【涼宮ハルヒ】谷川流 the 62章【学校を出よう!】

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125消失狂想曲
 そう、そこにキミの出番は無い。
 キミは彼女や彼を知る事も無く、彼女の気持ちに気づくことも無く、彼女と話す切っ掛けも無く。
 ただ淡々とした日々が繰り返される中、わたしだけがキミと共に歩む事になるだろう。
 倦怠感漂うサイクルに対しキミは人生なんてこんなものかと思うかもしれない。
 それこそがわたしが望んだ最高にして最善なサイクルなのだと、キミはわたしの気持ち同様に気づくことも無く。

 キミの出番は無い。
 わたしが、キミの全てを取り上げてしまうから。

126消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:02:18 ID:WEB7qEzo
- * -
「またな、佐々木」
 三重苦と自評した現状への決着を切望しつつキョンに別れを告げる。橘さんも引き上げてしまった以上彼との
会合はこれで終了だ。
 キョンは最後に笑い終え一息ついている藤原へ一瞥を投げると小さく手をふり喫茶店から出て行った。視線と
微笑だけで彼を見送るとわたしは先ほど彼の手勢のウェイトレスが置いていったコーヒーに口をつける。それほど
時間がたったわけでもないコーヒーは、だが焙煎を味わうには飲みやすい程度には熱を冷ましていた。

「僕がまだいるのに帰るとはな」
 僕以外に残った最後の一人は不快を態度で表現しつつ腕組みをしながらこぼす。
「これで解っただろ? アイツはまだ何もわかっちゃいない」
「くっくっ、そうだろうね。前に会った時に鎌をかけてみたけど、キョンは九曜さんや橘さんにばかり注意を払っていた。
 つまりはそういう事なんだろう。地球外知性の人型イントルーダー、周防九曜。リミテッドな超能力使い、橘京子。
 直接的な脅威となるこの二人がいなければとりあえず問題はおこらない。まあ普通ならそう判断するだろうね」
 カップを再び口へと運び喉に苦味を送り込む。左手に持つソーサーへ形式的にカップを戻すとそのまま藤原を指差した。
「だが僕が真に恐れている存在は彼女たちではない。そう、キミだ」
 藤原はさも当然だと言わんばかりの横柄な含み笑いを浮かべるとコーヒーを口にする。
「朝比奈みくるは優秀だ。アイツを含め涼宮ハルヒ勢の連中から未来人という存在への恐怖を完全に取り除いた
だけでなく、アイツらから庇護される対象とまでなっているんだから。その点については掛け値無しで賞賛する」
「それを確認したんだね」
 橘さんがキョンに謝っていた朝比奈さんの誘拐劇。あれは一部の人間が先走った結果だと彼女は言っていた。
 未来から強力に干渉されていた為に成功の出目は無いだろうと踏んでいた、とも。藤原とその背景はその一件から
様々な情報を得たのだろう。朝比奈みくるの一派がどのように干渉してくるか。涼宮さんに組する組織と橘さんたち
超能力集団がどれほどの力を有するのか。そして何より、朝比奈さんがどこまで彼らSOS団に深く潜入しているのかを。

「ああ、そうさ」
 主語の無いぼかした問いかけに藤原は間をおかず答える。カップを置き片肘を立てて頬杖をつくと、その方頬に
笑みを浮かべながら世界全てを侮蔑するかのようなため息と共に言葉を漏らした。
「本当、朝比奈みくるは優秀だ。未来人の能力をここまで曲解させる事に成功しているんだからな。未来人という
存在は過去と未来を知り時間移動が出来るだけで、自分には影響が少ない力なき存在だと連中は考えているだろう。
いざとなればどうとでもなると。
 全く愚かしいにも程がある。現地民やトイドールが何をしようと朝比奈みくるはどうにもできないのさ。未来の
朝比奈みくるが五体満足ああして無事な姿で現れている以上朝比奈みくるの無事は時間という絶対的な流れが決めた
既定事項であり、その既定事項を覆す事などは唯一つの例外を除いてありえない。
 いや、本来ならその唯一つの例外すらありえてはならない。過去における未来の不確定は未来にとって自身の
存在が不安定となる事であり、危惧すべき最大級の危険となる。
 だからこそ僕はここにこうしている。その唯一つの例外、涼宮の持つ時空改変能力の為だけに」

 スプーンに角砂糖を載せコーヒーに少しだけ浸す。角砂糖が下から徐々にコーヒーカラーに染まっていく。
「随分と雄弁じゃないか。みんながいた時にそれだけ喋ってやれば橘さんも喜んだんじゃないかい?」
「付き合う義務は無い。それに橘は『その程度』じゃ喜ばない」
「……なるほど。それが橘さんの既定事項、か」
 崩れだした角砂糖をコーヒーに落としかき混ぜると、窓の外で未だにそぼ降る雨を見るとも無く見た。
127消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:03:21 ID:WEB7qEzo
 キョンは未来を知るという意味を額面通りにしか捉えていない。だからキョンは未来人を恐れていない。
 未来人はこの現代の事象全てに於いて先手を打つ事ができる。それもそのはず、彼ら未来人はこの時間を
既定事項として把握しているのだから。わたしやキョンの生涯もまた彼らにとっては過去の出来事でしかない。
 彼らはわたしという人間の始まりから終わりまで全てを知っている。今のわたしが全く気づいていない、
将来ようやく知るであろう自分が求める深層心理に潜在する嗜好も、わたしがこのような事象を体験すれば
トラウマを持つのではないかといった未来的予測も、彼らにしてみれば本を読むよりも簡単に知りうる事が
できるのだ。

 そういう意味では宇宙人が万能たる力を持とうとも、超能力者がわたしの精神を掌握しようとも、全てを識る
存在である未来人の力には到底及ばない。
 彼らは過去のわたしたちがどのような人間なのか全て把握している。だからこそキョンや彼らには彼らの嗜好を
捉えつつ、だが全てを捉えない朝比奈みくるという存在が送り込まれたし、藤原もまたわたしのクリティカルポイ
ントともいえる急所を迷う事無く突く事ができたのだ。

「まったく本当に──残酷とは、前触れもなく訪れる」
《狂神》を零しつつわたしは静かに目を瞑ると、わたしは心に深く刻み込まれた電気羊の夢を思い返していた。

128消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:04:50 ID:WEB7qEzo
- * -
 県内有数の進学率を誇る名門学院を自分の母校としてからはや九ヶ月。
 視線届かぬ天頂を時々見上げる癖がいまだ絶えないわたしは、今日もそれを自覚しつつ目の前で共に昼食を営む
友人から窓の外へと視線を流して一息ついた。

「また、北を見てるんですか?」
 共学に通う一般女子高生の標準とも思える手の平サイズの弁当箱にフタをしつつ友人が聞いてくる。明るい栗色の
長髪を頭の左右でまとめ上げた友人は、そのツインテールと呼称されるしっぽをぴょこっと跳ねさせつつ、わたしが
見ている方角へと同じように目を向けた。
「自分の人生を賭けてまで選ぶ選択肢ではなかった……それはちゃんと理解しているつもりなんだけれどね。
 それでも時々考えてしまうの。もしわたしがもう一つの道を選んでいたらどうなっていたか。将来に不安はよぎる
けれど、それを補うだけのものがあそこにはあったのではないか。……彼と会うと今でも考えてしまう事だわ」
 わたしが見つめる先にある高校へと進学した彼とは通学路が同じ事もあり、今でも時々会ったり遊んだりと
交流し続けている。彼は中学時代と変わらず倦怠ライフを満喫しているようで、良くも悪くも変わらぬ彼に会う
たび不思議な安心感で心が充足される。

「うーん……未だに佐々木さんがそこまで惹かれるほどの人に見えないんだけどなぁ、彼。確かに一緒にいて
楽しい人なのは認めますけど」
「それが解っているだけでも十分よ。まあ何も知らない人からしたら単にぱっとしない男子って印象で終わっちゃい
そうだけどね、確かに」
 でも彼には、キョンにはわたしには無い何かがある。たとえばこの世界をひっくり返してしまいそうな、そんな
切っ掛けとなりそうな何かが。わたしはそう彼の事を評価していた。それ故にこうして彼と別の高校へと進学した
今でも、彼の事を考えて北高を見上げてしまう、そんなクセがついてしまったのだった。
 決して両親や教師の言葉に右顧左眄して流されるようにこの学院を進学先に決めた訳ではない。
 ないのだが、もし彼らが薦めたこの光陽園学院ではなく北高へ進学する事を決意していたらどうなっていたか。
 わたしの日常に付きまとうこの燻って纏わりつく虚脱感は完全燃焼されていただろうか。今までもキョンと
会う度に考えていた事だが特に最近はひどい。誰であろうと知る事の叶わぬifの世界、そんな無意味な事に思いを
馳せるようになったその理由は、今まさに教室へと戻りこのクラスにおけるわたしの席の後ろ、教室最後列の
窓際という特等席に座るなり
「……ふう」
と憂鬱を伴う溜息を吐く日課を持った風変わりなクラスメートにしてわたしの友人である彼女が原因に他ならない。
 彼女が憂鬱な理由を理解しているだけに、彼女に感化されてわたしも自分のいる場所が正しいのかと考え直す
事が多くなってきたのだ。
 七夕の時には現状維持が望みだなどと考えていた筈なのに、気づけば今以上の交流を、刺激を、そして何よりも
充足感を求めている。
 あの狂った存在の事もあるだろうが、どうやらわたしはこと彼との関係に関しては意外と貪欲な存在だったようだ。
129消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:06:01 ID:WEB7qEzo
 首を少しだけ動かし、視界ぎりぎりに彼女の姿を捉えると言葉をかける。
「今日も収穫無しかい?」
「見ての通り。毎日時間の無駄使い……本当、嫌になる」
「そいつはご苦労さま」
 机に突っ伏し不貞寝モードに入るのを確認し、わたしは彼女を放置する。
 それ以上彼女には決して立ち入らない。理由は簡単、彼女がそれを良しとしないから。
「ねぇ、いつも思うんだけど……佐々木さん、よく彼女と会話できるのね」
「そうかしら?」
 色々と感情を忍ばせ表情を緩める。確かに橘さんの言うとおり、後ろで不貞寝する彼女とコミュニケーションが
取れる人間なんてのはクラスはおろか学院内でもごく僅かしかいない。
 成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、そして橘さんをはじめとした女子生徒の大半がうらやむような好青年の
恋人を持つ彼女。
 誰がどう見たって勝ち組と呼ばれる人生を走っているのに、常に充たされぬ表情を浮かべる『問題児』。

 涼宮ハルヒ。
 わたしたちがいる光陽園学院の入学初日から日常を否定し、存在不明の超常を渇望する少女。
 彼女は、今なお日常が生い茂る幽鬱の中にいた。

130名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 22:06:19 ID:amH7ttth
支援
131消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:07:04 ID:WEB7qEzo
- * -
 人が知り合う縁なんてモノは何処にだって転がっているもので、入学したクラスで男女別に名前順で並ぶ座席も
また一つの出会いの切っ掛けとなった。
 その突飛なる自己紹介で入学初日にしてクラスメート全員に変な奴と認定された涼宮さんはもちろん自己紹介だけで
落ち着くような人間でもなく、その後の学院生活に於いても様々な行動言動を見せ付けていった。
 日常的な会話は全て一刀両断、全ての部活に仮入部しては部のレコードを塗り替えて即退部、休み時間になると
学校中を駆け巡り収穫無しの漁師に負けないぐらい不機嫌なオーラを全開にしては教室へ戻る。
 中学時代にはキョンたちに変な女と云われたわたしだが、彼女ははっきり言ってわたし以上に変な存在だった。

「毎日増える髪型と筆記具のカラーチョイスは何かへのメッセージなの?」
 黄金週間と呼ばれる中途半端な連休明け、そんな彼女の奇妙な日常にわたしは前々から気になっていた疑問を
投げかけてみた。
「……いつ気づいたの?」
「三週目に入ったときに一週間単位だって確信したわ」
「ふうん」
 月曜日は括りなしのストレートヘア、火曜日はポニーテール、水曜はツインテール……と、涼宮さんの頭には
毎日一つずつ括られる髪の束数が増えていく。土曜には五つ束という不思議な髪型になるが、日曜まででリセット
されて月曜にはまたストレートから再出発するというサイクルをみせていた。筆記具に関しても同じで、曜日に
よって外見が色違いのシャーペンを彼女は使用していた。
「……わたしさ、曜日には曜日の色ってものがあるように思えるのよ」
「曜日の概念が古人の都合で決められたものであったとしても?」
「ええ。古人がそこに何かを感じたからこそ曜日という概念を生み出したのかもしれないじゃない」
「七日間というサイクルに意味があるからこそ敢えて区分した……なるほど、興味深いお話ね」
 わたしは別に話をあわせた訳ではなく、本当に興味深い事だと思っていた。固定概念に囚われてしまえばそこで
思考は停滞する。それが中学時代に貴重にして尊重すべき友人から教わった教訓だ。まぁその彼自身は常日頃から
自分を包む倦怠感によってそういった突飛にして自由な思考をわざと秘匿・隠蔽している節があったが。
 だからこそわたしは、彼に似ながらもそれを隠蔽しないで突きつけ続けるという違った面をみせる涼宮さんという
存在に興味を持った。

「この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしの所に来なさい、以上っ!」
 誰もが持つ常識という世界に対してなかなか言えない啖呵をあっさりきった、涼宮さんという存在に。

「あんた、佐々木さんだっけ。そういえばどうして男女で話し方が変わるの?」
「癖、みたいなモノかな。昔ちょっとね。それと女の子相手にあの話し方だと、大体惹くよりも引かれてしまう
事が多いから」
「ふうん」
 涼宮さんはそれだけを返し机に伏す。それにしても彼女、クラスにもクラスメートにも興味が無さそうに思えて
いたが、それでも見るべき所、抑えるべき所はしっかりと見ているようだ。正直びっくりしたが、それ以上に
わたしはその事実に対して心を躍らせた。
 気分上々にしつつもう話は終わりかなと身体を前に向けようとした時、うつ伏せたまま涼宮さんが最後に一つ
だけわたしに告げてきた。
「あっちのモードの方があたしは好感が持てるわ。少なくとも他人にへつらってるようには見えないし」
 彼女という存在がいる限りこの学院も満更ではない、いやかなりのもんだ。表現しがたいとよく評される
くつくつと言った笑みが零れ落ちるがわたしはそれを抑えもせず即座に切り替えて返した。
「いいだろう、了解した。ならば今後、キミにはこちらの姿で話させてもらうとしよう」

132消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:08:35 ID:WEB7qEzo
- * -
 それから三週間後。
 涼宮さんは突然に彼氏と呼べる存在を作り出した。

「全く以って驚天動地だよ。理由が解ってしまうだけに尚更ね。いつもながらキミの決断力と行動力には恐れ入る」
 一時間目後の休憩時間、涼宮さんはいつもと違った慌しさで教室を飛び出していった。その後普段より幾分
苛立ちを減少させて戻った涼宮さんに大急ぎの理由を聞いてみればただ一言「彼氏を作ってきた」との事。
 おそらく彼女はマグロ以上に歩みを止めると死んでしまう存在なのだろう。わたしは彼女の熱意に心底感嘆した。
「解るんだ、理由」
「転入生の噂は僕にも聞き届いているからね。このあまりに中途半端な時期の転入、その転校には何か理由が
あるとキミはふんだ。だからキミはその転入生を彼氏というポストに迎え入れたんだ。キミの事だ、もし転入生が
女性であったとしてもその者と交友関係を求めに馳せ参じた事だろう。違うかい?」
「正解。まぁ普通に考えたら誰だって解るでしょうけど。だからこそ誰よりも先に抑える必要があったのよ」

 残念ながらその思考は普通に考えたとしたならば誰にも解らない事だろう。しかも転校生という属性だけで
彼氏にしてしまうなんてあまりにも突飛過ぎる。その転入生もよく肯んじたものだと逆に感心しかけたが、
涼宮さんの事だ。おそらく有無を言わさずその転入生を彼氏にしてしまったのだろう。その時の光景がいとも
簡単に思い浮かぶ。
「あぁ早く昼休みにならないかしら。彼の裏事情を徹底的に聞き出してやるんだから」
 名前もまだ知らぬその転入生に対し、わたしは心の中で合掌を送ってやった。

133消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:09:35 ID:WEB7qEzo
- * -
「そいつは確かに変わった奴だな」
 久しぶりに招かれた彼の家。わたしたちは世間話をしながら色彩豊かな折り紙を切り、折り、貼り合わせて
様々な飾りを作っていた。
「ああ。おかげさまで僕は退屈しない日々を過ごさせてもらってるよ。涼宮さんには悪いけどね」
「違いない。っとテープをとってくれ」
 手近にあったテープを渡し、ついでに自分が切り分けていた飾りの足を彼のぼんぼりと繋ぎ合わせる。たった
今完成したぼんぼりを始め、わたしたちの周りには紙のチェーンや星型の飾りなどがいくつか転がっていた。

「キョンくん次まだ〜? まだまだいっぱい飾れるよ〜。あっ、いっぱいできてる」
 彼の妹がやってきてわたしたちの作った飾りを拾い集めると足取り軽く縁側へ向かう。何の事は無い、そこに
立てられたやや小さめの笹に飾り付けを行うためだ。
「ほれ、短冊だ。願い事を書いて一緒に飾っとけ」
「うん、走るの速くなりますよ〜にっ、って書くんだ。みよちゃんもらってきたよ〜」
 短冊の束を受け取って妹さんが友達のもとへ走っていく。その様子を見つめつつ彼は肩を落とすと、
「やれやれ、今以上すばしっこくなったらいざって時に捕まえるの苦労すんじゃねえか。他の願い事にしてくれよ」
そう苦笑交じりにわたしにこぼしてきた。

 七夕を間近に控えたある放課後。たまたま帰路を共にしていたわたしとキョンは、これまたたまたま妹さんと
その友人が帰宅しているのに鉢合わせ、ついでに今日七夕の飾り付けをする予定だったと聞き、一緒にどうかと
妹さんたちに誘われ現在に至る。
 彼は適当に折り紙を束で取ると細長く切り、両端を繋いだ輪を次々と繋いでチェーンを作り出していく。
 わたしも紙に切れ込みを多数入れて引き伸ばし天の川を模した飾りを作ったり舟を織り上げたりして七夕装飾を
生産していく。そんな作業を行いながらわたしは件の姫君について最近気になった事を話し始めた。

「でもね、最近その涼宮さんの様子が微妙におかしいんだ。何ていうかいつもと違った、そうアンニュイ感が
漂うといった感じでね」
 学院生活に対し早々に見切りをつけたのか、あるいは七夕という時期が関係しているのか。それはわたしには
解らない。しかし常日頃学院中を駆け巡っていた暴走特急列車がここ数日停止線で止まるという姿を見てしまったら
誰だって疑問に思う事だろう。
 キョンは新たな折り紙を取り出すと三つ折りにしてから切り分け、それぞれに糸を通して短冊を作りあげる。
短冊の中には青や紫といった色も見受けられるので、五色がどうのと言うよりは単に余った折り紙の有効な
使い方を考えた結果なのだろう。
 短冊に糸を通しながらキョンはふと手を止めると首を回してほぐし、そのまま一息つくとずっと考えていたの
だろう事を話し出した。
「……ま、そんだけ面白い事が無いかと探し回って見つからなきゃ誰だって倦怠感が出てくるだろうよ。面白い
事なんてそう簡単には起こらない訳だし、それを生み出せるのは本当に一部の天才と呼ばれる存在だけなのさ。
 きっとその涼宮って奴も気づいたんだろうよ。結局のところ凡人は現状に満足するしかないって事にな」
「なるほど、それが常日頃キミがキミ自身へと言い聞かせている言葉という事か」
 わたしは理解を示す笑みを浮かべて返す。
「何だそりゃ。どういう意味だ」
「いや失礼、今のキミの発言中の態度が先の彼女、涼宮さんと何だか近い感じがしたのでね。理性と呼ばれる
表層意識では否定しているがキミもまたその深層意識では面白い事を渇望しているのではないかい?
 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、エトセトラエトセトラ……彼女の示した超常的な存在の、そのどれか
一つでも現れれば世界が変わるぐらい面白くなる事請け合いだからね」
134消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:11:31 ID:WEB7qEzo
 そう、キミもまた世界の変革を求めているのさ。それがありえないと解っていながらも。それを追い求めるのは
現代社会を生きる者にとって悪しき恥部であると考えていながらも。
 でもねキョン。先にあげたような不思議な存在や事象、ジュブナイル的なモノを追い求めるという行為は、
悪でも恥でもない事なんだ。むしろそういったジュブナイルな存在を追い求め続けられた者だけが後世に天才と
謳われる存在になれるのさ。
 今の涼宮さんは歯車がかみ合わず空転しているのだと思う。世界という名の歯車と、自分という存在の歯車が。
 だが、今彼女に必要なのは自分の歯車を世界に合わせて交換する事ではない。彼女にとって真に必要なのは
世界と自分との間にもう一つ、小さくてもいいからその二つの歯車を繋ぐ為の小歯車、ピニオンを置くことだ。
あの頃の僕がキミという存在を間に緩衝させた事で、世界という巨大にして冷徹な歯車相手に上手く回れるように
なったみたいにね。

「くっくっ……キョン。僕はある可能性を考えている。もしかしたらキミなら、キミならば涼宮さんと世界を
繋ぐピニオンにもなれるかもしれないとね。これはお世辞でも何でもない、僕の素直な感想さ」
「バカ言うな、いくら何でも買いかぶりすぎだ」
 短冊を指に挟んで回しつつキョンは照れてるとも気まずそうにとも取れる何ともいえない表情を浮かべていた。
「俺はそんな立派な奴じゃない。その涼宮って奴の緩衝材だなんて俺には無理だ。そうだな……俺にできる事と
いえば、せいぜい図書館の受付で困っている奴を捕まえてカードを作ってやるぐらいさ」
 何とも具体的な事例を出しつつ、照れ隠しかそのまま白い短冊を一枚差し出してくる。わたしは短冊を受け取ると、
だが願い事を書く事はせずそのまま財布の中へとしまい込んだ。
「何だ、書かないのか?」
「僕は現状に充足しているからね。これ以上何かを望んだらきっとバチがあたる。願い事を書かない事こそが
僕の願いなんだ」
 何だか解らないと言った表情をみせてキョンは頭をかく。その様子をわたしは表情を緩めて受け止めた。

 キョン……キミはさっきカードを作る程度しかできないと自分を評したけど、実際はそれで十分なんだよ。
 キミは単に余計な事に首を突っ込んで当然と思われる親切をしただけだと言うかもしれない。
 でもね、キョン。カードを作ってもらった人から見れば、その行為こそがまさに世界と自分を繋いでくれた
ピニオンだと言えるんだ。
 きっとその人はキミという存在を心に深く刻み込んだことだろう。わたしには解る。わたしもキミと言う存在に
出会った人間だから。
 だからこそわたしは何も望まない。
 わたしは今こうしてキミといられる事に満足している。だが新たな望みが叶うという事は、この世界が変わって
しまうという事だ。

 わたしの望みは現状維持。キミと共に歩んでいるこの世界の永続──それだけだから。

135消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:13:29 ID:WEB7qEzo
- * -
「意外と長く続いてるね、涼宮さんと」
 日本の学生の大半が待ち望み、また社会人の何割かが羨ましがるであろう学生にとって最長期休暇に突入した
のは今からほんの数時間前の事である。簡潔に述べるなら今日は夏休みの初日という事だ。
 数泊分の宿泊準備をカバンに詰め朝早くから乗り込んだフェリーは、現在全方位が二種類の青で構成される
世界をただひたすら走っていた。予定ではあと数時間はフェリーに乗っている事となっている。
 初夏の陽射しが容赦なく降り注ぎ、また海洋から反射して眩しさを過剰に振りまくフェリーの甲板で手すりに
寄りかかりながら、わたしは隣でやや疲労気味に微笑む青年へ話を振った。
 青年は潮風で乱れた前髪を軽くかきあげ顔からにじみ出ていた疲労感を体内へ押し込むと、学院で見慣れた
人当たりの良い好青年の姿へと戻る。
「意外と、とはどういう意味でしょう」
「そのままの意味さ。歯に衣着せずに語るなら、キミ程度の器では一学期終業を待たずに破局すると踏んでいた」
「手厳しい評価ですね。……そうならなかったのは、ひとえに努力の賜物ですよ。この旅行もその一つです。
僕は僕なりに涼宮さんに見限られないよう日々努力しているつもりですから」
 その好青年──古泉一樹は船内を駆け巡っているであろう自分の彼女、涼宮さんを思うような視線を見せて
爽やかに微笑んだ。

 彼の親戚の別荘へと招待されたのは一学期も終盤、期末テストも終わり午前授業へとカリキュラムが移行した
頃だった。
 彼にしてみれば涼宮さんのみを誘いたかったのだろうが、流石に孤島の別荘に涼宮さん一人ご招待というのは
モラル的に問題ありと判断したのだろう。涼宮さんに誰か他にも誘いましょうかと尋ねてみたのだそうだ。
 そうしたら件の姫君曰く、
「いてもいなくてもかまわない人間なんて何人誘っても同じよ。この学園にはそんな奴しかいないんだから。
でもそうね、敢えて誰か名を上げるとするなら佐々木さんかしら」
とのお言葉らしく、ここに涼宮さんの栄えある友人代表として白羽の矢が立ったわたしもまた彼の別荘へと招待
される運びとなった。

「涼宮さんの退屈を解消させたいなら孤島で殺人事件でも自演すればいい。まず間違いなくキミという存在に
花丸採点をつけてくれるさ」
 結局のところ、涼宮さんは普通の事では満足できない為に、常に退屈な日々を過ごしているだけなのだ。だと
したら涼宮さんのご機嫌を取る方法はいたって単純明快、非日常的なイベントを実施するだけでいいのだ。
 ただ非日常的なイベントという荒唐無稽なカテゴリをどう充たすかがまさに無理難題な部分であり、それ故に
彼は躍起になって彼女の為のプログラムを考え、涼宮さんは充足されぬ日常を過ごしているのだが。

「殺人事件ですか。ええ、実はそれも真剣に考えました。ですが流石に僕一人ではどうにもならなかったので
没にしたんです」
 だろうね。別荘にいる全員が親戚の友人一人のために殺人事件を模したサプライズパーティを行うなど、よほど
ノリが良い人たちでなければ無理な話だろう。その親戚だって休息する為に別荘に来ているのだ。わたしたちに
別荘を提供するだけでも感謝してもらいたいぐらいの気分でいるはずだ。
 それにしても本気で殺人事件劇まで考えるとは。
「いやはや、そこまでしてキミは彼女の事を繋ぎとめておきたいのかい?」
「もちろんです。僕も最初はびっくりしましたよ。転校初日の一時間目終了後にほぼ一方的な交際宣言なんて
聞いた事ありませんからね。
 この人は何を言っているのか、いったい何者なのかと思いましたよ。……今にして思えばそれが罠でした。
 あの時から今この瞬間まで僕はずっと嵌り続けているのでしょう。エデンに実る禁断の果実並に魅力的な、
彼女と言う存在の罠に」
「それはそれは、ご愁傷さまと言っておこう」
「お互い様ですよ」
 違いない。わたし自身がこの関係に固執していないのに対し、彼は万策投じて関係を維持しているという大きな
相違点はあるのだが、何だかんだ言ってわたし自身が涼宮さんと交友関係を維持している限り、傍から見れば
わたしも彼と同じ穴の狢なのだろう。
 我が心の友の口癖を借りるのならまさに「やれやれ」といった所か。
 この旅行に対して涼宮さんがいつまで興味を示していられるか──その結果が解るのもそう遠い未来ではない。
 わたしは潮風に当たりながら未だにフェリー内を探索する少々不機嫌な友人の姿を想像しながら追いかけていた。

136消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:14:12 ID:WEB7qEzo
- * -
 孤島から帰ってきて数日後。ふとした切っ掛けからクラスメートの橘さんと近所で開かれる夏祭りに一緒に
行こうという話になった……のだが。
「浴衣を着るという行為自体は否定しないけれど、それを誰かに見せる当ても無いのは少々寂しくないかな」
 いつの間にか夏祭りには二人で浴衣を着て歩くという事にまで話は進展していた。よって今日の予定はまず
浴衣を調達し、それからいざお祭りに出陣するというなんともハードなスケジュールとなっている。浴衣を試着
しつつ漏らした言葉に、胸を躍らせながら浴衣を選んでいた橘さんは虚をつかれた表情で瞬きをみせてきた。
「何を言ってるんです。見せる相手なら、ちゃんといるじゃないですか」
「見せる相手? いったい何処に?」
 今日誰かと会う予定でもあったのだろうかと考えるわたしに橘さんはポンと自分の胸を手のひらで叩くと、
「ほら、こうして佐々木さんの目の前に」

 薄紅色に朝顔の柄をあしらった浴衣を纏い、下駄を鳴らして街を歩く。普段見慣れた界隈もそこを歩く人々の
熱気や聞こえてくる祭囃子、時間帯、そして自分の格好まで違うとなるとここに来るまでの過程はどうであれ、
否応も無く気分も高揚してくるというものだ。
「あ。ほら佐々木さん、屋台とかも見えてきましたよ。ふふ、楽しそう」
 瑠璃色に金魚柄という浴衣で隣を歩く橘さんも似たような感じなのか、その明朗快活な性格がいつも以上に
増幅されている。いつものツインテールには桜桃のようなぼんぼり飾りが追加されており、まるでアメリカン
クラッカーのような楽しげなゆれ具合はそのまま彼女の心情を表しているかのようだった。

「あれ、もしかして佐々木か?」
 不意に背後から馴染み深い声で名前を呼ばれる。立ち止まり軽く振り向けば、そこには思っていた通りの人物が
事もあろうにその両脇にそれぞれ標準以上の評価を貰い受けておかしくない浴衣姿の女性を伴い立っていた。
「やあキョン、奇遇だね。もちろんこの祭りという行事や場所に対してではなく、人波がごった返すこの喧騒たる
賑わいの中でこうして僕たちが偶然にも出会えた事に対してだがね。さて僕のほうからも外交辞令以上の意味を
込めて挨拶させてもらうとするなら、キョン、両手に花とはまさに今のキミの状況の事を指し示す言葉なんだろう。
キミを羨む男子生徒の声が今にも其処彼処から聞こえてきそうだ」
「小学生二人の、しかも一人は妹の保護者役がそこまで羨ましがられる状況だとは知らなかった。何ならお前に
譲ろうか?」
「遠慮させてもらうよ。なに、キミにとって掌中の珠と思われる純粋無垢で可憐な少女たちに対し、ほんのちょっと
嫉妬心を加味した他愛ない冗談を述べただけだ。という訳で改めてこんばんは、お二人さん」
「こんばんは〜ささにゃんっ」
「こ、こんばんはです」
 わたしの言い回しが全く解っていない妹さんと、何やら色々な感情を含んで返してくるみよきちこと吉村さん。
 二人とも浴衣を着ておりその外見的評価は先ほどわたしが褒め称えた内容そのままである。おせじなんてものは
わたしが加味した嫉妬心の量すら混入していない。

 挨拶を交し終えたところを見計らい、キョンは相変わらず緊張感を何処かに置き忘れてきたかのような倦怠感を
みせつつ口を開いた。
「大体俺が両手に花の状態だというのならお前だってそんな可愛らしい人を連れて歩く羨ましい奴、って事に
なるじゃないのか?」
「ああもちろんだとも。今日の僕は彼女の引き立て役だと自覚しているからね」
 これも言葉に深い意味のない正直そのままな今の感想を述べたつもりでいたのだが、橘さんは自分が褒められる
事よりもわたしに対するわたし自身の評価が許せなかったようだ。
「何言っているんですか! そんな事無いですっ! 佐々木さんは十分綺麗で可愛いですよ!」
 あなたもそう思いますよね、とその勢いでキョンにわたしの感想を投げかける。そんな事を聞かれたらキョンも
困るだろうにと、即座に助け舟を出してその場をごまかそうとしたのだが……その時わたしの口からは何一つと
して思考が言語化される事が無かった。

 なぜだろう。
 歌を忘れたカナリアの如くわたしはただ肺にたまった呼気を音もなく吐き出すしかできない。
 わたしは、助け舟の意味をこめてその場をごまかそうとしていた思考以外のわたしは、いったいこの場に何を
望んでいるのだろうか。

 わたしは、全く動けなくなっていた。
137消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:15:10 ID:WEB7qEzo
「まあな。佐々木も容姿に限って言えばそこらの連中に遅れをとらないと思うぞ。まさに黙っていれば、って奴だ」
 それは突然に。永遠の刹那を抜けわたしの時が動き出す。
「黙っていればって……もうっ、一言多い人ですね。何でこう、もっと素直に褒められないんです?」
 橘さんの批判の声を伴奏にわたしは自分自身を確認する。どうやらわたしの心を絡み捕っていた謎の呪縛は、
先の彼の一言であっさりと解呪されたようだ。結局のところ何だったのか……それは解らずじまいのまま、それでも
わたしは彼からの感想を返すべくいつもと変わらぬ口調で、いつもと同じような言葉を何とか用意した。
「まあ落ち着いて橘さん。キョンは、彼は実に素直に答えてくれているわ。もうこれ以上ないってぐらい素直にね。
彼の事を知らない人は一言多いと思うかもしれない。でもね橘さん、彼の辞書にはどの版で調べてもおべっかという
文字は存在していないのよ」
 朗笑しつつ橘さんに彼と言う存在について語る。そして最後に彼を見ると、こちらからも一言だけ忠言してやった。
「まあ、だからこそキミはプレイボーイという言葉からは縁遠い存在でい続けるのだろうがね」
「なるほど……納得なのです」
「うるせえ、余計なお世話だ。っていうかお前らのほうが一言も二言も多すぎだ」
「キョンくんプレイボールしっかく〜」
 妹さんの言葉を機にその場にいた者たちが一人を除いて笑いあう。その除かれた一人、件の中心人物はどう表現
すればいいのか解らないといった表情で頭をかきつつ、結局いつもの口癖と共に嘆息を吐く事で思考を纏め上げたようだ。

「いやすまない。これでも口下手な僕なりに褒めているつもりなのさ、キョン。
 それにしても……くっくっ、キミのせいで笑いが止まらないよ。まさかキミの口から僕の容姿に対してお褒めの
言葉をいただけるとは思わなかったからね。 ここ最近では一番の驚愕だ。
 普段のキミならそうだな、あの童顔に反した膨よかな胸部を持つ癒し系少女や、隣の着物をスタイリッシュに
決めた長髪女性なんかがお眼鏡にかなう存在だと思っていたのだけれどね。それともキミはもしかしてこの会場に
雨や雪でも呼び込んで、傘を用意していない僕たちを濡れ鼠にするつもりなのかい?」
 彼からの賞賛に対しわたしなりの礼を返したら、彼は嘆息を零しつつ眉間にしわを寄せて呟いた。
「あー、そこの佐々木のお連れさん。これでもこいつに黙っていればの冠詞は必要ないと?」
「男は黙って何とやらでしょ、プレイボーイさん」
 キョンはわたしにではなく橘さんへと水を向けるも、どうやら桶でかけ返されたようだった。

「えー、ささにゃん雨が降るの? 雨はやだよー。あ、そうだキョンくん! わたしリンゴあめ食べたいな〜。
みんなもりんごあめ食べたいよね?」
「えっと、わたしは……」
「キョンが奢ってくれると言うのならご相伴にあずからせて貰うとしよう」
 吉村さんの躊躇に声を被せる。彼女の意には反するかもしれないが、ここは彼への攻め時だ。心中笑いつつ
わたしは隣に立つ橘さんに対して「あなたも一緒にどう?」と振る。
 橘さんは自分の浴衣の襟を軽くつまむと、
「リンゴ飴? あれって溶けて浴衣とかについたら大変なことになるんですよね。それに舌も赤くなるし」
 軽く舌を出しつつ訴えるが、すぐに引っ込めると誰もが好感を持てるだろう爽快な笑みを浮かべつつ、
「という訳で、もちろんゴチになります」
とわたしの意図した通りに答えてくれた。

「だ、そうだ。よかったねキョン、どうやら今日はプレイボーイになれそうだよ」
 彼の財布へ死刑宣告を伝えると共に朗笑が場を支配する中、キョンは観念したのかもう一度幸せを逃すため息を
こぼして肩を落とした。
 なに、大丈夫だよキョン。キミが逃したその幸せはちゃんとわたしが拾い上げているから。
 通行人に気を使いながらリンゴ飴を手にしつつ、彼らと肩を並べて屋台が並ぶ道を時間をかけて歩きながら、
わたしは言葉にはせずに彼へ告げた。

138消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:16:23 ID:WEB7qEzo
- * -
 いわゆる一般的に言う所の文化祭、光陽園学院音展祭は毎年秋分の日前後に行われる。
 この学院の音展祭は一風変わっており、学級単位での展示発表や模擬店などは行われない。そういった音展祭の
『展示』を行うのは部活や有志の面々たちである。では学級単位では何を行うのかというと、
「ほら、男子! もっとちゃんと声を出してっ!」
とここ毎日飛びまくる橘さんの檄からも解るとおり音展祭の音の部分、すなわち『音楽』を担当する事となる。
 全学年学級対抗の合唱コンクール。一般開放される本番で行われるこの大会、最上級生には最上級生としての
維持が、下級生には下級生なりの思惑がひしめき合い、何だかんだで毎年弥が上にも盛り上がりを見せてくれる
音展祭のメインイベントだった。

「でも残念ながらキミのお眼鏡にはかなわないんだよね、姫君」
「この程度で盛り上がれるなら最初から不思議な事なんて渇望してないわよ」
 不承不承ながら参加していると言うオーラを隠すことも無く、眉間に皺を寄せ全く興味がないと半目でそっぽを
向き腕を組みながら、それでいて誰よりも綺麗にメロディラインを奏でる。コンクールに必要な分は提供してるわと
言わんばかりに涼宮さんはある意味完璧に歌い上げてみせていた。
「当日はコンクール以外に希望者による個人演奏とかもあるけど?」
「興味ない。人の演奏にも、今の流行曲にも。もっと言うなら展示部門にも。どうせ予測の範囲内よ」
「そう」
 否定はしない。彼女の予想を超える事態が起こるなんて可能性は万が二つ程度しかなく、地球規模の天変地異
以上の偶然か、あるいは涼宮さん本人が行動を起こした時のみ起こりうるだろうからだ。
 そして涼宮さんが行動を起こさない限りその可能性は望むべくもない。わたしでは彼女に行動を起こさせるまで
には至れないらしく、彼女の空転思想は数ヶ月たった今でも続いているようだった。

 結局音展祭当日、涼宮さんはわたしたちの学級の発表一分前に集合し、ステージで忿懣遣る方無い態度を全身で
表しつつも見事に歌い、自分たちの発表終了と共に姿を消すとその日一日は彼女の姿を見る事はなかった。
 実に彼女らしい参加の仕方である。
 特に賞を取ることもなくコンクールは終了し、はれて自由行動となったわたしは今日来ると約束してくれた
キョンの元へと向かう為に校舎内を歩いていた。
「また彼ですか? はあ、佐々木さんともあろう人が、何であんな人なんかに……」
 何故かわたしと共に歩く橘さんにぼやかれる。わたしは別段深い理由がある訳でなく、ただわざわざ来てもらった
お礼が言いたいだけだと伝えようとして、だが伝える前に「その存在」がわたしの視界を縫いとめてしまった為、
わたしは結局反論する事はなかった。

 一般客やら生徒やらが往来する廊下、その柱の一つにその男は腕を組んで寄りかかっていた。見た目的には
古泉一樹と並ぶほどの好青年、だがその実男から感じられる雰囲気はどこか影を感じるといった次元ではなく、
全てに於いて負の方向に傾いたと言って過言ではない気配をかもし出していた。
 男は特に誰を見るでもなくただ寄りかかったままでいる。だが男はその雰囲気でわたしの事を捉えていた。
男から感じる空気を読む限り、男はわたしを捉えるためだけにわざわざこんな場所にまで足を運んできてやった
んだと言いたいようだ。
 涼宮さんがこの男の事を知れば本当に残念がる事だろう。何せ彼女が望む非日常、万が二つの確率がこうして
当たってしまったのだから。
139消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:18:36 ID:WEB7qEzo
「……佐々木さん。あれ、あの人って、一体」
 わたしが足を止めたからか、隣を歩いていた橘さんも立ち止まり同じ男を見つめている。第一印象、外見だけで
言うのならただの好青年だ。橘さんの興味が惹かれるのも解らなくはない。
「さぁ……わたしの記憶には引っかからない人ね。今日は一般にも開放しているし、誰か学院生の知り合いなん
じゃないかしら」
 彼に興味を持ったのかしら? と続けて聞こうとしたのだが、橘さんがわたしの袖の裾を小さく掴み身体を
近づけてきたので言葉が止まる。目を転じてみれば橘さんは彼に対し興味と言うよりは恐怖、怯えといった様子を
見せている。彼女もこの気配を感じ取ったというのか。
「どうしたの?」
「何でだろう……彼、変な感じがするんです。怖いというか、何と言うか。……近づかない方がいい気がする」

 わたしも心から賛成する。君子危うきに近寄らずとは良く言ったものだ。だが、例え天使が歩くのを恐れる
場所であろうと、どうやらわたしは進まなければならないらしい。それがバカバカしい行為と思えようとも。
「橘さんは迂回したほうがいい。どうやらあの男が用があるのはわたしだけみたいだしね」
「そうはいきません。一人より二人のほうが、いざと言うときに何とかなります。応援を呼んで来いと言うのも
無しですよ。そう言ってあたしがいない間に、佐々木さんは彼と接触するつもりでしょうから」

 ほぞを固めたのか、わたしの左腕にしっかりとしがみ付きながら橘さんは強い眼差しを返してきた。わたしは
意を決し、まるで熱い恋人たちのように腕にしっかりと身体を寄せてしがみ付く橘さんを同伴しつつ、その男の
そばへと歩いていった。
 わたしたちが近づいてもその男は姿勢を変えず、目線すら動かそうとしない。焦燥感で早足にならないよう、
またそれを悟られないよう慎重に足を繰り出し、互いに視線を合わせぬまま男の目前を通過しようとした所で、

「介入できているようだな。僕の事を認識した」
喧騒の中でも聞き取れる静かながらもハッキリとした声で呟いてきた。
「既定通り問題はない、成功だ」
 彼の言葉は聞き取れるが、その意味は全く以って理解できない。彼は何を言っているのだろうか。足を止め
橘さんに目線で尋ねるが彼女も心当たりが無いらしく首を大きく振って否定する。
 このまま無視する事も考えたが、わたしは敢えて接触する方を選ぶ。
「僕たちに何か用でも?」
「今はまだ無い。いずれ解る、それがあんたの既定事項だ」
 それだけ告げると男は柱に預けていた身体を戻し、わたしたちとは逆の方向へと歩き去ってしまった。
140消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:19:15 ID:WEB7qEzo
「あ、キョンくん! ささにゃんみ〜っけ!」
 男が見えなくなった後もその場に立ち尽くしていたわたしたちに快活な声が届く。男の見えない鎖に束縛されて
いたわたしたちはそこでようやく身体は動かせるものだと思い出す。振り向くと、こちらに向かって走ってくる
可愛らしい誘導弾を放ちつつのんびり手を振って存在証明するキョンの姿がそこにあった。
「よう、さっきの合唱見せてもら……ってどうしたんだ? 二人して死神にでも会ったかのような青い顔をして」
 先だって着弾した妹さんをわたしから引き剥がしつつ彼が訪ねてくる。その言葉にずっと抱きついていた橘さんへ
注意をむけると、確かに橘さんの顔色は肝を冷やしたかのように真っ青になっていた。
 おそらくわたしも同じような感じなのだろう。あの男から感じ取った全てが負の方向へ傑出した型破りな雰囲気。
あれは男自身のものだったのか、それとも男とは別の、あの時わたしたちが男以外に認識できなかった位置に立つ
何かしらの存在からなのか。

「いや、ちょっとばかり背筋が寒くなる事があってね。全身総毛だち命が縮む思いだったのさ」
「おいおい、いったい何があったんだ。どこかで爆発騒動でもあったのか」
「爆発程度なら良かったんだが……敢えて表現するならそうだね、幽霊に出会ったとでも言うべきかな」
 あまりに突飛な回答にキョンの思考が停止する。そんな彼の表情を見ていると何だか先ほどの戦慄がどうでも
よく感じられてきた。
 橘さんの肩にそっと手を置き子供をあやす様にポンポンと軽く叩いて落ち着かせる。橘さんもようやく頭と本能の
両方で安全になったと感じ出したのかしがみ付いていた手の力を徐々に抜きはじめ、代わりに腕を絡めるように
取ると自分の身体を預けてきた。
「本当、怖かった。……でもこうしていられるのはちょっとだけ役得気分かな。ふふっ、羨ましいでしょ」
「いや別に」
 何が何だか解らないがとりあえず大丈夫そうだと言う事は理解してくれたのだろう。キョンは橘さんを真似て
自分に抱きつく妹を視線だけで見つめながら「余計な事を教えてくれたもんだ」といった意味合いの長い嘆息を
交えつつこぼした。
「さて、特に何でもないんだったら色々案内してくれないか? とりあえずは妹が興味を示して俺から離れてくれる
ような所を所望する」
 無論、仰せのままに。わたしはゆっくりと頷いてみせた。

141消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:20:08 ID:WEB7qEzo
- * -
 光陽園学院に音展祭があるように、北高にもまた北高祭と呼ばれる文化祭がある。北高祭は音展祭とは違い
所謂一般的に言う所の文化祭の流れを汲んだものであった。
 わたしは一人、正門から昇降口まで並ぶ模擬店を横目にキョンの学級教室へと足を運ぶ。遊びに来いと誘って
くれた彼の話によると彼のクラスの委員長がかなりのやり手らしく、展示と模擬店を同時に行うなかなか面白い
モノに仕上がったと聞いていた。
 入口で貰ったパンフレットを眺めつつ彼の教室へ向かっていると、そんなわたしを導くかのように何処からか
馥郁たる香りが鼻を掠めてくる。
 やがて目的地にたどり着くと、丁度受付をしていたかつての級友がわたしの事を出迎えてくれた。

「あれ、佐々木さんじゃないか。久しぶり」
「やあ国木田、久しぶり。男子三日会わざれば刮目して見よとは言うものの、どうやら君は相変わらずのようだね」
「まあね。特に束縛されることもなく飄々と羽を伸ばした生活を送ってるよ。そっちはどうだい? 確か光陽園
だったよね」
「日々の勉学の為に週数日の塾通いといったレベルさ。学園自体の面白みは常に品薄状態だがそれでいて目玉商品が
無い訳でもない。フラストレーションが溜まるまでには至らないというまるで僕という存在をそのまま象徴するかの
ような日常を送っているよ」
 欲求不満を訴えるのはもっぱらわたしの後ろに座する彼女の仕事だ。涼宮さんには悪いが、わたしはそんな彼女の
変化を眺めているだけで退屈を紛らわす事ができている。それにわたしには橘さんや他の級友もいるし、さらには
一般人たる一般人の彼もいる。

「それはご苦労さま。どう、少し休んでいかない? キョンももうじき戻ってくるはずだし、その間退屈はしないと
思うよ。佐々木さんの事を呼んだのってキョンでしょ? だったらお代はキョンにつけておくから」
 それは流石にキョンに悪い。彼の懐の為にも目一杯ご馳走になる程度でとどめておく事にしよう。
「それがいいよ」
 国木田の含みにくつくつと言った忍び笑いで返す。早く戻ってこないと破産するよキョンなどと勝手な制限時間を
胸中で設けつつ、わたしは教室の入口に掛けられた看板に顔を向け、この企画内容を彼から聞いたときから気に
なっていた事を訊ねてみた。
「ところでこの企画、十月に行うには少々気が早いように感じられるのは僕の季節感がずれているせいではないよね」
「あってるよ。でも意外と評判良いんだよ。季節はずれって意外性もあるけど、やっぱり味が美味しいってのが一番かな」
 中に向かって一名の来客を伝えつつチケットと配布物を差し出される。そして営業的スマイルを浮かべると、
「では改めて、僕たちが自身を持って提供する実演展示会『おでんの歴史と作り方』、その目と舌で心行くまで
楽しんでいってね」
そう言って中へどうぞと案内してくれた。

 客席の一つに案内されて着席する。前の席の対応をしていたエプロン姿の少女がカウンターからの呼びかけで
こちらに気づくとにっこり微笑みながら「一年五組へようこそ」とファミレスのように挨拶をみせ、
「じゃ、ゆっくり楽しんで行ってね。自由時間になったら部室を覗かせてもらいに行くから」
と対応していた相手へ小さな声で伝えてカウンターへと戻っていった。どうやら友達の相手をしていたらしいその
セミロングの髪を軽く結わいた少女はお冷とメニューを手にすると、わたしの席へ改めてやってきて人当たりの
良い笑顔と共にお冷を置き、メニューを丁寧に差し出してから改めて挨拶してきた。
「いらっしゃいませ、チケットを戴きます。こちらの盛り合わせでよろしいでしょうか? お嫌いなタネとかが
ありましたら遠慮せずにおっしゃってくださいませ。代用のタネと交換いたしますので」
「構いません、そのままでお願いします」
「わかりました、少々お待ちくださいませ」
 少女は小気味良い対応でカウンターに戻りわたしの注文を奥へと伝える。そして新たな水を取ると別の席への
接遇へ向かいだした。
 前に座っていたショートヘアの少女はそんな彼女の事を少しの間眼で追っていたが、ハーフリム眼鏡の智に
手を沿えて一度グラスの位置を合わせなおすと小動物のように昆布巻をちまちまと食べ始めた。
142消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:20:48 ID:WEB7qEzo
「お待たせしました」
 少しして先ほどのセミロングの少女が使い捨てプラ容器に入れられた盛り合わせおでんを運んでくる。おでんを
机に置くとエプロンのポケットから箸とチューブからしを取り出しおでん添えるかどうか聞いてきた。
 わたしが断ると少女は箸だけをわたしに差し出してくる。
「では、ごゆっくり」
 と挨拶をしてその少女が下がる。わたしは割り箸を取ると二つに割り、いただきますと挨拶を呟いてまだ季節
はずれと取れるおでんをひとつ、またひとつと口に運んで堪能した。

 ここがキョンの教室なのかとのんびりと室内の雰囲気を眺めながらおでんを半分ぐらい食べ終えた頃、
「よっ、もう来てたのか」
そう聞き覚えのあるいつもの声と共にようやくわたしの待ち人が姿を現した。彼の呼びかけに右手を少し上げて
応えつつ、ふと教室内に軽く響いた先ほどの呼びかけに、わたし以上に全身の筋肉で反応を見せて動きがぴたりと
止まってしまった前の席の少女が気になった。
 驚いたともとれるがそれにしては少々違った反応である。目の前の淡い少女を視界の隅に捉えつつ、わたしは
上げた右手に持つ箸を動かして腹と舌の満足度について語ってやった。

「やあキョン、悪いが先に一人で楽しませてもらってるよ。キミの財布を財源とたこの風味豊かなおでんでね。
盛り合わせ皿のタネに関東特有のちくわぶと関西以西特有の牛スジの両方を加えるよう英断を下した人物に対して、
一遊客がほめそやしていたと伝えておいてくれたならばなお嬉しい限りだ。
 おでんという品目を選んだのもスジがいい。下味さえしっかりしていればこれほど失敗しづらい料理も他には
ないしタネの補充もしやすい。その上時間が立てばたつほどおでんはその風味を増し、結果、仄聞し訪れた客は
その評価以上の味を楽しむ事が可能となる。
 これら全てが計算尽くの行為だとしたのなら、僕はそのエンターテイナーに対しこのおでんの対価を払う事で
賞賛としようではないか」
「だとよ、朝倉。ちなみにその対価の出所は俺の財布だがな」
 わたしが寸評を語る間にキョンは向かいの席につき財布を振りつつため息をこぼす。キョンの言葉と手にして
いた盛り合わせチケットに反応して先ほどわたしに応対したセミロングの少女がキョンの分のおでんと水を持って
やってくる。

「ありがとう、そう言って褒めてもらえると企画者としてすごく嬉しいわ。もちろんクラスの一人としてもね」
 もぎりとしてチケットを受け取りつつ、少女は本当に楽しそうな表情を浮かべて微笑んできた。そんなキョン
たち二人の後ろ、俯きながらもこちらの様子をちらちらと伺っていた前の席の少女は少々挙動不審な感じで立ち
上がると脇に置いてたパンフレットと本を持ちやや急ぎ気味に教室を出て行ってしまった。
 おそらく彼女の親友なのだろう、朝倉と呼ばれたエプロンの少女はそんな退席する少女を見つめつつふぅと軽く
ため息を溢していた。わたしはそんな少女を見つめつつ心中で軽くお詫びしながら、
「くっくっ。なに、遅刻罰金なんてよくある話さ」
いつもの笑みをこぼしつつ味の染み入った大根を切り分けて自分の口へと運び味わった。

143消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:22:30 ID:WEB7qEzo
- * -
 キョンと暫く展示巡りを行い軽くなった財布の分だけ心と空腹を充たしたわたしは、やはり同じように遊びに
やってきた彼の妹さんへ彼の身柄を引き渡すと一人で当て所もなくぶらつく事にした。その一環で少し古めの
校舎へと足を運んだのもただの偶然でしかなければ、
「あら、さっきの」
と先ほどキョンのクラス展示でおでんを運んでくれたセミロングの少女と再会したのもまたただの偶然だった。
 文科系の部活動の拠点となっているらしく、普段は物静かであるだろうその校舎も今日は賑わいを見せていた。
料理研究会からはスウィーツ特有の甘い芳香が活動内容を宣伝流布し、階上からは単調な電子音がリズム良く
流れてくる。
「文芸部で友達が展示しててね。陣中見舞いってほど忙しくはないだろうけど、様子を見に行ってあげようと思って」
 特に目的も無かったわたしは彼女と共に他愛の無い会話をしつつ他と比べ人ごみ少ない階段を上がる。踊り場で
反転し更なる階上を目指そうとしたその時、突如としてあの時の負の感覚が満身貫かん勢いで襲い掛かってきた。
 思わず眼を見張るとはこの事か、わたしは階上へと顔を向け、そして見た。

「────────」

 あろう事か人の姿をして階上に立つ、その不透明な異質存在を。

 つい先日から冬服へと衣替えを行った為、ここ最近はわたし自身も普段身に纏っている慣れ親しんだ黒を基調と
するブレザーの制服を装い、ボリュームがあると言う表現すら生ぬるい程その全身の質量配分を烏の濡羽色と
謳える程の髪へ配分したようなその少女は、まるで蒸留水のような希薄さと和紙に墨を落としたかのような圧倒的な
存在感という相反する主張をあっさりと混ぜ合わせたような深い迫力を持っていた。
 先日の無粋人から感じたのは間違いなく彼女の力だと、理性や本能より先にわたしという存在の全てが認めてくる。
 空虚にして無限。例えるなら今のわたしがしているように上空を見上げると常にそこにあるモノ。
 暗夜に人が見上げる暗黒にして静寂たる天蓋領域──まさに宇宙と表現するのが一番相応しき存在。それが彼女だった。
 あと半歩でも近づけば即座にわたしの全てが飲み込まれて消失してしまうまさにデッドエンドな事態。そんな
ギリギリのラインに立たされわたしは声を発する事はおろか、無意識呼吸すら止めてしまいそうな状態に陥る。

「……彼女、あなたの知り合い?」
 共に歩いていた彼女もまたわたしに並び足を止める。あんな存在とは問答無用に初対面だが、だが初対面と
言い切れない部分もあり彼女への回答に詰まっていると、
「ごめんなさい、聞いちゃいけない関係だったみたいね。それじゃわたしはこれで」
そう挨拶を残し躊躇無く階段へと一歩踏み出した。そんな彼女の行動に五感の全てがシグナルを鳴らしてくる。
わたしはとっさに彼女の腕を取って引きとめようとしたが、その前に。

「────まだ……早い」

 驚くべき事に階上の存在がわたしたちに理解可能な言葉を発したかと思った次の瞬間には、わたしたち二人の
身体は同極磁石が弾かれる以上の勢いで吹き飛ばされ、踊り場の壁に叩きつけられていた。
 全身の骨が突然の衝撃に悲鳴をあげる。よろめきつつも地面に降り立つとその隣で一緒に歩いていた彼女が
糸が切れた操り人形の様にその場に頽れた。衝撃で意識を失ったのだろうか、倒れたまま全く反応が無い。
 異形の存在に警戒していたわたしと違い、彼女にしてみればまさに不意打ちだったはずだ。彼女の安否も気に
なるが、わたしはそのまま痛みを訴える全身で何とか立ったままその存在とコンタクトを取ってみる事にした。
144消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:23:20 ID:WEB7qEzo
「早い、とはどういう事?」
「────────今はまだ……何も──無い」
 何も無い? 今はまだ?
 彼女が何を指して何も無いと言っているのか全く解らないが、とりあえずこの存在と遭遇したのがわたしと
彼女だけで助かった。
 巻き込まれた彼女には悪いが、もしキョンといた時にこの存在と出会ってしまっていたらと思うとぞっとする。
この存在はあまりにも異質だ。世界どころが次元が違いすぎる。この静寂たる無の存在と解り合おうとする努力と
同等の労力を費やすだけで、おそらくこの惑星上から人類同士の騒乱なんてものは簡単に無くなる事だろう。
 だがこちらがそう考えコミュニケートを放棄しようとしても向こうが接してくるのでは仕方が無い。
 相手がどう答えるかなど考えるだけ無駄だと、わたしは率直な疑問をぶつけてみた。
「……要求は何だい。キミたちは僕に何を望む」
「相変わらず良い反応だ」
 正直、反応など全く期待してなかっただけにこの回答は驚いた。ただし言葉を発したのは目の前の天蓋領域
ではなく、その存在の横から姿を現した先日の無粋人だったが。

「僕達が何者か、とか言うありきたりで実を結ばない無駄なやり取りがない。あんたのそういう部分に関して
だけは僕は《鍵》なんかよりもよっぽど有能だと認めている」
 男は嗜虐的に口をゆがめて不快感しか相手に与えないだろう笑みを浮かべる。
 そのまま隣に立つ異質な存在へサムズアップ状態の親指を向けるとこの状況にも配役にも全く興味が無いと
言わんばかりに言葉を投げ捨てた。
「コレが言った通りだ。あんたはこれ以上ここに近づくな、僕たちの要求はそれだけだ」
「従おう。僕は彼女を連れて退散する、それで構わないね」
「好きにすればいい。そいつにはしてもらわなくてはならない既定事項があるが、それまではどうしようと構わない。
このまま放っておくもあんたの親友に連絡して返すも、あんたの自由にすればいい」
 わざわざ親友などという単語を出して告げてくる、アキレス腱を狙った返しに思わず自分を見失いそうになる。
一瞬の身体の硬直や直後に男を睨み返したわたしの様子でバレバレだろうが、それでもわたしは努めて平静を
装っているかのように振舞いをみせた。
「ならば好きにさせてもらおう」
 男を無視し倒れたままの少女へと近づく。素人判断だが呼吸を始め外見に異常はなく出血とかも見当たらない。
どうやら彼女はただ意識を失っているだけのようだ。そうした診断をしている間も階上からはあの男の癇に障る
言葉が降り注いでくる。
「好きにするがいい。あんたが駆け上る坂道で僕と再会するその《時》まで……それが既定事項だ」
 冷酷さを加味した嘲笑を男がする中、ふと突然に全身に浸透する単語をわたしは捕らえた。

