ドリンクやらが出てくる。
美柑に聞いてみたら「ムフフ」と意味深に笑われた。キショい。
「頑張りなよ?」とニヤニヤ笑われながら言われた。
どうやら俺とヤミの夜の行いが筒抜けらしい。
俺とヤミは二人して顔を真っ赤にした。
四十八日目。
明後日で最後だ。
明後日になれば、ヤミが俺の家にいる口実が無くなる。
口実が無ければ一緒にいてはいけないのかとも思うが、そこは俺もヤミも素直じゃない。
正直に「ずっと一緒にいて欲しい」と言えば良いだけの事なのに、それが言えない。
俺は根性無しだし、彼女だってそんな事言えるようなタマじゃないだろう。
明日はどうなる事やら。
今日も彼女にタイヤキを買ってやった。
「あなたが買ってくれるから、最近自分のお金でタイヤキ買った記憶が無いですね」
と言う彼女に、そもそもお前金持ってたのかと問いかけてみると、
彼女は少し表情を曇らせてから「あなたと違って職業も貯蓄もありますから」と答えた。
彼女の職業と言えば、殺し屋だ。
俺はたまたま殺されなかったが、やっぱり今まで何人も殺してきたのだろうか。
俺が大好きな、あの髪で。毎晩指に絡ませて撫でてやっている、あの髪で。
黄金色に混じってドロリとした血の色が滴る様を想像して、俺は少し寒気がした。
冬だから身震いは気温のせいに出来たが、ヤミには見抜かれていそうだった。
「ヤミにタイヤキ奢るのも、明後日で最後だなぁ」
場を誤魔化すために、俺はそう言った。
彼女が何と答えてくるか、試す意図もあった。
寂しがってくれるなら、こんなに嬉しい事は無い。
果たして、彼女は言った。
「……何言ってるんですか。命のお礼が、たった50日で済むと思ってたんですか?
まだまだ全然奢られ足りないですよ。命というのは文字通り一生モノですから。
一生を救ってもらっておいて、50日で返礼が済むわけありません。
これからもずっと毎日、私にタイヤキ奢り続けて下さい」
ムカ。
何か今とてつもなくイラッとしたぞ。
何でもう少しでこの同棲生活も最後だと言うのに、こんな辛辣な言い方をするんだコイツは。
「何でそんな命令口調なんだよ」
その時の俺は、少し感情が表に出過ぎていた。
そんなつもりはなかったのだが、あからさまに冷めたい表情をしていたと、後にヤミは語る。
四十九日目。
大変だ。
朝からヤミがいない。
少なくとも今日までは一緒にいてくれる筈だったのに。
朝起きたらもうベッドの中にいなかった。
俺は眠りの深い方とは言え、彼女が起きて出て行く事に、気付かなかったとは。
気配も物音も感じさせない辺り、さすが暗殺者だ。
ララの部屋も、美柑の部屋も見たがいない。
机の上には書き置きがあった。
「今までお世話になりました。今日からまた一人で暮らします」
俺は、春菜ちゃんや古手川や猿山、いろんな人に電話した。
彼女らがヤミの居場所など知るわけはないと冷静に考えればわかるのに、俺は焦っていた。
そして当然、見つかるような事は無かった。
何があったのか、喧嘩でもしたのかと、美柑が聞いてくる。
だがさっぱりわからない。
強いて言うなら、ヤミが辛辣な言い方をした事を、俺が諌めたくらいだ。だがそんな事で?
