「ま、いいわ。ここを襲撃することも出来たし、貴女に恥ずかしい思いをさせることもでき
たし、目的はほとんど果たしているんですものね」
「くっ・・・・・・」
「・・・・・・そろそろ貴女の忠実な飼い犬が着くころだから、私は裏界へ帰るわ。ね、ア
ンゼロット」
横臥するアンゼロットの顔の上をまたぎ、ベルが妖艶に笑う。
「気をつけなさい ? 次に隙を見つけたら、今度は最後までしちゃうわよ ? これで・・・」
と言いつつ、巨大な男根をアンゼロットの顔に近づける。肉棒を支え持つと、その頬
をぺちぺちとペニスで叩いた。
「い、や・・・・汚らわしい・・・ですわ・・・」
嫌悪感に眉をひそめ、顔を背けるアンゼロット。ベルが人の悪い笑みを浮かべると、
両手でその顔を挟み込み、無理矢理自分の股間正面に向けさせる。
「最後にもう一回だけ楽しませてもらうわ」
口の端を吊り上げてニヤリと笑い、アンゼロットの鼻をつまみ上げ呼吸をふさぐ。
たまらず口を開けるアンゼロット。
「息が・・・ぷあっ、な、なにをする・・・んぼおうぅぅぅぅっ・・・ !? 」
大きく開いたアンゼロットの口めがけて、ベルがペニスを押し込んだ。
もちろん、これだけの長さを持つ一物がすべて飲み込めるはずもない。だが、口腔内
と食道までを汚すだけなら、半分も飲み込ませる必要はないのだ。
ベルのペニスは直径も普通の男根より一回りは太く。アンゼロットの顎が外れそうに
なるくらいの太さを持っている。必死で、アンゼロットは口を大きく開け続けた。いくら
擬似的に魔力で生やされたペニスとはいえ、プチベルの肉体から生えたものである。
ベール=ゼファー本体が現れて自分にこんなことをしたのなら、噛み切ってやるとこ
ろだが、相手がプチベルの肉体なら、傷つけるわけにはいかない ---- だからこそ、
アンゼロットは懸命に大きく口を開け続けようとする。歯で肉茎を傷つけないように。
逆に言えば、そんな心理の動きを完全に読みきったからこそ、ベルも口内奉仕を強
制する気になったのだ。
「時間がないから、あんっ、私も、す、するわ、よ・・・うふぅん・・・」
アンゼロットの顔の上にまたがり、ペニスを飲み込ませながら肉棒を自分でしごく。
凄まじい速度。強引な、射精目的の自慰行為。喉を犯され、呼吸を制限され、アンゼ
ロットの意識が遠のきそうになる。それでも、耐える。死に物狂いで意識を正常に保と
うと耐え続ける。
「あーっ、出るっ ! アンゼロット、出るっ ! 喉だけじゃないわよ、直接貴女の胃袋を汚し
てあげるっ !! 」
ベール=ゼファー、絶頂の瞬間。
「じゃあね、アンゼロット」
(・・・え・・・・・・ !? )
ベルの ---- いや、プチベルの瞳から情欲の色が消えた。
「・・・・あ・・・あんぜろっと・・・おねーちゃんっ・・・ !? 」
射精の瞬間、ベルはプチベルの意識を開放し、自分自身は裏界へと帰還したのであ
る。
「どーして・・・やだ・・・なんでぇ・・・こんな・・・こんなこと・・・やだ・・・ごめんなさい・・・
ごめんなさいあんぜろっとおねーちゃん・・・や・・・やだ・・・やぁだあぁぁぁぁぁっ !!!! 」
泣きじゃくりながら、プチベルが射精する。五歳の幼女に突如訪れた、あり得べから
ざる男性器の絶頂感。性的な行為とはもっとも縁遠い年頃の幼女の身体を、股間を、
最大級の快楽が駆け抜けた !
「くひゃあぁぁぁぁぁぁっんっっ !? 」
プチベルの瞳が、ぐるん、と裏返る。絶叫する唇で、ごぼんっ、と音がして大量の泡
を盛大に噴き出す。涙と鼻水を大量に撒き散らしながら、アンゼロットの胃袋めがけ、
プチベルが精液をぶちまけた。
びゅっ、びゅぶっ、どびゅっ、どぷどぷどぷっ !!
最大級の絶頂にともなって吐き出された汚汁は、その量もいままで以上で。
同時に、派手な水音がプチベルの股間からしたかと思うと、またがったアンゼロットの
顔中に、黄金色の飛沫をほとばしらせる。温かな黄金の雨。
執務室に、かすかな臭気がただよった。
「ごぼっ !? おごっ、お゛ぉお゛ぉ〜〜〜ッ !? 」
突如、口腔内に注ぎ込まれた精液のあまりの量の多さに、アンゼロットが目を白黒
させた。極太の男根に唇を塞がれているため、逃げ場のない精液が口中に、喉の奥
に、胃袋に逆流する。それでも収まりきれない粘液が口中に溜まり、アンゼロットの頬
が、ぶくんっ、と膨れあがった。
「・・・かは・・・かひ・・・ひうぅぅ・・・・」
か細い断末魔の声を漏らし、プチベルの小さな身体がぐらり、と揺れた。仰向けに、
アンゼロットの身体の上に折り重なるように倒れると、その拍子にアンゼロットの口か
ら異形の男根がずるるるっ、と引き抜かれていく。
それが、結果的にアンゼロットの唇で再びしごかれる形となったせいで、口から完全
に抜けたと同時に、もう一度プチベルの股間の一物が最後の射精を行った。
どびゅうぅっ ! ぶっ ! びゅるるるるーっ !!
がくがくと幼い身体を痙攣させながら、アンゼロットを下敷きにしたままで、プチベル
がその巨根をぶるんぶるんと震わせる。人外の手段によって生み出された異形のペ
ニスは、最後の最後で常識外の射精を行った。吐き出された精液が、執務室の天井
までも白く塗りたくるほどの飛距離でぶちまけられる。
「きゃあぁぁぁっ ! やっ、やあぁぁぁぁっ ! 」
壮絶な射精を強制されたプチベルが拒絶の悲鳴を放つ。
天井にべっとりと大きく染みついた精液が、まるで雨漏りのように、二人の少女の全
身に降り注いだ。その膨大な量の射精が収まると ---- 精力と魔力の枯渇したペニス
は、霞の如く掻き消えた。
同時に ---- プチベルの悲鳴がぴたりと止まった。自身の放った精液にまみれなが
ら、完全に失神したのである。
アンゼロットは ---- 。
「げっ・・・げほっ・・・おうっ・・・うえぇぇっ・・・」
ペニスの栓を抜かれた唇から、唾液と精液の混じったどろどろの液体が、噴水のよ
うに噴き上がる。降り注いだ精液が、自分の吐き出した精液と混ざり合い、開いた口
めがけて流れ込み、さらにむせこんだ。いつのまにか、身体を束縛していた魔力は雲
散霧消し、アンゼロットは、完全に恥辱の罠から開放されたことを知った。
---- 安堵のあまり、気を失いそうになる。
しかし、ここで意識を手放してはならない。自分たちは大魔王の脅威から解放されて
も、まだ外では柊たちや配下のすべてがエミュレイターと交戦中なのだ。
(わたくしは・・・世界の守護者・・・身命を投げ打って戦う彼らの・・・司令塔とならなけ
れば・・・旗印とならなければ・・・)
その使命感だけが、彼女の意識をつなぎとめている。
そして、次第に近づいてくる声 ---- 自分の身を案じて叫び続けるコイズミの声も、
アンゼロットを失神から救った一因であった。
自分の身体にのしかかるプチベルの身体を、硝子細工でも扱うかのように丁寧に床
へと降ろし、アンゼロットは渾身の力を込めて身を起こした。がくり、と膝をつき四つん
ばいになる。胸ヤケがして、床へ向けて頭を下げると、
「げほ・・・ごほっ・・・お・・・おうぅぅっ・・・」
激しく咳こみ、胃の中の白く濁ったものをすべて吐き出す。
アンゼロットはドレスの袖で口元を拭うと、大きく息を吸い込み自分を呼ぶ臣下に答
えた。
「コイズミーーーーっ ! わたくしは執務室ですわーーーーっ !! 」
扉の外の廊下、その向こう側で慌しく駆けてくる音がして、
「ご無事ですか !! アンゼロット様ーーーーっ !! 」
コイズミが歓喜の絶叫を放った。
「す、すとっぷ ! すとっぷですわ、コイズミ !! 扉の外で待機なさい !! 」
慌てて押しとどめるアンゼロット。いくらなんでも、いま執務室に入ってこられるのは
困る。いまの部屋の惨状と自分たちの姿を、人目につけるわけにはいかない。
執務室には、精液と尿が撒き散らされ、匂いだって物凄い。自分自身も、ドレスのス
カートはびりびりに破られ下着もつけていないし、白濁液にまみれている。
プチベルにいたっては、痙攣したまま失神しているのだからなおさらだ。
それに ---- 自分たちが大魔王に陵辱の憂き目に遭うところだった、とコイズミが知
れば ---- 主を守れなかった自責の念のあまり、その場で自害して果てかねない。
「た、待機ですか !? し、しかしアンゼロット様・・・ ! 」
「しゃらっぷっ ! いまは貴方と議論している暇はありませんっ ! そうでしょうっ !? 」
扉の向こうで、ぐぬうっ、とコイズミがうなる。その隙に、アンゼロットは平素と変わら
ぬ司令官の声色で矢継ぎ早に指示を出した。
「現状での最優先項目は、大魔王ベール=ゼファーによって穿たれた結界の亀裂の
修復です ! 現在の当方の戦力から考えて、これ以上のエミュレイターの侵入は、致命
的。時間が経つほど、じわじわとこちらの戦力を削られていきます。それぞれの持ち場
もあるでしょうが、まずはそれに取り掛かりなさい ! 」
「はっ ! 」
きっと生真面目なコイズミのこと。互いの姿が見えないはずの扉の向こう側で、馬鹿
正直に最敬礼をしているに違いなかった。