「────────クル──エル カミ……」

 反射的にわたしは階上へと振り向くが、そこにはもう既に二人の姿は存在していなかった。二人が去ったからか
人の流れが戻ったようで、
「散る散ると書いて散々かぁ、くそっ、どうして俺の良さがこうも相手に伝わらないんだ……?」
と髪を掻き揚げつつ今日の成果を思い返して愚痴る、お調子者と称するのが一番正しい評価ではと思われる男子
生徒が歩いているだけだ。
「あぁ手に取るように解る、国木田やキョンが俺の成果を聞いて指を指して笑う姿が……チクショウッ!」
 意外な所で聞きなれた人物の名が出たこともある。階上を歩くその男子生徒を呼び止めてみると、最初は気だる
そうに、だが呼び止めたわたしが女生徒だと解ったら楽天的に、そしてわたしが介抱している女生徒が自分の知る
人物だと解ると一転して真剣な眼差しをみせて階段を駆け下りてきた。
145消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:24:15 ID:WEB7qEzo
 倒れている女生徒を再確認してからわたしと二人がかりで男子生徒に負ぶわせる。
「俺が朝倉、あ、こいつの事な。とにかくこいつを保健室まで運んでおくから、あんたは1年五組まで行って誰か
呼んできてくれないか? 委員長が倒れたから誰か来てくれって」
 了解の意を示し少女をその男に託すとわたしは人ごみを回避しながら駆け抜けキョンたちの教室まで引き返す。
 生憎と国木田やキョンの姿が教室に見受けられなかったので、適当に近くにいた女生徒へ声をかけて委員長の
朝倉さんが倒れた事を告げた。
「朝倉さんが!? ちょっと待って、すぐに向かうから!」
 他のクラスメートへ話を流し、さっきの女生徒が奥からカバンを持って戻ってくる。
「準備できたわ。行きましょう、それじゃ保健室へ!」
 さあ案内してと言わんばかりにわたしの手を取り足踏みをする。わたしも勢いに乗せられ足を出そうとするが、
ふと重要なことに気づいて繋いだ手に力が入りっぱなしの、まるで今すぐ散歩に飛び出しそうな犬のように気持ちが
急いている女生徒へと振り向いた。

「ごめんなさい、見ての通り他校の生徒だから北高は詳しくなくて。あなたが案内してもらえると助かるのですが」
「え……? あ、ご、ごめんなさい! こっちなのね、保健室は」
 言われてようやく気づいたのか、女生徒はまるでリードにつながれた犬が全速力で飼い主を引っ張りつつ散歩
するかのようにわたしの手を引っ張りながら保健室まで案内してくれた。冷静に考えればわたしは単に連絡役を
仰せつかった部外者なのだから、わたしを保健室へ案内する必要は全く無いのだが、彼女はそこまで頭が回らな
かったようだ。

「おう阪中、こっちだこっち」
 保健室の一角でパイプ足の丸椅子に座っていた先ほどの男子生徒がわたしたちを見つけると呼び寄せる。
「谷口くんだったのね、運んだのは。それでどうなの、朝倉さんの様子は」
「気を失ってるだけで問題は無さそうだとさ。保険の先生は病院に連れて行くかどうか話し合いに行ってる」
 わたしも場の流れのままにベッドの傍へとより様子を伺う。打ち所が悪かったのか単に時間の問題なのか、
彼女は相変わらず意識が戻っていないまま、ベッドに寝かされブランケットがかけられた状態で眠っていた。
「わたしが見ておく、朝倉さんのこと。谷口くんはクラスの方をお願い」
「そうか、じゃ悪いが任せたぜ。クラスの連中にはとりあえず落ち着いてるって話しとくからよ」
 男子生徒は立ち上がると軽く手を振り保健室を後にした。女生徒はそれを見送ると椅子を近づけ眠り続ける
彼女の様子を心配そうに伺う。わたしは少し離れた場所に位置取りして彼女が起きてくれるのを待つ事にした。

「……ん、っ」
 静かに眠り続けていた彼女が軽く眉を寄せて息を漏らしたのに気づき、付き添いの女生徒に近づいて共にベッドを
覗き込む。彼女はゆっくりと一度身体を右に向けて転がし、再度元に戻すとまた少し息を漏らしてからゆっくりと
両の瞳を開いた。
「……あれ。ここは……?」
「気づいたのね、よかった」
 級友の覚醒に心から喜ぶ女生徒を寝ながら見つめつつも、覚醒したばかりの彼女には何がどうなっているのか
まだ解っていないようだ。
「保険の先生に連絡した方がいいのでは。ここはわたしが見てますから」
「あ、そうよね。うん、行ってくる」
 わたしからの提案に女生徒は納得すると慌てて立ち上がり「お願いするね」と残して保健室を出て行った。
146消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:25:00 ID:WEB7qEzo
 わたしは女生徒が先ほどまで座っていた椅子に着席すると横たわる彼女に語りかける。
「ごめんなさい。意識が飛ぶ前の事、覚えてるかしら」
「……えっと、文芸部へ向かおうとあなたと歩いてて、それから……」
「上にいた人たちに気を取られて足を滑らせたの。わたしかあなたのどちらかは解らないけど。それで二人で
踊り場に落ちたって訳」
 適当に真実と虚実を混ぜて話す。彼女は完全に巻き込まれただけのただの被害者でしかなく、ならばあの存在の
事など知らない方がいい。あの男が言っていた「してもらうべき既定事項」というのも気にはなるが、今は切り出す
べきではない。わたしはそう結論付けた。
「そっか。それじゃわたしも謝らないと、ごめんなさい」
 話しつつ彼女が保健室の扉へと視線を向ける。何かと思いわたしも視線を向けると、どうも扉の外に誰かが立って
いる様子だった。足音を消しつつ近づいて扉を開けると、外にいたその人物は小さく「ひっ」と声を漏らして全身で
驚きを見せた。

「……えっと、朝倉さんが」
 外に立っていた人物──先ほどわたしの前でおでんを食べていた短髪の少女が悲鳴と同じく小さな声で呟いてくる。
 わたしはあぁと頷くと身体をどかして彼女を中へ通しつつベッドの方へ声を投げた。
「あなたにお見舞いみたい。後の事は彼女に任せてもいいのかしら?」
「長門さん、来てくれたの? ええ、後は彼女にお願いするわ。介抱してくれて本当にありがとう」
 先ほどまでとは打って変わって和やかな雰囲気をみせる。
 わたしは椅子に降ろしていた手提げを持つと「後は頼みます」と見舞いに来た少女へ会釈して保健室を後にした。

 先日、そして今日とあまりに常識以上の事がありすぎた。わたしは盛大なため息をつくと昇降口を出たあたりで
振り向き夕陽に染まった校舎を見つめる。
「声が聞きたい……な」
 ポケットに入れた携帯に手をかける。だがそろそろ北高祭も終了時刻、彼はクラスの後片付けなどで忙しい事だろう。
 仕方ない、彼が帰宅した頃を見計らい家から電話するまで我慢しようと考え、わたしは一人北高を後にした。

147消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:25:49 ID:WEB7qEzo
- * -
 ある行為の途中で雨が降り出した場合、その日を表すのに「ワンデイ イン ザ レイン」という表現は果たして
適切な語句だろうか。
 寒さが増す師走に入り、キョンと偶然鉢合い下校していたある日の事。彼が猫を拾い哲学的な名前をつけたと
いう話に花を咲かせていたわたしたちは、突然降り出した雨に会話を中断して適当なビルの軒下へと避難する事と
なった。

「悪かったね。キミ一人なら自転車に乗って帰ってたから雨にあたる事も無かっただろうに」
「なに、自転車で通っていればこんな日もあるさ」
「だが今日は僕に付き合ったが故の惨事だ。だからキミは気にせずにこれを使うといい」
 濡れた髪を水分飽和しかけているハンカチで拭きながら苦笑をみせる彼に汗拭き用の小タオルを差し出す。
「お前が使えよ」
「もちろんそのつもりさ。但しキミの後でね。それともキミは僕の使用済みタオルを所望するのかい?」

 特有の笑いを浮かべながら、身長差を利用して少しだけ状態を倒し上目がちに見つめながらタオルを差し出す。
 彼はわたしの顔から全身へ視線を落ち着かせず走らせ、すぐにそっぽ向いて表情を隠すとタオルを受け取り
自分の髪を拭き始めた。雨露で濡れ鼠となった全身のうち、頭と顔をとりあえずさっぱりさせるとすぐにタオルを
返してくる。どうせまた濡れるからと制服とかは諦めたようだ。
 わたしはタオルを受け取ると彼に習い髪から顔にたれる雫をぬぐいつつ、軽く仕掛けていた罠を公表してみた。

「まあ今日の体育の時間の後で一度使っているから、これは最初から僕の使用済みタオルな訳なんだけどね」
「……そうくるか」
 何とも表現しがたい引きつった笑いと諦めを足した様な表情を浮かべながらキョンは眉間に手をやり口癖を呟く。
 そんないつも通りの彼を見ているだけで心底からほっとしてしまう自分がいた。
「そうくるのさ。……それにしてもキミは本当に僕にとって大事な人間だよ。ちょっとした会話だけでこんなに
僕の心が癒されるんだからね」
「何だそりゃ。全く、癒されたければ女性らしくアロマテラピーやヒーリングでもしてろよ」
「佐々木には可愛らしい乙女チックな雰囲気が似合うな、そうキミが僕を見て断言してくれるのなら実行しよう」
「すまん、無理」
「助かるよ、僕自身も似合わないと思っているからね」

 あの日以来、わたしの胸中にはえもいわれぬ不安が常に渦巻いている。こうして彼と出会ったり話したりして
いるとその憂慮なモノは徐々に消えていくのだが、彼と別れたり話し終えたりするとその負の感情は再びわたしの
心中で復活してくる。しかも消失前よりも大きくなって。
 キョンの事を求めているのかとも考えた。確かにそんな気持ちがある事は否定しないが、この懸念はそんな
簡単な事ではない。
「という訳でキョン。僕とこうして肩を並べて歩いてしまった運命だと割り切って諦めてくれ」

 わたしは何かを恐れている。
 姿の見えない、言葉すら思いつかない、その何かを。

148消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:26:58 ID:WEB7qEzo
- * -
 冬はいよいよ本番を向かえ、雪が降る日も珍しくなくなってきた。街にはクリスマスへの準備と風邪が流行しだし、
またクリスマスイブに先んじて数日後に訪れる冬至のためにと南瓜と柚子が店頭にちらほら並びだす。

「クリスマスはどうするんだい?」
「普通にパーティ、とはいかないでしょうね。やはり」
 古泉一樹と偶然登校時間が重なったわたしは彼と共に登校しつつ尋ねる。どうも彼はわたしに対して苦笑と
悩み多き心中を見せるのが習慣になりつつあるようで、やはり今日も困った笑みを浮かべて腕を組みながら
次のイベントに頭を悩ませていた。
「だろうね。涼宮さんが喜ぶような不思議パーティなら僕も一度くらい体験してみたいと思うよ」
 同じ不思議でもあの闇の存在たちは遠慮したいが、そう心中でのみ言葉を付けたし彼に返す。もちろん超能力者
でも心理学者でもない彼はわたしの言葉を理解できる訳もなく、どうすれば涼宮さんが喜ぶか、それだけが全ての
パーティ企画をあれこれと思案していた。

「……正直に言いまして、最近の涼宮さんからは僕に対して飽きている感じが伝わってくるんですよ」
「夏にも言ったけど、よくもまあ九ヶ月も恋人関係がもったものだと僕は素直に感心しているんだけどね」
 彼に倣い僕も正直に返す。残念だけど彼は涼宮さんを満足させられるだけの器を持った人間ではない。彼女が
未だに憂鬱の表情を浮かべ続けているのが何よりの証拠だ。
「返す言葉もありません。ですがそれをただ認めて彼女の事を諦めるほど僕は諦めのよい人間ではないんです」
 解っているさ。面白い事を彼女に提供しようというそのキミの粘り強さ、それこそが涼宮さんが今でもキミと
関係を続けている唯一つの理由なのだから。

 もしかしたら彼は涼宮さんを喜ばせられる存在に化けるかもしれない。
 今はまだ力量不足が否めないが、あと少し、彼と涼宮さんを変える何かきっかけが起これば、彼は本当に
涼宮さんのパートナーになれるかもしれない。最近ではそう思うようになってきた。さっき彼に対して器で無い
と言ったが、涼宮さんが本当に彼の事をどうでもいい存在だと思っていたのならば、わたしが予想したとおり
夏前には彼女自身によってその関係をぶっつりと切られていたはずだ。

「僕の考えを言うならば」
 彼にしては珍しく表情から笑みを消し、真剣な眼差しを中空に向けつつ心情を吐露しだす。
「涼宮さんは僕の思考を読みきってしまっていると思うのです。だから僕が何を仕掛けようとそれは涼宮さんに
とって予測範囲内であり、ただの予定調和でしかない。例えるならば将棋やオセロと同じです。格下の相手に
二人零和有限確定完全情報ゲームを延々と続けたところですぐに飽きが来てしまう事は誰にだって解ります」
「今のキミ達に必要なのは場をかき混ぜるべくトリックスターだと言う事かい?」
「ええ、その通りです。前から考えてました。彼女が真に驚くようなサプライズを求めるのなら、僕以外の要因が
必要なのではないかと」
 なるほど、夏に僕を誘った本当の理由はそれだったのか。第三者の介入で場をかき混ぜ予測不能にする為の
ランダムノイズ、彼はその大役をわたしに求めたようだ。だが悲しいかな、わたしが発生させられるぶれ値もまた
微小でしかなく、結果的に涼宮さんの枠を突破する事はかなわなかったという訳だ。
 彼の考えは間違っていないのだが、如何せん選ぶ人間を間違えている。わたしもまた彼に近い、どちらかと
いうと策士よりの思考を持つ人間である。彼が求める予測不可能状態を発生させようとするのなら、似たような
人物でなく全く逆のタイプを放り込むべきなのだ。
 計算ではない天然で動く人間や彼女以上に場を楽しもうと思う人間を。
 全員が主役では面白くない。名脇役がいてこそ主役は映えるのだ。

「実に難しい課題です。涼宮さんと付き合える人物と言うだけでもかなり絞られてしまいますからね」
「ああ、実に難しい課題だよ。でもその苦労こそが彼女と共にいる為の代償なのだからね、現状維持を求めるなら
キミは頑張るしかないのさ」
「肝に銘じておきます」
 気持ちを引き締めここでようやく普段の快い笑みを浮かべる。彼がいつ涼宮さんとの関係に膝を折ってしまうか
などそれこそ予測不可能な話だが、それでもクリスマスぐらいまで続きそうだなと考えわたしはこの奇妙な友好
関係にある彼に対し、口には出さずにエールを送った。

149消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:27:52 ID:WEB7qEzo
- * -
 マカオ返還何周年と言った一高校生が都市生活を行うのにてんで関わらない当たり障りのないニュースを流す
TVをBGMに朝食を取る。ニュースと共に流れる天気を聞き外を見ると灰色に染まった曇り空が広がっていた。
 今日の寒さも相成って、もし降るとすれば雨ではなく氷雨か、あるいは初雪となる事だろう。肌に刺さる寒さを
感じつつわたしはいつも通りに家を出た。
 学生の本分として自分が居るべき場所へと到着すると椅子に座って後ろを振り返る。憂鬱姫はどこかへ出かけて
いるらしく、机の脇にかかったカバンだけが持ち主の所在が現在学校にあるという事を告げていた。

「おはよう佐々木さん、今日は一段と寒いね」
 橘さんが気温に対してやや過度に防寒対策していた手袋とマフラーを外しつつ挨拶してくる。寒さが苦手なのか、
それとも彼女なりな一足早めの冬物お披露目会なのか。外すだけなら自分の席で外せばいいのをわざわざこちらに
歩きながら行うと言う事は、少なくともそれらについてわたしからの意見が欲しいというサインなのだろう。
「おはよう橘さん。どうしたの、その可愛らしい防寒グッズ。昼からの寒さを予測して? それとも冬のファッション?」
「ふふ、どっちもです。こういうカラフルな毛糸モノって好きなんですよ。あぁ、早くお昼にならないかなぁ」
 昨日から短縮授業となっているので昼がくれば授業は終了、部活に入ってない橘さんは午後は丸々自由時間と
なり、彼女のお気に入りの毛糸の手袋とマフラーをつけて遊びに出られるという事になる。
「今日はどこかへ出かけるのかい?」
「ええ、クリスマスに向けて色々買い物しようかなって。佐々木さんも行きません?」
 せっかくの誘いだが、残念な事に今日は冬季講座の塾探しをしないとならない。
「えー、本当に残念ですよー。他の日にとかならないんですか?」
「説明会が今日までとかで無理なの。でも、逆に明日とかだったら予定空いてるから一緒に出かけられるわよ」
「本当ですか!? 絶対ですよ!」

 まるでクリスマスプレゼントを期待する子供のように目を輝かせつつ何度も釘を刺される。苦笑しつつ確約の
返事をしながら、わたしは今の彼女のように眼を輝かせて大はしゃぎしていたキョンの妹さんの事を思い出していた。
 去年は受験だなんだと慌しい冬休みだったが、そんな中キョンに呼ばれたクリスマスパーティで、わたしは
キョンと共に資金を出し合い妹さんへ抱き心地のよいぬいぐるみをプレゼントしてあげた。あの時の妹さんの
はしゃぎようと、そんな妹さんの姿に照れ笑いを浮かべるキョンを見て、わたしは生まれて初めてパーティとは
こんなに楽しいものだったのかと実感したのだった。

 そういえば今年はどうするつもりなのだろうか。明日橘さんと出かける時にいくつか候補を探しておくことに
しよう。ついでにキョンへのプレゼントも用意しておいたら面白い事になるかもしれない。きっとこれはどういう
事かと眼を丸くした後に自分は用意してなかったとちょっと後悔しつつさてどうしたものかと困り果てるだろう。
そんな姿を想像するだけでくつくつと笑みが浮かんでくる。
「佐々木さん、まだ笑うのは早いですよ。それじゃ明日絶対ですからね」
 わたしの笑いを誤解しつつ橘さんは上機嫌に自分の席へと戻っていた。それと入れ替わるかのように光陽園学院
きってのクイーンが恒例となった不機嫌丸出しの表情を浮かべて登場した。わたしの後ろにつき頬杖と共にため息
一つ。わたしが顔を向けると涼宮さんは一度目線を合わせた後にすぐ外を向いてしまう。
 どうやら今日は話したくない気分のようだ。わたしはその意思を汲み取ると身体を戻し期末テストの返却と答え
合わせがメインとなる授業の準備をする事にした。

150消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:28:49 ID:WEB7qEzo
 今日の授業も終了し、わたしは教室まで出迎えにきた古泉一樹を連れさっさと帰る涼宮さんと、例のお気に入りの
毛糸装備を纏い大きく手を振る橘さんを送りだしつつ、慣れ親しんだ当番と共に教室の掃除を開始した。机の位置を
元に戻し用具を片付けると、わたしはカバンを持ちクラスメートに挨拶して教室を出る。
 と、すれ違いざま耳にした言葉に気になるものがあった。

 どうも涼宮さんが校門前で何かしでかしたらしい。
 下校の際に校門前で起こった事なら古泉一樹が共にいたはずだ。それなのに涼宮さんは一体何をしたのだろうか。
更に所々で流れる会話を捉えるに、どうにも涼宮さんは他校の生徒に呼び止められ、その相手に対し容赦なくロー
キックとクリンチをお見舞いし、古泉一樹と共にその彼を何処かへと連れて行ってしまったと言う。
 何処まで尾鰭が付いた話なのかは解らないが、彼が一緒だったと言うのを信じるのならばとりあえず大事には
ならないだろう。何処かが解らない以上わたしにできる事はないし、知っていたとしても他人のゴシップを必要
以上にかぎ回るような趣味は持ち合わせていない。それにどうしても知りたかったら当人から聞けばいいのだ。
 自分にそう言い聞かせつつ歩いていると校門前にたどり着く。
 ここで涼宮さんは何をしたのか。騒動を起こしたという事にえも言われぬ胸騒ぎが尾を引くが、わたしは顔を
軽くはたいて眼を覚まさせると脳内を蠢く思慮を振り切った。

 明日、聞けばいい。
 そう考えて帰路につこうとした時、ふと校門の脇に立つ光陽園学院でない制服を纏った少女と眼があった。
いや正確に言うなら眼を合わせられた。
 少女はセミロングの髪と北高制服のスカートをなびかせて近づいてくると、手にしていた白い紙袋を静かに開き、
この時期コンビニなどでよく見かける湯気が上がる白い中華まんを差し出すと静かな笑みを浮かべて尋ねてきた。

「こんにちは。お時間ちょっとだけいいかな」
 確かキョンのクラスの委員長で、名は朝倉だったか。わたしは名前を思い出しながら中華まんを受け取り肯定の
意をみせた。

151消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:30:40 ID:WEB7qEzo
- * -
 彼女は改めて朝倉涼子と自分の名を告げ、わたしを尋ねてきた理由を語りだした。
「クラスメートの一人が様子が突然おかしくなってね。もしかしたら、あなたならその理由を知ってるかなって
思ったの」
 道すがら二人で中華まんを戴きつつ彼女の話に耳を傾ける。何故わたしがそんな彼女のクラスメートの奇行に
ついて理由を知ってなくてはならないのかと考えたが、彼女のクラスといえばキョンのクラスでもあり、彼女が
北高祭の一件でわたしがキョンと知り合いだと言う事を覚えていたとするなら一つだけ可能性が生まれてくる。
「まさか……そのおかしくなったクラスメートって、キョンなんですか?」
「ええ。それで国木田くんから聞いてた事を思い出したの。あなたが彼の恋人だってね」
「それは誤解です。確かにわたしは当時他のどの女子より彼に近かったかもしれないし、今でもそうなのかも
しれない。でもそれだけです」

 わたしがキョンの恋人にあげられるなど、なんだか背中がむず痒くなってくる。彼とはそういう関係ではない、
少なくともキョンがわたしを気の会う友人だと思っている限りはありえない。国木田たちが勘違いしているだけの
中学時代の他愛ない話ですよと返すと
「あらそうなの? ……だったら彼にもう一回釘を刺しておかなくちゃダメかな」
あごに手を置き伸ばした人差し指を添えながら彼女は何かを呟いた。一体何の話かと問い返してみるが、こっちの
話だからとあっさり質問を流されてしまう。そして気持ちの切り替えか、彼女は小さく頷くとわたしに会いに来た
本題を話し始めた。

「とりあえず彼の事なんだけど……」
 そんな枕詞から語られた内容はわたしを喫驚させるに充分たる内容だった。一昨日の昼に出会うなり何故自分が
クラスにいるのかと殺意をこめて眼光鋭く睨みつけられながら詰問され、それ以降も彼女を見ると「俺を殺す気は
無いのか」と言う感じの内容を聞いてくるという。
 更に一昨日以前は興味が無かったであろう部活とそこの女性部長に突然興味を示し、挙句の果てにはその部長の
家まで訪問し自分の活動はどうしたらよいかと話を聞いたと言う。
「そして今日は突然の授業ボイコット。休み時間に友人と話をしていたら突然叫びだしそのまま学校を飛び出して
行ったって聞いたわ。
 何ていうかあまりにも突飛過ぎる行動なのよ。まるで一昨日を境に別人になったみたい。最初は最近流行の
風邪による意識混濁かなって思ってたけど、それにしてもおかしすぎると思わない?」
 全く以て信じられない内容だった。どれ一つとってもわたしの知るキョンが取った行動とは思えない。彼女の
言葉を流用するならまさに別人の様ではないか。

 キョン、キミは一体何をしているんだ。何がキミをそんな奇行に駆り立てている。
 わたしの思惟は混迷を極め出口なき迷路を放浪する。いや、窓も扉も無い閉鎖空間に囚われた気分だ。無明の
闇で閉ざされた不可視の領域を先を照らす光明も道を示す指針も無くただ彷徨する思考。エラーを起こし機能停止
してしまったアンドロイドのように立ち尽くすわたしを見て何か告げようと脳を回転させて思い出したのかは
解らないが、朝倉涼子はそんなわたしに更なる情報を提示してきた。

「あ、そういえばもう一つ彼の奇行があったわ。確か自分のクラスにはわたしじゃなく涼宮ハルヒって人がいる
はずだって言って探してた。あなた知ってる? どうも光陽園学院の生徒らしいんだけど」
152消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:31:39 ID:WEB7qEzo
 涼宮……ハルヒ、ですって?
 突然の言葉に頭の中が真っ白になり、世界が激しくゆがんだ。
 何故そこで涼宮さんの名前が現れるのか。何故キョンが涼宮さんの事を探さなくてはならないのか。
 スカートのポケットから手探りで携帯電話を取り出したのは殆ど無意識的な行動だった。既にわたしの脳は路傍の
石よりも働いておらず、数多のシナプスは想定外の処理にオーバーヒートを警告していた。携帯電話のアドレス帳
からキョンの番号を検索し電話をかける。
 とにかく一秒でも早くキョンに話を聞きたい。私の全身はただそれだけの為に行動していた。
 だがそんな焦燥するわたしを嘲笑うかの如く、電話は相手先をコールする事すらせずにディスプレイにただ一言
『圏外です』と表示し、携帯電話の電波が彼の元どころか何処へも届かない事を告げてくるのみだった。
 どうする、彼の家へ直接押し掛けるか。いやキョンは授業をボイコットして何処かへ行ったって話だ。
 そもそもキョンは一体何処へ? キョンは何をしに向かった? 散らばったまま組みあがる気配の無いジグソー
パズルは、だが唐突な閃きで一気に構成される。
 さっき校門前で流れていた、明日聞いてみようと思っていた内容。

『どうにも涼宮さんは他校の生徒に呼び止められ、その相手に対し容赦なくローキックとクリンチをお見舞いし、
古泉一樹と共にその彼を何処かへと連れて行ってしまったと言う』

「……まさか。ソレがキミなのか、キョン」
 まるで正解だと言わんばかりに、圏外を示していたはずの携帯電話が着信を知らせるメロディを奏でだす。
 この着信音は橘さんかと認識し、ディスプレイで彼女の名前とアンテナ状態は最良であると示す電波状況の印に
戸惑ったまま電話を取った。
『佐々木さん、スクープです! 大事件なのです!』
「どうしたの橘さん。そんな大事件だなんて、今のわたしにはキョ……」
 呪詛を吐くかのように淡々と紡ぎ出す言葉を完全に無視しながら、電話の向こうで興奮しているのかいつもより
高い声が告げてきた。
『あたし、見ちゃったんです! 涼宮さんとキョンさんが一緒にいるの!』

「……え?」
 あまりに突飛無い内容に再度わたしはフリーズする。橘さんの言葉が脳に浸透しようやく理解すると、わたしは
慌てて聞き返した。
「涼宮さんと……キョンだって!? 橘さん、それはいつの話!?」
『今、たった今です! たった今喫茶店から出てくるのを見たんです。最初涼宮さんが飛び出してきてタクシーを拾って、
その後に古泉さんと彼が出てきて、そのまま三人でタクシーに乗り込むと何処かへ行っちゃったんです。彼ったら
涼宮さんたちとも知り合いだったんですか? でもそれにしては何か様子が……』
「橘さん、その喫茶店の場所は!」
 返って来た喫茶店名と場所には覚えがあった。学院から近い場所にある為に生徒達によく利用される場所で、前に
何度か橘さんやキョンと行った事もあり、帰路についていたわたし達が今立っている場所からでもそう遠くはない。
「橘さん、今からすぐに向かうからそこにいて!」
『あ、はい。わかり──』

 ぱん。
 拍手のような軽い音が耳に届くと共に電話が切れる。何事かと携帯を見るとディスプレイには何も写っておらず、
通話どころか電源自体が切れてしまっていた。電源ボタンを押して起動させようとするも携帯は全く動作せずただ
沈黙を続けてくる。
 さっきの電波状況といい携帯電話が壊れていたのだろうか、だがそれにしてもこのタイミングで壊れなくても。
やり場の無い怒りを携帯にぶつけつつポケットにしまうと同時に一台の車がすぐそばに止まる。そして後部座席
ドアを開けると運転手が振り向きながら聞いてきた。
「何処までだい?」
 その黒塗りの車は屋根に空車を表すライトを光らせ、そしてボディには白で所属会社名がかかれており、何処から
どう見てもこの車が一般乗用旅客運送を営む自動車事業、つまりタクシーである事を示していた。
153消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:32:28 ID:WEB7qEzo
 わたしは朝倉涼子に振り向き尋ねるが彼女は首を振る。何故止まったのかは解らないがとりあえず急いでいる
身としては丁度良い。財布の中身を思い出しつつわたしはタクシーへと乗り込むと先ほど橘さんが告げてきた
喫茶店を指定した。
「待って、わたしも乗る。彼の所へ向かうのよね」
 わたしを奥へ詰め込ませ、朝倉涼子も乗り合わせてくる。しかし運転手は朝倉涼子を乗せ終えた後も扉を開けた
ままで一向に発進しようとしなかった。二人で疑問に思いつつも彼女は自分で扉を閉め、わたしは運転手に出して
もらうよう急かすと煮え切らない返事と共に運転手はタクシーを発進させた。

「どうしたの、運転手さん」
 ぐったりと頭をたれて下を向くわたしをよそに、流石に運転手の奇妙な行動が気になったのか朝倉涼子が
尋ねると、運転手は後部ドアがちゃんと閉まっているか手元で確認しつつ逆に聞き返してきた。
「いやね、もう一人さんは良かったのかいって思ってね?」
「もう一人?」
「ああ、車を止めた女の子だよ。一緒にいただろ、ボリュームのある黒髪をした光陽園の生徒と。すぐに居なく
なったみたいだけど」
 その言葉にわたしは跳ねるように首を起こすと後ろを振り向き、車に乗り込んだ場所を確認する。

「──────、──」

 そこに立っていたあの形容しがたき黒の存在は、その姿を小さくしながらも相変わらず異質な雰囲気のまま
小さく何かを呟いていた。

154消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:33:14 ID:WEB7qEzo
- * -
「橘さん乗ってっ!」
 タクシーで喫茶店の前に到着し、そこで携帯を握り締めながらつま先で地面を叩きつつ待っている橘さんに
呼びかけた。同時に朝倉涼子が車から降りるとドアのそばに立ち彼女が乗り込むのを待つ。
「え? あ、はいっ!」
 橘さんが走って近づき、そのまま後部座席へと乗り込んでくる。最後にもう一度朝倉涼子が乗り込んだのを
確認しつつ、わたしは橘さんに何よりも聞かねばならない事を問い質した。
「それでキョンたちはどっちへ向かった!?」
「え、えっと、あっちです。で、そこの角を曲がっていきました」
「そう。だったら可能性があるのはやっぱりあそこね」
「ええ」
 ここに来るまでに二人で話し合い考えていた事だ。一昨日からキョンが行ったおかしな行動、それは大きく
分けると二つにまとめられる。
 一つは涼宮さんを探すという行為。そしてもう一つは突然文芸部に興味を持ち出したという事だ。
「運転手さん、このまま北高へ向かってください」
 おそらくキョンはあそこにいるはずだ。わたしが北高祭の時に上る事ができなかった、あの階段の先に。

 タクシーは北高へ続く坂道に入り、後ろに三人も座っているからかややアクセルを開き速度を上げはじめる。
そのままカーブへ差し掛かったその時、激しい音と共に突然フロントガラスが真っ白になったかと思うと車体が
大きく弾み、通常走行ではありえないような横への遠心力がわたし達に襲い掛かった。
 左へと身体が流された直後、全身に強く響く重低音と金属がひしゃげる高音のノイズと共に前方に向かって
吹き飛ばされるような勢いが身体を襲い、わたしは運転席のシートへと激しく身体を打ちつけた。

 何が起こったんだ。一体、何が。
 衝撃音の連続で耳鳴りが轟き外の音が聞こえない。激しい衝撃の影響で身体が悲鳴を上げている。目を開いても
世界が回転している感覚が視界として飛び込んでくる。わたしはそれでも何とか右手を伸ばして後部ドアに手を
かけると、そのまま押し開いて外界の空気を取り込んだ。
 後部シートから外へ身体を押し出すように転がり出る。何とか立ち上がり朦朧とした意識を取り戻して自分が
乗っていたタクシーを見るとフロントガラスは砕け散り、カーブの反対車線を超えガードレールをなぎ倒し、
歩道の先にある山間の壁に頭から激突している状態だった。
 運転手はエアバッグに飲み込まれて姿が見えない。後部の二人は大丈夫かと思い視線を運転席から外したところで、

「…………っ!」

その視界の隅に、進行方向だった坂道の上で立つ無粋な男と異質な存在を捉えてしまった。
155消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:33:59 ID:WEB7qEzo
「何をした……何を考えている! お前たちは一体何なんだ!」
「ウイルスさ。この世界に存在し得ない存在、それが僕らだ」
 男が目に見えて嘲笑を浮かべてくる。何の話だ。いやもうあんな存在など知った事か。
 わたしは彼らの事を相手にせず車内を覗き込むと二人に呼びかけ無事を確認する。
「だ、大丈夫、だと思う……」
「わたしも、多分、大丈夫」
 橘さんは後部シートに倒れこみながら息を整え、朝倉涼子は反対のドアを開けて外に出てくる。運転手も動いて
いるようで命に別状は無いようだった。
「ずいぶん余裕じゃないか。時間を大切にしろとこの時代の人間は習わないものなのか? もうすぐあいつが考え
抜いた末に規定既定通りキーを押す。そうすればこの電気羊の世界は終わりだというのに」

 ゴルフボールぐらいの大きさの玉を手玉にして遊びつつ男が更に告げてくる。
 あいつだと? あいつというのはやはり。
「キョンの事か。言え、お前たちは何が目的なんだ!」
 いい加減に我慢の限界だ。わたしは男に飛び掛らん勢いで走り出す。あの玉を投げつけフロントガラスを叩き
割り、道路に散りばめられた釘やらガラスやらが撒菱状態となりタイヤをバーストさせたのだろう。どう考えても
事故を狙ったとしか思えない上にキョンの方にまで何か手を回しているとしり、それでも我慢できるほどわたしは
聖人君子ではない。

「今はまだ禁則事項だ。僕が説明しなくてもいずれあんたにも解る。まずはこの世界の終焉を──」
 男の御託を無視し、走り寄る勢いで相手を倒してやろうと服に手を伸ばし掴みかかろうとする。だが後数ミリで
服を取れるかと思った瞬間、
「──感じようじゃないか」
男の言葉と共にわたしの動きが、視界範囲のものが、そして森羅万象が完全に停止した。

156消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:35:26 ID:WEB7qEzo
- * -
「世界の停止を確認。誤差、問題共になしだ」
 思考する以外何もできないわたしの目の前で相変わらず立ち続ける男はそう告げると髪をかき上げてから歩き
始めた。そのまま異質なる黒の存在に近づいて行くとなにやら呟き指示を出す。その存在が納得したのかは知ら
ないが、ゆっくりとこちらを向いて瞬き一つみせてきたかと思えばわたしはいきなり全身を固く止めていた力から
解放された。
 服を掴もうと伸ばしていた手は空を切り、突然走りを再開した身体に思考が追いつかず、わたしは数歩慣性で
進むと足を取られ、そのまま身体の向きが反転し尻餅をつく形で地面に身体を打ちつけた。

「バグった人形が作り出した虚構、注目すべき事項が何一つ存在しない無為な時間。それがこの世界だ」
 男は先ほどから手にしたボールをお手玉のように上に軽く放り上げつつ、ゆっくりとわたしの方に向かって
歩いてくる。男の言葉は全く以って意味不明で、普通に取れば精神に支障をきたした者の戯言と認識するところ
だろう。だがこの連中がそんな生易しい存在ではないのは既に嫌と言うほど思い知らされている。
「何の事を言っているんだ」
「あんたに少しだけ種明かししてやってんのさ。一年前の十二月十八日から一昨日までの一年間、あんたが体験
したと思っているその時間の記憶は、全て第三者によって改変された偽りの記憶でしかない。あんたが実際に
自ら体験したのはこの二日間だけで、それまでの一年間はこの世界配置ならこの人間はこう過ごしたであろうと
いう計算の元に生み出された虚構設定なのさ。
 ま、改変した奴にしてみてもアイツがあんたと思った以上に親睦を深めてしまったのは想定外だっただろうけどな」

 モザイクだらけの会話だが、その改変した第三者以外が誰の事を指して言っているのかは解る。だが彼の言い分を
正しく理解するなら、世界にとっての正しい時間軸は別にあり、その正しい時間軸を辿った歴史では僕とキョンが
親睦を深めていない関係にある、そう言っているみたいに聞こえてくる。
「どちらが正しい世界だとかには興味も意味もない。僕にとって重要なのはその歴史が僕にとっての規定事項だと
いう事、ただそれだけだ」
 男は手にしていたボールを軽くわたしに向かって放ってくる。コレがタクシーに投げつけられたボールなのかと
思わず手を伸ばして受け取ってしまった途端、ボールは一瞬光ったかと思うとわたしの中に溶け込むように吸収
されてしまった。

「そして僕の役目は世界修正に先駆けあんたに本当の時間を返してやる事だ。しかも今、このタイミングで。
 この静止した時間ならばあんたの心がいくら揺れ動こうとも、能力者がそれを把握することはできないからな」
 直後、身に覚えの無い記憶が脳内を駆け巡りわたしの情報処理能力は一気にオーバーヒートを起こす。それでも
この一年間の本当の記憶が今ある記憶を消す事も無く徐々にとわたしの中へと入ってきた。光陽園学院は進学校など
では無くお嬢様の通う女子高である事、わたしは市外の有名私立進学校へと進んだ事、キョンとはそれ以降疎遠と
なってしまっていた事。

 そして何より、北高へ進学した涼宮さんがキョンと組み、何やら楽しげな活動を行っているという事。

「何だいこの記憶は。僕の知るこの世界との充足感の落差は」
 これが本当の時間だというのか。僕は長い夢を見ていたと言う事なのか。進学校のカリキュラムについていく
為に塾通い勤勉し、取り立てて親睦を深めた者がいる訳でもなく日々淡々と起伏少ない人生を消費する。それが
彼から渡されたわたしの一年間の記憶だった。そしてそこには、卒業式以後のわたしの記憶には、彼の姿は一度と
して映っていなかった。
「ふざけるな。こんな世界の記憶なんて僕は認めない」
「それはあんたが決める事じゃない。僕らの歴史が決める事だ」
 男に言い切られた瞬間、わたしは全身の力が抜け落ちていくのを感じつつ無意識に乾いた笑みを溢していた。
「それこそ知った事か。認めないといったら認めないんだ。そうさ、認めるもんか……僕の人生から彼がいない
だけでこんなにも、こんなにも……くっははははっ!」

 これが世界の現実ならば、わたしは絵空事の麻薬に酔いしれていたクラウンだったと言う事になる。
 あまりにも唐突に訪れた冷酷な世界。それはキョンというピニオン、空を飛ぶのに必要な風切羽をもぎ取られ
永遠に飛び立てず地を這いずり回る鳥の世界。
 認めたくないのに、だがどこかで認めてしまっている。わたしは両手で目を被いつつ天を仰ぐと、静止した時の
中でただ狂気染みた笑いを響かせ続ける事だけしかできなかった。
157消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:37:11 ID:WEB7qEzo
- * -
「気は済んだか」
 全身に蠢いていた感情を出し切り自虐的な嘲笑すら零れなくなった頃、男が面倒臭そうにただ一言だけ投げ
かけてきた。
「キミは……キミたちは一体何者なんだ。一体何をしようとしているんだ」
「禁則事項だ。それと僕たちにはまだやるべき既定事項が残ってる。あんたにも付き合ってもらう」
 質問を一蹴すると男は存在へ指示を出す。存在はまるで滑るかのように身体を殆ど揺らす事無くタクシーの
方へと向かっていった。そして車内から外へ脱出し立ち上がろうとした所で静止している朝倉涼子の側に近づくと、
ゆっくり手を伸ばして彼女の胸に手を置く。
 何をするつもりかと疲弊した精神でおぼろげに見つめていると、その存在はまるで立体映像に手を差し伸べるが
如く、自分の手を彼女の胸へ溶け込むように挿し込んだ。
「────────閾値────改竄」
 ポツリと呟いた瞬間、朝倉涼子の身体が電気ショックを与えたみたいに大きく震え、力なく手を差し込んでいた
存在の方へと倒れこむ。その存在は空いた手を静かに横へ伸ばして彼女の身体を受け止めると、そのまま彼女を
肩に抱えあげて戻ってきた。

「飛ぶから立て。酔いたくなければ目を瞑ってるんだな」
 何が飛んで酔うのか全く説明が無いまま、男と朝倉涼子を抱えた存在は私の側でただじっと立ち尽くす。半ば
自暴自棄になっている状態のわたしは何とか足に力を入れるとふら付きながらもゆっくり立ち上がり目を閉じた。
 直後、足元から地面の感覚が消失する。同時に強烈な重力の捩れがわたしを四方八方から襲いだした。
 三半規管が警告を鳴らし、何事かと垂れていた頭を持ち上げ目を開こうとするが、それより先に男の手が頭に
置かれて首を上げることを許さない。
「目を開けるな。時の狭間なんて見ても気分が不快になるだけだ」
 既に最低の気分を味わっているのに今以上不快に陥る事などあるのだろうか、そう思いながらも素直に従う。
 遊園地の遠心力絶叫マシンが暴走したかのよな縦横無尽な圧力を感じ、そろそろ目を瞑っていても不快感が限界に
突入するかといったところで、ふと突然に足元に地面の感覚が戻ってきた。併せて男の手が頭からどけられる。
 何が起こっていたのかは解らないがどうやら終了したらしい。わたしは改めて首を上げて目を開き状況を確認した。

 肌寒さと周りの暗さが夜である事を告げてくる。目線をやや上にあげると、星空と民家の間に黒い影として数階
建ての建物の壁が伺えた。彼らと本格的に関わったあの日に振り返り見た、この建物の夕闇に染まる姿を思い出す。
「あれは北高? 何故……」
 とそこまで呟いて言葉を止める。何故北高で、しかも夜なのか。疑問は浮かぶが聞いたところで今までと同じく
答えは返ってこないだろう。その証拠に男と存在はわたしを無視して動いている。何をしているのかと視線を送ると、
あの存在が一緒に連れてきた朝倉涼子を肩からおろし壁に寄りかかる状態で座らせている所だった。
 男が倒れないよう身体を直し、最後に夜光で鈍色に光る物体を彼女の手元に置く。

「そろそろ来客が訪れるな。フィールド展開しろ」
 朝倉涼子をその場において立ち上がると、その存在が中空を見つめて唇だけで音無き声を呟く。風のような軽い
抵抗が身体を通り抜ける感覚を感じたかと思うと、存在を中心に発生した球体にわたしたちは飲み込まれていた。
「あんたは今から始まる三文芝居の唯一の観客なのさ」
「三文芝居?」
 状況には追いつけず二重の記憶には翻弄され精神がかなり磨耗していたわたしは疲労感を隠すことも無く男を
見返す。と、男はいつもの様な何事にも興味ないような雰囲気ではなく、軽い苛立ちと怒りを含んだ微妙な表情を
浮かべていた。
158消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:38:11 ID:WEB7qEzo
「ああ、三文芝居なんだ。あんた以外は全てこのくだらない演劇の配役でしかない。僕もこいつも朝倉涼子も、
そしてあいつらも。あんただけがこの舞台で唯一イレギュラーな存在なのさ」
 男が更に嫌悪感を見せつつあごで自分の視界を指す。それに習いわたしも首をそちらへ向けると、わたしたちの前、
北高の正門から影となる曲がり角で様子を伺う二つの人影が目に付いた。彼は誰時より暗き時間で中々判別し辛いが
一人は教師のようなスーツ姿の成人女性のようだ。そしてもう一人はというと、
「……キョン? 何でキョンが」
 こちらも暗くて顔は見えないのだが、シルエットだけで充分彼だと判断できる。星空の元で共に歩き、そして
何度も見送ったあの姿だけは見間違えようがない。一体何をしているのかと足を踏み出し声をかけようとするが、
フィールドと呼ばれる領域に阻まれてしまいそれは成せなかった。

「このフィールドは外部から認識できない。あんたは観客だと言ったはずだ。観客は芝居に参加できない、大人しく
見物しているものだ」
 腕組みをして立ち尽くす男のつま先が微妙に上下している。わたしに意味深に接触し、事故を起こしても平然と
していた人間にしては今の姿は何処か感情的で、今までで一番人間味を感じさせていた。
「────違う、彼──間違い?」
 それまで黙っていたその存在が言葉を発する。男は足を止めて溜め息をつくと首を向けずに答えてやった。
「間違ってるのはおまえだ。アイツが正解なんだよ」
「────────そう」
 彼らが何を話しているのか、これから一体何が始まるのか。そう思った瞬間、わたしたちを取り囲むフィールドが
突然衝撃音と供に虹色に輝きだした。キョンたちが見つめる先、北高の正門前から生じている何か物凄い力がこの
フィールドに容赦なく襲い掛かっている。
 何故だろう。その力は一見不可視だと言うのに、わたしにはその力の流れが手に取るように感じられた。

「これが時空改変能力……なるほど、誰も彼もが躍起になる訳だ」
「────────とても……苦い」
 男と存在もこの力を感じ取れているのか各々感想を漏らす。片方は本当に感想なのかどうか今一つ自信がないが
わたしが気にする事でもないだろう。
 やがて力の奔流が治まると、そばにいた存在は朝倉涼子の傍を離れてわたしたちの後ろに立った。男にフィー
ルドと称された結界から外れた朝倉涼子はゆっくりと頭を抱えながら覚醒しだす。座り込んだまま辺りを見回し
自分が置かれた状況を確認するも、事故を起こしたタクシーから外に出たかと思えば夜の母校前という現状に脳の
理解が追いついてない、そんな風に感じ取れた。
 立ち上がろうと身体を起こした時に手の傍にあったナイフに気づき拾い上げるが、一体これは何を意味している
のかとやはり頭を捻っているのが伺える。

「朝倉に設定されていた人間が持っている倫理の閾値を限界まで下げた。今のあいつは目的の為なら手段を選ば
ない兇刃そのものだ」
 男が説明するもわたしの耳はそれをただの音としてしか認識していない。その時のわたしはキョンたちが校門前の
街灯下で立つ少女に近づき何かを話している様子に夢中だったからだ。
 距離はあるが街灯の明かりで姿は見える。キョンたちが話す相手は北高祭の時にわたしの前の席でおでんを食べ、
朝倉涼子が保健室に運び込まれた時にお見舞いに来た、あの眼鏡をかけたショートヘアの少女だった。
159消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:39:09 ID:WEB7qEzo
「……あれ、長門さん?」
 朝倉涼子もキョンたちの事に気がついたらしい。この不可解な状況下で知り合いを発見できたのがよほど嬉し
かったのか、満面の笑みを浮かべつつふら付く足取りで少女たちの方へと向かっていく。
「良かった、長門さん、あなたがいて。あなたがいてくれれば、あなただけでもいれば、わたしは…………え?」
と、覚束無い足取りを見せていた朝倉涼子が不意に止まる。何事かとその視線の先、キョンたちの方へと視線を
戻せば、キョンが手にしていたモノを少女に向けて構えている所だった。
 実物をこの目で見た事はないので確実とは言えないが、あのフォルム、そして少女の激しい怯えようから考え
るに、やはりあれはこの国の大多数が所持を禁じられている武器、銃なのだろう。だが何故だ。
「何故キミがそんなモノを持っている。何故それを人になんか向けている。やめろキョン……キミは、キミは一体
何をするつもりなんだ!」
 思わず駆け出すもすぐにフィールドの壁にぶつかり近づく事ができない。苛立ちながらこの壁を作っている
存在へ苦情を告げようとして、それより先にフィールド外にいた朝倉涼子が動き出した。

「ちょっと……長門さんになにしてるのよ。彼女を傷つけるつもりなの? よりにもよってあなたが? 彼女は、
こんなにも。やっと、ここまで」
 わたしと同じ世界を見つめつつ捉え方が違ったもう一人の観客は、手に小道具をしっかりと持ち街灯が照らす
ステージへと走り出す。
「させない、させないさせないさせないさせない彼女を苦しませる事なんて誰にも絶対にさせないっ!」
「な、ダメだ! やめろ朝倉涼子! キョン逃げろ! 逃げるんだ、逃げて────っ!」
 フィールドを叩きつつわたしはあらん限りの声で叫ぶ。外界に届く事無きわたしの心からの訴えに、だがそこで
キョンと共に行動し後ろに付き従っていたスーツの女性が幸運にもこちらへと振り向いた。
 わたしの訴えは見えなくとも、朝倉涼子の姿は捉えられるはずだ。距離もまだある。
「頼む! 彼女を、朝倉さんを止めてくれ!」
 必死の願いをその女性に向けるが、しかし女性は朝倉涼子とその手にしたモノを確認した上で、あえて目を瞑り
首を振ると、伸ばした手をそのまま戻して握りしめ、踏み出しかけた足を踏みとどまらせ、信じられない事に朝倉
涼子がキョンへ向かうのを完全に黙認した。
 一縷の希望があっさりと絶たれた事にわたしが何故と思う間もなく、朝倉涼子は上体をやや落とすとそれまでの
スピードに乗せて後ろから躊躇う事無くキョンへと手にしたモノごと突撃していった。
 ドンッという音が響いた気がする。実際は気のせいなのだろうが、わたしはその瞬間確かにその音を聞いた。
 キョンがこの世界から否定される音を。

「キョ──────────ンッ!!」
 朝倉涼子の動きにあわせキョンがゆっくりと崩れ落ちる。あらん限りの声で叫び、渾身の力で両拳をフィールドに
打ち付けて突破しようと試みるが、わたしの思いは障壁に傷一つつける事すらできない。すぐさまこのフィールドを
生み出しているのが誰だったか思い出し、わたしは黒の領域へと掴みかかった。
「フィールドを解けっ! わたしを、今すぐあそこへ向かわせろっ!」
「それはあんたの役割じゃない」
 即座に男から否定の言葉が出される。わたしは男に拳を放つが、男はまるで何処を狙ってパンチしたのか知って
いたかの如く平然と自分の手で拳を受け止め、さらにもう片方の手で手首を掴むと強く握り締めてきた。
「くうっ! こ、この……」
「僕を殴る暇があるならあっちを見ろ。あんたの望んだ俳優たちの登場だ」

 男の言葉に従い再度キョンたちの方を向く。飛び込んできた風景は、何処から現れたのか先ほどまでその場に
いなかった三つの人影が兇刃朝倉からキョンの事を守っている所だった。
 だがその光景を目にし、わたしは思わず「ええ?」と言った間抜けな声を上げてしまう。
 あのふざけた女性と共に倒れたキョンに駆け寄った少女はまだいいとしよう。問題は残りの二人だ。
 朝倉涼子の兇刃を素手で握り止めている少女は顔に眼鏡をかけていないという違いはあるものの、どう見ても
街灯の下で怯えているショートヘアの少女と同じ姿だし、そしてなにより倒れたキョンの傍で銃を拾い立つ防寒を
主としたラフな格好をしているその男は、やはりどう見てもキョン当人にしか見えなかった。
160消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:40:01 ID:WEB7qEzo
 既にわたしの中の疑問符は完売状態で、この状況には声も出せず立ち尽くす。
 もう何が起こっても驚けやしないなと考えた直後、わたしはその考えをあっさりと撤回する事になった。
 朝倉涼子と対峙していた少女が小さく動いた途端、その手に握り締めていたナイフが煌めきながら光の粒子に
変換されていく。いや、ナイフだけではなく朝倉涼子もまた足元から粒子になり始め、数秒後には完全に消失して
しまっていた。ほぼ同時に、倒れたキョンに泣きついていただろう少女もキョンに被さったまま動きが無くなって
しまう。どうやらスーツ女が少女に対し気絶させたか何かを行ったようだ。
 遠めで何が起こっているのか完全に把握できず、またキョンの元へと走りよれないこの現状がもどかしい。
『観客』とはよく称したもので、つまりはわたしだけがこのイベントに対し何一つとして関与できない傍観者で
あると男は揶揄していたのだ。

「人間は与えられた事象が自分の理解の範疇を超えた時、何もできない存在だと思っていた」
 眼鏡のない少女がキョンから銃を受け取り同じ姿をした少女へと撃ち放つ。そのあまりに現実離れした光景に、
だがわたしはもう驚かない。どんなに驚愕すべき事象が起ころうと、観客である以上わたしには単なる映画や
夢と大差ないからだ。
「考えを改めるよ。人間はどのような状況に陥ろうと思考する事だけはできる。思考し、常に何かを選択する。
そういう存在なんだ」
 わたしはキョンたちを見つめたまま男に尋ねる。わたしがここにいてできる事はない。
「キミたちはいつになったら僕の事を解放してくれるんだい」
「あいつらが再改変した後だ。そうでないと僕たちは元の時間に戻れない」
「こう見えて門限がうるさくてね。できれば早めにお願いしたいものだ」
 男が全てを語る気がない事を理解したので返答を軽く流す。わたしの中の何かが麻痺してしまったのか、キョンが
無事っぽい雰囲気に冷静さを取り戻したのか、先ほどまでと違って展開される状況を素直に脳が受信する。
 立っているキョンが気絶した栗色髪の少女を背負い、ショートヘアの少女とスーツの女性が傍に寄り添った。
 と、スーツ姿の女性が控えめにこちらへと顔をむけてくると軽く会釈してくる。それにあわせ後ろから人間味
あふれる舌打ちが聞こえてきた。男の知り合いかと考え、ふとそこに違和感を感じる。
「なぜ彼女はこっちに挨拶を? こっちの姿は見えていない、そうじゃなかったのかい」
「簡単さ。相手からはこちらは見えてない、だがここに僕たちがいると最初から知っているのなら挨拶はできる。
つまりそういう事だ」
 つまりあのスーツ女もこの男の同類、この男がわたしの担当、あの女がキョン担当と言う事なのだろう。何か
途轍もない事にわたしもキョンも巻き込まれているのは確実であり、しかもキョンの方はある程度事情を知って
いるようだ。
 今度彼に問い詰めてみようかと思いもしたが、どうせコンタクトを取ろうとしてもこの男の仲間連中に阻止される
のがオチだろう。

「茶番は終わりだな。可視可聴ゼロの最大展開で構わない、再改変の影響を受けないようにするんだ」
「────────」
 不可侵の障壁が輝き、直後に闇が空間を支配する。目を開けている筈なのに何一つ目視できない。光すら束縛する
ブラックホールとはこのようなものだろうか、数分いるだけで精神に支障をきたしそうな文字通り無の空間だった。
すぐ後ろにいる筈の男の気配すら感じ取れない。
 音の無い世界でわたしが生きている証となる体内の音、ただそれだけが自分の中で響いている。微光も存在が許さ
れぬこの空間ではどんなに目が闇に慣れようとも何も捉える事ができない。
 自分が何処に存在しているのか、そもそも自分が本当に何処かに存在しているのかすら疑いたくなってくる。
 負の思考は更なる負の思考へと繋がり、ほんの僅かだった焦燥感は二次曲線を描くように膨れ上がる。
 常人が狂人に変質する感覚、心身ともにこれ以上ここにいるのは危険だと警告を投げてくる。頑なに固く閉じた口を
少しでも開けたならばたちどころに悲痛と狂乱の叫びを上げてしまう事だろう。
 そしてギリギリまで耐えていた壁が決壊して何かが弾け出しそうになった、その瞬間。

 気がつけば足が地面を踏みしめている。
 わたしは自分がいつの間にか夕陽落ちた誰そ彼時の空を何も考えずにただぼうと眺めている事に気が付いた。

161消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:41:05 ID:WEB7qEzo
- * -
「……結局は未来人たるキミが望んだ通り、いやここはキミに習って既定通りと言うべきか。僕は涼宮さんや
キョンと相反する位置に立ち、その意味も正体も解らない力の争奪戦に巻き込まれてしまった、と言う訳だ」

 コーヒーカップを皿に置き嘆息づく。わたしの溢した愚痴に満足したのか、藤原は邪心を感じるには些か稚拙な
そんなちぐはぐな笑みを浮かべていた。
「当然だ。僕たちの知る既に定められた事項を現地人になぞらせるのが僕の役目なんだからな」
「先ほど語っていた誘拐劇とやらも、そしてこうして今残ってキョンを牽制したのも既定事項なのかい?」
「言う必要は無い」
「キミ以外の未来部員が僕に関わってきている可能性は?」
「言う必要は無い。だが、あんたは今僕たちの監視下にある。それが全てだ」
 なるほど。今の時点では藤原のバックは僕を捕まえておく必要があると言う訳だ。いずれ取り合う力を受ける
器とするためか、それとも単なる捨て駒として使うためなのかは解らないが。
 だが藤原、僕は一応キミを友人と認識している。だからこれだけはキミに言っておいてあげよう。

「何だ」
「キミの既定する未来は絶対ではない。キョン側にいる朝比奈さんの未来もまた然り。キミたちがこうして過去を
訪れ奔走しているのが何よりの証拠だ。もっとも恐れるべき存在は確かにキミだが、だからといって対抗できない
存在という訳でもない。その意味についてキミはもっと考えるべきだ、と」
「僕の知る歴史の一文に抗うというのか? はっ、僕も甘く見られたものだな」
 言葉とは裏腹に藤原は本当に楽しそうに笑い出す。
「だがその事象すらも僕にとっては既定かもしれない。あんたは常にそのジレンマに悩まされるのさ。あんたには
未来日記を知り得る術が無いのだからな」
 そうだね。でも。

「藤原、キミは何故七夕飾りの短冊に願い事を書くか知っているかい?」
「は? 何の話だ?」
 不意な質問に藤原にしては珍しくキョトンとした顔をする。その姿に少しだけ口を緩めると、私はなんでもない
と軽く流した。

「さてキミはこれからどうする? このまま僕とてデート気分でも味わうつもりなのかな」
「僕の活動予定にそんな下らない内容は当然無い。だから帰る。勝手にゆっくりしていればいい」
 そうかいと相槌を打ち、席を立つ藤原に軽く手を降ると彼を見送りだす。そのままゆっくりと手を上にあげて
身体を伸ばし、ゆっくりと背もたれの上に手を置くと

「飛びます。眼を閉じて」

背中合わせの後部座席からわたしの手を取る彼女に従い、わたしは静かに眼を閉じた。

162消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:42:05 ID:WEB7qEzo
- * -
 わたしは自分がいつの間にか夕陽落ちた誰そ彼時の空を何も考えずにただぼうと眺めている事に気が付いた。
 世界は相変わらずそのままの世界を形成した状態で描かれている。
 全ては逢魔が時の見せた幻だったのだろうか。

 北高へと向かう長く気だるい坂道、夢の終焉となった場所。あの男も天蓋領域も傍にはいない。
 山間の壁に突撃したタクシーなどは何処にも存在せず、代わりにモスグリーンのバンが止まっているだけだ。
 自分の格好に視線を落とせば黒を基調とした光陽園学院のブレザー姿ではなく、市外にある進学校の特徴ある
セーラー服を纏っている。カバンも中の教材もただ一つだけの例外を除いて全て進学校に合わせたものだ。
 その唯一つの例外である手帳に挟まっているシールコーティングされた栞を取り出す。白い折り紙で作られた
その栞は、あの七夕の時にキョンから貰い受けた嘆願成就の短冊で作ったもの。何も願わない事こそがわたしの
願いと考え、白紙であり続ける事を望みコーティングしたその栞は、だがキョンの家で七夕飾りの手伝い自体を
行っていないこの世界では在らざる物のはずであった。

 どうして。わたしは短冊に疑問をぶつけつつ裏返す。すると、自分の知っている短冊との相違点がそこにはあった。
 何も望まぬ故に白紙を保っていたはずの短冊に、誰でもない自分自身の筆跡で、そこには一言だけ書かれていた。

 ── cruel comin' ──『クルエル カミ』と。

 クルエルカミ。意訳するなら『残酷とは、前触れもなく訪れる』といった感じだろうか。次々と世界が悪化して
いく今のわたしにとってこれほど相応しい言葉もない。
 彼らはこの結果をわたしに齎す存在なのだと最初から伝えていたのだ。自分たちは残酷を司る《狂神》なのだと。
 だがそれが何故この存在しないはずの短冊に、しかもわたし自身の文字で書かれているのか。わたしには永遠に
紐解けないであろう問題定義、それを記した短冊をしまいこむと、ただじっと空を仰いだ。

