>>92 あいよー。
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.0 プロローグ
どこにでもある商店街の片隅にある『晴霧堂』。旦那と死に別れた奥さんが女手一つで
4人もの娘を育てているという、実に涙のそそる裏話のある定食屋だ。そんな晴霧堂も、
かつて商店街の別の店で起きた食中毒騒動のあおりを受け、仕方なく闇金から運転資金を
借りたことがあった。もちろん、結果は坂道を転がりおちるがごとく。そればかりか、そ
の筋の連中に追い込みをかけられ、あまつさえ家族全員、そいつらに拉致られそうになっ
たことまである。
で。
偶然にも現場にいた俺が助けた、という次第だ。これでも一応、T学、K校と柔道で全
国大会に出てる腕前だし、OBには本職以上に本職っぽい警察関係者もいるんで、けっこ
う冷静に対処できたってだけの話にすぎない。
その後、その筋であることをめいっぱい宣伝しまくっていたバカどもはお縄になり、借
金も違法取り立てということでチャラになった。ついでに俺が先輩に嘆願、後輩を脅しま
くって晴霧堂で食事させることで、傾きかけていた店は一気に再興。そればかりか、これ
をきっかけに商店街も息を吹き返し……そのせいで妙なことになってしまった、というわ
けだ。
なにが妙かといえば。
──落ちぶれたとはいえ晴霧は武家の血筋。大恩を受けし時、一族の男はすべて忠義を尽
くし、一族の女はすべて身を捧げるのが掟です。
しかも。
──そうかぁ。武家の掟じゃ、しょうじゃないねぇ。
という気楽さで、なんかもう、いろいろなことが商店街公認になってしまった。
それもあって……