「結界の修復が完了した時点で、敵残存総数の確認と報告 ! わたくしはここを司令室
とし、執務室より指示を行います。マイクの回線は生きていますね !? 」
「はっ・・・あ、いえ、大至急確認いたしますっ ! 」
「よろしい。では、私の今言った指示を速やかに遂行なさいっ ! 」
カツン、と小気味良い靴の踵を鳴らす音。アンゼロットはふっ、と微笑を浮かべ。
「コイズミ」
「・・・・・・はっ !! 」
「頼りにしています。それと ---- どうもありがとう」
コイズミの絶句する気配が伝わってくる。しかし、それでもこの言葉がアンゼロットの
偽りない現在の心境に違いなかった。
「勿体無いお言葉・・・ロンギヌス・コイズミ、任務に戻りますっ !! 」
無駄に声を張り上げたのは、嬉し涙に潤んだ声を悟られぬためか。
立ち去ろうとするコイズミを、
「お待ちなさい、コイズミっ ! 」
アンゼロットが呼び止める。
「はっ、はいっ」
「・・・柊さんに伝えてください。ベルさんもわたくしと一緒にいますから、安心して戦い
なさい、と」
「・・・・・・ ! は、ははっ !! 」
来た時と同じ、せわしない足音が遠ざかっていく。
アンゼロットはその足音を愛おしく思いながらも、厳しい表情を取り戻した。
自らを奮い立たせるように拳を握ると、アンゼロットは執務室の自分専用にしつらえた
黒檀のデスクに座り、マイクとモニターのディスプレイ用のスイッチを入れる。
「さあ、反撃ですわよ ! 覚悟なさいエミュレイター !! 」
最後の戦いが ---- 始まる。
※※※
宙を乱舞する幾十枚もの呪符が、迫り来るエミュレイターの身体を闇の鎖で束縛す
る。命を削る真剣勝負において動きと速さを殺されることは、文字通り自分が殺される
ことだ、と彼らは身をもって知ったはずで ---- 。
「くれは、ナイスサポート ! でりゃあぁぁぁぁーっ !! 」
気合一閃、剣閃幾十。
くれはの呪符の呪的効果による足止めは数瞬だったかもしれないが、歴戦の魔剣
使いたる柊蓮司にとっては、その数瞬こそが勝敗を決する要であり、またその数瞬が
あれば、勝利を握るのには十分な時間なのである。
空を断つ横薙ぎ。下段から摺りあげる死の軌跡。煌き、閃く剣の舞は、無骨なる剛の
動き。防ぎ、避けるどころか、逃げ、息つく間も与えない斬撃に次ぐ斬撃。
十の屍がテラスの手すりから異界の海へと落下し、二十の屍が存在の力を失って消
え失せる。三十、四十の屍を累々と積み重ね、なおも魔剣を振りかざす柊の姿は、まさ
しく人の姿を取った「滅び」のようだ。その動きは、見るものが見れば目を覆いたくなる
ような無謀なもので、防御や回避をとことんまで捨てた攻撃特化型の戦闘行動である。
ゆえに、エミュレイターの予測を超える速度で迫ることができる。
ゆえに、エミュレイターの防壁を無視するかのように容易く斬り下げることが出来る。
もっとも、柊がこんな戦法を取るのは、退けば破滅につながる息の抜けない絶望的
な戦いであったればこそ。すぐ側に守るべき弱いものがいるからこそ。ここを破られて
は、世界中のウィザードたちの心の要を失ってしまうことを、よく理解しているからこそ
である。
とはいえ、捨て身の作戦などという猪突猛進の戦い方は、本来の柊の戦い方では
ありえない。これだけ多くの敵が相手であれば、取るべき戦いかたは、「一撃一殺」。
その戦法を選ばせたのは、自分の身を守る術を知っているものが、自分の戦いを
援護してくれるものがいるからだ。そして、それが一番自分の信頼するに足る相手で
あるからだ。
背中を任せることに、躊躇も憂いも疑うべくもない存在。
それが、柊蓮司にとっての赤羽くれはなのである。
宮殿のテラスにしっかりとその両足で立ち、紅い袴の裾をたなびかせ、いっそ凛々し
い立ち姿で破魔弓を構える赤羽くれは。その横には、ロンギヌスの一人が武器庫から
運び込んだ装填補充用の呪符をうずたかく積み上げ、破魔弓が空になる前に魔力と
呪符を補填する。無尽蔵の援護射撃を受けることが出来るなら ---- そして、それを
してくれるのが赤羽くれはなら ---- 柊蓮司は一千のエミュレイターを相手にしても、
息を切らすことなく全力で戦えるだろう。
くれはの援護に遅滞なきよう、彼女の四方を盾となって護衛するのはロンギヌスの
精鋭たち。エミュレイターたちも、本能で「真っ先に倒さなければならないのは彼ら二
人だ」と察したのか、陣形もなにも無視をして、テラスの一エリアに集結をし始める。
《敵エミュレイター第四陣、二百秒後に到達 ! その数・・・五百 !! 》
オペレーターの声に悲痛さが増していた。
いくらアンゼロット宮殿の全ロンギヌスが総力を結集しているとはいえ、通常の対エ
ミュレイター戦の常識を大きく外れた戦いである。疲労の色が濃くなり始めたロンギヌ
スたちに、柊の底抜けに明るい声が届いた。
「どりゃあっ ! ・・・・っと、イッチョあがりぃ ! よっし ! 二百秒休憩できるぞ、みんな ! 」
一瞬。
テラスにいた全員が沈黙し ---- 次の瞬間、爆笑の渦が沸き起こった。
「な、なんだ、お前ら。笑ってる場合じゃねーだろ !? 」
抗議をするも、柊を除く全員 ---- くれはもロンギヌスたちも腹を抱えて笑っている
のである。あろうことか、柊を指差しながら、肩を叩きあって笑う輩もいるではないか。
「ひ、ひーらぎ〜、いまのサイコーにウけたよ〜。あはははは〜」
目に涙をためて笑いこけるくれは。
笑われている当の柊は、自分がどんな失態を演じたのかがわからず、仏頂面になる
だけである。ひとしきり笑いが収まったところに、つかつかと歩み寄ってきたのは、自身
も笑いをこらえながら帰還を果たしたロンギヌス・コイズミであった。
「柊様。私たちは、貴方のような方と戦場に立てたことを幸運に思います」
「ほめてんのかっ !? いいや、ほめてねーなっ !? 絶対馬鹿にしてるだろっ !? 」
「すねない、すねない。ひーらぎ、それコイズミさんの本心だよ、きっと」
くれはの言葉を裏付けるように、柊に向かって力強く頷く、幾十幾百の顔また顔。
知らず知らずのうちに、絶望に落ち込みそうになっているみんなの心を、自分が救っ
たなどとは露とも知らず、柊は仏頂面のままでそっぽを向いた。
そんな柊に、
「柊様。主、アンゼロット様はご健在。プチベル様も主と一緒におられます」
と、コイズミが言う。その言葉に、ロンギヌス一同が歓声を上げた。その喜びの声を
後押しするように、別の回線からの通信がテラスに届く。
《みなさんお疲れ様です。わたくしの美声を聞けなくて寂しい想いをしていた柊さん、
ご機嫌はいかがですか ? 》
「誰が寂しいって言った !? この非常時に、馬鹿かお前はーっ !? 」
あっけらかんとしたいつものアンゼロットの口調に、いつもの罵声で柊が切り返す。
ああ ---- と。
そのとき、ここにいるみんなが思ったのだ。いつものアンゼロットと柊、いつもの自分
たちを、やっと我々は取り戻した ---- と。
《まあ、馬鹿とはなんですか、失礼な。後でじっくりお話し合いしましょうね、柊さん ?
それはさておき、コイズミ。先ほどわたくしが出した指示はどうなっていますか ? 》
姿勢を正して声の方角に向け直り、コイズミが報告をする。
「はっ ! テラスへ上がる途中、結界修復可能な人員を至急現場へ送る指示を出しまし
た。オペレーター、状況を」
「大至急、とのご指示でしたので宮殿内の転送装置を全基フル稼働させ、四十名のロ
ンギヌス隊員を各ポイントに送り込み、これに当たらせました。結界の完全修復は、現
在時刻よりおよそ十五分後です」
報告をうけたアンゼロットの声が、かすかに翳りを帯びる。
《十五分・・・もっと早めることは・・・無理でしょうね・・・》
ロンギヌスたちも必死なのだ。貴重な戦力を割いて戦闘以外の任務に当たらせてい
るのだから、これ以上の無茶な指示も出せないだろう。
すうっ、と息を吸い込んで、アンゼロットが問う。
《十五分後の結界修復までに・・・どれだけのエミュレイターが侵入するか・・・予測計算
はできますか・・・ ? 》
「結界亀裂発生からの継続的侵入・・・結界突破数の傾向は増加して・・・いままでに
撃破した敵戦力を差し引き・・・十五分後・・・」
あらゆる要因を入力しながら、手元の演算器を操作するオペレーターの顔から、みる
みる血の気が引いていく。
「十五分後・・・結界内のエミュレイター残存総数予測は・・・五千から・・・六千・・・」
絶望の雲は ---- まだ、晴れない。
(ラストバトル〜エンディングへ続きます。もう少しお付き合いのほどを・・・)
リアルにGJ!
ベル様のすごい鬼畜っぷり
そしていよいよラストバトルか、どっちに転んでもwktkの展開だ
プチベルがかわいそすぎる><
しかし柊蓮司は柊蓮司だな。行動にイヤみがないのが凄いw
柊も魅力的だがコイズミの生真面目な忠誠もたまりませんのぅ。
・・・にしてもプチベル可哀相。
スレ住人の中に、記憶を操作できる夢使い様はいらっしゃいませんかー!?