 そういえばこの世界での橘さんとかはいったい何処で何をしているのだろう。
 この世界の記憶の中で橘さんや古泉と言う人物に出会った事は一度も無い。願わくば、彼女たちぐらいはわたしが
知る姿のままでいてもらいたいものだ。
 そんな事を考えつつ空から地上に視線を戻したわたしは、何気に視界に入ったバンの後からすっと現れたツイン
テールの少女と目が合った。

「……え?」
 現れた少女が誰なのか認識した途端、その人物の突然の登板にわたしは驚きの念を禁じ得なかった。
 少女は左右から車両がやってこない事を確認すると道路を渡ってわたしに向かってくる。そしてわたしの前に
立つと軽く頭を下げ、光陽園学院の教室でいつもわたしに向けられていた朗らかな笑顔に待望しつづけた感動と
あの存在たちに似た昏い深みを乗せて挨拶してきた。
「初めまして、佐々木さん」
 彼女の言うとおり、この世界では初対面のはずなのに。
163消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:42:55 ID:WEB7qEzo
「教えてもらえるかしら。あなたはわたしを知っているのね?」
「もちろんです」
 好感度を振りまく笑顔で橘さんが答える。これはどういう事なのか。まさか、彼女は。

「そう。実はわたしもあなたの事なら多少なりとも知っているわ。言わせてもらっていいかしら? 橘京子さん」
 わたしの言葉に橘さんは吃驚した表情を見せる。どうやらわたしが彼女の事を知っていたのは彼女にとって
大きな予想外だったようだ。くっくっと小さく笑いつつわたしは更に饒舌に語る。
「わたしの知るあなたはこんな人。たまたま同じ学び舎、同じクラスに席を置き、クラス会議でのわたしの発言で
あなたはわたしに興味を持った。クラス委員を務め、みんなをまとめるよう快活に動き回り、風変わりな級友たちを
まとめあげる文字通りクラスの中心人物として……」
 わたしは静かに、でもわたし自身の熱意を込めて橘さんについて思い出せる限りの事を彼女自身に伝えていた。
 夏祭りで二人で浴衣を着て歩いた事や、音展祭でのがんばりっぷり、テスト前の勉強会や特になんでもない日に
街へと繰り出しぶらぶらと遊びまわった事など、とにかく思い出した端からの記憶を全部話していった。
 それはまるで何かを確認する儀式であるかのように。

 どれくらい経っただろう、わたしの話を黙って聞いていた橘さんは、だがその表情だけはわずかに翳らせていた。
「……と、これがわたしの知る橘さんという人物像とプロフィール。違ったかしら?」
 覚えている限りの全てを話し終え、わたしは橘さんにジャッジを求める。橘さんはわたしの知る姿のまま、
ツインテールを風になびかせつつ彼女の現実を告げてきた。
「もしもの話です。もしあたしが普通の人で、佐々木さんと同じ道を歩んでいたら、きっと今のあたしは佐々木
さんの言う通りの人物になっていたと思うのです。そうなっていたらどれだけ幸せだったのかな。でも」
 橘さんは自分に非がないにも関わらず頭を下げると、わたしの知る彼女らしからぬ寂しげな声で謝ってきた。

「ごめんなさい。世界はあたしにその道を歩ませてくれなかった。あたしが佐々木さんの事を知っているのは、
ある事情があるからなのです。ずっと見続けていたから。でも、それ以上の事はあたしに覚えはありません。
 あたしは、初めてこうして佐々木さんと会話するのですから」
「そう」
 いったい何処で道を違えたのか。橘さんや涼宮さん、古泉、クラスメート、それにキョン。彼らとただ普通に
在り続けられる楽園で心地よく流されて過ごす人生。そんな小さな幸福こそわたしが求め、白紙の短冊に託した
願いだったはずだ。どう間違ってもこんな酔生夢死な現状ではない。
 電気羊の夢と男が称した世界は、もう何処にも、無い。
 改めて思い知らされた現実に意気銷沈する。そんなわたしを気遣ってか、橘さんはそっとわたしの手を包み込む。
「佐々木さんが何を体験したのか、あたしにはわからない。だからあたしに言えるのはこれだけなのです」
 とった手を小さく引き寄せわたしに近づくと、橘さんはわたしの耳元へ囁くように告げてきた。

「電気羊の夢を取り戻す方法、教えてあげます」

164消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:43:56 ID:WEB7qEzo
- * -
 長い話になるから、とバンに案内されたわたしは後部座席に橘さんと二人きりで向かい合っている。
 安全基準を超えたブラックシートが貼られた窓からは殆ど光が入らず、また運転席助手席側には仕切りが立て
られており、暗い車内からでは何処を走っているかもわからない。

「それは、あまりにも荒唐無稽な話です」
 車両走行の騒音にかき消されない程度に、それでいて抑えた声で橘さんが切り出した。
「佐々木さん。先ほども言いましたが、あたしは普通の人ではありません」
「普通の人なんて人種は何処にもいないわ。確かに異質としか表現できない存在に出会った事もあるけれど」
 あの男と黒の存在。あれらはどう見ても異常としか呼べない存在だ。おかげで今のわたしは普通人と異常者との
境界線がかなり上方に対して修正されている。
 だが橘さんはそんなわたしの心境すら解っているといった感じで言葉を続けてきた。
「佐々木さんが誰と介したのかは大体予想できます。でも、それを踏まえた上でもあたしは、あたしたちは自分が
普通の人だと言う事はできません。できないのです」
「個ではなく集合単位で語ると言う事は、ドライバーの彼も含めてという事かしら」
「彼は違います。でも、あたし以外にも存在します。そしてあたしたちと違う存在も、また」
 静かに目を閉じるとゆっくりと息を吐き、次の言葉のタイミングを計る。バンが速度を落とし何処かへ停車した
のを身体で感じると、橘さんははっきりと告げてきた。

「あたしは、あたしたちは限定領域における異能力者。俗っぽく表現するなら、超能力者という存在です」
 奇怪な男、奇妙な存在の次は奇特な元知人とは本当におそれいった。これは一体誰の陰謀なのか。わたしという
存在に精神攻撃を仕掛け、常識という人の本質を崩壊させるのが狙いというならば十分功を奏している。
 どうにも橘さんはわたしの反応を楽しみにしているらしい。わたしの知る彼女にもあった、何かを期待する時に
ツインテールを跳ねさせる癖が出ている。
 わたしは眉間に指を当て思考をフル回転させると、とりあえず彼女に質問を投げてみる事にした。
「とりあえず二つほど質問させて。まず橘さんのいうそのリミテッドな超能力とは一体どういったものなのか。
そしてもう一つ。何故それを橘さんは出会ったばかりのわたしに話すのか。教えてくれるのよね」
「もちろんです。あたしはその為に、この時の為に三年もの間耐え忍んできたのですから」

 橘さんから聞いた内容は確かに荒唐無稽な話だった。神と呼ぶに相応しき力の存在。それを手にした涼宮さんと
涼宮さんによって生み出された超能力者たち。手にいれられなかったわたしとわたしが生み出した超能力者たち。
その者の内面的な世界とそこに現れる世界へのストレス、破壊衝動の塊《神人》と世界存続の危機。
力に群がる数多の組織。観察しに送り込まれた宇宙人。調査に訪れる未来人。エトセトラ、エトセトラ。
 どれ一つをとったとしても使い古されたジュブナリア小説のネタぐらいにしかならない空想科学的な内容だが、
あの存在を見た後ではあながち本当の事なのではと思えてくる。それに橘さんは本気で語っている。
「橘さんたちはわたしが溜め込んだストレスの化身を倒し解消させるべく、わたしの内面世界でその破壊衝動の
象徴たる巨人、《神人》を退治している乳酸菌のような人たちだと、そういう事かしら?」
「いいえ。佐々木さんの閉鎖空間には《神人》は存在しません。佐々木さんは世界をあるがまま受け入れています。
だから壊す存在も、その必要すらも無い。それこそ、あたしが佐々木さんの事を最も尊敬する部分」
 裏表無い言葉だと言わんばかりに瞳を輝かせつつ、橘さんがそっと手を差し出してくる。
「手をとって、眼を瞑ってください。佐々木さん自身を案内できるのかどうかは解りませんが、ご招待します。
 ──あたし達の楽園へ」
165消失狂想曲:2008/07/07(月) 22:45:01 ID:WEB7qEzo
 もういいですよ、と合図されわたしは瞳を開ける。
 何処かへと移動した訳ではなく先ほどと同じバンの中だったが、どうも様子がおかしい。
 内装が、いや内装の問題じゃない。空気自体に淡い乳白色が加味されている。霧の中とはまた違った感じだ。
 運転席を見ればそこに先ほどまで座っていたはずの運転手の姿がない。いや、それ以上に先ほどからノイズが
全く聞こえてきていない。そばを走る車や吹きすさぶ風、地面を転がる砂利や遠くで嘶く鳥の声、普通の状態なら
自然と聞こえてくるであろうはずの音が、眼を開けてから全く聞こえてこなかった。
 それは詰まる所、音を出す存在がいないと言う事であり。

「外に出てみませんか。ふふ、佐々木さんに佐々木さんの内面世界を案内するなんて、何か不思議な感じ」
 橘さんはわたしの手を取ったまま軽く振る。握られてくる手の感覚がもう随分と前に思えてくるような、そんな
懐かしい感覚に思わず微笑しながらわたしはその手を振り返した。
「自己啓発って言うのはちょっと苦手で。だからそう言ってもらえると助かるわ、橘さん」

 二人でバンを降りる。無機質な壁とコンクリート柱、そこに貼られたB1という階数と現在位置を示す記号。
そして数多くの整理された車両。どうやらバンは何処かの屋内駐車場に停車していたようだ。
 ただ電灯の明かりとは別に、空気が白みを帯びている雰囲気は伺える。それと満員御礼状態の駐車場の割に
人の生活に携わる雑音が何一つ響いてこないのも相変わらずだった。
「こちらです」
 手を取り続ける橘さんに案内されて駐車場を出る。階段を登り文字通り外に出ると、そこはモノトーンな天空が
支配する生命を感じない森閑とした世界だった。
「ノーマンズ、いや人どころが何一つとして生きている物がいないノーライフランド……これがわたしの心中」
「違います、佐々木さん。何もいない今のこの世界はまだ完成状態ではないのです。ノーライフランドではなく、
まだ何も産まれていない、不純なきイノセントワールド」
 橘さんは手を取り直してわたしの正面に立つと、愛おしさを加味した嫣然たる笑みを浮かべて表した。


「ここは白紙の楽園。佐々木さんの望むがままに作り上げる世界。佐々木さん、あなたはどんな世界を望みますか」


 短冊に願い事を書く行為のように、この真っ白い世界に望みを創り出す。
 わたしの願い、それは。

166消失狂想曲(完):2008/07/07(月) 22:46:15 ID:WEB7qEzo
- * -
 無人となった世界で背中合わせに手を取り合いつつわたしは尋ねる。
「わたしの世界、キョンは居心地悪がっていたんじゃないかしら。橘さん」
「彼は自分が涼宮さんを選んでいるから、この新たに提示された世界を受け入れられない。そんな感じでした」
「そう」
 思ったとおりの感想に一息つくと手を離して席を立つ。わたしに並ぶように橘さんも隣に立つと、わたし達は
白紙の楽園へと進み出た。

「後悔してない?」
 わたしの隣を並び歩く『共犯者』に聞く。橘さんは真剣な眼差しで、でも口元を微笑ませて笑い返してきた。
「さっきも言いませんでしたか? あたしは世界の安定を願っているって。宇宙人も未来人も超能力者も無い、
みんながみんなただ普通の人として生きていける世界。これ以上の安定があるとは思えないです」
 そしてわたしの手を取ると心の底から楽しそうな表情を浮かべ、
「佐々木さんと浴衣を着てお祭りに行くの、すごい楽しみ」
そんな年相応たる普通の感想をわたしに教えてくれた。


 如何に詳細な歴史の教科書や人物伝記でも、その人間の行間までは読み取る事はできない。定期的な観測では
僅か十数秒の空白の時間を取りこぼす事がある。そして何より、ここでの事象は未来から観測できない。
 時間を完全に支配するだけの力では、わたしの深に秘めた内心まで完全に捉えることはできない。
 敢えてキョンに対してすっとぼけた事を言い全く以って興味ないように振舞うのも、未来に気づかれぬように
ここで全てを行うのも、全てはわたしの、わたしが短冊に書き記した願い事の為。

 そうだ、キョン。わたしははこの望みの為ならば、喜んで狂える神となろう。この世界のキミにとってはただ
残酷としか思えない結果となろうとも、わたしはわたしが望む結末を齎す事に躊躇う事はしない。
 全てはわたしのエゴの為に。そしてそんなわたしと歩んでくれた、あの世界のキミの為に。
 今の世界のキミは、今の世界を選んだ。だから今度はわたしが、あの世界のキミに訪ねよう。
 無回答はなし、イエスかノーかで構わないから答えてほしい。


 ──今まで僕と歩んできた高校生活を、キミは楽しいと思わなかったのかい?


 そう、そこにはキミの出番なんて無い。
 キミは彼女や彼を知る事も無く、彼女の気持ちに気づくことも無く、彼女と話す切っ掛けも無く。
 ただ淡々とした日々が繰り返される中、わたしだけがキミと共に歩む事になるだろう。
 倦怠感漂うサイクルに対しキミは人生なんてこんなものかと思うかもしれない。
 それこそがわたしが望んだ最高にして最善なサイクルなのだと、キミはわたしの気持ち同様に気づくことも無く。

 キミの出番は無い。
 わたしが、キミの全てを取り上げてしまうから。


 短冊へ願いを記すのは、織姫の機の上手さを羨望した娘達が天に祈ったのが起源だという。
 わたしも羨望した願いをここに記そう。


 電気羊の夢を、取り戻そう。


- 了 -
167名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 22:48:29 ID:WEB7qEzo
以上です。
大団円で終わらないのはあまり書いた事無い分野なんでで結構戸惑った……では。
168名無しさん@ピンキー :2008/07/07(月) 23:04:34 ID:ywrz8BFR
今、読みオワタ。乙でした!
佐々木は、自分の閉鎖空間に入ったことは無かったんじゃなっかた?
169名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 23:08:57 ID:etqkkW76
これは凄い
170名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 23:18:13 ID:lffC3nfO
>>167
ほぼリアルタイムで読ませて頂きました。原作の伏線を活かしつつ、「いかにも」な展開に、背筋が震えました。
原作キャラがほぼフルキャスト出演したもう一つの「あの世界」、そして語り部を原作から変えて、類似した、しかし根本から異なる世界観の構築能力には脱帽する限り。
このあとの、「もう一つの驚愕」ともいうべき続編を期待するほかない、これに尽きます。GJです!
171名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 23:18:36 ID:6LCTBiRi
久しいな、乙かれ
172名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 00:07:33 ID:Qwi5uqGD
長かったが読むのは苦ではなかった。

お疲れ。
173名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 00:09:48 ID:3do71sVI
久しぶりに読み応えのある良作でした。GJ!
174名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 00:51:16 ID:PZGGWA+h
なんかすごく唐突に終わった感じがしたな。
でも面白かった。
175名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 00:53:40 ID:JvcMZiQB
この作品ってどれを読み終わった時に読むのが幸せ?
176名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:12:46 ID:huQnfT87
>>175
『古泉一樹のある種の罠』
177名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:14:58 ID:4sHLcdyo
ササキョンの時点でもう読む気がしない。
178名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:24:13 ID:eS+VbyyK
ササキョンは原作無視の俺様設定だからですか(笑)
179名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:31:54 ID:4sHLcdyo
読むだけ時間の無駄だった。読むのに消費した俺の時間を帰せ馬鹿。
180名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:33:01 ID:gvihAIWO
読む気がしないんだったら読むなよ馬鹿
181名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:34:48 ID:+mD1LP66
長すぎて笑ったw
内容はまあまあ
182名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:34:58 ID:4sHLcdyo
このスレッドは投下後の作者の自演が酷いね。
183名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:35:02 ID:OZD4UuMx
こういう投下は非常識と思ってるので
かりに興味ひかれる部分が目についてもななめよみ程度にしか読まない

機会があれば読むこともあるだろうけどここではないね
184名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:49:25 ID:gVT7gqLa
荒れるみたいだから
ササキョンみたいなマイナーカプは投下時に但し書き付けるようにしたらどうか
185名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 01:54:46 ID:TpEfXy+l
そんな特殊なカップリングじゃないし。一々但し書きとかいらないよ
一人か二人がぎゃーぎゃー言うのはいつものことだし、そういう奴はどうやったって文句言うよ
186名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:00:02 ID:4sHLcdyo
佐々木スレでヤレ(完)
187名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:01:46 ID:6+bMZvkV
ID:4sHLcdyoはいつもの粘着だね。つまり出来が良かったってこと。
188名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:08:10 ID:4sHLcdyo
4回書いたら粘着か、すばらしい判断基準ですね。
じゃあここからは携帯使って毎回ID変えて書きますね^^
189名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:09:26 ID:eMEf9bAB
自爆宣言かよw
190名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:11:25 ID:YloW5NbY
実際つまんないよ
作者の自演もウザイしさ
191名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:11:54 ID:eMEf9bAB
携帯早いなw
192名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:14:03 ID:iFj3Z9AV
いつもの粘着だな。今回はやや趣向を変えただけで。

さて読んでこよう
193名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:14:38 ID:39HD2EZA
エロなしでこの板に投下する時点で空気が読めてない
194名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:17:14 ID:4sHLcdyo
批判は全部粘着の仕業とか本気で思ってるならつける薬は無いな。
195名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:21:50 ID:CnnSowvX
長いし文章も読みにくい
これだけ文字数使って内容も薄い
196名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:22:51 ID:eMEf9bAB
>>193
おっと今度は、このスレが輩出した神作群まで批判し始めたー!

>>194
お前が>>188であんなことを書いたせいで、
今後全ての批判は粘着のお前が自演してると思われるんだぞw
当に自業自得w
これから読んでまともな批評つけようとしてた奴にとっては、いい迷惑だ
197名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:23:43 ID:gVT7gqLa
>>185
どう考えてもマイナーカプだと思うけど
198名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:25:28 ID:4sHLcdyo
>196
あほか、勝手に認定しといてなにが自業自得だ。

お前が>>196であんなことを書いたせいで、
今後全てのGJは作者の自演粘着と思われるんだぞw
当に自業自得w
199名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:26:19 ID:4sHLcdyo
じゃあ触手スレとかでエロなしの投下してみろよ。
馬鹿ですかって言われるから。
200名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:40:34 ID:eMEf9bAB
>>198
そのレスでお前がどう思われたか、「オウム返し」でググれば即わかるぞw

>>199
触手スレの住人がさぞ困ってるだろうな
オレんとこの住人に、こんな自演厨がいたと知って
かわいそうに
201名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:44:27 ID:4sHLcdyo
>200
オウム返しは昔から良く使われる有効的な返し方ですよ。
鏡を見せてやる事によって「オマエモナー」だと言う事を教えて上げるためにもね。

触手スレの住人の心配よりも、もっと心配するべきところがあると思います(ヒント:君の脳みそ)
202名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:56:13 ID:eMEf9bAB
>>201
オウム返しが有効的な返し方w
カッコして、ヒント:君の脳みそww
懐かし過ぎて腹いてえw
てっきりVIPのほうから来た奴かと思ってたのに全然違ったw
いくらVIPPERでも、今時こんな恥ずい文句はコピペでもできねえぞwww
203名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:05:54 ID:4sHLcdyo
お前も俺の批判に対する批判ばっかしてないでこのSSとやらについて意見を書いたらどうだ。
俺はクソ面白くも無いし、エロパロ的な内容でも無いし、こんな長いのはキャラ個別ならまとめサイトに投下してリンク貼るとかするべきだし。
それこそVIPでやるべきものだと思うね。

ま、VIPで書いてもうざがられるんじゃないかと思うけどねこういうのは。
204名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:12:14 ID:TcJo5hBJ
そうだったのか
冗長な以外はどこが悪いか判らなくて、何故叩かれているのか理解できなかったよ
サンクス
205名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:19:10 ID:eMEf9bAB
>>203
よしよし
いくらスレ初心者のお前でも、そうやって個人の感想を垂れ流す分には全く構わないぜw
206名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:22:37 ID:W+qTOvjP
-ここまで俺の自演-
207名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 03:31:19 ID:UiZODcxv
ID:eMEf9bAB
ID:4sHLcdyo
       ::                .|ミ|
       ::                .|ミ|
        ::               .|ミ|           ::::::::
         :::::     ____ |ミ|          ::::
           :: ,. -'"´      `¨ー 、       ::
   ::        /   ,,.-'"      ヽ  ヽ、    ::
   ::     ,,.-'"_  r‐'"     ,,.-'"`     ヽ、 ::
   ::   /    ヾ (    _,,.-='==-、ヽ         ヽ、   
   ::   i へ___ ヽゝ=-'"/    _,,>         ヽ 
   ::   ./ /  > ='''"  ̄ ̄ ̄               ヽ 
  ::   / .<_ ノ''"       ヽ               i
  ::   /    i   人_   ノ              .l
  ::  ,'     ' ,_,,ノエエエェェ了               /
    i       じエ='='='" ',              / ::
    ',       (___,,..----U             / ::
     ヽ、         __,,.. --------------i-'"  ::
      ヽ、_   __ -_'"--''"ニニニニニニニニヽ   ::
         `¨i三彡--''"´              ヽ  ::  
          /                      ヽ ::              ┼ヽ  -|r‐、. レ |
         /                     ヽ::            d⌒) ./| _ノ  __ノ
208名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 06:07:19 ID:4sHLcdyo
作者さん発狂してAA荒らしw
209名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 06:57:22 ID:5YgakTAG
しかしこれだけ長文書いた相手にクソだのツマランだの、本当に鬼だなお前ら
210名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 07:54:18 ID:q/UVAJZK
>>209
× お前ら
○ お前

細かい表現やら、原作未出の設定やらを上手くまとめてあると思う。
素直に面白かったと思うね。
211名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 09:16:40 ID:sDngA/cp
伏線もまとめられてて普通に面白かったよ。
力作乙。
212名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 12:08:02 ID:vvltbcin
つまんない
佐々木の口調がいちいち鼻に付くし
次からは佐々木スレでやろうな。
213名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 12:39:58 ID:yMtvQxrt
次はエロスに挑戦してくれ
214名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 13:27:22 ID:qrX/c1IV
面白いって言う人も多いだろうけどそれ以上につまんね言う人の方が多いだろうなあと読んでて思った
長さが長さだけにね
だから批判が多いのはある程度想定内だったんだけど、その批判レスの殆どを「粘着」で片付けて煽り合戦になってるのにはかなり引いた
本当に作者が自演してるんじゃないのかと疑いたくなっちまうあほらしい流れだ…

俺は特に破綻なくこれだけの大作書ききった作者にお疲れさまと言いたいね
面白かったかといわれると、素直に「そんなに」としか答えようはないけど。純粋にすごいじゃん、この量。真似できんわ
215名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 14:27:34 ID:CKl/On5u
1名が粘着していたのは事実だが(笑)
216名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 14:45:09 ID:idmChLAB
煽ってる馬鹿がいたから粘着されたんだろ。
217名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 15:13:07 ID:r58H4Vm4
堅苦しくて色気のない佐々木口調でこれだけ長くて
山場らしい山場もない平坦なストーリーだと
つまらなく感じる奴がいても仕方ないだろう

マンセーしようにも大作乙としか言いようがない
218名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 15:15:11 ID:U3hrE2qP
自分は雰囲気も良いし、面白いと思った。

しかし、その一方でいつエロくなるかどうエロくするのかワクテカしながら読んでいた自分もまた真実。
だってエロパロ板なんだもん、そりゃエロを期待するさ、したっていいじゃない。
219名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 15:18:11 ID:SO/eEOLM
ササキョンはマイナーだったのか…
あと俺もいつエロに繋がるのかなーとワクテカしてたw
220名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 15:31:35 ID:kz+fsASp
エロ書けないのに投下する作者が何故か多い。
エロは経験値が高くないと、途端に薄っぺらくなるから難しいのは分かるが。
221名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 16:27:31 ID:i0VeuKQ4
ここはSSスレの中でも屈指のSS職人が集い投稿する場所
このスレの読み手は文法や心理描写などの書き方を書き手が各自習得済みであるということを前提として作品を読む
なのできちんとした書き方を習得できてない奴が叩かれるのは当然のことなのだ
ここは「SS職人を育てる」場所じゃない「SS職人が挑戦する」場所なのだから

ここで酷評を受けた奴はまだ挑戦するには早すぎたということ
自分のレベルを上げてからまた挑戦すればいい
222名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 16:40:13 ID:VnFtViAe
ここまでが俺の自演
223名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 18:00:44 ID:huQnfT87
18歳以上の書き込みとは思えない
ゆとり教育は怖ろしいなぁ
224名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 18:09:18 ID:pWC2XV5l
>>166
最初にエロなしと断ってたし面白いんだろうなとwktkして読んでたよ。
面白かった。感情表現上手かったし、伏線回収も上手かったよ。
続編期待です。
225名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 18:28:23 ID:QoGgc2Bn
エロ無しならよそでやってくれ
226名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 18:41:58 ID:7G8trkAm
スレの支柱まで叩かれる時代になったか……。
227名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 19:09:47 ID:q/UVAJZK
>>182みたいな、SS投下後のテンプレ文章張りつけてるあたりで、
毎度お馴染みの粘着荒らしの仕業ってことは想像に難くないと思うが。

まあ、内容について批判してる人間はまだ良しとして、
荒らすだけが目的の自演馬鹿に付き合う必要はないと思うが。
「作者の自演」とかをNGにしときゃ問題ないんじゃね?
228名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 19:50:45 ID:m0LpaCRl
おっと今度は、このスレが輩出した神作群まで批判し始めたー!
229名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 20:01:05 ID:VnFtViAe
-ここまで俺の自演-
230名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 20:20:34 ID:T5QbQ4PD
>>182みたいな、SS投下後のテンプレ文章張りつけてるあたりで、
毎度お馴染みの粘着荒らしの仕業ってことは想像に難くないと思うが。

まあ、内容について批判してる人間はまだ良しとして、
荒らすだけが目的の自演馬鹿に付き合う必要はないと思うが。
「作者の自演」とかをNGにしときゃ問題ないんじゃね?
231名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 20:51:27 ID:YYRBfiPm
-ここまで俺の自慰-
232名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 21:29:24 ID:pWC2XV5l
ここは昔からエロなしも歓迎されてるよ。むしろエロなしのほうがクオリティ高いものも多かった。
少なくとも俺は歓迎する
233名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 22:03:49 ID:fOVgzfXd
作者さん含めて分かってる人は分かってるから大丈夫でしょ。

234名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 23:01:26 ID:trHnPOPI
>>167 遅ればせながらGJ!

そして、この静かで深い余韻を書ける才能に嫉妬。
いろいろ書かれてるけど、このスレでこれだけの反応が出ること自体、良作の証だよなあ。
なんと言うか、SSよりもオリジナルが読んでみたくなる作品でした。
次回作にも期待してますw
235名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 23:15:34 ID:q/UVAJZK
むしろ、この内容で書き続けて大団円迎えたら、
それはそれでゴイス。
236名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 00:11:03 ID:0/L61Eqw
投下してくれてありがとう。
職人達にはそんな気持ちであるべきだ。
237名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 00:18:29 ID:rAhCwPoY
>>167
GJ!七夕投下ありがとう!
こういうダークな七夕モノもいいかも。

この佐々木さんの声は、なんだかサイガーっぽい感じがする。
238名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 00:40:53 ID:9IEMhV/H
2、3日覗いてなかったらアスタの人来てたのかw
これは久々に読もう。

ちなみに叩いてる奴はたぶん一人。
ここ2、3ヵ月ずっとVIPの方でもこんな感じで粘着してる奴が居るから同一人物かと。
完全スルーでOK。
239名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 01:24:13 ID:NQQ326HN
>ちなみに叩いてる奴はたぶん一人。

こういうことを言い出すのが病気の始まりですね。

自分が大勢の人から批判されているという事実から逃げたくなるのは解る。
解るがそれはただの現実逃避。
なぜ君の作品がツマラナイと思われているのか、それを分析して次回作への反映点とするべきだ。
240名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 01:39:01 ID:3+kg5VdQ
この時間になると来るようになったのねw
241名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 01:39:15 ID:Q/5Kh8yv
擁護してるのはほとんど自演だろ
単発IDばかりだしな
242名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:03:53 ID:0/L61Eqw
おう-ご 擁護
仏語。衆生の祈願に応じて、仏や菩薩(ぼさつ)が守り助けること。
>>241
意味調べたが何が言いたいのかわからん。
>>236を書き込んだのは俺だが作者ではない。
勘違いするな。鬱陶しい
243名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:19:08 ID:NQQ326HN
批判すると必ず批判した事に対して怒る奴が出てくるのな。
気持ち悪い流れだ。
244名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:27:04 ID:j+DsZTQ0
>>243
>>241は批判と言うよりただの勘違い野郎。
てかそういう事書き込んでたらお前も同じだろ。
あとさっき回線落ちたっぽい。ID変わったかも
245名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:29:03 ID:9IEMhV/H
>>244
スルーで。
246名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:30:24 ID:NQQ326HN
>244
ほらな、絶対こういうのが出てくるだろ?
気色悪い。

なんつうか、北朝鮮の人民がみんなで将軍様をマンセーしてるみたい。
247名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:34:33 ID:e8igH+6Q
あのSSが長いだけのクソつまらんものであることは事実
いくら作者が自演してもこのじじつは変えられないなあ。
248名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:35:25 ID:NQQ326HN
>あとさっき回線落ちたっぽい。ID変わったかも

携帯からお疲れさんですw
自作自演大変ですねw
249名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:37:16 ID:88yrgB23
>>246
北朝鮮の人民が、とか言う奴のほうが気色悪いわ
250名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:39:18 ID:9IEMhV/H
>>249
スルーで。
251名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:45:07 ID:NQQ326HN
スルーで。 

って書く奴が一番スルーできてないね。
252名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:47:36 ID:NQQ326HN
なんか腹立ってきたな。

よし、じゃあ今日から毎日あのSSを批判する文章をここに書き込むことにするよ。
ホントはもうどうでいいかと思っていたが、どうやらこいつ等はSSを擁護することよりも、俺を叩く事の方が大事みたいだからな。

お前ら、ちゃんと俺をスルーしろよ?

「スルーで」とか書いてごまかそうとするなよ?w
253名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:53:54 ID:NQQ326HN
234 名無しさん@ピンキー sage New! 2008/07/08(火) 23:01:26 ID:trHnPOPI
>>167 遅ればせながらGJ!

そして、この静かで深い余韻を書ける才能に嫉妬。
いろいろ書かれてるけど、このスレでこれだけの反応が出ること自体、良作の証だよなあ。
なんと言うか、SSよりもオリジナルが読んでみたくなる作品でした。
次回作にも期待してますw

>この静かで深い余韻
安っぽい詩人が書きそうな表現www

>このスレでこれだけの反応が出ること自体、良作の証だよなあ
自意識過剰ですよwwwww
唯単につまらないからですwwwwwwwww

作者自演乙!
254名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:59:48 ID:If1IpyL1
>>252
どこかの将軍様みたいなお言葉ですなぁ
255名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:59:51 ID:6mWFBqsC
スルー出来ない馬鹿のせいで粘着が張り付いたな
256名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:00:07 ID:7Vc3AcGw
ヌルー。で
   ホ
257名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:00:17 ID:NQQ326HN
>254
スルーで。
258名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:01:26 ID:NQQ326HN
ちなみに擁護してる奴はたぶん一人。NAOTO2008。
ここ2、3ヵ月ずっとVIPの方でもこんな感じで粘着してる奴が居るから同一人物かと。
完全スルーでOK。
259名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:03:45 ID:If1IpyL1
そうか、お前がNAOTO2008か
260名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:20:29 ID:DZHEk1cg
ハルヒが輪姦陵辱されるSSマダー
261名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:23:55 ID:J8GsYp4F
ちなみに叩いてる奴はたぶん一人。
ここ2、3ヵ月ずっとVIPの方でもこんな感じで粘着してる奴が居るから同一人物かと。
完全スルーでOK。
262名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:24:29 ID:NQQ326HN
そうか、お前がNAOTO2008か
263名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 03:33:46 ID:w/L2s0YO
>>262
なんだ、悔しいのか?馬鹿に存在意義はないぞ?
264名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 04:27:58 ID:2QLCz7Ik
これだけ続いたスレだと保管庫で満足しちゃうな
265名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 05:20:38 ID:NQQ326HN
>263
どこぞの将軍様みたいな言葉ですなあ。
266名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 05:39:36 ID:NQQ326HN
ちなみに擁護してる奴はたぶん一人。
ここ2、3ヵ月ずっとVIPの方でもこんな感じで粘着してる奴が居るから同一人物かと。
完全スルーでOK。
267名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 05:42:40 ID:NQQ326HN
あのSS書いた作者
       ::                .|ミ|
       ::                .|ミ|
        ::               .|ミ|           ::::::::
         :::::     ____ |ミ|          ::::
           :: ,. -'"´      `¨ー 、       ::
   ::        /   ,,.-'"      ヽ  ヽ、    ::
   ::     ,,.-'"_  r‐'"     ,,.-'"`     ヽ、 ::
   ::   /    ヾ (    _,,.-='==-、ヽ         ヽ、   
   ::   i へ___ ヽゝ=-'"/    _,,>         ヽ 
   ::   ./ /  > ='''"  ̄ ̄ ̄               ヽ 
  ::   / .<_ ノ''"       ヽ               i
  ::   /    i   人_   ノ              .l
  ::  ,'     ' ,_,,ノエエエェェ了               /
    i       じエ='='='" ',              / ::
    ',       (___,,..----U             / ::
     ヽ、         __,,.. --------------i-'"  ::
      ヽ、_   __ -_'"--''"ニニニニニニニニヽ   ::
         `¨i三彡--''"´              ヽ  ::  
          /                      ヽ ::              ┼ヽ  -|r‐、. レ |
         /                     ヽ::            d⌒) ./| _ノ  __ノ
268名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 07:43:09 ID:AVBWqqy7
つまらなかったとかならわかるけど
作者は消えろとか自演乙とかそういうレスはスルーしとけよ
269名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 07:43:26 ID:Tuv6jWdL
佐々木ssはどちらかというと苦手なのだけれど、
続きを読みたいとこれだけ思えたssは、わたしとしては珍しい。
書く側は大変だとも思うし、これですでにテーマは出ているから、
結まで持って行くのは蛇足とも言えるのだろうが………読みたいです。

文化祭で長門さんと会っていたらどうなっていたのかなと思ったり。

それにしても憎ったらしいね、あっち側の未来人。
270名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 08:14:31 ID:BAynS5lZ
WEB7qEzo氏、おもしろくて一気に読んでしまった。
続きをwktkしながら待っています。
欲を言えばみくるが空気過ぎるんでもうちょい出番あげてw
271名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 10:15:09 ID:34xhKBNs
きんもー☆
272名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 10:55:20 ID:OPHYyKMg
-ここまで俺の自演-
273名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 12:21:13 ID:bxusT3Hw
夏か
274名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 12:46:16 ID:NQQ326HN
WEB7qEzo氏、つまらなすぎて一気に萎えてしまった。
続きを書くなら佐々木スレとかいう佐々木厨隔離スレがあるのでそこに書くかチラシの裏にでも書いてください。
275名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 13:16:58 ID:bxusT3Hw
>>274
取り敢えず死ねばいいと思うよ
276名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 14:44:02 ID:U2frleO8
つまらんのは同意だがここまで粘着する理由がわからん
277名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 14:55:31 ID:kdh0BpaP
みんな落ち着け。
とりあえず俺は濃いけど胸キュンってな感じのエロパロをいつも期待してマンモス
278名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 15:09:02 ID:OPHYyKMg
>>277時代を感じる
279名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 15:12:05 ID:mfoRGrZZ
最初にコピペ始めたのとはまた別人なんだろうなあ…
思いっきり頭悪そうだし
280名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 15:41:55 ID:kdh0BpaP
>>278
まじかorz
他のやつらはどういうのを求めてるんだろな
281名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 15:45:20 ID:OgzXdxrG
そこじゃなくてマンモスのほうだろ……
282名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 16:39:44 ID:+oJEYrSy
次に投下するやつは勇気がいるな
283名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 16:47:41 ID:mfoRGrZZ
そうか?
今投下したらよほど酷い作品でもない限りすごいGJの嵐になると思うぞ
とにかく空気を良くしたいと思う人が読まないうちから必死にGJ!!連呼してってくれると思う。ID変えながら何回も
284名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 17:07:14 ID:28cZsKLd
可能性高そうな予想だな。30%くらいか
まあ、今年それを言い出さなくても来年あたりにそれを言い出すのは確実だけどな
285名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 17:56:54 ID:5ZHc2IXY
朝比奈みるくウマー
286名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 18:12:50 ID:znPUbLu1
マイナーカプは荒れるから禁止にして、アナルあたりに行ってもらったら?
287名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 19:33:28 ID:D3FwvtE3
俺ルール押し付けるなでFA。
288名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 20:39:36 ID:nvf6bjoT
よく分からんがそういうの(ホモ)は801板でやってくれると助かる。
289名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 20:58:03 ID:OPHYyKMg
>>283
GJ。
今の内に出しとくぜ。
290名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:10:14 ID:p7J4DO5a
誰か気分を変えるエロパロを頼む
鬱なのは勘弁
291名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:35:17 ID:WkYvowdK
俺は鬱物結構好きだ
292名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 22:17:06 ID:9Lt4IwuQ
鬱物は大概ハルヒがどうこうされるからなぁ
無理だわぁ
293名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 22:31:35 ID:nvf6bjoT
敵対組織に捕まった森さん、
敵対組織に捕まった橘、
敵対組織に捕まったみくる、
とか
294名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 22:47:37 ID:OB4UHGML
どうせなら…ミヨキチ
295名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 00:03:13 ID:LLgvcC/9
車の中で藤原に悪戯されるみくるとか
296名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 01:25:18 ID:gmh1thwf
俺はハルヒがどうかなるのが一番鬱になるよ
でもそれがいい
297名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 01:32:12 ID:Biz2m98n
チンコがなくなる
298名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 03:07:18 ID:A5invz8v
じゃあみくるに悪戯される藤原はどうだね。
きょこタンに悪戯とか懐柔工作を受けるキョンでもいいぞ。
299名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:04:11 ID:7ZvOmlI2
>>293
> 敵対組織に捕まった橘、

採用。
300名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:44:59 ID:lEa70GL8
敵対組織って古泉のとこじゃないかw
あそこはコスプレ好きの変態が多いからなw
301名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:49:16 ID:WeMVH3cr
本当はもっと多数入り乱れてるような口ぶりだった

佐々木編にむけて宇宙人系も未来人系も超能力者系も2団体ずつ綺麗に揃えられてしまったけど
302名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 14:00:51 ID:X6sRbP1V
もういいよ、みくるがキョンに犯されて孕めば。
303名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 15:05:50 ID:4SnUOBRJ
なんだか鹿のミミとシッポを生やした小さな朝比奈さんを想像した
304名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 17:09:45 ID:J0Znd46B
可能性高そうな想像だな。奈良公園くらいか
まあ、今年それを言い出さなくても来年あたりにそれを言い出すのは確実だけどな
305名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:44:07 ID:TsfT4RVU
投下していいですか?
306名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:47:19 ID:TsfT4RVU
良さそうなんで、投下します。
307名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:48:17 ID:TsfT4RVU
「隣りにいっていいか?」
 自分のベッドに制服姿で腰掛けていた佐々木に尋ねた。
「いやだ、という理由がない」
 佐々木の照れ隠しの了解を得て俺が隣りに腰掛けると、ベッドが僅かに軋む。肩さえ触れ合うような距離だが、今の俺には絶望的な程遠く感じられた。
 もっと近くへ。
 その感情だけにつき動かされて、俺は佐々木の細く幼い首へと腕を回す。そっと、確かめるように唇が重なった。
 これがキスか。唇は柔らかく、ほんの少しだけ甘い。俺の腰は蕩け、頭の奥は微かに痺れそうになる。
 さらに奥へと侵入しようとする舌が閉じられた歯に拒まれた。
 俺はまるでノックでもするかのように立ちはだかる壁をなぞる。すると、佐々木は観念したように力を抜いた。
 細く震える舌先が佐々木の舌を絡めとると、くちゅくちゅと音を立てた。
 組み伏せるように蠢く口内とは別のところで魔の手が忍びよっていたことに佐々木は気付かなかった。
 俺は制服の上から佐々木の胸へと手を伸し、力を込めた。手のひらにすっぽりと収まりきる早熟の果実は、唇とはまた別の柔らかさでその形を変える。
「んっ……ふっ」
 繋がった唇の隙間から、吐息が漏れた。
 僅かに唇を離し、訊く。
「先にいってもいいか?」
「それも悪くないと思った」
308名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:49:26 ID:TsfT4RVU
 ムードもへったくれもない言葉が俺を安心させ、裾の方から肌を撫ぜるように右手を差し入れた。
「……やっぱり……怖い」
 肌理の細い絹のような肌が粟だっていくのが分かる。
 今度は俺が安心させる番だ。
「大丈夫。任せてくれ」
 その言葉に佐々木は僅かに身を震わせてから、こてんとベッドに倒れた。再び肌をなぞり始めた手がブラジャーの中へ忍び込むと、佐々木は固く目を閉じた。
「あっ……んっ」
 柔らかく力を込める度、先端の膨らみを摘む度に佐々木の口から声が漏れる。そのままセーラー服を捲り上げると、淡い色をした乳房が現れた。
 美しく、ぬらぬらと光る乳頭をそっと口に含み転がす。
「いっ……あっ」
 佐々木の声が大きくなるとともに、俺自身も快楽への焦躁が激しくなり、スカートの中へと手を入れてパンツを一息に脱がした。意外にも茂みの深いクレパスはぴったりと閉じている。
 どうすればいいんだろうか。扱いも知らず、勢いだけでここまできてしまったことに後悔を覚えた俺は動物的本能に導かれるまま口をつけた。
「ふぁっ」 
 ぴくんと佐々木の腰が浮く。
 その反応に安堵を覚えて、俺は舌先を動かした。
「あんっ……いっ……ふっ」
 口の中に唾液ではないさらさらとした液体が広がり、ことに至る決心がついた。
309名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:50:04 ID:TsfT4RVU
「佐々木。いいか?」
 こくんと赤らんだ顔が縦に振られた。
 財布に入れてあったコンドームをつけると、俺自身の先端をあてがい力を込める。
「つっ……」
 いくらか表情を歪ませた佐々木の中は俺の侵入を許さなかった。
 さらに力を込めても俺自身が力なく曲がるだけで、一向に入る兆しすらない。
「痛い痛い痛い……キョン……無理だよ」
「さきっぽだけだから! さきっぽだけだから!」
 土下座せんばかりに頼み込んだ俺を尻目に、佐々木はそそくさと服を直すと、
「もう……帰ってくれ」


 こうして俺の初体験は終った。
310名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 18:51:28 ID:TsfT4RVU
さきっぽだけだから!が言いたくて書きました。

スレ汚しすいません
311名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 19:08:25 ID:A5invz8v
この一個前の投下と同じぐらい長くしろとは言わないが、せめて現状の5倍は書いてきてくれ。
立つ物も立たないじゃないか。
312名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 19:15:20 ID:jnf9B+tj
これはこれでいいんじゃないかな?
短い美学というのもあろう
313名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 19:16:23 ID:iRiTop+J
落ちにもう一押し欲しかった
まぁ乙
314名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 19:59:11 ID:X6sRbP1V
更に鬱になるやつが増えるんじゃないか?ってSSありがとう
315名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 20:03:44 ID:2nva1C/Q
投下してくれてありがとう。
職人達にはそんな気持ちであるべきだ。
316名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 20:44:07 ID:iRiTop+J
>>315
死ね
317名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:05:04 ID:m5rTaP6F
>>315
賛成
318名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:40:31 ID:9AEr9nDV
先っぽ吹いたw
こういう小ネタもまぁ悪くない。オチが弱いのは同意w
319名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:41:59 ID:X3B6ZDfy
そういやキョンは佐々木のどこが好きになったのだろうか?
320名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:45:14 ID:Z5wpWnQP
人を好きになるのに理由がいるのかい?
321名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:46:55 ID:TsfT4RVU
>>318
勢いだけで書きましたから……許してくだしあ><
322名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 23:59:14 ID:DsCxhWQx
キョンがインポテンツになる話を考えてみたのだが
自分の文章力の無さに絶望した
SS職人の凄さがわかるね
323名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 00:10:33 ID:3GLTVbtd
でも書こうと思って行動してるだけでもいいと思う
324名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 00:18:43 ID:lD3IeERz
商業誌や新人賞めざしてるような人だと、そういう部分も大事。
もちろん、書き手自信がこだわりたければこだわってかまわない。
ネット上でアマチュアがSS楽しむ分には、不必要に文章作法に目くじらたてるのは無粋。
325名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 01:09:55 ID:oH6o1Q9S
>>315
間違いない(><)b
326名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 02:14:02 ID:NosP2Fes
ねみい
327名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 02:39:43 ID:NosP2Fes
VIPからようこそ、みなさん。
328名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 12:52:09 ID:UKVaCgZw
投下します。
鬱な展開もあるので嫌な方はスルーしてください。
329SS 枯れ逝く笹の葉 前編:2008/07/11(金) 12:53:30 ID:UKVaCgZw
市内某所会議室。
カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中、数人の男女が席についている。
どの顔もかなり緊張した面持ちで、この会議の重要性をうかがい知る事ができる。
「TFEI長門有希の容態は依然回復しないのですか?」
「回復の兆しはありません」
「他のTFEIの動向は?」
「TFEI喜緑江美里の消息も依然として不明。仮称・天蓋領域のTFEIについても不明のままです」
「憂うべき事態と言うわけですかな」
「あちらさんの組織の動向は把握できているのか?」

「みなさん。ここ事に至って、事態は急を告げています。いまや話し合いの時期は過ぎた、今こそ決断の時期と言えるのではないでしょうか?」
ざわめく会議参加者たち。
「僕は提案します。全面攻勢をかける時期かと」


枯れ逝く笹の葉 前編


某有名私立進学校に進んだ僕は、市外にあるという立地条件の為に電車通学を余儀なくされている。
まあ、北高に進んだ君のように毎朝ハイキングコースを満喫する羽目になるよりかは幾分マシなのかもしれないがね。キョン。
いつも通りの電車に乗り、いつも通りの駅で降り、いつも通りの学校へ向かう、いつもとかわらない登校風景、そのはずだった。

変化が現れたのは下駄箱で靴を履き替えたころから。
なぜか廊下のあたりが騒がしい。進学校では珍しい光景に分類される事になるだろうね。表向きはハイソなおぼっちゃんおじょうさまの学校なのだから。
廊下の掲示板コーナー付近に人だかりが出来ている。ふむ、何か大勢の人間の興味を引くようなものでも掲示してあるのだろうか?
「やあ君。何があったのかね?なにやら騒がしいようだが」
たまたま近くにいた男子に聞いてみたのだが、失礼な事にその男子は僕の顔を見た途端ギョッとした表情を残して、そのまま去っていってしまった。
はて、僕の男子に対する言葉使いに付いて疑問を持たれてしまったのだろうか。
僕は人込みの中をかき分けて掲示物を確認する事にした。
「…!」
絶句した。とは、こういうときに使うべき言葉だろうね。
そこに貼られていたのは、いわゆる売春的行為あるいは援助交際と呼ばれるべき行為が行われている写真の数々。
そして忌まわしい事にそこに貼られている写真の主は、僕だった。

授業開始のチャイムが鳴るその少し前になってようやく事態に気が付いた教師どもが、掲示板コーナーのあたりにやってきた。
追い散らすように生徒たちを教室へ誘導し、貼られていた写真を剥ぎ取り、僕の肩へ手を置いて、
「生活指導室へきたまえ。理由は理解しているね?」
と、宣告した。

言うまでも無いことだが、僕の身体は清らかなままだったし、最初の相手は出来ればとある人にしたいと願っていた。
だから、写真についてはまったく見に覚えの無いことで、捏造としか思えない。
と、教師どもに私見を述べたのだが。
「この写真とは別に、警察の方から資料がこの学校に提示されている」
初老の生活指導担当教師が、メガネのフレームを気にしながらそう言う。
「この資料によると、数日前に摘発された売春斡旋組織の所持していたリストの中に、ウチの高校の生徒とおぼしき人物が載っていたそうだ、
ちなみにリストの名前、住所、等のデータは君のものだった」

ありえない。
誰かに嵌められている。それを僕は確信した。
330SS 枯れ逝く笹の葉 前編:2008/07/11(金) 12:53:58 ID:UKVaCgZw
「本来ならば退学処分に相当するだろうと思う。しかし君は成績も優秀で授業態度も真面目な生徒だったようだ。内申書にもそう記載されている」
初老の教師は汚れた雑巾でも見るかのように僕を一瞥した後、
「よって、停学処分にしたいと思う。日数についてはおって指示があると思う」
進学校でこの処分は致命傷に等しい処分だと言えるのだろう。それにこの教師は言外に別の意味を含ませようとしている。
つまり、自主退学を僕に迫っているわけだ。

「今日はもう家に帰りたまえ。授業を受ける事が出来る状況では無いだろう」
そういい残し、教師どもは1人ずつ指導室から去っていった。
最後に1人だけ、まだ残っている教師がいた。教頭だった。
「君の対応によっては処分の再検討が行えるかもしれないよ」
教頭は僕の胸の部分と腰の部分をジロジロとギラついた眼で舐め回しながらそう言った。

こんなに早く学校から帰ることが出来るのは初めてのことだが、もちろん気持ちが晴れようはずが無い。
何者がこのような事態を引き起こしたのだろうか。
大体の予想は付く。しかし、これは君の指示ではあるまい。恐らくは君の側についているあの…

などと現状についての思考をめぐらせながら歩いていた僕の前に、いきなり黒塗りのバンが飛び出してきて、タイヤの音を軋ませながら僕の直ぐ前で停車した。
ドアがスライドして開き、中から少女が身を乗り出して手を差し伸べながら、
「乗ってください佐々木さん。事態は急を告げているようなのです」
そう言ったのは橘京子だった。

僕が乗り込むや否やバンは急発進し、制限速度を完全に無視して猛スピードで道路を走行した。
バンの中には橘さん以外にも数人の男達が乗り込んでいて、誰もが緊張した面持ちをしている。確かに、これは急を告げる事態というべきなのだろう。
「まず、落ち着いて聞いてください。わたしたちは攻撃を受けています」
確かに受けているようだね。僕も学校で手ひどいダメージを被ったよ。
「事態は更に深刻です、わたしたちの組織の基地のほぼ全てが攻撃を受けているの。この攻撃というのは武力を伴った攻撃と言う意味です。
その多くは音信不通になっていて、連絡がとれません。向こうの機関は早々に警察も消防もマスコミも押さえているみたい。迂闊だったわ、ここまでアイツが積極策に出てくるとは…」
九曜さんや藤原君はどうしているの?
「連絡が取れません。藤原君はいつものことだけど、九曜さんは…どうやら向こうのTFEIに攻勢をかけたみたいなの、わたしたちに連絡もくれず勝手にね。
今回の向こうの機関による攻撃の理由は、その報復処置の可能性が高いみたい」
僕達は今、どこへ向かっているのかな。
「わたしたちの基地の1つです。まだ攻撃を受けてない場所があるので、今は戦力をそこへ集中させているところなのです」
なるほど。僕の家に寄る余裕はなさそうだね。残念だ。
僕がそう言うと、橘さんは悲しそうな表情で、
「残念ですが、佐々木さんの家はもうありません」
…。
「大規模な火災が起きたのを確認できました。相手は消防組織に手を加えていて、消防車両の到着までにかなり長い時間をかけるように調整していたようです」
…そんな…。
「わたしの家族は!?父さんと母さんは無事なの!?」
思わず橘さんに掴みかからん勢いで尋ねてしまったが、どうかこの事については許して欲しい。この時の僕はそれほどまでに逼迫していたのだから。
橘さんは顔をうつむかせながら、
「まだ確認が取れていないのです。わたしたちの組織もかなりダメージを受けていて…」
そこまで言うと、橘さんは僕の肩に手を置いて毅然とした表情で、
「ですが、佐々木さんだけは絶対に守って見せます。わたしの命に変えても、あなただけは…」
橘さん…。
331SS 枯れ逝く笹の葉 前編:2008/07/11(金) 12:54:28 ID:UKVaCgZw
バンが着いた先は山奥のホテルだった。
いや、外見がホテルであるだけで中身は橘さんの所属する組織の基地とでも言うべき代物といえるのかも知れない。
ホテルの敷地内には男も女も入り混じって大勢の人がいて、そのほとんどの人が武器を所持していた。
武器の大半が自衛隊が装備している89式小銃やシグP220で、この武器がどこから流れているのか、おぼろげながら予測が付いた。
僕が敷地内に入った後も何台かバンが到着し、次々と武器や人員が強化されつつあるようだった。
今まで日本という国は平和ボケしている人間がウヨウヨいるぐらい平和なのだと認識していたのだが、どうやらその認識を改めなければいけないようだよ。キョン。

僕は今、ホテルの中の司令室ともいうべき場所に橘さんと共に立っている。
テーブルの上にはこのホテルと周辺の見取り図が広げられていて、到着した戦力の配置場所が書き込まれていた。
壁には一面にテレビモニタが敷き詰められていて、数々の監視カメラからの映像が映し出されている。
ざっと見たところ、100人以上の兵士が自衛隊の最新鋭の武器を持ち、この基地に詰めている事になる。
この部屋の中にも司令とおぼしき人や、通信のオペレータ、そして89式小銃を持った護衛の兵士などが大勢つめていた。
だが、周りの喧騒の様子をみていると、これでも安心できる事態ではないらしい。
次々と鳴る電話。飛び交う怒号。

と、突然。部屋の電気のいくつかが消え、テレビモニタの半数が映らなくなった。
一瞬の恐慌状態に陥った後、
「自家発電に切り替えて!急いで!」
誰かの叫び声でみなが我に帰り、次々とテレビモニタが復活していく。
そのうちの4台ほどが、電源復旧後もそのまま映らなくなっていた。ホテルの西側外を映しているはずの監視カメラのものだった。
護衛の兵士たちが、室内戦闘用にカスタマイズされた89式小銃のフォアグリップを握り締めるのが見えた。

橘さんが大急ぎで僕のところに来て、覚悟を決めた瞳で僕の事をみつめている。
腰につるされたホルスターにS&WM36のリボルバーが収まっているのが見えた。
「どうやら敵の攻勢が開始されるようなのです。ですが、落ち着いてください。現在の兵力なら十分持ちこたえられるはずの…」
そこまで彼女が言った時、もの凄い爆発音が轟き、僕と橘さんは床に叩きつけられた。
まるで近距離に落雷でもしたのかというぐらいの轟音が、数秒おきの間隔を置いて鳴り響き、ホテルの壁がミシミシと揺れた。
「榴弾砲による攻撃を受けている模様です。距離、位置共に不明!」
榴弾砲…。
「床に伏せて耳を両手で塞いでください!口を大きく開けたままにしておいて!」
轟音の合間に橘さんが叫んでいるのを何とか聞き取る事が出来、僕は言われた通りにそれを行った。実際、そうしなければ鼓膜を破かれていたと思う。
次々と降り注ぐ榴弾は155mmクラスの物らしく、このホテルの耐震設計がどの程度かは知らないが、この部屋に直撃を受ければ即死は免れなかっただろうね。
しかし、いくら山奥離れたホテルとはいえ、ここまでの事をしてその事実を闇に葬るだけの情報操作を、向こうの機関とやらはやってのける事ができるのだろうか。
だとしたらこの国のメディアはもう完全に死んでいると思うね。
壁を覆っているテレビカメラは次々と沈黙していき、生き残っている物にも凄惨な外の現場が映し出されていた。
ゴミくずの様に人が吹き飛ばされ、引きちぎれ、消し炭と化していた。
爆発で出来たいくつものクレーターがカメラに映っている。
あまりの出来事に、吐き気すら湧いてこなかった。カメラの向こうで、何人ぐらい死んだのだろう。
これこそが俗に言うテレビゲーム感覚というやつだろうか。
しかし、この茫然自失の状況を、短絡的にそう呼ぶのはあまりにも残酷だとは思わないかい?キョン。
332SS 枯れ逝く笹の葉 前編:2008/07/11(金) 12:55:13 ID:UKVaCgZw
「被害状況は?」
「第1、第4、第5、小隊応答無し!」「偵察小隊3つとも連絡取れません」「中隊司令部にも直撃を受けたようで、外の様子が…」
「外部との電話回線、全て不通です。有線、無線とわず全て!」
現状はどう控えめに表現しても大混乱というべきものだった。
組織的な反攻だとか、指揮伝達能力の維持などという事は、早々に放棄した方がよさそうだった。
やがて大気を叩く、バタバタという音が連なって聞こえてくるのが解った。
空港などで、この音に似た音は聞いた事がある。
かろうじて生き残ったカメラに映っていたのは、陸上自衛隊の対地攻撃ヘリ、ヒューイコブラの編隊だった。
十分持ちこたえる事が出来る、橘さんはそう言った。だけど僕にはそうは思えなかった。

ここまでくれば、この基地がこれまで攻撃を受けずに残っていた事自体がワナだったのだということに、僕ですら気が付いていた。
要するにここは屠殺場なのだ。ここに組織の生き残りの部隊を集結させ、一気に殲滅するためにわざと残されていたらしい。
ヒューイコブラは情け容赦なくロケット弾やTOW対地ミサイルをぶっ放し、ホテルに次々と風穴を開けていった。
ときおり、散発的な反撃がヘリに対して行われているようなのだけど、地上用の小火器ごときでヘリに対抗など出来るわけが無く、
要するに、僕はここに居るから、どうぞ殺してくださいと言っているのと同義な物だった。
発砲のあった場所へは連携して攻撃が加えられ、瓦礫とちぎれた人間の身体の一部が宙に舞い踊った。
ロケット弾とミサイルを撃ちつくしたヒューイコブラは、攻撃方法を20mmガトリング砲の機銃掃射に切り替えたようで、変質的なまでに念入りに地上に掃射を加えているようだった。
この状態で、外にいて命のあったものが、まだいるとは思えなかった。
僕達がいる部屋も壁や天井が崩れ落ち、何人もの人がそれの下敷きになって死んでいた。
僕はその事実に気が付いた時になって、始めて吐いた。

やがてヘリは去り、一時の静寂がホテルに訪れた。
橘さんは壁の下敷きになっていた人を助けようと努力していたが、既に死んでいる事は明らかだった。
救出を諦めると、床に吐瀉物を撒き散らしている僕の所まで来て、
「今のうちに脱出しましょう。さあ、こっちへ」
僕の手を掴んで無理に立たせると、何人かの生き残りと共にホテルの残骸を乗り越えて、外へ向かう。
しかし、ここまで用意周到な相手が、そんな事を許してくれるわけがないだろうという事ぐらい、理解はできていた。
瓦礫を乗り越え、中庭あたりに出たところで、半壊した門をくぐって89式装甲戦闘車が35mm機関砲を威嚇射撃で派手にぶっ放しながら登場したのを筆頭に、
次々と自衛隊の高機動車や軍用トラックがやってきて89式小銃を片手に兵士たちが何人も降りてきた。
手を上げて降参する以外に、僕達に選択肢があったと思うかい?
333SS 枯れ逝く笹の葉 前編:2008/07/11(金) 12:55:33 ID:UKVaCgZw
兵士たちに銃口でこずかれながら、武器を取り上げられて手錠をはめさせられた僕と橘さんは、高機動車に乗せられて再びドライブをする事になった。
降伏させてくれただけ、僕たちはまだ幸運だというべきなのだろう。
武器も捨てて命乞いまでしている人間を、容赦なく射殺していたのが去り際に視界に入っていた。

車に乗せられた後、僕と橘さんはロープで身体を縛られて目隠しを付けさせられた。
目隠しを付ける際の、兵士のギラギラした下卑た眼が網膜に焼きついていた。
あの生徒指導室で最後に教頭が見せた眼と、同じ眼をしていると僕は感じたよ。

「な、何をするんです!止めてください!」
橘さんの逼迫した声…。
戦争行為を行って高揚した兵士たちが次に求める一手というわけだろうか。なるほど戦場に売春婦は必要になるわけだ。
「こっちの娘は俺が貰っていいのか?」
「いや、そいつには手を出すなといわれている」
「ならしょうがねえ。ねえちゃん1人でみんなの相手をしてもらうぜ」
「やめて!ダメで…いやああっ!」

延々と続く橘さんの悲鳴と男たちの下卑た笑い声。
目隠しで外は見えないが、先ほどのホテルとはまた違う、地獄絵図だと思った。
いつの間にか、僕は目隠しの下で涙を流していた。

だがね、キョン。こんなのは、今後僕たちの身に降りかかったことに比べれば、序の口と呼ぶのも恥ずかしいぐらいの些細な出来事だったよ。
僕が君に再び出会うまでに、どのような事をされたのか、それについても聞いてくれるかい?