美柑は「所詮リトはリトだったか……」とため息をこぼしていた。何の事やらさっぱりわからない。
その日の食卓は静かだった。
ちょっと前までは、ララがいるだけで騒がしいと思っていたのだが。
今日はララはいるのに、ヤミがいないだけで、皆黙々と仏頂面で箸を運んでいる。
はたと、途中で俺は気づいた。おかずの量が多い。
コロッケの数が三人で割れない。
それを指摘すると美柑は「……いっけない、一人分多かった」と呟いた。
古典的な失敗をやらかす奴だと思ったが、すかさずララが言った。
「おかずが一人分多いんじゃないんだよリト。家族が一人少ないんだよ」
彼女はいつものように笑ってそう言ったが、思わずこちらが押し黙ってしまうような重みがあった。
五十日目。
モヤモヤした気分が晴れない。
ずっとベッドの上で寝転がり、両手で後頭部を抱え、落ち着かず寝返りを打つ。
ヤミが出て行った理由が未だにわからなかった。
そう言えば、昨日はヤミがいなかったから、タイヤキを買ってやれなかった。
50日間奢り続ける約束だったのに。
気晴らしにテレビをつける。再放送の昼ドラをやっていた。
それは幾らか古い番組で、自分の両親が十代だった頃ぐらいのドラマのようだった。
当然台詞も展開も古臭く、良く言えば古典的。
「一生俺のためにご飯作ってくれ!」
古いヘアスタイルをした、当時としてはイケてたんだろうと思しきファッションの男性が
ヒロイン役の女性にプロポーズの言葉を投げかけていた。
これはアレだ。
君の作った味噌汁が飲みたいとか、田舎の両親に会ってくれとか、その類。
今時誰がこんな求婚の仕方をするのかと思ったが、何かが心に引っかかり続けていた。
――これからもずっと毎日、私にタイヤキ奢り続けて下さい――
ヤミは確かそう言っていた。
これからもずっと……毎日……?
俺はがばっと跳ね起きた。そうしてすぐに着替えを済ませ、家を飛び出した。
何故気付いてやれなかったのか、何故あの言葉を無下にしたのかと、己を悔いる。
ヤミが素直じゃない事ぐらい、知ってただろうが。
学校へ行き、図書室や旧校舎や御門先生のところなど、くまなく探した。
それでも見つからないから、街の図書館へ行った。それでも見つからない。
公園や商店街など、思いつく場所は探しまくった。
どこだ? どこにいるんだ? ひょっとしてもうこの街には……いや、この星にはいない?
そんなの嫌だ! 会いたい、会いたい、会いたい会いたい会いたい会いたい……
ふいに、その姿を見つけた。
郊外にある川べりの原っぱに、ちょこんと座っている黒衣の少女。
対比的に美しく輝くあの金髪は間違いなかった。
「ヤミ!」
俺が駆けつけると、彼女は一瞬驚いたように振り向き、それから複雑な表情をした。
少しほころんだような、けれど躊躇っているような、悲しいような、泣きたいような。
手にはタイヤキが一つ、一口だけかじられていた。
傍にタイヤキ屋の車が停まっていた。
街をうろついて、行く先々でタイヤキを売るのだ。焼き芋みたいなもんだ。
「何やってんだよ、チクショウ」
走り回って横腹が痛かった。息は荒く、今にも呼吸は途切れてしまいそうだ。
心臓は早鐘を打ち、爆発寸前まできていた。
手を伸ばすと、彼女はやはり少し躊躇ったものの、拒絶はしなかった。
触れた手は勿論冬だから当たり前なのだが、その手に握っていたタイヤキまでもが冷たかった。
タイヤキ屋の親父曰く「一時間くらい前からずっとここにいるんだよ」との事だった。
一時間前にタイヤキを買いに来たものの、買っても全く手をつけなかったのだとか。
一口かじった跡があるのは、つい先程思い切って食べようとした、その直後だったらしい。
「でもタイヤキって冷めると美味しくないですね」
彼女がそう呟いたので、俺はタイヤキを一個買った。それをそのまま彼女に与える。
代わりに彼女の手にあった、冷めたタイヤキを奪い取り、そちらを頬張る。
確かに冷たく、はっきり言って……不味かった。
「何をやっているんですか、あなたは? 冷えてるから美味しくないでしょう。
自分のお金で買ったんですから、あなたはこっちの温かい方を食べれば……」
「うるせぇっ!」
ヤミが言い終えるのを待たず、無理矢理言葉を途切れさせる。
こんな時にまで優しく接する事が出来ない辺り、俺も十分素直じゃないな。
「お前は、俺が買ってやる以外のタイヤキは食うんじゃねぇ。
これから毎日、今後一生。絶対にだ!」
本当、素直じゃない。
こんな言い方でしか伝えられないなんて。けれどヤミには伝わったらしかった。
タイヤキ屋の親父も何か察したらしく、少しニンマリと笑っている。
「今後……一生、ですか?」
「あ、あぁっ! 当たり前だろ!」
俺は冷たいタイヤキを無理矢理口の中にねじこんだ。
「不味くないですか?」
「ヤミから貰ったタイヤキが不味いわけがないっ!」
ここまでくると滑稽だったと自分でも思う。
するとタイヤキ屋の親父が、新しくて熱いタイヤキを一個、オマケにくれた。
「サービスだ。
こんな日は若い奴らはみんな、デートスポットとか繁華街に繰り出すからな。
郊外じゃタイヤキも売れなくて今日はつまらなかったが、
お前さん達のお陰で良い気分になれたよ」
こんな日?