このベルはつまり柊に相手をされなかった怒りと屈辱を宿敵アンゼロットにぶつけているわけですね。
柊が素で言ってるのがわかるぐらい馬鹿なのが素敵すぐるw
これでプチベルのオプション(特殊能力:超巨大武器適応)が消えずに残ったままだったりしたら……
_ ∩
( ゚∀゚)彡 ふたなり!ふたなり!
⊂彡
あと、
>>354 >ところで紳士諸君、某所で話題がでたルー様と飛竜の過去話を待っているのは私だけかね?
同士よ!
>>369ー、消えてる消えてるー。
それにしても柊蓮司は本当にあたまのわるい男ですなw
次回更新をお待ちしてます
PS
>>354>>370 ぶっちゃけ、地下にきて誉められるとは思わなんだ。プロットもどきは手慰みに書いただけだったのだけど>ルー×飛竜
まぁでも展開がアレだからもし仮にネタ神が俺に降りてきてもここに書くようなエロ要素がないんで俺には無理
ってわけで誰かエロ要素付きでここで書いてー
ウィザードとエミュレイターの永きに渡る戦いの歴史で ---- 。
近年における数限りない闘争の中においても、対するエミュレイターの総数が一度に
四ケタ台に突入することなど稀である。
記憶に新しいものでいえば、志宝エリスを巡る宝玉戦争の終盤 ---- あの土星での
一大攻防戦。大魔王ベール=ゼファー率いる魔王軍団とエミュレイター軍による、総力
戦が頭をよぎる。しかし、今回の戦いにおいて決定的に違う点。それは ----
ウィザード側に、前回同様の戦艦型箒のような巨大魔術兵装が不足していることで
ある。くわえて、対魔王戦などの大きな戦いを経験したウィザードが、今回は柊蓮司と
赤羽くれはの二人しかいないこと。絶滅社の誇る強化人間も、腹筋丸出しの夢使いも、
おむすび大好きな魔術師の少女もいないのだ。
敵側に魔王級エミュレイターがいないとはいえ、この差は大きい。
まして、今回の戦いはアンゼロット宮殿そのものを攻められているのである。
城を囲む外堀は、柊たちとロンギヌス。
そして、ここを突入されれば一気に本丸であるアンゼロットを攻略されてしまうのだ。
そうなれば、この局地戦における敗北が、世界中のウィザードの敗北へとつながる
ことは容易に想像できる。
“世界の守護者”たるアンゼロットがエミュレイターに斃されるということが、世界中の
ウィザードに与える影響は計り知れない。おそらく、ここでの敗北を呼び水に、ありとあ
らゆるウィザードたちの戦いは敗北を運命的に決定付けられることになるであろう。
暗澹たる思いに一同が捕らわれていると、追い討ちをかけるようにオペレーターが
叫ぶ。
「敵エミュレイター第四陣、待機・・・しました ! 後続の到着を待って・・・数で押し切るつ
もりです・・・ !! 」
五百体のエミュレイターの中に、多少の知恵が回るものがいたのであろうか。
第一から第三陣までは、結界突破順に闇雲に突入をしてきてくれたから、ウィザード
側にとっては各個撃破の良い機会を得ることになったのである。
ならば、我先にとアンゼロット宮殿を攻めるよりは自軍の増大を待つことのほうが、
エミュレイター側にとってははるかに賢明であろう。なんといっても十五分間待つだけ
で、五千、六千という大軍勢が出来上がるのだ。
憎きウィザードどもを駆逐するのに、たかが十五分の待機がなんだというのか。
エミュレイターたちの殺戮への渇きと期待が増大していく気配が、はるか彼方の空か
らも、肌を刺すように感じられる。
さすがの柊が、息を飲んで沈黙した。
背後のくれはも、その背中に声をかけることが出来ずにいる。
凍りついたように時が止まる。誰もが声を出すことを恐れるかのように黙りこくる中、
最初に口を開いたのは柊蓮司であった。
「ふーーー・・・・だめだな、やっぱ」
ぎくり、とこの場にいた全員が身を強張らせた。柊蓮司が ---- あの、どんな強大な
敵に対しても果敢に立ち向かい、世界中のウィザードを敵に回してでも自分の意志を
貫く青年が ---- 六千のエミュレイターの大軍を前にしては諦めるしかないのか !?
「ひ、柊様・・・・・・」
「・・・ひーらぎぃ・・・・・・」
情けない声を上げるロンギヌス・コイズミとくれは。しかし、振り返った柊の顔は、なん
だかやたらとさっぱりしていて。
「だめだ、だめだ。やっぱ、きりがねえ。ただエミュレイターをぶった切るんじゃ芸がねえ
とは思うんだが、もう少し楽な方法はねえもんかなぁ」
その言葉の意味は ---- その真意は、これだけのエミュレイターを相手に、いまだ
戦う意志を失っていないということだろう。ただ、柊は考えていただけである。もっと、
効率の良いやり方はないものか、と。柊が言った「だめだ」とは、自分には良い方策が
頭に浮かばなかったというだけのことであり、戦う意志を放棄したわけでは、決してな
かったのである。
「アーンゼロットーっ !! 」
上空に向かって、おそらくはアンゼロットのいるであろう方角へ声を張り上げる。
《なんですの、人の名前を大声張り上げて呼んで。わたくしの名前なんですから、もっ
とみやびやかな感じで発音してください》
柊も柊なら、アンゼロットもアンゼロットである。
今の状況がわかっているのだろうか、と疑いたくなるほどに普段と変わらぬ二人な
のだ。
「お前の名前の呼び方なんてどーでもいーっつーの ! それより、今の状況なんとかす
るのが先だろうがっ」
《当然ですわ。この事態を打開するための方策を立てる必要があるわけですが・・・》
ここで、アンゼロットは言葉を区切り沈黙する。
その沈黙はテラスに伝染し、ただ静かに時間が過ぎていく。膨れ上がるエミュレイ
ターの気配だけが増加していく中、周囲をぐるりと見回して、柊は愛用の魔剣の切っ先
を床にカチンと突き立てた。
「んじゃ、整理するか。エミュレイターの総数は六千。これはもうどうしようもない事実
なわけだ。おまけにその六千体すべてが、一丸となってここへ一気に攻め寄せてくる。
・・・はは、きついか、やっぱ」
そう言いながらも柊の物言いに悲壮感は欠片もない。
「でもよ、こりゃ考えようによっちゃ、ある一面で俺たちにとってラッキーでもある。この
戦力差で、例えば敵が千体ずつ分かれて六方向から攻撃されることの方が、俺たち
にはキツイはずだ。そうだろ、アンゼロット ? 」
《・・・続けてください》
うながすアンゼロットの声にはかすかな驚きの響きがあった。なんだか、柊さんのく
せに、いろいろ考えているじゃないですか、と言外に言っているようだった。
「・・・なんだかんだ言ったって、俺やくれは、ロンギヌス全員集めたって千人いるかい
ないかだろう。それが六つに分けられて、それぞれ千体のエミュレイターを相手にする
のよりも、俺たち千人対エミュレイター六千、のほうが気持ちは楽だ」
確かに柊の言うとおりである。こちらの戦力を分断されて戦うのと、一軍対一軍で戦う
のでは、実はどちらも戦力差は六倍であり、数字上の変化はない。
しかし、エミュレイターと違って我々人間であるウィザードには「心理」という大きな内
的要因が存在することを忘れてはいけない。
「仲間と分断されて戦力を減らされた挙句、千体のエミュレイターと戦わなければなら
ない」という言葉には、ネガティヴな要素しか見当たらないが、「仲間と一丸となって、
六倍の敵と正面からぶつかり合う」という言い方のすり替えをすれば、仲間意識による
戦意の向上、あるいは一種の英雄的行為からくる気分の高揚、などの心理的効果が
期待できるのである。
それを、「そのほうが気が楽だ」という本能的な理由で良しとしてしまうのは、柊蓮司
ならではだ。だから、彼に「軍師的素養」などというものを期待しても無駄である。
ただ、柊は知らぬ間に、みんなにとって最善の道を選ぼうとしているだけなのである。
「だからって、情況が劇的に好転することはねえんだがな。ただ、俺たちにとって有利
なのは、敵軍が固まってるって一事のみ、だ。もし、敵に大打撃を与える方法さえ俺た
ちの手の中にあれば ---- そうだな、艦隊戦のときの戦艦みてえな火力でもあれば、
それで一気に敵の主力を叩き潰すことが出来るだろう ? 」
《なるほど。考えましたね、柊さん。それで ? 》
「それで、って、なにが」
《なにが、じゃありませんわ ! そこまで言うのですから、柊さんの思いついた、ないすあ
いでぃあ、とやらを -------- 》
言いかけて、アンゼロットは自分でも馬鹿なことを言ってしまったと思う。
柊は最初に、良い手が思いつかないから自分に声をかけたのではないか。
つまり、それはアンゼロット艦隊のときのような魔術兵装が宮殿内のどこかに配備
されていないか、という柊の問いかけであったわけである。頭痛がしそうな頭を振り、
アンゼロットは臣下一同へ指示を出す。
《武器庫に、わたくしが極秘裏に作成しておいたフォールンエンパイア・改が百基保管
してあります。エナジーストーム、対物、及び対魔装甲板の箒オプションの他に、射撃
の苦手な方でも多少有利に扱えるよう、レーザーサイトのおまけオプションがついてい
ます》
アンゼロットの解説に指一本ずつ折りながら数を数えていたロンギヌス・コイズミが、
愕然と顔を上げる。
「ア、アンゼロット様、搭載可能なオプション数を・・・」
《アンブラ社には、内緒ですよ ? うふふっ》
なんということであろう。
アンブラ社製の次世代型複合箒の発展系と呼ばれるフォールンエンパイアを、勝手に