つづく
334名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 12:56:14 ID:UKVaCgZw
以上です。
続きは近いうちに。
335名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 13:51:02 ID:wgHrTE+W
またコピペか?
336名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 13:59:54 ID:c0SOvgWI
乙だが
エロパロスレなので、せっかくのレイープやられているという設定なら、エロエロレイープシーンをエロく詳細に描いて欲しい
337名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 14:33:46 ID:o3rDXNk7
しかしエロパロ板だからと、とってつけたエロシーンもどうかと思わなくもない。
あ、いや待て、後編がまだあるじゃないか。
338名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 14:38:48 ID:BQzazMnz
何故にこの佐々木はやたらと銃器に詳しいんだね。
339名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 15:05:11 ID:tcKYHnXR
そうそう。
89式小銃、シグP220、S&WM36のリボルバー、榴弾は155mmクラス、ヒューイコブラ、TOW対地ミサイル、20mmガトリング砲、89式装甲戦闘車。
ミリオタの意見が聞いてみたい。
エヴァの映画のネルフが自衛隊に壊滅されるイメージで読んだ。
340名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 15:26:30 ID:15NBzCZD
隊員が89式で武装するのは判るけど、なんで拳銃を持つのか判らない。
そんなに89式て浸透していなかったっけ?
持つなら後は64式じゃね?
多分、腰のホルスターに納まっていたであろうM36。
官製支給品のホルスターだろうからグリップぐらいしか
判断出来ないのによく判別つくねー

日本の自衛隊には9mm拳銃は在るけどSIG220は無いから…どっかのテロリストですね
341名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 15:47:02 ID:BQzazMnz
>>340
J隊については全然詳しくないんだが、P220は一部の自衛隊で支給されてるとか聞いた。
あと、P220は9mm。

武器の名前だけ出しときゃいいや。という感じの、いかにもなB級感漂う前編だった気がする。
ツッコミいれるのもメンドクセーが、この文体と文章力でエロいSSが出てくるのか不安になっている。
342名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 16:40:30 ID:y0cK7/gO
佐々木厨が早速ダメ出ししだしたか。
343名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 16:43:47 ID:QTPdkbq1
一個前のクソ読みにくい奴よりマシじゃね?
何にせよ続きに期待する
344名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:17:11 ID:15gPz2kx
一応確認しとくとP220をライセンス生産したのが9mmけん銃
んで、ここ最近はJ隊も市街戦意識し始めたから今まで幹部や戦車兵とかだけだったのが
一般隊員も拳銃をサイドアームとして装備し始めてる 
ごめんね、ミリオタがでしゃばって
ぶっちゃけ普通の小説に細かい武器名とか要らないような気がする
んで、それを一般人の登場人物に言わせると違和感有りまくりだよね 
トムクランシーシリーズとかなら別だけど
345名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:28:44 ID:iIAcoCRh
重箱のスミをつついて自慢げに語るのがいかにも軍オタぽいな。
俺は名前が出てくる方が雰囲気が良くなると思うけど。
346名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:33:19 ID:lEeEGTpv
名前を出しても大半の人はピンとこないもんだ。ハルヒで軍事描写を求めている人なんて皆無だろうしな。
89式なんて名称を出さずに、自動小銃って方が伝わりやすい。
347名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:45:45 ID:d2CpqXGp
自動小銃ってなに?マシンガンみたいなの?

あと参考までに聞きたいけど佐々木が銃に詳しい以外に軍事的におかしい所ってある?
素人の俺にはこういうもんかとしかおもえなかった
348名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:57:08 ID:AOEXpXg8
一応確認しとくとP220をライセンス生産したのが9mmけん銃
んで、ここ最近はJ隊も市街戦意識し始めたから今まで幹部や戦車兵とかだけだったのが
一般隊員も拳銃をサイドアームとして装備し始めてる 
ごめんね、ミリオタがでしゃばって
349名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 19:12:20 ID:2sv3MJ3M
ミリオタと街宣車は似ている
350名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 19:24:26 ID:15gPz2kx
まぁ、ミリオタなんて自分の知識ひけらかして
優越感に浸りたい連中の集まりみたいなものだから
俺含めて
351名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 19:45:22 ID:qMxHaBzC
ぶっちゃけると佐々木スレ逝って叩かれてこい
352名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:20:13 ID:BQzazMnz
>>350
いや、SSについてマジメに駄目出ししてるつもりなんだが。
ようするに、知識が正しいのかどうかもわからんような人間に、
横槍突っ込まれてあーだーこーだ言われるぐらいなら、
中途半端な要素は切って捨てた方が、読みやすいし内容に説得力も出るっしょ。

というか、自分の知ってる武器名ひけらかして、
優越感に浸ってると思われるようなSSはどうかと。
353名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:32:27 ID:k7WWkQ/+
なんだ只の釣りか
354名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:43:47 ID:szhnGY9s
アスタの人の投下が終わってからこれまでの流れで、もうここが完全に見るに値しないスレだと悟った
もうこのスレは新参の人間で進めてもらうとして、あっちをそれ以外の人にとっての本スレすればいんじゃね?
355名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:51:32 ID:2sv3MJ3M
お好きに
356名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 20:51:49 ID:o3rDXNk7
>>354
まぁまともな住人はわざわざ餌を与えたりせずにちゃんとスルーしてるからね。
だからそう見えるんだろう。

>>346
あ〜そういやバイオハザードも1以外はハンドガンとかマグナムになってたな。
357名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:12:39 ID:9jTmUH2z
佐々木厨は佐々木がゲロ吐くシーンが気に入らなかったんだろ。
あれのどこに優越感を感じるのかサッパリわかんね。
358名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:39:24 ID:J39sY6OP
アスタの人の投下が終わってからこれまでの流れで、もうここが完全に見るに値しないスレだと悟った
もうこのスレは新参の人間で進めてもらうとして、あっちをそれ以外の人にとっての本スレすればいんじゃね?
359名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:40:53 ID:3GLTVbtd
また出たw
360名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:54:12 ID:lD3IeERz
軍オタSSかと思ったら
その手の連中からしたら駄目な作品だったらしいw
361名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 01:07:30 ID:0gaousnj
いや、装備品も違和感ないし
戦術も火砲で耕して騎兵で制圧して歩兵で占領という基本的なながれで問題はない。
にわか軍オタが自衛隊にP220が無いとか頭の悪い事を言ってるだけだ。

それよりも、読むのもマンドクセとか優越感に浸ってるとか叩き方が酷すぎだ。
よっぽど性格の悪い奴がいついてるみたいだなここは。
362名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 01:09:06 ID:rbxRZCOK
ここからミリオタの醜い争いスレ
363名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 01:57:12 ID:D5hqbN8B
>>361
一応確認しとくとP220をライセンス生産したのが9mmけん銃
んで、ここ最近はJ隊も市街戦意識し始めたから今まで幹部や戦車兵とかだけだったのが
一般隊員も拳銃をサイドアームとして装備し始めてる 
ごめんね、ミリオタがでしゃばって
ぶっちゃけ普通の小説に細かい武器名とか要らないような気がする
んで、それを一般人の登場人物に言わせると違和感有りまくりだよね 
トムクランシーシリーズとかなら別だけど
364名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 02:16:39 ID:SuMK+N3q
まあ落ち着けよ
365名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 02:40:42 ID:+6FJUccL
>>361
いや、戦術とかそういうのどうでもよくね?
ここながるんSSスレであってミリタリーSSスレじゃないし。
俺みたいな兵器の名前なんかどうでもいいと思ってる人間には、
延々と武器の名前書かれたところでハァ?としか思えない。
366名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 02:54:10 ID:GBjfX2RX
もう、なんでベッドの上ではMなあたしのSSが降ってこないのかしら!
キョン、あんた書きなさい。いつも見てるからわかるでしょ!
367名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 03:37:30 ID:0gaousnj
「キョン、君は知らないだろうけどね、僕には人には言えない隠れた趣味があるんだ。
僕の勘なのだが、今の音はS&WM37エアウエィトだと思うんだ、素人の君にはM36チーフスペシャルとの音の違いが解らないかもしれない。
だがね、アルミフレーム化して軽量化させたM37は少し残響音が違うんだよ。ステンレス製モデルのM60とも違う」

解ったから佐々木、ちょっと黙ってろ。
368名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 04:21:45 ID:QZVAUuHY
必要ない薀蓄をあとからはじめるのは いろんな意味で無用な人だからこそ。
つまり、みすぼらしい自分を飾ろうとしてそうするんだな。それを匿名掲示板でやるのは、さらに底辺だから。

そういうのを目にしたら、自分より下がいると思って歓迎するのがいい。
369名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 04:33:24 ID:HvluBQfA
そういうお前が一番の底辺だな
370名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 04:43:39 ID:0gaousnj
過去スレ読んだけど、読めば読むほど腐った馬鹿しかいないなここは
だれがこんなところに投下してやるもんかって気になるね。

投下してるのは真性のマゾだろw
371名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 05:04:05 ID:QZVAUuHY
>>369
特に軍事ネタは、おおいに内容にもよるが、意思が弱く人に頼られないような人が好む傾向があるのね。
その能力のなさを自覚しているから、逃避先として見た目の厳ついモノにすがる。
いざというときほど役に立たないタイプというか。
372名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 05:07:28 ID:0gaousnj
で、そういうお前さんは匿名掲示板で偉そうな文章を書き込んで現実から逃避してるのか。
なるほど、お前が一番の底辺だな。
373名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 08:58:23 ID:MMlN+8iv
今年も夏が来たか。
374名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 10:56:06 ID:+6FJUccL
つまり、現実で立派な人ってのは、
特命掲示板にSSが投下された後に、どこをどうしろなんて意見は絶対述べないというわけか。
バカじゃねーの。
375名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 12:04:16 ID:DUD0owjC
特命掲示板てらかっこよす
376名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 13:36:15 ID:lBK4XIIg
現実で立派な人は、そもそもこんな所に来ない
377名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 14:14:56 ID:GBjfX2RX
●<スレの雰囲気が良くならなければ、SS投下は凍結してしまうのです。
  んっふ、困ったものです。
  その作者は、このスレの流れを自分にとって面白くないものだと思い込んでいる。
  これはちょっとした恐怖ですよ。
  どこから〜(ry
378名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 14:53:52 ID:Lz2wy4nt
いや、装備品も違和感ないし
戦術も火砲で耕して騎兵で制圧して歩兵で占領という基本的なながれで問題はない。
にわか軍オタが自衛隊にP220が無いとか頭の悪い事を言ってるだけだ。
379名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 15:06:44 ID:oUE4XHyE
それでも今の流れは正直酷いもんだ
野郎の枝毛くらいどうでもいい話を延々聞かされるのはたまったもんじゃない
SS投下すると至近距離で肥溜めにボウリングの玉投げ込む気分になりそうだ
380名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 19:35:30 ID:ywHbHULX
04/01は本当に荒れに荒れた
まず日が変わったとたん朝倉SSの乱稿
ネタか真性かわからん稚拙な内容のSSで無駄に、そしていたずらにレスとスレ容量が失われる
そしてこれまた要領の得ない評論会
糞コテとそれにいちいち群がるバカども
春の陽気に当てられたか?
そしてエイプリルフールが許される午前ギリギリに意味のわからんネタにマジレス
なにが「ここはSSスレの中でも屈指のSS職人が集い投稿する場所」だ。寒いんだよ
しかもそれにいちいち反応し他スレにまで迷惑かける馬鹿
ようやくひと段落したと思ったら最初の三行で読む気のそがれるクソSSが投下され
04/01最後のレスは「久しぶりに1000行くね」というチラ裏かつ味気ない一行レス

結局2008/04/01はエイプリルフールネタのSSも投下されず春の陽気に当てられたお祭り気分の住民たちが他人を罵りあって終わるという悲惨な日となった

そして今日初めてのレスは少ない頭で考えた糞つまらないコピペをはやらせようと必死に頑張ってるキチガイ
このスレにはもはや未来も希望もないな
381名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 20:10:50 ID:gPdCc6XX
こりゃまた綺麗に詰め込んだなw
382名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 21:15:42 ID:0gaousnj
金払って読んでるわけでのも無いのにSSの出来が悪いのを偉そうに指摘できる神経をまず疑うよ。
で、偉そうに指摘してるそいつがたいそうご立派なSSが書けるかといえばもちろん書けるわけが無い。
そもそも相手とマトモな会話すら成立させる事に出来ない奴に相手を納得させれるSSなんて書けるわけが無いからな。
383名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 21:21:40 ID:cfcFTR7c
もういっそのこと作品に批評すること自体禁止しちまえばいい
384名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 21:24:46 ID:WQq3EiL5
もういっそのこと作品の投下以外禁止しちまえばいい

……とかなるよ
385名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 21:32:21 ID:sNecoSvd
>>382
どんな荒らしよりもタチが悪いのがこういう熱血馬鹿くんだったりする
386名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 22:10:04 ID:hhh2KPnp
まぁ、ここまでが俺の自演なワケなんだが…
387名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 22:28:39 ID:SoIRZATA
よし、一段落したしみんな落ち着こう
言いたい奴には言わせておけ、基本スルー
そうすれば何にも問題はないはずだ
388名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 22:30:27 ID:F9bKA0uc
「遅れたら死刑よ!」っていうのはちょっと可愛いけど

「遅れたら私刑よ!」だったらちょっと怖い
389名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 22:48:21 ID:MoVT19Nq
逆じゃね?
390名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 23:03:45 ID:oUE4XHyE
>>388
腹ペコなキョンを椅子に縛り付けて手作り弁当を
キョンの目の前で無茶苦茶美味しそうに食べるのだが
可愛そうになって文句言いつつ殆どキョンに
手ずから食べさせてしまうハルヒを想像してもうた

うん、私刑怖い、ついでに饅頭怖い
391名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 23:23:47 ID:0gaousnj
で、投下されたらされたでまた罵倒の嵐か
392名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 23:41:55 ID:frLeTnnp
>>388
私刑だと現実味があるというかなんというか…
393名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 23:46:12 ID:MoVT19Nq
キ「朝から何も食ってないんだ。一口でいいから分けてくれないか?」
ハ「いやよ、といいたいところだけどお腹をすかしたあんたがよそで迷惑かけないとも限らないしね。一口だけよ。」
キョンの口におかずを運ぶハルヒ
キ「助かったぜハルヒ。それにしてもこのオムレツ美味いな。」
ハ「当たり前でしょ、私が作ったやつなんだから。じゃ次はこれね。」
キ「む、この煮物も味がよくしみてるな。おふくろの味って奴か。」

国「相変わらず仲がいいねあの二人。」
谷「あれでもあの二人付き合ってないと言い張ってるらしいぞ。」
阪「涼宮さんもいい加減認めちゃえばいいのにね。」
394名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 00:05:45 ID:TiBhYAUj
>>382
同意。
職人が投下してくれなくなったらどうするつもりなんだよ。
批判する奴らにもうちょっと考えてくれと言いたい。
395名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 00:46:55 ID:UXIwNWi9
>>394
無理。
職人からもクレームが付いても無視してきたんだ。
自分が神になったとでも勘違いしている奴がいる内は、批判はずっと続く。
396名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 00:53:23 ID:u2K2bY1T
むしろスルーできない奴が居る内は
じゃね?
397名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 00:54:32 ID:c6nCk6LZ
SS投下=荒れるっていう状況がこうも続くと、まるで投下自体が荒らし行為に感じられるだろ。
398名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 01:58:05 ID:u0JyR2mG
このスレでの批判ってのは本来SS職人との切磋琢磨により
より良い作品を創作する手助けとするべきはずなのだが
いつの間にか叩く為の批判
自分の意に添わないから批判
批判の為の批判に堕してる
何故このスレに来たのかもう一度考えてみない?
自分は面白いSSに出会いたくてここを覗くようになったんだけど
みんなは違うの?
399名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 02:55:57 ID:03jwFrGj




       みんなは違うの? (笑)



400名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 03:11:43 ID:K/MHcjzI
このスレも400まで来たけどいまだ良質なエロ作品は1個も出てきてないね。
401名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 03:28:35 ID:JWJAPbYx
まあ上の奴みたいのが荒らしてるのも影響してんでないの?
402名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 06:18:33 ID:h+1U1MRr
金払って読んでるわけでのも無いのにSSの出来が悪いのを偉そうに指摘できる神経をまず疑うよ。
で、偉そうに指摘してるそいつがたいそうご立派なSSが書けるかといえばもちろん書けるわけが無い。
そもそも相手とマトモな会話すら成立させる事に出来ない奴に相手を納得させれるSSなんて書けるわけが無いからな。
403名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 07:04:43 ID:FHTur3ue
>>402を要約すると、
他人の批判をしたければ、金払え。
立派な文章を書けない奴が、文章の批評をするな。
相手と会話のできない奴が、相手を納得させれるわけがない。
すなわち、ただの自分語りでした。
404名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 07:10:38 ID:n/AxudSJ
もう評価以外はスルーでいいよ
405名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 08:51:20 ID:NfsJzuS/
>>403
って言うコピペ
406名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 13:01:35 ID:K/MHcjzI
ここにいるのは他人を馬鹿にすることでしか自己表現できないキチガイだけ。
407名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 13:51:15 ID:9+7m9zjH
鏡見て言ってくれ
408名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 15:03:47 ID:woL/J9y2
やれば出来る子。ちょおカッコイイ。あと寡黙な眼鏡娘が頬を染めながら入部届けを渡してくるに違いない。
409名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 19:29:58 ID:ggHEGDHC
>>408
BL腐女子
410名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 00:08:53 ID:kUmiDNFS
後半のエロ頑張って欲しい。
前半の雰囲気も悪くはないんだし。
411名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 00:13:42 ID:fczxjeM9
テンプレのどこにもエロなしは駄目と書いてないんだが
412名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 00:35:35 ID:mJPXr5rE
二行で輪姦される橘さんカワイソス
413名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 01:47:38 ID:rJVsSn4i
おっと今度は、このスレが輩出した神作群まで批判し始めたー!
414名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 02:55:35 ID:hCHuH/6x
>>413
テンプレのどこにもエロなしは駄目と書いてないんだが
415名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 08:57:00 ID:g0LSQGm/
何かここ数行の会話が意味不明なのは俺だけ?
416名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 09:56:51 ID:HvnMQRDe
>>415
このスレには定期的に、スレ内の言葉をコピペしまくるキチガイが居着いてるのを知らないわけではないよな?
彼は毎日がエブリデイで、暇を持て余してるんだ。
417名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 10:05:22 ID:g0LSQGm/
>>416
いやー、悪い、最近越して来た新参なもんで知らんかったわ
そりゃ会話が成立してないように見える訳だ

305 :足元見られる名無しさん:2008/06/25(水) 21:04:28 ID:7ue7FowZ
けっこう古い知り合いに半引き篭もりみたいな奴がいたのだが
人に会うのが嫌なくせに一人は寂しいみたいで
自分が一人じゃないってのを確認する為に手当たりしだいに
2CHに書き込みしてた、で、その書き込みにレスされると嬉しいらしく
その内煽りや荒しみたいのでもとにかくレスされるのが目的になっちゃって
止まらなくなっちゃってたみたい
まあ当然のごとくその内アク禁くらって書き込めなくなって
俺にメールで愚痴ってたな
しばらくしてそいつ自殺した
人間ってホント一人じゃ生きていけないんだな〜って思ったよ
あいつに串の刺し方でも教えてたらまだ荒しやりながら生きてたのかな?
って時々思うな、未だに

この中の自殺した奴みたいなのが常駐してんのね
418名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 13:47:10 ID:T/kgVdpJ
そんな話持ち出してくる奴も、荒らしと大して変わらないよ
もちっと考えて書き込もうぜ
419名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 14:25:27 ID:u8kWZxUB
>>416
釣りだとは思うが一応突っ込んでおく。
毎日がエブリデイってお前。
420名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 15:00:37 ID:bU87dCRl
>>419
いやー、悪い、最近越して来た新参なもんで知らんかったわ
421名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 15:01:59 ID:g0LSQGm/
>>418
あー、すまんすまん
前から掲示板で理解できないレスする奴の行動原理が分からんかったのだが
その分かりやすい例えがこれだったのでついコピってまった

422名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 16:07:22 ID:oeR0oBOO
>>419
単に間違えただけだろ。>>416はきっとこう言いたかったのさ。
「毎日はいつにも増してストライク」
423名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 17:51:25 ID:t+65n5+8
何かここ数行の会話が意味不明なのは俺だけ?

























424名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 18:41:36 ID:wP2aGipO
>>422
懐かしいな
425名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 21:29:57 ID:laqrXWds
続きを投下します。
鬱な展開もありますので、不快に思われる方や詰まらなく感じる方は、スルーしてくだされば幸いです。
426SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:30:45 ID:laqrXWds
橘さんがあげる悲鳴と、健気にも抵抗する物音と、周りにいる兵士たちの下卑た笑い声。
目隠しをされ、身体を拘束されている僕には外の様子が音でしか伝わらなかったが、ある種の地獄である事は容易に想像が付いたよ。キョン。
「いや!やめてください!」
「うるせえな、暴れんなよ!」
鋭い乾いた打撃音。多分平手打ちだと思う。
それから橘さんの上げる悲鳴は、嗚咽を交えたか細い物に変わった。
「あ…うっ…あっ…」
「なあ、向こうのねえちゃんもやっちまおうぜ」
「本部から手を出すなといわれている」
「なあに、触るぐらいならかまやしないって」
背中から僕の胸に野太い腕が回されるのを感じた。
「へっへ…」
そのまま制服の上から、無造作に両胸を揉み上げられた。


枯れ逝く笹の葉 中篇


僕は顔を背けて必死になって声を上げるのを我慢した。
目隠しを付けられているから、相手の顔すら解らない。
そんな相手になど、声を上げたくなかったからだ。

「こいつらの制服って、あの有名進学高の奴だよな」
「ああ、確かそうだぜ」
「お高く留まったお嬢様か。いいねぇ」
スカートをゆっくりと持ち上げられたのが感じられた。
「さすが、お嬢様は清楚な下着をつけておられる」
内腿から股間の付け根まで、がさついた手が何度も往復し始めた。
そのザラザラした感覚に、身体中に鳥肌が立ちそうになる。
やがて僕の秘所を守る布切れに兵士の鼻息がかかり…、
べろっと生暖かいもので舐められた。舌だ。
「…くあっ!」
すまない、声を上げてしまった。でも止めようがなかったんだよ。キョン。
「いま、ビクンって震えたぜ、こいつ」
兵士は何度も繰り返してショーツ越しに僕の秘所を舐め上げ始めた。
僕は声を噛み殺しながら、その感触から逃れようとしたのだが、兵士たちにとってそんな僕の姿は余計に嗜虐感を煽るだけのものでしか無いようだった。
僕の胸を揉んでいた兵士が、胸のかすかな変化について、目ざとく気が付いたようだった。
「乳首が、硬くなってきてるじゃねえか」
そう言いながら、制服の上からその部分ばかりを指の腹で円を描くように転がして、僕から快楽を引き出そうとする。
ショーツ越しに僕の秘所を舐めあげていた兵士が、ショーツを指でずらすのが感じられた。

目隠しをされている事が、こんなに恐怖感を生むとは、今になって僕はそれを思い知らされたよ。
427SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:31:52 ID:laqrXWds
そしてヌメヌメした舌が、僕の秘所を直接舐め上げ始めると、僕はもう声を押し殺せなくなってしまった。
「あはあっ!…くっ…あああっ!」
舌と指の動きが徐々に加速されていき、簡単に僕を快楽で追い詰めていく。
こんな奴らに逝かされるのは、悔しくて仕方が無いが、でも止める事は不可能だった。
「かはあっ!」
僕は電撃を浴びたかのように身体を弓なりにそらせ、初めて他人の手によってもたらされる絶頂に咽び泣いた。
涙が次から次から溢れてきて、止めたくても止まらなかった。
「泣くほど気持ちよかったのか、ええ?」
ざらざらした熱い物が僕の唇に押し当てられた。……唇を奪われた、と気が付いたのはほんの少し経ってからだった。
これが僕のファーストキスさ、キョン。相手は顔もわからない下卑た兵士。哀れんでくれてもかまわない。

口内にナメクジのような物が侵入し始めた。
僕のファーストキスの相手の舌だった。
その舌が僕の歯や歯茎を舐め上げて、臭い唾液を塗りつけていく。
僕はそいつの舌を噛んでやろうかと思ったが、再開された胸と秘所への愛撫の前に、それは困難な事となった。

「さ、佐々木さんに手を出さないで!佐々木さんはっ!」
橘さんの声が遠くに聞こえる。
「うるせえぞ、この女!」
再び、鋭い乾いた打撃音。3〜4回続いた。

僕は口内で舌を陵辱されていた。
兵士の舌が、ついに僕の舌を捕らえると、執拗に舌を絡ませて弄り上げてきたのだ。
「んーっ!…んっ…んんーっ!」
臭い唾液が喉に流れるたびに、僕は吐きそうになった。

秘所を直接舐めていた兵士が、僕の秘所を指を使ってグイッと開いたのが感じられた。中を直接見られるのが、どれほど恥ずかしいか。男の君には解らないかもしれないな。
「いい色してやがる…全然使い込んでねえな」
ぬるっとした舌が、僕の中に入ってきた。
中を直接舐め上げられる、おぞましい感覚。
そう、これはおぞましいんだ……絶対に…それ以外のものなんかじゃ…ない…。
「んんっ!…ん、ん…」
「そう我慢すんなよ。お前も素直に楽しんだらどうだ?」
兵士どもの僕を責める手や舌が、さらに大胆な動きになって行く。
「んふっ!…ん、んんんっ!!!」
僕はあっという間に2回目の頂上を迎えさせられたよ。
428SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:32:27 ID:laqrXWds
僕の口を長い事塞いでいた兵士がようやく口を離した頃には、僕はもう肩で息をついて荒い呼吸をするようになっていた。
「さて、そろそろお穣ちゃんに俺たちの方を気持ちよくしてもらおうか」
何か、熱いものが僕の唇に押し当てられた。鼻をつく、ツーンとした汗臭い匂い。
「い、いやあああああっ!!」
思わず叫び声を上げて顔を背けると、その兵士は僕の頭を両手でがっちりと固定して、
「なんなら下の口に直接ぶちこんでやってもいいんだぜ。どっちにする?」
背に腹は変えられない。その諺は君も理解しているだろう?
「あ…うっ…」
僕は恐る恐る口を開けて、それの先端を口に含み始めた。
「遠慮すんなよ、ほれ」
兵士は僕の頭を固定しながら腰を突き出し、それを僕の口内深くまで一気に突っ込んできた。
兵士の陰毛が僕の鼻と上唇に触れて、ちくちくと痛かった。
「いいか、歯を立てるんじゃねえぞ」
再びこみ上げてきた吐き気を抗議する暇も無く、兵士は僕の頭を前後にぶんぶんと降りながら腰を突き出し、それを僕の口内で激しく出入りさせ始めた。

口をレイプされている。僕はそう思ったよ。

言っておくがこの間も、僕は胸も秘所も嬲られ続けていた。
とにかく、早く終わってくれ。それしか頭の中に浮かんでこなかった。

「だ、出すぜ…飲めよ…」
何を…と考える暇も無く、兵士がそれを僕の口内深く突っ込むと、それが弾ける様に大きく脈動し、粘ついた熱い白濁液が叩きつけるように放出された。
むせ返るような牡の匂いに眩暈がした。飲むなんて到底無理だ。
「げほっ、げほっ…」
僕は激しく咳き込みながら、それから顔を引き剥がし、白濁液を口から吐き出した。
「あ、くっそ。飲めよ馬鹿」

「な、もういいだろ、直接ぶち込んでやろうぜ」
誰かが僕の足に手を掛けたその時だった。

「まもなく、目的地に到着します」
誰かの声が聞こえる。運転手だろうか?
兵士どもはチッっという舌打ちをしながら、
「運が良かったな、お穣ちゃん」
そういい残し、僕から離れていった。


つづく
429SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:33:01 ID:laqrXWds
高機動車から降ろされて、兵士たちに引っ張られて歩かされた。もちろん目隠しは付けたままさ。現在地の特定を困難にするためだろう。
何処かの部屋に連れて行かれ、やっと目隠しを外された時、そこにいたのは案の定あの男だったよ。

「一樹!」
詰め寄ろうとした橘さんを兵士たちが取り押さえる。
「その名前で呼ぶのはもう止めてくださいと、かつて言ったはずですが」
古泉が前髪をかき上げながらそう言った。


枯れ逝く笹の葉 中篇その2


「僕たちがあなたに要求するのは、情報の提供です」
「答える気はありません」
「ならば、当然尋問とか拷問とかの出番になります。それでよろしいのですか?」
橘さんは顔を背けながら、
「好きにしたら良いのです。絶対に話しませんから」
ちょっと待ってくれないか、まずは質問の内容を聞いてから判断したいのだが?
僕がそう言うと、古泉は顔をこちらに向けて、
「いいでしょう。最初の質問は、天蓋領域の端末についての事です。長門さんに攻撃を加えさせたのは、何故ですか?」
この質問になら、答えても良いのではないかい?
橘さんはしぶしぶと言った表情で、
「あれは九曜さんの単独行動です。あたしたちの指示によってじゃありません。彼女がどこにいるのかも、あたし達は知らないのです」
「なるほど、いいでしょう」
古泉は腕組みをしながら、うんうんと頷いた。

このとき、僕はこの古泉と言う男は話の通じる相手だと思い込んでいたよ。だが、現実は違ったね。

「では、次の質問。あなた方の組織の地下本部とやらは、どこにあるのです?」
完全に僕の知らない内容の話だった。
「それは…絶対に言えません。それをあたしが言えない事ぐらい、あなたにも解ってるはずです」
「ええ、もちろん。ですから、やはり拷問ですね」
スマイルを浮かべながら、事も無げにそう言った。

「ああ、そうそう。拷問を受けるのは佐々木さんの役目になります」
「…!佐々木さんは何も知りません!」
「ええ、そうですね。ですが、佐々木さんに拷問を加えたほうが、あなたが早く口を割ると思います」
「なんて…事を…」
古泉が手で合図をすると、周りの兵士たちが僕に群がってきた。ロープで身体を拘束されている僕には何の抵抗もできやしない。
「ま、待ってください!拷問はあたしが受けます!だから、佐々木さんには手を出さないで!」
「普通に口を割れば、拷問は無しで済みますが」
橘さんは悔しそうな表情で、
「それは…できないのです…」
古泉はふうっと溜息をつくと、
「ならば、いいでしょう。拷問は橘さんに」
430SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:33:38 ID:laqrXWds
今度は橘さんに兵士たちが群がり、少しはなれたところにあるマットへ彼女を連れて行く。
僕は古泉の隣の椅子に着席させられた。

拷問とは、何をするつもりなのかね。
「古今東西、女性に対する効果的な拷問は1つですよ」
虫も殺さない人畜無害なスマイルの仮面。

マットに乱暴に押し倒された彼女に、何人もの兵士たちが覆い被さっていった。
兵士たちは制服に手を掛けると、無造作にびりびりと引き裂いて、剥ぎ取っていく。
「い、いやあっ!」
「言いたくなったらいつでも言って下さい。そこで拷問は終了です」
「誰が!絶対に言いません!」
既に彼女の制服はあらかた破り取られ、裸も同然の姿になっていた。
何本も伸びた腕が、彼女の腕や足や腹や顔やらに組み付いて身体を押さえつけ、
いやらしい手つきで彼女の滑らかな肌を撫で回し、その柔らかな感触を楽しんでいる。
何本もの手によって争奪された胸のふくらみの部分は、特に念入りに揉み上げられていた。
「あっ…はっ…」
乳首を擦られるたびに、思わず彼女の口から甘い吐息が漏れていた。
中年のおっさんが彼女の膝を割り、下卑た笑みを浮かべながら、彼女の股間へと顔を近づけていく。
彼女は身体を捻って逃れようとしたが、ロープで身体を拘束されているうえ、何本もの手によって身体を押さえられているので、無駄な抵抗としか思えなかった。
やがて股間の部分に到達した中年のおっさんがそこに顔を埋め、びちゃびちゃと舌を使っている音が、ここにまで聞こえ始めた。
「くっ…!いや…っ!…あ」
眉を寄せて苦悶の表情を浮かべている、橘さん。
僕はそれ以上見ていられなくなり、顔を背けた。

「よく見ていたらどうです。橘さんは、あなたの身代わりになってくれているのですよ」
…こんな事が許されると、君は思っているのか?
「許されると思いますよ、この世界の存続のためならね。そもそも誰が許すのか、よく解りませんが」
それは君の本心か?君の本心や良心も許すと言っているのか?
「本心?」
古泉は顔を僕の方に向け、例のスマイルを浮かべながら、
「本心なんて、とっくに仮面の裏で捨ててしまいましたよ。あなたも仮面をつけているんですから、それぐらいお解りのはずです」

「へへ、それじゃお穣ちゃん。まずは1本目のチンポだぜ」
それまで秘所を舐めしゃぶっていた男が自分のチンポに手を沿え、あてがっているのが見えた。
「あ…あ…」
青ざめた顔の彼女。
その姿に余計に興奮したのか、おっさんは鼻息を荒くしながら、
「ほらよ」
正常位の体勢から一気に腰を押し込み、野太いチンポが可憐な秘所に挿入される。
「…くうっ!」
大きく仰け反る彼女をガッチリと腕で固定し、一気に最深部まで突き入れる。
秘所を限界近くにまで押し広げられ、彼女は顔を背けながら小刻みに身体を震えさせた。
「処女じゃねえが…あまり経験もなさそうだな。なかなかの上玉だぜ」
ゆっくりとしたストロークで腰の前後運動が開始される。
「うあっ…あっ!…一樹…」
腰が突き込まれる度に起こる、ぬちゃぬちゃっとした淫水音が、部屋に響き渡った。
彼女の身体が、おっさんのチンポによって汚されていく。
431SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:34:17 ID:laqrXWds
この事は彼も承知しているのかい?
「彼とは?」
キョンの事さ。彼がこんな事を許すとは思えない。
「でしょうね。ですが、彼がこれを知る機会は無いと思います」
僕が打ち明けないという、なにか根拠があるのかい?
「打ち明ける?あなたが?」
古泉はわざとらしく驚いて見せ、
「あなたが彼に打ち明ける機会が、今後訪れるとでも?」

おっさんが腰を突きこむたびに、彼女が切羽詰った苦悶の声を上げる。
「そろそろ良くなってきたんじゃねえか?」
「だ…誰がっ!…あっ!…くっ!」
涙をぼろぼろと流しながら、嫌々をするように首を振り、彼女はその残酷な事実を否定した。

僕は古泉の顔を黙ってじっと見つめた。
古泉は何の表情の変化も起こさず、ただ眼の前の輪姦劇を見つめ続けている。
何の変化も無い…そう、この時の古泉の表情にはあまりにも変化が無さすぎた。

「出すぜ、そろそろ」
「…!」
その言葉に彼女の眼が大きく見開かれる。
おっさんの腰の動きが、乱暴なまでに早くなった。
「いや、いやああっ!…中はっ!」
激しく首をふってもがいているが、拘束されていて大勢に押さえつけられているので何の効果も無い。
むしろ、彼女のその嫌がる姿に、兵士たちの興奮がより一層高められているようだった。
おっさんがひときわ強くチンポを突っ込み、身体をピクピクと痙攣させ始めた。射精しているのだ。
「いやあああっ!中ああっ!」
絶望的な表情で、口をわなわなと震わせながら、彼女は身体を悶えさせた。
おっさんは涎を垂らさんばかりの満足げな表情で、彼女の胎内に最後の一滴まで精液を注ぎ込む。
「馬鹿野郎、一発目から中で出すなよ」
「くくっ、なかなか具合が良くてな」
おっさんがチンポを引き抜くと、彼女の秘所から白濁液が逆流してどろどろと流れ落ちた。
糸が切れた操り人形の様に、彼女の四肢がガクリと力を失う。
「ま、入れやすくなっていいかもな」
すぐに次の兵士が入れ替わり、彼女を休ませることなく2本目のチンポの挿入が始まる。
「かはっ…ああっ!」
彼女の身体がビクンと爆ぜ、再び責め苦が開始された。
432SS 枯れ逝く笹の葉 中篇:2008/07/14(月) 21:35:01 ID:laqrXWds
その後も延々と陵辱劇は続いていった。
今、後背位で彼女を犯しているのが8人目ぐらいだろうか。
彼女の胎内や外に浴びせかけられたスペルマの匂いが、ここにまで漂ってくるほどの異臭を放っている。
胎内に精液を注ぎ込まれる度に、彼女の抵抗はどんどん弱まっていき、今では殆どなされるがままの状態だった。
やがて8人目の兵士が彼女の胎内で精液を放出させる。
「いや…あ…ああっ…あ…」
見も知らぬ男の精子で胎内を汚される屈辱感と、射精を子宮に受ける事による否定することのできない快感とで心を蝕まれ、彼女は咽び泣きながら弱々しく身体を悶えさせた。
8人目の兵士の射精が終わると、すぐに9番目の兵士に代わり、再びチンポの挿入が開始される。
「あ、あはあっ……あ……」
彼女の眼は、すでに焦点がぼやけつつあり、とろんとしていた。
「だいぶエロイ眼になってきたじゃねえか、お穣ちゃん」
兵士の腰の突き込みに身体を揺さぶられ、彼女の身体がガクガクと揺れている。
「ふへへ…くらいなよ」
彼女の髪を使って自慰をしていた兵士が、荒い息を吐きながらチンポを脈動させた。
脈打つたびにチンポから汚らしい白濁液が吐き出され、彼女の髪と顔とに粘着質な汚れを付着させていく。
彼女は抵抗する事も無く、虚ろな瞳で精液を身体に浴び続けた。
「い…一樹…」
言葉が一言、ぽつりと口から漏れた。

もう止めてくれ、あのままでは、橘さんが…。
「止めても良いですが、その場合あなたが変わりにレイプを受ける事になると思います」
もういいだろう、十分だ!このまま延々陵辱され続けたって、彼女は吐かないぞ!
「…そうですね。そろそろ輪姦じゃなく、別の拷問に変えるころあいかもしれません」
き、君という男は…。
キョン、なんでこんな男を仲間にしているんだ。この男の本性を知らないのか?
「そんなに彼のことが気になりますか…。なら、彼をここへ呼んであげましょうか?」
何?
「彼を、ここへ」
古泉が手で合図を送ると、兵士の1人が部屋の奥へ走っていた。


つづく
433名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 21:35:53 ID:laqrXWds
以上です。
次の後編で終わりになるはずです。では。
434名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:42:58 ID:hTA0K5Mj
次で終わるという宣言が一番嬉しかった
ここまで感想
435名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:47:40 ID:QBjaJAq5
>>434
おまえみたいな粘着荒らしを生んだ母親って本当にクズ女だよな
436名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 23:08:28 ID:gF0giP+L
ここってどんなスレだっけ?
437名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 23:13:38 ID:kMemS1Lf
谷口が古泉の所属する機関の一員で、SOS団達を守るという話を読んでみたいな。
谷口はずっとハルヒを見守る役目があったんで、ずっと同じクラスだったという設定で。
文章の才能がないから、書ける人がうらやましいし、尊敬する。
438名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 23:49:39 ID:QVo085JW
どんなに稚拙でもいいから書いてみるのもいいんじゃあないか?

人に言えたことじゃないけどね…
439名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 00:31:29 ID:7Ks12LSK
だね〜、実は谷口が古泉以上の能力の持ち主で
わざと馬鹿を演じ、その能力とハルヒに対する思いを隠しながら
命懸けでハルヒを守ってきたとか
話はいくらでも広がりんぐ
てか広がるから難しいのか
440名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 00:38:42 ID:VV3Es0St
スレ住人総スルーで谷口のお話に夢中www
お前のSSがいかにつまらんと思われてるかよくわかっただろwww
441名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 00:39:47 ID:LAL3tUa1
地の文の人称があやふやなので
佐々木がおっさんだのチンポだの言ってるみたいでワロタ
442名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 00:40:16 ID:wAz3+/M2
谷口とかクソどうでもいいよ。
谷口スレでいくらでも語ってろ
443名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 00:54:12 ID:7Ks12LSK
谷口スレなんてまだあったのかw
444名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 01:54:31 ID:S7z15Fil
10秒で読み終わった。
445名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 02:22:17 ID:VV3Es0St
つまらなすぎ。もうお前心でいいよ、バイバイw
446名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 03:09:35 ID:VOj3UxfH
18歳未満は来ちゃダメなんだぜ、ここ
447名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 03:37:11 ID:cwJa4mLY
俺は常に陵辱小説を応援してるので待ってるよ
448名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 05:08:05 ID:i9JG+pgd
>>433
乙でした。
こういうパターンは結構新鮮な希ガス。続き期待してます。
449名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 07:15:42 ID:8kBSMoMq
>>433
経験もない女をいかせるってどんなテクニシャン揃いなんだよw
童貞っぽい
450名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 08:21:17 ID:Qd5RmAHX
エロ漫画でよくあるパターン
451名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 08:46:36 ID:7Ks12LSK
薬でも使ってると脳内補完しとくか
452名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 09:36:44 ID:M5WHUDZH
>>449
よく訓練された兵士なんだよ
453名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 10:29:15 ID:ww9v4Llj
エロゲ板の処女スレで定期的に上がる話題だな
それを言い出すとエロゲやエロ漫画の大半がアウトになる。
454名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 10:32:13 ID:cwJa4mLY
レイプ物を書くのはいいけど、何故か女が快楽を感じるのが多いのは不思議でしょうがない。
455名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 12:27:59 ID:Mm5ShGrl
もうお前続き書かなくていいよ
456名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 13:00:39 ID:UaJLsRQL

(谷)

457名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 17:06:49 ID:RzyH02F9
>>454
それがいいんじゃないかw

この作品は駄目だがな
458名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 17:10:23 ID:yyOOAwUO
早速佐々木厨が暴れ出したか
459名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 17:23:03 ID:tqfNSfre
「ほら、ハルヒここがいいんだろう? もうビチョビチョじゃないか」
「きゃっ。だ、だめぇ、こんな格好恥ずかしいよぉ」
「いいだろう。もっとお前の恥ずかしい声を聞かせてくれよ」
「……ひ、東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間にしか興味ありません。この中に宇宙人、
未来人、異世界人、超能力者がいても、あたしのところには来なくていいわ。以上!」
「お前にとっちゃ恥ずかしいんだろうが、違うぞ」


「ほら、長門ここがいいんだろう? もうグチョグチョじゃないか」
「んっ……だ、だめ、こんな格好は恥ずかしい」
「いいだろう。もっとお前の恥ずかしい声を聞かせて欲しいんだよ」
「……××××××××××××××××××××」
「おそらく恥ずかしいんだろうが、確かめられないぞ」


「ほら、朝比奈さんここがいいんでしょ? もうヌチョヌチョじゃないですか」
「いやっ……だ、だめです、こんな格好は恥ずかしいですぅ」
「いいでしょう。もっと恥ずかしい声を聞かせてください」
「……わ、私の初体験は【禁則事項】才の時で、今までの経験人数は【禁則事項】ですぅ」
「間違いなく恥ずかしいんですけれど、聞きたくなかったですよ」
460名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 17:44:06 ID:sHk3LKXT
理論的な話をすると
性格的には最悪で結婚したくない男でやりたくもない奴で(あと、不倫とか経済的理由が背景にある。つまり社会的理由でやりたくない奴)
ハンサムだったり性テクニックがあるヤリチン(動物の本能としてはやりたい奴)
の場合ならレイプ展開でも感じるはず

二次元では、上に全くあてはまらない展開多いけど
461名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 18:19:29 ID:VV3Es0St
>>433
お前はもう後編を書かなくていい。
チラシの裏にでも書いて自分専用のエロ小説として使用しろ。
お前以外誰も後編がここに投下されることを望んでいない。

それを理解しろよ?バーカw
462名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 18:25:44 ID:d/183vvY
ここまでボロクソに叩かれる作品ってのも久しぶりだ
もちっと腕磨いてから来てくれよ、まってるから
>>459
こういうの割と好きだな
463名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 18:57:19 ID:wAz3+/M2
ヒントっ叩いてるのはひとり
464名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 19:34:57 ID:+MVzXfKR
俺も叩いたから最低でも一人以上だな
どこの板でも自分に都合の悪い流れになると「原因は一人」って言い出す奴が必ずいるのが面白いよな
465名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 19:39:48 ID:8kBSMoMq
俺も叩いた。
三人以上ってこったな。

>>463が自演の予感w
466名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 19:42:52 ID:VV3Es0St
作者自演ばれて涙目wwww
こんな糞みたいなSS投下しといてずうずうしいにも程があるぜ、クソが
467名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 20:01:09 ID:HpgasScm
言いすぎじゃね?
ちょっと(´・ω・)カワイソス
468名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 20:20:05 ID:hu1Kq6Ww
叩くにしてもやり方ってもんがあるだろうに…
このスレも末期だな

本当は作者も読者もフィフティフィフティが望ましいんだけどな
これじゃ作品投下が進む雰囲気じゃねぇな
469名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:25:42 ID:d/183vvY
叩くにしても欠点を述べてどうすればいいかぐらい言おうぜ?
それにしたって言い方があるだろうし
470名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:34:33 ID:AXe3IOjT
叩いている人数はわからんが、痛い奴ばかりだということはわかった
471名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:43:45 ID:BIAZ7O5v
>>464
>俺も叩いたから最低でも『一人以上』だな
こういう初歩的な間違いは好きです
472名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:45:11 ID:poSp4YYm
>>471
思いっきり算数が解ってないよねw
473名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:46:49 ID:nWV217R8
ヒントっ俺も叩いたって言ってるのも一人
474名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:01:44 ID:VV3Es0St
・一人称、三人称が入り乱れる無茶苦茶な文体
・佐々木の口調が原作とは似ても似つかないほど下手糞
・せっくる経験の無い童貞が想像で書いたありえないせっくる描写
・キョンに会えると思ってんの?と言った小泉がそれじゃあキョンに会わせてあげましょう。整合性が無い。
・橘x小泉とかいう寒いカプ

上記の事を踏まえまして、これを書いた奴は頭の悪い真性童貞の厨房
お前はもう後編なんか書かずに2度とこのスレに投下しないことを提案しますwwww
475名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:06:22 ID:QPLnLM7k
失笑モノのハイレベルレビューお疲れ様ですw
476名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:10:07 ID:ciEv4OJ7
>>474
お前は文体だ口調だ寒いカプだ言う前に
まずハルヒキャラの名前を覚えて来い。
477名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:10:17 ID:vkZ/sZvU
>>463
>>473
同じ人かい?
「ヒント『っ』」なんて使う人そうそう居ないぞ。
478名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:32:16 ID:IrcqnMmM
ヒントっ叩いてるのはひとり
479名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:32:58 ID:8kBSMoMq
いいカオスw
480名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:36:10 ID:l1uVJ3+C
投下します
前スレの「三人目の女神」の続きです
相変わらずえろなしですみません
481名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:38:32 ID:l1uVJ3+C
ありきたりなラブソングのように「キミ」がいてくれればいい

願っていたのはそれだけだった筈なのに



彼女が立ち去った後も俺はその場に立ち尽くしていた。
いい加減に水が革靴に浸み込み気持ち悪いのだが、移動することに頭が回らない。
かといって状況を整理しようとしても、理性を感情が揺さぶる。
誤解を恐れず全てを要約すれば、佐々木が俺に会いたかったがためにSOS団が合格できなかったということになる。
無論そんな要約などクソくらえだし、誰一人として責める権利も責められる必要もないのだが。
やっぱ、気が滅入る。
まとまらない思考を、そうやって二十分ほどこねくり回していただろうか。そろそろ俺は雨の重さに疲れ果て、帰宅することにした。
街灯がアスファルト色の水たまりをを銀に装飾していた。

とてもじゃないが晩に何か作る気にはなれず、自宅近くのスーパーで適当なものを買っていくことにした。
ああ、最近の自動ドアは手を触れないと開かないのか。
有線放送と店員の気の抜けた挨拶に出迎えられ、俺は総菜コーナーへ歩を進める。
その途中、お菓子売り場の通路を何とはなしに見やると。
うえっ、て口に出して言ったのなんて初めてじゃないだろうか。
そこには先程さんざん捨て置けない事実と投げ捨てたい責任を押し付けてくれた肉体が、その時にすら見せなかったような真剣な目つきでチョコレートを物色していた。
マズイ。
あれが佐々木だろうとそうじゃなかろうと、今会うのは気マズすぎる。
俺は逃げるように惣菜のもとへ走り、えり好みする暇もなくただ弁当っぽい容器をひっつかんでレジへ突入した。もちろんお菓子売り場を迂回してだ。
げっ、俺高菜嫌いなんだよな。
そーいや、あいつこの辺に住んでるのか?
482名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:39:42 ID:l1uVJ3+C
少し古ぼけた鉄階段をカン、カンと響かせ、俺の足はアパート二階の自室へと辿り着いた。
鍵をかけ、買ったばかりの机に鞄と弁当を放り投げると、ため息混じりに椅子へ体が倒れた。
濡れたスーツを着たままで何とも気持ちが悪い。
俺は疲れた体に鞭打ってそれをハンガーにかけ、シャワーを浴びることにした。
随分と待ってやっと出てきたお湯に少々癒されつつも、俺は心底不安だった。
ハルヒの変態パワーが自我を持っているなんて。しかもあろうことか、「世界征服でもしよっか」などとのたまいやがった。まるで「今夜は鍋にしよっか」ぐらいのノリで。
挙句の果てに、その結果は俺の努力次第。もう、突っ込んでもキリがない。ならやめとこう、うん。
ヤケクソ気味にシャワーから上がり、背広から携帯を取り出すと五件もの着信が入っていた。入学式のときにマナーモードにしたまま忘れてたんだな。
相手はSOS団の懲りない面々と鶴屋さんと家族から。
なんつーか。
ありがたいね、こういうの。
本来ならかけ直す順番などどうでもいい――いや、訂正。朝比奈さんにイの一番――なのだが、事態が事態なだけにまず一番の情報筋っぽい古泉から。
電話はスリーコールで取られた。
「待っていましたよ」
変わらない丁寧さ。いきなりタメ語にされたらそれはそれでムカつきそうだが。
「ああ、すまない。ちょっとケータイのこと忘れてた」
ケータイ片手に頭を乾かす。
「もう、伝わってるんだろ?」
向こうの背筋が伸びるのが伝わってきた。
「ええ、こちらは大騒ぎですよ。僕たち『機関』に限ったことではないでしょうが」
「だろうな」
「まさか知らぬ間に『力』が佐々木さんに移動していたなんて」
「それに自立した意思を持っていた、ってこともだろ?」
「もちろんです」
電子レンジに高菜弁当を入れる。
「単刀直入に聞くぞ、まだまだ電話しなきゃいけない相手がいるからな」
タイマーをセット。レンジが低く唸り始めた。
「俺は、どうすればいいと思う」
「すみませんが、今のところなんとも。いかんせん情報系統が混乱していて、調査時間も十分ではありませんでしたし」
まあそんなもんだよな、とか少しガッカリしつつ、古泉が続けるのを聞いた。
「この情報が役に立つかどうかはわかりませんが、佐々木さんは高校二年生の春以降に通院歴があります。なんでも、記憶にところどころブランクを感じるとか」
過熱が終了した。チーンと間抜けな音がなる。
「僕の考えでは、この時に『力』が佐々木さんの体を支配していたのではないかと思われます」
「あいつの話じゃ、ハルヒに押し込められてた時もあいつは意識があるように言っていたが」
「それが、普通の人間と『力』との違いなのではないでしょうか」
そう考えるしかないんだろうな。
「それじゃ、何かわかったらまた連絡してくれ」
「わかりました。そちらも、なにかありましたらお伝えください。お気をつけて」
ああ、と返事した後電話を切った。
483名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:40:05 ID:poSp4YYm
支援?
484名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:41:26 ID:l1uVJ3+C
高菜弁当をレンジから取り出しテーブルにのせる。
さて、次は。
リダイヤルする。
「……」
「よっ、長門」
さすがに早いな。ワンコールで取りやがった。コイツにワン切りは不可能かもしれん。
「情報はすでに伝達されている」
「ああ、だったら話は早い」
ふたを開ける。高菜の匂いが部屋に充満した。うぅ。
「俺はどうすればいい?」
受話器の向こうからはしかし、何の反応もなかった。聞こえてないのかな。
「なあ、長門。お前個人の考えでいいから、予想なり対処なり、なんかないか」
正座してピンと背筋を張った宇宙人の図が思い浮かぶ。あいつの部屋に座布団はあったよな。
シンプルイズベストとは言ってももうちょい何かないとさみしいような長門の部屋の全体図を脳内に完成させてもまだ向こうからの返事がないもんだから、俺は何か言おうとして口を開いた。
そのときだ。俺の話ってプレスされることが多いな。
「わたしからは何も言うことはできない」
あー、そっちもまだ情報が集まってないのか?確かに急な話では……

「情報統合思念体は今回の件に対し状態の維持及び経過の観察を決定した」
すまん、なんだって?
がんばれば俺にも解りそうだがあまり好ましくなさそうな話を理解するのは気が進まないんで、もっとかみ砕いて言ってくれるか。

「わたしは今回あなたを助けられない。あなたが進化の可能性へ勝利することは、進化の可能性における絶好の機会を逸し、再び事態を停滞化させることに他ならない」

俺はアメリカンコメディーよろしく電話を床に落とそうと(そんなのアメリカンコメディーじゃない、ていうなら謝る)し、この後にも電話がたまってんのにケータイ壊しちゃマズイので止めた。
マジか。正真正銘有言実行一刀両断深謀遠慮にマジか。
「わたしという個体からすればあなたを助けたい。しかし情報統合思念体は、今回の件――進化の可能性がそれ自体独立した思考を持ち合わせているという事態に興味を持っている」
古典の辞書を朗読するがごとく面白みのない音が電話口から漏れ続ける。
「だから、わたしからは動くことができない。進化の可能性を観察するヒューマノイド・インターフェースはすでに派遣されているが、あなたとの接触を行うことは禁じられている」
行動早いな。
「わたしの当面の任務は涼宮ハルヒの事後観察」
お前は離れられないってことか。

「ごめんなさい」
電話回線を通って変換されても、俺には長門の声に申し訳なさそう成分が読み取れた。
「いや、謝ることはない。お前はハルヒの子守を頑張ってくれ。それと、近況報告はちょくちょくやるから、俺が寂しい時は相手になってやってくれ」
返事はなかったが、肯定の意はなんとなく。
「じゃ、またな」
返事を待つ。最後に声くらいは聞いておきたい。

「気をつけて」
485名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:41:36 ID:poSp4YYm
支援
486名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:44:19 ID:l1uVJ3+C
高菜は嫌いなんだが気苦労と空腹感から思いのほか箸が進み、あっという間に平らげてしまった。同時に、忘れることができていた苦悩が大挙して押し寄せる。
「長門が動けない、か」
呟いた声に力がなかったことが自分でも嫌なほどわかる。
ハルヒに力がない以上現在のSOS団が持つリーサルウェポンは間違いなく長門だった。それが失われたとなると、ただでさえ苦しい状況は一層困難になる。
そうか、古泉はいつもどおり協力的なので意識しなかったが、『力』の根源がハルヒじゃなかったってことは各勢力にとって相当な変化なんだな。
俺はコトの重さを改めて認識しつつ、グダッてばかりもいられないので再びケータイに手を伸ばした。

「あ、キョンくんですか」
「はい。お久しぶりです、朝比奈さん」

早くも多少癒された。
「お話は聞いています」
一変して声に緊張感が生まれる。
「現在わたしたちも調査を行ってはいますが、未だ有力な手掛かりはありません」
半ば予想はしていたが、やっぱりチト辛いね。
「わたしのいる未来から――どれくらい先かは禁則事項なんだけど――とにかくだいぶ先の未来からこの時代を観測してはみたんだけど、今回の件に到達すると情報が遮断されているの」
受話器は不安げな声を伝え続ける。注いでいた茶からいつの間にか湯気は消えていた。
朝比奈さんの声が止まったのを感じ、俺は言葉をはさんだ。
「朝比奈さん」
「はい?」
「あなたは、俺の味方ですか」
えっ、という言葉を伝えた後受話器は沈黙する。
俺は長門のことを伝えた。
「そうなんですか、長門さんが……」
「はい。それで、朝比奈さんのグループの立場はどうなのかなって」
ふふふっ、と天使の声が笑う。
「わたしはいつだって、キョンくんの味方ですよ」
心の底から安堵した。
「ありがとうございます。そう言って頂いて随分と気が楽になりました」
思わず頭を下げる。相手には見えていないというのに。
「どういたしまして。あっそれと、キョンくん」
はいはいなんでございましょうか。
「せっかく二人とも都内に住んでるんだから、近々どこかで会いましょうよ」
もったいなきお言葉、ありがたく頂戴いたします。
「はい、直接お話もしたいですし。それじゃ早速ですけど、今週の日曜なんてどうでしょうか」
善は急げというしな。
「ごめんなさい。その日はちょっと外せない用事があるの。それに、よく考えたら手続きとか未来との交信とかで何かと忙しいんでした」
申し訳なさそうな声が受話器から六畳一間に響く。なるほど、勢いに任せて予定を忘れていたとは、なんとも朝比奈さんらしい。
「いえ、大丈夫ですよ。朝比奈さんの都合の良い時に呼び出してくれれば」
あなたに指定された日は元旦よりも絶対です。親の死に目に会えなくとも我慢しましょう。

朝比奈さんとの通話を終え、俺はソファに寝っ転がった。買ったばかりなのでスプリングの弾みがよい。
あとはハルヒと鶴屋さんと家族か。今月は電話代が早くもヤバそうだ。
やれやれ。
487名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:44:58 ID:l1uVJ3+C
ガードレールが、カーブミラーが、マンホールが前から後ろへと流れ去ってゆく。
朝日は爆走する俺を朗らかに照らしていた。
寝坊だ。
間に合うか間に合わないかというギリギリの。
もう少し早く起きていたらドタバタしながらも確実に間に合っていただろうし、もう少し遅く起きていれば確実に遅刻だったので開き直りもできるが、今回はまさにボーダーだ。
言い忘れていたが俺の住んでいる町は大学からかなり遠い。
急行に乗っても三十分くらいかかる。それもひとえに家賃のせいだ。
大学周辺とかはアホみたいなボロアパートでも平気で七・八万する。東京め。
と、説明しているうちに俺は駅へと辿り着いた。
定期を改札に叩きつけ、ホームへとひた走る。
朝の喧騒の中階段を落ちるように降り、発車寸前のドアと人の壁へと体をねじ込ませた。
駅員の注意が聞こえたが、申し訳ないと思いつつも知ったこっちゃない。
今の俺の行いは混み合った車内の被害者からすればとんだ迷惑なんだろうな。自分がやられたら大層嫌な目で見そうだ。