はて何の日だったかと思いだそうとして、すぐに答えがわかった。
ヤミを探す事に懸命になり過ぎて、重大なイベントを忘れていた。
「そっか……今日はクリスマス・イヴだったっけか」
七年目。
今日はヤミも朝から嬉しそうだった。
こいつと一緒になって七年になる今でも、こいつがこんなに笑っている顔はあまり見た事が無い。
俺も勿論嬉しかった。苦痛に喘ぎながら彼女が儲けてくれた、生まれたての赤ん坊。
ヤミには地球の戸籍が無いから、久しぶりに高校に帰って、御門先生に取り上げてもらった。
宇宙でならすぐに戸籍が取得出来るらしく、そのための手筈はデビルーク王が便宜をはかってくれた。
俺達が結婚式をあげた時は、ララも春菜ちゃんも、みんな喜んでくれた。
と言っても就職したばかりで結婚資金は無かったから、
俺は貯金を崩して何とか服装を整え、ヤミはララから借りた量産型ペケでドレスを仕立てた。
教会など借りられなかったが、何故か天条院先輩が別荘の一つを一日貸切にしてくれた。案外良い人だ。
本当なら挙式や披露宴の前に、専門の人の講習を受けて作法を学ぶべきなのだろうが、
その役は代わりに春菜ちゃん……西連寺と、古手川が買って出てくれた。
途中で、案の定ララの発明品だからヤミのドレスが溶けたりした事を除けば、
式は概ね順調に進み、笑いあり涙ありで、実に良い思い出だったものだ。
そして結婚式から一年が過ぎた頃。
俺達は夫婦から家族になった。生まれた子供には、まだ名前が無かった。
「早く決めろよ、ヤミ。最初の子供はお前が自分で決めたいって言ったんだぜ?」
「わかってます。でも、どうやって決めたら良いのか……」
保健室のベッドを借りて、その上で赤子を抱きながら、
その子を何と呼べば良いかわからず困り果てるヤミ。
俺はアドバイスをしてやった。
「他の星じゃどうか知らないけど、地球でなら、自分の好きな言葉を由来にしたりするぜ」
「私の好きなもの……」
ヤミはしばらく考え込んだ後、噴飯ものの回答を返した。
「タイヤキ」
「お前それはさすがに……」
好きなものを由来にすれば良いと言ったのはあなたですよと、ヤミは拗ねた。
「……あ、そうだ。好きなものって事は、好きな思い出でも良いんですよね?」
「そりゃあ、そうだろうけど。何か良いのが思いついたのか?」
ヤミは一年の中で最も思い出深いイベントの日の名称を、我が子につけた。
それは、聖なる夜の前夜祭。
俺がヤミのプロポーズに答えた……いや、違うな。
俺がヤミにプロポーズした、と言うべきだろう。あの思い出の日が、娘の名前になった。
きっと髪が綺麗な、ヤミに似て清廉な子に育つだろうという気がした。
……娘まで髪が武器になったら嫌だがな。
しゅーりょー
今週の「タイヤキ50個奢れ」に触発されてしまった
後悔はしていないが、悪い事はしたと思ってる
GJだぜ。
上と下から涙が出そうになったよ。
ヤミスキーの俺としてはGJを送らざるをえない…!