強化改造するにとどまらず、量産までしてのけていたか、アンゼロット ---- 。
「この際、ぜいたくも文句も言わねえさ。とにかく、武器はあるんだな ? 」
《戦艦の火力には遠く及びませんが、攻・防ともに性能抜群の、範囲攻撃可能な箒が
百基もあるのです。敵主力の殲滅とまでは行かないでしょうが、ある程度の打撃は
与えられるはずですわ。加えて、宮殿に内蔵された防壁魔方陣展開システムをフル
稼動させます。六千体のエミュレイターが相手でも、みなさんへの攻撃を多少はしのぐ
ことができるはずです》
「よしっ。それだけ聞けばあとは十分だぜっ ! 敵の勢揃いと、ここまで攻めて来んのに、
どれくらいかかるっ ? 」
柊の問いかけにロンギヌスの女性オペレーターが、
「結界の亀裂修復後、六千体のエミュレイターが集合するまで、およそ九分。進軍を
開始してここへ到達するまで、さらに三分。交戦開始は、およそ十二分後かと」
と、明快な回答をはじき出す。
「よっしゃあっ !! 急いで用意すんぞっ !! 」
柊の号令に応じたロンギヌスたちがあわただしく駆け出した。
決戦のときまで ---- あと、十二分。
※※※
上空に銃口をそろえて向けた百基の箒。
整然と横一列に並んだ死の砲列が、鈍い光を放ちながら開放のときを待つ。
その背後には破魔弓を構えたくれはが立ち、彼女を護衛するため、そしてロンギヌス
の現場指揮を執るために、コイズミがその右方を固める。
砲列を背中に魔剣を握り締め、仁王立ちするのは言うまでもなく柊蓮司。
彼の左右には、やはり何十人ものロンギヌスたち ---- 白兵戦に長けたものたちな
のか、手にはそれぞれ剣や白兵用箒を携えている ---- が控えていた。
遥か彼方の空から飛来するエミュレイターの一軍は、時間の経過とともに、上空の
一区画を黒い影で埋めつくしていく。その数、およそ六千余。
この広大な空が次第に、異形のものたちの影で塗り潰されていく様は、その勢力の
巨大さを雄弁に物語ってあまりある。
だが、見よ。
敵勢力を迎え撃たんとするロンギヌスたちの頼もしきこと。
背後に控える赤羽くれはの凛々しいこと。
陣の先頭に立ち、魔剣を携えた柊蓮司の力強きこと。
彼らは世界の盾である。世界の振るう剣である。宮殿に搭載された防壁システムと
いう鎧によって守護された彼らは、まさしく世界のための騎士である。
先刻、オペレーターの告げた「十二分後」が訪れ、互いの勢力が一触触発の間合い
に入ると -------- 。
「・・・っ、撃てえぇぇぇぇぇっ !! 」
コイズミが振り上げた手を降ろすと同時に、百基の箒が百条もの輝きで空を照らした。
対するエミュレイター側も負けじと、その輝きの六百倍もの死の光を宮殿めがけて吐き
つける。
しかし、エミュレイター側の攻撃は、一見薄い皮膜のようにも見える魔法防御システム
を傷つけることかなわず、ただただブルームの放つ輝きに自らの身体をさらすのみ。
焼けた鉄板に水滴を垂らしたときのような、じゅうっ、という耳障りな音を幾百も響かせ
ながら、エミュレイターの陣形の一角が消滅した。
「敵残存総数は五千二百 ! 残り半数にも、大小のダメージを確認 ! 」
オペレーターの報告が、一同を奮い立たせる。
勝利の凱歌にも似た歓声が沸きあがり、それをさらに鼓舞するようにコイズミが、
「エナジーストーム再装填 ! 」
武器保管庫からありったけの装備を持ち出してきたからこそ、可能な指示を出す。
魔方陣の防御に力を得て、ロンギヌスたちが次の攻撃の準備を意気揚々と行って
いる間 ---- 。
エミュレイターたちは続けて第二射目の攻撃を開始する。
降り注ぐ炎の雨、光の矢、闇色の瘴気の一斉掃射であった。
それが、ふたたび防壁システムに到達せん、とする瞬間 -------- 。
「ヴァニティワールドっ ! 」
エミュレイター群の漂う空の、さらに上空から。赤光を纏った闇の塊が、アンゼロット
宮殿めがけて放たれる。防壁を包み込み、蝕みながら、暗黒の球体がその護りを打ち
崩し、突然の第三勢力からの攻撃に戸惑うロンギヌスたちを、エミュレイターの攻撃が
容赦なく打ちのめした。
炎の雨に焼かれ、光の矢に貫かれ、闇色の瘴気に倒れ伏す、ロンギヌスたち。
《なんですって・・・・・・ !? 》
モニター越しに自軍の善戦を眺めていたアンゼロットが、身を乗り出して叫び声を上
げた -------- 。
※※※
臨時の司令室として執務室に腰を落ち着けていたアンゼロットが、愕然とモニターを
見つめる。配下のロンギヌスたちが次々と傷つき、倒れていく姿を呆然と眺め、信じら
れないものを見たかのように、虚ろな瞳を泳がせる。
はっ、と我に返りマイクを取り、
「カメラ、上、上です ! エミュレイター群、上空を映し出しなさいっ !! 」
まさか、まさか ---- 口の中で何度もつぶやきながら、見たくないものを見えないよ
うに祈るアンゼロット。しかし、彼女の期待は完全に裏切られ、当たって欲しくはなかっ
た予想は完全に的中してしまった。
ズームアウトした映像が、鮮明に解析される。
異界の空を埋め尽くすエミュレイターたちの上空、彼らに君臨するかのように宙に浮
かぶ姿はまさに威厳ある侵魔の女王のよう。
裏界にその名を轟かす、美しき蠅の女王。
その強大な力をもって、空を住処とするもの、翼あるものすべてを支配する ---- 。
大魔王 ---- ベール=ゼファー !!
「あっははははっ !! 無様ね、アンゼロット ! なんてお人よし、どこまで甘いのかしら !
私がただ裏界へ帰ると思ったら大間違いよ ! 所詮こいつらはどこかの魔王に送り込ま
れた下賎な下級エミュレイターどもに過ぎないわ ! 数が多いばかりの烏合の衆が、ま
さか貴女たちを“完全に”殲滅できるなんて思わないもの ! 」
「ベール=ゼファー・・・貴女は裏界に帰ったのでは・・・ !? 」
「だからお人よしって言ってるのよ、アンゼロット ! わたしが“それ”に施した仕掛けは、
もうひとつあるのよっ ! それは【門】としての役目 ! その娘がいる限り、私はどんな結界
も、時間すらも飛び越えて、その場に現れることが出来るのよ ! 」
高らかに歌い上げるように言い、ベール=ゼファーが遥か下界を見下ろした。
いまの彼女には、ロンギヌスたちが ---- いや、柊蓮司でさえも、地を這う虫のよう
に見えたであろう。
「アンゼロット。貴女にいいことを教えてあげる。“それ” ---- 」
と言いつつ指を差す先 ---- 距離と、幾枚もの宮殿の壁を隔ててはいるが、確かに
彼女の指差す先には、アンゼロットの執務室があり、“それ”とは当然プチベルを指して
いるのに違いなかった。
「“それ”が、私と密接につながっていることは貴女でもわかるでしょう ? いま、その娘
の息の根を止めれば、少なくともこの世界における私とのリンクは切れる。強制的に、
私は裏界へ帰還させられることになるわ。どう ? こんな劣勢を強いられた戦い、せめて
私一人ぐらいは戦線を離れさせた方がいいんじゃない・・・ ? 」
大魔王の言葉を、アンゼロットは直感的に真実だと感じ取った。
そして、次の瞬間、わたくしは試されているのだ、と気づいて背筋が凍る。
この戦いに勝利する確率を上げるためには、ベール=ゼファーの脅威を取り除かな
ければならない。そして、それは絶対に必要なことである。しかし、それにはこの部屋
の床で気を失って眠るプチベルを殺さなければいけない。
世界を守るため ---- 大を生かすために小を殺してきたいつものやり方をすれば、そ
れでいいのだ。“世界の守護者”としてはそれが当たり前の義務なのだ。
でも・・・でも、わたくしは・・・・・・。
「殺せばいいでしょ ? なぜ躊躇うの ? ほら、いつもどおり ------ 」
ベルの嘲る声に、アンゼロットが耳をふさいで机の上に顔を伏せる。
と -------- 。
執務室の絨毯がさわり、と擦れる音がした。
いつもの彼女を知るものからすれば驚愕するほどに、弱々しく、いまにも泣きだしそう
な表情をしたアンゼロットが、おそるおそる顔を上げた。
そこには ---- 失神からいつの間にか回復したプチベルが ---- 身体を起こし、床に
尻餅をついたままで、アンゼロットを見つめ返していた。
「ベル・・・さん・・・」
発する声まで弱々しく。アンゼロットは命の選択を迫られた幼子の名を呼んだ。
「・・・ごめんなさい・・・あんぜろっとおねーちゃん・・・わたし・・・わたし・・・」
喉が詰まる。なんと言っていいのか、なんと声をかけていいのかわからない。
産み出されたばかりの小さな女の子が、自分が何者であり、自分がどんな存在であ
り、自分がどれだけ大好きなみんなを、大好きな命を危機にさらしているのか ----
この少女はすべてを知って、そして自分を責めているのだ。
「わたし・・・いくわ・・・」
プチベルが静かに、しかし確かな決意を秘めてはっきりとそう言った。
「い、行くって・・・どこに行くというんですっ !? 」
アンゼロットの問いかけはほとんど悲鳴に近く。
なぜだか、それこそ何 ---- 年ぶりに、アンゼロットは泣きたくなった。
「わたし・・・ばかにされるのきらいだもの・・・ずっとまけているの・・・いやだもの・・・」
大魔王の元・写し身の少女は、こんなところは本体の負けん気の強さやプライドの
高さがやけに似ているのか、きっぱりそう言って唇を噛み締めた。