走り出した電車はいくつかの駅を通過し、割と開けていそうな町で数度停車した。
左右のドアが入れ替わりで開き、いつの間にか俺はさっきとは反対側のドアの方へ移動していた。
しかしこう、満員電車ってのは嫌なもんだね。北高への強制ハイキングも相当ウンザリものだったが、それはまだ健康的に消耗させられていた。
こっちはジワジワとなぶり殺しにくるような。
ところてんでスコポンやられるかシュレッダーでギリギリ轢かれるかの違い。自分でもよくわからん喩えだ。
ほれ、こうしている間にも足元の勢力争いは激化し、さながら仁義なき戦い広島抗争のごとき血みどろの縄張り争いが繰り広げられている。
俺は壁際に追いやられたが、目の前の小柄な女性が俺と電車の隅に押しつぶされないように一生懸命体を突っ張った。
すると、吊皮を掴んでいない方の掌に誰かが握る感触。どうも、目の前の女性の手。彼女は外を向いているため顔は見えない。
ヤバい、痴漢と間違われたら俺の一生は早くも一笑に付されることに、って下らないこと言ってる場合じゃない。
なんとかして体を離そうとする俺に、女性はゆっくりと顔を向けた。
はい、時間止まりました。

佐々木でした。
488名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:46:07 ID:l1uVJ3+C
思わず口調も変わってしまうほどの衝撃、お分かりいただけるだろうか。
たかだか満員電車くらいで昨日起こったコトの重大さを忘れていた俺もどうかしているが、ここで現れる佐々木も十分反則だ。
ジャッキーよろしくガラスをぶち破って外に飛び出したくなったがしかし、その衝動は佐々木のイレギュラーな表情によって消え去る。
中坊の時から見せてきたとらえどころのない笑みでも、昨日見せたダークさでもなく、うつむき加減の赤く染まった顔。
その目は何かを訴えるように俺と自分の腰のあたりを行き来している。
俺は無理矢理体をねじ曲げ、そのあたりに目をやった。
人の林の間から、不自然に伸びる黒い袖。
そのスーツから無機質に生えた腕が、その腕の先が裂けるようにして突出した薄汚れた五本指が、電車の腕とはまるで無関係に動き回る。
白いワンピースの腰の下で。
それを確認した瞬間俺の視界はどす黒く染まったが、満員の車内で殴りかかるわけにもいかないので何とか自制してその腕の持ち主を睨みつける。
視線だけで人が殺せるならそいつを十回は殺せた自信がある。
ハゲあがった眼鏡のそいつはギョッとして腕を離した。俺の親父と一緒くらいのトシじゃねえか。
俺としてはこのままそのハゲを社会的に抹殺すべく断罪して警察に引き渡したかったが、あまり騒ぎにすると佐々木が余計ヘコむかもしれないのでやめておいた。
その代り、震えていた細い指に俺のを絡ませる。
佐々木の顔が、安心したように赤いまま緩んだ。


電車はやっとこさ目的地に到着し、俺達は搾り出されるようにしてホームへと降り立った。途端に人の波が押し寄せてくるが、なんとかやり過ごし改札へとその流れに乗る。
外に出た俺と佐々木は小走りでキャンパスに向かう。
489名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:47:03 ID:l1uVJ3+C
佐々木の顔はまだほんのりと赤いが、そこに浮かんだ微笑は間違いなく佐々木のものだった。
やっぱ、励ました方がいいのかね。
「お前もチカンにあったりするんだな、佐々木」
言ったそばから自分もセクハラまがいの発言をしたような気がしてひどく申し訳なく思った。コトがコトだっただけに。
確かに佐々木はどこかの誰かさんと同じく黙っていればかなりの美形である。もっとも、本人がそれを気に入っているかは別として。
しかしその中身や思考からしてチカンにでも遭おうものなら、人間という種の性に対する態度と考察を中世ヨーロッパの例を引き合いに出しつつ解説し、相手を興醒めさせるくらいの芸当をやりかねないと思っただけだ。
ついでに刑法の第何条かは知らんが強制わいせつ罪の解説も。
「僕としても上京するにあたってそれなりの心構えはしてきたつもりなんだが、いざとなると何もできない自分が悔しくて仕方なかったよ。ゲイ・ボルグで突き刺されたように、僕のちっぽけなプライドはズタズタだ」
名前は聞いたことあるが、効果が解らん。
「そもそもゲイ・ボルグという槍はケルト神話の英雄ク・ホリンの使用していた武器で、刺された敵の体内で三十もの棘が開くという代物だった。最近では別の解釈も……」
いや、そこまで説明してくれなくても十分なんだが。
とはいえ佐々木なりの照れ隠しなのかもしれないと思い、俺は適当に聞き流すことにした。話している内容自体にはさしたる意味を持っていないのだろう。

「やはり僕も、所詮は女だということか。生物学的にも精神的にも」

雑踏と車とカラスたちの宴の中、その声だけがノイズをすり抜け俺の耳に入り込んだ。
だんまりをきめていたはずなのに、この言葉は俺に何か言わなければいけないような気にさせる間を造り出した。
別の話題、別の話題。
そういえば。
「そういえば」
二人の声が重なり、俺達は顔を見合わせて苦笑した。
佐々木はどうぞとばかり掌をこちらへ返す。やけになめらかな動きだった。
「お前はどこに住んでんだ?同じ電車だったが」
佐々木は駅の名前を告げ、俺は露骨に口も目も丸くした。いや、丸くなってしまった。
横断歩道の白線が、視界の端で手作りの映写機のように映っている。
キミは?と目線で問いかけてくる。白い輪郭が昇りきった朝日に閃いた。
俺は手で頭を覆いたくなる衝動をこらえ、答えた。
先ほど目の前の相手の口から出たのと、同じ駅名を。
490名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:48:38 ID:l1uVJ3+C
困ったな、である。
最寄り駅が同じということで芋蔓式にお互いの住所を明かしていくと、佐々木は俺と同じ町、同じ番地、同じアパートの一階に住んでいることが判明した。
ウソだろ、おい。
偶然にしては、出来すぎている。やはり、アレか。
佐々木の中の神様の力か。
しかしこの場合、どっちが力を行使したことになるのだろうか。佐々木か、それとも「彼女」自身か。
遥か向こうの教壇では教授が評定の付け方や授業の進め方をレクチャーしていたが、そんなことは気にも留めずに俺は熟考していた。なんの為に全速力で準備してきたんだか。
しかしどれほど心此処に有らずであろうとも、頭の中の悩みについて独り言を言うことは避けなければなかった。なぜかって?
それは、俺の右隣りのヤツに聞いてくれないか。シラバスに対し微笑を浮かべている珍妙なヤツに。

「しかしまあ大学にアパートに学部に授業の取り方にと、よくもこう偶然が重なったものだね」
俺は佐々木と二人で学食ランチだ。懐かしさが妙にこそばゆい。
「いつかキミにトンネル効果の例を引用して確率と不可能について述べたかとは思うが、憶えているかい?」
大学とはいっても学食はやっぱ混むんだな。高校の時とあんまり変わらん。二人分の席は、なぜかこれ見よがしに空いていたが。
「こんな偶然の積み重ねがあると、キミの言ったように万物の起こる確率はゼロではないのかもしれないという気になってくる。事実ではあるんだけどね」
うんうん、やはり一人暮らしでは野菜が不足しがちだからな。俺は普通なら頼みもしないサラダを注文したというわけ――

「キョン?」

気がつくと佐々木の目にショートレンジからの一撃を食らわされていた。。俺はメデューサにやられた戦士よろしく動けなくなる。
「どうしたんだい?先ほどの講義時間中も何やらうわの空だったと記憶しているが、体調でも思わしくないのかい?」
相も変らぬ微笑をたたえたその顔だが、底の知れぬ鳶色の双眸だけが訝しげに揺らいでいた。
「ああ、いやすまない。ちょっと考え事を」
嘘ではない。ホントのことを言ってないだけだ。
「それは嘘ではないだろうが、本当のことも言ってないないと邪推する。どうだろうね?」
かなり意地の悪い笑みに変えてきた。
でもこれは、間違いなく佐々木の表情だ。
俺は吊革にぶら下がるようにだらしなく両手をあげ、佐々木は満足げにオムライスを頬張った。ちくしょう。
佐々木が喋っている間に食べ終えてしまっていた俺はお冷を口に含む。
目の前のそいつが食べるのをなんとなく見ていると、不意に佐々木は上目づかいで視線を合わせてきた。ちくしょう。
491名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:50:01 ID:l1uVJ3+C
しばらくそうしていると佐々木の顔はほんのりと赤みがかって、その手はオムライスに入れたスプーンを持ち上げた後ふらふらと宙に遊ばせた。何してんだ。
それでも俺は静観を続けていたら、ううとかああとか呻いて佐々木はそれを自分の口に入れた。なぜそんな目で俺を見る。ちくしょう。
俺は逃げるように佐々木の分のコップも持って、お冷を注ぎに行った。
男子学生の哄笑。女子学生の談笑。銀食器の反響。館内放送の残響。
それらが不規則に入り乱れて交錯した食堂で、俺と佐々木の時間だけが緩やかな放物線に乗っかっていた。


それから二ヶ月ほどは、何事もなく過ぎ去っていった。
俺は観察も兼ねて佐々木と行動をほとんど共にしていたが「彼女」……って、やっぱりカッコ書きにしないと判りづらいよな?しかし意外とめんどくさい。
誰かいい考えがあったらこっそり耳打ちしてくれ。採用させていただく。

すまん、謎の電波を受信した。話を元に戻そう。
ともかく、「彼女」が現れることはなかった。高校時代のことをそれとなく聞くふりをして通院していたことは聞き出せたが、ここ二ヶ月ほどは何もないという。
何もないということは、事態は悪くなっていない代わりに良くもなっていないということだ。ジリ貧、という見方をすれば事態は悪化していると言える。
もちろん「彼女」の存在は伏せておいた。理性レベルでは「必要ない」と言っていた力だから、余計な心配をさせるのもナンだ。

ただ「彼女」からあんなことを言われたせいか、佐々木の言動が気になって仕方がない。見れば見るほど、そんな風に思えてくる。
そんな風ってのは、あえて解説なしの指示語だけで勘弁していただきたい。決してミスではない。仕様だ。

たとえば、今のこの状況。
午後の授業を終え晴れて自由の身となった俺は、近くの本屋から本を引っ張ってきて大学近くの公園で読んでいた。それが長門の貸してくれたSFモノの続編だったのは、ホームシックのようなものなのだろうか。
しかし読みはじめて幾許もたたない内に
「おや、珍しいねキョン。読書かい?」
すっかり聞き慣れた声が斜め上三十五度から降ってきて
「隣に失礼させてもらうよ」
すっかり見慣れた微笑が俺の右で小規模に炸裂した。ちくしょう。
ところで、なんで俺と同じところに?大学から帰る方向にあるとはいえ、通りから路地に入ったわかりづらい場所だ。
ああ、偶然か。
偶然だよな。なら仕方ない。
「確かに失礼だな、こう見えても俺は割と本は読む方だ」
やや強がりの添加物を含んだ俺の声が午後三時の公園に浮かぶ。ブランコには少女とその母親の姿。
492名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:50:06 ID:poSp4YYm
支援
493名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:51:03 ID:l1uVJ3+C
「お前こそ、読書か?」
佐々木の手にした文庫本を顎で指し示す。手の中で曲がったその表紙のタイトルは、カバーに覆われてわからない。
「そういえば、お前が本を読む姿はほとんど見たことないな」
しかしあの知識の豊富さから鑑みるに、相当な本の虫であるはずだ。
「ああ。僕は本を読むときに集中していたい性質だからね。あまり人前で、況や騒がしい所で読みたくはないのさ」
控え目な化粧が木漏れ日に映える。目は物憂げに閉じ、長い睫毛が高校までとは違う雰囲気を醸している。
「こちらに来てから見かけること顕著なのだが、満員電車の中で吊皮も何も掴もうとせず本を読みふける人は一体どういうつもりなんだろうね。自分は絶対倒れないとでも思っているのだろうか」
それはまあ、そうだな。そんな奴に限って電車が揺れると全体重をこっちにかけてきたりして、迷惑ったらありゃしない。
佐々木はクツクツと笑った。夏を目の前にした太陽に焼かれ、雨上がりの地面からは湿った熱気が立ち込める。
「一瞬、急ブレーキでも掛けてくれないかと願ってしまう穢い自分自身に気付いて呆然とすることがあるよ」
同意の相槌を打とうとしたが、右肩に心地よい重さを感じて止められる。かすかなシャンプーの香りが、木陰の風に流され俺の前を走り抜けた。
「人に迷惑をかけてまで読むべき本など、ありはしないのに」
言ってることとやってることが矛盾してないか、佐々木。
「そうでもないさ。先ほどの電車の件では本を読もうとして結果人に寄りかかる者の話だったが、今の僕はキミに寄りかかりたくて寄りかかっている。目的と行動は、なんら乖離していない」
屁理屈じゃないのか、それは。ついでにいえば、本を読む気はないんだな?
「無論僕の行為をキミが迷惑と感じるようであれば、僕はキミに詫びてここを立ち去ろう。どうかな?」
そんな柔らかそうに笑ってる奴に迷惑だなんて言えるものか。
俺のだんまりを許可の意と受け取ったらしく、佐々木はそのまま姿勢を変えなかった。何分もたたないうちに、葉と葉の触れ合う音のなかへ穏やかな寝息が混じる。
「どうすりゃいいんだ……」
幸せそうな佐々木の寝顔と対照的に、俺は一向に進展しない状況を憂いていた。
乗り手のいなくなったブランコが、ただ風の吹くまま揺れていた。
ちくしょう。
かわいいじゃねえか。
494名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:52:35 ID:l1uVJ3+C
後日古泉や長門と連絡を取ってみたものの、有力な情報を得ることはできなかった。
なんつーか、マズイ。このままダラダラと時が経過していけば、それこそ負けへの最短距離だ。
そもそも、長門も古泉も朝比奈さんも元々はハルヒを観察するための集団所属なのだから佐々木に対してアウェーであることは間違いない。
かといって佐々木専属の集団はすなわち俺達SOS団の敵。やすやすと情報をくれるとも思えないし、まず借りを作りたくもない。
ないない尽くしでどうしようもない。
手詰まり感が日に日に強くなっていく気がして、俺は相当参っていた。

しかし、今日の俺は少しばかりテンションが高い。何故かって?
それは元ミス北高(公式記録ではないが満場一致だと俺は信じて疑わない)にしてSOS団専属メイド且つ俺の天使である朝比奈さんと、とうとう会えるからである。
なんだかんだと先延ばしになって俺から要求するのもなんか悪いし、という知り合いが疎遠になる王道のパターンに日々おびえていた俺の気持ちを察してか、いやそうに違いない。
ともかく、朝比奈さんが連絡をくれた。俺はケータイに無限の感謝を込め、耳にあてた。懐かしくもかわいらしい声が俺の脳髄を焼き払う。
ビバ、科学。
会話中俺の脳はエマージェンシーレベルマックスを発令し、まともな思考など出来ぬままその女神の告げる待ち合わせ事項を俺の指は記録というバレエで表現した。文法に間違いがあっても気にしないでくれ。
そして電話終了後、メモを七回悦に入りながら見直し、八回目に妙なことに気付いた。
 
場所 新宿駅東口を出たとこの広場
時間 九時

いつから朝比奈さんは歌舞伎町の女王になったんだ?まさか十五から、ってことはあるまいな。
すまん、今のは妄言だ。

んで、約束の場所、約束の時間五分前に俺と朝比奈さんはかちあった。お互い律儀なもんだ。
朝比奈さん(大)が出てくるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたが、間違いなくちっこい朝比奈さんだ。あいかわらず庇護欲をそそられる。
今日の朝比奈さんは大人になったという主張だろうか、大きく胸と背中のあいた服(名前はわからん)にポニーテールといういでたち。どうやら俺を殺すつもりらしい。
「お久しぶりです、キョンくん。ちょっと見ないうちにたくましくなりましたね〜」
ええ、あなた一人くらいなら包み込めるようになりました、とかは言いたいけど言わない。謙遜で返すのがオトナってもんだ。そうだろ?
「いえいえ、そういう朝比奈さんは、相変わらずかわいいですね」
後で思い返して歯が浮くようなセリフは言いたかないが、大丈夫か?俺。
朝比奈さんはフフフと笑って、俺の手を取った。彼女にしては珍しく、割と強めに引っ張っていく。たくましく……なったのか?
「それじゃ行きましょ〜!お店はもう予約してあるんですよ!」
自分では苦笑いをしたつもりだったが、多分過去最大級にニヤケ面でマヌケ面なはずだ。古泉や谷口にに文句が言えないほどの。
すれ違っていく顔が全て羨望と嫉妬に変わっていくことに優越感と恐怖を覚えつつ、アーケードをくぐる。路上には変な出店やらホスト風の男やら黒人やら。すげえ街だ。
……って、朝比奈さん?どこに向かってるんですか。そっちは赤いゲートがあって、そこから先は愛憎と欲望の都市新宿の真骨頂ですよ?
「こっちにすっごく美味しいお店があるの。一度キョンくんに食べてもらいたくて!」
突っ走ってらっしゃる。こっちを向いてすらくれない。
あんなとこでまた誘拐でもされたら本当に打つ手がないからあまり危険な地域には行きたくなかったが、もうなるようになれだ。
と、半ば自暴自棄気味ながらも夢心地で引きずられていく俺だったが、横断歩道の途中で背中をある感覚に突き刺された。
その一瞬我に返り辺りを見渡すものの、あまりの人の多さにそれ以上の感覚を引き出せない。ネオンライトが行く人々の顔を、腕を、服を、思い思いに染め上げていく。もちろん、俺と朝比奈さんも。
俺は諦めて前を向き、朝比奈さんと並んで歩きはじめた。赤い門に吸い込まれていく、二人の体。
狭苦しい空を見上げてみる。ビルの先端を示す赤い光が、夜空の闇へてんでバラバラに反抗していた。
495名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:54:14 ID:l1uVJ3+C
今になって思えば、あのとき感じたものは視線だった。
それも、一度どこかで感じたもの。
今回は、その視線は笑ってはいなかったが。

「ね、ね、おいしいでしょ?これもこれも食べてみてください!」
朝比奈さんにより拉致された俺は、地下にある怪しげなバーに軟禁されていた。普通の人間が普通の感覚で普通に行動していれば絶対に寄り付かないようなところだ。
というか、まずは入れない。入口には屈強な黒人のボディーガード二名。これ見よがしに黒服で、少しでも下手を打てばその丸太のような腕で駅まで吹き飛ばされること請け合いだ。
そんな二人も朝比奈さんが来ると深々と頭を下げドアを開けた。俺達はマンガかゲームに出てきそうな古めかしいレンガの壁の階段を下って行った。照明がいちいち高そうな光を宿している。
フロントにつくと支配人らしき人物が現れ、俺達は広間とは別のどでかい部屋に案内された。扉の上にVIPと書いてあったとかなかったとか。
そして出てくる料理料理料理酒酒酒。素人目にも解る、金の無駄遣い。パフェの上で線香花火つけてどうすんだ。
多分線香花火じゃないんだろうな、とは思ったけど正式名称がわからんしイチ凡人の目からすれば線香花火にしか見えん。
そんな下らん事を考えている間にも、次々となんやかんや運ばれてくる。アリスのパーティみたいだ。
何か出てくるたびに料金が頭の中で予測・計算され、まさかデートとは男が払うべきものなのだろうかと考えるとそれも食わないうちから胃に穴が開きそうな気分になった。
そんな俺の表情を察してか、朝比奈さんは料金の心配はいらないと言ってくれたが。
というか、朝比奈さん、去年何やってたんすか?
まあ女性の過去を聞くのは野暮である……とこの場合逃げていいのかどうかだいぶ逡巡したが、今聞くべきことはそれではないと判断し止めることにする。
だいぶ酒をいれられていた(朝比奈さんは全然酔っていなかった。なぜ?)がしかし、とある疑問とおそらくはその答えが頭に浮かんだ瞬間幾分か頭が醒めた。多少ふらつく頭に、店内の照明がサイケな模様を殴り書きする。
ウェイターの曖昧な笑みがとある副団長を思い出させる。
シャンデリアやら高そうな料理やらを見ては落ち着きのない朝比奈さんを確認、そしての確信。
「あと何か食べてもらいたいものあったかな……?あっ、そういえば」

「――朝比奈さん」
496名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:55:19 ID:l1uVJ3+C
こんな真剣な声を出せるとは俺自身驚きだ。そして朝比奈さんが驚かない訳、ない。手に持ったワイングラスがくらりと揺れる。
酒入ってなかったら朝比奈さんにこんな口調で話しかけないだろうな。我ながらふてぶてしい。
けれども酒の勢いともやもやとしたイラつきが俺の暴挙を助長する。
時間が止まり、ジャズバンドの生演奏だけが世界を無視して鼓動していた。
俺は朝比奈さんの目を見ることができないまま、質問を始めた。
「なぜ、この店に来ようと思ったんですか?」
「そ、それは、前ここに来て料理がおいしかったから!」
「なぜ朝比奈さんが、こんな危なそうな町の地下のお店に来ることになったんですか?」
「ええと……セ、先輩に連れてきてもらって」
「佐々木の話をしなかったのは、なぜですか?まあ、俺も言い出し忘れていましたが」
「わ、わたしも忘れてたんですよ!大事なことなのに、だ、だめですね!わたしったら……」
質問をするたび、朝比奈さんの声がぶれていく。まるで、その手に持ったグラスの中の赤い液体のように。
「それじゃ、最後の質問です」
俺はそれまで履き慣れていない革靴を見ていたが、顔を上げた。視線が子犬のような瞳を貫く。
そして、シャンデリア、いくらかもわからない酒、名前もわからない料理、地下何メートルかもわからない部屋の壁を見まわして、まるで独り言のように訊いた。

「これは、朝比奈さん自身の意志ですか?」

答えは、なかった。
代わりに、すすり泣くような声がピアノの音に混じる。それは間接照明で怪しげに黒光りしていた。
ああ、なんだかんだ俺って朝比奈さん泣かせてばっかりだな。問答無用因果応報電光石火で死刑台行き、かな。
「やっぱり、キョンくんはすごいですね……隠しごと、出来ませんね」

その後のことは都合によって省略させていただく。あまり語りたくないことばかりだったし、いい加減自己嫌悪に過ぎる。
待ち合わせの場所と時間、そして店は未来からの指令だったらしい。なんでも、こうすることで何か重大な影響が発生するとのこと。もちろん「何か」は「禁則事項」だったが。
問題は朝比奈さんの上司、つまり朝比奈さん(大)が、俺の味方かどうかわからないこと。言うまでもなく信じたいのだが、状況は私情だけで判断することを許していない。
「ホントは、もっと普通のところで、普通にキョンくんとお話ししたかったのに……」
俺は、朝比奈さんが呼ぶならいつだってどこにだって現れますよと言った。
朝比奈さんは、最後に少しだけ笑ってくれた。
酒に漬かった俺の脳みそは、紙芝居でも見るかのように眼前の光景をただ記録していた。
497名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:56:45 ID:l1uVJ3+C
朝比奈さんを地下鉄の駅まで見送り、俺は再び最初の待ち合わせ場所まで戻っていった。涼しげな風がタクシーのようにビルの間を吹き抜ける。
明日は一限。ダラダラしている暇などなく、さっさと帰って寝るべきだ。先ほどのことで心労もたまっている。
それなら、この歩みを続ける理由はなんだ?なぜ俺は歩き続けている。
答えが出る前に、俺の足は止まった。俺の目は見ていた。
同じような髪形の男を。
同じような服装の女を。
同じような高さのビルを。
同じような底辺のゴミたちを。
とても数え切れないほどの光を。
それですら照らしきれない闇を。
絶え間なく囁き怒鳴る音を。
それですら隠しきれない静寂を。
そのすべてが到達できない狭間に、俺は手を伸ばした。
ズブリ、と、ありえないはずの擬音が俺の体を包み込む。
目を閉じる。
ドロドロに溶けた鉄をくぐり抜けたなら、こう感じるのだろうか。燃え尽きるような熱さが質量を伴って全身に殴りかかる。
しかし、俺は止まらなかった。止まるわけにはいかなかった。

唐突に、鼓動と呼吸以外のすべての音がやんだ。俺は目をあける。
どこかで、こういう写真集を見た様な気がする。
誰もいない、東京。金属音のような無が聞こえる。
その中心に、俺は独りで生えていた。ビルの屋上の赤いライトだけが、ここでの動く全て。おっと、信号も動いているな。
似たような空間には、何度か来たことがある。今となっても良い思い出とはならないが。
酒の幻覚?
それなら、何が起こったって問題ないな。現実じゃねーし。
頭の中の冷えた部分ではしきりにそうじゃないだろと警告していたが、朝比奈さんに担がれていたというひねくれた考えがその言葉を無視した。
それに、その言葉に耳を貸せば、いよいよ俺の手に負えない現実が非現実世界で俺を飲み込む。だから、何も認めたくはなかった。
しばらくその場に立ち尽くしていたが、何も起こらないので仕方なく歩きはじめた。
白い部分のはげかかった横断歩道を横目に車道へ出る。
植え込みに散乱していたはずのゴミは跡形もなく消えていた。
蒸し暑さだけ現実と虚構とが共有している。
ややふらつく足で歩けど歩けどついに人っ子一人見つけることができず、スーツを着込んだ体は汗だくになってきた。
それとは逆に酔いは段々と醒め、脳に響き渡るアラームは無視できないレベルとなってきた。

頭から完全に酒が抜けきり、代わりに冷汗がちらほら見え隠れするようになり、俺はとうとう観念した。
避け続けてきたこの答えこそが、おそらくは正しいのだろう。

ここは、閉鎖空間。
498名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:56:52 ID:poSp4YYm
支援
499名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:58:18 ID:l1uVJ3+C
なぜ俺が一人で入り込めたのかなど「異議あり!」なポイントは腐るほどあるが、「酒の幻覚」が消えてほかの選択肢が出てこない以上これしかない。
俺はこれを状況の進展というスカウターがはちきれんばかりの無理やりプラス思考にして自分を慰めることにした。
一度そうと認めてしまえば、あとは随分と楽になった。
犯罪者か。

この閉鎖空間は、状況や感覚からいって佐々木のものだとは思うが、何だか様子が違う。
前来た時はクリーム色だった世界が、寂しげな藍色に変わっていた。まるで海の底をひとり歩いているよう。
そういや、一人で閉鎖空間に来るのなんて初めてだな。けっこう、気味が悪い。一粒だけ鳥肌が立ったような気分だぜ。
くだらないことを考えながらも一通り歩き回ってみたが何も起こらず、途方にくれて俺はベンチに腰かけた。
進展したかと思いきや、とんだブービートラップだ。溜め息何回連続で出るか数えて――

あっ、ところで知ってるか?
物語ってのは、「あきらめかけた、その時」に絶対何か起こるようになってるらしいぜ。木曜スペシャルとかでも、そうだよな。それが一番盛り上がるもんな。

えっ?何が言いたいって?それは、お前。
何か起きたに決まってんだろ。
ここに来て初めて聞く、俺以外の者がたてる音。地球を踏み割るような、バカでかい。
慌てて俺は振り返る。
見上げれば口がマヌケに開いてしまうような、摩天楼。
それがいくつも立ち並ぶスパイクヒルズ。
てっぺんには何かを思い出させる赤い光。

それらの中の一つがなぜか、地面と平行に浮いていた。あれ、都庁じゃねえか?

ポカンと口が開いたのも、ビルがスカイ・フィッシュよろしく宙に浮いているのも、ほんの一瞬以下のことだったに違いない。
しかし、瓦礫の塔と化したそいつがアスファルトにもんどりうって俺の鼓膜を震わすまでの間が、やけに長く感じられた。
そのすぐ隣で、蛇のように長くクラゲのように不明瞭な「何か」が僅かに透けて見える向こうの空間を歪めていた。
ウデ、うで、腕だな、ありゃ。
あんな腕は、サルかヒトしか持たんだろう。しかしあんなでかい腕は、サルもヒトも持たんだろう。キングコングならどちらも満たしているが、顔を見ると生憎それでもない。
もう、回りくどい言い方はやめよう。現実逃避も甚だしい。
つーか、ここ現実じゃないけど。

藍色の暗い世界の中でも容易にその姿を識別できるほどの、暗黒の巨人がそこにいた。
500名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:59:46 ID:l1uVJ3+C
俺がごちゃごちゃと解説をしてる間にも、そいつは次々とビルをなぎ倒して歩いていた。なんか黒くなってから凶悪さが増したような気がする。
おい、佐々木の閉鎖空間ではあいつは出ないんじゃなかったのかよ!
俺は朝比奈さん誘拐犯(名前など忘れた)の言ったことが、それだけでいいから真実であってほしかったと思った。
……なんか、以前見た時よりもでかくなってないか、神人。
というか、さっき見た時よりでかくなってないか。

成長期か?

俺のアホなボケは黒い巨人による、最寄りのビルの破壊という荒業によりツッコまれた。
これだけは考えたくなかったんだが、近づいて来てやがる。
ヤツの顔はノッペラボーだが、目があるのなら確実に俺を凝視している顔の角度だ。
どうやら俺を殺す気らしい。
比喩でもなんでもなく。
「冗談はやめろ」
こういうときには常套句しか言えない。
当然俺は逃げる。当たり前と書いて当然だ。あんなん相手にできるか。
え?漢字違う?すまん、今取り込み中なんでな。あとにしてくれ。
しかしヤツの一歩は俺の三百歩、適当だが。
そんな奴に鬼ごっこで勝てるほど、俺の足はカモシカじゃない。
たとえそうであっても、どうしようもない限界が俺の前に《壁》となって立ちはだかっていた。
体が、何もないはずの空間へそれ以上進まない。寒天のような感覚に押し戻される。
初めて閉鎖空間に侵入したときに古泉と確認した、現実との境界。
すぐそばにあるはずの電器屋の看板が、白々しく「激安セール」の文字を写していた。
叩きつけた腕も、はじめはズブリといったがすぐに行きどまる。
何度も何度も殴ってみたが、痛みのない代わりに手ごたえもない。
くそ、これじゃホントにブービートラップ、言ってしまえばゴキブリホイホイじゃねえか。
そうこうしているうちに破壊音が俺のすぐ後ろまで迫ってきた。振り返ると、闇は俺のほんの十メートル手前。
腕の長さもちょうどそんくらい。

ヤツが腕を振り上げた。
その手が、まるでクイズ番組の解答ボタンを押すがごとく俺を叩き潰すイメージが浮かぶ。
さっきから赤い玉になれはしないかと必死で祈ってるが、別に体のどの部分も光はしない。リミテッドな超能力者の中でも、さらにリミテッドだ。
よかったな、古泉。お前はまだまだ必要らしいぞ。
その前に俺がロストしそうだが。
天を擦るほどに伸ばした腕は少し傾いたかと思うと、ジェットコースターの如く速度を上げて振り降ろされた。

わりい、みんな。
ゲームオーバーだ。

走馬灯の一つでも見てやろうかと覚悟を決め、お呼びでないにもかかわらず一番手に名乗りを上げた谷口のアホ面が俺の脳を汚すと同時に、全身を衝撃が襲う。

あっ、ところで知ってるか?
物語ってのは、「あきらめかけた、その時」に絶対何か起こるようになってるらしいぜ。木曜スペシャルとかでも、そうだよな。それが一番盛り上がるもんな。
501名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:00:57 ID:l1uVJ3+C
恐怖に目をつぶっていた俺は、巨人がアスファルトを叩き割った音が聞こえたことと、自分の体が横向きに吹っ飛んだことに疑問を挟む余地はなかった。
そして、二秒後に疑問を持った。
なんでやねん。
恐る恐る目をあけると、横向きに倒れた俺からは巨人が壁に足をつけて立っているように見えた。
左半身が痛い。
頭がグワングワン揺れる。
口の中に鉄の味。
瓦礫の割ける音。
消えていた五感が殺到する。
なんだか解らん。
とりあえず俺は生きているらしい。SOS団在中に培われた順応能力の高さを活かし、すぐに逃げなければという信号が脳から下される。
しかし、俺の体はどういうわけかすんなりと動かない。
瓦礫かなんかにつぶされてるのかとも思ったが、それにしては柔らかい。
それに、瓦礫には女子のいい感じの匂いなんかしないだろ?ついでに長めの髪の毛なんかも生えちゃいないはずだ。

「まったく……何もできないくせに」

どっかで聞いた声。
どっかで見た制服。
どっかで見た笑顔。

俺は神人にハエの如く圧殺されそうになったことも忘れ、どっかの世界で一度問うた質問を、うわ言のように「そいつ」へこぼした。

「どうしてお前がここにいる」
最大級の恐怖よりも最上級の疑問が勝っていた。
「朝倉、涼子」
俺の口は忌まわしい呪文を唱えたかのように震えながら、動いた。
真上にある信号がちかちかと無意味に点灯していた。
502名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:02:00 ID:l1uVJ3+C
「細かい話は、後でね?」
まるで放課後に人を呼び出しておいたがその前に問い詰められたのを軽くあしらうように茶目っ気たっぷりにそれだけ言うと、朝倉は俺の襟首を掴んで走り出した。
そのまま、腕を振り下ろしたままの巨人の股の間をくぐり抜けて後ろ側に回り込み、百メートルほど離れた所で停止した。
リアル市中引き回しを受けた俺はボロボロになっていた。
が、そんなことはお構いなしに朝倉の手を振り払ってさらにワニに追われたフック船長よろしく十メートルほど後ずさった。そして絶叫する。
「なんでお前がここにいやがんだ!」
お前は一度目は長門に、二度目も長門に消されたはずだ。ここに長門はいないんだから三度目はない。つまりお前の出番はないはず。
朝倉は返答する代わりに微笑のままやれやれといった風で肩をすくめ、良く出来た委員長のように優しく、絶対的に命令した。
「そこから一歩たりとも動かないでね?」
顔のパーツのない巨人が、ゆるりとこちらを向く。
体内の発光部分が不気味にバウンドする。
朝倉はそいつと対峙すると、野球のキャッチャーのような手つきをそいつに向けた。
俺の鼓動の合間に、ブツブツとつぶやく声が聞こえる。

次の瞬間、巨人の頭部が始めからなかったかのように消滅した。
気にすることもなく巨人は立ち上がったが、全身が妙に泡立っている。よくよく見ると、ヤツの体越しに見える向こうの風景が徐々に鮮明になっていく様子がわかった。
朝倉がマシンガンのごとく掌から針のようなものを飛ばし続けているらしい。
黒い雪が巨人から散る。
全身をアメリカのアニメで見る穴だらけのチーズのようにした巨人は、それでもなお近づいてきた。
歩くたびに、体中が欠けてゆく。ゾンビか。
「しつこいわね」
生まれかけの小鹿が立つのを見届けているような声で言うと、朝倉の両腕が上がった。忘れられないビジョンが頭の中で無許可に上映される。
光のない天に乞うような姿勢から朝倉の腕が発光し、蛇のように渦巻いたあと風穴だらけの巨躯へ突撃した。
巨人は朝倉の奇形化した腕にがんじがらめにされ、もし口があったなら、つーか頭自体ないけど、閉鎖空間が新装開店せざるをえなくなるような絶叫でも上げただろう。
そのまま十秒ほどもがいていたが、突然に全身が発砲入浴剤よろしく泡立って溶けた。
カラスの羽が風に舞いあがったように。
503名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:03:10 ID:l1uVJ3+C
俺はいつだって逃げだせたはずなのに、良く出来たホラ―フィルムを怖いもの見たさでつい観てしまうようにそのまま固まっていた。
脳内の情報処理装置は完全にフリーズ。
バックアップの要請も受け付けられない。
朝倉の腕が光を失い元通りになるのを見て、ようやく我に返った。
長髪が揺らぐ。
背中が胸に変わる。
二つの目が俺を確認する。
途端に、カナダあたりに放り込まれたような寒気。
訊きたかったことも何もかもが消えうせ、代わりに絶望的なまでの死への恐怖が全身を突き動かす。
ガタガタ震えながら後ずさりし、ほうほうのていで(こんな表現、イマドキ使うヤツいるのか?)立ち上がって逃げ出した。
と、思ったが。
「ほーら、何もしないから」
という言葉が終るか終らないかのうちに、俺の体のパーツは突然動かなくなった。
そのまま無様に転倒する。
いつかのようにピクリとも、というわけではないが、寝袋に詰め込まれたような拘束感が襲う。
アスファルトをのたうちまわった。硬い地面に叩きつけられる、ジタバタという靴の音。
そして近づいてくる、革靴の音。
バタバタカツカツ、それだけが無人新宿に響き渡る。
それがだんだん大きくなる。
死。
死。
死。
その一文字が頭の中を駆け巡り、呼吸と鼓動がメタルのように大気を揺らし、全身から滝のように冷たい汗が零れ落ちる。
あと四歩。
三歩。 
にほ。
いち。

「死」って漢字、こんな形だったっけ?
俺を見下ろしていた朝倉はしゃがみ込み、すっと右手を上げた。

「ちょっと、お話しましょうか」
額を柔らかいものが流れていった。
504名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:04:55 ID:l1uVJ3+C
「わたしはあなたに危害を加えるつもりはないわ」
「うそつけ」
朝倉の提案により始まった「お話」は、最初この話題から動くことはなかった。
当たり前だ。
二度も殺されそうになったヤツが、二度も殺そうとしてきたヤツの言うことなどカタツムリの角ほども信じられるものか。
「俺に危害を加えないって言うなら、どうして動きを封じる必要がある。さっさと解きやがれ」
もしこの様子が録画されていて後で見ようもんなら一生の汚点となりかねないほどにバタ足しながら凄む。
無論、滑稽なだけであるが。
そう感じたかどうかは知らないが朝倉は実によく出来た笑みを浮かべ
「うん、それ無理」
……そのセリフも慎んでもらいたい。
「だって自由にさせたら、わたしの話なんて聞いてくれないでしょ?」
繰り返す。当たり前だ。
自由が確認できた瞬間に逃げ出す。
「どうせそのままじゃ何も出来はしないんだから、おとなしく話を聞いて」
とても可愛らしくなるように両手を顔の前で合わせ
「ね?」
茶目っ気たっぷりにウィンクした。
「勝手にしやがれ」
自棄になった俺は吐き捨てた。
「もしちょっとでも変な動きをしたら、この舌噛み切ってやる。お前なんかに殺されてたまるか」
身の程知らずとは俺のことをいうらしい。
「それは困るから、その辺の筋肉も喋れる程度に封じてあるよ?よしんば噛み切れたとしても、死ぬほど痛いだけで死ぬことは不可能だけど」
最悪の退路も断たれたワケだ。

ビルの電気は一つたりとも点いていないのに、街頭やら信号機やらはちゃんと動作している。これは一体どういう具合だろうか。実に興味深い……
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
ああ、すまない。お前の話よりもこの閉鎖空間の電気の働きが気になってた。
朝倉は文化祭の話し合いの時にちっとも参加しようとしない男子を見るような目つきで、溜息をついた。
「だから、わたし達は今の事態に危機感を覚えているの」
俺はお前に危機感を覚えているな。
「長門さんは、あなたには加勢できないって、そう言ったんでしょ?」
不承不承肯く。
「情報統合思念体は進化の可能性――涼宮ハルヒの持っていた力自体が意志を持っていたことに非常に興味を持った。今までは、涼宮ハルヒの自我とあまりにも重複していたから発見できなかったけど」
サラサラの髪がかすかに揺れる。
「それが別の肉体へと移ったことで表面化した。観察すべきは、涼宮ハルヒではなく進化の可能性そのもの。涼宮ハルヒの鎮静化によって可能性を見失いつつあった情報統合思念体は、それこそ活発化した」
活発な情報統合思念体とは、なんとも想像しにくいな。
そこでふと思いだした。
「それじゃ、長門の言ってた『進化の可能性を観察する別のインターフェース』ってのは、お前のことか?」
朝倉は待ってましたとばかりにニンマリして
「人の話は最後まで聞く!」
お前に人の道を説かれるとはな。
「たしかに、これまでにない展望が予見された。期待が大きく膨らんだ」
ピンと人差指が立てられる。
「だけどそれは、あくまでも主流派の話」
505名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:05:11 ID:poSp4YYm
支援
506名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:07:12 ID:l1uVJ3+C
そのまま自分を指して
「それまでの急進派は、『力自体が意志をもつ』ということに驚愕したの。考えてもみて」
ふむ。
「無意識の内に力を発揮する涼宮さんならこちらからのアプローチでコントロールできるかもしれないけど、なんでも自分の願いを意識的に叶えちゃう人が言うことを聞いてくれるかしら?」
厳しいだろうな。
「自覚のあるカミサマを怒らせようもんなら、進化の可能性どころか原始の世界まで逆戻りさせられかねない。世界を造り変えようとしたあのカラミティには、さすがの急進派もキモを冷やしたわ」
頭の中に情景が浮かび上がってくる。灰色の世界、無数の「神人」、崩れ落ちる校舎、そして、ハルヒの意外と華奢な体。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす」
朝倉の口が三日月形に吊り上がる。また一粒、俺の背中を冷汗が伝った。
「主流派はあの危機を忘れ、再び世界を危険に晒そうとしている。世界を滅ぼされるくらいなら、進化の可能性など必要ない。それが、急進派の方向性。それを全うするため、わたしは再構成された」
連続俺殺害未遂犯は手を後ろに組んでクルクルと回った。髪の毛がバレイのリボンのようにしなる。
「新しいファクターにお互いが方向を百八十度転換させて結局また敵対するなんて、皮肉な話ね」
そこで朝倉の話が途切れたので、俺は口を開いた。おっ、そういえばちゃんと開いたな。舌を噛むつもりはとうに失せていたが。
痛いだけらしいし。
「そういや、なんでお前は佐々木の閉鎖空間の中に入ってこられたんだ?ついでに俺も」
佐々木の閉鎖空間に入るのは、あの憎き朝比奈さん誘拐犯の専売特許だったはずだ。
朝倉は大きな瞳でニッコリとさも嬉しそうに笑いかけて。
「まず普通の人がここに入れないのは、なんていうか……フィルターを思い浮かべてみて」
俺の頭の中にコーヒーフィルターが出現した。
「普通の人が入れない理由は、粒が大きすぎてフィルターの目を通り抜けられないから。古泉一樹や橘京子が入り込めたのは、その粒が常人よりも小さくなるような能力を与えられたから」
俺ですら忘れていた朝比奈さん誘(以下略)の名を、直接関わりはないはずなのに朝倉は知っていた。
「なるほど。それで、お前と俺は?」
「進化の可能性はその自我を発揮する際に、フィルターの交換を行ったの。もっと網の目を細かくして、邪魔者たちが入り込めなくなるようするために」
高校生のお姉さんが近所の小学生に算数を教えるような優しさをふんだんにちりばめた笑顔で
「けれども、そこにひとつの誤算があった。フィルターを交換するためには、一度古いフィルターを取り外して無防備な瞬間が生じる。それがどれだけの刹那でも、進化の可能性が人間と同じ自我を持つ以上『時間』がうまれる」
優雅に髪をすいた。夜は明けない。閉鎖空間だからか。
「その瞬間をねらって飛び込んだ。理論的に可能なことなら全てが可能。それが、わたし達の力」
507名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:08:20 ID:l1uVJ3+C
賢明なる読者諸君には自明のことであろうが、誤解のないように念のため言っておく。これは朝倉を油断させるための演技だからな。素直なフリをしているだけだぞ。

じゃあ俺は。なぜおれはここにいる。
「あなたはさっぱりわからないわね。こっちが聞きたいくらいよ」
この役立たずが、と思ったが口にはしない。人の頭の上のハエを追うより、だ。
「強いて言うなら、佐々木さんにも進化の可能性にも気に入られているからじゃない?」
墓穴か?墓穴だ。
なんとも返せずうつむいた俺の視界が、めくれ上がったアスファルトを捉えた。
「なんでここに神人がいるんだ?前来た時には影も形もなかったが」
「進化の可能性が佐々木さんに移ったからよ。もともと『彼』は進化の可能性が作り出したエネルギーの一部。それを『殺し』ていくことで、わたしは進化の可能性の弱体化、ひいては殺害を達成する」
そんな簡単に殺すとか言ってはいけません。実行力のあるお前は特に。
「それと」
「なに?」
「なんで制服なんだ?」
「この服装以外のデータがメモリに存在しなかったから」
「なるほど」
信じるも信じないも俺の自由。
朝倉の瞳は、一部でそう語っていた。
一部で。

気がつくと俺の体は自由に動くようになっていた。人質に取られていた社長がやっとこさ開放されたように、全身で伸びをする。
「随分と警戒心も解いてくれたみたいね」
油断していた。迂闊な。自重せよ。可及的速やかに退避しなければ。
でも、どこに?どうやって?
「この閉鎖空間は常時展開しているタイプだから、あなたは自分が壁をすり抜ける姿をイメージすれば出ていけるわ」
んなイメージ持てるか。
「じゃあずっとここにいる?わたしは構わないけど」
よし、やるか。
ん?そういえば。
「朝倉」
瞳と瞳がかちあう。
不覚にもきれいだと思った。
「お前は出ていかないのか?」
ふっと表情が緩んだ。苦笑い――これまでのどの笑いよりも人間臭い――をつくる。
「言ったでしょ?もう最小単位のフィルターがかかってしまった」
すっと目が閉じられる。俺はそんな朝倉を、見開いた目で見つめる。
「わたしはもう出られない」
508名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:10:33 ID:l1uVJ3+C
なぜだろうか、ガンと頭をぶったたかれたような感覚に襲われた。
「マジかよ」
「本当よ」
確かに俺はコイツに二回も殺されかけ恨みつらみも山ほどあるが、だからってそいつが一生こんなところに閉じ込められるのを喜べるほど単純でもない。
俺はそれ以上何も言えなかった。
しかし朝倉はまただいぶ嘘くさい笑みを浮かべ
「可哀相って思ってくれるなら、ちょくちょく遊びに来てね!」
とか言ってきやがった。
無論、こう言うしかないだろ。
「断る」
それが、俺にふさわしい言葉。そうだろ?


「んじゃ、な」
俺は目を閉じた。壁をすり抜ける自分をイメージする。そういえば昔佐々木とこういう話になったような気がするが、何回以上ぶつかってもまだ不可能なんだっけ?
ついでに、別れの一言。
「礼は言わねえぞ。俺はお前に二回殺されかけたんだから、今日お前に助けてもらったのも入れて差し引きマイナスいちだ」
「それじゃ、あと二回助けてあげた時にもらおうかしら、お礼」
「来ねえよ、こんなトコ」
沈黙。本当になんの音もしない。それはそれで集中し辛い。

「来ないでね」
何も走っていない道路に、誰もいないビルに、何処も埋まっていない空に、木霊した。
目を開けれなかった。表情を見てみたかった。でも、今までにないものが見えそうで、怖かった。

全身を、熱が包んできた。
つむった眼球に、壁が埋まりこんだ。
体がフィルターの目により原子レベルで細分化される、気がした。
ほんのちょっと目を開けて見ようと思ったころには、俺の全身を声、クラクション、巨大スクリーンの効果音が包み、都庁はおそらく普段どおりであろう光を新宿の月と対比させていた。
あの三日月は、下弦の月だったか上弦の月だったか。
そして先ほどまで朝倉の立っていた場所には、ただタバコの吸い殻が汚水に沈んでいた。
それでもその水溜りは、ネオンに照らされて七色の月を映し出していた。
509名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:12:20 ID:R7jJ32DG
支援?
510名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:14:33 ID:l1uVJ3+C
今回はここで切ります。
前回から続きを書いてみたら思いの外長くなってしまい焦りました。
もしよろしければ、もう少しお付き合いください。

あと、間違えてageてしまいました スマソ……
511名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:33:51 ID:D5pyS8Gy
これだけ長い文章を考えるのは疲れただろう。
乙。
とだけ言っておく。
512名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:04:38 ID:TGI06oLg
後からどうにでも言い逃れられるような安全圏からの、もってまわった書き込み乙
513名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 00:16:26 ID:wyAuuBUY
>>510
今は感想を述べるのが難しいところだ。各人理由が判然としない行動が多いし、謎な箇所が多すぎるから。
続きを是非投下してもらいたいな。ひとまず、乙です。
514名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 01:14:36 ID:uoOybBXi
>>510
乙。
朝比奈さんとのデート中の視線は佐々木or「彼女」かな?
他の人と浮気なんてするような人は神人にやられちゃいなさいって所か?
何にせよ続きが気になるな
515名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 01:15:07 ID:t6FQgfo9
>>510
GJ。
書くことを楽しんでるSSという気がする。
役者が次々出てくる話の広げ方とキョンの疾走感と嫌みのなさがいいなあ。
516名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 02:08:23 ID:Wn1FulZe
>>510
乙。
最終的にハルヒとくっつくなら、GJ。
佐々木とくっつくなら、糞。

と、俺は評価しよう。
517名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 02:18:18 ID:gJyOIzaD
>>516
評価もクソもタダのカプ厨じゃねーかw
つーかvipじゃねぇんだから内容を見ろよ内容を。

まぁコレ単独じゃ感想の出しようもねぇけどさ…
518名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 02:22:29 ID:EN5IW58k
>>510
まずはお疲れ様。
完結までがんばってくれ。通して読むぜ。
519名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 03:45:22 ID:Je2761EK
>>515
本人?
520名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 04:11:35 ID:SEQS2gL+
>>510
相変わらず長いが、飽きずに最後まで読めるのは展開を引っ張る力が強いからなんだろうな。
読みながら次の展開が気になるSSはいいSSだ。
取り敢えず乙して、続きをwktkしながら待ってるぜ。
521名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 09:17:46 ID:eSiUUyr1
>>510
乙。名作の予感…!
シビアな意見が多いが、俺はかなりwktkして待ってます。
522名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 11:10:51 ID:+LMWconZ
>>516
この話で佐々木エンドなら糞展開確実だからな(笑)
523名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 13:34:16 ID:kkPMBV7d
-ここまで俺の自演-
524名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 22:00:14 ID:klw9zRES
名作の予感…!
525名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 22:04:38 ID:ER0aCRd+
wktk
526名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 22:51:19 ID:52HNobk0
単発IDが多いのはROMが多いから
普段の雑談が馬鹿馬鹿しすぎて参加してないだけ
>>510
527名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:26:02 ID:miy3daNA
後からどうにでも言い逃れられるような安全圏からの、もってまわった書き込みばかりだな乙
528名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:44:24 ID:DlkCS+aA
スルーで。
529名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 04:24:17 ID:/yOG8Pbc
ヒントっもってまわった書き込みしてるのはひとり
530名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 08:38:50 ID:5Mq3pzqI
それは小学生の頃まで遡る。あたしが小学6年生の秋。日本シリーズで阪神の甲子園球場に連れていかれた。
今思えばそれは当時のあたしにとって拷問に近いものであったと思う。
響き渡る歓声。そしてそれを受けている選手たち。ああ、ここにいる人たちは選ばれたひとなんだなと思った。そしてあたしは場違いだと。でもそれだけじゃなかった。その日があたしの見た最後のパパだった・・・

パパは有名な芸術家だったけど絵がここのところ上手くいっていないらしく、たびたびママと相談していた。それを横で聞いていたあたしだけど大人の話に口を挟むのはなんとなく躊躇われた。それからパパはあまりあたしと遊んでくれなくなった。家族全体の会話も。
あるとき、急にパパに呼び出された。だけど手首をギュッと掴まれたときからあまりいいことではないような予感はしていた。
なぜかパパとママの寝室に連れていかれた。片方に白いシーツが一面にひかれている。そして少し離れたところに画材とスタンドが用意されていた。あたしに絵を教えてくれるのかとそのときは思った。
531名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 09:08:47 ID:5Mq3pzqI
「ハルヒ。服を全部脱ぎなさい。」その瞬間、頭が真っ白になった。それは、裸になるってこと・・・?
もうパパとお風呂には入ってないけど昔はパパに見られたってなんともなかったけどちょっと胸も大きくなりはじめて変な毛もうっすら生えてきていて恥ずかしい。あたしが立ち尽くしていると、「さっさとしなさい。これはこれからの生活に関わる大事なことなんだよ。」
パパはあたしをモチーフにした彫刻をつくるらしかった。仕事で悩んでいたから、だいたい想像はついたけどあたしが作品になるなんて思わなかった。
あたしは服を全部脱いでしまうとパパにベッドの上に乗るように言われた。そして、手を天井に差し伸べて上半身を反るポーズをさせられた。秘密の部分も脚を開かされて露わにされた。10分もしないうちに体の姿勢を保つのが難しくなってきた。
ちょっとでも動くとパパの厳しい怒号。パパはあたしと画板を睨み続けていた。パパが何を考えているのかすごく気になってその日は何度も動いてしまい、そのたびに叱られた。開始から4時間。その日はやっと終わった。気づくと全身が汗だらけになっていた。
532名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 10:09:18 ID:5Mq3pzqI
「いい作品をつくるにはお前にも頑張ってもらわないと困るんだよ。今日みたいな根性では・・・」
「きゃっ!な、なに・・・」親父は床の間の柱にどこからか用意された臭そうなロープであたしを縛り付けた。小さいあたしは抵抗もできずに裸のまま朝までそうして立っていた。夕飯も食べさせてもらえなかった。ママもいるはずなのに・・・
朝になってようやく縄を解いてくれたけどショックだったのはそのときママがただあたしに一言謝っただけだったことだった・・・
それから学校から帰ると長時間ポーズをさせられ続ける日々が続いた。卒業も近いのに友達と遊ぶことも禁止され、あたしは日に日に肉体的にも精神的にも蝕まれていった。
寝る前はいつも親父のことを考える。いっそのこと死んでしまえばいいのにと思っても昔の思い出がよみがえり、いつも泣いていた。これが終わったら昔みたいな優しい親父に戻ってくれると信じて・・・
親父は酒に溺れ、それ以外のときでも暴力を振るう用になった。中学に上がるころにはあたしはほとんど他人と接触することがなくなり、淋しく小学校を卒業した。
533名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 10:38:36 ID:5Mq3pzqI
あるとき耐えられなくなったあたしはついに七夕の日に家出することにした。
そこで話にもある不思議な男と出会う。そしてあたしは・・・結局そのまま帰ることにした。家についたら親父はもうこの家には居なかった。
ママはあたしを抱き締めてただただごめんねと繰り返すだけだった。
もう誰からも縛られることはない。と、わずかな希望が沸いたが、あたしの思うようにうまくはいかなかった。中学時代は本当にひとり。集ってきたのはどいつもこいつも体目当ての変態男ばっかし。
そうして高校になれば何かが変わるだろうと思って中学も卒業した・・・
そうしてあたしは高2になった。あたしの思い通りに振る舞える居場所を見つけた。そうしてその中のひとりの彼に恋心を抱いていた・・・
彼は良き相談相手だった。とはいっても、あたしが一方的に話しているだけだったけど・・・なんとなく自分の過去を話しても大丈夫な気がした。
534名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 11:32:42 ID:bzFlVdmb
書きながら投稿はイヤン
535名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 12:10:41 ID:MKozt4Jr
エスパー魔美思い出した
536名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 16:05:29 ID:Qn9pmAgH
この変態と、エスパー魔美の健康的ヌードデッサンを一緒にするな
537名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 17:57:33 ID:r4aVURjv
思い出したぐらいで怒るなよw
538名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 19:56:56 ID:gtAuAALu
ヒントっ思い出したのはひとり
539笹みそテクニック:2008/07/17(木) 20:40:38 ID:r4aVURjv
笹みそテクニック

山川流


「う〜トイレトイレ」
今、トイレを求めて全力疾走している僕は、北高に通うごく一般的な男の子。
強いて違うところをあげるとすれば…うん、特にないな。
苗字は国木田、名前は禁則事項。

そんなわけで、帰り道にある駅前公園のトイレにやって来たのだ。

ふと見ると、ベンチに一人の若い女が座っていた。

ウホッ! 佐々木さん…。

ハッ!
そう思っていると、突然佐々木さんは僕の見ている前でスカートのホックを外しはじめたのだ。

ジジーッ、スルッ。

「くっくっくっ、やらないか?国木田」

そういえばこの公園は防音のトイレがあることで有名な所だった。
中学生の頃、佐々木さんに密かに憧れていた僕は、誘われるままホイホイとトイレについて行っちゃったのだ。

彼女──
佐々木さんは中学卒業後、某有名私立進学校に入学したはずだった。
どういう訳かセックスをやりなれているらしく、トイレに入るなり僕は素裸にむかれてしまった。

「良かったのかい、ホイホイついてきて。僕は同級生だって、かまわないで食っちまう人間なのだが」

こんな事初めてだけどいいんです…
僕…佐々木さんの事、好き、でしたから…。

「くっくっくっ、嬉しい事言ってくれるじゃないか。それじゃあ、とことん喜ばせてあげるよ。国木田」

言葉どおりに彼女はすばらしいテクニシャンだった。
僕はというと、性器に与えられる快楽の波に身を震わせ悶えていた。

しかしその時、予期せぬ出来事が…
ブルブルッ!
うっ…。

で、出そう…。
「ん?もうかい?意外に早いんだね」
ち、ちがう…実はさっきから小便がしたかったんです。
このトイレに来たのも、そのためで…。

「そうか…」
540笹みそテクニック:2008/07/17(木) 20:41:23 ID:r4aVURjv
「よし、いいことを思いついた。君は僕の尻の中で小便をすると良い」
えーっ!?
おしりの中へですかぁ?
「男は度胸だよ、国木田。何でも試してみるのがいい。きっと良い気持ちだと思うが」
「…。」
「ほら、遠慮しないで入れてみたまえ」

佐々木さんはそう言うと、制服のスカートとショーツを脱ぎ捨て、美しいお尻を僕の前につきだした。

自分のお尻の中に小便をさせるなんて、なんて人なんだろう。
しかし、佐々木さんの引き締まったヒップを見ているうちに、そんな変態じみた事を試してみたい欲望が…。

それじゃ、やります…。

クン…ズ!ズズ!…ニュグ!

は、入りました…。

「あ、ああっ…次は、小便だよ、国木田…」

それじゃ出します…

シャーーッ チュチューーッ

「いいよ…。お腹の中にどんどん入ってくるのがわかる…。しっかり、肛門をしめておかないと…」

チューー

くうっ!気持ちいい…!
この初めての体験は、オナニーでは知る事のなかった絶頂感を僕にもたらした。
あまりに激しい快感に、小便を出しきると同時に僕のペニスは肛門の尿の海の中であっけなく果ててしまった。

ああーーっ!!

ドピュッ チャッ シャーーッ

「このぶんだと、そうとうガマンしていたみたいだね。…お腹の中がパンパンだよ、くっくっくっ」

はっはっ…。
「どうかしたのかい?」
あんまり気持ちよくて…こんなことしたの、初めてだから…。
「くっくっ、だろうね。僕も初めてだよ…」
541笹みそテクニック:2008/07/17(木) 20:43:00 ID:r4aVURjv
「ところで、僕のクリトリスを見てくれないか。これをどう思う?」

すごく…大きいです…。

「大きいのは良いけどね。このままじゃおさまりがつかないんだよ」

ヒョイ!
あっ…。
ニュプ

「今度は僕の番だろ、国木田」
ああっ!!

「いいっ…君は顔に似合わず、意外に逞しいんだね…」
で、出る…。
「なに?今出したばかりなのに、もう出すのかい?精力絶倫なんだね」
ちっ、ちがう…!!
「えっ?今度はウンコ?」

「君、僕をバキュームカーか何かと間違えてるんじゃないだろうね」
しーましェーん!!

「仕方がないな。いいよ、国木田、このまま出してしまえ。大便まみれでやるのも良いかもしれない。くっくっくっ」
えーーーっ!?