ヤミ側の心理描写も読んでみたかったー!
そろそろ次スレを…
GJ
心理の変化が読み取れた
GJと言わざるを得ない。
GG佐藤!!
>>641 ただいまの容量494…
もう一作品の容量も無理だと思うから、立てた方がいいね
なにも問題なかったら立てるけどいいかな?
スレ立ておながいします。
>>638GJ
なるほど…その二人の子が…あの…考えたな
クリスマスの前夜祭・・・・?ああ、なるほどそういうことか。
ここはあえてGJではなくこの言葉を送ろう
「だれがうまいこと言えとw」
651 :
650:2008/08/15(金) 02:21:05 ID:xALW6qf6
くそ、249に先を越されていたかっ・・・・・
あれおかしいな、249じゃなくて649ね。
連レススマソ、うめということでご勘弁
前夜ではなく大人Ver.な人なら話が繋がったと思うのだが・・・確かその人が前夜の方を・・・だった気がする。
だが読みやすい文章だった。GJ。
654 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 17:28:50 ID:8M1/tq0q
トランス!
別に話の繋がりなんざ考えてないっす
あのくだりに深い意味は無いです
ただ単に言葉遊びがしたかっただけなんでw
沢山の讃辞を頂きまして誠に有難う御座います
うm
うめしえん
産め
埋めにちょうどいい駄文をみつけたZE!
273 :名無しかわいいよ名無し:2008/08/18(月) 19:53:43 ID:ahx+e6FoO
>>272の続き
タッタッタッタッ
立花「しょおー!」ドンッ
リト「ぐはっ」どたっ
リト「てめっ!何しやがる!?」
立花「はっ(ダンッ)ほっ(ガッ)はい(トン)ワッセイ!(ダーン)」
リト「ぐわはうっ!!」
唯「ななな何!?」
唯のパンツを掴む立花
立花「ハイッ!」ズルッ
唯のパンツをさっと脱がす立花
唯「キャアッ!!何するのよ!ハレンチな!!」
自分のズボンとパンツを脱ぐ立花
そして・・・
立花「はあっ!」ズプズプッ!!唯のマ○コにチ○ポを突っ込む立花
唯「嫌あああっ!!痛い痛いいい!!」泣きながら叫ぶ唯
立花「ハイッ!(ズプッ)セイッ!(ズポッ)ほっ!(ズプッ)」
唯「嫌!嫌あ!(嫌なはずなのに感じちゃう!)」
唯「イ・・イクッ!!イッちゃう!!」
立花「しょおー!(ドピュドピュッ)」
唯「イクううう!!(ビクビクッ!)」
タッタッタッタッタッタッ(去っていく立花)
そして一年後・・・とある病院
唯「そろそろ・・・私達の子供が産まれるわ!」
立花「そうか・・・あれから一年経つのか・・月日が流れるのも早いものだ」
唯「うん、女の子だって!・・・でねっ・・この子の名前なんだけど・・・自然に親しめるようにミドリって名前はどうかな?」
立花「ミドリ・・・いい名前だな。よしこの子の名前はミドリだ(唯のお腹を撫でながら)」
唯「ありがとう、あなた。ねえミドリ・・・あなたはどんな子に育ってくれるのかな・・?」
完
これは酷い
662 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 14:04:31 ID:VV46pE8F
aaaaaaaaaaaaaaaa
埋め
664 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 06:59:08 ID:qWu5Xhk3
保守
665 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 18:34:11 ID:CmRlTVv1
梅
投下したいんだがこれは次スレに投げたほうがいいのん?
容量かね。
のこり3kBなら次スレだね。
埋めsage