「だ、だからって貴女にできることなんか・・・」
押しとどめようとするアンゼロットと視線を合わせながら、よろよろとプチベルが立ち
上がり、にっこりと ---- ひどく、透明な微笑みを浮かべた。
「“ちいさなきせき” -------- 」
プチベルの身体を黄金の光が包み込む。
ふわり、とその小さな身体が床から離れ ---- 次の瞬間、執務室の窓を突き破るよ
うにして、プチベルは戦いの空へと飛び立った。
「・・・・・・っ、ベルさん・・・ベルさーーーーーーんっ ! 」
残されたアンゼロットの呼ぶ声は、おそらく、もう二度とは届かなかった ---- 。
※※※
一転、勝利への階から転落し、敗北の近づく足音を耳にして。
ウィザードたちは熾烈な戦いを強いられていた。
結界が大魔王の魔力によって破壊されたのを境に、仲間が倒れる鈍い音が幾つも
聞こえ始める。空を舞うエミュレイターたちの炎の息に焼かれ、着陸を続ける敵の数は、
次第に増大し、柊たちの戦線は崩壊へのカウントダウンを始めるところであった。
ただ唯一の救いは、ロンギヌスたちに与えられた箒がフォールンエンパイア ---- 射
撃、白兵両用の箒 ---- であったことぐらいであろう。
上陸を果たしたエミュレイターの姿に、ロンギヌスたちは武器の在り様をすぐさま変化
させ、接近戦対応に切り替える。それでも ---- 。
「くそっ、振り出しに戻されちまったぜ ! 」
愚痴をこぼしながらも、柊がエミュレイターの屍で山を築き上げていく。
しかし、さすがの柊もこの戦況にあっては ---- 軽口を叩く余裕はあっても、その表
情に余裕がない。いや、むしろ次第に無理が祟ったせいか、顔色に疲労感が滲み出
てきている。剣の勢いから次第に鋭さと力強さが失われていき、ついには ---- 。
「・・・・ひーらぎっ !! 後ろっ・・・・ !? 」
どこかでくれはが叫ぶ声を聞いた。振り向いたときには遅く。眼前に迫りくるエミュレ
イターの鉤爪が、柊の息の根を止めようとしているところだった。
「きゃあああっ !? ひーらぎぃーーーっ !? 」
「く・・・・っそぉ・・・」
くれはの悲鳴。柊が舌打ちとともに魔剣を防御のために頭上にかざす。だが、間に合
わない。顔をしかめ、だめか、と柊が観念したその瞬間。
ビクウゥゥゥゥゥゥ・・・・・・ン・・・・。
エミュレイターが攻撃の姿勢を保ったまま硬直した。
本能のままに生きる知性の低いエミュレイターであればこそ、この場に現れた異変と
自らの生存の危機を敏感に感じ取ったのか。小刻みに痙攣したまま、感情などという
人間らしさとは縁遠いはずのエミュレイターが感じたものは ---- 絶対の恐怖。
自らの異能の力を遥かに凌駕する強者の登場に、恐怖したのだった。
戦場の時間が止まる。
ウィザードもエミュレイターも、その別なく。
-------- 動きを、止めた。
「ばにてぃーわーるどっ」
舌足らずの声で唱えられる呪文。テラスに降り立ったエミュレイターたちが、闇に飲み
こまれ、消滅する。十、二十、五十、百、と。
「・・・おい・・・嘘だろ・・・」
「はわ・・・そんな・・・ベルちゃん・・・ !? 」
黄金の輝きに身を包み、手には澱のように凝った闇を携えながら、それでも静かに
わずかの邪悪の気配もなく、どこか寂寥たる空気を漂わせながら。
「・・・ひいらぎれんじ・・・くれはおねーちゃん・・・」
プチベルが寂しそうに呟いた。
「お前・・・まさか・・・」
苦悶に満ちた表情で柊が言う。
それには答えず、気丈にも顔を反らせて強気なままで。
「まったくー、ひいらぎれんじはー。しょーがないからわたしがたすけてあげるわー」
と、そんな台詞をいまにも泣き出しそうな声で言うのだった。
「ベルっ・・・・・・ !! 」
「ベルちゃん・・・・・・ !? 」
テラスに蠢くエミュレイターを瞬時に殲滅した少女は、最後に二人へ、ふふん、と笑っ
て、光り輝きながら天を目指して飛び去っていった -------- 。
※※※
「な・・・どういうことよっ !? 」
眉を逆立て、頬を引きつらせながらベール=ゼファーが叫ぶ。
来る。“あの娘”が来る。
地上から自分めがけて一直線に飛んでくる。それをさえぎろうとするエミュレイターた
ちを殲滅しながら、迫り来る。
百、二百、そして三百。ついには千体の侵魔を屠りながら。
闇色の光をその小さな手から放ち、エミュレイターの群れを蹴散らしながら !
瞬く間に、ベール=ゼファーの浮かぶ空に並び立ったプチベルは、その頃には六千
体のエミュレイターの半数までをも消滅させていた。
「・・・貴女・・・まさか・・・まさか・・・ !? 」
「・・・わたしはまけないんだもん。まけないちからをもつために、えみゅれいたーにもど
ることにしたのよ」
ベール=ゼファーの額に、球のような汗が浮かんだ。
自分の元・写し身がエミュレイターに戻ったということは・・・大魔王の写し身としての
力を持ったということではないか !! 言うなれば、自分に近い力を持つものとの戦い。
プチベルの存在は、ベール=ゼファーの“願った”ものである。しかし、そうやって造り
上げられた彼女自身は、決して大魔王の思惑に屈することなく、プチベル自身の持つ
“小さな奇跡”を願うことで、大魔王と対等の戦いの場に姿を現したのだ。
「くっ・・・・こんなの予定外・・・っ・・・」
毒づきながら、ベール=ゼファーが両手を振りかざす。黒い球体が血の色の紫電を
まとい、膨張しながら生まれてくる。プチベルがそれに合わせるように手のひらをかざ
し、同様の暗黒球を大魔王へと突き出した。
「ヴァニティワールドっ ! 」
大魔王の魔力がプチベルの身体を覆い尽くそうとした瞬間。
ベール=ゼファーは暗黒の壁の向こうで、幼い少女の声を聞いた。
「・・・・・・じ・あんりみてっど」
それ以上に膨れ上がる闇、そしてさらなる闇。
「な、なんですっ・・・・きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・ !? 」
絶叫とともにベール=ゼファーの仮初めの肉体が消滅する。
後に、正史に記されることこそないが、『アンゼロット宮殿攻防戦』と呼び習わされる
こととなる戦いの -------- ウィザードたちの勝利が確定した瞬間であった。
(次回が最後の投下、エンディングへ続きます・・・)
ふっ、小さな女の子があんなに頑張ってるんだ……ここで何も言わなかったら男じゃないな
超☆GJ!!
ベルはホント詰めが甘いなぁw
GJ!
さすが柊蓮司の”娘”と言うべきか……何と言う果断なる決断力
ボスへの一撃にリソース注ぎ込んでるんでしょうな
それこそクレバーに
え?クレバー王子に一撃をそそぎこむって?
歳とると涙腺脆くなってあかんなぁ(ずびー
ただのヴァニティワールドとアンリミテッドの差は高レベルだと絶望的差だからな。
リソースつぎ込んだら打ち合いでノーマルじゃ勝てるはずも無し。
ベル様、切り札切るタイミング間違えたなwwww
裏界に押し返されたベル様がリオンに小馬鹿にされてると思うと、
それだけで勃起する。
>>379 GJでした。
お、俺は信じてましたYO? プチベルがいい子だって!
やばい、感動して泣きそうです。
凄まじい名作の予感にwktkしながら、宝玉少女の斬撃舞踏曲(下)クライマックス編を投下したいと思います。
バトルメインです。
人を救うとは簡単なことじゃない。
本来人が助けられるのは自分を含めて一人ぐらい。
それ以上を求めるのは無理がある。
苦痛がある。
けれど、けれど、彼は如何な苦痛をも、苦しみであろうとも助けることを諦めない。
正義の味方なんてガラじゃない。
偽善に酔いしれているわけでもない。
ただ救いたいから。
それだけで手を伸ばす。
そんな奴――
鉄臭い味がした。
喉から込み上げる血が口内に溜まり、あまりの生臭さに吐き捨てる。
「ぶゅっ」
湿った音と共に喀血が零れた。
激痛が腹から、全身から走り抜ける。激痛という名の熱が脳を煮え滾らせ、焼け爛れてしまいそうに熱い。
気絶してしまいそう。
けれども、それは許されない。その手に抱えていた温もりがないのだから。
「エリス!」
大切な後輩、大切な仲間。
それを手放したしまった自分、助けなければならないという感情。
それをたった一つの支えに、痛みを、悪寒を、熱を、全身に感じながら彼は目を開いた。
渇いた砂のような大地に手を付いて、見上げた空は――銀閃に覆われていた。
それは刃。
それは剣。
それは斧。
それは刀。
それは鉈。
それは戟。
幾千、幾万の剣の担い手が一斉に刀剣を掲げたかのような、刃の群。
紅い、紅い空の下に、万華鏡よりも淫らに咲き誇る刃光があった。
「なんだよ、これはぁ……」
柊は血を吐き零しながら、呟く。
見たこともない月匣、倒したはずのエミュレイターによって解除されない世界、幾多の常識が通じない月匣とはいえこれほどの異相空間は濃厚な戦いを繰り広げていた柊でも経験がないほどの苛烈、異常、歪んだ世界。
止まらない出血を、腹に当てた手で食い止めながら、柊が呆然と呟いた時だった。
「かぁー!」
声がした。
それは鴉の鳴き声。
見上げれば、数匹の鴉が赤い空の下で舞っていた。
「なんだ?」
おかしい。
通常の鴉、いや生物は月匣内に侵入できない。招かない限り、単なる生物が入り込めるような異相空間ではない。
とすれば、エミュレイターか?