─と、こんなわけで、僕の初めての体験はササミソな結果に終わったのでした…。

    ___
   |   _|
 ∠_____ゝ
  ll| ´_  ,_`l ?
  (( '''''( _ )'''l)
  ヽ ' -―=~
  /ロ/ ー' ヽ
  | ||//⌒l|
  | |' /` / | END
542名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 22:47:29 ID:ozffWUz4
なるほど。
糞を垂れ流した訳だな
上手いな。
543名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 22:52:31 ID:O9hx8bx5
できれば投下前に注意書きがほしかったです。
544名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 23:33:16 ID:Qn9pmAgH
佐々木は変態が似合う

今度は谷口でやってくれ
545名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:03:42 ID:aWrHpStN
どう考えても内容・文章共に糞まみれだが、
こうもくだらないことがわかりきっているが故に、最後まで読んでしまうという俺のアホさに乾杯。
ガ板のコピペ改変を見てる気分だった。
546名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:07:11 ID:EoBv4C/F
以上です。では
547名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:07:55 ID:7U0T0FQU
毎回毎回高級料理ばっかだと疲れるぜ。
たまにはカップラーメンが食いたくなる。そういうもんさ。

しかし、このくだらなさはなんなのだww
548名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:58:30 ID:1dTb+T96
カップラーメンに失礼だろ。

せいぜいよっちゃんいかクラスの商品価値だ。
549名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 01:04:57 ID:7U0T0FQU
これだけ頭の悪い文章を考えるのは疲れただろう。
乙。
とだけ言っておく。

名作の予感…!
550名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 02:00:02 ID:yQAF5sX7
なぜ国木田と佐々木でクソミソテクニックなのだ

公園のベンチといえば長門だろう
川沿いのベンチならみくるだが
551名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 03:48:56 ID:7S5xvlT6
本文にも笑ったが、それ以上に最後のAAで吹いたw
投下乙!
552名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 12:18:39 ID:InyLt4pn
久々に大笑いしたGJ!
553名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 00:10:26 ID:U9sgzWLd
これだけ長い文章を考えるのは疲れただろう。
乙。名作の予感…!
とだけ言っておく。
たまにはカップラーメンが食いたくなって最後まで読んでしまう俺に乾杯。
554名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 02:02:16 ID:T0zwI54/
エスパー魔美思い出した
555名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 04:56:19 ID:lPuUqYvM
これだけ長い文章を考えるのは疲れただろう。
乙。
とだけ言っておく。

みんな言い方が優しくなったなw
556名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 07:25:08 ID:fgH5AoA4
あぁそうさ!
なんせ俺の自演だからな!!
557名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 14:08:28 ID:rbA/6fa5
そしてここまでが俺の自演
558名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 14:45:50 ID:nmpDIh2T
ジ・エンド
559名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 17:17:42 ID:QZfTYOO4
末期だな
560名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 17:31:30 ID:64smLdeO
ヒントっっっっっっ末期なのはひとり
561名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 19:53:00 ID:T0zwI54/
よっちゃんいかに失礼だろ。

せいぜい松坂牛サーロインステーキクラスの商品価値だ。
562名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 20:34:07 ID:fgH5AoA4
これは俺の自演
563名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 20:59:27 ID:Ef3YhUD8
むしろ俺の自慰







ハルヒと遊園地行きたい
564名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 23:16:45 ID:cmnWBBWi
自演祭りだな。
まず落ち着こうぜ。
565名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:21:54 ID:SIVSJbI6
>564
自演乙。
566名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:37:33 ID:3SVObkeY
>565
自演乙。
567名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 01:49:24 ID:KTucP5oo
以上です。では。
568名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 08:34:44 ID:wDtcEJ7n
以上、自作自演でした
569名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 13:05:12 ID:SIVSJbI6
エスパー伊藤思い出した
570名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 20:50:39 ID:wDtcEJ7n
以上です。では。
571名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 23:53:59 ID:KTucP5oo
ーここまでテンプレー
>>1
572名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 00:11:24 ID:hHL4R13h
名前を出しても大半の人はピンとこないもんだ。ハルヒでエロ描写を求めている人なんて皆無だろうしな。
アナルなんて名称を出さずに、肛門って方が伝わりやすい。
573名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 00:25:37 ID:xNAT8MBd
いきなり何を言い出すんだこの人は
特に後半w
574名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 00:29:22 ID:FHUciz3L
とにかく肛門と言いたくて悶々とした生活を送っていたに違いない
575名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 01:01:28 ID:ERoL/4P4
>>572
俺はハルヒエロ描写を求めてここにたどり着いたんだが。
576名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 01:36:03 ID:hHL4R13h
なるほど、IDもエロイな
577名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 01:38:19 ID:FeNtDicR
>>575
マイノリティーは得てしてマジョリティーと勘違いしやすいもの
578名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 03:27:44 ID:/71RDtHA
>>575
エロールw
579名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 03:30:37 ID:FPp7LgPZ
しかも4Pか
580名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 04:11:01 ID:j0r+MZ6X
>>578
ロマサガww
581名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 08:39:26 ID:VVTPPwH+
>>575
ちょwww
IDwww
582名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 09:45:27 ID:bEP6Fhjj
【表現規制】表現の自由は誰のモノ【101】
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news2/1215876998/
583名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 15:51:11 ID:CxU9oou6
>>582
おk
584名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 18:40:31 ID:yfhJ24mR
保守
585名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 19:46:15 ID:jOvnpORO
飽きた。このスレだけで4つ投下したけど飽きた。
586名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 20:09:20 ID:hDthh+Pd
俺はあんたのエロは嫌いじゃないぜ?
587名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 22:04:18 ID:0b8zUoIg
惨めな自演だ
588名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 22:11:08 ID:jOvnpORO
>587
みたいな害虫が湧いているうちは書かない。
589名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:09:26 ID:0b8zUoIg
見苦しいなあ
590名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:11:03 ID:WoLCMp8p
枯れ木も山の賑わいって褒め言葉じゃないよね
591名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:14:07 ID:hDthh+Pd
>>589
はぁ……はやく死ねよ
592名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:19:31 ID:0b8zUoIg
こんなあからさまな自演をして楽しいのだろうか
593名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:37:04 ID:hbOgJhqm
>>585->>529まで全部自演だよな。どう考えても。
594名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:52:42 ID:jOvnpORO
>592
バカの一つ覚えみたいに自演自演と繰り返す無能。語彙力のなさが伺える。
595名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:58:14 ID:LajO9lDt
このスレ4つもssあったっけ?とまず思った。
もう煽りやらそんなレスしか見てない気がする。
596名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:02:57 ID:0b8zUoIg
図星を付かれて顔が真っ赤なID:jOvnpORO
必死すぎる
597名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:08:46 ID:qL8SewvE
>596
そんなあからさまな荒らしをして楽しいのか?君は。
楽しいのなら今すぐ病院で見てもらった方が良い。マジで。
598名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:16:50 ID:rpAEvj/X
飽きた。このスレだけで4つ投下したけど飽きた。
599名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:40:59 ID:qL8SewvE
ID:0b8zUoIgは今すぐ自殺でもしたほうが良いんじゃないかな。
彼が人類に貢献できる唯一の方法が自殺する事だと思う。
600名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 02:32:59 ID:vxdKMgjB
クソみたいな鬼畜陵辱モノを描く同人作家がいるのだが、ソイツの描いた
佐々木モノは珍しく救いがある展開だった。てかまさかアイツを正義の味方
にするとはw
601名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 02:42:59 ID:vvXNPALa
>>600
まて、きっと大董卓だろう?
602名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 04:49:47 ID:vxdKMgjB
>>601
…流石2chだな。余裕でチェック済みでしたか。
作者ハルヒ好きなのかな。佐々木と朝倉のキャラがぶれてなかった。
あとベガもwww
603名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 05:14:27 ID:vvXNPALa
確かに、ちゃんと原作を確認しているらしいのが読んでてわかったので好感。
エロ作家は原作を全然読まない、見ないって人多いからね。
最後の長門の口調も違和感ないし、まだメガネをかけてるのも設定どおり。
ハルヒの「あたし」や「古泉くん」に佐々木の「キミ」もあってた。
朝倉は「私」になってたけど、原作でも朝倉の一人称は混乱してるから仕方ないな。
四コマで一回ハルヒの一人称が「私」になってたが、これはただのミスっぽいし。

変なこだわりで、ついつい饒舌になってしまうな。
604名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 13:57:37 ID:sJ/5T9Dx
原作リスペクトのない同人ほど読んで損した気分になる物もないからな。
しゅべすたやとろりんこみたく何を(誰を)描いても同じというか原作のキャラと
全く接点のない別人になってしまう奴らもいるけど。
605名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 13:59:07 ID:4ztSfkbv
-ここまで俺の自演-
606名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 14:38:57 ID:D5b+hqa8
…流石2chだな。余裕でチェック済みでしたか。
作者ハルヒ好きなのかな。佐々木と朝倉のキャラがぶれてなかった。
あとベガもwww
607名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 15:04:41 ID:0iJTMdqb
原作読んでて当たり前だろ
608名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 19:05:10 ID:qL8SewvE
バカの一つ覚えみたいにコピペを繰り返すだけ。
実社会でもネットでも糞の役にもたたん邪魔な存在。早く死んで欲しいこいつ。
609名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 19:15:55 ID:PzNNborL
こいつwwwwww
610名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 19:22:37 ID:rpAEvj/X
>>594
みたいな害虫が湧いているうちは書かない。
611名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 19:31:52 ID:pYVUlH8k
荒れてるな。
今批判覚悟で投下してくれる勇者はいないだろうか。
少しはマシな空気になると思うんだが…
612名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 20:23:02 ID:OS8aowva
>>611
自分でやれよ、作品が投下されて雰囲気が良くなると思うならな
613名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 20:39:59 ID:od6Pl1C0
>>612
投下を待つスタンスとしては最低だな
投下しない、待たないんだったら消えてね♪
614名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 20:45:16 ID:qL8SewvE
投下したって荒らしの材料にされるだけ。
>610の様な馬鹿の1つ覚えの害虫が死ぬまで投下したって何も変わらない。

害虫早く死ねよ。お前の存在自体が人類にって迷惑だ、早く死ね。
615名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 21:33:03 ID:rpAEvj/X
バカの一つ覚えみたいにバカの一つ覚えバカの一つ覚えと繰り返す無能。語彙力のなさが伺える。
616名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:11:26 ID:4ztSfkbv
流石夏休み
沸きまくってるな。
617名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:28:44 ID:qL8SewvE
>615
うるせえ、コピペしかできない低脳が
早く死ねバーカ、お前なんか死んでも誰も悲しまないからとっとと死んでくれマジで
618名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:35:14 ID:qL8SewvE
      ☆ チン     マチクタビレタ〜
                        マチクタビレタ〜
       ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ヽ ___\(\・∀・) <  ID:rpAEvj/X の自殺マダー?
            \_/⊂ ⊂_ )   \_____________
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
       |  愛媛みかん  |/
619名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:38:54 ID:K9/pnuDA
>>618
通報します他
620名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:39:42 ID:o2swW/AF
      ☆ チン     マチクタビレタ〜
                        マチクタビレタ〜
       ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ヽ ___\(\・∀・) <  谷口×ハルヒor朝倉orキョンのラブラブSSマダー?
            \_/⊂ ⊂_ )   \_____________
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
       |  愛媛みかん  |/
621名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:43:27 ID:rpAEvj/X
ID:qL8SewvEみたいな害虫が湧いているうちは書かない。
622名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:47:24 ID:qL8SewvE
ID:rpAEvj/Xみたいな害虫が生きているうちは投下しない。
623名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:50:10 ID:qL8SewvE
ID:rpAEvj/Xの様な馬鹿な害虫がいる限りこのスレッドは荒れ続ける
結論ID:rpAEvj/Xが自殺すればみんな大喜び

どうせ実社会でもなんの役にも立ってない馬鹿なんだし自殺した方がよのなかのためだろ?
さあ、自殺しろお前は生きていること自体が罪悪だ
624名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:52:46 ID:9++nx7VY
いっそのこと2人ともSSかいてくれよ。
625名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:54:58 ID:qL8SewvE
ID:rpAEvj/Xには無理
他人のSSをコピペする事しかできない
626名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:56:16 ID:qL8SewvE
  ねえねえ、スレッドにまとわりついて
   荒らさないと気が済まないの?             ねえねえ        
   ストーカーとしてどんな気持ち?            自分が情けなくない?
    ねえ、どんな気持ち?                   どんな気持ち?
        ∩___∩                     ∩ __∩
    ♪   | ノ ⌒  ⌒ヽハッ    __ _,, -ー ,,    ハッ   / ⌒  ⌒ 丶
        /  (●)  (●)  ハッ   (/   "つ`..,:  ハッ (●)  (●) 丶
       |     ( _●_) ミ    :/       :::::i:.  ミ (_●_ )      |
 ___ 彡     |∪| ミ    :i        ─::!,,    ミ、 |∪|    、彡____
 ヽ___       ヽノ、`\     ヽ.....:::::::::  ::::ij(_::●   / ヽノ     ___/
       /        /ヽ <  . r "     r ミノ~.    〉 /\     丶
      /       /     ̄  :|::|.    ::::| :::i ゚。     ̄ ♪ \     丶
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     (_ ⌒丶           ::`|    ::::::| :::|_:           /⌒_)
      | /ヽ }.          :,'     ::(  :::}            } ヘ /
       し   )).         ::i      `.-‐i":.            J´((
          ソ  トントン      :;       ;                ソ  トントン
                     ID:rpAEvj/X
627名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 22:58:12 ID:qL8SewvE
                         ,、ァ
                      ,、 '";ィ'
________              /::::::/l:l
─- 、::::;;;;;;;;;`゙゙''‐ 、    __,,,,......,,,,_/:::::::::/: !|
  . : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l|
、、 . : : : : : : : : r'":::::::::::::::::::::::::::ノ::::ぃ::ヽ::::::ヽ!
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::::::/" ::     '\-:'、       で? ID:rpAEvj/Xの自殺はまだかなw
. \::゙、: : : :./:::::::::::::::::::::::::::::(・ )::  ,...,(・ ):::':、
 r、r.r ヽ 、 /:::::::::::::::::::::::::     _  `゙''‐''"  __,,',,,,___
r |_,|_,|_,|`ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ-    _|  、-l、,},,   ̄""'''¬-
|_,|_,|_,|_,|、-‐l'''"´:::::::'  ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、,
|_,|_,|_人そ(^il:::::::::::;、-''"  ,.-'  ゙、""ヾ'r-;;:l  冫、     ヽ、
| )   ヽノ |l;、-'゙:   ,/      ゞ=‐'"〜゙゙') ./. \
|  `".`´  ノヽ:::::..,.r'゙         ,,. ,r/ ./    ヽ
   入_ノ   ン;"::::::.       "´ '゙ ´ /      ゙、
 \_/  //:::::::::            {.        V
   /   / ./:::::::::::::            ',
  /  /  /:::::::::::::::::.            ',.
628名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 23:07:15 ID:K9/pnuDA
削除依頼ってどうやればいいんだ?
だれかテンプレたのみゅ
629名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 23:11:48 ID:vvXNPALa
http://qb5.2ch.net/saku2ch/

要請してみては
630名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 23:33:21 ID:K9/pnuDA
631名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 23:35:04 ID:vvXNPALa
ああ、そっちか。
おつかれさまです。
632名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 00:30:52 ID:umngNFx1
>630
あのコピペ荒らしがそこで何度も指摘それてる全く削除される気配も無いね。
633名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 00:38:18 ID:L/3Vf09I
>>632
コピペ荒らしは便乗犯が多くて特定出来ないんじゃないかな?
正直、ID変わっちゃうと運営じゃ追いきれないだろ
634名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 00:51:42 ID:vt1r8hYS
荒らしは無視すればいいんだよ
奴らはかまって欲しくてやってるだけでレスアンカや話題にあがると調子ずくから>>1に書いてあるように徹底無視すればいいんだよ
635名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 01:15:00 ID:nele+qEI
雑談はべつにいいが、雑談とSS以外の何かでスレを伸ばすな。
投下かと思って、wktkしながらリロードした俺がどう考えても馬鹿だ。
636名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 01:15:47 ID:49T0bzud
通報乙
どうしようもねえな荒らしは
637名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 01:24:40 ID:vVT/dugb
子供増えすぎだろここ。どんだけスルースキル無いんだよ。
もしかしてスルーの意味すらわからんのか?
638名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 01:25:27 ID:DDyZUnlU
>>637
書き込んだ時点でお前もな
639名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 01:27:11 ID:umngNFx1
無視したぐらいで荒らしがいなくなるわけが無いだろう。
なんでそんな簡単な事すら解らんのかね。
640名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 02:42:45 ID:+10wSVY8
rpAEvj/X = NEET
641名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:42:30 ID:nele+qEI
で、構ってやればいなくなるのかね。
642名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:44:18 ID:yVNiOPGl
SS投下してもらえれば流れも変わると思うっさ!
643名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:46:03 ID:WUoD4ZDc
07/23は本当に荒れに荒れた
まず日が変わったとたん朝倉SSの乱稿
ネタか真性かわからん稚拙な内容のSSで無駄に、そしていたずらにレスとスレ容量が失われる
そしてこれまた要領の得ない評論会
糞コテとそれにいちいち群がるバカども
春の陽気に当てられたか?
そしてエイプリルフールが許される午前ギリギリに意味のわからんネタにマジレス
なにが「ここはSSスレの中でも屈指のSS職人が集い投稿する場所」だ。寒いんだよ
しかもそれにいちいち反応し他スレにまで迷惑かける馬鹿
ようやくひと段落したと思ったら最初の三行で読む気のそがれるクソSSが投下され
04/01最後のレスは「久しぶりに1000行くね」というチラ裏かつ味気ない一行レス

結局2008/04/01はエイプリルフールネタのSSも投下されず春の陽気に当てられたお祭り気分の住民たちが他人を罵りあって終わるという悲惨な日となった

そして今日初めてのレスは少ない頭で考えた糞つまらないコピペをはやらせようと必死に頑張ってるキチガイ
このスレにはもはや未来も希望もないな
644名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 05:10:07 ID:umngNFx1
SSを書いても>643みたいな事をいわれちゃうんじゃなあ
そら誰も投下せんわ。

で、GJ的な発現があると「作者自演乙」じゃなあ
そら誰も投下せんわ。
645名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 06:57:26 ID:08cvQor2
発現乙
646名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 11:37:03 ID:UOrUJTzn
ID:umngNFx1
647名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 13:12:40 ID:nele+qEI
コピペバカの脳のアレさ加減も、いい加減末期的になってきたな。
毎日毎晩、手を変え品を変えて、よくもまあコピペだけし続けるもんだ。

精神病んでると本気で思える。
648名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 13:41:06 ID:umngNFx1
全く、真性の、馬、鹿、だな
649名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 16:11:19 ID:Z3xdrtaQ
バカとか脳のアレさとか、見下して悦に浸れる存在がいるってだけでもお前にとっては有益なのでは?
俺は毎回反応を返さないと気が済まない野郎の精神の方がよほど心配
650名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 16:45:23 ID:kUO5OLoY
馬鹿に反応するなと書く奴は大抵その馬鹿本人
651名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 18:50:11 ID:+RByMntz
たった一つ言えることがある

夏だなぁ
652名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 19:00:11 ID:c+J9cRJM
確かにこれは正しいな

夏だなぁ
653名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 19:26:04 ID:0w+IH6Sm
・ハルヒの寝言


いつもの部室の風景。ハルヒは団長机に突っ伏して居眠りしていた。

「ちょっとぉ・・・・キョンぅ・・・うふふ」
ハルヒがものすごく幸せそうな顔をして寝言を言っている。
「おや、一体どんな夢を見てるのでしょうか?」
黙れ古泉。

「やだぁ・・・もう・・・うふぅ」
ハルヒが寝言を続けた。



「いまどきゲームソフトをカセットなんて呼ばないわよぉ」
俺は機械に疎いオッサンか。


・古泉のry


いつもの部室ry。古泉は机にry
「ふふふ・・・いけませんよ」
古泉がいつものスマイルを維持しながら居眠りをしていた。うぜえ。
「一体どんな夢を見てるのかしら?」
ハルヒが古泉を眺めながら言った。嫌な予感がする。

「全く、あなたと言う人は・・・」
古泉が微笑みながら寝言を続けた。



「ムハンマドはメッカで生まれてメディナに逃げたんですよ。あなたの答えはメッカとメディナが逆になってますよ」
俺はどんだけバカにされてるんだ。
654名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 19:26:26 ID:0w+IH6Sm
・長門n(ry

いつもの(ry 。長門が睡眠をとるところなんてはじめて見た。
「・・・・1、2、3」
長門の寝顔は無表情のまま目を閉じたような寝顔だった。宇宙人でも寝言は言うのか。
「長門さん、一体どんな夢を見てるんでしょうか?」
いい夢だったらいいですけどね。朝比奈さん。

「・・・4、5、6、7・・・ここ」
一瞬にやけた顔になったように見えたのは俺だけでいい。



「仕返しマスを踏んだ。あなたに10万ドル請求する」
長門さんカンベンして下さい




・朝比奈さん(ry


い(ry。朝比奈さん(ry


「うふふ・・キョンくんったらぁ・・へたっぴですね・・」
朝比奈さんがものすごい幸せそうな寝顔をしながら寝言をいってる。
「・・・」
まずいぞ。ハルヒの顔が険しくなってきた。

「キョンくうん。もう一回やってみてくださぁーい」
朝比奈さんの寝顔の幸せフェイスがいっそう強くなる。
「これは・・ちょっと、まずいですね」
古泉も困惑してきた。どうにかしてやらんとホントにマズイのではないだろうか。

「キョンくぅん。私が動かしていいですかぁ・・うふふ。やったぁ。私頑張りますねぇ」
朝比奈さんの幸せフェイスの強さがピークに達した。
「・・・・・・・・」
あれ。長門さん?目がヤンデレモードになってますよ?

「ほうらキョン君、私凄いでしょう?」
朝比奈さんの幸せフェイスが「勝ち誇った顔」になったのを俺を含む4人は見逃さなかった。






「ほら、ゾンビの近くでショットガンを上段攻撃すると頭を吹き飛ばせるんですよ?もう一度見てくださいねぇ・・・・えい!やったぁ

〜!二体同時ぃ!気持ちいいですぅ〜!」
SOS団内での朝比奈さん株が大暴落
655名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 19:28:31 ID:0w+IH6Sm
勢いで書いた。夏を感じている
656名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 19:40:37 ID:NhQhjC1h
ハルヒと古泉のネタがヒット。
657名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 20:01:34 ID:RftH7AIV
どこで笑えばいいのかさっぱり分からん
これが世代格差か
658名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 20:32:18 ID:bZQ5T3qY
小ネタでもSSがくれば嬉しいもんだな。
ショットガンはバイオだったかな?
659名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 21:03:11 ID:nele+qEI
下手にSSモドキのSSが来るよりは、小ネタ以外の何物でもない小ネタのほうが良かったりするな。
まあ、誉めるようなもんじゃないけど。
660名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 21:03:13 ID:6DXbboIp
ネタ元がどうこう以前の問題で面白くないのが問題な
脈絡がまったく無く突拍子もないネタがシュールな笑いでも誘うのかと言えばそんなことも全然ないし
近所のおばさんに無理矢理引き留められて「昨日うちで起きたとても愉快な話」を嬉々として語られてるような居心地の悪さを感じる
661名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 21:35:10 ID:QEQrW7yt
おもろかった。
こういう小ネタは好きだ
662名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:20:36 ID:N8iz/TqA
朝比奈さんで吹いた俺はどうすればwww
663名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:33:01 ID:tmC4t+ER
最近はショットガンで頭狙っても死なないゾンビがいるからな
664名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:38:30 ID:icSYgkhW
なんでかしらんが朝比奈さんは黒くなる傾向があるなぁw
665名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:44:25 ID:QEQrW7yt
原作そのままじゃキャラが薄いからじゃね?
666名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:54:54 ID:icSYgkhW
なるほど。未来人だけど猫型ロボットみたいにオーバーテクノロジーがばんばん出てくるわけでもないしね。
朝比奈さんに姉属性をつけたSSが読みたいです。
667名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 23:56:10 ID:pjPE7UVQ
>>653-654
一人だけ別人みたいになっているような。そうか、「射手座の日」のは猫被ってたんだな。オチとしてはなかなか面白いかな。

>>664
SS的に黒化が似合う、本編とのギャップが大きくなるといったおいしい要素があるからだろうな。(大)は素で黒キャラっぽいけど。
668名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 00:02:34 ID:icSYgkhW
あぁ確かに幼なじみポジションのように最初から寄ってきているキャラは冷遇されがちだよね。
黒というか腹に一物を抱えてるキャラにした方が動かしやすいのか。
669名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 01:17:05 ID:PouF4Plf
あれだろ 吉田さん
670名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 02:22:00 ID:cQFyKOEn
犬変わっちゃうしコ○スとかいっちゃうし。
671名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 13:45:11 ID:+/an+qNg
てんで的外れな論評をしている、660が哀れすぎてフイタw
672名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 13:46:44 ID:z7u5dyaY
長門とやったキョンが宇宙性病にかかるSSないですか?
673名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 14:41:27 ID:kUsdz24J
>>672
コアな要求だなww
674名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 15:46:40 ID:g6WRJN22
つーか誰が最初に宇宙性病を長門にうつしたんだよw
おとうさんは許しませんよ!
675名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 18:32:31 ID:OApUtSO/
一子相伝の性病なんだろw
676名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 19:12:17 ID:Be1zKt+N
>>674
677名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 19:52:35 ID:QmBGKO7P
なんだ俺か。
678名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 19:54:57 ID:g6WRJN22
暑いから宇宙性病のSS書いてみようかと思ったが
自分の文才の無さに打ちのめされた
679名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:04:29 ID:V4N8/Jq5
宇宙性病って何なんだ
680名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:33:22 ID:3bDdA80o
文字通り宇宙性の病のことだろ?
681名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:38:43 ID:g6WRJN22
こんな感じかな?

「貴方に病原体を感染させてしまった」
「何だそれは、長門は病気だったのか?身体大丈夫なのか?」
「私には影響は無い、本来宿主たる情報統合思念体にも悪影響はなく共生関係にある
ただこの身体の有機体情報を構成する過程で感染性のあるウィルスとして実体化してしまった」
しかし何で今頃、感染性の物なら何で今まで感染しなかったんだ?
と、そこま言って俺は気が付いた、もしかして昨日の夜の・・・
「そう、性交渉によって感染する」
「それって・・・」
「通俗的な用語を使用すると宇宙性病に該当する存在」
682名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:45:55 ID:3bDdA80o
一日中勃ちっぱなしになるという、エロSSの前振りだな?
つまり、>>681には期待せざるを得ないということか。

…………これはもう如何ともしがたいね。
683名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 00:06:49 ID:/5QwxXH4
>>682
いや、キョンを独占するための方便かもしれない。他の人間にさらにうつしたら事だ、ということにしてしまえば狙い通りさ。
……なんか、微妙に似た話をこのスレで読んだような記憶が。どっちかというとメルヘンチックな話だったかな。
684名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:14:17 ID:b7XJGp7k
>>683
残念もうあったか
「情報統合思念体と長く共生関係にあったそれは情報操作に対する耐性がある」
「情報結合の解除を行う場合一度あなたの存在を完全に消去する必要がある」
「再構成された貴方は貴方であって貴方ではない」
「私という個体は貴方が貴方のままである事を望んでいる」
「発症を抑えるには週一度上書きを行い対象ウィルスの時間を巻き戻す必要がある」
「処置の為週一度この部屋に来てもらう必要がある」
「だめ?」と小首を傾げる長門
てな流れで結局週一どころか足繁く通うようになるキョン
てのを考えていたのだが落ちとしては同じような感じだね
685名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:18:54 ID:9VoxJ7aB
宇宙性病の副作用で触手怪人化したキョンが長門を襲う展開を考えていた俺はダメ人間らしいな。
686名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:20:11 ID:6iLTbKZb
一回既成事実を作ってしまえば貰ったようなものだろ。
消失以降のキョンなら長門相手にヤリ逃げ出来るとは考えない。
687名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:25:20 ID:phxt7omo
「治らないのか?情報統合思念体とやらにも治せないのか?」
「治す手段はある」
「じゃあ治してくれよ。長門だってそんなもの抱えてたくないだろう」
「治せない」
「なぜだ」
「情報統合思念体の思惑をあなたに語るのは禁則事項に抵触すると思われる」
「ちっ、もう一度くそったれと伝えろ。それと、治してくれないならいっそうつしまくってやる
思念体とやらはハルヒが感染してもまだそんな事が言えるかどうか」
「……」
「どうした」
「こまった」
長門の口から困ったなんて言葉が聞ける日が来るとはな。長生きはしてみるもんだ
なにせ去年の5月と12月とで2回死んでたところだったからな俺。
そういやあれも情報統合思念体とやらの関わりだったか。
「何が困るんだ?」
「わたしという個体はあなたを治って欲しくないと感じている」
はい?
「情報制御で宇宙性病を発症させあなたにうつしたのはわたし」
なんですと!いや長門のことだ、何か深い意味があって俺を守るためとかでやったことに違いない
「そうすればあなたは他の人にうつすことを危惧して特定の対象以外とは性行為を行えなくなると考えた」
「特定の…対象?」
「それが、わたし。すでに感染している我々同士の性交渉では、外部に感染者を広げることはない」
なるほどね。と納得している場合ではない。すると長門は俺を性的に独占しておきたかったということになるのだろうか。
長門は年が明けて以来、時々自分の意思や欲求を主張するようになっていることを
俺は驚きつつも何故だか自分のことのように嬉しく感じたりもしていたのだが
それにしてもこれほどの願望を表現したのははじめてじゃなかろうか。







688名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:41:08 ID:b7XJGp7k
>>687
だいぶ前に見たエイズキャリア同士のカップルが主人公になった漫画に似てるかな?
死ぬまで二人は幸せに暮らしましたとさ、みたいな感じだった
でも現実はタイプの違うエイズウィルスに複数感染して
治療が難しくなる、だからキャリア同士のカップルでもコンドーム使うんだよね

つまり何が言いたいかといえばみなさんコンドームを着けましょう
689名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 02:14:52 ID:nM+JkIJO
一万二千年で唇が汚染ってやってたな
690名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 02:51:24 ID:bK5hc6Cp
投下いたします。

ハルキョン、エロなし

64KB、約20レス予定
691おおよそタテマエ以上、ホンネ未満1:2008/07/26(土) 02:53:00 ID:bK5hc6Cp
 日に日に空に太陽が居座る時間が長くなり、何かにつけて気だるいのを五月病のせいにするのもそろそろ無理が出てきた新緑深まる頃、登校時とは別人とも思える軽い足取りで校舎を後にする生徒の群れに逆らって、
俺は校舎の階段をナメクジが這うようにトロトロと上がっていた。
 だだ下がりのモチベーションにも後押しされて、3階が見えたあたりで早くも息が切れてきやがった。欲求はおろか意志も義務も義理すらもない以上、スタミナを補う精神的要素はどこからも引っ張ってこれず、ため息ともつかない一息を吐き出して身体が休止状態に陥る。
 ボチボチいこうぜ。急いでまでやつの似非0円スマイルを拝みたいとは思わない。
 身体の内側から響いてくる脈が、まるで不当労働と心臓が叫んでいるかのように思えて、心中「まったくだ」と返す。
 開けっ放しの窓から部室棟が見下ろせた。
 今頃はあそこで朝比奈さんの給仕を与って、癒しの時間を享受していたはずなのにな。
 俺の意思が入り込む余地など1ミリもないままに、いつの間にか俺の行く先は視聴覚室へと変更になっていた。
 本日のSOS団の活動はハルヒの気まぐれで急遽中止。いつものことだと言えばそれまでで、あれやこれやとコキ使われずに済んだのは助かるが、至極のティータイムまでなくなってしまったのはいただけない。
 踊り場の壁にもたれかかって、つい10分ほど前の出来事を脳裏に映し出した。
 お馴染みの回想タイムである。


 ホームルームの後、水曜の半ドンで少しだけお得感が漂う日直の仕事を務め上げた俺は食堂に寄って、その場に居合わせた連中と適当に駄弁りながら安い早いのみ自慢のうどんを伸びて不味くならない程度に時間をかけて食し、
時間を浪費する口実を全て使い切ってから文芸部室に向かっていた。
 ありていに言えば行きたくない、だがそうそういうわけにもいかない、そんな板ばさみのメランコリックな気分だったのさ。
 かつてこんなに部室にいくのが億劫な時期なんてあっただろうか?
 いや、ないね。
 ちょうど去年の今頃、結成当初で慣れなくてぎこちなく感じるときはあったが、それと今の心境はまったく違う。
 率直に言おう。ちょっとばかし気まずいことになっているのさ。お互いの意図に反して奇しくもすれ違いが雪だるま式に積み重なってしまっているもんだから始末に負えない。
 相手はまぁ、言わずとも知れるところだろう。
 そう考えながら部室棟の階段を上りきると、廊下の向こう側で派手にドアが開け放たれて、まさに渦中の人物が目の前に現れた。
 限りなく強制連行に近い形で朝比奈さんをひき回してそいつは文芸部室から飛び出してきた。
「みくるちゃん急いで。タラタラしてたらセールに間に合わなくなるわよ。こういうのはね、スタートのポジショニングで勝負がついちゃうんだからね」
「ふえぇっ! ボ、ボタンくらいとめさせてえ」
 衣装がどうとかタイムセールがどうとか廊下の端まで響き渡るバカでかい声のおかげで、遠くに居ながらすぐに大まかな状況を把握する。
 歯医者に向かう母親に連れられた浮かない表情の子供さながらの構図だ。
 朝比奈さんの手を引くのに夢中の団長様は、教室1つ分を隔てた距離でようやく俺の存在に気づく。
 その瞬間、はっちゃけた笑顔を引っ込めて警戒あらわに眉根を寄せ、逆三角の目で俺に鋭い視線を寄越してきた。
 こいつ、まだ露骨に引きずってやがるな。さんざ謝ってかれこれ3日も経つというのに意外と根に持つやつだ。
 卑屈になる必要なんてないぜ。表情を引き締めて真正面から受けてたつ。
 こちらが立ち止まったのに対してハルヒは歩みを止める素振りも見せず、ツカツカとみるみる距離が詰まってくる。
 目を逸らしたほうが負けとばかりに、その間ずっと視線を交錯させたまま。とばっちりを食った朝比奈さんが視界の端で表情を強張らせていた。
「みくるちゃんとコスプレ用の衣装を買いにいくから、今日は中止ね」
 それだけ言い放ち、きっちりギロリとダメを押して通り過ぎていく。
 ついて来るなと無言のプレッシャー、と言ったところか。
 足を止めて話すのもイヤってか? えらい嫌われたもんだ。
 すれ違いざま首を回して視線をぶつけ合い、そろそろお互いに首関節の旋回が限界だってところでハルヒが盛大にそっぽをかました。
 睨み合いは俺の勝ち。だが、嫌悪感を投げつけられてチクリと痛まないほど鈍くもなく、結局ヘコまされた俺の負けのような気がした。
692おおよそタテマエ以上、ホンネ未満2:2008/07/26(土) 02:53:58 ID:bK5hc6Cp
 尾ければひょっとしたら朝比奈さんのコスプレショーが拝めたのかもしれんが、ふざけている場合じゃない。
 着せ替え人形にされて涙目で恥らい戸惑う朝比奈を見続けるのはあまりに忍びないし、それよりなによりハルヒにバレたときのこじれようを想像するだけで恐ろしい。
 せめて朝比奈さんに少しでも平穏があるようにと祈りながら二人を見送った――――、というわけだ。
 回想以上。


 さて、いい加減そろそろ行くかと、再び階段に足をかける。
 学校に用がなくなり帰宅するべきはずの俺が、どうしてわざわざ校舎に舞い戻って最上階を目指しているのか。その答えはポケットの中にある。
 2時間目の終わりに着信したメールの文面を諳んじた。
『放課後に視聴覚室へ来てくれませんか? 可能な限り人目を避けて一人でお願いします』
 放課後はSOS団の活動があるというのに、二人して抜けるのをハルヒが許すわけない。一体何を寝ぼけてやがるんだと一旦はシカトしてたが、頭が回ってなかったのはどうやら俺のほうだったようだ。
 古泉の呼び出しに続くハルヒの活動中止宣言。
 見計らったようなこの展開からしてハルヒの気まぐれはハプニングでもなんでもなく、最初から仕組まれたものだったに違いない。
 できることならこのまま回れ右を決め込みたい気分だが、一抹の気がかりに圧し留められ、俺は階上を目指す。
 なんだろうね、何かひっかかりのようなものを感じるのさ。
 こうやって呼び出しがかかるのは、たいていやっかいごとに巻き込まれかけている、もしくはすでにぐるぐる巻きになっているときだってのは、ここ1年余りで厭というほどに摩り込まれた教訓だ。
 良くない知らせと分かってるだけに、耳を背けても不安はまとわりつく。そうやってもやもやするくらいならいっそはっきりさせた方がまだ精神衛生上マシだという、消去法になぞらえた後ろ向きの義務感が俺の脚をくっていた。まったく難儀だね。
 やけくそ気味に最上階の第一歩を強く踏みしめて、通路を折れるとすぐに大きな扉にぶつかる。
 扉には窓が付いているが部屋の中からブラインドが下りているせいで中の様子は窺えない。
 なんのかんので辿り着いてしまった。さんざうだうだやりながら来たから放課後に入ってから随分時間が経っているが、ここまで来る労力とは比するべくもない。
 やれやれ、今回は一体何を聞かされるのやら。
 身構えながら俺は重厚な拵えになっている扉を押し開けた。
 ――――淡い光が闇に漂う空間に出迎えられる。
 明度の落差に視覚がおかしくなったのは一瞬のこと、すぐに状況を理解する。暗幕がかけられて作られた暗がりの中、天井に備え付けられたプロジェクタがスクリーンを映し出していた。
 どこかで見たことあるロゴと画だと思えばスクリーンセイバーだ。パソコンの画面出力ってことなんだろう。
 しかし肝心の待ち人の姿はどこだ――、
 『ようこそいらっしゃいました』
 サラウンド効果を伴って、聞き覚えのある声が視聴覚室に穏やかに響き渡った。
 2割増しで爽やかさを強調させたような声が逆に鼻に衝く、いやこの場合は耳に衝くと言った方が正しいのか、とにかく不快なのには変わりない。
 驚くのもそこそこにすぐにその発信元を突き止めた。
 最後方にある明かりの灯ったガラス張りのVTR室の中から手を振るスマイル野郎が約1名。
 思い切り顔をしかめてこのくだらない演出を労ってやった。
「あと10分待って来なかったら帰るところでしたよ」
 参った参ったとかぶりを振るのはポーズだけで、実際に堪えた風など微塵も窺えない。こんなくだらない前座に付き合わされた俺のほうがよっぽど参ってるぜ。
 そんな皮肉など意にも介さず胡散臭いにこやかさを振りまきながら、リアルワールドでは無能の超能力者、古泉一樹がVTR室から飄々と出てきた。
 ケータイのバック液晶に時刻を映し出す。ホームルームが終わってからすでに小1時間が経過しているのを確認して、呆れを通り越した疑念がわいた。
693おおよそタテマエ以上、ホンネ未満3:2008/07/26(土) 02:55:04 ID:bK5hc6Cp
 今の今までずっとそのマイクの前でスタンバってたのか?
 本気で常軌を問うような俺の質問に返ってきたのは「まさか」と、望んでいた副詞。そしてそれに続く、
「途中トイレにはちゃんと行きましたからね」
 という肯定の言葉は鼓膜まで届かなかったことにした。
 いい加減話を先に進めて、聞くことだけ聞いて早いところ帰りたいんだよ、俺は。
「用件を聞かせてもらおうか」
「もちろん涼宮さん絡みです。今日は是非ともあなたに見せたいものがありましてね。このような高所までご足労願った次第です。機関の事務所までお招きしてもよかったのですが、あなたが嫌がると思いましてね」
 よく分かってるじゃないか。その通りだ。で、気を利かせた結果がここってわけか。
 古泉は優雅にうなずき備え付けの長机に手をついて浅く腰掛けた。
「最近の涼宮さんの精神状態。……あなたは、どう見ていますか?」
 専門家が素人の意見を聞いてどうすると思いながらも、素直に感じていることを言ってやることにした。
 どうと問われても最近は平和なもんじゃないか。
 時間を飛び越えたり、異空間を彷徨ったりする事態にも見舞われず、このところ毎週のように行われている不思議探索も日常の範囲内でそこそこに興が乗っている。
 そりゃあ、色々あって俺とハルヒの仲がいささか芳しくないのは事実ではあるが、これは個人的な問題であるし、今のあいつがこの程度のことで癇癪を起こすほど手前勝手じゃないことも知ってるつもりだ。そうだろう?
「おっしゃる通りです。その証拠に1年前と比べば嘘のように静かな夜を過ごさせてもらっていますよ。涼宮さんの精神状態は安定しています。……おおむね、ね」
 含みのある言い方に顔を窺うと、悪たらしい笑みで迎えられる。
 さぁ、食いついてください、と言ったところだろうが、狙いすぎは逆効果だぜ。
 無言でただ続きを急かしてやることにした。
「前にも話したことがありますが、小規模な閉鎖空間は継続して発生しています。涼宮さんの意思とは関係なく情緒とリンクして生じるタイプのものなのですが、涼宮さんの感情の起伏を抑えつけるわけにもいかず、
当初から我々もこれは対処のしようがないランダムなイレギュラーである割り切っていたのです」
 確かハルヒが無意識に不安に思うことがあったり、怖い夢を見て情緒が揺れたりするだけでそういった状態になるんだったか。今更ではあるが、お前に同情を禁じえないね。
「ええ、涼宮さんが社会生活を送る上で免れないのは分かっていたんですがね。実はデータをとって精査してみると、新たな規則性が生じてきていることが分かってきたのですよ」
 どういうことだ? と訝る俺に古泉はリモコンとマウスの合いの子のような奇妙なインターフェースを操作して応えた。同時に背後から明るい光が差す。
 振り返るとスタンバイ状態が解除されてスクリーンに資料らしきものが映し出されていた。
「このグラフをご覧ください」
 言われるまでもなく、こんな異様に凝った演出をされては厭でも目が引かれる。どこぞの企画会議に迷い込んだかのようだぜ。
 グラフを良く見ると、横軸には日付、縦軸には……見慣れない単位が記されている。データが少ないためか棒グラフが疎らに並んでいた。
「このところの1ヶ月間にわたって日毎に発生した閉鎖空間の規模を棒グラフ化したものなのですが……、この通りグラフが立っている日の方が少ない。閉鎖空間が発生するのは降水確率すらも下回っていると言えるでしょう。
ただよく見てください。このグラフ、どこか特徴的であると感じませんか?」
 なにやら問題を出されているようなのが気に食わんが、踵を返して改めてスクリーンと相対する。ところどころ長いグラフが立っている間隔が周期的であるのが先ず目についた。
「どうやら月曜日はご機嫌ナナメのようだな。マンデーブルーってやつか?」
 投げやりに冗談を飛ばしてやると、古泉から呆れたようなお手上げのジェスチャーが返ってきた。中々に辛らつだね。
「着眼点は合ってますよ。ヒントを出しましょうか、月曜日のカウントになってしまっていますが、時間帯は例外なく未明です。つまり、涼宮さんは就寝中に閉鎖空間を展開させているのです」
 ということは、寝ている間の回想でイライラを増大させているということか。反芻している記憶はこの場合日曜のものであると考えるのが自然だろう。
 不思議探索をやったその夜にハルヒは閉鎖空間を作っている……、ということなのか?
「ご名答」
694おおよそタテマエ以上、ホンネ未満4:2008/07/26(土) 02:55:49 ID:bK5hc6Cp
 クイズ番組の司会者を装うかのように人差し指を立てて古泉が応えた。
 どうにも指されているのが正解を称えられているように思えない。まるで問い質されているかのような威圧感が感じられる。原因はあなたですよ、と言わんばかりだぜ。
「どうにも奇妙な現象だな。探索中の随時にそうなるというなら分かるが、どうして決まってその日の夜なんだ?」
「意識下では自分の感情を抑えることができても無意識下では限界があるのではないでしょうか。機嫌と厭世観が直結していたのは過去のこと。今の涼宮さんはそこまで不安定ではありません。
ただ、さすがに夢の中では自制しきれないみたいでしてね。これがタイムラグとなっているわけですよ」
 なるほどね。そういや春先にハルヒの精神状態は以前に比べて落ち着いてきている、と耳にしたことがある。そう言えば活動中に古泉がバイトの名目で中座をしなくなって久しいな。
 古泉がリモコンマウスをクリックすると、横軸の特定の日付に赤丸が浮かびあがる。
「印をつけたのが探索が実施された日です。活動の翌日に必ず小から中規模の閉鎖空間が発生しています。逆にこの日、二週間前の日曜日は活動がなかったのですが、この次の日はフラットになっています」
 単なる偶然だろ、と惚けるのは簡単だが、あまりに心当たりがあり過ぎて憚られる。
「原因考察の用意もしているんですけどね。必要ですか?」
「いらん。要はこのところ俺が探索のたびに何かとハルヒをイラつかせてるからこんな面倒ごとが起きてるんだ、と言いたいんだろう?」
 長くなりそうなので手近な座席に着いた。対して古泉は腰を上げてスクリーンの脇まで歩みを進め、いよいよ本格的に聞く体勢となる。
「理解が早くて助かります。経費を厭わず資料を作ってきた甲斐がありますね」
 プロジェクタに半身を照らされながら、手のひらでリモコンマウスを弄んで飄々と言ってのけた。
「どうにかしろってのは無理があるぜ? 俺だって意図的にハルヒと衝突してるわけじゃない。全くの不可抗力だ。反りが合ってないのは巡り合わせやタイミングの問題で、俺の意思じゃないんだからな」
 俺は最近数回分の不思議探索を振り返った。
 探索中に家の鍵を落として困っているミヨキチと出くわして探すのを手伝っているうちに集合の時間に遅れたり、クレーンゲームでハルヒが望んだぬいぐるみではなく長門が指差したやつが取れてしまったり、
SOS団三人娘が作ってきた弁当を広げた際に朝比奈さんと長門担当のおかずばかりを食べてしまったり、そして先週のあの珍騒動然り、とにかく間が悪かったんだよ。
 ハルヒは理屈で分かってても釈然とできず、俺は謝罪を安売りするつもりもなく居直ったまま。そんな感じで俺たちはどことなく淀んだ空気を引きずってしまっていた。
「おっしゃることは尤もです。運勢が悪かった、……主原因はこれに尽きます。しかし検証を重ねた結果、どうもそれだけとも言い切れない潜在要因が浮かびあがってきましてね。それをあなたにも是非確認願いたいのですよ」
 奥歯に生煮えのほうれん草が挟まったような物言いはさておき、確認とはどういうことだ? ワケの分からん分析データをわんさか見せられるのは勘弁願いたいんだがね。
「論より証拠と言うでしょう? 話を難しくするつもりはありません。これからあなたに引き続きお見せするのは先週のSOS団の課外活動を撮影した映像です」
 ……待て。どういうことだ?
 と、ツッコむのを聞かずに古泉はなにやらパソコンを操作する。スクリーンがブラックアウトした一瞬後に、その『映像』なるものの再生が始まってしまった。
 機先を制されて、するはずの抗議を宙に浮かせたまま俺は食い入るように画面を凝視する。
 場面は駅前の駐輪場だとすぐに理解した。チャリンコの列に混じって一人の人物が映っているが、遠方からの撮影のせいか画面が引いているので判別がつかない。
 要求に応えるようにズームアップが始まり、それがチャリを押し込もうと悪戦苦闘している俺本人であることを理解すると呼吸が一瞬止まった。が、
「くそっ、隣のチャリの前カゴが邪魔だな。デカいのつけたいのならせめて荷台につけろよ」
 身に覚えのある恥ずかしい愚痴が流れ始めると、固まってる場合じゃないと席を立つ。だが肝心の大声が喉元に引っかかって出てこない。
 情けないくらいの動転っぷりだが、とにかく「とめろ」という意図は伝わったらしく、映画仕立てのようなクリアな映像が一時停止する。
 スクリーンの中でスペースを確保して無事駐輪を終え、駅前広場に向かって駆け出そうとしている俺を今一度確認して務めて冷静に、
「いったい、これは何の真似だ?」
 と、睨みを利かせたが、暖簾に腕押しとばかりに古泉の軽薄な笑みは揺るがない。
695おおよそタテマエ以上、ホンネ未満5:2008/07/26(土) 02:57:55 ID:bK5hc6Cp
「先日の不思議探索の一部始終を機関の監修で記録として残させてもらったものです」
「そんなことはどうでもいい。なぜこんなもんを撮ったのかを訊いてるんだよ」
 いくらなんでも洒落じゃ済まされないぜ、これは。記録と言えば聞こえはいいが、無許可でやってるなら盗撮と何ら変わりはない。返答によっちゃ本気で怒るぞ。
 真正面から対峙する顔が引き締まって、余裕を残して笑みが消えた。細目を見開いて真顔のままゆるりと切り出してくる。
「この世界を安定に導くために必要だと判断したからですよ。ただ、無断の撮影行為に関して弁解の余地はありません」
 ためらうことなく古泉は腰を折って思わず毒気を抜かれてしまう。お馴染みの詭弁で塗り固めてくるだろうと踏んでたのに、とんだ拍子抜けだ。
「長門さんと朝比奈さんには許可をとっています。機関の独断でやったことではないということだけは分かってください。仕事上、涼宮さんに内緒であるのは仕方ないとしても、あなたには打ち明けるべきだったかもしれません。
しかし、お二方にはカメラを意識してもらっては困るという不可避な事情がありましてね。こうせざるを得なかったというわけです」
 終始真摯な姿勢を貫いて古泉がゆっくりと説く。
 釈然とはしないながらも、冗談めかしてやったことではないということを理解すると俺は再び椅子を引いて腰を落ち着けた。そして、
「どうしても必要だから撮ったんだな?」
 今一度念を押す。
「これだけのクオリティで撮影するために、それなりの費用がかかっています。高級外車がポンと買えてしまうくらいの、ね。それを本気度としてとらえてください」
 十分な返答だ。そこまで言うのなら、見てやろうじゃないか。
 どかりと腰を落ち着けて腕を組みながら再生を促してやると、スクリーンの中で止まっていた時が再び動き出す。
 バスターミナルの喧騒をサラウンドで聞きながら、駐輪場を出て信号をフライングして駆ける自分の姿を目で追う。
 安定したカメラワークにまるで自分主演の映画を見ているような錯覚に陥るぜ。溶けるようにスクリーンの中に引き込まれた。
 これほどリアルな追体験もないだろう。あのとき感じた初夏の眩い木漏れ日と、バスの排気ガスの臭いが蘇ってくるかのようだった。
 そこそこに賑わっている通りの人波を縫って先を急ぐ。……正直サマになっていない。息は切れていて身体の軸がぶれまくっている。
 ここで遅れては3回連続の奢りとなるわけで、なんとしても落とせないのは百も承知だが、ここまで不恰好になってるとは思ってなかったぜ。自分の振り見て我が振り直せとは皮肉だ。
 そんなことを考えてるうちに、最終カーブを折れて後僅かと迫る。しかし、開けた視界で待っていたのは、駅と反対の方から歩いてきた朝比奈さんが今まさに集合の輪に迎え入れられた瞬間だった。
 十数歩及ばすの惜敗に手を宙で泳がせたまま、口が半開きになる。……間抜けだ。
 しかし、万が一勝ったとして朝比奈さんに奢らせるなんてことはできそうにない。自首を申し出る犯人のように、俺はトボトボとモニュメントのアーチをくぐって待ち合わせの場所まで歩みを進める。
 自分ながら見上げた潔さだぜ。
「ごめんなさい。キョンくん」
「とんでもないですよ。朝比奈さんが謝る必要なんてありません。顔をあげてください」
 眉を下げて心底申しわけなさそうに手を合わせる朝比奈さんに対して、俺は努めて笑顔で対処する。顔で笑って心で泣いての心境が分かるだけ甘酸っぱいものがこみ上げてくる。
 心優しい天使はそれでもなお俺を気遣ってくれて、なにやら頭の下げ合いのような妙なやりとりになった。
 傍らで佇む団員の表情はそれぞれバラバラだ。
 古泉は陽だまりに居るかのように目を細めて穏やかに見守り、長門は何が始まったのか今ひとつ分かっていなさそうな感じで控えている。
 そしてハルヒは……、下唇をついと上げて憮然と湿った視線を俺たちに突き刺していた。
 こいつは意外だな。こうやって第三者視点から見ることで初めて気づいた表情だ。
 俺が違和感を覚えるのも当然で、それを裏付けるかのようにハルヒの顔が底意地の悪そうに崩れる。
 恒例の宣告が下らんとする――――、ところで映像が停止した。
 操作する権限を持ってるのは一人しかいない。意図が分からず訝しげに窺うと、ニヤケ面は何か携えているのをこちらに見せてから下投げでそれを寄越してきた。
 わけの分からないまま白い残像で絶妙の放物線を描いて手に収まった薄板状の物体を確認する。
696おおよそタテマエ以上、ホンネ未満6:2008/07/26(土) 02:58:33 ID:bK5hc6Cp
 何を、と思ったのは一瞬。暗がりに映える独特の白のデザインはあまりに有名で分かり易い。いわゆる携帯ミュージックプレイヤーという代物だった。
 しかし疑問は完全に晴れない。古泉に視線を戻すと片手を浅く振りかぶるようなジェスチャーを寄越した。着けろってか。
 あれこれ問うのも面倒で、言われるがままにコードを伸ばす。
 なんだこりゃ、イヤホンが1つしかないぞ。
 よく見たが千切れているわけじゃなさそうだ。ラジオを聴くおっさんが愛用するような古めかしい片耳用のそれを耳に突っ込むのはためらわれてたが、待ってたのかのように人差し指を右の耳に押し当てるポーズで促された。強引なやつだ。
 眉間を寄せながら、しぶしぶ装着してやった。
 中央のボタンを押して電源を入れてみる。量販店でいじったことがあるから操作方法は知っていた。
 何の変哲もない市販品のようだが……、はて。
 起動完了を待つと、白いバックグラウンドに『涼宮ハルヒ』の文字が映る。
 一瞬ハルヒの生歌でも流れ出すのかと錯覚したが、あるはずの再生マークも演奏時間が表示されておらず、インターフェースが一切の操作を受け付けない。
 ここでコイツが怪しげな改造品であることを認識した。
「電源は入ったようですね。百聞は一見にしかずと言いますし、説明は後回しにしましょうか。いいですか、イヤホンを押し当ててよく聴いて下さい」
 言い終わらない内に古泉がスクリーン上の動画再生ソフトのシークバーをいじった。
 少し巻き戻ったところから再び映像が流れ始める。
 駆け足の展開に置いていかれないように、とにかく画面に目を戻して耳を澄ます。
 俺が合流して朝比奈さんとの恐縮合戦が始まり、ハルヒが表情を変えて一声。

「はい! 喫茶店はキョンの奢り決定ー。 さて今日は何を頼もうかしら」
『鼻の下伸ばしながらヘコヘコしてるんじゃないわよ。ほんといい気味!』

 視聴覚室備え付けのスピーカーから流れたハルヒの宣告に被さる様に、イヤホンから罵倒が飛んできた。
 思考のついでに呼吸も止まらせて絶句する。それに倣うように画面が一時停止した。
「お聞きいただけましたか?」
 穏やかな問いかけが波立つ心を幾分静める。
 幻聴でないのは間違いない。抑揚や流暢さからして合成であるとも考えづらい。
 じゃあ消去法で残るのは何だ?
 そっくりさんのモノマネか? あるいは、細目野郎が妙な腹話術をかましてやがるのか?
 ……違うな。今のは間違いなく本人の声だった。1年以上一番近い座席であいつの生声を聞き続けてきた俺が断言してやる。
「この映像と合わん妙ちきりんな副音声は何だ?」
「涼宮さんの本意、と思しきものです」
 満を持した風で寄越しといて推測調なのはどういう了見だってのは、顔だけで伝わったらしく古泉がすかさず継いだ。
「実を言うと、我々もよく分かっていないのですよ。涼宮さんの感情の動きを把握するために機関で音声解析の研究を進めていたのですが、特殊な周波数の抽出に成功しましてね。それを色々といじくると、こんな変換ができてしまった、というのが事の顛末です」
 こりゃまたコメントに困る展開だ。楽曲を逆再生するとメッセージが聞こえる的なノリだな。
「それに近いものがありますね。それはこの変換をリアルタイムで処理する仕様になっているのですよ。まるで心の本音のように聞こえるのですが、それを検証する手立てがない、……ゆえに推察の域を出ないのです」
 信じがたい内容だ。そもそもこんなもんが現代科学で創り出せるとは思えん。
「その点に関してはご安心ください。我々の機関が企画し、ソフトを長門さんが構築し、ハード面を朝比奈さんが工面した協同製作です。品物は確かですよ」
 …………。
 長門もそうだが、朝比奈さんも何やってるんですか。
 二人そろってホイホイ機関に手を貸すとはとても思えない。超常勢力を相手取って脅迫できるほど機関に力があるとも思えない。そうなると買収……か? くそっ、……分からん。
697おおよそタテマエ以上、ホンネ未満7:2008/07/26(土) 02:59:27 ID:bK5hc6Cp
 ともかく、そう言われてはぐうの音も出ない。
 まぁいい。で、その何だかよく分からんモノを俺に披露してどうしようってんだ?
「大変失礼しました。そう言えば趣旨を伝えていませんでしたね。この映像を見ていただくのは第三者的な視点から追体験することで、あなたと涼宮さんの言動を客観的に再確認願いたいからです。
きっとあなたがたの意思疎通の食い違いを修正するに有意義に違いないでしょう。その装置はオマケです。使用の是非はあなたの意思に委ねられている」
 そうは言うものの、口先王子の薄っぺらい態度からは微塵も遠慮が感じられない。猜疑心は募るばかりだ。
「お前の尽力に免じて映像の方は見てやるとしよう。事実、自分を省みる良い機会になりそうだしな」
「どうかご自分だけでなく、涼宮さんの表情や言動にも注意してください。……さて」
 古泉は大きく息をつくと、無駄のない動作で簡単な身支度を済ませる。
 葛藤が渦巻くまま、それをぼんやりと見ていた。
 俺は一体どうしたい?
 ハルヒの心が知りたくないかと言うと嘘になる。だが、独力だけではどうにも限界があった。未だに確執が残っていることがその証拠だ。
 この微妙にギスギスした関係は小さな棘が刺さっているようで居心地が悪い。
 だが、そうは言っても、こんな人の本音を盗み聞きするような真似は俺の良心が許さん。紳士に悖る行為だぜ。
「ひとまず僕は退散するとします。一緒に見るようなものでもありませんから。時間をみてまた戻ってきます」
 腕時計を見ながら言うと、席に着いている俺に対して机越しにリモコンを差し出してきた。しかし、受け取ろうとする意思はあるものの、考えがまとまらず手が伸ばせない。
 察したのか古泉は机にリモコンを置いて操作方法を説いた。
「必要以上に誠実に構える必要はないと思いますけどね。なにせその装置が発する音声には何の保証もないのですから。あなたがさっき例えたように、面白がって歌を逆再生して聞いたとしても、その歌詞に真剣に耳を傾ける人はいないのと同じことですよ」
 そんな台詞だけを残して静かに部屋を後にした。
「何の保証もない、……ね」
 頭の中でしつこく残響した言葉が口を突いてこぼれる。
 掌の液晶に『涼宮ハルヒ』のゴシック体を映したまま漫然と、半ば無意識の内に俺はイヤホンを耳に突っ込んだままリモコンを手にとっていた。

//////////

「キョンとペアか。監督してあげるからしっかりやんなさいよ。団長のご指導をありがたく賜りなさい」
『キョンとペアか。最近なんだか気まずいし仲直りしたいな。せめてきっかけだけでもつかまないとね』