柊がそう考えた瞬間だった。
――血の雨が降り注いだ。
絶叫すらも上げる暇なく、空を舞う鴉たちを鋭く伸びた刃が貫いた。
一本、二本、十本、いや数百、数千にも至る刃が突き刺さり――切り刻んだ。肉も、血も、骨をも解体するかのように、嵐という言葉も生温い斬撃が起こる。
血の一滴、一滴すらも尊い、砕くべきだと歌うかのように剣閃が迸る。
斬、斬、斬。切る、斬る、刻む。
骨を断つ音も、肉を切り裂いた音も、血を砕いた音も、万を超える斬撃に両断される。
圧倒的な光景。
おぞましいはずなのに、どこまでも華麗だと酔い痴れてしまいそうな悪夢。
十秒にも至らない解体ショーの後に残ったのは、空へと薔薇のように咲き誇る刃たちと、その刀身に付いた鴉たちの血痕だけだった。
「なにが起こってやがる」
意味が分からない。
何故鴉を殺すのか、プラーナを奪うでもなく切り刻んで何の意味があるのか、理由が分からない。
だけど、けれど、一つだけ動かないといけない理由を見つけた。
バッとタッチボタンで開く傘のように万を越える刃の華が開いた時、僅かに晴れた銀光の向うに見過ごせないものを見つけたから。
「エ」
それは一人の少女。
彼が護るべき大切な仲間。
「リ」
その身は既に変わり果てた姿。
着ていた可愛らしい私服は既にボロキレとなって僅かに張りついて、その白い肌を隠すことすら出来ていない。
その細い手も、白い乳房も、小さく整った形の臀部も、何もかも晒し出されていた。
その身を覆い、貫き、囲むのは細い、無数の刃。彼女の肌に食い込み、細い刃は彼女の太ももを貫き、まるで生きているかのように脈動する。
彼女は刃に陵辱されていた。
肌を切り裂かれ、肉を貫かれ、その血を啜られる。
刀身陵辱。
彼女の体を傷つける刃はエリスの血に濡れて、紅く染まっていた。
「セン、ぱぃ」
エリスは泣いていた。
プラーナを貪れる痛みに苦しみを耐えながらも、血を流す柊を思って泣いていた。
自分の痛みなれば耐えられる。
如何なる辱めだろうが、耐え凌ぐ。
けれど、けれど、自分のせいで大切な誰かが傷つくのだけは耐えられなかった。
彼女と彼の間にあるのは万に至る刃の森。
刃に囲われる彼女からは柊が見えているのかどうかも分からない。
けれど、彼女は確かに柊のいる方向を見つめて、声を上げていた。
囁くような声で、悲鳴を上げていた。
「――スゥウウウウッ!」
視認した瞬間、柊の思考はぶっ飛んでいた。
それは怒り。
体を貫く痛みも、穿たれた傷も忘れるほどの憤怒。
残り少ないプラーナの量など忘れて、立ち上がり、駆け出していた。
出血など関係ない。プラーナさえあれば、プラーナで無理やり造血を行い、身体能力を強化し、音速に迫る速度で駆け出そうとして――
万に迫る刃の歓迎を受けた。
降り注ぐ刃。360度全てが殺意、凶器、必殺にして瞬殺。
それは必然だった。
しかし、運命を変えるのがウィザードならば、必然を覆すことも可能。
「どけぇっ!!」
瞬くよりも早く、その全身の血肉を粉砕する刃の群。
それに柊は右手に携えた魔剣の一撃を持って答える。
左手を添える。刀身に、血に塗れた左手を持って、己の血で刃を染め上げる――震える魔剣の咆哮。
生命の刃。命を喰らい、主の血を持って恍惚する魔剣の力。
迫る、迫る、殺意。それに足を踏み込み、血を吐き零しながら、腰を廻し、手を振り上げて、音すらも置き去りにした高速の斬撃が打ち砕く。
一閃。
一を持って、千を凌駕する。
振り抜かれた魔剣の軌道に沿って、迫る刀身たちが、バラバラとガラスのように砕け散る。まるで光のシャワー、高層ビルのガラス窓を全て砕いたような大轟音。
破片が柊の頬を切り裂く、肌を切り裂く、それはさながら散弾銃の嵐のように。
だが、関係ない。
ただ前へ踏み出す。右に、左に、前へと魔剣を振り抜きながら、柊は疾走する。
それは人知を超えた光景。
誰が想像しようか。万の刃に立ち向かう、たった一本の剣の戦いなど。
世界全てが敵であるかのような壮絶な戦いを。
風が戦慄いた。
斬撃。その概念の極みがここにある。
大地から、空から、生え出してくる無限の刀身。人間を粉微塵にして余りある処刑の刃。
それを柊 蓮司は踊るように打ち砕く。
手首を返し、プラーナを供給し、音速を超える斬撃――されど音も大気も震わせない矛盾、月衣の恩恵による限界無き一撃。
超音速の刃が、ほぼ同時に天と地を打ち砕く。
バラバラと散り行く桜の花びらのように刃の欠片が舞う、それを魔剣使いは縦横無尽に振り抜く刀身で打ち飛ばした。
如何なる魔技か。
魔剣の一撃で撃ち飛ばされた刃の欠片は弾丸のように疾走し、迫る刀身と衝突し、砕け散る。砕け散った刃は再び魔剣によって撃ち放たれ、砕くための刃となる。
なんたる矛盾。
ただ一人で世界とも戦い抜くためのウィザード、その戦い方。
無限の刀身に対抗するための無限の剣閃とでも語るべきか。
血を流しながら、喀血を撒き散らしながら、咆哮すらも切り刻まれる斬撃の合唱世界の中で、斬舞を踊る。
それは常識ではありえない世界。
正史より世界に語られてきた如何なる決闘劇よりも凄まじく、神話にすら至りそうな光景。
夜闇の魔法使い、それが生きるのは伝承であり御伽噺であり神話の世界だった。
しかし、限界は来る。
「ぶっ!」
何千本砕いたのかもわからないほどに魔剣を振るった柊の唇から、赤黒い喀血が零れた。
脚が止まる、すかさず迫る刃の洪水。辛うじて反撃、けれど手の動きが鈍い。
捌き切れない。
「やべええ!」
魔剣を振り下ろす、風が舞う。
術式を構築、震える足で砕けた刀身だらけの地面を蹴る。
プラーナを使用し、洪水を飛び越えるだけの脚力で重力の束縛を振り切る。月面を飛ぶかのように、高々と。
≪エアダンス≫
風の祝福。
重力の束縛を振り切った柊の動きを補助する不可視の風の渦。まさしく風の舞踏と証すべきほど動きが軽やかになる魔法。
数瞬前まで柊が立っていた場所を数百を越える斬撃が切り刻んだ後、縦横無尽に姿を超える刀身が上昇する。
下を見下ろす柊は見た。
早送りで流した薔薇の開花のように、刀身たちが螺旋を描きながら鋭く伸びてくる様を。
そう、それはまるで鴉を切り刻んだ解体ショーの再現のように。
「くそったれ!」
刀身を下に構える。
その刀身に――刃が突き立った。砲撃を喰らったかのような衝撃、戦車の前面装甲すらも貫通するだろう刺突が、数十発に渡り、柊の構えた刀身にぶちあたる。
吹き飛ぶ。踏ん張る場所もないから、ただ上昇する。飛び上がる、空へと向けて跳んでいく。
追撃してくる刃。
構えた魔剣の盾を潜り抜け、迫る刃に柊はちょうど三十九回目の刺突の勢いを利用して魔剣を翻した。
魔剣を後ろに振り回す、加速する上昇の勢い、エアダンスによる補助、さながら無重力空間のような束縛無き動き。
「はぁあっ!」
残り少ないプラーナを絞り出す、血を零しながら骨と肉と皮膚を強化する。
迫る刃、柊の首を、胸を貫き穿孔しようとする伸び上がる刀身――それを蹴り飛ばす。
何の変哲もないスポーツシューズ、毎度ボロボロになるので安物の靴、その靴底で――刀身の腹を蹴った。
僅かに歪む刀身の軌道。腹を掠める刃、プラーナが削られる、なんとも言えない脱力感。
「らぁあああああ!」
それでも無理やり脚の筋肉を踏ん張らせ、強引に避ける。
負傷していた太ももの傷が開く、じゅくりとズボンが血に染まる、問題ない。もう既に痛みなど感じる余裕がないのだから。
数百の刃が、軌道をそらした柊の横を突き抜けていく。
彼は見る。
無数に絡みつく刀身でそそり立つ刃の柱を、それは月まで届くかのようにどこまでも伸びていた。
見惚れそうな光景。
しかし、休む暇など呼吸一回分も存在しない。
柱が蠢いた。生き物のように、震える。
「っ!?」
開いた。
柱から、金属でありながら生物のように無数の刀身が飛び出す。蛇のように柊のように迫る、おぞましい光景。
「うぉお!?」
魔剣を振るう、体制の取れない状態で迫る刀身を弾く。けれど、二本目の刃が、三本目の斬撃が、柊の血肉を貫く。
血の華が華麗に咲いた。
「がぁああああああああ!!!!」
絶叫。
肩が貫かれ、わき腹を一度貫かれた傷口を抉るような刃。
ごきゅごきゅと音を立てて、刀身が蠢く。
もはや刀身は金属ではなかった。それは鋼色の肉。蠢く怪物。
醜い怪物。
ともすれば、失神してしまいそうなほどクラクラする意識の中で、柊は自らを貫く刀身を左手で掴んだ。
血が零れる、けれど離さない。歯を食いしばりながら、右手を振り抜く。