 朝とも昼ともつかない半端な時間のためか、休日にもかかわらず人の入りがまばらな喫茶店のボックス席で、恒例の楊枝を使った抽選が終わる。
 日常をありのまま映しただけのものにも関わらず、俺の五感はスクリーンの中に釘付けになっていた。
 冒頭でも感じたことではあるが、こうやって第三者の視点から見ると、驚くほどに気づかなかったことがいくつも見えてくる。岡目八目という諺は嘘じゃない。
 テーブルの下でさりげなく携帯をチェックしている古泉。毎度のこと仕事熱心でご苦労なことだ。
 アイスレモンティーに一口つけて瞬きをする朝比奈さん。思ってたより酸っぱかったんだろうか。
 文庫本から顔を上げて虚空の一点をじっと見つめる長門。インテリアの泡水槽が気になるらしい。
 そして、団員たちとなにげない雑談を交わす俺の様子をチラチラと窺うハルヒ。
 喋りっぱなしのイメージがあったが、それは勝手な思い込みだったようだ。
 団長として一同に発言するときは盛大に、それ以外は一人寡黙に飲み物に口をつけていた。スイッチでもついてるのかお前。
 カップ越しの上目遣いは、傍から見ていると……、なんだかこそばゆい気分になる。
 こんな風に視覚だけでも新発見の連続だ。
 そして、なによりも鮮烈なのが右耳から聞こえてくる問題の副音声。
698おおよそタテマエ以上、ホンネ未満8:2008/07/26(土) 03:01:05 ID:bK5hc6Cp
 スピーカーから流れてくる主音声と全く同じときもあれば、ここぞとばかりに突拍子もない台詞が飛び出してくるときもある。今みたいにな。
 毅然とした表情と殊勝な言葉の組み合わせはアンバランス過ぎて虚実が混沌としてくる。これを食らって平然としていられるやつが居たら、心の底から尊敬してやってもいい。
 しかし、そんな俺の戸惑いなど関係なく映像は移ろいでいく。
 抽選が終わって散開となった。にこやかに店を出て行く一同、対して渋い顔をして重い足取りでレジに向かう俺。不憫だ。
 財布を取り出して、レシートの束に埋もれているなけなしの紙幣を取り出す。
 ハルヒが背伸びをして背中越しにこっそり財布の中身を覗き見していやがった。鼻っ面を上げてがんばっている様が間抜けに映る。
 後ろに居るなってのは分かってたが、こんな真似をしてやがったのか。油断ならんやつだ。

「支払い大丈夫? まさか足りないなんて情けないこと言わないわよね?」
『あんまりお金入ってなかったなぁ。毎回奢りじゃさすがに厳しいわよね』

「いいから外に出てろ」

「かわいくない態度ねえ。みんな待ってるんだから早くね」
『よし。今日はこれ以上お金使わせないようにしましょう』

 …………やれやれ、耳を疑うぜまったく。
 しかし、あながちデタラメとは言い切れない。なぜならこの日確かに奢ったのはこの場だけで、この後余分な支払いを求められることはなかったからだ。
 そうなるとさっきの財布盗み見は興味本位ではなく、俺を気遣っての行為だってことになるよな。そしてそれを裏付けるイヤホン越しの台詞はやっぱり……、って止めとこうぜ。まともにとらないのが約束事のはずだ。
 画面が切り替わって、喫茶店で二組に分かれる。
 終日ペア固定システムなのを除いていつもと同じ、特に目的もなく街を練り歩く散策という名の不思議探索が始まった。
 雑踏の中、とめどない会話を交わしながら肩を並べて歩く。
 さすがに人ごみの中カメラを持ち込むことはできなかったらしく、離れたビルからズームでとったような画に俺たちが小さく収まっている。クリアに聞こえてくる音声は別録りってわけだ。一体どこにマイクを仕込んでるんだか。

「ああ、そうそう。この前借りたCD聴いたわよ」
『ああ、そうそう。この前借りたCD聴いたわよ』

「どうだった?」

 問いかけに、ハルヒは意地の悪そうに笑って応える。

「けっこうミーハーな感じだったわね。ああいうのが好きなんだ?」
『知らないジャンルだったけど、気に入った曲がいくつかあったわ』

「どんなのを聴いてるのか知りたいっていうから貸したのに、ずいぶんな感想だね」

「け、貶してるわけじゃないのよ。悪くはないけど一回聞けば十分ってこと。月曜日に返すわ」
『ご、誤解しないでよ、ちょっとは興味あるんだから。ダビングが終わってから返してあげる』

 のっけは共通のくせして会話が進むにつれてどんどん脱線していくことに関して、もはやお笑いのレベルだな。
 スクリーンの中の俺は、よもやハルヒが裏でこんなことを思っているなんて考えもせず、額面どおり趣味が合わなかったな、と単純に思うことしかできなかった。
 しかし、気に入らないと言った割には曲ごとに細かい感想(よく聞けば好意的にとれる内容)を述べるハルヒを見ていると妙にうなずける節がある。
 いや、納得してはだめなのかもしれんが、鵜でもあるまいし腑に落ちてしまうものを戻すのも無理な注文だった。
 駅を抜けて北側へ回りこんで大型の商業ビルへ入る。
 たまには店の中を歩いてみようというハルヒの提案だったのさ。
 さすがに追いきれなかったのか時間が少し飛んで、カメラが切り替わって今度は俯角から見下ろすような形になる。ドッキリ番組でありがちなアングルだぜ。
 白を基調としたフロアに店のロゴが映ってすぐに記憶が蘇った。生活雑貨店であれこれ見ながら冷やかしまくったあの場面か。
 メンズ衣類のコーナーでハルヒはいたずらっ子のように目を輝かせながら、あれこれ服を俺に合わせて遊んでいる。買いもしないくせに店にすればいい迷惑だ。
 自分としては冷静に対処しているつもりだったが、これじゃあ他人には一緒になってはしゃいでいるようにしか見えんな。下手をすれば痛いやつらのように思われたかもしれん。
 いいからお前少し落ち着け、という念が届くはずもなく、ハルヒは俺の腕を取って袖の長さを見ようとした。
 半そででむき出しになった二の腕に触れられた感触が蘇って肝を冷やす。
699おおよそタテマエ以上、ホンネ未満9:2008/07/26(土) 03:02:35 ID:bK5hc6Cp
 しかし俺を差し置いて、ハルヒがまるで火傷を避けたかのようなリアクションで手をひっこめていた。
 このアングルから見せられると、このオーバーアクションはいささか傷つくものがあるね。そんなことを考えた矢先、

「え、えーと、……ううん。なんでもないのよ」
『思ってたより堅くて……、少し驚いただけよ」

 見当違いの感想が返ってきた。
 なんのことを言ってるんだ? という疑問は直後に明かされる。

「次の店行きましょ。ちょっと遊びすぎたわね……」
『見た目は細いくせして結構筋肉あるじゃない……』

 ……そういうことかよ。
 思わず自分の二の腕に目を落とす。特に鍛えてるわけでもないし普通だと思うがね。実はあんまり男慣れしてないってことなのか?
 なんにせよ思いもよらんことを考えるやつだ。
 ハルヒがわざとらしく咳払いをする。映像じゃ分からんが、確かこのとき間近で見たハルヒの頬に僅かな朱が差していたことを思い出した。
 てっきりはしゃぎすぎたことを照れているもんだと思っていたがね、と唸る間にハルヒはまるで逃げるように身を翻して一人勝手に歩き出す。
 とにかくハルヒがおかしいと思ったのは今に始まったことじゃなかったらしく、画面の中でも置いてけぼりを食らっていた俺は、商品を戻して慌ててその小さな後ろ姿を追っていた。

//////////

 その後、ズカズカと我が物顔で通路を進むハルヒの後ろをついて回って、本屋、アロマショップ、観葉植物専門店を行き着くままに冷やかし尽くした。
 こうやって俯瞰して見ると、まるでハルヒの剣幕に気圧されて人の波が押し分けられていくように見える。
 断言してもいい。お前、絶対素で遊んでいるだろ。
 しかし、不意にわざとそう振舞っているかのように見える瞬間があるから侮れない。
 いつも前ばかり向いているやつだが、この日のハルヒはよく俺の方を窺っている。俺の反応を見ながら、間延びしないように努めているようにも思えた。
 これが錯覚でなければ、俺としては少々手持ち無沙汰であったとしても、もう少し落ち着いて回りたかったわけで、まったくありがた迷惑な話ではある。だが、それは裏を返すと俺を楽しませようと振舞っていることになるわけで、
もしかしたらこいつなりに和解を求めているんじゃないか、などと考え出すと少々複雑な気分になった。
 ハルヒの驀進もフロア一周に及ぶと勢いは弱まり、元居た雑貨屋の近くまで戻ってきていた。
 心なしか俺の表情が明るい。自分のことながらこんなに楽しそうにしてたのかと意外だった。
 スクリーンの中で俺の視線がふと一点に留まっている。
 俺の目を引いてるのはガラス張りで暖色系の照明が映える開放感のある店舗だった。
 直感で美容室かと思ったが違う。ネイルサロンだ。
 自発的に近づかない場所なのもあって、もの珍しさについつい立ち止まって中を覗いてしまったのを思い出した。
 映像じゃよく見えないが、奥の壁に並んだテーブルを挟んで女性同士が向かい合ってなにやら細かい作業に集中していたのが目に浮かぶ。
「こういう風になるんだな。あのバラの花とか立体感があって綺麗と思わないか?」
 展示用のサンプルを見ながら、呑気に話を振る俺。
 小洒落た癒しの空間に和んだのも一瞬、芋づる式で次に脳裏にスライドインしてきた安穏を覆す羅刹の面に竦み上がる。
 もはや怖いもの見たさに近い心境でハルヒの横顔に視線を移すと、案の定まなじりを吊り上げてものすごい形相で俺を睨みつけていた。
 応えるようにカメラがズームアップする。無駄に演出をいれなくていい、余計に怖いだろうが。
 今でもこの体たらくだ。当の俺は猛獣にエンカウントしたかのように金縛りに遭っている。
 さっきまで笑ってたのに、この豹変っぷりは一体何なんだ?

「不要な装飾の代表例ね。服には引っかかるし、タイピングで余計なキー打っちゃうし、少し当たっただけですぐに割れちゃうし、理解しがたい趣味だわ」
『先週あたしがやってきたときは、全然気づかなかったクセして適当なこと言ってんじゃないわよ。今更頼まれたって絶ッ対に見せてあげないんだからね」

 …………。
 右耳から即座に叩きつけられた答えに唖然となる。
700おおよそタテマエ以上、ホンネ未満10:2008/07/26(土) 03:03:20 ID:bK5hc6Cp
 対する画面の中の俺はそんな事情など知る由もなく、火に油を注ぐような愚かしいツッコミを入れていた。
「冷静に考えれば不便なことが多そうなのは分かるが、まるでやったことがあるような口ぶりだな」

「うっさい!」
『うっさい!』

 変則サラウンドでハルヒの怒声が痛いくらいに鼓膜に響きわたる。脳天を突き抜けるかのような衝撃に思わず腰が浮いた。
 電気ショックと大差ないぜ。今ので脳細胞のいくつかはダメになったに違いない。
 故意に残したような酷い音割れに編集者の悪意を感じるね。
 心中でさんざ毒づきながら、座り直して改めてスクリーンを凝視する。
 やれやれ、見事なまでのすれ違いっぷりだ。
 前々回の探索の後、ハルヒの機嫌が更に悪化したのは、こういう裏があったということなのか?
 しかし待ってくれ。言い逃れをするつもりはないが、よしんばそうだったとしても、ネイルアートに気づけなかったことは責められることか?
 手フェチでもあるまいし、指先なんてまじまじ見てる方がおかしいだろう、などと自己弁護を試みたが、悔しくも他団員から同意が得られる想像が浮かんでこなかったので取り下げることにした。
 普段ハルヒが色のついてないマニキュアを塗ったり、リップを付けたりしてるのは知っている。だがそれは身だしなみ程度のものであって、こういう必要以上にゴテゴテしたのは嫌いな性格のはずだ。
こればっかりは自信があるが、そう思うほどに辻褄が合わないことになってますます混乱するだけだった。……くそう。
 釈然としないまま、映像を追うに流される。
「何をそんなにカリカリしてるんだ?」
 傍らの俺に取り合わずハルヒは一人で歩き出す。しかし勢いがあるのは出だしの数歩だけでみるみるペースが落ちた。
 カメラが映したうつむき加減の横顔は口許をきつめに結んで、イラついているようにも考え込んでいるようにも見える。
 数歩取り残されて頭を掻きながら首をひねっている俺。だが、すぐに目の前の小さい背中を追って歩き出した。
 自分ながら健気だと思うぞ。
 そのままエスカレータを下って建物の外を出る。
 トボトボと後追いながら、そのまま駅まで戻るもんだと思っていた俺の予想を裏切って、板張りの中庭のような場所でハルヒは立ち止まると振り返らずに口を開いた。

「ちょっと休憩しましょ、……ちょっと飲み物買ってくるわ」
『ここで立て直しましょ、……ちょっと飲み物買ってくるわ』

 そう言い放って俺の返事も待たずに駆け出し、フレームから外れる。
 この場面はよく印象に残っている。確か自販機で当たりを引いたらしく、ウーロン茶を2本持ってきて1つ俺に恵んでくれたのさ。
 画面が切り替わってカメラがハルヒだけを映し出した。
 広場の外れにある自販機と対峙しウーロン茶を購入するハルヒ。1本目をしゃがんで取り出したところでおかしいことに気づいた。
 当たりを引いたようなリアクションがないのだ。
 何かをやらかすような空気を感じ取って固唾を呑んで見守る。
 缶にじっと視線を落として思案をしていたかと思うと、急に山猫のような鋭敏な挙動で周囲を見回し始めた。
 まさかの予感が的中し、俺はひたすら瞬きを繰り返す。
 こともあろうに、なんとハルヒはすばやく硬貨を押し込んで2本目を普通に購入しやがったのである。
 ちょっと待てとツッコむも、ハルヒは満足げにうなずくと、陸上部も一目おくダッシュであっという間に俺がぼけーっとベンチに腰掛けている広場へフレームイン。

「キョン、喜びなさい。当たって1本もうけたからあんたにあげる。ツイてるあたしに感謝するのよ?」
『こうすればわざとらしくないし、そもそもニブキョンが気づくはずもないし、我ながら冴えてるわね』
 
 悪かったなニブくて、とスクリーンの外から返すも空しく響くだけ。
 こいつは完全な盲点だったぜ。まさかハルヒが自発的に俺を労うことがあるなんてな。今のは事実を映し出したものに違いなく、ハルヒに対する認識の浅はかさを思い知る。
 しかもこの行動、思い返せば喫茶店の支払いで俺の財布の残高を気遣っていた副音声とつじつまが合うことになるじゃないか。となると、……いやいや、1回合致したからといって結論づけては統計学を冒涜することになる。
 なんとか気を取り直して画面の中に戻ろうとするも、しばらく上の空だった。
 結局集中が定まるまで、ハルヒのテンションギャップに動揺を隠して素直に喜んで受け取る俺、対して照れた風に必要以上に距離をとってベンチの端に腰掛けるハルヒのやりとりを丸々見送る羽目になった。
701おおよそタテマエ以上、ホンネ未満11:2008/07/26(土) 03:04:20 ID:bK5hc6Cp

//////////

 奇妙にもベンチの両端に座って缶をすする俺たちに シーソーでもやってるのかお前らとツッコみたいのはどうやら俺だけではなく、道行く人が視線を投げていく。当人たちを差し置いて見ているこっちが恥ずかしい。
 ハルヒはそっぽを向いて空を眺めて、俺は少し疲れた様子でため息を地面に落としていた。
 そんなギクシャクした空気をものともせず、俺たちに歩み寄る勇敢な人物が一人。
 広場でチラシを配っていた大学生風のあんちゃんが俺に声を掛けてきた。
 挨拶と営業スマイルと1枚のプリントだけ残して離れる。
 よほど参加者が少なくて困っていたのか、あるいはチラシをさばけずにいたのか、どちらにせよ見上げたプロ根性である。
 虚ろな目で手に取った紙に目を通す俺。
 紙面はよく覚えている。確か見出しは『ラブラブジャンボパフェチャレンジ』、噛みそうで噛まずに言える妙なタイトルだ。
 一面を占めるのは七夕の笹飾りも枯れ木にくすむような賑やかさで、菓子やら果物を好き放題トッピングしたような巨大パフェ。横に置いてあるワインのボトルが二回りは小さく見えたのには目を疑ったもんだ。
 細かい文面は忘れたが、要は巨大パフェの早食い大会の告知である。
 くだらないと思いつつ、その圧巻の大きさに目を見張る俺に悟られぬようにハルヒがじりじりと身を寄せる。そして、間合いに入ると同時にあっという間にチラシを奪った。

「なにこれ? 早食いのイベントじゃない」
『なにこれ? 早食いのイベントじゃない』

「そうみたいだな。参加しようとするやつは、よっぽどの食いしん坊か、甘味マニアか、なんにせよ物好きに違いないだろうよ。その写真を見てるだけで胸焼けできるぜ」

「キョン! これに参加するわよ!」
『キョン! これに参加するわよ!』

 俺が言い終わらない内にバカでかい声が二方向から被さる。
 ハルヒは立ち上がって俺にチラシを突きつけてきた。

「優勝すれば無料で、さらに賞金3万円よ? おなかいっぱいになって活動資金も稼げちゃう夢のような企画じゃないの」
『優勝すれば無料で、さらに賞金3万円よ? これを喫茶店代に充てればあんたにしばらくお金使わせずに済むじゃない』

 レジ前の台詞がここにもつながるとはね。このプレイヤー、侮れねえな。
 この急展開は単なる思いつきじゃないってのかよ。
 まくしたてるように強引に誘うハルヒをどう穿って見ても、俺を労っているようには思えない。
 ……やれやれ。一体何を信じるべきなのか。
 大きな根野菜が引っこ抜かれるように、とうとう腰を浮かされて連れられていく自分自身に苦笑を送るしかなかった。
 連絡橋を使って線路を越えて商店街まで足を伸ばす。
 目指す、いや目指さされているのはもちろんチラシに書かれているカフェレストランだ。
 連行されてはいるものの、俺だって黙って従うほど無駄に広い懐も、いかにも自分の内臓にダメージを与えそうな企画を喜んで受けるほど自虐趣味も持ち合わせちゃいない。
 ハルヒの後頭部に向かって懸命の抗議をぶつけて踏ん張っていた。
「ルールをちゃんと読んだのか? カップル参加が必須なんだぞ」

「何が言いたいわけ? 男女の組になってりゃ問題ないってことでしょ。ちょうどここに揃ってるんだからあたしたちのためにあるようなイベントよ」
『分かってるわよ。分かってるから……、行こうってんじゃない。こういう協調作業はもやもやを解消するのにもってこいだし、ノらない手はないわ」

「そういう意味じゃなくてだな。あー、……その、なんだ」

「何よ! 言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
『何よ! 言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ』

「企画のタイトルをよく見ろ、あと背景の模様も」
 ハルヒはくしゃくしゃになってるチラシを片手で雑に広げて一瞥する。一瞬目が大きく見開かれて吸った息が止まった。
 『ラブラブ』の文字や、『ハートマーク』の嵐に篤と面食らうがいい。そして考えを改めろ。
 そんな風に後ろで一人ほくそ笑んでいたのを思い出した。自分のことなのに、なぜか根暗で情けなさが先行する。
702おおよそタテマエ以上、ホンネ未満12:2008/07/26(土) 03:04:56 ID:bK5hc6Cp
 怯ませることくらいは期待していたが、ハルヒは歩く勢いを弱めず、声の調子もそのままに平然と返してきた。

「付き合ってるかどうかなんて分かりゃしないわよ。早食いなのよ、競争よ? 席につくまではともかく、食べ始めたら形振りなんて構ってる余裕はなくなるわ」
『あたしとじゃ到底そういう風には見られないって言いたいわけ? なんだかあんたに言われると無性にムカつくわ。それらしく振舞ってあげるから安心なさい』
 
 俺ばかりがカップル扱いで店に入ることを気に病んでいたのかと思っていたが、揺れた裏の声を聞く限りどうやらそうでもないらしい。
 背筋がむず痒い思いをしている間に、ずんずんと行程を消化してとうとう店頭に臨んだ。
 入り口から溢れるほどの長蛇の列ができていやがる。確かこのとき時刻は12時20分。開始10分前と迫っていたが、人だかりができるほどの人気を博していることに驚きを隠せない。
 みんないくら暇を持て余してるとしても手段は選ぼうぜ。
 歳の近そうな中高生、二十歳前後の若い男女が多い。まぁ、そうだろうな。血糖値が気になる年配の方が挑む企画じゃない。
 全般的に男のテンションが低めのように映った。お互いご愁傷様だね。


 暗転してテーブル席でハルヒと向き合って座ってるシーンに移った。
 過激な企画に反して黒塗りの木材で作られた空間は落ち着いた雰囲気を醸している。円形に張り出した2階の窓際には十ほどの二人席が並び、一番端に俺たちは座っていた。
 どこから撮ってやがると思いきや、そういやイベント記念撮影用に店員がハンディカムを持っていたな。そのドサクサに紛れて撮ったくさい。
 落ち着かない様子で俺はハルヒと二人してキョロキョロと辺りを見回している。
 店員の開会挨拶が終わった頃か。
 あのとき自分の目でも見たが、フロアの中心部にはボックス席があってどこも満席となっていた。
 一般の客と混ぜずにイベント専用に店を貸切にした状態となっている。
 満員御礼、全員着席、時間一杯と相成ったところで店員が続々と主役の巨大カフェをキッチンから運び出してきた。店内にどよめきが起こる。
 ドスンと当てるに相応しい重低擬音を伴って、横綱級の貫禄でテーブルに四股を踏みおろしたそいつを前にして戦慄が走る。
 そもそも男の店員が一人1個をやっとこさ抱えて持ってくる時点で異常だった。
 これは……、食い物なのか?
 忌憚のない俺のファーストインプレッションだ。
 無理もない。ハルヒのリアクションはどうだと思ったものの、堆く上に積もったアイスの山に阻まれて見えなかったんだぜ?
 仕方がないと首を傾けて向かい側を斜め下から仰ぎ見ると、案の定ハルヒは阿呆みたいに口を開けて絶句していた。
 すべての席にパフェが行き渡り、司会を務める店員代表、縁あってか広場で俺たちにチラシを配ったあんちゃんによるルール説明が始まった。
 制限時間は15分。時間内に完食できればお代はタダ、一番手には賞金3万円贈呈。チャレンジ失敗の場合は3500円が徴収されることになっている。正直手持ちがない。ハルヒが出すとも思えず、俺は本気で崖っぷちだった。
 トイレは自由、水も飲み放題と続いて、「最後に重要なルールを申し上げます」と大げさな断りが入って、
「パフェをご自分で食すのは禁止です。必ず互いに口に運んで食べさせ合うこと」
 と結ばれた。
 このときばかりは本当に耳を疑ったね。しかし、驚いているのは俺たちだけで周りの連中たちは落ち着き払っている。
 バカなことに俺たちだけが参戦前によくルールと趣旨を確認していなかったのさ。
 チラシの一番下にご丁寧に米印と下線付で件の最重要項目が記されていた。『ラブラブ』なのは伊達じゃなかったってことだ。
 言わんこっちゃない。今更強く言うのもなんだが、道中の俺の忠告は的を外してなかったことになる。
「スプーンは2本使っていただいて結構です。もちろん1本を共有してもらっても構いません」
 軽妙な冗談は和やかにウケていたが、俺には全然笑えない。ハルヒは表情を引きつらせたまま固まっていたが、目が合った瞬間白々しく視線を逸らしやがった。
 止せばいいのに自棄気味に俺がジョークを口にする。
「……どうするんだ? この際1本で食ってみるか?」

「バ、バッカじゃないの? ふざけてないで集中しなさい」
『バ、バッカじゃないの? 想像しちゃったじゃないのよ』

 ……想像するなよ。
 映像相手に苦言を呈したところで、笛を合図に開始の火蓋が切り落とされる。
 各テーブルにおいて一斉に身を乗り出して大山崩しが始まった。
703おおよそタテマエ以上、ホンネ未満13:2008/07/26(土) 03:05:51 ID:bK5hc6Cp
 パフェの外観を軽く説明しておこうか。
 まず器はグラスのカテゴリーに収めるのがためらわれるほどのスケールを誇る逆三角錐型。単品ならもはや花瓶と称するに値するぜ。基部を支える円形の足がCDサイズなのはきっと笑うところだ。
 その容器の下層を埋め尽くすのは大量の生クリームだ。ストロベリーソースが層を成すように絡んでいて縞模様を作っている。キウイの輪切りが内周に張り付いていてレリーフのように白と赤のストライプの中空に浮かんでいた。デカブツのくせして凝ってやがるぜ。
 上層はフルーツと菓子の乱戦模様で混沌と説明がつきずらい。分かり易いのはサグラダ・ファミリアを象ったように中央に高らかと伸びるアイスの尖塔か。この頂点が最高海抜地点を誇る。アイスは色鮮やかなスプレーでこれでもかってくらいにトッピングされていた。
 その他はとにかく色んなものが載って、いや、刺さってやがるな。目を引くのはなんといっても最長尺のアイスコーンだろう。アイスの中央塔から放射状に広がるように細長い三角錐が突き出ている。
やり過ぎ感が漂ってるせいか、宇宙要塞のアンテナに見えたのは俺だけではないはずだ。
 あとは隙間を埋めるようにチョコレートポッキー、ナッツクッキー、パイナップルの切り身、プラム、さくらんぼ、イチゴがひしめきあっていた、……一体何メガカロリーあるのかスペックを知るのも恐ろしい。
 そんな化け物じみたメニューに俺たちは挑もうとしていた。しかも、とんでもない精神的ハンデつきで。
 周りの席ではにこやかにコーンやクッキーをつまんで口に運び合ってる姿がある。まず上に載ってる物を片付けるのはセオリーだろうからな。
 しかし、俺たちは身じろぎもできずに硬直していた。こんな恥ずかしい真似ができるわけがない。
 
「キョン!」
『キョン!』

 鋭い声に顔が正面を向く。しかし、パフェに邪魔されてハルヒの頭しか見えなかったのか身体をよじって視線を迂回させる。その視線の先には顔を紅潮させて口元をへの字に歪ませているハルヒが居た。目は血走ってて鬼気迫るものがある。
 パフェを目の前にする顔じゃねえ。

「まずはアイスのコーンから片付けるわよ」
『自分から動きなさいよ、この甲斐性なし』

 ひどい言われようだが、この期に及んでまだ動けない体たらくなんだから抗弁のしようがない。
 事態についていけず、まごつく俺に焦れたのか、

「いーから、これを、あたしに、食べさせなさい!」
『いーから、これを、あたしに、食べさせなさい!』

 叫ぶような怒声が耳をつんざいた。
 脅迫じみた剣幕に圧されるように、俺はとにかく手当たり手に取るようにコーンを引き抜いてハルヒに差し出す。
 いきなり人参を突きつけられた馬のようにハルヒは一瞬のけぞったものの、シャリシャリと口にし始めた。残り数センチとなったところで手を離してやると、一気に飲み込んで咀嚼する。
 やけに時間をかけてコーンを食べ終わったハルヒは、ロボットのようなぎこちない動きで今度は自分がコーンをつかむと、のろのろと俺の口元に伸ばしてきた。
 半ばやけくそのように食らいつく。少しでもこの時間を短縮しようとバリバリと噛み進むがやけに食いづらそうだ。それもそのはず、コーンがぷるぷると震えてやがったんだからな。
 俺が黙っているのは、親の敵のように睨み続けるハルヒに封殺されていたからだ。
 とりあえず俗に言わないかもしれない『「あーん」イベント』を、よりによってあのハルヒを相手にやっちまったことに愕然と肩を落とそうとしたものの、そんな暇も与えられず、

「ほら、ぼさっとしないの! 次は、ポッキーいくわよ」
『失礼ねえ。そんなに嫌そうな顔することないじゃない』

 戦渦が俺を飲み込んでいった。
704おおよそタテマエ以上、ホンネ未満14:2008/07/26(土) 03:07:12 ID:bK5hc6Cp
 
//////////

「きゃっ! 今、指舐めたでしょ? こんのエロキョン!」
『ゆっ、指舐められちゃった。キョンにっ! ペロって!』

「文句があるなら皮の薄いパイナップルに言え」

 反撃とばかりに俺はさくらんぼの枝をつまもうとする。何かが振り切れてしまったのか、人としての大切な観念を失ってしまったのかは定かではない。
 とにかく恥じるのは後回しとばかりに俺たちは激しいスイーツラリーを繰り広げていた。

「あ、さくらんぼはダメ」
『あ、さくらんぼはダメ』

「なんでだ?」
 
「き、嫌いなのよ。そうっ、アレルギーがあるの!」
『種出すとこ見られたくないのよ。気遣いなさい!』

「……まぁいい。じゃあイチゴな」

「スプーン使いなさいよ。小さいから食べにくいじゃないのよ。あんたぶきっちょなんだから、落とさないように気をつけなさいよね!」
『スプーン使いなさいよ。今度はあたしがやっちゃうじゃない。べ、別に嫌じゃないけど、ってああもうっ、あたし何言ってるのかしら』

 言われた通りにスプーンで食わせてやると、それはそれでアレだったのかハルヒは目を白黒させた。きっと味なんて分かっちゃいないだろう。
 どうしてそう思うのかって? やり返された俺が正にそうだったからだよ。
 ハルヒの裏音声に関しては、後でまとめてツッコんでやることにした。意表を突かれるびに脈が乱れるが、いちいちやってたんじゃキリがない。それよりも自分ががんばってるせいか、不思議なほどに感情移入してしまうぜ。
傍観者でありながら、俺は画面の中の自分に半分以上気持ちを重ねてしまっていた。
 大騒ぎしてもつれあいながらもペースをつかみ始めた俺たちはパフェを飾っていた菓子、果実類を片付けてアイスの尖塔を切り崩しにかかっていた。
 遮蔽物が取り払われてハルヒの顔が正面から見えるようになっていた。スプーンの取り回しも少し楽なってペースはさらにあがる。
 だがアイスってのは間違っても早食いできるもんじゃない。
 すでに口の中は熱を奪われて麻痺を起こし、甘さとツープラトンで歯に沁みてきていた。パブロフの犬じゃないがこうやって見てるだけで条件反射で唾液が出てくる。
 弱音が喉まで出掛かっている俺に対して、ハルヒはまるで余計なことを意識するのを恐れるかのように、無我夢中で俺が差し出すアイスを貪っていた。
 ちゃんとスプーンを食べやすい位置に正確に制御できてない俺にも非があるが、口の周りにアイスを付けまくってパクついてる様は、ひいき目にみても品があるとは言えない。
 もちろん拭くように言ってやろうとしたさ。しかし、それすらも許されない気迫に呑まれてしまっていた。
 さりとてこっちにも限界ってものがある。冷たいものの食いすぎで腹も冷えてきて本格的にやばいと思った矢先だった。
「――――っ!」
 たまらず頭を押さえて顔を背ける俺。

「ど、どうしたの?」
『キョン、大丈夫?』

「ぃってえ……、頭にキーンってきた。なるべくゆっくり溶かしながら食べてたんだが、さすがにおっつかん。ちょっとだけ一息いれようぜ。お前も口の周りアイスまみれだぞ」
 俺の言葉に弾かれたようにハルヒはかなり慌てた様子でナプキンを取り口元を拭った。
 まったく、それだけべっとり付けといて気づいてなかったとは大した集中力だぜ。
 ガタガタになってる俺の身体はともかくとして、無理してペースアップした甲斐あって、アイスでできた中央塔は跡形もなくなくなっている。
 周りを見回すと俺たちよりも進んでないテーブルの方が多い、というよりも本気で早食いをやってるやつらなんてほんの一握りだという事実に気づいた。
 ……そりゃそうだ。楽しみこそあれ、なんの因果でこんな苦行に身を投じねばならんのだ。

「ふふ……、完全に遅れは取り戻したみたいね。何てことないわ、ちょうどいいハンデだったってこと。3万円はもらったも同然ね」
『最初はすごく恥ずかしかったけど、慣れれば案外どうってことないもんね。そうよ、キョンとあたしが協力すれば無敵なんだから』
 
 不敵に笑う因果の主を前に、恨めしそうに俺が眉根を寄せる。
705おおよそタテマエ以上、ホンネ未満15:2008/07/26(土) 03:08:02 ID:bK5hc6Cp
 心境は「まったくこの女は……」、といったところだったはずだ。
 しかし、ハルヒが明後日の方を向いたまま戻ってこないことに気づくと、自ずと皺が解けてその視線の先を追う。
 ハルヒが一体何に囚われていたのか、その答えは反対側の端の窓際席にあった。
 規格外の体格をしたカップルがさも窮屈そうに椅子に座ってパフェを掘り起こすように食っている。
 男がごついのはともかく向かいの女、遠目でもすでに二の腕がはんぱじゃない。下手しなくても俺よりウエイトあるぞ。
 尖塔はとうの昔に陥落し、スプーンの先が地下中層のキウイに届かんとしている。
 大本命があんなところに居たとはうかつだった。どう間違ってもあれには勝てんだろう。馬力が違いすぎる。
 ハルヒだって次元の差を思い知っただろうと、このときばかりは確信できた。しかし返ってきたのは――、

「キョン! 休んでる暇はないわ。なんとしてでもあれに勝つわよっ」
『無敵伝説を阻もうとはいい度胸ね。身の程思い知らせてやるわよっ』

 宥める言葉の一つでもかけようとした俺の慈悲を粉砕するカウンターパンチ。
 シュールなほど対照的な顔が、土台だけになったパフェを挟んで向き合う。
 瞳の中でメラメラと何かを滾らせるハルヒ。対してげっそりしてうなだれる俺。
 ハルヒがありきたりな叱咤を飛ばしてくるが、絶望に呆けて俺は生返事を繰り返すだけだ。
 まるでやる気のないマングースがハブとの戦いを強いられているようで哀れみがこみあげてくる。
 そんなやりとりが5秒と続かない内にハルヒは癇癪を起こしてテーブルを叩くと、無理やり俺の手にスプーンを握らせてきた。
 鬼か、お前は。
 そうやってなし崩し的に今度はボーリング作業が始まる。
 こうなりゃもう腹をくくるしかない。
 どうせ後は半液体なんだから、流し込むように食えばなんとかなる……、はずだ。勝ち負けは別として、食い終われば火種は断ち切られる。
 そう自分に言い聞かせた俺はハルヒがよそって寄越したスプーンを食んだ。
 クリームだと信じて疑わない俺はすする様に飲み込もうとした。その瞬間、自分の考えの甘さを思い知ることになる。
 生クリームの雪解けの食感とは相反する堅くザラついたような舌触り。
 白い大地の中にフレークという名の地雷が潜んでいた。なんてこった。
 パフェを覗き込むと、これでもかってくらいに高密度で敷き詰められている。
 よく考えりゃこいつは予測できたことだぜ。ごってりした盛り付けを支えるには強固な土台が要る。クリームだけじゃ沈んじまうからな。
 吐き出すわけにもいかず噛み砕く。冷たくないのは良いが、胃の中でたんまり膨れるに違いない。満腹感を感じ始めた頃合にこいつはガツンとくる。
 行き場のないやるせなさをぶつけるかのごとく、俺はロングスプーンにフレークを目いっぱいすくってハルヒの口元へもっていった。
 口に入れてから時間差でハルヒの顔が歪む。それを見届けてほんの一瞬だけ気分が晴れるが、結果的に卑しい上に虚しいだけだった。
 ゼウスの浮気相手を疎ましむヘーラーを思わせる憎しみの形相でハルヒはバリバリとフレークを砕き、すぐさま俺に仕掛けてくる。
 プラスチックでできた薔薇柄のロングスプーンをチャンチャンバラバラ、互いに無念無想で咀嚼、嚥下を繰り返す。
 しかし、自律神経をごまかし続けることなんて無理に決まってて、確実に精神論でも何ともできない真の限界が近づいていた。
 ロングスプーンを押し込まれている青い顔した俺の面は、もう放送コードギリギリだ。
 思い出すだけで気が滅入ってくるぜ。
 何を言ってもまず甘かった。ただでさえクリームが甘ったるいのに、フレークにはクソ丁寧にシュガーが塗してあって砕くと溶けて、それがチョコスプレッドと絡まるともう手に負えない。
、極寒地獄の次は極甘地獄だったってわけだ、なんてうまいこと言った気になってる場合じゃない。
 きっと俺の身体の中では経済崩壊を起こしたアフリカのどの辺にあるのかも分からんような国の物価並の勢いで血糖値が高騰し、インシュリンが湯水のように投入されていたことだろう。
 その上でボディブローのようにフレークが腹に溜まっていくのさ。
 冗談抜きで吐きそうだった心境が少しでも伝わることを願う。そうなれば、奮闘中の俺も少しは救われるだろうからな。
 だが、エールも虚しく青信号が点滅する。
 内臓が身体を操って拒否したかのように、反射といっても差し支えのない反応でハルヒが繰り出した矛先を、俺は顔を背けて避けてしまった。
 スプーンが掠めて頬に白線が走る。
706おおよそタテマエ以上、ホンネ未満16:2008/07/26(土) 03:08:42 ID:bK5hc6Cp
 とうに食べるのが追いついておらず、頬にヒマワリの種をつめこんだシマリスよろしく、口の中が格納超過となっていたのだ。
 憔悴しきった目でそれでもなおモゴモゴとがんばろうとする。
 その懸命な姿は、無謀な長距離マラソンチャレンジを終えようとしているタレントと重なって、なんだか微妙な気分になった。
 その様にさすがにハルヒも分かってくれたのか、少しインターバルを入れてくれた。
 タイム的には完全に安全圏内、もはや例のヘビー級カップルとの一騎打ちとなっていた。
 さすがにやつらも地雷に苦戦を強いられてるのか、手と口の動きがかなり鈍っている。驚いたことに中盤よりもかなり差が詰まっていた。
 リードは許しているもののスプーンで量って数口差といったところか。
 ここが勝負と悟ってか、最後の檄が飛んだ。

「もう少しよ。根性であと数口だけがんばんなさい!」
『あたしが多めに食べてあげるから、男見せなさい!』

 もう何がなんだか分かってない俺が虚ろに頷いて、ラストスパートの拍車がかかった。

//////////

 結果を言おう。
 なんと驚くべきことに俺たちは勝ったのだ。まぁ、代償として帰宅後に激しい腹痛に見舞われ、それから数日(昨日まで)腹を壊したわけだが、とにかく仇敵を僅差で差して『ラブラブジャンボパフェチャレンジ』第5回大会覇者に輝いた。
 精根尽き果てた俺は存在自体を霞ませた状態で、店内総立ちによる拍手喝采を浴びていた。
 今、画面の中では表彰が行われている。店長と思しき恰幅の良いおっさんから賞状と賞金3万円を真顔のまま受け取る俺。嬉しいもなにもない。ただ疲れきっている。
 どう考えてもハルヒが受け取るにふさわしいと思われたが、ハルヒは固辞して俺に譲った。
 なぜそうしたかさっぱりだったが、今までの副音声を考慮すれば分からんでもないような気がしないでもない。
 画面の端に映っているハルヒは後ろに控えて満足そうな顔で微笑んでいる。率先して食ってたにも関わらず特に辛そうな様子はない。一体その小さな身体のどこにしまいこんだんだ?
 イベントの締めくくりとして司会役の件のあんちゃんが、勝利インタビューをおっぱじめた。
 そこでいきなりハルヒが揚々としゃしゃり出てきて前衛交代。
 正直しゃべるのも辛い気分だから助かる。
「優勝おめでとうございます。かなりのハイペースでしたけど大丈夫ですか?」

「心配無用よ。これくらいどうってことないわね」
『あたしは何ともないけど、キョン大丈夫かしら』

「驚きの余裕ですね。小柄なのにすごいチャンピオンが誕生しました。ところで、お二人はどういった関係なんですか?」

「SOS団の団長とヒラ団員。あ、言うまでもなくもちろんあたしが団長ね」
『関係って、なんだろう? 友達……じゃちょっと物足りない感じなのよね』

 中途半端に空気が読めるあんちゃんはハルヒの電波な部分を鋭く察知して見事にスルー。煙に巻くかのように自分がスカウトしてきたことや、今回の俺たちの記録がいかにすごいかを篤と語った。
 電波の裏側がこんなにまともだったことにじっくり驚いてる間もなく、あんちゃんトークの最中、ほっぽり加減で手持ち無沙汰になったハルヒがテンションが底をついた俺にちゃちゃを入れてくる。

「せっかくの凱旋なんだから、しゃんと胸をはりなさいよ」
『ねぇ、本当に大丈夫? 無理させちゃってごめんなさい』

「……ああ」
 人の気も知らずに。
 あのときの俺は確かこんな感じの文句を心の中で垂れてたはずだ。
707おおよそタテマエ以上、ホンネ未満17:2008/07/26(土) 03:09:43 ID:bK5hc6Cp
 まともに取り合う気力も残ってなかった俺は、時折催してくる吐き気と戦いながら是非を問わず相槌を打つのが精一杯でハルヒの方を見向きもしなかったのさ。
 ハルヒはきっと情けない野郎に苛立つような、そんな可愛げのない顔をしてるはず。勝手にそう思い込んでいた。
 ところがどうだ。今スクリーンの中に居るハルヒの様子はそれとあまりにかけ離れていて、とんでもない思い違いを犯していたことを知る。
 眉根を寄せながら俺の横顔を覗き込んでいるハルヒは心底俺のことを気遣ってるように見えた。
 背中をさするような仕草をみせたが、手のひらを宙で彷徨わせて引っ込めてしまった。こいつの中で何か思うことがあったのか、深いところまでは分からん。ただ、申し訳なさそうに沈んだ顔を眺めていると、
さっき右耳から聞こえてきた言葉をそのままハルヒが発した言葉に当てはめても何らおかしくないような気がした。
 少し楽になったのか、俺が面を上げる。近い距離でハルヒと向き合う形となった。不意に俺の顔が迫ってハルヒは大きな瞳をさらに見開いた。
 その心境は分かる。少し照れてしまいそうな距離だからな。しかし、このとき俺はそんなことよりも他のことに囚われていた。
 瞬時に何かがおかしいことに気が付いた。あるはずのないものが、……ある。確かな違和感があるはずなのに、妙に似合っているせいか間違い探しの答えがすぐに出てこない。
 やっきになって俺はハルヒの顔をまじまじと見つめる。
 その顔は補習がかかったテストを受けているときよりも真剣で、視線は熱っぽくすら感じられた。完全にボケてやがる。

「なっ、なによ。頭までおかしくなったの? いきなり人の顔をジロジロ見ないでよ」
『なっ、なによ。あたしの口許ばっかり見て。こんなところで一体何考えてるわけ?』

 視線の先は気づかれてたか。目的はとんだ見当違いだが。
 ハルヒが言うように、確かに俺の視線の向かう先はハルヒの唇の近くだった。正確にはその少し上、上唇の上。
 至近距離で分かるくらいに細く薄っすらと、しかし絶妙のラインを描いて白髭が伸びていた。
 中央から唇に沿ってやや下がるが口の端に達するとそこから力強く跳ね上がって、見事なシンメトリーを誇る風体には威厳すら感じられる。
 非常に偏った例で申し訳ないが、ヴィルヘルム2世の肖像画を思わせる立派な口ひげ。
 髭の正体は言うまでもない。ナプキンの扱いがなってないガサツなこいつのことだからすぐに察しがつく。
 だが、よもや俺がそんなモノを凝視しているとは思わないハルヒは、見つめられていることに関して恥らいまくっている。
 可憐なほどに頬を染めて顔を逸らし、慌しく視線を右往左往させて俺を窺ってくる。視線の先は俺の口許にあるような気がした。
 こいつ、何かとんでもない勘違いをしてやしないか?
 しかし、そんなことなど見向きもせず髭だけを注視し続ける俺。
 ……まことに残念なことに、スクリーンの中にはバカしか居なかった。

「無理させたあたしを恨むのは分かるけど、こういうやり方は陰険よ。言いたいことがあるなら言えばいいじゃない」
『そんなに真剣に見られたら…………思い出すじゃないのよ。…………、今したらパフェの味がする……、のかしら』

 無意識のうちなのか、ハルヒがチロリと唇を湿らせた。
 胸が高鳴るのは見ているこっちばかり、当の俺は耳を貸さず「団長が皇帝に昇格しやがった」などと、くだらない結論に到達し、そうなるともう抑えきれず、

「ぷっ! ――――っ、はははははっ、ハルヒっ! お前っ、っくくく、わははははははっ!」

「えっ、何?」
『えっ、何?』

「ひっ……、髭っ!」

「ヒゲ?」
『ヒゲ?』

 真顔で女子には縁遠いワードを聞き返すハルヒがどこか間抜けで、よけいに俺の腹筋に拍車がかかる。
 おかしいのに似合ってるというミスマッチに賛同を禁じえないが、さすがにこの大爆笑はない。
 司会のあんちゃんも、他の店員も、取り巻きの客も一斉に水を打ったかのように静まり返っていた。
 末代まで祟られる恥だな。
708おおよそタテマエ以上、ホンネ未満18:2008/07/26(土) 03:11:15 ID:bK5hc6Cp
 引きつる頬と小競り合いながら自分にダメ出しをやるものの、画の中の俺は極限状態から開放された直後のためか堰をきったかのように笑いが止まない。
 バカにされてることをたっぷり3秒かけて悟ったハルヒは、強張った顔で指された箇所を慌ててこする。
 そして自分の腕に付いたものを確認して、ようやく事態を飲み込んだ。
 バネで跳ねたようにハルヒの眉が釣り上がり、顔が焼けた鉄の如き熱気を帯びて炯々と鬼の形相に成り変わる。
 それを目の当たりにして俺の顔からあっけなく笑みが消えた一瞬後、どてっぱらにハルヒ渾身のガゼルパンチがめり込んで、プラスチック容器から皿に落としたプリンのように俺は昏倒した。

//////////

 その後の映像にはあまり語られるところがない。単に俺が思い出したくないだけかもしれんがね。
 完全に機嫌を損ねたハルヒは一言も口を開くことなく集合場所まで肩を怒らせたまま踏破し、俺が後ろからヨタつきながら息絶え絶えについていくシーンを見ているだけだった気がする。
 店を出た後、もちろん自分に非があると分かっていた俺は背中に向けて何度も謝った。だが少しも取り合ってもらえず、終盤のほうはただ無言で歩くだけになってしまっていたのさ。
 駅前では朝比奈さんと長門、古泉の三人がすでに待っていた。
 横断歩道を渡るハルヒから怒気をいち早く感じ取ったのは古泉だ。お迎え用に用意していた陽気を消して、注意深くハルヒの所作を観察し始める。それに少し遅れて朝比奈さんも挙げようとした手を引っ込めて、ばつの悪そうに尻込みしてしまった。
二人を受けて長門の顔が5厘増しで引き締まる。
 合流するや否や、成果報告もすっ飛ばして一方的に解散を告げたハルヒは、止まることなく駅の方へ帰っていった。
 朝比奈さんが俺たちにちょこんと頭を下げてそれを追う。一瞬だけ逡巡して、結局長門は二人についていった。
 計ったように女子のことは女子で、男子のことは男子で、という形になる。
「一体、何があったのですか? あそこまで怒らせることができるあなたには感心の念すら抱きますよ」
「……長くなるぞ。やらかしてしまったことは認めるが、あいつが望む結果も出したんだ。しぶとく怒り続ける理由が分からん。プラマイゼロってところが妥当だろう」
 穏やかながらも鋭く問い詰めてくる古泉に対して俺の回答は要領を得ない。分からないものは答えられないのだ。
 どうしてハルヒが不当なまでに激しく怒ったのか、あれからもその理由をずっと考えていたが、結局明確な答えは出せないままだった。
 しかし、今ならなんとなく分かるような気がする。
 客観的に自分を見返すことで数え切れないほどの新しい発見があった。そして、一言毎に俺の脳髄を揺さぶったハルヒのホンネ(仮)。
 無論、重要なのは後者ではない。
 ハルヒの表情と言動を注意深く照らし合わせれば、もっと気づけたことがあるんじゃないか、という意識が芽生えたことが収穫だろう。
 そう総括を終えて、映像を止めようとした。
 たまには古泉も気の利いたものを寄越してくる。あいつに付き合って珍しく有意義な時間が過ごせたもんだと、席を立とうとしたそのときだった。
 コードの長さを見誤って、音を立ててプレイヤーをイヤホンごと床に落としてしまった。
 これくらいで壊れたりはせんだろうと思いつつも、焦って拾い上げる。液晶そのものは無事だったが、なにやら表示がおかしい。
『管理用画面 パスコマンドを入力してください』
 なんだこれは?
 落下の衝撃で勝手に変なモードに切り替わっていた。
 参ったぞ。戻るにはどうすりゃいい?
 ダメ元でドーナツ型の十字ボタンを適当にカチカチとやるってみる。すると、
『認証しました』と一瞬の表示、次いで『ターゲットセレクト』の画面が現れた。
 おいおい、今のでパスが通っちまったのか? 明らかに運の使い方を間違ってるぞ。
 選択できる項目は『涼宮ハルヒ』、『古泉一樹』の二択。今はハルヒの文字が反転している。ハルヒモードってことなんだろう。……古泉モードも選べるってことなのか?
709名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 03:11:38 ID:xnPn7tnT
まだ終わんねーのかよ……
710おおよそタテマエ以上、ホンネ未満19:2008/07/26(土) 03:11:56 ID:bK5hc6Cp
 好奇心は猫を殺す。
 その諺を知ってるにも関わらず、俺は何かに操られるがように、パッドをスクロールさせて『古泉一樹』の文字を選択していた。
 画面では未だ俺と古泉のやりとりが続いている。
『ターゲット 古泉一樹に変更完了しました』
 と表示された画面から目を離して、異様なほどに緩慢な動作でイヤホンを装着する。予想はしていたが、画面の台詞に合わせてやつの声が右耳から流れてきた。

「どうも情報が不足していて分析が困難です。店にでも入って腰を落ち着けて詳細に話してはもらえませんか?」
『これを口実にするつもりはないですけど、たまにはあなたと二人で黄昏の時間を過ごすのも悪くありませんね』

 …………。

「いい豆をそろえてる店がすぐ近くにあるんですよ。アンティークカフェですから落ち着いてくつろげると思います。行きましょうか」
『男同士腹を割って話そうではないですか。食べすぎのせいで随分顔色が優れませんね。僕が優しくケアしてさしあげるとしましょう』

 ――――っ!
 俺は引きちぎるようにイヤホンを剥ぎ取った。
 促す古泉の所作がエスコートするかの如く、そっと俺の腰の辺りに回ったように見えたのは副音声が成した被害妄想だと信じたい。
 まるで悪い夢から覚めた直後のように、寿命を削るかの勢いで心臓が早鐘を打っていた。嫌な汗が額を伝う。
 待てよ、検証不可とかぬかしてたがお前のモードがあるってことは――――、そこで俺は思考を停止させた。それ以上考えてはならないと本能が告げていたからだ。
 いつの間にか映像は終わっていて静寂と暗闇に包まれていることに気がつくと、言いようのない不安が押し寄せてきた。
 知らぬ間に口の中に溜まった唾を飲み込んで今一度、手にした薄い筐体に目を落とす。裏返すと鏡面にまるで悪魔の仔を見るかのような狂気じみた自分の顔が映っていた。
 一つの決心を固めるのと同時に、視聴覚室入り口がノックされる音を聞いて、返事を待たずに戸が開く。
 細身のシルエットが覗いたのを引き金に――――、俺が手にしたプレーヤーを叩き割ったことは言うまでもない。

―完―
711名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 03:12:44 ID:bK5hc6Cp
以上。
最後まで読んでくれた人、ありがとう。
712名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 04:26:51 ID:bKVwGHep
非常に楽しませて貰ったが、最後の最後で台無しだ……
この妙な疲労感どうしてくれるんだorz
713名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 05:12:20 ID:9VoxJ7aB
これはやっぱ、本当に心の声が解っていたわけじゃなくて、聞く人にとって都合の良い様に改変されて再生されるだけだったのかしら。
それとも古泉のも含めて心の声なのか?
714名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 09:38:25 ID:vyifDE4P
8割方正しいけど、残り2割は作った人の趣味が出ているのではないのかな?
715名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 09:52:01 ID:YEzTWCQu
>>710
オチがついてるようである意味オチてないよな、コレw
ハルヒとのこと思いっきり投げっぱなしてるやん。

これは続きを書く必要がある………むしろ、その他のキャラも題材にして書くべきだ。
鶴屋さんとかみくるとかが面白そうではある。
716名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 09:57:38 ID:/5QwxXH4
>>711
乙です。肩すかしが最後の最後にきて、やっぱりというか、常連さんの味が出ているな、と。
ひとつだけ展開に引っかかりを感じたけど、流れ故にあえて無視したのかな。曜日的な意味で。
3勢力がかりなシステムの本音が見えたか。策士はどなたか、気になる展開だった。GJ!
717名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 10:30:42 ID:S2cGBp1/
よーし、ハルヒ×キョン×谷口の3Pものでも書いちゃうぞー
718名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 11:22:45 ID:YEzTWCQu
キョン総受けとはまたニッチな趣味だな。
719名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 11:32:52 ID:rSbrbsCp
面白かったんだが最後のも含めて消化不良気味
続きがあるのかわからんが気になるね
720名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 15:13:22 ID:hvvBqQID
GJ!

宇宙人未来人超能力者が総がかりでやってる事が、純情可憐な乙女のホンネ覗き見とはw
このアホさ加減こそ、まさにハルヒワールド。
721名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 15:31:35 ID:vyifDE4P
純情可憐チルドレンですね
わかります
722名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 16:15:12 ID:rHS4pa4o
>>691
糖尿病になりそうだった^^
>>717
是非とも書いてくれ
723名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 16:31:11 ID:+VeVrIkr
この流れで未だに「GJ!」とか言ってる人見ると悲しくなる
724名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 16:41:19 ID:76RcPDg5
>>723
悲しいときは泣けばいい
他人の感想聞いて悲しくなる理由は解らないが
725名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 17:19:07 ID:hvvBqQID
>>723
俺は>>691-710が面白いと思ったからGJした。
君は自分が面白いと思ったSSにGJすればいいだけじゃないか。
なぜ人の感想で悲しくなるのか、俺はさっぱり理解できない。
726名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 17:48:47 ID:LQ3kBFru
>>710
ハルヒが可愛い過ぎるww
できればちゃんと仲直りする所まで読みたいなー
727名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 19:02:30 ID:jbNcYNJR
この程度で喜べるなんてレベル低い奴ら、やっぱ俺は他とは違うわ。
ってことですね。
>>710GJでした。
728名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 19:20:37 ID:BpW/DK1O
>>726
唇の上の汚れを笑われたくらいで破局するなら最初から縁が無い
普通に仲直りして元通りで、さほど面白くなるとは思えない
729名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 21:33:03 ID:YjDPGKxX
これはイイ三人称視点。ハルヒ可愛いなw
主音声と副音声の同期に感心した。
オチはちょっとしたホラーですよ、って感じだけど、古泉の副音声は友情と言えなくも無いレベルでアリだな。
GJでした。
730名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 22:10:44 ID:mkKIdEB/
ジョブ(笑)
731名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 22:34:05 ID:fjfrYbV+
久しぶりにSS読んででニヤニヤしてしまったw
GJ!
732名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 02:53:42 ID:Wx6gMyBl
おお、こないだのアスタの人に続いてまたまた古参の書き手さんが来てるじゃないか。
明日じっくり読ませていただきます。
733名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 03:05:52 ID:fHOtdI3T
日本語が変なとこが多いが、これはあえてキョンらしくしてるのかな
734名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 09:21:27 ID:gBW6zhOs
明日他の人がまだブログにうpしないのはあの荒しのせいか?
735名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 15:44:07 ID:mR3P5GT6
自演多すぎて時々萎える
736名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 17:18:04 ID:26uSFe20
作品以外の書き込みを読まなけりゃいいんじゃね?
737名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 00:04:22 ID:62HRKds8
ハルヒは自分が話している事と、まったく違う事を思考する超人です
738名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 00:59:24 ID:1s2RKB6f
タイトル:【涼宮ハルヒ】谷川流 the 62章【学校を出よう!】
【糞スレランク:SS】
犯行予告?:4/737 (0.54%)
直接的な誹謗中傷:29/737 (3.93%)
間接的な誹謗中傷:49/737 (6.65%)
卑猥な表現:258/737 (35.01%)
差別的表現:29/737 (3.93%)
無駄な改行:5/737 (0.68%)
巨大なAAなど:18/737 (2.44%)
同一文章の反復:1/737 (0.14%)
by 糞スレチェッカー Ver1.18 http://kabu.tm.land.to/kuso/kuso.cgi?ver=118

SSランクキタ━━━━━━(★∀★)━━━━━━!!!!
739名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 01:07:11 ID:ivx/+WJa
>>738
卑猥な表現35%てww
740名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 01:52:59 ID:P3CahSh4
どう見ても糞スレです、本当にありがとうございました。
741名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 01:54:34 ID:RWEXJttm
むしろエロパロスレでそれは低すぎるだろwww
742名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 02:32:01 ID:V6jMYf+H
SSか、そりゃヒドい……と思ってチェッカーのサイト覗いてみたらランクS9とかあって噴いた。
なんだ、ココってまだまだ甘々なんじゃん。
743名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 06:05:02 ID:rWlzoM/B
ちなみに一般的なエロパロスレだと

【糞スレランク:A+】
犯行予告?:2/262 (0.76%)
直接的な誹謗中傷:3/262 (1.15%)
間接的な誹謗中傷:9/262 (3.44%)
卑猥な表現:178/262 (67.94%)
差別的表現:37/262 (14.12%)
無駄な改行:3/262 (1.15%)
巨大なAAなど:7/262 (2.67%)
同一文章の反復:1/262 (0.38%)
by 糞スレチェッカー Ver1.18 http://kabu.tm.land.to/kuso/kuso.cgi?ver=118
744名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 14:26:18 ID:QAOw/nka
>>737
明らかにエロ分が足りないですね
745名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 21:57:25 ID:WsnlKLjW
てかエロパロなんだから卑猥なの当然じゃね?
746名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 23:10:01 ID:M15/kO1a
以上です。
747名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 00:01:42 ID:CCoIRj8i
お前は頭良いってのと同じくらいつまらん奴と言われてないか?冷静すぎるぞw
748名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 00:36:54 ID:tMYK5a0W
誰に言ってんの?
749名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 01:01:00 ID:SGMcVnPG
卑猥なレスが少ないエロパロスレなんて
750名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 01:14:17 ID:zSLdTo9o
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
    /  `´  \
     ('A`)     みんなで語尾に卑猥な言葉を付ければいいんじゃね?
     ノヽノヽ
       くく
751名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 09:57:49 ID:d9BVHfAw
「ふぇ、ひ、卑猥……ですかぁ?」
 ハルヒの相変わらず脊髄で思い立ったようなアホな提案に朝比奈さんが目を丸くする。
「なるほど、それは大変面白い案かと」
「でしょ? と言う訳でみんな今から語尾に卑猥な言葉を付けて話すのよ!
 一番卑猥な単語を付けた人が優勝よ、いいわね」
 全く以て良くないが、どうせそう言ったところで止まってくれやしないのだろうよ、この団長様は。
 だから言わん。別に朝比奈さんや長門の口から卑猥な言葉を聞いてみたいからと言う訳では決して無い。
 まあ確かに先ほどから長門が興味津々に本から視線を上げてハルヒや俺を見つめてくるのは確かに気にはなるが。

「それじゃ1、2の3で一斉にいくわよ。1、2の3っ!」
 ハルヒの無茶振りな号令に合わせて各々が口を開いた。

「……問題ない、キョン」
「えええっと、お茶が入りましたよ、キョン君」
「こらバカキョン! たまには能動的に動きなさいよキョン!」
「どうぞ僕の事はイツキと呼んで下さい、キョン」

「……で、俺のあだ名はいつから猥褻罪にあたるようなったんだ? ハルヒ」
 俺は頭を抱えながら溜息をついた。
752名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 13:16:47 ID:exWVCJ0C
卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥
卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥
卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥卑猥

これでいいのか?
753名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 16:03:40 ID:Exsu+5ON
キョンの語尾が『ハルヒ』という事実にフル勃起。このキョンはエロい。
754名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 17:36:49 ID:PqLlRWVi
エロパロ板なのにエロくないの多いよな
755名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 20:10:06 ID:qz4m8y/Q
長門も普通にキョンって言ったな
756名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 22:12:39 ID:zqlC7nNn
原作では代名詞以外に自分を指す言葉を発したことはない、とはキョンの弁だが、アニメ公式サイトだと普通に「キョン」を使ってるんだよな、長門。
谷川公認の公式設定なのかは分からないけど、よほどのことがなければ指名時にフルネーム使うキャラが、唐突に渾名使うのも不自然な印象はあるんだよな。
まあ、「分裂」でかつて多くのSS作者がネタにした「親しい相手のみキョンは名前呼びする」に反逆するキャラが誕生したわけだが。
757小ネタ 特に落ちはない:2008/07/29(火) 23:30:52 ID:xn2P4w1S
前はこんな感じ
ttp://be-sp.com/eroparo/sslibrary/h/haruhi/haruhi1430-2.html

「イタタ……、ハルヒもう勘弁してくれ」
「ホントに痛かったみたいね、キョンお尻は大丈夫?」
「無理やりだなんて酷いじゃないか」
「そう、酷いわね……、でも自業自得よ」
「おい自業自得って一体なんだよ」
「いいことキョン、あんたはその酷い事をあたしに無理やりしようとしてたのよ、そうでしょ」
「そっそれは……その……」
「それを今度は自分がされたからって急に被害者面するってどうなの、それってあたしは酷い目にあってもいいけど自分がそうなるのはいやだってこと?」
「いや……その……」
「あたしの体はおもちゃじゃないのよ、あたしはキョンの事が好きだから、キョンに喜んで欲しいから……それだからキョンはあたしの体を好きにしていいの、でも女の子の体はデリケートなんだからもっと大事に扱って頂戴」
「ハルヒすまん、俺が悪かった」
「大体キョンは勝手なのよ、初めての時だって……あのとき凄く痛かったけど…キョンに喜んで欲しかったらから我慢してたの、そしたらキョンはそのまま続けて五回もして……」
「あ、いや……それは……俺も初めてで……それにやっとハルヒと一つになれたのがとても嬉しくてつい……その…なんだ…すまん」
「まぁいいわ、反省してるみたいだし許してあげる、ねぇキョン、したい事があるんならちゃんとそういって頂戴、どうしてもキョンがしたいんだったらしていいから。だから無理やりとかそういうのは絶対に駄目よ」
「すまんハルヒ、俺が悪かった反省してる。許してくれ」
「今までだってそうだったでしょ、キョンがして欲しいっていうからお口でだってしたし、ごっくんって呑んであげたでしょ、着て欲しいっていうから体操着だってきたし、わざわざアンミラだってネットで取り寄せたじゃない」
「そうだったな、ありがとハルヒ……」
「……それでキョンはまだ……あたしとお尻でしてみたいの?」
「そ、それは……そのなんだ……」
「折角開発セットがあるんだし、キョンがどうしてもっていうんなら…ちょっと試すくらいならいいわよ……、それにキョンの童貞も処女も両方あたしが奪っちゃた訳だし……ごめんね」
「……そ、そうなのか……ホ、ホントにいいのか」
「キョンがしたいのならいいよ、でもあたしお尻でなんて初めてなんだら優しくして頂戴、でないと罰ゲームよ」
「わ、わかった。ありがとハルヒ、…まずはこのクリームだな……」
「な、なんだか変な感じね……ひゃっ!」
「大丈夫、痛いのは始めだけだって、ほらハルヒ。力を抜いて…それにしてこれでハルヒの処女は三つとも俺が頂いちゃったな、ハルヒありがとう」
「ばかっ!」

758名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 02:20:07 ID:fgvR7ChP
GJ!