バキン、砕ける音。肩の、腹の刀身を砕いた音。
怯んだように刀身が蠢く、けれどすぐさまに伸び上がり、柊に迫り――動いた彼を捉えきれずに空を切る。
疾走する。
迫る刃を踏み台に、柱へと柊が踏み込む。
「っ! らぁああ!」
落下しながら、柊は虚空を蹴り飛ばす。
自分から見れば下、すなわち上空を踏み場に、月衣による常識破壊、己のルールで足場と成した上空を踏んで、回転するように魔剣を走らせた。
魔剣の刃が剣の柱に突き立ち――めり込む。
「きりさけぇえええええ!」
刃が砕ける、一本目。刃が折れる、二本目。刃が壊れる、三本目――
次々と、次々と、折れて、壊れて、切られて、断たれて、その数が五百二十七本目に至った時、衝撃が粉砕された欠片と共に柱の向こう側から噴出した。
緩やかに折れていく、巨木のように。
ズズゥンと支えを失い、自重と共に刀身の巨木は崩壊する。
その本体を蹴り飛ばし、飛び離れた柊の前で砕け散るその様は美しい。
耳が壊れそうな金属音が鳴り響く、崩壊の禁忌を奏でるようにガラガラと醜く歪んだ刀身たちが涙のように大地に降り注いでいく。
柊が地面に着地した時、柱は終わりを告げていた。
刃の森に、無数の歪んだ剣たちが突き刺さる。
まるで墓場のような光景だった。
「はぁ、はぁ」
汗が止まらない。
血も止まらない。
寒気でガチガチと歯を鳴らしながら、柊は息を吐く。生臭い、血の臭いを伴った息を。
体力は限界に近づいている。
魔力も消耗し、プラーナに至っては使用をするのすら危険なほどに使い果たした。
だけれども。
ジャキン。
絶望を告げるような音がした。
見上げる。
そこには崩れた刀身の柱、それを貫く無限とも思える刀身の群。
空を覆い尽くし、咲き乱れる威容。
変わらない光景。
戦い始めた時と同じ絶望的な光景。
「くそっ」
無駄な足掻きだったのだ。
そんな言葉を叩きつけられたような気分。
どうすればいいと自問。
ここは敵の月匣の中、ルーラーを倒さなければ破壊は出来ない。エリスも助けることは出来ない。
しかし、ルーラーを探すだけの余裕もなければ暇もない。
もしも仲間がいれば、協力してエリスを確保し、柊が粘っている間にでも広範囲魔法で吹き飛ばすなどという手段も取れただろう。
だが、今ここにいるのは柊ただ一人だった。
どうやって抗えばいい。
どうすれば、どうすれば。
メリメリ。
瞬間、音がした。
生々しい音が。
柊は顔を上げる、視線をそちらに向ける、音がした方角に。
それは遥かな高みに浮かぶ紅。
万の刃による茨の高み、その葛篭の中、ぶじゅるぶじゅると音を立てて刀身たちの隙間から滲み出る血液の音。
彼は気が付く。
その囲みを形成する刀身、それは血痕に汚れた血の刃、鴉を切り刻み、柊の血を啜り、エリスの血に塗れた歪んだ刀身。
嗚呼、嗚呼、とどこからか声がした。
おぞましいかな。
狂おしいかな。
歪んだ血液が音を立てて、形を成す。
それは、それは血の化身。
「……エミュレイター、なの、か?」
それは柊が傷つけたエミュレイター、それの成れの果てなのだろうか。
ぶよぶよと粘着質に歪んだ血液色の液体に閉じ込められた刃を持つ侵魔。まるで閉じ込められ、貪られたような末路。
狂気の塊。
見るだけで精神が冒されそうな異形。
感じるのは虚無である。
感じるのはおぞましさ。
肌が震える、魔王を見たときよりも吐き気が込み上げる、力ではなく性質が、その存在が魂に伝える。
それは許容してはならぬもの。
それは受け入れることが出来ない狂気。
破棄し、否定し、消し去るべき怪物なのだと。
柊は気付く。
この月匣に取り込まれる前に倒したエミュレイター。それは逃がしたエミュレイターではなく、柊が倒したはずのエミュレイターの残骸が操られていただけだったのだと。
「お前が、お前が――本体かぁ!」
柊の咆哮、それに応えるように血色の塊が蠢いた。
ゴムのように膨らんで――形を変える。
目には捉えきれぬ速度で。虚空を踏破した。
「なっ!?」
声を上げる暇もなく、目の前に迫る紅――それが柊を吹き飛ばした。
血が零れる。
血によって、迸る超音速の刃が柊蓮司の存在を否定しようとしていた。
心が引き裂かれそうだった。
流れる血よりも、彼女が流す涙のほうが多いと思えるほどに。
「せんぱぁいい!」
エリスが叫ぶ。
眼下で血を流す柊の姿に、悲鳴を上げていた。
血を纏うエミュレイター、それが出てからエリスの視界は僅かに晴れていた。
そして、それは彼女に絶望を与えた。
柊が魔剣を振るう――それよりも早く迸る刃が彼の腕を傷つける。
柊が足を踏み出す――無限に錯綜する刃が彼を吹き飛ばす。
柊が吼える――轟音が彼の声を叩き潰す。
圧倒的な力の差だった。
鴉の血を、柊の血を、エリスの血を、液体を束ね、折れ砕けた刀身の欠片を取り込んで鞭とした血鞭。
達人が振るう鞭の先端は音速を超えるという。
ならば、それを人知を超えた異形が振るえば?
それは先端のみならず、しなる鞭全てが音速を超える至上の斬撃となる。
蛇の擦れあうような音を立てて、柊の周囲の空間を数百を越える紅の輝線が覆い尽くし、切り刻み、破砕する。
世界を覆い尽くす刀身が、全てを切り裂く斬撃と打ち砕く猛連打という破壊に塗れ、砕け散る。
分子構造まで破砕するような破壊、それにきらめく刃が雪のように舞い散る壮絶な光景。
それは見ているだけならば美しく、儚い世界。
けれど、それに砕ける、傷つくものがいた。
斬撃結界とでも呼ぶべき中心で、柊で膝を着いていた。噛み殺そうとしながらも洩れる絶叫を垂れ流し、必死に抗っていた。
迫る三撃。
その内二つを辛うじて捌き、残った一撃が彼の胸板から血を迸らせる。
降り注ぐ六撃。
死に物狂いで四つ迎撃、残った二発が血肉を散らした。
柊の全身には傷ついていないところなんてない。
血が流れ、斬撃が交差し、飛び散る血煙をさらなる血が塗り潰す地獄のような光景。
「いゃ」
エリスは涙を零す。
嗚咽が洩れる。
「いや」
泣き叫びたい。
今すぐにでも駆け寄って、助けたい。
けれど、その身は拘束され、切り刻まれて、痛みに血を流す哀れな状態。
「やめて! 柊先輩をこれ以上傷つけてないで!!」
絶叫。
けれど、そんな声なんて届かない。
ただ応えるのは、その肢体を貫き、貪る刃のみ。
冷たく、彼女の肉を貫いて、不気味に脈動するねじれた刃が震えた。
「っぁ」
エリスは声を洩らす。
彼女を取り囲む刃が震える。冷たい感触、痛みによる快楽にも似た感覚に、全身が焼けたように熱くなる。
プラーナの吸引。まるで犯されているような感覚。魂が陵辱されたような気持ち悪い、泣き叫びたい嫌悪感。
汗が零れる、血と汗が混ざった体液が首から、乳房を伝わり、生白い太ももから滴り、愛液のように零れる。
冷たさと熱さが混ざった矛盾した感覚。
肌に食い込む冷たさが、流れる血潮の熱さが、眼下でいたぶられる愛しい思い人への悲しみが、エリスを狂わせる。
狂いたい、狂いたい、狂えば楽なのだろう。
発狂して、絶望して、目を閉じればきっと楽なのだ。
それは理解出来る。
それは分かりきっている。
けれど、けれど。
「せんぱぁぃ」
それだけはやっちゃいけないのだ。
かつて世界を滅ぼしかけた。
くれはが死んで、自分を責めて、何もかも残っていないと、自分はただの獣だと思い込んでいた。
その時、助けに来てくれたのは――彼だったのだから。
「……って……」
だから、エリスは言う。
あの時言えなかった言葉を。
「……んばって……」
助けを求めるのではなく。
手助けが出来ないのならば、せめてもの想いを乗せて。
「頑張って! 柊先輩ぃ!」
ただ声を、想いを、告げた。
大好きだから。
好きだから。
愛しているから。
だから、だから、告げるのだ。
言葉を、想いを、たった一言に乗せて。
「負けないで!」
そして、それが眼下の光景が変わる切っ掛けだった。
忘れていたことがある。
忘れちゃいけないことがある。
目にも見えない、捉えることも、防ぐこともままならない斬撃。
それに翻弄されて、ぶっ飛ばされて、死にかけて、それでも諦めないで、流れる血も少なくなってきた頃。
それは聞こえたんだ。
「負けないで!」
と。
「ぁあ」
背負っているものがある。
今ここで負ければ、きっとエリスは死んでしまう。
大切な後輩が、大切な仲間が――掛け替えのない女性が死ぬ。護れない。
かつて味わったくれはの死。
泣き叫びそうになるような絶望感。
そんなのはもう二度と、二度と!
「味わいたくないんだよぉ!」
魔剣を振り抜く。大地を削り飛ばし、魔力と生命力を込めて薙ぎ払うように前へ。
衝撃音、金属音、けたたましい轟音。
弾かれる血鞭。奇跡的なクリーンヒット。
僅かに緩む速度、視認が出来た。
高速、詠唱、展開、術式、解放。
「嵐の乗り手、彼方へ運べ!」
言霊を発する。
魔力が渦巻く、流れる血を舞き散らし、明日への道へと運ぶそれは。
「≪ストーム・ラン≫!」
誰かを助けるために走る男を進ませる魔法。
瞬間、柊の足が大地を蹴った。
鳥が飛び立つよりも速く、タンポポの種子が風に舞うよりも早く、噴出したロケットのように迅く。
駆け抜ける。
前へ、進むために。
その速度は、弾き飛ばされたはずの血鞭へと追いつくほどの速さ。
震える血。迫りくる柊を砕こうと先端が物理法則を無視して、翻る。
その尖端を、切り上げた魔剣が弾いた。ただの反応によって繰り出される軌跡、それならば予測可能。
「 !!」
切り上げた魔剣、それが手首を返し、大地を踏み込み、言葉にならぬ咆哮に共に振り下ろされる。
斬!
振り抜かれた魔剣、その刃が食い込んだのは血鞭の肌、そこに突き立つ。
ぐじゅりと音を立てる。
「どけよ」
魔剣が震える。生きているかのように、怒りに打ち震えるように、柊の咆哮に答えて振動する。
「エリスが」
ずぶり、ずぶりと音が立つ。肉を裂くような音と共に。
「――泣いているだろうがぁ!」
怒り。
ただ一人の少女のために柊は怒る。
命を燃やして、戦い抜ける。
「風を纏え!」
轟々と風が巻き起こる。
それは散らばる欠片を、流す血を、何もかも飲み込む嵐。
「燃え上がれ!」
魔剣が燃え滾る。
太陽のように、赤熱化し、血を蒸発させ、輝く。
「何もかも!」
血が迸る。
燃え滾る魔剣、その柄が蠢き血を啜る。
命を啜り、風を纏い、炎に輝いて。
彼は疾る、走る、奔る。
その先は――
「ぶった」
輝ける命。
プラーナを注ぎ込み、血を零しながら、前へと進む。
明日へと手を伸ばすように、魔剣が奔る。
音を立てて出現する、真の刃。
変形し、唸りを上げて、神殺しの刃が、想いを乗せた剣が突き進む。
無限の刃をものともせず。
異形の狂気を貫いて。
先へ、先へと続いていく斬撃。
「ぎれぇええええええええええ!!」
それはきっと世界すらも切り裂く一撃。
幾千、幾万の修練の果てに垣間見られるような絶技。
その刃は遥か彼方の敵を貫いた。
両断して見せた。
願いのままに。
想いを乗せて。
たった一人の少女を救うために、切り裂いた。
紅い夜が終わる。
ガラガラと刃の世界が崩壊していく。
同時にエリスを拘束していた刃たちがひび割れる。
「え?」
バキンと音を立てて、エリスが解放される。
その高みのままに。
「きゃあぁああ!」
下手なビルの屋上にも匹敵する高さから落下する肢体。
エリスはあられもなく悲鳴を上げてグングンと迫る地面に、一番の危機感を味わいながら目を閉じ――フワリと誰かに受け止められるような感覚がした。
「大丈夫か?」
「え?」
おそるおそる目を開く。
そこには魔剣を置いて、エリスを抱きとめた柊の姿があった。
「怪我ないか? って、怪我だらけだな。悪ぃ」
エリスの全身を見つめて、柊は心底ばつが悪そうな顔をして呟く。
なんで彼はこんなに優しいのだろうか。
怪我なら彼の方が遥かに負っているというのに。
「私は大丈夫です、柊先輩」
そう告げるエリスはどこか蠱惑的だった。
破れ破れの衣服が肌に張り付き、普段は隠してあるはずの乳房も臀部も露出し、全身が淫らに血に塗れて、どこか痛々しく、けれどもその白い肌と相まって扇情的だった。
「そうか」
「柊先輩のほうこそ……大丈夫ですか?」
柊の顔色はまるで死体のようだった。
全身が血に塗れて、荒く息を吐いて、脂汗はこちらからも見えるほど。
元々の格好が分からないほど、破れ、切り裂かれ、ボロボロになった格好は壮絶の一言に過ぎた。
エリスは気付いていないし、柊も気付いていない。
血まみれの男女が、ほぼ半裸で抱き合う。
その光景が外部から見ればどれだけ異常で、どんな印象をもたれるかなど。
分かっていない鈍い二人。
「あ。月匣が解けましたね」
空を見上げる。
崩壊していく世界は既にほぼ消失し、空は青くなっていた。
大地に散らばる刃の群は消失し、世界は青く、清浄な姿を取り戻し――
「ああ」
ぐらりと、柊の体が揺れた。不自然に。
「終わった、な……」
ゴプリという音がした。
ポタリとエリスの顔に熱い何かが掛かる。
それは血だった。
柊が吐き出した血。
「せん、ぱい?」
エリスが呼びかけ、その肩に触れようとしたとき――柊は崩れ落ちた。
前のめりに、まるで風に吹かれて倒れたかのように。
「柊せん、ぱいぃい!」
柊は動かない。
元の世界の石畳の上で荒く息を吐き、血を流し、ピクリとも動かない柊。
エリスが肌に触れる――恐ろしいほど冷たい。
そして、同時に感じる、見えた。
一瞬だけ、柊の姿が歪んだように見えた。
「え?」
蜃気楼のように、歪んだ。
或いはTVのチューナーが歪んだように、ノイズが走ったように見えた。
瞬時に理解する。
柊の存在を保つ、プラーナが枯渇し掛かっているのだと。
何度も何度も戦って。
何度も何度も消費して。
何度も何度も奪われて。
それでも、彼は文字通り自分の存在をかけて、エリスに力を使ったのだ。
自分が消える可能性も省みず、力を使って、体を削って、命を燃やし尽くして足掻いたのだと。
その結果が、これだった。
「いや」
このままだと柊は消失する。
プラーナを使い果たし、消えた存在は誰からも忘れられる。憶えていられるのはウィザードだけ。
ウィザードでは無い、今のエリスは忘れてしまう。決して取り返せない思い出になってしまう。
「いや、いや、いやぁ! 消えないで、死なないで、柊先輩ぃ!」
絶叫する。
誰か助けて。
柊先輩を助けてと泣き叫ぶ。
涙を流しながら、柊の体にしがみ付く。
失っていく体温を、その存在を繋ぎとめようとして、必死に声を掛ける。
「わりぃ、少し寝かせてくれ……」
声が洩れる。
柊のかすれるような声。
「寝ちゃ駄目です! おきて! 起きてください、せんぱい!」
「はは、は。こういうときはきびしぃんだな、エリス」
「喋らないで! 意識をはっきりしてください! すぐにアンゼロットさんを呼びますから! 死なないで!」
「ぁぃつ、うるせえからやめてほしいわなぁ。あとべつにしなねえよ、すこしねるだ……け……」
柊の目が閉じられる。
エリスが揺さぶっても、声をかけても、反応がない。
彼の存在が揺らいでいくのが分かる。
絶望的な光景が広がっていく。
「いやぁ」
なんでこうなるの。
なんで柊先輩が消えないといけないの。
泣き叫ぶ。
絶望する。
必死に、必死に助ける方法を模索する。
――えっとねぇ、緊急時なんだけど憶えておくといいよ。
エリスの脳裏に、くれはの言葉が閃いた。
それはウィザードになってから、教えられた力の使い方と一般的な知識。
その中に緊急時に置けるプラーナの供給法があった。
――まあ普通はやるような機会もないし、女の子だとちょっと躊躇うけどね。
――えっとどんな方法ですか?
――それはねぇ……
思い出す。
けれど、それはどこか後ろめたい方法。
意識もない、許可もない、勝手にやるべきではない行為。
だけど。
「柊……先輩」
死なせなくない人がいる。
失いたくない好きな人がいる。
だから、エリスは――
「ごめんなさい」
柊の頭を持ち上げて、ゆっくりと顔を近づけて。
唇を交わした。
想いを乗せて、舌を絡めた。
投下終了です。
次回はエピローグ やっぱり三話だけで終了しませんでした(土下座)
戦闘大好きなくせに、拙い描写ですみません。もっと修練します、反省します。
あと、エロくなくてすみません(大汗)
ちなみに接吻によるプラーナ補給は魔装機神からのお約束ですw
次回はエロいれるべきか、それとも無しで清いまま終わらせるほうがいいのか迷ってます。
読んでくださった方がいればありがとうございます。
では、また次回。
い…一番槍GJ。
ひーらぎはさすがだなぁ、なんて思う今日この頃。
待ってた……ずっと待ってたんだから……っ!>斬撃の人
うーんやっぱり柊蓮司は柊蓮司だなぁ(誉め言葉)ほんとうにあたまがわるいなこの男は。大好きだ!?
こっからエロ持ってくんならやっぱりこうしかないよなぁ、とは思ってたけども。うん、エリスいいよイイヨー?健気でヨイヨー?
次回もわくとき待ってますー
>ぷちべるの人
混乱しながら慌てて対応しただけの一撃と、多分全力注ぎ込んだ必殺の一撃とか…
ベル様、罰当たったな…w
ぷちべるにぐっじょぶ!
>斬劇の人
…なんちゅー熱い…。まさかエロパロでこんな作品が降ってくるとは。
…って似たような感想は何度か覚えた気がするが…w
ともあれ、柊にぐっじょぶ!
もう500k届くのか。今回豊作だったんだなあ。
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l | .|、 |_|_ | lハ .| l\ヽ._l.、 .l l | さあ柊さん次のスレッドですわ
l | ‐| ヘl i \|. |∧ヽ .|ヽハ ヘ \.l `、| .| |
l/ヘ ヘ ヽ`、 |/下 ゝOヽ`l ヘ \ l ァィfゝO マヽ .l l .|
ヘ ハ \ ヽ{〈 !'l oj |i` ヘ ヽl .l ki´ ol.,l >l l .|
.ヘ ヘ ヽ\l ゝoー.'ソ ゝoー'ソ/ .l l |
f |∧ ヽ .\.  ̄´ ´ ̄ .| i l |
| \|トヘ丶ヽ ' ./| |ノ |
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