ぐらい言おうよ、みんな。
759名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 02:51:02 ID:dVHS/p7X
これは
自分の目の前で車に撥ねられ完膚無きまでに死んでしまったキョンの姿に精神を崩壊させてしまったハルヒが見ている夢だと思う。
760名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 04:53:02 ID:NCMWuQRI
GJ!
761名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 04:53:17 ID:Crc9Jm+C
あーはいはい、じーじぇいじーじぇい


!!!!

ふう
762名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 10:55:05 ID:K1LXhDff
>>756
意味不明
763名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 13:29:31 ID:tev/R6tt
>>756
パラノイアの文章
764名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 14:37:16 ID:LO1m4WY1
>>757
わっふるわっふる
765名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 18:33:20 ID:xAq2MPlv
寒い
766名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 00:14:48 ID:LQwVbDxP
>>761
「。」ついてると、落ち着いた感じになるよね。
たとえば、
α:「ふぅ・・・。」
β:「ふぅ・・・」
「。」がついているかいないかで、だいぶちがう。
767名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 00:19:40 ID:2MZrKnl6
-ここまで俺の自演-
768名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 02:59:10 ID:/9YJTiud
>>766
確かに。
769名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 14:15:18 ID:aP8yE3DR
>>767
確かに
770名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 15:39:26 ID:jgzkLKQH
>>768
確かに・・・
771名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 17:10:43 ID:ftP43nCD
数あるハルヒスレで、ここが最初に過疎になった。(最初から過疎なのは除く)

一番復活が遅いのも、ここだと予想される
772名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 17:47:37 ID:yZDStTCP
超人気作品でも賞味期限は一年が限度か……。覚えておこう。
773名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 17:50:43 ID:J1NKboNA
下巻が出たら盛り上がるのかな
774名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 18:21:35 ID:uW0Z91es
いつ出るんだか
775名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 18:24:22 ID:xDcR6inC
過疎った理由は知恵遅れの馬鹿がいたから。
776名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 22:30:05 ID:b2uAh3mq
ながるんのことか?
777名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 00:21:23 ID:NhIfA3BE
ながるんのことかーーーーー!!!
778名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 00:29:02 ID:O8Dlhkj+
>>774
まあEGコンバットファイナル発売から10年後くらいまでには出して欲しいところだな。
779名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 00:48:15 ID:PXU2cYke
過疎った理由は知恵遅れの馬鹿がいたから。
書き手は神なはず。
780名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 01:35:37 ID:kYNNNqqL
>>756
>>>まあ、「分裂」でかつて多くのSS作者がネタにした「親しい相手のみキョンは名前呼びする」に反逆するキャラが誕生したわけだが。

別に反逆してない
周囲は誤解したが、キョンの主観では佐々木は親しい存在じゃないから・・・
756はSSの読みすぎで頭が狂っている。原作読み直すべき
781名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 02:12:59 ID:ziZw4jkF
どうせ狂人ばかり
782名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 03:13:47 ID:FueRRBcG
SSの読みすぎで頭が狂っている。原作読み直すべき
783名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 04:29:20 ID:ztcq0Xck
と言うか………

キョンが下の名前で呼ぶ相手は常に親しい相手だが、親しい相手を常に下の名前で呼ぶわけでは無いはずですが…………
784名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 06:10:57 ID:YGNCDlrm
>>783
別に反逆してない
周囲は誤解したが、キョンの主観では佐々木は親しい存在じゃないから・・・
785名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 06:11:35 ID:O8Dlhkj+
つーか「親しい相手は名前呼び」って……


別に法則でもなんでもなくね?


というかふと思ったが、
「谷口」や「国木田」や「長門」や「朝比奈さん」とキョンは、めっちゃ親しくね? 俺原作を誤読してる?
786名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 07:44:38 ID:iNSbpJI+
つーか下の名前で呼ばれてるのハルヒくらいしかいねーじゃん。
787名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 08:34:58 ID:ztcq0Xck
ハルヒだけが特別親しいということ、か
788名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 11:34:10 ID:lz9bM8EE
下の名前呼びはキョンにとってハルヒが特別ということ
別に深い意味は無い
789名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 12:44:07 ID:jRXINS4j
何でそういう発想になるのか俺にはよく分からない。
> 「谷口」や「国木田」や「長門」や「朝比奈さん」とキョンは、めっちゃ親しくね? 俺原作を誤読してる?
この通りだと思うんだが。
いま騒いでるのはキョンハル以外認めたくがないために根拠のない自論をあげてるように見えてしまう。
790名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 15:20:34 ID:JhA226E7
親しいレベルが違うということだろ。
791名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 15:36:25 ID:/oxK69Hi
谷川公認の公式設定なのかは分からないけど、よほどのことがなければ指名時にフルネーム使うキャラが、唐突に渾名使うのも不自然な印象はあるんだよな。
まあ、「分裂」でかつて多くのSS作者がネタにした「親しい相手のみキョンは名前呼びする」に反逆するキャラが誕生したわけだが。
792名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 17:35:39 ID:p4tLbeyy
驚愕よりも先に、ハルヒ劇場act.3の西部劇編を先に書いて欲しい
793名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 18:21:39 ID:p4tLbeyy
谷川さんにとって細かい設定や伏線はどうでもいいんですよ。こっちのほうが面白いような気がする、で充分なわけです。そこには合理的な解決も、綿密な構成も、手がかりになるような伏線もありません。
かなり刹那的に物語を作っていると言えるでしょう。オチなんか考えていないのです。ひょっとしたら未完で終わるかもしれませんね。
794名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 19:21:04 ID:o8qGMarQ
ここで谷川流死亡説を提唱してみる
795名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 19:30:19 ID:ht8BrWGJ
可能性高そうな予想だな。30%くらいか
まあ、今年それを言い出さなくても来年あたりにそれを言い出すのは確実だけどな
796名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 21:40:23 ID:B2jQ7YFZ
一人だけ下の名前で呼ぶというのは、その人を特別好きであることを示すフラグだろ常考
797名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 22:06:32 ID:yvuKKQM3
憂鬱はちゃんとそういう話になってたのに気がつけばハルヒ放置路線に
なってしまったのはなぜだ?
短編用の設定を無理矢理引き伸ばしたのが悪いのか
それともどこかで進む道を間違えたのか
798名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 22:10:18 ID:WC42r3fq
ハルヒ放置路線ってなんだ?
799名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 22:14:40 ID:JhA226E7
みんなハルヒのために死ぬほど頑張ってるのにな。
800名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 22:43:22 ID:NhIfA3BE
むしろその所為で肝心のハルヒ本人を放置してる結果に
801名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 23:35:50 ID:o8qGMarQ
分裂なんかハルヒよりも古泉の方が
多く喋ってるんじゃないか、ってくらいハルヒ脇役化してね?
802名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 00:15:20 ID:u/r3m987
>>796
まあそれはそうだな。

それを思えばキョンと「ハルヒ以外」がエロパロ的肉体関係を持つに至ったSSの場合
やはり「長門→有希」、「朝比奈さん→みくる(さん?)」と
呼称を変えた方が良いのかもしれない。

……佐々木はどうすれバインダー。
803名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 00:17:21 ID:PfFQJlZv
>>801
ハルヒはもともとヒロイン兼脇役だろ
804名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 00:18:45 ID:u/r3m987
>>801
喋る量に関して言えば最初からそうじゃね?
805名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 01:20:58 ID:a7unvrkh
ハルヒに出番が少ないのは起承転結の起と結には必要だけど
承と転に関しては真実を知られちゃいけない関係上
関わらせてもらえないか仕方ないよ
806名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 01:27:49 ID:gbcqAKcV
>>805
まぁそうだよな。いかにハルヒに知られずにハルヒの希望通りの展開に持っていけるかみたいなところあるしね。
807名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 03:11:07 ID:rBjLAwM7
>>805
ハルヒって承と転では完全に邪魔者扱いされてるよなw
808名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 05:59:16 ID:lHhvl3vV
話の展開上出せないというだけで、邪魔者というわけではない。
809名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 10:05:32 ID:Apb5EAgK
>>808
俺がハルヒ=邪魔者扱いのカマドウマ(改)を書いてやろうか?
810名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 10:11:12 ID:prMwUksh
以上。
最後まで読んでくれた人、ありがとう。
811名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 12:05:15 ID:hnbf4jLB
>>810
つまらん。量が多いくせに中身はスカスカ。クズだ最低だ。時間を返せと言いたい。
809まで独占しておいてこの体たらく。両親に謝れ。お前は創作活動に向いていない。
書き込みをせずここを見ている人間にも謝れ。
812名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 12:06:53 ID:Ft/K4cSG
○5てん
813名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 12:49:29 ID:lHhvl3vV
書いたところで時間の無駄だと思うから辞めとけば?
嫌がらせが目的でSS書くとか、本末転倒だしバカバカしいとしか言い様がない。
814名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 15:10:55 ID:a7unvrkh
カマドウマで邪魔者のハルヒって想像してみた
ハルヒも一緒に閉鎖空間モドキに取り込まれる
ハルヒにばれない様に咄嗟に胸に強く抱きしめるキョン
最初は暴れて罵声を上げてたハルヒだがやがて力が抜けてボーっとしちゃう
それ見た怒れる長門、カマドウマ瞬殺、赤球持った古泉呆然
無事通常空間に戻れたが抱き合ったまま動かない二人
ドアをぶち破る勢いですたすた出て行く長門
自分の存在意義に疑問を感じつつ難しい顔して出て行く古泉
二人をチラチラ見ながら顔を真っ赤にして出て行く朝比奈さん
後に残される気絶した部長氏と抱き合った二人

うん、邪魔者は部長氏ですね





815名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 16:11:01 ID:Apb5EAgK
それも面白いけど、邪魔者になるのはこんな展開です

原作では後即解散を宣言したハルヒだが
SSでは急遽遊園地行きを決意する。
何故か金余りらしく、食事だの遊園地だの全部ハルヒが奢ってくれることになった。
早くしないと部長の容体が悪化するかも…という祈念と共に遊園地に付き合う団員達。せっかくの遊園地なのに部長が心配で全然楽しめない。
夜遅くなってから、やっと部長を助ける。キョンが寝たのは夜中の二時。
部長の他にも助けるべき人いるのに、次の日も団員を連れ出すハルヒ。
夜、団活が終わって皆で残りの人を助けに行こうとしたら、ハルヒにばったり会い、そのまま霊感スポットに直行でその日は徹夜。
連日団員を連れ出すハルヒと、学校と団活の合間を縫って人を助ける団員達。
ほぼ徹夜の日々が何日も続く。
816名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 17:06:22 ID:MFn3plt+
オチは全員助け出したご褒美として、Sドリンクを一本だけもらえるのですね
キョンがようやく何日か分の睡眠不足を解消しようとしたところで、ハルヒから電話一本で呼び出され、
俺は眠いんだ寝かせてくれ、とキョンが文句を垂れようとしたところでハルヒが一言、

「Sドリンクで疲労を0にすれば大丈夫よ」
817名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 18:46:12 ID:62Y0v94I
>>815
2人ぐらい手遅れになりそうだな
818名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 18:58:11 ID:PJSD4aJ3
部長氏も大分手遅れだった感があるんだが
てか、あれ放置してたらどうなってたんだろうね
819名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 19:02:32 ID:FlWezhlj
カマドウマが登校してた
820名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 19:21:34 ID:I+TBxmmH
普通に考えたら黄緑さんが解決するだろ
821名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 22:12:30 ID:LFxm/Feq
>>816
ネタが微妙に懐かしいな。あれ、団長には不向きなチマチマとしたゲームだけど。仮にプレイさせたら、クリアまでに死屍累々だろうな。
822名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 22:52:42 ID:OdmYcT2O
なんだ保管庫の作品がみれんぞ
823名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 22:54:54 ID:N1TLaxhz
>>819
ワラタwww
824名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 00:01:49 ID:pYEjWHrV
>>811
嘘だよ>>810が言ってる事は。
真に受けるなって。
825名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 22:07:13 ID:RQ5OmeGs
>>796
まともに話を初めて半月の女子を臆面なく下の名前呼びだけを見ると、キョンは谷口やうる星のあたると同類の、美人を積極的に口説きまくるプレイボールにも見える

しかし、憂鬱でのその他の記述を読み、キョンの積極性の無さ、ハルヒと二人で朝倉転校の謎を探した時のモノローグその他から考えて
積極的に女子を口説く性格でなく、彼女いない歴=年齢の何となく恋人関係というものに幻想持っている雰囲気がある奥手な男子と判断できる
826名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 07:18:45 ID:unkm43ly
試合開始ってわけか
827名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 15:29:13 ID:cAseKemY
           __
        , ‐' ´   ``‐、             / ̄:三}
.     /,. -─‐- 、.   ヽ        /   ,.=j
 _,.:_'______ヽ、 .!       ./   _,ノ
  `‐、{ へ  '゙⌒ `!~ヽ. !     /{.  /
    `! し゚  ( ゚j `v‐冫   , '::::::::ヽ、/
.    {.l   '⌒      ゙ 6',!   / :::::::::::::::/ __
.     〈  < ´ ̄,フ  .ノー'_ , ‐'´::::::::::::::;/ (_ノ)‐-、
.      ヽ.、 ` ‐", ‐´‐:ラ ':::::::::::::::: ;∠.   ヽ_}  ゙ヽ
        ,.r` "´  /:::::::::::::::::::ィ´  `ゝ  !、  /
     /       / :::::::::::::::: ; '´   /´\ /   r'\
.     i      ! ::::::::::::::/ 墨 | .!::::::::/ヽ、.._!ヽ. ヽ、
     {      {:::::::::::;:イ /   ‖i:::::::/:::::::::::::/  \
.      ヽ       ヽ,.ァ‐'´ /ヽ 二 ,/`ヽ、::::::::: /    ヽ
      ヽ、 ,. ‐'"   .ノ ,〈    >   `'‐- '
          >   _,. ‐'´ / /    `)
       ,ゝ       _.⊥.-r┬:/
       ヽ_,. -‐i"!´「L.=!┘     ヽ
       <      / /       |
       /    、i / __     ./
828名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 21:47:58 ID:jOvrTBSo
>>827
チートバットでホームラン打っても、モテるようにはならんと思うぞ、谷口。
829名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 06:42:05 ID:gcOCheRA
>>828
俺のバットは毎晩ホームランだけどな!
830名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 07:57:01 ID:LQ3U7Z1+
>>829寒い
831名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 01:30:39 ID:M37SKp2c
保守
832名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 01:32:35 ID:fqKm9bEW
保守
833名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:12:56 ID:xpkoOntZ
結局24h書き込みなかったのか 嫁宣言しとけば良かった
ということで丸一日レスがなければ喜緑さんは俺の嫁
834名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:20:21 ID:Pb4evfDI
>>833
マニアックだな
835名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:22:54 ID:R9k9oEIV
みんな一応覗いてはいると思うから阻止は確実だな

ってかマニアックなのか?
一時期ワカメ熱が凄いときがあった気がするけど
836名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:24:46 ID:KzfnWWR4
なんとなく喜緑さんは恐妻家なような気がする
837名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:28:27 ID:8kyhTnM9
まあこのスレでは、まゆ毛→ドM&わかめ→ドSは定説みたいなものだし
838名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:31:28 ID:Pb4evfDI
>>836
恐"妻"家?

レズなのかよw
839名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:50:33 ID:4PhIQ22h
2時間レスなかったら朝倉は喜緑さんの嫁
840名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 02:56:27 ID:LU704s3R
規制やらなんやらで皆静かなのかなw
841名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 06:05:07 ID:ewIsJ0bq
くに へ かえるんだな
おまえたち へんたい しんし たちにも いなかが あるだろう・・・
842名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 08:24:50 ID:WtXIuhYd
>>829がつまらんこと書き込んだから流れが止まったと思った
843名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 10:29:38 ID:HXNReZfv
>>842
それはあるな、暫く脱力してスレ覗くの嫌だった
844名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 14:49:38 ID:Ceb2SgEv
投下します
「三人目の女神」続編です
845名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 14:52:18 ID:Ceb2SgEv
ねえ

ヒトとしては「親」っていう共通項をもっているのに、その「親」から与えられた「仕事」がどうしようもなく相容れないね

わたしはほとんど本なんか読まなかったからわかんないけど、あなたの読んだ物語の中にはそういうお話もあったのかな

もしそのお話の彼らが和解し合えたのなら、わたしたちに少しの希望も生まれるのに


閉鎖空間から現実に帰った俺は、へとへとになって自宅へと転がり込んだ。
状況が大きく動いたこと自体は喜ばしいが、あまりにも大きすぎだ。もう少し小出しにしてほしい。
シャワーのあとソファーになだれ込んだが、それを見計らうがごとくケータイが鳴る。
俺はミニテーブル上のそれをつかみ上げ、相手を確認することもなく受けた。ある程度の予想はできる。

「もしもし」
「ご無事ですか?」
第一声がそれか、古泉。
「まるで何があったかわかってるような口ぶりだな」
なんとなく皮肉っぽい口調にしてみる。
「詳細はわかりませんが、あなたの存在がこの世界から数十秒程度『消失』していたことは観測できました」
そっか、そんな短時間なんだ、とか思いつつ俺はコトの説明をした。

俺が全てを語り終えると、古泉はフーッと考えるような音を出して、言った。
「僕は御役ごめん、といったところですかね」
「まじめにやれ」
しかしまあ同じことを考えるもんだな。
「冗談です」
ニヤリと笑ったのがありありと分かる声。
「しかし、あながち悪ふざけとも言い切れませんよ。あなたが閉鎖空間に入れるようになり、その収拾を朝倉涼子がつける……」
もっともらしく間を空ける。
「僕の入り込む余地などありませんね」
その通り、と言いたいところだ。しかし人間は自虐はよくても他人から同じことを言われるとムカつく、とよくいうので、言わないことにした。
「朝倉を信用してもいいと思うか」
途端に電話の向こうの空気が冷える。
「油断はできませんが、そのままにしておいて良いと思われます」
信用できるかはわからない、ってことか。
「もしあなたに危害を加えることが目的だったとしたら、閉鎖空間ほどおあつらえ向きの場所はありませんからね」
古泉が「危害を加える」と言ったとこで俺の脳裏に寒気が走った。
「そういやあいつは、佐々木の閉鎖空間は『常時展開型』とか言っていたが、ハルヒとは違うものなのか?」
ふむ、と置いて。
「佐々木さんについては専門外なので迂闊なことは言えませんが、涼宮さんについていえば、閉鎖空間は彼女の精神が不安定になると生み出されていました」
天井のシミが人の形に見える。
「それは思うに、涼宮さんの隙を見計らって『力』がそのアイデンティティを発揮しようとしていたのではないでしょうか?そして佐々木さんは」
俺の下の階にいるんだよな、コイツ。
「それほど精神力が強くないというか、自分に自信がないというか、隙が大きいのでは」
なるほど、それなら説明がつくな。
「お前にしちゃ分かりやすかった。感謝しといてやる、古泉」
「ありがとうございます。お役に立てて、何よりです」
846名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 14:55:07 ID:Ceb2SgEv
それじゃな、と電話を切ろうとするとコイツにしては珍しい慌てた声で止められた。
「なんかあんのか」
一転して気持ち悪いほどに落ち着いた声は、こう告げた。
「この件――特に朝倉涼子の件は、長門さんには伝えない方がよいかと思われます」
どうして、と言おうとして、俺は朝倉の言葉を思い出した。
(だけどそれは、あくまでも主流派の話……)
その間を縫って、古泉が続ける。
「察するに、長門さんの派閥と朝倉涼子の派閥は敵対関係にあります。そして仮にも朝倉涼子の派閥が我々寄りである以上、『アサシン』の存在を向こうに知らせるのは得策ではないかと」
長門を「向こう」と言い切った古泉に若干の失望を感じたが、全勢力にとってこの件は超A級の一大事で余裕がないんだろう。俺の危機意識が甘すぎるのだろうか。
よって、今回は古泉を不問に付すことに決める。我ながら偉そうだ。
「だが、もう俺はお前に喋っちまった。長門や情報統合思念体ならお前の頭の中くらい簡単に読みとっちまうんじゃないのか?」
「それがですね、恐らく『力』は奇妙な情報操作を行っていて、この『ゲーム』の内容は、あなたの体験したことはあなた以外にはわからないようにしてあるみたいなのですよ」
で?
「そしてあなたの口から出たそのことに関する情報も、一瞬の『音声』としてしか情報になりえない――つまり、直接話を聞いた人でなければ知りえない。『情報』の原子レベルでは解読できない」
前言撤回。わかりづらくなってきたぞ。
「簡単にいえば、あなたが、僕が、この話を誰かに聞かせない限り、文字で伝えない限り、あなたの体験、今回でいえば朝倉涼子の存在を知っているのはあなたと僕の二人だけ、ということです」
まあわかったことにしておこう――って。
「随分と重い役割与えちまったな」
「いえいえ、共に問題を解決していく同志ですからね。ありがたいくらいですよ」
最後に、今更な質問をする。
「お前は、俺の味方か?」
やれやれ、と言わんばかりの間が空いて。
「今更ですね」

通話を終えたケータイを握ったまま横たわっていると、すぐにまたバイブの振動。何も考えずに出る。
「もしもし」
「わたし」
一気に肩口が冷えたのは、たぶんノースリーブを着ていたからだけではない。
「午後11時23分52秒から、あなたの存在がこの空間から35秒間消失した。安否の確認」
それにしては随分と冷たい声だな。高一の春を思い出すぜ。
「ああ、俺は大丈夫だ。心配してくれてありがとな。」
「そう」
そのまま沈黙。まるで俺からの説明を待っているような。聞き出さなきゃいけない、でもそんな仕事したくない、という葛藤のような。
「……」
「……」
二行分の三点リーダの後、俺は根負けして口を開いた。
「なんだかわからんが佐々木の閉鎖空間に行っちまったんだ。でも何事もなく出てこれたから安心してくれ」
嘘じゃない。間の説明をしていないだけだ。
再び三点リーダを置こうかと用意した頃に、長門は短く答えた。
「そう」
心配して電話してくれたなら、怪我の治った犯人を尋問するかのような雰囲気をどっかにやってくれ。
その後も微妙なやり取りをギクシャクとして電話は切れた。ああ、いっそ懐かしいね。
847名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 14:56:47 ID:Ceb2SgEv
それなりにヘビィな電話で疲れ切ったボディに嫌というほど追い討ちを喰らった俺は寝床へ。ケータイでアラームを設定していると性懲りもなく電話が来た。
今度は相手を確認する。心の準備の大切さはさっき学んだばかりだ。
そして露骨に眉をしかめてみせる。誰が見ているわけでもないというのに。
「なんか用か、ハルヒ」
ワザとぶっきらぼうに、つうか疲労困憊だから地かもしれんがとにかく出ると、あからさまにムッとした空気を身に――いや声に纏って、団長様が降臨された。
「久しぶりの相手にそれはないんじゃない?SOS団の団長がただのヒラ団員兼雑用係且つ足手まとい心得キョンに電話してあげたんだから、あんたはテレビ電話で土下座した姿をあたしに見せるくらいはしなさいよ」
どんだけ俺の立場は落ちてんだ。
いったい何を言い出すのかと身構えていると、電話口から二度三度咳ばらいが聞こえた後妙に煮え切らない声が届けられた。
「最近、どうしてんのかなぁ、って思って。」
「は?」
思わず、思った通りの最短疑問詞が噴き出す。
「だって!あんた全然あたしに報告してこないじゃない!渋谷のセンター街に幽霊がいるとか、原宿には山姥がいるとか、新宿にはデイダラボッチがいるとか、なんかないのっ?!」
最後のひとつには流石の俺も震えたね。原宿のヤマンバは昔はいたんだろうな。今でもごく稀に見るけど。
「あんた、ちゃんと不思議探索やってるんでしょうね?いくら一人だからって、大事な団活を忘れてたら承知しないわよっ?!」
「スマン、完全に忘れてた」
そんなことしなくても残念ながら俺の周囲は正常なものが異常であるかのように異常で囲まれている。できることならお前と代わってやりたい。可及的速やかに。
すると電話口からツバが飛んできそうなほどの勢いでハルヒがまくしたてた。鼓膜が景気よく破裂する。いや、嘘だけど。
「このバカキョンっ!!あんたいっぺん女性専用車両に飛び込んでフクロにされてきなさいっ!!だいたいあんたはSOS団としての自覚が足んないのよっ!!」
「ヒトを性犯罪者にするな」
さっきから小さい「つ」とイクスクラメーションマークを大量生産してやがるなとかどうでもいいことを考えていると、うっかりハルヒの言葉を聞き落とした。
「スマン、なんだって?もっかい言ってくれないか?」
電話口からプルプルという擬態語がまるで聞こえてきそうな時間の経過の後、然るべくしてハルヒは怒鳴り散らした。なんだか早口で。
「だから、あんたは毎週日曜日、不思議探索の結果をあたしに定時連絡しなさいっ!!」
「お前、一人暮らし学生のケータイ料金がいかに生死を左右するかわかってんのか?」
俺の反論が功を奏したか、ハルヒはむぅ、と急に黙り込んだ後、むすくれたように言った。
「それじゃ百万光年譲ってあたしが電話してあげるから、あんたはそれなりの手柄を立てなさい。ハチ公の動く瞬間くらいは欲しいところね。飼い主が帰ってきた瞬間ならもっといいけど」
都庁がテトリスのブロックよろしく横向きに浮いてた瞬間なら見たんだがな。
なんであたしが……とかブツブツ言うハルヒをなだめすかしていると、いきなりテンションの上がった声が電話口から発射され俺の鼓膜をブチ破った。嘘だって。
「そういえばあんた、夏休みの最初の方はそこに残るの?それとも帰ってくるの?」
ふむ、夏休みといえばそんな話題も上がるだろうな。つーか今まで何も考えてなかった俺がおかしいか。
「おそらくは残るだろうな。なんの予定も考えてなかったし、そっちに戻るとしても八月の後半になると思う」
するとハルヒはふーん? 、となにか企む様な顔を絶対していそうに語尾を上げた。ヤな予感。
「そ。わかったわ」
「お前、なんか企んでないか?」
こう言われて「ハイソウデス」なんて答えるヤツは早々に脳を改造した方がいいと思う。いや、絶対じゃないけど。
無論ハルヒはなんでもないと言った。そう答えるのが筋であり、この後になんかやらかすのも筋であろう。
一体どんな悪事をやらかすのだろうかと逡巡していると、やけに落ち着いた声が耳に入ってきた。精神の浮き沈みが激しいな、今日。
「ホントはもっと言いたいことあるんだけど……」
あるんだけど?
「また今度にするわ!あんた疲れてそうだし」
コイツにヒトを気遣う心が生まれたのは死ぬほど嬉しいがしかし、気にならせといて話を切るのは気遣いが足りないと言わざるをえない。
しかしまあコイツの言うとおり完全にへたっていた俺は追及するのをやめといた。
珍重されるべきお心遣いだったし。
848名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 14:59:10 ID:Ceb2SgEv
「それじゃ、ちゃんと学校行くのよ?」
「はいはい」
「不思議探索も全力でやりなさいよ?」
「へいへい」
「たまにはそっちから電話しなさいよ?こっちだってケータイのお金バカになんないんだから」
「ほいほい」
母親のようなことを言うな。
「……なんかムカつく返事だわね」
うん、俺も悪ふざけが過ぎたと思う。
「ハルヒ」
「なによ?」
照れるね。
「電話、ありがとな」
「バッカ、あたしは当然のことをしたまでよ」
さっきと言ってること違わないか?、とは思ったが口にはしない。
団長様がヒラに電話するのは、特例中の特例とか言ってなかったか?まあどうでもいいけど。
「団員とのコミュニケーションは必須だからね!」
あいつが指をさす姿が目に浮かぶ。

「あんたはSOS団の一員なんだから!!」
その言葉によくわからない安堵を覚えたのは、また別の話。


どこか遠くで壁に銃弾が打ち込まれている。
(……、……)
一枚づつ壁はぶち抜かれ、段々と俺の傍に音は迫ってくる。
(……、……)
はて、俺はいったいなんて名前だっただろうか。この破裂音は俺の名とよく似ている気がした。だが、しばらく呼ばれていなかった名前。
(…ョン、キョン)
残り一枚隔てた意識の壁の向こうで、装填される弾丸が変わった。認めちゃいない、でも、もう逃げられない、俺のあだ名。
849名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:01:44 ID:Ceb2SgEv
「キョン、いつまでキミは寝てるつもりなんだい?」
自分でも情けなくなるようなうめき声が口から洩れたことだろう。今聞こえたカバの欠伸みたいな音がそれだ。
寝汗にまみれた最悪の寝起きは、時間を確認することでぶっ飛んだ。もうすでに朝イチの授業は始まっている。
もつれる足で懸命にインターホンへかじりつき、謝罪と「あと三分待ってくれ」を叫んで俺は再び格闘し出した。
最初に手が触れたデニムとシャツを着る。そこそこに顔を洗う。なおざり(おざなり?どっちでもいいや)に歯を磨く。教科書を鞄に叩きこむ。
たぶん本当に三分で準備を終えた俺は玄関を破壊せんとする特殊部隊よろしくドアへダッシュし、朝の光を背負っているはずの佐々木の姿を見た瞬間腰を抜かした。
「おはよう、キョン」
優しく口角の上がった紅い微笑みの上に、小人の被るような黒のハット。
ショートヘアをツーテールにまとめ、そこから見え隠れする耳には拘束具のようにいくつもピアスが「埋め込まれて」いる。
声が通り抜ける喉には、葬儀用の大事な花束を締め付けるようにリボンが。
全身には夏の陽気を拒む深海のようなゴシックドレスが纏わりつき、しかしアクセントの白が暑苦しさを全く感じさせない。
黒炭から生えた象牙のように際立った細い指には鎧の指輪。その鎧が握るのは剣ではなく盾。日差しから身を守るにしては豪奢すぎるものだが。
時代や絵画から抜け出した「お人形さん」が突然玄関にやってきた、という感じ。
総括するに、ゴスロリってやつだ。
――こういう衣装自体は、別に初めて見たわけじゃない。
SOS団ではハルヒが似たようなモンを朝比奈さん、長門、そんで自分に着せていたし、こっちに来てからはそういうファッションのヤツもゴマンと見てきた。
ただひとつ、目の前にいるコイツは他との決定的な違いがある。
やさしいながらもどこか頽廃的な雰囲気は、「流行りだからやってみましょ」という感じのSOS団や自称オシャレさんには決して作り出せない。

返事することさえ忘れ見とれているのか呆れているのか何を考えているのかわからん俺に、握るだけで折れてしまいそうな腕が差し出された。
「嬉しい反応だね。もしこのまま何事もなかったかのように振舞われたら、僕は恥ずかしさで溶けていたところだよ」
そんな格好を見せつけられたら諸葛亮孔明だって驚きで鶴翼の陣を崩すに違いない。
目の前の手を握り立ち上がる。華奢な指にそぐわない鋼の指輪が俺の手を甘噛みした。
「さて、どうせ急いだところで一限の授業は絶望的だしのんびりと行こうじゃないか」
それもそうだな、と相槌を打つ。後でのんびりと、追及してやろうじゃないか。立ち話じゃ辛いほど長くなりそうだからな。


「さて……と」
俺達はキャンパス近くのファーストフード店に腰をおろした。次の授業は四限であり、時間なら腐るほどあるってワケだ。
ちなみに俺達は隅っこの隅っこにいる。このゴスロリ少女は良くも悪くも視線を集めすぎるからである。
電車内で一緒にいるときは恥ずかしさを感じればいいのか誇りを感じればいいのか全くもって誰かに教えてもらいたかった。
まあそんなことはどーでもいい。
オレンジジュースを可愛らしくすすっている良家のカラスへ、俺は単刀直入に突きつけた。
850名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:04:19 ID:Ceb2SgEv
「お前、佐々木じゃないだろ?」
「ご察しの通り」
「どうせばらすウソなら最初からつくな、紛らわしい」
「今日は一度も自分を『佐々木さん』とは主張してないから、嘘をついたことにはならないんじゃない?」

上のやり取りからも分かるように、やはりコイツは佐々木じゃなかった。ところで、いい加減に呼び名が欲しい頃なので真に勝手且つ月並みではあるがコイツを「裏佐々木」とでも呼ぶことに決めさせていただく。
「まだちゃんと居やがったか。俺は、てっきり飽きてどっかに行っちまったかと思ってたよ」
「なーんにもまだ達成してないのに、居なくなれるもんですか」
二限の途中な時間帯ということで店内に人はまばらだ。とんちきな格好をしてとんちきな話をしている俺達にとっては都合がよい。
「で、なんでまた急に出てきたんだ」
「心当たりはありまくりでしょ?」
そうだな。運の悪いことに昨日の記憶はまだ無くなっちゃいない。
「佐々木さん、昨日なんだけど新宿に買い物に行ったのね。さて帰ろうかと駅前に行ったら、そこに誰が誰といたと思う?」
合衆国大統領と北の将軍様がいたら大騒ぎだろうな。
「それを見た佐々木さんはとてもがっかりしました。悲しくなりました」
「ちょっと待て、なんだって俺と朝比奈さんが一緒にいるのを見ただ」「あ、白状した」
しまった。
「まあそれはわかりきった答えだからどうでもいいとして」
話を途中で潰された俺は改めて反論する。
「えーっとな、俺と朝比奈さんが一緒にいたことは認めよう。だけどな、佐々木はそのくらいで心乱すようなヤワなヤツではなかったはずだ」
ニヤリと笑った裏佐々木が何か言おうとしたその時、頼んでいたフライドポテトとハンバーガーが運ばれてきた。店員が裏佐々木の異様な服装と俺とを一瞥し、怪訝な顔をして去って行く。
話を潰される不快感を味わった裏佐々木は、苦々しい表情になってポテトをひとつ摘む。なぜか俺はニヤけた。
「佐々木さんだってあなたと朝比奈さんの間にはやましいことは何もないって感覚で分かるわよ」
「何もない」ってのも、それはそれで悲しいことだがな。
「でもそれだけじゃ終われないのが感情の不思議、ってヤツじゃない?」
知らんわ。
「ともかく佐々木さんはイライラを募らせて、閉鎖空間で巨人――私の力の一部――を暴れさせたのね。おとなしい顔して行使した力は涼宮さんの倍近くだったから、人は見かけによらないものね」
あの深海のような空間にいた、暗黒の巨人を思い出す。配色を間違えた雪のように散っていったその体。
「あなたが閉鎖空間に入ってこれたのは知ってる。むしろ、ちょっとお仕置きでもしようかと、あなただけは入り込めるようにしたのね」
俺があの巨人は角を持っていたかどうか考えていると、不意に目の前のゴスロリ少女が視線をがんじがらめにしてきた。顔をそむけられない。
「ところでちょっと聞きたいんだけど」
「なんだ」
内心かなりビビりながら聞き返す。
「あの閉鎖空間の中に『誰か』いなかった?」
朝倉の存在はバレているようだが、それが誰かまではわからないのだろうか。もしそうなら、教えちゃいけないことな気がする。
震えるな、俺の全部。

「さあな、誰も見てねえよ」

何が起こったかわからなかった、といういい加減手垢のつきまくった表現を使うことをお許しいただきたい。
851名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:06:52 ID:Ceb2SgEv
まずは、感触だった。
俺の顔の右側をクーラーの風が撫でていった。そう思った。それくらいに静かだった。
しかし風と思ったそれは、どういうわけかいつまでも黒く細長く俺の横にとどまり、目玉だけ動かしてそれがフリルつきの袖だと理解するのに一瞬を要した。
全身から冷汗が、まるで示し合わせたかのように溢れ出す。
右頬をひときわ太い雫の伝う感触が、ナメクジの這うように不快に感じる。
喉はさっきまでジンジャーエールを飲んでいたことも忘れているようだ。
振り返ると、俺の背後にあった壁から人間の腕が生えていた。ゴスロリの服のそれは、そのまま目の前の少女につながっている。
不可解だったのは、壁に一切の亀裂も傷も見当たらないことだった。素人の作った合成画像のように、手首から先だけが壁に飲み込まれて消失している。

「嘘は良くないなあ、ウソは」

エイプリルフールの日、息子にわざと騙されたあと楽しげにたしなめる母親のように言った。
セルロイドの人形のように動けなくなった俺に、もう一本の腕が伸びてきた。情けないことだが、俺は目をつむる。当たり前だ、こちとら拷問に耐える訓練を受けた諜報機関の人間なんかじゃない。
そのままこれから俺の身に起こることを想像し、恐怖と共になんか俺ってよく死にそうな目に遭うなあとかやけに冷静に嘆息していると、さっきと同じ右頬を擦る感触がして結局イマージェンシーモードに引きずり込まれた。
「目を開けて」
心底嫌だった。首を振って拒絶することもできず、折れそうなほどに奥歯をかみしめる。
「開けて」
「開けてどうなる」
「いいから」
「よくない」
「それじゃ、わたしがあけてもいい?」
それはもっと嫌だ。
敵の手にかかるならば自ら舌を噛み切らんとする姫君の覚悟をもって、ゆっくりと目を開けた。そういや、舌噛み切ったくらいじゃ死ねないんだっけ。
幼稚園児のぬり絵のようになった世界で目を凝らし、必死で状況を確認する。同時に何も見たくないという、怖いもの見たくなさも顔を出す。

目の前の裏佐々木は、無言だった。手にはポテトをタバコでも持つかのようにつまんでいる。比較的長めのそれの両端には、緑色のソース。
何をやろうというのか、それへの興味以外は不思議なことに一切消えていた。
相変わらずいたずらっぽい眼をしている。
指先でポテトをクルクル弄んだあと、その一端を咥える。
ガタンという椅子の音。
狂ったように流れる黒人ラップ。
近づいてくるゴスロリ人形の整いすぎた睫毛。
遊園地のようにとっ散らかっていた色彩が、段々と日常のそれに戻ってくる。
間近に迫ったルージュの紅。
しかし、それが咥えたポテトの先端に見たソースの色は、緑ではなくなっていた。
むしろ、迫ってくる唇より幾分暗い――

薔薇を貪ったなら、こんな味がするだろうか。

「『誰』とは訊かないわ。『誰か』、いたんでしょ?」
「……ご察しの通り」
「どうせばらすウソなら最初からつかないで、紛らわしい」
852名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:10:21 ID:Ceb2SgEv
そのまま立ち去ろうとする裏佐々木。俺は顔の右側に触り、傷は跡形もなく塞がっていたが何か纏わりつくような感触を覚え、その手が血にまみれていたの見て呆然と――
いや、あいつには言わなきゃならないことがある。呆けてる場合じゃない、という声が体の底から聞こえ、俺はそれに従ってヤツを追いかけた。
ドアから出たところで裏佐々木の肩を掴み、振り向かせる。店に入ろうとしたカップルの迷惑そうな顔が見えて、俺達は駐車場の隅に移動した。夏の日差しが痛い。
「何か用?」
不機嫌な声と目に射られ、体が竦む。だが、これだけは言わなくてはならない。
「おまえ、その服は自分で買ったのか?」
心底アホを見る目。そんな事を訊きに来たのかと。さっきの雰囲気から、どのツラ下げてそんなこと訊くのかと。
「いえ?佐々木さんがあなたを喜ばそうと思って買っちゃったんだけど、勇気がなくて着れなかったみたい。それをわたしが、あなたへの目印に着て来たってワケ」
そんなんで俺が喜ぶと思ったのか、あのバカは。
「そのピアスは?」
俺はシロガネまみれになった形の良い耳をつまんだ。
ぴくん、と裏佐々木の体が震える。
「わたしが買って、わたしが付けたのよ。何か文句、あるの?」
耳から手を離し、改めて肩に手をかける。右手は血まみれなので左手で。
「お前が何買おうと着ようと勝手だけどな」
裏佐々木の眉が歪む。

「佐々木の体に傷をつけるマネはすんな」

蝉の合唱が不協和音になる。
固まっていた空間を切り裂いて、裏佐々木はにっこりとほほ笑んだ。
そのまま両腕を俺の背中に巻きつけ、抱きついてくる。やめろ、暑苦しい。
「今のはちょっと、よかったわよ?見直したわ」
「わかったから離せ、暑い」

今日初めて見せた「嬉しそうな」顔のまま、裏佐々木は話し始めた。
「いやー、おどかしてごめんね? 佐々木さんが可哀想であなたにムカついてたから、ちょっとやっちゃった。あと、ピアスはフェイクだから安心して!」
マジで、やられちゃったかと思ったわ。
裏佐々木は一人でうんうんと何かを納得し、
「とりあえず、佐々木さんも大事にされてるみたいね。それじゃ、ごほうびあげよっか」
もらうのはやぶさかではないな。「一撃」、とか以外なら。
期待三割不安五割その他二割で待っていると、裏佐々木は両手を合わせた。そこから一閃、太陽にも勝る光が木々を渡り、蝉の声が止んだ気がしたがまたすぐに鳴き始めた。
「はい」
差し出された掌には、指輪があった。裏佐々木が今身につけている、鎧のように広い範囲を覆うヤツ。
「このアーマーリングには」
そんな名前があるんだな。
「わたしの力が一回分込められてるの。強く思いを伝えれば、一回だけ願いが叶う」
突然、とんでもなく便利なものを手に入れちまったな。これさえあれば……
「でも、『今すぐこのゲームに勝ちたい』とか、そーいうチートなお願いはダメだからね! まあせいぜい、わたしを巡る勢力との駆け引きにでも使ってね」
ばれたか。
「それじゃ、叶えてくれる願いを増やせ、っていうのはどうだ?」
「いいわよ」
いいのかよっ!
「でも百個とかはさすがに無理だから、二つにするのでいい?」
なんか知らんがありがたい。つーか、えらいあっさり許可したな。
「わたしはランプの魔人とかみたいにケチケチしたくないの」
その割に願い事は一つ分少ないけどな、とは言わないことにした。
「ちなみにその指輪、薬指限定だから」
子供の様な事をするな。
「じゃ、わたしは引っ込むから、後のこと宜しくね? ちゃんと誉めてあげなきゃダメだよ?」
なにを、と聞きかけた途端裏佐々木の体が崩れ落ちる。俺は慌てて支えた。
「……ん」
十秒もしないうちに、少女の目が再び開いた。そのままぼんやりと焦点の合わない瞳で見つめられ、俺はだいぶ心拍数を上げた。
「ここは……どうして、キミが……? 顔から血が……」
そう口走った矢先、爆発音でも聞こえそうなほど急激に佐々木の顔が真っ赤に染まった。
「どどど……ど、どうして、キミが?! なんで、僕、僕は、わ、この服をっ?!」
アー、ソーイウコトダッタンデスネー、ウラノササキサン。
その後、半狂乱となった佐々木を落ち着かせたり、おさまったらおさまったで、上目づかいで服の感想を求められたりして、結局俺達はその日の授業を全てサボった。
やれやれだ。
853名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:13:12 ID:Ceb2SgEv
「……そこまで。すみやかに筆記用具を置いてください」
終わった、終わりましたよお母さん。
夏休み直前の関門、定期試験の最後の教科を終え、俺はボールペンをベーブ・ルースの動体視力をもってしても確認できないほどの速度で黒板へ投げつけようかと思ったがやめた。
代わりに、コロコロと情けない音をたてて机に転がすペン。似たような寂しい音が講堂の至る所で聞こえる。ついで溢れ出す溜息と半笑いと自嘲。俺は溜息役だな。
そしてコイツは……。
「どうだったかい?」
いつものかわらぬ微笑をソロで演奏している。
「ご察しの通り」
肩をすくめた俺に、喉にモノの詰まったような音を立て笑う佐々木。
「ほう、それでは上々の仕上がり、を示唆しているということで了解してよいのかな? 僕の立てた予想は当たらずとも遠からず、大同小異の異口同音だったと思うのだが」
最後の慣用句の使い方は間違ってると思うが、佐々木のことだから言葉遊びの一環だろうな。
「確かにどっかで見た様な語句ばかり出てきたけどな、それより先に行くことがなかった」
目をマンガのように細めて、佐々木はたしなめる。笑ってるだけなのか?
「む、それでは、今度からキミがちゃんと知識身に付けたかしっかり確認してあげないとな」
「そこまでお前に迷惑かけたくないわ。俺のレポートだって、ほぼお前の助言で出来上がっているようなもんだし」
あれがうまいこと評価されてなければ単位は軒並み暴落する。
「いやいや、キミの切り口は斬新で、とても僕の思いつかないことを書き出す――多分教授にも。ただ、少し論旨を明快にしてあげているだけさ」
鞄を担ぎ、俺達は会場を後にする。学生であふれた階段を流れ、外に出て夏の日差しを全身で受けた。こっちには蝉が少ないな。地元じゃ今頃、某ガキ大将のごときリサイタルをあちこちでやってるだろうに。
地元――地元か……。あいつら、元気でやってんのかな。
「キョン?」
顔が近い。
「いやね、その瞳に郷愁を感じたもので。キミはいつ頃あっちに戻るんだい?」
鋭いにもほどがあると思う。
「そうだな、八月の後半になるかな。佐々木、お前は?」
「僕は今年は帰らない。バイトがたてこんでいてね」
「そうか」
ちなみに佐々木はウェイトレスなんぞをやっていた。働きぶりを観察に行ったときは、顔が手にしたパフェのイチゴと変わらんくらいの色になってたな。まあバイト中の姿を知人に見られるのは恥ずかしい、ってのは分からんでもないが。
追記しておくと、ああ見えてかなりのドジである。油ものを引っ繰り返し、モップを取りに走りだすとそこにできた「魔のスケートゾーン」で自分も引っ繰り返ったとかなんとか。
「キョン?なにやら僕にとって不名誉なことを吐露したりしていないかい?」
鋭いにもほどがあると思う。

試験は六限にあったので、下宿先の駅に着くころには夕日も沈み切り闇が迫っていた。点滅する街灯が俺の影をカメラのフラッシュのように何度も何度も作り出す。
佐々木は例のバイト(古泉のとは違うぞ)ということで別れてきた。
コンビニ弁当をぶらさげ、階段を上る。とりあえず夏休み始まりってことで、ささやかにお祝いでもするか。
財布から鍵を取り出し、鍵穴へ入れる。ひねればガチャリと音が――しなかった。
「閉め忘れたかな……不用心な」
そうひとりごちてノブを握り、回し、引っ張った。
とたん。電気がついた。
嫌な予想が一瞬の内に数個作り出された。いくら危ない目によく遭うからって、それとは別に怖いもんは怖い。
だが恐れは、瞬きする間もなく消え去った。
854名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:14:35 ID:Ceb2SgEv
「えっへっへー!! 驚いた?」
聞き間違えることも、忘れることもあるはずのない声。
「勝手にお邪魔してしまい誠に申し訳ありません」
見間違えることも、忘れることもあるはずのない顔。
「ごめんなさいキョンくん。でも、喜んでくれるかなって思って」
嗅ぎ違えることも、忘れることもあるはずのない空気。
「ひさしぶり」

SOS団が、そこにいた。

「みんな……」
「フフン。ヒラ団員一名の為に全員で集まってあげたんだから、あんたはこの恩に報いるために自分の毛で機を織るくらいはしなさ……」
「勝手に入ってんじゃねーッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
とうぜんだろ、当然。久々にここまでシャウトしたわ。



「……ったく、そもそもどうやって侵入したんだよ。鍵掛ってただろ?」
「古泉君の知り合いに鍵屋さんがいるっていうから」
「すみません、涼宮さんがどうしてもというので……」
「……部屋の番号なんて教えてたっけ」
「情報収集は得意」
「……ちょうど試験の終わる日に、よく狙いすましたかのごとく押しかけたもんだ」
「ごめんなさい、時間関係はわたしの分野ですから……」
きっと犯罪だということを認識させてあげるのが、友だよな、みんな。つーか朝比奈さん、その発言はさり気にアウトじゃないですか?
そんなこんなで、SOS団の集会が久しぶりに決行された。俺の家で。そこで団長が取り出したるはニッカ。ついでアサヒ。
「おいハルヒ、お前酒は呑まないんじゃなかったのか? 呑むな呑ますな」
この団において、酒が入っても正常に動作できる者は一人だっていないはず。合宿の悪夢を思い出す。
古泉はどうなんだろ? どうでもいっか。
「いーでしょ、せっかくみんなそろっためでたい席なんだし」
めでたいのはお前の頭だ。
「それに、あれからもう四年もいくらも過ぎてるんだからちょっとは耐性も付いてるわよ。それじゃ、SOS団の結束を祝って、かんぱーい!!」
そんなもんかね、と思って口をつけた。あとはもう、わかるだろ?
ハルヒの酒乱ぶりはあいかわらず、もとい、激しさを増していたようであり、飛び跳ねてはロフト部分の低い天井に頭をぶつけて大笑いし、かと思えば急にグスグス泣き出したり、もうわけがわからん。
朝比奈さんはたぶんパッチテストでひっくり返るんだろうな。コーラでも酔うかもしれん。その割に意識はなんとか保っていたから、少しは成長したってとこか。
この前は、酒に見せかけて紅茶でも飲んでたのかな。任務中だったし。
長門はビールがお気に召さないのかウィスキーばっか呑んでいた。さらに某ネコ型ロボットよろしく次々と異次元から酒類を取り出し、状況はさらに悪化。
そんなことに情報統合思念体の力を使うんじゃありません。
「飲んで」
うわ―懐かしいなーおい。
「古泉、お前は大丈夫そうだな。やっぱ強いのか」
「いえいえ、あまり量をとっていないだけですよ。誰かひとりはお世話できる人がいないといけませんからね」
どーでもいーけどな、それ、俺じゃなくて掃除機だぞ。
855名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 15:17:23 ID:Ceb2SgEv
さっきまで俺の部屋だった空間は今や、モアイは裸足で逃げ出しロゼッタ=ストーンはうっかりバランスを崩しバミューダ=トライアングルは頂点が二つ増えるような異空間となりつつあった。
宇宙人、未来人、異世界人……はいないか、超能力者が酔っ払って好き勝手に変な空気をまき散らしてんだから、当たり前っちゃ当たり前だ。ハルヒの望んだ全ては今ここにある。
当の本人は暴れまくってそのにおいに気付かない訳だけども。
なんで俺は冷静に分析なんかしてられんのかって? そりゃお前、古泉も言ってたじゃないか。誰か一人はお世話役がいるって。
その「介抱役」の権限を最大限に利用して、女性陣にイタズラシヨウナドトハケッシテオモッテイナイノデスヨ。マジデ。
それでは手始めに、状況描写を終えた直後に昏倒した朝比奈さんを毒牙に――もとい――毛布でもかけましょうか。

――ピンポーン

なんだこの少年誌にありがちな展開は。ここはそーいうの全部オッケーなんだぜ? わざわざ焦らすなよ。
玄関に赴く。なんだかんだいってやっぱ少しは足がふらつくな。
相手の確認もせずに鍵をあける。よい子はマネしないよーに。

「やあ、夜分遅くに申し訳ないね」

異世界人の容器である疑惑が強いヤツ参上。これでカードは全部揃った。
ゆったりとした白のワンピースに、ちょっと外に出るとき履くようなサンダル。そう、同じアパートの二階に行くには申し分ない格好。
「単位取得の有無は置いておいてとりあえず夏休みの開始を共に祝おうと赴いたわけだが……」
部屋の奥にいる、古泉と長門の頭をアメリカンクラッカーよろしく振り回しているハルヒを一瞥したんだと思う。
「どうやらお取り込み中らしいね。先客、それも大事な親友とは、僕も星の巡りあわせの悪いものだ」
気にした風もないような表情を浮かべる佐々木。だが、町をひとりで歩く時のように平坦な瞳には隠しきれないツギハギが見て取れた。俺も長門や古泉で鍛えられたさ。
「なにいってんだ。これだけ近くに住んでるんだから、いつだってまた来れるじゃねえか」
佐々木の手には酒瓶。ブルータス、お前もか。
「時間は……」
時間は……なんだ?
疑問符をわかりやすく浮かべた顔をした俺に、いつもの微笑にほろ苦さを加えたオトナ向けの表情で、手を振ってこたえた。
「いや、なんでもない。こっちの話さ。そうだね、また今度お邪魔するよ」
「つーかお前も混じればいいじゃねえか。祝い事は多い方が楽しいもんだ」
すると佐々木は中国に住む仙人のように悟りきった顔をして
「思い出の中に他人は無用さ。では……」
と男の俺でも惚れそうなほどにキメて立ち去ろうとしたが
「あああああああーーーーッッ!!!!!!!!!! もしかして佐々木さん―――ーッッ?!!! ってゆーかもしかしてお酒――ー――――ーッッ?!!!!!!!」
「す、涼宮さん――ー――ーーーッッ?!!!!!」
そうは問屋が卸さなかった。うるさい。隣人から文句言われるのは俺なんだからな。
猿のようなスピードで部屋からヒト科ヒト類ヒト(分類が正しくなくても文句言わないでくれ)のはずであるハルヒが玄関へ躍り出て、チーターのようなスピードでヒト科ヒト類ヒトのはずのハルヒが酒を佐々木ごと巣穴へ持ち帰った。
まさか現代に酒呑童子が蘇るとは、柳田国男も腰を抜かすだろう。
856名無しさん@ピンキー
すっかり酔いの醒めてしまった(もともとそんなに酔っちゃいなかったが)俺は溜息一つドアを閉めた。
部屋に戻った時には既に佐々木はリンゴのように真っ赤だった。お前、そんなに弱くて大丈夫か? ハルヒが無理やり呑ませたっぽいけど。
「ほらほらー、いい感じで酔ってきたところでキョンの近況を赤裸々に告白してもらうわよ―――ーッッ?!!! モザイクもイニシャルもなしだかんねーーーッッ?!!!」
ハルヒ、酒のせいだとは思うがお前、キャラ変わってんぞ。さすがに、なんというか、その、イタい。
その後ハルヒの尋問は二時過ぎまで続き、最後には二人とも強風にあおられたハードルのようにパタンと倒れた。
古泉と長門は佐々木を興味深そうに見つめていたが、二人の目つきは喩えるならマーライオンを見るそれだった。「ああ、アレが有名なマーライオンね」くらいの。そして興味を失ったかのように眠りこける。
G級問題人物が目の前にいるのにその体たらくはなんだと、上司でもないのに叱りつけたくなった俺は正常なはずだ。
かくて俺の部屋(だったはずの場所)には五人分の死体が転がり、ついでアパートの指定の場所軽く三杯分くらいのゴミが散乱していた。これって、お約束だよな。
仕方なく片付けを黙々と開始し、こんなことなら俺も酔って寝ちまえばよかったと後の祭りを力いっぱい盛り上げ、不意に頬を熱いものがつたえばギャグとしては古典を踏襲したことになるなと下らないことを考えていた。
まあとりあえず、美少女四人の寝顔を見れて役得だったということにしておこう。古泉には白い布を被せておいた。
寝るときは目を閉じなさい、長門。

 

さて、と。
どうにか部屋を「立つ鳥跡を不本意ながら濁す」くらいの状態に戻し、パソコンに謎のフォルダ「negao」が追加され、これで最後にしたい溜息をついたころには四時を回っていた。うっすらと空は白みつつあるような気さえする。
もーダメだ、もームリとひとりごちて寝床のあるロフトへの梯子に手をかけた瞬間、寒気が脊髄を打ち抜いた。ゴキブリがいるんじゃないかという時の悪寒より百度は低いヤツ。
梯子を握ったまま停止する俺。安い壁掛け時計が身の程を知った音をたてる。
世界は確実に今も動いている。
止まっているのは、俺。
――俺が行ったところでどうなる? 「アイツ」も、もう来るなと言ったじゃねえか。朴念仁の役立たず、足手まといの三重苦が俺のあそこでの立場だ。
なるほど、全くの正論で弁解の余地もない。上院下院共に反対者ゼロで国会を通過だ。
だが、だけどな。
ぐっすり眠れないのは御免だ。
新聞屋を出し抜いた階段の金属音がベッドタウンに鳴り響いた。

「入ったはいいが」
今度の場所はすぐ近く。なんたってアパートの目の前だ。今回も侵入する時の気持ちの悪い感触はちゃんと味わったが、同じことを二度三度説明すんのも野暮なので割愛させていただく。
というか思い出したくない。古泉や橘と来た時はなんともなかったのにな。
「ホントにできることってなんにもねえよな」
そびえ立つ巨人を前にしてしみじみそう思う。ショッカーがサシで仮面ライダーと戦うにしても、もうちょっと勝ち目があるだろう。
テレビで見た屋久杉のように巨大な足が俺をスタンプしようと持ち上げられる。アレに踏まれたら死ぬよなあと、急行列車を見て「アレに轢かれたら死ぬよなあ」と考えるように能天気な感想しかなかった。
って。
逃げろよ、俺。